あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part195

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1名無しさん@お腹いっぱい。
もしもゼロの使い魔のルイズが召喚したのがサイトではなかったら?そんなifを語るスレ。



(前スレ)
あの作品のキャラがルイズに召喚されました PartPart193
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1228308245/



まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/
避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9616/




     _             ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
    〃 ` ヽ  .   ・ここはあの作品の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!
    l lf小从} l /    ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
   ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,.   ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
  ((/} )犬({つ'     ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
   / '"/_jl〉` j,    ・ 投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
   ヽ_/ィヘ_)〜′    ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
             ・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!




     _       
     〃  ^ヽ      ・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
    J{  ハ从{_,    ・クロス元が18禁作品でも、SSの内容が非18禁なら本スレでいいわよ、でも
    ノルノー゚ノjし     内容が18禁ならエロパロ板ゼロ魔スレで投下してね?
   /く{ {丈} }つ    ・クロス元がTYPE-MOON作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
   l く/_jlム! |     ・作品を初投下する時は元ネタの記載も忘れずにね。wikiに登録されづらいわ。
   レ-ヘじフ〜l      ・作者も読者も閲覧には専用ブラウザの使用を推奨するわ。負荷軽減に協力してね。





.   ,ィ =个=、      ・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。
   〈_/´ ̄ `ヽ      ・1レスの限界最大文字数は、全角文字なら2048文字分(4096Bytes)。これ以上は投下出来ません。
    { {_jイ」/j」j〉     ・行数は最大60行で、一行につき全角で128文字までですって。
    ヽl| ゚ヮ゚ノj|      ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
   ⊂j{不}lつ      ・次スレは>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
   く7 {_}ハ>      ・重複防止のため、次スレを立てる時は現行スレにその旨を宣言して下さいね。
    ‘ーrtァー’     ・クロス先に姉妹スレがある作品については、そちらへ投下して盛り上げてあげると喜ばれますよ。
               姉妹スレについては、まとめwikiのリンクを見て下さいね。
              ・一行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えます。
              SS文面の区切りが良いからと、最初に改行いれるとマズイです。
              レイアウト上一行目に改行入れる時はスペースを入れて改行しましょう。
2名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/11(木) 03:57:23 ID:jT09Szu0
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part194
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1228615261/
前スレミスった
3名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/11(木) 04:27:12 ID:gA4f96Ap
1乙

確認し忘れてたてちゃった。

まぁ196として使えばいいか。

196用
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1228937059/
4名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/11(木) 08:15:18 ID:rVKLzw9y
とりあえず半日亀なれど前スレ魔砲の人へ
教師陣は生徒を原則家名で呼ぶ
例外はフルネーム名乗ってないタバサのみ
キュルケなら「ミス・ツェルプストー」だし
ルイズなら「ミス・ヴァリエール」
これはコルベールも当然当てはまる
メンヌヴィルの学園襲撃以降キュルケがねだってファーストネームを呼ばせる的
変化はあってもおかしくないが
それ以前の時系列ではありえないから
「ギトー先生」もこの場合おかしい
教師同士も男なら「ミスタ」女なら「ミスorミセス」で通されてる
例外はオスマンの「オールド」のみ
5名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/11(木) 09:30:18 ID:9Dbo+z+8
おまえ、友達いないだろ?
6ゼロの使い ◆1sxkwMZzzc :2008/12/11(木) 09:35:39 ID:kMmbov97
予約が無い様なので、5分後 第9話を投下させていただきます。
7ゼロの使い ◆1sxkwMZzzc :2008/12/11(木) 09:40:55 ID:kMmbov97
「面白い。魔法を封じられたメイジに、このグリフォン隊隊長を殺せるか見せてもらおう。」
「裏切り者の分際で、過去の肩書きを名乗るとはな。」
「行くぞ!!」

ワルド達がエア・ニードルで斬りかかって来る。彼の世界で『真空切り』と呼ばれる技に酷似した攻撃をメディルは華麗な動きでかわしていく。

「どうした!?大口叩いておきながら、ただ逃げるだけか!!?」
「いや、貴様の実力を測っていたのさ。こっちの世界に来て身に付けた古代魔法の威力を試す実験台に相応しいかどうかを。」

言い終わるが否や、メディルは両手にそれぞれ別の呪文を発動させた。

「左にメラゾーマ、右にベギラゴン・・・合体魔法!閃熱大炎・メゾラゴン!!」

二つの呪文が交わり、先程のメラゾーマなど基準にすらならぬほど強力な劫火が五人のワルドを飲みこんだ。
だが、ワルド達は微かな焦げも作っていなかった。

「中々強力な火炎だが・・・我らには通じぬ。これで終わりだ!」

五人のワルドが放ったのはライトニング・クラウド。人の命をも奪う強力な風属性魔法だ。

「死ね!!」
強烈な雷撃が襲った。しかし、それはメディルにではなかった。
信じられないと言った顔で、四人のワルドが雷に撃たれ、蒸気のように消えた。

「馬鹿な・・・魔法を跳ね返しただと!!?」
反射と言う先住魔法が存在する。と噂には聞いていたが、ワルド自身、その効能を拝むのは初めてだった。
「反射呪文・マホカンタ。いかなる呪文も、この盾の前には無力。
・・・反逆者よ、自分の術に裏切られて冥土に旅立て!!」

「く・・・だが甘い・・・」

ドアの前にいた最後のワルドが、先の炎で視界を奪われた隙に張られた盾に跳ね返された雷を冷静に同じ呪文を以って相殺した。

「お互い魔法が効かない状態で互角になったと思っているのだろうが、肉弾戦ならば僕に部が・・・」
言いかけてワルドの顔が凍りついた。
至近距離にメディルがいたからだ。

「さっきの風で0距離射撃が防げるか!!?メラゾーマ!!」
至近距離からメラゾーマを受けたワルドは黒焦げの状態で吹っ飛び、壁に激突した。
しかし、そのワルドも霧のように消えてしまった。
刹那、メディルの背後の壁を破って、グリフォンに乗ったワルドが乱入した。
8ゼロの使い ◆1sxkwMZzzc :2008/12/11(木) 09:41:47 ID:kMmbov97
「残念だったな。先程退室した時に、偏在と入れ替わっておいたのさ。強敵相手に自ら向かうほど僕は馬鹿じゃないんでね。」

しかし、メディルは余裕の態度で言った。

「言った筈だぞ。先刻承知・・・最初から全部知っていたと。」
ボン!という音と共に、煙が昇り、メディルの姿が影の様な薄っぺらな魔物に変化した。

「言い忘れていたが、ジェリーマンやそのモシャスナイトの使う呪文・モシャスは姿だけでなく
生命力以外はオリジナルと全く同じ能力をコピーできる。山賊に襲撃されたとき入れ替わっておいたのだ。
そこからは古代魔法レムオルで姿を消して同行していた。
ついでに言うと先程のジェリーマンを用意したのも『私』で、二人は消え去り草ではなく私と同じ魔法で姿を消していたのだ。
これらの作業を音も無くやれたのは皇太子のサイレントのお陰だ。
貴様と同じで、私も出来るだけ矢表に立つのは避けたい性分でな。」

いつの間にかワルドの背後に、本物のメディルが立っていた。その右手のそれぞれの指に蝋燭の様な火が灯っていた。

「最強の火炎を5発くれてやる。貴様のペットも道連れだ!
五指爆炎弾(フィンガー・フレア・ボムズ)!!」
五発のメラゾーマの接射をまともに受け、グリフォンは粉々に吹き飛び、ワルドは先程の偏在と同じ目にあった。

「やったわね!」
レムオルの効果が切れたルイズが駆け寄ってきた。
「お見事ですぞ。メディル殿。」
「賞賛には及びませぬ、皇太子。主の母国の恥晒しを討ち取っただけです。」

(ワルドよ・・・)ワルドの頭の中に声が響いた。
ワルドは死んでなかった。戦うどころか、呪文一つ使えぬ虫の息だが、生きていた。
(誰だ・・・)
(私か・・・?お前の任務に手を貸すよう言われた者だ。)
(お前が・・・あの方の言っていた・・・)

作戦前、ワルドは指令者から協力者の存在を聞いていが、顔を合わせたことはおろか、こうして会話するのも初めてなのだ。
もっとも、テレパシーによる会話など、彼の人生でも初体験なのだが。

(な・・・ならば早く助けてくれ!!やつらはまだ俺が生きていると感づいていないようだが、
止めを刺されるのも時間の問題だ。)
あのメディルを見ていれば、最後の念押しに大呪文をかますことなど容易に想像できた。

(ああ、望み通り任務の成功を助けてやるとも。役に立たぬ駒の処分のついでにな。)
見知らぬ協力者の言葉に、ワルドは驚愕した。
(な・・・何を言って・・・)
(失敗者には死あるのみ・・・レコン・キスタの鋼の掟、よもや忘れたとは言わさんぞ。)
(ま・・・待て、待ってくれ、あのお方に・・・総司令官閣下に取り次いで・・・)
(この件については既にあのお方も閣下も了解済みだ。君が知らぬうちに、あの方が君にかけた魔法。
メガンテという自爆の術を改良した、生物を遠隔操作式の爆弾に変換する魔法で連中を城もろとも木っ端微塵にするとのお達しだ。)
(よ・・・止せ・・・止めてくれ・・・俺に・・・俺にもう一度チャンスを・・・)
(『ワルド君、せいぜい二つ名通り、最後は綺麗な閃光(はなび)となってくれたまえ』・・・
あのお方と閣下、そして私からの手向けの言葉だ・・・)
ワルドの最後の懇願は、華麗に無視され、テレパシーは途絶えた。

三人は驚愕した。死んだはずの男が、動くことすらままならぬはずのワルドが立ち上がったからだ。
とっさに杖を構える二人とメディルを無視するかのように、ワルドは予想外の行動に出た。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

文字通り、天に轟く叫びを上げるワルドの体が眩い光を放った。
刹那、ワルドの体がメディルのイオナズンが可愛く見えるほどの凄まじい大爆発を巻き起こし、
ニューカッスル城はアルビオン王国から消えた。
9ゼロの使い ◆1sxkwMZzzc :2008/12/11(木) 09:42:37 ID:kMmbov97
古代魔法の解説

何故『ロトの紋章』や『ダイの大冒険』の呪文が古代魔法扱いになっているか?
答えは簡単です。
上記2作はいずれも漫画版7(正式名称『ドラゴンクエスト エデンの戦士達』)より前に完結しているからです。
ちなみにロトは1997年、ダイは1996年に完結。漫画版7は2001年連載開始。

レムオルは単純に3(私が知る限りFCの3以前のドラクエにレムオルはありません)が7より前に発売されていた、と言うだけの理由です。

次にいつ覚えたのかですが、第5話でメディルが書を読んだことにより習得しています。
たったそれだけで習得って便利すぎないかと思われるでしょうが、
これは漫画版7・コミックス13巻にて「呪文の書を読んで覚える。」と作者・藤原カムイ氏自身が明言していますので、
その設定に従っただけです。

余談ですが、上記2作の作者には共通点があります。

それは・・・「現在休載している作品がある」と言うことです。

どちらも早く連載再開してもらいたいものです。

これにて投下終了です。
10名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/11(木) 10:55:40 ID:5vzAI1HK
乙でした!
11名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/11(木) 11:21:59 ID:QazgMIHz
なんか最後に巧い具合に閉めたなwwwwww
よ!にくいよ>>9作者!
12名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/11(木) 11:35:41 ID:VNTmMHFK
人なら禁呪でも魔族なら大丈夫か>五指爆炎弾(フィンガー・フレア・ボムズ)

しかしメゾラゴンなんて名前しか知らんぞwwww
13名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/11(木) 11:55:48 ID:HrLplb2C
閃光のワルド、暁に散りおったwww
“一瞬だけど閃光のように!”の言葉に違わぬ活躍(爆散は何気にスレ史上初?)に吹きました。
呪文の件は、カムイ版DQ7では他のDQシリーズが同じ世界の過去の話になっていることを考えれば無理はない……かな?
ちょっと無理があるような気もするけど、最後のワルドで文字通り全て吹っ飛んだわーw
14名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/11(木) 12:19:46 ID:9+dP4NdG
スレ立て乙。
15名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/11(木) 14:40:04 ID:dYhs8MuC

●植田佳奈
「こないだー、悪口を絶賛喋ってたら、後ろに本人いて(笑)
あんなことほんとにあるんだ!って思って、超びっくりしちゃった(笑)
実名って言うかその人しかあり得ないような悪口をバンバン言ってたの。
そしたら、”そんな風に思ってたんだ、ごめんね”って逆に謝られちゃって…(笑)」
「(悪口を言う時は)気をつけた方がいいよ、後ろと前と、ね(笑)
あと隣の部屋も気をつけた方がいい、結構漏れてるから。あたしそれだった(笑)」

コレとか、あと「早死にしそうな声優」 「もてなさそうな声優」 みたいな酷い項目ばかりのチェックに
全て釘宮を選んだととラジオで発言
16デモゼロ(仮):2008/12/11(木) 15:02:26 ID:E2cJcuBb
どなたもいらっしゃらない、かな
いい加減タイトルから(仮)を外した方がいいのかどうか、どうでもいい事に悩みつつ
15:10頃から、第六話を投下してもよろしいでしょうか?
17デモゼロ(仮):2008/12/11(木) 15:09:51 ID:E2cJcuBb
お許しを頂いておりませんが、投下開始いたします


 ゼロのルイズ改め、馬鹿力のルイズ
 気まぐれに出かけた街で、サビた剣を購入した
 インテリジェンス・ソードの癖に錆びているそいつの名前はデルフリンガー
 錆びてる癖に態度がでかい
 なんと言うか、生意気?

 本当なら、貴族たるルイズ、こんな剣なんていらない
 ……けれど
 何故だろう、デルフリンガーを持っていると、体が軽く感じるのは

 ……何故、だろう
 剣なんて、持った事もないのに
 この柄が、やけに手に馴染むのは


「オールド・オスマン!!」
 大発見をしてしまったコルベール
 大急ぎで、ノックもそこそこに学院長室の扉を開けた
 そこで、彼が見た光景は

「死ね!氏ねじゃなくて死ね!!糞じじぃーーーーーっ!!}
「っぎゃーーー!?死ぬ!本当に死んでしまう!ロングビル、ギブ、ギブーー!!」

 ぎりぎりぎりぎり
 割と本気でオールド・オスマンの首を締めにかかっている、憧れの美人秘書、ミス・ロングビルの姿

「………」
 ぱたん
 何も見なかった事にして、コルベールは扉を閉めた
 数回、深呼吸した後……こんこん、改めて、扉をノックする
「コルベールです」
「うむ、入りたまえ」
 オスマンの返事を聞いて、学院長室に入るコルベール
 先ほどまでの物騒な雰囲気は嘘のように消えていて、オスマンはきちんと学院長の椅子についており、ロングビルも秘書の席についている
 …先ほどの光景は、幻だったのだ
 コルベールは、そう自分に言い聞かせた
「どうしたのかね?」
「その、ミス・ヴァリエールの件についてですが…」
 ぴくり
 反応を示すオスマン
 ロングビルに席をはずすように告げる
18名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/11(木) 15:09:59 ID:3w6Rjjdv
支援すべきかと言われればそうではないと口にするほど自分に不正直であってはいけない
と思うところが無いでもないかもしれないなーなどと
頭の片隅で発言する自分が居ない、などと口にするほど恥知らずではない訳で・・・・


まあとにかく支援
19デモゼロ(仮):2008/12/11(木) 15:11:21 ID:E2cJcuBb
 ロングビルは、素直に立ち上がり、学院長室を出て行こうとして…
「あぁ、そうです、オールド・オスマン。今度セクハラいたしましたら、王室に報告します」
 その言葉を告げた時の表情は、笑顔
 しかし、その笑顔は明らかに、「次は容赦しないぞコラ」と言う仏の顔も三度な笑顔であった
 う、うむ、とオスマンはだらだら冷や汗流しつつ頷く
 その様子に満足したように微笑んで、ロングビルは学院長室を後にした
「…なんじゃい。ちょっとお尻を撫でたくらいで。モートソグニルが散歩に出かけておるから、覗く事はできんし…」
「自重してください。オールド・オスマン」
 若干頭痛を覚えつつ、コルベールは苦笑した
 …これさえなければ、もっと尊敬できる偉大な方なのだが

 こほん、と咳払いを一つ
 本来の話題に、戻らなくては
「オールド・オスマン。ミス・ヴァリエールの左手に刻まれたルーンなのですが…」
「おぉ、そう言えば、見た事もないような随分と珍しいルーンじゃったの。何かわかったのかの?」
「はい、それが…」
 とにかく、調査結果を報告するコルベール
 ルイズに刻まれたルーンは、始祖たるブリミルの使い魔に刻まれたという…ガンダールヴのルーンかもしれないという、その結果
 ううむ、とオスマンは考え込んだ表情となる
「…やれやれ、何もかもが、我々が抱く常識から外れとるの。使い魔は主の体に宿り、そして刻まれたルーンはガンダールヴ、とは…」
「間違い…ないのでしょうか?」
「ルーンはほぼ一致しておる。ミス・ヴァリエールは…ガンダールヴの力を、その身に宿してしまったのじゃな」
 正確に言えば、その力を身に付けるべきは、彼女の体の中の使い魔
 しかし、その使い魔は、主であるルイズに力を与えている存在
 故に、そのルーンの力も、ルイズに現れる
「確か、ガンダールヴは…あらゆる武器を、使いこなすんじゃったか」
「はい。もっとも、ミス・ヴァリエールが武器に相当するものを持っている場面を見ておりませんので、確認できませんが…」
「確か、食堂でグラモンの馬鹿息子を壁にめり込むくらい突き飛ばしたとか聞いておるが、あの時は?」
「武器の類は身につけておりませんでした。純粋に、彼女の力で突き飛ばしたようです」
 むむむむむ
 考え込む二人
 ルイズに宿った使い魔には、主に怪力を与える能力もあると言うのか
 不憫だ
 ルイズがあまりにも不憫で、二人は涙を流しそうになる
 まだ16歳の、小柄な乙女
 その身に宿りしは、常人の2,3倍の食欲と、その身に似合わぬ怪力
 …女性として、あまりにも不憫すぎる
 オスマンとコルベールは、ルイズと言う少女の将来を、少し心配したのだった

「…ヴァリエール、か」
 学院長室を後にしたロングビルは、一人、ぽつりと呟いた
 貴族なら、誰でも使えるはずの魔法が使えない少女
 それでも、貴族としての誇りを決して失わず、むしろ誰よりも貴族らしくあろうとする少女
 決して努力を怠る事のない彼女は、貴族嫌いのロングビルにとっても、好感を抱ける相手だった
 使い魔召喚の儀式で大怪我を折ってしまい…何故か、少女に相応しくない食欲が身についたと聞いているが
「……まさか、ね」
 己の考えを、己自身で否定する
 …まさか
 まさか、彼女が、自分の妹と同じような状況になっているはずがあるまい、と
 一人、そう結論付けたのだった

20デモゼロ(仮):2008/12/11(木) 15:12:07 ID:E2cJcuBb
 街に出かけてから、数日後の事
 夜、一人、杖を振るうルイズ
 ぼん!!と爆発音が響き渡る
「はぁ……」
 憂鬱にため息を吐くルイズ
 魔法は、相変わらず失敗してばかり
 やはり、ただの一度も成功しない
 …ん?一応、使い魔召喚と契約は成功してるから、二回は成功してるのか?
 しかし、やはりルイズは貴族として、魔法を普通に使いたかった
 だからこそ、努力する
 幸いと言うか、今までより心なしか疲れにくいような気もするし
 遠慮なく、魔法の練習を続けていく
 …どごん!!
 また、失敗
 なんとも見事な爆発である
「はぁ……」
「おいおい、そんなにため息ついてると、幸せが逃げていくぜ?」
 カタカタ
 傍らに置いていたデルフリンガーが、そう声をあげる
 結局、エキュー金貨100枚で購入したこの剣
 話し相手にもなるから、とあまり鞘に入れておく事はない
 今も、気晴らし用にと、鞘から出しておいておいていたのだ
「ため息もつきたくなるわよ。あぁ、もう。どうして成功しないのかしら…」
「ぶっちゃけ、ヘタな魔法より威力あって強力だと思うけどな、その爆発」
 確かに、人に直撃したら大怪我させる事確実な爆発ではあるけれど
 でも…それは、ルイズが使いたい魔法じゃあ、ない
「…せめて、水の秘薬が作れるようになって…治癒魔法が、使えるようになりたいのに…」
 病弱な姉の為に、せめて、それだけはできるようになりたい
 そう願っていたルイズ
 彼女にとって、やはり、魔法が爆発するという現象は悲しいものでしかないのだ
 だんだん、悲しい方向へと動いていくルイズの思考

 ぐぎゅるるるるるるるるる

 ………
 うん、何となくそんな予感はしたのだ
 毎度毎度、絶妙なタイミングで鳴る腹だ
「相棒は本当に大食らいだな。そのちっこい体のどこに収まってんだ?普通なら栄養全部胸に行ってんのかってパターンだが、娘っこにはその胸がないし…」
「…………」
 ぎゅううううううう
 力いっぱい、デルフリンガーの柄を握るルイズ
 左手のルーンが微かに発光し、ルイズの中を力が駆け巡る
「っちょ、っや!?いーたーいー!?やめっ、そんなに強く握らないでぇ!らめぇええええ!!!!」
 デルフリンガーでできる気晴らし、それがこれである
 剣の癖に痛みを感じるとはおかしい事だが、あんまり強く握られると痛いらしい
21デモゼロ(仮):2008/12/11(木) 15:13:15 ID:E2cJcuBb
 若干悲鳴が気色悪いが、わりと気晴らしになる
 まぁ、オススメはできないが
「ひでぇよ相棒…俺、壊れちまうよ…」
「そう簡単には壊れないでしょ。ってか、相棒って何よ」
 デルフリンガーは、何故かルイズを相棒、などと呼んできている
 理由を聞いても「忘れた」「何となく」としか答えが返ってこないため、埒があかない
 不思議と嫌な感じはしないので、とりあえずそのまま呼ばせていた
 ぐぎゅぅぅぅぅぅぅう
 …うん、まずは夜食よね、夜食
「ミス・ヴァリエール〜!」
 あ、来た来た!
 きらり、瞳を輝かせるルイズ
 ここ数日、毎日の用に夜、魔法の練習をしているルイズだったが、どうにもおなかがすいて仕方がない
 だから、シエスタに頼んで、夜食を用意してもらっていたのだ
 恩人であるルイズのために、シエスタは甲斐甲斐しく、料理を作ってくれていた
 豪華でなくてもいいから、とにかくおなか一杯になるものを、お願いしている為、いつもボリューム満点の料理を作ってくれる
 キラキラ、まるで飼い主がご飯を出してくれるのを待っている猫のような表情を浮かべるルイズ
 …と、今日は、シエスタの後ろから、誰かもう一人やってくるのが見えた
「ツェルプストー?」
「はぁい。今夜も頑張ってるじゃない。でも、早く寝ないとお肌に悪いわよ?」
 どうやら、連日魔法の練習で夜更かし気味のルイズを心配してくれたらしい
 …近頃、本当にキュルケの優しさが身にしみていた
 彼女が、こんなにも世話焼きな性格だとは思ってもみなかった
 今まで、キュルケにからかわれ、むきー!とそのからかいに乗ってばかりだったルイズ
 しかし、使い魔を召喚できた事で、ほんの少し心に余裕ができた事
 そして、初めは使い魔召喚に失敗していたと思われていたルイズをキュルケが心配し、からかいよりも気遣いを優先させた為に、二人の仲はかなり改善されていた
 先祖代々いがみ合ってきた仲とは、もう見えないかもしれない
「わかってるわよ。でも、もうちょっとだけ」
 むぐむぐ
 シエスタの作ってくれた、ボリューム満点のサンドイッチを食べつつ、キュルケに答えるルイズ
 うん、今日のサンドイッチも美味しい
 どっちかと言うと平民向けの料理らしいが、質よりも量を優先しがちになってしまったルイズにはちょうどいい
 むぐぐん……ごっくん
 よし、練習再開!!
「シエスタ、悪いけど、お皿片付けておいて。ツェルスプトー、失敗した時に巻き込んで怪我させるのも嫌だし、ちょっと離れていて」
 はい、と返事して、シエスタは皿を片付けにかかる
 キュルケも、ルイズの爆発魔法の威力は知っている
 素直に、ルイズから離れた
 杖を握り、ルイズは集中する
 一句一句、間違える事のない呪文の詠唱
 何度も何度も詠唱したのだ、間違えるはずがない
「……ファイヤーボール!!」
 ちゅごどごぉん!!
 派手な爆発音
 いつも通り、魔法は失敗した
22デモゼロ(仮):2008/12/11(木) 15:14:12 ID:E2cJcuBb
 ……ただ
 問題は

「げ」
 ぱらぱら……
 壁が、崩れている
 適当に壁を狙った放った魔法は、爆発によって見事にその壁を崩していた
 あ、あれ?
 固定化の魔法がかかっているはずなのに、どうして崩れるの?
 パニック状態になってしまうルイズ
 キュルケも、離れた所でぽか〜ん、と口をあけており…シエスタも、キュルケの隣辺りで、思わず足を止めてその崩れた壁を見つめていた
 ど、どどどどどどど、どうしよう
 怒られる!!
 頭の中で、ありとあらゆる言い訳を考え始めたルイズであったが

 …その思考は、強制的に打ち切られた

「え……?」
「っ逃げろ、相棒!!」
 大地を揺るがす、轟音
 ルイズたちの目の前に……巨大な、巨大な、次のゴーレムが姿を現した





いつもいつも短いですが、これにて第六話終了です
支援してくださった方、ありがとうございました
23名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/11(木) 15:24:47 ID:3w6Rjjdv
・・・・・・・・・・・そっか
テファもジョゼフも教皇も大メシばかばか食らってるのか
ウェストウッド村の財政がぴんちですな

次も期待しちゃうのです
24名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/11(木) 15:28:14 ID:H4pWIrYm


名無子「全部胸(ry」
テファ「言ってるお前は面白いのかも知れないが、言われるこっちは100万人目だ」
25名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/11(木) 17:46:31 ID:Ir9LRNP2
デモゼロの人乙。
死ね、氏ねじゃなくて死ねwワロスwww
空腹に耐えられずオーク鬼を喰おうとしておマチさんに止められるテファを幻視したw
次回にwktk
26名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/11(木) 18:24:16 ID:UtwdvVMB
wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
27名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/11(木) 18:32:46 ID:/JV7F6QT
おつお


エルフはキリスト教的進化論で言うところのΩ点に一番近い存在なのかな
28名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/11(木) 18:58:46 ID:q74ZemHX
96 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/12/04(木) 03:08:31 ID:DO3FnTGf
皆様、感想、雑談をぶった切るような形での書き込み。初めに謝罪をしておきます。
本スレに書くものかと思ったのですが、一応気になったので書き込みをします。私、この板ではリリカルなのはクロスとゼロの使い魔クロス、この二つのスレ・まとめサイトをよく見ております。
そんな中で、ふと気になりましたのが、先日投下されました「使い魔の左手、悪魔の右手」氏の作品、第一話の事です。
DMC4のクロスはまだまだ少なく私も大好物ですが、読んでいて思ったのです。召喚される前、ネロとキリエのシーンの文が、リリカルクロススレの方で連載されている作品によく似ていると。
その作品は、DMC4とのクロス、「魔法少女リリカルなのは〜DEVIL HUNTEERS〜」氏の同名作品です。
その第5話後半、シグナムとフェイトがネロを次元犯罪者と勘違いし、地球まで追ってきて、ネロ達と出会う場面の文及び描写と酷似している部分があります。

悪魔の右手氏
『城塞都市フォルトゥナ、ミティスの森
フォルトゥナ城を過ぎた辺りにある、ラテン語で「優しい」を意味する広大な森。
そのフォルトゥナで信仰されている宗教、再建が進む魔剣教団の本部が一望できるその場所で
二人のカップルが歩いている。』

リリカルなのはDHS第5話 
『何かを知っている。フェイトは今度こそは失敗しない事を胸に誓い、歩いて行く。
2人が向かうは、ミティスの森。フォルトゥナ城を過ぎた辺りにある、ラテン語で「優しい」を意味する広大な森だ。 』

悪魔の右手氏
『「ネロ」
「何だい?キリエ」
ネロ、と呼ばれた青年が振り返る。
「いつ来てもここは…素敵なところね、小鳥のさえずりと川のせせらぎがよく聞こえるわ」
「静かっちゃ静かなんだがな…」
「あなたとの時間もとても長く感じれる」
キリエ、と呼ばれた美しい女性はそういうと彼の左腕に腕をからめる。
「まぁ……ね…」 』
見ているこっちが恥ずかしくなるほどのノロケっぷりである、恋人であるキリエの口から出た素直な言葉に
ネロは少々頬を赤くしながら鼻の頭を気恥かしそうに?いた。

リリカルなのはDHS第五話
『「ここは、やっぱり静かね・・・・・・動物の鳴き声と川の流れの音だけ・・・・・・・ネロはそう思わない?」
「いや、いいところだとは思うさ」
ミティスの森でネロとキリエの2人はゆったりとしていた。何をするでもなく、ただ寄り添い、自然を感じる。
自然は人の心を癒し、恋人の存在はさらにそれを加速させる。ただ、静かに2人でいることが若い二人には幸福だった。
特にネロは、キリエがいいならなんでもといった感じだ。普段のはねっ返りぶりとは正反対である。
「でも悪魔が出たら危ないだろ?」
「でも、ネロが守ってくれるでしょ?あの時も・・・・・そうだったし・・・・・・・」
思い出されるのはあの全てが解決した日。2人の初めての接吻を邪魔した悪魔をネロは完膚なきまでに叩き潰した。それを持ってこられるとネロの顔も赤くなる。
「まぁ・・・ね・・・・」
鼻を掻き、照れ隠しをするネロ。そんな彼の様子を見て、キリエは優しい笑みを浮かべていた。 』
29名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/11(木) 18:59:34 ID:q74ZemHX
904 :名無しさん:2008/12/06(土) 01:29:09 HOST:i118-19-228-83.s05.a011.ap.plala.or.jp
失礼いたします。
私、「リリカルなのはクロスSSスレ」にて、「魔法少女リリカルなのは〜DEVIL HUNTERS〜」という作品を連載させて頂いている者です。
自分は、こちらのスレの作品の読み手として、主にまとめwiki、たまにスレ・避難所を覗いております。
この度、私の拙作からの盗用疑惑というのが報告されたようですが、同一作者の可能性及び、被害者の存在というコメントがありましたので、書き込みをさせて頂きました。
結論から言いますと、私は、こちらのスレでの長編作品は現時点では一切投下しておりません。
確認として、自分が執筆しておりますのは、件のリリカルなのは&DMC4クロス
某サイトにて投稿しております、マブラヴオルタネイティヴ&アーマード・コア4クロス、デビルメイクライ&ブラック・ラグーンクロス。
更新を停止しておりますが、ジョジョスレにて、仗助&トニオ召喚モノの4本を手掛け、これ以外に執筆しました長編作品はございません。
盗用疑惑に関するコメントですが、報告のレスを拝見させていただきました。
確かによく似ている部分があるなという感想を私は持ちました。あくまで個人的な意見ですが、あまりよい気分は致しません。
何故かと言いますと、クロス元がゲーム作品であり、今夏発売予定だったノベライズ版も未だ発売に至っていないと記憶しております。
また、設定資料集「デビルズ・マテリアライズコレクション」・「Saber of Savior」にも開発段階でのシナリオ台本のみで
DMC4本編の後日談に関する文献が存在しない状態で、こうも似るものだろうかと思うわけであります。
自分の中では、試作予告編も含めれば、10ヵ月近くに渡って執筆してきたものであり、所詮2次創作といえど、思い入れの強い作品であります。
それを盗用されたとなりますと、前述の通りいい気分は致しません。
とは言え、全て完全なコピペというわけではなく、現時点ではあくまで「疑わしき」でしかありませんので、管理者の方、議論をされた方の結論を待ちたいところであります。
仮定として、もし、盗用事実があるのなら、私はこのケースに関しては即刻削除は求めません。話の前半部分であり、完全なコピペではないからです。
但し、該当部分の全面改訂だけは求めたいと思います。
また、このスレの判断であります、「悪魔の右手」氏を反応を待つというのは、それはもう結構であります。
偉そうな事を言える立場ではございませんが、確実な検証をして頂き、氏のコメントを待ちたいと思います。
疑惑が事実であるのなら上記の該当部分を改訂していただければ結構ですし、
完全に氏が「そのような事実は全くない」と申されるのであれば私はそれ以上何も申しません。
そこからは議論者の方々の判断にゆだねたいと思います。
かつて、リリカルスレで盗作擁護の判定を受け追放された書き手もおりました事を考え、発言いたしますと
私は、盗作・盗用行為は許されざる事だと思っております。
ただ、今回はケースがケースですので比較的穏やかな姿勢で見ていきたいと思っております。
しかしながら、この件に対するレスポンスの皆無、反省のない態度、私以外からの引用、引き続き同様の行為が繰り返される等の事態になった場合
私は、流石に厳しい態度を取らざるを得ません。そのような場合は、削除を求めたいと思っております。

最後に、長文の書き込みを謝罪いたしますと共に、日々運営に関して議論を続けられています管理者及び他の方々に感謝を意をささげたいと思います。
追伸として、今後私に対する何らかのレスポンスが求められた場合、「リリカルなのはDHS」の名で書き込みをいたしますことをお伝えしたいと思います。
30名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/11(木) 19:00:33 ID:q74ZemHX
906 :名無しさん:2008/12/06(土) 01:51:22 HOST:wb01proxy01.ezweb.ne.jp
>>904 リリカルなのはDHS作者氏
自分はDMCもなのはもわからんので判断できんのですが
わかりやすい判断基準としてラテン語で云々の部分て
どっちかの原作とか資料とかであるんですか?

あと>>888=889であげられた以外に作者からみて疑わしいところってありますか?





>>管理人および議論スレ諸氏
盗用問題はコピペでもない限り検証が非常に難しいので
疑わしい部分の比較や双方の作者のコメントを待ちたいと思いますがどうでしょうか

あと期間とかの案として
一ヶ月間使い魔の左手、悪魔の右手氏からレスポンスがない場合
wiki登録分から本文を削除して盗用疑惑があるために一時削除の注意書きのみとし
二ヶ月間レスポンスがなければページを削除という形はいかがでしょうか

使い魔の左手、悪魔の右手氏からレスポンスがあった場合はコメントの内容次第になると思いますが
31名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/11(木) 19:01:17 ID:q74ZemHX
7 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/12/07(日) 11:28:32 ID:Q4IAz5CA
907 :リリカルなのはDHS ◆Y2c93Cv37M:2008/12/06(土) 02:45:24 HOST:i118-19-228-83.s05.a011.ap.plala.or.jp
ラテン語云々の部分に関しては、設定資料集などには一切記述されていません。
ただ、私が参考にいたしましたのは、2007年11月初め、プレス向けなどに発表した当時の最新情報にラテン語で「優しい」を意味するという記述はありました。
それの原文に関しては
『「デビル メイ クライ」シリーズでは珍しい、日差しが強く緑に囲まれた世界。それがフォルトゥナ郊外に広がる森林地帯「ミティスの森」だ。
ミティスとは優しいという意味を持つラテン語。
その名の通り、見る者の心を和ませる雄大な森だったか、フォルトゥナの悪魔に呼応するかのように、不気味な樹木が数多く見受けられるようになってきた。』
となっておりまして、私の文とは違うのは、原文では、場所については『フォルトゥナ郊外』、広さに関しては広大ではなく『雄大』と表現されています。
ただ、公式サイトでミティスの森に関して述べていたのは、比較的短期間で、詳細なキャラクターや武器などの紹介ページが出来てからは見ることが出来なくなっています。
また、他の疑わしいところという質問ですが、報告されましたレスでは、ネロが照れるシーンがありますが、鼻頭をかく。とはっきり言っているのは
拙作第六話にて
『この3人が集まり、使い捨ての尖兵にも等しい下級悪魔に劣ることがあろうか。
もとより悪魔を滅する使命を持つ者、愛する者のために重圧を押しのけた者、主の為にすべてをささげた者。古からの『原初の恐怖』でも彼らをすくめることなど出来なかった。
大剣が炎を巻き上げ悪魔を喰らう。大鎌が無慈悲にも悪魔の命を刈り取る。炎の魔剣が悪魔を切り裂く。
相手が人間ではないのならネロはもとよりフェイト達にも手加減をする理由は無い。30を超えるスケアクロウの群れが瞬く間に散っていく。
身を膨らませ、甲虫の群れが体液をまき散らしながら飛び散っていく。あとに残るのはちぎれた布袋、されどそれもやがて霞のように消え去っていく。
5分とかからない戦いであった。背に剣を戻したネロはすぐさまキリエの下へと歩む。
「大丈夫だったか?」
「うん・・・・・ネロが・・・守ってくれたから」
「まあ・・・・・ね」
鼻頭を掻きながら照れた表情を浮かべるネロ。
離れた場所で初めてその穏やかな表情を見たフェイト達はわずかに驚いたものの、すぐさま当初の目的を果たそうとする。 』
という5話と同じように「まぁ・・・ね」と言うシーンがございます。
とは言えどちらも同じような台詞まわしですので、現時点では疑惑でしかない事を考えますと
どちらかだ!とは申せませんが。
鼻頭をかく行為自体は、DMC4エンディングスタッフロールにて、あまり内容には触れませんが
2秒ほど映る場所があります。
32名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/11(木) 21:04:38 ID:y+MIip9s
ルイズとキュルケがアーン♥な関係になるSSは無いかね?
33名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/11(木) 21:12:31 ID:tT4LMdJM
テファはモリオン臭いなぁ、今後学院メンバーも感染するならキュルケはクレイモアだろうな
34名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/11(木) 21:18:16 ID:htQ4aZ6f
>>32
ジョジョのほうの虚無の茨
35名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/11(木) 21:21:11 ID:FeSM8ezl
デモンパラサイトの悪魔憑き(寄生虫憑き)はめったやたらとメシを食わねば
ならないなんてルールは無いんだ、せいぜい二倍位なんだ。どれだけでも食え
る腹にはなるんだが。

や〜、ネタなんでしょうけど。全裸ネタを前面に出してない所が好印象〜
36名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/11(木) 21:30:51 ID:hEphBRfQ
>>32
おまけにフーケもルイズに食われたぉw
37ナイトメイジ:2008/12/11(木) 22:01:12 ID:YFUyoBrK
22時6分から投下させてください
38名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/11(木) 22:01:33 ID:RCX5jVTe
予約無いようでしたら
22時30分から、『使い魔セガール〜最強のコック〜』を
投下しませんので他の方どうぞ
39名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/11(木) 22:03:25 ID:a+diT61a
>>38
なん・・・だと・・・!?
40ナイトメイジ:2008/12/11(木) 22:05:43 ID:YFUyoBrK
よやくあったみたいなのでどうぞ
41名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/11(木) 22:10:05 ID:6vurCore
>>38をよく見るんだ
42名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/11(木) 22:19:09 ID:h7bp8m9I
ナイトメイジが先に投下して問題ないんじゃね?
両方支援。
43名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/11(木) 22:24:14 ID:jR4X5HS3
>>38はスレを混乱させた罰としてミズーリ召喚物を書くこと。
44名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/11(木) 22:28:23 ID:Ju5J/d+3
>投下しませんので他の方どうぞ
落ち着いてよく読むんだ。
45名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/11(木) 22:31:25 ID:h7bp8m9I
って投下しないのかよ>>38
支援してサーセン
46名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/11(木) 22:32:12 ID:RzV4AOET
>>38
予約あるんだから投下しろよな
47名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/11(木) 22:33:20 ID:qB+jCFXt
スレを混乱させた罪を問われている>>38だが、 既に
『冗談でレスしたのに、作者さんの妨害という思いもよらぬ結果を招いた』
という恐ろしい罰を受けているのではないだろうか?
今頃は真っ青になってるだろうw
48名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/11(木) 22:34:56 ID:w86yqLOP
こうなったら38には書いてもらうしかないな。
49名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/11(木) 22:44:48 ID:a/s+b4m3
セガールwww投下キターと一瞬思っちゃったじゃないかw
50名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/11(木) 22:46:38 ID:S4H/VFMZ
時間的に見ても、投下予告見てから書いたわけじゃなさそう……?
51名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/11(木) 22:47:47 ID:Gok9cx44
これ以上無いというタイミングだなw
52名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/11(木) 22:55:49 ID:Fwm2hHYx
>>38
予約あったんだから頑張って投下しろよw
53名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/11(木) 23:05:48 ID:eShm7D7W
>>38頑張って投下してくだされ。

そしてナイトメイジの方、支援!!
54名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/11(木) 23:08:32 ID:nhkcKKsO
>>38題名は「沈黙の虚無」だぞ、絶対だぞ!
55名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/11(木) 23:10:32 ID:P4PLS/Hn
>>38は書くべき
そしてナイトメイジ支援
56名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/11(木) 23:14:57 ID:S4H/VFMZ
>>38の応答がない……もしやセガールがすでに動いた……!?
57名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/11(木) 23:16:29 ID:c3EnFbPW
消されたか・・・奴は完璧主義者だからな・・・
58名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/11(木) 23:20:37 ID:y+MIip9s
ルイズのションベン直飲みしてえ
5938:2008/12/11(木) 23:25:01 ID:RCX5jVTe
冗談で言ってほんとすいませんでした
今頑張って映画見直しながら書いてますw
60名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/11(木) 23:26:03 ID:iTcZZ5E+
>>38の人気に嫉妬w

61名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/11(木) 23:29:42 ID:h7bp8m9I
ナイトメイジの人がすぐに投下しないなら、代理投下を行おうかと思うんだが大丈夫でしょうか
62名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/11(木) 23:34:04 ID:S4H/VFMZ
結構時間たってるし、大丈夫だと思う
63ゼロの黒魔道士代理:2008/12/11(木) 23:35:00 ID:h7bp8m9I
それでは投下します。
64ゼロの黒魔道士1/5:2008/12/11(木) 23:35:42 ID:h7bp8m9I
――
……頭の中には次への動きがながれこんでくる……
「ちっきしょぉ、隙が全然ねぇな!相棒がちっこいから避けれてるもののぉっ!」
……変、といえば変だなと、頭の片隅では思ってたんだ……
「うぉぁっ!?今のぁ危ねぇ!?」
……ゴーレムの右手をギリギリ体を回転させて避ける……
「相棒っ!?おら、シャキッとしやがれっ!?考えてんのかっ!?アイツに隙ぁ――」
「分かってるよっ!だ、大丈夫っ!」
「頼むぜ相棒ぉぉぉぉぉ〜!!また来たぁぁっ!!」
……体がこんなに動くのも、こんな風に避けれるのも不思議だけど……

……『魔法を使った対策』が全然思いつかないのは何でなんだだろう……?


―ゼロの黒魔道士―
〜第十四幕〜 使役魔衆活躍譚


……考えてみれば変な話なんだ……
ボクは、ずっと、旅をしていたときも、『魔法を使って』戦ってたんだ……
だから、こういうときに、必死になって、頭がパニックになっちゃったとしても……
真っ先に『ファイア』を唱えようとか、『ストップ』で足止めだ!とか考えるはずなのに……
……今は……『フレア剣』のデルフの1撃をどうゴーレムに叩き込むかだけを考えてる……?

ドォォンッ
……そんなことが頭の片隅でグルグル渦巻いちゃってたとき、その白い塊が森の1部を削り取ったんだ……
「っ!?相棒っ!!」
「隙ができたっ!行くよっ!」
……やっぱり不思議なんだ……
普段のボクだったら、こんなに動き回ってるときに隙とかを見つけたりなんてできないのに……

ゴーレムがボクとデルフじゃなくて、白い塊に気を取られたその一瞬、
それとは反対側に思いっきり走る……
全てが、『スロウ』をかけたときみたいにゆっくりゆっくり流れて見える……

……ゴーレムの右手が一瞬遅れてボクに反応してつかみかかろうとするけど……
ブォンッズドンッ!!
『フレア剣』のデルフでそれをはじき返す……
瞬間、『フレア剣』の効果の一部が、ゴーレムの腕をコナゴナに砕く……

「あ、相棒っ!?『フレア』ってのがちびっと薄くなったぜ!?」
「大丈夫っ!まだ足を砕く分には余力があるからっ!!」
……フレア剣の効果がまだ続いているのが分かる……
それもどのくらいの威力かってことまでしっかりと……
……だからこそ、そのまま一気にゴーレムの足元に近づいて……
いや、その前に無事だった左手がボクに狙いを定めている!
デルフを左手1本で持ち直して、残ったフレアの余力は先端部に集中させて……
「いっけぇぇぇぇっ!!!」
「うぉぉぉぉっ!俺様大爆発っ!!」

ズドォォォォォンッ!!
……『突き』!
スタイナーおじちゃんや、ジタンの剣の攻撃方法じゃなくて、フライヤおねえちゃんの槍のような攻撃方法……
狙うのはむずかしいんだけど、「一点に絞られた力は貫通力を増し、鎧をも砕きますじゃ!」ってフライヤおねえちゃんが言っていた……
片手で狙ったから不安だったけど、ゴーレムの左足は膝のあたりまで全部コナゴナに……あれ?片手で?
……こんなにおっきな剣を、片手で扱った……?
65ゼロの黒魔道士2/5:2008/12/11(木) 23:36:16 ID:h7bp8m9I
「相棒ぉぉぉっ!?あぶねぇっ!!まだやっこさん持ちこたえてやがるっ!!!」
「え?う、うわぁっ!?」
ゴーレムが、残った左手で体を支え、再生させたばかりの右手でボクに襲いかかる……
「くっ、デルフ、ゴメン!正面から耐えるっ!!」
自分の目の前にデルフを構えて、両足を踏ん張る
「無茶言うなよっ!?そーいうのぁもっとガタイのしっかりした兄ちゃんがやるこったr…―」

デルフの言葉は、最後まで告げられることは無かったんだ……

「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」
ドォォォォォンッ!
白い塊が……『破壊の肉球』……いや、『ねこの手ラケット』から放たれた光弾が、ゴーレムの右手を破壊したんだ!
「ルイズおねえちゃんっ!?」
「おぉっ!娘っ子!?今度はド真中命中だなっ!?」

「ルイズにばっかいいカッコさせるもんですかっ!!『フレイム・ボール』!」
「『ジャベリン』」
ドゥン!ズバンッ!
キュルケおねえちゃんの炎と、タバサおねえちゃんの氷がゴーレムの上半身を襲う
ゴーレムは……バランスを完全に失っている!


「相棒っ!!」
「うんっ!」
「よっしゃ来いや『フレアk「砕けよ岩よ、天より堕ちて 愚か者達への鉄槌となせ! コメット!」え?ちょ、相棒、シメは『フレア剣』じゃねぇのっ!?」
ゴシャァァァッ
ヒュゥゥゥンと魔力で引き寄せられた天空の岩が落ちてきて、残ったゴーレムの体を貫通する……
……もうもうと立ち込める土煙りの中……ゴーレムが立ちあがる気配は、もう無かった……

「か、勝ったぁぁぁ〜……」
ちょっと疲れて場に座り込む……うーん、落ち着いたら魔法を使った対策がいつもどおり思い浮かぶ……?
なんなんだろ……武器を使った戦い方はいつもよりすごいのに……
「あ、相棒ぉぉ!最後は俺様の見せ場じゃねぇのっ!?俺様期待に胸ふくらましてたっつぅのにぃっ!?胸ねぇけどっ!!」
「あ、ご、ゴメン……」
……この……デルフを持ってる……左手の模様のお陰……かなぁ……?

「ビビーっ!!ビ〜ビ〜!!!」
ルイズおねえちゃんが土煙りが晴れるのを待たずに走ってきた……良かった、無事だったんだ……
「ルイズおねぇちゃんぶz」ベシッ「あぅっ!?」
「あんた、あんた……このバカっ!!勝手につっぱしたりしてっ!大体、最後の何!?アース・ハンドで岩投げとか!?」
「え、う、うん、ゴメン……あの、さっきのは『コメット』っていう魔法で……」
「最初っからアレやってたら倒せてたでしょっ!?何つっぱしって危険な目にあってんのよっ!このバカっ!!」ポコポコ
「い、いたた、ご、ゴメン、そのあの頭がカッとしちゃってその……」
……そう、左手の模様が光った瞬間に……「武器を使った倒し方」が真っ先に思い浮かんで……
……ただ、ゴーレムを武器で倒すことだけを考えて……
66ゼロの黒魔道士3/5:2008/12/11(木) 23:36:48 ID:h7bp8m9I
「ルイズ〜、その辺にしといてあげなさいな!ビビちゃ〜ん!かっこよかったわよ〜♪」
「お疲れ」
「あ、う、うん……おねえちゃんたちも、助けてくれてありがとう……」
「かかか!まぁ確かに嬢ちゃん達の援護があってこその活躍だったなぁ!最も、今回一番輝いたのは俺様だろ?な?な?」
ルイズおねえちゃんにこってりなぐられた後、
(……心配してくれるのはいいけど、もうちょっと手加減してほしいなぁ……)
他の二人もやってきた……あぁ、ホント、みんな無事で良かった……

「みなさん!ご無事で!!」
「ミス・ロングビル!?」
「今まで、どこに?」
……ロングビルおねえさんも無事だったみたい……
「え、えぇ、その――怖くて、隠れてましたの……みなさんご無事で、本当に良かった……」
ほっとした笑顔を浮かべるロングビルおねえさん……
……でも、なんだろう……?安心して笑ってるだけじゃないみたいな笑顔……?
「あ、そちらが『破壊の肉球』ですわね?それも無事で良かったですわ……」
「えぇ!これのお陰でフーケのゴーレムを――ってそうだわ!フーケ!!フーケはどこにっ!?」
あ!……やっぱり、ボクってうっかりしてるなぁ……肝心のフーケを見つけなきゃ……また襲われたら……
「あぁ、フーケらしき人影でしたら、私の隠れていた茂みの傍を走って逃げていきましたわよ?取り逃がしたのは残念ですけど、もう追うのは無理でしょうね……」
……逃げた?……変だなぁ……それならもっと早く逃げたらいいのに……ワザワザボクたちを倒そうと……倒そうと?
「そ、それより、『破壊の肉球』が壊れてないか確認したいのですが……よろしいですか?ミス・ヴァリエール?」
「あ、はい――あの、申し訳ありません、貴重な学院の宝物を使用してしまって――」
……倒そうとした?なんで?

……色々、考えること、不思議なことが頭でゴチャゴチャになっちゃって、気づかなかったんだ……
「いえいえ、お陰さまで――手間ぁ省けたよ、小娘ども」
……『ねこの手ラケット』を受け取ったロングビルおねえさんのふんいきが、ガラリと変わってしまったのに……
「ミス・ロングビル!?何をっ!?」
「違う、おそらく、フーケ」
「え?え?えぇぇぇ!?」
「ちょ、タバサ、それ本気っ!?え、ミス・ロングビル、冗談、ですよね!?」
「こ、こりゃおでれーたぁ!?」
……ロングビルおねえさんが『ねこの手ラケット』を構えたまま、メガネを外して……
“土くれ”のフーケの顔、になった……

「いやいや、まさかこんな単純な使い方とはねぇ!こんな危険を冒す必要なんて無かったわけだ!」
「み、ミス・ロングビル――ど、どうして、どうして貴女が!!」
「口を閉じるんだね、ヴァリエールのお嬢ちゃん!全員、杖と、その剣!それから予備の杖!とっととこっちに投げな!さもなきゃ、さっきの白い球がアンタたちの脳天吹っ飛ばすことになるよ!」
……とまどったまま、色んなことがグルグルと頭をまわり続けたまんまだった……
……まっさきに、タバサおねえちゃんが杖を投げ捨てて……キュルケおねえちゃんとルイズおねえちゃんがそれに続いた……
……一番最後に、ボクがデルフを投げ捨てる……なんで?なんで……なんで!?

「何故、逃亡しなかった?」
……タバサおねえちゃんが真っ先に質問をする……
「なーに、貴重なお宝ってことで盗んだはいいけど、使い方が分からなくてねぇ〜!使い方が分かると分んない、じゃ売るときに雲泥の差ってぇわけさね!」
「……じゃ、じゃぁ……使い方を知るためにボクたちをここまで連れてきたってわけ!?」
「ご名答、おチビの使い魔ちゃん!あんたたちが使ってくれて感謝してるわ〜!2度手間にならなくて!」
「フーケ!!あんた、そのためだけに!?そんなことのために!?」
「私たちの誰も使い方が分からなかったら、どうするつもりでしたの?ミス・ロンg――いえ、フーケさん?」
「そんときゃゴーレムで踏み殺して次の捜索隊に期待するだけさ!ま、そこのおチビちゃんの活躍っぷりには驚いたけれど……剣なしな上、この『破壊の肉球』さえありゃ詠唱する暇は無いだろ?」
……確かに、この距離だと……詠唱している間にラケットにやられてしまう……万が一よけれても……ルイズおねえちゃんたちが!
67ゼロの黒魔道士4/5:2008/12/11(木) 23:38:06 ID:h7bp8m9I
「さてと……長くしゃべりすぎたねぇ、他に聞きたいことは無いかい?折角だからもう少ししゃべろうか?」
……今朝までのやさしげな言葉じゃない、トゲトゲした言葉が、刺さる……
でも、なんだろう……ちょっと……悲しそう……?
「質問は無い」
……タバサおねえちゃんが、いつもと変わらない淡々とした調子で答える……
「そうかい……それじゃ、4人仲良く……散r「きゅいきゅいきゅい〜!!!!!」なっ!?」

……それは、森にわずかに射すおひさまの光を覆い尽くす大きくて青い影だった……
「ブフォォォォォォォォォッ!!!」
「シルフィードッ!?」
「私のフレイムもっ!?」

シルフィードに乗ったフレイムが、フーケに特大のブレスを叩きこんだ
「あっつ!?あちち!?こ、このトカゲ共がっ!!!!」
……フーケは、黒こげにならないようにそれをかわす……でも、フレイム、それで十分だよ……だって……
「青き海に意識薄れ、沈みゆく闇
         深き静寂に意識閉ざす… スリプル!」
魔法を放つ、その隙ができれば十分だから!

「く……こんなところで……ごめ……ん……」
魔法の煙に覆われて、フーケが眠りについた……
……「ごめん」って……何だろう?

「――っはぁぁぁ〜……し、死ぬかと思った……」
「フレイム!さっすが私の使い魔♪いいとこにくるじゃない!!」
「ブフォッ!」
……ルイズおねえちゃんも、キュルケおねえちゃんとフレイムも無事……

「きゅ、きゅいぃぃ〜!」
……ちょっと離れたところで、タバサおねえちゃんとシルフィードも元気そうだ……

……よかった、ホントに、無事に終わって……
でも……「ごめん」……誰に……かなぁ?


「おぉ〜い、相棒〜……忘れてねぇか〜?今回の功労者をよぉ〜?」
「あ、ご、ゴメンっ!デルフッ!?」


ピコン
〜真・おまけ〜

ATE ―青い反省会―

「きゅいきゅいきゅぃぃ〜♪」

青い龍は有頂天だった
今日はまさに大活躍!
大好きなおねえさまと、仲良しの精霊さんのピンチを、
自分が、まさに!絶好のタイミングで!
ヒーローのごとく!彗星のごとく!風のごとく!
それはもう見事に救ったのだから!
これならご褒美に今日の晩御飯は豪勢なお肉山盛りは間違いなしである

「きゅいぃぃ〜♪お・ね・え・さ・ま〜」

しかし念には念を入れる賢い青い龍
いつもの注意はきちんと把握し
みんなからは離れたところでも用心に用心を重ね
小声で主に話しかける
68ゼロの黒魔道士5/5:2008/12/11(木) 23:38:37 ID:h7bp8m9I
「おねえさま〜、今日はシルフィ大活躍なのね〜♪ほめてほめてほめt」ゴツン「い、いたいのねっ!?」

まさか、である
称賛を、ベタ褒めを、
それはもういつもの無愛想な顔も壊れるぐらいの笑顔で褒めてくれるもとの期待していたのに、
ゴツンッ
また、杖による1撃である

「お、おねえさま!?怒ってる!?どうして!?シルフィ大活躍したのね!?」
「タイミングが遅い」

そう、である
実は、タバサはシルフィードに学院を出る前に、自分達を尾行けてくるよう言いつけていたのだ
それがゴーレム相手のときにも出てこないとは……

「あ、あれはなのね、そ、その、フレイムが!そうフレイムが『俺もたまには活躍したい』って言うからなのね!」
「それでも、あなたの速さなら追いつくはず」
「う」

風韻龍の速度は馬車の速さをはるかにしのぐはず
それならば、なぜ

「えー、えーとそのーあのー、これはー……」
「口の横に、魚のカス」
「きゅいぃぃぃ!?きちんと掃除したはずなのにね!?」
「……は、ついてない」
「きゅいっ!?」
「でも嘘はついてた」
「きゅいぃ!?だ、ダマしたのね〜!!!」

そう、尾行途中で見つけた綺麗な小川、
そこに踊るは銀色の魚達
『腹が減っては戦はできぬ』とばかり、
フレイムが「そろそろ行こうぜ」と促すも聞かず、
まだまだ色気よりは食い気なのか、
モリモリ食いに食っての大遅刻、
轟音に慌てて飛んでくればおねえさまたち大ピンチ!という次第だったのである

「罰」
「きゅ、きゅい〜?」
かくなる上は、と渾身の瞳輝かせ攻撃

「晩御飯、野菜のみ」
「きゅ、きゅいぃぃ〜!」
だがそれは、“雪風”の前では塵芥に等しく

甘美なはずのご褒美タイムはアッサリ崩れ去るのであった
69ゼロの黒魔導士代理:2008/12/11(木) 23:39:59 ID:h7bp8m9I
以上、代理投下終了。
作者様曰く、「ときどき、フレイムの活躍が見たくなるのは私だけ? 」

70名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/11(木) 23:54:24 ID:S4H/VFMZ
ビビの人と代理の方乙

フレイムは、リザードンに進化するぐらいしないと活躍は……。
71名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/11(木) 23:56:55 ID:RzV4AOET
投下乙でした

>>59
その心意気は良しっ 頑張ってくれよ
72名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/11(木) 23:58:18 ID:c3EnFbPW
ごめんと口走るのは別に良いんだけどタイミングがご都合主義過ぎるきがするわw
73名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 00:04:50 ID:YANtpvI6
>>72
ドイツで交通事故に遭った留学生の日本人が亡くなる直前に
「ごめん…」
と呟いたのがそうだ。で、それを聞いた警察
「謝罪したという事は事故の責任はこいつか!」
って事になって話がややこしくなった、という話がある。
74名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 00:55:38 ID:nD1pIgeH
投下しようか、それとも「沈黙の虚無」(仮)を待つべきか悩むw
75名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 00:56:38 ID:ZOCW6sxs
>>74
投下しちゃいなよ
76ミゴール:2008/12/12(金) 01:03:58 ID:qo1JjTTx
こんばんわ。
予約無ければ投下よろしいでしょうか。
77名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 01:04:43 ID:qo1JjTTx
おっと失礼。
では翌日で。
78装甲騎兵ゼロ:2008/12/12(金) 01:04:49 ID:nD1pIgeH
許可も下りた(?)ので、1:10くらいから投下させていただきます
ドキドキする・・・・・・
79装甲騎兵ゼロ:2008/12/12(金) 01:05:33 ID:nD1pIgeH
おぉっと、被った、かな?
80名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 01:08:31 ID:RFvXjc5+
今日は嫌に被る日だな
時間指定したほうが先でいいんで無いのかね
81装甲騎兵ゼロ:2008/12/12(金) 01:10:26 ID:nD1pIgeH
ミゴールの方、ありがとうございます。ではいきます
82名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 01:10:45 ID:CC9hfP/9
ミゴールでもセガールでもボトムズでもナイトメイジでもいいw

早く投下してくれw
83装甲騎兵ゼロ:2008/12/12(金) 01:11:10 ID:nD1pIgeH
第1話「召喚」

人は過ちを繰返す。いや、繰返さなければならない運命なのかもしれない。
己らがいかに酷く傷つき、もうするまいと誓おうとも、やがてそれを忘れ、同じ愚を冒す。
そうして歴史は作られて、そしてこれからも作られる。
さながらメビウスの輪の如き道を、止まることなく進み続ける。


ここはアスラギウス銀河、ギルガメス連合星域のとある惑星。
現在この惑星を含む一帯は、ギルガメス連合がバララント同盟に宣戦布告したことで勃発した、第4次銀河大戦の真っ只中にある。
今ここを、一人の男が一機のAT―アーマードトルーパーで放浪していた。
かつては異能生存体と名づけられ、異能者と呼ばれ、今は触れえざるものと恐れられながら。

男は、ただひたすらに逃れたかった。
醜い争いの戦渦、染み付く硝煙の匂い、罪咎の証の血潮、それらから全て。
だが現実はそれを許さない。
逃れても逃れても、気づけばそれらは自分の背後を付いて回る。
それならば、決して逃れることができぬのなら、せめて一時の安息だけでも男は欲しかった。

そんな望みを抱きながら放浪しているとき、男は道すがら何かを見つけた。
見れば光る円がある。あるのだが、どこか奇妙に思えた。
よく見ると何もない空間に、そこだけ切り取ったみたいにその円はあったのだ。
なぜこんなところで、その前にこれは一体何であろうか。
いささか不可解ではあったものの、とりあえず調べてみようと近づいてゆく。
そしてATの手が触れようとした、瞬間。
「・・・・・・!」
強烈な勢いで円に吸い込まれていく。それはATの全力をもってしても、後退すらできずにいるほどであった。
男は機体から脱出を図るが時既に遅し、ハッチすら開けるまもなく機体ごと円の中に飲み込まれていく。

そのさなか、声が聞こえた気がした。何かを呼ぶような、ともすれば消え入りそうな声が。
「誰だ・・・俺を呼ぶのは、一体・・・・・・!」
やがてATが完全に飲み込まれると、その直ぐ後に円は跡形もなく消えさった。
最初から何ごともなかったかのように・・・。
84名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 01:11:56 ID:enSaLSGl
ルイズ(CV:銀河万丈)「お前も!お前も!お前も!私の為に死ね!!次回「分隊」」
85装甲騎兵ゼロ:2008/12/12(金) 01:14:08 ID:nD1pIgeH
―ハルキゲニア大陸の小国、トリステイン王国。
その中のトリステイン魔法学院からほんのすこし離れた場所では、使い魔の召喚、及び契約の儀が行われていた。
この行事は毎年、一年の生徒が二年への進級するために行うもので、これができなければ進級することができないのだという。
とはいっても普通ならばまず失敗はしないので、今では殆ど通過儀礼のようなものと化していた。
生徒たちが次々と契約を済ませていく様子を、担当の男性――コルベールは微笑ましく見ていた。
あぁ、今年も順調なようだ。ここのまま何事も無く終わるだろうと・・・思ったがただ一点、不安要素が彼の中にはあった。
今まさに召喚を・・・しようとして爆発を起こした少女のことである。

「何度失敗すれば気が済むんだよー、ゼロのルイズ!」
「やっぱ、ゼロはゼロでしかないな。」
「るっさいわね!黙ってみてなさいよっ!」
嘲りの言葉を、少女――ルイズは、怒気をはらんだ台詞で返す。
しかしその実、内心は焦りで満たされていた。いつもいつも、自分が魔法を唱えれば爆発ばかり。
進級にかかわる大事なこの日も、既に計二十近くは起こしただろうか。

だが一向に成功の気配は見えない。
「(なんで・・・なんでいつも・・・・・・こんな日にまで!)」
次第に表情にも焦りが現れ始めていた。見かねたコルベールが提案する。
「ミス・ヴァリエール、今日はもうこの辺にしましょう。また後日に行えば・・・」
今日できなくても明日出来るという保障はないが、他の生徒のこともあるのでこう言う他ない。
「そんな・・・!待ってください!あと一回、あと一回だけやらせてください!」
ここでできなければ、自分はこのさきもずっと「ゼロ」と嘲笑されるだろう。恐怖にも駆られたルイズは懇願した。
・・・もっとも、古今東西「もう一度」だの「一回だけ」などと頼み、できた試しはあまり無いのがお約束であるが。

ともかく、そこまで必死にされれば、コルベールとしても無下にはできないようで。
「うーむ・・・わかりました。そこまで言うのならば仕方ありません・・・ですが、本当にあと一回だけですぞ?」
チャンスを求めるルイズに、「これが最後」と同義の最後通告が言い渡される。
「はい!これで必ず召喚してみせます!」
言い切った以上もはや後は無く、まさに崖っぷち。今度こそとルイズは全力で集中し、魔力を杖にこめる。
「(こうなったらもう贅沢なんていわない!なんでもいいからお願い、答えて!)」
召喚の呪文を唱え、杖を振るう。そして本日のうちでも、ひときわ大きな爆発が起こった。
今日一番であろう爆発は、その爆風も煙の量もまた多かった。

とばっちりをくらった生徒はその原因たるルイズに罵倒の言葉を浴びせ始める。
「まーた失敗しやがった!」
「これで何度目だよっ。いい加減にあきらめろ。」
「こっちにまで迷惑かけるなよ、ゼロ!」
爆発ばかり何度も起こされ、いい加減他の生徒もうんざりしていた。
そこに自分たちまで巻き込まれそうになれば、文句の一つも出てくるだろう。
86装甲騎兵ゼロ:2008/12/12(金) 01:17:36 ID:nD1pIgeH
「あ〜あ、やっぱり駄目だったみたいね。」
炎にも似た赤髪に、思わず男の眼が行くほどのスタイルをもつ少女―キュルは言う。
「一回ぐらいならゼロのルイズでも成功するかと思ったけど・・・そう上手くはいかないわよね、やっぱ。」
どこか諦めにも似た調子でそう語る。
だがそれを否定する言葉がすぐ隣から発せられた。
「・・・違う、いる。」
キュルケとは対照的な、小柄で青い瞳と髪を持つ少女―タバサだった。
「え?何かって?」
「煙の中。何かがいる。」
その体にはおおよそ不釣合いな大きさの杖で、煙のほうをさして答える。

一方ルイズも、晴れていく煙の中に何かを見つけた。
「(何かいる・・・成功したの・・・?)」
そして煙が全て晴れる。そこには、大きな鋼の人型が座っていた。
立てば4メイルはあるだろうか。全身は緑系色、頭の顔と思しき部位には、恐らくは眼であろう3種のレンズ。
手には見たこともない種類の、巨大な銃のような物を持ち、肩や脇にはよくわからない箱や筒らしきものをくっつけている。

ルイズが呼び出したであろうそれを見て、周りの生徒がざわめく。
「おい、ゼロのルイズが成功したぞ!」
「まさかホントに召喚できるなんて・・・」
「しかもあれはゴーレム・・・いやガーゴイルか!?」
ハルキゲニアの定義に当てはめるならば、この人型はそのどちらかに属するだろう。
しかし、こんな珍妙な人型のゴーレムもガーゴイルも、この場にいる者の誰一人としてみたことが無かった。

「おぉ・・・これはなんとも・・・。」
コルベールは感嘆しながら召喚された人型に近づき、まじまじと眺める。
全体を見渡していくと、まず頭部がいささか奇妙な造りだが、それ以外の形状は限りなく人間に近い。
腕や足といった部位がハッキリとわかるよう区別され、一つ一つにきちんと間接まで設けられている。
よくみれば、所々何かしらの機械仕掛けが施されている箇所も覗き、それがコルベールの好奇心を一層刺激する。
「ミス・ヴァリエール、これは大成功ですぞ!」

目の前の物体を把握するだけで頭が一杯だったルイズは、自分の事を呼ばれてハッと我に返る。
「あ、え?その、成功・・・なんですよね?」
「そうですとも!ゴーレムかガーゴイルかはわかりませんが、これはそれらを遥かに上回る、
 非常に高度な技術で作られているのです!これほどのものを呼んだのですから、大成功ですよ!」
やればできるじゃないですか、などとコルベールはまくし立てる。
87名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 01:18:40 ID:rLJKZSfj
支援
88名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 01:19:26 ID:RFvXjc5+
支援だよ
89装甲騎兵ゼロ:2008/12/12(金) 01:19:55 ID:nD1pIgeH
正直なところ、小動物程度のものが来ると思ったが、まさかこんなゴーレム(ガーゴイルかも?)らしきものが現れるとは完全に想定外であった。
「(望んでたのとはかけ離れてるけど・・・でも召喚できただけ、全然いいわよね)」
そう、自分は成功したのだ。それだけでも心が満たされていくようだ。
よく見れば、確かにコルベールのいうとおり複雑な造りをしているように思える。金属でできたその体も、どこか頼もしそうに見えた。
顔に関しては、まぁよくわからない造形だと思ったが、あまり贅沢も言えまい。

とにかく「召喚できた=魔法が成功した」という事実を証明する証拠が目の前にある。
今のルイズにとっては、それが何よりも嬉しいことだった。
「では早速契約しましょう、さぁ早く!」
いい年の大人がなにかはしゃいでる様が、少々滑稽に映る。が、今のルイズにとってはどうでもよかった。
ともかく言われたとおりにまずは契約だ、そう思って人型へと近づく。
そしてルイズが目の前まで近づいた時、召喚されてから微動だにしなかった人型―型式番号:ATM-09-STTC、
機体名称「スコープドッグターボカスタム」は沈黙を破り、鋼鉄の体を立ち上がらせた。


