あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part194
もしもゼロの使い魔のルイズが召喚したのがサイトではなかったら?そんなifを語るスレ。
(前スレ)
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part193
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1228308245/ まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/ 避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9616/ _ ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
〃 ` ヽ . ・ここはあの作品の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!
l lf小从} l / ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,. ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
((/} )犬({つ' ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
/ '"/_jl〉` j, ・ 投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
ヽ_/ィヘ_)〜′ ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!
_ ・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
〃 ^ヽ ・クロス元が18禁作品であっても、SSの内容が非18禁である場合は
J{ ハ从{_, 本スレへの投下で問題ないわ。
ノルノー゚ノjし ・SSの内容が18禁な展開をする場合はクロス元に関わらず、
/く{ {丈} }つ 本スレではなく避難所への投下をお願いね?
l く/_jlム! | ・クロス元がTYPE-MOON作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
レ-ヘじフ〜l ・作品を初投下する時は元ネタの記載も忘れずにね。wikiに登録されづらいわ。
・作者も読者も閲覧には専用ブラウザの使用を推奨するわ。負荷軽減に協力してね。
. ,ィ =个=、 ・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。
〈_/´ ̄ `ヽ ・1レスの限界最大文字数は、全角文字なら2048文字分(4096Bytes)。これ以上は投下出来ません。
{ {_jイ」/j」j〉 ・行数は最大60行で、一行につき全角で128文字までですって。
ヽl| ゚ヮ゚ノj| ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
⊂j{不}lつ ・次スレは
>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
く7 {_}ハ> ・重複防止のため、次スレを立てる時は現行スレにその旨を宣言して下さいね。
‘ーrtァー’ ・クロス先に姉妹スレがある作品については、そちらへ投下して盛り上げてあげると喜ばれますよ。
姉妹スレについては、まとめwikiのリンクを見て下さいね。
・一行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えます。
SS文面の区切りが良いからと、最初に改行いれるとマズイです。
レイアウト上一行目に改行入れる時はスペースを入れて改行しましょう。
スレ立て乙
だがテンプレ更新かかってるぜw
>>1
建設乙
96 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/12/04(木) 03:08:31 ID:DO3FnTGf
皆様、感想、雑談をぶった切るような形での書き込み。初めに謝罪をしておきます。
本スレに書くものかと思ったのですが、一応気になったので書き込みをします。私、この板ではリリカルなのはクロスとゼロの使い魔クロス、この二つのスレ・まとめサイトをよく見ております。
そんな中で、ふと気になりましたのが、先日投下されました「使い魔の左手、悪魔の右手」氏の作品、第一話の事です。
DMC4のクロスはまだまだ少なく私も大好物ですが、読んでいて思ったのです。召喚される前、ネロとキリエのシーンの文が、リリカルクロススレの方で連載されている作品によく似ていると。
その作品は、DMC4とのクロス、「魔法少女リリカルなのは〜DEVIL HUNTEERS〜」氏の同名作品です。
その第5話後半、シグナムとフェイトがネロを次元犯罪者と勘違いし、地球まで追ってきて、ネロ達と出会う場面の文及び描写と酷似している部分があります。
悪魔の右手氏
『城塞都市フォルトゥナ、ミティスの森
フォルトゥナ城を過ぎた辺りにある、ラテン語で「優しい」を意味する広大な森。
そのフォルトゥナで信仰されている宗教、再建が進む魔剣教団の本部が一望できるその場所で
二人のカップルが歩いている。』
↓
リリカルなのはDHS第5話
『何かを知っている。フェイトは今度こそは失敗しない事を胸に誓い、歩いて行く。
2人が向かうは、ミティスの森。フォルトゥナ城を過ぎた辺りにある、ラテン語で「優しい」を意味する広大な森だ。 』
悪魔の右手氏
『「ネロ」
「何だい?キリエ」
ネロ、と呼ばれた青年が振り返る。
「いつ来てもここは…素敵なところね、小鳥のさえずりと川のせせらぎがよく聞こえるわ」
「静かっちゃ静かなんだがな…」
「あなたとの時間もとても長く感じれる」
キリエ、と呼ばれた美しい女性はそういうと彼の左腕に腕をからめる。
「まぁ……ね…」 』
見ているこっちが恥ずかしくなるほどのノロケっぷりである、恋人であるキリエの口から出た素直な言葉に
ネロは少々頬を赤くしながら鼻の頭を気恥かしそうに?いた。
↓
リリカルなのはDHS第五話
『「ここは、やっぱり静かね・・・・・・動物の鳴き声と川の流れの音だけ・・・・・・・ネロはそう思わない?」
「いや、いいところだとは思うさ」
ミティスの森でネロとキリエの2人はゆったりとしていた。何をするでもなく、ただ寄り添い、自然を感じる。
自然は人の心を癒し、恋人の存在はさらにそれを加速させる。ただ、静かに2人でいることが若い二人には幸福だった。
特にネロは、キリエがいいならなんでもといった感じだ。普段のはねっ返りぶりとは正反対である。
「でも悪魔が出たら危ないだろ?」
「でも、ネロが守ってくれるでしょ?あの時も・・・・・そうだったし・・・・・・・」
思い出されるのはあの全てが解決した日。2人の初めての接吻を邪魔した悪魔をネロは完膚なきまでに叩き潰した。それを持ってこられるとネロの顔も赤くなる。
「まぁ・・・ね・・・・」
鼻を掻き、照れ隠しをするネロ。そんな彼の様子を見て、キリエは優しい笑みを浮かべていた。 』
904 :名無しさん:2008/12/06(土) 01:29:09 HOST:i118-19-228-83.s05.a011.ap.plala.or.jp
失礼いたします。
私、「リリカルなのはクロスSSスレ」にて、「魔法少女リリカルなのは〜DEVIL HUNTERS〜」という作品を連載させて頂いている者です。
自分は、こちらのスレの作品の読み手として、主にまとめwiki、たまにスレ・避難所を覗いております。
この度、私の拙作からの盗用疑惑というのが報告されたようですが、同一作者の可能性及び、被害者の存在というコメントがありましたので、書き込みをさせて頂きました。
結論から言いますと、私は、こちらのスレでの長編作品は現時点では一切投下しておりません。
確認として、自分が執筆しておりますのは、件のリリカルなのは&DMC4クロス
某サイトにて投稿しております、マブラヴオルタネイティヴ&アーマード・コア4クロス、デビルメイクライ&ブラック・ラグーンクロス。
更新を停止しておりますが、ジョジョスレにて、仗助&トニオ召喚モノの4本を手掛け、これ以外に執筆しました長編作品はございません。
盗用疑惑に関するコメントですが、報告のレスを拝見させていただきました。
確かによく似ている部分があるなという感想を私は持ちました。あくまで個人的な意見ですが、あまりよい気分は致しません。
何故かと言いますと、クロス元がゲーム作品であり、今夏発売予定だったノベライズ版も未だ発売に至っていないと記憶しております。
また、設定資料集「デビルズ・マテリアライズコレクション」・「Saber of Savior」にも開発段階でのシナリオ台本のみで
DMC4本編の後日談に関する文献が存在しない状態で、こうも似るものだろうかと思うわけであります。
自分の中では、試作予告編も含めれば、10ヵ月近くに渡って執筆してきたものであり、所詮2次創作といえど、思い入れの強い作品であります。
それを盗用されたとなりますと、前述の通りいい気分は致しません。
とは言え、全て完全なコピペというわけではなく、現時点ではあくまで「疑わしき」でしかありませんので、管理者の方、議論をされた方の結論を待ちたいところであります。
仮定として、もし、盗用事実があるのなら、私はこのケースに関しては即刻削除は求めません。話の前半部分であり、完全なコピペではないからです。
但し、該当部分の全面改訂だけは求めたいと思います。
また、このスレの判断であります、「悪魔の右手」氏を反応を待つというのは、それはもう結構であります。
偉そうな事を言える立場ではございませんが、確実な検証をして頂き、氏のコメントを待ちたいと思います。
疑惑が事実であるのなら上記の該当部分を改訂していただければ結構ですし、
完全に氏が「そのような事実は全くない」と申されるのであれば私はそれ以上何も申しません。
そこからは議論者の方々の判断にゆだねたいと思います。
かつて、リリカルスレで盗作擁護の判定を受け追放された書き手もおりました事を考え、発言いたしますと
私は、盗作・盗用行為は許されざる事だと思っております。
ただ、今回はケースがケースですので比較的穏やかな姿勢で見ていきたいと思っております。
しかしながら、この件に対するレスポンスの皆無、反省のない態度、私以外からの引用、引き続き同様の行為が繰り返される等の事態になった場合
私は、流石に厳しい態度を取らざるを得ません。そのような場合は、削除を求めたいと思っております。
最後に、長文の書き込みを謝罪いたしますと共に、日々運営に関して議論を続けられています管理者及び他の方々に感謝を意をささげたいと思います。
追伸として、今後私に対する何らかのレスポンスが求められた場合、「リリカルなのはDHS」の名で書き込みをいたしますことをお伝えしたいと思います。
906 :名無しさん:2008/12/06(土) 01:51:22 HOST:wb01proxy01.ezweb.ne.jp
>>904 リリカルなのはDHS作者氏
自分はDMCもなのはもわからんので判断できんのですが
わかりやすい判断基準としてラテン語で云々の部分て
どっちかの原作とか資料とかであるんですか?
あと
>>888=889であげられた以外に作者からみて疑わしいところってありますか?
>>管理人および議論スレ諸氏
盗用問題はコピペでもない限り検証が非常に難しいので
疑わしい部分の比較や双方の作者のコメントを待ちたいと思いますがどうでしょうか
あと期間とかの案として
一ヶ月間使い魔の左手、悪魔の右手氏からレスポンスがない場合
wiki登録分から本文を削除して盗用疑惑があるために一時削除の注意書きのみとし
二ヶ月間レスポンスがなければページを削除という形はいかがでしょうか
使い魔の左手、悪魔の右手氏からレスポンスがあった場合はコメントの内容次第になると思いますが
907 :リリカルなのはDHS ◆Y2c93Cv37M:2008/12/06(土) 02:45:24 HOST:i118-19-228-83.s05.a011.ap.plala.or.jp
ラテン語云々の部分に関しては、設定資料集などには一切記述されていません。
ただ、私が参考にいたしましたのは、2007年11月初め、プレス向けなどに発表した当時の最新情報にラテン語で「優しい」を意味するという記述はありました。
それの原文に関しては
『「デビル メイ クライ」シリーズでは珍しい、日差しが強く緑に囲まれた世界。それがフォルトゥナ郊外に広がる森林地帯「ミティスの森」だ。
ミティスとは優しいという意味を持つラテン語。
その名の通り、見る者の心を和ませる雄大な森だったか、フォルトゥナの悪魔に呼応するかのように、不気味な樹木が数多く見受けられるようになってきた。』
となっておりまして、私の文とは違うのは、原文では、場所については『フォルトゥナ郊外』、広さに関しては広大ではなく『雄大』と表現されています。
ただ、公式サイトでミティスの森に関して述べていたのは、比較的短期間で、詳細なキャラクターや武器などの紹介ページが出来てからは見ることが出来なくなっています。
また、他の疑わしいところという質問ですが、報告されましたレスでは、ネロが照れるシーンがありますが、鼻頭をかく。とはっきり言っているのは
拙作第六話にて
『この3人が集まり、使い捨ての尖兵にも等しい下級悪魔に劣ることがあろうか。
もとより悪魔を滅する使命を持つ者、愛する者のために重圧を押しのけた者、主の為にすべてをささげた者。古からの『原初の恐怖』でも彼らをすくめることなど出来なかった。
大剣が炎を巻き上げ悪魔を喰らう。大鎌が無慈悲にも悪魔の命を刈り取る。炎の魔剣が悪魔を切り裂く。
相手が人間ではないのならネロはもとよりフェイト達にも手加減をする理由は無い。30を超えるスケアクロウの群れが瞬く間に散っていく。
身を膨らませ、甲虫の群れが体液をまき散らしながら飛び散っていく。あとに残るのはちぎれた布袋、されどそれもやがて霞のように消え去っていく。
5分とかからない戦いであった。背に剣を戻したネロはすぐさまキリエの下へと歩む。
「大丈夫だったか?」
「うん・・・・・ネロが・・・守ってくれたから」
「まあ・・・・・ね」
鼻頭を掻きながら照れた表情を浮かべるネロ。
離れた場所で初めてその穏やかな表情を見たフェイト達はわずかに驚いたものの、すぐさま当初の目的を果たそうとする。 』
という5話と同じように「まぁ・・・ね」と言うシーンがございます。
とは言えどちらも同じような台詞まわしですので、現時点では疑惑でしかない事を考えますと
どちらかだ!とは申せませんが。
鼻頭をかく行為自体は、DMC4エンディングスタッフロールにて、あまり内容には触れませんが
2秒ほど映る場所があります。
NGID: Q4IAz5CA
改訂版
もしもゼロの使い魔のルイズが召喚したのがサイトではなかったら?そんなifを語るスレ。
(前スレ)
あの作品のキャラがルイズに召喚されました PartPart193
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1228308245/ まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/ 避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9616/ _ ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
〃 ` ヽ . ・ここはあの作品の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!
l lf小从} l / ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,. ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
((/} )犬({つ' ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
/ '"/_jl〉` j, ・ 投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
ヽ_/ィヘ_)〜′ ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!
_
〃 ^ヽ ・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
J{ ハ从{_, ・クロス元が18禁作品でも、SSの内容が非18禁なら本スレでいいわよ、でも
ノルノー゚ノjし 内容が18禁ならエロパロ板ゼロ魔スレで投下してね?
/く{ {丈} }つ ・クロス元がTYPE-MOON作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
l く/_jlム! | ・作品を初投下する時は元ネタの記載も忘れずにね。wikiに登録されづらいわ。
レ-ヘじフ〜l ・作者も読者も閲覧には専用ブラウザの使用を推奨するわ。負荷軽減に協力してね。
. ,ィ =个=、 ・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。
〈_/´ ̄ `ヽ ・1レスの限界最大文字数は、全角文字なら2048文字分(4096Bytes)。これ以上は投下出来ません。
{ {_jイ」/j」j〉 ・行数は最大60行で、一行につき全角で128文字までですって。
ヽl| ゚ヮ゚ノj| ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
⊂j{不}lつ ・次スレは
>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
く7 {_}ハ> ・重複防止のため、次スレを立てる時は現行スレにその旨を宣言して下さいね。
‘ーrtァー’ ・クロス先に姉妹スレがある作品については、そちらへ投下して盛り上げてあげると喜ばれますよ。
姉妹スレについては、まとめwikiのリンクを見て下さいね。
・一行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えます。
SS文面の区切りが良いからと、最初に改行いれるとマズイです。
レイアウト上一行目に改行入れる時はスペースを入れて改行しましょう。
ブータの人〜待ってる。
私、待ってるから!
11 :
谷まゼロ3話:2008/12/07(日) 11:55:08 ID:at4Kye83
容量との兼ね合いから前スレとまたいで申し訳ありません。
進路がクリアなら続きから投下させていただきたいと思います。
よろしくお願いします。
12 :
谷まゼロ3話:2008/12/07(日) 11:57:28 ID:at4Kye83
シエスタは谷の頭の横辺りに立つと、谷をよく観察してみた。
やはり、仮面が異様さを醸し出していた。だが、どこか愛嬌がある様にもシエスタは見えた。
シエスタは屈んで、谷の顔の前で掌をひらひらと動かしてみた。
何の反応もない。
やはり寝ているのだろうとシエスタは判断した。
真っ白な仮面なので落書きしがいがあるだろうなぁ、などと子供のようなことをシエスタは考えていた。
そして、ちょっと指で仮面をつついてみようかというイタズラ心まで出てきてしまっていた。
だがその時、シエスタは異変に気がついた。
仮面には何も変化がなかったが、谷の耳が真っ赤になっていたのだった。
シエスタは、谷が起きていることに気がついた。怒られるかもしれないという心配が頭によぎるが、
それよりも、何故谷が耳を真っ赤にさせているのかわかってしまったことのほうがシエスタにとって大問題であった。
シエスタの顔がまるで熟したトマトのように真っ赤になった。
実は谷は起きていて、目も開けていた。ただ仮面をしていたので、シエスタにはそれがわからなかっただけだった。
つまり、谷にはしゃがんでいたシエスタのパンティが見えていたのだった。
シエスタは恥ずかしさのあまり両手で顔を覆い隠してしまった。
谷は慌てて起き上がり、シエスタの眼前に人差し指を立てた手を持ってきて、大声で言った。
「おい!オレのせいじゃないからな!お前が勝手に見せたんだ!オレは知らないぞ!」
「……はい。も、申し訳ありません。……もうわたしお嫁にいけないわ」
「……!」
谷は髪の毛をクシャクシャにしながら頭を掻いた。
もとより今は気分が最悪なのに、面倒なことに巻き込まれたとイライラしていた。
谷は、懐から文庫本を取り出した。それは谷が愛読している村上春樹の小説であった。
ここに来る前に持っていたものだった。因みに本はこれ一冊しか持ち合わせていない。
谷は、まるで近くに他人などいないかのように本を広げ読み始めた。
落着きを取り戻したシエスタは、谷のその姿を見ていて、ふと思い出した。
確か、先日メイジの生徒たちが使い魔召喚の儀式をしていて、
そのなかでも変わった生き物が召喚されたとか何とかで、学院の使用人たちの間でも囁かれていた。
たしか、人間で仮面をしていて……。そこまで思考をなぞると目の前の人物がその人だと、シエスタは気がついた。
「あなたは、ミス・ヴァリエールに呼び出された使い魔のタニさんですか?」
谷は本に目を落としたまま、何も返事をしなかった。
シエスタにはそれが、肯定の意を表しているのだと思った。
「私はシエスタっていいます、あの、タニさんは何をしていらっしゃるんですか?」
谷が顔だけを、シエスタに向けて言った。
「見てわからねェのか?小説を読んでんだ。邪魔すんな」
「は、はい!どうもスミマセン!」
謝ったシエスタであったが、どうも場の空気的に立ち去りづらくなっていた。
どうしようかと、谷の横にちょこんと座っているシエスタは戸惑いを覚えている。
支援
14 :
谷まゼロ3話:2008/12/07(日) 11:59:37 ID:at4Kye83
そこに突然、シエスタのことなんて塵芥ほども興味がなさそうであったはずの、
谷からシエスタに言葉が投げかけられた。
「なあ、おい」
「は、はいなんでしょう!」
いきなりのことでシエスタは吃驚したが、あることに気がついた。
先ほどまでの荒々しさが谷から感じられないのだ。それどころかどこか弱々しさが滲み出ている。
谷はどこか憂いを帯びた口調で言った。
「もしだっ。仮に、いや万が一……。自分の好きな人と会えなくなるってなったら、お前どうする?」
シエスタは質問の意味するところが、よくわからなかった。
だが、谷が真剣であることはわかった。そして悩んでいることも。
おそらく谷自身とその想い人とのことを言っているのだと理解できた。
シエスタは言った。
「難しいですね……。私はまだ好きな相手が出来たことがありませんから、そのお気持ちはわからないかもしれません。
ですけど、落ち込まないで下さい!想っていれば、それは相手に伝わると思いますし、
お互いに深い絆で結ばれていれば、何があっても大丈夫ですよ!」
谷はシエスタの言葉を、本に読んでいるフリをしながら聞いていた。
元から本なんて読んでいられるような心境ではなかったからだ。
確かに、ここに来てから読もうとしたことはあるが、
本に書かれている文字一つ一つはっきりと読めることが、そして小説の内容を面白いと感じることが、
今自分がここにいる、という『現実感』が露わになってしまうのが堪らなく嫌だったからだ。
だが、シエスタの話を聞いて少し気が楽になった気がした。
「……そっそうか!そうだなっ。こんなことで挫けねェ!」
谷は、勢いよく立ちあがって、ぎりぎりまで息を吸い込んだ。
そして拳に力を込め、清々しいぐらいに大きな声で叫んだ。
「島さああああああああああぁん!!!!好きだぁあああああああああ!!!こうっ、が、がぁーーっというのまに!
今に、夢から醒めて会いに行きますっっ!!!うおおおおおおおおおおおおおぉぉ!!!」
シエスタは谷の魂の咆哮に、腰をぬかすかと思うほど驚愕した。
だが、心には温かいものを感じている。人を想うということの素晴らしさが感じられたからだ。
急にシエスタは谷に親近感が湧いた気がした。
いつか自分にも、誰か想ってくれる人が現れるのだろうか。
とにかくシエスタは、この谷という人物にエールを送りたくなった。
「そうですよっ、頑張ってください!タニさん!」
シエスタは、何か谷に対して出来ないか考えた。
そして、一つ思いついた。
「あのタニさん?お腹空いていませんか?賄い食でよろしかったら厨房で御馳走します」
谷はシエスタの言葉を意外に思っていた。だが、腹が減っているのは確かだった。
谷支援w
16 :
谷まゼロ3話:2008/12/07(日) 12:01:07 ID:at4Kye83
「お、おう」
そして、脈絡もなく谷はシエスタに言った。
「お前、いいやつだな」
「えっ…!?え、え!?そ、そんなことありませんわっ。さ、行きましょう」
そして今、谷とシエスタは食堂の裏にある厨房にいる。
厨房に入ると、料理長であるマルトーという中年男性に、声をかけられるが、
谷は『うるせェ』の一言で、厨房の奥に追いやってしまった。だが、マルトーは威勢がいいと笑っていた。
テーブルの席についた谷の前に、賄いのシチューが置かれた。
シエスタが、食事を用意しようと思ったのは谷のためを思ってであることは確かであったが、
谷の仮面の下の素顔を拝んでみたいと思ったからでもある。ちょっとした好奇心である。
人間は口から物を食べる。だから、シエスタが言わなくても、仮面を外し、その素顔を露わにするだろう。
そう、シエスタは考えていた。
だが、谷が食べ終わってもその素顔を拝むことはできなかった。
シエスタは首をかしげた。
皿の中は空になっているのに、何故谷の素顔が見れなかったのかわからなかった。
谷は食べ終わると無言で席を立って厨房の出口に向って行った。
シエスタは、谷に声をかけた。
「どこに行かれるんですか?」
そのシエスタの言葉に、谷は『聞いてくる』とボソリと言った。
何を?誰に?シエスタは聞かなかった。何故か聞いてはいけない気がしたのだ。
谷は厨房を出て、ルイズを探した。
17 :
谷まゼロ3話:2008/12/07(日) 12:02:45 ID:at4Kye83
@
ルイズは教室に居た。ルイズ以外に誰もいない教室に。
偶然だろうか、それとも何か運命めいたものがあったのだろうか、
谷は学校の構造なんて全く知らないのにも関わらず、ルイズを見つけることが出来た。
だが、それが果たして二人とって良かったのか、判断しかねる。
何故なら、谷がルイズに何か物を尋ねるという点おいて、
この今という時は、まさに最悪の条件下であったからだ。
谷は教室に入ると、異変に気がついた。何故か教室がボロボロであったのだ。
その教室の中央に一人、ルイズが居た。そしてルイズは片付けをしていた。
今にも泣き出しそうな、そして悔しさと腹立たしさを含んだ表情で黙々と。
谷は、そんなことお構いなしに、ぶっきらぼうにルイズに声をかけた。
「おい!お前、早くこの夢から醒める方法知らねェのか?」
ルイズは答えなかった。黙って手を動かし作業を続ける。
「聞いてんのか?わかんねェなら、とりあえず島さんがどこにいるか教えろよ」
ルイズの拳に力が籠る。一気に怒りが爆発しそうになる。
また『シマサン』。何かといえば『シマサン』。二言目には『シマサン』。……もう我慢できない。
あんたのせいで……。わたしは……あんたのせいで……。
ルイズは心底機嫌が悪かった。
原因は午前中の授業に起きたことであった。
その授業中、ルイズは散々な目に遭ったのだ。
召喚から一日を過ぎているのにも関わらず、使い魔と『コントラクト・サーヴァント』が出来ていないこと。
そして、皆が授業に使い魔を連れて来て自慢げにしている中、ルイズだけ使い魔が行方不明であること。
とどめは、授業で教師に錬金の魔法の実演を命じられ、やってはみたが盛大に失敗し、
教室を、そして教室にいるもの全員を巻き込む爆発を起こし、その罰として教室の修繕を言い渡されたこと。
それぞれで、ルイズは周囲の人間から罵りや嘲笑を、その小さな体に受けた。
貴族である以上、メイジであり。そしてメイジである以上、魔法が使えて当然。
しかし、当のルイズはまともに魔法が使うことが出来ない。
『ゼロのルイズ』という名が周囲から与えられた。蔑称であった。
名門貴族の下に生まれてきたことも相まって、そのことに対する劣等感は凄まじいものがあった。
そんな複雑な心境下に投じられた谷の発言は、まさに火に油を注ぐ行為であった。
涙がこみ上げてきたルイズは、ぶつぶつと呟き始めた。
「……あんたのせいなのに、全部あんたのせいなのに、わたしがこんな辛いにあってるも全部、全部。
何なのよ……そんなに嫌なら、呼び出されなきゃよかったじゃない。
シマサンがいるところで、のうのうと暮らしてればよかったじゃない。
なんで、あんたなんか呼び出されたのよ……なんであんたなのよ!ふざけんじゃないわよ!」
谷は、ルイズの様子が変だとは思ったが、遠慮するに至らないと思ったのか構わず言った。
「オレは早くこんな悪夢みたいな夢から醒めて、現実の島さんに会いに行かなきゃ行けねェんだ。早く答えろよ」
18 :
谷まゼロ3話:2008/12/07(日) 12:04:33 ID:at4Kye83
その谷の言葉が、ルイズの導火線に火をつけた。
ルイズは心中の全てを吐き出すように、谷に向って叫んだ。
「夢、夢ってうるさいわよ!!本当はわかってんでしょ!!!?ここが現実だって!!
だからわたしに聞きに来たんじゃないの!?わたしならどうにかできる方法を知ってるんじゃないかって……!
……でも、残念ね、そんなのないのよ……!使い魔を呼び出す魔法はあっても、送り返す魔法なんてないのよ!
あんたなんかいらないのに……!!……帰したくても帰せないのよ!!
それに、別世界から来たってあんたが言うなら、元居た世界に戻ることなんてできないのよ!!!
あんたは嫌でもここで一生を過ごさないといけないのっ!!!」
突然、凄まじい剣幕てまくし立ててきたのがよほど意外だったのか谷は呆然としている。
その谷に向ってルイズは続けて言った。
それはまさしく、谷が『一番聞きたくない』言葉であった。
「あんたは、二度と!!!二度とシマサンに会えないのよ!!!!!」
ルイズは、全てを吐き出した後でハッとして気がついた。
不味い、谷を怒らせた。また殴りにかかってくる……!そう思っていた。
今までの経験からして、そうであるはずだとルイズは感じていたからだ。
だが、谷はその場から動いていなかった。
奇妙な静けさがあった。
……突然谷が凄い勢いで床に前から倒れた。谷は仮面が割れるんじゃないかと思われるほど盛大に顔を打った。
谷は床に手をつき、立ち上がろうとするが、その途中でまた床に崩れ落ちた。
「……!?……?…ぐっ、ぐ……お」
体に力が入らない。
頭のどこかで、そうではないかと考えていた事が、言葉として他人に突きつけられた。
そのことが、谷の精神に大きく揺さぶりをかけた。
谷の体中の汗腺という汗腺から汗が噴き出す。
「かっ、はぁっ!なっ!?……そんな……ウ、ウソだろ。二度と?島さんに二度と会えない?……え?
じ、冗談じゃねェ……だったらなんでオレは生まれてきたんだよ……!?認めねェ、……そんなこと断じて認めねェ」
谷は、どうにか立ち上がった。だが、足もとがおぼつかない。
今にも倒れそうになりながら、ふらふらと教室の出口に向う。その途中で谷は三回転んだ。
ルイズは、谷の衝撃の受けようにを見て、自分の発言に罪悪感を感じていた。
部屋を出て行った谷。
あれほど迫力があった谷の後姿が、とても小さく見え、
優しく吹いただけで、消えてしまいそうなほど儚くみえた。
だが、ルイズにはどうすること出来なかった。告げた事実は消えないのだから。
さすが谷だ、いいリアクション支援
20 :
谷まゼロ3話:2008/12/07(日) 12:06:34 ID:at4Kye83
投下終了です。ありがとうございました。
シエスタのスカートって、こんなことで中身が見えるほど短かったっけと思った方。
申し訳ありません。見逃して下さい。シエスタの赤面が書きたかっただけなんです。
あと、今日はもう一話夜に投下させていただくかもしれません。
その時は何卒よろしくお願いします。
関係ないけど、メリアドールを除隊させようとしたときのメッセージでやられました。
メリアドールいい。
投下乙です
今後の谷がどう再起してどう暴走するのか期待が止まらないぜ!
関係ないけど、フランソワのヘルプメッセージにやられました
おのれ黒本許すまじ
投下乙です
しかし谷はこうなったら自殺しかねんなw
同じ作品なら千葉を呼び出してたら1番丸く収まってたのに…奴ロリコンの気もあるし剣使うし
谷さん乙。
もしシエスタが履いてなかったらどんなリアクションしてたんだろうかw
とりあえずシエスタがいい人間と判断されてよかったw
GJした!
無能王が人類最悪の遊び人を召喚したようです。
というのを考えたが狐さんは世界を滅ぼしたいじゃなくて世界の終わりを見たいんだから無能王とは気が合わないか。
信望者を募って新十三階段を結成するくらいはしそうだが。
大市民の山形鐘一郎氏召喚
「美味し!!」な料理を作ってくれたり、小言をいったり
ここは自分の好きな漫画のキャラを好き勝手に語り合うスレなの?
こんにちは、ウルトラ5番目の使い魔の今週の投下を開始したいですが、進路よろしいでしょうか?
可能であれば、14:15より投下開始いたします。
邪気眼ネタはすでにあるが、召喚されたキャラの影響等で厨二病に目覚めるルイズとか見てみたいな。
ルイズ「これが私の固有魔法力、“虚無の爆炎獄(エクスプロージョン)”よ!!」
ギーシュ「なん……だと……」
支援
>ガンガルから赤い水兵のツァアとか
それは三次創作になる
つうかあの類のパチロボで明確なストーリーあるのはバイソンくらいだぜ
第25話
甘い薬の恐怖
大モグラ怪獣 モングラー 登場!
その日、才人は学院の水場で、いつもどおり洗濯に精を出していた。
「平和だなあ」
手を動かしながら、思わず才人はつぶやいた。
この日は天気晴朗にして、風は穏やか、日差しは温かく、湿度も良好、暑くも寒くもなく、平和そのものの陽気
であった。
水場の向こうの広場では、シエスタが何百枚になろうかという生徒達のシーツをうきうきしながら干している。
「晴れた日には布団を干すものです」
と、この間シエスタが言っていたことを思い出しながら、才人は夏の青空の下を風に吹かれてひらひらと舞う洗濯物と、
その間をスカートをなびかせて軽やかに駆けるメイド服の少女。この場にカメラがあったなら、百枚くらい撮って
末代までの家宝にできるのに、などと清純な自然の中で不純なことを考えていた。
これでは、もし撮られた写真の数だけ自分を増やせる二次元超獣ガマスが美少女の姿をしていたら、
才人はハルケギニアを滅ぼしていたかもしれない。まあそんなことをした日には、「焼却、ついでにあんたも燃えろ!」と、
ルイズにネガごと一片も残さず消し去られてしまうだろうから大丈夫だろうが、もし秋葉原なんかでそれを
やられたら地球は……。
物語を戻そう。
あのフリッグの舞踏会から、早2週間、怪獣や宇宙人の襲来もあれ以来なく、ヤプールも中休みをしているのか
ハルケギニアは平穏に包まれていた。
しかし、この日の夜。恐るべき事件が幕を上げようとは、まだ誰も知るよしもなかった。
夜もふけ、生徒達の誰もが自室に戻っていったそんな時間、女子寮のある部屋から、煌々とした明かりが漏れていた。
この部屋の主は、長い金色の巻き毛と青い瞳の少女。名前はモンモランシー・マルガリタ・ラ・フェール・ド・モンモランシ、
ルイズの級友の一人であり、水系統の使い手である。
ちなみに通り名は『香水』と呼ばれており、その通りに趣味と実益をかねて香水作りを得意としている。
かつて才人がハルケギニアにやってきた翌日に、ギーシュと決闘をする騒ぎがあった、その発端となった
香水も彼女がギーシュに送ったものであり、その後紆余曲折あったものの、王宮での活躍や先日のフリッグの舞踏会で
いっしょに踊ったことなどもあって、ギーシュとはよりを戻し、一応彼氏と彼女という関係に落ち着いている。
今日も、彼女は放課後の日課である香水製作に打ち込んでいたが、この日は少々おもむきが違っていた。
いつも通りに香水の原料の薬草や魔法薬のビーカーやフラスコをランプの炎にかけているところは同じだが……
いや、年頃の女性の部屋がなかば化学の実験室のようになっている時点でかなり異様だが、問題はそこではない。
今、彼女が混合している薬品の種類や調合手順は、香水のものとはまったく違っていた。
端的に言うと、それは禁断のポーション、国の法で作成、所持を禁じられている代物、ましてや使用するなどはもってのほか。
しかし、趣味は道徳に勝る。あらかたの香水や魔法のポーションを作り飽きてしまった彼女は、好奇心のままに、
禁断のポーションの作成に手を出してしまったのである。もちろん、そんなことは言い訳にはならずに、発覚しようものなら
大変な罰金が科せられて、彼女の実家さえも危機に陥ることになるが、若さというのは恐ろしい。要するに、
興味本位で覚醒剤に手を出して破滅する中学生などと同じパターンだ。
さて、そんなリスクを背負っているとは自覚せずに、彼女は秘薬の製作の最終段階に取り掛かろうとしていた。
「竜硫黄と、マンドラゴラを同時に入れて、透明になるまでかき混ぜてっと……」
大枚をはたいて手に入れた禁断のポーションのレシピによれば、その作業がすめば、後はある特殊な秘薬を
混ぜれば完成とあった。
モンモランシーは胸をわくわくさせて、薬壷の中の液体をかき混ぜ続けた。なお、この姿を人が見たら、ランプの
薄暗い明かりに照らされて、笑いながら薬を混ぜている彼女はすごくコワく見えただろう。
そして、液体がレシピのとおりに透明になると、彼女はとうとう最後の、一番大事な秘薬を投入しようと、それを
入れてある香水の瓶を手に取った。これを手に入れるために払った代価はエキュー金貨にして700枚、平民が5、6年は
暮らせる額で、彼女の貯金のほぼ全額に当たる。それだけ高価で貴重だということだ。
容量も、小瓶の中にほんのわずかにあるだけで、失敗しても次はない。
「そーっと、そーっとよ……」
こぼさぬように細心の注意を払いながら、高鳴る心臓の音を抑えながらモンモランシーは小瓶をゆっくりと傾けていった……
と、そのときだった。
彼女の部屋のドアを、まるで太鼓を打ち鳴らすかのような激しいノックが揺さぶった!!
「モンモランシー、ぼくだ、ギーシュだ! 君への永遠の奉仕者だよ。このドアを開けておくれ」
「!?」
それはこの学院でもっともやかましい男にして、単細胞で、直情型で、その他いろいろあるが、とりあえずバカと言い捨てて
間違いではない男、ギーシュの突然の訪問であった。
だが、そんなことはこの際問題ではなかった。
「あ、ああ……」
今のショックで、モンモランシーの手元が狂い、一滴ずつ投入しなければならない秘薬がいっぺんに全部入ってしまった。
そのため、ポーションは過剰反応を起こし、静かにピンク色に変わるはずが、真っ赤になってポコポコと泡立っている。
これはどう見ても失敗だ。
「……ギ、ギーシュぅぅぅ!!」
精魂込めて莫大な労力と経費を費やしてきた実験を、たった一瞬で台無しにされ、彼女は抑えきれない怒りを、
無神経にドアを叩き続けているバカ男にぶっつけることを迷わず決定した。
開錠の魔法で、鍵が外され、扉が古びた木がきしむ音を立てて、ゆっくりと開いた。
「おお、ようやく君の美しい顔を見せてくれたね。実は、あのフリッグの舞踏会のときの君の姿を思い出したら我慢
出来なくなってしまってね。二人でいっしょに月夜を眺めながらワインでもと、こうしてやってきた次第さ」
まったく空気を読めずに、とうとうと自らの死刑宣告文を読み上げながら、ギーシュはきざったらしく語って
いたが、モンモランシーはそんな台詞は1文字も耳に入れずに、ぽつりとギーシュに言った。
「じゃあギーシュ、わたしのお願いをひとつ聞いてくれる?」
「君の頼みとあれば、この命だって捧げるさ!」
「そう……じゃあ、死んで」
「へっ?」
一瞬何を言われたのか、理解できずにギーシュは間抜けに立ち尽くしたが、どす黒い声で呪文を詠唱する
モンモランシーの姿に、はっと我に返った。
「モ、モンモランシー!?」
「ギーシュ、あなたはこの学院のバイキンなの、バイキンは消去しないといけないよね。だから、死んで」
ようやくギーシュは自分がとんでもなく危険な状況にあることを理解した。
モンモランシーに向かって、すさまじい強さの魔力が集まっていく。彼女は、メイジとしてまだまだ低級の
はずだが、今の彼女から立ち上るオーラはトライアングルクラスはおろか、スクウェアクラスさえ凌駕しかねない
ように見えた。まるで大いなる海の力が彼女に宿ったかのようだ。
空気中の水分が凝縮して、渦を巻く水の玉が形作られていく。
ギーシュは全身から血の気が引いていくのを感じた。いつものモンモランシーなら水の塊で溺れさせてくる
程度(それでも充分人は死ぬが)で済ませてくれるのだが、巨大な圧力をかけられた水は、鋼鉄すらも寸断する、
あんなものをぶつけられたら確実に死ねる。
「ま、まってくれ……ぼ、ぼくが悪かった。だ、だから……」
必死に命乞いをするギーシュだったが、モンモランシーは冷酷に言い放った。
「悪かったって、なにが?」
「だ、だから……そうだ、一年のシンシアといっしょに遠乗りに行ったときのことだろう、あれは違うんだ、
彼女から詩を送られて、そのお礼のために……」
ブチッ
この瞬間、モンモランシーの堪忍袋を押さえていた、最後の細い糸が切れた。
「地獄に落ちろぉぉっ!!」
この瞬間、モンモランシーはルイズでさえ発揮したことがないほどの怒りを込めて、超圧縮された水の玉を
ギーシュに投げつけた。
それは、まるで鉄のように命中しても砕けずに、瞬時にギーシュの体を壁に叩きつけ、そのまま勢いを
緩めずに壁ごとギーシュを外にたたき出した後、花火のように爆裂した。
「ぎゃあぁぁぁっ……」
石造りの壁をぶち破って、ギーシュは階下の地面に向かってまっ逆さまに落ちていった。
「はぁ、はぁ……はぁ……」
怒りを全部吐き出して、壁に大きく開いた穴から吹き込んでくる風に当たりながらしばらくするうちに、
モンモランシーはようやく落ち着いてきた。
そして熱狂が冷めて、自分のやってきたことを冷静に見つめなおしてみると、禁断のポーションを作ろうと
していたのだという恐怖と罪悪感がいまさらながら襲ってきた。
もし、このままポーションが完成していたら、自分は使いたいという欲求に勝てなかっただろう。そして、
誰かに使用すれば、ここは魔法学院だから発覚するのは時間の問題、衛士隊に引き渡され、莫大な
罰金か牢獄暮らし、家名は地に落ち、一族郎党路頭に迷うはめに……
そう思うと、ギリギリのところで踏みとどまれてよかったと、どっと冷や汗が浮かんできた。
「結果的に、ギーシュに助けられたことになるわね。し、仕方ないから、明日会ったら許してやっても
いいかな……」
ぽっと顔を赤くしてつぶやいたモンモランシーだったが、部屋に戻った彼女の目に、件の禁断の
ポーションの失敗作が、不気味な泡を立てているのが入ってきて、顔をしかめた。
もう用済みで、さっさと処分したい代物だが、物が物だけに正規の処分法で学院の魔法薬の処理場に
持って行くわけにもいかない。
どうしたものかと考え込んだモンモランシーだったが、薬壷からただよってきた、失敗作の甘ったるい
臭いが鼻を突くと、とたんに面倒くさくなって、窓を全開にすると中庭に向かって力いっぱい薬壷ごと
放り投げてしまった。
「あー、これですっきりした。やっぱり悪いことはするもんじゃないわね。さっ、もう寝よ寝よ」
気分がさっぱりしたモンモランシーは、部屋の明かりを消すと、そのままベッドに入ってすやすやと
寝入ってしまった。
一方そのころ、スクウェアクラスの魔法の直撃を受けて、塔の上から落下させられたギーシュは、
奇跡的にもたいした傷もなく、女子寮から退去しようとしていた。
「あいたた……どうも今日は虫の居所が悪かったみたいだな。また出直すか」
信じがたいことに、平然とした様子で歩いていく、人間技とは思えないが、考えてみれば才人だって
ルイズからの攻撃であれば、爆発の中心にいようとすぐに蘇ってくることから、男という生き物は、女性からの
攻撃に対しては特別な防御力を備えているのかもしれない。
これ以上ここにいては、さっきの爆音を聞きつけて誰かがやってくるかもしれない。校則で女子寮に男子は
立ち入り禁止になっているし、今は夜中、間違いなく疑われる。ギーシュは足早に女子寮から離れようとした。
と、そのときである。彼の前面の地面が盛り上がって、そこから体長2メイルくらいの大きなモグラが顔を出してきた。
「おお! ヴェルダンデ、ぼくのヴェルダンデじゃないか、おお、いつ見ても君は美しい。そうか、この不幸な
主人を慰めようとしているのだね。ああ、君はなんて優しいんだ」
それは、ギーシュの使い魔のジャイアントモールのヴェルダンデであった。特徴としては大きさの他には、
大きく突き出た鼻がチャーミング(と、ギーシュは言っている)もちろん、ハルケギニアの特有の種であり
地球には存在しない。
とまあ、ギーシュの言葉からもわかるように、主人に溺愛されている彼(オスである)だったが、
今回顔を出してきたのは、決して不憫な主人を慰めるためではなかった。
ヴェルダンデは、自分の台詞に酔っている主人をスルーすると、彼のかたわらに落ちていた
なんともはや甘くていい臭いのする液体がこぼれている小さな壷に飛びつくと、それをぺろぺろと舐め始めた。
「あっ、ウェルダンデ、落ちてる物を口にしてはいけません! 行儀が悪いでしょう。食べ物ならきちんと
ミミズをあげるからやめなさい!」
まるでママさんである。しかしヴェルダンデは、その液体の味がよほど気に入ったのか、その後も
押さえつけようとするギーシュを無視して舐め続け、両者の珍妙な相撲は夜が更けるまで続けられた。
が、そんな平和な光景もここまでだということを、まだ知っている者は誰もいなかった。
翌日、山裾から日が昇り、魔法学院にまた朝がやってきた。
小鳥のさえずりが朝を告げ、厨房からは早くも煙と湯気が立ち上る。
女子寮では、まだルイズと才人がぐーすかと眠っていることだろう。
そんななか、珍しく早く目を覚ましたギーシュは、特にすることもないからと、ヴェルダンデの顔でも
見ようかと、中庭へと下りていった。通常使い魔は専用の厩舎のようなところに住まわされるか、
主人の部屋と同居するかだが、ヴェルダンデはモグラ、地面の下ならどこでも自分の家である。
「ヴェルダンデー、ぼくのヴェルダンデー、顔を見せておくれ」
中庭の真ん中に立って、いつもどおり愛しい使い魔の名前を呼んだ彼の前に、ヴェルダンデは
すぐにいつもと変わらない姿で現れた。
ただし、姿だけは……
「ヴ、ヴェルダンデぇぇぇ!!」
ギーシュの絶叫が、誰もいない中庭に響き渡った。
この日、ギーシュは授業を欠席した。
「ミスタ・グラモン……いないのですか、では、ミスタ・エリュオン……」
教師は特に気にせずに授業を開始した。元々生徒のサボりは珍しいことではない上に、ギーシュが
特に熱心な生徒でもなかったために、他の生徒達もすぐにそれを忘れてしまった。
だが、放課後になると、どこからともなく現れたギーシュは、WEKCの少年達が溜まり場にしている
納屋で雑談をしていた才人、ギムリ、レイナールを学院から離れた森の中にひきずるように連れて行った。
「どうしたんだよギーシュ、今日は授業にも出てこないでどうした?」
連れて来られた森の奥で、なにやら切羽詰った様子のギーシュにレイナールが尋ねた。
「君達を……親友だと、絶対信用できる人間だと見込んで話があるんだ」
「なんだ、かしこまって……」
「またモンモランシーに浮気がばれたとか?」
レイナールもギムリも、どうせギーシュのことだから女がらみだとは思ったが、ギーシュの目は真剣だった。
「サイト」
「ん?」
「特に、君に話しておきたいんだ。君は、怪獣のことには詳しいんだよね?」
「まあ、それなりにはな」
どういうことだ? と才人は首をひねった。
どうもギーシュの様子がおかしい、いつもの彼なら、どんな大変な事態(他人から見たらくだらないことが多いが)
に陥ろうが、生来のナルシストぶりを発揮して、窮地に陥った自分を美化して陶酔にひたるのだが、今回はそんな
余裕もないように見えた。きょろきょろと周りを見回し、人影がないか常に気にしている。
「3人とも、これから見せることは絶対秘密にしてくれると約束してくれるか?」
「……どうやら、ただごとじゃないみたいだな」
3人はふざけるのをやめて、顔を見合わせてうなづきあうと、「約束する」とギーシュに言った。
そして、3人の顔が真剣なのを見たギーシュはもう一度周囲を確認すると。
「……大丈夫だよ、出てきておくれ」
そう、森の一角に向けてささやいた。
すると、彼らの立っている地面が、いきなり地震のように揺れ動きだした。
「うわっ!?」
いきなりのことに、立っていられず彼らはひざを突いた。
やがて、目の前の地面がもこもこと小山のように盛り上がり始めると、彼らの目はそれに釘付けになり……
「な、なんだあれは!?」
小山の頂上が突然崩れたかと思うと、そこからとてつもなく巨大なモグラの頭が顔を出してきたではないか!
「か、怪獣だぁ!!」
「お、大モグラ怪獣モングラー!?」
突如現れたモングラーの姿に、とっさに才人は懐のガッツブラスターを、ギムリとレイナールは杖を取り出して
目の前の大モグラに向けたが、その前にギーシュが両手を広げて立ちふさがった。
「待ってくれ! 撃たないでくれ! あれは怪獣なんかじゃない、ぼくのヴェルダンデなんだ!」
「ヴェルダンデ!? お前の使い魔か? だが大きさが全然違うじゃないか!」
言われてみれば、特徴的な鼻は確かにヴェルダンデのものだ。しかしジャイアントモールは2〜3メイルが
せいぜいだ、目の前のこいつは頭だけでも10メイル相当はある。
「ぼくにだってわからないさ。なんでか朝になったら、こんなに大きくなってたんだ。昨日の夜まではなんでも
なかったのに……こんな姿が人に知られたら……」
普段能天気なギーシュとは思えないほどにがっくりとうなだれて、今にも泣き出しそうな表情に、
さしもの才人達も同情を禁じえなかった。
だが、事態が深刻なのはすぐにわかった。
これが2ヶ月前なら、お調子者のギーシュのことだから、きわめてレアリティの高い使い魔だとして大いに
自慢するかもしれないが、怪獣災害の多発するようになった今、怪獣を飼っているなど容認されるはずもない。
よくて没収されて魔法アカデミーの実験材料か、辺境への放逐、悪くすれば速攻で処分されてしまう。
もちろん、ギーシュの学生としての身分も、家名の立場も危うくなる。
先生方に相談することもできずに、半日の間にすっかりやつれてしまったように見えるギーシュだったが、
早々に名案などあろうはずもなく、とりあえず詳しく話を聞いてみることにした。
「とにかく、訳も無く巨大化するはずもない。昨日までは変わりなかったっていうけど、本当に何か変わった
ことはなかったのか?」
「特になかったと思う……ヴェルダンデは、いつもはずっと土の中にいるから、ぼくも行動を完全に把握
できてはいないし」
確かに、ほかの使い魔たちならともかく、呼ばない限りめったに地上には出てこないモグラの行動を
把握することは不可能に近い。
「もしかして、ヤプールの仕業か?」
「ヤプールだったら大暴れするように改造するさ、ただでかくなっただけで、おとなしいものじゃないか」
ギムリの説を才人は一蹴した。ガランやブラックピジョンのようにヤプールが人間のペットなどを奪って
超獣化させた例では、どれも凶悪な超獣と化している。
こういうときは、仲間内の中で一番の知性派で良識派のレイナールの意見がほしいところだ。
「ギーシュ、昨日の夜から朝までの間に、何か違和感を感じなかったか? 使い魔と主人は感覚を
共有できるから、どちらかに大きな変化があったら、相手にも多少なりとて影響があるはずだ」
さすが、いいことを言うと才人とギムリは感心した。使い魔との契約を考えた見事な意見だ、だてに
眼鏡はかけていない。
「そういえば、昨日最後にヴェルダンデと別れて、眠る前にずいぶん体がだるかった気がする。あれは、
モンモランシーの愛の痛みだったと思っていたけど、もしかしたら」
「そのときだな、巨大化したのは」
レイナールのおかげで、問題は一歩前進した。ヴェルダンデが巨大化した原因は、その直前に何かが
あったと考えるべきだろう。
才人は今のこともふまえて、もう一度ギーシュに質問をぶつけてみた。
「ギーシュ、その別れる前に何があったのかをよく思い出してみてくれ。多分そこで何かがあったんだろう。
例えば、何か妙なものを食べてたとか」
彼の脳裏には、かつて地球でモングラーとなったただのモグラが巨大化した理由が浮かんでいた。
しえん
「ええと……ええと……そうだ! あのときヴェルダンデは、地面に落ちてた薬壷からこぼれてた液体を
舐めてたんだ!」
「それだな。その場所に案内してくれ」
4人は、ヴェルダンデを地中に帰すと、ギーシュの案内で昨晩の場所へと駆けつけた。
「ここだ、ここだよ」
「ここって……女子寮のまん前じゃないか、こりないねえお前というやつは」
「そんなことはこの際いいから、その薬壷ってのは、これじゃないのか」
レイナールが、杖の先にひっかけて、泥に汚れた薬壷を拾い上げてきた。
すでに中身は空になっていたが、才人は中から漂ってくる甘い匂いをかいで、自分の考えていた仮説が
正しかったことを確信した。
「やっぱり、ハニーゼリオンだな」
ハニーゼリオン、それはかつて地球で開発された特殊栄養剤の一種であり、生物を急成長させる効果が
ある。ただし、過剰に摂取すると、このようになんでもない生物を怪獣化させてしまう恐るべき副作用を持つ。
問題は、なんでそんなろくでもないものがこんなところに転がっていたのかだが、それは薬壷を見た
ギムリがすぐに答えを出した。
「これは、モンモランシーの使ってる薬壷じゃないか?」
「そういえば……じゃあ、この薬を作ったのはモンモランシー?」
「そんな! 彼女がそんな恐ろしいことをするもんか!」
「するかどうかはモンモンに直接聞いてみればいいだろ。とにかく、手がかりは掴んだんだ」
ああだこうだと言いながらも、4人は揃ってモンモランシーの部屋に押しかけた。
ドアを激しくノックして、怒ったモンモランシーが顔を出したと思った瞬間、4人は部屋の中になだれ込み、
件の薬壷を彼女の前に突き出した。
「モンモン、この薬壷、お前のだよな」
それを見た瞬間、モンモランシーの顔色が変わった。突然の無礼な来訪者に怒って赤かった顔が、
見る見るうちに青ざめていく。才人達はそれで確信を持った。
「そ、そうだけど、それが何か」
「中に入ってた薬はなんだ?」
「う……た、ただの、失敗作の香水よ」
モンモランシーはうつむいて、たどたどしく冷や汗を流しながら答えた。やはり怪しい。
「目を見て言え、単なる薬じゃないだろ。相当やばいもんだろうが、今なら正直に話せば、先生方には
黙っていてやってもいいぞ」
「う、ほ、本当に?」
その一言で、もうやばいものを作ってましたと告白したようなものだが、4人はとりあえず揃って頭を
縦に振ってみせた。
「う……じゃ、じゃあ言うけど、絶対に他の人には言わないでよね、実は……」
遂に折れたモンモランシーは、とくとくと自白を始めた。そして、その薬の正体は、4人を例外なく
驚愕させた。
「ほ、惚れ薬ぃ!?」
そう、モンモランシーが作ろうとしていたのは、ご禁制の人の心を操る薬、惚れ薬だったのだ。
彼女は、好奇心のほかにも、浮気性のギーシュの気を引こうとしてこれに手を出していたのだ。
まったく女心というものは恐ろしい。
「なによ、そんなに驚かなくたって失敗しちゃったんだから別にいいじゃない!! 大体ギーシュ、
あなたがあっちこっちの女の子にやたら声をかけまくるのが悪いんだからね!!」
全然よくない。大麻草を栽培しようとして枯らしてしまったから無罪だなどということがありえないように、
彼女のやったことは重罪だが、逆ギレしてしまったモンモランシーは、溜め込んできた思いもあって、
ギーシュに八つ当たりをしていた。
そして、あんまりにも馬鹿らしい真実に、才人は呆れ返ってその様子を眺めていた。
「なるほど、惚れ薬を作ろうとして失敗したら、何がどうなっているのかハニーゼリオンができてしまった
というわけか……」
ある意味、彼女は天才かもしれないなと才人は思ったが、別に探偵をやっているわけではないから、
犯人を見つけても事件は解決しない。
「それでモンモン、この薬の解毒薬はないのか?」
「え!? ないわよそんなもの、作ろうと思えば作れるけど、材料はこのバカのおかげで全部消費しちゃった
から作りようがないの」
それを聞いた才人は、頭を抱えた。
「そうか、惚れ薬の失敗作で変化したなら、その解毒薬でなんとかなるかと思ったんだが」
「え? もしかして、あれを誰かが飲んじゃったの?」
モンモランシーの顔が引きつった。
「ギーシュ、この際彼女にも聞いてもらったほうがいいだろう。実は……」
事情を知らされたモンモランシーが天地がひっくり返ったほど驚いたのは言うまでもない。
「だからモンモランシー、ぼくのヴェルダンデの、ひいてはぼくがこの学院にいられるかどうかの瀬戸際
なんだ。どうか解毒薬を作ってくれ、お願いだよ」
ギーシュの普段のからは想像できないような切実な願いに、しかし、モンモランシーは苦しい表情をして、
言いにくそうに答えた。
「残念だけど、ほとんどの材料は揃えられるけど、一番肝心な『水の精霊の涙』が、どこももう売り切れで
手に入らないのよ。ただでさえとてつもなく高価なものだし、予約を頼んでもいつになることか」
「水の精霊の涙だって!? それは、確かに難題だな。魔法の秘薬のなかでも5本の指に入るほどレアな
代物、おまけに桁外れに高価ときている」
材料がなくてはどうしようもない。4人の顔は絶望に包まれ、ギーシュはもう死霊のようになっている。
「ごめんよヴェルダンデ、でも君を死なせはしない、どこまででもいっしょにいこう……みんな、短い間だった
けど、楽しかったよ」
生気を失ったギーシュの独白が、その唇から零れ落ちた。
だが、そのときモンモランシーが、思い切ったように、驚くべきことを口にした。
「一つだけ、方法があるわ」
「えっ!?」
「ラグドリアン湖にいる、水の精霊に直接かけあって、涙を分けてもらうの。わたしの家系は、代々水の
精霊との交渉役をやってきたから、わたしにもその心得はあるわ。ただし、水の精霊はとても気難しい
から、ちょっとでも機嫌を損ねたら、もう2度とチャンスはないわ」
それを聞いて、4人の顔に喜色が宿った。
「なんだ、そんな方法があるなら最初から言えばいいのに」
「馬鹿言わないで、そんな簡単に手に入るならわたしだって買ったりしないでとりに行ってるわ。いいこと、
水の精霊は気難しいだけじゃなくて、恐るべき先住魔法の使い手、うっかり機嫌を損ねて水の底に
沈められた先祖が何人いたことか……命がかかってると思いなさい」
4人は、背筋が寒くなるものを感じた。
特に才人以外の3人は、先住魔法という言葉に敏感に反応した。人間の系統魔法とは違う、圧倒的な
威力を誇る先住の魔法は、ハルケギニアの人間にとって恐怖の代名詞でもある。
「わ、わかった。じゃあ、善は急げだ、さっそく行こう」
「ちょっ、今から!?」
「地中にいるとはいえ、たまに呼吸のために顔を出すからいつ見つかるかもしれないんだ。それにどうせ
明日は虚無の曜日で休みだろ」
「わかったわよ。わたしの責任だし、けじめはつけるわ……やれやれ、野宿はお肌によくないのに」
モンモランシーは、ぶつくさ言うと、それでも旅支度を始めた。ここからラグドリアン湖まではゆうに
半日はかかる。
男達は部屋から出ると、それぞれの準備のために一旦自室へ戻っていき、才人はルイズにその
むねを報告した。
「と、いうわけなんだが、行っていいかなルイズ」
「はぁ、あんたはどこまで厄介ごとを持ってくるのよ。ほんとにお人よしなんだから……あんなのほっとけば
いい……とも今回は言えないか、仕方ないわ、すぐに準備するから手伝いなさい」
「えっ、お前も来るのか?」
意外なルイズの言葉に、才人は思わず声を大きくした。
「勘違いしないで、万一なにかあったら、あんた一人じゃ変身できないでしょ。第一、何かあったらお互いに
相手を連れて行くのがあんたとした約束、この際だから、旅の間にそのたるんだ根性を叩きなおして、
誰が主人で誰が下僕かわからせてやるわ」
口元を歪めて、愛用の乗馬鞭のほかに予備の鞭を3本もバッグに詰めたのは、馬に乗るときのためでは
ないだろうと、才人は明るくない未来に祈りをささげた。
続く
乙。
なるほど、惚れ薬イベントをこう使ってきたか!
今週はここまでです。支援してくださった方、どうもありがとうございました。
皆様のおかげで次のくぎりの25話までいけました。感謝しています。
さて、というわけで、先週の予告通りに今回はQのような展開になりました。
はたしてアンバランスゾーンに足を踏み入れてしまったギーシュはヴェルダンデを助けられるのか、
今回から原作4巻の水の精霊編に突入します。
アルビオンはどうしたって言われそうですが、いずれちゃんとやりますのでご安心を。
なお、作中モンモンの聞き分けが原作よりいいのは、ギムリとレイナールにもバレてるからと、ギーシュの進退がかかってるからです。
では、今回も次回予告を
美しい水をたたえる神秘の湖ラグドリアン
そこでは、思いも寄らぬ出会いが待っていた
湖畔にたたずむ巨大怪獣の目的はなにか!?
さあ、来週もみんなで見よう!
乙でした。
次回が楽しみです。
料理人の召喚でも書いてみようかな・・・
鉄鍋の虚無
料理は勝負、阿鼻叫喚の料理を作る最驚の料理人が召喚され・・・
虚無グルメ
イカモノ料理、聖地に眠る邪神を復活させ料理の材料になれと口汚く邪神を罵る料理人・・・
公爵息女の料理人
料理に気持ちを込めるフレンチシェフの料理が外交を助け、エルフとの和解を目指す料理SS
と思ったんだが・・・どう展開させればいいのか想像できんorz
>>47 そういうタイプの奴らは、長編で書いてもgdgdになる可能性高いと思うし、ゼロ魔側がオリ設定ばかりになりそうだから難しいかと
一発小ネタとかじゃないと書けないんじゃね
つうか、このスレって料理人キャラ出したいっていう人が定期的に出るね
書く人間が料理したことがないと難しそうだよなぁ。
いや、知識以外に経験が必要な描写って結構あるし。
ジャぱんとか味っ子とかリアクション主体で押すならありかもしれん。
……って、もう味皇様が召喚されてるのか。
黒柳のおtty…お兄さんでも呼んだら面白そうだ
ワンピースの闘うコックさん、サンジを召喚すれば良いんじゃないか
レディに優しいし、強いし、料理の知識はそれほどなくても大丈夫
問題はデルフ涙目と仲間のとこに戻りたがることかな
都合良く「戻る方法が分かるまで使い魔に……」という展開にはならない気が
>48
料理人と医者は出したいけど出せないキャラの筆頭になっているな
どちらも活躍するには設備がいるし、職人に知識が必要というでかいハードルがあるからなかなかSSとしてでないけどな
傍から見てる分には書きたいのに書けないなんて一々愚図ってないで避難所の隔離スレ行けよの筆頭候補です
>>50 徹子呼んでどうするんだ、と一瞬思った
まあペーとパー呼ぶよりマシ・・・・かなぁ?
