あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part193

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1名無しさん@お腹いっぱい。
もしもゼロの使い魔のルイズが召喚したのがサイトではなかったら?そんなifを語るスレ。

(前スレ)
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part192
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1228077440/

まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/
避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9616/


     _             ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
    〃 ` ヽ  .   ・ここはあの作品の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!
    l lf小从} l /    ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
   ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,.   ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
  ((/} )犬({つ'     ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
   / '"/_jl〉` j,    ・ 投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
   ヽ_/ィヘ_)〜′    ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
             ・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!


     _       ・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
     〃  ^ヽ      ・クロス元が18禁作品であっても、SSの内容が非18禁である場合は
    J{  ハ从{_,     本スレへの投下で問題ないわ。
    ノルノー゚ノjし     ・SSの内容が18禁な展開をする場合はクロス元に関わらず、
   /く{ {丈} }つ      本スレではなく避難所への投下をお願いね?
   l く/_jlム! |     ・クロス元がTYPE-MOON作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
   レ-ヘじフ〜l      ・作品を初投下する時は元ネタの記載も忘れずにね。wikiに登録されづらいわ。
              ・作者も読者も閲覧には専用ブラウザの使用を推奨するわ。負荷軽減に協力してね。


.   ,ィ =个=、      ・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。
   〈_/´ ̄ `ヽ      ・1レスの限界最大文字数は、全角文字なら2048文字分(4096Bytes)。これ以上は投下出来ません。
    { {_jイ」/j」j〉     ・行数は最大60行で、一行につき全角で128文字までですって。
    ヽl| ゚ヮ゚ノj|      ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
   ⊂j{不}lつ      ・次スレは>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
   く7 {_}ハ>      ・重複防止のため、次スレを立てる時は現行スレにその旨を宣言して下さいね。
    ‘ーrtァー’     ・クロス先に姉妹スレがある作品については、そちらへ投下して盛り上げてあげると喜ばれますよ。
               姉妹スレについては、まとめwikiのリンクを見て下さいね。
              ・一行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えます。
              SS文面の区切りが良いからと、最初に改行いれるとマズイです。
              レイアウト上一行目に改行入れる時はスペースを入れて改行しましょう。
2名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/03(水) 21:48:41 ID:KHKhSFOo
すっげ、1さんすっげ
すっげ、乙っす
3名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/03(水) 21:49:23 ID:2jRbpNfq
>1乙です
4ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2008/12/03(水) 21:49:23 ID:WNlFkiCl
21:55から第8話の投下を行います。
5名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/03(水) 21:50:33 ID:J8FogTL9
乙そして支援準備
6名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/03(水) 21:50:35 ID:BUaA/xjS
>>1さんなら乙ってくれると思ってたぜ!
そして支援
7名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/03(水) 21:52:07 ID:GpkshJKN
乙支援です!
8ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2008/12/03(水) 21:55:04 ID:WNlFkiCl
 ユーゼス・ゴッツォがルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールによってハルケギニアに召喚され、
使い魔として契約してから一週間ほど経過した。
 その間、刻まれたルーンを分析したり、字を覚えたり、御主人様を着替えさせたり、魔法に関しての本を読んだり、何か
とんでもないゲートの反応を検知したり、御主人様の下着を洗濯したり、御主人様の魔法を拝見したり、貴族と決闘した
り、筋肉痛に苦しんだり、超神形態に変身したり、何故か出現したアインストと戦ったりしたが、また新たな事態が発生
するようだった。
「アカデミーにいるエレオノール姉さまから、連絡が来たわ」
「ほう」
 一週間程度で返答が来るとは、どうやらルイズはかなり早い段階で連絡を取ってくれたらしい。
「えっと、……あー、ここは飛ばして、と……」
「?」
 冒頭の部分には『いきなり連絡してくるんじゃないの』とか『私だって忙しいんだから』とか書いてあったのだが、主人
の威厳を保つためにも、ルイズはその部分を意図的にカットする。
「こほん。……これによると、今度の虚無の曜日に姉さまが予定を空けてくれたから、昼頃に来なさい、だそうよ」
「虚無の曜日―――明日か」
「まあ、変に間隔を空けるよりはいいんじゃないの? それと……」
 ルイズがジロジロとユーゼスの全身を見て、その後で納得したように頷く。
「うん。やっぱり、アンタに剣を買ってあげる」
「剣だと?」
 あれだけ自分が筋肉痛で苦しんだ様子を見ているはずなのに、この少女は何を言っているのだろう……と、実際に声には
出していないが、ユーゼスの表情が雄弁に語っているのを見て、ルイズはその理由を説明し始めた。
「いい? 確かに、アンタはギーシュと……確か30分くらい戦って、それで引き分けたわ」
「その通りだ」
「つまり、マトモに戦ったら『ドット』クラスのメイジ一人くらいなら、互角程度には戦えるのよ。
 ……正直、戦力としてはあんまり大したことないけど、わたしの使い魔なんだから最低限の戦力は持っててもらわないと」
 この際だから体力のなさや筋肉痛には目をつぶるわ、と付け足して、ルイズはフフンと得意げな顔をする。
 その理屈自体はユーゼスも納得するのだが。
「しかし、良いのか?」
「何がよ?」
「御主人様は、私に関しての出費は最低限に抑えると考えていたのだが」
 それを聞いて、ジトッとした目でルイズはユーゼスを睨んだ。
「……アンタ、わたしを何だと思ってるのよ? 使い魔に贅沢させたら、クセになるでしょ。必要なものはキチンと買うわ。
わたしは別にケチじゃないのよ」
「分かった」
「じゃ、サッサと寝なさい。明日は早いんだから」
「では、お言葉に甘えさせてもらおう」
 ワラ束の上に横になるユーゼス。さすがに一週間もすれば、この寝床にも慣れてくる。
 そして20分ほど経過し、ユーゼスは浅めの睡眠に入った。
9ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2008/12/03(水) 21:57:12 ID:WNlFkiCl
 ルイズとユーゼスの静かな寝息が、部屋の中に小さく響く。
 と、いきなりルイズの目がパチリと開き、
「……ユーゼス、もう寝た?」
 眠りの中にいる使い魔に、小さな声で問いかける。
「……………」
 返答がないことを確認すると、ルイズはムクッと起き上がって、そろりそろりとユーゼスが寝ている横に移動する。
 そして、横になって眠っているユーゼスへと手を伸ばし―――
 その傍らに置いてある、ユーゼスが作成したレポートを手に取った。
 そして『ハルケギニアにおける魔法についての考察・第一稿』と書かれたそれを、音を立てないように持ち出して、こっ
そりと自分のカバンに入れる。
「……ふふふ」
 ユーゼスは、これを『専門家にはとても見せられない』と言っていた。……この理屈や理論を重視する男がそう言うのだ
から、それは本当にそうなのだろう。
 ならば、このレポートをアカデミーの主席研究員である自分の姉に見せたらどうなるか……。
「……ふふふ」
 おそらく、姉は物凄い剣幕でこのレポートの矛盾点や考察の甘い点、間違っている点、不明点などを指摘しまくることだ
ろう。
 そうすれば、いつも超然としているこの使い魔も、うろたえたり焦ったり困ったりするに違いない。
「ちょっとかわいそうな気もするけど……」
 何せこの使い魔は、主人に対してほとんど弱みらしい弱みを見せないのだ。
 体力がない、というのも弱みと言えば弱みだが、本人はそれを恥じている様子がない。
 ならば、自分の得意分野で叩き潰されれば―――と、ちょっとしたイタズラ心がルイズに芽生えてしまったのである。
「……エレオノール姉さまにキツく言われるのは、わたしも散々に味わってきたことだし、主人と苦しみを分かち合うのも
悪くはないわよね」
 つまり、ルイズはただ、ユーゼスの困った顔が見てみたいだけなのであった。
10ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2008/12/03(水) 21:59:14 ID:WNlFkiCl
「ゼェ、ゼェ、ゼェ……。つ、辛く、険しい、ゼェ、道のり、だったな……、ゼェ……」
「………辛くて、険しかったのは! ぜぇ〜んぶ! ア・ン・タ・の・せ・い・で・しょ〜〜!!」
 着ている白衣はボロボロ、銀色の長髪はバサバサ、しかも疲労困憊のユーゼス・ゴッツォ。
 そんな彼の主人は、顔をヒクつかせながらコメカミに血管を浮かせて使い魔のふがいなさに呆れていた。
「落馬が未遂も含めて14回、それから馬に乗ること自体に失敗したのが7回、あさっての方向に馬を走らせたのが9回、暴走
させたのが3回! ここまで乗馬が下手なヤツなんて見たことがないわ!!」
「……暴走は4回だ」
「うるっさいわね! ……それと何よ、その手に持ってる棒は?」
 ユーゼスは、両手で自分の身長の五分の四ほどの長さの木の棒を持っていた。……と言うより、地面に突き立てていた。
「道端に落ちていたのを拾った。杖の代わりだ」
「杖? メイジでもないアンタが、そんなの持ってどうするのよ?」
「……これを支えにしないと立てないのでな」
「…………………………」
 ここで、現在のユーゼスの状況を簡単に説明しておく。
 まず、手綱を握り続けていたので手が痛い。
 次に、落馬しないよう力を入れていたので脚が痛い。
 ついでに、長時間に渡って揺られ続けていたので腰が痛い。
 最後に、神経をすり減らしすぎたので精神的にも厳しかった。
「って言うかね、魔法学院から城下町まで、普通なら馬で3時間もかからないってのに、なんで4時間半もかかってんの
よ!?」
「私の乗馬技術が著しく低いからだな」
「冷静に切り返してるんじゃなぁ〜いっ!!」
 だんだんとユーゼスに対応しているルイズの方が、ゼェゼェと息を切らし始めてしまう。
「……とにかく! まずアンタの身なりを整えて、それから適当な水の秘薬でも買ってシャキッとさせるのが先決ね!」
「…別にそこまでしてもらう必要はないと思うが」
 その言葉を聞いて、ルイズはキッとユーゼスを睨みつける。
「いい? これからわたしたちが会うエレオノール姉さまはね、『貴族の面子(メンツ)』とか『見栄え』とか『権威』と
か、そういうのを何よりも大事にしてるの。
 ……まあ、これはハルケギニアの貴族のほとんどに共通してるんだけどね」
(随分と下らないことに―――いや、私も昔は似たようなものだったな)
 因果律に関しての研究を始める前までは、自分も『名声』や『才能を示すこと』を求めていたことを思い出す。
「で、貴族の『格』っていうのはね、『来客のもてなし』とか、『連れてる使用人の質』とかでも決まるのよ」
「ほう」
 使用人に教育が行き届いている、使用人の着ているもの一つ取っても違う―――など、そういうことだろうか。
「……ここまで言ったら、もう分かるわよね?」
「つまり、今の私の身なりはその『格』に満たない、と」
「そういうこと。……じゃ、行くわよ」
 そうして、プンスカ怒る桃髪のメイジとボロボロの使い魔は、トリステイン城下町の大通り―――ブルドンネ街を歩いて
いく。
11ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2008/12/03(水) 22:01:17 ID:WNlFkiCl
 30分が経過し、髪を整え、白衣を新調して、更に水の秘薬を一ビン飲み干して体調も万全に整えたユーゼス。
 彼は『ああもう、なんでこんなにムダな出費を……』とブツブツ愚痴る(出費について軽く感謝の言葉は述べた)御主人
様と共に、宮殿の近くにある王室直属の魔法研究機関、通称『アカデミー』へと向かっていた。
「気をつけなさいよ、スリが多いんだから! アンタ、内ポケットに入れてる財布は大丈夫でしょうね?」
 主人は財布なんか持たないわ、とユーゼスはルイズに財布を丸ごと預けられていた。かなり問題のあるやり方だとは思う
が、経験上、下手に口出しをしてはいけないことは分かっているので、口出しはしない。
 それよりも、ギッシリと詰まった金貨がズッシリと重く、ドッシリと存在を主張するので、ビッシリと詰まった人混みに
揉まれて落ちないように、手でガッシリと持たなければならないことの方が問題だ。
「出るのか、スリが?」
「それなりにはね。魔法を使われたら一発よ」
「『念力』か」
 あまりにもストレートなネーミングだったので、ユーゼスが大して見向きもしなかったコモン・マジックである。
「しかし、貴族がスリなどするのか?」
「トリステインの貴族は全員がメイジだけど、メイジの全てが貴族ってわけじゃないわ。いろんな事情で、勘当されたり家
を捨てたりした貴族の次男や三男坊なんかが、身をやつして傭兵になったり犯罪者になったりね。
 まあ、貴族は全体の人口の一割もいないし、そう溢れかえってるってわけでもないんだけど」
「成程」
 どうやら、単純に『メイジが絶対階級』というわけでもないようだ。
 まあ、メイジも平民と同じく転べば痛いし血も出るし、風邪だって引くだろうし、死ぬ時は死ぬだろう。
 それでも『魔法』というアドバンテージはやはり大きいな、などと考えている内に、
「着いたわ、ここがアカデミーよ」
 魔法学院より若干規模が小さい建物に到着した。
 ルイズは入り口に立つ衛兵の所にタタタ、と小走りに駆けていくと、姉の所在を尋ねる。
「失礼致します。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールと申しますが、エレオノール・アルベル
ティーヌ・ル・ブラン・ド・ラ・ブロワ・ド・ラ・ヴァリエールはおりますでしょうか?」
(……やたらと長い名前だな)
 暗記するだけで一苦労しそうだ、などと思いつつ、ユーゼスは事の成り行きを見守ることに徹した。
「ああ、ミス・ヴァリエールのご親族の方ですね。少々お待ちください」
 衛兵は入り口の近くにいる係官と思しき女性に声をかけ、その係官が建物の奥に引っ込む。
「ただいま、ミス・ヴァリエールをお呼びしておりますので、そのままでお待ちください」
「はい」
 そうして待つこと、約5分ほど。
 木で出来た正面の扉がギギギ、と開き、中から見事に美しい金髪の持ち主である女性が現れた。
12名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/03(水) 22:02:37 ID:J8FogTL9
支援
13ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2008/12/03(水) 22:03:17 ID:WNlFkiCl
 年齢は20代後半ほど。今の自分の外見年齢と同程度だろうか。
 顔立ちはルイズに似ているが、年上であることと、眼鏡をかけているせいでかなり理知的に見える。
 『可愛い』ではなく『綺麗』という言葉がしっくりくるような、掛け値なしの美人である。
 ……そして何より、目がキツく、ルイズがそれこそ可愛く見えそうなほど、かなり気が強そうだった。
 女性は長く美しい金髪をわずかに揺らしながら、ツカツカと無言でルイズに向かって歩いていく。
 そしてルイズの前でピタリと止まると、
「お、お久しぶりです、エレオノ、ふぁいだだだっ!!」
 いきなり右手で妹の頬をつねり上げた。
「……ルイズ、確か私はあなたに宛てた手紙に『昼頃に来なさい』と書いたわね?」
「ふぁ、ふぁい」
「じゃあ、今は何時かしら?」
「に、にじふぁんしゅぎれす(訳:に、2時半過ぎです)」
「そうね、世間一般ではそのくらいの時間を『昼頃』ではなく『昼過ぎ』と言うのよ、ちびルイズ?」
 ぎゅぅぅううう〜、と強く妹の頬をつねる姉―――エレオノール。
 痛がりながらも『ひゅ、ひゅいまひぇん、ねえひゃま〜』と姉に謝る妹―――ルイズ。
(……あれがこの姉妹なりのコミュニケーションなのだろうか。しかし……)
 極端に扱いにくそうな女だ。
 それがユーゼス・ゴッツォの、エレオノール・アルベルティーヌ・ル・ブラン・ド・ラ・ブロワ・ド・ラ・ヴァリエール
に対する第一印象だった。
「れ、れも、おきゅれたのは、しょこの、ちゅかいまのせいれ……(訳:で、でも、遅れたのは、そこの、使い魔のせい
で……)」
「アンタね、使い魔の監督なんて、メイジの初歩でしょう、初歩!」
(……よくアレで通じるな)
 頬をつねられたまま喋るルイズの言葉を、正確に把握して応答するエレオノールに、ユーゼスは感心する。
 一方、その頬をつねられているルイズはと言うと。
(い、痛い、ほっぺたが痛い……。な、なんとか話題を変えないと……。
 ……あ、そうだ!)
 さすがにつねられ続けるのは辛いので、(ルイズ的に)起死回生の一手を繰り出す決意をしていた。
「ね、ねえひゃま。えりぇおのーりゅねえひゃま(訳:ね、姉さま。エレオノール姉さま)」
「なに?」
「ご、ごきょんやきゅ、おみぇでとうごじゃいまひゅ(訳:ご、ご婚約、おめでとうございます)」
 それを聞いたエレオノールの眉と目はますます吊り上がり、空いていた左手も動員して、両手でルイズの両頬をつねり上
げる。
「あいだ! ほわだ! でえざば! どぼじで!(訳:姉さま! どうして!) あいだだだっだ!」
 上、下、奥、前、ぐるぐる回す。
 頬をつねるのにも色々とバリエーションがあるのだな、とユーゼスは無駄な知識を増やしていく。
「……あなた、知らないの? って言うか、知ってて言ってるわね?」
「わちゃひ、にゃんにもふぃりまふぇん!(訳:わたし、何にも知りません!)」
「婚約は解消よ! か・い・しょ・う!」
「にゃ、にゃにゆえにっ!?(訳:な、なにゆえにっ!?)」
「さあ? バーガンディ伯爵さまに聞いて頂戴。なんでも『もう限界』だそうよ。どうしてなのかしら!」
(……お可哀相なバーガンディ伯爵……)
 ルイズには、名前しか知らないバーガンディ伯爵の気持ちが痛いほど分かった。と言うか、現在進行形で痛いのだが。
 お試し期間の半同棲生活みたいなものだったらしいが、何せこの姉と四六時中一緒にいて、寝食を共にし、あまつさえそ
れが一生続くのである。
 むしろ、よく持った方だと言えるかもしれない。
 ……そのとばっちりが自分に降りかかるのは、ハッキリ言って迷惑以外の何物でもなかったが。
14名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/03(水) 22:04:29 ID:BUaA/xjS
支援じゃ!
15ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2008/12/03(水) 22:05:25 ID:WNlFkiCl
 ちなみに、そんな妹の内心など露知らず、頬をつねり続けている姉は、心中穏やかではなかった。
(ぐ、ぬぅ……)
 エレオノール・アルベルティーヌ・ル・ブラン・ド・ラ・ブロワ・ド・ラ・ヴァリエールは、ルイズよりも11歳ほど年上、
つまり御年27歳である。
 27歳。
 30歳へのカウントダウンだとか、ハルケギニア的な結婚適齢期をブッチ切っているとか、体力的な衰えが微妙に見え始め
たとか、27歳でその胸のサイズはちょっと……とか、それはともかく。
 今、問題とするべきは、彼女がつねっている妹の頬―――いや、もっと正確に言うならば。
(こ、この肌……!!)
 そう、この妹の『肌』である。
 最近、エレオノールは化粧のノリが悪い。
 ―――いや、実を言えば、自覚はあるのだ。
 自分はいわゆる『お肌の曲がり角』というものをギャリギャリと突破し、今まさに下り坂を突き進んでいる、と。
(それでも、それでも、っ……!!)
 そのみずみずしさ、うるおい、ツヤ、張り、キメ、加えてつねる指をはね返す弾力。
 ……全てが、かつて自分が持っていて、そして失ってしまったものだ。
 気がつけば、頬を触ったときの感触が『プニッ』から『ペタッ』へ、そして『カサッ』へと変わっていった。
 気がつけば、入浴した時に肌がお湯を弾かなくなっていた。
 気がつけば、自分の顔から輝きが薄れ、今ではボンヤリとしかその面影が見えなくなってしまった。
 無論、エレオノールとて、ただ黙ってその魔の手にかかったわけではない。
 食事は脂ものを控え、味付けは薄めに、野菜は多めにとったり。
 甘いものは実は大好きだが、まさに断腸の思いでそれを断ったり。
 小瓶一つで10エキューする水の秘薬を購入して、朝と入浴後には毎日欠かさず肌に水分を与えたり。
 太陽にはなるべく当たらないように過ごしたり(ハルケギニアの人間に『紫外線』という概念は無い)。
 適度な運動を欠かさず行ったり。
 母親から、肌の手入れのためのマッサージ法を伝授してもらったり。
 ストレスは溜めずに過ご―――したいのだが、どうも自分はストレスを感じやすい。何故だろうか。
 睡眠はたっぷりと取―――りたいのだが、研究職に就いている以上、2日や3日の徹夜はザラである。これはどうにもなら
ない。
 ……職場で鏡を見ながら『あら、ニキビが出来ちゃったわ』と言ったら、新人の女性研究員から『ミス・ヴァリエール、
ニキビはある程度の年齢を過ぎたら“吹き出物”って言うんですよ』と言われた時は、ソイツを絞め殺してやろうかと思っ
たが、鋼の精神でどうにか耐えた。
 ―――本当は、分かっている。
 失ってしまったものは……若さという輝きは、もう……二度と戻っては来ないのだと。
 しかし、それを求めてしまうのは…………人間のサガ、というモノなのだろうか?
(若さって、何かしら……)
 ユーゼスのかつての友人ならば、その問いに『振り向かないことさ!』、あるいは『あきらめないことさ!』などと答え
るのだろうが、あいにくとエレオノールにそんな友人はいなかった。
(フフフ、でも今に見ていなさい、ルイズ……。あなたもいずれ私と同じ年齢になる……。そうすれば、この苦悩も……)
 なお、ルイズが27歳になるということは、11年ほど経過する、ということである。
(……く、苦悩も……)
 もし、11年経過したとしたら。
(……理解が……出来て……)
 つまり、自分の年齢は―――――
(―――――そんな未来の話は、どうでもいいわね)
 エレオノールは速やかに思考を切り替えると、妹の頬をつねっていた両手をパッと離すのだった。
16名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/03(水) 22:07:04 ID:J8FogTL9
お肌の曲がり角支援
17ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2008/12/03(水) 22:07:32 ID:WNlFkiCl
「あうっ!」
 つねられていた手をいきなり離されて、その反動でルイズの身体がドサッと地面に倒れる。
 それと同時に、バサバサバサ、とルイズの鞄の中に入っていた紙の束が散乱した。
「あら? それは……?」
「……む」
 エレオノールとユーゼスの表情が変わる。
 前者は少し興味深げに、後者は『余計なことを』とでも言いたげな顔だった。
 エレオノールは地面に広がった紙を一つ一つ拾い上げると、その題名に目を通す。
「『魔法についての考察』? これはあなたが―――いえ、字が違うわね。ルイズ、誰が書いたの?」
「そ、そこにいる、わたしの使い魔です……」
 赤く腫れた頬を撫でさすりながら、ルイズはユーゼスの方を見た。エレオノールもそれにならってユーゼスを見るが、
すぐにレポートへと視線を移す。
「ふ……ん、ふん……」
 素早く眼球を動かし、レポートを読み上げていくエレオノール。
「……ここで読むのも何だから、中に入りなさい」
 そして、片手にユーゼスのレポートを持ったエレオノールの先導に従い、ルイズはおずおずと、ユーゼスは特に感慨もな
くアカデミーの中へと入っていった。

 二人は、エレオノールの研究室に通された。
 さすがに主席研究員、しかも名門貴族の長姉ともなれば、専用の研究室程度は持っていて当然らしい。
 デスクに座ったエレオノールがペラリと紙をめくる音が時折響き、その途中、
「……ルイズの使い魔の平民、私の質問に答えなさい」
 少々厳しい目つきで、ユーゼスに質問が投げかけられる。
「何だ?」
 ユーゼスとしても拒否する理由はないので、逆らわずに答えることにした。
(……うふふ、来た来た……)
 ルイズにとっては、待っていた瞬間でもある。これで『しどろもどろになるユーゼス』という、珍しい光景も見れるだろ
う。
 そしてそれを見た自分は言うのだ、『アンタの研究なんて、大したことないじゃない』と。
 ……言う、はずだったのだが。
「この水……『ブンシ』? というのは何?」
「霧や湯気などをよく観察すると、細かい粒子状になっているだろう。あれの粒の一つ一つだと思えばいい。……厳密に
言うとかなり違うのだがな」
「『サンソ』というのは?」
「……一概には言えないが、空気中に存在している『火が発生することにおいて必要な要素』と捉えてくれ」
「『キアツ』について」
「読んで字のごとく、『空気の圧力』だ。……確か、風の魔法に真空を利用した攻撃があったと思ったが、気圧についての
研究はされていないのか?」
「……『空気に圧力がある』って考え自体がないのよ」
「成程」
「『物質のユウテン』は? これを見ると、いつの間にか勝手に数字が設定されているようだけれど」
「『融点』は、『物質が熱によって溶解を始める温度』だ。
 数字については、水が沸騰する温度を100℃、水が凍り始める温度を0℃としている」
「……それだと、『水が凍り始める温度』より低くなった場合、どうするの?」
「その場合はマイナス10℃、マイナス100℃―――となる」
「ふぅ、ん……」
(……あ、あれ?)
 何だか、ルイズが想像していた結果とは、かなり違ってしまった。
18ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2008/12/03(水) 22:09:31 ID:WNlFkiCl
 困惑するルイズをよそに、エレオノールは一旦ユーゼスのレポートを読むことを切り上げる。
「ルイズ」
「は、はい!?」
「あなたの手紙には、『“サモン・サーヴァント”で平民の使い魔を召喚してしまった。軽くで構わないので調査して欲し
い』と書いてあったわね?」
「そ、その通りです」
「………」
 ユーゼスの目の前まで歩くエレオノール。
 そして指揮棒のような杖を取り出すと、短くルーンを呟き、光の粉をユーゼスに振りまいた。
「あの、姉さま、『ディテクト・マジック』なら、魔法学院の教師の方が……」
「あなたは黙ってなさい」
「はい……」
 言われた通りに、ルイズは黙りこくる。……心なしか、小さな背丈が更に縮んでしまったように見えた。
 そしてエレオノールは、集中してユーゼスの解析結果を分析する。
(この平民自体には、魔法的な要素は見当たらない……。強いて言うなら使い魔のルーンが反応しているくらいだけど、
それでも特におかしい点は……。
 ……………あら?)
 かすかな、本当にかすかな違和感を感じる。
 例えるなら全く同じワインを飲んで、産地も、出荷された年も、作った人間も、醸造した場所も、入っていたタルも、
入れられた瓶も、保温条件も、飲むためのグラスも、そのグラスへの注ぎ方も、ワインの温度も、飲むタイミングに至るま
で同じはずなのに、それでも感じてしまうほどの微妙な違い。
(……?)
 エレオノールはそこまで超人的に繊細な味覚を持っているわけではなかったが、そんな違和感を覚えてしまった。
 ……おそらく、並のメイジではスクウェアクラスであろうとこれを感じることは出来まい。
 このアカデミーの研究員として数え切れないほど―――魔法学院に入学する前から通算すれば、最低でも6桁には届いて
いるという確信がある―――『ディテクト・マジック』をかけてきた自分だからこそ判別できるほどの、それだけかすか
な違和感。
 それは、この平民の上半身―――頭部から感じる。
「じっとしていなさい」
「む?」
 ガシ、とエレオノールはユーゼスの頭を両手で掴み、更に『ディテクト・マジック』をかけた。
「……っ」
 ―――やはり、ほんのわずかな違和感を感じるが、その正体が分からない。
 頭を切開してみるか、という考えが浮かんだが、『人間の使い魔』などという前例のないモノを、迂闊なことで失うわけ
にはいかない。
 ……何より、妹の使い魔にそんなことは出来ない。
19名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/03(水) 22:10:59 ID:J8FogTL9
支援
20ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2008/12/03(水) 22:11:31 ID:WNlFkiCl
 そして、その調べられている対象のユーゼスは、
(……『正体不明のエネルギーが干渉している』、か。律儀に警告を送ってくるとはな)
 脳内のクロスゲート・パラダイム・システムから発信される信号を、顔は無表情のまま、内心で苦笑しつつキャッチして
いた。
 おそらくこのルイズの姉は、システムが発した警告信号を、魔法的な信号として捉えてしまったのだろう。
 機械的な信号まで把握が出来るとは、正直そこまでの繊細さがあるとは思わなかった。
 ……しかし、ナノチップサイズであるが故に、その信号も極めて微小。
 よって、その正体を看破することは出来ないのである。
(コルベールという教師は、このような反応を示さなかったが……。これはこの女が優秀なためか?)
 召喚されて間もなく『ディテクト・マジック』をかけた禿げた頭の中年教師を思い出し、エレオノールと比較する。
 これにより、ユーゼスの中で、“『ディテクト・マジック』に関してはエレオノール>コルベール”という図式が出来
上がった。

 エレオノールはしばらくユーゼスの頭を掴んでいたが、やがて手を離し、あらためてルイズに問いかける。
「……ルイズ、あなたはこのレポートを見た?」
「い、いいえ、見てませんけど」
「…………この平民が、魔法の研究をしていることは知っていて?」
「はい。召喚されたその日に、わたしの部屋の本を読んでました。あ、わたしの隣で授業も聞いてます」
「………………それに関して、あなたの感想は?」
「変な平民だな、って……」
「……………………この平民を、アカデミーに連れて来ようと思ったのはあなたの判断?」
「? いいえ、ユーゼスが自分から『連絡して欲しい』って言ったので……」
「………………………………はぁ」
 エレオノールは小さく、しかし深いため息をついた。
 どうやら自分の妹は、召喚した使い魔がかなり『特殊』であることに、ほとんど気付いていないらしい。
 頭にある微細な反応はともかくとして、使い魔の普段の行いをほとんど重要視していないようである。
 一応、普段この使い魔にどのようなことをさせているのかを聞いてみると、
「えっと、部屋の掃除とか、洗濯とか、着替えの手伝いとか、その他にも雑用とか……」
 ……この使い魔に対しては、小間使い程度の認識しか持っていないことが判明した。
(そんなだから『ゼロ』なのよ、まったく……)
 魔法が使える、使えない以前の問題のような気もするが、とにかく呆れるしかない。
 ふぅ、と息をもう一度吐いて、エレオノールはルイズに確認と指示を行う。
「……この使い魔を召喚したのは、1週間ほど前ね?」
「その通りです、姉さま」
「たしか、魔法学院には使い魔を召喚して2週間ほどしたら、その使い魔の品評会があったはずよね?」
「はい」
「辞退しなさい」
「はい……って、ええっ!!?」
 ルイズはいきなりの姉の指示に、鳶色の目を見開いて驚いた。
21名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/03(水) 22:13:33 ID:WNlFkiCl
「な、何でですか!? それは、平民の使い魔なんて、恥ずかしくってとても出せたものじゃありませんけど! あの品評
会はアンリエッタ姫殿下もお越しになられる、由緒正しい伝統行事なんですよ!?」
(……『とても出せたものではない』などと、本人の前で言うことではないと思うが)
 無論、ユーゼスは無言のままである。
「も、もしかして、ヴァリエール公爵家の恥になるから、とかですか……!? で、でも、それだったら品評会に出席しな
いことの方が、恥に……」
「……いいから、とにかく辞退すること! いいわね!?」
「あの、その、でも……」
「返事は!?」
「はっ、はいぃ!!」
「よろしい」
 エレオノールは眼鏡をクイっと指で上げると、ユーゼスの方を見る。
 実を言うと、『使い魔品評会』とは『使い魔を見る』ことが目的ではなく『その年のメイジを見る』ことの方に重きを置
いている。
 『使い魔を見るにはメイジを見ろ』という言葉にもあるように、召喚した使い魔とそれを使いこなしているかどうかを観
察し、その年のメイジの出来具合を調査するのである。
 ゲルマニアやガリアなど、外国からの留学生も珍しくないトリステイン魔法学院であるから、その意味合いは容易に察す
ることが出来るだろう。
 しかし、ルイズの場合はその使い魔が特殊すぎている。好奇の目で見られるのは避けられないだろうし、下手をしたら
本当に解剖させられかねない。
 そして何より、ルイズが言った『アンリエッタ姫殿下もお越しになる』というのが重要だ。
 この使い魔の正体も判明していない今の状態で、王室に直接―――あの『鳥の骨』こと宰相マザリーニの目に触れさせる
のは、危険すぎる。
 何しろ、父であるヴァリエール公爵が「あの男にだけは気を許すな。下手に手も出すな。なるべくなら関わるな」と言う
ほどの人物である。
 そんな男の前で、もし迂闊にもこの論文の発表などをやられていたら……。
(……少なくとも、ロクなことにはならないでしょうね……)
 気付かぬ内に息を呑むエレオノール。
 そして、初めてまともにユーゼスを―――『ただの平民』や『妹の使い魔』ではなく、ユーゼス個人に注目する。
 わずかにウェーブがかかっているが、基本はストレートの銀色の長髪。
 切れ長の目。
 顔は……まあ、美形とまではいかないまでも、整っている方である。
 問題はその人間性なのだが、これがどうにも掴みにくい。
 表情はほとんど動かないし、口調も平坦。強いて言うなら、時たま興味がありそうな目をこちらに向けてくることくらい
か。
 研究熱心な人間だということはレポートを流し見ただけでも分かるが、研究者にも色々とタイプがある。
 社会や世界に貢献しようとする者、役に立とうが立つまいが自分の研究にひたすら没頭する者、周囲の迷惑を顧みない
者、目的のためには手段を選ばない者、世界を自分の思い通りにしようとする者……。
 実際、ユーゼスは上記に挙げられたタイプの中に当てはまっていたのだが、それをエレオノールが知る術はない。
 とにかく、これだけは言える。
 ……腹に一物か二物くらいはありそうな男だわ。
 それがエレオノール・アルベルティーヌ・ル・ブラン・ド・ラ・ブロワ・ド・ラ・ヴァリエールの、ユーゼス・ゴッツォ
に対する第一印象だった。
22名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/03(水) 22:14:31 ID:BUaA/xjS
支援の二つ名
23ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2008/12/03(水) 22:14:39 ID:WNlFkiCl
申し訳ありません、ageてしまいました。
24名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/03(水) 22:14:53 ID:KHKhSFOo
春(?)がくるのか支援
25ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2008/12/03(水) 22:17:03 ID:WNlFkiCl
 自分を値踏みするような視線を向けてくるエレオノールに対して、ユーゼスは逆に感心していた。
(……私の特異性に気付いたか)
 先程の会話にあった『使い魔の品評会』。あれはおそらく、使い魔を通して次世代のメイジの実力を見極めることが目的
なのだろう。
 メイジがその国における特権階級ならば、メイジの力は国力と少なからず関係があることは容易に想像が出来る。
 しかもこの国の王族までが出席するとなれば、自分の存在をさらすのは、かなりのリスクになり得る。
 自分の知識のみならず、ルーンの特殊性まで発覚するような事態になり、更にもし『実験動物』の何たるかを理解してい
ない輩がいたら、それこそ自分はバラバラに解剖されかねない。
 仮にそんな事態にでもなれば、自分は即座に『この世界』から脱出するつもりだが……。
 ……まあ、今のところはその様子もないようだ。
「では、この簡易論文は、こちらで預からせてもらうわ」
 エレオノールが、相変わらず突き放すような口調で告げる。
「……本来なら、まだ専門家に見せられるような段階ではないのだがな」
「着眼点が今までにない……そう、斬新なものなんだから、こちらでも吟味する価値はあるでしょう。
 そうね……、添削した上で不明点や疑問点をまとめて、あとで魔法学院に送り返しましょうか」
(……そこまでしてくれるとは)
 下手をすると、異端扱いされるかもしれないと予想していたのだが。
「あとは……、この題材のレベルなら……」
 もう一度ペラペラとレポートを流し見て、エレオノールは何かを考え込む。
「少し待っていなさい」
 一言だけ言うと、研究室からどこかへと消えていくヴァリエール家の長女。
 そして10分と少々経過した頃に、彼女は分厚い本を3冊ほど抱えて戻ってきた。
 それをユーゼスに手渡し、
「これを読んで、その内容から読み取れる考察を私に送りなさい。……期限は特に設けないけど、なるべく早くに。いい
わね?」
 少々高圧的に命じる。
「承知した」
 ユーゼスは腕に伝わる魔法の専門書―――ルイズの部屋にある物より難しそうな―――の重さに、その顔を少しだけしか
めながら、『主人の姉』ではなく、『優秀な研究員』に対して了承の意を伝えた。
「そうだわ、ついでにルーンのスケッチも取らせてもらうから」
「………」
 これには少々、躊躇いを覚える。
 コルベール曰く『珍しいルーン』であり、自分に『武器や兵器の使い方を判別させる』、『感情に比例して身体能力を
向上させる』などの特殊能力を付与させたモノ。
 アカデミーであれば、このルーンの『能力』だけではなく『意味』のようなものも調査してくれるかも知れない。
 だが、それでは自分の特異性をますます際立たせるだけなのではないか……とも考えてしまう。
 しかし、差し当たって断わる理由も見当たらない。
 よってユーゼスは、黙って自分の左手に刻まれているルーンをエレオノールに差し出すのだった。
26ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2008/12/03(水) 22:19:14 ID:WNlFkiCl
「よし、と」
 ルーンのスケッチが終わった。
 これで本日のアカデミーに対する用事は、全て終了したことになる。
 特に御主人様の『余計なお節介』(ユーゼスは本当にルイズが親切心から自分のレポートを持ってきたと思っている)が
功を奏して、研究資料を提供してもらうことが出来たのは幸運としか言えない。
 しかも、わざわざ自分のレポートに関してアカデミーの主席研究員が意見してくれると言うのだから、これはもう望外の
事態である。
(これも因果律の成せる業(ワザ)か……)
 どうも自分に都合が良すぎる展開だが、それならばそれで存分に利用させてもらうまでだ。
「ああ、そうだわ」
 と、そこでエレオノールが何かに気付いて、またユーゼスに向き直った。
「平民、あなたの名前を聞いていなかったわね。教えなさい」
「……ユーゼス・ゴッツォだ、ミス・ヴァリエール」
「―――その無礼な喋り方、次に会う時までには直しておきなさい。……次に会うのがいつになるかは知らないけれど」
「考えておこう」
 別れ際に自己紹介を行う、という奇妙なやりとりの後で、ルイズとユーゼスはアカデミーを後にした。

 再びブルドンネ街に出る、主人と使い魔。
「次は武器屋だったな。……どうした御主人様、様子がおかしいようだが」
 次の目的地へ移動しようとしたところに、苦虫を噛み潰したような表情のルイズが目に入ったので、ユーゼスは声をかけ
てみた。
(何か嫌なことでもあったのだろうか)
 思春期の少女の思考パターンなど、ハッキリ言って全く分からないが、とりあえずここは声をかけてみるべきかと判断し
たのである。
 すると、
「っ、なんでっ!」
 今までで最も強烈な視線で睨まれた。
 ……よく見ると、その瞳には薄っすらと涙も浮かんでいる。
「……なんで、平民で、私の使い魔のアンタがっ! エレオノール姉さまと、あんなに……あんなにっ!!」
「………」
 鬱屈した物を吐き出すように、途切れ途切れに言うルイズ。
「わたしっ、わたしにだって、姉さまは、あんな……風にはっ、ア、アンタもまったく、物怖じしないでっ……!」
 ユーゼスに対する嫉妬や羨望、自分自身に対する焦燥や不甲斐なさ、姉から感じた自分に対する呆れや落胆―――その他
にも今までに散々『ゼロ』と呼ばれて蔑まれ続けてきたことのコンプレックス、いくら頑張っても実らない努力へのぶつけ
ようのない怒りなど、様々な感情が一気に噴き出していた。
 ―――その彼女の感情を、一言で集約すると。
「なんで、わたしは認められないのに、アンタが認められるのよ!!」
 人通りの多い場所だというのに、そんなことには頓着もせずルイズは叫んだ。
 ……結局は、そこに行き着くことになるのである。
 そんなルイズの悲痛な叫びに対し、ユーゼスはやはり感情のこもらない声で答えた。
「どう答えて欲しい?」
「……え?」
「『いつかは認められる』、『理解者がきっと現れる』、『何かの拍子に魔法が使えるようになるかもしれない』、
『一緒に頑張ろう』、『努力すれば道は拓ける』、『すまない』、『お前には無理だ』、『所詮“ゼロ”は“ゼロ”に過ぎ
ない』、『私には何も言えない』―――簡単に思い付くのはこのくらいか。
 どれが望みだ?」
「なっ……」
 ルイズは絶句した。
27名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/03(水) 22:19:17 ID:BUaA/xjS
あえて言おう、支援であると!
28ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2008/12/03(水) 22:21:14 ID:WNlFkiCl
「ただ単純に慰めて欲しいだけか? それならば、そのようにするが」
「バッ、バカにしないで! 誰がそんなこと!!」
「そうだろうな。中途半端な慰めなど、逆効果にしかならない」
 『認められない悔しさ』も、『冷笑される屈辱』も、『理解してもらえない苦悩』も、『自分という存在を超えるモノに
対する嫉妬』も、『卑小な自分自身に対する怒り』も、全てユーゼスは味わってきた。
 だから、ルイズの気持ちは少なからず理解が出来る。
 しかし、共感は出来ない。
「……私に感情をぶつけるだけぶつけて、それだけか? 『貴様』の底が知れるな、『御主人様』」
「なん、なんですって……!?」
 皮肉も込めて、『貴様』という罵りの意味を含めた呼び方と、『御主人様』という敬った呼び方を混同する。
「『貴様』が今やっていることは、子供がただ泣き喚いていることと大差がない。
 私という存在が現れて、それが自分の自意識や存在理由、居場所を脅かす。
 ……成程、確かに大事件だが、『貴様』はそれに対してただそうやって私に叫ぶだけか?」
「………っ」
「私を始末するなり、論文を燃やそうとするなり……、……実る保証などどこにもないが、それこそ自分自身で努力する
なりしないのか?」
 自分はやった。
 40年―――自分の半生を懸けて、クロスゲート・パラダイム・システムを完成させた。
 ウルトラマンの力を手に入れるために、非人道的なことにも手を染めた。
 身近な邪魔者は、ことごとく排除した。ある組織も乗っ取った。
 だと言うのに、この目の前の少女は。
「足掻きもせずに、ただ不満を吐露するだけ。
 ……こんな『御主人様』に当たるとは、これは『ハズレを引いてしまったな』」
「……っ、っ!!」
 召喚されたその日にルイズから言われたセリフを、そのまま引用して彼女に突き返す。
 ……ギリ、と歯と歯がこすれる音がルイズから聞こえた。
 そして、再びユーゼスを睨むと、
「うる……っ、うるさいわねっ!!」
 噛み付くように叫びを上げる。
「わたしが、このわたしが『ハズレ』ですって!?」
「違うのか? 世間からは『ゼロ』呼ばわりされて、姉には全く頭が上がらず、あげくの果てにはこの体たらくだが」
「い、い、言ったわね、この……!!」
 感情のままに杖を振り上げるルイズ。
 だが、感情とは別の『理性』が、そんな彼女に警告を放つ。
 ―――ここでこの使い魔を攻撃しても、それはコイツの言葉を肯定するだけだ。
 ―――自分のこの気持ちを晴らすには、この使い魔を、
「……そうね、分かったわ」
 杖を下ろす。
 引きつった笑みを浮かべつつ、感情の爆発を抑えながらルイズは言葉をつむぐ。
「認めてあげる。今は……今は、たしかにアンタの言う通りよ。でもね……!」
「でも、何だ?」
「……いつか、そう遠くない将来に、……絶対、絶対、絶対、アンタを屈服させてやるんだから!!!」
 睨みを利かせ、涙をにじませながら、御主人様は使い魔に宣言した。
「―――『お前』に対して、その手の期待はしないでおくよ、御主人様」
「フンッ、今はせいぜい得意になって浮かれて自惚れてるがいいわ!」
 ユーゼスは内心で少しだけ笑うと、敵意むき出しの主人に連れられて大通りを歩いていく。
 差し当たって、次の目的地は武器屋である。
29名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/03(水) 22:21:46 ID:J8FogTL9
しえーん
30ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2008/12/03(水) 22:23:40 ID:WNlFkiCl
 以上です。
 ……あれ、おかしいなぁ、この話の内にデルフ購入まで進めるつもりだったのに、いつの間にかこんなになってしまいま
した。何故でしょう。
 話を進めていると、たまにキャラクターが予想外の行動や言動を取り始めるので厄介ですな。

 ちなみにスーパーヒーロー作戦においてユーゼスが相手のことを『貴様』呼ばわりするのは、大体は感情的になっている
時なので、通常の呼び方の『お前』と区別させてみました。

 なお、『エレオノール姉さま』の『姉さま』の部分の読み方なのですが、この作品では『あねさま』ではなく『ねえさま』
で統一します。原作だとごっちゃになってるので。
 あと、私はエレオノール姉さまのことは結構好きですよ? いや、マジでw

 それでは、支援ありがとうございました。
31名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/03(水) 22:24:44 ID:GpkshJKN
乙でしたー!
心理描写を細かく書いていて読み応えがある……イイ!!
32名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/03(水) 22:25:29 ID:CbxHiq9p
お疲れ様でした。
次回も期待してます!
33名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/03(水) 22:25:44 ID:2NuGBjv5


ユーゼス、お前の友人は乗馬クラブで働いてたってのに…
34名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/03(水) 22:27:48 ID:dDn5ckaN
乙〜
しかしここまで体力のない使い魔は今までなかったなw
35名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/03(水) 22:28:18 ID:/9TbRhkT
ノノノノノ   
( ○○) <  乙!
  (||||)  
36名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/03(水) 22:37:29 ID:NdAXtEuu
新たにSS投下したい!でも書いたことないから小説読んで勉強したい人へ

『少ない文字数できちんと起承転結を踏まえたSS書きたい人』
・鬼平犯科帳などがオススメです、江戸時代の専門用語が厄介ですが
それを乗り切れば話の内容は短篇ばかり、簡単で読みやすいです。
『感動するSSを書きたい人』
・人によって感動するツボは違いますが、とりあえず初期の極道作品以外の浅田次郎をレッツトライ!
天国までの百マイル、壬生義士伝などをドゾー
『前置きが糞長いSSを書きたい人』
・有無を言わさず京極夏彦の姑獲鳥の夏を読みましょう
読みおわった後、『これ、600ページあったけど100ページで終わるんじゃね?』と思うこと受け合いです
37名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/03(水) 22:45:27 ID:nAP7I/wR
アニメのキャラ出すのは今までにもあったけど、ゲームのキャラを出すのはまずいですかね?
38ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2008/12/03(水) 22:46:58 ID:WNlFkiCl
>>37
あの、それを言われると私の立場がないんですがww
39名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/03(水) 22:47:03 ID:p03LKHCM
テンプレ無視の糞作家乙
40名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/03(水) 22:48:05 ID:GpkshJKN
ごもっともww 他にもゲームから召喚されてる作品ありますし、気にする必要ないかと
41名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/03(水) 22:48:31 ID:lO3A9uLP
ゼロのゲームキャラのことでしょう
PS2版とか原作小説にいないキャラとかいるわけだし
42名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/03(水) 22:49:16 ID:BuXdcy0z
>>37
問題ないと思うよ。
でもマイナーだから投下終了報告ついでに一言付け加えおけば
文句も出ないと思う。
43名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/03(水) 22:50:42 ID:GpkshJKN
>>39
批判中乙。死ねよクズカスゴミの糞スレ立て野郎。
44名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/03(水) 22:55:08 ID:4pLHcixk
てかここに毒吐くなよ…毒吐き行けば?
45名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/03(水) 22:57:04 ID:phO4AWRM
>>44
毒じゃなくて荒らしの気もするが…放置でいいだろ
46名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/03(水) 23:03:20 ID:nAP7I/wR
すまないみんな…オイラの説明不足で。
ええ。ゼロ魔のゲームからなんですよ。どの作品からとは言えませんが。
ただ使い魔として出すのではなく、主要メンバーに関わる妖淫として出したいなと考えているので。
47名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/03(水) 23:04:14 ID:qvGJN+gq
毒吐きが平和だから火種まいてんじゃね?
48名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/03(水) 23:05:04 ID:0Zxf9nDP
781 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2008/12/03(水) 20:48:05 ID:GpkshJKN
乙でした! ビビらしさが出てて面白かったです! 次も期待してます!!

785 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2008/12/03(水) 20:53:03 ID:GpkshJKN
正当な批判ならまだしもそんなことを好き勝手ほざいてるてめーらがゴミだ。

816 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2008/12/03(水) 21:41:59 ID:GpkshJKN
自分の事をゴミカスクズと自覚して無い批判厨は無視して支援。
スルーも使えない低脳だしまじ死んでくんないかな。


823 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2008/12/03(水) 22:07:20 ID:GpkshJKN
ただ単に叩きたいだけのゴミだから。それはそうと埋め。

7 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2008/12/03(水) 21:52:07 ID:GpkshJKN
乙支援です!

31 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2008/12/03(水) 22:24:44 ID:GpkshJKN
乙でしたー!
心理描写を細かく書いていて読み応えがある……イイ!!

40 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2008/12/03(水) 22:48:05 ID:GpkshJKN
ごもっともww 他にもゲームから召喚されてる作品ありますし、気にする必要ないかと

43 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2008/12/03(水) 22:50:42 ID:GpkshJKN
>>39
批判中乙。死ねよクズカスゴミの糞スレ立て野郎。

こんな反応が楽しいからだろ
49名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/03(水) 23:05:13 ID:qvGJN+gq
連続で恐縮だが、>>46なんと面妖な・・・・www
50名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/03(水) 23:05:47 ID:ySicnAkK
どちらかというとIFスレのほうがそれっぽいような気がする。多分。
というかそれってクロスとか関係無しに普通のSSでいいんじゃあ。
51名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/03(水) 23:08:32 ID:5TEJNnsx
>>46 >>49
妖淫www
52名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/03(水) 23:15:21 ID:lO3A9uLP
おそらくクロスの使い魔はちゃんといてゲームオリキャラが話に絡んでくるんだろう
アニメキャラ使ってる人もいるんだし自分は有りだと思う
53名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/03(水) 23:19:12 ID:ySicnAkK
>>52
あ、そういうことか。
それなら問題ないと思う
54名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/03(水) 23:21:46 ID:qvGJN+gq
同郷の顔見知りなのか、ハーフ獣人なのか、他国の姫なのか、カピバラなのか、司書なのか、ペンギンなのか知らんが
問題ないと思うわ。モット伯がおkなんだし。
55名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/03(水) 23:22:46 ID:MdKHSeDD
>>46
>妖淫
リシュのことですか、わかりません
56名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/03(水) 23:23:30 ID:5TEJNnsx
アニメオリでSSに頻出するのってモット伯くらいかね。

もっと吐く、と変換されたが。
57名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/03(水) 23:27:37 ID:SDSPWTTb
ゲェェェ
     ∧_∧
    (ill´Д`)
    ノ つ!;:i;l 。゚・
   と__)i:;l|;:;::;:::⊃
    ⊂;::;.,.';;;;'::.:.;::.⊃
58名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/03(水) 23:28:53 ID:TTTNZCFN
もっと吐け
59名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/03(水) 23:29:12 ID:D2lUxP/z
そういえば、腹一杯になったら吐いてまた食うってスタイルの晩餐会とかあったんだよね
60名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/03(水) 23:30:31 ID:GpkshJKN
ローマ時代、だったっけ……確か鳥の羽を喉に差し込んで吐いてたような。
61名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/03(水) 23:30:53 ID:SDSPWTTb
ローマじゃなかったか?

   _____
  /;;;;:::::::::::::::::/
 ||;;;;;;;;;;;;;;;;;;ハ,ハ ゲエェェェ
 |: ̄\;;;;; (,,/⌒ヽ
 |:   |: ̄ ̄ 〉  〜
 |:::.._|__ U゙U_|
      ゲボァハーッ
62名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/03(水) 23:33:36 ID:5TEJNnsx
なんか、苦しまずに吐ける薬が発明されて、その薬を作った人はえらく賞賛されたらしい……と星新一先生のエッセイにあった気が。
63名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/03(水) 23:35:57 ID:qvGJN+gq
I can puke!Hey!
You can puke!Hey!
We can puke!Hey!
MOTTO!MOTTO!
64名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/03(水) 23:55:58 ID:cL40Bz+7
香辛料と薬草を詰め込んだヤマネの蜂蜜漬けを食べて吐いてたという記録があるが>古代ローマ
65名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/03(水) 23:57:30 ID:oWa8V5eU
特効薬作れればノーベル賞ものなのは、
風邪・癌・水虫だったっけ?
66名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/03(水) 23:59:26 ID:5TEJNnsx
>>65
デマらしいよ。
67名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 00:07:15 ID:6e5NOMc2
>>64
一瞬おいしそうな響きだが良く考えると凄まじい代物だな、それ
68名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 00:13:50 ID:2dHaPMt+
なんか古代ローマには逆流性食道炎の人が多そうだな。
69名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 00:16:07 ID:pJzD5nFs
このスレの四天王、異論は認めない

【ゼロの使い】【ゼロの黒魔道士】【虚無の闇】【ゼロと波動】
70名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 00:18:37 ID:FfyyzZMd
13 :名無しさんなのね〜:2008/12/03(水) 21:55:43
目つきの悪い使い魔、後日談発表後だと確かに矛盾が出ちゃうんだな、仕方ない事だけど。
オーフェンが魔王の力を持ってないこととか、コルゴンと普通に仲良さげってところだろうか?
後日談が出た後に書いてたらどうなってたんだろうとちょっと興味が湧いた


14 :名無しさんなのね〜:2008/12/03(水) 22:03:21
>>13
魔王の力持って召喚されたオーフェンって強すぎね?w


15 :名無しさんなのね〜:2008/12/03(水) 22:05:23
>>14
ただし、魔術でモツが出る


16 :名無しさんなのね〜:2008/12/03(水) 22:09:07
>>14
制御に難有りらしい。
まぁそもそもどれくらいの事が出来るのかがよくわかってないんだけど。


17 :名無しさんなのね〜:2008/12/03(水) 22:09:30
>>1

>目つきの悪い使い魔

コルゴンがガリアからの逃亡時に
ビダーシャルを落とし穴に嵌めて激怒させたとかいうネタは、作者のレス返しの中だったっけ?
理想郷の作中にはなかったんだが。


18 :名無しさんなのね〜:2008/12/03(水) 22:11:29
ジョゼフのところで来る日も来る日も飲んだくれるコルゴン。
ジョゼフがうっとうしいと注意に来るとジョゼフをロッテーシャと間違えるコルゴン。
ジョゼフが更に止めようとするとジョゼフの背中を1cmほど刺すコルゴン
ジョゼフの頭の上でゲロを吐くコルゴン

とても酷い事になりそうな気配がひしひしとw


19 :名無しさんなのね〜:2008/12/03(水) 22:15:55
>……しかし……私は……ラッツベインの母親は……絶対……ティッシだと……
コギーもティッシも候補から消えてもうクリーオウかモブかって状況だからなぁ。
しかしティッシ派だったんだな、作者
71名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 00:19:14 ID:wJX5dtSj
残念ながらフロウェンの人が一番好きさ
72名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 00:20:47 ID:st/6lGE9
>>70
コピペしたらお前は偉く見えるのか?
73名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 00:22:41 ID:WKznHR4m
>>69
君に認めてもらう必要は無いが「イザベラ管理人」「ルイズキングダム!」がツートップ。

ちなみに四天王というのは所詮地下天なんで、上に上天がいっぱいいるんだぜ。
74名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 00:24:02 ID:6e5NOMc2
暗くって なんにも〜〜見えなァ〜い!
みんな……誰を相手にしてるんですゥ〜

―――ごめん、これ使う場所違った
75名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 00:24:22 ID:WKznHR4m
>>73
地下天って何だ。
下天と地居天混ぜてしまったぜ。
76名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 00:28:57 ID:WkrcMHEm
>>69
現在投下の多い作家四天王ということだな、異論はないぞ。
77名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 00:33:09 ID:n5ALDRAp
それにしても最近はゲームのキャラがよく喚ばれてるな。

ゲーム全般好きとしてはたまらん!
78名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 00:37:22 ID:4aMkTWI6
投下の予定はありませんか?
でしたら投下をしたいのですが・・・
時間は0:40分を予定しています

召喚者:アッシュ(ルーク・フォン・ファブレ)byテイルズオブジアビス
召喚時期:本編終了後
注意事項:この作品は、本編ラストの赤い髪の青年について、独自の解釈の元に構成されています
あの男は〜だ!との意見をお持ちの方は注意してお読みください
79名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 00:38:56 ID:EJNIdaZ3
既に投下されてるのとは別の作者様? 支援!
80名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 00:38:59 ID:2dHaPMt+
好きなSSを言う流れか。
といっても多くて言い切れんな。魔改造ルイズの話なら大抵好きだけど。
力が手に入ったから思わずはしゃいでつい殺っちゃうとか、ルイズはホントかわいいわぁ。
81異世界に灯る聖なる焔の光(1/3) ◆ABY3358Lsc :2008/12/04(木) 00:39:52 ID:4aMkTWI6
第一話 焔の召喚

音素(フォニム)に包まれた惑星オールドラント。星の生誕から終焉までを詠んだ預言(スコア)と、その遵守を絶対の教えとするローレライ教団に支配された世界。
今この時、オールドラントの人々に根付く預言に導かれる世界が終わろうとしていた。
世界を新たな未来に導こうとする栄光の大地で、二つの信念がぶつかり合っている。
世界を根本から正そうとする者、ヴァン・グランツが勝つか。人々の変革を信じる者、ルーク・フォン・ファブレが勝つか。未来の行方が決する時は近い。
その戦いの最中、一人の焔が肉体に与えられた役割を終えようとしていた。男の名はアッシュ。
ローレライ教団が設立した神託の盾(オラクル)騎士団の顔である、六神将の一角だった男。六神将は皆、自分の戦闘能力にちなんだ二つ名を持っている。
アッシュは、その血のごとき頭髪と卓越した剣技から、畏怖を込めて鮮血と称された。
アッシュにはもう一つの名がある。彼の本当の名前、キムラスカ・ランバルディア王国の貴族であるルーク・フォン・ファブレ。
今、オールドラントには二人のルークが存在している。
人や物質を構成する音素。これを有する全てのものに対して、複製品であるレプリカを作るフォミクリーと呼ばれる技術が確立されている。
アッシュはこの技術の被験者(オリジナル)。そして、アッシュが残した道を走るルークこそ、彼のレプリカなのだ。
アッシュはレプリカを憎んでいた。家族と過ごす時間、国のために尽力する時間、未来を共に歩むことを約束した最愛の女性、キムラスカの王女ナタリアと生きる時間、これらは全てレプリカのものとなったからだ。
故に、アッシュはレプリカに自分を求めた。全てを奪ったものに、ルークとして生きることを強要した。
しかし、レプリカは己の願望から大きく外れてしまった。レプリカが男になっていたのだ。
アッシュは許容できなかった。代用品でしかなかった男が自分を持つこと、オリジナルを超えようとしていることにアッシュは大きな衝撃を受けた。
アッシュはレプリカと『ルーク』をかけて決闘を申し込んだ。一騎打ちで全てを決するために。
お互いの生きる意味を賭けた激しい戦闘の結果、アッシュは負けた。今まで、劣化していたと思っていた存在に超えられたのだ。
アッシュはおぼろげながら気付いた。オリジナルとレプリカが違う存在であることに。
行き去るルークを背にし、迫りくる神託の盾のレプリカ兵士と対峙したアッシュは7年ぶりに自分の本当の名を叫んだ。
己の中の、止まった秒針を再び刻むために。はるか彼方に消えた光を取り戻すために。
「お前らの相手はこのアッシュ――いや……ルーク・フォン・ファブレだ。覚悟しな」
一人で相手にするにはあまりにも多い敵の兵力。それでもアッシュは全ての兵を切り伏せた。
しかし、ルークとの激戦直後で体力を大きく消耗してしまっていた。武器として使っていたローレライの剣もレプリカに預け、今は丸腰。それでも、敵の剣を奪って戦い抜いた。
満身創痍で大軍の相手をする。その代償はあまりにも大きすぎた。
「ちょっと……手こずったな……」
体を貫く剣が己の行く末の導となる。全身が、二つ名のごとく、鮮血に染まるなど初めてのことだろう。それは、己の終わりを意味している。
どの道、生きる時間などほとんど残されていない。くたばるのが少し早くなっただけの話だ。
ほっとけば音素が乖離して消える灯。だから、アッシュはナタリアやレプリカ達に道を残そうと命を張った。
そんなことを知ってか知らずか、あのレプリカは死ぬなと言ってきた。アッシュを助けるために命まで捨てようとした。
今も、生きろ、なんて勝手に約束していた。何も知らないくせに偉そうなことをほざいてるようにしか聞こえなかった。
どうあっても守れない約束など無意味だ。謝る時間さえ残されていない。
アッシュは全てを包む深い闇に沈んでいく。
「後は……頼んだ……」
焔が消える。
世界の狂いか、それとも一人の人間の純粋な狂気か、全てを奪われた男の最期の時。
だが、アッシュは穏やかに眠りへと導かれる。最期の最期で動き出した自分を胸に抱きながら。
焔が昇る。やがて焔はもう一人の自分へと降りてゆく。己の生きた証を、思いを乗せて。
82名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 00:40:04 ID:N0lmkugx
ならば支援さね
83名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 00:40:33 ID:n5ALDRAp
なんとぉーッ!支援だ。
84名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 00:40:50 ID:R3MrYEqh
ブータニアス卿とかBALLsとか
85異世界に灯る聖なる焔の光(2/3) ◆ABY3358Lsc :2008/12/04(木) 00:40:53 ID:4aMkTWI6
「……う……ん」
両の目にかかる強い光はアッシュを覚醒へと促す。
死んだはずの自分に意識があることを不思議と思った。しかし、例外といえる世が一つだけある。つまり、ここはあの世らしい。
アッシュは死後の世界など妄想に近いと思っていた。どうやら、そっちのほうが妄想だったようだ。
目を開いたら、ヴァンか六神将の誰かが覗き込んでる顔でもあるかもな、などと勝手な想像をしながら瞼に光が差し込む。
眩しそうに目を細めて、アッシュは死後の世界の風景に思いを馳せた。アッシュの瞳が静かに開かれる
「は……」
腑抜けにしても過ぎる声が漏れてしまった。ありえない光景が瞳に映し出される。死という絶対の前では決して戻れない世界が目の前にある。
あまりの出来事に、アッシュともあろう男の頭が真っ白になった。
そこにあるのは、かつての同僚であり、敵であった強者たちの姿ではない。
正直、死人が出てきたほうがはるかに楽に身の振りようが容易い。死んだと分かって、それで終わりになるからだ。
アッシュの頭上には石を整然と組み上げて造られた天井が見える。右手の窓は沈む太陽を象徴する橙の光を余すことなく室内に注ぎ込んでいる。
明らかに、ここは人の営みがうかがえる建造物の一室。建築様式から見るにかなり年季の入った貴族の屋敷の可能性が高い。
こんな場所を行き来できるのは生きている人間のみ。だが、死後の世界にも人の営みがある新事実が判明、とも考えられた。
しかし、神経が伝える心臓の鼓動は生きてなければ感じられない。つまり、アッシュは死んでいないということになる。
さすがのアッシュも状況の整理がつかない。
確かに、など、わざわざ確認するまでもない。アッシュの命はエルドラントで潰えた筈だ。
神託の楯の兵士に串刺しにされたというのに、死んでいないのなら、それはゾンビだ。
だが、その身は今も正常に活動している。生きている。ゾンビのように体が朽ちているようには見えない。
「どうなってんだ……これは」
この世の一番の不思議は何か。それに最も適した回答は今の自分じゃないか、と信じ込みそうなほどおかしな事になっていた。
疑問が多すぎて、どこから片付けていいかさっぱり分からない。
半分以上真っ白な頭であるが、それでも、確実に言えることが一つある。
瀕死のアッシュを助け出して、この屋敷に連れ込んだ者達がいる、ということだ。
アッシュは体勢を変えず、腕で体を弄ってみた。傷が傷だっただけに自分の一部とは思えないほど動きが鈍い。
それでも、全身に包帯が巻かれていることは確認できた。ご丁寧に、手厚く治療を施した人物がいる証拠だ。
それが誰かなど考えるまでもない。星の記憶消滅のために自分の超振動を利用しようとするヴァンか、生き残ることを約束しろと言ってきたナタリアやレプリカ達か。
どちらにせよ、くたばりぞこないに手間をかけるなど、余計なお世話もいいことだ。
先ほどと比べ、アッシュの頭も冷静になった。何が起きたかある程度見えてきたからだ。これだけ余裕を持てれば、必ず現れる訪問者への挨拶くらいは考えられる。
ヴァンへ掛ける言葉は考えなくていい。後を任せられたのに失敗しました、なんて敗戦の弁を吐く人間に命を預けた覚えはないからだ。
仮に、ヴァンが勝ったとしても、アッシュはヴァンの計画に賛同する気などかけらもない。ヴァンは反逆する人間を生かしておくほど甘い男ではない。元六神将とは言え、手負いの人間を始末するほど楽な仕事はない。死ぬのがわずかに遅くなるだけだ
アッシュは首を動かし、部屋の扉を探し出した。
暗い顔してレプリカが来たら、憎まれ口でも叩いてやろう。アッシュは、大変珍しいことに、少し笑った。
ナタリアだったら、困ったことにどんな言葉を紡げばいいかアッシュには思い浮かばなかった。気まずいとはこういう時に使われる。
滅多にない困り顔で、アッシュは生の実感を掴み始めている。すぐに消える命と、心のどこかでささやきながら。
さてどうするかと状態を根性で起こして待ち人を待つ。看病がよかったせいか、先ほどと比べ体が軽くなったように感じていた。
窓から外を伺える高さに頭を持っていったら、扉の向こうに人の気配がある。
扉が開かれる。アッシュは心の何処かで、尋ね人の驚いた表情を期待しながら、唇を緩めた。
「おや、目を覚ましたようだね」
人を労わる優しさのこもった声がアッシュの耳に入り込んだ。驚いた表情をするのはアッシュになった。
それも当たり前だ。予想の範疇より外にいる人物が来て、動揺するなというのは難しい。
巨大な木製の杖を持ち、黒いローブを着込んだ中年の譜術士(フォニマー)と顔を合わせた記憶はない。
86異世界に灯る聖なる焔の光(3/3) ◆ABY3358Lsc :2008/12/04(木) 00:42:13 ID:4aMkTWI6
「いやはや、君が召喚された時はどうなることかと不安だったが、何事もなくて良かったよ」
召喚という聞きなれない単語が気になった。しかし、今はそんなことに思考を割く余裕はない。
「体に異常はないかね。眠っている間、うなされていた時もあった。おかしいと感じるところがあるなら言ってくれたまえ」
どうも、いや、ここはやはりが適切だろう。瀕死の俺を救出して、この屋敷に運んだのはこの男だ。
お優しいことに、熱心に看病までしてくれたらしい。本人の意思か、誰かの差し金かはわからない。おそらく後者が濃厚だ。
「お前は何者だ」
問題はこの男がどこの人間かだ。服装からするに、おそらく譜術士。しかし、マルクトとキムラスカ両国軍の譜術士の正装に見られる特徴が確認できない。
しかし、黒いローブの譜術士はよく知っている。何せ、神託の盾騎士団は譜術士の外衣に黒いローブを採用しているからだ。
この男が神託の盾の兵だとするなら、ここはダアトか、あまり考えたくないことだが、エルドラント以外の根拠を失う。
推測はいくらでも立てられる。だが、今欲しいのは確実な現状の把握だ。
細かい話はこの男の口から聞くことにしたほうが良さそうだ。今はどれほど情報を引き出せるかに集中すべきだろう。
「あなたがおっしゃるとおり、こちらの立場を明かすのが本分でございます。しかし、我々も少々事態が差し迫っておりまして……。
ご無礼を承知で申し上げます。我々はあなたの素性をお伺いする必要があります。なにとぞ御協力願いたい」
俺の心のどこかで何かがずれた。違和感などという、あいまいな表現では表せない。男の言葉は明らかに異質だ。
「何故、俺から名乗る必要がある。俺を知らないはずがないだろう」
俺は神託の楯の特務師団長の任に就いていた。原則として、日の光を浴びない裏の人間だ。教団内部の人間だろうと、知らなくて当たり前な地位にいた。
しかし、今はそれに当たらない。なぜなら、俺を助けたのが誰であろうと、鮮血のアッシュ、それどころか、俺がルークオリジナルであることさえも知っているからだ。
「申し訳ありませんが、あなたがおそらく貴族である以外は何も……」
――貴族――長らく親しみがなかった単語を男が口にした瞬間、突然、男は、はっとなって、口を塞いだ。
俺の心のどこかが揺れ始めた。男の発言の整合性が取れない。俺の過去を知っている人間が何故こんなことを聞いてくる。
「何を言っている。ここはダアトかエルドラントのはずだ」
「ダアト?エルドラント?それは地名ですか?あなたはハルケギニアの貴族ではないのですか」
俺の心のどこかが崩れる音が聞こえた。幻聴と思えないほどの圧力を伴って。
「ハルケ……ギニア……。どういうことだ!オールドラントにそんな地名は存在しないぞ!」
急激に感情が高ぶて、言葉を荒げることを抑えられない。
頭に直接、これは嘘だとささやく声が聞こえる。しかし、それは断じてありえない。
ナタリアだろうと、ヴァンだろうと、こんな回りくどい手を取る必要性など砂粒一つほどの価値もない。
男が目を見開く。向こうも俺と同じことに気づいたようだ。
俺と世界がズレている。
87異世界に灯る聖なる焔の光(4/4) ◆ABY3358Lsc :2008/12/04(木) 00:43:14 ID:4aMkTWI6
「あ、あなた、もしや……、このハルケギニア以外の地に住む人間なのですか」
ヴァンに誘拐され、奴の部下になった時から、俺は世界中を飛び回った。
おかげで、オールドラントの都市や町はほぼ把握している。大抵の地なら土地勘もある。
ハルケギニアなど、俺のワールドマップには存在しない。惑星の歴史に記されてはいない。
あちらは俺の正体を探っている。いいだろう、包み隠さず話してやろう。
謎だらけの貴様らのすべてを暴いた後でな。
「当たり前だ!今度はこっちから聞いてやる。ハルケギニアとは何だ。俺をここに連れ込んだのはお前らか!答えろ!」
傍目でも男のうろたえが見て取れる。常識の枠を超えた事実を突きつけられれば、こうもなるだろう。
しばらく、まともな返答は期待できないはずだ。せいぜい御丁寧な説明を考えてもらいたいもんだ。
だが、男は思いのほか早く頭の整理ができたらしい。先ほどと比べ、表情が穏やかになった。
「どうも、お互い厄介な事態に陥っているようですね。先に、私の手前勝手な非礼をお許しください」
「いいだろう。だが、詫びとして、貴様らが何者か、そして俺の身に何が起こったのか、包み隠さず話してもらうぞ」
「仰せのままに。我々を知らねば、事の進展は望めそうにもないでしょうから」
永遠に掴めなくなった生がここにある。目が覚めてからは不可解なことばかり起きる。記憶に痕跡のかけらもない単語が降り注いでくる。俺だけ世界の外側にいるような不快感。
まるで、ヴァンに誘拐された直後のようだ。
だが、あの時とは違う。俺と世界の亀裂はこの男の語る内容が払い取ってくれる。俺が今、どこに立っているかを認識できるからだ。
「まずは、簡潔に説明します。あなたは、魔法が世の理をなす世界、ハルケギニアに召喚されたのです。メイジの使い魔として」
亀裂は塞がれなかった。思惑とはまったく逆の作用が働く。地割れに巻き込まれたかのようだ。はるかな天空へと伸びる岩壁に飲み込まれる。
「では、我々の世界からご説明いたします。どうか御静聴を……」
88異世界に灯る聖なる焔の光 ◆ABY3358Lsc :2008/12/04(木) 00:44:55 ID:4aMkTWI6
ちょっと短いですが、投下終了です