ATに搭乗している男―キリコ・キュービィは、自分が今おかれている状況がわからなかった。
光の円に引きずりこまれ、爆発が機体を襲う。その衝撃で気を失い、外部の喧騒で眼を覚まし、周りを見れば見知らぬ土地。
さっきまでいた場所とは、全くもって異なっていた。
「(ここは・・・一体?)」
ふと近くを見れば、ATのすぐ足元に桃髪ブロンドの少女が、驚いた様子でこちらをみつめ立っている。
その斜め後方には禿頭の男、さらに遠巻きに見るようにして散り散りと見える少年少女。
禿頭の男を除けば、男女で分かれてこそいるものの、皆ほぼ同じ服装をしている(一人センスのないヤツがいたが無視しておく)。
制服の類であろうか。ならばここは何かの施設で、彼らはその所属だろうか。

そんな考えを巡らせていると、なにやら遠巻きから騒いでいるのが聞こえてくる。
「(・・・ゴーレムだの、ガーゴイルだの。ATを見たことが無いか、珍しいのか・・・?)」
アストラギウス銀河ではどこでも存在してるであろうAT、ましてやスコープドッグタイプなら、それこそどこでも目に付きそうなものだ。
しかし彼らの反応をみるにそうではないらしい。よほど偏狭の星であろうか。

「(とりあえず、話をしてみるしかないな。)」
ATを少女から少し離し、降着状態に移行、コックピットハッチを開け、外に出る。
その一連の動作一つごとに、周りが騒がしくなった。
「(どうも・・・面倒なことになりそうだ。)」
心の中でつぶやく。
ATから降りたキリコはヘルメットを外し、目の前の少女ことルイズと対面した。


予告

出会いは、常に唐突だ。
好む好まざるは意味を成さず、前触れもなしにやってくる。
それがどんな姿であろうと、拒むことはできない。
誰が仕組んだこの運命。何が望みかその意思は。
キリコとルイズ、両者の出会いは果たして。

次回「接触」
行方は、神すら知る由もない。
90名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 01:21:38 ID:enSaLSGl
91装甲騎兵ゼロ:2008/12/12(金) 01:21:57 ID:nD1pIgeH
以上で一話は終わりです。支援してくださった方々、ありがとうございます。
ご感想、ご意見、ロッチナはどうした、等、お待ちしております。
92名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 01:23:16 ID:RFvXjc5+
あー、この前予告だけ投下した人だったかな? 何にしろ乙だ
93名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 01:23:31 ID:rLJKZSfj


さて、意外と壊れやすいATが一体何話まで持つのかが楽しみだ。
94名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 01:32:55 ID:GAyf1ZqV

>>93
ATは基本的に消耗品だしな
場違いな工芸品としてそこらに何機か転がってるんじゃないか?
95名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 01:33:31 ID:JcfwjNB9
>>93
外装的破損程度ならコルベール先生が修復するだろう。
で、最終的に自分専用のATを開発……は無理か……
96名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 01:34:47 ID:JcfwjNB9
乙を言い忘れてたぜ。
乙!。
97名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 01:36:29 ID:Si5NKRxt
ブレイブサーガー2でブレイブポリスで修理されてたなスコープドッグ。
98名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 01:42:37 ID:nNa9Ao5N
そういうやペールゼンファイルが映画になるんだよな
99名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 01:52:36 ID:9o3WRaX9
おおお!ボトムズから召喚か!キリコはガンダよりも名を記すことも〜の方がピッタリ来ると思うがどうだろうw

>>97
しかも途中で厨二病ATとして名高いテスタロッサに乗り換えるトンデモ展開
100名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 01:58:07 ID:p1BIRexY
>>91

>>97
>ブレイブサーガ2
「同じものは作れません……が、似た様な物なら作れるので、それで代用しますた」
だったっけか。

あと、無印で、ゲーム主人公の身の上を聞いたゴウトのおっさんだったかが、
「こんな年端も行かない子が戦争たぁ、チキュウってのも物騒な星だねぇ」
てなこと言ってたのが妙に記憶に残っている。
101名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 02:55:52 ID:ZOCW6sxs
>>91
この最低野郎
102名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 03:48:22 ID:vG4IokfP
>>91
遂に来やがったが……! 「神を殺した男」が。
しかし……「触れえざるもの」呼ばわりされて孤りで彷徨ついてんなら、本編終了後の
『赫奕たる異端』の続きな『孤影再び』辺りで呼び込まれたようだが(に、見える)。
んで、乗機が(いきなし)タボカスか……。(本編でいつもやってた)残骸寄せ集めで
再生した、素タコの方がよかったんでは?
なんにせよ、「最低野郎」好きとしては期待してまっせ。

103名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 04:17:42 ID:p6ta7vMR
異端編の後ということは…フィアナ(ノД`)・゚・。
弾薬の消費を抑えてどう切り抜けるかが問題だよなぁ
あとPR液とマッスルシリンダーの劣化も

個人的にはバーグラリードッグが一番好き
104名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 06:57:25 ID:m26pBhGb
最低の人乙

ターボカスタムという事はレッドショルダー所属か情報省所属くらいで
グレゴルーの改造品は全壊してるしで、一体いかにして手に入れたのかというか
基本的にキリコはATと一緒に放浪しない人なので
わりかし特殊な状況に見えるので、後々そのフォロー入るかな?
105名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 07:31:00 ID:9yoP2rlU
とうとう彼が来ちゃったか。
支配されることもすることも拒む男、行く先々を壊滅させる生ける災厄が。

何はともあれ期待しています。

「次回もルイズと地獄に付き合ってもらう」
106名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 08:14:48 ID:re9hj0+T
ミゴール来てたのか
今晩楽しみに待ってるぜ
107名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 08:16:36 ID:SYn1+y5O
キリコならAT無しでも十分強いよな。精神的にも肉体的にも。
装甲騎兵の人乙です。
108ゼロの使い ◆1sxkwMZzzc :2008/12/12(金) 08:24:14 ID:hfY5kL6K
5分後 第10話を投下させていただきます。
109名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 08:28:25 ID:woMwjl3f
>>97
sageが全角になっているから、半角に修理するんだ!
110ゼロの使い ◆1sxkwMZzzc :2008/12/12(金) 08:28:55 ID:hfY5kL6K
瓦礫一つ、動くもの一つ無い、ニューカッスル城跡地に三体の鉄像が立ち尽くしていた。
しばらくすると、鉄像が徐々に元の姿に戻っていった。

「驚きましたね。」
「ああ、まさかワルドが自爆するとは・・・」
「そうじゃなくて、あれほどの大爆発の中で生き残った事に驚いたんですよ。」
あの時、マホカンタでは間に合わぬと判断したメディルが鋼鉄変化呪文・アストロンを唱えたお陰だった。
後、0.1秒判断が遅ければマホカンタを使用しているメディルはともかく、他の二人は城の者と運命を共にしたであろう。

「あれは自爆ではない・・・恐らく何者かに爆破させられたのだろう。」
「では、ワルドの他に文と私の命を狙う刺客がいたと?」
「そう考えるのが妥当だろう。傭兵や山賊の一件と言い、奴一人で全てをやったとは思えぬ。」
「とにかく、ここを離れましょう。その刺客が確認に来るかもしれません。」
「さっきも言ったが、僕はここで死ぬ。だから君たちは・・・」

ウェールズは台詞を言い終わることができなかった。
背後から突き出された槍に、心臓を貫かれ、断末魔すらあげる事の出来ぬまま即死したからだ。
「念の為来てみれば・・・道連れにすら出来ぬとは、つくづく役に立たぬ男だ・・・」
槍の主が、得物を死体から引き抜く。そいつは傭兵と山賊を雇ったあの髑髏の騎乗兵だった。
すかさず、メディルが五指爆炎弾を見舞うが、華麗な槍捌きによって、全て弾かれた。
「いきなり、メラゾーマ5発とは随分な挨拶じゃないか。」
「貴様が、もう一人の刺客か。」
「いかにも。呪いのかかった金貨で傭兵と山賊をけしかけたのはこの私だ。」
「よくも、皇太子を・・・!!」
ルイズが失敗魔法を放とうとするのを、メディルが制す。
「止せ。お前の適う相手ではない。」
メディルは無意識のうちに悟った。間違いなくこいつはワルドより格上。
1体1ならともかく、主を守りながら勝てるかどうかは五分五分だった。
「そうそう。私はたださっき吹っ飛んだ役立たずの尻拭いに来ただけなんだ。そしてそれはもう済んだ。
私が君たちと戦う理由は無い。」
「文はどうする?」
「さっき、上層部から連絡があってねぇ。もう文は要らぬと仰りだ。」
「ほう。」
「まあ、私自身が戦う理由は無い・・・だけだがね。」
言われて、メディルはようやく気づいた。いつの間にか周囲が紫色の霧に覆われ、そこから骸の兵士や
中身の無い血まみれの甲冑の群れが這い出してきていることに。

「我が名は死神君主・グレートライドン。冥土の土産に、覚えておいてくれたまえ・・・」
それだけ言い残して、グレートライドンの姿は消えた。
「どうするメディル?」
「この霧、恐らくこの近くで冥界の入り口が開いたのだろう。」
「それって・・・」
「恐らくこの亡者どもは無限に湧いて出るはず。相手にするだけ無駄だ。」
「じゃあ・・・」
「答えは一つ。ルーラ!」

しかし、不思議な力でかき消された。
111ゼロの使い ◆1sxkwMZzzc :2008/12/12(金) 08:29:36 ID:hfY5kL6K
「やはりそう甘くは無いか。・・・なんてな。」

メディルは手近な魔物にマホカンタをかけた。
「ルイズ、皇太子の死体と私の服の裾を掴め、早く!!」
「わ、わかった。」
言われるがままにするルイズ。
「生憎、着地がうまく行くかどうかは運次第だ。バシルーラ!!」
先程の魔物にかけたバシルーラが、跳ね返ってくる。
その結果、三人はニューカッスル城跡を脱出することに成功したのだが。
「この後はどうするの!!?」
「柔らかい場所か、海上か、その辺飛んでる船の上に落ちることを祈るしかない。ルーラはまだ発動できないんだ。」

「いやあああああああああああ!!!」ルイズの絶叫がアルビオン領空に木霊した。

ルイズ達が一生に一度しかしないであろう、スカイダイビングをしている頃、
アルビオン大陸軍港施設・ロサイスの一室に司祭姿の細い男が玉座に座っていた。
「閣下。」
馬に乗った死神君主が、その男の元へやってきた。
「君か。皇太子はどうした。」
「心臓を一突きに。他2名は取り逃がしましたが・・・」
「冥府の入り口まで開いておきながら・・・か?」
「あのメディルと言う男・・・かなりの切れ者のようで・・・」
「そうか。それにしても、子爵で作った花火は美しかったな。遠くからでも良く見えたよ。」
「皇太子一人吹き飛ばせない、完全な娯楽専用の花火でしたがね。」
「まあ、あれだけ綺麗ならあのお方も満足なさるだろう。それより・・・」
「分かっております。その準備を兼ねて、この世とあの世を繋げたのですから。」
「楽しみだな。トリステインが血と炎に染まる日が。」
「全く持ってその通りで。制圧の暁には閣下はまず何をなさるおつもりで?」
「・・・トリステインにはそれは美しい姫がいるという。ぜひ一度食したいと思っていたのだ。」
「相変わらずですね。百人もの美女を食べておきながら・・・」
112名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 08:29:39 ID:woMwjl3f
支援
113ゼロの使い ◆1sxkwMZzzc :2008/12/12(金) 08:30:07 ID:hfY5kL6K
ルイズ達は幸運にも、トリステイン国近海に不時着(落下直前、メディルが硬化呪文スクルトを連発し衝撃を和らげた)した。
彼曰く、岩場などの硬い場所ではアストロンを使う予定だったとの事。
事ここに至って、ようやくルーラが使用可能となり、ルイズ達は海水と海藻にまみれたまま、
死体を引っさげて姫に謁見と言う、トリステイン始まって以来の暴挙を成し遂げた。
死体を見せ、事の仔細を説明すると、姫は壊れたかのように号泣し、天もまた、惜しみない涙を流した。
1時間ほど泣いただろうか。ようやく涙の収まったアンリエッタが言った。

「ごめんなさい・・・つい取り乱してしまって・・・手紙奪還の件、有難うございます。
褒美にそなたが望むがままの地位を与えましょう。皇太子の遺体はわが国で手厚く葬ることに・・・」
「とんでもない。私はただ、友人の頼みを聞いたに過ぎません。」
「僭越ながら、姫様に申し上げたい義がございます。」
「何でしょう。」
「姫様はゲルマニアに嫁ぐべきではありません。」
「何故ですか?」
「最愛の男が目の前にいるのに、何故ですか?はないんじゃないか、アンリエッタ。」

ルイズとアンリエッタ、メディル以外は聞き覚えの無い声に、その場にいる者は皆振り向き、目を見開いた。
確かに死んだはずのウェールズ皇太子が立って喋れば誰でもそうしたであろう。

「どどど、どういう事!!?」
「どうもこうも無い。私の魔法で生き返らせたのだ。」
「だって、あれは・・・」
「一部を除き人は無理。確かに私はそう言った。しかし、幸運にもウェールズはその一部だったのだ。」
「一部の人間ってどういう定義で決まるの?」
「黄泉の国から舞い戻るほどの強い意志、または神や精霊などの何らかの助力。
どちらかを持ち合わせた者のみは蘇生が可能だ。」
「でも、いつの間に・・・もっと早く復活させたって・・・」
「愛しの姫の前に来れば、皇太子の死の淵から生還しようとする意志は強くなるだろうし、
敵には皇太子が死んだと思ってもらったほうが好都合だ。
そう判断し、王室へ戻り次第蘇生を行うはずだったのだが、姫が泣き出したお陰で、
タイミングを逃し、30分待っても泣き止む気配が無いので、復活させたが、
皆姫に気を取られていて気が付かなかった。で、今ここに至るわけだ。」
「ミスタ・メディル、その術で、我が王党派の者達の復活を依頼したいのだが・・・」
「残念だがそれは無理だ。あの爆発で全員、跡形も無く消滅してしまったし。時間も経ちすぎた。
灰や消し炭となった者、死後一時間以上経った人間はいかに私とて救えない。前述の助力を持つ者は時間に関係なく死体と意志さえあれば蘇生出来るが、
残念ながら、あの城の者達にそういう物は感じられなかった。
あの城の者達の毛髪でも肉片でもいいから、死体の一部があれば姫が泣き止む前に蘇生出来たかもしれぬのだが・・・」
「そうか・・・やはり叶わぬ願いだったか・・・」
114ゼロの使い ◆1sxkwMZzzc :2008/12/12(金) 08:32:19 ID:hfY5kL6K
「でも、良かったですね。姫様。」
「ええ・・・でも・・・」
「なりませぬぞ、姫!」
突如口を挟んだのは民から鳥の骨と呼ばれているマザリーニ枢機卿であった。
「一通の手紙でさえ、危うく国を危機に貶める所だったのに、事もあろうに・・・」
「この場の全員が口を閉ざし、皇太子は外部から見えぬ所で・・・
たとえば地下牢や隠し部屋で生活していただく。これならばどうと言うことはあるまい。」
「ききき、貴様。一国の姫に、不倫しろとでも言うつもりか!!?」
「敵から身を隠すためとはいえ、地下牢は勘弁してもらいたいな。」
「不倫しろといった覚えは無いし、さほど長い時間隠れていろという訳でもない。」
「どういう事?」
「間もなく、レコン・キスタが攻め込んでくるだろう。そもそも政略結婚の発端は奴らを倒すため、
同盟を結ぶしかなかったから。逆に言えば、奴らを倒せば晴れて堂々と結婚できると言うわけだ。」
「そんな簡単に倒せるわけが・・・」
「私なら倒せる。否、倒して見せる。」
「枢機卿殿、彼は緻密な策を用い、ワルド子爵を死闘の末、打ち負かしたのです。」
「他にも城一つ吹き飛ばす爆発から守る術を使ったり、凄まじい嵐を吹き飛ばしたり・・・
正に彼の実力は桁外れです。国一つと戦わせても決して引けをとらぬはずです。」
「マザリーニ。私からも頼みます。私の友人とその使い魔を信じてやってはくれませぬか?」
使い魔、公爵の娘、皇太子、そして主君の眼差しに流石の枢機卿も折れた。

「では即刻、軍議に移るとしましょう。」とウェールズが切り出す。
「そうですな。敵の兵力は?」とマザリーニ。
「少なくとも5万。しかし、トリステイン侵攻の際はさらに多くの兵を率いてくるでしょう。」
「我が国の兵では太刀打ちできぬ。メディル殿に頼るしかないか・・・」
「ルイズ、ミスタ・メディル。ちょっと・・・」
二人は君主に言われるがままに、一冊の書の前に来た。
「これは始祖の祈祷書。指輪を嵌めた特定の者のみ、読めると言われています。メディル、あなたのルーンは始祖ブリミルの使い魔の物。
すなわちルイズ、あなたは始祖の使い魔の後継者を呼び出したと言えるのです。」
「なるほど。そのルイズならその書を読めるかも知れぬと。」
「はい。ミスタ・メディルの力を疑うわけではありませんが、保険は多いに越したことはありません。
あわよくば、この書にはこの戦を左右することが記されているかもしれないのです。」
「わかりました。」
返事と共に、書を手に取り、ゆっくりと読み上げるルイズ。その手には水のルビーが嵌められていた。
115ゼロの使い ◆1sxkwMZzzc :2008/12/12(金) 08:33:06 ID:hfY5kL6K
現段階で祈祷書から得られた情報はルイズが失われた虚無の使い手であり、彼女の爆発は失敗ではなく
虚無の初歩の術・爆発によるものであったこと。
そしてルイズは初歩の魔法『爆発』を覚えた。

「それはさておき、この度女王陛下のお耳に入れておきたいことが。」
「何ですか?」
「実は―」



「何と、そのような。」
「従わぬようなら国家反逆罪で処刑すればいいでしょう。」
「しかし、それは・・・」
「私も黙ってやるつもりでしたが、姫様の仰った通り、準備は多いに越したことはありません。」
「・・・分かりました。後ほど部隊を派遣します。」
「さて、これでお前と私はこの国の命運を左右する存在となったわけだ。」
「そんな・・・」事の重大さに、流石のルイズも腰が引けているようだ。
「人間とは死ぬ気になれば、誰かの為ならば、我ら魔族にも勝ることがある・・・認めたくは無いがな・・・」
その時ルイズは、使い魔の仮面の中に切なげな表情を見た気がした。
「ごめんなさい・・・」
「・・・謝る事は無い。お前が魔王様を殺したわけではないし、そもそも先に手を出したのは我らだ。
予想外の結果に終わったとは言え、戦と言うものの真理だと割り切っている。」
以前の自分では到底考えられぬ言葉に、彼は少しだけ自分の変化を自覚した。

―ここへ来てまだ、数日しか経っていないと言うのに、随分といろんな目にあい、丸くなったものだ。我ながら。

投下終了。いつもより余計に投下しております。その所為かエラーが。復活に関してはちょっとwizが混じってます。
神、精霊の助力を持つ者とは勿論、歴代の主人公達です。
116名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 09:32:12 ID:tCWk1NqT
キリコが来てるー!?
異能者+異能生存体+ガンダールブかよ!
PR液って250時間ぐらいしか持たないんじゃなかったっけ?
117名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 09:51:00 ID:kYlae91f
10日と10時間か……錬金で何とかなるかな?
118名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 10:07:38 ID:E+AV5DEt
固定化すればOK
119名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 10:36:53 ID:B9jreYWj
使いの人乙。
グレートライドン……ぶっちゃけ、しにがみきぞくだよな
120名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 11:13:58 ID:cBwg9V5z
1週間ぶりに覗いてみたら凄いのが召喚されてて吹いた
まさかスコタコのみならずキリコ本人も召喚されるとは……トリステイン滅亡フラグ立ったなw
キリコが立ち寄って無事だった場所ってあったっけ?
121名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 11:28:38 ID:ZM4nLuJG
>>91
最低野郎キタ──!!これは続きが楽しみだw
こっちの教皇も最後はキリコのせいでフガフガのボケ廃人になっちゃうのかな?
122名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 11:44:39 ID:KBqmhjLv
キリコか……

何か、レコンキスタだか神聖アルビオンだかに捕まって拷問されてるシーンが鮮明に思い浮かぶのだが……
123名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 11:49:02 ID:3ZzwsmqY
自分残してニューカッスル城が臣下共々吹っ飛んだのに
驚いたの一言で淡々とすますウェールズに吹いた。
124名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 12:05:46 ID:YhKuLzGL
よし、ここは教皇がケインを、テファがメロウを召喚
ジョゼフは・・・・・・・・レグジオネータ?

個人的にレグジオネータvsキリコを超読みたい
決着がついた後ハルケギニアが原形を保っていればいいのだが
125ゼロの氷竜 ◆Mzy8Osstcc :2008/12/12(金) 13:05:20 ID:G/mMaN+p
誰もいない……?

投下するなら今の内……

13:15ぐらいから……
126ゼロの氷竜 ◆Mzy8Osstcc :2008/12/12(金) 13:07:38 ID:G/mMaN+p
それにしても狼の人ギーシュの扱いひどいな。
いいぞ。もっとやれw



あと底辺'sじゃないボトムズの人、

ハル『ケギ』ニア

ですよ。
127名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 13:12:59 ID:g9j5sher
支援させていただきます
128ゼロの氷竜 ◆Mzy8Osstcc :2008/12/12(金) 13:15:27 ID:G/mMaN+p
ゼロの氷竜 十三話

トリステイン魔法学院では、多くの貴族の子弟や教師である貴族が生活している。
当然、生活に携わる様々な雑事を行う平民、つまりそれら貴族にかしずくものも数多い。
家具などをはじめとする調度品の修繕、管理をする執事やフットマン。
町から離れているため馬や馬車もあり、その世話をする下男や馬丁、馬車があれば無論御
者もいる。
そして、食事の際の給仕や掃除洗濯を担う多くのメイド。
ルイズの唯一の友人であったシエスタは、そのメイドとして魔法学院に所属する立場だ。
そのシエスタの心は、今ほとんどが驚きによってしめられている。
魔法学院に通うギーシュ・ド・グラモンから、激しく問いただされながらも、シエスタは
恐怖ではなく驚きを感じていた。
大半の貴族は、いついかなる時も平民を意識しない。
かしずかれていることが当然だからだ。
シエスタ達が会釈をしながら給仕をしたところで、何か言うこともない。
だがルイズをはじめとする幾人かの貴族、そして一部の教師達は平民を人間として認識し
ている。
ギーシュが入学して最初の食事で、給仕をしたシエスタは礼を言われたことを覚えている。
同級生にはやし立てられ、以降は給仕する人間にだけ聞こえる程度に声をひそめるように
なってしまったが、礼の言葉を聞いたのはシエスタだけではなかった。
「親の躾がいいのか、とんでもない女好きかのどっちかだな」
という料理長マルトーの言葉に、そのとき厨房にいた全員が笑っていた。
それは至極好意的なもので、決して悪意の込められたものではない。
だからこそ、だからこそ今、トリステイン魔法学院のアルヴィーズの食堂で、自分を罵る
男がギーシュだと、シエスタは信じることが出来なかった。
ゆえに、シエスタの心は驚きによってそのほとんどがしめられている。
転んだ拍子に膝を床で打ち、手に持っていたトレイをその上のケーキごと放り投げた。
トレイを投げ込んだ先で悲鳴があがったとき、シエスタの心に浮かんだのは一縷の希望。
顔を上げる前に、どうか被害にあったのが同僚であるように、という願いは叶わない。
救いをもたらす蜘蛛の糸は、貴族の証であるマントを見た瞬間に掻き消えた。
だがその貴族がギーシュであると認識し、シエスタの目の前に再び蜘蛛の糸が姿を見せる。
恐怖ではなく、深い謝罪の気持ちがシエスタの心をしめた。
シエスタが謝罪の言葉を口にしようとした刹那、それはギーシュの言葉に遮られる。
「なんてことをしてくれるんだ!?」
怒りをあらわにし、口から怒気そのものといった言葉を投げ放つ。
「平民は最低限の礼儀作法すら知らないのか!?」
赤みが差したシエスタの膝を気にすることもなく、足下の砕かれた香水壜だけに注視する。
シエスタと同じようにデザートを配っていたメイドたちも、平民を人間扱いしてくれてい
た普段と、あまりにもかけ離れたその態度に驚きや失望の表情を浮かべていた。
その理由は明白だ。
やはり貴族は貴族でしかないのだと。
しかしシエスタはそんな言葉を投げかけられても、まだ失望にはいたっていなかった。
自分がしでかしてしまった不始末に対しての叱責も、甘んじて受けている。
貴族たちが持つそれとは違うが、平民たちにも誇りというものが存在していた。
料理長のマルトーが、自らの料理に自信を持つように。
メイドたちは給仕の際、空気のように振舞うことを当然と思っている。
誰からも意識されることのない空気どころか、衆目の関心を集めている今の状況は、シエ
スタにとって恥ずべきものに他ならない。
であるからこそ、自らの失態に対するギーシュの酷な物言いも必然と受け止められる。
うなだれシエスタの心は、口から出る謝罪の言葉と等しかった。
ギーシュの詰問が、たった今シエスタが起こした失態のみ、もしくは過去に遡ったとして
も個人に対してであれば、それほどの時間を必要とせずに事は収束しただろう。
知らぬうちに平民たちから得ていた人望を、どぶに投げ捨てるだけですんでいたはずだ。
ところが今、ギーシュは心の平衡を失していた。
ある種喜劇のように、ギーシュは自らの足場を切り崩していく。
129ゼロの氷竜 ◆Mzy8Osstcc :2008/12/12(金) 13:16:02 ID:G/mMaN+p
ギーシュ・ド・グラモンは心の平衡を崩していた。
いくつかの要因があってのことではある。
一つはつい先刻、ブラムドに圧倒的な力の差を見せ付けられたこと。
自身の予想の甘さが、そして余計な挑発が招いたことでもあったが。
そして今一つは、その後モンモランシーに慰められたことだ。
無論、慰められたことに喜びもある。
しかしそれでも、貴族としての誇りが、男としての矜持が、ギーシュの心を揺らし続ける。
モンモランシーが近くにいれば、笑顔を浮かべる程度の虚勢は張れた。
だが食堂に入り、席が離れてしまえばその必要もなくなってしまう。
普段であればくだらない話をする友人たちから話しかけられても、気のない返事をするか
無視するといった有様だ。
陰鬱な黒さが、ギーシュの心を塗り潰しつつあった。
往々にして大きな出来事というものは、小さな因子が積み重なった上に起こる。
ギーシュの様子に、マリコルヌが幾度か呼びかけていた。
ところが何度呼んでも真っ当な返事は得られない。
貴族である誇りからか、重ねてきた経験の少なさからか、彼ら貴族が持つ自制の箍は小さ
く、しかも外れやすいものだ。
「おい、ギーシュ!」
マリコルヌの手がギーシュの肩を掴み、振り返らせる。
そのはずみで、ギーシュの懐から一つの香水壜が零れ落ちた。
モンモランシーから送られた香水壜が。
床に落ちた衝撃でも運良く割れなかったそれも、シエスタの踵と床に挟まれてはひとたま
りもない。
香水壜によって体の平衡を失ったシエスタは、抗うこともできずに転んでしまう。
いくつものケーキが乗せられたトレイを放り投げながら。
マリコルヌに振り向かされた横顔に、ケーキごとトレイが投げつけられる。
声をかけようとしていたマリコルヌは二の句が継げない。
ケーキや皿が落ちる音に周囲の人間も振り向くが、同じくとっさに言葉は出なかった。
当のギーシュにしても、すぐに事態を把握することなどできるはずがない。
ケーキのクリームで一時的に張り付いていたトレイも、自重で床へと落ちる。
その下から現れるのは、フルーツやクリームで彩られたギーシュの姿だ。
トレイが落ちた一瞬のあと、マリコルヌは笑いがこみ上げるのを感じた。
二瞬のあと、怒気に色付けられたギーシュの表情に、その笑いを飲み込む。
三瞬のあと、第一声を放ったのはギーシュだった。
「なんてことをしてくれるんだ1?」
その身に貼り付いたフルーツやクリームは、ギーシュの視界を遮っていない。
トレイがぶつかった衝撃で麻痺しているのか、大した痛みも感じていない。
ギーシュの目には、砕けた香水壜だけが映っていた。
一年前、魔法学院に入学した当日、ギーシュは余所見をしていて誰かを転ばせてしまった。
謝罪をしながら振り向いたギーシュは、転ばせてしまった少女の可憐さに呆然とする。
その少女、モンモランシーが立たせてもらうために上げた手に、一瞬気付かないほど。
「女の子には、優しくするものよ?」
手を貸されて立ち上がった後、モンモランシーが戯れにいった言葉を、ギーシュは今でも
律儀に守っている。
二人は自己紹介を交わして打ち解け、それから一年が経つうちにとても親しくなった。
そして今日、ブラムドとの事件のあと、モンモランシーが香水壜を差し出していう。
「あなたのために、作ったのよ」
白皙の頬を染めながら、つぶやくような一言を、ギーシュは心に留め置いている。
その大切な香水壜を踏み砕かれ、しかも心を黒く塗り潰していたギーシュは、自分の口か
ら溢れ出る言葉を止めることができなかった。
「平民は礼儀作法も知らないのか!?」
口に出していながらも、ギーシュは常からそう思っていたわけではない。
あまり裕福とはいえない領地では、当然平民との距離も近しくなる。
平民たちと食卓を囲んだこともあった。
だが今ギーシュの口から次々と溢れる言葉は、同級生たちに影響されたためか、平民への
蔑視に満ち溢れている。
そしてギーシュは、悪魔に囁かれたかのような自身の変貌に、まだ気付いていない。
130名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 13:16:24 ID:JHsYbpS7
だが待ち続けていた俺ガイル支援!
131ゼロの氷竜 ◆Mzy8Osstcc :2008/12/12(金) 13:16:35 ID:G/mMaN+p
「モンモランシーが僕のために作ってくれた香水を、一体どうしてくれるんだ!?」
この言葉で、ギーシュは奈落へ続く階段を一段下りた。
不意に、人垣を分けて一人の少女が姿を見せる。
「ケティ?」
ギーシュに名前を呼ばれた少女は、目に涙を浮かべながらつぶやく。
「ギーシュ様、やはりミス・モンモランシーと……」
ギーシュにとって、この一言はあまりにも思いがけないものだった。
思いもかけず、あまりに当然すぎる問いかけをされたため、返事をすることもできない。
ケティはその態度を、不実が暴露されたことによる狼狽だと誤解する。
そして怒りと悲しみに心を染め、それ以上何を言うこともなく人垣の中へと消えた。
取り残された形のギーシュだが、ケティの態度の意味が理解できない。
態度を決めかねていることが、致命的な誤りだということにも気付けない。
さしたる時間も経ないまま、ケティが消えた先とは違う人垣が開かれる。
そこに立つのは、怒りを押し殺し、笑顔を浮かべたモンモランシーだ。
察しの良いものならば、その表情に秘められた感情に気付いただろう。
ところがギーシュはひどく鈍かった。
「ギーシュ、あの子はだあれ?」
言い方だけは甘やかだったが、人垣の大多数はそれに含まれる恐ろしさに気付いている。
「一年のケティ・ド・ラ・ロッタだよ。先日ラ・ロシェールの森へ遠乗りに誘われてね」
ざわついていた人垣が静まりかえる中、ギーシュは奈落へ続く階段の二段目を踏んだ。
「そう……。喜んでくれた?」
「ああ、とても喜んでくれたよ」
ギーシュの表情は、むしろ晴れやかだった。
ただし、彼は決して開き直っているわけではない。
とある方面で非常に優秀な父親や兄の影響で、女性への態度が非常に洗練されていること。
そしてその整った顔で非常に、非常に誤解を招きやすかったが、ギーシュ自身はとても純
朴な少年だった。
彼にとって不幸なことは、魔法学院内でその事実に気付いているのが極々少数だという事
実と、モンモランシーが大多数に含まれていることだったろう。
モンモランシーが無言でギーシュに近付き、フルーツとクリームで彩られたその頭に、鮮
やかな赤を振りかけた。
愕然とするギーシュと、無表情になったモンモランシーは視線を合わせる。
「さようなら」
とだけ告げ、ケティと同じようにモンモランシーは人垣の向こうへ消えた。
ギーシュは混乱の極みにある。
彼にとって、ケティの誘いを受けたのはモンモランシーとの約束を守ったことだ。
女の子に優しくするという約束を。
ケティの態度で起こった混乱に、モンモランシーの態度が盛大な拍車をかける。
年若く経験の少ないギーシュは、偉大と信じてやまない先人の言葉に頼ろうとした。
つまり、とある方面で非常に優秀な父親と兄のそれに。
……ワインを引っかけられたぐらい、笑って許すのが男の度量だ。
どんな名言も価値のある至言も、使う時を誤れば、呆れるほど容易に世迷言へ姿を変える。
しかも悪いことにギーシュが心の中から拾い上げた言葉は、名言でも至言でもなかった。
それを言った当人でも、なぜ今その言葉を使うのかと首をかしげたに違いない。
そもそも引っかけられたという程度ではなく、ぶちまけられたというのが正しいだろう。
「仕方のない人だ」
とギーシュが笑ってつぶやいたところで、人垣の構成員たちは狂ったのかと思うだけだ。
幸か不幸か、ギーシュはその事実に気付くこともなかったが。
黒く染まっていたギーシュの心が、二人の少女がもたらした混乱によって、いつの間にか
ぬぐわれていた。
しかしこびりついていた残りかすが、暗く口を開ける奈落へ向けて、少年の背中を押す。
ギーシュがシエスタにいった最後の言葉には、嫉妬が含まれていた。
かつて偶然見かけた光景、ルイズがシエスタに屈託なく笑いかけていたその光景に、ギー
シュは深い嫉妬を覚えていた。
ギーシュには、素顔の自分をさらけ出せるような相手は学院には存在しない。
小さなことを、平民への礼の言葉をあげつらうような同級生しか。
モンモランシーならばと思ったこともあるが、男としての矜持と若さがそれを許さない。
その嫉妬が、悲劇の幕を開く。
「もういい。せいぜいあのゼロに慰めてもらいたまえ」
132名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 13:17:02 ID:g9j5sher
支援
133ゼロの氷竜 ◆Mzy8Osstcc :2008/12/12(金) 13:17:09 ID:G/mMaN+p
いつの間にか人垣の外に、状況を見守る三つの視線が増えていた。
ルイズたちに先んじて食堂に到着していた、ブラムドと二人の教師たちだ。
ともあれギーシュを止めようとするコルベールを、ブラムドとオスマンが押しとどめる。
「ひどいことにはならぬようにする」
というオスマンの言葉に、コルベールも不承不承ながら従う。
ただし、オスマンの目に浮かんでいた面白がるような光を見逃してはいなかったが。
「眠りの鐘を準備しますか?」
「いらん。魔法の力で有耶無耶にしても、後顧に憂いが残るだけじゃ」
提案をしたコルベールも、オスマンの正しさに首肯する。
二人の教師を横目に、ブラムドはシエスタへと視線を送っていた。
主であるルイズが自ら紹介した、身分の違う友人へ。
ブラムドが友と呼ぶ一人の魔術師、アルナカーラでさえ、魔術師が蛮族と呼ぶものたちに
友はいなかった。
時代が、そうさせなかったのかもしれない。
今、別の世界にいるブラムドは、友と呼ばれたシエスタがルイズをどう思っているのか、
この一件を一つの秤にしようとしていた。

ギーシュの一言で、うなだれていたシエスタの頭が持ち上がる。
その瞳には光が差していた。
それは詰問から開放された喜びでも、貴族に対する恐れでもない。
友を侮辱されたことへの怒りが、その目に宿っていた。
シエスタは知っている。
いや、シエスタだけが知っている。
ゼロという言葉が、彼女の友人をどれだけ傷付けてきたか。
ゼロという言葉が、彼女の友人の涙をどれだけ流させてきたか。
シエスタは、自分を友といってくれたルイズへの侮辱を、看過することなどできなかった。
腰を伸ばしたシエスタの顔から、表情が抜け落ちている。
その中で、目だけが光を放っていた。
「今のお言葉、取り消していただけませんか?」
炯々と光る目に気付き、ギーシュが問おうとした瞬間、口火を切ったのはシエスタだった。
さすがに、ここまで真正面から平民に楯突かれた経験は、ギーシュにも、人垣の構成員た
ちにもない。
「なんだって?」
余裕を持って応じたつもりだが、ギーシュの声は大きな驚きとささやかな怒りによって、
わずかに震えていた。
「ヴァリエール様をゼロと呼んだことを、取り消していただけませんか?」
ギーシュの心を占める、驚きと怒りの比率が徐々に変化する。
少年の心を、再び黒さが塗りつぶしていく。
「なぜだい?」
「あの方は、昨日使い魔を召喚されました。少なくとも、ゼロではありません」
ギーシュの心を塗りつぶす黒は、嫉妬という名前だ。
平民が貴族に楯突くことは、自らの首を処刑台に据えるに等しい。
貴族の気分で殺された平民は決して多くはないが、探すのが難しいほどでもなかった。
殺されないまでも、手足を折られたり切られたりといった程度であれば、探す必要もない。
そんな危険をおかしてまでも、たかだか一つの言葉を取り消させる理由が何か、もちろん
ギーシュは気付いている。
気付いているからこそ、自分の傍らにそんな友がいないからこそ、その嫉妬は強い。
「ゼロが一になったところで、大して変わりはないさ」
ギーシュの言葉は、ある意味で助け舟に等しい。
うなずきさえすれば、もう一度謝りさえすれば、ギーシュの暗い喜びは満たされただろう。
だがシエスタはかたくなだ。
「いいえ、ゼロと一では大きな違いがあります」
それゆえにギーシュの嫉妬は強く、自身の卑小さを悟らざるを得なくなる。
今、自らを犠牲にしても悔いはないというほどの友がいないこと、もし友を王家や有力貴
族に侮辱されたとして、自分は同じことができるだろうかと。
その感情が、ギーシュの口を滑らせる。
「君は、平民の分際で貴族にたてつくつもりか?」
134ゼロの氷竜 ◆Mzy8Osstcc :2008/12/12(金) 13:17:42 ID:G/mMaN+p
食堂へ入ろうとしていたキュルケと、食堂から駆け出そうとしていたモンモランシーがぶ
つかった。
ひとまず文句を言おうとしたキュルケだったが、モンモランシーの目に滲む涙に気付く。
「どうしたの?」
モンモランシーの様子に、そして食堂の一角に作られた人垣に、三人の少女が気付いた。
前からモンモランシーに恋の相談を受けていたキュルケは、何とはなしに事態を把握する。
「ギーシュ?」
こくりとモンモランシーがうなずく。
「浮気?」
再び、モンモランシーがうなずく。
そのまま声を殺して泣くモンモランシーに、キュルケはその豊かな胸を貸す。
事の次第が理解できないルイズとタバサは、不思議そうな顔を見合わせるだけだ。
だが人垣の中から上がったギーシュの声に、ルイズは表情を凍らせる。
「もういい。せいぜいあのゼロに慰めてもらいたまえ」
怒気をみなぎらせるルイズの様子を眺めながら、キュルケはモンモランシーへ自室へ戻る
ように促す。
一歩、二歩と人垣に近寄るルイズの耳に、聞き慣れた声が聞こえた。
「今のお言葉、取り消していただけませんか?」
それは友の声だ。
ルイズの足が止まる。
その方に手を置きながら、キュルケがつぶやく。
「いい友達じゃない」
キュルケへ振り返ったルイズの顔には、誇らしげな笑顔が浮かんでいた。
そこではっと気付く。
ギーシュの声に続いてシエスタの声が続いたということは、人垣の中心にいるのが二人だ
ということだ。
しかも会話から状況を考えれば、シエスタがギーシュにたてついている形になる。
貴族の機嫌を損ねた平民がどうなるのか、ルイズもキュルケもタバサもよく知っていた。
慌てて走り出そうとするルイズを、キュルケの腕が絡め取る。
さらに文句を言おうとする口を、空いた片手で塞いだ。
「ちょぉっと、様子を見ましょうよ」
煌めく少年の瞳でつぶやいたキュルケの様子に、ルイズは説得をあきらめかける。
だが友人を危険な目に遭わせるわけにはいかない。
それは自らを支えてくれたシエスタに対する恩義と、平民を守る貴族たらんとするルイズ
の誇りが許さないからだ。
なおも軛から脱しようとするルイズに、キュルケが声をかける。
「ひどいことになる前には止めるから」
その言葉に説得された訳ではないが、ルイズは四肢から力が抜けていくのを感じていた。
ついさっき、朝食の栄養分を使い果たしていたことへ、ルイズは思い至らない。
もどかしくうごめきながら、ルイズはシエスタとギーシュのやりとりを聞くことしかでき
なかった。
そのルイズを抑えながら、キュルケは人垣の中から聞こえる声に耳を奪われる。
平民と貴族を隔てる垣根の低いゲルマニア、その母国と魔法学院があるトリステインの違
いを、キュルケは一年間のうちに学んでいた。
歴史や伝統というものがどれだけ人の心を蝕むのか、増長する貴族とひれ伏す平民の姿に
表れる。
そのトリステインにいながら、友のために貴族へたてつく平民がいることが、キュルケの
心を震わせた。
その感動を、ギーシュの言葉が切り裂く。
「君は、平民の分際で貴族にたてつくつもりか?」
キュルケはギーシュを知っていた。
それはただの同級生としてではなく。
立ち居振る舞いとは裏腹な純朴さを見抜いていた。
平民を人間として見ていたことも知っている。
そのギーシュが、よりにもよって権威を振りかざした。
鋭く、熱く、純粋な怒りが、キュルケの口から放たれる。
「そこまでにしておきなさい!!」
人垣が、二つに割れた。
135名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 13:18:36 ID:g9j5sher
支援です
136ゼロの氷竜 ◆Mzy8Osstcc :2008/12/12(金) 13:18:51 ID:G/mMaN+p
以上。

支援誠に感謝!!!


それにしても話おせーなー俺w
137名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 13:20:37 ID:g9j5sher
乙でした〜
描写が丁寧で惚れ惚れします
さぁ、どうなるギーシュとワクワクです
138ゼロの氷竜 ◆Mzy8Osstcc :2008/12/12(金) 13:26:15 ID:G/mMaN+p
今年中には決闘を終わらせたいと思ってるんだけど
書いてると増えるんだよねw

申し訳ないんですが気長にお付き合い願えればとおもっとります。

ではではあでぃおぅす
139名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 13:26:44 ID:JHsYbpS7
乙でした〜
ギーシュの描写が細かくて感情移入すら出来……でもやっぱり二股は良くねぇなw
ピエロと化したギーシュの末路と復活に期待!
140名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 13:31:57 ID:cBwg9V5z
氷竜の人乙
ロードス好きの俺は毎回楽しみにしているぜ!
筆が遅くとも、ゆっくり書き進めて行ってね!
141お前の使い魔 16話:2008/12/12(金) 13:45:18 ID:BTzMxE0S
氷竜の人お疲れさんです
他にも色んな人が新しく書いてたり、前からの人も更新あったりと嬉しいッス

さて、予約が無ければ50分から投下するッス
142名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 13:50:03 ID:BTzMxE0S
「ダネットは……愛していない人に嫁げと言われたら……どうしますか?」

 姫殿下からの問いの意味がわからず、ダネットはしばらくぽかんと口を開けていたが、徐々に理解したのか、急に顔を真っ赤にして騒ぎ出した。

「わわわ私はその、そういう人というかですね? その、あの、えっと」

 この反応からして、ダネットにも気になる相手みたいなのいるんだ。そういえば、ちょっと前にそんな話してたような気がする。
 
「私とあいつはそういうんじゃなくてですね、愛してるとかじゃなくてですね、でも愛していないという訳じゃなくて、えっと」

 語るに落ちてるわよダネット。よっぽど『あいつ』とやらが好きみたいね。
 ん? なんかムカツク。なんでだ?

「その『あいつ』さん? その方以外ともし今すぐ結婚しなさいと言われたら結婚しますかダネット? ごめんなさい変なことを聞いて。でも聞いておきたいの。」

 姫殿下が、慌てるダネットに静かに語りかける。
 ダネットは顔を真っ赤にしながら、しばらくもごもご言っていたが、考えがまとまったらしく、赤みの残る顔ではっきりと答えた。

「嫌です」

 おお、愛されてるわね『あいつ』 むー……なんか複雑だ。

「……ならばルイズ、あなたならどうですか? 愛していない人に嫁げといわれたらどうしますか?」

 姫殿下の問いに、わたしはしばらく考えた後答えた。

「……結婚すると思います」

 わたしの答えが予想外だったのか、ダネットは驚いた顔でわたしを見る。

「どうしてですかお前? だって好きじゃない奴ですよ? 年中顔に変な仮面をつけた変なおっさんとかでもいいんですか?」

 なによその妙に具体的なおっさんは。

「流石にそんなのと結婚しろとは言われないでしょうけど、万が一にも父様や母様から言われたら……結婚しなくちゃいけないでしょうね」

 わたしの返事が気に入らないのか、ダネットは食い下がる。

「私にはわかりません。アンアンだってそうですよね? 結婚っていうのは好きな相手だからするんですよね?」

 ダネットの問いに、姫殿下は首を縦には振らなかった。
143お前の使い魔 16話:2008/12/12(金) 13:52:17 ID:BTzMxE0S
「アンアンもお前も変です! おかしいです! どうして好きじゃない相手と結婚できるんですか? 結婚っていうのは、好きな相手とずっと一緒にいるってことじゃないんですか?」
「あんたの言い分はもっともよダネット。だけどね……」
「わたくしは姫で、ルイズは貴族なのです」

 それでもダネットは納得しない。

「わかりません。わかりたいとも思いません」

 たまにダネットが羨ましく思える。
 わたしも、もし貴族として産まれなかったら、彼女みたいになれたのだろうか。
 だけど、わたしは貴族なんだ。だからわたしはダネットに言わなくちゃいけない。

「じゃあ聞くわダネット。もしあんたが結婚を断れば、あんたの大事な人に迷惑をかけてしまうとしたらどうする? 沢山の人に迷惑をかけてしまうならどうする?」

 ダネットは眉を吊り上げ、わたしに向かって言う。

「どういう意味ですか」
「言ったまんまよ。もしあんたが好き勝手にして、その結果、他の誰かが大変なことになるなら、場合によっては死んでしまうとしたら、あんたはどうするの?」

 ようやく理解できたのか、ダネットは無言でうつむいた。

「国を治める王族である姫殿下、そして平民を治める貴族であるわたし。嫌な言い方かもしれないけれど、ダネットとは立場が違うのよ。」

 こんなこと言いたくはない。でも、こうでも言わなきゃきっとダネットは納得しないだろう。
 ほんと、真っ直ぐというか頑固というか……。

「……じゃあアンアンは、他の誰かの為に結婚するんですか?」

 うつむいたままのダネットの問いに、姫殿下は少し悲しそうな顔をする。

「そんなのって……そんなのってないです! どうしてですか! アンアンが何か悪いことしたんですか!? どうして幸せになっちゃいけないんですか!?」

 まるで自分のことのように怒るダネットを見て、姫殿下は優しく微笑み答える。

「望まない結婚かもしれませんが、わたくしは幸せです。だって、民を、あなたやルイズの幸せを守ることができるんですもの」

 これが決め手になったのか、ダネットはうつむいたまま泣き出した。
 姫殿下は、そんなダネットに近づいてゆっくりと抱きしめ、優しく話しかける。

「今日会ったばかりのわたくしの為に泣いてくれてありがとうダネット。ぶしつけかもしれませんが、あなたのことをお友達と思ってもよろしいですか?」

 ダネットは肩を震わせながら姫殿下を抱きしめ返すと、溜まっていたものを吐き出すように答えた。

「ひっぐ……当然でず! アンアンは私の友達でず! 大事な友達でず!!」

 鼻水まじりの失礼極まりない答えだったが、わたしは止めようとは思わなかった。むしろ羨ましくも思える。

「ありがとうダネット。ほら、泣かないで。わたくしはとても幸せですのよ?」
「うー……ひっぐ……」
144お前の使い魔 16話:2008/12/12(金) 13:54:32 ID:BTzMxE0S
 しばらくして、ようやく泣き止んだダネットが離れた後、姫殿下はわたしに教えてくれた。

「わたくしは、ゲルマニアの皇帝に嫁ぎます。」
「ゲルマニアですって!?」

 まさかあんな野蛮な成り上がりの国と……。

「そのゲルなんとかってなんですか?」

 新たな疑問を口にするダネットに、わたしはわかりやすい答えを返す。

「キュルケの産まれたとこよ」
「乳でかの国……乳でかってお姫様だったんですか!?」
「どうしてそうなるのよ」

 少しは見直したかと思ったけど、やっぱりダメットだ。アホの子だ。

「つまり、キュルケは留学生なの。それで、姫殿下はキュルケの生まれ故郷の成り上がり皇帝と結婚するって言ってるの」
「リューガクセー……コーテー……お前は難しいことばっかり言います。もっとわかりやすく言いなさい」

 これ以上、どうやってわかりやすく言えというのだろうか。うーむ……。

「姫殿下は、遠い場所の野蛮な王と結婚するっていうことよ」
「一大事じゃないですか! アンアンが殺されちゃいます!!」
「なんでそうなんのよ!」
「だって野蛮って言ったじゃないですか」

 わたしと姫殿下と顔を向かい合わせ、どう説明したものかと頭をかかえるのであった。

 色々な例えやら何やらを出し、ようやくダネットが納得した頃には、わたしも姫殿下も少しだけ疲労の影が見えた。

「つまり、アンアンは遠い場所の偉い奴と結婚するんですね」

 ダネットの言葉に姫殿下は頷く。
 それを見たダネットは力強く姫殿下の肩に手を置き、とんでもないことを言い出した。

「アンアン!」
「は、はい?」
「何か私に出来ることはありませんか? アンアンが望むなら、その偉い奴の首根っこへし折ってきてやりますし、結婚式の邪魔をしろって言うならしてやります」

 あんた絶対にさっきわたし達が言ったこと忘れてるでしょダネット。
 まさか隣室のキュルケも、自分の国の皇帝を暗殺しようとしてる使い魔がいるなんて思いもしないでしょうね。

「落ち着きなさいダネット。姫殿下がそんなこと望むはずが」
「では……一つだけお願いを」
「ええ!? ちょっと姫殿下! ゲルマニアの皇帝を暗殺なさるおつもりですか!?」
「よく言いましたアンアン! 私がいたら百人力です!! お前、ゲルなんとかへ行く準備をしましょう!」
145お前の使い魔 16話:2008/12/12(金) 13:56:17 ID:BTzMxE0S
 待て待て待て待て、どうしてこうなるのよ! 洒落にならないわよ!?
 でも姫殿下の命とあらばやるしかないの!? ということは、わたしとダネットは明日からお尋ね者!? だけど王室からの勅命とあらば許されるんだろうか?

「いえ違います二人とも。わたくしが頼みたいのは別のことです」

 良かった……心底ほっとした……お尋ね物のメイジなんかになったら、家族に顔向けできなくなるとこだった……。

「むー……じゃあ、何を頼みたいんですかアンアン?」

 どうしてちょっと残念そうなのよダネット。

「実は……」

 姫殿下の頼みとは、皇帝の暗殺とまではいかないものの、これまたとんでもないものだった。
 『アルビオンのウェールズ皇太子へ送った手紙の奪還』
 これだけなら別段難しいものではないかもしれないが、問題はアルビオンの現状である。
 アルビオンは現在、反乱により内戦が起こり、戦争真っ只中。しかも、当然手紙が反乱軍に奪われる前に行かなきゃならない。
 更に、姫殿下は現在、自分の周りに信用がおけるものもおらず、わたしとダネットの二人だけで行くしかないときたものだ。
 これを頼んだのがどこぞの馬の骨ならば、鼻で笑って失敗魔法を食らわせるような内容である。
 だが、これは姫殿下の頼みなのだ。他でもない、わたしのおともだちの頼みなのだ。

「……という訳です。非常に勝手な頼みだとは思います。ですので、もし断るというのであれば、わたくしは諦めましょう」

 姫殿下はそう言って、瞳に涙を浮かべた。
 きっと、わたしかダネットが断れば、本当に諦めるのであろう。そんな涙だった。

「ダネット」
「ええ。わかってます」

 わたしはダネットと頷き合い、姫殿下をしっかり見つめながら答えた。

「お任せください姫殿下。その手紙、必ずやこのわたくしめが奪還して見せましょう」
「もし誰かが邪魔をするなら、私たちが首根っこへし折ってやります」
「二人とも……」

 わたし達の決意を聞くと、姫殿下は耐え切れなかったのか涙をこぼし、わたしとダネットに抱きついてきた。
 ダネットはそんな姫殿下を抱きしめた後、ふいに入り口を見て口を開いた。

「そういう訳ですから、そこの三人も協力しなさい」

 はい? 今なんて言ったのダネット?
 わたしと姫殿下は訳がわからず、ダネットが見つめる入り口へと視線を向けると、ゆっくりとドアが開いた。

「驚いた。いつから気付いてたのよダネット」
「恐らくは最初から」
「ぼくの高貴さが扉からにじみ出てしまったようだね。実に罪だ……」
146お前の使い魔 16話:2008/12/12(金) 13:59:08 ID:BTzMxE0S
 ぞろぞろと現れたのは、キュルケにタバサと、おまけとして薔薇を咥えたギーシュの三人。
 わたしと姫殿下が口をパクパクさせてダネットを見ると、当のダネットはケロッとした表情でわたし達を見返して言う。

「もしかして気がついてませんでしたか? 気配はうまく消してましたけど、絹ずれの音なんかしてましたよ?」

 化け物かあんたは。

「まさかタバサの言うとおり、最初っからバレてたとは思わなかったわ。隠れてて損しちゃった」
「つつつつぇつぇつぇ」
「どうしたのよルイズ、変な顔して」
「ツェルプストーがなんでいんのよおおっ!?」

 わたしの叫びで我に帰ったのか、姫殿下の顔色が凄い勢いで青くなっていく。
 そりゃあここで話していた内容は、ぶっちゃけとんでもないことのオンパレードだ。
 そんな姫殿下に、キュルケは死神の鎌を振るうような一撃を決める。

「お初にお目にかかりますアンリエッタ姫殿下。私の名はキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。ゲルマニアの貴族であるツェルプストーの者です」

 あ、姫殿下が固まった。

「どうしてアンアンもお前もさっきから変なんですか?」
「どうしてもこうしても無いわよ!! 何でもっと早く言わないのよあんたは!! このバカ! ダメット!!」
「なんで怒られなくちゃいけないんですか! 気付かなかったお前が悪いんじゃないですか!」
「こっそり教えるぐらいしなさいよ! 第一、あんな話をキュルケに聞かせたらマズいってことぐらい察しなさいよ!!」
「なんで乳でかに聞かせたらいけないんですか! 乳でかも友達なんだからいいじゃないですか!!」
「はあ!? ツェルプストーが友達!? 冗談じゃないわ! 敵よ敵!」
「嘘言わないでください! いっつも仲がいいくせに! お前は嘘つきです!!」
「なんですってええええっ!? もう一回言ってみなさいあんた! 吹っ飛ばすわよ!?」
「何回でも言ってやります! やーい嘘つきー! 嘘つきー!」
「むきいいいいっ!!!!」
147お前の使い魔 16話:2008/12/12(金) 14:01:28 ID:BTzMxE0S
 こんな感じでわたしとダネットが口喧嘩から取っ組み合いの喧嘩へとレベルアップさせている間に、キュルケは姫殿下へと近づいていた。
 それに気付いたわたしはダネットを引き剥がし、急いで姫殿下の前へ行き庇う。
 なんせキュルケはゲルマニアの貴族だ。
 キュルケに過剰な愛国心があるようには見えないが、話の中にゲルマニアの皇帝を卑下するような内容もあったのだから油断できない。

「ちょっとツェルプストー! あんた姫殿下に何をする気よ!」
「別に何もしないわよ。あんたも姫殿下も騒ぎすぎなの。ほら、どきなさい」

 キュルケはそう言ってわたしを横へ押しやると、いまだ固まったままの姫殿下の前でかしずいた。

「ゲルマニアの貴族として、そして民として、この度のアンリエッタ姫殿下と我が国の皇帝のご婚約、心よりお祝い申し上げます」

 キュルケの言葉に我に帰ったのか、姫殿下はおずおずと口を開いた。

「あの……先ほどのわたくしの話はどこまで……?」
「先ほどのとおっしゃいますと? ああ、手紙の件でございますわね。私めも奪還の命を授かれればと思います。」

 キュルケの言葉は、暗に『さっきの皇帝を卑下する事は忘れる』と語っていた。
 それに気付いたのか、姫殿下はほっとした顔になると、キュルケの後ろにいたタバサとギーシュへと視線を向ける。
 タバサはゆっくりと、ギーシュは大慌てでかしずき、更にギーシュはまくし立てるかの如く、手紙の奪還の任務を自分も受けたいと言い出す。

「ルイズはいい友人を持っていますね」

 のほほんとした姫殿下の言葉に、わたしは流石に頭を抱えるのだった。

 こうして、上手い具合に付いてくることとなった三人を含め、姫殿下から正式に勅命を受けることとなった。
 わたしは、姫殿下よりウェールズ皇太子宛ての手紙と、『水のルビー』を受け取った。
 事情を説明し、この水のルビーと手紙さえ見せれば、ウェールズ皇太子は手紙を返してくれるようだ。
 姫殿下から授かった手紙の中身が気になりもしたが、そこは邪推しないのが華というものだろう。
 姫殿下がわたしの部屋から帰った後、キュルケ達と明日の段取りを話し合い、この日は解散となった。
 夜も遅くなり、眠気が襲い始めたので、わたしはダネットより先に床に着くことにした。

「じゃあ先に寝るわね」
「はい。おやすみなさい」

 わたしの意識が夢の世界へと旅立つ直前、ダネットが部屋を出てどこかへと行っていたような気もするが、まあ気のせいだろう。
148名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 14:01:28 ID:g9j5sher
ダネットいい子だなぁ…支援
149お前の使い魔 16話:2008/12/12(金) 14:04:00 ID:BTzMxE0S
 翌日、学院の前にわたしが行くと、いち早く来ていたギーシュの使い魔であるジャイアントモールのヴェルダンデに襲われそうになった。
 そう「なった」のである。では今現在、どういう状況かというとだ。

「ひいいいいいっ! ヴェルダンデ! ぼくの可愛いヴェルダンデ!!」
「脂が乗ってて実に美味しそうです。キザ男も食料を持ってくるなんて気が利いてますね」
「ダネットー、三枚におろしちゃっていいわよー」
「任せてください!」
「やめてくれええええええっ!!」

 このギーシュの使い魔であるジャイアントモールは、突然出てきたかと思ったら、わたしに襲い掛かってきたのである。
 ギーシュ曰く、わたしが持っている水のルビーが目当てだったらしい。
 全く、姫殿下から授かった水のルビーを奪おうとするなんて、こんな不届きな使い魔は食料にでもなんにでもなればいいのよ。

「えっと、干し肉にするには時間がありませんから、取り合えず血抜きだけでもしましょう」
「君にはこのつぶらな瞳を持つヴェルダンデの可愛さがわからないのかい!? ほら、見てごらんよ! 泣いてるじゃないか!!」
「全くわかりません」
「笑いながら刃物をヴェルダンデに向けないでくれえええっ!!」

 こんな感じでドタバタ騒ぎをしていると、突然後ろから声を掛けられた。

「元気なのはいいことだが、一応、お忍びの任務なのだから静かにしないといけないんじゃないかな君たち?」

 この声は……。

「ワルドさま!?」

 振り向くと、昨日、式典で見たわたしの婚約者であるワルドさまが、朝もやの中から現れた。
 一でわたしの顔に血が集まり、かっと熱くなって顔色が赤くなるのがわかる。
 それと同時に……またあの黒い何かがどろりと心の中に流れ込む。
 危険だ。離れろ。今すぐに離れろ。離れることが出来ないというなら今すぐに殺

「どうした娘っ子、顔色が悪いぜ?」

 持っていたデルフの声に、はっと我に帰る。

「な、なんでもないわ」
「ほう、インテリジェンスソードとは珍しい。しかし、なぜ可愛い僕のルイズがそんな物騒な物を持っているんだい?」

 いつの間にかわたしに近づいていたワルドさまは、そう言ってわたしからデルフを取り上げて横に置き、わたしをひょいと抱きかかえた。

「お、お久しぶりでございます」
「相変わらず軽いな君は! まるで羽のがっ!?」

 わたしを抱きかかえ、笑顔だったワルドさまの顔が一瞬歪む。
 緩んだワルドさまの手から降りたわたしが、慌ててワルドさまの後ろを見ると、ダネットが怒りの表情でジャイアントモールを手に仁王立ちしていた。
150お前の使い魔 16話:2008/12/12(金) 14:07:08 ID:BTzMxE0S
「いきなり現れて何ですかこのエロヒゲは」
「ぼくのヴェルダンデを振り回すなあああっ!!」

 取り合えず無言でダネットをどつく。

「助けてやったのに何をするんですか!」
「ワルドさまになんて事すんのよあんた!」
「そんな奴知りません!」
「あんたがそのジャイアントモールで殴った人よ!」
「こんな奴、エロヒゲで充分です!!」

 こんな感じで、わたしとダネットが早朝から元気に取っ組み合いを始めていると、後ろから呆れたような声が聞こえた。

「あんた達、こんな時まで喧嘩?」
「いつもの光景」

 声のした方を見ると、支度を済ませたキュルケとタバサが歩いてきた。
 キュルケはざっと周りを見渡すと、一点で視線が止まる。

「あら、昨日式典にいらしていた方じゃないですか」

 む、何か嫌な予感。

「ちょっとキュルケ、ワルドさまに変なちょっかい出さないでよね」
「別にいいじゃない。あんたのじゃないんだし」

 むむむ、この色情狂、まさかワルドさまに手を出すつもりか。
 そんな事を考えていると、殴られたショックから立ち直ったワルドさまがわたしの横に来て、キュルケに話しかけた。

「僕はルイズのものだよレディ」
「あ、ワルドさま! お怪我はありませんか?」

 わたしはほっとしてワルドさまを見つめる。
 というか、ワルドさまって今、自分はわたしのものだって言ったわよね? ということは、あの婚約のことを覚えてくれているのかしら。
 正直、嬉しい。うー、顔が赤くなる。

「ルイズのものってどういうことかしら?」
「言った通りのままだよ。僕はルイズの婚約者なのさ。ああ、紹介が遅れたね。僕は、女王陛下の魔法衛士隊、グリフォン隊隊長、ワルド子爵だ」

 やっぱり覚えててくれたんだワルドさま……。
 キュルケが大口を開けてわたしを見てる。ふふ、羨ましいか。

「そ、そういうことよ。わかったら変なちょっかい出さないことねツェルプストー」

 言った後、わたしはふんと髪を掻き揚げる。
 おお、なんか優越感。
151お前の使い魔 16話:2008/12/12(金) 14:09:15 ID:BTzMxE0S
「よくわかりませんが、このエロヒゲは敵じゃないんですか?」

 まだ警戒心を全開で出しているダネットがワルドさまを指差して言う。

「失礼よダネット! この方はその……わたしの……えっと」
「お父さんですか?」
「違うわよ!」

 ダネットにワルドさまを紹介すると、以外にもダネットは素直に頭を下げた。

「すいません。勘違いしちゃいました」
「いや、構わないよ。先に自己紹介をしなかった僕も悪いからね」

 そう言って、ワルドさまはさっきのダネットの無礼を笑い飛ばした。
 ん? 何となく目が笑っていないような……気のせいかしら?

「しかし、姫殿下には聞いていたが、結構な大所帯だね」
「え、ええ。色々ありまして。そういえば、ワルドさまはどうしてここに?」
「僕も姫殿下に頼まれたのさ。同行させてもらうよルイズ」

 なんとワルドさまを助っ人に寄こすなんて、姫殿下って意外と抜け目がないわね。

 各々の自己紹介も終わり、さて行こうかとなった時、面々をぐるりと見渡した後、ワルドさまは不安げな表情で言った。

「この人数だと、馬で移動するのは大変じゃないのかい? 僕のグリフォンで移動するにしても、あれは二人乗りだからルイズしか乗せれない。やはり、少人数でいくのがいいと思うんだが」
「えっとですね、それに関しては」
「問題ない」

 タバサが短く答え、上を見上げると、上空からタバサの使い魔である風竜が降りてきた。
 ワルドさまは驚いた様子で、タバサに語りかけた。

「これは驚いた……君の使い魔かい?」
「そう」

 ワルドさまは「ふむ」と短く口にし、手を口に当てて何か考え込んだ後、頷く。

「これならば全員で空路を行くことができそうだね」

 笑いながらそう言ったワルドさまを見て、わたしの背中にぞくりと悪寒が走った。
 ワルドさまは笑顔だ。いつもと全く変わらない。だけど、だけど……今確かに、表情の裏の舌打ちが聞こえた。
 変だわたし。昨日、ワルドさまを見てからどうもおかしい。

「そ、そうですね。では行きましょう」

 わたしは不安を振り払い、みんなに声を掛けた。
 すると、ワルドさまがわたしの肩を抱いて口笛を吹き、降りてきた自分のグリフォンへと連れて行こうとする。
152お前の使い魔 16話:2008/12/12(金) 14:11:06 ID:BTzMxE0S
「あ、あの、ワルドさま?」
「ん? どうしたんだいルイズ?」
「えっと、わたしはその」
「恥ずかしがっているのかい?」
「いえ、そうじゃなくて」

 ワルドさまと一緒にグリフォンに乗る。
 嬉しい。嬉しいのだが、わたしの中の何かが拒絶している。
 一緒にいたいと思う反面、突き飛ばしてでも離れたいという感覚。
 なんで? どうして?

「お前はあっちです」

 わたしの手がぐいっと引かれる。
 見てみると、デルフを手にしたダネットが、開いてる方の手でわたしの手を掴んで引っ張っていた。

「使い魔君、申し訳ないんだが、ルイズは僕と」
「エロヒゲって呼び続けますよ?」
「……行きたまえ」
「はい。代わりにこれをお願いします」
「ぼくはこれ扱い!? というかヴェルダンデも連れていきたいのだけれど……」
「じゃあ血抜きしますね」
「諦めます……」

 笑顔でワルドさまに傷心のギーシュを押しやり、タバサとキュルケが乗る風竜へとわたしを連れて行くダネット。

「あんた急にどうして?」
「何となく嫌そうだったからです」

 驚いてダネットを見ると、相変わらずの笑顔でわたしを見ていた。
 わたしにもよくわからなかった何かを見抜いたとでも言うのだろうか。
 いや、実際に見抜いたんだろうな。そんな気がする。

「……ありがと」
「んっしょ、んっしょ。え? 何ですか?」

 わたしの呟きは、一生懸命風竜に乗ろうとするダネットには聞こえなかったようだ。

「何でもないわよ。それより、手を貸しなさいよ」
「仕方ありませんね。ほら、掴まりなさい」
「あ、あんたは忠誠心ってもんが足りないわよ!」
「それ何ですか? 美味しいんですか?」
「食べ物じゃないわよ!」

 そんなこんなで騒ぎつつ、わたし達一行は、アルビオンへの船が出る、港町ラ・ロシェールへと向かうのだった。
153お前の使い魔 16話:2008/12/12(金) 14:11:53 ID:BTzMxE0S
以上で16話終了
支援ありがとッス!

箱○買ったら筆が遅れに遅れてるというのは秘密

以下次回予告

 イザベラが呼び出した謎の平民アサギ
 この奇妙な平民を始末するべく、イザベラはアサギに吸血鬼退治を言いつける。
 そして、現地に向かったアサギは、吸血鬼が巣くうという村で衝撃の真実を目にする!!

「げっ、あんた戻ってきたのかい? じゃあ吸血鬼は倒し……ちょっとあんた、なんでこっちに銃向けてんのさ」
「このアサギ様ともあろうものが危うく騙されるとこだったわ……まさかあんたが吸血鬼だったなんてね!」
「はい!? 何言ってんだあんた!?」
「シラを切っても無駄よ! この昼間外を歩けない上、犬歯がちょーっと伸びてたり、歳を取るのが他のひとよりちょーっと遅いという呪いを受けたエルザに全部聞いたのよ!」
「いっけーアサギお姉ちゃん。わるい吸血鬼をやっつけろー」
「ちょ、どう見ても吸血鬼ってそこのガキじゃないか!!」
「問答無用! 来なさいっ! 無敵戦艦良綱!!」
「はあああああああああああああ!?」

 頭脳は子供、体系も子供。彼女に解ける謎は無い!!
 その名は、真の主人公アサギ!!

次回、お前の使い魔外伝 『どっかの村殺人事件』 お楽しみに!


