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【警告】
・以下のコテは下記の問題行動のためスレの総意により追放が確定しました。
【作者】スーパーロボット大戦X ◆ByQOpSwBoI
【問題の作品】「スーパーロボット大戦X」「スーパーロボット大戦E」「魔法少女(チェンジ!!)リリカルなのはA'S 次元世界最後の日」
【問題行為】盗作及び誠意の見られない謝罪
【作者】StS+ライダー ◆W2/fRICvcs
【問題の作品】なのはStS+仮面ライダー(第2部)
【問題行為】Wikipediaからの無断盗用
【作者】リリカルスクライド ◆etxgK549B2
【問題行動】盗作擁護発言
【問題行為】盗作の擁護(と見られる発言)及び、その後の自作削除の願いの乱用
【作者】はぴねす!
【問題の作品】はぴねす!
【問題行為】外部サイトからの盗作
【作者】リリカラー劇場=リリカル剣心=リリカルBsts=ビーストなのは
【問題の作品】魔法少女リリカルなのはFullcolor'S
リリカルなのはBeastStrikerS
ビーストなのは
魔法少女リリカルなのはStrikerS−時空剣客浪漫譚−
【問題行為】盗作、該当作品の外部サイト投稿及び誠意のない謝罪(リリカラー劇場)
追放処分後の別名義での投稿(Bsts)(ビーストなのは)
>>1乙です
繰り返しますが、スレ立て有難う御座いました
そしてR-TYPE Λ
第二十一話、続きを投下します
華麗に支援
STRONG支援。
魔力炉が最大稼動、「AC-51Η」による魔力増幅を受け、膨大な魔力をアルカンシェルへと再供給。
発射より僅か8秒程度にして、戦略魔導砲の再発射態勢が整った。
減衰を始めた第一斉射の空間歪曲発生領域、その消滅を待たずして第二斉射が自動発射され、更に放たれ続ける次元跳躍砲撃を無効化してゆく。
このペースならば大丈夫だと確信し、クロノが通常魔導砲撃の発射態勢を命じようとした、その矢先。
「前方、高エネルギー・・・」
クルーの警告よりも遥かに早く、空間歪曲発生領域を貫いて飛来した巨大な赤い閃光が、十数隻のXV級を呑み込んだ。
「な・・・」
「陽電子砲! 陽電子砲による攻撃です! XV級、17隻ロスト!」
「更に高エネルギー反応、来ます!」
「緊急回避!」
クロノによる咄嗟の指示により、クラウディアは急激な機動で回避運動へと移行する。
付近に位置する艦艇の機動を確認すれば、ローロンスとシャーロット、他4隻がクラウディアの後を追う様にして回避行動へと移行していた。
しかし、間に合わない。
飛来する巨大な赤、鋭利な青、2種の光条。
それらの陽電子砲撃は、最も回避の遅れていた2艦、その右舷を食い破り、または艦全体を呑み込んだ。
1隻が内部より爆発を起こし轟沈、残る1隻は破片すら残らなかった。
クルーの報告が、力なく響く。
「XV級・・・19隻ロスト」
クロノは呆然と、ただ呆然と、味方艦艇の消え去った空間を見詰めた。
其処には、何も無い。
数十名のクルーを乗せた時空管理局最新鋭の次元航行艦が、1発の砲撃で跡形も無く消滅したのだ。
恐らくは艦長以下、クルーの全ては、自らの死を認識する暇さえ無かっただろう。
余りにも呆気なく、軽過ぎる。
数十の、全体としては千数百もの生命が失われたというのに、余りにも現実味が薄く、認識が及ばない。
初めからそんな生命は存在しなかったのだ、と言われれば納得してしまいそうな無だけが、陽電子という名の死神が通過した跡に拡がっている。
軽過ぎる。
人間としての生命が、尊厳が、余りにも軽過ぎる。
それらの存在価値さえ、疑問視してしまう程に。
「空間歪曲発生領域、消失します!」
「・・・進路変更。目標、汚染艦隊。MC404、砲撃準備」
やがて、アルカンシェルによる空間歪曲の壁が、減衰により消失を始めた。
閃光が徐々に衰え、可視化された空間の歪みが消えてゆく。
その向こうに展開する汚染艦隊、その各所に点在するゆりかごと複合武装体の姿に、クロノは知らず歯軋りしていた。
「距離は?」
「・・・145000。全兵装、有効射程外です」
思わず、血が滲む程に拳を握り締める。
完敗だった。
通常魔導砲撃も、アルカンシェルも届かぬ超長距離から、汚染艦隊は次元跳躍砲撃と陽電子砲とを撃ち込んできたのだ。
こちらが距離を詰めようとする間、汚染艦隊は一方的に打撃を与える事ができる。
打つ手は、無い。
絶望と共に、クロノが息を吐く。
もう、撤退しかない。
席に座し、同じ決断を下すであろう支局艦艇からの通達を、静かに待つ。
そして、自身等に敗北を突き付けた存在、恐るべき未来からの来訪者達の全貌を眺め始めた。
だがその時、彼は汚染艦隊の奇妙な行動に気付く。
全艦艇がこちらへと舷側を曝し、回頭を開始しているのだ。
すぐさま身を乗り出し、映像を拡大表示する。
クルーも、他の管理局艦艇も気付いたらしい。
通信が慌しくなり、無数の単語が入り乱れる。
その中に、第97管理外世界という名称が含まれている事に気付いたクロノは、反射的にその惑星の映像を表示した。
ウィンドウへと映し出される、青き惑星。
特に先程との差異は無く、クロノは何が他艦艇の注意を惹いているのか理解できない。
地球は、特に変わりも無く存在しているというのに。
其処まで思考し、クロノは気付いた。
「・・・なに?」
地球が「変わらず」存在している?
何1つ異変も無く?
馬鹿な。
21世紀時点での第97管理外世界には、次元世界を観測手段など存在しない筈だ。
にも拘らず、あの惑星が今も健在であるならば。
「第97管理外世界近辺、所属不明艦隊捕捉! 総数40!」
汚染艦隊が放った核弾頭は、何処へ消えたのだ?
「艦長! 汚染艦隊、所属不明艦隊へと向け転進します!」
「画像拡大、不明艦隊を映せ!」
「映像、拡大します!」
クルーの報告により判明した、所属不明艦隊の出現。
クロノは、その艦隊が核弾頭の消失に関わっていると確信し、ウィンドウへと表示させる。
汚染艦隊が、管理局艦隊に背を向けてまで優先する、艦艇総数、僅か40隻の艦隊。
映し出されたその全貌に、彼は凍り付いた。
「表示しました・・・しかし、これは・・・」
既知の世界、そのいずれとも異なる艦艇の造形。
個人携行型質量兵器にも通ずる、余りにも無骨な外観。
管理局のそれとは異なり、優雅さなど欠片も存在しない、ただ只管に効率と機能性だけを突き詰めたかのような艦艇の集団が、其処にあった。
刃先の様に平坦な艦首から、後方へと向かうにつれ体積の膨れ上がる艦艇。
真横からならば、直角三角形に小さな艦橋が付いたかの様にも見えるだろう。
艦橋前方に主砲らしきユニットが2つ、艦首上部が大きく前方へと突き出た艦艇。
自動小銃にも似たその全貌は、艦の存在意義そのものが管理世界とは相容れない事を声高に主張しているかの様だ。
明らかに戦艦と判る、正しく大型銃器そのものとも云える全貌の巨大艦艇。
2連装砲塔6基、ミサイル格納ユニットらしき無数のハッチ、艦首に備えられた、XV級で云うアルカンシェルに相当するであろう、戦略兵装らしき大型ユニットは、見る者に圧倒的な重圧感を与える。
これらの艦艇ですら、既に管理世界の理解の範疇を外れている。
しかし、それ以上に無視する事のできない異形が、艦隊には存在した。
最早、艦と呼称する事すら躊躇われるそれらは、生理的嫌悪感をすら齎す全貌をウィンドウ上へと曝している。
先の戦艦とほぼ同じフォルムの艦体ながら、全長・全幅・全高、全てがそれを遥かに上回る艦艇群。
その巨大さは、信じ難い事にゆりかごにも迫る程だ。
艦体下部および後部には無数の槍状構造物が伸び、有機生命体の断面より垂れ下がる生体組織、それらを目にした際にも似た嫌悪感を見る者に植え付ける。
同じく、艦体下方側面より艦尾下方へと角度を付けつつ延びる翼状構造物は、その先端より多数の槍状構造物を伸ばしている。
恐らくは高度な知性と技術力を有する存在が建造した艦艇に、有り得ない事ではあるが、独自の生命が宿り、生物個体として成長したかの様な外観。
艦首兵装ユニットは、周囲に配置された槍状・板状構造物の存在と更なる大型化により、恐怖感すら伴って視界へと映り込んだ。
無機的構造物でありながら有機的生命体。
正しく、その表現が当て嵌まる。
そして、その異形を基に、更なる改良が加えられたのであろう巨艦。
全長が更に増大し、槍状・翼状構造物もその数を増している。
最早、人工建造物として認識する事すら困難な、異形の艦艇。
そして、何より。
他の2種を更に突き放す、余りにも巨大、余りにも異様。
より生物としての成長が進行し、成体として完成されたと云える外観。
巨大な翼、下方・前方・後方のほぼ全てを覆う槍状構造物。
巨獣の口腔とも取れる艦首兵装ユニット。
兵装と艦橋らしき部位を除けば、もはや生命体である事を疑う事さえ困難だろう。
「全長・・・3900m!? 全高1800m、最大全幅1300m・・・!」
「この艦・・・艦長、構造物が・・・!」
「分かっている」
そして、何かを発見したクルーが、怯えるかの様にクロノへと語り掛ける。
クロノにも、それは見えていた。
不明艦艇より伸びる、無数の槍状構造物。
それらの一部が、不自然に揺らめいている。
初めこそ見間違いかと考えたが、画像を拡大するや否や、その可能性は潰えた。
棘皮動物の棘にも似たそれらが、何らかの事象に反応して各々に独立可動、僅かながら管足の如く蠢いているのだ。
その事実を認識した瞬間、言い様の無い悪寒がクロノの背を駆け上がった。
それは正しく、人間が原生動物などに対し抱く、生理的嫌悪感と全く同じもの。
個人としての印象は兎も角、対象は明らかな人工建造物と判明しているにも拘らず、クロノは醜悪な生命体に相対した際と同じ感覚を抱いていた。
彼は既に、あの存在が生命体ではないと、知的存在によって建造された戦艦であると、そう云い切れなくなっている自己に気付いている。
それだけではない。
彼は何か、言い様のない不快感と嫌悪、生理的なものとは源を異にするそれらを覚えていた。
だが、それらの感覚が何処から生じているのか、それが判然としない。
一体、この感覚は何なのか。
「第10支局より入電・・・所属不明艦隊、詳細判明。第97管理外世界、国連宇宙軍・第17異層次元航行艦隊。艦隊編成、ニヴルヘイム級戦艦3隻、ムスペルヘイム級戦艦4隻、ヨトゥンヘイム級戦艦6隻、テュール級戦艦8隻、ガルム級巡航艦12隻、ニーズヘッグ級駆逐艦7隻。
計40隻の艦艇から成る、独立遊撃艦隊との事。艦載機はR戦闘機を中心に、総数500機前後・・・」
「警告! 本艦側面60m、空間歪曲発生!」
「何だと!?」
咄嗟に、ドーム側面へと視線を投じるクロノ。
果たして其処には、5機のR戦闘機が忽然と現われていた。
データ照合、該当記録あり。
クラナガンにて確認された、高圧縮エネルギー障壁発生機構搭載型。
それらが何故、管理局艦隊の只中に現れたのか。
クロノが理解するを待たず、5機は一斉に機体下部より大型ミサイルを放つ。
見れば、管理局艦隊の其処彼処より、計30発以上ものミサイルが放たれているではないか。
如何やら他にも、艦隊の隙間を縫う様にして同型機が出現しているらしい。
そして、ミサイルの飛翔する先に存在するは、地球軍艦隊へと向き直り後背を曝す汚染艦隊。
即座に迎撃が開始されるも、高度な欺瞞装置が搭載されているらしきミサイル群の数は一向に減らない。
それらは驚くべき速度で飛翔、150000もの距離を僅か十数秒で詰め、遂に汚染艦隊の只中へと突入。
瞬間、視界を焼かんばかりの閃光が、ブリッジを埋め尽くす。
同時に、強大なエネルギーの炸裂の余波が、クラウディア艦体を激しく打ちのめした。
座席より投げ出され、コンソールへと打ち付けられるクロノの身体。
ブリッジドーム内に、クルーの悲鳴が響く。
数秒後、何とか身を起こしたクロノは、外部映像を映し出すドーム内面に、驚くべき光景を見出した。
しかし、彼の口から零れた言葉は、まるでその有様を予測していたかの様なもの。
口内に溜まった血を吐き捨て、侮蔑の表情を隠そうともせずに呟く。
「ああ、そうだろうさ・・・貴様等が、通常の弾頭など用いる訳がない。狂人共にそんな良識がある訳がない」
そう呟く彼の視線の先には、未だ消えぬ数十の巨大な火球、その中に浮かぶ、大きく数を減らした汚染艦隊の影があった。
画像には、火球を生み出した現象についての解析結果が表示されている。
其処には、唯1つの単語のみが記されていた。
「核爆発」と。
そして、クロノは理解する。
先程の疑問、理由すら判然としない不快感と嫌悪。
彼はその明確な答えを、はっきりと自覚していた。
あれらの艦艇は、非常に「似ている」のだ。
気の所為などではない。
明らかに、紛れもなく、疑う余地すら無く。
あれらは余りにも酷似しているのだ。
彼等が打倒せんとする存在、打倒すべき存在。
今この瞬間、クラウディアの遥か前方で核の焔に呑まれ、なお滅びぬ異形の群れ。
生物と見紛うばかりの全貌、複合武装体。
支援だ!
GREAT支援
間違いない。
彼等が、地球軍があれらの艦艇を建造するに当たって摸した、その存在とは。
「R戦闘機、発艦確認!」
「汚染艦隊残存勢力、本艦隊へと向け再転進!」
「バイド」だ。
直後、第8支局艦艇より全艦隊に警告が奔る。
空間歪曲多数、及びバイド係数の上昇を確認。
大質量物体、転移まで20秒。
クロノは三度、アルカンシェルのバレル展開を命じる。
生存か、破滅か。
選び得る道は、1つしかない。
管理局が全てを取り戻すか。
地球軍が全てを灰と化すか。
バイドが全てを呑み込むか。
「AB戦役」最大にして最悪の戦闘と云われる、隔離空間内部艦隊戦。
その中でも最も長い期間に亘って継続し、最も多大な被害と犠牲を生み出した「極広域空間融合・第二次遭遇戦」。
大義も思想も朽ち果て、理性も尊厳も消失し、人が人たる所以を失い、「バイド」と「人間」、双方の「本性」のみが全てを支配した、悪夢の戦闘。
全てはまだ、始まりに過ぎなかった。
投下終了
私のミスでご迷惑をお掛けしてしまい、申し訳ありません
支援、そしてスレ立て、有難う御座いました
という訳で、今回からスーパー脇役タイムとなります
本来ならば前線に出る筈の無い人物、魔導資質の無い人物
そんな彼等が否応なく戦場へと巻き込まれてゆく様を上手く描ければと考えています
ギン姉は暫しお預け・・・と言いたいところですが、もしかすると次回辺りにいきなり彼女の話になるかもしれません
そして、現在の管理局の内情を、もう少し詳しく描写してみました
強硬派の言っている事は、21世紀の地球人からしてみれば「ふざけんな!」という感じですが、スカ博士が言う様に決して間違ってはいません
むしろ本当にヤバいのは強硬派ではなく22世紀の地球人です
かといって21世紀がヤバくないかと言われれば、実は管理局的にとってもヤバい世界であると・・・
今回出現した地球軍艦艇は、全て「TACTICS」のユニットです
デザインは非常にカッコイイのですが、良く見るとどっちがバイドか分からなくなる不気味さが素敵な連中です
某新米提督も、地球軍の新型艦に対して違和感を抱いていました
其々の性能などは、艦隊戦時に解説します
遂に出現した「コンバイラ」についてもその時に
次回予告
今回は以前の章と同じく、これから描写する展開を書いておきます
マッド & 旧ロングアーチ & 熟女’s & ナンバーズ & 他多数 → 本局脱出戦
管理局艦隊 & 地球軍 & バイド & エキストラの方々 → 艦隊戦
ギン姉 & 旧ライトニング & 武装警察 → ?
ではまた
>>1様、有難う御座いました
投下乙!GJ!
バイドが先か、地球軍が先か…
GJ!
ストライダーのバルムンクも核弾頭でしたね
帰郷を果たした司令官は人類を愚かと例えたけど
このどうしようもない業の因果は何故起きてしまったのだろう?
始まりの地へ到達しても結果は変わらないですし
やっぱり、最後はあれを建造するしかないな
GJ!相変わらず面白いです。
スカ博士はこの状況についてかなり正確に理解していそうだ。
管理局も生き延びることができたら地球のようになってくのかな。
管理局は地球軍を目の敵にしていて、
バイドに対する認識が微妙に低いので、
バイドの怖さをもっと知った時の反応が気になる。
バイドの容赦のないところが好きです。
しかし地球軍もバイド戦艦があるし、危険度は似たようなものか。
管理局内でも魔導士の危険性を
知っている人間がいるんですね。
良いキャラかも。
次回予告はエリオ勢が特に楽しみ。
戦いの中でどんな変化をしたのか・・・。
では続きを頑張ってください。
キングスマインド参上はまだ先かあああ!?いやそれともやっぱり出演は不可能かああ?!
でもカロンやスイートメモリーズがアリなら…
…ちょっとレオ2無双して頭冷やしてくる
そしてやはり出番のないマッキャロン級
24時から投下予約。
予告編第三弾、「イレギュラーサイド」です。
恐ろしいのはこれでもバイドと地球軍は氷山の一角に過ぎないところですよねー
ある意味、管理局は地球軍と接触できて幸運だったかと。バイドだけだったら目も当てられないw
本局脱出戦はパニック映画、艦隊戦はSFモノ、?は……愛憎劇かな?w
>>20 wktk
時間になりましたので投下します。
支援
「まだまだ、夢はこれからさ……」
男には夢があった。
人とは少し違う、夢と理想があった。
「そう、叶えるんだ……私の、夢を。誰にも辿り着けない、私だけの理想を」
再び動き出した、陰謀と策謀。
「ドクターが側にいてくれるなら、それでいい。それで、いいよ」
生娘が望むのは、ささやかなる願い。
「ずっと側にいてくれるなら、私は……」
純潔を捧げるは、背徳者への道筋か。
「偽りの仮面は、身も心も姿を変える」
仮面を被りし半身は、一人の男の夢を知っていた。
「私もあの人も、自分という存在に実感が持てない……だから、私たちは傷を舐め合う
ことが出来た」
半身は笑う、笑い続ける。偽りの仮面をその身につけて、ひたすらに。
「時間が……ない」
こぼれ落ちる砂粒は、少女の抱える砂時計。
「時間が、ないの」
僅かに残った砂粒が、少女を闇へと誘って、
少女に決断を迫り来る。
「ゼロ、今は、私だけを見て。そして、私の最期に……付き合って」
彼女は恋を知っていた。
姉も妹も知らない気持ちを、彼女は唯一知っていた。
「報われるとか報われないとか、そういうのはどうでもいいんだ」
彼女の笑顔は空の色、彼女の想いは星の輝き、
「人を好きになって、それがゼロだったことを、誇りに思える自分がいるから」
交錯するのは、想いと情念。
錯綜するのは、嘆きと悲しみ。
「救世主が世界を壊し、創造主が世界を創る。素敵な話だと思わないかい?」
破滅を望む救世主、再生を願う創造主。
「夢幻にはならない……夢は、幻ではなく現実となる」
「私と貴女は似すぎている。行動も、思考も、そして理想も」
突き付けるのは、残酷なる現実。
「なら、私たちは協力し合えるはずだ」
押しつけるのは、一方的な願望。
「スカリエッティは、あなたを倒したいんじゃない……スカリエッティは、あなたに!」
少女の告げる真実は、一人の男の野望を超えた、夢の塊。
「さぁ、私の夢はまだ始まったばかりだ……醒めることのないこの夢に、最後までお付き
合い願おうか、ゼロ」
ロックマンゼロ-逆襲の救世主-
2009年1月1日、投下開始予定
予告編第三弾です。
いや、イレギュラーは数が多いから長くなりますね。
出し切れないキャラが多いので、もう一弾ぐらい作っても良いかもしれません。
さて、前回の投下時にお知らせした、前作「赤き閃光の英雄」同人誌化計画ですが、
現在保管庫に特設ページ、避難所にクロスSSスレ同人誌用スレッドが建っております。
冬コミまで一ヵ月を切りましたが、皆様、よろしくお願いします。
GJ
投下日が予告されてますね
スカ×ルー?本編を待ってますね
投下乙です
しかし予告投下日……これはいいお年玉!
GJ!
一月一日とか遠いなって後一ヵ月なんですよねぇ、一年は早いな……
楽しみに待ってます。
深夜で申し訳無いのですが、00:50に投下予約をお願いします。
それでは、そろそろ投下します。
『さぁ、いよいよ復活の時だ!
私の「スポンサー」諸子、そしてこんな世界を作り出した管理局の諸君。
偽善の平和を謳う聖王教会の諸君もっ。
見えるかい? これが、君達が気にしながらも求めていた絶対の力!
旧暦の時代一度は世界を席巻し、そして破壊した古代ベルカの悪魔の兵器――
――聖王のゆりかご。
見えるかい……待ち望んだ主人を得て、古代の英知の結晶はその力を発揮するっ。
我々をあるべき未来へと……偉大なるアウターヘブンへと誘う奇跡の力!
さぁっここから夢の始まりだっ!!』
第十五話「突破」
「……始まったな」
ジョニーが天井を仰ぎ、スネークも黙って虚空を睨み付けた。
激しく揺れる地面。
耳を震わせた地響き。
それらはもうすっかり治まっているが、恐らくゆりかごは発進してしまったのだろう。
――もはや、一刻の猶予も無い。
目の前のジョニーもそれを分かっているのか、表情が目に見えて変化し、焦りの色が浮かんでいる。
「ほら、あんたの装備だ」
ばさり、と飛来するスニーキングスーツ。
スネークは乱暴に投げ渡されたそれを素早く身に付けた。
ぎゅうぎゅうに締め付けられた体も、一週間ぶりの懐かしい感覚を喜んで受け入れているようだ。
――やはり、これが俺の制服だな。
続いてボディアーマーを着用し、装備をざっと点検する。
全て異常無し。
シャドーモセスではスネークの脱獄を予想したのか、オセロットが装備に爆弾を仕掛けていた。
さすがにここでは、そこまで捻くれた奴はいないらしい。
スネークは炎上する六課を思い出して少し不安になりながらも、通信用デバイスに手を伸ばした。
地下で長時間放置された所為か、冷え込んだデバイス。
それを手に取って背筋がゾッとなるのを感じながらも、繋がってくれ、という祈りと共に通信を開く。
『……こちらスネーク。聞こえるか』
『スッ……スネークさん!! 無事ですか!? 今どこにっ!!?』
瞬時に脳内を駆け巡る叫び声に、スネークの体が悲鳴を上げた。
女ってのはどうしてここまで甲高い声を出せるんだ。
落ち着けシャーリー、と平静を装って声を絞りだし、映像を送信する端末を起動させる。
これで向こうは、こちらの様子をモニター出来る筈だ。
『今まで捕まっていた。ちょうど脱獄した所だ』
『――っ〜! 心配したんですよぉっ!!』
スネークは少々涙声のシャーリーに一言謝って、苦笑しながら頭を掻いた。
どうやら、相当心配を掛けたらしい。
真剣な声ではやてはいるか、と問う。
どうやらそれは答えるまでもない質問だったようで、すぐに回線は繋がった。
『スネークさん! ……無事で何よりです』
『ああ、心配を掛けたな。はやて、そっちの状況は?』
はやては安堵の息を漏らしながらスネークの無事を祝うと、早口で今起きている事態を説明する。
向こうも大変な騒ぎになっているらしい。
攫われたヴィヴィオとギンガ。
聖王のゆりかご発進、地上本部へ向けたガジェット・戦闘機人の進攻。
この事態に本局も動きだす、との事。
次元航行艦に拠点を移した機動六課もまもなく出撃するようだ。
『……はやて。ここにはメタルギアがある。スカリエッティは核攻撃を企んでいるぞ』
その後ゆりかごに合流するつもりだ、と。
恐らく通信が途切れていて自身しか知らないであろう情報をはやてに吐露。
はやてがメタルギア、と複雑そうに呟く。
向こうにいるスタッフ達のどよめきが聞こえてきて、スネークは下唇を噛み締めた。
『メタルギアは俺がどうにかするつもりだが……そこかしこでAMF戦になるだろう、こっちにはどれくらい増援を送れる?』
『六課からはフェイト隊長、そして教会騎士団が。だから……そちらへ行けるAMF戦可能な戦力は精々三、四人だけです』
ゆりかごへの戦力投入が一番大きい、との事。
――それだけ来れるなら十分だ。
スネークは笑いながら、はやての申し訳なさそうな苦笑を軽く流す。
むしろ、フェイト一人でも何と心強い増援か。
コホン、とはやてが咳払い、瞬時に緊張した声色に変化した。
『それでは。……スネークさん、貴方の目的はアジトの斥候、管制システムの無力化でした』
ああ、と頷く。
アジトの斥候は完遂とは言えないだろうし、管制システムについては手付かずの状態。
なんとも情けない話だが、後悔している暇は無い。
数秒の沈黙を経て、機動六課部隊長の命令がスネークに下される。
『ですが今から任務は変更となります。スネークさん、メタルギアを最優先で止めて下さい!』
『……メタルギアの核発射とゆりかごへの合流を阻止、だな。了解だ、部隊長』
そういった任務をもう何度繰り返したか。
ともかく復唱して確認し――口をつぐむ。
不意に黙り込んだスネークへ、はやてが訝しげに声を上げた。
『……スネークさん?』
『はやて。……これで全て、終わらせるぞ』
スネークはこの世界に来て、自分が臆病だと自覚した。
湾岸戦争に参加してから現在に至るまで疲れたように戦ってきて。
一人ではどうにもならない状況がある事がシャドーモセスで思い知らされたのだ。
誰だって、独りぼっちでは戦えない。
独りぼっちで戦ってる奴なんていやしない。
そんな中で、『スネーク』という重力圏に引き込まれた人が、その人生を変えていく。
自分の介入によって、自分の所為で誰かが傷付く。
現在に至るまで何事も自分で始末を付けてきたスネークは、それを酷く恐れた。
どうにもならない事だとしても、謝罪の念、そして自責の念が込み上げてきたのだ。
メタルギア。
アウターヘブン。
少なくともスカリエッティの計画に、ソリッド・スネークという存在が何かしらの影響を与えた事は間違いなかったのだから。
――だからこそ、ここで全てを終わらせる。
メタルギアを破壊、スカリエッティを止めてみせる。
『スネークさん、頑張りましょう!』
『……ああっ』
脳内へ響く力強い励ましに、そして胸に根強く留まり続ける責任感に戦意を高め。
スネークは頭を何度か振ってもやを払い、目の前の現実に向き合った。
――さぁ、一刻も早くメタルギアを破壊しなければ。
急かすような視線を向けてくるジョニーに頷きを返す。
「スネーク。どうするんだ?」
「管制システムは後回しだ。時間が無い、まずメタルギアを破壊する。お前、何か弱点とかわからないのか?」
こちらの世界へ来てずっとここにいたのなら、何か有用な情報を知っていてもおかしくは無いだろう。
確固たる信念を持って戦う事を決意した戦士ジョニーはふむ、とひとしきり唸って――
「――さっぱり分からん」
「……」
深い嘆息を漏らす。
ジョニーが悪怯れる様子も無く頬を掻いたので、スネークは止むなく質問を変える事にした。
何でもいいから知っている事を教えろ、と。
――股間に生えた卑猥なレーザーと頭部のレールガン、両肩に載せられた魔力砲。
既にスネークが知っている情報がジョニーの口から飛び出てきて再び溜め息。
それを見たジョニーが顔を赤くし、口を尖らせた。
「あれについては遠巻きに見ただけなんだよ! スカリエッティが俺にぺちゃくちゃ話すとでもっ!?」
――それもそうか。
確かに、自分が黒幕だったとしてこの男に包み隠さず話す事は無いだろう。
スカリエッティの判断に初めて同調。
そんなスネークの反応が余計不満なのか、ジョニーは男前の顔を歪ませる。
「ふんっ。……ああそうだ、アレはAMFを搭載している。と言ってもあんたや俺には関係ないか」
「何だと? ……魔導士にとってはやはり、大きな脅威になるな。それで、メタルギアはどこに?」
メタルギアの格納庫は殆ど一本道だ、とジョニーが扉へ顎をしゃくった。
――ならば、前進あるのみだ。
扉へと足を進めるスネークの背中へ、ジョニーの声が掛けられた。
「スネーク。格納庫への通路にはガジェットの群れが待ち構えている」
「突破するしかない。……お前は? 元々は向こう側の人間だろう」
「俺があんたの脱獄を幇助したのはもう知れ渡っているだろうよ。俺ももう奴らにとっては外敵扱いって事」
ジョニーは肩をすくめてわざとらしい溜め息を吐いてみせた。
スネークは苦笑しながらFAMASを構えようとして、ある事を思い出す。
豊富な装備品を漁ると振り返り、ジョニーの元へと歩み寄った。
「ほら。GSRだけでは心許ないだろ」
各種グレネードと、サブマシンガンMP5SD。
このサブマシンガンは減音器が標準装備されている。
抑えられた反動と、高い命中率。
『VERY EASY』な人向けの良銃なのだが、歴戦の傭兵であるスネークが使う機会は殆ど無かったのでちょうどいいだろう。
「弾薬が足りなくなったら俺に言え、分けてやる」
「うおぉっサンキュー、色々悪いな! ……でもあんたどんだけ弾薬持ち歩いてるんだよ?」
歩く弾薬庫。
そう言いたげな顔でMP5を点検し扉へと構えるジョニーに、スネークは不適な笑みを送って親指で額を指した。
親指の先には、もはや体の一部でありスネークの代名詞とも言えるようになったそれ。
縫い付けられた「∞」のマークに秘められた、意味通り無限大の可能性。
そう、どんな苦境も共に乗り越えてきた相棒だ。
心配いらん、と言ってスネークは声を張り上げる。
「『無限バンダナ』だ。……さぁ、行くぞっ!」
ソリッド・スネーク生存。
その吉報は瞬く間に機動六課を駆け巡り、ティアナの耳にも入った。
スターズ隊長高町なのはの娘ヴィヴィオ。
そして二週間程前に六課に出向した、スバルの姉ギンガ。
そして両者と共に捕まったと予想された頼れる年長者の存在は、六課に大きなダメージを与えた。
当然、ティアナもそうだ。
親友の姉ギンガとは懇意な間柄だったし、スネークも隊長陣と同じ位に尊敬していたので気が滅入っていたのも事実としてある。
勿論いつまでも落ち込んではいられないので、自分自身を奮い立たせてはいたが。
その行方不明者の一人である彼が無事だった事に、六課メンバーの間にも僅かだが安堵が漂った。
メタルギアの存在と核発射の可能性がおまけとして付いて来たがそれが気にならないくらい、伝説の傭兵が立ち上がった事に六課の士気も上がっていた。
全てを取り戻そう。
無事に事件を解決しよう。
その誓いを共有して、機動六課の隊員達は再び立ち上がったのだ。
そして今ティアナがいるのは、六課の輸送ヘリの中。
自らのデバイスであるクロスミラージュを撫でながら、数分前にスターズ隊長から言われた言葉を思い出していた。
誰よりも強くなった、とは言えない。
けれど、どんな相手が敵でも、どんな状況でも絶対に負けない。
守るものをを守れる力、救うべきものを救える力。
絶望的な状況に立ち向かっていける力。
ここまで頑張ってきたフォワード部隊の皆はそれが身についている、と。
本当にそうなのか。
少しだけなのはの言葉に対して不安が過り、ティアナは頭を振ってそんなもやを振り払う。
自分はエースオブエースと、伝説の英雄から教えを受けたのだ。
今自分を卑下するのは、彼らを侮辱するも同然。
拳をぎゅっと握り、近づく戦いへ向けてティアナは戦意を高めた。
――が、数分後には気が抜けてしまった。
何故か。
鼻を啜り涙を拭いながらヘリへ搭乗するスバルの所為だった。
「……出動前になぁに泣いてんのよ」
ティアナは隣へ座るスバルへ、呆れたような視線を送る。
――大体原因は分かっていた。
「なのはさんに、頑張って、って言おうと思ったのに……」
「逆に励まされて帰ってきた? ……バカね、あんたがなのはさんを励ますなんて十年早いって事でしょ」
ティアナはそう畳み掛け、涙目のスバルの頬を軽くつねる。
鼻声で何やら唸っているが気にしない。
「なのはさんを励ましたいなら、誰よりも強くてずっと立派にならなきゃ」
「……うん」
分かったらいつまでも泣かない、とスバルの背中を叩く。
スバルもいくらか調子が戻ったようで、ティアナに笑顔を見せた。
「ティア、ありがと」
「はいはい」
照れ臭さからそっぽを向くティアナに、スバルが微笑み。
ふと思い立ったかのように声を上げた。
「ティア」
「何?」
「……スネークさんって、強いよね」
スバルは治療の為アースラへの搭乗が遅れていたが、彼女にもスネークの過去は話されたようだ。
「私はティアやギン姉達がいたし、この身体の事で何度も悩んで相談して、励まされて。……でもスネークさんはそんな素振り全然見せなかった」
とある男の遺伝子を再現する為だけに生み出された存在。
彼の瞳が放つ光は、そんな望まぬ運命に押し潰される事無く、余りに眩しくそして強い、と。
――確かにそうだ。
ホテル・アグスタの一件でティアナが醜態を晒した時も、ティアナの心中を即座に見抜いて的確な言葉を与えてくれた。
達観した眼差しで。
だが、ティアナは知っていた。
地球の人々がスネークに嫌悪の眼差しを向けている、と聞かされた時に見た、ユーノの激昂を堪えた表情を。
只の友人としてではなく、シャドーモセス事件直後からスネークを見ていたからこその反応。
「……スネークさんは今も、自分がしてきた事に苦しんで、辛い思いをして、悩んでる筈よ」
「……」
きっと、そうなのだろう。
それでも。
「それでもあの人は戦う事に、生きる事について自分なりの答えを出そうと頑張ってる。私達と一緒に戦いながら。だから私達も――」
「――うん。頑張ってギン姉もヴィヴィオも全部取り戻して、事件を無事解決させる!」
「そういう事。いい、スバル。気合い入れていくわよ!」
おうっ、とスバルが拳を突き出し、ティアナもそれに合わせる。
絶対に、負けない。
その想いを胸に。
「ジョニー、アイテムだっ!」
等間隔に灯りが設置された、代り映えのしない通路。
絶え間なく響く銃声、それを彩る爆音、そして兵士達の雄叫び。
戦場が奏でる定番のBGMの中でさえ、スネークの芯が通った力強い声は共に戦う戦友へと届く。
ジョニーは突っ込んでくるガジェットをGSRで撃ち抜き遮蔽物の陰に飛び込んだところで、親指を突き立ててスネークへ反応を見せた。
スネークは彼へ弾薬やグレネードの詰め合せを投げ渡し、ついでに前方の無人兵器の群れへグレネードを放り投げる。
爆発音、そして辺りに散らばるガジェットの破片。
ジョニーが弾をリロードしているのを横目に遮蔽物から躍り出て、FAMASを標的へと構えて引き金を引く。
悲鳴代わりの爆音。
進行ルートを塞ぐように群がるガジェット達を葬り弾倉を取り替えた所で、スネークは正面を向いて声を張り上げた。
「突っ込めっ!!」
「う、おおおおおぉぉっ!」
FAMASの5.56弾とMP5の9ミリ弾、そしてガジェットが放つミサイルや熱光線が空中を忙しなく飛び交う。
意外にもジョニーの腕が良い事もあって、ガジェットは出現する度確実に殲滅され数を減らしている。
しかし同時に、スネーク達にも疲労は蓄積していく。
さらに着実に前進してはいるものの、そのスピードは亀のようにゆっくりで焦りを押さえるのにも一苦労だ。
そんな中。
「ううぅっ!!」
唐突に、ジョニーの時が止まった。
勿論、ガジェット達がそれを見過ごす事などない。
スネークは毒付き上半身を無理矢理捻って、彼を狙うガジェットへFAMASの引き金を引いた。
ジョニーを殺そうとするガジェットが側頭部を射抜かれ、小爆発を起こす。
青冷めた表情のジョニーに慌てて駆け寄り、彼を庇うように弾幕を張った。
「どうしたっ!?」
「は、腹が……と、といれ……」「っ〜〜!!」
途方も無い怒りに襲われ、頭を引っ叩いてやりたくなった。
下痢か、と怒鳴り付けると、ジョニーは弱々しく頷く。
こんな戦場で、とスネークは心底呆れ、もう一度怒鳴る事に。
「お前が胆のう炎でも一向に構わんが今は我慢しろ!!」
「ヒッ……く、くそぉっ、最後の二錠だ!」
ジョニーは懐から何かの錠剤を取り出して口に放り込んだ。
さらに片方の手で尻を押さえ、もう片方でMP5を操るという妙技を披露する。
このくそったれめ、とスネークも毒付く。
この通路すらも通り抜けられないかもしれない。
だがそれは幸運な事に杞憂だったようでしばらくの後、苦痛に顔を歪ませたジョニーが笑顔を浮かべた。
「――スネーク、出口!」
歓声に似た叫び声。
壁の格納スペースから続々と現れるガジェット達の向こうに、扉が見えた。
チャフグレネードのピンを抜き、敵の頭上目がけて投げ込む。
爆発と同時にジョニーがMP5の弾丸を敵へとばらまき、その間にスネークはスティンガーを構える。
――弾は既に装填完了だ。
「隠れろっ!」
スネークはその言葉と同時に飛び出すと、生き残った敵へ狙いを定めてスティンガーの引き金を引いた。
強力な爆発が起こり、吹き飛んだガジェットの残骸がスネークの真横を掠めていく。
よし、と頷こうとして、背後から聞こえてくる音に振り返る。
――ガジェット達の増援。
しかも、数が多すぎる。
スネークは、休む暇も与えてくれない彼らへ舌を打った。
「うへぇ……」
「――おい走れ、置いてくぞっ!!」
バwンwダwナwww
支援
パープル・ヘイズ!!
呆けた表情で大群を眺めていたジョニーの体がビクッと震える。
スネークは全速力の走りで扉へ向かって駆け抜けた。
ガジェット達は邪魔な仲間の残骸を何の躊躇も無く蹴散らしながら、グングンとスネーク達との距離を詰めてくる。
スネークが扉を抜け、続いて息を切らしながらジョニーも駆け込む。
扉をロックしろ、と膝を突いたスネークが言う前にジョニーの指は扉の横へと伸びていた。
電子音の後に続いたガチャリ、という音がロック出来た事を知らせる。
同時に扉を挟んで、泣き喚く赤ん坊のようにガジェット達が騒ぎ立てるのがスネークの耳にも届いた。
深呼吸を繰り返して息を整える。
「……おい、腹は大丈夫か、この糞男」
「……なんとか。こいつに助けられた、しばらくは持つ筈だ」
ゲリ止まーると丸文字の日本語で書かれた、錠剤の空き箱を振るジョニー。
――下痢止めか。
ありがとうジャパニーズ、と空き箱にキスしながら小声で呟くジョニーを一睨みして弾倉を交換する。
一生このまま休んでいたいところだが、そういう訳にもいかないだろう。
『スネークさん、大丈夫ですか? 怪我もしてみたいですけど……』
柔らかで優しいこの声はシャーリー。
戦場にいるスネークにとっては正に天使のような存在だ。
『ああ。念入りなマッサージとビールがあれば問題ない程度さ』
『帰ったらマッサージしてあげますよ。だから、頑張って下さい!』
『それは夢があるな。よし、さっさと終わらせる事にしよう。じゃあな』
無線を閉じたスネークは立ち上がり、ジョニーもそれに続く。
と、ジョニーが座り込んだ。
「い、つぅ……」
「おい、大丈夫か?」
「ハハ……メッチャ痛いし疲れたし、もう死んじゃいそう」
生傷だらけの――スネークも人の事は言えないが――ジョニーは歯を食い縛って軽口を叩き、ゆっくりと立ち上がった。
生きてる証拠さ、とスネークも苦笑する。
先程までの戦いが嘘のように静まり返ったこの部屋には、扉が三つあった。
スネークがジョニーへ視線をやると、彼はスネークの意図を汲んだのか扉の一つを指差す。
「……あっちの扉がメタルギアの格納庫だ」
「よし、じゃあ――」
いざ、対決へ。
一呼吸置いて歩を進めるスネークを、ジョニーが引き止めた。
「――待ってくれ。俺はこっちへ行く」
ジョニーがもう一つの扉へと体を向けた。
この先は管制室へ繋がっているんだ、と。
スネークはジョニーの考えを理解して、顔をしかめる。
この男はたった一人で、管制室へ向かうつもりなのだ。
管制システムの無力化という、スネークの元々の任務を果たす為に。
「俺が管制システムを、ウーノを止める。あんたはメタルギアを頼む」
「……だが」
「時間の猶予が無いのはあんたも分かってるだろう? メタルギア相手は俺には荷が重すぎる。せめてこっちは任せてくれ」
スネークは一度大きく唸って、諦めたように息を吐いた。
分かった、と目の前の戦友の肩に手を置いて、一言。
「――死ぬなよ」
ケラケラ、とジョニーは明るく笑ってみせる。
あんたは俺の体に流れた血の強運さを知らないのか、と。
――生憎、下痢男の血なんて知らないね。
そう微笑むスネークに、ジョニーは大げさな動きで驚きを表現した。
「俺の家は代々長男にジョニーと名付ける風習がある。父さんも、爺さんの名前もジョニーだ。いつか俺に息子が生まれたら、そいつもジョニーになる訳さ」
「ジョニー一族、か」
「爺さんは昔、あのビッグボスと殺り合って生き残ったんだ。爺さん曰く、奴が眼帯を付ける羽目になったのはそれらしい」
おまけに数々の死線を紙一重でこなしてきたんだぜ、と鼻を高くするジョニー。
――その話が本当なら、確かに凄い話だ。
ビッグボスは『二十世紀最強の兵士』と呼ばれた男。
老いても尚アウターヘブンやザンジバーランドであれだけの強さを見せていたのだ。
……全盛期の彼と殺し合って手傷を負わせ、生き延びるとは。
「俺はこのジョニーという名前、そしてこの体に流れる血を誇りに思っている。……スネーク、こっちは任せてくれよ」
「……分かった。そのジョニー一族の血とやらを信じよう。そっちは頼むぞ」
おう、と威勢の良い返事が返ってくる。
一歩進もうとして、またしてもジョニーがスネークを引き止めた。
眉をひそめて不満気に振り返る。
「まだ何かあるのか」
「もし、あんたが彼女達に会ったら伝えて欲しい事があるんだ」
「……何だ」
「……その。『君達は外の世界を是非見るべきだ、ジョニーが言うから間違いない』って」
ジョニーは小声でその伝言をスネークに託すと、照れ笑いを浮かべる。
スネークは分かった、と神妙な面持ちで頷き、会って間もない戦友へと左腕を突き出した。
ジョニーもその意図を理解したのか、左腕を絡ませる。
それは軍隊式の挨拶。
軍人として、仲間として互いを認めあった証。
――幸運を。
二人はそう言い合って、互いの健闘を祈る。
そして、別々の扉へ駆け出した。
激化する戦いへと向かって。
第十五話投下完了です、支援ありがとうございました。
今更MP5SD登場です。
MGS1インテグラルでVERYEASYを選ぶと最初から使えるサブマシンガンですね。
サプレッサーが付いていて弾数も無制限という鬼武器ですが、ツインスネークスにはさすがにありませんでした。
無限バンダナは本編でしっかり出そうと思って、以前のおまけの際ではぼかして出した次第です。
MGSは現実にある用語が飛び交う中で、時々無限バンダナみたいなのがメインムービーに出てくるのも魅力の一つだと思います。
というかボスは皆非常識なのばかりなんですけどね。
それでは、次回もよろしくお願いします。
GJ!
ジョニー一族の歴史が改変されてるw
R-TYPE氏のシュバルツガイストってもろアインハンダーやん
GJです。ジョニーが死亡フラグじゃね?
ジョニーの歴史改変には笑いました。俺は3じゃ眠らして殺しちまったのに…。
続き楽しみにしてます。
R-TYPE氏GJ
原作しらんが読んでて楽しいですよ
戦場は限りなくカオスな艦隊戦になってるがどう想像していいのかがワカリマセーン
リリカルギア氏GJ
いやー最終戦ですねー、これからラストまでが楽しみです
あとジョニーガンバッテー
リリカルギア氏GJ。
嘘つくなジョニーwww
47 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/01(月) 10:43:42 ID:jzig1R+F
R-TYPE氏更にGJ
クロノ提督が来ましたかww戦況が想像しづらいのですがw
次のストーリーが楽しみです。やっぱりエリオの裏切りの理由かな?
R-type氏GJです
ところで3か月前からやってる凾ェいまだに終わらない件について
4面で死ぬぜ!4面!
武装警察は話せば分かってはくれると思う。質量兵器を捨てろ?何それ死にたいの?
R−TYPE氏GJ!!
しかし、 バイドが全てを呑み込むのは嫌だが管理局が全てを取り戻すのも嫌だな。
>>41 リリカルギア氏GJ!
ティアナの思いやヘリの中の所が良いなあ。
51 :
一尉:2008/12/01(月) 15:15:56 ID:oaAI9B5E
ジョニー支援
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| *・ vv〉 アンヘルがこのスレに興味を示したようです
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| ノ
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18:30から投下予約。
結構間が空きましたがレイジングレン三話です。
時間なんで投下始めます。
天元突破レイジングレン 第三話 「その手に掴む意味(前編)」
夜が明け日が昇り、朝が来る。
たなびくカーテンを透かして日が差す部屋に膨らみを持ったベッドがあった。
シーツに覆われた丸みが身じろぎ、時折こぼれる吐息は少女のもの。
寝心地がよい姿勢をとり、膨らみの動きが呼吸によるかすかな上下運動に落ち着いた。少女は布団をかぶって窓からの日ざしを遮り、またまどろみの底に沈んでいく。
温かみのこもった布団はなんとも心地よく、怠惰な気持ちが睡眠欲求を助長する。
至福の時に口元を緩ませ枕に顔を擦りつけて、眠りの快楽に浸る彼女の頬に振動が伝った。
携帯のバイブレータだ。
続いて鳴るアラームが安眠の終わりを報せ、幼い顔の眉根が寄った。
うっすらと覚醒しつつ、今日が朝から学校に行く平日だと理解。
覚醒半分寝ぼけ半分で音源を求めてもぞもぞと弄っている内、少しずつ目が醒めて指先に硬い手触りが当たった。
手の届かない床で起床を促すメロディに少女、高町なのはが緩慢に起き始める。
控えめな欠伸を唇の間から出したなのはは名残惜しさを引き摺ってベッドから降りた。
起床直後のだるさを伸びをして抜く。軽い快感と体が目覚める感じに満足し、なのはは寝巻きに手をかけた。
膝丈のパンツに指をかけて下げ、フリル付きのちょっとしたお洒落をした下着が露出する。次いでたくし上げた上衣の裾下から、なだらかな曲線を描く腹にぽつんと窪んだへそと、あるかないかの胸の起伏が順に覗く。
脱いだ寝巻きを放り、扇情的というには些か幼い肢体が朝の寒気に触れて着衣を急かす。
次に壁のフックにひっかけた制服をとった。
ホワイトワンピースと黒のハイネックに首を腕を通し、その上に羽織ったジャケットの胸元でリボンを結ぶ。
最後にセミロングの髪をツインテールにまとめて準備万端、通学鞄を持ってドアノブを掴み、
「……あ」
そこまでいつもの習慣をなぞったところで机に置いていた赤い石に気づいた。
連鎖的に蘇るのは彼女の人生で最も濃密だった瞬間と苛烈だった人との夢のような記憶。
その彼の所有物でもあった赤い石は、
『おはようございます。戦闘の後遺症がないようで何よりです』
「おはよう。ごめんね、寝ぼけてたみたい」
レイジングハート――それが彼女の名前だった。
昨夜の騒動を治めるお手伝いをしたなのはに、力を貸してくれた魔法の杖だ。杖とは言っても、今は待機モードという状態で掌に収まるコンパクトなサイズになっていた。
そう言えば、と部屋を眺める。
昨日の出来事が現実だったとした場合、必要なものが欠けていた。
なのはが助けた、喋るフェレット、カミナ・スクライアだ。
いくら見回してもレイジングハート以外は昨日の朝と同じ部屋に、彼の実在そのものへの疑念が湧く。まさか彼は不安に思う自分が生み出した幻覚だったのではないか。
違う、と否定する。
勢いと情熱に溢れ、心強くなのはを支えた炎が彼の存在を現実だと知らしめ、彼との夜を忘れさせない。
燻っている熱は下腹部から胸の辺りで盛り、なのはの憶測に自信を持たせた。
「じゃあ……カミナさん、どこ行っちゃったんだろ。レイジングハートは何か知ってる?」
返答は否。カミナは派手好きなくせして隠密行動の魔法分野に長けているから、彼女でも見つけることは難しいそうだ。
というかそもそもカミナと別れたのは一体いつだ。
記憶を遡って辿り着くのはあの怪物を封印した後の話。
慣れないことをして疲れきったなのはは家に帰る途中、眠気を誤魔化すために彼と話していた。
内容は、カミナの育ったスクライアの里とそこの仲間、怪物の正体の宝石であるジュエルシード――詳しくは彼も知らないとか――や、なのはの家族や友達などについてだった。
そんな会話の種も尽きて家が近くなってきた頃に、なのはの帰りを待っていた兄に見つかり、そこからカミナを見なくなった。
何も言わずに去るなんて、と頬を張る。
よく言えば自由奔放というが実際は勝手で憤りの気持ちが大きいが、勝手なのは自分も一緒かと反省もしている。
家に着いてまず見たのは、明らかに怒りを湛えた兄、恭也の姿だった。襟元の湿りは海鳴市を走り回っていた証左だろうか。
さらに問いただされた際に、重要な部分――魔法に関する部分も隠して説明した。
支援
酷い怪我をしたフェレットを心配して訪ねた病院が事故に遭っており、フェレットの無事を確認しようとしていた、と。
咄嗟に思いついたものとはいえ、自分でも拙いと思う言い訳だ。長い間一緒に暮らしてきた家族は多分お見通しだ。
心配をかけ誤魔化しもしたなのはを信頼して、軽い注意で勘弁してくれた家族にはいくら頭を下げても足りない。
……あまり迷惑をかけないようにしなきゃね。
回想をさておき再決心したが、肝心のカミナの行方はわからないままだ。
と、リビングの母に呼ばれ、失意に耽る暇を打ち切られる。
レイジングハートをポケットに入れて時刻を確認してリビングに急いだ。
通学鞄を片手に、おはよう、と朝の挨拶。先に来ていた恭也は若干眠そうにしているのは、あの言い訳を確かめにいったからか。
兄の顔色を窺いつつテーブルにつき、いただきますと皆揃って並んだ朝食に手をつけ始めた。
これからも増えそうなカミナ関連の隠し事で胸を痛めつつ、なのははトーストに齧りついた。
夕べの話を知っているか。
登校し教室に着いた途端慌しく迫るアリサから聞いたのはそんな台詞だった。
現在抱える問題にピンポイントな話題に硬直。質問の意図を掴めず聞き返すと、フェレットを預けた病院が車か何かの事故に遭ったらしい、と補足したすずか。
彼の居所がわからなくては迂闊なことは言えず、憂える彼女達に曖昧な同意と相槌を返す程度にとどまった。
話し合いの結果、ひとまず予定通り放課後にフェレットを見に病院に行こうと決めたものの、三人とも授業中フェレットが気にかかってそわつき集中に欠けていた。
それでも先生の質問にしっかり答えるアリサをすごいな、と感心。
一方で昨日よりも呆けたなのはは肩身が狭い思いをしてアリサ達に何度もフォローされる始末。
ついぞ授業に身が入らず落ち込み、かけられる慰めが痛かった。
そんなこんなで普段よりも短く感じた授業が終わって三人は帰る足で病院に向かい、惨状に目にする現在に至った。
絶句。
アリサとすずかの反応はその一言に尽き、当事者のなのはとて例外ではなかった。
白日の下に全貌を広げる“事故”の痕跡には、夜闇に紛れて隠れていた部分も見受けられる。
アスファルトの路上は抉れて通行を制限する柵が立てられ、玄関が崩壊した病院は待合室の椅子の脚が隅に転がり、正面の住宅を囲う塀には無惨にも砕かれてできた穴。
ジュエルシードの怪物が振るった猛威の跡を前に、背中に冷ややかな棒が通ったような気分に襲われた。
自分が相対した存在の恐ろしさを再認識して肩を抱いた。
初見のアリサとすずかもきっと似た心境を抱いてフェレットの無事を案じている。
「あら、あなたたち昨日の」
青い顔を突き合わせたなのは達が蜘蛛の子が散るように飛び退く。
過剰なリアクションに困った顔を浮かべる女性には最近会ったばかり。
頬を染めて躊躇いがちにすずかが女性の名を口にする。
「……ご、ごめんなさい槇村先生。えと、大変なことになっちゃいましたね」
「ん? これのことね、あなた達が気にしなくても大丈夫――とは言えないわよね」
「あのっ、昨日のフェ――ど、動物達は無事なんですか!?」
いてもたってもいられずに割り込んで、フェレットの無事を問いかけて聞き直すアリサ。
それを予想していたように槇村は落ち着いて彼女を宥める。
「一応動物達がいる部屋までは被害は届かなかったみたいだけど昨日の子は、ね。ごめんなさい……責任もって預かったのに」
事故の際に怪我した体で逃げ出したかもしれない、こちらの方で見つける、と。
すまさそうに槇村に頭を下げられた三人は沈痛な面持ちで俯く。アリサとすずかとは理由を異とするなのはは、真実を一人知る者としてのもどかしさで表情に陰を差す。
誰もが消沈する中で、少しでも事情を話すべきか否かの板挟みで苦しんでいる時、それは来た。
「――――え」
新たに発達した感覚を締め付ける圧迫。
つい漏らした声に集まる視線を無視。肌を這う怖気と合致する記憶をサルベージする。
……まさかこれって!?
ジュエルシード。
怪物を生み出した核にして、この場に惨状をもたらした青い宝石。
今の感覚が確かならば、現れる怪物に別のどこかの誰かが蹂躙される光景を想起し立ち竦む。
「なのはちゃん、あの子のことはショックだけど、元気だそうよ」
「もし調子が悪いんだったら無理しないで言いなさいよ?」
辛苦を露わにするなのはを気遣う友達が被害に遭わないという保証もない。
それに、と脳内に散在する情報をまとめ上げる。なのはからすればジュエルシードとは災厄を招く火種であり、現在唯一カミナと自身を繋ぐ役割も果たしている。
カミナがジュエルシードに関わる理由はまだ不明。しかし関係する以上、彼と再会するにはそれに縋る他ない。
友達の安全とカミナの行方。二つの要因と迷いとを秤にかけ――二人に背を向けた。
「二人ともごめん、用事思い出しちゃったから先行くね!」
「急に用事って、どこに行くの!?」
「ちょっと何を言って――って、フェレットのことはどーすんのよー!」
事が終わった後にちゃんと説明しよう、と考えを巡らしポケットからレイジングハートを取り出す。
すでに事態を把握しているようで、点滅を繰り返して応答する。
『近辺にジュエルシードの反応を確認。すで発動しています』
「わかってる! 今から行くから詳しい場所知ってる!? 知ってたら教えて!」
『肯定です。反応地点はここから――』
告げられた場所に頷く。すれ違う人々から奇異の視線を浴び、なのはは必死の形相で駆けていった。
大いなる力の流れの出口を開いて、それは待っていた。
自我を持たぬ道具であるからその表現は正しくなかろうが、正解に近しい答えだった。
いつから待ち始めたかは記憶しておらず、それを知る者は過去と化した。
残ったのは、何を渇望して長い時を過ごしてきたかという情報。
力を望み手に入れて、物事を成し遂げんとする強い意思を望んでいる。
問題は、力を欲する者と望む者が違おうと、拒絶する権利と手段がない事実。
ちょうど今のようにだ。
偶然通りがかった小さな獣がそれに興味を示して弄んでいる
非力なそいつは強さを、剛健な肉体を、他者に負けえぬ強さの獲得を求めていた。
対象の願いが自己の使用者にふさわしいかを判断機能が測り、否定する。
そいつは生きたいだけだ。重要な、生存した未来へ進む意思が欠落している
しかし使用者を選択機能を排除した、システムが自動的に対象の願い――意思を読み取り力を解放、ひたすら先を臨む膨大な意思力が今の生を望む意思を呑み干した。
より巨大に、より丈夫に、より獰猛に、と願いを叶える。
自壊を厭わぬ進化は、対象本体への負担すら埒外に捨て置き、望んだ強さを歪んだ形で与えていく。
願望機を除く全機能をシャットダウン。捌け口を見つけた流動による進化を自己中断する機能はオミット済み。
対象が苦悶するが、もう遅い。
不相応な力に触れてしまった代償にしては大きすぎる対価を払い、忘却しつつあるかつての願いが叶えられる。
津波に滴った雫のごとく元型を失った元の意思が漂白される。自分が何であったかさえも洗い流され、そいつは己を突き動かす衝動/本能/感情のままに、天空へと咆哮を轟かせた。
生命を畏怖させる雄叫びを聞いたのは、なのはが神社に続く長階段上っていた頃。
肌で感じ取れるほどに増大した波動の源が、階段を昇った先にある。
辺りにはカミナの影も形もなく、ここまで走ってきた途中でも見当たらなかった。
何故?
彼の目的が昨日のジュエルシードのみ、“number XXI.”のジュエルシードはなのはが持っているから、ない。
怖気づき尻尾を巻いて逃げた可能性は初めから除外。なのはの知る――会って間もないが――彼なら駆けつけるに決まってる。断言できるくらいに昨晩のカミナは勇ましかった。
絞った結果は――先に行ったか、遅れているか。
頭上で二度目の咆哮が響いた。
ちくちくと顔面に刺さるプレッシャーに脇の木々が音を立ててしなり、舞い上がった小石と砂が下方に流されていく。
それは心理的かつ物理的に、生物と無生物をひっくるめて拒絶し屈服させるオーラ。
かつての怪物が放つ波動と勝手も質も異なる事象。咆哮の影響を避けるよう、姿勢を低くして上の段に手をついて進むなのはの違和を、レイジングハートの補足がときほぐす。
『ただの暴走にしては様子がおかしいですね。現地生物を取り込んだかもしれません』
「取り込むって、あれは人が使う物じゃなかったの?」
ジュエルシードは願いを叶える、古代の技術がこの世に放ったロストロギア。
カミナがもたらした情報から魔法のランプみたいな想像をしていただけに、捉え方によっておぞましくもある物言いに緊が高まる。
忘れてはならない。ジュエルシードとはなのはとカミナが対峙した、あの災禍の根源なのだ。
『もともとロストロギアは謎の多い遺物です。ジュエルシードに関しても詳細なデータがないのでお答えしかねます』
古代遺物ロストロギア、過去の文明を起源とし時空管理局の管理・保管対象である高度技術――と追加される専門用語。
“魔法”と聞いて抱いたファンシーなイメージやら女の子チックな夢やらの瓦解にげんなりする。
けれどこの時、この場所では隅に追いやろう。
最上段に手をかけたなのはは、鳥居の向こうに佇む“そいつ”を見据えた。
「結局、カミナさんが見つかんないのに着いちゃったね」
『そのようですね。あの男はどこをほっつき歩いているのでしょうね』
“そいつ”は天を仰ぐ獣だった。
全身を包む黒毛は針金の如し。体躯を支える四肢が石畳を踏み砕く。熱い呼気と唸りを吐く口腔に鋭い牙が不揃いに並び、赤い舌はぬめる涎を牙に塗りたくる。個々に動く四つの瞳が不気味さを際立たせていた。
大型肉食獣に匹敵する肉体は強靭性と密度を備え、格差の理解を植えつける。
現地生物を取り込んだとレイジングハートは言った。
なるほど確かに“そいつ”の姿は現地生物、犬そのものだ。
「でもこれはちょっと大きいんじゃないかなぁ」
肩高がなのはの身長を超えるモンスタードッグでは、冷や汗や苦笑いに気後れも無理はない。
応対するまでもなく捕食者と被捕食者の絶対関係を刷り込まれた本能の領域が黒犬を忌避。
いかに優れた魔法素質を持とうと、荒事全般の経験に乏しい彼女一人では、回り込んで不意打ちして決着が妥当。
息を潜めて脇の林への移動中、草陰よりこっそり犬の様子を窺う。
正直逃げたいと、弱気な気持ちに苛まれながらも観察する前、コマの切り替わりさながらに黒犬が居座る神社が、通常のそれに移った。
不測の事態進行の受容をしくじり、茫洋として足を林に進め続け、
『――上です!』
レイジングハートの警告で走りに変わった歩みの足跡が爆裂する。
咄嗟の反応が功を奏し、爆心地からは離脱。だが余波で流動する土に躓いたなのはの胸を、爆裂の原因たる黒犬の眼光が射抜いた。
死の予感が彼女の思考を加速させる。
四肢を折って準備を済ませた黒犬の突進は、高町なのはを十度殺しても釣りが出る必殺に成り得る。
しかしそれを祓う術を、自分は持っている。
「レイジングハートォ!」
起動呪文を回想――この状況で呑気に唱える暇がまどろっこしい、省略。
戦いに散じた己と杖のイメージを念じる。
制服がバリアジャケットへと換装し、左手の上に被さる円盤付手甲。空中に広がり、接続するパーツが杖を形成しヘッド部分のドリルが起動回転して魔力の猛りをあげる。
リンカーコアが魔力を汲み上げ、レイジングハートが防護障壁展開の演算を開始。
きらめき顕現していく桃色。なのはは障壁の完成を待たずに、桃色の光を引いてバックステップの連続で退く。
ただでさえ人間と他の生物では運動能力に開きがある。それを強化した黒犬に機先を制され、接近戦に持ち込まれるのは危険すぎる。
……だから一回仕切り直ししないとっ!
