あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part187
もしもゼロの使い魔のルイズが召喚したのがサイトではなかったら?そんなifを語るスレ。
(前スレ)
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part186
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1226751231/ まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/ 避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9616/ _ ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
〃 ` ヽ . ・ここはあの作品の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!
l lf小从} l / ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,. ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
((/} )犬({つ' ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
/ '"/_jl〉` j, ・ 投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
ヽ_/ィヘ_)〜′ ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!
_ ・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
〃 ^ヽ ・クロス元が18禁作品であっても、SSの内容が非18禁である場合は
J{ ハ从{_, 本スレへの投下で問題ないわ。
ノルノー゚ノjし ・SSの内容が18禁な展開をする場合はクロス元に関わらず、
/く{ {丈} }つ 本スレではなく避難所への投下をお願いね?
l く/_jlム! | ・クロス元がTYPE-MOON作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
レ-ヘじフ〜l ・作品を初投下する時は元ネタの記載も忘れずにね。wikiに登録されづらいわ。
・作者も読者も閲覧には専用ブラウザの使用を推奨するわ。負荷軽減に協力してね。
. ,ィ =个=、 ・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。
〈_/´ ̄ `ヽ ・1レスの限界最大文字数は、全角文字なら2048文字分(4096Bytes)。これ以上は投下出来ません。
{ {_jイ」/j」j〉 ・行数は最大60行で、一行につき全角で128文字までですって。
ヽl| ゚ヮ゚ノj| ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
⊂j{不}lつ ・次スレは
>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
く7 {_}ハ> ・重複防止のため、次スレを立てる時は現行スレにその旨を宣言して下さいね。
‘ーrtァー’ ・クロス先に姉妹スレがある作品については、そちらへ投下して盛り上げてあげると喜ばれますよ。
姉妹スレについては、まとめwikiのリンクを見て下さいね。
・一行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えます。
SS文面の区切りが良いからと、最初に改行いれるとマズイです。
レイアウト上一行目に改行入れる時はスペースを入れて改行しましょう。
すみません、前スレ容量確認してませんでしたorz
次から続き投稿します。
「……言ってみなさい」
「まず、最初に礼を言っておく。俺はルイズに召喚されなければ間違いなく死ぬところだった。だから俺を召喚してくれたこと、生き長らえさせてくれたことには、本当に感謝してる。
使い魔をやることだって引き受けるのも問題はない。俺のできる限りで、ルイズを守ろう」
その言葉に、先ほどまでの不機嫌を吹き飛ばすような勢いで驚きの表情を浮かべるルイズ。
だが、まだ続きがある。
「でもファルガイアには俺の帰りを信じて待っている家族がいるんだ。ファルガイアは自然が減少し荒野の広がる荒れた世界だが、そこに緑を取り戻す方法を探して今も旅を続けている、俺の大切な家族がいる。だから、いつかはファルガイアに帰りたい」
その言葉に、複雑な表情を浮かべるルイズ。
「もちろん方法だって分からない。探したって見つかるかどうかも分からない。でも、彼女を嘘吐きにさせたくないんだ。だから、頼む」
言葉とともに、頭を下げる。
そのまま、一体どれだけ時間が過ぎただろう。
沈黙は、ルイズのため息で破られた。
「はぁ、分かったわ、それでいい。わたしだって家族と死ぬまで離れ離れなんて嫌だもの。でも、使い魔の間はしっかりと仕事をこなしなさいよ?」
「あぁ、分かった」
よかった、分かってくれたようだ。
「前例の無いことだし、帰る方法が見つかるかどうかも分からないわよ?」
「構わない。死なない限り、方法は探してみるつもりだ」
その言葉に、俺の決意の固さを感じ取ったようだ。
またため息を一つ。
「ほんとに、何でこんなやつがわたしの使い魔に召喚されちゃったのかしら。まぁ仕方ないわ。その代わり、しっかり働かないと承知しないんだから」
そう言いながら、椅子から腰を上げ、俺の前まで歩いてくる。
そして、立ち止まり、
「何だ?」
「ちょっと屈みなさい」
屈む?まぁ、それくらいなら構わないが。
「こ、光栄に思いなさいよね。普通は貴族が平民にこんなことするなんて、絶対にありえないんだから」
そう前置きして、杖を取り出して呪文を唱える。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン、この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
そのまま、屈んだ俺に口づけをした。
突然のことに硬直する。
しばらくの後、ルイズが離れる。
と、その時、左手に熱と激痛を感じた。
「ぐッ……ああああッ!こ、これはッ!?」
「使い魔のルーンが刻まれてるんだわ。少し我慢して」
あまりの痛みと熱に、左手のガントレットを外す。
そうしてしばらく、と思ったがそれほど時間は経っていなかったかもしれない。その痛みに耐えていると、スッと痛みが引いていくのを感じるとともに、見たことも無い紋様が左手の甲に刻まれているのが見えた。
「成功、のようね。期待はしてなかったけど、感覚の共有はやっぱりでてきないみたいだわ」
「……あぁ、そのようだな」
これで、俺はルイズの使い魔になった、というわけか。
「さて、コルベール先生に報告と、あとは夕食ね。話し込んじゃったから、報告に行ったら丁度いい時間になりそうだわ」
その言葉に窓を見ると、日が傾いた空が茜色に染まっていた。
◇◆◇
「コントラクト・サーヴァントは無事に成功したようですね、ミス・ヴァリエール」
研究室に着き、契約の成功を告げフィアースの左手を見せると、コルベール先生は満足そうな笑顔でそう言った。
「しかしこれは珍しいルーンですね。少しメモを取ってもよいですかな?」
訊かれたフィアースはわたしに視線を向ける。
頷き返すと、彼はどうぞ、と左手を差し出した。
「ふむ……あいや、どうも」
フィアースの左手のルーンをスケッチしながら、コルベール先生がわたしに話しかける。
「よい使い魔に恵まれましたな、ミス・ヴァリエール」
「どういうことですか?」
その言葉の意味が分からず、私は思わず先生に訊ねた。
「おや、分かっていて返事をしたのでは無いようですね。彼は」
「フィアースです。フィアース・アウィル」
「それが彼の名前ですか。ではミスタ・アウィルは、私のルーンをスケッチさせて欲しいという依頼に対して、主人であるあなたに確認を求めたのですよ。そのあたりの機微はさすが人間といったところですか。違いますかな?」
話を振られたフィアースは、目を閉じて答えない。が、その沈黙が肯定を示しているようにも見えた。
もし先生の話が間違いでないなら、彼はわたしをちゃんと主人として立ててくれている。
それは主従としての信頼の証。
使い魔と主の関係としては当然のことではあるが、彼は普通の使い魔ではなく意思を持った人間である。その彼が契約して間もないわたしをちゃんと主人として見てくれたことに、ひとりでに頬が熱くなった。
「あ、ありがとうございます先生」
「なんのなんの。これから大変かもしれませんが頑張るのですよ、ミス・ヴァリエール」
「はい」
思わず返事も少し元気なものになる。
「それでは、そろそろ夕食の時間ですね。食堂へ向かうといいでしょう」
「失礼します」
そうして、わたしたちはコルベール先生の研究室を出た。
「そういえば、あんたの世界ではメイジが貴族ってわけじゃないのよね?」
食堂へと向かう道すがら、ふと思いついた疑問をフィアースに投げかける。
「あぁ。だが貴族や王族が平民を統治しているのは同じだ」
へぇ、そうなんだ。
「それってどうやって統治してるの?何か特別な力でもあるわけ?」
「そうだな。俺が召喚される前まで仲間と行動していた国では、代々の王女が姫巫女としての資質を持っていたらしい。守護獣……獣の形をした神様みたいなものか。それらと交感し、その能力を以って国を治めていたとか。
他の国にはそういう話は無かったが、王家の血筋というもの自体が重要視されていたんだろうな」
「ふぅん。じゃぁ貴族は?」
「貴族も血筋によって受け継がれていた。ハルケギニアの様に魔法が使える、使えないと言った大きな違いがあるわけではないが、その代わりに権力によって自らを守り、あるいは民を統治していた」
「じゃぁ、叛乱なんて起こった時には大変ね。平民と大差がないんじゃ」
「そうだな。だがそのための権力ではあったのだろう。まぁ、俺も旅をする身だったし、もともとはファルガイアの人間でもないから詳しくは分からないが」
ちょっと待って、今何か聞こえた。
「ファルガイアの人間じゃないって、それじゃあんたは何なのよ」
「俺はファルガイアではなくまた別の、エルゥボレアという世界で生まれたんだ。それからいろいろあってファルガイアに流れ着き、そこで家族を得た」
「ふぅん。まぁいいわ」
あんまり聞いてるとこんがらがってきそうだわ。それに、今私の使い魔をやっていることとは関係の無い話でもあるし。
と、話しながら歩いていると、アルヴィーズの食堂に着いてしまった。
「あ、忘れてた」
フィアースの食事なんて、いきなり行っても準備されてないわよねぇ。
「どうした?」
「あんたの食事のこと。ここは貴族の食堂だから……そうね、メイドにでも言って準備してもらうわ」
そう言ってから、手近にいたメイドに声をかける。
「はい、なんでしょうか」
この辺りでは珍しい、黒髪と黒い瞳を持ったメイドだ。
「あなた、名前は?」
「はい、シエスタと申します」
「じゃ、シエスタ。彼に食事を出してあげて。わたしの使い魔なの」
「あ、は、はい。分かりました」
一瞬の戸惑いの後に、了解の返事が返ってきた。
「じゃ、食事が終わったらここで落ち合いましょ」
「分かった」
「そ、それではミスタ、こちらへどうぞ」
そういうと、シエスタはフィアースを案内していった。
彼と別れたわたしはいつもの席に着き、いつも通りにお祈りを済ませ、食事を摂る。
と、近くにツェルプストーが居た。またヤなやつが……
案の定ちょっかいを出してくる。
「あらルイズ、使い魔はどうしたの?」
ヤな笑みだ。
「突然で食事の準備が間に合わなくてね、メイドに別で準備してもらってるの。残念ね」
「何がよ?」
「男と見れば見境無しのあなたが、誘惑するチャンスが無くて」
「あら酷いわね。ちゃんと相手は選んでるわ」
あれだけとっかえひっかえしといて、どこが選んでるですって?
「それに今後チャンスが無いわけでもないし。でもまぁ、あたしたちの幻覚じゃなかったのね。あなたもちゃんと使い魔を召喚できたんだ?」
「ふ、ふん。当たり前じゃない。わたしだってメイジだもの」
「ゼロ、だけどね」
むかッ。
で、でも抑えろわたし。今日はちゃんと魔法が成功したんだ。それも、二回連続!快挙よ快挙!!
ちょっと虚しくなった。
「もうゼロじゃないわよ。ちゃんとサモン・サーヴァントもコントラクト・サーヴァントも成功したもの」
「あら、じゃあもうゼロじゃないわね。おめでとう、ほぼゼロのルイズ」
むかむかッ。
「ッ……い、いや、いいわ。そうやって吠えてなさい。今日は見逃してあげるわ」
「あら?」
今日のわたしは機嫌がいいの。いつもは食って掛かるツェルプストーのちょっかいも華麗に回避よ。
「んもう、面白くないわね。いいわ、いつまで続くか見ててあげるわその意地っぱり」
そう言うと、ツェルプストーは自分の食事に専念しだした。
色々と思うところはあるけど、まぁいいわ。よくないけど。
とりあえず、食事を済ませてしまおう。
◇◆◇
シエスタと名乗った少女について行った先は、厨房だった。
「おう、どうしたシエスタ。ん、彼は?」
恰幅のいい中年の男性が、シエスタに俺のことを尋ねている。
「彼はミス・ヴァリエールの使い魔だそうです。事前の準備を伝えていなかったので、彼に何か食事を、と」
「フィアースだ。すまないがよろしく頼む」
「おぉ、あんたが。分かった、ちょっと待ってな」
そう言うと、彼は手早く賄い食を作ってくれた。
「マルトーさんはここのコック長なんですよ。貴族の皆さんにお出ししてる料理も、全部コック長の監督の下で作られてるんですから!」
「ほらよ、簡単なもので悪いが、まぁ我慢してくれや。あとシエスタ、あんまりおだてるとこそばゆくなるからやめてくれ」
がははと豪快に笑いながら、出来上がった食事を出してくれた。
「恩に着る」
そうしていただいた食事は、驚いたことにかなりの美味だった。
「これは……美味い」
「そう言ってもらえりゃ作り甲斐があるってもんだ!どんどん食ってくれよ!」
「ご馳走様でした」
「あいよ、こんなんでよければまた来てくれや。なんのかんの言ってせっかく作った料理を残しやがる貴族たちと違って、こっちまで嬉しくなるような食べっぷりだったしな」
そう、召喚される前から考えてかなりの時間食事を取っていなかった俺は、空腹に任せてお代わりまでしてしまった。
せっかくの料理を残すのは勿体無いかと思ったのだが、どうもそれが逆に好印象だったらしい。
「すまない、また何かあったら世話になる」
「おう、遠慮なくきてくれ!」
「シエスタもありがとう。それでは、ルイズと待ち合わせしているので」
「はい、何かあったら声をかけてくださいね」
ここの人々は、平民ということもあってか親切な人が多いようだ。
それに、ルイズが平民を召喚したというニュースは、既にここにまで広まっていた。
親切にされたのは、同じ平民のよしみというのもあるのかもしれないな。
そんなことを考えながら、ルイズと分かれたアルヴィーズの食堂の入り口まで戻ると、どうやら先に食事を終えたらしいルイズが待っていた。
「遅いわ。主人を待たせるなんて一体どういうつもりかしら?」
「時間の指定が無かったからな。待たせて悪かった」
「ふ、ふん。部屋に戻るわよ」
さて、この短時間に何があったのか、幾分かルイズの機嫌は傾いてしまったようだ。
その場に居なかった俺としてはどうしようもないのではあるが、まぁ仕方無いことか。
そんなことを考えながら何気なく夜空を見上げた俺は、心底驚いた。
「月が、二つある」
「そりゃあるわよ、月だもの。ファルガイアでは違うの?」
「あぁ。ファルガイアでもエルゥボレアでも、月は一つで色は白だった。光の関係で黄や赤に見えるときもあったが」
こうして二つの月を見ていると、また違う世界に来たのだと実感する。
「ふぅん、白くて一つだけの月ねぇ。ぜんぜん想像もできないけど」
やはりこちらでは、赤と青の二つの月が普通なのだろう。
部屋に戻ると、ルイズは読書を始めた。
俺はやることも無かったので壁を背にして床に座っていたのだが、ある程度時間が経ったところで可愛らしい欠伸が聞こえた。
「そろそろ寝ようかしら」
そう言うと、俺がここに居るのを気にも留めずに着替え始める。
流石にそのまま見ているのも悪い気がしたので、背を向けていた。
と、一つ疑問が。
「ルイズ、俺はどこで寝たらいいんだ?」
「ベッドは一つしか無いから、床で寝て。明日には干草くらいは用意してあげるわ」
ふむ。
まぁ旅の途中では野宿が当たり前だったことを考えれば、建物の中で寝れるだけありがたいとは思うが。
「分かった」
「それと」
先ほどまで着ていた下着と毛布をこちらに放ると、続けて
「それの洗濯よろしく。毛布は使っていいわ。あと朝起こして」
言うだけ言って、ベッドにもぐりこんでしまった。
「……分かった」
少々腑に落ちない部分はあったが、初日ではまぁ仕方の無いことか。
俺が床に横になると、ルイズが指を鳴らす。
それを合図に、ランプの火が落ちる。
窓から射す二つの月の明かりに照らされながら、俺のハルケギニアでの一日目はこうして終わった。
1話以上です。
兎にも角にも、スレ容量不確認失礼致しました。
以後気をつけます・・・
SSは、最初はまったりと本筋を追っていこうと思います。
初心者ですが、どうぞよろしくお願いします。
乙…しかしスレ立てたんなら、テンプレもちゃんと張っといた方がいいと思うんだがどうか。
ごめん。ちょっとカンチガイしてた。
改めて投下乙。
そしてスレ立て乙。
追記。
支援してくださった方々、ありがとうございます。
しっかり続けられるよう、頑張ります。
乙&乙
XFは久しぶりにWAテイスト溢れるWAだったな
例え我が身高熱に蝕まれようと投下はやめぬ……!
五分後くらいから投下します
そして
>>1スレ立て乙です
『桟橋』と呼ばれた巨大な樹木から伸びる一本の太い枝に、何本ものロープを使って帆船が吊るされていた。その帆船の舷側には翼が設けられている。そう、これはただの船ではない。空を舞う飛行船なのだ。
通称『白の国』とも呼ばれるアルビオンは巨大な浮遊大陸だ。そこに渡るためにワルドが急遽都合したその船の甲板で、船長とおぼしき初老の男が苛立たしげにパイプを吹かせた。
「いつまで待たせるんですかい? 急ぎだっていうからこっちは寝入りばなの船員を叩き起こしてまで出航の準備を整えたんですがね」
船長は吸い込んだ煙を嫌みったらしくはぁ〜、と吐き出した。
ワルドはそんな船長をぎろりと睨みつける。船長は肩をすくめて「おぉ怖い」と呟いた。
ルイズはまだ乗船しておらず、自分たちが上がってきた『桟橋』の階段をじっと見つめていた。
「ルイズ」
ワルドは甲板の上からルイズの背中に声をかけた。ルイズは無言でふるふると首を振る。
「いや。私、もう少し待つわ。あいつ、言ったから。『すぐに行く』って、そう言ったから」
「だがルイズ……我々には時間があまり無い。それに、もしかすると彼はもう……」
「使い魔を信用しろって言ったのはあなたよワルド!!」
キッ、と振り向いてルイズは声を張り上げた。その目には涙をいっぱいに溜めている。
その涙がこぼれてしまわない様に、ルイズは懸命に歯を食いしばっていた。
ワルドはため息をつくと、帽子をくしゃりと押さえつけた。
「……わかった、待とう。だが、あと半刻だけだ。それまでに彼が間に合わなければ出航する……いいね?」
ルイズは返事をしなかった。代わりに一瞬俯くと、再びワルドに背を向けてじっと階段を見つめだす。
(ふぅ…まいった。妬けるね、どうも)
そんなルイズの様子に、ワルドは苦笑いを浮かべるのだった。
「ちょこまかするんじゃないよ!!」
ラ・ロシェールの夜空にフーケの怒声が響く。フーケの苛立ちを表すように、フーケの操る巨大な岩ゴーレムは豪快にその腕を振るった。
地を駆けるキュルケに向かって振るわれたその腕は、もろともに岩造りの家屋を薙ぎ倒す。
「な、なんだありゃ!? 岩の巨人!?」
「ば、化け物だ!! 逃げろーーーーーッ!!」
町の人々は突然現れた破壊の権化に混乱し、寝巻きのまま家を飛び出し逃げ惑っていた。ゴーレムがところかまわず振り回す腕はラ・ロシェールの町並みを瓦礫の山に変えていく。
「む、無茶苦茶するんじゃないわよッ!! 何考えてんの!? アンタこんな真似したら死刑確実よ!?」
ゴーレムの腕をすれすれでかいくぐりながらキュルケはフーケに罵声を浴びせる。
幸い、まだゴーレムの攻撃による死者は出ていないようだが――トリステインの重要な交易港であるラ・ロシェールをこれだけ破壊してしまってはまず間違いなく縛り首だ。
「はんッ! どの道わたしは脱獄犯で縛り首決定さッ!! なら精々好きに暴れさせてもらうよ!! もっとも……捕まる気なんてさらさらないがね!!」
ゴーレムが硬く握った拳をキュルケに向かって叩きつける。直撃こそ免れたものの、その衝撃にキュルケの体は浮き上がり、瓦礫の山に突っ込んだ。
「あいたた……んもう!!」
「とどめ!!」
ゴーレムがその腕を大きく振りかぶる。瓦礫から身を起こし、頭を振るキュルケに腕を叩きつけようとして―――嫌な予感にフーケのうなじが逆立つ。フーケは背後を振り返った。
風竜シルフィードにまたがったタバサが猛スピードでフーケに迫る。
「ちぃッ!」
フーケの杖の動きにあわせ、ゴーレムは振りかぶった腕をタバサに向かって振るった。シルフィードは翼をはためかせ、ひらりとその腕をかわす。その背にしがみついたまま、タバサが杖を振る。
氷の塊がフーケに向けて射出された。ゴーレムのもう一方の腕がフーケの前に翳され、巨大な壁となってそれを弾く。
「ファイヤー・ボール!!」
キュルケも炎の玉を放ち、直接フーケを狙った。しかしそれもまたゴーレムの巨大な腕により防がれる。ゴーレムの腕にまとわりついた炎は、ゴーレムが大きく腕を一振りすると風に吹かれてかき消えてしまった。。
「やっぱり大きすぎだわこのゴーレム……もう、反則よ!!」
再び迫ってきたゴーレムの腕をかいくぐって、キュルケは毒づく。
支援
シルフィードに乗って空を舞うタバサにも、ゴーレムの腕が二度、三度と続けて振るわれた。
ひらりひらりと軽やかにシルフィードは身をかわすが、その背に乗るタバサは歯を食いしばっている。
シルフィードの回避行動により立て続けに行われる急な旋回は、その背に乗るタバサに大きな負担をかけていた。タバサはゴーレムの射程の外まで(即ちそれはタバサの魔法の射程の外をも意味する)後退せざるをえなかった。
「本当にすばしっこい奴らだね。このままじゃキリがないわ……ん?」
住人が避難してがらんどうになった家を見て、フーケはにやりと笑った。思い付いた。ちょろちょろ逃げる害虫をぷちっと潰す方法を。
誰もいなくなった三階建ての家屋をゴーレムは両腕で挟み込む。ゴーレムはみしみしと音を立て、そのままその家を土台ごと引っこ抜いた。
「なぁッ!?」
「…ッ!!」
余りの出来事に、キュルケとタバサは目を丸くして声を失った。
ゴーレムは抱え込んだその家を頭上に振りかぶる。
狙いはさっきから足元をちょろちょろしてうっとうしい赤髪の女――キュルケだ。
「さあ、よけてみなぁッ!!!!」
ぶん、とゴーレムは勢いよくその家を投げ放った。巨大な岩の塊が猛然とキュルケに迫る。宙を舞うその家は、月の光を受けてキュルケの周囲に大きな影を落とした。
「そんな……嘘でしょ?」
キュルケは呆然と呟く。
前へ走る? 間に合わない。後ろへ走る? 間に合わない。横へ飛ぶ? 間に合わない。上へ飛ぶ? ――間に合うはずが無い!
「くッ…!」
タバサがシルフィードを駆り、全速力でキュルケのもとへ向かう。
「タバサーーーーーーーーーッッッ!!!!!!」
だが、それも到底間に合わず、タバサの目の前で――キュルケの姿は巨大な瓦礫の下に消えた。
「あーはっはっはっはっはっは!!!!」
ずずん、と大地を揺るがす衝突音をバックミュージックに、フーケの哄笑が響く。
ゴーレムの肩の上で勝ち誇るフーケを、タバサはキッ、と睨みつけた。
「よくも…!」
フーケ目掛けてシルフィードが一直線に飛ぶ。振るわれるゴーレムの右腕。猛然と迫り来るソレを、腕の下をかいくぐることでなんとかかわす。
しかし、間髪入れず迫る左腕。かわすのが精一杯で、タバサはフーケとの距離を詰めることができない。
体勢を崩したシルフィードとタバサは、再びゴーレムの手の届かないところに撤退するしかなかった。
「ふふ……そのまま尻尾を巻いて逃げ出したってかまやしないよ、『雪風』のタバサ? もう十分に気は晴れた。わたしもこれからは忙しい身だ。そうそう時間もかけていられない……あんたのことは見逃してあげる」
「あなたの気が晴れても私の気が晴れない。あなたは私の大切な友達を殺した……絶対に、許さない」
「じゃあいつまでもそんなとこにいないで来なさい、羽虫。言ったでしょう? 忙しいの、わたしは」
「言われずとも」
タバサの声を合図にシルフィードは上方に向かって翼をはためかせた。風を切り裂き、シルフィードはぐんぐん上昇していく。
「ハッ! 結局逃げるのか!?」
フーケはどんどん小さくなるタバサを見上げて笑った。
ゴーレムの肩に乗るフーケが豆粒ほどの大きさに見える高さまで来て、ようやくシルフィードは上昇をやめた。
「何のつもりだ?」
怪訝そうに目を細めてフーケはタバサの姿を追う。
フーケの方からも、もはやタバサと風竜の姿は小さな点にしか見えない。
タバサは自らの位置をゴーレムの『真上』に調整すると、今度は一転、急降下を始めた。
「突撃、ってかい!?」
フーケは迫り来るタバサを視界に収めたまま、ゴーレムの腕を構えさせる。
標高が高くなれば高くなるほど気温は下がる。タバサはまるで身を切るような冷たい風に耐えながらぐんぐんシルフィードを降下させた。
(ゴーレムは人の形を模している以上、その腕の稼動範囲には限界がある)
「上から来ればゴーレムの動きを限定できると思ったかい!? あいにくだね! ゴーレムはその気になりゃあ『関節』なんて概念取っ払っちまえるのさ!!」
フーケは笑う。みしみしと音を立て、ゴーレムの肩が回りだす。その動きを誇示するように、ゴーレムは上に向かってぶんぶんと腕を振り回した。その動きは確かに人間の稼動領域を超えている。
しかしタバサは止まらない。
いよいよタバサとフーケ、二人の距離はお互いの顔を視認できるまでに近づいた。
タバサを見上げるフーケの顔には凶悪な笑みが浮かんでいる。
「叩き潰してやる!!」
フーケが杖を振り、ゴーレムで迎え撃とうとしたその刹那。
タバサはシルフィードの背を離脱した。
「なにッ!?」
「『フライ』」
シルフィードの背を飛び離れたタバサはフーケから見て右に、シルフィードはそのまま左に旋回する。
タバサの姿を視界に収めればシルフィードがフーケの死角に入り、シルフィードの姿を視界に収めればタバサの姿が死角に入る。
いかにゴーレムの扱いに長けたフーケといえど見えない相手を迎撃するのは不可能だ。
「小賢しい!!」
フーケは迷うことなくタバサを自らの正面に置いた。
「所詮あの風竜はアンタの使い魔! アンタが死に、その支配から逃れればわたしを狙う道理はない!!」
「……英断」
タバサは唇を噛んだ。
「終わりだ! 『雪風』のタバサ!! そんなへなちょこな『フライ』で私のゴーレムをかわせると思うな!!」
眼前に迫ったゴーレムの腕に、覚悟を決めたのかタバサは目を閉じた。
「万事休す」
そう呟いて目を開いたタバサは、ほんの僅かに――だが確かに、意地悪な微笑みをその顔に浮かべていた。
「……なんちゃって」
タバサは突然降下を止めて今度は逆に上昇する。タバサ目掛けて迫っていたゴーレムの腕が空を切った。
フーケは苛立ちを隠そうともせず、舌を鳴らす。
「チッ! この期におよんで、一体何のつもり……」
「はぁい♪」
聞こえるはずの無い声を、背後から聞いた。
「馬鹿な……」
思わず声を漏らし、フーケはゆっくりと振り返る。
月明かりが燃えるような赤い髪を、妖艶なその肉体を映し出す。
『微熱』のキュルケがそこにいた。
巨大な岩ゴーレムの肩の上で、キュルケとフーケが対峙する。
「ここまで近づけばあなたのゴーレムはもう役に立たないわ。まさか自分もろとも私を叩き潰すわけにはいかないものね。距離を取る? 無理よ。私、もうあなたの傍を離れるつもりはないもの」
右手に持った杖を構え、キュルケは妖しく微笑む。
「私が限定したかったのはゴーレムの動きではなく、あなたの視界。下から接近する彼女に気付かぬよう、あなたの目を上方に固定しておく必要があった」
一瞬の隙をついてシルフィードと合流したタバサは、その杖をフーケに向けている。既に詠唱は済ませており、いつでも氷の槍を撃ちだせる状態だ。
フーケはぎり、と奥歯を噛み締めた。
「『微熱』のキュルケ……アンタ、どうやってあの状態から……」
「見くびらないでちょうだい。確かに『微熱』は私の二つ名。でも、扱える魔法は何も『火』だけじゃなくってよ?」
言われてフーケは気がついた。月明かりなので分かりづらかったが、よく見ればキュルケの服や髪には所々泥が付着している。
「『錬金』…! 地面を泥に変えて……!!」
「前後左右が駄目。上も駄目。じゃあ、下しかないわよね。前にあなたが見せた錬金を参考にさせてもらったわ。でもやぁね。あなたと戦うと毎回汚れちゃう」
キュルケは泥の付着した自分の髪をつまみ、はぁ、とため息をついた。
「くっ…! だが…、『雪風』のタバサ! アンタはどうやってそのことを知った!? 私と同じく、アンタにもこの女が潰されたようにしか見えなかったはずだ!!」
納得のいかないフーケはタバサの方に向き直る。
「瓦礫の下敷きになる直前、彼女は私の名を呼んだ」
「は…? そ、それだけで……!?」
「以心伝心、ってやつよ。私たちを甘く見ないでちょうだい、『土くれ』のフーケ」
フーケは呆然と立ち尽くす。タバサはぶい、とピースサインをしてみせた。
わなわなとフーケの肩が震える。
「チェックメイトよ、フーケ。もうあなたに道は残されていない」
キュルケはフーケに語りかける。
まるで判決を告げる裁判官のように。
「杖を振り、私を魔法で仕留める? ノン、その時はタバサの槍があなたを貫くわ。では先にタバサをゴーレムで叩き伏せる? ノン、ゴーレムを動かした瞬間私があなたを小麦色に焼き上げてあげる。貫かれるか、その身を焼くか、跪くか。選びなさい、『被告人』フーケ」
フーケが伏せていた顔を上げる。観念したようにも見える表情で、フーケはくつくつと笑った。
「いいえ、『裁判官』。私にはもうひとつ取るべき道がございますわ」
「おかしな真似をすればその場で撃つわよ、フーケ」
キュルケは油断無くその杖をフーケに突きつける。もしフーケが妙な挙動を取れば即座に炎を放つ準備があった。
「ご心配なく。魔法は使わないし、私はこの場を一歩も動きませんわ」
奇妙だ。焦燥も絶望もフーケの表情からは読み取れない。
何が狙いなのか――そのフーケの様子は不気味ですらあった。
「では聞こうかしら。その行動とは何? フーケ」
「簡単ですわ。その行動とは……」
フーケはゆっくりと地面、つまり自らが立つゴーレムを指差した。
「――ゴーレムを消すこと」
フーケの言葉と同時に地面が消失した。少なくともキュルケにはそう感じられた。
ゴーレムを形作っていた岩が魔力の支えを無くし、地に落ちる。
「しまった…!」
キュルケは落下を始めた自分の体を支えるため「レビテーション」の魔法を唱えざるをえなかった。
「これでアンタの炎は消えた…! 後は……」
フーケは落下する体をぐるりと反転させた。
「後は『雪風』のタバサ、貴様だ!!」
タバサが杖を振る。落下するフーケ目掛けて氷の槍が発射された。
ゴーレムの肩の高さからまともに地面に叩きつけられては無事では済まない。
だというのに、フーケはタバサの魔法の迎撃を優先した。フーケが杖を振ると岩の塊がタバサとフーケの間に割って入り、氷の槍を受け止める。
「レビテーション」で速度を殺したキュルケよりも、シルフィードに乗って降下するタバサよりも先にフーケは地面に着地した。
「が…ぐッ……!!」
着地の衝撃でフーケの関節がぎしぎしと悲鳴を上げる。内臓系にも傷がついたか、激痛とこみ上げる猛烈な吐き気をしかしフーケは飲み込んだ。
(この痛み……二、三本はイったかもしんないねこりゃ……だけど!!)
痛みに悶える時間はない。フーケは杖を取ると、すぐに呪文の詠唱を始めた。
「逃がさないわよ! フーケ!!」
キュルケとタバサはもうすぐそこまで迫ってきている。
フーケは二人を鋭い瞳で睨みつけた。
「『微熱』のキュルケ…『雪風』のタバサ……この『土くれ』に二度も土をつけるとはね……! また大きな借りが出来た。首を洗って待っていなさい!!」
フーケが杖を振ると猛烈な砂嵐が巻き起こった。
「くっ!」
「うく…」
周囲の細かな砂粒を巻き上げ、徐々に勢力を増す砂嵐に、キュルケとタバサの目が眩む。
砂嵐がようやく止んだ時――フーケの姿はその場から綺麗さっぱり消えていた。
今や人っ子一人居なくなった『女神の杵』亭の酒場で、ギーシュ達と合流したキュルケ、タバサは勝利の祝杯を挙げていた。
「悔しいわね! 完全に追い詰めていたのに!!」
キュルケは注がれたワインを一息で飲み干すと、乱暴にグラスをテーブルに置いた。
その隣でタバサは視線を本に固定したままパラリとページを捲る。
「しょうがない。向こうの方が一枚上手だった」
「さすがに伝説の盗賊『土くれ』か……厄介なヤツを敵に回しちゃったかも、ね」
「僕としてはあの『土くれ』のフーケをたった二人で撃退したってだけでびっくりだよ。何者なんだ君たちは」
ギーシュはそんな二人の様子にやれやれと肩をすくめた。
「それよりも、これからどうする?」
キュルケがそこにいる皆の顔を見回して言った。
タバサは我関せずと本を読み進め、ギーシュは隣に立つメリッサにちらりと視線を送る。
「あ〜、僕は、そうだな、今更任務には戻れないし……メリッサの世話をしてくれるっていう貴族のところまで彼女を送ろうかな、うん」
「そ、そんな! そこまでしていただくわけにはいきません!!」
ギーシュの言葉にメリッサは慌てて首を振った。
ギーシュもまた「いやいや」と首を振る。
「なに、僕が好きでやってるだけだ。気にしないでくれ」
「で、でも……」
そんな二人のやり取りを眺めながら、キュルケは二杯目のグラスを空にすると、ほぅ、とため息をついた。
「このまま学院に帰ってもダーリンがいないんじゃ退屈ねぇ……ねえ、タバサ。あなたのシルフィードでアルビオンに先回りしちゃわない? 先にアルビオンに行って、ダーリン達を待ち伏せするの」
「現時点で既に船を発進させていると思われる彼らに追いつくのは困難。何より、あの子(シルフィード)を少し休ませないと」
「ぶぅ〜、つまんない……って何? どうしたのよギーシュ。ぽかんとしちゃって」
ギーシュは虚を突かれたような顔でキュルケの顔を凝視していた。
「キュルケ……今君、なんて言った?」
「な、何よ? わ、私何か気に触ること言ったかしら?」
キュルケの言葉を聞いて、ギーシュの頭の中でかちり、と何かのピースが埋まった。
フーケの姿を認めたときに覚えた違和感。その正体にギーシュは思い当たる。
フーケは酒場の入り口を壊し、自分たちの姿を認め、こう言ったのだ。
『まさかあんたらまで来るなんてね。忘れちゃいないよ。『雪風』のタバサ、『微熱』のキュルケ。このラ・ロシェールで待っていた甲斐があったってもんだ』
――待っていた?
――待っていただと?
『土くれ』のフーケ。
何故お前は僕たちがラ・ロシェールに来ることを知っていた?
ギーシュの中でカチカチとパズルのピースが埋まっていく。
これは、必要な情報の欠けたキュルケとタバサには辿り着けない、唯一この場で『鉄屑』のグリズネフと邂逅したギーシュにしか辿り着けぬ真実。
昨日、グリズネフの部下は言っていた。
『――俺昨日『ラ・ロシェール』の酒場であいつ見たぞ?』
ギーシュの思考は加速する。
つまり姫殿下がルイズの部屋を訪れたあの夜。何時ごろなのか詳しい時間は分からないが(おそらくは相当深夜だったであろうと思われるが)、既にフーケはここにいた。
誰に聞いたのだ? 僕らがアルビオンを目指してラ・ロシェールを訪れることを。
いや、そもそもあの夜の時点で僕らがラ・ロシェールを目指すことを知りえたのは誰だ?
おそらくはごく少数――或いは皆無ですらあるはずだ。姫殿下自身がルイズを訪ねにわざわざ学院まで足を運んだ程だ。例え王宮の近しい者にでも知られるわけにはいかなかったのは容易にうかがい知れる。
つまり、『直接姫殿下から任務を受けた僕たち』以外に任務の内容を知るものはいないのではないか――?
ギーシュはまるで電流が全身を駆け抜けたような衝撃を覚えた。
ああ、そもそも何故捕まったはずのフーケがここにいた?
決まってる。脱獄したからだ。
脱獄? あのチェルノボーグの監獄を?
何者かが手引きしたんだろう。そう考えるのが最も自然だ。
誰が? もちろん、トリステイン内の『裏切り者』だ。
『裏切り者』。突如頭の中に浮かび上がったその言葉がギーシュに例えようもない不安をもたらす。
頭の中に打ち立てられたとんでもない仮説。ギーシュはいやいやと頭を振った。
馬鹿げている。なんて馬鹿げた、それでいてひどく不誠実な考えだ。短絡的な自分の思考に笑いすらこみ上げてくる。
只ならぬギーシュの様子に見かねたキュルケは声をかけた。
「ちょっと、ギーシュどうしたの? 何か具合悪そうよアンタ。大丈夫?」
「――追うんだ」
「え?」
「ルイズ達を追うんだ!! 今ならまだ間に合うかもしれない!!!!」
自身を苛む焦燥に急き立てられるままに、ギーシュは叫ぶ。
「何を言ってるのよ!? どうしたのあんた!」
「説明してる時間も惜しい! 早く、早くしなきゃ、とんでもないことになるかもしれない!!」
「落ち着いて」
タバサが読んでいた本をぱたんと閉じた。
「どの道、すぐの出発は不可能。アルビオンまで飛ぶにはもう少しあの子に休息が必要。だから、落ち着いて」
「しかし――」
「落ち着いて」
透き通った水面のようなタバサの瞳に見つめられ、ギーシュは口ごもった。
「協力はする。だから話して。あなたの考えたことを」
「あぁ…話す、話すよ……君たちの意見も聞きたい。出来れば、この馬鹿げた考えを否定してくれ」
一度深呼吸してから、ギーシュはぽつぽつと己の仮説を話し始めた。
確かめなくては――願わくば、ただの杞憂であってくれ。
思いを胸に、今はただシルフィードの回復を待つ。
待つことしか出来ぬ歯がゆさに、ギーシュは拳を地面に叩きつけた。
男気溢れるギーシュに死亡フラグの臭いを感じつつ支援。
しばらく時計を眺めていた船長が片眉をあげてパイプの火を消す。
「半刻経ちましたぜ、旦那」
船長の言葉にワルドは無言で頷くと、甲板を降りてルイズの傍に歩み寄った。
それでも振り向こうとしないルイズの肩をやさしく掴む。
「時間だ。行こうルイズ」
少しの間を置いてルイズは無言でこくりと頷くと、飛行船に付けられたタラップを渡り始めた。ワルドが先に立ち、ルイズの手を引いてエスコートする。
甲板に渡る最後の一歩を踏み出す前に、ルイズはもう一度だけ『桟橋』の階段を振り返った。
「馬鹿……」
ぽつりと呟いて、タラップから甲板に降りる。
「それじゃあタラップは片付けちまって構いませんね?」
「ああ、頼む」
ワルドに一応の確認を取ると、船長は数名の船員を呼びつけた。
船長の命令を受けて船員達がテキパキと船に取り付けられたタラップを片付けにかかる。
「大丈夫さルイズ。彼はきっと生きている。一度剣を交えたこの僕が保証する。彼はそんなやわな男じゃないさ」
「うん…ありがとう、ワルド」
ワルドの大きな優しい手が俯いていたルイズの頭を撫でる。ルイズはくすぐったそうに身をよじった。
「うん? 何だありゃあ?」
その時、ルイズの後ろでタラップを片付けていた船員が素っ頓狂な声を上げた。
何となく船員の目線を追ったルイズの目が大きく見開かれる。
「ル、ルイズ〜〜〜」
へろへろになったパックが桟橋からこちらに向かって飛んできていた。
そしてその後ろには――ドラゴンころしをまるで杖のようにして歩を進めるガッツの姿もある。
「タラップ下ろして!! 早く!!」
片付けたばかりなのに、とぶつくさ言いながらも船員はすぐにタラップを架けなおしてくれた。
タラップを駆け下り、その勢いのままにルイズはガッツの胸元へ飛び込んだ。限界ギリギリの体を引きずってきたガッツはその勢いに耐え切れず尻餅をついてしまう。
「おいおい……」
ガッツが呆れたように声を出すと、ルイズはがばっと胸元に埋めていた顔を上げた。
「ばかッ!!!!」
たまらず零れ落ちた涙を拭おうともせず、ルイズは力一杯口を開いてガッツを怒鳴りつける。
「ばか、ばか、おおばか!!!! もう禁止! アンタ勝手な行動禁止!!! 勝手にわたしのそばを離れるな!! 動くときはわたしの許可を取るの!!」
「おい、あんまり揺するな。傷に響く」
「わかったの!?」
「わーった、わーった。分かったから手を離せって」
ぽかぽかと感情のままに殴りつけてくるルイズをガッツは鬱陶しそうに押しのける。
そんな二人の様子を甲板から眺めていたワルドは呆れ交じりの笑顔を浮かべていた。
「まさか、本当に間に合うとはな。つくづく大した男だ」
そう呟いて、何度も出航を遅らされてぶつぶつ文句を言っている船長に向き直る。
「待たせてすまなかったな船長。彼が乗り込んだら出航だ」
「今度こそ大丈夫なんでしょうね?」
「ああ、今度こそ大丈夫だ」
疑り深く聞いてくる船長に爽やかな笑顔で返しながら、ワルドはタラップに歩み寄る。
ちょうど数人の船員の手を借りてガッツが乗船してくるところだった。タラップを上ってくるガッツにワルドは手を差し出す。
「ご苦労だった、黒い剣士殿。貴殿のおかげで僕らは今こうして無傷で船に乗っている」
「よせよくすぐってえ。ガッツでいい」
騎士としての礼を尽くしたワルドの態度に、ガッツは顔をしかめながらその手を握る。
「なら僕もワルドでいいよ、ガッツ」
そう言ってワルドは笑った。
「出航だ!」
船長の掛け声と共に、慌ただしく船員が動き出す。
無事一行を乗せた船は今度こそ桟橋を離れ、空を舞った。
以上、投下終了
めっきり寒くなったね。皆風邪には気をつけて
いや、ホントに
いよいよ迫り来るクリスマスに戦々恐々としつつ、ではまた
GJ
投下してないで休めよwwwwwwwwwww
26 :
サイダー&ゼロ:2008/11/21(金) 14:54:28 ID:b29IWlCz
15:00から投下します。
ルイズがヴェストリの広場に到着した時、全て遅かった。
ダ・サイダーがピクリとも動かず、そしてサーベルにもひびが入っていた。
「あ……間に合わなかった……」
ルイズは、ただ立ちすくむだけだった。
「やあ『ゼロ』のルイズ、使い魔をこの僕が処刑させてもらったよ」
ギーシュ・ド・グラモンが、ルイズに話しかける。
「ちょ……!?処刑?何よそれ…アンタ…」
「ルイズ…君もこの男の事が邪魔なのだろ?」
「ちが」
ルイズの反論を許さないギーシュ。
「『違う』とでも言って、偽るつもりかい?」
「何を根拠にそんな事言うのよ!」
「あの使い魔を召喚して以来、君は恥をかかされ続けてきただろ。貴族として君のプライドは、ボロボロなはずだ」
「それは、そうだけど…でも、アイツは私の使い魔よ!アンタにあれこれされたくないの!」
必死に反論するルイズ。だがギーシュも言葉を返していく。
「ルイズ…君は知らないから、そんな事を言えるのだ。あの男の罪を……」
「罪?罪って一体何よ!」
「あの男は、貴族であるこの僕に逆らったのだよ…これは重罪だよ…この罪は、主の責任でもある。償ってもらうぞ」
ワルキューレがルイズの方向に向きを変える。ルイズも杖を抜き戦闘体制に入った矢先の出来事だった。
ワルキューレにサーベルが飛んでいき、金属音がヴェストリの広場に響き渡り、サーベルが折れた。
皆サーベルが飛んできた方向を見た。そこには、ダ・サイダーがフラフラになりながら立っていた。
「はぁ…はぁ…まだ、女に…はぁ…牙を向けようとするのか…はぁ…はぁ」
「フフフ…ハーハハハ!君は、何て愚かなんだ!そのまま寝ていれば良かったものを!」
ダ・サイダーの行為によってギーシュは、完全にその身を悪意に任せた。
「何かを守ろうとする君の行ないは立派だ…だが相手を選んだ方が良い…まあ…もう、遅いがな」
ワルキューレが、ダ・サイダーに右ストレートを放つ。
ダ・サイダーは身を屈め、攻撃をかわしそしてバックステップで距離をとった。
「メタコ…はぁ…状況分析結果は?…はぁ」
「ダーリン、ワルキューレが動かす時にアイツの薔薇が動くジャン。それを封じるジャン」
「薔薇か……ワルキューレの方はわかるか?」
「関節部分に隙間があるジャン。多分そこが弱点ジャン」
メタコの分析結果を聞き、勝機を見出すダ・サイダー。
「使い魔…話しは終わったか?…終わらせてやる…何もかも、全てなーー!!」
ギーシュが、薔薇を振る体制に入った。
「メタコ!ピンポイントで攻撃する。日本刀!」
ダ・サイダーも新たな武器を出させる。
「ダーリン……それが……無いジャン」
「は?」
「入ってないジャン…どっかに置いてきたジャン」
ワルキューレが攻撃を再開した。攻撃をかわしながら話すダ・サイダーとメタコ。
「どこかって…うわ!…どこだ…よっと!…メタコ…ほっと!」
「たしか……ダーリンの寝室だったと思うジャン」
「俺様の…あぶね!…寝室?…タイム!…アララ王国のか!」
ギーシュは、一瞬の隙を見逃さなかった。ダ・サイダーの顔に強烈なストレートを叩き込んだ。
「フッ…次は、ルイズお前だ…」
ルイズは、ただ呆然としていた。
「覚悟は出来ている様だな…」
ワルキューレが、ゆっくりとルイズへ歩みを進めていく。
ルイズはこの時、ダ・サイダーのことを考えていた。
(アイツには色々聞きたい事があんのよ!それなのに、問題を起こして…今度は私のせい?ふざけないでよ!)
「ダ・サイダー!!!アンタには色々聞きたい事があんのよ!!!」
「フフフ…ルイズ、気を失っている奴に何を言っても無駄だよ」
「何時まで、こんな奴に手間取ってんのよ!!!さっさと倒しちゃいなさいよ!!!この………スカポンタン!!!」
「フフフ…恐怖で、気が狂ったか?」
この場にいた、キュルケとタバサが敏感に反応した。
「ギーシュ…どうやらまだ、終わってないみたいよ」
「何だと!」
(ギーシュは気付いていないみたいだけど…ダ・サイダーだっけ…さっきと全然違うわね…)
そこには、ダ・サイダーの姿があった。
「メタコ…武器を出せ」
「わかったジャン、ダーリン!ラムネスの独楽と…兵から奪ったハルバード、二つあるジャン」
「独楽なんて使えるか…ハルバードを出せ!」
「わかったジャン」
メタコはハルバードを吐き出し、地面に刺す。
「よし!」
ダ・サイダーは、ハルバードを両手で持ち頭上でクルクルっと回し、そして構えなおす。
「やーーーってやるぜーーー!!!」
ダ・サイダーの中に眠るヒョウ、パンサーが目覚めた。
「重量武器のハルバードか…そんな物で、僕のワルキューレを倒せると思うな!」
ワルキューレが、ダ・サイダーにまた襲いかかる。
「ダーリン!」
「てやあーーーーー!!!」
ダ・サイダーもまた、ワルキューレに立ち向かう。あの『漆黒の騎士』の様に。
ダ・サイダーのハルバードは、ワルキューレに防がれ、空いた懐に潜り込まれた。
「使い魔!これで寝ていろ!!」
ワルキューレから放たれた、アッパーによりダ・サイダーは後方に吹っ飛び、動かなくなった。
「チッ…使い魔の分際のくせに手間取らせやがって…」
そして、ギーシュはルイズの方向を見る。
「だいぶ時間を取られたな…ルイズ…もう良いだろう」
その刹那…ワルキューレは真っ二つに切り裂かれ、ギーシュの顔すれすれに炎が飛んできた。
「何だ?まだ、邪魔をするつもりか?」
「ギーシュ…みっともないわよ…止めなさい」
キュルケが止めに入った。
「キュルケ!何故止める?コイツを…コイツを今ここで…」
「メイドと主を守ろうとしたのよ。彼とアナタとじゃどっちが正しいと思うのよ?」
「メイドは、この僕の服を汚した。この男は貴族に逆らった罪もある」
「服なんて洗えば良いでしょ。彼…何時貴族に逆らったの?教えてほしいものね」
キュルケの真っ当な意見にギーシュも返す言葉も無くなった。
「そ…それは…」
「『それは』まだ何かあるの?なんだったら、私が決闘の相手になってあげましょうか?」
「わかった………終わりにしよう」
こうして、ギーシュVSダ・サイダーの公開処刑(決闘)が終わった。
ダ・サイダーは待機していた水のメイジ達によって治療を受け、ルイズに説教を受けた。
その時に、ここが『トリステイン』という国、そして『トリステイン魔法学院』だと言う事も始めて知った。
学院長室では………
コルベールと老人もとい学院長が話していた。
「ミスタ・コルベール、彼は『ミョズニトニルン』なのじゃろ?」
「おそらく………」
「見事に負けたのう?」
「ええ…」
コルベールは、ダ・サイダーが勝つと思っていたため、予期せぬ出来事に混乱していた。
「たしか…『神の頭脳』と言われているんじゃなあ?」
「まあ…」
「あてにならんのう…まあ良い、ミスタ・コルベール、考えたい事が有るので退室してもらえるかな?」
「はい」
コルベールは、学院長室を去って行った。
(ダ・サイダーか…この本のキャラと類似する点が多い…ダ・サイダーか…様子を見てみるべきじゃな…)
学院長の視線の先には、一冊の本が置かれていた。
『ラムネスと聖女の冒険記』とかかれた本が………
31 :
サイダー&ゼロ :2008/11/21(金) 15:03:02 ID:b29IWlCz
投下終了。
ベルセルクの人、サイダーの人。両方とも乙
負けたwwwwwww
ちょいとスレ読んでる人々に質問
実は完結作品の特別編つーか後日談を考えています
200スレ記念にどうかと思って
ただ、本編とは外れた完全な「特別編」です。
具体的には、ハルケギニアではなくクロス先で展開する話
もちろんちゃんとゼロ魔キャラがメインのストーリーですが、活動する世界がクロス先
ストーリー上はちゃんと繋がってます
エログロはありません
「特別編」だから少々の遊びはお目こぼし頂きたい所なのですが
これは本スレOKか避難所行きか
ご意見希望
話がリンクしているなr個人的には本スレでもいいと思うけど。
もすこし具体的に言うと、クロス先でハルケギニアや虚無やエルフのストーリーが進むような話
君が自分の作品を未完成、不完全作だと思っているなら書けばいい。
ただ、その物語は本当に終わっていないのか?
読者は本当に続きを求めているのか?
蛇足になっていないか?独りよがりになっていないか?
自分は完結した作品の続きなんて書けない、もう終わっているのだから。
それは完結したクロス作品同士のクロスかね?
それとも提督とか薔薇乙女とかご立派様とか、単一作品の特別編かね?
単一作品です
物語が終わって一年後、さてさてその後の彼等は・・・て所で
個人的には、完結お疲れ様的な意味でやっちゃっても構わんと思うが。
重箱の隅をほじくる人も居るから避難場が無難かも?
書ける人は書ける。書けない人は書けない。
自分の嗜好と違うからって、なんで、いきなりけんか腰なの?
>>37
誰が損する訳じゃないし、ちゃんとルイズが召喚して色々あった話の続きなんだったら問題ないと思うけどな
やったれやったれ
すみません、ケンカ腰のつもりで書いたつもりはありませんでした。
もしもそう見えて不快になられた方がいらっしゃいましたらお詫び申し上げます。
あくまで一書き手から一書き手への意見と見解でした。
いいんじゃないかなっ!
僕は読んでみたい、けど避難所が無難かも
あっちに投下してから続き物であれば反応うかがってこっちに投下とか
あの作品の世界にルイズとか行きましたってか
要するに、本編終わったけど番外編書くよ、って事だろ?
だったら止める理由なんてないさ。
続き物ではないんですが、長いんですよ
多分Wikiにまとめるときに4話くらい分割するかと
「小ネタ集みたいに考えてたら、こんな風になってしまった。シャレにならない」
という感じです
そこまで言われるとその完結作品がどれかが気になってきた
あるある。
>>48 そこまで長いんなら、4分割して一日一投すればいいのでは?
「うわぁあああああああ!!!!!!!本物のルイズちゃあんだあああああああ!!!!!
ルイズ!ルイズ!ルイズ!ルイズぅぅうううわぁああああああああああああああ(以下略)」
嬉しさの余りショック死
「こんな気持ち悪い奴が使い魔にならなくて良かったわ、ミスタ・コルベールもう一回召喚してもよろしいでしょうか?」
「許可します」
遺体をためらいもなく焼却するコルベール
スレが荒れてほしくないんで避難所でお願いします。
姉妹スレの承太郎とか第二部(パラレル)終了後に第一部の後日談とかやってたな
ルイズが杜王町に行くやつ
普通にこのスレでやっていんじゃね? 長さは分割なり何なり調節できるだろうし
というか聞くまでもなく避難所なんじゃないかな
なんでかってのは感覚的なんで上手く説明できないけど、外伝のお祭り的なものならそっちの方が良いと思う
個人的には本スレで良いとは思うけど、なんだか荒れそうな雰囲気だし、やっぱり避難所が無難かなぁ。
>>34 個人的には
>具体的には、ハルケギニアではなくクロス先で展開する話
この部分が色々引っかかってくる可能性があると思うから、やるなら避難所が無難な気がする。
誰だか知らないけど一々スレ住人のお墨付きがあります、みたいな言質を取って投下しようという姿勢がうざい
それと自分の作品の特別編を200スレ記念に投下しようという考えにも傲慢が見える
お前の作品はスレを代表するものだとでも言うのか?
なるほど、ここでやるとこういうのが沸くわけか。
ふむ、やはり本スレは問題が多そうですね
では後日、200スレと関係なく避難所に第一話から投下しましょう
その後の対応はその後考える、対応も読者任せ、と言う事で
こんばんは。
他に人がいなければ投下したいのですが、いいですか?
私は一向に構わん!!!!