相変わらずの妄想なんだ。すまない
それでは
154名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 14:13:13 ID:g9j5sher
乙でした〜
エロヒゲwww
いいじゃないか、ロリエロヒゲじゃないんだからww
155デモゼロ:2008/12/12(金) 14:19:45 ID:g9j5sher
さて、素敵な作品が二つも投下された後に投下するのは大変緊張いたしますが…
…えと、どのくらい時間をおいてからなら、投下しても良いのでしょうか?

今回より、タイトルから(仮)を取らせて頂く第七話、投下準備は完了しております
156名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 14:34:41 ID:6rNnCwH9
15分から30分ぐらい開ければいいんじゃないでしょうか。
157デモゼロ:2008/12/12(金) 14:36:47 ID:g9j5sher
>>156
了解いたしました
それでは、14:45くらいから、投下させていだいてよろしいでしょうか
158名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 14:41:33 ID:cfJbEQGN
>>153
パラメータがインフレしてる戦艦呼ぶなw
159デモゼロ:2008/12/12(金) 14:45:52 ID:g9j5sher
時間になりましたので、投下開始させていただきます


 馬鹿力のルイズ
 その左手に刻まれしルーンはガンダールヴ

 しかし、ルイズはそれを知らない
 そして、たとえ、そのルーンが刻まれている事を知ったとしても

 …ガンダールヴ、それは神の左手
 ありとあらゆる武器を使いこなす

 魔法には全く関係ない
 相変わらず、ルイズは魔法を使えないまま
 それでも、一生懸命練習し

 …見事に、固定化の魔法がかかった壁を、ぶち壊してしまった


 ……ルイズが壁を壊した直後、現れた巨大な土のゴーレム
 その姿はまるで…
「まさか…土くれのフーケ!?」
 ま、まさか!
 まさか、魔法学院にまで現れるだなんて!?
 巨大な土ゴーレムは、ルイズが壊してしまった壁に、そのぶっとい腕を伸ばし、さらに壁を破壊していく
「……っきゃああ!?」
「!!シエスタ、ツェルスプトー!!」
 恐らく、ゴーレムに悪気はないのだろうけれど
 壊した壁の残骸はがらがらと崩れ落ちあたりに散らばっていく
 残骸とはいえ、一つ一つのパーツが大きい
 その一部が…呆然としていたキュルケとシエスタに、降りかかる
 …逃げるのが、間に合わない
 ば!とキュルケはとっさに、シエスタを庇うような体勢をとった
 が…このままでは、二人とも潰されてしまう!
(……助けなきゃ!!)
 そう考えるよりも先に、体が動いた
 地を蹴り、ルイズは二人に向かって駆け出す
 左手のルーンが光を放ち、ルイズに力を与えていく
 早く
 早く早く早く早く早く
 もっと速く、私の脚!!

 ……潰される
 キュルケは、そう思った
 迫ってくる壁の残骸の動きが、スローモーションのように瞳に映りこむ
 すぐ傍には、恐怖で固まっているシエスタの姿
 …自分だけ、逃げる訳にはいかない
 そもそも、自分だって…恐怖のせいなのか、脚が動かない
 せめて、シエスタを護ろうと彼女を庇うように、その体に覆い被さったが、多分意味はない
 一緒に潰されてしまう
 次に来る衝撃を覚悟して、キュルケは目を閉じた
160デモゼロ:2008/12/12(金) 14:46:50 ID:g9j5sher
 ………
 …………
 ……………
「…え?」
 衝撃は、こない
 恐る恐る、目を開き……その瞳は、驚愕で見開かれる
「ヴァリエール!?」
 ルイズが
 その小さな体で、目一杯腕を伸ばし、その残骸を支えていた
 ぱらぱら、小さな粉末があたりに散らばる
「く……!」
 ぎり、と歯を食いしばり、ルイズはそれをぽい、と放り投げた
 …いや、ぽい、なんて可愛らしい擬音は似合わない
 ……ぶん!!とでも言うべきだろうか
 それは、ゴーレムに当たって粉々に砕けた
 ゴーレムはそんなものものともせずに、壁の向こう側に手を伸ばしている
「あそこは…確か、宝物庫……!」
 恐らく、あのゴーレムは土くれのフーケが作り出した物
 …宝物庫の宝を盗み出すつもりか!
 咄嗟に杖を取り出し…しかし、キュルケは考えた
 こんな、巨大なゴーレム…自分たちだけでは、太刀打ちできる相手ではない
 誰か、人を呼んでこないと
 教師の増援を呼ばないと
「ヴァリエール、ここは一旦引いて…」
「…………も」
「…ヴァリエール?」
 き、とゴーレムを睨みつけているルイズ
 その表情に浮かんでいるのは、怒り
 様々な、ルイズの怒りの表情を見てきたキュルケだったが…見た事もないくらい、その表情は怒り一色で染められていた
「よくも……っ!!二人を、危険な目に合わせたわね!!」
 叫び、キュルケとシエスタをおいて、駆け出した

 よくも
 よくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくも
 二人を、危険な目に!!
 感情が、怒り一色で染め上げられる
 友…と呼んでもいいであろう者が命の危険に晒された事で、ルイズは我を忘れていた
 その癖して、どこか冷静な、妙な感覚
「相棒!っちょ、無理だろ、流石に!相手デカすぎるっての、引いた方が………って、みぎゃあ!?」
 がっし!
 叫ぶデルフリンガーを、むんずと掴んだルイズ
 …やっぱり、デルフを掴んだ方が体が軽い
 これなら…いける!!
「痛いっ!折れる、折れるぅぅぅう!!俺、折れちゃうっ!!……って、え?相棒の、心が震えて…?」
 デルフを手に、ルイズは駆ける
 目指すは、巨大な土のゴーレム
 両手でデルフを構え、真っ直ぐに睨みつける
 許さない 
 許してなんてやるものか!!
 ゴーレムは、ルイズの様子など気にも止めず、宝物庫の中を漁っているようだ
 それがまた、ルイズの怒りを刺激する
161デモゼロ:2008/12/12(金) 14:48:05 ID:g9j5sher
 …私なんて、相手にするまでもない、という事?
 ふざけないで!!

 目前に迫ってきた、ゴーレムの太い足
 それに向かって…横なぎに、ルイズは斬り付ける
 通常ならば、こんな錆びた剣など、はじかれておしまいのはず
 巨大なゴーレムの脚を、切り裂けるはずなどない

 ……ない、の、だが

(……いける!!)
 ルイズは、確信していた
 何故だろう、わかるのだ
 体中に、力が湧きあがってきている
 ちりちり、少し、左手の甲が熱い気がした
「おぉぉ……!わかる、わかるぜ、相棒。相棒の心が震えてやがる……!これなら、いけるぜ!!」
 デルフが、歓喜の声をあげた
 ……っがり!
 耳障りな音をたてて、デルフの刀身が土ゴーレムの脚に食い込んでいった
 がり、がりがり!!
 脚を、ちょうど半分くらい切り裂いてきたところで…一旦、刀身が止まりそうになった
 が、止めてなるものか
 このまま、脚を切り裂いてやる!
 そうすれば、バランスを崩して倒れるはず!!
 ルイズの中に溢れる力が、強くなる
 ざわり、ルイズの毛が逆立ってきて……そして、爪がざわざわ、伸び始めた
 そんな自身の変化に気づかず…ルイズは、渾身の力を込める!
「っやぁあああああ!!!」
 ざん……っ!と
 気合の声と共に、デルフを振り抜く

 ありえないはずの光景が、そこにはあった
 小柄な少女が、大きな剣を横なぎに薙ぎ払い……ゴーレムの片脚を、両断する
 ありえないはずのその光景は、しかし、現実だった

 ぐらり、バランスを崩し、倒れそうになるゴーレム
 が、すんでのところで片手をつき、倒れる事なく、両断された片脚を再生し始める
 そして、ぶぅん……と、腕を振りかぶり始めた
「やばっ!?来るぞ相棒!」
「……来なさいよ!」
 そんな攻撃、受け止めてやる!
 怒りに支配されているルイズに、恐怖などなかった
 攻撃してこようと、受け止めてみせる
 …今の自分には、それができる!
 そう、確信していた
 来るべき攻撃に備え、デルフを構えようとした、その時
162デモゼロ:2008/12/12(金) 14:49:24 ID:g9j5sher
 上空から降り注いだ氷の槍が、ルイズに向かって振り下ろされようとしたゴーレムの腕に突き刺さり
 反対側からは炎の球が飛んできて、ゴーレムの動きを鈍らせる

「…タバサ!?それに、キュルケも……」
 ばさり
 ゴーレムの頭上を飛ぶ風竜
 キュルケは、背後にシエスタを庇うような体勢で、き、とゴーレムを睨みつけ、杖を構えていた
 ……ぼろり
 ルイズへの攻撃が叶わなかったゴーレムの体が、崩れ始める
「や……ったの?」
「いや、多分、術者が逃げたんじゃねぇか?」
 デルフの言うとおりなのだろう
 ぼろぼろと、ゴーレムが土くれへと戻っていった後には…誰も、いなかった
 ゴーレムを操っていたはずのフーケの姿はどこにもない
「…逃げられた…!」
 悔しい
 悔しい、悔しい
 シエスタとキュルケを、あんな目にあわせた相手を逃がしてしまった
 悔しい!!
 悔しさに、歯を食いしばるルイズ
 土へと戻ったゴーレムの残骸を、ただただ、悔しげに見つめる


 …ひらり
 残されたのは、紙切れ一枚

『悪魔の種、確かに頂戴いたしました    土くれのフーケ』

 その紙切れを、初めに見つけた誰かさん
 ちゅう、と困ったような声をあげたのだった
163デモゼロ:2008/12/12(金) 14:51:28 ID:g9j5sher
以上で、第七話投下終了です
えっちなのが苦手なので、全裸はまだ後ほどに
…しかし、戦闘シーンも格好よく書くのが苦手です
もっと、格好よく書ければなぁ

プロット完成している区切りの良い部分までこれ以降も頑張って書いていきたいです
それでは
164名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 15:00:06 ID:8rTifBeB
乙です

デルフがそのうち握りつぶされないか心配ですね
165名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 15:33:00 ID:dFtT7gAZ
お疲れ様です〜
悪魔の種…正体が読めたッ!!www


種の種類と、この後の展開にwktk
166名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 15:35:37 ID:rV2Ww4UC
ルイズの、デルフを打ち付けた時の叫びが、デルフの悲鳴に見えた俺www
投下乙。
167名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 16:59:50 ID:yP1mnwz1
遅ればせながら、魔砲の人乙です。
次回もがんばってください。
168名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 17:06:29 ID:SM5MPyMK
皆さん投下乙です

最近スレの流れが遅くなったなと思うなり。やっぱりあの騒動が尾を引いているのだろうか
169名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 17:22:40 ID:YhKuLzGL
>>168
いや、一時期の流れの速さが異常だったと思えばヨロシ
170名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 17:24:49 ID:cmMEDgg4
また蒸し返す気か
171名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 17:25:21 ID:EBF0bN8S
一日に数作投下があるんだから別にそこまで遅いわけじゃないだろう
172ナイトメイジ:2008/12/12(金) 17:27:29 ID:oHP/ySU0
30分より投下させてください
173名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 17:29:07 ID:bFLdNeUT
ktkr
174名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 17:30:19 ID:ehQTsOPj
>>168
これでも他のSS系のスレでは速いほうだよ。
これまでが異常すぎだ。

>>172
ポンコツさま支援
175ナイトメイジ:2008/12/12(金) 17:32:02 ID:oHP/ySU0
洞窟の中は静かに、ただひたすらに静かだった。
死者はなにも語らず、死者と語らう姫君はなにも口にせず、それを見下ろす少女もまた沈黙を守っていた。
それを破るのはベール・ゼファー。
全てを知っているような声がルイズとアンリエッタの耳に滑り込む。
「終わったみたいね」
「どこ行ってたのよ」
「ちょっと、ね」
戻ってきたベルは1人でない。
「なんで、王党派の王子が?この方は本当にトリステインの王女様なんですか?いったい何が起こってたんですか?」
と、うろたえる竜騎士の少年を連れていた。
ベルはその少年を下から──少年の背はベルより頭2つ弱ほど高い──小突いて黙らせる。
「足を調達して来たのよ。空の上からトリステインに帰るには必要でしょ」
「そうだけど……」
「それなら帰りましょう。行き先はトリスタニアでいいわよね?」
何か言いくるめられたような気がしたが、ここにいつまでもは居られない。
文句を言ってやりたいのをぐっと押さえたルイズの了承はアンリエッタの声で遮られた。
「まずラグドリアン湖に行ってください」


風竜が雲を突き破ると視界は一気に開ける。
前には少し陰った空、下には広がる雲。
このままアルビオンに残し、再びクロムウェルの手で蹂躙させたくない。
そのアンリエッタのたっての願いによりウェールズ王子の遺骸は風竜に乗せられ、別れを惜しむ彼女の手に抱かれている。
強く吹く風が周りの雲を掃き散らかし、遙か後ろの巨大なアルビオン大陸の姿を明らかにした。
だが絶えず霧に包まれる大陸がそのベールを外すのはわずかの間。
アンリエッタが見つめるうちに再び雲は折り重なり、大陸をその中に飲み込んでいった。
ルイズはそんなアンリエッタの姿を彼女が再びウェールズの遺骸に目を移すまでじっと見つめ続けていた。


どこまでも広い水面を持つラグドリアン湖は、どこまでも静かにどこまでも続く夜空を鏡のように映していた。
この静けさと空から見下ろす二つの月と同様に、この地はアンリエッタとウェールズがかつて愛を誓いあった時のままのように見えた。
──本当に?
変わってしまったのかも知れない。
ルイズには知らないうちに世界が変わってしまったように思えた。
そう、変わらないものなどない。
太古の昔からあるはずのラグドリアン湖も姿を変えているではないか。
三年前、湖のこの畔に来たときには岸からほど近いところに大きな岩があった。
今はその岩はもう姿が無く、かわりに沖合に以前はなかった岩が小さく頭を見せている。
アンリエッタはその岩と青い月の重なる水面にウェールズを横たえた。
既にその体には温かみは欠片も残っておらず、冷たい湖水の一部になったよう。
杖とルーンにより紡がれたアンリエッタの魔法は無数の波紋を作る。
やがて波紋は波となり、その中にあるウェールズの遺骸を湖の底深くに連れ去った。
「これでもう誰もあなたを操ることはできません」
アンリエッタは濡れた片手を空に掲げる。
「誓約を聞き届けるというラグドリアン湖の水の精霊、そして水のルビーに誓います」
その指にある水のルビーが蒼月の光を受け、青く輝いた。
「ルイズ、あなたも証人になってください」
ルイズは頷き、アンリエッタの声を一つも聞き逃すまいと耳を澄ませる。
「私はいずれ再びアルビオンに戻りります」
アンリエッタは口をつぐみ、下唇を噛む。
その痛みを持って心に深く誓いを刻み込んだ。
「そして、簒奪者クロムウェルに報いを与えましょう」
「姫様」
ルイズもまたアンリエッタの誓いを心に刻む。
「私も手伝わせていただきます」
それはルイズ自身の誓いとなった。
176ナイトメイジ:2008/12/12(金) 17:34:15 ID:oHP/ySU0
その夜もトリステインの王宮は平穏の中にあった。
近々戦争が起こるという噂が流れ、衛士による警備は以前に比べ厳しくはなっていたものの静かであることには変わりない。
ただ残念なことに彼らは密かに城内に侵入した者達に気づいておらず、しかもその侵入者達は事もあろうに彼らが守るべき王女の寝所にいた。
もっとも、その侵入者達とは王女自身であったのだが。
「そういえばルイズ、一つ聞きたいんだけど」
「なに?」
無事、戻ってこれた。
この部屋に着てやってそれを実感する。
同時に体に積み重なった疲れが一気に吹き出した。
ルイズは床に座り込んでいるし、変わり身をしていたシエスタに手伝わせてメイド服から王女としての服に着替えているアンリエッタの足下もどことなくおぼつかない。
そこに話しかけてきたのが一緒に戻ってきたはずなのにまだまだ元気なベルだ。
「ルイズって魔法が使えなかったんでしょ」
「そうよ」
「いつの間に使えるようになったの?」
「いつの間にって……」
「ほら、何かきっかけがあったんじゃない?」
「きっかけ……」
最初にディスペル・マジックを使った時、ルイズはアンリエッタと供にニューカッスル城にいた。
その前に何があっただろうか。
ルイズはそれを思い出そうと目をつぶった。
まぶたが瞳を覆い、闇が訪れる。
そう、あの時ルイズは闇に似たものの中にいた。
その中でルイズにルーンをもたらしたものがあった。
目を閉じたままルイズはゆっくり考える。
──あれは確か……
「オルゴール」
「オルゴール?」
「そう、オルゴールの音が聞こえてきたの。それと一緒にルーンが聞こえてきて、それで使えたの」
「オルゴール……ね」
今度はベルが考える番だった。
組み直した足に蹴られたスカートがばさりと音を立てた。
「そんなの聞こえなかったわよ」
「聞こえてたわよ。そうよ、歌も聞こえてたわ」
「歌?」
「そう、こんなの」

    神の左手ガンダールヴ。勇猛果敢な神の盾。左に握った大剣と、右につかんだ長槍で、導きし我を守りきる。
    神の右手がヴィンダールヴ。心優しき神の笛。あらゆる獣を操りて、導きし我を運ぶは地海空。
    神の頭脳はミュズニトニルン。知恵のかたまり神の本。あらゆる知恵をため込みて、導きし我に助言を呈す。
    そして最後にもう1人……。記すことさえはばかれる……。
    四人の僕を従えて、我はこの地にやってきた……。

その歌は一度しか聞いたことがないはずなのに思いの外すらすらと思い出せた。
いや、本当は何度も何度も聞いていたのかも知れない。
魔法で心を縛られている間、ルイズに目覚めろ、起きろと何度も何度も。
「それなら」
ベルが窓に駆け寄り、大きく開けると冷たい風が吹き込んだ。
「行きましょう」
「どこへ?」
「もちろんアルビオンへ」
「ちょっと!待ちなさいよ」
ルイズは慌ててベルを止める。
冗談ではない。
本当に冗談を言ってないのかもしれない。
この使い魔は冗談のようなことを言う時ほど本気のことがある。
「今からアルビオンへ?無茶言わないでよ。危ないわ」
「いいじゃない。そのルイズには聞こえて、私には聞こえない音を出すオルゴールはルイズが魔法を使えるようになった鍵なのよ。持ってきてないんでしょ」
「そうだけど、前よりずっと危なくなっているわ」
「そのくらい何とかなるわよ」
「そのくらいって!」
177名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 17:36:23 ID:bFLdNeUT
支援
178ナイトメイジ:2008/12/12(金) 17:37:36 ID:oHP/ySU0
そのくらいをどのくらいと思っているのかはルイズにはわからないが、とにかく今のアルビオンは以前とは比べものにならないくらい危険になっているはずだ。
しかし無謀にもこの使い魔はそんなものはお構いなし。
必死で止めるのも聞かず、それどころかルイズの手を掴んで窓から飛び降りようとまでする。
「お待ちください」
アンリエッタが止めなければ強引なベルは本当にルイズをアルビオンに連れ去っていたかも知れない。
「ベール・ゼファー様。今、アルビオンに行くことは私も反対です」
「でもね、ルイズの魔法に関わるのよ。使い魔の私としては……ね」
「なによ」
「べつに」
横目で見られてルイズは何となく嫌な気分がした。
「オルゴールの変わりのものがあります」
「……へえ」
目の色が少しだけ変えたベルが窓から離れ、机のそばの椅子を引っ張ってそこに座る。
手を離されたルイズは座る場所もなく、そのまま立っていることにした。
「音のでないオルゴールには心当たりがあります。おそらくそれは始祖のオルゴールです」
「それで?」
「実物は私も見たことがありません。ただアルビオン王家に伝わる壊れたオルゴールが始祖のオルゴールとして伝わっているという話を聞いただけです」
「で、そのオルゴールがトリステインにもあるの?」
「いいえ。ですがそれによく似たものがあります。始祖の祈祷書です」
「でも、姫様。それは……本当に本物なのですか?」
始祖の祈祷書。それはハルケギニアで最も多い始祖の秘宝とも言われているものだ。
一冊しかないはずの始祖が記したとされる祈祷書は、その実ハルケギニア各地に存在し、それを所有する貴族、寺院、王室、果ては詐欺師までもが自らの持つ祈祷書こそ本物であると主張している。
「多くの専門家はトリステイン王室に伝わる祈祷書は間違いなく偽物であると言っています」
「それじゃ意味ないわね」
「私もそう思っていました。ですが今のルイズとベール・ゼファー様の話を聞いて確信しました。我が王家に伝わる祈祷書こそ本物です」
「なぜ?」
「トリステイン王室の祈祷書が偽物と断定された理由は全てのページに何一つ書き記されていない事なのです」
「音の聞こえない壊れたオルゴール、誰も読めない白紙の祈祷書……そういうわけね。それで、その祈祷書は見せてもらえるの?」
アンリエッタは頷きながら答える。
「ですが、すぐにというわけには……。祈祷書は代々、王室の結婚式において使われたという意味において価値を持っています。ですから、それなりの理由で後日ルイズに貸し出すということになります」
「いいわ。それからもう一つ欲しいものがあるわ」
怪訝な顔をするアンリエッタを見ながらベルは言葉を続ける。
「ルイズがつけている指輪が欲しいの」
「指輪って、これ?」
ルイズの指にはニューカッスル城の教会からずっと風のルビーが嵌っていた。
「ねえ、ルイズ。クロムウェルが虚無の魔法を使った時のことを思いだしてみて。忘れてないわよね」
もちろん忘れるはずがない。
ウェールズを蘇らせた時も、心を操る魔法を使った時もクロムウェルの指にあった指輪が妖しく輝いていた。
「あの指輪も虚無の魔法の鍵ね。で、ルイズが魔法を使った時にもその指輪が手にあった。持ってた方がいいでしょ」
「でも、これってウェールズ様の形見よ。それなら姫様に渡した方が……」
「アンリエッタ、どう?」
アンリエッタの指にあるのは誓いと願いをかけた証の水のルビー。
それをきつく握りしめる。
「ルイズ、あなたが持っていてください」
「……預からせていただきます」
ルイズもまた重みを増したようにすら思える風のルビーを握りしめた。
「さてと」
ベルは笑みを浮かべながら窓から夜空を見上げる。
「次のゲームはどうなるのかしら」
人がいかなる事を思おうとも素知らぬ風に月と星がそこにあった。


月に照らされる巨大な宮殿。
ここはガリアの王宮グラン・トロワ。
その最も奥の部屋に作られたハルケギニアを模した箱庭の前に座る男こそガリア王ジョゼフである。
「ほう、ほう。なるほど。よく教えてくれたミューズよ。そのような者がいるとはな」
ジョゼフが話しかけるのは人間ではない。
さりとて知恵のある他の生き物でもない。
黒髪の女性を模した人形に話しかけ、その言葉に耳を傾けているのだ。
「さて、ならばいかにするか」
179ナイトメイジ:2008/12/12(金) 17:39:25 ID:oHP/ySU0
ジョゼフは人形を箱庭に戻し、椅子に深く座り直す。
「サイを振りなさい」
そばに控えていた小姓がサイコロを二つ降る。
「ナイトメイジか。ベール・ゼファーとやら。このハルケギニアというゲーム盤は既に私が使っているのだよ。そこに割り込みたいのであれば、ふさわしい指し手であることを証明してもらわねばな。まずはこの目を持って試させてもらおう」
二つのサイコロはやがて動きを止め、その目を合計した一つの数字を出す。
「ほほう、11。そうかそうか。それなら……」
王の声を聞き、動き出す者が闇にいる。
それを称して人は暗躍という。


ラグドリアン湖。
ここにも夜の闇に躍る者がいた。
「まだ死に切れていないようね。あの魔法の力?それとも愛の力?執念と言った方がいいかしら。
でも嫌いじゃないわそういうの。だから、あなたにチャンスを与えてあげる。
あなたが望むなら彼女を守らせてあげてもいいわ。ただし、ただじゃないわ。けど悪い話じゃないでしょ。
クロムウェルと違って取引なんだから。それでもいい?そう、なら変わりなさい。私の力で」


叫び声を上げたワルドは悪夢にうなされた自らの声で目を覚ました自分に気づいた
ベッドに寝かされ、上を向く目にはロウソクの光に照らされた天井が見える。
光をたどり巡らせた視線が扉にむくと、それは耳障りな音を立てて開いた。
「目がさめたみたいだね」
揺らめく炎を映す眼鏡をかけたその顔にワルドは見覚えがあった。
元のサウスゴータ太守の娘というマチルダという女だ。
「どうなったのだ?俺は」
「ベール・ゼファーにやられたのさ。ひどい傷だったみたいだけど手加減してもらったみたいだね。明日には動けるようになるって話だよ」
「ぐっ!」
ワルドは悪夢を思い出す。
そうだ、ベール・ゼファーだ。
俺を打ちのめし、母の肖像を消した女。
「おのれ……必ず倒してくれる」
そばに立つマチルダがコップに水をくむ
コップと一緒に差し出した彼女の声はやけにさめていた。
「まだやる気なのかい?」
「無論だ。このまま終わりはしない」
「そうかい」
ワルドはその声に何か含むものがあるような気がした。
ただ何となくではあったが。
「やつを知っているのか?」
「まあね」
マチルダは部屋に置かれている花瓶から花の一輪を取り上げ、指先でもてあそぶ。
「あんたがもう一度あいつと戦って、それでも生きていたら教えてやるさ」
花弁の一つ床に落ちた。
それは何かを暗示しているのだろうか。
180ナイトメイジ:2008/12/12(金) 17:41:26 ID:oHP/ySU0
マントと金髪を風になびかせ、その目を遠くに向ける男が崖に立つ。
その者は赤い月を背負うラ・ロシェールの大樹を見上げ、手に持つ薔薇の一輪にキスをした口で呟いた。
「遅いな……みんな。まだかな。早く帰ってこないかな。おーい」
その者の名はギーシュ・ド・グラモンと言った。


その頃のアンリエッタ
「何か忘れているような……」


その頃のちょっとお出かけしていたベル
「忘れているってことはたいしたことじゃないわよね」


その頃のシエスタ
「何かあったんですか」


その頃のルイズ
「どうでもいいことね。きっと」


---------------------------------------------------
今回はここまでです

今明かされる衝撃の事実その2
ジョゼフはシナリオクラフトで遊んでいた!
デウスエクスマキナチャートはちゃんと用意しておけ

だって2d6振ってるし
181名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 17:45:01 ID:bFLdNeUT
投下乙です
182名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 18:03:05 ID:Sz58FxIb
サプリメント召喚w
183名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 18:12:52 ID:2BFWt7Ky
GJ!!
ウェールズ王子、「落とし子」に?。
ギーシュ・・・、まあ、次のセッションには登場判定に成功するでしょうw。
184名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 18:19:45 ID:p2hDbsoT
>>124
亀だが、なぜケインが上がっていてそこでレーンの名前があがらない!?
奴だって立派な装甲騎兵ボトムズ コマンド・フォークトの主人公だぞチクショー
185名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 18:55:32 ID:YhKuLzGL
>>184
それはお前(レーン)がマイナーだからだ
186名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 19:17:46 ID:dJzEPDUU
>>184
すまん、俺もそいつ(レーン)は知らない
187名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 19:31:05 ID:urEV/uPU
さて、嘘喰いでも召喚させてみるか
ハルケギニアに、かりかり梅があるかどうかだが
188名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 19:32:57 ID:rcg4oMth
>>187
困ったときのタルブ名産
189名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 19:36:38 ID:9KtfxkjV
ノボルが手がけた or 関わった作品で、ゼロ魔とクロスさせやすいようなファンタジーやSFってあったっけ?
魔界天使ジブリール以外で。
190名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 19:37:24 ID:VCgPdKsQ
タツノコキャラ召喚っておもしろそうだなあ
191名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 19:40:05 ID:k11JjHPB
グラドリエル召喚してくれ。
192名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 19:44:06 ID:31fSTWLG
バンツじゃないから恥ずかしくない連中召喚と申したか
193名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 19:46:42 ID:EieGrcVk
藤枝雅作品からどこぞの巫女と魔女を召喚して百合ん百合んな展開希望w
194名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 19:48:34 ID:SO0GDMSo
>>191
プリクラじゃなくて、おでんからメルセデス召喚は考えてたりする
195名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 19:49:23 ID:SO0GDMSo
ageちまった/(^o^)\
196名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 19:50:55 ID:LutUtG4k
クイーズブレイドのナナエルでいいじゃん〉ジブリール
197名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 19:55:51 ID:EieGrcVk
足洗邸からラウラ嬢(メイド、執事付き)召喚…うん、チート確定ww
198名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 20:03:22 ID:EieGrcVk
学園天国パラドキシアから煉司召喚…
タバサ涙目確定ww
199名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 20:05:03 ID:153d3KnG
>>198
煉司もいいけどQ子や聖、花子さんとかでも面白そうだw
200名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 20:08:09 ID:ODMha3A0
世紀末リーダー伝たけしからキムモーを召還

マチルダさんやアンアンやコルハーゲやタバサやワルドの嘘を見破るぜ
201名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 20:11:38 ID:ehQTsOPj
そういえばルイズが苦手な蛙、タバサが苦手な幽霊、オバケは呼ばれた覚えはあるけど、
キュルケが苦手なものって呼ばれたことあったっけ?
ってか苦手なものあるのかな?
202名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 20:14:06 ID:Ne3NngRC
>>193
源久也作品から猫神さまを召喚してルイズのストレスゲージを高めさせるのもいいかもしれん。
ルイズにしか見えなくて、失敗扱いされそうな所も高ポイント。
203名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 20:16:28 ID:gigurmlQ
安直で一発ネタレベルにしかなり得ないけど
スパロボZからジ・エーデル召喚
ドMが巡り合った素敵な快楽(鞭と爆発)
そこそこに美形を召還して舞い上がるルイズだが、ジ・エーデルを見るほどにダウン
最後はルイズにも飽きちゃったジ・エーデルがカオス・レムレースを呼び出してZ世界へ帰還
とかにしかならんなぁ、きっと
204名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 20:22:33 ID:k11JjHPB
海と大地の間の世界からビルバイン(ショウ&チャム)召喚のほうが。
205名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 20:23:50 ID:QLUd9MeI
タツノコだったら
今話題のキャシャーンsinsからキャシャーン召還してもいいと思うな
ギーシュ戦で恐ろしい強さを見せ付けて
危うくギーシュすら殺しそうになるとか
206名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 20:28:12 ID:gigurmlQ
実写版CASSHERNから稲妻が落ちてメインキャラが新造人間に・・・筋肉破裂で全員死ぬな・・・
207名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 20:30:17 ID:TXpUUpwW
タツノコかあ…ここは原点でシエスタが祖父伝来の赤い柔道着を…
208名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 20:31:11 ID:oHP/ySU0
シエスタが祖父伝来の謎のヘルメットという名のカブトを所持
209名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 20:33:13 ID:QLUd9MeI
というよりなんかキャシャーンといえば鬱と言う
決まりがあるのは実写版の所為か?
sins然り命に関するくらい話題が多いような気がするのは何故だ?w
210名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 20:34:34 ID:dqB6fiEp
海と大地とか聞いたら、ウルトラマンアグルとガイアがやっぱ浮かぶな。
我夢だったら帰り方を模索しながら請け負ってくれるかもしれんが、藤宮なら速攻で見放すな。
まあどっちにしても、東方に帰るヒントがあるかもって知った時点で変身して飛んでっちゃうだろうが。
211名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 20:36:24 ID:QLUd9MeI
藤宮もツンデレだしな
ある意味、同族嫌悪という現象がおきかねん
212名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 20:36:32 ID:VCgPdKsQ
>>205
青銅の悪魔を叩いて壊すわけか
個人的には破裏拳かジェネレイトする彼をだね
213名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 20:37:45 ID:EieGrcVk
TPぼんから並平凡(装備一式付き)召喚…うん、チート確定wワルド涙目ww
214名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 20:38:02 ID:ehQTsOPj
>>209
タツノコアニメはなんだかんだ言って鬱ネタが多いよ。
服装とか見た目とか簡略したあらすじで結構勘違いしちゃうけど。
215名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 20:39:30 ID:QLUd9MeI
>>212
それどころかガンダ性能が加われば
姉御のゴーレムともタイマン張れる可能性のある悪魔だ
なにせ不死身だし

ジェネレイターガウルか・・・
なんか性格的にはサイト似だな
覚悟はすぐに決まりそうだけど
216名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 20:43:49 ID:ZM4nLuJG
>>203
いかん、本当に読みたくなってきたじゃないかw
個人的にルイズの苛烈な責めは見ていてたまに辟易とする事もあるけど、
やっぱりそっちの気がある人にとっては正にごちそうさま状態なのかな?
ってか真の姿ならまだいいけど、あのじゃがいもジエー博士状態のを呼び出したら
それこそルイズが落胆しすぎて衰弱死んでしまいそうだw
217名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 20:43:57 ID:QLUd9MeI
>>214
そうかも知れんな、考えて見ればポリマー然りキャシャーン然り
内容を吟味するとかなり後ろ暗い話が多いな
だから現代人にも受けるのだろうけど

実写版のキャシャーンが特にそれをました奴だよな
ただ撮影演出が懲りすぎたのと製作者独自の考え入れすぎて
見ている人が追いつけなかった訳だが
218名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 20:44:51 ID:ljj6naG6
>>209
キャシャーンは初代からして結構鬱な作品だからな。
監督さんが元々ちょっとダークなヒーローものとして作ったとか言ってたし。
219名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 20:46:43 ID:EieGrcVk
青春ばくはつ劇場から部長召喚…
普通にラ部を結成しそうwそしてルイズがギーシュを性転換しそうww
220名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 20:48:38 ID:k11JjHPB
>>212
青銅の悪魔を叩いて砕く.最低でも鉄で錬金しないとだめですよね。

関係ないけどシュラトもタツノコだったんだ。
221名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 20:48:56 ID:QLUd9MeI
>>218
その割には明るく見えるのは昔と今のクオリティの差かも知れんな
それでもキャシャーンのデザインはシンプルイズベストの領域だと思うけど

今のはバトルシーンと話の内容で惹きつけるほどの
物になっているかもしれない
まぁ、深夜帯にやるのはどうかと思うけど
別段エロくもないし、SEEDほど狂気もないし
何故深夜?って感じだ
222名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 20:50:13 ID:9KtfxkjV
天空戦記シュラトだっけか?

たしかあかほりが原作の小説書いていたような。
223名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 20:51:16 ID:rLJKZSfj
シリアスとギャグが程よく混ざった初代トランスフォーマーからコンボイを召喚
名台詞の「私に良い考えがある」で事態が悪い方向へ、逆切れするコンボイ、
とばっちりを食らうギーシュとかwww
224名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 20:51:32 ID:0y8s7ot+
個人的には没った平成ライダーの企画書流用では? と思ってる。小林だし。
225名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 20:52:48 ID:EieGrcVk
シュラトか…召喚は無理だなorz
仮に喚べてもチートすぐるw
226名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 20:52:48 ID:QLUd9MeI
>>224
仮面ライダー小林?
なんだそのやられっぽい名前の奴はww
227名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 20:53:05 ID:gigurmlQ
>>216
ジエー博士かぁw
そりゃ考えなかったなぁw多分コントラクトサーヴァント出来ずにおしまいか
連載でもしようもんなら長期にわたって下手すりゃ最後まで保留ですねw
しかし、あの博士がガンダ補正でカッコよく剣を振る姿が容易に想像できてしまうのは何故だw

それはそうと、タツノコ繋がりでスパロボWの正気に戻ったゴダード召喚とか
・・・考えてみたけど
その場合システムボックスが無いから脇の下にクリスタルが入ってるただの凄く強いオッサンだな
228名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 20:54:38 ID:QLUd9MeI
まあ、バージル呼び出した時点で既にチートだろww
ここはさらにチートでチートブレイザーことナイトブレイザー呼び出すとか?w
まあギャグだが
229名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 20:56:42 ID:VGI+R40E
姉妹スレの旦那や白蛇はどーよ!?
230名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 20:59:16 ID:ljj6naG6
>>224
ブラスレイターもそんな感じだったなぁ。あれも小林がメインだったはずだ。
231名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 20:59:38 ID:EieGrcVk
>>228

暴走したらハルケギニア終了だなww
てかアレにガンダ補正付いたらワの人や7万涙目ww
232名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 21:00:37 ID:QLUd9MeI
まさに焔の災厄だなww
233名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 21:01:27 ID:k11JjHPB
オッス、オラ小林!ワクワクすっぞ!
234230:2008/12/12(金) 21:01:38 ID:ljj6naG6
あ、企画書か。流し見してたら読み間違えた、スマン。
235名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 21:07:43 ID:QLUd9MeI
>>233
すまん、酷くワクワクしねぇww
236名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 21:08:13 ID:O+d5GlYw
この後家庭教師ヒットマンREBORN!より獄寺隼人が召喚されるSS「ゼロのヒットマン」第1話を
投下します。
237ゼロのヒットマン 第1話:2008/12/12(金) 21:10:05 ID:O+d5GlYw
ここはとある町でのことだった。
「たまには散歩もいいですね、十代目。」
「そうだね。」
ツナと獄寺は町を楽しそうに散歩していた。すると突然不気味な鏡が現れました。
「なんだこのヘンテコな鏡は、」
獄寺が鏡に手を触れた瞬間、獄寺が鏡の中へと吸い込まれていった。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「獄寺くーーーーーーん!大変だリボーンに知らせないと。」

その頃、ハルケギニアの世界ではルイズが召喚の魔法の儀式を行っていた。
「宇宙の果てのどこかにいる私の僕よ!神聖で美しく!そして強力な使い魔よ!私は心より求め、訴えるわ!我が導きに、
応えなさいっ!」

杖を振り下ろすと、爆音とともに煙が巻き上がった。

「げほっ、げほっ、使い魔はどうなったの。」
煙の先に現れたのは、銀髪の男で服装はハルケギニアではみかけない格好だった。
「いてててててっ、ここは何処だよ、何がどうなっちまったんだよ・・・・・・」
「あんた誰よ?」
「俺は獄寺隼人だ!それよりもおめぇこそ誰だよ!訳の分かんねぇ世界に来ちまって俺は混乱してるんだ!」 20
獄寺は怒りを露にしながらルイズに質問した。
「私はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ。」
「長ぇよ!そんな名前!」
「ルイズでいいわよ。」
「それよりもここは何処だ!それになんで俺がこんな世界にいるんだよっ!」
「ここはハルケギニアのトリスティン魔法学校で、あんたは私の『サモン・サーヴァント』という召喚の魔法で呼び出され使い魔よ。
しかしなんで私の使い魔がこんな平民なのよ。ミスタ・コルベール!召喚をもう一度やり直させて下さい!」
ルイズはローブを纏って杖を持っている禿頭の中年男に言う、しかし男は首を横に振った。
「ダメです。一度召喚された使い魔は変更することはできません。」
「そんな・・・」
コルベールのその一言にルイズは少しショックを受けた。それを見ていた生徒達は
「おいルイズ!召喚で平民呼び出してどうすんだよ!」
「さすがゼロのルイズ。召喚したのが平民なんて傑作だ。」
「うるさいわねっ!私だって好きでこんな平民呼び出したわけじゃないんだからね!」
ルイズと生徒達が争っていると、後ろから獄寺がなにやら不満そうな態度を見せていました。
「さっきから俺を無視しやがって、それに俺を平民平民と呼びやがってふざけんじゃねえ!俺は十代目の右腕となる存在だ!
喰らえ!ハリケーン・ボム!」
獄寺がポケットからダイナマイトを取り出すとそのダイナマイトが発火し、そのダイナマイトは生徒達へと向かっていった。
ボガーーーーーーン!
「げほっ、げほっ、何だよ平民のくせに。」
「おめぇらもう一回ハリケーン・ボムを喰らいてえのかっ。じゃあ果てろ。」
獄寺の鋭い目つきと手に持っているダイナマイトを見た生徒達は
「ルイズの使い魔のあいつヤバそうだぜ。」
「じゃあ逃げるしかねぇよな」
あまりにもやばいのか逃げ出しました。
238名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 21:10:09 ID:JcfwjNB9
>>223
もうコンドル呼び出せばいいよwww
物凄く有能な使い魔だwww
239ゼロのヒットマン 第1話:2008/12/12(金) 21:11:41 ID:O+d5GlYw
「獄寺!あんたのその技すごいのね!」
「当然だ!俺は十代目の右腕となるために強くなったんだ!それよりも俺を元の世界に帰してくれ!あっちでは十代目が俺のこと心配してんだ!」
するとルイズは首を横に振った。
「無理よ、元の世界に帰す方法がないのよ。」
「そうかよ、だったら俺はお前の使い魔にでもなんにでもなってやる!ただしその代わり俺を十代目の所へ帰す手段を見つけろよ!」
「分かってるわよ!」
そういうとルイズと獄寺は魔法学校の遼に戻りました。

その日の夜の事でした。ルイズは獄寺にこんな質問をしました
「そういえばあんたの言ってた十代目って誰なのよ。」
「なんだよいきなり・・・・まぁ教えてやるよ。十代目っていうのは沢田綱吉のことだ。俺は初めてあの方と会ったとき、なんでこいつがボンゴレファミリーの
十代目なんだよって思ったんだ。しかしあの方と戦ってみて俺は負けたんだ。あの方こそボンゴレファミリーの十代目にふさわしいとな。」
「そうなんだ。あんたにも大切な仲間がいたのね。」
それからルイズと獄寺は眠りにつきました。

眠りについてから数時間後、獄寺は変な夢を見ました。
「獄寺くん!獄寺くん!」
夢の中でツナが獄寺を呼んでいました。
「十代目、一体何ですか。」
「獄寺くん早く帰ってきてくれよ!みんなも獄寺くんの帰りを待ってるんだ!」
「すみません。俺はまだ十代目の元へは帰れません。」
「なんでだよ!みんなが獄寺くんの事を心配しているんだよ!」
「十代目、俺は・・・・・・」
夢の中で獄寺がツナに何か言おうとしたその時

「ご〜〜〜く〜〜〜で〜〜〜ら〜〜〜っ!」
ルイズが怒った表情で獄寺を起こしました。
「うわっ!ビックリさせんなよっ!」
「ビックリしたのは私の方よ!いくら叫んでも全く起きなかったんだから、いったいどんな夢を見たのよ。」
「そんなのお前には・・・・・」
「いいから答えなさいよっ!」
獄寺はルイズに自分が見た夢の内容を話した。
「そうなんだ。つまりその十代目の人が獄寺の帰りを待ってるんだ。」
「そうだ!俺は一刻も早く十代目の元へ帰る手段を見つけるんだ!」
「いつになるか分からないけど必ず見つけるわ!だって獄寺の頼みなんだから。」

しばらくして獄寺はルイズにこんな質問をしました。
「そういえば、なんでルイズはあいつらにゼロのルイズって呼ばれてんだ。」
ルイズは悲しげな表情で答えた
「それは・・・・私はどんな魔法を使おうが必ず爆発して失敗してしまうのよ。この世界では魔法を使えないことなんて考えられない事なのよ。
それでお父様もお母様も、エレオノールお姉様も私に何一つ期待しなくなったのよ。」
「そうだったのか。悪かったなこんな事聞いちまって。」
「いいのよ。獄寺に私の辛い気持ちを伝えることができたから・・・。」
ルイズの悲しげな表情を見た獄寺は
「魔法なんて努力すれば使いこなせるようになんだからよ。あんまりメソメソすんな。俺も十代目の右腕として頑張ってるんだからお前も頑張れよ!」
「ありがとう・・・・獄寺。」


240ゼロのヒットマン 第1話:2008/12/12(金) 21:12:29 ID:O+d5GlYw
以上でゼロのヒットマン第1話を投下終了します。
241名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 21:14:27 ID:dT8y1AD2
この後って曖昧だなおい
ちゃんと時間指定しなきゃ
242名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 21:14:59 ID:WZKZwSwb
すげぇ下手クソ
SSの書き方ぐらいググれ
243名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 21:15:25 ID:JcfwjNB9
乙。
ただ次回からは投下予告してほしいな。
開始の10〜15分位に。
244名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 21:16:57 ID:urEV/uPU
まぁ俺が今から邪神モッコス召喚話書くから落ち着けよ
245名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 21:18:07 ID:hU33KRhn
>>243
10分? そりゃちょっと長すぎないか?
5分あれば十分そうな気もするんだが。
246ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2008/12/12(金) 21:21:46 ID:pO3nXjxe
 こんばんは。
 他に投下する方がいないようでしたら、第11話の投下を21:30から行います。

 今回はちょっと長いので、3分間隔で投下していきます。

 ……自分としては、投下予告は10分前後ほど前にやった方がいいと思いますが……この辺は個人の判断になりますかね。
247名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 21:23:04 ID:hU33KRhn
支援。

まぁ個人の好みなんだろうけど、10分あると混んでるときには迷惑じゃないかなと思ったり。>予告
248名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 21:23:27 ID:8rTifBeB
期待支援
249デモゼロ:2008/12/12(金) 21:25:10 ID:153d3KnG
支援
ラスボス様の後に、第八話の投下を予約してもよろしいでしょうか?
250名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 21:26:05 ID:VGI+R40E
おk
でも5分か7分位のインターバルは欲しいかも
251デモゼロ:2008/12/12(金) 21:27:21 ID:153d3KnG
>>250
えと…ラスボス様の投下が終了いたしましたら、その15〜20分後くらいに投下開始
で、よろしいでしょうか?
252名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 21:28:55 ID:ljj6naG6
>>251
そのくらい時間を空ければ問題ないと思うぞ、個人的には。
253ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2008/12/12(金) 21:30:01 ID:pO3nXjxe
 ―――男は、目の部分が4つ存在する異形の仮面を使い、素顔を隠した。
 そして『彼ら』について研究を始め、その素晴らしさに傾倒していく。
 ……だが『彼ら』は、男が直接目にした時、直接目にした場所を最後に、その姿を消していた。
 どうすれば『彼ら』にもう一度遭遇が出来るのか……。
 どうしれば『彼ら』が存在した時点まで、時をさかのぼることが出来るのか……。
 それだけを考えている内に、一つの転機が訪れた。

「フ、フフ……そういうことか……そういうことだったのか。何という偶然……これが因果律の成せる業(ワザ)か……。
 私の全知識が急速に紡がれていく……それが結集して一つの形になる……私は知っている……。
 ……デビルガンダムはこの私が創り出したモノだったのだ!!」

 未来の自分から、過去の―――現在の自分へと送られたヒント。
 地球の環境再生を目的として作られたと推察され、明らかに『あの時点』での地球の技術レベルを超えた物。
 それが未来からやって来ただろうことは予測の範疇だったが、まさか自分が送り込んだとは……。

「あとは……クロスゲート・パラダイム・システムを完成させるだけだ……。
 だが……時空間のゲートを検出する方法だけが……分からない」

 成功は確信している。
 なぜなら他でもない自分自身が、未来において時空間跳躍を成し遂げている証拠があるのだ。
 しかし、それを成し遂げる方法が、どうしても解明出来なかった。

 ―――その解明方法は、意外な存在によってもたらされる。

「お前の名前は?」
「……余は、ラオデキヤ・ジュデッカ・ゴッツォ」
「ゴッツォ……? 私と同じ名……何者だ?」
「……次元を超え、並行宇宙を超え、お前と因果律で結ばれた者……。
 余は別の宇宙でお前に創り出された者……。そして、お前はこの宇宙で余に創り出される者……。
 余とお前は、並行宇宙を超えた因果の鎖で結ばれている。我々は運命共同体なのだ」

 自分の運命共同体と名乗る、銀髪の男。

「運命共同体だと……貴様は一体何をしに来た?」
「お前へ啓示を与えに」

 彼は、男の目的を正確に理解しているようだった。

「別次元で余という存在を確立させるために……お前のシステムをより完全な物に近づけてやる」
「クロスゲート・パラダイム・システムをか!?」
「そうだ。このズフィルード……ジュデッカの機体フレームを使えば、時空を超えることが出来る。
 そしてお前の目的を、野望を達成するがいい。その行為は別の宇宙に存在する、お前と余の存在を確立することにな
る……」

 ―――思わぬ協力者の助力もあり、長い時間はかかったがシステムは完成した。
 男は自らの複製を作り、その複製に全てを任せる。

「行け……光の巨人の力を手に入れるために……。
 私の過去を抹消するために……。
 そしてお前は私の身代わりとなって……死ぬのだ」

 仮面の男の眼前に跪(ヒザマズ)いている、その『複製』の顔は―――

(―――ユーゼス?)
 ルイズの使い魔と、全く同じだった。
 だが髪の色が違う。青い。
 ……何より、雰囲気が違う。
 彼女の使い魔は確かに感情が薄いが、それでもあのように虚ろな顔はしていない。
 そう、まるで人形のような……。
254ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2008/12/12(金) 21:33:01 ID:pO3nXjxe
「起きろ、御主人様」
「……んぅ……?」
 ゆさゆさ、と身体を揺らされる感覚。
 ボンヤリと目を開け、目覚めてから最初に見たのは、使い魔の顔だった。
 髪の色は、自分のよく知る銀色である。
「どうした? 私の顔をじっと見て」
「……何でもないわ」
 反射的に『ねえアンタ、自分とソックリな人間に心当たりある?』と尋ねそうになってしまったが、やめた。
 それを聞いてしまうと―――何か、この使い魔との関係が壊れてしまうような気がしたのだ。
「今日は可能な限り早い内に、フーケの隠れ家とやらに向かうぞ」
「分かってるわよ」
 そうして、ユーゼスの手で着替えと洗顔、髪を梳いてもらい、食堂に向かう。
 ……心のどこかに、引っかかりを感じたまま。

 『6人』は、タルを10個ほど積んだ馬車に乗って出発した。
 なお、メンバー構成はルイズ、キュルケ、タバサ、ユーゼス、ミス・ロングビル、そして馬車を操る御者である。
「やっぱり体調が悪いみたいね、ミス・ロングビル……」
 心配そうに呟きながら、タルから離れた位置で眠るミス・ロングビルを見るキュルケ。
 本人曰く『フーケとの戦闘があると思うと、緊張して眠れなかった』らしく寝不足のようで、今はタルから離れた場所で
すうすうと寝息を立てている。
 なお、タルから離れた位置であるのは『仮にもフーケであるかも知れない疑惑がかけられているからな。タルから水を
抜かれでもしたら、その時点でフーケであることが確定するが……。まあ、離しておくに越したことはないだろう』という
ユーゼスの提案による処置だった。
 これにミス・ロングビルは顔をわずかに引きつらせたが、『ま、まあ、それもそうですわね』と納得して、少しだけ悔し
そうに眠りについた。
 そんな様子を見たルイズは無礼な使い魔を叱り、『こんな無礼な平民に無礼なことを言われても大して気に留めないなん
て、ミス・ロングビルは素晴らしい女性だわ』と尊敬の眼差しを向けたりしていた。

(……美しい)
 深い森の中、馬車に揺られながらユーゼスは素直にそう思った。
 屋根のないタイプの馬車であるため、外の景色がよく見える。
 考えてみれば、こうしてゆっくりとハルケギニアの自然を目にするのは初めてだ。
 大気も汚染されておらず、生態系は極めて正常、人工的な科学物質などほとんど存在していない。
 ユーゼスにとって、このハルケギニアはある意味、理想郷である。
 だと言うのに、主人を始めとする少女たちは、『薄暗い』というだけでこの森を気味悪がっている。
(この森の価値が理解出来ないとは、愚かな……)
 『環境汚染』などの概念が存在していない世界なのだから仕方がない、と言えばそれまでだが。
 ―――なお、彼の周囲にいる女性たちもそれぞれ美少女・美女と呼ばれる類の美しさを持っているのだが、彼にとって
『人間の美醜』など大して価値がなく、彼女たちに対しては特に心が湧き立つことなどは無かった。
255デモゼロ:2008/12/12(金) 21:34:28 ID:153d3KnG
支援します
256名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 21:35:32 ID:153d3KnG
名前欄消し忘れた……orz
支援
257ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2008/12/12(金) 21:36:01 ID:pO3nXjxe
 馬車は少し狭い道をやや強引に進み、やがて開けた場所に出る。
 広さは、おおよそ魔法学院の中庭程度。
 その中心に、ミス・ロングビルの証言どおりに廃屋が存在した。
「ミス・ロングビル、起きてください」
 ルイズがミス・ロングビルの肩を叩き、覚醒を促す。
 ミス・ロングビルは『ふあ……ん、ぁ……?』と小さな声を上げて覚醒すると、すぐにブンブンと頭を振って意識をハッ
キリさせる。
 そして廃屋を見て、自分の聞いた情報と照らし合わせた。
「……私の聞いた情報だと、あの中にいるという話です」
 茂みに隠れながら、ひそひそと話すミス・ロングビル。
 ちなみに馬車の手綱をここまで操ってきた平民の御者には『ゴーレムが出たら、馬車を置いてすぐに逃げなさい』と言い
含めてある。
 廃屋には、人のいる気配は全くない。
「……いると思う?」
「さすがにここからじゃ、よく分かんないわね……」
 いないとしたら、これ以上の好機はない。
 いるとしたら、奇襲をかけるしかない。
 ……取りあえず偵察を出して、中にフーケがいれば挑発して外に出し(室内では土ゴーレムは作れない)、その瞬間に
魔法で集中攻撃、これを仕留めるという案が出された。
 偵察役を兼ねた囮役は、ユーゼスである。
「…………まあ、貴族に囮をさせるわけにも行かないのだろうな」
 仕方がないので、剣を抜いてルーンを発動させる。
 ユーゼスは身体能力の強化を確認すると、慎重に廃屋へと近付いていく。
(……いない、のか?)
 気配を読むような技能は持ち合わせていないので、窓から直接覗いて様子を見る。
 小屋の中は、無人。
 テーブルの上に酒ビンが転がっている他には、薪が積み上げられている程度で、他に目立った点は―――
(―――いや、アレか?)
 その薪の隣に、少し大きめの箱がある。あの中に『あの鞭』があると見るべきだろうか。
 ……取りあえず、誰もいないことをボディランゲージで伝えて他の面々を呼ぶ。
 4人は警戒しながら近付いてきて、ユーゼスと合流した。
 タバサがドアに向かって『ディテクト・マジック』をかけて、ドアに罠がかけられていないか確認する。
「罠はないみたい」
 中に入っていくタバサ。それに続いて、キュルケとユーゼスも中に入った。ルイズとミス・ロングビルは外で見張りを
担当するらしい。
 そして、3人で箱の中身を確認する。
「……やはりな」
 ユーゼスがポツリと呟く。
「『やはりな』、って……そう言えばこの鞭の名前を聞いたときも反応してたわね、あなた。コレのことを知ってるの?
 どうやって使うのか、とか」
「そうだ。これはマジックアイテムなどでは―――」
 キュルケの質問に答えようとしたその時、
「キャァアアアアアア!!」
「き、きゃあ〜!」
 外で見張りをしていたルイズの甲高い悲鳴と、ミス・ロングビルの少しぎこちない悲鳴が響いた。
258ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2008/12/12(金) 21:39:01 ID:pO3nXjxe
 バコォーーーーーン!!
 3人が悲鳴を聞いて振り向いた瞬間、廃屋の屋根が盛大に吹き飛ぶ。
 見晴らしが良くなったため、屋根を吹き飛ばした犯人の姿もまたよく見ることが出来た。
「ゴーレム!?」
「……!」
 キュルケが叫び、タバサが身構える。
 それは、確かにゴーレムだった。
 大きさは約25メイルほど。
 その身体を構成する材質は、
「て、鉄で出来てるじゃないの!? 鉄の場合は10メイル前後じゃなかったの!?」
「……ひとまず退却」
「賛成だ」
 鉄で出来た巨大ゴーレムから逃れるため、全速力で駆け出す3人。
 少し離れた位置から鉄のゴーレムを見ていたユーゼスは、逃げ出しながらも弱点と思しき関節部を真っ先に注視していた。
「……む?」
 腕を振り上げる鉄ゴーレムの肘から、何か粉のような物がパラパラと落ちているのが見える。
「…………ふむ」
 そしてルイズとミス・ロングビルの姿を発見し、とにかく2人と再び合流した。
 見ると、ルイズは震えながらもゴーレムをじっと見ており、ミス・ロングビルはしっかりと杖を手に握ってはいたが身体
がすくんで動けないようである。
「ど、どうすんのよ、どうすんのよ!? 鉄であのサイズなんて、完全に想定外じゃない!! これじゃいくら水があって
も効果ないし、どうしろってのよ!!?」
「落ち着いて」
 振るわれるゴーレムの腕や足を避けつつ、ヒステリックに叫ぶキュルケをタバサがいさめる。
「……や、やっぱり逃げますか?」
「逃げるにしても動きを止めてからだな。さて、どうしたものか……。……御主人様、何をするつもりだ?」
 ミス・ロングビルもまた落ち着かない様子であり、ユーゼスも少し焦り始めていた。しかしルイズが杖を振り上げる様子
を目にして、思わず声をかける。
「アイツを……、あのゴーレムを倒してフーケを捕まえれば、誰ももうわたしを『ゼロ』なんて呼んだりは……!!」
(……いかんな)
 切羽詰まったと言うか、追い詰められた人間の目をしている。
「冷静になれ、御主人様。倒すにしても、一度は引いて―――」
「うるさいわね!! あんたの考えた策も、結局は役立たずだったんだから、そこで黙って見てなさい!!」
 ユーゼスの静止も聞かず、ルイズは魔法を詠唱し、杖を振る。
 ……鉄ゴーレムの胸のあたりで失敗による爆発が起こるが、大してダメージは与えられないようだった。
 しかし、
 ピシ……ッ
 ルイズが起こした爆発点を中心に小さく、しかしハッキリと鉄の身体にヒビが入る。
「……………」
 それを見て、ユーゼスは自分の予測を裏付けるための行動を起こす決意をした。
259名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 21:39:11 ID:EieGrcVk
支援
260名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 21:40:10 ID:153d3KnG
支援です
261ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2008/12/12(金) 21:42:01 ID:pO3nXjxe
「……足の関節を狙う」
 タバサが早口で詠唱を開始すると、馬車に積んであったタルのフタを吹き飛ばして水が宙に浮く。
 そして、水が氷へと変わり始め、
「待て、ミス・タバサ」
 本格的に攻撃に移ろうとした手前で、ユーゼスに止められた。
「……鉄の場合は関節を狙え、と言ったのはあなたのはず」
「少し、確認したいことがある。……ミス・ツェルプストー」
「何よ!?」
「この鞭の『使い方』をお見せしよう」
「……え?」
 言って、鞭の柄の部分を右手で掴む。
 左手のルーンが反応し、鞭の『使い方』が頭に流れ込んで、身体がそれを再現しようとする。
「……………」
 集中し、狙いを定める。
 目標はルイズがつけたヒビ。
 目的は倒すことではなく、あのゴーレムの中身を確認すること。
 振るうイメージは、既に頭の中にある。
 何しろ、自分で受けたことのある攻撃なのだから。
「はあっ!」
 掛け声と共に高く飛び上がり、鞭を振るう。
 高速で繰り出されたそれは、一度、二度、三度、四度と鉄の身体にぶつかって、小気味よくリズムを奏でた。
「……っ」
 着地するユーゼス。
 ……強く鞭を振るった腕が痛む。やはり、自分には肉体を使った直接戦闘は向いていない。
 それ以前に、この鞭は神技級の技術を持つ鍛え抜かれた達人が、更に強化服を身にまとって使う武器である。
 ルーンで多少強化されているとは言え、ユーゼス・ゴッツォ程度に扱いきれる物ではないのだ。
 ともかく、攻撃の成果を確かめるべく鉄ゴーレムを確認する。
「……あ、ゴーレムの鉄が、はがれて―――ええ!?」
 『本来の持ち主』が振るえば、鋼鉄ですらコマ切れに出来るような武器である。その効果自体にユーゼスは驚かない。
 ルイズたちも、『英雄が使ったマジックアイテム』という認識だったので『本来の力が発揮されれば、こんな威力がある
のか』程度の認識でしかない。
 驚いたのは、鉄ゴーレムの『中身』を目撃したためである。
「つ、土?」
 そう、鉄ゴーレムの中身は、土で満たされていた。
 ―――これぞ怪盗『土くれ』のフーケが夜も寝ないで、ついさっきまで寝てまでして考えた策。鎧ゴーレムである。
 水で濡らさないためには、水を弾く素材で包めば良い。
 その素材が頑丈ならば、なおのこと良い。
 ……この解決策のヒントを得たのは、徹夜明けで朝食に出されたサンドイッチからであった。
 サンドイッチを掴みながら、いきなり『これだー!!』と叫んだので、食堂にいた周囲の人間たちから妙な視線で見られ
るハメになったが、それはこの際どうでも良い。
 30メイルのゴーレムを作るだけで精神力はほぼ使い切ってしまうので、サイズは25メイル程度にとどめ、残った精神力を
使ってゴーレムを鉄でコーティングする。
 さすがに関節部分にはスキマが出来てしまうため、そこから漏れた土でユーゼスに正体を看破されてしまったが……。
 ともあれ『耐水』と『耐久』を両立させた、なかなかの出来だとフーケは自負していた。
(……しかし、これじゃ『土くれ』じゃなくて『鎧』のフーケになっちまうねぇ)
 慌てふためく魔法学院の生徒たちを見ながら、フーケは『改名した方が良いか』などと心の中でこっそり苦笑する。
262名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 21:44:21 ID:i3JTJy6K
支援
263ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2008/12/12(金) 21:45:14 ID:pO3nXjxe
 しかし。
「……予想通りだな。解決策は見えた」
「えっ?」
 右腕を左手で押さえながらも平然と言い放つユーゼスに、ミス・ロングビルは困惑の声を出してしまう。
 あのマジックアイテムの鞭を使って『鎧』を剥がしていくのか、と考えた。しかし、仮に昨晩の作戦通りに片足だけに
攻撃を集中するにしても、そんなことをチマチマやっていては時間がいくらあっても足りはしまい。
 それに、腕を抑えている様子からして、あの鞭には副作用があるらしい。
(……あまり使い勝手の良い武器じゃない、か)
 あわよくば自分が武器として使えれば……とも思ったが、どうやらそれはやめておいた方が良さそうだ。
「ど、どうすると言うのですか?」
 見極めも終わったので、そろそろ引き上げ時だろうか―――とも思ったが、あのゴーレムを倒す策とやらには興味があ
る。
 ユーゼスは鎧ゴーレムの踏み付けや、地面を叩く掌から逃げ続けるキュルケに向かって、指示を飛ばし始めた。
 ……なぜ、自分とミス・ロングビルがいるこの地点に攻撃してこないのか不思議ではあったが、攻撃がないのならば安心
して指示も出せるというものである。
「ミス・ツェルプストー! 左右どちらでも構わん、足に火炎放射を行え!」
 少し離れた位置にいるので、叫んで指示を行う。
「え!?」
「逃げたいのならば、私の指示に従うことだ。失敗したら、私をお前の炎で焼いても良い!」
 ……失敗したらどの道、皆殺しにされるじゃないかとも思ったが、何もしないよりは確かにマシかもしれない。
「ったく、何するつもりか知らないけど、失敗なんかしたらホントにこのゴーレムがやるより先にアンタを焼いてやるわ
よ!!?」
 言いつつ、キュルケは全力で鎧ゴーレムの鉄の左足に向かって炎をぶつける。
 動きながら放つ魔法のため今ひとつ威力が乗らないが、それでもジリジリと鉄が熱されていく。
「……まさか炎の熱で、鉄を溶かすつもりですか?」
「さすがにそこまで悠長ではない」
 トライアングルクラスの火の使い手と言えど、鉄を融解させるまで熱するには多大な時間と精神力が必要になる。
 随分と単純な手を使うものだ、と思ったミス・ロングビルだったが、どうやらこの平民の策はそれとは異なるらしい。
「ちょ、ちょっと、いつまで炙(アブ)ってればいいのよ!?」
 悲鳴のような抗議を上げるキュルケの言葉を聞き流し、ユーゼスは熱される箇所に神経を注いでいた。
 そして、その部分が炎の熱によって赤く色づき始めた時、
「火炎放射はそこまでだ! ……ミス・タバサ、ミス・ツェルプストーが熱した箇所に『アイス・ストーム』を使え!
タルの水は一切使うな!」
 炎が止まり、更にユーゼスが次の指示を飛ばす。
 タバサは一瞬戸惑ったが、昨夜の作戦会議の内容を思い出して、この平民をひとまず信用してみることにした。
「……ラグーズ・ウォータル・デル・ウィンデ!」
 赤熱した箇所に、氷の嵐がぶつかる。
 ジュウジュウと蒸発していく氷。
「―――あの、せっかく熱した箇所を、冷やしてどうするんです?」
「それが目的だ」
「?」
 ミス・ロングビルの質問に答えるユーゼスだったが、質問した彼女はその『回答の意図』の理解が出来ていない。
264名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 21:46:52 ID:153d3KnG
金属疲労という現象は果たして認識されているか否か支援
265ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2008/12/12(金) 21:48:15 ID:pO3nXjxe
 ピ……キッ
 何かにヒビが入る音が、小さく―――しかし確かに聞こえた。
「よし、アイス・ストームはそこまでで良い! ……御主人様!」
「何よ!?」
 ユーゼスがキュルケとタバサに出す指示など気にも留めず、ルイズは鎧ゴーレムに攻撃を放ち続けていた。
 しかしその爆発は、鎧ゴーレムの鉄の身体にわずかなヒビを入れるだけで、致命傷には遠い。
「ゴーレムの左足に『ファイヤーボール』を当てられるか!?」
「なっ……御主人様に命令するつもりなの、アンタ!? 使い魔の分際で!!」
 自分の従僕たる存在であるはずのユーゼスの指示通りに動くのが不服なのか、ルイズはあからさまに不満な声を出す。
 キュルケがそんなルイズに『取りあえずでいいから、今は指示に従えってのよ!』と叫ぼうとする。
 しかし、それより先にユーゼスが言葉を発した。
「……そうか、つまり『当てられない』のだな。―――まったく、『貴様』になど期待した私が馬鹿だった」
「な……!?」
 舌打ちしながら、痛んでいない左手で鞭を握る。
「所詮、ゼロのルイズは『ゼロ』でしかなかったか」
「な、な、なななな……!」
 やれやれ、とこれ見よがしに溜息を吐きながら、標的に得物をぶつけるために構える。
「まあ良い。『貴様』はそこで―――」
 ドガァアアアアーーーーーーーーーーンンン!!!!
 セリフの途中で、鎧ゴーレムの左足が盛大な衝撃に見舞われた。
 ふと視線をその爆発の『発生源』に向けると、ユーゼスの御主人様はプルプルと声と身体を震わせながら、彼を睨みつけ
ている。
「ご、ごご、御主人様に向かって、御主人様に向かって、その口の利き方!!」
 ルイズの顔は紅潮し、目は血走り、口はわななき、歯は食いしばられていた。
「こここ、この使い魔ったら、ごごご、御主人様に、ななな、なんてことを言うのかしらぁ〜〜!!?」
 しまった、とユーゼスは後悔した。
「そ、そこを動くんじゃないわよ、いいわね!!?」
「……待て、御主人様。今の言動は、『お前』の行動を促すためのものであって、決して本心から言ったわけでは―――」
 後ずさりながら、鎧ゴーレムの左足を確認するユーゼス。
 ―――その部分を覆っていた鉄は、ほとんどバラバラに砕けている。
 自分の目論見が成功したことを『当然』と思いつつも、しかし眼前に迫る新たな危機に対して、対策を立てねばならな
い。
「あ、あの、どうしてゴーレムの鉄が……!?」
 ミス・ロングビルが驚いた様子で尋ねてくるが、それに答える余裕もない。
「……ミス・タバサ、私はこちらの方向に逃げる。事が済んだら使い魔で拾ってくれ」
 こくり、と頷くタバサ。
 そして次の瞬間、
「ユゥゥゥゥゥウウウウウウウウゼェェエエエエス!!!」
 主人の絶叫を合図に、使い魔は全速力で逃げ出した。
266名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 21:50:42 ID:hU33KRhn
支援
267ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2008/12/12(金) 21:51:59 ID:pO3nXjxe
「……まったく、わざわざ挑発なんかしないで、最初から嘆願なり懇願なり切実な様子で訴えるなり、色々とやりようは
あるでしょう!?」
「んー、でもルイズに対しては、アレが一番効果があると思うけど?」
 タバサの使い魔である風竜シルフィードの背の上で、ルイズはプンスカ怒りながら使い魔の言動を非難する。
 ルイズの文句を聞くキュルケは、からかいの口調でルイズに応じていた。