焦燥に塗れたなのはの思惑。それを叩き潰す動きがすでに黒犬のもとにあった。
解放の時を待つ四肢の筋肉が盛り上がる。膨張と解放のプロセスを経て静は動へ転じ、刹那を超越した世界を黒い弾丸が飛んだ。
戦況の流れは一瞬だ。
稼いだ距離と障壁が役目を果たすことなく打ち砕かれ、丸裸のなのはが黒犬の突進に晒された。
瞬間、意識と命と肉体をまとめて削ぎ取る過剰威力が少女の体を穿った。バリアジャケットの許容量を上回る過負荷が、打ち消しきれない破砕を中身に通した。
ミリ秒単位で目まぐるしく思考するレイジングハートの演算回路が、高町なのはを救う策を検索――ヒット。
《――Jacket purge.》
構成維持に異常をきたしたバリアジャケットの一部を解除、復した魔力を相殺分に移して放った。
接触点に破音が鳴り小規模の魔力爆発が咲き、双方を弾き飛ばす。
黒犬がのけぞり、なのはは吹き飛んで坂の段差に落ちる。
即死を免れたものの防護を抜き熱を帯びた激痛に、思考の半分以上を支配されつつレイジングハートの機転に礼を告げる。
坂の上を見上げる。爆発を直に顔面にくらっても傷一つない黒犬は感覚麻痺を起こしたか、なのはを見失っている。
「よぉ……し、今の内にいくよっ」
《Sealing Mode. Set up.》
持ち主の意向を受諾したレイジングハートはモードチェンジ――桃色の三枚翼が羽撃いた。
《stand by ready.》
高まる魔力が、黒犬の鈍った感知値域に触れた。
突き刺さる二対の眼光で滲む怯えと竦みを抑えて、青ざめた唇で封印呪文を奏でていく。
自分でも驚くほど流暢に音を踊らす詠唱が敵の所作を凌駕する。坂を滑る黒犬に先んじて光帯を射出し、飛びかかった獣の全方を覆い尽くし締めつけた。
感覚でリンカーコアを操り魔力から吸い上げ、作り出した追加の帯の群れが展開陣形を経て黒犬に放たれた。
突き刺さる。
獣肉を裂かれ苦悶の唸りをあげる黒犬のもがく姿が網膜に焼きつく。なまじ実在の動物を元にしているだけに、生物を痛めつける嫌悪感はより強く沸いてくる。
それでもなのはは攻勢を緩めない。
受ける側に立ったが最後、直ちに蹂躙される立場に成り下がる結果くら自覚している。
己で立ち向かうと決めた以上――
「レイジングハートの足を引っ張ってばかりじゃ、いられ、ないよっ」
桃の輝きとドリルの回転が激しさを増し、黒犬の額にジュエルシードの刻印が浮かぶ。
勝利の確信を得たなのはの喉が気合の号をあげ、
「――――――ッッッ!!」
獣の雄叫びが全てを引き裂いた。
嘘、と驚きに塗り潰される思考の端で警鐘が鳴り、術式の制御を切り離す。
いち早く異常を察知したレイジングハートの演算が終了。自動防御膜に包まれたなのはの顔に影がかかった。
抑えつける縛鎖を千切り反逆を訴える“力ある咆哮”を浴び、砕け散る桃の術式。宙に固定する拘束から逃れた獣が地へと、封印を為そうとしたなのはを目掛けて舞い降りる。
繰り返し咆哮。たったそれだけでなのはを守る防護が無と化し、威圧に心を叩きのめされる。
黒犬に容赦などなかった。
腰を抜かす一歩手前でとどまったところにもたらされる、撫でるように払われた前脚。
バリアジャケットの防護を突き抜ける打撃が体のあちこちにに行き渡った。ただの一発が余力をまとめてぶっ飛ばし、草の緑が敷かれた坂に背中を強かに打ちつける。
横隔膜の正常な機能が乱れ、か、と声が漏れた。呼吸を妨げられる苦痛は、動作を封じて抵抗の糸口を断ち切る。
酸素を欲する喘ぎで上下する胸を、のたうつ無様を見下す黒犬が無慈悲に踏みつけた。
無意識に黒犬の脚を掴んだ手の、欠落したレイジングハートの重みが、血の気を引かせる。
ぶっ飛ばされた時に放したとしたら坂を下って回収は不可能だ。未熟のカバーを担う相方を失った途端、薄い膜越しに感じていた危機の感覚が理解の内に染み込み、心を覆う殻を剥がして裸の感情が露呈した。
いやだ、怖い。拒みと怖れが両腕を振るわせ、黒犬の脚を掴み、押し、ひっかき、叩く。
抵抗というにはたどたどしい足掻きも、強まる圧迫で体内の空気が押し出され萎んでいった。
詰みだ。
膨大な魔力一つの取り柄で劣勢を覆すには、彼女の経験も少なく黒犬との力の開きは大きい。
意思一つで無理を通して想いを実現できるほど世界は優しくない。
分不相応な試練に挑んで敗北した対価に幼いなのはに、否応なく思い知らされる世界の必定にして、逃れられぬ彼女の軽挙へのペナルティが科される。
それは弱肉強食。黒犬の口より滴りこぼれた生臭い唾液と吐息が頬を伝い、暴食の限りを果たしても尽きない獣の飢えを知った。
飢えた獣が白い戦装束に爪を立て、暗い喉の奥底が見えるほどに顎が開かれ、一見で焼きついた彼我の捕食関係が現実となって首元に噛みかかった。
なのはは喉を食い千切られる未来を想像する。
皮膚を裂き肉を食み骨をへし折るであろう獣牙を見据えて誰にとなくごめんなさいと心中で呟き、刹那を用いて来たる激痛と喪失に備えて歯を食い縛った。
「――――――」
なのに覚悟していた脅威はいつまで経っても訪れなかった。
己の命を摘み取るはずだった顎に合わせた焦点を、黒犬の顔全体に恐る恐る移した眼が驚愕の色に染まる。
黒犬の下顎を右側から削いで上顎を逆のこめかみへと抜けた異物。
天を突かんとばかりに切っ先を上げ、陽光を映し出す刀をなのはは知っている。
その認識はおのずと彼の到来を感じさせる。
急速に諦めの泥沼から浮上する気力を、黒犬の絶叫が震わした。
盛大にのけぞった手負いの獣が放ったそれは頭部を裂いた刃による痛みから――には見えない。
叫びからなのはが感じたのは、間近だった食事を邪魔された憤怒と、自身に牙を剥いた敵対者への戦意が編み出す威嚇だ。
踏みつけられた胸を通して伝わってくる、火花が散るような昂揚は、外傷などという取るに足らない刺激を上書きして有り余る灼熱の劫火を燃やしている。
刀が飛んできた眼下に黒犬の視線が向き、胸に乗った重みが減った機を逃さず、なのはが草地を蹴って拘束を抜け出た。
まず考えたのはレイジングハートの回収だ。いつまでもほったからしにしては心が痛むし、黒犬に抗えもしない。
かといって活発に上下運動する胸が即座の逃走をさせてくれない。が、幸いにもここは坂、転がっていけばすぐに退避できる。
黒犬が動く気配はないことを確認。さらに一蹴りして下る勢いに乗ろうとした矢先、坂を駆け上がる一陣の風とすれ違った。
静止を度外視した全力疾走。獣の威嚇に真っ向から仕掛けるフェレットは、まさしくなのはが捜し求めた蛮勇ともいえる闘志。
確かな証拠があったか、はたまた理屈なき直感か。いずれにしろなのはは刹那の邂逅に彼を見出した。
弾かれたように風を目で追った時、すでに二匹の獣の戦いの火蓋が切られていた。
大小の体格差が如実に表れ出す距離を、彼の最高速と黒犬の瞬発力が塗り潰す。
秒を細断する区切りを通過していく最中、加速以外を削ぎ落とした獣達の速度が吹き荒んだ。
当事者の領域である激突の瞬間に部外者が立ち入れる資格はない。かろうじて見えたのは、地を抉った黒犬の脚を踏み台にしたフェレットと、黒犬の顔を裂いて出でる銀閃。
体格に不釣合いな刀を体ごと振り切った彼の背後を、猛り狂った形相が咆声を撒き散らしながら顎に捉えんとする。
そこに刃が刺し貫き切り裂いた痕も、傷つけられた怯えもない。
なんという恐るべき再生力。
なんという恐るべき憤怒。
危ない、というなのは声を弾いた闘争領域で黒犬が加速を重ねる。
黒犬の足元が弾け、無数の石片に割れた石段や巻き上がった土が乱れ飛び、刻んでいく時が秒を数える頃にトップスピードに達した。
接近する猛威。彼は刀を足場として上方に飛び上がる。黒犬の鼻先を掴んで己を振り上げることで牙を間一髪で躱し、相対速度をもって転がり込むように突進を凌ぎきる。
勢い余って止まれぬ黒犬を一瞥。彼は回収した刀を魔力光で包み消し、なのはに視線を投げかけ下方にずらした。彼女が視線の意味を解するのを待たず、睨んでくる黒犬へと疾走。
耳障りな獣の唸りを伴い、彼を迎える害意の具現が繰り出された。
暴風を吹き荒らすは衝撃波を巻き起こす咆哮。
浮揚を堪えるため地に伏せた姿勢に、土の散弾が斜め前方から降りかかる。
さらには土砂の幕に潜んで待ち構える爪がうっすらと覗く。
予備動作を土砂に隠した三撃目。安全圏への退避には遅すぎるタイミング。簡易障壁を張って土砂へ飛び入る彼を狙い、繰り出される爪が土砂を裂いて現れた。
彼は障壁が稼いた微々たる猶予により、体表の一部を攫われつつ筋肉のバネを稼動して致死の一撃を抜けた。
交差する二匹の獣。逆転する立ち位置。見上げる側に回った彼は急停止し、魔力を迸らせた。
黒犬の反応は寸秒を越え、退避を凌駕する方向転換が牙を抜く。
彼は幾度目かの危機を悠々とした笑みで迎え、は、という吐息で一笑に付した。その下方、赤の魔力に呼応するように明滅する紅蓮の瞬きが鮮やかに燃え広がった。
黒犬の目を眩ます逆光を背負った彼は黒犬へ拳を突き出し、この場で初めて口を開き、
「今そっちに行くぜ、気ぃつけな」
赤を放射する光源たる魔法陣が一層輝き、光を捻りとる螺旋の弾丸をぶちかました。
大気を掘り進む高速飛翔体は瞬く間に、ようやく視力を取り戻した黒犬に肉薄。
速度を足し質量そのものを武器にした、咄嗟の回避など許されるはずのないカウンター。
されど、黒犬の力の根源はロストロギア。
数多の世界の理を捻じ曲げ破滅をもたらした古の論理。
その恩恵を預かった獣が、この程度の障害に阻まれるわけがなかった。
力の源、ジュエルシードが強いる異形なる強制進化が黒犬を侵す。
触れるか否かの境界に接した弾丸を躱せるよう、処した改造が生み出すは零を有に引き伸ばす、有り得ざる超反応。
静止したも同然の世界を立ち回る権限をものにした黒犬が身を捩り回転、紙一重で直撃軌道をはずれた。
すれ違う二つの螺旋運動――草地に踏み止まるもの、そのまま直進するもの。
前者、黒犬の切り替えは瞬速。着地から振り返りの移りは滞らず、流れるように反撃に出た。
後者、飛翔体は不在の空間を貫き、坂に沿って頂きへ螺旋を伸ばしていく。
奇襲は失敗、柔らかな毛皮を蹂躙する爪が無防備な背に向けられ振りかぶられる。
死神の鎌のごとき必殺に、彼は笑みを浮かべて元の姿勢を保っている。
掲げた拳は依然、黒犬がいた空間――ではなくさらに彼方、翔けていった弾丸を指していた。
「そうだ、そこだ……掴み取れなのは!」
叫びが見送った螺旋の先に駆けつける少女が、高町なのはがいた。
表情に理性の影は薄く、なんらかの衝動に後押しされた色を濃く表し、駆け足を速めていく彼女が飛来するそれを掴み取ろうと腕を伸ばし、五指が虚空を掻いた。
くしゃり、と顔を歪ませる少女は見た。
必殺の予感を覚え、気が昂ぶった獣を。
振り返らず、正面を見据え続ける彼を。
それらを視界に収め、なのはは渇いた唇で後方に流れていった螺旋の銘を唱えた。
「レイジングハート――お願い、来て!」
『了解。待ちかねました』
螺旋――レイジングハートが必死の願いに応え、構造を瞬間分解。宙に広がったパーツが虚空の彼方に溶け、一切のタイムラグもなしになのはの元へ再転送。
刹那を惜しんで差し出した手が、一番に出現した白のシャフトを掴んだ。
坂を下るなのはに追従して各パーツが転送、シャフトに結合する形で杖を組み立てる。
杖の先端に接続したドリルが雄々しく唸りをあげ、ヘッド中央部分のスペースで迸る紫電が飛んでいったコアを引き寄せる。
コアとヘッドと連結は、獣の爪が放たれたのとほぼ同時。
即座、脳裏にイメージを走らせ魔法を構築するがどうしても遅く、なのはが着く前に走り出した凶器は彼を八つ裂きにし得る。
絶望的なまでに遠い道のり、無慈悲なまでに足りない時間は、救いを妨げる壁はあまりにも堅い。
――だが忘れるなかれ、ドリルとは壁を穿つために存在すると。
『術式構成完了。いつでもいけます』
涼やかに響く女性音声の報告。
構成し直してから演算したのではありえない、再召喚以前になのはの思考をトレース、彼女が望む術式を模索し、転送時に通過する異空間にて術式を編んでいたからこそ可能となる構成速度。
なのはにそれを知る由はなく、ただレイジングハートのサポートに応えるだけの判断を下す。
一心同体――知性を有するインテリジェントデバイスと魔導師の、互いにすべきことを理解し合い円滑に実行する関係を、彼女達はこのミスできぬ土壇場で築き上げる。
レイジングハートが伝達する術式を思考で掬い、頭を働かせるよりリンカーコアの活性を優先。
魔導プログラムを起動、空間に魔法陣が浮かび、奇跡を起こす。
ミル単位以下の精度で角度調整した桃の障壁が黒犬と彼を隔てて発現、爪撃は彼から逸れて草地を削いだ。
微々たる変化に十分な成果。そして覆った道理が黒犬に刻んだ虚は極少。
会心の機を得た彼は小さな体躯を左へと振り回し、黒犬と目を合わせて挑発さながらに手招きしつつバックステップ。身を翻した彼の右拳が必殺の意ごと己の魔力を握り締める。
怒号と共に放たれた拳の先に漏れ出る赤が流れ、物体加速を実現する魔法陣を描き出した。
並行して二つ目の魔法が起動、それは弾丸の顕現。
我を取り戻した黒犬が魔法陣諸共に彼を牙にかけんと屈んだ時、慣れた呼吸をするかのごとく済ませた準備が結実する。
二つの咆哮がせめぎ合い
あの夜と変わらず紅蓮の輝きを担う後姿を見、なのはは万感の思いを込めて彼の名を叫んだ。
「――――カミナ、さんっ!」
その声を合図として彼、カミナの拳で紅蓮が弾け、前触れなく現れた刀の切っ先が獣の口腔に伸びた。
喉に触れる冷たい刃に対する黒犬の決断は迅速。筋肉のあらゆるベクトルを打ち消し、無理矢理逆方向に修正。
離れていく黒犬にカミナが刀を自らごと前方に押し込み、退く黒犬と追うカミナの図式ができる。
互いの地力の差から距離は徐々に開いていき、
「逃がしてやると思ってんのかぁぁぁぁぁぁ!!!」
紅蓮が二度弾ける。拳で生まれた魔法がきらめく銀閃に力の息吹を注ぐ。
空を翔ける翼を得た刃は、急制動により硬直した黒犬へと真っ直ぐに飛翔し――認識すら許さずその喉奥を貫いた。
投下終了。犬の改変が酷くて一話で終わらんかった……orz
でも折角ロストロギアなんだしこれくらいやってもいいだろ、という誘惑に勝てずこういう展開になりました。
以上です。
レイジングレン氏投下乙です。
元ネタには詳しくありませんが、楽しく読めました。
30分頃に地獄の四兄弟6話の投下を予約します。
結構間を空けた割には短いですが、よろしくお願いします。
>>65 ちょ、おまw
なんだこれーww 犬強すぎるだろ、本編の三倍比で済むのか!?
魔法少女の序盤の敵としてこんなにも苦戦する話を見たことがありません、GJでした!
そーだよねー、ジュエルシードって確か次元世界をぶっ飛ばせるよねぇ。
なんていうかGウイルスに感染したかのごとく犬がパワーアップして、犬型タイラントに思えてきました。
これでトドメをさせたのか? いや、なんか生きてそうで激しく怖い。恐ろしい!
なのはも頑張り、レイジングハートも頑張ったが、カミナ凄いなぁ。
フェレット形態だから様にならないけど戦闘能力高すぎる。刀ぶんぶんって、あの手でどうやって握ってるんだw?
魔法少女ものだということすら忘れて息を飲みましたw
次回も楽しみにしてます、頑張ってください!!
では、時間なので投下を
「お前も俺のこと馬鹿にしてるんだろ……笑えよ、あ?」
キックホッパーの仮面の下で、矢車はフェイトを初めとする数名の管理局員に凄まじい殺気を放っていた。
地獄の悪魔を連想させるような恐ろしく低い声に、赤い両眼から放たれる恐怖。
フェイトはおろか、同行していたギンガやティアナは知らなかった。
これほどまでに冷たい声を出せる存在がいることを、これほどまでの恐怖を放つ存在がいることを。
彼女たちは足を竦み上がらないようにするのに必死だった。
ザビーの仮面で隠されていて見えないが、キックホッパーの傍らに立つエリオもその殺気に背筋が凍りそうになっていた。
ドレイクとサソードがこの異様な視線に平常心を保つことが出来ていた。しかしドレイクの方は仮面の下ではほんの僅かだが、脂汗が染み出てくる。
そんな彼らとは対象的に、その殺気を感じ取ったパンチホッパーは仮面の下で歓喜の表情を浮かべている。
彼がキックホッパーに抱いている感情は絶対なる信頼と羨望だった。自分のように人あらざる存在を受け入れてくれる唯一の光。
目の前の気取った集団が持つ光とは訳が違っていた。向こうからすれば自分など敵に過ぎない。
ならばそんな光など汚してしまえばいい、むしろこちらから願い下げだ。
「どうせ俺なんて……」
右手を握りしめながらキックホッパーは己に宿らせる負の感情を全て、左足に込めていく。
そしてキックホッパーは恐怖と動揺に支配されかけているフェイトの元に駆け寄り、回し蹴りを繰り出した。
しかしそれはフェイトの肉体を傷つけるには及ばず、ヒヒイロノカネと光の刃がぶつかり合う鋭い金属音が響き、火花を散らすのみだった。
咄嗟に自分に降りかかる危機を察知したフェイトは、黄金の大剣――バルディッシュ ザンバーフォームで受けとめることに成功する。
その途端、彼女は目の前の出来事を疑い始めた。
バルディッシュは自信の威力とフェイトの魔力によって鋼鉄をも軽く切断する威力を持ち、JS事件を初めとする数々の危機を共に乗り越えてきた相棒だ。
現にたった今、市街地で暴れ回った異形の怪物達の皮膚も難なく切り裂くことが出来た。
しかし突如現れ、自分たちと共に戦ってくれた目の前のアーマー――仮面ライダーキックホッパーの左足は何事もなかったかのように、バルディッシュを押している。
あの勢いでバルディッシュを蹴りつけたら足が切断されてしまうはず。
「ちょっと待って下さい、私はあなたと戦いたいのではありません!」
焦りが生じつつもフェイトは何とか冷静さを保ち、キックホッパーに制止を投げかける。
しかし両眼が放つ殺意が止まる気配はない。
フェイトは体勢を立て直そうと両腕に力を込める。
それはただの蹴りのはずなのにとてつもない重圧が殺気を乗せて、彼女とバルディッシュに襲いかかってくる。
賢明に押し切ろうとするが、想像を遙かに上回るキックホッパーの凄まじい力にはびくともしない。
少しでも気を抜いてしまえば弾き飛ばされてしまいそうだった。
この状況を見てフェイトが危険と察知したティアナ、ギンガ、ドレイクの三人はキックホッパーを止めようと駆け寄るが、その道をパンチホッパーにより塞がれてしまう。
「兄貴の邪魔はさせないよ」
パンチホッパーはその仮面の下で邪悪な笑みを浮かべると、その拳をギンガに目掛けて放つ。
本能でその一撃を危険と察知した彼女は、反射的に身を屈めた。しかし完全に避けることは出来ず頬を掠めてしまう。
続けるようにパンチホッパーはがら空きの懐を左手のストレートで叩き込む。
「うっ……!」
それを受けたギンガの体は吹き飛ばされてしまい、コンクリートの地面に叩き付けられてしまう。
予想以上の力で、体の芯にまで痛みが響く。
しかし何とか苦痛を堪えて立ち上がり、体勢を立て直す。
それを見たパンチホッパーはギンガの元に歩み寄り、続けるように拳を振るう。しかし彼女はそれを紙一重の差で避けながら距離を空ける。
ギンガは望んでいないが、向こうからは明らかに敵意が感じられる。
やむを得ないので彼女はシューティングアーツの構えを取り、パンチホッパーに拳を振るった。
一方で、ティアナとドレイクはサソードの前に立っていた。
「そこをどけ、邪魔をするなら撃つ」
「ほう、この俺に楯突くとはいい度胸だ……来るがいい!」
ドレイクとサソードは互いの武器を突きつける。
ドレイクは利き腕である右腕でグリップを力強く握り、サソードの仮面に狙いを付ける。それには一寸の迷いもぶれも無かった。
対するサソードもドレイクの喉元に向けて、右手に持つ己の刀を構えている。
サソードが一歩、また一歩とドレイクに近づいた。
それに続くかのようにドレイクも一歩、また一歩と背後に下がっていく。
ドレイクは本来、銃を用いて戦う遠距離型の戦闘を得意とするライダーだ。故に、刀を持って戦う近距離戦闘スタイルのサソードとは相性が悪い。
サソードはそれを知ってか、ドレイクとは距離を詰めていく。いや詰めざるを得なかった。
もしもドレイクから距離を離されてしまっては、遠距離攻撃を持たないサソードにはあっけなくその弾丸の餌食になってしまう。
唯一の対抗手段がライダースラッシュの衝撃波だろうが、それではチャージの最中に攻撃を受けるに違いない。
彼らからはそれぞれの武器を含めて全体が、一つの武器になっているような緊張感が漂っていた。
「二人とも、止め――!」
戦いに繋がることを察知したティアナは制止の声を放とうとするが、それはあっけなくかき消されてしまった。
原因はただ一つ、ドレイクが放った一発の発砲音だった。
戦いのゴングとなり、二人の間に溜まっていた闘争本能が一気に吹き出す原因となったその弾丸は、サソードの右肩ギリギリを狙って撃ち出した物だ。
しかしその瞬間、サソードが構えている刀身がすっと動き、ドレイクの照準と重なった。
それに何の反応も示さないまま、ドレイクは続けて引き金を絞った。数発の弾丸はサソードの刀身に鋭い音を鳴らしながら当たり、砕け散りながら後ろに跳び去った。
そこからサソードはドレイクの元に駆けだし、刀を右肩に振るう。しかし直前でドレイクにはひらりと避けられてしまい、空振りに終わる。
だが続けるように左下から右上に、逆袈裟に切り上げた。刃がグリップを握るドレイクの右手に当たり、そこから叩き落とされてしまう。
「ッ!?」
ドレイクは仮面の下で苦悶の表情を浮かべるのに続くようにサソードは再び刃を振るう。
だがドレイクは軽く全身をずらし、すっと一撃を避けた。その勢いのまま、コンクリートの地面に落ちたドレイクグリップを拾う。
そこから引き金を引いて放たれる弾丸は、サソードの胸部に当たり怯ませる。
「だから、止めて下さい!」
ティアナは言うが、二人が止まる気配は一向に見られない。
この三つの戦いを、仮面の下でエリオは一筋の汗を流しながら苦しげに顔を歪めてながら静観するしかできなかった。
どうすればいい?
目の前では自分の恩師を初めとする時空管理局の仲間達とワームの暴行から自分を救い、『兄弟』として受け入れてくれた三人が戦っている。
フェイト達を助ける為に、兄弟達を止める。そうすれば、時空管理局に事情を説明して彼らを元の世界に帰すことが出来る。
しかしそれでは彼らの意思を無視してしまうことになってしまう。自分たちには今の境遇が相応しいと常日頃語っている。
だがそれをねじ曲げることが彼らにとって幸せを掴むきっかけになるはずだ。
いや、それでも――
「お前、俺の兄弟を笑った奴だな」
「え?」
唐突に聞こえた二つの声に、ザビーは振り向く。
そこには片足立ちになっているキックホッパーの左足と、フェイトのバルディッシュが押し合いが続いていた。
特殊金属ヒヒイロノカネで作られたアーマーと、魔力で構成された刃という二つの力は絶妙なバランスで拮抗している。
そんな中、フェイトはキックホッパーの突然の一言で訝しげな表情を浮かべていた。
「俺のことも笑ってもらおうか……?」
「なっ……!?」
その刹那、フェイトは再び背筋が凍り付くかのような感覚に襲われてしまう。
この世の全てを呪うような溜め息を吐きながら出す声に、恐怖という感情が全身の神経と細胞に刻まれていった。
それは魔道師として数多の戦いを潜り抜けてきたフェイトも例外ではなく、彼女の精神を震え上がらせていく。
間近で見る両眼からは相変わらず殺気を放つ。
いやそれだけではなく、今度は猛吹雪をも軽く上回る冷たさをその視線に宿らせていた。
暗闇の底から光を持つ者全てに対する怨み、嘲笑、憎悪、憤怒――
その体には暗闇が覆われ、アーマーの下には人ではなく死神が潜んでいるかのような錯覚に襲われてしまった。
それでもフェイトは壊れないように自我を保っていたが、恐怖を前に思わず力を緩めてしまう。
このままでは押し負ける。
そう危惧した彼女は渾身の力を込めて左足を打ち払い、後退していった。
対するキックホッパーはバランスを崩してふらついてしまうが、すぐに体勢を立て直す。
「クッ……!」
長年の経験から、キックホッパーは目の前にいる金髪の女が徒者ではないと察知する。
その目からはかつてザビーの資格者となり、ZECT精鋭部隊――シャドウの隊長として部隊を率いていた自分に似ている。
彼女の身長に匹敵、あるいは上回る黄金の大剣を軽々と持てることを考えると相当の実力者であり、未知の戦闘能力を所有している可能性が高い。
長期戦に持ち込むのは得策ではない。
そう判断したキックホッパーはタイフーンを基点に右手でゼクターレバーを動かし、その言葉を呟いた。
「ライダージャンプ……!」
『Rider Jump』
ホッパーゼクターから音程の高い電子音が発せられると、キックホッパーは左足を屈めた。
それを見たザビーは仮面の下でぎょっとした表情を浮かべ、頬に冷や汗が伝わる。
この行為の意味は、キックホッパーの必殺技――ライダーキックのエネルギー充填だ。
エリオの記憶に刻まれているその威力は自身のライダースティング、パンチホッパーのライダーパンチ、サソードのライダースラッシュと同じく驚異的なものだ。
恐らく威力の面ではその辺の魔道師が使う魔法に匹敵、あるいは上回るだろう。
何せ強靱なワームの肉体をも難なく粉砕することが出来てしまうくらいだ。いくらバリアジャケットに包まれているとはいえ無事ですむとは思えない。
防御魔法を使うという手もあるが技が技だ。破壊されてしまう可能性を否定することは出来なかった。
「あ、あ……」
危ない。
未来を予測したザビーはすぐさまフェイトの元に駆け寄り、跳ぶ直前だったキックホッパーの前で大の字で立ち塞がった。
「何……?」
キックホッパーは呟いた。
同時にパンチホッパーとギンガ、ドレイクとサソードとティアナはそれぞれ動きを止め、ザビーに視線を移す。
自らの盾になるようなザビーを見て、フェイトはぽかんとした表情を浮かべるしかできなかった。
支援
「お前、何のつもりだ!?」
パンチホッパーは憤怒の念を抱き、大声でザビーに怒鳴り出す。
そしてキックホッパーは溜息を漏らし、曲げていた足を伸ばした。
「帰るぞ、お前ら」
その言葉と共にキックホッパーは管理局員達に背を向け、その場を去ろうとする。
それについて行くようにサソードもドレイクに一瞥すると、歩き出す。
残るパンチホッパーはザビーの元に駆け寄ると、仮面の下から鬼のような目で睨み付ける。
「来い、後で話がある」
その一言を終えると、すぐさまパンチホッパーはキックホッパーとサソードの元へ歩き出した。
ザビーは安堵の溜息をつくと、振り向くことのないまま三人のライダーと同じように市街地を去っていく。
「待ってください!」
ザビーにはフェイトの声が聞こえるが、彼はそれを聞いていない。
四人のライダーはクロックアップを用いて、その場から姿を消した。
――あなたみたいな出来損ない、引き取らなければ良かったわ……
矢車達と出会った日に聞いた中傷が、今でもエリオの中に突き刺さっている。
あれはフェイトが言った言葉ではなく、フェイトに擬態した悪質なワームの言葉だ。
フェイトがあんな言葉を使うはずがないと、頭では分かっている。でも無理だ。
もしかしたら本当にフェイトは自分の事を失望し、嫌気を起こしているかもしれない。
顔を見せたらきっと、拒絶の表情と言葉を自分に投げつけるだろう。
そんなのは見たくもないし、聞きたくもなかった。
06 行き着く先は闇
太陽の光が照らされる高層ビルの屋上で、ビショップとドゥーエは互いの顔を見合わせていた。
市街地で繰り広げられていたライダーと魔導師の抗戦があっさりと終わり、四人のライダーが去っていくのを見て、下界の出来事に対する関心があっさりと消えてしまった。
「しかしまあ、ミッドチルダというこの世界の技術は実に興味深い……」
ビショップは感嘆の声を上げながら、ドゥーエの顔を見つめる。
「魔導師達が使うデバイスという兵器、あのザビー資格者を生み出したプロジェクト・F、常人を超える能力を持つ戦闘機人の技術、そして次元世界移動……どれも素晴らしいの一言です」
「あなた方も我々に協力するのなら、それら全てをこちらで提供しますが?」
「ご厚意、感謝致します……しかしその件に関する答えをまだキングは出しておりません」
ドゥーエは自らの口元に手を当てて上品な微笑みを浮かべるのに対し、ビショップは冷淡に答える。
それでも、普段のように相手を敬う態度は忘れてはいない。しかしその内心が見えているドゥーエにはただ苛立たせるだけだった。
目の前の種族、ファンガイアは自分を伝って内部に進入し技術を盗み出そうとしているに違いない。その為に位の高いビショップをパイプ役として送り込んだ……
最もそれはワームとて同じ事、ビショップと似たような理由で自分がパイプとして選ばれたのだが。
「先程も申したように、現時点で我々が出来ることは戦力の貸与。その見返りとしてあなた方ワームが次元世界移動の扉の提供……これで合致しているはずでしょう?」
「存じております」
「それ以上の要望を受け入れられるほど、我々ファンガイアはワームを信頼していません……申し訳ありませんが」
ドゥーエの金色に輝く長髪が風で揺れる中、ビショップは答弁する。
そして自らの眼鏡の角度を直しながら冷淡な声で、告げた。
「……最も、そちらで製造しているレジェンドルガのデータを提供するのなら、恐らくキングは出向いてくれるでしょう」
耳にした途端、笑顔を浮かべていたはずのドゥーエの眉が僅かに歪む。
その対応でビショップは確信し、内心で笑みを浮かべた。
「遙か太古の時代に存在し、人間の悲鳴をこの上ない嗜好とする種族……過去に多くの同胞が手を焼かされましたよ。初代のキバに封印されたから事なきを得ましたが」
「何のことを言ってるのでしょうか」
「ですがその真価を発揮させるには、王の存在が不可欠です……ロードの存在が」
ドゥーエの声など構いもせずに、ビショップは語り続ける。
地の底から聞こえるようなその声は、内面にどす黒い威圧感を宿らせていた。
やがて語りを終えると、ドゥーエはくすくすと笑い始めた。
「その程度のこと、私達が知らないとでも思ってるのですか?」
「まああなた方の技術なら、その問題も楽々解決させてしまいそうですがね」
「お褒め頂き光栄です、でも……」
瞬間、ビショップの目前に三本の爪が突きつけられた。
ドゥーエは自らの固有武器――ピアッシングネイルをほんの一瞬で右手に装着し、殺気を漲らせている。
伸縮自在のこの爪にほんの少しでも力を込めれば、その額を突き破るなど容易なことだった。
ドゥーエの表情には先程までの慈愛など欠片もなく、見る者全てを威迫させてしまうような凄みがあった。
しかしそれを目前にされたビショップは微塵も怯まずに、呆れたような溜息をつく。
「あまり私達を甘く見ない方が良いですよ? その気になればあなた方ファンガイアを絶滅させるなんて容易いことです」
「随分と直接的ですね、あなたらしくもない」
「深いところにまで踏み込もうとすると、それなりの報いを受けることを頭に叩き込んで下さい。でないとここで協定が決裂するでしょうから」
「ご忠告感謝致しましょう、ですが……」
その刹那、ドゥーエとビショップの間に一陣の風が吹き、鋼鉄が破壊される音が鳴り響く。それはビショップに突きつけられるピアッシングネイルを粉砕し、ただの破片へと変化している音だった。
あまりにも唐突すぎる出来事に、ドゥーエは思わず後ずさりながら右手を押さえ込む。
そして彼女は苦悶の表情を浮かべ、ビショップを睨み付ける。しかしその手に握られている物を見て、目を瞠った。
「そのような行動をとるのなら、私もそれに応じた行動を取らせて頂きます」
「それをどうやって入手したのですか? ハイパーゼクターと共に時空の狭間を彷徨っていたはず」
「時の恩恵を受けているのはワームやライダーだけではありません。我々ファンガイアにも施しがあり、手に入った……それだけの事」
怪訝な表情を浮かべるドゥーエを無視するようにビショップは右手に収めている物を見せつけ、語り続ける。
人工的に作られた雰囲気が漂うそれはカブト虫の形状を持ち、黒い輝きを放っている。
その機械の名はダークカブトゼクター。
ネイティブが行っていたマスクドライダー計画の試作器として作られ、このゼクターを元に数々のライダーが生み出された。
これ自身もライダーとしての戦闘機能を持つが、資格者の特定選定はされない。
「まあ、それはそれとして私としたことが失礼致しました……無礼な行為に及んだことをお許し下さい」
その言葉を終えるとビショップは自らの手からダークカブトゼクターを離し、頭を垂れる。
するとダークカブトゼクターは意志を持つかのように宙に浮かんだ末、空の彼方へと消えていった。
「あれを見せてもよろしかったのですか? 私がドクターに報告してしまうのかもしれませんよ」
「ご自由に。私もレジェンドルガの製造計画について知ることが出来ましたから」
ビショップは悠然たる面持ちを構えながらドゥーエに言う。
ドゥーエからは憤怒の感情は消え失せており、先程のような慈悲深い笑顔を取り戻している。その内面には大いなる残虐さを窺わせていることを、ビショップは知っている。
しかしそんなことを気にしたところで、何か意味があるわけではない。
「……キングへの報告もありますので、私は失礼させて頂きます」
軽く頭を下げながらぽつりと呟くと、ビショップはドゥーエの脇を通り過ぎていった。
微笑むドゥーエはそれを見送ることはせず、床に散らばったピアッシングネイルの残骸を見つめる。
ビショップがその場から離れた事を察知すると、喉を鳴らしていく。
「まさかダークカブトがファンガイアの手の中にあったとは……どうやら、あちらとはまだまだつき合いが長くなりそうね……」
ドゥーエは呟くが、それが誰かに届くことはない。
時空管理局の魔導師、ZECTの生み出した仮面ライダー、ワーム、ファンガイアが戦いを繰り広げていた市街地を見下ろせるビルの屋上で、彼女は一人だった。
華々しい戦勝感や、人々を守った自分を誇る気持ちなど、彼らは持ち合わせていない。
エリオ、矢車、影山、剣の四人は市街地での戦いを潜り抜けた後、クロックアップシステムを用いてクラナガン郊外に生い茂る森林地帯へと帰投していた。
幾千の星に照らされるミッドチルダの夜空の元に、四人はいる。影山がエリオの襟首を掴み、強引に引きつけた。
「モンディアル、お前一体どういうつもりだ?」
今にも感情を爆発させそうな影山の瞳はエリオの瞳を睨み付けている。
彼らの表情は、それぞれ異なるものだった。
沈んだ顔付きのエリオ。エリオの矢車に対する行為に憤慨する影山。普段の影山からは見られない態度に困惑する剣。
唯一矢車だけがいつも通りの無愛想な表情で腕を組み、その様子を眺めていた。
「すみません……」
「すみませんじゃない、何で兄貴の邪魔をしたのか聞いてるんだ!」
影山は激昂しながら襟首を強く締めるが、エリオは言わなかった。
沈鬱な表情を浮かべたまま、エリオは自らの視線をそらしてしまう。
それが反抗的に見えたのか影山の眉がピクリと跳ね上がり、襟首を突き飛ばす。
エリオは勢いよく地面に倒れ込んだ。
「いい度胸だ、お前がそのつもりならこっちにも――」
影山が一歩前に踏み出すと同時に、その道を塞ぐかのように横から片腕が飛び出してくる。
そこには自らの左腕を伸ばしながら、首を横に振る剣がいた。
「兄さん、落ち着いてくれ」
「何で止める? こんな奴庇う必要なんて無いだろ」
この状況に危機感を覚えた剣は影山を宥めようとするが、止まる気配はない。
支援
「兄貴もだ、何でこいつを追い出さないの!? 命の恩人の兄貴を裏切ろうとしたんだよ!」
影山は続けるように矢車に抗議する。
エリオは思う。恐らく矢車はフェイトへの攻撃を邪魔した自分を恨んでいるに違いない。
けど、彼女の危機を救うことが出来たから後悔はしていない。もしあそこで動かなかったらきっと矢車はフェイトへの攻撃を止めなかっただろう。
どんな罰でも甘んじて受けるつもりだ。
「ククク……ハハハハハハハ………!」
エリオが覚悟を決めた途端、矢車は突如として高らかに笑い始める。
実に愉快そうな笑みを浮かべながらエリオの顔を覗き込み、手を差し伸ばしてきた。
「兄弟、お前面白いな。気に入ったぜ?」
一瞬、エリオは何を言われたのか理解出来なかった。
あまりにも予想し得なかった言葉と対応に、エリオはぽかんとした表情を浮かべてしまう。
咎めるどころか、まるで矢車はエリオの行為を評価しているようだった。
「何言ってるのさ、兄貴!? こいつは――」
「裏切りってのはな、最高の暗闇だ……」
影山の言葉を遮るかのように矢車は呟く。
「相棒、お前だってそうだったろ? 裏切って、裏切られた末に闇に堕ちた……違うか?」
影山はばつの悪い表情を浮かべて、黙り込んだ。
矢車の言葉と影山の対応が何を意味しているのか。そして何故矢車は自分を受け入れるのかが、エリオには理解することが出来なかった。
ふとエリオは矢車が伸ばす腕を掴んだ。その身体はゆっくりと引っ張られて、立ち上がった。
「矢車さん、一ついいですか」
「何故あの女を襲ったか……だろ?」
自らの心を見透かされたような静かな声に、エリオはぎょっとした表情で黙り込む。
「俺も笑って貰おうと思った……それだけだ」
「一体どういう意味ですか?」
「さあな」
その一言を終えた矢車はエリオを見て、ゆっくりとその手を離す。
そう言われても、エリオには理解することが出来なかった。
やがてその後、矢車が影山を宥めることによって事態は一応の収束を見せる。
それによって影山の納得がいくことはなかったが、怒りは収まった。
数分経った頃、剣は矢車と影山の二人が森林へと戻った際を見計らってエリオに話しかけた。
「モンディ・アール、大丈夫か?」
エリオは無言で振り返る。
剣は笑顔を浮かべているが、それとは対極的にエリオは未だに表情が沈んでいたままだ。
「心配事があるのなら、何でも言ってくれ。俺は相談においても頂点に立つ男だ」
「いえ、別に何でもありません……」
エリオは笑いながら言うがそれは幽かなもので、一切の暖かみが感じられない。
剣にはそれがかつて正体を知り、自暴自棄になってしまった自分自身に見えてしまう。そういえば、エリオが心の底から笑っている顔など見た記憶がない。
もしや市街地でワームとの戦いに勝利した際、キックホッパーと戦ったあの金髪の女がエリオを不安定にしているのではないか。
あの女はエリオにとって特別な存在なのかもしれない。
そう剣は推測している。
だからといって何かが出来るというわけではない。それでも言葉を続ける。
「元気を出せ、影山兄さんならもう怒っていない」
「あ、そうですか」
「辛かったり、困ったことがあればすぐに言うがいい。この俺が何でも聞いてやろう」
「ありがとうございます……」
ゆっくりと、良き兄であることを心がけるような優しい声をかける。しかしエリオの表情が晴れることはない。
無理かもしれないが、彼には笑顔でいて欲しい。
自分はかつて大切な親友や恋人、更には正体を知りながらも尽くしてくれたじいやすらも裏切り、悲しませてしまった。
矢車や影山と違ってエリオには自分の正体を言っていないから、恐らくは知らないだろう。
所詮自分は彼を騙しているに過ぎない。それでも全てが終わるまでは心の奥深くにあるワームの本能を押さえて、戦うつもりだ。
だけどもし、エリオが自分の正体を知ったら憎悪の念を抱くかもしれない。
それでも一向に構わない、卑劣なワームである自分には相応しい末路だろう。
だがそれまではワームと戦い、弟であるエリオのことを精一杯に守るつもりだ。
「モンディ・アールよ」
「何ですか?」
「星が綺麗だな……」
ふと、エリオに声をかけた剣は平穏な夜空を見上げる。
そこには二つの満月と、数え切れないほどの星が瞬いていた――
06 終わり
投下完了
ダークカブトゼクター登場しました。
このビショップは現代編からやって来たと思って下さい。
近いうちに太牙くんやルークも登場させるつもりです。
先代キング、真夜、深央さんも何らかの形で出ると思います。
次回からなのはを登場させる予定です。
次の投下はカブトレボリューション 序章最終話。
囚われのヒロインスバルを助ける為に天道が活躍します。
結構時間がかかるかもしれませんが、また次回。
GJ
坊ちゃまはやっぱええ子や……
どうもこんばんわです
予約もないようですし、22時45分頃から、なの魂の番外編を投下させていただきます
支援
それは、彼女が魔法の力を手に入れる前のお話。
それは、彼がかけがえのない仲間達と出会う前のお話。
なの魂 〜番外編 押しかけ女房に妙な幻想を抱くな〜
朝日が町を彩り、小鳥達が穏やかな合唱を始める。
爽やかな風が連なる店先を吹き抜け、そこかしこから雨戸を開ける音が響きだす。
ここは江戸、海鳴市の小さな商店街。
その一角にある喫茶店『翠屋』の二階に、小さな女の子が立っていた。
「……う〜……!」
小学校の低学年くらいだろうか。
二つに結えられた栗色の長い髪。
まだあどけなさの残る、大きな瞳。
少女――高町なのははうーうー唸りながら、目一杯に背を伸ばしてインターホンを鳴らそうとしていた。
しかし、背丈の小さい彼女の腕はインターホンを押すにはいささか長さが足りなかったようだ。
はぁ、とため息をつき諦めたなのはは、今度は無遠慮に引き戸の玄関を叩きだす。
しかし、住人が出てくる様子は無い。
なのはは再びため息をついて、恨めしそうに玄関を睨んだ。
「ぎんさん、今日も留守なのかなぁ……」
そんな事を呟くなのはの胸に抱えられたのは、リボンで可愛らしく飾り付けられた小さなビニール袋。
それは、先日彼女が友人達と一緒に作ったクッキーであった。
両親や兄弟にも好評だったそのクッキー、銀時にも分けてあげようと先日ここへ立ち寄ったのだが、
その時はあいにく、彼は留守であった。
そして今日も。
がっかりとうな垂れて、なのはは万事屋を後にしようと背を向ける。
玄関の向こうから足音が聞こえてきたのは、その時であった。
次いで、玄関の戸が開く音。
なのははその場で足を止め、ぱぁ、と表情を明るくして、振り向いた。
「……あれ?」
目の前には、大きなマスクをつけて、寝巻き姿のまま苦しげに玄関に寄りかかる銀時の姿があった。
「えっと……もしかして風邪ですか? ぎんさん」
咳き込み、空ろな目をする彼に、遠慮がちに聞いてみる。
銀時は答えるのも億劫といった様子で、しかし律儀にもしゃがれた声でなのはの問いに答える。
「そーだよ。だから用件があるなら手短にしろ」
そう言う銀時の身体は常に左右にふらふらと揺れていて、放っておけばそのまま倒れ伏してしまいそうだ。
「あ、えっと……みんなでクッキー焼いたから、ぎんさんにも食べてもらいたくて……」
言われた通り、本当に手短に用件を伝えてなのはは銀時にビニール袋を差し出す。
受け取り、銀時は若干の無理をして青ざめた顔を僅かに綻ばせた。
「そーかい。気ィ使わせちまって悪いな」
「いえいえ、どういたしまして〜」
にっこりとなのはは笑顔を浮かべるが、しかし銀時は彼女の顔をまともに見ようともせず、
おぼつかない足取りで家に入ろうとしていた。
そんな彼の後姿に一抹の不安を覚えたのか、なのはは表情を曇らせながら銀時を引き止める。
「……あの……」
「ん?」
「ぎんさん、大丈夫なんですか?」
たかが風邪だというのに、そう問いかける彼女の顔は真剣そのもので。
思わず銀時は苦笑を漏らし、頭を掻きながら、
「んな大袈裟に心配するほどじゃねーよ。ただの風邪だ」
「で、でもおかしいですよ!」
尋常ではないほどに思いつめた表情のなのはの叫びに、眉をひそませた。
「……あ?」
「だって、ナントカは風邪ひかないって言うじゃないですか! それなのに風邪ひいちゃうなんて、
もしかしたら、新種のウイルスなのかも……」
「うるせーよ大きなお世話なんだよ! 座薬ブチ込むぞクソガキ!」
至極真面目な口調で放たれた無礼千万なその発言に、銀時の怒りがリミットブレイクを起こした。
だが、その直後に銀時の喉を猛烈な違和感が襲う。
マスクの上から手で口を覆い、その場にうずくまりそうになりながら大きな咳を何度も繰り返す。
慌てた様子でなのはがすぐ側まで駆け寄ってきたが、銀時はそれを拒むように手を振る。
「用が済んだんなら、さっさと帰れ。うつってもしらねーぞ」
おたおたと戸惑うなのはを尻目に銀時は一人玄関の中へと入って行き、ピシャリと引き戸を閉めてしまった。
心配そうに格子の引き戸を見つめ、なのはは口元に手を置きその場で考え込む。
普段の彼からは想像もつかないくらいに衰弱していたその姿が、何度も脳裏で浮かんでは消える。
不意になのはは顔を上げ、何かを決意したような顔つきで引き戸に手をかけた。
壁にもたれかかりながらなんとか台所まで移動した銀時は、千鳥足で冷蔵庫の前に立った。
何度か咳き込み、鼻をすすり、そして大事そうに手にしたビニールの小袋に目を移す。
ところどころ焦げていたり、生焼けだったり、大きさも不揃いで、市販されているクッキーと比べれば、
遥かに見劣りしそうな物だった。
だがその中には、市販品には決して含まれることのないものがある。
いつでもどこでも笑顔で愛想を振りまく少女の顔を思い浮かべ、銀時はおもむろに冷蔵庫の扉を開く。
「……賞味期限切れるまでに治るかねェ」
クッキーを大事に冷蔵庫にしまったその折、突然廊下の方からパタパタと足音が聞こえてきた。
その音は、おそらく居間の方へと消えていき、それに続いて今度は押入れのふすまを開く音が聞こえてきた。
そういえば、と銀時は今更になって玄関の鍵を閉め忘れたことに気付く。
もしかしたら、泥棒でも入ってきたのかもしれない。
最大限の注意を払いつつ、銀時は足音を忍ばせて居間へと向かう。
抜き足、差し足、忍び足。
ゆっくりと居間を覗き込んだ銀時の視界に入ったものは――
「……何やってんだ? お前」
押入れから掃除機を出そうとホースを抱え、ヨタヨタと千鳥足を踏むなのはの姿であった。
突然背後から声を掛けられたなのはは、当然声のした方に振り向こうとする。
だが、彼女が完全に銀時のほうを向くそれより前に、覚束なかった彼女の足が掃除機のホースを思いっきり踏みつけた。
バランスを崩し、そのまま正面から床に倒れこみそうになる。
しかし、彼女に衝撃が襲い掛かるその前に、どうにか銀時がなのはの小さな身体を抱き止めた。
目を真ん丸にし、驚いたようになのはは顔を上げる。
視界の中には、呆れた様子でこちらを見つめる銀時の顔があった。
「ったく。帰れっつったのが聞こえなかったか? つーか、何やってんだお前は」
どこか不機嫌な様子で、腕の中に抱えたなのはに言う。
なんの断りもなく家の中に入ってこられて、あまつさえ勝手に押入れの中を探られていたのだ。
銀時のこの反応も至極当然のことだろう。
しかしなのはは自分の非礼を詫びるでもなく、何故か真剣な目つきをして銀時を見つめ返すのだった。
「私、決めました。今日一日、私がぎんさんのメンドウを見ます」
「は?」
あまりにも突拍子もないなのはの申し出に、銀時は思わず呆けた顔をした。
もし彼がマスクをしていなければ、あんぐりと口をあけた間抜けな面が拝めたことだろう。
「こんなホコリだらけの部屋でグータラしてるから、風邪なんてひくんですよ!」
言うが早いか、なのはは銀時の腕の中から逃れ、
「ほら、お掃除もお洗濯も、ぜーんぶ私がやってあげますから、ぎんさんは休んでてください!」
なのはを助けるために身を低くしていた銀時の手を引き、ぐいぐいと和室の方へ連れて行こうとし始めた。
しかし銀時はそのままなのはに連れやられるようなことはせず、逆になのはの腕を引いてその場に留まろうとしていた。
「勝手に女房面してんじゃねーよ。つーかマジで帰れって。
今日はこれから客が来んだよ。お前が居ても邪魔になるだけ……」
そこまで言ったところで、突然インターホンの音が鳴り響く。
マズい、もう来たのか。
銀時は今の自分の装いを思い出し、着替えるために慌てて和室へと駆け込む。
一方のなのははそんな彼を無視して、トコトコと玄関へ向けて駆けて行く。
玄関の格子の隙間から、人の姿が見え隠れする。
なのはは急いで玄関先に降りて靴を履き、扉を開けて元気一杯に笑顔を浮かべた。
「おはようございます! 『万事屋銀ちゃん』で〜す」
客は、若い女性だった。
腰の辺りまで伸ばした長い黒髪。
少しツリ目になったこげ茶色の瞳。
気が強そうだが、同時に礼儀正しそうな印象を与える佇まい。
支援
「あら、可愛い店員さんね」
小さなお手伝いさんの思わぬお出迎えに、その女性は思わず顔を綻ばせる。
なのはは愛嬌を振りまきながら、しかし同時に困ったような笑みを見せ、
「すいません。店長さんが風邪をひいちゃってて、今日はお休みなんです」
「早速邪魔してんじゃねーよ」
着替え終わってやってきた銀時に、スリッパで頭をはたかれてしまった。
頭を押さえながら涙目で銀時に抗議の視線を向けるも、彼はなのはの訴えなどまったく無視して客を家の中へ招き入れた。
女性は少し戸惑った様子で、しかし銀時の後へついてゆき、なのはは不貞腐れながらも、お茶を淹れに台所へ向かう。
居間のソファーへ先に女性を座らせ、そしてテーブルを挟んで向かいのソファーにどっかりと腰を据えた銀時は、
しゃがれた声で言うのであった。
「そんじゃまァ依頼の方、お聞きしましょうかね」
通勤ラッシュの時間も過ぎ、徐々に商店街に活気が付いてきたその頃。
マスクをつけ、いつも通りに着物を着流した銀時は、面倒くさそうに街を闊歩していた。
薬を飲んだおかげか、その顔色は今朝と比べると随分良くなっているように見える。
「……ったく。深刻そうな顔して相談してくるから何事かと思ったが、猫が居なくなっただけとはねェ」
そういう彼の手の中には、真っ白な子猫が写された小さな写真。
ちなみに名前は"ユキちゃん"だそうな。
三日ほど前に家の外に出て以来、一度も家に帰ってこないので探すのに協力して欲しい、というのが今回の依頼だ。
しかし正直なところ、たかが猫を探すためにこんな朝早くから来店されるのは、たまったものではない。
呆れた様子で写真を眺めていると、彼のすぐ隣から声が聞こえてくる。
「ねこさんだって大事な家族です。いなくなったら心配するのは当たり前じゃないですか」
ひどく聞きなれた幼いその声の主は、やはりというかなんというか、なのはであった。
彼女は銀時の周りを纏わりつくように歩き回り、時折ピョンピョンとジャンプをしては、
銀時が持つ写真を奪い取ろうと試みていた。
しかし彼女の身長と跳躍力では、もちろん銀時の眼前に位置する写真に手を届かせることが出来るはずもなく。
何度も何度もピョコピョコと飛び跳ねるその姿は、見ていてあまりにも滑稽だった。
銀時は呆れた様子で、手にした写真をなのはに渡す。
そこに写る、小さく丸まった愛らしい子猫の姿に、なのはは思わず顔を綻ばせる。
そんな彼女を見下ろしながら、銀時はため息をついた。
「つーか、なんでお前までいんだよ」
「それはこっちのセリフです。今日は私が、お掃除もお洗濯もお仕事も、ぜーんぶやってあげるんですから。
ぎんさんは帰って休んでいてください」
顔の前で人差し指を立ててお姉さんぶるなのはだが、しかし銀時はそんな彼女を鼻で笑う。
「お前なんぞに仕事任せられるかっての。いいからさっさと帰れ」
歯に衣着せぬ銀時の言葉。
せっかく彼の身を案じて力になってあげようとしたのに、この物言いはあんまりだろう。
そう思い、なのはは頬を膨らませながら口を尖らせる。
87 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/01(月) 22:55:56 ID:LmCC+PSD
支援
ありゃ?失礼しました。
支援
「病人に任せるよりマシです! そうでなくても、普段からだらしなくしてるクセに!」
「うるせーよ。普段が自堕落でも仕事のときはキッチリしてんの。公私の分別はしっかりつけてんの」
「ぎんさんの場合、元から公も私も一緒じゃないですかー!」
「んだとコラ! オメーに銀さんの何が分かるってんだ!」
「分かりますぅ! ぎんさんのことならいっぱい知ってますー!」
まるで子供のような口論を始める二人。
いや、片方は本当に子供なのだが。
ともかく、そんなお騒がせなことをやっている二人の耳に、突如として可愛らしい動物の鳴き声が聞こえてきた。
にゃー、という聞き覚えのある独特の鳴き声に、二人は思わず辺りを見回す。
再び聞こえる、にゃーという鳴き声。
二人の視線はほぼ同時に、すぐ側にある本屋と服屋の間の路地へと向けられた。
小さな路地におかれた室外機。
その上にちょこんと乗っかる、小さな白い毛玉。
その毛玉は、クリクリとした愛らしい瞳で、銀時達をじぃっと見つめていた。
「ぎんさんっ! あれ、写真のねこさんですよ!」
「言われねーでも見えてるよ。つーかボリューム下げろ。逃げられたらどーすんだ」
ため息をつきながらなのはをたしなめる銀時だが、しかしなのははそんなことなど気にも留めず、
嬉々として子猫にゆっくりと近付く。
「おいでおいで〜。こわくないよ〜」
そっと、そっと。
まるで薄い氷の上でも歩くかのように、なのはは慎重に、笑顔のまま子猫の側まで向かう。
「……にゃ〜ん」
友好を示すために、猫の鳴き真似などをしてみる。
しかし子猫の方はというと、そんななのはを不思議そうに見つめて小首をかしげ、
一つ大きなあくびをしたかと思うと、そっぽを向いて室外機の向こうへと降りていってしまった。
「あ……」
「そら見ろ。逃げられちまったじゃねーか」
「むっ……い、言ってる場合じゃないですよ! 早く追いかけないと!」
パタパタと腕を振って抗議の態度を見せながら銀時の側まで戻り、なのはは彼の着物の袖を掴んで
路地へと引っ張る。
銀時は抵抗する素振りも見せず、ただ呆れたようになのはを見下ろすのであった。
どたどたと忙しない足音を立てながら猫を追っていたなのは達が着いたのは、打ち捨てられた廃工場であった。
先程までの喧騒な商店街とは打って変わり、まるで深夜のような静けさと、時折聞こえてくる男達の笑い声が
不気味な不協和音を奏でていた。
工場敷地の入り口にたむろする、ガラの悪そうな男達を刺激しないように気をつけつつ、なのはと銀時は懸命に子猫を追う。
その小さな身体に似合わず、意外にもすばしっこい子猫は、敷地の外に放棄されていた廃材の間を走りぬけ、
敷地と外界を隔てるために立てられた壁に小さく開いた穴から工場の敷地内に入り込んでいった。
しまった、という顔で銀時は周りを見回す。
工場の入り口は硬く閉ざされており、視界に入る限りでは、工場の周りは広大な壁により取り囲まれていた。
どうやら敷地内に入るには、子猫が通ったあの穴を通る他ないようだ。
しかし、あの穴は大人が通るにはあまりにも小さすぎる。
どうしたもんかと銀時が考えていると、突然袖を引っ張られるような感覚がした。
視線を落としてみると、じいっ、とこちらをみるなのはの顔。
「ぎんさんっ! 私が見てきましょうか?」
言葉こそ問いかけるような形だったが、しかしそこに質問の意図などないということは、
なのはの嬉しそうな顔を見れば明らかであった。
返答も返さずなのはを止めようとする銀時だが、しかしなのはも銀時の返答など待たずに、さっさと一人で
壁の穴から工場内へと入っていってしまった。
先も言ったとおり、銀時の大きな身体では壁の穴を通ることは出来ない。
銀時はため息をつきながら、進入口を探すために工場の周りをグルグルと歩き始めるのであった。
そこはまるでゴーストタウンのように廃れた場所だった。
錆の浮いたコンテナが無造作に並べられ、物言わぬ重機が所々に鎮座する。
一瞬吹き荒んだ風が、建物のトタン屋根を乱暴に震わせる。
にゃー、という鳴き声と、それに追従するように少女の声が聞こえてきたのはその時だ。
見た目よりも素早い子猫を追いかけて、運動音痴ななのはは、息を切らして必死に走る。
「はぁ……ふぁ……ま、待ってよ〜……」
健気に声を漏らすなのはだが、しかし子猫はそんな彼女に遠慮することなく、おんぼろな建造物の中に入っていってしまった。
なのはもその後を追い、建物の中へ入ったところで、荒く息を吐きながら膝に手をついた。
ふぅ、と大きく深呼吸をし、なのはは辺りを見回す。
立ち並ぶのは巨大なコンテナと重機。そして布をかぶせられた、巨大な何か。
入り口と僅かばかりの窓から差し込む光が、それらを不気味に照らし出していた。
どうやらここは倉庫として使われていた建物らしい。
少しばかり身を強張らせながら、なのははコンテナで作られた道に視線を沿わせる。
道のずっと先、窓からの光で四角く照らし出されたその場所で、真っ白な子猫は行儀良くおすわりをして、
建物の中央をじっと見つめていた。
これ幸いと、なのはは忍び足で子猫の背後ににじり寄る。
一歩、二歩、三歩。
もはや子猫との距離は目と鼻の先ほどにまで縮まっていたにもかかわらず、子猫はなのはに気付く素振りは全く見せなかった。
なのはは覚悟を決めたように真剣な顔をし、飛びつくように子猫の身体を抱きかかえた。
子猫は一瞬ビクリと驚いたように両耳を立てたが、しかしどういうわけかまったく抵抗の兆しを見せずに、
不思議そうになのはの顔を見つめていた。
「もう、あんまり飼い主さんに心配かけちゃダメだよ?」
めっ、としかめっ面を作るなのはの耳に人の話し声が聞こえてきたのは、まさにその時だった。
こんな人気のない廃工場で、話し声?
薄気味の悪いものを感じながら、しかし好奇心には勝てなかったのか、なのはは声のした方――先程まで子猫が見つめていた、
建物の中央へと目を向けた。
そこでは黒い服を身に纏った、背丈の高い男達が三人と二人に別れ、互いの顔を向き合わせていた。
全身黒尽くめで、こんなに暗い場所でサングラスまで付けて目元を隠すその男達は見るからに怪しく、
そして同時に危険な雰囲気を滲み出させていた。
向き合っていた男達の片方、二人のうち左手を位置取っていた男が突如として右の手を挙げた。
その手に握られるは、無骨な銀のトランク。
支援
(こ、これって……)
なのはは思わず後ずさる。
廃工場・黒服・トランク。
ドラマなどで散々見慣れた光景だが、現実でこんな光景を見てしまっては、冷静でいられるはずもない。
(なんだか犯罪の匂いかも……!)