紙袋の人来ないかな……医者だし
ゲロゲロくんだっけ?
来てましたね。
しばらく更新してないけど。
TOSのリーガルもマイ包丁持ってるくらい料理人だぞ
しかしいつものカッコで召喚されたら貴族だって言っても誰も信じてくれないだろうな
自分から言いふらすような性格じゃないが
…彼は自分の主人を殺してしまって以来、うなぎにしか心を開かなくなったのです…
周防ワールド展開で
寄せ集めのおちこぼれ集団がトリステイン相撲大会で活躍したり
ロマリアで坊さんになってしまったギーシュやワルドが騒動を繰り広げたり
コルベールとロングビルの中年?カップルがダンスを通じて心を通わせたり
サイトがインフルエンザに患っていたら
ハルケギニアの平民や下流貴族とかは
壊滅状態になるんじゃないかと思う。
>>61 誘導ありがとう!
>>SSにもしねぇのにうだうだと妄想だけしてうっおとしいぞこのアマ!って人
これ俺のことですね、わかります!
>>これ俺のことですね、わかります!
俺もいるぜ
いつからここはSS投下するだけのスレになったの?
感想やら雑談も出来るんじゃないの?
「妄想書きこむな」ってそんなにこのスレの寿命縮めたいのか?
個人的にはこんな感じだと思っている。
SSにも(中略)
唐突に○○が召喚されたらほにゃららら
急に□□から△△と、とにかくまったくが召喚されてカブタック
雑談
投下 → 感想 → その流れで雑談
>>62 架空の病原菌やウイルスを召喚ですね、わかります。
T-ベロニカに感染して燃える血をばら撒くキュルケが脳裏に
>>68 何にもならん妄想が書き込まれないだけで寿命が縮むの?
SSとその支援と感想だけだと……確実にさみしくなるぞ
定期的におっぱいの話が持ち上がったりもしますね。
……だから、ティファニアの4分の1で、シエスタの半分のアニエスは大きいのか小さいのか普通なのか、ハッキリしてくれと言っているんだ!
投下された作品の展開予想は作者が困るかもしれないから控えるべきだろうけど、雑談は問題なしのはず
伝統だろうともうおっぱいの話は飽きたよ・・・
そうだねぇ……
うだうだと続く何にもならない妄想でも、それがないと
支援してくれる人がいるか分からなくなうだろうしねぇ……
投下時と感想時に、関係の無い妄想を繰り広げる馬鹿に薦める程度か。
ゼロ魔キャラのおっぱいについて、
熱く語る紳士の皆様は設定考察スレで……良いのかな?
アレからコレ召喚してどうのこうのと言った後に書かない書けない言ってるのに避難所を進めるのがどうして雑談禁止の流れになってるのか理解できないんだが掻い摘んで説明してくれ
アニエスさんの筋肉は素晴らしい
ところでネトゲのNPC召喚ってあり?
>>75 そんなこと今まであったっけ?
雑談していてもすぐに切り替わっていたような気がんすんだけどなぁ……
>>77 実際にSS書きもしないアイディアは避難所のこのスレで!
↓
え、じゃあSS書くこと以外はやっちゃ駄目なの?
↓
なら雑談も禁止だな
大体こんな感じ?
>>78 ネトゲの方で禁止されてなければ問題ないと思うよ、NPCでの二次創作許可してる所もあるし
>>80 なんだいつものことか
>>81 普〜大程度…か。なるほど…。
ありがとう、参考になった。
84 :
ゼロの黒魔道士:2008/12/07(日) 18:29:36 ID:YUNk5D8M
さてさて、雑談ムードの中、ちょいと作品投下しますよっと
1835頃から失礼します
あと、毒吐きの方々、ちょくちょく参考にさせてもらってます。まだまだ未熟ですので批評は大好物です。お願いいたします。
支援
>>84 自分から毒吐きを頼むなんて、あんた凄いな支援。
87 :
ゼロの黒魔道士:2008/12/07(日) 18:33:10 ID:YUNk5D8M
投下開始
―――
…ボクは震えていたんだ…
「ん〜、いつもながらタバサの使い魔って最高よね〜!」
「く、くやしくないもんっ!ビビだって!ビビだって!」
「みんな違ってみんないい」
「きゅいきゅい〜♪」
…みんなは楽しそうなんだけど…
「あれ?ビビちゃんどうしたの?具合でも悪いのかしら?」
「ん?ちょっとビビ!あんた何か変なもん食べさせられたんじゃないでしょうね!シエスタとかいうメイドに…」
「乗り物酔い?」
「きゅい?きゅい?」
…ボク…高い所は…
…苦手なんだよね…
―ゼロの黒魔道士―
〜第十幕〜 王都 トリスタニア
…ボクたちが何でシルフィードに乗ってるかっていうと…
…昨日の夜…
「明日は虚無の曜日だから、街まで武器を買いに行くわよっ!」
「虚無の曜日?」
ルイズおねえちゃんの洗濯物を畳んでいたら、ルイズおねえちゃんがびしっと宣言したんだ…
「そ!明日は学校もお休み!だから、街に行って、あんたの武器を買うの!コルベール先生にも言われたでしょ?」
「…?確かに…コルベール先生に言われたけど…ルイズおねえちゃん、そのとき…いたっけ…?」
「!! ほ、ほら、ちょ、直接本人に聞いたのよっ!! ととと、ともかく、明日は早く起こさなくていいからっ!!おやすみっ!!」
「…う、うん、おやすみなさい…」
…?ルイズおねえちゃん…やっぱりボクのこと監視してたのかなぁ…?でも、何でだろ…?
…そんなことがあって今朝…
「あはははははははは!はは、ははははははははははっ!」
…ルイズおねえちゃんの笑い声から1日がはじまったんだ…
「そ、そんなに変かなぁ…」
…実際、すっごく変だったんだと思うんだけど…そんなに笑わなくてもいいんじゃないかなぁと思うんだ…
「だ、だって、あ、あんた、それ、一番足が短い人用のなのに!は、あははははははっ!!」
…ボクが乗っているのは「ウマ」って動物(チョコボはいないみたい…)で、街までは徒歩じゃなくて「ウマ」で行くらしいんだ…
それで、ボクもウマに乗ったはいいんだけど…
「…うー…全然届かない…」
…足がブラブラして、「あぶみ」っていうのに足が全然届かなかったんだ…でも、それって、そんなにおかしいことかなぁ…?
「あはははは! はぁ…まぁ、アレね子供用のおもちゃで売ってそうな感じよね」
…うーん…ウマと大きさが釣り合わないってことかなぁ…?
「あーあ、しょうがなわねぇ、2頭借りてきたけど、私もあんたといっしょn「あら、ビビちゃ〜ん!それとおまけでルイズ〜!」きゅ、キュルケ!?」
88 :
ゼロの黒魔道士:2008/12/07(日) 18:33:41 ID:YUNk5D8M
…そんなことを話していると、頭上からバッサバッサって大きな音がして、キュルケおねえちゃんの声がしたんだ…
「きゅいきゅい〜♪」
「な、何よ、シルフィード?ってことはタバサまでいるの!?」
「当然」
…ルイズおねえちゃん、「モテモテ」になったんだなぁって思ったんだ…
「どうせあんたのことだから、今日あたりビビちゃんと街でデートでもするかなーって張ってたら案の定ってワケ♪ビビちゃん相手に抜けがけは無しよ!」
「で、ででででデートじゃないっ!!これは使い魔へ日頃の忠誠をまぁ褒めてあげようかなってそういu」
「はいはいはい、その辺にしときなさいな、ルイズ。あんたいつか過呼吸で死ぬわよ?」
…ルイズおねえちゃんって、よく舌を噛んじゃったりしないなぁって思う…
「まぁ、それはさておき、ビビちゃん、トリスタニアまででしょ?シルフィードに乗って行けばあっという間だし、一緒に行かない?」
…ドラゴンって、上に乗れるんだ…
…じゃなくて!…飛んでるドラゴンって…まさか…
「え、ぼ、ボクはウマでゆっくりででも…」
「日頃シルフィードと遊んでくれてるお礼。シルフィードも喜ぶ」
「きゅい♪きゅいきゅい〜♪」
…シルフィードの目がキラキラ光る…こ…断りきれない…
「ま、まぁタバサがそう言うんなら乗ってあげてもいいわよ!ビビとゆっくり遊びたいしね! でもキュルケ、それならあんた必要無いんだから降りなさいよっ!」
「いやぁ〜ん♪ビビちゃん、ルイズがいじめる〜、助けて〜♪」
「ちょ、勝手に人の使い魔に触らないでよっ!ビビ、あんたはこっち!私の横!」
…もう、既に断れる流れじゃなかったんだ…
「前の方だと風が気持ちいい」
「きゅいきゅい♪」
…もう、「どうにでもなれ」って、ちょっと思っちゃったんだ…
…実際は…どうにもならなかったんだけどね…
「ゴメンね〜、まさか高いところが怖かったなんて このキュルケ、慰めてあげるわっ!この体でっ!」ムギュッ
「だからーっ!勝手に人の使い魔に抱きついたりするなーっ!!」グイグイッ
…シルフィードから降りても、ちょっと足がフラついてた…
「帰りは、低空で低速で送る」
…そっか、帰りもなんだ…か、覚悟しよっと…
シルフィードは、街の中じゃ迷惑だからって、しばらく街の外で遊んでくらしい…
確かに、街の中を見渡すと…
「…すごく…混んでるね…」
見渡す限り人、人…道幅もそんなに広くないし、人の海に溺れそうって思っちゃうぐらいだったんだ…
これだと、シルフィードの大きな体じゃ邪魔になるのはしょうがないんだろうなぁ…
「そりゃそうよ!トリステイン一の都なんだから!はぐれないでよ!」
「う、うん…わわっ!?」ドテッ
人の波や珍しい看板に見とれていたら、何にも無いところでコケちゃったんだ…
「ほら!もう、あんたねぇ… この辺はスリも多いし、気をつけなさい!私の財布しっかり持ってるんでしょうね!?」
「う、うん…ゴメンなさい…」
でも、お店の中とか、看板とか…新しいところって、なんかワクワクするんだ…
「あーもうっ!そんなキョロキョロしない!田舎者と思われるでしょっ!! あーもうっ!しょ、しょうがないから手つなぎなさいっ!はぐれるでしょっ!!」
「う、うん…」
…何でだろ?キュルケおねえちゃんがニヤニヤしながら「ルイズ〜、やるわねぇ〜♪」って言ってきたんだけど…?
…タバサおねえちゃんは本を読みながら人ごみをすり抜けてついてくる…すごいなぁ…ボクなら絶対5回はコケてるや…
89 :
ゼロの黒魔道士:2008/12/07(日) 18:34:15 ID:YUNk5D8M
「うわ、こんな汚いところ通るわけ?ルイズ〜、あんた趣味考えた方がいいわよ〜」
「し、しかたないじゃない!武器とか売ってるお店はこっちなんだし!」
武器屋さんは裏通りの薄汚れたところにあったんだ…
…ジタンなら「掘り出し物がありそうだ」って言うだろうし、
スタイナーおじちゃんなら「騎士たるもの、このような怪しい店で買い物はしないのである!」とか言いそうな場所だったんだ…
「武器?あぁ、ビビちゃんの?ってビビちゃん武器とか使えるの!?」
「う、うん…でも、コルベール先生に言われたし…元々杖とかで殴ったりもしてたからなんとか…なる…かなぁ…?」
「杖で、殴る…こう?」
…タバサおねえちゃんが何回素振りをやった…ボクよりタバサおねえちゃんの方が殴り慣れてそうなのはなんでだろう…?
「う、うん…でも、魔力がなくなったりしたときだけだし…」
「はいはい、無駄口叩かない!さっさと入るわよっ!!」
カランッって入った武器屋さんは、外の通りと同じぐらい汚くて、ゴチャゴチャしてるところだったんだ…
「へいいらっしゃ…き、貴族様で?ウ、ウチはまっとうな商売しておりまして、貴族様に目つけられるような商売は決して…」
「客よ」
…うーん…ホントに怪しげなところだなぁ…そんなこおを考えながら、キョロキョロと見渡してしまう
「これはこれは、貴族様が武器を?珍しいことですなぁ!」
「どうして?」
「いえ、若奥さま。坊主は聖具をふる、兵隊は剣をふる、貴族は杖を振りなさる。そして陛下はバルコニーからお手をおふりになる、と相場は決まっておりますんで」
…すごいなぁ…プロって…ボクなら今のセリフを言うのに2回は舌をかんじゃいそうだ…
「あぁ、この子よ。この子に武器が欲しいのっ!」
「あぁ、従者様で ってこの子に!?まだほんのお子様でh あ、いえいえ貴族様に文句はございません、えぇ、それに昨今“土くれ”対策ってことで武器をお求めになる方も多いですしねぇ…」
「土くれ?」
…そんなルイズおねえちゃんの話を横で聞きながら、手の届く位置にあった剣とか槍とか鎖鎌とかを触ってみる…
…?どうしてだろう…ボクは杖しか使ってたことないのに…
どれも使い方や作られ方がなんとなく分かる…?
「なんでも『土くれ』のブーケとかフーケとかいう、盗賊がおりまして、貴族のお宝を散埼盗みまくってるって噂でございます。これがめっぽう腕の立つメイジの盗賊だそうで、貴族様方はそれをおそれて下僕にまで剣を持たせる始末で」
「あら、物騒ねえ!でも、下僕に剣?ん〜、トリステインの貴族達って、ほんっと臆病ねぇ!」
「用心のため」
「…で、こちらがそんな貴族様方に好評頂いておりますレイピアってぇわけでして。えぇ、御覧下さいませ、この輝きを!お連れの方の体格ならこれぐらいの方が…」
「ん〜、そうねぇ…ちょっとビビ!そんなサビついた剣さわってないでこっちに来なさい!!」
「え?あ、う、うんっ!!」
ボクはそのとき、おっきな剣(昔ツンツンした頭の人が使ってたって情報が頭に浮かんだ…なんでだろ?)の次に、
錆びついたボロボロの剣を手にしようとしてたんだ…そしたら…
「けっ!!!やめとけやめとけっ!そんなお上品なだけで切れ味も悪けりゃ頑丈さのかけらもねぇ武器なんざ、お守り代わりにもなりゃしねぇっ!!」
「わ!?ご、ごめんなさいっ!?」
どこかからか男の人がどなる声が聞こえたんだ…
「こ、このやろデルフ!せっかくカmじゃねぇ、せっかくお客さんが来てくれてんのに何だその態度ぁっ!」
「デルフ?他にも店員がいるの? それよりも、今あんた『カモ』って…」
「今の声って…こっちからしたわよねぇ?ビビちゃん変な声出した?」
「え?ぼ、ボクはそんな…それに、今のはボクの頭の上の方から…」
「多分、これ」
90 :
ゼロの黒魔道士:2008/12/07(日) 18:34:52 ID:YUNk5D8M
そう言ってタバサおねえちゃんが持ったのが、さっきボクが触ろうとしたボロボロの剣だったんだ…
「おぅおぅ、青ぇ子は目ざといねぇ!俺様をあっさり見つけやがった!」
そしたらその剣がカチャカチャ言いながら…しゃ…
「しゃべってるっ!?」
「ちょっと、それってインテリジェンス・ソードじゃない?」
「あら、結構値打ち物よねぇ?」
「でもボロボロ」
「へ、へぇ、そうなんで…そいつはデルフリンガーってんですが、口も悪けりゃ見てくれも悪いんで売れ残ってやがってまして…やいデルフ!今度という今度は溶かしてやろうか!?」
「へっ、上等こいてんじゃねぇよっ!!こちとら現世にゃなんの未練もねぇ!煮るなり焼くなり好きにしやがれってんだ!!」
「おぉ、望みどおりにしてやらぁっ!そこの貴族様に頼んでやろうか?おぉ?」
「あら、じゃぁお望みどおり溶かしましたら、お安くしていただけませんこと?」
…うーん…こっちの剣って、しゃべったりするんだ…しかもかなり物騒なことをしゃべったりするんだなぁ…でも…
「だ、ダメだよ…生きてればいいことあるよ…?」
死ぬとか目の前で言われるのは…やっぱりちょっと嫌なんだ…
「けっ!こんな武器屋で人生終わったり、てめぇみたいなチンチクリンにブンブンふりまわされるだけの人生すごすぐれぇなら、溶かされた方がせいせいするってぇもんよっ!一思いにy…おいおい、ちょっと待て、そこのとんがり帽子!お前…!!」
「え?ぼ、ボク…?」
「おう、お前ぇだお前ぇ!お前ぇ、ちょっと俺様をにぎってみてくんねぇか?」
「え、あ、うん…」
「どうぞ」
「あ、ありがとう、タバサおねえちゃん…」
口がよく動く(って言っても、口は見当たらないんだけど…ホント不思議だなぁ…)そのボロボロの剣をギュッとにぎる…
なんだろう…すっごく…こう…
「…しっくり…くる…?」
「お前ぇさん、『使い手』かよ!そんなナリdってちょっと待て!待て待て待て!!こいつぁおでれーた!!お前ぇさん何なんだ!?とんでもねぇゴチャゴチャしたもんでできてやがる!?お前人じゃねぇんz」
「わわわわわっ!?だ、黙ってて!?」
…すっごい…手を触れただけで、この剣はボクのことを色々分かっちゃったみたいだ…でも…
「『使い手』って何…?」
小さな声でこっそりと聞いたんだ…武器屋のおじちゃんやルイズおねえちゃんたちが覗きこんでくる…
「そりゃぁお前ぇ、アレだよ、アレ えーとー、そーだなー、そのー いっけね、忘れちまった!!!」
ドテッてコケちゃった…うーん…こういうのを「ナイスボケ」って言うんだっけ…?
「でもまぁ、お前さんはとにかく『使い手』なんだ!6000年生きた俺様が保証するっ!だから俺様を買いやがれっ!!」
「え、えぇーと…」
「やめときなさい、ビビ!そんなボロ剣!しかもこんな客を『カモ』とか言う店からなんて!!」
「そ、そりゃお客さん、え、えと言葉のアヤってわけでして――あ、あのその、で、デルフの野郎でしたら100で結構です!新金貨100で!」
「あら、お安いじゃない、でもビビちゃんじゃこんな大きな剣は―」
うーん…確かに大きいけど…でも…
フライヤおねえちゃんが言ってたんだ…
「真に自分に合う武器とは、持つやいなや手になじみ、所持者の手足同然に動くものじゃ」って…
だから…
「ルイズおねえちゃん、ボク…デルフリンガーさんがいい!」
「ビビ!あんた話聞いてたの?」
「まぁまぁ、いいじゃねぇか娘っ子!へぇ、お前さんビビってのかい?よろしくな!」
「うん、よろしくね、デルフリンガーさん!」
「あー、デルフでいいぜ?こっちも『相棒』って呼ばしてもらうからよっ!」
「うん、よろしく、デルフ!」
…こうして、ボクとデルフが出会ったんだ…
91 :
ゼロの黒魔道士:2008/12/07(日) 18:35:24 ID:YUNk5D8M
「それにしても、客を『カモ』って…神経疑うわよねぇ、ルイズ…」
「ふぇ? あ!そうそうそう!そうよ!しかも貴族を…どういう魂胆かしらっ!!」
「…お城に報告?」
「ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃぃ!!お、お代は新金貨10で結構でございますぅぅぅ」
…なんでだろう…ルイズおねえちゃん達がすっごく悪い人達に見えたんだ…
ピコン
〜真・おまけ〜
ATE ―“かっぱらい”のウェッジの日記―
ちっくしょう!今日はついてねぇぜ!
いいとこのお嬢様っぽい桃色のガキに付き添ってやがった従者のガキ!!
トロくさそーだから狙いを定めてスろうとしたってのに!
念力でそそっと、まさに俺様絶妙のタイミングでスろうとしたってのに!
何勝手にコケてやがんだよっ!おかげでタイミング逃したじゃねぇか!
おまけにその後にスリとった青髪ガキぁ財布ん中にハシバミ草しか入ってねぇしよ!
嫌がらせか?“くすねとり”のビッグスの嫌がらせか!?
あんにゃろ先月の「スリとり競争」で負けたからって嫌がらせか!?
あんまりに腹たったんで、なけなしの金でチクトンネ街のジェシーの店へ
中じゃ武器屋のオヤジが泣き上戸よろしくやってやがった
「どうした?」って聞いたら、
「口の悪ぃインなんちゃらソードを売っぱらったはいいが、何か店も心もガラーンとしちまってなぁ…今日はもう店じまいだ…」
とかなんとかほざきやがる!け!そんな感傷にひたるようなガラかよ!おまけに長いこと付き合わされてグチ聞かされるし!
今日はまったくついてねぇぜ!!
――
投下完了。お目汚し失礼いたしました。
毒は食らった上でライフ0にならんように耐えてまた投稿いたします。
支援……しようと思ったら投下終了か。 乙
何だこれ
マジで読みずらい
黒魔道師の方、乙。
みんなテンション高いっすねww
>>谷魔ゼロのひと
亀だが投下乙
ただ、シエスタの下着はパンティーじゃなくてドロワーズみたいなやつだったと思う。
ゼロ魔4巻のシエスタがサイトにセーラー服を着てみせる場面で
こんな短いスカートだと下着がはみ出るから理由で穿いてなかったことがあったはずだから。
96 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 18:56:29 ID:Er/fNmee
黒魔道士の方、乙でしたー
しかしデルフのマトモな出番想像つかないや…
使えても体格がw
黒魔道士の方乙そしてGJでしたー
ツンツンした頭? 才人? とかうっかり思ってしまった自分
金髪のあっちの人ですねサーセンw
>>95 もしかして作者の趣味の問題かもしれない。
>>98 そうなのか、アニメは適当にしか見なかったから知らなかった
>>谷間の人
だそうですので
>>95は見なかったことにしてくださいOTLスマソ
黒魔道師の人乙〜
って、何やってんだビックスとウェッジwww
ゼロな提督の特別編が消されてるんだけど
どこで読めるの?
スルーパス
ビビ氏乙。 親父かわいいよ親父。
ところでさ。 上でもあったけど、やっぱり読み辛いよ。
ビビ一人称だからしょうがないとは言え、文頭文末に『…』ついちゃうとどう頑張ってもテンポ悪くなるよ。
地の文ほぼ全てに三点リーダ入ってるから単調になってくるし。
せめて文末の三点リーダは減らしてみるとか、リーダを『……』にして表情付けるとか、『――』使って雰囲気を変えてみるとか。
三点リーダはアクセントだから映えるものだと思うのです。
ところで三点リーダって『…』と『……』ってどっちが正しいの? 教えてエロいひとー
『……』じゃなかった?
106 :
谷まゼロ:2008/12/07(日) 20:01:30 ID:at4Kye83
予約がありませんでしたら、20時05分より4話を投下させていただきたいと思います。
>>100 どうも、谷間の人です。
謝ってくださる必要は全くありませんよ。
単に、パンティーの方が個人的にありがたみがあると思っ……いやあの、単なるミスですから。
誰かゼロな提督の特別編が掲載されているサイトを知りませんか?
108 :
谷まゼロ4話:2008/12/07(日) 20:05:25 ID:at4Kye83
学院のとある一角には、生徒たちの憩いの場があった。
そこには丸いテーブルがいくつも設置されており、
昼食を終えた生徒たちがそのテーブルで席を囲み、歓談をして楽しむためのものであった。
失意の谷は、その場所のテーブルにぐったりと頭を乗せ、席に力なく座っていた。
周りから見れば、まるでボロ雑巾が椅子に引っかかっているように見えるほど、覇気が失せていた。
谷の胸中は複雑であった。
認めたくない。どう考えても認めたくない。
だが、地球上にないものをいくつも見てきた。
谷であっても、元の場所に簡単に戻れると考えられるほど楽観的ではない。
それに加えて、こちら側の人間に帰ることができないと言われた日にはもうどうすればいいか分からなかった。
島さんが居ない世界。それは、谷とってどんな地獄よりも過酷なものである。
正直に言って生きていることすら無意味になってしまう。
島さんっ……オレっ!オレどうしたらいいんッスか?島さん……。
っそ、そんな、そんなの耐えれないです、島さん!!!島さんに会えなくなるなんて……。
島さあああああああああぁあああああああぁぁぁぁぁん!!!!!
谷の中で何かが決壊しそうになっていた。
そこに谷のことは勿論のこと、谷が今深刻な状況に陥っていることを知らない男がやってきた。
「まっ、待ってくれモンモランシー!!!誤解なんだ!!
ケティとはラ・ロシェールの森へ遠乗りをしただけで、やましいことなんてこれっぽちも!!
本当だっ信じておくれモンモランシー!と、とりあえず話だけでもしようじゃないか!」
金髪の巻き髪で、フリルがついたシャツを来ているいかにも気障っぽい格好をしたメイジの男であった。
その名は男はギーシュといった。
ギーシュは憤慨の色を露わにして前方を歩いているクルクルロール髪の女性を、
なんとか引きとめようとしているようであった。
谷とは違った意味で深刻な状況であるようであった。
色恋沙汰の修羅場。それが簡潔にギーシュの今現在のありさまを表す答えであった。
ギーシュはケティという下級生と、モンモランシーという同級生に二股をかけていたことが露見したのだった。
それによって、ケティには完全に見放され、モンモランシーからも、別れを告げられていた。
だが、なんとか誤解を……、というよりもモンモランシーとよりを戻そうとギーシュは必死になっていた。
「とりあえず、落ち着こうモンモランシー。君の可愛い顔が勿体ないよ。
さあ、丁度ここに席が空いている。ここに座っておくれ、そして僕がどんなに君のことを愛してるか聞いておくれ!」
歩を止め、ギーシュの言葉をジトリとした目で睨みならが聞いたモンモランシーは言った。
「あら。そこの席、空席じゃないわよ?根性だけじゃなくて目まで腐ったんじゃないかしら?ほら、どうするのギーシュ」
その言葉には凄まじいほどの冷酷さがあふれ出ていた。
ギーシュは女性を怒らせるのがこれほどまでに怖くて、そして厄介なのだと思い知った。
女性は褒めて喜ばすのも怒らせるのも簡単だが、
一度損ねた機嫌をなおすは物凄く難しいとギーシュは知っていた。
支援
110 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 20:07:19 ID:zv16wmGx
支援
『ルイズの胸の』谷まゼロ支援!
112 :
谷まゼロ4話:2008/12/07(日) 20:07:37 ID:at4Kye83
そして、彼女が言う通りにギーシュが座るように勧めた席には男が一人座っていた。
あまりにも存在感がなかったので、ギーシュは気づいていなかったのだった。
他に空席はなかった。この男に言ってどいてもらうのが一番であると考えた。
だが、彼女の手前、横暴なマネはできない。それがたとえ平民であっても。
ギーシュは、親しげに谷に話しかけた。
「済まないが、そこに座っている君。本来そこは平民が座ってはいけないのだよ。席を譲ってはくれないか」
谷はギーシュの言葉に応えないどころか、完全に無視した。ピクリとも動かない。
ギーシュは焦った。後ろでは、モンモランシーが腕を組んでこちらを睨んでいる。
早くしなければならなかった。
ギーシュは谷の肩に手をやって、揺さぶりながら大きな声で言った。
「ちょっと困るんだよ君!いいかい、もう一度だけ言……」
「ウルセェ!!!」
話の途中で、集るハエを払うかのように、谷がテーブルの上に拳を振りおろした。
テーブル足が盛大な音をたてて折れ、テーブルに置かれていた花瓶が割れて四散した。
ギーシュは、とっさに瓶の破片や飛び散った水から、モンモランシーを庇った。
自分の体を盾にし、モンモランシー肩に手をやり、抱きかかえるようにして。
自然と、ギーシュの顔がモンモランシーの目の前にあった。
モンモランシーの頬に赤みがさした。
ギーシュは真剣な顔をしていた。
愛しのモンモランシーが危険にさらされたのを怒っている……というのとは少し違っていた。
心の中では、物凄いハイテンションでガッツポーズを3回していた。
来た!!!よし!よし!これは来たぞ!!!こんなに都合のいい展開はおいしすぎる!!
こんなシチュエーション、一生に一回あるかないかだぞ!!
おいしすぎる!……おいしすぎるよ!!!これってもしかして僕のために誰かが仕組んでくれたのか!?
それは罠です支援
ギーシュ…合掌…
支援
115 :
谷まゼロ4話:2008/12/07(日) 20:09:16 ID:at4Kye83
確かに、ギーシュはモンモランシーが怪我をしなかったことを喜んではいた。
だがそれ以上に、今までの失態が全て清算できるイベントが発生したことに強い喜びを感じていた。
誰もが一度は夢見たことがあるであろう、乙女を窮地から救う自分。今それが、訪れたのだから。
ギーシュは心配そうな顔してモンモランシーに言った。
「大丈夫かい、モンモランシー?どこも怪我はしていないかい?」
「え?……え、ええ。その、あの……お陰様で。あ、ありがと。ギーシュ」
赤く染まった顔でいじらしくそう言うモンモランシーの唇に優しく人差し指で触れ、
ギーシュは、目をつぶって首を横に振った。
「礼は言わないでおくれ、僕は当然のことをしたまでさ。
もちろん、さっきのことの償いになるなんてことは……これっぽっちも考えていないよ。
僕は……君が無事ならそれでいいんだ……愛しのモンモランシー」
「ああ!ギーシュ……!!もうさっきことなんていいのよ……」
イヤッハァーーーーーーーーー!!!
ギーシュの心の中は喜びの咆哮で満たされていた。
完全に成功したと確信したギーシュであった。
もう駄目かもしれないと思っていた矢先であるから、喜びもひとしおである。
ギーシュは、ゆっくりと優しくモンモランシーの肩を離し、笑みを一度投げかけた後、立ちあがった。
このあと、ギーシュがモンモランシーとイチャイチャしながら、乳繰り合いながら、この場を去っていれば、
未来は間違いなく幸せなものであっただろう。しかし、悪魔の誘惑に勝てなかった。
ギーシュは欲を出し過ぎたのだった。
ギーシュは向きなおり、今もボロ雑巾のように椅子に座っている谷に詰め寄った。
「さてと……幸いにもモンモランシーは怪我をせずに済んだわけだが……。
君が危険にさらしたのは事実だ……そして平民が貴族に手を上げたことも……。
それが、どういうことかわかるかい?仮面をつけた男」
うわああアゲちゃった。すいません。
支援
ギーシュ逃げてぇー!支援
成仏しろよギーシュw
支援
119 :
谷まゼロ4話:2008/12/07(日) 20:12:08 ID:at4Kye83
谷は、顔だけギーシュに向けた。未だに何かをする気力は湧いていなかった。
そんな谷をお構いなしにギーシュはまるで芝居のようにたち振る舞った。
周囲の人間が何事かと、注目した。
「だが!平民の君が貴族に手を上げたことは、僕が遺憾とする大事の前には小事である!」
いいぞ、ぼく。最高に目立ってる。
「僕は愛しのモンモランシーを守ることができた。だが、もしかしたならば守れていなかったかもしれなかった!!
そのことは考えるだけでもおぞましい!もしも、彼女の透き通るような柔肌に傷でもついたら!
もしそんなことになっていれば、僕は到底耐えることができなかっただろう!つまりはだ!」
薔薇の造花を胸ポケットから抜き放ち、ビシリと谷に向って突きつけた。
「僕は、僕個人として、ギーシュ・ド・グラモンとして君を許すことができないというわけだ!」
手に持った薔薇を天高々に上に向け持ち上げた。
「薔薇である僕は、女性を、いやモンモランシーを耳で楽しませ、心楽します義務がある!
だからこそだ!ここに杖を掲げ、その障害である君に一対一の決闘を申し込む!!!」
おおお!!という歓声が沸き、拍手を送る者まで現れていた。
ギーシュコールが辺りに響く。
ぼく、今輝いてる……最高にカッコイイ!!!
ああ、モンモランシーの、あのとろけそうな目。あんな目でボクを見てくれるなんて!
父上、母上!ぼくぁ今幸せですっ。産んでくれてありがとう!本当にありがとうございます!
今ギーシュは蝶になります!!!
「ケンカか?」
谷が力なく、そう呟いた。
ギーシュはニヤリと笑った。
本当はこの目の前の仮面の男に感謝したい気持ちであったのだ。
しかし、いまさら決闘をしないわけにもいかない。ここで勝利を挙げ、有終の美を飾るのだと意気込んでいた。
「民草の言葉で言えばその通りだ。ケンカだ。どうだい、受けてくれるかい?」
「わかった。やってやる」
ギーシュは満足そうな顔した。
そして、周囲の人間に宣伝するかのように喋った。
「同意も得た!しでかした行為こそは許されざるものではある。
だがしかし!この男が、勇敢であることは賞賛しなければならない!
さあ、諸君。決闘だ!!ヴェストリの広場にて雌雄を決するのだ!」
歓声が一層大きくなった。いつの間にか大量のギャラリーが沸いている。
その一団は、谷を従えてヴェストリの広場に悠然と向うギーシュに続いた。
もはや、後戻りはできない状況になっている。
アルビオンまで跳んでけ支援
さらばギーシュ
支援
支援
怒らせてないとはいえこれはまずい支援
124 :
谷まゼロ4話:2008/12/07(日) 20:14:28 ID:at4Kye83
谷を追ってきたルイズと偶然居合わせたキュルケは、ギーシュと谷のやり取りの一部始終を見ていた。
「あ―――はっはっはっは!!!ちょ、っちょっと、やめてよギーシュ!ぷくくっ!っくはは!オカシすぎて
笑いが止まらないわっ!!!ダメっもーだめ!あっはっは!ぶはっぷッ、さ、酸欠になっちゃう!!」
キュルケが周囲の目を憚らず、スカートの中身を晒しながら地面を転がり、大笑いしていた。
だが、一方のルイズは浮かない顔したままであった。
それを見たキュルケは、未だにこみ上げてくる笑いをこらえて立ち上がり、ルイズの肩に手をまわして言った。
「ち、ちょっとなんでそんな暗い顔してんのよっぷっくくく。あなたも笑いなさいよ!
だってギーシュったら、あれだけ気障っぽく派手に観劇演じといて、
これからタニに、なす術もなくボッコンボコンのベッコンベッコンにされちゃうのよ?
オカシクってオカシクって仕方ないわ!!あっははは!あなた面白い使い魔呼んだわね!」
ルイズは何も答えない。キュルケも自分との温度差に気がついた。
手をヒラヒラさせ、キュルケはルイズに言った。
「ねえ、もしかしてタニが負けちゃうかもとか思ってるの?その心配ないわよ、
学院の壁を素手でぶち破るのよ?それにあたしのフレイムまであっさり倒したのよ?
ドットのギーシュが勝てるはずがないじゃない。ぷっくくっ、ああ!カワイソーなギーシュ!」
多分、キュルケの言ってることは間違ってない。
普通にやれば、タニが負けることはないことは確か。
ルイズはそう思っていた。
だが、谷のあの今にも消えいってしまいそうな後姿が、頭の中にこびりついて離れない。
ルイズには谷が本当に消えてしまうのでないかいう不安で一杯であった。
だが、決闘を止めることはできない。
止める資格なんてない、とルイズは考えていた。
崖から絶望の淵に突き落としたのは自分なのだからと。
様々な思いが交錯する中、決闘は今行われる。
125 :
谷まゼロ:2008/12/07(日) 20:16:13 ID:at4Kye83
ちょっと短いですが投下終了です。ありがとうございました。
使い魔とギーシュとの決闘の理由はいろいろあるけど、こんなのもいいかなぁと思ってやりました。
念のためというのもアレですが、ギーシュはゼロ魔の中でもお気に入りキャラです。
ここで終わりだけはよして支援
うああああ生殺しぃぃ
次回に超wktk。
谷さん乙
生殺しされてしまったよ
これはもうギーシュにはボッコボコになって頂こう
乙
なんつーか、よくここまでヨクサル作風で再現できるなと感心するぜw
次回も期待してます
谷の人乙
ギーシュの一挙一同がヨクサル絵で浮かんで笑っちまうw
谷の人、乙。
これからどういう内容の決闘になるのかwktkです。
>>104 明確な線引きはないはずですけど、原作では『……』で統一してますな。
>>129 俺もそれ思ったwしっかりヨクサル風だよなあwすげえw
長らくお待たせしました。
なんとか、三年寝太郎にはならずにやってきました
3話投下22時よりよろしいでしょうか?
谷まゼロGJ!
くそっ、谷の暴虐ぶりを次に持ち越すとは……。
そして怒れるマリコリヌ支援。
135 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 21:22:16 ID:M8nGG8v6
寝太郎さん、一日千秋の思いでお待ちしていました。支援!
あれ?規制かな?
おいお〜い、お前ら何をボーっとしてるんだよw
早く代理投下スレに行ってこいって、俺がやっちゃうぞ?
とか思ってたんだけどさ、投下は22時からなのね
ちょっと遠いんじゃないでしょうか
それに他の作者さんが投下しにくいような……
3年寝太郎だけに寝てるんじゃないでしょうか
いえいえ、起きてます。
それでは予定を少し切り上げて21時45分より開始します。
んじゃ改めて支援ッ!
おk支援支援
ありがとうございま支援
突如として宙に引上げられた巨躯の悪魔が、自分をそんな目に遭わせた者の姿を空中で探す。
巨躯の悪魔がその者に気付くのと、その者が悪魔の目前まで――地面から二十数メイルはある空中にも関わらず――迫っていたのはほぼ同時。
『邪魔をするなァァァ!』
悪魔は反射的に右手“である”大包丁をその者に振りかぶる。
――物理的衝突である剣戟が、衝撃波と成って周囲に旋風を巻き起こした。
巨躯の悪魔の大包丁が、その者の青白く輝く片刃に反った剣に受け止められ、その反動で生じた衝撃によって巨躯の悪魔とその者は空中で弾かれ合い、それぞれが離れた地点に着地する。
「ま、また別の悪魔がっ!」
先程まで巨躯の悪魔と戦っていたメイジ達のうち誰かの悲鳴で、初めて“その者”の姿が人間のものでは無い事を、巨躯の悪魔は認識した。
蒼い蛇を駆使して巨躯の悪魔を宙に吊り上げた“それ”は、蒼い悪魔の姿をしていたのだ。
メイジ達は条件反射の様に、地に降りた二体の悪魔をそれぞれの魔法で打ち倒そうと杖を向ける。
だが、メイジ達が狙いを定めるどころか詠唱する間も与えずに、二体の悪魔は揺らめく空気と陥没する地面を残してメイジ達の視界から消える。
両肩から正面に突き出た双角――左肩の角の先は折れている――の後部、
菱形の陥没した器官からの激しい熱を伴った気体の強烈な噴出が、周囲の空気を蜃気楼の如く揺らし地面を陥没させる程のエネルギーとなって、蒼い悪魔の体を激しい勢いで空中へと押し上げる。
宙に飛び出した蒼い悪魔の向かう先には巨躯の悪魔。
周囲で未だ生きているメイジの一人に狙いをつけた巨躯の悪魔が飛び掛るのを、空中で体ごと押し当てるようにして遮ったのだ。
『やめろっ!』
蒼い悪魔の呼び掛けへの巨躯の悪魔への返事は、再度の巨躯の悪魔の大包丁と蒼い悪魔の剣との剣戟。
だが、今度はお互いに先程より強い突進力で衝突したせい、いや、己の器官を使って現在進行形で前方へと推進している為に、弾き返される事無く鍔迫り合いになる。
『こんな事をして何になるっ!』
再度、蒼い悪魔が、互いの武器を迫り合わせながら巨躯の悪魔に呼びかける。
『貴族を皆殺しにするッ!』
巨躯の悪魔――マルトー――の二度目の返答は、憎しみと怒りで青白く燃える双眸を、蒼い悪魔、いや、この世界総ての貴族へと向けながらの、怨嗟の篭った叫び。
『あの威張り散したクズどもを殺し尽くすんだッ!』
マルトーが睨み付ける正面には、右の角が欠けた蒼い悪魔の血の如く紅い色の右目と幽鬼の如く揺らめく青白い左目。
先程、最初に剣をあわせた瞬間には、マルトーは本能的と言うべきか、自分の中に在る“何か”に教えられたかのように気付いたのだ。
目の前の蒼い悪魔は、自分と同じ存在<モノ>なのだと。
『本気かぁっ!?』
蒼い悪魔の叫びを合図に、どちらからとも無く鍔迫り合の状態から相手を弾くようにして脱した。
目前から悪魔の姿が失せる事に呆然とするメイジ達。
――空中で鍔迫り合いとう膠着状態を晒す。
再び衝撃波を伴って、二体の悪魔が距離を取る。
メイジ達が二体の悪魔の姿を再確認したのは頭上から剣戟音が響いてからだ。
――四方八方からの猛攻を、体を捻るようにして手に持った青白い反身の剣で弾く蒼い悪魔。
自由落下ならば既に地面に落ちていなければならない体は、空中で“何か”を剣で防ぐ度に宙を跳ねる。
あまりにも彼らの理解を超える動きを見せ付ける悪魔に何人かのメイジは驚愕のあまりに我を忘れる。
――巨躯の悪魔がその体格に似合わぬ機敏さで、文字通り四方八方から蒼い悪魔を襲う。
魔法を使わないどころか羽すらも無いと言うのに、頭上で空中を縦横無尽に駆ける様はあまりにシュールだ。
駆けつけた教師コルベールがすぐさま杖を向けるが、悪魔共のあまりにも機敏な動き――しかも空中であるに関わらず――のせいで狙いをつける事すら出来ない。
――それでも、二体の悪魔の体は重力に抗いきれずに地面に足をつける。
互いに間髪入れる事無く高速で踏み込み、再度剣を結ぶ。
『奴らは魔法が使えるからと威張り散し、俺達平民を見下して人間としちゃ見ていないッ!』
マルトーの今までに積もり積もった長年の貴族への不満、怒り、憎しみ、そして羨望。
禍々しい悪魔の姿はまさにマルトーの膨大な悪意の具現化。
先に彼が作り出した惨劇の舞台こそは、彼の憎悪に満ちた願望の具現と言える。
『だからッ! 俺と一緒に貴族どもを皆殺しにしないかッ!!』
目前の蒼い悪魔への執拗な攻撃はまさに彼の怨嗟の深さを表していた。
二体の悪魔が同士討ちをしている様をメイジ達も黙って見ているわけでは無い。
級友を、教え子を、恩師を殺された怒りと憎しみ、何より悪魔『風情』に『貴族』としての誇りを踏み躙られる事は彼らにとって耐え難い屈辱だ。
だが、先程から彼らの目では追いきれない悪魔の動きにあてずっぽう放つ魔法はほとんど掠る事無く、稀に当たる事があってもまるで有効的な効果が認められない。
そればかりか、蒼い悪魔に至っては、自身に届こうとする氷の矢を巨躯の悪魔の大包丁を受け止める片手間の如く剣で弾き、火の玉を後頭部から伸びる脊髄の様な長い尾を鞭の様に振るって打ち払う。
高威力、若しくは広範囲の魔法を使うにも、先程から続く戦闘と混乱により、既に精神力が打ち止め寸前でそのような術を使える者はこの場に残っていない。
メイジ達の中から悔しさから来る歯軋りが聞こえる。
蒼い悪魔の姿のおぞましさは、対峙するマルトーにも劣らず、欠けた頭角と肩角が更に凶暴なイメージを演出する。
だが、その姿に反する様に行動は一貫した“守勢”だった。
先程からマルトーの執拗な攻撃ばかりか、周囲のメイジの魔法でさえも総て裁いているものの、それだけ余裕が無いのだろうか、反撃に移るそぶりすら見られない。
『断るっ!』
目の前の悪魔の姿となったマルトーの攻撃に対して、まるで彼の憎悪を受け止めるが如く、己への攻撃だけでなく、ともすれば周囲にいる人間達へ向かう敵意でさえ一身に引き受けている。
『貴族とて人間だろうッ?!』
度重なる剣戟の果て。
蒼い曲刀に打ち付けられた衝撃で、マルトーの大包丁が衝撃に耐え切れずに粉々に砕け、その破片が瞬く間に灰と帰す。
「皆離れるんだ! ここは私がっ!」
この瞬間、遅れて地下牢からエレオノールと共に駆けつけたコルベールが常時では見せる事の無い激しい剣幕で叫ぶ。
その異様なまでに迫力のある教師の声に中てられたメイジ達が慌てながら散らばるようにして悪魔達から距離を取る。
火のトライアングルメイジであるコルベールが警告するのならば、何か強力な魔法を使うのだろうと予測して邪魔にならぬ様に引き下がったのだ。
コルベールには勝算がある。
自身の持つ必殺の魔法ならば、目の前にいる二体の悪魔がどれだけ機敏であろうとも『死』に至らしめるであろう。
だが、目の前の存在が死を撒き散らす邪悪な悪魔であると言うのにコルベールの手は微かに震えていた。
それは彼が昔に犯した罪の意識が生み出す躊躇い。
だが、その躊躇いを使命感で抑えつけ、魔法を開放――
「――ルイズっ!?」
――コルベールの耳に、近くにいるエレオノールの悲鳴じみた叫びが届いた。
コンシートの人支援!
召喚の儀式があった日から、隔離の為の自室謹慎ついでに、彼女は自分のこれからや使い魔“になる筈であった”男の事を思案しながら、自分の部屋に引き篭もっていた。
ルイズには相談する友人の一人も、この学院にはいない。だから、自室謹慎の解けた後も部屋にい続け一人で悩んでいた。
変化が生まれたのは、その日の昼過ぎ。
昼にメイドが持ってきた食事にもほとんど手をつけずに引き下げさせた後、ふと窓から外を見る。
目に飛び込んできたのは、オーク鬼の様な巨躯の怪物と学院のメイジ達との“戦闘”であった。
「……な、何よあれ!?」
突然過ぎる非日常な出来事に、驚愕し混乱するルイズであったが、そんな彼女は自分が気付かないうちに廊下を走っていた。
ルイズを掻き立てるのは誇り高い貴族たらんとする彼女の“在り方”。
だが、広場に到着したルイズの目前に広がるのは、彼女にとっては既に“戦闘”などと言えるものでは無かった。
彼女にとっては既に“地獄”でしか無い光景であった。
武器を失ったマルトーは慌てて蒼い悪魔と距離を取る為に跳躍をする。
数十メートルという人間の想像を超えるふざけた跳躍力。当然人間が追えるレベルではない。
にも関わらず、蒼い悪魔はそれに劣らぬ跳躍力でマルトーを逃がすまいと迫る。
迫る蒼い悪魔を視界に納めるマルトーだったが、武器を無くしたというのに、怯む事どころか待ち構えていたと言わんばかりのタイミングで蒼い悪魔の頭目掛けて腕を振る。
『奴らはせいぜい体のいい道具としか思っちゃいないッ!』
再び響く衝撃波を伴う剣戟。
マルトーの振るった腕の先に新たな刃物が生まれており、蒼い悪魔は目前まで迫った刃物を曲刀で受け止めたのだ。
先の大包丁の様な形ではあったが、その刀身は蒼い悪魔の持つ曲刀のモノに近い物質で構築されていた。
「……な、何よ……何なのよ……」
存在そのものが魔法という力によって身分を保証されているメイジ。
つまりは有事の際には戦う事を義務とされる存在と言える彼らが、原型を留めぬ程の屍を晒していた。
それだけでは無い。
多大な犠牲を作り出したのに、怪物は未だ健在。それどころか新たに蒼い悪魔まで現れ、今度はメイジの存在を歯牙にもかけずに広場を縦横無尽に駆けながら同士討ちを始める有様。
「何よこれはっ!!」
目の前の光景を拒む様にルイズは叫ぶ。
己の持つ価値観が、崇高なる貴族という存在のあり方そのものが、彼女の中で悪魔に踏み躙られるかのような錯覚。いや、事実、今この瞬間も踏み躙られている。
まさに彼女にとってそれは地獄以外の何物でも無い。
だが、ルイズの意思はそこで折れたりはしない。
常に誇り高くあろうとする彼女だからこそ、屈する事では無く、戦う事を選ぶ。
だからこそ、それを振り払う為に、その地獄を否定する為に、彼女は躊躇無く杖を構え呪文を唱える。
「ファイヤーボールっ!」
彼女杖からは敵を焼く為の火の玉どころか灯火すら生まれない。代わりに二体の悪魔のすぐ傍の壁が正体不明の爆発を起こす。
そう、これがルイズの現実。
彼女は魔法を正しく操る事が出来ない。
そう、彼女は魔法が成功しない出来損ないのメイジ。
つまりは貴族は皆メイジであるというトリステインの常識に反した存在。
そう、彼女の気位の高さは、誰よりもメイジとして、貴族としての在り方の拘るのは、自身の存在基盤そのものが元より抜け落ちている事の裏返し。
故に、彼女の二つ名は『ゼロのルイズ』。
これがルイズ・フランソワーズ・ル・プラン・ド・ラ・ヴァリエールの現実であり、“生き地獄”だった。
三年寝太郎とのクロスだと思った支援
異形の大包丁は、マルトーがイメージする己に相応しい“得物”であった。
先程まで振るっていた包丁も長年からが使っていた愛用の道具であったが、今この場で生み出した包丁は愛用の道具に劣らず“しっくり来る”
『そんな事もお前には解らんかッ!!』
一段と速度と激しさを増すマルトーの攻撃。だが、既に人間の目に留まるか留まらないかのレベルにまで届き始めたそれですら、蒼い悪魔は受け止め捌き続ける。
『それでもだっ!』
只、ここに至るまで反撃に転ずる事の無かった為にだろう攻撃をしかkりと防ぎ続けていた蒼い悪魔の動きは、心無しか攻撃を防ぎきるにも危うい状態にまで陥ったようにも見える。
突如、下から振り上げられたマルトーの大包丁が、蒼い悪魔の曲刀を上に弾く。
その強烈な衝撃は、曲刀こそ手放さなかったが、蒼い悪魔の腕を上に弾き、胴体をがら空きにする。
その隙に合わせ、マルトーが巨木の如き左腕で蒼い悪魔の胸を勢い良く貫かんとする――
『――グォッ!?』
『――ッ!?』
――爆発。
すぐ横の壁から生じた爆発は、マルトーの攻撃によるものでも、増してや蒼い悪魔によるものですら無かった。
蒼い悪魔がそのままバランスを崩し落下状態に入り始めたのを視界の隅に認めたマルトーは、眼下の地上を見回す。
自身が空中にいるので下への視界はよく開けていた為に、それはすぐに見つかった。
こちらに杖を向け、敵意を剥き出しに顔を顰めた桃色の髪の小娘。
『貴様――ッ!?』
目障りな貴族に吼え、空中から地上に立つ小娘目掛けて飛び掛らんと体を向き直そうとして、直下から衝撃がマルトーを襲う。
『グガァ!?』
蒼い悪魔が空中で両肩の器官を駆使して再上昇をしたのだ。
またもや爆発。
今度の爆発はマルトーと蒼い悪魔の二体を巻き込み、側面の壁に叩きつける。
先の爆発で皹が入った壁が、二度目の爆発と二体の悪魔の衝突に耐え切れず突き破られ、二体の悪魔はそのまま建物の中に叩き込まれた。
「ミス・ヴァリエールっ!!」
先のエレオノールの絶叫で慌てて魔法を中断たコルベールは、エレオノールを叫ばせた本人の姿を広場の隅に確認し、慌てて駆け寄ろうとする。
コルベールが駆けつけようとする間に、ルイズは続けざまにファイヤーボールの魔法の『失敗』をしていた。
だが、その『失敗』は全く別の意外な形として二体の悪魔へ効果を示したのだ。
ルイズの正しく施行されない魔法は必ず“爆発”という形で具現化する。原因は不明だが、とにかく爆発するのだ。
今回はその“爆発”が有効な手段となったわけだが、当のルイズは悪魔二体を見事に吹き飛ばしたにも関わらず、少し浮かない顔だった。
魔法が正しく使えない事が悔しいのか、それとも悪魔を倒せた自分が信じられないのか。
敵が吹き飛ばされた事で緊張を解いてしまったせいだろう、そんな事をコルベールが思ったのは。
だが、それは油断であると言わんばかりに、コルベールの目前で、ルイズのすぐそばの地面に何かが突き刺さったかと思うと、そこから強烈な爆風が起こった。
それも、在り得ない程の圧倒的極地破壊力を秘めた爆風だ。
「――ルイズッッッ!!!?」
ルイズの姿が爆風で消えるのを目の当たりにしたエレオノールが絶望の叫びを上げる。
爆風を生み出したのは、破壊された壁の向うから姿を現した巨躯の悪魔。
そして、その右腕は先程と打って変わった奇妙な形状をしていた。
「破壊の杖だとっ!」
コルベールがその顔を恐怖で歪めて思わず『それ』の名を叫ぶ。
『破壊の杖』、聞き伝わる話によるとワイバーンでさえ一撃で葬る程の威力のあるマジックアイテムであるとの事だが、その使い方はこの学院に長年勤務しているコルベールでさえ全く判らないものであった。
だが、その威力を目の当たりにし、しかもそれが悪魔の手にあるとなれば恐怖を感じないわけが無いのだ。
巨躯の悪魔が穴の開いた壁から飛び降り、地面をめり込ませて着地すると同時に『破壊の杖』を構える。
だが、巨躯の悪魔の構える杖の先は、現時点で最も近くにいる人間であるコルベールやエレオノールには向いていない。
続けて撃ち出される弾丸の先には、微かに蒼く光る異形の影。
そう、巨躯の悪魔は蒼い悪魔を執拗に攻撃し続けているのだ。
『ちょこまかとぉおお!!』
ハルケギニアの人間が『破壊の杖』と呼んだ使用法不明のマジックアイテム、否、本来の名称を『M72ロケットランチャー』と言う異世界の兵器であるそれは、単発式の重火器である。
だが、マルトーの腕と融合している砲身からは新たな弾が撃ち出される。
幸い、物質的な限界、若しくはマルトーの限界なのか、それらの弾は単なる鉄塊でしか無い。
それでも人間のような脆弱な肉体では到底耐えられる衝撃では無いのは、破壊される壁や抉られる地面を見るに明白だ。
断続的に打ち出される鉄の塊は、人間が目視して回避するには速過ぎるものではあった。
だが、蒼い悪魔にそれは当て嵌まらない。
マルトーと同じく、蒼い悪魔も人間の常識を逸脱している存在なのだ。
マルトーがロケトランチャーでルイズを撃ったその瞬間、
ルイズには杖を振る余裕どころか、瞼を閉じる暇も悲鳴を出す暇も呼吸をする暇すら無かった。
その時のルイズの視界に飛び込んだのは――
蒼い悪魔の広い胸板に抱かれるようにして、その悪魔の肩と首の間越しの向うで起こる爆発。
地面に飛び降りルイズに巨大な杖を一体化した腕を向ける巨躯の悪魔。
巨躯の悪魔の右腕と一体化した巨大な杖の先の空洞から撃ち出される奇妙な形の大砲の弾。
蒼い悪魔の人間の限界を軽く超える速度を以ってしてもその速度に届かず、それが蒼い悪魔の寸前に、ルイズの視界に迫る。
激しく横に揺すられ、視界が開ける。
今度は逆に揺すられ、在らぬ方から何かが重くのしかかる音が風圧として届く。
蒼い悪魔はほんの刹那でさえその動きを緩めずに右へと左へと翔ぶように地を駆ける。
悲鳴を上げたかどうか自分でも解らない程の耳鳴りと共にルイズの視界が除々に暗くなる。
大玉→空白→大玉→空白大玉空白大玉尻尾空白……
リピートするかのように幾度も巨大な弾が視界に迫り寸前で視界が開け又弾が迫り――そのたびに視界が闇色に薄らいでいく。
――彼女が初めて体験し、恐らく以後体験する事の無い高速の世界。
実際はほんの数秒ではあったが、文字通り死の淵にいるせいかやけに長く振り回されたものと体感していたルイズの意識が完全に闇に落ちる寸前、蒼い悪魔が動きを止める。
同時に、闇を振り払うような激しい光が熱気と共に吹き荒んだ。
「やったか?」
『爆炎』
コルベールがマルトーの頭上に放ったのがこの魔法だ。
火、火、土のトライアングルスペル。
『錬金』により、空気中の水蒸気を気化した燃料油に変え、空気と撹絆し、点火。
それによって生じる巨大な火球はあたりの酸素を燃やし尽くし、範囲内の生き物を窒息死させる。
更に生じた燃え盛る火球をマルトーの頭上に落とす事で、破滅の業火に包む徹底ぶりだ。
この残虐無比の炎蛇の名に相応しい攻撃魔法は、コルベールにとって長年の禁じ手であった。
先にこの魔法を使おうとした時、ルイズによって咄嗟にその手を止める事が出来たのは、実の所躊躇いがあったからだ。
ここに駆けつけるまでに、生徒、教師、使用人、多くの学院の人間の無残な躯を目の当たりにしてきた。
そう、相手は無差別に人を虐殺する異形の化け物であり、学園の生徒を預かる教師として、コルベールが戦う事を躊躇う理由は無い筈だった。
だが、過去の懺悔に心を蝕まれ続けていたコルベールは、この機に及んで戦う事を内心拒んでいた。
相手を気にしているというわけではなく、己が使う魔法が相手を傷つける事そのものに彼はトラウマを持ってしまっていたのだ。
だが、地獄の宴の如き場で、一人の生徒が彼に戦う意思を取り戻させた。
己が知るうちで最も非力な少女であったが、それでも彼女は最も誇り高く最も勇敢に敵に対峙して見せたのだ。
そして、そのルイズが爆風に包まれたと思われた瞬間、悪魔への激しい怒りと憎しみは、容易くコルベールの過去の古傷を、震える手を、逃げ出したくなる臆病さを捻じ伏る。
その直後、蒼い悪魔がルイズを爆風から救い出し、マルトーから引き離すという不可解な事態を目の当たりする。
これに対して、彼の体に刻まれた歴戦の経験は、状況を理解しようと行動を緩める事ではなく、状況に対処する為に倒せる敵に対応する事に体が行動に移り、ルイズが『爆炎』の有効範囲から抜けた瞬間に魔法をマルトーへ放ったのだ。
「無事ですか! ミス・ヴァリエール!」
『爆炎』によって生じた火球の直撃によって燃え上がる広場を尻目に、コルベールは己の意思を奮い立たせてくれた勇敢にして誇り高き生徒の名を呼んだ。
久々に見ると壮絶だが―――ここから巻き返してこそ燃えるというモノ!支援
支援
「う……ううっ……」
霞む視界と苦しくなる呼吸。
杖は手に無い。先の急制動に晒された時に落としてしまったのだ。
ルイズの朧気な視界でも、それは明らかな異形として映る。
「――わ、私は貴族よっ……貴族は敵に背を、向けないんだ…か……」
それでもルイズの意思は敵に屈さなかった。
悪魔がルイズに背中を向けたのが合図かの様に、ルイズの意識はそこで途切れた。
「ルイズから離れなさいっ!!」
蒼い悪魔に向かって魔法の氷で出来た槍を飛ばすのは、ルイズの身に起こった先までの事態に激昂し混乱の極みにあったエレオノール。
氷の槍を曲刀で弾く蒼い悪魔が大きく踏み込んで、エレオノールの前に迫る。
「ミス・ヴァリエールッ!」
コルベールの絶叫、あまりに速い蒼い悪魔の動きに、杖を振るう事すらエレオノールには出来ない。
「――っ!?」
死を覚悟し目を瞑るエレオノール。
蒼い悪魔はそんなエレオノールに背を向け、広場の炎から飛来する大玉を曲刀で弾いた。
「なっ!?」
一連の出来事を目の当たりにしたコルベールが目にしたのは、炎の中から浮かび上がる巨躯の悪魔の影。
「ま、まだ生きているのか!?」
とは言え、流石に巨躯の悪魔のダメージは大きいようだ。悪魔の体のあちこちが炭化し、足取りもおぼつかない。
『助けた相手からも撃たれているのに、それでも貴様はっ?!』
それでもマルトーは己に溜まる憎悪を糧に炎の中から歩み出て、蒼い悪魔を睨み付ける。
『くどいっ!』
目前の蒼い悪魔の回答はあくまで忌々しいまでに一貫していた。
『ならば――』
マルトーはふらつく腕と同化したロケットランチャーを構え――
『――死ねェッ!!』
――発射。
そこまでがコルベールが見た巨躯の悪魔――マルトー――の動く姿。
ロケットランチャーから弾が放たれるよりも疾く踏み込む。
放たれたばかりの大弾を後頭部から伸びた尾で叩き落とす。
そのまま突き出されたロケットランチャーの砲身を曲刀の横薙ぎ一閃。
紙でも切り裂くかの様に抵抗摩擦をほとんど感じさせない動作で砲身を横一文字→右腕→胴体→左肩まで淀みなく振り切る。
瞬き一つ、しただろうか? いや、していない筈だ。
なのにコルベールの目前の巨躯の悪魔は、破壊の杖から胴体横一文字までに斬り裂かれた軌跡を浮かべたかと思うと、直後その上体がゆっくりずり落ち始める
そして、その上体が地面に落ちる前に、悪魔の巨躯は跡形もなく灰となって崩れ去っった。
まだ消える気配の無い燃え盛る炎の向う。
コルベールの目前で、背を向けた蒼い悪魔の影が微かに浮かぶ。
「ま、待てっ!」
その言葉に応えたのか、それとも拒んだのか、一陣の疾風が奔り炎がかき消える。
蒼い悪魔は振るった蒼い曲刀を一瞬で右掌の中に仕舞い込み、コルベールにはっきり見える様に大きく屈み込んで跳躍。
正面の塔を大きく飛び越える程の跳躍を見せ、その向うへと姿を隠した。
「!? あの方向は!」
何かに思い立ったコルベールは、視界の隅でエレオノールが倒れたルイズを抱き寄せている姿に二人の無事を確かめると、蒼い悪魔の後を追う為に駆け出した。
もしさるさんなら避難所の【代理用】投下スレ【練習用】3へ支援
beに入会すればさるさん無くなる
無料だからまじオヌヌメ
さるさんかな?支援
代理スレにも反応なし…どうしたんだろ?