 ―――あの後、タバサたちは作戦通りにタルの水を操作して鎧ゴーレムの足を泥化させ、倒れている隙に逃げ出した。
 なお、ドカンドカンと爆発が移動していたので、ルイズとユーゼスを発見するのは非常に容易であった。
「……悪かったとは思うが、それにしてもやり過ぎだ、御主人様」
 ユーゼスは倒れ伏しつつタバサの『治癒』を受けながら、ボロボロの身体の状態を確認していた。
 タバサは風系統のメイジなので、水系統の『治癒』は本領ではない。
 学院に戻ったら、水の秘薬なり本職の水メイジに頼むなりしなければならないな―――などとユーゼスが考えていると、
「あの、ユーゼスさん?」
 ミス・ロングビルが、おずおずと進み出てきた。
「……ミス・ロングビル、こんなヤツに『さん』なんて付けなくていいです」
「いえ、あの窮地から脱出が出来たのは、この方のおかげですから」
 『なんて謙虚な人なんだろう』と、あらためて尊敬の念を抱くルイズだったが、ミス・ロングビルは興味津々な様子で
先程聞きそびれたことを質問する。
「……あのゴーレムの鉄を砕いたのは、どのような魔法なのです? もしかして、ミス・ヴァリエールの魔法が……?」
 ミス・ロングビルの言葉にピク、と反応するルイズ。
 もしかしたら、この使い魔の口から『御主人様の魔法は凄い』などというセリフが聞けるのでは―――と期待したが、
「いや、御主人様の魔法自体は、ただ単に爆発を起こすだけだ」
「……………」
 その期待は、見事に裏切られた。
「そうか、物質の温度変化に関しての研究も行われていないのだな、ここでは」
「「「「?」」」」
 疑問符を浮かべる、4人の女性たち。
「……金属に限らず、全ての固形物質に共通していることだが、固形物質は『急激な温度の変化』に晒されると脆くなる」
 横になりながらなのでサマになりにくいが、ユーゼスは淡々と説明する。
「あのゴーレムの場合は赤熱化するほど熱した直後に、氷点下程度にまで温度を下げたからな。軽くヒビも入っていたよう
だし、御主人様の爆発で該当箇所の周辺がバラバラになるのは当然だ」
「……あの、ゴメン、よく分かんないんだけど……」
 ちんぷんかんぷん、という言葉がまるで顔に書いてあるようなキュルケ。見ると、ルイズとミス・ロングビルも似たよう
な表情だった。
 唯一タバサだけは、何かを考え込んでいる様子だったが。
「―――特に冷たくもない水に氷を入れると、その氷にヒビが入る場合があるだろう。あれと同じ理屈だ」
「え、そうなの!?」
「知りませんでした……」
「凄い発見だわ……」
 こんな程度で感心されても困るのだが、とユーゼスが辟易する。
 ユーゼスがいた世界では、子供でも知っている理屈である。
268名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 21:54:15 ID:hU33KRhn
スレイヤーズだと「熱した鍋に水を掛けると割れちゃうでしょ?」だったな支援
269名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 21:55:21 ID:VGI+R40E
支援
270ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2008/12/12(金) 21:55:24 ID:pO3nXjxe
「……それにしても悔しいわね。ゴーレムは倒した―――ってほどでもないけど、とにかく攻略は出来たのに、肝心のフー
ケを捕まえることが出来なかったわ」
「まあ、『ズバットの鞭』も取り返せたし、良いんじゃないの?」
 不満そうに言うルイズに、キュルケが結果オーライじゃないかと宥(ナダ)めかける。
 しかし、そのルイズの言葉にミス・ロングビルが、
「……ええ、本当に…………悔しいですわねぇ、ええ。ゴーレムは、倒され……倒したのに」
 と賛同した。
 ギリギリと歯を食いしばり、手をキツく握っているところから見て、どうやら本心から悔しがっているようだ。
「そうですわよね、ミス・ロングビル! ゴーレムはわたしたちでも工夫すれば何とか出来るくらいの、あんまり大した
ことないレベルでしたけど、やっぱり逃げられたのは悔しいですわよね!」
「…………まったくです、ミス・ヴァリエール」
 意気投合する二人。
 しかし笑顔が引きつっている様子から見て、ミス・ロングビルは本当に心の底から悔しがっていることが分かる。
 そんなにフーケを捕まえることに執念を燃やしていたのか、と思ったが、考えてみれば真っ先にフーケの隠れ家を見つけ
たのもこの女性だ。
 ミス・ロングビルとフーケの間には、何か浅からぬ因縁があるのかも知れないが―――いちいち追求して、個人の事情に
首を突っ込む気はユーゼスやタバサにはなく、キュルケも『迂闊に触れて良いことじゃないっぽいわね』と遠慮する。
 ……なお、学院に帰還する途中で『ズバットの鞭』が正真正銘、マジックアイテムでも何でもない単なる武器であること
を知ってミス・ロングビルがガックリと肩を落とし、更に、ユーゼスがシルフィードに酔って他の面々に呆れられたことを
追記しておく。

 学院長室に戻り、5人の報告を受けたオールド・オスマンは『よかったよかった』、と喜んだ。
「……いや、友が去り際に残した物が戻ってきたことも嬉しいが、君たちが無事に戻ってきてくれたことが、何より嬉し
い。特にミス・ロングビルは、フーケかも知れぬとの疑いをかけて、重ね重ね申し訳ない」
「いえ、気にしておりませんので」
 にっこりと微笑むミス・ロングビル。どこか疲れた様子なのは、やはり体調が悪いのだろうか。
「さてと、『ズバットの鞭』も無事に戻ってきたことじゃし、一件落着なんじゃが……」
 オスマンは取り返された鞭を手に取りつつルイズたち3人の生徒を見て、申し訳なさそうに言葉を紡いだ。
「……これでフーケを捕まえた、ともなれば君たちに『シュヴァリエ』の爵位申請なり、叙勲の申請なりをしてるんじゃ
が、いかんせん『宝物を取り返した』だけでは弱くてのぉ……」
 それを聞いて、キュルケとタバサは落胆した表情を見せたが、ルイズだけは違った。
「要りません」
「ルイズ?」
 名誉や勲章は、『ゼロ』と呼ばれ続けたルイズにとって喉から手が出るほど欲しいはずなのに―――と、キュルケは困惑
する。
「だって、今回フーケのゴーレムを何とか出来たのは、全部わたしの使い魔の発想があってこそです。
 ……わたしは、『わたし自身』が掴んだ栄光以外は、要りませんわ」
 フン、と軽くユーゼスを睨むルイズ。ユーゼスは相変わらずの無表情である。
 オスマンはそんな主人と使い魔の様子を見て、どことなく嬉しそうに笑みを浮かべた。
「ふぅむ、ただ単にプライドが高いだけと思っておったが……」
 誇り高いと言うか、何と言うか―――いや、要するに、やはりただプライドが高いだけだろうか?
 少なくとも、単純に『お前の手柄は私の手柄、お前のミスはお前のミス』とする気はないようである。
「ふむ、何にせよ期待しとるよ、ミス・ヴァリエール」
「はい」
 話が一段落した所で、ポンポン、と手を打つオスマン。
「さてと、今日の夜は『フリッグの舞踏会』じゃ。このとおり『ズバットの鞭』も戻ったし、予定通りに執り行う」
「そうでしたわ! フーケの騒ぎで忘れておりました!」
 言われて、キュルケが嬉しそうに思い出す。
「今日の舞踏会の主役は君たちじゃ、用意をしてきたまえ。せいぜい着飾るのじゃぞ」
「はい!」
271名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 21:56:48 ID:hU33KRhn
虚弱体質の使い魔支援
272名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 21:57:12 ID:yMoA27DL
>189
「魔法薬売りのマレア」の魔法薬師マレアと材料探しのミソギ
273名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 21:58:03 ID:153d3KnG
支援です!
274ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2008/12/12(金) 21:58:33 ID:pO3nXjxe
 そうして、ルイズとキュルケとタバサは礼をした後、学院長室から退室しようとする。
「……………」
「……どうしたの?」
 しかしユーゼスが退室せずに残っていたので、ルイズが不満そうに声をかけた。
「オールド・オスマン氏と話したいことがあるのでな。……先に行っていてくれ、御主人様」
「あ、うん……」
 少し心配そうな様子を覗かせたが、頷いて完全に退室するルイズ。
 そして、ユーゼスは真正面からオスマンと対峙する。
「さて、何か私に聞きたいことがおありのようじゃな」
「……確かに、色々とあるが」
 敬語を全く使わない口調を気にも留めず、オスマンは微笑みながら先を促した。
「言ってごらんなさい、出来るだけ力になろう。君に爵位や勲章を授けることは出来んが、私の生徒を助けてくれたせめて
ものお礼じゃ」
 そしてオスマンは、コルベールとミス・ロングビルを退室させる。
 二人は不満そうだったが、仮にも魔法学院の最高権力者である学院長の命令には逆らえず、退室することとなった。
 そして、ユーゼスが口を開く。
「……2つほど頼みがあって、1つだけ聞きたいことがある」
「ふむ、頼みの方から聞こうか」
「図書館への入館許可と、空き部屋が1つ欲しい」
「?」
 その要求に、疑問符を浮かべるオスマン。
「君はどうやら魔法の研究に熱心なようじゃから、図書館への入館許可はともかくとして―――『空き部屋』とは何じゃ?」
「研究室として使う」
「研究室じゃと?」
「今は御主人様の部屋を借りているがな、このままのペースでは近い内に確実に手狭になる。
 ……今の内に、それなりのスペースを確保しておく必要があるのでな」
 オスマンは、ほお、と感心してユーゼスを見た。
「なるほど、なるほど。……それでは早速、図書館への入館許可証を書くとしようか。
 それと空き部屋じゃが、私の記憶が確かならちょうどミス・ヴァリエールの部屋が空いていたはずじゃ」
「そうなのか?」
「……前の入居者が『いつ爆発が起こるのか不安なので、部屋を変えてください』と泣きながら訴えるものでなぁ……」
 無理もない。
 眠っている間にいきなり爆発で吹き飛ばされる恐怖を考えれば、安心した睡眠どころか生きた心地すらしないだろう。
 真向かいの部屋にいるキュルケは、そういう意味ではかなり肝が据わっていると言える。
「では、その部屋に必要な物はあるかね?」
「普通サイズの机と、広い机、あとは大きめの本棚を入れられるだけ入れて欲しい」
 普通サイズの机は部屋の奥に入れてレポートなどの執筆用に、広い机は部屋の中央に置いて実験用に、あとは部屋を囲む
ように、本棚を入れられるだけ入れる予定である。
「うむ、手配しよう」
 これで、ここに残った理由の半分は達成した。
 ―――肝心なのは、残りの半分である。
 入館許可証を書くオスマンに向かって、ユーゼスは切り出した。
「……さて、本題だが」
「1つの『聞きたいこと』とやらじゃな」
 許可証にサインを書き、オスマンは傍らに置いていた鞭を手に取る。
「これのことじゃろう?」
「ああ。……単刀直入に聞くが、お前はその鞭の持ち主とどのような関係だ?」
275名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 22:00:03 ID:tSQYmE6m
今夜も投下ラッシュだぜ支援
276名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 22:01:11 ID:ehEnJ7lb
>それと空き部屋じゃが、私の記憶が確かならちょうどミス・ヴァリエールの部屋が空いていたはずじゃ
これは隣の部屋か何かのミスですかな、支援
277名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 22:01:31 ID:WZKZwSwb
支援
278ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2008/12/12(金) 22:01:36 ID:pO3nXjxe
 オスマンは机から水ギセルを取り出すと、それを口にくわえる。
 そして、目を細めて昔を懐かしみながら語り始めた。
「あれはもう30年―――いや、正確に言えば33年も前になるかの……。森を散策していた私は、ワイバーンに襲われてな。
どうにも苦戦しておったところに彼が……ケンが現れたのじゃ」
「ケン……早川健か」
 その名を聞いたオスマンが、遠くを見るような目になった。
「そう、ケン・ハヤカワ。
 常日頃から『自分は別の世界から来た』、と言っていてな。事実、我らの知らない知識を持ち、我らの常識にいちいち
感心したり驚いたり、憤慨したりしておった。
 ……私はその時には既に老人と呼ばれる年じゃったが、それでも若い頃にはご婦人方の黄色い声援や、熱いまなざしを
辟易するほどに浴びておっての。ケンはそんな昔の私に、勝るとも劣らぬほどの色男じゃった……」
「……………」
「……君、今『ならば、この世界にとってハヤカワの容姿はあまり大したことなかったんだな』とか思ったじゃろ?」
「いや、全く。それより、早く続きを頼む」
「そうかぁ? ……まあいいわい」
 話が脱線しそうになったが、即座に軌道修正を入れる。
「ともかく、そんなケンと私、そして君の主人であるミス・ヴァリエールの母君である『烈風』カリン殿の三人は、一時期
行動を共にしていたことがあるんじゃよ」
「…ほう」
 自分の主人の母親と、かつての自分の敵が共にいたとは。
 ……これも、因果律の成せる業だろうか。
「彼は魔法が使えぬ平民でありながら―――いや『魔法が使えぬ』という点を除けば、あらゆる面で完璧、そして奔放な男
じゃった」
 年齢不詳の老人は、口から煙を吐き出しつつもケラケラと笑いだす。
「何せその頃マンティコア隊の隊長であったカリン殿より、見事にマンティコアを乗りこなしておったからの!
 その他にも様々な幻獣を自在に乗りこなし、剣術、投げナイフ、笛の演奏、料理、釣り、呑み比べ……とにかくトリステ
インで一番と言われておった男たちを『しかしお前さんニッポンじゃあ二番目だ』とか言ってアッサリ打ち破っとった。
 ま、唯一の欠点は、歌が下手なことじゃったが」
(……相変わらずのようだな)
 世界が変わっても、やはり早川健は早川健のようである。
「それと忘れてはならんのが、三人でトリステイン中の悪徳貴族やら、人身売買などを扱う犯罪組織やら、猛り狂った幻獣
やらを相手にした八面六臂の大活躍でな! 特にケンとカリン殿とのコンビは無敵じゃった!」
 やけに嬉しそうに話すオスマン。
「て言うかな、カリン殿はもう、絶対ケンに惚れてたな。口にも顔にも出さんかったが、態度に思いっきり出ておったし。
今のヴァリエール公爵なんかはその様子を見て歯ぎしりしておったような気もするが、それはどうでもええか」
 言葉に合わせて、くわえた水ギセルがカチャカチャと音を立てる。
「……で、その功績が認められてケンにシュヴァリエの称号を与えよう、って話が持ち上がったんじゃが、ケンの奴は
『俺は行かなきゃならない。……友の仇を討つために』と言って去ろうとしてな」
 と、ここでオスマンの表情に、苛立ちが現れ始めた。
「……それで……あの馬鹿め! 別れ際にカリン殿とお互いの帽子を交換して『幸せになれよ、カリーヌ』ぅ? まず
間違いなく彼女の気持ちに気付いておったくせに、なんじゃあの態度!!」
「……………」
 ……また話が妙な方向に脱線しつつある。
「あー、思い出したら腹が立ってきたわい! 大体、カリン殿もカリン殿じゃっつーの!
 メチャクチャ無理して笑顔作って『…貴方のご武運を祈ります』って、ケンの姿が見えなくなった後で手渡された帽子
をギュッと抱きしめるし!!
 その後二日くらい続けて目を真っ赤に腫らしておきながら『何も問題ありません』とか言うし!!」
 オスマンは、回想しつつも興奮して語り続ける。
「……カリン殿が隊長であった時のマンティコア隊のモットーは『鉄の規律』じゃったらしいが、アレは絶対にケンとの
アレコレが関係しとると思うよ、私は」
(―――そんな思い出話は、どうでもいいのだが)
279名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 22:03:19 ID:ehQTsOPj
流石日本一の男w支援
280名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 22:03:35 ID:hU33KRhn
年寄りの昔話くらい大目にみたれよユーゼス支援
281名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 22:03:54 ID:rLJKZSfj
早川健ならやりかねんwww
支援
282名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 22:04:32 ID:153d3KnG
支援
カリン様乙女
283ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2008/12/12(金) 22:04:38 ID:pO3nXjxe
「まあそんな感じでじゃな、3ヶ月に渡る恋と冒険と浪漫の末、風のように現れた男は、嵐のように戦って、朝日と共に去っ
ていったんじゃよ」
 ぜえぜえ、と息を切らしながら、かつてオスマンが体験した物語は終了する。
「……早川健が去っていった方向は?」
「東じゃ。ロバ・アル・カリイレに向かえば、あるいは自分が元いた世界に戻れるかも知れぬ、と言っていたの」
「………ふむ」
 東には確かにゲートの反応があったが、確かにあの男なら自力で時空間を突破しそうで、少し怖い。
 ともあれ、この世界にかつて快傑ズバットが存在したのは間違いないようだ。
「……私からも質問して良いかね?」
「答えられることならばな」
「まあ、無理に答えんでも構わんが……。
 ……君はケンとどのような関係なのだね? 君がケンと同じ世界からやって来たということは容易に想像がつくが、どう
も君の話し振りからするに、彼と知り合いのようじゃし」
 どう答えたものか、とユーゼスは考える。
 まさか『敵同士だった』などと正直に答えるわけにもいかないだろう。
 ならば、こう答えるしかない。
「……そうだな、知人だよ」
 それを聞いたオスマンは水ギセルをいじりながら、
「『知人』、か……。……実に便利な表現じゃの?」
 わざわざ声に出してユーゼスの回答を吟味した。
 ……そのまましばらく、ユーゼスとオスマンの視線が交錯する。
 そして、
「ま、いいわい」
 そんなやり取りを切り上げたのもまた、オスマンだった。
「それと、君の左手のこのルーンじゃが」
「知っているのか?」
「…………そうじゃな、話しておいた方が良いじゃろう」
 オスマンは少しばかり悩んだようだったが、口を開く。
「それは『ガンダールヴ』……伝説の使い魔の印じゃよ」
「伝説?」
「そうじゃ。その伝説の使い魔は、ありとあらゆる『武器』を使いこなしたと言われておる。君がケン以外に使えぬはず
の、あの鞭を使えたのも、そのおかげじゃろう」
 そのルーンの効果は知っているし、体験もしていた。しかし。
(『伝説』だと? ……過去に同じルーンが存在していたと言うのか?)
 新たな疑問が沸き起こる。
 危うく思考がグルグルと回転しそうになるが、ここは質問するのが先だ。
「なぜ、そのような『伝説』が私の左手に?」
「分からん」
 ユーゼスは溜息を吐いた。
「すまんの。ただ、もしかしたら君がこの世界にやって来たのと、何か関係があるのかも知れん」
「……その可能性は私も考えているが、何のために私がこのハルケギニアに呼ばれたのか……それが最大の疑問点だ」
「私も調べてみよう。しかし……」
「しかし、何だ?」
「何も分からなくても、恨まんでくれよ。なあに、こっちの世界も住めば都じゃ、嫁さんだって探してやるわい」
 再び溜息を吐くユーゼス。正直言って、結婚などに興味はない。
「……最後に、改めて礼を言わせてくれ。よくぞ、我が友の武器を取り返してくれた。
 ―――そうじゃ、この鞭は君が使うと良い」
「良いのか?」
「あのまま宝物庫の中で腐らせておくよりは、この方が有意義じゃろう」
 そうして、鞭を受け取る。
「ああ、それと王室の魔法研究所―――アカデミーの連中には気をつけるんじゃぞ? 君の知識や、『ガンダールヴ』と
しての能力を狙ってくるやも知れんのでな」
「……覚えておこう」
 なお、アカデミーの主席研究員と繋がりがあることは、確実に話がややこしくなることが予測されたので黙っていた。
284名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 22:07:43 ID:hU33KRhn
でも歌は下手なんだよな支援
285ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2008/12/12(金) 22:07:48 ID:pO3nXjxe
 その日の夜、ミス・ロングビルは一人でアルヴィーズの食堂の下の階に座っていた。
 上の階では今まさにフリッグの舞踏会の真っ最中であり、彼女も少なからず男性からの誘いは受けていたのだが、とても
舞踏会を楽しむ気にはなれなかったのだ。
「……はあ」
 自分がこの魔法学院に来た『目的』は……まあ、取りあえずではあるが、果たしたと言えるだろう。
 問題は、今後についてである。
 仮に『もう用済みだ』とばかりに魔法学院を去ったとして、その後はどうしようか。
 『本業』に専念するのも良いのだが、今だ完全に自分が『土くれ』のフーケであるという疑念が完全に消えたわけでもな
い。ゴーレムが破られ、秘宝が取り返されたこのタイミングで学院から去ったら、『やはりミス・ロングビルがフーケだっ
たのか』という結論に達しかねないのである。
 ……自分の顔は、生徒や教師などにバッチリと記憶されている。
 つまり、その『疑惑』が元で、これからはおちおち昼間にも出歩けない生活が待っている可能性がある。
「……う〜ん」
 そして―――これが、最も重要なことなのだが。
「安定した収入があるってのは、魅力的だし……」
 これまで彼女は恥を忍んで居酒屋で給仕をやったり、『一山当てるための無茶』を繰り返したりと、かなり不安定な生活
を過ごしてきた。
 だが今はどうだろう。プライドが酷く傷つけられるわけでもなく(今日は『とある事情』からプライドを酷く傷つけられ
はしたが)、特に危ない橋を渡るわけでもなく、常に気を張っている必要もなく。
 雇い主のエロジジイによるセクハラが悩みの種と言えるが、あしらい方さえ覚えれば何とかなるレベルだ。
 それに何より。
「これであの子に胸を張って仕事のことが言えるし……」
 ミス・ロングビルは故郷の国の小さな村に、仕送りを送り続けている。
 これまで顔を見せるたび、妹がわりの少女から『ねえ、姉さんはどんな仕事をしてるの?』とさんざん聞かれてきたの
だ。
 今までは『秘密』とか『内緒』とかの言葉でお茶を濁してきたが、これでハッキリと自分の職業を言えるようになるでは
ないか。
「……決めちまうかねえ」
 素の喋り方で、ポツリと呟くミス・ロングビルであった。

「……………」
 ミス・ロングビルから少々離れた席に座るユーゼス。
 さすがに貴族の舞踏会に、平民が顔を出すわけには行くまい―――という理由で、下の階で待機しているのである。
「あのメイドから聞いた『銀の方舟』、早川健、そしてこの私……」
 オスマンから託された鞭をテーブルの上に置き、ユーゼスは思案にふける。
「……偶然にしては、あまりにも出来すぎている。やはり、この世界には何か特別なものがあるのだろうか……」
 更に、自分に刻まれたこのルーン。
 ガンダールヴという名前らしいが、オスマンも詳細は知らないようだ。……と言うより、意図的に教えなかったようにも
見える。
 『使い魔』ということは、それを使役したメイジがいたはずだが、それについての情報が提供されていない。さすがに
使い魔の存在だけが一人歩きしてメイジの情報が無い、などという事態にはならないだろう。
 つまり、少なくとも今の時点で知られては困る情報が、このガンダールヴのルーンには込められているのだ。
「……………」
 遠からず、アカデミーのエレオノールもこのガンダールヴに行き着くだろう。あわよくば、そこから情報を得られるかも
知れないが……。
「……自分で調べた方が早いな」
 一人で結論づけて、席から立ち上がる。
 せっかく図書館への入館許可証を貰ったのだ、早速今から使わせてもらおう。
 そう思って歩き始めると、上の階から彼の主人―――ルイズが降りてきた。
 長い桃色の髪を一つにまとめ、白いドレスと、肘まである白い手袋を身にまとっている。
 そして、自分の姿を見つけるなりツカツカと歩み寄ってきた。
「……………」
 嫌な予感がする。
 ……少なくとも、今日中に図書館に入るのは諦めた方が良さそうだ。
「そもそも、私に『きらびやかなパーティー』など場違いなのだがな……」
 独り言を言いつつ、ユーゼスは主人へと歩み寄っていく。

 ―――さて、御主人様の説得は難しそうだが、どう説き伏せたものだろうか。
286名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 22:09:23 ID:VGI+R40E
支援
287名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 22:09:51 ID:hU33KRhn
おマチさんがんばれ支援
288ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2008/12/12(金) 22:10:51 ID:pO3nXjxe
 以上です。

 ……おかしいなあ、予定ではダイジェストで土ゴーレム戦をサクッと終わらせて、少なくともコレよりは短く終わらせる
つもりだったんですが……。
 ふと『水を防ぐにはどうしたら良いんだろう』と考えて、前回投下した際に『防水加工すれば』という書き込みがあった
のを思い出し、今度はそれに対する攻略法を―――と考える内に、こんなになっちまいました。
 しかも何と言いますか、戦闘にカタルシスや『一撃必殺』、『一発逆転』とかいう要素が皆無ですし。
 私も他の皆さんみたいに、こう、圧倒的な力でバシーンとやってみたいとか思うんですけどねえ……とは言え、これはこ
れで面白いですが。

 さて、ズバットのエピソードですが、原作で『破壊の杖』がどこかの国の兵士からオスマンに渡されたのは30年前で、ル
イズの母親である『烈風』カリンが引退したのも、また30年前……ということで、時間軸をちょっとイジらせてもらって
2つを繋げてみました。
 ……さすがに失恋してマンティコア隊を引退、そのあとすぐ結婚、というのはアレなので。

 そして企業の大規模なリストラや大学生の内定取り消しなどが相次ぐ昨今、おマチさんは就職先を決めたようですw
 ……いや、良いキャラだと思うんで、放し飼いにするよりは、あえて『正体が誰にもバレていない状態』で手元に置いた
方が今後も面白かろう、と。

 ともあれ、当初の目標である原作1巻の壁は突破しました。
 今後も気力や状況が許す限り、執筆を続けていこうと思いますので、よろしくお願い致します。

 それでは、支援ありがとうございました。

>>276
 うわ、すいません! 正しくは『ミス・ヴァリエールの隣の部屋』です!
289名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 22:12:20 ID:153d3KnG
乙でした〜!!
憧れる頭脳戦描写、勉強させていただきます!

とりあえず、おマチさん、就職先固定おめでとうございますw
290名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 22:12:48 ID:ehQTsOPj
ラスボスさん乙

個人的には一撃必殺よりこういう頭ひねって解決するのが好きなので歓迎です。
291名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 22:12:59 ID:hU33KRhn
鉄の規律って、つまり八つ当たりだったのかw
292名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 22:13:12 ID:/tlNuRNF
ラスボスの世界ではカリン様は50歳近いのかな?w
293名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 22:14:47 ID:hU33KRhn
若く見えるだけで原作でもそんなもんじゃなかったっけ? 長女は17・・げふんげふん、27歳なんだし。
294名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 22:15:43 ID:ehQTsOPj
>>292
原作でもそうじゃなかったっけ。
長子が三十路近いからそれに20弱足した数字になることには変わりないし。
295名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 22:19:01 ID:OIR2f504
乙です!
こういうノリの作品は貴重ですよ、いざとなればガチ戦闘な展開も出来るわけだし
296名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 22:19:56 ID:7/bLgycO
乙でした。
伝説四人の使い間が全員名前が違う早川建だと張っていたんだが、違ったかw
297名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 22:20:20 ID:qkdRoVKD
まさかカリンママとコンビだったとは……
カリンママ、若い頃は(今もある意味)ツンデレだったんッスねww
298名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 22:20:25 ID:hU33KRhn
それはさすがにV3と被るしw
299デモゼロ:2008/12/12(金) 22:21:27 ID:153d3KnG
改めて、素敵な頭脳戦を見せてくださったラスボスの方へ乙を送りつつ

22:30頃になりましたら、第八話投下させていただきます
300名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 22:21:34 ID:/tlNuRNF
>>294
勘違いすいません。
やたらと活発(?)なイメージがあるんで、せいぜい40ぐらいかと思ってたw
でも、確かにいきおくれな娘が居たんだったね。

某作品じゃマンティコアに乗って空中戦もやってたしw
301名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 22:22:52 ID:cV4sLzg3
>>297
きっとことあるごとに建と比べられるハメになったであろう旦那哀れwww
302名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 22:25:21 ID:7/bLgycO
>>298
いや、そういうことじゃなくて
憚られる:早川建
ガンダ:風見四郎
ヴィンダ:番場壮吉
ミョズ:新命 明
の四人で、名前と能力を使い分けてるだけで全部同一人物とかw
303名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 22:25:31 ID:pO3nXjxe
>>299
支援します。
304名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 22:28:41 ID:ehQTsOPj
>>302
全部早川健でも問題ないような・・・・

腹ぺこルイズまで待機
305デモゼロ:2008/12/12(金) 22:29:46 ID:153d3KnG
投下、開始させていただきます


 馬鹿力のルイズ
 土くれのゴーレムの片脚切り裂いた

 けれど残念
 ゴーレムを操っていた土くれのフーケは逃げてしまった
 宝物庫に収められていた「悪魔の種」を持ち出して…


 今、ルイズの目の前で、責任の擦り付け合いと言う名の醜い争いが繰り広げられている
 やれ、その日の当直は誰だった、だの、見張りの兵は何をしてたんだ、だの
 誰もかれもが、自分は悪くない、自分に責任はないと罪を擦り付け合っている
 コルベールはその争いに加わらず、残り少ない髪の毛の残り残量に頭を抱えてはいるが
 …全く、貴族たるもの、こんなありさまでどうするのだ!
 教師たちの貴族らしからぬ様子に、ルイズはぷんすか、不機嫌だ
 フーケの犯行を目撃した、という事で、呼び出されていたルイズたち
 生徒の前で、こんな醜い争いをするなんて
 あぁ、もう、キュルケは退屈になってきたのかうとうとしているし、タバサはさっさと本を読み始めているし
 シエスタも、初めはこんな場に呼び出されてびくびくしていたのが、今は目の前の争いを見てオロオロし始めている
 結局、その醜い争いは、オールド・オスマンのお叱りの言葉が響くまで続いた
 本当に、貴族としてあるまじき醜態である
「オールド・オスマン!」
 ばん!
 そこに、扉が開いてミス・ロングビルがやってきた
 そう言えば、呼び出されてここに来た時から、姿が見えなかったような
「おぉ、ミス・ロングビル。一体、どこへ行っておったのじゃ?」
「土くれのフーケの居所を調べておりました……重要な証言を、得る事ができましたわ」
 ざわ
 再び、教師たちがざわめきだす
 …フーケの居所が、わかった!?
 ルイズはじっと、ロングビルの報告に耳を傾ける
「近隣の農民に聞き込んだところ、近隣の森の廃屋で、怪しい人物を見かけたそうです。黒づくめのローブを着た、男だったとか」
 ざわ…ざわ…
306デモゼロ:2008/12/12(金) 22:30:35 ID:153d3KnG
 間違いない、フーケだ
 ぎり、とルイズは拳を握り緊める
 フーケに逃げられた悔しさが、再び強くなる
「徒歩で半日、馬で四時間の距離ですか……オールド・オスマン!王室に報告を…」
「そんな事しとる間に逃げられてしまうわい。それに…魔法学院の問題は、学院で解決すべきじゃ」
 ざ、と部屋の中を見渡す、オールド・オスマン
 フーケの捜索隊を編成する、と言い出した
 なるほど、自分たちでフーケを捕まえる、という事か
「我を、と思う者は杖をあげよ!」

 …しぃん
 気まずい
 気まずいほどの、思い沈黙
 誰かがサイレンスの魔法を使ったのか、と錯覚するほどに、部屋の中は静まり返った
 誰一人、手をあげようとしない
 一人、コルベールは悩んだ表情を浮かべて…杖をあげようとして、しかし、何かの思いに、後悔に邪魔されているように、あげられないでいる
 ……この学院の教師たちは、こんなにも腰抜けなのか!?
 むかむか、むかむか
 ルイズの苛立ちは、最高潮に達しようとしていた

 こうなったら
 いや、違う
 …最初から、決めていた

「ミス・ヴァリエール!?」
 杖を掲げるルイズ
 その瞳に秘めるのは、決意
 …シエスタとキュルケを危ない目にあわせたフーケを…自分の手で捕まえてみせる!!
「あ、あなたは生徒ではありませんか!そんな危険な事…」
「誰も、杖をあげないではないですか」
 ルイズの言葉に、何やら口うるさく言おうとしてきた教師たちは押し黙った
 そう、ルイズ以外、誰も杖を掲げようとしない
 ……いや、違う
 ルイズの後を追うように、二人、杖を掲げた
「ヴァエリエールの者だけに、いい顔はさせませんわ」
「……心配」
 キュルケとタバサ
 二人も、揃って杖を掲げてきた
 結局、他に誰も杖を掲げる事はなく……三人が、フーケ捜索隊に任命される
「ミ、ミス・ヴァリエール…大丈夫なのですか?」
 おろおろ、心配そうに見つめてくるシエスタ
 …あぁ、そんな、泣きそうな顔をしないで
 あなたを心配させたかった訳じゃ、悲しませたかった訳じゃないのだから
「大丈夫、心配しないで」
「で、でも…」
「あなたは安心して、美味しいクックベリーパイでも、用意しておいてくれる?たっぷりおなかを空かせて帰ってくるから」
 安心して、と
 そう言って、シエスタに笑いかけるルイズ
 シエスタは、まだどこか心配そうな表情を浮かべながらも…はい、と頷いてきた
 道中の道案内などは、ミス・ロングビルが担当する事となった
 …待っていなさい、土くれのフーケ
 ぎったんぎったんにしてやるんだから!!
「うむ、では、魔法学院は諸君らの努力と貴族の義務に期待する!!」
「「「「杖にかけて!!」」」」
 ぐぎゅるるるるるるるるるるるる!!!

 ………
 …………
 ……………
307デモゼロ:2008/12/12(金) 22:31:22 ID:153d3KnG
 い、痛い
 沈黙が、視線が痛い!!

「…ま、腹が減っては戦が出来ぬというからの。しっかり食べてから出発するんじゃぞ」
「………はい」
 馬鹿馬鹿、私のおなかの馬鹿!!
 ルイズはこっそり、自分のおなかの空気の読めなさに涙を飲んだのだった


 がたごと、がたごと
 馬車が揺れる
 がたごともぐもぐもぐもぐもぐもぐ
 …ちょっと、お行儀悪いかもしれないけれど
 食事をとるための時間すら、惜しくて
 ルイズは、馬車の中で食事をとっていた
 シエスタ特製・ドカ盛り弁当
 本当に、シエスタは大食漢向けの食事をよくわかってくれている
 なんて素敵なボリューム!今のルイズにぴったりだ!!
 傍らに、鞘に収めたデルフを置いて
 もぐもぐ、ひたすら食べていく
「本当、よく食べるわねぇ」
「し、仕方がないでしょう。おなかが鳴っちゃうんだから!!」
 うぅ、キュ、キュルケにはわからないわよ、この悩みは!
 もぐぐ、サンドイッチを頬張りつつ、ちょっぴりいじけるルイズ
 二人のどこか仲の良い様子を見て、ロングビルは微笑ましそうに笑みを浮かべている
 タバサは、ルイズのお弁当に入っていたハシバミ草サンドイッチを分けてもらって、むぐむぐ、食べていたが…
「………」
 つ、と
 不意に、杖を握った
「タバサ?どうかしたの?」
「…………何か、いる」
 つい、と杖を振るタバサ
 ちゅちゅーーー!?と悲鳴が上がる
「…あら?」
「鼠?」
 じたばた
 空中でじたばたする一匹の鼠
 どうやら、馬車に乗り込んでいたらしい
 なんだろう、鼠の癖になかなか毛並みが良くて、可愛らしい
 何で、馬車に鼠が乗り込んでいるんだろう?
 ……あれ?
 でも、ちょっと待て
 この鼠、どっかで見た事あるような?
 じたばたばたた
 空中でもがく鼠の様子に、ロングビルが驚いたように、目を見開いたのだった

308名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 22:32:07 ID:hU33KRhn
支援
309名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 22:32:14 ID:sIX5J27h
>>34
久々にゼロ魔のSSでワロタ
爆熱以来だわ
310デモゼロ:2008/12/12(金) 22:32:34 ID:153d3KnG
 …一方、その頃
「全く、ミスタ・コルベールは事情があるから仕方がないとして、他の教師たちは…のう、モートソグニル?」
 …………
「おや…モートソグニルや?また、散歩に行ってしまったのかの?」
 きょろきょろ
 姿の見えない己の使い魔
 どこに行ってしまったのかと、オールド・オスマンは一人、首を傾げていたのだった


「どうして、オールド・オスマンの使い魔がここに…」
 ちゅう
 念力の魔法から解放され、ほっと一息吐いているモートソグニル
 ルイズの手の平の上で、可愛らしく声をあげる
「…もしかしたら、あなたたちを心配して。オールド・オスマンがお目付け役につけてくださったのかもしれませんね」
 そう言ってくる、ロングビル
 使い魔とは感覚が共用できる…つまり、使い魔が見ている光景を、メイジは見る事ができる
 なるほど、このモートソグニルがルイズたちの危機を見たら、魔法学院から、すぐに増援を寄越せる、という事か
 …あの状況で、誰か来てくれるのか、あんまり期待はできないが
「そうだとしても…戦いに巻き込まれたら大変だわ。離れた所にいるのよ?」
 ナデナデ、モートソグニルを撫でてやると、モートソグニルはちゅちゅう、と嬉しそうに声をあげてくる
 …う〜ん、鼠って、こんなに可愛らしい生き物だったっけ?
 首をかしげるルイズの前で、モートソグニルは愛らしい仕草を見せる
 ころん、とおなかなど見せてきて
 …な、何たる無防備
 これは、おなかを撫でてあげないといけない気がするではないか
 そ〜っと、優しく、指先で撫でてやると、ちゅうぅ〜、とくすぐったそうに身を捩る
 その可愛らしい仕草に、緊張していた一行は、少し、緊張をほぐしたのだった


 ……ルイズは、まだ知らない
 己の身に、待ち受ける運命を
 これから先、ルイズの日常は粉々に壊されて
 もはや、日常に戻る事のできぬ運命が、己に待ち構えている事を
 ルイズはまだ、知らない
311名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 22:32:50 ID:pO3nXjxe
なんか緊張感が……w 支援
312名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 22:32:52 ID:iIouig4+
>>302
ヴィンダとミョズは逆の方がいいっしょ
ヴィンダ:アオレンジャー(弓使い=狩人、狩には動物を従えて行うものもある)
ミョズ:ビッグワン(行動隊長=頭脳派)
こんなイメージ
313デモゼロ:2008/12/12(金) 22:34:07 ID:153d3KnG
毎度毎度短くて申し訳ありませんが、これにて第八話投下終了です

支援してくださった方
そして、wikiに第七話保管登録してくださった方

ありがとうございました
314名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 22:36:00 ID:pO3nXjxe
デモゼロの方、乙です。

フーケ捜索隊の志願の時に、杖を掲げようとするコルベール……ちぃっ、私もやれば良かったっww
315ゼロの社長 18:2008/12/12(金) 22:38:25 ID:PkymEJ4Z
ラスボスの人、デモゼロの人乙です。

18話完成したので10分後くらいに投下OKでしょうか?
316名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 22:40:02 ID:VGI+R40E
おk、支援
317名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 22:42:32 ID:EieGrcVk
おぉ、社長の人も。
今日はいい日だ。支援
318ゼロの社長 18:2008/12/12(金) 22:49:10 ID:PkymEJ4Z
「ふむ…召喚銃を盗まれた事にしてしまう…か。」
「…少し早計だったかしら?考えてみれば、別に今なくっても必要なときだけ返してもらえばいいわけだし。
そんな遠くに…例えば他国に貸し出してしまっていると言うわけではないのでしょう?」

他国どころか、すぐ近く、この学校の教師であるジャン・コルベールの手元にあるのだが。
もともと、コルベールに貸与した理由は、海馬瀬人により召喚銃の正体が『銃型のデュエルディスク』であることがわかったためである。
デュエルディスクは、使い方次第ではメイジの能力をもはるかに凌駕するモンスターや魔法を使う事ができる危険な代物でもある。
これが安易に悪用されないために、下手に宝物庫の中にしまっておくよりも信用の置ける人物に預けた方がいいと判断したからである。
事実、難攻不落とも噂されたとある貴族の宝物庫も、ここにいるミス・ロングビル…土くれのフーケに苦も無く盗み出されてしまった事があった。
学院の宝物庫はといえば、教師が交代制で見回りをする事になっている上に、平民の衛兵もいるが、
実のところ掛かっている『固定化』などの魔法に信用を置きすぎているので、その教師たちであっても危機意識が低いため、決して安全とはいえない。
それならば、やはりコルベールに預けておいた方が安全だろう。
だが、それに関しても問題が無いわけではない。
もちろんコルベールへの信用がという意味ではない。
彼はオスマンが、この学院の教師陣の中でもっとも信頼している人物である。
『炎蛇』と呼ばれる二つ名。
かつてはトリステイン王国魔法研究所実験小隊の小隊長であり、戦闘のエキスパートであった。
そして、それだけの強い力を持ちながらも、彼は命の尊さを理解している人物だった。
かつて彼が犯してしまった罪はいまだに彼を責めつづけている。
だが、同時にそれは、コルベール自身がもつ優しさの証明でもある。
彼ならば、恩人の形見である『デュエルディスク』を正しく使う事ができるであろう。
では、なにが問題か。
宝物庫の中でほこりを被っていた上に、アカデミーでも全く使い方がわからずガラクタ扱いされていたとはいえ
登録されている以上は、すでに『召喚銃』はトリステイン王国の貴重なマジックアイテムである。
319名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 22:50:34 ID:VGI+R40E
支援
320ゼロの社長 18:2008/12/12(金) 22:51:03 ID:PkymEJ4Z
元の持ち主とはいえ、オスマンが勝手に譲渡や貸与してしまうわけにはいかないのである。

(…まぁ、ばれないとは思っとるんじゃがのぉ…)

だが、もし盗まれてしまったのならば、どうせガラクタだし仕方ないだろうですむレベルの代物でもある。
いちいち国の宝だなんだと枷をつけておく必要など無いと、オスマンは思った。

「ふむ…しかし、どうやって盗み出す?いや、正確には盗まれた事にする…か。
宝物庫の扉もその周囲を固める壁も含めて『固定化』の魔法が掛かっている。
それも、スクウェアクラスのメイジによるものじゃ。
土くれのフーケがいかに強力なメイジとはいえ、あれは簡単には破れんじゃろう。」
「そうですね、私は所詮トライアングル。何度か調べましたけど、やはりあの固定化を破るのは難しいようです。
でも、今度盗みをする土くれのフーケは強力ですよ?なにせ、トリステイン魔法学院の学院長が味方にいるのですもの。」

ふふっ、と笑いながらとんでもない事を口にする。
オスマンも見事な返答に思わず笑い出した。

「ほっほっほ、違いない。どうせ消えて無くなるのじゃ。最高のメイジにして盗賊にして幻想『土くれのフーケ』
ならばなんでもありじゃな。面白くなってきたわい。」







「おじいちゃ…祖父は、私の故郷であるタルブの村に、ふらっと現れたそうなんです。
何でも、気がついたらここについていたとかで、持ち前の明るさで村の人たちともすぐに仲良くなっていって、いつしか村に住み着いていました
ある日、村が大量のオーク鬼に襲われた事があって、そのときに祖父は見たこともない亜人たちを従えたり、
魔法を使ったりしてオーク鬼たちをなぎ倒していったそうです。
祖父は一躍村の英雄になったのですが、メイジでもないのに、杖もないのにそんなことができるなんて知れたら
国から目をつけられると、村中皆で秘密にしていたんです。」
「このカードから察するに…君の祖父も海馬君と同じデュエリストだったんだろう。
これ以外のカードと、デュエルディスク…これや海馬君の腕についていたようなものとかがあったと思われるのだが…
なにか、そう言うものは残っていないのですか?」

コルベールは傍にあった召喚銃を指し、シエスタに聞いた。
321ゼロの社長 18:2008/12/12(金) 22:52:53 ID:PkymEJ4Z

「祖父には昔からの友人という亜人の知り合いの方がいました。
普段は姿が見えないのですが、祖父曰く、いつも傍にいてくれると言っていました。
オーク鬼の騒動のときも、祖父の傍で一緒に戦っていたそうです。
実は、私も何度かお話したことがあるんです。
見た目は怖そうなんですけれど、話してみると優しい人なんです。
でも祖父が亡くなった時、このカード以外のカードとデュエルディスク…って言うんですか?
それをもって、姿を消してしまったんです。」
「なんだ。それじゃあどこにあるのかわからないじゃない。」

ルイズが残念そうに呟いた。
海馬の言っていた元の世界。
その手がかりがつかめるかもと思ったのに、文字通り消えてしまっていたとは。

「それ以来、その亜人は姿を現していないの?」
「一度だけ…。私がタルブを出て、ここにお仕えする事が決まった日に、祖父の墓参りをしにいったんです。
一通り報告をしてふと顔を上げると、いつのまにかそこにいらしていたんです。
『シエスタ。僕は君を魔法学院などにはやりたくは無い。
でも、君が決めた事だから、無理には止めない。
でも、つらいことがあったら、すぐ戻ってくるんだよ。』
と言って、また姿を消してしまったんです。
私、ユベルさんには色々と聞きたい事があったんですけど…。」
「ユベル…それがその亜人の名前?」
「ふむ…とりあえず、海馬君が戻ってきたら、この話を伝えてみよう。
もう夜も遅いし、ミス・ヴァリエールはとりあえず部屋に戻りなさい。
海馬君モそのうち戻ってくるだろ――」

と、コルベールが言いかけたとき、部屋の外から爆音が響いた。
と、同時にグラっと辺りが揺れたような感覚がした。

「なっ…何!?地震?」
「違う!これは…本塔の方だ!」

4人は急いで本塔の方へと駆けつけた。
4人は目を疑った。本塔の傍には30メイルはあるかという巨大なゴーレムがそびえ立ち、一心不乱に本塔を殴りつづけていた。
恐ろしい事に、スクウェアメイジ数人がかりでの強力な『固定化』の魔法がかかっているはずの本塔の壁が、
少しづつひび割れていっているのである。

「うそっ!?何よあのゴーレム!本塔の壁を破壊しているのっ!?」

キュルケの驚きは、その場にいたメイジ全員の心の代弁だったのかもしれない。
強力なはずの本塔の壁を、物理力だけで破壊するなど、そんなゴーレム聞いた事がなかった。
322ゼロの社長 18:2008/12/12(金) 22:54:52 ID:PkymEJ4Z
驚いている間にも、少しづつ壁のひびは広がっていっている。
と、そのときルイズが、ゴーレムの肩の上に人影を発見した。

「見てっ!あのゴーレムの肩の所に誰かいるわっ!」

つられて全員の視線がゴーレムの肩に集まる。
遠く、夜の暗闇にまぎれてよくは見えないが、フードを被りマントを羽織った人影が、確かにそこに見えた。

「巨大な土のゴーレム…まさかっ!?あれが土くれのフーケっ!?」



ゴーレムの肩の上にいたのは、フードとマントで見を隠した土くれのフーケこと、ロングビルだった。
ロングビルは辺りを見回すと少しづつギャラリーが増えてきている事を確認した。

「誰にも破れなかった宝物庫の固定化を破れるほどのメイジだと言う事をアピールすれば、
おいそれと追いかけて捕まえようなどとは思わないでしょうね。」
「うむ、言っちゃなんじゃがうちの教師陣は、そう言うのが集まっているからのう。」

ロングビルのいる肩から少し手前。ゴーレムの胸の位置から、別の声が返事をした。
そこにいたのは、ロングビルと同じように姿を隠したオスマンだった。
ゴーレムの胸の位置に足場を作り、固定化を解除まではいかなくとも、弱体化させる魔法を掛け、破壊のアシストをしていたのである。
もっとも、その姿は周りからは死角になっており、まるで打撃だけで壁を破壊しているように見えるのである。
ロングビルとオスマンの立てた作戦はこうである。
二人がかりで強引に本塔の壁をゴーレムで破壊する。
その後メッセージカードを残して、オスマンはそのまま学院長室へ帰還。
ロングビルは大声で犯行をアピールした後ゴーレムで学校外へと逃亡。
ゴーレムを学校外で土へと戻した後、何食わぬ顔で学院長に細事を報告にくる事でまず第一幕を終了とすると言う作戦であった。

「しかし、こういう盗賊みたいな事も楽しいのぉ。癖になりそうじゃ。」
「絶対に止めてください。これが終わったら、どうせ始末書の嵐ですよ。」
「ふん。さて、もう一撃くらいかの…ってうぉっ!?」

オスマンが気を緩めたとき、いきなり火球がゴーレムの方へ飛んできた。
火球はゴーレムの背中に当たったが、ゴーレムはびくともしなかった。

火球を打ち込んだのはキュルケだった。
323名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 22:57:52 ID:gFKyFWCF
社長キター!!まってたよぉぉぉぉ!
これで勝つる!!
324ゼロの社長 18:2008/12/12(金) 22:57:54 ID:PkymEJ4Z

「土くれのフーケだかなんだか知らないが、人の学校で好き勝手暴れてもらっちゃ困るのよね!
ファイアボール!5連打ぁ!!」

キュルケが呪文を唱えると、5個の火球が杖の前に生まれ、一直線にゴーレムに向かって走った。
火球5個を直撃したゴーレムは、グラっと少し体制を崩した。
揺れるゴーレムの肩の上で、ロングビルはチッと唇をかんだ。

「くっ…後一発で壁が壊れるんだ。一気にぶち破る!」

「ミス・ツェルプストー!やめなさい!ここで戦闘をすれば被害が増える。
何より、相手の実力もわからぬうちにむやみに手を出すものではない!」

コルベールが必死に制止を呼びかけたが、キュルケは聞く耳持たなかった。

「こそ泥が好き勝手暴れているのを見てみぬ振りなんてできませんわ。
そうでしょう?ルイズ!」

ハッとコルベールが目をルイズに向けると、ルイズもまた杖を構え、呪文を唱えていた。

「やめたまえ、ミス・ヴァリエール!第一君は――」
「ここで何もしないなんて、貴族じゃないわ。ここで逃げたら、それこそ『ゼロ』じゃない!」

ぎゅっと杖を握る手に力が入る。
たとえ魔法が失敗しても、爆発だって攻撃にならない事はない!

「ファイアボール!!!」

当然、火の玉は起こらなかった…が、失敗魔法による爆発は、ゴーレムの右ひじの部分で発生し、
ゴーレムの右腕を吹き飛ばした。

「や…やった―――」
「まずい!!!」

ルイズの歓喜の声と、コルベールの危惧の声はほぼ同時だった。
壁を貫こうと振り上げた右腕の速度がルイズの爆発により向きを変えられ、
折れた右腕は、ルイズの立ちのほうへと加速しながらつっこんできた。

「しまった!」「いかん!」

ロングビルとオスマンもそれに気づき、杖を構えたときにはもう遅かった。
右腕がルイズ達のいた場所に突っ込み、黙々と土ぼこりをあげていた。
誰もがルイズ達の死を予感した。
325名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 22:58:00 ID:cV4sLzg3
社長支援
326ゼロの社長 18:2008/12/12(金) 23:00:08 ID:PkymEJ4Z
いや、死を免れても大怪我は必死…と、思ったそのとき、
土煙の中から一筋の光が照らされていく。
そして、土煙が晴れたときには、光の壁のようなものに包まれた、ルイズ達四人の無事な姿があった。
そして、その壁の中にもう一つ、天使のような翼を持った、小さな黒い生き物が浮いているのが見えた。

「ハネ…クリボー…?」
「クリクリィ!」

そう声を上げると、ハネクリボーはぼぅっと光、姿を消した。
他の3人も、ゴーレムのところにいたロングビルとオスマンも、何が起こったのかわからない様子だった。
はっと正気を取り戻し、ロングビルはゴーレムを操り、残った左腕で本塔の壁を打ち崩した。
そしてすばやく中に入り、メモを残してまた戻った。

「OK、後は作戦どおりに!」
「じゃが…あれは一体…?」
「それは後に!早くしないと捕まってしまいます!」

言い切る前にロングビルは魔法で土煙を作り出し、誰にも気づかれないようにオスマンを降ろし、
自分はゴーレムを従えて学院の外へと移動した。

「くっ、しまった!土くれのフーケが!」
「いや、とりあえず怪我人がいないかが先だ。シエスタ君、君は学院長に連絡を…」
「その必要はない。」

オスマンは、何食わぬ顔でコルベールたちの前に姿をあらわした。

「君達以外の生徒はとっくに逃げ出していたわい。君たちは、怪我はないかの?」
「いえ…しかし、土くれのフーケを取り逃がしてしまいました。それに…」

ルイズは落ち込んだ様子で告げた。
フーケを取り逃がした事よりも、自分の魔法のせいで一歩間違えば皆が大怪我をしていたかもしれない事の方が
ルイズの心に重くのしかかっていた。

「もうわけがわかんないわ…土くれのフーケが現れたり、ゴーレムの腕が飛んできたり……後、あの光った羽の生えたの!
あれ、さっきのあなたのカードの奴よね!あなた、セトみたいなことができるの!?」

キュルケはシエスタの胸元に手を突っ込んで強引にハネクリボーのカードを取り出そうとした。

「きゃっ!そこちがいま…あっ…ダメです!」

少女二人の絡み合いを横目で見ながら、コホン、とオスマンは真面目な口調でこう言った。

「とりあえず今、ミス・ロングビルに追跡をさせておる。
明日盗まれたものの確認と、土くれのフーケの捜索を行うから、君たちは部屋に戻って休みたまえ。
ミスタ・コルベール。手伝ってくれたまえ。」
「構いませんが、オールド・オスマン。そう言う話は横目で別の場所をちらちらよそ見ながらするものではないと思いますが。」
327ゼロの社長 18:2008/12/12(金) 23:02:07 ID:PkymEJ4Z



翌日。
早朝から宝物庫では教師陣と現場に居合わせたルイズ、キュルケが集まっていた。
壁にはでかでかと、『召喚銃、確かに領収いたしました。土くれのフーケ』と言うサインが書き込まれていた。
教師陣は「やれ衛兵が悪い」だの「やれ巡回をしていた教師はだれだ」打の責任の押し付け合いを始める始末であった。
当直であったのはミセス・シュヴルーズであったが、サボって自室で寝ていたため、顔を真っ青にして泣き出していた。
それがわかった途端、全員の批難はシュヴルーズに集中したが、オスマンの一言で全員が黙らざるを得なかった。
オスマンが指差したのは、この宝物庫に開いた巨大な穴。

「あの強力な『固定化』を破るほど強力なメイジとゴーレムじゃ。たとえこの場の全員が真面目に警備をしていたとしても、勝てたかどうか…。
じゃから、ミセス・シュヴルーズ。涙を拭きなさい。君だけに責任があるわけじゃない。」

優しげな表情で語るオスマン。
名役者とはこのことである。
キッと顔を上げてオスマンは教師陣に向けて言った。

「犯行現場にいたのは、コルベール君と君たち二人だね。」

シエスタは平民であるため、呼ばれなかった。
キュルケとルイズはコルベールの後ろから一歩前に出て説明を始めた。

「コルベール先生の研究室にいた私たちは、本塔のほうからものすごい音がしたので、先生と一緒に本塔のほうへ駆けつけました。
すると、巨大なゴーレムが本塔を殴りつけていたのです。」
「塔の壁を砕いて穴をあけたフーケは、そのまま中に入り、その後何かを抱えて外へ出てきました。
そして煙幕を張って逃亡したようです。煙が晴れたときには、ゴーレムの下だった土の塊が残っているだけでした。」
「ふむ・・・」

オスマンが髭を撫でつつ考えているようなしぐさをしていると、ロングビルが宝物庫へと現れた。

「オールド・オスマン、ただいま戻りました。」
「うむ、調査の方はどうだったかね?」
「はい、あの後必死に捜索をしたのですが、残念ながらフーケを見つけることはできませんでした。
しかし、近所の農民から、フーケと思われる黒づくめの人物が、近くの森の中の小屋へと入っていくのを見たという情報を得られました。」
328名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 23:04:11 ID:hR3aERzu
支援
329ゼロの社長 18:2008/12/12(金) 23:04:14 ID:PkymEJ4Z

場がざわっ…と喧騒に包まれる。

「一体場所はどこだね!?」
「歩いて半日、馬で4時間と言ったところでしょう。」

明確な場所を指示され、教師たちは口々に『すぐに王室に連絡を』だの、と声を上げた。

「静粛に。…おそらく、それがフーケのアジトであろう。
ならば、これより捜索隊を編成する!だれか!我こそはと言うものは杖を上げい!」

オスマンの突然の提案にまたも室内でざわめきが起こる。
相手はスクウェアクラスの魔法をも打ち破るゴーレムを操るメイジ。
生半可な相手ではないことは、本塔の宝物庫に開いた大穴が物語っている。

「オールド・オスマン、王室衛士隊に連絡をとって、包囲網をしいては…?」

教師の一人、ギトーが提案をした。
なるべくなら自分が関わらずにすむようにと思っての発言であると、すぐに見抜いたオスマンは、それを静かに否定した。

「今から連絡しても遅いわ。衛士隊が到着するころには既にフーケはまた姿を消しておる。
今すぐに出発し、我々の手で解決しなければならぬ。」
「ではそのお役目。私に行かせてください!」

杖があがった。
教師たちの中からではなく、杖を上げたのは横にいたルイズであった。
慌ててシュヴルーズが声をかける。

「ミス・ヴァリエール!あなたは学生ではありませんか!ここは教師に任せて…」
「誰も杖を掲げないじゃないですか!それに、私は昨夜ゴーレムの右腕を破壊する事ができました!
私なら、あのゴーレムとだって闘う事ができるはずです!」

真剣な眼差しでルイズはオスマンに…いや、この場の全員に訴えた。
自分にできることを、メイジとして今できることを。
打算でも計算でもなく、今自分ができることをルイズはしたかった。
昨夜の戦闘では、自分のミスで皆を危うく危険な目に合わせてしまった。
けれども、ならば尚更、自分は強くならなければいけない。
でなければ、今この場にはいないあの使い魔に会わせる顔がないというものだ。
その真剣な瞳に釣られたのか、ルイズの横からもう一つ杖が上がった。

「ミス・ツェルプストー!あなたまで…」
「ヴァリエールに遅れをとるわけには行きませんので。」
330ゼロの社長 18:2008/12/12(金) 23:06:08 ID:PkymEJ4Z

何か面白いものを見つけたような目をしながら、キュルケは答えた。
それを見たコルベールも杖を掲げた。

「私も同行します。教師としては、彼女達を止めるべきなのでしょうが…。」

コルベールもルイズの真剣な瞳に説かれたようだった。
ルイズの強い意志は言葉で止められるようなものではない。
だが、相手はあれほどのメイジ、易々と勝てる相手とは思えない。
せめて、海馬がいればとは思うが、今はここにはいない。
それならば…思っての行動であった。
ふむ、とうなずくオスマン。

「では、ミスタ・コルベール。ミス・ヴァリエールとミス・ツェルプストーを率い、
フーケの捜索に出発するのじゃ。
ミス・ロングビル、馬車の準備をし道案内を頼む。3名は各々の準備をしていく事。
ただし、特に二人には言っておく事がある。」

そういうと、オスマンはルイズ達の方へと向き直った。

「君たちはまだ学生だ。ミスタ・コルベールの指示をよく聞く事じゃ。
決して無茶をするんではない。勇気と無謀は別のものじゃ。」
『はい!』
「うむ、魔法学院は諸君らの努力と、貴族の義務に期待する」

そうして3人はミス・ロングビルを案内役に、フーケの潜む森へと出発した。










『そうか…そんな事が…。やっぱり魔法学院になんか行かせるんじゃなかったよ。
しょうがないね、僕がじきじきに行って連れ戻すしか無いみたいだね。』







331名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 23:08:39 ID:VhBLX1jF
支援。
ユベルが覇王以外と仲良くしてるとすっげぇ違和感w
332ゼロの社長 18:2008/12/12(金) 23:09:19 ID:PkymEJ4Z
18話完です。
支援していただいた人たちに感謝を。

投下間隔が結構開いてしまったなぁと…あと、GXのキャラに偏っているような気がするので
ゼロ魔のキャラが薄れちゃわないようにバランスをとっていきたいと思います。
あれ…?社長がでない話を書いたのってはじめてかも…
それでは〜
333名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 23:13:55 ID:pO3nXjxe
社長の方、乙でした。
フーケ戦がどうなるのかwktkです。
334名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 23:17:18 ID:KIa91fFV
乙です
深夜42時アニメのあの方が出てきてテンションあがってきたぜ!
335名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 23:20:53 ID:gFKyFWCF
社長ー俺だー結婚してくれー乙!!
ユベルキターー!!!
なんかすごいことが起こりそうだぜ!!
次も楽しみにしてるよー!!!
336名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 23:27:53 ID:DJm16+01
そういえば、そろそろmtl分が不足してきたぜ……
337名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 23:30:09 ID:DhjkjB3q
社長さん乙でした
まさかのグォレンダァw
338名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 23:32:42 ID:uLucYaRi
         /       /    、  \   ヽ  、
        l /        |     \   ヽ   ヽ  ',
        |/     / 人      ヽ,   ',   |   !
        ||  !. l 、| /  ヽ l    /l   |_,  !  ヽ
        ヽ |l | /ヾ|、 ノイ  /! /_,|イ'l´    |   \
         〉!ヽ\|ー,‐≧、,ノ /_ノ≦___| /   ト、    ヽ   ちょっと!!警察の検問のおかげで仕事にいけないじゃないの!!
        /   |\! ゝー'゙  ̄ ´ ゝ、_ノ  7   .!  ヽ     \
      /    |  |             /   |ヽ、|     〉   工期が迫ってるのになんとかしなさいよ!!
      ヽ     |  l u          u./.    |:::::::メ,    /
       〉  r'゙/   ヽ   ー─--、   /     |::::::::::::}_  /
      /  {./     |>- ` ー一'_, イ      /:::::::::´::::::ヽ `ヽ
    /  r'7     ノ:::::∧` >< /     /:::::::::::::::::::::::ハ  ` 、
   /   /´/     ∧:::::::::∨ ,、 ∧     ヽ; -ー' ´::::::::::::}.    \
. /    |::/     /::::::\:::::∨ | /:::::ヽ      \::::::::_,::::ハ       \
〈      /     /:::::::::::::::\ ヽ7::::/::ヽ      ヾ´::::::::::::::::l        \
 ヽ   /     /::::::::::::::::::::::::`::^__´::::::::::l       |::::::::::::::::::ヽヽ      ヽ
  }  〈      ∧::::::::::::::::::::::::::::::::::::`'一::〉       l:::::::::::::::::::::', |      /
  〉  ∧      ヽ::::::::::::::::::::∧:::::::::::::/         /::::::::::::::::::::::∨    /
. /  |:::::ヽ      ',::::::::::::/| ト;:::::/        /::::::::::::::::::::::::::::ヽ   /
. /   l:::::::::}      }::::::/  || || ∨        /::::::::::::::::::::::::::::::::::::\〈
           白田組重機オペレーター 白田弘之
339名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 23:33:23 ID:uLucYaRi
             /\
           _/ ◯  ヽ、    _
       __ _/::::::___::::::::`::.、/::: |
      /n_:>‐ ' ´      ̄`ヽ::::::O::|
     /    /     ヽ ヽ  \:::::ト、
   /     ハ      i  i.   \| ヽ
  / /   i / \.     i  i i   \ ',
  | i i   | |   \ , --|- ミ | i    i  ',
  | i i   |イ| ̄`   ) / _i_/ |`ト|    |!  i
   ', N   | ,rr=ミ   /ノ´i{「`}iヽ| |  ./|  i
   \ト、 .イ ト:.ィ}     {トi::イ} / /  i   ',
    i| \ト 辷リ      ゞ‐'' /イ    i   ヽ     まったく、さっきまであんなに警察の検問に文句言ってたくせに・・・
    /i!   |    '        /     ヽ   ',
.   / !i   ',     _ _,.    ./      |   |
   i !|    \.        イ       |  /!|   いいですよ、義兄さんが言うなら。おまわりさん、やりましょう。
   | ハ| i    i>、    _,. ' |       /| / リ
   !| ∨.    i  __,≧'-----:|  /  / レ'       
     \ハ ハ| ii{ ∩ ∩ /| i !{ ̄ ̄ \         義兄さんはモンケーンを、私は計算をしましょう。
     / V/ハ. } ∪ i/  VV|::::::::::::  |
     | ::::::::::::::::::::::\,/::_:_::,.>―――-、_〉   あんな山荘に普通の作業でやったら山荘が谷底に吹っ飛んじゃう。
     {‐‐-――:::/|ハ ̄:::::::::::::::       \
    /::::::::::::::::/  .|::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::    }
       白田組重機オペレーター  白田五郎
340谷まゼロ:2008/12/12(金) 23:41:10 ID:hR3aERzu
なんという投下ラッシュ……。嬉しい限りです。
予約がなければ、23時45分から六話投下させていただきたいと思います。
341名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 23:42:36 ID:8rTifBeB
でたなギャグ補正込みとはいえある意味最強の使い魔
支援
342谷まゼロ六話:2008/12/12(金) 23:45:00 ID:hR3aERzu
ルイズは学院長室に呼び出されていた。
用件は言わずもがな、谷がしでかした大事件についての言及である。
オスマン氏が、後ろで手を組んで窓の外を見つめながら言った。

「ミス・ロングビル、本日昼ごろ起こった騒ぎの詳細な損害報告をしてくれたまえ」

言い渡された秘書のロングビルは、手に持った書類に目を落とし、淡々と言った。

「あの騒ぎによる、怪我人の総数は84名。内、教師が3名です。奇跡的に重傷者、死者はいません。
 加えて、学院内における定着物を含む建造物の修繕必要箇所は、24ヵ所です」

ルイズの顔は血の気が引き真っ青になっていた。
だがオスマン氏は報告を聞くと、実に楽しげに笑った。

「ほっほっほっ。実に凄まじい損害であると言ってよいだろう。清々しいぐらいじゃ。
 何せ、魔法を使えぬ平民が実質84名のメイジを倒してしもうたんじゃからのう。
 それにあの振り回した像の末路は、なかなか趣がある。あのままオブジェとして飾って置いてもよいと思うのだが?」

オスマン氏が言っている像とは、谷が残らず一切合財吹き飛ばすのに使った銅像のことであった。
谷は振り回した後、学院に向って放り投げたのだった。
そして、投げられた銅像は頭から外壁に突き刺さり、足だけが天に向って外出ていた。
コルベールはオスマン氏の冗談交じりの言葉対して、苦々しく言った。

「笑い事じゃありません!学院を臨時休校にせねばならないほどの惨事ですぞ!オールド・オスマン」

まさに笑い事ではなかった。特にルイズにとってはこれは一大事と言えた。
自分の使い魔がしでかしたことは、あまりにも事が大き過ぎた。
何故なら、学院にいる生徒や教師は皆貴族であるからだ。
その者たちを、谷が全員銅像で殴り飛ばしたのだ。
責任問題が、ルイズの身に降りかかることは火を見るよりも明らかであった。
そして、自分の使い魔である谷の処遇に関しても、何を言い渡されるかわからない。
ルイズは戦々恐々の顔で、まるで死刑宣告を待つ咎人のような、憔悴しきった顔をしている。
そんなルイズを見て、オスマン氏は、どこか穏やかさを感じさせるようなそして飄々として言った。

「のう。ミス・ロングビル。あの騒ぎのとき、授業は始っておったかの?」
「時刻的にはすでに。ですが多くの生徒が騒ぎを聞きつけ、ヴェストリの広場に向ってしまったため、
 始業の時間が来ましても、始めることができなかったようです」
「……だそうだ。ミス・ヴァリエール」

ルイズはオスマン氏が何を言おうとしているかわからなかった。
オスマン氏は、誰にでもなく独り言のように言った。

「つまりはじゃ、生徒たちは、ちゃんと教室にいて学生の本分たる学業に専念しておれば、
 怪我なんぞせずに済んだわけじゃ。ある意味、自業自得だと思わんかね?」

オスマン氏が言っていることは、まさにルイズにとってはこの上なく有り難いものであった。
学院側は、今回のことについて責任の言及を行わずに目を瞑ると言っているのである。

「まあ、君が騒動を起こすのは初めてのことではあるまい。
 生徒たちも慣れている……というのも変な話じゃがの」

思い当たる節があるルイズはバツの悪そうな顔をした。
ルイズは、魔法を失敗すると授業が行えなくなるほどの爆発を起こすことがあるのだった。
一回や二回のことではなく、周りの生徒たちからも魔法の使用を止められるほどであり、
今日も、その失敗をしでかし教室で爆発を起こしていた。

「とりあえずはじゃ、学院の修繕に関しては、まあ……払って貰うしかあるまい。
 だが、ミス・ヴァリエールとその使い魔に関して『学院は責任は問わん』、それでいいかな?」
343名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 23:45:11 ID:JHsYbpS7
谷間ゼロノットイコール胸が無い支援
344谷まゼロ六話:2008/12/12(金) 23:47:21 ID:hR3aERzu
オスマン氏は、『生徒の親たちなどが、何か文句言ってきても庇うことはできない』と言っているのだった。
だが、ルイズにとっては目を瞑ってくれるだけで十分であった。
ルイズは恭しく礼をした。

これは後々の話ではあるが、被害に遭った生徒たちが親に言いつけるなどして、
学院にルイズたちに何かしらの処分を与えるように求めてくる事態にはならなかった。
これは皆誰しもが、平民になす術もなく負けたという事実をひた隠しにしようとしたせいでもある。
誰か一人や二人なら、話は違ったであろう。
だがしかし、谷によって負かされたのは大勢のメイジである。
統治する側の人間たちにとって、たった一人の平民に、そうされたとあっては面目が立たない。
不満がある生徒は確かに居た。だがどうしようもないとわかると、今度は忘れるように努力した。
報復するにも、あれほどの不死身さを見せられ、あれほどの圧倒的な力を見せられては、
そんな気も失せてしまい、皆諦めを覚えていた。
この谷がしでかした一大事は、平民たちの間で嬉々として語られる噂話程度のものとなって、事態は収束していった。

それに、ギーシュが決闘を谷に持ちかけたことも、結果的にではあるがルイズたちの助けになった。
何故なら、谷はあの決闘がなくとも、いつか感情を抑える限界が訪れ、爆発していたであろうからである。
もし、あの場が双方の同意で成り立った決闘という形式のものでなかったら、責任問題はさらに重大であっただろう。
もしかしたならば、谷は処刑になっていたかもしれない。勿論できるかどうかは別としてだが。

オスマン氏は思い出したように、部屋を見渡しながら言った。

「ところで、肝心の使い魔がおらんようだが?」

痛いところを突かれたルイズであった。
この騒ぎを起こした当事者がいないのだから本来であれば、お話にならない。
ルイズは俯いて言った。

「スミマセン。連れてこられませんでした……」

正直に答えたが、果たしてこれでいいのかとルイズは思った。
だが、そんなルイズの心情とは裏腹にオスマン氏は明るく言った。

「まあよい。誰も責めてはおらん。だがしかしじゃ、これからこのようなことが続くようであれば、
 こちらとしても、対応に苦慮する事態になるであろうことは肝に銘じておいて欲しい。わかったかの?」

「はい。重々承知しています……」

オスマン氏に、そう返事はしたものの、ルイズには自信がなかった。
退出を命じられ、谷のいる所に向うルイズの足取りは重い。
谷をこれから自分がどう扱えばいいのかまったく見当がつかないからだ。

あいつは『シマサン』にしか興味がない……わたしのことなんて視界の端にもいない。
言うことを聞かせることができるのも、たぶん『シマサン』だけ……。
『シマサン』?……あっ!