ひょんなところで三種の神器を目の当たりにしてしまったなのはは子猫を抱え、
狼狽もあらわにその場を離れようときびすを返す。
足元から甲高い金属音が聞こえてきた。
上擦った声を上げて視線を落とす。
細く長いパイプが、なのはを嘲笑うかのように転がっていた。
真っ白になった思考の中でどうにか理解できたのは、背後から怒気を孕んだ男の声が近づいてきているということだけであった。
工場の周りを一周したところで、銀時は頭を抱えてため息をついた。
まいった、進入できそうなところがどこにもない。
恨めしそうに一際高い工場の煙突を睨みつけ、そして突如襲ってきた寒気に身を震わす。
どうやら、風邪がぶり返してきたらしい。
さっさと帰りたいところだが、しかしなのはが戻ってこない以上、勝手に岐路に着くわけにはいかない。
銀時は再び頭を捻り、そして思い直す。
よくよく考えれば、ここは廃工場。
稼動中の工場ならまだしも、誰一人として使っていないのならば、多少強引な入り方をしても文句を言う人間など
そうそういないはずだ。
だったら話は早い、と銀時は腰に差した木刀を手に取り、先程なのはが入っていった壁の穴へと近づく。
そして穴の向こうから聞こえてきた車のエンジン音に、銀時は眉をひそめた。
ここへ来たときからずっと入り口の辺りにたむろしていた、ガラの悪い若者達もその音に気付いたらしく、
何事かと腰を浮かす。
それと同時に、硬く閉ざされていた入り口の大きな扉が、音を軋ませながら独りでに開きだした。
一体何が起こっているというのだろうか。
銀時が扉の動きを静観していると、突然若者達が喚き声を上げながら扉の前から飛び退り、それとほぼ同時に
扉の中から一台のトラックが飛び出してきた。
トラックは危うく若者達を跳ね飛ばしそうになりながらハンドルを切り、銀時のすぐ脇を通り抜けようとする。
随分と荒っぽい運転だ、と不快感もあらわに、銀時は道を空けながら運転席を覗き込もうとする。
まるで逃げるように走り去るトラックの中。
どこかで見たような栗色の髪が、ドアの下からちょこんと飛び出していた。
トラックのコンテナと排気ガスの跡を眺め、銀時はため息を漏らして背後を見やる。
既に姿の見えなくなったトラックに罵声を飛ばす若者達の側には、彼らが乗ってきたのであろうバイクが
マフラーを揺らしながら停められていた。
ガタガタと悪路を走るトラックの中で身体を揺られ、両腕両足を縄で縛られ口をガムテープで塞がれたなのはは、
呻き声をあげながら身動ぎをした。
助けを呼ぶために、芋虫のように身体をくねらせ窓際に近付こうとするも、しかし助手席に座る男にそれを阻まれる。
だがもし男が邪魔をしなかったとしても、おそらく彼女の小さな身体では、窓の外に顔を出して助けを呼ぶことは叶わなかっただろう。
支援
支援
「……で。どうすんですか? そのガキ」
運転席でトラックを駆る男が、二つの席の間でうごめくなのはを一瞥しながら助手席の男に問いかける。
少しばかり不憫そうな表情を見せる運転席の男に、だが助手席の男は彼の表情など気にも留めずに言う。
「取引現場を見られた以上、子供だろうと消すしかないだろ。……ま、その前に少しだけ……」
下卑た笑みを男は浮かべる。
「相変わらず好き者ですね、アンタは」と運転席の男は軽蔑したような顔でかぶりを振る。
あまりにもあっけなく放たれた『消す』という言葉になのはは大きく目を見開き、瞳に涙を溜めながら、
どうにか逃げ出そうと懸命に身体をくねらせる。
その無意味にも思える抵抗が目障りに思えたのか、助手席の男は鬱陶しそうになのはを見下ろし――
「……何だ?」
突如として背後から聞こえてきた異音に、眉をひそめた。
金属製の物を叩くようなその音は徐々にその大きさを増していき、やがて音とともに車体すらも揺れるほどまでになっていった。
異音の原因を探るべく、サイドミラーへと目を配らせる。
知らない男が映っていた。
眩しいまでの銀髪。大空を思わせる柄の入った真白の着物。
マスクをつけ、バイクにまたがったその男は、あろうことかトラックと併走し、車体の横っ腹に仮借ない蹴りを加え続けていた。
窓から身を乗り出し、直接その様子を確認する。
それに気付いたらしいバイクの男はトラックを蹴るのを止め、まるで親の仇でも見るかのような眼差しでこちらを睨みつけてきた。
「……オーイ。車止めろボケ」
唐突に聞こえてきたその声に、なのはは驚愕の表情を作り、必死になってサイドミラーを見やろうと身体を伸ばした。
だがミラーに映っていたのは、身を乗り出す男の背中のみ。
しかし、今聞こえたのは紛れもなく彼の声。
――ぎんさんっ!
叫ぼうと喉を震わせ、だがガムテープで硬く閉ざされた口からは、むーむーという呻き声だけが発せられる。
助手席の男が身体を車の中に戻すと同時、不意にトラックが大きく揺れた。
運転席に座る男が、すぐ脇の壁面――つまり、銀時が居る方向へ、車体を打ち付けるようにハンドルを切ったのだ。
トラックは壁に衝突することはなかったが、しかし車の外からはガリガリと壁を削り取るような壮絶な音が響く。
「オオオイ、ちょっと待て! 病人にこの仕打ちはないんじゃないの!?」
銀時の情けない訴えが聞こえてくると同時、助手席の窓のすぐ側を電信柱が駆けてゆき……。
破滅的な破砕音が響き渡り、次いで巨大な爆発音がなのは達を追いかけ、そして失速していった。
顔面蒼白になり、なのはは瞳を震わせ運転席の男を見上げる。
「……なんだったんですかね。今の」
「知るか。とにかく、また今みたいな輩が来る前に、さっさと逃げ……」
男達の会話がそこまで続いたところで、突如として頭上から轟音が響く。
『うおわァァァァァ!!?』
金属が引き裂かれる甲高い不快音と共に、助手席と運転席の間の天井から一本の木刀が凄まじい勢いで
突き出された。
なのはは呆けたようにその木刀を眺め、そしてはっと我に返る。
「伏せてろなのは!」
悲鳴を上げる男達の声を掻き消すように響いたその大声に従い、なのはは目を瞑り身体を丸める。
フロントガラスが盛大に砕け、"何か"が車内へ飛び込んできた。
その"何か"はガラスを突き破った勢いそのままに、運転席の男に痛烈な蹴りを叩き込む。
顔面を蹴飛ばされ、後頭部をシートにしたたかに打ち付け、男はそのまま昏倒する。
驚きに目を見開く助手席の男に、乱入者――坂田銀時はボロボロになったマスクを外し、
殺意すら孕んでいるのではないかと思えるくらいに鋭い眼光を浴びせた。
「オイ、オッサン……人の女に手ェ出してんじゃねェよ」
身体の芯から脅えさせるような凄みの効いたその言葉に、男は思わず萎縮し、
しかし銀時が丸腰であることを確認するや、口の端を吊り上げながらなのはの身体を引き寄せた。
「オ、オイ動くな! 動くとこのガキがどうなるか……」
叫び、懐から取り出したのは黒光りする一丁の拳銃。
その銃口が銀時の眉間へと向けられ、だがその瞬間に拳銃を持つ男の腕に激痛が走った。
「いっ……!?」
驚き、男は腕を見る。
貼り方が甘かったのだろう。自力でガムテープの拘束を解いたなのはが、その小さな口で男の腕に、
思いっきり歯を立てて噛み付いていたのだ。
唐突に男の胸倉が掴まれ、身体が前へと引き寄せられる。
正面に迫るは、歯を食いしばった銀時の顔。
渾身の頭突きを頭部へと受け、男の意識は一瞬にして混濁し、そのままピクリとも動かなくなった。
「ったく。手間かけさせんじゃねーよ」
僅かに安堵した様子で、しかし悪態をつきながら銀時は、なのはの身体を戒めていた縄を解き始めた。
しかし、なのはは何故か脅えたような表情で瞳を潤ませ、
「ぎ、ぎんさんっ! そんなことよりブレーキブレーキ!」
「……あ?」
数秒後、廃工場から程近い川で、大きな水柱が上がったとかなんとか。
「……あれ?」
ここは何処? 俺は誰?
目を開けた銀時がまず最初に考えたのは、そんなことだった。
視界に映るのは、真っ白な天井とそこに据え付けられた長い電灯。
ゆっくり身を起こし、辺りを見回してみる。
天井と同じく白く塗られた壁面。
部屋中に並べられたベッドと、それら全ての脇に置かれた小さな引き出し。
窓の外から差し込む光は、すっかり夕焼けに染まっていた。
支援入ります!
「おや。ようやく目を覚ましたみたいだね」
窓から外の景色を眺めていた銀時の耳に、そんな声が聞こえてきた。
振り向くと、この部屋の入り口と思わしき場所に一人の男の姿。
高町士郎が、そこに立っていた。
「君のお客さんがお礼を言っていたよ。猫、見つけてくれてありがとうございますだとさ」
その言葉で、ようやく先程までの騒動を思い出し、自身の今の状況を把握する。
ブレーキもかけずにトラックを走らせっぱなしにしていたおかげで、ガードレールを突き破って川へ突貫。
その後、どこかの親切な人が自分達を救出して……。
ということは、ここはどこかの病院か。
そこまで考えを到らせたところで、銀時は重大なことに気付く。
「旦那、なのはは……!」
焦燥した様子で身を乗り出そうとする銀時だが、不意に腹部に違和感を感じて動きを止める。
視線の先では、士郎が困ったような笑みを浮かべて、銀時の腰の辺りを指差していた。
指されるままに、視線をそこへ落としてみる。
「……ぅ……ん……」
銀時の身体の上に上半身を乗せ、すやすやと眠るなのはの姿がそこにあった。
「一応検査入院した方がいいって医者に言われたんだけどね。
自分の診察が終わった途端、すぐにここに駆け込んできちゃって」
ずっと君の看病をしてたんだよ。と士郎は笑う。
どこか嬉しそうな表情で健やかな寝息を立てるなのはの顔を見て、気の抜けたように銀時はため息をつく。
「あ、そうそう。父親として一言言わせて貰うけど」
唐突に何かを思い出したように、士郎が笑みを崩さずにこやかに言う。
一体何なのだろうかと銀時は眉をひそませ、
「あいにくだけど、今のところ君に娘をくれてやるつもりはないからね」
突拍子もなく言われたその言葉に銀時は思わず放心し、そして先程自分が言った言葉を思い出す。
――人の女に手ェ出してんじゃねェよ。
「……ったく。何を報告してんだか、コイツは」
呆れたように呟き、なのはの頬をむにーっと引っ張る。
苦しそうな呻き声と共に、なのはの小さな腕が銀時の身体の上でパタパタと暴れた。
「言われねーでも分かってるさ。こんなじゃじゃ馬、俺じゃ預かりきれねーよ」
ため息をつきながらそんなことを言い、銀時はなのはの頭をそっと撫でる。
大きくて無骨で、暖かな手の下では、なのはが笑いながら小さく寝言を漏らしていた。
「ぎんさんっ! 早く行きますよー!」
休日の昼下がり。
なのはは元気一杯に銀時の手を引き、駅前の大通りを闊歩していた。
前のめりになり、この小さな身体の何処にこんな力があるのだろうかと考えながら、銀時はブツブツと不平を漏らす。
「あんまり急かすなっての。一応銀さん病み上がりなんですけど。家でゆっくりしてたいんですけど」
しかしなのはは銀時の言葉には聞く耳を持たずに、
「そんなこと言って。ほうっておいたら、ずっと家にこもってるでしょ?」
「お前俺のことなんだと思ってんの? オタクか? ニートか? 引き篭もりか俺ァ?」
「と・に・か・く! 助けてもらっちゃったんですから、いちどお礼しないと、私の気がすまないんですー!」
ぐいぐいと腕を引っ張るなのはについに根負けしたのか、銀時は半ば諦めた様子でため息をつき、
なのはの後ろを追うように歩く。
「つーか、パフェ奢るって話なら、わざわざこんなところまで来なくてもいいだろーが」
「いっつもうちのパフェばっかりだと、さすがにあきちゃうでしょう? ……ほら、着きましたよー!」
そう言って彼女が立ち止まったのは、とある喫茶店の前。
意気揚々となのはは店内に入り、銀時は面倒くさそうに頭を掻きながら店の扉をくぐる。
「あ……い、いらっしゃいませ!」
二人を出迎えたのは、どこか地味で頼りない、メガネをかけた青年だった。
それは、彼女が魔法の力を手に入れる前のお話。
それは、彼がかけがえのない仲間達と出会った時のお話。
支援だコラアアアアアアアア!!!
以上で投下終了です。
昔からこんなんでした。二人とも
なのははやっぱり良い子だと思いますよ、ええ
乙ですよ
>>押しかけ女房に妙な幻想を抱くな
まさしく幻想そのまんまじゃねえかコラァァァァァァ!
見事な光源氏フラグじゃねえかァァァァァァ!
なの魂氏乙です、そういえば明々後日で最新刊発売日ですね
・・・・って何俺の中のバックベアード様が目覚めそうなこの話
俺、今ならロリコン撃滅光線が撃てる気がするんだ……
GJ!
なのはは本当に銀さんが好きなんだなぁ…
銀さん良い男だし、3人娘にも好かれてるし、羨ましいぞコノヤロー!
待ちわびていたぜなの魂さんGJ!
>>52 アンヘルー!俺だー!王子と結婚してやってくれー!
>>107 ぶふぅう!! DOD氏なにやってるんですか!
DOD氏ー! 俺だー! ピポスバルを餌付けさせてくれー!
>>107 GJ!!
DOD氏、あなたは最高だ!!
>>107 /' ! ━━┓┃┃
-‐'―ニ二二二二ニ>ヽ、 ┃ ━━━━━━━━
ァ /,,ィ=-;;,,, , ,,_ ト-、 ) ┃ ┃┃┃
' Y ー==j 〈,,二,゙ ! ) 。 ┛
ゝ. {、 - ,. ヾ "^ } } ゚ 。
) ,. ‘-,,' ≦ 三
ゞ, ∧ヾ ゝ'゚ ≦ 三 ゚。 ゚
'=-/ ヽ゚ 。≧ 三 ==-
/ |ヽ \-ァ, ≧=- 。
! \ イレ,、 >三 。゚ ・ ゚
| >≦`Vヾ ヾ ≧
〉 ,く 。゚ /。・イハ 、、 `ミ 。 ゚ 。 ・
DOD氏が投下かと思って全裸で待機してた俺
そろそろ服着てもいいかな?
>>107 結婚なんてあの城で初めて出会った時に即やってるじゃないですか
ほら、結婚指輪のような臓器も交換したし
それにしてもこのDOD氏ノリノリである。
さぁ理想郷でバカップルの生活を書く作業を続けるんだ。
話をぶった切って申し訳ないが、前々から暖めていたDMC3クロスのなのはを投稿したいが――宜しいか?
>>101 なの魂氏GJ!
なのはちゃんが可愛い……さりげなくちょっと毒舌なのもいい。
考えてみたら、他のメンバーより先に出会ってたんですなあ。
>>116 支援
120 :
一尉:2008/12/02(火) 15:14:37 ID:iQ0tWM+j
銀さん支援
>>116 もし投下されるんなら何時くらいに投下すると書き込んだ方がいいんではないんでしょうか。
DMC全力で支援!
…? 支援
116です、ちょっと――貯めて居たネタフラッシュメモリ捜索中です。
投下は何時になるか解りませんので、とりあえず、フラッシュを発見しだい
こちらに書き込み、投下します。
ご迷惑おかけしました orz
騙して悪いがそのフラッシュメモリは預からせてもらった
だが安心しな、実は嘘だからな
>>124 なんというかまあ気持ちは分かるけど、見つかったらまず投下予約状況を確認して投下時間を宣言してから投下してくださいね。
それがここらへんのルールですから。
何度も失礼、116でございます。
フラッシュがどーも見当たらないので、発見しだい投下予約させて頂きます。
後日、再び予約入れて投下しますので――失礼しました。
・・・・部屋、片付けるか orz
そのすり替えたフラッシュメモリをさらに隠したのも私だ
131 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/02(火) 20:44:18 ID:iF3qIJba
>>131 なに、ただの通りすがりのサラリーマンだ
「私は21世紀から来たサラリーマンだ」
砂漠の虎スレになっとる…
とりあえずフラッシュメモリ探索頑張れ。
そしてなの魂氏GJ!そうだよなぁ、翠屋の上に転がり込んでるんだから、なのははぱっつぁんよりも銀さんと付き合い長いんだよなぁ。
分かっていたことだったけど何となく盲点でした。後、平仮名で「ぎんさん」って呼ぶなのはが可愛すぎる。
……この付き合いの長さというアドバンテージをひっくり返すために夜天の王はあんなことを(ry
GJです!
正直ミッドチルダ編も期待します。
>>129 それも私だ。
と、お約束のように言いつつ、10時50分頃からミッドチルダUCAT 地上攻防戦 その2を投下してもよろしいでしょうか?
中篇になるかそれとも四部構成になるのか不明です。
激しい壊れ注意です。
支援
支援します
そろそろ時間ですので投下開始です。
激しい壊れ注意、容量が多めなので支援をお願いします。
そして、注意――今までのUCATは準備運動でした。
以上を承知の上、ご拝読ください。
ミッドチルダUCAT意見陳述会。
それは年々削られた予算にも関わらず戦力を拡大し、発言力を強めているUCATに対する監査儀式のようなものだったのかもしれない。
優れた組織力と治安維持に反して、得体の知れない人材や兵器などにミッドチルダ市民の不信感は高まり、押さえつけていた殻が破れるようにその実情を人々が知りたがるようになった。
彼らは敵なのか?
それとも自分達を護ってくれる存在なのか?
秘密裏に開発が進み、その持続申請が出された新型拠点防衛用兵器アインヘリヤルなどの存在により、人々の注目は極度の高まりを見せていた。
そして、その会議が終わりかけた時、事態は波乱の展開を迎えた。
始まりは突然だった。
爆音が鳴り響き、それと同時に警報が地上本部の室内全てに鳴り響いた。
会議に参加していたものは誰しも目を見張り、戸惑いに声を上げて、窓の外を見た。
「な、なんだ!?」
それは無数の敵影だった。
ガジェット・ドローンと呼ばれる機械兵器、それが雲海のように迫っている。
誰もが驚きに声を上げた。
迎撃を! いや、避難を! 地上本部の防衛はどうなっている!
口々に叫び声が上がる、その中で会議に参加していたはやてたちは目を合わせて出撃する覚悟を決めて、その横で三人の様子を見ていたカリムは祈るように腕を組んだ。
「失礼ながら、私たちはしゅつげ――」
「必要ないな」
はやてが立ち上がろうとした瞬間、声が掛かった。
それはオールバックの髪型に一房の白髪が混じった青年。
レジアス・ゲイズ中将の横で客分として座っている人物、佐山 御言。
「っ、どういう意味ですか!?」
「言葉の意味も理解出来ないのかね? 先ほど告げている通りだ。出撃する必要は無い」
佐山がチラリと横のレジアスを見ると、彼もこっくりと頷いた。
ガタリを椅子から立ち上がると、彼は静かに、されど重々しい口調で告げた。
「皆、落ち着つけ。それと勝手な判断で移動しないように、あくまでも攻撃対象は私たちUCATのようです」
「っ、勝手なことを! 私たちに被害が出たらどう責任を取るのかね!!」
口々に騒ぎ立てる本局幹部達。
それらを佐山はやれやれと息を吐くと、告げた。
「なるほど。ならば、責任を取ればいいのかね? よろしい、きみ達にかすり傷一つでも付けばこの男が皺腹を掻っ捌いてくれる!」
自信満々に告げる佐山。
「……いや、ワシはそこまで言ってないのだが」
「これで満足するのだろう!! なんならばきみ達に介錯をさせてもいいぞ! 分かるかね? ジャパニーズハラキリーだ!」
「ぉーぃ」
無視されて少し寂しいレジアスだった。
白熱する陳述会会場。
音を上げていく爆音。
そして。
「なっ、あれをみろ!」
誰かが叫んだ。
その瞬間、誰もが窓の外を見た。
大いなる”桃色の奔流”が、空を焼き尽くしたのを。
尻神様!支援
変態さん大集合と聞いて支援に来ますた
支援
時は少々遡る。
四時間前、ミッドチルダUCAT本部内を歩き回ったなのは、フェイト、はやては疲労困憊だった。
肉体的には負担はない。
ただし精神は幾つもの刀傷を負い、出血を起こし、今にも壊死しそうだった。
だって。
「魔王様−! 俺だー! 結婚してくれー!」
「フェイトそーん! 俺だー! 踏んでくれー!」
「はやてー! 別にいいやー! でも、サインくれー!」
と、喚き散らす陸士たちがワラワラとどこからともなく色紙と使い捨てカメラを持って寄ってきたり。
「見てくれよ? これ……どう思う?」
「……すごく……大きいです」
と、ベンチに座り込んで、手作りらしい1/10ナンバーズフィギュアを見せ合っている陸士もいたし。
「はいはい、ここが有名な陸士108部隊の部隊室だよー」
「へえー、ここであのギンガ姉ちゃんが寝顔撮られたりしたんだね!」
「すごーい!」
「俺もいつかUCATに入って、可愛い部下とラブラブの職場恋愛になりたーい!」
「じゃあ、私それに横恋慕して、ドロドロ関係になりた〜い!」
「じゃあ、僕はそれを最後まで見届けて歯をがたがたするー!」
「あらあら、皆さんおませさんですね。でも、不倫とかは事前に正妻と結託しておくと後々楽なのよ☆」
などと告げるバスガイドならぬUCATガイドのお姉さんと小学校低学年の子供たちが集団行動などをしていたり。
他にも、ほかにも……思い出すだけで吐血しそうな光景を沢山見たなのはたちは記憶にフタをするという賢い大人の選択をした。
意見陳述会なのにも関わらず、警備網が強まっている気がまったくしなかった。
というか、ここはテーマパークなのだろうか?
一応何度かここに来ているらしいはやて曰く「……信じられんかもしれんけどな、ここ申請すれば見学いつでもOKなんや」と武装組織にして治安部隊あるまじき状態らしい。
どうなっているのだろうか?
つくづくなのはとフェイトはフォワード陣を内部警備に廻さなくてよかったと思う。
「まあええわ。とりあえず大体見て回ったし、上の会場に行こうか」
「そうだね……」
「同意する」
ガクーと頭を落とし、なのはたちは上の階に上がろうとエレベーターに向かう。
道は迷わない。
別段持ち込み禁止にもなっていないデバイスたちにルートマップは記憶しておいてあるし、そこらへんで急造らしき案内板が用意されているからだ。
まるでお祭り騒ぎのように張られているポスターや立て札に中学時代の文化祭を思い出して微笑ましくなりそうになる三人だったが、それらを用意したのがいい年こいた大人たちだと思うとどこか凹む。
騒がしく大工道具を持った陸士たちや、エレキギターにドラムなどなどと持ったパンクな格好をした陸士たち(一名女の子がいたような気がした)などとすれ違い、エレベーター前に辿り着く。
すると、そこに見覚えのある顔があった。
支援
支援
「あ、カリム!」
「? はやて! それに皆さんも」
そこには礼服を身に纏い、身だしなみを調えた金髪の女性が立っていた。
カリム・グラシア。
聖王教会の騎士にして、時空管理局少将である才女。
そして、機動六課の後見人の一人でもある女性。
彼女は美しい、宗教画に描かれる美の女神の如く整えられた美貌、太陽の光を凝縮し糸に紡ぎ上げたかのような金色の髪を滑らかに伸ばし、神聖を帯びた礼服の下に隠し切れない肢体は妖しく禁忌を踏み越えさせるほどに魅力的な肉体。
彼女は佇むだけで世界を変えるかもしれない美貌の持ち主だった。
――ただし、その周りで写真撮影を求められていなければ。
「あ、すみません。こっち向いてくださーい」
「あ、はい」
振り向き、ニコッと微笑む。
パシャリ。
インスタントカメラのフラッシュが瞬き、カメラを撮った人間と一緒に移った無数の陸士たちが喚き散らすように歓喜の声を上げた。
『ひゃっほー! カリムさんと写真撮ったどー!』
「宝物だー! 家宝にします!」
「ありがとう、ありがとう!」
歓喜の舞を踊る陸士たちの暗黒舞踏。
それらを引きつった顔で見送り、そしてそれらを目撃したはやては困惑しきった顔と引きつった声で尋ねた。
「か、カリム? なにやっとんの?」
「いえ、写真を求められたので。一緒に写っただけですよ?」
「あかんー!! というか、カリム! あんたのキャラ変わっとるわ! 普通ああいうのは「あら嬉しいですわ。けどごめんなさい、私は聖王に仕える身。淫らに貴方方と触れ合うわけにはいきません」 とか言って断るんとちがうんか!?」
「いえ……一緒に写真を撮ってくれたら、聖王教会に全財産を寄付しに行きますと沢山言われたら、つい」
フッと顔を背けるカリム。
どうやら信仰のプライドとかを金で売ったらしい。
「カリムー!!」
親友の行動に、はやては泣いた。
真面目に泣いた。
「ごめんね、はやて。聖王教会も色々と苦しいの」
「知りたくなかった事実やわ」
そんなコント劇場を繰り広げている間に、チンッという音が鳴り響く。
カリムが押しておいたらしい昇降ボタンが点滅し、エレベーターの重厚な扉が開かれた。
支援
支援いたしやす
「えっと、はやてたちも会場に行くのよね?」
「そ、そうや」
「乗ろうか、なのは」
「そうだね」
四人がぞろぞろとエレベーターに乗り込む。
見晴らしのいいガラス張りのエレベーター。
はやてがその白い指を動かして、会場のある階層のボタンを押し込むと、鈍い音を立てながらエレベーターが上昇していく。
「ん? そういえばカリム」
「なに、はやて?」
ニッコリと聖女のような笑みを浮かべるカリム。
「シャッハはどないしたん? いつもなら護衛にいるやろ」
「ああ、シャッハね……彼女なら急用でこれなかったわ」
「急用? カリムの護衛以上に優先することなんか?」
シャッハはカリムに忠誠を誓っている神殿騎士だ。
その彼女が時空管理局本局の制御を半ば離れた組織――危険極まるミッドチルダUCATに一人で行かせるとは信じられなかった。
どれほどの用件なのか?
「いえね。毎月のことなんだけど、ちょっと布教活動をしているらしいの」
「ふ、布教?」
「ええ。どうしても悔い改めさせないといけない連中がいると、朝から出かけて行ったわ」
『……』
ふぅっと悩ましくため息を吐き出すカリムに、なのはたちは沈黙で答えた。
深く尋ねると危険だと、幾多の戦場を駆け抜けた彼女達の感が叫んでいた。
そりゃあもう全開で。
結局、なのはたちは会場に辿り着くまで言葉を発することはなかった。
UCAT!UCAT!
パイルバンク!パイルバンク!支援
支援
「そろそろ、意見陳述会が終わる頃かなぁ」
「そうだね」
ミッドチルダUCAT地上本部の外壁、そこでフォワード陣は定められた警備位置に立っていた。
フォワード四人組が集まり、さらには周囲にも同じように警備に当てられた陸士たちがいるのだが……どうにもやる気が感じられない。
ラジオ体操をしたり、他の人間のデバイスを借りてお手玉をしていたり、様々な行動をしている。
組織としてふざけているに等しかったが、今まで何度か陸士たちと共同戦線を張ってきたフォワード陣たちはミッドチルダUCATの練度が決して低くないことを知っている。
彼らなりの緊張感のほぐし方なのだろうと、適応力高く納得し始めていた。
決して空を舞い上がりながら「うらー! 敵はどこだー! ティアナにいいところを見せるぞー!」とか叫んでいる知り合いを見て、諦めたわけではない。
断じて違うのだ。
「あ、そういえばギンガさんはどうしたんですか?」
「ギン姉? そういえばさっきなんか陸士108部隊の人が来て、連れてかれたけど」
くいっと首を捻り、スバルが答える。
「ギンガさんって確か元々は108部隊の人なんですよね? やっぱりあちらとのほうが連携とか上手いんでしょうか」
短い間だが、同じ部隊として戦ってきたエリオとしては少し寂しかった。
そんな彼の頭をポンッとスバルが撫でる。
「大丈夫。場所とか所属が違っても、同じ時空管理局で、同じ世界を護ろうとしている仲間だから!」
「そうですね」
少しだけ安心したように微笑むエリオ。
それを見てティアナは肩を竦めて、キャロも嬉しそうに口元に手を当てて微笑んだ。
その時だった。
「ん? なんだ、ありゃぁ?」
人間ピラミッドをして、上で片足立ちをしてアドレナリン全開のイイ表情をしていた陸士が唐突に何かを捉えた。
空の果てに浮かんだ黒点。
陸士の声に気付いて振り返ったフォワード陣は数え切れないほどの数を交戦してきた敵を見間違えることなく、叫んだ。
「ガジェット・ドローン!!?」
「予言通り、襲撃が来たわね!
それぞれがデバイスを起動させて、構える。
そして、ガジェットたちはAMFを展開し、次々とレーザーを放つ。まるで光の雨のよう。
遠い黒点から発せられる破壊に誰もが殺気立ち、十分もしないうちにこちらへと辿り着いてくるだろうことが分かる。
出動要請が掛かるのも時間の問題だ、とティアナたちが考えた瞬間だった。
支援
悪役支援
『総員、一時待機!』
「え?」
拡声マイクから響く声に誰しも手を止めた。
戦闘放棄!?
そう考えたのも無理は無い。
だがしかし、その次の瞬間発せられた言葉に誰もが耳を疑った。
『時空管理局は不利益な弾圧をしない! というわけで、説得要員。彼らに警告をしてあげたまえ!』
「は?」
その瞬間だった。
ガラガラガラという轟音と砂埃を上げてやってくる巨大な影に気が付いたのは。
「な、なにあれ?」
ティアナが呆然と呟く。
それは形容しがたいものだった。
まずそれは四つの車輪を持っていた――ただし木製。
それは車体があった――ただし大きな木製。その全身には細長いバーが備え付けられ、それを無数の陸士たち(何故かハッピ姿)が押していた。
その全身には金箔が貼られていたり、クリスマスツリーのように豆電球がつけられていたり、さらにはチャラッチャッチャー♪ というメロディが甲高く鳴り響いている。
そして、その上は丸い台になっていた。
一言で言うなればステージ、フォワード陣たちは知らないがそれは第97管理外世界においてお立ち台と呼ばれるジュリアナが踊り狂うようなカラフルな台だった。
そして、そして、その上に……一人の女性が半泣きで立たされていた。
限りなくキワどい水着姿、豊満な胸を惜しげもなく上から突き出し、さらに下乳もむしゃぶりつきたくなるほどにさらされて、
そのサクランボウが付いているだろう位置だけが伸縮性のある布地で覆われており、さらにヘソ出し、股間の食い込みは凄まじいの一言に限るお色気満載の水着に、片手にはビーチパラソルまで持たされている。
はっきり言おう。
レースクイーンの格好だった。
さらに残酷なことを告げると、それは透き通る青空のような美しい髪を翻し、見るもの全てが凛々しく引き付けられるだろう美貌を涙で歪めた哀れなる女性――その名を。
「ぎ、ギン姉!?」
ギンガ・ナカジマといった。
実の妹の驚愕の声すらも聞こえないのか、半ば諦め顔のギンガ。
その下で台車を押す連中は凄まじく輝いた笑みでスポーツカーのような速度で駆け抜けると、迫り来るガジェットたちから一番よく見えるまで押し込んでいく。
ガラガラガラと途中で鼻血を吹き出しながら、ギンガを連続撮影していた進路上の陸士を一切の躊躇いもなく撥ね飛ばし、彼らはキキーと火花を散らしながら停止した。
『えぐえぐ。やだぁ』
泣き声が拡声器から洩れ出てくるが、誰も聞いていなかった。
ただ爽やかな顔で。
「さあギンガさん! 彼らに説得をするんだ!」
「ギンガならやれる!」
「頑張って〜!」
と告げるだけである。
まるで優しい顔で地獄の針山に送り込む鬼どもを見るような目でギンガは彼らを見たが、誰も気にしなかった。
というか、少し興奮しているような気がしたので、目をそらした。
味方はいないと結論付けて、ギンガは気丈にも立ち直り、前を向いた。
そこには無数のガジェット、そして遠目だがガジェットの上に乗ってこちらへとやってくる少女達――ナンバーズの姿が見えていた。
そんな彼女達を見て、少しだけギンガは決意を新たにした。
『こちらミッドガルドUCAT、説得要員です! もしもしー聞こえていますかー!』
拡声器の出力をMAXに訴えかける。
その声にナンバーズの少女達は気付いたようで、ギンガに目を向けた。
そのまま声を発し、渡されたカンペ通りに説得を開始。
『貴方達の行為は犯罪行為です! 都市部における公共物破損、違法魔導機械の操作、及びミッドチルダUCATへの破壊工作、他諸々の容疑で逮捕しますよぉ!』
声を張り上げる。
その度に揺ら揺らと彼女の一部分が揺れた。
風は強く、片手に持つビーチパラソルの勢いに堪えるために踏みとどまる彼女の体は深く語らないがバインバインと震える。
「うるせー! そんな説得で引き下がれるわけないだろ、ばーか!!」
遠めに見える赤い髪の少女が叫び返す。
当たり前である。ギンガもこんな説得で引き下がるなんて信じていなかった。
けれど、けれど!
それでもギンガはやめて欲しかった――彼女達のために。
『やめてー! これ以上進んじゃ駄目―! 本当に! 本当に戦わなければいけなくなるからー! やめてー!』
それは絶叫だった。
叫んでいる最中にギンガは涙が止まらなかった、うっと口元を抑える、涙が下に零れ落ちる。
『?』
そのギンガの態度にナンバーズの誰もが首を捻った。
そして、その意味を彼女達は数分後に思い知る。
「まあいい。ガジェット共、タイプゼロを死なない程度にぶっ飛ばせ!」
紅い髪の少女が叫びを上げて、腕を振り下ろす。
それと同時にガジェットU型がミサイルを、筒状のT型がレーザーを吐き散らし、ギンガの台車へと集中砲火が叩き込まれる。
「ギン姉!」
「ギンガさん!!」
呆気に取られていたフォワード陣が慌てて反応するが、時は既に遅し。
攻撃は次々と撃ち込まれて――炎爆が生み出される。
ガジェットの攻撃は止む事無く叩き込まれて、その攻撃力の高さをよく知るフォワード陣は顔を青ざめて、スバルは絶叫を上げた。
「ギン姉ー――ね?」
その悲鳴は、途中で途絶えた。
爆炎が吹き荒れた後、そこにいたのは無数の陸士たち。
台車には傷一つなく、ハッピと団扇と看板を持った陸士たちがフォーメーションを組んで障壁を張り、胸も張っていた。
ギン姉……www
支援
「はーははは! 我らがギンガ親衛隊!」
「魂の篭らぬ機械の攻撃など」
「やらせはせん! やらせはせんぞぉおおお!!」
「ま、また変態かー!!」
咆哮じみた絶叫。
同時にガジェットからさらにレーザーが放たれるか、バシンと煌めき輝く手甲を付けた陸士の一人に叩き落され、さらに打ち出されるミサイルは強化合金製団扇と【ギンガラブ】とかかれた立て札の前に悉く弾き返される。
なんか真面目にやるのがアホらしくなるほどの鉄壁の防御。
笑い声を上げているギンガ親衛隊陸士たちの頭上で、シクシクと泣いているギンガが異彩を放っていた。
そんな時だった。
『……ギンガ。どうやら彼女達は悲しいことに説得は受け入れられないようだ。下がりたまえ』
「ラッドさんの声?」
聞き覚えのある声が放送マイクから聞こえてきて、スバルたちが首を捻った。
それと同時にギンガは泣き崩れた。
『ごめんなさい、ごめんなさい、彼らを止められない私の無力を許して……!』
『撤収〜!!』
泣きながら謝るギンガを乗せて、台車と陸士たちは凄まじい速度で後退していった。
そして、その代わりといってはなんだが地上本部の路上道路の地面がギギギと音を立てて開いていく。
『え?』
誰かが声を洩らした、誰もが声を洩らした。
そこから出てきたのはキュラキュラと音を立てて出てくる鋼鉄の獣。
キャタピラがあった、台座があった、砲台があった、砲身があった。
――それは十数台にも及ぶ戦車だった。
しかも、その装甲にはこうペイントされている【全力全壊☆】と。
『全NANOHA-3、展開せよ!』
放送マイクから声が轟く。
どこか楽しげなラッドの声。
そして、轟くのだ。
こう。
『ディバイィイイイン・バスター!!!』
“十数にも渡る桃色の砲撃が大気を貫いた”。
sienn
Tes!
その砲撃の圧倒的火力を見つめているものたちがいた。
意見陳述会会場、そこにモニターで映し出された戦線。
そして、その戦車型魔導砲から飛び出した桃色の砲撃に、フェイトは横の親友に振り向いて。
「……なのは、いつから分身魔法覚えたの?」
「ちがうー! 私じゃないのー!!」
なのはが否定の叫び声を上げた瞬間、モニターからゾットするような声が聞こえた。
『……少し頭を冷やそうか――もう一度ディバイン・バスター!』
ちゅどーんという砲撃音と共に聞こえる無数の“女性の声”。
ジロリとなのはを見つめる視線が増えた。
「私じゃないよ! 本当だよ!? なんで、皆見るの!?!」
「なのは……」
「なのはちゃん……」
「タカマチさん……」
誰も信じていなかった。
「はにゃー!!」
猫のような叫び声が上がった。
二度に渡る一斉砲撃。
桃色の破壊砲撃はAMFを展開するガジェットたちを蹴散らし、破壊し、汚い花火と成り果てていた。
「ふはははは、圧倒的じゃないか。我が軍は!!」
それは陸が極秘裏に製作した魔導砲台戦車。
正式名称【Napalm・Atomic・Now・Out-range・Hyperthermia・Attack-kanon】3式。
略してNANOHA−3。
通称なのはさん部隊の指揮官はただ一人腕組みをして、純白と蒼と赤のトリコロールに塗られたNANOHA−3の上で佇んでいた。
なんという砲台www
支援
魔王すら圧倒する変態 支援
Tes!
何かエイプキラーっぽいのいたような?
地上本部なにつくってんだwww 支援
支援
ええい、UCATのNANOHA-3はバケモノか!支援
「ふざけんなー!!」
その時声が聞こえた。
すると、爆炎の煙の中から動きの素早いガジェットUにしがみ付いたナンバーズたちが罵声を上げている。
「む? まだ生き残っているか。各自再度砲撃準備を開始!!」
『ラジャー!』
砲台に光が宿り、戦車内部から声が上がる。
「照準、構え!」
砲塔がゆっくりと動き出し、照準を合わせる。
「メインバレル冷却開始!」
砲身から蒸気が噴き出す。
「次弾……装填!」
巨大な砲弾の薬莢がおもむろに弾き出される、戦車内部で糾弾手が巨大な砲撃型カートリッジを交換する。
「反動ブレーキ、再度固定!」
ガシンと巨大なバンカーが左右に地面に突き刺さる。
グングングンとどこか掃除機が空気を吸い込むような音を立てて、桃色の光が砲身に宿る。
『行くぞ、我らが全力全壊!』
『――少し頭冷やそうか?』
声が響く、無数に響く。
それはNANOHA−3に搭載された砲撃魔法のオリジナル砲撃魔導師に敬意を称しての音声ボイス(なお、本人に承諾なし)
さらにいえばオリジナルに敬意を払って態々魔力光の輝きを着色したもの。
偉大なる人物に敬意を払う兵器とも言える装備。
だからこそ、皆はこう叫ぶのだ。
『ディバイィイイイン・バスタァアアアー!!』
桃色の閃光が大空を蹂躙する。
誰も防げない、誰も逆らえない、魔王の如き光景。
ゴミクズのようにガジェットたちが蹴散らされた。
そして、中にいる操縦者も、外にいる指揮官も全員が敬礼して。
「――なのはさんのおかげです!」
と叫んだ。
その光景に加えて迂闊にも音声を拾ったせいで、スカートに関わらず会場でなのはがひっくり返ったことなど彼らは知る由もなかった。
ちなみに魔法術式及びボイスは本局の教導隊部隊長から快く譲渡されたものである。
後日、それらの事実を知ったなのはがレイジングハート片手に本局に乗り込んできた時、教導隊部隊長はこう告げた。
「あ? お前、術式プログラムに著作権なんてあるわけないだろ」
という現実溢れる言葉だったという。
Tes
確かになのはさんのおかげだw
支援
「……ふむ。どうやら無事に終われそうだな」
色んな意味で呆然としている本局幹部達、聖王教会関係者、記者、さらにいえば機動六課の面々を横目にレジアスが渋く呟いた。
しかし、それを否定する言葉が隣の佐山から発せられる。
「馬鹿め。フラグを立てたな」
「ぬ?」
佐山の言葉に首を捻った瞬間、モニターを見つめていた本局幹部達が声を上げた。
「な、あの砲撃群を!?」
砲撃の吹き荒れた後、何も残らないと思われた空に無数の黒点が浮かんでいた。
ガジェットだ。
しかも、小さく映るナンバーズたちも無事である。
おかしい。どう考えてもあの魔導戦車から撃ち出される砲撃はガジェットが展開するAMFの出力を凌駕していた。映像からの試算だが、リミッター付きのなのはの砲撃と比べても遜色無いほどの威力はあったのだ。
そして、事実過去二回の砲撃でガジェットが撃沈していったのを見ている。
なのに、何故?
「それだけやない!!」
はやては思わず声を上げて、モニターを指差した。
数が増えている。
次々とガジェットが虚空から姿を現し、レーザーを放ち、ミサイルを放ち、破壊活動を続けながら飛来してくる。
NANOHA−3の砲撃が応戦とばかりに繰り出されるも、その瞬間無数のガジェットが一塊になるように連結し、その砲撃を弱体化させた。
「AMFの多重展開やて!?」
今までのガジェットにない戦法であり、機能だった。
NANOHA−3の砲撃は引き続き撃ち出されているが、明らかに落としきれていない。
応じるように陸士たちが応戦を始めるが、圧倒的な数と出力に吹き飛ばされていく。
「くっ! どう見ても陸士だけに手に終える事態やない! レジアス中将、私らは機動六課として自主的に出撃するわ!!」
見過ごしておけるわけがない。
戦う力があるというのに、見て見ぬふりなど出来なかった。
踵を返し、他の呆然とする幹部達を押し退けて、はやてたちが会場を閉ざす扉を開こうとした瞬間。
――ガギン。
扉は開かなかった。
「え?」
扉がロックされている。
キッと振り返ると、レジアスと佐山は仏頂面で座っていた。
「レジアス中将! そして、そこの佐山やったか。アンタら、何考えてんの! 扉を開けい!!」
上司にする言葉使いではなかったが、そんなのに気にしている余裕は無かった。
ただ外に出なければ、戦わなければ地上本部は、外で戦っているフォワード陣たちはやられてしまうのだ。
そして、ここが落ちれば今後このミッドチルダの危機を護るのは誰なのだ。
本局か? いや、海だけでは護りきれるわけが無い。足が遅すぎる、地に足をつけてない海では駆けつけられない。
はやてはだからこそ期待していた。
ミッドチルダUCAT、人格と性質はともかく陸の理想を実現する組織だと。
だけど、それは裏切られた。
と思った。
支援
「まったく……君は私の話を聞いていたのかね?」
「なんやて?」
「私は告げたはずだぞ。“きみらが出撃する必要は無い”」
佐山は立ち上がる。
その手を美しく翻し、手を伸ばした。
「あえてここで告げよう。佐山の姓は悪役を任ずると」
それは堂々と誇りに満ちた言葉だった。
何一つしていない。
ただ発言だけが許される客分でありながら、まるで誰よりも偉そうに、尊く、英雄のように告げた。
それこそが悪役である証明。
「どこぞのエロジジイと同じ匂いがする駄目男よ。さっさと本気を出したらどうなのかね?」
「だ、駄目だよ、佐山君! せめて大城全部長よりは心持ちマシぐらいに言ってあげないと!!」
その横でわたわたと手を振り上げる長髪の美しい麗人が悪意無き刃を振るった。
「……」
しょぼーん。
レジアスは凹んでいた。
「さらりと言葉の暴力をありがとう、新庄君」
「ほえ?」
「ま、まあいい」
不屈の根性で立ち上がり、レジアスは見えないように腰をとんとんっと叩くと、懐から一つのレシーバーを取り出した。
「――私だ。総員に通達せよ、対異世界装備の許可を与える」
『本当ですか?』
「返事は違うだろう。正しくUCATとして動きたまえ」
瞬間、レシーバーの向こうで息を飲む声が聞こえた。
それは戸惑い、それは喜び、それは歓喜。
『――Tes.(テス)!』
声が上がる。
そして、レジアスは静かにレシーバーを置き、机の上のスイッチを操作した。
「私だ。管制室、調子はどうかね?」
『あー! 俺だ! 今なんか変なハッキングされてやがるが、現在必死こいて食い止めてるよ!』
「なるほど。ならば至急どんな手段を取ってでもそれを解決しろ。そして、ミッドチルダUCAT、対異世界装備の許可を与えた――概念空間を展開しろ」
『っ! Tes.!』
聞きなれない応答。
そして、それらに戸惑う全員にレジアスは両手を広げて、告げた。
悪役っぷりがお見事!支援
尻神様はまだかー
概念空間w 支援
まロ念の空間がくるのか
「時空管理局本局のものよ、聖王教会の重鎮たちよ、そしてこれらを見ているこの世界の住人全てに伝えましょう」
告げる。
重々しく誇りを篭めて。
「私たちの名前は時空管理局では無い。地上本部ですらない」
カメラが向けられる。
そして、それらを通してミッドチルダの全都市で画像が流される。
放送されるのはレジアスの顔、声、その全て。
「私たちはミッドチルダUCAT。そして、その目的は“如何なる異世界からも私たちの世界を守り通すことであります”」
「っ! 時空管理局の理念を超えた発言だと!? クーデターでも企む気か!」
「愚かな。彼らは地上部隊だぞ? 世界を護るのが何が悪いのかね」
幹部の言葉に、佐山が嘲るように、けれども淡々とした口調で告げた。
「私たちは貴方達を護ります。
例えどの世界が私たちを嫌おうとも、貴方達が私たちを嫌っても護りましょう。
私たちは見返りを求めない。
私たちは理解を求めない。
私たちは如何なる屍をも顧みない。
私たちは如何なる犠牲をも厭わない。
私たちはどんなに苦しくても諦めない。
私たちはどんなに絶望的でも挫けない」
告げる。
告げる。
レジアスは吼える。
「私たちは無限の次元世界の一つです。
かつて11の異世界と戦った組織がありました。
かつてどんなに苦しいときでも諦めない組織がありました。
かつて世界を滅ぼしてでも護ろうとした世界を守り通した組織がありました。
だからこそ、私たちはもっと強く在らなければならないのです。
11では利かない、100でも足りない、1000でも少ないかもしれない、もっともっと沢山の世界があります」
腕を振るう。
ただ答えるように。
ただ告げるように。
レジアスは誰にも理解を求めなくても、ただ叫ぶのだ。
「けれど誓いましょう。
だけど、契約をしましょう。
私たちは決して敗れないと、くじけないと、守り通してみせると!
正義ではありません。
私たちは正義にはなりえません。
ただの諦めの悪い人間たちの集まりです。
けれども、私たちはこの胸に誓った覚悟を秘めて叫ぶのです」
レジアスは手を上げた。
佐山も手を上げた。
新庄も手を上げた。
本部にいる全てのUCATが手を上げた。
そして、外に戦う誰もが笑って、きっと手を上げたに違いない。
支援
Tes!
「我、ここに契約す――Tes.(テスタメント)!!」
誰が吼えた。
「Tes.!」
誰かが手を伸ばした。
「Tes.!」
誰かが悲鳴と共に叫んだ。
「Tes.!」
誰かが走りながら言った。
「Tes.!」
誰かが戦いながら告げた。
「Tes.!」
誰かが吹き飛ばされながらも誓った。
「ミッドチルダUCAT! 対異世界組織の演習戦闘に入る! 各員、対異世界装備準備!!」
『Tes.!』
ここに契約は成された。
思わずオレも手を上げてしまった支援
Tes!
支援
Jud.!
今回はここまで!
いつものオマケはまとめに収録する際に追加します!
明日の夜にこの続きを投下しますね。
というか、一気に乗せると確実に50KBどころではなくなるので(汗)
地上本部激闘編、これからが本番です。沢山のご支援ありがとうございました!
次回も激しく壊れます!!!
Tes.!!
支援n「
193 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/02(火) 23:17:00 ID:NImOlk/S
やべぇ…笑いながら感動してしまったぜww
なのはさんのおかげです!
Tes.!
カワカミンが溢れてる!
やはり中将は全部長ポジションでしたかw
>>191 GJです。
どこまで言ってもどこから突っ込めばいいのかわからないのがUCATですね。
糞、続きが待ち遠しい!
tes!
Tes.!
UCATの本領発揮ですねw
これからが楽しみだ。
かける言葉が見当たらん
なんというカオス、なんというフェティシズム
震えるほどGJ、燃え尽きるほどGJ
>> 「あ? お前、術式プログラムに著作権なんてあるわけないだろ」
吹いた!まさに最初からこうしとくんだったぜな一言!GJ!そしてtes.
大きいサイズでねんぷちの頭にフィットするのが限界じゃないか?
らきすたキャラは大体同じくらいの頭の大きさだったはずだし
誤爆orz
くそっ!原作知らないからギャグからシリアスな急展開についていけないぜ!
続きまってます!
GJ
久しぶりに原作を読み返したくなるなぁ
相変わらずどこに突っ込めば良いのかわかりませんが、レースクイーンギンガの映像化はまだですか?
とりあえず武神とサンダーフェロウでも出しときゃたいていの相手は吹っ飛ぶぜ
…ところでこれらって質量兵器に入るんかな?
大量破壊兵器でなきゃおkみたいだよ。
少なくとも武神は「金属は生きている」概念下だからなあ。
機竜はどうだったっけ?
UCATGJ。元ネタ知らないけど、普通に楽しめた!これはいいなのはさんのおかげ。
で、ギンガのレースクイーンのイラストはいつうpするんですか?
「あ? お前、術式プログラムに著作権なんてあるわけないだろ」 ……ごもっとも、でも鬼ですなww
ついに陸……いや、UCATの本領発揮ですな、あんまり原作しらないがこのかっこよさはなんだ!!エリオが騙されてしまうwww
GJ
うぅ初めてだちゃんと正当に?活躍するレジアスが見れたのは
ニヤニヤ。
俺は嘘吐きです。そして、明日になったので続きを投下します。
だけど、今回はおまけだけです。
おまけのラストの意味は次回判明します。
次回の話は今日の夜に投下します(午後8時前後?)
55分から投下してもよろしいでしょうか?
支援です!
名もなき一般隊員がかっこよくてこそのUCAT頑張れ
tes.
今日だってUCAT
1.バイク乗りと一人の少女
特車部隊に一人の青年が居た。
彼は何時ものように慣れた足で本部内を歩いていた。
特車部隊は機動戦と追跡などに長ける部隊だが、その反面警備任務などには向いておらず、意見陳述会における間本部で待機命令が出ていた。
とはいえ、待機命令などはこのUCATにおいては直ちに出撃できて、連絡が取れる状態であればどんな形でもいい。
というのが暗黙のルールだったので、彼はバイク乗りから新しく手に入れたライディングボードの適正を認められて以来着用している装甲スーツにすっぽりとしたフルフェイスヘルメット。
そして、手には菓子折りを持っていた。
こんな格好でコンビニ入るだけでも通報されるようなものだが、頭には特車部隊【甲】という張り紙を額に張っているので誰も気にしない。
というか、この程度の格好で気にする細い神経を持っているのはUCATにはいない。
そのまま彼はテクテクと歩き、エレベーターに乗り、地下から階段で下った。
彼が向かうのは留置所だ。
地上本部で拘束した犯罪者を一時的に置いておき、然るべき裁判などの工程を踏んだ後、別世界の刑務所に入れるか、それとも別の処分を判定するまでの待機所。
本来ならば普通の陸士が近寄る必要もない場所なのだが――彼は例外だった。
「ん? お前か」
留置所の前でエロゲーをやっていた監視員は彼の存在に気付いて、軽く手を上げる。
「ああ」
「何時もの子かい? と、こういうとまるでキャバクラの指定みたいだな。やーい、変態」
「その発想が変態じゃねえか」
ゲラゲラと笑うと、金の亡者なだけでどこかストイックな彼に赤く平べったいカードを渡した。
番号が書かれている。
そこに辿り着くためのカード、それ以外には使えないカード。
「まあ暇だろうから適当に相手してやりな」
「まあ俺も暇だからな」
ガリガリとヘルメット越しに頭を掻くという意味のない工程を果たして、陸士の彼は歩き出した。
その背を見送る監視員の男は呟いた。
「これ、なんてエロゲ?」
歩く、歩く、冷たい床。
響く、響く、硬質な音。
呼吸すらも漏れでないヘルメットの外には何も届かない。
拒絶されているような錯覚すら覚える。
けれども、淡々と歩き続ける。
そして、目当ての留置室の前に辿り着くと、彼は受け取っていたカードキーを差し込んだ。
扉が開くと同時に扉の横で小さな扉が開いた。
そこに菓子折りを入れる。パタンと閉じる。
そして、彼も扉の中を潜り、背後で扉が閉まった。
同時に閃光が全身を潜り抜けて、ピーという音が鳴り響く。
スキャン。刃物などを持っていないかどうか、通信機の類は許可が降りているものであり、ICチップを入れているために問題は無い。
五秒もせずに前の扉が開く。
その横でぽとんと菓子折りが出てくる。こちらもスキャン完了。
扉を潜ると――そこには一人の少女がガラス越しに座っていた。
紅い髪を短いポニーテールにまとめ、薄青いワンピースを質素に着込んだ姿だった。
「ひさしぶりッス」
「よう」
手を上げる。
すると、手を上げ返した。
彼女の名はウィンディ。
色々在って彼と知り合った少女――戦闘機人である。
「ほれ、菓子折り」
「おーう、サンキュウッス」
嬉しそうに菓子折りを受け取るウェンディ。
彼とウェンディは適当に雑談を開始した。
五分だろうか、三十分だろうか、一時間ぐらいだろうか。
話しをして、話しをして、沢山話をして――不意に言葉が途切れた。
「……んで、今日は何の用件ッス?」
「ん? 用件ってお前がいつも言って来るようにただの挨拶――」
「じゃないっすよねぇ?」
「……普段はアホなくせに妙に鋭いよなぁ」
ため息を吐く彼。
そして、とんとんと手袋を嵌めた指でデスクを叩くと、言った。
「とりあえずお前らの判決というか処分内容が一ヵ月後には出ることになったから」
「……そうっすか」
「何故か俺が伝えろってさ。まったく、暇じゃねえのによ。特車部隊っていえば結構なエリートなんだぜ? 地上ならな」
けれど、彼は所詮Cランク以下の魔導師だった。
このミッドチルダUCAT以外では見向きもされない程度の素養しかない。
だからこそ彼は金を求めた。
素質が無くても、金さえあればなんだって出来るから。
権力だって金を積めば買えることだってある。
命すらも時には買える、蘇らせることが出来ないだけでだ。
だけど、そんな彼だがたまには打算抜きで行動だってするのだ。
「ま、安心しろよ」
「え?」
「協力的だからよ、お前ら。ウチの部隊も、どいつもこいつもお前らの助命嘆願を書いて出してるしさ。大したことにはならねえよ」
「……ありがとうッス。他の姉妹の分もお礼を言っておくッスね」
「気にすんな。ただの伝言だからよ」
そう告げると彼は立ち上がった。
用件は終わりとばかりに椅子から立つ。
「じゃあな」
「あ」
手を振って立ち去ろうとする彼に、ウェンディは声を上げた。
「ひ、一つ聞いていいッスか!」
「あ?」
「お、お前も助命嘆願書いてくれたッスかね!?」
ウェンディはそれだけが知りたかった。
ただそれだけが気になって、声を張り上げた。
断じて彼を引き止めたかったわけじゃない。そう、思った。
「……書いてねえよ」
ガリっと、彼はヘルメットを被っているにも関わらず頭を掻いた。
それは彼の癖なのだろう。
ある行為を隠す時にするときに行う無意識の癖だった。
ウェンディは微笑む。少しだけはにかんだ。
「じゃ、また来るわ」
「おうっす! 今度はフルーツ山盛りで来るッスよ!」
「高けえよ。せめて、パイナップル一個で我慢しろ」
そう告げて彼は立ち去った。
静かに、背後で笑う少女の笑みも見ずに彼は立ち去った。
そして、それを見ていた監視員の男は呟いた。
「……死亡フラグ立てやがった」
乙 と合掌したのは彼だけの秘密である。
2.偉大なるもの。
嗚呼、嗚呼。
祈りましょう、祈りましょう。
嗚呼、嗚呼。
願いましょう、願いましょう。
世界が救われることを祈りましょう。
世界が護られることを祈りましょう。
誰かが願いました。
世界を救いたいと。
それはどこまでも純粋な願いでした。
平和への願いを叶える願望でした。
けれども、平和は願うだけではやってきませんでした。
どこの時代でも、どこの世界でも、平和を阻むものが居たのです。
それは悪でした。
けれども、正義でもありました。
悪役は正義を持って、平和を願うものとぶつかりました。
平和を願うものも正義をもって戦いました。
正義とはたくさんあります。
たくさんの願いがあります。
けれど、いつだってどっちかが勝ちました。
力が強いもの。
運がいいもの。
願いの強いもの。
大勢の人が望むものが勝つとは限りませんでした。
世界はいつだって不条理で動いています。
tes.
だから、だから。
誰かが願いました。
誰もが望む平和を作るものを。
誰もが願う正義を貫くものを。
信じなさい。
信じるのです。
それは剣を手にするものです。
それは悪を断つものです。
それは魔を断つものです。
それは闇を消し去るものです。
それは希望を忘れないものです。
人々の心にあるものこそがそれの力でした。
誰もが抱いて、忘れて、けれども蘇る輝きでした。
さあ信じましょう。
それは今こそ蘇るのです。
輝けるものを呼び出しましょう。
さあ――叫びなさい。
■■の名を!!
投下完了です。
お約束と次回の伏線話でした。
次回、二番目の意味が分かります。
そして、先に言っておきます。
――ごめんなさい(やりすぎる意味で)。
次回も変態パラダイス、当社比3.5倍でお送りします! 支援をありがとうございました!!
Tes.!!!
GJ!Tes.!
最近連射王を読んだ私はUCATの本気に感動させられます。
変態でも良いですよね。
Tes.!
Tes.!
二つ目の伏線誰か分かりそうなわからなそうな
悪役と尻神様も出たし、このあともクロニクルから誰か出ないかなー
GJ!Tes.!
そして近所の書店にも古本屋にも連射王売ってない俺涙目w
バイク乗りとウェンディが、実にお約束で楽しいんだけど、実に死亡フラグでおっかない。
いや、UCATで人死には出ないだろうと思ってますが。
こいつらは普通に幸せな家庭を築けばいいと思うよ。趣味も合うだろうし。
ストイックな金の亡者には、能天気なウェンディが必要だよ。
二つ目の伏線は、どうしようもなく某ニトロの無垢なる刃が思い起こされて仕方ないです。
連射王、近所の図書館にあったぜ! 今呼んでる真っ最中だぜ!
GJ!!
変なフラグと変な伏線だ!
おまけ2がGPMに見える件について
とりあえず思い信じて次の投稿までの時間を打撃しますね
>エレキギターにドラムなどなどと持ったパンクな格好をした陸士たち(一名女の子
ま さ か
テンプレ違反だがワロタ
どうも一日空けました。
7時40分からミッドチルダUCATの続きを投下します。
変態祭りです。
支援をお願いします!!!
早過ぎるwwww
支援
どんな概念飛び出すか楽しみ支援
本気な変態たちを支援
支援!
235 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/03(水) 19:35:44 ID:vdIMogyK
支援
支援
では、投下開始します!
今までのは本当に序の口でした! 本当にすみません!
支援お願いします!
『Tes.!』
咆哮が上がる。
『Tes.!』
叫びが上がる。
『Tes.!』
誓いの言葉が鳴り響く。
誰もが手を伸ばした。
砲撃の中でも手を掲げた。
血反吐を吐きながらも手を掲げた。
降り注ぐ光線に耐えながらも手を掲げた。
燃え盛る炎に焦がされながらも手を掲げた。
吼え猛るTes.の叫び声は津波のように戦場に響き渡り、伸ばされた手はまるで命萌える花々のように戦場に咲き誇る。
誇りを今こそ見せろと誰かが叫んだ。
今こそ自分たちの存在意義を押し付けろと叫んだ。
俺たちの待ち望んだ時が来たのだと
「なに、これ?」
魔力弾を撃ち放ちながら、ティアナは振り返る。
陸士たちが圧倒的な不利な状況でありながらも笑っていたから。
「でも、なんでだろう。誰も諦めていないよ!」
ガジェット・ドローンの一機を粉砕し、その爆風を浴びながらもスバルが気付く。
陸士たちの目は、いやミッドチルダUCAT隊員全てが目をぎら付かせていた。
「凄い。なんでだろう、負ける気がしません!」
「誰もが信じてるんです。負けないって、勝つって!」
エリオとキャロが理解する。
聞きなれない言葉、それを叫ぶものたち、だがそれは神聖なものだと分かった。
誓いを新たにする誇りある言葉。
そして、声が轟く。
支援いっきまーす
『対異世界戦闘準備に移行する! 総員、前を見ろぉお!』
翻る。
バッと足並みを揃えて、誰もが前を見た。
絶望的な戦力差。
攻撃は通じない、魔法を防ぐAMF、それらを展開し、質量兵器で身を固めた鋼鉄のアバドンたち。
破壊を撒き散らし、業火を呼び起こし、硬く冷たい錬鉄の津波。
『そして、後ろに振り向け!!』
バッと全員が一斉に振り向いた。
前から後ろへ、背を向ける。
『総員撤収ー!!』
鳴り響く声に、わーと全員が走り出した。
土埃を上げながら、全員逃げ出した。
『――は???』
もう一度言おう
全員逃げ出した。
「戦略的撤退ー!」
「これは逃げるのではない、後ろ向きに前進しているだけだ!」
「尻尾巻いてとんずらー!」
「てやんでいっ!」
などなど、わざわざ使い魔の尻尾を丸めたり、ピッピッピーと笛を吹きながら下がるものなど。
陸士たちは誰一人躊躇わずに逃げ出した。
「え? えぇええ!?」
「お、お前ら逃げるのかよ!!」
スバルの戸惑う声、ナンバーズの紅い髪の少女の怒声。
けれども、誰も止まらなかった。
ついでに言えば、陸士たちが逃げる最中に機動六課のフォワード陣も無数の陸士たちの流れに飲まれて、担ぎ上げられた。
「え!? こ、こらー! 私はまだ戦うー!」
「なにこれー!」
「あわわわわ、足を触らないでー! なんで息荒くしてるんですか!?」
「わー高〜い」
惚れ惚れするほどの速度で全員撤収していった。
後に残されたのは行軍するのをしばし忘れたナンバーズとガジェットたちだけだった。
カラカラと何故か枯草がその前を転がっていった(撤収時に陸士の一人が投げ込みました)
「な、舐めやがって……ぶち壊してやる!」
怒声が響く。
ナンバーズの少女――No.9 ノーヴェが怒りの形相に顔を歪めて、手を振り降ろした。
ガジェットたちによる破壊が始まる。
悪夢の如きガジェットたちの襲撃。
しかし、それよりも先に魑魅魍魎の如き襲撃をミッドチルダ本部は受けていた。
『レッツパリィイイイイ!』
入り口から飛び込む無数の陸士たち。
ガラスで出来た入り口を数人掛かりで蹴破られ、傍でエロ本を読んでいた休憩中の白衣の老人にガラス片の雨が突き刺さり、血だるまになった。
「ぎゃー!!」
絞め殺した豚のような悲鳴が上がる真横で、受付嬢の女性二人は慌てる事無く唐傘をバッと広げてガラス片を防いだ。
片方はあら、マニキュアが剥げちゃったと少しだけ文句を呟いた。
「用件はなんでしょうか?」
パラパラと落ちるガラスのシャワーが心地いいほど素敵な音を立てる。
『ちょっとこの街を護るので、全ロッカールームの扉ロックを解除してください!』
手早く用件を告げる陸士沢山。
「分かりました」
のぉおおお! また老人虐待じゃー! などと叫ぶ老人から目を外し、受付嬢の一人が電話をかけて、もう一人が受付下のデスクの隠し引き戸を開いた。
そこには紅く丸いボタンで【緊急時以外は押しては駄目よ♪】と書かれた防護フィルターがあった。
しかし、一切気にせずに彼女は厚手の革手袋を嵌めると、拳を固めて、にこやかな笑顔で真下に正拳突きを叩き込んだ。
一撃粉砕。
ボタンが腰の入った一撃の前にめり込み、UCAT本部の至る所から何かが解除される金属音が鳴り響いた。
「どうぞ、いってくださいませ」
『サンキュ!』
全員サムズアップ、素敵な笑顔を浮かべた。
わーと叫び声を上げて散らばっていく数百人の陸士たちの津波、それらが去った後に残されたのは呆然とした表情を浮かべるフォワード陣とにこやか笑顔の受付嬢とまだ痛い、痛いのぉ、新たな領域が開いてしまうぞい! と転がる老人だけだった。
「あら? 何かご用件はおありでしょうか」
営業スマイルでフォワード陣に告げる受付嬢。
呆然としたままのティアナはようやく再起動して。
「あ、あの彼らは一体何しに?」
「そうですね。ちょっと本気を出すための準備に行ったのだと思いますわ」
「本気?」
「ええ。対異世界戦闘準備ですから」
ニッコリと受付嬢が優しく微笑むと、もう一人の受付嬢がよっこらせっと受付奥に積んであったダンボール箱を開けた。
中から四つの蒼い石の付けられたペンダントを取り出し、彼女たちは落ち着いた態度で差し出した。
「では、皆様。これを身に付けてください」
本気すぎるwww
バタン、バタン、バタン!