書き込み中にいきなり寝てしまったのかもしれないぞ
作者殿がさるさん規制を食らった&避難所も規制されているので代理で終了宣言します。
『以上、三話終了です。板野サーカスの文章化は僕にはムリぽ(死 だけどがんばる』
それもさるさんだ
作者さんも代理さんも乙でした
ブラスレイターさん、代理さん乙でした。
惜しむらくは規制……あけた時には続投願います、というのはあつかましいか。
業者書き込みの規制に巻き込まれたって感じかね
まぁ乙でした!
序盤からこれだけ違う展開を見せられると、期待が高まるな。
他の小説から、憑き者祓いにして探偵?の京極堂とか呼んでセーフなの?
すみません
22:55から「”舵輪(ヘルム)”の使い魔」第2話を投下しても宜しいでしょうか?
ここに投下すると荒れるから避難所に投下すればいいんじゃないかな(笑)
>>166 やっぱり、そうですかね?
駄文っぷりには自信がありますし(をい)、投下するのが遅いし
いか、ミョズじゃなくてミュズだww
>>168 おお、そう言う事か
それでは8分遅れですが、投下していきたいと思います
第2話 『ぼくは使い魔』
〜〜〜〜〜〜〜〜以下、本文〜〜〜〜〜〜〜〜
ミュズが目覚めると、そこは見た事の無い建物の薄暗く照明を落とした部屋だった。
「ふあ…。ここは…?」
フカフカとした床の上に横になってフカフカとした布が掛けられていたミュズは上体を起こし、くしくしと目を擦りながら呟く。
「お目覚めですか?ミュズ…さん?」
横から声がするので、ミュズはそちらを向くとそこには、黒い服の上から白い前掛けをした黒髪の女の子が椅子に座っている。
ミュズは見知らぬ女の子に名を呼ばれて、不思議そうな顔して小首を傾げる。
「こんばんは、私はシエスタっていいます。私はあなたと同じ平民で、貴族の方々をお世話するために、ここでご奉仕させていただいているんです。」
シエスタは丁寧に自己紹介をする。
「ぼくはミュズ。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールのものです。シエスタはヒトだから…、あなたとは違います」
ミュズの返事に戸惑ったが、矢継ぎ早にシエスタは用件を言う。
「あなたの御主人様、ミス・ヴァリエールに言われて、あなたが起きるのを待っていたの。『起きたら、私の部屋に連れて来るように』って」
シエスタは足元から取り出したサンダルを、手際良く馴れた手つきでミュズに履かせる。
そのサンダルは、足の甲と踵を太い紐で固定して、足首のところで結ぶ、しっかりとした履き心地のある物であった。
ミュズは今まで寝ていた台の上から降りる。
「あの。シエスタ、ぼくの服は?」
今になってミュズは自分の着ている服が変わっている事に気が付く。
ベージュの飾っ気の無いワンピースで、ミュズにはサイズが大きく袖や首回りなどがタボダボと開いている。
「始め、ミス・ヴァリエールにあなたの着替えと着ていた赤い布を普段着に仕立てる様に申し付けられました。眠っている間に着替えを済ませたのですが、夕食後に再度、ミス・ヴァリエールから依頼されたのですよ」
シエスタは経緯を説明する。
既に陽が落ちて、赤と青の双月がトリステインを照らす時刻となっていた。
シエスタは部屋にある唯一の灯を持つと、ミュズの手を引いき、その部屋を出た。
つかつかと歩くシエスタと、その後ろをてとてとと歩くミュズが薄暗い夜の廊下を進む。
手を引かれていたミュズは、窓から明るい二つの月を見た。
「ここは地球?」
「チキュウ?いいえ、トリステインですよ」
シエスタは『地球』と言う聞いた事がある単語に頭を傾げながら、ミュズの質問に返答する。
「あの時、テレポートされたから…、データで知っているのと…違う。ここはトリステインと言う惑星(ほし)なんだ」
ミュズは声には出さずに呟いた。
その頃、ルイズは寮塔の自分の部屋で考えていた。
もとい召喚してから、授業の時も夕食の時もお風呂の時も、ずっと悩み続けていた。
あんな小さな少女が召喚されてすぐに演技や嘘で、あんな事を言えるだろうか?
張りぼてのドラゴンがあんなに息苦しそうに動き、あんなドロドロに溶けてしまうだろうか?
少女とドラゴンの言葉は眉唾ものであったが、一人と一頭が存在していたのは紛れもない事実である。
あの時、咄嗟に水をあげてしまったのは、その一人と一頭を見ていて、貴族の責務(ノブレス・オブリージュ)として父母に教えられた助けを求める平民に対する、または親愛なるちい姉さまが言っていた弱っている動物に対する行動であった。
ルイズは延々と悩んで結局、あの溶けてしまったドラゴンが張りぼてで無いと結論を出し、ミュズと言う少女はその虚言癖のある韻竜に育てられた娘と言う事にした。
ルイズの考えが纏まる時、頃合い良くノックする音が聞こえた。
「夜分、失礼します。ミュズさんを連れてきました」
その声を聞いたルイズはミュズを招き入れ、シエスタを下がらせる。
ルイズはミュズを見ると、逡巡の後に溜息をついてしまった。
目の前の少女には悪いが、せめて鷲とか梟とかの様なカッコいい生き物がよかったと、ルイズは思ってしまう。
ルイズはぶっきらぼうにドカッと机の横にある椅子に腰掛け、机の上に頬杖をついた。
「あんたは何なのよ。なんで、召喚してあなたが来ちゃったのかしら?」
ルイズは悲しげな顔でミュズに問い質す。
「ぼくのお父さんは――科学者で、悪いヒトでした。悪い…仲間に誘われて、悪い目的のために大層な時間をかけて、ぼくを作りました。」
ミュズは部屋の隅に立ったまま、自身の生い立ちを話し始める。
「”宇宙最高の秘宝”を手に入れるための道具として…。でも、父の仲間の狙いは、ぼくの中の”二枚目の地図(ネクストシート)”だった。」
訳の分からぬ単語が頻出するミュズの突拍子も無い話しに、ルイズは話半分に相槌を打っていた。
「きっと始めから裏切られていた。合流地点だった”地球”で待ち伏せされて…、父はまだ眠っていたぼくを誕生させて、脱出したんです。そこにテレポートのゲートが現れて…着陸するとあの場所に居ました」
「そのげーと?が召喚の門かしら。召喚の魔法、つまり『サモン・サーヴァント』は、ハルケギニアの生き物を呼び出すのよ。」
ルイズは疑わしげなミュズの話しを聞いた所で、召喚についての説明をする。
「普通は動物や幻獣なんだけどね。人間が召喚されるなんて初めて見たわ。しかもチキュウなんて所、聞いたことがない」
「そうなんですか」(近隣のハルケギニア星から生き物を、愛玩や使役目的でテレポートするのかな?それで現れた生き物を使い魔って呼んでいる?)
そんな事を考えながら、ミュズは興味深げに頷いていた。
「ところで、使い魔が何をするか知ってる?」
ルイズの質問にミュズは、首を横に振って答える。
「まず、使い魔は主人の目となり、耳となる能力を与えられるわ」
「どういうことですか?」
「使い魔が見たものは、主人も見ることができるのよ。でも、あんたじゃ無理みたいね。わたし、何にも見えないもん!」
「ちょっと待ってください」
ミュズは落胆するルイズの話しを切って、部屋の窓から身を乗り出し、遠くの方を眺めた。
その後、おもむろにミュズはルイズに近付き、頭を掴んで額同士をくっつける。
ルイズの目の前に、夜空に煌めく見覚えのある白い尖塔が浮かぶ。
「きゃああ!な、なに?トリスタニアの宮殿がみえた?今のは?」
ルイズは、がばりとミュズの手から外れ、驚きの余りに悲鳴を上げて混乱する。
「ぼくの目に見えるものです」
「確かに、ここからトリスタニアを遮りそうな山なんかはないけど、すごいわね?」
「もっと遠くまで見ることも出来ますよ」
「色々と変わってるけど、なかなか使えそうな能力じゃない」
ルイズは、遠見の一種かなと考えつつ、落胆していた使い魔に頷きながら感心する。
「それから、使い魔は主人の望むものを見つけてくるのよ。例えば秘薬とかね」
「秘薬ってなんですか?」
「特定の魔法を使うときに使用する触媒よ。硫黄とか、コケとか……。あなたに見つけてこれないでしょう」
「薬品の原料ですか?実物を見せて頂ければ、サーチして用意出来ます」
「ああ、はいはい」
簡単そうにミュズが返答をするので、そこら辺に生えてる雑草と勘違いしているじゃないかとルイズは思いつつ、あきれ気味にあしらう。
「そして、これが一番なんだけど……。使い魔は、主人を守る存在であるのよ。その能力で、主人を敵から守るのが一番の役目!あなたじゃ無理ね……」
ルイズは自分より小さく細いミュズを見て、諦めた様に言う。
「ぼく単体でも、十分に戦えます!」
「そうなの…?でもね。あんたみたいな小っちゃい娘を盾にするなんて、貴族の名折れよ!」
ファイティングポーズをとって自信満々といった様子のミュズに、ルイズは貴族としての心構えから啖呵を切る。
「だから、あなたに出来そうなことをやらせるわ。洗濯、掃除、その他雑用」
「はい、分かりました。マスター」
ルイズはビシッとミュズを指差して高らに宣言し、ミュズは従順に頭を垂れた。
173 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 23:11:52 ID:UqzH43GF
言いたい事を言い終わったルイズに、恐縮しつつミュズは尋ねる。
「あのー、これなんですけど…」
ミュズは左手の甲を見せる。
そこには蛇がのたくった様な紋様、ある種の文字が躍っていた。
「ああ、それね。わたしの使い魔ですっていう、印みたいなものよ」
「この印が刻まれた事で、それまでに無かった能力が付加されたみたいです」
「使い魔として契約したときに、特殊能力を得ることがあるって聞いたことがあるけど、みたいってどう言うこと?」
「能力を発動させる条件が分からなくって、能力が使えないんです」
「それじゃ、意味ないじゃない!」
ルイズは素早く鋭いツッコミをミュズに入れる。
ミュズは恥ずかしそうに顔を赤らめ、しょんぼりと肩を落とす。
「さてと、色々と喋ってたら、眠くなっちゃったわ」
ルイズは、くあと欠伸をする。
椅子から立ち上がり、ブラウスのボタンに手をかけて、一個づつボタンを外していく。
ミュズは奇妙に見えるルイズの動きに疑問を投げ掛ける。
「なにをしているんですか?」
きょとんとした声で、ルイズが言った。
「寝るから、着替えるのよ」
この娘は今まで着の身着のままで生活していたのだろうと、ルイズは考えながら、いそいそと着替えを続ける。
「じゃあ、これ、明日になったら洗濯しといて」
ルイズは脱ぎ終わったキャミソールとパンティをミュズに渡し、大きめのネグリジェをかぶる。
ミュズは渡された物を物珍しそうに見ている。
ルイズはベッドに座ると、毛布を一枚投げてよこした。
「ベッドは一つしかないんだからしかたないけど、ここで寝てくれる」
ルイズは床を指差す。
ミュズは嫌な顔をせずに洗濯物を足元に置き、横になって毛布に包まった。
ルイズが、ぱちんと指を弾くと、ランプの灯りが消え、部屋に真っ暗な夜の帳が下りる。
ミュズが驚いて興味津々と言った様子で騒ぐので、ルイズは早く寝なさいと怒鳴りつける。
怒鳴られて静かになったミュズは寝る気配を見せる事が無く、窓の外の双月を眺めていた。
しかし、ルイズは昼間から夕方過ぎまでミュズが眠り続けていたのを知っているので咎める事はしなかった。
「おやすみなさい」ルイズは眠たげな声でミュズに呟く。
そして、ミュズの使い魔としての生活が始まった。
し
え
ん
以上、投下終了
投下が月一ペースになりそうです
余談ですが、今週、マップス愛蔵版2巻が発売されます
それには「”舵輪(ヘルム)”の使い魔」における”破壊の杖”が出てきます
ってかそこまで投下するのに何ヶ月かける気だ、己は!!
ヘルムの人、おつー。
ネクシート号の出現も待ってますよー。
3〜4巻分そうとうなのかな?
だとすると破壊の杖相当って何だろう。
生贄砲はいくらなんでもやりすぎだし、ザザーンの杖砲かな?
おお、乙と書くのを忘れていた。
ヘルムの人お疲れ様でした。
設定スレで相談に乗ったのがこういう風に生かされるとは(w
ヘルムの人、乙。
マップスかぁ。昔集めてたけど、途中でいつ単行本が出るのかわからなくなって辞めたんだよな。
愛蔵版、集めてみるかなぁ。あの作者さんのマンガ好きだし。
あの人の漫画だとダンクーガ・バーンとかクロノアイズとか巨大ジムとグレイ・ストーク卿の話が好きだったな
聖地にあるのはDNAオルガン、DNAデータバンク
一人一人の生まれてから死ぬまでの行動
肉体的特徴、知能、気質、性格、才能
社会適応性や犯罪指向性
遺伝子の組み合わせによってどういうタイプの人間が生まれるかの予測やその結果
ルイズのようなゼロが生まれたのはDNAデータバンクの予測ミスか!?
みたいにクロス元から設定のみいただくってのはどうなの?
ゼロ魔でやる意味があるかどうかだな
>>181 銃夢ネタか。正直難しそうだ。
ケイオスあたりが召喚されたらサイコメトリーによる(可能な限りの)スキルコピーに
ガンダールヴ補正がプラスされて、剣の腕は超強くなりそうだけど。
3枚の星図そろいし時。
白き地図人かざまく光を示す。
元の作品知らなくても読んでる人って結構いるみたいだが
このスレから入った人でジョジョ本編読んだ事無くて
このスレの保管庫の作品も読みつくして
姉妹スレのジョジョの作品も読み出した人とかっているのかな?
予約なければ3分後に投下します。
マーティン泣かせたかったので、クロス先の設定がいつも以上に出てしまいました。
訳分からなかったら質問スレとかで聞いてやって下さい。
33,シェザールとロルカーン
ノクターナルが話し終わって後、タムリエル生まれは衝撃を受けている。
「えーと、ねぇ、マスター。衝撃の展開らしいけど、何がどう凄いんだい?」
ハルケギニア生まれとして真っ当な意見のマチルダが言った。
フォックスは小さく、消え入りそうな声で答えた。
「つまり、俺たちが信じている神は、まったく神ではなかったと言うことだ」
これでほぼ全ての説明が終わるのだが、これだけだと二人の心情が把握出来ない。少々前に戻る。
驚きの声を鬱陶しそうに聞きながら、ノクターナルは言った。
『何故驚く?お前達を守るために末弟はアイレイドと戦い、
その後息子であるモーリアウスをお前達の下へ送ったではないか』
マーティンは何か考え事をしている。ルイズは全く着いていけない。
とりあえず、夜の女王に最大の疑問を聞いてみることにした。
「その…ノクターナル様。心臓取られても死なないの?」
『痛いが死なぬ。ロルカーンはその力をほとんど心臓に含ませていた故、
制約が課せられて後、自身の力でニルンには行けなくなったがな』
へぇ、痛いで済むんだ。でもそれならどうして…死んだ事になっているのかしら?
いや、それ以前に…
「その、エイドラとデイドラは違うって」
『アヌイ=エルに似ているか、シシスに似ているかの違いのみだ。
全てシシスが創ったと言える。そう我は父より教わった』
お父さんってシシスよね。ならこれは間違っているかもしれない訳ね。
ルイズはそのように解釈した。タムリエル人はそう思わなかった。
「プリンス・ノクターナル。先ほどの神はもしやシェザールの事では?」
ロルカーンの名でタムリエルに知られる神は、
人の神として知られている。人を助けるという領分は、
シロディール地方ではシェザールと言われる神の仕事だった。
彼はアイレイドから人間を守っていたが、
ある時フラリと消え去ったと伝えられている。
専門家の研究では、他の地域の人間を助けに行ったのだろうとされているが、
結局帰ってくることはなく、後になって聖アレッシアがアイレイドを打ち倒し、
現在に至っている。何度か九大神に近い神として、
大々的に奉ろうという話が出ているが、何故か時の皇帝はそれに許可を出さず、
シェザールはシロディール地域のみで信仰を集める神となっている。
詳しくは『シェザールと神々』でも読むと分かりやすい。
『左様。それもまた末弟の名の一つなり』
ロルカーンなのにシェザール?どういう意味かしら。
ルイズは疑問をノクターナルにぶつけた。
『娘。お前の名は何だ?』
「ルイズです。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」
『ならばお前は「ルイズ」であり「フランソワーズ」であり「ブラン」であり、
「ヴァリエール」であるのだな?あまり使われぬ名もあろう』
確かに、ミス・ブランと呼ばれた事は今まで一度もない。
そういうことか。場所によって呼び名が変わるとかそういうのね。
なんとなくルイズは理解できた。神格の名前が、所によって変わることは良くあることだ。
「ですが、シェザールは途中で去りましたし、
モーリアウスを送ったのはカイネのはず。
かの神はキナレスと同一のはずですが…?」
九大神の司祭なら、アイレイドとの戦の際に現れた神の事は知っていて当然である。
説法の中に神の名前を含ませたりしないといけない。諳んじて言える程度には覚えていた。
モーリアウスというのは、聖アレッシアの伴侶となる半神の雄牛として知られる神格である。
彼は「カイネの息吹」の異名を持ち、今は自然や空等を司る神である「キナレス」
の下に位置する神として知られている。
『アカトシュに諫められたのだ。それでも行こうとした故、
竜神はムンダスへの門を閉じた。そして奴隷の女王はシェザールの崇拝を止め、
アカトシュを信仰するようになった』
マーティンは驚きで体を凍らせた。奴隷の女王とは、聖アレッシアを表す名の一つである。
ノクターナルは話を続ける。
『そして末弟は二神の嫁を持っていてな。一神はキナレス。
そしてもう一つの神はその侍女マーラ。そしてマーラはアカトシュの妻でもある』
ややこしくなってきたわね。
そうルイズは思いながら今聞いた話を整理する。
えーと、ロルカーンは世界を創造した事で心臓を抜き取られたけど、
実はまだ生きていて、古代エルフのアイレイド達と人間の争いの際に人間を助けたと。
で、アカトシュに怒られて行けなくされた代わりに、奥さんを通して息子を送った訳ね。
行けなくされた時に、デイドラも行くことが出来なくなった。
それを勘違いしたアレッシアは、アカトシュを奉るようになったのね。
いえ、勘違いさせたのかしら?あくどいわね。
マーティンの友達が言ってた事って、嘘もいいとこじゃない。
でも、なんてロルカーンは死んだ事になっているのかしら?
「な、確かにカイネはショール(シェザールの別名)の未亡人と聞いたことがありますが…
しかし、ならば何故ロルカーンは死んだ事に?」
はぁ。とノクターナルはため息を付いた。
あまりに定命の者の頭が可哀想だと思って。
『考えてみよ。末弟が何故ニルンをエセリウスの近くではなく、
オブリビオンに近いムンダスに創ろうと思ったか。
何故エイドラはお前達に無関心かをな』
辺りに沈黙が漂う。ルイズは蚊帳の外過ぎて付いていけない。
「ええと、その、ノクターナル様。分からないので教えてもらえませんか?」
困りながら言ったルイズの言葉に、
意外にもノクターナルはニヤリと笑って答えた。
『ああ。分からぬ事、理解出来ぬ事は無理矢理考えても何も浮かばぬ。
ならば早々に聞けば良い。考えた上で分からぬ事は何の問題も無いからな。
その程度の頭すら持ち合わせておらぬのは、流石はインペリアルと言ったところか?』
インペリアルと称される、シロディール生まれの人間は「自称」文化人種である。
自分たちの文化を、彼らからしてみれば「野蛮」な文化と取り替え、
彼らからしてみれば「素晴らしい」文化にしてあげようと、
嫌なお節介とも言える同化政策を他国に強制してきた種族なのだ。
ちなみに、NOと言ったら戦争してでも教えてくれる。困った連中だ。
これを勘違いして、本気で文化人だと言う者がたまにいるが、
アレッシア・オッタスの案内書シリーズでも見ると良い。
あれが普通に売れる世界の中心にいる種族が、
本当に文化的かどうかをよく考えてみるべきだ。
個人的に、排他的と言ったほうがよく似合うと思われる。
通常なら分からない、とマーティンは答えられただろうが、
そこまで頭が回る状態ではない。
だから分からない。とすら言えなかった。
ノクターナルはひどい顔をしたタムリエル人を見て、
また語り始めた。
『つまりほとんどのエイドラは、あまり創造に関わってはおらぬということだ。特にアカトシュはな。
むしろあの竜は、アイレイドとの戦でニルンから人間を消そうとしていたぞ?しかし叶わなかった。
故にロルカーンをお前達の記憶から消し、彼の地から力を得られる様にしようと考えたのだ。
キナレスはどうにかしたかったようだが、アカトシュに敵うはずもないからな。従う他無い。』
マーティンとフォックスの顔色が変わった。
それは正に三神が偽りの神であった事を知った、モロウウインドの民の様に。
「…ノ、ノクターナル様?そ、それは一体…?」
いかにも動揺した声でフォックスは言った。
仮面越しではあるが、顔色が悪そうだ。
順を追ってノクターナルは説明をし始めた。
『始めに、我らの常闇の父シシスは、アヌイ=エルに体を作り替えてくれと頼まれた。
アヌイ=エルは秩序と不変を司る存在だが、体が朽ちかけていたのだ。
かの神は本来創造とは無縁であったからな。我が父に頼むほか無かった』
秩序と不変を司るということは、規則や法を守れという意味に取られがちであり、
実際、九大神の主神であるアカトシュもその様に戒めている。
しかしそれは、生ある者に合わせて最大限に譲歩した考え方である。
本当に秩序だった不変を望むなら、生命を創る時点で間違っている。
生き物は変化する存在なのだから、創らない事が正解だ。
さらに言えば、それら全てを無かった事にすると都合が良くなる。
もっとも、ニルンの創造に関わっていないのと、
あまりにも他の神々が関わり過ぎているので、
竜の神はそういった行いが出来ないだけなのだ。
自分にそれらの考え方を適応していない理由は、神も己には甘いということだ。
むしろ、ニルンの神々は大甘と言える。そして生ある者にとても厳しい。
特にエイドラはろくな報酬を与えず、英雄にお使いをさせる事で有名だ。
報酬だけを考えたら、デイドラの方がよっぽど気前が良い。
『Aka(竜)になりたいと言ったから、シシスはアヌイ=エルの体と混じり、
彼の存在の形を変えた。その時に生まれた莫大な力によって、最初の我らが生まれた。
この時、我らは皆同じ存在であり、名前も持っていなかった。
シシスに近い考え方を持つか、アヌイ=エルに近い考え方を持つかの違いはあったがな。
それが霊(et'Ada)だ。これは我が父シシスより伝え聞いた。
そうであったかは覚えておらぬ。されど、
我も今はエイドラと言われる者達と、黒き闇で話をした事は覚えている。
デイドラとエイドラは兄弟姉妹であり、ロルカーンと呼ばれる者は我が末弟なのだ』
「霊…」
マーティンは信じられない顔でその言葉を聞いている。
マーティンはその存在を古いエイドラか何かを言っているのだろうと思っていた。
『さて、アヌイ=エルの形が変わりアカトシュとなったが、
何故か彼の存在はシシスに怒り狂った。そして二神は戦い合うのだ。
その時流れた血肉から星々が生まれた。この時マグナスやメファーラ、
それとお前達が知らぬいくつかの神達が、暇つぶしに我らに名を付け、
体を構築させた。あの存在達は我らと同格なのか、それとも父と同格なのか、
我にはあまり良く分からぬ』
さっきの四本腕の女が、そんなに凄い神様なのかねぇ?
どうしたってボケ加減ではこいつと良い勝負しそうな気がするんだけど。
等と思いながらマチルダは、ノクターナルの話を分からないなりに聞く。
『それから我やマグナスは、血肉から生まれし星を並べて麗しき星座を創った。
ああ、我らの形はその時、今よりも遙かに巨大であった。
今もなろうと思えばなれぬ事はないが、
変わったところで特におもしろみもないからな』
愕然とした顔で、タムリエルの二人はそれを聞いている。
いくらデイドラに関わっているとは言えども、
二人とも心の中は九大神の色に染まっている。
シロディールで生まれたからには当然だ。故に信じたくない話だった。
エセリウスではネタバレすなっ!とタロスあたりが叫んでいる。
『時間はお前達が作りだした概念だが、時はそれよりずっと以前から流れている。
疲れて戦いを止めた不死の竜と蛇は、辺りを見回して我らを初めて認識した。
そしてシシスは自分に近き者を引き入れる『オブリビオン』の世界の、
海の部分だけを創った。今でも覚えている。汝らは純正なる我の子だと言われた事をな。
その後直ぐに我が父は消え去った故、我らは苦労したぞ?創造なぞしたことがなかったのだからな。
アカトシュは『エセリウス』の全てを創り、そこに自分に近しい者達を連れて行った』
「オブリビオンの海?」
ルイズが聞いた。ノクターナルは答える。
『オブリビオンはデイドラを統べし者達の領域以外は、
そのほとんどが海となっておる。海といえども普通の物ではない。
魂だけしか入ることを許されぬ海よ。故に肉体が欲しくば何処かのデイドラの主なり、
王子なり、もしくは誰の物でもない領域に身を寄せるしか術はない』
神様の世界なだけあってすごいのね色々と。
ルイズはそんな事を考えながら続きを聞いた。
『しばらく時が経った。アズラが星々は私の物だ、
とか抜かしたので何度かきつく灸を据えたな。
ある日の事だ。我らが時折来る父に言われて適当に創った領域に、
ロルカーンと名乗る者が現れた。エイドラを連れてな。
あれは最後のシシスの子と名乗った』
「そのエイドラとはまさか…」
マーティンがか細い声で言った。ノクターナルはふむ、と首をかしげてから言った。
『何がまさかかは知らぬが、マグナスとキナレス。そして後にアルドマーになる、
あまり力を持たぬエイドラ達だ。確か、それとトリマニックもいたな』
アルドマー?全てのエルフの祖だ。とノクターナルはルイズに答えた。
「え、エルフって神様なの?」
『不死の存在から定命の存在になりたがったのだ。我にはその理屈が未だ理解できぬ』
ルイズは思考する。
えーとえーと。エルフが神様なら、アイレイド達が人間をどうにかしようとしたことも、
ある意味正当性が…いえ、エルフになった神様達が関与した訳じゃないから、
それとこれとは別ね。もしかしてこの世界のエルフもエイドラだったのかしら?
それがどうかを知るには、ジェームズの隣でとりあえず話を聞いているティファニアの、
指輪とオルゴールの作用によって使える様になった先住魔法を見れば良いが、
そこまでルイズの思考は及ばなかった。
「つまり、何ですかな。ノクターナル様」
グレイ・フォックスは震えながら言い始めた。
ティファニアとジェームズ。それにマチルダとタバサは、
どうしたら良いか分からずにじっとしている他無かった。
『何だ?』
「我らは、その、あなた様達に創られたと?」
『否。創ったのはマグナスとロルカーンだ。他に赤き人間を創った神もいたはずだ。
我らはいくらか力を提供し、星系の星の形を丸くした程度に過ぎぬ。
ウッドエルフのいくらかを、カジートに変えたのはアズラだがな。
そしてオルシマーを創ったのはトリマニックだ…他は覚えておらぬ。
まどろみの中で創造を見ていたからな。我は生ある者の創造には関わっておらぬのだ』
オルシマーとは、後にタムリエル世界でオークとなる種族であり、
トリマニックは、現在デイドラの主でマラキャスと呼ばれる存在である。
今はこの解釈だけで納得していただきたい。
マーティンは信じられない様子でノクターナルを見続けている。
そうか、これがあの時のダークエルフの気持ちか。
己の教義を全て否定されて、九大神教団に入ったエルフの気持ちか。
ノクターナルの言葉に、嘘偽りの気配は一切見えなかった。
マーティンは、不安げながらも覚悟を決めて言った。
「では、プリンス・ノクターナル。何故エイドラは、九大神は我らの神となっているのです?」
良い質問だ。とノクターナルは言って答えた。
『最初、ニルンを創っていたのはマグナスであり、ヴァーミルナはそれを手伝っていた。
ヴァーミルナが時折、マグナスと関連付けられて考えられるのはそれが理由だ。
ロルカーンは人間を創っていた。今のそれは色々と枝分かれが進んでいるな。
ところが、噂を聞きつけ神になりたがったエイドラが、大量に現れだしてな。
マグナスはそれに嫌気が差してどこかへ行った。ヴァーミルナを残してな。
ロルカーンは飽き性だったのか、もっと前に消え去っておったな。
しばらく経って、心臓を赤き山に投げ捨てたのはアカトシュだ。どこで奪って来たのかは知らぬ』
故に、とノクターナルは話を続ける。
『創り主がおらぬ世界だ。いくらでも話は造れよう。
そして奴らは、マグナスがおらぬ世界の定命の者達に、
我らこそが神と教えたのだ』
まぁ、そうよね。筋は通るわね。とルイズは思った。
誰かが創ったけれど、途中から嫌になって消えたわけで、
創りかけのそれをちゃんと創り終えて、
神様として崇めさせた。でも、アカトシュはあまり良く思っていなかったのよね?
それなのにどうして創るのを許可したのかしら…
自分の子供達とも言えるエルフ達がそこに行ったから?
脳細胞を全て使いながら、ルイズは話を整理していく。
実際のところその通りだった。
親は子に厳しくしつつも、どこか甘くしてしまうものだ。
孫とかなら、もうどうしようもないくらい甘くなるのだろう。
けれど、最近のエルフはデイドラ信仰が主流である。
アカトシュ的に悲しい事ではないだろうか。
『ロルカーンも、エセリウスにいるのだろうが詳しくは知らん。
少なくとも、オブリビオンの何処にもおらぬ』
すぅと、マーティンは大きく息を吸い、吐いた。
顔がとても青くなっている。
「では、何故かの神々は我らに奇跡をお与えに?」
『あの程度で奇跡と言わせる為だ。本来もう少々力を使えば、
かの神達に治せぬ病など無い。ただの魔女ですら吸血病を治せるのだぞ?
されど、お前達はつけあがるからな。そして面倒なのだ。
末弟が創りし世界の者達は脆弱であり、
何らかの神に頼らねば生きていけぬ。
もしデイドラの信仰が強くなればどうなるであろうか?』
デイドラって、あんまり良くない存在なのよね。
ルイズは、以前マーティンから聞いたデイドラについての事を思い出す。
自分たちにとって楽しい事をする為なら、人間やエルフとか、
それに獣人がどうなっても構わない連中…
このノクターナルは違うみたいだけど、
楽しむ為に、親族にまで手を出したりするのかしら?
ルイズの疑問に、ノクターナルの話が答えた。
スゲェ時間に投下だなw
支援
『アカトシュをどうにかしようと思うデイドラが現れよう。
デイゴンなぞは特にそう思うであろうな。
殺せずとも、閉じこめる方法くらいはあるだろう。
我が父も喜んで協力するかもしれぬ。竜が嫌いなのだ。あのお方は。
それは困る故、お前達に嘘を教え、九大神を崇め奉らせているのだ。
面倒だが、そうせねばならぬ。仕方が無いから、
お前達に拝ませてやっているのだと言っていたぞ。
これだから人間から神になったタロスは困る』
マーティンは座っていた椅子から床に落ちる。
そのまま起きあがらず、両手で頭を掴みうなり声を上げた。
自身が信じていた物を、今全否定された。
決めた覚悟は、打ち砕かれた。
「マ、マーティン!?大丈夫?ちょっと、返事してよ!ね、ねぇったら!」
椅子から落ちたマーティンに驚いて、ルイズは彼に駆け寄った。
彼女からしてみれば、今までの話はただの物語である。
しかしマーティン達からしてみれば、
ずっと信じていた宗教を否定された瞬間だった。
フォックスは、どうにか正気でいる事が出来た。
それは、彼がそこまで神と関係のある生活をしていなかったからである。
自身の宗教を否定されたダメージは大きいが、まだしばらくすれば立ち直れる。
だが、マーティンは違う。若い頃からずっと神々に翻弄され続ける人生だったからだ。
彼を形成する物の中で、最も大きいのは宗教である。
だからこそ、こればかりは代えが利かない。
「何故、何故だと言うのか!何故街が襲われた時にアカトシュ神が助けてくれなかったのか!
私は信じたくない!だが、これは、これは…」
証拠がありすぎた。最後の最後まで、彼らが何の行動も起こさなかったのは事実である。
マーティンが命と引き替えに、召喚魔法を使ってようやくアカトシュの化身が現れた。
しかし、それにマーティンの魂が入り込んだのだ。アカトシュ自身は来ていない。
だが、殺したかったと?アイレイドに殺させたかったのが本意だと?
それだけは、どうしても信じたくなかった。
『受け入れろとは言わぬが、あのタロスは前科持ちだな。
ネレヴァリンにどうしようもないコインを渡し、
あの赤き山に登らせた。そして英雄があの地に潜む者を倒した後何と言ったと思うか?』
ノクターナルはとても楽しそうに笑っていた。
デイドラは、基本的に人間の弱いところを痛ぶるのが好きな連中である。
ノクターナルは手荒な事は嫌いだが、人の弱っているところに追い打ちを掛けることは、
そこまで問題でもなかった。そして彼は彼女の信者ではない。
遠慮する必要性が無い。
『神の祝福があればこそ、赤き山の悪魔を倒せた!と九大神の司祭に言わせたのだ。
ネレヴァリンは怒り狂ってな。それから後、アズラのせいで英雄は妻を殺すハメになった。
ああ、赤き山の悪魔は元々ネレヴァリンの親友だ。もはや何もかもが嫌になったあの神殺しは、
タムリエルを去ったのだ。もし、エイドラがお前達を創りし神なら、
己で悪魔ダゴス・ウルをどうにかすると我は思うがな。普通は』
救いようの無い話に、ルイズは何とも言えない気持ちになった。
これが嘘かどうかは分からないけれど、もし、本当だとしたら、
ネレヴァリンって人はとても悲しい人だったのかしらね。
でも、どうして優しいって言われている神様が、
そんな事をさせたのかしら?
しんみりした顔のルイズは、ノクターナルを見た。
目が合った。先ほどの話で出来た疑問を言った。
「アズラって優しいデイドラと聞いたのですけれども…」
『あれが!?笑い話だ。あれほど高慢な我が妹を優しいと!騙されれば騙した者を殺し!
誓いを破りし三人の見せしめとして、全てのチャイマーの肌と目の色を変えてダークエルフに仕立て上げ!
己の信者の人生100年を孤独に過ごさせ、狂うか強くなるかでシェオゴラスと賭をする女が優しいと!
誓いを破った三神達を、その誓いを立てさせた竹馬の友たるネレヴァルに殺させる女が優しいと!』
腹を抱えて思いっきり笑っている。
その様にルイズはゾッとした。確かにこの何かは人間ではない。
けれど、何となくのほほんとしている神様らしき何かだと思っていた。
今確かにそれ以外の、もっと恐ろしい何かだと理解出来た。
そして、おそらくそれこそがデイドラなのだと。
『まぁ、己の信者や分を弁えた者達にはそれなりにやっている様だがな。
されど、あれを優しいと言うか。あり得ぬな。やはり生ある者は理解出来ぬ』
アズラ。彼女は巷ではデイドラ王子の中でも話が分かると評判だが、
実際の所、定命の存在をとても軽んじて見ているからこそ、
仕方ないですねー、で?何か用ですか?
また星ですか?欲しいんですか?ならこれでもやってきてくれませんか?
そしたらあげますから。と、心の内では人を小馬鹿にした態度で、
しかし、それを表には出さずに尊大に振る舞うデイドラ王子である。
私のお陰であなた達は生きているのですよ?分かっていますか?オーラが常に漂っている。
そしてそれで悦に浸っている。いわゆる女王様気質という奴だ。
もちろん、それを馬鹿にしたり、疑問を持ったりした存在には容赦しない。
定命の種を超越した存在であり、自身を信奉する者達には神の責任として、
ちゃんと世話してやっている分信者も多いが、実社会でこんなのに会ったら、
間違いなく地雷である。正確に言うと核地雷だ。ブチ切れたルイズが可愛く見える程に。
古きダガーフォールの英雄は、アズラを呼び出した際にある依頼を受ける。
その依頼とは、
「私に対して無礼な事を言っている愚かな司祭がいるので、殺してきてくれませんか?」
アンアンが可愛く見えるわがままっ子である。神様なのだから言わせておけば良いだろうに。
ちなみにもし断ると
「違う!あなたはこの頼みをはいと言うのです!はい、美しきアズラ。
私は喜んで、あなたの象牙の指が音を鳴らすと共に司祭を殺すと言うのです!
この不作法者!偏屈者!野蛮人!さて、私は女である事を忘れ、
何か後悔する事を言う前に行かねばなりません」
なんておっかない事を叫ぶ。さすがは狂気を司る神と賭け事をする仲なだけはある。
それなりに頭のネジが外れているらしい。象牙とは美しい白を表すのだが、
当時のアズラの肌の色は黒に近い褐色だ。色覚にまで異常があるようだ。
だが、こんな事をアズラ様の目の前で言ったらもうどうしようもない。
だって彼女は死者の国の管理人なのだから。
また、彼女は人を吸血鬼にする病である吸血病にかかってしまった人間を、
元に戻す方法を知っているはずである。にも関わらず、何故彼女はシロディールの英雄に、
吸血鬼となった信者を殺させたのだろうか?
おそらく、治すのが面倒だったのだろう。死んだらこっちに来るのだから、
適当に相手をしてやれば良いと思っていたのではないだろうか。
ただロウソクを立てて、弔っている風に見せかけているのだろう。
その方が信者ウケも良いし。
ちなみに、ノクターナルを呼び出すと
「そなたは力を望むか?ならば我に痛みをもたらす者をどうにかしてくれぬか?」
と言われる。ある魔法使いを倒して欲しいらしいが断ると、
「考えるに、全てにおいて心無いな。我とお前は契約を交わさず、
がっかりした我は冷たい我が領域に帰る訳だ。
お前の魂はそこらの連中よりもよほど冷たいな。
もう少々他者を見習え」
と、軽く恨み節を吐いて消える。どちらが良いかは人それぞれだろう。
マリコルヌなら、もっと神様に罵られたいからアズラを選ぶに違いない。
基本的にデイドラの女性は美形である為、罵られがいがあるだろう。
一般的なデイドラのイメージと、その真実の間は乖離が激しいのだ。
一見優しい顔をした人間程、迂闊に信用してはならない様に。
「マ、マーティン…」
ルイズは嘆くマーティンを見た。ノクターナルはおもしろくなって来たので、
まだ何か言おうとしたがティファニアにダメです。と言われたので、
仕方なくそこまでで話を終えた。
「…あ、ああ。ルイズかい?すまない。取り乱してしまった」
息が乱れ、涙を流し、マーティンは咳き込んだ。ルイズが慌てて背中をさする。
「えーと、ねぇ、マスター。衝撃の展開らしいけど、何がどう凄いんだい?」
ハルケギニア人として真っ当な意見のマチルダが言った。
フォックスは小さく、消え入りそうな声で答えた。
「つまり、俺たちが信じている神は、まったく神ではなかったと言うことだ。
自分の信じている何かが否定されちまったってわけだ…
明日から改宗しないとなー…ブリミル?いや、いっその事ノクターナルにでも」
「落ち着いておくれよマスター!別に良いじゃないか。死んじまった訳でなし。
普通に拝むのも嫌だってのに、こんなのを心から信じたらそれこそヤバイって」
うつろな目でフォックスがブツブツ呟く。マチルダがどうにかしようと頑張っている。
ノクターナルが何か言おうとしたが、その前にハリセンで叩かれた。
マーティンは、床に座り込んで言った。
「はは。考えてみればおかしいと思ってはいたのだ。
だが、考えない様にしていた。神が私たちに試練を与えていると、
そう信じていたのだ。だからこそ、私は、私は…」
さるさん?
長めの時はゆっくり3分から5分間隔ぐらいで投下しないと
代理スレに残りの投下あり
携帯なので代理不能
どなたかよろしゅ〜
そう言ってむせび泣く。ルイズはどうすれば良いか分からなかった。
私も、ブリミルを否定されたらこうなるかしら…オモロ顔の人を信仰したいとも思わないわね。
ブリミル教は魔法至上主義である。神は魔法を通して世界に働きかけている。という考え方だ。
ルイズは魔法を使えなかった。故にあまり信じたいとも思っていない。
常識的な祈り等はするが、熱心に信じたいとはそれほど思わずに育ってきた。
最初から自身が『虚無』だと知っていれば、また話も違っただろうが。
マーティンは違う。何と言っても神の力を目の当たりにし、
その力で世界を救えたと思っていたからだ。
それを面倒だから自分たちがやらされていた。
さらに言えば消えて欲しかったが、それでデイドラと戦うのは嫌だから、
仕方なく力を貸し与えた等とはどうしても考えたくなかった。
しかし、あまりにも確証が有りすぎた。
マーティンはまだ泣いている。一応使い魔として私が呼び出したんだから、
どうにかマーティンを慰めないといけないわよね。
でも、どうすれば良いのかしら…?
ルイズは、いつか自分がされた様に、マーティンに話しかけた。
「そ、その、ねぇマーティン。私、こういう時、何言ったら良いのかわかんないけど…
神様が神様でなくても、その、良いんじゃないかなって。ええとね、
何て言えば良いのかしら」
ふむ、と今まで静観していたジェームズがマーティンを見て遠くを見る目で言った。
「なぁ、お若いの。君の気持ちは私にはある程度分かる気がする。
互いに神に裏切られた者としてな。だが、私も君も生きている。
ならば、前へ行けるのではないか?そう考えて生きる事が、
人間に出来る唯一の事ではないだろうか?私は、そんな気がするよ」
ジェームズは自嘲気味に口をつり上げる。マーティンは涙ながらに彼を見た。
「弟が死に、私に託された願いは勝手に破られ、意気消沈している中レコンキスタが現れた。
連中は神の名を騙り、聖地を奪還すると息巻いた。そしてアルビオンは潰れ、私は今やただの人だ。
だが、それでも生きている。姪に諭されてな。それで良いのではないかと思う。
君の神は神では無かった。だが、それでも君は生きている。それで良いじゃあないか」
「そうだと思うには、時間が必要です…とりあえず今日は眠る事にします」
体から絞り出す様にマーティンは言った。そして立ち上がり、
明らかに肩を落として部屋から出ようとした時、
ドアの前に鏡が現れた。中から、美しい女と逝っちゃってる目をした少年と、
タマネギ頭の憎いアイツがやってきた。
「バイアズーラ!」
「…君は、確か私の友の」
曇王の神殿に友がやって来た時、何度か一緒に来ていたウッドエルフの青年だった。
アズラ信者である事は、その言動から良く分かっている。
200 :
代理:2008/12/08(月) 05:20:04 ID:CUQckXaX
すいません。さるさんみたいなので代理投下願います。
そう言ってむせび泣く。ルイズはどうすれば良いか分からなかった。
私も、ブリミルを否定されたらこうなるかしら…オモロ顔の人を信仰したいとも思わないわね。
ブリミル教は魔法至上主義である。神は魔法を通して世界に働きかけている。という考え方だ。
ルイズは魔法を使えなかった。故にあまり信じたいとも思っていない。
常識的な祈り等はするが、熱心に信じたいとはそれほど思わずに育ってきた。
最初から自身が『虚無』だと知っていれば、また話も違っただろうが。
マーティンは違う。何と言っても神の力を目の当たりにし、
その力で世界を救えたと思っていたからだ。
それを面倒だから自分たちがやらされていた。
さらに言えば消えて欲しかったが、それでデイドラと戦うのは嫌だから、
仕方なく力を貸し与えた等とはどうしても考えたくなかった。
しかし、あまりにも確証が有りすぎた。
マーティンはまだ泣いている。一応使い魔として私が呼び出したんだから、
どうにかマーティンを慰めないといけないわよね。
でも、どうすれば良いのかしら…?
ルイズは、いつか自分がされた様に、マーティンに話しかけた。
「そ、その、ねぇマーティン。私、こういう時、何言ったら良いのかわかんないけど…
神様が神様でなくても、その、良いんじゃないかなって。ええとね、
何て言えば良いのかしら」
ふむ、と今まで静観していたジェームズがマーティンを見て遠くを見る目で言った。
「なぁ、お若いの。君の気持ちは私にはある程度分かる気がする。
互いに神に裏切られた者としてな。だが、私も君も生きている。
ならば、前へ行けるのではないか?そう考えて生きる事が、
人間に出来る唯一の事ではないだろうか?私は、そんな気がするよ」
ジェームズは自嘲気味に口をつり上げる。マーティンは涙ながらに彼を見た。
「弟が死に、私に託された願いは勝手に破られ、意気消沈している中レコンキスタが現れた。
連中は神の名を騙り、聖地を奪還すると息巻いた。そしてアルビオンは潰れ、私は今やただの人だ。
だが、それでも生きている。姪に諭されてな。それで良いのではないかと思う。
君の神は神では無かった。だが、それでも君は生きている。それで良いじゃあないか」
「そうだと思うには、時間が必要です…とりあえず今日は眠る事にします」
体から絞り出す様にマーティンは言った。そして立ち上がり、
明らかに肩を落として部屋から出ようとした時、
ドアの前に鏡が現れた。中から、美しい女と逝っちゃってる目をした少年と、
タマネギ頭の憎いアイツがやってきた。
「バイアズーラ!」
「…君は、確か私の友の」
曇王の神殿に友がやって来た時、何度か一緒に来ていたウッドエルフの青年だった。
アズラ信者である事は、その言動から良く分かっている。
201 :
代理:2008/12/08(月) 05:21:57 ID:CUQckXaX
あ、すいません被りました支援
202 :
エルダー携帯:2008/12/08(月) 05:28:50 ID:6bTizn3q
すいません。連投とさるさんを勘違いしてしまいました。今さるさんにかかったので、代理願います。グダグダでごめんなさい
203 :
代理:2008/12/08(月) 05:47:13 ID:CUQckXaX
『な…ノクターナル。何故お前がここにいる?』
『お前とは何だお前とは。我がどこにいようが構わぬであろうが。ヴァーミルナよ、そんな姿をしてどうした?』
「知リ合イ?」
今の発音は何だ?とヴァーミルナとタマネギ頭を除き、皆が男を見た。
サイトは、結局あの時から今までずっとヴァーミルナの領域にいた。
そんな訳でハッキリ言ってとってもマズイ訳で。
「き、君は…?」
マーティンが青ざめた顔で言った。さっきの衝撃はまだ回復していないが、
その青年の顔を見てさらに青くなった。明かに人の色、というより定命の存在の肌の色をしていない彼は、
本人としてはニッコリと笑ったつもりだった。周りからすれば、ゾンビの様な笑顔だった。
「お、おばけ…」
沈黙を貫いていたタバサが怖そうな声で呟いた。
さっきからの話はほぼ分かっていないが、
鏡から現れた目の前にいる人らしき何かが、人間で無いことだけは理解出来た。
「おバけジャなイヨ?ニん間だヨ?」
「化け物―!?」
皆が騒ぐ中、ノクターナルはふむ、とサイトの顔を見てから、ヴァーミルナの顔を見る。
ああ、なるほど。と彼女なりに理解した。
投下終了。ごめんなさいゼロ魔置いてきぼりです。おマチ姐さんの質問の答えが今回の全てと考えて下さい。
原作における『シシス』の理論に近い形の話ですので、アンチ九大神になってます。
細かい所で分からない事があったら質問スレなどで聞いて下さいね。
それではまた次の投下まで。支援ありがとうございました。おやすみなさい。
204 :
代理:2008/12/08(月) 05:52:28 ID:CUQckXaX
代理投下終了ッス
乙でした。
代理の人も。
>>181 避難所なら問題ないんじゃない?
るるるとかがそうだったし、他にも始祖とかその辺りとか原作で未登場な周辺を中心にクロス先設定にあわせたものがないわけじゃあない。
本スレならあれこれいう人がいるかもしれんが、そこらはちゃんと役割分担ができていることだしね。
>>185 俺は逆。仮面のルイズから姉妹スレ入って、あっちだいたい読んで、こっちたきた。
5分後 第7話投下します。
アルビオンへの船が停泊すると言う桟橋は天にも届こうかと言う大樹だった。
どうやら敵はこちらの動きを読んでいないようで、これと言った苦もなく、船にたどり着くことが出来た。
船主には黄金並みの値が付くと言う積荷の硫黄と同額の運賃を払い、ワルドが動力の風石代わりをするという条件で、出発を早めてもらった。
「へへ・・・ざまあみやがれ・・・」
傭兵達の前にはついさっきまで『女神の杵』亭だった瓦礫の山が積まれていた。
とても生存者がいるとは思えなかった。
瓦礫の下にぽっかりと開いた、巨大な土竜が掘ったような穴を見るまでは。
「取り逃がしたか・・・」
「ど・・・どうする・・・追うか?」
「その必要はない・・・」
傭兵達の頭の中に、忘れたくても忘れられぬ悪霊の声が響いた。
「こちらの目的は果たされた。これをもって君たちを解任する。既に金貨の呪いは解除した。
大砲に関しても適当に処分してくれたまえ。」
それだけ言い残して悪霊の声は消えた。
それと同時に、天から滝の様な雨が降り注いだ。
「ふう・・・助かったわね・・・」とキュルケ。
「間一髪・・・」
「どうだい?捨て駒と言われた僕だけど、こうして君たちの役に立っただろ?」
と傍らの巨大土竜・ジャイアントモールを撫でながらギーシュが自慢げに言う。
「そうね。でも・・・」
キュルケは天を疎ましげな目で見た。
「天候は最悪ね。」
アルビオン行きの貨物船の中で、船員達は大混乱に陥っていた。
「くそ!よりにもよってこんな嵐の中を飛ぶ羽目になるとは!!」
「ぐずぐずするな!死にたくなかったら急げ!!」
その時、船に爆音が轟き、地震にも似た衝撃が襲い掛かった。
「何事だ!!」
「落雷です!右船腹に着火しました!!」
「急いで消火に当たれ!墜落するぞ!」
まさに空の地獄と呼ぶべき空間を船は進んでいた。
怒涛の如き雨、風神が暴れているような暴風、雷神の怒りそのものの様な無数の雷。
まるで天までもがアルビオン貴族派に手を貸しているかのようだった。
「このままじゃ船が持たないぞ!!ん?」
船員が怪訝そうな声を上げる。
客人のはずの白面の男が甲板に立っていた。
「おい、あんた。死にたいのか、早く船室に・・・」
言いかけて船員は言葉を呑んだ。男が掌をこちらに向けたからだ。
「メラミ!!」
船員は目を瞑った。後方で爆音が響いた。
「私が呪文で雷を弾く。その間に何とかしろ。」
「わ・・・わかった。」そう言い残して船員はそそくさと立ち去った。
メディルは意志でもあるかのように、次々と船に降り注ぐ雷を火炎呪文で弾いていった。
「凄ぇな・・・あの客人・・・」
「全くだ。雷を弾くなんざ人間業じゃねぇ・・・」
「だがこれじゃキリがねぇ・・・」
そんな船員達の言葉に応じるかのように、メディルは言い放った。
「目には目を。嵐には嵐だ。バギクロス!!」
数本の巨大竜巻が発生し、船の軌道上と周辺にある雷雲を根こそぎ吹き飛ばしてしまった。
「すげえすげえ!!」
黒い雲海を吹き飛ばすと、そこには澄み切った青空が広がっていた。
「いやぁ、客人。あんたのお陰だよ。」
「あんた、城お抱えの魔術師か何かか?その腕、只者じゃない。」
質問攻めにする船員達を無視して、メディルは船室へと戻った。
「聞いたわよ。メディル。あなたのお陰なんですってね。」ルイズが嬉々として迫る。
「主を守るため、任務達成の為当然の事をしたまでの事。」相も変わらず淡々とした口調で答える。
「謙遜することないわよ。でも、あなた一体何者なの?」
「と言うと?」
「幾らなんでも雷を弾いたり、嵐を吹き飛ばしたり、そんな芸当人間に出来るはずないからよ。」
・・・
暫しの沈黙
先に口を開いたのはメディルだった。
「別に隠していた訳ではないが、私は魔族だ。」
「ま・・・魔族・・・?魔族なんて・・・御伽噺だと思ってた・・・」
「私から見ればオークやオーガがその辺の森にうろついて、竜まで存在する世界で、
魔族が空想の産物に過ぎないことに驚いたよ。」
「そ、そう・・・でも・・・本当・・・なのよね・・・?」
「ああ。そして、お前達がイメージしているのと概ね同じものだ。」
「じゃあ、前の主君って言うのは・・・」
「・・・かつて世界の殆どを封印した、大魔王オルゴ・デミーラ様だ。
私はあの方の片腕として仕えていた。」
「魔王の・・・片腕・・・」
「私はあの方の配下の中で最強の呪文の使い手だった。だが、お前に召還されたあの日、
魔王様共々敗れ去ったのだ。」
ルイズは只黙っていた。
「だが、ルイズ。お前に誓った忠誠は本物だ。信じろとは言わぬ、どうするかはお前が決めるといい。」
砲撃音の後に、空賊襲撃の報せが船員達の阿鼻叫喚という形で船内にけたたましく響いたのはその直後だった。
投下終了です。
前回のレスに対して。
『「傭兵の恥〜」がおかしい。』・・・時間が経つに連れて、確かに恥さらしの方がしっくり来る様な気がしました。
『ルイズはアルビオンに行った事がある。』・・・言われて気づきました。orz
気にしない気にしない。
多少の言葉遣いなんて間違いあって当然です。俺なんかもうね、しょっちゅうです。
アルビオン行ったこと在るもOK。どのみちよくイメージできる場所なんて
無いと思いますよ。それに多少設定を変えるくらいは普通です。
いわなきゃわかんないですよ。
あ、いっちゃったのか!
大丈夫・・・マジャスティスがある・・・・
一斉改変☆
それかアストロン唱えてすべての言葉を受け付けない
いつも心にアストロン
ムッムッホァッー!イ!
すいません。
3分で賢者タイムか
早いな
>>214 いや、荒らしじゃなくて誤爆です。
ホントすいませんでした。
もうマクシーム召喚して23文字で全ての問題を終わらせようゼ
人があまりいらっしゃらない…かな?
進路が空いているようでしたら、13:40くらいから、投下を開始させていただきます
…〆切ぶっちぎりになってしまった故、人がいない間にこそこそ投下しようとする小心者です
こんな時間でも見てる暇人はいるものだぜ支援
>>220 あ、申し訳ありませんデモンパラサイトとのクロスで「デモゼロ(仮)」と言う駄文を以前投下させていただいたものです
二話は近日中に、という風に言っておきながら遅くなってしまいました
大食いルイズのあれかな
支援
あんな駄文でも覚えていてくださった方がいらっしゃるとは…!
大変遅くなりましたが、二話目を投下させていただきます
んな駄文読みたかねぇよ!と言うお方は、お手数かけますが「デモゼロ(仮))でNG登録をお願いいたします
それでは、投下、開始させていただきます
ゼロのルイズ
使える魔法がゼロのルイズ
とうとう、使い魔召喚の魔法すらも失敗した
…本当に、失敗したのか?
それは、まだ、誰にも、はっきりと言えない状況
「傷の具合は、どうなの?」
「もう大丈夫よ」
ふん!と胸を張って、キュルケに答えるルイズ
もう、包帯もいらないだろう
そう考えて、ルイズは勝手に包帯を解きだした
コルベールと、医務室勤務の水のメイジが慌て出す
「ミ、ミス・ヴァリエール、まだ、包帯を外すにははや…」
い、と言おうとしたのだろう
しかし、言葉は最後まで続かなかった
包帯の下、そこには、傷痕すらも残っておらず、綺麗な肌が覗いていて
水の秘薬を大量に使っても、助かるかどうか、危うい怪我だったはず
…なのに、何故?
コルベールの頭に疑問が浮かぶ
が、当のルイズ本人は、思ったよりも怪我が酷くなかったのだろう、とそう判断した
…大した事ない怪我で、何日も意識不明だっただなんて
何たる無様な事か
そう考え、少し落ち込む
…落ち込むと、同時に
重要な事実を、改めて認識した
重要な事実を、改めて認識した
「あ、あの…ミスタ・コルベール。使い魔召喚の、儀式についてですが…」
自分は、どうしたらいいのか
全くわからず、泣き出しそうな表情になりながら、コルベールの意見を求めるルイズ
ルイズの傷の治りの早さの異常性について考え込みかけていたコルベールは、はっ、と正気に返った
そうだ、傷の治癒速度も異常だが…それ以前に、もう一つ、彼女の身には、通常であれば考えられない異常が発生しているのだ
「そうだわ。ミス・ヴァリエール、あなた、使い魔を呼べなかった…の、よ、ね?」
…え?と
キュルケも、その事実に気づいてしまった
ルイズの左手の甲
そこには…まるで、使い魔に刻まれるようなルーンが、はっきりと浮かび上がっていたのだ
何故?
使い魔の召喚に失敗したルイズ
使い魔の契約の魔法を、使ってすらいないはずなのに?
何故…彼女の体に、ルーンが刻まれている?
「ミス・ツェルプトー、この事は、どうか内密に」
神妙な面持ちでコルベールにそう言われ、こくり、頷くキュルケ
左手の甲のルーン、花の乙女と思えぬ食欲、異常な程強まっている治癒力
ルイズの体には、今、様々な異変が起きている
これは、もう、コルベール一人の判断では、解決できない問題にまで発展していて
学園長たる、オールド・オスマンの判断を仰がなければならない
コルベールにそう告げられ、小さな体をますます小さくするように落ち込むルイズ
そんなルイズの様子に、キュルケは、どう声をかけたらいいのか、わからなくて
ただ、励ましてやるかのように、その小さな体を、そっと抱き締めてやったのだった
(………あら?)
その時、キュルケはふと、妙な事に気づいた
ずっと寝たきりだったルイズ、その、体から
ふわり、と…どこか、ほのかに甘い香りが立ち上っていた、その事実に
前代未聞、の事である
人間に、それも、メイジの体に、使い魔のルーンが刻まれてしまうだなんて
偉大なるメイジであり、長い時を生きてきたオスマンにとっても、それははじめてみる現象だった
とにかく、ディレクト・マジックの魔法を使い、原因を探ろうとする
ルイズは、体を小さくしながら、とにかく、結果が出るのを待つ
「……ううむ」
困ったような声を出すオスマン
…い、いいいいい、一体、どんな結果が!?
ばくばくばく、ルイズの鼓動は、嫌な意味で高鳴ってしまう
「どうにも、奇妙な事が起きておるのぅ…」
「あ、あの、どういう事でしょう」
「…ミス・ヴァリエール。君の体の中に…何か、全く別の生き物が存在している。そんな感じがするのじゃ」
別の生き物が?
体の中に?
それは、一体どう言う事なのか?