予定ではルイズを出すまで書くつもりが・・・
コルベール先生がここで終われと言うもので
普通に考えればおかしい点がありますが、それは次回に
89名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 00:58:11 ID:n5ALDRAp
乙!
90名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 01:05:09 ID:W7IOTTeQ

先生簡単に信じすぎの気もするが
91名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 01:42:14 ID:dfkX32tb
アニメが予想以上に出来が良かったアビスの人乙です
これからの展開に期待

そしてラスボスの人乙です
ユーゼス体力無さすぎ吹いたwww
エレ姉さまのお悩みがこと細かく描かれているのもツボでしたw
92名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 02:32:14 ID:i3F7pFrQ
前スレの最後が綺麗過ぎるwww
93名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 02:36:11 ID:qfWScAlo
スゲー絶妙www
94名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 02:41:34 ID:lPErJ9yu
>>92
いやぁ、毒吐き野郎が居たから流れを変えようとしたらああなったさ・・・w
95名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 02:55:44 ID:ujUjR6Yg
>>92
フォルゴレだっけ?CD持ってるよ。
初めて聞いたときは爆笑した。
96名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 03:08:31 ID:DO3FnTGf
皆様、感想、雑談をぶった切るような形での書き込み。初めに謝罪をしておきます。
本スレに書くものかと思ったのですが、一応気になったので書き込みをします。私、この板ではリリカルなのはクロスとゼロの使い魔クロス、この二つのスレ・まとめサイトをよく見ております。
そんな中で、ふと気になりましたのが、先日投下されました「使い魔の左手、悪魔の右手」氏の作品、第一話の事です。
DMC4のクロスはまだまだ少なく私も大好物ですが、読んでいて思ったのです。召喚される前、ネロとキリエのシーンの文が、リリカルクロススレの方で連載されている作品によく似ていると。
その作品は、DMC4とのクロス、「魔法少女リリカルなのは〜DEVIL HUNTEERS〜」氏の同名作品です。
その第5話後半、シグナムとフェイトがネロを次元犯罪者と勘違いし、地球まで追ってきて、ネロ達と出会う場面の文及び描写と酷似している部分があります。

悪魔の右手氏
『城塞都市フォルトゥナ、ミティスの森
フォルトゥナ城を過ぎた辺りにある、ラテン語で「優しい」を意味する広大な森。
そのフォルトゥナで信仰されている宗教、再建が進む魔剣教団の本部が一望できるその場所で
二人のカップルが歩いている。』

リリカルなのはDHS第5話 
『何かを知っている。フェイトは今度こそは失敗しない事を胸に誓い、歩いて行く。
2人が向かうは、ミティスの森。フォルトゥナ城を過ぎた辺りにある、ラテン語で「優しい」を意味する広大な森だ。 』

悪魔の右手氏
『「ネロ」
「何だい?キリエ」
ネロ、と呼ばれた青年が振り返る。
「いつ来てもここは…素敵なところね、小鳥のさえずりと川のせせらぎがよく聞こえるわ」
「静かっちゃ静かなんだがな…」
「あなたとの時間もとても長く感じれる」
キリエ、と呼ばれた美しい女性はそういうと彼の左腕に腕をからめる。
「まぁ……ね…」 』
見ているこっちが恥ずかしくなるほどのノロケっぷりである、恋人であるキリエの口から出た素直な言葉に
ネロは少々頬を赤くしながら鼻の頭を気恥かしそうに?いた。

リリカルなのはDHS第五話
『「ここは、やっぱり静かね・・・・・・動物の鳴き声と川の流れの音だけ・・・・・・・ネロはそう思わない?」
「いや、いいところだとは思うさ」
ミティスの森でネロとキリエの2人はゆったりとしていた。何をするでもなく、ただ寄り添い、自然を感じる。
自然は人の心を癒し、恋人の存在はさらにそれを加速させる。ただ、静かに2人でいることが若い二人には幸福だった。
特にネロは、キリエがいいならなんでもといった感じだ。普段のはねっ返りぶりとは正反対である。
「でも悪魔が出たら危ないだろ?」
「でも、ネロが守ってくれるでしょ?あの時も・・・・・そうだったし・・・・・・・」
思い出されるのはあの全てが解決した日。2人の初めての接吻を邪魔した悪魔をネロは完膚なきまでに叩き潰した。それを持ってこられるとネロの顔も赤くなる。
「まぁ・・・ね・・・・」
鼻を掻き、照れ隠しをするネロ。そんな彼の様子を見て、キリエは優しい笑みを浮かべていた。 』
97名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 03:16:40 ID:pJzD5nFs
>>96
明らかにぱくってるな
NTにいた盗作君もDMCとゼロ魔のクロスだったから
こいつと同一人物かも
98名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 03:20:30 ID:z5GAkLdS
オーフェンとか掲載されたとか言う理想郷ってどこ?
99名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 03:26:43 ID:WoKRR4Vg
クロス元から流用した部分が被るのは仕方の無い気もするけど・・・
もう少し捻ったほうが良いのかもね。
100名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 03:26:54 ID:DO3FnTGf
悪魔の右手氏
『時を遡ること数ヶ月前、フォルトゥナで起きた前教皇サンクトゥス一派ら一部の幹部による暴走からそれなりに経ち
お互いの気持ちを伝えあった二人はこうやって度々出かけるようになったのである。
今日は度重なる使用により刃がボロボロになってしまった彼の愛剣、レッドクイーンにメンテナンスを施してもらうために
魔剣教団技術局へと赴くところであった。 』

リリカルなのはDHS第5話
『「ネロ」
フォルトゥナ市街地にある大劇場前、大きな噴水の前に彼女は居た。
「キリエ」
ネロが愛するたった一人のかけがえのない女性、キリエ。彼女ぬに向かってくる彼の眼はとても穏やかなものだった。
「待たせたかな?」
「ううん、大丈夫」
決して他の人間には見せることのない表情。人生を賭けて守り抜くと誓った彼女にのみ向ける笑顔。
かつてのサンクトゥス一派の暴走からそれなりに経った。あの時、お互いの気持ちを伝えあった二人はこうやって度々出かけるようになった。
皮肉なことに先の事件による組織の崩壊が彼らに余裕を与えた。 』

いかがでしょうか?話の順序は違っていますが、一部に関しては句読点の打ち方すらまるっきり一緒の物もあります。
話の展開が全く違いますので、「盗作だ!」と高らかに叫んで良い物かとは思いますが、恐らく描写の参考にされたのでしょう。
リリカルスレの方では、かつて何度か盗作疑惑論争、盗作による当該作者のアク禁、作品削除が行われています。
そういう意味で、私は過剰に反応し過ぎているのかもしれませんが、もし、文章の一部引用がなされている事実があるのなら、ご自分の言葉で文章を御書き直しになられた方が良いと私は思います。
DHS氏にとどまらず、他の方からも参考にしてらっしゃる部分があるかもしれません。その場合も同様です。
最後に、私は悪魔の右手氏の作品を削除した方がいいのでは?とは申しません。完全にクロス先が違うのもありますし、私も前述の通り、DMCは大好物ですし、もちろんゼロ使も大ファンです。
そういう意味では、かつては暗殺の任務も数多くこなし、悪魔の右腕を持ち、スパーダの血を引く者、皮肉屋好戦的、集団の中での孤立を何とも思わない。
独特の設定を持つネロがハルケギニアにやってくるというのはとても新鮮です。

長々しい、お見苦しい文を書き込みしまして、大変ご迷惑をおかけしました。
101名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 03:29:39 ID:WoKRR4Vg
それにしてもDMCと見ると、一瞬クラウザーさんの事かと思ってしまうな。
102名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 03:32:07 ID:ozsU2Qht
>>100
取りあえずこれ、ここよりも避難所の運営議論スレに持ってった方がいいと思う。
103名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 03:40:53 ID:9YqeLSK6
>101
資本主義の豚と化すマリコルヌ余裕でした
104名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 03:45:46 ID:effC7ftU
>>98今メンテナンス中みたいだから見れないよ

検索すべし
105名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 03:48:16 ID:Vpmzs1dT
>>98
キャプテンハーロックの戦艦の名前で検索すればいいと思う
106名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 05:17:19 ID:SDwgoFpJ
それも私だ
107名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 06:50:14 ID:GjUZGQcK
>105
デスシャドウ号か
108名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 07:31:03 ID:G+Ea9zSy
いつかあるとは思っていたが、ついに盗作来たか
109名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 08:08:06 ID:st/6lGE9
そこで倒錯問題を住人全体に摩り替える奴が単発IDで湧けば完璧だ
110名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 08:10:24 ID:KASs9dTz
ここでまた管理人の手腕が問われるな
俺なら絶対削除するね
111名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 08:17:20 ID:SJh2v7v8
作者が同一という可能性もあるんじゃね?
112名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 08:41:09 ID:qfWScAlo
>>96はただの読み手?
なのはの方のクロス作品の作者さん?

前者にしろ後者にしろとりあえずは使い魔の左手、悪魔の右手の作者氏のコメントを待ちたいな
題材がかぶってるところから似たような感じになったって可能性も捨てきれないように思える
DMCやってないから固有名詞とかがかぶってんのが盗作によるものなのかがわからない

まぁ使い魔の左手、悪魔の左手氏がコメントなしに二話を投下して
この件に一切レスポンスなしとかなら先方のスレでなのはの方の作者に確認して
削除とかの処分を運営議論スレにあげる
ってのでどうかな?
113ゼロの使い ◆1sxkwMZzzc :2008/12/04(木) 09:01:58 ID:a0Sh1tJK
5分後、第6話投下します。
114名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 09:02:35 ID:lPErJ9yu
頑張れ。支援
115ゼロの使い ◆1sxkwMZzzc :2008/12/04(木) 09:07:13 ID:a0Sh1tJK
二人は身分の違いも忘れ、過去の思い出を語らいながら、時に笑い、時に懐かしみ。
そんな他愛もなく、しかしほほえましい雑談を十数分ほど続けた。
「初めまして。メディル殿。」
ずっとスルーされていたが、ようやくメディルに話が振られた。
「お初にお目にかかります、姫殿下。」
「凄いわね・・・こんな素晴らしい使い魔を持っているなんて・・・」
「いえ、そんな・・・勿体無いお言葉を・・・」謙遜するルイズだが、明らかに建前だけだった。

次の瞬間、アンリエッタの表情がどこか儚げなものへと変わった。

「私・・・貴方が羨ましいわ・・・姫なんて籠の中の鳥も同然・・・」
「姫殿下、一体どうなされたのですか?」
「私、結婚することになったの。」

アンリエッタの話ではアルビオンと言う国の反乱軍が勝利を収める前に、
ゲルマニアという国(ルイズ曰くなりあがり共の野蛮な国)と同盟を結ぶべく、そこの皇帝と政略結婚をするという。
ところが、その政略結婚の障害となるものがよりにもよって全滅寸前のアルビオン王家にあるというのだ。
それはアルビオン皇太子・ウェールズに送った文だと言う。それが反乱軍の手に渡れば、直ちに公表され、同盟破棄は必定とは姫の談。
アンリエッタ自身、友人であるルイズに依頼するのは不本意だったが、他に頼むに値する実力と信頼を持ち合わせた者もおらず、まさに苦渋の決断であった。
ルイズは親友の頼みと二つ返事で引き受けた。
主であるルイズもそうだが、メディルもまたその文の内容を悟っていた。
そして、人間とはやはり哀れなものだ・・・と白面の魔術師は思った。
と、その時、部屋の鍵を魔法で開け、飛び込んで来た者が現れた。が、彼はすぐにメディルに取り押さえられた。

「ギーシュ!」
それはメディルに丸焼きにされたばかりか、ここに至るまで名前すら表示されなかったギーシュであった。
美しい姫の姿を見て、磁石に吸われる砂鉄の様にやってきたというのが本人の談。
「姫殿下、こやつの処分、いかが致しましょうか。」先程同様珍しくメディルが敬語で姫に問いかけた。
本来なら、メディルにとってアンリエッタはオスマン同様、敬意を払うべき相手ではない。
しかし、彼女がルイズの無二の友人かつ主君である以上、礼を尽くさぬわけにはいかなかった。
「あなたはグラモン元帥の末っ子ですね。」
「ご存知でしたか!」と喜びの表情を浮かべるのも束の間、
「ええ。常に女難に見舞われている貴族として、王室でも噂になっております。」
姫のあまりにもあまりな返事に、ギーシュがこれでもかと凹む。傍らではルイズがそれを見て必死に笑いをこらえていた。
「この不幸な姫の力になってくれませんか?」
無論、この女たらしが首を横に振るはずはなかった。
出発は明朝に決まり、ルイズは皇太子に渡す文を返還する旨を記した文と資金繰りに困ったとき売り払うための水のルビーを姫から受け取った。

メディルが誰かのイメージを読み取りルーラで行く事を提案したが、この中のメンバー全員、皇太子の居場所を知らぬばかりか、
ルイズとギーシュに至ってはアルビオンにすら行った事が無かった。
唯一、アンリエッタだけは行った事があるらしいが、何年も前の事ゆえ、思い出せないという。
116ゼロの使い ◆1sxkwMZzzc :2008/12/04(木) 09:07:57 ID:a0Sh1tJK
その頃・・・
アルビオン行きの船が出る港町ラ・ロシェールのどこかの酒場・・・

「アルビオンは終わりだ!!」
「あんな金にもならない国滅んじまえよ。」

大勢の傭兵達がアルビオン王家の中傷を肴に一杯やっていた。
そこへ一人の非常識な客が訪れた。
酒場の中に事もあろうに、馬に乗ったまま入ってきたのだから非常識以外の何者でもない。
二つの意味で驚くマスターに最高級ワインを注文し、彼は傭兵達に向き直った。

「傭兵の諸君。仕事はいらんかね?」

傭兵達の顔が青ざめた。それもその筈、そいつは髑髏の顔をしていたのだから。

「欲しくない訳じゃないが・・・か、金は・・・」
一人が震えながら言葉を紡ぐ。
髑髏の男は馬に背負わせていた鉄製の大箱を床に置いた。
「エキュー金貨で10万。足りなければ、もっと用意するがどうする?」

足りないと言う者はいなかった。箱を開けようと近付いた傭兵達の鼻面を、髑髏男のランスが掠めた。
その見事な槍捌きに彼らは関心すると同時に、更なる恐怖を抱いた。

「まだ話は終わっていない。」
注文のワインを飲み下し、彼は続けた。

「この金貨には呪いがかかっている。この金貨を手にしておきがら、仕事を放棄した奴が死ぬようにな。」
「へ・・・へへっ・・・一度請けた仕事を投げるなんて傭兵の恥はこの中には・・・」
「アルビオン王家は数に含まれないのかね?」
「うぐ・・・」その言葉を出されては黙るしかなかった。髑髏男はそんなことを気にするでもなく説明を続けた。
「・・・まあいい。とにかく引き受ける者だけ金貨を手にするがいい。ターゲットは数人のメイジ。
桃色の髪の女の一行だ。メンバーの中に鬼神の如き強さを誇るメイジがいるらしいから、こちらで武器を用意した。」
「随分用意がいいんだな・・・ところであんた・・・そのお面。」
「お面?」髑髏男が怪訝そうな声で言う。
「い・・・いや、その髑髏のお面、あまり似合ってないぜ。」
「クククク・・・これか?」

髑髏面は傭兵達の前で、それを外して見せた。
「生憎と自前だよ。」
首無し人間の手の上でしゃれこうべが喋ると言う恐怖としか言いようのない光景に哀れな数名の傭兵とマスターが気絶した。
彼らは揃って白目を剥き、口から泡を吹き、股間から悪臭漂う液体を滴らせていた。
彼は髑髏を頭に戻し、数枚の銀貨をカウンターに置いて店を去った。

「なんだ・・・ありゃあ・・・」
「あ・・・ああ・・・悪霊だ・・・アルビオンの悪霊だ・・・」
「ど・・・どうする・・・?俺ら呪い殺されるんじゃ・・・」
「じょ・・・上等じゃねぇか・・・悪霊だろうが死神だろうが、
メイジ数人殺すだけで10万なんてボロい商売・・・見逃せるかってんだ。」
口では強がっていたが、その男の股間もかすかに湿っていた。
酒場の外では傭兵達の為に用意された武器が、2つの月光を浴びて鈍く光っていた。
噂では、その後、とある山賊の一団の前にも、馬に乗った死神が現れ、大金と引き換えにメイジの暗殺を依頼したと言う。
117ゼロの使い ◆1sxkwMZzzc :2008/12/04(木) 09:08:36 ID:a0Sh1tJK
翌日、ルイズ達は意外な人物に出会った。
獅子と鳥を混ぜたような外見のグリフォンを操り、全身から涼やかな、それでいて強力なオーラを放つ彼は魔法衛士隊グリフォン隊隊長・ワルド子爵だった。
何の因果かこの男、ルイズの婚約者だと言うのだ。彼曰く、姫に言われて助太刀に現れたとの事。
ちなみに、彼もアルビオンへ行くのは初めてという。
港町ラ・ロシェールへと続く山道をグリフォンと馬で進む道中、山賊の一団の襲撃を受けた。
メディルはメンバーの実力を図るべく、物陰に隠れ敢えて手出しをしなかった。
ワルドはその肩書きに違わぬ杖捌きと強力な風の魔法で次々と華麗に賊を蹴散らした。
ルイズはいつものように失敗魔法の爆発で応戦。狙いが荒いが、威力は申し分ない。
しかし、ギーシュときたらまるで役に立たず、作り出した青銅のゴーレムも山賊の鉄の武器の前にあっさりと砕かれてしまったのだ。
その後はただただ逃げるばかりであった。
メディルの中でいざと言うときの捨て駒候補第1位にギーシュが選ばれたのは言うまでもなかった。
しかし、敵もさるもので、山賊とは思えぬ不屈の闘志で、人数にものを言わせ襲ってきた。
メディル達が知る由もなかったが、彼らが誰一人として逃げないのは呪われているからである。
メディルが大呪文の一つでも見舞おうとしたその時、山賊たちに上空から火炎と烈風が襲い掛かった。
同時に、ルイズが不機嫌そうな顔をした。
それもその筈。上空から現れたのはヴァリエール家の、ルイズの怨敵であり、本作において、
ギーシュ以上に存在感の薄かったキュルケと、その親友にして、ここまで一言も触れられなかったタバサだったからだ。
曰く、良い男(ワルド)目当てで、親友の風竜で追っかけてきたとか。
キュルケの参入でやかましくなったものの、一同は何とか宿に着いた。

「船は既に姫殿下が手配してくれている。明日の朝にはアルビオンへ出発出来るだろう。」
「そうか。しかし、ワルド殿、どうしても解せぬことがある。」
「何だね?」
「何故、このような山の上に船があるのだ?」と異世界の者ならば誰でも口にするであろう疑問を投げかけるメディル。
「ああ、それはアルビオンが浮遊大陸で、そこへ行くのに飛行船を使うからさ。」
「なるほど。」
「あまり驚かないのだな。」
「月が二つもあるような世界だしな。」これは彼の本心だった。
「そういえば君は異界から来たのだったな。」
「ああ。と言っても世界観に言うほどの差はないのだが。」
「同じような世界なの?」
「ああ。剣と魔法が支配する世界だ。わが主はその世界を」

言いかけてメディルはルイズを突き飛ばした。怒ろうとしたルイズだが、先程自分のいた所を鉄の塊が通るのを見て言葉を呑んだ。
「敵襲だ!!」
ワルドが叫ぶと、その場の全員が戦闘体勢に入った。

「撃て撃て!!メイジのクソガキ共をぶっ飛ばせ!!」
百人ほどの傭兵達が「女神の杵」亭を包囲していた。
そして対メディル用に受け取った、車輪付き大砲10門に山のようにある砲弾を込め、次から次へと撃ちまくった。
「矢も弾も惜しむな!!呪いで死にたくなけりゃ撃ちまくれ!!」

「このままじゃ宿が持たないぞ。」とギーシュ。
「雑魚が・・・大砲如きで、私を討ち取ろうなどとは・・・」
外の傭兵に向け、最強即死呪文ザラキーマを発動しようとするメディルをワルドが制す。
「民間人を巻き込みかねない大呪文は控えるんだ。この任務の場合、僕と君とルイズが船に辿り着ければいいんだ。」
「つまり・・・キュルケたちは囮・・・?」
「ま、仕方ないかな。あたしたち、アルビオンへ行く目的知らないし。」
「右に同じ。」
「ぼ、僕は・・・」
「「「お前(君・あんた)は捨て駒確定。」」」
「やっぱり・・・」

これにて投下終了。支援ありがとうございます。
118名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 09:13:40 ID:OlOquvXl
投下乙。テンポ早いねえ

非常にくだらない突っ込みで悪いんだが
ルイズって旅行でアルビオン行ったことがあると思ったんだけど……
おれの勘違いかな?
119名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 09:13:44 ID:ulNpTq/P
乙でした。
誰も疑問を挟まない、ギーシュの扱いに涙……が出ることも無いか。
120名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 09:26:31 ID:zEpFiwls
> 「へ・・・へへっ・・・一度請けた仕事を投げるなんて傭兵の恥はこの中には・・・」

投下乙、ここの文章がおかしいね
121名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 10:24:05 ID:81+BIVv5
>>120
どこがどうおかしいのかな

言ってみ
122名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 10:28:42 ID:3sLJhIEU
>>120
おかしくないと思うんだが
123名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 10:30:52 ID:q19Tl5In
>>120
「傭兵の恥」じゃなくて「恥さらし」は?

「“請けた仕事はキッチリこなす”“何がなんでも生き残る”、両方やらなくちゃならんのが傭兵の辛いとこだな……覚悟は良いか、オレはできてる」
124名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 10:44:04 ID:n5ALDRAp
文章自体は通じてるから間違ではないと思う。
「なんて」を削り、「傭兵の恥」を「傭兵の恥さらし」に変えるとわかりやすい……かも
125名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 10:47:31 ID:lQctzDys
赤ペン先生かお前ら
126名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 10:52:25 ID:h10Tlens
>>123

確かに「一度請けた仕事を投げ出すような恥さらしは」にしちゃった方が
シンプルではあるが、傭兵の恥でも意味は通るから別にいいんじゃん?

「私は宇宙の中で貴女を来て見たほしいのです」とか、何がなんだか意味が
分からない破綻とかだったらアレだが、そうでもないなら、そういう表現も
ありかなくらいで流しちゃっても良いようにも。言葉は生き物だ。目くじら立てることもないと思うぞ。
127名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 10:52:38 ID:n5ALDRAp
>>125
赤ペン先生懐かしいなwww
添削はそこまでツッコむ所じゃないし、自重しとくぜ。


支援は自重しないけど。
128名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 10:55:15 ID:OlOquvXl
つまらん、だけのレスとかよりはよほどいいと思うけどね
自分で読み返してるだけだと、どうにも意識が回らなかったりするから
129名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 11:05:29 ID:h10Tlens
>>128

一利はあるが、出来れば避難所か感想スレでをお願いしたいように。
以前某所で似た展開になったのROMってたんだが、言葉の薀蓄と荒らしの
不毛な争いになって、すんごいガッカリなことになったの見たことあったんよ。

第三者の指摘で気付く事も確かに多いし、必要な事なんだが…その辺を思うと、
ちょっとだけ複雑な気分がしたもんだから。
130名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 11:06:43 ID:yAhFymu8
「へ・・・へへっ」でボンガロを思い出した
131名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 11:07:50 ID:5/0zgR6f
東方あたりの二次みたいに
スレ投下じゃなくファイルをロダに上げる形式の保管庫があれば
投下しやすく修正しやすくて便利なんだけどね、削除も本人証明不要
しかしそれを作る手間を考えると難しい、既存作品の移設を考えるとほとんど不可
保管庫が複数建ってカプ論争みたいな派閥争いが起きると目も当てられないし
132名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 11:07:52 ID:3L0yJf7T
先生か、そういえばまだぬーべーは召喚されてなかったよな。
133名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 11:11:13 ID:ZDFc1A0Y
>120>124
>「へ……へへっ……一度請けた仕事を投げる傭兵の恥さらしはこの中にいねぇよ」
>「アルビオン王家の仕事は数に含まれないのかね?」

こんな感じなら満足か
134名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 11:16:19 ID:zEpFiwls
気付けば簡単に改善できた箇所だから惜しいな。と思っただけで悪意はないよ
次回も楽しみにしてるから頑張ってね
135名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 11:24:22 ID:x6byzWeu
教師といわれてスコットやエマ・フロスト
あるいは肝心な大事件で絶対に役に立たないチャールズ・エグゼビア呼ぶとか
136名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 11:35:26 ID:sCvWSnI1
教師……マチコ先生
137名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 12:26:44 ID:xxCVGXMR
まいっちんぐマチルダ先生
138名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 12:31:08 ID:OlOquvXl
超時空ヅラズレタ コルベール先生

ツルッ☆
139名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 12:44:45 ID:UYJ5WQ42
>うん、思いっきり過剰反応してるね。
それを盗作というなら似たような設定のものは全て盗作になるよ。
たとえば
Fateの衛宮士郎・アーチャーがネギまのエヴァの登校地獄をルールブレイカーで解くとかもね。
140名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 12:51:04 ID:KCEI/z8b
ぬ〜べ〜召還……
タバサ涙目だな

ただタバサ母の狂った原因が霊的なものになりそうだ
141名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 12:59:02 ID:vKMDugoK
ゴルゴムの仕業だ!
142名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 13:09:19 ID:uw5PXijA
ワイルドアームズ4のブリューナクの中から誰か召喚とか良くない?
個性的な面子な上に異能者が揃ってて面白そうだし…
143名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 13:14:46 ID:0MQ36mWU
対七万で生身で空中を飛び回って撃破しまくる若本声の男、
という構図が真っ先に思い浮かんだ。
144名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 13:15:37 ID:lQctzDys
あの中で使えるのは若本くらいだろう。
145名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 13:23:54 ID:lQctzDys
>>142
あと一応、忘れてるかも知れんが、あいつら流血の革命を成功させた武闘派系反貴族主義集団の最右翼だぞ。
146名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 13:41:16 ID:y0ZanECI
>>139

まぁ、盗作というよりかは、文章のまんま引用って感じを言ってるんじゃないか?題材は違うけど、確かに句読点の打ち方までとネロとキリエの会話の展開が酷似してるし。
書き込みした奴みたいに、酷似してるんだけど盗作って言っていいのかなぁ?なんて迷っている奴も居るだろうし。いいんじゃない?と思う奴も居るし。
勿論これで盗作だって叫ぶ奴も居るだろうし。
まぁ、作者と避難所の反応待ちじゃない?でも引用でもあくまでそれは、元を明らかにして他のところから引っ張ってきたというわけで。引用先を明記しなきゃ無断使用になってしまうわけで。
ただ、俺個人の意見を言わせて貰えば、DMC4を扱ってるクロスはまだまだ少なくて、型月的なテンプレ展開が無いわけで。
クロス元はゲームで、それにどちらも本編終了後を扱ってるから、設定集の最後にある台本とかの文献は一切役に立たず、描写は作者の想像でしかない。
そう言う意味では、似ているなと言わざるを得ないさ。
147名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 13:47:41 ID:Rgyl1xT1
つスルーの魔法
つ避難所へ転移の魔法
148名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 14:00:45 ID:y0ZanECI
蒸し返すような事してすまんかった。自重するわ。
取り敢えず、エクスプロージョン喰らってくる
149名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 15:33:43 ID:ZwVfpIkq
赤ペン先生とか聞いたから
四体の使い魔は犬やら蟹やら狸やらライオン
四人揃ってぶこまっちが召喚されました
というのを想像した
教皇が社会科、ジョゼフが国語を教えて
マチルダからテファと蟹が算数を習い
コルベールからルイズとライオンが理科を習うよ

チャレンジ零年生
150名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 15:51:59 ID:mDlSvCWW
さすがに教皇に社会科は教わりたくないわ・・・
151名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 16:10:56 ID:xgbcCKOI
教皇なにしてんすか
ってツッコミ入れたいな それ
152名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 16:19:39 ID:rU5fmQ3d
ジョゼフが……国語?
153名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 16:31:41 ID:x6byzWeu
そういやサムスピからの召喚ないな
ケッコありそうなんだが・・・・・・

わたし?
わたしはジャコルルに挑んで玉砕しました
154名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 16:46:44 ID:s5s4Pk62
小ネタでミヅキが呼ばれてたような。
155名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 16:50:19 ID:jkXW05Uf
>154
あのミヅキの話、長編にしてくれないかなぁ
156名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 16:59:50 ID:6e5NOMc2
チャレンジ零年生……

それ園児じゃね?
157名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 17:02:32 ID:wHEwNb8T
スルーの名を借りた臭い物に蓋、我関せず、か

かつての「なのはクロススレ」と同じ反応だな
158名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 17:05:30 ID:6qrDN0rk
運営議論スレの派生スレ、テンプレ改正案スレで、結論が一つ出たのでこちらに報告します。

経緯:ウイキの規約でアダルトコンテンツの禁止条項がある事を知った。
その折にテンプレスレでアダルト内容に関しての話が出た。
よってウィキではアダルト禁止である事を提言。
議論の末、アダルト内容に関する2項目を削り、以下の項目に差し替える事に落ち着いた。


>・クロス元が18禁作品でも、SSの内容が非18禁なら本スレでいいわよ、でも内容が18禁ならエロパロ板ゼロ魔スレで投下してね?

下手をするとまとめがウィキ自体から削除されるかもしれない事に関する
条項なので早期の議論&決着と差し替えを希望しています。

ですので、皆様もこちらで議論にご参加くださるようお願いします。
テンプレ改正案スレ
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/9616/1227775510/l50
運営議論スレ5
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/9616/1227588208/l50
159名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 17:19:51 ID:D8KhPjZD
ほんと提督大勝利だな
今の状態見て爆笑してんだろうな
160名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 17:24:58 ID:x6byzWeu
だから掘り返すなって
161名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 17:25:41 ID:ksidH35X
2↑華麗なるスルー
162名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 17:26:56 ID:vKMDugoK
>>159
てめえケツこっちに向けろよ。
163名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 17:28:45 ID:ksidH35X
スルー
164名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 17:29:28 ID:UwUwOb5S
提督というと某おばあちゃんの人だな、あれはよかた…はれ、見れない?
そうか…久しぶりに来たのでよくわからんかったがここのところの荒れはリンディさんが原因だたのか…
165名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 17:29:49 ID:ZwVfpIkq
>>152
だってガリア語がハルケギニアの公用語じゃんよ

嘘ちょっと適当だった
166名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 17:30:29 ID:r2s4SJ+Q
リンディさんとちゅっちゅしたいよぉ
167名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 17:34:24 ID:vKMDugoK
俺はフェイトちゃん!
168名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 17:38:00 ID:ksidH35X
12巻だっけか?タバサのボロ泣きの顔を見た時……エレクトの魔法をかけられた。
169名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 17:38:28 ID:rctXx+5r
ではなのは(幼女)は俺がもらって行くぜ
170名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 17:39:40 ID:rctXx+5r
>>168

よう俺
171名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 17:45:12 ID:6e5NOMc2
>>168
それは嬉し泣きか?それとも―――
172名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 17:50:47 ID:ksidH35X
>>171
サイト達が駆けつけた時の話ね。

続けるが、そのときおれは決めたんだ。理由は何でもいい。SSでボロ泣きさせてやる……てね。
きさくな王女の人よ。ありがとう。あなたのおかげでこの思いが間違っていないと確信したよ。

ところでキュルケも泣かせてみたいなぁ。どうやったら泣くかな?うへへへへ。
173名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 17:55:28 ID:vKMDugoK
マジレスすると
キュルケはセクロス上手いと
良い声で泣くらしいよ。
174名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 17:55:32 ID:6e5NOMc2
>>172
動機はともかく発言がド変態じゃねぇかwww
175名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 17:56:04 ID:rctXx+5r
ベッドの上で鳴いてるところしか浮かばないw
176名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 18:00:10 ID:rctXx+5r
ところでアン様が泣いているところを見たい奴いるか?
もう火のついた様にビンビンにw
177名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 18:01:24 ID:o9ptxyYy
キュルケは小ネタで償還されたゴルゴにさんざん哭かされただろ
178名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 18:09:09 ID:96T+pqrH
女の子が号泣してるの見ると萌えるよなww
仲間が以外に多くて驚いたわw
最近だと虚無の闇でのルイズの泣いている所は最高だったぜ…フヒヒ
179名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 18:18:20 ID:rctXx+5r
>>178

よう俺
180名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 18:26:19 ID:ksidH35X
アンアンは結構泣きそうだからなぁ……。
なぁ頼むよ、キュルケを泣かしてくれよ。泣かせる方法を考えてくれよ。
そうしたらおれ、もっと彼女のこと好きになれると思うんだ……。


普段気丈で、また体の大きな彼女のことだ。
親に見捨てられた子供のように弱弱しく声を立てて泣く姿はきっと美しくて儚げで、
見てはいけないものを見てしまったという奇妙な背徳を感じると共に愛しさががこみ上げるに違いない……。

うへ、うへへへへ。

頭?大丈夫だよ?
181名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 18:30:14 ID:rctXx+5r
何でこんなに俺が居るんだw
キュルケか…よっぽど追い込まないと難しい希ガス。
182名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 18:32:55 ID:x6byzWeu
いやいやここは意表をついてスカロンを





・・・・・・・・・意表をつけばいいってモンじゃねーよなー
183名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 18:37:32 ID:96T+pqrH
キュルケも見たいがおマチさんも見たいぜ
完全に成熟した女が恥も外聞も忘れて泣きじゃくる……
最高じゃないか…フヒヒ
おマチさんは自分だけでなくテファも相当追い込まないと無理だろうなー
しかし、泣いてるところを見るのは確かに堪らんがそこに到るまで
かなりキャラを虐めないと無理なのが諸刃の剣だな。キャラが可哀想だしな…
184名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 18:38:49 ID:eDK0eqRZ
キュルケって「微熱」の二つ名のわりに、本質はけっこう醒めた性格のように思える
185名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 18:39:36 ID:KCEI/z8b
ふとエクプロージョン繋がりで炎のエルクを……
なんて思ったが半端無い鬱展開に成りそうで……
186名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 18:39:51 ID:y11fcCyu
俺多すぎだろ、JKwwwww
187名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 18:42:47 ID:o9ptxyYy
キュルケはゼロ魔の良心だと思う。


ところでヤマジュンネタも18禁あつかいなのか?
188名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 19:08:42 ID:uJdkQzjC
>187
それこそ完全な18禁じゃねーかw
189名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 19:13:38 ID:t8KCdPKb
>>185
契約のキスした後は、当然
「体 が 熱 い !」
だよな?
190名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 19:13:59 ID:4lQIDjZ9
じゃあ田亀源五郎先生ネタでいいや
191名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 19:19:54 ID:5KX2ZY1b
微熱って風邪引いてる時になりやすいけど、
そういう時って普段よりかえって自分を見つめやすかったりするじゃないか
いわば賢者モード
よってキュルケは常に賢者モード
192名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 19:24:35 ID:E41KLU1U
賢者モードと発情モードを同時発動できる人間…だと
193名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 19:28:26 ID:uvPMenEh
話の流れ読まずに悪い。
逆召喚に関する話題なんだけどこっちでいいか?
194名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 19:29:37 ID:o9ptxyYy
どうじゃろ? スレタイには反するが、過去の例はたくさんあるし……
195名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 19:30:03 ID:5KX2ZY1b
避難所でやればいいんじゃないの
196名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 19:31:17 ID:uvPMenEh
いや、投下じゃなくてちょっと相談に乗ってほしいというか意見を募りたいんだ。
197名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 19:31:42 ID:5KX2ZY1b
ならますます避難所でやればいいんじゃないの
198名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 19:31:54 ID:rgTXIW1b
>>194
過去の奴は大体避難所じゃなかったっけ?

>>185
エルク=ファイアーストームだと思うのは、漫画版の影響か…
199名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 19:33:11 ID:uvPMenEh
>>197
わかった。
すまない。そしてありがとう。
200名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 19:40:42 ID:PsMkNEFX


で、結局は避難所でも盗作問題はスルーかよw
201名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 19:44:28 ID:rgTXIW1b
作者が出てくるまで待とうって事だろ?
202名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 20:00:01 ID:31+bS0o0
>>192
スーパーサイヤ人の状態で生活してると興奮しなくなるのと同じじゃね?
203名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 20:00:59 ID:st/6lGE9
>>200
本人が出てくるまで待てない君が馬鹿かつチキンという事は判った
204名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 20:04:21 ID:rctXx+5r
おマチさんは姉妹スレのアヌビス神召喚でいい泣きっぷりだったぞw
205名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 20:04:27 ID:dOIhaPYa
そろそろ誰かケルピー召喚して濡れ濡れエロくなったルイズをだな
206名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 20:06:50 ID:R3MrYEqh
スーパーレモンちゃん2だから恥ずかしくないもん!
207名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 20:07:45 ID:oGtxV3ur
前スレのヘイン小ネタ見て思ったんだけどエグベルトとマザリーニってなんか似てないかな
208名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 20:10:31 ID:Fl8cIuok
>>192
冷静に自分を見つめ醒めた頭でハァハァするだけの事だぜ
209名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 20:17:43 ID:ZnvzRPKN
ラインとかドットが使えればいいわけだから
軍事的にはメイジ増やして

ドットなりラインなりの数を揃えると思うんだが
騎士の対決とか捕虜にして身代金でがっぽがっぽ?
個人の資質に頼った戦争してたの?

しかし傭兵が居るようだし、
農閑期に戦争をしてたのかね

じゃなきゃ生産力の要であるメイジが大量に居なくなったら
労働人口が減って即国が傾くと思うんだが
210名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 20:20:31 ID:ioGuYGfN
決闘はありゃお互い正面衝突してないからやり出した貴族間の遊びみたいなもんだろ
アルビオン戦じゃガチ殺し合いだったし
211名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 20:24:55 ID:R3MrYEqh
貴族じゃなくなったメイジの子孫がどんどん増えて平民メイジ大増殖になってないのかが不思議でしょうがないんだ
212名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 20:29:12 ID:GbnBRQrO
あれだ。プリミル時代突入した時に徹底的に戦術理論とかを弾圧しまくったんだろ。非魔道師の反乱撲滅のために。



つーことで今でも地方巡回のプリミル異端尋問とかがいて

「Nobody expects the Primil's Inquisition!」

とかやってるんだぞ、きっと。
213名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 20:33:37 ID:5KX2ZY1b
きっと貴族は繁殖力が弱いんだよ
なのに三人も子供作ったヴァリエール公と疾風カリンはド凄え種と畑なんだよ
214名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 20:35:47 ID:BPZ8HOCH
ドラッグオンドラグーンのオナニールが召喚されたら、
どのショタが目を付けられるか予想するスレになりました
215名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 20:36:20 ID:n8XM39CS
お断りします
216名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 20:37:53 ID:KCEI/z8b
力は血ではなく家に宿るってやってたのは風の聖痕だっけ?

一代なら問題ないが本家から離れる毎に力が薄れるって奴
案外こんなんかもしれない
217名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 20:42:45 ID:v1ZeYHRM
>214
オナ兄さんの守備範囲によるな
一般的なショタまでなのか、ジュリオのような美少年までOKなのか
そもそもゼロ魔てショタ全然いなくね?

オナ兄さんからすれば童顔なサイトはショタの部類にはいるのやもしれんが
218名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 20:51:59 ID:c/RlbcBa
>>205
僕はハンチさん一筋だピー
219名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 20:53:33 ID:yi+hQkXt
森で自慰ってる間にフーケに自分以外全滅させられるんですね
220名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 20:54:32 ID:JJT+DQ3Q
>>212

「虚無の使い魔は三人!」

「ガンダールブ! ヴィンダールヴ! ミョズニト二ルン! 記すことさえはばかられる! ……ええい、もう良い!」

こうか。
それはそれとして、ブリミルな。プじゃない。
221名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 20:54:42 ID:dOIhaPYa
>>218
何であっさりバレるかね!?

オナ兄さんは基本的にショタは何でもOKだと思う
ガチで殺しに来てる敵兵ですらハァハァするし
と言うわけで誰か裏の林に行かないか?
222名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 20:54:57 ID:qYeRT1uz
>>213
日曜の朝九時に『苗床戦隊☆タネウマン』という題名の
フランス書院なゼロの使い魔前史がやる光景を幻視した。お茶の間が
阿鼻叫喚の地獄絵図になっていたYO
223名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 20:55:00 ID:BPZ8HOCH
ハンチって
「あははっ!もうイッちゃったんですかぁ!?」とか
「あぁ!いぃ!・・んぅ」
とかエロい事大声で言う人だったよな、リビングの憩いの一時が凍り付いたよ
224ベルセルク・ゼロ:2008/12/04(木) 20:55:22 ID:fBS5Hd/w
予約入ってないよね?
なければ五分後くらいから投下します。
225名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 20:57:32 ID:lo0lF8Lh
狂戦士支援
226名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 20:57:37 ID:o9ptxyYy
放魔支援
227ベルセルク・ゼロ24:2008/12/04(木) 21:00:09 ID:fBS5Hd/w
 ルイズ一行を乗せ、順調にアルビオンへ航行を続ける飛行船マリー・ガラント号。
 ルイズ達のために急遽用意された客用の船室で、ガッツは『ライトニング・クラウド』によって受けた傷の処置を行っていた。
 鎧と、下に着ていたシャツまで脱いで、火傷で引き攣った皮膚に妖精の粉を塗りこんでいく。手の回らない背中側はパックが直接その羽から粉を振りまいていた。
 ガッツの背中でパックはその傷の凄惨さに顔をしかめた。
 ガッツの背中にはまるで電流が通り抜けた跡を示すかのように火傷が走り、その部分が酷く膨れ上がっていた。しかも、鎧との摩擦によってか、所々皮膚が破れてしまっている。
「結構ひどい火傷だなあ。しばらく痛むよこりゃ」
「構わねえよ。とりあえず体が動きゃそれでいい」
 傷は酷く痛むだろうに、ガッツはそれをおくびにも出さずに淡々と言った。
 もし旅の仲間であった小さな魔女シールケがこの場にいたならば、無理をするなと涙交じりに声を上げたことだろう。
 コンコンと、船室のドアを叩く音がした。
「ガッツ…いるの?」
 遠慮がちにドアが開かれ、ルイズがひょこっと顔を出す。
「ひゃあッ!?」
 上半身をはだけて床に座り込むガッツの姿に、ルイズは思わず顔を引っ込めてしまった。
「き、着替えの途中だったの?」
 ルイズはほんのりと頬を赤らめながら、恐る恐る問いかける。
「いや、少し傷を見てるだけだ」
「そ、そう……って、傷ッ!? やっぱりさっき怪我したの!?」
 ガッツの言葉に、一転してルイズは勢いよくドアを開け、ガッツの傍に駆け寄ってきた。
 ガッツのすぐ傍にしゃがみ込み、火傷を覗き込むとうっ、と息を詰まらせる。
「ひ、ひどい傷じゃない! どうしてすぐに言わないの!!」
 血相を変えたルイズはガッツの手から妖精の粉が入った巾着を取り上げた。
 そのまま傷口に粉を塗りこもうとして、ガッツに制止される。
「いらねえよ。もう大体終わった」
 そう言ってガッツは傍に置いていたシャツを手に取り、頭から被った。
「でも……!」
 なおも食い下がろうとしたルイズだったが、ガッツが首を通したシャツに気がつくと目を丸くした。
「あっ……」
 黒い無地のシャツに、申しわけ程度に小さな家紋が刺繍されている。胸元辺りに刺繍された小さなヴァリエール家の紋章。
 トリステインの城下町で買ったガッツへのプレゼント――違う、ご褒美だ。こんな時でもルイズは心中で言い直す。
 部屋の窓から捨ててしまったはずのソレを、今目の前でガッツが身に着けている。
228名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 21:01:52 ID:ujDjn8jF
>>212
プリミルって何だよww
229ベルセルク・ゼロ24:2008/12/04(木) 21:02:13 ID:fBS5Hd/w
「それ…どうして……?」
「あん?」
「シャツ……」
「ああ、拾った。誰のかは知らねえが着心地もいいんでな、ありがたく使わせてもらってる」
 思わずぐらりと頭が揺れた。
 ――ああ、この男は、ホントに、もう。
 知ってるの?
 そのシャツはわ・ざ・わ・ざこの私が見立てたものなのよ?
 剣を振る邪魔にならないよう、どれだけ素材と着心地に拘ったか!
 窓からそれを投げ捨てたとき、私がどんな気持ちだったか!
 胸の中に溢れる言葉は形にならず、ルイズはぱくぱくとただ金魚のように口を開ける。
「なんだ?」
「うるさい! 何でもないわよ!!」
 ふん! と鼻息荒くルイズは立ち上がり、ガッツに背を向ける。
 くやしい。きっとこの男はいい拾い物したぜ、くらいにしか思っていないのだ。
 ここ数日の私の煩悶になんか気付きもしないのだ。
 だからといって、今更言えやしない。
『そのシャツは私があなたのために買ってきたものなのよ!』
 なんて、言えるわけが無い。
 そんな言葉、貴族としての――いや、ルイズ・フランソワーズとしてのプライドにかけて口にするわけにはいかない。
「よかったじゃない! そんな良い物捨てるなんて馬鹿なやつもいたもんね!!」
 だから、代わりにそんなことを口にして、肩をいからせてダンダンと床を踏みつける。
「まったくだ」
 後ろから放たれた追い打ちの一言に、ルイズは「きぃー!」と拳を握りしめずにはいられなかった。
「ところでお前は何しに来たんだ?」
 無遠慮な言葉にルイズの眉がピクリと上がる。
 ルイズはちらりとガッツに視線を向けると、胸一杯に吸い込んだ空気を諦め交じりに盛大に吐き出した。
 そうして振り返ったその顔は、意外なほどにすっきりとしたものだった。
「アルビオンが見えたのよ。甲板に上がってみなさいよ。きっと驚くから」
 ――まあいいか。
 ルイズは心中そう呟いた。
 着心地はいいと言ってくれたから。
 気分はそんなに悪くない。

230名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 21:02:43 ID:ujDjn8jF
うわ、失敗失敗申し訳ありません。
231名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 21:02:47 ID:R3MrYEqh
えっとあれだよ、狂牛病の原因になる…支援
232ベルセルク・ゼロ24:2008/12/04(木) 21:04:42 ID:fBS5Hd/w
 空を巨大な大陸が漂っていた。その地表には雄大な山脈が聳え立ち、流れる川は大陸の淵で滝となってごつごつとした岩肌を滑り落ちている。
 流れ落ちる水は、吹く風によって白い霧と化し、大陸の下半分を覆っていた。
 浮遊大陸アルビオン――『白の国』と呼ばれる由縁である。
 その壮大な光景に、甲板に上がったガッツとパックは言葉を失くしていた。
「こりゃあ……」
「すご……」
「どう? ちょっとしたものでしょ」
 ガッツ達のリアクションが嬉しいのか、少しルイズは得意気だ。
「アルビオンはああやって主に大洋の上を彷徨っているわ。でも、風の関係なのか月に何度かはハルケギニアの上にやってくる。大きさはトリステインの国土ほどもあるのよ」
 ルイズがアルビオンについて説明している様子を興味深げに眺めてワルドが近づいてきた。
「君たちはアルビオンを見たことがないのか?」
 ワルドは不思議そうにガッツとパックを見ている。
 まずい、とルイズは思った。
 ガッツが異世界から来た人間だということは口外すべきではないとルイズはオスマンから言われている。
 そしてルイズ自身、無用なトラブルを避けるためにそうした方がよかろうと考えていた。
「あの、あのね、ワルド。ガッツはずっと、ずーっと遠いところから来たみたいで、あんまりこの辺のことについては詳しくないみたいなの」
「へえ……興味深いな。もしや東方から来たのか? 君たちは。良かったら話を聞かせてくれないか?」
「まあ……そのうちな」
 何とかごまかせたようだ。ルイズはほっと息を吐いた。
 ただ、予想以上の食いつきだ。これはぼろが出る前に話を逸らさなければなるまい。
「ところで、ワルドはさっきまで船長と話していたみたいだけど何を話していたの?」
「アルビオンの戦況について話を聞いていたんだ。特に、ニューカッスル付近のね。やはり少々強硬な手段をとらねば王党派と連絡を取ることは難しそうだ」
 ルイズとワルドはそのままアルビオン上陸後の手筈について相談を始めた。
 といっても、戦の経験の無いルイズにそうそう意見は出せない。手筈は基本的にワルドが整える形になった。
 ルイズはちらりとガッツに目を向ける。
 ガッツはじっとアルビオンを見つめたまま動かなかった。
(そんなに感動したのかしら……ちょっと、意外ね)
 ガッツの思わぬ一面に、ルイズはつい微笑みを浮かべてしまう。
 ルイズは間違っていた。
 確かに、雄大なアルビオンの姿にガッツも何か感じるものはあったのかもしれない。
 しかし今、ガッツの胸中に多く渦巻いていたのは感動ではなく―――失望だった。
 余りにもガッツが知る『アルビオン』とかけ離れた姿。
 再び突きつけられる、ここが『異世界』であるという実感。
「クソっ……」
 苛立ちがつい口をついて出てしまう。
 この旅で、少しでも元の世界に帰る手がかりを掴むはずだった。
 だが、求めれば求めるほど―――遠くなる。
「何とかなるって」
 ぽふっ、と頬に感じる軽い感触。
 いつの間にかパックが肩に降りて、ガッツの頬に寄りかかってきていた。
 ふぅ、と思わずため息が漏れる。
「気楽でいいな、てめーは。脳みそ何が詰まってんだ?」
「近頃は栗が詰まってんじゃないかともっぱらの評判でね……」
「誰が言ってんだ、誰が」
「主に俺が言ってるぜ相棒!!」
 いつの間に鞘から出たのかデルフリンガーもカタカタ柄を鳴らした。
 ガッツは無言でデルフリンガーの柄に手をかける。
「あっ、ちょっと待って、相棒、そりゃねえよ、俺だってさびし」
 ばちん、としっかり鞘に収められ、デルフリンガーの言葉は途切れた。
「ったく……うるせえ奴らだ」
 ひとりごちて、ガッツは再びアルビオンをその目に収める。
 不思議と、さっきまで感じていた苛立ちは少しマシになっていた。

233ベルセルク・ゼロ24:2008/12/04(木) 21:07:24 ID:fBS5Hd/w
「右舷上方の雲中より、船が接近してきます!!」
 突然、見張りを務めていた船員の切羽詰った声が船上に響いた。
 言われた方向に目を向けてみれば、なるほど、確かに一隻の船がこちらに近づいてきている。
 黒いタールで塗られたその船体は、こちらより一回り大きく、舷側に開いた穴からは大砲が突き出ていた。二十門を超えるその砲門が、ピタリとこちらに狙いをつけている。
「やだ…アルビオンの反乱軍かしら……」
「この船はその反乱軍に物資を届ける途中だ。あれが反乱軍なら狙われる道理がない……何かきな臭いな。ルイズ、僕の傍を離れるなよ」
 不安そうに声を上げるルイズを庇うように、ワルドはその傍に寄り添った。
「船長!! あの船、こちらの信号に答えません!!」
「何!? まさか……!!」
 見張りの泣きそうな声に、船長の顔がみるみるうちに青ざめる。
「空賊です!!」
 まるでその通りだと言わんばかりにどうん、と火薬が弾ける音を走らせて黒船から砲弾が放たれた。
 砲弾はマリー・ガラント号の船体をかすめ、雲の中に消えていく。
「船長ぉ!! あの船から停船命令が!!」
 もはやマリー・ガラント号の船内は恐慌状態に陥っていた。
「なんてこった!!」
 船長は頭を抱えた。
 先程の一発は脅しだ。この停船命令に従わなければ次はしっかり当ててくるだろう。
 ならば交戦してみるか? 何を馬鹿な。砲門の数を比べてみろ。あちらは二十、こちらは三だ。加えて船員も戦闘には慣れていない。
 船長は助けを求めるようにワルドに目を向けた。
 ワルドは無言で首を横に振る。
 実は無理な出航を押し通すため、マリー・ガラント号の航行にワルドも魔力を提供していた。空賊の一団を相手取るほど精神力は残っていない。
 船長は力なく膝を着き、そして、停船命令を発した。
 裏帆を打たれたマリー・ガラント号は速度を弱め、やがて完全に停止する。
「そんな…私たち、どうなるの……?」
「大丈夫だ。僕がついてる」
 恐怖に震えるルイズの肩を、ワルドは優しく抱き寄せる。
「ったく、落ち着かねえこった」
 黒船の舷側から弓やフリントロック銃でこちらに狙いを定める男たちを睨みつけ、ガッツはちっ、と舌を鳴らした。
 停船したマリー・ガラント号に向かって、黒船から次々とロープが架けられる。
 そのロープを伝って、次々と空賊たちが乗り移ってきた。空賊達は、その手に曲刀や斧等、思い思いの武器を携えている。
 やがて、二十人を超える男たちがマリー・ガラント号に乗り移り、甲板は完全に制圧された。
「船長は誰だ?」
 空賊の中でも一際派手な出で立ちの男が声を上げた。ぼさぼさの長い黒髪を赤いバンダナで纏め、ご丁寧にも左目に眼帯を巻いている。
 絵に描いたような海賊衣装。どうやらこの男が空賊の頭であるらしい。
「私だ」
 疲れ果てた面持ちの船長が、それでも精一杯の威厳を持って男の前に歩み出た。
 船長と空賊のやり取りを横目に、ワルドがルイズを引き連れてガッツの傍に歩み寄る。
「無茶はよせよ」
 空賊に聞かれぬよう声を抑えてワルドはガッツに釘を刺した。
 『女神の杵』亭でも危険を顧みず一人盗賊の前に躍り出たこの男は、この状況でも何をしでかすかわからない。
「よく見ろ。彼らは剣や斧を手にしてはいるが……何人かは腰に杖のようなものを差している。おそらく、メイジだ」
 確かにワルドの言うとおり、腰に杖のような棒を差している男がちらほら見られた。
「君もまだ本調子ではあるまい。短慮は禁物だぞ」
「わかってるよ」
 ガッツはため息混じりに呟いた。そもそも、首尾よくこちらに移ってきた空賊達を全滅させても、報復としてこちらの船ごと大砲で沈められて終わりだ。
「そうだ、今は機を待つんだ……」
 念を押すようにワルドは言った。
「船ごともらった!! 料金はてめえらの命だ!!」
 空賊の頭は宣言するように高らかに声を上げる。
「ほう、貴族も乗せてるのか。そいつらも連れてきな。身代金もたっぷり貰えるだろうぜ」
 引き上げる間際、ルイズ達に気付いた空賊の頭は最後にそう付け加えた。

234名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 21:08:09 ID:wRL31SnN
支援
235名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 21:08:55 ID:BPZ8HOCH
いつになったらナメクジ王の娘はガッツに復讐に来るのか待ち続けて早10年
支援
236名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 21:10:09 ID:Fl8cIuok
間に合ったか?俺の…最後の支援…
237名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 21:11:01 ID:aSuo8sSN
sienn
238ベルセルク・ゼロ24:2008/12/04(木) 21:11:34 ID:fBS5Hd/w
 空賊によって黒船に連行されたルイズ達は、狭い船倉に閉じ込められていた。
 ワルドとルイズは杖を取り上げられ、ガッツに至ってはドラゴンころしを始め、ボーガンなどの武具、甲冑、左手の義手に至るまで一切合財を取り上げられてしまっていた。もちろん、デルフリンガーも没収されている。
「さて…これからどうするか……」
 親切にも空賊から差し入れられた粗末なスープを平らげて、ワルドは呟いた。
 ルイズは火薬や砲弾が乱雑に詰まれた船倉を隅々まで見渡す。
「何とか脱出できないかしら?」
「どうやって? いや、というより……どこに、と言った方が正しいか。上手くこの部屋を抜け出せたとしても、ここが空の上である以上逃げ場所が無い」
「でも、このままここでこうしてるわけには……!」
 ルイズの顔には目に見えて焦りが浮かんでいる。
 こうしている間にも戦況は悪化し、王党派と連絡を取ることが困難になるかもしれない。少しの時間でも無駄にするわけにはいかないのだ。
 ルイズは「うぅ〜」と唸って天井を見上げた。
 ワルドは壁に背をついて物思いに耽っている。
 ガッツはこの船倉に押し込められてから一度も口を開いていなかった。
 重苦しい雰囲気のまま時間だけが過ぎていく。
 やがて船倉のドアが開き、看守を務めていた痩せぎすの空賊が顔を出した。
「おめえらもしかしてアルビオンの貴族派かい?」
 じろりと三人を見回して、にやにやしながら問いかけてくる。
 ルイズ達は答えかねていた。空賊の質問の意図がわからぬ以上、迂闊な事は口に出来ない。
「だとしたら悪いことを……うぐッ!?」
 にやにやしていた空賊の顔が苦痛に歪む。
 ルイズとワルドは己の目を疑った。
 いつの間にか痩せぎすの空賊の背後に回りこんだガッツが、男の首に腕を回している。
 一瞬で絞め落とされた空賊は口の隙間から涎を垂らし、ごとりと昏倒した。
「な…!? き、貴様ら!!」
 部屋の入り口から声が上がる。どうやらもう一人外で待機していたらしい。
「チィッ!!」
 今度はガッツと同時にワルドも動いた。ガッツが男の顔を掴み、部屋に引き込むとワルドがすぐに当身を食らわせる。二人目の空賊もごろりと床に転がった。
 ルイズとワルドの顔がサァーっと青く染まる。
「な、な、な、なんてことしてんのよ!!」
「じ、自分が何をしたかわかってるのか君は!!」
 ルイズもワルドも冷や汗を流し、ガッツに詰め寄った。
「ここでじっとしててもしょうがねえだろ」
「だからと言って!! 何か策があるのか!!」
「あの空賊の頭を人質にする」
 ルイズとワルドは二人揃ってあんぐりと口を開いた。
 無茶苦茶だ。あまりにも単純明快すぎて、逆に理解が追いつかない。
「どうやって? 丸腰なんだぞ、僕たちは!」
「もちろん俺達の装備を先に回収する。それまではこいつらのもんを借りりゃあいい」
 そう言ってガッツは倒れた空賊達を親指で指差した。
「だから! どこに僕らの装備が置いてあるかもわからんのに……!!」
 ――ズパッとさんじょー♪
 ――ズパッと解決♪
 ワルドの言葉を遮って、軽妙なメロディが部屋の中に響き渡る。
 くるくると空中で前転しながらパックがガッツの頭の上にシュタッ、と降り立った。
「くゎいけつ、ズパーーーック!!!!」
 首にスカーフを巻いたパックがビシィ! と決めのポーズを取る。満足したのかパックは腰に手を当てて、んふー、と鼻息を漏らした。
239名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 21:12:45 ID:4lQIDjZ9
>オナ兄さん

先日完結したあのスレの住民か?支援
240名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 21:13:56 ID:WoKRR4Vg
ズパック支援
241名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 21:18:41 ID:PvA5h+fP
sienn
242名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 21:20:36 ID:PvA5h+fP
shien
243ベルセルク・ゼロ24:2008/12/04(木) 21:25:52 ID:fBS5Hd/w
ごめん! パソコンに異常が発生して再起動してた!!
投下を再開します!!
244名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 21:27:12 ID:dTHF0rjk
再起動がんばれ、支援
245ベルセルク・ゼロ24:2008/12/04(木) 21:27:24 ID:fBS5Hd/w
「取り上げられた武器の場所とリーダーのいる場所を把握してきたぞ!」
 ガッツの頭の上でパックは胸を張る。
 ワルドはしかしまだ納得がいかないようだった。
「…相手は荒くれ者の空賊達だ。リーダーを人質に取ったからといって言うことを聞くとは限らん」
「こいつらは盗賊の類にしちゃ統率が取れすぎてる。あの頭の影響力が強い証拠だ」
 ガッツの言葉に、ワルドは顎に手を当て黙考した。
 マリー・ガラント号を強襲してきた時の見事な手際。
 まるで戦時中の捕虜を扱うような自分たちの待遇。
 確かに、どれもただの空賊だというには違和感を覚えるものばかりだ。
 特に、ガッツは今まで多くの盗賊たちを見てきた。それ故に、この連中の異質さは際立って見える。
 ワルドの言うように、本来荒くれ者であるはずの盗賊たちを集めてそれらを成しているのだとしたら、あの空賊の頭の支配力は計り知れない。
 何かあるのだ。
 他の追随を許さぬ圧倒的な力か、絶対的なカリスマか。
「それでも……人質を見捨てる可能性はゼロではない」
「まあ……そん時はそん時だ」
 ワルドは呆れながらも、その顔に笑みを浮かべた。
 まったく、つくづく無鉄砲な男だ。
 勇気か無謀か。こんな向こう見ずな馬鹿野郎にはついぞお目にかかったことは無い。
 だが―――肩を並べるのにこれほど心強い男にもまた、出会うのは初めてだった。
「いいだろう。やってみせよう。この身に帯びた『閃光』の名にかけてな」
 空賊から抜き取った曲刀をその手に携えて、ワルドは不敵に笑った。
「お前は俺達の後ろを着いて来い。遅れるなよ、ルイズ」
「う、うん」
 ルイズは両手の拳をぎゅっと握りながら頷いた。
 自分ではこの二人の助けになることは出来ない。ならば、せめて足手まといにならないようにしなくては。
「行くぞ」
 ガッツの声を合図として、パックを先導に三人は部屋を飛び出した。


 ガッツ達が軟禁されていた船倉からそう離れてはいない一室で、テーブルの上にガッツの装備が並べられていた。
 ボウガン、投げナイフ、炸裂弾、大砲の仕込まれた義手、古びたインテリジェンスソード――壁に立てかけられた馬鹿げた大きさの大剣。
 それらを順に眺めながら、まだ二十台半ばと思われる若い空賊は感嘆の息を漏らした。
「まったく、すげえなこりゃ。あの野郎、一体どこに戦争に行くつもりだったんだ?」
「もし貴族派に加わる予定だったってんならよかったじゃねえか。ここで先に捕まえといてよ」
「違ぇねえ、こんなもん相手にしたかぁねーや」
 椅子に座ってカードを弄っていた赤毛の空賊の言葉に、ドラゴンころしを眺めていた年若い空賊は笑った。
「見てくれよ。こんなもんまで持ち歩いてやがる。気味悪いったらありゃしねえ」
 そう言って若い空賊はテーブルの上から卵のようなものを手に取って、赤毛の盗賊に突き出して見せた。
「やめろよ、近づけるの。俺はそれを見て食欲が無くしちまったんだ」
「ホントに、作ったやつの神経を疑うぜ。異端審問で殺されても文句はいえねえよ、こんなもん持ってたら」
 若い空賊はまじまじと卵のような奇怪な石――『ベヘリット』を眺める。
 卵形の石に、余りにもリアルな人間の目と鼻と口が、出鱈目に配置されている。
 確かに、その造形は見ていて気持ちのいいものではない。
「うわっ!!」
 突然若い空賊は悲鳴を上げるとベヘリットを手放した。
 カツン、と音を立ててベヘリットが床に転がる。
「なんだ? どうした?」
「う、動いた! コイツ、動きやがった!!」
 顔を蒼白にして、若い盗賊は床に転がったベヘリットを指差す。
「じょ、冗談だろ? タチ悪いぜ、そういうの」
「冗談なもんか!! 目が合ったんだ!!」
「つ、疲れてるんだよお前。最近忙しかったからな。ほら、ポーカーでもやって気を晴らそうぜ」
「でも、確かに……いや、そ、そうだな。そうするか」
 二人はだらだらと汗を流しながらポーカーに興じ始めた。
 自分たちは何も見なかった、見なかったのだと言い聞かせながら。

246ベルセルク・ゼロ24:2008/12/04(木) 21:28:15 ID:fBS5Hd/w
 黒船の後甲板に設けられた、他に比べて豪華な部屋で、金髪の美青年がペンを走らせている。
「今回手に入った硫黄でまだ少しは抗うことが出来るか……」
 そう呟いてペンを置き、うん、と背を伸ばす。ぽきぽきと小気味よい音が鳴った。
「だが、所詮は消え逝く蝋燭に少々蝋を継ぎ足しただけ。これはただの悪あがきに過ぎない……わかってはいるんだけどな」
 金髪の美青年は自嘲気味に呟くと、ふぅ、と深いため息をついた。
 今この部屋にはこの金髪の青年しかいない。故に、本来ではそれが許される立場ではないのだが――金髪の青年は弱音を漏らしていた。
「それでも、愚かな貴族派の連中に簡単に我が国を渡すわけにはいかない……」
 青年の顔は苦渋に満ちている。
 死ぬのが怖いわけではない。自身が死ぬ覚悟などとっくに出来ている。
 ただ、それに皆をつき合わせてしまうのが心苦しい。
「僕は間違っているのかな――――アンリエッタ」
 声はただ部屋に反響し、虚空に消える。答えてくれる者は誰もいない。
 代わりに返ってきたのは通信筒から響く、緊急事態を伝える報せだった。
「殿下!! 捕らえていた貴族たちが脱走しました!! 武器の監視を任せていたポールとフランツから連絡がありません!! 既に武器は奪還されたものと思われます!!」
「わかった。彼らはおそらく僕を狙ってくるだろう。甲板に上がらせるな」
「了解しました!!」
 金髪の青年はすぐにテーブルの上に置いていたカツラを被り、赤いバンダナを巻いた。
 眼帯で左目を覆い、金髪の美青年はあっという間に粗野な空賊の頭へと変貌する。

 ――ガッツが違和感を覚えた理由はここにある。
 そもそも、彼らは空賊ですらなかった。
 船の名はアルビオン本国艦隊旗艦『イーグル』号。
 船長の名は王立空軍大将ウェールズ・テューダー。

 ルイズ達が追い求めるアルビオンの王子、その人である。
247ベルセルク・ゼロ:2008/12/04(木) 21:30:14 ID:fBS5Hd/w
以上、投下終了。
いや〜焦った。無事投下出来てなにより。
そいじゃあこれからも皆でガシガシここを盛り上げていこうぜ!!
俺も頑張って書くからさ!!
248名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 21:34:50 ID:9cCpqcGk
上半身と下半身がさようならするのは何人になることやら
249ゼロの黒魔道士:2008/12/04(木) 21:53:35 ID:dTHF0rjk
ガシガシ盛り上げ隊!
ベルセルクの人、乙っした!!