扉が開く、扉が開く、うっかり女子更衣室の扉も開く。
きゃー! という悲鳴と死ねやおらー! という怒声が鳴り響かせながらも、陸士たちはそれぞれ自分に割り当てられたロッカーの扉を開いた。
中から取り出すのは衣装であり、青い石の付いたペンダントであり、デバイスの追加パーツであり、インストール用ディスクだったり、さらにはまったく違うデバイスだったり、フィギュアだったり、音楽プレーヤーだったりした。
「ふふふ、この時を楽しみに俺はUCATに入ったんだ!」
「俺なんか5年と1ヶ月と32時間待ち望んでいたぜ!」
「俺は前世から待っていたぁ!」
などと楽しく早口で雑談しながら、陸士たちが着替える、装備する、交換する。
全員が賢石装備を身に纏う。
概念空間の展開、時空管理局ではまだミッドチルダUCAT以外に浸透していない概念技術。
それに飲み込まれないための必須装備。
そして、一人で握ったデバイスを起動させると。
『いっきまーす!』
軽やかな少女の声が響いた。
『ようやく出番ね。頑張るわよ』
艶やかな女の声がした。
『全力全壊、なの!』
どこかで聞いた覚えのあるような声がした。
彼らが装備するのはストレージデバイス、だがしかし音声サンプルにロリ声声優だったり、人気アイドルだったり、機動六課の誇る美少女及び美女及び美少年の声などを使っていたりした。
そして、彼らはそれぞれデバイスに己なりの名称を刻み込んでいる。
それが彼らに力を与える。
着替え途中の面々は準備に時間は掛かるが、武装と賢石装備だけの面々は素早く準備を整え、廊下を走り出す。
『装備変更型班、早急に出撃せよ!』
放送が鳴り響く。
『概念空間を開くぞぉ!』
瞬間、聞こえた。
・――名は力を与える。
反撃を知らせる概念条文の声が。
結局ダ○○人間という事に変わりはないじゃないかww支援
時間は数分前に遡る。
ミッドチルダUCAT地下管制室。
そこで一つの戦いが行われていた。
「ハッキング進行速度、遅延にまで追い込みましたが――止まりません!」
「ちっ! どんな能力使ってやがる! 一応ミッドチルダ最高のスパコンなんだぞ!」
白衣と制服を身に付けた管制員たちが罵倒の声を上げる。
忙しくなく指を走らせ、ありとあらゆる対抗プログラムを入力していくがどれも駆逐され、破壊され、蹴散らされていく。
背後に鎮座する大型のスーパーコンピューターが処理速度に悲鳴を上げるようにガタガタと揺れていた。
十数人にも及ぶオペレーターが、カウンターハッカーたちが端末を動かし、プログラムを作動させて、戦いを挑む。
だがしかし、強い、侵食が止まらない、まるで津波のように人の手では止められない。
そう思えた。
「おーい、中将から指示が来たぞー!」
その時、壁際の受話器で連絡を取っていた男が暢気な声を上げた。
「あ? なんだって!?」
「どんな手段使ってでもいいから早急に食い止めて、概念空間開けだってさ」
「対異世界戦闘準備? ……あと、本当にどんな手段使ってもいいのか?」
ギラリとメガネをかけた白衣の主任らしき人物が期待するかのように唇を歪める。
「――ははは、何を言ってるんだ」
答えるように連絡員の男が笑う。
「当たり前だろう、JK」
『オォオオケエエエエ!!』
何故か一斉に誰もがガッツポーズを取った。
「おい、アイツを呼べ! バトルプログラマーだ!! あと、キーボードを六個ほどもってこい! 銅線とペンチも忘れずにな!」
「了解、了解!」
「ちょっと蹴り起こしてくる!!」
数人の管制員が慌しく傍にあった仮眠室の扉を蹴り破り、中にいるであろう人物を捕縛しに行った。
ガラガラと近くの棚から台車に乗せて【BPs専用使い捨てキーボード】と書かれたダンボールが運ばれてくる。
「ははは! この可愛くも無いスーパーコンピューターよ、さようならだ! バックアップは既に取ってあるのでな!」
ゲタゲタと笑い転げる主任。
その時だった。仮眠室から両腕をグレイの如く捕まれて、一人の男が現れたのは。
だらしのない白衣、目には生気がなく、伸ばし放題の髪が女の如く長く、背筋もまがり、やる気もない男。
だがしかし、皆が知っていた。彼はやれば出来る子だと!
キーボードがクラッシィされる気がしてきた支援
2nd-G支援
まさかのBPS支援
「仕事だぞ! バトルプログラマー!」
「あ〜、仕事ですか? 私、まだ昼寝してたいんですが」
「うるせえ、黙れ! テメエに拒否権は無い! 栄養ドリンク、コンバイン!!」
口を広げられて、一本数万円と同じ価格の栄養ドリンクを無理やり飲まされる。
鼻もつままれているので飲むしか彼に生きる余地はない。
さらに、飲み干したと確認したと同時にネコ耳を緊急装着した女性管制員(ロリ)が「にゃ〜!」といいながら、猫パンチを叩き込んだ。
「ごふっ!」
特に痛くも無いはずなのに、その男が吹き飛び――次の瞬間、鼻から流れる紅い血潮を拭い去り、顔を上げた。
「――さて、敵はどこですか?」
キラーンと輝く瞳、光る歯、美化された顔つきで彼は告げた。
「今ハッキングを受けている。それらをなんとしてでも食い止めて、さらに概念空間――2nt-Gを展開しろ。頼むぞ、バトルプログラマー。スパコンの負担は一切考えるな」
「了解、というかTes.」
カツカツカツと彼は歩み寄り、渡されたペンチを手に取る。
そして、キーボードのケーブルを即座にペンチで切り落とし、それらを銅線で繋ぎ、ガムテープで補強し、六個のキーボードを並行直結させた。
「やります」
瞬間、それを見た者は奇跡を見た。
指が音速を超え、光速に走らんとばかりにキーボードに指を叩きつけていく。
それはピアノでも演奏するかのように優雅、女性に触れるかのように優しく、されど弾丸のように荒々しい指の乱舞。
モニターに無数の記号と数字と文字が並べられていき、プログラムが一瞬単位で生成、改竄、修復していく。
「――敵ハッキング、停滞。いえ、後退していきます!」
次々と生まれ変わるかのようにモニター画面が改竄されていき、同時に背後のスパコンがガタガタと痙攣を起こし、悲鳴を上げるかのように蒸気を噴出していく。
あまりにも激しい攻防。
あまりにも凄まじい処理を強いられたコンピュータが耐えられないのだ。
この概念は2ndか
支援!
支援
「後二十秒ぐらいで駆逐出来ますね。ついでに概念空間の処理演算プログラムを組んでおきますから」
まるで速度を変えずに告げるバトルプログラマーと呼ばれた男。
彼の勇姿を見ながら、今にも大往生を遂げそうなスパコンに振り返り、白衣を着た男たちは告げた。
「とりあえずこれ壊れたら開発中の美少女型パソコンに切り替えるか」
「そうだな。ようやくデザインも決まったし、萌えボイスも登録したし、性能あっちのほうが上だしなぁ」
ハッハッハと笑い声を上げる面子だった。
「あのー、駆逐終わっちゃったんですけど?」
画面がオールグリーン。
完全に駆除完了。
彼らは知らないが、人間を超えるために改造された戦闘機人の能力をただの人間が凌駕した瞬間だった。
「では、やりたまえ! ミッドチルダUCATの全力を見せるために!」
遠い空で眼鏡を付けた女が喚き声を上げていることなど知らぬまま、主任は眼鏡を輝かせて叫んだ。
「ういーっす」
エンターキーが押し込まれる。
そして、響き渡ったのだ。
・――名は力を与える。
世界の法則を書き換える、美しき女性の声が響いた。
・――名は力を与える。
その声は彼女たちの耳にも届いた。
「なんだ?」
地上に降り立ったノーヴェが首を傾げる。
『油断するな、ノーヴェ。奴らはUCATだ、何も策をしないわけがない』
無線通信でトーレからの声が届く。
凛々しく、落ち着いた声。
姉妹たちの戦闘教官でもある彼女の声はノーヴェには頼もしく聞こえるが、それでも納得出来ないものがある。
「心配ねえよ! あの変態共をぶっ飛ばして、皆を救うだけだ! 何も、問題はねえ!」
ガンナックルを固く握り締めて、ノーヴェは誓う。
譲れないものがある。
卑劣にも罠に落ち、捕らえられた姉妹たちがいるのだ。
絶対に助け出してみせる! そのために――
UCAT知らないのでこの展開わけが、わかららららららららなくて支援
名は力を与える
つまり、ボルドマンハゲフラッシュ
「木偶共! さっさとあの不愉快な建物をぶっ飛ばせ!」
周囲の施設を破壊していたガジェットに無線での通信を飛ばし、制御する。
如何なる罠があろうとも負けない。
今までよりも短期間の運用に縮めることを条件に出力を増したAMFを展開するガジェットたちに陸士如きの魔法では絶対に通じない。
勝てる。勝つ!
そう決意した瞬間だった。
「悪いが、そうはさせないぜ!」
空から声が掛かる。
一台のライディングボードに乗る二人の陸士――見覚えのあるメカ、ノーヴェは気付く。
「テメエ、それはぁああああ!!」
ウェンディのマシン。
どこまでこちらを馬鹿にすれば、誇りを汚せば気が済むのだ。
怒りを露にエアライナーを起動、空への線路を築く、ジェットエッジで空中を駆け巡る。
「っ! ウイングロード!?」
ウイングロード。
タイプゼロが使う魔法。違う、違う、違う!
「ちげええよ!! 私は、ブレイクライナーだ!」
叫んだ瞬間、何故か速度が上がったような気がした。
「まずい、先にいけ!」
フルフェイスの陸士がもう一人の陸士――山吹色の胴衣を来た男を蹴り落とし、ノーヴェに立ち向かう。
「了解!」
「おぉおお!!」
空中での機動戦。
一人の少女と一人の男がマシンと性能を持って戦い合う。
その最中に一人の男が地面に着地する。
「ふふふ、待たせたな!」
ビシッとポーズ。
ワックスで固めた髪を撫でると、彼は両手を広げた。息を大きく吸い込む。
「? 何をする気だ?」
遠目で観察するトーレが気付いた。
彼はデバイスを手に持っていない、魔力の作動は感じられない。
だがしかし、腰を落とし、広げた手を腰元に持っていき、まるでボールを抱えるような体勢で何かを呟いている。
唇を読んでみた。
「か……め……は?」
ゆっくりと、ゆっくりと手が前にもっていかれて、同時にその手に閃光が宿る。
それは光の太陽。
まるで燃え盛る太陽がその手に宿ったかのような輝き――魔力反応はないというのに。
必殺技の乱舞ですね
「なっ!」
「――波ぁあああああああああ!!!」
光の奔流。
巨大なエネルギー波と呼ぶしかない何かが撃ち放たれた。
大地を蹂躙し、大空を貫き、無数のガジェットを消滅させる、Sランクオーバーな砲撃魔法の如き威力だった。
「なんだと!?」
その光景にトーレが驚愕した瞬間だった。
「烈光! 斬心撃!!」 「ライトニングクラッシュ!」 「燃え盛れ、俺のソウルブラスト!!」
ぶぉおおんとバイクに乗って、奇妙なポーズと明らかに意味のない動作を取った陸士連中が珍妙な名前を叫ぶと同時に破壊が吹き荒れた。
光の刃が、稲妻の如き閃光が、大気を震わせる超衝撃破が撃ち出される。
Cランクどころか、Aランク、下手するとAAAにも届くかもしれない威力だった。
さらにゾクゾクと他の陸士たちも砂糖に群がる蟻の如く舞い戻り、「北斗レールガンサタン玄武脚ぅ!」「真・水断スパァアアアアク!!」「断錬虚獣剣!」などと叫び声と共に足と拳と剣を突き出し、同時に炸裂する怪現象。
魔法なのか?
いや、魔法よりもおぞましい何かだとトーレは感じた。
「ど、どういうことだ! ウーノ!!」
『わ、分からないわ!? 魔力反応は一切無いのに! ISでもない』
トーレが通信を繋げるが、現場をモニターしているウーノにも分からないようだった。
「ふははは! 教えてやろう!」
「なんだと!?」
「今この空間は概念空間で、この中では“名前が意味どおりの力を持つ”! ゆえに、俺たちの繰り出す必殺技は――」
「奥義! 炎海昇踏の突き!!」
炎の海となった業火の上を踏み踊り、刀型アームドデバイスを手に取った陸士が華麗なる突きでガジェットを一撃粉砕する。
「神魔破断! 魔を超え、神すらも切り裂く一刀! 究極光還剣!!」
手に持つ閃光溢れる剣を手に取り、陸士が地面を駆け抜けながら、旋転。
空へと切り上げた一撃は光の柱となり、そのライン上のガジェット全てを一刀両断に引き裂き、さらに何故かキラキラと光に還元された。
「――このように現実となるのだ!!」
「なんだそれはー!」
『信じられないわよー!』
二人の女性の悲鳴が上がる。
だが、陸士たちは凄く爽やかな笑みを浮かべると、それぞれ煌めき輝く武装、手を、四肢を滾らせて告げた。
「さあ野郎共! はっちゃけるぞ!」
「今日は無礼講だー! 幾ら妄想ほざいても怒られないぞー!」
「ぐぅう、収まれ俺の邪鬼眼! 第三の解放はまだ早すぎる!!!」
「俺が正義だ! ジャスティス・ジェノサーイド!」
戦いの幕が開いた。
あぼーん。
という雰囲気でモニターを見つめている誰もが唖然としていた。
会場の中が静けさに満ちている。
平常心なのはレジアスと佐山だけで、新庄は頭が痛そうに手の平と額に当てていた。
「……なんやねん、これ」
はやてがポツリと洩らした、その言葉は皆の心を代弁していた。
モニターの中では羞恥心を持っていれば掻き毟りたくなるような言葉を叫び、無駄にカラフルな剣や、杖、銃、槍、斧、大砲、あとスーツなどを身に纏った陸士たちが所狭しと暴れまわり、ガジェットを撃退していた。
そして、モニターの中にさらに一際目立つ一団が現れる。
それはカラフルな色の五人組。
『ストロベリーレンジャー!』
イチゴのような色をした全身タイツに、イチゴ型のベルトを嵌めた覆面戦士。
『オレンジレンジャー!』
つぶつぶっとしたスーツに身を包み、オレンジ形のベルトを装着した覆面戦士二号。
『スイカレンジャー!』 『ブルーベリーレンジャー!』 『パインレンジャー!』
それぞれの名乗りどおりの色の全身タイツに身を包み、それぞれの名乗り通りのベルトを嵌めて、ポーズを決める。
『全員揃ってフルーツ+野菜戦隊 スウィートレンジャー! 参上だぜ!!』
チュドーン。
スウィートレンジャーズの背後で爆炎を上がる。よく見れば傍で控えている陸士の一人が発破スイッチを押し込んでいた。
『そして、行くぞ必殺!』
迫り来るガジェットたちに身構えて、五人が即座に組み体操の如くポーズを決める。
ストロベリーを中心に結成されるポーズ。
オレンジとスイカがしゃがみこみ、その上にストロベリーが両肩を支えに乗り出し、さらに後ろ足をブルーベリーとパインが固定する。
言うなればストロベリーが前向きにYのポーズを取っているだけだった。
しかし、高まる閃光。
それで、高まる力。
ゴゴゴゴとモニター画面すら震えて、叫ばれる言葉。
『スウィーツ(笑)!!!』
溢れんばかりの極光が全てを消し飛ばした。
爆音を上げて、カラフルな色彩の光爆がガジェットたちを砕いていく。
その光景を見た数人の本局幹部がガンッと額を机に打ち付けた。フェイトもなのはも額を打ち付けた。はやては少し遠い目を浮かべた。カリムは現実逃避していた。
「ふふふ、実に清々しいまで変態しかいない部隊だね。どうやら頭がやられているようだ。あんな叫び声を上げるとは破廉恥だと思わないかね、新庄君?」
「その発案者は僕の目の前にいる人だったと思うんだけど、気のせいかな?」
「記憶違いとは、君らしくないね。私があのような名前の技を叫べと告げた記憶は一切無いよ?」
清々しい笑みを浮かべる佐山に、新庄は発言するのを諦めた。
そして、レジアスは静かに告げた。
「どうですかな? ミッドチルダUCATの力は。皆様を安心させられたでしょうか」
背後のモニターで銀髪に染め上げた空士が『Jackpot! HA! 楽しすぎて狂っちまいそうだぜ!』と叫びながら、紅いコートを翻し、二挺拳銃を乱射しているが、レジアスはまったく動じない。
駄目だこいつらww ナンバーズ早く逃げろ支援ww
「う、うむ……確かにその戦力は認めよう、レジアス・ゲイズ中将」
引きつった顔だったが、直視しなくても押し付けられるような現実を見せられては認めざるを得ない。
正直に言えば何も知らなかったことにして帰りたいぐらいだったが、その幹部は頑張った。
「しかし、初動の遅れの所為でガジェットたちが迫っているのだが、本当に大丈夫なのかね? この本部には敵の攻撃が――」
届かないというのか。
そう、質問しようとした彼にニヤリと笑うレジアス。
「その心配はない。既にこの本部は“無敵”だ」
「む。幾らなんでもそれは自信過剰では」
「では、見てみてください」
ポチッとモニターの一つを拡大して映し出す。
それはミッドチルダUCAT本部を戦場部分から映し出した画像のようだった。
「あ、ガジェットが!」
ようやく立ち直ったフェイトが声を上げる。
数機のガジェットが防衛網を潜り抜けて、レーザーを、ミサイルを、本部に発射し――
カーンッ!
『え?』
という擬音が聞こえそうなほどに弾かれた。
建物に着弾した瞬間、レーザーは拡散し、ミサイルも空しく爆破するが砕ける様子は無い。よく見ればガラス窓の部分もあったのに壊れていない。
「どういうことだ!?」
「この本部も私達の技術で強化されているのです」
レジアスは不敵に微笑んだ。
そして、この中の三名しか知らない事実。
現在この本部は戦場となっている2st−Gの概念空間に加えて、本部にのみ作用するように調整された1st−Gの概念が働いている。
1st−Gの概念、“文字には力を与える能がある”。
それによりこの本部はこう強化されていた。本部に地下室に用意された看板、ミッドチルダUCATの誰の目にも届かない立て札、その裏にミミズが腸捻転で断末魔の叫びを上げているような文字でこう書かれている。
【むてきようさい】 記載者 八雲 覚と。
とはいえ、それらの事実を知らないものたちは未知の技術に危険性と脅威を感じて眉間に皺を寄せた。
原作に忠実なUCATwww
こうなったら止められない止まらない!支援!
「さて、このまま行けば問題なく――」
「中将!」
レジアスがそう呟こうとした瞬間、壁をガパッと蹴り開けてオーリスが現れた。
忍者扉のような隠し扉の存在に何人かが目を剥くが、オーリスは気にせずに駆け寄るとレジアスに小声で報告する。
「……今報告が入ったのですが、アインヘリヤルに同じようにガジェットとナンバーズによる襲撃があったと」
「なに? ……本当か? ていうか、私としては頭の痛いだけの兵器なのに、何が狙いだ?」
「さあ? ですが、襲われているらしいです」
深刻そうな顔。
だがしかし、それは予想されるだろう内容とは違っていた。
「しかし……哀れだな、“襲撃者が”」
「そうですね……襲撃者が」
少し天を仰ぐ二人。
そんな二人に新庄が首を捻って訊ねた。
「どうしたんですか?」
「あ、いえ。ちょっと開発中というか、研究班が暴走して作った欠陥兵器アインヘリアルがあるのですが……」
フッとオーリスは疲れ果てた顔で遠くを見て呟いた。
「そこを護衛しているのがミッドチルダUCAT最凶のゴミタメ共なんですよ」
やwめwwれwwwいや、もっとやれwwwwwww
支援
時間はしばし巻き戻り。
アインヘリアルの配備された高台地域。
そこで二人の少女とアインヘリアル直掩隊との苛烈な戦闘が始まっていた。
「舐めんな、オルラァアアア!!」
振り翳される木刀。
それを受け止めるのは手に掴んだスローイングナイフ・スティンガー。
「っ!」
ビリビリと痺れる威力。
さらに繰り出される蹴りを避けるために、美しき少女チンクは銀髪を靡かせてバックステップをした。
「手ごわい!」
「あ〜? オレらを都市でヌクヌクしている奴らと一緒にすんなよ、おらぁ!!」
木刀を振り抜いたミッドチルダUCAT、その制服を改造し、特攻服風味にしたリーゼント頭の陸士は叫んだ。
「俺たちこそミッドチルダUCAT最強! 亞韻経裏夜屡の直掩隊だ、夜露死苦ぅ!」
「く、ここにも変態が!」
「変態じゃねー! ツッパリつってんだろうがぁああああ!!」
雄羅雄羅雄羅! とドスの効いた声で罵声を上げると、リーゼント陸士は木刀を振り翳す。
しかし、それが振り下ろされるよりもチンクが懐から取り出したスティンガーを投げつけた。
「っ!?」
咄嗟に構えた木刀でその刃を次々と受け止めるが。
「ISランブルデトネイター!」
「!?」
爆散。
金属の破片が散弾銃の如く周囲を切り裂き、爆風が肉を消し飛ばす。
黙々と上がる粉塵。しかし、数秒と経たずにその粉塵は切り裂かれた。
「おりぁぁああ!!」
血まみれだが、しっかりと四肢を持ったリーゼント陸士が一瞬硬直したチンクを捉えて、その拳を叩き付けた。
咄嗟に腕で伏せるが、硬く重く強い一撃。
チンクの小柄な体は数メートル吹き飛ばされて、ザリザリと地面に着地しながら確かに人造の骨身に染みた威力に顔を歪めた。
「カッ! 舐めた真似しやがって」
ペッと口の中を切ったのだろう、血の混じった唾を地面に吐き捨てる。
リーゼントはランブルデトネイターの爆風で乱れ、吹き飛び、ボサボサの獣のような顔つきでありながら、目が刃物のようにギラついていた。
「いいぜ、木刀も無くしちまったし、男なら素手ゴロでケリをつけるべきだろう!」
「あ、姉は女だ!」
「うるせえ! 細かいことをグタグダ抜かすな!!」
ええー!? という表情を浮かべるチンクに、気合声を上げて駆け出す元リーゼント。
今度は防ぐ得物もない。仕留めきれる、と新たに取り出したスティンガーを構えた瞬間だった。
「メンチビーム!」
――目から、ビームが、出た。
元リーゼントから。
「なっ!?」
目から発せられた極細魔力砲撃に、動揺のあまりに直撃したチンクが吹っ飛ぶ。
シェルコートを展開する暇もなく、まるで眼光だけで吹っ飛んだかのように飛んだ。人が飛んだ。
「ん? 当たったか」
「ちょっと待て! お前、さっき素手ゴロだとか言っておいてビームだと!? しかも、なんで目から出るんだ!!」
打撃力とインパクトはともかく、威力はそれほど大したことのなかったらしい。
すぐさま立ち上がったチンクだったが、すぐさまに突っ込みを入れた。
「あ? こんなのはツッパリの基本技だ! ツッパリなら誰でも出来る!!」
「嘘つけぇえ!」
「嘘じゃない! ほら、見てみろ!!」
バッと横を指差す。
チンクは前の陸士を警戒しながら、その先を見た。
「メンチビームだ、おらぁ!!」
「根性焼きしたるわー!」
などなど、叫びながら鉄パイプでガジェットを殴る陸士、素手でガジェットを踏みつけて破砕する陸士、ヨーヨーでセッテと戦っている女陸士、さらに補助するように錨のように分厚い鎖を振り回し、ブーメランブレイドやガジェットを薙ぎ払う大柄な陸士などなど。
――チンクは現実から離脱しようとする頭を咄嗟に振り、前に向き直った。
「と、ともかく! 姉たちは貴様らを排除し、アインへリアルを破壊させてもらう!」
「ああん? 俺達の愛車に何する気だ、ワレェ!!」
どこか噛み合わない会話をしながら、チンクと元リーゼントが再び激突しようとした時だった。
「やめなさい!!!」
声が轟いた。
とりあえずアインヘリヤル自体も魔改造ものだろうな支援
アインヘリヤルがまともであるとは到底思えないwww
「なに?」
「?」
「あ、あれは!」
アインへリアル指揮所、その天井、その出っ張りの高い場所に一人の女性が佇んでいた。
短く切りそろえた髪型、両腕を露出させ、その首から胴体まで体のラインを浮き彫りにする特徴的なバリアジャケット、その両手に握られたのは双剣というよりもトンファーに似たアームドデバイス・ヴィンデルシャフト。
彼女の名はシャッハ・ヌエラ。
聖王教会の騎士カリムに使える補佐役であり、護衛騎士。
本来ならばどこか幼さを感じさせるあどけない顔は怒りに彩られていた。
「……いつものお祈りの時間にも関わらず連絡が取れないと思ったら、こんなところで戦っていたのですね」
ジャコン。
重々しくデバイスが構えられる。
「っ!? 聖王教会のシャッハ・ヌエラ!?」
警戒すべき敵戦力としてデータベースに入力していたチンクは驚愕と共に声を上げるが、横の元リーゼントは違う反応を見せた。
「し、死夜覇の姉御!!」
「……は?」
「こ、コレはあくまでも正義のためで! 俺たちはUCATとして戦っていたんです!」
「――その呼び方は止めなさいと何度も言った筈です」
ニッコリと微笑むシャッハ。
だが、その身に溢れる魔力は溢れんばかりに轟きを上げていた。
ジャキンとポーズを取り、シャッハは叫んだ。
「無礼千万、過去の自分を見ているようでこのシャッハ、怒りが有頂天です!」
トゥッと飛び上がるシャッハ。
華麗なバレリーナかフィギュアスケート選手のようにアクセルスピンしながら、彼女はガジェットの一つ目掛けて落下すると、その足を閃かせて。
「トンファーキィイク!!」
その足でガジェットを一撃粉砕した。
「と、トンファー関係ないし!?」
「さらにトンファータックル!」
空中で彼女の姿が掻き消える。
跳躍魔法、転移の亜種。
空中で姿を掻き消した次の瞬間、その“肩”で複数のガジェットを貫通する。
「そして、最後にトンファァアアビィイイイム!!!」
チュドーン。
――目からビームが飛び出した。
ガジェットのAMFを凌駕するほどの高密度収束砲撃がガジェットを貫通し、爆散。
シャッハwww
結局最後はビームに落ち着く訳ですね支援
もう嫌だこの組織(褒め言葉
「なんだ、それー!!」
チンクの叫び声に、クルリと目から薄い蒸気を放ちながらシャッハは告げた。
「……我が双剣ヴィンデルシャフトは天地と一つ。故にトンファーは無くともよいのです」
「デバイス取り出した意味は!? それと、それって双剣じゃないのか!?」
「うるさいですね。トンファーレーザー!」
うるさいので、チンクをレーザー(目から発した)でぶっ飛ばすシャッハ。
シェルコートすらも貫通してチンクは吹っ飛んだ。
そして、ギラリとポーズを構えると、生き残りのガジェットとセッテに目を向ける。
「さあ来なさい。信仰とトンファーの力を魅せてあげましょう」
聖王教会の誇る鬼神シャッハ・ヌエラ。
彼女の真価が今ここで明かされようとしていた。
そして、時刻は元に戻る。
「魅せよ、魅せよ、切り裂け! シャイニングドラゴンウェーブ!」
両手を上に開き、まるで何か投げ飛ばすかのように振り抜いた先。
碧と蒼が混じった竜巻が生み出されて、数名の味方を巻き込みながらガジェットたちのミサイルやレーザーなどを理不尽に吹き飛ばす!
「行くぜ、衝撃のファーストブリットぉおおお!!」
ナックル型のアームドデバイスに、旋回しながら加速した陸士――コスプレ済みは荒れぶる勢いのままにガジェットの装甲に拳をめり込ませ、食い千切る。
最初投入された装備変更型陸士に加えて、その格好を大きく変えたものたちが戦場に姿を現していた。
2nd-Gにおける概念条文【名は力を持つ】
それは文字の意味、名前に宿る意味、それに加えてそれに対する不特定多数のイメージが大きく作用する。
例えばメラ! と叫んでも意味の判らないものがいればそれはまったく効果をなさないが、メラという名称が炎を操るものだということを知られており、信じていればそれは炎と化す。
疑ってはいけないのだ。
故に彼らは愛用する空想の存在の姿に身を固め、さらに本格派はBGMを流すイヤホンを耳に装着し、酔いしれている。
シャーマニズムにおける獣憑き、或いは神降ろしに近いもの。
彼らは真似るではなく、それそのものになりきり、信じ込むではなく当然だと考えていた。
オリジナルの必殺技ならばその無駄に意味と言葉が難しい名称で威力を上げて、既存のものならばそれを再現する。
世界を狂わせるほどに、世界を震撼させるほどに彼らの妄想力は逞しかった。
「行ける、行けるぞ! 俺たち、最強!!!」
熱気。
熱狂。
必殺技を放つたびに代償として体力を使っていたが、興奮に有頂天な彼らの勢いは止まらない。
もはや暴徒と化していたUCATの隊員たち。
だがしかし、その前に不意に空中が歪んだ。
無数のガジェットが次々と現れる。
彼らは知らなかったが、それは遠隔で憎々しげに彼らを見つめているクアットロが生み出した幻影だった。
「ち、まだ増援か!」
うざったそうに呟く。
だが、それだけだと思えた瞬間――違う何かが現れた。
30過ぎた童貞が魔法を使えるというのと同じ理論ですね支援
シャッハさんwwwwww
トンファーとブロントとかwwww
「なにっ!?」
それは四つ足の魔導機械。
後にガジェット・ドローンWと呼ばれる強力な魔導兵器たち。
それが百を超える数で転送される。
そして、それぞれ周囲の空間を歪ませるほどの高出力の魔力を放つ――内部に内蔵されたレリックの出力だった。
「どんだけの数で転送してやがる!?」
しかもそれだけではなかった。
続いて転送されたのはガジェット・ドローンVと呼ばれる巨大なガジェット。
それが次の瞬間、他のガジェットにアームを伸ばし、接続、接続、合体。
「なっ!?」
巨大な一機となって、目に見えるほど濃密度のAFMを展開し、咆哮を上げた。
「っ! スピアライトニング!」
叫ぶ、槍状の閃光が飛び込み、直撃するが――傷はあるが、瞬く間に修復されていく。
「なん、だと!?」
おぞましき魔力を発し、大地を喰らい、それは産声を上げた。
同じように作られていく無数の合体ガジェット。
それは内部から紅い魔力光を迸らせ――大地を震撼させた。
撃ち出される必殺技すらも蹴散らし、その一踏みで地脈を刺激、局所的な大地震を巻き起こす。
隆起した大地が陸士たちを吹き飛ばす。
「推定魔力ランク――Sオーバーだと!?」
「S級ロストロギア級が複数!?」
『はははは! 足掻いたようだけど、これでお終いね!』
笑い声が轟く。
それは遠隔操作しているクアットロの声だと分かる者は少なかったが、その声に怒りを覚えたのは沢山居た。
「舐めるな! 俺たちは負けねえ!」
「そうだ! 決して負けない!」
「かかってこいよ、化物共が!!」
決してUCATは怯まない、怯えない、負けない。
威勢よく彼らが進もうとした瞬間だった。
――それは姿を現した。
sien
sien
sien
elo
無理を理不尽で押し通す!支援
モニターに映る巨大ガジェット。
その威容に誰もが息を飲んだ。
「あれは、いや、あの魔力光は!」
「間違いないよ! じゅ、ジュエルシード!!」
なのはとフェイトが顔を見合わせて叫ぶ。
ジュエルシード。
かつてなのはとフェイトが出会い、戦うきっかけになったロストロギア。
それはたった一個の何万分の一の出力で小規模次元震を起こし、複数集めれば出来ぬものはないとされる超エネルギーの塊。
この世界が吹っ飛んでもおかしくない存在。
「……ジュエルシードとは何かね?」
佐山が淡々と訊ねる。
オーリスが答えた。
「そうですね。別に概念を封じているものでは無いですが、意味合い的にはそちらの概念核のようなものかと」
「つまり、一言で言えば超やばい代物だと?」
「……その通りです」
ふむと、佐山は腕を組んで、レジアスに目を向けた。
「レジアス。対抗手段はもちろんあるんだろうね?」
「ふっ、ワシを誰だと思っている。ロストロギアテロにも対策は講じておるわ」
「ならばよろしい。私たちが手を出す理由を与えないでくれたまえ」
「レジアス中将、頑張ってください!」
「うむ」
最近可愛げの少ないオーリスと違って、純真無垢な新庄に孫を見るような目で頷くと、レジアスは手を伸ばした。
ポチッとある場所への通信を繋げる。
「あー私だ。出撃準備を頼む」
『――舞ってましたぁああ!』
本当に舞ってそうな叫び声が帰ってくる。
それに耳を塞いで、告げた。
「では、初のお披露目だ。くれぐれもミスのないようにな」
『Tes.!!』
同時に通信が切れた。
そして、これ以上何が飛び出すんだこの野郎という目で見ている全員ににこやかに微笑み。
「では、ミッドチルダUCAT最高の守護者を紹介しましょう」
レジアスはポチッとモニターを操作した。
シャッハさんと愉快な仲間達の名前が読めんwww支援
合体の浪漫がわかるスカさんとはいい酒が飲めそうだ支援
ダカダカダカ! 足音が鳴り響く。
それは暗く、深く、広い世界。
そこで声が上がった。
「――出撃要請がきたぞぉ!」
「な、なんだってー!?」
ミッドチルダUCAT、三番地下格納庫。
そこでカップラーメンを啜っていた整備員達がぶびーと鼻と口からメンを吐き出した。
「マジでか!?」「嘘だろ! 一生封印指定だと思ってたのに!」「やったぜ、俺らの出番だぁああ!」
わーと喜び勇む整備員達。
そして、そんな彼らに扉を蹴破り、白衣を来た男が飛び込み前転からの宙返りでテーブルの上に立った。
――怪鳥のポーズ!
「うらあー! 私のマシンの出番だ! さあ、出撃準備をしろ!!!」
『ラジャー!!』
全員が慌しく走り出し、近くのコンソールに向かう。
鳴り響く警報、パトランプが紅く輝き、いやおうにも緊張感を沸きたてる。
そして、全員がコンソールにつき、白衣の人物が中央の座席に座ると、まるでピアノでも掻き鳴らすかのようにパネルの上に指を走らせていく。
するとどうだろう。
真っ暗に遮光フィルターのかけられた硬質ガラスの靄が段々晴れていく。
中に何かが見える。
そう、そこには何かがいた。偉大で、気高く、逞しい何かが存在した。
全長二十メートルには達する何か。
鋼鉄の四肢、背には巨大な羽無き翼、黒ずんだ手甲はまるで鉄槌の如く雄雄しい。
だが、それは各坐し、息すらしていない死人のような気配を放っていた。
「概念条文展開します! 一番概念空間――“文字には力を与える能がある”!」
文字に命が宿る。
ガラスの向こうで佇むそれが全身に描かれた記号を輝かせ、内部から全てにおいて埋め込まれたプログラム文が意味を持つ、力を宿す。
「概念条文を追加! 賢石の出力を上昇! 概念条文――“名は力を与える”」
それは名を持つ存在。
ドクンと格納庫が震えた、誰もが震えた、燃え上がるように吼え猛る命の鼓動を感じた。
光が宿る、命を持つ、その内部に宿された三つの魔導炉が出力を上昇させ、その中央に置かれたジュエルシード 改名【G(ガッツ)ストーン】が篭められた名前のままに淡い光を放ち始める。
オペレーターが指を動かし、声を張り上げて、荒れ狂う出力を制御していく。
パラメータが急激に上昇し、それら全てが3番と描かれたラインを超えた瞬間、白衣の男が叫んだ。
「さあ目覚めろ! 三番、3st−Gの概念空間を展開! ――“鉱物は命を持つ”!!」
ドクン、ドクン、ドクン。
心臓が高鳴る、誰もが心臓を鳴らして息を飲んでガラスの向こうのそれを見た。
それは偉大なる鋼鉄。
それは輝ける希望。
それは誰もが願い念じた存在。
破壊神wwwww
『起動せよ! 我らが最高傑作、世界の守護者!! 勇気を纏い、産声を上げろ!』
叫び声が輪唱する。
祈るのだ。希望を抱くのだ。
そして、それは震え出した。
それは1st−Gの文字で機体を構成し、
それは2st−Gの名前で存在を構成し、
それは3st−Gの鉱物で命を構成した存在。
そして、それは目覚めた。
始まりは水を切り裂く音だった。
ミッドチルダUCAT、付近に存在する市民プール。
非常事態故に避難勧告が出され、誰もいないはずのそのプールの水は渦巻いていた。
グルグルと、グルグルと、螺旋を描いていた。
「おーらい! オーライ!」
プールの縁にキャップ帽を被った陸士が旗を振っている。
そして、水がざばーという唸り声を上げて――二つに割れた。
津波でも起こったかのごとく、滝でも産み出されるかのごとく水が割れていく。
そして、そこから何かがせり上がって来た。
まず見えたのは太陽の光に輝く灼熱の兜。
蒼い深海のような眼光が世界を見渡すように輝き、その眼差しを柔らかく包むように兜がもう一つの太陽を産み出し陽光を放つ。
鋼鉄の四肢は優しく大気を掴み、背の翼はまるで産み出されたことを喜ぶかのごとくガキィインと金属音を響かせて開かれた。
それは巨大な鋼鉄の巨人。
それは見つめるもの誰もが憧れ抱く力の証。
もっと古い歴史を持ち、もっとも新しい歴史の幕開け。
『おぉおおおおお!!』
吼え猛る。
荒々しくも、気高い産声が上がった。
誰が吼えた、其れが吼えた、世界に存在を示す。
魅せよ、この輝きを!
翔けよ、世界の果てまで!
『俺は来た』
手を伸ばす。
悲しみに震える人々を嘆くかのごとく。
助けを求める人々を掴み取るかのごとく。
大気を唸らせ、海を響かせ、空を見つめて。
『あまねく存在する大空よ! 広がる無限の大地よ! 永久無限に轟く次元の海よ! 俺は来たぁ!』
拳を叩きつける。
電流を迸らせ、燃え盛るバーニアを光の翼に変えて、魔力の粒子を撒き散らしながら、叫んだ。
何を出す気だ支援
ヴィータを搭乗させるべきものがsien
支援
周囲の大地が陥没するほどの衝撃破と絶叫。
錬鉄の巨人は腰に佩いた剣を手に取ると、大空へと向けて鞘を抜き払う。
『トラボシブレェエエエド!』
蒼い粒子を撒き散らし、清純なる螺旋の輝きを迸らせながら刀身が空へと突き出される。
『伸びよ。我が気合!!』
伸びる、伸びる、伸びる。
剣が伸張する、その咆哮に応えるように。
そして、産み出されたのは全長数百メートルの超弩級大剣。
これこそ悪を切り裂く剣、魔を断つ刃、Ex−Stの名を冠せし斬魔巨剣。
『チェストオオオ!!』
一閃。
振り抜かれた刃は世界を切り裂いた。
爆散。
空を舞うガジェットが一気に砕け散る。
刃を払うと、同時に元の形状に戻る。
『む! 今行くぞ!!』
そして、それは翼を広げて飛び上がる。
・――光は力である
『G-Sp Wing!!!』
閃光の翼を撒き散らし、魔法技術によるベクトル変換と武神による重力制御、その三つを使い巨体が飛んだ。
鋼鉄の巨人が空を舞う。
軽やかに、鋭く、砲弾のように飛び、翼を広げて――数秒と掛からずに彼は降り立つ。
陸士たちの前に。
護るべき存在たちの前に。
その身に刻まれた存在意義と魂に誓って。
『リリカルマジカルブレイブ! 勇気を纏いし魔導の神――勇装魔神クラナガン! 世界を救う魔法をプレゼントにやってきた!』
今ここにもっとも新しい勇者は咆哮を轟かせた。
支援
勇者ロボwwww支援
混ざりすぎててわけがわからなくwwww 支援
今回の投下完了。
やっちゃいました☆ 伏線張って、起きましたがオリジナル勇者ロボの発進です。
次回もさらにシリアスとギャグの混じり合いながら、進むと思います。
武神とか他の概念みたら再現できると思ったのです!
では、また後ほどオマケでも投下しようと思います。
支援ありがとうございました!!
あれ?勇者としては普通にカッコイイと思うんだが
ああ、でも管理局の常識ある人間的には大して変わらないかw支援
体は(偏った)夢と(偏った)希望でできている
UCATの人乙でした
わ、笑いすぎて持病の喘息がa
これはガオガイガー的なものか?いやアクエリオン的な物!?
なにわともあれGJGJGJ!!
とりあえずこの喜劇をリアルで視聴してる3脳共と3提督がどんな顔してるのか・・・・・・
次回が楽しみであります!
298 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/03(水) 20:31:02 ID:A9UxuxfB
>>286 >それは2st−Gの名前で存在を構成し、
>それは3st−Gの鉱物で命を構成した存在。
2ndと3rdでは?
GJ
バーカバーカ(いい意味で)
プールからの登場=マジンガー
チェスト=ダイゼンガー
勇気を纏いし〜=スーパーピンチクラッシャー
じゃないかな?とにかくGJだぜ!
GJです。
2nd-G概念は反則ですよね。
ガシェットには名前ないだうから、名前のある人間を傷つけられないだろうし、
ナンバーズも数字は名前としては弱かったはずだし……
>死夜覇の姉御
笑うしかないwww
いったい昔なにをしてたんですかwwww
GJ!
いい感じのネタがありますね
音速超過のトーレとか見たいです
光の翼はG-spじゃなくてX-Wiです
GJです。
しかしいきなり喧嘩番長ネタに虫姫さまネタまで来るとは
今まで以上のかっとばしぶりが素敵です
少しだけレス返しです。
>>263 >>298 >>303 間違えと誤字だ! この不覚……許せ!
すいませんでした、まとめ登録時に修正します。
>>207 >>203 レースクイーンギンガさんは皆さんの心の中に。
自分絵心が欠如してますが、神の降臨を祈るしかありません。
>>302 色々やりました。
次回判明予定です。
今夜12時ごろにおまけを投下します。
本当に馬鹿じゃねぇのかwwwwアホスwwwwwww
部屋で大笑いしてしまったw
超GJですwww
GJ!変態だなw
変態のほうが強くなるのかw
死夜覇の姉御のAAできたよ!
∩ 我がヴィンデルシャフトは
(っm 天地とひとつ
| |
∧_∧ | 故にトンファーは無くともよいのです
_( ´Д`)|
/ ) ドゴォォォ _ /
/ ,イ 、 ノ ∧ ∧―= ̄ `ヽ, _
/ / | ( ∵. ・( 〈__ > ゛ 、_
| | ヽ ー=- ̄ ̄=_、 (/ , ´ノ \
| | `iー__=―_ ;, / / /
(!、) =_二__ ̄_=;, / / ,'
/ / / /| |
/ / !、_/ / 〉
/ _/ |_/
ヽ、_ヽ
UCAT氏GJです。自分も元ネタは分かりませんが、とりあえず分かることがありますwww
とんでもなくカオスだったとwwww
さて、皆さまお久しぶりです。なのはDHSの第9話、投下させてもらってもよろしいでしょうか?
はい
それでは10時に投下させてもらいます。よろしくお願いします。
313 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/03(水) 21:59:34 ID:/4n7hncz
UCAT氏 果てし無くGJ! つーか、ジュエルシード持ってたんすかUCAT
それとは別に倉庫の方の誤字報告ですが
一部、1stの所が1nd-Gになっているのと
2nd-Gが2nt-Gになっている部分がありました。
それでは投下します。って言っても覚えている人いるのかなぁ?ちょっと不安です。
今回は8話と違って10k超えましたwwwそれでは
いつか返事を約束してやってきたのは地球。
初めての日本以外の国。海鳴ともミッドとも違う文化。何もかもが新鮮だった。
はやて達も結構楽しげな様子で良かった・・・・・・・・・
でも本来の目的を忘れちゃいけない。ここに来たのは『あの人』に会うため。
そしてその彼は、偶然にも私の目の前に座っていた。
魔法少女リリカルなのは DEVIL HUNTERS 第9話「合流〜後編」
「あぁん・・・・・・?」
キリエの歌への拍手が鳴りやまぬ劇場内。そこで彼女らは彼に出会った。呆けたようにフェイト達を見るネロ。
「あ・・あの!!」
すかさず、フェイトが口を開いた。
「その・・・・お答を・・・・聞きに来ました・・・・・」
シグナムの厳格な雰囲気とは違う、斜に構えた相手を寄せ付けないネロの態度は未だ慣れず、とっさの言葉が出てこなかった。
それでも言葉は通じたが、ネロにその場を動く気配はなかった。
「ちょっと待ってな。眠たい説法が終わったら相手してやるよ」
前は途中で帰ろうとしたが、キリエに聞くだけ聞けと言われてしまってはこの場を後にするわけにもいかない。故に教皇の説法を聞き終わってからにしろということだ。
「あ、はい」
無理に今すぐきかせろとも言えないので、了承するフェイト。その様子を横で六課の面々が見ていた。
「あの人が、フェイトちゃんとシグナムが言っていた・・・・・・」
「そうみたいだね。でもなんかちょっと怖そうだね・・・にゃはは」
はやての言葉になのはが苦笑する。あまり男性との交流が多いわけでもない。ユーノやクロノ、兄や父とも違うタイプのネロの第一印象は、『怖そう』であった。
「ねぇねぇ、ティア。あの人が例の?」
「でしょうね。って、アンタ、ジロジロ見るもんじゃないわよ。失礼でしょうが」
スバルの無邪気っぷりをティアナが嗜める。しかし彼女の視線もまたネロの方を向いていた。
「(アンノウンを蹴散らして、フェイトさんやシグナム副隊長を圧倒した人・・・・・・・・)」
「(そして、質量兵器を平然と使う男・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)」
わずかながらの羨望と憎悪の視線がネロに向けられていた。
「ねぇねぇ、エリオくん。あの人にお礼・・・・・・・言わなきゃだよね?」
「そうだね。フェイトさんを助けてくれたし、僕たちも助けられたしね」
あの時のスケアクロウを屠ったのは紛れもないネロ。質量兵器の事は考えず、フェイトと自分たちの命を救ってくれた感謝が第一だった。非常によく出来た子供たちである。
しえん
「遥か2000年前」
あいさつ代わりのやり取りもそこそこに、しばらくすると、現教皇の話が始まった。サンクトゥスと同じように、天使をモチーフにした白い装束。しかし、今の教皇は『世界救済』などという企みはしないが。
「ネロ・・・・・・」
そこに、歌を終えたキリエがやってくる。六課の面々の存在がなければ、まさに2年前の時と同じような光景。だが、この後にダンテと悪魔の襲撃を心配する必要はない。
「ああ」
ネロがうなずくと、キリエは隣へと腰を下ろす。その時、ネロの向こうにいるフェイト達の存在に気がついた。
「・・・・・・・」
説法の最中。あまり声を出すべきではない。黙してお辞儀をして挨拶とする。その様子にやはり同じ事を考えていたのか、フェイト達も黙したまま礼をする。
「魔剣士スパーダが魔界を離反し、我ら人間の為に剣を振るってくださったのは皆も知っているだろう」
「悪魔でありながらその力を我らの為に使ってくださったのは何故だろうか・・・・・・・・・」
教皇の話に六課の面々は『悪魔』という単語に反応する。フェイトとシグナムはともかく、他の者にはおとぎ話の域を出ないような話に思えた。宗教とはそういうのが多いのだから。
「それは『心』であろう。人を愛する心なのだ」
「やがてスパーダは聖女エヴァを愛した。そして悪魔と人の間に子をもうけた」
六課の彼女たちには知る由はない。今まさに、管理局が追っている男がこの教皇がのたまう子供の事だとは。
「皆もよく覚えているだろう・・・・・・この街が悪魔で溢れかえり、多くの人々が命を失った・・・・・・・」
会場内の信者たちは神妙な顔つきで話を聞き続けている。思い出すのは2年前の惨事。
「前教皇サンクトゥスが害されかけた事態も起こった。だが、それはサンクトゥスの野望を止めるためだった」
やたら具体的な事が出てきて六課の面々も困惑し始めた。悪魔?街に溢れかえる?
「悪魔の力を利用し、楽園を築かんとしたサンクトゥスの所業は、大きくこの地に傷跡を残した」
「未だ一部の市街では修復が終わっていないところもあるだろう」
そう言われてみれば一部倒壊した所があったなとフェイトは思った。だが、そこで疑問を持った。
話に聞くほどの惨事が起きたのなら何故管理局にはそれが掴めなかったのか。
「だが思い出してほしい。偽りの神は倒され、街は救われた」
「偽神を討ち果たしたのは、勇気ある教団騎士とエヴァとスパーダの御子息だと」
御子息・・・・・・子供がいるということは、本当に存在したのか。シグナムは思った。
「絶望にはまだ早い。偉大なる魔剣士の血は受け継がれ、勇気あるものは育っている」
「我らが持つべきは勇気だ。確かに我らはあまりにか弱い。だが、愛する心というものはまぎれもなく人間の武器だ・・・・・・」
「困難とて乗り越えられる。我らには神の子達と心がある。さぁ・・・・・・・・・・祈ろうではないか」
教皇は両手を顔の前で組み、祈りを捧げる。続いて信者たちも同じく空へ祈りを捧げる。
「・・・・・・・・・・・」
そしてネロも、キリエと共に手を組み、祈りを捧げていた。彼が願い、誓うのはただ一つ。それは愛する者を守ること。
「さて、約束だったな。付いてきな」
魔剣祭も終わり、祈りをささげた人々が帰路へ着くころ、ネロは立ち上がり歩きだした。
この大劇場は教団の施設の一つである。裏に行けば教団の詰め所が存在する。そこで話をしようというのだ。
教団施設内を女性を引き連れて歩くネロはかなり注目の的だった。だが、ダンテもちょくちょく足を運んでいたことから何か絡んでいると踏み、ちょっかいを出すことはなかった。
やがて、広めの会議室につくと上座にネロが座り、隣にキリエが座った。
「じゃあ、始めようぜ?」
ネロの言葉を聞き、とりあえず隊長陣が自己紹介と新人たちの紹介をする。その後、はやてが訪ねる。
「ネロさんの事は伺っています。それで、そちらの女性は?」
キリエについて聞かれ、すかさず手の平を向けるネロ。
「その前に、とりあえずの答えを言わせてもらうぜ」
「?わかりました。じゃあお返事・・・・・もらえますか?」
何故、話を制したのが分からないフェイトだったが、とりあえず、1週間前の答えを聞いた。
「結論から言えば・・・・・・・Yesだ。だけど、条件がある」
「・・・・・なんでしょう」
条件。この条件で出してくるのはなんなのだろうか。
「この、キリエを連れていく許可をよこしてくれ。あと、俺にガミガミ指図するな。それだけさ」
「キリエ・・・・・さんですか?」
皆の視線がキリエへと向く。彼女はネロの恋人。それははやて達にも予想が出来た。
「余り彼女を不安にさせたくない。条件が飲めないなら話は無しだ」
ダンテには承諾しろと言われたが、これくらいの無理も通してくれないような所だったら、断るつもりでいた。指図するなという言葉も合わせてだ。
ネロの条件にはやては瞬時に最良の答えを導き出す。民間協力者の恋人。何もしない一般人であれば局の組織である六課に置くのは難しい。ならどうするか。
「じゃあ・・・・・一応、隊の寮母さんのお手伝いをしてもらうってことでええですか?それなら一応つじつま合わせは出来るんで・・・・・」
はやての答えに応答したのはネロでは無く当のキリエ。
「お願いします」
頭を下げるキリエ。一応条件は飲んだ。ならば
「じゃあ・・・・民間協力者として手伝ってもらうって事で。ネロさん、それでええですか?」
「ああ」
かくして、機動六課に魔剣教団騎士ネロが組み込まれた瞬間であった。
「それで、一応聞きたい事がいろいろあるんですけど」
承諾は貰った。ならこのときから、必要な情報を教えてもらうことにしよう。そう思ってはやては問いかけた。
「悪魔とか、あとさっきのスピーチでの話の事とか・・・・・おしえてもらえますか?」
「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・」」」」」」
誰もが黙ってしまった。悪魔の存在を聞かされていたフェイトやシグナムもだ。
2年前に起きた惨事。教皇サンクトゥスの暴走。フォルトゥナ中に悪魔が蔓延り、戦いを演じたこと。己の右腕の秘密。昔、負傷した時に右腕が悪魔化したこと。
スパーダの子息、ダンテのこと。ダンテに関してはその姿に関する事は一切喋らなかったが。
「その・・・・・魔界が、悪魔の住むところなんですね?」
はやての問いにネロはうなずく。
「そうさ。クソどもの溜まり場だよ。2年前に現れた悪魔も、魔界とここをつなぐ地獄門から現れたんだからな」
「地獄門?」
「まぁ、召喚の為のゲートってやつさ。ジジイ共は、そこから悪魔を召喚して実験とかを繰り返してきたらしいが」
技術局の長だったアグナスの言葉でもある。自動で動く鎧、ビアンコアンジェロなどはその実験から生み出された。
「その魔界からもたらされたのが・・・・・・地球の魔法・・・・・・」
なのはの言葉は間違っていない。魔術や魔道と呼ばれることの多い地球の魔法文化というか魔法技術は悪魔からもたらされたものだ。
しかし治癒、攻撃、飛行、防御なんでもできるミッド式やベルカ式とは違う。地球の魔道はまさに殺すための術。
悪魔の所業を為すか悪魔に対抗するための物かの違いはあるが、ほとんどが敵を撃ち滅ぼす為に使われるのは大きな違いだ。勿論、非殺傷設定などあるわけがない。
「ああ、だけどよ、その管理局って所に所属させようってのはお勧めしないぜ。ってか俺も抵抗するしな」
「・・・・・・なんでですか?」
その言葉を放ったのはティアナだった。静かに、されど迫力を感じさせる声色だった。
「確かにデカイことやらかしちまったのは事実だけどな、悪魔の存在は一般には知られてないんだよ。こんな発達した世の中だ。いきなり管理局が現れたら大混乱だぜ?」
支援
確かに科学の進歩したこの世界で、魔法だとかなんだとかでわけのわからない組織が現れたらそれは世界レベルの大混乱だろう。
「それに、全人類が従うとは思えないしな」
ただでさえ同じ地球人同士で戦争やるような種族だ。肌の違い、文化の違いですら差別をするような輩もいる。それに地球には数多くの独立国がある。とうていまとまるとは思えない。
「下手したら、アメリカとかロシアあたりが先頭に立って大戦争かもな?地球の人間からしてみれば星一個全部侵略されるようなもんだからな」
侵略。そのような言葉を使われ思わずスバルが声を上げる。
「そんな!侵略だなんて!?」
よくも悪くも幼く、管理局の正義を信じ、己がやっていることが間違っていないと感じてしまう、そんな年頃。その言葉を否定せざるを得なかった。
「何も知らない奴にとっちゃそういうことって事だよ。下手したら昨日まで住んでいた『自分の国』が無くなっちまうんだからな。抵抗もするだろうよ」
管理局が正しいとか地球側が正しいとかそういう次元の話ではない。もしも地球側が一丸となって管理局と共に歩む道を模索するというのなら流血も無く円満に解決だろう。
だが、200を超える国家を有する地球の多様性を見れば、どだい無理な話としか言えないのだ。同じ世界の住人がいがみ合うこともあるのに他の世界と協調などできようものか。
もし地球が、悪魔と魔道が一般にも広く認知されているような世界であったらまた話は違っていたのかもしれないが、残念ながらそうではないのが現実。
六課の面々だけで考えるには壮大すぎるテーマだった。
「・・・・・・・・・」
皆、押し黙る。自分たちの想定の範囲外のケース。人智を超える敵の存在。おとぎ話の住人と思っていた悪魔。それ故にこの地球がどれだけ特殊なのか。
魔法文化があるなら管理下へ。だがそれを行おうとすれば未曾有の大混乱へ。はやて、フェイト、なのはですら想定してなかった地球から始まっている今回の騒動。
だが、それでも、ネロというアドバイザーを手に入れた事は六課にとって、悪魔と相対する上で限りないプラスではあったことは確かだった。
「そんじゃあ・・・ネロさん達を2日後に迎えに来ますので。準備の方しとってください」
「ああ」
「わかりました」
はやての言葉にネロとキリエが頷く。それを聞くと、ついに六課の皆も帰り支度を始める。彼らとて通常の仕事があるのだ。非戦闘要員にすべての仕事を任せるわけにはいかない。
「迎えにはフェイトちゃんが行きますんで」
「よろしくね」
フェイトも頭を下げる。2人と話をしたフェイトかシグナムが迎えには適任とされたのだ。残念ながらシグナムはフェイトの副官なのであっちで留守番になる。
「・・・・・・ネロ」
そのシグナムがネロに話しかける。
「なんだよ?」
「ミッドに渡ったら、私と模擬戦をしてはくれないか?」
「ちょ、シグナム」
いきなりバトルジャンキーの血が騒ぎ始めた彼女の姿に周りも慌てる。
「・・・・・・・めんどくせぇ」
だが、そんな事はつゆ知らず、面倒くさいの一言で片づけてしまったネロ。
「面倒くさいだと?・・・・・・・・逃げるのか?」
全くもってお決まりのパターン。冷静に考えれば誘っているのは見え見えなのだが。
「っち!、仕方ねぇな」
ネロもある意味好戦的な人間である。売られたケンカは高く買うことにしよう。
「ふふふ・・・・・決まりだな」
満足そうに笑みを浮かべるシグナム。どうやらダンテだけにとどまらずネロの周りにも面倒事は事欠かないようだ。
To Be Continued・・・・・・・・・・・・・・・・
投下完了です。え?間明けたのに普段と量が変わらない?・・・・・・・・ごめんなさい。
なかなか、執筆の時間が取れないっていうのは・・・・・いい訳にもなりませんね。構想自体は練っているのですが。
今回も戦いはなくてすいません。でも次回には模擬戦を入れたいと思っています。
8話のときの予告。姉さんとネロの超絶衝撃波頭突きは次回に持ち越しですwwwww
スバルとのやり取り、どっちが正しいとかそういうのが言いたいのではなく、それぞれが何かを思っている。それぞれの『心』というのを描きたいと思っています故にこのシーンを入れてみました。
どういうことが言いたいかと言うと、まあ、ティアの異常なほどの向上心やに対するなのはの教え子に対する自分の二の舞になってほしくないという真心。
人を殺すのはモットーとしないダンテに対する暗殺者として人を殺しなれたネロの思いとか。
DMC4のサンクトゥス戦でネロが言った『心』が自分の中のテーマでは一応あります。
そしてもう一つのテーマ。姐さんの出番を増やす!!!!!大きい事は良い事なんですwwwwだから増やしたいんです!!!
とまぁ、見てくださった皆様、ありがとうございました。批評は私の糧でございますのでどうぞ遠慮なく申してください。それに誤字なんかもあれば。次から気をつけるようにします。
次回予告
坊や、六課で赤い女王の入ったケースをパカっ!姉さんと超絶衝撃波頭突き対決
GJ!
キリエ着いて来たか、てっきり留守番させてる間にフラグ立てるのかと思ってたぜw
乙かれ
ネロの腕が悪魔の力だと知られても避けられたりしないといいなあ
キリエはついて来るみたいだけど出番はあるのだろうか。原作ではほとんど空気だったし
DHS氏、GJでした!