しかし、それはオールド・オスマンにも、漠然としかわからない結果で
どうにも…ルイズの体の中に、何故か、非常に、非常に、恐らく、肉眼では確認できないであろう、小さな生物が住み着いていて
恐らく、ルイズの左手に現れたルーンは、その生物に刻まれるべきはずのルーンが、何故か、ルイズの体に浮かび上がった結果ではないか、という事だった
だがしかし、ルイズには、そんな生物に契約の口付けを交わした記憶は…
………
「あ」
「何か、覚えがあるのですか?」
はい、とコルベールに答えるルイズ
確信はないのだが…もしかしたら、あの夢の中での出来事
それが、関係しているのではないだろうか?
そう考え、ルイズは、オールド・オスマンとコルベールに、意識不明になっていた間、見た夢に付いて話した
桃色の毛並みの獣人に、契約の口付けを交わしたという、その夢を
ルイズが話したその内容に、二人はそろって考え込む
「…恐らく、その時に、契約が成立されたようですね」
「し、しかし、何故、私の体にルーンが…」
「これは、推測でしかないのですが」
失敗に思われた、使い魔の召喚
だが、本当は成功していたのではないか?
その生物は、極小の…それも、人に寄生するような生物、もしくは、人間にとり憑くような生物で
あの爆発で大怪我を負ってしまったルイズの、その傷口から生物は入り込むか何かして
夢の中で、獣人という姿をとって、ルイズと契約を交わしたのでは?
「その生物は、人に寄生する事により生き長らえる生物で…もしかしたら、寄生した人間に、活力を与えるような、そんな生物なのかもしれません」
寄生生物と言うと聞こえは悪いが、その生物にとっても、宿主が死んでしまえば、自分も死んでしまう
だからこそ、寄生した相手に活力を与える、そんな生物がいてもおかしくないだろう…多分
ルイズの傷の治りが早かったのも、恐らく、それで説明がつく
「…その、食欲…に、ついてですが」
「それも、何かに寄生されている、と考えると、ある程度説明がつきます」
…つまり、は
体の中に、生物が住み着いているが為に
その生物の分まで、栄養を取る必要がある、そう言う事らしい
え?という事は、私このまま一生大食い?
花の乙女ルイズ、少々どころか結構なショックである
…で、でも、いくら食べても太らないのなら…いやいや、でも…
ううむ、悩むルイズだが、悩んだところでどうにかなる問題ではない
ともかく、ルイズは召喚に成功しており、その生物との契約が成り立ってしまっている
それは、動かしようのない事実なのだ
だとしても、だ
寄生生物を召喚して、それに寄生されている、だなんて、少々聞こえが悪い
表向きは、秘密にしておくべきだろう
ルイズが、名家の生まれであるからこそ、そう言った点には、充分に注意して配慮しなければ
「召喚と契約の成功、おめでとうございます…と、言っていいものかどうか、この状況ではわかりませんが。ともかく、ミス・ヴァリエール。あなたも、無事、進級する事ができますよ」
「あ……!」
…あぁ
自分は、この学園を、去らずにすむのだ
まだ、自分はメイジとして生きていっていいのだ
…今は、ただ、その事実が嬉しくて
ルイズはほっと、笑みを浮かべたのだった
とりあえず、一旦、女子寮の自室へと戻ったルイズ
久々の自分のベッドの上にぽすん、と倒れこみ…己の左手に刻まれたルーンを見つめた
…使い魔を呼ぼうとして、自分の体にルーンが刻まれるなんて、考えた事もなかった
けれど、これは紛れもない現実
自分の体に、使い魔のルーンが刻まれたのは事実なのだ
「…私の、中に」
自分の体の中に、別の生命が住み着いている
それも、どうやら事実であるらしい
一応、害はないようだが…増大した食欲は、害であるかどうか判断が微妙だが、少々、不思議な感覚だ
「成功…したの、よね」
微妙ではあるけれど、召喚できたらしい事は事実、契約できたらしい事は事実
一応、進級はできたものの…なにやら、先行き不安でもある
何せ、使い魔の姿が見えないのも、また事実なのだ
クラスメイトに、何と言われてからかわれるやら
憂鬱な気持ちを抱えながら、ルイズはそろそろ就寝しようと、寝間着に着替えようとして
ぐうきゅるるるるるるるるるる
「………」
静かな部屋の中に響く、盛大な腹の音
無視しようとしたけれど、きゅるきゅる、きゅるるるる
まるで、何かの鳴き声のように、腹の音は鳴り響いて
「…あぁ、もう!」
おなかがすきすぎて、眠れそうにない!!
ちょっと恥ずかしいけれどはしたないけれど、そうも言っていられない
ルイズは、他の生徒の姿が見えないのを確認して、夜食を手に入れるべく、食堂へと向かっていったのだった
ガンガン支援するぞッ!
非常に短くて申し訳ありませんが、以上で第二話の投下を終了させていただきます
次回あたりで、何の共生生物を呼んだのか、何となくでもわかるようにしたいですが…
次こそ、もう少し早く投下できるよう、努力していきたいと思います
支援してくださった方、第一話を覚えていてくださった方、ありがとうございました
> 重要な事実を、改めて認識した
> 重要な事実を、改めて認識した
だ、大事なことなんで二回言ったんだよね!?
投下乙でした。このまま続きもがんばってくれー。
支援……って終わりか、投下乙!
個人的には「、」を使いすぎかなーと思った。
こま切れだと全くないのより読みにくかったりするから、大胆に取り除いちゃうのとかもありだぜ
あんまり長くなるなら、途中で文を切ってしまうのもいい。そうすれば「、」だけにはならないで済むからね
上から目線UZEEEとおもったらすまん。内容的には好きなので期待してますよ
>>230 あぁっ!?
大事な事だから二回言うべきかもしれないけれどあからさまな間違いっ!?
>>231 「、」使いすぎは読みにくくなってしまうのですね
個人的には気にならないのですが、次回、あまり使いすぎないよう気をつけていきたいです
せ、せめて今年中には第三話を投下したい…!
ルイズの腹の音は
くぎゅぅううううううううううううう
と予想していたが外れてしまったな
どちらかというとフレイムの鳴き声だったな
フレイムは『きゅるきゅる』、
シルフィードは『きゅいきゅい』、
ヴェルダンデは特に鳴き声なし(強いて言うなら『モグモグモグ』)、
ロビンも鳴き声の描写はなし。
……これは束縛と見るべきか、想像の余地ありと見るべきか。
真面目に考えることじゃないと見た
ヴェルダンデは匂いを嗅ぐ様の時「ふごふご」でないかい?
>>233 その珍妙な音はいったいどういう発想で生まれてきたんだww
>>238 いや、普通に釘宮から…
あれ?釣られた?
うむ、見事な釣られ具合である
デモゼロ(仮)の人乙!
個人的に大好きだから応援してるぜ
予約がないようなので、5分後より投下させていただきます。
わかさ生活のCMは見る度にバージョンアップしてる気がする
誤爆した
支援する
誤爆乙そして支援
第三話
グレイヴを召喚してから数日が過ぎた。ルイズとグレイヴの生活にも
一定のパターンができあがってきていた。
朝、ルイズがベットで目覚めるとともにグレイヴは初日に与えられた
イスで目を開く。特に本人からの要望はなかったのでイスが彼の寝床と
なった。寝床兼生活スペースかもしれなかった。ルイズの部屋にいる間は、
ほとんどをそこに座って過ごしている。
案外気に入っているのかしらね。そんな風に思う。
グレイヴとの生活が始まってからルイズの目覚めはよくなった。
一度寝坊しかけて彼に起こされたときは心臓が止まるかと思った。
割と本気で。それ以来、彼より早く起きるように心がけている。
朝の準備を終えるとルイズは朝食をとるために食堂へと向かう。
グレイヴは食事をとらないため、授業まで部屋で待機させている。
授業の時間になると教室でグレイヴと合流する。
恐らく、グレイヴは教室に移動するときまで、部屋のイスに
座りっぱなしのはずだ。確認したことはないが正しいと思う。
もしかして私が部屋を出たあと、私のベットでゴロゴロしてたりして。
そんなことを想像する。
……ありえないわね。万が一それが真実だったとしてもその場面だけは
目撃しないようにしないと。私の今後のために。
グレイヴは喋らない平民の使い魔として学院で少し知られてきた。
ときどき、本当にときどきだが彼の正体について言ってやりたくなる
ときがある。
昼食の時間になると再びグレイヴと別れる。部屋で午後の授業まで
待たせているのだが、コルベールに呼ばれ彼の研究室、もしくは
トレーラーに行くことがある。少しでも手掛かりが欲しいらしいが
結果は芳しくないようだ。
そんなある日、コルベールは彼の左手に目をやる。
召喚されたものにばかり気を取られていましたが、珍しいルーンですね。
一応メモしておきましょう。
その日の夜、彼はそのルーンが伝説の『ガンダールヴ』のルーンと
同じであることに気づく。すぐにオスマンに知らせたが、彼も頭を
抱えていた。
『ガンダールヴ』とは始祖ブリミルの使い魔であったされるものだ。
あらゆる武器をつかいこなし、その強さは並みのメイジでは歯が
立たないくらいだったとされている。
「ただでさえ厄介なのにこのうえ『ガンダールヴ』じゃと」
「とりあえずこれも秘密じゃな、ミス・ヴァリエールにもな」
「彼女にもですか?」
「これ以上秘密を抱えさせるのもかわいそうじゃろ、それに、この問題は
ひょっとしたらガーゴイルということよりもやっかいかもしれんしな、
他言無用じゃ」
「わかりました」
最近というかグレイヴを召喚してからルイズは、彼のことを考える時間が
多くなった。もちろん、恋などではない。グレイヴの正体についてだ。
彼はなんのために作られたのだろうか?そう彼が人為的に生み出されたの
ならきっと何か目的があるはずだ。それも並大抵ではない。なんせ人の血で
動くのだ。家事などをするために作られたのだとしたら、ちぐはぐ過ぎる。
人の生き血をすする召使い。ありえないわね。
しかし想像はつく。ミスタ・コルベールも気づいているだろう。
彼は戦うために生み出されたのではないか?その想像はきっと正しい。
想像を裏付けるものの一つとは彼の持っている鞄と棺桶だ。
非常に重いのだ。それを軽々と持ち運ぶ怪力。鞄の中に入っている二つの
ものは鈍器なのでは?棺桶もなんらかの武器かもしれない。
そう考えると彼が鞄を手放さない理由もわかる。戦うために生み出された
彼が武器を手放すわけにはいかないのだ。
両手にあの鈍器を持って戦う彼を想像する。少し、いや大分かっこ悪い気がする。
ちゃんとした武器を与えたほうがいいかしら?見栄えのする大剣とか。
でも買う前にミスタ・コルベールに相談したほうがいいかもしれないわね。
剣を持たせるなどとんでもないと反対されるかもしれないし。
しかしそれは杞憂に終わった。彼は特に反対しなかった。
コルベールは相談されたことについて考えていた。グレイヴに剣を持たせる。
彼は『ガンダールヴ』でもあるのだ。どんな反応をするか、持ち前の好奇心が
うずいた。
彼が剣を持つ危険についても考えてみたが、剣を持たせるくらいは
大丈夫な気がする。ここ数日、彼と付き合ってみての印象だ。少なくとも
学院の人々に危害は加えないと思う。もしかしたらこの学院で一番
グレイヴを信用している人物は彼かもしれなかった。
虚無の曜日になりルイズはグレイヴを連れ剣を買いに出かけた。
遠出をするとグレイヴに伝えると、彼はいつもの鞄に加え棺桶まで
持っていこうとした。あんなもの馬に乗せられるわけないと置いてこさせたが、
鞄はしっかり持ってきている。
トリステインの城下町を武器屋に向けて歩いているが、グレイヴはやはり
目立っていた。長身に加えてあの格好である。かなり目を引く。
それに彼の雰囲気を感じてか、微妙にだが周りの人が道を譲ってくれている
ように思える。見た目だけでも護衛の役目を果たしているわね。そんなことを
考えながら歩いていると、武器屋に到着した。
どんな剣がいいか分からないので、グレイヴに選ばせてみる。
「グレイヴ、好きな剣を選んでいいのよ」
しかし彼は何も選ばない。イライラし声をかけようとすると、不意に声が
聞こえた。
「迷っているなら俺を買え、おめえさん『使い手』だろう?体格も立派だし、
雰囲気もただもんじゃねえ。是非とも、おめえさんに使って貰いてえ」
グレイヴは声のほうを向く。ルイズには彼が驚いているようにみえた。
そこには一本のボロボロの剣があった。ルイズも最初驚いたが
インテリジェンスソードと知って納得する。
それよりもグレイヴの反応が気になった。いつもと明らかに違う反応。
もしやあの剣の言ったことに何か関係しているのだろうか?確か『使い手』
とか言っていた。
本当はインテリジェンスソードの存在を知らなかったからの反応だったの
だが、ルイズには分からなかった。まさかインテリジェンスソードの存在を
知らないとは思いもしなかったのだ。
よし、これにしよう。
見た目はみすぼらしくグレイヴに持たせたくはなかったが、彼の正体を知る
きっかけになるかもしれない。インテリジェンスソードを買い、グレイヴに
持たせる。デルフリンガーというらしい。
帰る道中デルフリンガーにグレイヴのことや、『使い手』のことを尋ねて
みるが、どうにも要領を得ない。
グレイヴも特に反応はしないし、あの剣を買ったのは失敗だったかしら?
学院に着くとルイズはグレイヴを連れて中庭に向かう。そこでルイズは
グレイヴにデルフリンガーを抜かせてみた。詳しいことは分からないが様に
なっているようにみえる。するとデルフリンガーが気になることを言う。
「おでれーた、相棒、おめえさん人間じゃないな?それに心も感じられねえ」
ルイズが驚きながらに言う。
「あんたグレイヴのことが分かるの?教えなさい。今すぐ、できる限り詳しく」
「待て、待て、落ち着け、俺もそんなに詳しく分かるわけじゃねえ。
ただなんとなくそう感じただけだ」
「なによ、当てにならないわね。でもグレイヴが人間じゃないってことは
秘密だからね、誰にも言うんじゃないわよ。それからグレイヴのことが何か
分かったらすぐに教えなさい。いいわね」
「いいともさ、俺も相棒のことを言いふらしたりはしないよ」
そんな会話の中、グレイヴは突然デルフリンガーを地面に突き立てる。
「おーい、相棒?」
アタッシュケースを開けケルベロスを手に取る。
何をしたいのかしら?ルイズは疑問に思うが、デルフリンガーは気づいた
ようだった。
「そりゃないよ、せっかく俺を買ったんだから俺を使ってくれよ。銃より剣の
ほうがいいぜ」
「あれって銃なの?」
あんな形の銃など見たことがない。そういわれてみれば引き金らしきものがある。
支援
「ねえ、グレイヴ、一発撃ってみなさい。どれくらいの威力があるか
見てみたいわ」
横でデルフリンガーが銃なんて邪道だ、などと言っているが無視する。
しかしグレイヴは撃たない。何故かしら?目標を決めてないから?
周囲を見ると丁度いい目標があった。本塔の壁である。確か固定化の魔法が
かかっていて、そのうえ厚みもあり凄い丈夫なはずだ。いい的だと思ったのだ。
そのときは。
変な形をしているし片手で扱う銃のようなので、かなり距離のある的まで
届きすらしないかも、そう思い気軽に言う。
「ほら、撃ってみてって」
グレイヴが本塔の壁に銃を向ける。
せめて届いてほしいわねなどと考える
引き金が引かれる。
轟音が響き、思わず耳を押さえる。本塔に近づき銃弾のあとを確かめようと
する。しかしそんなに近づかずとも本塔の壁にヒビが入っているのが見えた。
「嘘……」
思わず声が漏れる。あれがあの変な銃の威力?信じられない威力だ。
「おでれーた、これが相棒の銃の威力かい?」
デルフリンガーも驚いている。
突然、グレイヴの気配が変わった。持っていたデルフリンガーを投げ捨て、
先ほど撃った銃を一丁ずつ両手に構える。下からデルフリンガーの苦情が
聞こえてくる。
どうかしたの?と聞こうとするが、その言葉を発する前に巨大な土ゴーレムが
現れた。ゴーレムはルイズ達のことなど気にもせず、本塔のヒビの入っている
壁を殴り、穴を開ける。
ルイズはあまりのことに頭がついていってなかった。グレイヴも銃を構えた
まま動かない、様子をうかがっているのかもしれない。
それからゴーレムは学院の外へと歩き出す。
我に返ったルイズがあわてて言う。
「あそこは確か宝物庫だったはずよ、急いで追いかけないと」
「もう無理だ、追いつけないって。ずいぶん離されちまった」
デルフリンガーが引き止める。しかし追いつけなくとも、何か手がかり
くらいは見つけられるかもしれない。ゴーレムの逃げたほうへ走り出す。
グレイヴもついてくる。
「お〜い、置いていかないでくれえ」
後ろでデルフリンガーが叫んでいたが気にしている余裕はない。
上空には何か飛んでいるのが見える。あの盗賊の使い魔だろうか?
空を飛んで逃げられたら絶対に追いつけない。焦りながら懸命に走る、
すると遠くでゴーレムが突然崩れるのが見えた。
空を飛んでいた何かも、いつの間にかいなくなっていた。崩れたゴーレムに
追いついたが、そこには土の山があるだけだった。
こういうときこそ、落ち着かなくては。そう自分に言い聞かせ事態を
整理する。
あのゴーレムは本塔にあったヒビを殴っていた。その結果穴が開き、
宝物庫が襲われた。つまり襲われた原因、少なくとも穴が開いた原因は
あのヒビのせいということになる。あのヒビの原因は考えるまでもない。
盗賊について思いだそうとするが離れていたこともあり、黒いローブに
すっぽり身を包んでいたことくらいしか分からない。
盗賊には逃げられ、手がかりもない。ルイズは頭を抱えた。
以上で第三話を終了とさせて頂きます。
感想、批判、などありましたら
よろしくお願いします。
それと支援してくださった方々、
ありがとうございました。
乙
ゼロな提督の特別編が読めません
どこにあるのでしょうか?
スルー
死人の人乙。
しっかしライトorレフトヘッドでこれだと、デスホーラーはさぞすげぇだろうな
>>253 もうひとつのまとめwikiに行けば見られるよ
見方は
1.書き込みの名前の欄に
http://fusianasan.2ch.net/ と入れる。(裏ドメイン名)
2.本文にIDとパスワードの guest guest を入れて、書込みボタンを押します。
3.タイトルが「あの作品のキャラがルイズに召喚されました まとめwikiへようこそ」に変わればばOK
4.サーバーが重いと2chに戻ってくるけど、くじけずに何度も挑戦。
うまく行くと、目的のページにつながります。
5.家庭の電話回線よりも、企業や学校の専用回線からの方がサーバートラフィックの
都合上つながる確立が高いです。
(注意!)全て半角で入れること!!
23:00〜03:00の間はつながり難いです!何度もトライ!
http://fusianasan.2ch.net/←は、裏ドメインの為「直リン」で飛んでも
「鯖が見つかりません」になります。
さすがに今時流行んねえと思うぞそれ
gest gest
死人の人、乙です。
使い手が無口だとデルフも出番が増えていいね。
しかしヤツは銃使い(ガンスリンガー)
デルフは活躍できるのか!?
社長の人こないかなぁ…
死人の人、乙カレー!
流石は直径60cm(多分)のハンドガンw
これを無制限にぶっ放すから恐ろしいw
>>259 接近されても棺桶、よってデルフ涙目な予感w
アトリの人も…
>>261 いや、あの、60pってバスケットボールの倍はあるぞw
グスタフ砲クラスじゃねえかw
列車砲かシュトルムティーガー
ということはカールを持ち歩いてるのか…
たとえ60mmのかきまちがえとしても……
充分砲だな。
60口径 15mmてとこか
何、その程度フランクさんには通じんよ
ワインを飲めばすぐ治る
しかし棺桶か……いかん、棺桶を盾にする某勇者一行が思い浮かぶww
>>267 50口径、12.7oは実在してるはずだから、ゲームやマンガなら60口径もアリだな。
公式設定によるとケルベロスは
口径15mm、全長約60センチだそうですよ。
センターヘッドは直径、周囲、口径、威力が更に上
拳銃という名の戦車砲。でも分類は拳銃だそうなw
それを振り回しながら360°乱射してのけるファンゴラムは死者というより元・人間と言うべき
もしや.600NE...
ツェリサカか!?
2120より投下します。
かなり前にかいたエクスキャリバーの続きです。
>>271 >>272 設定は詳しく知らなかったが、奴らの銃はまさにハンドキャノンってことか……しかも弾数無限。
ワルドはわんぱくでもいい、たくましく生きてほしい。
>>273 ありゃ、ムチャクチャ高いバカ銃じゃねーかw
その日、世界は変わった。
ルイズはその兵器を使える唯一の人間だった。しかし、誰よりそれの恐ろしさを知っていた。だから使うのを嫌
がった。
あれほど魔法に執着していたのに、あの日から私がいくらからかっても、軽くあしらうようになった。その頃の
私は、魔法が成功して余裕ができた、その程度しか考えていなかった。だけど、そうじゃなかった。
「魔法が最高だと思ってるなんて、幸せね」
あの、疲れた表情と言葉が、未だに忘れられない。そのときは、私は無邪気に憤慨できた。あの兵器の威力を見
る前は。
天空に放たれた光は、跳ね返るかのように地上に降り注ぎ、狙った大地を焦土にしてしまった。私はそれを、あ
の塔のモニターという遠見の鏡で見てしまった。
私は理解した。メイジがどんなに束になろうと、これには敵わないと。
キュルケの回顧録より
ルイズは、エクスキャリバーを使う気はなかった。誰がどんなに請うても、首を縦に振らなかった。たとえアン
リエッタが興味本位で撃つよう頼んでも、エレオノールが脅迫しても。アカデミーの人間がどんなに調べても、
それを撃つどころか、一部の起動すらできなかった。
それの威力を知っている、そしてそれを造ったのが誰か知っているルイズは、魔法に固執しなくなった。平民で
メイドのシエスタやコック長のマルトーなどとも親しくなり、よく話すようになった。同級生たちにそれをから
かわれたりしたが、爆破してやるとそれもなくなった。キュルケは、それをいい傾向だと見ていたが。
しかし、そんな平和な日々は続かない。急遽決まったアンリエッタ姫の学院視察、その日の夜。
「ルイズ、力を貸して欲しいの」
突然の姫の訪問に、しかしルイズは驚かない。遥か天空の機械の眼から、彼女はアンリエッタが寮に向かってく
るのを見ていた。
望む望まないに関わらず、ルイズは巨大な力を持っているのだ。
それは遺憾ながら、コルベールの滑らせた口からアカデミーのエレオノールを経て、王室に伝わっていた。『ヴ
ァリエール家の三女が強力な兵器を召喚した』と。
「今、アルビオン王家に叛旗を翻している貴族たち、レコン・キスタをどうにかしないと、トリステインが危な
いの。彼らは聖地奪還を掲げ、ハルケギニアの統一を目指しているわ」
アルビオンで内戦が起きているのはよく『見え』ていた。日に日に戦線を後退させ、今では浮遊大陸の隅にある
城に篭城している。あれは、ニューカッスル城といっただろうか。
「そこで、トリステインはゲルマニアと同盟を結ぶことになりました。条件は、わたくしがゲルマニアに嫁ぐこ
と。成り上がりのあの国には、始祖の血という正当性がのどから手が出るほど欲しいものですから」
それを聞いても、ルイズの頭は冷静だった。かつての彼女なら憤慨していただろうが、異世界のあらゆる英知が
詰まったその頭では、それが『しかたのないこと』と理解できてしまった。強大な勢力が統一を名目に宣戦布告
してくるかもしれない、そして自国の国力ではそれに対抗できない、ならば力のある隣国と軍事同盟を結ぼう、
しかし相手は政略結婚を条件にしてきた。それだけだ。幾度となく繰り返された歴史が、また繰り返されるだけ
の話。
「……アルビオンに、同盟を阻止できる何かがあるのですね?」
「――――っ。ええ、そうよ」
考えてみれば簡単な話だ。同盟ができなければ、トリステインはレコン・キスタに滅ぼされる。逆を言えば、レ
コン・キスタはトリステイン・ゲルマニアの同盟をなんとしても阻止したい。しかし、妨害できる材料がなけれ
ばそのまま放置しておけばいいのだ。わざわざそれをルイズに話すということは――――
「私に、その『何か』を取り戻して欲しいのですね?」
「……ええ。城には既にレコン・キスタの間諜が入り込んでいるらしいの。だから、信頼できるあなたに頼みに
来たのよ。危険なのは判っているわ、だけどあなた以外に信じられる人がいないの……」
そして、彼女は、ルイズが一番触れられたくないことに触れてしまった。
「それに、あなたにはエクスキャリバーがあるじゃない。あれはとても強力な兵器と聞い」
「あれを、使えと言うのですか」
アンリエッタの笑顔が凍りつく。恐ろしく低い、今まで一度も聞いたことのない底冷えのする声。アンリエッタ
は一瞬、それが誰の声か判らなかった。
「そ、そうよ。あれもあなたの使い魔なのだから、あなたを護ることくらいなら……」
「姫様。あれの威力、レコン・キスタで試してみましょうか。二度とトリステインに楯突く国家は現れなくなる
でしょう」
ルイズの表情は笑顔。しかし、アンリエッタはその笑顔を生涯忘れられなかった。世界の全てを呪ったような、
そんな笑顔だった。
それから数日間、ルイズは学院とアカデミーの人間にエクスキャリバーの運用を叩き込んだ。エレオノールと学
院の生徒は反発したが、アンリエッタとオスマンの命令が下達されると大人しく作業するようになった。
そして、後にD-dayと呼ばれるその日、ルイズとアンリエッタと、枢機卿マザリーニをはじめとする将軍や大臣
が、トリステイン空軍旗艦メルカトールに乗り、アルビオンに発った。様々な問題や文句が大臣や将軍からあが
ったが、姫とヴァリエール家の三女の説得は、それを黙らせた。乗員の中にはヴァリエール公爵などルイズの家
族がいたが、ルイズの一言でこれも黙らせた。
「お叱りは、結果を見てからでもできます」
そしてその日、歴史上最も短く、最も犠牲者の多い戦争が始まった。
風石を大量に消費し、メルカトールはニューカッスル城上空に現れた。トリステインによる突然の介入にアルビ
オン王家、レコン・キスタ共々驚いたが、たった一隻の援軍に、片方に絶望を、もう片方に嘲笑を与えた。
しかし、それは一回の手旗信号により変わる。
『レコン・キスタに告ぐ。我はトリステイン公爵ヴァリエール家三女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・
ド・ラ・ヴァリエール。即時降伏せよ。従わぬ場合は、光の鉄槌が諸君を襲うだろう』
レコン・キスタ側の空軍司令部、戦艦レキシントンの艦橋では、たちの悪い冗談だと思っていた。が、公爵家名
義での通達だ、冗談では済まされない。
すぐに主砲をメルカトールに向け、返答を送る。
『こちらレコン・キスタ空軍司令サー・ジョンストン。その要求には従えない』
それが儀礼的なものとは、双方承知していた。
『了解した。トリステイン王国はレコン・キスタに宣戦布告する』
宣戦布告と同時に、ルイズはエクスキャリバーから持ってきた衛星通信機に声を吹き込む。
「作戦開始。目標、第一ポイント。敵旗艦」
外では将軍や大臣が敵主砲に怯えて騒いでいるが、すぐに大人しくなるだろう。今、艦橋にいるのは国の頂点に
近しい者たちと最小限のクルーだけだ。即ち、アンリエッタ、マザリーニ、ヴァリエール公爵、ヴァリエール夫
人、エレオノール、そしてルイズ。
支援
「ルイズ、お前は、何をしたかわかっているのか?」
「もちろんです。ほら、お父様も敵艦を見ていないと。歴史の変わる瞬間を見逃しますわ」
「ちびルイズ! お父様に向かって……」
「あねさま。黙って見ていてください」
くるりとエレオノールに背を向け、エクスキャリバーに指示を出す。
「照射」
そして向き直り、
「これが、異世界の平民の力です」
その言葉と同時に、レキシントンは天空からの青い光に包まれた。
騒いでいた将軍大臣達、艦橋の人々、ニューカッスル城の王族貴族、そして、レコン・キスタ。レキシントンに
乗っていた者と、光の下にいた者以外の、その場に居合わせた全ての人が、その光を見て唖然としていた。
たった数秒の、光の柱。それが、史上最大の戦艦を、消し去った。
「第二ポイント。敵主力戦艦群。照射」
時が止まったように動かない人々の中で、ただ一人、ルイズが淡々と通信機に命令を言う。
次に大きな戦艦が幾つか消え去った。
「第三ポイント。敵地上拠点。照射」
無慈悲にも、地上の野営地が焦土となる。
「後は指定ポイントを順次照射。民間人には絶対に当てないよう注意すること」
その言葉は、さながら『元の世界』の軍人の様だった。
もう『照射』の声も無く、次々に光の柱が現れては消え、次々に人が、船が消えてゆく。
「どうです、姫様。私の言葉の意味が理解できましたか? 貴女は私に、『これを使え』と命じたのです」
ルイズは、震えていた。しかし、必死でそれを隠して、努めて平静を装い、アンリエッタに告げる。アンリエッ
タは、蒼白な顔で涙を流しながら、その光景を見ていた。
「これが、異世界の平民の力、魔法の無い世界で造られた兵器。個人を護る為に使えるようなものではありませ
ん。大量殺戮と対空防衛の為の、文字通りの戦略兵器なのです。これが……私の、使い魔……エクスキャリバー
の……真実……です」
「おお……ルイズ……こんな、私は、こんなつもりじゃ……」
嗚咽と共に、アンリエッタは崩れ落ち、ルイズにすがりついた。
「ごめんなさい……ごめん……なさい……」
怖くて、泣きたかった。しかし、泣くわけにはいかなかった。ルイズは、強大な力を持ち、そして今、それを行
使したのだ。泣いてしまったら、エクスキャリバーの威力を誇示するために人柱になった、消え去ったレコン・
キスタの兵士に申し訳が立たない。戦争とはいえ、敵とはいえ、こちらのエゴで殺してしまったのだ。そして、
この件に加担した学院の生徒、教師、アカデミーの人間に罪の意識を持たせぬために、ルイズ一人がこの殺戮の
責任を負うために、ルイズ名義で宣戦布告をしたのだ。今ここで子供のように泣くわけにはいかなかった。
レコン・キスタの首謀者、オリヴァー・クロムウェル名義で降伏が宣言されたのは、それから十二分後のことだ
った。
支援
ちょいと短いですが、終わりです。
AC0では対空防御兵器として使われていたみたいですが、
飛行中の戦闘機を瞬時に融解させる熱量を出せる……というか、
ICBMを撃墜できるように造ってるから、絶対に地上に対する戦略レーザー攻撃ができるはずなんですよね。
そこんところを補足させていただきます。
ちなみに、イメージとしてはredEyesのオービターアイズの攻撃から爆発を消しただけ、ってところです。
>>258 裏2chに引っかかったのも今ではいい思い出でしたw
聖剣の人、GJ&乙です。
いきなりオーバーテクノロジーが投入されたらどうなるか、というかなり良い例ですなぁ。
乙です
ACってこんな凄い兵器まで出てるんですね。
ところで、「おお……ルイズ……こんな、私は、こんなつもりじゃ……」
このセリフってパパンですか?それともアンアン?
一方的なクロスはだめ!
だめったらだめ!
蹂躙はだめ!
アンアンですよ
わかりにくかったみたいですねぇ……精進しないと
>>290 やっぱそうっぽい?
おお……ってのから父ちゃんぽいかなぁというか、アンアンっぽくないなぁ
と思ったんだけど、ジュリエットだっておおロミオとか言ってるもんな
>>288で書いといて今更ですけど、作者さん気にせんでください、あんま本とか読まない奴の戯言ということでご勘弁を
聖剣の人、乙。
圧倒的ジャマイカ。
さて、これから世界はどう動いていくのか……。
聖剣の人乙
この後がどうなるか読みたいですな
エルフでもどうしようもなさそうですが
乙
ACで衛星兵器と聞くとアーマードコアが出てくるから困る
ほとんどそのまんまなやつがあるしw
正直、蹂躙の定義が分からないんだよな
個人的には、強大な力を持ってワハハと暴れまわったり力で敵を下して説教したりすると蹂躙
強大な力に苦悩したり身の振り方を必死に考えたりするのは蹂躙じゃないと思っている
スレ住民のみんなはどうだろうか? まあ考えは人それぞれなのは間違いなんだろうけどな
あと、聖剣の人乙でした
>>291 いやいや、流れからしたらどう読んでもアンアンです
おお……という言葉を女性が使うのに違和感を感じてパパンかと思ってしまったんです
>>292にも書いた通り、あまり読書をしない奴の戯言なので気にしないでください
聖剣の人、乙です。
…しっかし、凄いな。このルイズなら世界を掌握できるんじゃね?
ゲームで、なんでレーザーが『上』から降ってくるのか謎だったが
多分ミラー衛星使ってるんだな
>>298
それはお前、サテキャ握ったガロードがAC世界を掌握するようなもんだぞ。
やんなかっただろ、あいつ。
強い力を持つ事と、それを私欲の為に振るう事は本来はイコールじゃない。まーガロードクラスの克己心がないとそうなりがちではあるが。
それはそうと、ネギまとクロス。
ゼロ魔の連中がネギ達の教室にやってきました。
ルイズ「アレが14ないし15歳? あれが、あれが、あれが……」
タバサ「年齢って何? 年下って何?」
二人して教室の隅で体育座り。
エヴァ「だから忠告したんだ!!
奴等は14ないし15歳だと言う事を無条件で受け入れ、それ以上余計な事は考えるなと!!」
明日菜「まー私達も通った道よね。」
エヴァ「……お前が言うか?」
体調がいいせいか筆が進みました
「デモゼロ(仮)」第三話、22:10くらいに投下を開始してもよろしいでしょうか?
>ルイズ「アレが14ないし15歳? あれが、あれが、あれが……」
男塾の方がすごいぜ
あいつら高校生だ
ほとんどがルイズと同じ年令かそれ以下だ
別に続き書かなくてもいいネタだった気もするけど、乙でしたー
戦力が凄いだけなら別に蹂躙じゃないと思うよ。
そういえば、ティセプティコンはもう書かないのかなー
>>300 確かにな。ルイズもやらんと思うし、やったらギャグじゃないと読む気になれなそうだ。
反射衛星と聞いてガミラス軍を召喚
強大な力を手に入れても、ストッパーになってくれる人がいるか、
私欲のためには使用できないとか制限されてたら蹂躙にはならないだろう。
例えるなら孫悟空の三蔵法師やわっかみたいなものだな。
そういうSSもいくつかあるしな。
>>303 トリステインメイジの生き様は〜色なし恋なし情けあり〜
……ごめんなさい、思い付きを垂れ流しただけです。
そう言えば魔法学院に校歌ってあるんでしょうかね。
それはともかく支援。
>>305 もしやるのならタルブにF22がないとw
309 :
307:2008/12/08(月) 22:08:30 ID:HtabYhqw
では、第三話、投下させていただきます
読みたくない、という方はお手数かけますが「デモゼロ(仮)」でNG登録をお願いいたします
何とか、使い魔召喚に成功したらしいゼロのルイズ
使い魔の契約にも成功したらしいルイズ
これでもう、ゼロじゃない?
いやいや、違う
何せ、召喚した生物は目に見えない
使い魔のルーンは、何故かルイズに刻まれてしまった
これで、本当に成功したと言えるのか?
それはまだ、誰にもわからないままだ
朝
それは、爽やかな目覚めの時
ぐうううううきゅるるるるるるるるる
…通常なら、爽やかな目覚めの時、なのだが
「…おなかすいた」
目覚めたルイズ、目覚めた瞬間の一言はこれである
おなかがすいた
体が、激しく空腹を訴える
さ、昨夜、太っちゃうかもと言う不安を抱えながらも、夜食をたっぷり食べたのに!?
まだ足りないというのかこの体め!!
とにかく、このままでは空腹で死んでしまう
朝は、いつもぼや〜〜っとして、身支度に時間がかかってしまうルイズだが
このままでは、おなかと背中がくっついてしまいそう、急いで身支度を整える
貴族の子女として、いい加減な格好で人前に出るわけにはいかない
なり続ける腹を叱咤しつつ、ルイズは無事、身支度を終えた
あぁ、早く食堂に行かなければ!!
飛び出るように部屋を出たルイズ
まるで、それにあわせるように…隣の部屋から、仇敵たるキュルケが、使い魔のサラマンダーを連れて、部屋を出てきたところだった
う、とルイズは、あからさまに嫌な表情を浮かべてしまう
何せ、彼女には日々、からかわれてばかり
先祖代々の宿敵である彼女に、ルイズはどうにも、口では勝てないのである
…いや、その魔法の実技でも勝てないけれど、で、でも、筆記の成績は私の方が上なんだから!絶対負けないんだからっ!!
キュルケが声をかけてくるまでのほんの数秒の間に、ルイズの中でめまぐるしく思考が流れ流れる
「おはよう、ヴァリエール」
「…おはよう、ツェルプストー」
いつも通り、少々不機嫌に挨拶に応じるルイズ
おなかがすいているせいもあって、いつも以上に不機嫌だ
とにかく、自分は早く食堂に行きたい
ツェルプストーの相手をしている暇なんかない
「…やっぱり、現実なのよね」
しげしげと、ルイズの左手の甲を見つめて、ぽつり、呟いてきたキュルケ
むかっ、とむかっ腹が立ったが、そのむかっ腹にすら勝つ空腹とはどれだけの空腹なのか
とにかく、怒鳴る気にはならなかった
「そうよ、現実よ。だから、どうしたの?とりあえず、私は早く食堂に行きたいんだけど」
「まぁ、そう言わないで」
苦笑してきたキュルケ
つい、とルイズの左手を取ってきた
何を、と、ルイズが言おうとすると…す、と左手に何かがはめられる
「…え?」
それは、薄い布で作られた、手の甲と手の平を覆う飾り
ちょうど、左手に刻まれたルーンがしっかりと隠れる
「これでよし。ほら、右手も貸しなさい」
言われて、つい、右手を差し出すルイズ
キュルケは、同じ物を右手にもはめてくれた
「乙女の肌に、こんな物が刻まれてるなんて、知られたくないでしょう?」
隠さなければ、はっきりと見えてしまう
これなら大丈夫、とキュルケは笑ってきた
…確かに
何かしらで、隠さなければいけないな、とは思っていたが…
空腹に急かされていた為、どうやって隠すか、なんて考える余裕はなかった
(気を使って…くれた?)
医務室で、ルイズに刻まれていたルーンを見ていたキュルケ
心配…して、くれたのか?
キュルケが、どうして?
混乱するルイズ
いや、しかし、今は、混乱するよりも先に、言うべきことがあるじゃないか
「あ…ありがとう、ツェルプストー」
ぽつり、呟くようなルイズの、その言葉に
あら、とキュルケは驚いたような表情を浮かべた
「あなたが素直だなんて…!?な、何か悪い物でも食べたの!?おなかがすきすぎて、拾い食いでもしたんじゃないでしょうね!?」
「な、ななななななななな、何を言ってるのよ!?そ、そんな事する訳ないでしょう!!」
せ、折角、勇気を振り絞ってお礼を言ったと言うのに、なんだそれは!!
真っ赤になって、大声を出すルイズ
その瞬間
くぎゅぅううううううううううううう
「………」
「………」
くきゅるるる
…大声出したら、ますますおなかすいた…
「…とりえあず、食堂、行きましょうね」
「……えぇ」
うぅぅ…
は、早く食べないと…倒れそう
よろよろ、歩き出すルイズ
その後ろ姿を見つめて、キュルケはやんわり、笑みを浮かべた
「…良かった、思ったよりは、元気そうね」
キュルケは、ルイズの事が嫌いではない
そりゃあ、先祖代々、いがみ合ってきた間柄ではある
しかし、キュルケ個人としては日々の努力を怠らず、常に貴族であろうとするルイズに対し、好感を抱いていた
それは、できの悪い妹に対して姉が抱くような、そんな感情
周囲からの侮蔑の言葉に晒され続ける彼女を、ほんの少しでも、支えてあげたい
そんな想いが、キュルケの中には確かに存在していた
「……あ、あなたの事、自慢するの忘れちゃったわね」
拗ねたような仕草を見せた、キュルケの使い魔・サラマンダーのフレイム
御免なさい、と可愛い使い魔をそっと撫でて、キュルケはルイズの後を追って食堂へと向かったのだった
あぁ、今日の朝食は大変、美味しかった
おなか一杯食べて、満足なルイズ
何せ、貴族の食事なのだから、朝の食卓も当然豪勢だ
普段なら、ルイズのように小柄であったり、食の細い生徒は、その豪華な料理を勿体無くも残してしまう事が多いのだが…
異常に食欲が増している今のルイズ
それを、ぺろりと平らげた
どころか、両隣に座っている生徒が残しているのを見て、みっともないな、と思いつつも、それまで食べてしまった
…だって、自分の分だけじゃ足りなかったんだもん
あれだけじゃあ、授業中に盛大に腹を鳴らしてしまいそう
余談だが、コック長たるマルトーが、いつもより残された料理の量が少なかった為、いつもより少し機嫌が良かったのはわりとどうでもいい事である
さて、次は授業の時間
憂鬱さとか、気分を入れ替えて、授業に集中しなければ!!
使い魔を連れずに教室へと入ったルイズは、当然、好奇の目に晒されたが、気にしない事にした
…誰が何と言おうと、自分は使い魔召喚に、契約に、成功したのだ
そう、自分に言い聞かせる
やがて、教室内に教師であるミセス・シュヴルーズが入ってきた
教室を見回したシュヴルーズは、ルイズの姿を見つけ、ほっとしたような表情を浮かべて声をかけてくる
「ミス・ヴァリエール。怪我はもう、よろしいのですか?」
「はい、もう大丈夫です」
「良かった…では、今日は無事、全員揃っての最初の授業ですね」
そう、ルイズが数日間意識不明だった為、授業は一人欠けた状態で行われていたのだ
休んでいたルイズの事を気遣ってか、シュヴルーズは基礎的な部分のおさらいから、授業を開始してくれる
土のメイジたる彼女がまず教えるのは、錬金の魔法
ぱっ、と石ころを真金に変えてみせるシュヴルーズ
そして、ルイズにこう、声をかけてきた
「では、ミス・ヴァリエール。実際に、錬金の魔法を使ってみてください」
…この、瞬間
ぴし!と、教室の中の空気が凍りついた
何せ、ルイズはゼロのルイズ
どんな魔法を使っても爆発してしまうゼロのルイズ
絶対
ぜっっっったいに、また爆発させるに決まっている!!
そう考えた生徒たちは、慌ててシュヴルーズを止めようとする
「き、危険です!やめさせてください!!」
「まだ死にたくありません!死亡フラグすら立てていません!!」
「おや、どうなさったのですか?」
生徒たちの様子に、不思議そうに首を傾げるシュヴルーズ
>ガミラス軍を召喚
ハルケギニアの大気は彼らに合わないので即座に惑星上から脱出出来ないと全員死ぬ
…信じられない事だが、彼女、ここまで有名なゼロのルイズの名前の由縁を知らなかったのだ
そして…
周囲の言葉に、ルイズはぴき、と確かに切れていた
何よ
何よ何よ、そこまでいう事ないじゃない
つ、使い魔の召喚は(多分)成功したんだから!
契約の魔法だって(多分)成功したんだから!!
もう、爆発しないかもしれないじゃない!!
「…やります」
ゆらり
立ち上がる、ルイズ
周囲の生徒たちは、ますます悲鳴をあげた
さささっ、と机の下に隠れたり、防御行動をとり始めている
が、構ってられるか
成功させてやる…成功して、みせる!
「あまり、緊張しなくても大丈夫ですよ」
絶対に成功させようと思うあまり、緊張してしまうルイズに、シュヴルーズは優しく声をかけてくれた
彼女はルイズが失敗するなどと、考えてもいないようだ
…それはそうだろう、この錬金の魔法は、わりと基礎の魔法なのだし
だからこそ…失敗する訳にはいかない!!
気合を入れ、ルイズは杖を振るう!!
「……れん・きん!!」
直後
かっ!!と石ころが光に包まれた
まずい
ルイズは、本能的に理解する
このままでは、石ころが爆発する
それを止めるのは、不可能
このままここにいては、自分は確実に大怪我をする
早く、離れなければ
(……っダメ!)
間に合うはずがない
…それに
もし、自分が離れることができても…ミセス・シュヴルーズが逃げる事ができない
自分を信じてくれた教師に、怪我を負わせてしまう!
少しでも
ほんの、少しでも…石ころから、離れなければ
シュヴルーズを、石ころから離さなければ
そう思った瞬間…ルイズは、自分でも信じられないくらい、体が動いたのを理解した
っば!とシュヴルーズの元へと駆けより、彼女の体にタックルを食らわせるようにして抱きかかえ、そのままその場から飛びのく
背後で、閃光とともに爆音が鳴り響き、石ころが爆発したのがわかった
「………っ!!」
背中にぶつかってくる爆風と、石ころのカケラ
鋭い刃と化した石ころのカケラが、無数に背中に突き刺さる
激痛に、ルイズは歯を食いしばって耐えた
どさ!!と床に倒れこむ、ルイズとシュヴルーズ
教室内では、爆風の影響で生徒たちやその使い魔が吹き飛ばされ、大パニックになっていた
「だ、大丈夫ですか、ミセス・シュヴルーズ!!」
が、ルイズはそんな教室内のパニックを無視して、慌てて体を起こし、シュヴルーズに声を駆けた
状況を理解しきれていないのだろう、呆然としているシュヴルーズ
あぁ…良かった、怪我はしてないようだ
その事実に、ひとまずほっとする
「は、はい、大丈夫です………!!」
何とか、返事を返してきたシュヴルーズ
直後、慌てたようにルイズを見つめる
「ミ、ミス・ヴァリエール!血が…」
「え?」
つぅ、と
顔を伝った、温かい物
ぽたり
床に落ちたそれを見て…どうやら、自分が背中だけではなく、頭にも傷を負ったらしい事をルイズは理解した
ずきり、背中に走る激痛
召喚の儀式の時ほどではないが、また怪我を負ってしまったらしい
「は、早く、早く、医務室に!!」
目の前で、生徒が怪我をしてしまった
その事実に、うろたえているシュヴルーズ
大丈夫ですから、とルイズはシュヴルーズに声を駆けた
「大丈夫、です。自分で歩けますから」
ずきり、ずきり
かなりの痛み、しかし、それでも、歩けない訳ではない
結局、自分は失敗させてしまった、いつも通り、爆発させてしまった
……これ以上、誰かに迷惑をかけたくない
「申し訳ありません…医務室に、行ってきます」
よろり、体をよろめかせながらも、教室を後にするみずき
その後ろ姿を、呆然とも食ったシュヴルーズだったが…教室がパニック状態に陥っている事に、ようやく気づき
慌てて、生徒たちを落ち着かせようと行動を開始したのだった
「……ヴァリエール」
ぴょこり
爆発の直前、机の下に避難した為、被害を最小限に防いだキュルケ
ちらり、視線を友人であるタバサへと向けた
彼女は無事だろうか?
……良かった、タバサにも、怪我はないようだ
ほっとしながらも…キュルケは、再び負傷してしまったルイズの事が、心配で
彼女が出て行ったその扉を、じっと見つめるのだった
「………」
キュルケは、気づいていなかった
タバサも、また、ルイズが出て行った、その扉を見つめている事に
…タバサは、見てしまった
ルイズが人間とは思えぬ動きで、爆発の衝撃から護るようにミセス・シュヴルーズを庇いながら抱きかかえ、その場から飛びのいていた
その一連の動きを…はっきりと、見てしまった
あれは、一体?
タバサの心に、はっきりと疑惑が根を張ったのだった
ACって聞くとスピリットオブマザーウィルとかアンサラーを思い浮かべるな
あれもヤバイ
以上で、第三話を終了させていただきます
…おかしい…今回で、何となくわかるようにするはずが…これではまだ何がついたのかわからない…
じ、次回こそ、どの共生生物が憑いたかわかる、はず
ところで、第二話にて「ツェルプストー」を間違えて「ツェルプトー」にしてしまっていました
キュルケファンの方、申し訳ありませんでした
>>316 ダメコン考えてないからとっつき一発で堕ちるシロモノがヤバイとな!?
・・・・たしかにヤバイな。
ハラペコルイズには是非フレイムの味見をしてもらいたい
デモゼロの人、乙です。
キュルケファンって……えっと、いるの?
乙です
ところで新カオスヒーローの人まだかな
>>321 マザーウィルとかいかにも兵器的なのはアレだが
アンサラーみたいなのはファンタジー世界にもマッチするよね
飛び交うミサイルとコジマ汚染に目をつぶれば、短編ぐらいでなら活躍できるよね!
エスコンゼロのエクスキャリバーの話と被りそうだが
>>321 むしろ、シロナガスクジラの2.5倍のサイズが空を飛んでる方に驚いたw
地球防衛軍や鋼鉄の咆哮のボスどもが出てきたら
問題はどうやって契約するかだけどね
フォーリナーはヒャッハァ!侵略だ!→ヒンニュウ1だ!ヒンニュウ1が来た!これで勝つる!
しか思い浮かばない
鋼鉄の咆哮はスレイプニル以外飛んでるか浮いてるか沈んでるやつしかないじゃないか
>>325 契約する前に虐殺シーンに飛ぶと思う
しかし地球防衛軍の一般人は頑丈だ
蟻や蜘蛛が1shot killな銃弾を喰らっても死なない
ルイズがバーサーカーを召喚しました。
Q.どのバーサーカーか?
1.北欧神話の。
2.DQ2の。
3.FF5の。
4.Fate/stay nightの。
5.フレッド・セイバーヘーゲンの。
6.あえてFFX−2のドレススフィアの
7.ネクロスの要塞の
8.スプリガンの
もうガッツが呼ばれてるじゃないか
9.ジャングルに住む理髪士のばあさん
ラグナレクno.2のあの人
究極超人あ〜るのも
ヴィンサガのビョルン
>>329 バーサーカー…略してバカですね わかります
ここまでオルソン無し、と。
バーサーカーって言葉だけでも結構ググったらヒットするのな!おでれーた!
さて、予約無ければ投下したく思います。
2355ぐらいから。お願いいたします
投下開始
――
「ぷ、くくっ い、いや別に変じゃないのよ?ビビ、うん、あんたが選んだんだから、まぁいいと思うんだけど…」
…ちょっと、うっかりしてた、とは思うんだ…
「あははははは!ま、まぁ、あはは!これも可愛いから…ぷぷ、やだビビちゃんたらもー!あはははははははは!」
…でも、そんなに笑わなくてもいいんじゃないかなぁって思うんだけど…
「きゅいきゅ〜い♪」
うー……シルフィードまで笑ってる……
「あ、相棒、無理することぁないぜ?」
デルフの気づかいがちょっとうれしいけど……ちょっぴり悲しいんだ……
「明らかに、短い」
……まさか、デルフを鞘から抜くことができないなんて、考えもしなかったんだ……
―ゼロの黒魔道士―
〜第十一幕〜 フレアうも多少の縁
武器屋さんの帰り道はルイズおねえちゃんたちのお買いものだったんだ…
ルイズおねえちゃんの連れて行ってくれたお菓子屋さんに…
(クックベリーパイってとっても甘かったんだ!でもルイズおねえちゃんは食べすぎだと思う…)
キュルケおねえちゃんの下着屋さん…
(ルイズおねえちゃんは恥ずかしがってた…でもなんで女の人の下着ってあんなにキラキラしたりしてるんだろ…?)
タバサおねえちゃんの本屋さん…
(いっぱい本を買ったんだけど、まだ物足りなさそうな顔してた…お財布が落としたからってツケにしちゃったし…)
――その間、デルフはずっと手に持ってたんだ…デルフは鞘に入れたとたん黙っちゃった…どういう仕組みなんだろ?
――帰りのシルフィードのことは、あまり思い出したくない…うー…空って揺れて動くんだなぁ…
帰って、みんなの部屋に荷物を運び終わった後(ボクも手伝ったけど、タバサおねえちゃんの本は量が多すぎると思った…)、
「ちょっと試したいことがあるんだ」って言ったら、おねえちゃんたちがみんなついてきた…
場所は広い方が色々やりやしかなって思って、最初にボクがルイズおねえちゃんに召喚された場所…
それで、デルフを鞘から取り出そうとして…両手を広げたよりもデルフは長くて…
…うーん……鞘は今度どうにかしなくっちゃいけないなぁ……
「ん〜、でもこのちみっこさが可愛らしいのよね〜♪ビビちゃん、やっぱりウチに来ない?」
「キュルケ!あんたってば毎度毎度っ――」
「ところで、試したいことって?」
タバサおねえちゃんが鞘をとってくれながら聞いてきたんだ……
「あ、うん…… 『魔法剣』ってできないかなって――」
「「「『魔法剣』???」」」
おねえちゃんたちの声が合唱のようにきれいに揃う……ホント仲良しだなぁ……
「『魔法剣』ってぇのぁなんでぇ、相棒?マジック・アイテムの剣のこっちゃねぇだろ?」
「あ、うん…仲間と旅してたときに、スタイナーおじちゃんって剣の使い手と一緒に編み出した技なんだ……」
それは、スタイナーおじちゃんの『思いつき』から生まれた技……
ボクの魔法をスタイナーおじちゃんの剣にまとわせて、そのまま斬る
属性攻撃と武力攻撃の合わせ技で、応用範囲が広くて使いやすい技だから…
「――で、ボクが剣を使うなら、そういうやり方かなって……」
「ふーん、つまり、剣を魔法で覆っちゃうってワケ?確かにそんなボロボロの剣でも少しは攻撃力も出そうだけど…」
「へぇ〜、ビビちゃんのところの魔法ってそんなことまでできるわけ?なかなかおもしろい発想ね〜」
「魔力による物理攻撃の強化――興味深い」
「おいおい、ちょい待ちやがれよ!俺様、その『魔法剣』ってのやられるワケ?周りに炎とか?うわ、俺様熱いじゃんっ!!」
「あ、だ、大丈夫だと思うよ?……多分」
「多分だぁ!?保障なしかよっ!冗談きつぃーぜー、相棒ーっ!フッツーに使ってくれりゃぁいいってのによぉ〜!」
「まぁ、ものは試しって言うし、ビビちゃん、やってみたら?」
「そうね、安かったとはいえ、そんなボロ剣にも役に立ってもらわなきゃ!」
「期待」
「きゅい〜♪」
「う、うん……じゃ、やってみるね?」
う〜ん、みんなの見てる前だと緊張するなぁ……やっぱり、失敗はできないし、一番シンプルな『ファイア剣』からだと思ったんだ…
「岩砕き、骸崩す、地に潜む者たち
集いて赤き炎となれ! ファイア!」
ボゥッと微量ながらもしっかり熱量のこもった炎がデルフの周りに……
「うぉ、あっちっ!?あちっ!?」
……まとわりつかない?『ファイア』がどこかに消えちゃった……?
「どうしたのよ、ビビ?魔法剣って、見た目普通の剣のまんまなわけ?」
「え、う、ううん……おかしいなぁ?」
……今度はもうちょっと大きめの炎を……
「地の砂に眠りし火の力目覚め
緑なめる赤き舌となれ! ファイラ!」
ボワッと大きめの炎でデルフを包みこm……って……あれ?
「あぢぢぢぢぢぢ!?か、勘弁してくれよ、熱ぃもんは熱ぃんだからよぉ〜!」
「すいこまれた……?」
「炎を飲み込んだ?」
「あら、すっごいじゃない?今の炎、私のファイア・ボールぐらいの力があるわよ?」
……この剣って、「炎属性吸収」の効果でもあるのかなぁ…?それなら……
「まばゆき光彩を刃となして
地を引き裂かん! サンダー!」
バチッとちょっと大きな音がして雷がデルフを…
「どぅわっ!?お、おでれーたー、大きな音させんじゃねぇよっ!」
……雷まで?じゃぁ……
「闇に生まれし精霊の吐息の
凍てつく風の刃に散れ! ブリザド!」
ヒュォォォと冷気の集まりがデルフを…
「うぁ、さ、ささ寒ぃ〜よっ!歯の音が合わなくなっちまうっ!――歯なんざねぇけど」
「じゃぁ黙ってなさいっ! ビビ、どうしたのよ?早くその『魔法剣』っていうの見せなさいよ!」
「う、うん……?」
おかしい、と思ったんだ
「冷気属性吸収」なら、剣の表に霜が残るってことは無いはずなんだ……でもデルフには……
「お、おい相棒ぉ〜…寒ぃから今ならさっきの『ファイア』ってぇの当ててもいいからよぉ〜…」
……しっかり霜の跡がついてる……でも魔法をまとわない……まるで……
「…魔力だけ吸い取ってる……?」
「お?お?魔力を吸い取る……?
……
……おぉ!俺様、そんな力そういやあったっけ!こりゃおでれーた!」
ガクッとみんなで一緒にコケた……うー……剣がしゃべるってのも驚きだけど……
「あっきれた、物忘れまでする剣なんてはじめてよ!ほんっと頭の中までサビだらけなんじゃない?」
「あら、でも中々掘り出し物よ?ん〜、ビビちゃんってけっこう目利きだったわけね!」
「でも、魔法剣、使えない?」
「はっはっはぁ、そーいうことになるなぁ!おい、相棒、諦めて俺様をフツーに使いやがれ!」
……うーん……でも、もしかして「属性吸収」の延長かもしれない……そう思って、もうちょっと色々試してみることにしたんだ……
「大気に集いし溢るる涙よ、
集いて固まり満ちるがいい! ウォータ!」
水属性の『ウォータ』は……バシャァッとデルフの周りを水球が落ちるだけ……
「わぱっ!?お、溺れるじゃねぇかっ! いや俺様剣だし溺れねぇのか? と、とにかくよ、相棒その辺で……」
「滅びゆく肉体に暗黒神の名を刻め
始源の炎甦らん! フレア!」
シュォォォォと周囲の魔力が一か所に集まって……これはデルフの周りにうまくまとわりついた
「おぉぉ!?お、俺様が輝いてる!?」
「綺麗」
「わー、ビビちゃん、すごいじゃない!これにはかの有名なシュペー卿も真っ青ね!」
「へぇボロ剣でも馬子にも衣装って言うのn――ん?この光……見たことあるような……」
「よいしょっと、とりあえず、第一段階は成功だよね……デルフ、行くよっ!」
……不思議なことに……デルフをにぎったときからずっと、
剣の振り方なんてスタイナーおじちゃんやジタンが振るのを見たことしかないのに……
「へ?い、行くってどこに……どぅわぁぁっ!?」
……すっと頭に入ってきて……重くて、ボクの体より長い剣をかつぐように思いっきり……
ドォォォンッ!!
地面に叩きつけたんだ……
「きゅ、きゅいぃぃ〜!!」
「ケホケホッ、す、すごい威力ねぇ、『魔法剣』って ルイズの失敗魔法よりすごいんじゃない?」
「ちょっと、土煙がひどいわよ!やるならやるって言いなさい!!ん?私の失敗魔法?」
…キュルケおねえちゃんの言葉に、ルイズおねえちゃんが考えこんじゃったんだ……
「あぁ〜〜〜!!それよそれ!!私の失敗魔法にそっくり!! って失敗じゃないぃぃぃ!!」
……ルイズおねえちゃんって、ときどき感情がすっごく揺れるなぁ……
「今の魔法、何?」
「あ、う、うん、タバサおねえちゃん……今のは『フレア』って言って……よいしょっと、ゴメン、デルフ、一回置くね?」
「お、おぉぅ…いや〜、すげぇ爆発だったなぁ〜!俺様目ぇ回すぐれぇおでれぇた〜!目はねぇけど」
「滅びゆく肉体に暗黒神の名を刻め
始源の炎甦らん! フレア!」
シュォォォ…ドォォンッ!!
今度はデルフにまとわせたりしないで、近くにあった岩に直接『フレア』をぶつける
そういえば、ルイズおねえちゃんの『錬金』のときの魔力って、これに似てたかも……?
「あら、ビビちゃんも爆発が使えるわけ?ん〜…でもルイズのノーコン失敗魔法と違ってしっかり制御できてるってわけね〜…」
「し、しししし失敗じゃないわよっ!!! ってそれよりもビビぃっ!!」
「は、はいっ!?」
……ルイズおねえちゃん、すっごい迫力だ……
「今の魔法……私にも使える?」
「え?え?」
何よ、ルイズ、コモン・マジックも使えないのにヨソの魔法使おうってワケ?」
「着眼点はおもしろいかもしれない」
「あらなに、タバサは肯定派?」
「押してダメなら引いてみろ、色々やってみるのも吉」
「う、うぅん……」
黒魔法も誰でも使えるってわけじゃないんだけどなぁ……でも……
「ど、どうなのよビビっ!私でももしかしたら、万が一ってない!?」
「…ルイズ、必死ねぇ…」
「溺れる者は藁をも掴む」
「きゅいきゅい〜」
……ルイズおねえちゃんが頑張ってるのは知ってたし……
(ゴメンね、ルイズおねえちゃん……コッソリ夜中に起きて魔法の練習に行ってるのには気づいてたんだ……)
「できるかどうかは分からないけど……やり方は教えようか……?」
……ちょっとでもルイズおねえちゃんのタメになりたいって思ったんだ
「できることから」、だよね?