さて、2200ぐらいから投下させていただこうと思います。
ほのぼのなのとひえびえなのを…よろしくお願いいたします
250名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 21:54:56 ID:wRL31SnN
支援
251名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 21:55:07 ID:lo0lF8Lh
ベルセルク乙。
アルビオン軍の貴重な兵力がバンバン減らないかwktk
252名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 21:56:00 ID:Pw5s8UBi
支援させていただきます。そして「ゼロの黒魔導士」様待ってました!
253ゼロの黒魔道士:2008/12/04(木) 21:59:33 ID:dTHF0rjk
投下開始です

―――
…ボクは困ってた…ものすっごく困ってたんだ…
「ツェルプストー!!!いい加減に離しなさいっ!!!」
…どうすればいいんだろう…
「あらぁ、いいじゃな〜い、ビビちゃんだって、あんたのその緊縮財政な体より、こっちの方が絶対いいわよ?ねぇ?」
…あのホントにボク…そんなに抱きしめられても…
「苦しそう」
…息ができないんだけど!!!


―ゼロの黒魔道士―
〜第八幕〜 ビビ、まだまだがんばる



…色んなことがあった一日が終わって…
…また朝日が昇ったんだ…

「ん〜…洗濯に行かないと…」
…ルイズおねえちゃんはよく寝てる…昨晩は「それで?それで?」とボクの話をせがんだんだ…
…ちょっと、子供みたいだなぁと思って笑ってしまう
…やっぱり、ルイズおねえちゃんの使い魔になって良かったなぁと思うんだ…

「あ、ビビ様、おはようございます…」
「あ、シエスタ、おはよ…どうしたの?」
…洗濯場にはもうシエスタがいた…いつも早いなぁ…でもなんか様子が変だったんだ…
「ビビ様…メイジ様だったんですね…」
…あ、そっか…
「え、う、う、うん…で、でもでも、ぼ、ボクは貴族じゃないよ?」
…こっちでは魔法が使えるってことが貴族ってことなんだ…昨日オスマン先生に聞いたっけ…
「え?貴族じゃない…?ホントですか?」
「う、うん…ぼ、ボクはその…東方ってとこから来た…みたい…」
…昨日の打ち合わせ通り嘘をつく…うーん…こういう嘘ってやっぱり苦手だ…
「まぁ、ロバ・アル・カリイエから!?」
「う、うん…だ、だから…その…貴族じゃないから…『様』とかそういうのは…」
…こっちじゃあまり魔法って使わない方が良さそうだなぁ…
「… …フフッ、分かりました。それじゃビビ『さん』、今日もお洗濯、がんばりましょうか?」
「う、うん!がんばる!」
あ、良かった…うん、やっぱり笑顔の方が、うれしいもんね…?
254ゼロの黒魔道士:2008/12/04(木) 22:00:04 ID:dTHF0rjk
「ルイズおねえちゃん…朝だよ?起きてよー?」
ゆさゆさとベッドをゆする…なかなか起きてくれない…うーん…ホントに子供みたいだなぁ…
…うーん…どうしよう…

 …
  …しょうがない…
一回おもいっきりベッドから離れる…
とんとんっと靴を整えて、しっかり帽子をかぶりなおす…
「…よしっ!」
…カバオ君と競争したときを思い出して…おもいっきり…
トトトトトトトトトトトトトトッ タンッ ドサッ
「ごふっ!?」
「あ、ルイズおねえちゃん、起きた…?」ベシッ「あいたっ!?」
「あ、あんたねぇ、もうちょっと大人しく起こせないのっ!?」
「うー…だって…気持ち良さそうに寝てたから…」
「あのねぇ…今度からは物理的な手段以外で起こしなさいっ!いいわねっ!?」
「う、うん…」
…うーん…サンダーとかで起こしたら、怪我しないかなぁ…?

「おーう、来たな!『我らがとんがり帽子』!」
「おはようございまーす…え?わ、われらのとんがりぼうし!?」
厨房に入るなり(ルイズおねえちゃんの支度に手間取っちゃったから、結構遅くなったんだ)、マルトーおじちゃんがそう声をかけてきたんだ…
「生意気な貴族をとっちめてくれたんだっ!異国のメイジとはいえ平民なんだろ?シエスタに聞いたぜ?」
…こっちの貴族って、平民って人たちと仲がやっぱり悪いのかなぁ…?
うーん…でもトレノの貴族の人たちもあまりいい印象が無いから、しょうがないのかもしれないなぁ…
「う、うん…で、でも『我らのとんがり帽子』って…うわっ、テーブルの上がすごいけど、今日はお祭りでもあるの?」
「ダハハハハハ!!ある意味お祭りだな!!ホントは昨日の晩にやるつもりだったんだが、昨日夕飯食いに来なかったろ?だから、今から、お前さんの勝利を祝って宴を開催するぞっ!『我らのとんがり帽子』っ」
…えーとー…な、なんかすっごい盛り上がってる…ホント、どうしよう…

ク〜キュルルル

…うーん…でもお腹がすいてるのは確かだよね…こういうのを『体は正直』って言うのかなぁ…?
「じゃ、じゃお願いします…」
「ははっ!かしこまんなって、『我らのとんがり帽子』!おーい、ワインもってこいっ!」


…うぅ…朝から食べ過ぎた…ちょっと気分が悪いや…
でも残したらおじいちゃんが「もったいないアルヨ〜!!」って化けて出てきそうだったし…
「ビビ〜!遅かったわねぇ?どうしたの?…フラフラだけど、まだ昨日のケガ?大丈夫?」
「…なんでもないよ…うん、だいじょうぶ、だいじょうぶ…」
「そう?…まぁ、いいわ、使い魔をしっかり管理できない貴族って言われるのも嫌だし、ちゃんと言うのよ?」
「は、は〜い…」
…今日は、あまり、動かないようにしよっと…
255名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 22:00:38 ID:Pw5s8UBi
支援
256ゼロの黒魔道士:2008/12/04(木) 22:00:41 ID:dTHF0rjk
「あ、きたきた!ビビちゃ〜ん!!」
「げ、ツェルプストー…」
…教室に行くと、キュルケおねえちゃんが手をふってきた…
今日は隣にいるのは男の子たちじゃなくて青い髪のメガネの女の子だった…
「お、おはよう、キュルケおねえt「こんなヤツに挨拶しなくていいわよ、ビビっ!」う、え、え、え?」
…なんか、ルイズおねえちゃんの目が怖い…
「も〜つれないわねぇ、ヴァリエール…私、昨日の試合ですっごく感動しちゃったんだから!!」
…なんか、キュルケおねえちゃんの手が怖い…ワキワキ動いてる…
「1度に7体のゴーレムをっ!しかもすっごい雷でっ!しかもその魔法の使い手が…あ〜ん!こんなにかわいらしい子なんて〜!」ギュムッ
「わぁぁぁぁっ!?」
「ちょ、つ、ツェルプストー、人の使い魔に勝手に抱きつかないでっ!離れ、離れなさいっ!!」
グイグイとルイズおねえちゃんが引っ張る…首の辺りを…
「いいじゃない、こんなお人形さんみたいな可愛い子っ…あ〜ん、このまま連れて帰っちゃおうかしらっ!『微熱』がうずきまくりだわ〜っ!ね、いいわよね、ビビちゃんっ!」」
「は・な・し・な・さーいっ!!!」
…正直…息ができなくなるぐらい…苦しかった…

「…ケホケホ…」
「ゴッメンなさいね〜、ほら、『微熱は急に止まらない』って言うでしょ?」
「言わないわよっ!!全く、人のマントは燃やすわ、人の使い魔を殺しかけるわ、ゲルマニアの女って最っ低っ!!」
…えーと…ルイズおねえちゃんも首絞めたりしてたんだけどなぁ…
「…大丈夫?」
「あ、う、うん…ありがとう…えーと…」
青い髪のメガネの子が話しかけてきたんだ…
「タバサ」
「え?」
「タバサ」
…あ、名前、かな…?
「タバサおねえちゃん…?あ、ボク、ビビって言います…よろしくお願いします…」
「知ってる」
…タバサおねえちゃんがずずいっと顔を寄せてくる…う…な、なんなんだろ…?
「聞かせて」
「え、な、何を…?」
…思わず後ずさる…なんだろ、キュルケおねえちゃんとかとまた全然違う迫力だなぁ…
「昨日の続き」
「き、昨日?」
…昨日って…タバサお姉ちゃんに会ってないよね…?
「…あなたの世界の話」
「!?!?あ、あんた何でそのことをっ!!」
キュルケおねえちゃんと言い争ってたルイズおねえちゃんが慌ててこっちを向く
「あ、ちなみに私も知ってるわよ〜」
「え、ど、どういうことっ!?」
「ホラ、あの試合で私、すっごい感動しちゃったでしょ?」
…うーん…感動しちゃったんだ…そうなのか…なぁ…?
「で、その後すぐに抱き締めに行きたかったんだけど、そこのヴァリエールと一緒に学院長室に行っちゃったでしょ?しかもその後思いつめたような表情してたし…」
…話がどこに行くのかよく分からないなぁ…?
「で、気になっちゃって〜…殿方達の誘いをぜんっぶキャンセルして、こっそり聞いてたってワケ♪」
…こっそり…って…え?え?
「えぇぇぇぇっ!?あ、あんた、まさかっ!!と、盗聴してたってわけっ!?」
「あぁん、聞き覚えが悪いわねぇ…ちょちょーっと何話てるかなーって気になって、タバサに頼んでー、風魔法をちょいちょいーっとやってー、聞いてたーってだけよー♪この子もビビちゃんのこと気になってたみたいだし、ね♪」
「興味津津」
…こっちの魔法って、ホント便利だなぁ…
「ななななななな!!き、貴族にあるまじきマナー違反よっ!!最低っ!!最っ低っ!!」
「ごーめーん♪…でも、まさかおとぎ話に出るみたいな冒険をしていた子なんてねぇ…」
「あ、あんたたちどこまで…」
「えーと、ビビちゃんが『…ルイズおねえちゃん?もう寝たの…?ふぅ…子供みたいだなぁ…』って言ったところまでかしら?」
…う…そこまで聞かれてたんだ…恥ずかしくて、帽子をさらにぎゅーっと深くかぶった…
「…行為については謝罪する、ゴメン」
257ゼロの黒魔道士:2008/12/04(木) 22:01:20 ID:dTHF0rjk
「う…だ、黙ってなさいよっ!オールド・オスマンにも秘密にしておけって言われてるんだからっ!!それで貸し借り無しなんだからっ!!」
「あら、ラッキーね♪」
「ツェルプストー、あんたはマントの件もあるからダメっ!!」
「え〜、ケチ〜」
「ケチじゃないっ!」

「あのー…そろそろ授業なんですが…静かにしてもらえませんかねぇ?」
…コルベール先生が教室に入ってきて…こっちを見て注意する…
…なんか…ゴメンなさい…
「は〜い、分かりました〜!  ビビちゃん、授業終わったら、昨日の続きお願いね♪」
「こ、こらツェルプストー、あたしの許可なく…」
「あら、だってお話の盗賊様、すっごくかっこ良かったんですもの♪私も誘拐された〜い♪」
「あ、あんたねぇ…「ミス・ヴァリエール?授業を始めても?」す、すみませんっ!!」
…キュルケおねえちゃん、ルイズおねえちゃんと仲がいいのかなぁ…?
「…私にも、聞かせて」
「え、う、うん…」
タバサおねえちゃんからも頼まれちゃった…

…ん〜…
「大体ねぇ、人の使い魔に対して…」
「いいじゃな〜い、固いこと言いっこなしよー」
「自由意思尊重」
…うん、きっと、この三人…
…友達、なんだよね?
…なんか…いいなって思うんだ、こういうの…

「…あのー、授業、ちゃんと聞いてください…」



ピコン
〜おまけ〜

ATE ―チェス・ゲーム―


昼下がり、チェス盤を挟んだ二人の男

「…それで?どういうつもりだったんだい?」

銀髪の男が白いポーンを進める
捨て駒のつもりだろうが見え透いている
だがそれすらも罠かもしれない

「どういうつもりか?とは何かな、余のミョズニトニルンよ」

金髪の男が眉をあげる
見え透いた罠でも結構、
とばかりに黒のルークが取りに行く
258ゼロの黒魔道士:2008/12/04(木) 22:01:51 ID:dTHF0rjk
「それだよ、『余のミョズニトニルン』…ご自身が『虚無』というのは秘密だったのでは?」

反対方向に白のナイトが躍り出る
おそらく陽動だろう

「由来は言っているぞ?『主であるアルビオン王家に連なる末席の者を殺し、ガリア王のところに亡命してきた使い魔』…親しい者に送る、いつもの由来だ」

ニヤリと笑った男がクイーンを動かしナイトを奪う
いつでも来いと城門を広げる

「…なるほど、あのエルフは『親しい者』、と…まったく、危険な嘘を重ねるね。『虚無』ではなく『虚言』の使い手じゃないかい?」

だがその城門にはまだ飛び込まない
ポーンを地道に1歩進ませる

「そんなに重ねたか?えーと、『熱心なブリミル教徒』、『魔法が不得意な無能王』、『異国のメイジを預かる男』、『信愛なるエルフに協力する蛮族』、『クーデターの黒幕』…」

指折り数えながら黒のルークを引き戻す
実に楽しげだ

「やれやれ…その実『野心をもった舞台演出家』だからねぇ…始末に終えないよ…あぁ、そうそう、その演出家様に報告があったんだ」

別のポーンがまた進む
ビショップがルークを狙う形になる

「ほう?アルビオンの雑兵共が何かやらかしたか?…チェックだ」

黒いナイトが躍り出る

「いやいや…先ほどの『主であるアルビオン王家に連なる末席の者』…舞台にはあがってないものの、実在しているようでねぇ…」

クイーンがナイトを蹴散らした

「おいおい…俺の嘘がバレるというのか?」

それでも楽しそうに、
黒のビショップが無謀な位置へ

「あぁ、何でも『物忘れがひどくなる森』がサウスゴーダにあるそうでね、何人かの傭兵が任務も忘れて戻ってきてしまったそうだ…この局面でそれは無謀すぎないかい?」

隙間を縫って、クイーンが玉座に迫り来る

「ほう、どうやら『虚無』の駒は早々に揃いそうだな…いやなに、俺はビショップ(僧侶)が昔から嫌いでね…」

その僧侶をしてキングの前への壁とする

「舞台演出家としては、どう盛り上げたいんだい?このまま綱渡りの芝居を続けるつもりは無いんだろ?…チェック」

クイーンがビショップの命を奪う

「さてね、『神の頭脳』の主が2人いたら問題だしなぁ…どっちを主にしたい、お前は?」

眉間に皺をよせつつもなお楽しげに、
クイーンがクイーンを蹴散らしこちらの顔を伺う

…『殺せ』ということか…

「残酷な王様だ…傭兵でも使いましょうか?アルビオンでの本命には少々お待ちいただいて…チェック・メイト」
259ゼロの黒魔道士:2008/12/04(木) 22:02:23 ID:dTHF0rjk
白のビショップがキングの命を取りにきた

「…なぁ、クジャよ…実際のチェスならば…奪った駒を使ってはならぬってルールは無いだろ?」

楽しげに、実に楽しげに
白の女王が再び盤上へ
チェック・メイトが崩れ去る

「…なるほどね…どっちの駒を奪おうか?トリステインか、アルビオンか…」

苦笑を浮かべて銀髪の男が席を立つ
まったく、とんだチェスだ
ルールも何もありやしない

「アルビオンの幕が閉じた後で十分だ。何より、二つの駒がどう動くか見極めんとな…それと…」

チェック・メイトをかけていた白のビショップをつまみあげる

「…生臭坊主どもがどう動くか、見てやろうじゃないか…」

「…ご随意に、陛下。それでは、『神の頭脳』は『殺したはずの主』探しにアルビオンに戻りましょう…」

優雅な一礼をする男
…かつては武器商人として知られガイアを混乱へと導いた男…

「エルフ共は俺が相手しておいてやるから気にするな。まぁまだ盤面にはお出にならないだろうがな…」

チェスの駒を自ら片付ける王
…そう、チェスを始めるのも、片付けるのも、いつも彼自身なのだ…

「それでは、最高の舞台を…」
「あぁ、至高の遊戯を…」

チェスの試合は、まだはじまったばかりだ…
――
投下完了です。でも、おまけじゃない方にクジャが登場するのはいつの日になるやら・・・お目汚し失礼いたしました
260名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 22:06:13 ID:9Ale/Buy
ベルセルクの方、黒魔導士の方、共に乙でしたーww
261名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 22:09:32 ID:Rpj6bku8
>>245
>「う、動いた! コイツ、動きやがった!!」
男塾一号生じゃないが思いっきり嫌な予感がするなぁ……
262名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 22:15:43 ID:Ou99JUDt
>>214>>217
オナ兄さんって実はDODで一番強いキャラだよな
263名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 22:18:15 ID:dOIhaPYa
>>239
いや待て何の話だ凄い気になるんだが
>>262
大魔法連射してれば赤ちゃんも瞬殺のオナ兄さん
やべえよギーシュ一瞬でやられて裏の林に連れ込まれちゃうよ
264鋼の人 ◆qtfp0iDgnk :2008/12/04(木) 22:19:57 ID:N/ECJmY5
どうも暫くぶりになります。
ニコニコで動画見てたら筆が止まっちゃってまいりますね(72は正義
あと「ゼロ魔のTRPGが欲しい」と要望が出て過労死するノボルを想像してサディスティックな気持ちを慰めたり。

まぁともかく。
続きが出来たので22:30から投下予定
265名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 22:20:44 ID:ZDFc1A0Y
そういや、Load of Vermilionではオナ兄さんの立場は使い魔だな
266名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 22:20:49 ID:dTHF0rjk
これは支援
熱烈支援
267名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 22:23:05 ID:dOIhaPYa
>>265
つうかアリ姉さんとアンヘル以外皆人間やめてる
支援
268名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 22:26:36 ID:3sLJhIEU
>>261
ベヘリットは普段から動いてるから大丈夫
269名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 22:27:28 ID:9Ale/Buy
でも覚醒するときも動いてたような……
そして鋼の人支援
270名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 22:28:43 ID:wRL31SnN
支援
271名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 22:28:45 ID:ZDFc1A0Y
>267
人間はカイム(皆無)なんつってな ハハッ
おや、こんな時間に誰か来たようだ……支援
272鋼の使い魔 ◆qtfp0iDgnk :2008/12/04(木) 22:30:13 ID:N/ECJmY5
 夕陽に染まるアルビオン、ロサイス港。
 見下ろす地平線を背に、艤装を完了した『レキシントン』号の甲板上に主要各艦の長が整然と不動のまま並んでいた。
 彼らの前に設えられた台上には『レキシントン』号艦長ボーウッド。今回の親善艦隊の総指揮を貴族議会から任命されたジョンストン卿。
その他旗艦参謀員が並び、目の前に並ぶ艦隊構成員達を視界に収めている。
 ジョンストンは一歩踏み出して声を張った。その声は制音【サイレント】の応用によって甲板上はもとより艦隊各艦へと伝えられ、総ての船員達に聞こえるようになっている。
「諸君。愚かなる旧アルビオン王家との輝かしき戦いを乗り越えた英雄諸君。ここに停泊する戦列艦30、非戦列艦20にて私の声を聞いている英雄諸君」
 …アルビオン内乱の折、ジョンストンは自らは決して前線に出ることはなかった。レコン・キスタに所属し、王家に反目はしたものの、
明らかに積極的に王軍打倒に参加しなかった。
 彼は日和見に徹し、今、ここにいた。
「我々はロサイスを出発し、トリステイン領空上にてかの国の艦隊と合流した後、トリステイン中部からゲルマニア南部、そしてそこより南西に進路を取り、
帰国するものである。かの国の者たちに我々神聖アルビオン帝国が、始祖の権威に安座し怠惰に国を治めるあの者らへ、我らが彼らに劣る事無く、
優越する国の品格を有するものである事を示して欲しい」
 訓示が終わるとアルビオン式の敬礼と足を揃える音が乱れる事無く木霊する。
 ジョンストンが下がり、変わってボーウッドが前に出た。彼は自身も敬礼し、台上に向かった。
「当艦各員。此度の航路は当艦としては初めてとなる。さらに新艤装後とあっていくつかの面において操作上の変更をきたす箇所もあるだろう。
だが諸君らはいささかの懸念を持つ必要は無い。いつもどおりにやってくれ。
もっとも…船上の常だ、『不測の行動』も迫られるだろうが、この船で共に過した各員の冷静沈着なる行動に期待する。以上だ」
 艦長の敬礼に答えるように、眼前の船員達の敬礼が返される。
 それは乱れはおろか、たった一つの大きな音として帰ってくる。ボーウッドは我知らず満足げに頷くのだった。
 
 台上で訓示や指示が行われる中、黄昏る船の陰に入るようにして集団を見つめる一人の男がいた。
 お決まりの魔法衛士大隊兵制服と、唾の広く取られた羽帽子だ。…しかし今は、帽子が深く被り直されていて顔色が窺えない。
 
 号令とともに船員達が解散し、台上にいたボーウッドとジョンストンも艦橋に向かう通路に向かう。するとワルドが当然のようにその中に入った。
「見事な演説でしたなぁ、艦長、総司令殿」
 嘗ての彼を知るものがいれば随分と衝撃を受けるだろう、実に剣呑とした調子でワルドが二人に声を掛ける。
それにボーウッドは憮然としていたが、ジョンストンの方は機嫌よさ気に答えた。
「おお、子爵殿。正直言って、緊張しっぱなしだったよ。壇上に君を乗せられず閣下に悪かったと思っているくらいでね」
「とんでもない。私はあくまで客将。『不測の行動』までなんの配役もない、ただの乗り合いだ男に過ぎません。そうですな、艦長?」
 ボーウッドは押し黙ったまま、視線を通路に向けている。
「…親善訪問の『概要』は委細承知している。だが少なくともラ・ロシェールの合流地点までは子爵、君はまさに乗り合いだ客人に過ぎない。そこをわきまえてもらう」
「結構結構。大いに結構…」
 くっくっく、と篭る笑い声がワルドから聞こえて、ボーウッドはさらに表情を渋くするのだった。
 
 
273鋼の使い魔 ◆qtfp0iDgnk :2008/12/04(木) 22:32:07 ID:N/ECJmY5
 その日、アルビオン空軍艦隊は一等戦列艦『レキシントン』を旗艦としてロサイスを出港。ラ・ロシェールまでの航路を夜間航行で進むのだった。
 
 
 
 『開幕、長い一日』
 
 
 
 夜の帳が下りた、トリステイン魔法学院。
 既に夕食の時間も終わり、後はもう寝るだけ。勿論、眠らずに思い思いに夜を過す者も多い。
 幸か不幸か、そんな眠らない住人の一人にギーシュはいた。ただ、普段であればそれはモンモランシーか自分の部屋、なのだが、今はコルベール研究塔前にいる。
 目の前には木材に布を張った大きな天幕の下で、掲げられたランタンに照らされる半壊状態の『飛翔機』があった。
 
 ギーシュが昼間、ちょっとした好奇心から『飛翔機』を動かした時、誤った操作により完成したはずの飛翔機に早急の修復を必要とする損傷が加えられたのである。
 具体的には、風を掴むために計算されて作られた鉄枠が歪み、そこに張られた布が破け、後部にある噴射推進器の二本一組が使えなくなっている。
 大慌てで駆けつけたコルベールとギュスターヴだったが、結局のところ夜も更けた今になっても修理が終わらずにいた。
 ギーシュは指示されて資材置き場から織られたままの白い布生地をせっせと持ち込み、コルベールは飛翔機のフレームから羽布を剥し、
ギュスターヴは新たに鋼材を取り出して足りない部品を作っている。
「ミスタ・コルベール…まだ終わりませんか…?」
 当事者とはいえギーシュはかなり疲れていた。
「機体前面を作っている鋼材を凡そ全て点検しなければいけないので、もう少しですかな…」
 そう言ったコルベールは剥ぎ取った鉄の棒を見定め、使えるものは歪みを直し、使えなさそうなものをより分けている。
「明日からアンリエッタ王女の婚礼儀式が始まるから、学院全体の人も減る。そのうちに飛行実験をする予定なんだよ…」
 ため息も漏れそうなギュスターヴから『お前のお陰で余計な仕事が増えたじゃないか』といわんばかりの雰囲気がギーシュに伝わってくる。なんとも気まずい。
「う…で、でもさ。誰が見たってこんなもので空を飛べるなんて思わないよ。…いい所、フライフィッシャーの模型か何かにしか見えないじゃないか」
 と抗弁するギーシュ。ちなみに『フライフィッシャー』とは、アルビオンの洋上軌道上に生息しているといわれる伝説上の生き物である。
その姿はロマリア南方の海で見られる巨大なエイに似ているという…。
 
 半刻ほどしてから、流石に余り長い間引き止めておくのはかわいそうだからとコルベールはギーシュを解放してあげるのだった。
 
 …結局、フレームの修理が終わったのが手元の時計の針が日付を越した頃だった。
「明日の朝一番で布を張り直せば、大体正午頃には飛行実験が出来ますな」
 眼鏡を外して目頭を解すコルベールと、腰を伸ばしてトントンとするギュスターヴ。
 傍目には大の男二人が奇怪な玩具をせっせとこさえているようにしか見えない。実のところ、学院に務める教職者たちは殆どがそのように思っている。
間抜けなコルベールめ、また奇怪な道具を作って遊んでいるな。と。
 家を食い潰して道楽に励んでいるのだから、一般的貴族の価値観から見ればそのように見るのも当時は仕方のないところだった。
 
 
274名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 22:32:25 ID:wRL31SnN
支援
275鋼の使い魔 ◆qtfp0iDgnk :2008/12/04(木) 22:34:38 ID:N/ECJmY5
 ギュスターヴはそっと扉を開けて、ルイズの部屋へと戻ってきた。
 寝台では既にルイズが静かに寝息を立てている。
 閉じきらないカーテンから漏れる、変わらぬ明るさで双月の光がルイズの頬に掛かっていた。
 起こさぬ様に、そっと寝台の脇に丸められたマットを広げて、横になる。
「んぅ…」
「ん…?」
 起こしてしまったか、と思ったが、むにゃむにゃとルイズから寝言が漏れている。
「あんたは……私の…使い魔……なんだから……」
 …どうやらギュスターヴを夢に見ているらしい。せっかくの夢だというのに、眉をひそめて噛み付きそうな顔をしていた。
「……主人の……傍に……」
 ギュスターヴは暫くルイズの寝相を見てから、やがて埃も立たない様にそっと頭を撫でた。綿のような髪が流れ、次第にルイズの眉間の寄り上がりが解れ、
相から棘が抜けて穏やかなものへと変わった。
「ん……」
 ルイズが緩く寝返りを打つと、部屋に戻った頃と同じく静かな寝息が聞こえるようになった。
 
「嬢ちゃん最近はずっと机にかじりついてっから、色々と溜ってるんだろうよ」
 壁に立掛けたデルフはそう言った。
「…ま、仕方が無い。婚礼の儀式とやらが終わったら、たっぷり面倒見るさ」
 身に帯びるものを外して身体を伸ばし、静かにギュスターヴは眠りに付こうとした。
「相棒」
 だが、再びデルフがまどろむ間際に声をかける。
「……なんだ?」
「相棒は何時まで使い魔やる気なんだい?嬢ちゃんが死ぬまでかい?」
 うっすらと目を空けて、ギュスターヴは答えた。
「…ルイズが自分の道を見つけるまではここにいる。少なくとも」
「じゃあよ、そいつが見つかるまでは帰ることが出来ても帰らねーって言うのかい」
 脳裏にタルブに住まう背の曲がった老人が思い出されては、消えた。
「そうおいそれと帰れるわけでもないだろう。…時間はあるさ」
 
 幼い頃、自分が死んでも大地に還るアニマすらないのだ、とどこかで諦観した。
 その思いは年を経てもギュスターヴの心の中に残っていた。深淵な洞の様な孤独に浸りながら、せめて今生きることを謳歌して、死ぬ時は死ぬ。そう決めていた。
 なら、この生まれた地より遠く離れた異界だって生きるに都合が悪くもない。
「どこで何をしようと俺の勝手さ…なんて言うと、レスリーが怒りそうだがな…」
「なんか言ったか相棒?」
「なんでもないよ。…寝るぞ、起こすなよ」
 どこか自嘲気味に笑うと、ギュスターヴは再び眠りにつくのだった。
 
 
 
276名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 22:35:50 ID:wRL31SnN
支援
277名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 22:36:02 ID:Ou99JUDt
支援
278鋼の使い魔 ◆qtfp0iDgnk :2008/12/04(木) 22:36:34 ID:N/ECJmY5
 ルイズはその時、一人小舟の上に居た。
 妙だ。さっきまでギュスターヴが一緒にいたはずなのに。
「ここ…どこ…?」
 自分の乗る小舟はオールも竿もなく、水の上を流れていた。
「ギュスターヴー、近くにいるんでしょー?」
 四方に向かって使い魔を呼んでみても、何も返ってこない。地平の先はインクを落としたようにぼやけていて、響く音を吸い込んでいく。
「ぅー…」
 恨めしげに鳴いてみても何も届かない。辺りは暗く、静かだった。
「もー、どこなのよここはー!」
 苛立たしく水面をぱしゃぱしゃと手で叩いてみても同じだった。空は薄暗く、水面が鉛色に揺れるのが見える。
 ルイズが途方にくれていると、薄暗い水の流れの先で、仄光る何かがこちらへと流れてくる。
それはルイズの小舟まで来ると流れてゆく事無く、小舟と併走するようにずっと近くに漂っていた。
「なにこれ…?」
 ぐっと手を伸ばす。光る何かに手が届き、拾い上げた。
 …それは濁りの一切ない大理石か何か、真っ白な石材から削りだしたと思われる卵のイミテーション(模造品)だった。
「綺麗…」
 感嘆するルイズの両手に収まる大きさの卵は、石材特有の滑らかな手触りが掌に吸い付くようだった。
 そしてそれはどこか…脈打っていた。手のひら越しに仔犬を抱いた時のようなしっとりとした暖かさが広がっていく。
 それを感じると、今置かれた場所がとても淋しいものに思えた。暖かな卵の温もりが逆に心に安らぎを与えてくれる様でもあった。
 孤独の中でルイズはやがて、親鳥が卵を抱くように卵のイミテーションを抱き込んで眠った。
 小舟はそのまま闇の中を流れていく。夢の中で眠るルイズを覆う闇を、更に濃くしながら…。
 
 
 
 翌日。朝食の時間が終わった頃、学院に王室の紋章の入った馬車がやってきた。
 受付をする衛兵に馬車に乗っていた王宮の役人が告げる。
「ラ・ヴァリエール公息女ルイズ・フランソワーズ殿をお迎えに上がりました」
 
 同じ頃、部屋でルイズは鞄に始祖の祈祷書を入れ、指には秘かに『水のルビー』を填めていそいそと支度に掛かっていた。
「これで準備はよし。…祝詞の原稿はもったし…」
 
 
 ルイズはこれから王宮に上がり、諸侯と共に婚礼の儀式に参加するのである。
 まず、夕刻から始まる諸侯の集まりに父ラ・ヴァリエール公と共に出席して翌朝、アンリエッタの一団と共にゲルマニア帝都ウィンドボナへと出発し、
彼の地で行われる式典で祝詞を読むのである。
 
 ルイズの部屋をノックする者がいた。
「開いてるわ」
 普段ならここでシエスタがやってくるのだが、帰省中のため別のメイドがやってくる。
「ミス・ヴァリエール。お迎えの方がお待ちになっています」
「もう少し待たせて頂戴。それほど時間はとらせないから」
 そう言ってルイズはメイドを素通りして部屋を出て行く。
「あ、あの、ミス・ヴァリエール!何処へ?!」
「貴方は迎えの馬車まで行って待つように伝えなさい」
 つかつかと足取り早くルイズは学生寮を出て行った。
 
279名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 22:37:52 ID:9Ale/Buy
支援……するけど、ちょっとこれ……
280鋼の使い魔 ◆qtfp0iDgnk :2008/12/04(木) 22:39:02 ID:N/ECJmY5
 コルベール研究塔前では晴天の下、修理の終わった飛翔機に布を張り直す作業に追われていた。
 骨組みの上でピンと張られた布が継ぎ目を重ねるように貼り付けられている。継ぎ目から布が剥げるのを防ぐ為だ。
 鋼材から作った骨組みに布を合わせ、しわやたるみなく鋲や接着剤で貼り付ける。鋲も飛行中に緩んだりしないように、接着剤を塗りこんで骨組みに打ち付けている。
 
「ギュスターヴ!」
 ルイズはコルベール研究塔に寄って塔前の広場に広げられた作業現場にいるギュスターヴを呼んだ。
 飛翔機の前で梯子に登っていたギュスターヴは振り向くとルイズに手を振り、梯子から降りて近寄った。
「今日はもう王宮に行くんだろう?」
「そうなんだけど…暫く部屋を空けるから、顔見ておこうと思って……」
「ほぅ…」
 顎に手を当てしたり顔のギュスターヴに、ルイズはカッと顔を崩す。
「なっ、何よ?!ち、違うんだからね?連れて行けない使い魔がかわいそうになっただけなんだからね?!」
「はいはい、判ってるよ。…自分の使い魔なら信じてくれよ」
「…うん。……ところで…飛ぶの?これ」
 ルイズが怪訝そうに指差す飛翔機はまだ羽布の張り直しが半分ほどしかされていない。噴射推進器は予備を装填され、噴射口はゴミが入らないように今は布を縄で縛って蓋がされている。
「…飛ぶらしい。本当は昼前には飛ぶ予定だったんだがな」
「ねぇ、帰ってきたら怪我してました、とかだったら承知しないんだからね!」
 判ってるよ、と言ってふと、ギュスターヴは作業現場の台に掛かっている懐中時計を見た。
「もうそろそろ行かないと不味いんじゃないか?」
「え?……そうね。御者も待たせてるし、もう…行くわ」
 ルイズは軽く手を振ってその場を後にしようと歩き出した。
「ルイズ」
 ギュスターヴに声かけられ、振り返く。
 
 ギュスターヴは腰に手を当て、笑っていた。
「いってらっしゃい」
 
 ルイズはハッとして、暫く困惑したが、にっこり笑って、
「いってきます」
 
 そしてそのまま振り返らず、御者の待つ正門まで歩いていった。
281名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 22:40:43 ID:s5s4Pk62
おはよう、メカ支援
282鋼の使い魔(後書き) ◆qtfp0iDgnk :2008/12/04(木) 22:41:09 ID:N/ECJmY5
投下終了。
原作三巻後半部へと入っていきます。
あ、この場を借りて支援絵を描いてくださった歓楽街のていおー氏に感謝の言葉を送りたいと思います。
283名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 22:41:11 ID:wRL31SnN
支援
284名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 22:56:58 ID:mDlSvCWW
最終決戦は聖地でVSエッグですね?わかります
285名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 22:59:54 ID:BPZ8HOCH
ギュスターヴのモデルは織田信長ってマジ?
286名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 23:01:53 ID:n5ALDRAp
鋼の人乙!&お久しぶり。
ルイズの夢の中(?)のエッグがとてつもなく気になる!
287名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 23:10:17 ID:AA+AbqP0
>>285
まあギュスターヴのやってきた事と死に様を見れば
自然と織田信長になるよな
288名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 23:20:19 ID:TsYpEE3X
鋼の人,乙です。
エッグが夢の中で出てきました。あれってナイツの一族にとって宿敵ですよね。
ということはシエスタが関わるのかな?

>>285
自分は織田信長とナポレオンって聞いたことありますよ。
289魔導書が使い魔-04:2008/12/04(木) 23:35:35 ID:EjdbDe/d
ちわー、です。
長らくお待たせしました。(待ってる人がいれば!)
予定がなければ11時45分から投下したいと思います。
かなりの分量があるので、2〜3分置きでw
290魔導書が使い魔-04:2008/12/04(木) 23:46:54 ID:EjdbDe/d
「…………」
「…………」
重い、重い沈黙を横たえながら2人は黙々と教室を片づけていく。
あれから一時的に意識を取り戻したシュヴリーズはルイズに教室の片づけを命
じると、そのまま救護室へと運ばれていった。
今後あの中年教師にトラウマが刻み込まれるだろうが、今は関係ないことであ
る。
「…………」
ルイズは煤と壊れた机の破片を掃き集め。
「…………」
アルは残った机の上で腕を組んで胡坐をかき。
「てけり・り」
どこからか聞きつけてきたのかダンセイニが壊れた机を移動させていた。
「って、なんであんたは働いてないのよ!」
今更ながら気が付いたようにルイズはアルに向かって叫ぶ。
アルはルイズを見て。
「なぜ汝の不始末を妾が拭わねばならん」
「――う」
鋭い指摘だった。
なにか反論する材料を探そうと、ルイズは言葉につまり。
「だ、だけど……」
考えられた思考は、取り繕う彼女からボロボロと錆のように落ちていき。
「だって……あんたは、わたしの……使い魔なの……よ」
今更通用しないと判っている理屈を取り出すしかなかった。
思い起こされるのは遠い過去から続く今までの日々。
国の中でも有数の家系、英雄視されることもある両親、あらゆる才を花開かせ
る姉。
気がついたときから、自分はひたすらに努力を積み重ねてきた。
学を学び、才の方向を試し、礼を刻み込み、精神を叩き上げる。
経済、歴史、社会構造を覚え、理解できるまで噛み砕いた説明を父親から聞き
だし。乗馬、剣術、弓術などを体験し、自分に合ったものを上の姉の指導の元
練習を重ね。テーブルマナーに家臣への接し方に王族謁見のマナーから隣国の
貴族との会食マナーを母さまに厳しく躾けられ、時折逃げることはあったが弱
音を吐くことはなく。心の強さ、優しさ、暖かさをちいねえさまから与えられ、
そしてそれに応えようと常に自身へと問いかけることは忘れない。
言葉にすることは簡単だが。自分にできることを、できないことを。できるよ
うになるまで、またはできないとわかるまで、自分という土台を積み重ね、踏
み固めていった。
そう、やればやるだけ結果は応えてくれる。伸び悩むこともあるが、続ければ
必ず報われるのだと自分は、そう思っていたのだ。
誰もが――自分でさえ――その将来に大きな希望を持った。
だが――
箒を痛いほど握り、掃き集めていたはずのゴミは無秩序に転がされる。砕けよ
というかのごとく歯は噛み締められ、目に溜まった雫を零さないように更に力
をかけられる。
――だがたった一つだけ。ある意味最も望み、あることが当然だと思われる物
――魔法。
ただそれだけが、たったそれだけが、そんなことだけが……自分にはなかった。
熱心で出来るたびに褒めてくれた家庭教師は魔法を見ると、侮蔑のような目を
向けてきた。
どんなことがあっても優しく頭を撫でてくれる父さまの目は、魔法のことを言
うと痛ましく歪む。
はじめは修練が足らないと叱っていた母さまも、月日が経つうちにその頻度も
少なくなっていく。
なにかと魔法をネタにいじっていた姉さまも、そこには触れなくなった。
ただ、ちいねえさまだけはなにも変わらなかったが、逆にそれが辛かった。
そして己を変えるため、自分を脱ぎ捨てるために、父さまの反対を押し切りこ
の学院に入った。
勉強した。家の蔵書数を遥かに超える学院の図書館を嘗め尽くす勢いで、魔法
291魔導書が使い魔-04:2008/12/04(木) 23:48:00 ID:EjdbDe/d
関連の本を読み漁る。『火』『水』『土』『風』から『コモン』マジック。広
く使われる攻撃魔法から回復魔法、防御魔法、生活に根差す『錬金』や、誰も
知らないようなマイナーな魔法まで。
練習と勉強と復習と予習とを夜や朝、昼なども自由になる時間を、全てを費や
し繰り返し、座学では学年で一番の成績を収めるまでになった。
それでも――魔法だけは、使えなかった。
泣きそうだった、だけど歯を食いしばって耐えた。必ず芽が出る、必ず報われ
る。
そう……言い聞かせて……自分を騙し続けてきた。
「ふっ……く、くぅ……っ」
だけど胸の奥。いつも押さえ込んでいた突き崩すような衝動に耐えるには、
心はもう限界だった。
「てけり・り〜……」
聞こえた声のほうを見ると、ダンセイニが手(?)を止め、こちらをうかがい。
気づけばアルもこちらを見ていた。
「そ、そうよね……っ。ど、どうせあんたも。わたしに失望したでしょ!」
「――」
たとえ心が折れそうでも、彼女は反射的に虚飾を取り繕うとする。
「言われてた、でしょ? ゼロの、ルイズって……」
顔に無理やり笑みを貼り付け、たとえそれが自分でも崩れそうだとわかってい
ても、止める事はできない。
「……わたしはっ! 昔か、ら……こんな、のっ」
俯きそうになる顔を、わざと相手に向け。決して逃げることはしない。それが
悲しいまでの彼女の性。
「一度もっ……魔法が、成功しなっくて」
吐き出す言葉は刃。本来なら他人を切るはずの言葉は、その向かう方向が違う。
そして致命的な刃は。
「――もうっどう、や……てっも……魔法なんてっ!」
自らを深く突き刺さ――
「――ある男の話だ」
アルが口を開く。
「その男はひどく貧乏人でな。ガスは止められる電気は止められる水道は止め
られる家賃は払えず、日々の食う物さえもないありさまで。毎日教会に行って
は食事をタカルしまつ」
「え――?」
突如始まった話に困惑していると、さらにアルは話を進めていく。
「探偵なんぞしていたが、とんだ三流。来る仕事は犬猫などのペット捜索。す
ぐにへたれるし、あげく女には甘いと来る!」
話が進むごとにアルはなぜか興奮したみたいに鼻息を荒くする。
「なんだあれは! 巨乳か! あの脂肪の塊がいいのか!」
「ちょっ、ちょっとなに!?」
なぞの迫力にルイズが口を挟むが、アルは取り合わない。
「そんなのだから、いつもいつも。貧乏くじを引いて泥沼へと引きずりこまれ、
いつも痛い目を見るのだ。だがな――」
ふと、そこで口調が和らぎ、顔に笑みが浮かぶ。
「どんな苦境に立たされようとも、どんなに痛い目を見ようとも。たとえ、
今やっていることが無駄であろうとも」
それはまるで、子を見守る母のような微笑。伴侶を自慢する愛する者の喜び。
「そやつは、決して諦めなかった。決して膝を屈しなかった」
アルがルイズへと顔を向けた。
「千回。万回。億回。何度失敗しようとも、挫けそうになっても。その男は必
ず立ち上がり再び挑んだ」
そこで一度言葉を切り。
「それで、汝はどうだ?」
まるで試すような瞳が、ルイズを捕らえる。
「“たかが今まで成功しなかった程度”で全てを投げ出すのか?」
そしてアルは。
「たった千回の失敗で、たった万回の失敗で、億回にもいかぬ失敗で諦めるほ
ど。汝の目指す道は軽いのか?」
292名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 23:50:08 ID:L/gXIxC1
輝くトラペゾ支援
293魔導書が使い魔-04:2008/12/04(木) 23:50:38 ID:EjdbDe/d
負けを認めるのか、と聞いてきた。
「さあ、応えよ我が契約者――ルイズ」
「――」
それに彼女は――ルイズは硬く硬く手を握り締め、きつくきつく歯を食いしば
り。
「全てを投げ出す? 諦める? 冗談じゃないわっ!」
アルへ顔を向けて、キっと睨み付けると。
「千回? 万回? 億回の失敗? 上等っ! その男ができたんなら、わたし
に出来ない筈がないじゃない!」
その胸を焦がすは新たなる灯火。
「上等じゃないアル。わたしは決して諦めてなんてやらない!」
そう、他人から逃げを、負けを誘われて膝を屈するほど、ルイズの誇りは軽く
はない。
「うむ、それでこそ妾の主にふさわしい」
「てけり・り〜♪」
アルはそれに満足そうにうなずき、ポヨポヨとダンセイニが跳ねる。
「いや、それは止めて……」
うめくルイズの横。
「……早々簡単に壊れてもらっては困るからの」
なにか不穏な言葉も聞こえたが。
ともあれルイズは改めて、気合を入れ直すと箒を握る。
「よし! ちゃちゃっと済ませちゃいましょう!」
「てけり・りっ!」
拳を振り上げるルイズに倣い、触手を拳のようにして合わせる。
「待て」
そこでアルが異論を挟む。
「なによ」
アルは悩むように腕を組み。
「そのアルと言うのは、もしかせんでも妾のことか?」
「あんた以外に誰がいるのよ」
「な、汝もか!」
「あんたなんてアルで十分よ。それよりさっさと手伝いなさいよ!」
「ええい! 誰が手伝うか!」
そうして、騒がしくも教室の片付けは進んでいく。



「これも違う……」
コルベールはトリステイン学院本塔の図書館。教師のみ閲覧可能の『フェニア
のライブラリー』で唸っていた。
30メイルもある巨大な本棚の上部。『レビテーション』で浮いている彼の手に
は一冊の本。
タイトルは『始祖ブリミルの使い魔たち』。ハルケギニアにおいて、知らぬ者
はいない物を扱った物である。
彼が他にも抱える本は『ルーンの総称意義』『ハルゲギニアの伝記伝承』など
がある。
書に目を通していたコルベールだが、一番大きな挿絵を見つける。
その絵には始祖ブリミルの使い魔たちのルーン描かれているのだが。
「……これは?」
コルベールは懐から紙を取り出す。
それは先日、気絶したルイズから写し取ったルーンが描かれている。
「まさかっ!」
彼の顔が驚きに歪む。
「おっとっとっ!」
抱えていた本が落ちそうになり、あたふたとしたあと。
「こうしておりません!」
本を乱雑に戻し、急いで図書館を後にした。
294魔導書が使い魔-04:2008/12/04(木) 23:52:28 ID:EjdbDe/d
学院長室。おおよそ、このハルケギニアにおいて最高峰と呼ばれる魔法使いオ
ールド・オスマン。
数々の功績と、群を抜く実力、膨大な知識量。300年も生きていると言われ、
白い口ひげと髪はその通り抜けた歴史を感じさせる。
そのハルケギニアの伝説の魔法使いは。
「ヒマじゃのー……」
とても時間を持て余していた。
前はそれなりに学院長として仕事があったのだが、最近は有能な秘書を雇った
おかげでサインと判子だけで事足りる。
期限ぎりぎりまでやらない主義であるオスマンでも、それならすぐに済むのだ。
むろん、いつも余裕で書類や仕事の期限をぶっちぎることで困っていた関係者
は喜んだが、オスマン本人は大きくヒマを持て余すこととなる。
「ヒマじゃのーーーー…………」
そういって、大の大人が重厚なテーブルにベチャリと突っ伏す姿はいかにもア
レな感じである。
ふとオスマンが視線を向けると、そこには黙々と書類と向き合っている秘書
――ロングビルがいた。
眼鏡をかけてキリリとした表情で書類と向き合うその姿は、いかにも出来る女
といった感じである。
しばしその姿を眺めていたオスマンは、ふと悪戯を思いついたような顔をする
と。
「モートソグニルや」
ちゅう、と可愛らしい声を上げてオスマンの肩に自身の使いまであるハツカネ
ズミが現れた。
「ちいと頼みごとがあるんじゃが」
オスマンはゴニョゴニョと使い魔に頼みごとを伝えると。
モートソグニルはちゅう、と小さく鳴いた。
「よし、頼んだぞ」
彼は勇敢にもロングビルの机へと駆けていき――
ガシャン!
ぢゅう!?
絨毯から現れたトラバサミに挟まれあえなく散っていった。
「モートソグニルぅぅぅううっ!?」
慌てて駆け寄るオスマン。
書類作業を止め、ロングビルは『錬金』を唱え終えた羽ペンを置く。
「ミス・ロングビル……なんと酷い事を……」
ピクピクと痙攣しているネズミを労わる様に手にするオスマンは、ロングビル
へ言った。
「セクハラする時間があるなら仕事をしてください」
それにロングビルは勤めて冷静に返す。
「なんじゃいなんじゃい、そんなにもこの老体を苛めて楽しいのか!」
カッと目を見開き、詰め寄るオスマンにロングビルは動じず。
「そう言いながら胸の谷間を凝視しないでください」
ぐいっとオスマンの頭を押しのけた。
「かー! 見られるぐらいでガタガタ言うな! そんなのだから男がよりつか
んのだ!」
吐き捨てるようにオスマンが言うと。
「…………」
「痛い痛い痛いっ! 止めてごめんなさい! 殴らないで蹴らないでっ!」
無言で殴る蹴るを繰り返すロングビル。
そんな日常的な行為を行っていると。
突如勢いよく扉が開け放たれた。
「大変です! オールド・オス……マン?」
慌てたように入ってきたコルベールが見た物は、地面にうずくまるオスマンと、
それとはなんの関わりもないように机で黙々と書類を整理するロングビルであ
った。
一瞬なにをしているのかこの痴呆老人、と思った物のコルベールは本題を思い
出した。
「オールド・オスマン! そんな遊んでいる場合ではありません!」
295魔導書が使い魔-04:2008/12/04(木) 23:55:07 ID:EjdbDe/d
「いや、遊んでいるわけでは……」
恨みがましい目を秘書に送るも、ロングビルはどこ吹く風と淡々と仕事をこな
す。
オスマンはローブを叩きながら立ち上がるとコルベールと向き合い。
「で、どうしたんじゃ。ミスタ……コールベル」
「私は呼び鈴ではありません! コルベールです!」
「おお、そうじゃったそうじゃった。で、なにかの?」
飄々と笑うオスマンにコルベールは改めてその意を告げた。
「オールド・オスマン、これを」
手に持った書を掲げる。
「『始祖ブリミルの使い魔たち』じゃと? まーたカビ臭いものを」
「それはいいのです!」
そうして次にコルベールがその書の挿絵を開いた後。
「これは、6000年来の伝説が舞い降りたかもしれません!」
ルイズのルーンの写しを取り出した。
「…………」
オスマンの顔が一瞬にして引き締まり。
「ミス・ロングビル少し席を外してくれぬかの」
ロングビルは無言で席を立つと部屋から出て行った。
それを確認するとオスマンはコルベールへと問いかけた。
「それで、詳細を話してくれんか」



「むう……」
アルは唸りながら廊下を歩いていた。
「てけり・り」
その後ろをうねうねとダンセイニが続く。
ルイズの姿はそこにはなく、1人と1匹は当てもなく学院を歩く。
「あの小娘め……」
怨嗟の篭った声でアルが呟いた。

教室の片付けをなんとか終えた3人(2人と1匹?)は少し遅くなった昼食へと
行こうとしたのだが。
そこでルイズはアルに向かい。
「ああ、あんたは昼食抜きね」
と告げたのである。
当然のことながらアルは抗議したが。
「あんたは片づけを手伝わなかった上に、朝食では随分と恥をかかせてくれた
わね。少しは反省しなさい!」
ルイズは聞く耳を持たず、これを覆すことはなかった。

そうして空腹な1人と1匹は飢えを満たすべく、こうして彷徨っているのである。
「うぬぬ……妾が餓死したらどうしてくれよう」
「てけり・り」
魔導書であるアルは実際なにも食べなくてもいいのだが、最近まで人間と同じ
生活をしていたため習慣となってしまった。
「……今頃、あやつはどうしておるかな」
ぽつりとアルが言葉を漏らす。
思い出すのは懐かしき日々、教会での騒がしくも賑やかな食事。
暴走するシスター、騒ぎ出す餓鬼たち、主を地獄へ叩き込む妾、おちょくられ
る■■■――
「あ――」
なぜか、重要なことが、思い出せない、気がした。
それは――愚か者で――うつけで――馬鹿で――未熟者で――暖かくて――大
切で――かけがえのない――その名は□●◎■○△
「ああ――」
そのことを詳しく思い出そうとすると頭に奔るノイズノイズノイズ――
「くぅ……っ」
296魔導書が使い魔-04:2008/12/04(木) 23:57:25 ID:EjdbDe/d
「てけり・り?」
立ち止まったアルを心配そうにダンセイニが見上げるが、それどころではない。
バックヤードで疾走する術式を呼び出す。
現状記述損傷率は38.35――失礼これは違う――36.51844% 修復率は1.26548%
どこかがおかしい、確実に修復が進んでいるはずなのに。前より深刻化してい
る気がする。
なにか重要なことが検閲されているような――
「――どうしました」
そんな時だった。声をかけられたのは。
「……?」
アルが見上げた先で、黒髪を揺らした少女がこちらを見て問いかけた。
「どこか具合でも悪いのですか?」

「もう、おかわりはいいですか?」
「うむ、もうよい」
「てけり・り」
空っぽになった皿を前にアルとダンセイニは満足そうな声を上げた。
シエスタと名乗った少女はこの学院のメイドらしく、ダンセイニの姿に一瞬驚
きはしたもののすぐに順応した。
そしてアルが空腹であると告げると快く厨房へと案内してくれたのだ。
腹が膨れて機嫌がいいのだろう、アルはほぼ空っぽになった鍋を持つシエスタ
に言った。
「馳走になったな小娘」
どう見ても年下に小娘と言われてシエスタは。
「ふふ、どういたしまして」
背伸びをしている子供とでも見ているのだろう、優しい笑みを浮かべる。
そしてシエスタはアルへと話しかける。
「でも、大変ですね。平民なのに使い魔なんて」
「ん? 小娘なぜそれを?」
平民と呼ばれたことはこのさい無視して、アルは最も気になったことを聞いた。
シエスタは軽く笑い。
「だって、今日の朝食であんなに騒いだらすぐに噂は広まりますよ」
「ふむ」
それもそうかとアルが納得していると、奥から恰幅のいい男が現れると野太い
笑みを浮かべ話しかける。
「どうだい? 俺の料理は」
「うむ、美味であった」
「がははははっ! いいねぇ! あんな食べっぷりでそんなことを言われると
嬉しくなるねぇ!」
「ぬあっ! 汝っ! 頭をっ振り回すな!」
グシャグシャと髪をかき混ぜる手をアルは跳ね除けると。
威厳高々に口を開いた。
「妾はあらゆる外道の集大成。最強魔導書『アル・アジフ』なるぞ!」
その言葉に一瞬ぽかんとなる男。だが。
「がはははっ! それなら俺はこの厨房のコック長のマルトーだ!」
笑いながらアルの頭をまたかき混ぜる。
「だからするなとっ!」
「賄でよければいつでも食いにきな」
抗議するアルに、マルトーは男臭い笑みを浮かべ、笑いながら厨房の奥へと帰
っていく。
「よいしょっと」
それに連動するようにシエスタも鍋を置くと、近くにあった銀のトレイを掴む。
「ん? 汝どうした」
「今からデザートを運ぶんです」
そうか、とアルが呟くと。クイクイと袖が引っ張られる。下を見ると。
「てけり・り」
うにょうにょとダンセイニが動いていた。
「なんだ?」
「てけり・り」
297名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 23:58:16 ID:r/zXyWK/
待ってたぜ支援
298魔導書が使い魔-04:2008/12/05(金) 00:00:24 ID:EjdbDe/d
「ふむ、確かに一宿はないが一飯の恩はあるな」
「てけり・り!」
「ふむふむ、それもよいか」
人外と人外が不思議な会話を繰り広げる中。
「あのー……」
置いて行かれるシエスタが声をかけようとした時。
「よし!」
アルが勢いよく立ち上がりシエスタへ振り返ると、偉そうに言い放つ。
「感謝せよ。汝の雑務を手伝ってやろう」
「てけり・り」
それにシエスタは、一瞬ぽかんとした後。
「はい、それじゃあお願いしますね」
微笑ましいと笑った。



ルイズは食後の紅茶を嗜みながら、ご満悦であった。
なにせあの生意気な使い魔に現在昼食抜きという罰を与えているのだ。
ああすれば、あいつも少しは懲りるに違いない。
「ふふ……ふふふふ」
薄暗くほくそ笑むルイズは、不気味な笑みを周囲に振りまき近寄りがたい雰囲
気となっているのだが。
(まあ、これで反省する態度を見せたら、夕食はまともに取らせてあげようか
しら)
ふふふふふ、とにやけながら紅茶を含んだルイズは。
「てけり・り〜」
「ぶーっ!!」
「きゃあ!」
突如聞こえた聞き覚えのある声に口の中の物を噴出した。
不幸にも通りがかったモンモランシーが直撃を食らったが、それを気にしてい
るどころではない。
口元を拭きつつ周囲を見渡すと。そこには。
「ほれ」
「はい」
「てけり・り〜♪」
アルがケーキの乗った銀のトレイを差し出すと、シエスタがはさみでケーキを
つまみ貴族へ配っていき。ダンセイニはその体を生かして運搬と配膳の両方を
こなす。その異形の姿になぜか女性を中心に人気を集めている。
ダンセイニと目が合った。
ぷにょぷにょと体を少女たちに触られていたダンセイニはルイズに近づくと。
「てけり・り」
ケーキを皿に乗せる。
(あ、イチゴのショートケーキ。しかもほかのよりも少しイチゴが大きい)
そんなことにルイズは少し幸福感を――
「って、なにしてんのよあんたたちっ!!」
かみ締めるほど余裕はなかった。
叫び声に注目が集まり渦中にいるアルは、その声に振り返ると。
「なんだ、汝か」
疲れたように言った。
「なんだはないでしょう! なんだは!」
ルイズが歩み寄ると、アルと言い争いをはじめた。
シエスタはなにかを察したのか、静かにアルからトレイを受け取るとその場を
離れていった。
「ええい! 本当によくもまあさえずるな汝は!」
「なによ! 使い魔のくせに!」

少しその場を離れ、シエスタは言い争う2人を見た。
桃色の髪を揺らし理不尽とも取れることをまくし立てる少女と、それに対して
負けじと理不尽を理不尽かつ偉そうに拒否する銀髪の少女。
299名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 00:01:34 ID:Fx+9snmy
紫煙
300魔導書が使い魔-04:2008/12/05(金) 00:02:51 ID:EjdbDe/d
当人たちにとっては真剣なのだろうが、故郷に多くの兄弟を持つシエスタから
見ると姉妹喧嘩のようで微笑ましいことこの上なかった。
零れそうになる笑みを押さえ込み、1人でトレイからはさみでケーキを配って
いく。
それを横目に見ていたせいだろうか。
「おい、ギーシュ! ほんとはどの子と付き合ってるんだよ!」
「誰が恋人なんだ?」
「ふ、僕は薔薇。薔薇というものは多くに愛でられるからこそ意味があるんだ」
目の前で複数の少年に囲まれ質問をはぐらかすキザな少年――ギーシュから転
がり落ちた小壜を思わず拾う。
「あの、貴族様。これを落としましたよ」
「うん?」
小壜を差し出されたギーシュは、一瞬だけ苦い顔をすると。
「そんな物は知らないな」
しれっとした顔で言った。
普段のシエスタならそこでなにかを察しただろう。だがルイズとアルのやり取
りを見てお節介な心が頭を擡げ、シエスタはギーシュへ言いすがる。
「ですが、確かに」
「しつこいな君は――」
それに早々に話を打ち切ろうとしたギーシュの声は。
「――おいこれ! まさかモンモランシーの香水か!」
先ほどから彼に質問をしていたマリコルヌによって遮られ、周囲の少年はその
声に敏感に反応した。
「この小瓶の形、間違いない!」
「しかもこの鮮やかな紫色は!」
「これってモンモランシーが自分自身のためにしか調合しない特別な香水じゃ
ないか!」
こうなればもうギーシュにもシエスタにも止めることはできない。
「これをギーシュが持っていたということは」
「ギーシュ! お前はモンモランシーと付き合っているのか!」
「いや、それは――」
ギーシュはそれを必死に弁解しようと、口を開いたとき。
「ギーシュ様……」
気がつけば、ギーシュが振り向いた先に栗色の髪の可愛らしい少女が居た。マ
ントの色からして1年生であるその少女を見たとき、ギーシュの顔に焦りが浮
かんだ。
「け、ケティ!」
ケティと呼ばれた少女はじっとギーシュの顔を見ると、急にボロボロと涙を流
し始める。
「ギーシュ様……やっぱりミス・モンモランシーと」
「違うケティ! これはなにかも間違いで! その小壜は僕がさっき落ちてい
たのを拾ったんだ!」
「もういいですっ!」
あたふたと言い訳をするギーシュを少女は遮ると。大きく腕を振りかぶった。
踏み締められた足は地面を掴み。その踏み込みから生まれた剄を螺旋と捉え。
足から膝、膝から腰、腰から肩、肩から肘、肘から手へと伝達増幅する。鞭の
ようにしなった腕は震脚と剄力を一切漏らさず、ギーシュの頬へとその衝撃を
解き放つ。
――ドゴン!!
「ぐべらぼへっっ!!??」
おおよそ人体が発するとは思えないような打撃音と共に、カンフー映画の如く
その場で4回転し墜落するギーシュ。
「さようなら!」
拳法の達人にも劣らぬ見事な平手を放った少女は、泣きながら走り去っていっ
た。
ポカンと言い争うことも忘れ、お互いに見入っていたアルとルイズの傍。巻き
髪の少女がつかつかとギーシュの元へと一直線に歩いていく。
「お、お、お、お、お……」
首が直角に曲がったままゾンビの如く立ち上がったギーシュに巻き髪の少女が
301魔導書が使い魔-04:2008/12/05(金) 00:04:51 ID:EjdbDe/d
話しかける。
「こんにちは、ギーシュ」
「も、モンモランシーっ! これはだね――」
一瞬にして復活したギーシュが弁解の言葉をつむぐ前に。
「うそつき!」
「べぶしゃっっ!!??」
どこから取り出したのか、四角い石塊に柄を付けただけハンマーでモンモラン
シーはギーシュを殴打。生肉と硬い骨を無理やり鈍器で叩き潰すような生々し
い音が暫し響いた。
周囲に鮮血と肉片とピンクのなにかが散らばる中、モンモランシーはハンマー
を投げ捨てると、そのまま歩き去っていく。
「ふんっ!」
後に残されるは血塗れたハンマーと、R-18指定とモザイクがか
かりそうなギーシュだった。
「「「「「…………」」」」」
乾いた……乾いた空気が場を駆け抜ける。
「……お、おい」
だが、ようやく様子を見ていた少年が、目の前の惨状に水のメイジを呼ぼうと
口を開いたが。
「――ふっ!」
「「「「「――ッッ!!??」」」」」
バネ仕掛けのごとくピョンッと立ち上がったギーシュに周囲はビクリと震えた。
「いやー、あのレディたちは薔薇の存在の意味というのを理解してなかったみ
たいだね」
薔薇の造花を取り出し普段のキザを演じるギーシュ……頭が一部陥没し、頂点
から胸元まで血に濡れているが。
「薔薇というものは僕のシンボルリックマークであり、シンボルと言うことは
世界に掲げるもので……あれぇ? ということは薔薇である僕は世界に掲げら
れる存在で、そんな僕はアイドルになるというのか! ああ、敬遠なる信徒達
よ……僕の愛は無限……神は皆の心に居る。そう僕は言い皆を信じた結果、十
字架に縫いつけられ小高い丘へ晒されるために運ばれていくのであった……裏
切り者はどこだぁぁぁあああっっ!!」
どうやら、かなり場所へと頭が旅立ったらしい。
だが、この時に逃げていればよかったものの。
「そこなメイド」
あまりの情況と変貌についていけず立ち尽くすシエスタにギーシュが薔薇を突
きつける。
「君のおかげで僕の世界的愛を受けるべき2人のレディが勘違いをしてしまっ
たじゃないか。どうしてくれる」
シエスタは困った。本来なら杖を意識して、それに恐れたことにしないといけ
ないのに。目の前で思考がトンでしまっている少年を見たことで、怖がり方が
頭から吹き飛んでしまっていた。
「え、えーと……」
しどろもどろに声をだす。
これではいけないと判りつつ、謝罪の言葉すら思い浮かばない。謝らなければ
いけない、怖がらなければいけない。なぜなら、それが周囲も自分も傷つかな
いための、彼女の処世術なのだから。
「さあ、どうしてくれるんだ」
さらに迫る薔薇。
「あ、あのっ」
「――まあ、なんとも情けない男だな」
シエスタはようやく謝罪の言葉を思い出したが。それは嘲るような声の前に出
ることは無かった。
周囲の注目が移った。
「なんだとっ!」
そこには銀髪を揺らしながら歩く1人の少女。
アルはシエスタの前に立つと腕を組み、胸を張って言った。
「汝が醜態を晒した原因は。元はといえば自身がまいたタネだ。なぜこやつが
攻められねばならぬ」
302魔導書が使い魔-04:2008/12/05(金) 00:07:21 ID:EjdbDe/d
その言葉に周囲は爆笑した。
「確かにギーシュ! それはお門違いだ!」
そうだそうだ、と周りの野次が飛び交う中、ギーシュは自身の主張を曲げない。
「そこのメイドがもう少し気が利いていれば、レディたちが傷つくこともなか
ったんだ!」
「やれやれ……」
それにアルはため息を吐くと。
「汝も人なら、人間の理解できる言葉を喋らんのか」
ギーシュの顔に朱がさした。
「平民ごときが貴族に口答えをするのか!」
発した言葉はこの世界にとって絶対にして当然のこと、貴族とは平民よりも上
位の存在であるという自負。
だがそれも。
「汝、それは身分が違えばどんな醜態を晒しても恥ずかしくないと言う事か?
随分立派な考えだな」
目の前の少女には関係が無かった。
もう怒りのあまり震える拳をギーシュはなんとか押さえ込む。溢れんばかりの
怒りは1周して逆に冷静にさせる。そしてギーシュは薔薇をアルに突きつける。
「よろしい、ならば貴族の礼節というものを教えてあげよう。決闘だ!」
「ふん、よかろう」
おお、と周囲が際限なく盛り上がり。目の前の出来事について行くだけで必死
のシエスタをよそに。