ルイズは何かを閃いた。
その時導き出した答えは、確かに有効なものかもしれなかった。
だが、一歩間違えれば一気に奈落の底に落ちてしまうようなものであった。
しかし、ルイズには他に方法がなかった。それに、……谷を思うがためでもあった。
ルイズは、廊下を歩く足を速めて、谷のいる場所へ向かった。
345名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 23:49:20 ID:EieGrcVk
うおおぉ、谷の人までキターーッ!!!支援
346谷まゼロ六話:2008/12/12(金) 23:49:59 ID:hR3aERzu

もう日が沈みそうになっている時刻。
一方の谷は厨房の隅で膝を抱えて座り込んでいた。
そのあたりだけ負のオーラが充満している。
谷は、メイジたちを全員なぎ倒し、一しきり泣いた後、
誰に言われたわけでもないのに、厨房にいきなり来た。
そして今の今まで、一言も喋りもせず、ずっと蹲っている。
谷の近くでイスに座るシエスタは、見るに痛々しい谷の姿を少し寂しげな顔を向けながら、
ボロボロになった谷のガクランの上着を針で縫って修繕していた。

そこに、ヴェストリの広場の惨状を見に行っていた料理長のマルトーがやってきた。
マルトーは、決闘で平民である谷が貴族であるメイジたちを打ち負かしたことを伝聞で知り、
自ら飛ぶようにして、その現場をこっそり見に向っていたのであった。
興奮冷めやらぬマルトーが、ズカズカと谷に近づいて行った。

「おお!オレは見たぞ!!!人生これまで生きてきた中でもあれほど爽快な光景はお目にかかったことがねぇ!
 あの生意気な貴族のガキ共が、揃いも揃って、地べたに口づけしてやがった!流石は……っ!むぐっ!」

谷に歩み寄って、豪快な口調で捲し立てるマルトーの口をシエスタが、慌てて塞いだ。
小声でシエスタはマルトーに責めるように言った。

「マルトーさん!!ダメです!今タニさんに喋りかけちゃダメです!!」

眉毛をへの字に曲げたマルトーがシエスタの手を下ろさせると、
冗談じゃないぜ。と言わんばかりにシエスタに詰め寄った。

「シエスタ。もしかして『我らの拳』を独り占めにするつもりか?ん?
 そういうことをしたくなる気持ちもわかるが、ちょっとぐらい分けてくれてもいいじゃないか!」

シエスタの意に反して、マルトーは大きな声でそう言った。
だが、シエスタはそんなマルトーの様子に危機感を覚えていた。
谷の方をチラチラと見ながら言った。

「ち、違います。そんなのじゃないんですっ!」
「何が違うんだ?」
347名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 23:51:44 ID:LlO7XKsa
マルトー空気嫁
348谷まゼロ六話:2008/12/12(金) 23:52:51 ID:hR3aERzu
シエスタはマルトーに事の詳細を伝えようとした。

無言の谷が厨房に来てから後、その谷を追ってきたルイズが厨房を訪れたのだ。
その時、シエスタはルイズから、谷ついて色々聞いたのだった。

ルイズが言うには、谷は今混乱状態にあって、話が出来る状態ではないこと。
召喚されたことにより想い人と離れ離れになっていることがその要因になっていること。
慰めの言葉も、称賛の言葉も、今は煩わしいものでしかないであろうこと、
下手につつくような真似をして怒りを買えば、ルイズ自身も止めることができないということ。

そしてそのルイズから、何やら谷と面識があるらしきシエスタに谷を見ておいてくれないかと頼まれたこと。
それらを掻い摘んでシエスタはマルトーに説明した。

「マルトーさん。厨房が、そのヴェストリの広場みたいになっちゃいますよ?いいんですか?」

シエスタはまるで脅すかのようにマルトーに言った。
マルトーの頭の中にヴェストリの広場の光景が蘇る。
もし、自分の大事な厨房があのような有様になったとしたら……そう考えたら背筋に悪寒が走った。

「お、おう。そうか、それじゃあしょうがないなっ。……また今度にするか!」

マルトーは少し引きつった笑顔をシエスタに投げかけた後、厨房の奥へ消えていった。
シエスタはホッと胸をなでおろした。
確かに、この場で暴れられでもしたらという心配もしていなかったわけでもない。
だが、今はただ単に谷をそっとして置いてあげたかったというのが本当の理由であった。
それは単純に谷が、かわいそうに思えたからだ。身も心もボロボロで、儚く、
そして誰が見ても憐憫の情を抱くに違いないと断じていいほど、谷はその身に寂しげな暗さを帯びていた。

シエスタはそれほど『シマサン』に会えないことが辛いのだとわかった。
そして、それほど谷に好意を寄せられている『シマサン』が羨ましいとも思った。

シエスタは、先ほど座っていた椅子にまた座り、黙ってチクチクと裁縫を再開した。
おそらく、自分が谷にしてあげられることはこれぐらいであろうと思ってシエスタが勝手にやっていることであった。
349谷まゼロ六話:2008/12/12(金) 23:55:46 ID:hR3aERzu
そんな様子を外から、厨房の窓を覗きこんで見ていたのはルイズであった。
どのタイミングで入って行っていいのか分からず戸惑っているようにも見えた。
そこに後ろからとある男から突然声をかけられた。

「どうだい?彼の様子は?」

吃驚して振り返ったルイズは、その男の姿を見てさらに驚いた。

「ギーシュ!?あんた生きてたの!?」

そこには、谷の決闘相手であったギーシュが立っていた。
ルイズは、谷によってギーシュは学院の遥か彼方に飛ばされ、空中分解したものだとばっかり思っていた。
ギーシュはどこか気不味そうにしている。

「その言い草は、ヒドイな……まあそう思っても仕方がない状況であったことは確かだが」

ルイズは、そう言うギーシュを頭から足先まで視線を泳がし、じっくりと見た。
そして有り得ないものを見たかのように驚き入った声で言った。

「……何で無傷なの?」
「……はっはっは!僕はどうやら悪運だけは強いらしい!あー……もしかして笑いごとじゃなかったかね?」

ギーシュはいち早く地面に伏せていたおかげで、運良くあの惨劇から免れていたのであった。
ジト目でルイズに見られているのに気がついたのか、ギーシュは申し訳なさそうに言った。

「僕はこれでも本当に反省しているんだ。彼が抱えている問題を知らずに不躾なことをしてしまったとね」

ギーシュの顔は真剣になっていた。窓から見える谷の姿を見ながら言った。
「詳しい事は勿論知らない。だが、彼が灯台の光を見失い、暗き海を彷徨う難破船であることはわかる」

谷の魂の咆哮。それを聞いていたギーシュは、谷に身震えるほどの恐怖を覚えながらも、
ある種の親近感を抱いていた。誰かを愛することに情熱を傾ける男として。

「……償いというのも変だとは思うが。このギーシュ・ド・グラモン、
 何か助けになれるのであれば、出来得る限りの助力を与えることを惜しまない。
 そう彼に……まあ伝えられる時に伝えておいて欲しい。
 僕が直接言っても、言い終わる前に殴り飛ばされるのがオチだろうしね」

言い終わるとギーシュは、ルイズに別れの言葉を言って、その場を去っていった。
350谷まゼロ六話:2008/12/12(金) 23:57:47 ID:hR3aERzu
ギーシュを見送ったルイズは、唇をきつく結んだ。覚悟を決めているのだった。
ギーシュが言うように、下手をすれば話しかけただけで殴り飛ばされるであろう。
それは、もちろんルイズも例外ではない。例外はただ一人なのだから。
しかしルイズは引くわけにはいかない。
意を決して厨房のドアに手をかけた。

ルイズが厨房に入ると、まずシエスタと目が合った。
何か変化があったかシエスタに目で聞く。だが、シエスタは黙って首を横に振った。
谷は今もまだ、固い殻に閉じこもったままであった。
ルイズは腹をくくった。谷に近づき、喋りかけた。

「ねぇタニ。……話があるの」

谷はルイズの言葉に応えない。
だが、ここまでは予想通りであった。
次にルイズは、谷が絶対に何かしらの反応を見せるであろう事柄を言い放った。

「もし……、もしもよ?あんたを元の場所に帰す方法があるかもしれない……っていったらどうする?」

そのルイズの言葉を聞いた瞬間、
まるで、獲物に飛びかかる狼のような俊敏さで、
谷は物凄い勢いで立ち上がり、ルイズの襟口を体ごと持ち上げるようにして掴んだ。
のっぴきならない必死さでルイズを捲し立てる。

「おい!!!なら早く帰せ!!!島さんがいる世界に俺を帰せ!!」

切実な願いであった。何故なら谷は島さんが居なければ生きている意味がなくなるのだから当然といえる。

ルイズはぎりぎり足先が付く程度に持ち上げられていた。
喋り辛くなるほど、息苦しかったが懸命に堪えた。今この時が正念場だと自分に言い聞かせて。

「……っあ、あくまでも『可能性』よ。呼び出す魔法があるなら、逆に送り返す魔法があるんじゃないかっていう……。
 ……でも、無いと決めつけるのは早すぎると思うの。色々調べればもしかしたら……わたしも一緒に探すから」

谷はルイズから一度視線を外し、そのことについて考えてみた……。
そして再び視線を戻した谷は、当然の疑問をルイズに投げかけた。

「見つからなかったらどうすんだ?」

その言葉には、言い表せないほどの迫力と殺気が込められていた。
ルイズは、挫けそうにな心を奮い立たせ、喉から絞り出すようにして言った。

「……見つからなかった時は……わたしを好きにしていいわ。煮るなり焼くなり、殴り飛ばすなり」
351名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 23:58:03 ID:F4mYUnNT
俺、谷まを読み終わったら寝るんだ……支援
352谷まゼロ六話:2008/12/12(金) 23:59:45 ID:hR3aERzu
谷はルイズの目の奥に宿る決意を見た。
確かに、可能性についてのいい分には嘘が含まれていないようではあるし、
もし、目的が達成されなかったときは責任をとるという覚悟もあると、谷にもわかった。
あらゆる感情が含んでいるであろう威圧的な谷の言葉がルイズの耳に届いた。

「見つからなかったらぶっ殺すからな」

そこに冗談の響きはない。

「ええ……わかってるわ」

谷はルイズの額に人指し指を突き立てて言った。

「だけどな、オレはそんなに待てないぞ!今すぐにでも!!本当なら今すぐにも島さんに会いたいんだからな!!」
「ど、どどど、どれくらいなら待てるの……?」

ルイズは焦っていた。何故なら、使い魔を送り返す魔法を見つけるというのは、
誰も聞いたことも、そして誰も試みようとしたことがないことを、一から探すという気の遠くなるような苦行であるからだ。
手がかりという手がかりも全くないし、そもそもそんな魔法があるかもどうかすらわからない。
そんな、広大な砂漠の中から一粒の宝石を探すような作業に、谷がどれだけ付き合うかルイズにはわからなかった。

まず、学院の書庫を漁って、城下町にも調べに行って……とてもじゃないけど短期間は無理だわ。
谷はどれくらい待ってくれるかしら?
一年?いやそんなに待てるわけがないわ。半年?もしかして一か月なんて無茶言わないわよね?

谷はキッパリと言いきった。

「1分だ!!!」

「いっぷっ!?なっ!ええええ!!!?無理無理無理無理!!」

あまりの谷の無茶ぶりにルイズは驚き慌てふためいた。
まさか、靴下を履くだけで過ぎてしまうような時間を言うとは思いもよらなかった。
いくらなんでも、谷が言うような時間では何もできないので、
仕方がないと言わんばかりに、ルイズは切り札を出すことを心の中で決めた。
本当に最後の切り札であった。だが必ず効果があると確信があった。
ルイズは谷を責め立てるように言った。

「そんな堪え性がない男は『シマサン』に嫌われるわよ!?」

突然、谷のルイズを掴む手から力が抜けた。
谷にとって、島さんに嫌われるということは、心臓を銃弾で撃ち抜かれるより致命傷となり得ることであった。
これほど恐ろしいことはない。
谷に言うことを聞かせる方法として、ある意味これ以上姑息な手はないとルイズ自身も思ってはいたが、
なす術がこれしか残っていないのだから、仕方がないと自分に言い聞かせていた。
だが、これほど効果があるとは思わなかった。
魔法がほとんど使えないルイズにとっては皮肉ではあるが、それはまるで魔法のようであった。
353名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 00:00:33 ID:NlyynvMU
支援
354谷まゼロ六話:2008/12/13(土) 00:02:21 ID:8KFGC8dY
「っお、お前……なんでそんなこと言えるんだ?」
「わ、わたしも、同じ女だからよ。と、とりあえずすぐキレるような男をいいと思う女はいないはずよ、ねえ?」

ルイズは、シエスタに顔向けた。
突然振られたシエスタは、慌てふためいていた。
だが、ルイズの顔がまるで藁にもすがるような表情になっているのを見てしまったシエスタは協力するしかないと思ったのだった。

「え、ええ。そうですわ!私もそう思います」
「だ、そうよ!シマサンに嫌われるわよ!それでいいの!?」
「タニさん!頑張ってください!シマサンに嫌われないために!」

「そっそうか。……そうだな。それにしてもオマエら、怖いこと言うな」

谷は、いつも通りというわけには行かなかったが、少しでも希望が見えてきたことにより。
なんとか前を向けるようにはなっていた。

っそ、そうか……そうだよな……まだ諦めるのは早いよな。

谷はルイズから手を離した。
ルイズはニンマリと笑顔になった。ここまで上手く行くとは思ってなかったからだった。
そして、つい調子に乗ってしまった。
突然ルイズは拳を握りしめ、体の前に持ってきて、谷に向って力強く言ってのけた。

「いい?タニ。これは言わば、あんたに課せられた『恋の試練』なのよ!!!」

「『恋の試練』!!?……なんだソレ」

ルイズの背景に稲妻が走ったような幻覚が見えた気がした。

「……」
「……」

自分の発言のあまりの恥ずかしさにルイズの顔は耳の先まで真っ赤になっていた。

な、なななにわたしこんな恥ずかしいこと口走ってんの!?バカじゃないの!??
もう……穴があったら入りたい……。

シエスタが慌てて助け船を出した。

「あの!あ、あれですよ!ほら、あの、えーと……ミス・ヴァリエールが仰りたいことというのは……。
 そうっ!これを乗り越えられれば、お互いの心の距離が縮まるという意味ですよ。
 も、もしかして、シマサンもいなくなったタニさんを心配してヤキモキしてるかも……?」

谷は、先ほどのルイズの発言を忘れて、シエスタの言葉に反応した。

「っし、心配してくれるってことは!脈があるってことだよな!!?」

「え?……ええ!!」

たぶん、と心の中で付け加えたシエスタであった。
というよりも、相思相愛ではないのを今初めて知ったので、そのことを驚いていた。
よもや、片思いでこれだけ思いつめることができるのかと、シエスタはある意味感心した。

小さくガッツポーズする谷を眺めたまま、顔がまだ赤いルイズが、シエスタにこっそりと喋りかけた。
「助かったわ……あんた名前は?」
「シエスタと申します……」
「覚えておくわ……」

奇妙な友情が芽生えた瞬間であった。
355名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 00:02:45 ID:wgk1ffKD
・・・すごいけどアレな漢だ支援。
356名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 00:03:39 ID:VGI+R40E
支援・・・・

後で代理投下かましていいか?
357谷まゼロ六話:2008/12/13(土) 00:03:45 ID:8KFGC8dY
投下終了です。ありがとうございました。

数字に関しましては適当です。
それと、ギーシュの処遇はどうでしょうか。
その他大勢と一緒に吹っ飛ばすだけでは味気ないと思ってのことなんですが……。
358名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 00:07:44 ID:E2O5JVlC
乙でしたー。
谷の操縦法を覚えたルイズとシエスタ……ただ、やりすぎてリミッターを超えた場合にどうなるか、が問題ですね。
359ゼロの黒魔道士0/5(代理):2008/12/13(土) 00:08:10 ID:NlyynvMU
乙でしたー
まぁいいんじゃないですか?

代理投下入っても宜しいでしょうか? 0:10から投下します

416 :ゼロの黒魔道士1/5:2008/12/12(金) 23:37:56
いろんな人が本スレ投下してる中、乙できないのが辛い!!
eonetはじかれっぱなしにつき、またも代理投下願います。すいません。
360ゼロの黒魔道士1/5(代理):2008/12/13(土) 00:10:28 ID:NlyynvMU
参ります
――
「いやいやいや!まさかミス・ロングビルがフーケとはのぅ!残念なことじゃわい……」
……オスマン先生が悲しい顔をする
そうだよね……信じていた人が、実は悪い人だなんて、悲しいことだと思う……
「ところで、彼女は学院長が自らお雇いになったのですよね?どういった経緯ですの?」
「いや、それがそのー……酒場で……ケホンケホン」
「酒場?あの、オールド・オスマン?どういうことですか?」
……あ、仲間を見つけるのはやっぱり酒場が一番って聞いた気がするから、そういうことかなぁ……?
「い、いや、その、ちょいと飲んでおったら、目の前にそれはそれは見事な尻があったもんでな?」
……あれ?
「オールド・オスマン、まさか……」
「触っても笑ってくれたんじゃもん!折角だから、もっと触る機会が欲しかったんじゃもん!丁度秘書もおらんかったし!」
……えーとー……つまりこれって……
「ダメな大人の見本」
……タバサおねえちゃん、多分、大正解だよ、それ……


―ゼロの黒魔道士―
〜第十五幕〜 黒とゼロのワルツ


……眠ったフーケをそのままロープで縛って、シルフィードで帰ってきたボクたち……
(馬車は後で届けてもらうよう近くの農村の人に頼んだんだ……
速いのはいいんだけど……ボクは空を飛ぶなら馬車でゆっくりでいいんだけどなぁ……)
学院の衛兵さんたちに、フーケを引き渡して(フーケ、なんか悔しそうだった……)、
そのまま学院長室へ報告に行ったんだ……

「ま、まぁアレじゃよ!お、女の色気は怖いもんじゃよっ!な、なぁ、コルベール君!」
「なんでそこで私にふるんですか!?……あ、え、えぇそのいえ否定はしませんが……」
……えーと、これって……
「ダメな大人の見本市」
……タバサおねえちゃん、クリティカル率高いなぁ……

「あーえー、オホン!ともかく、諸君達の活躍は実に天晴れじゃった!君達3人には、王宮へシュバリエの爵位申請を出しておくからの!あぁ、タバサ君は既にもっとったから精霊勲章じゃな!」
……フーケを捕まえるって、そんなにすごいことだったんだ……今さらながら、よく無事だったなぁってホッとする……
「あ、あの、3人って…――ビビに、あの、私の使い魔には?」
……ルイズおねえちゃんが聞く……うーん、ボクは、別にそういうのは……
「すまんのう、彼は使い魔じゃしのぅ……」
「そんな!今回、ビビは――」
「あ、あの、ルイズおねえちゃん?ボク、ルイズおねえちゃんが無事だったから、それでいいんだ……シュバリエ、おめでとう!」
……うん、ホントに、無事でよかった……色々、危なかったけど……
「ふむ、若いながら謙虚で何より、じゃな!さてと、今晩はフリッグの舞踏会じゃ!フーケの件も終わったことじゃし、予定通り行うぞい!」
「そうでしたわ! すっかり忘れておりました!」
……キュルケおねえちゃんがすっごくうれしそう……
そっか、貴族の人って、やっぱり踊るんだ……
「今夜の主役は間違いなく君達じゃ!用意をしてきたまえ、せいぜい着飾るのじゃぞ?」
……ルイズおねえちゃんたちは一礼をしていそいそと学院長室を出ていく……
「ビビ?何ボーっとしてんの?」
「あ、ゴメン、ルイズおねえちゃん……ちょっと、オスマン先生に聞きたいことがあるから……」
……そう、今日は聞きたいことがいっぱいある……
「そう?あまり迷惑かけないようにね!お行儀よくね!」
「う、うん!」
361ゼロの黒魔道士2/5(代理):2008/12/13(土) 00:11:10 ID:NlyynvMU
……ルイズおねえちゃん達が出て行って、オスマン先生がゆっくり椅子に座りなおす……
「さてと……聞きたいこと?とは何かね、ビビ君」
「え、えっと、その、ま、まずはコレのことなんですけど……」
……フーケから取り返した『破壊の肉球』……
「ふむ?我が学院の秘宝じゃが、どうかしたかの?」
「あの、こ、コレ、ボクたちの旅したガイアでは『ねこの手ラケット』って呼ばれていた伝説の武器なんですけど……」
なんで、ここにあるのか、それが不思議だったんだ……
「なんと!!君の世界の!?ほぅ!とすると彼らは……いやはや、偶然とはおそろしいもんじゃ……」
「オールド・オスマン?どういうことなんですか?」

「ふむ、ありゃもう30年ほど前にさかのぼるかのぅ……王宮からの頼まれごとでな、ワイバーン討伐に繰り出したんじゃ」
……30年前……オスマン先生、そんな昔から王様に何か頼まれるぐらい偉い人だったんだ……
「それでの?ちょいと霧が出てきよったから休んどったら、まさに狙うべきワイバーンが上空に現れおってな!いやはや、あれほどの恐怖そうそうないわい!」
……それは、怖そうだなぁ……
「で、の?そんときちょーいと……まぁ、冷えとったからの?シモが近くての……」
「まさか、用を足しているときに襲われたというのですか!?」
……うわ……ボクなら絶対パニックになりそうだなぁ……
「いやはや、このときつかんどったのは杖ではなくまさにワシの杖!これがこのときはまだまだ現役まっさかりじゃったから……あの頃は良かったのぅ……」
「えーとー……それで、『ねこの手ラケット』の話はどこで出てくるんですか……?」
……オスマン先生、話が長くなりやすいのかなぁ……?

「お!?おぉ、そうじゃったそうじゃった!でまぁ、ワシのピンチに、その『破壊の肉球』を持った旅人がワシを助けてくれたんじゃ!」
「旅人……ですか?」
……旅人……?
「うむ、これが滅法強くての!ワシがモノをしまう前にあっさりと倒しよった!2人づれでの――名を確かエプサンとコリーヌ、じゃったっけ?」
「……イプセンとコリン……?」
「お!それじゃそれじゃ!イプセンとコリン!はて、知り合いかの?ビビ君」
……その名前は、お芝居で有名だから知っていた……
「イプセンとコリン……イプセンは実在の冒険家で、友人のコリンとの冒険の多くをお芝居の台本にした人です……」
お話の中に登場する『全てが逆様になったお城』には、ボクたち自身も訪れたっけ……
でも、なんでその2人が……?
「き、君の世界の!?なんと、するとこの『破壊の肉球』は異世界の!!これは研究しがいが!!」
……コルベール先生がキラキラと輝きだす……
362ゼロの黒魔道士3/5(代理):2008/12/13(土) 00:12:00 ID:NlyynvMU
「!!!ほ、本当ですか、ビビ君っ!!!で、で?で?で!?どうなりましたかっ!?」
……コルベール先生、近くによると、本当に眩しい……
「え、えと……その、体が軽くなって、いつもできないような動きが……」
「な、なんと!?お、オールド・オスマン!!これはやはり……」
「ふむぅ……そうじゃの――ビビ君、それは『ガンダールヴ』のルーンじゃよ」
「が、『ガンダールヴ』?」
何かの……名前なのかなぁ……?
「始祖の使い魔、『神の左手』とも言われておる……あらゆる武器を使いこなし、勇猛果敢にして、主を守る伝説の存在じゃよ」
「そのルーンがビビ君にっ!いやこれはもう……あぁ、研究したい!!」
……な、なんかすっごいことになっちゃったみたいだ……
「あの、でも……確かに、この……えーと、『ガンダールヴ』のルーンですか……?がキラキラしたとき、こう……体が軽くなったり、力が強くなったりはしたんですけど……」
「けど?何かあったのかね?」
「……魔法を使うことを忘れちゃったんです……えーと、魔法そのものを忘れたってワケじゃなくて……こう……頭がカーッとなったって言うか……」
「ほう…――おもしろいのぅ」
オスマン先生が髭をしごきながら考え込む……
コルベール先生はキラキラする頭をポリポリしながら、ちょっと考えて、何かを思いついたみたいに顔をあげた……

「――…仮説、ですが1つ」
「ほう?言うてみぃ、コルベール君」
「『ガンダールヴ』、は伝承によると『あらゆる武器』を使いこなすとありますが、『魔法を使った』という記録は聞かれません、となると…――」
「――…『ガンダールヴ』のルーンは武器を自在に操らせるが、それに集中させてしまう。それにより他の行動が抑制されてしまう、ということかね?仮説の域を出んのう……」
……あれ?そういえばこの効果って……
「……『バーサク』……?」
「何じゃ?ビビ君」
「あ、えぇと、『バーサク』っていうのは……」
『バーサク』……武器攻撃の力が上がる代わりに、たたかう、しかできなくなる状態異常……
……ボクみたいな援護役がなっちゃうと、大変だからって、用心してたっけ……
「ふむ?じゃから『バーサク(狂戦士)』……味のある名付け方じゃのう?しかし、正確に『バーサク』と同じ状態、というワケじゃないんじゃろ?」
「う、うんそうです……こう……『バーサク』のとき以上に力は出るんですけど……意識はもっとはっきりしてるって言うか……ただ、ちょっと頭がカッと……なっちゃって……」
……ルイズおねえちゃんを、守ろうとして……逆に助けられることになっちゃった……

「オールド・オスマン、つまりこれは……」
「ふむふむ、いやぁ、なかなかに奥が深いようじゃの、『ガンダールヴ』のルーンは!ビビ君、また何か分かれば教えてくれんかの?」
「あ、は、はい!」
「さてさて、ボヤボヤしとってもしょうがあるまい!おぬしも主役じゃて、舞踏会に備えんと」
「え?ぼ、ボクも舞踏会に?」
……いいの、かなぁ……?
「いつまでもここにおっちゃ、ミス・ヴァリエールがワシを恨みよるわ!さっさと行っておあげ!」
「は、はい!あ、あのその……」
「ビビ君、何かあったらいつでも教えてくれたまえ!!しかし『バーサク』とは……ブツブツ……」
「はいっ!」
……『ダメな大人の見本市』だけど……いい先生たちで、よかった!
363名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 00:12:13 ID:EIyMn/SQ
支援
364ゼロの黒魔道士4/5(代理):2008/12/13(土) 00:13:07 ID:NlyynvMU
「で?よぉ、相棒……中入んなくていいのか?俺様主役なのに……」
「う〜ん……ちょっと、中はキラキラしすぎちゃってるから……」
……舞踏会は、お芝居の中よりももっともっとキラキラしてて、なんか入りにくかった……
だから、ボクはデルフをはなし相手に、こうしてバルコニーでのんびりおしゃべりすることにしたんだ……
「大丈夫だって!ほれ、『フレア剣』!あれやりゃ俺様だって貴族の坊ちゃん嬢ちゃん以上にギラギラしてみせるぜっ!!」
「……あれ?デルフ、嫌がってなかったっけ?……『フレア剣』……」
「いやー、案外あれが慣れると病みつきになりそうでなぁ、あの感覚が……」
……そういうものなのかなぁ……?

「あら、ビビちゃん!そんな隅っこで剣とおしゃべり?」
「あ、キュルケおねえちゃん!……すっごいね……」
……キュルケおねえちゃん、いつもの制服よりも……ずっとずっと、迫力がある……
「ふふ〜ん♪お陰さまでね、寄ってくる虫相手が大変よ〜♪」
……虫?……出るのかなぁ……蚊とか……
「……あ、そういえば、タバサおねえちゃんは?」
「タバサなら、あそこよ、ホラ、テーブルのところ……」
「……すっごいね……」
キュルケおねえちゃんが指さした先には……お皿の山の陰からちょこんと覗く青い髪……
……タバサおねえちゃんなら、クイナぐらい色々食べちゃいそうだなぁ……

「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール嬢のおな〜り〜!」
……一際大きな歓声が、入口の方からさざ波みたいに伝わってくる
「あら、着飾ったわねぇ!色気は私に劣るけど」
「おぅおぅ!馬子にも衣装だな、こりゃ!」
「……すっごいや……」
……ルイズおねえちゃんは、まるで、お姫様みたいだった……
真っ白なドレスに、うっすらとした化粧……何人もの男の子たちが声をかける……『モテモテ』だなぁ……
「あらあら?キョロキョロしちゃって……なるほどね、じゃ、ビビちゃん、また後でね〜♪」
「あ、うん、またね……」
キュルケおねえちゃんはちょっと意味ありげな笑顔を浮かべて男の子たちの輪の中に戻っていった……

「あー!こんなとこにいた!!ビビ!探したわよ!!」
「あ、う、うん、ゴメンなさい……」
……ちょっとしてから、バルコニーにルイズおねえちゃんがやってくる……
室内からの灯りで、シルエットがよりくっきりして……うん、きれいだなぁって思うんだ……
「……ルイズおねえちゃんは、踊らないの……?」
「ん?ん〜……釣り合う殿方がいなくてね〜……」
「ふ〜ん……」
ダンスって、やっぱり釣り合うとかあるんだな……うーん、ボクには無理そう……
「そ、それに……そう!つ、使い魔が1人で突っ立ってるのは、主としてどうかと思うわけよ!!」
「え?え?え?」
……ルイズおねえちゃんがビシッとこちらを指さす
「使い魔として……そう!ダンスの1つも踊れないとしめしがつかないでしょ!ヴァリエール家の使い魔としては!!」
「え?ど、どどど、どういうこと?」
……まさか……
「はぁ……分からないわけ?……うーん、しょうがないわねぇ……」
スッと、フワッと、ルイズおねえちゃんがその手をボクに差し出して……
「踊ってくださらない?ジェントルマン」
……ボクと、だ、ダンス!?
「え、え、えぇぇ!?ぼ、ボクと!?いや、で、でもでもでも、ぼ、ボク踊ったことないし……」
「いいのよっ!ホラ!私の手をとって、さっさと中に入る!」
……結局ズルズルと引きずられるボク……
「う、うわぁぁぁぁ〜〜……」
「相棒〜、がんばれや〜!カカカカ!青春だねぇ〜!!」
365ゼロの黒魔道士5/5(代理):2008/12/13(土) 00:13:44 ID:NlyynvMU
「はい、そこで右、左、ターン……うん、はじめてにしてはなかなかじゃない!」
「う、うーん……そ、そうかなぁ……」
……どっちかっていうと、振り回されてるだけな気もする……
「――…あのね、ビビ」
「?どうしたの、ルイズおねえちゃん?」
くるりとターンをしながらルイズおねえちゃんがポツリとしゃべりはじめる
「――…私、もっと強くなるから、あんたに負けないくらい、強くなるから!」
「……うん!応援するよ、ルイズおねえちゃん!」
……それは、きっとルイズおねえちゃんの『できること』だし、『やりたいこと』…
「あんたよりずっと強くなって、あんたの『フレア』や『コメット』ごとぶっとばしちゃうんだから!」
「……それは、どうかと思うなぁ……」
……ちょっと、ボクは苦笑する

……ボクも、もっともっと強くなりたい、ルイズおねえちゃんを、もう危ない目に合わせたくない……

……色んなことがあった日の夜は、2つの月がとっても綺麗で、くるりくるりと過ぎていった……

――
以上です。お願いします。
そろそろテンプレから離れてオリジナル展開に入れるかなーと思います。
すごい人たち多い中、こんなヘボいのでお目汚し毎度すいません。
366名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 00:14:28 ID:NlyynvMU
投下完了
367名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 00:19:30 ID:0xsje1Ca
支援

もうヨクサル絵でしかキャラが浮かんでこない
368名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 00:21:25 ID:PLrEJTpI
黒魔道師の方、乙。

ところでFF9やってないからよくわからんが、「○○したんだ」ってのはビビの口癖か何かかね?
369名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 00:25:05 ID:Apq8+S3N
ビビはだいたいこんな口調
というかエンディングのモノローグというか

ジタンが召喚されてたらおもしろかっこよくスマートに物事が進むんだろうか
370名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 00:29:20 ID:LkNWi5Uc
谷と黒魔道士の人、そして代理投下の人乙。

谷まゼロを読んで、谷仮面を読み直してみたんだが…。
物理耐性、電撃耐性(常人悶絶レベルのスタンガン無効)、技に対しての適応力あり、
弱点はスピードが遅く、テクニックとスピードのあるタイプに弱いくらいなもんだ。

それも島さんパウアが上がれば、ほぼ縮地レベルのスピードまで行くし…。
誰か清河か、最低でも中岡あたりを呼ばねば止められん。
371名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 00:29:44 ID:+8R1s0IY
顔を近づけて口裏を合わせるように頼むギーシュの顔面に頭突き!
372虚無と金の卵:2008/12/13(土) 00:43:02 ID:mbpe2nwy
投下ラッシュ続きますね。
ということで便乗。予約無ければ0:50より『虚無と金の卵』を投下します。
373名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 00:44:39 ID:D8vtDjB6
そろそろ、寝ようかと思っていたのに、投下ラッシュが凄すぎ〜!
なので、喜んで支援
374名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 00:48:25 ID:zCYVTxF6
なんなんだこの異常とも言える投下ラッシュは!?

祭か?祭なのか!?
もう乙と支援しっぱなしだ。
しかしながらまだ宴は続く!

支援は自重しないッ!
375虚無と金の卵 1/5:2008/12/13(土) 00:50:14 ID:mbpe2nwy
「ワルド!」

 混乱と焦燥がルイズを覆う。
 ルイズは、二人の切り結んでいた場所へ、馬を真っ直ぐに駆けさせようとする。
 だが、右手が――右手袋に変身したウフコックが、それを押しとどめた。
 手綱が後ろへと引っ張られ、馬は慌てて急制動を駆ける。

「落ち着け、接触するな!」
「だ、だって! ワルドが! 死んじゃう!」

 取り乱したルイズに対して、ウフコックが手袋越しに叫ぶ。

「プロ同士の戦いに君が突っ込んでどうする! 魔法で勝てるのか!? それとも素手で戦うか!?
 戦って死ぬことが君の仕事か!」

 ウフコックに怒鳴られる――召喚して以来、ルイズにとって初めての体験である。
 その驚きで、一瞬ルイズの動きが止まる。
 驚愕による心の空白を埋めるように、落ち着いた声でウフコックはルイズに話しかける。
 気付けば、ルイズの右手からいつもの鼠の姿を表に出していた。真っ直ぐな視線でルイズを見つめる。

「……君の仕事は、生きてアルビオンに辿り着くことから始まるんだ。飛び出したいのはわかる。
 だが無策に飛び出したところで何も事態は変わらない。何が起きていて、何をすべきか、冷製に考えるんだ」
「……で、でも、どうすれば……!」
「まずは出来る限り状況を確認しよう。君はワルド、と呼んだな。剣が突き刺されるのを見たが、今は影も形もない。
 もしかして魔法ではないか?」
「……え? あ、そうだ……『遍在』……!」

 ルイズは改めてワルドを探す。
 そこにワルドの姿は影も形もなく、剣を傾けたまま、呆としている少年の姿があるばかりであった。
 アンリエッタの言葉をルイズは思い出す。確かに、『裏切ったのは遍在の使い手』と話していた。
 ――おそらく、ワルドは殺されていない。未遂なのだ。
 決定的な事態が先送りされたという安堵と不安をルイズは噛みしめつつ、やっと冷静に考える余裕が生まれた。
 今、目にしたこと。平民の男が貴族に襲いかかっていたのだ。
 考えられるのは、まず一つ。あの平民が貴族に襲いかかるような、後先も考えない盗人か何かであること。
 そしてもう一つ。
 ワルドがもはやトリステインの貴族などではなく、平民に追われても文句の言えない立場であること。
 後者が決定事項であることは疑いようもない。
 だが、前者の可能性も否定しきれない、とルイズは思う。
 レコン・キスタも何も知らない無謀な盗賊の可能性もあるのだ――そんな誤魔化しで、心を塗りつぶそうとする。

「してやられちまったな、相棒。こりゃあおそらく『遍在』だぜ。
 多分、グリフォンを落としたあたりだろう。砂煙に隠れて本体と分身が入れ替わってたんだと思うぜ」
「……まあ良いさ。どうせ行き先はわかってる」
 
376名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 00:50:57 ID:ZHKLAxLj
社長乙!
超ヤンデレのユベルも丸くなったもんだ。
しかしユベルは十代の魂と融合してるはずだから、十代の死後独立してるのは…
それに12次元宇宙を掌握していたユベルの力があって戻れなかった…
こうなると十代の奥さん、シエスタの祖母はまさか明日香かレイか?
多くの謎がどのように解かれていくのか、楽しみにしています。
377名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 00:51:25 ID:D8vtDjB6
支援
378虚無と金の卵 2/5:2008/12/13(土) 00:52:25 ID:mbpe2nwy
 辺りには物音一つ無く、峡谷に挟まれた、何処か荒涼とした街道が見えるのみだ。
 それなりに距離があるはずの少年の声は、明瞭にルイズの耳に届いてきていた。
 人影は少年しか辺りにはなかったが、少年とは明らかに別の、妙に甲高い男の声が聞こえてくる。

「……しかし、仕事が見られたな」
「娘っ子に見られたってどうってことあるめぇよ」

 少年が剣を鞘に納め、ルイズの方へ無造作に近寄ってくる。

「な、何よ、何か用!?」
「ルイズ、慌てて逃げ出すのも不自然だ。会話を合わせろ……いざというときは俺が出る」

 ウフコックはルイズだけに聞こえるよう呟く。
 そして密やかに変身し、マントの裾に隠すようにしてスタンロッドを出現させる。
 見た目に気を使ったのか、ルイズの持つ杖とそっくりのデザインで、先端の放電部だけが形状を異にしている。

「ちょっと尋ねたいんだが、さっきの男とは知り合いか?」
「……あ、貴方、平民よね。貴族になんて口の利き方よ! 人に尋ねる前に名乗るくらいしたらどうなのよ!」

 ルイズは興奮冷めやらず、つい喧嘩腰で答える。
 だが言い放ってから、はっと気付く。目の前の男がどれだけ危険か。

「……ああ、申し訳ない。貴族様と話すのは、慣れて無いんだ」

 少年は頭を掻きながら、ぶっきらぼうに謝る。
 一言で言えば、奇妙。ルイズはそんな印象を抱いた。
 見たところ、おそらく同世代。マントなど当然無く、くたびれた旅装を着ている――明らかに平民。
 この辺りでは珍しい黒髪、黒眼、そして握った剣だけが目を引く。
 また、背には一挺の銃と、手にしたものよりは短そうな剣を背負っていた。
 だが、顔だけを見れば、とても魔法衛士隊の精鋭と切り結ぶほどの強者には見えないし、有無を言わさず襲いかかる盗賊にも見えない。
 遍在とは言えワルドを易々と追い詰めていた光景が、嘘のように思えた。

「俺はサイト。ただの傭兵だ。念のため言っておくけど、山賊や物取りじゃあない。
 それは信じて欲しい。あんたに危害を加えるつもりはない」
「……そう」

 ルイズは、硬い表情のまま相づちを打つ。

「ところで……確かさっき、ワルド、って名前を呼んでいたよな?」

 少年の茫洋とした眼に、剣呑な光が混ざる。
379名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 00:52:34 ID:+8R1s0IY
支援
380虚無と金の卵 3/5:2008/12/13(土) 00:54:47 ID:mbpe2nwy
 
「……そうよ。確かに呼んだわ。ワルド子爵は私の昔の知り合いだったから、驚いたのよ……。
 もっともしばらく会っては居なかったけど」
「知り合い? 仲間じゃあなくて?」
「そうよ。文句でもあるの?」
「そんなつもりは無いけどな……。こんな時期にアルビオンへ行く貴族ってのは、大分珍しい」
「あんただって、見るからに怪しいじゃないのよ!」
「ま、そりゃあわかっちゃいるけどな」

 少年の訝しげな目つきや舐めた口の利き方が勘に障ったらしく、ルイズは妙に怒っていた。
 他人に打ち明けられない秘密の任務とはいえ、ルイズはアンリエッタから直々に受けた依頼の真っ最中である。
 平民に疑われるなど言語道断のはずであった。
 第一、平民がへりくだりもせずに貴族に物を尋ねるなど、トリステインならば常識外れも良いところだ。
 ルイズがさらに怒るかに見えたそのとき、ルイズのマントの裾からウフコックが現れる。
 変身する瞬間がサイトの視界に入らぬよう、器用に元のネズミの姿に戻っていた。

「落ち着くんだ、ルイズ。彼は警戒はしているが、害意を抱いているわけではなさそうだ」
「ウフコック……」
「ん……? ネズミ?」
「初めまして。俺はウフコック。ルイズの使い魔をしている」
「へぇ、ずいぶん洒落たネズミだな。俺はサイトだ。そして……」

 前触れもなくサイトは剣を抜き払う。
 ルイズとウフコックに緊張が走るが、それとは対照的に、剣の鍔元から暢気な声が響いてきた。

「おう、相棒。俺に喋らせてくれるたぁ珍しいじゃねーか」
「この剣が、相棒のデルフリンガーだ」
「……インテリジェンスソード?」

 こうして一人と一匹、一人と一振りが、奇妙な邂逅を果たした。
 
 
 
 
 
 
381名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 00:56:35 ID:D8vtDjB6
支援
382虚無と金の卵 4/5:2008/12/13(土) 00:58:25 ID:mbpe2nwy
「……そうか、本当にレコン・キスタじゃないのか」

 ルイズは街道の真ん中で馬から降りもせず、サイトの質問に乱暴に答えていた。
 サイトは、ルイズがレコン・キスタであると疑っていたようだが、ルイズはあくまで関係ないと突っぱねた。
 だがルイズが自分の姓名を名乗ってトリステインの貴族だと示したところ、サイトは呆気なく納得していた。
 サイトの話によれば、既にアルビオンでは、レコン・キスタの貴族が誰であるか周知の事実であるらしく、
 名前を聞いただけで無関係と判断したようだった。

「全く、変な勘ぐりされたらたまらないわ」

 ルイズは馬に跨ったまま、気丈に言葉を返す。

「……そうか、色々と悪いことしちまったな。知り合いの追われる姿なんて、見たくなかったろうに」

 思いがけないサイトの言葉に、ルイズは固まる。
 図星だった。今の状況は、ワルドがや国の衛兵や賞金稼ぎに追われる身になっているという証左なのだから。
 目の前の男が愚かな物取りや盗人であれば、幾分心は楽だったかもしれない――そんな考えをルイズは頭から振り払う。

「か、関係ないわそんなこと」
「……ん、まあ、気にしてないなら良いんだけどな」
「ところで、あんた自分のこと傭兵って言ってたけど、そっちこそこんなところで何してるのよ」
「仕事さ。アルビオンに雇われてレコン・キスタの連中を捜してるところだった」
「捜してる……って、メイジを捕まえようって言うの!?」
「もうお尋ね者のメイジさ。貴族じゃない」
「……あんた、ずいぶん自信があるのね」

 少なくともトリステインには、貴族と平民の間に絶対的な差がある。
 魔法を使えるか否か。たとえドットクラスのメイジであったとしても、ただの平民とは天と地ほどの差がある。
 だがそんなことを一切気にかけない目の前の男に、ルイズ自身、理由のわからない苛立ちを抱いていた。

「切った張ったくらいしか、特技がないもんでな」 かすれたような、疲労のこもった声で少年は言い捨てる。
「ま、相棒も俺も、メイジ相手の戦いなんざ慣れてるからなぁ」

 デルフリンガーがぶっきらぼうに口を挟み、それにウフコックが尋ねた。

「君が、彼と共に戦うのか?」 
「そりゃあ俺は剣で、相棒は剣士だからな。太陽が東から昇るくれぇ当たり前だぜ」
「……ふむ」

 ウフコックが、妙に興味深そうにデルフリンガーを見つめている。

「立ち話も良いけど、私達はアルビオンに行かなきゃいけないの。悪いけどそんなに暇も無いのよ」
「……ラ・ロシェールは間違いなく危険だぞ。アルビオンの外に居たレコン・キスタの貴族が集まって、
 王党派への反撃を狙っている。目に見える危険はまだ無いけど、正直言って一触即発だ。
 あんたは別に内戦に関わってるわけでも無さそうだし……」
「それでも、行くわ」

 無関心な表情だったサイトが、妙に驚いた顔をしている。

「へえ」
「……何よ」
「いや……なかなか勇気があるんだな。さっきの戦いだって、見てたんだろう?」
「……うるさいわね。そっちこそどうする気よ」

 ぶすったれた声でルイズは言葉を返す。

「俺も、ラ・ロシェールに向かう。仕事が失敗しちまった以上は戻って報告しないとな。何なら一緒に行くか?」
「なっ、なんでそうなるのよ!」
「街道も物騒だぜ。今のアルビオンは内戦で手一杯だから、ロクに山賊も取り締まっちゃいない。
 貴族とはいえ、流石に女の一人旅を見送るってのもなぁ……。だから、ラ・ロシェールに着くまで護衛として雇わないか?」
383名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 00:58:50 ID:zCYVTxF6
支援
384名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 01:00:05 ID:D8vtDjB6
支援
385虚無と金の卵 5/5:2008/12/13(土) 01:02:20 ID:mbpe2nwy
 
 確かに正論だとルイズは思った。もし秘密の任務でなければ、人足や護衛を雇っていて然るべき旅である。
 だが、未遂とはいえ自分の許嫁に剣を振り下ろした男だ。危険極まりないに違いない。
 ルイズは目の前の少年を、容易に信用する気にはなれなかった。

「みすぼらしいが、今晩寝泊まりできる小屋と厩舎も用意できるぜ」
「厩舎ね……」
「どうだ?」

 半日以上馬を走らせていたルイズには、魅力的な提案だった。
 ラ・ロシェールまでは二日かかると見積もっていた。月明かりを頼りに、夜通し道を進むことすら覚悟していたのだ。
 だが、ルイズの乗った馬も、今の戦いの空気に当てられたのだろう、長駆させているにも関わらず妙に興奮していた。
 ラ・ロシェールは山の上に存在する。道はそれなりに舗装されているとはいえ、今の状態で登り坂を駆けさせたら潰れかねない。
 道中で屋根付きの場所で寝られるならば、馬や人間の体力をどれだけ回復させられるだろうか。

「……さっきも名乗ったけど、私はヴァリエール公爵家の三女よ。もし私に何かがあったら、
 貴方の過失じゃなかったとしても貴方に責めが来るのよ?」
「そりゃ、放っておいたって同じだ。ここで別れた後で、もしあんたが誰かに襲われたとしたら、疑われるのは俺さ」
「……筋は通ってるわね。でも、私達は急ぎ旅なの。早くアルビオンに行かなきゃいけないの」
「船が着くのは次のスヴェルの月。つまりは三日後だぜ?」
「……え、うそ」

 ルイズは思わぬ情報に、ぽかんとした顔をする。

「ま、俺自身が信用できないって気持ちもわかる。初対面だし、剣を振り回してるところだったしな。
 無理にとは言わないぜ」

 ルイズは思案な顔をしつつ、ウフコックに声を潜めて尋ねた。
 当然、ウフコックならば相手の心の臭いを嗅いでいるはずだった。

(ウフコック、どう?)
(……嘘は付いていなさそうだ。企みの臭いも、安易な悪意の臭いもしない。
 気まぐれに商売っ気を出している感じだ。ふっかけられるかもしれないが、仕事に対しては信用がおけそうだ)

 ルイズは複雑に思う。
 少なくとも使用人や護衛として、雇われる側の人間として、彼が信頼できるという保証を得たのだ。
 また、ラ・ロシェールの状況と船の着く予定を知った以上は、無理押しして急ぐ必要性も薄れた。
 しかも今のようなトラブルが起きたことを考えると、このまま何の対策もせず無理に旅を続けるのも困難と
 ルイズの直感は囁いていた。――ルイズは複雑な感情を押し殺し、溜息混じり口を開く。

「……わかったわ。貴方の世話になるわ」
「交渉成立だな。宜しく、ご主人様」
386虚無と金の卵:2008/12/13(土) 01:04:34 ID:mbpe2nwy
以上、投下完了。支援ありがとうございました。
ラ・ロシェールまで妙に遠いです。早く派手なドンパチ書きたいなぁ。

ちなみに三浦健太郎御大やお前の使い魔さん同様、私も箱○買いました。
いやー、デッドラとオブリ面白いわ。
い、いちおう書いてるよ! 先の方のプロットで迷走してるけど!
387名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 01:10:06 ID:zCYVTxF6
乙!
箱○所持者多数みたいですな……

あぁ、気になるタイトルが徐々に増えていく。
ラストレムナントがサガシリーズを手掛けた方々によって作られてるらしく、一層箱○か欲しくなった今日この頃。
388名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 01:14:14 ID:D8vtDjB6
投下乙です。
ウフコックって、こーゆー時便利と言うか、
本当に頼りになる相棒だなっと。
続きが楽しみです。
389名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 02:11:40 ID:7QymSiT8
一瞬ウサコッツに見えてしまった
390名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 02:18:09 ID:ZHKLAxLj
>>389
アニマルソルジャーのあの子?
そういえばサンレッドの人続き書いてくれないかなあ。
391名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 02:19:06 ID:R80YrzbZ
Fallout買うんだ!絶対損はない
392名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 02:37:58 ID:X8m6M4pf
フロウウェンの人まだかなぁ
続きが読みたい
393名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 02:38:04 ID:aarBhG9A
箱といえばアイマスな俺参上
ウサコッツ出すならタレ耳先輩とデビルぬことPちゃんも欲しいな
394名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 02:53:34 ID:TX5g8SS2
>>391
無様だろ…?Fo3の質問スレ立てた>>1って俺なんだぜ……?
395名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 03:00:58 ID:8OYSuIcC
箱○の流れで言う

ボルソンさんが召還されました
396名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 03:04:37 ID:TX5g8SS2
せっかくだから俺は、ワンピース着てクマのかぶりものをかぶり、小型チェーンソーを持って返り血浴びてるフランクさんを召喚するぜ!
397名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 03:08:17 ID:bEHxA4gd
スカイダルトンマキバオーラインバッハ三世ですねわかります
398名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 03:08:50 ID:YL7dZTtT
フランクさん的には、スクープを世に出し損なったのを嘆くべきか、地獄から脱出できたのを喜ぶべきか微妙だな

あと、シエスタの手伝いでデザートを配ってる時とかにもルーンが光ってそうで困るw
399名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 03:08:51 ID:cPdS/VsX
>>396
召喚された瞬間殺され・・・・・死なないか。

七万の大軍と対峙した時面白そう。゚+.( ^ω^) ゚+.゚
400名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 03:13:21 ID:EIyMn/SQ
アニマルソルジャーの3匹を召喚ならルイズが喜び・・・あっ、デビル猫は確か満月だと真の姿になるんだっけ?
ゼロ魔世界の月は二つもあるからある意味最強なのか・・・
401名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 03:44:55 ID:DjlIkMcf
>>400
満月で変身はヘルウルフ君
402名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 04:00:01 ID:A2sDOKz1
>>399
ウィラメッテの総人口53594人を総滅(ゾンビとはいえ)できるんだから頑張れば7万くらいいけるはず。
403名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 04:10:13 ID:dsxgBmoB
マイケルの中身はレオパルドン、そんな風に思ってたことは一度たりともねえぜ
戦争男戻ってこないかなあ
404名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 04:46:41 ID:MKwCGXsW
戦争男ならシベリアの地吹雪で2人を道連れにして、散ってくれると本気で信じてたのになあ。
405名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 07:24:33 ID:EIyMn/SQ
>>401
ぐは!素で間違えてた!
ご指摘ありがとう
406名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 07:44:44 ID:lLcENXCt
>400
技術レベルの低い世界だと改造衝動を満たせないPちゃんが悲惨なんですけど
407名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 07:52:36 ID:MRjb0n2d
二子玉丼の手軽さと美味さは異常!
408名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 08:08:28 ID:YJ6a3jCn
P…魔スターP召喚…うん、ハルケギニア終了だなww
409名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 08:56:19 ID:dDC9d0iK
>>406
コルベール先生を仲間に引き込んで、魔法と科学技術を組み合わせた全く新しい改造ボディを生み出すとか
410名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 09:11:24 ID:eXh9YgH6
科学技術はコルベール、ギーシュ
特殊アイテムは宝物庫、タルブ
が基本だね
411名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 09:30:12 ID:5GoRRKhm
Pと聞いてプロフェッサーシャーボ召還
そして産まれるダムダムゾンゲルゲ……とか瞬時に連想した

疲れてんのかな.....
412名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 09:52:02 ID:VbAEz+NB
テイルズからバルバドス・ゲーティアを召喚
色々と次元を飛び越える人だからハルケギニアに飛んで来ても違和感無し。

…強すぎるけど理不尽なくらいにw
413名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 10:17:12 ID:ZbrdWYOy
ギーシュ「僕はメイジだから魔法d」
バルバトス「術に頼る屑どもがぁ!」

ギーシュ死亡。
414名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 10:39:01 ID:myLZk7hx
>>412
次元飛び越えるときたらやっぱりクレスでしょーがw
415名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 10:40:59 ID:1TBtJmyl
>>413
大概の相手が当てはまるw
つか絶対従わないから話が続かねえよw
416名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 10:49:24 ID:5GoRRKhm
>>413
「魔法なんざ使ってんじゃねぇ!!」
ですねわかります


そりゃ記すことも憚られるは……
417名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 11:09:25 ID:guoJzJix
>>411
取り敢えずミラーちゃんはルイズに叩き割られるな
後コルベールは全身ふっさふさに
418名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 11:30:04 ID:oap9z0P3
テイルズだったらゼロス呼ぼうぜ
419名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 11:33:55 ID:aarBhG9A
プロフェッサーと聞いてプロフェッサーコブラが浮かんだ
下手したらユベル付きで呼べるな
420名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 12:20:55 ID:9VQaP/ZJ
テイルズならアビスのシンクが面白い
劣っているゆえに、自分を高く保とうとするルイズ
劣化した存在だからこそ、自分を卑下して自暴自棄になっているシンク
主と使い魔の仲が最悪になるだろうけど、面白い話になりそう
421名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 12:32:04 ID:OA5zUlIk
>>413
対ギーシュ   = 前口上の途中で『俺と戦う資格はねぇ!』
対フーケ    = 通常攻撃でゴーレムを粉砕
対ワルド1回目  = 杖で突きながら詠唱する筈が三連→ハッハー!→いつまで寝てんだ!で涙目
対フーケ&傭兵 = 語る暇もなく蹂躙w
対偽空族    = 人質?何それ?って感じで粉砕w
対ワルド2回目  = 前回の反省から最初に魔法を詠唱して(以下略
対レコン    = 原作では逃げるがアナゴに後退の二文字はない。
対ワルド3回目  = 飛行竜で轢逃げ(マテ

ここまで来る間にルイズが殺される可能性…多すぎて測定不能
422名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 12:55:17 ID:1TBtJmyl
所で、ハルケギニアにライオンはいたっけ?
423名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 12:57:23 ID:ezxgR8+h
クロス先を考える流れっぽいので一つ、最近のはまり物から。

「空の軌跡 the 3rd」より原作終了後のエステルとヨシュア召喚。エステルは面倒見がいいし、いい方向でルイズを導いてくれそう。ヨシュアは問題対処役かな。
ルイズの成長にはすっごく良さそうではあるんだけど、一つだけ問題が。……ルイズがあのバカップルぶりに耐えられるかどうかだけが心配ww
424名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 13:01:06 ID:m6k2k/v7
じゃあパパスで
425名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 13:05:21 ID:VsKfzVys
ソウルイーターから主役二人召喚
魔女狩りの始まりですね
426名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 13:08:46 ID:iHDQSjvm
>>423
ヨシュアが居るとフーケ戦が一瞬で終わりそうだ
暗殺というか闇討ち的な意味で

ワルドも(ry
427名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 13:29:56 ID:5GoRRKhm
からくりからリーゼ&マサルとか

使い魔達がリーゼに従って貴族涙目……?

あと問題は人形の投入時期だよな
序盤だとコルベール歓喜・分解コースだろうし……
428名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 13:33:19 ID:q6dFaVR8
みんな何を言ってるんだ。箱○といえばこのゲームだろう

つ 『アガレスト戦記』
公式HPhttp://www.compileheart.com/agarest/index.html

ところでちっちゃいエリスとソウルブリードするにはどのルートを進めばいいんですかー?
429名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 13:41:50 ID:cPdS/VsX
GoWのガチムチ兄貴達はどーですか。

SONYの方も召喚されたら大変そうだな。
430名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 14:06:31 ID:f30ODx3Z
GoWと言うと「プランBで行こう」の人達?
それともスパルタの人?
431死人の使い魔 ◆I9NRoyNg4k :2008/12/13(土) 14:10:36 ID:zgaVXRJp
昨夜の投下ラッシュに乗り遅れました。
予約がないようなので、5分後より投下させていただきます。
432死人の使い魔 ◆I9NRoyNg4k :2008/12/13(土) 14:16:37 ID:zgaVXRJp
第四話

 次の日、宝物庫にルイズは目撃者として呼ばれた。横にはグレイヴもいる。
彼は喋れないのであまり意味はなかったのだが、目撃者だったため一応連れて
きたのだ。
 さらにキュルケと知らない女の子が呼ばれている。その子の名前はタバサ
といい、キュルケの友人らしい。
 教師同士の話を聞いてみると盗まれたものは『破壊の杖』というもので、
盗んだ盗賊の名は土くれのフーケというらしい。
大胆にも壁にメッセージと自分の名前を残していったのだ。
 シュヴルーズが当直の責任を追及されていたが、オスマンの登場により
いったん話は終わった。シュヴルーズをかばうようにオスマンは当直の現状に
ついて尋ねる。どうやら、ちゃんと当直をしている教師はいないようだ。
 無理もないわねとルイズは思う。オスマンも言っていたが誰が魔法学院が
襲われると考えるのだ。しかし現実として宝物庫は襲われている。
「犯行の現場を見ていたのは誰だね?」
オスマンが質問する。
「この三人です」
 コルベールが答える。三人とはルイズとキュルケとタバサのことだ。
グレイヴは使い魔なので数には入らない。
 うすうすと分かってはいたが、やはりあの二人も目撃者らしい。すると
あのとき飛んでいたのは、フーケの使い魔ではなくタバサの使い魔だったの
だろう。何か手がかりを持っているといいのだけど。フーケの顔を見ているとか。
 詳しく説明してみたまえと言われ、ルイズは昨日のことを説明し始める。
グレイヴの銃のことは隠した。卑怯な気はしたが言い出せなかったのだ。
ルイズの説明を引き継ぐようにキュルケが話し始める。
「私はタバサと一緒に彼女の使い魔でちょっと出かけていたんですが、学院に
帰ってきたとき何か大きな音がしたんです。それで気になって見にいって
もらったんです」
キュルケは一息ついて続ける。
「彼女の使い魔はウィンドドラゴンなので、すぐに大きなゴーレムが見えました。
肩に黒いローブのメイジが乗ってました。それでそのゴーレムに近づいてみたん
ですけど、いきなりゴーレムが崩れたんです。すぐに周囲を見渡したんですけど、
黒いローブのメイジはいつの間にか消えていたので、引き返しました」
「顔は見えなかったのかね?」
オスマンが尋ねる。
「ヴァリエールも言ってましたが、黒いローブのせいで見えませんでした」
「ミス・タバサは?」
「見てません」
タバサが答える。
「手がかりはなしというわけか」
 周囲の空気が重くなるが、オスマンの秘書のロングビルが現れたことにより
一変する。彼女は朝からフーケの調査を行い、その居場所を突き止めた
らしかったのだ。
 彼女が言うには近くの森の廃屋に黒ずくめの男が入っていくのを、目撃した
人がいるらしい。
黒ずくめのローブと聞いてルイズはフーケに間違いないと思い、オスマンに
そのことを伝える。
 王宮に知らせ、助けを求めようとするコルベールに対し、オスマンは
自分達で解決すべきだとし、捜索隊の有志を募る。
「我はと思うものは、杖を掲げよ」
 誰も捜索隊に志願しないのを見てルイズは決心した。元はといえば
私が原因なんだから私が何とかしないと。そう思い杖を掲げる。
それを見てキュルケも杖を掲げ、続いてタバサも杖を掲げる。
キュルケはルイズに対する対抗心で、タバサはキュルケを心配して。
433死人の使い魔 ◆I9NRoyNg4k :2008/12/13(土) 14:17:45 ID:zgaVXRJp
「ではこの三人に行ってもらおうかの」
 オスマンが決断するが、ミセス・シュヴルーズが生徒達を危険にさらす
わけにはいかないと反対する。しかし、それなら自分が行くかね? と言われ
言葉をにごした。
 それからオスマンはタバサがシュバリエの称号を持っていることを皆に
伝える。つまり実力の認められているメイジなのだ。キュルケも知らなかった
ようでタバサに確認している。当の本人は誇らしげにするでもなく黙って
立っていたが。
 次にオスマンはキュルケについて、強力な炎の使い手と誉める。最後に
ルイズだがオスマンも困っているようだった。誉めるところを探すのに
苦労しているのが感じられる。結局、将来が期待されているという何とも
微妙なものだった。
 オスマンはちらりとグレイヴを見るが何も言わなかった。彼のことは
ガーゴイルであることも、『ガンダールヴ』らしいことも秘密なのだ。
 コルベールもグレイヴのことを見ていた。ミス・ヴァリエールが行く以上、
彼も行くだろう。彼女達のことを守って欲しい。彼にならそれが可能だと
感じていた。
 ルイズ達が行くことに決まり、ロングビルが道案内をしてくれることに
なった。移動手段としてオスマンが馬車を用意してくれる。一度解散し
おのおの準備をして、その馬車に集合することにした。

 ルイズとグレイヴは集合場所に一番乗りだった。周囲にまだ誰もいない。
グレイヴは昨日の二丁の銃に加え棺桶を持ってきている。デルフリンガーは
置いていかれて、部屋ですねていた。
 あの銃を持ってきているのは理解できる。凄い威力だった。役に立つかも
しれない。しかし何故棺桶まで持ってきているのか疑問だった。もしかしたら、
あれも銃なのだろうか? あの銃も変わった形をしているし、棺桶の形をした
銃もあるかもしれない。扱いづらそうだが。
棺桶を指さし尋ねる。
「もしかして、これも銃なの?」
グレイヴはうなずく。
やっぱりそうなのだ、しかしどうやって撃つのだろうか? 
それを尋ねようとしたらキュルケとタバサが来てしまった。できればあまり
知られたくないことだったので、話を打ち切った。
「ヴァリエール?」
「何よ?」
「あんた、その平民も連れて行くの?」
そうだった、キュルケ達にとっては彼はただの平民なのだ。何とか
誤魔化さないと。
「そうよ、こいつだって目撃者なんだから」
「まあ、いいけどね」
深くは追求せず、キュルケは肩をすくめた。
 最後にロングビルが来る。やはりグレイヴに少し驚いているようだったが
何も言わなかった。そして御者を買って出てくれる。
「ミス・ロングビル、手綱なんて彼に任せればいいのではないですか?」
グレイヴを見て言う。
「いいのですよ、私は貴族の名をなくしていますから」
キュルケがそのことについてさらに聞こうとしたが、ルイズが止めさせた。
キュルケは今度はグレイヴについて聞き始める。
434死人の使い魔 ◆I9NRoyNg4k :2008/12/13(土) 14:18:49 ID:zgaVXRJp
「ねえところで、その棺桶は何なの? さっきから気になってたんだけど」
キュルケがルイズに尋ねる。
「それは、その、グレイヴの持ち物で私もよく知らないの」
とっさに誤魔化そうかと思ったが上手く言葉が出てこない。
「変わったもの持ってるわね。これもあの箱に入ってたの?」
「そうよ、そこからグレイヴが持ってきたの」
「で、これ何に使うの? 大きくってけっこう邪魔なんだけど」
また答えにくいことを聞かれた。グレイヴに直接聞きなさいよという言葉を
飲み込む。彼がもし、その質問に答えてしまったらやっかいなことになる。
「わかんないけど、殴るとか? けっこう重いし、威力はあるわよ」
本当は銃らしいということは秘密にしたい。
「殴るって、あなた正気なの? 相手はあのゴーレムなのよ、大きさ見た
でしょう?」
呆れたように言われる。
そんなことは分かっていたが、いまさら引くことはできない。
「ゴーレムじゃなくてフーケを殴ればいいでしょう」
「あんたねえ、こんなもので殴られたら死ぬわよ? フーケを殺すつもり?」
いっそう呆れたような顔をされる。
「そもそもこれ、扱えるの? 触ってみたけどすっごい重そうよ?」
「大丈夫でしょ、グレイヴが運んできたんだから」
「けっこう力持ちなのね、顔も悪くないし。無口なのが減点かしらね」
喋れないと知っているはずなのにそんなことを言う。
「無口じゃなくて喋れないの!」
ルイズも律儀に言い返した。
「それにしても彼も災難よねえ、無謀な主人が志願したせいでこんなことに
付き合わなくっちゃいけないんだから」
気の毒そうにグレイヴを見ながら言う。
「今なら間に合うわよ、彼だけでも帰してあげたら?」
「うるさいわね、彼は私の使い魔なの。主人を守る義務があるわ。それに
あんただって、さっき納得したでしょう」
「納得というか、まさか戦わせるつもりで連れてきたとは思わないわよ。
メイジ同士の戦いに平民を巻き込むつもり? 私だってフレイムは置いて
きてるわよ。ちょっと力持ちなくらいじゃどうにもならないわよ?」
ちなみにタバサの使い魔、ウィンドドラゴンのシルフィードは上空をついて
きている。
「いいのっ、きっと何かの役に立つわ」
グレイヴの正体を喋れないルイズは強引に押し切る。
「こんな主人であなたも大変ねえ」
キュルケが同情の視線をグレイヴに向けた。

 そんなことを話しているうちに森の入り口に着く。ここからは徒歩で行く
ことになる。
 グレイヴはデス・ホーラーからのびている二本の鎖を両方の二の腕に一本
ずつ巻きつけ、両手にはケルベロスを持つ。右手には赤い装飾をされた銃、
左手には白い装飾をされた銃を持っている。両腕より鎖によって吊るされて
いる棺桶は太ももの後ろあたりにある。
 歩くだびに棺桶が揺れている。おそらくはあの格好がグレイヴの戦闘態勢
なのだろう。ルイズ達も杖をしっかり構え、ロングビルのあとをついていく。
 しばらく歩くと森が一部なくなっておりちょっとした広場になっている。
その中央に廃屋が見える。ロングビルの聞いた情報によると、あの廃屋の中に
フーケがいるらしい。
435死人の使い魔 ◆I9NRoyNg4k :2008/12/13(土) 14:19:43 ID:zgaVXRJp
 木々に隠れながら作戦会議をする。偵察を送り、フーケが確認されしだい
ゴーレムを作る暇を与えず一気に倒す、という作戦に決まった。あの
ゴーレムは脅威だ、できるなら戦いたくはない。
 問題は偵察を誰にするかだったが、グレイヴが自らがというような動きをする。
「えーと、あんたが行ってくれるの?」
首を縦に振るグレイヴ。
「ちょっと、ヴァリエール何言ってるのよ! こんなことに巻き込んだだけ
じゃなく、危険なことまで任せるつもりなの? メイジとしての誇りまで
ゼロになったの?」
「い、いいのよ、こいつは使い魔なんだから、主人のために危険な目に
あったって当然だわ」
つい心にもないことを言ってしまう。しかし真実を言わずに説得する手段は
浮かばなかった。それに彼に任せたほうがいい気がする。
彼はガーゴイルなのだ、むしろこういうことのために作られたのでは? 
という気までする。
「とにかく、あいつが行きたいって言ってるんだから、あいつでいいの」
キュルケがグレイヴを向いて言う。
「あなたもよ、なんでそんなこと言うのよ。いくら使い魔でもそこまで
しなくていいのよ?」
首を横に振るグレイヴ。
「まあ、志願してくれているのなら、彼に任せてみてもいいのではないですか? 
あの小屋にフーケがいると決まったわけではありませんし。何かあったら
すぐに彼を助けられるようにしておきましょう」
ロングビルがまとめるように言った。
「わかりましたわ、ミス・ロングビル」
キュルケが折れ、再びグレイヴのほうを見る。
「あなたもフーケがいたらすぐに逃げるのよ」
さらにからかうように付け加える。
「それと逃げるならゼロのルイズのほうじゃなくて私達のほうに逃げるのよ?」
「ツェルプストー! 何言ってんのよ、あんた」
「ゼロのルイズのほうに逃げちゃったら、助かるものも助からないでしょう?」
顔色を変えて言い返そうとするが、今まであの小屋を見張っていたタバサに
止められる。
「そこまで」
確かにここであまり長話をするわけにもいかない。もうすでにかなりの時間が
過ぎてしまっていた。
ルイズはまだ納得していないようで、あとで覚えてなさいよと呟いていた。

