あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part188
提督支援です。
イゼルローン要塞のプラス1809レベルには森林公園がある。
人工天体内の人工森林であるため、その生態系は人間の管理下に置かれている。このた
め蚊などの人間が害虫と呼んで忌み嫌う生物が存在しない。これを不自然な歪んだ環境と
いう者もいるし、「昼寝するには最高だ」と評した者もいる。具体的には、この要塞の元司
令官。
その男が昼寝場所に決め込んだ場所には、別の人物の姿があった。亜麻色の髪を持つ若
者は、かつて彼の師父の昼寝場所だったベンチに腰を降ろし、空になったスナック菓子と
飲み物を脇に置いていた。そして彼を遠くからみつめる人影もあった。
厳密に言うと、それが人影と呼べるかどうかは分からない。何故なら、その影はあまり
にも大きかったから。ジーンズの上下を着込み、スニーカーを履いている男性、と言えば
いいのだろうか。服装は平凡なものなのだが、サイズが人間の範疇になかった。それは身
長2.5mはあり、丸いボールをつなぎ合わせたような筋肉が体中に盛り上がり、圧倒的
な威圧感を周囲にまき散らしていたから。
その人物はしばらくの間ウロウロと考え込みながら歩きまわった後、意を決してベンチ
へと歩き出した。そして若者の前に立った時、携帯端末を取り出し、襟にマイクを取り付
けた。
「あの、ユリアン・ミンツ司令官殿ですね?」
その人物が、正確には携帯端末から呼びかける声が投げかけられた時、ユリアンは別段
驚かなかった。彼の事は事前に知っていたからだ。彼は頭部に巻き貝のようにねじれた角
を持ち、突き出た口からは涎が垂れ下がっていた。そんな異様な頭部を持った人物は、ユ
リアンは一人しか知らない。そして彼がイゼルローンで様々な治療を受けている最中だと
いう事も報道から知っていた。
「そうです。ですけど、もう司令官ではありませんよ。それに僕は軍を退いたのです。え
と、たしか、ラスカルさんでしたか?」
「…ラルカスです。どうしてみなさん私の名をラスカルと間違えるのでしょうね」
「すいません。でも、どうしてでしょう?」
そういって若者は恥ずかしげに笑う。涎を垂らし続ける男も、鼻と口から荒く息を吐い
た。笑っているらしい。巨人というに相応しい牛頭の男は穏やかに元司令官と言葉を交わ
していた。
巨人は一般的にミノタウロスと呼ばれる外見をしていた。
特別編 魔法使い達
その時、自動翻訳をしていた携帯端末からピリリリ…とアラームが鳴る。神話世界の幻
獣は科学の産物たる携帯端末を硬く太い指で操作し、モニターから幾つかのデータを表示
させた。
「失礼、薬の時間ですので」
「どうぞ。事情は承知してますので、気になさらずに」
ラルカスと名乗るミノタウロスは別のポケットから小さなケースを取り出し、モニター
の表示に従って幾つかを大きな口の中に放り込んでいく。
大きなゲップを吐き出しながら、ラルカスは再び語り出した。
「銀河帝国の人々は皆、医療はメイジに限る、と言います。ですが、そんな事はありませ
んよ。
ミノタウロスの肉体に脳移植をした人間の私の理性を守ってくれているのは、間違いな
く科学で作られた薬です。あえて脳の機能を制限する事で脳の暴走を抑える抗精神病薬。
これが無ければ、とっくに私は身も心もミノタウロスになって、今も人を襲い、喰らい続
けていたでしょう」
人を襲い、喰らう。その言葉を聞いた時、ユリアンの眉は僅かに歪んだ。その事にラス
カルも気付き、慌てて牛の頭と両手を左右に振る。
「ああっ!すいません、無神経な事を言ってしまって。もちろん私は自分の罪を必ず償う
つもりです。そのためにも私は自分の肉体と水魔法と知識を銀河帝国に提供しているので
す」
謝罪された若者も慌てて頭を下げた
「いえ、こちらこそすいません。その辺の事情も承知しているのですから、僕の方が気を
使うべきでした」