「なに勝手なことやってのよあんたはっ!」

さらなる闖入者が現れる。
野次馬の輪が広がる。そこから出てきたのは桃色の髪の少女。ルイズを見てギ
ーシュはアルのことを思い出す。
「そうか、……君はルイズの使い魔だったな!」
一々セリフごとにポーズを取るギーシュをルイズは無視し、アルへと近づくと
その腕を取ると引っ張った。
「さあ、行くわよ」
ぐいぐいと引っ張られそうになるをなんとかアルは踏みとどまる。
「こ、こら! なにをする小娘!」
ルイズはアルに向き直ると。
「なに勝手に首を突っ込んで、勝手に喧嘩売って、勝手に決闘なんてしてるよ
の!」
先ほどから溜めていた怒りを吐き出した。
シエスタを指差し。
「なんであんなメイドのことを庇ってるのよ!」
「うむ、あやつには恩義があるからな」
当然と返すアル。それにルイズはギーシュを指差し。
「なんで、あんなのの決闘なんて受けるのよ!」
「断る道理もなく、負ける道理もないからだな」
「だからなんであんたはそんなに偉そう――」
ギーシュをそっちのけで言い争いを始めようとする2人に。
「僕を無視して仲良くお喋りとはいい度胸だルイズっっ!!」
存在を無視されていた当人が切れた。
「使い魔の不始末は主人の不始末だ! 君にも決闘を申し込む!」
ざわりと先ほどとは違うざわめきと共に周囲は騒いだ。
いきなり決闘を申し込まれ戸惑うルイズは。
「ちょ、ちょっとちょっと! 貴族同士の決闘は――」
「――逃げる気か? まあ、魔法成功率“ゼロ”のルイズじゃしょうがないな」
その言葉に、周囲は一瞬昼の授業を思い出しルイズに注目するが。
「ふん、それがどうしたのよ」
彼女はあっさりとそれを跳ね除け、馬鹿馬鹿しいとばかり背中を向ける。
「ほら行くわよ」
「だから引っ張るな!」
いつもの彼女ならすぐに噛み付いただろう。だが少し前に、溜め込んでいた毒
を吐いていたルイズには普段には無い余裕があった。
303名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 00:07:34 ID:QOjXCLv+
支援
304名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 00:09:13 ID:Fx+9snmy
モンモーランシー支援
305魔導書が使い魔-04:2008/12/05(金) 00:09:46 ID:I61YTCnU
ある種の覚悟を背負ったルイズに軽薄にもギーシュは。
「ふん、本当に怖気づいたのか。どうせその平民も、君みたいに口とプライド
だけの存在なんだろうな!」
「――」
なにか触れてはならない物に触れてしまった。
ピタリとルイズが立ち止まる。
「ぴぃっ!?」
ルイズの近くにいたマリコルヌが恐怖から悲鳴を上げた。
ゆっくりとルイズが振り返る。
「――いいわ、ギーシュ」
その目には闘争の炎が燃えていた。
「その決闘、受けて立とうじゃないの」



騒ぎを遠巻きに見ていたキュルケは戸惑っていた。
食後ウニョウニョと可愛らしい生物がケーキを運んできて。そのケーキを堪能
しようとした時、馬鹿話をしていたギーシュたちが騒ぎ始める。
二股によって受けた裁き。まあ、過剰攻撃とも思えたが本人達の心の傷を思え
ばそう攻める気も起こらず、元より首を突っ込む気もなかった。
その後、醜態を晒すようにメイドに喚き散らしていたが、それだけならなんて
ことはない。
どうせ本当に処罰するほどの度胸などギーシュにはないのだ。
ここまでならキュルケも別に戸惑いはしない。
だが突如、メイドを庇うように現れたルイズの使い魔。
そしてそれに決闘を申し込むギーシュ。
ここまでは、ここまではいいとしよう。勝っても平民をいたぶる趣味の悪い男、
負けたら平民に負けた貴族の面汚しと、貴族が平民に対して決闘を申し込むな
ど恥の上塗りにすぎないが。
だが、使い魔を止めようとしたルイズにもギーシュが決闘を申し込んだ時、キ
ュルケは食べていたケーキを喉に詰まらせそうになった。
そして始めは断ったルイズが、ギーシュの言葉の何が原因か。決闘を受けたと
き、思わず息が止まった。

「ちょっとルイズ!」
ヴェストリの広場で待つ、と先に出て行ったギーシュたちと入れ替わるように
キュルケがルイズへ詰め寄る。
「なによキュルケ」
ぶすったれた表情でルイズは返す。
すぐ横ではルイズの使い魔――アルがメイドに何か言われている、がそんなこ
とを気にしている余裕は無かった。
「なんであんな決闘受けたのよ!」
「あなたには関係ないわ」
「そんなこと言っている場合じゃないでしょっ!」
思わずキュルケは怒鳴った。
いつものギーシュなら女に怪我を負わせるようなことはしないだろう。だが、
いかんせんあのグラモン家は女癖と血の気が強いときている。
あの頭に血が上り、遠くに旅立ったギーシュに手加減など望むことは出来ない。
「ともかくっ。今すぐ決闘なんて止めなさい!」
我がことのように焦り声を上ずらせるキュルケ。
「いや」
他人事のように淡々と喋るルイズ。
普段の彼女たちからすれば、まるで立場が逆であった。
「いやって……そんな我侭言ってどうするの! あなたは魔法が使えないんだ
から。こんなつまらないことで命を落とすかもしれないのよ!」
必死に引きとめようとするキュルケに、ルイズはポツリと言った。
「あいつは」
思わずルイズの顔を覗き込んだキュルケは息を呑む。
「――っ!」
306名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 00:10:13 ID:i6DIWa9I
おっと支援
307魔導書が使い魔-04:2008/12/05(金) 00:12:24 ID:I61YTCnU
「わたしの使い魔を侮辱した」
その目は、なにも譲らないと語っていた。
「あー、もう」
グシャグシャとキュルケは髪をかき混ぜ、背を向けた。
「好きになさい!」
「好きにするわよ」
ふん、とルイズはアルを連れそのまま広場へ歩いていく。
ルイズが食堂を抜けた頃になって、キュルケはため息をついた。
「はあー……」
これからどうするかを考え。
「このまま見て見ぬ振りってわけにもいかない、か……」
自分も広場に行こうとしたとき、背後から声がかかった。
「……心配性」
いつのまにかいた親友――タバサにそう言われ。
「違うっ」
キュルケは顔を赤くして怒鳴った。



事件の渦中にいたはずのシエスタは大いに戸惑っていた。
本来なら自分が咎を受ければ丸く収まるはずだったことが、いつの間にか自身
の手を離れ。貴族と平民の決闘騒ぎまで大きくなってしまったのだ。
途中、アルの主人であるルイズが止めようと入ったが。結局は彼女も決闘を受
けることになった。
たとえ貴族である彼女がいても、シエスタは噂で知っている。ルイズは魔法が
使えない貴族だということを。
魔法の使えない貴族は、立場以外は平民となんら変わりは無い。
平民が貴族と戦って勝てるわけはないのだ、普通は。
それを昔実感していたシエスタは、ここで初めて青くなった。

「アルさんっ!」
先に広場に行くギーシュと野次馬、まだこの場に残っているアルにシエスタは
向かった。
アルはシエスタに気がつくと笑いかける。
「汝、怪我はないな?」
まず自分の心配をする彼女にシエスタは言葉が詰まった。
「そ、そんなことより! 決闘なんて止めてください! 死んじゃいますよ!」
「だがな」
「だがじゃありません!」
シエスタは必死だった。貴族であるルイズはともかく、平民であるアルの命を
あのギーシュが気にかけるとは思えない。
「――なんでこんなことをっ」
もはや懇願するかのように言うシエスタに、アルは酷くそっけなさそうに。
「いや……こういうのを見過ごすと、後味が悪くてな」
信じられなかった。本当に死ぬかもしれないのに、彼女はたったそれだけこと
で自分を庇ったのだ。
「妾もどこぞのうつけに毒されただけだ」
そう恥じるように、誇るように、後悔するように言うアルに。
「――」
シエスタは言葉もない。
「それにな、負ける道理など一欠けらもない」
なにも言えないシエスタの横を、ルイズが通る。
ルイズはアルと2、3言い合うと、残った野次馬を連れてそのまま食堂を出て行く。
残されたシエスタは1人、拳を握った。
「……っ」



「諸君! 決闘だ!」
308魔導書が使い魔-04:2008/12/05(金) 00:14:42 ID:I61YTCnU
大げさなポーズを取りながらギーシュが言った。
ヴェストリの広場に噂を聞きつけ集まった多くの生徒達がそれに同調するよう
に応える。
広場には野次馬の輪ができ、その中心には3人。
「覚悟はいいかい。ルイズと平民の使い魔君」
1人はギーシュと。
「五月蝿いわね」
「御託はいい、さっさとやらんか」
ルイズとアルである。
口元をヒクヒクとさせながらも、ギーシュは薔薇の造花を突きつけた。
「さあルイズ、怪我したくないなら今のうちだ。僕にその無礼な使い魔と一緒
に謝るんだ」
多少は冷静になったのか、取引らしきものをさも名案とばかりに語るギーシュ。
「却下だ」
「するわけないでしょ」
だが当然のごとく2人は跳ね除ける。
ギーシュは一瞬硬直するも、余裕は崩さなかった。
「そうだな。このままでは決闘にもなりはしない」
それは相手が平民と“ゼロ”のルイズであるから、という明らかな嘲りと油断。
一方的な哀れみすらも持ち、ギーシュは語りかける。
「ハンデだ。僕はゴーレム1体で戦おうじゃないか」
薔薇の造花を振ると、花びらが1枚落ちそこから女性を模したゴーレムが現れる。
「どうだい? これが僕『青銅』ギーシュのゴーレム『ワルキューレ』だ」
惚れ惚れと言うギーシュに――

先ほどから目の前でギーシュがなにか喚いている。
ルイズはそれを聞きながらもほとんどを聞き流していた。
頭の中を駆け巡るのは、緊張と不安と恐怖である。
かっとなったとはいえ勢いで決闘を受けてしまい今更後には引けない。
怖い……。
青銅でできたゴーレムの一撃は軽々とルイズを吹き飛ばすだろう。ルイズの攻
撃など青銅は意にも介さないだろう。
この手にあるのは一度も成功しない魔法を操る細い杖だけ。
なんと頼りないことだろう。なんと情けないことだろう。
心の弱い部分が今すぐ謝れ、逃げろと訴えてくる。事実そうしたほうが賢いの
だろう。こんな戦いは無益だとわかっている。
ちらりと横を見る。となりにいるアルは腕を組み、まるで敵ではないとばかり
に余裕の笑みでギーシュを見ていた。
ルイズは思う。負けるわけにはいかない、と。
杖を握り込むと、大きく息を吸う。頭に浮かぶはライバルたる赤毛の女。口は
勝手に動く。
「ギーシュ、早くしてくれないかしら。わたしはあの2人と同じでその長った
らしい語りは告白だと思ってしまうわ」
ルイズは長々と口上を述べているギーシュに言った。
「――もちろん断るけど」
「――っ!」
ギーシュの表情から余裕が消える。
「いいだろう……。グラモン家の3男、ギーシュ・ド・グラモン。『青銅』の
ワルキューレがお相手する」
ルイズはそれを見て、杖を掲げた。
「ラ・ヴァリエール家の3女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ
・ヴァリエール! 来なさい!」
「行け! ワルキューレ!」
薔薇の造花が振られ、ゴーレムが2人へと走り出した。
「やれやれ、名乗りとはまた悠長な」
そう言ってアルが動き出そうとしたとき、目の前に出された手で動きを制され
る。
「……なんのつもりだ?」
動きを制す手を、ルイズをアルは見た。
309名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 00:15:55 ID:QOjXCLv+
ショゴス支援
310魔導書が使い魔-04:2008/12/05(金) 00:16:56 ID:I61YTCnU
ルイズは前を、近づいてくるゴーレムを見ながら言う。
「あんたは下がってて」
「なにを――」
「これだけは――譲れないの」
「――」
それになにを感じたのか。アルは口をつむぐと1歩後ろへ下がり。
「行くわよ、ギーシュ!」
ルイズはゴーレムへ1歩踏み込んだ。



時を同じくして学院長室。
「――と、言うことです」
「なんとまあ……」
ルーンついての経緯を聞き終えたオスマンは、椅子へと深く座り込んだ。
テーブルから水キセルを取り出すと吸い始める。
「意思を持ち、人に化けれる魔導書……跳ね返った契約……また随分とやっか
いじゃのう」
プカプカと輪を作る煙を見ながらオスマンは呟く。
「それだけではありません!」
興奮したようすでコルベールは続ける。
「ミス・ヴァリエールに刻まれてしまったルーンは、この『ガンダルーヴ』と
まったく同一なのです!」
「ふむ……伝説か……」
吐き出した煙が雲のように漂った。
コルベールは一瞬煙に顔をしかめるも、オスマンへと意を向けた。
「どう思います、オールド・オスマン」
「ふーむ……」
オスマンが腕を組み悩み始めたときだった。
突如ドアがノックされる。
「誰じゃ?」
「私です。オールド・オスマン」
それはミス・ロングビルの声であった。
「なにようじゃ?」
オスマンが促すと、扉越しに声が響く。
「ヴァストリの広場で、生徒達の決闘騒ぎが起こっています。教師達が止めに
入ろうとしても、集まった生徒達が邪魔で近づけないそうです」
「……本当に貴族という連中は……」
心から疲れたような声を出すオスマン。
「それで? 騒いでいる中心人物は誰かね?」
「1人はグラモン家のギーシュ」
「ああ、あの女好きの家系か。まーた女関係だろうな。それで、相手は?」
ため息をついたオスマンは、次の言葉で心臓が止まるかと思った。
「相手は――ラ・ヴァリエール家のルイズと、その使い魔です」
「――げほげほげほげほっ!?」
オスマンはあまりの驚きで蒸せる。
「よ、よりにもよって公爵家の娘になにをしておるんじゃ! グラモン家の馬
鹿息子は!」
このトリステインにおいて公爵家は王家に次ぐ地位を持っており、しかもラ・
ヴァリエール家は王家の血を遠く引いているという筋金入りの家系であるのだ。
さらにいうと、この学院の運営資金もかなりの部分でラ・ヴァリエール家の援
助を受けている。
怪我などされたらこちらが睨まれる。もし死ぬことなどあればこの学院関係者
全員の首が飛びかねない。
「教師達から『眠りの鐘』の使用許可が求められています」
「許可する! 即刻止めに行かせろ!」
「わかりました」
ロングビルの足音が遠くなる。
「オールド・オスマン!」
311魔導書が使い魔-04:2008/12/05(金) 00:19:25 ID:I61YTCnU
事情はわかっているコルベールは真っ青な顔でオスマンを見た。
オスマンが杖を振るうと壁に掛けられた布が剥がされ、等身大の鏡があらわに
なる。
「ええい! 今はどうなっておる!」
鏡に向かい杖を振ると、鏡面にこことは違う景色が写り始めた。



汗は額から頬を伝い顎へ垂れ、落ちる。
振りかぶられる青銅の拳。
まるで猛牛のごとく襲い掛かってくるゴーレムを前に。ルイズは大きくバック
ステップでかわし、素早く呪文を唱えて杖を突き出す。
「ファイヤーボール!」
だが火球は出ず、見当違いの場所が爆発し地面が抉れた。
「またかよー!」
げらげらと野次が飛ぶ。
「――っ!」
だが相手をする暇も悔やむ暇もない。ワルキューレが迫る。
またも大きく振りかぶられる青銅の拳。
(近い!)
「ああっ!!」
スレスレを通る拳を、思いっきり横に飛ぶことでかわした。
ゴロゴロと地面を無様に転がる。
すぐに次が来る。
そう思い立ち上がろうとしたとき、ゴーレムが止まっていることに気がついた。
顔を上げると、ギーシュが静かにこちらを見ていた。
「もう止めないか?」
なにを言っているのかわからない。
「わかっただろう。君は僕には敵わないことが」
「――」
「あれからもう10分ほど経ってる。君のしぶとさはわかったが、冷静になって
考えて勝ち目はないだろう?」
たしかに体は疲れきり、土にまみれている。
「その執念に免じて、謝罪しろとはもう言わない。だが、負けを認めてくれ」
唱える魔法は所詮失敗。爆発は一度もかすりもしない。
「僕は本来、レディには優しいんでね。傷つけたくはないんだ」
だけど。
ゆらりと立ち上がる。足は恐怖と疲れで震え、息は上がり、打開策も無い。
だけどっ。
だけどっ! 決して膝は屈しない!
「その杖を手放せば、もうそれで――」
杖を突きつける。
「いいから、さっさとそのゴミ人形で来なさいよ」
ギーシュの顔が瞬時に赤くなり、歪んだ。
「人がせっかく優しく諭せば! もう手加減はなしだ! ワルキューレ!」
どん、と今までにない速度で迫るゴーレム。
ルイズは動かず、口早に呪文を唱え。
「ファイヤーボールッッ!!」
前方が地面ごと爆発し、大きな土煙が上がった。
「……やった?」
そう油断したのがいけなかった。
土煙からゴーレムが飛び出してくる。
「――あ」
避けよう、そう思ったときにはすでに拳は振られている。
バキ、とへし折れる音がして、ルイズは殴り飛ばされていた。
今度は力なく地面を転がるルイズ。彼女は転がり続け、アルの前で止まる。
シーンと周囲の生徒達が黙った。
ギーシュは加減を誤ったかと顔を青くするが。
「……ふ……くっ」
312魔導書が使い魔-04:2008/12/05(金) 00:22:02 ID:I61YTCnU
まだ立ち上がるルイズを見て、安堵の息を吐いた。
なんとか、立ち上がるルイズだが。
「そこまでだな、ルイズ」
「……?」
「杖が折れている」
そう、ルイズの杖は真ん中から真っ二つになっている。
もはやそれでは、失敗でも魔法は使えない。
「これで君の負け――」
そう続けようとしたが。
「決闘のルールは、相手の杖を落とすまでよ」
ルイズの目はまだ続けると言っていた。
ギーシュは心底呆れたとため息を吐く。
「やれやれ。それじゃあ」
薔薇の造花を振る。花びらが1枚落ちるとそれは剣となる。ギーシュは剣を掴
むとルイズへと投げた。
目の前に転がった剣を見たあと、ルイズはギーシュを睨む。
「これはなに?」
「剣だよ。杖がそうなってしまっても戦おうというなら、それを使えばいい。
剣は平民がメイジへ対抗するために持つ牙だからね。ゼロのルイズ。魔法とい
う牙がない君にはちょうどいいだろう?」
ギーシュはニヤリと笑った。
「…………っ!」
ギリリと歯をルイズが食いしばり、そのまま駆け出そうとしたが。後ろから声
が上がった。
「うむ、遠慮なく使わせてもらおう」
それはルイズが危険になってもずっと傍観していたアルであった。
戸惑うルイズを尻目にアルはしゃがみ剣を掴む。
「アル、わたしはメイジよ。剣なんか使わないわ」
そうルイズが言うが。
「剣ではなく、杖ならばいいのだな」
「そうよ、でも杖も」
視線の先、握られているのは折れた杖。
「ならば問題は無い」
「え?」
ルイズが顔を上げたとき、目の前で怪異が起こっていた。

アルは賞賛した、ルイズの気高さを、誇り高さを、その執念を。
だから杖が折れてもなお立ち向かおうルイズを見て、心動かぬわけはなかった。
目の前に剣が投げられる。
その時、彼女の中でなにかが動いた。
――外的刺激による活性。目録一部復旧。
――キーワード『剣』。現在復旧記述内における『剣』の項目を検索。
――該当3件。うち、現状に適している物を選別。
剣を拾う。それは青銅で出来ていて、鍛えられてもいないこの金属は戦場では
使い物にならないだろう。
だが、その属性が剣であればそれでよかった。今の状態では1から作り出すの
は負担がかかりすぎるのだから。
「――ヴーアの無敵の印において」
印を結ぶ。心に持つは鍛造の意思。
「――力を与えよ、力を与えよ、力を与えよ!」
指先に火が灯り、それを一気に柄から剣先まで這わせた。
剣が炎に包まれ、そこから現れたのは。
「――バルザイの偃月刀」
彼女にとって慣れ親しんだ武器であった。
「――」
野次馬が、ギーシュも、ルイズも含めこの場にいた全てが目の前の光景に息を
呑んだ。
呆然とするルイズへ、アルは偃月刀を投げ渡す。
「ほれ」
313名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 00:24:22 ID:F4Ge5hYM
バルザイの偃月刀キタ、これで勝つる!支援
314名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 00:24:35 ID:QOjXCLv+
偃月刀ktkr支援
315名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 00:25:55 ID:qPO/lVIh
長くて読み応え十分だ支援!
316魔導書が使い魔-04代理:2008/12/05(金) 00:28:49 ID:QOjXCLv+
「ひゃっ!」
あたふたと受け取るルイズ。
「それは魔術的儀礼での術の媒体。剣にして『魔法使いの杖』だ。それならい
いだろう」
「え? え? あんた今――」
「今は、そんなことを気にしている場合か汝?」
その言葉にハッとして前を向く。
そこには未だ混乱から覚めないギーシュがいる。
そうだ、今は気にしている場合ではなかった。
「……ありがと、アル」
できる限りそっけない言葉。それでも、言うだけで恥ずかしかった。
「ふん。我がここまで手を貸したのだ。圧勝以外は認めんぞ」
「当然!」
ルイズは剣を両手で握り締める。
「ワルキューレっ!」
混乱から覚めたギーシュが、その心を表すかのように薔薇を振るい。それに合
わせるようにゴーレムが動いた。
それは先ほどよりも速く、疲れ切ったルイズにはもはや避けようはない。
「――っ!!」
遠目で見ていたキュルケは、それを見てとっさに杖を抜くが。
(ここからじゃ間に合わないっ!?)
誰もが、ルイズが吹き飛ぶ場面を想像した。
だが。
「なんだ」
ルイズはその場に立っていた。
「なんだよ!」
その後ろで、左右に分断されたゴーレムがガラガラと崩れながら勢いよく地面
を転がる。
「なんだよ! それはぁっ!!」
剣を握るルイズの左手でルーンが輝いていた。

ルイズは驚いていた。
体は疲労し、立つのがやっとだったのに。剣を握った瞬間に、急に体が軽くな
ったのだ。
剣はまるで長年使っていた愛用品のように手に馴染み、体は疲れも感じない。
理由はわからない、考えがまとまらず、思考は空回りするばかり。
剣? ルーン? アルの支援?
ただ、左腕が熱い。
ああ今は余計なことを考えるのはやめよう。この熱があればどこまでもいける。
熱が、心に火を点す。
その熱に浮かされるように、剣を構える。
目の前では大いに取り乱したギーシュが、新たに6体のゴーレムを作り出して
いた。
(相手は1体じゃなかったのかしら? まあいいわ、すぐに0になるんだから)
膝を曲げて、ルイズは思いっきり飛び出した。
体は羽のように軽く、宙を飛ぶかのように舞った。

次に行かせたワルキューレが6等分に分断されたのを見て、ギーシュは思わず
叫びそうになった。
先ほどまで逃げ回るだけだったルイズが、あの奇怪な剣を握った瞬間様変わり
した。
まるでグリフォンのごとく優雅に素早く動き、竜のごとく苛烈に攻撃をする。
その身体能力は同じ人間とは思えないような変わりようだ。
剣も剣で。金属の中では柔らかいほうとはいえ青銅を音すら立てず、まるでバ
ターのごとく切り裂いている。
だがなにより。ルイズの左手で煌々と輝くルーンが、ギーシュの目についた。
あれはなんだ? なぜメイジにルーンが? 自身の体にルーンを刻む魔法など
ないはずだ。
「だから! なんだよそれはっ!」
317魔導書が使い魔-04代理:2008/12/05(金) 00:30:03 ID:QOjXCLv+
新たに3体のワルキューレが縦、横、斜めとそれぞれ真っ二つにされた。
「くっ!」
残りのゴーレムは2体。
崩れたゴーレムの破片の中心、そこには荒い息を吐きながら立つルイズの姿。
ルイズはこちらを見る。
「――ひっ!?」
その鋭い視線に、体を貫かれたかと思った。
「――」
そしてルイズは力を溜めるかのように少し屈むと、こちらへ向かい、大きく飛
び上がった。
「わ、ワルキューレぇぇええっっ!!」
必死に残った2体に迎え撃たせた。
もう手加減もなにもない。ただ金属の塊をぶつけてやろうと思った。
ワルキューレがルイズの着地点に走る。
こうなったらルイズも終わりだろう。そうギーシュは確信した、が――
ルイズが空中で体を捻る。
握った剣は遠心力を生み、体全体を使い独楽のように回転した。
そしてそのまま着地点へと待ち構えていたゴーレムとすれ違い、着地。
ざざーっと殺しきれぬ力で、地面を回転しながら足の裏で滑り――止まった。
「…………」
「――――」
両者は無言。
周囲から驚きの声一つ上がらぬ中。
ルイズの背後で、ずるりとゴーレムの胴に切れ目が入り、滑り落ちる。
ガランとゴーレムが崩れる音をバックに、ルイズはギーシュへと歩く。
もはや茫然自失となっているギーシュの前で止まり、剣を突きつけた。
「あなたの負けよ」
それにガクガクとギーシュは頷いた。
「あ、ああ……僕の、負けだ」

ギーシュから背を向ける。
邪魔なので剣を放した瞬間、今まで感じなかった疲労感が急に押し寄せてきた。
ふらりと体が揺れる。
そして崩れ落ちそうになる体が、誰かに支えられた。
残った力でなんとか首を上げると、そこにはキュルケがいた。
「……やるじゃない」
言葉少なに言う彼女の顔には笑み。
なぜか恥ずかしくなって顔を背ける。
顔を向けた先には、こちらに向かい走ってくるシエスタと。
「ふん、まあまあだな」
ニヤリと笑うアルの姿があった。
意識が遠くなる。
(また、あんたは偉そうに……)
暗くなる視界の中、心で悪態をつきながらも口元には笑みが浮かんでいた。



「……なんじゃ、あれは」
学院長室。オスマンは『遠見の鏡』の前で魂が抜けたように呟いた。
その隣でコルベールは恐ろしいかのように言った。
「勝ってしまいました……」
鏡の中では、今頃『眠りの鐘』を持ってきた教師達が戸惑っている。
「ミスタ・コルベール。ミス・ヴァリエールに剣術の覚えは?」
「いいえ、少なくとも私は聞いたことがございません」
「となると」
「やはり、あのルーンの効果でしょうか……」
ごくりとコルベールは唾を飲んだ。
「これは大発見です! オールド・オスマン! あのミス・アル・アジフもそ
うですが、これは伝説の再来です!」
318魔導書が使い魔-04代理:2008/12/05(金) 00:31:03 ID:QOjXCLv+
興奮するコルベールにオスマンはあくまでも冷静だった。
「これ、落ち着かんか」
「あ……すいません。ですが、これは大変なことですよ」
まだ興奮覚めやらんといったコルベール。
「ふむ、それで。ミスタ・コルベール、君はこれをどうするのかね?」
「それはもちろん、王室に連絡し指示を」
「やめておけ」
そう言うコルベールを、オスマンは制した。
「なぜです?」
「ミスタ・コルベール。お前さんは生徒を王室やアカデミーの戦争の道具や研
究材料にしたいか?」
ハッとなるコルベール。
「い、いえ……そういうわけでは……」
オスマンは存在を忘れていた水キセルを咥えると、それを吹かす。
「うむ、わかっておる。お前さんは生徒をそんな目で見るような人ではない。
だがな、今こやつらを王室に報告すればそうなるであろう」
キセルから浮いた煙は輪を形作ると、そこにオスマンは息を吹きかける。
「平和なこの時代、戦の種なんぞ態々撒かなくてもいい」
輪は息に吹かれて崩れ去った。
「どちらにしろ、これはしばらく内密にことを進めるぞ」
「わかりました」
「君にはもう少し、『ガンダールヴ』について調べてもらう。いいかね?」
「はい」
言うが早いがコルベールが早々に部屋を出て行く。
1人になったオスマンは『遠見の鏡』を見る。
3人の女の子たちに囲まれ抱かれ眠るルイズの傍、放置されていた奇怪な剣が
ザラザラと砂になっていった。
「……これは、伝説以上にやっかいなことになるかもしれんのう」
オスマンは静かに呟くと、ルイズを囲っている女の子の1人。
銀髪の少女を見て呟いた。



――見られている。
そう感じたのは少し前であった。
だが、直接なにかをしてくるわけでもなく。視線から害はないと判断するとア
ルはそれを無視していた。
目の前ではキュルケにすがりスースーと寝息を立てるルイズ。そしてルイズの
髪を愛し気に梳くキュルケがいる。
「本当に……勝っちゃったんですね」
アルの横でシエスタが呟いた。
「言ったろう。負ける道理はないと」
ふふん、と胸を張る。
一瞬目を丸くしたシエスタは、ふふと綻ぶように笑った。
ふと、アルはまた視線を感じた。
そちらを向くと、青い髪の少女がこちらをジッと見ている。
「……?」
なんだと思って声を掛けようとしたが。
「アルさん。キュルケ様がルイズ様を運ぶらしいですよ」
「うむ?」
シエスタの声に反応して、そちらを向く。キュルケがルイズを背負い、こちら
を待っていた。
再び視線を戻すと、青い髪の少女はこちらに背を向け学院へと歩いていってい
る。
「……ふむ?」
首をかしげるアルに、再度シエスタから。
「アルさん、キュルケ様行ってしまいますよ」
「ああ、わかったわかった」
まあ、どういうこともないだろう。そう思い、アルはキュルケの後を追った。
319魔導書が使い魔-04代理:2008/12/05(金) 00:32:22 ID:QOjXCLv+
382 名前:魔導書が使い魔-04[sage] 投稿日:2008/12/05(金) 00:30:29 ID:FL1-125-199-94-15.hrs.mesh.ad.jp
今回はここまでです。
ようやく終わったギーシュ戦。
始めに予定していた文量の倍になってしまって青くなった私w
さあ、次は虚無の日のお出かけだー!
つ、次こそは早く書くぞー!
320名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 00:37:30 ID:dkRlNmGJ
魔導書の作家さん、お疲れ様です。
ところで、俺の謙信ちゃんはどうなったんんだ?
321名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 00:37:31 ID:5VwbMUgf
テラ長スwww
マジおつかれー
322名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 00:47:47 ID:1h2VSijw
杖としての能力使ってねえwww
しかし実際問題バルザイの円月刀と普通の杖とでは魔法の増幅率は違ってくんのかな? 
バルザイは血を媒介にすれば最高級の魔術合金にヒヒイロガネ破壊できるレベルの
爆発を起こせるけど。
323名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 01:00:09 ID:QOjXCLv+
魔導書の人GJ!!
杖として受け取っておいて剣でカタをつけるルイズが素敵でした。
wikiのほうは容量オーバーでa/bパートに分割しましたが
分割した位置に問題はないでしょうか?
324名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 01:08:07 ID:1JIUP25k
ラヴクラフトがこのスレに興味を持ったようです
325名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 01:45:49 ID:azpE1OmW
遅ればせながら・・・
ローマの人、ラスボスの人、乙です!
二つとも凄く楽しみにしてる作品なので新作が来る度にwktkしてますw
326名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 01:52:14 ID:xv0oz17O
今、浦安鉄筋家族の春巻が召喚されたストーリーを考えているのだが…
どうしてもギャグにしかならねぇし、遭難してばっかりの話しか思い浮かばねぇora
327名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 01:56:59 ID:/Ek4hKKa
俺も読んでるだけじゃあなく・・・、書いてみようかな

最低野郎で
328名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 01:59:12 ID:DbgVeCRM
CCを召喚しようか漫画のほうのナナリーを召喚しようか迷ってる
329名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 02:10:07 ID:rSfLwuig
>>328
>漫画のほうのナナリー召喚
そんな事したらゼロさんがナナリー奪還にやって来て、ハルケギニア終了のお知らせじゃまいか。
330名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 02:17:45 ID:2Uis3VV7
てかその前にマークネモ大暴れ→ハルケギニア終了じゃね?
331名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 02:22:56 ID:GIXfNKq1
巨大ゴーレム!ナナリーあやうし!つづく
↓次の回
魔王ゼロにいきなり破壊されるゴーレム!最初からクライマックスだぜ!

ワルドは敵だった!偏在で4倍ピンチ!つづく
↓次の回
ワープで現れ稲妻だって素手で受け止める!虚無?ギアス?だから何

魔王ゼロに惚れ込んだキュルケ!兄の貞操がピンチだナナリー!
→マッチョ転じてグラマラス(はぁと)
332名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 02:38:35 ID:EuvM+k5h
ドットがラインの精神力を上回ることってあるの?
あるいはドットが一時期にスクエアクラスになるとか
何が言いたいのかというと遠心力やロープの反動を利用することによりクラスを上げれないのか?ってことでして
333名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 02:43:58 ID:I61YTCnU
ロープの反動で2倍!
遠心力より2倍!
さらにひねりを(ry
334名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 02:48:42 ID:DbgVeCRM
釘を入れた袋をエアハンマーで吹き飛ばしてばら撒くとかそういう…?
地面からゴーレムを作って空いた穴に錬金した杭を設置して落とし穴にするとか
小麦粉を風で空気に混ぜて粉塵爆破とか
ホレ薬ならぬホモ薬を作って相手の士気をガッタガタにするとか
335名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 02:55:35 ID:I61YTCnU
ようやくさるさんが解けたので、この場で言います。

>>323
代理とwikiありがとうございます。
336名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 03:01:15 ID:YQNSc5Oa
>>329
読みてえw
337名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 03:06:57 ID:qGx+jb+n
とんでもナナリー(マンガ版)はいいよwwwww

あれはネタだと思って惰性で読んでる
正直ねぇよwwww
338名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 03:13:26 ID:uDeZJTGI
ナナリー読んでないけど、同じ谷口でもガンソ(漫画版)よりはマシなんだよな?
339名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 03:17:55 ID:uih5dKNS
よく知らんけどあれはあれで面白い(どういうベクトルか解らんが)と聞いてる
340名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 03:44:08 ID:6lkJ/jCI
スクライド漫画版のぶっ飛び具合は異常
341名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 04:03:36 ID:Da/higSc
SS書くような割と深めのファン(?)でも、ゴーレムに立ちはだかるところとか評価が分かれてる場面が多くて面白い。
342名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 04:29:26 ID:74r1EZT9
>>326
殴ったら殴ったで拳痛めるような虚弱体質だしな
そのわりには即死級のダメージ受けても翌週にはケロッとしてるが
343名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 05:22:02 ID:mDCI/N6j
こんな時間にエルザが酷い目に会う部分を書いてたら興奮してきた
344名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 05:30:54 ID:CLS9hUmH
スクライドとというと思い出すのは終わらない夏休みだ
345名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 08:05:52 ID:JCiOjmyx
ここで俺屍から、黄川人と大照天昼子(イツ花)を召喚!

するとルイズ達の世界がメチャクチャになるので止めました
346お前の使い魔 15話:2008/12/05(金) 08:51:23 ID:Fz8b/pxr
おはようございますッス
プリニーの難しさにPSPを破壊しそうッス

こんな感じで予約なければ55分から投下するッスー
347お前の使い魔 15話:2008/12/05(金) 08:55:13 ID:Fz8b/pxr
 あの日から数日経ち、わたしはとてつもない問題にぶち当たっていた。
 その問題は非常にわたしの神経を圧迫し、体調にも悪影響を及ぼす。
 身体の自由が奪われ、今日もわたしは重い身体を引きずるように教室へと向かうのだった……。

「お……重い……」
「やっぱりお前は運動不足です。サビ剣の一本や二本持ったぐらいで筋肉痛になるなんて、どれだけひ弱なんですか。」
「あんたみたいな筋肉バカじゃないのよわたしは!! あーもう! これあんたが持ちなさいよ!! 雑用は使い魔の仕事でしょうが!!」
「嫌です。そんなばっちい剣なんて持ちたくないです。」
「わたしだって嫌よこんな汚い剣! みんなにだって笑われるし、筋肉痛にはなるしでいいこと無しよ!!」
「私のせいじゃありません!」
「むきーーーー!!!!」
「あのー……流石にちょっと傷ついちゃうぞ俺。」

 そう。問題とは、デルフを常に持つことによるわたしの疲労と周囲の目だ。
 なんせこいつはデカい・重い・汚いの三拍子が揃った剣なのだ。
 メイジが、しかも女生徒が持つような代物じゃない。
 当然、わたしだってその類にもれない。

「これ、いつまで持ってりゃいいのかしら。はぁ……憂鬱だわ。」

 数日間、わたしは時間の許す限り図書館にこもって必死に文献をあさり、どこかにヒントが無いかと躍起になって探した。
 ミスタ・コルベールや、学院長も色んな方面で調べてくれているらしい。
 ついでに、タバサも毎日図書館で見たし(これは本人の趣味かもしれないが)、どうやらキュルケもゲルマニアの方面で色々探してくれているようだ。
 しかし手がかりはゼロ。
 唯一の幸いといえば、デルフを手にしてから変な夢は見なくなったし、変な声も聞こえないというものぐらいだ。
 その点だけは評価してやってもいいかしら。

「とは言ってもねえ……」
「結構似合ってるからいいじゃないですか。」
「良くない!」
「そうだ、いっそのこと、術師を辞めて剣士になっちゃうってのはどうですか?」
「なる訳あるかあああああっ!!!!」

 そんなこんなで騒ぎつつ教室へと入り、授業を受ける。
 今日の授業はミスタ・ギトーが講師らしく、延々と風の系統の魔法の素晴らしさとやらを語っている。
 そして、授業が進むにつれ、最強の系統は何かなんて話題になり、キュルケが火の系統だと答え、それを鼻で笑ったミスタ・ギトーがキュルケを挑発した。
 挑発されたキュルケが、ミスタ・ギトーへとファイアー・ボールを打ち込む。
 ここまではよかったのだ。いや、よくは無いが、まだ笑い話で済んでいた。
 問題は、ミスタ・ギトーはこれを風の壁で打ち消し、勢いの止まらない烈風はキュルケへと牙を剥いたこと。

 反射的に身体が動いた。
348名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 08:55:16 ID:udTcSGm0
今いるところから避難所に書き込めないのでこっちに報告。

まとめWikiの、ゼロと波動の元ネタ、タイトル直しました。

ファイナルのスペルはFAINALぢゃなくてFINALです。
349名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 08:56:19 ID:udTcSGm0
割り込みすみません支援
350お前の使い魔 15話:2008/12/05(金) 08:57:50 ID:Fz8b/pxr
「ルイズ……あんた……」
「怪我は無い?」
「あ……うん、大丈夫よ。あんたこそ大丈夫?」
「あー、大丈夫みたい。」
「いい動きするじゃねえか娘っ子。おでれーたぜ。」

 気がつくとわたしはキュルケの前に立ち、デルフを構えていた。
 ミスタ・ギトーの打ち出した烈風は、デルフへと吸い込まれるかのように消えてなくなり、教室の中は静かなものだった。

「み、ミス・ヴァリエール、どういうつもりだね?」
「どうもこうもありませんミスタ・ギトー。一歩間違えば危険なことになりそうでしたので、自分のできることをやりました。」

 ざわざわと教室にいた生徒達が騒ぎ出し、魔法が消失するという不可思議なものを見せられた為か、奇異の目でわたしを見る。
 風の系統の使い手である、ミスタ・ギトーの魔法をあっさりかき消したのだから、まあ仕方が無いか。というか、自分でもびっくりしてるし。

「お前、今の動きはどこで覚えたんですか?」

 いつの間にかわたしの近くに来ていたダネットが、心なしか青ざめた顔でわたしに尋ねた。

「どこでって……夢中だったから覚えてないわよそんなもの。」
「……そうですか。」

 わたしの返事を聞き妙な表情を浮かべるダネット。
 冷静になって考えてみると、わたしとキュルケの席はそれなりに離れている。
 しかし、わたしはその距離を一気に移動し、キュルケの前で剣を構えるなんて芸当をやってのけた。
 はて? どうやってあの距離を移動したんだわたし?

「あの動きは……」

 ダネットがさっきのわたしの動きについて何かを話そうとした時、どたどたと誰かが廊下を走る音が聞こえ、勢いよく教室のドアが開いた。

「あやややや、ミスタ・ギトー! 失礼し」
「お前! ハゲのオッサンがハゲじゃなくなってます!!」

 うん。間違ってないわよダネット。確かにミスタ・コルベールの頭には、金髪巻き毛の髪があった。でもね、そういうことは出来るだけ小さな声で言いなさい?
 ほら、教室に入ってきたミスタ・コルベールが固まっちゃったじゃない。

「あれも術ですか? 髪が生えるなんて凄い術があるんですねえ。」
「おでれーた。6000年の間にそんな魔法できたのか。」

 はっはっは。黙りなさいこのダメ使い魔にボロ剣。

「でもあんまり似合ってません。術をやり直した方がいいと思います。」

 似合ってないとダネットが言った瞬間、ビクンとミスタ・コルベールの肩が揺れ、頭に付けていた金髪巻き毛のカツラがずれ落ちた。

「か、髪が落ちました!! あれはどんな術ですか!?」
「失敗魔法。」
「おでれーた。」

 驚いて叫ぶダネットの言葉に、絶妙なタイミングでかぶせられたタバサとデルフの一言により、教室内で激しい笑いが起きる。
 うーむ……子供って残酷だ。
 その後、怒りを通り越して半泣きになったミスタ・コルベールから、驚きの内容が告げられる。
 今日、先の陛下の忘れ形見でもある、アンリエッタ姫殿下が学院にこられるというのだ。
 なので、今日の授業は中止となり、生徒と教師の手で歓迎式典の準備を行い、出来次第、正装して正門に並ぶとのことだ。
351名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 08:58:00 ID:whEu6sE5
支援 キラッ☆
352お前の使い魔 15話:2008/12/05(金) 09:00:05 ID:Fz8b/pxr
「王様が来るんですか?」
「姫殿下よ。」
「お姫様ですか?」
「そ。というか、あんたって貴族は知らないのにお姫様とかはわかるのね。」
「馬鹿にしないでください! 私だってお姫様ぐらいはわかります。綺麗な格好をして、美味しいものを食べれるんです。」
「あー……そういう認識なのね。なんか安心したわ。」

 相変わらずなダネットとそんなやり取りをしつつ、準備を行う。
 わたしは、準備を行いながら、過去の姫殿下とのほほえましいやり取りを思い出していた。
 きっと、あの頃よりお美しくなられているはずだ。
 幼少の頃のことなど、姫殿下はお忘れになってらっしゃるだろう。
 そんな事を考えていた。

 式典の準備も終わり、生徒達が学院の正門に並ぶ。
 一応、ダネットも以前に買った服へと着替えさせ、列に並ばせている。
 デルフは、貴族の娘であるわたしが持ったまま姫殿下を迎える訳にもいかなかったので、ダネットに持ってもらうことにした。

「お姫様はどこですか? まだですか? いつくるんですか?」
「落ち着きなさい。もうすぐ来られるわよ。それよりも、飛び出したりしちゃダメだからね。姫殿下のとこに行って『ご飯ください』とか言っちゃ駄目よ。」
「い、言いませんよ?」

 冗談で言ったのだが、こいつ言うつもりだったな。
 前代未聞の事件を未然に防いだことに、わたしはほっと胸を撫で下ろす。
 そうこうしてる内に、姫殿下を乗せた馬車がやってきた。

「ほー……あれがお姫様ですか。綺麗ですね。」
「ほー。こりゃ確かに綺麗だ。」
「あれがトリステインの王女? ふん、あたしの方が美人じゃない。」
「乳でかの場合、美人というか、えっちいです。」
「俺は嫌いじゃねえがな。」
「デルフはわかってるわね。ダネット、女っていうのは色気と美しさがあってこそよ? まだまだ子供ねあんた。」
「私はもう大人です! 乳でかなんかよりよっぽど……よっぽど……うう……乳でかはすぐいじめるから嫌いです!」
「まあ気を落とすな嬢ちゃん。胸の大きさだけで価値が全部決まるわけじゃねえし。」
「ほっといてください!!」

 横で騒ぐキュルケとダネットとデルフのやり取りを聞きつつ、わたしの目は姫殿下ではなく、グリフォンにまたがった貴族を追っていた。
 まさか、こんな所でお会いすることになるなんて。

「お前、どうしました? お腹の調子でも悪いんですか?」
「悪いもんでも食ったか娘っ子?」
「あら、いい男がいるじゃない。ダネット、あんたも見てみなさいよ。」
「私はあんなヒゲ興味ないです。」
「あんないい男に興味がないなんて、もしかしてダネットって彼氏いたりするの?」
「い、いません! 私とあいつはそんなんじゃないです!!」
「あいつ? あいつって誰よ? 言ってみなさいよこのぉ。」
「嬢ちゃんは色気より食い気って感じがするがねえ。」

 二人と一本のやり取りが耳に入るが、入った傍から抜けていく。

「もしかしてあのいい男ってルイズの知り合い?」
「へ? そうなんですかお前?」

 思い出されるのは過去のやり取り。わたしの婚約者であるグリフォンにまたがった彼……ワルドとの思い出。
 きっと……彼も忘れてしまっているだろう。姫殿下と同じように、ゼロでしかないわたしとの事など。
353お前の使い魔 15話:2008/12/05(金) 09:02:50 ID:Fz8b/pxr
 部屋に戻っても、わたしは上の空だった。
 ダネットやキュルケからなにやら言われていた気もするが、一つも思い出せない。
 彼、ワルドを見てから、わたしの思考は霧がかかったようにぼやけている。
 しかし、一つだけ気にかかることがあった。
 それは、彼を見た瞬間に高鳴った胸の鼓動とは別に、何かがわたしの中に走ったのだ。
 直感ではなく、とてつもなく黒い何か。危機感を越える何か。
 何故、彼を見た瞬間に思ってしまったのだろう? 『あいつは危険だ』と。

「誰ですかお前は!」

 ダネットの怒声に、わたしは我に帰る。
 我に帰った時に、薄暗くなった部屋に驚いた。いつのまにやら夜になっていたようだ。

「ど、どうしたのダネット?」

 部屋の入り口を見ると、そこには目深にフードをかぶった女性がいた。
 女性は、眉を吊り上げているダネットをよそに杖を振り、同時に光の粉が部屋に舞う。

「……ディティクトマジック?」
「お前! 危ない!!」
「は?」

 言うが早いか、こちらに突撃するダネット。
 わたしはかわしきれず、ダアネットとひと塊になって部屋の端まで転がる。

「い、いきなり何すんのよあんたは!」
「話は後です。そこの変な格好をしたお前!! 急に変な術を使って、私たちに何をするつもりですか!!」

 ディティクトマジックを使った女性は、あまりの出来事に驚いているようで、フードの端からぽかんと開けた口が見える。
 どうやらダネットはディティクトマジックの光が、何か危険なものかと勘違いしたようで、呆気に取られた女性へと敵意をむき出しにしていた。

「何も言わないのなら聞き出すまでです。覚悟しなさい! 首根っこへし折ってやります!!」

 びしりと短剣を女性へ突き出し、戦いの構えを取るダネット。
 フードの女性は相変わらず、状況の変化について来れず、あたふたしている。

「え? え?」
「隙ありです!! やああああっ!!!!」
「待たんかこのボケ使い魔あああああっ!!!!」
「いったぁ!! な、何をするんですかお前!! はっ!? もしやこの」
「いい加減その思考はやめなさい! どうしてあんたはいっつもこうなのよ!! このダメ使い魔! ダメット!!」

 暴走してフードの女性へ飛びかかったダネットを後ろからはたき落としたわたしは、びしびしと杖を振り下ろし、ダネットを躾ける。
 来客を無視して騒ぐわたし達を見かねたのか、デルフが女性に話しかけた。
354お前の使い魔 15話:2008/12/05(金) 09:05:04 ID:Fz8b/pxr
「騒がしくてすまんな姉ちゃん。」
「今の声は……?」
「こっちこっち。」
「これは……インテリジェンスソードですか。珍しいものを持っていますねルイズ・フランソワーズ。」

 デルフと女性のやり取りの中で、突然わたしの名前を呼ばれ驚く。
 今の声、どこかで聞いたことがあるような……。

「もしかして……」
「お久しぶりね。」

 女性が被っていたフードを取ると、そこには美しい顔があった。

「ひ、姫殿下!? し、失礼しました!!」
「こいつ誰ですか?」

 失礼千万なことを言うダネットにげんこつを叩き込む。

「あいたあっ! 何するんですか!」
「このお方はアンリエッタ姫殿下よ! 今日、学院でお出迎えしたでしょうが!」
「こいつがあのお姫様ですか?」
「あんたはもう黙りなさい!!」

 姫殿下は、ダネットの様子や言葉に少々驚いているようだが、お怒りにはなられていないようだった。
 良かった……打ち首とか言われなくて。

 その後、わたしと姫殿下は懐かしの再会を喜び合い、しばし思い出話に花を咲かせた。
 忘れているかもしれないと思っていた思い出も、姫殿下は全て覚えておいでだった。
 むしろ、わたしの方が忘れかけていたようなものでも、姫殿下にとっては大事な思い出だったらしく、逆に驚かされたほどだ。
 そして思い出話も終わり、一段楽したところで、姫殿下は憂いの表情を浮かべた。

「あの頃は、毎日が楽しかったわ。なんにも悩みなんかなくって」

 気になり、わたしが訪ねると、悲しみをたたえた笑顔で、結婚なさるという事を教えてくれた。
 場が一気に沈んだものになる。……ダメ使い魔とボロ剣を除いて。
355お前の使い魔 15話:2008/12/05(金) 09:07:16 ID:Fz8b/pxr
「なんでお姫様は落ち込んでるんですか? 結婚するならおめでたいじゃないですか。」
「そこはほれ、色々あんだよきっと。」
「色々……はっ!! 食べすぎでしょうか?」
「どこをどうやったらそんな結論に至ったか教えてくれ。」
「えっとですね……ごにょごにょ」
「なるほどね。確かにそんな理由だったら暗くもなるわ。お嬢ちゃん結構頭いいんだな。」
「それほどでもあります。えっへん。」

 わたしは無言で乗馬用の鞭を取り出し、アホな一人と一本に振り下ろす。

「痛いじゃないですか!!」
「俺は痛くないんだけど、やめてもらえると嬉しい。」
「やかましい! どうしてあんた達は揃いも揃ってそんななのよ!!」

 こんなわたし達を見て、きっと姫殿下は呆れてるんだろうなと思ったら、なんと笑っていた。

「申し訳ありません姫殿下。こいつらには後ほど、きつく言って聞かせますので、なにとぞご容赦を。」
「いいのですよルイズ。あなたはとても楽しそう……羨ましいわ。」

 羨ましい? 他人にはそう見えるものなんだろうか? むしろ苦労ばかりでいい事なんかあんまりない気もする。
 何はともあれ、謝罪しておかなきゃ。

「いえ、使い魔の無礼は主の無礼です。失礼しました。」
「使い魔? こちらの亜人の女性とインテリジェンスソードが?」
「私はセプー族です!」
「俺は使い魔じゃない。」

 疑問を投げかけた姫殿下に、眉を吊り上げ反論するダネットと、のん気な声で返すデルフ。
 失礼ここに極まれり。終わった。わたしの人生は終わった。

「もももも申し訳ありません姫殿下! あんたら今すぐ謝りなさい!!」
「い、いえ、いいのですよルイズ。それにしてもセプー族というのは初めて聞きました。珍しい種族ですね。えっと、お名前は?」

 良かった。首が繋がった。
356お前の使い魔 15話:2008/12/05(金) 09:09:03 ID:Fz8b/pxr
「ダネットです。お前の名前はなんですか?」

 終わった。完全に終わった。さようならわたしの首。

「アンリエッタと申します。よろしくねダネット。」

 首が繋がった……良かった……。いや待て、この展開からいくと、次は……。

「アン……アン……アンアンですね。よろしくですアンアン。」

 よりにもよって、なんで姫殿下だけそんな愉快な呼び方すんのあんた!? なんなの!? なんかの意思なの!?
 ああ……もう無理だ……首じゃ済まない。これはもう城下引き回しの上、さらし首にされても文句は言えない。
 思えば辛いばかりの16年だったわ……ああ、なんと悲しき薄幸の美少女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール……。

「アンアン……かわいらしい呼び名ですね。ええ、よろしくお願いしますわ。」

 せめて死ぬ前に、クックベリーパイをお腹が破れるほど食べた……ええ!? よろしくしちゃうの!? いいの!?

「よ、よろしいのですか姫殿下!?」
「あだ名というものですよね? こんな風に呼ばれたのは初めてですから、少し嬉しいぐらいよルイズ。あなたも呼んでくれないかしら?」
「めめめめ滅相もございません!!」
「あら残念……」

 姫殿下は、本当に残念そうな表情を浮かべるが、呼べるわけないでしょうに。常識的に考えて。
 その後、意気投合したのか、ダネットと姫殿下はお喋りを始めた。
 姫殿下はダネットの故郷の話を聞き、驚いたり笑ったり。ダネットはお姫様の生活というものを聞いて、時には羨ましそうに、時には窮屈そうだと言ったり。
 最初はヒヤヒヤしながら横目で見ていたわたしも、いつの間にかお喋りに加わり、女三人の楽しい時間は過ぎていった。ついでに、デルフは会話に参加できず、途中でいじけたりしてた。
 だが、この楽しい時間は、ダネットの放った一言で凍りついた。

「それで、アンアンは何で結婚が嫌なんですか? やっぱり食べすぎですか?」

 どうして覚えとかなきゃいけないことを忘れて、覚えなくていい事を覚えてるんだこいつは。
 ちょっとぐらいは察しなさい! と言いたいが、実を言うとわたしも気になってたりする。
 姫殿下を見ると、少しためらいはしているようだが、話していただけそうだ。
 しばらくして、姫殿下はダネットに向かってゆっくりと口を開いた。

「ダネットは……愛していない人に嫁げと言われたら……どうしますか?」
357名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 09:10:05 ID:whEu6sE5
支援
358お前の使い魔 15話:2008/12/05(金) 09:15:15 ID:Fz8b/pxr
以上で15話終了
支援ありがとッス!

以下、次回予告

ガリア王妃が呼び出した奇妙な平民
それはとんでもない主人公だった!?

「ああああんた誰だい?」
「ふふ……聞いて驚きなさい。あたしの名はアサギ。真の主人公アサギ様よ!!」

次回、お前の使い魔外伝
『王女さまチャチャチャ』

うん。妄想なんだ。すまない。

それでは
359名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 09:18:55 ID:whEu6sE5
投下乙です
今は時間がないので後で読ませて頂きます
360名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 09:35:24 ID:a9+tQE2u
暑中見舞い?暑中見舞いじゃないか!
361名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 09:43:29 ID:BMk8WsKP
アーサーギッ!アーサーギッ!
アサギ様ばんざーい!
362名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 09:44:02 ID:QmEmlOyt
投下乙ですー
アサギさん!?永遠に発売未定の『次回作』の主人公アサギさんじゃないですか!?
…その後ろ手に隠したプリニーの皮は…一体?