支援
支援
9話
ルイズは昨日早くに床についたせいだろうか、いつもより早く目が覚めた。
寝ぼけ眼をこすりながらむっくりと上半身を起こしたルイズは、一瞬なんで私の部屋に鎧や盾が置いてあるのかしらと疑問に思ったが、すぐに昨日の事を思い出した。
あの三人が召喚されて、紆余曲折の末なんとか使い魔に出来たのだ。そして部屋には誰もいない事に気付く。
三人がいったいどこに行ったのか疑問に思ったルイズは、まさか三人が逃げ出したのでは?と恐れたが、それは無い筈だとすぐに否定した。
ウォレヌスが言っていた通り逃げ出したって行く所なんて奴らには無いのだから。昨日が丸っきり夢でもない限り必ず戻ってくる。ルイズは自分にそう言い聞かせた。
(でもだとしたらどこにいるのかしら……主人の許可を得ずに勝手に出歩くなんてふざけてるわ)
そしてルイズは改めて三人をキチンと躾なければ、と考えた。だがそれは簡単にはいかないだろう。
彼らが自分に対して忠誠心などカケラも持ってないのは明らかだ。
それでも使い魔を完全に従順にさせるのはメイジの義務である。それだけは絶対に成し遂げなければならない。
主人の言う事を聞かない使い魔などあってはならないのだ。
そう思った時、ドアが開き、才人、ウォレヌス、プッロがゾロゾロと部屋に入ってきた。
ルイズは心の中でホッとした。彼らは逃げ出したわけでもないし、昨日の騒動が幻だったわけでもない。
彼らは自分が召喚に成功した証拠だ。そして召喚に成功したと言う事はもう自分は魔法が使えるようになったと言う事でもある。
私はもうゼロじゃない、ルイズはそれを強く実感し思わず笑みをこぼしそうになる。これからは級友達にあのふざけたあだ名で呼ばれる事も無いのだ。
幸せを心の中で噛み締めていたルイズに、才人が呆れたような声で話しかけた。
「なんだ、もう起きてるのかよ。なら俺が起こす必要なんて無かったじゃねえか」
ルイズは才人の言葉に、朝一番に主人にかける言葉がそれ?とムカッとなった。
そしてルイズは主人としての威厳を保たねば、と考えた。それにこいつらがどこに行ったのか聞かなければ、とも。
昨日自分が洗濯を頼んだのは完全に忘れている。
「あんたね、それが一日の初めにご主人様に会って言う言葉?おはようございます、ご機嫌はいかがですか、ご主人様って言う位の気は利かせなさいよ。だいたい一体どこに行ってたのよ、あんた達?主人を置いて勝手に出て行くなんて何考えてるの?」
才人は眉をひそめた。こいつ、何言ってるんだ、と言いたげな表情である。
「どこって、洗濯にだよ。お前がそうしろっつったんだろ。忘れたのか?」
「あっ、そう言えばそうだったわね……」
そこにウォレヌスが一つ付け加えた。
「そして私達は顔を洗うのと外の空気を吸うために彼についていった」
完全に忘れていたが、思い出した。確かに自分は昨日こいつに洗濯を命じたのだった。自分の言いつけを守ったのなら、さすがに非難する事は出来ないだろう。
使い魔には厳しく、だがあくまでも公平にと言うのがルイズが受けた教育だ。
だからルイズはならいいわ、でも次からは一人は部屋に残る様にしなさいと言おうとしたのだが、その前にプッロが口を開いた。
「おい、昨日も言ったがな、俺はお前を主人と認めた覚えはない。忘れるなよ、このティトゥス・プッロ腐っても小便臭いガキの奴隷になるつもりなんてない!」
プッロは腕を組み、ムスッとした表情で言い放った。
ルイズは即座に激昂し、彼女の色白な顔が紅に染まった。
自分は今までゼロだなんだと陰口を叩かれても一度も面と向かってガキだなんて呼ばれた事は無い。
ましてや小便臭いとは!そもそも小便などと言う下賎な言葉を自分の目の前で使われた事自体がルイズにとって初めてだ。
「ああああああんた、今なんて言ったの!?しょしょしょしょしょ、小便臭いガキですって!?」
だがルイズの剣幕をプッロは全く意に介さない。彼はルイズの薄いネグリジェに包まれた肢体をジロジロと見ながら、追い討ちをかけた。
「だってそうだろ?その体つきを見る限りじゃ精々十三くらいだろ。なら小便臭いガキだな」
そこに才人が追い討ちをかけた。
「ま、確かにその体つきでは甘めに見積もって14歳ってとこだな。お前、何歳なんだ?」
実際の年より若く見られるのは普通は良い事なのだろうが、だが今のルイズにとっては罵倒でしかなかった。
プッロが自分を取るに足らない小娘としか見ていないのは日を見るより明らかなのだ。
そして一番の問題はプッロの言った事が事実、だと言う事だ。
自分の貧相な体つきはいつも悩みの種であり、平たく言えばコンプレックスだった。
だから、私は豊かな体つきのちい姉様とお母様の血を継いでるのよと自分に言い聞かせていたのだが、よりによってルイズが一番気にしてる所をプッロは的確についてしまった。
「あ、あ、あのね、こう見えても私は16よ!こ、子供なんかじゃないの!」
ルイズは声を張り上げる。これで少しでもプッロが態度を改めればと思って。だが彼女の淡い期待はプッロの突然の哄笑に掻き消された。
「あっひゃっひゃっひゃっひゃ!じゅ、じゅ、十六ぅ?その体で?貴族の割には随分とひもじい生活をしてるんだな!ええ?そこらの奴隷でももうちょっとマシな体つきをしてるぞ!」
「うう、うるさいわね!これから成長するのよ!いいい、遺伝的に見てもこのままで止まる確率は低いの!」
ルイズはどもりながら必死になって言い返す。興奮した時の彼女の癖だ。
だがプッロにルイズを恐れる様子は全く無い。だがそれは当然と言えるだろう。
兜以外は全裸で戦い、死を少しも恐れずに野獣の様に突撃してくるガリア人のガエサタエと呼ばれる狂戦士と、顔を紅潮させてどもりながら怒鳴る娘ではどう考えても前者の方が遥かに恐ろしい。
プッロはその様な連中と何度も戦い、生き残ったのだ。
「へ〜、遺伝ねえ……でもその年じゃもう成長する可能性は低いと思うがね」
プッロの言葉に才人はプッと噴きだし、ウォレヌスすら僅かに頬を歪ませた。
(ああもう、なんでこいつらはこうもうっとうしいのよ!)
この三人の中でも、このプッロは特に酷い。こいつだけは絶対に自分をご主人様と呼ばせてやる、とルイズは決意した。
そうしなければ気が治まらないし、何よりこのまま平民如きに貴族をバカにさせるなぞ道徳に反する事ですらある。
まずはこいつらに躾を与え、自分が主人である事を頭に叩きこまさなければならない。
それには実力行使が必要だ。こいつらにはいくら口で言っても無駄なのは明らかだった。
実力行使と言っても体格で言えば、自分は才人はともかくプッロやウォレヌスとは比べ物にもならない。
乗馬に使う鞭は棚の中に置いてあるが、その様な物をこの二人が少しでも恐れるわけが無いのはルイズにも理解できた。
だが体格差など魔法の前では何の意味もなさない。
これが昨日までなら話は違っただろうが、もう自分はゼロではないのだから魔法を扱えるのだ。
例え兵士だろうが平民は魔法の前では全くの無力。まずそれを解らせねばなるまい。
(さ〜て、一体こいつをどうしてくれようかしら?いったい何時までそうやって余裕でいられるかしら?)
ルイズはどんな魔法を使ってやろうかと心の中でほくそえみながら、プッロを見つめた。
「ヴァリエール、一体これからどうするんだ?朝食に行くのか?」
ウォレヌスにルイズは余裕を見せて答えた。
「え?ああ、そうよ。今から食堂に行くの……でもその前に服を着せて」
「何だと?」
「だから服を着させて。早くしなさい」
そう言いながらルイズはニヤリと笑った。もちろん彼らがそんな要求を呑む筈が無いのは承知している。
プッロの顔から笑みが消え、同時に才人が抗議の声を上げた。
「うんなもん自分で着ればいいだろ!なんで俺達がそんな事しなきゃいけないんだ?」
ルイズはチッチッと自信に満ちた表情を見せながら指を振り、もう一度ルイズははっきりと言った。
「貴族はね、下僕がいれば自分で服を着たりしないの。だから着せて」
ウォレヌスは眼を見開き、口を真一文字に結んだ。不快になったのは明らかだ。
「下僕だと?笑わせるな!我々はあくまで雇用されただけの筈だ。服を着せてくれる奴隷が欲しいなら奴隷市にでも行け」
この反論はルイズには予想外だった。確かにこいつらとは使い魔として金を出して雇うという奇妙な契約を結んでいるのは事実だ。
だが、それでもコンタラクト・サーヴァントを通じて使い魔の契約を結んだのもまた事実。ルイズはその点を押し出した。
「例え雇用されたとしても、あんたたちが召喚の儀式を通して私の使い魔になった事に変わりは無いわ。その時点であんた達は私の下僕なの!解る?」
だがウォレヌスも勢いを落とさない。
「だが私たちはお前と給金を条件に使い魔になる事を呑んだ。その様な選択肢を与えられた時点で奴隷とは言えん!」
そしてウォレヌスに続いてプッロが面白そうにルイズに質問を浴びせた。
「それに俺達があくまで拒否したらどうする?どうやって服を着させるんだ?」
「いい質問ね!いいわ、平民が貴族に逆らうとどうなるか教えてあげる。魔法の力をたっぷりと味わいなさい」
ルイズは自信たっぷりにそう言うと、ベッドから降り、机の上の杖を取ろうと腕を伸ばした。
……だがルイズが杖を手にする前に、プッロがさっと杖を取ってしまった。
ルイズは傍から見たら滑稽な程に狼狽してしまった。プッロが先に杖を奪うなど考えもしなかったのだ。
杖が無ければメイジは全くの無力。力で言えば平民と何の違いもないのだ。
「ちょ、ちょっとあんた!すぐにそれを返しなさい!」
「うん?こいつの事か?」
プッロは杖を手でクルクルと玩びながら答えた。顔には意地悪そうな笑みが浮かんでいる。
返すつもりが全く無いのは誰にでも見て取れた。
「そいつは無理だな。あのジジイを見る限りじゃ、魔法を使うにはこの棒切れが必要なんだろ?なら渡す訳にはいかないな」
ルイズは杖を取り返そうとプッロに掴みかかろうとしたが、プッロはルイズをヒョイヒョイと避け続ける。
プッロに触れる事すら出来ないルイズをおかしく思ったのか、才人はククッと笑い始めた。
ウォレヌスはと言うと、わざわざ自分から魔法を使うと宣言するとはマヌケな奴だ、と呆れた顔で呟いた。
「しゅ、主人に暴言を吐くだけでなく杖まで奪うなんて……いったい何考えてるのよ、あんたは!これが最後の警告よ!すぐに杖を返して!」
ルイズは精一杯の凄みを入れて言ったつもりだったが、プッロは杖を返すどころか、何か面白い事を考え付いたかのように笑みを更に底意地の悪そうな物に変えた。
「う〜ん、そうだな……返してやってもいいがその前に、俺達に対して魔法を使わないと誓った後に、お願いします返して下さい、って言ってみな。そうすりゃ返してやるよ」
ルイズは絶句してしまった。この野蛮人に杖を返してくれと頼むなど問題外だ。貴族の威厳も何もあったものじゃない、いやそれ以前に自分の誇りが許さない。
(魔法を使わないと誓う?お願いします?冗談じゃないわ!)
だが自分に杖を取り返す術が無いのも事実だ。ルイズは自分の無力さに心中で悪態をついた。
結局、杖が無ければメイジはただの人間なのだ。
ルイズはなんとか杖を取り返せる方法は無いかと考えた……一つあった。魔法とは全く関係無いが非常に効果的な方法を。
これならプッロも杖を返さざるを得ないだろう。
そしてルイズは勝ち誇ったようにプッロに向けて宣言した。
「あんたバカじゃない?使い魔に哀願するメイジが一体どこにいるっていうのよ。あんたら全員今日から飯抜き。主人をコケにした挙句に杖を奪った罰よ。ま、杖を今すぐ返すんなら許してやってもいいけど?」
この宣言にルイズの期待通り、才人は不安な顔になったが、プッロとウォレヌスはそうはならなかった。
ウォレヌスはだからどうしたといわんばかりの表情をし、プッロにいたってはプッと笑い出した。
「おいおい、そんな事に意味があると思ってるのか?」
「ど、どう言う意味よ」
ルイズはうろたえた。予定ではこいつはもうしどろもどろになって許しを請うてる筈なのに。
(なんで?なんでこいつは平気にしてるの?)
プッロは哀れむようにルイズに言った。
「お前なんぞに頼らなくてもお前と学院がくれる給金で飯を買えばすむと言う事だ」
この言葉に才人は感心したように声を上げた。
「そ、そうか!それをすっかり忘れてた」
これは完全に考えの外だったが、考えてみれば当たり前の事だ。
学院長が少なくとも普通に生活するには不自由しないだけの金を出すと合意したのだから。
使い魔として雇用されてるんだから当然給金は出さなければならない。それに学院側からも何か仕事を提供すると学院長は言っていたんだからそっちからも収入はあるだろう。
プッロ達からすればその金で食料を購入すれば良いだけの話なのだ。
あんな事に賛成するんじゃなかった、とルイズは後悔した。
だがそれでもルイズは諦めなかった。彼らはまだ金を1ドニエも持っていないのだ。まだ一縷の望みはある、とルイズは考えた。
「で、でも、今日はどうするの?あんた達はまだお金なんて全然ない筈よ!だから最初の給料が手に入るまであんたらは食事抜き!」
だがこれも大してこたえなかったようで、プッロは落ち着いてルイズに返答した。
「別に構わんさ。食い物を手に入れる方法なんざ他にもあるからね」
才人にとってもこれは予期せぬ答えだったようだ。
「あ、あるんですか?そんな方法が?」
「まあな。ま、それをこいつの目の前で教える訳にはいかないがな」
食べ物を手に入れる方法。それが何なのかルイズは考えてみた。
まずサイトはともかくプッロとウォレヌスは相当の場数を踏んだ兵士に見える。ならば近くの森から何かを取って来て食べる位ならやりかねない。
そして特にプッロなら、厨房に忍び込んで何かを失敬する位なら平気でやりそうだ。もしそんな事になって、それが発覚すればそれは自分の責任になる。
使い魔の不始末は主人の不始末になるのだ。厨房からパンを盗んで捕まった使い魔を持つメイジなんて聞いた事もない。
そんな事になれば果たして学院から、いや両親からなんと言われるか……
「おい、どうした?俺たちに着替えさせるんじゃなかったか?杖はもういいのか?」
何も言わないルイズを見て、プッロが実に楽しそうに声をかけた。
ルイズは必死で何とかしてこいつに自発的に杖を返させる方法は無いかと考えたが、何も思い浮かばない。
そして杖を持たずに授業に出るのはリスクが高すぎる。もし何かを実演しろと言われたら言い訳のしようが無いからだ。
正直に使い魔に奪われましたと答えるのは論外だし、無くしたと嘘をついても叱責されるのは目に見えてる。
もうどうしようも無い、そう判断したルイズは断腸の思いでプッロに杖を返してくれるように頼んだ。
「プッロ、杖を返して……お願い。あんた達に魔法は使わないと約束するから」
「そう、そうやって素直に頼めばいいんだ」
そう言ってプッロはニヤッと笑い、杖をルイズに放り投げた。
だが彼は最後にもう一撃加える事を忘れなかった。
「ところで、着替えの方は手伝わなくていいのか?お嬢ちゃん?」
「うるさいわね!気が変わったのよ!気が!服は自分で着替えるわ!」
(一々傷口に塩を塗るんじゃない!もうゼロじゃなくなったって言うのに、一体どうしてよりによってこんな連中が使い魔なのよ!)
ルイズはそう思いながら、恥辱にまみれた気分で制服を身に着けた。
怒りと屈辱に顔をゆがめさせながらルイズはもう一度、こいつらを絶対に、絶対に服従させてやると誓った。
(ヴァリエール家の名にかけて、こいつらに絶対に私が主人だって認めさせてやるわ!絶対に!)
四人は部屋を出た。廊下には似たようなドアが幾つか並んでいる。
プッロは上機嫌だった。何せあの生意気なクソガキをへこませる事が出来たのだから。
そして彼は目の前のドアから出てきた女を見て更に上機嫌になった。
その女は褐色の肌と彫りの深い顔を持っており、燃えるような赤毛と突き出た胸がひと際目を引いた。
(こりゃかなりの上玉だ……!このガキとは大違いだなぁ)
年は恐らく二十歳にも達していないだろう。だから女と言うよりは娘と呼んだ方がいいかもしれない。
だが色気と言う点ではルイズとは比べ物にならない。まさにプッロの好みと言える女だった。
そしてその娘が、ルイズに向けて口を開いた。
「あら、おはようルイズ。結局サモン・サーヴァントはどうなったん――」
そこまで言ってから彼女は呆けたように口を開けた。
「あらら、男を三人も部屋に連れ込むなんて……使い魔召喚に失敗したからって随分とヤケになってるのね、ルイズ。意外な一面だわ」
ルイズのさっきまで紅くなっていた頬が再び真っ赤になった。
「いったいなんでそう言う発想になるのよツェルプストー!こいつらは私達の使い魔!」
「軽い冗談よ、本気にしないで……ってちょっと待って。使い魔?彼らが」
そう言って、彼女はプッロ達をマジマジと見つめた。その顔を見るにどうも半信半疑のようだ。
シエスタ達もこのことに仰天していた事を思い出し、人間が使い魔とやらになるのは本当に珍しい事みたいだな、とプッロは思った。
ツェルプストーと呼ばれた娘は手を腰に当て、三人を覗き込んだ。
「ねえ、あなた達。本当に彼女に召喚されて、契約しちゃったの?使い魔のフリをしろって言われたとかじゃなく?」
「ああ、本当にそうだ」
そう才人は答え、プッロはそれに不本意ながらね、と付け加えた。
「私がそんな情けない事するわけないでしょ。嘘だと思うならミスタ・コルベールや学院長に聞いて見なさい」
「あっはっはっはっは!サモン・サーヴァントで人間、しかも三人召喚しちゃうなんて完全に予想外だわ!さすがゼロのルイズね」
「うるさいわね、召喚も契約も成功したんだからその名前はもう無効よ。しかも召喚した数で言えばあんたを三倍も上回ってるのよ!」
ルイズはムキになって悔しそうな声で言い返す。
(こいつら、仲が悪いみたいだな)
プッロは彼女たちのやり取りを見てそう思った。そしてどうやら口げんかでは褐色の娘の方が一枚上手のようだ。
「ま、数では勝ってるかも知れないけどやっぱり使い魔ならもっとちゃんとしたのが良いわよね。フレイム〜」
彼女が勝ち誇ったような声でそう言うと、彼女の部屋からのっそりと真っ赤な色をした大きなトカゲの様な生き物が現れた。
驚く事に尻尾には炎が燃え盛っている。
「うわっ!真っ赤な何か!」
このトカゲを見た才人はそう叫んで慌てて後ずさり、プッロとウォレヌスは身構えた。
もっとも、プッロもウォレヌスもこのフレイムが危険だと思考したわけではない。単に戦場での長年の経験のおかげで、未知の物体に反射的に反応してしまったのだ。
「あら、あなた達、サラマンダーを見るのは初めて?私が命令しない限り誰かを襲うなんて事は無いから安心しなさい」
ツェルプストーの言葉に三人は警戒を解き、プッロはこのトカゲをじっと見つめてみた。形はトカゲに似ているが、大きさは桁違いだ。
そして尻尾に炎を灯しているトカゲなど見た事も聞いた事もない。
だがこんな場所ならこれ位の動物ならいてもおかしくないだろうと思い、この事はあまり気にならなかった。
代わりにプッロが気になったのは果たしてこのトカゲが食べられるのかどうか、だ。
基本的に、彼にとって動物と言うのは食べる為に存在しているのだ。
(あまりうまそうには見えねえな)
もともとトカゲなんてよほど食料が不足している時位にしか食べた事がないし、特にうまいとも思えなかった。
この火トカゲも例外ではないだろう。だが、こいつの尻尾は既に燃えてるんだから料理する必要がないから楽だなとプッロは思った。
「ほら、この逞しい体つきと尻尾の炎を見なさい。間違いなくこれは火竜山脈のサラマンダーよ。好事家に見せたら値段なんかつかないわよ、きっと」
ツェルプストーが自慢げにその大きな胸を張った。
「あっそ。そりゃ良かったわね」
「ま、そう気を落とさない事ね。ゼロのルイズ。ただの平民三人でもきっと何かの役に立つかもしれないじゃない……もしかしたらね」
彼女は含み笑いをしながらそう言った。ルイズをバカにしているのは明確だ。
それ自体は大いに結構な事だが、「平民三人」と言う言葉がどう考えても肯定的に使われていないのがプッロは少し気に障った。
「そう言えばあなた達、お名前は?」
だがそれでも自分たちにはある程度の興味を持ってるらしい。
恐らくは珍しいものを見た、程度の関心だろうが。
「平賀才人」
「ティトゥス・プッロだ」
「……ルキウス・ウォレヌス」
「あら、そろいもそろって変な名前ねえ」
「そりゃ悪かったな。それにこっちからすりゃそっちも変な名前だらけだし」
才人がブスッっと答える。プッロも彼に同意した。
ヴァリエールだのツェルプストーだの全く耳慣れない名前なう上に、発音しにくいといったらありゃしない。
それにどう見ても自分より十歳以上下の娘にそんな事を言われるのも癪だ。
「おいお嬢ちゃん、他人の名前を聞くなら自分も言うのが礼儀って奴じゃないかね?」
「あら、ごめんなさいね。確かにその通りだわ」
ツェルプストーと呼ばれた娘は特に気分を害した様子は無かった。
だがなぜかルイズの方が難色を示した。
「平民が貴族に対してそんな口を聞くんじゃないの!なに考えてるのよ、全く!」
「キャンキャンとうるさいな、お前は。俺はこっちのお嬢ちゃんに話してるんだよ」
鬱陶しがるように言ったプッロに、ルイズは既に興奮で赤く染まった頬を更に真っ赤にさせて叫んだ。
「あ、あんたはまた主人に対してそんな口を……よりにもよってこいつの前で……!」
「私は別に構わないわ。でもルイズ、使い魔に言う事を聞かせられないのは情けないわね。もうちょっと躾をなんとかした方がいいわよ?」
ツェルプストーはクスクスと笑いながら言った。プッロが見るに、この娘はルイズをからかう事を大きな楽しみにしているらしい。
彼女の言葉にルイズは唇を噛んで睨みつけること以外は何も出来なかった。
「そうそう、ティトゥス。私はキュルケ。キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。二つ名は“微熱”よ。じゃあ授業で会いましょう、ゼロのルイズと使い魔さん達」
ツェルプストー、いやキュルケは最後にそう言うと、ウィンクをし、フレイムを連れて颯爽と去っていった。
去っていくキュルケを見ながら、プッロは何かが引っかかっていた。彼女の名前だ。
(キュルケ、キュルケ……あっ、思い出した!)
キュルケと言うのは記憶が正しければ、ウリュッセウスをたぶらかそうとした魔女の名前の筈だ。
むろん、本その物を読んだ事は無いがプッロもウリュッセウスの冒険については知っている。
(でもまさか関係がある訳は無いだろうな……ただの偶然か)
「あ〜もう、全くイライラさせるわね、あの女!使い魔にまで色目を使って!」
ルイズが地団太を踏みながら言った。
「一体誰なんだよあいつ。クラスメートかなんかか?」
「残念ながらね!ゲルマニアから留学してきた色情魔よ!」
ルイズの可愛らしい唇から飛び出してきた、思っても見ない言葉にプッロは仰天してしまった。
(ゲルマニアだと!?)
ゲルマニア。勇猛さそして野蛮さでは他に並ぶ物の無い、ゲルマニア諸部族が住む地。
プッロはガリア戦争の最中、カエサルがゲルマニアに牽制的な遠征を行った際にこの地に一度だけ足を踏み入れた事がある。
ある程度「文明化」されたガリアとは違い、そこは完全な未開地としか言いようが無く、こんな場所で暮らすんならそりゃ強くはなるだろうな、と思った物だ。
正直に言えば、あそこにはもう二度と戻りたくない。
(それが一体なんでこのガキの口から出た?ここはゲルマニアと何千マイルも離れている筈だぞ)
「おい……お前今ゲルマニアって言ったのか?」
「そうだけど?」
ルイズの言葉を確認したプッロはこの事について彼女を詰問しようとしたが、その前にウォレヌスが彼の肩を掴んだ。
「一体何を……」
ウォレヌスは答える代わりにプッロに耳打ちした。
「今は黙っていろ。この事については後で調べる」
この事はかなり気になるが、隊長がそう言うのなら仕方ない。
「なに?一体なんなのよ?気になるわね」
「こっちの話だ……ところでゼロのルイズとは何の事だ?」
ウォレヌスは話を逸らすためか、ルイズにあだ名の事について聞いた。
プッロもその事については少し疑問に思っていた。ゼロとは一度も聞いた事が無い言葉だからだ。
「ただのあだ名よ。それにもうその名前はもう私には意味が無いからあんたには無関係」
ルイズはきっぱりと言い切った。彼女の反応を見てプッロにはどうも彼女がその事について話したがっていないように見えた。
(どうやらあまり良い意味じゃないみたいだな、ゼロって言葉は)
食堂に向けて歩き出した四人だったが、先ほどの騒動で、ルイズはかなり苛立っているようだ。
その表情は重い。彼女の険悪な雰囲気を見てとったプッロは、少しやりすぎたかなと思った。
いくら生意気で傲慢だろうと、結局はただの娘。
無論、ちらを足蹴にするなら容赦する気は全くないにしても、あまりからかいすぎるのも大人気ない。
そう思った時、ルイズが足を止めた。
「……忘れてたけど、あんた達は食堂に入れないわ」
才人はルイズに即座に抗議した。
「え〜っ、なんでだよ!今更食事抜きとか言い出すのか!?」
このガキ、何を考えてんだ?とプッロは思った。食事を抜こうが意味は無いとさっき言ったばかりなのに。
「おいおい、俺はもう背中と腹がくっ付きそうなんだぞ?それに言っただろ?お前が食事抜きにしょうが関係無いって」
はーっ、とため息をついてルイズは答えた。
「違うわよ。貴族と平民が混じって食事するのが駄目だって事。次からは“何とか”するけど、今日の所は無理ね」
(チッ、面倒くせえな)
プッロは元々の性格と、ローマでは法で平民と貴族が同じ権利を保障されている事もあってあまり階級の差と言う物に気を払わない。
「偉い人」にはそれなりの敬意を払った方がいいと言う事位は理解しているし、貴族が平民よりも格式では上と言う事もなんとなくは解るが、貴族と言うだけで心の底から恐れたり敬う様な事は無い。
ましてや貴族とは言えど蛮人の子供でしかない。
だがウォレヌスはさほど気にしていないようだ。
「こっちは構わん。食堂にはお前と同じ位の子供で沢山なんだろう?こちらだけで食べる方が楽だ。だが一体どうすればいい?」
(ま、確かにこいつの様なガキどもがウジャウジャしてる場所で食うってのも疲れるな)
そう考えてプッロは納得した。
「そうね……仕方ないから厨房にでも行って何か貰ってきなさい。私の名前を出せば余り物くらいにはありつけるだろうから」
「なら最初からそっちに行かせりゃ良かっただろ」
「うるっさいわね、今思い出したんだから仕方ないでしょ。とにかく食べ終わったら二年生の教室に集まって。道が解らなければ誰かに聞きなさい」
だが才人は疑問を洩らした。
「そもそも教室に行って俺たちは何をするんだよ。お前と一緒に勉強するわけじゃないんだろ?」
そりゃそうだ、とプッロは内心で笑った。自分が勉強をするなんて冗談でしかない。
だとすれば一体なぜ教室に行かなければならないのだろう。
「当たり前でしょそんな事。教室で座ってるだけでいいのよ」
ルイズの答えに才人は更に疑問を重ねた。
「そんな事してなんになるんだよ?俺達がいる意味はあんのか?」
もっともな疑問ではある。勉強をするわけでもないのにわざわざ教室に座る理由は無いだろう。
そしてルイズもどうやらその答えを知らないようだ。
「いちいち口答えしない!他の使い魔は全部そうするのよ……それに座ってるだけでいいなんて、そんなに楽な仕事なんて他にないでしょう?」
「ま、そりゃそうだけどさ……」
確かに座るだけならこれほど簡単な仕事はないだろう。そう考えれば使い魔とやらの役目も大した事は無いのかもしれないな、とプッロは思った。
「とにかく朝食の後は二年生の教室に行けばいいんだな?じゃあさっさと行かせて貰うぞ」
そう言ってウォレヌスはルイズに背を向け歩き出した。
三人ともあの場所からの厨房への道を知らなかったのだが、幸いにも途中出合った奉公人の一人に道を聞く事が出来た。
そして彼らは厨房へと歩いていたのだが、才人はある事が気になっていた。
さっきルイズが「ゲルマニア」と言った時プッロとウォレヌスは明らかに奇妙な反応をした事だ。
才人は直接聞いた方が早いだろうと思い、プッロに話しかけた。
ウォレヌスでも良かったのだが、彼には近づきがたい雰囲気がある。少なくともプッロの方が話しかけやすい。
「あの、さっきあいつがゲルマニア、って言った時に何か言いたそうでしけど、どうかしたんですか?」
「ああ、あれか。ローマの北にそんな名前の場所があるんでな。それがあいつの口から出たんで驚いたんだよ」
どう言う意味だよそれ、と才人はいぶかしんだ。
「場所って、町の名前か何かですか?」
「いや、国、と言うか地域の名前だな。完全に未開の地でなあ、たくさんの部族が住んでるんだが、連中は人間と言うよりは動物に近い。酷い場所さ」
支援
そう言えば世界史の授業でそんな事を聞いた事があったかもしれない、と才人は思った。
(確か、ゲルマン民族の大移動がどうのって話だったなかな……でも内容は全然思いだせねえな)
学校での成績は平均でも、才人は歴史と言う物に対して興味が殆ど無い。
彼には歴史を習うと言うのが、単に年号の暗記をするだけの作業にしか思えなかったのだ。その為、テストが終わった後は覚えていた事は全部忘れてしまうのが普通になっていた。
今更考えてもどうにもならない事は承知していても、才人は今になってもっとまじめに勉強しとくんだったと後悔した。そうしていればこの人達についてももっと解ったかもしれない。
それでもなぜウォレヌスがプッロを止めたのかが解らない。
「あの、なんでウォレヌスさんはプッロさんを止めたんですか?」
プッロもこれを不思議に思っていたようで、才人に合わせた。
「ええ、教えてくださいよ。あいつがゲルマニアの事を知ってるはずなんて無いのに、気にならなかったんですか?」
ウォレヌスは事も無げに答えた。
「正直に言えばさっさと朝食を食べたかったんでな、それに明らかに機嫌が悪くなったあの小娘と話したくなかった……そもそもあのキュルケとか言う女がやってきたゲルマニアは我々が知っているゲルマニアとは多分関係がない」
「へぇ、なんでそんな事が解るんです?」
「肌の色からして違うだろう、あの女は。あれじゃゲルマニア人どころかシュリア人だ」
実際にゲルマニア人を見たプッロはこの言葉で納得した様子だったが、才人は疑問を捨て切れなかった。
偶然全く同じ名前の国が存在するなんて事があるのだろうか?しかも地球とは何の関係も無いだろう異世界に。
「でもウォレヌスさん、偶然全く同じ地名になるなんて有り得るんでしょうか?はっきり言って都合が良すぎると思うんですけど……」
ウォレヌスは顎に手を当てた。才人が言った事を考えているのだろう。
「……確かに不自然な感じがするのは否めんな。出来ればこの国の地図を見たい所だ。そうすれば地理も含めて色々と確認出来るんだが」
「そんな事するよりもあの女に直接話しを聞いた方が早いと思うんですがねえ」
そう言ったプッロをウォレヌスがジロリと睨んだ。
「ふん、もっともらしい言い訳だな。だがあの女と寝たいだけなんだろう?」
図星を疲れたのか、プッロはえっへっへっへっへ、と笑って何も言わなかった。
才人にはプッロの言いたい事はよく解った。
あのキュルケと言う女の子はとても魅力的だった。ルイズもとても可愛い(少なくとも顔は)が、色気という点では及ぶべくもない。
だが女性経験など全くない才人は、二人のストレートな発言に少し恥ずかしくなったしまった。
キスですら昨日、ルイズと契約した時にしたのが始めてだったのだから。だから才人は急いで話題を変えた。
「それにしてもかっこよかったですよ、プッロさん」
「あぁ?何の話だ?」
「ほら、あいつを言い負かしたことですよ!」
実際プッロに言い負かされ渋々自分で着替えたルイズを見てスカッとしたのは事実だ。
それを見た才人は二人に感謝したかったが、同時に少しばかり恥を感じている。
飯抜きと言われた時、自分はあっさりとルイズの要求に屈しようとしたのと比べて、この二人はいとも容易くそれを撤回させたのだ。
プッロは肩をすくめた。特に考えているわけではないようだ。
「ああ、あれか。気にするな。こっちもあのガキの吠え面が見られて楽しめたし。ま、少しやりすぎたかもしれんがな」
才人も同感だった。ルイズの自信満々の表情が次第に歪んで行ったのは、悪趣味だが確かに面白いと言わざるをえない。
だがルイズは明らかに狼狽し、困惑していた。生意気な奴だとは言え、あんな事を何回も繰り返すのは嫌だ。
(なんとかあいつにもうちょっと俺たちをマシに扱う様にさせるのは無理なのかな?)
だがそれはルイズの性格を見る限り難しそうだ。と言ってもまだここに来てから1日だ。時間はたっぷりある……
(ってちょっと待て。なんでここに長く暮らす事が前提になってるんだよ、おれ)
こんな所からは一刻も早く帰りたい筈なのに。この思念を晴らす為にも才人はもう一つ気になった事を聞く事にした。
「食料を手に入れる方法なんていくらでもある」と言うプッロの言葉だ。
この発言でルイズはへこまされたのは確かだが、才人にはその方法が解らない。
「ところで、さっきあいつに食べ物なんていくらでも手に入るって言ってましたよね?いったいどうやって手に入れるんです?」
プッロは肩をすくめた。なんだそんな事か、と言わんばかりに。
「うん?そりゃ考えればすぐに幾つか思いつくだろ。シエスタ辺りに厨房から何か持ってきてくれる様に頼むとか、厨房の連中を少し手伝ってお礼として貰うとか、それが駄目ならそうだな、盗めばいいんだよ」
「ぬ、盗む?」
「ああ。夜中に厨房とかにこっそりと入って残り物を幾つか失敬するだけさ。誰の迷惑にもならないだろ?」
最初の二つはともかく、プッロがあまりにもあっさりと窃盗を口にしたのに才人は驚いてしまった。
ウォレヌスもこれには難色を示したようだ。
「我々はケチな泥棒じゃない。そんな事が出来るか」
「可能性の一つとして挙げただけですよ。それはそれとしてもいよいよとなれば近くの森に入って、何か食えそうな物を探すって手もあるな」
「それじゃ時間がかかりすぎる上に長くは持たん。まあどちらにせよ、食料を手に入れるのにあの小娘だけに頼るなんて事はない」
才人は感嘆してしまった。
ご飯なんて待っていれば自動的に母親が作ってくれるし、ちょっと金があればインスタント食品でもなんでも買える。
そんな認識の自分と比べて、この二人は自分よりずっと生活力がある。これは単に彼らが大人だから、兵隊だからとかじゃない。
かれらは何か自分とは根本から違う部分がある。才人はそう直感した。だがはたしてそれを恥じるべきかどうなのか、才人には判断が出来なかった。
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以上です。次回の終わりか、次々回に決闘が起こる予定です。
毎回書いている事ですが、遅れてしまって申し訳ありません。
展開がとにかくスローですが、前回いただいたコメントの通りこのままのペースでやろうと思います。
ただ次回はもうあらかた書き終わってるので、長くかかっても一週間ちょっとで終わる筈です。
鷲の人、乙。
展開が遅いうんぬんは、そんなに気にする必要も無いと思いますよ。
投下乙です
二人に影響されてか才人がハルケギニアや契約について深く考えてるのが面白いなと思った
(偶然全く同じ地名になるなんて有り得るのか、なんでここに長く暮らす事が前提になってるんだとかね)
鷲の人、お疲れ様
ローマ人から見たハルケギニアかぁ、世界史を久々に思い出すな
年号と単語ばっかでぜんっぜん面白くなかったのはホントだw
乙でした
昨今の一般学生の世界史認識はこんなもんか…
「血肉を持つ者、光の下に生きし者、呪うなるかな生なる力を、捧げるなり虚無の闇へ……」
闇に沈んだ部屋に声が響く。
静かな夜であった。月は雲に遮られ、月光は地上に届いていない。吹く風は生温く、過分に水分を含んでいる。
森の獣は息を潜め、草原からは虫の音が微かに響いてくる。時折、強い風が吹くが、月を覆い隠す厚い雲を吹き飛ばすには至らない。
殆どの部屋の明かりは消え、学院内は静まり返っている。しかし、全くの静寂というわけではなく、ぽつぽつと明かりが漏れている部屋も存在していた。
そして、ルイズの部屋も、その少数派の中の一つであった。
閉ざされたカーテンから僅かに漏れ出でるのは、柔らかい橙の光。その光源は、窓際に置かれている勉強机の上に存在していた。
頼りないランプの明かりが勉強机を闇に浮かび上がらせている。
その机に陣取っているのは、ジュディであった。
机上には、魔道書とノートが広げらている。
「何なの、この術? 『スポイル』っていう術みたいだけど、すごく嫌な感じがする」
解読してた『常闇の魔道板』から顔を挙げ、ジュディは眉根を顰める。
そして、魔道板を机の上に置くと、膝を抱きかかえるようにして椅子の背にもたれた。その体勢のまま前後に体を揺すり、椅子を軋ませながら考え込む。
ジュディは、オスマンから魔道板を受け取って以来、少しづつ読み解いていっていた。
魔道板を読み解く基本は、心で捉える事だ。それが基本であり、極意でもある。
もちろん、記されている魔道文字は、文字としての機能も持ち合わせている。だが、魔道文字とはそれ自体が魔道の産物であり、記し手の移し身だ。
魔道板を読み解くという行為は、記し手を知るという事であり。そして、記し手を知るという事は、自らの気の流れを変える事に繋がる。
そうする事によって、初めて術を習得する事が出来るのだ。
「オジイチャンから貰った魔道板にも、同じような術がのってたっけ? あれと同じような術かなぁ?
五行の術じゃないみたいだけど……」
術を使うのには、気の流れを制御するための発動体が必要になる。
例えば、火行術を使うのには、火行の気を操る杖や腕輪が必要であり、火行の発動体では他の術を行使する事は出来ない。
基本的に発動体は、獣石と呼ばれる石で造られている。獣石そのもので造られている物から、獣石を埋め込まれている物まで幅広く、形に決まりはない。
一般的な形は杖や腕輪であるが、それ以外の形状が珍しいというわけでもない。
だが、マイノリティなのは否めないだろう。誰だって、わざわざ使いにくい物を選んだりはしない。
「でも、どうやって使うんだろう?」
ジュディは小首を傾げて考え込む。
いかに異質な術であろうと、その気の流れ制御する発動体がなければ術を使う事は出来ない。そして、そんなモノが存在するなど、ジュディは聞いた事がなかった。
しかし、ジュディは自分たちが使う『術』とは違う『魔法』が存在する事を知っている。だが、この術は異質な気を有してはいるものの、ハルケギニアの『魔法』ではない。
そして、この魔道板には異質な術だけではなく、五行の術も記されていた。それは、ハルケギニアの魔法使いが記した物ではない事を示している。
それを読み解く過程で、ジュディは祖父から渡された魔道板からも、同質の気が感じられる事に気が付いた。
それは微かなモノであったが、件の魔道板や例のガントレットから感じられたモノと同じであった。
異邦の地で見つけた物と、祖父から与えられた魔道板。それらから同じ気を感じることが出来るのは、それらがハルケギニアの外からもたらされたという事実を示唆していた。
「オスマンさんが言ってた怪物って、もしかしたらこの魔道板に引き寄せられたのかなぁ?」
ふと思いつき、呟く。陰陽の気が入り混じり、五行の範疇におさまらない術が記されたこの不気味な魔道板なら、あり得るように思えた。
改めて魔道板を手に取ると、再び解読を始める。
刻まれた文字をなぞりながら、ジュディの胸中には、言いようのない不安が渦を巻いていた。
『これはいったい何? 私の知らない秘密が魔道の世界には隠されているみたい』
心の内にあるのは、謎を解き明かし先へ進もうとする欲求と、踏み止まろうとする理性。そして何よりも、未知への恐れが存在していた。
まだ未熟なジュディであるが、魔道士としての心得は、祖父から、そして母から教えられている。
未知を探究し、世界の理を紐解く。それが魔道士の在り方だ。
しかし、人が全てを知り尽くす事など、到底出来はしないという事も同時に教えられていた。故に、魔道士はどこかで線引きをして、踏み止まることも必要なのだと。
ジュディは悩む。魔道の世界には、五行法則の範疇を超えた何かが存在していると、気が付いてしまった。
気付いたからには、知りたいと思ってしまうのが人のサガだろう。その欲望を抑えるには、ジュディはまだ幼く経験も足らなかった。
「ジュディ? まだ起きてるの?」
後ろからジュディを呼ぶ声が聞こえる。ルイズの声だ。
ルイズは、ベッドから上体を起こしている。
ランプの明かりは、そこまで十分に届いてはおらず、どんな表情をしているかは分からない。かろうじて、体の輪郭が分かる程度だ。
「早く寝ないと、起きられないわよ?」
「はーい。ごめんなさい」
言い含めるような口調のルイズに、ジュディは素直に従う。
手に持っていた魔道板を魔道書を重ねてノートの上に置くと、羽織っていたカーディガンを脱ぎ、椅子の背もたれに引っかける。
そして、椅子を机に押し込むと、ランプの明かりを消した。
完全な闇が訪れる。
「毎晩、頑張ってるみたいだけど、程々にしなきゃ体を壊すわよ?」
「うん。おやすみなさい」
「ええ、お休みなさい」
暫くの間、闇に沈んだ部屋には2人の話し声が聞こえていたが、やがて規則正しい寝息が1つ、2つと生まれ、闇は静寂が包まれた。
いつの間にか厚い雲は晴れ、2つの月が弱々しい光で地上を照らす。それは、静かな夜であった。
未来の大魔女候補2人 〜Judy & Louise〜
第10話 『王女と髭と魔女2人』
朝露に濡れた森の中に、粗末な小屋が存在していた。その小屋は、人の手で造られた物ではなく、ただ丸太を積み重ねただけの物であった。
地面には、柔らかい藁が敷かれ、その端の方には、水の張られた飼い葉桶が置かれている。そして、その小屋には、巨体を持つ何かが横たわっていた。
幾重にも木の枝を重ねて拵えられた天蓋の隙間から、眩しい朝日が降り注ぐ。
朝日は、巨大な何かにも平等に降り注ぎ、その姿を照らしている。
朝日に照らされるその姿は、蒼穹の鱗を持ち、鋭い牙と爪を持つ巨大な竜であった。巨大とはいっても、同族からしてみれば小柄なほうであり、まだ幼生であった。
その竜が、体に鼻先を埋め、丸くなって寝ているのだった。
薄っすらと朝靄がかかる森に、朝が来たと告げるように小鳥たちが囀る声が聞こえてくる。
竜の寝ている小屋の上にも、小鳥はとまり、囀っている。それに反応するかのように、竜はその巨体を身じろぎをし、痙攣するかのように目蓋が震えた。
「ふぁああぁーああぁ……」
竜は大口を開けて欠伸をする。開かれた口は、子供ならば丸呑み出来てしまう程に大きく、鋭く尖った牙が生え揃っていた。
竜は欠伸をしたままの恰好で動きを止める。五体を投げ出し、大きく口を広げるその格好はだらしがない。
そのままの体勢で少し待っていると、小屋の屋根にとまっていた小鳥たちが近寄って来た。
小鳥たちは鋭い牙の上にとまり、歯の隙間に挟まった食べかすをついばみ始めた。
小鳥たちは竜の餌になるという恐怖は感じておらず、竜もまた小鳥たちを餌とはみなしていない。
それは、お互いの利益がかみ合っているからだ。竜は歯の掃除をして貰い、小鳥は餌にありつける。見事な共生関係であった。
やがて歯の掃除が終わると、小鳥たちは飛び去って行く。
それを見送ると、竜は再び大きな欠伸をした。次いで、大きく伸びをして凝り固まった体を解きほぐす。
竜は飼い葉桶の水を一口飲んでから、小屋から顔を出した。陽光が直接降り注ぎ、目を細める。
「太陽さん、おはようなのね……」
竜はのんびりとした口調で、太陽を見詰めながらそう呟いた。
通常、竜が喋ることはない。
人外の者が喋れる様になるには、メイジの使い魔になる事がまず初めに挙げられる。
この森が、トリステイン魔法学院の隣にある事を鑑みれば、竜は使い魔なのかもしれない。
だが、使い魔の契約で喋れる様に成れるのは、犬や猫に代表される長い間人の傍にいた種族だけである。
竜などという、人の身近にいなかった種族が使い魔になって喋れる様になる可能性など、微塵もない。
だが、人語を操るという竜が存在しなかったわけではない。
とうの昔に絶滅したと言われる韻竜は、人語を自在に操り、人と意思の疎通が可能だったという。
以上の事から、この竜は韻竜であり、それは間違いではない。
これで、韻竜は絶滅したという通説は覆されたわけである。しかし、その数が少ないのは事実であり、彼女も同族を見た事は、親を除いてはない。
彼女、つまりこの竜の事だが、の名前はシルフィード。
シルフィードとは、風の妖精の名前であり、彼女の本当の名前は別にある。だがしかし、彼女はこの名前を気に入っていた。
何故ならば、それは大好きなご主人様に付けてもらったものだからだ。
シルフィードが脳裏に思い浮かべるのは、蒼髪で年の割には小柄な体格の少女。暇さえあれば本を読み、何が起こっても感情を露わにすることはない少女。
無愛想で無口な少女だが、本当は優しい人間だという事を、シルフィードは本能で悟っていた。
召喚の門を潜り抜け、初めて会った瞬間からシルフィードは少女の事を気に入ってしまった。一目惚れと言っても良いだろう。
シルフィードの方が遥かに長い年月を生きているが、まるで姉が出来た様な気持ちになり、使い魔になって以降、姉と呼び慕っているのであった。
陽光に巨体を晒して、温まるのをじっと待つ。やがて、霞がかかったように朦朧としていた意識が覚醒していく。
目が覚めていく心地よい感覚に身を任せているシルフィードであったが、突如ある事に気が付き、慌ただしく周りを見渡した。
左右に首を振り、前と後ろを挙動不審気味に振り返る。そうして、周りに人がいないことを確認出来ると、安堵の溜息を吐き出した。
「ふぅ…… 焦ったのね。ついうっかり喋っちゃったのね。
あっ! また喋っちゃったのね! お口にチャックなのね」
シルフィードは、主人であるタバサによって人前で喋ることを禁じられていた。それは、無用な軋轢を生みださないための処置であり、面倒だったからではない。
喋っていいのは、上空3000メイル以上の場所だけと決められていた。
あたふたと慌てるシルフィードの耳が、ガサガサと木の枝が揺さぶられる音を捉える。慌てて見上げると、太い木の枝に赤い鱗の竜がとまっていた。
赤い竜は、シルフィードよりも小さく、1メイル半ほどしかない。
「オハヨウ、シルフィード」
「きゅい。おはようなのね、イアぺトス。
あっ! また喋っちゃったのね。早く空に行くのね」
挨拶をされて、つい人語を喋ってしまったシルフィードは、一目散に大空へ飛びあがった。それに一拍遅れて、イアぺトスが後に続く。
シルフィードは、イアぺトスの飛び上れる限界高度まで上昇すると、目を三角にして説教を始めた。
「きゅい! オマエ、何時になったら分かるのね!? 地上じゃ喋っちゃダメなのね!」
「ダイジョウブだよ。周りには誰もいなかったし、聞かれてないよ」
「そういう問題じゃないのね! こういうのは、普段からの心がけなのね。うっかり人前で喋って、解剖されても知らないのね!」
「そんな細かいこと気にするなんて、若さが足りないよ」
シルフィードが説教をしてイアぺトスが軽く受け流す。既に日課となったやり取りだ。
「きゅい!? もう怒ったのね。そこに居直るがいいのね!」
「アハハ シルフィが怒ったー」
蒼と赤の軌跡が絡み合いながら、大空を縦横無尽に翔ける。
2匹はお互いの周りを飛び回り、じゃれ合う。ぶつかり合う事なく位置を入れ替え、踊るかのように飛び回る。
無論、シルフィードは本気で怒っているわけではなく、スキンシップの一環だ。
暫く2匹は、大空での追いかけっこを楽しむ。
ふと、イアぺトスの動きが止まる。何かを見つけたらしく、地上を見下ろしている。
「あっ! サイト君だ。ここんとこ、毎朝走ってるよね?」
その呟きを聞いて視線を追うと、大剣を背負った黒髪の少年が学院の内周を走っている姿をシルフィードはその大きな双眸で捉えた。
サイトは両手に水桶を抱え、水を零さないように腰を落として走っている。
支援
「今の光は……?」
爆発の物とは違う突然の輝きに思わず閉じた目を開いて見えた風景は、コックピットではなく抜けるような青空。
少し体を起こし辺りを見渡すと、ファルガイアではめったに見られないほどに緑豊かな平原や森や山々、そして古めかしい建物。
それと杖を持った少年少女。大人の姿も見えるがその姿はみな少し風変わりだ。
統一感のある服装は何かしらの制服を思い起こさせるが、それと同時にどことなくスペルキャスターのクラスも彷彿とさせる。
「あんた誰?」
問いかける声がする。彼らの中でも一番俺の近くにいる、ピンクがかったブロンドの少女からのようだ。整った風貌と少しだけきつく吊り上った瞳。年はクラリッサと同じくらいか、少し下か。
「俺は、フィアース。フィアース・アウィル」
「ふぅん、平民にしては気の利いた名前じゃない」
「ここはどこだ?俺はどうして生きている?」
俺はロンバルディアの爆発に巻き込まれたはずだ。奇跡的に死ななかったにしても、無傷というのはおかしい。
ふと見ると、目の前の少女が俺の言葉にイライラしているのが見て取れる。
「ルイズ!『サモン・サーヴァント』で平民を呼び出してどうするんだ!」
誰かの声とともに、笑いが巻き起こる。
「ちょ、ちょっと間違えただけよ!」
「間違えたってなんだよ!流石はゼロのルイズだ!」
少女の慌てた反論にも、すぐに反論が飛んでくる。と同時に周囲の人々の笑いが爆笑に変わる。
「ミスタ・コルベール!」
少女―――先ほどの野次からすると、ルイズ、というのが彼女の名か?―――が声をかけると、人ごみの中から少し年を取った男性が進み出てきた。
大きな木の杖、長めの黒いローブ。こちらは宮廷魔術師のような格好だ。
「なんだね?ミス・ヴァリエール」
「あの!もう一度召喚をさせてください!」
召喚、ということは、俺はこの少女に召喚されたのか。
あの爆発の瞬間に辺りが輝いたのは、この少女の魔法の影響だったということだろうか。
思考に沈む俺を余所に、二人の会話は続いていく。
「それはダメだ、ミス・ヴァリエール」
「どうしてですか!」
「それが決まりであり、伝統だからだ。召喚の儀で呼び出された『使い魔』によって属性を固定し、専門課程へと進む。これは神聖な儀式であり、例外は認められない」
ふと辺りを見回してみると、少年少女は火トカゲやらカエルやらといった、なるほど使い魔という言葉にふさわしい生物とともにいるのが見て取れる。
「でも!平民を使い魔にするなんて聞いたことがありません!」
その言葉に、またも周囲で笑いが起こる。
「ミス・ヴァリエール、もう一度いいます。例外は認められない、やり直しは無しです」
強い口調に、少女は肩を落とす。
「ですが」
だが、彼の話はまだ終わっていないようだった。
「確かに前例のない事態ではあります。どうやら意思疎通には問題が無いようですし、一度彼と話し合うのもいいでしょう。この後の授業は免除と
しますが、コントラクト・サーヴァントが成功したら私のところまで来るように」
「……はい」
不満そうな声ではあったが、少女は承諾の返事を返す。
「それでは、皆さんは教室に戻りましょう。ミス・ヴァリエールは、この後は自由行動とします」
その声で周囲の人だかりが動き始める。中には嘲笑や悪口を隠さない輩もいたが。
浮き上がり、空を飛んで建物へと戻っていく集団には驚いた。これがここの魔法の一端か。暴走後のカティナも宙に浮いた状態でいたが、人が浮
くのを見ることなどめったにない。
それを、悔しさを堪えながら唇を噛んだままうつむいてやり過ごす少女。
その姿に、あの瞬間の必死な声が思い出される。
間違いない、やはり俺は彼女によってこの世界に召喚されたようだ。
「あぁもう!なんであんたみたいな平民が呼び出されるのよ!?」
周囲の目も無くなり、苛立ちが限界に達したか。こらえきれなくなった様子で声を荒げる。
「まぁ仕方ないわ。先生もああ言ってることだし。付いてきなさい。部屋に戻るわ」
そういうと、少女は背を向けて勝手に歩き出した。
手元には愛用のポールアームは見当たらない、もちろんロンバルディアも無い。
あの瞬間、俺は身一つで呼び寄せられたらしい。装備していたガントレットといくつかのアイテムはちゃんと付いてきていたが。
見知らぬ世界で武器もなく一人きりというこの状況は正直心もとない。俺はおとなしく彼女の後について行くことにした。
「そうだな、ではどこか証明のできる場所へ移動したいのだが」
「何で?」
「クラスチェンジでは外見は変わらない。能力の変化を見せるには実演して見せるのが一番だろうが、エレメントを室内で使うのはよくないだろう」
「なるほどね。わかったわ、ついてきなさい」
そういうと、ルイズは部屋を出る。
「とりあえず、その魔法を見せてみなさい。見た感じは平民のあなたが魔法を使えれば信じてあげるわ。武器なんかは使い慣れてそうだから判断できないし」
そう言いながら、歩いてきたのは最初に俺が召喚された、召喚の儀式を行っていた平原だ。
「ここならいいでしょう」
「あぁ。では……アクセス!」
ARMを握り締め、スペルキャスターのクラスを展開する。瞬間、周囲から光が集まり俺の体を覆う。見慣れたクラスチェンジの瞬間だ。
「何!?急に光が」
「これがクラスチェンジ、スペルキャスターのクラスを展開したところだ」
「ふ、ふぅん、本当に外見は変わらないのね。で、魔法は?」
「ではあの石に。ファイア!」
術式を展開。と同時に、小石を中心として炎が勢いよく燃え上がる。
「ほ、他にも使えるの?」
「では、フリーズ!」
今度は氷柱が立ち上がる。
「他にも土属性のクラッシュ、風属性のヴォルテックがあるが」
「わかった、わかったわ。なによそれ、杖も無しに、しかも四属性全て使えるなんて反則じゃない!」
憤慨している様子のルイズに、どうしたものかと考える。
「だが多様性は無い。今見せた通り、攻撃にしか使えない術式だからな」
納得はしてないだろうが、効果は実証して見せた。これでARMのことは信じてもらえるだろう。
「ね。もしかしてそのARMを使えば、誰でもそんなことができるの?」
「個人の脳波への調整が必要だから、これ自体を誰か別の人が使うことはできない。だがファルガイアではARMを購入さえすれば誰でも使用は可能だ。
あとはクラスさえシェアリングしていれば……もっとも、今のスペルキャスターは基本クラスだから、ARMに初期状態で登録されてあるのだが」
その説明に、なぜか落胆の色を隠せないルイズ。
「……?どうかしたのか?」
「な、何でも無いわよ。とりあえずそのARMの能力と、あなたが別の世界から来たって話、信じてあげるとするわ」
あからさまに何かを隠しているのが分かる。が、詮索するのもよくないだろう。人には言えないことだってある。
「あと、その魔法は他の人には見せないようにしなさい」
「何故だ?」
「杖も使わずに魔法を使うなんて、メイジには不可能だからよ。魔物とか、ヘタをすればエルフと間違えられたり、そうじゃなくてもアカデミーでモルモットにされかねないわよ」
それは流石に困るな。
「わかった、気をつける」
「じゃ、とりあえずわたしの部屋へ戻るわよ」
うぉいw 予告なしかよw
前スレからの転載っぽいが何をしたいのか分からない
NG推奨
HZWbPE1A
鷲の人乙です。
遅くても面白いので問題ナシ。
次回に超wktk。
>>88 作者がやったかのように見せたいんじゃね?
レコンキスタ株大暴落の新聞を見たワルドが自己破産
「まさかアルビオンを占領して財政破綻させるとは・・・」
そう語るのはトリステインの髭面貴公子 ジャン・ジャック・ワルド(35歳)だ、今年の初頭、突如として立ち上げられたレコンキスタの債権を買い
数ヵ月後にはアルビオンを占領しまさに鰻上りのレコンキスタであったが
単なる政権交代であり改革など微塵も行われないどころか戦費負担を
平民に押し付け、近隣諸国の投資家から信頼を失った挙句に債権は紙くずになった。
現在ワルド氏は婚約者であるヴァリエール家の三女・ルイズと交際を続けているが、烈風氏からの強い風当たりに婚約を白紙に戻した。
「魔法衛士隊の皆から借りた金の返済期限が迫っているんだ」
そう話すワルドは国から貸与されたグリフォンをレンタルに出し
毎月利子に当てている
このような一攫千金を狙って多額の借金を背負ったメイジの自己破産が相次ぎ、
トリステインに限らず周辺国でも野良メイジの増加が大きな社会問題となっている。
というネタ
野良メイジwwww
ワルドwwww
妙に生々しいと言うか、何と言うかwww
W=faceからイデタツとレフィオ召喚
ワルキューレの攻撃を顔で防ぐイデタツとライトニングクラウドを喰うレフィオを幻視したw
さてさて、ようやく載せられる分が書き終わりました。
投下予定もないみたいなので、21時10分から投下したいと思います。
支援ぬ
支援
しえn
お前ら落ちつけ始まる前から支援しても意味ねぇって
それは正四角形を保ちながら、内部に正三角形を隙間なく詰め込んだ図形だっ
た。
その正三角形の中には正二角形がこれもまた隙間なく詰め込まれ。
その正二角形の中には正五角形が詰め込まれていた。
図形は、捻じ曲がった直角の石柱に施され。石柱は隙間からぬらぬらと濃い緑
色の粘液を出して、表面を真っ赤に染め上げる。
石柱はとてつもなく大きかった。石柱の一節が小さい城程度の大きさとなって
いる。さらに人間が感じる物理法則という概念からすると、それはとても考え
られない長さである。その長さと大きさ“だけ”見るならばユークリッド幾何
学の概念から理論上では存在できる物体であろう。だが、それが存在すること
自体がこの世界への冒涜とも言える。
事実、天へと伸びるその柱は何度も折れ曲がり曲がりくねり波打ち枝分かれし
ながらも、虚空を突き破らんと一直線に伸び。その一節一節は分子一個分すら
も通らないほど精密に組み合わされ、その境目から湯水のように粘液が滴って
いく。
矛盾→矛盾/曲がった直線/円状の正三角形/真っ赤な緑色粘液
それは在るだけで人の精神を蹂躙するような“神聖なる邪気”を放ち、世界を
侵す冒す犯す。
なぜこんな石柱があるのだろうか? こんな物が早々あるのだろうか? これ
は人の作り出せるものなのだろうか? いや、そもそもこれは人にとって理解
できるものなのだろうか?