 グレイヴはルイズ達に顔を向け一度うなずき、走って小屋に向かう。
小屋の前に着くと間髪を入れずに、足で扉を蹴って中に入っていく。
しばらくするとグレイヴが小屋から出てきて銃で手招きをする。
 それを見て全員は周囲を警戒しながら小屋に寄っていく。
中を確認すると誰もいないようだった。ルイズ達が小屋に入るなか、
ロングビルは辺りを偵察してきますと周囲の森に消えていった。
小屋の中で手がかりを探していると『破壊の杖』が見つかった。
 ルイズがふとグレイヴを見ると『破壊の杖』に少し驚いているような
気がした。なにか気になることがあるのかと思ったが、デルフリンガーの
ときと同様、勘違いの可能性がある。深くは気にしないことにした。
それにしても、あっさり見つかったわねとタバサが抱えていた『破壊の杖』
を見る。
 突然、グレイヴの気配が変わり、彼は窓を破り飛び出す。
あわてて壊れた窓から外を見てみると、銃を構えているグレイヴの向こうに、
フーケの巨大な土ゴーレムが立っていた。
436死人の使い魔 ◆I9NRoyNg4k :2008/12/13(土) 14:21:08 ID:zgaVXRJp
以上で第四話を終了とさせて頂きます。
感想、批判、などありましたら
よろしくお願いします。
437名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 14:23:02 ID:cPdS/VsX
おつお

>>430
どっちでも召喚されたら面白そうだなぁと。
438名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 14:36:29 ID:lDZEqC+G
クレイトスさんを召喚だって?
とりあえず揺れるベッドは確実だな
439名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 14:42:09 ID:1Cof9Sjs
>>427
夢についてドス黒い笑顔で語りまくるダメ男の一つの頂点化したコッパゲか

あの頃の藤田は良かった・・・
440ゼロの黒魔道士代理:2008/12/13(土) 15:09:12 ID:yLJlcDr5
予約がないようでしたら代理投下を行って宜しいでしょうか
441名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 15:11:08 ID:NlyynvMU
オレはおkだが
442名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 15:13:54 ID:yvxKXlNi
>>440
駄目って言ったらどうする?
443ゼロの黒魔道士代理:2008/12/13(土) 15:14:39 ID:yLJlcDr5
>>442

orz
444名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 15:17:15 ID:rNBCzHXK
ちょw
445名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 15:23:32 ID:FPCZPiG5
test
446名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 15:24:05 ID:FPCZPiG5
投下支援OK
447ゼロの黒魔道士代理:2008/12/13(土) 15:26:11 ID:yLJlcDr5
えーと、投下していいんでしょうか
448名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 15:27:19 ID:Gb2DWc5E
支援する
449名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 15:28:49 ID:NlyynvMU
じゃ支援爆撃開始
450ゼロの黒魔道士 幕間劇ノ一 1/5:2008/12/13(土) 15:29:28 ID:yLJlcDr5
それでは投下します。
―――

今回はちょい番外編というか次回以降のためのサイドストーリーということで…
邪気眼入っちゃってます。よろしくお願いいたします。

―――

二人の男がおったとさ

一人は銀髪、一人は青髪

二人の男がおったとさ

一人は作られし存在で、
虚構の城に立てこもり、
世界を変えると意気込んで、
世を混乱に陥れ、
数多の命を奪いけり

   一人は無能と蔑まれ、
   豪奢な城の主となり、
   実の弟の命を奪い、
   その妻子をも苦しめて、
   狂えし王と囁かれり

一人は命もつきかけて

   一人は命を絶ちたくて

光の鏡に

   召喚の扉を

入ったそうな

   開いたそうな


―ゼロの黒魔道士―
〜幕間劇ノ一〜 Obey Me, or Defy Me ?
451ゼロの黒魔道士 幕間劇ノ一 2/5:2008/12/13(土) 15:30:01 ID:yLJlcDr5
一人の男は困惑の顔

   一人の男は驚愕の顔

一人の男はその手を月光にかざす

   一人の男はその手で顔を覆う

「――…どういうことだ?」
一人の男は困惑の声

   「――…くはははは!こいつはいい!本当に死神が現れた!」
   一人の男は狂った笑い

「死神?そう呼ばれるのは久しぶりだねぇ……それで?君は誰かな?」

   「くははははは!この俺が!無能の俺が!死神を召喚したぞ!さぁ、俺を殺せ!」

「やれやれ……つまり、君がこの僕を呼び寄せ、黄泉返らせた、とでも?」

   「なんだ?貴様、死人だったのか?俺が?弟を殺した俺がお前を現世に戻したと?傑作だ!」

「質問の答えになってないようだ……もう一度聞こう、君がこの僕を喚んだ、それでいいかい?」

   「あぁ、そうさ!死人よ!この俺がお前を喚んだ!光る鏡を越えただろ?それが何よりの証だ!」

「――…なるほど、すると君は死人の魂を喚ぶ悪魔の類というわけかな?」

   「悪魔?くははは!それはいい!あぁ、そうさ、俺は悪魔さ!始祖を恨む悪魔さ!」

「――…悪魔とはいえ、この命を永らえさせてくれたことには感謝しよう…それで?望みは?」

   「望み、だと?ふん、そんなものは、決まっている!俺を殺せ!現世に求むる物など何も無い!」
452ゼロの黒魔道士 幕間劇ノ一 3/5:2008/12/13(土) 15:30:34 ID:yLJlcDr5
一人の男は直感する
こいつは自分に似ていると
運命を恨み、それに抗い、全てを壊そうとした自分に

男自身は、憎んでいた弟に諭され、
全てを許容し、自分の持つ物を全て妹に与えることで贖罪とし、
命運尽きたと砂上の楼閣で果てるはずだったのだが、
何の運命かこの男に喚ばれた……ならば……


「そうか…でも、バカバカしくないかい?僕を喚びよせた悪魔殿?」

   「バカバカしい、だと?ふん、貴様に何が分かる!いいから殺せ!」

「そうさ、運命を恨むなら、運命に抗えばいい!貴方にはまだその力があろうに!」

   「力、だと!?無能と呼ばれ続けたこの俺に、力だと!?冗談にしても笑えんぞ!」

「ハハハハハ!お笑い種だねぇ、悪魔殿!この僕を喚んだ、君が無能だと?」

   「あぁ、俺は無能さ!始祖を恨んでも、何もできず!弟を恨んで、それを殺し!俺は…無力だ!」

「――…何も成さずに、さえずるんじゃないよ、悪魔殿」

   「何を言う!貴様に、貴様なんかに、俺のことが…――」

「運命に抗わずに、殺せ、だ?ふん、そんな醜い命に興味は無いね!」

   「ほう、貴様、この俺の命が醜いだと?奪う価値すらないとでも?」

「貴方は運がいい…――かつて運命に抗った男、しかも一度失敗した男がここにいる…」

   一人の男は直感する
   こいつは自分に似ていると
   運命を恨み、自分を生んだ者を恨み、全て棄ててしまいたいと思った自分に

   男自身は、憧れだった弟を殺し
   全てを憎み、自分の持つ物をいずれ全て姪に与えることで贖罪とし、
   命運果ててみろと豪奢な城で戯れに召喚の扉を呼び出したのだが…
   何の運命かこの男を喚んだ……ならば……

   「――…貴様の失敗談から学べ、とでも?死人殿」

「そうは言わないさ、命続くならば抗うのもいいんじゃないか、というささやかな提案さ」
一人の男が妖艶の笑み
自分と似ているこの男
ならばその運命を救おうと

   「――…くはははは!!気が変わった!お前、俺の使い魔になれ!新しい遊戯を始めるぞ!」
   一人の男が豪胆な笑み
   自分と似ているこの男
   ならばその運命を賭けようと
453ゼロの黒魔道士 幕間劇ノ一 4/5:2008/12/13(土) 15:31:04 ID:yLJlcDr5
「ほう?遊戯?」

  「あぁ、忌まわしき始祖様の仮面を剥ぐ遊戯だ!おもしろいぞ!6000年分の恨みをこめて遊んでやる!」

「おもしろい…ならば手伝いましょう…あなたの見せる舞台に美しい華をそなえましょう……」


二人の男がおったとさ

一人は銀髪、一人は青髪

どちらも運命を恨んでた

二人の男がおったとさ

―――

   「どうした?何かおもしろいことでもあったか?クジャよ」

それから月日は流れ、

チェス盤の駒も増えていく

「いやいや、少々思い出し笑いを。あの夜もかように月が輝いていたかと」

   あの日、運命に惑わされ、屈し、果てようとした男が、

あの日、運命に操られ、悔い、果てたはずの男が、

出会ったその日から幾星霜

   「やれやれ、そんな詩的な表現を使われちゃ、誰が俺の愛人か分からなくなる」
   王がにこやかに苦笑する。詩的な表現は少々腹が立つが、この男の報告はいつも楽しみなのだ

「おや、貴方のチェス・パートナーはこの僕だと思っておりましたが?」
男はいつもどおりの怪しい笑み。王を理解しているのは自分に他ならぬと確信している

   「ふん、それで?アルビオンのルークが落ちる報告か?既にお前に任せたはずだが?」
   今年度の農作物の収穫量予想に関する書類を脇へどける。所詮面白みの無い数字の羅列だ

「フフ、そのルークを狙うビショップ共が、トリステインで新たな駒を見つけたようでね」
城壁を狙う僧共。それはまさしくアルビオン王城に攻め入らんとするレコン・キスタのこと

   「ほう?エルフとの厄介なゲームよりも大分おもしろくなってきているな?虚無か?」
   聞かぬともわかることをあえて聞く。本当に残念そうな顔をする。王は遊戯が好きなのだ

「しかも両方だよ!いや、実際は片方は女王自身とそのナイト、もう片方は、そう女王を守る女ナイト、といったところか」
男は暗喩を続け笑みを一層妖しくする。この男にとって、世界は舞台。自分はそこに華を添える脇役と心得ている

   「女ナイトだと?おいおい、新しい駒だな!どういう動きを見せるんだ、そいつは?」
   王はいよいよ身を乗り出す。その表情はかつて死を望んだ廃人ではなく、まさしく悪童と呼べるもの

「ナイトではなく、正確には盗人なんだがね!被りし仮面は“土くれ”で、その中身はサウスゴータの元貴族!」
男は華々しく新しい役者を紹介する。それは舞台の道化にして、舞台の支配人も思わせる言葉運び

   「なんと!これは面白い動きをしそうだな!アルビオンの馬鹿共はこのことに?」
   手を叩き喜ぶ王。この新しい駒の登場に、頭に浮かぶチェス盤で、駒が激しく踊りだす
454ゼロの黒魔道士 幕間劇ノ一 5/5:2008/12/13(土) 15:31:36 ID:yLJlcDr5
「サウスゴータの名で“土くれ”の力を動かす、としか考えてないようでね、まだ彼女の守る女王にはお気づきでない」
肩をすくめる男。彼の前には、彼の『神の頭脳』の前にはほとんどの者はその馬鹿共に含まれる。いや、少なくとも一人…――

   「そうか……そのナイト、こちらに欲しいな……」
   『神の頭脳』が認めた男、『神の頭脳』の主はそう言って口元をつりあげる

「幕間に奪おうか?庭に出てバラを摘むより楽な仕事だけれど」
聞かぬともわかることをあえて聞く。いよいよもって美しくも妖しげなる笑みだ

   「いや……そうだ!馬鹿共が飽きたときを狙え、バラは摘めば早々に飾らねばならんしな!」
   笑い声が思わず忍び洩れる。もはや駒の動きはほぼ読めた。読めぬとすれば、神の気まぐれ

「御随意に、王よ!それでは、アルビオンの終幕、とくとご覧あれ!」
優雅で、艶やかな一礼。舞台の幕は既に開き、観客共がもうすぐ揃う

舞台で踊るはこの世の命
それを彩るは虚無の子達

   チェス盤で舞うはこの世の理
   それに対峙するは二人の男


運命は常にこう問いかける「我に従うや?我に抗うや?」

二人の男はこう答えるだろう「我等汝に破れし者なり、我等汝を倒す者なり」

――
以上です。アルビオンではクジャ様活躍させたいなー。
しかし、クジャ様交ると厨二病が発作的に起きるのはなんででしょ
いつもいつも代理&お目汚し申し訳ございません。
455名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 15:36:56 ID:rNBCzHXK
代理投下乙です
456名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 17:05:25 ID:guoJzJix
GGの人とビビの人乙です
グレイヴな頭撫で撫でと人差し指立てて喧嘩止めるのがODのお決まりだけど今のところなさそうだw
457名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 17:32:58 ID:RHGyvHq5
作家の皆様乙です。
ラスボスを読んでて思ったのが、
誰か早川健が召喚された話書いてくれねーかなと
458名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 17:39:08 ID:PLrEJTpI
>>457
タイトルは「日本一の使い魔」以外にないな。

……しかし、万能キャラって扱いにくいぞぅ。
459立身出世物語 ◆sMc1nAya/k :2008/12/13(土) 17:41:28 ID:YaSN3U/j
>>457
さあ、自分で書くんだ!
もし君が「俺、文才ないしー」と思うなら……
それでも書くんだ!
文章力なんて数書いてる内に身に付く物さ!
460名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 17:42:43 ID:RHGyvHq5
>>458
ズバット無双でもそれはそれで面白いと思う
461名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 17:42:43 ID:YaSN3U/j
>>459
変なコテハン付けたまま送信してしまった……スマヌorz
462名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 17:44:08 ID:Bu9luLNh
無能キャラを召喚すればいいんじゃね
ガンダールヴもなしでなにができるか
463名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 17:47:07 ID:YaSN3U/j
>>462
早川健が召喚された話、っていう流れなのに。
464名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 17:52:14 ID:PLrEJTpI
健「お前さんの爆発……日本じゃあ二番目だ」
ルイズ「に、にっぽんって何? ……ともかく、じゃあ一番は誰なのよ?」
健「チッチッチッ」(指を一本立てて左右に振り、その後自分を指差す)
ルイズ「な、何ですって!? いいわ、それじゃ私の爆発を見せてあげる!」

……避難所に書くべきだったか。
465名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 17:57:50 ID:owLNQ30e
>>464
まずそこから張り合うのかw
466名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 18:08:14 ID:Oe61AVqT
健「お前さんのツンデレ……日本じゃあ二番目だ」
ルイズ「に、にっぽんって何? ……ともかく、じゃあ一番は誰なのよ?」
健「チッチッチッ」(指を一本立てて左右に振り、その後自分を指差す)
ルイズ「な、何ですって!? いいわ、それじゃ私のツンデレを見せてあげる!」

あほな事書いたと思ってる。
467名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 18:11:33 ID:PLrEJTpI
まあ早川健は殺された親友の仇をひたすら追い続けるという、一途な男ではあるけどねw
468名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 18:22:20 ID:A8WZ9519
仮面ライダーV3に変身出来るしね!
469名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 18:24:27 ID:z1kZnrmR
ユーゼス「ズバットのマネは危険ですから、絶対にマネしないでね」
470名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 18:35:56 ID:PLrEJTpI
ズバットの話のパターン

犯罪組織が、何か事件を起こす
 ↓
早川健がその解決に奔走
 ↓
犯罪組織が雇った用心棒(必ず何かの達人、ビリヤードとかテニスとか魚釣りとか)が出て来る
 ↓
>>464みたいなやりとりの後、用心棒がそれなりに凄い技を披露
 ↓
直後にもっと凄いことをやる早川健
 ↓
一旦退散する用心棒
 ↓
事件が進んで、直接対決
 ↓
どう考えても早川やられてるだろ、という描写。しかし死体がない
 ↓
どこからともなくズバットが現れる
 ↓
戦闘して勝利したあと、「2月2日、飛鳥五郎を殺したのは貴様かぁ!!」「ち、違う!」「嘘をつけぇ!!」
 ↓
「飛鳥、お前を殺した奴はここにもいなかった……」

ほぼ全編、こんな感じです。
471名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 18:38:56 ID:AR2cuegr
お約束っていいよね。
しかし、日本一の探偵とは誰も言ってくれないだろうなあ。
472名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 18:39:17 ID:8TCoeeWM
このスレ加齢臭がする
473名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 18:55:26 ID:/hTZwAst
長寿スレと言え。
474名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 18:59:02 ID:u6COFyL7
「お前さんの加齢臭……日本じゃあ(ry」

ファンの
感想や
いかに
475名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 19:44:29 ID:DzAGUpni
>>474
加齢臭じゃねえ! 少女臭だっつってんだろぁ!
476名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 19:44:50 ID:UOOTgK70
幻水からナナミを召喚すると、もれなくルイズが突き飛ばされて壁にめり込みます
477名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 19:45:20 ID:QMV3Vm9P
>>472
お前のIDは何をそんなに怖がっているんだ
478名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 19:47:12 ID:dGzkVtTP
聖剣伝説3の竜帝召喚してルイズに膨大な魔力と引き換えに
 命を半分よこせなんて持ちかけたら乗りそうだな。
479名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 19:59:26 ID:VsKfzVys
>>478それなら3の脱落したフェアリー召喚してマナの力手に入れたルイズがマナの木を植えるとかどうだろう?
480名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 20:00:49 ID:M4yBQxCJ
>>475
ババア!俺だ、結婚してくr(略
481名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 20:02:58 ID:+FWU6Snp
>>477
WM……つまり、ウェブマネーを怖がっているようだな。
買い物しすぎたんじゃね?
482狂蛇の使い魔:2008/12/13(土) 20:37:00 ID:YCkPHU5y
予約等なければ20:45くらいから投下したいです
483名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 20:38:45 ID:IFzjKzz0
ズバット召喚か…

ズバット の ちょうおんぱ!

てきの ギーシュ は こんらんした
てきの ギーシュ は こんらんしている わけもわからずじぶんをこうげきした

てきのワルキューレ の ふくろだたき!

ギーシュ の こうげき!
ワルキューレ の こうげき!
ワルキューレ の こうげき!
ワルキューレ の こうげき!
ワルキューレ の こうげき!
ワルキューレ の こうげき!

ズバット は たおれた!

ルイズ の「だいばくはつ」!

てきの ギーシュ は たおれた!
てきの ワルキューレ は たおれた!
ルイズ は たおれた!

ルイズ の てもとには たたかえるつかいまがいない!
ルイズ は めのまえ が まっくらになった
484名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 20:42:11 ID:SmlUt9jC
>482
支援いたそう!
485狂蛇の使い魔:2008/12/13(土) 20:46:01 ID:YCkPHU5y
では、投下します

第十七話



岩をくりぬいてできたような、特徴的な街並みが続く港町、ラ・ロシェール。

いつもはたくさんの人で賑わうその場所だが、そこに人間は誰一人として存在しておらず、どこもがらんとしていた。
無人の店が建ち並び、町を静寂が支配している様からは、どこか不気味な雰囲気が感じられる。
さらに、よく見ると店に掲げられている看板の文字が、まるで鏡合わせのように反転している。
そして、その町中を闊歩する怪物たち……

それらは、ここが鏡の世界、ミラーワールドであることの証明であった。



そんな町の中央で、王蛇とタイガはそれぞれが手にした武器で、迫りくる怪物たちに応戦していた。

金色をした蛇の尾を乱暴に叩きつけながら、白い怪物たちを次々に蹴散らしていく王蛇。
無言で虎の模様が描かれた斧を振るい、最小限の動きで確実に怪物たちを仕留めていくタイガ。

二人の動きは対称的であったが、共に怪物たちを圧倒していることに変わりはなかった。
現に、二人を取り囲んでいたはずの五体の白い怪物たちは皆、二人に触れることも叶わずにすべて地面に倒れていた。
486狂蛇の使い魔:2008/12/13(土) 20:47:05 ID:YCkPHU5y
 
二人が怪物たちにトドメを刺そうと武器を構えた、その瞬間。

倒れていた怪物たちの白い背中が、突然パキパキという音と共に割れ始めた。
何事かと二人が様子を窺っていると、ひび割れた怪物の背中が盛り上がり、固い表皮を突き破って中から青い怪物が姿を現した。

全身がゴツゴツした青い表皮に覆われ、鋭い突起が生えている両腕。
人間で言う顔の部分には無数の赤い穴があいており、その頭頂部からは、まるで長い髪の毛のように、太いトンボの尾のようなものが伸びていた。

顔の両脇に二枚ずつある虫の羽をはばたかせると、青い怪物レイドラグーンは空中に舞い上がった。



「っ……!!」

タイガの顔の真横を、怪物の腕がかすめる。
すぐに反撃しようとするも、攻撃の対象は既に空中へと避難していた。
そうこうしているうちに、別の方向からもう一匹の怪物が攻撃を仕掛けてくる。
今度は避けきれず、怪物の爪が胸を削った。
「ぐっ……」

攻撃をくらうとともに命中した箇所から火花が飛び散り、タイガは思わず数歩後退した。

一人で二体を相手にしているタイガは、怪物の波状攻撃に苦戦していた。
空中に逃れる相手には、斧を使った攻撃が届かないのだ。
487狂蛇の使い魔:2008/12/13(土) 20:48:31 ID:YCkPHU5y
 
タイガは再び攻撃を仕掛けてきた二体の怪物たちを横っ飛びでかわし、数歩の距離を置いた。
そしてデッキからカードを引き抜くと、斧に素早く差し込んだ。

『FINAL VENT』

鳴り響いた音声とともに、怪物たちの背後から白虎の怪物が現れ、二体を鋭い爪で捕らえた。
不気味な声をあげながら、二体の怪物は地面に叩き落とされ、地面を引きずられていく。

タイガは向かってくる怪物目掛けて、デストクローが装備された両腕を大きく広げた。

「はっ!!」

眼前まで引きずられてきた二体の怪物を、タイガは両腕の爪で持ち上げる。
そのまま頭上に掲げると、怪物たちは呻き声をあげながら白く発光し始め、その後、爆発を起こし消滅した。



白虎の怪物が、倒した怪物から現れた二つの光球をその身に取り込むのを確認すると、依然として戦い続けている王蛇の方を見やった。
彼は未だに剣一本だけを振るいながら、三匹の怪物と互角以上に渡り合っている。
むしろ、羽をもがれ、空を飛ぶ力を失うほどまでに、怪物たちが追い込まれていると言ったほうが表現としては正しい。



タイガはその強さに驚きながらも、本来の目的を果たすため、デッキから再びカードを引いた。
488狂蛇の使い魔:2008/12/13(土) 20:50:09 ID:YCkPHU5y
 
『ADVENT』

カードを装填した斧から音声が流れ、王蛇たちのいる方から白虎の怪物が飛び出した。

狙うは――アサクラだ!



「うおわっ!?」

突然現れた乱入者に、王蛇は仰向けに地面へ叩きつけられると、先ほどの怪物たちと同じく地面を引きずられていった。

これを好機とみた怪物たちは、傷ついた体を押さえながら、ほうほうの体でその場から逃げていく。
タイガは見向きもしなかった。



以前も同じ攻撃を受けた経験のある王蛇は、前と同じようにその怪物の脇腹を思い切り蹴り上げ、拘束から脱した。
そしてすぐさま身を起こし、立ち上がる。

「貴様! 戦いたいなら戦いたいと言え! こういうやり方はなぁ、一番イライラするんだよッ!!」

手放していた剣を拾い上げ、タイガに向かって力のあらんかぎりに振り降ろす。

「っ……!!」

剣を両腕のデストクローで受け止めたタイガであったが、そのあまりの重さに押し潰されそうになる。
それでも、それ以上押し込まれることはなかった。



お互いの武器を交えたまま、二人は仮面越しににらみ合う。

しかし、両者の体からタイムリミットの証である粒子が立ち昇り始めると、二人は弾かれるようにして互いから離れ合った。
489狂蛇の使い魔:2008/12/13(土) 20:52:22 ID:YCkPHU5y
 
「チィッ!!」

激昂した王蛇が、剣を地面に思い切り投げつけた。激しい音をたてながら、剣が弾き飛ばされる。
そして宿の方を振り向くと、手鏡のある中庭に向かって歩いていった。
タイガも無言のまま、その後に続いた。



「お前、何のつもりだ?」

ルイズの手鏡から元いた中庭へと戻ると、浅倉は後から出てきたタバサの胸ぐらを掴み、顔を間近に近づけながら彼女に尋ねた。
手荒にされてもなお、タバサは表情一つ変えず、冷静に彼の問いに答えた。

「ライダー同士は戦うもの」
「何ィ……?」

以前自分が言ったことを、そのままそっくり返される。
浅倉は苦い表情でタバサを乱暴に突き放すと、舌打ちとともに彼女を一瞥し、収まらない怒りをむき出しにしながら、自らの部屋へと歩きだした。



そんな彼の後ろ姿を見ながら、タバサは考える。

復讐という修羅の道。
一歩踏み出すのを躊躇っていた私に、勇気をくれたのは彼だ。

彼がライダーだということを知った時。
ライダーという存在が、この世界の何者よりも強い力を持っていることを知った時。
私は、復讐に身を任せることに決めたのだ。
490狂蛇の使い魔:2008/12/13(土) 20:54:16 ID:YCkPHU5y
 
彼の力をもってすれば、人一人を殺めることなんて実に容易い。
あの性格からして、彼も躊躇することはないだろう。
だから、初めは彼を利用し、復讐を遂行しようと思っていた。

でも、私は彼と同じ力を手に入れた。
戦うことを宿命とされた、悪魔の力を。



そして宿命と同時にもう一つ、可能性を得た。
ライダー同士戦い合い、最後の一人になることができたのならば、どんな望みでも叶えられるという可能性。
失ってしまった大切なものを、この手に取り戻せるかもしれないという可能性を。



浅倉の言っていた主催者は、この世界には存在しない。
ライダーが何人いるかもわからない。
そもそも、浅倉の言ったことが真実かすらも証明できない。

それでも、私には僅かな希望に賭けるしか道はない。
悪魔に魂を売ってでも、願いを叶えなければならないのだ。



だから、私は浅倉を倒す。
復讐は私一人の力があればで十分だし、どうせいつかは潰し合わなければならないのだ。
ライダーは一人でいい。

「母さま……」

心に大切な人の姿を描きつつ、タバサは空を見上げた。
真っ青な空の真ん中で、太陽が燦々と輝いていた。
491狂蛇の使い魔:2008/12/13(土) 20:56:11 ID:YCkPHU5y
 
「うっ……」
「! ワルド様、気がつかれましたか?」

ベッドの上で目を覚ましたワルドは、ルイズの声を聞きながら、気を失うまでの記憶を思いだしていた。

(そうか、あの使い魔にやられて……)

思わず歯ぎしりする。
使い魔に自分との実力差を見せつけてやるつもりが、とんだ恥をかいてしまった。

「ワルド様……?」

心配そうな顔でこちらを覗きこむルイズに、ワルドは慌てて笑顔を作る。

「ああ、ルイズ。……心配をかけてしまったね。でも、もう大丈夫だ」

そう言って、ワルドはベッドから立ち上がると、ルイズの体を引き寄せ、抱きしめた。

「君が側にいてくれたおかげだよ。ありがとう、ルイズ」

ルイズの耳元でそっと囁きかける。
ルイズの顔が、晴れ渡るように明るくなった。

(私を褒めて下さるなんて……)

最近滅多に褒めてもらうことのなかったルイズは、彼の一言に痛く感激していた。

そんなルイズの様子を見て、ワルドは内心ほくそ笑みながら、窓の外に目をやった。
傾き始めた太陽が、町を真っ赤に染め上げている。



(そろそろ時間か……)

ワルドが心の内で呟いた。
492狂蛇の使い魔:2008/12/13(土) 20:57:46 ID:YCkPHU5y
以上です。
支援ありがとうございました!
493名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 20:59:12 ID:7SQb9B6x
投下乙です
龍騎はあまり見た事無いんだが、タバサに死亡フラグが立ったとみて間違いない?
494名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 21:19:50 ID:UOOTgK70
必殺メイド、ロベルタさんを召喚すれば
シエスタは、傘ショットガンと拷問多種多様を覚えて無敵になる!
495鋼の人 ◆qtfp0iDgnk :2008/12/13(土) 21:24:59 ID:J3tA7dhs
とーどかーないーめっせーじー不可視ならっびっりっんっす〜
っと、あまり関係ない前降りは後が怖いのでこの辺で。

投下予告、2130に。
496名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 21:31:21 ID:7uwDjw/6
>>478
もし主人公勢ならデュランはもんくなしでガンダールヴだろ、ウィンダールヴはケヴィンかな?
ミュズはアンジェラかシャルロットでいいとして…ホークアイはリースは使い魔は似合わないなぁ。
497鋼の使い魔 ◆qtfp0iDgnk :2008/12/13(土) 21:31:31 ID:J3tA7dhs
 風石船の港があるラ・ロシェールの町から、南西に20リーグの場所。
 山岳丘陵とそれを囲む深い森に覆われているラ・ロシェール領の一角上空に、白百合の軍旗をはためかせる船団が滞空していた。
 トリステイン王国の空軍艦隊である。旗艦は2等戦列艦『メルカトール』号以下フリゲート艦を含めた30隻で構成された艦隊は、
神聖アルビオン共和国からやってくる艦隊と、それに搭乗するアンリエッタの婚儀に出席する国賓を迎える為にトリステインの時刻0900より上空に待機していた。
 『メルカトール』号の艦橋では艦長フェヴィスと艦隊司令長官ラ・ラメー伯が正装で眼前の空を見据えていた。
 ラ・ラメーは艦橋に掛けられた時計を睨んだ。
「彼奴等は遅いな。艦長」
 事前通告では1000には両艦隊合流、アルビオン側からの祝辞文書、及びそれに伴うトリステイン側からの返辞文書の交換など、
外交上のやり取りをする手はずになっているのだが、現在時刻は1020。精強とされるアルビオン空軍にしては、と、この遅刻は不愉快を誘った。
「事前通告によれば、向こうは『ロイヤル・ソヴリン』を旗艦に艦隊を組んでいるとのこと。巨艦を主軸にしているならば足も遅いでしょう」
「ふん。王家を殺した犬共め。犬なりに格好をつけるつもりらしいな」
 ラ・ラメーは神聖アルビオン共和国に対する軽蔑の心を包み隠さない。路地裏で乞食に這い付かれたように鬱陶しげであった。
 
 
 実のところ、トリステイン側の貴族、特に王宮に入り込み政治の一部を担う者達の中で、アルビオン側から降って沸いた『不可侵条約』打診をどのように見ていたのか。
 彼らは『内乱に疲れた貴族派はトリステインとの戦いを恐れているのだ』『ゲルマニアと手を組んだトリステインと戦う事を避けている』等と解釈していた。
 無論、凡そ全てのトリステイン貴族がそう思っていたわけではなく、ゲルマニアとの軍事協約を取り付けたマザリ―ニなどは、
かの国から秘かにとある集団をトリステインに呼び寄せていた……。
 ともかく、トリステインの中枢にあって体勢を占めたのは「王家を蔑ろにしたアルビオン貴族め、恐れるに足らず。吾らは始祖より賜りし王家を担ぐ者なり」
という自負であった。
 もっともキュルケの言葉を借りるなら、その傲慢と自負がトリステインを小国にしているのだが。
 
498名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 21:32:58 ID:ZzEr1a5v
支援
499鋼の使い魔 ◆qtfp0iDgnk :2008/12/13(土) 21:33:18 ID:J3tA7dhs
 
 『メルカトール』号艦橋に、見張り台より導管を伝って声が入った。
「11時の方向に艦影多数!」
 北に向けられた艦首より北西の空から三層に組まれた艦隊が、やがて姿を現した。
 艦隊陣形は勇ましくも紡錘陣だ。一際巨大な艦影がその中央に陣取っている。
「あれが『ロイヤル・ソヴリン』か…。実に巨きいな」
 ラ・ラメーは艦橋の窓から、アルビオンの旗艦をまじまじと見た。
「過去の一等戦列艦と比べても格別の巨艦ですな。随伴の艦艇が小さく見えます」
「連中も下品極まるな。めでたい祝いの時にあのような船でやってくるなど…」
 やがてアルビオン艦隊は相対距離300メイルで停止した。大マストの上で信号士が杖を振ってこちらに平文で信号を送ってくる。
『貴艦隊ノ歓迎ヲ謝ス アルビオン艦隊旗艦『レキシントン』艦長』
「艦長名義の発信とは嘗められたものだな…。忌々しい」
 ラ・ラメーは自分が虚仮にされたと見てぎりりを歯を噛んだ。同時に、決して重厚とは言えない自分の艦隊を振り返り、忸怩の思いに駆られる。
「…返答は如何しますか」
「…まぁ、良い。返信は『貴艦隊ノ来訪ヲ心ヨリ歓迎ス トリステイン艦隊司令長官』。以上だ」
 脇に起立していた副官が書き取られた返信文を復唱し、『メルカトール』号の大マストの信号士へと送られる。
 返信が行われた後、アルビオン艦隊側から轟音が飛び込んできた。
 礼砲である。空砲によって艦隊歓迎に対する感謝を表すものだ。
 『レキシントン』の礼砲は全砲『81』門全てを使った空砲であり、その衝撃はトリステイン艦隊を振るわせた。
「…こちらの礼砲は幾つになさいますか」
 艦長はラ・ラメーに聞く。相手の礼砲に対し、こちらも答えなければならない。
 王家またはそれに順ずる最高位の貴族及びそれらの名代に対しては、11発の空砲を行うのが慣例だ。以下、相手の位が下がるほどに空砲の数は減らされる。
「…7発でよかろう」
 因みに7発は、最上位から2段下がる者に対する答砲になる。位で言えば、「一軍の大将」に対するものである。
 ラ・ラメーなりの皮肉であり、意地でもあった。
 
 
 『レキシントン』号艦橋にて、ヘンリー・ボーウッドは左舷に展開しているトリステイン艦隊を見た。
 等間隔で響く空砲を静かに聴いていたのであったが、脇にいる今回の『親善訪問』司令官であるジョンストンは、対照的にそわそわとして落ち着きなく上座に座っていた。
「艦長、あまり距離を詰めすぎるな。…君らはいい。揚陸に向け待機している兵達は空に慣れない。不用意だと士気が下がる」
 本音では自分が怖いのだろう、とボーウッドは脳裏で唾を吐くが、そんなことはおくびにも出さないだけの礼儀は身についていた。平坦な口調で答える。
「サー。しかしながら、相手側に警戒されないためにも、また、こちらの砲を有効に機能させるためにも、ある程度の距離を殺さないといけません」
「そ、そうか…まぁ、いい。そろそろ準備に掛かりたまえ」
 司令官とはいえ、ジョンストンは戦の素人だ。ボーウッドは実務指揮に関しては彼から一任されている。
「左舷砲戦準備、『火竜弾』装填。『ホバート』号の係留ロープを切断せよ」
 『ホバート』とは艦隊陣形の左端、ちょうどトリステイン艦隊の正面に近いところで陣形に参加している艦である。艦齢も古く、装備も旧式の老朽艦だった。
 今現在『ホバート』号に人員は乗っていない。…いや、ラ・ロシェールに入るまでは乗っていた。だが、人員は途中で他の艦に乗せられ、代わりに多量の火薬を詰め、
ここまでは他の艦にロープで引っ張られる形で運ばれてきていた。遠景からは無人艦であると悟られないように巧妙に偽装して…。
「左舷砲戦準備完了。1番から15番までいけます」
 砲撃長から導管で報告が来る。この間、トリステイン側の礼砲が4度、轟いた。
 そして、トリステイン艦隊6度目の空砲が空に響く。
 
 
500名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 21:34:45 ID:YCkPHU5y
支援です
501鋼の使い魔 ◆qtfp0iDgnk :2008/12/13(土) 21:35:20 ID:J3tA7dhs
 「アルビオン艦隊に異変!左翼の艦艇で火災発生の模様!」
 『メルカトール』の艦橋に見張り台からの報告が届く。
 トリステイン艦隊の正面に位置し、アルビオン艦隊の左翼に当たる艦の一つから煙が上がっているのだ。
「む。事故か…?」
 いぶかしむラ・ラメーであったが、艦艇で事故はつきものである。さして留意もしなかった。
 だがアルビオンの艦隊は、艦の火災を鎮火する素振りを見せない。火災に見舞われた船はどんどんと煙を上げ続けている。
 そしてついにその船――『ホバート』号は、爆発炎上した。炎を蜥蜴の舌のように伸ばして船は高度を保てず降下していった。
「な、何事だ?!なぜアルビオンは救助に向かわない?」
 傍観していたラ・ラメー以下、艦橋は騒然となった。
 艦長フェヴィスも呆然としていたが、直後信号士から届いた文書を見て、さらに唖然とした。
「皆、落ち着いてくれ!アルビオン側から信号が届いた」
 その声に艦橋の騒ぎが静かになる
『『レキシントン』号艦長ヨリ トリステイン艦隊旗艦 『ホバート』号ヲ撃沈セシ、貴艦ノ砲撃ノ意図ヲ説明サレタシ』
「砲撃だと?!向こうの事故じゃないか!」
 息巻くラ・ラメーは信号士まで直通の導管を開く。
「アルビオン旗艦に返信だ!『本艦ノ射撃ハ答砲ナリ 実弾ニアラズ』」
 しかし、ラ・ラメーの命令が行き届く前に、アルビオン側から再度の通信が入った。
『只今ノ貴艦ノ射撃ハ空砲ニアラズ 我ハ貴艦ノ攻撃ニ対シ応戦セントス』
「ふざけるな!言いがかりだ!」
 だが、ラ・ラメーの声は虚しく、『レキシントン』からの砲撃で掻き消えた。
 砲撃が着弾し、『メルカトール』が揺れた。
「送れ!『砲撃ヲ中止セヨ 本艦ニ交戦ノ意思アラズ』!」
 しがみつくように導管に吐き出されるラ・ラメーの言葉にアルビオン側はそれに答える事無く、砲撃が続く。
「艦長!被弾箇所から激しい火災が発生しています!」
「消火が間に合いません!」
 船体の各部から悲鳴のような報告が届く。
 そんな最中、再度の着弾を受ける『メルカトール』。今度は艦橋に近い場所に被弾し、艦橋全体が大きく揺れた。
(ちぃっ!このままでは船が沈む!それにアルビオン側の有無を言わせぬ砲撃…手際が良すぎるではないか!)
 フェヴィスはここに至って、アルビオン側が始めから婚礼の賓客としてではなく、戦闘を意図してここにやってきたのだと理解した。
「司令!応戦しないとやられますぞ!」
「だが艦長、このままでは国際問題に発展するぞ!それだけは避け」
 ラメーの言葉はそこで途切れた。艦橋にアルビオンの砲撃が当たったからである。
 着弾の衝撃にフェヴィスは壁に叩きつけられた。
 致命傷を免れたフェヴィスは意識が途切れるのを必死に繋ぎ止めてどうにか立ち上がった。ほんの一瞬の出来事だった。
だのに艦橋は通常の砲撃ならありえないほどの大火災に陥っていた。
 振り向けば、ラ・ラメーは足首から上が消し飛んで靴先だけを艦橋に残していた。
 血の吹き出る頭を抑えて、彼は艦全域に向けて導管を開けた。
「艦隊司令長官戦死!これより旗艦艦長の私が艦隊指揮を執る!各部は被害状況報告!各砲座は砲撃準備!陣形両翼は前進、中央は後退する!全艦全速を出せ!」
 
502鋼の使い魔 ◆qtfp0iDgnk :2008/12/13(土) 21:37:16 ID:J3tA7dhs
 『レキシントン』艦橋では、ボーウッドが坦々と艦隊に指示をしていた。
「左翼は後退、右翼は前進し敵の左翼を抑えろ。中央は10時方向に火力を集中させて敵の右翼を潰す」
(前弓陣から反弓陣に変え、こちらを包囲したいのだろうが、残念ながら層が薄すぎる…)
 
 前弓陣とは弓の反りのように陣形を作り、反りの部分を前面にした布陣である。反弓陣は逆に、反りを後方にした布陣だ。
 本来なら紡錘陣形を迎えるのに適する反弓陣だが、なにせアルビオンと比較すると、トリステインの艦隊はどうしても船の数で劣る。
包囲するにも艦隊の層が薄すぎるのだった。
 加えて今回、アルビオン側の旗艦『レキシントン』には改修艤装時に積み込んだ新兵器『火竜弾』がある。
 『火竜弾』は、固定化を施した空洞の青銅球に、特殊な配合をした液体を詰めた砲弾である。砲弾は着弾と同時に爆ぜ、
発射時に熱せられた青銅球の破片と液体が触れると猛烈に燃焼し、着弾部を焼き尽くす。また、この燃焼する液体はある程度の粘り気を含み、
着弾の衝撃で爆ぜる時により広い範囲の着弾部破壊が期待できるのだ。
 
「いやぁ、おみごと、おみごと」
 指揮に没頭していたボーウッドの背筋が凍る。背後には深く帽子を被ったワルドが立っていた。
「実に見事な戦闘ですなぁ。トリステインの艦隊がまるで的のようだ」
 実に剣呑としているワルド。ボーウッドは前を見直す。
 ボーウッドはふと、自分が死体に埋もれているような錯覚を覚えた。聞こえる声に、くちなわが這うような冷たい腐臭を思い出させる。
(なにを馬鹿な…ここは既に戦場だ。気を保て、ヘンリー)

「既に勝敗は決した。後は子爵、君の仕事だ」
 ボーウッドの言うとおり、艦隊戦はほぼ終わりを迎えつつあった。
 トリステイン艦隊規艦『メルカトール』号は山のような火災を上げて降下、爆沈し、残る艦隊も指揮系統を失ってバラバラの運動を始めていた。 
 ボーウッドは信号士を介して隷下の艦隊に向けて号令する。
「本艦は揚陸部隊の火力支援を行うためにこの空域を離脱する。艦隊指揮を『デ・ダナン』号に一時移す。各艦は残存する敵艦を掃討せよ。
しかる後、合流地点『カイ』に集結されたし」
 そして『レキシントン』は動き出す。揚陸を目的に作られた5級戦列(フリゲート)艦を率いて、ラ・ロシェールを離れようとした。
「歴史に名を残しますな。艦長」
 からからと嗤うワルドに、表情を殺したボーウッドが答える。
「なに、ただの戦争が始まっただけさ」
 
 
 
 『タルブ戦役・序―開戦―』
 
 
 
503鋼の使い魔 ◆qtfp0iDgnk :2008/12/13(土) 21:39:17 ID:J3tA7dhs
 魔法学院から馬車に揺られて王宮に参上したルイズ。その鞄には始祖の祈祷書、指には『水のルビー』が秘かに輝いていた。
 通された大きな部屋には、既にトリステインの各所より婚礼に祝辞を述べ、歓迎に来た貴族達が集まっていた。学院で顔を見たことのある若者も、何人かいる。
 今はサロンで集まっているだけの時間で、正式な参上は夕方からとなるため、来ている者は皆、(格式を意識した上でだが)砕けた風情であった。
 おそらく来ているであろう父、ラ・ヴァリエール公爵を探していると、背後から耳を引っ張られる。
「何をきょろきょろとしているのかしら?」
「あいたたたたっ!…ぁ、姉様」
 引かれる耳痛さに振り向けばエレオノールが見慣れた澄まし顔で立っていた。その格好は普段よりも上品に抑えられたもので、
そこはやはりどうにもルイズとは世間の見られ方が違うのを意識させる。
「お父様から貴方を迎えに行くように言われたのよ。ついて来なさい」
 
 エレオノールに連れられて大広間を後にし、広い通廊を行く。歩きながら姉の挙動が微妙に落ち着かないのにルイズは気付いた。
「姉様?」
「…きょ、今日は、ギュスターヴ殿、いらっしゃらないのね」
「ぇ?うん。こういう場所に連れてくるわけにも行かないし」
「そ、それもそうね…はぁ」
 どこか落胆しているようなエレオノールだった。
 
 開祖が王室の庶子であるラ・ヴァリエール家は、他の貴族に比べても別格の扱いをうけて王宮の中で一角を使うことを許されていた。
 今そこで、ヴァリエール公は来客を受けている。相手は宰相マザリーニ枢機卿である。
「細君はご出席にならないと聞きましたが」
 丸帽を被った僧侶姿のマザリーニが普段と変わらぬ風情で聞く。
「本来ならば罷りならぬことですが、カトレアの具合が優れず。領地を空けるわけにも行きませんので。ご容赦を」
 一通の書状をマザリーニに渡しつつ、ヴァリエール公は謝した。
 
 カトレアとはヴァリエール公の娘の一人。ルイズの姉、エレオノールの妹に当たる。慈愛に溢れた令嬢として社交の世界では知られているが、
生来の病気を抱えているため、領地から出ることは稀であった。
 
 部屋のドアが叩かれ、エレオノールとルイズが入ってきた。
「ルイズを連れてきましたわ。お父様」
「む、そうか。…では枢機卿。後ほど」
 一礼してマザリーニは部屋を出て行く。
 
「お父様。ご健勝とお見受けします」
 礼をするルイズ。一瞥してヴァリエール公は頷いた。
「春の帰省以来だなルイズや。お前も仔細無き様で、父は嬉しいぞ」
 目を細めて笑うヴァリエール公。三姉妹で年の離れた末子のルイズを、ヴァリエール公は最も大事に思っていた。
「この度、お前は殿下ご婚儀における巫女に選んで頂いた。代々の領主にも胸を張れる大役だ。万難を排して勤め上げるのだぞ」
「はいっ。不肖、ルイズ・フランソワーズは、巫女役を拝命されてから今日まで、殿下のご婚礼を祝福するための祝詞に推敲を重ねてまいりました。
必ずや、お父様や歴代領主、拝聴される各位に恥じない勤めを果たして見せますわ」
 ぐっと拳を握ってルイズは宣言した。ここに嘘偽りはない。
 ゼロと呼ばれ、魔法のまともに使えぬ私でも、殿下とトリステインのため、貴族として謗られない仕事が果たせるのだ。
 その一念が今のルイズの脳裏を埋め尽くしているのであった。
「うむ。その心意気や良し。…とはいえ、それまで時間はある。今は力を抜いて休むのだぞ。まずは夕刻7時よりの諸侯による祝賀まで、ここに居ておくれ。
エレオノール。お前はルイズの支度の手伝いをしてやっておくれ」
「わかりましたわ」
「私は少し、諸侯に挨拶をしてくる。…領地にいることが長いからな、こういう時でもないと顔を見ない輩も多い…」
 そう言ってヴァリエール公は部屋を抜けていった。
 威厳を保ちつつも暖かな父の言葉を受けて呆然とするルイズに、エレオノールはむにっと頬をつねり上げる。
「あうぅっ?!」
「まったく、何ぼうっとしてるのよ。…本当はね、あんたが巫女役に選ばれなければ私がお父様と列席するはずだったのよ」
「ぇ、そうだったの…?」
 聞かされて、姉の役を奪ってしまったような罪悪感を感じる。
「ま、いいわ。社交の場に出るの、それほど好きじゃないし。たまには妹に晴れの舞台をあげるのも年長の勤めってやつよ」
「姉さま…」
「ほら、ぼさっとしてないの。うちの針子呼んでるから、あんたの今夜の衣装を決めるわよ」
 感心するルイズを部屋の奥へ引っ張っていく。奥にはヴァリエール家専属の針子師が何人も待ちうけているのだった。
 
 
504名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 21:39:27 ID:X3ydguq8
sienだze
505鋼の使い魔 ◆qtfp0iDgnk :2008/12/13(土) 21:41:39 ID:J3tA7dhs
 王宮の【大サロン】にて、ヴァリエール公が諸侯と情報交換をしていると、壮年の官吏が通廊から飛び込み、、サロンに来るや否や文書を読み上げ始めた。
「この場にお集まりのトリステイン諸侯の皆様方。マリアンヌ女王陛下の名において、大会議室へ移動して頂きたい方々がおられますので、
僭越ながら読み上げさせていただきます」
 ざわり、とサロンがどよめいた。官吏は権力者達から集まる視線に強張りながらも文書を注視した。
「王国軍元帥・グラモン卿、高等法務院長官・リッシュモン卿、拝爵三位・ラ・ヴァリエール公……」
 づらづらと官吏は10人強に昇る貴族の名前を挙げていく。その悉くはトリステインの中枢を治める大官僚か、国内有数の地位を持つ大貴族だった。
 そのことにさらにサロン中はどよめいた。せっかくの祝いの席のはずなのに、実に物々しいではないか。
「…以上の各位につきましては、至急大会議室に来るようにとマリアンヌ陛下並びに宰相閣下のご命令にございます」
 それだけ言うと官吏は額に汗を浮かべつつ、深々と諸侯に頭を下げてサロンを出て行った。
「はて、陛下は何の御用か?」
 ヴァリエール公に近寄ってきたのは元帥杖を下賜されて長いグラモン卿だった。
「…ともかくも、陛下の御命令であるなら至急に向かうべきでしょうな」
 眉をひそめながらもヴァリエール公は足早にサロンを出てゆく。グラモン卿もそれに続いた。
 
 マリアンヌの召集とはいえ、誰もが一目散に集まるわけではない。サロンにいたため格好が崩れ過ぎている者は急いで当てられた部屋や屋敷に帰り、
身支度をせねばならなかった。
 もっとも、グラモン卿とヴァリエール公はサロンに出向いた格好のまま大会議室へと向かっていた。彼らはトリステイン貴族の中でも上位に当たる者達だ。
「…公爵、此度の招集は本当にマリアンヌ様のご意思と思うかね」
 長い通廊を行く男二人の言葉は、硬い。
「恐らく宰相殿が陛下の御名を借りたのだろう。それくらいは辺境にいても存じてますぞ」
 通廊を横切るとそこは大会議室の入り口。両開きの絢爛なる扉が開けられている。
 当然の事ながら、まだ会議室には誰も参上していなかった。最上段にも陛下がおられず、変わりに最上段の玉座から一段下がる卓に、
静かに文書を読んでいる枢機卿が座っていた。
「マザリーニ殿!此度の召集は如何なるものか!」
 グラモン卿が卓のマザリーニに駆け寄る。
「これはグラモン卿。お早い参上ですな。…ひとまずこれをお読みになられよ。先ほど来たばかりの伝書ですぞ」
 平時と何等変わらぬ風情のマザリーニはグラモン卿に手の紙束を渡す。渡されたグラモン卿も黙ってそれに目を通した。
 目を通しながら、グラモン卿の顔が赤くなり、次に青くなった。紙束を握る手が締まっていき紙に皺が寄っていく。
「鳥の骨!これは一体どういうことだ?!」
 読み終わると同時に憤怒に駆られたグラモン卿は我知らず市井に流布するマザリーニの渾名を口にした。
 一方マザリーニは淡々と答える。彼にとって渾名陰口の類など耳朶にも掛からないのだ。ゆえに宰相でありながらおおっぴらに渾名が呼ばれる。
「見てのとおりです。神聖アルビオン共和国側が我が方の艦隊を壊滅させ、トリステイン国土内を我が物顔でうろついているのですよ」
「のんきに構えている場合か!」
 かっかと噴火するグラモン卿。そこにヴァリエール公が寄り口を開いた。
「聞いていたアルビオン側との不可侵条約交渉は時間稼ぎであったということですな」
「おのれ!国家間の条約をなんだと思って居るのだ連中は!ラメーもラメーだ!なぜ踏み留まらず壊走しよった!」
「『メルカトール』は真っ先に狙われて撃沈したとあります。こちらが歓迎に専念して警戒をしていなかったのがそもそもの原因でしょう」
 ぎりり、と老体のグラモン卿は怒りに身体をブルブルと震わせている。
 対してヴァリエール公は沈着に、理性を湛えた瞳でマザリーニを見た。
「…して、現況はいかがな様子で」
「一部はラ・ロシェール南西に進路を取り、もう一部は北西へ向かったという。後者の行き先は不明だが前者は恐らく、タルブ盆地の占領が目的だろう。
あそこを取れば王都まで障害になるものが無い」
 マザリーニもまた冷静だった。アルビオンが何を欲しているのか粒さに観察していたのである。
 そうこうしているうちにぞろぞろと召集された諸侯が会議室へ参上し始め、大会議室は俄に騒がしくなり始める。
「…さて、両人。問題の解決はこれからの閣議にて決めなければなりませぬ。陛下の参上まで、しばし、お待ちを」
 枢機卿の目に炯とする光があった。
506鋼の使い魔(後書き) ◆qtfp0iDgnk :2008/12/13(土) 21:44:31 ID:J3tA7dhs
投下終了。ああ、はじめちゃったよタルブ戦。
マスコン(に相当する)場面を巧くやれるか未だに不安です。
507名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 22:26:17 ID:RSunYqZJ
乙でした!
508名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 22:26:27 ID:ABY0B9tA


ラ・ラメーが真面目な文章の中に混じってると浮きすぎて噴くw
509鷲と虚無 ◆I3um5htGcs :2008/12/13(土) 22:32:55 ID:GlMq9SGT
昨日はかなりの投下ラッシュでしたね。
狂蛇と鋼の人もお疲れ様でした。
予約は無いので、5分後に投下したいと思います。
510名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 22:34:47 ID:7SQb9B6x
支援しますぜ
511鷲と虚無 ◆I3um5htGcs :2008/12/13(土) 22:37:20 ID:GlMq9SGT
11話

才人が朝食の残りを口に入れている間に、最初はウォレヌスが、次はプッロがトイレに行った。
昨夜から用を足していないのは彼らも同じだ。その間に才人は朝食を食べ終える。
量こそはそれ程多いわけではなかったが、何はともあれ空腹は十分に満たされた。
そしてプッロが戻ると、ウォレヌスが見計らった様に口を開いた。
「そろそろ教室とやらに行った方がいいと思う。授業が始まった後に行けばあの娘が色々とうるさそうだ」
「ええ、俺もそう思いますね。今はこれ以上ここにいてもする事はないし」
才人も特に反対する理由は無い。どっち道、昼食時にはここには戻ってくる。
そして三人は改めてマルトーに礼を言い、教室への道を聞くと厨房を後にした。

教室は広々とした石造りの部屋で、大学の講義室のように下から上に階段のように席が続いている。
中に入ってまず目に入ったのが生徒達の使い魔だ。
その多くは生徒達と同じ席にたたずんでおり、猫やカラスなどの普通の動物もいたが才人のとってはファンタジーにしか出てこない“架空”の動物――すなわちキュルケも連れていたサラマンダーなど――も数多い。
既にキュルケのフレイムを見て多少の免疫が出来ていたとは言え、才人は驚嘆した。二人もかなり面食らったようだ。
「あの神話に出てきそうなバケモノたちが、使い魔とやらなんですよねえ」
プッロがポツリと呟く。
「だろうな……人間が召還されると言うのは確かに相当珍しいようだ」
その通り、人間どころか人間に近い姿を持つ使い魔さえ、自分達以外には誰もいない。
これはつまり、オスマンの「使い魔に人間はいない」やシエスタらの自分達への反応に嘘は無かったと言う事だ。
人間が召還されると言うだけでも有り得ない上に、それがまったく別の異世界からの召還。なぜこんな事が起こったのだろう?
(そもそも一体なんで俺が……世界には他にも60億人もいるってのに。ったく、運が悪いってレベルじゃねえだろこれ)
才人は再び自分の境遇を呪う。だがそうしても自分がこのファンタジー世界に古代人のオッサン二人と一緒に取り残されたと言う事実は何も変わらない。

教室の中には既に数十人の生徒と思われる少年少女が着席していた。あのキュルケの姿も、特徴的な赤髪と褐色の肌のおかげですぐに確認できた。
キュルケは数人の男子生徒に囲まれており、彼女の人気振りがうかがえた。だがあの美貌なら当然だろう。
ルイズの方も、彼女の桃色がかった金髪はひと際目立ったのですぐに見つける事が出来た。
だが何かが変だ。他の生徒達は皆隣同士で座ってるのに、ルイズだけは隣に誰もおわず、一人だけで座っている。
(俺達の分のスペースを取っておいたのかな?)
そう思った時、才人は生徒達が自分たちを見てなにやら騒ぎ始めたのに気づいた。

「おい、なんで平民が教室に入ってきてるんだ?」
「誰かあいつらをつまみ出せよ」
どうも自分たちが教室の中に入るというのが問題らしい。何か変な事になる前に早くルイズの所に行った方がいい。
才人はそう思い、ルイズの元へと急いだ。

ルイズは才人達を目に留めると、「来たわね。さ、座りなさい」と言った。
プッロとウォレヌスは何も答えずにそのまま椅子に座った。
才人も同じくそうしようとしたが、ルイズに制止された。
「何やってんのよ、そこはメイジの席……あんたらが座るのは床。プッロ、ウォレヌス。立ちなさい」
ルイズの語調は早朝と比べて、幾分疲れたかの様に聞こえる。勢いが無い。
プッロさんに手玉に取られたのが答えたのかな、と才人は推測した。
そしてプッロもウォレヌスも椅子から立ち上がる気配はない。
「ちょっとあんた達、聞こえなかったの?」
「椅子が空いてるのにわざわざ床に座れるかよ。何回言えば解る?おれはお前の下になったつもりなんてないんだよ」
少しためらったが、結局才人も二人に習い椅子に座った。
ルイズは苦虫を噛み潰したような表情になり、ぐぬぬぬと唸ったが、何も言わなかった。
しかし、自分達の分の席を取っておいた、と言うわけでないのなら何であいつの周りには誰もいないんだろう、と才人は不思議に思った。
512名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 22:37:53 ID:8TdO7ehN
支援するでござる
513鷲と虚無 ◆I3um5htGcs :2008/12/13(土) 22:38:06 ID:GlMq9SGT
そして他の生徒達は何故かは解らないが、自分たちが教室にいるの事を不思議に、そして不快に思ってるようだ。
それがなぜかを知る為、才人は彼らの言葉に聞き耳をたててみた。
「あいつら、ゼロのルイズの隣に座ったぞ」
「一体誰なんだあいつら?ゼロのルイズと何か話してたぞ」
「ただの平民が貴族と同じ席に座るなんて、気でも狂ってるのか?」
どうやら彼らは、平民とやらが自分たちと同じ席に座るのを不快に思っているらしい。
オスマンはここは貴族に魔法を教える学校だと言ってたし、ルイズも、プッロもウォレヌスも殆ど相手にしていないとはいえ自分が貴族である事を盛んに主張していた。
ならば彼らも全員貴族なのだろう。貴族と平民。才人にはフィクション以外では殆ど馴染みの無い言葉だ。
その理解も“貴族は金持ちでなんとなく偉い”と言った程度だ。今までの例に漏れず、学校で習ったフランス革命などについての歴史は綺麗に頭の中から溶けて無くなっていた。
当然、単に平民とやらであるという理由だけで見下されるのはいい気分ではない。

それは他の二人とも同じなのだろうか、才人はウォレヌスが小さく「小うるさい蛮人のガキどもが」と呟くのを耳にした。
バンジン、と言うのはどう言う事なのか才人は不思議に思った。
野蛮人と言う意味だろうか。だがここの人間は才人のイメージするような野蛮人、つまり毛皮を着た原始人という風な連中ではない。
だが今はその事について聞く様な状況ではない。今のところは黙っておこうと才人は判断した。
そして驚く事に、なぜかルイズまでもが歯軋りをしている。
だがどう考えても自分達の事を思ってそうしているわけだとは思えない。
おそらくは他の生徒達が自分までもを馬鹿にしてるのが悔しいのだろう、と才人は見当をつけた。それがなぜかは解らないが。

やがて教室に教師と思われる、小太りの中年女性が入ってきた。
紫色のローブと、三角帽子をつけた優しそうな人だ。
彼女が教室の一番下にある机に座ると同時に、それまでガヤガヤと騒がしかった生徒達は彼女に抗議の声を上げ始めた。
「ミセス・シュブルーズ、なんで平民が教室にいるんですか!どう言う事なのか教えて下さい!」
「すぐにあいつらを追い出して下さい!」
「ゼロのルイズがあの平民達と話をしていました!」

そのシュブルーズと呼ばれた先生は、生徒達の詰問に落ち着いた様子で答えた。
「その事については学院長から説明を受けました。彼らは昨日ミス・ヴァリエールに召還され、使い魔となった平民達です。気にしない様にしなさい」
先ほどまで騒いでいた生徒達は突如シン、と静かになったかと思うと、次はどっと笑い始めた。
忙しい連中だな、と才人は思った。
「おいおい、てっきり失敗したのかと思ったら平民を、しかも三人召還してたのかよ!さすがゼロのルイズだ!」
「成功してもやっぱりはゼロはゼロだな!」

彼らは思い思いにルイズをからかい、笑う。
才人はルイズが顔を赤くし、悔しそうに拳を握り締めたのに気づいた。
これはちょっと酷い。これでは殆どいじめだ。
ルイズの後ろに座っていた、太っちょの男子などはルイズに直接声をかけた。
「ゼロのルイズ、召喚に失敗したからってそこら辺を歩いてた平民を連れてくるんじゃない!見っともないぞ!」
これにはルイズも立ち上がり、声を張り上げて言い返した。
「違うわ!本当に召喚できたのよ!こいつらが勝手にきちゃったのよ!それに私はもうゼロじゃないの!」
514鷲と虚無 ◆I3um5htGcs :2008/12/13(土) 22:38:53 ID:GlMq9SGT
だが今度は意外な事にプッロが席から立ち上がり、ルイズに口を出した。
「おい、勝手にきたってのは聞き捨てならねえな!俺がいつこんな場所に来たいって言ったんだ?お前が“勝手に”つれて来たんだろうが!」
「あ〜もう!頼むからあんたは黙ってて!」
ウォレヌスの方は手を頭に当ててうなだれた。こんな下らん言い争いはゴメンだと言わんばかりに。
「おいおい、平民を連れてくるにしたってもうちょっと品の良い奴をつれて来いよ。これじゃちょっと程度が低すぎるぜ?」
「だから違うって言ってるでしょ!なんならミスタ・コルベールに聞いて見なさい!」
ここに至って、シュブルーズが懐から小さな杖を取り出し、何かを呟いた。
するとルイズもプッロも太っちょも、見えない手に押さえつけられたかの様にストンと椅子に座り込まされた。
「いい加減にしなさい!教室で下らない口論をする事は許しません!他の皆さんも、お友達の悪口を言うような程度の低い事は止めなさい!さあ、早く授業を始めますよ」
シュルブルーズがそう叱責を飛ばすと、プッロはブツブツと何か呟き、ルイズはしょんぼりとうなだれた。

最初にゴタゴタはあった物の、授業はおおむね滞りなく進んだ。
授業の最初は都合の良い事に、今までの復習のようでシュブルーズは基本から説明してくれ、そのおかげで才人たちにも魔法の仕組みと言う物が良く解った。
例えば、魔法には大昔に失われた虚無の系統を除いて四つの系統、すなわち火、土、水そして風が存在し、魔法使い(メイジと言うらしい)にはそれぞれ得意とする系統が存在する事、そして“足せる”系統の数でメイジのランクが決まる事などだ。
無論、才人にとってもこれは非常に興味深い物だったが、一番関心を奪われたのはウォレヌスとプッロの二人らしく非常に熱心に耳をかたむけている。
だが心なしか、ウォレヌスの表情の方が暗い。その理由は才人にはわからない。
そして彼女は最後にこう付け加えた。
「そしてこれらの魔法の為に、我々は社会を維持する事が出来るのです。例えば、もし魔法が無ければ重要な金属を作る事も出来ませんし、石を切り出す事も出来ません。作物の生産も今よりずっと手間取るでしょう。我々がいなければ平民達はたちどころに生きる術を失うのです」

これを聞いたプッロは不思議そうな顔をし、ルイズに「おい」と声をかけた。
「……なによ」
「平民が生きる術を失う、ってどう言う意味だ?なんでそうなるのか解らねえんだが」
ルイズは棘を含めた言い方で返した。
「……あんたらしい馬鹿な質問ね。魔法が使えない平民が生きられるわけないじゃない」
「馬鹿だとぉ?まあいい、って事はなんだ魔法ってのは貴族しか使えないってのか?」
「当たり前でしょ!魔法が使えるからこそ貴族なのよ!あんた達が来た場所ってのは一体――」

その瞬間、シュブルーズのカミナリが飛んだ。
「ミス・ヴァリエール!授業中に無駄なおしゃべりをするのは許しません!」
「で、でも!こいつが勝手に話しかけただけで……」
「使い魔の不始末は主人の不始末です。それと、あなたも……」
そう言ってシュブルーズはプッロを睨んだ。
「授業中は静かに!」
プッロは「へえへえ、すみませんね」と小さく言い、肩をすくめて見せる。
ルイズは、プッロの方も叱責を受けたせいか素直にすみませんと言った。

これで才人はなんでルイズや他の生徒達があんなに偉そうだったのか少し理解出来た。
貴族しか魔法を使えず、シュブルーズの言うように魔法のおかげで社会が成り立ってるのなら確かにそれはすごい。
少し位威張るのも当然かもしれない。だからと言って良い気分はまったくしないが。
515鷲と虚無 ◆I3um5htGcs :2008/12/13(土) 22:39:49 ID:GlMq9SGT
これらの基本をおさらいした後に、シュブルーズは本題に入った。
「では、今日は皆さんに“錬金”の魔法を覚えてもらいます。一年生の時にやり方を覚えた方もいるでしょうが、基本は大事ですから手を抜かずにしっかりとやりなさい。まずは私が手本を見せましょう」
そう言って彼女は懐から小石を取り出すと、それを机に置く。
そして杖を持つと、何かを呟いた。その途端、信じられない事にただの石ころが何かの光り輝く金属に変化した。
「そ、それってもしかして……金ですか?」
キュルケが恐る恐ると言った様子でシュブルーズに聞いた。
「いいえ、残念ながらただの真鍮です。ゴールドはスクエアでないと錬金できません。私はトライアングルなので……」
彼女はもったいぶった様に言ったが、トライアングルと言うだけでも上にはスクエアしかいないのだから中々の実力者なのだろう。
そして彼女は錬金を行う魔法の使い方を教え始めたが、魔法に縁など無い才人には何を話しているのかは全く理解出来ない。

才人もこの錬金と言う物には驚いたがウォレヌスとプッロの反応はまさに驚愕としか形容出来ない物だ。
最初はポカンと口を開けていた二人だったが、やがて二人は小声で話し始めた。
「今……確かにただの石ころが真鍮に変わったんですよね。何かの手品とかじゃなく」
「ああ……間違いない」
そう言ってウォレヌスは首を振った。
「冗談じゃない、あんな事が死すべき定めの人間に出来て良い筈が無い」

その時、ルイズが苛立った様に声を張り上げた。
「あんた達、さっきの先生の言葉を聞いて無かったの?授業中は黙ってなさい!」
だがこれは逆効果だったようだ。シュブルーズは話を中断し、ルイズを睨んだ。
「ミス・ヴァリエール。私の言った事を理解しましたか?私は授業中は静かに、と言ったのです」
「で、ですが私はこいつらが話し始めたので注意を……」
「前にも言いましたが、使い魔の不始末は主人の不始末です。彼らを黙らせないのならあなたの責任です。よろしい、あなたがきちんと授業を聞いていたかどうか試して見ましょう。あなたが錬金の実演をしてみなさい」
突然の指名に、ルイズは思わず聞き返した。
「え?わ、私ですか?」
「そうです。ちゃんと私の話を聞いていたのなら出来るはずです。さあ、やってみなさい」

彼女のその言葉と同時に、生徒達がザワザワと騒ぎ出した。
「あ、あのミセス・シュブルーズ。絶対に止めさせた方がいいと思いますけど……」
キュルケが困ったようなような顔をして言う。
「何故です?」
「危険だからです。凄く」
教室にいた人間の殆どがうなずいた。
「確かにミス・ヴァリエールの実技の成績はあまり良くないのは知っていますが、それ以外の部分では彼女はとても優秀です。彼女なら出来る筈です」
と言った後に、シュブルーズは忘れずに一つ付け加えた。
「もし授業をちゃんと聞いていたのなら、ですが」

才人も他の二人も、なぜ生徒達がこうも騒ぎ始めたのかが理解出来なかった。
一体何が“危険”なのだろう。ルイズ自身までが青ざめた表情になっている。
そして才人はルイズが何かをブツブツと呟くのを耳にした。
「……大丈夫、大丈夫よ。学院長も召喚は成功だって言ってくれた。私はもう魔法が出来るようになったの。私はもうゼロじゃない。これを成功させればあいつらも私を見直す筈……」
そしてルイズは立ち上がり、表情は蒼白ながらキッパリと言った。
「私、やります!」
シュブルーズは満足げにうなずいたが、他の生徒達はますます騒ぎ出し、キュルケに至っては殆ど哀願するようにルイズに言った。
「お願いだからやめて、ルイズ。どうなるかはあなたにも解ってるでしょう!?」
「いいことツェルプストー、私はもうゼロじゃないの!使い魔を召還出来たのがその証拠!そこで見てなさい」
そう高らかに宣言し、ルイズは席を立ちシュブルーズの所に進み出た。
516名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 22:40:06 ID:7SQb9B6x
才人色々考えてるな支援
517鷲と虚無 ◆I3um5htGcs :2008/12/13(土) 22:40:37 ID:GlMq9SGT
ルイズがシュブルーズの机の前に立つとほぼ同時に、ウォレヌスが口を開いた。
「プッロ、才人君。机の下に隠れた方がいい」
「え?なんでです?」
プッロは意味が解らないと言う様に聞いた。
「この騒ぎ具合は普通じゃないのは解るだろう。何かが危険だ。それに他の生徒の殆どはそうしてる」
才人は周りを見回した。なるほど、確かに生徒達の殆どは既に机の下に隠れている。
別に隠れても失う物は何も無い。三人は机の下にもぐりこんだ。

机の下からは何も見えないが、声を聞く事は出来る。
才人はルイズの隣に立ったシュブルーズが、錬金を始める様に命ずるのを聞いた。
「さあ、始めなさい。やり方は解りますね?」
「はい」
そしてルイズが何かの呪文らしき物を力強く口に出すのを聞くのと同時に、才人の耳にとてつもない轟音が響いた。
爆弾のような(と言っても才人は本物の爆弾を聞いた事があるわけではないが)としか形容がしない音だ。
それがクラス中を揺さぶり、最初に驚いた使い魔達が暴れだす音が聞こえてきた。
その次は生徒達の罵声だ。
「クソッ!誰かさっさとあいつを退学にさせろよ!」
「やっぱりゼロのルイズはゼロのまんまね!冗談じゃないわ!」
「ラッキーが!俺のラッキーがヘビに食われちまった!」

才人は恐る恐る机から身を出し、周りを見渡した。プッロとウォレヌスも続いて起き上がった。
「……雷でも落ちたのか、これは?」
ウォレヌスが唖然とした様子で呟いた。
教室の中央は黒こげになっている。ミセス・シュブルーズは倒れているが、ピクピクと痙攣しているので生きているようだ。
机はめちゃくちゃに壊されており、錬金された筈の石ころは影も形も見えない。当のルイズは服がボロボロになってはいるが、シュブルーズとは違いちゃんと立っている。
彼女はうつむいたまま悔しそうにギリギリと歯を食いしばり、手は血が滲む程強く握り締めていたが、才人達にはそれが見えなかった。

結局、その日の錬金の授業はそのまま中止になった。
ミセス・シュブルーズは命に別状は無かったとはいえ、とても授業に参加出来る状態ではなかったからだ。
彼女は爆音を聞きつけたやってきた他の教師達にそのまま医務室に連れて行かれた。
この惨状を招いたルイズはと言うと、滅茶苦茶になった教室(爆発だけでなく、暴れた使い魔達が壊した備品も含めて)の掃除を命じられた。

そして教室にはルイズと三人だけが残された。だが誰も掃除を始めようとはしない。
ルイズはうつむいたまま動こうとしないし、ウォレヌスは腕を組んだまま壁の背にもたれ、プッロは椅子に座ったまま足を机の上に投げ出していた。
しばらくの間気まずい空気が流れたが、その内プッロが口を開いた。

「おい、さっきのあれ、ありゃなんだったんだ」
「そうだ。あれはどう考えても錬金と言う奴ではないだろう。まるで落雷のようだった。一体何をしたんだ?」
最初、ルイズは黙ったままだったが、ポツリポツリと答え始めた。
「……見て解らない?失敗よ。完全な」
それを聞いて才人はやっとゼロのルイズと言う言葉の意味を理解出来た。
ゼロと言うのは成功率ゼロと言う意味だったのだ。そして同時になぜ彼女がクラスメートから笑われていたのかも解った。
「なあルイズ」
「……なによ」
「お前のあだ名のゼロのルイズって奴。あれってもしかして……魔法を必ず失敗する、って意味か?」
518鷲と虚無 ◆I3um5htGcs :2008/12/13(土) 22:41:33 ID:GlMq9SGT
ルイズは答えなかったが、プッロはどうやらそれを肯定と受け取ったらしい。
「おいおいお嬢ちゃん、それ本当か?まさか魔法が使えないのにさっきまで貴族だのなんだのと威張り腐ってたのか?お前、魔法が使えるから貴族だって言ってたよな。じゃあお前はただのガキなのか?今朝杖を突きつけたのもただのコケおどしか?え?」
確かにそれが本当なら噴飯物だ。
ご主人様だの貴族だのと散々威張っていたのに、肝心の本人が魔法を使えないなどと、冗談にすらならない。
単に魔法が使えない鬱憤を自分達にぶつけていた様にしか見えない。才人は憤慨し、ウォレヌスまでもが嘲りの声を出した。
「なるほど、あの爆発は魔法が失敗したのか。確かにどう見ても錬金とやらではなかったからな……まったくお笑いだな、おい」

ルイズは相変わらずうつむいたまま、答える。
「……そうよ。魔法が必ず失敗して爆発を起こすからゼロのルイズ。簡単でしょ?……さあ、掃除を始めましょう。手伝って。ウォレヌス、あんたは机の残骸を片付けて」
だがウォレヌスは鼻で笑った。
「ハッ!なぜそんな事を?これはお前がやらかした事だろう。お前が起こした不始末をなぜ私達が片付ける必要がある」
これには才人も同意した。
「俺も同感だ。自分の不始末は自分で始末しろよ」
なるほど、確かに彼女はどうやら魔法が使えないと言う理由でクラスメートに馬鹿にされているようだ。
だがだからと言って自分が彼女の尻拭いをする必要は無い。
そして最後にプッロが一言付け加えた。
「それが嫌だってんなら、暇な奉公人にでも手伝って貰っとけ。どっちにしろ、俺たちの誰もお前を手伝う気なんて無いってことだ」

ルイズは少しずつ顔をあげる。その顔は悔しさと不甲斐なさに歪んでおり、目には涙すら浮かんでいる。
そして彼女は三人を睨み付けながら、感情を爆発させた。

「……あああ、あんた達はなんでいちいちあーだこーだと口答えするの!?き、昨日もそう、今日もそう!おまけにつ、杖まで奪う!ああ、あんたらは私の使い魔なのよ!しゅ、主人の私には絶対服従の筈なのに一体なんで!
な、なんでたかが平民がこんなに私に逆らうの!?いや、そもそもなんで貴族への敬意なんてカカ、カケラも持たない平民三人が私のつ、使い魔になったのよ?しかも三人!あ、悪夢だわ!
おまけに魔法がやっとの事でせせ、成功してやっとゼロの名前が無くなるかと思ったらあいも変わらずば、爆発!昨日の召喚の成功はい、一体なんだったのよ!?それともやっぱりし、失敗?失敗だったの?
ええ、そうにちち、違いないわ、私は召喚に失敗したからこそあんた達みたいなややや、野蛮人がやってきたのよ!そうに違いないわ!私はゼロのルイズ!
これからも一生魔法を使えずに終わるのよ!これでま、満足?笑いなさい、笑いなさいよ!どうせ心の中じゃもうわわわ、私の事を嘲笑ってるんでしょ?さあ、笑いなさい!」

あらん限りの声を喉から絞り出し、殆ど絶叫といって言い様子でどもりながらまくしたてるルイズ。
肩で息をしながら、ルイズは三人をにらんでいたがやがて自分の杖を床に叩きつけると、彼女は涙をこぼしながら教室から駆け出していった。
才人達は彼女の突然の剣幕に圧倒され、何も出来なかった。
519名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 22:42:26 ID:GlMq9SGT
以上です。次話こそ決闘の始めになる予定です。
それにしても書きたいシーンや話は幾らでもあるのにそれを早く文に出来る力が無いってのは辛い。
520名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 22:44:04 ID:7SQb9B6x
投下乙です
……流石に気の毒だな
521名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 22:46:54 ID:PLrEJTpI
鷲の人、乙でした。
ルイズが何だか追い詰められとりますなぁ。

あと、メインは才人なんですかね?
いや、才人の視点が多かったんで、ちょっと気になったんですけど。
522名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 22:50:41 ID:5iNECOwR
乙でしたー。
……ルイズって、追い詰められている時が輝いて見えるのは気のせいかな?
523名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 22:53:35 ID:zTM+GJIh
ルイズは苛められるほど輝く
アンアンが駄目な子ほどかわいい。キュルケがいい人でいい女と同じ理論だな
524名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 22:54:48 ID:kfdNKxHE
投下乙です
数の暴力には勝てんなw
525立身出世物語 ◆sMc1nAya/k :2008/12/13(土) 22:56:35 ID:HJTmQxWN
乙でしたあ。

今のところ、才人は二人にくっついてるだけで何も決断とかしてないな。
526名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 22:58:34 ID:HJTmQxWN
>>525
なぜだ、ギコナビのレスエディタに入れたコテハンが消えない・・・・・・不注意でした。
何回同じことやってるんだ、俺は・・・・・・orz
527名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 22:59:57 ID:NlyynvMU
コテハン記憶のチェック確認しようZE
528名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 23:04:15 ID:HJTmQxWN
どうにも、さっきから色んなスレで同じことやってるんだよなあ。
年齢か?年のせいなのか?