まったく関係ないけど某スレにて、主役を前作主人公に乗っ取られたロボットアニメの元主人公とカップルになってたなアサギさん…。
363名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 10:01:34 ID:a9+tQE2u
>>362
kwsk
364名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 10:07:44 ID:QmEmlOyt
>>363
か、カップリングの話…?
いや、ゼタ様の丁稚にされた某シ○・ア○カが(先に丁稚奉公してた)アサギさんとくっついた、ってだけの話なんだが…
スレが落ちちゃって行方不明なんだよなぁ…。続き、読みたかったんだが…。
365名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 10:52:53 ID:iblNrz8l
ダメットの人乙です
ダネットに負けず劣らずアホ描写で描かれている事が多いアンアンだけど
これは凄ぇ肩入れしそうな雰囲気w
次回も期待!
366名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 11:12:46 ID:1JIUP25k
ダネットの人乙
おいおいソウルクレイドルだよ、俺の大好きなSC、SCじゃないか!
ディスガイア3にダネット登場ヒャホーイ
367名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 12:43:22 ID:McD4f+Ud
ちょっと前に号泣萌えって話があったけど、そういやダネットも号泣ヒロインだったなぁ
368名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 12:49:48 ID:bscMMTuL
>>364
大魔王デスティニーでググった際にキャッシュで読めた覚えが……

今も見れるか解らんけど
(今会社なんで確認できなくてスマン)
369虚無の闇:2008/12/05(金) 13:05:28 ID:qC3WITjl
20分から10話を投下したいのですが、OKでしょうか
370名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 13:09:29 ID:nVd/2hQu
支援
371虚無の闇:2008/12/05(金) 13:21:28 ID:qC3WITjl
トリスティン魔法学院の一室で、緑色の髪をした女性がひたすらに文句を並べ立てていた。
部屋には彼女以外の人影は無いが、決して頭がおかしいとか、行き遅れで狂ったとか、精神がかわいそうだとかではない。
彼女の話し相手は壁際に立てかけられているインテリジェンスソード、デルフリンガーだった。彼はかれこれ2時間は愚痴につき合わされている。
普段は取り繕われている有能な秘書としての仮面は完全に脱げ去り、思いつくありとあらゆる言葉を駆使して学院長の罵詈雑言を並べ立てていた。サイレントの魔法がなければ学院中に声が響き渡っているだろう。

「あの色ボケときたら! 何が白より黒が似合う、だい! 下着に気を使わないから男が出来ない、なんて言いやがって!」

「そんな事を言われても、俺は剣だから……」

「あたしゃあ、ま! だ! 23歳だよ! あ〜〜!!! 忌々しい! 余計なお世話だよ! この! この! この!」

「ちょ、痛い! 痛いって! やめて! お願い! 蹴らないで!」

哀れデルフリンガーは無数の靴跡をつけられ、人間ならボロ雑巾一歩手前になるまで蹴られ続けた。買われた当初にババアだ行き遅れだと口を滑らせたのが不味かったようだ。
その時は本格的に鉄屑にされる所だったのだが、自称数千歳は伊達ではないようで、幸か不幸か今のところは壊れていない。
最初は使い手など眉唾物だと思い買われる事さえ拒否した彼だったが、今は一刻も早くその少年の下に行きたくて仕方がなかった。ここに居たら寿命が猛烈な勢いで減ってしまう。

「はぁ、はぁ……、お前は、本当に、無駄に頑丈だね……。あそこの扉みたいに、錬金をかけたって、ビクともしないんだから」

「うぅ……。だからって、これは、酷いぜ……」

いい加減に蹴り疲れたらしいロングビルは大きく息を吐いた。床の上にデルフを放置したまま近くの椅子に腰を下ろし、時折ぶつぶつと学院長の文句を言いながら策略を練る。
彼女が狙っているのは学院長秘蔵のお宝とされる、その名も"破壊の魔道書"だ。コルベールをそそのかして聞いた所によれば、ワイバーンの群れを一撃で退散させる力があるとか。
しかしここの警備は正に鉄壁。あのハゲから弱点が物理攻撃と言われた時は狂喜したものだが、他に弱点らしい弱点が無いので、消去法で残ったのがそれなのだろう。
30メイルを超える土ゴーレムとはいえ、容易に殴り壊せるような物ではなかった。時間さえかければ不可能ではないが、壊すだけ壊して逮捕されては本末転倒もいいところだ。
予想では全力で4~5発は殴りつける必要がある。当直の教師たちがサボっているのは調査済みだが、ラムのように威力を集中させる方法でも限り、確実に逃げされると言い切れるほどの余裕が無い。

「チッ! 正に、鉄壁の防御ってやつか……」

「だろ?! だからいい加減に諦めて、俺をその使い手のところにさ……」

「相変わらず五月蝿い剣だね! それじゃ、私の面目丸つぶれじゃないか!
ったく! テファのお願いじゃなきゃ、お前なんか絶対に買わなかったのに……」

彼女がこの剣を買ったのは、妹分である少女からの手紙にそう書いてあったからだ。
なんでも友達が欲しくてサモン・サーヴァントをやったら、傷だらけの少年が出てきたらしい。自称ガンダールヴだそうで、斧だけで村にやってきた盗賊の群れを叩きのめしたと。
テファの属性からすればそこまで不思議ではないが、それだけではなく未来から来たとも自称しているようだ。伝説の使い魔はファンタジーのオンパレードだね、まったく。

色々と知っている素振りをしているようだが、フーケとしてはまともに信じていなかった。大方、寂しい少女の気を引こうとしているのだろう。テファに手を出したら承知しないよ!
王都の武器屋の情報なんて一度行けばすぐに分かる。もっと細かいことが書いてあれば信じたかもしれないが、そもそも手紙では安全のために具体的な地名や名前も書けないので、やり取りできる情報に制限がありすぎた。
とにかくその少年は、いろいろな意味で危険だという事は間違いない。さっさとこの仕事を済ませ、そのガンダールヴとやらが発情する前に村へ戻らなければ。テファがいろいろな意味で心配だ。
そのためにさっさと仕事を済ませたいのだが、そこでまた話がループする訳だった。
372虚無の闇:2008/12/05(金) 13:22:59 ID:qC3WITjl

「あー! もう! どうすりゃいいんだい……」

「プライドなんて、いいじゃねーかよ。捕まる訳には、いかないんだろ?」

デルフリンガーは鍔をがちゃがちゃと鳴らした。ロングビルは椅子に背中を預け、ぼんやりと天井を見つめる。
悔しいがその通りだ。ここの稼ぎは決して悪くないし、あのオスマンのセクハラとて遊びの領域を出ていない。家名をなくしたメイジが働くには、最上の部類に入る職場だった。
最低限の食事をするために苦痛で泣き叫びながら体を売る少女など、ちょいと巷を探せばごまんと見つかるだろう。貴族の中でも最低の部類に入る奴ならば、平民を売り買いする事に何の抵抗も抱かない。
魔法は使えるとはいえ平民でしか無い自分を秘書にまで取り立ててくれるオスマンは、排他的なトリスティンでは極めて珍しいと言える。ただ単にセクハラで目が眩んだだけかもしれないけれども。
今の給料は仕送りを続けるには少々心もとない金額ではあるが、ラインと偽っているからこそ不足なのだ。トライアングルだと自白すればどうにかなるはずだった。
一時期はそれこそ泥水をすするような思いだってした。ここの安定した生活も悪くない。

しかし、だ。
だからといって、セクハラを許すとなると、全くの別問題。
フーケは激怒した。必ず、かの好色暴虐のジジイを除かなければならぬと決意した。てなもんである。

休暇を取れるのならそれがベストなのだが、入学式やフリッグの舞踏会などの行事が重なるこの季節。移動だけで1週間近くかかるというのに、そんな長期休暇が早々取れるものではない。
ガンダールヴとかいうのが虚にしろ実にしろ、テファの役に立つなら残しておくのは悪い話ではなかった。最近はアルビオンも革命とやらで物騒になっていると言う。そういう意味でもここで働き続ける事は不可能だ。
落ち着ける場所を探し、どこかを安住の地として認められるまで旅が続くだろう。先立つ物としても破壊の魔道書は絶対に必要だった。

「ゴーレムにも何か武器があればねえ……。例えばハンマーとかで、こう……」

自分のゴーレムに見合うサイズの武器があれば、それこそ巨大なハンマーでもあれば仕事はスムーズだろう。もっともそれを作ろうとしたら今月は終わってしまうし、隠しておけるスペースも無い。
舌打ちしながら天井から顔を戻したロングビルは、未だ床の上に転がっているデルフリンガーに目を向けた。ちょっとした思いつきがあり、布で汚れを払い、歪みなどが無いかと入念にチェックする。
あれほど酷く扱ったのに、錆びているはずの刀身には刃毀れこぼれ一つ無い。鉄製のゴーレムで叩き折ろうとしても、ヒビはおろか曲がりさえしない頑丈さ。その力をゴーレムが振るえば、もしかすると……。

「あ、あれ? お姉さんってば、もしかして、酷い事考えてる?! 俺、まだ遣り残した事が……ちょまっ!」

「……安心しな。ちゃんと、武器として使ってやるさ……」

人権が発展途上であるハルキゲニアにおいて剣の権利など守られるはずもなく、哀願の言葉すら聞き届けられずに鞘へと押し込められた。






森の中にぽつんと立っている小屋で、巨大な竜と小さな女の子が話し合っていた。
少女は何故か体中に変なお札を貼り付け、手には塩がたっぷりと詰め込まれたビンを抱えている。
373虚無の闇:2008/12/05(金) 13:24:58 ID:qC3WITjl

「お姉さま、アレは凄いのね! 森を一面を凍らせちゃうなんて、人間にはぜーったい無理なのね! きっと凄い精霊なの!」

「……ぜったい、間違い、ない?」

「もちろん! このシルフィードのことを信じなさい! 少なくとも、幽霊なんかには無理なのね! きゅいきゅい」

本日は授業のある平日で、欠席は多いが不良というわけではない彼女がここにいる理由、それはルイズが怖いからだ。
切欠は一昨日のこと、タバサは言い渡された無茶な任務に備え『ハルケギニアの多種多様な吸血鬼について』という本を読んでいた。
情報を漏らさず吸収するためにじっくりと読み勧めた結果、夜更かしになってしい、タバサは手早く寝る為の準備を進める。
吸血鬼の討伐方法を考えながら目を閉じたが、書物に記載されていた無数の被害と嫌な未来がちらついてしまい、中々寝られない。
そこで気晴らしにと使い魔の様子を見るべく視界を同調させた結果、見えたのはルイズが頭から大木に突っ込むというショッキングなシーンだった。タバサが飛び起きたのは言うまでも無い。
木の揺れ具合から見ても即死なのは明らかで、タバサは親友の友達が死んだ事に心を痛めた。

ここまでなら嫌な物を見た、だけで済んだのだが……。
心を落ち着かせようと窓の外を覗いたタバサは、足の無いルイズが彼女の部屋に戻っていくのを、この目でバッチリと見てしまったのだ。
光の中に浮かぶ真っ白な体には、足がどこにも存在しておらず……。それはつまり、タバサが最も恐れるアレにそっくり。
タバサは漏らした。そりゃもう耐え切れず、滝のように容赦なく漏らした。そしてその後に気絶した。

黒いニーソックスのために足が夜の闇にまぎれて見えなかっただけなのだが、タバサの中でルイズは吸血鬼の100倍は恐ろしい存在、幽霊と認定された。
翌朝、「大丈夫あれは見間違いだからもうルイズはいない居る訳無い大丈夫大丈夫大丈夫」と念仏のごとく唱え続けながら朝食に向かったタバサは、そこにルイズがいるのに気付いて亜高速の世界に突入した。
あの瞬間のタバサは、まず間違いなくハルキゲニアで最も早い存在だった。そりゃもう風韻竜の群れが尻尾巻いて逃げるほど早かった。千の風になった。

お昼まで布団に頭を突っ込んで震え続け、途中でうっかり眠ってしまった時など、夢の中で10人のルイズに追い掛け回されもした。
寮に悲鳴を響かせながら飛び起き、喉が裂けるぐらい叫んだ。朝食に向かう前にトイレに行ってあり、タンクが空っぽだったのは不幸中の幸いだろう。
もはや逃げ場はどこにも無いと覚醒したタバサは「こんな危険な所にいられるか! 私はシルフィードに会ってたしかめる!」と死亡フラグを撒き散らしながら決意。
こんな時のために用意しておいたゴーストバスターズグッツを手に、シルフィードの小屋までやってきた訳である。もちろん道中はフライで全速力だ。

「……彼女に会って、確認して」

「わかったのね! わたしに任せなさいなの! きゅいきゅい!」

本来なら危なっかしいシルフィードに頼むだなんて危険行為はしないが、相手が幽霊の可能性があるなら別だった。
自分から会いに行くという選択肢は砂一粒ほどもなく、手紙を書いた所で渡したくない。ルイズが居る場所=心霊スポットとなる訳で、部屋に近づく事さえ断固拒否する。
なんというか呪われそうではないか。彼女の事をゼロと呼んだ事はなくとも、もし下手に刺激したらこちらが恨まれるかもしれない。幽霊に取り付かれる生活なんて嫌だった。
そしてタバサには、一刻も早く彼女が幽霊か否かを知る必要があった。知らねば命の危機が迫る事になる。

「……お腹減った」

「シルフィードもなのね! お使いが終わったら、お肉! いっぱいお肉食べたいのね!」

いっぱいのお肉と言われて、タバサの口の中に唾が湧き出した。彼女としてはステーキよりハシバミ草派なのだが、今はどちらでも構わないほど空腹だった。
逃げ出したせいで朝食はもちろん食べ逃してしまったし、昼食の時間もいましがた終わったばかりだ。遅れたのは寝過したためだが、ルイズが居るなら食べになど行けない。
幽霊が食事をとるのかは分からないが、ゾンビに幽霊がくっついているとも考えられる。油断はできなかった。敵は強大なのだ。

「行ってくるのね! るーるる」
374虚無の闇:2008/12/05(金) 13:26:56 ID:qC3WITjl

空へと飛び立ったシルフィードを見送りつつ、タバサは抱えていた瓶へと視線を送った。
やめろ、やめるんだ。そんな事をして何になる。分かってはいたものの、押し寄せる空腹には耐えられず指先に塩を付けてぺろりと舐める。しょっぱい。そして猛烈にひもじい。

タバサは見た目に反してかなりの大食いの部類に入る。王都まで食べに行けば暫くはどうにかなるが、食事のたびにシルフィードを走らせては目立ちすぎた。
王都までは馬で片道3時間、シルフィードを走らせても1時間ほどは見なければならない。1日3回の食事をすべてトリスタニアで済ませる気なら、1日の4分の1は移動時間になってしまう。
学院に通いながらそんな事をするのは絶対に不可能であり、とにかく早いうちにルイズとの対決を済ませなければ餓死してしまうとタバサは考えていた。いざとなればこのお祓い道具が役に立つはずだとも。

笑ってはいけない。本人は物凄く真剣だし、お札だって書物を見ながら移したお手製の物、真剣も真剣、俗にいうガチである。

キューっという可愛らしい音がタバサのお腹から響き、空高くにいるシルフィードの後ろ姿が大きいお肉の塊に見えた。
だからタバサが、シルフィードに喋るなと注意し忘れていたのは仕方がなかったのだ。腹が減っては戦は出来ぬ、栄養が来なければ頭だって回らない。





クックベリーパイをたらふく食べて幸せ気分だったルイズは、おざなりに杖を振りながら空を飛んでいた。
空を飛ぶのもだいぶ上手くなった。魔力容量の大きさと体の頑丈さを生かして無茶に速度を上げるのをやめ、少しずつ制御できる範囲を増やす事にしてからは、地味ながら確実に成果が上がっている。
既にそこらの幻獣には遅れを取らないだろう。常軌を逸しているとしか思えない急制動からなる敏捷さにおいては、贔屓目に見ても風竜でさえ凌ぐと思われた。
内臓がシャッフルされるほどの反動を完全に無視して動ける。空をナイフで切り裂くように抉る軌道は、人間なら数秒で気絶するだろう。
その他の呪文についても確実に使いこなし始めていた。殺し合いになった場合でも、この学院にいる生徒相手ならば1クラスまとめて相手にできる。何しろルイズはマホカンタを、魔法を跳ね返す魔法を使うことができるのだから。

今のルイズにとって怖いのは平民の傭兵だ。死角から発射される銃や弓は、命中すれば恐るべき威力を持っている。
ゼロだった頃から比べれば無敵とさえ思えるほどの力を手に入れたが、自分を過剰評価する事は禁物だと考えていた。ゾーマさえも人間を相手に滅びた、物事に絶対はない。
土メイジのゴーレムも驚異的な相手だろう。小さくて数のいる相手ならば得意分野ではあるが、高い防御力を持つ1つの強大な敵を相手にした場合、今の呪文では心もとなかった。
呪文のバリエーションが足りないし、練習も足りない。時間ももっと欲しい。しかし今一番不足しているものと言えば、力を存分に振るえる敵、そして実戦経験だろう。
王都でスリやチンピラでも狩ろうかと頭を悩ませていると、後方から耳慣れない声が飛んできた。

「やっと見つけたのね! お姉さまが呼んでるの! そしてお肉なの!」

緩やかに減速して振り返ってみれば、そこにいたのは巨大な竜の幼生である。頭をぶつけたせいで耳がおかしくなったのかと思ったが、無視するななどと喚き散らされるにあたり、なるほど韻竜なのだと納得した。
しかし風韻竜でも頭の方はいまいちのようで、呼び止めた理由を説明するでもなくお姉さまやらお肉やらと言い続けている。

「……で?」

痺れを切らしたルイズは片眉を吊り上げて問うた。声には若干の殺気が混じっている。
それに対しシルフィードが述べたのは、幽霊ならお姉さまを許してやってくれだとか、美味しくないから呪っちゃだめだとか、正直意味不明な内容だった。どうにも要領を得ない。

「死んだ覚えは無いわ。ちゃんと足はあるわよ……。タバサの使い魔よね?」

「そうなの! お姉さまなの!」

「で、彼女に会えばいいの?」

「う……わ、忘れたの……。で、でも、確かそんな感じだったのね! ついてくるの! きゅいきゅい」
375名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 13:28:47 ID:s5S6sszo
タバサ可愛い支援
376虚無の闇:2008/12/05(金) 13:29:46 ID:qC3WITjl

そう言うなりシルフィードは体を反転させ、かなりの速度で主人の下へと引き返し始めた。一瞬躊躇したルイズだが、気を取り直してすぐに後を追う。
タバサの意図がよく分からなかった。使い魔が風韻竜であるということを明かした意味は何だろう?
こちらに興味を持ってくれた結果なのかもしれない。あの竜が自分を背中に乗せないのは、単なる嫌がらせやド忘れではなく、この程度で置いて行かれるメイジならば必要ないという意思表示か。
表情を硬化させ、さらに深く仮面を被り直すルイズとは対照的に、シルフィードは山盛りのお肉へと思いを馳せていた。






「……幽霊じゃ、ない?」

「だからね、何でそう思ったのかは知らないけれど、違うってば」

木の陰に隠れて顔だけ覗かせるタバサを、ルイズは多分に呆れを滲ませながら見つめている。
どう見ても顔色が悪く、まだルイズの一挙一動に気を取られているようで、視線はかなり泳いでいた。私のカリスマはどこに行ったのかしら? ルイズは内心で頭を抱えた。
どうやら魔法の実力などと同じく、一朝一夕で身に着けられる物ではないらしい。それに今は人間であることに固執していて、そのためにルイズの部分が色濃く影響を与えている。
魔物に染まってしまいたいのに、貴族を否定すればするほどしがみ付きたくなってしまう。押し込められた残虐性を引き出すには理由が必要だった。

「あなたに、聞きたい事がある」

ようやくルイズの前に出てきたタバサへ、ルイズは軽く微笑みを向ける。タバサは相変わらず無表情だったが、少なくとも無意味に怯えているような素振りは見せなくなった。
お互いに内心を探り合う無言の戦いがしばらく続いた。雰囲気を察したのかシルフィードも大人しくしており、沈黙が耳に痛いほどの重苦しい空気だ。
タバサはいつも通りの無表情を通しているが、その眼には警戒色が色濃く浮かんでおり、人間に化けた吸血鬼を見定めようとするような剣呑さがある。
しかしルイズの能面のような微笑みからは何も得られなかったようで、やがて意を決したように切り出した。

「あなたの魔法は、なに?」

「……その問いに答えるには、信頼が足りないわね」

短く、それでいて核心に触れる言葉。ルイズは笑顔を保ったまま、答える気は無いという返答を返す。
握りこんだ左手の中に氷の弾を作り出し、いつでも心臓へ向けて発射できる体制を整える。薄い胸板を貫通するには十分な威力をもっていた。
タバサの右手に込められた力が増す。下手をすれば殺し合いになると分かっているので、お互いに迂闊な行動はとれない。

「わかった。でも、秘密にして欲しい」

だが予想に反しタバサは、いや、シャルロット・エレーヌ・オルレアンは語り始めた。
自分がガリアの王族である事、謀殺された王弟オルレアン公の娘である事、服務中の死を目的として危険な任務を強制されていること。
次の任務は最悪の妖魔と名高い吸血鬼の討伐であり、成功したとしても無事に帰還できる可能性は低く、助力を必要としている。
そして唇をかみしめながら、絶対に達成しなければならない目的があることも告げた。それまでは何が起ころうと死ぬ訳には行かず、何をしても生き残ると言い切った。
タバサの冷たい瞳は同時に灼熱となって燃え上がり、人形のような彼女の中で荒れ狂う感情の一端がうかがえた。ルイズは仮面ではない笑みを浮かべる。
急にルイズに接近した理由については、目的のためにはエルフと戦闘になる可能性が高く、杖を持たずにフライを使ったルイズに興味を持ったから、だそうだ。
杖を忘れるなんて、果たしてどれほど焦っていたのか。迂闊にも程がある行動だったが、タバサの注意を引けたという意味では悪くなかった。

「協力してほしい」

「……いいわよ、でも条件がある」
377虚無の闇:2008/12/05(金) 13:32:01 ID:qC3WITjl

どんな無理難題を想像したのか、表情を硬化させたタバサを見てルイズは笑った。ある意味では彼女の想像より遥かに危険だろうが、もしかしたらそうではないかもしれない。
タバサの顔に浮かぶ警戒の色がさらに濃くなり、人間ならば一瞬で屠れる程のスペルが準備されていると知りながら、ルイズは穏やかに目を閉じた。
そして思う。やはりタバサを選んでよかった、彼女こそ自分にふさわしい友達だと。

吸血鬼とはいえ、見た目は人間と何も変わらない。さらに言えば盗賊の処理などを任務として命じられた事もあるだろうから、タバサは立派な殺戮者という訳だった。
ただ命じられたというだけで人間を人間が殺す。獣ですら滅多に犯さない禁忌を、人間はこうも容易くやってのける。なんと素晴らしい。
人間は慣れる生き物だ。犯罪者を殺すのに慣れれば、罪なき人間を殺す事さえも慣れる。やがて殺人は日常の光景になるか、ねじくれた精神のもとで遊びへと昇華するか。

「友達になって欲しいの。貴方が私の傍に居てくれる限り、協力は惜しまないわ」

ルイズが求めたのは、共に夜を歩いてくれる存在だった。孤独を癒し温もりを与え、やがてそれらを必要としなくなるまで、傍にいてくれる人物を。
不安定な魂は、闇に落ちるか光に目覚めるか分からない。だからどちらに成り果てても、離れていかない人が欲しかった。逃げようとしたならば引きずり込んでやる。
闇に染まり血に染まり、外道の道を突き進んだその先、もう二度と戻れない場所まで歩いていこうではないか。

タバサは不審そうな表情を浮かべていたが、それでも差し出されたルイズの右腕とり、短いながらも握手を交わした。

「……よろしく」

「よろしく、シャルロット」

こうしてルイズは友達を得た。果たして友と呼んでいいのかは定かではないが、それでも手に入れた。





タバサは差し出されたルイズの右手にいやな予感を感じながらも、受ける以外の選択肢がなかった。
すでに情報を与えてしまっている、実力行使が通る相手だとも思えない。ルイズの笑みはあのジョゼフのように、鼻を刺すような腐敗臭を感じた。
選択を間違えたかという後悔が首をもたげる。だがルイズを味方にできれば、目的に大きく近づけることは間違いなかった。杖を使わない魔法、つまり先住魔法を使えるのだから。
いままでずっと探し続けていた、一筋の光明が見えたのだ。それにたどり着く道がどれほど危険であろうと、みすみす見逃すという選択肢はなかった。絶対に母を取り戻してみせる。
親友であるキュルケに相談する訳にはいかない。親友だからこそ、こんな危険なことに巻き込みたくない。タバサは人形という殻の下で湧き上がる感情を抑え、ただそうであるように努める。

「私はタバサ」

シャルロットと呼ばれる事を許せるのは、母を取り戻してから。相変わらず底の見えないルイズの笑みを不気味に思い、自らの不甲斐なさに少しだけ怒りを感じながら言った。
まだルイズに母のことを話すのは早すぎるが、そういう意味でもこの任務はいい機会だろう。シルフィードをもってもしても驚異的と言える戦闘力があるようだし、吸血鬼に後れを取るとも考えにくい。
会話をつづけている間だけでも、ルイズは敵を求めているような口ぶりを匂わせているから、今後も協力してくれる可能性が高かった。任務において非常に有益な協力者になるはずだ。
ルイズは傍に置いておかなければならない。引き留めなければならない。そうしなければ、目的は達成できない。タバサの中に様々な事柄が刻まれる。
それは本心からタバサが思った事かもしれなかったし、そうではないかもしれなかった。それでもルイズに対する比重は大きくなる。

「それと、私の魔法は……。あの使い魔の力を借りているの」
378虚無の闇:2008/12/05(金) 13:32:52 ID:qC3WITjl

タバサの脳裏に使い魔召喚の儀式で見た、あのおぞましく邪悪な、しかし絶大な力を持った者が浮かんだ。たしかにアレからすれば、吸血鬼など赤子と大差ないだろう。
期待が大きくなる。ルイズを天上から降りてきた蜘蛛の糸であるかのように錯覚し、かつて夢見たイーヴァルディの勇者を幻視した。
ずっとずっと探していたのだ。楽しく平和だったあの頃に戻る方法を。もし戻れるのならば、悪魔にだって魂を売るだろう。
母を取り戻したい。タバサという人形を抱き、娘であるシャルロットを拒絶する彼女の姿を見る度に、千の針で突き刺されたように胸が苦しくなった。心には絶望と怒りが満ちた。
だというのに今まで自分に出来た事と言えば、ただ命令されるままに足掻き、這いずるだけ。日に日にやせ細り顔色を悪くする母の姿を見て、どれほど泣いただろうか。
復讐に走ろうにもジョゼフの警固は完璧で、エルフによって作られた薬は手掛かりさえも掴めず、永遠に輪の上を走り続けるような地獄だった。
深い深い闇の中で、ついに見つけたのだ。この連鎖を破壊し、あの頃に戻れるかもしれない方法を。

「協力は惜しまないわ。だから、ずっと友達でいてね?」

相変わらずの笑顔だったが、なぜか今度は聖母のように柔和な微笑みだとタバサは思った。



珍しく大人しいシルフィードも、なんというか、悪くない人物だと考えていた。お姉様には友達があまりいないし、こんな強いのが味方になってくれるなら嬉しい。
吸血鬼盗伐が次の任務だと聞いた時は絶望した。せっかく素敵な名前を付けてくれたし、不便は色々とあっても楽しい生活が終わってしまうのかと、悲しかった。
ルイズは最初はものすごく嫌なヤツだと思っていたけれど、こうして会ってみると人は見かけによらないものだ。あの意地悪で厭味ったらしい従姉姫と比べたら、腐ったお肉と新鮮なお肉ほども違う。
今までもいろいろと危険な任務とやらに送られ、そのたびにお姉様が怪我をしたりと気が気でなかったけれど、この桃色がいてくれるなら安心。この後はおなかいっぱいのお肉だし、まったくもって一安心だ。

「出発は明日。日の出前に、シルフィードを学院の裏手に待機させておく」

きゅいきゅいと歌いだしそうなシルフィードおいて、話し合いは大詰めになっていた。


まずはガリアの首都リュティスまでシルフィードで向かい、タバサは王宮で正式に任務を受け取った後、宿で待機しているルイズと共に朝食をとる。
その後は目的地であるサビエラ村まで一直線に進み、報告があった村で吸血鬼を発見、退治する。

言葉でいえば極めて簡単なことだが、実際は困難を極めた。
吸血鬼の外見は全く人間と変わらず、その気になれば牙さえも自由自在に隠せる上に、ディテクト・マジックすらもすり抜けてしまう。
先に贈られたガリアの聖騎士があっけなく殺された事も合わせれば、敵はかなりマンハントに慣れていると推測できる。
イザベラはこういった情報だけを先に手紙で通告し、正式な依頼を遅らせることで恐怖を煽ろうとしたようだが、その思惑は完全に裏目に出た。
彼女としてもルイズのような化け物が、まさか魔法学院に在籍しているとは夢にも思わなかっただろうから、仕方がないと言えば仕方がない。

話し合いを終えて別れる際、ルイズが杖も持たずに空を飛んだのを目にし、タバサの確信はさらに強くなった。
379虚無の闇:2008/12/05(金) 13:35:28 ID:qC3WITjl
以上で終了になります

次回はサビエラ村編。でもそろそろ話のストックが尽きる危機に……
380名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 13:38:32 ID:G2W5wFB+
ゼロのしもべが長らく更新されてませんが、OVAのジャイアントロボからロボ召喚ってのはナシでしょうか。
もちろん、ガンダールヴはルイズ自身で。
↓こんな感じ

ナレーション:異世界ハルケギニア、人類は始祖ブリミルのもたらした魔法によって6000年の繁栄を謳歌していた。
だがその輝かしい平和の陰で激しくぶつかり合う二つの力があった。
聖地奪還を策謀する秘密結社レコンキスタ

レコンキスタ:われらの聖ブリミルのために!


ナレーション:かたや、彼らに対抗すべく、世界各国より集められた正義のエキスパートたち、ゼロ機関。
そしてその中に史上最強のゴーレム、ジャイアントロボを操縦する一人の少女の姿があった。名を「草間大作」


ルイズ:砕きなさい、ジャイアントロボ
ロボ:ガォ




まあ、「半ズボン姿のルイズがある意味絵になりそう」という思いつきからきたものですが。
背も低い上貧乳なので少年と見分けがつかな………
(エオルー・スーヌ・フィル・ヤルンサクサ……)あれ、どこからか呪文が聞こえ………
381名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 13:44:43 ID:G2W5wFB+
すまん
>>380だが、名前の所を間違えた。
「草間大作」→「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」
382名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 13:46:28 ID:JB0Q03US
クイーンズブレイドで何か書こうと思ったが小説読んでねえ
ゲームブックと南崎いく版の漫画は持ってるけど

トモエとニクスが比較的まともな格好とキャラだが…エキドナとかエロ過ぎて駄目だろ
383名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 13:52:01 ID:uWJJ3a93
皆々様乙ー。
アサギと聞いて退魔戦忍という単語が思いついた俺はおっきおっき
384名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 14:00:17 ID:QmEmlOyt
闇の人乙でしたー。
タバサが皮輪良くて仕方がないよタバサ。でもちょっと誤字脱字が多く感じられたんだぜ。
ゆっくりと楽しみに待つからのんびりチェックしてくれても何の問題も無いんだぜ?

>>382
ニクスは一見まともな格好だけどたしか履いてなかったはず…。
あれはフィギュアだけの設定だったのかな…?どのみち杖がエロインテリジェンスアイテムだからやばいといえばやばいけど。
あと、小説版と南崎いく版はかなりストーリーや細かい設定が違うので要注意。
一番無難なのはやっぱりトモエ。性格は良いし能力的には魔法剣士だしで。
385名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 14:01:23 ID:Q/MR0JLD
このタバサ可愛いなwwwwwまさに俺の嫁
虐殺要因であるエルザがどうなるのかwktkがとまらん



たとえ興味の無いSSだって
投下直後にネタふりは失礼だぜ……?
386名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 14:03:04 ID:q9BHuDv/
草間田・遺作召喚?
兄弟に草間田・臭作や草間田・鬼作がいるとか。



うん、ただの妄想だね。
387名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 14:19:00 ID:qC3WITjl
>>384
なんと……。何度も読み直してるはずなんだけどなあ
確認してきます
388名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 14:39:29 ID:iZHbAoqJ
田山花袋の「少女病」から、ラストで電車に轢かれて死亡した後の
視姦魔の主人公(30過ぎのおっちゃん、妻子持ち)が召喚ってのはどうじゃろか?
魔法学院は可愛い女子が多いし、しかも主人はとびきりの美少女とあっては
本人の嗜好からしてウハウハ状態で大喜びしそうな気がw
でもって彼の視点で魔法学院の女子に対する粘っこい観察描写が延々と続くみたいな。
389名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 14:48:47 ID:JB0Q03US
>384
ゲームブックを見るとローライズを履いてるぜ。どっちみちエロいが。
召喚するならトモエかぁ。ニクスのああ見えて小市民なところが好きなんだけど。

しかしトモエはギーシュ戦で不自然なほど派手に巫女服が破れそうだな。
で、白い褌が露わに…
390名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 14:57:51 ID:Mifd8DiP
闇の人面白がったです。
シルフィードからするとルイズはなんなんですかね。
一応モンスターに分類されそうだしヒエーとなっちゃうのだろうか。
でも竜種だから違うのかな、ドラクエ的に考えて。
次回も期待してんぜ、オッスオッス。
391名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 15:04:01 ID:vaxdqMVx
ニクスは今は魔術師やってぶいぶい言わせてるけど元々は平民の最下層出身者
貴族は嫌いだけど逆らうだけの勇気がないというのが結構リアルだよな
そして粗末な材料で美味しい料理が作れ、服を自作できるほど裁縫も得意
外見と特技と性格のギャップがすげえ
392名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 15:09:17 ID:eu0njEuF
うーむ、社長では救われ、ジルには下僕にされ、扱いの差が激しいキャラだよなエルザって。
いまやギーシュ、フーケ、ワルドに並んで噛ませ犬4天王と言えるんじゃないか。
393名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 15:12:59 ID:idyypP9h
虚無の闇の人、乙でした。
ルイズには邪悪なキャラが似合う。そう思ってしまうなあ。
394名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 15:17:47 ID:heWOqLlS
阿部さんのアナルの中に召喚ゲートが!

というわけで道下くんがホイホイ召喚されました
395名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 15:19:04 ID:5XU94o++
>>392
「イザベラ管理人」のエルザはかなり扱いいいな。
396名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 15:20:43 ID:tKL1Pl0Y
未来から来たってのがスレ違い的な意味合いじゃないことを祈るわ・・・
397名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 15:27:33 ID:6ahVd71D
>>392
ジョジョスレでは主人公(ホルホース)の相方になってたりもする<エルザ
398名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 15:29:46 ID:CT/yKc0L
>>396
何言ってんだお前?
もうルイズは使い魔召喚してるだろ。
399名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 15:32:15 ID:5XU94o++
野生のエルザ
400名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 15:32:52 ID:THooOOFP
未来というと
「あの作品」がゼロ魔でルイズが聖女ルイズを召喚とかか
401名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 15:41:49 ID:rIFcm5T0
もう「ゼロの使い魔」からサイト召喚でいいよ
402名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 15:47:47 ID:5XU94o++
>>401
なんて斬新なww
403名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 16:16:40 ID:WheA/brD
9巻くらいのサイトを召喚するとな
どうなるんだろう
404名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 16:23:04 ID:6ahVd71D
ギーシュがひどい有様になる
405名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 16:23:47 ID:L58w+ZMU
>>403
逆行物か
いくつか見かけた気がするな
406名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 16:33:07 ID:XfuH0mNu
まだしばらくかかるでしょうけどゼロ魔が完結したら、その後のサイトを召喚とか出てくるんでしょうね。
407名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 16:41:48 ID:iZHbAoqJ
>>401
ノボル先生お疲れさまッス
408名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 17:23:40 ID:82vgharR
アニメ版サイト召喚とか漫画版サイト召喚とか
409名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 17:31:01 ID:3/rm2M1q
>>406
もうある
410名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 17:39:40 ID:LFef/FXQ
>>406
どこぞのサイトに逆行最強サイト召喚があったな。
411名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 17:46:58 ID:5XU94o++
>>410
それは強そうなサイトだなww 荒らしも業者書き込みも一蹴する強さ。
412名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 17:50:18 ID:uWJJ3a93
読者も一蹴しそうだなw
413名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 17:51:20 ID:ZGt4vvZU
ゼロの使い魔 二回目
だっけ? 俺は嫌いじゃないな、あれ
414名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 17:51:22 ID:B3H8nYrc
孤独なサイトか
415名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 17:57:12 ID:LFef/FXQ
>>413
俺も嫌いじゃないな。ただどっちかっつーと、もう一人の逆行者のほうが好きで読んでるが。
これ以上はスレ違いかな?
416名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 17:59:04 ID:tr0JiULW
とっくの昔からスレ違いでござる の巻き
417名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 18:04:14 ID:TqcNZaHd
>>415
良かったら、二回目じゃない方のタイトルを教えてくれ
418名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 18:12:24 ID:PHp3hMT4
逆行サイトとかで黒百合のラーメン屋を思い出した俺は重力砲好き
419名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 18:12:41 ID:LFef/FXQ
>>417
スマン、誤解させたか。
俺が言ってるのも「ゼロの使い魔 二回目」だよ。アレには逆行者が複数いるし。
あと、スレ違いなんでここで終わらさせてくれ。
420名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 18:24:09 ID:XLdqfeik
ノボルを召喚
紙とペンでゼロ魔キャラ全ての運命を司る
421名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 18:28:05 ID:wnWDb/9E
「『これ以上はスレ違い』…ってよォ〜〜。『スレ違い』ってのはわかる…。
スゲーよくわかる。別のサイトの事を話しとるからな…。だが『これ以上』って部分はどういう事だああ〜〜っ!?
さんざんスレ違いな話した後に、『これ以上はスレ違い』って書けば許されるのかっつーのよーーーッ!
ナメやがってこの言葉ァ超イラつくぜぇ〜〜ッ!!皆が皆、好き勝手絶頂に話したらスレが崩壊しちまうじゃあねーか!
やれるもんならやってみやがれってんだ!
チクショーッ。どういう事だ!どういう事だよッ!クソッ!縞パンってどういう事だッ!ナメやがって、クソッ!クソッ!
422名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 18:29:00 ID:bCMW4W71
>>421
あんたもジョジョスレに帰れw
423名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 18:30:43 ID:1BAusy5d
>>421
早くサブ・ゼロの使い魔を進めて下さい
424名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 18:33:50 ID:S6yxl5eC
予約ないようでしたら投下いいでしょうか?
ゲームからの召喚なのですが。
『GUNGRAVE O.D.』より
ビヨンド・ザ・グレイヴを召喚です。
425名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 18:35:58 ID:5VwbMUgf
支援〜、投下どうぞ〜
426名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 18:36:47 ID:S6yxl5eC
それでは5分後より投下させていただきます。
427死人の使い魔 ◆I9NRoyNg4k :2008/12/05(金) 18:42:05 ID:S6yxl5eC
死人の使い魔
第一話

 ルイズにとって今日は待ちに待ったサモン・サーヴァントの日だった。
不名誉な二つ名であるゼロを返上できるかもしれないのだ。
素晴らしい使い魔さえ召喚できれば。しかし彼女の希望はあっけなく潰えた。
何度かの『サモン・サーヴァント』のあとついに彼女が召喚したのは、
大きな、非常に大きな箱だった。箱というには少しおかしな形だったが。
箱というよりは変わった小屋といったほうがいいかもしれない。
特徴としては直方体のような形で、材質は金属だろう。
一部ガラス張りになっている前部分と全面金属で覆われている
非常に長い後ろ部分とで構成されている。
そしてタイヤがいくつかついている。
トレーラーと呼ばれるものだったがルイズには知るよしもなかった。
「ミスタ・コルベール」
彼も驚いているようだった。声に反応がない。
もう一度強く呼びかけるとやっとルイズの方を向いた。
「もう一回召喚させてください」
『サモン・サーヴァント』は生物を呼び出す魔法だ。
決してこんなものを呼び出すものではない。
願いはあえなく却下されたが、希望になることも言ってくれた。
これは檻ではないかと。
言われてみればそうかもしれない。
それならば中には高位の幻獣がいるかもしれない、
いやいるに違いない。
その横でコルベールが魔力の反応は無いようだと呟いていた。
まずは前部分をのぞく。ガラス張りになっているため、のぞきやすい。
中には何もいない。
今度は後ろ部分の開け口を探す。
どうやら真後ろが開け口のようだ。取っ手がみつかった。
乱暴に取っ手を引くがなかなか開かない。
突然コルベールに止められる。
考えもしなかったが中には凶暴な獣がいるかもしれない。
金属製の檻で閉じ込める程の。
コルベールが先頭に立ってくれ、杖を構える。
扉が開く。
中から何かが飛び出してくる、というようなことはなかった。
冷たい空気が開いた扉から流れてくる。
おそるおそる中をのぞきこむルイズとコルベール。
中は結構広く生物の気配はない。
奥に視線を向けると上の方から太いパイプが伸びているのが見えた。
ふとそれを目でたどっていく。
イスの背もたれにつながっているようだった。
そしてあることに気づき、息を飲む。
イスに人が座っているのだ。
その人物は黒い服を着ておりまったく動かない。
まるで眠っている、いや死んでいるかのようにみえた。
428死人の使い魔 ◆I9NRoyNg4k :2008/12/05(金) 18:43:37 ID:S6yxl5eC
 コルベールはこれのつくりに驚いていた。
外側も異質だが中はさらに異質だった。
そして何よりこれらを作るのに魔法を使っている
痕跡が一切感じられない。
いったいどのようにして作られたのか。
ルイズは奥に座っている人に声をかけてみたが反応はない。
少しイライラし中に入っていく。
ゆっくりと奥のほうへ歩き出す。
イスの前に立ち再び呼びかける。
突然明かりがついた。
恐くなりそこから飛び出す。
コルベールも警戒している。
しかし何かが起きるわけでなく、機械の音が響く。
しばらくたち機械の完了音とともにイスのパイプがはずれる。
イスに座っている男が目を開ける。
同時にトレーラーの中に備えつけられていたモニターから
声が流れはじめた。
それは浅葱ミカからビヨンド・ザ・グレイヴへの別れの言葉。
天寿を全うしグレイヴを残していく彼女からの最後の挨拶だった。
グレイヴ以外にはその言葉は理解できなかったが、
ルイズもコルベールも黙って聞いていた。
驚きのあまり声も出ないのかもしれなかった。
モニターからの声の終わりとともにルイズが口を開いた。
あんたは誰?これは何なの?さっきの声は?
疑問はつきない。しかし男は無言だった。
「もう一回召喚させてください」
再びこの台詞を言う。いろいろ気になることはあるが
彼はきっと平民だろう。平民の使い魔など考えられない。
しかし先ほどと同じ言葉で却下される。
「でも平民を使い魔にするなんて」
伝統とルールそして彼はただの平民ではないかもという言葉、
そして進級がかかっているという現実にルイズは折れた。
へんてこな箱の中にいたし、もしかしたらすごい力があるかも
という淡い希望も抱いていた。
「感謝しなさいよ、貴族にこんなことされるなんて」
そう言い『コントラクト・サーヴァント』の呪文を唱え
イスに座ったままの彼と唇を重ねる。
そして彼の左手に『使い魔のルーン』が刻まれる。
相変わらず彼に変化はないように見えた。
429死人の使い魔 ◆I9NRoyNg4k :2008/12/05(金) 18:45:04 ID:S6yxl5eC
 コルベールはまず生徒を帰らせた。
授業は全員使い魔を呼んだので終了である。
ただ個人的興味としてさきほど召喚された平民の彼に話しかけた。
『ディテクトマジック』をし彼が平民ということはわかった。
しかし彼の入っていた箱は興味をひいた。
何か話しかけているルイズとともにコルベールも
質問をしてみるが彼は何も答えない。
喋れないのか?疑問が浮かぶがそれにしてはおかしい。
「体を調べても?」
とグレイヴに尋ねる。
少ししゅんじゅんしたように見えたが、首が縦にふられる。
調べてみて驚いた。平民とかそういうレベルではなく
彼は人間ではないのかもしれない。
それを伝えられたルイズは驚いた。
「では彼はなんなんですか?」
「わからないですがガーゴイルのような存在かも。それにしては
魔力を感じないですが」
「東方か、もしくはエルフの技術でつくられたのかも。この箱もね」
驚きグレイヴをみながら答える。
「エルフのガーゴイル……。でも彼は人間にしか見えません」
「おぞましいことだが、人間を材料に作ったのかもしれません」
聞こえているだろう言葉にグレイヴは反応しなかった。
「まあいいわあんたがガーゴイルなら平民よりは使えるかも」
内心の怯えを隠しながらルイズは言う。
「あんた歩けるの?とりあえずついてきなさい」
グレイヴは黙って立ち上がり彼女についていく。
トレーラーから降りる際グレイヴは
“ケルベロス”――二丁の巨銃――の入ったアタッシュケースと
“デス・ホーラー”――重火器を多数搭載した棺桶――を持ち出す。
「何それ、持っていくの?」
鞄のようなものはともかく髑髏の刻まれた
金属の棺桶は不気味だった。
うなずくグレイヴをみてまあややこしいことは
後回しだわ、と学院に歩き出す。
コルベールも後からついてきている。
430死人の使い魔 ◆I9NRoyNg4k :2008/12/05(金) 18:46:52 ID:S6yxl5eC
 オスマンにコルベールがルイズの召喚したトレーラーと
グレイヴについて報告している。
オスマンから質問されるもやはり無言のグレイヴ。
「あの箱を調べれば何か分かるかもしれません、
是非とも私に調べさせてください」
コルベールがオスマンに頼んでいた。
ルイズとしても異論はなかった。少しでも彼のことが分かればと。
「ところでそれは何かね?鞄と棺桶にみえるが」
「わかりません。彼があの箱から持ってきたんです」
「中を見せてくれんかね?」
グレイヴはアタッシュケースを開き中を見せる。
「何かねこれは?」
コルベールが好奇心からケルベロスの片割れを
手に取ろうとするが、グレイヴに止められた。
「そっちにも何か入っているの?」
棺桶を指差しルイズが尋ねる。
首を横に振るグレイヴ。
「マジックアイテムではないようだし大丈夫じゃろ。
ミス・ヴァリエールにも従っておるようじゃし」
「それから彼は喋れない平民ということにしておいてくれると
ありがたいんじゃが、少なくとも詳細が分かるまでは」
ルイズは心の葛藤はあったものの同意した。
人間を材料にしたガーゴイルというのが真実だとしたら、
とてもじゃないが言いふらせることではない。

「今日はいろいろあって疲れたわ。細かいことは明日にしましょう」
グレイヴと部屋に戻ったルイズは寝る準備をしながら言った。
使い魔の役割はさっき伝えた。内容を理解しているのか
していないのか反応はあまりなかった。
ただ最後に伝えた一番重要な役割
「使い魔は主人を守る存在であるのよ!」
その言葉にはうなずいていた。
寝る準備が終了する。
「あんたの寝場所はイスでいい?」
ルイズの部屋には使っていないイスが一つあった。
入学祝いとして家族が買ってくれたものの一つだが、
ルイズには大きかったため自分の使うイスは別に用意したのだ。
今までイスで眠っていたのだ構わないだろうと、ルイズは言った。
グレイヴは何も言わず、指定されたイスに座った。
言うことには素直に従うのよね。
そこで重要なことに気づく。
彼の名前はなんなのかしら?そもそも名前はあるの?
どういうわけか箱の中に流れていた声を思い出した。
なんて言っていたかは理解できなかったが最初に聞こえてきた
単語はこいつの名前だったのでは?
確かこう言っていたはずだ。
「ビヨンド・ザ・グレイヴ」
彼がこちらを向いた、今までとは少し違う反応に思えた。
「あんたの名前?」
首を縦にふった。やはり彼の名前なのだ。
「これからはあんたのことグレイヴと呼ぶわ、いい?」
再び首を縦にふる。
「じゃあグレイヴ、おやすみなさい」
431死人の使い魔 ◆I9NRoyNg4k :2008/12/05(金) 18:51:14 ID:S6yxl5eC
 短いですが以上で第一話を終了とさせて頂きます。
あとすいません、非常に読みにくいですよね。
次回以降気をつけます。

それからちょっと追記があります。


設定というかこのSSにおける
銃とグレイヴの体についての補足説明です。

 まずこの世界においては銃の弾切れはありません。
なんじゃそりゃという方がいらっしゃるかもしれませんが、
『GUNGRAVE』の世界ではそうなのです。
 なんせケルベロスは装弾数10億発のコスモガンですから。
そのため銃弾を手に入れるために苦労するということはありません。
またハルケギニアの銃にも弾切れはありません。
次弾を撃つのに時間がかかる(普通に弾込めするくらいの時間)
という設定です。
 グレイヴの銃だけ弾切れしないというのは不公平なので。
ただハルケギニアの銃が登場することはないです。
ルイズ達が弾切れを不思議に思わないための設定です。

 グレイヴの体についてですがゲームをやったことのある、
もしくはアニメをみたことがあるという方はご存知だと思いますが、
彼は定期的に血液を交換しなくてはいけません。
 その頻度についての私の独自の解釈になりますが、
彼は普通に暮らすだけならそれ程頻繁に血液を
交換しなくても良いのでは?と考えます。
 戦闘を行い怪我を負うほど血液交換の間隔が短くなる。
公式には分かりませんが、このSSではそういう設定です。


以上になります。長々と失礼しました。
長さは中篇くらいの予定です。
感想、批判、などありましたら
よろしくお願いします。
432名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 18:59:58 ID:oGZZ6mcI
>>427
銃については作中設定(というかゲーム性のための設定)を押し通すのに不利な要素だけ独自設定なのですか?
433名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 19:13:54 ID:X75V7cYq
>>431
お疲れさん。

だけど、ケルベの弾薬ならコンテナ一個に10万発くらい入りそうだし、もともとあのトレーラーって移動基地
なんだから、弾薬や交換パーツの製造設備があるってことでいいような・・・もともと一般には売ってなさそうな
専用弾薬ばっかりだしさ。
434死人の使い魔 ◆I9NRoyNg4k :2008/12/05(金) 19:18:45 ID:S6yxl5eC
>>432
 不利な要素とは次弾を撃つのに時間がかかるという点でしょうか?
ハルケギニアの銃が弾切れもなく、連射できたらさすがに
世界観を壊しすぎかな?と思っての設定です。
あくまで弾切れを心配しないための処置です。

あとグレイヴ無双にはならない予定です。

>>433
そういわれてみれば、そうですね。
ただあまり戦闘はメインに考えてなかったので
弾薬についてはゲーム設定でいいかなと。
435サイダー&ゼロ:2008/12/05(金) 19:19:36 ID:lOsJfsaH
投下予約無ければ、19:25ぐらいに投下OKしたいのですが良いですか?
436名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 19:20:48 ID:OrH/qMdW
補給やメンテの場面を書くのがメンドクセ
ルイズやコッパゲへの説明もメンドクセ
いくらでも書きようはあるけどメンドクセ
437名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 19:21:22 ID:FtWnwTo8
GUNGRAVE来た!キャラデザが好きなんで嬉しいなw
トライガンもヘルシングもコスモガンだから銃弾の設定はこれでいいんじゃないかと。
残弾数を気にしながら戦う輩じゃないですから。
しかし、血液交換がハルケギニアではキツイ。似たような人工透析でも週に三回受けないといけないですからね。
そこは作者の匙加減でいいと思う。

>>435支援
438サイダー&ゼロ 第7話:2008/12/05(金) 19:25:30 ID:lOsJfsaH
ギーシュVSダ・サイダーの戦いから、3日が経った。
ギーシュは傷を負っていない為、平穏な日々を過ごしていた。
ダ・サイダーはというと、水のメイジ達の力によって肉体的な傷は癒えたのだが、精神的な傷は癒えず寝込んでいた。
(ワルキューレか…この俺様が、手も足も出ずにやられるとはな…俺も『アレ』を使うべきだったか?)
「ダーリン…気にする事無いジャン」
「なぁ…メタコ…『アレ』を呼び出したら、勝てたのではないか?」
「ココアがいないのに、いざと言う時に動かなくなる可能性も有るジャン。多用は禁物ジャン」
「せめて…日本刀さえあれば…」
ルイズは、授業が終わるとヴェストリの広場に3日間向かい、ダ・サイダーの事を考えていた。
(『サーベル』・『ハルバード』それに…『日本刀』とか言ってたわね…『日本刀』がどんな武器か知らないけど、戦士なの?)
(戦士なら負けるとわかっていたはず…なのに戦いを続けたのはなぜ?)
ルイズを悩ませる理由…それは『なぜダ・サイダーが、必要にまでギーシュに食い下がったのか?』という事。
(事の発端は、メイドの不始末だった。でも矛先は、アイツに向けられた。なぜ?…かばったから)
(これはギーシュの理由であり、アイツの理由にはならない)
(守るため?…何を?…メイド?…それとも…自分の命?………わからない…アイツにプライドが有るとは思えない)
ルイズは、ダ・サイダーが戦う理由を見つけ出そうとするのだが、見つからない。
その頃ダ・サイダーは、まだ落ち込んでいた。
「はあぁぁぁぁ………」
「ダーリン!しっかりするジャン」
「もう、ほっといてくれ………」
「お宝奪って、脱出しようジャン!」
メタコの『お宝』にダ・サイダーが反応した。
「宝…か………フフフ………ハーハハハハ」
「ダ…ダーリン?」
「メタコ!今夜、決行するぞ!題して『お宝奪って、ここから脱出し、売り払いそのまま豪遊するぞ!大作戦』だ!」
「ダーリン、完全復活ジャン」
「おう!やーーーってやるぜーーー!」
かくして、ダ・サイダー発案のこの作戦は今夜決行となった。
が、ダ・サイダーと同じ宝を狙うもう一人いた。
(情報収集はこれぐらいか………今夜「噂の宝『聖なる箱』を頂くから……)
439サイダー&ゼロ 第7話:2008/12/05(金) 19:26:44 ID:lOsJfsaH
その日の深夜・・・・

この時間、トリステイン魔法学院は双月の月明かりに照らされ、そして静寂に包まれる。
魔法学院の外は、森になっており、一人の男が森の中に潜んでいた。
「『もり』に居ると、『もり』『もり』と元気なってくるなー!」
「ダーリン、最高ジャン!」
「他の奴にも聞かせてやりたいぐらいだろ?」
「今、ここに居ないなんてバカジャン」
と、一人で盛り上がっていた。
時を同じく、この魔法学院の外の森(先ほどの男とは別の場所にて)フードを被った者が、杖を抜き、詠唱していた。
一人森の中で、盛り上がっていた男はついに行動に移す。
「メタコ…『お宝奪って、ここから脱出し、売り払いそのまま豪遊するぞ!大作戦』スタートだ!」
「わかったジャン!」
男は、ポケットから笛を取り出す。
「フフフ…奏でてやろう…この俺様が…『漆黒の騎士』を操るこの俺様…偉大なる勇者ダ・サイダー伝説の始まりだ」
ダ・サイダーは、笛を吹き始める。メタコが奏でられた音色にのせ、踊り始める。
そして、メタコの口から卵が吐き出される。それをダ・サイダーが、見事にキャッチする。
「クイーーーーーーン・サイダローーーーーーーーン!!!」
卵を天高く投げつけた。投げられた卵は、上空で割れ雲を呼び、そして雷を呼んだ。
雷は激しさを増し、やがてヒョウの顔を描き、ダ・サイダーの前に落雷が発生した。
雷も止み、雲が晴れると、ダ・サイダーの愛機『漆黒の騎士・クイーンサイダロン』があった。
ダ・サイダーは、クイーンサイダロンから発せられた搭乗ビームで乗りこんだ。
フードを被った者はというと、詠唱を完成させ、土で出来たゴーレムを作り、宝物庫に向かっていた。
(今の落雷は何?警備が動いたか?)
ルイズはというと…落雷で目がさめ、ダ・サイダーが居ない事に気付き、学院中探し回っていた。
クイーンサイダロンに乗りこんだダ・サイダーは、早速宝物庫に向かうため、左右のレバーを前に押し、足もとのペダルを踏み込む。
すると、クイーンサイダロンの背後から青い炎が噴出し、猛烈なスピードで前に進み出した。
「待っていろよー!俺様が宝を頂戴してやるからなー!」
「ゴーゴー!ダーリン!お宝ゲットジャン!」
440サイダー&ゼロ 第7話:2008/12/05(金) 19:27:58 ID:lOsJfsaH
その頃…ルイズはというと…
「アイツは、いつもいつもいつもいつも…この私に迷惑かけて…一回体でわからせないと駄目なの?」
学院内を走っているルイズの外をクイーンサイダロンが、走り去る。
「今の…一体何?…何が起きてるの?…私も行かなくちゃ…嫌な予感がする」
ルイズもクイーンサイダロンが去って行った方向に向かう。
クイーンサイダロンが、宝物庫の前に一番乗りだった。
「メタコ!いくぞ!」
「待つジャン!左から、何かこっちに向かってきてるジャン」
「バカな!…何だアレは?…宝は俺様の物だー!」
クイーンサイダロンは、胸から一本の棒を取り出し、クルクルっと回転させ、棒からハルバードに形状を変え、
頭上でクルクルっと回転させ構える。構え終わると、そのまま一気に背後から青い炎を出しながら、ゴーレムに突っ込んだ。
そして・・・・ゴーレムの左腕を叩き切り、旋回し右腕を叩き切り少し距離をとる。
「ハーハハ!脆い、脆い。そんな物でこの俺様と張り合うつもりか?」
「ダ!ダーリン!再生してるジャン!」
「は?再生?…な…何だと!」
クイーンサイダロンによって切られた両腕は、再生し元の形状に戻っていた。
「再生できないぐらいバラバラにしてやる!」
クイーンサイダロンがハルバードを構えなおし、再び突っ込もうとした刹那、クイーンサイダロンのすぐ前方が爆発する。
「うわー!!何だ?…砲撃か?」
クイーンサイダロンの右腕の側で爆発が起きる。
「ダーリン…こんな物…まともに食らったら…持たないジャン!」
「わかっている!…どこだ!」
校舎の影に隠れながら、爆発を起こした人物が叫ぶ。
「ここがどこだか知ってるの!いい加減にしなさいよ!!これ以上暴れるのなら許さないんだから!!!」
この声にダ・サイダーが反応する。
「この声…まさか…あいつか?」
「間違い無いジャン!『ヒス板女』ジャン!しかもこっちだけに警告しているジャン!」
「どうすんだよ!これじゃあ…宝は盗れないじゃないか!」
「今回は、退くしかないジャン」
「退く?バカな事をいうな!ここで退いたら、アイツに奪われる!」
「爆発をかい潜って、アイツを破壊するなんて無理ジャン!」
クイーンサイダロンの左腕の側で爆発が起きる。
ダ・サイダーは左右のレバーを巧みに操り、ハルバードを棒に変えそのまま胸にしまい込む。
「ダーリン!どうする気ジャン」
「メタコ!奴を破壊し、そのまま退く。例の物を出せ!」
441サイダー&ゼロ 第7話:2008/12/05(金) 19:29:08 ID:lOsJfsaH
メタコは『タバスコ』を取り出し、ダ・サイダーに渡す。
そして、ダ・サイダーは『タバスコ』を一気飲みをする。
「グググ………アアアアアアアアアアアアアアア…カレーーー!!!」
クイーンサイダロン内にてのたうち回るダ・サイダー。
「ダーリン…この方法は、やっぱ無茶ジャン」
だが、メタコ心配をよそに、クイーンサイダロンの上部にあるレバーが降りた。
「やーーーーーーってやるぜ!!!ヤリパンサーーーーーー!!!」
ダ・サイダーは上部にあるレバーを押し込む。それは、理性を外す瞬間。
クイーンサイダロンは人型から、黒ヒョウ、パンサーへと形を変えた。
この変形は、ルイズ、そしてゴーレムを操っている者を驚かせた。
「な…何?これ…マジックアイテムなの?それとも…錬金?」
(ん?…これは何なの…段違いの速さと力…このような物は聞いた事が無い…魔法でもない…何?)
ヤリパンサー内のダ・サイダーは、血圧メイタ―をさらに上げていた。
「はあぁぁぁぁーーー!!!」
ヤリパンサーから青い炎が開放された。
「やーーーってやるぜーーー!!!」
ヤリパンサーは、ゴーレムに突進していく。
「待ちなさいよ!!!逃げる気?」
追いかけるルイズ。
「あ…もう一体居たの…」
ゴーレムを操っている者はというと・・・
(たかが、捨て身の突進…捕まえてあげる…フフフ)
ヤリパンサーと、それを受けとめようとするゴーレム。
ヤリパンサーの勢いは止まらず、そのままどこかへと走り去った。
ゴーレムは、胴体に大きな穴が開き、跡形も無く崩れた。
(チッ…走り去ったみたいだし…一旦様子を見た方がよさそうね…)
ルイズはというと・・・
「何?…何が起きたの?…何なのアレ?…」

こうして、ダ・サイダー発案「お宝奪って、ここから脱出し、売り払いそのまま豪遊するぞ!大作戦」は失敗に終わった。
『漆黒の騎士』の存在は、トリステイン魔法学院の噂となった。
442サイダー&ゼロ:2008/12/05(金) 19:30:27 ID:lOsJfsaH
投下終了。
443ゼロの黒魔道士:2008/12/05(金) 19:43:40 ID:5VwbMUgf
乙でございます!

さてさて、投下ラッシュに紛れて投下したいと存じます。
1950時ぐらいから…よろしくお願いいたします
444名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 19:44:42 ID:ZbUrp7hj
アルティメット支援!!
445ゼロの黒魔道士:2008/12/05(金) 19:46:49 ID:5VwbMUgf
今日はネタだから、ぶっちゃけ外伝的?ご飯はじまりそうなので早めて投下開始
――
「じゃ、私達は宿題やってるから、中庭で他の使い魔達と遊んでらっしゃい!」
「うん、ルイズおねえちゃんも、宿題っていうの?がんばってね?」
「はいはい…あぁ、それからいいこと?使い魔の恥は主の恥なんだから、変なことしちゃダメだからね!」
「はい!」
…今日はルイズおねえちゃんの授業は午前中までしか無かったんだけど、
ルイズおねえちゃんたちは「宿題」っていうのがあって集中したいからって図書室に行っちゃった…
…学生さんって大変だなぁ…
んー…ボクは、今日は夕方まで仕事が無いし、フレイムとかと遊ぼうかなって思ってたんだ…けど…

…なんでだろ…誰かに見られている気がする…?



―ゼロの黒魔道士―
〜第九幕〜 とんがり帽子のその下の


ピコン
ATE ―まるみえ―

「ちょ、ちょっとっちょっと!キョロキョロしてるわよ!気づかれてるんじゃないっ!?」
「落ち着きなさいな、ルイズ…きっとまだ校内の地理に詳しくないだけよ…あぁん、キョロキョロするビビちゃんもかわい〜♪」
「二人とも、声が大きい」

校舎の影、とんがり帽子を追う桃・赤・青髪の3人組
ビビの語る異国話に興味を惹かれ、一緒になって聞き入っているうちに、
なんとなく仲良くなったような気がする今日このごろ
何せここ2、3日でいつの間にか「ルイズ」だの「キュルケ」だの名前で呼び合うようになってしまったのだ
まぁ最も、その点を指摘したところで、本人達は真っ赤になって否定するであろうが
さて天気もいいし、授業は午前まで、目立つ宿題も出ていない中、この3人が何をしているかというと…

446ゼロの黒魔道士:2008/12/05(金) 19:47:19 ID:5VwbMUgf
カポーン
話を前日の女湯まで戻さねばならない
映像ならばサービスシーンとなるワザとらしい場面転換だが、
文章だけではそうはいかない
ただ、一昔前に流行った歌で言うところの、
「どれもみんなきれいだね♪」の「オンリーワン♪」で大変よろしかった、
とだけここでは言及しておこう。深い意味はまったく無い

さてさて閑話休題、
ここでなされた会談の内容であるが…
「あ〜、肩が凝るわ〜♪」
「…げ、下品な自慢はやめなさいよ、キュルケッ!わ、わたしだって、私だって…」
「あ、ゴメンなさいね〜、慎ましやかなカラダでは言えない悩みだったわね、ル・イ・ズ♪」
「そ、そんなモンね、あ、後で絶対垂れるんだから!」
「フフフッ、このハリと柔らかさを見てもそんなことが言えるのかしらっ!!」
「くっ…私だってぇぇぇ!!」
「…自慢、自重」
…コホン、重要なのはこの会話ではなく…

「あぁ、ところでルイズ?ビビちゃんのことなんだけど」
「ビビの?…また自分のところに寄越せとか寝ぼけたこと言うんじゃないでしょうね、キュルケ」
「それもあるけどね?…気にならない?」
「気になるって何よ?私の使い魔にケチつける気?」
「んもー、そうじゃなくってー、ホラ…」
「帽子の下」
「帽子の下…?あぁ…」

そう、ビビの帽子の下である
何しろいつでもきゅっきゅと念入りにかぶりなおし、
おまけに寝るときまでずっとそのままなのだ
…帽子の下に何があるのかは誰も知らない…

「ん〜…でもビビの出生の秘密知っちゃったし…何となく『見せて』とは言いにくいし…」
「いや私もそうだけどね、ルイズ…でも、使い魔の主として、使い魔のことを深く知るってことは大事じゃない?」
「…つまりただの好奇心」
「よ、要約しなくていいわよタバサッ…ねぇ、どう思う、ビビちゃんの帽子の下…どんな顔があるのか…」
「う〜…き、気にならないとは言わないけど…でも『何があってもビビはビビ』だし…」
ブクブクと顔を湯に沈めるルイズ
「ん〜…私の読みではすっごい美少年だと思うのよね〜…声がいいし…タバサはどう思う?」
「…案外、コルベール先生と同じ髪型」
ブホッと湯に吹き出すルイズ   同時刻、遠く離れたある小屋で禿頭がクシャミした
「た、タバサ…あんたねぇ、人の使い魔をなんだと…」
「可能性の問題、観測するまで中身は不定」
「う」
何気なくタバサが量子力学の概念に到達したところでルイズがうなる
つまるところ、「見てみなきゃ何も分からん」ってだけなのだが
「…と、いうわけで…ビビちゃんの顔、見てみたくない?」
「そ…そりゃぁ…で、でもでも無理やりひっぺがすワケには…」
「あらぁ〜、ルイズ、あなた実は乱暴にされる方が好きなわけ?」
「っ!?!?こ、この色欲魔っ!!何考えてんのよっ!!」
「コッソリ見る」
「コッソリって…帽子が取れるのを待つっていうわけ?そんなのいつになるか…」
「…なるほど、偶然を装って…それはいけるわね、ナイスアイディアよ、タバサっ!」
「ちょ、ちょっと何を勝手に…」
「見るか、見ないか、二つに一つ」
「う…わ、分かったわよっ!私の使い魔なんだしっ!私が全て把握しないとねっ!!」
「じゃ、決まりっていうことで♪」
「状況は明日開始」

…ここに、『女湯の誓い』別名『ビビちゃんの、ちょっといいとこ見てみ隊結成式』が執り行われた…
447ゼロの黒魔道士:2008/12/05(金) 19:47:50 ID:5VwbMUgf
そも、三人寄れば色々なことが可能になるとは諸君も周知のことであると存じる
歴史上の故事にならえば『桃園の誓い』であるし、『毛利元就の三本の矢』がその例に当たる
…どちらも結果的にどうなったかは触れないでおこう…



さてさて舞台は現在のトリステイン魔法学院の中庭に戻り…

「…あ、フレイムー、こんにちは!いい天気だね〜…」
「ブホッ」
…何も知らない今回のターゲット、フレイム相手にまずは和やかに挨拶
「きゅるきゅる♪」
「あ、シルフィードも来てたんだ。こんにちは!もうご飯食べたの?」
「きゅいっ!」
…実はこのシルフィード、今回の仕掛け人
何も知らないターゲット、やはり和やかに挨拶
和やかな空気が中庭を満たしていく…
と、ここで、次の瞬間っ!
「きゅ〜いっ♪」ペロンッ
「うわっ!?く、くすぐったいよぉ…」
仕掛け人、ターゲットの顔を舐める、舐める、これでもかと舐めるっ!

「…まぁ、『シルフィードにじゃれさせて帽子を取らせる』ってシンプルだけど…大丈夫なの?」
「作為が発覚されない作戦が今回の要」
「今朝からちょこちょこってタバサが風魔法て取ろうとしてみたけどビビちゃん、しっかり帽子押さえて飛ばないようにしちゃってたしねぇ…」
そう、これこそが今回の作戦なのだ
仕掛け人、まだ舐めるっ!なんという舐めっぷりだ、
それともターゲットはアイスクリームのように甘いというのか
ターゲットが涎でベトベトになっていく
ここでターゲットたまらず
「う、と、とんずらぁぁっ!!」トトトッ
ターゲット、逃走を開始する
が、しかし仕掛け人がすかさずこれを追うっ!
しかしこの仕掛け人、ノリノリである
カプッ
「うわぁぁっ!?」
ここでついにターゲットを確保、
あえなく逃走劇はここまでとなってしまった
仕掛け人、ターゲットを口にくわえてご満悦
ターゲットこれには呆然、手も足も出ない

「あとはそのまま帽子をとるだけ」
「決定的瞬間ねっ!」
「な、何があってもビビはビビなんだから…」
ギャラリーの誰もが期待した と、次の瞬間っ!
448ゼロの黒魔道士:2008/12/05(金) 19:48:21 ID:5VwbMUgf
帽子がずれて、ついに全容が明かされる…
とここで、アクシデントが発生
「おや、ビビ君、こんなところにいたのかい?」
「コルベール先生?…た、助けて…」
なんと第三者が乱入、これには仕掛け人渋い表情だ
「おやおや…仲のいいのは結構ですが、ビビ君も嫌がってますし、その辺にしてくださいね?」
優しいぞ、コルベール!
輝いてるぞ、コルベール!
困った仕掛け人、ここでギブアップ
「きゅぃ〜…」
ドサッ
「あうっ!?」
ターゲットの身柄は解放された

「あっちゃ〜…作戦失敗?」
「禿、邪魔」
「…うー…よかったような悪かったような…」

「あぁ、そうそうビビ君、君は魔法を使うときに杖などは使わないのかい?」
「え?えぇと…あれば使いますけど、別に無くても使えます…あった方が強力ですけど…」
この第三者、ギャラリーにはまったく気づいていない
「ふむ、根本的にこちらの魔法とは違うのかな?…それでは例えば火の魔法で…」
しかしこの第三者、己の研究欲のためか色々と聞いてくる
ギャラリーが「自重しろコッパゲ!」と心で叫ぶが、まったく気にしない
元々の仕掛け人、企画者に対して「どうすればいいのか」と軽くジェスチャー
企画者はこれに「とりあえず待機」と合図を送る
仕掛け人・企画者共に焦りが生じる…

「…う、うん…そうです、大体『ラ』の上に『ガ』があって…あ、でも呪文の詠唱は…あと『ジャ』があるという話を…」
「ほう!つまり『ファイア』の上に『ファイラ』でさらに『ファイガ』と!!いやはや、おもしろいですなぁ…で、その『ジャ』魔法というのは…」
何がおもしろいんだ、コルベール!
何が楽しいんだ、コルベール!
これには仕掛け人も呆れ顔
このコルベールまったく留まる気配が無い
実にイキイキとした表情だ

「あぁ、そういえば君は武器などを使ったことは?例えば剣とか槍とか…」
「え、うーん…ボクはだいたい後ろからの援護とかだったから…あの、どうしてそんなことを…?」
「ふむ、いや、君はガンd…ケホケホ…そ、そう君は使い魔なんだし、ミス・ヴァリエールを守るために武器を使うという場面が出るかもしれません、一度使ってみてくれませんか?」
「…?んー…ルイズおねえちゃんを守るために必要なら…わかりました、使ってみます…」
「そうかっ!ぜひ使った場合は結果を教えてくれたまえ!…おぉ、もう日が暮れますな…それでは、私はこの辺で…」
「あ、はーい!コルベール先生、さようなら」
と、ここでタイムアップ
記録は…なんと5時間34分22秒!
もちろん今日の最高記録だ
仕掛け人は既に疲れて寝てしまった!
すごいぞ、コルベール!
ありえないぞ、コルベール!
449ゼロの黒魔道士:2008/12/05(金) 19:48:52 ID:5VwbMUgf
「…な、長かったわねぇ…」
「…貴重な話は聞けた…でも禿自重」
「腰が痛い〜…ビビちゃんもよく付き合ったわねぇ…」

企画者達があきらめて帰ろうとした…
次の瞬間っ!
「う〜…ベトベトで気持ち悪い…水浴びしたほうがいいよね…」
なんとターゲット、自ら水浴びを宣言
これには企画者達も目が覚めた

「み、水浴びっていうことは」
「通常、服は脱ぐ」
「覗くみたいだけど…これはチャンスねっ!」

覗きであるということは最初からだと思うのはともかく事態は進行する
ターゲットは周りを気にしている
まさかここで水浴びをしてしまうのか?
案外露出の趣味でもあるのか?
そんなことをルイズが気にし始めた…
次の瞬間っ
「大気に集いし溢るる涙よ、
         集いて固まり満ちるがいい! ウォータ!」
なんとターゲット自分の頭上に水球を出現させたではないか
ザバーンッ
加減しているとはいえものすごい水量だ
これには仕掛け人も起きだし目を丸くする

これを数回繰り返しあらかた汚れが取れたところで
今度はターゲット、近くにあった木切れを集めてきたではないか
一体何をしようというのか
「岩砕き、骸崩す、地に潜む者たち
         集いて赤き炎となれ! ファイア!」
なんと焚き火である
そう、実はこの一連の動作、
旅の途中でモルボルなどに襲われた後に行われる野外での洗濯方法なのだ
これならばたとえ水などのない屋外でも汚れが取れるとあって奥様方にも実に好評
だが魔力をかなり消耗するので、テントの無いときには使用できない
そんなちょっと珍しい魔法の使い方、あなたは許せる?許せない?