「よぉしっ!やってやるわよっ!!失敗なんて慣れてるんだからっ!!!」
「あらあら、ルイズったら、自分で失敗って認めちゃって……」
「きっと成長の証」
「きゅい〜♪」
「かぁ〜、青春だねぇ〜!」
ドォォォンッ
「る、ルイズおねえちゃん、も、もうちょっと肩の力は抜いて大丈夫だよっ!?」
「抜いてるわよっ!!」
「あ、飽きねぇなぁ〜娘っ子は……俺様おでれーた……」
「今の『ファイア』って呪文でしょ?それまで爆発させちゃうのね、ルイズって……」
「これで41回目の爆発」
……シルフィードは、あんまりにも爆発がすごいから避難しちゃってた……
……空にはいつの間にか2つのお月さま……
「ルイズ〜、いい加減にしないと、夜更かしはお肌の敵よ〜!」
「うっさいわね、キュルケっ!次で!次できっちり成功させて終わりにしてやるわっ!!」
「う、う、うん……それじゃ今日はもう一回『ファイア』の……」
「滅びゆく肉体に暗黒神の名を刻めっ!!!!」
「え、る、ルイズおねえちゃん?それはフレアの…」
「始源の炎甦らん! フレアぁぁぁぁっ!」
シュドォォォォォォォォォォォンッ!!!
「うっひゃぁ、またド派手にいきやがったな!おでれーた!」
「しかも大外れ」
「あっちゃ〜、あの壁って『固定化』かかってたわよね?」
……学校の校舎にヒビが入ってたんだ……うーん……なんであんなところまで爆発が行っちゃうのかなぁ……?
「確か、宝物庫の辺り」
「る、ルイズおねえちゃん……どうしよう……」
「うー―…こ、今回は流石に私の失敗だし、しっかり弁償するわよ…」
「ルイズ、あんた弁償ばっかりねぇ、ヴァリエール家の財政大丈夫?」
「うっさいわねぇ!!ツェルプストー家に心配されたか無いわよっ!!」
「はははっ!娘っ子の魔法は強烈だなぁ!こいつぁー俺様おでれーた!」
……いつものような仲良しの喧嘩……
……だから、まったく気付かなかったんだ……
……大きな音が、月を遮って近づいてくるまでは……
――
投下完了です。お目汚し失礼いたしました。
つか読んでおいて後から蹂躙とかいれわてもねえ
テンプレ議論スレでは本スレ基本なんでもおkにして、騒ぐやつは荒らしだっていう考え方もあるようで
明確な基準もなしに蹂躙って魔法の言葉をいえば、一方的に相手が悪くなると思わないで欲しい
っておわ! 投下が……
支援し損ねた
読まずに蹂躙扱いできるような心眼はどうやったら身につきますか?
黒魔の人乙
>>346 蹂躙かどうかはともかく、読まなきゃ分からんだろw
黒魔道士乙
ファイアとかの呪文って、なんか資料があるの?
FF9の中にあったかどうか、覚えてない
FFTじゃね?
>>350 ファイアの呪文とかは、基本FFTからパクってますw
理由?かっこいいからw
FFTにない魔法(ウォータとか)は、まぁ雰囲気で…オリジナルっす
蹂躙か
ゲキからのリオさまを呼んでも蹂躙になりますか?
臨獣拳的な意味で
>>353 半角sageなら今すぐにでも身に付けられるはず
>>355 リンビースト出したらな
……ジョセフが喚んだのがメレだったらジョゼフ涙目過ぎる(LOVEウォーリア的な意味で)
まとめで読んで飛んできた
エクスキャリバー、なんて素敵な響き
うぜぇ伝説の剣かと思ったのは内緒にするまでもあるまい
つまり、一番最初に動作させた後、
その力のやばさに気がついたコッパゲール先生が
錬金で装置をぶっ壊して終了ですね。
そんな超兵器も、懐に潜り込めば弱いとガルム隊は証明してくれました
小回りきく分、アーサー王を裏切ったモルガーナ王妃ことモルガンの方がよほど始末に負えない
>>358 リオと引き離された日には召喚者は・・・
聖剣引き抜くルイズがアルチュールなら相打つモルドレは…姉…じゃないか
あーとゲームなら壊したのはガルムだから…犬……サイト?
エクスキャリバー
エクスキャリバー
フロム ユナイテッドキングダム
アイム ルッキング フォー ヘブン
アイム ゴーイング トゥー ハルケギニアー
私の伝説を聞きたいか?
武勇伝が聞きたいか?
君達はどこから来た?
ルイズ「あんたが来たんじゃ(ry
ヴァカめ!!
私の伝説は12世紀から始まったのだ!
聖剣の人乙です!続きを心待ちにしてたんで嬉しい限り。
とは言えこの過剰な破壊力にチート偵察能力。今後どうなっていくか楽しみです。
そしてデモゼロの人も連続GJ!!
獣人ってことはアレなんでしょうが、って事はデモパラお約束の展開も……
ルイズという時点で少々微妙な機体になってしまいますが。
そういえば最初のリプレイも絵師は兎塚だったな。
聖剣の方、デモゼロの方、乙であります。
で、問題なければ01:40から投下したいと思います。どすこい
「すまん、逃げられた」
「まあ、仕方ないわね。あんたで捕まえられなかったんなら、誰にも捕まえられないわ」
「だから有名なんでしょうね」
リュウがフーケを逃してしまったことをルイズもキュルケも別段、責めたりはしなかった。
実際、リュウで無理ならここにいる誰もできるとは思えない。
ただ、タバサだけが何も言わずリュウの顔をじっと見ていた。
「それにしても、ミス・ロングビルが”土くれのフーケ”だったとはねぇ」
キュルケの呟きに他の面々もうなずく。
「それで、『破壊の珠』はどうするんですか?」
シエスタが問う。
「いくらフーケでも馬車より早くは移動できないだろう。このまま進んで先に『破壊の珠』を回収する」
フーケは『破壊の珠』を返すと言っていたが、それを正直に言うわけにもいかないのであくまで取り返すというスタンスは崩さない。
「じゃあ、改めて気を引き締めて、レッツゴー!」
「ちょっと!なんであんたが仕切ってるのよ!」
キュルケが片手を挙げて言い放つが、フーケ討伐隊の隊長は自分だと勝手に思い込んでいるルイズがそれに噛み付く。
「別に誰がしたっていいじゃない。っていうか、なんでいちいちそんなことつっかかってくるのよ」
「あの〜・・・ぜんぜん気が引き締まってるようには見えないんですけど・・・」
恐る恐る声をかけたシエスタは二人に完全に黙殺された。
渦巻暴風脚支援
1時間ほど進むと、フーケが言ったとおりの広場に出た。
広場の中央には廃屋と思しき小屋が一軒。
罠がないことはフーケから聞いて知っていたが、一応リュウが先頭にたって扉を開ける。
確かに罠はなかった。
罠はなかったが、代わりに一行が小屋の中に見たもの。
それは地獄絵図だった。
家具といわず天井といわず、あたり一面に血が飛び散り、床は絨毯でも敷いたかのように赤く染まっている。
そして、いたるところに転がるオーク鬼の死体。
ある死体は胴体から真っ二つに切り分けられ、またある死体は頭を握りつぶされている。
一方的な虐殺劇であったことは容易に想像できた。
それを目の当たりにしたシエスタは惨状に耐え切れず、小屋から走り出ると木陰で嘔吐してしまった。
シエスタは田舎育ちなので豚や牛の解体なら見慣れていたが、例え顔が豚に似ていようとも解体されているのが人間の形をしているものとなると話は違った。
ルイズは自分は貴族であるというプライドからなんとか嘔吐を堪える。
キュルケとタバサは顔こそしかめたものの、傍から見る限りでは大丈夫そうだった。
浮世に現れた地獄のような小屋の中に、リュウが吐き気に襲われながらも入っていく。
それに続くルイズとキュルケ。
タバサは小屋の入り口の辺りで周りを警戒している。
小屋の中央にあった血塗れのテーブルには箱が置いてあった。
フーケが言っていた箱と特徴が一致している。
そして、既に蓋の開けられている箱の中からは異様な殺気が溢れ出していた。
この殺気に誘われてオーク鬼が集まってきたらしい。
リュウが辺りを警戒しながら箱に近づき、中を覗く。
「こ・・・これは・・・なんでこんなところに!?」
箱の中身、『破壊の珠』の正体を知ったリュウが愕然とした。
と、同時にリュウの様子がおかしくなる。
「う・・・うおおおおおぉぉぉぉぉっ!!!」
咆哮をあげるリュウ。
うずくまり、苦しそうに自分の頭を抱える左手が妖しく光を放っている。
「ちょ!?ちょっとリュウ!!大丈夫!?」
ルイズが心配してリュウに近づこうとした、そのとき
「ブモーーーーーッ!!」
突然奥の部屋の扉が蹴破られ巨大な何かがリュウに襲い掛かった。
苦しんでいるリュウに避ける術はなく、まともに体当たりを食らって小屋の壁を突き破り、遥か後方まで吹き飛ばされてしまった。
黒騎士理想郷に移ったのね
「リュウ!」
ルイズが悲鳴をあげる。
何が起こったのか理解できない。
そんな中、いち早く行動を起こしたのはタバサだった。
一番出口に近かったタバサが『フライ』の呪文を詠唱し始めたのだ。
キュルケはすぐさまタバサの行動の意味を理解した。
取り乱したルイズに飛びついて担ぎ上げ、小屋出口に急ぐ。
それを加速させるためにタバサが『フライ』の呪文をキュルケにかけて小屋の外まで緊急離脱させる。
お互いを信頼しあう二人だから出来る連携だった。
『フライ』の呪文だけでは詠唱時間中に襲われる。
かといってキュルケがルイズを担いで走ったのではとてもではないが間に合わない。
そこで、詠唱が完成するまで、少しでも距離を稼ぐためにキュルケが走ったのだった。
小屋から脱出するとルイズはキュルケの腕から飛び出した。
リュウの元にかけより、様子を窺う・・・どうやら気を失っているだけのようだ。
「良かった・・・生きてる・・・」
最悪の事態は免れた。が、状況はあまり芳しくない。
あのリュウが一撃で戦闘不能にされてしまったのだ。
全員が小屋から離れ、リュウを襲った犯人の正体を探ろうとする。
少しして、そいつは小屋の中からのそりと現れた。
リュウを戦闘不能に追いやった正体。
それは返り血で全身を真っ赤に染め上げた、身の丈3メイルにも及ぶのではないかという巨人だった。
腰に何かの動物の革を巻きつけているが、それ以外は全裸である。
しかし、全裸だからこそよくわかる。
巨人の身体は異常なまでの筋肉に覆われていた。
桁外れの体格を誇るリュウの身長が3メイルあったとしても、これほどにはならないだろう。
最早丸太という表現すら生ぬるい腕には人間の倍はありそうな巨大な血塗れの斧を、まるで棒切れか何かのように振り回し
もう片方の手には上半身しかないオーク鬼の頭をぶら下げている。
そして、決定的に人と違ったのが首から上。
人の顔の代わりに、牛の頭が生えていた。
『破壊の珠』が放つ禍々しい殺気はオーク鬼のみならず、牛頭の巨人までも呼び寄せていたのだ。
手にぶら下げていたオーク鬼の亡骸を放り捨てると、のそりのそりと近づいてくる巨人。
「・・・ミノタウロス」
タバサが呟く。
最悪の相手だった。
投下見てから支援、余裕でした
スクウェアクラスならともかく、トライアングルクラスの自分達では勝負にならない。
「無理。撤退」
タバサが宣言して短く鋭く口笛を吹くと、すぐさま1匹の風竜が現われた。
タバサの使い魔。風竜のシルフィード。
シルフィードはタバサたちを拾うために急降下する際、ついでにミノタウロスに一発蹴りを入れようと近づいて、足を思いっきりミノタウロスの頭に突き出す。
「きゅいっ!」
が、それは大きな間違いだった。
ミノタウロスは身体に似合わぬ鋭い動きでシルフィードの足をかわすと、逆にすれ違いざまにシルフィードの尻尾を掴でしまった。
「きゅいぃ!?」
必死で逃げようともがくシルフィード。
まだ幼生とはいえ、人間数人を乗せて飛行できるシルフィードの力をもってしても尚抗えない凄まじい腕力。
ミノタウロスが腕を引っ張るとシルフィードは成すすべなく地面に叩きつけられ、そのまま意識を失ってしまった。
「シルフィード・・・」
タバサは短く呟くと杖を構えた。
顔は変わらず無表情だが、目には静かな怒りの炎が燃え盛っている。
「こうなったらもう、やるしかないわね・・・」
キュルケも覚悟を決めて杖を構えた。
「いくわよ・・・」
キュルケの眼前に現れたのは直径1メイルを超える特大の炎の玉。
「ファイアボール!!」
炎の玉は一直線に牛頭の巨人を目指し、直撃する。
「ふんっ!ざまあみなさい!」
勝利を確信したキュルケだったが、爆煙が収まりつつある爆心地を見て顔を歪ませる。
「頑丈なやつねぇ・・・」
煙の中から現れたミノタウロスには火傷の痕すらなかった。
ミノタウロスはただの巨人ではない。
巨大な身体に猛牛のタフネスさと、分厚い皮膚による耐久力を兼ね備えている。
その上、知性は低いが獰猛な性格からくる戦闘への集中力は非常に高い。
それ故に有り余る体力もあいまって魔法に対する抵抗力は桁外れに高かった。
まさに生粋の狂戦士。
投下しようと思ったらすっかり忘れてた支援
昇竜拳は支援を呼ぶからな
しえん
「ちょっとは効きなさいよ。こっちのやる気がなくなっちゃうじゃない・・・」
口では軽口を叩くが、内心は穏やかではなかった。
今、放ったファイアボールはキュルケが全力で撃ち込んだ一発だったのだ。
これ以上の威力の魔法は使えないし、そもそも今のでかなりの魔力を消耗してしまった。
ミノタウロスがゆっくりとキュルケに近づく。
――まずい。完全にわたしに狙いを定めてる・・・避けられるか・・・?――
キュルケの倍はあろうかという巨大な斧を振り上げる牛頭の巨人。
「ウィンディ・アイシクル」
「ブモッ!?」
キュルケに斧を振り下ろす寸前、突然後ろから襲撃されたミノタウロスがバランスを崩してたたらを踏む。
こっそり後ろに回っていたタバサがミノタウロスの頭と首の継ぎ目がけて何本もの氷の槍を放っていた。
首の後ろ、延髄には大事な神経が集中している。
どんな生き物だろうと脊椎動物である限り、延髄は弱点。
「ブモーッ!」
だが、例え弱点であろうとも、トライアングル・クラスのタバサの魔法の出力ですら威力が足りていなかった。
ほとんどダメージを受けた様子すらないミノタウロスは標的をキュルケからタバサに移すと、凄まじい勢いで突進してくる。
発育著しいキュルケと違い、身体の軽いタバサは身を躱すことに長けていた。
だが今回は相手が悪い。
躱すべき対象が大きすぎるのだ。
少々身を翻したところでミノタウロスの突進を避けられそうにない。
タバサは自分の身体が宙に舞うのを覚悟して目を瞑る。
「させません!」
猛スピードでタバサ目掛けて突進するミノタウロスを、それ以上のスピードで追いかけたのはシエスタだった。
ひとしきり胃の中身を出し切ったあと、キュルケたちの危機に気づいて応援に向かった。
シエスタはなんとかミノタウロスに追いつくと、横から体当たりする。
重量差があり過ぎるので正面からぶつかったのでは勝ち目はないが、横からぶつかれば勢いの向きを変えるぐらいはなんとかできる。
無理やり進行方向を変えられたミノタウロスはタバサの横を通り過ぎた。
「ブモーーッ!!」
突然邪魔に入ったシエスタに標的を変えるミノタウロス。
口から涎を垂らし、斧を構えてシエスタと対峙する。
だが、牛頭の巨人を前にシエスタも一歩も引かない。
――なんなんですかあのデカイ斧は。
あんなので殴られたりしたら痛いじゃすまないんだろうなぁ――
先ほどの小屋の中の惨状と重なって思わずザクロな自分を想像をしてしまい、ぶんぶんと首を振って頭から嫌な映像を追い出すシエスタ。
死と隣り合わせの恐怖にガクガクと震える膝を無理やり押さえつける。
毎日毎日リュウの修行をこっそり見て、真似ていたのだ。
リュウがどのように動いていたのかは覚えているし、形だけなら自分にもできる。
それに自分は力だけは強い。
嘔吐している最中にリュウが吹き飛ばされているのを見た。
リュウが戦えない今、彼女らを守るのは自分の役目だ。
怖がっている場合ではない。
シエスタは使命感に燃えていた。
ヴァカめ!!
私の支援は12世紀から始まったのだ!
「いきます!せぇ〜のっ!」
シエスタは自分の中から恐怖心を無理やり追い出して覚悟を決めると、ミノタウロスに向かって突進した。
ミノタウロスがシエスタの胴体めがけて斧を横殴りに振るう。
恐ろしく速いスピードで襲い来る自分よりも遥かに巨大な斧を跳んで躱すと
上半身を思い切り捻って横向きの回転を身体に加える。
「見よう見まねで竜巻ぃ〜」
ミノタウロスの頭の側に達したところで、溜めに溜めた下半身を思い切り捻って1回転し、即頭部に踵を叩きつける。
「しゅん風脚!!噛んだ!?」
あながち間違っていない。
空中だったので一撃しか加えることはできなかった。
「しょーりゅーけん!!」
着地と同時に続けざまに再び跳び上がって顎を下から殴りあげる。
二度、三度、左右の拳で跳び上がりながら殴り上げるが一向に倒れる気配のないミノタウロス。
それでも自分の片腕ほどもない小動物から、まさかの威力の攻撃を喰らって一瞬たじろいでいる。
だが獰猛な戦士はすぐに気を取り直すと、斧を持っていない左手で殴りかかってきた。
斧を持っていないので先ほどとは比べ物にならないスピードで特大の拳が飛んでくる。
「ひっ!?」
慌てて両腕を交差させて自分の頭を庇う。
リュウの練習を見ていると、こういうときは相手の攻撃を違う方向に逸らすべきなのだろうが、シエスタにそんな余裕はない。
ミノタウロスの拳をまともに両腕で受けとめる。
シエスタ2、30人分はありそうな体重から襲い来る拳の威力は凄まじかった。
頭こそ庇ったものの、そのまま吹き飛ばされ、地面に叩きつけられ、更に幾度かバウンド。
それでも泥だらけになりながら気丈に立ち上がり、身構える。
「こんなの、どうやって戦えばいいんでしょう!?」
思わず愚痴がこぼれる。
身体中が痛い。
地面に叩きつけられた背中も痛いが、それよりも腕がまずかった。
殴られた衝撃で痺れてしまっている。まったく動かない。
「とにかく、痺れが取れるまでなんとか時間稼ぎしなきゃ・・・」
ミノタウロスが、今度は油断なくゆっくり近づいてくる。
知能が低い彼にも理解できた。目の前の人間のメスが楽には勝てない相手だと。
「マズイわね・・・猪突猛進・・・じゃなくて牛突猛進?だったら、もしかしたらあの子ならどうにかなるかもと思ったけど、警戒されちゃったわね・・・」
キュルケが呟く。
「・・・援護」
タバサが呪文の詠唱を始めた。
「そうね。わたしの方はもう残りかすみたいなもんだけど、ないよりはマシね」
キュルケも再びファイア・ボールの詠唱を始める。
幾本もの氷の槍が背後から巨体を襲い、その直後に炎の玉が直撃する。
間髪いれずに再び氷の槍。
その次に飛んできた炎の玉は先ほどよりもだいぶ小さかった。
そしてまた氷の槍。
こちらは勢いが衰えない。
ダメージこそ殆どないものの、鬱陶しいことこの上ない連続魔法掃射。
ミノタウロスが忌々しそうに魔法の出所に首を向ける。
デシカカト支援
「今のうちに!」
タバサとキュルケの時間稼ぎのおかげで幾分腕の痺れの取れたシエスタが、何やら難しい顔をして両手を揃え、自分の腰のあたりに据える。
まだ痺れは取れきっていないので直接殴るには無理があるが、リュウが練習の際に空に向けて放った一発。
もしあれが自分にも出来ればどうにかなるかもしれない。
「集中・・・集中・・・」
半身を捻って腰に溜めた両手に意識を集中する。
シエスタの掌がうっすらと光ったような気がした。
「見よう見まね・・・はどーけん!」
シエスタは腰に溜めた両手をミノタウロスに向けて思いっきり突き出した。
・・・が、それだけ。
シエスタの手からは何もでない。
「そりゃそうよねー」
冷や汗をたらしながら苦笑いするシエスタ。
ほんの一瞬だけ跳ね上がった闘いの気配を察したミノタウロスは目標を再びシエスタに定めて突進し、巨大な身体で彼女を捉える。
「ぎゃん!」
何メイルも吹き飛ばされ、生えていた大木にぶつかって止まる。
大木はシエスタがぶつかったところを基点に折れてしまい、地響きをたてて地面に横たわった。
「いった〜〜い」
したたかにぶつけた頭をさすりながら起き上がるシエスタ。
身体中が痛いし口からは血が溢れるが、幸い腕の痺れの方はかなり治まってきた。
「あったまきた〜〜!」
ぱんぱん!と両手をはたいて手の痺れが治まったのを確認すると、自分の俊足を活かして全速力でミノタウロスにかけより、勢いそのままに拳を突き上げる。
走った勢いを利用しているのでリュウの昇竜拳のように垂直にはあがらず、大きく斜め前方に飛び上がった。
「見ようみまね・・・しょーおーけん!!また噛んだ!?」
むしろ、正解。
ミノタウロスの顎にめり込むシエスタの拳。
思った以上に遠くから飛んでくる拳にミノタウロスも反応できなかった。
ミノタウロスの顎に自分の拳をめり込ませてもシエスタの勢いは止まらず、そのまま数メイルひきずるように巨体を押し込んでいく。
やがて小屋の壁にぶつかり、壁を壊してようやく止まった。
崩れた壁や屋根の一部が瓦礫となってミノタウロスとシエスタの上に襲い掛かる。
「ちょっ!?ちょっと!?大丈夫なの!?」
生き埋めになったシエスタに慌てるキュルケ。
タバサは瓦礫をどけようとレビテーションの詠唱を始めている。
そのとき、瓦礫がガラリと音を立てた。
タバサの呪文はまだ完成していない。
瓦礫の中から這い出してきたのはシエスタだった。
彼女は埃まみれの顔でボロボロになったメイド服のスカートを翻らせ、高らかに言い放つ。
「あたしにだって 負けられない理由があるんだから!」
それきりミノタウロスは動かなくなった。
「リュウだけが特別だと思ってたけど、そうでもないみたいね・・・」
口から泡を噴いてのびてしまったミノタウロスを遠巻きに見ながら感想を漏らす。
「・・・あの娘、怒らせるのはやめとこ・・・」
ボソリと呟いたキュルケの隣でタバサがこくりと頷いていた。
支援せざるを得ない
「やった!やりました!・・・ってあれ!?」
大金星に飛び跳ねて喜んでいたシエスタが、突然膝から崩れ落ちる。
「ちょ!?ちょっと!?シエスタ??」
シエスタの只ならぬ様子に心配して声をかけるキュルケ。
「あ・・・あれ?あれ?」
何度も立とうと膝を立ててみるが適わない、まるで自分の身体ではないようだ。
最初、極度の緊張から開放されて腰が抜けてしまっているだけかと思った。
だが、どうやらそれも違うらしい。
なぜなら、シエスタの全身を先ほどまでとは比べ物にならない強烈な激痛が襲ったから。
いかな屈強なシエスタでも、やはりミノタウロスと渡り合うのは無謀だった。
本来の彼女の限界を大きく超えて動き続けた為に幾箇所もの筋が断裂し、腱は伸びきり、心臓もパンクしそうなほどバクバクと脈打っている。
その上二度にわたるミノタウロスの打撃で折れた肋骨が片方の肺に刺さったらしく、口から溢れる大量の血。
分厚く硬いミノタウロスの顎を殴り続けたために両の拳の骨は砕けて最早握ることすらできない。
恐らく肺の他にも内臓がいろいろと大変なことになっているだろう。
身体中が悲鳴をあげていた。
生きているだけで奇跡に近く、とっくに身動きできない状態だったが皆を守りたい、助けたいという一心で無理やり身体を動かしていたに過ぎなかったのだ。
「なんか・・・思った以上に・・・身体を・・・酷使してた・・・みたい・・・です」
口から血を流しながら息も絶え絶えに苦笑いを浮かべるシエスタ。
本来ならのた打ち回るほどの痛みのはずだったが、精神に異常をきたさないように脳が防衛本能として痛みの大半をシャットアウトしてくれたのは幸いだった。
「まったく、無茶したわね。でもおかげで助かったわ。ありがと。急いで学院に戻って、水のメイジに頼んで治してあげるわね。
水の秘薬もじゃんじゃん使ってあげるから安心して。大丈夫よ、ツェルプストー家は裕福だからね」
文字通り身を挺して自分を守ってくれたシエスタ。
今にも泣き出してしまいそうな自分を鼓舞するためにわざと軽口を叩きながらキュルケが肩を貸すためシエスタに近づこうとしたとき・・・
「ブモーーッ!」
怒りのこもった雄叫びとともに瓦礫を蹴散らして現れたのは完全にのびていたはずのミノタウロス。
シエスタの膂力をもってしても、狂える牛頭の巨人から意識を刈り取るのは数瞬が限度だった。
口からはだらしなく涎を垂れ流し、怒りに狂った目は充血しきって真っ赤に染まっている。
そして真っ赤に染まった瞳に映っているのはただひとつ。
自分の半分もないくせに生意気にも滅多打ちにしてくれた人間のメス。
巨人は腕を振り上げ、憎きメスに狙いを定める。
「シエスタ!」
キュルケが悲鳴をあげる。魔法を撃ち込もうにも間に合わない。それに、そもそもキュルケ自体魔力がまるで残っていなかった。
一方のタバサはミノタウロスが立ち上がった瞬間から呪文の詠唱を開始していたが、こちらも間に合いそうにない。
今まさに自分に向けて振り下ろされんとする特大の拳。
が、もう腕をあげて顔を庇うことすらままならない。
きつく目を閉じるシエスタ。
直後、鈍く、しかし激しい音が響く。
シエスタがんばる! 支援
試演
支援
――あれ?痛くない?――
シエスタが恐る恐る目を開けると、巨人は顔を抑え、数歩後退していた。
「もう一発いけ〜っ!」
離れた場所でルイズが叫ぶ。
そして、叫ぶルイズの隣には両手を揃えて腰に据え、構える男。リュウが立っていた。
両の掌の間で何かがうっすらと光る。
淡い光は圧縮されたような揺らぎを一瞬見せたあと、はっきりと目視できるエネルギーの塊となった。
「電刃・・・」
エネルギーの塊に帯電したような稲光がほとばしる。
「・・・波動拳!」
リュウが上半身を捻り、両手を突き出すと同時にエネルギーの塊がバチバチと放電しながら凄まじい勢いでミノタウロスを襲った。
ミノタウロスはこれを両手で防ぐが、電気を纏ったエネルギーの塊に打たれて身体が硬直してしまう。
”殺意の波動”と”波動”
二つの摩擦によって電気を生み出し帯電された波動拳は相手の神経伝達組織に流れる微弱な電流を霍乱させて身体の自由を奪う。
帯電させることに大半の力を収束させるため、波動拳自体の威力はさほどでもないが、相手の防御を一切無視するリュウの奥の手だった。
「ブモーーッ!?」
突然身体の自由が利かなくなって恐慌状態に陥った相手に、一気に駆け寄るリュウ。
リュウが間近に迫ったときにはミノタウロスの硬直も解けていた、が、構わず懐まで潜り込む。
「ふんっ!!」
左足をミノタウロスの左横まで踏み込ませ、左の拳で右の胴を横向きに、胴に対して垂直に殴る。
人間ならば肝臓に当たる部分。
肝臓に強い衝撃を与えると、肝臓は肝臓自体の修復に全力を注ぐ。
その為に一時的にグリコーゲンの精製が止まり、筋肉の活動が著しく阻害されてしまう。
故にレバーブローは絶大な効果を持っている。
首から下が人間である以上、ミノタウロスの肝臓の位置も人間同様と踏んでレバーブローを放った。
そしてリュウの予想は当たり、ミノタウロスの動きが一瞬止まる。
筋肉の動きが阻害され、腹筋に力を込めることができなくなったところで、返す右の拳を鳩尾に突き刺す。
一般に鳩尾は筋肉がつかない為に人体の急所だと言われている。
が、実際には発達した腹筋ならば十分に鳩尾を覆い隠せる為、鍛え上げられた肉体にとって鳩尾は弱点足り得ない。
しかし直前に放たれたレバーブローによって弛緩してしまった腹筋は鎧としての役割を全うできず、リュウの拳が胃を直撃する。
「ブモッ!」
レバーブローと無防備な鳩尾への打撃という未知の痛みに直面し、困惑するミノタウロス。
あまりの痛さに斧を手放して膝をついてしまうが、それでも野生の本能でリュウに殴りかかる。
殴りかかってくる右腕を、左の前腕で手前に巻き込みながら受け流す。
ミノタウロスは膝をついて身をかがめている為に、今、リュウの目の高さにあるのは牛の頭。
巻き込んだ際にできた上半身の右の溜めを開放し、右の拳で思い切り牛の顎を突き上げる。
桁外れた膂力によって突き上げられる拳に無理やり立ち上がらされるミノタウロス。
即座に左右の拳に全神経を集中するリュウ。
「真!」
再び落ちてくる牛頭の顎に左の拳を打ち込み、突き上げる。
「昇竜拳!」
続けざまに跳び上がりながら右の拳で追い討ち。
骨が砕ける鈍い音とともに天高く打ち上げられたミノタウロスは地面に叩きつけられたあと、今度こそ動かなくなった。
以上で投下終了です。
シエスタがんばる!な回でした
読んで下さった皆様、ごっつぁんです。
よし
これで眠れる
乙でした
シエスタがサクラならまさかそのライバルはモが沢山つく人か!
と妄想した
乙!
シエスタ無双かと思ったww
波動の人乙でした。
トライアングルより強いシエスタw
>>370 情報感謝。
あのルイズも、聖剣にならぶ大量殺人こなしてるんだよなぁ。
蹂躙って感じじゃないのは、ルイズが主体的に行動してるせいかね。
波動の人、ハラショー&ボリショイ・パヴィエーダでした。
『破壊の珠』が『あの数珠』だとしたら、『持ち主』が出てきてミノタウロスを一撃必殺、シエスタがそれに怒り、
「矛盾が生まれた!」
ってなるかと思いました。
違ってよかったw
396 :
http://118x240x200x146.ap118.gyao.ne.jp.2ch.net/:2008/12/09(火) 02:26:26 ID:M13kpduS
guest guest
波動の人乙!
緊迫する戦闘のはずなのにシエスタ…なんと言うさくらだ
>>396お前何してんだ?
リュウの人乙です。
このシエスタには是非ともセーラー服を着ていただきたいw
次回にwktk
裏2ちゃんねるか…懐かしいな
ゼロ魔の漫画にDQM+をコラした懐かしい画像を発掘した
波動さん乙です。
リュウの戦闘がカッコ良いなあ。本当、肉体言語って素晴らしいッッ
波動さんってアオイシロをプレイしてたりします?
度を越えた悪ノリや魔改造にオリジナル魔法とか
毒吐きで大人気ですね^ ^
403 :
238:2008/12/09(火) 06:50:31 ID:MAJYD9sc
>>239 「釘宮」とは何ぞや?と思ってググって見たらナルホド、ルイズ役の声優の人でしたか。
で愛称が「くぎゅ」とか。
いや、知らなかったんで変な書き込みをしてしまってすいません。
さくらがじいちゃんとは・・・予想外だった・・・まあ付いててもおかしくないかw
一晩見てなかっただけなのに多数の投下!
皆様乙です
>>329 >>330>>331>>332>>334>>335>>337>>
>>339>>340 Fate/ZEROのバーサーカーが出てないですね。
こいつの宝具『騎士は徒手にて死せず(ナイト・オブ・オーナー)』ってガンダールヴと被るんじゃね?
およそ武器となりうるものなら何でも、触れる事で自分の宝具にしちゃうって能力なわけで。
作中ではジェット戦闘機を宝具にして乗ってたパイロットがGで即死しちゃうような滅茶苦茶な空中戦やってたね。
・・・って、型月クロスはスレチでしたっけ。
なんでも武器にするといえば、アーケードゲームの筐体とか冷凍マグロとか気絶した敵とかを武器にする人たちもいるな。
>>407 どうぐ ちょうろう
ちょうろうをそうびした
かいしんのいちげき
モンスターABに365のダメージをあたえた
ですねわかります
ガンダールヴのルーンで冷凍マグロの「正しい」使い方がわかったりするんだろうかw
お〜れ〜の武器を〜知ってるか〜い?
起きたら色々と投下されてますね。乙
シエスタは相変わらず強いなあ
最強シエスタというと大豪院シエスタか剣聖シエスタあたりだろうが…他サイトも入れてよければ理想狂の偽乳の人のシエスタ・サウザーだろう
>>361 しかも散弾ミッソーやら機銃すら跳ね返すECM付き
ゼロ魔世界の兵力じゃタウブルグの聖剣の懐に潜り込める手段が無い予感がするが
>>406 理想郷に「ジョゼフ×ガンダールヴ×バーサーカー(ランスロット)」
という最凶コンボが出てくる作品ならあったな。
『見様見真似』ができるのは、さくらと弥彦だけではなかったか。
波動の人、遅ればせながら乙でした。
そういやこのミノタウロスはラスカルじゃ無かったのか、姉妹スレだとよくレギュラー取ってるんだが
本スレだとあんま無いな、ん…最近なんかの作品で異世界で治癒系メイジとして大活躍すてる作品を見たような気がするが気のせいだろう
ギル様の奴か、デルフリンガーがかなり使ってもらえているのに哀れという珍しい作品だなw
デルフにとっての幸せは……何処にあるんだろう。
ランスの魔剣カオスみたいに「魔人斬らせろ」とか叫ぶような奴なら、まだ良かったのに。下手に人間らしいのが、デルフの不幸なのかもしれない。
デルフの幸せ
それは、特定の武器を持たない剣使いが召喚されることじゃないか
本元ですらセリフがなかったりで割と扱い酷いしねw
よそのスレだが、アヌビス神とのコンビっつーネタがあったな
デルフの幸せ…やはり可愛い女性系インテリジェンス・ソードだろう
きゅいフラグの話はあるのにデルフフラグの話無いなあ
管理人の人の別バージョンで十六夜さん×デルフとか
久遠の絆「はるけぎにあ編」で
天野先輩×デルフ
とかでどうか?
>>409 それは語ることすら憚れるルーンの領分だろうな
ちなみに冷凍マグロの正しい使い方は、解凍してから解体ショーを開いて大判振る舞い!
ちなみにルーンの能力は、味のある関西弁、超一流コックの技能、怪しいお茶の精製、不死身の肉体
そしてセガール拳だ!
まとめで聖剣読んで思ったんだけど、アカデミーや学院の奴にエクスキャリバーの使い方教えるってまずくね?
ルイズの照射許可が出ない限り撃てないのなら大丈夫だろうけど。
>>406 スカーエッジと言うラノベの主人公の能力がガンダに近いというか一部超越してる
持ったモノの記憶を読みとり自身の体で再現するから(業物の刀から歴代の持ち主の技を模倣
医師の持ち物で切られた自分の体を縫うなど)
強化能力無いけど充分過ぎる
>>427 銃夢にそんな感じの能力者いたな。
ノヴァ教授の息子で盲目のミュージシャンだっけ。
サイボーグの体を触ってかつてそのボディを修理した技術者のスキルを再現したり、日本刀から剣豪の技を再現したり。
こっちも身体強化能力はないが、並以下の身体能力しかない奴が刀一本で戦闘サイボーグと渡り合えるんだから十分チートだw
429 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/09(火) 13:24:04 ID:mLOipFKX
虚無の闇マダー?
サイコメトリー系を戦闘に借り出すのによくある手法だもの
>>424 ひょっとして本を食べる妖怪さん……
もとい文学少女のことかや?
>>427 ・・・銃夢のケイオスの丸パクリだろ、その設定
>>424 父親がピンチに陥っても名前で呼んでやらないと助けてない娘ですね、分かります
たまに思うんだけどそこまで深くわかってしまうなら、空気から情報読んじゃって
これは中年オヤジの屁になった経験のある空気だ! とか読んでしまわないのだろうか
それより大地を読んで地球になるというのはどうだろう
全く関係無いのだがルイズ達のいる女子寮ってやっぱ管理人さんいるんだろうなぁ
などと思い、管理人さんなら「あの柄」のエプロンしてて「あの名前」つけた犬
飼ってるに違いないなぁ なんて妄想した
好物はうまい棒?
>>436 そして召喚された少年と始まるほんわか寮生活ですね。
この時間帯ならば、他に投下される方はいません…よね?
15:10くらいから、第四話の投下を開始してもよろしいでしょうか?
ぴよぴよエプロン着けた美人未亡人が浮かぶのは
加齢臭漂う世代になっちゃったんだろうな。
最上級生あたりが寮長をやっているんじゃないかな。
それかそれを兼任している教師がいるとか。
前者は学園が生徒達にどれだけに自治を認めているかによるだろうけど。
良いとこの子女ばかりだからそれ相応の家柄の人間じゃないと
そう言う業務は無理じゃないかな。
波動の人乙であります!
ところで昇龍拳って、アッパーと膝蹴りの同時攻撃じゃありませんでしたっけ?
真・昇龍もクリーンヒットの場合
ボディーブロー→ショートアッパー→アッパーカット&膝蹴り
となり、ストIIIのゲーム上でも4ヒットコンボと表示されていたような〜?
拳 肘 ひざ
管理人はいないんじゃね?
掃除やら修理やら細々とした事は使用人が
見回りとかはその日の当直の先生がやってるとかじゃね?
お許し頂いておりませんが…投下、いいのでしょうか?
ひとまず、勝手ながらデモゼロ(仮)第四話を投下を開始させていただきます
再び怪我を負ったゼロのルイズ
先生を護って怪我したゼロのルイズ
自分の身に起こった変化の全てに、まだ彼女は気づいていない
医務室で、水メイジの治療を受けることになったルイズ
血を流しながら医務室に入ってきたルイズの姿に、慌てて水の秘薬を持ち出すメイジ
治療を受けようとした、まさに、その瞬間
ぐ〜〜〜〜ぅううう
「………」
「…ミス?」
あぅあぅあぅ
こ、こんな状況でおなかが鳴る事ないでしょぉおおおおお!!!
自分自身のおなかに、心の中で突っ込みをいれるルイズ
しかし、おなかはぐうぐうぐきゅるるん、遠慮なく悲鳴をあげる
恥ずかしさで真っ赤になりながら、ルイズは食事の用意をお願いした
医務室勤務のメイジは、たまたま医務室の傍を通りがかったメイドを捕まえ、食事をここに持ってくるよう言っている
ドアの隙間から見えた姿は、ルイズが意識不明の状態から目を覚ました時、どんどん食事を運んで来てくれた、あのメイドだった
珍しい黒い髪をしたメイドだから、よく覚えている
……あの時と同じメイドで良かった、とこっそり思うルイズ
ほ、他のメイドにまで、自分の大食いっぷりが知られてしまうだなんて、耐えられな…
…あ、待てよ?
運んできてくれたのはあのメイドだけど、食事を作ったのは、別にあのメイドではなくて
当然、料理を作ったコックはわかっているだろうし、当然その周りにいる使用人たちも…
…………
考えているうちに羞恥で死にそうになったため、ルイズは考えるのをやめた
ぐううう、おなかは悲鳴をあげ続けているし
…空腹の感覚で、痛みの感覚が忘れられる、と言うのは、果たして幸福か否か
とりあえず、水のメイジは改めて、傷の治療をはじめてくれた
どうやら、ルイズには通常の人間以上の自然治癒力が身についているらしいという事が既に伝えられているせいだろうか、治療は簡単なものだ
ルイズ自身も、その程度の治療で問題ない、と自然と自覚できた
人間の体って、こんなにも丈夫になるものだっけ?
ちょっぴり、疑問にも思ってみるが
(…これが、私の使い魔の力、なのかしらね?)
自分の体の中にいる使い魔が、自分を護ってくれようとしているのだろうか?
まぁ、それは愛情とか忠誠心によるものじゃなくて、ルイズが死んだら自分も死ぬから、と言う意識からなのだろうが
それでも、使い魔の能力を実感できると言うのは、メイジとして嬉しい事である
傷の治療が大体終わったところで、メイドがぱたぱた、料理を運んできてくれた
ふわり、食欲を誘ういい香り
ぎゅぐるるるるるるるるる
……えぇい、おなかの音よ、静まれ!!
メ、メイドが必死に笑いを堪えているではないか
ま、まぁ、笑わないで頑張ってくれているのだから、良しとしてあげるけどねっ!!
早速、始祖への祈りを捧げてから、食事を開始するルイズ
…そう言えば、意識不明から起き上がった直後の食事の時は、始祖への祈りを忘れてしまっていた
貴族としてあるまじき事だ
以降は、絶対にそんな事がないよう、気をつけないと
もぐもぐもぐもぐもぐ
ぱくぱくもぐもぐむしゃむしゃごっくん
朝食を、しっかりと(いつもより多めに)食べたはずなのに
まだ、昼食の時間には、少し早いはずなのに
ルイズの食欲は止まらない
監督生(プリフェクト)はいてもおかしくないかもしれんが…だとすると一体誰がやってるのやら
もぐもぐもぐ、何だか、朝よりも食欲が増しているような気がしないでもない
…まさか、時間が経つごとにどんどん、食べる量が増えていく、なんて事はないわよね?ないわよね!!??
自分の中にいるらしい使い魔にそう心の中で問い掛けつつも、食べる食べる
それでも、がっついて食べるのではなく、きちんと食事マナーを護っている辺りは流石、とでも言うべきなのだろうか
もぐもぐ、まるで前日の様子を繰り返すように、ベッドの傍には空の食器が、どんどん詰まれていっている
…御免なさい、医務室勤務の水メイジ
お願いだから、唖然とした表情で見つめないで、恥ずかしいから!
ぱくぱくぱくぱく、食べ進めていっていて…その内、ルイズはおや?と思い始める
簡単な治療で済ませたために、背中がずきずき、痛いままだったのだが…その痛みが、消えてきている
体中の痛みが、嘘みたいになくなっていっているのだ
まるで、初めから怪我などしていなかったかのように、体中の痛みが全て、消えうせた
その事実に驚きながらも…食事をする手は、止まらなかった
けふっ
満足したところで、ルイズはようやく食事を止めた
…満足、したんだけど
でも、デザートも食べたい
できれば、美味しい美味しいクックベリーパイ辺りを
「デザートも、お願いしていいかしら?」
「あ、は、はい。デザートも、こちらに運べばよろしいでしょうか?」
尋ねられて、ルイズは少し、考える
もう、体の痛みは消えてしまっているのだ
自分の目では確認できない箇所ばかりだからわからないけれど、多分、怪我はもう全部治りきってしまっているのではないか?
そう考えると…ベッドの上で食べ続ける、と言うのも、行儀が悪い
「いえ、食堂で食べるわ。着替えたらすぐ食堂に向かうから、準備をしていてくれる?」
「は、はい、わかりました」
頷いて、医務室を後にしようとするメイド
「あ、ちょっと、待って」
そのメイドを、ルイズは少し、引きとめた
びくーーん!と体を震わせ、ちょっぴり怯えた表情でメイドは振り返る
な、何よ、別に、とって食おうって訳じゃないのに
「あなた、名前は?」
「あ、その……シ、シエスタ、です」
「そう。悪いけれど、私がこれだけ大量に食事をする、って言う事…言いふらさないでね?」
ぷしゅう
少々頬を赤くさせながら、そう命令…と言うより、お願いしたルイズ
だって、恥ずかしいから!!
「ゼロのルイズが大食いのルイズになった」
とかなんて、絶対、絶対言われたくないから!
もしかしたら、もう手遅れかもしれないけれど!!
ルイズのそんなお願いに、シエスタは一瞬、きょとんとして
「はい、わかりました。秘密にしておきます」
と、とても優しい笑顔を浮かべて、了承してきた
どうやら、ルイズの乙女心が伝わってくれたらしい
ぱたぱた、シエスタが医務室を出て行くのを見送って、ルイズは立ち上がる
「ミス・ヴァリエール。本当に大丈夫なのですか?」
「はい。問題ありません」
立ち上がっても、どこにも痛みは感じない
本当に…完全に、傷は完治していた
と、なると、今考えるべき事は、制服を着替える事だ
爆発の衝撃で汚れてしまったし、破けたりしてしまっている制服を着たまま食堂に行くのは問題だろう
医務室の水メイジに礼を述べ、ルイズは急いで寮の自室へと向かった
ぴしり、予備の制服に着替え、食堂に現れたルイズ
ちょうど、他の生徒たちも昼食を終えて、デザートの時間になっていたようだ
…うん、結構ナイスタイミング?
空いている席につくと、シエスタがすぐに、デザートのクックベリーパイを運んできてくれた
それは、周りの生徒が食べているものよりも、少し大きめの物だ
ありがとう、と礼を言って、ルイズは早速クックベリーパイを食べ始める
あぁ…やっぱり、クックベリーパイは素晴らしい
この美味しさに、ルイズはメロメロだ
「あら、ヴァリエール。もう大丈夫なの?」
美味しい物を食べていると、気持ちが穏やかになって余裕ができる
だから、突然キュルケに声をかけられても、ルイズは調子を崩さず、返事を返す
「えぇ。問題ないわ」
「そう?なら、いいのだけど…」
結構酷い怪我だったのに、と言ってくるキュルケ
心配してくれていた?
いや、まさか、そんな事はあるまい
何でも、自分に都合よく考えてはいけない
「そう言えば…その、教室、メチャクチャになっちゃったけど…」
「あぁ、あれなら、ミセス・シュヴルーズがゴーレムを作って、それで片付けてたわよ」
そう、と少し表情を暗くするルイズ
…自分がメチャクチャにしてしまったのに、ミセス・シュヴルーズに片付けさせてしまっていただなんて
後で、謝らなければ
もぐもぐ、クックベリーパイを食べながら、思考の海へと沈むルイズ
…その、ルイズの思考は、食堂の片隅で発生した言い争いで、引き戻された
何事だ人が美味しく食べている時に、煩いじゃないか
ちょっぴり不機嫌になりつつ、そちらに視線をやると…
おや、あれは、確かギーシュとか言う生徒だったか
そのギーシュが見覚えのない、恐らく下級生であろう少女に平手打ちを食らっており
さらに、え〜と…香水だっけ洪水だっけ、どっちだっけ…とりあえず、モンランシーにワイン瓶を脳天に叩きつけられている
今の自分だったら耐えられそうな一撃だけど、あれ、結構痛いんじゃないだろうか
当たり所が悪かったら、相当な大怪我になるような
耳へと入り込んでくる声などを聞いていたところ、どうやら、ギーシュが二股したのがバレたらしかった
まさしく、自業自得である
興味を失い、意識をクックベリーパイへと戻そうとしたルイズだったのだが
そうも、行かなくなった
「………!!」
ギーシュが、二股がバレる原因となったらしいメイドに、因縁をつけているのが見えた
そのメイドは……シエスタ!
シエスタは、泣き出しそうな表情で、ぷるぷる震えていて
そのシエスタの姿に…ルイズはむか、と苛立ちを覚えた
こうなったのは、そもそも、ギーシュが二股をかけたのが原因ではないか
経緯はよくわからないが、シエスタは悪くないのではないか
すくり、立ち上がるルイズ
医務室にいる時、料理を運んできてくれたシエスタ
自分の大食いを、秘密にしてくれる、と言ってくれたシエスタ
彼女は今、貴族に因縁をつけられると言う、平民として最大といっていい恐怖に襲われている
…助けなければ!!
どうしたの?と声をかけてきたキュルケに返事をする余裕もなく、ルイズはずんずん、ギーシュとシエスタに近づいてく
「ちょっと、ギーシュ!聞いていれば、そもそも、あんたが二股をかけたのが悪いんでしょう!シエスタは関係ないわ!!」
ずずい!!
小さな、ないに等しい胸を張って、ルイズはシエスタを庇うように仁王立ちした
それに驚いたのは、もちろんシエスタも驚いたが、それよりもギーシュだ
…何故、ルイズが間に割り込んでくるのだ?
何故、彼女が、平民のメイドごときを庇うのか?
理解できなかったが、それよりも、自分が悪いと断言されたのが気に食わないギーシュ
いや、気に食わないというよりも、認めたくないと言う方が真実か
「何だい?急に割り込んできて」
「平民に因縁をつけて虐めるなんて、貴族として恥ずかしくないの!?」
そうだ、これは、貴族として恥ずかしい行為だ
常に、貴族である事を意識し、相応しく振舞う事を良しとするルイズ
ますます、ギーシュが許せない
そう言われると、う、と言葉に詰まってしまうギーシュだったが
「そうだ、お前が悪いぞギーシュ!」
「サイテーだな、ギーシュ」
「ってか、おにゃのこ二人と付き合っていたなんて羨ましいぞゴルァ、片方ヨコセ!」
などと、周囲から言われなどしたら、引き下がれる訳がない
…とりあえず、最後のお前、後で顔を貸せ
モンランシーもケティもお前なんかに譲るものか
「ふん、ゼロのルイズは魔法を使えないから、平民に対して親近感でも持っているのかな?」
「……っなんですって!!」
ぷっつーん!
元々、怒りの沸点が低いルイズ
第三者から見れば面白いほどに、あっさりと切れた
どん!と、怒りに任せて思いっきりギーシュを突き飛ばす
…そう
思いっきり、だ
ルイズは花の乙女、しかも、体格は小柄な方で、当然、腕力などほとんどない
そんなルイズに突き飛ばされても、少しよろけるだけですむ
………はずだった、の、だが
おおっと、支援!
ギーシュを突き飛ばした、その瞬間
ルイズは、全身に突然、猛烈な力が駆け抜けたのを、確かに感じた
「ぎゃああああ!?」
どんがらがっしゃん!!
「……え?」
きょとん、とするルイズ
あれ?
目の前にいたはずのギーシュはどこに?
しぃん、と静まり返る食堂内
皆が、消えてしまったギーシュの姿を探す
「…ギ、ギーシュ!?」
「い、いたぞ!!」
ギーシュがいたのは、食堂の端の壁際
そこに、ちょっぴりめり込んで…ぴくぴく、痙攣していた
頭を打ったのか、だくだく血が流れている
「お、おい、しっかりしろ!何があったんだ!!」
「ギーシュ、寝るな、意識を失うな!!寝たら死ぬぞ!!」
「きゃああああああああ!!??ギ、ギーシュ、しっかりしてぇ!!!」
え?
え?え??え???
混乱するルイズ
何故か、ギーシュをぶん殴った後食堂から出て行っていたはずのモンランシーまで駆けつけ、皆がギーシュの救助に当たっている
誰かが、フライの魔法をかけて、ギーシュを運び出していった
多分、医務室にでも運んで行くのだろう
「ヴァ、ヴァリエール様?」
「え……え〜っと……」
呆然とした声でシエスタに名前を呼ばれ、ちょっぴり気まずい表情で振り返る
ギーシュに因縁つけられていた恐怖は、どうやら、吹き飛んでしまったらしく
シエスタはきょとん、とルイズを見つめてきていた
「え、えっと…も、もう大丈夫よ!安心しなさい、シエスタ」
「………っ!!」
ぶわ、と
シエスタの両目から、涙が溢れ出す
吹き飛んだはずの恐怖を、改めて思い出したのだろう
わっ、と泣き出してしまった
「シ、シエスタ」
「あ、ありが、とう……ありがとう、ございます……」
ぽろぽろ、ぽろぽろ
涙を流しながら、ルイズにお礼を言ってくるシエスタ
大丈夫だから、とルイズはそっと、シエスタの体を抱き締め、落ち着かせるように背中を撫でてやる
「………」
そして、ふと
じっと、おのれの右手を見詰めた
ギーシュを突き飛ばした、自分の右手
(わた……し?)
ギーシュを突き飛ばしたのは、自分
けれど、あそこまでするつもりなんてなかった
と、言うか、結構離れた距離にあった壁までギーシュを突き飛ばせるなんて思ってもみなかった
それも、めり込ませるくらいに、強い衝撃を与えてしまうだなんて
自分に…何故、そんな力が?
(これも…使い魔の力なの?)
シエスタの背中を撫でてやる手を、左手から右手にチェンジ
今度は、布で覆われた左手の甲をじっと見つめる
そこに刻まれている使い魔のルーンは、今は特に異常もなく、静かである
…ルイズがギーシュを突き飛ばした、その瞬間
左手のルーンが、一瞬強く輝いた事に
気づいたのは、キュルケと、そのキュルケの傍でハシバミ草のサラダに舌鼓を打っていたタバサと
そして、その様子をこっそりと見ていた、誰かだけだった
相変わらず短くて申し訳ありませんが、これにて第四話投下終了です
お気づきになられた方もいらっしゃるようですが、ルイズについた共生生物はあれです
そう言えば、デモパラのリプレイ第一弾の絵師様はゼロ魔の絵師様と同じ方でしたね
言われるまで気づかなかった自分が情けないです
ひとまず、フーケ戦の辺りまではプロット完成しておりますので、せめてその辺りまでは書いていきたい心意気であります
最後になりましたが、支援したくださった方、ありがとうございました
壁にめり込んでも生きていられるのはギャグキャラ補正だな
……死んでたりしてw
なるほど、寄生生物にとっては寄生先こそが防具であり武器、ということなのかな?
乙っすー
さぁ、早く悪魔化>解除>全裸>まいっちんぐのコンボを!
宣言から投下までってさ、近すぎて被ってもマヌケだけど、
遠すぎてもスレの専有化になりえるから難しいよな。
避難所に兄貴が来ていたな
本編がPCクラッシュで飛んだらしい・・・・
10分〜15分ぐらいがいいと個人的には思ってる
投下までは5分から10分が嬉しいかなあ、そして切りの良い5の倍数分に投下w
どんな作品でも、長く待たされるのは焦れったいw
>>432 銃夢知らんけどスカの主人公は子供の時に起きた飛行機墜落事故での唯一の生還者
同じく瀕死で生き残った人達がその状況下で生きる術を伝えながら死んでいく中で魂に欠落が生じ
発生した能力とか言ってたな
孤独感の欠落とか能力を生かすためにはそれを成せる土台(肉体)が必要とか色々考えられてたな
力使うと腕から血を流し続けるから貧血とか起こすしバランスは良いかも知れない
あたかも銃夢がそれのパクリのような物言い
にんともかんとも
>>460 おっとそいつはすまん
銃夢がかなり前からやってるのは知ってるさ
読んだ事無いだけで
今度時間出来たら漫喫でも行って銃夢読んで見るさ
>>453 共生生物が自分の身を守るために寄生先を強化している設定がある
で、現代社会が舞台なので武器、防具の概念は基本無しなので悪魔化すると人間時とは比べ物にならんほど能力値があがる
ちなみに悪魔化すると後衛専門の共生生物でも、人間が拳銃持ったときと同じ攻撃力を素手で発揮できる
ルイズは肉弾専門のヴォージェだから余計に馬鹿力になる
>>451 今回のルイズが使ったのってレベル2−1技能の<獣強化>?
ガンダ効果はレベルが1上昇でおk?
>462
ふと思ったが姉妹スレのバオーみたく最終的には宿主の体から寄生生物の幼体が宿主の体を突き破って
宿主死亡とかあるのかい?
真3の主人公もマガタマに寄生されて悪魔になるんだよな
デスピリアの主人公のアルーアも脳に人の顔ついた蟲寄生させて攻撃力アップさせてたな
そうだよなーキュルケと最初から割と仲いいが、
ロイスを誰とも結べないとエライことになるもんな・・・
いやいやいや、ロイスはダブルクロス2nd用語だから。
デモンパラサイトには無いから、ロイス。
ロイスの代わりに飯食って寝ると侵食率(違)下がります。
>463
そこまでヘビーなペナルティは無いけど、調子に乗って能力を使いすぎたり、
大きなダメージを何度も受けすぎると倫理観の喪失とかしたりする。
ま、基本は気楽にバンバン能力使って、バンバン服が破けて(もしくは事前に脱いで)、
バンバンジャージに着替えて、バンバン焼肉喰う作品です。
寄生といえば、ゼロのパラサイトの続きはまだかなぁ……密かに続きを期待してるんだが
原作でもクロスでも、
なんでルイズさんは、余計な事ばかり言う(する)んですか?
傷とか逆鱗に触れたりとか。
地雷はとりあえず踏まないとドラマが生まれないだろ。
トラブルメーカーは使いやすいんだよ。
ルイズは原作でも割と歩く地雷じゃなかったか。
自分自身も割と地雷キャラなのに他の地雷もピンポイントで踏み抜くと?
…確かに言われればそんな気がするなルイズ。
まぁ、あえていうなら、召喚されてくるヤツも、
たいがい地雷を踏みやすい位置に置いてるしなぁ
アレだろ?マインス○ーパーの爆弾MAX状態、みたいな
トラブルメーカーってのは二種類あるような気がする
一つは自分から分かってて地雷を踏んで楽しむ奴
(代表例としては魔界医師とか光画部のOBとかパタリロだな)
もう一つは他人が忠告しても「大丈夫」だと根拠無く突っ込んで地雷を踏んで後悔する奴
ルイズは後者に属すると思う
>>467 よく知らんがよく脱いでよく肉を食うってことは板垣漫画みたいな作品なんだな
>467
一つ大事なものを忘れて居るぞ
ジャージ
だ
果たしてルイズはジャージを手に入れることができるのか
さもないと服の代金がシャレにならないことになるぞ
>478
すまん。さきばしったな。かいてあった
>>477 最近出たリプレイ集「極道☆キラリ」は笑いながら読めるのでちょっとオヌヌメだ。
481 :
使い魔の炎 :2008/12/09(火) 19:44:10 ID:w6uOrC+S
予約なければ7時55分から「使い魔の炎」第10話投下させてもらいます
ワルドとの決闘に敗れた日の夜、烈火は客室のベランダで物思いにふけっていた。
部屋には烈火ただひとり。 ギーシュやキュルケたちは下で酒を飲んでいる。
ベランダから、空に浮かぶふたつの大きな月を眺める。
…自分がいることは、ルイズにとっては迷惑なのかもしれない。
烈火はそう考え始めていた。
決闘のとき、ワルドに言われた言葉を反芻する。
君では、ルイズを守れない。
烈火は唇を噛みしめた。
それでも、烈火はルイズのそばにいたかった。
しかし、烈火の心はすでに決まっていた。
主君を守るのが忍者の役目。 役目が果たせない忍者など、必要ないのだ。
だから、自分はルイズを絶対に守る。彼女がこの大事な任務を果たすまでは。
そしてそのあとはー
「レッカ、こんなとこで何してんのよ?」
不意に声をかけられた。 振り向くと、ルイズが立っていた。
烈火はとっさに笑顔を作った。
「い、いや、なんでもねえぞ姫! 月がキレイだなと思ってな!」
ルイズは烈火のいつもとは少し違う様子に感づいたが、任務の疲れもあるのか、深くそのことを問いただすことはしなかった。
「?…そう。 まあ良いけど、風邪とかひかないでよね。
任務に支障をきたすから」
「わーってるよ」
任務のがあるからとはいえ、やはり自分の心配をしてくれる。 ルイズは優しく、かっこよかった。
だからこそ、ルイズにこれ以上迷惑はかけられない。 だから、烈火はルイズに心配をかけないように陽気に返事をした。
おぉう、ご飯食べ終わってPC再開させたら感想いただけたり色々予想していただいていたり、感無量
ひとまず、今後のネタバレになるかもしれないのでご質問の回答は控えさせていただきます
まずは支援!!