……むぅ。
529鷲と虚無 ◆I3um5htGcs :2008/12/13(土) 23:11:14 ID:iJNQO2E7
>>521
>あと、メインは才人なんですかね?
もうちょっと先まではそうなっています。
メインの視点を区切りごとに変えようと思いますんで。
>>525
その点はちょっと重要なポイントになる予定です。
530名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 23:15:17 ID:Bu9luLNh
乙でした。
ゼロの概念って、まだ古代ローマには伝わってなかったな、そういえば。
531ナイトメイジ:2008/12/13(土) 23:15:45 ID:lLcENXCt
20分から投下させてください
532ナイトメイジ:2008/12/13(土) 23:21:36 ID:lLcENXCt
既に夜も更け、酔漢たちももう眠りに落ちている頃だろうか。
青臭い下生え茂る野原で男は息をする音すらも消し、身を潜めていた。
「副隊長、総員配置につきました」
「よし。合図を待て」
男はトリステイン魔法衛士隊の一つ、グリフォン隊の副隊長。
そして、この隊の指揮官でもある。
副隊長は前日までこの隊の指揮官ではなかった。
副隊長の上には当然ながら隊長がいたのだ。
隊長の名はワルド。
人品兼ね備えたスクエアメイジであり、忠信篤い貴族。
副隊長を含む全ての隊員達に尊敬される、まさに理想を体現したような男であった。
しかしそれも既に過去の話である。
数日前、王女に呼び出され、聞かされた内容がそれを物語っていた。
「ワルドはレコン・キスタに与する裏切り者です」
副隊長は我が耳を疑った。
──そんな馬鹿な
それを口に出さずにいれたのはアンリエッタ王女の顔にあったのが華のようなと称されるような笑顔ではなく、氷のように張り付いた笑顔だったからだろう。
「グリフォン隊の総力を持ってして、さらなる裏切り者を探し出すのです」
続けて下されたアンリエッタ王女の命令を聞いた副隊長は慌てて隊舎に戻り、命令を果たすべく行動を開始したのであった。
その結果、見つけたのがトリステイン郊外にうち捨てられたこの小屋においてレコン・キスタのスパイとおぼしき男がトリステインのとある貴族の執事と接触するという確かな情報である。
「失敗はできん。グリフォン隊の誇りにかけて」
これを逃せば次にいつ手柄を上げられるかわからない。
そして、手柄が上げられなければ隊長の裏切りという不祥事を起こしたグリフォン隊は解散となる。
それは副隊長にとっても、栄誉あるグリフォン隊を構成する隊員達にとっても看過できないことなのだ。
待つこと十数分。
虫が顔に止まり、這い回り始めたころだ。
一軒家から少し離れたところにわずかな光が灯る。
合図だ。
「突撃!」
号令と共に、副隊長と部下達は一斉に身を起こす。
小さく聞こえていた虫の声はやみ、不思議な静寂が満たされる。
数匹のグリフォンは両翼を広げ、小屋を包囲した。
副隊長は窓を突き破り、乱入。
砕け散った木枠が顔を叩くのを無視して、杖にブレイドをかけた。
床に着地すると同時に斬りかかってきた傭兵らしき男を切り伏せる。
ついでにその男のそばにあった木箱も切り裂いてしまう。
中からおびただしい量の金貨が砂のようにこぼれ落ちた。
直後、別の窓と扉を蹴り壊した部下達がライトの魔法で室内にいた数人の男たちを照らし出した。
「トリステイン魔法衛士隊、グリフォン隊だ!」
中にいたのはメイジが少数、それから平民の傭兵が数人。
ほとんどの腰は引けているが、まだ抵抗の意志を見せている者もいる。
メイジの1人が魔法を唱えようとしているのを目の端で確認。
その懐に素早く飛び込み、杖のみを斬り飛ばして床にたたきつけた。
「貴様らがレコン・キスタか。その口、じっくり割らせてもらうぞ」
「それはちょっと困るわね」
「なにっ!?」
それが副隊長の最後の言葉となった。
533ナイトメイジ:2008/12/13(土) 23:22:47 ID:lLcENXCt
術者を失った魔法の光は次々に消え、小屋の中は瞬時に暗くなる。
次いで聞こえてくる人が床に落ちる音にレコン・キスタのスパイ達は一歩もその場から動けずにいた。
やがて静かになり、動く者はなにもなくなる。
その中で扉の外に見える二つの金色の光が瞳であることに気づくのには少しの時間がかかった。
「お、お前はだれだ?」
レコン・キスタのスパイであるその男は言ってから後悔した。
その二つの瞳を持つ者が自分達を害する者ではないと誰が保障してくれるのだ。
「気を抜き過ぎよ。もう少し気をつけて動く事ね」
闇から聞こえる女の声に仲間達が一斉にほっと息をつく。
声をかけたレコンキスタの男も同様だ。
どうやら話が通じる相手のようだ。
「助けてくれたのか?」
「そういうことになるわね。レコン・キスタの邪魔はして欲しくないと思っているし」
このレコン・キスタのスパイは下級とはいえ貴族であった。
相手が味方となれば余裕も出てくる。
今更ではあるが怯えて曲がりきっていた背中を伸ばし、貴族としての矜持を見せようとした。
「名前をお教え願えないだろうか」
風にあおられ、小屋が崩れそうな音を立てて扉が閉まる。
レコン・キスタの男は慌てて外に飛び出たが、金色の瞳を持つ女はどこにも見あたらない。
代わりにレコン・キスタの男は小屋を囲むように倒れ伏しているグリフォン隊の隊員とグリフォンをいくつも見つけた。
一陣の風が吹く。
自分の体が冷えたのはそのせいだということにした。
そうだ、こんな寒いところにはもういたくない。
未だ部屋の中に居る男たちに声をかけ、レコン・キスタの男はなるべく早くその場を去った。


「どういう事ですか!」
アンリエッタが声を荒げたはしたなさに顔を赤らめていたのは、執務室でのことだった。
居住まいを正し、小さく咳払いを一つ。
自らを落ち着かせてから言葉を続けた。
「兵が揃えられないとはどういう事です」
それに答えたのは市井において鳥の骨とも揶揄されているが確かな政治手腕を持つマザリーニ枢機卿である。
あだ名に違わぬ細い体の彼が話す内容は重いものであった。
「レコン・キスタに対する見方は今、すぐにでも攻めてくると言うものと和平を求めて来るであろうというものの二つに分かれており後者の見方が優勢です。多額の予算を使って来るかどうかもわからぬレコン・キスタに備えることはできないと多くのものが見ているのです」
「先日まではレコン・キスタがすぐにでも攻めてくると見られていたではありませんか。そのために警備も増強したのではありませんか」
「この数日間でそれが急激に変わったのです」
「急激に……まさかそれほどまでにレコン・キスタの手のものが我が国に?」
「おそらく」
アンリエッタはがっくりと椅子に背を預ける。
アルビオンより帰還を果たした次の日のことだ。
マザリーニにこってり絞られた後、アルビオンでの出来事を話し、国防について話し合った。
そしてそれに対する策もいくつか施した。
しかし、レコン・キスタの動きは彼女を上回っていた。
それはアンリエッタの甘さか、あるいはレコン・キスタの強さによるものか。
その判断ができるほど彼女はまだ政治に慣れていない。
「グリフォン隊に期待するしかありませんね。同時に何か手を打たねばなりませんね」
「そのことですが」
マザリーニの顔はとてもでは無いが明るい知らせを持っているようではない。
「昨夜、グリフォン隊は壊滅しました」
力の抜けてアンリエッタの手から羽ペンが落ちていく。
その先にまだついていたインクが高価な羊皮紙を汚していた。
「隊として既に成り立たない状況にあるようですな」
落としたペンをそのままに、うつむいたアンリエッタは頭を数回振った。
何かを考えなければならないのだろう。
だが、なにも考えられなかった。
「後は私が」
「わかりました。任せます」
マザリーニが退室するまで、アンリエッタはそこから動くことはなかった。
ただ扉の閉まる音がやんだとき、一言だけ呟いた。
「ウェールズ様、私は無力です」
534ナイトメイジ:2008/12/13(土) 23:24:25 ID:lLcENXCt
この日を境にグリフォン隊はその輝かしい歴史を閉じることとなる。
同時にトリスタニアにおいてレコン・キスタとの条約締結を進める派閥がその数を徐々に増やしつつあった。
彼らのうちの幾人かは平民が一生どころか5回生まれ変わっても稼げないような金貨を手に入れていたが、それに気付く者はごくわずかだった。
さらに、それを見計らっていたかのようにアルビオン新政府より条約締結の打診があり、トリステインはそれをゲルマニアとの協議の末異例の早さで受け入れることとなる。
これにはトリステインの一部の貴族からの強力な推進があったという。
アンリエッタは書類にサインをする際に「白々しい」と呟いたとも言われるが真偽は定かではない。
繕われたような平和を得たトリステインは憂いを忘れようとするようにアンリエッタ王女とゲルマニア皇帝、アルブレヒト三世との婚姻に向け、準備を進めていくのであった。


空を飛ぶ鳩を見ても不審に思う者はまずいないだろう。
それがトリステイン魔法学院の女子寮の窓に飛び込んでも同じ事だ。
鳩が迷い込んだと思う者が少し、残りはその部屋に住む女生徒の使い魔だと考える。
しかし、この鳩はどうやらどちらでもないようだ。
その足に足に筒がつけれているからには迷い込んだ鳩ではないだろうし、この部屋に住んでいる女生徒の使い魔は見事な風竜なのだ。
部屋の主である特徴的な青い髪を持つ生徒の名はタバサという。
タバサは慣れた手つきで鳩を捕まえると、筒の中より小さな紙を取り出し、無感情な瞳でそれに目を通す。
「ルイズ・フランソワーズ、ベール・ゼファー、監視」
その間にこぼしたこの一言も、ただ確認のためだけに発したものだった。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
今回はここまでです

アンリエッタがなんか攻撃的です
アルビオンでひどい目にあったからこうなるかなー、とか思ってます
535名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 23:36:43 ID:42fgEAlu
乙!
536名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 23:41:02 ID:KPrk1Pfv
ナイトメイジは26話目で良いのだよね?
537名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 23:43:46 ID:Apq8+S3N
蛮人と聞くとあの蛮人を思い出す
538ゼロの黒魔道士:2008/12/13(土) 23:45:01 ID:42fgEAlu
おろ?やっと規制外れたかな?
今まで書き込めなかったけど、代理投下してくだすった方々に大いなる感謝を!
そして素晴らしい作品を投下してはる作者さん全てに乙!

ってことで、予約無ければ2350時ぐらいから投下したく存じます。
よろしくお願いいたします
539ゼロの黒魔道士:2008/12/13(土) 23:50:00 ID:42fgEAlu
投下開始します

――
「ルイズおね〜ちゃ〜ん?……やっぱりダメかぁ……デルフ、いつものやるよ」
帽子をきゅっとかぶりなおして、デルフをルイズおねえちゃんの傍に立て掛ける
「あーちきしょー!娘っ子、頼むからそろそろ自分で起きてくれよぉぉ!!」
朝日がちょっとずつ高くなる 今日もいい天気になりそうだなぁ
「まばゆき光彩を刃となして
         地を引き裂かん! サンダー!」
ビシャァァァァンッ
「キャァァッ!?」
「あ、起きた!ルイズおねぇちゃん、おはよう!」
「――ビビ〜!?もうちょっと大人しい起こし方にしなさいよ!毎度毎度、流石に心臓に悪いわ!」
「そーだぞー!いくら吸い取れるっつったてしびれるもんはしびれんだからなー!!」
ここ最近の日課、ルイズおねえちゃんをサンダー(の音)で起こすこと
「……ん〜、ルイズおねえちゃんが声かけて起きてくれるんならいいんだけど……」
「加減ってもんがあんでしょ!?もうちょっとこー…大人しい音とか無いの?」
使い魔ってホント色々やらなきゃいけないんだ
「う〜ん……じゃぁ、次からは『ブリザド』とか……?」
「凍えるでしょっ!?冬眠したくないわよっ!!」
……ホント、大変だなぁ……


―ゼロの黒魔道士―
〜第十六幕〜 日常と非日常


「ルイズおねえちゃん、宿題は?」
「誰に聞いてるのよ!もちろんバッチリよ!!」
ルイズおねえちゃんの朝食が終わるのを、
フレイムや他の使い魔たちと待って
(シルフィードはいたりいなかったりするんだ、タバサおねえちゃんとお仕事らしいんだけど……?)
それから一緒に授業に向かう
こっちの魔法は、ガイアの黒魔法や白魔法や赤魔法とは(そしてもちろん青魔法とも)全然違うんだ
(貴族の人が、モンスターを食べたらどうなるか分からないけど……)
ハルケギニアの魔法は属性特化、だから、おもしろい応用方法がいっぱいある
土の魔法で建物を建てたり、火の魔法で鍛冶をしたり(合成屋さんの仕事ってわけじゃないみたい)、
風の魔法で情報のやりとりもできるし、水の魔法がガイアの白魔法に相当するみたいなんだ(ポーションも使うから、薬剤師の心得もあるのかもしれないなぁ)
そんな風に、全然違う魔法の授業は、毎日毎日おもしろくて、ずっと聞いてても飽きない……
でも、学生さんたちはみんな眠そう……みんな夜更かしとかしちゃってるのかなぁ……?
ルイズおねえちゃんは、夜更かしして予習復習をしたりするけど、授業中はしっかり起きてるからえらいなぁって思うんだ
(だけど朝は寝坊することが多い……うーん、朝起きて勉強するわけにはいかないのかなぁ……?)

フーケの事件以降、特に大きな問題も無かった
ただ、ちょっとだけ色々変化があったみたいなんだ……

まずは、ルイズおねえちゃんを見る目
「あの『ゼロ』が」とか、「ツェルプストーや青い子の功績でしょ、どうせ」とか、
「使い魔に劣ってる主」とか、そういったちっちゃな文句はときどき聞くけど(……不愉快だよね、こういうの……)
学生さんたちが、みんなに聞こえるようにとか、ルイズおねえちゃんに直接向かってとか、とにかくそういう風にバカにすることは無くなったんだ
これはとっても良いことだと思う
……ただ、「使い魔に劣ってる」ってどうかなぁ……?
ルイズおねえちゃん、ボクよりもずっとずっとがんばり屋さんだし(あんなに毎日沢山の本を読んで、色々書くってできないと思うんだ)
ずっとずっと負けず嫌いだし(これって、がんばるためには必要なことだと思うんだ……あるていど、だけどね)
ずっとずっとやさしいよ?(といっても、ルイズおねえちゃんは素直じゃないから、これはみんなに分かってもらえないかもしれない……もったいないなぁ)
……あと、身長とか……まぁ、ボクは小さいままで十分だから、これはいいかな?

540ゼロの黒魔道士:2008/12/13(土) 23:50:33 ID:42fgEAlu
それと、キュルケおねえちゃんとタバサおねえちゃんとの仲
フーケの事件の前の前の日ぐらいからボクの話を聞いてたりしたから(今、ジタンたちとの冒険の物語は『クレイラの幹』ぐらいまで進んでる)
ちょっとずつお友達になっていってるなぁと思ってたけど、
最近は教室で出あう度に……
「やっほ〜!ビビちゃんおはよ〜!ついでにルイズも〜!」
「ついでって何よ!ついでって!!」
「朝から元気」
「あ、キュルケおねえちゃん、タバサおねえちゃん、おはよう!」
……こうやってどんどん仲よくなってるんだ……
キュルケおねえちゃんも、ルイズおねえちゃんぐらい素直じゃないから、「仲良しです!」とかは言わないとは思うんだけどね……
ちょっと、子供っぽいなぁと思う、二人とも……

あと、一番分かりやすかった変化、それは……
「はいはいはい!それでは授業をはじm……はいみなさん!授業中は帽子をぬぐ!!」
……なんでか分からないけど、「とんがり帽子」が学院で流行しちゃったみたいなんだ……
「ビビちゃん、決闘といいフーケの事件といい、渦中の人だからね〜!」
ってキュルケおねえちゃんが言ってたり、
「『とんがり帽子をかぶれば魔法の力があがる』という思い込み」
ってタバサおねえちゃんが言ってたり、
「バッカみたい!散々人の使い魔バカにしといて今更、マネ?フフーンだ!」
ってルイズおねえちゃんが言ってたりするけど……うーん……?
「つまりよ、相棒、みんなおめぇさんにあやかりてぇのよ!単純な坊ちゃん嬢ちゃんだぜっ!」
……デルフのが一番分かりやすい気がする
でもボクのとんがり帽子、そんなに特別な物じゃないし、
貴族の人たちって、同じとんがり帽子でも、素材とかが高級そうで……
なんか、ボクのとんがり帽子がちょっとくすんで見えちゃう気がする……
うーん……まぁ、いいのかなぁ……?装備は値段じゃない……よね?多分……


「それでは、はじめようか!」
「よろしくお願いしますっ!」
……ボクの生活もちょっと変わったんだ

「そこっ!」ガシャガシャッ
2体の鎧がが左右からボクを襲う
「わたたっ!まだまだっ!」ガキンッ
ギリギリまで引きつけてからバックステップでそれを避ける
「後ろが甘いよっ!」ガシャジャキッ
後ろからもう1体の鎧がつめてきているけど、これは予想している動き
「ブツブツ……ファイア!」ボゥッ

……ギーシュと、『特訓』してるんだ、放課後に

『ガンダールヴ』のおかげで、武器を握ったりすると、体がよく動くし、単純な力もあがってる
ボクの場合、元々後ろからの援護が基本だったから、前で戦うことができる『ガンダールヴ』の力はうれしいんだ
これなら、ルイズおねえちゃんを守ったりする使い魔の仕事っていうのが、もっと安全確実なものになるから

でも……『ガンダールヴ』の力を使うと、「冷静な戦いができない」っていう問題点があるんだ
特に、魔法を使った対処や、後ろに一歩ひいたりして戦うやり方をうまくできなくなっちゃう
「戦場では、落ち着きが無い者が真っ先に散るのである!!冷静沈着!これこそが戦いの極意である!!」
ってスタイナーおじちゃんが言っていた(でも「一番落ち着き無いの、オッサンだろ?」ってジタンがつっこんでたなぁ……)

……もっともっと強くなりたい、何よりも、ルイズおねえちゃんに危ない目に合わせたくない、だから……
541ゼロの黒魔道士:2008/12/13(土) 23:51:13 ID:42fgEAlu
「ブリザド!!」ヒュォォォカキィンッ
「ちべてっ!?あ、相棒ぉぉぉ〜、もう今日はこの辺にしとこうぜぇぇ〜!!」
「どうする?ビビ君?」
「え?ん〜……ボクはまだまだ大丈夫だけど……」
「ハハ!同じく!というわけで、続行だ!今日こそ君に一発お見舞いしないとね!」
「あ、相棒ぉぉぉ〜!」

……ギーシュにお願いして、一緒に『特訓』することにしたんだ
ギーシュは、決闘の後ちょっと友達が減ってて、暇になっちゃったみたいで、
(恋人さんには必死に謝って許してもらったみたい……でも、次の日にはまたほっぺた真赤にしてたけどなぁ?)
折角だし自分ももっと鎧を上手く動かせるようになりたいっていうことで、喜んでやってくれてるみたい
……特訓内容はギーシュの作った剣を持って、デルフをギーシュの鎧に持ってもらう
ボクの目標は、「ギーシュの攻撃をかいくぐりつつ、デルフに魔法を打ち込む」っていうこと
……これで、魔法の使い方を考えながら、近い距離の敵とも戦うことができる、と思ったんだ……

「ウォータ!」ジャパッ
「ぐぼぉっ!?」
「サンダー!!」ビシャァァンッ
「びぇっ!?」
「ファイア!!!」ボォォッ
「ぐはぁっ!?もう勘弁して〜!!」
……ちなみに、なんでデルフを狙うかっていうと、
これならデルフが魔法を吸収するから、鎧へのダメージは少なくて済む、つまり、『特訓』を長時間やっても平気、だからなんだ
「『平気』じゃねぇよっ!!ちきしょぉっ!もっと大事に扱ってくれや、相棒っ!!特訓とぁいえよぉ!?」
「ふむ、そろそろ夕飯の時間だし、今日はこのぐらいにしようか?」
「ん?あ、ホントだ……じゃ今日はこの辺d」ガシャンッ「うわぁっ!?」ドテッ
「油断大敵!足元がお留守だよ、ビビ君!」
……足払いかけられちゃった……うーん、ボクもまだまだだなぁ……
「戦場では卑怯な技も存在するからね!用心することさ!それじゃ、また明日!」
ギーシュはトリステインでは有名な軍人さんの家の子だから、戦法には詳しいみたい
だから、ドットメイジっていう、ハルケギニアではレベルが低い方の魔法使いでも、結構強い
……うーん、でも今のはちょっと卑怯すぎる気もするなぁ……
「うん、また明日ね……えいっ!」カクンッ
「うぉ!?ひ、膝カックンとはまた古い手を――今日のところは痛み分けかな?明日は絶対勝たせてもらうよ!」
「ボクも、負けないから!」
こういうのを、『ライバル』って言うのかな?うん、なんかいい響きだと思う


「……こうして、お姫様と盗賊と男の子は、『老人の亡霊が出る渓谷』、ピナックルロックスにたどりつきました」
晩は、ルイズおねえちゃんの洗濯物を畳んでるぐらいの時間に、
キュルケおねえちゃんとタバサおねえちゃんがやってきて、ボクと仲間の冒険話をするんだ
3人とも、とっても熱心に聞いてくれる
「亡霊?いやん、怖〜い!ビビちゃん、どうなっちゃうの?」
「ん〜…今日はキリが良いから、この辺までかな?おねえちゃんたち、明日も授業あるしね」
空には月灯り、雲から覗く赤と青の光が心地いい
542名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 23:51:17 ID:HnqSUNxd
おおっとビビ支援。今日も投下多いなw
543ゼロの黒魔道士:2008/12/13(土) 23:51:46 ID:42fgEAlu
「あら、もうこんな時間?はいはい!それじゃ、あんた達は撤収〜!」
「ブー、ビビちゃんを独り占めずる〜い!――あら?タバサ?どうしたの?」
「……なんでもない」
……?タバサおねえちゃん、どうかしたのかなぁ?『亡霊』って言葉にピクッてした気もしたけど……?
「顔色悪いわよ?あ、分かった、ビビちゃんたちのスリル満点の冒険譚に酔いしれちゃったってわけね!あぁ、私もどっかの盗賊に誘拐されないかしら!」
「ちょっとー、昨日の今日でよくそんなこと言えるわね!私はもう盗賊なんてゴメンよ!」
「あらー?いいじゃないの!かっこいい人に身分の差なんて無いわ!ねぇ、タバサ?」
「……否定はしない」
「あ、顔が赤くなった、いやん、タバサかわい〜♪」
……え?顔、赤くなったの?……全然分からないや……
「はいはい!そーこーまーで!もう私たち、寝るからねー!帰れ帰れー!」
「ブー、ケチー!ルイズ、そんなんだから胸も成長しないのよ?もっとおおらかにならないと!」
「言ってなさいバカ!!脳みそで何か考えないから胸にばっか栄養行くのよ!この乳だけー!」
……こんな感じで、ホントにキュルケおねえちゃんたちが自分たちの部屋に帰るのはもうちょっと時間がかかる
だから、この間に残りの洗濯物を畳むんだ
「嬢ちゃんたち元気だなぁ〜!いやしかしよ、そのベアトリクスって騎士はすっげー強そうだな?」
「あ、うん。実際、3回戦ったけど3回とも負けちゃったし……4人がかりで……」
……最後には味方になってくれたけど……ホント強かったなぁ……
「ゲ、そいつぁすげー!女騎士かー、それもアリだったk、あいやいや!今は相棒が一番だぜ?うん!」
「……デルフ、ゴメンね?ボクで……」
……ちょっと、悲しくなる……
「つれねぇこと言うなや!!相棒は今やお前さんなんだって!!安心しろい!俺様が認めてやっからよ!」
「うーん……うん、まぁ、今日のところはいいかなぁ……」
「なんでぇ、そりゃ!」
……デルフにも認められるぐらい、強くなりたいなぁと思うんだ……


「よいしょっと……」
……真夜中、ボクが寝たと思っているルイズおねえちゃんが机に向かう
「……よし!」
おっきな本を取り出して、羽ペンを忙しく動かし始める……
ルイズおねえちゃん、ホントがんばり屋さんだと思う
……でも、別にボクが寝た後がんばらなくてもいいのになぁって思うんだ……素直じゃないなぁ……

……ボクの1日はこうやってすぎていく……
明日も、いい日でありますように……
ルイズおねえちゃん、おやすみなさい、明日も、ボク、がんばるから……


ピコン
ATE ―欲望の足跡―

牢獄の夜は静かにすぎていく
聞こえてくるのは囚人共の寝息と、どこからか滴り落ちる水の音のみ
「っはぁ〜、とっとと逃げたいけど『固定化』がギッチリかかってやがるしねぇ〜……」
元ロングビルことフーケは、独房の中独りつぶやいた
最も杖も無いので固定化があろうと無かろうと意味は無いのだが
「っはぁ〜……どうしたもんかねぇ?」
本日も溜息の数だけ幸せが逃げていく
捕まることはある程度覚悟していたとはいえ、
いざ捕まってみると村に残してきた子供たちのこと、特に1人の少女のことが気にかかる
544名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 23:52:06 ID:hUtRa+dk
……支……援……
545ゼロの黒魔道士:2008/12/13(土) 23:52:28 ID:42fgEAlu
「郷愁の念かね、フーケよ」
「っ……誰だい、あんた?看守ってワケじゃなさそうだけど」
気付かぬ間に男が1人、独房の前に
顔を全て覆う仮面が牢獄の幽かな光に浮かびあがり、亡霊を想わせる
臭う、こいつは臭うとフーケは確信する
趣味半分とはいえ、裏社会で食っていた身、危険な臭いを嗅ぎわける鼻はもっているつもりだ
「仕事をもってきてやった。協力するなら出してやるが?」
「へっ、おあいにくさま、あたしゃ休業中、これでもバカンスの最中でね、他をあたっておくれよ」
ワザワザ牢獄を訪ねてまで仕事の依頼、ますますもって何かがある
危険な橋はなるべく渡らない。渡った挙句が今の醜態だ。過ちは2度も3度も犯したくない
「君に頼みたいのだよ、フーケ……いや、マチルダ・オブ・サウスゴータ」
「!!!」
ハッと息を飲む
こいつは、仮面をかぶったこいつは私の仮面の中身を知っている、どこまで?
いや、疑う時は全てを、がこの世界の原則だ。全てを知られている可能性すらある
「……懐かしき故郷のために働かんかね?」
「ハッ!!私の名前を知ってんなら、王族のために私が働くかどうかだってご存じだろ?願い下げだね!」
故郷、それは大事な物を残してきた場所であると同時に、全てを失った場所でもある
「安心したまえ、我々は王族に反抗する者だよ。我々とともに、愚王の散る様を見たくないかい?」
「ふん、どこまで信用できるものだか――」
そこまで言ったところで、もう1人の男が近づいてくるのに気づいた
「ほほう!彼女が“土くれ”かい?いや、バラのように可憐な貴女にその名は相応しくないようだ!」
銀髪の露出の多い服を着こなした男がやたら芝居がかった口調で大きな声を出す
看守に気付かれはしまいかと他人事ながら気にかかる
「――…クジャ、もう看守は片づけたのか?」
「もう既に麗しき夢の中さ!後は籠から小鳥を逃がすだけ……」
「……あんた達、何者だい?」
おかしい、盗賊1人を雇うにしては大がかりすぎる、
こいつらは何を企んでいるのか?盗賊の頭脳が素早く回る
「おやおや、それを知ったら、もう僕達に協力するしか無いよ?籠から逃げて、また籠に入る気かい?」
妖しいまでに美しい微笑をたたえて銀髪の男が問う
仮面の男には無い迫力がこの男にはある、こいつはいくつかの修羅場を超えてきていると直感が告げる
「クジャ、貴様いい加減に――」
「結構じゃないさ!黙って飼われる気はサラサラ無いけどね!協力っての?させてもらおうじゃないか!」
もう覚悟は決めた。どうせこのまま牢にいたところで明日は死刑とも知れぬ身
別の籠?上等である、その籠ごと後で噛み砕いてやってもいい
「ほう……良かろう、歓迎しよう、マチルダ……」
仮面の奥で男が口端をゆがませるのが分かる、全く食えない男共だ
「それで?私の飼い主にも名前はあるんだろ?」
「聞きたいかい、小鳥君!ならば教えてあげよう、その名は――」
「――『レコン・キスタ』。我らの理想へようこそ、マチルダ」

牢獄の夜は何事も無かったように静かに過ぎていく
――
以上です。「…」を減らすよう努力したいなぁ…
お目汚しすいませんでした
546名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 00:01:06 ID:3zeI33tA
乙です
ワルドとクジャは相性悪そうだw
547名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 00:07:27 ID:UlRrZDxY
細かいかもしれんが、ちゃんと句点付けようぜ
548名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 00:07:50 ID:xEIJdIZi
乙〜

思いつきをひとつ
ひよっこを一人前に鍛え上げる鬼軍曹、ジョン・スミスを召喚してしまったルイズ
資質を見抜いたスミスはルイズを指導者に育てるべく行動する
クロスじゃなくなるけどね
549名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 00:12:32 ID:bQk9Zo7h
ミゴール来んのかね
550ミゴール:2008/12/14(日) 00:13:08 ID:AJMwuFrx
こんばんわ、予約無ければ投下したいと
551名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 00:14:26 ID:uj+QXZKq
>>549
なんという召喚魔法の使い手
552名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 00:14:30 ID:UlRrZDxY
>>549が召喚したのか?w
553名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 00:16:01 ID:IgSbSMRN
かの高名な召喚士>>549が現れたと聞いて
554名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 00:16:05 ID:u6wBeh1Y
素晴らしい、では支援だ!
555ゼロと在らざるべき者 5-1:2008/12/14(日) 00:16:49 ID:AJMwuFrx
あいや、ちょうどよかったようで。
予約無いようなで投下いたします。

 深夜の学院。普段ならわずかに起きて騒ぐ生徒を除いて静まり返っている
はずの時間。しかし、まれにそんな時間に人知れず魔法の練習をする生徒も
いるものであり、そんな真面目な生徒を巡回の衛士や当直の教師は黙認する
のが常だった。――もっとも、何事にも例外はあるのだが。

 ドカン、と大きな音が中庭に響く。それがしばらくの間をおいてもう一度。
学生寮から少々離れた本塔の傍、そこで魔法の練習を続けている生徒がいた。
「げほっ、今のはまた派手に失敗したわ……中々あんたを召喚した時のよう
に成功しないわね」
 ぶつぶつと呟きながら土ぼこりを浴びた顔を拭っているのはルイズ、そし
て彼女の横に控えるその使い魔、ミゴールだった。使い魔召喚の儀式以来の
最初の魔法の行使だった昼の授業、そこでいつもと変わらない魔法の失敗に
よる爆発……相変わらずの「ゼロ」という汚名を返上するべく、ルイズはミ
ゴールを連れて深夜の魔法練習をしていたのだ。無論これが始めてという訳
ではないが、久しぶりであるのは確かだ。深夜という時間の上に寮からは距
離を取った場所で隠れて練習をしているという状況、それも失敗して爆発ば
かり起こしている所をが他人に見られるというのはルイズにとっても屈辱で
あり恥辱であった。入学当初は、名家ヴァリエールの出でありながら夜にも
関わらず熱心に魔法の練習をするルイズの姿に尊敬を覚える生徒も僅かにい
たものだった。しかし、一向に上達の気配が無いだけでなく無様な爆発を繰
り返すルイズの姿に、周囲の生徒達は「ゼロ」という二つ名をつけてあざ笑
うようになったのだ。そしてルイズもまた、魔法の失敗を続ける様を見せま
いと人目に付かない場所を探して魔法の練習をするようになっていった。
 だが、今のルイズには学院に入学した時に抱いていた「一人前の貴族」に
なるという目標に加えて、一つの目的がある。
 彼女に忠誠を誓う使い魔、ミゴール――世界を拒絶し、拒絶される存在。
 火、水、土、風、全ての精霊力に反する者。
 ルイズの魔法の初めての成功、初めての成果。
 ただ在るだけで世界から拒絶され死へと向かう存在であるミゴールを救っ
たのは、ルイズとのコントラクトサーヴァントによるルーンの力だとミゴー
ル自身は語っていた。
 ならば、ルイズが魔法を爆発させずに使えるようになればミゴール族が世
界の全てから拒絶される在り様を救えるのではないか? それだけではない、
ミゴールの語る世界の神話――始祖ブリミルすら含めた世界そのものを創造
したという絶対創造神カルドラと、ミゴールらを創造した抑制神バルテアス、
彼ら神々の創造の力の根源となった創造の書カルドセプト。ミゴールの語る
ところによれば、創造の力を独占するカルドラからバルテアス神がカルドセ
プトを奪ったものの、カルドラがその手でカルドセプトを破壊し、そしてそ
の創造の書の断片のページがカードとなって世界に散在しているということ
である。そしてそのカルドセプトの断片であるカードを集め、カルドセプト
を復元したときこそカルドラに討たれ封印されたバルテアス神がカルドセプ
トの力を利用し復活できるというのだ。
 また、それらのカードは単体でもセプターと呼ばれる適性のあるものであ
ればそこに込められた創造の力を擬似的に解放することが出来るマジックア
イテムでもある。ミゴールが言うには、この世界がカルドラ世界の一つであ
る以上必ずカルドセプトの断片であるカードは存在するとのことだ。ならば、
ルイズ達ハルケギニアの住民がカードの力を知らない理由として考えられる
のは、ハルケギニアの人間にカードに適性のある者が居ない、あるいは――
既に何者かがカードの大部分を独占し、その存在を隠蔽しているかだろうと
ミゴールは考えていた。ルイズに召喚される前、バブラシュカ大陸において、
彼らミゴール族がバルテアス神復活を目指して築いた「黒のセプター」もま
た、モルダビア教団という表の顔と、黒のセプターという破壊と略奪の集団
という二つの仮面を使ってバルテアス神復活という目的を隠していた。この
ハルケギニア大陸においても同様の手口でカードを集めている集団がある、
というのは十分に考えられることだ。
556名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 00:17:16 ID:bQk9Zo7h
おぉっ召喚してしまった!
支援!
557ゼロと在らざるべき者 5-2:2008/12/14(日) 00:17:36 ID:AJMwuFrx
 もしもハルケギニア大陸でカードの力が知られていない理由が後者ならば、
必ずやその集団と敵対する時が来る。無論それらと友好的に接触を取り、協
力を求めることなどは不可能だ。かつてミゴールが種族の存亡を賭けて戦っ
たバブラシュカ大陸において、ミゴールは黒のセプターの一員としてセプタ
ーズギルドという人間のセプターが作った集団とも争ったが、そのセプター
ズギルドを初めとしてセプターの集団というものが一枚岩になることは決し
て無い。それほどまでにカルドセプトの誘惑は強い――唯一の例外が、種族
の存亡という自分達とその子々孫々全ての生と死を賭けるほどの目的を持っ
ていた黒のセプターのみであるほどだ。いずれ必ず、あるいは集団が出来た
その時から、全てのセプター達は他のセプターを出し抜くことを考えるもの
である。そんな中でバルテアス神を復活させるなどという利益にならない目
的を持つルイズとミゴールには、僅かな協力どころか敵対以外の反応が帰っ
てくるはずが無い。
 そんな集団が存在するならば、バルテアス神復活のためにはそれらを出し
抜いてカードを集めカルドセプトを復元するという極めて困難な道を往くこ
とになる。故にこそルイズは今歩める一歩として、人前での失敗を恥じて控
えていた魔法の練習を再び始めることにしたのである。
 もっとも、そんな成長物語には思いもよらない不幸が訪れるものだが。


「……どうしようかしら」
 呆然と上を見上げながら呟くルイズ。熱心に魔法の練習を続けていたのだ
が、系統魔法からコモンマジックの練習に切り替えてもやはり失敗続き、そ
のことで苛立ってきたルイズが気晴らしにとありったけ精神力をこめるイメ
ージでファイアーボールを唱えてみたのだ。そしてその結果が、ルイズの視
線の先……学院の本塔の外壁、そこに大きな亀裂が入っていた。
 流石にこれはこっそり逃げても、先ほどからの爆発音から犯人はルイズだ
とすぐに解ってしまうだろう、ではどうすればいいか……
「ルイズ様っ」
 考えに没頭していたルイズの脳を突然の叫びが覚醒させる。突然の地響き
と轟音、それに驚く間も無くルイズの腕が体ごと引かれると急に荒馬の上に
乗せられたかのようにその体が激しく上下しながら風を切る。驚愕と混乱で
声にならない悲鳴を漏らすルイズだったが、その突然の浮遊感は始まりと同
様に突然に止まった。本塔を挟んで反対側の広場の壁の影、そこでを駆け抜
けてルイズの体がそっと地面に降ろされる。傍にいたミゴールがルイズを抱
きかかえたまま、疾風の如き勢いでその場を飛び退ったのだ。地面に足を降
ろすも突然の疾走感による混乱からそのまま腰を落としてしまうルイズ。そ
んな彼女を庇うかのように、ミゴールは油断無く先ほどまで二人がいた場所
――その先で歩を進める巨大なゴーレムを観察していた。
「ルイズ様、突然のご無礼どうかご容赦を。先ほど、我々の後方にあのよう
なゴーレムが召喚されたため、手荒ながらも火急先ほどの場所から離れるべ
きと判断いたしました」
 そう言いながら、傍の花壇に放置されていた修理中の鉄柵を見つけてその
一本を素早く手に取る。とは言えこれでは気休めにしかならないのはミゴー
ル自身も解っている。恐らく先の授業であった、土系統の魔法という物で作
られたゴーレムであり、ミゴールならばあれに強打を加えることが可能だろ
う。しかし、この眼前にそびえるゴーレムは余りにも巨大であり、手にある
武器は比較にならないほど貧弱だ。例えミゴールが切りかかり多少の痛撃を
与えようと、その巨体を破壊する前にミゴールが蹂躙される方が早いだろう。
(あれの狙いは何だ? 目的が解らぬ以上は、下手に動きルイズ様を危険に
晒すことはできぬ。……退くか)
558ゼロと在らざるべき者 5-3:2008/12/14(日) 00:18:16 ID:AJMwuFrx
「再度の無礼どうかご容赦下さい。ルイズ様、あれの狙いは解りませぬが、
ひとまずこの場を離れた方がよいでしょう」
 地響きを立てながらゴーレムが本塔へ、すなわちルイズとミゴールの方へ
足を進めて来るのを見て、ミゴールはまだ混乱するルイズを抱え上げ、本塔
をゴーレムとの間に立つ壁のようにして退くことにする。
「な……学院の中に、こんな巨大なゴーレムが……何者なの」
 呆然と呟くルイズ、その視線の先でゴーレムは本塔の前で両足を開くと、
大きく腕を振りかぶりその巨大な拳をひびの入った外壁に叩きつける。そ
の圧倒的な質量から生まれる破壊力に、石壁が耐え切れずに大きな穴を空
けて突き破られた。ゴーレムの目標が建物の方だと分り、そのまま巻き込
まれない内にこの場を離れようとするミゴール。しかし、黒い人影がゴー
レムの腕を伝って穴から塔の中へ進入するのを見て、ようやく我に返った
ルイズが叫びを上げる。
「あそこは宝物庫?! いけない、賊よミゴール! 追いなさい、逃がし
てはダメよ!!」
 ミゴールの腕の中でばたばたと暴れながら金切り声を上げるルイズ。そ
んなルイズを取り落とすまいと腰を落としてルイズを地面に降ろすミゴー
ルに、ルイズは半ばパニックになりながらゴーレムの方を指差し叫んでい
る。その指の示す先で、先ほどの黒い人影が建物の中へとゴーレムの腕を
伝って進入するのが見えミゴールにも見えた。
「ミゴール、命令よ! あれはゴーレムを使って本塔の宝物庫に侵入した
わ、必ず捕らえなさい!!」
「っ、はっ確かに!」
 極僅かにルイズを残すことに躊躇いを覚えたミゴールだが、命令という
言葉が彼に躊躇いを打ち消させた。手の中の鉄棒を握りなおし、四足獣の
如き姿勢でミゴールは猛然と駆け出した。

「こいつが破壊の剣かい。にしちゃあ随分と小さな箱だね……まあいいさ、
どんなすごいマジックアイテムか、じっくり調べさせてもらおうかね」
 ゴーレムの肩の上で小箱を手に一人呟く黒いボロ布をかぶった影――土く
れのフーケ。何の事故かは分らないが、宝物庫の下見の最中にその壁が爆発
して大きな亀裂が入ったのを偶然にもフーケは見た。この期を逃せば再び壁
に強力な固定化が加えられるどころか、強行突破は不可能なほど厳重な構造
に改修されるのは間違いない。そう判断したフーケは変装として近くの部屋
の中のカーテンを手早く錬金でボロ布に変えて姿を隠すとゴーレムで強襲し
たのだ。
 思わぬ幸運により目当ての宝を手にしたフーケは、上機嫌でゴーレムの足
を進め学院を出ようとし――雄叫びとそれに続く衝撃に打たれた。
 
「ッガアアアアアアア!!」
 夜気を引き裂く咆哮が響く。左手のルーンを煌々と輝かせながら、禍々し
い異形の亜人、ミゴールは右手に握った1メイル弱の鉄棒を渾身の力を込め
て振りかぶっていた。
 あのゴーレム、動きが遅く見えるとはいえその巨体故の速度、そして質量
による耐久力と破壊力。それに正面から立ち向かえば、人と変わらぬ大きさ
のミゴールなど無残に踏み潰されるか、羽虫のように叩き潰されるだろう。
ならば狙うべきはゴーレムを操る術者以外に無い、今まさに学院から出よう
とするゴーレムに追いついたミゴールはそう判断した。
559名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 00:18:21 ID:3MuhUymy
これはすごい
支援
560名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 00:18:41 ID:bQk9Zo7h
支援
561ゼロと在らざるべき者 5-4:2008/12/14(日) 00:19:11 ID:AJMwuFrx
 そして今までの疾走の勢いと左手に輝く主人に与えられたルーンによる力
の全てを込める。腕に、否、全身に力が満ち満ちていた。疾駆する体は風の
先を進むかのように軽く、しかし地を蹴る足は巨獣の一歩の如き衝撃を大地
に刻んだ。その在り得ざる程の疾走の勢いを乗せて鉄棒を振りかぶった両足
は勢いに負けて浮かぶどころか大樹の如く大地を捉え、弛緩させた上体は踏
み締める両足から順に力を巡らせミシミシという筋肉が軋む音が聞こえそう
な程に張り詰めてゆく。槍を投擲する場合、本来は放物線を描くように投げ
ることで重力によって威力を発揮させるものだ。だが、今のミゴールに満ち
る力はそんなものを必要としない。今、己の体に溢れる力こそがもっとも強
力な破壊力を生み出すのだ。
「アアアアアアッ!」
 最後の咆哮。呼気と共に蓄えられた力を解き放つ。左手の輝きが一際強く
夜を裂き、弧を描く右手が鉄棒を大地から空に昇る流星の如くゴーレムの上
の術者へと一直線に投げ放たれた。

 ゴウと冷えた空気を裂き飛翔する鉄塊。
 驚愕を浮かべて振り向くフーケ。
 そしてドズムッ、と土を穿ち砕く低い衝撃音。
 砕け散るゴーレムの右肩。

 ごくり、と喉を鳴らして見守るルイズ、ややあってその視線の先でゴーレ
ムの巨体がゆっくりと傾いでゆく。思わず歓喜の叫びを上げるルイズ。自分
の使い魔が学院を襲った盗賊を仕留めた――襲われた原因は自分にあるのか
も知れないが――という手柄に、思わずミゴールへ駆け出す。
 しかしミゴールの佇むゴーレムの残骸の前に辿り着いたルイズが見たのは、
苦渋に満ちた表情を浮かべた使い魔の姿だった。
「申し訳ございませぬルイズ様……あの盗賊、敢えてゴーレムを崩れるに任
せてその隙に逃げ出したようです。私の失態にございます」
 ぎしり、と牙の見える歯を食いしばりながらフーケが逃げ去ったであろう
方角をミゴールは睨みながらルイズの命令を果たせなかったことを悔いてい
た。


 翌日、街道を早足で行く馬車があった。御者台には学院長秘書のミス・ロ
ングビル、そして座席部にルイズ、キュルケ、タバサ、そしてミゴールが座
ってる。ゴトゴトと車輪を鳴らしながら道を行く彼らの目的――それは、学
院の秘宝『破壊の剣』の奪還であった。

 深夜のフーケによる破壊の剣盗難事件。朝から開かれた緊急の会議でルイ
ズは目撃者として事件の一部始終を説明していたところ、突然オールド・オ
スマンの秘書であるミス・ロングビルが学院長室に飛び込んできたのだ。土
くれのフーケの潜伏場所と思われる情報を持って。
562ゼロと在らざるべき者 5-5:2008/12/14(日) 00:19:55 ID:AJMwuFrx
 この一件を学院内部で解決させたいとするオスマン、それに対して二の足
を踏むどころか遠まわしに拒絶する教師達。その姿を見たルイズは、思わず
杖を掲げ叫んでしまった。私が行きます、と。

「で、何か大所帯になっちゃったわねぇ……」
「まあ良いじゃない。私としてもルイズに借りを返すいい機会だったし。感
謝しなさいよ、ルイズ? 私が来てあげなきゃあなたと使い魔、それにミス・
ロングビルだけで何とかしないといけなかったんだから」
「言うわねキュルケ。ただ着いて来ただけになって借りを増やさないといい
わね」
 ルイズの呟きにキュルケが茶々を入れる。結局、ルイズが杖を掲げるのを
教師達は止めようとするだけで誰も「替わりに自分が行く」とは言い出さな
かった。そこにドアの前で聞き耳を立てていたキュルケが友人のタバサと共
に飛び込み、自分達も行くと言い出したのだ。その申し出をオスマンは意外
にも受け入れ、道案内のミス・ロングビルとそれぞれの使い魔(サラマンダ
ーは馬車に乗れないし、まだ治療中なので留守番だが)を除けば生徒だけの
破壊の剣奪還に向かうことになったのだ。
 がたごととゆれる馬車の上で言い合いを続けるルイズとキュルケ、その言
葉の合間を縫って断ち切るようにロングビルがルイズに尋ねた。
「ところで、ミス・ヴァリエール? あなたの使い魔の亜人、私も見たこと
が無いのですが……一体どういう種なのかお聞きしてもいいでしょうか?
何でも召喚された時は皆が悪魔か何かと見間違えたとか」
 ピクリ、と目を瞑って腕を組んでいたミゴールが片目をロングビルへ向け
た。そしてキュルケとの呼吸を外されたルイズは、肩透かしを食らったよう
に一瞬言葉を失うが、ロングビルに向き直って隣に座るミゴールを指差しな
がら簡単に説明する。
「えっと、ミゴールと言う亜人で、まあ遠くに住んでいる種族なんで珍しい
のだと思います」
「珍しい亜人ですか、何か目立った特長でもあるのですか? 言葉を喋る亜
人と言えば翼人などがありますが……」
 重ねて問いかけるロングビルに、今度はキュルケも口を挟む。
「あらミス・ロングビル、こんな亜人はどうでもいいでしょう。それより私
はあなたがどうして学院長の秘書なんかしてるかの方に興味がありますわ」
 割り込んでくるキュルケに、ロングビルが一瞬らしくない苦々しい表情を
浮かべた。が、すぐに引きつった笑みを浮かべながらもごまかすように早口
でキュルケに答える。
「いえいえ、なんといいますか、私は元貴族のメイジでして。ラインメイジ
程度では仕事のえり好みも出来ないことも無いもので。それを学院長に拾っ
て頂いただけですわ。その、あまり聞かないでくれるとありがたいのですが」
 さりげなく「元貴族」という単語を混ぜてあまり聞いてくれるなと念を押
しながら強引に話を打ち切る。そしてロングビルは再びルイズに質問を投げ
かける。
「それで先ほどの質問に戻りたいのですが、そのミゴールには翼人の先住の
ような特殊な力があるのではないですか? ほら、トロール鬼よりも力が強
いとかそういったものが……」
「えっ……いえ、それ程のことは無いですわ。確かに人よりは力が強いみた
いですが」
「あら、そんなことは無いでしょう? 私も昨日フーケが宝物庫を襲った時
の目撃情報を聞いていますが、ミス・ヴァリエールの使い魔が逃げるゴーレ
ムを追って腕を砕いたと聞いていますわ。何か素晴らしい力があるのでは?」
 御者台から身を乗り出すようにして聞いてくるロングビルに、タバサがポ
ツリと注意する。
「前」
「あ、あらあらこれは失礼しました」
 慌てて御者台に腰を落としなおして手綱を取るロングビル。その後ろでル
イズロングビルの言葉に少し憮然としていた。
563ゼロと在らざるべき者 5-6:2008/12/14(日) 00:20:28 ID:AJMwuFrx
「ミス・ロングビル……あなたもそんなに詳しく目撃情報を集めていたのな
ら、それを学院長説明すればよかったんじゃありませんか。それとも……」
 それとも、に続くのはルイズが壁を壊すところを誰か他にも見ていたのを
知っているのでは、という問いかけだったのだが、ロングビルは手綱を捌き
ながら努めて明るく返す。
「いえいえ。私が聞いた方はゴーレムが逃げ去るところを見た、というもの
でしかたら。ミス・ヴァリエール程詳しい情報は持っておりませんわ」
 その後は何か微妙な空気が漂い、フーケが潜んでいるという小屋のある森
まで誰も口を開かなかった。

 やがて馬車が森の中に入ると、ロングビルは馬車を止めた。ここから先は
馬車が進める道がないので徒歩になるということである。空から降りてきた
タバサの使い魔のシルフィードと共に馬車を残し、ルイズ達は森の中をロン
グビルの案内に従って進みだした。
 獣道に近い道のため所々突き出している木々の枝葉を、先頭に立つロング
ビルが後ろのルイズたちのために鉈で切り払いながら進んでいるのを見てふ
とルイズが思いついたようにミゴールに声をかける。
「そういえばミゴール、あんたに武器買って上げて無かったわね。あんなの
欲しい?」
「はっ。我らミゴールは戦士の種族ゆえ、剣や槍の類があれば更なる戦働き
ができます」
「そう。ミス・ロングビル、よければもう一本錬金してもらえるかしら」
 ロングビルが元貴族と聞いて多少砕けた言葉になったルイズの言葉。しか
しロングビルはその言葉の内容にぎくり、と肩を震わせる。足を止めてルイ
ズとミゴールの方を振り向くと、顔に愛想笑いを浮かべて馬車の中での問い
かけと同じ質問をする。
「そ、そういえばミス・ヴァリエール、馬車の中での質問が途中になってい
ましたが、その亜人にはどのような力があるのですか? 興味があって……
いえ、興味というよりはそう、戦力の確認としてですね?」
「? はあ……まあ何というか、ゴーレムのようなものを壊しやすい、とい
うかそういった生き物だと言っていました。ミゴール自身は」
 突然足を止めてそんなことを言い始めたロングビルに首を傾げながらルイ
ズが答える。そのルイズの答えにロングビルは満足しなかったのか、今度は
ミゴールに問いかける。
「ええとミゴール、お前はそんな力があるの? お前は昨日逃げるゴーレム
と戦った、ということだけどあれに勝てるのか答えなさい」
「……」
 しかしミゴールは答えない。ロングビルの問いを無視するようにルイズの
斜め前で足を止めたまま不動である。質問を無視された格好になったロング
ビルは眉を吊り上げてもう一度問いかけようとして、
「聞いてないのかい、亜人!あんたは……」
「……」
「あ、ああ〜……えっと」
 ぎろり、と睨み返されて言葉が尻すぼみになる。二人のやり取りを見たル
イズは苦笑いをしながらロングビルに声をかけた。
「あはは、ミス・ロングビルも気にしないで下さい。こいつ人間が嫌いな種
族なもので、私や私の師に当たる教師とか以外には物凄く愛想悪いんです。
ねえミゴール、あんた昨日のゴーレムに正面から戦って勝てる?」
「いいえ、ルイズ様。昨日は逃げる所を後ろから襲ったために手傷を負わせ
ることができただけでございます。多少の武器を持ってしても正面から戦え
ば、奴を倒す前に先にこちらが力尽きましょう。力不足申し訳ございませぬ」
564ゼロと在らざるべき者 5-7:2008/12/14(日) 00:21:10 ID:AJMwuFrx
 歩きながらであるためいつものように膝を付くことはしないものの、仰々
しく答えるミゴール、そんなやり取りを後ろから見ていたキュルケが、少し
急かすように声をかけた。
「ちょっと、いつまでのんびり歩いているつもり?早く行きましょうよ」
「そ、そうですわね。では行きましょう皆さん」
 その言葉に慌ててロングビルが森の中を進み、ルイズ達もそれに続く。そ
うなのだ、自分達は今土くれのフーケが潜んでいる森の中に居るのだ。そう
自分に言い聞かせながらルイズは気を引き締めた。


「この箱」
「あっけないわねー」
「まあ、何にしろこれで目的は達した訳ね」
 タバサの持つ箱の周りをルイズとキュルケが囲み、気の抜けた声を上げる。
ロングビルの案内した先、フーケの隠れ家と思われる小屋を見つけた5人は、
ロングビルを周囲の警戒に残して慎重に小屋に近づき探索を始めたのだが……
あっさり盗まれた破壊の剣の箱が見つかったのだ。
 後はこのまま破壊の剣を持って無事に帰るだけ、と言うところでルイズが
ふと頭に浮かんだ疑問を口にする。
「そういえば中身は確かめなくていいの? 私達って箱しか見たこと無いけ
ど、中身を入れ替えられてたら駄目じゃない。鍵が開けられてたりなんかし
てない?」
 ルイズの疑問にタバサが箱の鍵を確かめるが、そもそも箱には鍵がかかっ
ていなかった。4人が見つめる中、開いた箱の中にあったのは……
「何これ?」
「すりかえられた……わけではない。この箱の内側、この石版を納めるため
の形に作られている」
「じゃあこれが破壊の剣って訳? どこが?」
 首を傾げるキュルケとタバサ、その横からゆっくりと手が伸ばされる。
「これって……まさかカード……?」
 呟きながら「破壊の剣」をそっと手に取るルイズ。

 その瞬間、ルイズの周囲が――世界が弾けた。
565名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 00:22:30 ID:bQk9Zo7h
支援
566ミゴール:2008/12/14(日) 00:23:37 ID:AJMwuFrx
以上で投下終了です。

気付けば3ヶ月ぶりで申し訳ない。
仕事が忙しいのもあったしまた最近忙しくなっておりますが、最大の障害はDS版を現在進行形でプレイ中でして。
途中で切っていますので、今回はいくらか早く次を投下したいと。では。
567名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 00:24:50 ID:bQk9Zo7h
乙!
568名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 00:30:55 ID:u7cgtU3a
乙です!

>>549
おい!作者さんが留まっている内にちゃっちゃと契約するんだ!
569名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 00:31:10 ID:8wbwb57I
ところでグレイヴの銃の弾は原作通り無限なんだろうか
570名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 00:34:33 ID:bQk9Zo7h
契約すればいつでも呼び出して続きを読めたり…とか?
571名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 00:47:51 ID:crrW3EOM
ミゴールの方乙
こういう忠誠心溢れる使い魔は大好きだぜ
572名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 00:52:20 ID:pG4COcHj
ひよっこを一人前に
ならへっぽこーずのガルガドとノリスは?
573名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 00:52:57 ID:JuzXKwhy
ミゴールの人乙。
まとめでこれまでの話も読んだが、ルイズにとって最高の使い魔だなぁ。
つか、かっこいいよミゴール。
574名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 01:09:12 ID:8C6BuiGz
ミゴールが帰ってきた!これでかつる!
575名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 01:16:55 ID:u7cgtU3a
>>569
お前、わざわざ作者さんが投下後の後書きで説明して下さったじゃないか!