キリエが付いてくるとは思いませんでした。
ネロガンバレ、嫁居るからがんばれ、あとシグナム少し自重しなさいw
次回も楽しみにしてます。
そして、予告どおり12時からミッドチルダUCATおまけを投下します。
今回も二番目が次回への伏線となっております。
よろしくお願いします。
Tes.!支援
そろそろ時間ですので投下開始です。
今回は六課がメイン〜。
今日もUCAT日和
1.近日発売予定です
機動六課宿舎。
訓練を終えてフリーな時間。
休憩室に備え付けてある小さなモニター画面に、一人の少年が熱中していた。
「かっこいいですね!」
「おおー、やっぱり好きか」
エリオが嬉しそうに声を上げて、その後ろでソファーに座るヴァイスが微笑ましく笑っていた。
「あれ? エリオ、それにヴァイス陸曹もここにいたんですか?」
その時、たまたま休憩室を通りかかったフェイトがひょっこりと顔を出した。
「あ。フェイトさん」
「フェイト隊長、入浴は終わったんですか?」
「セクハラで訴えますよ? でも、正解です」
湯上りらしくホカホカした玉の肌に、少し湿った髪を靡かせるフェイト。
艶やかなその表情にはマトモな性欲を持った人間ならば釘付けになりそうなほど色香に満ちていたが、片方は思春期も迎えていない少年、もう片方は正常では無い男。
二人共モニターに目を向ける。
「? 何見てるんですか?」
他の部屋に洩れない程度のボリュームに上げられたモニターからは爆発音や叫び声、さらにびしゃーという砲撃音が轟いていた。
モニターの中では『トラボシブレエエエエエド!!!』という叫び声と共に、手にした剣で巨大で悪そうなメカを両断するロボットの姿があった。
支援
「あ、これミッドチルダUCATがスポンサーやっているローカルアニメなんですよ。エリオを誘ってやったんですが……」
「僕、こういうの初めて見たんですがかっこいいですね!」
キラキラと目を輝かせて、いつもは子供らしくないエリオが拳を握り締めて、わーと声を上げていた。
この調子で。と、ヴァイスは苦笑した。
一喜一憂、コロコロと表情が変わるエリオ。
そんな彼に保護者として彼女は喜びと少しの悔しさを覚えた。
「なんてアニメなんですか?」
「えっと――あ、タイトルロゴでますよ」
ヴァイスが指差すと、画面の中で先ほど剣を振りましていたロボットがポーズを決める。
『リリカルマジカルブレイブ! 勇気を纏いし魔導の神――勇装魔神クラナガン! 世界を救う魔法をプレゼントにやってきた!』
ジャキーン。
真っ赤なロゴと共にクラナガンと名乗ったロボットが派手に映し出された。
そして、エリオは楽しそうにそれを見終えて、フェイトとヴァイスはその後姿を微笑ましく見ていた。
しかし、彼女は知らない。
この三日後、その本物が自分たちの前に出てくることに。
しかし、少年は知らなかった。
この三日後、その勇者と熱い友情を結ぶことになるなんて。
そして、この場の誰もが知らなかった。
この四日後、勇装魔神クラナガンのDVDがミッドチルダUCATのロゴ入りで発売されて、大人気商品になるなんて。
2.知らないんですか!? 彼女こそ時空世界の果てから――(ry
「ん? ティアナー、何見てるの?」
プライベート時間。
ティアナの部屋に遊びに来たスバルはヘッドホンを耳にして、何かの雑誌を読んでいるティアナに話しかけた。
「ちょっと気になる記事を見つけてね。ほら、これ」
ティアナが渡したそれは芸能雑誌だった。
スバルはそれを受け取ると、読み上げる。
「なになに? ……ミッドチルダUCAT、陸士108部隊のギンガ・ナカジマとラッド・カルタス氏が婚約間近? 嘘だ〜、まだ私何も教えてもらってないもん」
「身内の危機だからこそ教えてもらってないんじゃないの? いや、それよりもこっちよ」
ピシピシとティアナがページの記事の一つを指差した。
そこには帽子を被り、目元を隠した少女らしき人物が映っている。
「なに? えっと、伝説の歌姫ルノーがミッドチルダに六年ぶりに帰郷? 近日新シングルを発表? だ、誰だっけ?」
「呆れた。スバル、ルノーの事知らないの?」
「……誰だっけ?」
? とクエスチョンマークを頭に浮かべるスバルに、はぁっとため息を付いてティアナはヘッドホンを外した。
「ほら、これで分かるでしょ」
パコッとヘッドホンをスバルの耳に装着。
そして、そこから流れるメロディと歌声にピーンとスバルの背筋が伸びた。
「あーこれって! あれだよね! 確か、あの昔大ヒットした歌手の!」
「そう。一時期ミッドチルダを熱狂の嵐に叩き込んだ伝説的歌手よ。彼女の歌った【二人の翼】とかもう忘れられないわ」
少しだけうっとりとティアナが呟く。
こっそりと自分のテーマソングにしている、とはティアナはさすがに口に出す勇気は無かった。
きっとUCATのなかにはボルテ○カやゲッター○ームとかも使える人もいるはず支援
元ネタ探しで「炎海昇踏の突き」でググったら最新話がトップにでた
UCATすげぇ
「えー。でも、確か六年前に病気か何かで引退したんじゃなかったっけ?」
「でも、なんか戻ってきたらしいわよ? まあゴシップ雑誌だから当てにはならないけど」
スバルから雑誌を取り上げると、ティアナはヘッドホンを取り上げた。
「じゃ、スバル。私これ聞くので忙しいからじゃあね」
「えー。ティアー。ルノーのCD貸してくれない? なんか久しぶりに聞きたくなったから」
「アンタ、自分で買ってないの?」
「実は集めてるけど、全部家に……テヘへ」
しょうがない相棒だった。
ティアナはため息を吐くと、適当にお気に入りのルノーのサウンドアルバムを一つ手渡す。
「壊さないでね。そしたら、ケツからファントムブレイザー叩きこむから」
「し、しないよ!」
ありがとう、ティアー!
と暢気に呟いて、スバルは去っていった。
そして、ティアナは心地いい歌声に飲み込まれながら呟いた。
「もし、ルノーが活動再会するなら。ライブとか見に行きたいわね」
彼女は知らない。
その夢が思いがけない形で叶うことを。
投下完了です。支援ありがとうございました!
次回の話はまあ数日中に投下します。ええ。
それではまたお会いしましょう、Tes.!
>>329 ……なん……だと?
GJ!です
ルノーさん既に伏線あったような感じが
GJ!
しかし欲を言うなら後半のタイトル、知らないんですか!?
よりもやはり、ご存知、ないのですか!?のほうが(ry
>>334 まとめで修正しておきます。
度々の不覚……許せ!(すみませんでした)
某作品ファンとしては不覚過ぎました。
>>329 UCATでググると
他のキーワード: ミッドチルダUCAT
ってでてくるよ
>>336 俺もそれ確認した。
というか終わりのクロニクル知らない人結構多い?
知らない人が本屋で見つけたらちょっとビックリすると思うけど。
因みに佐山は過去に「このライトノベルがすごい」っていうランキング本で
男性キャラ一位を獲っていたりする。
初見の人は厚さ的に避けるだろうけど値段分の価値はある。
是非オススメしたいもんだ
>>336 試してみてフイタ
京極夏彦と厚さでタイマン張った小説だからな…
その量を一冊で発売しちまおうってのが無謀なんだがなwww
京極夏彦は新装版の文庫を発売するときには、上・中・下巻に分けたというのにwwwww
しかし同じ内容でも、厚い本1冊と薄い本2冊では合計価格に若干差が出て詐欺られた気分になるのもまた事実
一方で清涼院流水は、内容的には新書1冊ですむ内容を12ヶ月連続で12冊、1冊千円で発売した
UCAT最強の家族バカ、最強のシスコン×2がまだ登場してないということは……
まだ出てきてないオットーとディードが哀れです(確信)
342 :
一尉:2008/12/04(木) 15:41:46 ID:61UTWJzW
アボ的なUCATは却下です。支援
ちょ、wikiトップw
よく見たらまとめのお絵かき板に早くもギン姉の姿がwww
345 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/04(木) 17:06:15 ID:aTh3EXM8
ネロとか悪魔に対してアドバイザーなんてできんのか??ただ見かけたらぶっ殺せってしかならないだろ
失礼します、誰もいなそうなので第三話投下させてもらいます。
レザードの依頼を受けたスカリエッティは、培養液の前で考え込んでいた。
「う〜ん、どうしよ……」
「どうしよっと言われましても、完成している基礎フレームの中で使われていないモノはコレしかないのですから」
仕方がないとウーノは話す。No.Wの基礎フレームは既に使用しており、
現状残っているのはNo.Xの基礎フレームのみだった。
No.Xの基礎フレームの特徴は戦闘用の為、他の基礎フレームよりかなり頑丈に出来ている。
………ただ少女タイプのフレームではあるが。
リリカルプロファイル
第三話 計画
一週間後、培養液の中には銀色の髪の少女が浮かんでいた。
レザードから手渡された“髪の毛”の遺伝子を組み込んだ戦闘機人である。
「どうしよ…勢いで使ったが不味いよね、新たな“愛しき者”が少女とか」
「そうですね、戦闘機人は成長しませんですし」
「何の話です?」
いきなりの声に思わず驚くスカリエッティとウーノ、
振り返るとそこにはレザードがいた。どうやら待ちきれずやってきた様子だった。
「どうです?」
「……一応、肉体は完成しているよ、後は魂を定着させるだけだが……」
「なるほど……」
そう言うとレザードは培養液の中にいる戦闘機人を見つめていた。
その隣ではスカリエッティとウーノが冷や汗を垂らしている。
「なるほど、なかなかの出来ですね」
「へっ?!」
「細部も丁寧に造られてますし」
どうやらレザードは気に入ったらしく上機嫌だった。
彼の趣味に合っていたようだと、スカリエッティはほっと胸をなで下ろしす。
それから更に一週間後、訓練場には銀色の髪の少女とトーレが模擬戦を行っていた。
彼女の名はチンク、名付け親はスカリエッティである。
更に二階のモニター室では茶髪の女性クアットロがドゥーエと共に模擬戦のデータを集めていた。
彼女はチンクより三日ばかり遅くロールアウトした“姉”である。
そして彼女らの様子を別の部屋で見つめるスカリエッティとウーノ。すると不意に後ろから呼び声がする。
「ドクター、彼女達の様子はどうです?」
「レザードかい、安心したまえ順調に学習しているよ」
「それは良かった、ところで頼みたいことがあるのですが」
「何かな?」
「ガジェットをいくつか貸して頂きたいのです」
「ほう…と言う事は完成したのかね」
レザードの眼鏡が怪しく光り頷く。
場所は変わりここは先ほどチンク達が模擬戦をしていた訓練場。その中心にてレザードが仁王立ちをしていた。
一方二階のモニター室ではスカリエッティとウーノがデータ取りの準備を、
残りのナンバーズはレザードが模擬戦をすると聞いて野次馬見物をしていた。
「準備は良いかい?」
「いつでもどうぞ」
スカリエッティが合図を出すと、カプセル型の機械が五つ現れる。
ガジェットドローンT型、偵察・情報収集を主にしている機械である、その為か最低限の戦闘力しか持たせていない。
レザードにとっては相手不足ではあるが、情報収集にはもってこいの相手だった。
「さて……ネクロノミコン起動」
レザードが一言発すると腰につけたナイフ型のデバイスが輝きだし、形状を変え左手に収まる。
魔導書型ストレージデバイス・ネクロノミコン、レザードの強力な魔力に対応したオリハルコン製のデバイスである。
さて…何から始めるかと悩んでいると、ガジェットが一斉に攻撃を仕掛けてくる。
「やれやれせっかちですね……ガードレインフォース」
そう唱えるとレザードの周りに防御結界が現れガジェットの攻撃を弾いていく。
ガードレインフォース、かつてレザードが居た世界の補助魔法であったが、今はこの世界にあわせた造りになっている。
更に元々の補助魔法としても機能している為か、強固な防御魔法と化していた。
ガジェットの集中攻撃の中、レザードは右手を一体のガジェットに向ける。
「ファイアランス」
レザードが唱えると周りに二つ炎が現れ、それは刃となってガジェットに向かって行く。
そしてガジェットに突き刺さると呆気なく溶解した。
「さて……」
レザードは一呼吸置くが、ガジェット達は攻撃の手を休めず襲いかかる。
すると今度はレザードの足元に五亡星が現れる。そしてレザードの姿が消え、ガジェットの攻撃は虚しく空を切った。
移送方陣、レザードの世界ではロストミスティックと呼ばれ、モノや人を移動させる失伝魔法である。
移送方陣は発動まで時間が掛かるため使いにくかったが、プログラム化させる事で本来より使い易くなっていた。
「魔法のプログラム化、それだけでこうも使いやすくなるとは」
レザードは移送方陣で一体のガジェットの後ろをとると先程と同様に手をかざす。
「クールダンセル」
今度はガジェットの前に氷の固まりが現る、氷の固まりは氷の刃を持った女性に姿を変えガジェットを三度斬りつける。
すると傷口が凍り始め、最後には全身を凍り付かせる、凍り付いたガジェットは床下に落ち、粉々に砕け散った。
「まだまだですよ」
そう言うとレザードは人差し指でガジェットを指差す。
「ライトニングボルト」
レザードの指先から強力な電撃が発生し一直線にガジェットに向かい直撃する。
電撃を食らったガジェットはショートしながら爆発した。
更にダークセイヴァーを唱えると、ガジェットの周りに闇が生まれる。
闇は刃と形なってガジェットを串刺しにした。
「これで最後ですね、ストーントウチ」
レザードが指を鳴らすと、ガジェットの足下から灰色の煙が立ち上る。
そして灰色の煙が晴れるとそこには石化したガジェットの姿があった。
石化したガジェットはゴトッという音と共に床下に落ち、真っ二つに割れる。
「少々やりすぎましたか…意外に加減が難しい……」
そう言って眼鏡に手を当て不敵な笑みを浮かべるレザードであった。
一方モニター室では全員が唖然としていた。
自分達の世界では珍しい魔力変換をこうも自在に操っていたからだ。
そしてナンバーズの中にレザードを尊敬の念で見つめている者がいた。
「良いデータは取れましたか?」
「あぁ、十分なデータが取れたよ。これなら計画を実行することできる」
スカリエッティは狂気な笑みでレザードを見つめ、レザードは不敵な笑みでスカリエッティを見上げた。
場所は変わってここは会議室、部屋の中にはスカリエッティを中心に右側にウーノ、ドゥーエ、
左側にドゥーエそしてレザードが座っていた。
そこでスカリエッティは計画を発表する。
スカリエッティが立てた計画とは、自分を造った最高評議会を暗殺、更に時空管理局を崩壊させる事だと言う。
まずは最高評議会を暗殺する為にドゥーエを管理局に潜入させると。
彼女が選ばれた理由として、彼女が持つIS(先天固有技能)ライアーズ・マスクが適切だと話す。
ライアーズマスクは、戦闘機人たる自身の肉体を人の肉体に擬態させる効果を持つ。
この能力ならば暗殺も容易いだろうとスカリエッティは話す。
するとレザードが異を申し立てる。
「なるほどすばらしい能力ですが、些か心許ない。ここは一つ私の呪法を授けましょう」
レザードがドゥーエに授ける呪法は魅惑の呪〈チャーム〉だった。
魅惑の呪とは相手を魅了させ意のままに操る呪法だと言う。
「彼女達の力は魔力に近い特性を持っています。プログラム化させた魅惑の呪を組み込めば遂行しやすくなると思いますが」
スカリエッティは納得しドゥーエもまたレザードの案に賛同した。
次に時空管理局を崩壊させる為にスカリエッティは新たな戦闘機人を育成とガジェットの量産を、
レザードは不死者〈グール〉の製造と量産を考えていた。
不死者の方はグールパウダーを生産すれば問題なく、更に量産化はクローン技術を応用すると言う。
そして新たな戦闘機人の教育はウーノとトーレに、いずれはクアットロ、チンクにも協力してもらうと言う。
「ではそのように…」
「それで…この計画はなんと名付けるのですか?」
レザードの問いにスカリエッティは狂気を含んだ笑みでこう答えた。
「ふっ、それは勿論“ラグナロク”計画さ」
かつてレザードが居た世界で起きた厄災、その名を冠した計画が徐々にしかし確実に進み始めた……
一方研究所の廊下、チンクは自身の鍛錬を終了させ自分の部屋に戻ろうとしていた。
すると反対側からクアットロが歩いてくる。
「クアットロ……それは?」
「似合う?、博士に習って掛けてみたのよ」
眼鏡に手を当て不敵な笑みを浮かべる。この日からクアットロは伊達眼鏡を掛け始めた。
以上です。クアットロ眼鏡属性に目覚めるってな回です。
毎度説明口調で申し訳ない、誤字、脱字等あったら更にスミマセン。
それと、纏めて下さった方、本当にありがとうございます。この場を借りて感謝のお礼を申し上げます。
それではまた。
GJでした。
四番の眼鏡の由来がこんな所に!?
18:50前後から投下させていただいてもよろしいでしょうか?
そろそろお時間になりましたので、投下させていただきます
======
「どうして……」
叶わぬ想いを抱いたまま、プレシアの悲しい野望はここに潰えた。
「どうしてお前がここにいる!?」
しかし、ジュエルシードを……願いを叶える魔法の宝石を巡る戦いは。
「答えろ、魔刃頑駄無!!」
まだ、終わらない。
巻之弐拾八「消え行く『きょう』と、命繋ぐ『あした』」
地響きのような遠く、重い音が彼方から聞こえて来る。
際限なく広がる虚数空間に、時の庭園の内部は文字通り「喰われ」つつあった。
もはや崩壊は時間の問題。
しかしその最深部では、未だ武者丸達と堕悪闇軍団・首領の魔刃頑駄無との睨み合いが続いていた。
「猛きものもついには滅びぬ、ひとえに風の前の塵に同じ、か……」
「何を!?」
「天馬の国に伝わる、ある古典文学の序文の一節だ。
今の、この場所の状況をよく表しているとは思わんか?」
その手の中にジュエルシードを弄びながら、堕悪魔刃頑駄無はどこまでも冷静な、
ある意味で傲慢なまでに高みに立った視点で一同を見下ろしていた。
「彼が堕悪魔刃頑駄無……別次元の世界を侵略しようとする軍事組織の首領か。
いくつの法に抵触するかなんて、考えるだけですごい事になりそうだ」
「んな事はどうでもいい! ここで会ったが百年目、覚悟してもらうぜ!」
史上類を見ない大物時空犯罪者を前に、どういう罪状を突き付けてやろうかと思案するクロノ。
その一方で、武者丸はいつもの調子で威勢よく魔刃頑駄無に啖呵を切っているのだが……
現実はどうだ? と、他方では醒めた目線で自分達の戦力を分析していた。
ここに至るまでの連戦で鎧兜はもちろんの事、刀も金属疲労の限界まで酷使されている。
他の者に目を向ければ、満身創痍で片腕がろくに動かない斗機丸、魔力の尽きかけた魔導師達、
ハナから戦力に勘定するつもりはない抜け忍どもなど、皆戦力というには心許ない者ばかり。
今の彼にできる事は、虚勢を張って、せめて心だけでも負けまいと歯を食いしばることだけだった。
「意気込みはよし。だが、今の貴様らに俺を倒してジュエルシードを奪い、
その上でここが崩壊する前に脱出する手立てはあるのか?」
しかし、そんな事はとうにお見通し。
正論ばかりが並べ立てられ、全ての反論はここに封殺される。
「そ、それは……」
「……なら、さっさと俺達を始末でも何でもすればいいだろう。
もうここにはまともに戦える力を残した者など、一人としていやしないぞ」
隙が生まれるわずかな一瞬を狙い、話の引き延ばしを図る斗機丸。
だが、さすがに総大将自ら乗り込んできているだけあって、付け入る隙は一切見える様子がない。
このままでは名古屋の時のように、いや、それ以上に手ひどく蹂躙されるのがオチだ。
それでも、わずかな可能性に望みをかけて、斗機丸はその瞬間を待ち続けていた。
「ここでお前たちを屠るのはたやすい……が、ここもじきに崩れ落ちる。
わざわざこの俺が手を下すまでもないわ」
「いちいち腹立つヤローだな……ってか人の質問に答えろよ!
一体お前はどーしてこんな所にいるんだってさっき聞いただろーが!!」
斗機丸の意を汲んだのか、それともただ自分が気に入らないだけか。
武者丸はスルーされていた自分の問いかけをもう一度掘り返しだす。
「馬鹿め、べらべらと秘密を得意気に話すような愚か者がどこの世界にいる?
こうしてジュエルシードが手に入った以上、もうここに用など無い。
貴様らはそこで燃え尽きるがいい!」
そう言いながら、魔刃が手をかけた物……それは術が成功する事なく、
目覚めぬまま、ただそこに存在していた「繭」。
プレシアの娘、アリシアの遺体が納められた活殺裏葛篭の成れの果てだった。
「待って! その子を一体どうするつもり!?」
ただ一人、一部始終を最初から最後まで見守り、それの意味する所を否応なく知らされていたなのはは、
シューティングモードに形態を戻したレイジングハートを構え、無謀にも魔刃に立ち向かう。
確かにプレシアは許せないと思う。
けれども、どうしようもないくらいに……壊れてしまうほどに娘を愛していたという気持ちだけは
理解できなくもなかった。
だから、それを横から割り込んできて奪っていくような事はもっと許せない。
ただそれだけの理由が彼女を突き動かしていた。
「なに、軽い手土産のようなものよ。
我らの手をかいくぐり、ここまで来た女の研究成果だ……大きな力を持っているに違いない」
しかし、もう魔力が尽き果てている事までもお見通しなのか。
それとも数日前に交戦した時に、なのはの魔法は自分には通用しないと判断したのだろうか、
全く動じる事なく、ただじろりと睨みつけてくるだけ。
それだけなのに、体が石になったかのように指先一つ動かす事すらかなわない。
――これが威圧感というものなのだろうか?
ぞっとするような冷たい何かが流れる感覚に、なのはは恐怖を覚えていた。
そんななのはの姿を見て、魔刃はニヤリと口許に笑みを浮かべると、左手を妖しく輝かせて
念力のような力を発し、ふわりと繭を宙に浮かべる。
「アリシア……あぁ、アリシア!」
狂乱状態のプレシアはその様子を目の当たりにし、バインドで自由のきかない体ながらも
必死で我が子の名前を呼び続ける。
しかし、我が子を思う母親の心も魔刃にとってはそよ吹く風となんら変わることがない。
何事もないかのように、懐から何やら奇妙な呪文が刻まれた護符のような札を取りだすと、
それを宙にかざして、裂け目としか表現できないような「入口」を作る。
転移魔法の一種なのだろうか。
そこに手をかけながら、手を出す事もかなわず、ただその行為を見送ることしかできない
武者丸達を見下すように魔刃はその口を開き、告げた。
「貴様らに運があれば、その時は別の趣向を凝らして相手をしてやろう。
ただし……ここでおとなしく朽ち果てておけばよかったと後悔する事になるがな!」
「何を! 見てやがれ……その時は絶対、テメーに吠え面かかせてやるぜ!」
繰り広げられる捨てゼリフと捨てゼリフの応酬。
しかし、両者の間には圧倒的な力の差と言う高く、そして分厚い壁が重々しく横たわっていた。
「せいぜい足掻くがいい、小童どもよ! ファファファ……!」
そして、壁の向こうの勝者が残して行ったのは、特徴のある高笑い。
武者丸たちとプレシアの双方をぶつけあわせ、両者が疲弊した所でまんまとジュエルシードを手にし、
堕悪魔刃頑駄無は裂け目の向こう側へとその姿を消して行った。
「結局、あいつの一人勝ちかよ……くそぉっ!」
地に膝をつき、武者丸はやり場のない怒りを拳とともに床へと叩きつける。
一方、斗機丸は魔刃の行動の不可解な点にその思いを馳せていた。
このメンバーの中に内通者がいる公算が高い。
クロノ達管理局のように、あの大規模な雷の魔法を行使した際に、その大元を
探り当てた可能性もあるから、はっきりとした確証を得たわけではないのだが、
元刑事としての直感がそれだけではないと訴えかけてくる。
いるとすれば、それは恐らくあの三人組の中の誰か。
そう思案しながら、斗機丸は魔刃に気付かれまいと残骸のふりを続ける抜け忍トリオに、
その視線を決して誰にも気取られぬように向ける。
しかし、不可解な点がある。
彼らの目的がジュエルシードを集める事、それは理解できる。
だがなのはとあの娘……フェイトが集めたそれを全て奪っていった時点で、自分達はもう用済みのはず。
なら、あの生還を期待するかのような、口ぶりは一体何故だ?
まだ、自分達には自分達でも気付いていない「何か」があるのかもしれない。
ならば。
「……武者丸、いつまでもそうしているわけにはいかない。
ここを脱出するぞ!」
それを確かめるためにも、何としてもここから脱出せねばならない
結局相手の掌の上というのがシャクではあるが、それでも動かないわけにはいかないのだから。
「……あぁ。アルフ、さっき捕まってた連中を逃がしたみたいに魔法でワープとかできないか?」
「あぁ、一回分くらいなら何とか……とにかく、早くフェイトを休ませないと」
アルフは、気を失って三人組に介抱されているフェイトを気にかけながら、
転移魔法を行使するため意識を集中させる。
茜色の魔方陣が光を放ち、拡がりながらその場に居合わせた全員を包み込んでいき、そして……
「……!! フェイトちゃん!」
転移魔法が発動するかしないかの、そのわずかな瞬間の出来事だった。
虚数空間に庭園を支える柱の多くが飲み込まれてしまった事によって、構造物であった
瓦礫の塊がついに崩落を始めたのだ。
なのはは落ちてくるその瓦礫からフェイトを救おうとして駆け寄って行くが、長く体の自由を奪われ、
なおかつ体に多大な負担のかかる、最大出力での魔力砲撃を行った直後。
この時のなのはを誰が責められよう。
「ふぇっ?」
よろめく足が、バリアジャケットの長いスカートを踏んづける。
「あっ、は、はにゃ?」
つんのめったまま両足はもつれ、その上瓦礫の破片にぶつかってバランスを崩し、そして。
「わ、た、たっ、あ、あぶなーいっ!! どいてぇっ!」
「え、えぇっ!?」
案の定、術式を構築していたアルフの目前に突っ込んでいく。
「ふぇっ、ふぇっ……」
その際、なのはのお下げ髪の先っちょがアルフの鼻孔をくすぐって。
「へぷちゅん!」
くしゃみとともに、構築途中だった魔法術式が発動されてしまったのであった。
降ってきた瓦礫は、魔力の輝きとともにかすり傷も負わせられないようなレベルにまで
粉々に粉砕されていて、皆けろりとしている。
しかし魔方陣は消え、それを唱えていたアルフと彼女のかき抱いていたフェイトだけが……
「あいたた……大丈夫、フェイトちゃん、アルフさん……!?」
その場から忽然と姿を消していた。
「ふぇ、ふぇふぇふぇふぇフェイトちゃぁぁぁぁぁぁん!?」
「ちょっと姐御! 置いてきぼりはナシですぜぇーっ!?」
「へぷちゅん? へぷちゅんって何さ!? くしゃみが緊迫感なさすぎるよ、アルフ!」
「おいマジか? マジなのか? ギャグですまされる展開じゃないぞこいつぁー!?」
「お、落ち着け皆! まだ戻る手段は……」
途端に恐慌状態に陥る直情型組。
斗機丸はそんな彼らをなだめようと試みる。
だが。
「無い」
重く、そして冷たく響くクロノの呟きがそれを遮った。
「さっきのが最後のチャンスだったんだ。
虚数空間が広がりすぎて、時空境界線が通常ではありえない程に乱れてしまっている。
今の状態のまま転移しても……どこに飛ばされてしまうかわからない」
押し寄せる波が引くように、一同の顔がいっぺんに青ざめていく。
脱出する事ができない。
つまりは……
その先にある事実を連想し、ほとんどの者は言葉を失った。
「けど、ここで潰されるよりはましだろ!?
だったらさっさと……」
それでもあきらめまいと、武者丸はクロノに食い下がっていった。
しかし、クロノは首を横に振るばかり。
「……同じさ。時空の海に放り出される可能性の方が圧倒的に高い。
運よくどこかの世界に出たとしても、そこが真空の宇宙空間である可能性は?
例え惑星上でも、地上よりはるかに高い高空に転移するかもしれないし、逆に海の底かもしれない。
あるいは地面の中に出てしまって、身動きも取れずに窒息するのがお好みか?
それとも呼吸に適さない大気の世界で、もがき苦しんで力尽きるかい?」
荒野を走る死神の列が得意げに無残な死に方を並べ立て、クロノの口がそれを代弁するかのように、
当てもなく転移することへの危険をつらつらと並べ立てる。
それを聞く者それぞれの表情は、みな一様に重く、暗い。
「……どこに飛ばされるかわからないって言うのは、そう言う事なんだ。
僕達の生存可能な世界に辿り着く確率なんて、ギャンブルで億万長者になる確率よりずっと……
そう、ずっと低いんだ」
鉛のように重苦しい空気がその場を包み込む。
――ならば、どうあがいても絶望しかないではないか。
だが、当のクロノ自身と、一番深い傷を負っている斗機丸の瞳は、決して死んではいなかった。
その斗機丸は、少々きつすぎるくらいにがなりたてた後のクロノに歩み寄り、声をかける。
「脅かすのはそこまでにしておいてやれ、クロノ。
まだ何もかもお終いだと決まった訳じゃない……そうだな?」
「……もちろんだ!」
力強くそう言いきるクロノ。
彼のあまりにも矛盾したその発言に、誰しもが皆疑問を頭に浮かべる。
「えっ、それってどういう……?」
「言葉通りの意味さ。あくまで『僕達が』できる事はもう全部やり尽くした後なんだ。
そう、この庭園に来る前までの事も含めて……ね」
その直後であった。
また一つ、二つと大きな何かが崩れる音が、遠くから聞こえてきて、
それは少しずつ大きくなって行く。
「うひゃっ!?」
「きゃあっ!」
「ま、またどこかが潰れた音かよ!?」
「いや、違う。こいつは……!」
ススムやなのはが驚きの声をあげ、堕悪雑獄愚は子ども達をかばうように振舞いながら、
周囲に警戒の目を向ける。
しかし、武者丸はその轟音の中に、かすかに聞き慣れた音が混じっている事に気付いた。
一点に強力な電圧がかけられた粒子が集束し、そうして生み出された一筋の閃光が、
周囲の全てに破壊をもたらし突き進む、流れの速い川の激流にも似たその音。
そう、かつて自分達の後方から放たれていた、戦友のものと同じ音。
「……来たか!」
斗機丸が振り向くと、すでにぼろぼろにひびわれた壁を貫いて、閃光が疾る。
まるでバターをくりぬいたかのようにその断面はきれいにえぐり取られている。
ぽかんとそれを見つめる一同の前に、その大穴からゆっくりと姿を見せた力強い影。
その正体は……
『皆、待たせてすまなかったな!』
「鎧丸!!」
武者丸と斗機丸にとって、何よりも頼れる司令塔。
鎧丸その人であった。
「しゃ、シャチョー!? なんで、どうして?」
ぱかりと鎧丸の後頭部が開き、「中の人」こと鎧丸の真の姿であるシャチョーが
そこからにょきっと顔を出し、ススムの問いかけに答える。
「皆、細かい事は後回しにしてさっさとこっちについて来てチョーよ!
僕ちゃん、ホントはこんなコワイ所には一秒だっていたくないんだぎゃー!」
よく見ると、勇ましい登場とは裏腹に、ひょこりと覗くシャチョーの顔はひどく青ざめていて、
なおかつ体中をぶるぶると震わせて懸命に恐怖と闘っている様がありありと見てとれる。
「な、何だか締まらないなぁ……」
「けど、よく来てくれたぜ鎧丸!」
「だーかーら! もうそういうのは全部後! こんな所とは一刻も早くおさらばするんだぎゃー!!」
シャチョーの必死にも程がある呼びかけが逆にその真実味を強めているのか、
皆黙って案内されるがままに最下層の部屋を脱出していく。
そんな中、なのはは一人来た道を振り返り、一足先に消えてしまった二人の安否を心配していた。
「フェイトちゃん……アルフさん……」
人知れずこぼれたその呟きを聞きつけたユーノはなのはを思いやり、声をかける。
「きっと大丈夫だよ、なのは。
さっきのタイミングで転移できたのなら、二人は予定通りの所に辿り着いてるはず。
だから……絶対、また会えるよ」
「……そうだね。その時は、その時はちゃんと……!」
「うん、頑張ろうねって言ったら変だけど……応援するよ、なのは」
「うん……うん!」
――それから数十分後。
大小いくつもの爆発を繰り返し、時の庭園は時空の彼方にその姿を消していった。
一人の母親が抱いた、恐ろしくも哀しい想いを道連れにして。
「待たせたな、者どもよ」
一寸先も見渡せぬ暗い部屋に、蝋燭でわずかな明かりを灯しながら堕悪魔刃頑駄無の声が響く。
「フン、待ちくたびれたぞ」
不機嫌そうな顔をしながらも、真っ先に答えるのは炎魔忍軍の軍団長、漸羅。
部下からの人望が厚いとともに、戦いの中に己を見出す戦闘狂としての側面を持っている。
「お帰りをお持ちしておりました。して、首尾の方は?」
最大限の敬意をこめて、空魔忍軍団長、羽流鋭は魔刃を出迎える。
正々堂々とした武人肌であり、魔刃の片腕とも呼べる側近的存在である。
「うむ、この通りよ」
「おぉ……これぞまさしくジュエルシード!」
魔刃の差し出した妖しく輝く蒼い宝石を、顔中に笑みを浮かべながら受け取るのは刃流刃浪。
残虐なる妖魔忍軍の長であり、同時に堕悪闇軍団の数少ない資金源ともなっている
メイド喫茶「ラトーラ」の店主も兼ねている、極めて重要な存在である。
「そんな事より……」
「あ」
その声とともに、かちりと軽い音を立てて、暗かった部屋に蛍光灯の明かりが灯る。
するとそこには、狭い喫茶店の従業員控え室で、いかめしい鎧を着こんだ男四人が身を寄せ合って、
ジュエルシードを取り囲んでいるアレな光景がまさに白日の下に晒されていた。
「いつまで控え室でそんな餓鬼みたいな悪の秘密結社ごっこやってるんだい!
ずっと立ち入り禁止にしてるからバイトの娘達が困ってたじゃないか!?」
扇子を片手に首領と最高幹部三人相手に男前な啖呵を切る、女堕悪武者。
四魔忍軍の団長達の紅一点、冷酷非道な謀略を得意とする氷魔忍軍の華紅羅だ。
「いや、我々はどこからどう真面目に考察しても悪の秘密結社なので……」
気迫に圧され、冷や汗をたらりと流す羽流鋭。
「こういうのは形から入るのが大事なのである」
刃流刃浪はひょうひょうと主張だけを述べて。
「よせ刃流刃浪。女にこのノリがわかってたまるか!」
漸羅はキレる。
「そういう事はやる事やってから言いな!
もう何か月資金調達のために行動を制限させられてると思ってるんだい!?」
そんな不真面目極まりない男四人の尻に、火を点けるように檄を飛ばす華紅羅。
女海賊の頭領を思わせるその姿を見れば、一体この場の誰がボスなのか疑わしくなってしまう。
当のボスは裏でこそこそするより危険の中に自ら飛び込んで行く行動派なため、なおさらである。
で、そのボスこと堕悪魔刃頑駄無は実に不服そうにその言葉に答えた。
「それは心外だな華紅羅よ、ジュエルシードはこの通り手に入れた。
これで我ら堕悪闇軍団が天馬の国に散らばるジュエルシードの大半を手中に収めた事になる」
それでやっと得心したらしく、パイプ椅子を引いてきて華紅羅は腰を落ち着ける。
「そうかい……ついに『大蛇』を目覚めさせる時が来たってわけだねぇ」
「左様である。すでに準備は整ってあるからして、後はジュエルシードを埋め込むだけにございます」
刃流刃浪の言葉に魔刃は満足そうに頷くと、さらに質問を繰り返す。
もう一つ、ずっと気になっていた事柄について。
「フム……では『彼奴』はどうなっておるか?」
「『彼奴』ならすでに調整が終了しております。ご覧になりますか?」
「よかろう」
「ハッ……おい、入れ」
刃流刃浪の呼びかけに応じ、軋む音を立てながら安物の薄い扉を開けて入ってくるその武者。
全身を黒塗りの鎧に包み、背には巨大な刀を背負い、顔は漆黒よりなお色濃いゴーグルに覆われて
容易に窺うことはできない。
そして、何よりその全身からは危険なまでに強力な闘気を漲らせている。
魔刃は、刃流刃浪の手により仕上げられた、その漆黒の武者の姿をいたく満足そうに見つめ、
思わず感嘆の声を漏らしていた。
「ほう……これは予想以上の……」
「しかし堕悪魔刃頑駄無様、こ奴は危険です。何せ……」
羽流鋭はその武者の危険性を知っているが故に、魔刃に対し意見する。
しかし。
「……!」
黒い武者は物音一つ立てずに、身の丈以上もあるその刀を息一つ乱さずに振るい、
羽流鋭の喉元にその刃を突き付けて抑揚を感じさせない声で言った。
「少し黙っていろ。俺は俺のやりたいようにやらせてもらう」
「ぬぅ……!」
「ファファファ、よいではないか羽流鋭よ。こ奴の実力はこの俺が太鼓判を押してやる」
「しかし!」
それでも食い下がる羽流鋭に、魔刃は声の調子をさらに低くして言い放つ。
「羽流鋭よ、貴様の言い分もわかるが、そのまま意地を張っていると……
拾った命をまたも失う事になるぞ?」
「ク……出過ぎた真似をいたし、申し訳ございませぬ……!」
憎々しげに黒い武者を睨みつけながら、しぶしぶと言った風情で羽流鋭はようやく引き下がる。
「よかろう。ではまず最初に……」
そう言い、格好付けてマントを翻す魔刃の手に、刃流刃浪から何かが手渡される。
……箒と塵取りが。
他の者はと言えば、漸羅は雑巾、羽流鋭はハタキ、華紅羅は掃除機、黒い武者はゴミ袋。
それぞれが掃除道具を握らされたまま、きょとんとした顔を浮かべている。
「控え室の片づけから始めていただきます!
あんな大きな刀をこんな狭い所で振り回しては困るのである。
いかに魔刃頑駄無様といえど、働いてくれる女の子の為の部屋を荒らしたままにしておくのは、
決して許せんのである!」
「……ハイ」
正論に対しては素直に従う「全次元世界の征服を企む悪の軍団の幹部一同」の姿が、そこにあった。
「で、邪魔と言えばそいつは一体何だ? 俺にはガラクタにしか見えないんだが?」
漸羅は手渡された雑巾を心底嫌そうに固く絞りながら、魔刃がジュエルシードとともに持ち帰った
有機物とも無機物ともつかない巨大な塊を、顎で指し示す。
それは、プレシアが全てを賭けて花開かせようとしていた、あの「繭」であった。
「おぉ、忘れる所だった。刃流刃浪よ、妖怪武者のために使う魂魄に余剰があったな。
すぐに持って参れ」
「それは構いませんが、ちゃんと後片付けの方もお願い申し上げますね」
「う……うむ」
ギロリと威圧感たっぷりに睨まれ、二の句が継げなくなってしまう魔刃。
なんだかんだで財布を握っている人間の発言力は違う。
「魂魄を? 一体何に使うおつもりですか?」
「フフフ……まぁ見ておれ。面白い物を見せてやろうぞ。
やれ、刃流刃浪」
「承知いたしました」
奥の倉庫から持ち出された、甕に詰められていた光り輝くエネルギー体……魂魄。
亡者の魂を基に合成した、いわば即席妖怪武者の素。
刃流刃浪はそれを「繭」に向かって表情一つ変えずに押し付ける。
完全に無感情のまま、言われるがままに慣れた手つきで下忍悪魅を呼びだす時と同じように。
……そう、「無」感情である。
「見よ! これが魔女プレシアが命をかけて追い求めた究極の秘術の正体よぉ!」
激しい光を放ちながら、びきびきと音を立てて「繭」が内側から砕かれる。
そして、もうもうと蒸気のような気体が部屋に立ち込め、
一同の視線はその中から現れるモノに向け、一点に注がれた。
果たして、そこに現れたモノとは?
「ぅ、ん……かぁ、さん……」
長い金髪を伸ばし、あどけない顔をした小さな女の子。
その女の子がゆっくりと目を開き、寝ぼけた顔で彼らを見つめている光景であった。
「ま、魔刃頑駄無……様?」
「究極の……秘術?」
いぶかしげな眼を少女から徐々に魔刃へと向ける幹部一同。
強力な魔導兵器か、もしくは強力無比な力を持つ合成生命体かという期待は完全に打ち砕かれ、
皆一様に落胆と困惑を隠せない様子。
そんな中、渦中の堕悪魔刃頑駄無はと言えば。
「……あ、あっれぇ……?」
もはや威厳も何もなく、予想外の結果にただ目を白黒させていた。
「トッキー、大丈夫か!?
ススムも、お前生きてたんなら何か言えよこの野郎!」
「なのは!」
「なのはちゃん!」
シャチョーに導かれ、辿り着いたのはどこか未来的な建物の中のような場所。
そこでなのは達を待っていたのは、思いがけない友の顔であった。
「アリサちゃん、すずかちゃん! それにシンヤ君も!」
「皆、どうしてこんな所に……それより、ここは一体どこなの?
ナントカ空間とか、さっきの時の庭園の部屋でもないみたいだけど……」
鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして、駆け寄ってくる三人に応じるなのはとススム。
辺りを見渡すと、そこはまるでSF映画のような未来的なイメージの部屋である事がわかるのだが、
二人にはここがどんな場所なのかまるで見当もつかない。
他のメンバーの大半に関しても同じのようで、きょろきょろと物珍しそうに部屋を観察し、
どうにも落ち着かない様子。
ただし、それはユーノとクロノを除いての話であったが。
「それは私から説明させていただきます」
自動ドアなのだろうか、空気が抜けるような音とともにその扉が横に勝手に開くと、
そこから一人の女性が現れる。
翡翠色をした長い髪を後ろでまとめ、きっちりとした制服のような衣服を纏った、
理知的なイメージを抱かせる若々しい女性。
クロノは彼女の姿を認めると急に姿勢を正している様子。
突然の事に戸惑いっぱなしの一同を安心させるかのように、その女性は柔らかい笑みを浮かべ、
無機質な部屋に華を添えていた。
「あなたは?」
「私はこの艦の艦長、時空管理局のリンディ=ハラオウンと申します。
『アースラ』にようこそ、武者頑駄無の皆さん」
途中までかっこよかったのにw
ジュエルシードを失い、心身ともに大きな傷を残しながらもどうにか命をつないだ武者丸達。
そんな彼らの前に現れた女性、リンディは彼らに何を求めるのだろうか?
そして、数奇な運命を経てこの世に蘇った少女の運命やいかに!?
――次回を待て!!
======
今回は以上です。
少し……いや、かなり冒険的な内容にシフトしてきてるなぁと、我ながら思う今日この頃。
セレブ(笑)な魔刃様も大好きなので、どうやって料理しようか悩んでおりますw
年内にあと一本くらい書けたらいいなぁと思いつつ、次回もぜひお楽しみに!
※おまけ
以下の人物の名前の読みと基になったMS名を書け。(配点=5点)
( 漸羅 = )
( 羽流鋭 = )
( 刃流刃浪 = )
( 華紅羅 = )
えーーwww生き返っちゃたよアリシアちゃんww!!堕悪魔刃頑駄無
いや、今日だけは様付けで呼ばせてもらうぜ!GJ!!
GJ!
魔刃wwwww
横取りするからそうなるwwwww
( 漸羅 = ビギナ・ゼラ )
( 羽流鋭 = ベルガ・バルス )
( 刃流刃浪 = ヴァルヴァロ )
( 華紅羅 = ガーベラ・テトラ )
これで合ってますよね?
上二つがシルエットフォーミュラで下二つが0083でしたっけ?
>>363 gjです!!
魔刃wwwww
なのはを威圧した勢いはどこへwwwwww
>>347 ×ほっと胸をなで下ろしす。
○ほっと胸をなで下ろす。
消し忘れスミマセン。
>「見よ! これが魔女プレシアが命をかけて追い求めた究極の秘術の正体よぉ!」
叫びながらもモップで床の掃除を続ける魔刃頑駄無を想像して吹いたwwww
>>367 テメエ、想像して大爆笑だったわ! 天才的発想乙!! 正直それはなかったw
>>363 武者○伝氏、乙でした!
しかし、魔刃頑駄無……カリスマブレイクにもほどがあるわw!!
返せ! 前回の緊張感を返せ! あと狂っちゃったプレシアさんに謝れww
何事もないようにかるーく復活させんなw どれだけ立場低いんだよ! プレシアがどうにもこうにも事実知ったら喜ぶべきか悲しむべきか分からないぞ!!
秒間百連打でツッコミいれたくなるような内容でGGJ!
次回も待ってるZE!
さらに考えたら他の幹部たちも掃除してんじゃね?
悪の幹部たちが掃除する中目覚めるアリシア、どんな状況やねんってww
ああ、ゆくゆくはラトーラの看板娘ですねわかりました!
GJ!!です。
シリアスが吹っ飛んだw
アリシアが母親に会いたいとゴネたら、刑務所襲撃ぐらいしてくれそうだw
武者○伝氏、毎度ながらGJでした!
堕悪紅零斗丸キター!軍団の絶妙な世帯臭さが素敵です。
そしてまさかの……。こうなるとプレシアの更生にも期待が持てそうな
元ネタの武者○伝版の魔刃もシリアス半分・ギャグ半分な俗世に染まった面白キャラだったし
そんな魔刃の珍道中がこれからも楽しみです。
どうも二日ぶりです。
17時50分からミッドチルダUCATの続きを投下してもよろしいでしょうか?
予定容量のシーンを全て書くと、なんと80KB超えそうどころか100KB逝きそうなので分割して投下することにしました。
よろしければ支援をお願いします。
勇装魔神支援
378 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 17:25:48 ID:epH5S7ID
投下早い!支援支援!!!
いったい夢境学園氏の脳内では何が起こっているというのだ…
世界が、凄まじい勢いで生まれていく
ウオオこの指数はビッグバンを引き起こすほどの
紫煙
図書館で借りてきた「終わりのクロニクル」1上〜2下までを、積ん読しつつ支援
そろそろ時間ですので投下開始します。
支援をお願いします。今回はシリアスかも?
その光景を見たとき、機動六課部隊長八神 はやてはこう告げた。
「……なんや普通やないか」
そう告げた次の瞬間、ハッとはやては顔を強張らせて頭を振った。
UCAT関係者以外の全員が彼女を見ていた。
ああ、この子も手遅れになったのかと。
「いや、違う! あかん! 毒されて、なんか普通に感じとる! カムバック、カムバック私の常識! 戻ってきて! 昨日までの私!」
はやては常識人として、そこらへんにいる普通の魔法少女としての誇りを保つために叫んだ。
それを咄嗟に慰める女性が二人。
「落ちついて、はやて! 必殺技を放ちまくる陸士たちよりはきっとマトモだよ! ……たぶん」
「そ、そうだよ! 精々勇者ロボの一つや二つ……ごめん、普通じゃなかった」
しかし、自滅した。
ズガーンと落ち込む三人娘の様子に、レジアスは気にした様子もなく、オーリスがいれてくれた茶を啜る。
オーリスがはやてたちを憐れんだ目で見ているが、彼女は冷徹な顔の裏腹に情が深い女性だった。
レジアスはコキリと肩を鳴らすと、モニターを見つめた。
様々な戦況が映し出された無数のモニターにはクラナガンを投入したとはいえ、膨大な出力を誇る新型魔導兵器と合体ガジェットに苦戦する陸士たちが見られる。
最後の一手を打つ必要がある。
「レジアス。何を躊躇っているのかね?」
レジアスの思考を読み取ったかのように、佐山が横にいる新庄に肩を揉んでもらいながら告げた。
「うちの連中を折角貸し出したんだ。存分に使い倒すのが彼らへの礼儀ではないのかね?」
「そうですよ。もうなんていうか、ここまできたらどこまでもやっちゃっていいかと」
先ほどまで勇者ロボの発進に全力全開でツッコミいれまくり、疲れ果てた新庄がこくりと頷く。
「疲れたのならば私にもたれかかってもいいが?」
「佐山くんだとセクハラするから、いや」
というバカップル会話をしている二人から目線を外し、レジアスはここにきて初めて酷く楽しげに口元を歪めた。
「ふむ。それもそうか」
初老の差し掛かる年齢だというのに、レジアスの瞳は悪戯好きな少年のように輝いていた。
状況は十分、動機も十分。
いいぜやっちまえと悪魔が囁き、天使がふれーふれーと手を上げていたような気がした。
「では、オペレーションAHEADを開始する」
状況開始、そう告げて他の幹部達には目に見えない位置でスイッチを入れた。
それがこの戦いの作戦最終段階を意味するものだと、この時誰も知らなかった。
大地は熱気に満ちていた。
空は嘆き悲しむように雲を渦巻いていた。
世界は破壊を撒き散らすものたちによって震撼し、それに対抗するように誇りあるものたちが咆哮を上げていた。
世界は分割されている。
二つの正義、けれども相容れることのない正義によって打ち別れた。
今こそが歴史の分岐点、一つの新しい物語が歴史に刻みいれられる時だと誰もが気付いていた。
大いなる時のうねり、始まるは破滅か再生か、それとも新たなる創造かそれとも全てを終わらせる終末か。
分からない、分からない、だけどそれはそこに立っていた。
それは偉大なる魂。
鋼鉄の巨人、命宿せし鋼の人形、魂持ちし巨兵。
見よ。その勇ましき鉄腕を。如何なる巨悪にだろうが決して折れず、怯まず、打ち込むことが出来るだろう強大なるガントレットを身に付けた腕部。
見よ。父なる大地を踏み締める脚を。如何なる苦難に遭おうともそれは決して膝を着く事無く、ただ歩み続けるための地上を突き進む脚部。
見よ。その装甲を。太陽の光を受け、熱気に燃える劫火に炙られ、それでもなお煌めき輝く純白の甲冑を。
如何なる災禍に遭おうとも、受け止め、弾き散らすための勇猛なる鎧。かつて素手で如何なるものをも打ち倒すことが出来なかった獅子、それを打ち倒した闘士が勝ち取った毛皮の如くそれは分厚く、気高く、強固。
その肩アーマーには己が背負いし組織の印章を旗印のように刻み込み、自分が誇りと勇気に輝かせる。
そして、その額に輝くのは地上を蝕む劫火よりも熱く、命流れし血潮よりも紅く、空に燃え盛る太陽の如く眩い兜。
人間を模した口を震わせ、その碧鉱石色に輝かせた瞳に石の光をたぎらせ、それは吼えた。
『我が名を知れ! 我こそはこの地上を護るもの! 勇装魔神クラナガンだと!!!』
ビリビリと大気が震え立つ。
アスファルトの地面に散らばる残骸が、アスファルトの石屑が、その勇気ある咆哮に奮い立つかのように震動した。
大地が揺れたかと誰もが錯覚する。
だがしかし、彼は大地を揺らしたりなどしない。ただこの大地を、この空を、そしてありとあらゆる手が届く、そして届かなくても届かしてみせる、世界を護るために生み出された勇者。
『OOOOOOOO!!』
その咆哮に、その存在に、脅威と認識したのか、もっと近くに存在する合体ガジェット――欲望の化身、願いを叶える宝玉、ジュエルシードを孕んだ機械の獣。
無線コール、命名ジュエルビースト。
それが幾つもの丸みを帯びた鉄塊、茨のように絡みつかせた配線、アームベルトに覆われた四肢を動かし、突進してくる。
サイズにして50メートルを超える巨大怪獣。大地を分解し、その膨大な魔力と精密極まるプログラムで魔法による再構築を果たしたそれは模造金属に覆われた合金の巨獣。
強敵である。
後の世の検証では、L級艦船からの艦砲射撃を浴びせなければ有効打を与えられなかったとされる怪物。
だがしかし、決して膝を屈すことを知らない不屈の魂を持つクラナガンは怯まない。
その腰に佩いた巨剣の柄を握り締める。
『トラボシブレェーエエド!!』
叫び抜刀、碧色の閃光を浴び、光の粒子を螺旋と変えて滾らせる烈光の太刀。
Ex-st-Blade/トラボシブレード。虎星の二つ名を背負いし鋼刃。
Low−Gにて開発された概念兵装、機殻杖Ex−stのレプリカを大型化し、大剣と変えた武装。
それは持ち主の気合によって威力を変え、さらには刀身すらも増幅させる斬魔巨剣である。
『X−wi−ng!!』
・――光は力である
概念条文の言葉を鳴り響かせ、クラナガンは装備を起動させた。
ガパリと背部から伸びる羽無き翼、背部に伸びる巨大なウイングブロックを上下に分割し、その内部から魔力炉から供給された光の粒子を噴出させる。
X−wi−ng。
元の装備こそ全竜交渉部隊の一人が装備していた飛行用の概念兵器。
光の羽根を生み出し、ありとあらゆる光に力を与える概念を持つ光翼。
そう、ありとあらゆる光に力を与えるのだ。全身から放つ魔力の光粒子にも、トラボシブレードから放たれる光刃にも。
『おぉおお!』
咆哮疾駆。
バンッと光の翼が大気を打ちつけ、鋼鉄の脚部が大地を蹴り飛ばした瞬間、その巨躯が掻き消える。
同時に響き渡るのは雷鳴の如き破裂音。
常人には認識外の速度で駆け抜けるそれは如何なる悪夢か。鋼の巨人が音速を超えた機動を見せるなど通常の物理学を嗜む物理学者が見れば目を剥き、泡を吹くだろう現象。
バリアジャケットの技術を利用した大気抵抗キャンセル、同時並行で作動するベクトル操作、さらにX−wi−ngの膨大な出力、武神が持つ重力制御技術、その全てを一点に兼ね備えた超絶技術の賜物。
『GA!?』
ジュエルビーストは咆哮を上げ、瞬時に全身から魔力場を発した。
指向性を定めないただの放出、だがしかしSランクオーバーの魔力の圧力はただそれだけ地面を陥没させる衝撃波。
――その衝撃波に一太刀の閃光が食い込んだ。
『チェストォオオ!!』
一閃両断。
残像を残し、クラナガンがジュエルビーストの傍を駆け抜ける。
ガリガリとアスファルトの床をブルドーザーで掘り起こしたような土砂を撒き散らしながら、彼はトラボシブレードを振り抜いていた。
『GA!?』
ズルリ。
ジュエルビーストの巨腕が次の瞬間、歪んだ。付け根から緩やかにズレはじめ、数秒と経たず落下する。
巨大な質量が大地にめり込み、破砕音を鳴り響かせるよりも早くクラナガンは動いていた。
旋転、切り返し、薙ぎ払い。
金属のフレームが恍惚の絶叫を響かせ、マニピュレーターが咆哮を上げながら軋んだ。
息を吸い込むように刀身を短くし、地面を切り裂かぬように下から振り上げて、インパクトの瞬間気合を篭める。
『秘剣 雷槌墜とし!!』
1セコンドにも満たぬ僅かな瞬間のみ、息吹を発するように刀身を伸ばし、相手を両断する。
バガンと音を立ててジュエルビーストの顎から脳天までが裂かれた。絶叫すらも許さずに、脳漿代わりの配線と血肉と機械油をぶちまける。
壮絶極まる一刀。
大地から空へと舞い上がるように、天から打ち下ろされし大いなる主神の奇跡。稲妻。それを切り裂いたのは第97管理外世界、世界でもっとも多くの勇者を生み出せし国で語られし雷切りの逸話か。
クラナガンのAIに、データベースに刻み込まれた数々のデータは先人たちの伝説を尊び、それに追いつかんと仮想空間で修練を続けてきたのだ。
日本刀の妙技はそのデータに叩き込まれており、彼が繰り出す剣技はあらゆる武術者たちの血肉の証、命を賭けて伝え残してきた剣の教え、その心と血肉の咆哮か。
ジュエルビーストが頭部を裂かれてもなおその身に宿した魔力を用いて復元――ならず。
クラナガンの手首が閃く、命を持ちし金属は硬くありながらも人体のようにしなやか、故に繰り出せる音速の剣技。
通常サイズに戻したトラボシブレード、その軌跡を見れた者は何名居たか。
唸った斬撃音は一つ。だがしかし、ジュエルビーストに刻まれたのはX字の二撃。
鉄よりも硬く、鋼よりもしなやかで、ダイヤモンドの如く頑強なそれをクラナガンは切り裂いてみせる。
斬鉄の技巧、見ればその刃は片手に握り、もう片方の指は刀身に添えて、足首を曲げ、ジョイントを軋ませ、マニピュレーターを稼働限界まで動かし、翼を用いて大気を打ち、その自重の全てを一瞬の二撃に叩き込んでいた。
火花散る散る、玉散る斬撃二刀。
例え2nd−Gの概念加護がなくとも実現したであろう技巧の数々。
振り抜いたトラボシブレード、流れるような動作で血払いならぬ油払いをする。
『未熟!』
僅かに刀身にこびり付いた金属かすに、ガジェットのものだろう機械油がこびりついた刀身を見たクラナガンは己の未熟さを思い知る。
真に稲妻を切り裂ける一刀ならばこの程度の敵に機械油などこびり付く余地は無く、振り切れるはず。
後に繰り出した二撃に僅かな違和感を覚えたのはそのためか。
修練が足りぬ、まだ未熟だ。
クラナガンは心から己の未熟さに嘆き、怒りすら覚えた。
『許せ。苦しませずに逝かせることが出来ぬ己の未熟!』
血払いを終わらせ、クラナガンはトラボシブレードを地面に突き刺すと、その空いた手から魔力の迸りを噴出した。
狙うは一つ、ジュエルビーストのジュエルシード。
魔力噴出用の外部ノズルを剥き出しに、クラナガンはデータベースに登録された術式プログラムを起動。高速処理で演算をしながら、燃え盛る右手をジュエルビーストの切り裂いた断面に突き刺し――
『コンバイン!』
裂く、裂く、砕き散らす。
鉄の肉を砕き、配線の神経を千切り、機械油の血を浴びながらクラナガンはその手をめり込ませて――叫んだ。
『ブレイク・インパクトォオッ!』
食い込んだクラナガンの手すらも貪ろうとするジュエルビースト。
その血肉の固有周波数を計算し、集積し、破壊する震動波で弾き散らす。
ブレイクインパルスと呼ばれる魔法の術式をアレンジした兵装。ある元執務官が態々プログラミングを行い、快く術式を提供してくれた武装の一つ。
そして、握り締めたその拳に秘められたのは確かな宝玉、唸りを上げる力の塊。
『リリカルマジカル! ジュエルシード、シリアル13、封印!』
データベースに登録された封印術式、さらにそれとセットで着いていた封印詠唱を叫び、クラナガンはジュエルシードを封印する。
どこかで哀れな女性が顔を真っ赤に突っ伏したような気がするが、おそらくそれは幻影。
封印と同時に転送プログラムを呼び出し、ジュエルシードを地上本部の隔離エリアへと転送した。
『よし、一つは倒した――っ!?』
僅かに安堵した瞬間、亜音速の速度で突っ込んできた物体がクラナガンに直撃した。
爆音にも似た激突音。
ぶつかったもの、それは先ほどのものよりも少し小柄な40メートルほどのジュエルビースト。だがしかし、その巨体はクラナガンの全長を遥かに超えている。音速に迫る速度で、数百トンを超える物体の激突は計り知れないほどの威力。
しかも、そのジュエルビーストは先ほどのものと比べて形状を変えていた。
よりおぞましい獣の形に、しなやかに動くための獣型として進化。おそるべきはジュエルビーストの願望の発現能力。内部に搭載された小型獣(ちなみにぬこ)のタビングAI、それと連結されたジュエルビーストが野生の本能に従い強化を望んでいた。
2nd−G、名前を持たないものが弱体化する空間でなければクラナガンが一撃で中破してもおかしくなかっただろう。
全身のフレームに絶叫の大合唱を鳴り響かせながら、クラナガンはそれを受け止め、ブレーキを掛けていた。
不味いと理解していた。
彼の背後には護るべき陸士たちがおり、吹き飛ばされる方角には地上本部がある。
幾ら概念防護があろうとも決して無敵というわけではないのだ。この質量の二つが激突すれば破砕の可能性がある。
そこを巻き込むわけにはいかない!
『うぉおおおお!!』
X−wi−ngの出力を上げて、大地に鋼鉄の脚を突きたて、火花と瓦礫を撒き散らしながらブレーキ、ブレーキ、急制動。
その身に背負う幾多の命の重みに賭けて、クラナガンは抗い続けた。
背後でどわー! とか、うひょー! という悲鳴が聞こえる、飛び込んでくるクラナガンとジュエルビーストの攻防に逃げ惑う陸士たちの声にクラナガンは涙を流すことが出来れば流しただろう痛みを覚えた。
だがしかし、止まらない。じりじりと、がりがりと、軽自動車ほどの速度でクラナガンとジュエルビーストが進んでいく。
『くっ!』
止まれないのか。一瞬クラナガンが絶望しかけた瞬間、声が響いた。
支援
支援!!