…再び訪れる沈黙。
月の光が照らす中、ふたりは微妙な距離を保ったまま立っていた。
突然、ルイズが口を開いて沈黙を破った。
「…わたし、この間ワルドにプロポーズされたの」
烈火は驚きに目を見開いてルイズを見たが、慌てて無表情を繕った。
反応がない(ように見えた)烈火を見て、ルイズは続けた。
「レッカは、わたしとワルドが結婚したら、どう思う…?」
「…」
烈火は黙ったまま、答えない。
ーなによ、なんか言いなさいよ。
ルイズはそう思った。 私のことを守るだのなんだの言ってくれるけど、こんなときには何も言ってくれない。
レッカがひとこと言ってくれれば、何かが変わるかもしれないのに。
…って、なに考えてるのよ、わたし。
ルイズは、味わったことのない感情に戸惑っていた。
自分が自分じゃないような感覚の正体がわからず、ルイズはイライラを言葉にして烈火にぶつける。
「…何よ、何も言えないの…? あんたなんか、一生そこで月でも眺めてればいいのよ!!」
ルイズはフン、とそっぽを向き、ベランダを出ていこうとした。
「待てよ。俺は…」
慌てて烈火が口を開いた、その時。
突然の地響きとともに、巨大な影が月明かりを遮った。
「な、なんだ!?」
烈火とルイズは同時に外に目を向けた。
そこにあったのは、見覚えのある造形の岩石でできた巨大なゴーレム。
そしてその肩では、同じく見覚えのある人物がこちらを見て微笑んでいた。
「てめえは…!」
「フーケ!!」
二人の叫びを聞いて、フーケは嬉々とした声を出した。
「お久しぶりね、おふたりさん」
口元をニヤリと釣り上げる。
「てめえ、捕まってたはずじゃ…」
烈火は意外な人物の登場に自分の目を疑ったが、すぐに腰を落として臨戦態勢をとった。
「親切な人がいてね。 わたしみたいな美人があんな穴蔵にいるのはもったいないってさ」
「余計なことするやつもいるもんだな…なんか用か? こっちは忙しいんだけどな」
烈火はデルフリンガーを引き抜いた。
「冷たいわねえ。 素敵なバカンスをありがとうって、お礼を言いにきたのに!」
フーケが笑みを浮かべると同時にびゅん、と空気を震わせゴーレムの拳が動いた。
「危ねえ!」
「きゃあ!」
烈火はルイズを抱えて飛び上がった。
先ほどまで2人が立っていたベランダの一部が粉々に破壊される。
烈火は着地するとルイズを抱いたまま、全力で走り出した。
「戦うにしても、ここじゃ不利だ! 逃げんぞ姫!!」
「ち、ちょっと、離しなさい!
ひとりでも逃げれるわよ!」
もがくルイズをなだめながら、烈火は必死で廊下を走り抜けた。
ワルドやキュルケに助けを求めるため、一階に降りた二人だったが、既に一階も戦場と化していた。
テーブルの裏に隠れているワルドたちに見つけたふたりは、低い姿勢で駆け寄った。
「参ったね」
ワルドの言葉にキュルケが頷く。
「一体なんなんだよ、これ!?」
「この前の連中、やっぱりただの物盗りじゃなかったってことね」
キュルケがやれやれ、と言わんばかりの表情で答えた。
「外にはフーケもいるわ!」
「わかってるわよ」
キュルケが指さした先には、吹きさらしの向こうから覗くゴーレムの足があった。
支援ですぜ
「如何せん数が多すぎる。 どうやらラ・ロシェール中の傭兵が集まっているらしい」
ワルドが渋い顔でつぶやく。 この状況を打破する手を考えているようだ。
そのとき、キュルケが再び口を開いた。
「…あたしとタバサが囮になるわ。 あんたたちは任務があるんでしょう?」
キュルケの言葉に、ルイズは驚いた声をあげた。
「えぇ!? で、でも…」
キュルケはつまらなさそうに口を尖らせて言った。
「ま、あたしたちは任務が何であるかすら知らないんだし…
こんな奴ら、あたしたち二人でどうとでもできるわ。 ね、タバサ?」
優雅に本を広げたまま、タバサが頷く。
「ぼくのゴーレムがいれば、たかが傭兵ぐらい…」
青い顔のギーシュの言葉をキュルケが遮る。
「あなたがいても足手まといよ。 それにあなたも任務を命じられているんでしょう?
…早く行きなさいな。 ヴァリエール、勘違いしないでね? あんたのために囮になるんじゃないんだから」
「…わかったわ」
そういいながらもルイズはキュルケたちに頭を下げ、歩きだした。
「…桟橋はこっちだ」
ワルドとルイズに、烈火、足手まといと言われて少しヘコんでいるギーシュが後に続く。
ときどき矢が飛んできたが、タバサが杖を振って張った風の防御壁にすべてたたき落とされた。
ルイズたちは厨房に通じるドアを一気に駆け抜けた。
烈火たちが厨房に向かったのを確認して、キュルケはため息をついた。
「えらそうなこと言ったものの、ふたりでこの人数を倒すのは骨が折れそうね」
懐から手鏡をとりだし、化粧を直しながらぼやく。
「…フーケ」
タバサの呟きに、キュルケが頷く。
「そうね、大将を倒して相手の戦意を喪失させるのが一番良さそう」
手鏡をしまい、一拍おいてキュルケは立ち上がった。
形の良い唇を開き、すうっと息を吸い込むと、叫んだ。
「でてらっしゃい、年増のおばさん!
この"微熱"のキュルケが、謹んでお相手してあげますわ!!」
瞬間、壁が突き破られ、かたまった傭兵たちをかき分けるようにして、フーケのゴーレムが姿を表した。
「言ってくれるわね、小娘が…」
殺気を全身にたぎらせたフーケを乗せ、ゴーレムがふたりに迫る。
「レッカの真似をするしかないわね…タバサ、わかる?」
近づいてくるゴーレムから目を離さず、キュルケが呟く。
タバサはコクン、と頷き、簡潔に答えた。
「わかってる」
「お話は済んだかい?…遠慮なくいかせてもらうよ!」
フーケが吼えると同時に、ゴーレムの右足がふたりに迫った。
素早く飛び退き、体制を整え直す。
ふたりが先ほどまでいた場所には、大きなクレーターのようなものが出来ていた。
キュルケはその威力に思わず舌を巻く。
…この攻撃をくらう前に、勝負をつけなきゃならないわね。
キュルケは、タバサに目で合図を送る。 作戦決行のサインだ。
タバサが頷き、杖を振る。 唱えた呪文は「エア・カッター」。
巨大な体と力を持つゴーレムも、攻撃の直後は隙だらけだ。
かまいたちによる斬撃で、ゴーレムはいくつもの土塊と化してと崩れ落ちる。
フーケは一瞬顔をしかめたが、すぐに笑顔を作った。
「この程度で私のゴーレムを倒せると思ってるのかい!?」
屋内なので周りに石や土はないが、これぐらいならすぐに再生できる。
しかしそのとき、ふと自分と"ゼロ"のルイズの使い魔との戦いの風景がフーケの脳裏によぎった。
粉々にされたゴーレムを、炎によって焼き尽くされた光景が甦る。
キュルケが微笑み、タバサが頷いた。
しまったー
フーケがキュルケたちの思惑にフーケが気付いたときには、無数の"ファイアボール"がゴーレムの断片を襲っていた。
支援させていただきます
「これが空を飛ぶのか?」
烈火は初めて見る異世界の桟橋と船に目を丸くした。
大樹に木の実がぶら下がっているように見える。
どうやら大樹が"港"、木の実が"船"らしい。
「海に浮かぶ船もあれば、空に浮かぶ船もあるわ」
平然と答えるルイズ。
「君は、ほんとに何も知らないのかい?」
ギーシュに呆れられたが、烈火は無視した。 こんなのを知っているわけがない。
大樹の根本にたどり着くと、中は空洞になっている。
目当ての階段を見つけ登るワルドに、ルイズと烈火、ギーシュが続く。
途中の踊り場にたどり着いたとき、ふと烈火が不気味な気配を感じた。
誰かがいる…?
烈火は呼吸を整え、精神を集中した。
「な、なんだ!?」
そのとき、ギーシュが素っ頓狂な声をあげた。
ギーシュの近くを黒い影がすり抜け、ルイズに手をかけようとしていた。
「姫、危ねえ!」
烈火はとっさにルイズの後ろの影に回し蹴りを叩き込んだ。
「きゃあ!」
ルイズは悲鳴をあげ尻餅をついたが、怪我はないようだ。
烈火の蹴りをくらった影は、空中で体を反転させ軽々と地面に着地した。
「何者だてめえ!?」
烈火が叫ぶと、影はすくっと立ち上がった。
月の光を反射し、男の顔が浮かび上がる。
暗闇に不気味に映える白い仮面。
仮面を見た烈火の頭に、以前の夢がフラッシュバックする。自分を圧倒的に上回る、堕天使の姿を象った炎。
ルイズを守りきれず、炎に包まれる自分。
「くっ…」
戦闘中にもかかわらず、思わず烈火は頭を抱え、膝をついた。
「レッカ!!」
ルイズの声ではっと我に返る。
「相棒! 構えろ!」
デルフリンガーが叫んだ。
そのときには、杖をかまえた仮面の男がすでに目の前まで迫っていた。
しまったー
「『ライトニング・クラウド』!」
呪文の正体に気付いたデルフリンガーが叫ぶ。
男の周辺から蛇のようにうごめく稲妻が飛び出し、烈火に直撃した。
デルフリンガーを掲げて電撃を受け止めたが、鋭い痛みが烈火の右腕を襲う。
「うあああああああ!!」
思わず右手を押さえ、うずくまる。
常人なら気絶するほどの痛み。
「この野郎っ!!」
しかし烈火は痛みを振り払うと素早く立ち上がり、勢いそのままに鞘に入ったままのデルフリンガーを男の顔面に叩き込んだ。
再び吹き飛ぶ仮面の男。
続けざまにワルドが呪文を唱え、"エア・ハンマー"で宙を舞う仮面の男に追い討ちをかけた。
再び吹き飛ばされた男は階段から落下した。
しかし、地面に打ちつけられることなく着地し、暗闇へと姿を消した。
「…痛えな、チクショウ」
烈火はその場に座り込んだ。
左腕には、巨大なミミズ腫れのような火傷の痕ができていた。
なんつー威力だ…
始めて味わう痛みによる呻きを、なんとか烈火はかみ殺した。
「レッカ!」
心配そうな声をあげながら、ルイズが駆け寄ってきた。
ワルドが烈火に近づき、右手の傷を見て言った。
「よく腕一本で済んだな。 『ライトニング・クラウド』は本来なら命を奪う程の呪文だぞ?」
そして烈火の右手に握られたデルフリンガーに目を向ける。
「インテリジェンスソードか。珍しい代物だな。 これが電撃をふせいだのか…金属ではないのか?」
「知らん、忘れた」
ぶっきらぼうに答えるデルフリンガー。
どうやら決闘で蹴飛ばされた時以来、ワルドの存在が気にくわないようだ。
「レッカ、大丈夫?」
ルイズが烈火に駆け寄る。 心配そうな表情で、よく見ると涙が滲んでいる。
「立てるかい?」
ギーシュが烈火を助け起こそうとしたが、烈火は心配をかけないためにその手を振り払い、笑顔を作った。
「大丈夫だ、問題ねえよ。…先を急ごう」
今回はここまでで投下終了、ありがとうございます。
気がついたら、前の投下から1ヶ月経っててびっくりした…
投下乙です。
待つ側からすれば、SS投下が1ヶ月ないなんてよくあること……
むしろ年単位なんてのもザラに……
乙でした〜
あるある…早く次を投下したいのに、気がつけば時間が経つのはあっという間…
しかし、無理なさらない程度で、投下してくださいね
まあ最初はガッと飛ばすけどだんだんスローダウンしていくのが普通だからな。
10話分以上連載して、なおかつ投下してる人はそれだけですごい。
何はともあれ乙です。
投下1時間以上でおざなりな乙3つだけ
感想は全く無い
しかも年単位を引き合いにやら、たまの投下を無理すんなとか遠回しに辞めろと言わんばかり
評価の対象は話数だけ
1ヶ月ぶりに出てきて無様を晒しただけですね
烈火の人、乙でした。主人公が『主人公』してますな。……羨ましいです。
他に予約の方がいなければ、21:45から第10話の投下を行います。
―――知らない場所の夢を見ている。
いつもの……普通の夢と違うのは、これが『夢だ』とハッキリ自覚が出来る点だった。
「私は地球で起きる怪奇現象を調査しています。
最近頻発する怪奇現象は、地球の環境汚染が原因だと思っています。大気を浄化し、環境を再生すれば……怪獣の出現
も減るはずです」
妙な丸い兜を被り、黄色い服を着込んだ人々に、自己紹介をする男。
……その顔にはまったく見覚えがないのに、その声は自分がよく知っている人間の声だった。
「そうか……また新たな『光の巨人』が現れたか。
私は運が良い……彼らの種族を2人も確認出来るとはな……」
自分の知識にない文字で書かれた、様々な観測結果。
それを見ながら、男は自分が『彼ら』に対して強く興味を惹かれるのを感じていた。
「馬鹿な……私の大気浄化弾が……電磁霧を発生させるとは……。……この星の大気は一体どうなっているんだ!?」
周囲の反対も、事前の実験も無視して強引に行った浄化。
「私は……間違っていない。私はこの星のために……あれを使ったんだ……美しい自然を守るために……」
「……だからと言って、何をしてもいいってわけではないんです」
「……私は間違っていない……間違っていない……ただ、レーダーが使えなくなっただけではないか……」
「そのせいで人が大勢死んでもいいって言うんですか!?」
それが引き金となり、守るはずだったものを危機に晒してしまった。
だが……。
「お前も私を責めに来たのか? 私に罪はない。あるとすれば、地球の大気をあそこまで汚染した人間の方だ。
……もうこの星の自然は崩壊寸前なのだ。一刻も早く汚染された大気を浄化しなければならなかったのだ!」
男は、本当に自分は間違ってはいないと思っている。
そもそも守るはずのものを汚していたのは、そこの住人たちではないか、と。
「私は地球に残る。まだ大気の浄化を諦めたわけではない。それにこの星には他にも面白い研究対象があるからね……」
扉越しの会話を終え、男は誰もいない壁に向かって自分の本心を吐露し始めた。
「……ギャバン、浄化するのは地球の大気だけではないのだよ。浄化の対象には地球人も含まれているのだ……。
地球人の凶暴性、ウルトラマン、そしてデビルガンダム……私の汚名を返上するには最高の素材だ……。
クククク……全宇宙に私の才能を示してやる……」
そうだ、あの地を汚した人間こそが、本当の浄化の対象……。
―――男の気持ちは、少なからず分かる。
自分の住んでいる世界にも、どうにもならないほど愚かな人間は幾らかは存在している。
だが、だからと言ってそこに住む人間全員を粛清する、というのは……。
「私より、ウルトラマンに頼んだ方が良いのではないか? 彼は地球の救世主だ。きっとこの事態を何とかしてくれるだ
ろう」
人間よりも遥かな高みに存在する、超常の存在。
この段階で、男は自分が『彼ら』に強烈に憧れていることを実感していた。
「私を責めるのはいいが、地球の大気をここまで汚染した責任はどう取るのかね、地球人の諸君!?」
このような愚かな人間などよりも、ずっと素晴らしい者たち……。
「ハハハ! それはいい! ウルトラマンに支配されれば、地球の環境は破壊されずに済む!
自分の星すら満足に守れない、他力本願で自分勝手な地球人にはふさわしい支配者だ!」
『彼ら』であれば、『彼ら』の力を使えば、『彼ら』の力を使うことが出来れば……。
「……怪獣ならば同胞でも殺す。やはり地球人は凶暴な種族だ。この美しい地球には相応しくない生物だ……」
この愚かで凶暴な者たちを一掃し、自分が求める世界を……。
「……ETFの総攻撃が始まったか……。……私は……このまま……TDF基地の独房で朽ち果てるのか……?
……屈辱にまみれたまま……こんな所で終わるのか……」
この地で見つけた崇高な存在にも届かず、自分が本来果たすべきだった目的も果たせず、何よりも本当の『汚染の原因』
も一掃出来ずに、終わってしまうのか。
「あ、ああ……わ、私の手が……足が……!
か、顔が……顔が……!
……私の顔が……あああ……!!」
激痛が男の全身を襲う。
命の灯は、消える寸前だ。
だが、救いは意外な所から差し伸べられる。
「……誰だ、お前は……? ……確か……ETFの、ザラブ……星人……?」
本来ならば自分たちとは敵対している存在。
それが、男を助けた。
―――そして、男は、
「―――――っ、ぅ……?」
目が覚める。
よく見慣れた、魔法学院の中にある自分の部屋だ。
時計を見ると、午前6時。使い魔は……どうやら洗濯に行っているらしく、部屋にはいない。
「……なに、今の夢?」
まったく知らない場所を舞台にして、まったく知らない人間を主役にした演劇を見せられているような感覚だった。
―――あんなグロテスクな終わり方をするなど、三流以下もいいところだが。
しかし、あの『声』は……。
「でも、顔が全然違ってたわよね……」
おまけに、まとっている雰囲気がかなり違う。
あの『主役』には全然余裕がないというか、えらく感情的なのである。
「う〜〜ん…………ま、いっか」
あれこれ考えても始まるまい。
そんなことより、今は二度寝を楽しむべきだろう。
「うぅ〜……ん、二度寝ってなんでこんなに気持ちいいのかしらぁ〜……」
……ルイズは、自分が見た夢の意味も、価値も、夢の主役であった男の苦悩も、知らない。
ドガァアアアアーーーーーーーーーーンンン!!!!
中庭に、また爆発音が盛大に響く。
……そう、『また』である。
何度やっても、爆発、爆発、爆発。
どうしてこう、自分の魔法は爆発しか引き起こさないのだろうか。
「……………」
今頃、表の方では使い魔品評会の真っ最中だ。
優勝候補は、立派な風竜を召喚したタバサあたりだろうか。
まあ、出場していない自分にとってはどうでもいい。
「……………」
教師に『辞退したいのですが』と言ったら、当然ながら『駄目です』と言われたが、エレオノールがわざわざ文書で辞退
させてくれるように頼んだらしい。
……実際には、ほとんど命令に近かったようだが。
家名とかをチラつかせたのだろうな、などと大まかな予想は立てられるが、実際のところはどうだか分からない。
アンリエッタ姫殿下にお目通り出来ないのは残念だが、自分の無能ぶりを大々的にアピールすることにもなりかねない。
と言うか、そうなる可能性がかなり高い。
「……………」
それはさておき、爆発である。
自分から少し離れたところで黙々と本を読んでいる使い魔に言えば、この爆発についての意見くらいは色々と聞けるかも
しれないが、なんだかそれは―――何かに、負ける気がする。
「………うーん」
だが、ただ魔法の失敗を繰り返して爆発を連発させるだけでは、あまりにも意味がない。
なので、ここは使い魔にならって『考察』などをしてみようと思い立った。
……参考と言うか、盗めるところは、盗むべきなのである。
「さて、と……」
何度か失敗の爆発を繰り返して、判明したことが1つだけある。
それは、意識を集中すれば集中するほど、爆発の規模や威力が増していくということだ。
よくよく考えてみると、今まで『爆発の理由』を考えたことはあったが、『爆発そのものの分析』はしたことがなかった
と気付く。
もう一度、『ファイヤーボール』を使ってみる。……結果はやはり、爆発。
しかし。
「……焦げた跡がないわ」
爆発跡を観察してみると、中心からかなりの勢いで『拡散』したことが分かるのだが、その中心に焦げ跡がない。
つまり衝撃があっても熱がない……ようだ。もしかしたら、焦げ跡も含めてどこかへ飛んでしまっているのかもしれない
が。
だが、焦げ跡が少しも残らない爆発など、少なくとも自分は聞いたことがない。
それ以前に、自分のコレは本当に『爆発』なのだろうか?
そもそも『爆発』とは何だろうか?
対象が弾け飛んで、衝撃があって、煙がたくさん出て―――
支援せざるを得ない
うむむむ〜、と自問自答しながら唸っていると、
「あー、これはまた派手にやったわねぇ」
と、聞き覚えがあって聞きたくない声が聞こえてきた。
「……何の用よ、キュルケ―――と、タバサ」
ジトっと赤い髪の仇敵に視線を向けると、彼女の友人である青い髪の少女も目に入ったので、慌てて名前を付け足すル
イズ。
「なーんか、こっちの方からドッカンドッカン爆発音が聞こえるもんだから、ちょっと見物にね」
「品評会はどうしたのよ?」
「もうあたしたちの番は終わったわよ。あとは残りの連中と審査だけ。ま、ただ待ってるのも暇だし」
言い終わると、キュルケは視線をルイズから中庭へと移した。そして改めて惨状を確認してから、告げる。
「……これだけやっちゃうと、お説教じゃ済まないわよ?」
「いいのよ、どうせ土系統の魔法でも使えばチョチョイのチョイなんだから」
「適当って言うか、大雑把な考え方ねぇ」
「……そのセリフ、アンタにだけは言われたくないわ」
ルイズとキュルケの間に、剣呑な空気が漂う。
一方のタバサは、そんな二人のやりとりに頓着もせず、立ちながら本を読んでいた。
「そう言えばルイズ、あなた品評会に出なかったわよね?」
う、とルイズが言葉に詰まる。
「なんでも、家の方から直々に辞退させるように頼んだらしいじゃない? あんな平民をお姫様の前に出すのが恥ずかしく
て家に頼んだのか、それとも家から全力で止められたのか……」
ニヤつきながら言葉をつむぐキュルケだったが、『家から全力で止められた』のあたりでルイズの身体がピクンと動いた
ことを見て、
「え? 何? もしかして本当に家から止められたの?
あっはっは! さ、さすがはトリステインでも屈指の名門のヴァリエール家、プライドの高さも屈指ってわけ!?」
腹を抱えて笑い始めた。
「まったく、そんなだから先祖代々、恋人をウチに寝取られるのよ」
そのキュルケの言葉に、再びルイズはピクンと反応する。
「……ちょっと待ちなさい、ご先祖様は関係ないでしょ!?」
「はあ? 何言ってるのよ、プライドばっかりムダに高くって、ちょっとつついたら必要以上に熱くなって、短気なところ
なんて、まさにヴァリエールの血筋そのものじゃないの」
『あ、嫉妬深いって特徴もあったわね』などと呟くキュルケに向かって、ルイズは震える声で、しかし冷ややかに提案す
る。
「ツ、ツェルプストー、いい加減にわたしたちの代で、この因縁も終わりにしない?」
「へぇ、決着をつけようってこと?」
「そうよ」
ギチギチと目に見えない圧力で空間が張り詰めていく。
「ああそれと、一つだけ言っておきたいことがあるんだけど」
「何?」
「あたし、先祖のこととか全然関係なく、個人的にあんたのことが大っ嫌いなのよ」
「奇遇ね、わたしもよ」
「気が合うわね」
うふふと笑いあう二人。
そして次の瞬間、二人は同時に宣言した。
「「決闘よ!!」」
SSに限らず、創作文の価値は完結出来るかどうかだと思う。
グランゾンの力をもってすれば支援する事など造作もありません
爆風が舞う。
炎が踊る。
ドッカンドッカン、ボワボワボワという感じで、衝撃と熱が中庭に充満していた。
(……何をやっているのだ、あの二人は?)
そんなルイズとキュルケが巻き起こす戦闘の音に、ユーゼスは本から視線を上げて様子を確認する。
(…………まあ、死ぬことはないか)
あのツェルプストーという女も、そのあたりの加減は分かっているだろうし、ルイズの爆発が直撃するほど鈍いとも思え
ない。
見ようによっては、ただ『からかって遊んでいるだけ』にも見える。
(そんなことより、今はこの本に集中しなくてはな)
爆音と燃焼音をBGMに、本を読み進めようとするユーゼス。
さてどこまで読んでいたか、と再び視線を本に落とそうとすると、視界の隅に小さな人影が見えた。
「?」
「………」
青い髪の少女、タバサである。
タバサはユーゼスの隣に座ると、持参していた本を黙って読み始めた。
(……存在感の薄い人間だな。……む、この髪の色は……)
髪の色を見て、この少女がアインストと戦っていたことを思い出す。
しかし、だからと言って自分に関係があるかと言うと、そうでもない。
つまり、ユーゼスとしてはこのタバサという少女は、どうでもいい存在であった。
……なお、それはタバサの側からしても同様である。
「………」
「………」
御主人様と友人の決闘にほとんど気を向けず、無言で本を読み続けるユーゼスとタバサ。
と、不意にタバサからユーゼスに声をかけられた。
「……その本」
声に反応してタバサの方を見ると、ジッと自分の読んでいる本に注目している。
「これがどうした?」
「どんなことが書いてあるの?」
「魔法に関しての本だ。アカデミーにツテがあったのでな。……そちらは?」
ついでとばかりに、ユーゼスもタバサが読んでいる本に関して質問した。
「哲学書」
「そうか」
それきり、読書に戻る二人。
「………」
「………」
「こっの、大体アンタねぇ、引っ切り無しに男を部屋に連れ込んでんじゃないわよ、この淫乱女!!」
「ハッ! 女の情熱を理解が出来ないなんてかわいそうね、この処女!!」
「んなっ……、わたしはどこかの誰かみたいに、自分を安売りしたりはしないのよ!!」
「あらあら、誰からも相手にされない女は言うことが違うわねぇ〜?」
どうでもいいが、戦闘音やルイズとキュルケの口喧嘩が煩い。無視しようと思えば、無視が出来るレベルだったが。
しかし、いい加減に集中の邪魔になり始めた時、小さな呟きと共に、スッとタバサが杖を振る。
すると、世界から音が消えた。
(……風属性の『サイレント』か)
本から得た知識によって、すでに大体の魔法は頭の中に入っている。
しかし音を―――空気の振動だけを抑制する魔法とは、なかなか興味深い。
普通に考えれば『空気を固定』しているわけだから、呼吸や行動そのものが不可能になりそうだが、可聴域の振動のみを
抑制しているのだろうか?
(後々、この『サイレント』について深く考察してみるか……)
それにしても便利な魔法だ、などと感想を抱きながら、ユーゼスは読書に集中する。
無音の世界でしばらく読書を行っていると、地面が揺れる感覚がした。
おそらく、決闘が白熱しているのだろう。
更に読書を行っていると、小さな土のカケラが飛んできた。
おそらく、決闘がかなり白熱しているのだろう。
より理解を深めるため、もう一度最初から読書を行っていると、いきなり誰かに本を取り上げられた。
ついで、頭に衝撃。
……前を見ると、怒った形相のルイズが杖を片手に、何かをわめき散らしている。
しかしタバサの『サイレント』が効いているため、その声は全く伝わらない。
横を見てみると、タバサもまたキュルケに本を取り上げられて何か言われているようだったが、自分と同じく声が伝わっ
ていない。
しかし、二人とも土やホコリで随分と汚れている。
どうやら、決闘はかなり盛り上がったようだ。
「………」
「………」
顔を見合わせるユーゼスとタバサ。
仕方ない、とでも言いたげにタバサは杖を振り、『サイレント』が解除される。
「……いきなり何をする?」
「アンタ、何やってんのよ!? 御主人様が危機に陥ってたってのに、全然知らんぷりでタバサと一緒に本なんか読ん
で!!」
「危機? ……決闘で負ける寸前にでも追い詰められたのか?」
「違うわよ!!」
『使い魔失格』、『そもそも敬意が足りない』、『役立たず』などの言葉が飛ぶが、何が起こったのか今ひとつ要領を
得ない。
仕方がないので、御主人様を無視してキュルケに尋ねることにした。
「何があった?」
ユーゼスの問いに、キュルケは切迫した様子で、
「30メイルくらいのゴーレムが出たのよ、ゴーレムが!」
そう答えたのだった。
いくら中庭と品評会の会場とが離れているとは言え、30メイルものゴーレムが学院内を闊歩するという事態に気付かない
わけもなく、アンリエッタ王女つきの王宮のメイジや兵士も交えて実況見分が行われた。
とは言え、ハルケギニアの技術力で科学捜査などを用いた証拠の押収などは不可能であり、判明したのは実行犯が『土く
れ』のフーケと名乗る盗賊であることのみ。
なお、品評会の優勝者は大方の予想通りタバサであったが、それどころではなくなってしまったため、『いるような、
いないような』という曖昧な結果となった。
また、実況見分を野次馬に紛れながら眺めている最中、ルイズがアンリエッタ王女と会話を交わす一幕が見られたが、
ユーゼスにとってはどうでもいいことだったので、その会話の内容は分からない。
そして、王宮の面々が引き上げた夕刻過ぎ。
ユーゼスも含めて、事件現場にいたルイズ、キュルケ、タバサが改めて学院長室に集められた。
他にも、学院中の主要な教師たちが集合している。
「―――で、犯行の現場を見ていたのが君たちかね」
オスマンが3人の少女を見回した後、じっとユーゼスを見つめる。
(この目……気に入らんな)
観察や値踏みをするような視線ならばともかく、『奥にある何か』を見透かそうとする視線だった。
まるで『お前の正体に心当たりがあるぞ、真の力を早く見せろ』とでも言われているようである。
『自分以外のユーゼス・ゴッツォ』でもあるまいし、そのように存在するのかしないのか不確定な事象を引き出そうと
するのは、『このユーゼス・ゴッツォ』とはスタンスが異なる。
とは言え、睨み返しても得る物は何もないので、我関せずとばかりにその視線を受け流すユーゼスだった。
「では、詳しく説明したまえ」
つ、とユーゼスから視線を外すと、オスマンは状況の説明を求める。
それにルイズが応え、その時の状況を語り始めた。
「……えーと、わたしとそこのミス・ツェルプストーが中庭で『談笑』している時に、いきなりゴーレムが現れて、宝物庫
の壁を壊したんです」
「『談笑』?」
ユーゼスが疑問をそのまま口に出したら、キュルケにコッソリと、しかし力強くヒジで小突かれた。
……そう言えば貴族同士の決闘は禁止されていたのだったな、などと思い出す。
「それで、肩に乗ってた黒いローブのメイジが、宝物庫の中から何かを盗み出して―――」
ゴーレムは城壁を越え、土になって崩れた。後には土しか残っていなかった。黒いローブのメイジの姿は消えていた。
「ふむ……」
つまり、追おうにも手掛かりがない。
「……おや、そう言えばミス・ロングビルはどうしたね?」
「それがその……、事件が発生した直後から、姿が見えませんで」
「この非常時に、どこに行ったのじゃ?」
「……どこなんでしょう?」
「…………まさかとは思うが、ミス・ロングビルが『土くれ』のフーケじゃった、などという線はなかろうな。少々、姿を
くらませるタイミングが良すぎんか?」
「それは……さすがに穿ちすぎではありませんか?」
>>504 もうやめて田中芳樹と庄司卓のHPはもう0よー(棒
それはソレとして支援
ミス・ロングビルに対する疑念がにわかに持ち上がり始めると、まさにタイミングを見計らったかのように、学院長の
秘書であるミス・ロングビルが現れた。
年齢は20代中盤ころ、緑色の長い髪に理知的な顔立ちをした、眼鏡の美人である。
「……申し訳ありませんが、人がいないからと言って濡れ衣を着せないでいただけないでしょうか」
「おお、すまんすまん。いや、年を取ると妙に疑い深くなってしまっての」
オスマンはこほん、と咳をすると、あらためてミス・ロングビルに退席の理由を尋ねる。
「して、どこに行っていたのかね?」
「一刻を争う事態のようですので、『土くれ』のフーケの足取りを追って調査しておりましたの」
「調査?」
「そうですわ。魔法学院の宝物庫の物となれば、トリステインの国宝も同然。何もしないわけには行かないでしょう?」
軽くではあるがジロリとオスマンを睨むミス・ロングビル。……言外に『よくも容疑者にしやがったな』というメッセー
ジが込められていた。
「い、いや、それは悪かったと言っておるだろう。……では、その結果は?」
「はい。フーケの居所が分かりました」
ざわ、と学院長室にどよめきが広がる。
「……誰に聞いたんじゃね? ミス・ロングビル」
「近所の農民に聞き込んだところ、近くの森の廃屋に入っていった黒ずくめのローブの男を見たそうです。おそらく、その
男がフーケに間違いないかと」
「そして廃屋がフーケの隠れ家、か……。服装もミス・ヴァリエールの証言と一致するの」
ふむ、とオスマンは長いアゴ髭を撫でながら思案する。
「そこは近いのかね?」
「はい。徒歩で半日。馬で4時間といったところでしょうか」
それを聞いたコルベールが即座に『すぐに王宮に報告を!』と叫ぶが、『そんなことをしている間に逃げられるわ!!』と
いうオスマンの一喝で黙ってしまう。
「第一、盗まれたのは魔法学院の宝じゃ! ならば当然、この問題は我ら魔法学院で解決する!!」
高らかに宣言するオスマン。
「……では、捜索隊を編成する。我こそはと思う者は、杖を掲げよ」
そうして学院長が直々に呼びかけるが、誰も杖を掲げない。ただ困惑して教師同士で顔を見合わせるだけである。
その体たらくに辟易したオスマンが『どうした、名を上げようとする貴族はおらんのか!?』などと発破をかけるが、
それでもやはり誰も杖を掲げない。
オスマンが盛大に溜息を吐きかけた、その時。
「ミス・ヴァリエール!?」
ルイズが杖を顔の前に掲げた。
「何をしているのです!? あなたは生徒ではありませんか! ここは教師に任せて……!」
「誰も掲げないじゃないですか」
(……名を上げたいのか)
そんな主人の様子を一歩引いた立場で見ながら、ユーゼスはそんな感想を抱く。
すると、今度はキュルケがその杖を掲げた。
「ミス・ツェルプストー! 君は生徒じゃないか!?」
「フン、ヴァリエールには負けられませんわ」
それを見て、その横に立つタバサも杖を掲げる。
「……タバサ、あなたは別にいいのよ? 関係ないんだから」
「心配」
「タバサ……」
「ありがとう……」
じーん、と感動した様子のキュルケとルイズ。
その一幕を見たオスマンは微笑みながら、
「……では、捜索隊は彼女たちに頼むとしようか」
捜索隊のメンバーを決定する。
当然ながら、教師たちから反対意見が多数出たが、オスマンから『では、君が行くかね?』と話を振られてしまっては閉
口するしかない。
そしてタバサはシュヴァリエ。キュルケは優秀な家系で本人も優秀。ルイズも優秀な家系で本人は…………これもまた
優秀な家系のグラモン家の子息と、互角に渡り合った使い魔を召喚した、ということで半ば強引に納得させたのであった。
そして、オスマンが3人に警告を送る。
「しかし気をつけるんじゃぞ。今まで『土くれ』のフーケは、その通り名から土系統のメイジとばかり思われていたが、ど
うやら火系統もかなりこなせるようじゃからな」
「えっ?」
その警告に戸惑ったのは、なぜかミス・ロングビルである。
「何せ、中庭の至るところに強力な炎を放射したと思われる焦げ後や、爆発跡の確認が出来たからの。これは土系統だけで可
能な芸当ではない」
「そ、そうですわね! そう言えば、フーケは火系統の魔法もバリバリ使ってるようでしたわ!」
「よ、よくわからない爆発の魔法も、ドカドカ繰り出してるように見えましたし!」
引きつった表情でフーケの能力を説明するキュルケとルイズ。
ユーゼスはこっそりと、
「いいのか?」
とタバサに尋ねてみる。
「別に困らない」
「……それもそうだな」
素っ気なく返されたが、確かにその通りなので、ここはフーケに罪を被ってもらうことにした。
「……そ、それでは、明日の朝一番に、その廃屋に向けて出発するということで」
若干表情をヒクつかせたミス・ロングビルが音頭をとり、この場は解散となったのだった。
「……ユーゼス・ゴッツォ君」
「何だ、ミスタ・グラモン」
「君たちが、あの噂に名高い『土くれ』のフーケと戦うかもしれない、ということは君から聞いた」
「そうだな」
「僕は、その捜索隊には全く関わっていないし、志願した覚えはこれっぽっちもない」
「その通りだ」
「……それで、なぜ僕がフーケ対策の作戦会議とやらに参加しなくてはならないのかね!?」
「あ、あの、私は辞退したはずなのですが……」
悲痛な様子で叫ぶギーシュと、非常に困った様子のミセス・シュヴルーズ。
フーケ捜索隊の3人とユーゼス、ミス・ロングビル、そしてギーシュとミセス・シュヴルーズは、小さめの教室に集合して
いた。
長くなりそうなので、お茶まで用意されている。
「フーケというメイジを相手にするに当たって、同じ土系統のメイジの立場から意見をもらいたい」
「ミセス・シュヴルーズはともかく、なぜこの僕が!?」
「お前もゴーレムを使うだろう?」
「ドットとトライアングル……いや、もしかしたらスクウェアかもしれないメイジを同列に見ないでくれたまえ!」
―――何はともあれ、作戦会議である。
「……って言うか、作戦会議なんて必要なの?」
面倒そうにキュルケが質問する。
「では聞くが、実際にフーケのゴーレムを間近で見て、あのゴーレムに勝てると思ったのか、ミス・ツェルプストー?」
私は実際には見ていないからよく分からないが、と心の中で付け足す。
う、と小さく唸って、キュルケは黙り込んだ。
「……フーケがいない時を見計らって、盗まれた宝を奪い返す、という案はどうでしょう?」
「都合よくいなければ、な。いた場合の話をしている」
ミス・ロングビルの意見を一蹴するユーゼス。
「……ちょっと待ちなさい。作戦会議をするのは良しとして、なんでアンタが司会進行役をやってるのよ!?」
「消去法だ」
ルイズの疑問に、これもまたユーゼスがアッサリと答えた。
キュルケは『司会なんてガラじゃないし、面倒だし』とパス、タバサは明らかに向いておらず、ルイズとギーシュもその
ような能力には疑問があり、シュヴルーズはそもそもフーケ捜索に乗り気ではないため『やっぱりやめましょう』という
方向に話が進みかねない。
強いて言うならミス・ロングビルが適役だったが、『私は秘書ですから、あまり先頭に立つようなことは……』と辞退さ
れてしまったのである。
それでも彼女を推す声はあったが、『議論をまとめるよりは、議論の一員として皆さんのお役に立ちたいのです』、『議
論をまとめるのに手一杯で、私から意見が出せないかもしれませんし……』などと言われてしまったので、司会はユーゼス
となっている。
「それにフーケを打倒する策があるのでしたら、是非お聞かせ願いたいですしね」
と付け加えるミス・ロングビルであった。
「差し当たって、あの土で出来た30メイルのゴーレムへの対抗策だが」
要するに、フーケ対策とはゴーレム対策である。
これさえ何とかなれば、フーケは攻略したも同然だ。
「キュルケとタバサで同時に攻撃すればどうだい? 二人ともトライアングルなんだから、もしフーケがスクウェアだとし
ても土で出来たゴーレム1体は倒せそうに思うが」
ギーシュの提案に、キュルケは首を横に振った。
「……悔しいけどダメね。中庭に現れた時も、そう思って全力で炎をぶつけたんだけど、ほとんど効いてないみたいだった
し」
「じゃあ、フーケ本人を倒すのは?」
「遠く離れてたら、手の出しようがない」
「ゴーレムが出たら逃げる、というのはどうでしょう?」
「……それで宝が取り戻せなかったら、意味がないのでは……」
出す案がことごとく却下されていくので、早くも議論メンバー内に微妙な空気が流れ始める。
そこでユーゼスが、ミス・ロングビルに質問する。
「ミス・ロングビル。フーケが潜んでいる廃屋の近くには、ゴーレムの材料となる土は大量にあるのか?」
「え? ああ、はい。森の中ですから、それはもう沢山」
「石や岩などは?」
「あまり見かけなかったように思いますが……」
ユーゼスはそれを聞くと、ミセス・シュヴルーズへと向き直る。
「ミセス・シュヴルーズ。30サントほどの大きさの『土人形』を『錬金』で作ってもらいたい」
「はあ」
シュヴルーズが杖を一振りすると、ユーゼスが立つ教壇の前に、注文通りの30サント程度の土人形が現れた。
「………」
紅茶のポットを手に取り、それを土人形まで運ぶユーゼス。
そして、中に入っていたお湯をトポトポと土人形にかけ始めた。
「……何やってんの、アンタ?」
「少し見ていろ、御主人様」
そのままお湯をかけていると、土人形は泥になってベシャ、と潰れてしまう。
「「「「「「…………あ」」」」」」
「これで良いのではないか?」
特に感情も込めず、ユーゼスは言った。
「も、盲点だったな……」
「まさかこんな攻略法があるとは……」
感心するギーシュとシュヴルーズだったが、それにタバサが異を唱える。
「……相手は30メイル。空気中の水分を集めるだけでは、それだけの水を用意できない」
「水をタルにでも入れて運べば良いだろう。それに、何も全身に浴びせる必要はない。足にでも集中させれば、そこから崩
れて転ぶ」
「やられた箇所を再生する可能性がある」
「立ち上がる隙にでも、逃げれば良い。……30メイルの巨体だ、立ち上がるのも一苦労だと予測するが」
「都合よく土でゴーレムを作るとも限らない」
「通り名が『土くれ』だから、その可能性は高いと思うが……。……ふむ、ミス・ロングビル、もう一度確認するが、その
廃屋の近くには石や岩など、他にゴーレムの素材になりそうな物はなかったのだな?」
「え、ええ、確か……なかった、はず、だと思います」
「……ミス・ロングビル、体調が悪いんですか? 汗がダラダラ流れてますけど」
「だ、大丈夫です」
ルイズが心配して声をかけるが、ミス・ロングビルは自分の健在ぶりを主張した。
「……そうだ! 僕のワルキューレのように、『錬金』でゴーレムを作った場合はどうするんだ!? それこそ岩とか、粘
土とか、鉄とか!」
ギーシュがハッと気付いて声を荒げた。
ユーゼスはアゴに手を当てて考えると、シュヴルーズに質問する。
「ミセス・シュヴルーズ。仮に『錬金』で材質を全て構築した場合、30メイル程度のゴーレムを作ることは可能なのか?」
シュヴルーズはその問いに関してしばし沈黙して思考を巡らせると、ゆっくりとした口調で答えた。
「……それはスクウェアクラスでも難しいですわね。ただの土から粘土へ、となると精神力の消費も少なくて済みますが、
岩や鉄など『土』から遠くなればなるほど、ゴーレムの規模も小さくなるはずです」
「具体的な大きさは」
「あくまで予想ではありますけれど……30メイルを基準として、粘土程度なら25メイル前後、岩なら20メイル前後、鉄なら
10メイル前後でしょうか。
もっとも、これは素材を全て『錬金』で作り上げた場合の話ですが」
うーん、と考え込む一同。
「……素材が粘土だったら、柔らかいし、あたしたちでも何とかなるんじゃないかしら?
それこそ、さっきその平民が言ってたみたいに足か何かに攻撃を集中させて逃げれば良いんだし」
「問題は、岩や鉄の場合」
一同は再び黙り込む。
……本当に体調が悪いのかミス・ロングビルの様子が少しおかしいが、構わずに(何より本人がこの場に残ることを強く
希望したので)作戦会議は続いていく。
支援
…そう言えば、土とかだったら、お湯かぶったらそうなりますよね
支援
流石頭脳キャラ。先に対策会議を開くとは。アニメ版の状況だからできることでもあるけど。
と、ユーゼスが、今度はギーシュに頼み込んだ。
「ミスタ・グラモン、ゴーレムを一体出してもらいたい」
「ん? ああ、さっきのミセス・シュヴルーズの土人形のように、小さなモデルにするのか」
鉄と青銅では少々異なるが……などと呟きつつも、ギーシュは頼まれるがままに青銅のゴーレム、ワルキューレを出現さ
せた。
そしてユーゼスは教室に持ち込んでいた剣(ルイズと共に買った『普通の剣』である)をシュッと抜き放ち、それを思い
切り、背後からワルキューレの膝の部分に叩き付ける。
金属同士がぶつかる甲高い音が教室中に響き、一同は耳をふさいだ。
「っ、もう少しこの音をなんとか……、あ、ギーシュのゴーレムが倒れてるわ」
キンキン響く耳でどうにかルイズの言葉を判別すると、一同は一斉にワルキューレを見る。
そこには、確かにルイズが言った通りに、右膝をポキリと切断(と言うほど鋭利でもないが)されて倒れ伏すワルキュー
レがあった。
「人型である以上、基本的に関節部は強度が弱くならざるを得ないからな。そこを突けば良いだろう」
「……う〜む、しかしそれは僕のワルキューレにも言えるのか……。ユーゼス、これは関節の装甲を厚くしてみれば解決
出来るのかい?」
「そんなことをすれば、確実に動きが鈍くなるな。関節の駆動範囲も狭くなる」
ダメかー、と悩み始めるギーシュ。
ユーゼスが元いた世界のモビルファイターなどは、この『関節部の脆弱化』に対して『人間の関節構造に限りなく近付け
る』ことで対策を行ったようだが、それをハルケギニアのゴーレムに求めても仕方がない。
「しかし、ことフーケのゴーレムに限って言えば、かなり有効な手段でしょうね。素材が鉄では、再生を行うにも多大な精
神力を必要とするでしょうし」
「……土と岩と鉄とか、色んな素材を混ぜた場合はどうなるんですか?」
「そのようにバラバラな素材では、ゴーレムはなめらかに動きません。それぞれ手触りと固さがバラバラでしょう? 何と
言うか―――『土の滑(スベ)り』と『岩の滑り』と『鉄の滑り』がゴチャゴチャになっていますから」
「うむ、僕のワルキューレが青銅だけで出来ているようにね」
キュルケの質問にシュヴルーズが答え、ギーシュが捕捉する。
「じゃあ、明日は取りあえず、馬車に水をタルで積めるだけ積みましょう。フーケが土でゴーレムを作ってきたら、その水
を足にかけて、土じゃなかったら氷魔法の素材にでもすればいいわ。
ミス・ロングビル、手配を…………なんで涙目なんですか?」
「……な、何でも、ないです……」
『休んだ方がいいですよ』、『何でしたら、大まかな道を教えてくれるだけでも……』などと優しく声をかけられるが、
ミス・ロングビルはどうしても同行するようだった。
何でも、『ここで同行しなかったら、それこそ自分がフーケだって言ってるようなものじゃないですか』だそうだ。
もっとも、戦闘はキュルケとタバサ、そして自分も参加すると声高に主張するルイズに任せて、彼女はユーゼスと共に彼
女たちを見守ることになっているのだが。
「有意義な時間でした、……えーと……ユーゼスさん、でしたかしら?」
どことなく満足そうな顔でにっこりと微笑みながら、シュヴルーズはユーゼスに語りかける。
「平民でも、あなたのように思慮が深い人がおられるのですね。
では、明日のフーケ捜索はくれぐれもお気をつけて」
本当に感心した様子で退席するシュヴルーズ。次いで、ギーシュがユーゼスに話しかけてくる。
「何だったら、僕もフーケ捜索に参加しようか?」
「……お前のワルキューレでは、踏み潰されて終わりだと思うが……。牽制か囮で良いならば、参加しても構わんぞ」
「むう、それは活躍とは言えないな……。仕方ない、今回は君たちに華を譲るとしよう」
ギーシュは、バラの造花を一振りして去っていく。
一方、ミス・ロングビルは頭を抱えて何かをブツブツと呟きながら自室へと戻っていった。
耳を済ませてみると、『どうすれば』とか『考え付いたところであの平民がまた』とか聞こえてきたが、ノイローゼか
何かだろうか。
……個人の事情を詮索する趣味はないので、放っておくこととする。
そしてルイズとキュルケ、タバサも席を立った。
「……屈服のさせがいがあるわ」
「何言ってるのよ、アンタ?」
ユーゼスに睨みを利かせるルイズと、そんなルイズを疑問に思うキュルケ。
相変わらず無言のタバサも引き連れて、4人で女子寮へと戻っていく。
そこで、ふとユーゼスは肝心な要素を忘れていたことに気付いた。
「……そう言えば、聞いていなかったのだが」
「何よ?」
「盗まれた宝とは、何だ? どのような形状をしているのかが分からなければ、確認のしようがない」
そう言えば言ってなかったっけ、とルイズもまた今更ながら気付く。
「確か、昔の英雄が使ってた武器だったと思うわ」
「宝物庫を見学した時に見たけど、あたしにはただのロープにしか見えなかったわねぇ」
「ロープが武器?」
魔法がかかったロープを巻きつけて、動きを束縛でもするのだろうか。
「でもアレ、ロープじゃなくて鞭じゃなかったかしら?」
「そうだったわね。ほとんど鞭には見えなかったけど。名前は、えっと……ザ、じゃなくて、ズ……ゼ?」
キュルケが名前を思い出すのに苦労していると、タバサがポツリと正解を告げる。
―――その名を聞いて、ユーゼスの表情が明らかに一変した。
「ズバットの鞭」
それも私だ支援
マチさん涙目ww
支援
おマチさん涙目w支援
以上です。
ルイズの爆発に関しては、原作を読み返してみて『煤だらけになった』って描写はあるんですが、明確に『爆炎が上がっ
た』って描写はなかったので、『熱は発生していない』と解釈しました。
あと、対おマチさんのゴーレムなんですが……これ、どこかの誰かが既にやっていないか戦々恐々です……。いや、自分
の調べが足りないと言われればそれまでなんですが……。
ガンダ補正があるとは言え、この作品におけるユーゼスの身体能力では、どう足掻いてもゴーレムには勝てませんし、も
う苦肉の策みたいなものです。
さすがに超神形態に変身するのも大人げがなさ過ぎますし、そもそも超神形態が出るとバランスが崩れまくるので、可能な
限り使用は控えようと思っております。
それでは、支援ありがとうございました。
くじけないでおマチさんw
と言いつつおマチさんをそれなりに酷い目に合わせる予定な自分も支援
っとと、終わった、乙でした〜
頭脳派なキャラは、ガンダ修正がついてもゴーレム戦はきついですからね
そこは頭脳でカバー、素晴らしいです
524 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/09(火) 22:14:13 ID:gPnHY0Se
乙です
超神形態でフルボッコ期待してたけどそれ以上に面白そうですね
ラスボスの人GJ
戦闘前からおマチさん涙目www
次回に超wktk。
乙!
こ、こうなりゃ防水加工だおマチさんっ!
…って、無理かねぇ?
そこで水に強い木造ゴーレムですよ
……キュルケの餌食だな
これを機に「泥んこのフーケ」とか「泥レスのフーケ」に転職というのはいかがカナ? カナ?
後者とか特にオススメ!
さてさて、頭を使われたしっかりしたストーリーの後は、
私めの頭のカケラすら使わないうっすいものを…
みんなすげぇなぁ…
2235時から失礼いたします
ユーゼフ乙
がんばれおマチさん、正体が知られていない今ならチャンスはある!
そしてビビ支援
あの騒ぎから回復していいことだ
今日も何個も投下がある
乙!&支援!
投下開始です
――
「な、なんなのよコレっ!?」
ズゥーン、ズゥーンと大きな音が響き渡る……
「ゴーレム!?でも大きすぎじゃないっ!?」
二つの月を覆い隠す大きな影……
「お、おでれーた!?なんなんでぇこいつぁ!?」
そいつは校舎の壁を叩きつけ……
「おそらく、“土くれ”」
こっちを睨みつけた……え?こっちを?
「う、うわぁぁっ!?」
ボクらのこと、バレてるっ!?
―ゼロの黒魔道士―
〜第十二幕〜 追い立てる思い
急いでその場を逃げたんだ……
ゴーレムの上に乗ってた人(影しか見えなかったけど…)はゴーレムを伝って壊した壁の中に入っていった……
「“土くれ”って――今日街で聞いた盗賊の?ちょっとぉ、こんな大きなゴーレムなんて聞いてないわよぉ!」
「“土くれ”のフーケ、壁を土くれに変え、ときには巨大なゴーレムで襲うことで有名」
「おでれーた!とんだ盗賊がいやがったもんだなぁ!あんなゴーレムそうそうお目にかかれねぇぜ!こいつぁおでれーた!」
息も切れ切れになりながら、ゴーレムから見えなくなる死角の壁までたどりついたんだ……
「な、何よっ!“土くれ”!?た、たかが盗賊じゃないのよっ!!」
ルイズおねえちゃんが突然立ち上がり、来た道を戻ろうとしたんだ……
「る、ルイズおねえちゃん!危ないよっ!」
マントの裾をつかんで止めようとする……
ズルズルとそのまま引きずられちゃった……
「ルイズ!あんたじゃ何もできないでしょ!!」
「危険」
「娘っ子ぉ、ここぁ大人しくしときな!」
「うぅ〜!目の前にいるのに〜!!」
「だ、だから危ないんだと思うんだけど……」
……ルイズおねえちゃんを止めるので精いっぱいで、
……ボクたちは、ゴーレムを、“土くれ”のフーケを見送ってしまったんだ……
……確かに、倒せたのかもしれない、でも……
……ルイズおねえちゃんを危険な目に合わせるわけには……いかないよね?
「――…ふむ、つまり、そのまま逃してしまった、と」
翌朝、ボクたちは学院長室に目撃者として呼ばれたんだ……
……やっぱり昨日のゴーレムは、“土くれのフーケ”だったんだ……
壁にしっかりと、「『破壊の肉球』、確かに領収いたしました 土くれのフーケ」って書いてあったんだって……
わざわざそんなこと書くなんて、ジタンみたいな盗賊だなぁ……
「はい、申し訳ございません、取り逃してしまって……」
ルイズおねえちゃんが、悔しそうに、拳をにぎりしめて言う……
「いやいや、仕方あるまい、おぬしらに怪我が無くて何よりじゃよ」
オスマン先生が髭をしごきながら言う……
う〜ん、オスマン先生って、マジメなときは偉そうでかっこいいんだなぁ……
「大体、宿直の教師は誰だったのかねっ!!職務怠慢では!?」
「だ、誰だってサボってたりしてましたでしょっ!?ご自分の勤務態度はどうでしたの!」
……何人かの先生たちが言い争いをはじめる……
……それを見て、ルイズおねえちゃんがよりいっそう拳をかたく握りしめる……
……うーん、たしかに、これって『みにくいあらそい』って感じだけど……
「喝っ!!」
オスマン先生の声が、ビリビリ響く……思わず、帽子をギュッとつかんじゃったんだ……
「教師の怠慢については我々全員が責任を感じ折り入って恥じるべきじゃろう!が、しかし、今はそれを議論する場では無いっ!!」
……オスマン先生、すごいなぁ……空気が一気にひきしまる……
なんかこう……気をつけの姿勢のまま石化しちゃうような感じ……
「しかし、こんなときにミス・ロングビルはどこへいったんじゃ!彼女の尻でもなでんと考えがまとまらんわいっ!!」
……うーん……やっぱり、オスマン先生って『ダメな大人』なのかなぁ……?
「あら、皆様お揃いで」
「おうおう!ミス・ロングビル!『噂をすれば尻』じゃな!あ、やめて、こめかみは地味に痛いからやめてやめてやめてぇぇ……」
……ロングビルおねえさんは、にっこり笑って、羽ペンの先の方でオスマン先生のこめかみをツンツンつついたんだ……
うぅ……あれはけっこう痛そうだなぁ……
「――…コホン、ミス・ロングビル、この非常時に一体どちらへ?」
コルベール先生が話を戻したんだ
……その一言で、その場の空気がまた元の会議っぽいものに戻ったんだ……
「えぇ、朝から急ぎ、調査を」
「ほぅ、調査とな?」
「えぇ。朝からフーケの噂を聞きまして、急ぎフーケの逃げ去ったとおぼしき方面へ調査を……」
「そ、それで、どうだったんですか!?」
……コルベール先生って、興奮すると汗でさらに眩しくなるんだなぁ……
「付近の農民数人に訊きこんだところ、村外れの森にある廃屋に入っていった黒ローブの男を見た、とのことです。恐らくその者フーケであり、その廃屋はフーケが隠れ家として使っている所ではないかと」
「なんと!その廃屋はどこに!?」
「ここからですと、徒歩で半日、馬なら4時間ほどといった場所です」
……すごいなぁ、そんなことまで分かっちゃうんだ……
でも、フーケ、バレバレだよね?……ジタンだったら「プロじゃないなぁ」とか言うのかなぁ?
「な、ならば早急に王室に報告しましょう!王室衛士隊に今回の事を依頼し、兵隊を差し向けてもらわなければ!」
「喝っっ!!浮足立っておるぞ、ミスタ・ゴールドヘルム!」
「……あの、私、コルベールですが……」
……オスマン先生って、空気を引き締めたいのかなぁ?それとも、思いっきりダラけさせたいのかなぁ…?全然分かんないや……
「ともかく、じゃ!そんなことをしている間にフーケはもっと遠くに逃げよるわ!第一、自分達を襲う火の粉を自分達で満足に払えんで貴族も何もあるものか!」
「――…お言葉は立派ですが、人のお尻を触りながら言うのはやめていただけます?」
「あたたたたたた、眉間はやめて、眉間もやめて!?目に入りそうですっごく怖い!?」
……オスマン先生って、ホント何がしたいのかなぁ……?
とりあえずズバットに因果率なんて関係無しなんですね。すばらしいw
「お、オホン!!!しかるに!魔法学院で起こった問題は我々だけで解決せねばならん!!そこでじゃ、フーケの捜索隊を編成する事にする!我こそはと思うものは杖を掲げよ!」
……ちょっとダラけた空気が引き締まる……
でも、さっきとは違う、どこか冷めきった引き締まり方だったんだ……
「これ、誰も杖を掲げんのか?名を上げる良い機会じゃぞ?」
……さっきまで 『みにくいあらそい』してた先生たちも顔を下げっぱなしだ……うーん、確かに、あのゴーレムは怖いもんね……
「み、ミス・ヴァリエール!?」
「え?る、ルイズおねえちゃんっ!?」
……いつの間にか、ルイズおねえちゃんの杖が、天井の高いところまでしっかりと指し示すように上げられてたんだ……
「ミス・ヴァリエール、あなたは生徒ではありませんか!昨日の事態を目撃したなら、どれほど危険なことかお分かりでは!?」
「誰も、杖を上げないではないですか!!!」
……ルイズおねえちゃんの拳がプルプル震える……
ルイズおねえちゃん、悔しいのかなぁ、昨日のことが……?
「み、ミス・ツェルプストーまで!?」
キュルケおねえちゃんと……その影に隠れてタバサおねえちゃんも杖をしっかり上げていた……
「ルイズにだけ、いい格好はさせたくありませんもの!」
「心配」
……ルイズおねえちゃん、良かったね!
こんなに強い友達……ううん、違うね!「仲間」ができたんだ!
「ほほほ、気概があるのは生徒ばかり、か!まぁ情けなくもあり頼もしくもあり!!よかろう!諸君らにフーケのことは一任しよう!!」
「そんなオールド・オスマン!生徒達だけに任せるなどと!?」
「なんじゃい、ミスタ・ガトー!ならばお主が行くか?」
「わ、私はギトーで……いえ、何でもありません……」
「それに、じゃ!ミス・タバサは若くしてシュヴァリエの称号を持つ騎士と聞いておる!」
……水をかけられたように部屋の中の空気がざわめく……シュバリエって何だろ?
「本当なの?タバサ?」
「……ルイズおねえちゃん、シュバリエって……?」
「は!? あ、そっか、あんた知らなかったのよね……シュバリエっていうのは、純粋に個人がなした偉業に対して王室から与えられる称号よ!」
「つまり……タバサおねえちゃんってすごいってこと?」
「そりゃもう!……タバサって普段無口だけど、あの若さでシュバリエなんだ……」
「も〜!タバサ、つれないじゃな〜い!親友の私に教えないなんて〜!」
「聞かれなかった」
……騎士って聞いて、『プルート隊』のことを思い出したんだけど……このざわめき方だと、きっともっとすごいんだろうなぁ……
「それに、ミス・ツェルプストーはゲルマニアの優秀な軍人を多く輩出した家系の出で彼女自身が出す炎魔法も強力と聞いておる!!」
……キュルケおねえちゃんが胸をはってオスマン先生の紹介に答える
……軍人さんの家か……きっと、鎧とかがいっぱいあるんだろうなぁ……
「そして、ミス・ヴァリエールじゃが……」
ルイズおねえちゃんが今か今かと構えている……
「えー、そのー、なんじゃ、数々の優秀なメイジを輩出したヴァリエール公爵家の息女であり、えー、将来有望なメイジと聞いておる!!」
……ルイズおねえちゃんが、ホントに「ガクッ」て音がしそうなぐらい肩を落としたんだ……
……また拳がプルプルふるえてる……うーん、なんとかしてあげたいなぁ……
「そ、それに、その使い魔であるビビ君は、異国のメイジとして、祖国を救った英雄の一人と聞いておる!!」
「え?ぼ、ボク!?」
……突然の紹介に驚いて、辺りを見回すと、先生達がこっちを見てる……うぅ、恥ずかしいなぁ……
「そうですぞ!それにビビ君はガンd」
「ゲホゴホウォッフォン!!あぁ、風邪でもひいたかの!うん!」
……?オスマン先生、さっきまであんなに元気だったのになぁ……?