>>570
丁重なお持て成しをすることで、作者さんに気持ち良く書いて頂ける権利だ!
576名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 01:21:22 ID:rd+B8ws1
いやー、ミゴール待ちかねたよ
次も楽しみにしています
そして俺も早くカルドDS買わんと

577名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 01:22:38 ID:2DU8Ae91
俺はブータニアスをいつまでも待ち続ける・・・
578名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 01:22:41 ID:8wbwb57I
>>575
見落としてた
作者さんすいません
579名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 01:24:06 ID:UExJYs1q
破壊の剣は魔剣ストームコーザーか
はたまた妖刀マサムネか
580名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 01:29:55 ID:p25dT7kN
気が早いかもしれないが
虚無の闇はまだかなぁ
前回のラストを見るに、次も避難所っぽいけど
581名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 01:32:53 ID:p6+7CUJu
そろそろカオスヒーローが投下されてもいいはず
582零姫さまの使い魔:2008/12/14(日) 01:40:09 ID:HgCRZovT
投下予約がなければ、50分から投下します。
583名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 01:40:57 ID:8zGoMKHg
待っておりましたミゴールの人乙
つーか>>549に感謝を言うべきなのか?w
584名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 01:44:43 ID:uj+QXZKq
いやぁ連日盛況だな
585名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 01:50:36 ID:keruG1OS
>>566
いい使いまだ。しかし、凶悪な引きですね。ほんと+(0゚・∀・) + ワクテカ +
身体がてかっちゃうよ!
586零姫さまの使い魔 第十話@:2008/12/14(日) 01:51:06 ID:HgCRZovT
「あっしは手の目だ 
 先見や千里眼で酒の席を取り持つ芸人だ

 ついにと言うべきか 先日 ウチのお嬢がメイジの資質に目覚めた
 それも そんじょそこらの魔法使いなんざァ目じゃねえ
 何でも この国で一番偉い神様 始祖ぶりみるさん伝来の力ときたもんだ
 お嬢の長年の努力も これで漸く実を結ぶ日が来たって訳で 本来なら目出度い話なんだが……

 正直 あっしは心配だね
 何せ お嬢の方は本物の伝説だが その使い魔は単なる芸人なのさ
 今までも騙し騙しやってきたもんだが あっしの代役も そろそろ限界なのかもしれねぇ

 それにしても あっしがお嬢の足手纏いになる日が来ようとは……
 分かっちゃいても 随分と癪に障る話だねェ」





「まったく忌々しい限りよね
 あたしがあれだけ必死で編み出した【エクスプロージョン】も
 祈祷書を紐解けば ちゃんとスペルが記されていたって言うんだから
 こういう書物は 後世の人間が分かるように残しておいてもらいたいわ」

偉大なる始祖に言いがかりをつけつつ、部屋の壁に向かい、ルイズがぶんぶんと杖を振るう。
時折、祈祷書を読み返しては、呪文を念入りに確認する。
もう三時間ばかり、飽きもせずに同じ事を繰り返しているルイズに対し、呆れ気味に手の目がぼやく。

「予習はそれくらいで十分なんじゃ無いのかい? もう夜中だぜ
 どうせ 使う予定なんてありゃあしねぇのに……」

「アンタが怠慢すぎるのよ ちょっとは飛行機の仕様書に目を通そうとは思わないの」

「……あっしは出たとこ勝負なのさ」

ふん、と、やる気のかけらも無い手の目を無視して、ルイズは再び祈祷書に向きなおった。
【始祖の祈祷書】―― トリステイン王家に伝わるその書物をルイズが手にしたのは、偶然によるものであった。

一週間前、タルブの大地で、一つの『奇跡』を起こしたルイズ。
「彼女の力は 伝説にある【虚無】の系統かもしれない」と言う、オスマンの曖昧な見解を受け
アンリエッタは、ルイズを王宮の宝物庫へと招き入れた。
始祖伝来と謳われる宝物群の中に、彼女の力のルーツを探す手がかりがあるのでは、と考えたのだ。

精巧な治金技術で作られた装飾品、奇抜なデザインの杖、果ては使い道の分からぬカラクリ細工。
久方ぶりに日の目を見た宝物庫の中は、さながら眉唾物の見本市といった態であった。

大仰な名前の割に、中が白紙の祈祷書などは、まさしくその『胡散臭い品々』の代表格であり
たまたま、王家伝来の指輪【水のルビー】を嵌めてみたルイズが、ページを開くことが無ければ、
或いは、そのまま歴史の片隅で忘れ去られていたかも知れなかった。
先程の始祖ブリミルに対するルイズの当て擦りも、まんざら的外れな意見とは言えなかった。
587名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 01:53:00 ID:p6+7CUJu
支援
588零姫さまの使い魔 第十話A:2008/12/14(日) 01:53:42 ID:HgCRZovT
ともあれルイズは、水のルビーを鍵に、祈祷書からいくつかの呪文を引き出す事ができた。
元々魔法が使えない事がコンプレックスだった彼女は、すぐにでも呪文を試したかったのだが
魔法の使用は、アンリエッタから固く禁じられていた。
戦局を大きく揺るがす程の魔法の存在が公になった場合、ルイズの身辺に危険が及ぶであろう事を危惧したのである。

ルイズも子供ではない。
女王の言葉の意味を十分に理解してはいたのだが、
魔法が使える事を隠し、『ゼロのルイズ』を装い続けるというのは、
ある意味で、魔法が使えなかった頃以上の負担を彼女に強いた。
ここ一週間、自室に戻る度にイメージトレーニングを繰り返していたのは
漸く手に入れた玩具を早く試してみたい、という、はやる心の顕れであった。

「ああ 早くこれらの魔法を トリステインのために役立てられる日が来ないかしら?」
「……勘弁してくれ」

夢見がちなルイズの言葉に、手の目がため息をもらす。
巨大な戦艦を一撃で葬り、たったの一人で戦力差を覆せるだけの可能性を秘めた虚無の系統。
その強大な力を使わねばならぬ事態に度々遭遇するようでは、もはや、手の目に未来は無いだろう。

「ともあれ 将来的な可能性はさておき 今のお嬢はまだ一介の学生なんだぜ?
 『伝説』の魔法を使わなきゃならない事態に出くわすことなんざ 早々……」

――カツン、と

部屋の窓を叩く小石の音に、手の目の言葉が止まる。
やや間を置いて、更に一回。
二人が思わず顔を見合わせる、人目を避け、秘密裏に連絡をとりたい時のためにと
かねてよりアンリエッタと打ち合わせていた合図であった。
思わず、手の目が一つ舌打ちをする。

「……早々無いだろうと あっしは信じたかったんだがね」




589零姫さまの使い魔 第十話B:2008/12/14(日) 01:56:06 ID:HgCRZovT
裏庭に降りてきた二人の姿を認めると、その来客はフードを脱いだ。
二人の眼前に、凛々しい顔立ちの女性が現れる。

「あなたは確か……」
「覚えていたか そうだ 銃士隊のアニエスだ」

ルイズの呼びかけに、あくまで硬い表情を崩さず女が応じる。
アニエス・シュバリエ・ド・ミラン。
軍の再編に伴い新設された銃士隊初代隊長であり、
ルイズの持つ虚無の力を狙う者が現れた場合の備えにと、アンリエッタが紹介してくれた騎士であった。

「あなたがここに来たという事は まさかレコン・キスタが?」

「いや……
 女王陛下が こちらを訪ねてきてはいないかと思ってな」

「え……?」

思いもよらぬ一言に、ルイズの思考が淀む。
常識的に考えるならば、一国の代表が、こんな夜更けに一介の学生の下を訪ねるはずが無い。
それこそ先日のアルビオン行のような、特別な用件の無い限りは。

「城で 何かあったんだね?」
「うむ……」

察しの早い手の目の断定に、やや言葉尻を濁した後、やがて意を決したように、アニエスが口を開いた。

「女王陛下が 城から姿を消したのだ
 いや この場合 何者かに攫われたと言うべきか……」

「何ですって!」
590零姫さまの使い魔 第十話C:2008/12/14(日) 01:58:12 ID:HgCRZovT
ルイズが思わず叫ぶ。
真夜中の来客とあって、ある程度の異常事態は予想していたが、現実は彼女の想像の遥か上を行った。

「随分と突飛な話じゃないか…… 何か手がかりは無いのかい?」

二の句が告げられぬ主に代わり、手の目が会話を引き受ける。
しばしの沈黙の後、自らの思考を整理するかのように、アニエスが状況の説明を始めた。

「ああ…… 王女の自室では 侍従がひとり昏倒していたんだが 
 彼女がおかしな証言をしたのだ
 ……王女をかどわかしたのは かのアルビオンの ウェールズ皇太子であるとな」

「なッ!」

今度ばかりは、流石の手の目も驚きの声を漏らす。

「そんな! そんなハズ無いわッ! だって王子は……」

「ああ 皇太子は確かに亡くなられた筈だ
 ミス・ヴァリエールの証言だけではなく 信頼できる筋からの複数の情報で
 その事実だけは確定している
 女官の見間違いか あるいは賊の変装なのか
 しかし…… だとしても 何故わざわざ皇太子に化ける必要がある……」

「…………」

「ともかく 主要な街道には既に捜索の手を回しているが
 女王の行方はようとして知れん
 友人である貴殿に 何か心当たりは無いか?」

アニエスの問いかけに、ルイズが再び沈黙する。
今しがた事情を聞いたばかりのルイズに、本来なら心当たりなどあろう筈も無い。
だが、会話の中に出てきた『ウェールズ皇太子』と言う単語が、
ルイズの直感に、一つの地名を訴えかけていた。

「手の目 今から零戦を飛ばせる?」

「……佐々木氏の腕なら 夜間飛行も大丈夫だろうよ
 だが 燃料があまり残って無ぇ あちこち探し回ってる余裕は無いよ」

手の目の答えを受け、ルイズが確かな口調で目的の地を告げた。

「ラグドリアン湖へ ……アンリエッタ様と皇太子が 初めて出会った場所よ」



591名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 02:00:09 ID:bQk9Zo7h
支援
592名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 02:00:40 ID:p6+7CUJu
しえん
593零姫さまの使い魔 第十話D:2008/12/14(日) 02:01:05 ID:HgCRZovT
――ラグドリアン湖。

トリステインとガリアの国境に挟まれたその巨大な湖は
水の精霊たちの住まう地として、また、大陸でも指折りの風光明媚な地として古くより知られ、
長いハルケギニアの歴史の中、国家間の繁栄を祝う催しが度々開かれた名所であった。

三年前、大規模な園遊会が催された際に、アンリエッタの友人として、ルイズも彼の地を訪れていた。



「おそらくは その時にお二人は出会い そして恋に落ちた
 もちろん それが今回の事件と関係あるわけでは無いのだけれど……」

でも、とルイズが言いつぐむ。
筋道だった予想に基づく捜索ならば、アニエス始め王宮の家臣団が既に行っている。
その上でなんら成果が上がらなかったからこそ、アニエスは学院まで捜査の足を伸ばしたのだ。
今のルイズに出来ることは、己の勘を信じて行動する事のみであった。

「いや…… 案外お嬢の勘は当たっているかもしれねぇ」

「えっ?」

「メイジの使う魔法の中には 姿形を他人に変えられる術があっただろう?」

手の目が質問を投げかける。
答えは聞くまでも無い。彼女はアルビオンの地で、ウェールズに化けた刺客に襲われたことがあるのだから。

「その魔法の存在は 当然女王も承知の筈だ
 女王を攫った偽王子の立場で考えれば 王女に自分を本物だと信じさせる為の材料が欲しい筈さ
 逃避行の際に二人の思い出の地による事は 犯人達にとって 十分な利益になるだろうね」

勘の鋭い手の目の肯定を受け、ルイズが安堵の吐息を洩らす。
だが、しばしの沈黙の後、ルイズは再び表情を曇らせた。

「……アンリエッタさまを攫ったのは 本当に偽の王子なのかしら?」

「どういう意味だい?」

「だってそうでしょ?
 腹心であるアニエスさんですら気付かなかった 王女の皇太子に対する思いを
 『賊』はどうやって知り得たと言うの?
 二人の関係は 私達を除けば それこそ当人同士くらいしか知り得ぬ筈なのに」

「…………」

「本当にあの時 ウェールズ殿下は亡くなられたのかしら?
 例えば 私たちが去った後 未知の魔法やマジックアイテムの力で
 一命を取り留めていた可能性だって……」

「いや それは無いね」
594零姫さまの使い魔 第十話E:2008/12/14(日) 02:03:41 ID:HgCRZovT
風防の外の闇夜を一心に睨みながら、振り返りもせずに手の目が言う。

「王子が亡命を拒絶したのは 己の名誉の為だけじゃねぇ
 トリステインを ひいては女王陛下を戦禍に巻き込むことを忌避したからだ
 そのウェールズ殿下が 仮に生きていたとしても 
 女王を惑わし 彼女の名誉を貶めるような真似をする筈が無いだろう?」

「それは……」

「あっしには そいつがどうしても堪忍ならねぇのさ
 王子を思う女王の心を利用し 女王を思う王子の遺志を踏みにじる奴らがよ
 賊の正体が何者なのかは知らないが そんな奴らは絶対に世にのさばらせて置いちゃならねぇ」

「……ええ そうね そうよね
 ごめん おかしな事を聞いたわね」

どうやら合点がいった風のルイズを尻目に、手の目は再び操縦に集中する。

実のところ、手の目の言葉は嘘である。
未知の魔法で王子が生き延びた可能性があるのなら、未知の魔法で王子が操られている可能性もあるだろう。
魔法の常識を持たない手の目には、王子が本物である可能性の方がよっぽど高いようにすら思われた。
それに、ほとんど面識の無いウェールズのために闘志を露わにするほど、彼女は義侠心に厚い人間ではない。

ただ、手の目の立場からすれば、王子が偽物であると言う前提をルイズに刷り込んでおいた方が
万一賊と鉢合わせになった時に都合がいいと、それだけの事であった。

やがて、二人の眼下に、双月の輝きを携えた、巨大な湖面がいっぱいに広がってきた。

「何てェデカさだ…… こいつは湖と言うよりは 大陸の中の海って感じだな
 しかし これだけ広いと どっから探しゃぁいいってんだ?」

「そのまま真っ直ぐ 高度を少し落として」

ルイズの指示に従い、手の目は零戦を寄せ、湖畔を舐めるように飛行させる。

「お嬢 当てがあるのかい?」

「ラグドリアン湖に住まう水の精霊は 別名・誓約の精霊とも呼ばれているわ
 その御下で交わされた誓約は 絶対に破られることが無いのと……
 もし 偽王子が姫様を御するためにこの地に寄ったと言うのならば
 永遠の愛を誓うために 必ずや 精霊の現れると言われる岸辺に向かうはずよ」



595名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 02:05:39 ID:bQk9Zo7h
支援
596零姫さまの使い魔 第十話F:2008/12/14(日) 02:06:31 ID:HgCRZovT
「ルイズ……」

月明かりに照らし出された二人の姿を捉え、零戦が鮮やかに機首を返す。
二人の行く手を遮る形で機体が止まり、ルイズがゆっくりと草むらへ降り立つ。
眼前の光景に、どくりと鼓動が高鳴る。

ルイズの視線の先にいたのは、彼女の主、アンリエッタ・ド・トリステイン。
そして……

「ウェールズ……さま?」

咄嗟にこぼれた自身の呟きを、ぶんぶんと頭を振るい否定する。
だが、それがまやかしと分かっていてはいても、彼女は意識せずにはいられない。
アンリエッタを庇う様に立つ金髪の若者、その笑顔が、在りし日のウェールズ・オブ・テューダーそのものである事を。

「うそ…… 嘘よ!
 私は確かに見たわ ウェールズ殿下は確かにあの時」

「胸元を貫かれ 血を吐いて死んだ かい?」

人懐っこい笑みを浮かべながら、ウェールズが襟元を緩める。
はだけた胸元に除く傷跡に、ルイズ達が瞠目する。
風穴を塞ぐ、異様な肉の盛り上がり。その位置は間違いなく心臓の上である。
魔法や薬による常識的な治癒とは異なる、明らかに異質な治療痕であった。

「――ッ 離れて 姫様! そいつは……」

「…………」

「姫様?」

アンリエッタはしばし、ウェールズに寄り添い俯いていたが
やがて、静かに顔を上げ、口を開いた。

「お願い ルイズ…… 道を開けて」

「姫様……! そんな
 でも なぜ? 何故なんですッ! だって あなたはあの時……」

「ええ 装おうとしたわ あなたの前で…… 立派な王女の役を
 ウェールズ様が死んだと聞かされたあの時 私は全ての希望を失っていたから
 どうせ残りの人生を 外交の道具として費やす事になるのならば
 せめて民の 臣下の あなたの望む姿で振舞おうと思った
 それだけが 命がけで任務を果たしてくれたあなたに出来る 唯一の友誼であったから……」

「そんな……」

「でも 彼は再び 私の前に現れた
 彼が本物なのか偽者なのか 生きているのか死んでいるのか
 そんな事は もはやどうでもいい事なのよ
 彼が 彼が私の傍にいてくれる事だけが 私の唯一の希望なのだから」

「…………」

「最後の命令よ 道を開けて ルイズ・フランソワーズ……」
597名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 02:07:28 ID:bQk9Zo7h
支援
598零姫さまの使い魔 第十話G:2008/12/14(日) 02:09:33 ID:HgCRZovT
だらり、とルイズが杖を下ろす。
ルイズの脳裏に、かつての王女の顔が思い出される。

想い人を救う事が出来なかった自分を労わり、優しく抱きとめてくれたアンリエッタ
凛々しい甲冑姿で兵士達を束ねていた、王族の使命感に満ちたアンリエッタ
その、誇るべき女王の心底が、これ程までに深く傷つき、絶望に覆われているなど、誰が想像出来たであろうか。

だが、少なくともルイズだけは、彼女の思いに気付けねばならなかった筈である。
ルイズはアンリエッタが頼みを置く側近であり、最大の親友であったのだから。
今のルイズには、自分がアンリエッタの前に立つ資格は無いように思われた。

気圧されるままに身を引きかけた、ルイズの肩を、手の目が軽く叩く。

「手の目……」

「聞く必要はないぜ お嬢 
 目の前のお姫さんは 既に王女としての責務を放棄しているんだからな」

つい、と手の目が一歩前へ出る。アンリエッタの表情が、やや険しいものとなる。

「なあ姫さんよォ お天道様に背いて あんた一体何処に行こうってんだ?
 故郷を捨てて 人々の期待を裏切って 親友の思いを足蹴にして 
 それで幸せになれると思うのかい……?」

「…………」

「無理なんだよ 
 大切な人に裏切られた者の悲しみが癒える事はあっても
 大切な人を裏切っちまった者の重荷が消える事は無ェ
 愛しい人の側で幸せを感じる度に あんたは裏切った者の大きさを感じる事になる
 あんたは今 真の意味での希望を捨てようとしているのさ」

「……あなたに何が分かるというの?
 愛しい人を守る事すら適わない傀儡の孤独が 流れ者のあなたに分かると言うの!」

「あんたこそ何も分かっちゃいねェ
 何一つ居場所を持たない 流れ者の侘びしさ……
 自らを束縛するものの一つ一つが どれ程かけがえの無いものかって事をね」

交渉の無意味を知り、アンリエッタが反射的に杖を構える。
その動きに合わせ、手の目も右手をかざそうとしたが……、

「むっ……!」

アンリエッタを庇うように立ち塞がったウェールズの姿に、手の目の動きが止まる。
瞬間的に、手の目は自らの力が通用しない事を悟った。
599名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 02:10:35 ID:bQk9Zo7h
支援
600零姫さまの使い魔 第十話H:2008/12/14(日) 02:11:35 ID:HgCRZovT
手の目の刺青の真価は、相手に幻を見せる事ではない。
相手の心理を、そのルーツを見通す心眼こそ、彼女の最大の武器であった。

相手の心の弱きを突き、対手に幻を疑う余地を与えない、
または、分かったところでどうしようもない幻を見せる。
その巧みな心理誘導こそが、スクウェアクラスのメイジとも渡り合える、彼女の力の真骨頂であった。

だが、目の前の青年には、その探るべき心が無い。
魂なき器に宿るのは、強力な魔力で制御された、意思を持たぬプログラム。
これまでも何度か、実力面で太刀打ちできない相手に出くわした事のある手の目であったが
今宵、彼女の目の前に居たのは、真の意味での彼女の『天敵』であった。

「手の目…… 少しだけ時間を稼げる?」
「!」

ルイズの言葉の意味に、手の目が即座に気付く。
祈祷書に記された虚無の魔法で、この場を凌ごうと言うのだ。

「合点だ」

手の目の返事を受け、ルイズがすぐさま瞑想に移る。
とにかく、ウェールズに幻術が効かない以上、狙いはアンリエッタに移すしかない。
狙いを気取られぬよう、手の目は緩やかに動き出そうとしたが……

アンリエッタを視界におさめた瞬間、手の目に悪寒が走った。
遠めに見たアンリエッタの呟きが、ウェールズの詠唱とシンクロしている事に気付いたのだ。

「なッ!」

直後、広大なラグドリアンの湖面が水蛇のようにうねり、巨大な水竜巻となって二人を取り囲む。
凶悪なるスペルの効果の前に、手の目は文字通り八方塞りとなった。
幻術を仕掛けようにも、立ち上る水柱が視界を遮っていた。

「時間を稼げとはいったがよ あっしは只の芸人だぜ
 こいつをどうすりゃァいいってんだ……」

だが、手の目に思考する時間は残っていない。
大地を大きく抉り取りながら、巨大な水龍が徐々に二人へと迫ってくる。

「畜生ッ!」

手の目が破れかぶれに右手を突き出す。
普段の冷静な彼女にしては、あまりにも無意味な悪足掻き。

ラグドリアンの地で、再び『奇跡』が起こったのは、まさにその時であった。



601零姫さまの使い魔 第十話I:2008/12/14(日) 02:13:32 ID:HgCRZovT
「なっ…… こいつは……」

その場にふさわしくない、手の目の呆然とした呟きに、ルイズが思わず目を開ける。
直後、彼女もまた驚きの声を上げた。

二人の眼前には、迫りくる巨大な竜巻から守るように両手を広げて立ちはだかる
金髪の青年の後姿があった。

「そ そんなッ! ウェールズ様なのッ?」

「何ですって!」

予想外のルイズの叫びに、アンリエッタの思考が大きく乱される。
水竜巻はぐらりと揺らぎ、三人の手前で二つに割れると、烈風とともに消え去った。

辺りを包んでいた緊張感が消え、湖畔が元の静寂を取り戻す。
双月の輝きに照らし出され、死んだ筈のウェールズが二人、その場に対峙する。

「ウェ…… ウェールズ さ ま?」

アンリエッタの杖先が震える。
新たに現れたウェールズは、いつもの穏やかな笑顔ではない。
深い悲しみを携えた、何処までも澄みきった瞳で彼女を見ていた。

「どうしたんだい? アンリエッタ」

傍らのウェールズが、アンリエッタの耳元で囁く。

「さあ もう一度 今度こそ確実に 彼らを退けるんだ」

「でも あれは ウェールズさまは……
 なんで? あの人は いったい……?」

「莫ッ迦野郎が!」
602零姫さまの使い魔 第十話J:2008/12/14(日) 02:15:36 ID:HgCRZovT
呆然と震えるアンリエッタに叩きつけるように、手の目が吼える。
普段の彼女からは想像もつかない激しい感情が、喉を突いて溢れていた。

「世の理を破ってまで現れねばならなかった彼の苦しみが テメェにゃ分からないって言うのか?
 愛する人の幸せを祈って逝った 彼の想いが 分からないって言うのかよ?
 下らねェ人形如きに騙されやがって! アンタの王子への想いってェのはその程度のモンなのか?」

「…………」

「いい加減に気付けよ! アンタの自分勝手な都合が 
 彼の生き様を 死に様を汚してるってことによォ!」

「そんな…… 私 わたし は」

手の目の叫びに、ウェールズの瞳に、アンリエッタは杖をとり落とし、呆然とその場にひざまづいた。

「ごめんなさい 姫様…… ウェールズ殿下……」

涙を拭い、ルイズが最後の詠唱を完成させる。

「今の私には…… これしか!」

振り下ろした杖の先から、伝説の虚無の輝きが溢れ出す。
あらゆる魔法を無力化する【ディスペル・マジック】。

――眩い輝きが周囲に満ちる中、魂無きウェールズは、ただの器へと還った。



603零姫さまの使い魔 第十話K:2008/12/14(日) 02:17:37 ID:HgCRZovT
「――どうやら お迎えが来たみたいだね」

月夜に映るヒポグリフの一団を見つめながら、手の目が呟く。
あれだけの竜巻に閃光である。平坦な湖畔では、遠目からでも良い目印になったであろう。

「お嬢は 姫さんに付いてやった方がいいだろうね」

「あなたはどうするの?」

「飛行機を置いていく訳には行かないからね
 少し湖畔を散歩してから 一人で学院に戻るよ」

ルイズはひとつ頷くと、俯くアンリエッタを支え、
寄り添うようにヒポグリフの背に乗った。
ひとしきり事情を確認した後、一団は、再び月夜へと飛び去っていった。

再び、湖畔に静寂が戻る。

全てはこれで良かった筈だ。
月明かりを携える幻想的な湖を眺めながら、手の目がそう思考する。
今回の一件で、アンリエッタは王子を裏切り、親友を殺しかけるという重い十字架を負ったが
その苦しみは、彼女をより良い為政者に導く糧となるはずである。

それに、なにも悪い事ばかりだったわけではない。
今回の事件は、アンリエッタとルイズの間にあった壁を取り払ってくれた。
ルイズもまた、かりそめの魂とはいえ、主人の前で最愛の人の命を奪うという重荷を負っていたが、
若い二人ならば、互いの重荷を分かち合い、助け合いながら、正しい方向に成長していけるであろう。

――分かち合いようの無い荷を背負うのは、流れ者の手の目一人で十分なのだ。

「ああ……」

と、ややうんざりした声で、手の目が背後を振り返る。

「あんた まだ居たんだったね」

手の目の瞳の先には、件の金髪の青年、ウェールズ・オブ・テューダーが佇んでいた……。



604零姫さまの使い魔 第十話L:2008/12/14(日) 02:19:26 ID:HgCRZovT
――結局の所、偽ウェールズは、手の目達の前に現れた方であった。

先の瞬間、手の目はアンリエッタを幻惑する事は不可能と判断し、咄嗟に標的をルイズに変えたのだ。
手の目の期待通り、混じりっ気のないルイズの驚愕の声は、アンリエッタの精神を乱し、水竜巻を不発に終わらせるに至った。

だが、当のアンリエッタ自身は、その事に気付いていない。
彼女の視点では、手の目達の前に現れたもう一人のウェールズが、竜巻から二人を守ったように見えた筈である。
そしてその錯覚が、偽者に本物以上の存在感を与え、彼女を疑心暗鬼に陥らせたのである。

してみれば、偽ウェールズが口を開かなかった理由も明白である。
手の目はウェールズの人となりを、殆ど知らなかったのだから……。




「幕はとっくに下りてるんだ 役者はとっと掃けなよ」

手の目の言葉にひとつ頷くと、ウェールズはそのままフッと消え去った。


――それで漸く、湖畔には、手の目一人が残された。


「堪忍しとくれよ 王子様
 あんたも色々言いたいことがあるだろうが 聞いてやる事はできそうもないや」

頭上の双月を見上げながら、手の目が誰に聞かせるでもなく呟く。

「……どっちかって言うと あっしは地獄行きだろうからね」
605名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 02:20:12 ID:bQk9Zo7h
支援
606零姫さまの使い魔:2008/12/14(日) 02:22:56 ID:HgCRZovT
以上で投下終了です。
どうもウェールズの扱いが悪いですが、彼の事が嫌いなわけではありません
葉介作品だと那由子くらい好きです。
607名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 02:38:28 ID:1cEQ0JBd
別に昔酷い目に遭わされた訳じゃないけど常に扱いは悪いんですね、わかります。
608名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 02:45:04 ID:zMyqIXMy
乙です。
もしかしたら若旦那の『影』が一人歩きしたみたいにウェールズの『影』も一人歩きしたりして。

>葉介作品だと那由子くらい好きです。
人間腸詰だの催眠術でマネキン扱いだの目隠し鬼になって地獄行きだのされるんですね、わかります。
609名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 02:52:27 ID:fy8QV1P5
戦闘を全て踊りと歌にするってのは駄目かな?
歌って踊っていると敵が次々と倒れていくのよ
610名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 02:54:17 ID:gSfae1Th
スペースチャンネル5からうららでも呼ぶかい。
611名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 02:58:08 ID:fy8QV1P5
>>610
ガッシュからフォルゴレを
ただそれで敵が倒れるのは原作でもフォルゴレが出演する映画だけだから流石にまずいかな
612名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 03:09:52 ID:GLjujBfH
DEAD SPACE よりアイザック
ギーシュがバラバラにされてしまう・・・
613名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 03:10:08 ID:q18wZNDH
>>609
何そのインド映画の王道展開
614名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 03:15:50 ID:eQSgK+Tu
ネバーランドの中の人を呼ぶしかないな。
SSの連載が続くにつれて白くなっていく。
615名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 03:18:25 ID:4UpcLiuf
>>ネバーランド
スペクトラルフォースからウェイブとかブレイクとかジャドウとか『直接攻撃』の出来るやつだな
一撃で1000人はいけるから7万も頑張れば一人で何とかなる
616名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 03:21:22 ID:8zGoMKHg
>>610
モロ星人によるハルケギニア蹂躙……悪くないなw
617名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 03:27:36 ID:eQSgK+Tu
>>615
いや、そっちのネバーランドじゃなくてこっちのだな。
ttp://blogs.yahoo.co.jp/under_the_shiny_sky/54108481.html
618名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 03:31:40 ID:st69ems2
ギーシュを見るたびに、メガドライブのLUNARというゲームの
ナッシュと言うキャラをどうしても思い出す。
魔法、キザ、女、と全てが一致。
顔までそっくりだものな。なんか参考にでもしたんだろうか。
619名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 03:35:00 ID:ywAj9MX8
ここでピート皇帝をだな
620名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 05:36:25 ID:ywHP/Ybp
>>613
ムトゥと躍るルイズか
しかし、ヤマグチノボル展開をしようとすると至る所でひたすら躍らなくちゃならなくなるな。
621名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 06:32:37 ID:tT55Qo1W
>>534
亀レス気味ですがナイトメイジの人乙です。
アンリエッタは原作でもゾンビウェールズのイベント後に攻撃的になってますから、自然な流れかと。
これからのベルの暗躍に期待しております。
622名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 06:33:25 ID:XRHKJ47b
>>ネバーランド
納豆とオクラの国だな。
623名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 09:34:22 ID:Alc7MSXH
宝塚星組公演「ゼロの使い魔」

ルイズ「♪おぉ〜応えよ、何処かにいる、強力な使い魔よ〜」

         爆発

ギーシュ&マリコルヌ「♪またもやったか、やっぱりお前はゼロ、ゼロ、ゼロ」

コルベール(禿頭男装)「♪あぁ、哀れなヴァリエール、契約せよ〜」
624名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 09:42:29 ID:J+xqbPeT
♪が付いてるが宝塚はオペラじゃないぞ
でも想像できて笑った
625名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 09:44:09 ID:OqdqZCXR
マリコルヌが美形なのですね、わかります
626名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 09:49:17 ID:5kG/02EV
美形でドMとか、どこのギャグ漫画だよって言う
627名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 10:01:34 ID:oOHQ1kTE
今日は日曜だから、ウルトラの人の更新があると見た。

……断言は出来ないんだけど。
628名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 10:19:44 ID:9iEqjcbV
コー―――ル!頼むぜ人修羅の人!
629名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 10:20:28 ID:lripn9P8
夜までには避難所にガチレズな使い魔のを投下したいな
630名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 11:11:46 ID:gKBpag5u
3日ばかり核戦争後の荒廃した米国をさ迷ってて、まとめ見たら最低野郎がきてて吹いた。

苦いコーヒー飲んで期待してますぜ。
631名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 11:37:31 ID:+4Mq2Ixg
とりあえず
シェスタ魔改造じゃ無けりゃ何でもいいや
632名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 11:42:26 ID:MgzgNB7p
まあ、放射能汚染が起きたチェルノブイリ跡は今は自然の宝庫になってるそうで
一概に荒廃するとも限らんらしいが

ちなみにゴキブリは放射能に弱いから真っ先に死ぬらしい
633名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 11:52:40 ID:TXUp2HLi
>>632
実験したら真っ先に死んでたな
634名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 11:59:57 ID:LA2ZisUJ
>>630
ヒャッハー!なゲームの第三作目の事ですね、解ります。
635名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 12:04:58 ID:ho4lZbms
つまり衝撃的なEDを迎える「レッツランニング!」なロシア人を召還ですね、分かります。
636名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 12:43:33 ID:dlYZllLf
一度行ってみたいんだよなあチェルノブイリ
ツアーもあるらしいし

さてじゃあマクミラン大尉でも呼ぼうか
ステンバーイ…
637名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 13:27:13 ID:5kG/02EV
そういやチェルノブイリを石棺の上からまた更に鋼鉄で保護するって話はどうなったんだろう。

stalker召喚かね?
638名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 13:33:01 ID:BT+N7bem
ガンダム00から刹那Fセイエイ

「この世界の歪み、見つけたぞルイズ」
「いいからさっさと教室の片付けしなさいよ」
「・・・」
639名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 13:34:14 ID:IgJ8s0We
>>631

そんなにシエスタ改変が嫌か
640名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 13:36:25 ID:5LCsPerc
>>639
アストラギウスからの召還者の話であっても、60年前の日本出身の佐々木でなきゃ駄目って
主張なんじゃない?
641名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 13:40:47 ID:Wo4p4ZXN
まぁ原作のあのシエスタが好きな人は改変嫌がっても仕方ない
642名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 13:49:08 ID:2Z852JRY
ルイズが全身に鎧を着た鈍い光を放つ使い魔を召喚してからしばらく。
学院では奇妙な流行り病が蔓延る様になった。
使い魔と仲良くしていたコルベールの髪は一気に抜け落ち、決闘で殴られたギーシュは怪我のせいだけでなく歯が抜け落ちた。
倦怠感は誰の身にも襲いかかり、寝た切りになったキュルケがある朝血を吐いて死んだ事から恐怖は爆発した。
原因が特定されず、治療法も見付からないまま学院は閉鎖され、生徒は散り散りに去っていき、
そして使い魔は主人と共に王宮に召抱えられた。

王都に到達した疫病は止まらず、マザリーニ枢機卿が体調を崩したのを皮切りに非常事態宣言が。
使い魔の訪れたアルビオン、ガリア、ロマリア、すべての地に疫病が発生した事から彼が元凶だと発覚したのは
既に放射能汚染が手遅れの段に至ってからだった。

半死半生の討伐隊が組織され、使い魔・チェルノブを始末する為送り込まれたが
長患いしたルイズを遂に失ったチェルノブはサハラに向って一人で旅立ち、その足取りはとうの昔に失われていた。
後世に伝えられた所によると、後に交流を持たれたエルフの間でも「光を放つ疫病の悪魔」の事は伝説と化していたという。


行け!チェルノブ!
愛と平和を守る為に!

我が前に敵は無し。 後ろにも。
643名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 13:54:32 ID:gKBpag5u
>>635
我が道に敵はなし!ですね、わかります!

同じメーカーならチンさん召喚だろうか…
『あたり、よかったのう。』
644名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 13:54:43 ID:oxZXRXUc
まさに終末の使い魔だな
645名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 13:56:16 ID:OnUIHJwS
チェルノブは止まれないがそこはどうなるのか気になる
646名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 14:00:46 ID:e/6gsWh2
チェルノブイリっつわれると千の目のイワンが出てくるな
戦う人間発電所はともかくとして
647名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 14:10:36 ID:oxZXRXUc
人間原子炉か

考えてみりゃ原子炉搭載のロボットって誰が居たっけか?
ロックマンXのゼロが小型原子炉で動いてるとか聞いたが・・・
648名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 14:14:01 ID:MgzgNB7p
つザク
649名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 14:16:54 ID:oxZXRXUc
核融合炉という観点ならSEED系のモビルスーツ以外はそうだろうな
まぁSEED系も例外居るけど

爆発したら危険な使い魔達だな
650名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 14:17:09 ID:139yuer0
『我が前に敵なし!』で卍丸思い出した。
いや、天外魔境の格ゲーでそういう勝利メッセージがあってな…?
651名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 14:17:36 ID:oOHQ1kTE
つアトム
652名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 14:17:54 ID:JGGoNL0A
>>647
有名所ではアトムが原子炉搭載ですね
悪人がアトムの動きとめるために原子炉に銃弾打ち込んだりしてます

あとメカンダーロボも原子炉です
必殺技「メカンダーフレイム」は原子炉の炎を開放するという荒技です
他には意外なところでコンバトラーVが原子炉搭載ロボです
装甲もサーメット(チタンカーバイトという実在の金属)
さらには8マンも原子炉で動いてたりするのです
色々と怖っ!
653名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 14:19:29 ID:5LCsPerc
核融合炉と核分裂炉は全くの別物だよ
654名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 14:19:57 ID:oxZXRXUc
おそろしいなアトミックパワーは
ほとんど最強クラスのロボじゃねぇかww

つうかそれつながりで全部召喚したらルイズに敵いないな?
まさにチート軍団だ
655名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 14:20:33 ID:2Z852JRY
>コンバトラーV
こいつは目に見える電磁波を始終放ってるのが
原子炉搭載ってよりヤバい
656名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 14:21:18 ID:MgzgNB7p
まあ、核よりやばい動力の連中が腐るほどいるのがロボットアニメ業界ですけどね
657名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 14:21:46 ID:fy8QV1P5
核融合炉は放射能は出ないでしょ?
658名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 14:22:17 ID:OqdqZCXR
つドラ○もん

実はドラ焼きを原子分解してるんだぜ、ヤツは?
659名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 14:22:25 ID:GbtAu9nw
ん十年前は夢の無限エネルギーだったからねぇ。
今では負の面が広がりすぎて反転しちゃったけど。
660名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 14:23:11 ID:oxZXRXUc
縮退炉で動く奴とかゲッター線とか反物質炉とか

まあ扱いミスったら一気にあぼーんという奴ばかりだな
661名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 14:25:20 ID:oxZXRXUc
>>659
今じゃ町ひとつ消せる破壊兵器だもんな
皮肉なもんだ
662名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 14:25:58 ID:5kG/02EV
エネルギーがほぼ無限に近いACはどうなのさ。
663名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 14:26:19 ID:fy8QV1P5
コルベールが興味本位でいじくりまわして炉を暴走させるんですね?
664名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 14:28:19 ID:oxZXRXUc
>>663
∀とか召喚したらギャグでやりそうだな
月光蝶暴走
665名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 14:28:44 ID:w1HaaT+W
制御システム壊れたら地球が吹っ飛ぶような超重力エネルギーで動く
超人機メタルダーとかもヤバイ
666名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 14:28:57 ID:5kG/02EV
>>661
ロシアにはメガトン級の核兵器があるけど。
落とすところに落としたら軽く国滅ぶレベル
667名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 14:29:26 ID:JGGoNL0A
核エネルギーといえばラヂオマンをルイズに呼ばせよう
るくとどっちがデンジャーかな?

>>660
擬似反物質砲であるフェルミオン砲を装備したソルテッカマンは安全だぜ!
問題は アレを装着=かませ犬確定な点だが
668名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 14:29:57 ID:oxZXRXUc
なぜかヒーロー系統
生きてるだけで危険なエネルギーの奴多いなww
669名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 14:32:35 ID:2Z852JRY
X-MENのサンファイアーというミュータントは
広島で被爆した為にスーパーパワーを得た核の炎を操る能力者で
現在メルトダウン起こしてるんだぜ
670名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 14:33:51 ID:JGGoNL0A
>>666
ちなみに飲料水用の人造湖作るのにロシアの阿呆どもは核爆弾使ったりしてるぜ

逆にとってもエコロジーなのがヘビーメタル
外装プラスチックで動力は太陽光発電
アレでなんでやられたら爆発するんだ?
671名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 14:34:09 ID:oxZXRXUc
ゴジラかそいつは・・・
672名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 14:34:39 ID:139yuer0
キカイダー…じゃない、メタルダーも原子炉じゃなかったか?
…と思ったが超重力エネルギーなのかメタルダー。

感情の高ぶりで戦闘形態に変身するからガンダにぴったりかと思ったんだが…w
673名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 14:34:47 ID:A9EafVfE
ジャイアンテロボも原子力エンジンだったか
674名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 14:36:53 ID:kh9sV8JI
人間火力発電所のおじさんは?
必殺技はアームロック
675名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 14:41:57 ID:JGGoNL0A
>>669
吉田四郎はその能力をローグに奪われ、現在は別の能力を与えられてアポカリプスの
手下となってます

残念!(ネタ古っ)
676名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 14:42:02 ID:oxZXRXUc
それは軋間紅摩のおっさんのことか?
あの人の得意技はアイアンクローだったと思うが
677名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 14:42:33 ID:2Z852JRY
ハルケギニアに核は早過ぎるでござる

放射線の危険性が中々世に知られなかったのは
もっとも初期の研究者のキュリー夫人が異常に放射線に強い体質だった為に
長期間ラジウムいじり続けてても健康被害を感じずになかなか気付かなかったからといわれている
678名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 14:43:45 ID:IgJ8s0We
>>674
フーケもワルドも七万の軍団もクロムウェルもミョズもジョゼフもみんなアームロックで倒すゴロー。

そしてストーカー化するシエスタ。
679名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 14:54:12 ID:auGHLLmV
>>657
ヘリウム3なら。
重水素では、確か発生したはず。
680名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 14:56:13 ID:WGhZMS5T
お空でいいじゃない、生身で核融合を完全制御出来る化け烏だぜ
さとり以外に従うかどうかはさておくとして。どう考えても初日でギガフレアかましそう
681名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 14:57:58 ID:TXUp2HLi
ロボットの中でおそらく一番エネルギー消費が激しいのはドラえもん
アレだけ大量のどら焼きをほぼ完全にエネルギーにしているんだ
エネルギー量は半端ない
一度トイレに行ったから100%の分解率ではないけど恐ろしい
682名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 15:01:08 ID:u4gb5hYk
>>674
教室で駅弁を食い始める使い魔。
マリコルヌ「シューマイ臭せぇ〜〜〜」
こうですねwww
683名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 15:01:48 ID:6QBQ9tlH
>>677
あとマンハッタン計画の時もほとんどの技術者に放射線とか放射能の危険については教えなかったとかね。
マンハッタン計画には「謎の死」がいっぱいあるそーだ。
つか今も裁判していたりする。
かなり後までだいたいそんなで、放射線の危険はむしろ知られないようにしてた。
ヒロシマとかの映像や写真も日本政府のプロパガンダと言い張ってたくらい。
1960年くらいのアメリカ陸軍の放射性廃棄物処理のマニュアルの映像には、白い布をかぶせたら放射線は通さないとでているそうだ。

まあ日本の場合は広瀬なんたらいうのがやたらと危険なものと吹聴していたという特殊事情もあるんだけど。
684名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 15:05:31 ID:0Sv8nryN
そりゃまあ、四次元ポケットのために常に時空間を操作し続けているわけだしな
685名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 15:14:16 ID:dlYZllLf
虚無ってのはこの世の全てを構成する小さい粒より小さい粒に働きかけるんでしょ?
だったらやっぱエクスプロージョンは核爆発なのかな
核分裂なのか核融合なのかはわからんが
686名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 15:17:03 ID:IgJ8s0We
>>685
放射線、放射性物質のことが描かれてないから核融合じゃない?

するとルイズは歩く純粋水爆ってことになるのか………
687名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 15:21:36 ID:2O+POv25
核融合でも中性子線ばらまくから危険だよ
一番近いのは対消滅っぽいけど一定範囲内から特定の物質のみ消滅とか
固定化とは違う形で物理的に強化したヨルムンガンドに防がれてたりでよくわからんな
688装甲騎兵ゼロ:2008/12/14(日) 15:23:28 ID:katZM/6l
予想以上の反響におでれーた!
同じ最低野郎の方々、間違いを指摘してくださった氷竜の方、ありがとうございます。

さて、とりあえずいくつかの疑問に回答をば

Q この前の予告者?
A はい。予告しないとやっぱりボトムズじゃないかなと・・・遅くなりましたが。

Q 滅亡ktkr?
A 「ハルケギニアは」しませんw

Q 他の最低野郎どもは?
A キリコと世界の動き次第です。

Q 染み付いて?
A むせる

後は徐々に本編で明かしていく方向で。予約なければ、15:30くらいから投下してよろしいですか?
689名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 15:25:00 ID:O9ValcsT
>>685
普通の魔法とは桁が違いすぎるので、必要なエネルギーは質量から変換して、
後は意思のままに好きな現象を起こせるんじゃないかと想像しとる。

ティルトウェイトもどこか(無責任)で核爆発を起こして熱量だけを持ってくるとかいう説明があったっけ…
690装甲騎兵ゼロ:2008/12/14(日) 15:30:53 ID:katZM/6l
それではいきます


第2話「接触」

その場にいたものは、目の前で起きていることをよく把握しきれていなかった。
魔法の使えない「ゼロのルイズ」が召喚に成功し、その結果が見たこともないゴーレムで、さらに中から人間がでてきた。
全力で理解しようと思考を巡らせるが、すればするほどわけがわからなくなる。
渦中のルイズもまた同じであった。一体目の前の「それ」はなんなのか?
混乱するルイズに「それ」―キリコから不意に声がかけられる。

「すまないが、聞きたいことがある。」
「ふぁ!?え、え・・・と」
頭の中が整理しきれていときに声をかけられたので、思わず素っ頓狂な声をだすルイズ。
構わずキリコが続ける。
「ここはどこなんだ?見る限りでは俺がさっきまでいた場所と違うように見えるが。」
「その・・・えーと、あの・・・」
ますます混乱ルイズに代わり、コルベールが質問に答える。

「ミス・ヴァリエールはまだ落ち着いていないようですので、私が代わりにお答えいたしましょう。
 ここはハルケギニア大陸、トリステイン王国の魔法学院、さらにそのすぐ近くの平原です。」
ハルケギニア、トリステイン。どちらもキリコには聞きなれない名称だった。
「(さっきの様子じゃATを見たことがないように思えるが・・・そんな偏狭の星がまだあったのか。しかし魔法学院とはいったい?)」
そんな疑問を頭の隅にとどめながら、別の質問を続けていく。
「聞かない名前の国名だが、ここはなんという惑星だ?いや、そもそもギルガメスとバララント、どっちの陣営に所属しているんだ?」
「惑星・・・とは、一体なんでしょうか?それにギルガメスとバララントとやらは、どこかの国名でしょうか?どちらにしろ私にはわかりませんなぁ・・・。」
この返答にキリコは驚いた。惑星間航行が当然の時代に、自分達が住むアストラギウス銀河を二分するほどの二大勢力を知らないなどとは、
いくら偏狭の惑星であろうとまずありえないことだった。

キリコはここに至ってようやく、自分が今置かれている状況がかなり異常なことだと考え始めていた。
先ほどのコルベールの言葉を思い返してみると、どうも惑星という概念すらない。この分だと宇宙などに関しても同様であろう。
さらに魔法学院という、ファンタジー作品の世界にありそうな施設。それらから答えを導き出すのに時間はかからなかった。
「(ここは俺の知っている世界・・・アストラギウス銀河じゃないのか・・・!)」
もっと言えば、全く違う「異世界」かもしれない。キリコは悪い夢でも見ている気分だった。

一方二人が話している間に冷静になったルイズには、ある疑問が浮かんだ。
「そうだ・・・ミスタ・コルベール、こういう場合はどっちが使い魔になるんですか!?」
二つのものを召喚したなら、そのどちらと契約すればいいのだろうか。
そんな想定外の事態に対する、至極自然な質問だった。
コルベールも改めて考えてみる。最初見たときこそ浮かれていたが、そもそもこの人型はなんであろうか。
そして中から出てきた彼との関係はなんなのか。それらを聞いてみることにした。

辺りを窺うようにしていたキリコは質問される。
「え〜、彼女の疑問もありますので、今度はこちらからよろしいですかな?」
視線をコルベールに戻し、キリコは頷く。
691名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 15:32:28 ID:dlYZllLf
支援
692装甲騎兵ゼロ:2008/12/14(日) 15:33:41 ID:katZM/6l
「では・・・あぁそうだ、そういえばまだ互いに名前を知りませんでしたね。私はジャン・コルベールと申しまして、先のトリステイン魔法学院で教師をしております。
 それと彼女は生徒の一人、ミス・ヴァリエールこと、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブランド・ラ・ヴァリエールです。」
「コルベール、先生か。俺はキリコ・キュービィだ。キリコでいい。」
コルベールの自己とルイズの紹介にキリコも続く。

「ミスタ・キリコですね。それではお訊ねしますが、これは・・・ゴーレムでしょうか?というか、あなたはなぜこの中にいたのでしょう。」
「これはゴーレムじゃない。AT―アーマードトルーパーという分類の兵器で、俺はそのパイロットだ。」
「なんと!これは兵器なのですか!?しかし、アーマードなんたらと言われても・・・・・・。」
この世界では、メイジがゴーレムを兵器の一つに使うことはあるが、フネなどのように生産・体系化などはされていない。
コルベールが信じられないのも、そういった理由があるからだった。

今のやり取りで判明したことを、コルベールはルイズに告げる。
「たぶん、召喚によって呼ばれたのは彼なのでしょう。このアーマード・・・え〜と、『AT』といいましたか。
 これは中に彼が乗っていたから、一緒に呼ばれたのだと思います。」
ルイズは驚きを隠せなかった。自分が呼んだのはゴーレムではなく、その中にいた人間だったのだ。

再びコルベールがキリコに質問する。
「そういえば、見たところ杖を持っていないようで・・・お尋ねしますが、あなたはメイジでしょうか?」
これほどのものを所有しているなら、さぞ凄いメイジなのではないだろうか。だがキリコの答えはそれを否定する。
「いや・・・俺はただの一兵士だ。ところでメイジというのが何か分からないが。」
「メイジというのは、魔法が使えるものをさす言葉です。知らないということは、もしや貴族でも・・・?」
「あぁ、違うな。俺は魔法なんか使えないし、貴族でもない。いたって普通の人間だ。」
ルイズにとって、それは最悪の結果だった。使い魔として人間を、それも魔法の使えない平民!そんなヤツを自分は呼んでしまったのだ。

やがてそんな状況を理解した生徒が段々と騒ぎ始める。
「ハハハ・・・な、なんだ、ホントに呼んだのはただの平民で、あっちのゴーレムはオマケだってよ!」
「やっぱりゼロはゼロだったな!驚かせやがって。」
「ホントは召喚どころか、その辺からつれてきたんじゃないのかー?ゼロのルイズ!」
静かだった場が一転、再び喧騒の渦に覆われていく。

そんな中、思い出したようにルイズが言う。
「ミスタ・コルベール!もう一度召喚の許可を!」
「なりませんぞ、ミス・ヴァリエール。例えなんであれ、召喚したものとは契約を結ぶのがきまりです。
 それにあなたも約束したでしょう『あと一回だけ』と。一度した約束を反故にするなどあってはなりません。」
もはやルイズは何もいえなかった。
確かに召喚はした。だけど平民が使い魔なのは嫌。だが契約しなければ留年。ならば召喚をやりなおしたい。しかし約束はやぶれない。
そんなどうしようもない状況についには頭を抱えてしまう。

そんなルイズや周りにも、お構いなしにとキリコは訊ねる。
「状況をまだハッキリ理解したわけじゃないが・・・俺はその『契約』とやらをしないといけないのか?」
ルイズを指差しながら言う。
「申し訳ないのですが、そういうことになります・・・。ですが彼女も進級がかかっているのです。勝手なこととは承知の上でお願いします。
 ミス・ヴァリエールと、使い魔として契約してもらえないでしょうか?」
コルベールとしても、素性のわからぬキリコを使い魔とするのには、少々抵抗があった。
693装甲騎兵ゼロ:2008/12/14(日) 15:36:05 ID:katZM/6l
しかし儀式の決まりを破るのもまた許されないこと、ルイズだけ特例扱いはできない。
彼女の努力は知っている。その姿だってこの目で見ている。だからこそ、他の生徒と分け隔てなく、かつ平等に接しなければいけない。
教師という立場のコルベールに出来ることは、キリコに頭を下げるのが精一杯であった。

相対するキリコは冷静に現状を推察する。
「(今の俺はここ・・・トリステインとやらにいる。それはこのルイズとかいう少女が魔法で呼び出したから。理由は使い魔としての契約。
 ・・・俺みたいなのが呼ばれるのはかなり異例みたいだ。それでも契約とやらをしなければ、ルイズは留年・・・その場合俺はどうなる?いやそれよりも)」
また一つ、キリコの脳裏に疑問がよぎった。それを確かめるため、再びコルベールに訊く。

「一度呼んだものを送り返すことは出来ないのか?」
頭を上げたコルベールは申し訳なさそうな顔で答える。
「そういった魔法は残念ながら・・・。召喚の『サモン・サーヴァント』は一方的に呼び出すことしか出来ないのです。」
随分といい加減な面があるものだなと、口には出さずあきれるキリコだった。
「戻ることができないなら・・・いずれにしても、俺は学院とやらにやっかいになるしかないのだろうな。」
その問いに無言でコルベールは頷く。
各地をあちらこちらと放浪するのが当たり前のキリコとて、知識も常識も全く通じない、ましてや異世界で同じことをするのは流石に躊躇われた。
ならば行動に制約はつくであろうが、外を出回るよりはずっと安全であろう学院にとどまっていたほうが、何かと都合はいい。
結局、キリコが生きていくためには最初から選択肢などなかった。

不安げな顔でコルベールが見守る中、キリコはさきほどの問いに対する回答を出す。
「わかった・・・そいつの使い魔とやらになろう。」
「おぉ、契約していただけますか!それはよかった!」
どうせ(現状では)帰る手立てが見つからないのなら、当分はここで暮らしていかなければならないだろう。
そのための手段になることくらいはしておこうというのが、キリコの出した結論である。
なにはともかくキリコは了承した。残るはルイズである。
「さぁ、あとはあなただけです、ミス・ヴァリエール・・・。」

コルベールにそう促されると、改めて状況を纏め、心を落ち着けてルイズは考える。
進級するためには使い魔がいなければならないのは百も承知。だが目の前の使い魔候補は人間で平民だ。
貴族である自分が、それをおいそれと納得できるわけがない。
しかし留年したとなれば、それこそヴェリエール家の名に泥をブチまける行為。
「(元はといえば、呼び出したのはわたしなんだから、その責任はとらなくちゃいけない・・・。)」
それに教師であるコルベールは、自分のために頭を下げてくれた。魔法もろくに使えない「ゼロ」と蔑まれる自分のために・・・。
「(教師にここまでさせて引き下がるなんて・・・それこそ恥知らずよ、ルイズ!)」
心の中で自分を叱咤し、奮い立たせる。それまでうつむいていた顔をあげると、その瞳にもはや迷いは無かった。
「わかりましたミスタ・コルベール・・・私、契約します!」
「よく決心しました、ミス・ヴァリエール。それでは早速契約の儀を・・・」

ここであることに気づいたキリコが割り込む。
「待て。そういえば聞いてなかったが、一体どう契約を交わすんだ?」
「口付けです。その後にルーンが体に刻まれて、それで契約完了となります。」
そういうことはもっと早く説明しておけと、内心で毒づくキリコであった。
694名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 15:36:56 ID:u7cgtU3a
>>660
でっかいジムは?
695装甲騎兵ゼロ:2008/12/14(日) 15:39:14 ID:katZM/6l
ルイズも思い出したように顔が赤くなる。気恥ずかしいのでさっさと済ましてしまおうとキリコに詰め寄る。
「ほ、ほら!はは早く済ませるわよ!・・・感謝しなさいよ、貴族にこんなことされるなんて、滅多に無いんだから!」
強引に自分と同じ高さまでキリコの頭をもって、勢いまかせにキスをする。
それが終わると、やがてキリコの左手の甲にルーンが刻まれ始める。その痛みに思わず呻き、うずくまるキリコ。
「あぁ、心配はいりません。ルーンが刻まれている故の現象です。少しの間なので我慢してください。」
だから先に言えと、ちょっとした恨みをコルベールに覚えていた。


ルーンが刻まれるのが終わり、ようやくキリコも落ち着いた。そのルーンを、コルベールがもの珍しそうに眺める。
「ふむ、みたことのないルーンですな。」
そういってスケッチをとった後、本日はこれまでと生徒たちに解散を促した。
「お前はそこの平民と歩いてこいよルイズー。」
「レビテーションだって満足に使えないしなー。」
ルイズを小馬鹿にしながら魔法で飛んでいく生徒たち。

そうやって自分を笑うものにかまわず、キリコに命じるルイズ。
「あたしたちも帰るわよ、ついてきなさい。」
何故飛ばないのか、いや飛ぶ魔法が使えないのであろうかと、キリコは考える。
それをルイズに聞こうと思ったが、どこか怒っている様子を見るに薮蛇だろうと察し、やめておく。

ふと思い出したようにATのほうを向くと、コッパゲ・・・いやコルベールがまたもや興味深そうに調べていた。
「なにしてんのよ!ほら、さっさと行くわよ!」
ATのことが気になったが、「是非とも自分に任せて欲しい!」とコルベールに半ば強引に押し切られてしまった。
これ以上言っても無駄と悟ったキリコは、とりあえず注意する点を告げて後をまかせることにし、早足でルイズの後をついていった。
日が夕日になるほど傾くまで、いくばくか時間が掛かる午後の出来事であった



予告

目にも見えぬ偶然が、時に巨大な因果になる。
そこから芽生えた種には、誰も気づかない。
人知れず育った芽は、やがて有象無象を飲み込んでいく。
果ては生んだものにすら、その牙を向ける。
この世の全てを喰らおうと、際限など無いかのように。

次回「契機」
必然たりえない偶然はない。
696装甲騎兵ゼロ:2008/12/14(日) 15:41:58 ID:katZM/6l
以上で2話目終了です。支援ありがとうございました。
697名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 15:42:08 ID:u7cgtU3a
投下中に失礼しました、乙です。
698名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 15:43:18 ID:fy8QV1P5
>>696
この最低野郎
699名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 15:46:06 ID:IgJ8s0We
乙!
700名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 15:46:35 ID:5LCsPerc
ボトムズの人乙

そのうち作中で説明がなされるかもしれないだろうけど、いくつか疑問が

コルベールが「兵士」や「兵器」という単語にナガティブな反応を示さなかったのは?

召還された事に対し、キリコがワイズマンの遺産が発動した可能性を考える事は?

放浪するキリコが「帰る」事に拘るものなのか?戦いを求めているからとか?

タコほったらかし?
701名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 15:47:06 ID:dQn9xkeN
キリコの人乙です。
次回にwktk。
702名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 15:53:47 ID:ajxBeuO3
>>700
俺もワイズマンを真っ先にキリコは疑うんじゃなかろうかとか思ったけど、
そこらへんは作者さんのネタ潰しになるかも知れないから自重しよう。

さて、次回は個人的にボトムズ史上最高のキリコの名言発動かな?
703名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 15:54:29 ID:obyNKaU2
>>698

ノノノノノ
( ○○) ・・・?
  (||||)

704名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 15:56:24 ID:IgJ8s0We
どうしたんですか釣神さま
705名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 16:02:58 ID:ajxBeuO3
とりあえずもしかしたら知らん人が荒らしの類と勘違いずるかもしれんから言っておくと
装甲騎兵ボトムズの『ボトムズ』って最低野郎って意味ね
転じてボトムズファンとかの事を最低野郎と言ったりする。
706名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 16:06:02 ID:XQMC9A/S
作者じゃ無いけど予想
>>コルベールが「兵士」や「兵器」という単語にナガティブな反応を示さなかったのは?
メイジの大量虐殺的な『戦争』はコリゴリだけど平民だったら精々1度に1人2人が精一杯のせせこましい物と思って侮ったから
>>召還された事に対し、キリコがワイズマンの遺産が発動した可能性を考える事は?
南幸太郎みたいに何か事件が起こるたびにゴルゴムやクライシス帝国の所為だと決め付けるのは良くないと思って自重した
>放浪するキリコが「帰る」事に拘るものなのか?戦いを求めているからとか?
放浪するにしてもせめて自分の知識が通じる世界じゃ無いと一人旅もままなら無いから

まぁ全部ハズレだろうけど
707名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 16:07:21 ID:lripn9P8
最低の人乙
個人的には赤い耐圧服とヘルメット姿のキリコを見たらハルケ側はビビると思っていた
708名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 16:11:19 ID:R6gMH0jo
幸太郎と誤変換されてるのも間違いなくゴルゴムの仕業
709名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 16:12:03 ID:lhScfDJv
>>703
「この最低野郎」はボトムズファンにとっては褒め言葉なので何の問題も無い。
しかし他の作家さんとかに言ったらしゃれにならないので注意。
710名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 16:12:50 ID:u7cgtU3a
ゴルゴムのスピリチュアルアタック!

光太郎は天ぷらが食べたくなった!
711名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 16:13:32 ID:fy8QV1P5
次はコルベールがいじくり回してバラバラで組立不可能となったATが広間に転がる
712名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 16:16:10 ID:piKtguDs
>>707
あれは確かに怖いw
たまには普通の服着ろよと言いたくなる
713名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 16:17:07 ID:qfhYKwTf
最低野郎Tシャツとかあったなぁ
714名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 16:26:00 ID:7n5NtiXI
ボトムズ知らん人を無駄に刺激しそうで危ないな。>最低野郎
いい加減古い作品だし、ここはボトムズ関連のスレではないし。
715ゲーッ!熊の爪の使い魔:2008/12/14(日) 16:27:22 ID:TQUWIYkt
半ごろから投下します。
716名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 16:30:50 ID:dQn9xkeN
とりあえず最低野郎の後に(ホメ言葉)をつければ問題無い希ガス。

待ってました。戦争男支援
717ゲーッ!熊の爪の使い魔:2008/12/14(日) 16:32:05 ID:TQUWIYkt
では投下を開始します。
あまり長くはないですが。
718ゲーッ!熊の爪の使い魔1/3:2008/12/14(日) 16:33:18 ID:TQUWIYkt
第十話 使い魔のお披露目

さて、とうとう使い魔のお披露目の日がやってきた。
学園の生徒たちも普段と違い、緊張したり湧き立ったりしていた。
そしてそんな中、トリステイン王女アンリエッタが学園に到着した。
そして生徒達からのお披露目がはじまった。
アンリエッタは今日この日に喜びを感じていた。
多くの使い魔を見れるから、というわけではない。
自分にとっての親友、大切な幼馴染に会えるからだ。
幾人かの紹介が続く中、ついに待ち望んだ人物が現れた。
ああ、久しぶりだけどあなたは変わっていない。
あのころのままね、ルイズ。
……でも、どうして心なしか顔が引きつっているのだろう?
そんな疑問をよそに、先に上がってきたルイズは続いて使い魔の紹介を行う。
「えー…、その、私の使い魔の、ベ、ベルモンド、です……」
「くうーん」
そして現れたのは、大きなクマちゃんだった。
「まあ、かわいいクマちゃん!」
アンリエッタはその姿に感嘆の声を上げた。
それを聞いたルイズはさらに顔を引きつらせ、歯切れ悪く続けた。
「で、では…、この、ベ、ベルモンドが、踊り、を、披露します…」
そうして使い魔のクマちゃんが踊り出す。
クルクル回ったり、手を振ったり、それはとても可愛らしく、楽しい気分になるものだった。
「まあ、なんて素敵なんでしょう!」
自然とアンリエッタは拍手をしていた。
ただ、こんな素敵なのになんで周りの生徒たちも顔が引きつっているんだろう?
719名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 16:33:38 ID:5LCsPerc
支援
720ゲーッ!熊の爪の使い魔2/3:2008/12/14(日) 16:34:53 ID:TQUWIYkt
お披露目が終わった後、少し離れた庭でルイズは頭を抱えていた。
「ああ、私はなんてことを…」
「あれ、どうしたの、ルイズ?」
「どうしたの?じゃないわよ!姫様を謀るようなことをしちゃうなんて!」
「まあ、そこまで気にしなくてもいいんじゃないかな?」
「気にするわよ、って言うかその話し方やめなさいよ、ウォーズマン!」
「えー、でも今の僕はベルモンドだし」
「おかしいわよそれ!」
前日、姫様に見せられるようなマイルドな芸が思いつかなかったルイズに対し、ウォーズマンが提案したのだった。
「よし、俺はベルモンドになろう」
立派な貴族らしさ、などと言っている割には姿を変える、言ってみれば正体をごまかすこと、
に対してウォーズマンは全く抵抗がないようだった。
これもひとえに旧友の前にでもオーバーボディをまとって現れた経験によるものだったが、ルイズには知る由もなかった。
結局他にいい案も浮かばず、その案を採用したのだった。
しかし罪悪感は消えない。なんだか話も通じないのでベルモンドからも離れてうんうん唸っていたが、
それが一気に吹き飛ぶようなことが起きた。
721名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 16:35:22 ID:u7cgtU3a
支援
722名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 16:35:33 ID:JGGoNL0A
ぬいぐるみ着た姿でしたか
てっきり「とびっきりの笑顔で笑いながらハミング」するかとwktgしてたのに

ちっと残念

そんなワケで支援
723ゲーッ!熊の爪の使い魔3/3:2008/12/14(日) 16:37:42 ID:TQUWIYkt
いきなり巨大なゴーレムが現れて塔を殴りつけ始めたのだ。肩には何物かが乗っている。
確かあそこは宝物庫のはず、じゃあ、こいつは賊!
そう考えるとルイズはゴーレムに対す呪文を唱える。
しかし起きるのは爆発だけ、しかもゴーレムではなく宝物庫の壁が。
このとき賊は見ていた。固定化のかかった壁が傷ついたことに。
同時に、それで存在に気付かれたルイズに対してゴーレムが手を伸ばす。
「え、きゃあぁぁ!」
そしてそのままなす術なく掴み上げられる。
ああ、殺される、そう思ったとき、
「スクリュードライバー!」
ベルモンドの腹を突き破り、ウォーズマンが爪を突き出し回転しながら突っ込んできた。
ガガガッ!!
そしてそのままルイズを掴むゴーレムの腕を穿つと、放り出されたルイズを抱えて着地した。
だが、ゴーレムは腕を飛ばされたというのに気にしたそぶりもなく
二人が離れた場所に降りたのを見ると宝物庫に向き直り、
ある一点、ルイズの爆破で傷がついた場所を殴り抜いた。
そのまま賊は空いた穴に入ると目当てのものを奪い、ゴーレムに乗って去って行った。
そしてあとには、秘宝である「破壊の爪」を奪ったという巷を騒がしている盗賊、フーケからの犯行声明と、
「賊が押し入ったって、大丈夫ですか?ミスヴァリエール、ウォーズマンさん」
「ああ、俺たちは無事だ、シエスタ。やつは逃がしてしまったがな。
ところですまないが頼みがある、もう一度こいつを直してくれないか?」
またしても破れたベルモンドの着ぐるみが残ったのだった。
724名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 16:39:06 ID:FPmsB0PI
>いたって普通の人間だ。
キリコ嘘付いたらあかん!って自分の素性を知る前でも後でもそう言うか…。
725ゲーッ!熊の爪の使い魔:2008/12/14(日) 16:42:11 ID:TQUWIYkt
以上で投下を終了します。
時期が開いた上に短いですがリアルでとても忙しいです。
今後も細く長く続けていきたいです。
726名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 16:43:37 ID:AZLSEn26
>>725
帰ってきた、戦争男が帰ってきた
グオゴゴゴ
727名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 16:44:09 ID:5LCsPerc
戦争さん乙

破壊の爪が戦争男のそのまんまスペアの爪というオチとかまさか
728名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 16:46:32 ID:dQn9xkeN
ウォーズマンの人乙です
次回にwktk。

>>722

> 「とびっきりの笑顔で笑いながらハミング」
そんな事したらアン様失神+一生トラウマですがなwwww
729名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 16:47:06 ID:u7cgtU3a
>>625
GJ!
これで戦争男の超人強度が更に増えるのかw
730名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 17:32:50 ID:GbtAu9nw
容量やばいけど次スレは重複スレを流用するの?

あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part195
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1228937059/
731ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2008/12/14(日) 17:49:21 ID:oOHQ1kTE
 熊の爪の方、乙です。
 罪悪感にとらわれるルイズがなんとも……w

 さて、他に予約の方がいないようでしたら、18:00から投下を行いたいのですが……。
 重複スレに投下した方が良いですかね?
 ちなみに容量はメモ帳で28KBです。
732名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 17:50:03 ID:dlYZllLf
ここは残り5kb弱
733ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2008/12/14(日) 17:52:26 ID:oOHQ1kTE
それでは、重複スレに投下することにして……良いんですかね?
反対意見がなければ、そちらに投下します。
734名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 17:53:33 ID:GbtAu9nw
向こうでお待ちしています。
735名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 17:54:43 ID:Uc0jMsuj
落ちてないから再利用でいいっしょ

反対の理由はなかろうかと
736名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 18:21:09 ID:wgF1mc+J
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part195
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1228937059/

次スレー
737名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 18:27:26 ID:sPCwKULb
>>670
バッテリーの種類によっては爆発する
たとえばLiイオンのとか
738ゼロの騎士:2008/12/14(日) 18:42:30 ID:wgF1mc+J
予約なければ投下したいんですがいいですか?
739名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 18:43:20 ID:3bZO450Z
>>738
容量が無いので、投下は次スレの方が宜しいかと
740名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 18:45:41 ID:wgF1mc+J
わかりました。次スレいってきます どうもありがとう
741名無しさん@お腹いっぱい。
                                          ○________
                               なぎはらえー     |:|\\:::::||.:.||::::://|    /イ
                                              |:l\\\||.:.|l///|  .///
                         __ ィ   ,. -――- 、     |:|:二二二二二二二 !// /
                        /    /          \.   |:l///||.:.|l\\\|/  /
                / ̄ ̄ ̄ ̄ 7 / / ./  / /   l l l lハ  |:|//:::::||.:.||:::::\\l    /
  ト、     ,.    ̄ ̄Τ 弋tァ―   `ー /  l从 |メ|_l  l_.l斗l |ヽ V |:| ̄ ̄ ̄ ̄ フ  ̄ ̄    |                  イ
  ヽ \__∠ -――く  __       .Z¨¨\   N ヒj ∨ ヒソj .l ヽ\|       / /     |                / !
   ヽ  ∠____vvV____ヽ   <   ≧__/ ゝ、t‐┐ ノ .|┐  . \   / /         \           /   l
.    \\_____ivvvvvvvv|   V.    (  (  /Tえハフ{  V   ‐一 '´ /     __. -―=-`      /  / l  l
       \!      |   / 入_.V/|      >-ヘ  \:::∨::∧  ∨ ∠二 -‐ .二二 -‐ ' ´ /        /   / l.  l
 __  |\       l/V  _{_____/x|    (_|::::__ノ   }ィ介ーヘ  /  ,.-‐ ' ´           /       ____  ̄ ̄フ ∧  l
  )-ヘ j ̄} /|        /___/xx|       _Σ___/| | |V::::ノ/ ∠___           {     /      `<  /  \|
  {  V  /`7.         /___./xXハ    ( |:::::::::::::::::ハ   >' ____ 二二二二二二>   /   __    〈
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    |   ヽ        /____|]]∧  __|__L.∠ ム'  <`丶 、 `丶、       /       \_____/    /
    |     ',         {     |]]]>'  __      ∧ l\ \   丶、 ` 、   ∠ -――-  ..____ノ   /
   ノ     }       l ̄ ̄ ̄.|] >' ,. '  ̄ / .// :/  V'  \ ヽ    `丶\/                 /
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 入ノ. ヽ  く  ヽ______7 ー―∠__    〃  l :/    :l l     \V       ヽ       \    ,.  '´
`ー′   \  `<  | {      /   | /〃   :|/  __V/ ̄| ̄ ̄{_     \_      ` <
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            V     人__/  / | /           ̄{ ̄  >‐ ァ-、    \             〉ー}  j
                {  / ./  ∨      __      ̄ ̄ >-</  / ̄ ̄         廴ノ  '
      <ヽ__      /し /        < )__ \   _r‐く___/  /    < ) \     {__ノ /
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     ∠二)―、       `ー‐┐    ∠ ∠_r‐--―      <__       ∠ )__          \_
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