「ルフトメッサー!!」
大気破断。
背後から打ち出された衝撃波が、ジュエルビーストの真紅に燃える瞳に打ち込まれた。
『GRU!?』
それはあくまでも急増で作り出された外部センサーの一つでしかなかったが、内部に搭載されたダビングAIにとっては片目を潰されたかのような衝撃だったのだろう。
動きが鈍る、脚が止まる。
その隙をクラナガンは見逃さなかった。
『ブレイズキック!』
脚部裏の放熱ノズルから勢いよく蒸気を噴出し、加速された膝でジュエルビーストの顎を打ち抜く。
たわぬ顎、配線とベルトで編まれた急増の巨体が震動を響かせて、全身を薄気味悪い金属音に満たしていく。
そして、流れるようにクラナガンは手に持っていたトラボシブレードを振り抜くが、ベクトル制御魔法でも使っているのかしなやかにジュエルビーストが飛び下がり、ひらりとかわして見せた。
ズシン、地面が揺れる、その自重と震動音だけが巨体であり、膨大な質量を秘めた存在だと知らせてくる。
間合いが開く。グルルルと合成の唸り声を洩らし、ジュエルビーストが警告音を発す。
前方への警戒を緩めぬまま、クラナガンは先ほどの衝撃波が放たれた方角を見た。
「大丈夫ですか、クラナガン!」
そこには紅い燃えるような髪をなびかせ、クラナガンを見上げる少年がいた。その周りには怯えるように……というか呆れたようにクラナガンを見上げる三人の少女。
彼はアームドデバイスらしき槍を構えていた、おそらく先ほどの衝撃波を放ったのは彼だろう。クラナガンのデータベースに登録されたルフトメッサーは近代ベルカ式の斬撃魔法だから。
いつのまにか、地上本部の直ぐそこまで迫っていたらしい。もしも彼が手助けしてくれなかったら、クラナガンは護るべきものを護れなかったのだ。
『ありがとう。少年よ、名前を聞かせてくれないか』
こんなにも幼い少年が戦線に加わっているという事実、クラナガンはそのことに心を痛めながらも、その勇気に感嘆していた。
少年は目を輝かせながらも、決意を秘めた言葉で告げる。
「エリオ。エリオ・モンディアルです! クラナガン、僕も一緒に戦います!」
「ええ!? エリオ、ちょっと!」
「正気!? いや、でも、気持ちはちょこっとだけ分かるけど!」
「エリオくん!?」
少年の決意に、三人の少女が驚いていたが、クラナガンの心には少年の心が深く染み渡っていた。
勇者として分かる。
彼は勇気ある存在だと。
『私と共に戦うのは危険だ。それを承知かね、エリオ君』
「はい!」
一瞬もエリオは迷わなかった。即答だった。
クラナガンは通信を開始、高速圧縮言語でミッドチルダUCATの管制室に問い合わせる。
『彼を私の操者にしてもいいか?』 『構わん、やれ』
即答だった。
クランナガンのAIにはサムズアップする管制室の皆の姿が、頼もしい開発班の人たちの笑顔が見えていた。
『分かった。エリオくん、いや、エリオ! 私に乗れ!!』
前のジュエルビースト、それに警戒しながらクラナガンは膝を着き、背部のウイングブロックの付け根を左右に押し広げ、コクピットブロックを露出させる。
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「え? まさか」
『さあ!』
クラナガンの声、それに引かれてエリオは目に意思の光を宿し頷いた。
「行ってきます、皆!」
エリオはスバル、ティアナ、そしてキャロに微笑んで駆け上がる。
ソニックムーブ、電光のような速度でコクピットブロックに辿り付く。
内部にエリオが入ったことを確認すると、クラナガンはコクピットブロックを閉じ、ウイングブロックを元の位置に移動させると、叫んだ。
『エリオ! 操縦システムをベルカ式操者に切り替える!』
「え?」
中に入ったエリオは驚いた。
複雑な機器があるかと思っていたコクピットだが、内部は丸い円形だった。
そして、中心部にはなにやら差し込むような鍵穴がある。
『君のデータを私に入力するんだ! デバイスを突き刺せ!!』
「分かった!」
起動状態のストラーダを構えて、エリオは迷う事無く鍵穴に突き刺す。
突き刺した瞬間、ストラーダを周囲から飛び出した無数のケーブルが覆っていく。
『Strat.!!』
ストラーダが電子音声を響かせ、その全身にエネルギーを満たし、自動的に第三形態へと移行する。
蒸気を噴出し、次の瞬間、周りのコクピットの壁面に景色が映し出された。
『エリオ・モンディアル――魔力変換資質:電気を保有。君の生体電流をこちらの操縦システムとリンクさせる。エリオ、君はストラーダを握っているだけでいい! 後は自分の体を動かす要領でサポートしてくれ!』
「分かりました!」
『普段は私に任せろ!』
クラナガンの声が響く。
ここに一人の勇気ある少年と共にあり、真なる目覚めを迎えようとする勇者が剣を掲げた。
『さあ来い! 勇気と気合、その力を重ね持つ私は簡単には敗れんぞ!!』
トラボシブレード。
その巨剣を振り翳し、クラナガンは突き進む。
世界を護るために。
「……エリオくん、いっちゃった」
ポカーンと寂しそうに呟くのはキャロだった。
凄まじい速度でジュエルビーストと戦い始めるクラナガンを見送ったスバルとティアナはなんというか息を吐くと、ぐっと立ち直るように腕を折り曲げた。
「よし、キャロ! エリオに負けてられないわよ! 私たちは私たちにやれることをするのよ!」
「そうだよ! 私たちだって時空管理局の部隊であり、機動六課なんだから!」
「そうよ!」
ティアナとスバルが気合を入れるために叫んだ瞬間、それに答える声があった。
ダダダと足音を立ててミッドチルダUCAT本部から飛び出してきたギンガだった。
「ギン姉! あれ? さっきのみず――」
「言わないで」
ガシッと己の妹の口を神速で塞ぎながら、ギンガは通常のバリアジャケット衣装で涙に少し紅くなった目元を拭った。
どうやらしばし泣いていたらしい。
ティアナには気持ちが分かった。自分も同じ目にあったら間違いなくするだろうし。
「もごもご〜!」
「ああ、ごめんなさいね」
パッと妹の口を塞いでいた手を離すギンガ。
しかし、その肩にぐわしと恐ろしいほどの握力で握り締め。
「さっきまでの光景は一切口にしないこと。い〜い?」
「え、でも……」
「い い わ ね?」
めぎり、と音を立てそうなほどにスバルの肩に指が食い込む。
ギンガは微笑んでいたが、目とこめかみだけが笑ってなかった。
コクコクと必死にスバルが頷くと、ようやく手を離す。
「じゃ、行くわよ。この概念空間内ではまず自分の出す魔法や技のイメージをしっかりと持つの」
「イメージ?」
「そう。スバル、コレに目を通しておいて!」
ギンガがスバルに一枚の紙切れを渡す。
そこにはなにやら複数行の文章が書かれていた。
「へ? こ、これこの通りにするの?」
「そう……私だってしたくないんだけどね、って大物が来たわ!」
ギンガが目を向けた先には遅れて合体を開始しているジュエルビースト、20メートルサイズが迫る姿。
その足元には無数のガジェットW型がいたら、ギンガは構わずに構えて、走り出す。
「そして、さらに己が名前をイメージする! 私の名前はギンガ・ナカジマ!!」
ギンガが加速。
脚部に嵌めたブリッツキャリバー――意味、電撃の如く進撃。
速度が急激に膨れ上がる、電光のような速度。
「手にし拳は銀河すらも打ち砕く絶倒流星!」
繰り出す一撃、それはガジェットWの認識速度を超えて打ち込まれる。
スバルは見た、ティアナもキャロも見た。
それはまるで星々が流れる様の如く。
「名付けて、ギャラクシースターダスト!」
ギンガの意味に授かりし銀河。
さらに星々の流れる姿を表現せし技名、二重の意味、イメージを増幅させた概念武術。
ギンガ・ナカジマ、彼女も立派なUCAT隊員だった。
バラバラに粉砕したガジェットWが不自然に放物線を描いて真上に飛んで、螺旋を描きながら地面に墜落。破片を撒き散らした。
「凄い! ティアナ、キャロ、私たちも続こうよ!」
「そ、そうね!」
「私はサポートします! ブーストアップ、ストライクパワー!」
出力上昇のブースト。
意味は直撃すべき力。
スバルが加速する、マッハキャリバー、音速の意味を冠せし相棒はその力を増幅させていた。
「はは、凄いね、マッハキャリバー!」
『Yes』
音速と電光、認識外の速度へと辿り付く二人のシューティングアーツ使い。
砕く、砕く、打ち込む。
リボルバーナックル、弾丸の如き拳打、音速超過の打撃を打ち込まれてガジェットが吹き飛ぶ、吹き飛ぶ、吹き飛ぶ。
名前を持たない彼らでは概念による強化されたシューティングアーツの使い手たちを止めることは出来ない。
そして、迫る。
ティアナの援護射撃を受けながら、姉妹は巨大なジュエルビーストの眼前へと迫っていた。
「見えた! どうする!」
「体勢を崩す。そしたら、例の奴を!!」
姉妹が意思を交換し、頷く。
バッと左右に別れた瞬間、その間をジュエルビーストの巨腕が粉砕した。
早い、概念空間による補助がなければ捉えられたほどの速度。
だがしかし、音速に迫るほどではなく、電光を捉え切れるには反応が遅すぎる。
支援
パープル・ヘイズっ!
「リボルバー!」
「ナックル!」
二人が回る。
クルクルと回転しながら、飛び上がり、振り下ろされた巨腕に左右から。
「キャノン!!」/「バンカー!!!」
障壁を纏った二人の打撃、豪腕粉砕。
左右から同じ着弾点に叩き込まれた衝撃波は逃げ場なくその血肉を蝕み、瓦解させる。
腕が砕ける、ミチミチと骨が砕け、血肉が裂け、神経代わりの配線が飛び出し、血の代わりとなるどす黒い機械油が噴出する。
さらに脚を翻す。
「ブリッツ!」/「マッハ!」
電光の速度、音速の速度、日本刀の斬撃が如き鋭い足刀。
それが窪んだ巨腕を畳み込み、叩き折る。
言葉にするまでもなく、二人は同時に叫んだ。
『キャリバーズ・コンビネーション!』
体育会系のノリか、それとも元々これらに対して素養があったのか、二人のナカジマ少女は蹴りの反動で飛び下がり、華麗に着地しながらポーズを決めた。
次の瞬間、スバルはにやっと笑い、ギンガは自己嫌悪に膝を屈しかけた。
「っ、まだよ! 動いて、二人共!!」
『え!?』
ティアナの警告に、スバルとギンガは腕を見上げた。
腕を叩き折られたジュエルビースト、その断面が不気味に蠢いていた。
びゅらびゅらと配線が動き出し、機械油が渦を巻き、紅いガジェットのものだろう幾つもの眼光が彼女達を睨む。
びゅる、びゅるるとおぞましい音が響き、次の刹那、無数の配線が触手のように伸びた。
それは音速であり、電光でもあるスバルとギンガと捉えるほどの速度と膨大な量。
「なっ!」
「っ!!」
即座に離脱したはずの二人の足首に配線が絡みつく、カツオの一本釣りのような速度で上に持ち上げられて、二人の肢体が上空に跳ね上がる。
高度三十メートルの高みへと数秒で持ち上がり、見上げるティアナでさえも首が痛くなるほどの位置へと運ばれた。
「スバル! ギンガさん!!」
「この、リボルバー!」
「ディバイイン!」
ティアナの叫びに答えるように、ギンガが大気の螺旋を左手のリボルバーナックルに這わせ、スバルが左手に魔力スフィアを構築し、反撃を試みるが。
ジュエルシードの我欲が許さない。
伸びる、伸びる、伸びる、無数の配線が彼女達の肢体に絡みつく。
口に猿轡のように噛まし、詠唱を許さない。足首に絡まる配線が勢いを増し、戦闘機人である彼女達の四肢を引き抜こうとする。
淫猥に胸部の周りに絡みついた配線が彼女たちの体を千切らんと強まり、ブルリと年頃にも関わらず大きくはみ出た乳房を揺らし、ギンガとスバルは痛みの悲鳴を上げた。
「このぉ! ファントム・ブレイザー!!」
地上のティアナたちにも聞こえるほどの絶叫、それにティアナが咆哮を上げる。
カートリッジを三連続で排出、暴発寸前まで高めた銃身を向けて、ティアナは引き金を引いた。
異なる世界で彼女と同じ術式で武神すらも貫いた魔力砲撃がジュエルビーストの中枢に直撃するが――深く穿たれた傷口は瞬く間に再生する。
「嘘!」
「ブーストかけたのに!」
キャロが顔を蒼白に染めて、ティアナが悲痛な顔に歪めた。
聞こえる、聞こえるのは友の悲鳴、大切な知り合いの絶叫。助けられないのか、才能の差なのか、ティアナが絶望的に怒りを覚えた瞬間だった。
「HAHAHAー!」
銃撃の雨が降り注いだ。
無数の魔力弾が遥か上空からジュエルビーストを穿つ、穿つ、穿つ、驚異的な速射。
レインストームと名付けられた技はまさしく雨の如く、嵐の如く弾丸を叩き込む。
「え?」
クルクルとライフル弾のように旋回しながら遥か上空から降りてきた影は配線の嵐を撃ち抜き、砕き、引き裂き、そして背後の剣を振り翳した。
「クールに行こうぜ!!」
両断。
一太刀にてスバルとギンガの配線を切り裂き、その人影は紅いコートを翻しながら二人を掴んで跳ねた。
迫る配線を笑いながら避けて、落下。
派手なバック転を見せながら、高度30メートル以上の位置から無事に地上に着地する。
「ふぅ、大丈夫かい。嬢ちゃんたち」
紅いコートが孕んだ空気を吐き出し、ゆっくりと地面に落ちる。
銀髪を煌めかせて、背後に身に付けた異彩な趣向の施された魔剣がガチリと音を立てた。
「え?」
その後姿に見覚えがあった。
ティアナは叫ぶ。その名前を。
支援
支援
支援
しいいいいいいええええええええええええええええんんんん!
「に、兄さん!?」
「よう」
それはティーダ・ランスターだった。
自慢の赤毛を銀髪に染めて、目に痛いほどに真っ赤なコートを翻し、特注品らしき刀剣(命名リ○リオン)を背負っているというコスプレ済みだった。
最悪な再会だった。
「なんで、そんな格好に?」
「あ。まあ概念補正が掛かるからな。あとなんていうか……」
くいっと首を捻り、ティーダは告げた。
「魂の親友って感じ?」
「なんでよ!!」
ツッコミを入れた。
ティアナの兄貴像がさらに砕けた瞬間だった。
「ま、とにかく」
ティーダが手を閃かせる。
迫り来るジュエルビースト、その顔面に目にも止まらぬ速射を撃ち込んだ。
その一撃は先ほどまでティアナが叩き込んでいたよりも遥かに強力で、装甲を削っていくのが分かる。
何故? とティアナは思った。魔力量の違い? いや、それだけじゃない。制御精度も違うけれど、それだけなんかじゃない。
「ティアナ、前に言ったはずだぜ?」
「え?」
「ランスターの魔法に貫けないものはないと」
そう、それは幼き頃の約束。
ティーダが彼女の遺した言葉。
けれど、それを本当はティアナは信じていなかったのはないのか?
「信じろ。ランスターの姓、それが放つ魔法に貫けないものはないのだと」
「……」
「俺が信じられないか? ティアナ」
信じられない理由なんて沢山あった。
コスプレしてたり、死んでなかったり、元気だったり、笑っていたり、護ってくれたり、けれど、けれど。
何もかも放棄する。
そして、まっさらに考えてティアナは微笑んだ。
「いえ、信じてるわ。兄貴」
「兄さんといって欲しいがね、不思議とそれが心地いいな」
構える。
兄妹が同じ構えを取り、銃口を一点に向けた。
息を飲む、意思を向ける、信じる心を銃弾に篭める。
「信じろ、最強の己を」
「うん」
魔力を高め、威力を高め、心を高める。
「こういう時はどう言えばいいか分かるか?」
「知ってるわ」
さすれば貫けないものはないのだと信じられる。
そして、引き金を――
『Jackpot.!』
引いた。
ジュエルビーストがその一発の銃弾で揺らぐ、吹き飛ぶ、怯む。
ずずぅんと地響きを響かせるそれを眺めながら、ミッドチルダ地上本部、その近くの特設ステージ裏で慌しく動くものたちが居た。
「カメラ準備出来たかー!」
「スピーカ、音響班全員チェック終了済みだろうな! ここでしくじったら裸一丁でクラナガン走らせるぞ!!」
タオルを頭に巻いた陸士たちが慌しく走り回り、次々と準備を済ませていく。
そして、その傍には椅子に座り、それぞれある楽器を持った少年少女たちがいた。
「うー、緊張するなぁ」
鉢巻を巻いた少年が手に持ったエレキギターを音も立てずに弾いた。
「大丈夫だよ」
長く滑らかに伸ばした黒髪、その中に一房のみ金髪を交えた美しい少女が少年の手の上に、手を重ねた。
きゅっと息を詰まったような声が鉢巻少年の喉から洩れる。このややエロめと蔑まれた言葉が吐かれたのに彼は気がついただろうか?
「あーいいねえ、この後輩共は。よし、ちさ――」
「はいはい、後でね後で」
何か呟こうとした大柄な青年の顔面に拳と流れるように肘のフックを叩き込んだ活発な少女が息を吐く。
「わくわくしますねー」
「これを見てワクワク出来るならお前の神経はどうやら配線がずれているんだろうな」
子供のように目を輝かせるブロンドの少女に、赤く焼けた赤銅色の肌をした青年がため息を吐く。
支援
支援一筋30年
_
( ゚∀゚)x"⌒''ヽ、 鍛えに鍛えた左腕
(| ...:: Y-.、
| イ、 ! :ヽ 求めるものはただ一つ
U U `ー=i;;::.. .:ト、
ゝ;;::ヽ :`i 今日も明日も腕を振る
>゙::. .,)
/:::. /;ノ
ゞヽ、ゝヽ、_/:: /
`ヾミ :: :. ゙ _/
`ー--‐''゙~
「しかし、いいわよねー。佐山と新庄は〜」
ぶーと唇を突き出す活発そうな少女。
「いいじゃねえか。俺たちはここで暢気に演奏してればいいんだし」
それに相槌を打つのは相棒らしき大柄な青年。
「じゃなくて、どうせならこうバリバリ戦って、蹴散らしてやりたいんだけど……非常事態にでもならないと許可が降りないのよね」
「だからといって、こんなことをやることになった意味が分からないがな」
などと、暢気な会話をしていたときだった。
「みなさーん。そろそろ時間ですよー!」
彼らの前に一人の少女が現れる。
それは美しき着飾った少女。
碧く流れるような新緑のドレスはまるで命の芽吹きを感じさせるほどに柔らかく、その手首に付けたブレスレットは自己主張は強くなくけれども、
持ち主を確かに輝かせる金剛石の光を帯び、その靴は妖艶に蕩けた魔女の唇のように真っ赤であり、深々と被った麦藁帽子から洩れる髪は大地の温かさを感じさせる柔らかでしなやかな茶髪。
美しい声だった。
鈴が鳴るかのように、声のみで大気が喜びに踊りだし、美の祝福を与えられたかのごとく清純と満ちる。
それは決して天性のものだけではなく、修練と努力、そして人の想いが満ち満ちたからこそ発せられる声だった。
「分かったわ、ルノーちゃん」
ルノー、そう呼ばれた少女が帽子の内側で微笑む。
返事を返した活発な女性もニコリと微笑み、何度やっても慣れていない鉢巻き少年に蹴りを入れてから、全員が立ち上がる。
ドラムが二人、ベースにしてサブボーカルが一人、エレキギターが一人、電子ピアノが二人、メインボーカルが一人。
それが彼女たちのチームだった。
「さあ行きましょう、私たちの戦場に!」
『Tes.!!』
そして、全員がステージに出ると、そこは喝采の嵐だった。
「ルノーちゃーん!」
「待ってたぜー!」
喝采、喝采、喝采、絶叫、咆哮、感涙の涙。
熱気が篭る、熱意に溢れる、まるで地獄、まるで天国。
沢山の陸士がいた、沢山の人々がいた、一般市民も陸士も他にも他にも沢山の人がいた。
その中で一人一人が前に出る。
『皆―! UCATしてるー!?』
ルノー、そう呼ばれた少女がマイクを手に叫んだ。
そして、会場が割れんばかりに声が轟いた。
すぐ傍は戦場だというのに誰も気にしていなかった。いや、気にする必要が無かった。
俺の歌を聴けええええ!支援!
『今このUCATが大変なのー! でもねー、私が力になれるって聞いて私やってきちゃったー!』
叫ぶ、声を上げる、心まで蕩かし、魂を震え上げるような声が轟いた。
『そして、私は一人じゃない。心強い人たちが沢山います! それはファンのみんなだし、この人たちです!』
ベースを手にした少女が手を掲げる。
『風見 千里さん!』
大柄な青年がドラムの椅子に座り、にやっと哂う。
『出雲 覚さん!』
そして、もう一人赤銅色の肌をした青年がサングラスを外し、ドラムの前で前方を見た。
『ダン・ノースウィンドさん!』
わたわたとした手つきで電子ピアノの前に佇む少女が二人。
『ヒオ・サンダーソンさんと御影さんー!』
そして、最後に鉢巻きを巻いた少年が唾を飲んで前を見つめて――
『えっとひば……ややエロさん?』
ずるっとこけた。
ぐわんぐわんとその拍子にエレキギターがやかましい音を立てる、笑い声が轟く。
「違いますー!! 飛場 竜司です!!」
『じゃ、飛場 竜司さんってことでー!』
「ことですか!!?」
全員の名乗りが終わる。
『皆さんは全竜交渉部隊っていうすっごい部隊の人だったんですよー! 皆、驚いてねー!』
わーという声が轟く。
喝采が、喝采が、世界に名乗りを上げていく。
そして、最後にルノーと名乗った少女が帽子に手をかけた。
『そして。私も名前を名乗るね』
『おぉおお!??』
ぱさりと麦藁帽子が空に飛ぶ。
そこにいたのは一人の少女。
左目に光を失いながらもにっこりと微笑む少女。
『ルノーことラグナ・グランツ!! 一生懸命に歌うからー』
叫ぶ。
ラグナが叫ぶ。
世界に響き渡るように。
『私の歌を聞けぇええええええええええええええええ!!』
演奏が始まった。
世界を救うための演奏が。
戦いを始めよう。
武芸とは舞いである。
舞いとは音楽がなければならない。
物語は色と舞いと歌によって彩られていく。
さあ歌を聞け。
オペレーションAHEADの開幕だ。
そっちかよ、支援
支援
ミス ラグナ・グランセニック の間違いでした。
苗字を間違えたー!! まとめでは修正しておきます
ノシ
GJ!相変わらず物凄いですね!
皆輝いてるなw
ルノー、川上氏のAHEADシリーズ以外のキャラかと
思ってたらヴァイスの妹とは。シェリルw
エリオ君は王道なキャラになってしまったw
アイドルなヴァイスの妹の活躍に期待。
変態兄がどんな反応するかw
何というネタ満載の怪ストーリーw
普通に勇者ロボのノリで戸惑いやら楽しいやら懐かしいやら……クラナガンがヒーロー過ぎる
このエリオは間違いなく修正不能な方向へ(変態街道)まっしぐらでしょうなーw
あとティーダがダンテのマブダチとか、マジ自重w
本家日本UCATの連中も出てきてワクワクですね。
さて、「闇の王女 第九章中編」19:50分より投下します。
20KB越えしてるので、支援をよろしくお願いします。
>『Jackpot.!』
赤と青の兄弟乙www
UCAT氏乙!
……でもエリオ×勇者は真面目にやっても成立しそうな気がしたw
GJ
キャロのエリオくんいっちゃった発言は物理的な距離以外のモノも含まれてるんだろうなぁww
昨日終わクロ読み終わったあー!
と思ったら投下来てたー!
GJ!
エリオが勇者シリーズの王道を進んでるwwww
ギンガさんもやっぱりUCATの隊員なんだね
星 銀
屑 河
こんな感じで四隅に文字が出てるんだろうなあ
あと美影さんの名前間違えるとそこの飛場・ややエロに成敗されますぜ
>>417 やっちゃったZE☆
御影× 美影○ まとめで修正しておきます!
侘びとして明日午後十時頃に続き投下すると予告しておく!
多分次回こそまた沈静化していた変態祭りになる予定です。
うぅぅっぅぅらやまし過ぎるぞぉぉぉ!!!!!エリオォォオォォォォォォォ!!!!!!
俺もクラナガンに乗りてぇぇぇっぇぇっぇぇ!!!!!!!エリオォォォォ!!!
そのまま勇者街道ぉぉぉまっしぃぃぃぐらぁぁぁだぁぁぁl!!!!!!
エリオもそっちに行っちゃったか……
ある意味純心だったが故のことなんでしょうね
フェイトがアニメを見せたヴァイスをどうするのか激しく気になります
UCAT GJ!
クラナガンの生体電流操縦……ガン×ソードっすかw
明日も楽しみにしてますぜ!!
GJ
そうか、グランセニックはルノーだったな
忘れてたぜ
時間ですので投下ー
魔法少女リリカルなのは 闇の王女 第九章中編
絶望の味を知ってなお、運命に抗うモノどもがいた。
この世界に神はいないと悟ってなお、祈り続ける人々がいた。
夜の闇を貪るように、眠りという逃避をすることも出来た。
けれど、この物語においてそれは無意味な仮定だ。
誰もが、たった一人を守るために戦っていた。
一人の青年がいる。彼が世界に望むのは、永久の幸福でも運命の呪縛から逃れることでもない。
女の子がいた。ボロボロに傷つけられてもなお、生き続ける選択をした少女が。
彼女を守って、護って、その果てに彼女が笑える世界を創り上げること―――
―――若人が背負うにはあまりに重い決断だった。
「それでも……僕は止まれないんだ……」
黒髪の青年はそう呟くと、デバイス「S2U」を撫でながら彼女を想った。
それは無償の愛に似たモノのようで、確かに違った。
情愛/狂愛/親愛――全てを孕んだ好意。でも、その瞳が宿すのはある意味において自己犠牲。
そう、自らの人生全てを捧げても惜しくないほど―――クロノ・ハラオウンは高町なのはを愛していた。
彼が本来望んでいたのは、誰だって望む人並みの幸福で、“彼女”と一緒に過ごす日々を死が二人を別つまで続けるというもの。
だがそんな幸福は、あの雪の降る寒い日、無邪気な彼女が永遠に失われた事件によって霧散した。
憎むべきは犯人たる狂人か?
それとも全てを計画していた最高評議会か?
あるいは、彼女を魔導へ引き込んだスクライアの少年か?
そのどれも否、だ。
そのどれもが所詮、この世界―――次元世界群を構成する一要素でしかなく、次元世界という枠組みそのものへ挑まんとする青年にとって、それらは些事だ。
すべては彼女を救うために。
故に、クロノ・ハラオウンは命じよう。提督服の裾を直し、XV級次元航行艦クラウディアの艦長としての職務を果たす。
彼――あるいは誰よりも彼女のことを案じている青年は、戦端が開かれた<聖王のゆりかご>周辺空域をブリッジルームの艦長席から眺めた。
オペレーターが情報を纏めて寄越す度に、艦隊司令として的確な指示を出し、刃向かう敵を殲滅していく姿は非情な冷酷さを漂わせていた。
ああ、非情で良いとも。外道と誹られようと、自分が成すことは変わりないのだから。
誰にも聞かれないように、そっと、愛しい女性の名を呟いた。
「なのは……君を、この手に取り戻してみせる―――」
悲痛なのは覚悟か、それとも男の在り方か。
ある意味において不屈の心を胸に、クロノは走り出した。
終焉へと。
物語の終着点へと。
何年か前のことだ。
最初に、なのはの身体のことを知ったのは、紛れもなくクロノ・ハラオウンだった。
それが果たしてなのはとクロノにとって、どういう意味合いを持っていたのかはわからない。
アースラがジェイル・スカリエッティの秘密研究所から奪取/生還させた少女の身体は、おぞましい科学者の手で念入りに弄られていた。
吐き気を覚えるほどの薬物投与/体組織の強化/リンカーコアのジュエルシードとの融合……彼女が味わってきた苦痛の何分の一でも良いから、
肩代わりしたいと艦の医師が嗚咽を洩らすほどの凄惨な姿。クロノはその言葉を、何処か遠い国の出来事のようにぼんやりとして聞いた。
なのはの身体が二度と元に戻らない? 誰のせいで? そんな思念が脳裏を過ぎり―――
―――錯乱状態で暴れるなのはの姿と、切ないほど弱々しい悲鳴をモニター越しに聞いて、その混乱は打ち破られた。
「なのは!」
暴走する魔力の濁流――彼女の体内のリンカーコアからあふれ出した魔力が、まるで津波のように医務室の壁面を叩く。
ビリビリと鼓膜を叩く音、発生した衝撃波に目を回しそうになりながら、別室から弾丸のようにクロノは飛び込んだ。
爆音。なのはが栗色の髪の毛を振り乱し、何事かを叫んでいる、絶叫している、耳が馬鹿になっていてわからない。
一際強い魔力の波動が撒き散らされ、その暴力的な衝撃に魔力の盾を吹き飛ばされそうになりながら、彼女に近寄る。
「なのは、大丈夫だ、僕が助けるから――」
何事かを、涙しながらなのはが言った、確かに言葉として発した。
涙は煌めく星のようにポロポロと零れていき、淡い雪のように表情が崩れていく。
近寄る――彼我の距離は約五メートル。それでも聞こえないほどの暴風域を展開する、純粋な魔力の暴力に脅威を覚えながらも、
クロノは努めて笑顔に徹した。大丈夫なのだと、もう薄暗い地獄から彼女は抜け出したのだと伝えたくて、必死に近づいていく。
四メートル。徐々に声が聞こえてきた。
「―――や、わ――こ――」
三メートル。一際強い魔力の塊がシールドに叩きつけられ、クロノの腕に血が滲み始めた。
なのはの身体に、もう少しで手が届く。逸る気持ちを抑えて、冷静に歩を進める。
伝えたかった――どんなに彼女が傷ついていても、きっと自分が支えてみせると。
二メートル。声がはっきりと聞こえた。
「近づかないで――クロノ君――私、わたし――貴方を殺しちゃう!」
爆圧。折れるんじゃないかと思考するほど、爆発の衝撃がシールドを支えるクロノの両腕に掛かった。
その負荷はあまりに重く、馬鹿げた大きさの圧力に軋みを上げる筋繊維、骨格の上げる悲鳴に似た激痛に顔が歪む。
思わず後退したくなるほどの苦痛に耐えて、足を前に進める。筋繊維の断裂する音が聞こえるのではないか、と思わずにはいられない痛み。
そうか、と得心がいった。なのはの長い髪が強風に煽られて揺れている――まるでクロノを拒絶し、阻むのが意志であるかのように。
この魔力の暴風域は、言わば高町なのはの他者への拒絶の壁であり、それ故に侵入者を阻んでいるのだ。
一歩、前に進んだ。腕のシールドが軋みを上げてひび割れていく。
「なのは」
びくり、と彼女の顔が歪んだ。
とても悲しそうな顔で、いやいやと彼女は首を振る。
「大丈夫だ」
シールドが崩壊していき、魔力の濁流が執務官服を着たクロノに直接叩きつけられる。
痛い、熱い、燃えるような感覚が皮膚を叩き、生身の部分をどうしようもない痛みが襲う。
それでも。
伝えたい想いがあった。
手を伸ばせ、クロノ・ハラオウン。
彼女の顔は―――本当にすぐそこにある。
「だ、めぇ――わたし、本当に――」
喉仏が出て、ほんの少し、いや本当はすごく低くなった声で告げた。
傷だらけ、魔力流によって皮膚が切れて血が滲む手で、なのはの柔らかな頬を撫でた。
白くなめらかで―――本当に、綺麗だった。
「――僕を誰だと思っているんだ? クロノ・ハラオウンは、絶対に君を見捨てたりなんかしない。
約束しよう、世界を敵に回しても、君だけは救ってみせると―――」
なのはは泣いていた。
継母に捨てられたボロボロの白雪姫みたいに、どうしようもなくって泣いていた。
その頬を撫でてやりながら、クロノは左腕で彼女の手を取り――ただ、握りしめた。
きっと大丈夫だと。彼女を取り巻くすべてが嘘であっても、自分という存在だけは真実なのだと、伝えるために。
何時しか魔力の暴発による暴風域は終わり、絶対的な脅威に見えたなのはの中に宿るジュエルシードの輝きも、失せていた。
「……ありが……とう」
涙でぐしゃぐしゃになった顔をほんの少し綻ばせて、彼女はそう言った。
思えばこのときからだったのだろう、クロノ・ハラオウンが高町なのはという少女に“本当に”惹かれたのは。
超巨大艦船型ロストロギア<聖王のゆりかご>内部――聖王の玉座へ通ずる通路内。
黒い甲冑――半ば以上人型であることを放棄したような鋼の塊が、幾条もの光の矢を放つ。
高濃度AMF下においても輝きを失わない魔力の矢は、光学迷彩を展開していたガジェット・ドローンW数機を打ち砕き、爆発させる。
内部に動力機関を積み込んだ大型機動兵器であり、AMFという盾を持ったガジェットWの重装甲を撃ち抜く魔法、その出力は桁違いだ。
黒き甲冑の騎士は、背中に翼のような推進機関を備え、右手に黒と黄金の魔仗、もしくは槍を携えて飛行――広大な通路を、魔力反応の強い方向へ向けて進んでいた。
事前にクロノから受け取っていた情報では、聖王の玉座こそこのキロメートル級機動兵器の中枢なのだという。
であれば、そこに行けば彼女にとっての仇であり、憎むべき相手であるジェイル・スカリエッティの居場所も分かるのかも知れなかった。
要するに当てずっぽうであり、直感に従った行動だ――そんな自分に、黒い魔導師“高町なのは”は苦笑する。
「……そう、これは私の妄念」
既に、この身は一人きりではない。
ルーテシアもユーノもクロノもフェイトもいる。
たとえ離れていようと、心通わせた人がいるその温かさだけで、彼女は泣くことが出来た。
まだ、心は死んでいない―――そう教えてくれた幼い少女、ルーテシア。
何時までも自分を待ってくれていた、ユーノ。
大言を吐いて、ボロボロの自分を救ってくれたクロノ。
どんなにぶつかりあっても親友であるフェイト。
こんなにも、多くの人がいるのだ。
「勝手に死ねない、よね」
それ故の、未練だった。
何も失いたくなどない、という思い。
飛行魔法の速度を上昇させ、通路を駆け抜けると―――
―――途轍もなく広い、大空洞とでも形容すべき空間が広がっていた。
地平線の果てがあるのではないかと疑うほどの広さ、そして虚数空間の如き虚無を内包した空気に、天井の高さは計測不能なほどで、
下手をすれば次元航行艦一隻が丸ごと入ってしまうほどの大きさ。おそらくは次元境界線を操作することで生成された、疑似空間の類だろう。
一体この空間を維持するのにどれだけのエネルギーと超越的な技術が用いられているのか。
その何処か現実離れした、特大のがらんどうの中心に“それ”はいた。
ぞわり、と総毛立ちながら、レイジングハートへコマンド――魔法術式を構築していく。
そこに立つ存在の背に流れる金髪が揺れ、手に持った黄金の杖を掲げてそいつは笑う。
白い法衣のようなバリアジャケットを纏った、なのはとそう歳は変わらないであろう少女。
神秘的なまでに美しい容姿、その少女は流暢なミッドチルダ語で語りかけてきた。
「こんにちは、高町なのは――“C”の預言風に言うと“闇の王女”かな?」
「貴女は……」
「私はスカリエッティに生成された聖王クローン体、聖王ヴィヴィオ。
つまり、貴方の敵―――なのかな? それは貴方次第だけれど」
くすりと笑うと、彼女は何処までも可憐に目をすがめ、なのはという存在を視認する。
緑と赤のオッドアイがきらきらと輝き、黒い甲冑と翼によって宙に浮く高町なのはを見据えた。
全身を漆黒の装身具と甲冑で覆い尽くし、顔すらフルフェイスの仮面で覆った姿は、まるで死神のような威圧感。
槍のように尖った長大かつ黄金色の杖――レイジングハート・エクセリオンの切っ先はヴィヴィオに向けられ、術式の集束を待ち望んでいる。
杖の戦端で膨れあがるのは純粋魔力の光球――砲撃魔法の前兆たる魔力スフィア――カートリッジが四発分排莢され、内部の圧縮魔力がさらに出力をブーストする。
その出力係数は馬鹿げている――巡洋艦主砲クラスの圧倒的なエネルギーが、指向性を持った爆撃となりて降り注ごうと胎動し、円環と共に集束された。
ヴィヴィオは、その大脳と直結した高速演算システムによって術式を解析しながら、なおも語りかけた。
「ねぇ、貴方の戦う意味は何? 復讐? 義憤? 怒り?
それとも―――貴方は“惰性”で人が殺せてしまうのかな?
スカリエッティの居場所はね、近いけれど―――貴方を通すわけにはいかないな」
それは言葉という呪いだ。聞き続ければ、心が折れてしまう類の毒。
呪縛となる音を遮るために、バインドを展開――相手の四肢を任意の空間座標に縛り付け、砲撃の照準を完了する。
「――貴女には、関係ないっ! ディバイン―――」
レイジングハートの自動照準による修正も加え、解き放つ。
《―――バスター》
刹那、膨張しきったエネルギー球が一方向に向けて放出され、苛烈な光の刃が聖王ヴィヴィオに鉄槌の如く振り下ろされる。
じりじりと空間を侵す光量とエネルギー、瞬く間に人間一人の身体など焼き尽くす業火を前にして、ヴィヴィオは―――
―――笑っていた。
「本当に」
バインドを何事もなかったかのように、一度に破壊してすり抜け、
「この程度の」
白い法衣に包まれた右腕を、天から振り下ろされる光の奔流にかざし、
「能力で」
聖王の身体に刻まれた遺伝子が覚醒、<聖王>を護るための防御技能を発動させる。
五感とリンクした大脳の高速演算システムが力を開封し、砲撃の術式を瞬く間に解析/馬鹿げた出力のフィールド魔法が光の刃を受け止めた。
「現人神と言われた“聖王”に挑もうなど―――!!」
じりじりと云う灼熱の底にいるような焦げついた音。高速回転する三角形のベルカ魔方陣が桃色の魔力流を受け止め、
次々と分解して魔力素に戻していく―――その処理速度は神速の域であり、魔力の激流が術式を食い破るよりも遙かに早い。
なのはが全力で、自身の体内に眠るジュエルシードと共鳴させることによって、引き出す魔力量を桁違いにしているにも関わらず、
砲撃は一ミリメートルたりとも通らず、むしろ押し返されている錯覚を覚えるほどに圧倒的な“力”。
レイジングハートが砲撃の中止を訴え、なのは自身のリンカーコアが上げる悲鳴を察知し、砲撃を強制停止。
自らの砲撃を片手で凌いで見せた聖王に驚愕――そして何よりも過負荷に悲鳴を上げる身体に、なのはの姿勢が崩れた。
ヴィヴィオがその隙を見逃すはずもなく、瞬時に空中へ一千を超える魔力の短剣が生成された。
その一本一本に円環の魔方陣が発生しており、魔法の産物だと教えてくれた。
さしずめ槍衾に似た光景―――ふらついた身体を無理矢理奮い立たせ、ブラスターモードの魔力障壁で防ごうとするが、
先ほどの魔力行使で身体が上手く動いてくれない。規模が桁違いだったが、見覚えのある術式だった。
何時も自分を支えてくれた青年、クロノ・ハラオウンの得意とする範囲攻撃魔法。
その名を―――
「―――スティンガーブレイド・エクスキューションシフト」
聖王ヴィヴィオは、穏やかな表情で処刑執行を告げた。
トリガーワードと同時に一千本を超える短剣の群れが、音速の壁を突き崩して迫った。
彼我の距離は約百メートルほどであり、縦横に展開された短剣群を避けきる術などない。
高速飛翔体と化してなのはを刺し貫こうとする短剣は、黒騎士の甲冑を包囲した刹那に炸裂――粉塵と爆風を半径数百メートルの空間にばらまき、
爆風で聖王自身を巻き込みながら粉塵は広がり、辺り一帯は暗闇に飲まれる――視覚補助魔法なしでは一寸先も見えないほどに。
元々<聖王のゆりかご>の人工照明によって照らされていた室内――そう形容するには広すぎる疑似空間だが――は、粉塵の煙幕によって遮光されたのだった。
爆音の残響が響き、漸く“薄暗い”と言える程度の明るさになった頃、ぽつりと聖王は呟いた。
「これで終わり?」
「まだだああぁぁぁっ!!」
瞬間、爆煙の隙間を縫うように飛来するもの――六枚の光の翼を生やしたレイジングハート・エクセリオン。
高速の刃と化した魔杖の一撃は、<聖王の鎧>が自動生成したバリアーに阻まれるが、それを突破しようと
先端に半実体化する魔力刃<ストライクフレーム>を形成、瞬間突撃システムの構築に成功し、突撃を試みる。
A.C.S――《Accelerate Charge System》――高速突撃砲エクセリオンバスターA.C.S対応形態。
なのはの騎士甲冑は所々傷つき、ひび割れているが健在だ。先ほどの攻撃を切り抜けたのは、なのはの咄嗟の機転だった。
包囲攻撃を防御しきれないならば、攻撃を打ち消す魔力攻撃で包囲網に穴を開ける――なのはの豊富な魔力がなければ不可能な戦術。
一瞬でエクセリオンモードへレイジングハートを可変させ、ブラスターモードとの併用によってさらなる力を引き出し、
<ストライクフレーム>によってスティンガーブレイドを打ち消してヴィヴィオの懐に潜り込む。
過負荷が身体を蝕む禁断のシステムを、迷いなく使用する――激痛が神経系を駆け抜け、脳髄を痛みが支配。
皮膚は泡立つようで、肉体で痛まない部位など存在しないと錯覚する感覚。
苦悶の呻きを上げながら、トリガーワードを呟いた。
「くぅぅぅッッッ! エクセリオン―――バスターッッ!!」
「面白いね――<聖王の鎧>とどちらが勝つか」
本来あり得ない、空間が軋む音が聞こえた。
次元境界線が曖昧な空間の特性故か、高純度のエネルギーの激突に硝子が割れるような音が響く。
虹色の魔力光<カイゼル・ファルベ>――その幻想的な光を打ち消す桃色の光、<ストライクフレーム>の魔力刃。
音速を凌駕し、その先にある超音速の領域に達する激突――ヴィヴィオ側の圧倒的な魔力の壁によって衝撃波は相殺されているが、
それでも止まらないエネルギーの濁流がレイジングハートから暴発に近い形で放出され、障壁を叩き割っていく。
「へぇ……!」
ヴィヴィオはおそらく、戦いが始まって以来初めて、攻撃をその身に受けようとしていた。
<聖王の鎧>の特性と高速演算システムの併用によって、無敵の防御力を誇る一騎こそ“聖王”。
だが、ジュエルシードという悪夢の力を借りたエクセリオンバスターは、戦艦の主砲を御せる<聖王の鎧>に処理しきれるエネルギー量の限界を突破し、
貫通せんとしていた。処理限界――ヴィヴィオの身体が光の渦に飲まれた。ありったけの魔力をフルドライブで注ぎ込み、高町なのはは翔るように砲撃を放つ。
リンカーコアと融合したジュエルシードが暴走しようとするのを抑えつけ、激痛によって視覚も聴覚も馬鹿になり、咆哮しながら魔力を放ち続ける。
幾度/何秒/何故――叫び続けたのかわからなくなるまで―――そして。
「―――よくやるね。貴方を戦士として手本にして良かった」
なのはを驚愕せしめる声が聞こえた。
打ち破ったはずの敵の声が、前方から聞こえたのだ。
レイジングハートと騎士甲冑の限界――魔力放出を終了したとき、腹に衝撃。
なのはの重いとは言えない身体――しかし騎士甲冑によって着ぶくれしている――が空高く蹴り上げられ、
虹色の指向性散弾の雨が、自爆同然の突撃戦法でボロボロの甲冑/肉体を打ち据える。
腹部装甲が崩壊する鋭い蹴り――戦艦の対空射撃でも傷つかなかった装甲が、ただの膝蹴りに破壊されていた。
内臓に強い衝撃――化け物じみた速さで打ち出される攻撃は、すべて徒手空拳の打撃。
レイジングハートを手放し、杖と同時に床へ叩きつけられた。
吐き気を覚え、唾液を仮面の内部に吐き出しながら呻いた。
「がはぁ――げぁ!」
《マスター!》
「ねぇ、貴方が戦う理由―――私はこう推測しているんだけど」
地面へ打ち付けられ、ぴくりとも動かない高町なのはを見下ろしながら、聖王は語る。
おそらく最もおぞましい呪詛を語りながら、酷薄に、加虐的に笑う。
やめろ、と心中で叫んだ。どう頑張っても聞こえてしまうそれに、心から恐怖した。
「その“不屈”は――“呪い”でしょう?」
聞こえてしまった。
「今の貴方――ナンバー105――という存在が生まれる過程で消費された命の重さ、それ故の行動。
復讐は、断じて強い決心や決意に基づくものではない。一度壊れかけた心を補強するために、煉獄の道を選んだだけ。
しかも、その決断すら殺されていった命の重さに耐えきれなかったから―――」
「ちが……う……」
「―――違わない、貴方の目の前で死んでいった実験体達が、貴方自身を呪った。
修羅道に落ちたのは自分自身の意志? 穢れてしまったから日常に戻れない?
そのどれも違う。貴方は所詮―――」
やめろ、それ以上は言うな。
腕を伸ばしてレイジングハートを拾おうし―――
「―――がらんどうの心を埋める術を、殺戮に見出した化け物(モンスター)でしかない」
―――生きる意味など、失われていたのではないか?
どう覚悟しようと――穢されたものは穢されたのである。
この身体の何処に、狂気の科学者のメスが入っていない部位があるだろう?
心の痛みは限界で、自分という存在が消えそうなほど痛くて痛くて―――許容など出来なかった。
何処かで自分に嘘をつくべきだったのだ。それが何時か破綻する嘘だったとしても。
もう駄目だ、と悲鳴を上げる心をなだめすかして、もう一度“高町なのは”として生きる道を探せば良かった。
家族の元へ戻ることが出来なくても、支えてくれる人々が必ずいたはずなのだ。修羅に落ちてなお、自分を支えてくれる人がいたのだから。
だが―――自分は、老人達の甘言に踊らされ、結果として多くの人を殺めた。
そこに―――意味はない。彼らの犠牲は、無意味だ。どう足掻いても、なのはという人間自身の罪でしかなかった。
故に、高町なのはは救われてはいけない―――そんな強迫観念こそ、死にたがる心の正体。
生きる意味も見出せない人間が、人の命を奪って良いのか?
「わ、た、し、は―――」
煉獄と狂気の炎で保っていた精神が、ゆるゆると崩れていく。
その様子をじっと見ていた聖王ヴィヴィオは、腰に提げた長剣型アームド・デバイスを起動させると、流麗な金髪を揺らして抜き放った。
虹色の魔力光、<カイゼル・ファルベ>を纏った鋼の刀身が怪しく七色に輝き、その切れ味を魔剣じみたものへと変える。
そして、穏やかに精神の壊死を迎えようとしている、高町なのはへ語りかけた。
「貴方の行為によって、次元世界は生まれ変わる。
貴方の涙は、次なる時代の光となるでしょう―――さようなら、高町なのは」
剣はなのはの首を刎ねようと振り上げられ。
背後から迫る雷の矢を切り払うために刃は使われた。
「なのは―――!!」
「フェイト……ちゃん……?」
光ない瞳で仮面越しに見た友人は、輝かしく女神のように美しかった。
長い金髪は風にはためき、加速魔法の連続による雷光の如き速さで真・ソニックフォームの身体は加速し、
一対の長剣ライオットザンバーが、二刀流の連撃となりて打ち掛かった。聖王ヴィヴィオは同じく金髪を揺らし、振り返りながら剣を叩きつけるように横薙ぎに一閃。
雷光の魔導師の二刀、現人神たる聖王の一刀―――剣閃と剣閃が交わって鋼と光刃の打ち鳴らす音が生まれる。
幾度も生まれる剣戟の戦舞に、美しい金属音/空間の震える音が幾重にも残響として鳴っていく。
高速で動き回る魔導師に翻弄されつつも、聖王の高速演算システムは最適な斬撃を見つけていた。
手数と速さでは圧倒的なはずのフェイトは、<聖王の鎧>の絶対守護領域によって干渉を受け、一瞬の隙が生まれる。
その一瞬に、ヴィヴィオは剣を握っていない左の腕でフェイトを弾き飛ばした。
「くぁ?!」
聖王の魔人じみた“力”に吹き飛ばされ。
体勢を崩したフェイトへ向けて、踏み込む―――必殺の斬撃。
身も心もボロボロの黒騎士は、悲痛に叫んだ。
「フェイトちゃん!」
ジェットエンジンの如き爆音。
同時――加速する突撃槍が、音の領域を超えてアームド・デバイスの剣閃を防いでいた。
とんでもない衝撃と、音の反響に誰もが刮目する。
かち合う鋼と鋼。
「フェイトさんは―――殺らせない!」
揺れる赤毛は短く乱雑に切り揃えられ、茶色のロングコートが風にはためいた。
聖王ヴィヴィオのオッドアイが怒りに細められ、美麗な顔が怒りに歪んだ。
その薄い唇から紡がれたのは、少年の名前だ。
「エリオ・モンディアル……! 私の臣下でありながら、裏切るかっ!」
「僕は、もう自分の運命から逃げない! フェイトさんが教えてくれた、僕は誰かの道具じゃない、人間なんだって。
聖王ヴィヴィオ、僕は―――貴方に反逆する! 貴方の統治する世界に“幸せ”はないと思うから――」
「……」
なのはは、何故かその言葉が胸に響くのを感じた。
声が聞こえる――最高のパートナーの、主を呼ぶ声が。
《マスター、貴方がご自分を否定されようと、我が身は共にあります。
立ってください。立って、立って、生き抜いてください》
立てるのか、自分に。こんなにも壊れてしまった自分が―――
レイジングハートの声が、心に染み渡る。
《幾千、幾億の戦を経ようと、我が“不屈”の名はマスターの胸にあるはずです。
どんな状態だろうと、あの小さな姫君との約束で、生きて帰る義務が貴方にはあるのです!》
―――約束があった。必ず、皆で笑いあえるように生きて帰ってくるのだと。
レイジングハートは――光り輝く紅玉は、自己修復を終えた完璧な状態で、なのはの目の前に在った。
黄金色の杖として、ドラムマガジン式カートリッジによって禍々しい武器としてありながら、依然―――相棒だった。
ふらり、と黒騎士は立ち上がり、ボロボロの甲冑をパージ。皆がその異音に振り向き、驚愕する。
蒸気と共に黒い舞踏服のようなバリアジャケットに身を包んだ少女は、レイジングハート・エクセリオンを手に、不屈の心を証明していた。
あの日のように力強く、“高町”の姓(かばね)を受け継ぐ者として―――ただ一人の人間として、生きていた。
「……そうだね、レイジングハート……こんな私でも、護りたい約束がある。
それだけで、戦う理由なんて十分―――!」
《All right,master》
絶対者たる王に向けて、彼女は吼えた。
母親譲りの栗色の髪の毛が、風に揺れた。
「行くよ、聖王ヴィヴィオ――貴女には、負けてられないっっ!!」
支援するぜ!
あとがき
疾れ、お前は一人じゃない!
どうも、そんな熱血なノリが大好きな私です。
前回、再生怪人クイントで〜とか書きましたが、ありゃ嘘だ。
いえ、というかプロット組み直したらこっちの話の方が早く投稿できる感じになりまして、このような結果に。
ヴィヴィオはクアットロとマッド・スカ博士に養育されたのでこんな立派なサディストに。
幼女フォームはあるのか?!
次回こそ、ナカジマ一家+五番のお話をお届けできたらいいなー。
書いてる内に完璧に今回、“クロノ→なのは”ですが、ユーノ君の見せ場も作ってありますのでご安心……?
どっちも「なのはLOVE」です、愛は人を救うんです! とプラネテス:タナベ張りに。
次回はもう少し早く投稿できるように頑張りたい――というわけで執筆です。
ではでは。
>UCAT
GJ!ついにあの主力が登場ですね。打撃夫婦にもっと出番を!
GJ!
なんていうかヴィヴィオつえええ! こんな聖王だったら許せた! ビバラスボス!
そして、なのはが砕かれつつも立ち上がっていく様が男らしい!(まて)
あとクロノかっこいいよ、クロノ! 黒くて純真で、なんていうか素敵だ!
対聖王戦なのはに加えて、フェイトに、エリオと参戦して聖王に勝てるのか?
しかし、洒落にならない強さだなぁ。本来ならこれぐらい強かったんだろうか?
闇の王女もクライマックス、次回も楽しみにしているぜ!
GJ!
かっこいいなあクロノ
もうなんか何があろうとも自分を曲げたりしそうに無い辺りが特に
437 :
一尉:2008/12/05(金) 22:19:53 ID:0Xm0ekGZ
クロノ支援
そう、リリカルなのはに足りないのは、この問答無用でカリスマ全開なラスボスだっ!!
管理局でもスカ側でもない
次元海賊クロスボーンバンガード!!!!
っていう妄想があるんだけど、文章に出来ないオレを許してくれ
まだ書く気はないんだけど、このスレって何個ぐらいまでならクロスしても許されるの?
ぶっちゃけ始めて書く人間が三つ四つの作品を絡めて問題なくまとめられるわけないが、ちょっと聞きたかったので
>>440 好きなだけどうぞ。そこに規定はないと思ったがね
ただ多重クロスは叩かれやすいのでご注意を
あとそういう質問はウロス辺りの避難所でしてください
まとめきって完結させるなら特に問題は無いと思うが
ていうかまとめられないの前提かよw
多重クロスはおススメしない。
ほぼ間違いなく破綻するから
まあ石川作品でクロスとか同じ作者で
世界観が繋がってるやつならまだいいかもね
あとはジ・エンドの奴みたいなのとか
それ以外はやっぱり避けた方がいいと思う
キングダムハーツとクロスさせたら消されそうで怖い
でも妄想止まらない
どのみち文章に出来ないから関係ないか
夢の国は夢のままであるのが万人にとって平和なんだ
出た瞬間にみんながやばいやばいいいはじめたもんな
R-TYPEGJ!!
願わくば地球軍がすべてを灰にすることを祈ります。
遅くなりましたがUCATの方、闇の王女の方、乙です。
しかし素晴らしい執筆速度ですね。
一割でいいから分けてもらいたい。
>>446 それは某黒ねずmゲフンゲフン、ドラの苦手なものの
親会社のせいですか?
こんな掲示板まで来るのかな?<ネズミーランドは
来る…きっと来る…!
裏の林からやってくる
>>UCAT氏
カオすすぎる。エリオがなんか主人公になれそうな感じがしてきた。
DMCネタ来ると思ってたらやっぱり来たか。
笑わせていただきました。続き楽しみにしています!!
夢の国のキャラを出さなければあるいは……だめかな?
>>433 王女様立ち上がれ!
聖王やべぇー
・・・て、かんじですね。いや、強い強い(汗)
後クロノ、ユーノびいきの私ですが、ここのクロノは応援せざるを得ない!
ともあれGJでした!
突然ですが・・・
現在こちらにて趣味で執筆してますSSのキャラと、Sts
のキャラ数名を絡ませたSSを考えております。
まだまだ先になるとは思うのですが、こちらの方に投下して
OKでしょうか?
>>455 多分だめです
載せたとして感想こないで
著作権がなんたらと叩かれると思います
それでも続けたら多分ずっと叩かれ続けるうえに下手すれば運営議論に行く可能性もありそうです
>>458 >>1 >オリネタ、エロパロはエロパロ板の専用スレの方でお願いします。
>>460 了解しました・・・
でわ創作発表の方に投下します。
m(。。)m
というか、キングダムハーツのキャラってソラも含めてオリキャラもスクエニじゃなくて
ネズミ王国が版権持ってるから多分無理。スレ違いスマン
>UCAT
確かエリオは10歳だったよな? ケンタ(ファイバード)や勇太(ジェイデッカー)と同年代じゃないか。
勇者ロボのパートナー適齢期じゃないか!(9〜12歳が私的適齢期と思っている)
やっぱり勇者ロボには赤色と短パンの似合う男の子が必須だと思うんだ
>>433 ゲッター昴氏GJでした!!
いやはや熱い展開ですね、最後まで目が話せませんぜよ。
これからも執筆頑張ってください!!
こんにちはー。
ちょっと諸事情で今回からトリップ変更しました。
ちょっくら、50分頃からミッドチルダUCATの続きを投下します。
誰も10時までにもう一本続きを投下しないなんて言ってませんよ?
出来れば支援をお願いします。
まあゆっくり投下しますので。
今夜も変態祭り!!! Tes.
ちょwww速ええwww
Tes.
リアルでの生活は大丈夫なのかww
支援
Tes.
『えええ〜!?』
ミッドチルダUCAT意見陳述会会場。
そこではもう何度驚いたのか呆れたのか分からない声が上がっていた。
「エリオー! なんでそんなのに乗っちゃってるのぉおお!!」
バンバン、机を叩きフェイトが悲しみの縁に蹲る。
「フェイトちゃん、しゃあないんや。男の子は一回ぐらい勇者に憧れるもんやで」
「うぅ、こ、これがエリオの選んだ道なら応援するのが親の務めなの?」
フェイトが涙に潤んだ瞳で慰めてくれるはやてを見上げたが、さっとはやてに視線を逸らされた。
逸らされた! ガビーンとショックを受けているフェイトは捨て置いた。
誰も彼女を慰め続けるほどの余裕がなかった。
そして、不意になのはが呟いた。
「あの、一つ聞いていいかな?」
「何かね?」
質問を許すと、佐山が告げると、なのはは頬を掻いて呟いた。
「ルノーって誰?」
瞬間、誰もがザッと彼女から退いた。
「え? え? え???」
憐れむような目。
異世界人を見るような目。
ああ、かわいそうだけど明日には食肉になるのよね。という豚を見るような目、目、目。
それになのはがキョロキョロと困ったような視線を巡らせて「わ、私って世間から置いてかれてる?」と今更のように気がついた瞬間だった。
「ご存じないのですか!」
シュタッと不意に天井から何かが飛び出し、なのはの目の前の机に着地した。
ふえええ! となのはが髪の毛を逆立てて仰天するのも関わらず、頭も黒、顔も黒、衣装も黒、何もかも黒尽くめの人物――いわゆる黒子の格好をした人物がずずいと顔を近づけ、ガシッと黒子がなのはの肩を掴み、洗脳するように叫んだ。
「ご存じないのですか!? 彼女こそ、ミッドチルダUCATのお遊戯会から注目され、瞬く間にシンガーアイドルの道を駆け抜けた超次元シンデレラガールルノーちゃんです!! 大事なことだから二回訊ねました!!!」
「そ、そうなんですかー!!」
「分かりましたね? 分かってくれたのならば嬉しい。ではっ!」
半泣きになりそうな勢いでガクガクと首を振ったなのはの肩から手を離し、黒子は再び天井へと跳んだ。
重力を逆転されたかのように彼は天井に張り付き、そのままぐるりと天井が回転していなくなった。
……この建物は一体どういう改造が施されているのだろうか。
知りたいような、知りたくないような、そんな気分が充満する中、はやては勇気ある質問をした。
「ところでもうなんていうか凄い今更なんやけど、あんなところでライブさせて平気なんかい?」
諦めを通り越し、悟りの領域に達し始めたらしいはやて。
「問題は無い」
レジアスは平然としたまま告げた。
「あそこには陸士の70%が詰めておるし、考えられる限りの防備は行っている。抜かりはない」
「せやけど、敵が攻め込んできたら――」
「問題は無い」
ニヤリと微笑むレジアス。
佐山が隣でどうやら脳に来ているらしいなと告げて、新庄がその首を絞めていた。
「最高の護衛がついているからな」
「護衛?」
その瞬間だった。
「うむ。最高のスナイパーがな」
何回……この引き金を引いたのだろう。
数百か? それとも数千か? もしかしたら万にも達しているかもしれないし、あるいは妄想で記憶を誤魔化して、まだ百回にも満たない数しか引いていないのかもしれない。
決まっているのは、引き金を引くたびに心に積み重なる重み。
体から搾り取られる魔力の代償に、何かを打ち抜いたようという感触。
現実の一部を切り取って、都合のいい夢のように改変された光景がスコープの中に映っている。
見えるのは一つの景色
映し出される黒点に照準を合わせて、彼は息を潜めて待っていた。
「……相棒、風速は?」
『――3ノット』
観測手にして、ただ唯一の己の相棒から返ってきたのは正確無比な測定結果だった。
「そこそこあるか。ストームレイダー、弾道補正の修正を頼む」
『OK』
3ノット。
時速にしておよそ11キロの弱風。
突風の可能性も考えると、通常の射撃だと弾道が逸れる可能性があった。
高密度の圧縮した魔力弾とはいえ、あらゆる大気を紙くずのように撃ち抜けるというわけではない。
風を読み、射角を保持し、周囲の地形と環境の全てを頭に叩き込んで、それらの僅かな失敗の可能性を極限まで削り落とし、初めて“狙撃”は成立する。
――狙撃。
そうこれから行おうとしているのは狙撃だ。
見えないところで、卑怯にも敵対者を認識することすら許さず、一方的にその意思を刈り取る最低の行為だ。
真正面から戦えるだけの力も素質も技量も持たない彼がただ唯一行える行為。
彼の一つだけの存在意義だった。
「……」
息を吐く。
呼吸を止める。
僅かに確認した時刻は既に作戦の開始を知らせている。
これからの数分間が全てを決める。
カチカチカチ。
頭の中で時計が秒針を刻む。
カチカチカチ。
腕の骨で銃身を支え、被った迷彩シーツの重みに耐えながら、一時溶接の構えを崩さない。
己の腕に鉄心を、着いた肘に溶接を、指に掛けた引き金にスイッチを載せるイメージ。
ただの一押しで全てが解決すると思い込み、呼吸と動きを停止させる。
カチカチカチ。
タイミングを計れ。
意識を細めろ。
集中すると思うな。ただそれに熱中し、夢中になり、意識を溶かす。
カチカチカチ。
酸素を奪われた肺が痛みを訴える。
脳が軋み、呼吸をしろと叫び声を上げ出す。
けれども、それは決して彼には届かない。
轟々と吹き付ける突風も、目の前を吹きぬけるゴミくずも、響き渡る前奏も、彼の意識に見えず、ただ彼はスコープの中の光景に埋没し。
カチカチ――カチリ。
歯車が重なる音と共に、彼は引き金を引いた。
ストームレイダーが知らせる有効距離、その内部に侵入したくだらないガラクタ、その中心部を打ち抜く。
風を切り、大気を歪め、目にも留まらない高速度の魔力弾が一直線に破砕を開始、まるで焼き菓子が砕け散るかのように呆気ない。
けれども、彼は意識せず、ただ次弾を装填した。
カランと排出された薬莢が地面に落ちたと同時にストームレイダーの内部に打ち込まれた魔力を圧縮し、高密度の魔力弾を精製する。
それらを瞬くような間に行って、彼は引き金を引き絞る。速射、次の獲物は次々と迫ってくる。
――そして、射撃。
打ち出された弾丸は次の鉄くずに叩き込まれて、その血肉を噴き上げる。
これでいい。
誰も近づけさせない、排出、装填、照準、射出、撃破、これだけを繰り返せ。
そうすれば。
支援
変態支援
「ラグナ、今度こそ護ってやる」
犬歯を剥き出しに、壮絶な笑みを浮かべて一人の兄が狂っていた。
彼の心を悔恨の憎悪が燃やしていた。
如何に時間が経とうとも消えることの出来ない感情が鎌首をもたげていた。
嗚呼、嗚呼、今の俺ならば枝切れをへし折るような気分で命を奪える。破壊することが出来る。
「こいよ、今日の俺は阿修羅すら超えちまうかもしれないぜ」
ニヤリと壮絶に微笑み、ヴァイス・グランセニックは引き金を引き続ける。
その途中でラグナに色目を向ける陸士を射殺したくなって、何回かスコープを向けてしまったのは彼だけの秘密である。
前奏を終わらせて、ラグナたちはいよいよ本番に入ろうとしていた。
ステージのテンションは最高潮、歌うのに支障は無い、全員の体も温まってきている。
(兄さん、見ていて)
どこかで自分を見守ってくれているだろう最愛の兄を想う。
少々やりすぎの気はあるが、ラグナは兄の想いをしっかりと受け止めていた。
故に歌う、兄が所属する組織、そして育ったこの世界を護るために歌う。
『みんなー! 楽しんでくれているかなー!』
マイクを手に持ち、ラグナが手を振る。
それと同時に無数の手が上がり、団扇が、旗が、喜びに彩られた人々の笑顔が見える。
ラグナが後ろに目を向ける。千里が笑っていた、竜司が顔を赤く染めながらも頷いていた。
彼女は脚を踏み出す、一斉にスポットライトが当たる、無数のカメラが向けられていて昔の自分だったらたちまち縮みこまってしまうだろう注目に笑顔で答えた。
『ありがとう、皆。そして、本当にありがとう。六年ぶりだけど、皆と逢えて本当に嬉しい!』
「俺もだー!」 「ありがとー!」 「復活してくれてありがとうー!」 「もっと歌がききたーい!」 「ルノー! いや、ラグナー!」
声、声、声。
返ってくる声が力強い、力になる、勇気が湧いてくる。
『ありがとう、皆! この左目からだとよく見えないけど、みんなの顔はこの右眼で見えるよ!』
ラグナが目を瞬かせる。
彼女の左目は六年前、彼女の身柄を狙ったテロリストから彼女を救うために撃ち出された兄の弾丸が過って打ち抜き、その眼の結晶体と視神経が永久に治療不可能となっていた。
兄はそのことをどこまでも悔いたが、ラグナは気にしてない。動揺しながらも続いて撃ち出された次弾は逆上したテロリストを撃ち抜き、彼女を助けたのだから。
その左目を痛ましくみる人たちの顔を見て、ラグナはにっこりと笑った。
『でも、この見えない左目で皆の心がしっかり見えるよ! 沢山、沢山、楽しんでくれているのが分かる、期待してくれているのが分かるから――』
パチッと目パチをして、彼女はマイクを握らぬ手とは逆の手を前に伸ばした。
まるで誘うように、何かを握り締めるかのように、声を静かに伸ばしていく。
支援!