「んー…サッパリしたー…あ、シエスタのところに洗濯物とりにいかなきゃ…じゃ、またね、フレイム、シルフィード」
「ブフォッ」
「きゅ、きゅぃぃ〜…」

「今日はもうダメね…う〜ん、でもビビちゃん、便利よね〜…」
「作戦失敗、後でおしおき」
「くっ…うー…見たかったような見たくなかったような…」

少女達のあくなき挑戦は続く…かもしれない

――


…あれ?男の子が草むらの影にいる…?学生さんかなぁ…?ちょっとぽっちゃりしてる…
「あのー…どうしたんですか…?」
「うわぁぁっ!?な、なんでも無いよ!?べ、別に何かに集中していた少女達のパンチラをスケッチしたりなんかしてないよっ!?」
…????貴族の人たちって…やっぱりどこか変なのかなぁ…?
…ルイズおねえちゃんたちも何やってるんだろ…?宿題っていうのは終わったのかなぁ…?
――――
投下完了。月曜8時なイメージでした。ホント色々ゴメンなさい
450名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 20:01:16 ID:r89If27H
支援する。
451名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 20:02:03 ID:yqCoIotR
ボルタ電池を知ってればノートパソコンに充電できるだろう。
直流モーターの構造を知っていれば水車に繋いで発電できるだろう。
トランジスタの原理を知っていれば可能性は無限大。
コルベールに頼めば喜々として作ってくれるかも。

だれかそんなSS書きませんか?
452名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 20:02:25 ID:JRIYKZSy
乙でしたー
あああ、ビビかわいすぎる
ところでぽっちゃりした貴族の人はビビ観察をしてるのかと
思ってしまった俺自重
453名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 20:03:26 ID:r89If27H
って終わってた……
ちょっと霧の中に突貫してくる……
その前に乙!
454名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 20:13:09 ID:6lkJ/jCI
ハリー・ポッチャー吹いた
455名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 20:15:31 ID:rEnbsx32
>>451
冒険野郎マクガイバーを喚べと?
456名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 20:23:55 ID:F/YE7Opf
虚無の闇の人の未来から来たガンダールヴでNTの巣作りドラゴンクロスを思い出した。
まあ、それと違っても、ロマリアでブリミルの時代に行った時のあれをいじくれば何とかなる気もしたけど。
457名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 20:26:27 ID:jSmsMyj1
>>456
巣作りってーと、削除された奴だな。作者が削除したらしいが。
458名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 20:33:30 ID:VS1M7AWZ
>>451
マジレスすると充電は無理
459名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 20:40:53 ID:JCiOjmyx
普通の小説のキャラも召喚OKなのか?
ピスケンと軍曹を召喚したいんだが
460名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 20:43:08 ID:TqcNZaHd
>>455
考えろ、考えろマクガイバー!!
461名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 20:44:53 ID:TqcNZaHd
>>459
板はアニキャラ総合だけど、ゲームとかからも召喚されてるから別に良いんでない?
462名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 20:45:20 ID:yqCoIotR
>>455
それ、面白そう

>>458
そうなのか。知ランカッター
463名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 20:52:24 ID:nR0Po08h
>>459
「きんぴか」なんてここの住人でどんだけ知ってんだよw
っていうかヒデさんは!?
464名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 20:52:53 ID:jSmsMyj1
>>451
定格電圧やらの問題があるんでない?
465名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 21:00:30 ID:FtWnwTo8
予約なかったら新規投稿なんですけど投下してもいいですか?

漫画、谷仮面から谷を召喚です。
谷仮面はエアマスターとか、ハチワンダイバーを描いてる柴田ヨクサルの作品です。


よかったら21時5分より投下させていただきます。
466名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 21:02:07 ID:r89If27H
読んだことないけど支援する!
467名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 21:04:08 ID:vJaYUuoI
>>465
お、おま・・・。奴を島さんから離したら大変なことになるだろ・・・。
468谷まゼロ:2008/12/05(金) 21:04:55 ID:FtWnwTo8
ここは、魔法使いが学びを請う魔法学園。ハルケギニアに存在するトリステイン王国内に居を構えている。
名をトリステイン魔法学園。
そこで今、春の使い魔の召喚儀式が執り行われていた。
儀式の主役である生徒たちは、教師に教わった通りに呪文を唱え、
生涯共にするであろう使い魔とかけがえのない出会いを果たしていた。

だが、その中で一人召喚の儀式が上手くいっていない生徒がいた。
桃色がかったブロンドの髪の少女、名をルイズといった。
ルイズは、未だに使い魔を呼び出せてないことを周りの生徒から罵りの言葉を投げられていた。
唇を噛んで肩を震わせているルイズは、他の生徒に言い返すことはできなかった。
使い魔を呼び出せていないのは事実であったからだ。
顔を紅潮させてルイズは叫んだ。

「この際、変なやつでもいいから出て来なさいよっ!」

ルイズは、すでに何度も失敗している召喚の魔法を再び唱え、杖を振る。
魔法を唱えたその瞬間、辺りを覆い隠すほどの噴煙起こす爆発が生じた。
ルイズは、また失敗したと思った。だが、煙が徐々に晴れてくると何かの影が爆心地だった所に見える。
その影を見たルイズの心は躍った。ついに成功したのだと。

だが、完全に煙が晴れ、影の正体が明らかになると風船が萎むかのように、落胆の色がルイズの顔に表れた。
生徒の一人が、召喚されたものを指をさして、野卑た口調で言った。

「おい人間だぜ!ルイズ、『サモン・サーヴァント』で人間を呼び出してどうすんだ!しかも―……平民?」

その生徒が指さす方向には、一人の青年が地面に転がっていた。
黒尽くめの衣装で、手には小さな本らしきものを持っている。
青年は、まるで座っている椅子をいきなり引き抜かれてコケたような体勢であった。
しかし、注目すべき点は他に存在した。
その青年の顔には、その前面を隠すようにぴったりと張り付いた仮面があった。
白く、そして酷く無機質。そして視界を確保するためなのだろうか、申し訳程度に目の部分に穴が開いている。

「平民を呼ぶとはさすがはゼロのルイズだ!しかもあの平民、仮面をつけてるぞ、変人同士お似合いだな!」

誰かがそう言うと、人垣でどっと笑いが起きる。
笑われたルイズは顔を真っ赤にさせ、引率の教師らしき中年男性に詰め寄った。

「ミスタ・コルベール!儀式のやり直しを要求します!」

ミスタ・コルベールと呼ばれた黒いローブの男性は、首を横に振った。
「それはダメだ。ミス・ヴァリエール。決まりなのだよ。二年生に進級する際、君たちは『使い魔』を召喚する。
 例外なく、一度呼び出した使い魔は変更することはできない。なぜなら春の使い魔召喚は神聖な儀式だからだ。
 好むと好まざるにかかわらず、彼を使い魔にするしかない」

「でもっ!……でもこんなのって!お面してるんですよ!?」

再びミスタ・コルベールは首を横に振った。そして子供に言い聞かすように柔らかな口調で言った。

「これは伝統なんだ。ミス・ヴァリエール、儀式を続けなさい」

ルイズはがっくりと肩を落とした。そして観念したのか、
無様に転がっている自分の使い魔となる青年の下に歩いて近づいて行った。

ルイズが目の前まで来ると、青年は前触れもなく、突然立ち上がった。
ルイズは一瞬驚いて後ずさるが、立ち上がった青年を上から下へと視線をやり、よくよく見てみた。
青年は思うより身長が高かった。加えて、顔に仮面をつけているので一切表情がわからない、
そのためルイズは不気味さを覚えている。
どう話しかけようかルイズが逡巡していると、仮面をつけた青年の顔がルイズに向いた。
やはりこの青年が何を考えているかルイズにはわからなかった。
469名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 21:05:25 ID:TqcNZaHd
うぉおおお!読んだことないけど、支援!
470名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 21:07:04 ID:pTULF+m5
ヨクサルの漫画じゃいまだ一番強いと思ってる支援
471谷まゼロ:2008/12/05(金) 21:07:58 ID:FtWnwTo8

……何だ?ここは?

仮面をつけた青年が、呼び出された瞬間に思ったことだった。至極まともな感想であった。

青年の名前は『谷』といった。
彼は、二本の鳥山高校に通う高校生。通学途中に呼び出されたのでガクランに鞄といった格好であった。
まず谷はどこからこんな変な状況になったのかを過去からなぞって考えてみた。

たしかオレは通学するために電車に乗ってて、駅に着いて降りようとした、そうしたらここにいた。

とても簡潔な答えであった。
付け加えるとするならば、彼は大好きな小説を読みながら電車の乗車口から降りたのだ。
そのとき谷は、自分の体に当たって誰かを突き飛ばしても、気付かないほど熱中して本を読みながら歩いていた。
そしてそのことが此度の要因となった。目の前に現れた光る鏡に、そのまま歩いて突っ込んでしまったのだ。
それが谷が居た世界、地球と、今いる世界、ハルケギニアを繋ぐゲートであった。

だが、そんなことは与り知らない谷であった。
とりあえず立ち上がって、周りを見渡した。
豊かな草原が広がっており、いかにもといった感じの西洋風の石造りの古城が見えた。
谷には、誰もが一度は想像したことがあるようなファンタジー世界に思えた。

そして、目の前には魔法使いのコスプレをしたような少女や、男子たちが目の前にいる。

つまり、これはこういうことだ。

谷は電車の下りた瞬間に、このファンタジーな世界に迷い込んだことを彼なりに自己解釈した。
そして突然大きな声で喋った。


「夢だなコレ!」


いきなりわけのわからないことを言いだした仮面の男にルイズは混乱した。

「え?なに……!?なんなの……!?」
「いつのまに眠ったんだオレ?」

谷は完璧に今いるこの場所が夢の世界だと思い込んでいた。
元々思い込みの激しい性格ではあるが、このような展開においては、まだまともと言えるかもしれない。
472谷まゼロ:2008/12/05(金) 21:10:09 ID:FtWnwTo8
谷は、次に『島さん』のことを考えた。
『島さん』とは、谷が思いを寄せる『島 リホコ』という名の同学年の女生徒である。
谷は、その『島さん』に対して、並々ならぬ恋心を抱いている。今現在は一方的な片思いではあるが、
彼にとっては、何を投げだしても惜しくないほどの女性であり、彼女に想いを寄せている。
『島さん』こそ谷にとっての世界の中心であり、酸素のようになくては生きていけないほどの存在。
普通の人間から見れば、異常ともとれるような強い恋心。
一歩間違えれば、ストーカーとなんら変わらない。むしろそれよりもヒドイ。
だが、彼は『島さん』の幸せを心から願っていたし。そのためにはどんな苦労も厭わない。

そして、『島さん』を思い浮かべない時はない。
このときもまた、『島さん』が登場する夢だと信じ込んでいた。
自分の心の芯に根付く願望が見せる夢だと。

意味不明なことを口走ってから、何か考え耽っている仮面の男に、戸惑いを覚えながらもルイズは声をかけた。

「……ね、ねぇ。とりあえず、あんた名前は?」

その言葉に改めてルイズの存在を視認した谷は、仮面をつけた顔向けた。
谷は指をルイズに向ってさして、見下ろしながら言った。

「お前、オレの夢の世界の住人だろ?何言ってんだ!そのくらいわかれ!」

「……????な、なんなの?何を言ってるの?名前を教えなさいって言ってるのよ!」

ルイズのがっかり度は、さらに増えていた。人間で平民。そして変人。意思疎通ができるかも怪しい。
谷は首をかしげると、めんどくさそうに言った。

「谷」

「なによ?タニ?変な名前」

目の前にいるルイズを、谷は変わったやつだと思った。
そして頭の先から足先まで、ルイズを見た。白いブラウスに短すぎるスカート、そしてマント。
まるでハロウィンの仮装であった。このまま、トリックオアトリートと言われても違和感がない。

ふと『島さん』がこの格好をしていたならと考える。
短いスカートを来て、魅力的な太ももを露わにしている姿を想像する。
谷の顔は真っ赤になり、急に忙しなく周囲を見渡した。

「おいっ!島さんはどこだ!?オレの夢なんだから絶対いるだろ?なあ」

「はあ!?頭おかしいんじゃないの。ホント何言ってんのよ『コイツ』……」

それは何の前触れもなく訪れた。
まるで、噴火するはずもない砂場に作られた山が突然噴火し、溶岩を噴出したかのような不条理。


「コイツとはなんだあああああああああああああ!!!!!」

「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!?」


谷が突然ルイズに向って拳を振り上げて殴りかかろうとし、鼓膜が破れるかと思わるほどの声量で叫んだのだ。
何の脈絡もなく、怒髪天を衝いた谷に流石のルイズも身の危険を感じ、
悲鳴を上げながら、頭を両手で押さえて身を屈めた。
しかし、拳は振り下ろされなかった。
473谷まゼロ:2008/12/05(金) 21:12:55 ID:FtWnwTo8
恐る恐るルイズが頭をあげると、そこには拳を振り上げたまま固まっている谷がいた。
しばらくすると、谷は静かに拳を下ろし、何故か項垂れていた。

谷は、自己嫌悪を苛まれていたのだ。夢の住人に対して、何をやっているんだろうかと自問自答していた。
なんで夢の中で『島さん』を探そうとしてるんだと。

何千回も見た『島さん』が出る夢。
『島さん』が自分に対して「好き」と言ってくれる夢。
自分のセコイ願望が生み出した夢。
自分で『好き』と言わせている惨め過ぎる、そして馬鹿すぎる夢。

今回もまた、こんな馬鹿げたファンタジーの世界に『島さん』を出演させて、
自分の浅ましい願望を実現させようとしている。谷はそう考えていた。
谷はつらかった。彼は現実の『島さん』に好かれたいのだから。

ごめんなさい……夢だからって好き勝手やって。

谷は心の中で『島さん』に本気で謝っていた。

そんな心情を知らないルイズは、谷がいきなりネジが切れた人形のように止まってしまったかのように思えた。
しかし、チャンスだと考えた。急いで杖を振って呪文を唱える。

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。
 この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」

呪文を唱え終えると、ルイズは放心状態の谷の仮面に、ぴょんとジャンプしてキスをした。
キスをすることが、使い魔の契約となるのだった。
これで『コントラクト・サーヴァント』完了、しばらく待てば体に『使い魔のルーン』が刻まれる。
そのはずだった。ルイズもそのことを知っていた。
だが、待てどもそのような気配は毛頭ない。
どこか縋りつくように、そして心なしか力のない口調でルイズは尋ねた。

「ミスタ・コルベール」

ミスタ・コルベールは谷をまじまじと見つめてから言った。

「うーん。これはあれではないだろうか。仮面を外して直に行わなければならないのでは?
 ミス・ヴァリエール、とりあえず試してみなさい」
474谷まゼロ:2008/12/05(金) 21:15:05 ID:FtWnwTo8
なるほど、とルイズは思った。だから『コントラクト・サーヴァント』がうまくいかなかったんだと。
ミスタ・コルベールの発言は、ルイズに希望を与えた。
未だに心ここにあらず状態の谷に近づき、ルイズは仮面に手をかけ、もぎ取ろうとするがびくともしなかった。
何かで固定されているようには見えないのに、ずれる気配すらもない。
顔を真っ赤にして、谷の体に足をかけて引っ張るがどうにもならない。
その場にいる者たちに、スカートの下から現れた陶器のように白い肌をした太ももを披露しているだけであった。

突然谷がルイズの顔の横に手をかけ、そのまま押しのけ、ルイズを自分から引き離した。

「むおっ……!!何すんのよ!っていうかなんで外れないのよ!!?呪いでもかかってんの!?それとも同化してんの!?
 ちょっと自分で仮面を外しなさいよ!『コントラクト・サーヴァント』できないじゃない!!」

辺りから再び笑いが起きる。

「おいおい!ルイズ!平民相手に『コントラクト・サーヴァント』できないのかよ!?」

嘲笑はさらに大きなものとなった。
見かねたミスタ・コルベールが、ルイズに諭すかのように言った。

「ミス・ヴァリエール。今は『コントラクト・サーヴァント』をしなくてもいいです。出来る時になったらしなさい」

そうは言われても、ルイズにとって屈辱には他ならなかった。
奥歯で噛みしめ悔しそうな顔をしている。

「さてと、皆教室に戻るぞ」

ミスタ・コルベールがそう告げると、生徒たちは短く呪文を唱えて杖を振った。
すると、生徒たちの体が宙に浮き、そのまま遠くに見える古城に向って飛んでいった。

その、人が空を飛ぶという現実世界では信じられない光景をぼんやりと見つめていた谷が叫んだ。

「こりゃ夢だわ!!いやもう間違いねェ!!こりゃ夢だ!」

「何言ってんのよ……コイ……。とにかくついて来なさいよ」

禁句ワードと思しきものを避けて、ルイズは谷に言った。
得体のしれない使い魔。先が思いやられるルイズであった。
475名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 21:16:37 ID:vJaYUuoI

破壊力→ヤバイ
防御力→スゴイ
容赦なさ→ハンパナイ
島さん好き度→ジュリエッタ並
476谷まゼロ:2008/12/05(金) 21:17:27 ID:FtWnwTo8
日が暮れ、谷とルイズは学院内にある女子寮の一室、ルイズの部屋に来ていた。
谷はなにがなんだかわからないまま、ついてきてしまっていた。
未だに、しばらくすれば、この夢から醒めると思っているのだった。

谷は窓から、夜空にある二つの月を眺めていた。

谷の言い分を聞いたルイズは、ほとほと呆れていた。
この世界が自分の夢の世界だと主張しているのだから、頭がおかしいと思われても仕方がない。

「ちょっと!!タニ!!何度言ったらわかるの?ここは現実よ!!」

「だーかーらっ!。夢だって言ってんだろ!?」

「あんたバカじゃないの!?ここのどこが夢だっていうのよ!?
 説明してみなさいよ!!あんたは呼吸してるでしょ!?あんたは実際にここにいるでしょ!?
 これが現実じゃなかったら、どこに現実があるのよ!?」

「何だ?お前。そしたらあれか。ここが現実だとしたら、あの月はなんなんだ?
 二つあるじゃねえか!こんなの地球じゃねェ!!別世界だ!!」

そこまで自分で言った瞬間、谷の背筋が冷たくなった。嫌な予感が頭によぎる。

「……これが、現実だったらどうするんだ?……し、島さんと会えなくなるじゃねェのか!?
 ちょっと待てよ!!ありえねェぞ!全然笑えねェ!断じて認めねェ!!」

突然谷は窓を開け放って、首の血管がくっきり浮き上がるほど力強く、遠吠えする狼のように叫んだ。

「島さあああああああああああああぁぁん!!!!」

「うるさあああああああああああああい!!!」

ルイズは辟易していた。変人どころのレベルじゃない。
なにか猛烈に勘違いしたまま、それを断じて貫こうとしている。
半ば諦めモードのルイズは投げやりに谷に質問した。

「その『シマサン』って誰よ?」

まともな答えが返ってくるとは思っていなかった。
しかし、意外にも谷の返答は、今までのと比べると要領を得ていた。

「島さんは、オレが大好きな女性だ!!凄い魅力的なんだぞ」

ルイズはその言葉に何故かカチンときた。谷が初めて嬉しそうにしているのが、他の女の自慢だったからかもしれない。

自分の主人であるわたしを差し置いて……なんなのコイツ。

沸々とルイズの中で苛立ちが沸き立っていた。
そして、悪気はなかったしそんなつもりもなかったが、ルイズは自ら大き過ぎる地雷を踏んだ。

「そのシマサンっていう女、どーせあんたが言うほど大した女じゃないんでしょ」

言葉を言いきった瞬間、ルイズにもわかるほど、周囲の空気が変化した。
ベッドに腰かけて喋っていたルイズの目の前に、無言で谷が立っている。
その無機質な仮面で隠された顔でルイズを見下ろしていた。とてつもない圧迫感と威圧感。

このあとルイズは生涯忘れることのない経験を味わうことになるのだった。
477谷まゼロ:2008/12/05(金) 21:19:57 ID:FtWnwTo8
投下終了です。ありがとうございました。
谷の仮面はストリートファイターのバルログのお面を想像してくれると助かります。
478名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 21:20:19 ID:yqCoIotR
紫煙
479名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 21:20:47 ID:TqcNZaHd
>>475で説明された島さん好き度が超分かりやすい支援
480名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 21:21:42 ID:jSmsMyj1
谷の前で島さんを侮辱するとは……ルイズ、ピンチ!
481名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 21:21:46 ID:TqcNZaHd
>>477
乙です、後でじっくり読ませて頂きます。
482名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 21:24:13 ID:4MZ0oCKq
乙です。
「島さあああああああああああああぁぁん!!!!」

「うるさあああああああああああああい!!!」

のくだり吹いたww
483名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 21:25:32 ID:I65fJeMz
ルイズ死んだな。乙。
484名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 21:26:46 ID:5VwbMUgf
こりゃまたうっとうしいのが召喚されたなww
乙!
485名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 21:29:51 ID:j6l3kJu0
谷……だおぉ!?
いかん、どう転んでも最高の展開しか想像できない!

谷の素顔を見たらルイズ達驚くだろうなぁw
486名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 21:31:36 ID:r89If27H
>>475の解説からするとまたもトンデモない使い魔が喚ばれたってことになる。


つまりワルド涙目www
487名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 21:34:16 ID:pTULF+m5
島さんで釣る事を思いつかない限り何もしそうもないがw乙でしたー
488名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 21:36:57 ID:j6l3kJu0
谷仮面とエアマスターは世界がつながってるが
谷はエアマスター陣の中でも最強クラスだろうな
だがそんな強さよりも谷の奇行のほうが楽しみだぜ!
何せこの世界には谷の愛する島さんだけじゃなく……村上春樹の小説もないんだからな……w
489名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 21:36:59 ID:Qarl/SCG
谷といえばフライングバロセロナアタックだな。しかしめんどくさいの呼び出したなww乙ー
490名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 21:37:36 ID:I65fJeMz
>>486
谷を一言で表せば

テッカマンブレードのテッカマン並みの戦闘力を持った恋愛バカだ
いつも島さんのことで頭が一杯で障害物はぶっ飛ばす
491名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 21:41:17 ID:TqcNZaHd
>>490
> テッカマンブレードのテッカマン並みの戦闘力
またまたぁ〜w
492名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 21:42:59 ID:vJaYUuoI
>>490
パンチ一発で校庭から屋上まで人吹っ飛ぶもんな。
493名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 21:46:30 ID:TqcNZaHd
>>492
日照権の問題から地下に校舎を作ったとかで、屋上が一回の半分しか無いとか?
494名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 21:50:00 ID:oBMi3XVi

            , 'i´ヽ  ゙i'、
..             i:::ヽ,:l__,l,.ノi
..             |::::ヾ,| !|ソ:|                   
            |::::ヾ,|.:V:|ソ:|       谷仮面の人GJ!
             ..|::::ヾ,|::  :|ソ:|     
             ト、_::::|::  :|;イ、    
         _,,.-‐' `ー '"::/ /  |   ̄`''ー-、
      r‐''"   ./  i\/  /    |     / ヽ
      /     /   | /;;;ヽ、 l ヽ /     ノ /}
     ノ |   >   |' }::{ ノ   \   / // ハ
     { ヽ |   {    | l:::l /   o /  .:{ /ノ / |
    / ヽ|   l     |ノ:::::{  (^ヽ/  .::i/ / ノ |
   / {  |  ヽ    |::::::l    \\.:::|  /.::: ノ|
   { ヽ、 ミ|   ゙、   |:::::l   /  ヽ ヽl:::/:::ノ.::::}
   ノ  ーニ:|    ヽ  |:::l   /    } }   -'''' |
  /,:::;;;;;;;:, |    ヽ  |:/  /   .::::| |'' ̄ ヽ |
  ノ  ニ- ::|     ヽ レ  / _,.-‐'"^ | |ヽ  ヾノ
 { ノ ____ヽ):::.   __ヽ_,,.=‐<   ヽ | |:::::;;;; ノ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|\
____________________|  |__

495ナイトメイジ:2008/12/05(金) 21:57:02 ID:A9USVJwz
22時から投下させてください
496名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 21:57:33 ID:dsfC0Iyn
>>493
いや、ごくフツーの学校だったはず

誰かが屋上からトラックの荷台に落ちたあと運搬されて千葉までブッ飛んだと勘違いしてたなw
497名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 21:59:46 ID:r89If27H
支援は自重しないぜ!
498名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 22:01:31 ID:vJaYUuoI
>>493
ごくごく普通の三階建ての(おそらく)コンクリ建築の校舎。
185kgの相手をブレンバスターの姿勢からボールみたいにブン投げるとか作中でやってた。
499ナイトメイジ:2008/12/05(金) 22:01:46 ID:A9USVJwz
なにも起こらなかった。
アンリエッタ姫にかけられた魔法は心を操る魔法。
解いても何かが目に見えるはずがない。
でも、いつも起こる爆発も起こらない
だからそれでいいはず。
──それなら、きっと……
──成功しているはず
ルイズはアンリエッタ姫の頬の上に手をかざした。
アンリエッタ姫の呼吸は穏やかに続いている。
この手で触れればきっと目覚める。
──起きたら姫様はどうするだろう
喜んでくれるだろうか。
それとも、怒る?
もしかして虚無の魔法が解けていなかったら、操られた心のままに私を殺そうとするかも知れない。
──きっと、大丈夫。
期待と少しの不安を胸にルイズはかざした手で頬にそっと触れた。
触れた手の中でアンリエッタの頬が動く。
次に瞼が細かく揺れ、薄くそれから大きく開かれた。
「え……?」
そこから流れるのは涙。
一筋、二筋。
涙の筋は重なり、また一筋となりアンリエッタの瞳より次から次に。
「姫様、どうなされたのです?」
「ルイズ?魔法……なぜ私にかけられた魔法が解けているの?なぜ?」
「え?あ……それは」
赤く染まるアンリエッタ姫の瞳に見据えられたルイズはぽつりと答えた。
「私の魔法で姫様にかけられた魔法を解きました」
アンリエッタ姫の震える両手が顔を覆い隠す。
手のひらの間から涙と嗚咽が漏れていた。
──なぜ、悲しむの?
ルイズにはわからなかった。
喜ぶのならわかる。
心を苛む魔法が取り除かれたのだから。
怒るのもわかる。
その魔法を書けた本人──クロムウェル──に怒りを感じないはずがない。
──なぜ?
なぜアンリエッタ姫がこんなに悲しんでいるのかルイズにはわからない。
「なぜ……魔法を解いたのですか。ルイズ」
「え?」
ルイズの問いに答えるのはアンリエッタ姫しかいなかった。
だだしそれは、ルイズの望むものではない。
「私はあのままがよかったのに」
「ひ、姫様?」
「魔法で操られていたままでよかったのに。そうすれば、ウェールズ様とずっと一緒に……。それなのに!ルイズ、あなたは……」
流れる涙と同時に言葉も流れでる。
どちらも止めどなくただ流れ出る。
「姫様、何を?」
「ああ、そうだわ。ルイズ。いいことを思いついたわ」
アンリエッタは突然立ち上がり、見えるはずのない空を仰ぎ見ながら笑うように言葉を続ける。
でもそれは本当に笑っているのだろうか。
「戻ってもう一度、魔法をかけてもらうのよ。そうよ、それがいいわ。それが一番いいのわ」
「姫様!」
ルイズのあらん限りの声が洞窟に響いた。
そんなに大きな声を出さなくてもアンリエッタ姫には届く。
目の前にいるのだから。
でもルイズにはそうは思えなかった。
地平線よりさらに遠くに届くような声を出さなければ届かないように思えてならなかった。
「お願いです!そんなこと言わないでください」
アンリエッタの手をぎゅっと握りしめる。
500ナイトメイジ:2008/12/05(金) 22:04:32 ID:A9USVJwz
そうしないともう会えなくなりそうだったから。
「姫様、本当にそう思っているのですか?ウェールズ王子が本当にここにいて欲しいと思っていると思っているのですか?
ウェールズ王子は操られているんです。あの時の姫様と同じように。
そんなウェールズ王子と共にあることが本当に姫様の望むことなのですか?そんなの間違ってます、嘘です、偽りです。
本当のウェールズ王子だってそんなことは望みません。絶対に。
ですから姫様……そんな嘘に身を任せるのはやめてください!」
息の続く限り一気呵成に言葉を出し続けたルイズはこれ以上はもう言えない。
息が切れてしまってぜいぜいと肩で息をする。
「ルイズ……」
アンリエッタが手に力がこもり、ルイズの手をしっかりと握り返す。
ルイズにはその手の感触がアンリエッタの心がここに戻ってきた証のように感じられた。
「嘘ではないよ。アンリエッタ」
だが、その心はアルビオンの風に吹かれた羽のように飛んでしまった。
それはどこに飛ぶのだろう。
もはや手の届かない遠くにか。
それとも


アンリエッタたちがたどった道の奥にわだかまる闇の中から現れた姿があった。
ぼんやりとした苔の光に照らし出されるのは見間違えようない。
「ウェールズ様」
柔らかな笑みをたたえ、アンリエッタのために片手を差し伸べるその姿はかつて生きていた時のまま。
「アンリエッタ、君を愛している。この思いは本当だ。嘘なんかじゃない。だから、わたしと共に行こう」
その手を取ることは夢を掴むのと同じ。
心地よい言葉に導かれ、アンリエッタの震える片手もまたウェールズに伸ばされる。
2人の手が触れるまであと少し。
「嘘よ!」
ルイズの声が心臓に突き刺さりそうになる。
そのためか、アンリエッタの手は指一本分を残して動きを止めた。
「ミス・ヴァリエールか。私の言葉のどこに嘘があるのだ」
「身も心も操られている死体の言葉に真実なんてあるはずがないわ」
「操られてなどいないよ。私は正気だ。そして、アンリエッタを想う気持ちも本物だ」
「だったら!」
ルイズは杖を突き出し、ウェールズを睨みつける。
杖にわずかな光が灯ったような気がした。
「この魔法であなたの嘘を暴いてやるわ!」
「それはさせられないな」
ルイズの呪文が洞窟の中に反響する中、ウェールズもまた杖を抜き、呪文を唱える。
わずかな詠唱が終わるとウェールズの杖には光が灯り、刃を成す。
「虚無の魔法が解かれてはアンリエッタと供にいることができないからね」
刃をまとう杖を振り上げられる。
その落ちる先にはルイズがいた。


アンリエッタの眼前には争い逢う2人がいた。
1人はウェールズ・テューダー。最愛の人。
もう1人はルイズ・フランソワーズ。一番の親友。
その2人が互いに杖を交えようとしている。
2人とも大切な人。
比べようもないくらいに大切な人。
ウェールズを止めるか、ルイズを止めるか。
選べるはずもない。
迷うアンリエッタの耳にウェールズの作ったブレイドが風を切る音が届いた。
ルイズの流れるような詠唱も聞いた。
そしてアンリエッタは2人の間に身を投げ出した。
501ナイトメイジ:2008/12/05(金) 22:09:14 ID:A9USVJwz
振り下ろされたブレイドが服を破き、肉を切り裂く。
噴き出す血が白い肌とくすんだ服を鮮やかに染め上げた。
「なにっ!」
アンリエッタは痛みに震える手で、肩で止まったブレイドを灯すウェールズの杖を掴んだ。
「アンリエッタ、離すんだ、離してくれ」
「いいえ、離しません。あなたにルイズを殺させはしません」
その細腕でウェールズの杖を止めることなどできるようはずもない。
だが彼女の手の中で杖はぴたりと動きを止めていた。
「ルイズ!あなたの魔法を!」
杖はまっすぐウェールズへ。
それに託される呪文の最後の一節もウェールズへ向けられた。
「ディスペル・マジック」
声は呪文となり、呪文は魔法へ。
それはウェールズ中を水のように流れる魔法を吹き散らした。


魔法の力で命をとどめていた死体は魔法を失えばどうなるのか。
無論それは命を再び失い、本来の姿であるただの死体に戻る。
アンリエッタの膝の上に頭をのせ、洞窟の床に横たわるウェールズのように。
「ねえ、ルイズ。ウェールズ様はね。最期に私を守ってくださったわ」
眠るように目を閉じている、しかし少しずつ温かみを失いつつあるウェールズの顔をアンリエッタは何度も何度もなでていた。
「私達を捕まえるのなら、声なんかかけなければよかった」
今日は何度泣いたことだろう。
何度も泣いたはずなのに、涙は涸れることなくウェールズの顔にぽつりぽつり雨のように落ちる。
「私の手でウェールズ様の杖を止める事なんてできないわ。それなのにウェールズ様は私の手の中に杖をとどめて、ずっと待ってくれたわ」
落ちた涙を指先で拭き取る。
拭き取るとまた涙が落ちる。
それもまたぬぐい取った。
「あの時ウェールズ様はきっとご自分を操っている魔法に打ち勝っていたのよ。だから、ああして私たちを助けてくださったんだわ。なのに私はルイズが魔法を解いてくれたのに、負けてしまっていた」
今度は自分の目をぬぐう。
朝露のような水滴が指をつたい、手の中に消えた。
「私はもう負けません。人を操る虚無の魔法にも、それを使うクロムウェルにも」
顔を上げるアンリエッタの目には悲しみとは別の感情が宿る。
流れる涙は既に無くなっていた。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ここまでです

今明かされる衝撃の真実
アンリエッタはディフェンダーだった!
クロス先を知らないとわからんネタですけどね
502名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 22:22:28 ID:XbKh77pb
乙〜
アンアン頑張った!よくやった!
503名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 22:29:32 ID:4679J5wA
GJでした。アンアンナイスファイッ!!!
あと>>494
とりあえず、ジャック自重しろwwwwwwwwwこんな所まで来るんじゃねぇwwwww
504名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 22:30:24 ID:5VwbMUgf
アンアンがまともなのがすっごく久しぶりに感じるぜ・・・乙!
505名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 22:38:50 ID:XRCFTKrX
>>485

すまん。
どういう素顔なんだ?
506名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 22:42:34 ID:rUdOh9BK
>>505
イケメン

覆面の素顔っていったらザ・モモタロウのモモタロウも中々
モンガー呼びだされねーかなw
507名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 23:03:24 ID:dsfC0Iyn
>>506
おしりふ〜りふ〜り♪ もんが♪ もんが♪
モモちんも良いけど、覆面モノならコイツは忘れちゃいけない

『そ れ は 私 の お い な り さ ん だ !』
イケメンではないけどチャイナな美女をGETした羨ましい男だw
508名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 23:06:22 ID:1JIUP25k
>>503
干<我々が召喚されたようです尻を貸そう>興
509名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 23:06:40 ID:rYmGN5Uk
>>507
召喚はされてるけどかなり長い間更新が止まってるんだよ……
510505:2008/12/05(金) 23:08:20 ID:XRCFTKrX
>>506

サンクス!
コミック、ヤフオクで探してみるか・・・
モモタロウもいいが、個人的には牛バカの方がわけわかんなくなりそうでいいw

>>507

変態仮面かw
ギーシュに召還されてましたな。

しかし、こいつが召還されたらルイズが気の毒すぎるw
511名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 23:14:27 ID:4MZ0oCKq
なぜか>>506のモモタロウでモモタロス思い出した
電王の人続き書いてくれ!
512名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 23:14:30 ID:dsfC0Iyn
>>510
ジョゼフに召喚させれば色々とorz状態なジョゼフという珍獣が見れる筈だw
513名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 23:15:51 ID:jSmsMyj1
狂介「それは我が家のお稲荷様だ」。
514名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 23:26:26 ID:Bowy0rlC
>>490

テッカマン並って、どのテッカマン?テッカマンって「異星人テッカマン」
という種族名の事だからテッカマン並といわれてもさっぱりわからんぞ。
テッカマン・ダガーなら三下だし、エビルなら凶キャラだが…


ところで「企業戦士YAMAZAKI」とかは召喚できないんだろうか?
毎回違う必殺技を使ってたから難しいか?
515名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 23:28:07 ID:VvMicBbw
谷の人に期待


しかし、島さんを好きすぎて一歩も歩けなくなる程島さんが好きな谷を島さんから引き離すなんて、
なんて恐ろしい事を……
516名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 23:28:48 ID:TqcNZaHd
あんたなら、あんたなら出来るよ!
517名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 23:37:29 ID:RNc/2cIi
YAMAZAKIは小ネタで既にあるよ
話も結構いい出来だったぜ

誰か岸和田博士の科学的愛情で書いてくれないかな・・・・
ツルベールが安川君ポジで
518名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 23:37:51 ID:o9IUI5Wh
>>514
小ネタにYAMAZAKIあるよ
519名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 23:48:58 ID:TqcNZaHd
>>517
……リクエストしてんの?
520名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 01:04:31 ID:eazps9pU
トニたけ漫画を文章で再現しろとはまた無理難題をおっしゃる…
トリステインロボ'08とか出てきてもインパクト弱すぎます博士
521名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 01:10:53 ID:n9Y5YqtO
魔砲は…気長に待つか
522名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 01:37:27 ID:agPEax4w
自分もリリカルルイズの人の復帰を信じ続ける
523名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 01:42:58 ID:ei2UCoSF
変態魔法ゼミナールというタイトルが思い浮かんだが自重する
524名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 01:45:09 ID:SsFDvIX1
なのは系は型月並に五月蝿いから正直あまり好きじゃないな
525名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 01:51:13 ID:uCYRvOgM
>>513
クーちゃん召還?
クーちゃんの性格的に透いないと物語展開させるの大変そうだな
透は透で人外にモテル(コトジノヌシ、ムビョウちゃん×2、シロちゃん、お鈴さん、玉ちゃん他)から話拗れそうだし

>>514
初代テッカマンが体育座りでのの字書き出すぞ
526ゼロのあやかし ◆9hRTcF3Vrc :2008/12/06(土) 01:55:53 ID:Zi2UHb4Q
えと、「あやかしびと」から『一乃谷愁厳』を召喚しようと思うのですが、
進路はグリーンでしょうか?
527名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 01:57:36 ID:HmfhqMXs
どぞー

支援
528ゼロのあやかし ◆9hRTcF3Vrc :2008/12/06(土) 01:59:03 ID:Zi2UHb4Q
では参ります、支援感謝。




ゼロのあやかし 〜使い魔の名は愁厳〜


これより語るは、
此処ではない空の下の
今ではない星の上の
そんな世界での出来事のひとつ。

一人の少女とその仲間達が、
空より来る災厄と繰り広げた
熾烈な戦いの記録。

その物語の始まりは、ひとつの流れ星であった。
そしてその物語の終わりは、ひとつの誓いであった。
529ゼロのあやかし ◆9hRTcF3Vrc :2008/12/06(土) 02:02:48 ID:Zi2UHb4Q
 ルイズにはそれが夢であると分かった。
何故か?
 それは答えるべくもない事だが、日常であれば人の首というものはそう易々とは飛ばない筈だからだ。
そしてルイズには、戦場に出る予定も処刑場に足を向ける趣味も無いからだ。
おまけに辺りは天も地も無く光り輝き影すら見えぬ、全く知らない場所だ。
人の首が飛んで来た方を見やる。
 先ほどから凄い音がしているが、それが肉を切り裂き骨を絶つ音である事を、まだルイズは知らないのだ。
それにしても心臓を何度も突き刺され、腕を切り落とされあまつさえ胴を真っ二つに断たれても、瞬く刹那には元の姿に戻っているのはいったいどういう事か。
それは疑うまでも無く人の姿をしていたが、その非常識ぶりは人ではない様に見受けられる。
 何度切り裂かれようと、何度突き刺されようと、何度断ち切られようと立ちはだかり、それがさも確定事項であるかの様に立ち向かう。
愚直の極みとも言えるその姿は、何故か酷く心を揺さぶった。

 ルイズの方向からは背中しか見えなかったが、それが男である事は髪型や服装から見て取れた。
同様にこちらを向いて、彼にそれ程の損傷を与えているのは長い黒髪の少女だ。
年の頃は自分より5〜6才は上なのだろうか?
 身長もそこそこ高く肉付きも良さそうなので、少なくとも同世代には見えないしそうではないと願っている。
特に女性の胸部装甲については意図的にスルーした。
 どちらも白い学生服と思わしき物を身に纏い、手には同じ形の片刃の反りのある大きめな剣を持っている。
が、男の方は両手持ちなのに対し少女は片手で振り回しては、容易く彼の体を薙ぎ払っている。
先ほど首が飛んで来た時にチラリと見えたが、この二人の顔のつくりはよく似ていて兄妹にすら見えた。
530ゼロのあやかし ◆9hRTcF3Vrc :2008/12/06(土) 02:07:37 ID:Zi2UHb4Q
 なのに決定的なまでに異なって見えるのは、その必死さと心から滲み出て来る魂の色――とでも言うのか、それが違い過ぎるからだろう。
それはルイズにも一目で分かった。
 目の前の少女が――彼の敵が『奪う側』である事を、傷付けて楽しむ事を、嬲り殺しに快楽を追い求める事が出来る事を、ルイズは見抜いた。
彼については顔を見なくても、それこそ一目合わせなくてもその背中が全てを語っていた。

彼は、私を護っている。

 何度となく挑んではその身を切りつけられ、そのたびに膝をつくがまた再び立ち上がる。
そして、両手で正面に構えた剣でまた少女に切り掛かるのだ。

ルイズは悲しくなった。
――まだ、また護られているのか?
自分はそこまで弱いのかと塞ぎ込みたくなる。
 魔法が使えない事不便さにはもう慣れたというのに、その事実をそれでも認めたくないと努力してきた。
父様も母様もエレオノール姉さまもカトレア姉さまも、執事やメイド達ですら必死になって応援してくれた。
なのに自分には魔法が使えない。
 次第に応援される事が当たり前になっていき、その応援すら飽き始められていき。
期待に応えられない事が悔しくて、諦めが混じり始めた事が悲しくて胸が潰れそうになる。
だから、トリステイン魔法学園に入学するのは環境をガラリと変える事によって心機一転させるのもあったが、
 結局の所、ルイズはその重い期待から逃げたのだ。
無論それだけではないし物は言い様という事でもあるのだが、心の底にこびりついた様な鬱屈した思いだけは騙し切れなかった。
531ゼロのあやかし ◆9hRTcF3Vrc :2008/12/06(土) 02:12:31 ID:Zi2UHb4Q
 ルイズは頭が良かった。
良かったが故に、自分が如何に世間知らずで我が侭で人に頼っているかが分かってしまった。
学園の誰も彼もが自分を指して『ゼロのルイズ』と呼んでいる事も知っているし、それでも見守っていてくれる人が居る事にも気付いている。
 自分が落ち込んでいれば、何やかやとちょっかいを出して発破かけてくれる者が居る事を知っていたし、
誰よりも公平である事で、ほんの少しだけ贔屓になっている事を知りつつも、変わることなく接してくれる者を知っているし、
口にも態度にも出さないがほんの些細な所作に滲み出てしまう気遣いを、必死に隠しながらもそばに居てくれる者も知っている。
 つまり、ルイズは家でも学園でも支えられ、助けられ、見守られながらも、その想いに応える事が出来ないでいる事に気付いてしまっているのだ。

 その上、ルイズは志高く恥を知る者だった。
立派で厳格な父様や母様、厳しく気高くあろうとするエレオノール姉さまに慈愛に満ちたカトレア姉さまの様な、貴族でありたいと願った。
 それは、確かに魔法なしでも人格者として並ぶ事は出来るだろう。
だがこの世では貴族とは魔法が使える者を指し、治めるべき領土と領民を持つ事こそが貴族の証であるとされる。
 三女であるルイズにも下級貴族が羨むくらいには領土を与えられるだろう、メイジであれば。
魔法が使えなくてもカトレア姉さまが取り成してもらい家に居る事は出来るだろう、扱いは知らないが。
が、それに甘んじる事は出来ないだろうし、そんな事になれば失意のままに命を絶つ事すら考えてしまうだろう、と自己分析している。
532名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 02:13:58 ID:HmfhqMXs
支援
533名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 02:14:20 ID:seOtjRU5
支援
534ゼロのあやかし ◆9hRTcF3Vrc :2008/12/06(土) 02:15:39 ID:Zi2UHb4Q
 それが、夢の中でまで見知らぬ誰かに護られているとなれば、酷く落ち込むのも致し方ないというもの。
そして明日こそが、今日までの努力が意味を成さなかった結果、等と呼ばれかねない『使い魔召喚の儀』である。
 そんな日を前にして、自分はベッドに入る前に何と祈った?

明日なんて来ません様に……

 どんなに失敗しようと繰り返し繰り返し挑戦してきたのに、明日の使い魔召喚はただの一度きり。
失敗すれば留年だ。
 使い魔すらまともに召喚出来ないならば、それはメイジではない。
留年とはいえど、実質メイジとしての資質など無いに等しい。
 つまり、家族も家の者達も学園にいる数少ない理解者達も、それこそ路傍の石に願いを託した事になる。
ルイズは自分の身に降り掛かった不幸よりも、皆の想いに応えられない事を酷く悲しんだ。
 だから、またしても護られているだけのこの夢にルイズは悲しくなってしまうのだ。
535ゼロのあやかし ◆9hRTcF3Vrc :2008/12/06(土) 02:21:11 ID:Zi2UHb4Q
  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


「刑二郎にはよろしく伝えておいてくれ」
 そう告げる彼の肉体は、余すとこ無く傷付けられボロボロだった。
その姿が薄らいでいき、ともすれば消えてしまいそうな中で二人でひとつであった彼の大事な妹は血を吐く様に問いかけた。
「お兄ちゃん、最後に一つだけ教えて!」
 普段は兄様と呼ぶ妹から、お兄ちゃんなどと呼ばれるのは久方ぶり――そう、呼べなくしてしまった彼としてはとても懐かしそうに思いながら、彼女の問いを待った。

「お兄ちゃんは幸せだった?今も、幸せ?」

 そうだ、妹は人に気を使いすぎて兄である彼にも心配を掛けさせた。
それ故に彼女を慕う者も居たし、ソレを妬む者も居た。
けれどこの問い掛けだけは、最期の問い掛けだけは彼と彼女自身の為だけのものだ。
 それ故に彼は微笑みながら答えを出した。

「ああ、幸せだったとも。今も―――――幸せだ」

 微笑みと共に放った言葉は――嘘。
なのにそれは悲しいくらいに真実で、切なくなるくらいに事実だった。
最高の幸せをつかむことで、周りが不幸になるのなら、第二の幸福を掴んだ方が良かっただけ。
 彼自身は生きていきたかったし、生徒会の仲間ともこれからの人生を歩んでいきたかった。
その為に妹を犠牲にする、そうすれば叶うのにそれでは幸せにはなれない。
彼にとっての幸せは妹が、刀子が双七君と幸せになってくれる事でもあるのだ。
536名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 02:22:37 ID:HmfhqMXs
支援

いまさらだけど18禁展開とかあったらスレ違いなので注意

キャラ的に難しそうだがw
537ゼロのあやかし ◆9hRTcF3Vrc :2008/12/06(土) 02:27:02 ID:Zi2UHb4Q
 二人の姿が完全に見えなくなる前に俺は歩き出した。
この先に何があるのかは知らないが、閻魔の前にでもしょっ引かれるのだろうか?
特に、三途の川が見えて来るのでもなく、ただ真っ直ぐに歩いていく。
 すると、誰かに見られている気がしたのでふと横を見た。
ふわりふわりと誰かの魂が漂っていた。まるで道案内をするかのように、俺に纏わりついている。
覚えはないが、懐かしい。懐かしいが、覚えがない。だが、ついてこいと言うのであれば。



――ついていこうじゃないか。



 暫く歩いたが、魂はこちらの体を気遣う様に辺りを飛び回りながらついてくる。
それが面映くもあったが、何故そこまで気遣うのかは本当に心当たりが無かった。
時々俺の前に立っては向かう方向を直している様だった。
 ふと前を見ると前を見ると魂が目の前で止まっていた。
何事かと足を止めると、先ほどから導いてきた魂は突如として銀色の円盤――というよりはむしろ鏡になった。
驚いて立ち止まるが、辺りを見回してみても最早何も周りには無く、銀色の鏡が目の前にあった。
538名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 02:29:41 ID:seOtjRU5
支援
539ゼロのあやかし ◆9hRTcF3Vrc :2008/12/06(土) 02:32:08 ID:Zi2UHb4Q
>>支援感謝です。自分にはエロスは無理ですorz


「ここに触れろというのか?」
 どうせ返事が無いものだと知りつつも、愁厳はそう質問した。
無論、答えが返ってくる訳ではなかったが、そうだとばかりにその鏡が淡い光を放ったように見えた。
 光が収まると、鏡の中に青々とした草原が広がっていて、マントを羽織った少年少女たちが居るのが見えた。
天国……にしては随分変わっているし、どう見ても日本には見えない景色にどうしたものかと思案していると、手前に女の子座りしている少女に目がいった。
 呆然とした表情のままこちらを見ているが、微妙に視線が合わない。恐らくこちらは見えていないのだろう。
特に指示も無いが、ここに向かえばいいのだろうか?

 次の人生とやらはこの様にやって来るものなのか、と何とはなしに違和感を感じながらも一歩を踏み出そうとすると、足元に何か居た。
「プギィ!」
……子豚だ、それは丸々太った小さな子豚だった。
 いつの間に足元にいたのか分からないが、この空間ではそういう事もあるのではないか?
 そう考えていたので、子豚の出現にはあまり疑問を抱かなかったが、何故こちらを見上げて唸っているのかは気になった。
「プギィ!プギィプギィィィ!!」
「……あー、何かいいたいのは分かるんだが、君の言葉はちょっと、その……分からん」
そういうとさらにヒートアップしたのか、子豚はさらに唸りだした。
 どうしたものかと首をかしげていると、何処からとも無くカラスが飛んできた。
そして、足元の子豚を両足の爪でガッチリと掴むとそのままどこかへ飛び去っていった。
「プ、プギィィィィィィィィィィ!!」
「なんなんだ、いったい?」
カラスはいつの間にか見えなくなっていた。
 子豚は何かを口にしていた様だが何と言っていたのか分からなかった、分かる筈も無かった。
全く訳が分からなかったが、分かる必要は無いと言われた気がしたので其のままにした。
540ゼロのあやかし ◆9hRTcF3Vrc :2008/12/06(土) 02:37:02 ID:Zi2UHb4Q
 暫くそのままカラスの飛び去っていった方向を眺めていたが、そのままでは何も始まらないと思い至って鏡に向き直った。
 すると、鏡の中の情景は少し分かっていた。
先ほど手前に座っていた少女が、こちらに背を向けて忙しなく怒鳴り散らしていた。といっても声が聞こえないので、時々横を向いた時の口の動きで分かっただけだが。
 そして、周りに居た少年少女たちが少女を見て笑って――哂っていた。

 愁厳自身、いじめというものを経験したことは無かった。
勿論、一乃谷の血に因って引き起こされた問題点は時としてからかいの対象にはなったが、常日頃から鍛錬を重ね真面目で面倒見のいい性格から、敵を作ることは少なかった。
 ……中には近づき過ぎた異性に酷く嫌われる事はあったし、容姿の事で妬まれる事も無かった訳ではないが、品行方正かつ実直に暮らしてきた為に表立って敵になる者は無かった。
 どちらかといえば、いじめている者を成敗しいじめられている者を助ける事が多かった。
だから少女はいじめられているものだと思ったのだ。
「俺をここまで連れて来たのは、彼女なのか?」
 その呟きに答えるかの様に、少女は背を向けたまま肩を落とした。

 愁厳は何時の世であろうと、何処であろうとその様な行為はあるものだと嘆息したが、助けを求めている少女を放ってはおけなかった。
 何より、本来ならば天国でも地獄でも辿り着き、何らかのけじめをつけてから転生するなりするのだろうが、誰だか分からぬ魂に導かれて此処まで来たのだ。
 ならばこの状況を打破するのが自分の役目、そう思っていた。


が、少女がこちらに向き直って手のひらを差し伸べた時、その光景の持つ意味が一変した。
 確かに眦(まなじり)には涙を湛え、口元も歪んでいて今にも泣き出しそうではあったが、瞳は死んでいなかった。
それを見た愁厳は自分を恥じた。
少女はただ単に助けを求めていた訳ではなかった。
 共に目の前の壁を打ち砕く為の仲間が、眼前に広がる絶望を討ち払う為の味方が欲しかったのだ。
541ゼロのあやかし ◆9hRTcF3Vrc :2008/12/06(土) 02:41:58 ID:Zi2UHb4Q
愁厳は何時かの時の様に、背中合わせに刑二郎が居ない事を悲しんだ。
そして先ほどの様に、隣に双七が居ない事を悲しんだ。
だが、目の前には少女が居た。
それで愁厳には決心がついた。
「分かった、今行く」

そうして、愁厳は目の前の鏡に飛び込んだのだった。



  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇





支援感謝です。
途中で指摘されていますが、PC版では18禁ゲーである「あやかしびと」から、
『一乃谷愁厳』を召喚してみました。
一応PS2版もありますので、そちらをプレイされるのでも話は分かると思います……そっちはやったこと無いですが。

あと、エロス描写は残念ながら無理ですw
ゼロ魔原作くらいのレベルなら何とかなりそうですが、どうなんでしょう?

続きは二週間後ぐらいまでには頑張りたいと思います!
というか、年末だよ何で年末に始めてるんだよとか思いつつも、宜しければ読んでやって下さい♪
542名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 02:49:00 ID:HmfhqMXs


つか18禁だと投下できねぇっつのw
原作レベルならありだと思うが

あやかしびと原作なみの熱い展開希望w

まぁあやかしびと値段あがりすぎてて体験版しかやってないんだがorz
543名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 02:55:49 ID:uCYRvOgM
乙です
あやかしびとは初代PC版しかやってないや
今後の展開に期待

シエスタが人妖になってそうだなぁ
544名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 02:56:22 ID:0lRR9x80

あやかしびとはPSPで出るとか聞いたが、ホントかいな?
545名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 03:59:31 ID:FEciCcNW
本当

ファミ通に記事が載っていた。
546名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 04:42:28 ID:z66gaVDI
あやかしの人、ベル様の人乙

アンリエッタがディフェンダーだと!?
あぁ、あのけしからん乳でワイドカバーするんですね。納得
547名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 08:28:00 ID:bL4VssTF BE:285941142-2BP(43)
乙。
実はPS2番に追加されたルートがニコニコに・・・・・
548名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 09:44:40 ID:ABbBl/3J
アン様の乳でワイドカバーなら、テファの乳ならどんだけ〜
549名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 09:55:57 ID:aYOBW9eK
>>506

亀レススマソ。
モンガー召喚…モンガーダンスで何故か自爆する30メイルゴーレムや轢き逃げアタックで吹っ飛ぶワルドを幻視したw
550名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 09:59:03 ID:mw27ezxy
おっぱいの価値イコール大きさ、という風潮はどうかと思うんだが、皆の意見を伺いたい。
551名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 10:10:03 ID:Z48s/E8S
そういえば『コータローまかり通る!』でおっぱいから煙幕を噴射してた人がいたなぁ…
あるいは綵雲の薔薇輝石の娘とか…
552名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 10:19:04 ID:iksEPcHh
>>550
小ささだろう
553名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 10:30:57 ID:PJbjh7kA
>>550
「おっぱいは大きくても小さくてもヨイものだ」と乳神様は申されました。
つまりお前はおっぱいマイスターなどではないッッ!!!
554名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 10:35:23 ID:aYOBW9eK
>>550

巨乳が好きだ。
ぶっちゃけテファとシエスタとカトレアとアン様に前後左右から挟まれたい

貧乳が好きだ。
ぶっちゃけルイズとタバサの発育途上の乳を存分にスリスリナデナデしたい。

年上のお姉さんの乳も好きだ。
ぶっちゃけエレオノールやおマチさんやシェフィールドを押し倒して揉みしだいて反応を楽しみたい。

無論普通の大きさの乳も好きだ。
モンモンの乳は一日中愛でても飽きる事はないだろう。

結論:乳=神、乳マンセー
555名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 10:37:36 ID:22SsAmgd
>554
よくわかった
つまり貧乳だとか巨乳だとかという大きさによるカテゴリーを超越したすばらしい乳をさす言葉
それが「神乳」という概念なんだな
556名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 10:38:26 ID:IjLqyD/e
学園の愛すべき馬鹿者達と、禁書目録の青髪ピアスに萌え談義をしてもらいたい……きっと『ツンデレ』と言う概念が認知され、ルイズとエレオノールさんが大変なことになってしまうから。
557名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 10:41:28 ID:mw27ezxy
>>554
なるほど、しかしタバサは貧乳じゃなくて無にゅグハァッ
558名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 11:05:26 ID:n0Euivrw
おぱーいはすてっきーですね
559名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 11:12:37 ID:aVKwNN+M
貧乳でも巨乳でも形良ければすべてよし
560名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 11:20:25 ID:56rJqP29
乳こそが世の理
561名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 11:36:13 ID:OIOY7Foi
ルイズとエレオノールが乳流れを習得しようと奮闘するのですね
562名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 11:49:54 ID:B3cjn4ef
北斗神拳の使い手を召喚し転龍呼吸法を伝授されたルイズ
圧倒的な胸囲を誇るようになったが、カップはAのままなのであった…
563名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 11:51:11 ID:mw27ezxy
そもそもハルケギニアにブラジャーってあるのか?
564名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 12:02:57 ID:6EpDqdrD
無い
565名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 12:03:24 ID:1bFLgxkT
>>563
無いです。原作できっちり書かれてたはず
566名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 12:03:37 ID:4pKewPNW
ナイトメイジのアンアンには魔剣使いになってもらって
カバーリング→金剛剣とかやっていただきたい
567名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 12:07:55 ID:mw27ezxy
>>564 >>565
アニエスなんかは、サラシとかをキツく巻いてるのかなぁ。
568名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 12:35:53 ID:56rJqP29
1890年頃からトリンプ創業者を召喚!起こせ!下着革命!
はともかくブラの原型は古代ギリシアからも見つかっているというのに
569名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 12:38:29 ID:1bFLgxkT
>>567
機能性を考えると多分きつく巻いてるんだろうな。って想像してたら萌えた。
自分できつめに巻くようにしてるけど、ちょっとだけ痛くて表情が歪むんだよ。
で巻き終わったあとにふう、っと一息。胸をなでるんだ。

ポンと胸の辺りを叩いて、撫でる。
別に女性であることにそこまで不利は感じていない。
男との腕力の差は歴然としているが、女性であることが武器になるし、彼女はその武器にこれまで助けられてきたこともしばしばである。
容姿の美しい彼女を見ると、メイジも傭兵も男であれば例外なく油断するか、下心を出す。
彼女にとっては手持ちの武器で戦えるかどうかこそが最大の関心事なのである。
しかし毎日しているが、こればかりはやはり苦しく、そのたびに彼女は少しだけ、自分が女性であることに不満を覚えてしまうのだ。

んー、妄想だけでアニエスが好きになってしまった……。
切欠を与えてくれたあなたに感謝を。
570名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 12:39:11 ID:23lrWiVo
乳もいいけど尻もいいだろ
おマチさんの安産型の尻に敷かれたい
571名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 12:40:07 ID:OIOY7Foi
ブラジャーがない=胸の下着がないとはいえないと思うんだが。
Tシャツだって元は下着だったんだし。
572名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 12:40:16 ID:23lrWiVo
あ、あとお臍から下腹部のラインも捨てがたいね
アニエスさんは個人的には腹筋が六つに割れているイメージ
573名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 12:40:53 ID:1bFLgxkT
>>572
ますます好きになった
574名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 12:41:47 ID:f7cpzFLe
おっぱいは素晴らしいものと言うけれど
腹の方が出てるようなおっぱいはダメだ
575名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 12:41:51 ID:a+mrZrGF
テファのおっぱいは脂肪分がそのまま出てくるから
出せば出すほどおっぱいがしぼむよ!しぼむよ!
576虚無の闇:2008/12/06(土) 12:44:36 ID:rbcd9szv
1時から11話投下したいんですが
かまいませんね?!
577名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 12:45:16 ID:mw27ezxy
テファのおっぱい≒シエスタ2人分≒アニエス4人分らしいね。
578名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 12:47:15 ID:tQk5hqfp
>>572
日本の女戦士キャラは、筋肉のキの字もないような細身怪力か
さもなきゃ異形マッチョのどっちかだからなあ
適度な筋肉ついた女体ってそんなに描くの難しいのかね
579名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 12:47:29 ID:mw27ezxy
……なんで私はSS書きながら、こんなにおっぱいについて真剣に考えてるんだろう支援。
580名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 12:47:43 ID:mXb01qx0
君の意見を聞こうッ支援!
581名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 12:54:55 ID:Z48s/E8S
>>566
何を言う。
ディフェンダーならば魔物使いだろうJK
こう、うぞうぞとした触手まみれの魔物をガイバーよろしく全身に装備してだな…
582虚無の闇:2008/12/06(土) 12:59:39 ID:rbcd9szv
ガリアの首都から500リーグもの距離があるサビエラ村だが、村としての規模は大きいほうに入る。
山間にあり商人なども頻繁には訪れない寒村だが、山を行く猟師や行商人などにとっては重要だ。住人の数が二桁という村も多数ある中、300を超す人口は町といってもよかった。
遅きことナメクジの如く働かざる事無能王のごとし、と囁かれるお役所仕事が、たった二ヶ月の間に二人ものメイジを送った事からも重要性が解る。
既に9人もの被害者を出しているだけあって、村人の顔は誰も彼も不安と恐怖で埋められてた。貴族である騎士に面と向かって口に出す者は居なかったが、家や木の陰に皆で集まっては、思い思いの感想を飛ばす。

「今度派遣されてきた騎士様は大丈夫かしら」
「よくわからんが、従者っぽい姉ちゃんは見るからに能天気っぽいな……」
「なんと、三人とも女の子とは……。全員合わせても、この前の騎士様のほうが、なんぼか強そうじゃなあ」
「でも貴族様が二人なら、何とかなるんじゃないかしら?」
「わからねえなあ。前の騎士様は、3日しかもたんかった……」

村人たちは騎士たちの実力を半人前と評価し、だからこそ二人でやってきたのだと判断した。
貴族の系統魔法が幾ら強いとは言え、吸血鬼は先住魔法を使えるのだから五分五分。長い寿命を持つ彼らのキャリアも考えれば、メイジのほうが不利なぐらいである。
まだ他人をいたわる余裕があった者は若い二人の死を想像して悼み、恐怖に駆り立てられた者は、自らの手で吸血鬼を倒すのだといきり立つ。
一行が段々畑を抜け、最上段にある長老の家へと入るのを見届けた後で、農夫たちは鼻息荒くクワやカマを手に村の広場へと集まった。

「俺たちの手で、吸血鬼を見つけるんだ!」
「俺は、あの、よそ者の婆さんが怪しいと思う」
「……あの占い師だとかいう、小さな婆さんか」
「そうだ! あのババアは確かに締め切った家から出てこねえし、怪しいぜ!」
「ってぇと、アレキサンドルとかいう木偶の坊が、グールって事か……」

村で切れ者と評判である薬草師レオンが犯人だと言い立てるのは、三ヶ月ほど前にこの村にやってきた占い師の老婆だった。
占い師という仕事はあるらしいのに、肌が悪いといって部屋から出てこない。この事実だけでも村人の不安を掻き立てるのには十分すぎたし、その息子の首には傷があった。
もはや吸血鬼はあの婆さんに違いない、という所で彼らの意見は一致している。怒りと疑いで顔を黒くゆがめた男たちは、すぐにでもその婆さんの家へと奇襲をかけそうなほどだ。
このままでは村の存続の危機になる。疑わしきは罰せよ、それで吸血鬼を狩れるのなら安いものだと。

「おい、レオン! 騎士様がお呼びだ! 話を聞きたいってさ!」

だから彼らは、ついに吸血鬼をこの手で血祭りに上げる時がきたのだと思った。




「その、マゼンタ婆さんが吸血鬼じゃ……では、ないのかと、皆は疑っとります」

大きなテーブルの下座に着き、薬草師のレオンはおっかなびっくり意見を話した。相手は幾ら子供とは言え、騎士であり貴族でありメイジでもある。
下手な事を言えば吸血鬼に何かされる前に命が危ないと、緊張で声がどもり、額には冷や汗が浮いている。
村長も村人が爆発する寸前であった事を知り、動揺を隠せないで居た。下手をすれば人間同士で殺し合いが始まるところだったのだ。
一度勃発してしまえばもう止まらない。被害者が出続ける限り負のスパイラルが村を襲い、あっというまに廃村へと追い込まれてしまうだろう。村を割っての戦争すら起こりかねない。
若い子供を持つ夫婦などは、既に何組も村を捨てて逃げ出している。このままでは争いが起きなくとも遠からず村は滅び、打ち捨てられた廃村へと姿を変えるはずだ。吸血鬼が居る村に移住する物好きなど居ないのだから。
583虚無の闇:2008/12/06(土) 13:01:21 ID:rbcd9szv

二人の騎士と従者、正確には一人の騎士と使い魔、そしてその友人は、どちらも無表情で村人の報告を聞いていた。

「おかしいわね……。もし貴方が吸血鬼だったら、そんな危険な村に、いつまでも居続ける?」

「そうね! 不自然なのね!」

「それに吸血鬼の老人って事は、少なくとも数百年は生きてる訳よね? そんなすぐに疑われるような事、するかしら」

レオンは言葉に詰まり、苦々しげに顔をゆがめた。吸血鬼が長い寿命を持つというのは知られていたが、恐怖に駆られてそこまでは考えていなかったようだ。
別に証拠などがある訳でもなく、なんとなく怪しかったから。そして疑うことで恐怖を紛らわせる対象がほしかったから、槍玉に挙げる対象として占い師の老婆が選ばれたにすぎない。

「そりゃあ、たしかに……。でも、逃げられねえのかもしれません。
顔を覚えてるヤツも何人か居ますし、逃げたら吸血鬼だって白状してるようなもんです」

これも確かにその通りだった。吸血鬼の疑いをかけられた人間に行く場所など無く、ここを追い出されたが最後、彼らは噂が消えるまで流浪し続けるしかない。
吸血鬼とはいえ食事をしなければ飢える。森の中に潜んだとしてもその期間が長ければ長いほど、人前に出られるような格好ではなくなってしまう。
日の下に出られないボロボロの洋服を纏った乞食のような者を、快く迎え入れる村などハルキゲニアのどこにもない。当然ながら疑いの目をかけられ、まともに行動できないだろう。

「まあ、とりあえずは……。そのお婆さんの所へ行ってみましょうか。他に手がかりも無いし」

「……わかった」

「了解なのね! きゅいきゅい」

最も年長に見える青い髪の従者は鳴き声としか思えないような口癖を連発し、仕えるべき貴族様へ勢いよく抱きつく。髪の色が同じなため、傍目からは姉妹のように見えた。
レオンと長老は半人前だと思っていた騎士様が意外な洞察力を持っていたと安心するべきか、変な従者を連れている事をいぶかしむべきか悩んだ。




長老とレオンに案内され、タバサ一行は問題の老婆が済むという家までやってきた。
平民が住む中でもみすぼらしい部類に入り、壁のあちこちに素人らしき継ぎ接ぎが残っている。どこから聞きつけたのか、家の周囲には何人もの村人が集まっている。
彼らから家を守ろうと、厳つい体格をしたアレキサンドルがドアの前に仁王立ちしていた。投げつけられる罵倒が気に障ったのか、その顔は怒りで真っ赤だ。