「……さて!ともかく、諸君らに全てを任せる!ミス・ロングビル、すまんが、道中の案内と監督を頼めるかの?」
「えぇ、もとよりそのつもりでしたわ」
「うむ、では、魔法学院は諸君らの努力と貴族の義務に期待する!!」
「「「杖にかけて!!!」」」
「え?え?えと……あの……で、デルフにかけて!?」
……何となく、合わせないとダメなのかなって思っちゃったんだ……
「はぁ〜いい天気ね〜!このままピクニックでも行っちゃいたいぐらいだわ〜!」
「キュルケ!気をぬきすぎよ!!私たちは魔法学院の期待を背負ってるんだからね!!そ・れ・と!!ビビに勝手に抱きつかないでっ!!」
「え〜、いいじゃな〜い!まだ道のりは長そうなんだし〜!」
……ボクたちは、天気のいい中、フーケがいるっていう森を目指して馬車の中にいたんだ……
タバサおねえちゃんは読書、ルイズおねえちゃんとキュルケおねえちゃんはいつもの喧嘩……それで……
「ミス・ロングビル!何もあなたが御者をしなくてもよろしいですのに〜」
「いえ、私は貴族の名を失ったものですから……」
……ロングビルおねえさんが御者さんをやっていたんだ
……「貴族の名を失う」って言うときのロングビルおねえさん……なんか、悲しそう……?
「あら、その辺りのことを詳しく聞きたいですわ!」
「ちょ、キュルケ!やめなさいよ!人にはね、言いたくないこととかあるものなの!!貴族なんだから、慎みをもちなさい!!」
「え〜、だって退屈じゃな〜い!じゃビビちゃんといちゃつく〜♪」
「あぁっ!こらーっ!!いい加減にしなさーいっ!!」
「娘っ子たち、元気だなぁ〜……」
「う、うん……元気だね……」
デルフは最初から鞘から出しておいたから今もしゃべってる(戦闘になったときに鞘から出せないって危険だもんね……)
……そんな春のあったかい日差しの中、あのおっきなゴーレムと戦わなくちゃいけないかもしれないって中を、
ボクたちはピクニック気分で馬車に揺れていったんだ……
「――こんなこっていいのかねぇ、相棒?」
「な、なんとかなると思うよ?……多分……」
――
投下完了。さーて、おマチさんどうしてくれようか…
お目汚し失礼いたしました
乙でした〜
なんと言うピクニック気分w
これからおマチさんがどんな素敵な目に会うのかわくわくします
黒魔道士の方、乙です。
……うわあ、ちょうど同じあたりだしw
そちらは素っ頓狂な策を使わずに、スパーンとキリよく終わりそうですな。
ラスボスさん乙
ってかあの男こんなところまで来ていたのかw
乙です。
……つか肉球て、ラケットか、ラケットなんだなww
>>539 お互い、がんばりましょうぞ!
…まぁ、ウチのバカの子たちは緻密な作戦計画とか練れないんで…
「肉球」に「破壊」という修飾語をつけることに違和感を覚えないのかハルケギニア人はw
ハルケギニアでも肉球には破壊的な魅力があるんだよw
ハルケギニアの錬金術で柔らかい石を作ってみようの巻
もれなくゾナハ病がセットについてきます。おまけでオートマータもね!
そこでオリハルコン@スプリガンですよ
デブぬこの肉急に顔面プニプニされたら、あらゆる意志を破壊される覚悟がある。
と言うわけでプリーズリターンブータニアス郷。
柔らかい石を召喚したルイズが溶けた水をみんなが飲んじゃったでござる、の巻
過剰な貴族の誇りに目覚める者と
魔法コンプレックスに目覚める者と
巨乳コンプレックスに目覚める者の
どーしようもないバトルロイヤルがそのうち始まる!!
>>549 なんだ、虚無のバーゲンセールじゃないのか
>>509 そこに佐藤大輔も加えてやってください。
つーか、ノボルも加わったらどうしようw
肉球でプニっと人を飛ばせます
sienn!
ナナー ナナー ラップで召喚
ガンダールブでごめーん いきなりスイマメーン
夜もふけてきたところで、一つ投下してもよろしいですかね?
・・・なんか凄い方々の後な上、まだ予告編(?)くらいしかできませんが。
作品は「装甲騎兵ボトムズ」より、キリコ・キュービィを召喚で。
予約等がなければ2:00丁度あたりに。
ハルケギニアで飲む苦いコーヒーキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!!
なんというハルケギニア終了のお知らせ
地獄を見れば 心が乾く
支援
559 :
装甲騎兵ゼロ:2008/12/10(水) 02:02:00 ID:4n+75Lay
予告
紅い月と蒼い月。
夜空を煌く双月の、ここは大陸ハルキゲニア。
魔法が跋扈するこの世界で、ゼロと蔑まれる少女は願った。
険しき己が道を、ともに歩むものが現れることを。
やがて一人の男が彼の地に呼び出される。
不死の体で今一度、最低野郎を引き連れて。
装甲騎兵ゼロ「召喚」
お楽しみに。
今回はこれだけです。一応4話までありますが、まだ修正しなきゃならんとこが一杯で・・・
BGMとか銀河万丈ボイスを脳内で補完するとより楽しめます。
……
うどん食いてー
(がちょーん)
サイヤの使い魔読んだが、
悟空が原作そのままの強さでうどん吹いた、
悟空は国家を破壊するどころじゃない強さなんだから
召喚された影響で身体能力や戦闘能力がゼロ魔世界にレベルに低下とか
某バトロワみたいに調整しろよwwwwwww
キリコと言ったら、ブラックジャックのキリコ
……タバサの母親関係で色々ありそう
それでは面白さまで低下してしまう
そんなら原作読むわいってな
>>563 その類いの悟空改変物をドラゴンボールGT(ごめんなさい 鳥山先生)
と呼ぶんだぜ。
はいみんなはくしゅー
場合によっては最初に枷を作っておいたがいい場合もあるが
悟空みたいに生身で強い奴とかはせいぜい瞬間移動が使えないぐらいしか思いつかん
デストロンガスでどうこうみたいなのもあったが、必要性も感じないし
よろしいならばゼロ魔キャラを底上げだ
とりあえずワルドはセル完全体並みの戦闘力にしてエアニードルの威力は大陸を吹き飛ばすぐらい
ギーシュはメタルクウラ並みの戦闘力のワルキューレを一度に数百体を錬成できるようにしてだな
クリリンやチャオズやヤムチャが、相対的には周囲のパワーインフレでよわっちく感じるのに、
一般人の尺度で測ると神レベルの強さ、みたいなもんだな
三大かませであるギーシュやワやおマチさんだってそうだし
俺の脳内設定では
DBキャラが違う世界に行くと身体能力や戦闘能力がその世界に応じたレベルになって弱くなる、
逆に他の世界のキャラがDB世界に行くとDBキャラ並の身体能力や戦闘能力になる、
つまりルイズが竜なしで空飛べたり魔法で大陸破壊とかそんなレベル、
ストリートファイターのリュウの真空波動拳が
VSシリーズでは極太ビームになるのと同じ理屈、
どうだ、画期的だろ?
以上チラシの裏
ただ悟空やベジータがギーシュ相手に苦戦するのも何か違うと思う
子供のときの悟空呼べばいいんじゃないの?
超サイヤ人3とかベジットじゃ強すぎて話が作れん。
まあ描写の問題だよ、
かめはめ波が岩破壊する程度だとか
元気玉が直径100mクレーター作る程度だとか、
悟空無双はそのままでいい。
武器で斬りまくっても傷一つつかないってのは引いたし。
ヘタレな頃のポップ召喚してルイズと共に徐々に成長していく姿とか見てみたいなー
>>574 かといって武器で切られて血を流すのも
子供時代の悟空ですら銃弾は痛いぐらいで血は一滴も流さない身体なんだし
>>576 そこはワンピみたいに寝て食えば治る風にしときゃいい。
悟空はパワーバランスもそうだが、ゼロ魔キャラと比べるといまいち"薄い"ように思う
召喚するならMrサタンのほうが、あのクドさといいサタンマジックといい、ゼロ世界に似合う
うんじゃ戦わない主人公を呼ぼう
580 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/10(水) 05:45:03 ID:Dp953M5U
未来版トランクスが見たいな
剣使いだからデルフとの相性もいいだろうし、ホイポイカプセルなんかも驚きの目で見られるだろうし
敵は何とか辻褄合わせて完全体セルとか魔人ブウを登場させれば「どうやって倒すんだ・・」みたいな感じで見れるし
ただそうなったらゼロ魔キャラ完全に置いてけぼりだろうけど・・
下らん妄想申し訳ないです
>>563 つまり原作のドラゴンボールを 蹂 躙 しろとおっしゃる?
GTにすごろく界とかそんな名前の気が使えない場所があったことを思い出した
自分は戦わずに先生になって弟子に戦わせる
弱い弱いといわれてるヤムチャですら
ピッコロ大魔王より遥かに強いサイバイマンと互角に戦ってたから
本気出せば地球征服位軽く出来るからな・・・
他のZ戦士がいるからやらないだろうが
Z戦士は基本的に呼んじゃいけない気がするw
ここであえての実写映画版ドラゴンボールエヴォリューションかr…
すまん、俺が悪かった
5分後、第8話を投下させていただきます。
>>551 日浦功は……もうダメージなんか受けないんだろうな
ハリウッド版ってどうなったっけ?
情報規制か契約の問題か、それともスルーしているのか。
ジャンプで見た覚えがないのだが。
TVでちょっと見た記憶はあるがな。
日本人なら全力でスルーされそうな出来っぽいが。
空賊如きメディルにとっては物の数ではないが、人質に取られた船員の身を案じるルイズの命により、手が出せないでいた。
三人は大人しく、空賊船の一室に入ることになった。
「どうする?」
「しばらくは様子を見るしかあるまい。」とワルド。
暫くすると、乱暴に扉が開き男が二人入ってきた。
「頭領がお呼びだ。来い!」
連れて行かれた船長室で明らかになったのは衝撃の事実だった。
なんと空賊の正体はアルビオン王党派の空軍で、その頭は捜し求めたウェールズ皇太子だったのだ。
流石に簡単には信じられなかったが、彼の風のルビーと水のルビーが反応し、虹が出来たことで信じざるを得なくなった。
大使であるルイズ一向はアルビオン王国最後の砦であるニューカッスル城へと招きいれられた。
招かれたあまりにも粗末な皇太子の部屋で、ワルドが少しの間だけ席を外した。
少しといっても、1分程度の時間だったのでルイズも皇太子も不審に思わなかった。
「そんな・・・アンリエッタが・・・結婚・・・!?」
姫の文を渡された皇太子は驚愕のあまり声が震えていた。無理も無い話だ。
そのまま無言で、机から小箱を取り出し、何度も呼んだのであろう、ボロボロの文をルイズに渡した。
「殿下、どうか亡命してください。」
明日には敗北すると言う絶望的戦況を聞いたルイズが溜まらず叫ぶ。
「これは姫様の願いです!」
ルイズは悟っていた。あの文には亡命を勧告する一文があったことを。
だが、皇太子の返事は首を横に振ることだった。
「僭越ながら殿下。」とメディルが口を挟む。
「何だね、ミスタ・メディル。」
「5万ぐらいなら、やってやれないことは無いですが・・・」
メディルは少し控えめに言った。
本音を言えば、今の彼は一国を一人で敵に回しても勝つ事の出来る程である。
「貴殿の武勇は聞き及んでいる。しかし、大使を戦争に巻き込むわけにはいかない。」
「左様でございますか・・・それでは最後に一つだけ聞き入れては下さいませんか?」
「何かね?」
メディルの口から出た申し出は意外なものだった。
「ルイズと共に、部屋の入り口付近に行ってくれませんか?」
「は?」
「殿下、お願いです。彼の言う通りに。」
まだ短い付き合いだが、彼女はメディルの人となり・・・否、「魔となり」を知っていた。
彼は意味も無くこんな事を言う者ではないと言うことを。
言われたとおりにルイズとウェールズが移動したところで、メディルは二人から離れた位置にいるワルドに向き直った。
「役者は揃い、文も受け取った。もう猿芝居はいいのではないか?・・・ワルド。」
メディルの言葉の意味がルイズとウェールズにはすぐには理解できなかった。
「何を突然言い出すのかね、ミスタ・メディル。」とワルド。
「生憎と、我々魔族は嫉妬や憤怒、欲望と言った人間の負の感情に敏感でな。
貴様が我々を欺いている事は先刻承知だったのだ。すぐ殺すことも出来たが、案内役と生かしてしておいた。」
「何を馬鹿げた事を・・・なあ、ルイズ。」
ワルドはルイズを見やった。しかし、その目は婚約者に対するものでは到底ありえなかった。
ウェールズもまた、杖を構えている。
「皇太子殿も、このような人間ですらない者の言うことを真に受けるなど・・・」
「確かに、我々魔族は長い歴史の中で星の数ほどの人間を苦しめ、殺してきた。
だが、貴様のように主を裏切ったものは少なくとも私のいた軍にはいなかった。」
メディルの台詞が終わると、ワルドは俯いて黙り込んだ。しかし、すぐに狂ったような高笑いをした。
「ああそうさ。僕はアルビオン貴族派レコン・キスタの刺客。
ルイズと文とウェールズの命を手土産にここを去るつもりだったが、
どうやらルイズは諦める他なさそうだ。だが・・・」
ワルドは懐から杖を取り出し、ウェールズに襲い掛かった。
「文と皇太子の首は逃さん!!」
ワルドの杖がウェールズの心臓に命中する――寸前で、ワルドは飛びのいた。
そうしなければ、メディルが不意を突いて放った火炎呪文で焼け焦げていたから。
「皇太子を殺したければ、私を殺してからにするのだな。」
「面白い。風が最強たる所以とスクウェアメイジの恐ろしさを身を以って知るがいい。ユビキタス・デル・ウィンデ!」
ワルドが詠唱を終えると、部屋の中に、合計五人のワルドが出現した。
「一つ一つが意志と力を持った分身か。」
「一目で見抜くとは流石だ。スクウェア相手に5対1で勝てるかな?」
笑止とばかりにメディルが眼前の一人に最強火炎呪文・メラゾーマを放つ。
しかし、ワルドは周りに強風を起こし、火炎を受け流した。
「君の攻撃は分析しつくしているよ。火炎は見ての通り、フーケを仕留めた死の言葉はサイレントで防ぐ。
爆発も他の魔法も同じ事。そして・・・」
言い終わらぬ内に二人のワルドがルイズとウェールズに襲い掛かった。
「君と正面から戦う必要も無い。」
ドカッ!二人の心臓に深々と杖が突き刺さった。
しかし、次の瞬間その顔が驚愕に染まった。
あろう事か、二人の姿はゼリーの様などろどろの生き物になり、そして崩れ落ちた。
「それはジェリーマンと言って、他人に化けることの出来る連中だ。
普段の姿のときは音も無く移動し、液体であるがゆえにドアの隙間からでも入れる。
ちなみに本物の二人はジェリーマンに持たせた文の指示の下、同じく持たせた消え去り草というアイテムで姿を隠している。
貴様が私に気を取られている僅かな隙を突いて種を仕込ませてもらった。」
「やはり君を先に殺さねばならないようだ。だが、扉を固めてしまえば、二人が脱出する術は無い。」と言いながら一人がドアを封鎖した。
そう。この部屋にはたった一つの扉以外に出入り口は無かった。メディルとの会話中も、ワルドは音に気を配っていた。
その彼の記憶では、ドアの開く音はしなかったので、部屋から出てない事だけは間違いない。
「そうだな。消え去り草もいずれは効き目が切れるだろう。だが・・・」
メディルが未だかつて無い殺気を放った。それは彼が本気でワルドを殺しにかかろうとしている証だった。
「それまでに貴様の息の根を止める!」
投下終了です。皇太子の部屋が少し変わっていますが、これは意図的にやっています。
支援
投下乙ですー。
さすがは魔王軍の参謀だな。ただまあ近接戦闘にいささか不利があるのが不安要素かな?
>>588 いまワイドショー見てたら浜崎あゆみが主題歌を歌うとか来年3月上映だとか言ってた
ブルマが凄いことになってた。なにあのララ=クロフトモドキ。
実写版「ゼロの使い魔」かあ…サイトとシエスタ以外は外人さん俳優で逝くとして…
よく憑依系でルイズ達を見て「あ原作そっくりあれは確かにルイ(ry」とかあるけど
アニメまんまのキャラが実際にいたら不気味だろう
某完結作を書けない某御大の某作で宇宙人が地球人に親近感もってもらおうとアニメまんまの姿に化けて地球人と接触しようとして地球側に引かれるというエピがあたが
手がけるのはあのアニメや漫画の実写化に定評のある青少年に悪い影響を与えかねない某T社ですね、解ります
時間はある。書く道具(ワードかルーズリーフ)もある。資料もある。書かなくちゃという気概もある。なのになかなか筆が進まない。
そんな事ありませんか?
byとあるSS作家の呟き
書いてる内にルイズが「誰お前」状態に…初めから聞き分けがよく、空気を読むルイズなんてルイズじゃないよね
ハルケ住人からすれば余りにも不気味な存在だったら流石のルイズもいきなりご主人様宣言なんかしないよね?
そういわれてもな。
忘れてないか?
ルイズがサイトを酷い扱いするようになったのはルイズの私室で
サイトがルイズを襲ってからなんだぞ。それまでは平民の使い魔に
不満を漏らしはしても扱いはさほど酷くなかった。
異世界なんていう頭がどっかいっちゃったようなことしゃべっていても
一応は話を聞いてやるくらいの分別もあった。
ならば、最初からルイズを襲ったりしないような、
最低限の礼節をわきまえてる奴ならルイズぶちきれも少ないはずだよ。
とくにある程度有能なら、まるきり無能のサイトより扱いも良くなって当然。
食堂でのあの食事は十分ひどいと思うが。
しかも少しでも気に触ると食事抜きだし。
どうにも、自分が書くと登場人物が全員原作より優しくなってしまっている気がしてならない
もうちょっと厳しくするべきなのだろうか
>>600 魔法が使えないことを散々バカにする歌を歌いだして爆笑した後、料理に魔法かけないで下さいね、爆発するから
なんていうのが少しだなんて……お前の心の広さには敵わんぜ
進めているストーリーの矛盾点やキャラの性格の矛盾なんかを8割方書きあがったときに見つけて
大幅修正しなきゃいけないときの悲しさ
つか、ちゃんと考えてから書き出さないとなぁ…
投下したあとに
「やべ、デレすぎた」って悔やむことが稀によくある
さじ加減が難しい、ルイズにしろクロスキャラにしろ
>>596 俺の場合は
時間はある。書く道具(ワードかルーズリーフ)もある。書こうという気概もある。だけど原作読んだ事ない。
半端な知識で書いたら怒られるから書けない。書かないんじゃなくて書けないだけ。いやー残念だ。
いや、書く時間あるなら読めばいいじゃねーか
自分の場合、話の筋に関係のないどうでもいい事で悩んで執筆が止まる事がある
ルイズたちより年下な感じの美少年にするか…
それとも、ルイズたちよりちょっと年上のイケメンにするか…
それとも、素敵なナイスミドルにするか…
設定忘れちゃって原作読んでたら
なんとなく1巻丸まるよんじゃって、おぉい! ってなる事がたまに
二次創作を始めてから原作を見返すと、いちいち新たな発見があるよなあ。
つか、自分がどんだけ二次創作に毒されていたかが改めて解るというw
まー、クロスの場合はシエスタのあたりとか設定違っていること多いし、無理に原作そのまんまでなければいけない、という訳でもないんだが、そこらは塩梅だよな…。
俺が書かないのは連載をあっちこっちで始めすぎているからだ…ごめんなさい。色々と、ごめんなさいorz
SSに限ったことじゃないけど、制作に着手する前の構想練ってるときが一番楽しいよね。
ああ、楽しい
だが実際に書こうとすると進まないんだこれが、臆病だからよっぽど書き溜めないと投下なんて出来ないぜ
>>602一回目だから拳骨かアッパーカットぐらいで勘弁するさ。
「書かなきゃいけない」という強迫観念にも似た「義務」になっている時点で、創作意欲はかなり減ってるんじゃなかろうか。
ま、幸いにして俺は「書きたいこと」がまだ沢山あるけど。
>>612 打ち方次第で歯がへし折れる殴り方が慈悲深いと抜かすか
ついでに顎ぶっ壊すと後々の生活にも支障でるしな
とんだドSの拷問狂の居るスレだ
おおこわいこわい
一発だけなら誤射かもしれないby朝日新聞
>「やべ、デレすぎた」って悔やむことが稀によくある
>さじ加減が難しい、ルイズにしろクロスキャラにしろ
クロムウェルのデレ具合のさじ加減が難しいと読んだ
>>617 お前はどんな話を書いているんだw
どうでもいいけど「稀によくある」って、稀なの? よくあるの?
エセ中国語の「そんなことナイアル」と同じ種類の矛盾なの?
ないアルよ
>>619 ないのか、あるのか、はっきりしろ
バチン!!
原作読みながら、この場面はあのキャラならこう動くかな?そしてそれに対する周囲のリアクションは?
このキャラとあのキャラが対面したらどういう会話がされるのか?
と妄想するのもまた楽しい
問題はそれを文字にすることだ・・・
>>618 おいィ?俺にネタの説明をしろというのか;
ここはルイズ嬢に虚無らしく「風林寺隼人」を召喚してもらおう
・・・・・虚無っつーより混沌というか混乱というか
そもそもアレを制御できる人間がどっかにいるのか
もう、虚無ればいいじゃない
>>622 じゃあ、長老じゃなくて謎の青年我流Xにしようぜ
>>618 稀にしか起きないけど、起きても大して驚かない・あるあるwってなるくらいのことと解釈してる
角に足の小指ぶつけたりとか
>>599 異世界に拉致られたことに対する同情を差し引いても、結構自業自得な面があるよな。
アンチルイズものとか読むと、原作読んでないよなぁって思うときがある。
なぜか最近になってブロント語使うアホがあちこちで沸くようになったな
誰かソニック・ザ・ヘッジホッグ版を作ってくれ
やっぱ原作は読んだ方が良いよな
ここがアニメ板だからっつっても、ゼロ魔の原作はラノベなわけで、
そしてアニメは数字の取れる萌えやエロが重視されているんだろうから、
原作を読んだ方がキャラや世界観をより深く知ることが出来るだろう
こんなこと、いちいち言われなくても分かってるかw
お久しぶりです。
いろいろあって間が空いてしまいましたが、どうにか投下できるくらいまで執筆できました。
流れ的に言うとエピソードの半分くらいなのですが、分量的に前後編に分けなければならなくなる量になりそうなのと、間を開けすぎるのもあれなので思い切って投下に踏み切ることにしました。
特に予告もないようなので、18:30ぐらいから投下します。
途中で五分くらいあいたらさるさんの可能性もありますので、その時は避難所を確認してみてください。
その時は代理をどなたかお願いします。
PS 友人は助かりました。今度入院したらあぼーんだそうですが。
うおおおお魔砲の人きた!
これでかつる!
なのはキターーーーッ!
これで勝つる!支援
管理局の白い……
残りあと100KBほどだが、支援しよう
これから投下開始いたします。第二十二話、襲撃。
次スレ用意しとくか?
翌日、ルイズ、なのは、タバサの一行は、ガリアの妨害を受けることもなく無事にロマリアに到着した。
聖地に次ぐ第二の聖なる場所である都市。だがそこは、同時に矛盾に満ちた場所であった。
「でも驚いた。こんなことも出来るなんて」
ルイズは言葉を選びつつも、賞賛を絶やさない。
今タバサ達『四人』は、ロマリアの市街を教皇の元へと向かっていた。
お忍びであるため、用意された鑑札も、ただの巡礼者としてのものである。この時点で、ルイズ達はこの街に潜む矛盾に気がついてしまった。
ルイズもタバサも、本来の身分は他国においてもかなり上位のものに属する。だがそのような上位者は、訪問に際しても一定の格式を暗黙のうちに要求される。今回はそんなことをしていたら問題がありすぎるため、あらかじめ仮の身分が用意されていた。
ルイズを中堅よりやや下の貴族とし、なのはやタバサはその従者という扱いである。タバサは元貴族ということにしておいた。この程度なら無碍に扱われることもなく、また過度に歓迎されることもない。
信心深い貴族が、あこがれの聖都巡礼に来た、程度の使いで済まされる。
ただ、困ったのがシルフィードの扱いだ。本来なら馬車か船で来る予定だったのであるが、シルフィードは使い魔とはいえ竜である。普通竜を預かるような場所は軍関連以外あまりない。ないわけではないが、よけいな興味と詮索を引くことは間違いない。
かといって見知らぬ土地のこと。郊外で待機していてもらうのも問題だ。
ところがタバサがあっさりと解決策を提示した。
街外れに着陸したあと、タバサがシルフィードに何かを命じた。
「ええ〜、あれは窮屈だからいやなの〜」
「シルフィード」
彼女はいやがっていたが、タバサが言葉鋭くにらみつけると、渋々それを実行した。
次の瞬間、そこに巨大な竜の姿はなく、タバサによく似た青い髪の、スタイルのよい女性が出現していた。
……全裸で。
「な、な、な、」
何故か慌てるルイズに対して、タバサは顔色一つ変えず、荷物の中から服を取りだした。
それを思いっきり嫌そうな表情のまま着るシルフィード。
きちんと服を着てしまえば、タバサの身内といっても通用しそうな姿になった。
「これで問題ない。行きましょう」
ルイズがあっけにとられていたのも気にせずに、タバサは街の方を目指した。
そして一行四人は、なんの問題もなく街に入っている。
だがその表情は、一様に暗かった。
「ずいぶん荒んでますね……」
「噂とは大違い」
なのはのつぶやきに、タバサが相づちを打つ。
宿を確保して一息ついた一行だったが、全然疲れがとれるような気分にはなれなかった。
ここまでの道すがら見た光景は、特にルイズにとって衝撃的なものであった。
なのははテレビやニュース、そしてわずかだが自分の目でもこういう光景を見たことがある。
タバサも本国からの任務をこなす折りに何度かこういうものを見ている。
だが、ルイズは今までこういう世界を見たことがなかった。
確かにトリステインの下町あたりには貧しい人の集まるスラムのような場所がある。そこが危険な場所だということも知っている。
だが、それでもそこにいる人々は生活をしていた。飢えてはいたが、あそこではなにがしかの『仕事』をして何とか食べていくことが出来ていた。物乞いだっていたが、それだって……
こんなにたくさんじゃなかった。
そして何より、目の光が違いすぎた。
ルイズにはうまく言えなかったが、こう、『希望を使い果たした』とでもいうような目だった。
そして何より衝撃を受けたのは、そんな人達がごく普通に町中に点在し、そして明らかに豊かな、きらびやかな服装をした、神官と思われる人達が、
彼らをまるで存在しないかのように、ごく自然に無視したまま通り過ぎたことだった。
荷物を整理し終わる頃には、夕餉の時間になっていた。その間ルイズは、ずっと窓の外を無言で見つめていた。
「ご主人様、ご飯の用意が出来たそうですが」
宿の人の知らせを受けたなのはは、ルイズに言葉を掛けた。
「なのは」
返ってきたのは、短いが、強い言葉だった。
「なんなの、これ……ここが始祖のお膝元とでもいう場所なの?」
「知りません」
怒ると同時に縋るようなルイズの言葉を、なのははばっさりと切って捨てた。
「私だってここに来たのは初めてです。ご主人様以上のことを知る道理がありません」
「なのは……」
不安げに揺れるルイズの瞳。それに対して、その忠実なる使い魔はこう返した。
「ならば、自分の目で確かめるしかありませんね」
「なのは」
「今はやるべきことが他にあります。ですけど、そのくらいの時間は、たぶんとれるんじゃないかと思いますよ」
ルイズの瞳に力が戻っていた。
「ご飯。待たせると悪い」
「おなかすいたの〜、きゅい」
そこへ見計らったかのように、タバサとシルフィードの声がかかる。
くう
それと同時に、ルイズのおなかが小さく鳴った。
ものすごい勢いで真っ赤になるルイズ。だがその時使い魔と親友達は、礼儀正しく後ろを向いてドアに向かっていたところだった。
ダイレクト火砲支援
夜。
闇の帳は、ロマリアだけでなく、アルビオンにも、トリステインにも等しく下りてきていた。
そんな中、郊外にいくつもの大きな塔を抱える建物−−トリステイン魔法学院に向かう影があった。
「手筈を確認する」
闇の中、一人の男が言った。
「アルフ隊とベイ隊は、この塔に侵入。四階に宝物庫があるから、そこを見張れ。あの学院には、『眠りの鐘』って言うやっかいなものがある。それを使われたら一気にこちらが瓦解しかねん」
「出来れば奪取、最低でも宝物庫への侵入を防げばいいんだな」
「ああ、無理はするな。何しろあそこはメイジの巣窟だ。大半はガキとはいえ、教師の中にも腕利きはいるだろう。本塔の他の場所は他の部隊が押さえる」
「メンヴィルヌ殿の部隊には囮をお願いしたい。困難かつ割に合わない役目だが、他の役では相手を殺せないのだ」
「まあいいだろう。俺も思う存分人を焼き殺せる」
「その間に本隊が寮塔を襲撃する。狙いは女子寮だ。男子寮はついででいい。が、押さえられるなら押さえろ」
「女子寮を押さえて人質を取ったら、他の部隊はいったん撤退、近くに潜伏しろ。交渉終了と同時に、猛攻が来るだろうからな。こちらの撤退を援護してくれ」
「判った」
その日はトリステイン魔法学院の歴史に残る日となった。
早朝……だか、早起きな平民達が起き出してくるには少し早い時間。
闇を切り裂いて、いくつもの火球が容赦なくそこにあった建物を蹂躙した。
「うわあっ!!」
「な、なんだ!」
平穏をむさぼっていた人達が慌てて逃げ出す。そこに容赦なく襲いかかる新たな炎。
焦熱地獄が出現していた。
「何事だ!」
「賊です! 火のメイジもいるようです!」
騒ぎに目を覚ました学院の教師達は、本塔へ駆けつけてきた。
「うろたえるでない!」
浮ついた彼らを一喝したのは、オールド・オスマンその人であった。
「賊の目的は不明だが、明らかにこちらを殺す気でかかってきておる! 今日の宝物庫当番は!」
「あ、はい、私です!」
ミス・シュヴルーズが、宝物庫の鍵を掲げながら叫ぶ。
「すぐさま『眠りの鐘』を取って来たまえ! ギトー君、彼女と一緒に」
「はっ」
打てば響くかのようにギトーが答え、すぐさま本塔を駆け上がる。
「火と風のものは襲ってくる相手を見定めたまえ! 無理はせんでよろしい。従軍経験のないものは無茶したらいかんぞ! 水と土は守りに入る。狙いは宝物庫か生徒かじゃろう! 寮塔の守りにつくんじゃ」
なんだかんだと言われてもさすがはオールド・オスマン。相手の狙いを即座に読み切っていた。
だが彼にとって不運だったのは、相手が自分たちの力量ではとうてい対処できない、一流の部隊だったことであった。
本塔を駆け上がったシュヴルーズとギトーは、宝物庫の前に取り付く幾人もの人影を見た。
「曲者っ!」
ちらりと影が見えると同時に、ギトーはためらうことなく『エア・カッター』をたたき込む。
「ぐあっ!」
宝物庫の扉にたかっていた賊は、その一撃であっさりと吹き飛ばされた。
「ふっ、たわいもない」
そうギトーが思った瞬間、今度は彼が吹き飛ばされていた。
「ギトー先せ……っ」
シュヴルーズがそういいかけた時、いきなり後ろから羽交い締めにされて喉を押さえられる。同時に別の人間の手が腰に下げた鍵を奪い取っていた。
「へっ、たわいもないな」
「思った通りだ。案の定、鍵を持ってきてくれたな」
その場に投げ出されるシュヴルーズ。男二人は、悠然と宝物庫に近づいていく。
「く……けほっ」
喉を痛めつけられ、まともに詠唱が出来ない。相手はメイジの弱点をよく知っている。
素人は杖を奪って安心する。だが杖は予備を持つことも出来る。
一番安全なのは、こうやって喉を潰すことだ。詠唱無しでは魔法は使えない。
今の彼女に出来るのは、せいぜい一番得意な『赤土』の練金程度だった。
それもせいぜい、小指の先ほどが精一杯だろう。
だが、それでよかった。ひどい目にあったものの、その点だけは始祖ブリミルに感謝します、とシュヴルーズは思った。
他の誰でも、このまま為す術もなく、宝物を強奪されていただろう。だが自分なら。
彼女は痛む喉から声を絞り出して、魔法を使った。
『……』
そしてそのまま、意識を失った。
男達は鍵を開けようとして、その鍵が入らないことに気がついた。
よく見ると、鍵穴が土でふさがれている。おそらく、『練金』で土を詰められたのだ。
男は鍵の方を見た。複雑な形状で、差し込んだあと回せばいいと言う単純なものではない。
刻みをつけただけの鍵ならば何とかなったかも知れないが、このような複雑な形の鍵穴に土を詰め込まれてしまっては、掻き出すことすら出来ない。
「どうします、隊長」
「痛み分けだな。宝物庫は封鎖された。しばらくどちらにも手は出せん。そこの二人を縛って人質にしておけ。後は本隊に任せろ」
「はっ」
本塔の宝物庫は、ミス・シュヴルーズの機転によってかろうじて守られた。
だが、それ以外の部分ではほぼ全面的な敗北を喫していた。
数はこちらの方が圧倒的に多い。だが、敵を相手にして立ち向かえる気概を持った人物はほとんどいなかった。
わずかのうちに、生徒、教師あわせて二百名近くの貴族が人質としてとらえられていた。
腕に覚えのあった教師も、生徒を人質にされては手が出なかった。
最初の襲撃によって焼かれ、死んだ教師や衛士もたくさん出ていた。
その焼け焦げた死体を見せられて、生徒の大半が抵抗の気力をなくしていた。
「やれやれ、完敗じゃのう」
オールド・オスマンは、縛られたままぼそりとつぶやいた。
そして捕まった人質達を見渡す。
(じゃが、まだ希望はある。この場にいない彼らが動いてくれれば……何とかなるんじゃがのう)
捕まった人物の中に、何名かの欠けがあることにオスマンは気がついていた。
教師一名、生徒二名。
だがそれは、オスマンの知る限りこの学院内では有数の使い手であった。
そのうちの一人、キュルケは近くの茂みに隠れていた。
決闘の心得はあっても、このような集団の戦い、ましてや無慈悲にも相手を殺戮していく戦いにはあまり縁がなかった。
つい先頃、アルビオンでそうなり掛けたが、本格的な戦闘が始まる前にルイズとなのはの働きで決着が付いてしまっていた。
だが、あの体験は決して無駄ではなかったらしい。
夜半、何故か異様な気配を察知したキュルケは、身支度を調えるとそのまま寮塔を出て使い魔達のたまり場へと向かった。そこでフレイムの姿を見た時、襲撃が始まった。
罪もない平民の宿舎を焼き払い、出てきた平民すら焼き殺す残虐さ。
いち早く飛び出した幾人かの教師もあっさりと倒された。
そこまで来て、初めて自分が感じた異様な気配が、つい先日、ニューカッスルで奇襲を受けた時のそれとそっくりだったことに気がついた。
前回もきっとこの気配はあったのだろう。だが自分にはそれがなんだか理解できなかったため、無意識的に無視していたに違いない。
だが前回の奇襲で、この感覚ははっきりと『危険』と認識されたらしい。そして再び同じ状況に陥った時、今度は体がはっきりと警告を発したのだった。
フレイムをつれ、襲撃者から逃れる方に動く。何とかしたいが、一人では多勢に無勢だ。
学院のみんなには悪いが、最悪自分だけでも脱出して王城なりなんなりに知らせを届けることになるかも知れない。
その時、キュルケの目が光を捕らえた。まだ伏兵が? と思ったが、その光の位置がある名物教師の実験小屋であることに思い至った。
まさか、と思いつつ、キュルケはそちらへと向かった。
まさかがそこにあった。
実験室の扉を開けると、そこではミスタ・コルベールがなにやら怪しげな機械を動かしている最中だったのある。
「ミスタ・コルベール!」
さすがにキュルケも頭に来て怒鳴ると同時に杖を振りかざす。だがそこまでしてもコルベールは目の前の機械の方に注目していた。
さすがにキュルケも違和感を感じる。彼は変わり者ではあっても、人の話を無視するタイプではない。よく見ると彼の耳に何かが詰まっているのに気がついた。
どうやら何かの理由で耳栓をしていたらしい。これでは外の騒ぎも判るはずがない。
彼女は黙って彼の背後に立ち、それにコルベールが反応する前に彼の耳から耳栓を抜き取った。
「わっ! なにを……おや、ミス・キュルケ……!」
何事かと振り返ってキュルケの方を見るコルベール。が、次の瞬間その表情が一変した。
キュルケも見たことがない、ものすごく引き締まった『武人』の表情。
思わず彼女は目をこすってしまった。
「ミスタ……?」
「敵襲ですか、ミス・キュルケ」
驚いたことに、こちらがなにも言わないうちにコルベールは今の状態を『敵襲』と言い切った。
「はい」
そう答えることしかできないキュルケ。
コルベールは機械を止めると、外の様子をうかがいつつ言った。
「本格的にこれを実験する前でよかった。本格稼働させるとこの機械は轟音を発するのでね。そんなときに扉を開けたら、一発でこちらの存在がばれるところでした」
「それで耳栓を……」
問い返すキュルケに対して頷くコルベール。
「ミス・ツェルプストー。判っている限りの状況を」
いったん扉を閉め、わずかな明かりもすべて落としてから、コルベールはキュルケに聞いた。
「はっきりとしたことは判りませんわ。ですが、ここが気づかれなかったことといい、相手の動きは収まり掛けている気がします」
「そうですか……だとすると、偵察してこないといけませんね。ミス・キュルケ、あなたはここに隠れていなさい。明かりが付いていたにもかかわらず襲われなかったということは、相手はここに気がついていない可能性が高い」
「……はい」
不満ではあったが、とりあえず頷くキュルケ。
「自慢できる話ではありませんが、ここに来る前は軍にいたこともあります。それに私は教師ですよ」
そういってコルベールは実験室を出て行った。
キュルケは、まるで別人のように精悍な表情をしていたコルベールを思わず見送ってしまったが、もとよりこんなところにじっとしていられる彼女ではない。
だが彼のいうとおり自分の技量では危険なのは確かだ。だが付近の様子は気になる。
少し考えた後、キュルケはこんなときこそ活躍できそうな相棒の存在に思い至った。幸い襲撃していたのは火のメイジ。それだけということはないだろうが、主力が火なら危険は格段に少ない。
(いきなさい、フレイム。夜の散歩のように、私に状況を伝えて)
(御意)
ギーシュやモンモランシーほど熱狂することはなくとも、しっかりと日常会話は教え込んでいたキュルケ。会話できるほどの語彙はないものの、このような返事が出来るくらいにはなっていた。
そしてキュルケの忠実な使い魔であるフレイムは、ゆっくりとたまり場から離れていった。
sien
支援
一方、夜の闇の中をコルベールは走る。普段とは別人のように鋭く、確かな動きで。それでも彼にとっては不満な動きでしかなかった。
(だいぶなまっていますね……まあ私も歳ですし)
自嘲しつつも、その動きは素人のものとは思えない。
闇に紛れるようにして付近を動き回った彼は、襲撃者の配置をほぼ掴んでいた。
(ある意味終わっていますね……兵力の大半が撤収中、有力なもの何人かが交渉に備えて待機というわけですか。これは僥倖です)
相手の動きを見て、コルベールにはその意図がほぼ掴めていた。人質を取り、それを監視できる人数を残して残りが周辺に潜伏・待機。これはおそらく政府筋に要求を出したあと、人質解放と共に脱出するための布陣。
当然のことながら交渉時には相手も武力を率いてくる。包囲されることになるだろう。そうなると脱出には外部との連携がどうしても必要になる。そのための兵力をこうしてあらかじめ外に出しているのだ。
(こんなご時世にこんなことをするとすれば、相手はアルビオンのレコン・キスタとかいう奴らでしょうか。なんでこんなことをするのかはよく判りませんが……)
ルイズ達のことは学院内では当事者以外ではオスマンしか知らなかった。
(人質になっている生徒達は、朝までは大丈夫でしょう。まずは……)
それからさほどの時も経たないうち。
学院を出、近くの森の中で再集合した部隊の元に、死に神が降り立っていた。
森の中、点呼する彼らの間に、わずかな異臭が漂う。
油の匂い? と思った時には遅かった。
決して派手ではないが、わずかな閃光のみを伴った燃焼が一帯に炸裂する。
それはコルベール必殺の魔法。練金によって燃えやすい油を空気中に漂わせ、それを一瞬にして燃焼させることにより大気中より酸素を奪い取り、範囲内の相手を窒息させる虐殺の魔法『爆炎』。
それを今回、術の一部に手を加え、代名詞でもある爆炎が目立たないように炸裂させた。
燃焼には必ずしも光を伴うとは限らないのだ。
そしてほんの数分の後、周辺には顔を紫色に染め、苦悶の表情を浮かべた死体がたくさん転がっていた。
それを沈痛の表情で見るコルベール。
「『科学』の知識は、本来決してこんなことに使うものではないはずなのに……」
それはかつて、自らの手で燃やしたとある村に伝わっていた書物。
自らの死が避けられないと知った時、遺産として受け取ったもの。
『あなたもきっと、なにも知らされずにここへ赴いたのでしょうね……』
疫病の根絶の名目の元行われた新教徒狩り。その中で託されたもの。
それは一つの赤い貴石と何冊かの書物。
『私の命は上げるわ。でもこれは、これだけは駄目なの。これは残さなければならない……もしあなたの仕事が『疫病にかかった村人の処分』なら、これを廃棄する理由はないはずよ』
結局彼は、その遺産を人知れずに受け取った。
赤い貴石は、戒めのために手元に置いている。
書物は内容をすべて暗記したあとに燃やした。
その書物は、使い方によってはまさに世界を根本から変えてしまう意味を持っていたからだ。
『自然科学』と称されていた、未知の学問。
この世界を魔法に頼らずに見つめ直した書。
今使った『爆炎』の魔法の原理も、その書から学んだものだった。
人が生きるためには、『酸素』と名付けられた、大気の一要素が必要であり、それは燃焼によって使用される。
火事で人が息を詰まらせて死ぬのは、そのせいである。
そのほかにも、その書はこの世界のあり方を、『魔法抜きで』語っていた。
若き日のコルベールは、それにあこがれると同時に、その危険に気がついた。
その書物には、それが発展した場合の文明の姿も暗示されていた。
そこには魔法使いなどいなくても人は豊かになれる−−そういうことが書かれていたのだ。
コルベールにとっての誤算は、襲撃者の中にある人物が混じっていたことだった。
視覚に頼らず、敵を察知できる人物が一人いたこと。
その人物だけは、それからすこしのち……コルベールが学院に戻るより早く、別働隊の運命を悟っていた。
風に乗って運ばれる、炎と死の臭いによって。
「すまん、少し出る」
メンヴィルヌはそういって立ち上がった。
現在この場に残っていた仲間は総勢七名。二百人いる人質を押さえるにはどう見ても少ないが、そこはそれ、ちゃんと手は打っていた。
人質を二つに分け、その一方だけを厳重に監視する。
厳重な方はほとんどが女性。それもトリステインで特に身分が高い女性を厳選している。
筆頭公爵の娘が不在だったのは残念だが、それでもこちらの誰かが傷ついたら大きな問題になる人物だ。
それに縛られて男子生徒を初めとする教師達すら手出しが出来ない。
「どうした?」
そう聞いてくる同志に、メンヴィルヌは軽く手を振って答えた。
「なに、野暮用だ。用足しって言うやつさ」
「なんだ。時間掛けるなよ」
「とは言ってもなあ、ま、急いでくらぁ」
そういうメンヴィルヌの顔は、何故か不自然なくらい輝いていた。
(間違いない……この臭い、別働隊、全員やられたのか? だとすると相手はおそらく、あの隊長並みの腕利きか……)
これから始まる闘争の予感に、彼は全身が激しく昂ぶるのを感じた。
その時、彼の嗅覚に、かすかに漂ってくる『匂い』があった。
獣や蛇の匂いに混じって、ほんのわずかに漂う『女』の匂い。
ここで捕らえた『乙女』とは違う、男をよく知る『雌』の匂いだ。
メンヴィルヌは盲目の戦士であった。目を失った代わりに、彼は匂いと温度に対して異常なまでに敏感になった。
特に肉の焼ける匂いと、人間の体臭・体温に。
それはある意味視覚を越えていた。
そんな彼の感覚にかかった新たな匂い。男をよく知る女の匂い。
おそらくはこちらの手を逃れた教師か。メンヴィルヌはそう判断した。その匂いがこちらを伺っている。
「ちょうどいい……食前の酒をいただこうか」
メンヴィルヌは、あえて隙を作りつつ、木陰へと向かって行った。
支援
sien
フレイムに様子をうかがわせていたが、敵は小勢にもかかわらず、呆れるくらいに隙がなかった。生徒と教師の大半……おそらくは全員が講堂に集められているらしい。
しばらくフレイムの目を通じて監視していたものの、相手の動きもコルベールの動きも判らない。
彼が逃げたなどということは、キュルケは毛ほども疑っていなかった。彼が見せたあの表情は、キュルケの男を見る目を直撃していた。
もしあれが逃げるような男だとしたら、自分の目は節穴以下である。
だが、ついに動きがあった。
一人の屈強そうな男が、講堂から出てきたのだ。
監視の目を男に移すと、男は何かを探すように動き、やがて木陰に向かって行った。
その行動にキュルケは覚えがあった。男がトイレを探す時の様子だった。
しめた、と思った。人間、出すものを出している時はきわめて隙が大きくなる。
これはチャンスだ。
キュルケは意を決して、隠れ場所であった研究室から出た。
木陰で立ち小便をするふりをしていたメンヴィルヌは、『女』の匂いが急激に強まったのを感じていた。先ほどまでの残り香とは違う確かな匂いが、空気の中に漂っている。
まだ熱を感じ取れるほどではないが、近づいてきているのは確かだ。
それを悟った彼は、股間から己のものを取り出すと、本当に放尿をはじめた。
これは彼にとっても賭だった。自分の出したもので、女の匂いがどうしても途切れるからだ。もしこのときに遠距離から熱も匂いも伴わない攻撃……土系統の魔法などで攻撃されたらかなり不利になる。だがそれは杞憂だった。紛れもない女の熱が、彼の感覚にかかってきた。
そしてそれを越える、熱い炎の感触。
どうやら相手は火のメイジだったようだ。
そして彼は、しずくを切って己のものをしまうと、一歩横に動いた。
その脇を、巨大な火球が通り過ぎていき、奥の立木に命中した。
あっという間に火だるまになる立木。講堂の方にもばれるだろうが、今の状況でならせいぜい出てきても一人だろう。なら邪魔をするなと言えばいい。
そして彼は悠然と女の熱の方を見ると言った。
「よう、お熱いお誘いだな」
相手の体温が上がるのを、彼は察知していた。
ラストでさるさん喰らいました。代理お願いします。
とのことなので、
>>651が最後です。
さるさん解けたかな? というわけで投下終了です。
続きは一応何とか年内には。コミケとかもありますが頑張ります。
次回23話はキュルケファンの方、お待たせしましたな内容になる予定です。
それでは、また。
654 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/10(水) 19:08:01 ID:fihbYir1
魔砲の人乙です
久しぶりに来てくれたw
久々乙!
乙
魔砲の人乙っした!
キュルケの活躍にwktk
放尿中に攻撃されたら不利というかそれでやられたら恥ってレベルじゃねえぞ
何故か青いつなぎ姿のメンヴィルヌを想像したw
乙です!
逆に考えるんだ。噴水で火を消せばいいと考えるんだ
エヴァのシンジ君が召喚されたら、一体何の役にたてるのか考えるスレになりました
>>661 シエスタのお祖父さんがダミープラグだったなんてー
>>662 そうそうw
こっちの場合は「殺(や)らないか」だろうけど
>>658 放尿中のやつに不意打ちして返り討ちに合うほうが恥ずかしいと思うがな。
どこかの傾奇者は圧勝してるし
小便首のキュルケ……。
ここでピクル召喚
食料は山ほどある、グリフォンやらなんやら
ルイズ裂けて死んじゃうだろ
「ところでこのファイアーボールを見てくれ。こいつをどう思う?」
「凄く…熱いです…」
何故にくそみそな流れにw
ギトー、スクウェアなのに頼りねぇw原作でもこんなもんだから問題はないけどねw
ところでメンヌヴィルってクラス明言されてたっけ?
673 :
谷まゼロ:2008/12/10(水) 20:56:00 ID:Hhw+vG+3
予約がありませんようなので、21時00分より5話を投下させていただきたいと思います。
674 :
谷まゼロ5話:2008/12/10(水) 21:00:03 ID:Hhw+vG+3
ここは学院長室。
コルベールが淡々と、オスマン氏に説明していた。
話がいったん終わるとオスマン氏は重々しい口調で喋り始めた。
「つまり、こういうことじゃな。生徒のミス・ヴァリエールは使い魔召喚に成功したが、
『コントラクト・サーヴァント』が出来なかったというわけじゃな?」
コルベールが自分の描いた谷の仮面のスケッチをオスマンに渡して言った。
「そうです、それで契約を妨げている可能性として、この仮面が理由にあるのではないかと、
もしかしたら、マジックアイテムの一種かもしれません。オールド・オスマン」
「うーむ、まだ決め付けるには早計であろう、今度ディティクトマジックをかけて魔法が関係しているか確かめてみなさい」
オスマンは自分の髭を撫で、どこか興味無さ気にそう言った。
コルベールが応えた。
「そうですな」
二人がそんな話をしていると、ドアがノックされた。
「誰じゃ?」
扉の向こうから、女性の声が聞こえてきた。
「私です。オールド・オスマン」
「なんじゃ?入ってきてくれ」
ドアを開け、入って来たのは、学院長付き秘書のミス・ロングビルであった。
理知的で凛々しい顔しており、大人の女性の色気がある。
ミス・ロングビルは、少し慌てたように言った。
「ヴェストリの広場で、決闘をしている生徒達がいるようです。大騒ぎになっています。
止めに入った教師がいましたが、生徒に邪魔されて、止められないようです」
「まったく、暇をもてあました貴族ほど、たちの悪い生き物はおらんわい。で、だれが暴れておるんだね?」
「一人はギーシュ・ド・グラモン」
「あの、グラモンのとこのバカ息子か。親父も色の道では剛の者じゃったが、息子も輪にかけて女好きじゃ。」
オスマン氏は机を、拳でコツコツと叩いた。
「相手は誰じゃ?」
「……それがメイジではありません。ミス・ヴァリエールの使い魔の青年のようです」
オスマン氏とコルベールは顔を見合わせた。先ほどまで噂していた使い魔のことだったからだ。
「教師達は、決闘を止めるために『眠りの鐘』の使用許可を求めております」
オスマン氏の目が、鷹のように鋭く光った。
「アホか。たかが子供のケンカを止めるのに、秘宝を使ってどうするんじゃ。放って置きなさい」
「わかりました」
ミス・ロングビルが去っていく足音が聞こえた。
自分の秘書が居なくなったのを確認すると、壁にかかった大きな鏡に向って杖を振った。
すると、鏡面にヴェストリの広場の様子が映し出された。
コルベールは、オスマン氏の行動に疑問を思った。
「オールド・オスマン?」
「うむ、まあ、暇をもてあましている者は、ここにもいるというわけじゃ」
どこかイタズラ坊主を思わせるような、おどけた口調でオスマン氏はそう言った。
支援
676 :
谷まゼロ5話:2008/12/10(水) 21:02:23 ID:Hhw+vG+3
所変わって、ヴェストリの広場。ここは魔法学院の敷地内、『風』と『火』の塔の間にある、中庭である。
西側にある広場なので、そこには日中でも陽があまり差さない。戦いにはうってつけの場所である。
しかし……先ほどのギャラリーに加え、噂を聞きつけた生徒たちまでが集まり、広場は溢れかえっていた。
「諸君!今日僕は一人の可憐なる乙女のために!そして然るべき罰をこの平民に与えるため!
ここに杖を掲げ、この者と決闘を行う!そして今!その戦いの火蓋は切られる!!!」
ギーシュが薔薇の造花を掲げた。うおーッ!と歓声が沸き起こる。
「ギーシュが決闘するぞ!相手はルイズの平民だ!」
谷とギーシュは、逃げ場を断つかのように集まっている大勢の人間達に囲まれていた。
それはもはや、人で出来たコロシアムのようであった。
「とりあえず、逃げずに来たことは褒めてやろうじゃないか」
ギーシュは薔薇の造花を弄りながら、歌うように言った。
まあ、本当は戦わずに降参してくれるのが一番だけどな、こちらも心痛まずに済む。
何せ、君には礼を言いたいぐらいなのだからね。だが、遠慮はしないよ。
モンモランシーが危険にさらされたこと自体は許し難い。
不敵な笑みを浮かべたギーシュはそう考えていた。
谷が何かを我慢できないものを無理やり抑えつけたような、イラついた調子で言った。
「早くしろよ」
「ふん、いいだろう。だが、僕はメイジだ。だから魔法で戦う。よもや文句はあるまいね?」
相手の反応をうかがう。しかし、谷は、まるで石像のように動かず立っているだけであった。
「……まあいい。ああと、言い忘れていたよ。僕の二つ名は『青銅』。青銅のギーシュだ。
従って、青銅のゴーレム『ワルキューレ』がお相手をするよ」
ギーシュは話し終えると余裕の笑みで谷を見つめ、そして薔薇を振った。
花びらが一枚宙に舞ったかと思うと……、甲冑を着た女騎士の形をした人形が現れた。
ワルキューレとギーシュに呼ばれた青銅の人形。身長は人間と同じ程度。
それは、ギーシュの思いのままに動かせることが出来、戦闘にでさえ使用できるほど細密な操作が可能であった。
ワルキューレ自立して動き、ギーシュの横についた。
「さてと、ぐずぐずしていたら観客たちにどやされてしまうからね、いけ!ワルキューレ!」
命令を受けたワルキューレは機敏に動き、谷に向って走り始めた。
ワルキューレは走る勢いに力をそのまま乗せ、谷にその青銅の塊の拳を放った。
次の瞬間ルイズとキュルケは驚きを覚え、他の者は当然のものとしてその光景を見た。
谷は、ワルキューレの攻撃を受け吹っ飛び、体を地面に打ちつけながら転がった。
大きな歓声が巻き起こった。
支援は自重しないッ!
紫煙
同撃支援拳
680 :
谷まゼロ5話:2008/12/10(水) 21:04:59 ID:Hhw+vG+3
「……え?何でよ?タニならあんな青銅像ぐらい紙屑同然でしょ?」
殴り飛ばされた谷を見て、そう呟いたのはキュルケだった。
しかし、そう思うのも無理はない、昨日あれだけの力を見せておきながら、この有様なのだから。
それに加え、キュルケは昨晩見せた力が谷の全てではないとも考えていた。
なのにもかかわらず、谷は地面に倒れている。何が何だが理解できなかった。
「ねぇあれってパフォーマンスの一種かしら、ルイズ」
「……」
ルイズは答えなかった。何かねばついたものが心の奥にあったからだ。
もしかしたら、と考えるが、その考えを頭を振ってかき消す。
そんなはずはないと。
谷を殴り飛ばしたギーシュは満足であった。
ギーシュはタニが酷い怪我をしないように手加減し、その上で戦いの負けを認めさせるような絶妙な加減をしていた。
だが、何かが変であった。
ギーシュが不安を胸に抱いていると、何事もなかったように谷が立ち上がった。
ワルキューレを指差して谷は言った。
「おい、オマエ。その像は一体だけか?」
何を聞いているのだろうかとギーシュは思った。
「そんなことを聞いてどうするつもりだい?僕は一体で充分だと思っているからそうしているだけさ」
「全部だせ」
ギーシュはその言葉にカチンと来た。
ワルキューレの攻撃を蚊が刺したようなものを言わんばかりの態度も気に障ったが、
まるで、ギーシュ側が劣っているかのような言い草であったからだ。
ギーシュの心は乱されていた。イラついた調子で言う。
「いいかい?君のためを思って言うが。この戦い、早く降参するのが一番いいのだよ……」
ギーシュの言葉を聞くと、自分を殴り飛ばしたワルキューレの前に立って、
拳を大きく振りかぶった。ワルキューレを殴ろうとしているのだった。
ギーシュは谷の行為をせせら笑った。
「殴ろうというのかい?僕のワルキューレを?はっ!止めておきなよ。青銅といっても、人間の素手では……」
言い切るか否かの瞬間。ギーシュは言葉を失った。耳に、聞こえ慣れぬ金属が一瞬でひしゃげる音が届いたからだ。
そう……無言で谷がワルキューレを殴り飛ばしたのだ。
それは、まるで球を空に投げたかのように綺麗な放物線を描いて、
悠々と人垣を飛び越え、学院の壁に衝突し爆ぜた。その様子を人々は、ただ呆然と目で追った。
ワルキューレはまるで、子供が食い散らかした食べカスのように地面に散らばった。
青銅像ぶつけられた学院の壁には大きな亀裂が入っていた。
谷から目線を外し、ワルキューレを目で追っていたギーシュは、そのなれの果てを見て驚愕した。
全身から汗が噴き出してくる。歯の根が合わない。
振り返り、改めて谷の姿を見た。先ほどまでネズミに見えていたものが獅子に化けたかのように見えた。
まるで、突然天国から地獄に突き落とされたような気分であった。
今まで、期待していたもの全てが断ち切られたギーシュ。
眼は泳ぎ、後ろに後ずさった。だが、逃げることはできない。取り囲む観客たちがそれを許さないだろう。
も、もももももしかしてぼ、ぼぼぼ僕はとととんでもな……。
681 :
谷まゼロ5話:2008/12/10(水) 21:08:02 ID:Hhw+vG+3
谷が地面を指をさして、ギーシュを脅すように短く言った。
「全部出せ」
「……ヒっ!……は、はい」
ギーシュは顔は半泣きに加え鼻水までちょっと垂れて、情けない顔になっていた。
平民との戦い、それを安くて美味い戦いだと思っていたのだ。
負ける筈がないと思っていたのだから、この状況は予想だにしないものであった。
ギーシュは従うしかなかった。従わなければ殺すという谷の意思が感じられたからだ。
薔薇の造花である杖を振り、花びらが宙に舞う。今度は一体ではない、新しく現れたのは実に六体。
今のギーシュが出せる最大数であった。
ギーシュには先ほどまでの余裕はすでに消えうせていた。
自分がとんでもない勘違いをしていたことがわかったのだ、しかし時はすでに遅し。
足抜けはもう出来ない。ギーシュは、躊躇しながらも谷に聞いた。
「これで全部のワルキューレ出したが……いったい何を」
ギーシュはこれからワルキューレを全部破壊され、
最後のメインディッシュに自分が宙に舞うことになるのではと、考えていた。
だが、谷は俯き気味の顔をギーシュに向けたまま、手で招くような動作をした。
「全部でかかってこいよ、さもないと……ぶっ殺す!」
ギーシュは恐れおののいた。
いったい何がどうして?そう思わずにはいられなかった。
「うぁっあ!!」
ギーシュは片方の手で顔を庇いながら、目を瞑ったまま杖を振り、ワルキューレたちに谷を襲うように命じた。
ワルキューレは一丸となって谷に代わる代わる拳を振るった。
谷は仁王立ちをしたままそれらすべての攻撃を一身に受けた。
打撃で、顔を殴れれのけ反り、胴を殴られ上体は折れ曲がった。
衣服は破れ、体には血がにじみ出る。まさに一方的な暴力であった。
周りを囲むギャラリーは凍りついていた。
あれほどの力を体現した仮面の男が、何もせずにただ殴られているのだから、異様に感じているのだった。
仮面のせいで表情がわからないので、苦悶の表情は見えない。
そのことが見ているもの全てに不気味さを増長させる。
まるで、不死者を見ているような感覚であった。
尚もまだワルキューレにより暴力は続いた。
次第に辺りから囁くような声が聞こえてくる。
二人を囲む観客たちも、もう決闘を楽しむ様相ではなくなっていたのを理解していた。
だが、なぜかその場から立ち去ることができない。
一人の生徒が呟いた。
「お、おいあれってなんだよ、なんで戦わないんだ。もう10分は殴られてるぞ……普通の人間なら死んでるはずだぜ」
夢から覚めたい谷を支援
683 :
谷まゼロ5話:2008/12/10(水) 21:10:14 ID:Hhw+vG+3
谷は、殴られても蹴飛ばされても、何事もなかったようにまた立ち上がった。何度でも何度でも。
谷の体は鮮血で染まっていく。
ギーシュが止めようとすると、谷が怒声を上げそれを止める、それが何回も繰り返された。
すでに、六体のうち二体のワルキューレは殴り続けたせいで腕の部分が欠損している有様であった。
ボロボロになっていく谷を見ていたルイズは我慢しきれなくなり、人垣を分けて、
谷のいる場所に向おうとした。だが、キュルケがルイズの手首をしっかりと掴んで止めた。
「っ!……離してよっ!止めないとタニが!!」
つい先ほど、ギーシュのことを大笑いしていたとは思えないほど真剣な表情をしたキュルケが言った。
「やめなさいルイズ。タニは……あれは自分の意思で望んでやってることよ。
それに横槍を入れてみなさい……きっとあなたも、ただじゃ済まないわよ」
「っでも……でも!」
キュルケはルイズの目を見たまま首を横に振った。
ルイズは自分の無力を呪った。
でも……なんでこんなことを……?