生き恥の人wwwww
『この歌を聞いてください』
静かに、されど次第に激しく出雲とダンがドラムを叩き始める。
そして、音を奏で作り出すようにヒオと美影が音の調和を生み出し始めた。
タンタンタン、竜司と千里が足踏みを開始し、リズムを取り始める。
『この時のための新曲です。UCATの皆さんに力になればいい――“GO AHEAD”』
息を吸い込み、ラグナは次の瞬間歌声を炸裂させた。
ギターが、ベースが激しく音を紡ぎ出す。
『AHEAD! AHEAD! AHEAD!』
声が張りあがる。
一人の少女のものとは思えぬ怒声、それが会場を貫く、震撼させる。
『貫き通せ 己の信念!』
ラグナがステージの床を踏み締める、美しい歌声が凶器のように鋭く吼え猛る。
激しく叩き出されるドラムの暴力的な音がそれに重みを与える、力を叩き込む。
『AHEAD! AHEAD! AHEAD!』
千里がラグナに合わせて吼えた。
ベースを弾き鳴らしながら、メゾプラノが調和する、音を生み出す、幾重にも重なった音の螺旋が生み出されていく。
『信じるもののために突き進め!』
竜司がギターを静かに、されど丁寧に弾き鳴らす。
加わるのは電撃のような刺激的な音、背後から懸命に打ち導かれる電子ピアノの旋律を紡ぎ上げて、折り重ねていく。
『AHEAD! AHEAD! AHEAD!』
声が加わる。
いつしか会場の誰かが声を張り上げていた。AHEADと。
『世界を敵に回してもいいじゃない!』
祈りが篭められる。
カメラの向こうに聞こえる誰かに、放送スピーカーと通して戦場の全てに、画面が映し出されるミッドチルダの全てに歌声が鳴り響く。
祈りを願い、願いを篭めて、篭められし力を解き放つ。
『AHEAD! AHEAD! AHEAD!』
ステージの上の全員が叫んでいた。
出雲が、ダンが、武器を振るうのとは違う、機竜を操縦するとも違う、未知の領域へと入り込み、体力ではなく魂が上げる熱気に汗を浮かばせる。
誰もが汗を掻く。
今ここで声を張り上げているように当たり前に。
『護りたいもののために頑張ってもいいじゃない!』
ガツンとした拳の篭った声。
正面から見れば膝を屈し、魂を振るわせられるような叫び、ラグナは髪を振り乱し、衣装のドレスを翻しながらダンッと存在をアピールするように床を踏み締め、叫んだ。
手を伸ばす。前へ。
『AHEAD! AHEAD! AHEAD!』
会場の誰もが叫んでいた。
喝采が、咆哮が、喝采が、怒号が、喝采が上がる。
誰のが飲み込まれる、熱狂の渦に、燃え盛る火に炙られて焼かれるように、魂すらも打ち震わせる信念を見つけ出したかのように。
『前に進もうよ、誰にだって負けられない』
二人の少女が手を重ねる。
歌声を鳴り響かせる二人の手が重なり、さらなる調和を果たす。
美しき美の塊、誰もが手を伸ばす、明日の空を目掛けて。
それは祝詞だった。
それは祝福だった。
それは祈願だった。
『AHEAD! AHEAD! AHEAD!』
叫ぶ、叫ぶ、叫ぶ。
遠くの誰かが叫んでいた。天地が割れんと鳴り響いた。空気すらも喝采を上げているような錯覚すらした。
劇場の誰もが軍靴を鳴らす、踵を大地に叩きつける、自分がここだと、ここにいるのだと、ここから進むのだとアピールするかのように。
『だって大切なものが ここにあるから!』
絶叫。
それは願いの祈歌。
ラグナは歌い続ける、聞こえている誰かに勝利を導くために、ただ許された力の方法がそれだった。
その歌声を聞いているものたちがいた。
戦場で戦う誰もがその歌声を聞いていた。
倒れ付した誰もがそれを全身に浴びていた。
『AHEAD! AHEAD! AHEAD!』
美しい歌声がボロボロの体に染み渡る。
魂の篭った叫び声が耳に響く、寝ていられそうになかった。
「進撃せよ、進撃せよ、か」
ボロボロの陸士が一人、二人、また一人と立ち上がる。
前を見る。
無限に終わらないのではないか、そう思える敵の数、それが怖くなくなっていた。
『貫き通せ 己の信念!』
熱狂。
かつて神話に伝わる歌姫は戦士を歌によって狂わせ、恐れを知らぬベルセルクとして戦場に送り込んだらしい。
だが、それもいいかもしれない。
これほど麗しい歌声に導かれて、誰かのために戦えるのならば戦士として本望だろう。
「いくぞ、貴様ら! 俺たちは決して挫けず、前に突き進む陸士17部隊だ!」
『応!!』
疾る、疾る、前へ。
『おっとそれには俺達も混ぜてもらおうか!』
その横に他の陸士たちも駆けつける。
どいつもこいつも傷を負っていた、けれども笑っていた。
『陸士72部隊、頑強さだけが取り柄です!』
全身装甲服に身を包み、破壊したであろうガジェットの機械油に満ちた陸士たちも走ってくる。
その手にはボロボロのデバイスがあった。火花を散らしながらも、魔力を宿す武器たちがあった。
どんどんと走り出す、前に突き進む、足音が鳴り響いていた。
『忘れちゃいけない、俺たち特車部隊! 切り込み隊長をやらせてもらう!』
バイクの唸り声。
金属の馬に乗って、鋼鉄の凶器を操るフルフェイスの陸士たちが彼らを追い抜く。
そのバイクの全身からは黒い煙を吹いているのに、その身は貧弱で、武装もロクに無いのに。
どいつもこいつも馬鹿ばかりだった。
折れた脚を引きずりながら、手の感覚の無くなった腕を必死に振り上げながら叫ぶ。
「俺たちだってこの世界を護れることを証明してやれ!!」
『ぉおおおお!!!』
誇りを持ちし喝采が上がる。
『信じるもののために突き進め!』
その声に従い、誰もが己の信じる力を繰り出した。
戦いは続いていた。
遥かな高みで螺旋を描くように。
高度数百メートル、上がって上がってどこまでも上がって雲の真下で二人の人影が激突していた。
支援
Tes.
ちょっと7巻でカジェット撲殺してくる
「おぉおお!!」
「っ!」
螺旋を描くように展開された足場――ISのテンプレートを表示させた力場、ISエアライナーの作り出す空中足場。
踏み出す、それすらも粉砕するかのように力強く、繰り出されるのはジェットエッジに覆われた鉄槌の如き蹴打。
「このっ!」
手から瞬時に伸ばした警棒型のデバイスでそれを受け止めるが、踵裏のノズルから噴出する圧力がそれを許さない。
ミシミシと音を立てて、デバイスが根元から砕かれた。
「っ!!」
顔面にめり込む蹴り、吹き飛ばされる、しかし決してその手に握ったライディングボードのハンドルは放さず、スラスターを吹かして着地する位置にボートを移動させる。
それを見るたびに対峙する少女――ノーヴェの顔が怒気に歪む。
「テメエ、それに乗るんじゃねえよ!!」
ガンナックルの射撃。
エネルギー弾が叩き込まれる、そのモーションを見切ったフルフェイスの陸士は高度保持のためのスラスターを一瞬カット。
落下、一瞬前まで陸士の胸元のあった場所をエネルギー弾が空しく駆け抜ける。
「なにっ!?」
足首でライディングボードの尻を踏み抜きながら、背部に付けたアサルトライフルを構えた。弾丸の代わりに着弾式のスタンガンにも似たものを打ち出すスタンライフル、直撃すれば大の大人でも一瞬で悶絶し、筋弛緩は免れない鎮圧武装。
角度を決める、蹴りの圧力でボードの角度が変わった、踏み抜いたほうを下に、頭の方が上に、斜めの角度。ノーヴェを狙える角度。
自由落下でありながらも足場はある。ペダルを踏み込み、スラスターを吹かせながら陸士は引き金を引いた。
「っ!?」
吐き散らされる弾丸、しかしそれをノーヴェは跳躍し、旋回しながら、さらなる足場を空中にISで作成。蹴る、踏む、跳ぶ、滑る。
それらでスタン弾を躱しながら、ノーヴェは叫んだ。
「テメエ! 馬鹿にしてるのか!!」
「あ?」
陸士が首を傾げる。
だが、ノーヴェは怒気を沈めぬままに叫んだ。
「なんで攻撃を当ててこない! 手を抜いているのか!」
ノーヴェが気付く。
先ほどから陸士が積極的に反撃してこないことを、そして先ほどのアサルトライフルの弾丸が致死性であり、しかもその照準が甘いことに気付いた。
「……んなわけないだろ」
一瞬の沈黙、それが何よりも雄弁に語っていた。
「だったら、殺しにこいよ!」
馬鹿にされているのか。
どこまで、どこまでこちらの誇りを汚せば気が済むのだ。
ノーヴェは怒る、怒りを滾らせて、速度を上げる。ブレイクライナー、その名の通りに破壊を撒き散らすために。
支援
はじめての遭遇だ!支援!
「っ!!」
瞬間、陸士は気付いた。
走るエアライナー、その足場が瓦解していると。
理解。
彼女が叫んでいた名前、それはブレイクライナー――破壊する突撃者。
不味いと悟った。
「やめろ! それ以上名前を意識するな!」
「うるせええ!!」
速度を上げる、音速に迫るほどの機動、ジェットエッジを全開。エアライナーを踏み締めながら飛び上がる。
陸士が息を飲む、空中に飛び上がる彼女、艶かしい四肢を剥き出しに、鋼鉄の武具を手足に付けた彼女は太陽の逆光に煽られて魅入られるほどに美しかった。
だが躊躇は一瞬、陸士はライディングボードを蹴り飛ばす――逃がすための動作、借り受けたその道具を壊すことは躊躇われた。
そして彼女と対峙するように跳んだ。
「ぉおおおお!」
「ライダー!」
ガキョン。
追加武装として用意された使い捨てのアームドデバイスインスタント、それを信じながら唯一彼が威張ることの出来るベクトル操作で体を回転、重力を逆向けた。
「潰れろぉおお!」
「キイィック!」
ブレイクライナーとしての破壊の蹴撃。
語り継がれる最強のライダーたちの象徴技。
震動し、白熱し、爆砕し、激昂する脚部と脚部が激突する。
轟音爆砕。
吹き飛ばされる、互いに。
「ぐっ!!」
「っう!!」
ノーヴェが作り出した空中の摩天楼、エアライナーの帯状滑走路に背中からぶつかり、陸士はヘルメットの中で小さく血を吐いた。
「が、げはぁ!」
あばらがやられたのか、生臭い香り、息するのも億劫、胃酸の熱が喉を焼く。
痛い、痛い、痛い。
だけど、止まれない。
「――会いに行くって約束しちまったもんなぁ」
少女の笑みを思い浮かべる、力が宿る、命を賭ける意味を確認する。
嗤う、ヘルメットを少しだけ開けて、吐瀉物を吐き散らす。
遥か下の奴らには迷惑だろうが、こっちも一杯一杯許してもらおう。
「く、てめえ!」
声が上がる。
同じように叩きつけられたノーヴェ、だが戦闘機人故か特に支障なし。けれども、陸士は気付く、彼女の佇むエアライナーがひび割れていく事を、そして武具すらもピシリと破砕を始めている。
名前の意味が叩きつける相手を砕くことから触れる全てを破壊する意味となっている。
怒りだ。全てを燃やしつくさんとする怒りが彼女自身すらも蝕み始めている。
止められるか? と、陸士は自分に問いかけて、薄く笑う。
Tes.
この陸士はもはや主役の一人といっても過言ではないなww
「何がおかしいんだよ!!」
ノーヴェが怒りを立ち上らせる、怒髪天を突くという奴だろうか。
けれども、陸士は笑いを止めぬままに手を突き出し。
「いや、俺みたいな雑魚が先を考えたらお終いだと思ってな」
止められるか? などどこまで驕り昂ぶっているのだ。
そんな器じゃない、出来るか出来ないかなんて可能性じゃない。ただやるのだ。命尽き果ててでも。
「行くぜ、丁度良い。ここは良いステージだ!」
踵で床を叩く、シャキンと音が出て車輪が飛び出る、昔流行ったローラーブーツというものだ。
それを特車部隊の人間は乗機を失ったときの代用として使う、ベクトル操作があるから、並外れたバランス感覚があるから。
滑走、加速、走り出す、螺旋を描いてレース場を駆け抜ける。
「良い度胸じゃねえか!」
彼女もまたジェットエッジを噴出させ、走り出す。
彼女は怒りのあまりに自分の異変にすら気付いていない、自滅が待っているだけだというのに。
陸士はベクトル操作で重力の矛先を前へと向けながら、考える。
賢い勝ち方は時間を潰して破滅を待つことだろう。だが、それは選べない。
「おぉおおおおおおお!!」
「あぁあああああああ!」
加速、加速、加速。
いつかたどり着くための、いつか激突するための、いつか死ぬための、いつか殺すための疾走。
『AHEAD! AHEAD! AHEAD!』
通信機から聞こえる進撃歌。
『貫き通せ 己の信念!』
貫き通そう、己の意地を。
己の全てを速度に変えて、才能無き陸士は走る。
己の全てを破壊に変えて、選ばれし少女は疾る。
数秒、数分だろうか。
終わりが近づいてくる、レーンを越えた先に見えるのはアイツとソックリの赤い髪を靡かせた少女。
「ライダー!!!」
手の平を握り締める。最後の武器。これが無くなれば有効打は消える。ミッド式の自分にはデバイス無しで魔法を編み上げる技量すらなく、身体強化も不可能だから。
「ぉおおおお!」
迫り来る一陣の弾丸となった少女に、命の全てを叩き込むつもりでリンカーコアからデバイスに魔力を流し込む。
拳が赤熱化する、燃え上がる、メラメラと、命を燃やすように、きらめきを帯びる。
「パァアアアンチ!!!」
「しねええええええ!!」
そして――激突した。
黙々と支援
拳はめり込んだ。陸士の体に。
「がほっ」
体が折れそうなほどに曲がる、歪む、ガンナックルが深々と陸士の腹を貫きそうなまでにめり込んでいた。
血がびしゃびしゃと吐き出されて、ヘルメットの中の顔を隠していく。
至近距離であるのにノーヴェには陸士の顔が見えそうになかった。
「勝った……」
ノーヴェの唇が喜びに満ちて、次の瞬間痛みに歪んだ。
陸士の拳もめり込んでいた。ノーヴェの肩に。
それが本来ならば人間をぶち抜くほどのノーヴェの打撃の威力を落としていた。燃え盛る灼熱に、ノーヴェは苦痛の顔を浮かべて、一端こいつを投げ捨てようとした瞬間だった。
ピキリと音がした。
「え?」
足元を見る、エアライナーが蜘蛛の巣のようにひび割れていた。
そして、バカンと音がしてジェットエッジが煙を吹いて、ガンナックルが砕けて落ちた。
「なん――」
疑問を最後まで抱く暇は無かった。
砕け散ったエアライナーの隙間からノーヴェが落ちた、真っ逆さまに、重力の鎖に縛り上げられたかのように。
落ちる、落ちる、どこまでも。
「エアライナー!!」
ISを起動、けれど作り出した足場はノーヴェが触れるたびに、壊れる、壊れる、壊れる。ガラスのように受け止めることが出来ない、速度を落とすことすら。
そして、ジェットエッジも剥がれ落ちた。まるで砂のように瓦解する。
「な、なんで!?」
彼女は知らない。ブレイクライナー、破壊する突撃者、その意味とイメージが加速するごとに破砕を撒き散らすものだということに自分が想像していることに。
加速すれば加速するだけそれが触れたものを破壊する、エアライナー程度の強度では落下速度による破壊力を増したノーヴェを受け止めることは出来ない。
死ぬ。
死のイメージが彼女の脳裏にこびりつく、高度数百メートル、幾ら戦闘機人でもその高さから落下すれば砕け散るだろう、助からないだろう。
重力の鎖は否が応でも彼女を地上へと、死の導き手として引きずり込もうとしていた。
「いや」
叫ぶ。
風圧で髪を揺らしながら、彼女は叫ぶ。
「嫌だ!」
死にたくない、死にたくない。
トーレ、ウェンディ、クアットロ、誰でも良い飛べる奴なら、助けてくれるなら誰でも――
「たすけてぇ!」
「しゃあねえな」
そう叫んだ瞬間、キュッと彼女の腰に何かが絡みついた。
絵板より愛を込めて支援!!
待て、それは死亡フラグだ!
支援
「!?」
ガクンと一瞬停滞するが、直ぐにその絡みついたもの――ワイヤーが破砕される。
落下する、そう思った瞬間、ガシッとその胴体を掴まれた。誰かの腕に。
「え?」
「よっ」
それは血まみれのヘルメットをした陸士だった。足元にはライディングボード、ウェンディのボードに乗っている。
生きていたのか、けれどノーヴェは混乱する。
「な、なんでアタシを?」
その陸士は爛れていたブレイクランナー、その加速がついた概念能力による被害、痛みが走っているはず、腹には今も重傷を負っている筈なのに。
「――アイツが悲しむ、お前を死なせたらな」
「え?」
「それだけだ。姉妹は大切にしろよ。こいつを貸してくれた奴がよくお前のことを言っていたよ」
そう告げて、陸士はノーヴェを抱きしめて、ボードの上に乗せるとポンと頭を撫でた。
「う、ウェンディが?」
「そうだ。アイツは元気にしているよ、他の奴もな」
陸士は告げる、真っ赤に染まったヘルメットが不気味だったけど声はしっかりとしていた。
命の危機から助かった安堵、心臓が激しく高鳴っていた。
一瞬だけ残念に思う、彼の顔が見えないのが。
(へ?)
その感覚に戸惑って、ノーヴェが首をかしげた瞬間だった。
「あ」
陸士が声を上げた。
「なんだよ?」
「あー、その、な」
「あ? はっきりいえよ」
「お前、ちょっと前隠したほうがいい」
「へ?」
体を見下ろす。
質問である、頑強なジェットエッジやガンナックルが砕けるブレイクライナーの破壊概念。
Q.それだとスーツはどうなるんでしょうか?
A.スッパじゃね?
「う、うぅうう、うきゃあああああああああ!!」
「いてぇええええええ!!」
殴り飛ばされた陸士の悲鳴がどこまでも響いていた。
そして、後日彼は顔を赤らめてこちらを睨むノーヴェと、不機嫌なウェンディを見てこう告げた。
「\(^o^)/」
鮮血の香りが漂っていた。
燃え盛るは劫火の揺らめき。
声は無い、声はない、こえはない。
幾多の破壊の果てに作り上げられた地獄の如き光景。
そこに一人の天使――いや一人の女性がいた。
「ようやくの再戦か」
光の翼、輝ける烈光刃、インパルスブレード、それらを四肢に生やした美しい女性は静かにそう告げる。
炎が生み出した熱風、それを浴びながらも彼女の髪は揺らがない、不可視の重力制御によるフィールドで彼女の頭部はヘルメットを被っているかのように保護されている。
故に彼女の美貌は揺らがない、汚れない、乱れない、保たれ続ける。
それと対峙するのは地面に転がった四足の残骸か、それとも地面で動けずに血を流す陸士たちか、否、否、否。
ただ一人だけ対峙するのもがいた。
名前はない。
顔も隠したただの装甲服を纏った男。
だが、彼女の存在感だけでそれを識別し、確信していた。
「さて、何のことかな?」
装甲服の陸士はぬけぬけとそう語る。
『AHEAD! AHEAD! AHEAD!』
遠くから聞こえる甲高い叫び声。
誰もが酔いしれる勇気ある進撃歌、祈りの祝詞、希望を蓄えて突き進む叫び。
「ふん。AHEAD――進撃せよ、か。正義を信じるままに突き進むか」
「さてな」
トーレの言葉に、その陸士は冷たくあしらう。
だが拳を握り締める、脚を曲げる、緩やかに魔力を纏い、息吹を発した。
戦うのだ、推定ランクAAを超えるだろうトーレに、Bランクにも満たない低ランク魔導師が挑む。
無謀、無知、自殺行為。
だが、引かない、望まれているから、意地があるから。
『世界を敵に回してもいいじゃない!』
そうだ。世界を敵に回すのと比べたらその程度は簡単なものだ。
彼の闘気が満ちるのを理解し、トーレは薄く微笑みながらフワリと地上から数センチ浮かび上がる。
彼女の四肢はもはや地面を蹴る必要が無い、その出力からの反発力のみで音速を超える機動が約束されている、一瞬にして彼の仲間たちを切り裂いたように。
フラグはフラグでもハーレムフラグw 支援!!
フラグ折ってフラグ立てやがったwww
支援
「一つ訂正しておく」
けれども、陸士は恐れる事無く静かに告げた。
大事なことだ。
「なんだ?」
「俺たちは正義じゃない――悪役だ!」
瞬間、陸士が地面を蹴り飛ばす。
トーレの笑みが深まる。
「そうか! 悪と悪役の貪りあい、その程度のものだったか!!」
ベクトル変更、重力の落下速度すらも味方に付けて瞬時に間合いを詰めて、掌打を打ち込。
んだと思った瞬間、そこには誰もなく。
「っ!?」
旋転、回し蹴り。
気配があった、だが遅い、捉えられない。
「上だ」
破裂音が二度聞こえて、上から叩きつけられる蹴りが陸士を地面に打ち込んだ。
膝が折れる、地面がひび割れるほど強力な一撃、重すぎる打撃。
「がっ!」
胴体から地面に叩きつけられた陸士は呻き声を上げる、だが止まれば死ぬ。
肉体が動かせなくてもベクトルを変える、重力を横へ――横に落下する。
追撃、光の光刃が地面を両断した。数メートルにも達するエネルギー翼、まるで大剣、それが豆腐のように地面を両断する。
「避けたか」
「っ!」
臓器が悲鳴を上げているが、それでも無理やり酸素を取り込んで、陸士が見上げる。
トーレの四肢から洩れ出るインパルスブレードの光はさらに勢いを増し、長大な翼と生まれ変わる。
凶器にして翼、翼にして武器、武器にして移動補助機能、攻防一体の武装。
音速すら凌駕する機能を持ち合わせた彼女、それに勝てるのか。
「使わないのか?」
「なに?」
「必殺技を使え。この概念下ならばそれが現実化するのだろう、貴様の妄信が私の機能を凌駕すれば勝てるだろう」
ライドインパルス/高速機動。
彼女のIS名が語る概念補助が彼女の能力をさらに強化する。
「名前を名乗らないのか? 少しでも強くなるのかもしれないぞ」
トーレの頭脳は高速で概念化のルールを学び始めていた。
トーレという3の数字を意味した名称に概念補助は薄いが、先ほど戦っていた勇装魔神クラナガンや奇妙な格好をしていた連中はそれぞれ名前を名乗り、戦っていた。
名前を意識する、それが2nd−Gでの有効な戦い方であり、必須条件だと。
「……言った筈だ。俺は名前を名乗らん、しがない陸士でな。勝ったら教えてやるといったぜ?」
けれど、彼は名前を名乗らない。
無名のままで拳を作り出す。
「それにな。俺は一つ証明したいことがある」
「なんだ?」
「テメエは今まで倒した、そして今倒した連中の名前を全部知っているか」
呟く。
彼女は疑問げに眉間に皺を寄せるが、答える様子は無い。
そうだろう、彼女にとって名も知らない倒した相手など今まで食べたパンの数を数えるぐらいに覚えていないに違いない。
彼だって今まで捕獲した犯罪者全ての名称など覚えているわけもないし、記憶からも薄れている。
だがしかし。
「名前が無くても、歴史はある。路傍の石だろうが、空に浮かび上がる決まった形でない雲でさえも、年月がある。歩んだ来た時間がある」
名前が無くてもその存在は其処に在る。
語らなくとも、語れなくとも、存在は在ったのだ。
過去の積み重ねは有名な存在と同じように繰り返され、幾層もの過去を積み重ねて今現代にあり、未来に続くのだ。
重みがある。
無名ですら歴史がある。
それを彼は語っていた。
「故に俺はこの名も無き拳でお前をぶちのめす」
名付けるのならば無銘拳。
彼はイメージする、彼は信じている、それが例え名前がなくても他のどれにも劣らないということを。
「そうか。ならば私はお前を倒して名を尋ねよう!」
トーレがニヤリと微笑み、首元のスーツのスイッチを入れる。
光の翼が羽ばたく。
煌めく粒子が世界を埋め尽くすかのように輝き――掻き消えた。
破裂音が響き渡る。
音速を凌駕した衝撃波が突風と化して陸士の体を打った。
見る、見る、探す。
どこだ、どこから来る。
音速を凌駕してもあの光の残光は決して消えない、美し過ぎる光刃は鮮烈に世界にイメージを受け付ける。
世界に光が刻まれていく、ジグザグに、撹乱するかのように、ありとあらゆる場所に光の粒子が吹き散らされる。
「上、横、いや、後ろか!?」
目を後ろに振り向けようとした瞬間。
「いいや、前だ」
「っ!」
数十メートル先にトーレが降り立ち、地面を削り上げながら一瞬で間合いを詰めてきた。
ソニックブームの風が巻き起こる、音よりも早い、腕を閃かせるが間に合うか、躱すのは不可能だと感じ取る。
彼女の体が旋転する、その四肢より生やした八対の翼が光刃と化して、旋風と化して襲い来る。一枚一枚が斬馬刀の如きミキサーのカッター。
当たれば木っ端微塵、肉片粉砕、惨殺確定、17分割どころではない。
支援!支援!
「――っ!」
だが、彼はあえて前に一歩踏み出し、左手を楯にするかのように構えた。
愚か、たった一本の腕で防ぎきれるような甘い攻撃ではない。鉄すら断ち切る、鋼すら輪切りにし、合金すらも粉砕するインパルスブレードの破壊力。
けれども、次の瞬間響いたのは――大気の焼ける音、空間が打ち震える音、そして血肉骨が砕け散る音だった。
「なっ!」
止められた。
八対の刃、それが彼の左腕で、彼の脇腹で食い込み――止められていた。
「予測どおり、その翼には質量は殆どねえ。俺でも耐え切れるほどにな」
音速を凌駕しても元ある質量が少なければそれは破壊力としては劣る。
ただの木剣だったほうが遥かに破壊力が高く、陸士を粉砕していただろう。
だが、インパルスブレードはエネルギー粒子の塊であり、質量による破壊を求めていなかった。
「だから、お前の負けだ!!」
踵で地面を打つ、足首を捻る、膝を曲げる、腰を落とす、胴体を廻し、肩を酷使し、肘を捻らせ、腕を跳ねらせ、手首を押し込む。
その動作はこの世界には伝わらない武術においてこう語られる。
勁道を開くと。
拳打。
ただの一撃でありながらも重みを増し、歴史の重さすらも痛感する一撃必倒の一撃、それがトーレの胸にめり込む、衝撃の全てを叩き込む。
「がっ!!」
吹き飛ぶ、無名の歴史に、彼女が吹き飛び、地面に転げた。
「ぐっ、何故……防げた?」
血反吐を吐く、彼の一撃は戦闘機人の骨格フレーム、その破砕打点を忠実に打ち込んでいた。
痛みが襲う、呼吸すらもままならない。
「あ? そうだな」
装甲服が焼かれていた、インパルスブレードの熱量に焼け爛れた装甲服は消し屑となって千切れ飛び、その下のアンダースーツを露出させる。
そこにはこんな張り紙が張ってあった『とてもがんじょう』 と。
「お前対策にな、1st―Gの賢石加工をさせてもらってたよ」
「……技を使わないのではなかったのか?」
「嘘じゃないぜ? 名前も技も使ってない、これは文章だからな」
ニヤリと微笑む、彼の左腕は動かない、どうやら折れているようだった。
常人には耐えられない圧力、身体強化をしてもなお皮膚が破れ、肉が裂かれ、骨が砕ける恐るべき光刃だった。
「さて戦うものとしての礼儀は知っているな?」
「……好きにしろ。私は負けた」
トーレは大人しく呟く。戦いの場で負けたものは勝利者に従う、当たり前のルール。
ここまでの会話で彼はトーレにトドメを刺そうと思えばいつでもさせた。それが現実だった。
AHEAD! AHEAD! AHEAD!
支援! 支援! 支援!
やっぱ無名キャラは川上作品のロマンですねー
音速超過支援
支援を!一心不乱の大支援を!
「なるほどな」
だから右手で彼女に差し出した。
「は?」
「ほれ、連行するから立ち上がれ。お前らもさっさと蘇れ、ボケッ」
そう陸士が告げると、他の面子もあ〜というゾンビな動きと共に起き上がる。
ふらふらとしているが、まだ生きていた。
「あー痛たたた、これ骨ヒビ入ってるんだけど!!」
「俺なんて足折れてるぜ。超いてー!」
「くそぅ、呻き声ぐらい上げたかったのに、いきなり一対一とか始めるから空気読んだよ!!」
「邪魔すら出来なかったよ! 空気的に!!」
呆然とした雰囲気でトーレが周りを見渡す。
どいつもこいつも文句を言いながら笑っていた。
そして、トーレは自分に差し出されて手をこまったように見つめて。
「ほれ、掴まれよ」
「ああ」
しっかりと掴み、立ち上がる。
「じゃ、連行ー!」
彼女に肩を貸して、陸士と他の面子はノロノロと歩き出した。
戦いはまだ続いたけれど、彼らの戦いは終わったのだ。
「そういえば、結局俺の勝ちだな」
「そうだ」
「名前は教えられないな」
「……いずれ再戦させてもらうぞ」
「気が向いたらな」
そんな会話があったかどうかは分からない。
そして、その陸士が面倒くさくなってトーレを担ぎ上げて、彼女の尻と肩を支えにうらーと走り出したのも事実かどうかも不明だった。
熱血支援!
時々これは川上氏が書いたんじゃないということを忘れてしまうことがあるw
再現度がやべえw
その頃、クラナガンの市街をある一台のマシンが駆け抜けていた。
『AHEAD! AHEAD! AHEAD!』
『護りたいもののために頑張ってもいいじゃない!』
「いい歌声ですね、ここまで響いてきます」
走る、走る、走る。
キュラキュラキュラからドラドラドラという轟音を鳴り響かせて、それは疾駆していた。
一人の女性を先頭に乗せて。
具体的には捻られたグルグル模様の砲塔のような部分の先端に彼女は仁王立ちしていた。
「死夜破の姉御! このまま突き進みますが、良いんですか――ブベラッ!?」
「その呼び方はやめろといいましたよね」
にっこりと微笑みながら操縦席から飛び出した馬鹿の顔を蹴る――死夜覇ことシャッハ。
ヒラリと腰布の下からスパッツがよく見えたのだが言ったら殺されると確信していたヤンキー陸士は何も言わなかった。
そんな惨状に避難中の市民たちは注目しながらこう思った。
(ああ、またUCATか)
誰もが諦めていた、色んな意味で。
「さあ参りますよ! いざゆかん、ミッドチルダUCAT!! 騎士カリム、待っていてくださいね!」
蹴りから一転、元の位置に戻ったシャッハがビシッと指を突き出し叫んだ。
その指先に映るのは爆炎を轟かせて戦い続けるだろう戦場――なのだが。
「なっ!?」
その先に、シャッハの視力は信じられないものを見た。
『ウォオオオオ!?』
それは一人の巨人の敗北。
それは一人の勇者が吹き飛ばされる姿。
「あれは、まさか!」
視力強化、望遠鏡を超えるシャッハの視力が対峙する黒点を見つける。
そう、それは最強最悪の秘密兵器。
ゼスト・グランツ。
彼が勇装魔神クラナガンを打ち倒す姿だった。
家族バカきたああああああああ
もはや軍神級ですね支援
勇者に支援
まさかのゼストvsクラナガンw 支援!!
エリオVSゼストですね!
川上作品的にロボVS人間はすばらしいものがあります
GJでした!
GJ!
変態祭りを期待してたのになんですかこいつらの格好良さはwww
ライダー陸士がどこぞの不可能男のようにエロ不注意www
そんなんだからNice boat.な展開になるんだよwww
数の子の1/3が捕まったけどスカは戦力的に大丈夫なんだろうか
そして僕らのクラナガンが…負けた…?
GJ!!
今夜も楽しみにしてまっせ旦那!
GJ
勇者ロボの敗北……それはグレートな合体フラグだ!!
乙です!!!
無名陸士どもが格好よすぎる…
ハーレムフラグをたてた陸士に吹いたw
そして最後でまさかの家族バカ乱入、武神をふっとばすとかあんたはどこの軍神だww
ついでにややエロはもっとひどい扱いにしてもおkじゃない(ry
518 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/06(土) 16:43:54 ID:0cLKMKgx
GJ!!!
名もなき陸士たちの熱さに血圧が沸騰しっぱなしです!!
クラガナンが負けた?・・・・・・・・・・
は!!こ、これは勇者シリーズでお約束のアレフラグか!!
今こそ奇跡のアレを見せてくれ勇者よ!!
ちなみに合体相手は王道の竜ですか?それともシリーズ初の虫ですか?
あーもーチクショウなんでこんなに格好いいんだよ!?
ちょっと前まで『スイーツ(笑)!』とかやってたはずなのに、なんか普通に感動しちゃったよ!
ウェンディルート確定かと思われた陸士は何ハーレムルートに入ってるんだよ!?
そーゆーのが許されるのは主人公の特権だろう!?
もう一人の格闘陸士の方が、ルート確定っぽい感じになってるよ! 大人な感じだし!ライバルフラグっぽいけど!
数年後の後日談とかあったらなんか結婚してそうだよ、トーレと格闘陸士!
というか、作者氏は本当に川上先生御本人じゃないんでしょうか?
ノリとか川上節の再現度が本気で半端じゃないんですが。あと筆がのってるときの執筆速度も。
これ、明らかに終わクロクライマックスのノリですよね。数の子たちとUCATの伏線も回収されてるし。
聖王のゆりかごとか必要ないでしょう、コレ。
ゼストの名字 グランツじゃないような
ゼスト・グランガイツ \(^o^)/
また苗字を間違えた。修正してきます。
>>520 指摘ありがとうございました。誰だグランツ?
>>519 ちがいますよー 本人じゃないですよー。
単なる脳が沸いているだけです、では
Tes.!!
あ、一つ発見。
メゾプラノじゃなくてメゾソプラノじゃね?
あ、トリが前のままだった。
こっちが新しいのです、今夜こそこっちで投下します。
>>522 \(^o^)/ \(^o^)/ \(^o^)/
誤字指摘ありがとうございます。
引き続き見つかったのがありましたら随時まとめで修正します。ありがとうございました ORZ
なんか本編よりヒーロー物っぽいんだが
GJGJGJ!!
陸士達の馬鹿馬鹿しいまでのカッコよさがたまらん!
<<こちらオメガ11、戦線に到達した。まずは我が戦友UCATたちへの感想だ>>
GJでした!ここ数日、物凄い勢いで投下が連発されてましたが、いったいこのクオリティ
はどこから来るというのか、UCATの連中は不死身か!?w
変態どもは自重せず、さらにまさかの勇者ロボ出現、さらにさらにそれすら倒すゼスト登場!?
カッコいいとこは素直にカッコいいのに変態なとこはとことん変態なこの温度差、ホントに
素晴らしいです。
次回もこの分だともうすぐ、でしょうか。このままゆりかご戦まで突っ切ってくださいw
<<そして、今度は久しぶりに俺が1900頃に投下したい。THE OPERATION LYRICALの後日談なんだ。
支援できる部隊がいれば、よろしく頼む>>
ていうか、チンクとセッテは? あれ?
描写も無く負けちゃったんですかっ(涙
>>527 安心しなさい
きっと今頃紳士達に視姦されてるから
>>528 某スレみたいに、「あぶぶー」とか言われてるんですね。わかります。
支援体勢! イジェークト!!!
<<時間になったので投下します。ボムズウェイ、ボムズウェイッ>>
ACE COMBAT04 THE OPERATION LYRICAL
後日談 Mobius1&Mobius1
事件から数ヵ月後、ミッドチルダのある訓練空域にて。
――レッドアラート。その時、私は空中にいた。
編隊長機の後席で、戦闘機から見る空の様子を、自分の記憶に焼き付けておこうとしていた。
通信機のスイッチを入れるなり、前席が地上に向かって吼えている。
「無茶言わないで。お客さんの面倒見てんのよ、こっちは」
前席、すなわちこの機の機長を務めるには、かつての私の部下。その声には苛立ちが混じり、これが司令室とのやり取りじゃなかったら、そのまま怒鳴ってそう。
六課解散後、しばらく姿を見ないと思ったら、いつの間にか戦闘機パイロットになっていた。それも、凄腕パイロットに。
「通信司令室からメビウス1――転移魔法が発動したと思われる場所は、ランダーズ岬を基点に二七八から三〇二にかけて」
ところが、機長の抗議を聞きもせず、司令室は通信と同時にデータリンクを使い、レーダー上に転移魔法の発動が観測されたと思しき場所を転送してきた。
「――ランスター3尉、地上本部の貴隊しか間に合わない」
はぁ、と機長はため息を吐いた。いかにも気が乗らない様子で司令室とのやり取りを終えた彼女は、続いて通信機に手を伸ばす。
「ベイカー、ズヴェンソン、後ろについて。あたしたちで偵察に向かうわ、残りは低空へ退避して」
機長が一言そう告げると、周囲を飛んでいた味方の戦闘機は二機を残し、みんな主翼を翻し、低空へと降りていった。
残った私たちの機体と僚機の二機だけが編隊を組み、司令室から送られた座標に向けて飛ぶことになる。
「なのはさん」
機長――酸素マスクとヘルメットで覆われたティアナの顔が、こちらを振り向く。今回、私を後席に乗ってみないかと勧めたのは彼女だった。
だからだろう、彼女はどこか申し訳なさそうな表情を浮かべていた。
「ごめんなさい、急に任務が入っちゃいました――引き返す訳にもいかないんで、このままお付き合い願います」
「あぁ、了解。うん、大丈夫だよ」
私はティアナに向かって、右手の親指を立ててみせた。彼女は頷き、正面に向き直り、機体の操縦に戻った。
視線を右上に上げると、彼女の指示を受けて援護位置につく味方の戦闘機が――確か、私の記憶ではF-15Cだったと思う――この機体のすぐ傍を移動していく。
ティアナはそれを確認し、わずかに間を置いて、操縦桿を捻る。
「あ、あの、ティアナ? 大丈夫だとは思うけど、なるべく安全運転でね?」
「努力します」
しかし、彼女の言葉とは裏腹に、私とティアナを乗せたこの機体は左に派手にロールを打ち、降下していく。
世界がひっくり返り、胃が裏返った。
>>先ほどから陸士が積極的に反撃してこないことを、そして先ほどのアサルトライフルの弾丸が致死性であり、しかもその照準が甘いことに気付いた。
遅レスすまねえ
非致死じゃね?
FOX3 支援!
二時間前。
なのはは、管理局地上本部管轄の飛行場を訪ねていた。
目的は最近地上本部に限らず、本局ですらその名を知らない者はいないと言われるほどの、凄腕のエースパイロットに会うこと。
「こ、こちらでお待ちください。あ、あの、出来ればあとでサインをお願いします!」
面会するのに都合のいい、飛行場の食堂に案内してくれた若い陸士は、露骨なまでに緊張していた。
何しろ、現在は療養中のはずのエースオブエースがやって来たのだ。雑誌の取材などで名も顔も知れていたなのはを見て、緊張しないはずがない。
サインについては笑顔でOKを出すと、陸士はさぞ嬉しそうに「じゃあまた後で!」と飛び出していった。
そのままのんびり、食堂の窓から見える駐機場に並んだ戦闘機、ときどき響き渡るジェットの轟音に思いを馳せていると、目的の人物が、食堂の扉を開けてやって来た。
「ティアナ・ランスター3尉、参りました――お久しぶりです、なのはさん」
「うん――久しぶりだね、ティアナ」
やって来たのは、飛行服の上にフライトジャケットを羽織ったティアナだった。
とりあえず形式だけの敬礼を交わし、ティアナはなのはの傍に座る。
「……まさか、戦闘機のパイロットになってるなんて思いもしなかったよ。階級も跳ね上がってるし」
なのはは、ティアナの羽織ったフライトジャケットを見ながら呟く。フライトジャケットの右胸の部分には、あのリボンのマークがあった。
同時に、飛行服の首元に縫い付けられた階級章は3尉のものになっている。パイロットはみんな士官とされるので、ティアナは操縦訓練を終えると同時に階級を上げていた。
「彼に、ちょっとでも近づけたらいいなって思って。もちろん、執務官への道だって、諦めた訳じゃありませんよ」
今はもうこの場にいない、本来のこのフライトジャケットの持ち主に思いを馳せながら、ティアナは飛行服の懐から待機モードのクロスミラージュを取り出す。
今の彼女は、フェイトの執務官補佐と地上本部の戦闘機パイロット、どちらも掛け持ちでやっているのだ。
「びっくりしたよ、"メビウス1"の跡継ぎが来たとか、二代目リボン付きとか、色々話が飛び込んできて」
「いえ……あたしなんか、まだまだですよ」
謙遜のつもりで苦笑いを浮かべるティアナだったが、なのはは知っている。ジェイル・スカリエッティの事件に関わった地上本部の戦闘機パイロットたち、アヴァランチ、ウィン
ドホバー、スカイキッドの三人が、口を揃えて言っていた。「間違いなく、彼女の動きはメビウス1だ」と。
それに比べて、となのははひっそりと自嘲気味な笑みを浮かべる。一連の事件でブラスターモードの開放、身体への負担を無視した大量のカートリッジロード、そしてスカリエッ
ティのADF-01ファルケンによるレーザーの直撃。身体に影響が出ない訳がなく、現在、彼女は半ば強制的に療養中なのである。
鋼鉄の翼を得たティアナ、逆に翼を失った自分。そろそろ、世代交代の時期なのかもしれない。
「――そうだ、なのはさん」
そんななのはの心境を察してか、突然ティアナが何か思いついたのか、懐からその日のフライトスケジュールが載った書類を取り出す。
「午後からまた、訓練飛行が入っているんです。よかったら、一緒に飛びません? 操縦はあたしがします」
「え……で、でもティアナが乗ってる機体って」
確か一人乗りと聞いていたのだが、どうもティアナの様子を見る限り違うらしい。
かくして、なのはは機上の人となるのであった。
一時間前。
貸し出された飛行服は、自動的に装着されるバリアジャケットとは訳が違った。
悪戦苦闘しながらどうにか飛行服に耐Gスーツ、サヴァイバル・ジャケットを身に着けたなのはは、ティアナの案内で格納庫に入った。
「あれ……アレが、ティアナの機体?」
「ええ、そうですよ」
なのはの問いに、ティアナが誇らしげに頷いた。
格納庫にて整備員の点検を受けているティアナの愛機の名は、F-15ACTIVEと言う。優れた機動性を持つF-15を改良し、より高度な機体制御システムを搭載した機体である。
コクピットにて行われている作業は、なのはが乗るための後部座席追加のためだろう。それ以上になのはが気になったのは、尾翼に描かれたリボンのマークである。
フライトジャケットどころか、コールサインとマークまで受け継いだらしい。なのはは苦笑いしながら、F-15ACTIVEの後部座席に乗り込んだ。
ティアナの方は整備員と一緒に機体の目視点検を行い、それが終わってようやくコクピットの前席に乗り込んだ。
「じゃ、行きますよ」
「うん、了解」
なのはが頷くのと同時に、ティアナはF-15ACTIVEのエンジンをスタートさせる。
後席から、なのははティアナのエンジン始動の手順を見ていたが、その仕草はずいぶん手馴れていた。スイッチ一つ押すにも、戸惑いなどが一切無い。
きっと、彼もこんな風に愛機を飛ばしていたのだろう。なのはにはティアナの動きが、かつてのメビウス1と被って見えた。
ゆっくりとF-15ACTIVEは格納庫から顔を出し、誘導員の指示に従って滑走路の端へと進む。
「Mobius1 Cleared for takeoff.Good luck」
「Roger.Cleared for takeoff」
管制塔から離陸許可が下りると、ティアナは最後に操縦桿、ラダーペダルを動かして、離陸前の最後の動作確認。これも異常無し。
彼女は一度、エンジン・スロットルレバーを下げた。エンジンの排気音が弱まり、周囲に静寂が舞い降りる。
「――行きます」
最後に一言だけ、なのはに確認するようにティアナは言った。断る理由があるはずも無く、なのはは頷く。
直後、彼女はエンジン・スロットルレバーを叩き込み、エンジン推力を押し上げる。
滑走開始。荒鷲は己の心臓を最大限に活動させ、空へと昇るため、大地を駆け出す。
ティアナは頃合を見計らい、もう一度、今度は一番奥にまでエンジン・スロットルレバーを叩き込む。
途端に、F-15ACTIVEのエンジンから赤いジェットの炎が姿を現し、咆哮を上げる。アフターバーナー、点火。
数十トンを超えるはずの機体は、それが嘘のように離陸していった。
女性は案外戦闘機乗りに向いている、となのはは訓練空域に向かう途中、ティアナから聞いた。
強いGに晒される格闘戦では、身体の柔らかい女性の方が、より強く、より長い時間Gに耐えていられるからだそうだ。
もちろん体力や肺活量では男性の方が上だが、ティアナは魔導師としてそれなりに高いレベルにある。空戦中に、身体強化の魔法を使うこともあると言う。
「けど、空戦魔導師の適性はないのに、パイロットの適性はあったんだ?」
「ええ、まぁ……検査方法が違うからなのかも」
そんなこんなで訓練空域に向かう途中、先の司令室からの通信である。ひょっとしたら実戦になるかもしれない。
「こちらメビウス1、指定された座標に到着……何もないわね」
念のため搭載する兵装のセーフティを解除していたが、彼女たちの乗るF-15ACTIVEを出迎えたのは特に何も無い、いつも通りの青空だった。
ティアナは通信機のスイッチを入れて、僚機たちに散開して周辺を目視偵察するよう命じると、自身も正面に向き直り、周囲に視線を巡らせる。
支援する! メビウス1イジェークト!
「あぁ、なのはさん? 出来ればそっちの方でも何かないか探してください」
「え? うん、いいけど……」
何しろ、戦闘機に関してはなのはは対決した経験はあっても、搭乗経験は無い。果たして自分が役に立てるのだろうか。
ところが、ティアナはそんなことはお構いなしに、戸惑うなのはに対して言葉を続ける。
「目玉は多い方がいいんです。幸い、なのはさんには二つあります」
「――なんか、性格も多少変わった?」
「かもしれませんね」
ぶっきらぼうに答えるティアナ。頼もしくなったと言えるのだろうが、なのはの胸には一抹の寂しさのようなものがあった。
本当に、"エース"の雰囲気を漂わせちゃって――。
しばらく目視による偵察警戒を実施していた二人だったが、依然として何も見つからない。
結局司令室の誤報だったのだろうか。ティアナは「まぁ、こんなこともあります」と大して気にした様子も見せず、散開している僚機たちに集合命令を出そうと、通信機に手を伸
ばす。
なのはも緊張を解いて、酸素マスクを外し、視線を眼下の海に向けた――その瞬間、彼女は眼を見開いた。
瞬きすれば見失いそうなほどの、青い海にぽつんと浮かぶ黒点が一つ、彼女たちを乗せたF-15ACTIVEとは正反対の方向へ進んでいるのが見えた。
「――三時方向、何かいる!」
「!」
ティアナの反応は速かった。直ちに三時方向下位に視線を向けると彼女も目標と思しき黒点を見つけ、操縦桿を右に倒し、次いで引く。
F-15ACTIVEは素早く主翼を翻してハーフ・ロール、機首を下げて急降下に入る。
「ティアナ、味方を呼んだ方が――」
「その前に有利なポジションにつく方が先です。急機動の連続になりますからね、舌噛まないでください」
なのはの提案を無視し、ティアナはF-15ACTIVEの高度がある程度下がったところで反転、水平飛行に戻る。
――目視できる距離なのにレーダーに反応が無い、ステルス機かしら。
ステルス機、という単語が脳裏をよぎって、ティアナはふと、F-15ACTIVEの尾翼に描かれたリボンのマークを思い浮かべる。
彼の愛機、F-22ラプターもステルス戦闘機だった。ひょっとしたら――しかしティアナは首を振り、己の考えを否定する。今は目の前の目標に集中すべきだ。
目標との距離が縮まるに連れて、徐々にその形がはっきりしてきた。形状からして明らかに戦闘機、それもステルス性を意識したもの。
心臓の鼓動が、早くなるのが分かった。所属不明のステルス戦闘機。もし撃ってきたら、自分は勝てるのだろうか。F-15ACTIVEはその巨大さと各部に付け加えられたカナード翼の
おかげで、ステルス性は皆無に近い。
しかし、それを補って余りある機動性が本機の売りである。ティアナは記憶を掘り起こして所属不明機への対処方法を思い出し、このステルス機に近付くことにした。
まずは警告のため、通信機を国際緊急周波数に。所属と飛行目的を明らかにするよう呼びかけてみたが、返事は来なかった。
「どんな面してるのか、確認してみないと――」
エンジン・スロットルレバーを押し込み、F-15ACTIVEを加速させた彼女はステルス機に接近。機体の形状だけでなく、塗装や国籍マークもはっきり見える距離にまで近付き――そ
こで、ティアナ、そして後席のなのはすらもが、息を呑んだ。
「あれって……嘘」
「本物、だよね?」
よりはっきりと見えるようになった機体の形状から察するに、こいつは間違いなくF-22ラプター。
ただし尾翼に描かれた部隊マークは、このF-15ACTIVEと同じ、リボンのマークだった。
パイロットは――ティアナは思わず、コクピットの方に視線を送った。酸素マスクとヘルメットを装着したパイロットが、こちらを見ていた。
たまらず、ティアナは酸素マスクを外し、パイロットが自分であることをF-22に向かってアピールする。
F-22のパイロットは気がついたのか驚いたような様子を見せ――そして、右手の人差し指をくいくいと曲げた。
――来い。
言葉を実際に聞いた訳ではない。だがティアナは、彼が何を言いたいのかすぐに分かった。直後、F-22は突然急上昇。そのまま宙返りを打ち、ティアナとなのはのF-15ACTIVEの後
方上位に位置しようとする。
「あ、ティアナ、後ろを取られる……」
「分かってます――上等、やってやろうじゃないの」
後方に食らいつこうとしたF-22を回避するべく、ティアナは操縦桿を左に倒して、機体をロールさせる。
左に回転しつつF-22のロックオン可能範囲内から逃れたF-15ACTIVEは、減速しつつ今度は右にロール、F-22の後方下位に強引に潜り込もうとする。
通常のF-15なら失速してしまうほどの速度だが、F-15ACTIVEに搭載された電子制御は優秀だ。ティアナの操縦に機敏に反応してみせるこの機体は、F-22の後ろを奪うことに成功す
る。
もらった、とティアナは機関砲の引き金に指をかけた。もちろん実際に発砲する気はなく、ガンカメラでF-22を撮影するだけだ。地上に戻って現像すれば、撃墜判定を取れる。
だが、さすがに一筋縄にはいかない。F-22は一度機首を上げて急上昇、ティアナがこれを追いかけようと操縦桿を引いた時、まるで追いかけてくるのを読んだかのようにハーフ
ロール、急降下へ。急激な方向転換について行けず、彼女のF-15ACTIVEはF-22を取り逃がしてしまう。
逃がすもんか、とティアナの闘志に火がついた。エンジン・スロットルレバーを叩き込み、アフターバーナー点火。操縦桿を前に突いてF-15ACTIVEの機首を下げさせると、加速し
ながらF-15ACTIVEはF-22を追って降下に入る。
「うわっ……ティ、ティアナ、もうちょっとゆっくり」
降下に入ったため、マイナスのGがかかり、身体が浮くような感覚がする。なのはが驚いているが、ティアナは無言の返答。眼下のF-22を睨みつける。
ようやくF-22を正面に捉えたが、今度は右へ左へと不規則に旋回して、ロックオンさせまいと逃げ回る動きを見せた。ティアナは逃げるF-22を追って、追従旋回。
F-15ACTIVEが右に行けばF-22は左に、それを追えば今度は右にとイタチゴッコをしばらく繰り返す。後席のなのはが旋回でGのかかる度にいちいち小さく悲鳴を漏らしているが、
気にせずティアナは操縦を続けた。
――まぁ、空戦魔導師だったんだから酔うことは無いと思うけど。
念には念を入れて、後席にエチケット袋を置いておくべきだったかもしれない。そんなことを考えながら、ティアナは逃げるF-22を追い回す。
F-22が右に旋回。ティアナはこれを追うべく操縦桿を右に倒し――そのまま、今度は左に一気に倒す。
右へとロールしようとしていたF-15ACTIVEの主翼が翻り、急激な左方向へのロール。F-22は右旋回から左旋回に入り、自らティアナの前に躍り出てしまう。機動を先読みしたのだ。
「捉えた……」
静かに呟くのと同時に、ウエポン・システムに手を伸ばして使用する兵装、短距離空対空ミサイルのAIM-9サイドワインダーを選択。AIM-9の弾頭はF-22のエンジンから放出される
赤外線を捉え、ヘッドホンを通じてティアナに電子音を送る。ロックオンした証拠だ。
「メビウス1、フォックス2……!?」
言いかけて、ティアナは思い止まった。F-22は尾翼の付け根から盛大に炎の塊、赤外線誘導のミサイルを幻惑するフレアを放出。AIM-9の弾頭はどれがF-22のエンジンのものなの
か混乱し、ロックオンが外れてしまった。
――ロックオンされる瞬間を読んだ? なんて人。
やっぱり"元祖"は強い。驚くティアナを余所に、F-22は急激な右旋回。ティアナのF-15ACTIVEの右後方にまで回り込むと、機首をわずかにずらす。機関砲で狙い撃ちするつもりだ。
「ティアナ、撃たれる、後ろから――!」
「分かってます――ガンキルにこだわるなら、こっちだって!」
エンジン・スロットルレバーを強引に押し下げ、さらにエア・ブレーキ展開。F-15ACTIVEは機体上面のブレーキを展開させて、急激な減速。
F-22はさすがにこれは予想外だったらしく、F-15ACTIVEの前に突き出されてしまう。
酸素マスクから送られてくる酸素をたっぷり吸って、ティアナは冷静に、しかし熱い思考はどうすることも出来ないまま、機関砲の引き金に指をかけた。
照準が、F-22の胴体に重なる。その瞬間彼女はガンカメラを起動させ、同時にF-22のパイロットに対して宣告する。
「ガンアタック、キル! 撃墜ですよ、いい加減大人しくしてください、メビウスさん」
開きっぱなしにしていた通信回線に怒鳴り込むと、しばらくして応答があった。同時に、F-22は水平飛行に戻って大人しくなる。
「――いやぁ、やられたよ。いい腕じゃないか、ランスター?」
天使とダンスだぜ 支援!
F-22のコクピット、それまで激しい空戦機動を行っていたパイロット――メビウス1は、酸素マスクを外し、満足そうな笑みを浮かべていた。
傍らを飛ぶのは、いつの間にか戦闘機乗りになっていた、かつて生死を共にした若き銃士の駆るF-15ACTIVE。見込みがあったのは事実だが、まさかパイロットになっているとは
思いもしなかった。
「手加減しましたね? 機関砲にこだわらなければ、あの時点で撃墜できたはずです」
とは言え、このツンツンした態度は変わらないらしい。メビウス1は苦笑いしつつ、返答。
「バレたか。いや、機関砲なら純粋にパイロットの技量で決まるからな。お前さんの技量がどんなもんか」
「試したんですね? まったくもう……」
F-15ACTIVEのコクピットで、前席に座るパイロットがやれやれ、と首を振っているのが見えた。しかしそうなると、後席でぐったりしているのは誰なのだろう。
「うーん……」
「あ。な、なのはさん、大丈夫ですか?」
「え、ちょ、なのはかよ!? なんで乗ってるんだ」
通信に入り込んできたうめき声。ティアナはそこでようやく、なのはがエアーシック(飛行酔い)に陥っていることに気付いた。
早く帰らないと、これは大変なことになるかもしれない。コクピットを嘔吐物で汚すのもまずいが、何よりなのはの体調が心配だ。
ひとまず帰路に着きながら、ティアナは気にかかっていたことをメビウス1に問う。
「そういえば、どうしてまたミッドに?」
「――さて、な。自由エルジア軍を蹴散らして帰ろうとして、気がついたらまたここだよ」
つくづく俺はミッドチルダに縁がある、とメビウス1は付け加えて、笑ってみせた。
すると突然、通信機の方から、何故だかティアナのものと思しき、嗚咽が聞こえた。はっとなって振り向くと、F-15ACTIVEのコクピットで、ティアナが酸素マスクを外し、目元を
抑えているのが見えた。明らかに、泣いている。
「お、おい、どうしたんだ。どっか具合でも……」
「――違います!」
心配して声をかけると、何故か怒られた。
じゃあ何だろう、と彼女の言葉を待っていると、通信機に再び、今度は涙声のティアナの声が入ってきた。
「――もう、会えないと思ってた。でも、メビウスさんは……」
また来てくれた。それは本人の意図したものではないにせよ、メビウス1が再びミッドチルダに来たのは動かしようの無い事実なのだ。
これが地上であるならば、彼女は人目も気にせず、彼の胸に飛び込んだだろう。自ら望んで戦闘機に乗った訳だが、この時ほどティアナは地上に戻りたいと思った時はなかった。
そんな彼女の気持ちを察したのか定かではないが、メビウス1は優しい笑みを浮かべて言った。
「――ああ。ただいま、ティアナ」
「……お帰りなさい」
ミッドの空に、リボン付きが舞い戻った。
休んでなどいられない、さあ支援だ!
どこかの古城の一室。その部屋で数人の男たちが、何枚かの報告書を手に、ため息を吐いていた。
「カプチェンコも妙なものを残したものだ、時空転移装置など……ユリシーズが落ちてからだろう、機能し始めたのは?」
オーシア空軍の飛行服を着た男が、同じく飛行服、ただしこちらはユークトバニア空軍のものを着た男に尋ねる。
男は頷き、複数ある報告書の中から、一枚を取り出す。
「ああ、それも不定期かつ何を飛ばすか分からん代物だ。我々の意図しない物まで飛ばすのは困った……もっとも、おかげでADF-01のテストは出来たが」
報告書に記されているのは、ADF-01ファルケンの詳細なデータ、それに添付された写真。
かなり重要なものであるはずなのだが、男は興味がなくなったように、報告書をテーブルの上に放り投げる。
「コフィン・システムはまだ実用レベルに達していないな。パイロットがあんな狂人でもないと精神が崩壊してしまう」
「試験的にADFX-02の機能を入れてみたが、こっちの方は効果が高いようだ。もっともコストが凄まじいが……レーザーだけで充分だな」
他にも何枚かある報告書を捲る男たちがいたが、いずれもが最終的に興味をなくし、報告書を投げ捨てた。あとはせいぜい証拠隠滅のため、焼却炉にでもぶち込むしかない。
「ところでZ.O.Eのデータはどうする? 我々はアークバードに搭載するUAV以外に特に使う用事がないが」
「自由エルジアにくれてやれ、元はと言えばあっちの技術だ。しかし……痛手だったな。貴重なADF-01を失ってしまうとは。残りは四機だろう?」
オーシアの飛行服を着た男が、確認するように言った。潜伏生活を余儀なくされる彼らにとって、戦闘機は非常に貴重だ。
ましてや、ファルケンはベルカがその技術の粋を集めて開発した、まさに切り札。彼の言うとおり、これを一機でも失うのは痛手だった。
「ああ。まさか、"リボン付き"と"黄色"が一緒に来ているとは思わなかった。エースの力は偉大だな」
「メガリスもな。しかし、これではっきりしたぞ。空からの大質量攻撃、これは極めて有効だ」
「となるとアシュレイ、やはりSOLGを使うか?」
ここに来て初めてアシュレイ、と呼ばれたオーシアの飛行服の男は、当然のように頷き、しかしすぐには実行しないことを話す。
「うむ。だがシステムの掌握にかなり時間がかかる、あと五年は待つべきだ」
「だろうな。ユークトバニアの方も、タカ派の軍人の掌握にはまだ手間取りそうだ」
「頼むぞミヒャエル、計画ではそっちからオーシアに仕掛ける予定だからな」
「分かっている、全てはベルカのため……」
ミヒャエルと呼ばれたユークトバニアの飛行服の男は、やはり頷く。
アグレッサーとして各国に迎えられたはいいが、まだまだ彼らの計画には時間がかかる。ミッドチルダでの一連の事件は、彼らにしてみればただの実験に過ぎないのだ。
「そうだ、ベルカのためだ。そのためならあと五年や四年、大したことは無い」
「皆、しばしの辛抱だ。それまでは耐えよう、ベルカのために」
男たちは、静かにその時を待つ。一九九五年、あの日、潰えたはずの強く、巨大なベルカ公国を取り戻すために。
THE OPERATION LYRICAL Fin...?
続編くるー? 支援!!
投下終了です。支援ありがとうございました。でもメビウス1はイジェクトしないってw
最後のがいったいどういうことなのかは、各人で妄想してお楽しみください。
COD4とのクロスは書き出したので、もう少しお待ちを。
乙!