「うるせえぞ! 違うって言ってるだろうが! 黙りやがれ!
あぁ……騎士様! 誓って言いますが、おっかあは吸血鬼なんかじゃありません!」

「嘘をつくな! 俺は知ってるんだ! お前の首には、吸血鬼に噛まれた跡があるだろうが!」

「だから、山ビルに噛まれたって言ってるだろう! それに傷があるのは、俺だけじゃねえ!」

憎悪に包まれて一触即発の空気になった村の一角を眺め、ルイズは実に楽しげな笑みを浮かべてニヤニヤと笑った。横に居るタバサに突付かれて、慌てて表情を戻す。
長老の力強い一喝に諭され、村人たちは一時的に静かになったが、また何かの切欠があればすぐに炎上するのは眼に見えていた。このままでは村の未来は暗いだろう。
タバサが村人に対し落ち着いて行動してくれと注意を促し、簡易的にだが吸血鬼であるか否かを調べる呪文を知っていると嘯く。もちろん真っ赤な嘘だが、それだけでも村人たちは安心し、どうにか落ち着きを取り戻した。
散っていく彼らの背中を注意深く見守った後で、アレキサンドルは残ったタバサたちを家へと招きいれる。
584虚無の闇:2008/12/06(土) 13:02:49 ID:rbcd9szv

「……それじゃあ、どうぞ中へ……。おっかあは、あそこのベッドで寝ております」

中は外見どおり狭くて薄暗く、部屋数も一つしかなかった。土間の奥には無数の傷がある家具がいくつか並んでおり、壁際のベッドには問題の老人が寝かされている。
あちこち穴の開いた赤い寝巻きからは、水分を失った枯れ木のように細い腕が伸びていた。布団のほうも擦り切れたカーペットのように薄っぺらで、貴族の使う物とは天と地ほども差がある。
彼女が吸血鬼であり、哀愁を誘おうとしているのなら、中々上手い演技といえた。とてもアレクサンドルの血を吸えるとは思えないほどやせ細っていて、格闘する事は愚か、転んだだけで骨を折ってしまいそうだ。

「……おっかあ、騎士様が来た。吸血鬼かどうか、見分けてくれるそうだ……。これで、疑われずにすむぞ」

大男は怒鳴っていた姿からは想像も出来ないほど優しい手つきで母を抱き起こし、がい骨のように皺枯れた顔を見守る。
マゼンタ婆さんと呼ばれた彼女は体を震わせながら礼をすると、息子の太い腕に縋りついた。その顔にははっきりと恐怖の色が浮かんでいる。
流石にこの光景にレオンも毒気を抜かれたようで、何度か舌打ちをしては居心地悪そうに部屋を見回していた。
タバサが老婆へゆっくりと歩み寄り、杖を掲げながら出鱈目な呪文を唱える。空気が張り詰め、息をすることさえ躊躇われるような静寂が部屋を包んだ。
もちろんそんな呪文には吸血鬼どころか人とオーク鬼を見分ける効果さえなく、タバサは無言なままに答えを先送りにして頭を働かせる。

「それだけじゃ、ちょっと心もとないわね」

突如として杖を掲げたルイズに、アレキサンドルは老婆を抱えるようにしてガードした。レオンと長老は後ずさりし、シルフィードは叫ぶ。

「ダメなの! いきなり、そんな……」

「……勘違いしないでよ。別に、危険な行為はしないわ」

村に来る前など、面倒だから全部叩き潰してしまえば良いなどと吐いたルイズらしからぬ発言だった。
飛び掛ろうとしていたシルフィードは渋々ながら身を引き、ルイズがぶつぶつと呪文を唱えるのを黙って見守る。
現れたのは無数の氷の塊で、思わずタバサも杖を握る腕に力を込めた。しかし形状から意図を察したようで、使い魔と同じく沈黙を通す。

「ドアから光を入れるから、ちょっとどいてくれない?」

5つほどの薄っぺらい塊が中に浮いていた。一方は水面のように平らになっており、室内の光をあちこちに反射している。
慌ててドアを開けにいったレオンの後に続くように氷の群れは動き、薄暗い室内を裂いて一筋の光がリレーのごとく繋がった。老婆の右腕が照らし出されたが、肌が焼けるような変化は全く見られない。
黄昏時でさえ吸血鬼が出歩くには危険な時間帯なのだから、この老婆が人間の皮でも被っていない限り、吸血鬼であるはずが無かった。

「これで解っただろ?! おっかあは病気、それだけなんだ! 決して、吸血鬼なんてもんじゃねえ!」

唖然としているレオンへと満足げに言い放つアレキサンドルに追い出されるようにして、一行は部屋の外へと出た。




それからは村を回って誤解を解きながらの聞き込みを続けたが、効果は芳しくなかった。村の皆はマゼンタ婆さんこそ吸血鬼だと信じて疑わず、それ以外の可能性など考えなかったようだ。
村長の家で遅めの昼食を食べ、これからのことを話し合う。両親をメイジに殺されたという少女の話を聞いたりしたが、言葉遊びが気晴らしになった程度で、参考にはならなかった。
食事を終えてすぐ聞き込みを再開したが、どこの家を回っても怪しいというのはマゼンタ婆さん。それ以外は誰かと聞けば、息子のアレクサンドル。これでは話にならない。
585名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 13:03:21 ID:56rJqP29

586虚無の闇:2008/12/06(土) 13:04:12 ID:rbcd9szv

「あ〜! もう! やっぱり、村ごとどうにかするのが一番じゃないの?!」

焦れて愚痴を言うルイズとは対照的に、タバサは相変わらずの無表情を貫いている。シルフィードは満腹らしく、そういった意味では文句が無いようだ。
ニガヨモギというとんでもなく苦いサラダに辟易したルイズたちとは違い、タバサは皿に山ができるほどの量を喜んで食べていた。蓼食う虫も好き好きである。

「敵は狡猾。焦ってはいけない」

「はぁ……。わかってるわよ。もし見つけたら、酷い目にあわせてやるんだから」

吸血鬼が森に居た場合のために村の外周を回っているのだが、今のところ何の手がかりも無かった。薪を作るために森へ出入りしている人間も居るには居るようだが、最低限にしているために森のことは分からないという。
半日村を歩き回った結果、手がかりは全くのゼロ。村に来た当初は空高くにあった太陽も傾き、地平線へと飲み込まれようとしている。
昼間は人間の時間だが、夜の闇は吸血鬼の時間だ。幾らタバサとて背後から奇襲されれば万全とは言えず、そろそろ戻ったほうが賢明だった。

「ったく! 吸血鬼の分際で、私を煩わせるなんて……」

愚痴を言いながら地面を蹴飛ばす。異世界の魔法とて決して万能ではなかった。
拠点になっている屋敷へすごすごと引き返し、期待の眼差しを送ってくる村長に、嫌々ながらも手がかりさえ見つからなかったことを報告する。
それでも村長は努めて明るく労いの言葉をかけてくれた。ルイズは別に申し訳ないなどとは思わなかったが、うざったい小言が来ないのは喜ぶべきことだった。

「そうですか……。まあ、仕方がありません。騎士様がいれば、村人も安心できます。ゆっくり休んでください」

深々と礼をする長老が出て行った後で、ルイズたちは思い思いに体を休める。賓客用なのかそれなりに豪華な部屋で、少なくともあの老婆の家よりはよほどまともだ。
ルイズは部屋に不満がないわけでは無かったが、ああだこうだと騒いでも無駄だと知っていたので何も言わなかった。軽く肩をすくめると、適当なベッドに腰を下ろす。
タバサもそれに倣って適当に座り、従者役のシルフィードが持たされていた鞄から書物を取り出して読み始める。タイトルを覗き込んだルイズはあの吸血鬼の本だと知って興味を無くした。

「疲れたのね〜。やっと休めるの! きゅいきゅい」

あまり疲れを見せない二人とは違って、慣れない体で歩き回ったシルフィードはくたくたなようだ。彼女からすれば邪魔でしかない上着を颯爽と脱ぎ捨てたあげく、ベッドでゴロゴロと転がり回って豊満な胸の肉を豪快に波打たせる。
虚胸と貧胸の二人が合体しても届かないほどの豊かさに、ルイズは目を背けて唇を噛み締めた。自分の胸を軽く見降ろし、あからさまな舌打ちをする。全く気付かないシルフィードは仰向けになって伸び伸びとしていた。
タバサも何か思うところがあったようで、どうしようもなく胸を揺らしながらはしゃぎ回るシルフィードに杖を振り下ろす。

「きゅいっ……! い、痛いのね!」

「人間は服を着る」

涙目になりながらうーうーと唸るシルフィードを睨みつけ、タバサは普段より更に冷たい声で言った。木製とはいえメイジの杖ともなれば、魔法によって下手な金属よりも強靭になっていたりする。
竜の状態でも悲鳴を上げるのだから、人間形態で殴られればもっと痛い。本気で殴られれば痛いでは済まない事にだってなるだろう。
シルフィードは芋虫のようにひたすら身悶えを繰り返した後で、相変わらず無表情な主人に恨みがましい視線を送った。目じりに涙を溜めた上目遣いで、見方によっては十分に官能的な光景だ。
タバサが年毎の少年だったならば篭絡されたかもしれない。ただ残念な事にタバサは女性で、同姓にどうこうするような趣味は無かった。無表情を貫き通すタバサに根負けしたのか、頭を抑えながらも渋々と服を拾おうと立ち上がる。
だが上着に手をかけたところで、突然に"してやったり"という表情を浮かべた。
587虚無の闇:2008/12/06(土) 13:05:47 ID:rbcd9szv

「シルフィードはこれから寝るのね! 寝る時は裸だったりする人も居るのね! だから、服はいらないのね! るーるる」

タバサは眉をひそめた。貴族などはネグリジェなどを夜着とするのが一般的だが、裸で眠る事が特別悪くて不自然という訳ではない。
例えばキュルケなど夜の事情を行うものならば、疲れ果ててそのまま寝てしまうといった事態だって起こりえる。他人が居るなら何かしら着るべきだが、著しく問題にするほどでもない。
与えられたベッドも平民のものにしては上等な部類で、あの老婆の家の物と比べればよほど上質だ。春先の冷気なら十分に凌げるだけの毛布もあるから、そういう意味でも服を着ろと強制は難しかった。
ついに主人を言いくるめる事に成功した事が余程嬉しかったのか、シルフィードは能天気な歌を歌いながら下に手をかけ、指先にぶら下げながら振り回した。
豊満な胸をこれでもかと張るシルフィードと、諦めたのか杖を置いて書物を読み始めるタバサ。二つのメロンを憎らしげに見るルイズ。吸血鬼討伐任務中とは思えないほどシュールな光景だ。

「お姉ちゃ……。な、なに、やってるの?」

素っ裸で仁王立ちしているシルフィードをみて、先の昼食ではあれほど怯えていた少女も呆然としていた。
誰も杖を持っていなかったのが大きいかもしれないが、それにしても豊満なボディを持つシルフィードの全裸は衝撃的だったらしい。
女の子としてもその辺が気になるようで、たわわに実った二つの果実をチラチラと見ている。

「きゅい? なんなのね?」

「え、あ、その……。晩御飯……」

「ご飯! お肉! お魚! お肉! るーるる」

そのまま走り出したシルフィードの後頭部へ向かって、タバサは持っていた分厚い本をぶん投げた。
588名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 13:06:52 ID:79v5wmmD
sien
589名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 13:07:48 ID:mw27ezxy
村人を一人ずつ箱の中にでも押し込んで、それにインパス使えば見分けられるんじゃないかと思った支援。
590名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 13:09:08 ID:ms1+CX0A
支援
591虚無の闇:2008/12/06(土) 13:09:26 ID:rbcd9szv
以上で今回は終了になります。次回は吸血鬼お料理編。具体的にはハンバーグ
筆者的には銃杖読んでるんでエルザも好きなキャラです。幼女可愛いよ幼女。だから苛める

そういう描写があるのは最後の一部分だけにとどめてあるつもりなんですが

1.全部本スレ
2.全部避難所
3.その部分だけ避難所

読者の皆様に従おうと思います
592名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 13:09:39 ID:yoSlIqsp
赤く光っている
593名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 13:13:41 ID:mw27ezxy
2で、投下したら本スレに報告でいいと思う。
594名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 13:13:48 ID:QnsS4yok
投下乙であります!
赤く光りそうなので、2がいいかと
595名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 13:14:58 ID:mw27ezxy
申し訳ない、乙を忘れてました。
596名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 13:15:13 ID:ms1+CX0A
なんと強大な愛情……
乙!

具体的にハンバーグってことは、
ミンチよりヒデェってことか……
597名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 13:17:54 ID:56rJqP29
嘘だと言ってよ、ルイズ
598名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 13:25:03 ID:syRMpN4a
エルザ肉のハンバーグをきゅいきゅいが美味しくいただいてしまうわけかね
封神演義の伯邑孝みたいだなぁ
599名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 13:41:29 ID:rbcd9szv
了解です、では報告だけここでさせて貰いますね
支援ありがとうございました
600名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 13:50:11 ID:4pKewPNW
>>581
なんかアレだな
「ただいま寄生中」の線虫どもをアンアンが使い魔として召喚しちゃいそうだなソレ
正義の為に力を使うたびに、だんだん尻が気持ちよくなってくるアンアン……ある!
601名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 14:02:47 ID:9eSTHQWK
乙でした!

まあ、エロなら15禁の範囲ならここでも避難所でもOKだけど
グロとなるとまた話が別だからなあ。
避難所で投下して報告だけここで、ということでOKかと。
602名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 14:36:17 ID:uPJzZyda
>>599
ちょっと待ってください。
wikiを見れば更新はチェックできるんですし、わざわざグロを投下したことを本スレで報告することは無いと思います。
本スレで不味いから避難所に投下するんですから、わざわざ報告するのも変な話じゃないですか。

グロ無しの話は本スレに投下なさるんでしょうし、更新を見逃した人もその時に気付きますよ。
603名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 14:42:30 ID:rbcd9szv
>>602
了解、では避難所だけに留めておきます
604名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 14:44:22 ID:gB4Ew8lX
>>602
投下した事すら言うんじゃねえってどんだけ心狭いのよ……
嫌ならわざわざ見に行かなきゃいいやん

いちいち毎日wiki確認するより一度スレで告知してくれた方がいいよ
知らないうちに多数決で消えてたとか嫌だぞ
605名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 14:46:11 ID:rbcd9szv
ぬお……どうしよう

この話題で荒れるのも困るので、この書き込みの秒数下一桁で決めたいと思います
偶数:報告する
奇数:しない

お騒がせしました
606名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 14:51:17 ID:uPJzZyda
>>604
好きならチェックすればいいやん。

いちいち毎日スレを全てチェックするより楽ですよ。
仮に多数決で削除されることがあるとしても、本スレに報告しないでするわけが無いだろう。
そんなことしたら今度こそ終わる。

>>605
凄い大胆な案ですね、話し合うのでは無く運任せですか……
607名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 14:52:41 ID:1bFLgxkT
一つ言っておくが判断は他人に任せないほうがいいよ。特に不特定多数には。
こうした方がいいだろうと自分でよーく考えて行動。
間違えたり、指摘されたら謝る。

これが一番いい気がするな。

言質を取ろうとした時点ですでにその行動自体に自分で疑問を持っている証拠でしょ?
見て貰いたいと言う気持ちはよーく分かりますが、この欲求を殺して考えれば既に答えは自分の中で出ているはずかと。
608名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 14:54:06 ID:9yBkoobR
>>600
アナルウーマン乙。
この展開だと後方不敗は確実にウェールズだな。
609名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 14:55:30 ID:n0Euivrw
……時間が空気を読むとはな

ミニ奇跡を目の当たりにした所で、話題の続きといこうか。
いくぞ、すてっきーなおぱーいがおれたちをまっている(末期)
610名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 15:07:57 ID:IVE7sFfO
シルフィード(もちろん人間形態)のおっぱいも無視はできない。

そういえば、シルフィードの変身ってどれぐらいの自由度があるんだろう?
例えば「もう少し小さく」「もっとピンク色に」とかいうリクエストに答えられるのかどうか。
611名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 15:07:58 ID:512BZNrp
「聖☆おにいさん」の二人組召喚

スゴいのかスゴくないのか・・・・・・
どっちにしろあの雰囲気を文章で表すことはほぼ不可能と理解できた
612名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 15:08:54 ID:yoSlIqsp
兄貴な方々が胸板を晒し始めたようです
613名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 15:10:36 ID:3sSkoM32
ここで話し合わせ、荒らしたとして荒らし認定
こうですね、わかります。当てが外れて顔真っ赤wwwwwwww



おっぱいは両手で包めるぐらいのサイズが一番だろ
大きいばかりが能じゃない。小さすぎることを悩む女の子がいいんだ
大きいおっぱいが好きだというのなら、揉んでおおきくしてあげてこそ、だぜ!
614名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 15:11:18 ID:amoVBNsw
聖おにいさんって小ネタになかったか?
615名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 15:12:22 ID:1bFLgxkT
性技の戦士ジュッパツマンを召還
アンアンとウェールズをくっつけることに執念を燃やしレコンキスタと戦う。
もちろんアンアンはウェールズより先にお手つき。
616名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 15:16:11 ID:512BZNrp
>>610
じゃあ「むっつ」とか「やっつ」とかとか「硬く硬く、鋼よりも硬いおぱーいを」
とかのリクエストも可?

そこまでいくともうドミネーターのオーバースキルに近いな
617名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 15:20:44 ID:AxLflgNM
それは 乳というにはあまりにも硬すぎた
硬く 分厚く 大きく そして夢が無すぎた
それは 正に大胸筋だった
618名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 15:38:06 ID:HmfhqMXs
>>617
うまいんだがおかげでアドンサムソンしか思い浮かばなくなっちまったwww
619名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 15:38:54 ID:n0Euivrw
胸板といえばマッスル
マッスルといえばボディビルダー
ボディビルダーといえばシュワちゃん
シュワちゃんといえばラスト・アクション・ヒーロー

ジャック・スレイターが召喚されたようです
620名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 15:55:13 ID:k636DMCI
ダンテの胸板とキュルケのおっぱいに挟まれるルイズってのがあったな
621名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 15:55:18 ID:LXgrXz+e
州知事つったらコマンドーだべよ。
622名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 16:00:04 ID:AxLflgNM
子どもの為にクリスタルプレゼントのおもちゃ探しに奔走したり、妊娠したりするのもあるでよ


ターミネーターでも、さすがにワルドには勝てないんだろうなぁ……
623名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 16:00:45 ID:yoSlIqsp
ハリウッド映画における大統領だったら何があっても勝てるんだがなあ
624名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 16:03:00 ID:OLkskAdV
闇の人乙

村人の疑心暗鬼だったりで、ばあさんと息子がどうなるかわからん。
殺し合ったりだとルイズは喜びそうだけど。
吸血鬼はどうなるんかね、宣言通り酷い目に合うのか。魔王軍に降るのか。

そんなことより、おっぱいの方が気になったのは内緒だ。
次回も頑張れ
625名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 16:14:55 ID:pLTlwutK
「この宇宙のどこかに居る強力な使い魔よ、幻獣…獣人…ドラゴン…そうよ!ドラゴンがいいわ!
我が召喚に応じたまえ」

ホアァァァァア!!

胸板の東洋代表、ブルース・リーを召喚


日本人なら大仁田厚を召喚して
「大仁田vsギーシュ 電流決闘デスマッチ」
「大仁田vsフーケ  金網爆破デスマッチ」
「大仁田、ルイズvsワルド、ビダーシャル  有刺鉄線爆破コンクリート時限爆弾デスマッチ」
626名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 16:18:14 ID:AxLflgNM
ドラゴンでブルース・リーは旨いな!
続けるの難しくて出オチにしかならんだろうけどw
627名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 16:21:10 ID:LXgrXz+e
>>622
まあ他にレールガン振り回したりゲリラ戦がうまかったりするからそっちの方で何とか

そういえばT-0の人はどうしてるんだろ

>>625
>そうよ!ドラゴンがいいわ!
藤波さん天竜さんがアップを始めたようです
628名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 16:24:55 ID:yoSlIqsp
坂本龍馬が召喚されたようです
そして国王制度廃止へー
629名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 16:28:08 ID:1bFLgxkT
天竜イイナ

鞭打ち 爆発で気絶した天竜に対し
「ちょっとやり過ぎた」
ジャンボ・ルイズの発言
630名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 16:28:17 ID:2JXoTtC+
>>623
レッツパアアアリイイイイイイイイイイ
リチャアアアアアアアアドオオオオオオオオオオオ
631名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 16:29:24 ID:yoSlIqsp
>>630
あんたは純和製の大統領だろうが
632名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 16:29:29 ID:AxLflgNM
ピンポンから風間を召喚して卓球選手の反射神経を見せつけ……
いや待てよ、ゼロっつったら五島が居たな!
633名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 16:40:51 ID:AxLflgNM
でもって、マリコルヌがオババを召喚して
「かっちブーだな、ドラゴン」とか言い出すわけですよ

風系統だし完璧だ!
634名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 16:43:05 ID:rbcd9szv
>ハリウッド映画における大統領

今日はくしくも7月4日である。
君達は再び自由のために戦う。
暴政や圧政や迫害から逃れるためにではなく、絶滅をかけてだ。
私達は生きるために、存在するために戦う。
そして我々がこの戦いに勝利した時、
7月4日はもはやアメリカだけの祝日ではなく
我々人類が沈黙することなく
生きる決意を宣言した日として記憶されるだろう。
我々は戦わずして滅びはしない。
我々は生き続ける、我々は戦い続ける
そして今日我々の独立記念日を賛美するのだ!
635名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 16:50:32 ID:512BZNrp
はっはっは、みんな何を言ってるんだ
ドラゴンといえばストリーキングに決まってるジャマイカ
636名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 16:58:01 ID:690BmBM1
グロの線引きってどの辺なんかな?
637名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 17:01:19 ID:boPYhAPh
 モツがばら撒かれる程度……、かな?
638名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 17:01:23 ID:2JXoTtC+
腹からモツが出るとかじゃないかな
639名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 17:01:43 ID:UDzmyEfO
ヤバいドラゴンと聞いて真っ先に連想するのが竜機神とリューナイト・ゼファー(アニメ版メテオザッパー時)、
ドラゴンの聖闘士だった……


どんだけカオスなんだ俺.....
640名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 17:02:47 ID:7+HtVaRU
>>631
米国で売るつもりが911で出来なかったらしいな。

おかげで結構なプレミアついちゃったけど。
配信してくれないかなぁ・・・・
641名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 17:04:20 ID:2JXoTtC+
ヤバイドラゴンつったら
オーフェンのミストドラゴンとかディープドラゴンあたりか
パンツアードラグーンのアトゥムドラゴンかな

「狙え」
『ビグシオマ』
642名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 17:07:58 ID:syRMpN4a
藤波……天竜……



「海が好きーーーーーーーっ」(どっぱーーん)
643名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 17:09:24 ID:k5/dma68
ドラゴンというとFSSのドラゴン・・・・
成体は拙いから幼生を・・・・・

LED以外は自慢できる生き物っぽいし。
問題はルイズの寿命が持つかどうか。
成体になるまで150年、FSSの世界の人間の平均寿命は300〜400歳。

なお育てた特典として死人の復活若返り何でもござれの命の水が貰えます。
644死人の使い魔 ◆I9NRoyNg4k :2008/12/06(土) 17:15:54 ID:WryNSPs0
予約がないようなので、5分後より投下させていただきます。
645名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 17:16:53 ID:UDzmyEfO
ヤバイだけの竜ならデスザウラーだの暴龍だの大神龍だの結構居るよね九頭龍とかもか
646名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 17:21:33 ID:OKo9KM8k
つーかグロ禁止みたいに言われてるけど、テンプレにはそういうの無いんだよねー
暗黙の了解っていうか、読者が文句を言うから作者は避難所に行ってるだけ。現状ではどちらかというと騒ぐほうが問題になる部類だろ
ラノベだってグロい内容のものは結構グロかったりするしさ、一部がグロいってだけなら別にいいと思うんだけど
線引きが難しすぎてどうしようもないし、運営議論スレでみなの意見を言えばいいと思うぜ
俺がグロいと思うからこの内容は避難所だとかで、荒らしたい作家が目をつけるなら一番のホットポイントだと思うし
647死人の使い魔 ◆I9NRoyNg4k :2008/12/06(土) 17:21:33 ID:WryNSPs0
第二話

 翌朝、目覚めたルイズは寝ぼけながらみたグレイヴに驚いた。
一瞬、何故部屋に死体がなどという考えが頭に浮かぶ。
 そんなルイズの考えを知ってか知らずかグレイヴも目を開ける。
 私が起きたのがわかったのかしら?
着替えながらそんなことを思う。手伝ってもらうという考えも
浮かんだが、彼をみるとそんな気持ちなどなくなる。
 昨日寝る前に家事をさせてみようかなどとも考えていたのだが、
そんなものは似合わないし、自分の目の届かないところで
何かをさせるのは不安な気がした。
 着替えが終わったあと改めて彼を観察する。
見た目は二十歳代の後半くらいに見える。
黒髪は肩まで伸びていて肌は浅黒い。服装も変わっている。
少なくともトリステインでは見かけない。
 目に付く特徴の一つとして眼鏡もあげられる。
眼鏡じたいは珍しいものではないが、左目のレンズは
黒く、白い十字が描かれている。
伸びた前髪がレンズにかかっていることもあり
左目を見ることはできない。
 ただそのレンズの奥をのぞこうとは思わなかった。
その目を通るように大きな傷跡が縦に刻まれていたからだ。
もしかしたらレンズの奥の左目は無いかも。
 頼んでみれば眼鏡を外してくれそうだったが
確かめる勇気はなかった。

「ついてきて」
朝の準備を終えたあと、彼に声をかける。
 彼が立ち上がり鞄を手に持つ。
 かなりの長身だ、そして猫背で歩いている。
それがまた多少の不気味さを出していた。
「それ持っていくの?」
「まあいいわ、よっぽど大事なものなのね」
 アタッシュケースの中身を理解せずに
気軽に許可を出す。
 ケルベロスがどういうものかを知っていれば
許可は出さなかったかもしれないが。
648死人の使い魔 ◆I9NRoyNg4k :2008/12/06(土) 17:22:46 ID:WryNSPs0
 ルイズとグレイヴが部屋を出るとちょうどキュルケが
部屋から出てきた。
 キュルケにグレイヴのことを平民の使い魔だとからかわれる。
「なんであんたは私が、へ、平民を呼び出したのを知っているのよ」
 本当は平民じゃないのにと真実を言えない悔しさを混ぜながら答える。
それにグレイヴのことは学院長とコルベール先生しか
知らないはずだ。
「あら、結構うわさになっているわよ。ゼロのルイズが
平民を召喚したって」
 ゼロと平民を強調しながらキュルケが答える。
「昨日あなたが呼んだ箱の中身を気にしている人が結構いてね、
こっそりのぞいていたらしいわよ」
「立派なのは入れ物だけだったわね、残念ねルイズ」
 そんな言葉のあとにキュルケの使い魔の自慢が始まった。
サラマンダーでフレイムというらしい。悔しいが立派だ。
彼女の属性にも合っている。素直に認めるのはしゃくだが。
 不意にキュルケがグレイヴに名前を尋ねた。
「あなた、お名前は?」
「……………………」
 答えはない。
 あわてて答える。
「彼グレイヴっていうの、それと喋れないの」
 キュルケは驚いた顔をしたあと、残念ねと言い、
 お先に失礼とサラマンダーを連れて去っていった。
「なによあの女、自分がサラマンダーを召喚したからって」
 一人で愚痴る。グレイヴは相変わらずだった。

 食堂に着きグレイヴに声をかける。
「そういえばあんた何を食べるの?」
 人と同じもの?それとももっと別の何かだろうか?
そもそも食事は必要なのか?
 とりあえず隣の席に使用人用の食事を用意してもらっている。
その席にグレイヴを座らせるが食事をする気配はなかった。
「喋れないのって本当に不便ね」
 私の言っていること理解しているのかしら?
たまたま従っているように見えるだけで実は、
意志の疎通はできていないのではと不安になる。
649死人の使い魔 ◆I9NRoyNg4k :2008/12/06(土) 17:23:42 ID:WryNSPs0
 授業が始まる前ミセス・シュヴルーズがグレイヴについて
指摘したせいで、またゼロのルイズだの平民の使い魔だのとからかわれた。
 からかった生徒に反論しながら思う、彼はただの平民じゃない!と。
彼が喋れて自分の正体を説明できれば、きっとゼロの二つ名も
平民の使い魔という評価も返上できるのに。
 ミセス・シュヴルーズが騒ぎを収め授業を始めた。
先生の『錬金』の授業を聞き流しながらグレイヴのことを見る。
 私は魔法を使えない。正確には使おうとすると爆発が起きる。
そのためゼロと呼ばれているのだがその分、いやそれ故に
座学のほうは頑張っているのだ。今日の講義も予習は済んでいる。
 そもそもグレイヴは何者なんだろう?
ミスタ・コルベールが言うには魔法以外の技術で作られた
ガーゴイルらしいが、実際はどうなんだろう?
案外ただの平民だったらどうしよう。
 などと考えていたらいつの間にか授業は終わっていた。

 その日のコルベールは興奮していた。
 まだ触れたことのない未知の技術、それも非常に高度な。
その技術に触れることができるのだ。
 そのための準備は昨日のうちにしておいた。
といってもトレーラーを自分の研究室の近くに運んだだけなのだが、
それが非常に大変だった。
 タイヤがついているからと馬でひいてみたが
馬ではひけないくらい重く、学院の教師達に
応援を頼みやっと運んだのだ。
 はやる気持ちを抑えトレーラーに乗り込む。
 やはり素晴らしい。
 目を輝かせながら中を調べ始めるのだった。

 昼食の時間になりグレイヴと食堂に向かうルイズだったが、
ふと思いついたように言う。
「あんた食事はいらないんでしょう?」
 うなずくグレイヴ。
「なら部屋で待ってなさい。あとで迎えにいくから。
部屋まで一人で帰れる?」
 再びうなずき、グレイヴは部屋の方へ歩き出した。
 一人で行動させるということに多少の不安はあったが、
部屋に戻るくらいは大丈夫だろう。
食堂にいて何も食べないのは不自然だ。
周囲の人にとって彼はただの平民なのだから。
 食事が終わりデザートを食べているが、
またグレイヴのことをぼんやりと考えていた。
 最後の一口をというとき、何やら後ろが騒がしかった。
少し耳を傾けてみるとギーシュが一年生の女子と
揉めているらしかった。
頬をひっぱたく音が聞こえたが、ルイズにはどうでもよかった。
 最後の一口を食べながら再び考えに沈む。
ふと目をやるとギーシュがモンモラシーに
頭からワインをかけられていた。
そのあとギーシュの友人らしき人物がギーシュに
謝っているのが見えた。
「すまないギーシュ、壜を拾ったばかりに」
 心底どうでもよかった。
 デザートを食べ終えたのでルイズは食堂をあとにした。
650死人の使い魔 ◆I9NRoyNg4k :2008/12/06(土) 17:24:34 ID:WryNSPs0
 ルイズがグレイヴを迎えにいくとグレイヴが部屋の前に
立っているのが見えた。
 もしかして扉開けれないのかしら?
 そこで気づく、鍵をかけていたことに。
 でも鍵がかかっていたなら私のところに来ればいいのに。
しかし扉を開けようとして開かずに立ち尽くすグレイヴを
想像して少し可笑しくなった。
 よく見れば少し不機嫌なようにも見える。
 部屋の鍵くらい持たせていいかしら?
食事のたびに部屋の前で立たせるのは可哀想な気がした。
言うことには素直に従うし、鍵くらいなら渡してもいいだろう。
 あまり考えずに決断する。
 時間を確認すると授業にはまだ時間があった。
 ミスタ・コルベールに会いに行こうかしら。
何か分かったかもしれないし。
「グレイヴ、ついてきなさい」

 トレーラーの中にコルベールはいた。
朝からずっと休憩も取らずに中を調べていた。
 中に入ってきたルイズとグレイヴをみて、ため息をついて言う。
「素晴らしい技術です。」
「いったいどこで作られたのか、想像もつきません」
 それからいかにこれらが素晴らしいかを興奮しながら語り始める。
ルイズには難しいことは分からなかったが、とにかく凄い
ということは伝わった。
 改めてみると使い方の分からないものばかりだ。
 奥のイスを見る。
 あそこにグレイヴは座っていたのよね。
 するとコルベールが気になることがありますと
イスまで二人を連れて行く。
 コルベールの顔を見ると強ばった顔をしていた。
このイスに繋がっていたパイプを覚えていますか?と尋ねられる。
 このパイプがはずれグレイヴは目を開いたのだ。
記憶に強く残っている。
「私もパイプのことは記憶に残っていて調べてみました」
「そうするとそのパイプの先には血液、それも恐らくですが
人間の血液がありました」
「彼は血液で動いているのかもしれません」
 それはチェンバーと呼ばれるもので、血液を補給するものではなく、
交換するための道具だったのだが、コルベールにもそこまでは
分からなかった。
 ルイズの頭の中には吸血鬼という考えが浮かぶ。
 しかしその考えが聞こえたかのようにコルベールは否定した。
「元が吸血鬼という可能性はありますが、
彼は吸血鬼ではないと思います」
「少なくとも一般に知られている吸血鬼ではありません。
吸血鬼の特徴とあまりにかけ離れすぎています」
「じゃあ、彼は一体なんなんです?」
「分からないですが、ガーゴイルのようなもので間違いはないと思います。
人の血液で動くというのがつきますが」
「グレイヴは人間を襲うんですか?」
 怯えながら尋ねる。
「分かりません。ただ当分は大丈夫だと思います。
まだここに大量の血液が残っていますので」
「どうやって集めたのかはわかりませんが」
 ルイズには嫌な考えがというか、嫌な考えしか浮かばない。
651死人の使い魔 ◆I9NRoyNg4k :2008/12/06(土) 17:25:48 ID:WryNSPs0
「まあこれからも彼と付き合っていくなら
何らかの方法を考えなければならないでしょう」
 しかしと続けまたこの技術に対する賞賛になる。
「新鮮な血液を長期にわたり保存する方法はないのですが、
これはそれを可能にしています」
 血液のパックをみながら言う。
「本当に彼が喋れないのが残念です、是非とも話を聞きたかった」
 ルイズはコルベールの態度が気にかかり尋ねる。
「あのグレイヴのことは恐くないんですか?」
 彼は人間の血液で動く、いわば化物のようなものだ。
それなのにあまりに能天気なようにみえる。
「まったく怖くないといったら、嘘になりますがね」
 少し微笑みながら言う。
「しかし私は彼に何かをされたわけではないし、
これからも何かをされるとは思えない」
 でもとルイズが言う。
「言いたいことは分かりますよ、しかしですね、
この技術をみてください。」
「血液を新鮮な状態で保存する。確かに気持ちのいい
ことではありません」
「しかしこの技術が実用化されたら将来多くの
人が助かる可能性が出てきます」
「技術というのは扱う人しだいです。彼についても
同じことが言えるのではないでしょうか?」
 それを聞いてルイズは思う。
 そうよ主人の私がしっかりグレイヴの手綱を握っていればいいのよ。
 気持ちがかなり楽になる。
しかしそのためには人間の血液、もしくはそれに代わるものを
見つけなければならないのだ。そこで気づく。
「あのグレイヴはいつ、どれくらいの血液を必要をしているのですか?」
「分かりません」
 答えはあっさりしたものだった。
「必要になったら彼が教えてくれるでしょう」
「量については一度目のときに計測しましょう」
「あと、このことについても皆には秘密ですよ、
私も学院長にしか報告しません」
「分かっています」
 うなずきながらルイズは答える。
 しかし秘密ばかりが増える。
それもこれもみんなグレイヴのせいだと
少し疲れた顔をしながら彼のほうをみる。
すごい重要な話をしていたのに相変わらずの無表情だった。
しかし釘だけはさしておかなければ。
「いい、あんたの血液に関しては私が何とかしてあげるから、
絶対、ぜ〜ったいに人を襲ったら駄目だからね」
 グレイヴはうなずく。
 本当に分かってんのかしら。ため息をつきながら思う。
 しかし正体はどうであれ、彼は私の使い魔なのだ。
私がしっかりしなくては。
 再びそう強く思った。
652死人の使い魔 ◆I9NRoyNg4k :2008/12/06(土) 17:27:40 ID:WryNSPs0
以上で第二話を終了とさせて頂きます。
感想、批判、などありましたら
よろしくお願いします。
653名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 17:31:03 ID:a+mrZrGF
すごいやマサルさん セクシーコマンドー外伝からヒゲ部のメンバー

「たしか、マサルさんが目が光ってまぶしいと思ったら爆発みたいなのに巻き込まれたと思ったんだが」
「どうしたキャシャリン、こいつはなかなかいけるぞ!」
その辺に居た使い魔を串刺しにして食っているマサル
「うわぁあああああぼくのヘンリエッタがああああああ野蛮人に食われているぅぅぅううううううう」

「む?悪かったな」
と使い魔のマスターの少年に串を差し出すマサル
「ま、食えよ (キラン)」
「ふ、ふざけるなああああああ」
土のメイジだったのかマサルが地面に首まで埋まった
「なんてことだ!ここが砂場だったら死んでいるぞコンチクショー!」
「あわわ、これは夢や夢なんや」
マチャ彦が現実逃避している

「まぁお前ら落ち着け、底の禿じゃなくて責任者っぽいのが居るから俺が事情を聞いてやろうじゃないか」
ピッピピー

トレパンがふにゃふにゃしながらコルベールに事情を話す
「ドゥユゥ アンダスッターン」
「オウフ マイゴッ」

話が付いたのか戻ってきた
「どうもここは日本じゃ無いらしい」
「そんなのここの連中見れば判るでしょうが!」
「ということは・・・ここはアメリカだなっ!」
「そんなわけあるかっ」

ルイズはメソを使い魔にして
夜中、部屋から抜け出す謎の生き物を見て
トラウマになる
654名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 17:43:18 ID:aYOBW9eK
グレイウ゛の人乙です。
何も残らないほどの活躍をwktkして待ちます。
655名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 17:44:05 ID:7iimDw+5
>>652
乙!
血液が無くなった時の補充が大変そうだ…
あと、「」の中はあまり改行しない方が読みやすいかな。
656名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 17:44:58 ID:tce9HEqv
『フランケン・ふらん』から、ふらん召喚。

重病のカトレアも瀕死のウェールズも皆無事生還!
けど…
657名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 18:12:16 ID:yoSlIqsp
葛葉ライドウからライドウを召喚!
悪魔使役ってあっちではどういう認識になるんだろ
管から出してるだけで召喚とはまた違う原理だし
658名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 18:37:11 ID:EKxhQekJ
死人の人乙ー
平民の使い魔と知り合いにならなければシエスタもギーシュに怒られずに済むんだ!
あの決闘騒ぎの真の原因はやっぱサイトなんだな
659名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 18:40:34 ID:7zWPOrzL
>657
○○から○○を召喚!

って言う前に保管所ぐらい見ろよ
半分ぐらいは既出だぞ
660名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 18:44:57 ID:KUNxpLXN
>>643
「るいず」「ねえちゃん」「はらへった」だけで書いてる
けど真の意味で全く進まない 話が作れない


いっそのことカイエンをry
661名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 18:49:27 ID:wDfqGraV
>>660
無力なすえぞう力がそうぷ様とかを呼びそうだなww
662名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 18:51:59 ID:yLqt8WE5
何となく…
アニメ版ミスター味っ子を召喚…

陽一「シエスタねーちゃん!マルトーのおっちゃんは何処に行ったんだよ!」
シエスタ「陽ちゃん、マルトーさんはモット伯に無理矢理連れて行かれて…」
陽一「くそう、モット伯め!料理人を金や権力でどうにか出来ると思うなよ!」

陽一「やい、モット伯爵!マルトーのおっちゃんを返せ!」
モット「ふふふ、良いだろう。ならばミスター味っ子、料理勝負で貴様がかったらマルトーを返してやろう…
   ただし!貴様が負けたら貴様もワシの下で働いてもらうぞ!」
陽一「良いだろう!お前なんかに負けるもんか!」
マルトー「陽一、ダメだこんなヤツの言うことを聞いちゃ!」
陽一「まかしといてよ、おっちゃん。こんなヤツにオレは負けたりはしないよ!」
モット「ふふふならば勝負は3日後、○○で勝負だ!」


さらわれるマルトーというい珍しいシュチュを思い浮かべた。
663谷まゼロ:2008/12/06(土) 19:02:15 ID:f5GPZNHd
予約がないようでしたら、19時05分から投下させていただきたいと思います。
664谷まゼロ2話:2008/12/06(土) 19:05:09 ID:f5GPZNHd
ルイズは谷を呼びたしたことに心底がっかりしていた。
呼び出した使い魔が、幻獣や動物であれば、主人の身を守ったり、
秘薬などの素材を主人のために見つけてきたりすることが出来、ルイズを大いに満足させたであろう。
しかし、自分が呼び出したのは人間で平民。
使い魔にとって一番重要である『主人の身を守る』ということすら出来ないように見えた。
加えて、『コントラクト・サーヴァント』が出来ていないとなれば、落胆もひとしおである。

そして『主人を身を守る』ことが使命であるはずの使い魔は、
今その主人に対し、拳を振り上げていた。

「え?」

間の抜けた声を上げたルイズ。しかし、この状況が理解できないほど頭が回らなかったわけではなかった。
目の前の使い魔は自分を殴り飛ばそうとしているのだった。

ルイズは慌てて頭を下げた。その僅か上を谷が振りぬいた拳が通り抜ける。
標的に当たらなかった拳は、窓ガラスを盛大な音をたてながら叩き割った。
ルイズが信じられないものを目の当たりにしたかのように、驚きの声を上げた。

「ちょっと何よ!?貴族に!使い魔が主人に!手を上げるなんて信じらんない!
 どうなるかわかってんの!?なんとか言いなさいよ!」

だが、その言葉が無意味であることにルイズは気がついた。
谷の耳には何も届いていない。今もルイズを殴り飛ばすことだけに意識を集中させている。
異様なまでの殺気を発しながら。

ルイズは喉をならして唾を飲み込んだ。
自分の主人に手をあげる使い魔なんてルイズは聞いたことがない。
ルイズは谷から逃れるためにベッドどから降りた。谷がおもむろに歩いてそれを追う。
壁を背にしたルイズは逃げ場を失っていた。その時杖をもっていなかったし、抵抗する術は持ち合わせていなかった。
ルイズは竦み上がりそうになりがらも、心を奮い立たせ、谷に言った。

「わたしが何をしたっていうのよ!?」

ルイズが何をしたか。そして、なぜ谷は怒っているのか。
それらの答えはすべて、ルイズが『島さん』をバカにしたことに帰結する。
665谷まゼロ2話:2008/12/06(土) 19:07:32 ID:f5GPZNHd
谷にとって『島さん』はかけがえのない存在である。

谷は幼い頃より自分の意思で仮面をつけていた。谷が居た世界でも、日常生活で仮面をつけるということは、異端であった。
だから、彼は周りの人間からは奇異の目で見られ、変人扱いされてきた。
本人はそのことに関して毛ほども気にはしていなかったが、そんな状態でまともな人間関係なんて築けるはずはなかった。
だが、それはある意味本人が望んだことであるようであった。谷は望んで他人との間に壁を作っているのだった。

人は、誰しもが人に恋い焦がれる時がある。
ある者は、幼稚園の保母さんが初恋の相手かもしれない。
ある者は、近所の幼馴染が相手かもしれない。

だが、谷は『島さん』と出会うまで、他人に恋をするどころか、信じられる人すらいなかった。

そんな谷が初めて他人である『島さん』を好きになったのだ。
広い世界で『唯一』好きな、大好きなヒト。それが谷にとっての『島さん』であった。

その『島さん』をルイズにバカにされたのだ。
谷には許すことができなかった。

谷は、自分の怒りを買うものに対して、容赦という言葉を持たない。
年端もいかない子供に対しても、大人げない態度で虐げることができるし、
大勢の不良であろうと、短刀を持ったヤクザであろうと、たとえ女であろうと、
その拳をもってして殴り飛ばすことになんの迷いもない。

ルイズもまた、谷が容赦すべき相手と認識するわけがなかった。
谷は再び拳に力を込めた。

「てめェ!よくも島さんを!!ゆるさん!」
「シマ、シ、シ、シマサン!?」

再びルイズに対して拳が振るわれた。
その動作自体は比較的遅く、ルイズでも間一髪避けることができた。
だが、ルイズは避けたあとに起きた出来事に驚愕した。

谷が放った拳は空を切り、そして壁にぶち当たった。

普通なら、石造りで出来た壁なんかを素手で思いっきり殴ろうものなら拳のほうが壊れてしまう。
しかし、谷は違った。

ルイズの耳に轟音が響いた。

恐る恐る谷を見てみると、衝撃の光景が目の前に展開されていた。
谷が素手のパンチで壁をぶち破ったのだ。
谷の、バカが二回付いても足りないぐらいの馬鹿力が可能にさせる破壊力であった。
壁は破片となり粉々に砕かれ、人一人が余裕で通れるほどの巨大な穴が出来ていた。
666谷間ゼロ2話:2008/12/06(土) 19:10:13 ID:f5GPZNHd
「ちょ、ちょっとなんなの!?戦争でも始まったの!?」

そう叫んだのは、先ほどまで就寝中であった、ルイズの隣の部屋の女性であった。
名をキュルケ。ルイズのヴァリエール家と宿命関係にあるツェルプスト―家の者である。
ルイズとは同じ学年の生徒ではあるが、家同士の因縁があるためか、いつもいがみ合っている関係である。

しかし、今のルイズは混乱していた。
誰でもいいから、助けが欲しかった。なぜなら自分の使い魔が間違いなく自分に敵意を向けているのだから。
そして、自分にはどうにかする術がなかった。

ルイズは、谷が作った壁の大穴から、キュルケの部屋に飛び込んだ。
そして、キュルケが寝転がっているベッドに飛び乗った。

「ちょ、ちょっと何をやってるのよあなた!ここが誰の部屋かわかって?ルイズ。
 っていうか、なんで人の部屋の壁を壊してるのよ!」

「わたしの部屋の壁でもあるわよ!!ちょ、ちょっと助けなさいよ」

「助けるってあたしが?ヴァリエール家のあなたを、このツェルプストー家のあたしが?冗談言わないで」
「この状況で冗談なんて言えるわけないでしょ!!?あの壁見たでしょ!?」
「あの壁がどうしたのよ?どうせあなたが魔法を失敗してぶち壊したんでしょ!?」

ルイズは歯ぎしりをした。

「っ違うわよ!!そんなことできるわけないじゃない!わたしの使い魔が素手でぶち破ったのよっ!!」

信じらんない、あり得る筈がない、といった風に目を見開き驚きを隠せないキュルケが言った。

「あの平民の使い魔が!?それこそ冗談でしょ!?
 素手で学院の壁が壊せるわけないでしょう!?っていうかアレ……」

キュルケが、そしてルイズが息をのんだ。
そこには壁の穴を通り抜け、ルイズたちに視線を向けている不気味な白い仮面の男がいた。
心情を表わす顔を隠し、余計に恐怖をかきたてるのに一役買っている仮面が目に付いた。
それを見ると、先ほどの谷とルイズのやり取りを知らないキュルケも理解できた。
その目の前に立つ男が、明らかにルイズに敵意を抱いていることを、そして自分も巻き込まれていることを。

「ふ、フレイム!!!」

キュルケは思わず自分の使い魔の名を呼んだ。
部屋の隅の闇からのっそりと、虎ほどの大きさの真っ赤なトカゲが現れた。
尻尾が、燃え盛る炎でできていた。チロチロと口から火がほとばしっている。

このフレイムという使い魔は、谷と同様、使い魔召喚の儀式で呼ばれた生物であった。
サラマンダーのフレイムは主人であるキュルケの身の危険を察知した。
そして、その原因であると思われる谷の前にその大きな体を盾にし立ちはだかった。
フレイムの口にから、熱気が溢れ出す。
炎を吐いて谷を追い払うつもりであった。
だが、それは成功しなかった。
667谷間ゼロ2話:2008/12/06(土) 19:13:02 ID:f5GPZNHd
「邪魔だ、このトカゲめ!!!」

「きゅおっ!!?」

谷は、片手でフレイムの頭を鷲掴みにし、そのまま上に蹴り飛ばした。
天井にフレイムが激突し、部屋が僅かに揺れる。
パラパラと天井の破片が落ちてくるが、肝心のフレイム自身が落ちてこない。
フレイムは完全に天井に埋まってしまい落ちてこないのだった。

「う、嘘でしょ。あたしの自慢の使い魔が……」

頭の中が絶望に溺れたキュルケも、ルイズの使い魔の異常性に気がついた。
そして何でこんな理不尽なことに巻き込まれているのかと、憤りを感じていた。
キュルケは、ルイズの服をとっ掴んで問い詰めた。

「なんなのよこれ!?あんなのに殴られでもしたら、頭にコブどころじゃ済まないわよ!
 あなた自分の使い魔に何をしたの!?何をどうしたらあんなに怒らせられるのよ!?」

「そんなのわたしだって知らないわよっ!……あっ、もしかしてシマサンっていう女をわたしが悪く言ったから?」
「誰よ!?そのシマサンっていうの!?」
「タニが好きな女の名前よ!」
「なに?好きな女をバカにされたから怒ってるの!?……それなら」

キュルケとルイズは顔を見合わせた。
そして、無言で二人は一つの答えに縋りついた。谷に聞こえないように、こそこそと話した

「なら、今度は褒めるのよ!褒めて褒めまくって褒めちぎるのよそのシマサンっていう人を!
 そのシマサンっていうのはどんな人物なの!?」

「な、名前しか知らないわよ!」
「ちょっと何よそれ!あの男殴ろうと拳を振り上げてるわよ!あたし死にたくないわ!
 なんでもいいから褒めるのよ!!!」

「そんな!どうやって言えばいいのよ!わからないわ!!」

キュルケはチッと舌打ちをした。
そして、拳を振り上げている谷に向って愛想のよい笑顔で言った。

「あ、あなたタニっていうのかしら?ルイズと違って、あたしはそのシマサンを素敵な女性だと思ってるわよ?」

知りもしない女性を褒めることは滑稽としか言いようがなかった。
ルイズはこんなことで谷が止まるはずがないと、どこか確信めいたものを抱いていた。
だが、物事は二人の予想を反した。
谷の振り上げた拳が、ピタリとその動きを止めたのだ。
668名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 19:14:43 ID:EzdYumED
しえん
669名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 19:15:03 ID:OnoIr2Dj
フレイム追悼支援
670谷まゼロ2話:2008/12/06(土) 19:15:28 ID:f5GPZNHd
しめた!

キュルケは赤く燃えるような髪をかきあげながら、一気に責め立てるように言った。

「もうシマサンったら、このあたしでさえ、一目置いちゃうほどの美人じゃない?
 そんなシマサンが想い人なんて、もうタニったら隅に置けないわね。ねえルイズ?」

突然話を振られて、慌てふためきながらもルイズは相槌を打った。

「え!?……え?……え、ええ!そうねっ!わたしもシマサンは素晴らしいと思うわ!!」

ルイズもキュルケも必死であった。

「そうよ、あの艶やかに煌めく長くて綺麗な髪なんて最高よねっ!ね、ルイズ?」

髪がショートだったらどうするのよキュルケ!とルイズは心の中で責めた。

「そ、そうね!それに、スタイルも出るところは出て引っ込むところは引っ込んでて抜群よねっ!ね、キュルケ?」

何よ、もしもあなたみたいに貧相な体つきだったらどうするのよルイズ!とキュルケは心の中で責めた。

っていうか、またあたしに振るんじゃないわよルイズ!!

まるで、導火線に火がついた爆弾の押し付け合いをしているような有様であった。
完全に想像による島さんを褒める言葉。
そんなもので谷が、どうにかなるかどうかは二人はわからなかった。
二人は谷の反応を待った。
谷はしばらく無言で固まっていたが、ふと呟いた。

「それは嘘だろ」

やっぱりダメだった!

やはり、こんな嘘が通じる筈がなかったのだと二人は後悔した。
そしてキュルケが悪あがきをする様に、取り繕った。

「ルイズが言ってたのよ!タニがシマサンことを語っているの聞いてると、
 シマサンがどんな女性か容易に想像できるって!それはタニの想いの強さがそうさせるんじゃない?
 そんなに想われてるなんてシマサンが羨ましいわ!凄いわシマサン!ねえルイズ!?」

「え!?……え、ええ!!」

完全に詭弁であった。
タニのこともシマサンのことも全く知らない。その上での発言であるから出鱈目もいいところである。
しかし、思いもよらぬことが起きた。
671名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 19:17:34 ID:LwvheDDO
シズナマン支援
672谷まゼロ2話:2008/12/06(土) 19:17:56 ID:f5GPZNHd
谷が頭をかいて、まるで照れているかのような素振りをして言ったのだ。

「そっ、そうか!?そうだろ!?しっ、島さんは、凄いイイんだ!運動神経もいいんだぜ!」

まるで自分の父親はパイロットなんだと自慢する子供のようだった。
仮面で表情はまったくわからないが、今さっきまでの怒りようはどこにやらといった感じで、
本当にうれしそうに喋っていた。

心の底から『シマサン』という人間が好きなのだと、ルイズとキュルケは理解できた。
危険から逃れられたのがわかったせいか、つい興味本位でキュルケは谷に聞いてしまった。

「……そのシマサンってタニの恋人なの?」
「こいびっ……!」

恋人という単語を聞くと、谷は物凄い勢いで後ずさり、
壁の方が壊れるのではないかというほど、背中から壁に激突した。
そして、部屋の中央に戻ってきた谷が慌てふためいた様子で言った。

「いっいや、違うんだけどさ。へへっ。それに、ま、まだ告白もしてないんだよ」

谷は委縮しきっていた。
そんな姿を口をポカンとさせ見ていたルイズは、谷のポケットから一枚の紙がヒラリと落ちたのに気づいた。
ルイズは、そのことに気が付いていない谷に先んじて、その紙を拾い上げた。
それは島さんが写っている写真であった。ハルケギニアには写真は存在しないので、
ルイズにはそれが、精巧な絵に見えた。

「なによ、この絵。いや、これ絵なの?まるで鏡に映った像みたいに鮮明……。
 っていうか、この絵の女の人がもしかしてシマサンってっていうヒト?」

キュルケはルイズが手に持っている写真を横から覗き込んで言った。

「あら、確かに美人ではあるわね、こうなんか抱擁力がある優しさと、リンとして引かない強い部分をもってそうな……」

なに適当なことを言ってるのか、とルイズは心の中でキュルケを責めた。
せっかく谷の怒りが収まったのに、下手に何か言って逆戻りになったらどうするのかと。

突然キュルケに向ってビシリと指をさして、谷は力強く叫んだ。

「そう!そのとおりだ!!」

キュルケの適当な言葉に谷は同意した。

「ど、同意するわけ……?」

思わずズッコケそうになるほど、ルイズは呆れてしまった。

「……」
「……」

「写真返せ」

谷は、乱暴にルイズから写真をひったくった。
そして、大切なものなのか、折り目が付かないように細心の注意を払いながらポケットの中に写真をしまった。
673名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 19:18:12 ID:pVHZ/cWQ
何なんだこの異様な緊張を強いる状況は支援w
674谷まゼロ2話:2008/12/06(土) 19:20:13 ID:f5GPZNHd
谷は頭をガリガリと掻いた。
今度は、ルイズに対してではなく、現状について苛立ちを感じていた。
天井に向って谷は叫んだ。

「夢にしちゃ長すぎるぞ!しかも面白くねェ!オレだって暇じゃねェんだぞ!……島さんにも会えねェし。
 ……っさっさと夢から醒めろオレ!……っこうなったら逆に夢の中で寝てやるぞ!」

谷は寝ている間に、夢から醒め現実に戻るんじゃないかと考えた。
ズカズカと足音をたてながら、自分が開けた穴からルイズの部屋に戻っていった。

「……夢ってなによ?ルイズ」

当然の疑問であった。ルイズはキュルケの疑問に答えた。

「タニはここを自分の夢の世界だと思ってるのよ。でも、ここが現実だったら別の世界だとか言ってたから、
 ハルケギニアのことなんて知らないとこから来たっぽいことはなんとなくわかるんだけど……」

キュルケは、谷の心情が少し読めた。読めたからこそ嫌な予感がしていた。

「それって不味いんじゃないかしら」
「は?どこらへんが?」

「……多分、タニは薄々っていうかほとんど気づいてるけど認めたくないのよ。
 ここが現実だとしたら、シマサンに二度と会えないかもしれないんだからねえ」

ルイズはハッとした。その通りかもしれないとも思った。
そしてルイズにも何が問題かわかった。
使い魔は呼び出す魔法はあっても、送り返す魔法なんてものは存在しない。
何故なら呼び出された使い魔は、その生涯をその主人と共にすることが大前提だからである。

そして谷も、どうにかできるならば、ルイズがとうに送り返すか何かしているはずということも、
ルイズの態度から薄々読み取っているのかも知れなかった。
だから、谷にとってここは夢の世界でなければならないのだった。

もし、その谷がここを現実としっかり認識して、愛しの『シマサン』と会えないとわかったならば……。

ルイズとキュルケはゾッとした。

キュルケは片手を上げて、にこやかに言った。

「じゃ、あたしは寝るから。もうあたしを巻き込んじゃダメよ?」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!!わたしどうすればいいのよ!?」

キュルケはタヌキ寝入りを決め込んでいた。
ルイズは頭を抱えて、ブルブルと震えていた。

「……っ!ど、どどどど、どうしよう。なんなのよあの使い魔っ!」

ルイズは得体のしれない仮面をつけた使い魔に振り回されっぱなしであった。
明日以降のことを考えると不安を感じずにはいられないルイズであった。
675谷まゼロ2話:2008/12/06(土) 19:22:57 ID:f5GPZNHd
投下終了です。支援ありがとうございました。
因みに、フレイムはちゃんとこのあと救出されてます。
676名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 19:25:32 ID:B3cjn4ef
どうなんだこれからw
GJでしたーw
677名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 19:25:42 ID:aYOBW9eK
谷仮面の人GJ!
哀れフレイムwww
次回に超wktk
678名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 19:53:13 ID:1bFLgxkT
乙でした。
原作は知らないけど、谷君強い……
そしてどんだけ島さんが好きなのかと
679名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 19:54:09 ID:OnoIr2Dj
>>678
これでもまだ抑え気味なほうだ
680名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 20:18:37 ID:K5+/DcRr
写真を引き裂こうものなら・・・・

681名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 20:22:21 ID:2JXoTtC+
マジな話ジュリエッタぐらいしかマトモに相手出来ないと思う
682名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 20:30:49 ID:G5spI/XC
ジュリエッタと戦う前に3ページくらい使ってエアマスターと島さんがどれだけすばらしいか言い合うのが容易に想像つくな
683名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 20:38:41 ID:uPJzZyda
どちらもお互いの話は全く聞かずに延々と語ったところで勝手に納得して唐突に攻撃を開始するのか
684名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 20:39:04 ID:OpdJlJfZ
>>675
まずは乙です。
しかし、この作品のタイトルはやっぱり狙ってるんでしょうか?
”(ルイズの胸が)谷まゼロ”とかけているとか………。
685名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 20:42:19 ID:AxLflgNM
ルイズ:谷(MONSTERでは無い)
キュルケ:ジュリエッタ(セフレ三人を相手に獣のように性欲を処理)
タバサ:長戸(門では無い)
686名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 20:44:47 ID:QuTJ0IpS
乙です。
今からマンガ喫茶で、谷仮面とエアマスター読んできます。
谷仮面は知らなかったけど、エアマスターは前々から気になっていたんだ。
687名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 20:45:27 ID:OnoIr2Dj
全員意中の相手から離されたら呼んだ奴ためらいなしでぶっ殺しかねんぞw
688名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 20:50:19 ID:AxLflgNM
>>687
タバサはまだ何とかなると思う
経験と相手が三人の中では(戦力的に)まだマシだから

ルイズはどうにもならんし、キュルケもジュリエッタが相手で初見じゃ一撃だよな


変態力なら長戸が断トツだと思う
689名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 21:05:03 ID:EKxhQekJ
ジュリエッタは誰が呼んだとしても
坂本「お前が仮に雨に打たれて震えている子犬を助けた事があったとしよう。でも死ね」
で蹴り飛ばされそうな気がする
690名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 21:06:21 ID:0ELYw3gI
乙です
エアマスターしか読んでなくて谷仮面は世界感繋がってる事しか知らなかったけど
ジュリエッタ並のHENTAI(褒め言葉)が出てくるのねw
今後の展開が楽しみすぎるwww
691名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 21:12:16 ID:2JXoTtC+
谷仮面はエアマスの深道ランキング4位の皆口 由紀も出てくるよね
エアマスでなんかヤンデレになってたけどw
692名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 21:17:40 ID:0w8D5K8I
誰か深道呼べよ
693名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 21:23:21 ID:AxLflgNM
深道召喚
※ただし弟
694名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 21:23:57 ID:+LJHJa8T
>>692
どっちだ?
優秀な兄かぱっとしない花火使いの弟か
それよりも僕は終盤のグダグダで最後がどうなったか分からずに終わった時田進之介をだね
695名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 21:25:49 ID:8nV6cDlW
>>694
ちゃんとエアマスターと戦って納得して燃え尽きて負けてたよ。
696名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 21:28:03 ID:+LJHJa8T
>>695
そうじゃなくて最終回で同級生メンバーが出てきたり、月雄や崎山たちのその後はあったのに
進之介だけ触れられてなかったのがってこと
697名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 21:31:35 ID:IiJ7vLbN
何故か鈴蘭最強のリンダマンが召喚されたようです
698名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 21:44:28 ID:LmiY+gIt
谷はどこに行っても谷だな、変わり身の早さとか笑えるw
699名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 22:03:49 ID:rbcd9szv
ルイズがシャナとナギと大河を召喚してカルテットでくぎゅううううううう
とかをたまに考える。物凄く五月蝿そうだ
700名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 22:09:10 ID:XIpGqUlo
谷仮面の人、お疲れさまです。

ギーシュ戦が楽しみですw

ギーシュがどんだけやばい事して谷を怒らせるのか・・・・・w
701名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 22:09:43 ID:7AD+/N3m
>>698
この場合は「変わり身」より「切り替わり」の方が良いんじゃないのか。
変わり身だと相手や状況にあわせて自分にとって都合よく立ち回ること
になると思うが。
702名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 22:16:35 ID:QBFxv5cw
>>699
涅ネムや白雪みぞれなら、結構静かなくぎゅううううになる気がするな。
てか、クロスキャラとしては悪くないかもしれん。人造死神と雪女だし。
703名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 22:19:03 ID:2JXoTtC+
某ドリルの妹や豆腐やアイドルとか鋼の弟は駄目ですか?
704名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 22:29:38 ID:PvM/3z7Q
>>703
最後のは専用スレが、
と思ったらスレは消えているっぽいな。
>でっかい鎧が弟の作品
705零姫さまの使い魔:2008/12/06(土) 22:31:11 ID:g5Qv74OM
投下予約が無いようでしたら40分から投下します。
ちなみに、前回分は避難所に投下済みですので、第九話となります。
706名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 22:34:02 ID:QBFxv5cw
>>704
かなり前に廃れたらしいが、そもそも鎧の弟が召喚されたってのは見かけなかった気がする。
鋼の兄よりルイズとうまくやっていけそうな気がするんだがな。
見かけだけなら、リビング・メイルで通せるし。
707名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 22:38:35 ID:23lrWiVo
>703
>ドリル
ルイズよりも更にロリ(身長120cm)、でっかい戦斧を担いだドワーフ娘しか思い浮かばん
708零姫さまの使い魔 第九話@:2008/12/06(土) 22:40:44 ID:g5Qv74OM
「あっしは手の目だ 今は喋ってる時間は無ェ!
 とっとと本編に行っとくれ!」





「ふっふっふ ついにこの時が来たな!
 この前の宣言通り 貴様は俺の手で八つざ……」

「うおォッ どいた どいた どいた どいたァ――!」

「え……? な! なんどゥわあああアアァァアァ――!」

次々に襲いかかってくる新手を蹴散らし、モンスターマシンが天空を駆ける。
零戦が制空権を奪い返した事を契機に、死に体だったトリステイン軍が息を吹き返す。

「ちょっと! 今の ワルドじゃない?」
「知るかッ あっしは今 それどころじゃねェ!」

ルイズの言葉に短く応じつつも、手の目は意識は、佐々木氏の一挙手一投足へと向けられていた。

戦闘開始から、およそ二十分。
異世界の科学技術が生み出した、空戦芸術の結晶に加え
神の如き繊細な業と、烈火の如き大和魂を併せ持った青年士官。

一対一の状況ならば、ハード、ソフト両面で死角を持たない零戦であったが
ここに来て、敵の無限にも思えるほどの物量作戦の前に、徐々に動きが抑えられつつあった。

状況を覆す術があるとすれば、敵の旗艦・レキシントン号を始めとした主力艦隊を撃破する事のみであったが
単独でそれを行なえるほどの火力を、零戦は有していない。
のみならず、このまま消耗戦が続けば、敵よりも先に銃弾が尽きるであろう事は明白だった。
コルベールとの約束もあり、手の目も引き際を考え始めてはいたものの
敵の増援に包囲されつつある現状では、氏の悪魔の如き操縦技術について行くだけで精一杯だった。

「……ッ! やべェ お嬢 そこらにしがみついとけッ!」
「ヒイィッ!」

主を気遣う言葉とは裏腹に、手の目は勢い良く機体を起こすと、スロットル全開で上空へと駆け上がる。
尚も追いすがる敵の裏をかき、鮮やかにトンボ返りを決めると、逆光を武器に急降下を始め
慌てふためく敵勢に掃射を浴びせつつ、凄まじい勢いで突き抜けてく。
一団を振り切った二人の眼前に、今度は恐るべきスピードで大地が迫る。

「手の目ッ! 前 まえ!」
「しゃべんなッ! 舌噛むぞ!」

「イヤアアアアァァァ!」

本能的に、ルイズが体を丸め、御守り代わりの山高帽を抱え込む。
地表が目と鼻の先にまで迫った瞬間、ルイズは自分の中で、鼓動が一つ、どくん、と大きく脈打つのを聞いた……。



709零姫さまの使い魔 第九話A:2008/12/06(土) 22:43:54 ID:g5Qv74OM
墜落の衝撃に備え、その身を強張らせていたルイズだったが、やがて異変に気付いた。

最初に感じた違和感は、周囲の静寂だった。
機内に響いていたエンジン音も、機銃に撃ち抜かれた飛竜の叫びも
戦場にあった筈の全ての音が、いつの間にかすっかり消え失せていた。

空気抵抗を受け大きく軋んでいた機体の振動も、静止したかのように治まっている。
落下中に感じていた、恐怖をともなう浮遊感も無い。

眼前に迫る、炎に巻かれた大地も、
目端に捉えた、必死の形相の手の目も、
状況を確認しようとするルイズ自身の動きすらも、

気が付いた時には、彼女の周囲の、ありとあらゆる物体が、その動きを静止させていた。

(これは…… 何が 何が起こったというの?
 私の体が動かない 指の一本も いえ 声すらも上げることが出来ないなんて
 それに この周りの有様は何なの? これじゃあ まるで時間が……)

『いえ 時間が止まっているのではありません
 貴方は今 眼前に迫った危機に対して 高速で思考を回転させている最中なのですよ』

(! ――誰)

突如、耳元に響いてきた男の声にルイズの思考が驚きに満ちる。
背後に何者かの気配を感じてはいるが、確認しようにも、体を動かすことが出来ない。

『人は死の間際に 自身の生涯を走馬灯のように追体験する という話を聞いた事がありませんか?
 今 貴方が体験しているものも それと似たような状態なのです

 刹那の刻の内に 己が生涯全てを振り返る事が出来る程の 濃密な思考体験……
 それ故に 今の貴方には周囲の動きが 相対的に緩慢なものへと感じられているのです
 時間が止まってしまったのかと 誤解をしてしまう程にね』

あまりにも突飛で難解な男の説明。
今のルイズには即座に理解できる話ではなかったが、
その中に出てきた単語の一つが、彼女の心を強く締め上げた。
710零姫さまの使い魔 第九話B:2008/12/06(土) 22:46:37 ID:g5Qv74OM
(走馬灯…… それじゃあ わたしはこのまま死んでしまうの)

『いいえ そうならないように 私をこの場に呼んだのでしょう お姫様?』

(私が 呼んだ……? どういう事なの?
 そもそも あなたの言うように この状況が一瞬の出来事に過ぎないと言うのなら
 あなたは何故 私の思考と当然のように会話出来るの?) 