広がる拡がる疑問苦悶煩悶。
そして気がついた。石柱に亀裂があることに。
その亀裂は真っ赤な粘液を垂れ流し、真っ赤な緑色粘液を真っ赤に染め直し。
グバリと 亀裂
から その 目
が 開い た
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
●●●●●●●●●<◎>●●●●●●●●●
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
「あ、あ、あ……あ――」
その時は“私”は思わず声を上げた。
壊れる……乞われる……恋われる……。
その眸に、その視線に、その眼球に。
精神を、魂を、心を、肉体を、髪も/肉も/血も/爪も/唇も/皮も/ありと
あらゆる物ものモノ全てがその視線に壊れされる。
バラバラになり魂の欠片まで磨り潰されそうになる瞬間。
私の前に――
清らかな光を放つ、五芒星形が、描かれた。
そうして“私”の意識は急速に浮上した。
遠く小鳥の囀りが聞こえ、朝の冷たい空気が肺腑に行き渡る。
閉じた目蓋から穏やかな日光が透ける。完全には覚醒していない意識が、ここ
が現実だと語ってくれる。
安堵しまた眠りの淵へと落ちそうな私を、優しい揺れが襲った。
誰だろうと思うも。
ゆさゆさとひたひたと体が揺すられる。
他人の感触。それでルイズは昨日使い魔を召喚したんだと思い出した。昨日の
寝る前の出来事が薄ぼんやりと再生される。
揺すられる体に加え、ぬたぬたぺたぺたと頬を優しく叩かれる。
頼んでないのに、自発的に主人を起こす。あの生意気な使い魔に少しは自覚が
芽生えたのか。
そう少し感心するルイズは。
「てけり・り」
(そうそう、こんな声……で?)
なにか、重大な間違いが各所にある気がした。
なぜ、体が揺すられるたびに近くから粘着質な音がするのか。なぜ、頬を優し
く叩かれるたびに湿っぽいゼリーのような感触がするのか。というか、あいつ
はあんな声だったか。
(ひたひた? ぬたぬた? ぺたぺた?)
得体も知れない恐怖。
暖かい布団の中、這いずるように背中を進んでいく悪寒。
本能は叫んでいる。それは決して見てはならないと。
予感は戦いている。それは目で触れてはならないと。
警告は響いている。それは理解してはならないと。
だが人類が人間であるがゆえに理性を、霊長の頂点とおこがましく思う知性を
持ち。賢く、聡明で……ゆえに愚かな理性は、その本能の警告を捻じ伏せる。
好奇心という名の蛮勇と無知を武器に、理性と知性と言う欲望と愚かさを指針
に人類は発展と愚進を続けてきたのだ。
だが覚悟せよ人間。深淵を覗き込む時、その深淵もこちらを見つめている。
そしてその例に乗り、ルイズが覚悟を決めてゆっくりと目を開けると。
目の前に。
半透明な。
不定形生命体の。
目玉があった。
「……」
その姿はまさにスライム。なぜかぐっすりと眠るアルを背(?)に乗せ。そこ
から触手を伸ばし、ルイズの体を揺すり、頬を優しく叩いている。
顔の前に伸ばされた眼球と目が合った。
「てけり・り」
容姿の割には可愛らしい声を上げた。
「――」
それに対して、ルイズは胸いっぱいに息を吸い。
「――いやああああぁぁぁぁああああっ!!」
朝一番に悲鳴を女寮中に響かせた。
キュルケの朝は意外と早い。
見た目と性格からずぼらと思われがちであるが、その実ルイズが起きる前から
起きている。
確かにキュルケはあまり朝に強いわけではないが、だからといってそれで朝の
貴重な時間を浪費することをよしとしない。
彼女は情熱と恋に彩られる女。だから朝のわずかな時間すらも消費することを
惜しむ。
まあ、簡単に言えば朝の化粧なのだが。
それに先ほど述べたように、キュルケはあまり朝に強いほうではない。本来な
ら時間ぎりぎりまで寝ていたいほどであるが、化粧にはなにかと時間がかかる。
どうせいつ起きても眠いのなら、早めに起きて身だしなみを整えた方がいい。
それがキュルケの出した結論である。もちろん虚無の曜日などといった休日は
除くが。
そういうことで、眠気眼で起きたキュルケは、袖で目元を擦りながら小さくあ
くびをした。
その身を包むのはクマ柄の入った可愛いパジャマ。
普段の彼女は薄いネグリジェやレースのベビードールといった色気のあるもの
を着て、幾人も男を時間差で部屋に招きいれ篭絡しているのだが。
昨日は使い魔の召喚の儀式があり、想像していた以上にキュルケも他の生徒も
疲れていた。そして熱しやすく冷めやすい……つまりは興が乗らなかったキュ
ルケは、その日は全ての男の誘いを蹴って、早々に眠りについたのである。
そこで話は戻るのだが、キュルケは実のところ意外と乙女チックである。普段
から情熱や色気を前面に出し、自身のスタイルや周囲の評価を熟知している彼
女はそれを晒すことを恥と思っていることもあり。だからだろうか。誰も招か
ずに1人で眠る夜など、ときおりこのクマ柄のパジャマを着ることがある。
このことを知るのは、母国にいる母か――
「キュルキュル」
今、自分をうかがうこのサラマンダーぐらいなものだろう。
キュルケは頬を緩め自らがフレイムと名づけたサラマンダーの頭を撫でると、
フレイムは目を細めてじゃれ付く。
「ん〜っ!」
ぐぐっと背を伸ばす。胸元にあるクマが必要以上に前にせり出した。
ようやく頭がはっきりしてくる。肺の空気を入れ替えながら立ち上がると、パ
ジャマへと手をかけた。
着替えを背に乗せて持ってきてくれるフレイムに微笑みながら、その意識は別
の場所へと移される。
昨日の儀式を思い出す。そう、深く印象に残っているのはこのフレイムとタバ
サの風竜。そして――ルイズのゴーレム。
轟音と共に黒雲を呼び寄せ、魔方陣から降り立った傷だらけのゴーレム。
周囲の評価は冷ややかで残酷なものが多かったが、キュルケはそんなものに惑
わされはしない。
たとえ傷だらけだとしても跪いて30メイル、立ったなら50メイルに届くと思わ
れる巨大なゴーレムを呼ぶなど普通に出来ることではない。
ルイズ――この学園の嘲笑の対象にして、ツェルプストー家因縁の家系の子。
幾十幾百年争いあった呪いともいえる争いの血筋。
だが、キュルケには関係なかった。因縁の家系、嘲笑の対象、争う血筋、そん
なものはなんら意味を持たない言葉。
ルイズがここでは落ちこぼれと言われ蔑まれ、自分の足元にも及ばぬ実力だと
して。キュルケはルイズを一度も見下したことはない。彼女にとって、ルイズ
とは数少ない対等の相手なのだから。
そういえば昨日は結局ルイズが契約のためにゴーレムの顔まで上った後、なぜ
か慌てたコルベールが急遽生徒を先に学院に帰るように促していたが。ルイズ
になにかあったのだろうか? もしなにかあれば、“いつもの方法”で発破を
かけなければならない。でなければひどく、つまらない。
脳内で、からかわれ憤慨しまくし立てるルイズの姿を想像して、思わず不適な
笑いが浮かぶ。
そう、キュルケにとって、相手を対等として認める条件。それは――
『――いやああああぁぁぁぁああああっ!!』
突然壁越しに大音量の悲鳴が響いた。
思わずキュルケは手を止めるが。
「……まあいいでしょ」
朝からあんなに元気なら、少々やりすぎてもかまわないだろう。
取りとめもなくそう考え、着替えを再開する。
無論キュルケの中には、そもそもからかわないという選択肢は端から存在しな
かった。
世界にはびこる邪悪は日々静かにそして確実に、日常の裏側で進行している。
邪悪は時として、表舞台から迷い込んできた罪無き人を容赦なく引きずり込み
冒していく。
そう今も、現在進行形で……。
「……五月蝿いぞ」
アルは朝から大声を聞かされ、不満気に起きだした。
「ふあぁっ……んんっ!」
まだ眠気の残る眼を擦ると猫のように伸びをし、ルイズの様子に気がついた。
「汝、なにをしている?」
ベッドの端。最もアルから遠い場所で、後ずさった格好でガタガタ震えながら
ルイズは叫んだ。
「な、ななななななんなのよそれはっ!?」
若干細かく震えているが、指差された先には。
「てけり・り」
アルを乗せ、プルプルと可愛らしく(個人によって感性差あり)震える生命体
Xが1匹。
正二角形てなんだ?
支援
だーれす支援
元ネタ知らないけど鳴き声可愛いなぁ支援
「ああ、こいつか」
言葉の意味を理解したアルはこう答えた。
「こやつの名はダンセイニだ」
「だ、ダンセイニ?」
随分と立派な名前だった。それがなぜか気に入らない。
「ダンセイニ挨拶をしてやれ」
「てけり・り」
人類的な恐怖――ダンセイニから触手が伸びて、指差していた手を握られる。
そのままシェイクハンド。
貴族の挨拶ではないが、礼節はあるらしい。
ひんやりとした少し水っぽい粘着感が堪らなく嫌だった。
「――って! なんの回答にもなってないわよ!」
アルはさもなにが不満なのかという顔をして。
「なにが不満なのだ?」
「字面のまま言うんじゃないわよ! そうじゃなくて不満もなにも、なんでそ
んなものがいるの!」
ダンセイニの上でアルは腕を組む。
「なんでもなにも、童が喚(よ)んだからだ」
「あなたが……喚んだ?」
「うむ」
喚んだってことは、召喚? メイジでもない者が召喚? しかも使い魔が?
いやあれは意志があり魔力を持つ齢1000年にいくインテリジェンスブックなの
だ。召喚ぐらいしておかしくない……決してわたしがこんな簡単に魔法を使え
るから悔しいわけじゃない……うん。
半場ぼーぜんとするルイズ
「ショゴスという元々は『古きもの』の奴隷だった種族でな。それにこやつは、
前にいた場所でも世話になった童の友人でもあるのだ」
あー、今日の朝食はなにかしら。
どこか思考が上の空となったルイズに、アルはこう続けた。
「それで昨晩、汝が言った雑用はこやつに全てまかせることとした」
「てけり・り」
ふんと胸を張る人外たち……て。
「ちょーっと待ったぁぁぁっ!!」
「さっきからなんだ汝は」
不愉快そうにアルは顔を歪めるが、こっちはそうは言ってられない。
「なんでこいつがわたしの世話をするのよ!」
再三ダンセイニを指差す。
「だから、なにが不満なのだ」
「わ、わたしの身の回りの世話は、あんたがするもんじゃない!」
それにアルはさもめんどくさそうな顔をして。
「なぜ童がせねばならぬ。雑用なら誰がやっても同じだ。それにこやつは元が
奴隷種族だけあって意外と奉仕は得意なほうだ」
「てけり・り」
任せろといわんばかりに波打つ体。
「止めてそれ……夢にでそう……」
その悪夢の権現たるゼリーを見てルイズは。
「もう……それでいい」
なし崩し的にその存在を認めた。
「はじめからそう言えばいいのだ」
さっきから偉そうな古本娘はこのさい置いておくとして。ここでふと朝食の時
間が迫っていることに気がついた。そろそろ着替えなければ間に合わない。
「あ、着が……」
ルイズは着替えさせようとアルに顔を向け。
「てけり・り」
うじゅるうじゅると触手をうごめかす狂気の産物と目が合った。
「き、きききき着替えは自分でしようかしらっ!」
そうしてルイズは1人ベッドの端でモソモソと着替えだした。
>>106 クトゥルーだしデモンベインだしそんなもんだと思っておけば
支援
「さて、急がなくちゃ」
アルと連れ立って部屋を出る。部屋でうねっていた不可思議生命体はできるだ
け視界に入れないようにして……。
なんか触手をいってらっしゃいみたいに振っているけど気のせいだろう……う
ん、全力で気のせいにした。
必死に狂気に抗ったルイズが、日常の香りに安堵していると。まるで計ったか
のように隣の扉が開け放たれる。そしてその扉から1人の女の子が出てきた。
燃えるように赤く波打つ髪、豊満な胸をはち切れそうなシャツが辛うじて留め、
高い身長はそれに似合う肉付きを現し、褐色の肌と相成って体全体から発する
色気。いろんな意味でルイズとは正反対である彼女――キュルケはルイズを見
ると、まるで大好物を目の前にした猫のような目を細めた。
「おはようルイズ」
彼女たちは因縁の家柄。普段であれば、キュルケにファーストネームを呼ばれ
たらいくらか反論をするルイズだが。
「……おはようキュルケ」
ルイズはぐったりとそれに応えた。
「あら?」
手ごたえの無さに拍子抜けするキュルケは、ルイズの後ろにいるアルに気が付
いた。
「ルイズ、後ろの子は?」
「……使い魔」
「――え?」
それにルイズは投げやり気味に応える。
「だって昨日、あなたが呼んだのはあのゴーレムじゃない」
なにかの間違いじゃ? と言う風に窓の外を指差すと。そこには平原の真ん中
に跪き佇む巨体があった。
ルイズもつられる様に外を見ると、少し苦い顔をして。
「……うるさいわね、ちょっとした手違いがあったのよ」
キュルケはその言葉にアルをジーと観察するように見つめ。
「アル・アジフだ。苦しゅうない、楽にせよ人間」
無い胸を張るアル。
「なにを偉そうに……」
疲れた声でつっこみを入れるルイズ。
「ぷ」
そしてキュルケは思わずといった風に噴出すと。途端に笑い出す。
「あはははは! あなたらしくていいじゃない、こんな平民を使い魔にするな
んて」
杖もない、マントもない。容姿はかなり整っているが、なにか特殊なものも感
じない。ならば平民だろうとあたりをつけた。
それにアルは。
「所詮人間はこんなものか」
外見ばかりに気を取られる、そう呟きため息をついた。
だがキュルケは、それに対して負け惜しみとでも思ったのだろう。
「ふふ、キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプ
ストーよ。キュルケでいいわ。あなたは?」
「ふむ。童はアル・アジフ。なんの因果かこやつの所有物となっておる」
「所有物……?」
妙な言い回しにキュルケは戸惑ったが、まあ使い魔も所有物という意味では同
じだと納得した。
「そう、これからもよろしく」
これでアルのことを注意深く観察したなら、平民と断定することは無いだろう。
彼女の祖国では平民も領地があれば貴族になれる、ある意味常識外で育ったが。
やはりその思考は常識の範疇に収まっていた。
「にしても平民とはね。ルイズ、使い魔ってのはね。こういうのをいうのよ」
キュルケはそういうと、開け放たれた扉へ顔を向けた。
「いらっしゃいフレイム」
そこからのっそりと真っ赤で巨大なトカゲが出てくる。
「ほう」
アルが興味深そうにトカゲを見た。
「みなさい、これが私の使い魔、サラマンダーのフレイムよ」
フレイムと呼ばれたサラマンダーは火のついた尻尾を振る。
キュルケは胸を張るとフレイムへ言った。
「フレイム、挨拶をしてあげなさい」
「きゅるきゅる」
フレイムはそう鳴くと2人へ向き直り。
「きゅる」
ルイズへと頭を下げ。アルへ向き直り。
「…………」
「…………」
なんとなしに目が合った。
「……………………」
「……………………」
互いに沈黙。
一言も喋らない。
「………………………………」
「………………………………」
見つめ合い。
「………………………………………………」
「………………………………………………」
見つめ合い――
「……………………………………………………………………………………」
「……………………………………………………………………………………」
見つめ――
「…………………………………………………………………………………………
………………………………………………」
「…………………………………………………………………………………………
……………………………………おいおい」
見つめ合っていた異形の内、アルが思わずつっこむと。
「きゅるきゅるきゅるっ」
「わっ! な、汝! なにをするか!」
突然フレイムがアルへとじゃれる様に、顔をすり寄せてきた。
「や、止めぬかっ! 火を噴くな! 童が燃えたらどうすのだ!」
「フレイムがここまで懐くなんて」
なんだか納得いかないと微妙な顔をするキュルケ。
「汝の使い魔だろう止めぬか!」
「きゅるきゅる」
仲良きことは良いことか。でも思ったのだろうか、キュルケはそれを放置する。
「それでどう? うらやましいでしょう」
そうして、ある種恒例の挑発行為を続けるのだが。
「あーそうね……」
いまいちルイズの反応は薄かった。
人型となる喋る魔導書や、本能が恐怖するゼリーとかと朝から争ったルイズに
はもう気力がなかった。
「……なーんか、元気ないわね」
まあ、いつまでもここにいるわけにもいかずキュルケは身を翻し。
「まあいいわ。フレイム、行くわよ」
「きゅる」
「ルイズ、朝食に遅れないようにね」
そうしてフレイムを連れてさっさと歩み去っていった。
後に残された2人は。
「むう、騒がしき者だったな。何者だ?」
「ご先祖様の代から争い合っている宿敵の家系よ」
「中々溝が深いな」
「まあね」
「まあよい、童は腹が減った。さっさと案内せよ」
「なんでそんなに偉そうなのよ!」
支援
「なぜ童が小娘ごときに畏まらなければならぬ」
「また小娘って!」
再び言い争いながら食堂へと向かった。
「ほう、これはまた」
食堂へと入ったとき、アルは感嘆の声を漏らした。
多少は気分が払拭されたのかルイズが少し誇らしげになる。
「ふふん、どうかしら」
目の前にはやたら長いテーブルが三つ並んでおり、今もメイドが忙しく料理を
並べている。
「このトリステイン魔法学院が教えているのは魔法だけじゃないのよ」
ルイズは得意気に指を立てると、説明するかのように語りだした。
「メイジは全員貴族であるから、貴族としての作法や礼儀。そして一番に精神
を育むことをモットーとしてるの。『貴族は魔法をもってしてその精神となす』
ってね」
鳶色の瞳を片方瞑り、指揮棒のように指を振りながら続ける。
「本来ならあなたのようなのが、この『アルヴィーズの食堂』へ入ることは
――あれ?」
後ろを向き、指をアルへ突きつけようとして――そこに誰も居ないことに気が
付いた。
「え? え? どこに……」
慌てて周囲を見回そうとした時。
「むぐむぐ……これは、中々の美味……だな」
振り向くと、巨大なソーセージをくわえ込むアルの姿があった。
いきなりのことで誰も彼女を止めることができず、むしろ幾人かの生徒は
(主に男子)はなぜか生唾を飲み込みながら食い入るように、太くて長いソー
セージを咥えるアルに見入っている。(やや前屈み)
「って、またあんたはなに勝手に食べてんのよぉぉぉっ!!」
勢いよくルイズが詰め寄るが。
アルはやたらカッコよく、まるで歴戦の兵士のような笑みを浮かべ。
「ふ。食とは、つまりは本能が求める欲求にして闘争! 誰も童を止められん!」
なぜか背後で飢えに苦しむ貧乏人のような男の姿が見えたが……幻だろう。
「というかあんたに食なんて必要あるの!?」
「必要不必要は関係ない! ただ我は食らうのみだ!」
「なにが、本能が求める欲求にして闘争よ! ただの食い意地じゃない!」
結局アルはこのまま食べ続け、ルイズは使い魔の管理がなっていないと教師か
らお叱りを受けることとなる。
教室へ入った2人を出迎えたのは、くすくすという小鳥の囀りのような笑い声
と視線だった。
軽く教室を見回すと、多種多様雑多な使い魔たちと少し離れた場所で、アルを
見ては笑う生徒がいる。
散々食堂で騒いだことにより、すっかりと顔を覚えられてしまったらしい。
「……不愉快だな」
「…………」
ぽつりとアルが言うが、ルイズはまるで慣れているかのごとく笑い声には反応
せず進む。
近くを通るたびに、使い魔、平民、契約、ゼロ、などと言った小声が聞こえて
くる。
その中にはキュルケもいたが、これは笑みの種類が違った。
「ふふ」
「……?」
それがなんなのかと、探ろうとした時。
ルイズはほぼ無表情で席に座った。しかたなしにアルもその横の席にドカリと
座り込む。
「――」
sien
一瞬ルイズがなにか言おうとしたが、結局はなにも言わなかった。
「ふむ、作りは立派なのだな」
改めて教室を見回しなんとなしに呟くと、ルイズが口を開く。
「当たり前よ、トリステインの貴族の嫡子が集まるこの場所はこの魔法学院は
大陸でも有数の名門なの」
窓枠や扉などには精緻な彫刻や壁には所々幻獣などのレリーフを見ながらアル
は言う。
「ふむ、それでか。なんというか成金趣味だな」
それにルイズはため息を付きながら。
「貴族が暮らす場所なのに、平民と同じような環境ではいけないでしょう?
ちゃんとした威厳を保つためには必要なことなのよ」
その言葉を疑いのかけらもなく口にするルイズを見て、アルは既視感のような
ものを感じた。
(どこかで……似たような存在を……)
だがいくら記憶を遡ろうとしても、出てくるのはエラーか混在した記録ばかり。
(っく。記録自体が破損したか、目録が使えないことで掘り出せぬだけなのか)
アルが思考に埋没しようとしたとき、扉が開いてふくよかな中年の女が入って
きた。
彼女は生徒たちを見回すと、穏やかな笑みを浮かべると口を開く。
「皆さん。春の使い魔召喚は、大成功のようですわね。このシュヴァルーズ、
こうやって春の新学期に、様々な使い魔たちを見るのがとても楽しみなのです
よ」
その声に、周囲はルイズの隣――アルを見ると一斉にクスクスと笑い出す。
「おやおや。変わった使い魔を召喚したものですね。ミス・ヴァリエール」
シュヴァルーズがそういうと、周囲の小笑いが、一気に大笑いになる。
(くだらん……)
それを冷めた目でアルが見ていると。一人の生徒が勢いよく立ち上がり、ルイ
ズを指差し大声で言った。
「ゼロのルイズ! 昨日のゴーレムがボロかったからって、代わりに平民なん
て連れてくるなよ!」
それに、ルイズは極々静かに立ち上がる。
当人――マリコルヌはそれに気が付かぬのか、大きく手を広げながら演説よう
に語り続ける。
「どうせ、そこらにいた平民を捕まえて――」
周囲の生徒はいつもの癇癪か怒鳴り声が続くかと思い、それにより口論を騒ぎ
立てようと待ち構えていたが。
「マリコルヌ」
予想に反してルイズの顔は笑顔で、その声は非常に穏やかで。
「――黙りやがれ、このブタ野郎」
人生的に絶望より深い部分に潜ったような。あらゆる悲哀を受け止めたような。
てめえ俺は疲れてるんだ、少しは静かにしやがれ殺されてぇのか? と語るよ
うな超々々々低温の視線でマリコルヌを睨んだ。
「ぎろり」
「ひぃっ!?」
周囲を凍りつかせた。
後にマリコルヌは語る。
「ま、またあの視線に睨まれたら……ブヒィッ!!」
その彼が特殊な性癖に目覚めるまであと少し時間がかかる。
すとんとルイズが座ると、まるで止まった時間が戻るかのごとく周囲はざわめ
き始める。
だが当の本人であるルイズはなぜかぐったりとしたまま、アルにいたっては、
よっぽど暗いものを押し込めていたのだな、と感心していた。
そしてその空気に気づかぬのか、シュヴァルーズは大きく手を叩く。
「はいはい、みなさん雑談はここまでです」
空気の読めないものの強さか、教室は強制的に授業の空気へと流されていく。
「…………」
ルイズも、気持ちを切り替えたのか授業へと集中した。
マリコルヌwwwww
支援
シュヴァルーズは一度せきをしたあと、杖を振ると机の上に数個の石ころが現
れる。
「私の2つ名は『赤土』。赤土のシュヴァルーズです。『土』系統の魔法を、
これから1年みなさんに講義します。まず――」
騒ぐ当人達が集中しているため、授業は円滑に進む。アルもあまり出会わない
魔術のことに多少興味はあった。
失われた『虚無』を含めた『火』『水』『風』『土』の5つの系統魔法。その
系統魔法の使える数を表す『ドット』『ライン』『トライアングル』『スクウ
ェア』のメイジの位階(クラス)など。
(ふむ、ここまで闇の臭いのない魔術はめずらしい)
教師本人の系統もあるのだろう『土』を全面的に肯定しているが、年初めの授
業なのかその内容は模範的で知識の無いものにはちょうどいい。
だがアルは。
「……つまらん」
そう言って机へと突っ伏した。
「あんた、なにしてるのよ」
ルイズが思わず、顔を向ける。
教卓でシュヴァルーズが石ころを真鍮へと変えているが、アルはもう見向きも
しない。
それどころか、あくびをして眠りにつこうともしている。
「今は授業中なのよ、失礼じゃない」
ひそひそ声でルイズが注意するとアルは疲れたかのように言った。
「あんなもの児戯にも等しい」
「なっ――」
突然のことに言葉が詰まる中、アルはさらに続ける。
「魔術とは本来、世界の裏をかく物。世界の裏を、常識の非常識を疾走し汲み
上げるのが本分だ。だがあれはなんだ? ただの物質変換ではないか」
1000年もの長き時を闇の世界で暮らしてきた彼女にとって、説明された物はま
さに児戯である。
火を出すだけ? 風を吹かすだけ? 水を噴出すだけ? 土を操作するだけ?
実演した『錬金』にしても“既存の物質を作り出すけだけ”という、彼女の知
る魔術の中でも“基礎以下”と称されるものである。
術を使うあの教師でさえ、簡易な精神統一すらなっていない。
様々な、それこそ比喩ではない地獄にいた彼女からすれば余りにもぬるかった。
「よって、童には無意味どころの話でない。むしろ退屈を誘う害悪だな、うむ」
だが、そんなことを――彼女の潜り抜けた世界を――知らないルイズにとって
は、それはこの世界のメイジの存在全てを、彼女自身を愚弄する行為にも等し
かった。
無意味――それは、彼女が目指す夢をまさに汚す言葉である。
「――あんたっ!」
そして勢いよくルイズが立ち上がり。
「ミス・ヴァリエールあなたが立候補しますか。いいでしょう、こちらに来な
さい」
おっとりとした声をかけられた。
「――へ?」
いきなり名指しされ置いていかれるルイズに、シュヴァルーズはなおも優しく
声をかける。
「ミス・ヴァリエール。この小石を『錬金』してみなさい」
どうやら、あの中年教師は『錬金』をする生徒を募っていたところ、ちょうど
ルイズが立ち上がったことでそれを立候補と間違えたらしい。
「さあ、ミス・ヴァリエール」
「あ――」
そして、ルイズが反応するより早く。
「ミス・シュヴァルーズ! それは危険です!」
生徒たちが反応した。
「絶対ルイズにはやらせてはいけません!」
「危ないです!」
口々に言う生徒たち。
ブヒィてww 支援
これは支援
派遣衛士ワルドの憂鬱
支援
さるさん食らったそうなので代理投下いきます
「あら、ミス・ヴァリエールは座学でも優秀な成績を収めていると聞きますよ」
「それでもです!」
みんな必死になって気が付かない。ルイズの手が硬く握られブルブルと震えて
いるのに。
「ですが――」
「ルイズに魔法なんて使えるはずありません!」
それは誰が言ったことだろう。
その言葉を聞いたとき、ルイズの中のなにかが切れた。
「ミス・シュヴァルーズ! わたしはやります!」
勢いよく言い放つと、堂々とルイズは教卓へと歩き出す。
悲鳴を上げたり顔面が蒼白になったりする生徒たちは、次々と机の下へと潜っ
ていく。
「なにをしておるのだ?」
それを見て首をかしげるアルに、机の下からキュルケが苦笑しながら話しかけ
た。
「あなたも巻き込まれないように隠れたほうがいいわよ」
「……?」
そうこうしている間に教卓についたルイズにシュヴァルーズは笑いかける。
「さあ、ミス・ヴァリエール」
この時、シュヴァルーズは油断していたのだろう。いくら実技が苦手な生徒だ
と噂されても。ただそれだけだろうと。
「はい!」
この時、ルイズも油断していたのだろう。サモン・サーヴァントと、不完全な
がらコントラクト・サーヴァントを成功させたことで、彼女にわずかな希望を
もたらしたのだろう。
「緊張することはありません。さあ、『錬金』したい金属を強く思い浮かべる
のです」
だがそれは、ルイズが杖を振り上げ。
「錬金――!」
振り下ろしたことで、粉々に吹き飛んだ。
爆風が吹き荒れ、ルイズとシュヴァルーズは吹き飛ばされ黒板へと叩きつけら
れる。
「――にゃにぃぃっ!」
顔を出していたアルは爆風に煽られた。
その爆音に飛び起き、混乱した使い魔たちが暴れだし。それによりよけいに混
乱する生徒達。
「ああ! 僕のラッキーが!」
「や、止めろハスタール! 痛たたたっ!!」
「腕が! おでの腕がぁぁ!!」
阿鼻叫喚の地獄であった。
「なにがどうなって……」
ふらふらと頭を振ったアルが教卓を見ると。
黒い煤につつまれた教卓の周囲。
ボロボロになったルイズがむくりと立ち上がると、一言言った。
「ちょっと失敗みたいね」
「「「「「「どこがちょっとだ!」」」」」」
ここにいるみんなの心が一つになった。
「だからやるなと言ったんだよ! ゼロのルイズ!」
「確立ゼロだからゼロのルイズ!」
そこでアルは、大声でどなる生徒達に言った。
「ところで、あやつは大丈夫なのか?」
アルが指差した先。
ぴくぴくとやばい痙攣のしかたをしているシュヴァルーズがいた。
「「「「「「あ」」」」」」
今回はこれで終わりです。
次回はとうとう、ギーシュとの戦い。
ふふ……どうしよう?w
まあ、できるかぎりデモベ風に熱くかける頑張ります。あと、早く書けるように……。
以上、代理でした。
カリグラなにやってんのwwww
作者さんも代理の人もGJでした
魔道書の人、代理の人、乙です。
見つめ合うアルとフレイムが何ともww
よんでますよ、アザゼルさんから アザゼルさん
「こんのぉ、薔薇咥えてイケメン気取ったキザ野郎がぁああああ」
「だいじょうぶ、だいじょうぶ、これを突きつければあのキザ野郎とは別れられますって」
「そういう問題じゃあないのよ!私の気がすまないのぉ!」
モンモラシーがルイズを捕まえて
ギーシュの浮気を何とかしろと頼んだ
そしてルイズは気が重いが悪魔を呼び出した
「もう、ルイズはん、飯時に召還するなって何べん言うたらわかってくれますのん?」
こかかかか
ちゃぶ台ごと召還されたアザゼルさん
「それで生贄はどこですのん」
「それよ」
どーん
底には豚足が一本、皿に載せてある
”完璧 悪魔 舐めとるな コイツ”
「あれ、でも、これ、意外と、キラいじゃないかも」
ちゅぱちゅぱちゅぱちゅぱ
「ほいで今回は何がしたいの」
「甲と乙を別れさせたいの」
「あーわかったー、別れさすんやねー」
魔方陣にもぐって帰るアザゼルさん
次の日
全身からモンモラシーの香水をプンプン香らせたギーシュが引きこもってしまった
そして怒鳴り込んでくるモンモラシー
「ちょっとあれどういうことよー、なんで私が香水をぶっ掛けた事になってるのよー」
ここでいいかげんちからつきた
デモペ乙
クトゥルー題材ものは多いだけあって、このスレにも何度か現れてるからそれぞれ展開が違うのがいいね。
魔導書の人乙でした。
そりゃあ、アル…というかデモベの化物マギウス連中にしてみればそりゃあ詰まらんわな。四系統、虚無、先住といったハルケギニアの魔法は。
こんばんは。
第5話の投下を、22:40から行ってもよろしいでしょうか。
…しかし、もう5回目だというのに、この投下前のプレッシャーのような物には一向に慣れる気配がいたしませんな。
>127
アザゼルさんは脳みそがはみ出しても頑丈だったな
「………」
ようやく2冊目を読み終えた。かなり遅いペースである。
そもそも、いちいち辞書を参照しながら専門書を読み進む―――という行為に無理があるようにも思う。
(ともあれ、焦る必要もないが……)
1冊目の本を読んでいる時に感じた『強烈な反応』に関しては、少なくともこちらからは絶対にアクションを起こさない、
と決定している。『一ヶ月前の反応』も『一週間後の反応』も同様だ。
こんな未知数な存在を相手に、うかつに行動を起こすほど、自分は若くもなければ勇気もないのである。
今まさに調べている『魔法』のように、自分の興味を引く物であればその限りではないが、何せ精神年齢はもう70歳近
く。
40年前のように、
(…地球人の凶暴性、ウルトラマン、そしてデビルガンダム…私の汚名を返上するには最高の素材だ…。
クククク…全宇宙に私の才能を示してやる…)
このような思考に行き着くのは、少々困難だろう。大体、ハルケギニアの人間に自分の才能を示したところで、あまり大
した意味もない。
そもそもこのハルケギニアでは魔法が使えない『平民』の地位がかなり低いらしい。『貴族にあらざれば人にあらず』
―――というほど酷くもないようだが、決定的な『壁』のようなものがあるのだ。
(……どうでもいいことだな)
今の制度が続こうが、市民革命が起きようが、異邦人である自分にはあまり関係がない。
ならば自分の趣味に没頭しよう、と本2冊分の知識を元に考察を始める。
(まずは『杖』か)
エルフなどが使う『先住魔法』とやらは置いておくとして、魔法の行使には絶対に『杖』が必要とされている。
メイジの『精神力』を外に『出力』するための装置、あるいはメイジが『精神力』を使ってこの『世界』そのものに対し
て影響を及ぼすための媒介のようなものだろうか。
……仮に前者だった場合、『魔法』はメイジ自身の力となり、後者だった場合はメイジというより『世界』自体が反応、
あるいは呼応していると捉えることも出来るが。
『杖』もまた、その辺の木を切ればいいという物ではなく、数日以上かけて契約したその個人専用のものでなくてはなら
ないらしい。
この行為が『世界』と『メイジ』とを接続するためのものだとすると、後者の方が可能性が高いのではないかと考えられ
るが―――
(あくまで『可能性』の話だからな…)
あるいは、全く別の要因が絡んでいるのかも知れない。
なかなか興味深い、などと思いつつ、ユーゼスは次のテーマに移る。
(メイジの能力は遺伝される………ふむ)
階級制度が導入されているということは、おそらく長い間メイジ同士で血を交わらせてきたのだろうが、そのメイジと平
民が子を成した場合、その子供は魔法を使えるのだろうか?
考えられるパターンとしては、『魔法が普通に使える』、『魔法は使えるが威力は弱くなる』、『魔法が使えない』、
『隔世遺伝によって数世代後に発現する』くらいだが、少なくとも自分が読んだ本にはそんな事例は書いていなかった。
本によると、このハルケギニアには6000年も歴史があるのに、そのような例が1件も無いとは不自然すぎる。
(……平民と子を成すことを『家の恥』とでも考えたのだろうか。ならば記録に残すわけはないな)
次に、レベルを上げる条件には、大きな感情のうねりかメイジの修練が必要とされる件について。
……感情のうねりについては、それこそスーパーモードかハイパーモードのようなものだろう。人間の感情を安易に単純
化するのは危険だが、『激しい怒り』や『憎悪』などがキーになるはずだ。……『明鏡止水の境地』に至れば、一体ランク
はどうなるのだろう。
よく分からないのは、修練によってレベルが上昇する場合である。
これは、ある日突然にレベルが上がるのか、それとも『そろそろ上がりそうだな』という手応えのような物と共に上がるの
か。
あるいは、その『修練』の果てに至った精神的な境地こそが、レベルを上げるキーなのかも知れないが。
ラスボスさん支援
もう聖地にいるのはイデオンクラスじゃないと手におえん
続いて、魔法そのもの―――とは言え、コモンマジックについてしか読んでいないが―――について考える。
『ライト』。そのままストレートなネーミングだ。光を放出する魔法だが、瞬間的に使って敵の眼をくらませる、という
使い方も出来るだろう。
『ブレイド』。魔力を刃とする魔法であり、そのメイジが得意とする系統によって刃の色も異なるらしい。ウルトラマン
もスペシウム光線のエネルギーを使って八つ裂き光輪やキャッチリングを使っていたので、原理的には同じものかもしれな
い。
『レビテーション』。浮揚の魔法。最初は念力か念動力のようなものかと思ったが、どうやら違うらしい。重力を軽減す
る―――対象の物体を軽くするだけで、逆に重くしたり力で押さえつけたりは出来ないようである。
人間を始めとする生物にとって飛行が困難である理由としては、体重を超える上向きの力を捻出することが出来ないから
だ。重力を軽減する能力があれば、どんな生物でも浮くなり飛ぶなり出来るだろう。あとは微細な重心移動や重量の増減の
コントロールが可能となれば、自由自在に空を飛べる。
『ディテクト・マジック』。魔法やマジックアイテムを探知するための魔法。応用として、その魔法やマジックアイテム
の詳細を分析することも出来るのだとか。
……かなり大雑把な例えだが、リトマス紙を使って酸性かアルカリ性かを調べたり、ヨウ素液を使ってデンプンを検知す
るようなものだろうか。しかし詳細を分析するとは……。……自分が使えれば、おそらく乱用しているに違いない。
『サモン・サーヴァント』と、『コントラクト・サーヴァント』。……これらが『コモン』であるということに非常に納
得がいかない。
仮にも空間を捻じ曲げる魔法と、ゲートを潜り抜けた生物にクサビを打ち込む魔法なのである。ルイズに至っては時空間
まで捻じ曲げ、自分に特殊能力まで付加させたのだ。これが専門的なものでも、高度な魔法でもなく『コモン(共通)』。
自分は40年かけてクロスゲート・パラダイム・システムを造り出し、ほとんど生涯を懸けて時空間を超えたのに、
『コモン』。
(…………………………)
……深く考えると、めまいや頭痛が起きそうなので、これについては打ち切ることにする。
『ロック』と『アンロック』。………………これに至っては、わけが分からない。鍵の構造など無数にあるはずなのに、
それに対して施錠と開錠を行うとは、どういうことだろうか?
しかも『アンロック』が効かない鍵もあるという。おそらくこの鍵はマジックアイテムの類ではないか……と推測する
(あくまで『推測』である)が、そうするとこの『アンロック』の存在意義とは何なのだろうか。
―――と、基本的なコモンマジックだけでこれだけの疑問や考察が出て来る。
これがそれぞれの系統魔法にまで及んだら、おそらくとんでもないことになるのだろうな―――などと考えていると、窓の
外の空が白んでいるのが見えた。
(……徹夜してしまったな)
研究に没頭して時間を忘れるなど、研究者にとってはよくあることである。
無論、身体に良いわけはないが。
「―――そう言えば」
自分はルイズから洗濯を頼まれていたのだった。
率直に言って、こんなことはやりたくないが、これが務めだと言うのなら仕方がない。
下着や肌着を持ち、ドアを開けて部屋の外に出る。
そこで気付く。
「しまった」
……洗濯はどこでやれば良いのだろう。
そもそも、この建築物の構造はどうなっているのか。
いや、それ以前に、洗濯とはどうやるのだろう。
「………むう」
途方に暮れるユーゼス。
すると、そこに。
「……あら? たしか、ミス・ヴァリエールの使い魔の……」
ルイズから状況説明を受ける前に、自分にパンを運んで来てくれた黒髪のメイドが現れたのだった。
支援
支援
ちょうど良い。洗濯の場所、およびそこに至るまでの経路を説明してもらおう。
「……すまないが、洗濯する場所を教えてくれ」
「え? どうして使い魔さんが洗濯を?」
「御主人様に命じられたのでな」
あはは、と苦笑しながら部屋の前に置かれた皿とコップを片づけるメイド。
「…えっと、私がやっておきましょうか、お洗濯? 多分、私の方が慣れてると思いますし」
メイドは朗らかに笑いながら、ユーゼスの仕事の肩代わりを買って出る。
……ここまで邪気のない笑顔を向けられたのは、かなり久し振りである。
(逆にやりにくい相手だな)
敵意や悪意、疑念などを向けられるのに慣れすぎたせいか、このような『見返りを求めない善意』はかえって危険かも知れ
ない。
「………一応、私に与えられた仕事だからな。私が果たさねばなるまい」
「はあ、律儀な方ですねぇ。
そういうわけなら、私が実地も込みで教えてあげます」
そして洗濯物を持って歩くユーゼスとメイド。二人は連れ立って歩きながら、
「ふーん、それじゃ使い魔さんは東方から来たんですか?」
「……それに近い」
正確に言うと『東方』どころではないのだが、東にはクロスゲートが頻出しているようだし、自分は擬似的なクロスゲー
トから出現したのだから、完全に間違いというわけでもない。ような気がする。
「む?」
ふとメイドの顔を見てみると、そのすぐ下………襟元に光る物があった。
よく見ると、それは……。
「? 使い魔さん、どうしました?」
「……その襟に付けているものは、何だ?」
ユーゼスにとっては、どうにも見覚えのあるマークである。
何せ、かつて自分が地球に赴任した折に、一番最初に所属した組織のマークなのだから。
「これですか? 我が家に伝わるお守りです。何でも、ひいおじいちゃんの故郷では、選ばれた人しかこれを貰えなかったそ
うですよ」
……あの組織は何だかんだ言ってもエリート集団だったのだから、当然である。
支援
円谷マーク支援
しかし。
「曽祖父の故郷?」
「はい。60年前に、東の地から空を飛ぶ『銀の方舟』に乗ってやって来た、ってお父さんは言ってました。
でも、『銀の方舟』をもう一度飛ばすことは出来なくって、そのまま村に住み着いてちゃって―――」
「……その『銀の方舟』とやらの、形状や色を教えてもらおう」
「えっとですね、『銀の方舟』ですから、やっぱり銀色で……ああ、先の部分あたりが赤かったですね。形は、こう……丸っ
こい形をしてるんですけど」
メイドから『銀の方舟』についての情報を聞いたユーゼスは、乗っていた人間やその状況について思考を巡らせる。
(………空間の歪みか、ウルトラゾーンにでも巻き込まれたのか?)
このメイドの曽祖父が乗っていた物がユーゼスの推測通りの物だとしたら、アレにワープ機能などないはずである。つまり
ワープ中の事故ではないことになるが…。
(……いや、待て)
こちらに転移してきたシチュエーションは、大体ではあるが察しがつく。
その転移してきた人間とやらの詳細については、これも察しがつく。人格などはどうでもいい。
問題は。
「曽祖父は、お前の村で子を作ったのか?」
「はい。私の髪の色って珍しいでしょ? ひいおじいちゃん譲りらしいです」
「………」
(私の世界の人間と、ハルケギニアの人間で遺伝子交配が出来るだと……!?)
ユーゼスは機会があればいずれ試してみようか(『試せる』可能性は限りなく低そうだが)とも思ったが、遺伝子交配につ
いては十中八九失敗すると考えていたのである。
極端な話、自分は異次元人のようなものであるし、ハルケギニアの人間と遺伝子配列が極端に似通っている可能性は、限り
なく低い。
一条寺 烈こと、宇宙刑事ギャバンは地球人とバード星人の混血であるが、バード星には遺伝子変換のための技術もある。
……いや、そう言えば『母親は遺伝子変換を行ったのか?』と直接に聞いたことは無かったか……。
仮にギャバンの母親である地球人が、遺伝子変換を行っていないとしたら……。
(……都合が良すぎるな)
いくら何でも、そんな訳はないだろう。
ユーゼスは思考をハルケギニアの人間に関するものに戻し、あらためて考える。
(やはり、ハルケギニアは地球の並行世界なのか……)
隣り合っているとまでは言い切れないが、かなり『近い位置』にあるようだ。
(……まあ、私には関係のないことだな)
並行世界だの、時空間の移動だのについては、今まで散々研究してきた。
今はどちらかと言うと、この世界の『魔法』の方が興味深い。
そして何より、今の自分には『洗濯』という困難な使命がある。
メイドの襟に輝く流星のマークを視界に入れながら、ユーゼスは彼女と歩いていくのだった。
早川じゃないのか支援!シエスタ毒蝮か!
「ちょっと待っててくださいね、私の分の洗濯物を持って来ますから」
そう言って、メイドはどこかへと小走りに駆けていった。
待つこと10分ほど。…遠くから、何か布のカタマリのようなものがこちらへと向かって来る。
「………」
「よいしょ、っと」
そこから聞こえるメイドの声。
自分が手に持つ洗濯物の量と、メイドの洗濯物の量を、改めて比べてみる。
(………まあ、いいか)
慣れていない人間に手伝われても、かえって足手まといになるだけである。そのあたりの割り切りは大切だ。
「じゃあ、行きましょうか」
「分かった」
そして洗い場に到着し、メイドの指導を受けながらの、たどたどしい洗濯が始まった。
「あっ、駄目です、まだ十分に濡れてません……!」
「む、そうか?」
「焦っちゃダメです。もっとゆっくり……そうです、やさしく……」
「加減が……難しいな……」
「ああっ! そんなに乱暴にしたら破れちゃいますっ!!」
「……申し訳ない」
「もうっ、けっこうデリケートなんですからね? まあ、経験を積めば、使い魔さんももっと上手になると思いますけど」
「うむ」
「し、しぼる力が強すぎですっ! ちぎっちゃうつもりですか!?」
「いや、そんなつもりは無いのだが」
洗濯終了。……なかなかハードな内容だった。
「それじゃ、私はまだ続きがありますから」
「分かった」
洗濯物を干す場所は教えてもらったので、メイドに教えてもらった通りに干す。……これも、意外にコツが必要だった。
干し終わり、遠目に選択中のメイドを見つつ、ルイズの部屋に戻る。…気が付くと、既に日は昇りきっていた。
ガチャッ
ドアを開けると、ちょうどユーゼスの御主人様も目覚めた所だったようだ。
「……ぅあ?」
寝ぼけた様子でこちらを見るルイズ。
「目が覚めたか、御主人様」
「……あ、アンタ、誰?」
「……………御挨拶だな」
ルイズは数度まばたきをすると、『ああ、そう言えば昨日、召喚したんだっけ』と呟いてベッドから起き上がる。
「下着」
「どこにある?」
「そこのー、クローゼットのー、一番下の引き出しに入ってるー」
言われた通りに見てみると、確かに入っていた。
……どれを持っていけば良いのか分からないので、適当に選んで手渡す。
なお、さすがに下着は自分で替えるらしい。
「服」
椅子にかかっていた制服を無言で持っていき、ブラウスやスカートを着せる。
「顔」
「?」
「……顔を洗うのよ」
「そういうことは前の日の内に言って貰いたい」
「ったく、気の利かない奴ね……」
明日から仕事が一つ増えるな、などと考えるユーゼスに頓着もせず、ルイズは命令を出していく。
「髪を梳きなさい」
「…………言っておくが、私はその方面は素人だぞ」
「別に良いわよ、わたしの髪は質が良いんだから、ちょっとやそっとじゃ絡まったりはしないの。でも少し乱れてるで
しょ?」
「まあ、御主人様が良いと言うのなら構わないが」
という訳で、言われた通りに桃色の髪を梳く。
「……じゃあ、食堂に行くわよ」
「分かった」
そうしてルイズと部屋を出ると、ほぼ同じタイミングで真向かいの部屋のドアが開いた。
そこから出て来た赤髪で色黒、長身でスタイルの良い女性がニヤリと笑って、ルイズに挨拶した。
「おはよう。ルイズ」
支援
「……おはよう。キュルケ」
面倒臭そうと言うより、嫌そうな顔でその女性に挨拶をするルイズ。
「あなたの使い魔って、それ?」
女性はユーゼスを指差して、馬鹿にしたような口調で問いかける。
「…………そうよ」
「あっはっは! ほんとに人間なのね! 凄いじゃない!」
(ふむ)
『人間の使い魔』が異常であるということについては、昨日の時点で主人から言われている。
しかし。
(『凄い』、か)
よくよく考えてみれば、あの付加機能を差し引いたとしても、自分は『特殊な例』なのである。凄いと言えば、確かに凄
い。
(後で使い魔に関する本も読んでみるか)
そんなユーゼスの思考などつゆ知らず、女性とルイズの会話は続く。
「『サモン・サーヴァント』で平民を喚(ヨ)んじゃうなんて、あなたらしいわ。さすがはゼロのルイズ」
「……うるさいわね」
「あたしも昨日、使い魔を召喚したのよ。誰かさんと違って、一発で呪文成功よ」
「あ、そう」
「どうせ使い魔にするなら、こういうのがいいわよねぇ〜。フレイムー」
女性が声をかけると、その部屋の奥からのっしのっしと、地球のトラくらいの大きさの、真っ赤な爬虫類と思しき生物が
現れ、その生物から熱気が伝わってくる。
(怪獣か)
特に目を見張るものでもないな、とユーゼスは思った。
彼のいた世界では、地球や他の惑星や宇宙などに、ウジャウジャこういう類の生物がいたのである。
切られた尻尾がビチビチ動いたり、火を吐いたり、冷凍ガスのようなものを出したり、光線を吐いたり、その光線を腹か
ら吸収したりする怪獣がいるのだから、今更、熱気を出す程度では全く関心を引かない。
「あら、そっちのあなたは興味なさそうね?」
「…いや、それなりに興味はあるがな」
『通常の使い魔』という面においては、興味を抱いている。
「襲いかかったりはしないのか?」
「平気よ。あたしが命令しない限り、襲ったりしないから。冷静そうな顔してるけど、意外と臆病なのね」
(命令に従うということは、あの『精神制御』は全ての使い魔に共通しているのか)
自分のように『この世界よりの思考』を押し付けるものではないだろうが、それでも『主人の命令を聞く』という方向づ
けはなされているのだろう。
その後、自分の使い魔の凄さをこれ見よがしにアピールした女性―――『微熱』のキュルケというらしい―――は、つい
でとばかりにユーゼスの名前を聞くと、颯爽と去っていった。
「くやしー! なんなのあの女! 自分が火竜山脈のサラマンダーを召喚したからって! ああもう!」
(希少価値という面で言えば、『人間の使い魔』の方が高いと思うが)
わめくルイズを冷静に見ながらそんなことを思うユーゼスだったが、おそらくルイズにそんなことを言おうと、慰めにも
なるまい。むしろ逆効果の可能性もある。
ルイズは『う゛〜』と唸って自分を見ると、
「ああもう、メイジの実力を測るには使い魔を見ろって言われているぐらいなのに! なんであのバカ女がサラマンダー
で、わたしがこんな平民なのよ!」
今度は、ユーゼスに向かって喚き出した。
「それは私の方が聞きたい」
ユーゼスもユーゼスで、主人と同じ疑問を主人自身に投げかけてみる。
「うっさいわね! ……ああそうだわ、今後、あの女には近付かないようにしなさい。いいわね?」
主人はその疑問を一蹴し、かなり一方的な通告を使い魔に行った。
「理由を尋ねても良いか?」
「……そうね、どうもアンタは理屈で動くタイプみたいだから、ちゃんと説明してあげる」
ルイズ曰く、
・キュルケはゲルマニアの貴族である。
・わたしは成り上がりのゲルマニアが大嫌い。
・実家のヴァリエールの領地はゲルマニアとの国境沿いにあり、逆にキュルケの実家のツェルプストーの領地はトリステ
インとの国境沿いにある。
・つまり両国が戦争になったら、真っ先にヴァリエールとツェルプストーの戦いになる。
・要するに、先祖代々、両家は戦争のたびに殺しあっている関係。
・加えて先祖代々、婚約者や奥さんを寝取られている。
・小鳥一匹だって、あの女には取られたくない。
「わかった!?」
「概要はな」
(先祖はあくまで先祖であって、今代には直接的な関係はないのではないか?)
そんな考えが頭に浮かぶが、どうもこの世界の『貴族』という人種は、歴史や伝統などを重要視しすぎる傾向にあるよう
だ。メンタリティの違いという物は、そう簡単に受け入れられるものではあるまい。
……自分が、地球人を受け入れられなかったように。
それに、この主人の個人的な性格もある。下手な刺激は火に油を注ぐ結果になるだろう。
頭から煙が噴き出しそうな勢いでプリプリ怒りながら、ルイズはユーゼスを連れて食堂へと歩いていくのだった。
(……私の趣味ではないな)
トリステイン魔法学院の食堂の内装を見た、ユーゼスの感想はそれだった。
とにかくきらびやかで、派手、豪奢、贅沢、豪華絢爛。
「トリステイン魔法学院で教えるのは、魔法だけじゃないのよ」
「ふむ」
「貴族たるべき教育も存分に受けるの。だから食堂も、貴族の食卓にふさわしいものでなければならないのよ」
「ふむ」
「ホントならアンタみたいな平民は、この『アルヴィーズの食堂』には一生入れないのよ。感謝してよね」
「『アルヴィーズ』?」
「小人の名前よ。周りに像がたくさん並んでいるでしょ。夜になるとアレが踊ったりするわ」
「ほう……」
どういう原理で動くのだろう、などとユーゼスがまた思考しようとすると、
「椅子」
思考する間もなくルイズから指示が飛び、ユーゼスは無表情で主人の椅子を引く。
「アンタはそれを食べなさい」
椅子に腰掛けたルイズが指差した先には、床の上にスープが一皿と、パンが二個。
「……………」
「ホントなら、使い魔は外なんだから。アンタはわたしの特別な計らいで、床。感謝しなさい」
「……………感謝しておく」
「よろしい」
凶暴な地球人と傲慢なハルケギニア人、どちらがマシなのだろう……などと考えつつユーゼスは床に座り込む。
「偉大なる始祖ブリミルと女王陛下よ。今朝もささやかな糧を我らに与えたもうたことを感謝いたします」
唱和の声が、アルヴィーズの食堂に響く。
(ささやか、か)
ここでは『ささやか』という言葉の意味が、自分の知っているものとは違うのだろうか、と思ったが、翻訳機能の正確さ
からすると同じなのだろうと溜息をつく。
そもそも、朝から大きな鳥のローストや、高級そうなワイン、マスの形をしたパイなど、明らかにカロリー多可である。
よく胸焼けや胃が重くなったりしないものだ。
(かと言って、これもこれで極端だが)
固いパンをスープでふやかしながら、ユーゼスはこの使い魔生活が早くも嫌になって来たことを自覚していた。
(………かと言って、支配や征服や君臨などをする気力もないし、滅亡させるのも意味がないがな)
ゆっくりやっていこう、と改めて思う使い魔であった。
「ああそうだ、昨日は部屋の中にいたけど、今日からアンタも魔法の授業について来なさい」
「? 良いのか?」
魔法に興味がある自分としては願ったり叶ったりであるが、この扱いからすると『授業に出るな』と言われると予想して
いたのである。
「……使い魔を連れてないせいで、色々と言われるのよ」
「ふむ」
何はともあれ、『魔法の教育』が見られるのはありがたい。
ユーゼスはその内容を期待しつつ、取りあえず今日一日の手始めのエネルギーの摂取を第一に行った。
支援
ゆっくり何をやる気だしえんww
以上です。
めくるめくラスボスたちの思惑やら戦略やらが錯綜すると思ってた人はごめんなさい、しばらくは基本的にテンプレに沿お
うかと思ってます。
次回はシュヴルーズ先生のはちみつじゅぎょ、あ、ごめんなさい、石を投げないでっ。
『バード星には遺伝子変換のための技術もある』ってのは、私のオリジナル設定です。……いや、異性人との混血って、
普通に考えればそうなんじゃないのかなぁ、と思うのですが、どうなんでしょう?
ところでみなさんにお聞きしたいんですが、こういう洗濯ってアリですかね?
ちなみに昔のスパロボは、けっこう文章的にエロかったんですよ、これが。今は視覚的にエロいですけど。
それでは、支援ありがとうございました。
GJでしたッ!
テンプレ展開は内部の細かな差異を楽しみたいところである
>>148 ゆっくり滅亡して逝ってね!!(AA略
ってことじゃねwww
ここだけ読むとユーゼスさん大人で人格者に見えるw
>>149 >ちなみに昔のスパロボは、けっこう文章的にエロかったんですよ
ああ、ウラキとニナがアレしてるように聞こえちゃうシーンとか
サフィーネの「シュウ様と○○○○するのよー!」とか?