ルイズは何故タニがこのようなことをしているか考えてみた。
だが、考えが深まるごとに不安は増すばかりであった。
も、もしかして……もしかして、……そんな!?
ルイズの中で一つの答えが出た。
もしかして、谷は死のうとしているのではないかと考えたのだ。島さんが居ないこの世界に悲観して。
その答えが頭によぎった瞬間、ルイズの凄まじい速さで血の気が引いて行った。
自分が出した答えを、必死にかき消そうとするが、逆にそうする度に頭の中での存在感が増してゆく。
そんな……そんなのってないわっ!!タニやめてよっ!!やめなさいよっ!あんたわたしの使い魔でしょ!!?
谷がまた殴り飛ばされ地面に転がった。
ワルキューレは攻撃を受けていないのにもかかわらず、三体が行動不能になっていた。
それほど激しく谷を痛めつけていたのだった。
だが、それほどの暴力を受けたはずの谷は、まるで寝床から起きるような自然さで立ち上がった。
そして、何か呟いていた。
684 :
谷まゼロ5話:2008/12/10(水) 21:12:44 ID:Hhw+vG+3
「っ……ねェな」
誰も聞き取れないほど小さな声であった。
何を言っているのだろうかと、ルイズは耳を澄ました。そうするとまた聞こえた。今度ははっきりと。
「っ全然痛くねェ。……夢だなコレ」
谷の声は震えていた。
まるで、母親を彷徨い探す迷い子が泣いているような、そんなやるせなさがあった。
谷たちを取り囲んでいた者たちは、谷の発言はただの強がりにしか聞こえなかった、だがルイズは違った。
「っ!!?……っう!」
ルイズは思わず口を手で塞いだ。眼の奥から涙が溢れてくる。
わかったのだった。谷の胸中が。
ルイズに現実として伝えられた事実。
それをまだ信じたくないのだ。
何よりも大切な『島さん』に会えないという事実を。
認めたくない、認められる筈がない。
認めたしまったら。何もかもが壊れてしまう。
夢だと信じなければ、立ちあがることも出来ないのだ。
島さんが居なければ、谷はこの先の人生を一歩も歩くことはできない。
谷は、新しくそして常識からかけ離れた世界に迷い込んだとしても、
残してきた自分の家族のことを思い浮かべなかった。
二度と学校に通えなくなることの心配など頭の片隅にもなかった。
これからどこで生活し、どこで糧を得ればいいのかなどということは考えもしなかった。
ただ一つ、ただ一点だけ。
島さんという女性についてだけ考えを寄せていた。
彼の頭の中には、島さんしかいない。
「クソっ……クソっ!夢だ……絶対夢だろっ……痛くねェなら夢だろ!
頼むから、お願いだから誰でもいいから夢って言ってくれ!!!!夢じゃなきゃ困るんだよ!!!!」
誰に対して言ってるのか谷自身にもわからなかった。
「オレって『夢オチ人生』のはずだろ?いつだってそうだったじゃねェか!!!
夢を見る度に、島さんが出てくる夢をみてっ!!!なんかこうっ……ちょっといいムードなんかになったりして……!!
で、でもっ、いいところで夢から醒めて……ああ、また夢だったんだって……落ちこんで……っ!!」
……その方がましだ。っクソ!クソッ!
「人に夢が見せるもんがなんかは知らんが……見せるなら、島さんが出る夢にしやがれっ!!!」
まさしく谷だ
GJすぎる
686 :
谷まゼロ5話:2008/12/10(水) 21:15:25 ID:Hhw+vG+3
ルイズは頬には一筋の涙が流れていた。
谷の島さんに対する想いの強さ、そして谷とってこの世界が無類の地獄に違いないことがわかったのだ。
そして、この希望がない世界を彷徨い続けなければならない事実。ルイズは悲惨すぎると思ったのだ。
対するギーシュはこの異常な状況を全く理解できていなかった。
だが、自分が本能的に危険を感じている事だけはわかった。
そうだ……降参しよう!そうだそれが一番だ……!
確かに誇りは大事だが、このままでは、あのワルキューレのようにバラバラにされてしまうよ!
ギーシュはゴクリと喉を鳴らしてから恐る恐る谷に向って言った。
「た、頼む。も、もう君の勝ちでいい……僕はこの戦いを……」
「ウルセェ!!!さっさと来やがれ!!!ぶっ殺すぞっ!!!」
ギーシュの言葉は涙ぐんだ声の谷によってかき消された。
怯えきったギーシュには、谷の言葉に逆らう力はなかった。
また同じようにワルキューレに命じ、谷を殴り飛ばした。
殴られた反動で、谷のズボンの後ろポケットから何かが飛び出した。
谷の周りに紙吹雪のようなものが舞う。
谷はどこか慌てた様子で、空中に手を伸ばし掴み取ろうとするが、地面に散らばり落ちてしまった。
地面に散らばった紙を、四つん這いの姿勢になり、無造作にかき集め始めた。
その紙は、映画の前売り券であった。
一枚や二枚ではなく、集めれば束になるほど数がある様だった。
そして、一つの映画につき必ず同じのが二枚あった。
そう、大切な人と一緒に見るための二枚だ。
ふと、思い出したかのように、今までの行為とはかけ離れた静寂さを纏いながら、
まるで、死にかけの虫が足を動かしているかのような動作で、
谷は一枚一枚券を確認しながら集めていった。
「……拾わねェと。……あっと、この映画はもう終わってるじゃねェか……島さん誘おうとしたけどできなかったんだよな。
これも、これも終わってる……あ、これはあと少しで……って、そういや今日は何日だよ……。
確か、昨日からだから……そしたら、これは二日後までか……?っは……二日後ってなんだよ……っっうぅっ」
急に現実感が谷を襲う。現実と認めたくないはずなのに、確実に現実であることが明らかになっていく。
谷は手の中にある映画の前売り券が元に戻らなくほど強く拳を握った。
紙が折れ曲がってクシャクシャになった。谷の手は震えていた。
手だけではなく、谷は蹲り体を震わせていた。
687 :
谷まゼロ5話:2008/12/10(水) 21:17:59 ID:Hhw+vG+3
……いつものように電車に乗って、村上春樹の小説を読みながら学校に行って、
下駄箱で島さんに『おはよう』って挨拶されたのを、宇宙に飛び出るほど喜んで。
地学室で受ける授業で、教室の窓から向かい側の校舎に島さんが一生懸命授業受けている姿を眺めて。
部活で汗を流して頑張る島さんを、遠くから見守って……。
いつか島さんに告白して、島さんがOKしてくれるのを夢見る、そんな日常。
……それの何が悪いんだよ!!!!オレが何をしたってんだよ!!!!
谷は、券から手を放しゆっくりと立ち上がった。
そして、突然谷は人垣の方へ向かって歩き始めた。
谷が近づくと、まるで、その部分だけ波が引くように人垣が割れた。
ギーシュは、谷が気が済んだから、この場から去ろうとしているのかと思った。やっと終わったと安堵の色が顔に出た。
だが、その予想は甘かった。
谷は、ヴェストリの広場に建てられている銅像の前に立った。
その銅像は、メイジの姿をしており、そら高々に杖を掲げている像であった。大きさは谷の身長の三倍はゆうにある。
誰かを称えるものであろうか、それともただの飾りだろうか、それは谷にはわからない。
その場にいる者全員が谷の行動に注目する中、谷はその銅像の足に両手を回した。
誰も、谷が何をしようとしているのか理解できなかった。
急に銅像に抱きつくなんて気でも狂ったのかと思う者がほとんどであった。
だが、谷の周囲に取り巻く者たちは確かに聞いた。
何かが軋むような音を。そしてそれは谷が居るところから響いてきている。
谷の肩が、膨張しているように見えた。凄まじいほどの力がそこに込められているのだった。
「こんなクソみてェなのが現実っていうなら……」
不穏な音をたてて銅像の足に亀裂が入る。
「いらねェ……島さんがいない世界なんて……いらねェ」
周囲の者たちは、驚きのあまり一斉にのけぞった。
谷が、巨大な銅像を台座から引きちぎろうとしているのがわかったのだ。
「こっ、こんな現実……こんな現実!!!!」
そんなこと生身の人間が、ましてや魔法を使えない平民なんかが……出来るわけがない。
皆、そう考えていた。だが体が竦んで動かないことが、何を意味しているのか直感が知らしていた。
ここにいると危ないと。
支援
支援!
690 :
谷まゼロ5話:2008/12/10(水) 21:20:46 ID:Hhw+vG+3
「こんな現実ぶっ壊してやる!!!!」
台座から、銅像が離れた。その瞬間、皆逃げようと体を反転させ駆け出そうとするが、
谷は銅像の足を掴んだまま、まるでバットを振るような速度で、銅像を扱った。
一瞬で谷の周囲にあるものをすべて宙高く吹き飛ばした。
周りを取り囲んでいた野次馬、観客、教師、何もかもを無差別に銅像で薙ぎ払う。
谷は自分の体を軸にして回転し始めた。
それは暴虐の限りを尽くす竜巻の如く、無慈悲に何もかもを巻き込み、そして吹き飛ばした。
逃げる者も全て、そこにある物全て。逃げ惑う悲鳴が木霊し、阿鼻叫喚の地獄を作りだす。
谷は叫ぶ。まるで世界を越え、島さんに届くようにと、どこまでも力強く。
「オレは島さんがいる世界がじゃなきゃ意味がねェんだ!!!
島さんがいなきゃ、そんなの世界じゃねェ!!!!クソだ!!!!
オレは島さんが好きだ!!!誰よりもだ!!!
この先、どこの世界で!!どんな男が島さんの前に現れたって!!!
その男が島さんをどんなに好きだって抜かそうが!!!
誰であろうとオレの方が100倍は島さんのことが好きなんだ!!!!
オレが一番絶対島さんを好きなんだ!!!!」
「島さんが好きだああああああああああああああああああああああああ!!!!」
谷の仮面の目の部分に開いた穴から、滝のように涙が溢れていた。
泣いているのだった。流れる涙は止めどなく流れ続ける。
彼の暴虐も涙も止められる人物はここにいない。
何もかもが無くなるまで、続くに違いなかった。
谷の声がかすれるほど弩級の咆哮がヴェストリの広場を蹂躙する。
「ウッぁあぁあああぁあああああああぁあぁぁぁぁぁああああああ!!!!!」
無敵すぐるwww
wktk支援
693 :
谷まゼロ5話:2008/12/10(水) 21:23:31 ID:Hhw+vG+3
――全てが終わったとき、ヴェストリの広場で立っている者は誰もいなかった。
この現状を作りだした谷は膝から崩れ、蹲ってすすり泣いていた。
ルイズは、誰よりも早く谷がするであろうことを見抜いたキュルケに襟首を掴まれ、
引きずられるようにして、蹂躙の渦から遠くに逃れていた。
腰が抜けて座り込んでいるルイズが呟いた。
「……ぜ、全滅……タニで」
まさか、谷にこれほどまでの力があろうとは、思いもよらなかったルイズは目の前の光景が信じられなかった。
突然、掴んだルイズを放り出して、屈んでいたキュルケが立ち上がった。
急に襟首を離されたルイズは、地面に頭を打ちそうになった。
だが、キュルケの横顔を見た瞬間、何かを言う気は失せた。
キュルケが、この死屍累々のような凄惨な状況に一切目をくれず、ある一点のみを驚き入った顔で見つめていたのだ。
そしてその目線の先にあるのは、谷であった。
まるで、流れ星を見ることが出来た子供のように高揚感を抑えられないキュルケは言った。
「凄いわ……凄すぎるわ……タニ!ああタニ!こんなのありえないわ!
男を自分に『惚れさせたい』とは思っても、こんなにあたし自身が強く『惚れられたい』と思ったことはないわ!!」
「……き、キュルケ?あんた何言ってるの?」
信じられないといった表情をしたキュルケはルイズ詰め寄って言った。
「あなたわからないの!?もし、もしもよ?あれだけの愛情がもし自分一人だけに向ってくるとしたら!!
……そうよ!相手を壊してしまいそうなまで力強くて、そして曲がることを知らない直線的な愛情のかいなに抱かれたとしたら、
この『微熱』の二つ名を持つあたしであっても、燃え上がるどころか、燃え尽きて灰になっちゃうかもしれないわ!
それほどのよ!?これが興奮せずにいられるものですか!」
ルイズはキュルケに言われて初めてそのことを考えた。
自分一人にだけ、決して他の誰にも向かない確固たる愛情。
場所が変ろうが、世界が変わろうが、時間がどれだけ過ぎようとも、ただ一人自分だけを想ってくれる。
他人に、あそこまで愛されてしまったら自分はどうなるのだろう。
もし、あれほどの愛情が、自分だけに注がれたとしたなら……。
今まで恋愛という恋愛を経験をしたことがなかったルイズとって、それは考えるだけでも刺激的すぎた。
ルイズはギュッと胸元を手で強く掴んだ。
高鳴った胸の鼓動が静まらない。
694 :
谷まゼロ5話:2008/12/10(水) 21:24:56 ID:Hhw+vG+3
投下終了です。ありがとうございました。
それとまとめWikiに登録なさってくれた方、
遅ればせながら、感謝を申し上げます。本当にありがとうございます。
乙。
ルイズじゃ静止役すら出来んだろうしこれからどうすんのやら
本当に一人でハルケギニア崩壊させてもおかしくないからな谷
なんという熱(くるし)い男よ、谷
乙っしたー
支援しようとしたら終わっていた。谷の人乙です。
あと、ゼロと魔砲使い22話、メンヴィルヌはメンヌヴィルの間違いでした。wikiの方では訂正されています。
人の名前を間違える癖はどうにもならないなあ。特にカタカナだと。
谷ま乙
谷仮面大好きなんで無茶うれしいです
GJ!
谷の人、乙
>>695 谷って妙なところ(島さん絡み)で頭悪いからコロッと騙されそうだがw
うーむ何から何まで谷だなーw
GJ!
次回にwktk。
すげぇ乙。
谷っていうキャラが嫌というほど良く理解できた
けなげでいい話だと思ったら全部吹っ飛んだぜw
谷の人乙
ルーン無しでもガンダールヴ状態じゃないかw
乙でした。
しかしガンダールヴ補正なしでこれならルーンがついちゃった日には…。
おマチさん逃げてー! 超逃げてー!!
…ギャグ補正のほうがついて死にはしないか。
…まだ、序の口レベルだってのが怖いよな。
谷仮面の方、乙でした〜
元ネタ存じませんが、強いですね、谷w
えと、22:25くらいから第五話を投下したいと思うのですが…よろしいでしょうか?
島さんためならたとえ火の中水の中宇宙の中
それが谷クオリティ
「今日もこの漫画の男どもは、女子の意向を無視して先走る」
この間のハチワンダイバー1ページ目柱の煽り文だが、この人の漫画は昔からこのノリかw
支援支援
支援せざるを得ない
では、投下開始させていただきます
ゼロのルイズ
左手に使い魔のルーンが刻まれたゼロのルイズ
片手でギーシュを突き飛ばした
花の乙女の不思議な怪力で、壁にめり込むくらいに吹っ飛ばされたギーシュ
一応、生きていたらしく、直前に痴話喧嘩していたモンランシーの献身的な治療により、大して時間がかかる事なく復活した
…ルイズです
それ以来、「ゼロのルイズ」じゃなくて「馬鹿力のルイズ」とか呼ばれるようになったとです
乙女として、それはある意味「ゼロのルイズ」なみに勘弁してほしいとです
ギーシュに因縁つけられていたシエスタを助けたルイズ
コックのマルトーたちに
「貴族にも、こんな優しい人がいたのか」
と、大変感謝され、たっぷりのご馳走を作ってもらった
通常なら、一人ではとても食べきれないその量をぺろりと平らげたルイズ
…見事に、シエスタに秘密にしてもらった意味がなくなった
が、代わりに毎食、他の生徒の料理よりもちょっぴり大目に出してもらえる事になったため、結果オーライとした
「ん〜…」
のびのび
今日も、朝食が美味しかった
本日は虚無の曜日
つまるところ、休日であるこの日
当然、授業はない
「どうしようかしら…」
特に予定はない
大人しく自習でもしていようかな、とも思ったけれど、外はぽかぽか、いい天気
部屋の中に篭っているのは、何だか馬鹿馬鹿しい気がする
街にでも、出かけようかな、と何となく思い立ってみた
そうと決まれば、早速行動開始だ
ルイズは馬を借りるべく、部屋を後にした
そして、こちらはキュルケ
彼女もまた、本日の予定はない
殿方とのデートもない休日の過ごし方をどうしようかと考えていたキュルケ
何となく、ルイズの事が気になった
左手に使い魔のルーンが刻まれ、乙女にあるまじき食欲と怪力が身についてしまったルイズ
…同じ女性として、同情してしまう
人前では落ち込んだ様子をあまり見せないようにしているが…やっぱり、落ち込んでいるのではないだろうか
ここは、ライバルとして、ちょっと気合を入れてやらないと
そう考え、隣のルイズの部屋へと向かうキュルケ
こんこん、軽くノックをしたが……返事はない
間の悪い事に、キュルケが部屋を出るその少し前に、ルイズは馬を借りに、部屋を出ていたのだ
アンロックの魔法を使って部屋に無断進入したキュルケは、ルイズの部屋の窓から、馬に乗って学園を出て行くルイズの姿を見つけた
「街にでも出かけるのかしら?」
気分転換にでも出かけるつもりなのかもしれない
この時間に学園を出たとなると、昼食も外で食べてくるのか
………
待てよ?
「…あの子、ちゃんと自分の食費、払えるんでしょうね…?」
常人の2,3倍は軽く食べてしまうようになったルイズ
街に出て食事をするとなると、食費は大丈夫なのだろうか?
他人事ながら、少々心配だ
…仕方がない、自分もついていって、もし、食費が足りなくなりそうになったら助けてやろう
何だか、最近、妙にルイズの面倒が見たくて仕方ない
なんと言うのだろう、この感情…母性本能?
いや、それとは違うか?
「ま、どっちでもいいわよね」
とにかく、ルイズを追いかけなければ
馬を借りて追いかけるのが普通だが、それはちょっと面倒臭い
そうだ、タバサも誘って、彼女の使い魔の風竜の背中に乗せてもらおう
あの風竜、乗り心地良さそうだし
「それじゃ、フレイム。留守番お願いね」
「きゅる」
誰かが部屋まで誘いに来た時の対応は、フレイムに任せるとして
キュルケは鼻歌など歌いつつ、タバサの部屋へと向かったのだった
街へと到着したルイズ
ぐきゅるるるん、早速おなかを鳴らす
…し、仕方ないわよね、じょ、乗馬と言う運動をしたんだから仕方ないわよね!!
自分に言い訳しつつ、まずは食事をすべく、店を探すルイズ
今まで、無駄遣いを控えてきた為、お小遣いはそれなりにある
……とは言え
今の自分の食欲では、通常貴族が入る店で食事するのは不可能だ
払えない、絶対に払いきれない!!
仕方がないから、平民向けの大衆食堂を探すことにした
そして、発見したその店で……ルイズは、素敵な、素敵な張り紙を見つけた
『特盛りセット、20分以内に食べきったら料金タダ+賞金エキュー金貨10枚プレゼント!!』
なんと言う大盤振る舞いだろう
賞金にはカケラも興味ないが、タダ、と言うのは素晴らしい
ふわり、店から漂ってくる匂いからして、恐らく、不味いわけではあるまい
ぐぎゅーーーーーるるるん
空腹も、そろそろ限界に近い
本日のお昼は、この店に決定!!
果たして、どれほどの料理かとうきうきしながら店内に入っていく
……ざわ、と
店内が、あからさまにざわついたのが、わかった
それはそうだろう
こんな平民向けの大衆食堂に、あからさまにメイジとわかる少女が、入ってきたのだから
店長と思わしき人物が慌ててルイズの元へやってくる
「き、貴族様。この店は、貴族様向けのお料理はご用意できませんが…」
「いいの。それよりも、この特盛りセットとやら、20分以内に食べきったらタダ、って本当?」
「は、はい。今のところ、実現できたお客様はいらっしゃいませんが…」
「それじゃあ、その特盛りセット一人前、お願い」
ざわ…
ざわ……ざわ……
店内が、ますますざわつきだす
「特盛りセット…だと…?」
「あの、注文した客のことごとくを打ち破った、あの……?」
「正気か?あの貴族…それも、あんな小柄な…」
「…小柄な少女があれだけの量の料理を食べたら…おなかがぽっこり……ハァハァ」
最後、変な内容も聞こえてきたような気がするが、まぁ、大半の客はルイズの正気を疑っているようである
が、そんな事はどうでもいい
それよりも…それよりも、おなかすいた!!
「よ、よろしいのですか?本当に?」
「貴族に二言はないわ」
堂々と言い切ったルイズ
その言葉に、店長はきりり、わかりました、と表情を引き締め、厨房へと向かったのだった
「おっかしいわね〜、どこにいるのかしら、あの子」
「………」
部屋の中でサイレントをかけて読書にいそしんでいたタバサを、無理矢理引っ張り出してきたキュルケ
初めは、当然迷惑そうな様子を見せたタバサだったが、キュルケがルイズを追いかけたいのだと知って、承諾してくれた
この子も、ルイズの事が気になるのかしら?
他者に対してほとんど興味を見せないタバサにしては珍しい、とキュルケが思っていると
「…あの時、左手の甲が光った」
と、ぽつり、タバサが呟いたので、思わずぎくりとしてみる
ルイズの左手の甲にルーンが刻まれてしまったのは、自分とルイズ、コルベールとオールド・オスマン
そして、医務室の水メイジ以外は知らない事であり、絶対の秘密だからだ
ルイズがギーシュを突き飛ばした瞬間、あのルーンが光ったように見えたのは、気のせいじゃなかったのか
そして、タバサがそれに、気づいてしまっていただなんて
そ、そうかしら?と適当に誤魔化して、ひとまず風竜に乗せてもらい、街まで来たのだが…
ルイズの姿が、見つからない
入りそうな店は、一通り覗いてみたのだが、どこにも姿が見えないのだ
「どこに行っちゃったのかしら?」
「………」
ちらり
タバサが目を向けたのは、平民向けの食堂が立ち並ぶ界隈
まさか、あんな場所に……あ、いや待てよ?
食欲が増してしまっているルイズの事だ、食費を安く済ませようと、こちらに来ているかもしれない
そちらを探せば……ルイズは、すぐに見付かった
ざわざわ、随分と繁盛している店があるな、と思ったら、どうやらそうではなく
皆、珍しいものを見る目で、店内を覗いているのだ
好奇心に負けて一緒に覗いたら、ルイズはそこにいた
もぐもぐむしゃむしゃ
食事のマナーはきっちりと守って、しかし、通常では考えられない量の料理を平らげていっている
店のウェイターらしき男が半泣きだが、どうしてだろう?
「これ」
つ、とタバサが指差した張り紙を見て、キュルケは苦笑した
…なるほど、特盛りという言葉と、タダと言う言葉につられたな
もぐもぐもぐもぐもぐ…
………ごっくん
どうやら、食事が終わったようである
「ごちそうさま」
「………」
「時間、オーバーしてる?」
いいえ、とウェイターは力なく、首を左右にふった
そう、とルイズは笑顔を浮かべる
はじけんばかりの明るい笑顔
満ち足りた、そんな表情をしていた
「それじゃあ、お代はいらないわね」
「はい……エキュー金貨も……特盛りセット3人前お召し上がりになられましたので…30枚差し上げます……」
っちょ!?
三人前!?
またこの子は、どれだけ食べたのだ!?
全貌を見たわけじゃないからよくわからないが、時間内に食べきったらタダな上、エキュー金貨まで進呈されるような料理
生半可な量ではあるまい
それを、よ、よりによって三人前!?
……今のルイズなら、問題ないかも
何だか、納得してしまったキュルケ
隣でタバサが
「………負けた」
とか呟いていたが、特に気にしない事にした
「あぁ、金貨はいらないわ。これだけの料理を食べる事ができただけで、満足だから」
……あぁ、この時のルイズの笑顔は、店側にとっては女神の笑みに思えたのではないだろうか
確かに、結構な量の食事の代金が全く入らない、と言うのは店にとって大きな痛手だろう
しかし
しかし……だ
エキュー金貨を払わないですめば、まだ、店は続けていける
まだ、ここで諦めずにすむ
もし、ここでルイズにエキュー金貨30枚を支払ってしまったら…明日の営業すら、厳しいけれど
でも、払わずにすむのなら、まだやっていける
「……ありがとうございます、貴族様!!」
そう言ってウェイターは、深々と、深々と、頭を下げたのだった
あぁ、おなか一杯!!
つやつやてかてか、大満足なルイズ
いつの間にやら随分な数のギャラリーが集まっていたようだけど、気にしない
気にしたら負けだ、と思う事にした
よろしい、ならば支援だ
御免なさい、と人ごみをかきわけ、店を脱出し…
「はぁい、ルイズ」
……へ?
びし、と固まるルイズ
ぎ、ぎ、ぎ…と、ぎくしゃく、声のしたほうへと視線を向けると
「は〜い♪」
「……食いしん坊ばんざい」
笑顔で手を振ってくるキュルケと、その横で何やらよくわからない事を呟いている、タバサの姿が!!
…見られた?
あ、あの食事風景を見られた!?
ぼしゅしゅしゅしゅしゅしゅん!!と
ルイズは、物凄い勢いで頬を赤く染め上げて行くのだった
………
え〜……
うっかり取り乱しそうになりつつも、何とか抑えた
ルイズは、自分を褒めてあげたい気分である
どうやら、キュルケは自分を追いかけてきたらしかった
ルイズが、食費を払えないくらいに食べるのではないかと、心配してくれたようだ
し、失礼ね、私だって、それくらいは考えるんだから!!
ちょっとぷんすかしつつも、心配してもらえたのは素直に嬉しい
…最近、キュルケが随分と優しいような
気のせいだろうか?
悩みながらも、ルイズはキュルケとタバサと一緒に、三人で街を歩いていた
ま、まぁ、折角だし、一緒に行動してあげても構わないんだからねっ!!
とは言え、特別目的があった訳でもない
気分転換にならないかな、くらいの気持ちで来ていたのだから
特別、覗きたい店があった訳でもないのだ
それでも、ただ歩くのも退屈で、いくつかの店を冷やかしで覗いてみる
…最後に、気まぐれに武器の店になんて寄ったのが、不味かったのかもしれない
近頃、巷を騒がせている盗賊、「土くれのフーケ」の話などを聞かされ、その影響もあってか武器の売れ行きがいいらしい
まぁ、自分たちのような貴族は普通あまり武器を使わないが、警護の仕事をする平民のために、貴族が買い与えたりもしているらしい
貴族ばかりを狙う盗賊
…平民を狙うのと貴族を狙うのとでは、後者の方が危険度は数百倍高いが、その分儲けもかなりのものだろう
その盗賊、かなり腕がいいようだ
だとしても、まさか魔法学院までは入ってこないわよね〜、と他人事で考える
それに、自分たちはメイジだ
冷やかしで入っただけだから、武器を購入する予定もない
何も買わずに、店を出ようとすると
「っへ!ザマー見やがれ、折角のカモが逃げていくぜ!」
「コラ!デルフてめぇ!!」
へ?
何?今の声、どこから?
きょろきょろ、店内を見渡すルイズ
キュルケも不思議そうに辺りを見回しているが…
店内にいるのは、自分たちと武器屋の主人だけだ
一瞬、ちらり、と鼠か何かの尻尾が見えたけれど、あれはノーカウントで問題あるまい
「あれ」
タバサが指差した先
…カタカタ
そこにあったのは、錆びた剣
それがカタカタ、勝手に動いている
「っは。武器の価値もわからない馬鹿に、ナマクラ売りつけて暴利を貪ってる癖によ!」
「人聞きの悪い事を言うな!あれは、貴族様に社会勉強をさせているだけだ!」
嘘付け
ってか、まっとうな商売をしているとか、私たちが店に入った時言ってなかったっけ?
どうでもいいけど、と思いつつ…剣が、喋った
その事実を、改めて認識した
「もしかして…インテリジェンス・ソード?」
意思持つ剣
そんな凄い物が、何故こんな店に?
…あ、錆びてるから、大して凄い物でもないのか?
どう考えてもナマクラよね、これ
「おいこら、娘っこ。今、物凄く失礼な事考えなかったか?」
「気のせいよ………って、ちょっと!!剣の癖に貴族をそんな呼び方して!何様のつもりよ!!」
大人気なくも怒るルイズ
むんず!とその剣の柄を思いっきり握った
ざわり、まるで、ギーシュを突き飛ばした時のように、全身に力が駆け巡る
「っちょ!?い、痛い!?痛いっての!折れちゃうからもっと優しく握ってくれなきゃらめぇ!!………って、あれ??」
気色悪い悲鳴をあげていた剣だったが…急に、不思議そうな声を上げた
人間で言うと、首でも傾げているような、そんな声
「…あれ?使い手?でも、こいつ貴族だろ?……う〜ん?」
「使い手?って、何よ??」
何わけのわからない事を言っているんだ、この剣
首をかしげるルイズに、何を思ったのか、自分を買え、と剣は言い出した
は?何言ってんの?
貴族たる私が、こんなあからさまにナマクラな剣を買うなんて…
(………あら?)
が、ふと、ルイズは気づいた
…体が、軽いような?
この剣を持っていると、なんだか体が軽くなっているような、そんな感じがしたのだ
気のせい?
……いや、違う
ルイズは、自分の左手の甲が…そこに刻まれたルーンが、微かに発光しているのに、気づいた
「……この剣は、いくらかしら?」
ルイズの言葉に、キュルケが、武器屋の主人が驚いた声を上げる
…ただ、タバサは、じっと、ルイズの左手の甲を見詰めていて
……もう一人
誰かさんも、また、物陰からじっと、ルイズの左手の甲をじっと見つめていた
…ルイズたちが、街に繰り出していた頃
「こ、これは……!」
図書室に篭っていたコルベールは、見つけた
見つけてしまった
ルイズの左手の甲に刻まれたルーン
珍しいそのルーンを調べていて…とうとう、見つけてしまった
「は、早く、オールド・オスマンにお知らせしなければ……!」
コルベールが見つけた書物に、そのルーンは記されていた
神の左手・ガンダールヴ
ルイズに刻まれたルーンは…その伝説のルーンに、酷似していたのだった
支援
支援
以上で、第五話は終了となります
以前の投下の時予想されていましたが、ルイズについた共生生物はヴォージェです
待ち望まれている変身ですが、もう少し後、という事で少々お待ちくださいませ
乙!
食いしん坊万歳だw!
乙です
変身しちゃったら誰より本人がびっくりしそうだなぁw
間違いなくこのルイズは兵糧攻めに誰よりも弱い
しかしルイズが呼んだのが谷でよかったな
ジュリエッタや長戸だったら問答無用でその場で殺されてただろうしなw
連中もマキや金ちゃんの愛さえあれば地球破壊爆弾だって受け止めるしゴジラだって投げ飛ばす連中だからな
このルイズを兵糧攻めにするには
杖を手放させた上で金属で手足を封印するか
アルビオンに単独放置ぐらいしかないんじゃないか?
寄生状態でのスペック知らないけどさ
>>629 ちょっと考えた事があるさ……
ソニックにガンダ補正入ったとしても普通は武器使わない。
倉庫の物がカオスエメラルドにすればいいかと考えたが、それをすると7つ集めなければならない。
零戦をトルネードにすれば当然テイルスが関わってくるわけで……
そんなこんなで頓挫した。orz
ぶっちゃけシャドウの方が活躍しそう。
ガンガン武器使うし。
乙!
獣強化持ちって事はルイズのレベルは最低でも2−1か、おマチさんのゴーレムで太刀打ちできるかな?
>>724 設定では悪魔化(変身)した後はLv1でも鉄骨ですら簡単に捻じ曲げられるくらいの力がつくから、金属で封印した程度じゃ抑えられ無い気がする
空腹のあまり忘我状態になって暴れまわる可能性を考えると兵糧攻めは返って危険かもしれない
お腹の音が『くぎゅう』に近付いてないかい?
腹が減ったらカエルでも食べればいいんだ。
他にも大きいカエルとか超巨大なカエルとか。
そろそろ次スレ?
オレはピッツァが食いたいが
娼婦風スパゲティーも捨てがたい
遅ればせながら谷の人乙
映画の前売り券があるって事は千葉と戦う前に召喚されたわけか
>>723 長戸が一番マシじゃね?
その三人の中じゃ一番「会話」が出来るから
ただ、金ちゃんの膝枕で寝てたはずなのに気が付いたら草原だったってなったら、話も聞かずにかみ殺そうとするだろうけどな
>>559 予告キターーーーーーーーーーッ!!
これがないとボトムズって感じがしないね。楽しみにしてるよ。
御神苗優を召喚すれば、ルイズ難なくオリハルコンゲット
>>730 >>1 ・次スレは
>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
ちなみにテンプレは変わっているので、次スレを立てる時にはwiki参照
亀だが
>>653、乙でした〜!
ずっとお待ちしておりました。今後も応援しております。
今日ふとデルフリンガーってスナップドラゴンしたんじゃねとか思い浮かんだ
TOの魔法って基本は精霊に働きかけてたな
>>724 攻撃手段として、車や石灯籠さらには鉄骨を引き抜いて投げあうのがOKの世界だから
鋼鉄の拘束衣にスクェアの固定化かけても破られると思う
それに、飢餓などの重いストレスにさらされ続けると『暴走』し、最終的には
人間性と引き換えにより強力な『悪魔憑き』、『ヴィシャス(邪悪の意)』となって
破壊と殺戮の限りを尽くすことになるから、兵糧攻めは下の下以下
代理スレにゼロの黒魔道士きてたんで代理行きます
―――
「ミス・ロングビル!本当にこんなところにフーケのアジトが?」
……あったかいお日さまの光も届かない森の中、
「えぇ、元々は木こりや狩人の仮宿として使われていたそうですよ?」
……あるはずの鳥のさえずりも無くて、
「フーケも、なんでこんなところにアジトなんk―…あいたっ!?キュルケ、気をつけなさいよっ!!」
……聞こえるのはボクたちが前に進む音だけで、
「しょうがないじゃないのよー!邪魔な木の枝を払わなきゃ進めやしないんだし」
……その小屋はホントに突然
「静かに、もう着く」
……ボクたちの目の前に現れたんだ
「よっしゃー!おっぱじめるぜーっ!!」
「「「デルフ、静かに!!!」」」
……でも緊張感が無いのはなんでなんだろう……?
―ゼロの黒魔道士―
〜第十三幕〜 独りじゃない
……その廃屋は、廃屋っていうわりにはこじんまりとしてこぎれいだった
……ん〜、まぁこれだったら、野宿するよりはマシだし、住めなくはないかなぁ……?
「それで?どうする?一気に燃やしでもしちゃいましょうか?」
「ちょ、ちょっとキュルケ!そしたら『破壊の肉球』までも燃えちゃうじゃないっ!ちょっとは考えなさいよっ!!」
「いや〜ね、冗談じゃない♪」
「策はある」
……ずっと黙ってたタバサおねえちゃんは、ずっと考えてたらしい……
なんか、こういうの手慣れてるのかなぁ……?
ビルすらも壊して投げるからなー。ルイズのついている共生生物は破壊力に
かけてはすべての中でトップクラスだしのぅ。縛り付けるのは難しいかな。
あっ、デモゼロ、応援してますよ。
……タバサおねえちゃんが地面に絵を描いて作戦を説明していく
……つまり、偵察が1人、廃屋を偵察して、フーケがいればおびきだす、いなければ探索するって作戦……
「えっと……探索してる途中でゴーレムが襲ってきたらどうしよう……?あんなに大きいのだと、小屋ごと潰されちゃうよ……?」
「探索の間は見張りを外に置く、この場合ルイズが適任」
「へ?私?」
「爆音で知らせる。発動が早い」
……確かにあの爆発だと音がすっごくよく聞こえそうだ……タバサおねえちゃん、色々考えてるんだなぁ……
「あははっ!確かに『施錠』でも爆発するんだから、発動は一瞬よね!」
「くっ……これが終わったらあんたのそのフザけたこと言う口でも『施錠』してやろうかしら!」
「いや〜ん、ルイズに爆発で殺される〜♪ビビちゃん助けて〜♪」ギュッ
「だからあんたは毎度毎度ーっ!!」
……えーとー……もっと緊張感をもった方がいいと思うんだけどなぁ……?
「おぅおぅおぅ、娘っ子ども!ここぁ敵さんの陣中だぜっ!ちっとぁ気ぃひきしめなっ!!」
……でも、デルフに注意されるのは、なんか、違うと思っちゃうのはなんでなんだろう……?
「あの、それで――どなたが偵察を?」
……ロングビルおねえさんは……緊張してるのかなぁ……?
でも目つきがちょっと違うような……?
なんかこう……今から大仕事だ!っていうときみたいな……
「私が適任」
……タバサおねえちゃんが自ら宣言する
……うーん……やっぱり、タバサおねえちゃんがこの場では一番頼りに……いや
いけないんだ、そんなんじゃ……ボクはルイズおねえちゃんの使い魔なんだから
「よぉよぉ、相棒、ゴーレム出てきたらどーするつもりでぇ?」
……タバサおねえちゃんが偵察に向かってすぐ、デルフがヒソヒソ声で聞いてきた
「うーん……ここなら、迷惑にならないと思うし……『フレア剣』かなぁ……?」
……昨日みたいに、学院にゴーレムが密着してる状態でやったら、壁ごと壊してたかもしれないもんね……
「ゲ、やっぱアレかよ!いや、俺様輝いてる瞬間はいいのよ?でも叩きつけられる瞬間、意識飛びそうなぐれぇガッツリ衝撃がくんだけどよぉ〜」
「う〜ん……ボクと一緒に旅してた人と『フレア剣』は何回かやったけど……剣は全然壊れなかったし……多分大丈夫じゃないかなぁ……?」
……そういえばスタイナーおじちゃんは剣をしっかり手入れしてたっけ……それで剣があんなに丈夫だったのかなぁ……?
ボクも後で剣の手入れの仕方を調べなきゃいけないなぁ……
「お?ちょい待ち!その言い方ぁ聞き捨てなんねぇなぁ!まるで俺様がヤワに見えるみてぇじゃねぇか!」
「え?い、いやそんなことは……」
……うーん……実際、ちょっとサビサビだから気にはなってたんだけど……
「っかぁ〜!相棒にそう思われるようじゃ武器の名が廃るぁ!上等でぇ!『フレア剣』だろーが『ズレタ剣』だろーが何度でも耐えてみせらぁっ!!ガンガンやりやがれ相棒っ!!」
「う、うん……き、期待するね?」
……デルフがやる気になってくれて、多分、良かったんだよね……?
……でも『ズレタ剣』かぁ……確かに、デルフってどっかずれてる気がするなぁ……
「あ、タバサからの合図よ、フーケいないって」
「じゃ、探索と、私は見張り……ちょっとキュルケ!私が見張ってあげるんだから、フザけないできっちり探索しなさいよっ!!」
……ボクとデルフが気の抜けた会話をしちゃってた間に、タバサおねえちゃんの偵察は終わってた……
うーん……ボクも緊張感がなかったのかなぁ……
「あ、それでは私は念のため、反対側の見張りを」
「え?あぁ、そうね。お願いします、ミス・ロングビル」
……ロングビルおねえさんは廃屋の向こう側の見張り、ボクとキュルケおねえちゃんとタバサおねえちゃんで探索だ
「おいおい、俺様忘れるんじゃねぇよ、相棒っ!」
……う〜ん……剣がどうやって探索するんだろ……?
シエーン
「しっかし埃だらけねぇ〜、こんなとこ、ホントにアジトにしてたわけ?」
……テーブルの上や階段、そこら中が埃まみれになっている小屋の中、
……床だけが埃がきれいに掃除されてる……フーケって、几帳面なのかなぁ?ズボラなのかなぁ?
「あった、『破壊の肉球』」
……盗まれた『破壊の肉球』っていう宝物はあっさり棚の中から見つかった……
「何よ、アッサリ見つかるじゃない!なんかつまんな〜い!」
……そのアッサリ見つかった『破壊の肉球』は……
「え!?そ、そ、それが『破壊の肉球』なのっ!?」
「そうよ?私、去年の授業で宝物庫の見学をしたときに見たそのまんまで――ビビちゃん、どうしたの?」
「おいおい、どーしたってんだ相棒?その猫の前足みてーな棒っきれがどうしたってんだ?」
……間違いない、これは、この武器は、旅の仲間が持っていたあの武器に……
……同じ種類の武器の中では最強の威力を誇るあの武器にそっくりだった……
でも……
「なんで……なんでこれがここに?」
ドォォンッ!!
外から爆音が響き渡る、それと同時に……
「危ない」
「きゃっ!?」
ゴシャァッと叩き潰すように土の塊が……巨大なゴーレムの腕が小屋の屋根を貫いたんだ……
「あ、相棒っ!」
「だ、大丈夫っ!に、逃げなきゃっ!!」
「そうねっ!『破壊の肉球』は取り返したし、任務は完了よっ!」
「戦略的撤退」
急いで小屋の出口から出るボクたち……でもそんなボクたちの目の前にあったものは……
「このぉーっ!フーケっ!!『ファイア・ボール』!!」ドォォンッ
おっきなおっきなフーケの土ゴーレムの体と……それに立ち向かう……
「このルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールが相手よっ!かかってきなさーいっ!!」
「ルイズおねぇちゃんっ!?な、何してるのっ!?」
ルイズおねえちゃんが、手当たり次第にゴーレムの体を爆発させてたんだ……
でも、あとからあとからゴーレムの体が治っていってしまう……まさか『リジェネ』?
「再生可能なゴーレム、手がつけられない」
「タバサの言うとおりよ!ルイズ、逃げるわよっ!!」
……キュルケおねえちゃんの言葉を聞いて、ルイズおねえちゃんが、学院長室で握りしめたよりも、ずっと、ずっときつく、杖を握りしめたんだ……
「嫌よっ!!」
「る、ルイズおねえちゃん!?」
「ちょっと、ルイズ!!あんた状況分かってんの!?」
「私は!私は貴族よっ!!!魔法が使えるだけじゃない!!相手に後ろを見せないのが貴族よ!」
……そのとき、また分かった気がしたんだ……
……ルイズおねえちゃんは、エーコに似て意地っ張りで素直になれないだけじゃないんだ……
……スタイナーおじちゃんや、ダガーおねえちゃんみたいに……『責任感』っていうのが強いんだ……
……「〜として」、「〜だから」……そういった言葉で、いつでも自分のなすべきことをハッキリさせてる……だけど……
……ときどき、自分自身の目指すものに、溺れそうになるんだ……
……溺れて、ボクたちが、ここにいるのに、見えなくなっちゃうんだ……
……そう、あのときのジタンも……
……だったら……ボクが言うべきことは、やるべきことは……
「……ルイズおねえちゃん、大丈夫だよ」
帽子をギュッとかぶりなおす……大丈夫だよ、ルイズおねえちゃん、怖いものなんて、何も無い……
「ビビ!?あんたは下がってなさい!こいつは、私が!!」
「だからあんたには無理だってルイズ!!いいから逃げrキャァァァッ!?」ブォォンッガキィィンッ!!
思いっきりふられたゴーレムの腕を、デルフを地面に突き立てて防ぐ
……そう、ボクのやるべきこと、それは……
「……ルイズおねえちゃん、『使い魔を見れば、メイジの力が分かる』なんだっけ……?」
「な、何よっ!い、いいからそこをどきなさいっ!!あんたも爆発に巻き込むわよっ!!」
「……それなら、ボクが……ボクが、ルイズおねえちゃんの力になる!!」
「は!?何を言って――」
「ルイズおねえちゃん!ルイズおねえちゃんは……独りじゃない、よ!!」
……ボクが、ボクらがいるんだ!!
デルフを地面から引っこ抜いて、思いっきり走る、走る、走る!
……今までのボクだったら、こんなに早く走れなかった、すぐにコケてばっかりだった……
左手の模様が、キラキラと光る……
「っかぁー!なかなかいいセリフ吐くじゃねぇかよぉ!相棒!!」
「デルフ!!意識飛んじゃうかもしれないけど、行くよっ!!」
「おう、かかってこい、だぁ!『使い手のルーン』と同じぐれぇ俺様を輝かしてみせやがれってんだ!!」
「滅びゆく肉体に暗黒神の名を刻め
始源の炎甦らん! フレア!」シュォォォォォ
「ッヒョォ!来た来た来たぁっ!!相棒っ!狙いはついてんのかっ!?」
「足っ!!まずは動きを止めなきゃっ!!」
サラマンダーが言っていた、「どんなモンスターでも、足さえ止めりゃぁ後は壊すだけだ」って……でも……
「ち、近づけないっ!?」
ゴーレムが、腕をブンブン振ってボクの行く手をはばむ、必死に避けるしかない、ボク……
「相棒っ!魔法でっ!『フレア』ってぇのを当てちまえばいいんじゃねぇか!?」
「そ、それが……」
……やっぱりボクってうっかりしてるのかなぁ……
「う、動きながらだと狙いがつけられないっ!!」
「はぁぁぁぁっ!?じ、じゃぁ何考えなしにつっこんでやがんでぇこんちきしょぉぉっ!?ここまできちゃ引っ返すことぁできねぇぜ!?」
「ど、どうしよう……」
……考えるんだ、考えるんだ……左手の光がボクに避ける力をくれている……だから、考えるんだ!
ピコン
強制ATE ―焦りといらだち―
ルイズは、焦っていた
自分の使い魔が、
彼女に異国の寝物語をしてくれた使い魔が、
彼女に今は形にならずとも大切な言葉を話した使い魔が、
今、窮地に立たされている
「ビビぃぃぃぃっ!!!キュルケっ!!離してっ!!ビビを助けなくちゃっ!!!」
スパァンッと小気味いい平手の音がルイズの脳天に響く
それが自身の頬に打たれた戒めの楔と気づくのはその一瞬後
「いい加減にしなさいっ!!ビビちゃんは、あなたの我儘で今ピンチなのよっ!!貴族だの何だの言うなら、状況をもっと見極めなさいっ!!」
「今、彼は何とか回避できている。あなたが入れば、彼はあなたを守るためにより難しい動きを強いられる」
それが分からない彼女ではない
しかし、ただただ悔しいのだ
何もできない自分が、
爆発させることしかできない自分が、
貴族としての力を持たぬ自分が
タバサの手にする獲物が、ルイズの目に入る
マジック・アイテム?それにしては奇妙な形だ
猫の掌にも似せた布製の器が、棒の先端についた物体
しかし、冠する名前は『破壊』ならば――
「タバサ、それ貸して!!!」
「ルイズ!?」
無理やりタバサからそれを奪い取る
使い方など分からない、でも、それでも――
「私の使い魔からっ――」
上半身を風に押される柳のごとく反らせ――
「離れなさいっっ!!!!」
棒ごと前方に投げ出す――
それは魔力の塊なのか、
はたまた使い魔に答えんとする意思の結晶か、
白き光が、集いて、押し固まり、
棒の先端の器から放たれた――
ドゴォォォォンッ
「ルイズっ!?」
「すごい貫通力」
――まったく見当違いの方向へ、ゴーレムのはるか右10メイルの位置へ
だが――
「――これなら、いける!」
――彼女は確信する
「ビビ!!あんたは……あんただって!!『独りじゃない』んだからっ!!!」
――自らの、『できること』を
―――
以上です。ごめんなさい、数を数え間違えましたorz
代理終了、数は直しときました
otu
予約無かったら、しばらく後に投下させてもらってよかですか? 短いですが。
投下乙です。ビビは頑張るなあ
>>748 時間を指定するんだ
十五分後としましょう
支援
そろそろ行かせて貰います。
ロックの一日は太陽が昇り立てという早い時間に始まる。
まだ淡い光を浴びながら、トレーニングに汗を流す。 考えても見れば、昔からテリーと旅をしていた時の日課が復活しただけの事なのだが、場所が場所だけに新鮮な気もしていた。
カンを取り戻す為のトレーニングではある。しかし、それにしても違和感を感じる所がロックにはあった。
前々からあった左手に宿る熱と、やけに偏る気の流れ。そして、それを覚えた後には昔からしていたトレーニングではあり得なかった途轍もない疲労感がある。
(どういう事だ?)
ロックは集中力を高める為の瞑想をしながら考える。
気を扱うとなると、どうしても左手が反応するのだ。グローブに包まれた手の中には、使い魔のルーンとやらが光を放っている。酷い落書きをされたもんだと思ったものだが、一体こいつがどう関係しているのかが理解できない。
だが、そこでロックの瞑想は中断される事となった。
「痛ぇっ!」
「雑念を覚えていたな?」
「んだよ、ギトーのおっさんか……」
杖でびしっと背中を叩かれたロックが目にしたのは、ふてぶてしい表情で立つギトーの姿だった。
こうして顔を合わせるのは、言葉の感覚から察するに一度や二度でないのは明白だ。
先日の一件では、闘いをするまでになった仲ではあるのだが、こんな風にギトーがロックに声を掛けるのには理由がある。
「精神力を高める為の瞑想に雑念を混ぜてしまえば、本末転倒ではないか」
「あー、いや、その、あんたらの言う精神力と俺とかが使う気は別なんだけど……いや、小難しい事はわかんねぇなぁ」
「何を言っているんだ、君は。君の講釈は前に聞いたが、似たようなものではないか」
「そうだけどさぁ……ま、いいや。さて、そろそろ始めるか、おっさん」
「いい加減おっさんと呼ぶのはやめたまえ。ミス・ヴァリエールの使い魔よ」
「あんたがその呼び方止めたら考えるぜ、“おっさん”」
「ふむ、ではこちらも考えておこうか、“使い魔”」
軽口を叩き合いながらでも、空気の流れに熱を帯びさせていく。
始める、というのは何か説明するまでもないだろう。
「顔面腫らして授業に出る事になっても恨むなよな」
「それはお互い様という物だろう。ではゆくぞ」
その言葉と共に、ロックは前傾姿勢で駆け出し、ギトーは詠唱を始める。
まぁ、簡単に言ってしまえば、ロックの早朝トレーニングの締めに行われるスパーリングパートナーとしてギトーがいるのだった。
ギトー本人は未知に対する研究と公言して憚らないが、やはり男である。一度土を付けられた事実は覆らぬ為、こうして毎朝如何にロックへの雪辱を晴らそうかと向かってくるのだ。
無論、互いに暗黙の了解として、大怪我や命に関わる様な技や魔法を用いたりはしない。
具体的に言えば、ロックとて、気を完全に込めた拳は固めないし、ギトーもエアニードルなどといった魔法を使う事は無い。そんな感じだ。
先も述べたが、まさにスパーリングという物になっている。
「錬金!」
「うぉっとっと!」
機先を制したのはギトーであった。
風のメイジであるギトーだが、こういった小技は系等によらずメイジであれば扱えるというもの。それはこの間彼の口から聞いてはいたものの、実践されるのは初めてだった。
ギトーは足元の土を錬金によって盛り上げ、更に石へと変化させたのだ。
殴りかかったロックが、それに躓き拳は逸れていく。
「一つ!」
「いってぇっ!!」
がら空きになったロックの首筋に、ギトーの杖が強かに打ちつけられた。
苦痛の呻き声を上げるロックをふふんと鼻を鳴らして彼は言う。
「もしも私の杖にエアニードルを纏っていたら、君は今ので死んでいたな」
「たらればの話はいらねぇよ」
「ふっ、足元が見えていないとは正にこの事か」
「一回やらかしたくらいで、随分偉そうに言うじゃねぇかおっさん!」
「事実とは怖い怖い。私も痛感しているのだがね」
「っの野郎!」
自虐を交えたギトーの挑発だが、ロックの頭に血を昇らせるには十分に過ぎた。
ムキになった小僧一匹御せずして教師などできようか。この間はしてやられたが、歳に見合った老獪さは備えている。
風の魔法の後押しを受けるギトーの動きは、ロックをして追い付く事が困難なものだ。
前は自分も熱くなり過ぎたからこそ土を舐めたのだと、いまだ若干の痛みが残る肋骨をさすりながら、ギトーは続けた。
「なかなか、捉えられんみたいだなぁ。滑稽だ」
「抜かせよ! 顔面腫らすじゃすまないぜ!」
「鬼ごっこになると弱い使い魔だ」
「チックショウ!」
フライや偏在を用い、ロックを幻惑するギトー。
果てしない追いかけっこになりがちだが、時折思い出したかのように放たれる魔法は、少なからずロックにダメージを与える。
気の受けによって魔法に耐える事が出来ると気付いたのは最近だが、ロックはそれをスポンジが水を吸うように吸収していた。勝手が多少違うのは確か、しかし、天性の才がロックにはある。
受け方をしっかりしていれば、微細なダメージでしかない。
そんな風に、これも日課となったロックの日常の一ページだ。
鬼ごっこもどきが続いて約三十分が経とうとしている。走り回り、魔法を使い。体力も精神力も使えるだけ使ったという所。
「ぜーはー」
「…………」
「おっさん、結構つらそうな顔してるぜ? 降参しなって……」
「……何を馬鹿な……どの口で言うんだね……げほっげほっ」
「「…………」」
いつも通りのやり取り。
結局の所、お互いに気を使いながらでも負けず嫌いなのは確かであって、子供の口喧嘩で場が締まる事となるのが基本だった。
数分へたり込み、息を整える二人。
そうして、ロックが再び口を開く。
「なぁ、おっさん」
「何だ、使い魔」
「次はもうちょっと偏在をメインでやってくれよ。あれ、面白いからな。慣れときたいんだ」
「ふむ、ならば君は気とやらを使った技をもう少し見せてくれ。偏在相手にならば遠慮はいらん」
「そう言って、本体に当たっちまったらどうすんだよ」
「万が一という話になるな」
「ほんっと、抜かせよ」
テリーとの旅を思い返すと、こういう場面はいくらでも出てくる。
魔法学院で受けていた授業が無駄だったとは言わないが、実地でこういう風にギトーとの交流を経て思う。
(楽しいよな、実際)
テリーとの青空教室によく似ている。
ばてばてになるまで動いて、その後飯を食って、歩いて。
ギトーは陰気だが、こうして付き合ってみればなかなかに見えてくるものも多い。第一印象が最悪だっただけに、余計にプラスの方向へ進むのが早かったのかもしれないが。
「動きすぎで腹も減らん。私は自室に戻って授業の支度でもしよう」
「そんなんじゃ身がもたないぜ? ただでさえ冴えねぇ面が酷くなっちまうだろう」
「……口の減らん奴だ」
「教育方針がそんなもんだったのさ。じゃ、また後でな、ミスタ・ギトー」
「ああ、ロック・ハワード」
手をひらひらとしながら送るロックに、ギトーは薄い笑みを浮かべて返した。
※
「あれが男の世界って奴かしらね? ヴァリエール」
「何よ、朝から姿が見えないと思ってたら、あんな……」
「あちゃー、聞こえてないわね、これ」
「聞こえてるわよ!」
「あらあら、扱いづらい子だわ、ほんと」
「扱いづらいのはあの馬鹿犬よ、ご主人様のお世話を第一に考えないなんて」
「はー、いいわねぇ。やっぱり、男っていうのはワイルドじゃないと」
「黙りなさいよ! ツェルプストー!」
隣り合った部屋の窓から顔を伸ばす少女二人は、同時刻こんな風にかみ合っているのかかみ合っていないのか、分からない会話に興じるのであった。
以上です。
あじゃじゃっしたー。
乙っす。
ギトーが……
ギトーが活躍してる。生き生きしてる。
嫌味も散々言ってるのにあまり腹が立たない。
むしろ清々しい。不思議!
ナイスなギトー乙
ギトーが活躍してるSSって珍しいよね
対ワルド対策だな
次スレ立ててみるか
ダメだった
↓よろ
行ってみるか
500kbなら正月休みを執筆で潰す!!
なんというつぶす気のない発言
500ならヘルマドンナ召喚
スレに作者がいっぱいいるから、勘違いした一部の読者が痛いよね
ルールで嫌いなSSならスルーって書いてあるのに、ヘイトだの蹂躙だのって……。このスレで初めてそんな事言ってる人を見たよ
1年生の小学生の作文レベルで俺TUEEEEEしてたら分からないでもないけれどさあ
しかも、どこの部分か指摘さえせず蹂躙認定とか、酷いとしか言いようがないぜ
ろくな事を言わず、レッテルだけ貼って「俺はゼロ魔を分かってる」つもりになる
よくもまあそんなことが出来るもんだ
訓練された読者なら、提督だなんだっていまだにぶつくさ言い続けるような真似はしないだろうに
練習すれば下手な人だってSS書けるし、文才がどうのとかいうなら書いてみればいいんだよ。作者の気持ちが分かるから
だけど……って言う前にメモ帳を立ち上げるんだ!
>>767 >訓練された読者なら、提督だなんだっていまだにぶつくさ言い続けるような真似はしないだろうに
自分に言い聞かせるといいよ。
769 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/11(木) 08:54:13 ID:e4GucPp/
>>769 ageた上にスールー出来んかった……orz
正直すまぬ
>>770 スールー ……
うん、スルーの間違いだな。
ちょっと斬首されてくる……
o....rz
スールとな
「杖が、曲がっていてよ」
「えっ」
>>771 ミスター・スールー(日本語版ではミスター・カトー)がアップを始めたようです
スタートレックキャラでやるなら、クワークやウォーフなんか見るからに亜人だからやりやすそう
「ファンタジー世界設定のホロデッキ」で遊んでたはずが実は本当に異世界に召喚されていたとか
>773
なぜ俺の構想を知っている
キュ「ルイズ、根性が曲がっていてよ」
ル「あんですってー!!」
___
, ‐''"´ `''ー 、_
/ >-─- 、
/ / `ヽ
_,ノ / ',
、_, イ´ / } ヘ ',
| / / / ハ ハ ',
⌒ヽ、 | / / / / リ ∨| ', l い
, "´ ̄ ̄¨ ''ー-、 | / / / /| / 〃 /ハ| l, | } ヘ `ー-‐'
/ `丶、 ‐-イ / / /l |./ / / │ リV| リ ト、
. / / ─-、 / 从 { ハ/--┼ ' ナ'' ー- | / } | )
/ /{ } ヘ i \ / / 八 从( __ _ リ / リノ
. / /八 ハ ヽ } l 〃 ト、 ハ ,.-=ミ '゙=ミ、厶イ イ
{ /| /│{ \ / } }∧ | │ . イ { :、 ヽ{ ´ /_八 い
イ' | ト、l八 / _j」L. ', | | {/ { ヽ `'ー- 、 ::::::::: . :::::::八 } }
/ .{ | リ __`ーV/ハ '´ _ リ} | | 八 \ いrヘ、 ノ } リノ
│ハ〈 Vう '゙ V'うヽ lレ^ヽ | \( ヽ\人/ (| ` . (__ノ イ jノ乂ノ
Vハ ...... .....`゙ リ/ } | __/ \ `r-< ̄⌒''<,_
ウメダナ ノ八 ゙゙゙゙ ' ゙゙゛゛ _, イ i l //ハ o\ ヽ、 \ o ゚> .._
/イ l\ _ , イ[ |i i│ // ', o /几 | |\ 「 ̄ ` ミュ、
/ jレ'  ̄{:{> __, ´  ̄`ヽi│ .厂\ '.c/ / | ト、 │ )〉 /`丶、
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