『その答えは簡単です
 僕もまた 貴方の思考の一部なのですよ』

ルイズの視界の端に、上等そうな黒の外套がちらりと映る。
男の言葉は、相変わらず理解不能な事ばかりであったが、
何故だか彼の声は、ルイズの心に、形容しがたい安心感をもたらした。

『かつて手の目から 手にしている【破壊の帽子】の持ち主の話を聞いた事がありましたね?
 この土壇場にきて 貴方は咄嗟にその事を思い出した
 そして そのイメージを かつて夢の中で出会った【彼】と重ね合わせ 僕と言う仮想人格を想像した

 僕が言うのもおかしな話だが 実際 面白い手だと思いますよ
 ホームズ役とワトソン役を一人でこなして 目の前の事件を解決しようと言うのだからね』

(……ホームズ? ワトソン?)

『さて…… 状況の説明も終わったところで 早速出掛けるとしましょうか』

(え……?)

男の突然の言葉に、ルイズが思わず呆然とする。
その様に、ルイズの背後で、男が笑ったように感じた。

『先ほど言ったでしょう? 
 走馬灯―― 記憶の中へのタイムトラベルですよ

 ああ 先に言っておきますが 今回ばかりは 目の前の小娘に期待するのは無駄と言うものです
 今のそいつは 操縦桿を握り締めながら喚くだけで精一杯のようだ
 それでも 目の前に迫った衝突の危機くらいは避けられるかもしれませんがね

 ともかく 敵の大軍を撃退し 愛する母国を救う方法は 
 これから体験する過去への旅の中で あなた自身が探し出すしか無いようです……』



711零姫さまの使い魔 第九話C:2008/12/06(土) 22:49:34 ID:g5Qv74OM
「――皆さん 春の使い魔召喚の儀式は 大成功のようですね」
「はっ!」
 
再び気付いた時、ルイズは零戦の操縦席ではなく、魔法学院の教室にいた。

「おやおや 変わった使い魔を召還したものですね ミス・ヴァリエール」
「ゼロのルイズ! 召喚できないからって その辺歩いてた平民を連れてくるなよ!」

風邪っぴきの罵倒に合わせ、ゲラゲラと教室中の生徒が笑う。
周囲の反応から嘲笑の一言一句に至るまで、何もかもが記憶の通り、
彼女はいつしか、在りし日の授業の光景へと跳んでいた。

……ただ一つ違ったのは、彼女の傍らにいた使い魔が、手の目ではなかった、という事である。

「ふむ 見たところ かつての授業のワン・シーンといったところですか
 成程 現状を打破するために 先ずは魔法のおさらいをしておくのも悪くないでしょう」

「あなたは……」

ルイズが瞠目する。
彼女の横にいたのは、切れ長の瞳に、何処か儚げな光を宿した黒衣の青年。
外套に山高帽という黒づくめの異装と、白い肌とのコントラストが、
青年の超然とした様子を印象つける。
その姿は、ルイズの記憶の片隅に鮮明に焼き付いていた【彼】の姿そのものであった。

「知っている…… 私は 確かにあなたの事を知っているわ!」

「勿論そうでしょう 
 僕は【彼】の影…… かつて貴方の見た【彼】のイメージそのものなのですから」

「それって……」
「ミス・ヴァリエール!」

男の言葉の意味を問う暇もなく、ルイズが記憶の中のシュブヴルーズの咎めを受ける。

「授業中の私語は慎みなさい
 おしゃべりしている暇があるのなら あなたに『錬金』の実演をしてもらいましょうか」

シュヴールズの提案に、教室にざわめきが走る。ルイズにとっては体験済みの事態ではあったが。

「不思議ね これだけ生徒がいるというのに
 誰一人 あなたの存在を気に留めやしない」

「当然ですよ ここは既に過ぎ去った 貴方の記憶の中の世界
 私たちが ここで何をしようとも 既に起こってしまった出来事が変わる筈がありません」

「でも それじゃあ……」

教壇に立ったルイズは、一つ深呼吸をすると、卓上の石ころ目掛け、勢い良く杖を振るう。
結果はやはりあの日と同じ。
杖先から生じた閃光とともに、石ころは机ごと爆発した。
爆風に驚いた使い魔達が暴走を始め、教室が阿鼻叫喚の大騒ぎになる中、
全身を煤だらけにしたルイズは、かろうじて立ち上がると、再び男の方を見つめた。

「やっぱり こうなってしまうのね……」




712零姫さまの使い魔 第九話D:2008/12/06(土) 22:52:58 ID:g5Qv74OM
「やっぱり 私には魔法なんて使えないんだわ……」

いくつもの記憶を飛び移りながら、ルイズが必死に詠唱を紡ぎ、幾度となく杖を振り下ろす。

――火球、錬金、疾風、治療、飛行、ゴーレム精製、製氷……

結果は悉くが失敗。
規模の大小は違えども、ルイズの『魔法』は常に爆発を生み出し
辺りに多大な被害をもたらす。
そして、その度に居合わせた人々の失望、嘲笑、罵倒の仮面が彼女を襲った。

劣等生であるルイズを執拗に罵る同級生の顔。
大きくため息をつく教師達の顔。
無言で冷厳な眼差しを向ける母の顔。
愛娘のために、眉間に悲しげな皺を寄せる父の顔。
強い言葉で突き放す長姉の顔。
ただ、優しい微笑みをもたらす次姉の顔。

彼らの視線に耐えられず、ルイズは逃げ出すかのように、
記憶の大河を過去へ過去へと遡っていく……。



「あなたは私自身の記憶の中から 解決の糸口を探し出せと言ったけれども
 そんなものは 初めから存在しなかったんだわ
 私は魔法の使えない 出来損ないのメイジだから……」

いつの間にか、ルイズは小船の上で、懐かしい香りのする毛布にくるまって泣いていた。

うらぶれた中庭、セピア色の空に、大きく清澄な池
そこは、幼いルイズが母に叱られた際に良く逃げ込んだ『秘密の場所』だった。

「そんな事はありませんよ お姫様」

小島の霧の中から現れた【彼】が手を差し伸べ、童女へと帰ったルイズの小さな体を、優しく抱えあげる。

「これまでの旅の中には 現実を打ち破るためのヒント……
 いえ 答えそのものが示されていました
 貴方はただ その事に気付いていなかっただけです」

「現実を打ち破る 答え……?」

「ええ」

青年はそこで言葉を区切ると、いつの日かルイズに見せた無邪気な笑みを浮かべた。

「貴方の【魔法】
 人々が失敗と称したあの爆発を 敵の旗艦にぶつけてやりましょう」



713名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 22:54:54 ID:AqAJjBf4
支援
714零姫さまの使い魔 第九話E:2008/12/06(土) 22:55:26 ID:g5Qv74OM
「えっ?」

驚いたルイズが振り向いた先には、月明かりに黒煙を浮かべる搭の一角が見えた。

思い出の小船は既に無い。そこは魔法学院の中庭。
怪盗フーケが破壊の帽子を狙い、学院に乗り込んできた晩の記憶であった。

「まったく 見事な力ではありませんか
 強固な魔法の防護を無力化し ゴーレムすらたじろく分厚い外壁を丸ごと吹き飛ばす
 この凄まじい現象 失敗などという言葉だけで取り繕えるものではありませんよ」

遥か搭の最上段に立った彼が、中庭のルイズに言葉を投げ掛ける。

「これこそ間違いなく貴方の力 貴方の持つ個性そのものです
 尤も 貴方自身 この現象を失敗と信じ 事実から目を逸らしていたようですが……
 でも 眼前の圧倒的な兵力差を打破するには 最適な魔法だとは思いませんか?」

「そんな…… でも だとしても無理よ!
 私はこの爆発をコントロールする術を知らない
 それに あの巨大な戦艦を落すためには どんな詠唱を唱えればいいのか……」

「どうしてです?
 実践ならばつい先程 何百回何千回と積んできたばかりではありませんか?
 どのような条件で どの程度の爆発が起こるのか
 貴方が知らずとも 貴方の本能が覚えています
 それに 紡ぐべき詠唱を知らないのなら これから探せば良いだけの話です」

男の言葉に合わせ、周囲の風景が大きく揺らぎ、
巨大な本棚が次々と立ち上がっては、ルイズを圧迫してくる。

「何……? ここは 学院の図書館……?」

「貴方の図書館ですよ お姫様
 貴方は魔法が使えない分 誰よりも深く魔法について学んできた

 詠唱を構成する 個々の単語の根源的な意味
 それらの組み合わせによって期待できる 副次的な効果……

 貴方が積み重ねてきた努力の全てが この部屋にはあります
 あの爆発を使いこなすのに最適な呪文の組み合わせを この中から作り出すのです」

「……出来るの そんな事が?」

「出来ますよ 魔法とは 人間の持つイメージの力
 杖も詠唱も イメージを現実の形にするための手段に過ぎないのですから
 尤も これは【彼】からの受け売りですがね」

男は手元の分厚い書物を手に取ると、フッと息を吹きかけ埃を払った。

「さあ 分かったら早速始めましょうか
 何せ 考える時間は無限にありますが
 実際に行動に移るには 少しばかり遅すぎるのですから……」



715名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 22:57:29 ID:AqAJjBf4
支援
716零姫さまの使い魔 第九話F:2008/12/06(土) 22:59:03 ID:g5Qv74OM
「南無三ッ!」

手の目は一声叫ぶと、視界に被る少尉の動きを必死で追い掛けた。
刹那に見せた神業により、機体は地表スレスレで持ち直し、高速を維持したまま一直線に駆け出した。

「怪我は無ェかッ? おじょ……」

振り向いた手の目がルイズの異変に気付く。
狂乱寸前の慌てた姿は既に無く、代りに彼女は、俯きながら何事かブツブツと呟いていた。
更に呼びかけようと、手の目が口を開きかけたが、
そこで彼女は、ルイズが件の山高帽を強く握り締めているのに気がついた。

「……若旦那…… か?」

だが、手の目に思索に耽る時間は無い。
前方には、既に包囲の輪を縮めつつある竜騎士の一団が迫っていた。

「ええい! 仕方ねェ」

もはや腹も決まったとばかりに一声叫ぶと、手の目は再び操縦桿へと意識を戻した。


――エオルー・スーヌ・フィル・ヤルンサクサ……


機内にルイズの澄んだ声が響く。
初めは意味不明だった単語の羅列が、徐々に流暢な詩へと変わっていくのが分かる。
魔法の素養を持たない手の目であっても、その詠唱が、ただの魔法とは異質なものである事を感じ取っていた。
ルイズの周囲が、殻を内側からつつく卵を見るかのような、奇妙な高揚感に包まれていた……。

「女は度胸だ! やってくれ 佐々木の旦那!」

手の目の咆哮に合わせ…… という訳でもないのだろうが、
零戦はタイミング良く機首を返して、高速で旋回しながら敵の囲みを突破する。
大きく開けた視界の真下に、アルビオン軍の旗艦・レキシントン号の姿が現れる。


――ジェラ・イサ・ウンジュー・ハガル・ベオークン…… イル


最後の詠唱を完成させると、ルイズはカッと両目を見開き、敵艦目掛け杖を振るった。
一瞬、タルブの大地が静寂に包まれる。

直後、白色の光球がレキシントン号を包み、眩い輝きが周囲に満ちる。
生ける者の一切を傷つける事無く、ただ、敵艦に対し圧倒的な破壊を刻む、奇跡のような光。
その凄まじいまでの光景を、衝撃波で木の葉のように舞う機体の中で、二人は見た。

光が収まり、再び大地に静寂が戻る。
巨大な風穴を開けたレキシントン号は、緩やかにタルブの地へと沈み
やがて、ズンッ、と一つ轟音を響かせた。



717零姫さまの使い魔 第九話G:2008/12/06(土) 23:00:19 ID:g5Qv74OM
「…………」
「……やった の?」

眼下に広がる信じがたい光景を、二人はしばし呆然と眺めていたが、
直後、喜びに満ち溢れた顔のルイズが、勢い良く手の目に抱き付いた。
反動で、機体が大きくバランスを崩す。

「うわっ! 何しやがるッ!」

「手の目! 見た 見た? 見たッ!
 私 出来たの! 魔法が使えたのよッ!」

「あ ああ 魔法があれ程凄ェもんだとは……」

「でしょ でしょ でしょ!
 私ももう 本当にこのまま死んじゃうのかと思って
 でも その時 時間が止まって 
 それで あたしの前に【彼】が現れて!」

「【彼】?」

「そう! 出会ったことは無いけど でも知ってる人よ
 黒髪で 黒のコートで それで…… とっても素敵な人!
 【彼】が私の魔法を教えてくれたの
 そういえばあの人 帽子の持ち主が何とかって……」

「…………」

手の目は興奮冷めやらぬルイズを無視すると、勢い良く操縦桿を傾けた。
反動でルイズは後方に大きく倒れこみ、風防に強かに頭をぶつけた。

「なッ! 何すんのよ?」

「五月蝿ェ 佐々木の旦那に聞いてくれ……」

「……だから ササキって誰よ……?」




戦場に響くトリステイン軍の歓声を聞きながら、手の目は村の外れへと機体を着陸させた。
ようやく地獄から開放された二人の前に、見覚えのある影が一つ、息せき切って近付いてくる。

「手の目〜! ミス・ヴァリエ〜ル〜!」
「シエスタ……」

シエスタは大きく深呼吸すると、手の目の両手を強く握り締めた。
718零姫さまの使い魔 第九話H:2008/12/06(土) 23:02:22 ID:g5Qv74OM
「見てたわ 手の目! 
 凄いわ この竜の羽衣が 本当に空を飛んだのね!」

「あ ああ……」

「スゴい スゴい!
 良かった…… ひいおじいちゃんは 嘘吐きじゃ無かったのねッ!」

「そりゃあ勿論さ
 あんたの曾祖父は…… 曽祖父は り 立派な軍人だったよ……」

「うん…… 本当に良かった」

喜びの余り、両目を濡らして俯くシエスタ。
普段の彼女からは想像もつかない興奮ぶりに、思わず二人が顔を見合わせる。
やがて、顔を上げたシエスタが、希望に満ちた瞳で手の目を覗き込んだ。

「ねえ 手の目 この羽衣 私にも操縦できる?」
「何…… だって……?」

その時、喜色満面のシエスタに対し、手の目の眼前から一気に血の気が引いていくのが
傍らで見ていたルイズには分かった。

「この飛行機の事 一度はあなたに頼んだのだけど
 実際に飛んでいる姿を目の当たりにして
 出来る事なら 私自身の手でひいおじいちゃんの遺言を叶えてあげたいって思ったの だから……」

「……駄目だ」
「えっ?」

予想外の手の目の拒絶に、シエスタが思わず聞き返す。

「こいつを乗りこなせるのは 一部の選ばれた人間だけだ
 一つの失敗が空の上じゃあ 死につながるんだ
 女子供が手軽に操れると思うんじゃねェ!」

「えっ! で でも 手の目は
 それに ミス・ヴァリエールだって……」

「ダメったら ダメったら ダメェ!
 曾祖父の愛した機体を テメェの棺桶にしようってのか?
 大空を舐めるなッ ファンタジー!」

「……そう」

手の目の剣幕を目の当たりにし、
シエスタは大きく肩を落すと、トボトボと村人達の所へ戻っていった。
だがルイズは、見送る手の目の両足が、ガタガタと震えているのを見逃さなかった。

「……ナイスな判断だわ 手の目
 状況はよく分からないけど 今のは私も嫌な予感がしたわ」

「ああ…… 血は争えない ってな
 こんなのは 先を見るまでも無ェ事だ……」

719零姫さまの使い魔 :2008/12/06(土) 23:04:22 ID:g5Qv74OM
以上、投下終了です。
復讐鬼と化したワルドは、色々使い方を考えていたのですが。
結局、スチャラカな展開には勝てませんでした。
720名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 23:15:40 ID:qUwNVYF3
やはり手の目はヨウスケ作品最萌えキャラだな。
721名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 23:20:44 ID:XzOaLnxa
「プラチナクr」
どっかのホストがルイズの右拳の前に沈んだようです
722名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 23:23:47 ID:qOCQ98pV
そろそろ料理人呼ばないか?

「お前はこの鍋料理をより美味しくするために竜肉を入れたんだな。そこのチビ女の使い魔をバラして!!」

「キ、キサマ・・・公爵のわしによりにもよってウジ虫を食わせたのかァ!!」
「カカカカカカカカカーそのウジ虫をお前らはウマイウマイとがっついて食ってたんだぜ!肉に最高のうまみを与えてくれたウジ虫をな!!」
呼び出された虚無の使い魔は全員記すことさえ憚られる連中でした・・・うん蹂躙にしかならないねこいつら。
723名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 23:28:09 ID:kusZkO3+
俺のカレーは仕上げにこの変な虫を入れるのさ
724名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 23:28:13 ID:Jj4pGN0e
>>722
月給12万円!月給12万円じゃないか!
725名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 23:37:20 ID:QBFxv5cw
>>722
決闘の相手がマルトーの親父になりそうな使い魔だなぁ。
726名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 23:39:05 ID:XB6UAalp
その流れで行くと、秋山のイトコがシエスタになるんじゃ?
727名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 23:39:32 ID:EKxhQekJ
マルトー「諸君、決闘だ!」
ルイズ「ちょっとジャン、何考えてるのよ!ただの平民のアンタが貴族に料理を出すマルトーに勝てるわけ無いじゃ無いの!」
728名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 23:40:47 ID:XB6UAalp
ジャンのように『勝負』に拘るキャラ……となると、ワンナウツの渡久地なんてのもかなりのものかと。
729名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 23:41:00 ID:2JXoTtC+
>>722
もうそいつはほっといてやってくれ・・・
先週打ち切りくらったんだから・・・
730名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 23:49:55 ID:QDeAhqzW
悪徒打ち切りといいジャン打ち切りといいチャンピオンは、
いや、チャンピオンも迷走している気がする。
731名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 23:50:12 ID:NnYzYwDq
>>729
円満終了じゃないのか?
単行本のストックからして
732名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 23:54:36 ID:2JXoTtC+
ジャン切ってまでそんなにヤンキー漫画増やしたいのかチャンピオンは・・・迷走してるぜ相変わらず
733名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 23:57:58 ID:gB4Ew8lX
何ィ!?
ジャン打ち切り確定かよ
なんてこった
734名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 00:03:14 ID:ZglsCou0
手の目乙
原作知らんが楽しめたぜ
735名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 00:05:27 ID:wfZN5pU0
ルイズの魔法改変ってどこまで許されるんだろ?
対象物を爆破じゃなくて、ウルトラダイナマイトのごとく自分自身が爆発じゃだめ?
ゼロと虐められたり、〇または〇門に異物を挿入されると
四肢と頭部と五臓六部を飛び散らし、周囲を巻き添えにしながら自爆するルイズ、
でも何故か次の瞬間には元通り

ワルド「〇ンコ吹っ飛んじゃった…」
フーケ「試したのかい!」
736名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 00:08:28 ID:TqWeTXTK
大量の調味料やスパイス使われるのに慣れた現代人の舌が、
基本的に中世レベルの素材や技術で作られた料理をどれだけ美味く感じるのやら
737名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 00:08:46 ID:DEeCPlbl
そんなX-MENのミュータントが行きつく先みたいな能力にせんでも
738名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 00:10:23 ID:r9aRVRPw
美味しんぼの山岡さんたちはアボリジニーの食いもん美味い美味い言いながらガツガツ食ってたじゃん
739名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 00:14:55 ID:BhhmuEKG
>>736
世の中の現代人全てがスローフードを食わないなんて訳ないやん
740名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 00:17:16 ID:3568Ar/E
腹が減ってりゃ何でも上手いんでないかなぁ……、限度はあるだろうけどさw

以前あまりにも濃い味付けにしていたから、味覚が馬鹿になるのが怖いのと健康を考えて
少しづつ薄味にしてみたら慣れていったんだけど、不味い料理に慣れることは無いんだろうか。
741名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 00:19:19 ID:3568Ar/E
>>739
質問とズレてないか?
742名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 00:42:46 ID:9nLMuKP6
家畜やら野菜やらの品種改良とかしてんのかな
743名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 00:50:07 ID:m89Kl+V8
転勤で関西行ったとき社員食堂でなんか味薄いなーって思ったけど慣れた
今年東北へ戻ったら味濃いなーって思ってびっくりした
約3年前はこれがデフォだったはずなのに

慣れっすよ慣れ
744名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 01:02:01 ID:Dwp0QG7H
現代人でも、ただ焼いて塩コショウ振っただけの肉を全くうまいと思わない奴はそんなにいないと思うんだけど
745名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 01:04:21 ID:BLhjPeL5
マンガ肉(原始肉)食いたい
746名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 01:09:31 ID:xzNcnSKt
どこかでまんが肉を追求している店があったなぁ。
747名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 01:10:34 ID:WVoeaILQ
昨日の筋肉から、この原始肉の流れは
市長召喚の予兆か
748名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 01:12:28 ID:9ex7z1Y9
こしょうひとつぶはおうごんひとつぶ

>>742
日本人の食への執念が発達させた技術じゃないの?
749名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 01:22:58 ID:BLhjPeL5
「我々アルビオン人に言わせてもらえば、ゲルマニアはキャベツ野郎、ガリアはカエル食いだ」
「お前の所で少しはマシな飯を食おうと思ったら、朝飯を三回食わなきゃならない」
「黙れマンモーニめ」
750名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 01:25:41 ID:Of6R94P7
魔法を使った料理ってないかな
水魔法で成長を促進させたり、火の魔法で焼いたり
苦味成分を錬金でうまみ成分に
751名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 01:28:35 ID:s8terDwU
タバサの冒険であったじゃないか
752名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 01:33:02 ID:zWn4EySy
流れを無視するようで申し訳ないが、原作に防御結界や魔法障壁って出てきたっけ?
風を起こして防御とかじゃなくて、いわゆるバリア的な。
753名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 01:33:40 ID:Dwp0QG7H
>>747
ロリボマーとマッスルボマーのクロスか

>>749
トリステインはニシンが有名になるんだろうかね
754名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 01:33:58 ID:tOMtNwDs
いつのまにか谷君が召還されてるじゃないか
よりにもよってヨクサルの世界で1,2を争うやばい奴を呼ばんでも
ヨクサルはエアマスも含めて一番強いのは谷君と言ってたが、どの状態の強さなんだろうな
755名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 01:34:11 ID:Of6R94P7
>>751
忘れてた、代用肉か
756名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 01:34:52 ID:OQG8qwyW
合成肉ハンバーグの出番だな
757名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 01:44:38 ID:9ex7z1Y9
>>756
ゴムの味がする…
758名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 01:46:33 ID:sKfJXtjM
>>722
打ち切りで俺涙眼の作品じゃないか・・・(涙
759名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 02:07:24 ID:3568Ar/E
>>749
元ネタは、なんじゃらホイッ!
760名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 02:15:13 ID:BLhjPeL5
ドイツはキャベツかジャガイモか腸詰かビール
フランスはカエルかカタツムリ
イギリスは牛肉か魚というか全般的に不味い飯
そしてイタリアはマザコンと相場が決まっているのだ
761名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 02:23:37 ID:u2beFZu4
そういえばラストの舞台が大きな大会でも何でもないただの店の厨房で再生怪人的な旧キャラたちと
ひたすら新メニューを決める戦いで終わった料理漫画あるらしいぜ

最後の料理が1000円のフカヒレ料理でみんな1レンゲとかもうね
762名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 03:32:32 ID:3xWXCUuY
チャーハンは冷たいご飯で作ろうとすると難易度高いぞ、暖かいご飯使っとけ。
あと調理中に卵からめるのも難易度高いから、最初から卵絡ませた卵ご飯使っとけ。
763名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 03:33:22 ID:3xWXCUuY
って、うお、また誤爆した。
すまん。
764名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 03:43:19 ID:siEwtBmA
なんと見事な誤爆w
765名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 03:52:06 ID:r9aRVRPw
あながちこの流れだと誤爆でもないのがあれだなw
766名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 04:00:19 ID:yWU/S0RH
チャーハンは、飯をジャーから出したあと、皿に広げて冷やしてから作れって習ったけどな。
767名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 04:08:10 ID:EgV7uVmY
冷や飯使うときは、熱が入るまで無理に混ぜんなって土井先生が言ってた。
768名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 04:17:39 ID:it6yd4zQ
そこでマヨネーズでチャーハンですよ
769名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 04:49:28 ID:iAP2Oc9X
今日のチャーハンスレはここですか
770名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 05:12:01 ID:LDsnfH7N
ああ。ただし使っていい費用は千円までだ。
771名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 05:15:12 ID:yWU/S0RH
高っ
772名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 05:44:34 ID:Ccpw5D6g
  ∧,,∧
 (;`・ω・)  。・゚・⌒) チャーハン作るよ!!
 /   o━ヽニニフ))
 しー-J
773ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2008/12/07(日) 06:51:20 ID:W1DyOpv8
おはようございます。

チャーハンは炊き立てのご飯から作ると、炒めた時に上手くほぐれなくてダマになっちゃいますよ。

予約がなければ、第9話の投下を7:00から行います。
774名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 06:53:51 ID:Ccpw5D6g
  ∧,,∧
 (;`・ω・)  。・゚・⌒) 支援するよ!!
 /   o━ヽニニフ))
 しー-J
775名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 06:57:22 ID:mkn4h76E
支援
776ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2008/12/07(日) 07:00:11 ID:W1DyOpv8
 ブルドンネ街から少し外れた、不衛生と言うにも少々生ぬるい路地裏。
 そこにある武器屋の中で、ルイズとユーゼスは剣の見定めを行っていた。
「アンタ、この剣を使える?」
「無理だな」
 『店主のお勧め』である、1.5メイルほどの大きさの頑丈そうな大剣を見て、ユーゼスは即座にそう判断する。
「ま、そうでしょうね。重そうだし」
「ふむ、これで『私にちょうど良い剣だ』などと言われたら、お前に対する評価を改めなければならないところだったぞ、
御主人様」
「……それはどうも」
 どのように改められるかは、今更考えるまでもない。
「やっぱり、こっちのレイピアの方が良いんじゃない?」
 ルイズが片手で、細身の剣を差し出す。
 それを見たユーゼスはアゴに手を当てて考えた後、否定の言葉を口にした。
「悪くはないが、細すぎる。攻撃方法が突きに限定されるし、鍔迫(ツバゼ)り合いにでもなったら確実に折れるぞ」
「う〜ん……」
 そう言われると、確かにその通りのような気がしてくる。
(それ以前に、鍔迫り合いになったら、まず負けちゃうんじゃ……)
 ユーゼスの腕力から判断した、ほとんど確信に近い予想ではあったが、あえて口には出さないことにした。
 ……仮にも自分から『剣を買ってあげる』などと言い出した手前、今更『やめましょう』とは言えないのだ。
 では何を買えば良いのだろう、と二人で首をひねっていると、
「開いているか?」
 凛とした女性の声が、狭い店内に響く。
 ルイズとユーゼスがそれにつられて入り口の方を見ると、そこには毅然とした態度の年若い女性が立っていた。
 杖もマントもないことから、少なくとも貴族ではないことがうかがえる。
 年は大体だが20歳を過ぎたあたり、短めの金髪、先程会ったエレオノールとは違った意味で気の強そうな青い瞳。
 下手をすると男にも見えてしまいかねないような顔だが、女性独特の線の柔らかさは確かに確認が出来る。
 また、その歩き方には『油断のなさ』がにじみ出ていた。
(……軍人か?)
 あのタイプの人間に遭遇したことがあっただろうか、とユーゼスは脳内で検索をかけてみる。
 ……確か、トレーズ・クシュリナーダの側近に女性がいたような気がするが、雰囲気としてはアレが一番近いだろうか。
「何だ、アニエスか」
「『何だ』とは失礼だな、客に向かって」
「……今、ちょうど貴族のお嬢様が、従者に使わせる剣を選んでらっしゃるんだよ。何を買うつもりかは分かんねぇが、
邪魔だけはするんじゃねぇぞ」
「分かった、分かった」
 店主とのやりとりの後、金髪の女性は店の隅へと歩いていく。
 そしてそこにある乱雑に剣が押し込まれているタルの前に立ち、ガチャガチャと剣の束の中をかき回し始めた。
「……何やってんのかしら、あの平民」
「あの中から『それなりに良い剣』を選んでいるのではないか?」
 そもそも『剣を購入する』という行為自体が初めてなので、ルイズとユーゼスは『手本』とするべく、しばらく金髪の
女性の様子を見ることにした。
 ……当然ながら、店主は良い顔をしていないが。
777ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2008/12/07(日) 07:02:11 ID:W1DyOpv8
 そうして観察すること、しばし。
「これを貰おう」
 『お勧め』として出された剣ほど太くもないが、余計な装飾も、作った人間の遊び心も見当たらない『質実剛健』を体現
したような剣を手に取る金髪の女性。
 『ふむ、あのような物が良いのか』というユーゼスの呟きを耳にして、店主は顔をしかめた。
「……また、味も素っ気もねぇ剣を選びやがるな、お前は」
「何か問題でもあるのか?」
「ねぇよ。……ったく、せっかくのカモが……」
 ぶつくさ言いながらも、店主は金髪の女性が差し出した剣を鞘に入れる。
「それと、例のモノを」
「あいよ。お前も変わってるよな、わざわざ銃を改造して欲しいなんざ……」
「実用性と扱いやすさを重視しているだけだ」
 店主はげんなりした様子で店の奥に引っ込み、1分もしない内に布に包まれた棒状の物を持って来た。
「ふむ……」
 金髪の女性が布を解くと、中から木と鉄が組み合わさって出来た50サントほどの長さの銃が現れる。
(……アレがこの世界の『兵器』のレベルか)
 ユーゼスにしてみれば、『クラシカル』や『骨董品』を通り越して、『貴重な文化財』のレベルである。
 見たところ、火薬を使った単発式のようだが……。
(剣も『錬金』で鍛えて、魔法もかけたと言っていたな。魔法で大抵のことが出来てしまうから、工業技術が発達しにくい
のだろうな)
 仮に、人間が本当にその身一つで出来る範囲を、1〜10と定義する(扱う事象自体は何でも良い)。
 魔法を使えば、その範囲が1〜100にまで広がるとする。
 ……察するにハルケギニアの人間たちは、その『100』までで満足してしまっているのだろう。
 実際、科学技術で再現するにはかなり困難な事象も、割合あっさりと魔法でこなしてしまう。
 仮に範囲を超える事態が起きたとしても、『120』や『200』程度の範囲であれば、使い方を工夫するなり、人員を増やす
なりすれば解決が出来る。
 しかし、どう工夫を凝らそうが、完全に魔法の範囲を超えてしまう事態には、全く対応が出来ずに終わるだろう。
 例えば『1000』や『10000』の規模であったとしても、まず間違いなく最初に魔法を使った解決策を模索するはずだ。
 ハルケギニアでは前提と言うか、根底に『魔法』があるため、魔法以外の解決方法が極めて見つかりにくい。
 そもそも、『魔法』が発達しているせいで、その解決方法になりえる『魔法以外の解決方法』の手段が発達しないので
ある。
 ……部屋が暗かったとして、ランプでは心もとない。
 地球人は、これをどうすれば解決出来るのだろうと考え、試行錯誤の末に電球や蛍光灯が発明された。
 しかし、このハルケギニアでは『魔法なりマジックアイテムなりを使えば良い』で解決してしまう。
 魔法技術もそれなりに発達の余地はあるのだろうが、国が出来てから6000年も経過しているのに、今だ文明が中世レベルで
あることを考えると、どうも魔法にはエネルギー的にも応用範囲的にも『限界』があるようだ。
(……とは言え、無節操な産業の発達は私も好まないがな)
 産業が発達すれば、必然的に自然が汚染される。
 科学技術がほとんどないということは、このハルケギニアは美しい自然を美しいまま保っていられるということでもある。
 この世界は、下手に加速させるよりも、このままでいるのが一番良いのかもしれないな―――などと、ユーゼスは珍しく
感傷的に思うのだった。
778名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 07:02:22 ID:Ccpw5D6g
支援
779ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2008/12/07(日) 07:04:10 ID:W1DyOpv8
「ねえ、銃はどうなの?」
「……? どう、とは何だ?」
「アンタが銃を使えるのか、ってことよ」
 しんみりしていると、横にいたルイズから声をかけられる。
 ユーゼスは主人の問いについて、ふむ、と軽く考えると、
「難しいな」
 と答えた。
「……もうちょっと詳しく答えなさい」
「あのような『扱う者の技量が反映されすぎる』武器は、私に向いていない。
 ただ『使うだけ』ならともかく『動き回りながら撃つ』となると、かなりの技量と習熟と実戦経験が必要になるだろうな」
「ふーん」
 使うのならば、やはり剣のような単純な武器だろう。
 何しろ『斬る』と『突く』くらいしか攻撃方法がないので、扱いが単純なのである。それこそ『使い方』だけを感覚として
得て、多少の身体能力の向上を得たユーゼスでも使えるほどに。
「じゃあ、取りあえず剣を選びましょうか。レイピア以上で、あの『お勧め』以下のサイズのを」
「そうだな」
 結局ルイズとユーゼスも、金髪の女性にならってタルに押し込まれている剣の中から選ぶことにした。
「う〜んと、コレなんてどうかしら?」
「形状が独特すぎるな。斬る時に引っかかる。……これはどうだ?」
「細工の趣味が悪すぎ! アンタは仮にもわたしの使い魔なんだから、そんなの持ってたらわたしの品格まで疑われちゃう
でしょ!」
「そんなものか」
「そんなものよ! ……じゃあ、コレ!」
「短すぎる。それでは対人戦闘で動脈をかき切るか、刺すことくらいにしか使えないぞ」
「……それじゃ『貴族の従者』ってよりは『暗殺者』ね……」
 アレでもないコレでもないソレでもない、と次々に刃物を手に取りながら言い合う主人と使い魔。
(……どうでもいいのだが、いちいち武器を手に取るたびに『使い方』が頭に流れ込んでくるのは、何とかならないのだろ
うか)
 『頭に浮かぶ』だけならまだ良いのだが、身体の方が勝手に『その武器に最適な身体の動かし方』を実行しようとするの
だ。しかも無意識レベルで。
 握り方、構え方、重心の取り方、体重移動のやり方、振るい方、身体のねじり方、刃の角度の付け方、果ては持ち運び方
や歩き方まで、である。
 ……一つや二つ程度ならば許容も出来るのだが、こう取っ替え引っ替えしていては、ハッキリ言って疲れる。
 ルーンの機能のオン・オフが自在に出来ればいいのだが、そんな便利な機能はないし、構造をいじるには『精神制御』の
部分と同じく、固着する前に操作する必要がある。
(……諦めるしかないか)
 これほどの剣に触れる機会など、そうそうあるものでもないだろう。
 これも貴重な体験、と割り切って、ユーゼスは剣の物色を再会した。
 そして、手違いで錆びだらけの剣を掴み上げてしまう。
「コレは―――駄目だな」
「ダメね」
 さすがにこれは意見が一致した。
 さっさと戻そう、とタルの中に錆びた剣を押し込もうとすると、
「おうおう! 手に取って見るなり『駄目だ』とは、言ってくれるじゃねえか!」
 いきなり剣が大声で抗議を始めたのだった。
780ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2008/12/07(日) 07:06:11 ID:W1DyOpv8
「剣が喋っただと?」
 この魔法の世界では、このようなこともあるのだろうか。
 ユーゼスが物珍しそうに錆びた剣を見ていると、店の主人から怒鳴り声が上がる。
「やい、デル公! お客様に失礼なことを言うんじゃねえ!」
「デルコー?」
 改めて、その剣を観察してみる。
 『店主のお勧め』と比べて、長さ自体はそれほど変わらない。違うのは刀身が折れなさそうな程度には細いことだ。
 ―――錆びさえ浮いていなければ、そこそこに良い剣だったと言えるだろう。
「『お客様』ぁ? こんな剣もマトモに振れねえようなヒョロヒョロした兄ちゃんが『お客様』だぁ? ふざけんじゃね
えよ! 耳をちょんぎってやらあ! 顔を出せ!」
「……それって、インテリジェンスソード?」
 戸惑いながら、ルイズが店主に問う。
「そうでさ、若奥さま。意思を持つ魔剣、インテリジェンスソードでさ。いったい、どこの魔術師が始めたんでしょうか
ねえ、剣を喋らせるなんて……」
 『おめえは黙ってろ』だの『溶かすぞ』だの『やってもらおうじゃねえか』だの、口汚い口論を始める店主とインテリ
ジェンスソード。
 店主のかたわらでは、自分たちの事の成り行きを見物していたのか、まだカウンター近くにいた金髪の女性が『ほう、
あんなものもあったのか』などと言っている。
 ユーゼスは試しに錆びたインテリジェンスソードを二、三度振ってみた。
(……重さ自体は少し重い程度か。この『喋る剣』も興味深いのだが)
 やはり、錆びているのが致命的だ。
 そのままじっと錆びたインテリジェンスソードを眺めていると、その剣が何かに気付いたように声を上げる。
「……おでれーた。見損なってた。てめ、『使い手』か」
「『使い手』?」
 言い得て妙な表現である。
 確かに、自分のルーンの能力ならば武器をある程度は『使う』ことが出来る。
 ……自在かつ巧みに『操る』、武器を手にして『戦う』のは、自分の領分ではないが。
「ふん、自分の実力も知らんのか。まあいい。てめ、俺を買え」
「……ふむ」
 数秒ほど考え、ユーゼスは店主に気になることを尋ねてみる。
「……これと同じインテリジェンスソードで、もう少し理知的で、物静かで、主人に忠実そうなものはないか?」
「おい、そりゃどういう意味だ!?」
 錆びたインテリジェンスソードの抗議を無視して、店主はユーゼスの質問に答える。
「はあ、すんません。あいにくウチにあるインテリジェンスソードは、そのデル公の一本だけでして……」
「他の店に行けばあるのか?」
「いや、インテリジェンスソードを扱ってる店ってのは、なかなか見当たらないと思いますぜ」
「……………」
「あ、あの、ちょっと、兄ちゃん―――いや、お兄さん? お兄さんの実力を見抜けるインテリジェンスソードなんて、ハ
ルケギニア広しと言えど、このデルフリンガー様くらいのもんで……」
「……そうだな、買おう」
「お、おお! 買ってくれるか、兄ちゃん! そう来なくっちゃな!」
 ユーゼスが下した決断に、デルフリンガーという名前の剣は鍔をガチャガチャと鳴らしながら喜んだ。
 ルイズはそれを聞いて、露骨に不満そうな声を上げる。
「え〜? そんなのにするの? もっと綺麗で、喋らないのにしなさいよ」
「……誰がこんな錆びた剣を『実際に使う』などと言った?」
「……………え?」
 困惑の声を上げたのは、デルフリンガーである。
「インテリジェンスソード……なかなか面白い研究材料だ。持って帰って色々と調査をしてみる。
 さて、改めて『実際に使う』ための剣を選ぶぞ、御主人様」
「え、ええええええええええ!!?」
 絶叫が、武器屋の中に響き渡った。
781ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2008/12/07(日) 07:08:09 ID:W1DyOpv8
「な、なあ、嘘だよな? もう、兄ちゃんったら、冗談なんか言わなさそうな顔してサラッとキツいジョークを言ったりす
るんだから。……ねぇ?」
 そんなデルフリンガーの呼びかけを無視して、二人は相変わらず剣を選ぶ。
「う〜〜〜ん……。……なんか、こう、『コレだ!』ってのが無いわね」
「そうだな、細すぎず太すぎず、長すぎず短すぎず、形や装飾も華美すぎず……」
 首をひねるルイズとユーゼス。
 もう、こうなったら本格的に別の店に行った方が良いか、と思い始めていると。
「……はあ、見ていられんな」
 呆れた様子で、金髪の女性がカウンター脇からこちらへと歩いてきた。
「な、何よ、アンタ?」
「……貴族のお嬢様、今あなたの手元にある予算は?」
「え? ……えっと、1000エキュー持ってきて、ユーゼスの白衣とか水の秘薬とかで使ったから……820エキューくらい?」
 唐突に質問されたので、思わず素直に答えてしまうルイズ。
「この錆びた剣の値段は?」
 金髪の女性は、次に店主へと質問する。
「あー、それなら100でいい」
「安いな。……では、残りは720エキューほどか……」
 ふぅむ、と呟いた後、剣が押し込まれたタルから視線を外す。
 そして壁にかけてある剣を見分し始めた。
「あれ、このタルの中から選ぶんじゃないの?」
「その中にあるのは、全て500エキュー以下の投げ売り品だ。……あいにく私は金のない平民だからな、その中から比較的
良い品を選ばせてもらったのだが」
 数秒ほど壁に並べられた剣を眺めた後、金髪の女性は一本の剣を手に取った。
「これなどはどうだ?」
 女性から剣を手渡される。
 長さは若干短め、太さはデルフリンガーと同程度、装飾もほとんどない。
 端的に言うと、特徴らしい特徴のない剣である。
「ふむ、悪くないな」
「……少なくとも、このボロ剣よりはマシね。値段はいくらになるのかしら?」
「…………650エキューになりまさ」
 いかにも不服そうに言う店主だったが、金髪の女性は構わずに決断を促した。
「では、これで決まりだな」
「ああ」
「ま、良いか」
「い、いやいや、そんなどこにでもあるような剣じゃなくて、この長い年月を経て幾多の経験を蓄積した……」
 そんな購入者の様子を見て、何とか自分の『剣』としてのポジションをキープしたいデルフリンガーだったが、
「あ、どうしても煩(ウルサ)いと思ったら、こうやって鞘に入れれば大人しくなりまさあ」
「ちょ、ちょっと待っ」
 ガシャン、と鞘に収められて沈黙してしまった。
782名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 07:08:18 ID:mkn4h76E
ひでえ!
783ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2008/12/07(日) 07:10:11 ID:W1DyOpv8
「じゃあ、二つで750エキューで良いわね?」
「へい、毎度」
 やはり不満そうな様子ではあったが、客は客なので淡々と仕事をこなす店主。
 そして、剣2本がユーゼスに渡されたのだが、
「……重い」
 軽々と振り回されるイメージがあるが、剣はなかなか重量がある。それが2本なのだから、鍛えてある人間であっても
そこそこの負担になってしまう。
 加えて、エレオノールから受け取った分厚い魔法の本が3冊。
 ……剣は、鞘から抜かないとルーンの効力は発揮されないので、身体能力の向上は望めない。
 要約すると、荷物だらけで凄く重い。
 ぬぅ、と声を上げながら剣2本を背負い、肩の鞄に入れてある本の重さを実感するユーゼスだった。
「そう言やお前、城勤めになったんだって?」
「まあな、ここに来るのもこれが最後かも知れん。何しろ支給品があるようだからな」
「……既製品でお前が満足するとは思えねえけどな」
 そんな店主と金髪の女性の雑談を聞きつつ、武器屋を後にする。

 そして魔法学院への帰り道にて。
「くっ、剣と本の重さで、バランス、がっ……! ぐあっ!?」
「また落馬!? ……ああもう、こんなヤツを屈服させようって決意したわたしって、間違ってるのかしら……」
 なお、帰りには5時間ほどかかったことを追記しておく。
784ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g :2008/12/07(日) 07:12:03 ID:W1DyOpv8
 以上です。今回はちょっと短めでした。
 確か、以前に『最初の方からアニエスを絡める方法はないのか』みたいな話題があったので、自分なりに考えた結果、
ここで出してみることにしてみました。
 ……ええ、まあ、我ながらこんな序盤からアニエスを出してどうするつもりなんでしょうね、って感じなんですが。

 それでは、支援ありがとうございました。

 ※追記
 避難所に狂蛇の方が投下されておりましたので、どなたか投下をお願いいたします。
785名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 07:12:58 ID:mkn4h76E
乙ー
相変わらず体力ねーな
786名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 07:20:59 ID:j/TNxMtR
デルやん奇跡殺しの左手以来のピンチw

ラスボスさん乙
787狂蛇代理:2008/12/07(日) 08:09:15 ID:QOD9zMhQ
どなたか代理投下をお願いします
との事なので代理投下しますね
予約がなければ2分後から
788狂蛇代理:2008/12/07(日) 08:11:17 ID:QOD9zMhQ

第十六話



明くる日。
朝食を済ませたルイズは、「見てもらいたいものがある」とワルドに呼び出され、宿にある中庭へとやって来ていた。

宿の裏にあるその場所は、かつて軍の訓練場として利用されてきたという。
さすがに大人数の軍隊全員が収まるほど広くはないが、小規模の訓練であれば充分通用するだけの大きさはあった。
今では宿の物置にでもされているのか、あちこちに木箱や樽が置かれている。

ルイズが宿からの階段を降りると、中庭の中央にワルドが立っているのが見えた。
早足で彼のもとへと駆け寄る。

「やあ、ルイズ。いきなり呼び出してすまなかったね」

ルイズに気づいたワルドが、彼女に向けてにっこりと微笑みかける。

「ワルド様、見てもらいたいものというのは……?」
「ああ、実は彼から決闘を挑まれてね」

そう言って、ワルドが中庭の奥に顔を向ける。
その視線の先には、置かれていた樽に腰かける浅倉の姿があった。
左手に手鏡を持ち、右肩にデルフリンガーを担いで、暇そうにたたずんでいる。

「彼がどのくらいの腕なのか興味があるからね。是非にと引き受けたんだけど、よければ君にも見ていてもらいたいんだ」

自信に溢れた表情でワルドが言った。
789狂蛇代理:2008/12/07(日) 08:12:19 ID:QOD9zMhQ

「そいつが来たら始めるんだったな」

そう言いながら、浅倉は座っていた樽から腰を上げた。
背負っているデルフリンガーをカチャカチャと鳴らしながら二人に近づいていく。

「や、やっぱりそんな、決闘だなんて……」
「大丈夫。ほんの腕試しさ! 彼を死なせたりしないようにある程度は手加減をするから、ルイズは安心して見ていてくれ」

二人を止めようとするルイズの言葉を遮るようにして、ワルドが言った。
彼女を不安にさせないよう、にっかりと笑顔を作ってみせる。

そんな彼の振る舞いを、浅倉は鼻で笑った。

「大した自信だな……。せいぜい、死なないように気をつけろよ? ……おい、これを持て」
「え? ……うわっ!」

ルイズに手鏡とデルフリンガーを押しつけると、浅倉はズボンのポケットからデッキを取り出し、手鏡に向けてかざした。
現れた銀色のベルトが、腰に装着される。

「ほう……」

ワルドが思わず感嘆の声を漏らした。

「変身!」

デッキをベルトに差し込み、ガラスの割れるような音と共に浅倉が紫の蛇の鎧を纏う。
変身が完了すると、王蛇はため息と共に首を回し、手を軽く払った。
790狂蛇代理:2008/12/07(日) 08:13:23 ID:QOD9zMhQ
 
「なるほど。それが噂のマジックアイテムか……。実に興味深い」

ワルドはそう言いながら、王蛇から数歩距離をとる。
そして王蛇の方を向き直ると杖を抜き、構えた。
目付きも真剣なものに変わるが、余裕の表情は崩さない。

それを見た王蛇も、ルイズに持たせていたデルフリンガーをぐわしと掴むと、彼女の目の前で鞘から剣を引き抜いた。
「ひっ」というルイズの声に構うことなく、王蛇は一度剣を振るうと、用済みとなった鞘を後ろに放り投げた。

「邪魔だ。どいてろ」

言われるや否や、ルイズは後ろにある壁まで後ずさった。

戦いとなれば一切手を抜かないのが浅倉というものだ。
ワルドの実力はルイズの知るところではあるが、果たして彼は無事でいられるだろうか……?
ハラハラしながら両者を見守る。

「僕の二つ名は『閃光』だ。風の……」
「黙れ。ここの連中はどうもおしゃべりが過ぎる……。とっとと始めるぞ」

話を強引に止められ、ワルドは一瞬むっとしたが、すぐに元の表情に戻る。

「……じゃあ、始めようか。かかってきたまえ」
「そうか……。なら、遠慮なくいくぜぇっ!!」

腕を大きく広げた王蛇が、ワルド目掛けて勢いよく地を蹴った。
791狂蛇代理:2008/12/07(日) 08:14:28 ID:QOD9zMhQ
 
(は、速い……!)

王蛇が振り下ろした剣をすんでのところでかわしながら、ワルドは心の中で呟いた。

先に攻撃を仕掛けさせることで、相手の実力がどれくらいのものなのかを見極めるつもりだった。
だが、もはやそんな悠長なことを言っていられない。
次から次へと繰り出される斬撃に、反撃はおろか身を守る呪文すら詠唱させてもらえないのだ。

また、その威力も凄まじいものであった。
地面が抉られ、壁も所々が砕けていることから、その身に一撃でも攻撃をくらってしまえば致命傷は免れないだろう。
手加減など論外である。

(彼は本気で私を殺るつもりなのか……?)
突き出された剣を後ろに飛び退くことで回避し、そのまま数歩後退して王蛇と距離をとった。
額を嫌な汗がつたっていく。

先ほどまでの余裕は何処へか消え去り、今では焦りに満ちた表情をしていた。

(なんとか呪文を使えれば……!)

そう考えているうちに、目の前まで迫った王蛇が再び斬りつけてきた。
ワルドは咄嗟に横へと身を転がすことで、なんとかその一撃を避ける。
後ろにあった木箱の上から半分が、一瞬で消し飛んだ。
792狂蛇代理:2008/12/07(日) 08:15:37 ID:QOD9zMhQ
 
「口ほどにもないな……もっと俺を楽しませろ」

王蛇が動きを止め、ワルドに向かって言い放つ。

「くっ……!」

余裕を見せつけられたワルドは、表情により一層苦々しさを増しながら王蛇に杖を向け、素早く呪文を唱えた。

詠唱が完了すると、風が塊となって四方から王蛇に襲いかかった。
風の魔法、エアハンマーである。

王蛇はその強化された感覚で押し寄せる風の気配を察知すると、前に向けて勢いよく飛び上がった。
先ほどまで王蛇がいた地点に風の塊が殺到し、相殺される。

「ハァッ!!」

飛び上がった王蛇は、そのままワルド目掛けて空中から剣を振り下ろした。
ワルドもすぐに杖を構え呪文を詠唱し、攻撃に備える。

杖と剣が、激しい音とともにぶつかりあった。



「ぐぅっ……!!」

上空から振り下ろされた剣を、ワルドは風の魔法エア・ニードルで魔力を纏った杖を使い、膝を地面についてどうにか受け止めた。
しかし力の差は歴然で、両手で抑えている杖がじわじわと押し込められていく。

一方の王蛇は、右手に持った剣にだんだんと力を加えていくことで、相手が必死に抗う様を楽しんでいた。
仮面の中で、浅倉は不気味な笑みを浮かべた。
793狂蛇代理:2008/12/07(日) 08:16:41 ID:QOD9zMhQ
 
「ッ!!」

王蛇が突然剣を引き、反動でワルドの体がふわりと浮き上がる。
その隙を突いて、王蛇は無防備なワルドの体を蹴り飛ばした。

「うがぁッ!!」

後ろに向かって一直線に吹き飛んだワルドは、積んであった木箱の山に体を打ち付けられると、そのまま地面に転がり落ちた。
地に臥したワルドが朦朧としていた意識を手放すと同時に、王蛇がトドメを刺さんと駆け出した。
が。

「やめてぇっ!!」
「うおっ!?」

ルイズが王蛇に駆け寄ると、その体に飛びつき、押し倒した。
地面に倒れてもなお、ルイズは王蛇に抱きついて離れない。

「もうやめて! これ以上やったらワルド様が死んじゃう!」
「おまえぇ! 邪魔をするなァッ!!」

王蛇がルイズの首を掴み上げ、殴りかかろうと拳を振り上げた、ちょうどその時。

二人の頭の中で、あの耳鳴りのようなものが響き渡った。

「ん……?」

王蛇がルイズの首から手を離し、辺りを見回しながらゆっくりと立ち上がった。
むせかえっていたルイズも、顔を動かして辺りの様子をうかがう。
794狂蛇代理:2008/12/07(日) 08:17:45 ID:QOD9zMhQ

「アサクラ」

宿から中庭に飛び出てきたタバサが、こちらに向かって歩み寄ってきた。
キュルケもその後に続いて現れたが、中庭の惨状とボロボロになって気絶しているワルドの姿を見て唖然としている。

「怪物」
「分かっている。ちょうどいい憂さ晴らしだ……。鏡を出せ」

視線に気づいたルイズが、息を整えながら手鏡を差し出した。
王蛇は手鏡を受け取ることなく、そのまま鏡に飛び込んでいった。

王蛇の後を追うように、タバサもルイズの持った手鏡に向かってデッキをかざした。
ベルトが現れ、腰に巻かれる。

「変身」

ベルトにデッキを差し込み、けたたましい音が鳴ると同時に白虎の鎧が体を覆う。
変身を終えると、タイガは無言で鏡の中へと入っていった。



二人が鏡に消えていくのを見届けると、ルイズは急いでワルドの元へと駆け寄った。
状況がなんとなく把握できたキュルケは、ルイズの肩を掴むと彼女に詰め寄った。
795狂蛇代理:2008/12/07(日) 08:18:50 ID:QOD9zMhQ
 
「ちょっとルイズ、これは一体どういうこと? ちゃんと説明しなさい!」
「あ、後で何でも話してあげるから、今は誰か助けを呼んできて欲しいの! ワルド様が怪我をしてるのよ! お願い!」

半泣きになりながらそう言うと、ルイズはキュルケに頭を深々と下げた。

「わ、分かったから頭を上げなさい! 今人を呼んでくるから!」

ルイズの顔を無理やり上げさせると、キュルケは宿に向かって元来た道を戻って行った。



(ルイズが、頭を……!?)

今まで自分に対しては意地でも頭を下げようとしなかったルイズが、婚約者のためとはいえこうもあっさり頭を下げたことに、キュルケは驚きを感じていた。

そういえば、ルイズが塞ぎ込んで以来、彼女のツンツンとした態度を一度も見ていない。
それどころか、まるでトゲが抜けたかのように素直で大人しくなってしまっている。

これも浅倉の影響なのだろうか……?

再び騒動を起こした男のことを考えながら、キュルケは宿の中を駆け抜けて行った。




浅倉、モンスター、仮面ライダー……
これらの登場により狂い始めた、ルイズたちの数奇な運命。
彼女が気づいたのは、その一端にしかすぎなかったのである。
796狂蛇代理:2008/12/07(日) 08:20:00 ID:QOD9zMhQ
以上です
ライダーの高スペックに加えて、ガンダールヴの効果まで付属。
甘くみてたワルドに勝ち目はありませんでした。

狂蛇の人お疲れ様でした。
797名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 08:39:19 ID:W1DyOpv8
狂蛇の方、代理の方、乙です。

なんか随分ルイズが殊勝になっとりますなぁ。
798名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 08:48:31 ID:zo34sogB
狂蛇さん、代理さん乙でした。
一般人であったサイトにガンダールヴ補正が付いただけでワルドと良い勝負が出来るのに、浅倉に仮面ライダー+ガンダールヴ。
油断しているワルドが偏在無しで勝てる確率、考えるまでも無かったか。
799名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 09:57:01 ID:TqwNhSdq
ゼロ魔世界における、平民の心の代弁者

ガフガリオン「ああ、わかってるさッ!よおくわかっているとも!貴族といえども邪魔になれば排除される…
それが頂点に立つ『貴族の血筋』ってやつなンだろ?」
「邪魔ならば殺される…俺たち平民と変わらンって事さッ!」
800名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 09:59:30 ID:HQgJtXPg
狂蛇の人、代理の人、共に乙でしたー。
偏在使っても浅倉なら野生の勘とかで本物を見つけてしまいそうだと思うのは俺だけじゃあるまいw
801名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 10:24:07 ID:Z8E4ozaU
学園の食料を食い尽くす探偵が召喚されたと聞いて
802名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 10:29:46 ID:HQgJtXPg
喰いタン…だとっ!?
803名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 10:31:47 ID:2hg4UVRx
妻木さんでは駄目ですか?
あの人だと学院内に勝手に『ああ探偵事務所トリステイン支店』を開きそうだがw
804探偵物語2008(1レスのネタ):2008/12/07(日) 10:44:35 ID:lVfYN4Ev
探偵使い魔、工藤俊作(松田優作)は今日も鏡の前で下半身裸のままキメ、コーヒーを噴き出す

やってきたのはコルベール(成田三樹夫)

「工藤ちゃん工藤ちゃん大変だよぉ!盗賊フーケが学院のお宝を盗んでっちゃったよ!」

工藤ちゃんはロングビル(夏目雅子)と共にフーケ捜索に出るが、立ち向かうのはワルド(八名信夫)
ワルドの遍在(悪役商会)に苦戦するが、そこへ主人のルイズ(佐藤蛾次郎)が…
805名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 10:46:28 ID:oO9sIG++
>>804
蛾次郎はあんまりだろwww
806名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 11:02:25 ID:SAaqZW26
481KB超えているので次スレ立てました

あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part194
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1228615261/
807名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 11:05:02 ID:DZfSmpM1
設定がほとんどないキャラの召還とかありなのかな?
ガンガルから赤い水兵のツァアとかコレジャナイロボとか召還して微妙な気持ちになるルイズという妄想が頭に浮かんだんだが
808名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 11:18:50 ID:uiejDOvX
>>799
FFTの中でもイイキャラしてるからな、ガフガリオンは。

……
ルイズに召喚されて再度貴族の名を手に入れるために、
文字通り『何でもする』アルガスを幻視した。
809名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 11:18:55 ID:EEO6G33z
小ネタならアリかも…
810名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 11:21:42 ID:ZglsCou0
>>806
スレ立て乙。
さあ、埋め立ての時間だ
811名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 11:23:00 ID:TqwNhSdq
チェルシー、マンキンのたまお、はてなようせい、ヒナギクを召喚すると
ルイズと合わせて貧乳戦隊ピンクファイブが作れます
812名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 11:37:40 ID:2hg4UVRx
>>808
ディリータだったらウェールズ暗殺してアンアンと結婚もしくは、アンアン暗殺してルイズを王位に就けるとかやりそうな……
まあどのルートでも最終的には刺されるわけですけどw
813名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 11:39:05 ID:5duShdmn
一方ラッドとアリシアとラヴィアンは依頼を遂行しに行った
814名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 11:43:39 ID:Ccpw5D6g
メリアドールあたりは、徹底的にエルフに反目するけど、聖地の真実を見せられたら寝返りそうだな。
815谷まゼロ:2008/12/07(日) 11:44:14 ID:at4Kye83
予約がなければ、谷まゼロ三話を に投下させていただきたいと思います。
よろしくお願いします。多分容量内に収まる……はず。
816谷まゼロ3話:2008/12/07(日) 11:46:40 ID:at4Kye83
ルイズは、ベッドの上で目を覚ました。寝ぼけ眼を腕でゴシゴシと拭った。
昨日のドタバタ劇のせいで睡眠が浅かったのか、いまいちすっきりしない。

あの忌々しい使い魔め。絶対こき使ってやるんだから。

ベッドを降り、制服に着替えようと、椅子にかかった制服を取りにトタトタと歩いて行った。
そこへ、誰かがルイズに声をかけてきた。
すでに制服に着替えたキュルケであった。
キュルケは昨晩谷が開けた穴の淵にもたれかけながら、ルイズに言った。

「あら、随分と遅い起床だこと。それにまあなんていうか……」

キュルケはまじまじとルイズの姿を見た。
ルイズの格好はネグリジェ一枚を身につけているだけであった。
そうであるから、朝日を受けてネグリジェが透けて、体のラインがはっきりと露わになっている。

「貧相な体ね。谷間もゼロ。まさにゼロのルイズ。打って変わってシマサンはグラマーだったわね。
 あたしみたいに♪……あなた、タニに相手にされないんじゃないかしら?」

「何よ!!うるさいわね!タニはわたしの使い魔なんだから!あんたには関係ないでしょ!!
 それに体のことはもっっっっと関係ないわ。デカ乳!ていうかなんで勝手にわたしの部屋に入ってきてるのよ!」

キュルケはやれやれといった感じに肩をすくめて言った。

「そのあなたの使い魔が、壁をぶち破ったからでしょう?これどうしてくれるの?」

キュルケが穴が開いた壁をコツコツと握り拳で叩く。

「うっ、それは……タニに言いなさいよ」
「あらあら、使い魔が起こした不祥事は主人の責任じゃないのかしら?」
「だからタニのせいだって言ってるでしょ!!!」
「で、その肝心のタニはどこかしら?」

ルイズはキュルケに言われて初めて気がついた。
肝心の谷を朝起きてから見ていない。
確か昨日はルイズのベッドから毛布をひったくって、自分から床で寝ていたはずだったが……。
部屋のどこを探しても谷の姿が見当たらない。

「ど、どこいったのよ。主人はここにいるのよ?洗濯、それに着替えを手伝わせようと思ってたのに」
「あなたまだ懲りてないの?あの使い魔が主人どころか、他人の言うこと聞くようなタマだとは思えないけど?
 いうことを聞かせられるのはシマサンぐらいなもんでしょ」

ルイズも内心その通りだと思っていた。昨日で会ったばかりではあるが、
谷はシマサン以外の人間は眼中になさそうであった。しかしルイズはそれを認めるわけにはいかない。

「う、うるさいわね。絶対従わせてみせるんだから、今に見てなさい!キュルケ」
「はいはい」
817名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 11:47:20 ID:YSdkaAzo
>>815
容量内に収まらないと悲惨なので、素直に新スレに投下することをお勧めします。
818谷まゼロ3話:2008/12/07(日) 11:48:39 ID:at4Kye83

そんなルイズとキュルケのやり取りがあってから、しばらく時間がたった後だった。
谷は、ルイズがまだ目を覚ます前に一人で部屋を出て、しばらくブラブラとした後、
学院の敷地内にある食堂横の芝生の上に、両手を頭の後ろにやって、それを枕代わりにして寝ころんでいた。

未だに、ここを夢の世界だと考えていた。
もちろん、うすら寒いものを背中に感じていることは確かだった。だがやはり認めるわけにはいかない。

芝生に寝転がる前に、少し学院内を散策してみた時のことだ。
すれ違う学院生徒からは、奇異の目で見られていたが、谷はそんなことは一切構わなかった。
それよりも、学院から見える景色、そして学院内にあるもの、そして見慣れぬというよりも、
現実世界では存在しえないような奇妙な生物がうようよいることに、驚いていた。
空に竜が飛んでいたのを目にした時は度肝を抜かれた。

……オレってこんなに想像力逞しかったのか。

谷はそんな風に考えるようにしていた。
だが、焦燥感は拭えない。胸の奥底でなにか、目をそむけたい物体が本人の意思とは無関係に
どんどん大きく肥大化しているかのような感覚。
気分は晴れない。今もこうやって寝転がることぐらいしかできることはない。
もう丸一日以上島さんをを目にしていない。

島さん島さん島さん島さん島さん島さん島さん島さん……。

谷は、このままでは『島さん不足による禁断症状』が起こってしまうところまで来ていた。

こんな葛藤を頭の中でぐるぐると廻らせているが、仮面のおかげで誰にもその表情はわからない。
食堂から出てきた一人のメイドもそうであった。
彼女はシエスタという名の給仕であった。今日もまた貴族相手に、朝食の配膳をしていた。
シエスタは仕事を一通り終え、厨房に戻るところであった。
その帰り道に彼女は、一人の男と出会うことになったのだ。

シエスタは芝生の上に転がっている谷を不審に思った。
だが、何故か危険は感じなかった。
それが格好により貴族ではなく、自分と同じ平民であると見てわかったからなのか、
それとも、単に不審に思ったことよりも、谷に対しての興味が勝ったのか、シエスタにもよくわからなかった。

だが、ちょっと近づいてみて、よくよく見たくなったことは確かであった。
それは、丁度道を歩いている途中、偶然猫と出くわした時に、猫を触りたくなるのと同じような感覚だったのかもしれない。
それに、まるでのっぺらぼうのような仮面をつけているのだから興味を欠くことはない。
相手の目が見えないことがシエスタの警戒心を薄めたのだろう。

なんの根拠はないが、シエスタは谷が寝ているものと思っていた。
周囲に誰もいないことを確かめた。
シエスタは、内心少しわくわくしながらスカートの裾を指先で挟んで持つと、そろりと忍び足で谷に近づいた。
819谷まゼロ3話:2008/12/07(日) 11:50:54 ID:at4Kye83
≫815
了解しました。申し訳ありません、新スレの方に投下させていただきたいと思います。
ご指摘ありがとうございました。
820名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 12:16:41 ID:it6yd4zQ
埋 め よ う か
821名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 12:20:29 ID:2hg4UVRx
いいのかい? ホイホイ埋めちゃって?
822名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 12:22:34 ID:ZglsCou0
スレの中がパンパンだぜ
823名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 12:27:26 ID:LCxWweqy
500kbならあいしてるから毛の薄くなった時代の鉄兵召喚
824名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 12:28:16 ID:h7koYXEu
そうだ、お前スレのケツにAA投下しろ。
825名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 12:31:40 ID:2hg4UVRx
もしも阿部さんがジョゼフに召喚されていたら……
阿部さんのお陰で過去を全て吹っ切れ(性的に)いい男になったジョゼフは
シャルルとベッドで和解しガリアはハッテンを極めるなw

……ある意味タバサとイザベラは本編よりも不幸になるけど
826名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 12:53:34 ID:hOpgeiIy
827名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 12:56:16 ID:z7TxXbyg
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828名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 12:57:32 ID:z7TxXbyg
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