ゆっくり人体実験でしょうな、メイジとかモンスターとか腑分けしてしらべるんだお。
完成したので10分後、23:25から投下したいと思います。
あと、前スレで投下した後の容量を確認してなかったため、XFの人には迷惑をかけました。
本当なら、俺がスレ立てなくちゃならなかったんだよなぁ……
今更ながら
>>1乙。
支援。
サフィーネやモニカは存在自体がアレだったからなー。戦闘セリフがあえぎ声だったりギャグボールかまされてたり。
まぁゼロ魔のほうがエロいから目立たないっちゃ目立たないんだがw
きらびやかに彩られた会場に、華やかな音楽が流れる。
時刻は既に夜。夜空には、赤と青の2つの月が昇り、学院を煌々と照らしていた。
本塔の2階、アルヴィーズの食堂の上は大きなホールとなっており、そこで舞踏会は開かれていた。
ダンスフロアでは、華やかな衣装に身を包んだ男女が優雅にステップを踏み、曲調合わせてゆったりと踊っている。
豪華な料理が盛られたテーブルの周りで歓談に興じている者もいる。
2階の天井は吹き抜けになっており、3階の貴賓席からはホールが一望できる造りになっていた。
高い天井では、幾つものシャンデリアが眩いばかりに光を放ち、まさしく光の世界である。
しかし、光があれば闇があるように、光が当たらない場所も当然ある。そして光が強ければ強い程、闇もまた濃くなるのが道理である。
つまり、この舞踏会を待ち望んでいなかった者、いや、その存在自体をうとんでいる者も多分に存在していた。
『踊った相手と結ばれる』そういった噂があるように、この舞踏会は、恋人やその予備軍のためにあるようなものだ。
当然、その尻馬に乗り遅れた者、乗れなかった者は、非常に肩身の狭い思いをすることになる。
そういうわけで、この舞踏会の存在を心から呪っている一団が、ホールの一角に陣取っていた。
太っちょな少年を筆頭とした集団だ。それは、今夜の舞踏会の下準備に失敗してしまった者達である。
彼らの周りの空気は重く澱み、近寄りがたい雰囲気をかもしている。
それこそ、王女が来校してさえいなければ、あらゆる手段を用いて舞踏会を台無しにしようとしただろう。
血走った眼で何かを力説している少年のそばでは、黒いパーティードレスのタバサが一心不乱に料理を相手取っていた。そばで行われている集会には、全くの興味がないようである。
そこから少し離れたホールの片隅。カーテンの裏にも闇の住人がまた一人。
「ちくしょー! いっつもこんな旨いモン食いやがって! ブリミルなんてクソくらえだ!」
未来の大魔女候補2人 〜Judy & Louise〜
第11話 『舞踏会と魔女2人』
カーテンの裏に隠れて、パンを齧りながら悪態をついているのはサイトであった。
その顔にはやさぐれた表情を浮かべ、背中を丸めて屈み込んでいる。足は踵を床に密着させて膝を広げ、その上には腕を乗せている。いわゆる不良座りだ。
その姿勢のままパンを咥え、口の動きだけで頬張り、咀嚼する。
「ああ、軟らけぇなぁ。いっつも食ってるパンなんてカチンコチンなのに、こんなに美味いなんて詐欺くせぇ。
でも、テリヤキバーガーが無いなんて、寂しいトコだよな。あの甘辛いソースとマヨネーズのコラボが、たまんねぇんだよなぁ……」
死んだ魚のような眼で呟きながらカーテンの陰からホールを覗き見る。
目に映るのは、別世界ともいえる豪華絢爛な空間であった。
それに比べて、カーテンの裏は冷気と湿気の溜まり場所でヒンヤリジメジメとしている。
現在の状況を再認識したサイトは、まるで自分が鼠か何かになった様な気がして、幾度目かの深いため息を吐いた。
「テリヤキバッカってのは、なんなんだよ坊主?」
話しかけるのは、サイトに背負われた大剣、デルフリンガーである。
デルフリンガーは完全に鞘には収まってはおらず、僅かに鈍色の刀身を覗かせていた。言葉を発する度に鍔元の金具が動いていて、まるで口のようだ。
「故郷の料理だよ。パンとパンの間に野菜と肉を挟んだヤツだよ。
ああ、もう随分と食ってねぇなぁ……
俺、何してんだろ?」
「故郷には、帰れねぇのかい?」
おどけた様な声でデルフリンガーは訊ねる。そんなに故郷に帰りたいのなら、帰ればいいと言いたげな口調だ。
その問いに、サイトは力なく首を横に振る。そして、頬杖をつくと幾分投げやりな口調で話し始めた。
「無理。一体全体どうやって帰っていいのか分かんないね。
とりあえず、今は金貯めてんの」
「金を貯めれば帰れるのかい?」
「さあ? わかんね。
でも今は、どうやって帰りゃいいのかいいのか分かんねぇし、借りを返さなくちゃならないのも2人いるしな」
「借り? 1人は貴族の娘っ子だとして、もう1人は誰だい?」
デルフリンガーが思い浮かべるのは、何かにつけて短気なピンク髪の少女である。
彼女に借金をしているとデルフリンガーは聞いているが、もう1人には心当たりがない。
目も合わさず、床を見つめながらサイトは答える。
「ロングビルの姐御だよ。
こっちに来て暫く面倒みてくれてたし、この仕事を紹介してくれたのも姐御だからな。何か恩返しをしたいんだよ」
「へぇ、義理堅いこって。そういう奴、嫌いじゃないぜ」
見直したというように、デルフリンガーは感心した声でサイトに共感する。
率直な意見を受けて、サイトはむず痒く感じる。
ドジだのノロマだのと常日頃から叱責されるのサイトにとって、褒められる事など随分と久しぶりであり、返答に窮してしまう。
暫くの無言の後、ちょろまかしてきたパンを懐から取り出すと、一息に頬張る。どうやら照れ隠しのようだ。
その一連の行動を見たデルフリンガーは、音も立てずに小さく鍔元の金具を震わせた。
「で、何時までこんな所に隠れてる気だい?」
「…………」
モゴモゴと口を動かしながら逡巡する。
咀嚼し、嚥下するまでどちらも言葉を発さなかった。談笑の声と優美なメロディーがその空白を埋める。
そして、漸くパンを全て飲み込んだサイトが口を開いた。
「とりあえず、あそこにあるご馳走をどうやったら手に入れられるかを考えるのが先決だと思わないか?」
「思わんねぇ。まだサボリを続けんのかい?」
サイトはふざけているわけではなく、いたって真面目な顔だ。
が、デルフリンガーは呆れたと言わんばかりに落胆した声で返す。先程の言葉を撤回したいような口調であった。
流石にバツが悪いと感じたらしく、サイトは不貞腐れた顔を背けて吐き捨てる様に呟く。
「……警備なんて、ちゃんちゃらおかしくてやってらんねぇよ」
「まあ、お城の腕っこきが警備についてるし、坊主に出番があるようには思えねぇな」
「だろ? だったら、とことんサボってやるさ」
学院の内外には、城から来た兵士が警備についていた。
特に、舞踏会が行われている本塔には魔法衛士隊が直々に警備についており、本来の警備員達は隅に追いやられている。
いつもより強固な警備態勢が敷かれている場所に賊が入り込むと思えず、よしんば入り込んだとしても、すぐに取り押さえられるのは目に見えていた。
そんなわけだから、やる気が起きるわけもなく、サイトは与えられた役割をサボタージュしたのであった。
そして、職務を放棄したのがばれるといけないのと、舞踏会で振る舞われるご馳走を目当てにしてこんな場所に隠れているのであった。
しかし、ただの下働きが堂々と会場に入れるはずもなく、手に入れられたのは、ホールに運び込まれる寸前のパンが2つ3つだけである。
それでも、普段の彼が口に出来る物とは雲泥の差があった。
ならば、テーブルに並べられている料理の数々を味わいたいと考えるのも、むべなるかなといったところだ。
だが、料理を取るにはテーブルまで近づかなければならない。テーブルまで近づくには、カーテンから姿を現さなければならず、それは、あまりにも危険な試みである。
頭を捻って考えても、サイトには姿を隠したままご馳走にありつけるアイデアは閃かなかった。
「こんな所で何してるの?」
不意に、頭の上から声をかけられ、サイトは顔を挙げる。
カーテンの隙間から差し込んでいた僅かな光は、小さな影で遮られていた。目を細めて光量を調節する。
カーテンを引いて覗きこんで来ている人影は、ジュディであった。
フリルがふんだんにあしらわれた淡いピンクのドレスに身を包み、金の髪は小奇麗に梳かされている。
そして、珍しい物を見つけた様な色を宿したハシバミ色の大きな瞳で、サイトを覗きこんでいた。
「サイト君もデルフ君もこんな所でどうしたの? かくれんぼ?」
「か、かくれんぼじゃないよ」
支援。
無邪気な顔で訊ねてくるジュディに、サイトはどうやって言い訳をしようか迷い、口ごもり忙しなく辺りを見回す。
それは、忍び込んでいるのがばれるのを恐れているがためであった。
だが、そんな事情など知らないジュディは、構わずに話し掛ける。
「どうしたの、キョロキョロして? やっぱり、かくれんぼ?」
「えーと、違うんだけど…… まあ、それで良いや。
だから、少し離れて。んでもって、あまりこっち見ないでくれたら嬉しい」
「うん分かった。
それよりもどう?」
ジュディは少し離れると、笑顔で訊ねてくる。
だが、サイトは質問の意味が理解できずに、頭の中を疑問符だらけにして聞き返す。
「? なにが?」
「もうっ、鈍感ね! そんなんじゃ、レディにもてないよ!」
サイトは本当に何も分かっていないらしく、ただただ聞き返す。
その態度にジュディはプリプリと怒るが、サイトは首を捻るばかりだ。
「??」
「お嬢ちゃんは、ドレスが似合ってるかどうか訊いてるんじゃあないかい?」
「あっ! そっか」
未だに疑問符を浮かべているサイトに、デルフリンガーが助け船を出す。その言葉にジュディは深く頷き、スカートの裾をつまんで持ち上げてみせる。
漸く合点がいったサイトは、ポンと両手を打ち合わせた。その仕草を見て、デルフリンガーは小さく嘆息した。人よりも機微に長けた剣である。
気を取り直し、ジュディは先程のやり取りをやり直す。
「どう? 似合ってる?」
「う、うん。似合ってる。可愛いよ」
軽やかにその場で一回転してポーズをきめてみせるジュディに、サイトは慌てて頷いて褒め言葉をかける。
それで機嫌を直したらしく、ジュディは満面の笑顔を浮かべた。
「でしょ? 学院長先生が用意してくれたんだ。あと、髪とかはロングビル先生が整えてくれたの」
「へぇ、姐御がねぇ…… そういや、子供の世話は慣れたものなのかな?」
一瞬、想像がつかないとも思ったが、サイトはロングビルと出会った時の事を思い出し、なるほどと納得する。
ああ見えて義理や人情に厚い所もあり、家族を、特に妹を大事に想っている事をサイトは思い出した。
それを知っていれば、ジュディに対する態度も、そうあり得ない事ではないと思える。
「それで、どうしてこんな所に隠れてるの?」
「別に好きで隠れてるわけじゃないけどね……」
「でも、此処にデルフ君を持ちこんで大丈夫なの? 怒られなかった?」
ジュディは、サイトがデルフリンガーを背負っているのを見咎める。
そんな事を聞かれるとは思ってもいなかったサイトは驚き、慌てて経緯の説明をする。
「えっ? いや、今日は警備員なんだ。
ほら、王女様が来るからってんで警備を強化するために駆り出されたんだよ。剣を持ってるからってね」
「警備員? こんな所にいて大丈夫なの?」
「ホントは大丈夫じゃないんだけど大丈夫だろ。
警備なんて、城の奴らに任せといた方が安全で確実だって。魔法衛士隊とか言うのに任せときゃいいの。
あの髭、なぁーにが『本塔の警備は我らが受け持つ、せいぜい足を引っ張らないでくれたまえよ。はっはっは』だ。けっ!」
サイトは厭味ったらしい声で誰かの物真似をする。恐らくは、件の魔法衛士隊の誰かの真似なのだろう。
憎々しげな顔のまま、サイトは陰口をたたくが、デルフリンガーがそれを遮る
「それで拗ねちまってこんな所に隠れてんだよ、坊主は。情けねぇよなぁ?」
「拗ねてなんかねぇ!」
「それが拗ねてるってぇいうんだよ。まったく……」
サイトはむきになって否定するが、デルフリンガーにあっさりと切り捨てられる。こういう切れ味だけは抜群だ。
ぐうの音も出ないサイトは、これはいけないと思い、話題をそらすためにジュディに訊ね返す。
「っと。それはともかく、ジュディはなにしてんの? 舞踏会なんだから、誰かと踊ったりはしねぇの?」
「ううん、見てるだけだよ。それに、なんだか圧倒されて、ココにいていいのかなって思っちゃって居づらいの」
「ああ、なんだか分かるなぁ。綺麗で豪華過ぎて、なんだか場違いな気になるんだよね」
「うん、そうなの。だから一緒にお話ししましょ?」
場の空気に馴染めないというジュディにサイトは親近感を覚える。
いままで身構えていたのが馬鹿馬鹿しくなり、体から無駄な力が抜けていく。
『ぐぅううぅ〜…ぅぅっ……』
気持ちが軽くなったせいか、空気が押しつぶされるような音がサイトの腹部から響いた。
サイトは赤くなって眼を逸らし、ジュディは声を上げずにクスクスと笑う。
「お腹空いてるの?」
「いや…… うん、まあ……」
「何か取って来てあげようか?」
「マジで!?」
「坊主…… 俺ぁ恥ずかしいよ……」
願ってもない申し出に、サイトはすぐさま飛びつく。
それを見ていたデルフリンガーは、忸怩たる思いを禁じえなかった。恥ずかしいやら情けないやらで、それっきり黙り込んでしまう。
「じゃあ、何がいい?」
「んじゃあ、肉がいいな。肉汁が滴ったヤツ。
……ぅん?」
恥も外聞も気にしていないサイトであったが、ホールの雰囲気が変わったことに気がつき、カーテンから顔を出す。
ホールに満ちていた穏やかな演奏は何時の間にか止んでいた。
人々の視線は入口、開け放たれた壮麗な扉の奥に集まっていた。小さなざわめきが走り、歓談の声が一時止む。
「ヴァリエール公爵家が息女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール嬢のおなーりぃーーっ!」
門番を務めている衛士が声を張り上げると、ルイズが姿を現した。
その姿を見て、サイトは息を飲む。
バレッタで纏められた薄桃の髪、ホワイトのパーティードレスに包まれた慎ましやかな肢体と純白の長手袋に覆われた白魚のような腕。
ドレスの胸元は大胆に開き、小さな顔には薄く化粧が施されている。
それらの要素と持前の高貴な美貌が相まって、ルイズは熟練の職人の手によって磨き上げられた宝石のような輝きを湛えていた。
そのルイズの姿からは、普段の尖がった雰囲気は鳴りを潜めており、まさに清楚な淑女のそれであった。
ジュディは感嘆のため息を漏らし、大きな瞳をさらに大きくして、憧れの眼差しで見つめている。
「わぁ…… 綺麗だね」
「あ、あぁ…… 馬子にも衣装ってやつ、だな……」
見とれていた事に気がついたサイトは、顔を振って自分の内に生じた感情を否定する。
ルイズの登場を皮切りに、楽士たちは流麗な音楽を奏で始めた。
いままでルイズの魅力に気がついていなかった男たちは、こぞってダンスに誘おうと彼女の周囲に群がっている。その中には、暗黒集会を開いていた太めの少年の姿もある。
ルイズは群がる男どもを振り切りると、踊る男女の間を流れるようにすり抜け、階段を上っていった。
「それってどういう意味?」
「……よく似合ってるっていう意味だよ」
「素直じゃないねぇ……」
でたらめを教えるサイトにデルフリンガーは嘆息する。
「そっかぁ。
言ってあげたら喜んでくれるかなぁ?」
「やめときな、お嬢ちゃん」
でたらめを真に受けるジュディをデルフリンガーは引き留めるのであった。
◆◇◆
夜は深まり、華やかな舞踏会も既に終わりを告げた。
学院は舞踏会があった事など嘘だったかの様に静かである。静かに吹く夜風は冷たく、舞踏会の余韻である熱を吹き飛ばしていく様だ。
2つの月は陰り、穏やかな闇に包まれた魔法学院の女子寮に、ルイズとジュディは帰っていた。
2人はベッドの上に座りこんでいる。
クッションを両手で抱きかかえたジュディは、興奮したように舞踏会での出来事を余すことなく話している。
それに対し、ルイズは頷いてはいるものの、時折、思考の空白が生まれている様子だ。
「でね、サイト君たら結局見つかっちゃって、窓から飛び降りたの。
しかも、2階から飛び降りたのにピンピンしてて、わたしビックリしちゃったぁ」
「そう……」
「もぅ〜 さっきから『うん』とか『そう』ばっかりじゃない!」
「……そう」
どんなに一生懸命、楽しそうに話してもルイズは生返事を返すばかりで、張り合いというモノが感じられず、ジュディは嘆息を漏らす。
そして、壁に預けていた背中を起こすと、ルイズの隣に移動する。
「どうしたの? 昼も何だかボーッとしてたみたいだけど、何かあったの?」
「えっ? うん…… 何でも無いのよ。だから、心配しなくても大丈夫よ!」
ルイズは慌てて顔をあげると、両手と顔をプルプルと左右に振って否定する。
「はぁ……」
「ほら! また溜息」
否定するのだが、また少し経つと再び溜息が洩れる。
「嘘っ! してないわよ」
「してたよ。自分じゃ気がついてないだけだよぉ。
本当に今日は変だよ? なにか悩み事でもあるの?」
それを見咎めたジュディに注意されるが、ルイズは頑なに否定する。
しかし、ジュディも譲らず問い詰める。
「はぁ…… 駄目ね私。ジュディを心配させるなんて」
ルイズはガックリと肩を落とすと、自己嫌悪を始める。
「ううん。気にしてないよ。悩み事があるなら聞いてあげるよ?」
「……そうね。1人で思い悩んでてもどうにもならないわよね。
誰かに聞いてもらった方がいいのかしら?」
「わたしなら、いくらでも聞いてあげるよ?」
「ふふ…… ありがとう。
じゃあ、話すわね。そうね、何処から話したものかしら……?」
ジュディに解きほぐされ、ルイズは意地を張るのを諦めて素直に相談しようと決心した。
ルイズは腕組みをして頭の中を整理し、ジュディはルイズが話し始めるのを正座をして待っている。
不意に、静かになった部屋に乾いた音が響いた。誰かがルイズの部屋の扉を叩いているようだ。
ノックの音は規則正しく、間を開けて2回、続けて短く3回叩かれる。
「お客さん?」
「このノックの仕方……
まってジュディ、私が出るわ」
ジュディが腰を上げようとするが、ルイズはそれを制止した。
足を縺れさせながら扉に駆け寄ると、ドアノブを引いて訪問者の姿を確かめる。
扉の先、薄暗い廊下に立っていたのは、黒いフードをすっぽりと被った人物であった。
フードからは細い顎が覗き、体つきはふっくらとしている。それらの事から、少女だという事が見て取れる。
ルイズは目を見開き、探るような仕草で少女をつぶさに観察した後、呆然と呟く。
「貴女は、もしかして……」
少女はその先を片手で制する。そして、辺りの様子を窺った後、流れるような足取りで部屋へと侵入し、後ろ手で扉を閉めた。
一息吐いた後、少女はフードと同じ色のマントの裾から杖を取り出すと、短くルーンを紡いで一振りした。
振られた杖からは、輝く粒子が生まれ出て部屋中に広がり行く。
「デティクトマジック?」
「壁に耳あり私メアリーと言いますし、用心に越したことはありませんわ」
使われた魔法を言い当てたルイズに、安全を確認した少女は悪戯っぽく微笑む。
少女の声を聞いたルイズは、はっとした顔になった。
慌ててジュディへと向き直る。そして、ベッドから枕を引っ掴むと、ジュディの両手にそれを押し付けた。
「ジュディ、悪いんだけど席を外してくれない?
そうね…… 今夜はキュルケの部屋にでも泊まってほしいの」
「どうして?」
「今は理由を聞かないで。2人にさせて、お願い」
「むー…… しょうがないなぁ。後で説明してよね」
渋々とジュディは承諾すると、枕を抱えたまま部屋の外へと出て行った。
ルイズと少女は暫くの間見つめ合い、静寂が訪れる。
その沈黙を破ったのは、少女の方であった。黒いフードを脱ぎ捨て、素顔を露わにする。
少女が誰か確認したルイズは、慌てて膝をつくと、首を垂れた。
「お久しぶりね、ルイズ・フランソワーズ」
「姫殿下!」
フードの奥から現れた顔は、トリステイン王国王女アンリエッタ。その人であった。
◆◇◆
ジュディは階段をのぼっていた。
壁には等間隔にランプが掛っており、揺らめく緋色の炎がボンヤリと廊下を照らしている。
だが、その光は頼りなく、足元を照らすには十全ではない。
ジュディは躓かないように、薄暗い階段を一歩一歩確かめながらゆっくりと上がっていく。
向かう先はタバサの部屋だ。
キュルケの部屋にも行ったのだが、何か理由があるらしく断られたのであった。
ジュディは、キュルケとのやり取りを思い出しながら階段を上っていく。
・
・
・
「ごめんね。今ちょっと立て込んでて、泊めてあげれないの。
そうだわ。タバサに頼んでみたらどう? あの子なら、きっと泊めてくれるんじゃないかしら?」
キュルケは顔だけをドアの隙間から出し、マントで体を隠すようにマントをピッタリと前で閉じている。
言葉もそこそこにキュルケは部屋に引っ込んでしまった。
閉じられた扉の向こう側から話し声が聞こえてくる。
「待たせたわねぇ…… ほら! ご褒美だよっ!」
「ひぃぅっ! ぁ、ありがとうございます……」
何かが空を切る鋭い音とくぐもった男の声が僅かに耳に届いた。
それの意味するところを完全に理解出来なかったジュディであったが、あれが大人の世界なのだろうかと漠然と思った。
・
・
・
大したトラブルもなく、ジュディは5階に辿り着いた。
廊下の両脇には幾つもの扉が並び、それぞれにネームプレートが掛っている。
ジュディは、ネームプレートのひとつひとつを確かめながら廊下を進んでいき、タバサの部屋を探し当てた。
つま先立ちになり、少し背伸びをしてドアをノックをする。だが、いくら待っても反応が返ってこない。
ジュディは首を傾げるが、再びノックをして呼びかける。
「タバサさん、居ないの?」
やはり返事はない。
ここがダメなのならば、あとはコルベールの研究室くらいしか、ジュディには思いつかない。ロングビルを頼ろうにも、教職員用の寮には行ったことがないのであった。
どうしたものかと途方に暮れていると、唐突に扉が開かれた。片手に本を携えたタバサが姿を現す。どうやら、読書中だったようだ。
読書の邪魔をされて不機嫌な様子もなく、何時もの調子で簡潔に問うてくる。
「……何か、用?」
「あっ、こんばんは、タバサさん。
えっとね、ルイズさんのお部屋にお客さんが来てるから、今晩泊めてほしいの」
「…………」
タバサは無言で頷き、部屋の奥へと引っ込んでいった。扉は開いたままだ。
ジュディは、置いてけぼりにされて暫く立ち尽くす。
やがて、部屋の奥からタバサが目配せをしたのに気がつくと、部屋に足を踏み入れ、静かに扉を閉めた。
「ありがとう、タバサさん。あと、突然邪魔しちゃってゴメンナサイ」
「……問題、ない」
感謝の言葉に一言だけ返すと、タバサは顔を覆い隠すように本を開いた。
・
・
・
今回の成長。
ルイズは、肉の鎧L2を破棄してマハラジャL3のスキルパネルを習得しました。
ジュディは、聞き耳L2を破棄しておしゃれL2のスキルパネルを習得しました。
魔道板を読み解き、『ビルドアップ』を習得しました。
第11話 -了-
第11話投下完了。
……今回もルイズのセリフが少ないなぁ。ま、いっか。一度あることは二度あると言うし。
あと、誤解されぬよう言っておくと、作者はキュルケの事は嫌いじゃないですよ。
本当なら、もう少し早く投下する予定だったんですけど、saga2が面白くて……
支援
乙。
まぁたまには主役を変えてみるのもいいでしょう。
ところで、ルイズがRYU FINALのリュウvs豪鬼戦の記録映像か何かを見たらどんな顔するかな?
乙。
ところで魔導書の人よ。
童じゃなくて妾じゃね?
あとシュヴルーズがシュヴァルーズになってね?
あと魔導書の人に関しては、改行位置が少し早すぎるのが気になった。
ぎゃー! 本当だ!
>>170 の人報告感謝します。
大学で書くと、PCが変わるから登録されていない+それを忘れている=現在の悲劇。
なんて、悲劇……
「汝」と書いて「なれ」と読む、とか?
それは悲劇じゃなく喜劇w
誘導がなかったのでスレが進んでることに気づかなかったぜ。
シュラト呼ぼうぜ
勝手に呼べ
いまあっついたま〜しい〜を〜♪
あかほりさとるかぁ……なにかあの人の作品って呼ばれてましたっけ?
>>174 学生の本分は勉学にあり、大学は学び舎であるという始祖ブリミルからのお告げなのです。
>>180 ♪誰かの傷ついた心が〜孤独な空で燃え上がる〜
もっとも呼ばれたというよりラダム樹でみんな改造されちゃってさぁ大変というお話だけど。
>>180 ヤリパンサーがスタンばってる笑いの勇者がですね
セイバーの小樽と3人娘&花菱召還とか面白そうだけど俺には書けそうも無いぜorz
ウィルフレド召喚。
ナルト召喚とかどうだろ?
三年間の修行のために自来也と里外に出てる時に召喚されてルイズに影分身の術とか教えたりww
逆口寄せでいつでも戻れるナルトとガマ親分の逆口寄せで来た自来也とか
本格的な諜報機関ができたり
シエスタが写輪眼持ちとか
才能があれば書けるのにorz
ローディ先生呼ぼうぜ
同じ粗製同士ルイズと気が合うかも
まあ後に低い適正を経験で補って一企業最高戦力に上り詰めた努力型と
元々虚無の資質を持っていた才能型で違いはあるが
求めよ、さらば与えられん、とは思わん事だ、
書けよ、さらば与えられん
だからこそ俺はSSを書きはじめたのさ
ねだるな、勝ち取れ、さすればどうたらこうたら
つまりエウレカセブンから…
…なんか誰を呼んでもいまいちパッとしないな。
レントンのコンビニからクワトロ大尉を召喚…
三次創作なのでアウトー!となるぞ
ラノベだけど薔薇のマリアからSIXを召喚
初日に○イプされるルイズ
決闘で負けた後公衆の面前で掘られるギーシュ
バズーカでゴーレムぶっ壊された後レ○プされるおマチさん
お忍びでルイズの部屋にやって来てレイ○されるアンアン
ヒゲだから掘られたあと死姦までされるワルド
避難所行きってレベルじゃ無いな
クラウザーさんは避難所行き?
>>193 すでにデトロイトメタルシティーのクラウザーさんは喚ばれている。
まとめ調べろ。
それでもやるというのなら止めはしない。
>>96 超遅レスだが一言
『こ の マ ヌ ケ 面 が ぁっ!?』
ウッドゥン・フェイスなど…なんて素敵な提案をしてくれるんださあ早く書き上げるんだハリーハリーハリー!
ゼロな提督見てて思ったんだが
ミサイル攻撃って現代レベルのミサイルと換装してたの?
単に核じゃない通常弾頭に換装しただけじゃね?
単純な運動エネルギーだけで十分じゃないか?
通常のミサイルは、その爆発自体のエネルギーよりも、飛び散る破片の方がダメージがでかいと聞いたことがある。
っていうか戦争に使う爆弾の類は大概がそうじゃないのか?
いわゆる「パイナップル」がボコボコにしてあるのは
効率的に破片を飛び散らせる為だろ?
爆発のエネルギーによるダメージが中心の兵器となると
燃料気化爆弾とか核兵器とかの大量破壊兵器クラスになっちゃうと思うんだが
単純な爆薬(ダイナマイトとか)の爆風を直接ぶつけるよりは、やっぱりそっちの方が効率が良いのかね。
対人殺傷力を高めるのに、爆薬に周りに木ネジやら釘などを配置しておくのはセオリー。
SASの隊員はアイスクリームの空き箱に鉄の破片や釘にC4をあわせて詰め込んで自作クレイモアを作ったらしいな
台風の日に外にいると風自体は大丈夫だけど、
飛んできた看板の破片とかに当たると致命的なのと一緒なんでない?
そこでエクスプロージョンだろ
タルブ戦のエクスプロージョンを対人仕様にしてみる
そこまで言うんなら人間そのものを標的にしておけ
グロいことになるけどな
エクスプロージョンの特性を考えれば
装備だけを吹き飛ばす事も可能なはず
つまり全裸(ry
「だったら麻雀で勝負よ!!」 ってやつか
人間を標的にすると一人粉砕だけど、岩を標的にすれば複数人を・・・
対人用エクスプロージョンってあべしとかひでぶ的な意味でヤバい気がする
ここは爆弾を語るスレですねわk(ry
だってルイズは爆弾むs(ry
ケンシロウ召喚…
アルビオン編が凄い事にw
じゃあ前田慶次(花の慶次)召喚…一緒かw
じゃあ斎藤杢之助を召喚しようぜ。
確か爆弾もイケたはずだ。
前田慶次を喚ぶなら一夢庵ひょっとこ斉のほうがいいだろ
>>200 関係ないけどパイナップルのでこぼこはあまり威力に寄与してないって、後の調査でわかったらしい。
外じゃなくて中に刻み目つけた方が効率よく破片が飛ぶんだって。
>>219 慶次だったら「ガキと喧嘩はできん」で済む。
だから爆弾つながりで捨丸呼ぼうぜ。
ギーシュ「うっ…う…ぐ な…何をやってんだよ
明日は死ぬかもしれないってのに…みんなバカだよ…
そ…そんなんじゃ…おれ…行けねえじゃねえかよ!!」
あれ? 陥落直前のニューカッスル城での話みたいだ
爆弾だったらボムボムの実の人とか
松風と一緒に召喚じゃないと、どっかで暴れ馬とか暴れ竜とか暴れマンティコアとか捕まえないと
>>221 確かあまったれボンボンだった若者が、慶次に触発されて男になるって話があったよなぁ。
あと、まだ幼い殿様が切腹する話とかも。
>>223 フレイムかシルフィードでよくね?
あるいは野良ワイバーンを飼い馴らすとかw
ルイズ・ヴァリエールの小便鉄砲くらいやがれ〜!
>>227 グランドプレ氏がアップを始めたようです
ハイアットがカトレアに召還されました
「あらまぁ・・・ここはいったいどこでしょう」
「ごめんなさいね、私があなたを召還したの、うっ、ゴホゴホッ」
「はやくイルパラッツォさまの所に帰らなくては」オロオロ
「この病弱な体が憎いっ!えいえい」
胸をぽこぽこ叩いている
「そ、そんな事をしては駄目ですよ。そうだ、こういうとき飲む薬があったんだわ」
ジャラジャラ
説明中
「異国の薬ならもしかした治るかもしれないわっ!ありがとう綾杉さん」
「いえいえ」
ごくり
っかと目を見開き、口と耳と花から紫色の汁を出しながら
ヤバイ痙攣をし始める
ばたばたばたばた・・・へなり
「まぁ、大変・・・・息をしてないわ」
おわり
233 :
223:2008/11/22(土) 14:30:20 ID:3OqG/aN4
>>225 慶次「速い。なんて速さだ。まるでお前は 松風だー」
シルフィード「(シルフィーはシルフィーなのね〜)」
>>233 違和感ゼロww
そして使い魔取られたタバサ涙目w
そう言えば花の慶次で傷口洗うのに小便かけてたよな…
ゴクリ…
このロリコンどもが!(ry
ルイズに召還させるならパッパラ隊(初期)の水島とかも良さそうな
例えどんな攻撃されてもほぼ無傷な不死身キャラ(一部例外在り)だから相性は良いかも
ただパッパラ隊だと嫉妬マスクシリーズととびかげ&ごうてんが他の虚無に呼出されてしまうのが容易に想像出来てしまうのが難点か
ジョゼフに嫉妬マスク召還されたら凄いだろうな、主抹殺しようとする使い魔との血で血を洗う戦いが…
いきなり関係ない話で悪いが、いままでの作品の中で、ガンダールウ゛としての力を一番引き出せてるキャラって誰だろう?
>>239 大半のイベント(レコンキスタがらみ)が起こらなくなりそうだなw
美形で愛人ありなのに弟萌え一筋なんてしっと団からみたら抹殺対象ど真ん中だろうなw
>>241 レコンキスタとはもてない男達の集団でイチャつくカップルを始祖の名の下に成敗する事を目的としている。
こんな感じで大半のイベントもパッパラ風に起きます。
>>239 いや、とびかげ&轟天は召喚されなくても何時の間にかいるのでしょう
で、オスマンが「ややこれはとびかげ先生、お久しぶりです」
しっとマスクがジョゼフに「メリィィィィークリスマーーース!」と言いながらフルボッコにする姿が見えたww
ふとタバサへの嫉妬から嫉妬レディ二号となったイザベラとか
ときめも仮面を教皇が召還してしまって双方涙目な姿とかも毒電波に乗って脳裏に……
疲れているんだろうか.......
きっとタルブには温泉があって「ストライクフリーダム温泉じじい」
とかいう人気者が居たりするんだよ。
ギーシュが薔薇の湯を見て感激し中に入ったところ…これ以上は書かないでおこう。
アッー!
「虚無の使い魔と煉獄の虚神」の続きってまだでしょうか?
滅茶苦茶気になる
サイト君は何時まで女のトコに居るのだろう・・・
253 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/22(土) 18:25:41 ID:/606Vj/S
>>252 まだでしょうか? とか言われて分かる奴がどこにいるんだ
>>216 ケンシロウ召喚は考えてはいたけどギーシュとの決闘騒ぎは起きずに
ギーシュ「やいメイド、君が機転を利かさなかったからひどい目に会ったぞ!」
シエスタ「ひえー、めんごめんご」
ケンシロウ「あ、ちょっといいですか?虫が・・・ほっ!」
ぺし
ギーシュ「いて」
ケンシロウ「ああ、とれたとれた」
ギーシュ「やれやれ、なんだあいつ・・・はべら!」
マルコリヌ「うわぁ!なんだこいつ、急に死によったぞ」
ってなるからなぁ
ケンシロウはやるじゃないの人と戦った時も
ちょっとぼこる程度で済ませたよ。
他にもサウザー爆裂死させなかったりと相手はちゃんと選ぶ。
チンピラは必要以上に無惨に殺してたがなw
マリコルヌ「どこからでもどうぞ」
北斗勢召喚はマジで面白そうだなwwケンやレイ、シュウとかファルコなんかはルイズとも上手くやれそうだが、
万が一ラオウやカイオウ、サウザー、アミバ、ジャギ様でも喚んだ日には…ww
ケンシロウは飛べないからレビテーションを使われたら手も足もでない
飛び道具も天破活殺くらいしかないし
下から石でも投げるだろ
知らないのか?ケンシロウもラオウも空を飛べるぞ
二人の最初の対決時、ちゃんと空を飛んでいただろ。ラオウは馬ごと
・・・なんで馬まで・・・
北斗剛掌破…
レビテーション使ってる間はメイジ側も攻撃できないから大丈夫。
ラオウが馬と一緒に召喚されたら・・・・
「異国の王を召喚した!」
各国王族完全位負け
でも、ラオウはタバサの使い魔になって欲しい
ケンシロウも北斗剛掌波使えただろ
ケンシロウはちゃんと対空技持ってるから(格ゲー的な意味で
すごいよ!!マサルさんのキャシャリン召喚してちぃ姉さまにつよしスペシャルをですね…
修羅の国で天将奔烈も使ってた。
飛び道具反射の二指真空把もある。
カトレアがチョッパー召喚
激流に身を任せ同化する
サイトもギーシュに浮かされて何も出来なかったからなあ
まあケンシロウなら闘気で何とでもなりそうだがw
カイオウの魔闘気で浮かされ攻撃受けた前例があるのを忘れたかね
対抗策は既にある
>>268 絶対に元の世界に戻ろうとする
というか今までに召喚されたキャラも普通に契約を了承してて不自然すぎる
あの遠心力で足場を作るやつかwww
マヌケにもほどがあるわw
>>272 「とりあえず戻る方法がないから」ってのはそれなりに十分な理由になるんじゃないかと思うが。
大体の所は「無理してまで戻る理由がない」か、「戻れるようになるまでの間、仕方ないから使い魔」のどっちかパターンじゃない?
それが納得できないとしたら作者の描写不足だろうな。
あるいはキャラが(あるいは作者が・・・げふんげふん)深い事を考えないタイプとか。w
>>274 戻りたくないというパターンもいくつかあるな。
あと、普通に戻れるから気にしていない人もいたような。
>272
チョッパーだったら取り敢えずちぃ姉さまの病気を治そうとしてくれるだろ。
その後でルフィ達の所に戻ろうとするとは思うけど。
召喚じゃなくてクマにハルケギニアまで吹っ飛ばされたことにしよう
>>277 そうなるとハルケギニアがいまだ発見されていない未知の大陸ということに…なるのか?
>>277 飛ばされたタイミングで召喚。
本人は飛ばされたと思い込んでいる、でどうだ?
>>278 グランドラインの異常性を考えるとあながち大丈夫のような
でも海軍とか一部の海賊は把握してそう、ハルケギニアも一部だけがしってるとか
ミラー二等兵が召喚されました
予約ありますか?なければ投下しようと思います
なければ投下します
避難所とどちらにしようか迷いましたが、結局こちらを選びました。
イゼルローン要塞のプラス1809レベルには森林公園がある。
人工天体内の人工森林であるため、その生態系は人間の管理下に置かれている。このた
め蚊などの人間が害虫と呼んで忌み嫌う生物が存在しない。これを不自然な歪んだ環境と
いう者もいるし、「昼寝するには最高だ」と評した者もいる。具体的には、この要塞の元司
令官。
その男が昼寝場所に決め込んだ場所には、別の人物の姿があった。亜麻色の髪を持つ若
者は、かつて彼の師父の昼寝場所だったベンチに腰を降ろし、空になったスナック菓子と
飲み物を脇に置いていた。そして彼を遠くからみつめる人影もあった。
厳密に言うと、それが人影と呼べるかどうかは分からない。何故なら、その影はあまり
にも大きかったから。ジーンズの上下を着込み、スニーカーを履いている男性、と言えば
いいのだろうか。服装は平凡なものなのだが、サイズが人間の範疇になかった。それは身
長2.5mはあり、丸いボールをつなぎ合わせたような筋肉が体中に盛り上がり、圧倒的
な威圧感を周囲にまき散らしていたから。
その人物はしばらくの間ウロウロと考え込みながら歩きまわった後、意を決してベンチ
へと歩き出した。そして若者の前に立った時、携帯端末を取り出し、襟にマイクを取り付
けた。
「あの、ユリアン・ミンツ司令官殿ですね?」
その人物が、正確には携帯端末から呼びかける声が投げかけられた時、ユリアンは別段
驚かなかった。彼の事は事前に知っていたからだ。彼は頭部に巻き貝のようにねじれた角
を持ち、突き出た口からは涎が垂れ下がっていた。そんな異様な頭部を持った人物は、ユ
リアンは一人しか知らない。そして彼がイゼルローンで様々な治療を受けている最中だと
いう事も報道から知っていた。
「そうです。ですけど、もう司令官ではありませんよ。それに僕は軍を退いたのです。え
と、たしか、ラスカルさんでしたか?」
「…ラルカスです。どうしてみなさん私の名をラスカルと間違えるのでしょうね」
「すいません。でも、どうしてでしょう?」
そういって若者は恥ずかしげに笑う。涎を垂らし続ける男も、鼻と口から荒く息を吐い
た。笑っているらしい。巨人というに相応しい牛頭の男は穏やかに元司令官と言葉を交わ
していた。
巨人は一般的にミノタウロスと呼ばれる外見をしていた。
特別編 魔法使い達
その時、自動翻訳をしていた携帯端末からピリリリ…とアラームが鳴る。神話世界の幻
獣は科学の産物たる携帯端末を硬く太い指で操作し、モニターから幾つかのデータを表示
させた。
「失礼、薬の時間ですので」
「どうぞ。事情は承知してますので、気になさらずに」
ラルカスと名乗るミノタウロスは別のポケットから小さなケースを取り出し、モニター
の表示に従って幾つかを大きな口の中に放り込んでいく。
大きなゲップを吐き出しながら、ラルカスは再び語り出した。
「銀河帝国の人々は皆、医療はメイジに限る、と言います。ですが、そんな事はありませ
んよ。
ミノタウロスの肉体に脳移植をした人間の私の理性を守ってくれているのは、間違いな
く科学で作られた薬です。あえて脳の機能を制限する事で脳の暴走を抑える抗精神病薬。
これが無ければ、とっくに私は身も心もミノタウロスになって、今も人を襲い、喰らい続
けていたでしょう」
人を襲い、喰らう。その言葉を聞いた時、ユリアンの眉は僅かに歪んだ。その事にラス
カルも気付き、慌てて牛の頭と両手を左右に振る。
「ああっ!すいません、無神経な事を言ってしまって。もちろん私は自分の罪を必ず償う
つもりです。そのためにも私は自分の肉体と水魔法と知識を銀河帝国に提供しているので
す」
謝罪された若者も慌てて頭を下げた
「いえ、こちらこそすいません。その辺の事情も承知しているのですから、僕の方が気を
使うべきでした」
どちらか迷ったなら、普通の神経してれば避難所行くよね支援
ファイエル。あそこらへんに支援。
(ブリュブリュブリュブリュ)
そう、ユリアンは知っていた。ミノタウロスの彼は人間の脳を持つ事を。かつては優秀
な水のメイジだったが、不治の病に冒された肉体を捨て、ミノタウロスに脳移植した。そ
の後、ミノタウロスの肉体に脳を冒され、理性を失い人を襲う怪物へ成り下がりつつあっ
た。その後ガリアで掴まり、イゼルローンへ送られた。
お互いが相手の謝罪を受け入れた後、ユリアンは再び静かに神話の獣へ言葉をかける。
「ところで、今は病院を出ても大丈夫なのですか?」
その問に牛の頭が上下に揺れる。
「主治医から外出許可は得ています。また、ミノタウロスとしての本能が高まった場合の
ため、この薬…超高濃度リスパダールをもらってますよ。もともと強力な抗精神病薬です
が、私のために更に濃縮してくれたそうです」
と言って巨大なジーンズのジャンパーのポケットから取り出したのは、その大きな手の
平の上では小さく見える緑色のボトル。さらに襟をめくり、首筋の皮膚に取り付けてある
小さな機械を示した。
「そして、これ。センサーも付いてるんです。これはミノタウロスの細胞が活性化した時
に、人間では使用されない鼻腔の器官である鋤鼻器官(じょびきかん:嗅覚でなくフェロ
モン様物質を受容する器官。高等霊長類では機能せず、鼻腔内に痕跡が残るのみ)も活性
化するのを利用してるそうです。
ミノタウロス細胞活性化により私が理性を失いそうになれば、まず電撃で私を気絶させ
ます。同時に警報が病院と警察、そして軍に警報が送られます。私の皮膚は硬いし、魔力
は水のスクウェアですが、帝国軍なら殺すのに苦労はしないでしょう」
「そうですか…それは良かった、と言って良いのかどうか、僕には分かりませんが、とも
かく安心はしました」
ミノタウロスは頷きながら薬をポケットに戻して服を整える。
「安心して良い事ですよ。何より、私自身が安心しているのです。これでもう自分が人を
襲う事はない、と。
ガリアで捕縛された時、理性が残っているうちに死罪にして欲しい、と訴えました。で
もシャルロット女王様は私のような怪物にすら情けをかけてくれました。私を銀河帝国へ
送ってくれたのです。
そしてこの世界の人々は、私を単なる実験動物として扱わず、私の治療のために本当に
頑張ってくれています。遺伝子治療によるミノタウロス細胞の不活化、薬物投与による脳
神経細胞保護と、ドーパミンやグルタミン酸やセロトニン等の神経伝達物質補給…と、す
いません。この辺は勉強中で、よく分からないのですが」
「いえ、この宇宙に来て一年もないのに、そこまで学んで理解出来ているなんて、驚きま
した」
これはお世辞でも何でもなく、事実ユリアンは驚いていた。
確かに脳移植すら行うほどの水メイジであるため、もともと医学に関してはそれなりの
知識をもっていただろう。だがハルケギニアは魔法世界。その出身者が医学限定とはいえ
専門用語を口にするのは驚きだ。第一、だらだらと涎を垂らした牛の幻獣が科学用語を並
べると、さすがに凄まじい違和感がある。
通訳をしていた携帯端末が、今度はプルルル…と音を立てる。
「すいません、病院に戻る時間になってしまいました。せっかくミンツ殿とお話が出来た
のに、残念です」
「いえ、これからもお話し出来る機会は必ずありますよ」
「そう願います。かのヤン殿のご子息と出会えたなど、一生の自慢ですから。長々と大事
な時間を取らせてしまって申し訳ありませんでした」
そういってミノタウロスは携帯端末を畳んで大きな胸ポケットにしまう。そして深く頭
を下げ、今度は自分の大きな口でたどたどしい帝国語を語った。
「サヨウナラ。マタアイマショウ」
ジーンズ姿のミノタウロスは、その重量で小道に大きな足跡を残しながら公園の入り口
へ向かって歩いていった。
彼が向かう先、人口森林を囲む壁の一角には、沢山の窓が並んだところがある。それは
イゼルローン中央病院。この一年で新設された巨大な総合病院兼生命科学研究所。公園に
面した区画を利用しているのは、患者のストレスを軽減する為に、病室の窓から見える風
景を開放感ある爽やかさに演出するため。森林公園ブロックの、雲の浮かぶ青空が投影さ
れる天井近くまで、病室の窓が5階分くらい積み重なっている。
さて時流に取り残されたゼロ魔キャラ達は何してるのやら支援
ヤン・バレンタイン提督支援
「さてと、僕もそろそろ行かなきゃな・・・」
誰に言う出もなく、ユリアンは呟く。
ベンチから立ち上がり、お尻を払いながら周囲を見渡す。そして空になった菓子袋に飲
み物の容器を突っ込み小さく丸めてベンチ横のゴミ箱に向けて投げる。その袋は空中でカ
ツンと音を立てて跳ね返り、ゴミ箱の中に落ちた。
ユリアンはベンチや小道全体を覆っている透明な強化ガラスを二回ほどコツコツ叩いて
から歩き出す。それは最近設置されたガラスの小道。
ここは森林公園。イゼルローン要塞内部の人工森林。当然、そこにいる生物は全て科学
の管理下にある。そして人間は管理外ゆえ、公園に立ち入れないようガラスの小道のみ歩
く事を許された。
だから、ガラスの向こうに立つ木も、降り注ぐ陽光も科学で制御されている。木々の間
を飛び回る鳥――20世紀初頭に乱獲のため絶滅したはずのリョコウバトも。水辺の岩の
上でひなたぼっこする、やたら大きくて真っ赤で尻尾からチロチロと火を上げているトカ
ゲ――サラマンダーも。エアコンが起こすそよ風にぷかぷかと宙を漂う目玉のお化け――
バグベアーも。木の上で毛繕いをしている、イタチに似てはいるが大きくて青い潤んだ瞳
を持つ生き物――ハルケギニアでは偉大なる古代の幻獣と呼ばれたエコーも。
小さくて大人しい個体ばかりを選んで、ではある。だがそれでも科学の範疇から外れて
いるはずの幻獣達が、直径60kmの人工天体イゼルローン要塞内部にある森林公園で、の
んびりと穏やかな時を過ごしていた。
イゼルローン要塞。それは一年ほど前までは銀河帝国に抵抗する共和主義者達が死闘を
繰り広げた最前線。
だが今は別の意味を持っていた。
それは、魔法世界への窓口。科学と魔法を融合させる最先端の研究施設。第二地球から
連れてきた様々な生物が銀河帝国側の生物と生態系に与える影響を調査する実験機関。昨
年捕獲した召喚門を管理する『アインシュタイン・ローゼンの橋』監視観測司令所、通称
『ゲート』の運営拠点。第二地球調査研究機構本部。etc...
そして今、イゼルローン要塞は銀河帝国ローエングラム王朝初代皇帝ラインハルト一世
と民主共和制の中心人物ヤン・ウェンリーによる戦争終結宣言より一周年を記念する式典
の会場として準備が進められていた。
「ちょっとユリアン!どこほっつき歩いてたのよ!」
自室に戻ってきたユリアンは、玄関の扉を開けたとたんに甲高い女性の怒声で迎えられ
た。
「おーう、お帰り、元司令官殿。お前さんの被保護者は一緒じゃないのかい?」
廊下の奥からは鉄灰色の髪とソバカスの男性がヒョコッと顔を出した。
「元司令官って言うのは止めて下さい、アッテンボロー元中将」
「はは、そう呼ばれると昔を思い出すな。もう一度、帝国相手に大暴れしてみるか」
そんな焦臭い事を言う男が開いたままの携帯端末を手にして部屋から出てくる。その後
ろから青いTシャツにショートジーンズを着た女性がついてくる。
「バカ言ってないで、早くはいんなさいよ。もう、こいつのインタビューの相手はウンザ
リよ」
「これは申し訳ありません、レディ。これもジャーナリストの職責ゆえ、お許し下さい」
なんて口では謝罪するアッテンボローだったが、態度は全然詫びれてない。軽口を後ろ
の女性に投げかけつつ、玄関へやってきた。その後ろからも女性が来る。長いピンクの髪
を揺らす小柄な女性だ。
ユリアンは女性に軽く頭を下げた。
「すいません、ルイズさん。無理を言ってインタビューに応じてもらって」
「まったくだわ。こんなの、もうハッキリ言って飽きたわよ。ユリアンの頼みじゃなかっ
たら絶対聞かなかったんだからね!」
そういってルイズは頬を膨らましてプイッとそっぽを向く。
もっとも、ユリアンもアッテンボローもルイズが別に怒っていない事は知っている。こ
ういう言い方をする人だという事は、アッテンボローの先輩かつユリアンの養父から聞か
されていたから。
ルイズは翻訳機の合成音ではなく、自分の肉声で流暢な同盟公用語の話を続ける。
「それで、肝心のヤンは主ほったらかして、どこ行ってるの?」
部屋に入って思い思いに椅子に座る三人。ソファーに腰掛けたルイズに聞かれたユリア
ンは少し首を傾げて考える。
「司令部ですね、フレデリカさんも一緒だったはずです。式典の予定とか予行演習とかの
ためにキャゼルヌさんに狩り出されるんだ…と、嫌そうな顔してました。まだ戻っていな
い所を見ると、長引いてるようですね。
確か、アッテンボローさんも呼ばれていたはずですが?」
「俺は黒幕に徹するのだ」
不良中年は胸を張ってサボる事を宣言した。
「それに、そんな儀式より大事な事がある。是非ともルイズお嬢様からハルケギニアにお
ける先輩の真実を聞き出さねばならないんだ。
というか、先輩だったら、もっと醜態を晒したはずなんだ。あんな安物TVみたいに格
好良くない!ようやく念願のジャーナリストになったんだ。絶対、絶対に、低俗なマスコ
ミによる真実の隠蔽・事実の捏造に抵抗してやる!」
そういって、敬愛する先輩にして歴史的偉人と化したヤン・ウェンリーの評判を落とす
べく決意を新たに拳を振り上げる。横で聞いてるルイズとユリアンは苦笑いしながら目を
合わせてしまう。
ルイズは机のリモコンで立体TVをONにした。
「その捏造というのは、このドラマのことね」
立体映像は中世ヨーロッパの城はバックに、目鼻立ちの整った役者達が仰々しい演技を
している。その中には収まりの悪い黒髪にベレー帽をのせた、とても美男子で引き締まっ
た肉体を持つ男性が軽やかにユニコーンを駆る姿があった。
「確かにひどい捏造ですね」
ユリアンも同意する。そしてアッテンボローの先輩にして元上司に対する罵詈雑言は更
に続いた。先輩はこんな美男子じゃないだの、もっと体はたるんでるだの、格好付けた台
詞なんか絶対言えないだの…。さらにはルイズまで一緒になって、あいつ私の下着を洗お
うとしてボロボロにしてくれたんだから、とか、ヤンが来てから私まで寝坊の常習者にさ
れたんだから、とか。
それを聞かされているユリアンは、一緒になって笑うべきか養父の名誉のため怒るべき
か、脳の左右で両意見が戦わされていた。
彼等が話しているのは、数ヶ月前から始まったTVドラマシリーズ。題を「異邦人」と
いう三部作だ。第二地球に迷い込んだ人々の冒険物語を元にした、一応はフィクションと
いう扱いになっている。銀河帝国の人々へハルケギニア世界を伝えるための素材として、
舞台はリアルに徹している。ただし、アッテンボローが言うように、脚色やら演出やらが
酷い。
第一部はオイゲン・サヴァリッシュのサクセスストーリー。ハルケギニアの片田舎タル
ブの村を舞台にした、苦難と挫折から這い上がり成功を手にした男の物語。これは元々が
ハッピーエンドで終わるため、さほどの脚色はない。平和な片田舎で起きる涙と笑いの人
情模様が中心だ。もちろん村を襲う悪いメイジが荷電粒子ライフルで狙撃されたり、悪徳
商人を科学知識と勇気で懲らしめるシーンはある。そんな事実はないが、入れないと盛り
上がらないので追加された。
第二部はヨハネス・シュトラウスの冒険物語。本人は異世界を逃げ回り、放浪の果てに
絶望と共に死んだ。だがドラマでは、行く先々で悪と戦い弱きを助け平和を守り風のよう
に去っていく謎のヒーローにされてしまった。オスマンと出会う前に盗賊達を倒した話な
どは、ハルケギニアを裏から支配する邪教集団をたった一人で壊滅させ、その首領と一騎
打ちの末に相打ちになる…メチャクチャな誇張がされた。ラストは『オスマンに匿われて
表向き死んだ事にされた彼は、タルブから迎えに来たオイゲンに連れられて静かな余生を
過ごした。だがハルケギニアに悪のはびこる時、再び彼は銃を手に立ち上がるだろう』と
いうエピローグ付き。これを見たヤンは何も言わなかったが、これは開いた口が塞がらな
かったという類だろう。
そして第三部は、当然ながらヤンの物語。ヤンはドラマの筋書きに口を出したりはしな
かったし、第二部を見た後はドラマ製作スタッフとの面会にも応じなかった。そして今、
放映中のドラマを見ようともしない。たまにCMでドラマの予告など流れようものなら即
座にチャンネルを変える。ドラマを見た元部下や友人達は、「本人が見たら製作会社に怒鳴
り込むんじゃなかろうか」と、内心期待していた。
ちなみにルイズは第三部を欠かさず録画して、見るたびに腹を抱えて大爆笑。
避 難 所 で や れ ! !