この後を引く終わり方で後は妄想しだいなのか!?
お、俺は妄想力に自信が無いんだ!
TOL氏GJ!!
メビウス1が帰ってきたぜ! でも、アンタ磁石でも付いているのかww 飛ばされすぎだろww
そして、なにやらベルカが企んでいるようですがこれはもしやついにCOD4とエースコンバット+なのはのクロス伏線?
本格的に戦争が始まりそうだぜ、ひゃっはー!!
まさかのティアナの戦闘機パイロット。
まあそうだよね、飛行適正ないもんね、お金掛かるよね。SSXでも飛べるか不明だしね。
しかし、本格的に修羅場が始まりそうだぜ、ひゃはー! 続きを妄想といわず妄信しつつ待っています!!
こんばんわです。UCAT様、TOL様に続き、21時30頃ラクロアを投下いたします。
よろしくお願いいたします。
・・・・・ロボはいい・・・・・
支援する!!! さあどんとこい!
UCAT氏GJ
ところで自分も以前終わクロとのクロスを考えてた時期がありますが
その頃から思ってましたが、
フェイトって2nd概念との相性やばくね
FATEは身の破滅や死などの悪い運命を表すので
実際に死にはしないでも
つまりフェイトは
・字面の意味で不幸になり
・認識される意味で脱げば脱ぐほど早く強くなる、むしろ脱ぎ属性
いいぞもっとやれ
高天氏支援。
TOL氏GJ。
そしてUCAT氏。勇者直撃世代の1人から心からのGJを。
てか誰か、フェイトさん車にエネルギー生命体降ろしてエリオと交流させてくれる人はおらんかw
GJ!
管理局の技術が入ったらそのうちニューコムチックな機体も開発できそうですね。
552 :
一尉:2008/12/06(土) 21:26:46 ID:5gCddHbe
もっとやれよ支援
魔法少女リリカルなのは外伝・ラクロアの勇者
第14話
・本局内一室
本局内に幾つかある応接室。
部屋の明かりは消えており、唯一スタンドの小さな光だけが、この部屋を照らしている。
備え付けられているソファーには、一人の初老の男性がいた。
彼の手にあるのは『八神はやて』に関する事が細かく書かれた報告書。
だが、彼はそれを手に持つだけで目を通そうとはせず、机に置いてある写真立ての中にある写真を見つめていた。
若い男女と幼い男の子。誰が見ても家族の写真。この部屋に彼の事を知らない人物がいたならば、
息子夫婦と孫の写真を見ている老人と見てしまうだろう。
だが違う。写真に写っている男女は部下だった男とその妻、幼い子供は自分の生徒であり、今では立派な執務官。
初老の男性はその写真を見据えながら11年前の出来事、自分の部下を、彼女の夫を、少年の父を失った事件を思い出す。
だがロクな記憶が無い、あの事件で手に入れたのは名声でも手柄でもなかった・・・・後悔、それだけ。
それなのに周囲の皆は無論、夫を失った妻も、父を失った子供も、自分を責めたりはしなかった。
『仕方が無かった』『しょうがなかった』皆口に出すのはそんな言葉ばかり。
いっそ部下殺し、夫を返せ、お父さんを返せと罵ってくれた方がどんなに楽だったか。だが、自分の周りの人間は物分りが良すぎた。
むしろ英雄扱いをされた。プロパガンダとしての意味合いもあったのだろう。
だが、彼には辛かった・・・・辛すぎた。
『何が英雄だ?部下を殺した自分が何が英雄か!!』
「・・・・そろそろか・・・・」
我に返ると同時に時計を見る。おそらく自分の使い魔達が上手くやってくれているだろう。
長きに渡る闇の書を巡る忌まわしい事件ももうすぐ終る。彼女『八神はやて』の永久封印という形で。
幼い、未来のある少女を永遠に封じ込めるという事に、心が痛む事もあった。
だからこそ、悲劇を繰り替えさせてはいけないという薄っぺらい使命感を盾にする事で正当化させ、自らを突き動かしている。
「・・・・それでも・・・・心は痛むな。結局、私はこの痛みを死ぬまで背負わなければならないのか・・・・・」
10年前は悲劇を起こさせないために部下を蒸発させた。そして今回は悲劇を永久に起こさせないため、自分を慕う幼い少女を
氷漬けにしようとしている。
「何も変わらんな・・・・・・後悔だけを残したあの時と」
男は手に持っていただけの報告書に初めて目を通した。まるで、眩しい物を見るかのように目を細め、八神はやての写真を見据える。
ギル・グレアム、闇の書事件に裏から暗躍していた男は、ケジメをつけるかのように、ただじっと、はやての写真を見据えていた。
・地球
海鳴大学病院から1キロほど離れた高層ビル、二人の仮面の男は事を終えた後、そこで最後の準備を行っていた。
「・・・よし、結界は張れた」
足元に展開していた魔法陣を消し、目視で結界が晴れたことを再確認する。
「デュランダルの用意は?」
「出来ている・・・・問題ない」
待機モードであるカード状態のデュランダルを見せつけ、抜かりがないことを証明する。その直後、
此処からでも聞こえる爆音と共に強力な魔力が、海鳴大学病院屋上を中心に爆発を起こした。
「・・・・空間攻撃魔法か・・・・・持つかな?あの二人?」
「・・・・・暴走開始の瞬間までは持って欲しいな」
今だ空間攻撃『デアボニック・エミッション』の攻撃が続く上空を見つめながら二人は呟く。
今頃、あの空間内ではあの二人の少女が必至になって攻撃に耐えていることだろう。
その調子で攻撃に耐え、時間を稼いでくれれば良い。いくら彼女達でも、今の実力では奴に勝つ事などできないだろうから。
否、勝って貰っては困る。奴には生きたまま、永遠に眠ってもらわなけらばならないのだから。
「まぁ、精々かんばってくれ・・・・未来を担う魔道師達・・・・・っ!?」
そんな、軽い激励の言葉を呟いた直後、彼らの周囲に、突如蒼い光の粒子が囲むように出現する。
その粒子の正体にすぐに気付いた仮面の男達は、即座にその場を離れようとするが、その行動より早く、
彼らの足元にミッド式の魔法陣が出現、其処から生えるように伸びた魔力の戒めが、彼らを拘束した。
「バインドだと・・・・だが、この程度」
「待て!これはただのバインドでは(そう、その通り」
上空から聞こえた声に、二人は揃えて顔を向ける。
「ストラグルバインド・・・・相手を拘束すると同時に、拘束者にかけられた強化魔法を無効化する」
愛杖のS2Uを構えたクロノ・ハラオウンは淡々と効力を説明しながらゆっくりと彼らの前へと降りる。
仮面の男達は脱出しようともがくが、クロノは特に慌てもせずにその光景を見据えた後、S2Uをステッキの様に回転させる。
「あまり使い所の無い魔法だけど、こういう時には役に立つ。変身魔法も強制的に解除するからね」
その言葉が合図だったかのように、二人の仮面の男は、声をあげて苦しみだす。徐々に体が光に包まれ、
体系が男性から女性へと、白い服が黒い服へと変わってゆく。
そして顔を覆っていた仮面が弾ける様に取れ、その素顔をさらす事となった。
足元まで転がってきた仮面に目を向けた後、クロノは変身魔法が解けた二人を再び見据える。
「・・・クロノ・・・・このぉ・・・・」
変身魔法が解けたリーゼロッテは、悔しそうにクロノをにらみつけ
「こんな魔法・・・教えてなかったんだがな・・・・」
同じく変身魔法が解けたリーゼアリアも、内から出る悔しさを抑えるかのように、声を低くし呟いた。
そんな二人の避難を正面から受け止めたクロノは、こみ上げてくる悲しさを拳を握る事で抑え、ゆっくりと答える。
「・・・一人でも精進しろと言ったのは・・・君達だろ?・・アリア・・・ロッテ・・・」
「・・・・全く・・・余計な事を言わなければ良かったよ」
観念したかの様にアリアは溜息をつき、ロッテもまた、軽く首を左右に振る。
「アタシらの負けさクロ助、さぁ、何処へでも連れて行くが良いさ・・・勿論、クロ助がさ」
「私達・・・・元が猫で自由奔放だからね、クロノ並みに強い相手がエスコートしてくれないと、逃げちゃうかもね?」
クロノに正体がバレ、捕縛された事は計算外だった。だが、まだ全てが台無しになったわけではない。
戦闘は未だ続いている。使い魔らしい二人が合流したが、それでも彼女達では奴を止める事は出来ないだろう。
もしクロノが戦闘に参加したのなら勝敗は分からない。だが、彼には自分達を護送する仕事が残っている、不可能だ。
奴が暴走すればこちらのもの。有効手段を用いてる自分達を拘束するほど、クロノも馬鹿ではない筈。
「確かに・・・・僕は君達をグレアム提督の所まで連れて行かなければいけない・・・・・だから答えてくれ。
騎士ガンダムを何処へ連れて行った」
「っ!!父様は関係(ジュ!!」
ロッテは主であるグレアムは無関係だと叫ぼうとした。だが、何かが顔の横を掠めたため、言葉を詰まらせる。
頬に感じる痛み。滴り落ちる血、パラパラと落ちる髪の毛、テニスボール大の丸さにくり貫かれた落下防止のフェンス、
そして、見た事もない冷たい瞳で自分達を見据え、S2Uを構えるクロノ。
「・・・・・悪いけど、無駄口は叩かないでくれ・・・・・管理外世界人への暴行、脅迫、君らは十分罪といえる行為を行っている。
大人しくこちらの質問に答えるのなら、多少考慮してもいいけど・・・・だんまりを通すのなら、君らの主である提督に全てを被ってもらう」
今まで見た事もない表情で自分達を見据えるクロノに、リーゼ姉妹は悔しそうに歯を食いしばり睨みつける。そして
数秒の沈黙の後、リーゼアリアが吐き捨てるように、ナイトガンダムがいる次元世界の座標を言い放った。
「・・・分かったわ・・・・ガンダム君はこちらに任せて」
クロノからの報告を聞いたリンディは通信を切り、一度溜息を吐いた後、背もたれに背を預ける。
今回の事件、裏で行動していたのは『やはり』グレアム提督だった。
予感はしていた。グレアム提督が闇の書事件に悔いを残していた事は以前から知っていた。だからこそ、今回の事件で何かしらの行動を起こすとは思っていた。
案の定、裏でリーゼ姉妹が動いていた・・・・・グレアム提督の差し金で間違いはないだろう。
身内である彼女達なら、エイミィが不審がっていたシステムのクラッキングなども納得できる。
だが、気付くのが遅すぎた。闇の書は完成してしまい、今はなのは達が迎撃を行っている。
彼女達の強さは十分理解してるが今回は相手が悪すぎる。その証拠に映し出されている映像からでも苦戦を強いられているのは目に見えている。
「(このままじゃ暴走して・・・今までの繰り返し・・・・)」
このままではいずれ暴走し、手が付けれなくなる。そうなってしまうと方法は一つ。
周囲の被害を気にせずにアルカンシェルで吹き飛ばすしかない。だが、方法はもう一つ残されている。
唯一の望みは主である八神はやての意識があること、もし呼びかけに応じればまだチャンスはある。
「エイミィ!!ガンダム君の居場所、特定できた!?」
「はい!ですが・・・・思ったより距離があります。それに、戦闘が行われいるようです!!」
キーボードを素早くたたき、なのは達の戦闘が映し出されているメインスクリーンの横に、映像を出現させる。
音声を拾う事はできなかったが、映像は思ったよりの鮮明に映し出されていた。
一面の砂漠に、巨大生物の死骸が多数。中にはリーゼ姉妹が用意したのか傀儡兵と思われる残骸も確認できる。
それらの屍から少しはなれたところにナイトガンダムはいた。
外傷は無さそうだが、鎧は巨大生物の血液で汚れており、傷も幾つか確認でいる。
どれほど戦い続けていたのだろうか?息は荒く、立っている事も辛いのか、時より膝をつき動きを止めている。
それでも、襲い掛かって来る傀儡兵を横一文字に切り裂き、砂の中からでて来た赤竜を電磁スピアで黒焦げにし、どうにか餌食になる事を防いでいた。
このままでは不味いことは誰が見ても分かった。だが、今の自分達に・・・・・助けに向かわせる戦力は無かった。
なのは達は論外、クロノはリーゼ姉妹やクレアム提督の尋問、アースラ所属の武装局員も結界の維持や周囲の災害で手一杯。
それ以前に、あの場所へ行けば必然的に戦いとなる。相手は赤竜や傀儡兵、仮にどうにか局員を割けても、下手したらナイトガンダムの足を引っ張る可能性もある。
「せめて・・・・・クロノやなのはさん達ほどの実力者・・・・・ランクA以上の魔道師がいれば」
そんな虫の良い話があるはずがない。そう思っていた。だが、頭に浮かんだある人物の姿が、その思いを打ち壊した。
「アレックス!!」
自然と椅子から立ち上がり、武装局員に指示を出しているアレックス目掛け、大声で叫ぶ。
「至急連絡を!地上本部へ!!」
「はぁ!!」
もう何十体目かになる傀儡兵を真横に斬り倒す。切り口からスパークが発生しその直後、大爆発。
本来なら盾で爆風をやり過ごすか、斬った瞬間に退避するなど避け方はあるのだが、疲れがピークに達したナイトガンダムには
もうそんな余裕すらなかった。爆風に煽られ吹き飛び、砂の大地に叩きつけられる。
「・・・・・・まだ・・・だ・・・・・」
正直、このまま眠りたい。砂の冷たさが眠気を更に誘う。だが、此処で眠る事は死を意味する。あの機械や獣は待ってはくれない。
電磁スピアを杖にし、どうにか立ち上がるが体は正直に反応してしまう。
「・・・・・・う・・・・ぁ・・・・・」
足が自然ともつれ、尻餅をついてしまう。その隙を見逃す敵ではなかった。
一体の傀儡兵が手に持っている巨大な斧を構え突撃、それに対しナイトガンダムは迎撃態勢を取る所か、満足に立ち上がる事も出ない。
「・・・く・・そっ・・・・」
どうにか電磁スピアを杖にし立ち上がる。だが出来たのは其処まで。
先行していた傀儡兵は既にナイトガンダムの脳天目掛けて巨大な斧を振り下ろそうしていた。その時
『Knuckle Duster』
デバイス特有の電子音が突如響き渡る。その直後、ナイトガンダムに攻撃を加えようとした傀儡兵は凄まじい速さの何かと激突。
装甲を凹ませ、大地に自分の一部をばら撒きながら豪快に吹き飛んだ。
支援!!
「・・・何が・・・一体?」
突然の事態にナイトガンダムは唖然としながらも、傀儡兵にぶつかって来た『者』に目を向ける。
ボディースーツの様な服装、おそらくバリアジャケットだろう。足には依然本で見たローラースケートの様な物を履いている。
そして、腕には手甲と呼ぶには可笑しい無骨な物を装着している。
魔力で作った道の様なものの上に立っているその人物はゆっくりと顔を向け、間に合った事に安堵していた。
「間に合ったようね」
「ク・・・・クイント殿!?どうして此処へ?」
ナイトガンダムのピンチを救った人物、クイント・ナカジマは何も言わずに、自身が作った光の道『ウィングロード』から降り、駆け寄る。
そして、今すぐにでも倒れそうなナイトガンダムの体を抱え、負傷がないか調べ始めた。
「・・・・・怪我はないみたいね・・・でも、これだけの数をよくもまぁ・・・・」
赤竜と傀儡兵、戦闘能力だけならAランク魔道師とも渡り合える存在。そんな相手が辺りを見渡せば残骸や死骸となって埋め尽くされている。
これを全て一人でやったとなると、彼の実力を凄いと思うと同時に、彼が敵でなくて本当によったと思う。
「・・・・リンディ提督に頼まれてね・・・・・君がピンチだから助けて欲しいって。だから私が所属する陸士部隊が応援と救助にきたってわけ。
今、提督が担当している事件・・・かなり不味いことになってるそうよ」
「・・・・・っ!まさか!(動かないで!」
闇の書になにか動きがあったに違いない、居ても立っても居られなくなる。
咄嗟に起き上がろうとするが、その行動をクイントは無理矢理抑えた。
「落ち着いて、君の強さは十分嫌ってほど分かったけど、こんな満身創痍な状態じゃどうにもならないでしょ?メガーヌ!こっち!!」
クイントより少し遅れてきた陸士部隊っが即座に戦闘を開始する。隊長を思われる槍を持った男性が次々と蹴散らし、
残りは後ろから攻撃で援護する。その中から、クイントの声に反応したピンク色の髪の女性が駆け足でこちらへと近づいてくる。
「回復と転送は彼女に任せるわ。私なんかよりエキスパートだからすぐに良くなるわよ。回復が終ったら彼女に現場まで転送してもらって、
此処は私達『ゼスト隊』が抑えるわ!」
到着したメガーヌに、二言三言言葉を交わした後、ガンダムに笑顔でガッツポーズを決めたクイントは、
ウィングロードを展開、戦場へと突き進む。
「さて、騎士ガンダム君ね?事情はクイントから聞いているわ、じっとしてて直ぐに終るから。っとその前に」
思い出し方の様に、メガーヌは不意に右手を肩の高さまで上げる。するとグローブに埋め込まれている水晶が光り、黒い塊を出現させた。
その塊は徐々に大きくなり人の形を形成、成人男性程度の大きさになった直後、爆発。
中から、人の形をしたモンスターが現われた。
「・・・これは・・・モンスター?」
「違うわ。私の自慢の使い魔、ガリューって言うの。見た目は怖いけど優しくて紳士よ。クイントの援護、お願いね」
承知したと言わんばかりに深々と頭を下げた後、踵を返し、砂の大地を蹴る。
ものすごいスピードでクイントの後を追うガリューの姿を確認したメガーヌは、ナイトガンダムの胸に優しく手を載せ、詠唱を唱える。
疲弊していた体がみるみる軽くなる感覚に心地よさを感じながらも、ナイトガンダムは向こうで起こっている出来事に不安を隠せないでいた。
・海鳴市上空
ユーノとアルフも加わり、実質4対1となった戦い。それぞれがスピード戦、砲撃、拘束など得意分野で一気に攻める。
だが、闇の書の意思は顔色一つ変えず、無言でそれらの攻撃を裁ききり、攻撃を仕掛けてくる。
拘束のため巻きつけたバインドは瞬時に破壊され、左右同時に放った砲撃は完全に防がれる。
そしてカウンターといわんばかりに、自動誘導型高速射撃魔法『ブラッディダガー』がなのは達目掛けて放たれた。
その攻撃を皆が咄嗟にガードし耐え切る。
「ううっ・・・どうにか・・・」
自身を包み混む爆煙から咄嗟に抜け出すなのは。自分は防御が間に合ったため、着弾時に舞い上がった煙にむせただけで済んだ。だが、皆はどうなのだろう?
なのはは咄嗟にフェイトやユーノの姿を確認、自分と同じく無傷でいる事に安堵する。
だが、フェイトの顔を見た瞬間、彼女が何か叫んでいた。それが『なのは!上!!』だと理解したその直後、
先ほどの攻撃が再びなのはに襲い掛かった。
クイント支援! なのはピンチ!
レイジングハートが咄嗟にシールドを展開するも間に合わず、数本の赤い鋼の短剣がなのはに突き刺さる。
バリアジャケットの強度のおかげで致命傷は免れたが、彼方此方が裂け、露出した肌からは血がにじみでていた。
「(・・・・・油断・・・した・・・・)」
あの時、自分は仲間の無事だけを気にかけてしまい、敵である相手の行動を見忘れていた。
依然アリサにも言われた事がある『なのははすずかと同じで、私達のことを気にかけすぎて、自分の事をおろそかにしている』と
「はは・・・アリサちゃんの言うとおりだ・・・・・」
それがこの結果、正に自業自得だ。痛みを堪えながも必至に瞑っていた瞳を開ける。
先ず見えたのは無表情の闇の書の意思の顔。何度も言葉を投げかけても、答えるどころか表情一つ変える事がなかった。
その彼女が魔力を纏わせた拳を振り上げ、自分に叩きつけようとしている。
フェイト達が咄嗟に助けに入ろうとするが、再びブラッディダガーの洗礼を受け足止めをされてしまう。
未だにこちらに無表情の顔を向けているとなると、目的は間違いなく自分、あの拳が思い切りたたきつけられる事を考えると嫌な気持ちになる。
「防御を」
咄嗟に右手を翳し、障壁を展開しようとする。だが闇の書の意思は翳されたなのはの腕を掴み、無理矢理横に払う。
握りつぶすかのような力で掴まれる腕に、なのはは苦悶も表情を浮かべるが、
迫り来る拳を見た瞬間、それはすぐに恐怖手と変わる。
「・・・いや・・・・・」
防御の仕様が無い。もし冷静だったら何か考えが浮かんだかもしれないが、そんな余裕は無い。
バリアジャケットも先ほどの攻撃でダメージを負っている、当たればほぼダイレクトに自分にダメージが来るだろう。
体をこわばらせ目を瞑る。この瞬間に出来ることといえば、この位だった。そして
「ムービー・サーベ!!」
上空から放たれた斬撃波が、なのはを殴ろうとした闇の書の意思に直撃、爆煙に包まれながら落下してゆく。
自分を助けてくれた攻撃に、なのはは呆気にとられながらも斬撃波が放たれたほうへと首を向ける。
否、分かっていた。聞き覚えがある声、そして特有の魔法。それでも確認したかった。
「ガンダムさん!!」
「すまない、遅くなった」
ゆっくりと自分の元へと降りてくるナイトガンダムをなのはは笑顔で迎える。だが、彼の姿を見てその表情は変わってしまった。
こちらへ向かってくるフェイト達もまた彼の姿に言葉を失う。鎧は傷だらけ、マントは何かの染みで汚く汚れている。
誰が見ても無事とはいえない状態だった。
「一体どうしたんだい!?ズタボロじゃないか!?」
「色々とあってね。鎧はこの様だけど、戦闘には支障は無いから大丈夫。優秀な方に回復魔法を施してもらった。
悪いが詳しい話は後にしてくれ。こちらの事情もリンディ殿から聞いている。先ずは」
ゆっくりと顔を下へと向ける。
直に目が合った。無表情に自分を見つめる彼女に。全くダメージを受けていないのだろう。
直撃した肩には外傷はおろか、バリアジャケットに綻びすらない。ただ、自分・・・否、自分達に向けての強い殺気を感じる事は出来た。
「・・・・・アルフとユーノは動きを止めることに専念してくれ。あと、いざという時の回復を頼む」
「うん!」
「あいよ!」
「その隙に私とフェイトが接近戦を仕掛ける。なのはは後方で援護を頼む」
「わかった!」
「はい!」
なのはは後方に下がり、ユーノとアルフは挟み込む様に左右に展開、そしてナイトガンダムとフェイトは武器を構え突撃しようとする。
その光景を見た闇の書の意思はゆっくりと右手を掲げ魔法陣を展開。だが、その色は黒くは無く、なのはと同じ桃色。
そして大気中に漂う魔力が魔法陣の中心へと集まってゆき、徐々に大きな球体へと変わってゆく。
「なっ・・・まさか・・・」
「あれは・・・・」
ナイトガンダム以外の全員が、これから何が起こるのか嫌でも理解した。
なのはの必殺技ともいえる集束砲撃魔法。その威力を身を持って知ってるフェイトは、叫ぶようにアルフにユーノをつれて逃げるように指示、
その後、有無を言わさずナイトガンダムの手を掴み、全速力で退避、途中なのはの腰を抱え、スピードを上げる。
「フェイト!一体どうしたんだ!?」
「あれはなのはの必殺魔法・・・此処にいると危険!」
「でも、こんなに離れなくても」
「至近で直撃を受けたら、どんなに防御しても確実に落とされる、回避距離を取らなきゃ!」
既に肉眼では闇の書の意思は確認出来ず、桃色の球体が微かに見えるだけ、それでもフェイトはスピードを落とさすに距離をあける。
『左方向300ヤード、一般市民がいます』
普段は自分から喋る事がないバルディッシュが無視できない報告をしたのは、距離にして数キロはなれた時だった。
「・・・・・」
普段なら車が行きかう道路、だが結界が張られている今では、車は愚か、人すらない筈の空間。だが、二人の人物が取り残されていた。
月村すずかは両手で通学カバンを抱え、ただ呆然と周りの風景を見ていた。
アリサと町を歩いていた時に起こった出来事。突然、人や車、町の喧騒が一気に無くなりゴーストタウンと化してしまった。
「やっぱり誰もいないよ!急にひとがいなくなっちゃった・・・・辺りは暗くなるし、何か光ってるし一体何が起こってるの!?」
様子を見に行っていたアリサが息を切らせながら近づいてくる。普段は強気な彼女も、この非常識な現状では同様を隠しきれないでいた。
それでも、不安がるすずかを・・・大切な友達を、少しでも安心させようと気を強く持つ。
「(・・・何、あの誘拐に比べたらまだマシよ!!)とりあえず逃げよう!なるべく遠くへ!」
「う・・・うん」
自らに活を入れたアリサは、すずかの手を引き、その場から離れようとする。
口では言ったものの、何処へ逃げて言いのか分からない。不安だけが残る。
だが、彼女は諦めていなかった。ある騎士の存在が彼女の心を折れなくしている。
「それに・・・・・私達にはいるじゃない。強くてカッコいいナイトがさ。きっと助けに来てくれるわ」
それはすずかも同じだった。今自分は言いようの無い不安に支配されている。だが、絶望はしてない。
むしろ彼の事を考えると不安が嘘の様に消えてゆく。きっと助けに来てくれると信じているから・・・・・・自分の家族が。
「うん!ガンダムさんがきっと来てくれる!!信じよ!!アリサちゃん!」
「OK!とにかく先ずは此処から離れましょ!じっとしてても何も始まらないわ!!」
不安が消えたすずかの表情にアリサは笑顔で親指を立てる。そして再びすずかの手を取りその場を後にしようとした時、
近くで何かが降り立ち、砂煙を巻き上げた。
『Distance・・・・70・・・・・60・・・・・50・・・・』
結果内に取り残された一般市民との距離をカウントするバルディッシュ。
そして距離が40を切ったった所で、フェイトはなのはとナイトガンダムを下ろす。
二人とも、アスファルトの道路を豪快に土煙をあげなら滑り降りる。
即座に3人は辺りを見回し、取り残された人物を探す。
結界が張られているため、自分達以外の人間はいない筈。だが、バルディッシュの報告が間違いの筈がない。
「だれか!!いるのなら返事をしてください!!!」
おそらく隠れている可能性もある。だからこそナイトガンダムは呼びかけた。
なのはとフェイトもまた、真似するかのように声を出そうとしたその時、
「・・・その声・・・・・」
「ガンダム・・・さん?」
その声に反応したのか、建物の間の道からアリサとすずかが一度顔を覗かせた後、ゆっくりと出て来た。
「すずか!アリサ!どうして君達が!?」
閉じ込められた人物がアリサとすずかだった事に驚きを隠せない。なのは達もただ唖然としている。
とにかく事情を聞くため、二人の下へ歩み寄ろうとするが、
それより早く二人は泣きそうな顔でナイトガンダムの元まで駆け足で近づき抱きついた。突然ぶつかる様に抱きついてくる二人に倒れそうになるが
咄嗟に踏ん張り、二人を抱きとめた。
怖かったに違いない。突然人が消え、自分達だけが取り残されたのだから。
この位の年頃の少女なら泣き崩れていても可笑しくはない。それなのに、彼女達はこの場所から逃げようと行動をしていた。
それでも怖かった事には違いない。すずかは無論、普段は強気なアリサも、自分にしがみ付き震えていた。
だからこそ、少しでも安心させるために二人の頭を優しく撫でた。
「怖かったんだね・・・・もう大丈夫だ・・・・大丈夫だから」
自然と絶望感が抜けてゆく。ナイトガンダムと出会っただけで不安が一気に吹き飛ぶのを感じる。
「良かった・・・ガンダムさんに会えて・・・・・私達・・どうしたら・・・・・えっ?」
「・・・・・なのは・・・・・フェイト・・・・・」
落ち着いたため、回りを確認する余裕が出来たすずかとアリサは、初めて後ろで自分達を見守るように見つめているなのは達に気付く。
なのはとフェイトもまた、何を言って良いのか言葉を詰まらせる。
沈黙が続く中、最初に啖呵を切ったのは仲良しグループのリーダーだった。
「なのはもフェイトも・・・・・一体どうしたの!?制服なんか来て・・・杖みたいの持って!?フェイトにいたってはコスプレまでして!!
町の人はどうしちゃったの!?あのピンク色の光は何!?知ってるなら教えなさいよ!!」
不安が完全に拭いきれていないのだろう、自然と頭に置かれているナイトガンダムの腕を掴みながら一気に巻くしたてる。
本来だったらそんなアリサの行動を抑える役割をしてるすずかも今回ばかりはとめる様子はなく、答えを聞くためなのは達を見据える。
もう隠し切る事も不可能だと思った二人は、手短に事情だけでも話そうとした・・・・その時。
今まで上空にあったピンク色の球体が近くの地面に落下、それはスターライトブレイカーが発射された事を意味していた。
地面に着弾したスターライトブレイカーは、着弾点を中心に広がり、なのは達目掛けて迫り来る。あまりの巨大な魔力波のため、
立ち並ぶビルは丸ごと桃色の光に飲まれる。それは正に衝撃波ではなく数百メートルの巨大な壁。広域拡散しながらも、威力を落とさずに迫り来る。
その光景にアリサとすずかは再び怯え、ナイトガンダムにしがみ付く。
「フェイトちゃん!アリサちゃん達を!!」
フェイトは即座にカートリッジをロード、ナイトガンダムは一度二人に笑顔を向けると、静かに手を話しゆっくりと後ろに下がる。
その直後、二人を包み込むようにドーム型の障壁が形成される。
それを確認した後、なのはとフェイトも直撃に備え防御魔法を展開、だが、ナイトガンダムは防御をしないどころか、
前へと進み、なのはが張った防御空間から抜け出してしまう。
「ガンダムさん!!どうしたの!?早く中に入って!!」
「・・・・この魔力量からして、完全には防御しきれる可能性は低い。わたしが攻撃魔法で相殺を試みる、
相殺が無理でも、威力を抑える事は出来る筈。その後の防御は二人に任せる!!」
目を閉じ詠唱を開始する。メガーヌという魔術師のおかげで体力は回復できたが、使用した魔力はそうも行かない。
それでもどうにか撃つ事が出来る。自分が習得している中で一番強力な魔法を。
闇の書の意思が放ったスターライトブレイカーは、町を飲み込みながらそれなりのスピードで迫り来る。
桃色の光はあまりに巨大すぎて、目を開いてる事すら難しい。アリサとすずかは抱き合いながら蹲り、
なんはとフェイトは目を細めながらも衝撃に備える。
だが、発射される前に逃げた距離が長かったのが幸いしたのか、
スターライトブレイカーの光が前線にいるナイトガンダムに直撃するまでの距離、約100メートル・・・・・・どうにか詠唱が完了した。
『ソーラ・レイ!!!』
スターライトブレイカーの光をかき消すほど光が、ナイトガンダムから放出される。それは激しい光と激しい熱を発し前面に扇状に広がる。
道路のアスファルトは剥げ落ち、止めてあった車は熱で爆発し燃え盛り、ショウウィンドウのガラスは一斉に割れ、飾ってあった服やマネキンは消し炭となる。
進行方向にある全ての障害物を焦がし、燃やし、吹き飛ばしながら桃色の壁に迫り激突。
衝撃波が町全体を包み込む。広範囲に渡りガラスは砕け、車は吹き飛び、鼓膜が破れるほどの爆音がなのは達を襲った。
「・・・・・やった・・・の・・・・・」
爆音と光が晴れたため、なのははゆっくりと瞳をあける。其処には、膝をつき息を荒くしているナイトガンダム、
焼け焦げた街並み、そして『ソーラ・レイ』の直撃を受けて尚、迫り来るスターライトブレイカーの桃色の光。
「でも・・・以前の様な勢いはなくなってる。威力を抑える事は出来たんだ!ガンダムさん!後は任せて!!」
息を落ち着かせながらも、律義に頷いたナイトガンダムは、バックステップでなのはの後ろに下がり、シールドを構える。その直後、衝撃が皆を襲った。
全員が目を閉じ、歯を食いしばり衝撃に耐える。威力を減少させてもこの衝撃、もし『ソーラ・レイ』での中和がなかったら、
自分達はどうなっていたのだろう・・・・・・・自然とそんな事を考えながら、なのはは衝撃に耐える。後ろにいる皆を守るために。
「・・・・・駄目です!!映像・・・来ません!!!ああもう!!」
悔しさから力の限りコンソールを叩きつけるエイミィ。これほど歯がゆいと思った事は無かった。
皆は現場で頑張っているのに、自分は暢気に座って様子をうかがう事しかできない。
だが、自分が出来ることは嫌でも理解している。だからこそ、今は唯一出来ることをする。
「・・・はやく・・・・・晴れてよ・・・お願いだから・・・」
なぜか取り残されたなのはの友達、彼女達を安全な場所まで転移させ、戦闘での気がかりを無くす事が今自分が出来る唯一の援護。
エイミィは祈った。早く映像が回復する事を、皆の無事を。
時間にして数分、徐々に衝撃がなくなり、眩しさも消えてゆく。
「・・・・・終った・・・・・?」
恐る恐る瞳をゆっくりと開ける。見えたのは結界のせいで不気味に変色した街並み。見る物を圧倒していた桃色の壁は完全に消えていた。
正直ホットした。カートリッジを2発使用して張った『ワイドエリアプロテクション』もあと少しという所で破られそうだったからだ。
「(とにかく、次の攻撃が来る前にアリサちゃん達を安全な場所まで)」
安全を確認するため、張っていたワイドエリアプロテクションを解き、後ろを振り向こうと
「上だ!!!!」
なのは達の真上で浮遊していた多数の鋼の短剣『ブラッディダガー』が雨の様に落下したのは、
なのはが振り向き、ナイトガンダムが叫び、フェイトが咄嗟にアリサ達に再びフィールドを張ったのと、ほぼ同時だった。
防御をする暇などなかった。バリアジャケットは裂け、デバイスや鎧は傷つき、肌から血を滲ませる。
フェイトが咄嗟に張った『ディフェンサープラス』により、アリサとすずかはその洗礼を受けることはなかった。だが、
見ている事しか出来なかった。大切な人が傷ついてゆく姿を。
「なのは!!!フェイト!!!」
「ガンダムさん!!!!」
落下音が聞こえなくなったため、攻撃は止んだのだろう。舞い上がった土ぼこりで前が全く見えない。
皆は無事なのだろうか不安になる。だが、自然と想像してしまう。血だるまとなって倒れているなのは達の姿を。
想像した瞬間、アリサはこみ上げてくる物を抑えるため手で口をふさぐ。背中を摩ってくれるすずかの気遣いがありがたい。
無理矢理深呼吸をし、気を落ち着かせる。未だにフェイトが張ってくれたバリアの様な物のせいで外に出ることはできない。
だからこそ立ち上がり、大声で叫んだ。皆の無事を確認するために。
だが、帰ってくるのは沈黙だけ。それでも呼ぶことをやめない。すると、彼女達の呼びかけに答えたのか、
未だ立ち込める砂煙から人影がうっすらと現われた。それはこちらへと近づき形をはっきりしてゆく。
「なのは!!・・・・えっ、フェイト?」
最初はなのはかフェイトだと思った二人は、顔を合わせて喜んだ。だが、近づく影が徐々に大きくなってゆく事に、喜びから不安に変わる。
そして二人の前に現われたのは、なのはでも、フェイとでも、ナイトガンダムでもなかった。
歳は忍と同じ位だろう、モデルも裸足で逃げ出すほどのスタイルに同姓でも見惚れるほどの容姿、
だが、コスプレとも取れる格好、背中に生えてる黒い羽、そして、人形の様な感情の篭ってない表情。
二人を怯えさせるには十分だった。
「な・・・・なによ!あんた!?」
支援!!
自然とすずかを庇うように前へと出たアリサは、震える体を無理矢理動かし自分達を見つめている美少女『闇の書の意思』を睨みつける。
だが、闇の書の意思はアリサの問いに答える事無く、ゆっくりと右手を上げ、掌を彼女達に突き出す。
甲高い音を立ててディフェンサープラスが砕けたのはその直後だった。
「あっ・・・・・あっ・・・・」
恐怖に負けてしまったすずかはへたり込んでしまう。アリサはせめてもの抵抗と言わんばかりに通学カバンを投げるが、
闇の書の意思に当たる前に、見えない壁の様なものに当たり、一瞬で墨になってしまう。
情けないが動けない、恐怖で足がガタツク、少しでも気を緩めたら大泣きしてしまう。
だが許す事はできない・・・・おそらくなのは達をあんな目に合わせたのはこの人だろう、せめてもの抵抗と、アリサは睨みつける事をやめない。
そんな彼女の目線を光の無い瞳で受け止めた闇の書の意思は、掌に魔力を溜める。砲撃を撃つ為に。
相手が魔力を持たないただの人間と判断したのだろう、直ぐに収束を止め、何の警告もせずに放った。
容赦の無い殺傷設定、並みの武装局員でも防御無しで喰らえば大怪我、防御魔法所か、
バリアジャケットすら着ていないアリサ達が喰らえば、待っているのは間違いない死。
二人は自然と抱き合い目を瞑る。その直後、直撃し爆発。新たな爆煙が吹き荒れた。
抱き合い、恐怖に震える二人。だが、痛みは一向に訪れなかった。不思議に思い、恐る恐る瞳を開ける。
目にしたのは、ボロボロだが見覚えがあるマント、直ぐに理解した、彼が庇ってくれたと。
嬉しかった、生きててくれて、そして助けてくれて。
「ガンダム!!」
「ガンダムさん!!」
ブラッティダガーの雨を潜り抜けたナイトガンダムが先ず目にしたのは、闇の書の意思が怯えるアリサ達に向かって収束砲を放つ瞬間だった。
咄嗟に、高速移動魔法『ホバー』を使い、すずか達の前へと出だナイトガンダムはシールドでその攻撃を防ぐ。
「彼女達は・・・やらせん!!!!」
そして、間髪いれずに電磁スピアを構え地面を蹴る。雷を纏ったその切っ先は真っ直ぐに闇の書の意思の肩目掛けて突き進む。
だが、肩に触れる寸前に闇の書の意思は電磁スピアを掴み、進行を阻止、
電流が流れているにも関わらず、表情を変えること無くカウンターともいえる攻撃を防ぐ。そして握る手に力を込め、あっさりと電磁スピアを握り砕いた。
だが、チャンスは出来た。自分の愛槍を犠牲にしたこの隙を見逃す事はできない。
砕けた電磁スピアの残骸を無造作に投げる。あまりにも幼稚な攻撃に、闇の書の意思は防御魔法を発動させず、手で払う事で防ぐ。
ナイトガンダムはこの瞬間を狙っていた。彼女の右手は今だ砕けた電磁スピアの切っ先を握っており、左腕はその残骸を払ったため、横に伸びている。
時間にしてわすか数秒、だが、至近距離で体を攻撃できる唯一のチャンス。
「破廉恥だが、気にはしてられない!!!」
右手を伸ばし、掌を闇の書の意思の胸に押し付ける、やわらかい感触が手に伝わるが、今はそんなことどうでも良い。
闇の書の意思は、電磁スピアの破片を持ったまま殴りかかろうとするが、攻撃はわずかばかりナイトガンダムの方が早かった。
「ムービ・ガン!!」
零距離から光の弾丸を放つ魔法「ムービ・ガン」を放った。零距離から放ったため、反動でナイトガンダムは吹き飛ぶ。だが、
防ぎようの無い零距離での直撃を受けた闇の書の意思はその数十倍の勢いで吹き飛び、ビルに激突、
ソーラ・レイの光により、脆くなっていたビルはその衝撃で崩落、激しい音を立てながら倒壊し、彼女を生埋めにした。
だが、零距離からの攻撃は使用したナイトガンダムにもダメージを与えた。痛みに顔を顰め、腕を押さえながら蹲る、だが、そんな事をする暇は無い。
「ぐあぁぁ・・・・エ・・・・エイミィ殿!!今です!!転送を!!!」
煙が立ち込める腕を振りながら、様子を伺っているであろうエイミィに大声で伝える。
その言葉が伝わったのか、アリサとすずかの足元に転送魔法陣が展開、驚く間も無く、二人はその場から姿を消した。
「・・・よかった・・・・これで・・・」
二人が無事転送した事に心からほっとする。だがその直後、生埋めになっていた闇の書の意思がビルの瓦礫を吹き飛ばしながら表れ、
即座にナイトガンダム目掛けて砲撃を放った。
二人の転送を確認してたため、背を向けていたナイトガンダムは気付くのが遅れ、振り向いた時には盾を構える暇など無いほど迫っていた。
後悔する暇も、目を瞑る暇もない。だが、その攻撃があたる事は無かった。
『Sonic Move』
聞きなれた電子音と共に、体が引っ張られる感覚、気づいた時には自分に向かった放たれた収束砲はビルに直撃しており、
その直撃を受けるはずだった自分は手を取られ、空中に浮いていた
「良かった・・・間に合った・・・・ごめん、少し、気絶していた」
普段のバリアジャケットよりさらに薄い格好。『ソニックフォーム』に身を包んだフェイトは、間に合った事に心から安堵する。そして
『Restrict Lock』
リアクターパージにより、バリアジャケットの上着をなくしたなのはが、近くのビルの屋上から、闇の書の意思目掛けて拘束魔法レストリクトロックを施した。
本来なら一度で済む拘束を3重に賭けて施す。それに続けてフェイトもライトニングバインドを施し、動きを封じた。
「・・・・・これで・・・・・お話しできるね・・・・」
拘束された闇の書の意思に言葉を投げかけるなのは、だが、闇の書の意思は何も答えず、バインドの解除に取り掛かる。
「御願い!止まって!!ヴィータちゃん達を傷つけたのは私達じゃないんです!!!」
彼女は答えない、ただバインドを黙々と解除して行く。
「君は・・・・はやての言葉に耳をかたむけたのか!!はやてがこんな事を本気で望んでいると思っているのか!!」
彼女は答えない、残りのバインドを解除し、自由を手にする。
それでもなのは達は言葉を投げかけた、思いを込めて必至に。だが、その返答は言葉ではなく、
なのは達を囲むブラッティダガーという攻撃だった。
フェイトは咄嗟になのはとナイトガンダムの手を掴み上空へと退避、そして
バルディッシュを構え、両手足のソニックセイルを羽ばたかせる。一撃を見舞うために
「こ・・・の・・・・・・駄々っ子!!!・・・・・言う事を・・・・・聞けぇ!!!!」
猛スピードで一直線に闇の書の意思へと迫り、バルデッシュを振り下ろす。続くようにナイトガンダムも突撃、少し遅れて剣を振り下ろした。
だが、二人の同時攻撃も、彼女が張ったシールドに阻まれ、甲高い音を立てるだけでおわってしまう。その直後
「えっ・・・・?」
「なん・・・だ・・?」
とてつもない無力感が二人を襲う。体は光に包まれ、徐々に薄くなってゆく。
「フェイトちゃん!!ガンダムさん!!!」
なのはの叫び声も二人には殆ど聞こえない、そして
『ABSORPTION』
デバイス特有の電子音の後、二人は完全に消えてしまった。
・????
「・・・・・ん・・・・・・」
今までに感じた事もない眠気がはやてを襲う、此処は何処なのか、自分はどうしたのか、そんな事どうでもよくなる程の心地よい眠気。
だが、うっすらと明けた瞳から見える人影がその眠気を無理矢理抑えた。
黒い服を着た同姓が見ても見ほれるほどの銀髪の美人、誰もが一度見れば忘れる事は無いだろう。
「(・・・・・だれやったっけ・・・・・・会った事ある様な・・・・・無い様な・・・・)」
眠いがやはり気になってしまう。声をかけようとしてみるが、体を眠気が支配しているため、口が重くて喋る事もできない。
だが、彼女の言葉を聞く事は出来た。優しい、澄んだ声
「・・・わが主・・・・・貴方の夢は・・・・私が全てかなえます・・・・・」
「私の・・・・・・夢・・・・・」
闇の書の意思はゆっくりと近づき、はやての頬を両手で優しく触る。
人とは思えない冷たい手、だがそれでもはやての眠気は覚める事は無かった。ただ、身を任せるだけ。
そんなはやての態度に何を感じたのか、闇の書の意思は一度微笑んだあと、頬から手を離し
「ですから・・・・主・・・・・」
その手をはやての首へと持っていき
「死んでください」
微笑みながら、ゆっくりと首を絞め始めた。
こんばんわです。投下終了です。
読んでくださった皆様、ありがとうございました。
支援、ありがとうございます。
編集、いつもありがとうございます。
職人の皆様GJです。
次は何時になるのやら・・・・orz
・魔法紹介
:ムービ・ガン
光の弾丸で敵を攻撃する光撃魔法
なのはのアクセルシューターに酷似しているが、操作性は全く無い。
だが、威力は高い。
:ソーラ・レイ
強烈な光と熱で敵を消し去る光撃魔法。
現在ナイトガンダムが覚えている魔法の中ではトップクラスの攻撃力を持つ。
どうにか投下できました。
>>549 "Fate"の意味は確かにそうだけど、「運切」と同じように、そこは解釈次第でしょう。
GJ!
ここまで来たー!
騎士ガンダムの見る夢はいったい…?
567のおかげで
伯林のフェイトがあの位置の謎が解けた
ゲレーゲンハイトか
パンチューポリスだっけっかベルリン
パンツァーポリスだ
間違うな
高天氏GJです
ゼスト隊来ましたねStsへの伏線ですかね
そして次回ガンダムは・・・
楽しみです
高天氏GJです!
ゼスト隊がきたのはいいけど、はやてがやばいww
毎回毎回緊張感だらけで息を付く暇がないですね!
でも、そろそろクライマックスかな? 原作のネタも満載で、毎度ワクワクさせていただいてます。
そして、お待たせしましたが午前一時頃(遅れました)
ミッドチルダUCAT! 続きを投下させていただきます!!
なのですが、このスレの容量が足りないようです。
新スレを立てようとしたのですが、無理でした。誰かお願いできますか? ORZ
>>574乙!
リリカル夢郷学園氏は次スレに降臨するのかな?
というか、氏のここ最近の執筆速度は異常な域だと思うのだが。
リアルでの生活に支障が出てないのか心配になってくる。
八神はやてスレッドでハヤテのごとくとのクロスSSはやってるが
埋めておくか
,ィ
!{ , -−-- _
, -−弋/ , -< ̄
/ , ,r へ 、 \
/ / /i / ヽヽ ハ ヽrヽ
, -‐◯彡 l ! ト, l | l .l l ハ
/ / | ヾ | l l大トト, 斗 ! ト、 l うめるわよー
レ{( .l r,! l ヒソ }ノヒル' ソ }ノ , -−- 、__, -‐- 、
ヾ l ゞl ト{""rv┐ "ハ〈 /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./:_.:-< ̄
,.、 ,' / ∧ `ト .ゝ_' .イ_N、\ /.:.:.:.//-−- 、:.-:.、:.:ヽ_ }ヽ
| | / / />k 「`7´ ´ `ヽ ヽ /:.:.,.イ:./7´, ̄! ̄ト!.:.:.:.lヽノ>ヽ) ) ,.:-y:7
./77トレ'7/ / // ,.へ\! 、 i } ト、 /:.:./(|.//|,イ.:ノ!.:,.イ.:!:!:./ / , -  ̄>´二>_
.トゝニ)`7' / / ∠_/i 丶ゝ ヽ! _ノルヘフ. , '_,ィ二ゝ、! ⌒ ⌒/:.lル'/,ィ l / ∨´`i<V´::::::`ヽ
. `<:::ノヽ_/ fニヽ />‐ヘ〈 , -'_ニ- ヘ , \ /.:.|,ィ´ __,ト _`フ)_イ:.:./ { !,不{_七 l }::ヾ<「 ̄` /!
/!:::,ノ人/ 〉V イ ヾ -'/レ'´ ̄ / ,イ∨.:, -_ニ! /l´ .ト、/ 〉、 L -‐∨ィ{ソ じソ ∧:::ト、:::ヽ / /」__//
. / テrく ヽ /二ニゝ [二] 丶rく7 /! } .ト〈 _」::〈 ∨ iく{ ,r'人 ニ<^)イ八 、 "/.! ,レ|::::! ト、:} < ̄>={_ノ´ ´ニ>'7
l / l. ` -,ヘ | |ヽ ヾ 、_.〈::ヽニス! ノ !ノ レ' ヾ::ヽ.l 〈::::ヾK.:.:.:.:.:.:.:.:.) >'7><_,」 ! トノ ', ` .`7/´7 、/ ,ィ,ノl } ヽYゝ
ヽ{ \ ヽ. \ ! ! 〉、_ `ー、ヾ、:::::{彳〉 / `ーヽ / \::::ソ.:.:.:.__,.ノ ( ,/Y 、ヽ! ト,ゝ _ `‐-、 .| | { (|/(ヒj ヒjノ,イハ
丶._ \_ヽ.|/ / ー= /[二]`ー‐r' / `ー-ゝ __,ソ:.:.:.( .`/::\rへl !ノ  ̄) / ,.、ヾゝ ゞi ト _r‐, ノ/ノノ
 ̄_,>!,/ /∧ | ,' \ `ー-{:.) {::::::::::ヽf´ゝ __`ー- 、 (/ |_! ,.ィ7ゞZラY^ヾ
〈__,.イ // ト、 !l \ }ノ Y::::::::::::\ノ ) ̄) ) rf{]::K7 [ /`o⌒)/ _〉
/ // ! l !! ヽ ヽ:::::::,r< ,.ケ<_ -'ス `ス::ノト'〈_ 不_,ノ`K´ \
/ //! , - 、! l ト、 ヽ >'´:::::::`K_ ー,r-v<7て{二_ノ ,.〈イ介ニテべ> .〉
, --− 7´ // レ:::::::::::l | \ _ ‐_二_ヽ_ハ {::i:::::r‐'´rくレ<:::::::::ヽ_∧  ̄ TLゝ==彳{ゝ_/
/ / .// .|:::::::::::l | ヽ //_ -‐r、`ー', `ーr' r‐'! )::::::人,r'  ̄} ヽkニラ、
/ __ -−-、 // l:::::::::::::l | ヽ.//,.イ ! \ l ル'ー、 /´ ̄/ー' , − 、 / ./| l
_ニ三-−  ̄ヽ ヽ,/// !:::::::::::.l | , -_ニヽ } ' ∧ l l ヽ} /ニニヽ::! ./ ./ (7・ω・)</ ̄ィ ̄<:.:! ノ
, ヘ\ /\_/::://ニ_ヽ_!::::::::::/ レ'_/ ,>ソー' } ', ヽ / /::::::::::| l:レ' / r') l T´/!/ 7´| ヽ! ∧
ヽ\_ノ:::::::::::::::/' / `-l:::::::::/,ィ´ニー-‐'_ノノ / ヽ Y /:::::::::::::メ三三7 | l_| 丶ー=ミ、 / ! |ヽ-.ヘ
`-/:::::::::::::::::// l:::::::::::::ヽ  ̄,.イ /--‐‐ヘ ∧. /::::::::::::,イ:::::::::::/ ゝ-、 `ー、))' ! `r、_,ヘ',
/ / // `ヾヽヽ ,. -―_..ニ=-
/ / / / ヾ /,. ----`=-
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ト、 | |/ / r'ヽ、 //
ヽヽ ! r' l ,二ニヽ |⌒゙`| ,.イ,.イ // __/ヽ _
,. ---ヽ `Y /'´ ̄ `丶、!ヘ:r、| ,.イ/ / // _lri⌒`丶レl
/-‐_==- `ヽ |/ / / / / l/'´ ,ハ1/!,r'! _
'´, '´ , - ヽ/ ノ//,.ィ r_ニY /::::::`ヽ/⌒ヽ'-、
/ / , - 、 ∨/__// / l7´ | /:::::::::/ ヽ'-、
/ ,.イ / \ !'ー―-'- 、/ ,イ ! l::::::::/ ,rァヽ'、
l/ l ,イ l-l‐ト!、 ト、 _、__、__ ヽヽヽ ト-----; 、ヽ、___Y,. --、__ ! !::::/ lフ
ヽN l ト、Nリィ;、ヾ ´,ゞ=、ト、 ! ト、!`/ // ``ヽヽヽ  ̄ `丶、 ',:::! ヽフ
ヾ / 〉ヒl ト':::_ト、リ',r'´}/ ___// ノ::,! ヽ ト、::! ,イ
/ ∧ 、 ヽ_ソ '//__ノ | r--' ヽ::ヽヽ ト、 ! ` ,イ'
リ | \‘' _リ|イ ,r;==' '---,、 ヽ::',} ! ! /-'
ヾ `ー ' ´ リ-、|| l Y }:::} | ヽァゥ、ト'
|:::ヽ ノ l、 /:::/ /_ノ-'、 ,!、
7_:::ヽ / / \:/―'ヽ ヽー、_ ,イ- '
\ '---V´__,ィ´ ``! ト;、ァ、ァト'ヾ、_, イ-r'__
:::::ヽ ,. ヘ`ヽ ヽ/l_,r'´ | ヽ'`´ゝ'ヽト、
;;::::::::Y ! ヽ } | `ヾ´/j )
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,. -―ァ'´/ ,. ヽ",.ィ二、 ̄
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` ナ‐ァ:.:::::.j/. , ' └┘ |イハ / ! \ !
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. / :./ / :.:_,巨三三ミf¨フ :.| |:::::| \}
/ :./ /ヽ :./―ァ::::::::::>'´ ==,' i、::::!
,. - '´ _,.イ 〃-‐┤::ハ`ー'´,.-<´ .:./ / `ニュ、
-‐ '´ _,. -‐ !N‐=‐にロこ}´ -=―¬ :./ / ___}、_
_,. -‐ r┴ >′:::::::`ー―こ二::_` く ∠二 __,.ニニュ、
r′,. イ:::::::::::::::::::::::::: ⊂二、`:::::\`ー┴,. へr― …¬\
j / |:::::::::::::::::::::::::::: r―ー':::: ヾ ̄ト<:::ヾヽ\ }
/ 〉=Eロ======、、`二ニ=::::::\|:::::}::}::::廿::::〉 /
,. '´ ,. イ:::::::::::::::::::::::::::::\ `ァ―'^ー-、_ノイ:::::::::::/_,. ィ´
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ヾ三ソ::::::::ト、 /, -=ニ三ミ、 ヽ
\::::::::ノ!:ヘ // / i 、 `ヾヽ i. ',
Y´ ! ト、 ./‐/ニA_ニi、=ハ ヾ::::! }
{ヽ ∨ l ヘ ! l /Ll_\トj七メ l V !
ヾ::\ ∨ i ヘl !〈 ト'::l 7゚::ヽ!×! ! ,' /7
>:::\ヽノ __ 「`ト!、.ゞ' , 弋ソ.! ! ト、 ノ /::/
\:::::::ハ./, ' l l:::ハ. r‐ 、 ""| ! l、:X/:::::::7
〈::::::::::::l〉 .〉 〉:::トゝノ__,.ィー! l .K>、\::<
ヾ_::::::::! / //テ、}][`7ヲヘ!イノ!∧トゝ::\:X´
レヘ:::ゝ _ y' _ -、 ! | lヾ'<`ー-,.、:::::::::::::_ル、}
\::! 7/ ! ト、_ノイト、l::::::/|_|二_ ̄
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/} レ´二_ー-'_/:《::::::/ノ l `ト、二ソ|
/:::/ _>'<二ヾ´:::|ソ::::::>ヽ,イ ト、::::::::イ
/::::::/ /  ̄/7ソ三`,>ヘ/-‐' .l /  ̄ .ト、
/::::::/!/ ノー'二7ニソ>‐y`/7 〉|\ ヽ /:::::\
∠/!/ / /::://:::::/ソ>:::〈〈:::「ヾ,!:::::\ `ー-イ::r 、:::::\
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-=ニ -─-、rー`.ミ、: : : :- 、: : : : :ヽ、 : : : :ヽ : .、: : : ヽ_
, -l: : : : : :l:l: \: :\.、: : : :\:\: :\ `_: .、ヽ ` 丶、
/ /: :/: : l: :l、l、: :\ 、:\ヽ、: : \:ヽ.、: ヽ: ヽ`ヽ l
. /. -//:/: :l : l: :l \\:\_.斗 _=ニヽ:ヽ ヽ: :\: ヽ l
////: :/: : l: : :l、:l _\'´ヽ /riー弌`i 、:l: :l-、l l\:l /
/: /: : l: l: :l : : :lヽl´ __ ヽ t乞ク l:ヽ l i): :l ヽ. _/
. //:l : : l: :l : l : l: :l. /r。弌 ´ ̄ l: :l、l/ l、: l >〉
/イ: :/:l: l|: : l: : l、l〈 iス.j:} l: :レ'l : l:l\l l
l: /l/l l l : lヽ: l \ ゞ'゙ 〈 l: :l:l、 : :l l 、_ l
l/ l |l l: :l l:ヽ:l: : l r ¬ /l: l: :l:\:N\\
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// / ハヽ_:.l/ノ::::::::::::::::::::::::::::
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/:.:/:.:.:.:.:./;;lニ コ;;/ ヽl:.:l:.:.:.:.l〈i lr'::ハ:::::l l:.:.l 込-夕 l:.l:.l:.:.:.:l:l:.:.:l:.:
/:.:/:.:.:.:.:.:.l;;;;;;;;l」;;;/ l:.l:.:.:/:l:l 弋二ノ Vl ´  ̄ l/リl:.:.:l:.:l:.:.l:.:
. /:〃:.:.:.:.:.:.:.:.:l;;;;;;;;;;;;/ ヽl:./{rl:.ヽ ,. _rニュ_ } l:.l´l:.:.lヽl:.:ll:.
/:/l:.:.:.:.:.:.:.:/ \./ l:l ヽミl:.:.l `l __ ,.イ:.l l:.l l/l l:.
// l:.:.:.:.:.:.:./ // │ r.:'l. r'⌒ヽ ! ~´ ,ィ;;;; l:.l、リ l:l l:
. l:l l:.:.:.:.:.:./ // l::::l 廴_ノ lヽ. / l;;;; l:l ; ヽ、 l:l
l| l:.:.:.:.:/ l:l l::::l l::::l_`_ー '_ /l、.〃;;;;;;; i} ll
l l:.:.:./ ll ,. -─- 、l::::i} ,.i::::l-、 : l;;;;l: : { /.、;;;;/,.l ll
l:.:/ l / l::::l' {i::::l l: :l;;;;l: :/ : : // l ll
l:/ l / l::::l ,'´`ヽ {::::l l: :l - く: : : : ヽヽ l ノ
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/ _, イヽ / \: /\ \ \
/ .x<l / ∨ \/: \ ∧\ \
/ // ∨ イ¨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ `< l /\ ヽ
. { / />'´ //│ :/ { ヽ \ l \/ !\ }
. ∨ /|// //│| | { ハ |\.__ヽ_│ |\ |/| /
∨/// | l レ| 十ハ { \{ 斗z 、}`| │/ \ │ /
{/ :| l |│小V,仟ラト fう外Y |// 〉{ /
. ヽ l∧ l∧: \{ r'::::j| r':::::j| }/ W / ∧/
\| ヽ.ヽ \{ VZリ VZ:リ/ l /| |
\ \{ヽハ , / ルヘ| |
l7 l ゝ Vフ / ∧./| ノ
〈 | l> _ , ィ/ / ̄\j /
\ j∧ W ム '/ ∠ニニ戈<._
>ヘ |ヘ V イ // ヽ
/ ∨\} 人二7|// ノ |
/ x-j∠厶.厶_/ |
| \/ L」 \ 、 │
/ \ _/∧ ノ\ ヽ∧
{ /く / | ヽ_/\. \ {∧
_,.、,.-ァ-- 、 /´ ̄ヽ
/ ` Y´ヘ \
\ 、 ヽ. /,- / _ ヽ _ヽ-──-へ- 、
_≧、`ヽ:ヽ { / / } / } }ト 、 l / : : : : ー-ヽ、 : ヽ :\
`ミ_:-、::\/ /-/、// /i ト lヽ l / : : : : : :ヽ、 : 、 :\: :ト、: ヽ
\ ̄:::::}l/::l ィ乞ォ、l / }|ヽ} ヽ l /: : / : |lヽ: : l:ト、:}ヽl ∀ ト、 :ヽ
/ ヽ-'´ヽく l l 込タ ,.rァ / l l } l : : l : l: ll ヽ}:l:l リ_}_lトl|V`ヽ}、:ヽ
/ //´ ̄ ヽ.} l 、伐 /iイ /リ l : : l :{:ト:lヽ }l/´{j佇i | }:l : : :\:ヽ
/ /{l:::::::::::::::ヽl l ー /ノノl / l : : ト、:〈i仰 , ゞ'′ l: }: : : : : \
/ / l::::::::::::::::::::l.、 lト - イl l { / ヽ:lヽ:{ヽi ゞ′r ァ /l: ハ -.、 : : : ヽ.、
./ / / ヽ::::__::::::::::l<l l ー- 、l l{/l l: N:i:ト、 __ / l/l:::::::::l、\ : ヽ\
∠ 〃 }r‐-`、V「`l l:::::::::::ヽ { l: l|: lヽ:}l : : _ill-‐ /l::::::/ ll: :ヽ: : lヽ:\
/{ \ / メ、 i.〉:::::l l::::::::::::::ヽ l: l|: l l , '/´ ̄ ` l:::/ l}ヽ: :\:l \
/// ヽ、/`ヽ、-、 V:::::〃l l::::::::::::::::lト、 l: l l:/{i'´l ヽ{\ リ ヽ: : }:l: : :\
// / ハ:::::::::::ヽヽ. |::::ll::l ll、:::::://::::ヽ l:l /{ l|:l l ノ` ヽ _ヽ_ヽ: : :
/ / /::::::::::::::::::ト.iV´:ll:/ /}:: ̄ll:/:::::::::/ l:l/: l {i:{ ヽ、 { v'´:.:.:.:.:.:.:.ヽ :
r ─ '´l:::::::::::::::::::::::〉l.ニl/ /::::::::::::llヽ._/i. /: l ヽ._ヾヽ- ` ーァ、 \/::::, '´  ̄` ヽヽ
ヽ - ─ 7:::::::::::::::::::::: }:: //::ニ ┐〃l::l、 l l l\ / :/ / } .ィ弌 r`─`- 、{:::/:, - '´  ̄ >
/ `}::::::::::::::::::/:/::::::::::::::l l:::「ニl l l l ` ー ‐'´ /ヽ_山-ll:::::::::::::::::::V::{:::::::::::::ー-{__`
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