いや、ごめん。流石にこれは支援出来ない……
「・・・というわけで、俺は必ず先輩の真実の姿を報道してみせるのだ!だから、是非と
も協力をお願い致します、ルイズ様」
「うむ、まっかせなさーい」
へりくだって頭を下げるアッテンボローの申し出に、ルイズは満足そうに快諾した。
そんな二人にユリアンは目の前に差し迫った問題を思い出させる。
「まぁまぁ、そういう話はとりあえず置いておいてですね、もうすぐ皇帝もイゼルローン
に到着するんだから、ちゃんと服とか式典用のスピーチとか考えておきましょう。
それと、ルイズさんは久しぶりの里帰りなんですから、荷物やお土産がまだまだ増える
でしょう?」
「そーなのよね。持ち込み禁止にならない物を選ぶのって大変だわ。メックリンガー高等
弁務官って、本当に融通の利かない人ね」
「あの人は第二地球の文化と文明と生態系を守るために全力を尽くしているんですよ。あ
の人がサハラに駐在していなければ、とっくに第二地球は僕たちの文化に汚染されていま
したよ」
「そうだよな、俺もその点は賛成だ。というか、あの人は本当に命を賭けて高等弁務官を
やってるよ。帝国軍人で、あそこまで皇帝に意見反論するヤツは中々いないぜ」
ユリアンの言葉にアッテンボローは二つ返事で同意する。
事実、メックリンガーは銀河帝国の使者として高等弁務官の肩書きで第二地球のサハラ
に降りたって以来、己の運命を第二地球の調査と保護に見定めたかのように職務に没頭し
ていた。科学の産物をほとんど身につけず、衣服はエルフと同じ物を着用している。移動
も馬や風竜を使っている。朝起きるのに目覚まし時計も使わない徹底ぶりに、『トイレはサ
ハラの砂漠で済ませ、砂を紙の代わりにしている』というジョークが広まった。そして後
日、本人の口から、それが真実だと語られた。
そんな風に雑談をしながら、三人は式典の準備とお土産選びをしていくのだった。
式典準備が進むイゼルローン要塞、流体金属に覆われた白銀の人工天体を戦艦の窓から
見つめる双眸が多数存在していた。白い流線型の戦艦、ブリュンヒルトの一室から、一組
の双眸がベッド上から眺めている。その隣にいる女性はイゼルローンではなく、窓の外を
眺める人物を見つめていた。
「・・・終わりました。体の具合はどうですか?」
長い金髪を頭上でまとめ、長い耳を堂々と周囲に示しているエルフの女性は少し心配そ
うにベッドに寝る男性の横顔を見つめる。その言葉は、口から直接に語られるのはハルケ
ギニア語だが、襟元の機械からは帝国語が流れてくる。帝国語の方は翻訳機越しの合成音
声。しかし、意味を理解出来ないはずのハルケギニア語の方が鈴の音のように耳に心地よ
い。
アイスブルーの瞳は焦点を人工天体からエルフの女性に移した。
「良好だ。いつも済まないな、テファ」
「いえ、私は大したことはしていません。全ては母から譲られた指輪の力です、ラインハ
ルト様」
そういって頭を下げてくるラインハルトに、ティファニアはいつものように恐縮して頭
を下げる。同時にとっても大きな胸が揺れる。隣で控える従卒のエミールは顔を赤くしな
がら見て見ぬふりしようと努力している。努力してるが、チラチラと視線がティファニア
の胸に行ってしまう。
そんな思春期の悩ましさには気付かぬ風を装って、室内にいるもう一人の人物はエルフ
の女性に尋ねる。
「それで、ティファニア様。その指輪ですが、あとどれくらい使えそうですか?」
「そうですねぇ…」
銀の台座にはまる水の精霊の力を込めた指輪を眺めながら、あれこれと考える。
「陛下の発作が今の頻度と症状で起き続けるのであれば、3年くらいは保つと思います。
確実とは言えませんが」
その予想に軍服姿の男性は右手を顎に当てて思考を巡らす。同時に腰に当てた左腕から
は、僅かに駆動音が聞こえてくる。
「それだけ時間を稼げるなら、陛下の治療法を確立するには十分でしょう。例え足りなく
なっても、ラルカス氏に頼むなり第二地球から新たな水系メイジを呼び寄せるなり出来ま
すし」
その予想に皇帝も満足そうに頷く。
>>60で避難所に投下する、対応も読者任せと言っておきながら
全力で無視するアホの書くゼロ魔蹂躙貴族ヘイト俺様マンセーSSなど質の良し悪しに関わらず
ありとあらゆるゼロ魔SSの中で最低最悪のSSだろう
そのへんを自覚できない彼もやはり最低最悪のSS書きもどきなのです
「うむ、全く魔法の力とは素晴らしいな。どうだ、ワーレンも左腕を治してもらうといい
のではないか?」
その言葉にワーレン上級大将は恐縮したように慌てて首を振る。
「とんでもありません!陛下の治療にティファニア様が提供して下さる貴重なマジックア
イテムを、私などのために使うなど、勿体ない限りです。
それに、もう左腕は痛みませんし、この義手も気に入っています。何より、いかな水の
精霊の力を凝縮した魔法の指輪でも、まさか腕が生えてきたりはしないでしょう?ラルカ
ス氏でも無理だそうですが」
ワーレンの予想にティファニアは、申し訳なさそうに口を開いた。
「はい…すいません。いくらなんでも無くした腕までは、ちょっと…」
「さすがに、そうであろうな。だが、今後の研究次第ではわからんぞ?」
ラインハルトは知的好奇心に目を輝かせながら、今後予想される医学の発展について述
べた。
「魔法の発見により、僅か一年で医療は飛躍的に進歩した。イゼルローンにいるラルカス
の助力を得れば、単純な外傷によって死ぬ者は事実上ゼロだからな。即死しない限り、ほ
ぼ確実に助かるのだ。
ゴールデンバウム王朝時代に封印されたり失伝した生命工学も復活させている。予はも
しかしたら、宇宙を統一した偉業より、科学と医療を飛躍的に発展させた皇帝として歴史
に名を残すやもしれん」
遠くイゼルローンを眺めながら語る皇帝の未来像に、室内の人々も頷く。
ラインハルトの言葉は真実だった。
どんな傷でも跡も残さず治してしまう治癒魔法。それは既に医療の現場で活用されてい
た。具体的にはイゼルローンにて治療を受けている水のスクウェア、ミノタウロスの肉体
を持つラルカスだ。彼は確かに実験動物としての地位にある。だが同時に最大限の努力を
もって彼の人間の脳はミノタウロス細胞から守られていた。彼の水魔法を治療に活用する
ために。
彼の魔力を持ってすれば、いかなる治療困難な傷も治る。皮膚まで完璧に再生させてし
まうので傷痕も残らない。おまけにミノタウロスの肉体を持っているため、信じがたいタ
フネスさで臨床の現場に臨める。
また、彼は一人しかいないが、実際に彼が全ての患者を完全に治す必要はない。心臓・
脳・膵臓等の重要な器官や主要動脈のみ魔法で癒してもらえばいい。魔法に頼るまでもな
い残りの治療は通常の医学で対応すればいいのだ。それだけで大幅に手術の成功率も治療
効率も上がる。ラルカスの魔力も節約出来る。入院・治療期間が大幅に短縮される。財政
における医療福祉関連予算が浮く。
ラルカスがイゼルローンに送られ、人間の理性を保てる目処が立っただけで医療の現場
は飛躍的に進歩した。
そんな明るい未来像を思い浮かべる彼等の元に、通信が届いた。
デスクのモニターに現れたのは主席秘書官だった人物。今はローエングラム王朝初代皇
后。名をヒルデガルド・フォン・ローエングラムという、体内に新たな命を宿らせ国母に
なる予定の女性だ。
だが、モニターに映る表情には母になる喜びは無い。その美貌に相応しくない、浮かな
いものだった。国母となるべき伴侶の憂鬱な顔に、皇帝は僅かに眉をひそめる。
「どうしたのだ、カイザーリン(皇妃)よ。何かあったのか?」
皇妃と呼ばれてから少し躊躇った後、ヒルデガルドは簡略に事実を伝えた。
「彼が…死にました」
彼。名を伝えず、ただ彼と言った。そしてラインハルトには誰の事なのか、即座に理解
出来てしまった。青い瞳に驚愕と悲しみが満ちる。
「…死因は、何だ?」
「自殺です」
「今さら強いたのではあるまいな?」
「いえ。確かに自殺との報告です」
その報告を聞いた時、ティファニアは思わず顔を背けてしまった。ワーレンも顔を曇ら
せてしまう。
「そう、か…だが、何故にオーベルシュタインでなく皇妃が自ら報告するのだ?このよう
な報告、お腹の子供にも良くないだろう」
「それは、私が陛下に伝えねばならない事だと思いましたから。そして、テファにも」
「そうか、そうだな…」
人の迷惑顧みずやりたい事だけやるのはさぞかし楽しいでしょうね支援
呟くように同意した皇帝は後ろを振り向く。そこには顔を伏せて口を手で覆い、瞳に魔
涙を浮かべるティファニアの姿があった。
「すまぬ、テファよ。貴女の努力を無にしてしまった。私の責任だ」
「いえ、陛下が謝る必要はありません。陛下は最善を尽くされました」
そう言ってラインハルトを気遣うティファニアだったが、その口からは嗚咽が漏れる。
ティファニアは銀河帝国に来て、公式行事や会見の合間を縫って行った仕事があった。
もちろんラインハルトの発作を抑えるというものはある。だが、ラインハルトが彼女に頼
んだのは、自分の治療ではない。自分を暗殺しようとした男を助けて欲しい、というもの
だ。その人物はヴェスターラントの生き残りで、ヴェスターラントの虐殺を故意に見逃し
たラインハルトを憎んでいた。
旧帝国ゴールデンバウム朝の門閥貴族勢力は、旧帝国暦488年のリップシュタット戦役
において、自らの領地であるヴェスターラント内で核攻撃を行った。民衆の反乱を虐殺に
よって制したのだ。ラインハルトは事前に情報を得ていたが、「この暴挙を黙認し、全宇宙
に広く公表する事で門閥貴族派の人望を失墜させるべし」というオーベルシュタインの進
言を採用した。
結果、目論見通りに門閥貴族派は瓦解した。戦役は三ヶ月は早く集結し、戦死者も一千
万は少なく済んだと見られている。だが同時に、ラインハルトは罪の意識に苛まされる事
になった。
ヤンがイゼルローンに帰還した後、ハルケギニアからの客人を引き連れて帝国の新首都
として選定されたフェザーンに戻ったラインハルトは、彼に暗殺されかかった。即座に取
り押さえられた彼は、本来なら死罪だった。だがラインハルトは「もうヴェスターラント
で誰も殺してはならぬ」と処刑をさせなかった。代わりにティファニアへ頼んだのだ。も
しも彼が望むならば、彼の憎悪と復讐の記憶を彼女の虚無の魔法によって消してくれない
か…と。
エルフとして襲撃者に怯え続け、長引く内乱に家族を失った孤児達を世話してきたティ
ファニアは、この件を他人事とは思えなかった。皇帝の依頼を承諾し、暗殺者と面会し記
憶の抹消を申し出た。結果として暗殺者はラインハルトへの憎悪を消す事を拒んだが、戦
乱に翻弄され続けた美しいエルフ、ティファニアとの話には応じた。ラインハルトも一時
の罪悪感から彼の自分への憎しみを魔法で消そうと考えた事を後悔した。せめて彼が新し
い人生を送れるように支えてもらえないだろうか、とティファニアに頭を下げて頼み込ん
だ。
その後、ティファニアは指輪によるラインハルトの治療と暗殺者へのカウンセリングに
時間を費やしていた。
だが今回、イゼルローンでの式典に出席するため彼女は皇帝と共にフェザーンを離れて
いた。その時を待っていたかのように彼は自殺してしまった。室内の男と少年にも彼女の
胸の内は理解出来る。自分が彼の傍から離れた為、彼を死なせてしまったのではないか、
と自責の念を抱いていると。
「テファよ。彼の死は決して貴女の責任ではない。明らかに予の罪なのだ」
ラインハルトはベッドから立ち上がり、嗚咽する彼女の背に手を置く。だが彼女の涙は
止めどなく流れ落ち続ける。
「済まぬ、テファ。今は部屋で休んでくれ。ワーレン、彼女を部屋へ」
「承知しました」
義手の将は泣き崩れそうなエルフを支えながら、ラインハルトの私室を後にした。後に
残るラインハルトとエミールは黙って視線を床に落とす。
「…魔法も決して全能ではない。そんな事は分かっていたはずだ。予は結局、度し難い愚
か者なのだ」
「そんな事はありません!陛下は、最善を尽くされました」
ラインハルトの弱音を聞いたエミールは、必死に皇帝を慰める言葉を投げかける。しか
し皇帝は黙ったまま顔を伏せる。
ふと彼は視線をあげ、イゼルローンを見つめた。
「あの男なら、何と言うだろうな」
皇帝が考えている人物が誰なのか、エミールにはすぐ分かった。宇宙広しといえど、皇
帝の相談相手となりうる人は極めて限られるから。
やはり続きは正直気になる支援
ブリミルを愚神とか狂宴とかいっといて魔法をきっちり利用するなんて
なんと下劣な
「いや〜、そんな事を僕に聞かれても分からないよ」
ラインハルトの脳裏に浮かんでいた相談相手は、気の抜けた返事を返した。ただしそれ
はラインハルトの苦悩に答えたものではない。
「分からないって事はないだろ?だって、お前さんの剣じゃないか」
問われたヤンは傍らの壁に立てかけていた長剣を手にして抜き放つ。そして剣に向かっ
て自分に向けられた質問を投げかけた。
「もう何度目か分からないけど、また説明してくれるかい?君がどこでどうやって考えて
話しているのか」
「んなもんしらねーって!何度言わすんだよ。キャゼルヌさんよ、いい加減飽きてるんだ
よ、そういう質問は」
長剣はツバをカチカチ打ち鳴らしながら答える。正しくは剣のツバ近くに取り付けられ
た翻訳機から不平不満が流れる。キャゼルヌと呼ばれた男性も明らかに不満そうだ。顎に
手を当てて考え込む。
「ふぅ〜む。それじゃ、しょうがない。イゼルローン要塞副司令の権限を活用して、お前
さんの剣を接収して分解してみるか」
「や、やめて、分解しないで」
長剣は怖がっているかのようにカタカタ震える。横で聞いてるヤンも、この手の会話に
はさすがにウンザリしていた。
「とにかくデル君は僕の剣ですから。例え帝国軍といえど、我が家の家宝を勝手に持ち去
るなんて許さないからね」
「しょうがない。ならお前さん達、一つだけ答えてくれ」
「何です?」「んだよ?」
「お前さん、毎晩鼻歌を歌いながら剣を磨いてるって、本当か?」
「ああ、本当だぜ。あんな下手な歌を聴かされるこっちの身にもなれってんだ。ホントに
おでれーたぜ、こいつ歌まで下手なのな」
ヤンが答えるより早く長剣が答えた。不名誉な追加情報付きで。ヤンはかつての部下で
ある友人に向かって口をモゴモゴさせてしまう。
アレックス・キャゼルヌ。ヤンが士官学校在学時は同校の事務次長で、デスクワークの
達人としてヤン艦隊の後方勤務と事務処理を一手に引き受けた人物。その実力を見込まれ
て帝国軍に請われ、イゼルローン要塞副司令兼要塞事務監の地位に就いた。というか、ヤ
ンの帰還から現在に至るまで、まるでなし崩しのようにイゼルローン要塞の運営を任され
続けていた。
イゼルローン要塞は同盟が亡びヤンとラインハルトの会見がなった後は帝国へ引き渡さ
れている。だが、軍事施設としての機能が不要になった代わりに魔法研究機関・各種実験
施設等の、更に煩雑で複雑な用途が次から次へと追加された。『ゲート』建設時から同要塞
の実務を仕切り続けたキャゼルヌを放逐する事は、銀河帝国にとって悪夢以外の何物でも
なかった。
というわけで、ヤンはイゼルローンの影の支配者たるキャゼルヌ副司令に副司令室へ呼
び出され、彼が一番嫌いな長いスピーチを練習させられていた。
「せっかく軍から退けたのに…ルイズの執事っていう仕事だってあるのに…なんだって僕
がこんな目に…」
もちろん「2秒スピーチ」の異名を持つヤンにとっては、いかに重要な式典とはいえ長
いスピーチは拷問以外の何物でもない。さっきから彼の口からは、ぼやきばかりが漏れて
いた。
「お前さん、そりゃあれだ、厄介事を押しつけられるのはヤンという存在の運命なんだろ
う」
「おう!そいつは間違いねーな。ヤンの剣である俺ッチが保証するぜ」
もちろんヤンはそんな運命を保証されても嬉しくなかった。
「第一、皇帝陛下が直々に来るんだから、僕は必要ないんだじゃないかなぁ。あの閣下の
横じゃ、僕なんか誰も見ないよ」
往生際の悪すぎる元上司の姿に元部下は大袈裟に肩をすくめる。
「あのな、皇帝に銀河帝国への憲法導入と議会開設を勧めたのはお前だろ。その発表式典
で、なんでお前が欠席するんだ」
「そーだそーだ、俺は横で聞いてたからな。おでれーたねぇ、今さら自分が言いだした事
を知らんぷりする気かよ」
「うう…」
誰になんと言われようと、自分が正しいと信じたのなら、それを貫くべきです支援
地震だ!
自分が正しいと信じた道が、他人を傷つけると気付かないのならまさに正義そのもの、即ち独善ですね支援
>>302 自分を信じるのと人の意見を聞かないのはまったくの別物だぜ
こいつは明らかに人の話を聞いてねー
ヤンが観念して諦めの呻きを上げた時、副司令室のインターホンが来客を告げるチャイ
ムを鳴らした。入ってきたのは紺色のスーツを着込んだフレデリカ。そしてその後ろにも
う一人、青く長い髪を腰まで垂らしたワンピース姿の女性。トレードマークの光るおでこ
をツヤツヤさせている。
まるで救世主でも見つけたかのように、ヤンは来訪者を満面の笑みで出迎えた。
「やあ、イザベラさん。妻とご一緒でしたか。さささ、こちらへどうぞ」
「ヤン、ヒサシブリ。アリガトウ」
イザベラは翻訳機を使わず、たどたどしい帝国語で礼を言ってヤンが勧める椅子に座っ
た。そのふんぞり返って椅子に座る姿勢は、謙虚とか礼儀とかとは縁が無さそうだ。だが
室内の人々はイザベラが本物の王女だったことは知っているので、僅か一年で腰が低くな
るとは期待していなかった。
フレデリカはイザベラの横を通り過ぎ、夫が手に持つスピーチの原稿用紙へ視線を向け
る。
「あなた、ちゃんと練習してた?」
その瞬間、彼等はヤンを業苦から救う救世主ではなかった事をヤンは悟った。ガックリ
と肩を落としてしまう。
「そんな、フレデリカ…せっかく久しぶりにイザベラさんと会えたんだから、ほら、旧交
を温め合うとか何とかあるだろう?」
「気ニスルナ、学校ノ帰リダ。コレカラ病院ヘ行ク。途中、フレデリカニ会ッタカラ立チ
寄ッタ」
「病院ですか。ラルカスさんの助手をしていると聞きましたが」
ヤンの問いかけにイザベラは小さく頷く。
「ソウダ。夜マデ、オペガ5件入ッテル。時間無イ。父ハ、ラインハルトト共ニ来テイル
カ?」
イザベラの質問に答えたのはキャゼルヌ。申し訳なさそうに首を横に振った。
「いえ、来ていませんよ。やはり公の場には一切出ないつもりのようです」
「ソウカ。邪魔シタ」
父と会えないという事実に、イザベラはさほど残念そうな顔はしなかった。淡々と礼を
して部屋を後にした。ジョゼフとイザベラがガリア王族時代、広大な宮殿の中で顔を合わ
す事も話をする事も皆無だった事は周知の事実だった。なので、希薄な親子関係について
ヤン達は不憫だとは思っても不思議には思わなかった。
イザベラはイゼルローンで学校に通っている。もちろん通常の授業ではなく、科学や社
会、何より一般常識を最初から懇切丁寧に教える特別カリキュラムだ。ルイズやティファ
ニアも、場所は違うが同じカリキュラムを受けている。彼等の習得具合を見て、今後の第
二地球からの来訪者、希望あれば移住者への授業を改良する予定だ。彼等はそのためのテ
ストケースでもある。
そしてイザベラは水系統の魔法を使えるため、ラルカスと共に病院で医療に携わってい
る。もちろんスクウェアであるラルカスに比べれば大した治癒魔法ではない。が、それで
も医学では不可能な奇跡じみた事が出来る。魔法による治療を受けるため全宇宙から訪れ
る患者達への治療に忙しいのも周知の事実だった。
そしてジョゼフはミョズニトニルンと共に宇宙の片隅で隠遁していた。以後、彼等の情
報は全く流れてきていなかった。
「やれやれ、残念だねぇ。せっかくの終戦一周年記念式典なんだから、第二地球からの来
訪者も全員揃ってくれるとよかったんだけど。里帰りの機会なんだし」
溜息混じりの夫の言葉に妻も賛成した。
「本当ですわね。戦争が終結したのは彼等の協力あってのことなのですから。せっかくの
里帰りの機会なのですし」
「しょうがあるまいよ。ガリア王家の三人は、ほとんど亡命なんだから。残りのメンバー
が揃っただけで良しとするしかないさ。
俺としては、昔の仲間が集まれなかった方が残念だな。ま、旧同盟軍の最高幹部が昔の
拠点に集まったりしたら、帝国軍に何と言われるかわからんからなぁ」
シェーンコップ・メルカッツ・ポプラン等の元イゼルローン共和政府重鎮達は、ほとん
どが要塞に来なかった。彼等が集結する事は帝国の人々にいらぬ刺激を与える、という配
慮からだ。
これとは別に、ヤンはキャゼルヌの残りのメンバーという言葉に少し首を傾げた。そう
いえば残りの二人の顔を見ていないな、と。
その疑問にはキャゼルヌが答えた。辟易した様子で。
「あいつらだったら、またシャフトのおっさんとやりあってるぜ。毎度毎度懲りないこっ
たなぁ」
「おでれーたなぁ、本当に話が噛みあわねーのな、あいつら」
デルフリンガーのセリフにヤン夫妻も苦笑いしてしまう。そして次の言葉で、ヤンだけ
が更に苦笑いしてしまう。己の責務を必死で誤魔化すために。
「ともかく、今は他人の事より自分の事を考えるべきです。それじゃ、スピーチの練習を
しましょうか」
「い、いや、ほら、ね、フレデリカ。僕にはルイズの執事っていう大事な仕事があってだ
ね」
だが人間二名と剣一本は誤魔化されなかった。
「ルイズさんには今はユリアンがついていますわ。だから、あなたは自分の職務に集中し
て下さって結構です」
「そだな。それに、おでれーたぜ?おめー、執事の仕事の大半を嫁さんに取られてんじゃ
ねーか。ハッキリ言って、ヤンは執事として役に立ってないわな」
「そういうわけだ。諦めな、ヤン。妻と長剣の告発があった以上は申し開き出来ないぞ。
観念して練習しろ」
かくして、かつて始祖ブリミルを呪ったヤンは、ブリミルへの八つ当たりも追加する事
にした。
イザベラ程度の水魔法で役に立つとか帝国の医療技術は低いんだ、現代以下か
>>60で言ってた話はなンだったンですかッ!
結局自分達は騙されてたって事なンですかッ!
特別編@、終了
批判は1〜31話を書き進める間にも受けていました
今後も様々に受けるでしょう。
それら全てを受け入れる事も書き手の役目と覚悟しています
>>311 あなたの覚悟はどうでもいい
スレは作者の所有物じゃない
悲劇の主人公によって楽しいですか?
>>311 受け入れてないだろ、避難所でやっても迷惑なのは変わりないが避難所行けよ
正直、因縁つけるような人が前々からいたしなぁ…
そうじゃなくても、言い方によってはそう言う人達と同一視されるから気をつけましょう
とりあえず、乙でした、続きも、お体壊さない程度に頑張ってください
faithの十周年特価のハードディスク買えなかった
実におしい、くやしい
う〜む、「晩節を汚す」ってやつ?
悪いが君は今回で踏み越えてはいけない線を越えたぞ
増長するのもいい加減にしたまえ
>>310 匿名の有象無象の発言だから自分とは関係ないってことじゃないの?w
そんなにぐちぐち言わなきゃならない内容かなぁ……?
まあいいや、とにかく投下乙です
>>316 お前もかw
あの価格は、あり得ないよな……
>>311 貴方の覚悟は立派ですが、荒れるのが分かっててやるのは荒らしですよ。
よく読んでね
>・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
避難所でやれって言ってる奴らの大半が毒吐きでやれって内容なのは新手のギャグか
興味のないSSはスルーできるが、
有害なSSはスルーできん……
内容では無く本人の対応に問題があると言っている
それでも荒れる事が予測出来たんだから、配慮位はするべきだろう
>>320 内容に文句なぞ言ってる奴はいないのだが?
当人の無礼な態度が問題だ
開き直りと受け入れる覚悟は違いますよ、ましてや自分も問題があると自覚しての投下ですから自重して欲しいですよ
まぁ…なんだ。
一度言ったことを覆す位なら最初から言うなと
話は面白いのでOK。
あと言いたい事のある奴は俺と一緒に毒吐き行こうぜ。
スレを荒らすのもアレだし。
>>311 あなたが覚悟するのは勝手だが、それによって他の作者や住人が迷惑を受けることは無視ですか?
ちょっと心配だねぇ
これからハルケギニアと提督の世界が合わさった世界観のクロス超えたお話を節目ごとに投下する危険を感じた。
対応は読者任せって言ったなら避難所に行く流れだな。
自分を批判する奴は読者じゃないって思うなら本スレでどうぞw
どうせ、確信犯なんだろ?
話しても仕方ない
以下毒吐きで
>>322 今回ばかりはSSの内容じゃなくて作者の態度が気に入らないって人が多いかと
ああ。SSの内容そのものには文句とかは別にない。
でも
>>311の発言は、ほんっとーに拙かったとおもう。
投下中は静観してたけど、続きをここに投下されると
確実に荒れると分かってる以上は避難スレに移ってほしい。
それでも投下するっていうなら、作者も荒らしと大差ない。
>>311 お願いだからワルドとウェールズとアンリエッタの三人の後日談書いて欲しい
正直、ルイズ達よりこの三人の方が気になる
提督の人、次回から避難所に行かれる事をお勧めします。
さすがに今回はフォロー不可です。
あと言いたい事のある方は毒吐きで存分にお願いします。
>>337 あの三人の話には興味あるよね。
こういう面白い話は落ち着いて読みたいので避難所で掲載した方が良いよ。
静かに読みたいんだ。
避難所に投下すると言っといて、本スレに投下する奴って馬鹿なの? 死ぬの?
すいません。投下良いですかね?
よけりゃ10時くらいからさせていただきます。
おお、救いの主よ!
救スレ主があらわれたぞ!
全力で支援させていただく
久保みたいに幼稚な内容のが受けるってこった
24.『子供向けのアヌの伝記』と『人類の誕生以前』、それと古の種族について
マーティンが竜の上のルイズに声をかけた。
なんとも言えず悲しそうな顔をするルイズだったが、
彼女は気を取り直してマーティンに手を振った。
「どうしたの?聞いてなかったとか」
「うううるさいわね。それじゃ、また後でね!」
キュルケとの会話を乱暴に終わらせて、
彼女は竜から降りてマーティンに近づく。
「何か、あったのかい?」
「何にもないわ。ええ、何にもね」
そうか。とマーティンは何も聞かずにルイズが歩く方へ付いていった。
竜から少し離れた所で止まり、彼女は口を開いた。
「ところでさっきの話なんだけど」
「ああ、伝記の話かい?」
ルイズは首を横に振る。
「あなたが帰る事が出来るかって話よ。皇帝なんだから早く帰らないと大変でしょ?」
「ああ、その事なんだけどね。難しいからもうしばらくかかるそうなんだ」
実際は違っていた。
『お前はもうニルンに帰る事は許されぬ』
静かにノクターナルは言った。驚きもせずにマーティンは問う。
ここがどこかを聞いたときにある程度予想はついていた。
「何故か、教えていただけますか?」
『あの時、確かにお前の体は竜となりデイゴンを打ち倒した。
そして石となった体から抜け出した魂は、
本来ならそのままエセリウスに行く事になっていたのだ。
だが、あるデイドラの主が悪巧みか何かでお前をここへ運ばれる様に仕向けた。
あの娘の魔法がお前を対象とする様にな』
「では、この体は?」
『そやつはアカトシュを説き伏せたらしい。
あの娘が死ぬかお前が死ぬか。その時が来たるまで、
お前を定命の存在として生かす事を許可させたのだ。
その証が左手にルーンとして刻まれている』
という事はやはりここの創造にはかの竜神が関わっているということか。
しかし、そんな事をするデイドラとは一体誰だ?
サングインならやりかねないが、もう縁は切ったはずだ。
来る者拒まず去る者追わず、が基本のデイドラ教団から抜けたマーティンは、
自身にそこまで親身になるデイドラなんて、どこにもいないと考えている。
友達であるシロディールの英雄が、デイドラの主になるという可能性なんておもいつきもしない。
そもそも人がデイドラになりうる事自体ありえないのだから。
と、今まで培ってきた固定観念により最初からその可能性ははずしていた。
『後からデイドラの主になった者の考えなぞ、我には理解できぬ。
竜の子よ。これが定命の存在として最後の生だ。思うがまま生きるが良かろう』
定命の、というフレーズがどうにも気にかかった。
マーティンは少し嫌な予感がしつつも聞き返す。
「プリンス・ノクターナル、その言葉の意味は…?」
『タロスと同じかそれ以上の事を為し遂げたお前を、
九大神教団の者達が見逃すと思うか?お前は称えられ、
何があっても新たにエイドラの神々に加えられる事であろう』
欠伸をして続ける。夜の女王の異名もあって夜行性なのだろうか。
『本来なら既に祭り上げられているところを、
アカトシュが教団の者達の夢枕に立って待つよう命じたのだ。
それを考えれば、早々に死んだ方が良いのかもしれぬ』
死ぬのもどうかと思うが、まだ皇帝の方が楽じゃないのかそれは。
左手で額を抑えつつ、マーティンは目を閉じてため息をついた。
『案ずるな。神なぞ案外暇な物だ。それ故いくらかのデイドラ王子や主は、
暇つぶしに変革を起こしたがる。タムリエルのどこかに穴が無いかを探し遊ぶのだ。
我は闇の中、まどろみに浸れば年月が過ぎるのだがな』
だから物を盗られるのではないのでしょうか。
とも言えず、自身の今後について何が起こるのだろうか。
そんな事を考えながらノクターナルとの会話を終え、
マーティンはルイズの方へと向かった。
「へぇ。制約って面倒ね」
この地にある制約が邪魔をして帰る事が出来ない。
とマーティンは嘘をついた。ルイズは彼が死んだ事を未だに信じていないし、
これを話したとしても冗談とされるだろう。
ここの東の地に行くのも悪くは無いだろうし、
しばらくは休養として(その割には案外物騒な世界だが)
休ませてもらう事にしよう。そうマーティンは考えた。
彼の中でのタムリエルは現在平和になっているから大丈夫。
本当にそうかは、現在最高責任者のオカート総書記官が良く知っている。
「ああ、けれど戻ることが出来ると分かったなら問題はないさ」
そう言って嘘がバレないように笑顔を作る。ルイズはあまりこういった事への勘が鋭く無い。
すんなりと信じたらしかった。
「なら、さっき言ってた伝記を話してくれる?」
マーティンは笑って答え、子供達に何度も話した物語を語り始めた。
支援
「むかしむかし、まず最初にアヌとパドメイという兄弟がいた。
彼らが何もない『虚無』と呼ばれる空間に存在してから、時が動き出したんだ」
「ねぇその『虚無』って」
伝説の、とルイズが言おうとしたがマーティンが先に口を開いた。
「いや、あくまで何もない状態を表した言葉だよ。だからここの『虚無』とは意味が違う。話を戻そう。」
彼ら二人がやって来た事で時が動き、それによって光と闇が混ざってニーアが生まれました。
アヌとパドメイは彼女の出現に喜びましたが、彼女が愛したのはアヌでした。
パドメイは傷心のまま行方をくらまします。
「いきなり過ぎるわ。いくらなんでも」
もうちょっとこう何か無いの?とルイズは尋ねたが、マーティンは首を横に振った。
「まぁ、子供向けだからね。ニーアがいたかどうかすら私は知らないし」
「え!?」
「さて、それはこの物語を話してからゆっくり語るとして、続きを言うよ」
ルイズが質問しながら物語は続き、佳境に入った。
ニーアを殺したパドメイは、彼女が産んだ「創造」にまで手にかけました。
ずたずたに引き裂かれたそれを救おうと、アヌはパドメイと戦います。
アヌが勝利し、パドメイは死んだと思われたので捨て置かれました。
アヌが「創造」をニルン、すなわちタムリエルにすることによって救おうと試みる中、
未だ生きていたパドメイがアヌに襲いかかります。
彼の死に際の一撃はアヌの胸を貫きました。
瀕死のアヌはパドメイごと「時」の外へと身を投げてニルンを救いました。
「…三角関係の末にそこまでこじれるのかしら」
恋愛って怖いわね。ルイズはそんな事を思いながら、
大いに帝国至上主義が混じった一文の続きを聞いた。
パドメイの体から流れた血はデイドラとなり、アヌの血は星になりました。
ふたつの血が混ざり合うと、エイドラが生まれました。
(そのため、エイドラは善にも悪にもなれるのです。
「創造」とのつながりがないデイドラよりも、
エイドラのほうがこの世の出来事に深く関わっているのもうなずけます)
「前にエイドラはほとんど人前に出てこないって言ってなかったっけ?」
善悪の概念なんて神にはない。あくまで人にとっての善し悪しなのだが、
子供向けなのでそんな事は無視してある。帝国で親しまれている事もあって、
この物語は随分とエイドラ寄りだ。エイドラの神々である九大神が、
本当に善い連中かどうかはハッキリ言って微妙である。
「うん。けれど神々は奇跡として病気の治療を無料で行ってくれるんだ。
他にも点在する祠を巡ってそこで祈れば色々と目に見えた御利益がある。
残念だけど重病は治してくれないんだ。君のお姉さんみたいな人も、おそらくは」
以前何かの話で病気の話題になった時、ルイズはマーティンの治癒呪文に期待したが、
いわゆる一般的な、誰でも罹る病気以外治す事が出来ないと聞いてがっかりした経験がある。
>>347 ゼロ魔をダシ程度にしか考えてないファン(笑)が喜ぶようなゼロ魔世界蹂躙モノが受けるんだろw
後はクロス先マンセー内容にすれば、頭の中身の無い馬鹿な連中は食いつくw
神様と言っても万能じゃないのね。ハァとルイズはため息を付いた。
「このお話は続きがあるけど、今関係があるのはここまでだね」
「なら、これを下地にして聞くんだけど本当は何があったの?」
マーティンはにっこりと答えた。
「分からない」
「えー」
ルイズはブーイングの声を上げた。マーティンは口を開き、弁明する。
「もっと詳しく書かれた『人類の誕生以前』という本にも書いてあるんだけど、
タムリエルに王朝が出来る前の年代は神話や伝説、
または私が信じている九大神教団の教義を通してしか知る事が出来ないんだ。
本当かどうかは分からない。前に教えてもらったブリミルの伝説のようにね」
始祖ブリミルは6000年前に四の使い魔と共に現れ、
悪魔であるエルフ達を『虚無』の魔法で倒し、
ハルケギニアに平和をもたらした存在である。
また、その血は今も王家に残っている。
故に、トリステイン・アルビオン・ガリアの三国は、神より王権を預かった神聖なる国である。
また、ロマリアは始祖を奉るという重要な役割を担う国であり、王家と同じく神聖である。
まとめればそんな話をルイズは母から伝え聞いた。あの頃はまだ子供だったからエルフが怖い物という事と、
ブリミルは凄いメイジであった事、それと自分は立派な国に生まれたという事しか分からなかった。
今考えてみれば、この物語も本当かどうか怪しいわよね。すんなり信じた子供時代とは変わって、
自国の神話を本当かどうか分からない、と言い切った男の話を聞き、ルイズの思考に変化が芽生えた。
「とりあえずさっき言ったから話すけど、輪をかけて分からなくなると思うよ」
とりあえずルイズは聞く事にした。
宇宙はアヌとパドメイのオルビス(混沌、もしくは全体)から形成された。
アカトシュが生まれ、「時」が始まった。故にこの神は「時の竜神」とも呼ばれる。
そして神々(霊 et'Ada)が生まれ、ロルカーンはそれらを説き伏せ、
(または欺き)定命の次元、ニルンを創造させた。
創造の許可を得たのはロルカーンだったが、
実際にニルン創造の設計を担当した中心的存在は、
マグナスと言われる魔法の神であったとも言われる。
魔法使いの杖の形に象徴される事もある彼は、
ニルンを創った際の多大な犠牲に嫌気がさして、
大多数のエイドラと共にエセリウスへと去った。
「話の筋がほぼ違う気がするのだけど。さっきのあの人の話とも何か違うわ。というよりロルカーンて誰。宇宙って何よ」
天文学がそれほど発達していない世界の人である彼女としてもっともな意見だろう。
そうとは知らないが、マーティンも昔は良く分かっていなかったので、
分かりやすくなるよう、言葉を選びながら言った。
なにか湧いてるが支援
「うん。これらも正確な事が分かっていないからとしか言えないんだ。ごめんよ。
ロルカーンの事だけど、彼は大抵の神話や宗教で、
アカトシュと対の存在として崇められる創造の神様の事だよ。
ニルンを創った時に色々と問題があったらしくて、
罰として他の神々に殺されてしまったんだ」
さっきのアレが神様なのよね一応…そりゃ問題も起こすわね。
ルイズの中の神様像が音を立てて崩れる中、マーティンは話を続ける。
「創造の契約でエイドラは死ぬと言われているんだけれど、
私はロルカーンが死んだから、
エイドラは死ぬと言われているんじゃないかと思う。
宇宙と言うのはええと、星々の間にある空間の事だよ。
それと星を合わせてムンダス界と言うんだ」
ドワーフ製の精巧な太陽系儀。彼が魔法を学んだアルケイン大学にそれはあり、
これを用いた授業にマーティンは参加した事があった。
一般的な帝国領内の文化レベルは、現在のハルケギニアより遅れている部分が多々ある。
野蛮な闘技場で賭け事をする事も、闘技会に参加して日銭を稼ぐ事もでき、
またかの国には銃が無く、未だ弓矢で戦っているのだ。
誰もが魔法を使える為、遠距離戦は魔法を使えば良いと思っているのかもしれない。
勝っているかもしれない点として挙げられる物の一つは、
新聞が発行され、シロディールの各地に配達されている事。
しかしそれは「帝国の支援」により市民は無料で読む事が出来る。
つまり、ある記者のペンネームを少々借りて言えば、
「ペンは黒檀の剣よりも弱し」と言う他ない。
しかし、そんなタムリエルにはエルフ族である超魔法文明のアイレイドと、
やはりエルフの一種である、超魔法機械文明のドワーフの遺産がある。
現在帝国で「インペリアル」として知られるシロディール人は、
元々アイレイドの奴隷であり、彼らの文化を模倣して今に至っている部分がある。
本来エルフの神であるアカトシュを九大神の主神として扱い、
他の神々以上に奉っている事等がそれの代表格と言えるだろう。
しかし、様々な理由により古代エルフの一種である、彼らの魔法技術はほとんど失われてしまった。
ドワーフはというと、今はダークエルフとして知られているダンマー、
それの古代種族との「赤き山(Red Mountain)」での戦いで敗れ、絶滅したと「されている」。
実際は、いつだって儀典の方がより正しいものだ。それが優しい嘘かどうかは、
騙されたダークエルフ達が決める事であり、他種族が口を出す事ではない。
この地下に住む事から深き者(Deep Ones)として知られるドワーフ達は魔法と機械技術を組み合わせ、
帝国や、ハルケギニアのどの国でも太刀打ちできない技術力を持っていた。
彼らは歯車と蒸気機関によって動く機械兵士や、見事な装飾細工、
それと何千年経ってもまるで固定化でもかかったかの様に変わらない、
特殊な合金を造った事で知られている。
この合金で造られた機械兵士の装甲板は、
それをはぎ取って身につけても重装として今も実用に耐える事が出来るほどだ。
ドワーフ研究家であり、遺跡発掘で多大な成果を上げた、
ロナルド・ノードセンに言わせてみれば「古代の機械人間の強化外骨格にすぎない」
(『ケメル・ゼーの廃墟』6p)物を鎧として着る様を想像すると、笑わずにはいられないらしい。
これらの遺産は、一般人が作動させる事すら不可能な物も多く、
簡単に扱える武具等を除き、彼らの技術を一部でも正しく活用するには、
独学で研究書を漁るか相応の研究機関、一般的には各領土に置かれてあるメイジギルドや、
それに準ずる地域毎の研究機関等で修練を積むしか方法は無い。
もう滅びてしまったアイレイドと、絶滅したとされるドワーフが造り出した罠や装置は、
数千年以上経過しているものの未だ活動を続けている物も多い。
モロウウインドにはドワーフが造り出した遺跡が今も残っている。
彼らが地下に造ったその遺跡は未だに蒸気パイプ網が機能し、
蒸気と歯車で動く機械人形が遺跡にやってくる冒険家を、
いまかいまかと待ちかまえている。
シロディールに残るアイレイドの遺跡も同様で、
敵対者用の罠が遺跡の財宝を狙う冒険家に向かって作動することも珍しくない。
金属音を立てつつ暗い密室の中、ニルンとその周りにある星を模した球状の物体が回る様は、
最初こそ何とも思わなかった。しかし段々と辺りの色が変わり、
天井や周りが星々の光を映し出していくと、幻想的なその光景に驚きと感動を覚えた。
そう言えば、今はどうなっているのだろう。
故障して現在立ち入り禁止になっている事を知らない彼は、そんな事を思った。
ルイズは頭を抱えて一言呟く。まとめられるかしら?不可能にも程があるわね。
さっき聞いたマラキャスだの何だのの話も一切無かった事もあり、
ため息を一つ吐いて言った。
「神話ってちゃんと理解しようとすると大変なのね…」
『ああまったくだ。定命の者達は一々理屈をこねて理解せねば気がすまぬ。
先に言うが、それらが真と思わぬ事だ。ならば何が真かと問われても、
我も覚えてはおらぬ。お前とて赤子の頃を覚えてなどおらぬだろう?』
ルイズの影からひょいと現れたのは夜の女王。
ひ、とルイズは後ずさる。マーティンはノクターナルが誰かを抱えていることに気が付いた。
「アンリエッタ姫…?」
『そうだ竜の子よ。あの奪いし者に忠告しておけ。デイドラ王子を使役する事がどれほど無謀な事かをな』
夜の女王の領域を経由して、アンリエッタはタルブにやって来た。
よく見れば気絶している。何の覚悟も無くオブリビオンに入ったのだから、当然と言えるのかもしれない。
「姫さま…」
ルイズは何ともいえない顔で彼女を見ている事しか出来なかった。
「あの人が例のヴァリエールさんですか。ところで、チュレンヌさんはどうかしたのですか?」
お説教が終わって、多数の盗賊達とティファニアは移動して現在、
盗賊ギルドタルブ支部、村内にある拠点の一室に戻っていた。
二階には現在気絶した王と王子がベッドに寝かされて治療を受けている。
目覚めるまでもうしばらくかかるらしい。
今、誰かに言われるでもなく灰色狐がドアの前で番をしている。
それを何の表情も無くマチルダは見ていた。
「い、いえ、き、聞いていなかったものですから」
「それ以前に教えていませんわ。チュレンヌ様」
シエスタがああ、この男は本当にこの方以外眼中に無かったのですね。
とでも言いたげに言った。どこから聞きつけたのかは知らないけれど、
どうやら王家とその次に偉い一族の娘が来る事までは調べきれなかったらしい。
「ど、どうしましょうモット殿!もし私たちの事が王宮に知れたら…」
「いや、うろたえてはならんぞチュレンヌ。姫殿下がギルドを頼ったということは、
彼女も我ら二人と同じということだ。それにヴァリエール家の娘をアルビオンへ行かせた事が知れたら、
『烈風』はさて、どう動くか…」
何故そこに烈風が?ティファニア以外はそう思ってモットを見た。
ティファニアは烈風を知らないので、モットが何を言っているのか分からない。
「知らんのか?ヴァリエール殿の奥方はかの『烈風』カリン殿だぞ。
いくら彼女が王家に固く忠誠を誓おうとも、それはあくまで忠を尽くすだけの価値があってこその話。
かの女傑は規律違反を最も嫌う。今回の一件は烈風にしてみれば王家がヴァリエールを裏切った。
と捉えかねん。いかに王家に忠を尽くす彼女といえども、貴族である前に母親だ。
果たして、その様な事をされて未だ忠誠を誓っていられるかどうか…」
もしかしたら、いや、忠心が強いからこそ尚更反乱でも起こしかねんぞ。
モットは、そう言われて震えが止まらないチュレンヌに対し、楽天的に笑った。
「なに、心配する事はない。ルイズ殿とアンリエッタ姫は幼い頃からの友人だ。
あの二人の間柄ならその様な問題も起こらぬだろうて。さて、ティファニア様。
帰ってきた夜の女王と来賓の方々をそろそろお迎えに行きませんと」
王宮内の事については相当な情報通らしい。モットの言葉を聞いてチュレンヌは安心した。
何なんだこの雲の上の会話は。盗賊達はそんな事を思いながら、
気まずい雰囲気になっているだろう、二階の二人を誰が呼びに行くかについて、
ティファニアとシエスタが出て行った部屋の中で話す事にした。
投下終了。専門用語ばっかりで本当にすいませんです。
前作やっていたら『The Monomyth』と内容違うとか言われるかもしれませんけれど、
シロディールで入手出来ないんでマーティンの口から出る話はこれで納得して下さい。
それじゃまた次の投下まで。毒とかルール分かって無くてすいません本当に。
エルダーの人、乙。
投下お疲れ様です。
投下乙です!
実は今回初めて読んだのですが、面白かったです!
これから第一話を読みに行きます。
遅レスだが提督作者の対応は確かにまずかったな…
応援してるだけに自分で叩かれる材料を作っちゃったのが…
しかし前々から提督に限らず、蹂躙だ何だと湧いてる奴らは何様なんだ?
自分では書きもしないROM専のくせに、与えられる餌が嫌ならスレから消えろと
支援と乙の声どうもありがとうございます。
それではおやすみなさい。
>>361 書いてるし、投稿してるが何か文句あるかw?
>>363 特に誰だと指定したわけじゃないぜ
そういうの最近目立つからさ…
自分も何も書いてないから言えた義理じゃないが
提督乙お久しぶり。
こうして読んでると提督に限らず、他の作品も後日談というシチュエーションで読んでみたくなるなあ。
しかし神話論とか宗教学あたりの話をハルケギニアで頑張るのは、いろんな意味で難しそうだなと感じさせてくれる。
というかだな、んな喧嘩腰な言葉で応対されても
ただ煽りたいだけに見えてしまうから困る
どっちもけんか腰だが、ID:RZNo6RZWはついでに少し頭が緩かったなw
いい具合に荒れて住みやすそうなスレですね
>>363 全面的に支持しますよ!!! もっと頑張ってくださいね!!!
>>369に同意。
文句が出るのは仕方がないにしても、もう少し言葉を選べよと言いたい。
どんなに筋が通っていたとしても、それでは荒らしと同レベルになってしまう時がある。
久保の人にやたら噛み付く人とかね。
>>361 ・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。
>>1にあるテンプレにこういうのがあるから、これに触れたらROM専とか関係無いよね。
あと、そういう口調で荒れる原因を作るのなら毒吐きに言ってね。
>>354 そういう煽り交じりのも毒吐き向けだって分かって言ってる?
もうこの話題は擁護もそれ以外も、全部毒吐きでやればいいよ!
というか、これ以上やったらスレが壊れちゃうぅ!
375 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/22(土) 22:39:05 ID:vHMd0qOm
そういう言い方をされると、「いいよ、壊れちまえ!」と言いたくなるw
お前は次に「俺が死んできます」と言う
普通に面白かったし、どっちかのクロスを馬鹿にしたわけでもない
別に18禁展開でもないし、ここに投下するのって何か問題あるのかなぁ?
単発さんが、これまでのログ読んでないのは分かったよ。
「俺の気に入らない作者は本スレくんな」って人が湧いてるだけだろ
>>377 >六千年にわたる、愚神を讃える狂宴が終わった。
この一文だけでもうね
. .,⌒ γ⌒., .
. [皿 ・´] .
. ⊂| |つ . そして時が流れた!
. [ ヽ_,rァ .
. 丿 λ 、´ヾゝ .
. """ """ .
提督グッジョブです。
聖地のゲートは完全に地球起源人類の管理下に置かれたようで、めでたしめでたし。
こっちの言葉を学習したイザベラもいいな。
マチルダさんとヤンの子供はどうしてるのかな?
さて、ではA行きます
その頃、ヤン達に「話が噛み合っていない」と評された人物達がお互いに向けて自分の
意見を投げつけ続けていた。
「だーかーらー!分からんと言っとるんだ!」
奇しくもヤンと同じ意見を吐いたのはシャフト。
場所はイゼルローン要塞に近い宙域にある『アインシュタイン・ローゼンの橋』監視観
測司令所、通称『ゲート』。そのラウンジで三人はテーブルを囲み議論を戦わせている。既
に禿げた男は、もうすぐハゲ仲間になる予定の男と、その隣に座るハゲそうにない長い金
髪の男に怒鳴っていた。
「ビダーシャル君、君が言う精霊の力については仮説を立ててある。超弦理論で言う所の
『M理論』の応用だ」
シャフトが語ろうとする理論を二人の男はとりあえず黙って聞く事にした。
「本来この世界は縦・横・高さに時間を加えた四次元時空ではなく、これに7つの次元を
加えた11次元で構成されている。だが第五以上の次元は展開される事無く極微の世界に
丸め込まれて封印されている。それが『M理論』だ。この封印された空間の形状について
は『カラビ=ヤウ空間』等の予想がなされているが、この点は関係ないので今は置いてお
く。
この五次元以上の次元が展開されていると各ブレーン同士が、つまりパラレルワールド
が重なりやすくなる。重なれば両ブレーンは対消滅する。また宇宙の物理法則も不安定で
星も生物も存在出来ない。
だが君たちの宇宙は、封印されるはずの五次元以上の次元が僅かに展開されたまま存在
し続ける事が出来たのだろう。そこから生まれる力と存在を君たちは『精霊』として感じ
ていると見る事が」
「全く、お前達の頭の固さには恐れ入る」
ビダーシャルがシャフトの解説に口を挟む。
「どうしてお前達は何もかもを理屈で、頭で考えて理解しようとするのだ?何故に大きな
視点で物事を体感しようとしない。
確かにこの宇宙は精霊の存在が希薄だ。風石の欠片も生成されないほどだ。だがそれで
も精霊は確かに存在している。ただ声が小さく微かなため、聞き取りにくいだけでしかな
い。
お前達が『大いなる意思』を受け入れ、精霊達の囁きに耳を傾けさえすれば、精霊の声
はお前達の耳にも届くだろう」
「だから、それが分からんと言っとるんだ!我々は君たちエルフや亜人とは違うんだ。精
霊の声とやらを聞き取るための器官それ自体が体に備わっていないんだよ。聞き取れるは
ずがないだろうが」
「まぁまぁ、お二人とも、少し落ち着きましょうぞ」
もうすぐ完全なハゲ仲間になりそうな頭髪の寂しい男、コルベールが二人の間に割って
入る。
「ビダーシャル殿。以前から言っている通り我々には精霊の声が聞こえんのですぞ。これ
は多分、聞く意思があるか否かの問題ではありますまい。
生まれた時から盲目の人に光や色を話しても理解してもらえないのと同じでしょう。耳
の聞こえない人に音楽の素晴らしさを語っても分からないのです。
ここはやはり精霊の声を聞くためのアイテムを開発するのが相互理解のための近道と思
うのですぞ」
「コルベール君、簡単に言わんでくれ。私達には魔法が使えない。研究が始まったばかり
の現状では科学で魔力を再現することもできない。そのため魔力を必要とするアイテムの
一切を作る事が出来ない」
「それは誤解であり、君達の知恵と力を卑下する思考だ。あらゆる命が『大いなる意思』
のもとに生きている事、どちらの宇宙でも変わりはない。君とて『大いなる意思』に包ま
れている。要はその自覚が」
「いやいや、それは無理ですぞ。やはり魔力というインターフェイスを間に挟む事で円滑
な知覚を」
「それが出来ないって言ってるんだよ!系統魔法は遺伝子由来じゃないか。ただの人間の
私たちには今のところどうしようもない」
なッ…… ここであえて「続けて投下する」だとッ!?
なんという勇気だッ
あんた、ある意味で凄いよ……
読み手様が暴れてるようだが支援!
よくわからんがアンチキモイ
『ゲート』のラウンジに三人の声が周囲を憚らず響いている。バーテンダーもウェイト
レスも他の客も、科学・魔法・精霊の三つの立場から生まれる意見の相違は簡単に埋まり
そうもないな、と感じざるを得なかった。
そんな人々の思惑とは関係なく、ラウンジの窓からは戦艦の列に捕獲されたままの召喚
門が輝いているのが見えていた。
人々の悲喜こもごもが織り成す中、ブリュンヒルトは無事にイゼルローンへ入港した。
歓呼の叫びで迎えられた皇帝ラインハルトは、ティファニアや部下達を引き連れて出迎え
のイゼルローン高官達の前に降り立つ。ただ皇帝は無駄な装飾や過剰な警備を嫌うと周知
徹底されていたため、楽団の荘厳なファンファーレ等の無意味な演出はなく、簡単な出迎
えだった。
その様子は全宇宙に報道された。イゼルローンから遠く離れた銀河の反対側、フェザー
ンにも。
フェザーン。
かつては帝国の自治領ながら実質的独立を守り、同盟との中継貿易を行い莫大な利益を
上げていた商業国家。その資金力と、フェザーンを背後から操る地球教の力により、両国
の戦乱を制御下に置き宇宙を支配していた。軌道エレベーターが設置されているのもこの
星だけである。
帝国領に併合後、皇帝ラインハルトの遷都令によって、新帝国の帝都となった。旧帝国
領と旧同盟領の双方を支配下に置いたローエングラム王朝にとって、両者の何れとも交通
の便がよくインフラも整っているフェザーンは新帝都として絶好の地であった。
そんな帝国新首都に集い帝国の政治経済軍事を担う内閣の構成員、国務尚書をはじめと
した各尚書とその部下達は、彼らが忠誠を誓う皇帝の姿をTVで優雅に眺めていた。
「ふむ、無事に到着なされたか」
「出迎えにはヤンも立っている。これで新領土の共和主義者どもへの示しもつくな」
「銀河帝国の政体をヤンが受け入れられたと示されれば、新領土のテロやデモもさらに減
る事だろうよ」
「だが気をつけねば。『銀河帝国を民主共和制が乗っ取った』などと勘違いする輩が調子付
くかもしれんから」
そんなテーブルを囲む閣僚達の話の中に、一人の部下が控えめに意見を差し入れた。
「原理主義的共和主義者も気になりますが…ゼーフェルト博士、今はこちを気にしては頂
けませんか?」
そう言って部下は中央のデスクに置かれた端末を操作し、あるデータを表示させた。目
の前で表示された内容に、学芸尚書であるゼーフェルトはかなり大袈裟に眉をしかめてし
まった。
その様子に他の高官もTVから視線を移す。
「どうされたのです?ゼーフェルト博士」
「ブラッケ殿、どうもこうも…またメックリンガーですよ」
メックリンガーの名を聞いたとたん、室内の不快指数が80%程上昇した気がする。不快
指数が100%を超えていそうな 学芸尚書は舌打ち混じりにデータの内容を要約して皆に伝
えた。
「あいつ、第二地球第二次調査隊メンバーに、また口出ししてきおった。おまけに双月上
の港湾施設建設は認められない、と。なんと予定地を恒星の重力圏を離れた宙域まで移動
させろと言うのだ」
とたんに、これで何度目のメンバー変更だ、双月に拠点を作らなかったら調査船の運用
に支障が出るじゃないか、急いで研究施設建設をしなきゃならんのに、もう無人機だけで
の調査は限界が出てるのだぞ、第二地球以外の星系へも進出したいってのに、全くあいつ
は何を考えてるんだ、まさか第二地球の権益を独占する気では…、といった様々な不平が
湧き出してくる。
いや、ちょっと……
もうやめて!スレのライフはもう0よ!
そんな中、まぁまぁ落ち着いて…と皆をなだめる声がする。だがゼーフェルトの不満は
なだめられなかった。
「まぁまぁ落ち着いて、と言われてもリヒター殿。こう何度もパラレル・ワールドへの調
査に口出しされては話が進みませんぞ。それにあなたも以前から、財務尚書として『ゲー
ト』関連予算が増大しすぎるのは看過出来ない、と不満をこぼしておいでだったじゃない
ですか」
その不満にリヒター財務尚書は一応の理解を示した。
「確かに『ゲート』関連予算が急速に増大しているのは事実です。戦争終結により浮くは
ずだった軍事予算が『ゲート』へ流れてる状況ですから。港湾予定地変更は予算上認めら
れない、と伝えます。
ただ…その、言いにくいのですが…メンバー変更の件は、メックリンガーの胸中も、と
いうか、怒りの程を察するべきではないか…と」
その言葉に他の高官達も口をつぐむ。そして小声で「第一次が、あれだから…」「何故に
陛下はヤツを選んだんだ?」「本人の強い希望です」「陛下は確かに常勝の天才だが、人事
だけは…」と呟きが漏れる。
丁度その時モニターの報道番組は場面が変わり、話題の中心である第一次調査隊の動向
のニュースが報じられていた。そしてそのニュースの内容を見たとたん、高官達は溜息と
ともに目を覆い頭を抱えた。
モニターには、第一次調査隊隊長の誇らしげな姿が映っていた。ナレーションが映像の
詳細を解説し始める。
「それでは第二地球調査隊のレポートです。本日、現地時間正午に調査隊は火竜山脈最高
峰への登頂に成功しました。
この火竜山脈は第一地球におけるアルプス山脈に相当し、六千メートル級の活火山が連
なる危険な地域です。加えて名が示すとおり火竜の生息地でもあるため、登山道もない人
跡未踏の地でした。また、高等弁務官メックリンガー上級大将より現地調達した機材のみ
使用を許可され、ビーム銃の携帯すら許されない、危険極まりない登山計画を余儀なくさ
れました。
ですがこのたび調査隊はトリステインとガリアからのメンバーを加えた合同チームを結
成し、苦難の末に登頂を成し遂げたのです。また登山ルート上にある火竜と極楽鳥の生息
地へも学術的調査がなされました。この調査結果により、第二地球研究が更に進展すると
期待されています。
この調査隊にガリアから参加したリュリュ女史、及びトリステインより参加したエレオ
ノール女史は山頂にて、ビッテンフェルト隊長と共に喜びの表情で記念撮影を撮り…」
山頂の写真が写っていた。
その写真には確かに山を制した男の顔をするビッテンフェルト上級大将が、ローエング
ラム王朝旗である大きなゴールデンルーヴェ(黄金獅子旗)を山頂に突き立てて翻してい
る姿が映っていた。その左右には女性がいる。右にはルイズの姉であるエレオノールが、
左にはガリア出身の参加者と紹介されたリュリュという若い女性が映っていた。二人とも
長い髪を後ろで束ね、顔は泥で汚れ、かなり日焼けしている。登山用の衣服もメイジの証
であるマントもボロボロだ。
ただ、ナレーションに言うとおり喜びの表情で、というのは微妙だった。何故なら、左
右の女性二人はビッテンフェルトに抱きつきながら、引きつった笑みで睨みあっていたか
ら。
「…他に写真は無かったのか?」「第二地球への過度な干渉は勅命を持って禁じられている
というのに旗まで立てやがって」「おまけに現地女性と親しくなるとは、悩ましい」「だめ
だあいつ、早く更迭しないと」「なんというか、相変わらず自重という言葉を知らないイノ
シシだな」
銀河帝国の国政を預かる人々の苦悩は、今日も深い。
そこにしびれて憧れるがスレは荒れそうだ支援
あっひゃっひゃっひゃっひゃw
もう笑うしかないw
すげー、提督TUEEEEEEEEEEEEEE!
かっこいいまでの自分本位!
あの……投下予告は……?
内容の是非は読んだ後で言うが…
とりあえず、この状況で投下できる鋼の精神に敬意を評し
支援
支援
シャフトとビダーシャルという「異なる技術の専門家」の議論は面白いな
さっさとくたばれ
日付が変わり場所は戻ってイゼルローン要塞。吹き抜けの広大なフロアを埋め尽くす数
万人の群衆が壇上に立つ人達へ視線を集中させていた。壇上にいるのはラインハルトとヤ
ンとルイズ、ティファニアにイザベラ、イゼルローン司令官ワーレンと副司令官キャゼル
ヌに警護兵達など。
まず第二地球を代表して濃紺のブレザーに身を纏ったルイズが、次に素っ気ないスーツ
姿のヤンがスピーチをしていた。「2秒スピーチ」の二つ名に似合わぬ長いスピーチ、と当
人は感じていたろう。だがそれでも、このような重要な式典では有り得ない短く簡単なス
ピーチ。そしてそんな短いスピーチすら、顔を赤らめ頭をかき四苦八苦している。聞いて
る方が恥ずかしくなる程に。
「・・・とまあ、えと、そんなワケでして、今回の帝国憲法起草委員会の設置と、あので
すね、憲法発布後5年後を目処とした帝国議会開設の提案を受け入れて下さった皇帝陛下
には、ええ、最大限の、その、謝辞をですね、はい」
ボカッ
いい音と共にヤンの尻に蹴りが入れられた。
「痛っ!な、何をするんだ、ルイズ」
「いーかげんになさい!あんた恥ずかしいのよ。もう下がって、陛下に譲りなさい!」
かくて英雄と呼ばれた男は全宇宙に中継される式典で、ルイズにズルズルと引きずられ
て後ろに下げられてしまった。観衆からは様々な声があがる。5割は失笑、4割は突然の
事に驚いたどよめき、残りはTVや報道で見た英雄の真実の姿に落胆した溜め息という所
だろうか。
ラインハルトが前に出るまでのしばしの間、会場からは小声での会話があちこちで交わ
されている。そしてその中に、特に若い男性同士の間では共通の話題が熱く戦わされてい
た。
「・・・やはり、ティファニアだよな」
「ああ。あの胸は確かに魔法だ、奇跡だ。大きさもさることながら、何よりあの張りと形
が素晴らしいぜ。おっとりした喋り方とか優しい笑顔とかあるけど、何と言っても胸だよ
な」
「ハルケギニアにはブラジャーが無いという話だから、あれがずっとノーブラだったとい
うわけ?信じられねえ」
「畜生、どうして俺はサウスゴータに生まれなかったんだ」
「そういやティファニアって、使い魔いないんだよな?」
その瞬間、男達の目に妖しい光が宿る。
「つ、使い魔って、主と一心同体…なんだよな?」
「その契約はキスから始まり、以後は寝食を共にするんですよ。実際ドラマではヤン提督
とルイズは、ずっと同じ部屋で暮らしてたって…」
「と、いうことは…」
男達の口に押し殺した下品な笑い声が漏れる。
そんな、女性の価値を貶めるがごとき品評と、邪な欲望に満ちた未来像を想像する連中
は、周囲のご婦人からの冷たい眼光に睨まれて慌てて口を閉ざした。黙って前方へ視線を
戻す。
壇上ではラインハルトが聴衆へ向けて口を開く所だった。
支援
帝国はハルケギニア宇宙へ進出するか!!
メイジは永遠に地面にはいつくばっていればいいww
ラインハルトから全宇宙に向けて語られるメッセージ。帝国憲法・帝国議会導入、帝国
と旧同盟とフェザーンの安定、魔法文明保護と秩序ある交流…。皇帝が描くのは明るい未
来像。
だが、そんなモニター上に映る生気溢れる美貌の皇帝の姿に舌打ちをする者達がいた。
「金髪の小僧め。宇宙の支配者気取りか」
「魔法まで手に入れて、神にでもなったつもりだろうよ。身の程知らずな若造が」
暗い部屋の中、彼等は手にした武器弾薬等の装備品を整えつつ、卓上の小さなモニター
に映るラインハルト・ヤン・ルイズが舞台上の机に置かれた共同宣言書に調印する姿を睨
み付けていた。
そんな毒と闇を練り固めたような悪意に満ちた室内に一人の男が入ってきた。三十歳を
過ぎたばかりの痩せた鋭角的な印象の男を目にすると同時に、武器を手にしていた男女は
床に膝を付いて傅いた。
痩せた男は右手を宙に泳がせる。
「確かに皇帝ラインハルトは神でも支配者でもない。一介の平凡な人間に過ぎぬ。そして
世界の真のありようも理解せぬ盲目の羊に過ぎぬ」
その男は、あたかも自らが平凡な人間ではなく世界の真のありようを理解しているかの
ように語り出す。その言葉を傅く男女は神の御言葉のごとく賜っている。
「ゆえに我等は世界の真実を回復せねばならぬ。そのために我等は彼の地へ向かわねばな
らぬのだ」
痩せた男の後に続いて、黒衣をまとった老人が室内に入ってきた。痩せた男をはじめと
して、室内全ての人々が更に平伏する。
「総大主教(グランド・ビショップ)猊下…」
誰からともなく声が漏れる。
皺だらけの老人は、意外と張りのある声を発した。
「地球をわが手に」
他の者達も同じ言葉を唱和する。
式典を終えて舞台を降りるラインハルトに数名の部下が駆け寄ってきた。
「陛下、ハイネセンのロイエンタール元帥から緊急通信です」
部下の一人が取り出した機械のパネルを開き映像を表示させる。そこに映っているのは
右目が黒で左目が青の長身の男。彼は手早く報告をした。ラインハルトと、その後ろにい
るヤンの神経を逆撫でするに十分な内容の報告を。
《マイン・カイザー(我が皇帝)、地球教の残党がイゼルローンへ向かっています》
ラインハルトには、怒声を上げる暇はおろか眉をしかめる時間すら、残念ながら無かっ
た。何故ならその報告を皇帝が聞くと同時に足下から轟音と震動が伝わってきたから。
「商業区のカフェテラスで爆発です!現在、消防隊・憲兵隊・レスキュー隊が向かってい
ます!」
「森林公園のゴミ箱の一つが爆発しました!死者はいませんでしたが、付近にいた数名の
吸血鬼と黒翼人が破片を受けて負傷しました!」
「港湾に停泊していた船が自爆!被害甚大!同区画内に停泊した艦船も巻き込まれていま
す!死傷者多数!」
平和な未来を描く祭典は、突如死と破壊の饗宴へと姿を変えた。矢継ぎ早にラインハル
トは消火・救助・犯人の捜索を指示していく。ワーレンは皇帝の命を受け、要塞司令室へ
と駆け出す。キャゼルヌもラインハルト以下の式典出席者へ待避を促した。
「地球教の標的は皇帝陛下でしょう。急ぎ待避して頂きますよう」
だがラインハルトは動かなかった。そしてヤンも。考え込んだまま動かない
二人の間で視線を往復させたキャゼルヌは、もう一度皇帝へ非難を促そうとする。
それより早く、ルイズが口を開いた。
「囮、ね」
泣きながら投下していると聞いてwwww
ここまで自分に自信を持っているとさぞ人生楽しいだろうなぁw
そんな性格になりたいとも思わないがw
ノーブラ支援
提督の大将、あまり言いたくないがそいつは「スレの私物化」って言うんですぜ?
……頼むから24時間以上開けてから投下しろよや(#゚Д゚)ゴルァ!
後ろからティファニアが不安そうに彼等へ寄ってくる。大きな大きな胸の前で汗に濡れ
た手を組んでいる。
「囮って、どういうことでしょうか?」
「分かりやすい陽動ってことよ。もしくは脅しって所かしら?」
ルイズの予想にヤンは頷いた。
「その通りさ。皇帝陛下が狙いなら、この式典を狙うのが常套手段だ。なのに彼等は全然
関係ない所を爆破したんだ」
その後の予測をラインハルトが続ける。
「式典の警備が厳しく、爆弾を仕掛けられなかった事もあるだろう。だが、無関係な場所
を爆破する必要はない。予への警備が強固となるため、暗殺が更に難しくなるからだ」
「ナラ、何ガ本当ノ目的ダ?」
普段から光るおでこを今は汗で光らせるイザベラの問いにはルイズが答えた。
「間違いなく、『ゲート』だわ」
その答えにラインハルトとヤンは頷き、イザベラとティファニアは目を丸くする。そし
てキャゼルヌは「あっ!」と声を上げた。
「地球教の連中…まさか、サハラへ逃げる気か!?いや、逃げるだけじゃない。征服する
気だ!
召喚門を拡大させて艦船で門をくぐるか、そのまま小型機で門に突っ込む気だ。だが陛
下を暗殺したら帝国は絶対に奴等を許さない。命に替えても通過させない。何より強迫す
るはずの相手を殺したら、交渉が出来ない」
その通りだ、と通信機からロイエンタールの冷静な声が響いてくる。その時、他の部下
の胸元から発信音がした。取り出した通信機越しにワーレンの姿が現れる。司令部へ向か
うエレベーターの中で、彼は一つの文書を読み上げた。
《地球教からの犯行声明文と要求が送られてきました。
イゼルローン要塞の各所に爆弾を仕掛けた。召喚門を通過した後に設置場所と解除
コードを伝える、との内容です》
その内容を聞いた時、皇帝のバージンスノーをを固めたような皮膚の下で血が沸騰し始
めているのが周囲の人々には良く分かった。そして英雄と呼ばれた男はボリボリと頭を掻
きながら面倒そうに口を開く。
「やれやれ、分かりやすい嘘だなぁ。
爆弾を解除した後、帝国の追跡隊がサハラに飛んで来るじゃないか。あの魔法惑星のど
こへ逃げようと観測衛星や無人探査機の監視網から逃げられるわけがない。即座に掴まっ
てしまうよ」
ラインハルトも口から言葉を紡ぐ。ただし、炎を纏うかのような激情と共に。
「死に損ないのクズ共めっ!
全く、ヤンの言うとおりだ。奴等は間違いなく、通過した瞬間に召喚門を捕獲する艦船
を破壊する。そうすれば門が閉じ、すぐには追う事が出来ないからだ。その間に観測衛星
や無人機を破壊し、第二地球の何処かに降り立つのだ。現地人に紛れれば、もはや追跡は
不可能だからな!
通過する直前にゼッフル粒子でもまき散らして爆破する気だ。解除コードなぞ最初から
伝える気はない!」
キャゼルヌも悔しそうに呻いてしまう。
「くそ、式典で大量の民間船と出席者が訪れ、しかも皇帝陛下への警護に意識が集中して
しまう今を狙われたか。警護の人数や帝国兵が増えても、陛下への警護以外は手薄になっ
てしまうからなぁ。オマケに戦争が終結して一年で気も緩んでるし、戦時並みの警備体制
は敷いてないぞ。
今イゼルローンには、船は軍と民間あわせて数万隻、人間は二百万以上。搬入される大
量のコンテナや手荷物なんか、全部はチェックし切れていない。この巨大な要塞内と船と
人の群れの中から、誰がどこに爆弾を仕掛けたかなんて、何の情報も無しじゃ見つけるの
は不可能に近い」
事件の概要と地球教残党の意図について推理を巡らしながらも、皇帝と副指令は自らの
職務を怠らせたりはしていない。部下達がつなぐ通信機を通じて、様々な部署に指示を飛
ばしていく。
ルールは守れよ、予告くらいしろよ。
コレ、荒らしじゃないのか?
うーん……さっきは擁護したけど……この反応の直後で……
とりあえず支援
好きなものは紅茶と各個撃破と雲古
支援
投下するなとは言わないが、スレのルールは守ろうよ
支援
ルイズごときが正しい判断してる!?
信じられん
.,⌒ γ⌒.,
[皿 ・´]
⊂| |つ そして時が流れた。
[ ヽ_,rァ
丿 λ 、´ヾゝ
""" """
そしてイザベラも自前の通信端末から流れる声に耳を向けていた。
「呼ビ出シ。緊急オペ。行ッテクル」
その言葉を聞いた皇帝はイザベラの警護を部下の一人に命じる。イザベラは青く長い髪
を振り乱して屈強そうな警護兵と共に走っていった。
そして普段はボンヤリしているヤンも今はボンヤリしていなかった。まだロイエンター
ルと繋がったままの通信機に飛びつく。
「いきなりすいません、新領土総督。実は、差し障りがなければ教えて欲しいのです。先
ほどの地球教徒に関する情報は、どこから得たのものですか?」
その問いにロイエンタールは一瞬沈黙する。ただし口の端を釣り上げた、人の悪い笑み
を浮かべて。その表情を見たヤンは回答を聞くまでもなく、自分の予想が当たっている事
を理解した。
横目で見ていたラインハルトが口にした。ヤンが予想した答えを。
「トリューニヒト、だな」
その名前を聞いた時、ルイズとティファニアはどういう事か分からなかった。ヤンがい
きなり顔を紅潮させ、ラインハルトが嫌悪の感情を浮かべ、通信機越しのロイエンタール
が皮肉めいた笑みを浮かべたままだったから。一体その人物が何なのか、異邦人の二人は
知らなかった。
「よーよー、それって誰なんだ?」
尋ねてきたのは、ようやく駆けつけてきたユリアンとフレデリカ、ではなくユリアンが
持っているデルフリンガー。だが、その場の誰もトリューニヒトが誰かを二人と一本に説
明しなかった。
ヨブ・トリューニヒト。それは新領土総督となったロイエンタールの高等参事官の名。
旧自由惑星同盟の最後の首班。舞台俳優のような優れた容姿と、国民の心をつかむ演説の
才能から、40代半ばで自由惑星同盟の元首の座を得るなど、政治家としての人気取り能力
は卓越した人物。
そして、旧同盟を帝国に売り渡して滅亡に導いた張本人。にも関わらず帝国に仕官し自
分が売り渡した同盟領に高等参事官として任官した厚顔、とうより鉄壁の面の皮を持つ人
物。腐敗した民主主義の象徴、扇動政治家の具体例、保身のみに長けた政治業者、妖怪と
呼ばれた男…。
つまり、口にしたくもないほどラインハルトとヤンが毛嫌いしている人物。なおかつ、
かつては地球教徒を味方にしていた人物。
「・・・では解除コードを伝えます。一つめ、男子トイレのは『cogito, ergo sum』、二つめ
の女子トイレのものは『De omnibus dubitandum』です」
ワーレンはモニター上の痩せた男が目を閉じてそらんじた言葉を記録する。
「分かった、入力させる。少し待て」
司令室のデスクに座るワーレンに、通信機のスピーカーから港湾にある二カ所のトイレ
において爆弾解除に成功した旨を告げる兵士の声が響いてきた。同時に、その爆薬の中身
は二つとも花火用の黒色火薬でしかなかったことも。
《イゼルローン要塞に多数の爆弾を仕掛けた事、全爆弾の解除コードを私が記憶して
いる事、信じてもらえましたか?》
ゼロな提督支援します
>>414 32秒後に投下しはじめるのが投下予告なのか?
こんなのしてないのとかわらん、たんなる免罪符代わりのレスだろうが
つまんねーSSより余程面白いからいいや
がんがんこいや!
正面の大きなモニターでは、鋭角的な印象の痩せた男が優越感に浸った笑みを浮かべて
いる。
「…分かった、信じよう。ド・ヴィリエ大主教」
これに対応するワーレンは苦虫を噛み潰したような表情だ。
《では、こちらの要求通り召喚門を拡大してもらいます。こちらの船に搭載している
小型機で通過するので20m程で構いません。通過後に解除コードと設置場所を送信し
ます》
「まて、私の権限では召喚門通過を許可出来ない。まず皇帝陛下へ」
《では今すぐ皇帝を出せばよいでしょう。わざわざ皇帝がイゼルローンにいる時を選
んだのですから》
司令官は務めて平静を装っている。だが口から漏れる歯ぎしりの音を隠す事には失敗し
てしまった。
「・・・承知した。だがすぐには無理だ。皇帝陛下へ事態を報告するので」
《時間を稼ぐのは交渉人の基本ですが、我々は待つ気はありません。時限式の爆弾も
待ってはくれません。忘れないで頂きたい、爆弾の中には熱核兵器が混じっているこ
とを。
我々はこのまま『ゲート』へ向かいます。もちろん邪魔をしないで頂きたい》
そう捨てゼリフを残して大主教は通信を切った。ワーレンはしばしこめかみに右手を当
てて黙考した後、力一杯デスクを殴りつけた。
兵士やオペレーターが慌ただしく出入りし様々な報告が飛び交う司令室。指揮官席に座
るワーレンが皇帝への通信回線を開く。
即座に回線は繋がり、金髪を風に揺らす皇帝の金髪が映る。ヴィークルに乗って司令部
へ向かっているようだ。ワーレンは手早く現状を報告する。
「奴等は間違いなく地球教徒です。ついさっきまで地球教団の総書記代理、ド・ヴィリエ
大主教が交渉に立っていました。要求は召喚門拡大と通過です。奴等の船は『ゲート』へ
航行中で、あと一時間ほどで現地へ到着してしまいます。
爆弾は現在捜索中。森林公園の監視カメラからゴミ箱に爆弾を仕掛けた人物の映像を確
認し、全監視カメラの映像データを検索。要塞内での動きを割り出しました。ですがその
人物の足取りから捜索した結果、発見された二つの爆弾は黒色火薬を詰めた花火みたいな
物ばかり。ダミーです。他の実行犯が分からない以上、今は総員を上げてしらみつぶしに
捜索するしかありません。
奴等は小型熱核兵器をも仕掛けた、と言っています」
《自爆した艦船の方はどうだ?》
「入港時の申請内容と、その船に出入りしていた人物も監視カメラから調査中です。です
が、まだ何も発見出来ていません」
皇帝へ報告しているワーレンの元へ、別部署からの報告も次々と送られてくる。その中
の一つ、『ゲート』からの望遠拡大映像に目を止めた。
「陛下、今『ゲート』から奴等の船の映像を捉えました。そちらでも確認出来ますか?」
ワーレンの言うように、星が煌めく漆黒の宇宙を背景にした一隻の船が艦首を向けてい
る映像が皇帝の元へも送信された。
《確認した。この船に関する情報は?》
「お待ち下さい…イゼルローンの入港記録にはありません。要塞には入らず離れた宙域で
待機していたようです。実行犯は要塞内に爆弾を仕掛けた後に要塞を離れ、この船に集合
したのでしょう
船種は、ごく一般的な貨物船です。この船に関する情報も集めます」
《うむ。ロイエンタールからの情報もそちらに送らせる》
言うが早いかロイエンタールからのデータが受信され、ワーレンのモニターにも表示さ
れた。そこには『地球教徒が廃棄予定の旧同盟軍備から小型核爆弾を三個とゼッフル粒子
発生装置、そして強襲降下艇一機を盗みだし、イゼルローンへ向かった』との情報があっ
た。
>>417 泣きながら投下してるんだよ。ほっとこうぜ。
今は支援に集中すべし
それ以外の方は、毒吐きへとどうぞ
そして、もし意見があるのでしたら、荒らしや因縁つけてると思われない、理性的な言葉づかいでお願いいたします
ビッテンフェルト何やってんだw
しかししつこいようだが、ハルケギニア世界とそっちに残ってる連中がどうなったかの方が気になるよ
お願い、お願いだよみんな!
この作品に関わる全てのレスは毒吐きで行ってよ!
作品とか投下出来る雰囲気じゃなくなっちゃうよ!
トリューニヒトキター
要塞の広い通路を走る大型ヴィークルにはラインハルトとヤンをはじめ、舞台袖に来て
いたヤンの関係者全員も乗っていた。その前後に数台の警護車輌が随伴している。疾風が
駆け抜ける中、全員がラインハルトとワーレンの通話に意識を集中させている。
ワーレンが一通り報告を終えて通信を切ると同時に、即座に次の報告を始めたのはキャ
ゼルヌ副司令。
「現在、一般人の要塞からの待避を進めています。全研究データと軍事情報のコピーと緊
急送信も行っています。ですが、時間が足りません。核爆弾のリミットは、恐らく奴等が
通過し終える頃を見計らって設定しているはずです。つまり、三つの爆弾が順番に爆発す
るとするなら、一発目は数時間以内でしょう。
ブリュンヒルトの緊急発進準備は整いました。このヴィークルを向かわせますので、陛
下も急ぎ待避して下さい」
キャゼルヌからの再度の待避を勧める言葉に、ラインハルトは冷笑をもって応じた。
「差し出がましい事を言うな。あのような旧時代の亡霊に殺されはしない。予は逃げも隠
れもせぬ。このまま司令室へ向かえ」
さらに待避を進言しようとしたキャゼルヌだが、その言葉を遮るように『ゲート』から
の緊急通信が彼等の前に繋がった。そこにはシャフト、コルベール、そしてビダーシャル
の三人が映っていた。
最初に口を開けたのはコルベール。広がり続ける額に汗を浮かべながら早口でまくした
てた。
《皇帝陛下!連絡を見ましたぞ。絶対に召喚門を通らせてはなりません!召喚門を通
られたら、ハルケギニアが、私の故郷が、破壊されてしまいますぞ!》
「承知している。ビダーシャルよ、サハラのエルフに連絡してくれ。早急に召喚門を精霊
で封印するよう伝えるのだ。奴等に関する情報も送る」
ビダーシャルも緊張した面持ちで頷く。だが、彼の口から伝えられるのは皮肉にも科学
の力を認める物だった。
《既にエルフの各部族に伝えてある。だが、エルフが総力をあげたとしても、恐らく
は船の通過を止められない。お前達の科学の力は様々な面で精霊の力を上回っている
のだ。単純な物理的パワーは、その最たる物だ》
その言葉にヴィークル上の人々は頭を抱えてしまう。そしてビダーシャルは更に問題を
提起した。
《だが、憂慮すべきは奴等が通過する事それ自体ではない。召喚門を閉じられると、
その後こちら側からは長期間に渡りサハラへ、お前達の言う第二地球へ行く事が出来
なくなる事だ》
「なに?どういうことだ。確かに召喚門を閉じられれば門は通れないが、向こうの宇宙へ
行くための座標計算は済んでいるはずだ。多少の手間と時間がかかってもワームホールを
通って向こう側にいけるのではないのか?」
その問いに答えたのはモニターに前のめりで詰め寄るシャフト。ツバをまき散らしなが
ら激しくまくし立てる。
《無理なのです!
その座標計算は『現在の召喚門の位置』を基準にしているのです。召喚門という基
準点があるから、本来は不可能な座標計算が可能となっています。もし召喚門が閉じ
たら、計算が成り立たないのです!
つまり再度、宇宙のどこかで召喚門を捕獲しないと、向こう側へはワープ出来ませ
ん!》
さらにコルベールがシャフトに負けず画面へ割り込み、もっと深刻な予想される事態を
報告する。
《おまけにですぞ!あの召喚門はハルケギニアにおける虚無の力に比例して活性化す
るのです…ですが、今現在、ハルケギニアにいる虚無の使い手はロマリアの聖エイジ
ス三十二世のみ!他の虚無の使い手は、運悪く、三人ともこちらの宇宙に来ているの
です。
つまり召喚門は今、極めて活動を弱めているのです!だから、次に召喚門を手に入
れるのは、何年後になるのか予想がつきませんぞ!他の方法でも、どうやっても、や
はりすぐには行けないのですぞ!》
メイジが遺伝だとして
地水火風の属性とレベルってどんな関係なんだろ
支援だ
来るもの拒まず去るもの追わず
支援
シャフトが活躍してるのがいいわぁ
拒絶反応すげぇw
下手すりゃ、まとめの方も消されたりするんじゃないか?
今日はスレが荒れまくるだろうね。
「な!な・・・な、な!」
ルイズが言葉を詰まらせ、ワナワナと震えてしまう。ティファニアの頭にはハルケギニ
アの絶望的未来像が駆けめぐる。足が震え、体が崩れ落ちそうになるのをフレデリカが支
える。
「そ、そんな事になったら…アルビオンも、ハルケギニアも、サハラも東方も…彼等に全
部、無茶苦茶にされて…何年後かに行っても、既に手遅れで…」
同じ想像をルイズもコルベールもビダーシャルも、向こう側から来た全ての人々が脳裏
に描き、大きな不安に押し潰されかけているだろう事は想像に難くない。銀河帝国側宇宙
の人々にとっても絶望的な事態だ。この一年、彼等が想い描いてきた希望に満ちた未来像
が全て破壊されてしまう。
今まで黙って話を聞いていたデルフリンガーがヒョコッと鞘から飛び出した。
「おうおう!おでれーたなぁ。こりゃ、なんだか良く分かんない話だったけど、大変な事
になっちまったな。
んで、ヤンよ。それに皇帝さんよぉ、黙って奴等を通す気かい?」
背中から聞いてくるデルフリンガーに、ボリボリと頭をかくヤンがノンビリと答える。
「そんなワケにはいかないなぁ。彼等には暗殺されたりとか、色々と嫌な目に会わされて
るし。
今の僕はタダの一般人だけど、出来るだけ邪魔させてもらおうか」
そしてラインハルトも一笑に付す。
「笑わせるな。これは逆にチャンスだ。奴等を、この宇宙に巣くうダニである狂信者の残
党を一網打尽にする好機なのだ。
ふん、奴等に自分たちが時代遅れの化石だという事を教えてやる」
「ほうほう、すっげー自信だな。んで、具体的にはどーすんだ?」
ラインハルトは、まるで悪戯をする少年のような笑顔でヤンを見た。瞬間、ヤンはため
息を漏らす。
「やっぱり、僕達ですか?」
「ふふ、卿のおかげで到来した新時代なのだからな。責任を取って、しっかりと卿と卿の
長剣には働いてもらおうか」
「分かりました。でも僕とデル君が働くためには」
「承知している。爆弾は全軍をあげて捜索し、必ず発見する」
ユリアンはラインハルトとヤンの間で視線をせわしなく往復させる。作戦内容を口にす
るでもないのに同一の作戦を組み立てているかのような二人に驚嘆と、僅かな嫉妬を感じ
てしまう。
「それと、爆弾捜索と解除は奴等を捕縛することで更に確実になる。そのためには、予が
自ら助力を請うべきだろう」
「そうですね。僅か数時間で全爆弾の発見と解除をするには、実行犯を捉える事が早道で
すから」
まるでそれが当然の事かのように二人は話を進め、皇帝はルイズとティファニアへ向い
て頭を下げた。
「済まぬが、奴等を捉えるために協力して欲しい」
ユリアンは女性二人へ素直に頭を下げる皇帝の姿に驚きと、今度は尊敬の念を抱いた。
「もちろんですわ!このルイズに任せて下さい!」
「わ、私も出来るだけの事をします。頑張ります、陛下」
ルイズは胸を張り、ティファニアは頭を下げて皇帝の頼みを快諾した。
その後もラインハルトとヤンは手早く相談を勧め、作戦の内容を詰めていく。
「…これでいいだろう。必要なものは急いで届けさせる」
「ですね。それでは我々はブリュンヒルトへ向かいます」
「うむ。予はこのまま司令室へ向かう。キャゼルヌも予と共に来い」
「了解です」
言うが早いか皇帝は車列を停車させ、風のように颯爽と別の警護車輌へ乗り換える。慌
てて後を追うキャゼルヌも乗せた後、車列を急発進させて司令室へと疾走していった。
「では、ブリュンヒルトへお願いします」
「承知しました」
ヤンの依頼に大型ヴィークルを駆る運転手の若い兵士は軽く敬礼を返す。残った人々を
乗せ、悲鳴のような音を立てるタイヤで床を削りながら方向転換と急発進をした。
ヤンは妻と息子に声をかける。
「それじゃ、後は頼むとするよ」
フレデリカとユリアンは強く頷いた。
「ええ、あなたも頑張ってらっしゃい」
「僕も全力を尽くします。どうか、生きて戻ってきて下さい」
虚無の使い手がこっちの世界で世界扉を開いたらどうなるんだろうな支援
纏め勝手に削除はアク禁だぜ支援
支援
ああ……またここが糞ウザい珍英厨の溜まり場になるのか……
それ以外になんで作者は自分が争いの種になるの承知で本スレに投下するのかね
せめて避難所か勝手にサイト作ってやってよ
283:ゼロな提督:特別編@ :2008/11/22(土) 20:50:45 ID:n9VFvzla
383:ゼロな提督:特別編A :2008/11/22(土) 22:53:08 ID:r0nsjlFQ
A、以上
残りは、また後日。
今日は銀凡伝の新作も読めたし、いい日だな
支援
>>417 というかな、元々投下予告なんてものは
『同時に投下されて被るのが嫌』だからするのであって
あらかじめ他の誰かの投下がされないようであれば
別に『投下します→どうぞ』なんて受け答えは不必要だと
支援
>>439 乙でした。
マチルダさんの後日談もあると信じて待っています。
とりあえず終ったみたいだから一言
相手が荒らしのようなものだとしても、作品投下中の支援以外のレスはルール違反だからやめようぜ
相手がルールを破ったから、こっちもルールを破っていいって事にはならないんだから
あと一時間も経って日付が変わったら「後日」とされるのであれば、
もはや荒らし以外の何者でもありませんな。
大作の連投おつかれさまでした
続きが気になる良作ですね
>>442 だからこそ投下予告して速効投下したら意味ないんじゃないか
予告同士が被ることだって珍しく無いんだから、時間空けなきゃ本編まで被るかもしれないだろ
ルール守ってるとは思えない
乙でした
地球教ばんざーい
ブリミル教ばんざーい
投下乙でした。後でじっくり読もう
それにしても荒れ具合が酷いなあ
先住魔法を使える
翼人の繁殖牧場とかありそう
翼人は平民より下の階級とか
「ジャイアントロボ 投下が静止する日」 なんとかしてください・・・orz
スレの容量潰しで削除依頼をだしてもいいかもな
これはゼロ魔の原作より面白いですね。
提督がいなければスレはここまで大きくならなかったと思います。
賛否両論のレスが他のSSに比べて桁外れに多いのが証拠。
つまり、GJ!
提督乙。
しかし後日談扱いははもったいないな。
普通に続編というか続いてるからいろいろとキャラの今後とか気になる。
本気で言っているのん?
まあ今日が終われば投下も始まるさ。荒れるのもID変わるまでだろう
後たった30分だ
とりあえず、これだけは言いたい。
この次の投下される方、頑張ってください。
>>451 翼人の脳の一部を移植して平民も魔法が使えるようにするとかできそう
>>447 まあさっきのは一介の視聴者の意見だからあまり意味も無い話だったわけだけれどね
あと多分、氏は普通に自分以外の誰かが投下をしないだろうと確信して投下したと思うぞ
現状で定期的に投下されてる人でゲリラ的に投下する人は殆ど無いし
氏もスレを定期的に覗いているだろうからそれを知っているだろうしな
なんだか変な雰囲気なので、小ネタでも投下して1クッション置いてみましょうか。
本能にまかせて書いたはいいものの、忙しくて続きなど書けそうにない第一話的なものですが。
よろしければ10分後に。皆様落ち着いていただければ幸い。
名前!名前!
>>463 歓迎します。
大部分の人たちだって本当は荒れたくないと思うんですけどね。
>>463 これはきちんと他人に配慮された礼儀正しい投下予告ですね
是非支援させていただきます
おっけ、超期待するわ♪
頑張ってなー!!
言いたい事は毒吐きでいってくるわw
てことで支援!
支援いたすw
コレでこのスレの空気も変わるといいなぁ。
エルクゥの人待ってました支援!!
フレデリカが音符つき高笑いしながらヤンを追っかけまわして光線で村を焼き払う話のどこが銀英伝とのクロスだ
支援させてもらいます
支援
ヤンとラインハルトによるハルケギニア救済乙でした
それでは、『エターナルメロディ』より『ウェンディ・ミゼリア』召喚です。
よろしくお願い致します。
------------------------------------------------------------
空を見ると思い出す。
あの青空に漂う雲のように自由だった、彼の事を。
「はふゥ……」
下宿兼職場である教会兼孤児院の屋根裏部屋の小さな窓から空を見上げた少女、ウェンディ・ミゼリアは、吐息とともに肩を落とし、その空色の長い髪を揺らした。
「今日もいい天気……」
今日も、このパーリアの街は晴天らしかった。
外は朝の陽に溢れていた。静けさの中に、徐々に人々の活動の音が混じり始める、暁の時。
「よッと」
軽やかな体さばきで布団から跳ね起きて、一伸び。
寝巻きを脱ぎ捨て、髪をトレードマークである三つ編みに編んで普段着に着替えると、気分は仕事モードだ。
「あはは……なんだか、ウソみたい」
ついこの間まで、こんな仕事、嫌で嫌で仕方がなかったのだが。
一年以上に渡る旅を終え、パーリアに戻ってきたウェンディは、しばらく気が抜けた状態だった。
それを見かねたのか、旅のパーティメンバーの一人だったカレン・レカキスは、ウェンディにこの仕事―――教会の孤児院での、住み込み家政婦―――を紹介したのだ。
最初は、慣れない子供達の世話に四苦八苦して、さめざめとすすり泣く事もあったが……彼女は、もう旅を始める前の、人間不信でひねくれているだけの少女ではなかった。
決して楽ではない―――どころか、まるで物語の英雄が辿るような、封印されたダンジョンと凶悪なモンスターを相手にし続けた旅によって、肉体的、精神的に鍛えられていた事もあった。
しかし、それよりも……彼女の中に、一本のゆずれない芯が通っていたのだ。
『好きです。この気持ち、ずっと忘れませんから』
別離の際のその言葉が、今の彼女の原動力だ。
彼に恥じない自分になりたい。それが、彼女にその本来の強さと優しさをどんどんと取り戻させていた。
「―――さん。私、今日も頑張ってみます」
空に向かって一言呟き、ウェンディは自室のドアを開け、
「こぉらっ、ピーター! またイタズラして―――!」
そして、ドアの外に待ち構えていたイタズラ小僧に注意しようとした、その時だった。
『我が導きに、応えなさい!』
「えっ!?」
魔法で大きく響かせた声のように思えたそれは、涙を堪えた少女の、切羽詰ったようなものだった。
「えええええッ!?!?」
そして、目の前に現れる巨大な光の鏡。
子供の首根っこを引っ掴もうとしていた手が避ける間もなくソレに吸い込まれ、そこから体全部を引きずり込まれてしまう。
ああ、旅をしていた頃はこんなトラブルもあったなぁ、などと視界いっぱいに広がる光の中で思いながら、ウェンディの意識はそこであえなく爆ぜた。
§
支援
換気期待支援
「平民だ! ゼロのルイズが平民を召喚したぞ!」
トリステイン魔法学院、春の使い魔召喚儀式の場は、嘲笑に包まれた。
その中心にいる少女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールが杖を振るうと、いつものように起こる爆発。
その最後の一発が盛大に巻き上げた土煙が晴れ始めたそこにいたのは、どう見ても自分達貴族が着るような物ではない簡素な服を着た、一人の少女だったのだ。
「あたた……もォ、なんなんですかァ……?」
三つ編みにした空色の髪が盛大に乱れ、ふらつく頭を押さえるように、その手がぐしぐしとかきあげている。ウェンディだった。
やがて、完全に煙が晴れる。
杖を振り上げた体勢のまま、ぷるぷると肩を揺らしていたルイズが、大股でウェンディに近付いていった。
「あんた誰?」
「はァ……?」
不機嫌そのものの声をかけられて、ウェンディは眉を寄せた。
声質自体は、鈴が鳴るような可憐なものだったが……惜しいかな、それはあまりに不機嫌さを含んでいて台無しになっている。
「あなたこそ誰ですか? っていうか、ここどこですか?」
「っ! あんたねえ! 平民のくせに、貴族に向かって何よその態度っ!」
ウェンディが少し不機嫌を乗せて返事を返すと、途端にヒステリーを起こす桃色の髪を持つ少女。
ああ、と、ウェンディはなんだか懐かしさを感じた。
レミット・マリエーナ。公国の王女であるという彼女が、よくこんな怒り方をしていた気がする。旅の後半は、だいぶ丸くなっていたけれど。
「はあ、それは失礼しました。でも、名乗ってもいないのに、見た目だけで貴族だなんてわかるはずないじゃないですか」
「……何言ってんのよ。マント着てるのが見えないの?」
ウェンディとしては当然の疑問を口にしただけだったが、ルイズは青筋を浮かべて怒りに震えていた。
ルイズにとっては、『マントを着てたってお前は貴族には見えない』と言われているも同然だったからだ。
それは、彼女のコンプレックスを何よりも刺激した……いや、そのコンプレックス自体から来る被害妄想だからか。
「はぁ……マントを着ていれば貴族なんですか?」
ウェンディのそれは、『マント着てたって魔法使えないお前じゃ貴族じゃないよねーpgr』というような皮肉など一切篭められていない、純粋な疑問であったが、今のルイズにそんな事に気付く余裕はなかった。
「あ、あんた、死にたいの? 死にたいのね?」
「はァっ!? な、なんでそんな事になるんですかァ!」
というか、思いっきりそんな被害妄想バリバリだった。手に持っている、聖歌隊の指揮棒のようなタクトを振り上げ、今にも振り下ろしそうだった。
「ハハハ! 平民にもバカにされてるぜ!」
「さすがゼロのルイズだ!」
爆発が完全に収まり、彼女達のやりとりが聞きとれたのか、周囲がどっと笑いに包まれる。
それには、ルイズのみならず、克服しかけていたウェンディの体も震わせるほどの嘲りが含まれていた。
「…………」
「あ、あの……?」
ルイズは、振り上げていた杖を力なく下ろし、うつむいて肩を震わせる。
その顔には、酷く見覚えがあった。―――かつての自分の姿、そのものだ。
嘲られ、見下され、そして何よりも自分自身が、見下される事を是と思っている。自分をいじめている連中を憎みながら、見返してやると息巻きながら、心のどこかでは、自分なんていじめられて当然なんだと諦めてしまっている。
「……ハァ」
支援
支援していってね!
風通しをよくしましょう 支援
ウェンディは、とりあえずここがどこかという問題を棚上げした。旅をしていた頃には、別のところにワープする魔法陣だなんてそれこそいくらでもお目にかかっている。
こんな遠くっぽいところまで飛ばされるほど強力な魔法なんて、どうやってかけられたのか皆目見当もつかないが、まあそういう事もあるのだろう。あの古代文明キラーの引き起こすトラブルなら、起こりかねないと思った。
そんな事よりも……ウェンディは、それ以上儚げに揺れる桃色の髪を見ていられなかったのだ。
「だいじょうぶ」
「っ!?」
ぽふん、と、その小さな体躯を抱きしめた。びくん、と桃色の髪が震え、体を硬くする。
「だいじょうぶ」
もう一度、泣いている幼子をあやすような声で抱きしめる。
言葉による慰めなど効かないどころか逆効果だ。それは、自分の経験でわかりきっている。
―――あの旅の始めの頃、近付いてくる彼に対して行った数々の無礼を思い出してちょっと情けなくなるが、今は割愛だ。
いきなり抱きすくめられて呆然としてしまっている桃髪少女をそっと離し、ウェンディはすっと立ち上がった。
「あなた達ッ!」
まるで慈母のような雰囲気を纏ってルイズを優しく抱擁した少女に声を失っていた周囲の生徒達は、いきなり怒鳴られてビクっと飛び上がった。
「こんな女の子を皆していじめて、恥ずかしいと思わないのッ!?」
以前のウェンディだったらとても言えないような言葉だったが、孤児院での家政婦経験が、彼女の神経を図太くさせていた。
やんちゃなガキどもと来たら、もう言葉が通じないサルと同レベルなのだ。大人しくしているのはお菓子を食べている時ぐらいの。
怒鳴る事には、慣れてしまっていた。
「い、いや、だってそいつ、魔法の成功確率ゼロだし……」
剣幕に気圧されたのか、小太りの少年がおそるおそると反論するが。
「はァ!? 魔法!? そんなもん使えようと使えまいとどうでもいいでしょ! そんな程度の事であんないじめをしてるのあなたはッ!? それでも男の子ですかッ!」
「ひィっ! す、すいませんっ!」
一瞬で撃墜された。
伏せてしまった少年の顔がどこか恍惚に赤らんでいたのは、幸運な事に誰も目にする事はなかった。
「おい平民、聞き捨てならないな。我ら貴族の力たる魔法がどうでもいいだって?」
「はァ?」
太っちょの少年を蔑むように見ながら、別の男子生徒が前に進み出る。
「始祖より受け継いだ魔法の力をどうでもいいなどと口にするその無礼。事と次第によっては、ただではすまないぞ?」
「始祖……?」
少年は、杖を構えながら凄んでくる。
とはいえ、超古代の防衛システムすら打ち破ったパーティの一員であるウェンディには子供の背伸びもいいところだったので、それに対処するよりも、聞き慣れない言葉に首を傾げる方が先であった。
旅を続けている時に、何回かこんな感覚を覚えた事がある。そう、文化の違い、という奴だ。
信じている神からちょっとした生活習慣まで。ところ変われば、人はガラリと変わる。自分とは違うそれに引っかかった時の感覚だった。
結構遠くまで飛ばされちゃったのかしら、と考えたところで、周囲にいた子供達の人垣から、一人の中年男性が現れた。
「ミスタ・ロレーヌ! いたずらに力を誇示するのは止めなさいと言っているでしょう!」
「み、ミスタ・コルベール」
少年を一喝したその男性は……見事にハゲだった。
「どうも、失礼をお許しください、ミス」
「ああ、いえ……」
こちらへと近付き、頭を下げてくる男。
節くれだった杖を持ち、知的な目にメガネを光らせるその姿は、熟練の魔導師と言えなくもなかったが……頭のつるピカが、どこか親しみやすさを演出していた。
これだけ人が居れば一度で充分なんだろうな支援
支援あるのみ
正直、元ネタは知らないが支援。
「あの、すいません、ここはどこですか? 光の鏡みたいなものに吸い込まれたと思ったら、いきなりここにいたんですけど」
「はい。ここはトリステイン王国、トリステイン魔法学院。あなたはそこのミス・ヴァリエールの『サモン・サーヴァント』によって、ここに召喚されたのです」
「……聞いたコトないですけど。はぁ、召喚ですか……」
落ち着いた態度で返答されて、とりあえずは落ち着いた。
地名や魔法名を聞いた事がないのは、知人の古代文明マニアに散々わけわからん話を聞かされてもう慣れている。ウェンディに深く溜め息をつかせたのは、『召喚』という単語だった。
「よくわかりませんが、魔法学院ということは、私は何らかの魔法でここに呼ばれてしまったと、そういうわけですね?」
「はい、そうなります」
いやそうなりますじゃねーだろこのハゲ丸、と心の中で毒づいたが、周囲は子供ばかりのこの場で唯一話が通じそうな大人だったので、なんとか喉まで出かかったのを堪えた。
「じゃ、早く返してください」
「はい?」
「いや『はい?』じゃなくて。さっさと返してください。忙しいンです、私」
雇い主のズボラさを思い出して、ウェンディは暗澹たる気持ちになった。
あのスチャラカ神父にまかせておいたら、三日で教会がゴミ捨て場同然になる。一刻も早く戻る必要があった。
「うーん、と言われましてもですねえ……」
だが、男は困ったように頬をかいていた。
……まるで、雇い主の神父が言いにくい事を頼んでくる時のようだ。ウェンディは嫌な予感しかしなかった。
「……もしかして、返せないとか言うんじゃ?」
「実はその通りでして、ハイ」
ハイじゃねーよこのダラズ、と、自らの使える最大威力の物理魔法『ヴァニシング・レイ』をカマしたくなるのを、寸前で堪えた。
「……詳しく説明してもらえますか?」
三白眼で睨みつけられた男、ジャン・コルベールは、汗をかきかき事情を話し始めた。
§
「―――ここは貴族に魔法を教える学校で、二年生に上がる際に魔法で動物を呼んで使い魔にする。元々知性のない動物を呼び出す魔法だから、送り返す魔法なんて作られていない。そして、この子、ルイズちゃんがそれを使った時に、なぜか人間である私が召喚されたと……」
学院の教師であるというコルベールが話した事を要約すると、そういう事だった。
「動物扱いですか、私……」
「い、いえいえ。決してそのようなわけでは……人が呼び出されるというのは、非常に珍しいというか、前例のないケースでして……」
「はァ……それで、使い魔を召喚出来ないとルイズちゃんが進級出来ないので、使い魔になってほしいと」
「そ、そういう事になります」
「はぁ、勘弁してくださいよォ……」
とんでもない事に巻き込まれた、とウェンディは頭を抱えた。
まったく、ようやく仕事にも慣れてきたところだったというのに……これなら、まだあの古代文明ヲタクの起こすトラブルの方がマシ……でもないような気もするが、こんな見も知らない場所に飛ばされる事はさすがに……その内あるような気もするが、ええい、まあとにかく。
久しぶりに、ウェンディは自分の不運を嘆いたのであった。
「もう一回その『サモン・サーヴァント』とやらを使えば、違うのが出てくるンじゃないですか?」
「い、いえ、実はこれ、結構神聖な儀式でして……やり直しというのは、原則認められないのですよ。最初に選ばれた使い魔が、始祖のお導きによりもっとも相性のよい相手とされていますので……」
「だからって、人を使い魔にするなんて無茶すぎです。っていうか転移魔法で無理矢理に拉致ってほとんど一生束縛されるなんて普通に人道に反してます。勘弁してください」
「む、むう」
男は黙って支援
嫁が召喚された、全力支援だ
ウェンディとコルベールの舌戦を、周囲は固唾を飲んで見守っている。
先ほどウェンディに絡もうとした少年をはじめとしたプライドの高そうな幾人かは、平民風情が生意気に、とでも言いたげに眉を歪めているが、それ以外は頭がついていっていない様子だった。
「し、しかし、平民の方にしてはご理解が早いですね……もしかして、魔法についてお詳しいので?」
コルベールのそれは苦し紛れの話題そらしのようだったが、紛れのない好奇心も多分に含まれていた。
ウェンディの、身の上を嘆きはするも、魔法については疑問を持たず、なおかつ一定の理解をしている様子に、ただの平民ではないと直感したのだ。
未知と常識外の匂い。
自らも変人であると自覚のあるコルベールは、興味さえ向けば、そういうものに敏感なのだった。
「魔法? まぁ一通りは使えますけど、詳しいってほどじゃ」
事も無げに言ったウェンディに、ざわっ、と周囲の空気が変わった。
一番驚いたのは、呆然と教師と少女のやりとりを見ていたルイズだ。
「あ、あなた、メイジだったの!?」
「メイジ? はあ、魔法使いの事をそう呼ぶ事もありますね。私は専門じゃないですけど」
「せ、専門じゃないって何よ。メイジはメイジでしょう?」
「うーン……?」
どうにも話が噛み合わない。さきほど少年が噛み付いてきた時と同じ感覚だった。
「魔法についての風習が違うのかな……? 始祖がどうとか、貴族がどうとか言ってたし……」
貴族しか魔法を使う事を許されていないとか、そんな感じだろうか。とウェンディは当たりをつけてみた。そしてそれは、結構的を射ていた。
「うーっ! 何をごちゃごちゃ言ってるのよ! 魔法が使えるっていうなら使ってみなさいよ!」
「はあ。じゃあとりあえず……『ウォーター・レストレイション』!」
ヤケっぱちに叫んだルイズは、聞き慣れない呪文を唱えた目の前の少女を包むように表れた水の塊に心底驚き、声も出ずに口をぱくぱくさせている。
『ウォーター・レストレイション』。それは、地水火風を司る精霊に呼びかけ、力を貸してもらう精霊魔法の初歩の初歩。水の精霊の力を借り、少しずつ傷と体力を癒していく魔法だ。
そしてルイズの反応は、そのままそっくりと周囲の生徒達も同じだった。唯一驚いていないのは、『精霊と仲良しさんの人間なんて珍しいのね、きゅいきゅい♪』と微笑ましそうに呟いて主人に杖で殴られている竜種ぐらいである。
「はい、使いましたよ……って、どうしたんですか、そんなハトがビームくらったような顔をして」
「せ……」
「せ?」
「先住魔法ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!???」
ルイズの叫びで、周囲の生徒たちの様子が、はっきりと恐怖のそれに変わる。
ゆらゆらとウェンディの周りを取り巻いて浮いている水の塊を、ルイズもコルベールも周囲の生徒も、お化けでも見るかのように見つめていた。
起こっている現象自体は、メイジ達の扱う系統魔法でも不可能な事ではない。空気中の水蒸気を集めて流水にする水の魔法と、物を浮かせる事の出来る『レビテーション』を組み合わせれば出来る事だが……彼女は杖を持たず、しかも同時にそれをやってのけたのだ。
「せんじゅうまほう? いや、これ精霊魔法ですケド……」
「なななな何よそれ! そんな魔法聞いた事ないわよ!」
「うーん、冒険用の、ごく一般的な魔法のはずなンですが……」
「う、うーむ、これは……驚きましたな」
もしや、魔法そのものも何か違うのだろうか。だとしたら、どんな遠くまで飛ばされてしまったというのだろうか……。
ルイズだけではなくコルベールすら同じ反応をしているのを見てそんな事を思ったウェンディの頭に、ふと嫌な予感がよぎった。まだいじめられっ子だった時から、こんな風に閃くような予感は―――特に悪いものに関する事は、よく当たったものだ。
異世界。
ここが、住んでいたところとは違う世界であるという可能性だ。その存在を、ウェンディは知っていた。
『彼』が住んでいたという異世界『チキュー』は、魔法の存在しない世界であるらしいから、ここはそうではないのだろう。
しかし、旅の途中の打ち捨てられた廃坑で見つけた謎の鏡は、それまた別の異世界―――確か、怪獣と異常気象の飛び交うオモシロカッコいい世界だとか鏡自体が言っていたが―――に繋がっていた。(くぐらなかったから実際にあるのかはわからないが)
もしかしたら、『世界』というのはいくつもあって……ここは、そんな中の一つなのかもしれない。
支〜援
……うわァ。
そこまで思いついて、ウェンディは再び頭を抱えた。
知り合いの古代文明グルイならば小躍りして喜びそうな状況だったが、なぜそれが自分に振りかかるのか。もっと喜びそうなヤツ他にいるじゃん。どこぞの古代文明ストーカーとかさァ。
こんな見知らぬ土地に一人で放り出されてどうしろと―――。
「―――あ。それって……」
そして気付く。
それは、『彼』と同じじゃないのか。
魔法の使えぬ世界からウェンディ達の世界に事故で飛ばされて、確実に帰れるかどうかもわからないまま一年半も旅を続けて、それでも優しく笑っていた『彼』と。
……というか、同じ状況になってみてわかる。それは異常だ。私なんて、本当にそうかもわからない、ただ思いついたというだけで、こんなにも取り乱しているというのに。
「あの」
「あ、は、はい。なんでしょうか?」
「ほんっっとーに、帰る方法ってないんですか?」
驚きと恐怖一辺倒の生徒達とは違い、それに好奇心が半分ほど混じり合った、どこか子供のような眼で『ウォーター・レストレイション』の水を眺めているコルベールに、ウェンディは少し凄みながら聞いた。
―――私にも、やれるかな。
『彼』に会う前の自分だったら、思いつきもしなかったであろう思考。
「う、うーん。どうしてもと言うのであれば、そこまでの旅費ぐらいだったら出させていただきますが……トリステインを知らないというのであれば、帰り道もわからないのではないですか?」
「そうですね……確かに、帰り道がわかりません」
先ほどの説明の中では『神聖な儀式だからやり直しは認められない』とかいうような事を言っていたのに、随分と妥協した返事になっていた。先住魔法とかいうのは、そこまで恐ろしいものなのだろうか?
しかし、そのコルベールの言葉は、徒歩で帰る事を前提にしたものだった。異世界に帰る方法など想定もしていないのだろう。
―――無理かもしれない、と不安が襲ってくる。
でも。
もし帰る事が出来たのならば、胸を張って『彼』に会える気がする。
『彼』に会うために、異世界でもどこでも行ける気がする。
「わかりました。帰るための魔法を探してくれるという条件を飲んでくれるなら、使い魔、やってあげます」
だからその一歩目を、大好きな『彼』と同じ道程を、いじめられっ子だった少女、ウェンディ・ミゼリアは踏み出した。
懐か支援!
このゲームを中古屋で買ったのがマイノリティな趣味に走る切っ掛けになった。
というわけで、自分が道を踏み外すきっかけとなったゲームからでした。
支援ありがとうございます。
・いじめられっ子
・編み物が得意
とかでルイズと絡ませると面白そうだなぁ、という思いつきだけで書いたものなので、粗はあると思いますが、楽しんでいただければ幸い。
乙です
乙
乙
これで思いつき……だと……!?
乙。
鳩ビームで笑ってしまった。
.,⌒ γ⌒., 。
[皿 ・´] 。
⊂| |つ 。お前さん、かっこいいよ!
| ヽ_,rァ 。
丿 λ 、´ヾゝ 。
""" """ 。
まさかのエタメロwww激しく乙です!
悠久シリーズも全て集めたなぁ・・・誰か召喚されてたっけ?つーかスゲェ懐かしいw
ほのぼのしたので乙
乙
でもコレは普通に一話だよね。
小ネタとかいって召喚だけで終わらせるなんて許されざるよ。
エタメロはやったことないけど、なんだか続きを期待したくなる
内容でした乙
ゼロメロディ乙でした
提督くらいの大作を書けるようになってください
乙!
元ネタは知りませんが、面白いけど詰め込みすぎなどっかの完結長編ものと違って、読みやすくて面白い!
ぜひ続きをお願いします!
>>505 少しは空気を読んでください・・・
エタメロかSSでプレイした記憶が懐かしいですね
うわー先が読みてー!
実に乙です!
ウェンディにひどいことしたら叩く
鉄骨鉄骨鉄骨落下で異世界へ
乙でした!
うぉー俺がレミットの次に好きなウェンディだー
乙であります
乙&GJでした
エタメロや悠久で道を踏み外した人は結構いそう、俺もだけどw
お気に入りはティナだった、こっちが召喚されてたら大混乱だったろうなw
変わらずのテンプレマンセーなSSばっかな中で提督のオリジナリティは貴重
>>513 空気を換えようと投下した作品の直後にその発言はちょっとどうかと思うですよ?
あのオリジナリティは嫌いじゃないけど、それを理由に他を叩きたいなら毒吐きへどうぞ。
貴方の本音はその一行の前半ですか? 後半ですか?
オリジナリティを理由にマンセーされてもな
ありゃあ既に荒しだろ
はいはい、換気換気
オリジナル展開の作品は好き。
MtLとか普通に面白い。
でも提督は無いわ。
エターナルメロディから召喚乙。
ウェンディが説教と魔法実演でハルケギニアの文化を蹂躙していて面白いですね
。
ハルケギニア未開人の貴族の誇りとかボコボコに破壊してください。
褒めるのであれば他者と比較せず、良い所をアピールすればよくないですかね?
ここは品評会じゃないんですからいい所を出し合って、皆で気持ちよく使っていきませんか?
つーか、エタメロとか懐かしすぎるw
もっとやってくれ!w
もうルイズに『スルー』の魔法を使わせるのはやめようぜ。
爆発してばかりじゃないか。
エタメロ懐かしいです。
青春時代でした……。
>>510 鉄骨と同化、その後増えたり馬と合体するんだよな。
終わったんモノ掘り返すのは勘違いした大作家様の常だよなw
どうせなら己のウンコ同士をミックスさせてゼロの薔薇提督でも書けよ
>>524 貴様!あのアンソロを読んでいたな!w
……あれから、もう12年か。時が経つのも早いなぁ。
エタメロでウェンディと聞くと最初にノベライズ版を思い出すのがファンの嗜み。
いずれは、世界扉で自分の世界ではなく『彼』の元に行くのだろうと想像すると幸せになれます。
今前スレから読み終わった。
毒吐きスレじゃなくてここで言わせてもらうが。
何この読者様方は?
提督は正直ゼロ魔分が少ないからアレだと思うが、
粘着してる奴らこそスレの私物化だろうに。
そういや、ゼロ魔SSで読める範疇にあるのって憑依ものばっかだな。
ルイズに召喚されたのが別キャラってSSには皆無って感じだが。
憑依物になんて地雷しか有りませんよ……
ケンシロウ「シエスタそのサラダ食ってみろ」
シエスタ「え!?い、いえ私は今食べたばかりで…」
ケンシロウ「そんなに苦いサラダがあるか!」
まじかる☆アンティークからスフィー・リム・アトワリア・クリエールを召喚。
召喚されたとき勢い余ってルイズ死亡。
蘇生した結果スフィーは身長:135cm / スリーサイズ:64-53-69 の素敵な体型に。
公爵家三女死亡→蘇生ってやばくない?
それとシエスタは長瀬の血を引いている。
>>528 本当にスレを読んでみたのか気になるが、
今回は作品の内容ではなく、本スレでは問題がありそうだと理解しながら本スレに投下した作者の行動に対する非難だろ?
>>534 問題視してる方が問題なんじゃないのかい( ´ー`)y-~~
単発が多いねぇ
>>526 唯一の公式アンソロだからなw
「黙れ虫」ネタも好きだった。
>>527 小説版も買ったけどまだあるかな?
ゲムドラナイトのラジオドラマも聞いてたなぁ…
>>535 この場面で面白くもない冗談言わないで下さい(;><)
>>534 いや、非難する気持ちは分かるよ。
でもスレ上から下まで読んでて、いい加減粘着しすぎだと。
今回の問題も、
「最初は避難所に投下するつもりだったけど、やっぱり本スレに投下します」
ってだけだろ?
それなのにいつまでもグダグダと、ほんとスレ住人様、読者様だと思うわ。
>>539 毒スレへどうぞ。
擁護したい人もそうでない人も、今はあっちへどうぞ。
というかスレの正常な運営の妨げになっています。
SSは面白ければ正義だと思う
戦争って敵対する両方が「俺達が正義だ」って思念でやってんだぜ?
面白かったら何やってもいいのか、DQNの発想だなw
提督を叩いてるのは単に嫉妬してるだけだろ
>>544 そう言う君はどこまでOKなのか線引き出来るのかね?
ぜひ聞かせて貰いたいね
ダメそうかなと思ったら避難所に投下すれば終わる話だな
>>546 どこまでOKって…マジで聞いてるのか?
面白い=正義って本気で思ってるの?
提督は単純にキモイ
作品も作者も信者もアンチもすべてがキモイ
>>548 面白い=正義などといつ言った?
線引きを聞かせろといってるだけなのだが日本語が不自由なのか?
それならば申し訳ない失礼した。
>>550 毒スレへ行ってくれ、頼む。
あんたが行けば残るのは煽り荒らしと粘着の単発IDだけだから。
新しくクロノトリガーから召喚されないかなぁ
DSになるし
>>550 俺の542に対するレスにレス付けたんだから、そういう事じゃないのか?
何の線引きが聞きたいのか分からん。
やっぱさ、空気を読むってのは大事だと思うんですよ。
確かに賛否両論でそれを叩けは粘着乙で、褒めれば信者乙でしょ?
そこで、スレが荒れる(荒れるのが分かっている)のであれば空気を読んで避難所へ向かうのが、
社会生活をする上でのモラルじゃないでしょうか。
面白ければ正義と仰る方も居ますが、その面白さを殺す荒らしへの起爆剤っぷりと毒要素の強い作品ならば、
作者自身の不人気っぷりはまさしく悪でしょう?
自分で自分の首を絞めて「自分は悪です」ってどんなマゾですかw
面白い=正義と仰るのであれば
『自分の作品を以下に楽しんでもらえる環境を作るか?』ぶっちゃけプレゼン能力やプロデュース能力で、
作品を正義にも悪にもしてしまうという事を考えてもらいたいです><
線引きですか?
それを聞かねばならないほど、線引きに苦心されているのでしたら
>>1をご覧になってまとめサイトをご覧なられるのが宜しいかとおもいます。
それでもまだ燻るのであればこのスレから立ち去ることをお勧めします
……ああ、長文になってしまった
>>553 クロノトリガーからはカエル召喚くらいだっけ?
DS版買ったけど何度やっても面白い。
問題なければ02:00から投下しようと思います。
第7話への多くのレス、多謝であります。
よっしゃ、波動の人キタ!
これで勝つる!!!
支援致します
チュドーン!
チュドドーン!!
チュドドドーン!!!
リュウが『型』を行っている隣で連続爆破を続けるルイズ。
中庭の地面は既にそこらじゅう穴だらけになっている。
知らない者が見ればテロだと思われても仕方がない惨状だった。
「だあぁぁぁっ!なんでこうも毎回毎回爆発するのよ!」
どんな呪文を何回唱えても相変わらず爆発しかおこらないことに痺れを切らして叫ぶルイズ。
「乱れた心では何事も成せない。まずは落ち着いて集中することだ」
落ち着いた声で言うリュウは、先ほどから同じ動きを延々と繰り返している。
オスマンやコルベールの話では、ルイズには普通の魔法が使えない可能性がある。
それはつまり、今の練習をいくらやっても効果がないということだ。
しかし、リュウは確信している。
この世に無駄な努力などないことを。
一見意味がないように見えることも、後から振り返ってみれば必ず血肉になっているものだ。
「解ってるわよ!ファイアーボール!!」
チュドーーーン!!
リュウのアドバイスもどこ吹く風と荒れ狂うルイズ。というよりも、そもそもルイズが落ち着くなど無理だった。
「ああ!もう!こうも爆発が続くと流石に飽きるわね!一回でも成功してくれれば色々工夫できるのに!」
相変わらずプリプリ怒っているルイズ。
「ところでリュウ。あんたここ数日ずっと同じこと繰り返してるだけだけど、それって飽きない?」
気分転換にとリュウに話しかける。
「同じことを繰り返していても・・・例えば、ただ殴るという動作を繰り返しているだけでも一回ごとに常に新しい発見があるもんだ。飽きたりしないさ」
ルイズの質問にひたすら同じ動作を繰り返しながら笑顔で答えるリュウ。
「ふうん・・・あんたのことだから練習でも色々工夫してるんじゃないかと思ったけど、そうでもないのね」
「工夫は大事だが 基礎はそれ以上に大事だ 」
至極当然といった感じで答えるリュウ。
「リュウみたいな人でも基礎は大事なんだ・・・」
ルイズはぼやくのを止めると、再び呪文を唱えだした。
支援
支援!
「しかし、あれだね、相棒に貴族の娘っ子に平民の娘っ子ときたもんだ。最近はここも賑やかになったもんだあね。」
木に立て掛けられたまま一人(一本?)呟くデルフリンガー。
リュウが夜中に中庭で修行しているのを知って以来、ルイズは毎晩リュウの隣で魔法の練習をするようになった。
それと、相変わらず建物の陰からこっそりリュウを見ながら練習するシエスタ。
「あの娘っ子もこっちでやりゃあいいのにね。どうせバレてることも気づいてるだろうに。それにしても、今日はいつにも増して賑やかだあね」
見れば寮の方から二人の人影が近づいてくる。赤い髪の長身の女と、碧い髪の小柄な少女。
ルイズは二つの影に気づくと露骨にいやな顔になった。
「ちょっと!何しにきたのよ!」
嫌な顔を隠そうともせずに赤い髪の女、キュルケに食って掛かる。
「あのねぇ。夜中にそれだけ騒いでおいてそういう言い草もないんじゃない?
ここ最近、やたらと煩いから何かと思って来てみれば・・・一人無差別テロごっこ?」
呆れた顔で答えるキュルケ。
「な・・・何よ!いくらなんでも寮まで聞こえるはずないじゃない!」
中庭と寮は結構離れているので、気になるほどの音が届くとは思えない。
「この子は風のメイジなの。だから風の流れとか音に敏感なのよ。寝不足になっちゃったら可哀想でしょ?」
そう言ってタバサの頭を撫でるキュルケ。
「で、どうなの?少しは魔法使えるようになった?」
タバサが音に敏感なのは本当だが、実際には『静寂』の魔法で外の音を遮断してしまうので、ルイズの爆音など関係ない。
単にキュルケがルイズを心配していただけなのだが、それをストレートに言うのも恥ずかしかったのでタバサを理由に使っただけである。
真相を知っているタバサは無表情のまま小さくボソッと「不器用」と呟いた。
「ばばば馬鹿にしないでよね!」
キュルケとしてはルイズを気にしているからこそ出た言葉だったのだが、当のルイズはそれを馬鹿にされたと思ってしまった。
だから、思わず言ってしまった。
「魔法ぐらい使えるわよ!!」
ただ、こういう言い方をされるとキュルケの方も悪戯心が鎌首をもたげてしまう。
「あら?それは頼もしいわね。じゃあ、あそこに転がってる石。なんでもいいからあれに魔法をかけてみてよ、歩く無差別テロリストさん?」
ニヤニヤしながら言うキュルケ。
「テテテテロリストが歩くのは当たり前でしょ!みみみ見てなさい!!」
意外とまともなツッコミを入れつつ、ルイズは数メイル先に転がる石に向けて、呪文を唱えながら杖を振った。
「ファイアーボール!!」
チュドーーーーーンッ!!
一際大きな爆音が轟く。
だが、石には何の変化もない。
変化があったのは学院の塔の上の方の壁。丁度宝物庫のある辺りだった。
壁がモウモウと煙をあげている。
しばらくして煙が晴れてみると、壁に大きなヒビが入っているのが見てとれた。
「あ〜あ・・・」
大きく溜息をつくキュルケ。
「た・・・たまたま調子が悪かっただけよ」
それでも尚強気のルイズ。
「調子が悪いのは別にいいんだけどね。あれ、どうするつもり?」
自分のこめかみを押さえながらルイズを問い詰めるキュルケ。
それでも何か言い返そうとしたルイズだったが、それは適わなかった。
塔のすぐ傍の地面が盛り上がり、そのまま30メイルはあろうかという巨大な人影になると塔のヒビ割れた部分を殴りつけたからだった。
支援あるのみ
ドゴーン!
大きな音と共に塔の壁に人一人入れるほどの穴が開く。
すぐさま巨大な人影の肩の辺りに乗っていたマントとフードに包まれた誰かが穴の中に入っていった。
「クレイゴーレム・・・」
タバサが小さく呟く。
「噂の”土くれのフーケ”ね!?行くわよ!!」
キュルケが叫ぶと、リュウと3人の少女は駆け出した。
「あたしってばツイてるねぇ!どうしたもんかと思ってたら、なんだか知らないけど突然爆発とはね!」
壁の穴の中に入っていったのはキュルケの指摘通り”土くれのフーケ”。
色仕掛けでコルベールから得た情報では、宝物庫の壁はスクウェアクラスのメイジたちによって固定化がかけられているとのことだった。
スクウェアメイジの固定化がかけられている以上、トライアングルの自分の錬金ではどうにもならない。
が、自分のゴーレムなら物理攻撃で破壊できる。そう踏んでいた。
しかし、実際に目の前にしてみると固定化よりもその壁の分厚さ自体が問題だった。
いくら自分のゴーレムでもここまで分厚い上に固定化までかかった壁は流石に破壊できない。
どうしたものかと思案していると、突如壁の一部が、それも丁度宝物庫の辺りが爆破され、ヒビが入ったのだ。
フーケはこれ幸いにと急いでゴーレムを練成すると、ヒビの入った部分を思い切り殴りつけた。
さしもの分厚い壁もヒビが入っていればゴーレムで破壊できる。
めでたく穴の開いた宝物庫の中に侵入するフーケ。
「あったあった・・・」
宝物庫の際奥に保管されていた箱に書かれた『破壊の珠』の文字を見つけ、ほくそ笑む。
箱を開け、中から人の頭程の大きさの珠が連なった輪を取り上げる。
「これが『破壊の珠』だね・・・確かに頂戴したよ」
フーケは宝物庫の壁に『フーケ参上。破壊の珠は確かに頂戴した』
と書きなぐると、再び壁の穴から飛び出し、ゴーレムの手から腕を伝って肩に飛び移る。
「さてと、あのリュウとか言うのがこっちに来るまでに逃げないとね」
が、見ればリュウはすぐ近くまで来ていた。
支援
「・・・って、やけに速いじゃないか」
基礎体力からして常人とは違う次元にいるリュウはフーケの予想を遥かに超える速さで走ってきた。
フーケは急いでゴーレムから飛び降りると、闇の中へと身を隠す。
「逃げるまで時間稼ぎしなきゃね」
ゴーレムで傍に生えていた10メイルほどの大木を引き抜くと、リュウたちに向けて狙いをつける。
「大丈夫、時間稼ぎしたいだけだから当てたりしないよ」
物は盗るが命は取らない。
それがフーケの美学だった。
「ファイアーボール!!」
ルイズが途中で立ち止まって呪文を詠唱し、杖を振った。
もちろん火の玉は出現しなかったが、突然ゴーレムの表面で爆発が起こる。
が、先ほどよりも遥かに弱い爆発しか起こらず、ゴーレムの表面が軽く焦げた程度でしかない。
「馬鹿!なんてことするんだい!!」
思わず叫んでしまうフーケ。
爆発はゴーレムにたいしたダメージを与えはしなかったが、しかしそれでもゴーレムの手元を狂わすには十分だった。
リュウの目の前に投げつけるつもりだった大木は大きく狙いを外れてずっと後方、
呪文を唱える為に立ち止まり一人離れた場所にいたルイズに向けて一直線に飛ぶ。
「え!?」
避けることすらできず、自分目掛けて飛んでくる大木をただ見ているしかできないルイズ。
ルイズを助けようとリュウが振り向いて走るが、あまりに距離が離れているのでとても間に合わない。
タバサも”エア・ハンマー”をぶつけて大木の軌道を変えようとする。
が、こちらも詠唱が間に合わない。
キュルケに至っては反応することすらできなかった。
ドウンッ!!
ルイズ目掛けて飛んできた大木は無情にも直撃し、辺りに激しい土煙が巻き上がる。
「嫌ぁぁぁっ!!」
キュルケの悲鳴。
杖をギュッと握り締め、きつく目を閉じるタバサ。
そして、リュウの瞳孔が開く。
―――おおおおおおおおおっ!!!―――
地獄から沸きあがるような雄叫びと共に、リュウの全身からあまりに濃厚な殺気が噴き出す。
それは、先日のギーシュと闘ったときとは比べることすら愚かしいほどの、果ての見えない、深い暗い殺意だった。
その殺気にあてられてリュウの周りの草花が半径数メイルに渡って一瞬で枯れていく。
赤黒く光る禍々しい瞳でゴーレムを睨み付けると両手を揃えて腰に据え、半身を捻る。
左手のルーンが、篭手の上からでも判るほど激しく妖しく光った。
支援
―――滅・波動拳!―――
ゴーレムに向けて両手を突き出すと、合わせた両の掌からリュウ自身初めて見るほどの巨大な気の塊が放たれる。
放たれた気の塊は30メイルもあるゴーレムの腰から上全てを一瞬のうちに消し飛ばし、
そのまま微塵も勢いを衰えさせずにその直線上にあった塔の上部をも完璧に消し去り、空の彼方に消える。
―――ぬぅんっ!―――
奈落の底まで響き渡るような呻き声をあげると、信じられない速度で地面を滑るように移動するリュウ。
瞬きひとつの間に下半身しかないゴーレムの足元まで辿り着くと、無造作にゴーレムの足を殴りつける。
ゴバアァッ!!
拳の一振りでゴーレムの足が数メイルにわたり、大きく抉り取られた。
更に殴りつける。
再び大きくゴーレムの足が抉り取られる。
フーケのゴーレムには強力な再生能力がある。
周りに土さえあれば、破壊されても即座にその場所を修復できるのだ。
だが、そんな能力はあってもなくても同じだった。
上半身は既に消滅しているし、下半身にしてもどんなに高速で回復しようにも、破壊のスピードにまるで追いつかない。
たった数度拳を振るっただけで最早足をほとんど失った30メイルのゴーレムの下半身は自重を支えることができなくなり、膝から崩れ落ち始める。
目の高さまで落ちてきたゴーレムの部位を、手当たり次第に尚も殴りつけるリュウ。
・・・脚・・・膝・・・腿・・・腰・・・
全ての部位が、拳が触れた瞬間に塵芥と消え果てる。
「な・・・なんだい・・・あれは・・・」
盗賊の本能が勝手に身体を動かしてくれたおかげで、どさくさに紛れてその場から逃げることには成功したが、フーケは放心状態だった。
人を殺めてしまったこともあるが、それよりもリュウの化物としか表現のしようがない強さ。
そして何よりリュウの放つ殺気。それは生命の根源から湧き上がるような恐怖。
本能から来る恐怖に身体中が震えている。
「あの貴族の娘には悪いことしちまったね・・・それにしてもあのリュウって男・・・何者なんだい・・・」
呟くと、フーケはガタガタと震える身体を無理やり動かして闇の中に消えていった。
俺の拳が血を求めている支援
支援
リュウの中に僅かに残った冷静な自分が全力で”殺意の波動”の暴走を止めようとしていた。
――何故だ?何故”殺意の波動”が勝手に!?・・・抑えられない!!ここで正気を失ってしまえば大変なことになる――
今正気を失えばキュルケたちを手にかけてしまうかも知れない。
理性が飲み込まれそうになるのを必死で堪える。
「お怪我はありませんか?ミス・ヴァリエール?」
大木が落ちた辺り、土煙の中から声が聞こえた。
リュウがかろうじて残る理性でそちらの方を見ると、収まりつつある土煙の中に二人の人影が見える。
一人は腰を抜かしてへたり込んでいるルイズ。
そしてもう一人は、大木を手で支えているシエスタだった。
シエスタが誰もいない方に向けて支えていた大木を手放す。
ルイズの無事を確認したリュウはそのまま意識を失った。
キュルケとタバサもルイズの無事を確認すると、安堵の溜息をつき、
ルイズの方は大丈夫だと判断してリュウの介抱に向かう。
キュルケは地面に座り込んで自分の膝にリュウの頭をそっと乗せてやると、額の汗を拭ってやった。
「あなた・・・何者なの・・・?」
意識のないリュウから返事が来るはずもないが、誰に言うでもなくつぶやく。
ドットメイジであるギーシュならともかく、トライアングルクラスのメイジが作ったと思われる
30メイル級のゴーレムですらリュウの相手にはならなかった。
そもそも、あの手から出た術のようなものは何だったのか。魔法ではないようだったが・・・
底の見えない強さを持つこの男は、一体どこまで強いのだろう。
そして、その天井知らずの強さに驕ることもなく深い優しさを湛えた瞳を思い出す。
「やばいなぁ・・・本気で好きになっちゃったかも・・・」
隣にいたタバサでも聞き取れないほどの小さい声を漏らすキュルケだった。
建物の陰から見ていたシエスタは、リュウたちが爆発のあった方に走っていったのを後からこっそり、見つからないように距離を離して追いかけていた。
そこで見たのはルイズ目掛けて一直線に飛んでくる10メイルはあろうかという大木。
慌てるシエスタ。
「おじいちゃん!わたしに力を貸してっ!!」
シエスタは全力で走るとルイズの前に飛び出し、大木を受け止めたのだった。
「あ・・・ありがとう・・・大丈夫よ・・・」
腰が抜けたまま、なんとか言葉を紡ぐルイズ。
「とにかく、間に合って良かったです。走るのが速いのも、力が強いのも、たまには役に立つんですね」
シエスタが微笑んだ。
支援
以上で投下終了です。
ありがとうございました。
乙です
乙でありました
乙であります
殺意のリュウ無双・・・よりシエスタの潜在能力がwww
今後の展開も激しく期待してます!
波動さん乙です。
ルイズピンチ→殺意の波動ONという図式。
ていうかシエスタ強っ。
シエスタが見よう見まねで波動拳使いそうな予感。
乙です。
今後に激しく期待!
乙w
シエスタがさくら化するのか!?w
というか、おマチさん、無事に逃げられて良かったねw
>>555 とりあえずあんたは悪決定
SSでもない長文を本スレに投下ってテンプレ荒らし並にひどいぞ
あい、自重します
ところで、多重クロスや他作品のキャラと一緒にサイトも召喚される話は本スレでもok?
>>580 さくらの恰好したシエスタ…だと…
超見てぇー!!
波動の人GJです。
次回に超wktk。
>>583 X3などの傑作前例があるし、いんでない?
>>583 OKだと思うよ。前例あるし。
ただスンゴイ難しいよ。ハッキリ言って。
俺には、俺には見えるぜ 褌一丁で隈取をしたシエスタが・・・むしろそれ以外思いつかん
全シエスタ入場とかいうネタみたいな
>>587 私は、”日焼けしたシエスタ”しか見えんかった(w
提督を批判してるのが特定のIDばかりでワロタwww
提督を擁護してるのも特定のIDばかりでワロタwww
やっぱりエドモンドさんでシャンコナヴェなんですかね
タルブの村が凄まじい事になっていそうな予感
村の中央に土俵があるとか?
ストキャラで男の黒髪なんてリュウ、ケン、本田ぐらいしかいないから特定は容易
現在の相撲と違い、元々は戦争で徒手空拳で戦う為の技術だったとか。
……エドモンドの流れを汲んでいると仮定するなら、そのくらい無茶でもアリな気がする。
相手を転倒させてマウントポジションとって短刀でグサリまでが一挙動だからね>戦場格闘技としての相撲
つまりシエスタが空を飛んで頭突きをするのか…。
>>599 ということは、タルブ戦は零戦でなくシエスタに乗って空中戦を……
DJ!も黒髪じゃなかったっけ…?
あとフェイロン。ケンは金髪だったような…染めてるんだっけ?
>600
それ、リュウじゃない。桃白々だ。
>>602 いや、キン肉マンゼブラかもしれんぞ?
マッスルリベンジャー的な意味で。
アフガン航空相撲ですね、わかります。
>>596 ベガ様も黒髪だったはずだ。
だからシエスタは秘密結社タルブーの総帥かもしれん。
ここであえて春麗の可能性を提示……ごめん、なんか無理があるような気がする。
タルブ名産の美味しいシャドルーワイン……
キャッチコピーは「舌先に光臨する神の世界」「心を天に解放する」「目を閉じれば広がる極楽浄土」
グラス一杯でもう病み付き、これ無しでは人生の意味が無いってか
>>607 何か危ないクスリが入ってそうな気がするのは気のせいですか?
>>581 ここは別にss投稿スレじゃないんだけど、なんか勘違いしてる?
>>608 シャドルーは麻薬の密売もやってたみたいだからな。
ストキャラならダルシム最強じゃね?
体伸びるわ、空飛ぶわ、火吹くわ、テレポするわでチートすぎる
ソドムは黒髪だっけ? 奴なら素晴らしい日本文化をハルケにもたらしてくれそうだ。
>>610 たしかナムカプでは「表向きは麻薬密売組織」とか言う言われようだったな
表向きの顔でさえ犯罪組織
短いですが11:15ごろから投下します。
1200万パワー支援
シエスタのじいさんは武道やってたって言ってんのにベガとか無いしw
ごっついタイガ−バズ−カの人に決まってんじゃん。
正義超人はいいなぁ〜支援
せめて、二次創作では活躍してもらいたい……
ミハイルマンが見守っていますよ支援
>>610 ですよねー、ベガ様居ついてたなら花畑くらいは
ファイティングコンピュー支援
では、次から投下します。
第九話 ウォーズマンのいる日常
さて、ギーシュとの決闘やルイズたちとの話を経てウォーズマンには新たな日常がやってきていた。
ウォーズマンの朝は早い。
日も昇る前から起き出すと、学園の敷地の一角に用意してもらったスペース
(もともと使われておらず空いていたため使わせてもらっている)でトレーニングを始める。
いらなくなったぼろきれを巻きつけた棒に向かいタックルを繰り返し、
同じくいらなくなったボロ屑などをもらってきてそれをつめて作ったサンドバックに拳を打ち込み、
ダンベルを持ち上げ筋力トレーニングを繰り返す。
もちろん器具を用いないストレッチや腕立て伏せといった練習も欠かさない。
そして日が出てくると、ルイズのものに加えシエスタの洗濯物も持って行ってやり、一緒に洗濯をする。
ウォーズマンが正体を表して以来ルイズは彼に洗濯を頼んでもいいのか不安になっていたが、
シエスタの手伝いをするということもあり今でも洗濯は行ってくれている。
もちろん、今のウォーズマン相手にさすがに着替えまでは頼めなかったが。
それはさておき、オーバーボディを脱いだウォーズマンはもう普通に洗いものもできるようになり、
シエスタを二人で洗いものを洗濯して干していく。
そしてそれが終わるとシエスタと別れルイズを起こしに行く。
なお、ウォーズマンに起こされるとルイズはスパッと起きていた。
もちろん怖いからだ。
眠さよりも恐怖が上回る。
だが、それでも数日続けると少しはこの起床リズムにも慣れてきていた。
そしてルイズを食堂へ送ると再びトレーニングを始める。
そして食後にはルイズとともに授業に出る。
この世界で戦っていくためには魔法についてより深く知る必要があると考えたからだ。
そしてそのあともルイズの昼食の間はトレーニングし、午後の授業を一緒に聞く。
その後はさらにトレーニングを始めるがそこにはもう一人が加わることになる。
ギーシュである。
ウォーズマンはトレーニングの傍ら、ギーシュに稽古をつけてやっていたのだ。
このことを知ると皆は一様に意外そうな顔をするのだが、
ウォーズマンはギーシュに自分と同じにおいを感じ取っていたのである。
さまざまな世界で、召喚された使い魔の実力を見せるていのいいやられ役、
そう、かませ犬のにおいである。
ステカセのかませにされ、牛のかませにされ、体内をリングにされ、真っ先にマスクを狩られ、象にはウギャアされ、
その後20年余り、作中時間では三十四年たった後、再び老害仮面とメシウママンモスにゴーヒューな目にあわされた自分と同じにおいを。
だからこそ、自分のふがいなさを自覚し向上しようとしているギーシュに声をかけ、技や戦法を教えている。
また、ウォーズマンもギーシュに錬金でダンベルなどの金属製の練習器具を準備してもらったり、
稽古の成果を試すことも兼ねてワルキューレを相手にスパーリングを行ったりしている。
植物メイジ支援
今度は『実況』が何時出てくるかが凄く気になってしまう支援
たしか風メイジだっけ…?
そしてルイズの夕食後は、ルイズやシエスタたちに何か用事や困ったことがないか聞いた後、
トレーニングをしてから与えられた自分の部屋で休む。
当初はルイズと一緒の部屋にいたのだが、ルイズに限界が来た。
さすがに一緒にベッドで寝る気にはなれなかったので、
もらってきた毛布を重ねて敷いて布団のようにしていたのだがその結果、、
夜中静かなところでコーホーコーホー、
おまけに壁には修繕の終わった中身のない着ぐるみがだらんと掛けられている。
怖すぎる。
結局ルイズがマルトー達に頼み込み、寝れさえすればどこでもいいということで
物置に使われていた小さい部屋を整理して空けて、ウォーズマンの寝床にしている。
これが平日の一日。
休日の虚無の曜日には、シエスタたちに手伝えることがあればそれを手伝い、
そのあとの時間は一日中トレーニングとギーシュへの指導。
何でもギーシュは今では前のように女生徒に声をかけて回ることはなくなり、
モンモランシーとだけ付き合っているらしい。
そして空いた時間でウォーズマンに指導を受けている。
なお、一度ルイズに休日に剣を買ってあげるといわれたが、ウォーズマンは断固拒否した。
「俺は正義超人レスラー、用いるのはこの鍛え抜かれた五体とリングのみ。
凶器など使わない」
「え、でもあんたこの前爪つけてたじゃない……」
「ベアークローはおれの一部だ」
「でも凶器になるんじゃ、」
「俺の一部だ」
というわけで結局この話は流れた。
「……あれ、このデルフリンガーさまの出番は?」
その時どこぞの武器屋ではそういう声が上がったという。
かませ犬吹いた
支援
取り外し可能なくせに体の一部支援
デルフばいちゃ
待ってウォーズマン、アナタの主観時間では未来のはずの出来事が認識されてないか支援
まあ、ゆでキャラだし。
やっぱり気にしてたのね……支援
そんな日常に変化がやってきた。
「大変、ウォーズマン!今度姫様が学園にこられてそのとき使い魔のお披露目をするんですって。
皆、何か特技とかを披露しないといけないそうなの」
「そうか、ならこのおれの鍛えた技を、」
「ごめんなさい、姫様の前だしあまり荒々しいことはやめてほしいの」
「そ、そうなのか……」
「うーん、攻めて笑顔とかできれば、でもその仮面じゃあ」
「それなら問題ない」
「え、できるの、どうやって?じゃあちょっとやって見せて」
そう言われるやいなや、
「ウォーズマンスマイル!」
なぜ笑うのにわざわざ叫ぶのか、一瞬そう思ったが、そんなルイズの前で黒いマスクの口がパカッと……
「ひぃいいやあああぁぁぁああああああああああぁーーーーー」
結局、笑顔は取り止めになったという。
スマイル支援
コサックダンスくらいしか芸無いものね
支援
友情の素晴しさについて語ればいいよ!
以上で投下を終了します。
ウォーズマンにデルフを使わせる展開がおもいつかなかったので彼には流れてもらいました。
デルフファンの方すいません。
ところでウォーズマン負けちゃいましたけど割といい負け方でしたよね。
ウギャアのときと違って。
乙ー
でもウォーズマンのやったことは結果的に強敵を増やしただけ・・・ゲフンゲフン
セイウチンを改心させたようにワルドだって完璧メイジから正義メイジに戻せるさきっと!
乙でした
いつかギーシュとウォーズマンのタッグフォーメーションAが見られるのだろうか
ネプチューンマンは老害やない
乙
そういえば、2世でサタンが出てきたのを見て、
ルイズが金のマスクを召喚、それを被って謎のマスクマン、悪魔将軍に変身なんて馬鹿なことを考えた事もあったよ
イエッサー悪魔将軍!
そういえば超人にライトニングクラウドってどの程度効果が有るんだろう
ネプチューンマンクラスになれば雷を掴んで武器にすることも出来るけど
ウォーズマンやその他の超人にとってはちょっとはダメージになるのかな
>>638 ジェネラルストーンでよくね?
そしてルイズはガチムチ超人に…ガクガクブルブル
>>639 ウォーズマンはロボット超人だから、電撃とかかなりまずいんじゃね?
その場のノリによってはエネルギーを吸収する可能性も考えられる
ストレンジ・プラスから美国探偵事務所一同召喚…
ルイズやシエスタやテファを見て欲望に火がつく正宗や巧美のストーカーと化すワルドを幻視したw
バイクマンはすげーいい加減な接続方法でバッテリー補充してたよな
>>643 やべえw
それは超見たいw
正宗にとっては天国かもしれんな、トリステインはw
巧美の腹黒さはバンパイアセイバーのバレッタに勝るとも劣らないからいいSSになりそうw
しかし・・・
>>巧美のストーカーと化すワルドを幻視したw
これがリアルに想像できていやだw
投下予約無いようでしたら30分より投下します
乙です
デルフはこの際デルフマンというオリジナル超人にでもして活躍を…
しない方がデルフは幸せですね
「あっしは手の目だ
先見や千里眼で酒の席を取り持つ芸人だ
あっしの芸が当てにならないってのは 先刻述べた通りだが
これがどういうわけか 占うまでも無い 分かりきった未来に限って
妙にはっきり見えやがる事が 往々にしてある
何でこんな事話すかってェと こうしてる今も見えてんのさ
そう 丁度ここ…… ニューカッスルに来た時から ずっとこんな調子さ
尤も この国の行く末なんぞ 本来なら手前の知った事じゃねぇ
手紙さえ手に入れば こんな辛気臭い場所ともおさらばって寸法な筈だが……
あ〜ぁ 何でこういう 大事な先は見えないかねぇ?」
――ニューカッスル
レコン・キスタとの決戦の準備が進む中、城内の一室では
机の上に置かれた封筒を、三人の男女がそれぞれ見つめていた。
「――さあ これが姫からいただいた手紙だ アンリエッタに宜しく伝えてくれ」
「殿下……」
部屋の主、アルビオン王国皇太子、ウェールズ・テューダーの晴れ晴れとした笑顔に、ルイズの表情が曇る。
目の前に置かれた、アンリエッタの手紙。
これを無事に持ち帰れば、見事、王女からの依頼は果たされる事となる。
だが、王女がルイズに対して望んでいたのは、こんな小手先の使い走りでは無いだろう。
ニューカッスルの置かれた絶望的な状況を見るにつけ、ルイズは改めて感じずにはいられなかった。
アンリエッタは、想い人であるウェールズの亡命を望んでいたのだろう。
それは、政治的に見るならば、進んで災厄を招き入れる行動であり、指導者の立場にある者が下してよい命令ではない。
だからこそ、彼女はこの任務を、切れ者の宰相でも有能な魔法衛士隊隊長でもなく、
唯一無二の友であるルイズに頼んだのだ。
そんな、乙女の切なる願いも、ルイズの言を尽くした説得も、遂には王子の決意を崩すことは出来なかった。
任務を達成しつつある現状とは裏腹に、ルイズの胸中は重く沈んでいた。
「夕刻には宴が始まる
しばし客間にて休息をとった後 是非 出席してもらいたい」
「…………」
ルイズはもはや、王子の覚悟を揺るがすほどの言葉を持ち合わせてはいない。
小さくため息をつき、部屋を後にしようとした。
その動きを、傍らにいたワルドに、軽く抑えられる。
「ワルド……?」
「子爵殿 いかがなされた?」
「おそれながら 殿下に折り入ってお願いしたき儀がございます」
穏やかではあるが、やや緊張が感じられるワルドの口調に、ウェールズが先を促す。
「もし叶うならば 明日 城内の礼拝堂において ウェールズ殿下の媒酌の下
私と 傍らにいる婚約者 ルイズ・フランソワーズとの結婚式を行うこと お許しください」
「!」
「ワ ワルドッ! あなた こんな時に何を……」
「勿論 式といっても あくまで儀礼的なものさ
立会いはあくまで殿下ひとりにお願いするつもりだし
これまでの生活が変わるわけでもない
ただ…… どの道 遠からず永遠の愛を誓い合うことになるのなら
面識の無い司祭の前より 誇り高き騎士である殿下にお願いしたいと思ったんだ」
「…………」
「殿下」
ルイズの沈黙を肯定と捉えたか、ワルドが改めてウェールズに向き直る。
「ニューカッスルに留まる兵達の覚悟 このジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド
武門に名を連ねる者として まこと 深い感銘を受けました
残念ながら 私は重大な任務を帯びたる身 供をすることは叶いませぬが
この上はせめて 殿下の媒酌を誉れに 今生の別れに致しとうございます」
ここまで、二人のやりとりを呆然と見ていたウェールズであったが
ワルドの最後の懇願に対し、穏やかな笑顔を見せた。
「素晴らしい話ではないか
この無能たる我が身に残せる物があると言うなら
喜んで お役目引き受けさせて頂こう」
・
・
・
「ワルド…… 何で あんな大事なことを突然?」
「ああ
あれは何も僕たちの為だけではない
あの申し出は ウェールズ殿下の為でもあるんだ」
「ウェールズ様の……?」
客室へと続く渡り廊下を、二人が進む。
視線を向ける事無く、ワルドが言葉を続ける。
「お優しい殿下の事だ 愛する王女に何一つ残せぬ事も
その使者として現れた 君の誠意を袖にした事も
内心では相当気に病んでおられる筈さ
その彼が 僕達に対し残せるものがあると分かれば
少しは心労を和らげる事が出来るんじゃないかと思ってね……」
「…………」
ルイズが視線を落とす。
もし、ワルドの予想通り、ルイズの態度が王子を苦しめているというのならば
その憂いを取り去る為のワルドの方便を、止められる道理は無かった。
「――それから この話は彼女…… 君の使い魔には秘密にしておいた方がいい」
「え?」
ようやく平静を取り戻しつつあったルイズの思考が、再び揺さぶられる。
形だけの使い魔とは言え、彼女とは公的には主従の間柄であり、私的には大事な友人である。
いかに内々の式とはいえ、これまで危険の多い任務に従ってきてくれた彼女を、参列させない道理は無い。
「ここ数日 供に旅をしてきて感じた事だ
やはり 彼女は我々とは違う」
「それ…… どう言う事?」
「いや 決して悪い意味じゃない
ただ 今は契約で繋がれてはいるが
彼女の価値観は あくまで漂泊の民のそれなのだろうと思う」
「漂泊の民?」
「何一つ権利を持たずに生まれ それ故に 何の義務も負わずに生きてきた人間と言う事さ
様々な特権に守られ その分 貴族としての在り方に縛られている 僕等とは真逆の存在だ
世間の荒波に揉まれながら 自らの芸に由って身を立てて来た事だけが彼女の誇りだ
死に望もうとする貴族の矜持も 今生の誉れを抱きたいという心理も
彼女は理解しようとはしないだろう」
「それは…… でも」
「レコン・キスタの圧力が迫る城内に留まり
任務そっちのけで結婚式ごっこに興じると知れば 彼女は決して良い顔はしない
君と彼女の関係に 必要の無い亀裂を生む事は無いだろう?」
どこかワルドに言いくるめられた感はあったものの、結局ルイズは押し黙るしかなかった。
手の目が危険を覚悟でついて来たのは、あくまでルイズの身を守るためである。
それを知りながら、結婚式に時間を費やすことは、彼女の献身に対する裏切りに感じられたからだ。
「終わったかい? おふたりさん」
部屋の入り口では、話題の中心人物である手の目が、二人を待ち侘びていた。
「手の目……」
「ああ 王女の手紙は 無事に返却されたよ」
咄嗟に言葉がでなかったルイズを遮り、自然な口調でワルドが言う。
「ついては今後の話だが……
明朝 城内から避難民を乗せた船が出る
君はそれに同乗し 一足先にトリステインに戻ってほしい
我々は 後からグリフォンで追う
長距離ではあるが 二人乗りならば何とかなるだろう」
「……言ってる意味がさっぱり分からねェ
手紙が手に入ったんなら こんな所に長居する理由は無いだろうに
一緒に船で帰ればいいじゃねぇか?」
「――君の立場から言えば 確かにその通りだろうが……
今の我々は トリステインを代表する大使でもある
アルビオン皇太子の厚意に甘えっぱなしで 挨拶の一つもせずに去るわけには行くまいよ」
「ふぅん……」
もっともらしいワルドの説明を、いかにも胡散臭げな態度で聞いていた手の目であったが
やがて詮索にも飽いたか、クルリと背を向けると、あてがわれた自室の扉を開けながら――、
「どうでもいいけどよォ 木乃伊取りがナントカってェのだけは勘弁だぜ」
「!」
「なッ……!」
――と、二人が反論する間もなく、バタンと扉を閉めた。
・
・
・
――夕刻
ホールでは、アルビオン王国にとって久方振りの宴が開かれていた。
トリステインの有力貴族であるルイズでも、目を見張る程の贅を尽くしたパーティー
テーブルには豪勢な料理の数々が所狭しと並び、着飾った貴族や貴婦人達が会話に花を咲かせる。
時折、老王自ら、ここまで付き従ってきた忠臣たちを慰撫して回るが
宴の歓喜に当てられたは、王の真摯な憂いすらも冗談として笑い飛ばした。
一切の翳りが無い、明るく、華やかな宴
それが却って、事態の傍観者であるルイズにとって、印象的な光景に映る。
「やれやれ こんな七面倒臭い宴席は初めてだ」
ようやく周囲から開放された手の目が、辟易といった感じで近付いてくる。
その表情は、既に先の冷めたものへと戻っている。
「手の目」
「あ〜ぁ あんな浴びるように煽りやがって
滅多に無ェ上等な酒だぜ あんなの見たら蔵元が泣くよ」
複雑な表情のルイズに対し、手の目の態度は傍観者そのものである。
余りのデリカシーの無さに、ルイズの心中に先の怒りが込み上げて来る。
「アンタねぇ…… あの人達が無理して明るく振舞っているのが分からないの?
もうちょっと とるべき態度ってものがあるでしょうが」
「そんな事ァ こちとら百も承知さ お嬢の方こそ あいつらに入れ込みすぎなのさ
目の前の光景は 所詮 隣国で起こってる他人事の一部なんだからよォ」
「そんな言い方……」
尚も反論しかけたところで、ルイズが違和感に気付く。
普段から冷淡な手の目ではあるが、いくらなんでも、今日の彼女の突き放した態度は余りにおかしい。
余りにも冷め過ぎた、傍観者の目線。
その意味するところは……
「手の目 アンタまさか……」
「まさかもなにも こうしてる今もはっきり見えるよ
これから【先】の映像が 握り締めた刺青の上から流れ込んできやがる
こんなにも見通しが利くのは こっちも初めての事さ……」
ルイズが憂いを抱えているのは、これから先、ニューカッスルで起こる出来事を予想するが故である。
そして、今宵の手の目がどこまでも冷め切っていたのは、これから起こる出来事を確信するが故であった。
「――でも 先が見えると言うのなら あるいは……」
「どうしようもないね
今の彼らに何を言った所で 情熱に水を差すことしか出来ないし
どう助言してみたところで 盤上では既に詰んでるんだ
あっしが見たものを余す所なく伝えたとしても
精々 道連れに出来る敵さんの数が増えるってェだけさ……」
「そんな……」
「彼らは別にそれでいいのさ
今の彼らに残された問題は いかに誇り高く死ぬかってだけだからな
だがよ お嬢はそうじゃねェだろ?
だったら あんなモンに巻き込まれちゃいけねェや」
「…………」
「――他に まだ何か 抱え込んじゃいないか?」
ルイズが再び息を呑む。今宵の手の目の冴えは、まさに異常である。
もっとも、相手は年下とはいえ、長年酒の席を取り持つ事を生業としてきた手練である。
憂いを隠し切れない貴族の令嬢の心理など、裸同然なのかも知れない。
「察するに ワルドの旦那の事だろう?」
「……ええ」
と、ひとまず肯定はしたものの、それっきり、ルイズは言葉に詰まる。
明日起こる出来事を、手の目に話すわけにはいかないが、
その確信を避け、どのように悩みを打ち明ければ良いかが分からなかった。
「あの旦那は 何と言うか 少し近すぎるな」
「近い?」
「ああ あっしは勿論 初対面だし
お嬢は小さい頃の馴染みとは言え 十年来会っていなかったんだろ?
あの旦那は その辺の垣根を易々と乗り越えて近付いてくるのさ」
人と人の距離感。
それは、常に人と向き合う仕事で糊口を凌いできた手の目だからこそ、気になる部分であった。
人同士の付き合いには、それぞれに守っておきたい距離が存在し
人付き合いの旨い者であるほどに、踏み越えてはならない一線を把握して、
他人との間に、絶妙な距離感を保つものである。
これがワルドの場合、自分の本心は隠したままで
いつの間にか対手の内側に入り込んでこようとするきらいがあった。
彼がどこまで自覚的にやっているのかまでは分からないが
それこそが、ルイズが感じたある種の違和感、手の目が感じた本能的な嫌悪感の正体だった。
「――ともあれ ワルドの旦那は強引な流れを作り出す節はあるが
後はお嬢が その流れに乗るか あるいは逆らうか 問題はそこだけなのさ
だから 本当はあっしがちょっかい出す事でも無いんだが……」
言いながら、手の目がルイズの右手を取る。
「何?」
「なぁに ちょっとしたおまじないだ
どうしても お嬢が自分で判断を下せなかった時は
こいつを試してみるのもいいだろうよ」
・
・
・
「やれやれ やっぱり当分は乗り込めそうにないね」
明朝、港内に集まった人だかりに対し、手の目が絶句する。
脱出に使えるのは、城に残った戦艦一隻のみというのだから
いかに城内に人が少ないとはいえ、混雑を起こすのは当然であった。
出航まで時間がかかるであろう事を覚悟し、手の目が港内の片隅に腰を下ろす。
手の目がトリステインからの大使の一行と知れば、乗員達も率先して道を開けてはくれるのだろうが
不安な表情を浮かべる女子供を押し退けてまで乗り込む程、安っぽいプライドは持ち合わせていなかった。
――と、
後方から感じた気配に、ゆっくりと手の目が振り向く。
洞窟の影から現れたのは、昨夜のパーティで見知った顔。
「あんた…… 王子様 かい?」
手の目の記憶に間違いが無ければ、確かに目の前にいるのは
アルビオン王国皇太子、ウェールズ・テューダーであろう。
昨夜見たとおりの穏やかな笑みを浮かべ、ゆっくりと近付いてくる。
手の目としては、その光景を額面通りに受け取るわけにはいかない
アルビオンの皇太子は、本来なら今頃、ルイズ達の別れの挨拶を受けていなければいけない筈である。
「……わざわざ出向いて下さったのは有難いが
こんな所で 油売ってていいのかい?」
疑惑の色が混じった手の目の軽口に、男は応じない。
相変わらずの笑顔で、ゆっくりと体を沈め……
次の瞬間、風を巻き、獣の如き跳躍で、手の目の鼻先へと迫った。
「!」
咄嗟にかざそうとした手の目の右手首が、閃光の一太刀で斬り飛ばされる。
「ぐッ……」
返す刀で打ち込まれた強烈な刺突が、手の目の右胸を深々と貫いた。
以上、投下終了です。
一話完結の葉介作品だとまず無い引きですが、区切りが良かったので。
ここ二話ほど、手の目が芸を見せていないので、次回は全開で行きたいと思います。
乙っしたー
人の心理を推し測る手管にかけてはおそらくこのスレで呼ばれた全ての使い魔の中でも最上級
それゆえに腹に一物抱える御仁にとっては厄介極まりない危険な相手
とはいえ切ったはったは苦手な手の目
鉄火場に放り込まれた彼女の運命やいかに!ですなー
…なんか上手く纏まらんかったのう…
エロ注意
おーけー、
>>657がハルケギニアに生まれ変われるように祈ってあげよう。
平民の美少年として狒々親父にアッー!?されるのとおちこぼれ貧乏三下美少女メイジとして野郎どもからレイープされるの。
どっちが良い?
別にゼロ魔の世界じゃなくても金と権力があればできるんじゃね?
>>657が見てるゼロ魔と
俺が見てるゼロ魔が違うものだというのが良くわかるな
どうやら分かっていないようだが、『現代』こそは一番奴隷人口多い時代なのだよ。
そして世界に存在する銃の数は約12億丁、全人口の五人に一人が銃を所持している『現代』が一番戦争人口割合が多い時代でもある。
>>657は生まれる国を間違えただけだ。
アフリカに生まれれば良かったのにな……
ウォーズマン乙
>>657も乙なんだぜ
貴族の血を引いた平民に魔法を教えて下克上したら面白そうですな
>『現代』こそは一番奴隷人口多い
割合なら史上最も低いんだろうけど、母数となる総人口がな。
直近の50年で2倍に増えてるんだから、異常としか言いようがない。
6000年たってあれっぽっちのハルケギニアの停滞も異常
いかに貴族が世界を腐らせていたかがわかる
ハルケギニアにもネット環境があったんだな
平民が貴族への恨み言をこんなとこに書き込むとは
地球人は宇宙人と取引して蒸気機関などの超技術を手に入れただけに過ぎなかったんだよ!
6000年あのレベルの文明維持できてたのならむしろすごいぞ持続可能な開発(笑)
とやらが実現してるに違いない
>>665 メソポタミアに都市国家が建設された頃から数えて今ちょうど
6000年くらいたってる。地球も6000年前から1000年前くらいまでは
それほど大した進化は遂げてない。
産業革命以後がすさまじい。産業革命がなきゃ地球もハルキ
も同じようなもんだろう。6000年から見れば産業革命なんか
その最後の200年300年のときにおきてる。
ハルキの停滞なんかその時間スパンからしたら誤差だろう。
今、ハルキでも産業革命に相当するなにかが進行中かも知れない。
コッパゲの空飛ぶ蛇くんですね、分かります。
ワンピの天竜人とゼロ魔の貴族の区別の付かない奴がまた出たのか
ゼロ魔の貴族はちゃんと魔法で社会に貢献してるしな
威張るにしても威張れるだけ役にはたってる
674 :
虚無と金の卵:2008/11/23(日) 15:18:42 ID:x8+DrCud
予約無ければ、『虚無と金の卵』15:30より投下いたします。
こんにちは、第23話投下開始したいのですが大丈夫でしょうか。
今回は前回までに比べれば短めなので、さるさんの心配はないと思います。
よろしければ15:30より開始いたします。
あっ、申し訳ありません。では、先にどうぞ、私は16時すぎあたりから投下させていただきます。
>虚無と金の卵 15:30から
>ウルトラ5番目の使い魔 16:00から
と言う事で支援
>>676 すみません、お先に投下させて頂きますね。
***
アンリエッタ姫殿下の行幸した日の夜。
ルイズは歓迎式典を終えた後、大人しく自室に戻り、姫殿下の姿を思い起こしていた。
魔法学院の生徒として、他の生徒や教師と共に姫殿下を出迎えた。
アンリエッタ姫殿下が馬車から降り、緋毛氈の上を優雅に歩いていく姿――自分と同じように成長している。
だが、瞼の裏のお転婆な姿とはそこにはなく、気品と威厳、そして優雅さを兼ね備えた一国の王女であった。
実に立派になった。あの無邪気な頃の姫がいないと思うと少し寂しい。
だが、その寂しさと同じだけの誇らしさを、ルイズは感じていた。
「なあ、ルイズ。アンリエッタ姫が来てから妙に嬉しそうだな。他の学生のように、うかれているという感じでもない」
「あら、そう見えるかしら?」
「親しみと喜びの匂いを感じる。あの一団の中に、誰か知り合いでもいたのか?」
「うん。そうよ……幼馴染が居たの。声はかけられなかったけど……でも、一目見られただけでも本当によかったわ」
しみじみとルイズは語る。
「幼馴染か……。良いものだな」
「ウフコックは、そういう人いる?」
「馴染みの友達なら……ああ、俺の生まれた研究所に、イルカの友達と人間の友達が居る」
「い、イルカ? 貴方みたいに喋るの?」
ルイズの驚いた声に、誇らしげにウフコックは答える。
「ああ。まあ少し荒っぽい性格だが……博識で頼りになる男だった」
「そ、そうなの……。貴方の生まれたっていう研究所をもし見たら、多分卒倒しちゃうかも」
「きっと君の認識の幅が広がることだろう。……ああ、だがチャールズは見ない方が良いだろうな。本気で卒倒しかねない」
「よくわからないけど……ウフコックがそう言うなら、そうなんでしょうね。
ところで貴方、お仕事をしてたのよね。衛士隊みたいに、犯罪者を捕まえていたんだっけ?」
「ん? ……ああ。まあ正しくは、証人保護、生命保全が目的だったが」
「どうしてその研究所から出て、その仕事を選んだの? 他の友達はどうしたの?」
ルイズの何気ない問いに、ウフコックは逡巡した。
ウフコックは嘘を付くことを嫌う。また、同様に何かを秘密にすることも嫌う。
ウフコックの生来の嗅覚の前には、嘘も秘密も意味を為さない。
そのため人間の嘘や秘密と言った概念自体理解することに、意外なほどに時間を要した。
またウフコック自身が誰かを騙す/隠す行為、それは一般人以上に罪悪感を伴う行為だった。
あらゆる心理を嗅ぎ取る自分自身が、何かを隠すこと。それがどれほどの公平性を欠く行為であるのか、
十分以上にウフコックは自覚している。
そのウフコックが、珍しく押し黙った。
「……言い難いことなら、別に良いわよ?」
優しくルイズは諭す。だがウフコックは、遠くを見るような目で語り始めた。
「一緒に、研究所を出て、都市を目指した友……というより、仲間が居たんだ。
皆……強かった。どんな窮地に立たされても、諦めることは無かった」
言葉の響きとは裏腹に寂しげなウフコックの声。ルイズは驚きつつ、耳を傾ける。
「俺が研究所を出たのは……研究所の外の世界に、俺を必要とする人がいると願ったからだ。
まあ、一緒に研究所を出た仲間達の理由は、それぞれ少し違っていただろう。だが俺達は、決して少なくない数の人達を救ってきた。
……彼らと共に仕事して、恐らく初めて、誇らしさというものを感じたと思う。今の俺があるのは、彼らのお陰だろう」
「その仲間の人達が、好きだったのね……」
「ああ。誰もが、かけがえの無い親友だった」
「……今は、その人達は?」
ウフコックが言いよどむ程のことが起こったのだろう。聞くべきか、聞かずに済ませるべきか、迷う。
だがルイズは、覚悟を決めて尋ねた。
「……何人かは、死に別れてしまった」
「……! そうなの……」
「俺達の仕事とは、証人を守ることだった。
俺達のリーダーは、利益の名の下に踏み潰される人を、苦痛に塗れて生きる人を、救いたかったんだ。
だが、証人が失われることで利益を得る連中は少なくなかった……闘いは避けられなかった」
「……辛かったでしょうね」
ルイズは、ウフコックの背を撫でた。
ルイズの手の平に、背を預けるウフコックの重みが伝わる。
「死に別れたときは……ひどく落ち込んだ。本当に自分の道が正しかったのか、迷いに迷った。
だが今は、彼らの死を無駄にしたくないという気持ちが強いんだ。
俺は、仲間達の意思を受け継いでいる。どんな状況であれ、俺はそれを貫きたい」
「……今度落ち着いて、貴方の仲間のこと、ゆっくりと聞かせてくれる? もちろん、貴方が良ければ、だけど」
「ああ、いいとも。是非聞いてほしい。皆、武勇伝と呼ぶに相応しい活躍だったんだ。しかし一つ不安があるな」
「どんな?」
「皆、本当に頼りになる人間ばかりだったから、俺への関心が薄れてしまいそうで心配だ」
「あら、嫉妬してくれるの?」
「さあて、どうだろうな」
「貴方の代わりなんていないわよ。……そうだ。仲間の話をしてくれたら、私の幼馴染のことも教えてあげるわ」
「それは楽しみだ」
このとき、ウフコックは一つの嘘をつき、一つの事実を隠した。
ウフコックの仲間、そのうちの一人は都市へ出る以前に死亡していた。
そして更に、9人は都市で死亡した。
13人中、生き残ったのは3人のみ――その中に09メンバーの指導者はいない。
戦闘ならばどの軍隊でも全滅と判定するであろうケース。
少なくとも「何人か」という言葉で表してよい数字では無かった。
そして、生き残った3人の内の1人でウフコックの元相棒――その男がウフコック達と決別して
敵の下へ降ったという事実を、ウフコックは口にすることができなかった。
>>643 他にも美羽さんをオバサン呼ばわりしてしばかれた挙句Mに覚醒するマルコメとか、ラスティネイルポジションになるおマチさんとか、毎回デルフ共々弟バリアーにされるもギャグ補正で次の場面で復活する恒を幻視したw
ウフコック支援
話し込んでいる内に夜も更け、ウフコックもルイズも寝る支度を整えようとした頃。
「もうずいぶん遅くなったわね……。でも、なかなか寝られないわ」
「余韻に浸りながら床に着くのは悪いものではないさ。また明日に色々と話そうか……」
ウフコックがだらしなく欠伸をして布団に潜り込もうとした。
その瞬間、ノックが響く。
始めに、長く2回。そして短く3回。
ウフコックの嗅覚に、ルイズの驚き、戸惑い、そして大きな歓喜の匂いが届く。
「……まさか……!」
ルイズは寝巻きに着替えようとしていたが、急いでブラウスを身に付けて扉を開く。
扉から入ってきたのは、ローブを羽織り、頭をフードをすっぽりと被った女性。
手早く後ろ手で扉を閉め、辺りをディティクトマジックで調べ始める。
「どこに耳が、目が光っているかわかりませんからね」
「……姫殿下!」
女性はフードを下ろす。現れたのは、魔法学院総出で出迎えたはずのアンリエッタであった。
ルイズの顔が輝く。アンリエッタの表情も、明るい笑顔に包まれる。
「ああ、ルイズ! 懐かしいルイズ!」
アンリエッタはルイズを愛しそうに抱きしめる。だが、ルイズは嬉しさを堪えるように畏まる。
「姫殿下、こんな下賎な場所に来てはなりません……!」
「ルイズ、堅苦しい言葉は止めてちょうだい! ここには枢機卿も母上も、宮廷貴族も居ないのだから」
総出で迎えたときとは打って変わり、アンリエッタには年相応の明るさが見て取れた。
「お願いよ、そんなよそよそしい言葉はよして、昔を思い出しましょう?」
「姫様……」
「クリーム菓子でつかみ合いの喧嘩をしたこともあったでしょう……本当に懐かしいわ」
「アミアンの包囲線もありましたわ。……ドレスを引っ張り合って、私、気絶してしまいましたわ」
「そうよそうよ! 覚えてるじゃないのルイズ!」
「二人で、泥だらけになってはしゃいでいたりしましたわ。懐かしい……」
昔の話に花を咲かせて屈託無く笑う二人を、ウフコックは優しく見守る。
「ところで、可愛らしいネズミさんね。ルイズの使い魔さんかしら?」
「ええ。ウフコック、ご挨拶なさい」
「初めまして、アンリエッタ姫。俺はウフコック。ルイズの使い魔をさせて貰っている。
特技はまあ、お喋りとお洒落といったところだろうか」
「あら、お喋りもできるのね。毛並みも艶やかで、とても綺麗だわ。お洒落さんには間違いないのね」
「ありがとう、アンリエッタ姫。ところでルイズ、先ほど、俺に幼馴染のことを話してくれるという約束をしたが……。
その約束を果たして貰える、という理解で良いのかな?」
「こ、こらウフコックっ! 姫様の前なんだから、幼馴染なんて気安い言葉、使わないで頂戴!」
支援させて頂きます
>>676 もう少し間隔開けた方が良いんじゃないかな?
と思わないでもなかったり。
だがウフコックは悪びれもせず、ありのままをアンリエッタに伝える。
それを聞いてアンリエッタは嬉しそうに微笑んだ。
「いや、ルイズは貴女に対して、強い親しみと誇らしさを感じている。本当に幼馴染の成長を喜んでいる、という感じだった。
現に先ほどまで、興奮してなかなか寝付けないでいたのだから」
「まあ……嬉しい……」
感極まったように、アンリエッタは涙ぐむ。
「ここ来てよかったわ。貴方の元気そうな顔が見れたのだから」
「私も、姫様のお姿を見れて……とても幸せです。それに昔のことを覚えてくださっているなんて、感激でした」
「忘れるわけがないわ。……昔は、毎日がとても楽しかったもの」
アンリエッタが成長し、ルイズがお相手役を止めて別れ、十年近く経つ。
二人で遊んだ子供の頃の話。別れた後に起きた話。
相変わらず魔法が使えないこと/宰相に愚痴られてばかりであること。
魔法学院に入学したこと/父が死んだこと。
ウフコックを召喚してから変わりつつある日々/政務に追われる日々。
二人は互いを確かめるように、尽きることなく話し合った。
だが、ふと、アンリエッタの顔に影が差す。
「……この先も、どうか、私と遊んだ日々、忘れないでいてくれる?」
「……姫様?」
アンリエッタはまた、来たときのようにルイズを抱擁する。
「きっと貴女なら良いメイジになるわ。ルイズ」
そして去ろうとしてルイズから離れ、扉に手をかける。だが、ウフコックが呼び止める。
「待つんだ。そのまま帰ってしまって、良いのか?」
「……ええ、私はただ、友達の顔が、見たかっただけですわ」
「そうか……まあ、心許せる友人は何より貴重だ。いつまた会えるかわからないとなれば、なおのことだろう。
だがルイズにとっても貴女は友だ。友の身を案じる気持ちというのは、大事にしてあげるべきだと思う」
アンリエッタの、ドアノブを回そうとする手が止まった。
ルイズも何かの気配を悟る。
「……姫様。何かお話したいことがあるなら、仰ってください。私は誓って、他言など致しません」
だが、アンリエッタは哀しそうに首を横に振る。
「……いいえ、言えませんわ。貴女を巻き込めはしない」
「ですが……!」
「迂闊に話したら、貴女も無関係では無くなります。まだ学生の貴女に危険を晒させたくありません……」
王女の孤独――迂闊に触れてはならぬ権威そのもの。
ルイズは、目の前の敬愛すべき姫に、何かしらの危機が迫っていることに気付いた。
ルイズは思う。
助けてあげたい。力になりたい。
だが――今、自分が手を差し伸べることが出来るのか。果たして差し伸べて良いのか。
もしアンリエッタ姫を助けるとして、何を命じられてもウフコックと一緒ならやり遂げることは出来る。
だが――。
ルイズはウフコックを見つめた。
やれやれ、と肩をすくめている――頼もしさを伴うふてぶてしさ。
「姫様。私はそれでも構いません。どうか、お話になってください」
「ルイズ……」
アンリエッタは伏せていた瞳をあげ、ルイズと、ウフコックを交互に見た。
「ありがとう、ルイズ。それに使い魔さん。この話は、どうか他言無用に願います。良いですね?」
「はい、姫様」
「……この学院に来る前は、ゲルマニアに行幸してきました。表向きには……私がゲルマニアの皇帝に嫁ぐため、
そしてトリステインとゲルマニア間の和平を結ぶためでした。それはご存知?」
望まぬ結婚であろうことを悟り、ルイズの声は暗くなる。
「はい。……噂ですが、レコンキスタがアルビオンを牛耳ったときのための策と、聞いております……。
ですが表向き、ということは……」
「本来ならそのはずでしたわ……そういう形式でゲルマニアに行幸しました。でも、実際は裏の目的があったの。
実は、婚姻というのは周囲の目を誤魔化すための方便に過ぎないわ。正式な話は何も無くて、
あくまでありそうな雰囲気を作り出しているだけなの」
「裏の目的……」
アンリエッタは少し沈黙し、言いにくそうに切り出した。
「……アルビオンの外……ゲルマニアやトリステインの貴族の中に、レコンキスタの協力者が居ることがわかったのです」
「トリステインの貴族に!? なんて恥知らずな!」
レコンキスタの影響で国策が決まったとしても、レコンキスタそのものは対岸の火事。
大抵の貴族はその程度の認識であり、ルイズもその大抵の貴族に含まれる。ルイズは驚きを露わにした。
「ええ……とても衝撃でしたわ。それも、私やマザリーニの信頼していた貴族が裏切り、
レコンキスタに協力していたのです……。しかも、私は彼の者に秘密を漏らしてしまいましたわ」
「秘密……」
「……私が、以前にウェールズ皇太子に宛てた手紙です。それを知られれば、トリステインとゲルマニア間の
国交は悪化し、レコンキスタは勢い付くでしょう。それほどの内容の手紙が、あるのです……」
「姫様、その手紙とは……」
ルイズの言葉に、アンリエッタは耐えるように唇を結び、首を横に振る。
「ごめんなさい、ルイズ。それは言えないの……」
「ですが、その、レコンキスタに通じている者がおわかりになるのでしたら……」
「彼らは、誰もが一騎当千の魔法衛士隊の隊員なのです。易々と捕まることはないでしょう。
しかも一人は風の遍在の使い手。こちらが万全を期していても、抑えることは至難の技です」
「そんな人が……レコンキスタなのですね」
「もし捕縛から逃れたら、彼らはアルビオンに逃げることでしょう。そしてその内の一人は、
手紙のことを知っています。レコンキスタが今や危機に陥っている以上、アルビオンや他国を牽制する材料ならば、
手段を選ばずに手に入れようとするはずです」
「はい……」
「私がしたためた手紙のために、歴史あるアルビオン王家が倒れ、そして簒奪者がトリステインに牙を向くようなことがあれば……。
私は、償いきれぬほどの罪を背負うことになります」
その罪の重さに、ぶるりとアンリエッタは震える。
「……今のうちに動けば、気取られる前に手紙を回収することができます。
そしてトリステインも、アルビオンも、混乱させることなく事態は収束するでしょう。
……しかし魔法衛士隊から裏切りが出たとなれば王宮は浮き足立つことは必須。頼れる者が居ないのです……」
「姫様……ご安心してください。一命に代えましても、その手紙、取り戻して参ります」
ルイズは、アンリエッタの信頼に応えるべく、目を見つめて頷く。
だがそこで、黙って話を聞いていたウフコックが割り込んだ。
「……なあ。言葉を挟んでも良いだろうか」
「えっ、い、いきなり何よ?」
話が纏まりつつ合った瞬間のウフコックの言葉に、ルイズは驚く。
「その手紙の内容については、どうしても言えないということか?」
「そう仰ってるじゃないの」
「まあ、ルイズがアンリエッタ姫の忠実な僕として行くのならば、何の問題も無い。
号令を聞いて飛び出せばよいだけの話で、目的を遂行する以外の余計な知識は、むしろ邪魔だろう」
ルイズは、ウフコックの口ぶりに不穏な空気を感じ取る。
「ウフコック……どういう話をするつもりなの?」
「……ルイズ、構いません。ウフコックさん、お話を続けて貰える?」
アンリエッタに促されて、ウフコックは言い聞かせるように、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「ルイズは貴女の忠実な僕として、立派な働きを見せると思う。
首尾よく例の手紙を回収し、国としての危機は回避できるだろう。
そして貴女が頼む限り、貴女に取り入ろうとする誰か、貴女を利用しようとする誰かには
任せることのできない仕事を、ルイズは何も言わずに進んで請け負うだろう」
ひどく客観的な物言いに、アンリエッタは固まる。ルイズは恐々としつつ見守った。
「だがもし、だがアンリエッタ姫、もしルイズとの間の友情を信じるのであれば……。
目の前の友を、どうか信頼してあげてほしい。きっと何を言ったとしても、失望したり、裏切ったりすることはない。
少なくともルイズは、王女としてだけではなく、等身大の人間として君を心配しているんだ。
ルイズも、その手紙がどういうものなのか、薄々勘付いているのだろう?」
「うっ……」
ウフコックの言葉は事実であった。ウェールズに宛てた手紙という話と、アンリエッタの狼狽ぶりを、
ルイズは頭の何処かで冷静に見ていた。
「事情を聞かずに察して行動するのも、一つの絆の在り方だろうし、それでも問題を解決することはできる。
だが、より深い話を、一人の人間としての本音を、聞いてあげるべきだ。それができるのは君だけなのだから。
それとも君はアンリエッタ姫に、王女としての姿しか求めないのか?」
「それは……。でも……」
逡巡を露にするルイズの肩に、アンリエッタの手が置かれる。
「いいのよ、ルイズ。……そうね、取り繕うとした私がいけなかったわ」
アンリエッタの顔は、何処か吹っ切れたような表情をしていた。
しえん
「貴女にお願いがあります。命令じゃなくて、お願いよ……私の話を聞いて。そして絶対に、誰にも言わないでくれる?」
「……はい」
「私がウェールズ様に宛てた手紙は……恋文です。ウェールズ様に、恋焦がれていました。
手紙をしたためたときの気持ちは、今も変わりありません」
「そうでしたか……」
「ですが、国を預かる身分の人間が一時の感情に身を任せるなど、あってはならないのです。
それが露見したら、やがては王族への疑心に繋がります。そしてレコンキスタが勢力を盛り返せば
アルビオンの戦乱はさらに拡大し、やがては国を挙げての戦争に繋がりかねません……。
手紙を送った当時は、レコンキスタなんて影も形もありませんでした。でも、あんな手紙を送ってもウェールズ様を困らせ、
厄介事を引き起こすだけだなんて、わかりきっていたのに……。私は、自分を御することができませんでした。
私が至らなさのために……皆を、ウェールズ様を苦しめるなんて、耐えられない」
ルイズは気付く。アンリエッタの感じる後ろめたさと、自分の心を。
客観的に判断すれば、完全に姫が悪い。方便とはいえゲルマニア皇帝との婚約の話が持ち上がっている以上、
教会には酷く対面が悪くなる。国内の貴族に関しては、言わずもがな。
ゴシップ好きの野次馬や、王侯貴族にロマンを求める平民を喜ばせる程度だろう。
だが敢えてルイズはそれを気付きつつも、心の片隅で、誉れ高い姫君というアンリエッタという偶像を
守ろうとしていた自分に気付いた。
無邪気に遊んでいた幼少の頃を瞼の裏に浮かべることはできたが、今、目の前にいるアンリエッタが、
過去の延長上の当たり前の17歳の少女ということを無視しようとしていたのでないか――ルイズは自問自答する。
王女であるアンリエッタを助けたいと思ったのは紛れもない真実だ。
だがその裏、権威ある人間に恩を売りたいという気持ちが一点も無かったと言えるのか――否定は難しかった。
恥部を視界の外に追いやり、笑顔だけを向け合う関係――アンリエッタの愚痴るような、宮廷貴族と同じではないか。
ルイズは遠い過去/アンリエッタとの関係を思い出す。
当然ながら未熟すぎる頃は遠慮など何も無かった。
無かったが故に、当たり前のようにぶつかりあった。
ときには互いに罵りあって、掴みあって――そして認めあったのに。
「言うなれば、貴女の友情と忠誠に付け込んで、私の愚かさ、私の泥を被るような仕事を、押し付けようとしていたんです」
「姫様、良いんです」
「……ルイズ」
「私が貴族で、王女に忠誠を誓う身分というのは、代えようがありません。ご命令とあらば、何であれ従います。
でも、それとは無関係に、私は姫様を案じていますし、姫様が私と喧嘩して泥だらけになったり、
男の人を好きになる当たり前の女の子だってことも、私だけは理解してます。
……だから、困っているのなら、人に言えない悩みがあるなら、私を遠慮なく言ってください。
私は、いつでも正直に答えます」
「ルイズ……」
「ただし、姫様を怒らせることも言うと思いますので! ……だって私達、友達ですから」
アンリエッタは、ただ涙を零すがままに任せた。
ルイズは、アンリエッタをただ抱きしめた。アンリエッタの重圧を軽くしてあげることを祈って。
「ルイズ……手紙をしたため、送ってしまった私が馬鹿だったの。自分の心、自分の未熟さには、自分で決着を着けるわ。
……でも、どうか今だけ、貴女に頼りたいの。お願い、助けてルイズ」
「はい……姫様。貴女を助けます」
アンリエッタはその言葉を聞いて、ルイズを抱き返した。
「……で、友達として質問があります」 アンリエッタが泣き止むのを待って、にやりとルイズが微笑む。
「ええ、ルイズ。何かしら?」 涙をぬぐいつつ、アンリエッタは言葉を返す。
「ウェールズ様の、どんなところが好きになったんですか?」
支援
ひとしきりルイズはアンリエッタを質問攻めし/無理矢理答えさせ/散々弄りまくった。
お互い年頃の娘らしく、言葉を潜めつつも話の盛り上がりは激しかった。
「ひ、ひどいわルイズ……やっぱり意地悪で厳しいところも変わってないのね」
「血筋ですもの」
泣き止んだはずのアンリエッタが涙目で抗議する。
「私は、ウェールズ様との件は個人的に応援はしてますが、それはまた落ち着いて話をしましょう。
まずは手紙が先決です」
「そうね……」
その言葉でアンリエッタは気を取り直し、ある物を取り出してルイズに渡す。
「ルイズ、これを持っていって頂戴」
「……これは……」
「ウェールズ様宛てに書いた手紙です。ウェールズ様にお読みになって頂ければ、手紙の返却に
すぐ応じてくれるでしょう。それと、もう一つ……」
アンリエッタは、自分の指に嵌められた指輪を外し、ルイズの手を握るように手渡した。
「母君から頂いた、水のルビーです。路銀に困ったら、これを売り払ってください」
「……はい。ありがたく、頂戴致します」
「今日は、本当にここに来てよかった。ありがとう、ルイズ。ありがとう、ウフコックさん。
おかげで、何だか心が軽くなったようだわ。……誰かとこんな風に話せたのは何年ぶりのことかしら」
「姫様……」
「気にしないで、ルイズ」
アンリエッタは名残惜しそうにルイズの手を離し、表情を引き締める。
「……正直、アルビオンは危険です。内戦は小康状態ですが、火種が燻っていることには変わりありません。
だからこそ、レコンキスタに身を落とした彼ら――ワルド子爵らに、あの手紙を奪われてはならないのです。
ルイズ……どうかウェールズ様に宛てた手紙を取り戻して、無事に戻ってきて頂戴……」
そして、その名を、ルイズは聞いてしまった。
アンリエッタとは別の、もう一つ過去からの衝撃――あざなえる縄のような悪意に、ルイズの心は縛られる。
690 :
虚無と金の卵:2008/11/23(日) 15:48:59 ID:x8+DrCud
以上、投下終了。ウルトラ5番目の人さん、お待たせしました。
そして皆さん支援感謝です。
と、それともう一つ。
まとめサイトの方で小ネタ拾ったりメンテしてくれたりする人、ありがとう。
小ネタは自分で拾おうと思いつつ放っておいたもんで、助かりました。
虚無と金の卵の人、乙です。
では、
>>682さんの言うとおり、ちょっと伸ばして16:20から投下開始したいと思いますので
よろしくお願いします。
金の卵GJでした。
この段階でワルドが敵と断定されてるのは中々に斬新ですね。
続きが非常に気になります。
第23話
無限と光の旅立ち!!
ウルトラの父
ゾフィー
ウルトラマンタロウ
ウルトラマンメビウス
ウルトラマンヒカリ 登場!
双月も山影に沈み、しんしんと、優しい闇が学院を包んでいた。
フリッグの舞踏会は、魔法学院始まって以来例を見ない盛り上がりのうちに幕を下ろした。
踊り疲れて、草原に人々が倒れ伏したとき、オルフィの歌も終わり、チンペもパンドラに迎えられて母親も元へと
戻っていった。
そのとき、あのベアトリスがパンドラに向かって深く頭を下げていたのは、彼女を見る大勢の人の目を別のもの
に変えていた。
そうして、パンドラとオルフィは、再び草原の土を掘り返すと、地底の怪獣の世界へと帰っていき、大勢の人々が
「またこいよー」と手を振って見送った。
ガラキングとバンゴは、こっそり隠れて変身したエースによって、バンゴの体に大量の特殊ガスが吹き込まれて、
まるで本物の風船のようにまあるくなると、ガラキングは長年追い求めた恋人を見つけたかのように、大喜びで
飛びつこうとしたが、エースはバンゴのボールを、サッカー選手のようにタンタンとリフティングしてかわし、
そして大空のかなたへ向かって思いっきりシュート!! お星様になっていくバンゴを追って球形に変形したガラキングも
また、エースに蹴り飛ばされて、お騒がせな二大怪獣は宇宙のかなたへ飛んでいった。
「またこいよー」
「こいつらは来なくていい!!」
散々追い回されて、疲労の極致に追い込まれたマリコルヌが怒鳴っていた。
そして、すべてが収まり、草原に静けさが戻ると、エースも夜空を見上げ、満天の星空へと飛び立っていった。
「ショワッチ!!」
エースも夜空に消えてゆくと、皆はそれぞれのいる場所へと帰っていった。
多分、また明日からは貴族と平民、従える者と従えられる者の関係が始まるのだろう。
しかし、この日この時、身分も人種も性別も、国籍も、人間と怪獣でさえ共に過ごした時間があったことは、
確かに彼らの胸に刻まれたに違いない。
才人とルイズは、床に入る前に、星明りだけが部屋を照らすなか、互いにシルエットのみしか見えない
相手を見ながら語り合っていた。
「楽しかったな」
「まあね、国のお父様やお母様が聞いたら怒るだろうけど、こんなに踊ったのは生まれてはじめてよ」
社交のためのダンスではなく、相手と楽しむための踊りなど、子供のころ以来だったと、ルイズの声にも
自然と懐かしさがにじみ出ていた。
まあ、口に出せば、どこが子供のころと成長したんだと言われそうだから、そこのところは言わなかったが、
同時に、またいっしょに踊りたいとも言い出せなかった。
「それに、今回は一匹も倒さないですんで良かった。あいつらも、無事に帰れてればいいな」
才人は、パンドラとオルフィが、今度は誰にも邪魔されずに平和に過ごせることを祈った。
「あんたは、帰りたくないの?」
「え?」
ルイズがぽつりと言った言葉を、才人はうまく聞き取れなかった。
「あんたは、元の世界に帰りたくないの? ここに来て、もうすぐ2ヶ月になるわ、元の世界に帰る方法を探そうとは
思ってないの」
それはまったく、唐突で衝撃的な質問だった。
そうか、ここに来てもう2ヶ月か……望郷の思いが才人の胸をよぎり、思わず部屋の隅に大切に保管してある、
この世界に召喚されたときにいっしょに持ってきたノートパソコンを取り出した。
「そりゃ、日本には母さんも父さんもいるし、学校もある。こいつでネットもしたかったし、照り焼きバーガーも
ずいぶん食ってない」
ほこりを払って、黒々としたノートパソコンの画面を見ながら才人は言った。まだ使えるだろうが、バッテリーの
量がギリギリなので電源を落としたまま、長いこと起動させていない。
「じゃあ、やっぱり帰りたいんだ」
「ああ、帰りたい。ろくなもんじゃなかったかもしれないが、大事な俺の居場所だったからな」
暗がりで、お互い表情のわからないままふたりの会話は続いた。
「じゃあ、なんで帰る方法を探そうとしないの?」
ルイズは、思い切って才人にそう尋ねた。それほど故郷を思いながらも、帰る努力をまったくしていない
ことが、彼女には理解できなかったからだが、才人の答えはルイズの予想を超えていた。
「実は、あてがひとつあるんだ」
「えっ!?」
思わず驚きの声がルイズからもれた。
実は、才人には内緒にしていたが、ルイズは暇を見て学院の図書室にこもり、サモン・サーヴァントで
呼ばれた使い魔を帰還させる方法がないか、調べていたのだが、そうした手立ては何一つなかったのに、
いったいどうした手があるというのか。
「ウルトラマンダイナの話を聞いた後に思いついたんだが、この世界と違う世界が無数にあるなら、
この世界から直接地球に帰れなくても、地球につながっている世界に入れれば、そこから地球に
帰れるかもしれない」
「あなたの世界とつながっている世界って、まさか」
「そう、ヤプールの異次元世界さ。あいつは、ハルケギニアを征服した後、地球も攻めると言っていた。
だったら、あの異次元世界は地球とハルケギニアを結ぶことができるってことだ。これから、どうなるかは
わからないけど、ヤプールとの決戦は異次元空間に乗り込んでやることになるだろう。俺が帰るチャンスが
あるとしたら、そのときだ」
それは、ルイズには想像もつかなかった方法であった。皮肉なことだが、今この世界を侵略しようとしている
敵の存在が、才人を元の世界に戻す唯一の希望となっているとは。
「だから、当分はお前の使い魔をやりながら、ヤプールと戦っていくつもりさ。もうしばらくよろしく頼むぜ」
「……」
ルイズは答えることができなかった。
才人が元の世界に帰る方法が見つかったのはいい。そのために、ヤプールと戦ってくれるのもいいだろう。
しかし、いつの日か、ヤプールを倒すことができた日には、それが才人との別れということになる。
当然才人もそれはわかっているだろう。しかし、そのとき才人は自分を捨てて、さっさと元の世界に帰って
いってしまうのだろうか。
使い魔だからと引き止めることはできる。しかし、才人にも自分と同じように家族もいれば帰る家もある。
それから無理に引き離す権利が自分にあるのか、ルイズの心は散々に乱れた。
しかし、才人の元いた世界では、ふたりの思いをも超えて、事態は大きく動き出そうとしていた。
青く輝く美しい星、地球。
そこからはるか300万光年離れた宇宙にウルトラ戦士達の故郷、M78星雲、ウルトラの星はある。
ここは、通称光の国と呼ばれ、全宇宙の平和をつかさどる宇宙警備隊が、日夜星々の平和を守るために働いているのだ。
美しく整えられた超近代都市には、人工太陽プラズマスパークから常に光が送られ、夜がやってくることはない。
その中央、ウルトラタワーで、今宇宙警備隊大隊長ウルトラの父が、宇宙警備隊隊長ゾフィーからの報告を受けていた。
「それでは、エースの行方はまだわからんというのか」
「はい、四方手を尽くしているのですが、いまだ手がかりらしきものはなにも……」
「そうか、エースのことだ、無事でいるとは思うが」
ウルトラの父は心配そうな声でそう言った。
今から1ヶ月半ほど前に、地球近辺のパトロールについていたエースが突然消息を絶ち、ゾフィーは宇宙に
散っているウルトラ兄弟達の力も借りて、あちこちの星々を捜索していたが、エースの行方はいっこうに
掴めていなかった。
また、ゾフィーにはもうひとつ気がかりなことがあった。
「それに、エースが消息を絶つ寸前に送ってきたウルトラサインも気になります。『ヤプールの復活のきざしを
見つけた』と、それが確かだとすれば、由々しき事態です」
「うむ、ヤプールの復活は全宇宙にとって極めて危険だ。しかし、それらしい兆候は発見できていない」
「ヤプールのことを一番知っているのはエースです。間違うとは思えません」
ゾフィーはエースへの信頼を込めて、父にそう言った。
「そうだな。ヤプールのことだ、またどんな恐ろしい方法で襲ってくるかわからん、エースはその一端を
掴んだのだろう。ゾフィーよ、こうなってはもう猶予はない。一刻も早くエースを探し出し、ヤプールの
復活を阻止せねば、ようやくエンペラ星人の脅威から解放された宇宙がまた闇に閉ざされることになりかねんぞ」
「はい、ですが現状、我々に打つ手は……」
苦しげに言うゾフィーに、しかしウルトラの父は力強く道を示した。
支援
「ゾフィーよ、希望は地球にある」
「地球に!?」
「そうだ、エースが消息を絶ったのは太陽系の近辺だ。ならば地球人達は何か掴んでいるかもしれん。
それに、異次元研究に関しては、彼らは我等の一歩先をいっている。地球人達の力を借りて、必ず
この事態を解決するのだ」
「はい、ウルトラの父!」
胸を張って答えたゾフィーに、ウルトラの父は大きくうなづいた。
そして、ゾフィーの召集指令を受けて、ウルトラタワーに若き戦士が呼び寄せられた。
「お呼びですか、ゾフィー兄さん」
「メビウス、よく来たな」
彼こそは、若い身体に純粋な心と正義の意思を秘めたウルトラ兄弟10番目の戦士、ウルトラマンメビウスである。
「さっそくだが、エースのことはお前も承知しているな。地球近海で消息を絶ってから、もうすぐ2ヶ月になる。
しかも、その寸前にエースはヤプールの復活を知らせてきている」
「はい、ヤプールとは僕も戦いましたが、奴は本当に恐ろしい相手でした」
メビウスの胸に、地球でヤプールと戦ったときの思い出が蘇ってきた。
4人の宇宙人を操り、究極超獣Uキラーザウルス・ネオとなって兄弟達とともに神戸で戦ったときは、ゾフィーと
タロウ兄さんが駆けつけなくては4兄弟ごと全滅していたかもしれない。
さらにその後も、赤い雨とともに復活し、バキシムを操ってGUYSの全滅を計ったり、ドラゴリー、ベロクロンと
次々に強力な超獣を送り込んできた。
ようやくGUYSの新兵器、ディメンショナル・ディゾルバーで異次元ごと封印することに成功したのもつかの間、
エンペラ星人の率いる四天王の一人となって三度復活、卑劣な戦いを挑んできたが、仲間達との思いを
受けて立ち上がり、メビュームバーストで今度こそ葬ったはずなのだが。
「奴はマイナスエネルギーの集合体、完全に抹消することはできない。恐らくはまた力を蓄えて我らウルトラ兄弟、
そして地球への復讐を狙っているに違いない。メビウス、地球へゆけ、そして地球人達と力をあわせ、ヤプールの
復活を阻止するのだ」
「地球へ!? わかりました、必ずヤプールの企みを食い止めてみせます。そして、必ずエース兄さんを探し出してきます」
「うむ、頼むぞ」
元気よく答えたメビウスを、ゾフィーは頼もしそうに見つめた。
だがそのとき、旅立とうとしたメビウスをひとつの声が押しとどめた。
「待て、メビウス」
「! ウルトラマンヒカリ」
そこに現れたのは、青き体を持つウルトラの若き勇者、ウルトラマンヒカリであった。
「ゾフィー、地球へは私も共に行こう」
「ヒカリ」
「あのエースまでが消息を絶つ事態だ。しかも相手はあのヤプールという、一人では危険だ、用心はしすぎることはない。
それに、調査であれば私の科学者としての知識が役に立てるかもしれん」
ウルトラマンヒカリは、今は宇宙警備隊員であるが、元は高名な科学者としてウルトラの星でも知られた人物だった。
ゾフィーのものと同じく、大きな功績を残した者にのみ与えられる勲章、胸のスターマークがその証拠だ。
ゾフィーは一度に二人もウルトラの星を離れることを危惧したが、ヒカリの言うとおり、一人で動いてはエースの
二の舞になる可能性がある。それに、ヒカリの能力も確かにこの任務にはうってつけだ。
支援
「わかった、ヒカリ、君にも頼もう。しかし、充分用心するのだ、何かあったらすぐにウルトラサインで知らせろ。
この任務は、正直何が起こるかはわからん」
「了解した。では、よろしく頼むぞメビウス」
「こちらこそ、お願いします。ウルトラマンヒカリ!」
メビウスとヒカリは、固く握手をかわした。
「よし、それでは行くのだ!!」
「はいっ!!」
二人の若き勇者は、M78星雲の空へと飛び立った。
目指すは、かけがえのない星、地球。
(頼むぞ、ふたりとも)
ゾフィーは二人を見えなくなるまで見送った。
そして、二人が空のかなたに消えたとき、ゾフィーの背後から、聞きなれた声が聞こえた。
「行きましたね。弟達が」
そこには、今ウルトラの国にいるひとりのウルトラ兄弟、今は宇宙警備隊の筆頭教官として働いている、
ウルトラ兄弟6番目の戦士、ウルトラマンタロウの姿があった。
「うむ、あの二人なら、きっと使命を果たしてくれるだろう」
「そうですね。彼らはもう立派なウルトラの戦士ですから」
タロウは、いまやはるかな空にいるであろう、かつての教え子、メビウスに心の中でエールを送った。
宇宙警備隊のルーキーであったメビウスが、地球に派遣されていったときのことは、まだ昨日のことのように
思い出せる。最初のころはウルトラの星から冷や冷やしながら見ていたものだが、戦う度に強くなる彼の成長の
速さには驚いたものだ。
特に、エンペラ星人の尖兵、インペライザーが来襲したときには、命令に背いてまで地球に残り、遂には
自分のウルトラダイナマイトでさえ倒せなかったインペライザーを倒してしまった。しかも、その後はウルトラマンで
あることを知られながら、なおも仲間として地球人とともに戦い続けるという、兄弟達の誰一人としてできなかった
ことをやりとげてしまった。
「しかしタロウ、これは嵐の前の静けさかもしれん。お前も心しておけ、もしかしたら、エンペラ星人にも匹敵するかも
しれない脅威の前触れかもしれん」
「はい」
タロウは、ゾフィーの言葉に黙ってうなづいた。
ヤプールの恐ろしさは、タロウも身をもって知っている。かつてタロウが地球の守りについていた時代、エースに
倒されてわずか1年も経たないというのにヤプールは復活をとげ、改造ベムスターを始めとする怪獣軍団でタロウに
戦いを挑んできた。その威力はものすごく、タロウも一度は手も足も出ずに撤退を余儀なくされたが、勇敢な
地球の青年やZATの助けもあって、2度目は怪獣軍団ごとヤプールを再び撃破している。
ゾフィーは、確信にも似た予感を感じていた。ヤプールは、復活の度に怨念を蓄えて強力になっていく、一度は
エンペラ星人配下の邪将に成り下がったが、エンペラ星人亡き今、独自に動き出すことは間違いない。
「宇宙に散ったウルトラの戦士達よ。新たなる戦いの日は近い、心せよ!」
ゾフィーは全宇宙に散らばったウルトラの兄弟をはじめとする戦士達にウルトラサインを送った。
それは宇宙の闇を裂き、ウルトラマン、セブン、ジャック、レオ、アストラ、80、さらなる戦士達の元へと飛んでいく。
「タロウ、我々もこうしてはおれんぞ」
「はい、ゾフィー兄さん」
ゾフィーには宇宙警備隊隊長として、タロウにも次の世代を担う戦士達を育てる教官としての任務が残っている。
旅立った弟達に未来を任せ、二人はそれぞれの戦いの場へと戻っていった。
だが、ウルトラの父、そしてゾフィーの予感は、不幸にも的中していた。
地球を目指すメビウスとヒカリの姿は、ヤプールの監視の目に掛かっていたのだ。
「動き出したかウルトラ兄弟、だが邪魔はさせぬぞ。今度こそ、貴様らと地球人どもに復讐を果たしてくれる」
ようやく平穏を取り戻した地球にも、再び嵐が訪れようとしていた。
続く
以上です。
行方不明になったエースを追ってM78星雲も遂に動き出しました。
成長したメビウスを見て、一番誇らしいのはやはりタロウでしょうね。
また、夏の映画も見ましたが、メビウス=ミライの純朴さはやはり微笑ましいですね。
しかし、いくら応援してもらったからってただの一般人(ダイゴ)に軽々しく正体ばらすなよミライ……
ティガ、ダイナ、ガイアとウルトラ兄弟が勢揃いしたシーンではマジ泣きしました。次の映画ではぜひ今回は漏れたタロウ達
他の兄弟やコスモスらも勢揃いの超大作を願いたいです。
やっぱりすんなり2巻の展開とはいきそうもありませんが、タバサの冒険なども織り交ぜつつ、進めていきたいと思います。
支援だ支援、ワクワク
支援しようと思ったら終わってしまった
相変わらず面白くて次に期待を持たせる展開なので期待しておりますです、はい
ウルトラの人、乙。
ミスターファイヤーヘッドが派遣されてたら、それはそれで面白かった気がww
才人「なーんだ、ゾフィーか」
ルイズ「ゾフィー?」
才人「ああ、一番弱いウルトラマンなんだ」
>>703 設定上では相当強い筈なんだけどな、ゾフィーは。
本気で必殺光線を打つを惑星を破壊してしまうから、滅多なことでは
全力を出せないらしいぞ。
ウルトラの人GJそして乙でした
メビウス達兄弟の登場にwktkが止まりません
メビウスといえば思い出の先生でマジ泣きしたことを思い出します
ウルトラ戦士は惑星破壊できる奴がゴロゴロいるしな
>>704 タロウは設定上は最強に近いはずだけど、どうにも甘えん坊ってイメージが抜け切れないようなもんか。
ウルトラの人GJでしたー
光の国や地球が関わってきてハルケギニアとどう折り合いをつけるのか気になる所
改めて見るとやっぱりヤプールのしつこさは異常、劇場版含めてもメビウスだけで3回も出てきてたとは
>>703 真面目なのと悪ノリとをごっちゃにされて楽しめる人間てのはあんまり居ないと思うぞ
>>704 そこはオブラートに包んで、
兄弟のなかで最強だけど。一番安心できない
ぐらいにしておけよw
>>707 ウルトラマン同士で誕生した超・超人だしな。年齢的にメビウスもそれっぽいけど。
真に最強は次元破壊とかできるノアか最高齢のキングだと思ってるけど。
メビウスって、メビウスブレスも仲間からの応援もない状態だと、実はかなり弱くないか?
キングはあのチートな腕輪をポンとあげちゃうことのできるお方。
これからどんな秘密道具を後だしで繰り出してくるのか戦々恐々。
ノアは何かエネルギー切れする印象があるから
レジェンドやメビウスインフィニティ、6重合体タロウほどじゃなさそう
>>711 実はも何も新人だし比較対照が歴代の英雄なんだから弱くて当然だと思う
弱いと思う。
だからこそ仲間を得て応援を得て、あそこまで強くなれたのがメビウスだと思う。
ウルトラ5番目の使い魔も、メイジと平民の垣根を越えて力をあわせたり、エースの
正体を知りながらも協力を惜しまないオスマンがいる。メビウス後の世界からきた
サイトだからこそ言える台詞とかできる振る舞いとか描写されてるから、このシリーズ
大好きだ。どっちの作品も大事にしようって気持ちが伝わってくる。
予約無ければ、19:45より投下予定
容量の方大丈夫?
残り54KBのようです。
次スレは450KB行ったらだっけ?
三十分後、司令室に悠然と座るラインハルトの前にはド・ヴィリエの歪んだ笑みが映し
出されていた。その映像の横にはキラキラ輝く召喚門近くに停船した船の映像も並んでい
る。
召喚門の周囲には次元の穴を固定する戦艦列が千隻近く、衝突寸前の状態まで円形に密
集している。この状態でゼッフル粒子を散布されれば、粒子それ自体の爆発だけでなく、
艦船の誘爆まで連鎖的に拡大してしまう。外周部の艦から順に距離を取るべく移動してい
るが、各艦が十分な距離を取れるまでには時間が足らない。
《さて、それでは門を拡大させてもらいましょうか。皇帝陛下》
大主教は口調だけは丁寧だった。大主教としての品位の残渣か、皇帝へ表面上は敬意を
表したのか。ともかく、その鋭角的な痩せた印象の男の表情には、明らかに軽蔑と嘲笑が
混じっている。
彼の背後には狭いコクピットが映っている。既に船内に収納された小型機に乗り移り、
発進を待っている状態なのだろう。
「予に命令する気か?」
《拒める立場でもないでしょう?》
「思い上がるな、痴れ者が!」
《口論する気もありません。早くしないと、陛下も核爆発に巻き込まれるかもしれま
せんよ》
「気にするな。お前ごときに斃されるなら、予はその程度の男だったというだけだ」
《勇ましいものです。さすがは常勝の天才。だが、あなたの我が儘に付き合わされる
人達にも死を強いる気ですか?》
「愚問だな。軍人になると言う事は、殺す覚悟も殺される覚悟もあるということだ」
《軍人は、ね。だが、一般人にそんな覚悟はないでしょうな。そして、イゼルローン
へ治療に来ているだけの患者達にも、ね》
瞬間、皇帝の瞳が刺すように鋭くなる。
「貴様…まさか!」
《その通りですよ。イゼルローン中央病院、かの呪われた牛男を飼育する邪悪な動物
実験場があるブロックを浄化して差し上げます》
ラインハルトの端正な顔が怒りに歪む。同じく大主教への怒りと呪詛の言葉が、司令室
で交渉の行方を見つめる人々からも漏れ出す。
「貴様等、それでも聖職者か!無辜の民を苦しめ殺す事が神の教えか!?」
怒りに震える皇帝と司令室の軍人達、その有様を眺める大主教の顔が大きく愉悦で歪ん
だ。
《盲目の罪深き羊たちも我等の聖なる炎により魂を清められることで天界へと旅立つ
事ができるのです。これは救済です》
「狂人共め。それで己を正当化したつもりか」
《何を言ってるのですか?ヴェスターラントと同じようにするだけじゃないですか。
虐殺陛下》
怒りに歪んだラインハルトの口から、耳障りな歯ぎしりが響いてくる。
《さて、無駄話はこれくらいにしましょうか。
そろそろ希望に満ちた別世界に行くとしましょう。扉を開けて下さい。ところで、
爆弾のリミットですが…》
ド・ヴィリエはわざとらしく腕時計を目の前に持ってくる。
《あと27分ですね。爆弾処理班が急行して解除なり停止なりさせるにしても、そろ
そろ難しいですよ。もちろん入院患者達の避難なんか間に合いません。急いだ方が良
いのでは?
ちなみに、別の場所でも順次、時限爆弾が爆発します。あと二つほど》
ラインハルトは烈火のごとき視線でモニターの狂信者を睨み付けたまま、しばし黙り込
む。
容量に問題あるようであれば
場合によっては次スレが立つまで待つか、あるいは避難所などに
投下されてはいかがでしょうか?>提督の人
支援
「…爆弾の場所と解除コードを送信する件、偽りはないだろうな?」
その言葉に大主教の口の端が釣り上がる。
《もちろんですとも。設置場所については私の端末に入力してあります》
そういって彼は胸ポケットから小さな携帯端末を取り出し、皇帝へ示す。
「設置場所は、だと?解除コードはどうした」
大主教はモニター越しにニヤニヤとした笑いを見せつけつつ、左手で端末をポケットに
戻しながら右手人差し指で自分のこめかみをコツコツと突いた。
《私の頭の中です。なので、早まった事を考えないように。門を通った後で送ってあ
げますよ。
あと24分、どうしますか?》
ラインハルトの沈黙は一瞬だった。すぐ画面外の部下達へ向けて指示を飛ばす。同時に
地球教徒達の乗る船の前方で、光を放つ召喚門が急拡大する。
「貴様等の要求通り、20m程まで拡大させた。通過を許可する…だが、通過した後の事は
予の感知する所ではない。お前達は魔法世界に過剰な期待を抱いているようだが、あの星
は決して楽園ではないぞ。
既にお前達の事はサハラのエルフに伝えてある。お前達は現地の亜人やメイジ達にも追
われるのだ」
門の拡大を確認した大主教はラインハルトの忠告を聞き流しながら、コクピットにいる
部下達へ向けて次々に指示を飛ばす。
一通り指示を終えた所で、改めて皇帝へ向き直った。勝利の余韻に浸りながら。
《おかまいなく。陛下の保護政策のおかげで銀河帝国や召喚門はサハラとハルケギニ
ア以外には知られていません。向こうへ行ったら、そうですね、南アメリカ辺りにで
も行きましょう。
かの星は我等地球教徒が追い求めた聖地。その聖地を心より信仰する我等を、必ず
や暖かく迎え入れてくれるでしょう》
「地球違いだ。おまけに、銃で脅しながらか?」
《世界の真実を伝えるのも使徒の務め。彼等に科学という、もう一つの真実を広める
事は神の御心に沿う行いです》
そんな毒と針で彩られた会話をかわす通信回線の中に、エンジン音や機械の駆動音が混
じってくる。周囲にいた部下から、貨物室のメインハッチが開きつつあるとの報告が映像
と共に送られてきた。大主教は横目で画像を、開きつつあるハッチの向こうから差し込む
召喚門の輝きをみつめる。
「最後に聞くが…降伏する気はないか?今なら生かしておいてやってもよいぞ」
その言葉を聞いたとたん、ド・ヴィリエは笑い出した。腹の底から、悪意に満ちた哄笑
が司令室に響き渡る。そして表面だけの敬意も消え去り、聖職者の名を騙る俗物の本性を
現した。
《そんなに負けるのが悔しいか?なぁ、悔しいだろう?常勝の天才にとっては初めて
の敗北か?
すぐにも追跡隊を送るつもりだろう?無駄だな。すぐファンタジー世界に身を隠す
ぞ。そして発見した時には、とっくに手遅れだ。科学と魔法を融合した軍団を率い、
玉座でふんぞり返る金髪の小僧を地獄に落としてやる。
再会の時を、首を長くして待っていろ!》
言い終えるが早いか大主教は通信回線を切断した。
消えた画面から視線を動かさず、小さく呟く。
「だからお前等は時代遅れの化石だと言うんだ」
皇帝は落ち着いて隣に立つワーレンに命じた。
「待つのは嫌いだ。すぐ奴等の首を皿に載せて持ってこい」
「しばしお待ちを。何しろ奴等は毒が多いので、料理に時間をかけておりますから」
命じられたワーレンは微笑んだ。悪戯の成功を見てほくそ笑む少年の様に意地悪く。そ
してラインハルトも、ようやく我慢していた笑い声を口から漏らす。
二人の目の前には別の映像がある。それは、ブリュンヒルト艦内の映像。空気を抜かれ
て真空になった貨物室、その中に小型の作業艇がある。作業艇コクピットの前には小さな
鏡のようなものがあった。
「急げ。爆弾処理と避難もだ」
「爆弾処理班には指示を飛ばしてあります。避難は目下キャゼルヌが」
二人が視線をずらした先に、神業的手際の良さで的確な指示を飛ばし続けるイゼルロー
ン要塞副司令の姿があった。
イゼルローン中央病院。玄関から最上階までを貫く吹き抜けが特徴的な正面ホールは、
病院から走り出す人々でごった返していた。
「急げ!待避しろぉ!」「走れる患者は自分で走るんだ!エレベーターへ向かえ!」「車イ
スを持ってきて!」「ストレッチャーは無いのか!?手押し式でいい!」「点滴輸血も引っ
こ抜け!生きてれば構わない!」「隔壁へ行ってえ!この区画ごと放棄よ!すぐに閉まって
しまうっ!!」「緊急用シューターは重症患者と子供優先だ!」
病院内は既に阿鼻叫喚と化していた。
避難誘導する軍人も、自爆した船があった港湾から運ばれてきた沢山の怪我人も、足下
の覚束無い患者達を支えて必死に進む看護師も、スタッフへの指示を陣頭指揮する医師達
も、そして先を行く人々を押しのけて我先に逃げようとする多くの人々も。誰も彼もが病
院から飛び出してくる。軍用民間医療用問わず、あらゆる車輌に飛び乗る。走り去ろうと
する車にしがみつく。一人でも多くの患者を、その病状や治療内容に構わずエレベーター
へ押し込めていく。
そしてそれは病院だけではない。病院周辺のあらゆる施設から人が飛び出し、先を争っ
てエレベーターやシューターに飛び込む。あらゆる通路を埋め尽くす人と車輌の波が隔壁
へ向かって、死にものぐるいで走っていく。
『・・・ラルカス、どこだい、ラルカス!』
イゼルローン病院四階、既に人の気配を無くした無機的な空間。様々なモニターと顕微
鏡付きマニピュレーターなど医療器具に埋め尽くされた部屋、手術室。多くの手術室の扉
が左右に並んだクリーンルームの廊下に、気の強そうな若い女の声が響く。ただしそれは
ハルケギニア語。
『・・・イザベラか!?何をしている、早く逃げろ!!』
返事もハルケギニア語だった。ミノタウロスの喉を使った、少しぎこちない発音だ。薄
い青緑色の肌着、術衣を着たイザベラは杖を握りしめたまま声のする手術室の開け放たれ
た扉へ飛び込んだ。
そこでは、ミノタウロスの巨体が大斧を握っていた。
空調管理による陽圧、即ち雑菌やウィルスが飛散する外気を手術室内に入れないよう気
圧を高くするため閉じられているべき手術室の扉。それが自動で全て開け放たれる緊急事
態。あと数十分で核の炎に包まれるオペ室に、ミノタウロスと医師と看護師がいた。椅子
の形の手術台に座って眠る患者も。
ラルカスは大斧の杖を患者の頭部に向け、医師は後頭部から頭蓋内部へ差し込まれたマ
ニピュレーターを操作し、看護師は二人を補助している。手術室のモニターには頭蓋内部、
左右の脳の間に差し込まれた極細の機械の指が映っている。先端に着けられた小型カメラ
からの映像だ。
彼等はこの生死を分かたんとする時に、まだ手術を続けていた。
泣きながら投下していると聞いて
今度は科学が魔法に翻弄されるのかもしれない…そう思いながら支援
調子にのんなクズ作者。消えろ
『何してんだ!あんたら、死ぬ気かい?!早く逃げな!緊急搬送用シューターも、もうす
ぐ隔壁と一緒に閉じられちまうよ!』
だが、彼等は動かない。医師はマニピュレーターの操作を続けている。ラルカスも治癒
魔法を使い続ける。
『ダメだ。あと少しで第三脳室に入り込んだ破片を取り出せる。脳内出血を止めれれば、
この患者を搬送出来るんだ』
『ん、んな事言ってる場合かー!自分が死んだら何にもならないだろ!死にたいってのか
い!?さっさと逃げな!』
『出来ない!私は、私は逃げるわけにはいかないんだ。自分の命を惜しむ事は出来ないん
だっ!』
ラルカスは何の迷いもなく治癒魔法を放ち続ける。同じく逃げない医師がスコープに目
を当てたままイザベラへ怒声を上げる。
「な、何言ってるか、知らん、が…予想はつく。ほほ、他のヤツらは、避難した。お前も
ささっさと、逃げろ。この、この処置が、終わったら俺達も、いい行く」
「ア、アンタラ・・・」
全身に脂汗を流している看護師も、たどたどしく口を開く。
「わ、私は、あたし、逃げれない。患者をのこして、逃げたら、なんか、負けたかなって
思っちゃう…あ、あはは、あたし、バカ」
三人とも、死の恐怖に顔を引きつらせながらも動く気配は見せない。
「ウ、ウウウ、ウアーーーッモォーーーーッッ!!」
叫ぶやイザベラは患者の頭部へ杖を向ける。その目はメインモニターへ、第三脳室の脳
脊髄液内に浮かび患者の脳を傷つけている破片へと向いている。
「破片、『念動』デ出ス!ヤマムラ、破片吸イ出セ!』
言うが早いか、イザベラの杖に合わせて脳に刺さっていた破片がマニピュレーターの指
へ動き出す。ヤマムラと呼ばれた医師は機械の指で破片を吸引口で吸い取った。傷ついた
脳内血管からの出血は即座にラルカスの治癒魔法で塞がれた。
「抜く!」「っはい!」
差し込まれていたマニピュレーターも医師と看護師により引き抜かれる。とたんに患者
の外傷が全て、みるみるうちに治っていく。
治癒を終えたラルカスが、即座に別のルーンを唱える。そして大斧を手術室にいる全員
に向けて振り下ろした。患者含めて全員が宙に浮く。
『な!いきなり何すんだい?!』『この方が早い!』
ラルカスは走り出した。
病院の廊下を暴風のごとき速さで駆け出した。医師と看護師と患者とイザベラを背後に
浮かせたまま、廊下にあるワゴンもボンベも全て吹っ飛ばし、頭と角にぶつかる指示版も
構わず破壊し、扉は粉砕し、角を曲がりきれないなら壁を走り、四人を浮かしながら疾走
する。
密閉されたクリーンルームのガラスに減速無しで突っ込む。ガラスを頭の角で突き破り
弾丸のごとラルカスは病棟の廊下に出た。彼の視界の先には廊下の先に、外の風景を映す
病院の窓が入った。
『飛ぶぞ!』
人間達の返事も聞かず、ミノタウロスは窓に向かって駆け出した。玄関ホールに面した
四階の窓へ向けて。
ガッシャーン!!
うわひゃああああああああああああああ・・・
イザベラの悲鳴が空を飛んだ。吹き抜けの空間を人と幻獣が落下する。
ズドンッ!
一瞬の自由落下の後、ラルカスは病院前の敷地に着地していた。魔法も使わず、己の足
だけで四階から落下した巨体を受け止めたのだ。そして遅れて落ちてきた四人を、今度は
魔法で受け止めた。
『大丈夫か!?すぐにこのまま避難を』
目を回しかけていた医療スタッフに声をかけようとしたラルカスの言葉が止まった。そ
れは頭上に飛行する物体をみつけたから。それも、隔壁へ向けて全速力で避難するもので
はなく、病院入り口へ向けて正面ホールを降下してくる数機の機体を。
地球教徒達の乗る船は貨物室の扉を開いていた。だが、未だに小型艇は射出されていな
かった。何故なら、その扉は中途半端に開いたままで止まってしまったからだ。僅かに開
いた扉の向こうには、光を放つ召喚門が覗いている。
「どうした!何故開けない?」
コクピットで叫ぶ大主教の詰問に、右隣の席に座る男が大声で答えた。
「と、扉が動きません!」
男は必死にコントロールパネルのボタンを操作し続ける。だが鋼鉄の扉は全く反応しな
い。途中までは問題なく開き続けていたのに。
「くそ、故障か。こんな所で…しょうがない。砲撃で破壊しろ。発進したら予定通りゼッ
フル粒子散布、召喚門を越えてから船を自爆だ」
男は小型艇に搭載されたレールガンの照準を合わせようとレバーを握りしめる。そのと
き、左隣の席に座る女から絶望的な叫びが上がる。
「ぜ…ゼッフル粒子発生装置が反応しません!指示を何度入力しても、全く応答がありま
せん!」
「な…?!」
呻いたド・ヴィリエは汗を流しながらパネルに飛びつき、船と小型艇の状態をチェック
する。モニターには船のメインコンピューターと小型艇のコンピューターから送られてく
る内容が表示されていく。
「ば…バカな!?」
大主教は叫んだ。左右の男女も驚愕に目を見開いた。そして女から続けて甲高い悲鳴が
上がる。
「レーダーが、三次元レーダーが表示されません!船外モニターも映りません!」
扉を開閉させるべきモーターが動かなくなっている。レーダーはアンテナが破壊されて
いる。カメラは消失している。ゼッフル粒子発生装置は小型艇からの指示を受け取る通信
機が無くなっている。
彼等が小型艇に乗り移るまで全く問題無かったはずの船が、突然故障箇所で真っ赤に染
まって表示されていた。しかも、故障箇所は見る見るうちに増えていく。砲撃も何も受け
ていないのに。
彼等は気付かなかった。開いた扉の向こう、20mまで拡大した召喚門の光の前に、もう
一つの光源があることを。彼等が乗り捨てるつもりだった貨物船の外壁、扉のすぐ近くに
は光を放つ鏡のようなものが浮いていた。それは『虚無』の魔法で作られた時空の穴――
『世界扉』。
小さな時空の穴から船内を覗き見る美女達がいることに、狂信者達は気付いていなかっ
た。
「・・・オッケーよ。エンジンも壊したわ」
ブリュンヒルトのエアロック、作業艇のコクピット内でルイズは杖を構えている。
「これでいいわ。もう彼等は完全に動く事が出来ないわね」
操作卓を操作するフレデリカは地球教徒が乗る貨物船の立体図を様々な角度から表示、
内部構造をルイズに示していく。
「あと少し、2分くらいは『世界扉』を維持出来ます。次はどこを壊しますか?」
コクピットの外へ向けて小さな杖を構えるティファニアは、どことなく楽しげだ。その
左手には古ぼけた本――始祖の祈祷書を開いている。そして杖を持つ右手の薬指には茶色
の指輪――ガリア王家に代々伝わり、ジョゼフが所有していたはずの土のルビーが輝いて
いた。
「んじゃ、そろそろバラバラにしてあげましょっかねー」
楽しそうに語るルイズの右手にも杖と指輪――水のルビー。そしてルイズの目の前のコ
ンソールに無造作に置かれているのは、ガリア王家の秘宝である始祖の香炉。
ルイズはルーンを唱えた。『エクスプロージョン』を、コクピットの向こうへ向けて。既
にティファニアの生み出した小さな『世界扉』から空気を吸い出された貨物室、そこに浮
かぶ小さな召喚門の向こうに見える、小型艇へ。
貨物船内の小型艇は丸ごと光に包まれた。
ラインハルトが「急いで届けさせる」と約束したもの。それはイゼルローン要塞に保管
してあった始祖の秘宝。そして『世界扉』、時空に穴を開ける魔法製ワームホールは、ティ
ファニアにはイゼルローンへ来た当初から使えていた。彼女がホームシックにかかり始め
た頃から。ウェストウッド村の子供達やマチルダに会いたいという想いに、始祖の秘宝は
以前から応えていた。
現在のティファニアの魔力では次元の壁を越えてトリステインへワームホールを繋げる
には足りない。その魔力がいつになったら溜まるのかも分からない。開けたとしても、そ
の座標は召喚門からずれているため、再び膨大な座標計算を行わねばならない。このため
ティファニアの『世界扉』でハルケギニアへの道を、地球教徒達を追跡出来るほど短時間
で開く目処は立たない。
だがイゼルローン要塞から召喚門まで小さな穴を造るくらいは問題なかった。
光が消えた時、強襲降下艇のコンソールは火花と煙を吹き出していた。貨物船と連結さ
せていた固定装置兼射出装置もバラバラになった。降下艇のレールガンだけでなく、彼等
が降り立った世界を征服するために満載していた全兵器も役立たずにされていた。大主教
を含めコクピットにいた三人と、後部座席にいた他の地球教徒が所持していたブラスター
までも、引き金が折れていた。
貨物船との連結が破壊された降下艇は、 無重力の貨物室内で虚しく漂い始める。
「いやー、やっぱり無重力は面白いですぞ。『フライ』で簡単に飛び回れるし、こんな大き
な船体が私だけで動かせるのですからな」
漂う降下艇の横で人の声がした。だが、そこには誰もいるように見えなかった。それに
真空の中で声は伝わらないので、その声を聞けたのはヘルメット付属の通信機で彼の声を
聞いた人だけ。
いきなり貨物室内の空間の一部がずれ、シワが寄る。何もないはずの真空からいきなり
現れたのは宇宙服に身を包んだコルベール。そして彼が左手に持っているのは、誰からも
姿が見えなくなる魔法のマント、科学風に言うなら光学迷彩布『不可視のマント』だ。そ
して右手には杖が握られていた。
彼は宇宙服を着用して『ゲート』を出て、戦列艦の巨体と『不可視のマント』で身を隠
しながら『フライ』で接近。貨物室の扉の隙間から忍び込んでいた。
「さて、それでは出てきて頂きましょうぞ」
コルベールが振る杖に合わせて降下艇も動き出す。同時に中途半端なままで止まってい
た貨物室の扉もルイズに爆破される。地球教徒は船ごと船外へ放り出された。駆逐艦の大
きなハッチが口を開けた宇宙空間へ。
召喚門を捉えていた戦艦列、そのうちの一隻が列を離れ、ハッチを開いたまま貨物船へ
接近していたのだ。
パクッ
そんな擬音がピッタリなほど、降下艇とコルベールとティファニアが作る小さな召喚門
は駆逐艦の貨物室に飲み込まれた。ただの鉄屑になった貨物船を突き飛ばして。
乙っす、ノイズは気にせず支援しまっせ。
支援、しかし空気悪いな。
魔法VS科学支援
爆発的な勢いで大気がバルブから放出され、駆逐艦の貨物室内が気圧を上げていく。降
下艇のコクピット近くに光球が生じ、消えた瞬間にはコクピットを覆う天井が丸くえぐら
れ、内部が剥き出しになった。
「確保ぉーっ!」
指揮官の絶叫が響き渡るまでもなく、貨物室内で待機していた装甲擲弾兵が即座に突撃
し、降下艇内の狂信者を次々と制圧していく。大主教ド・ヴィリエは特に念入りに取り押
さえられ、胸ポケットの端末を奪い取る。
「これだ!急げ!」「ロックを破るんだ!爆弾の場所をっ!」「解除コードも入ってないか
確認しろぉ!」
端末はデータ解析のために急いで貨物室から運び出された。
「終わったわ。テファ、お疲れ様。もう大丈夫よ」
「ふぅ〜。上手くいったのでしょうか?」
フレデリカの言葉にティファニアは杖を降ろす。同時に召喚門は消失した。バルブが解
放され、貨物室内に空気が満ち始める。
そしてコクピット内にラインハルトの声も満ちた。
《もちろん上手くいったとも。テファもルイズも素晴らしい働きだった》
モニターに投影されたラインハルトには満足げな笑みが浮かぶ。その様子にルイズは誇
らしげに胸を張る。
「まーこのくらいは、楽なものですわよ。お任せ下さいな!」
《もちろんだ。それでは、ブリュンヒルト内で一時休息してくれ。爆弾の方はこちら
で対処する》
皇帝との通信が切れた直後、狭いコクピットに女性達の黄色い歓声が響いた。
カチャッ
装甲服に身を包んだ屈強な男達に全身を締め上げられ、床に貼り付けられる大主教の頭
にブラスターが押しつけられた。装甲敵弾兵の一人が憤怒に満ちた声を絞り出す。
「解除コードを言え」
だが大主教は何も語らない。ただ陰湿な笑みを浮かべているだけだ。銃口がこめかみに
めり込むほどに押しつけられ、狂信者の頭は床になすりつけられる。
「これが最後だ、解除コードを言え。言えば命は助けてやる」
くっくっく…と、くぐもった笑い声が歪んだ口から漏れる。
「言っておくが、あの端末に入っているのは本当に爆弾の場所だけだ。解除コードは俺し
か知らん。ちなみに、あの爆弾は液体窒素を吹きかけて止まるような安物じゃないぞ。温
度センサー付きだ」
暗い目がコクピットの時計へ向く。
「あと、10分」
装甲敵弾兵達の胸に湧いた怒りは、そのまま彼等の全身で表現された。大主教の全ての
関節と骨から軋む音が沸き、哀れむ価値のない犠牲者が上げる惨めなうめき声が貨物室に
漂う。
「このまま核が爆発すれば、お前をこの場で射殺する。もちろん楽には死なせん。
さあ…言え!」
銃の引き金が僅かずつ引き絞られていく
ド・ヴィリエ大主教の口がゆっくりと開く。大きく息を吸う。
そして、彼は叫んだ。
「金髪の小僧!地獄で待ってるぞ!!」
言い終えると同時に彼は奥歯を噛み締めた。
急ぎ自白させるため、兵士達は彼等の口の動きを止める事が出来ない状態だった。
奥歯に仕込まれた爆弾は狂信者の頭を吹き飛ばし、血と頭蓋と脳髄を兵士達の装甲にな
すりつけた。
支援
支援!
投下したい、注目されたいが一番か…
ご自分でHPでも作って、そこでやってくれませんか?
イゼルローン中央病院周辺へ飛来した小型機の一機は、病院玄関前に爆弾処理班を降ろ
し、代わりに目を回したイザベラ達医療スタッフと患者を収容していた。そして最後にラ
ルカスが巨体を機体の狭い入り口に押し込めようともがいている。他の機体はホール上空
に滞空したり、病院周囲の通路を周回し、病院以外の離れた場所に特定されたとしても対
応出来るように待機していた。
着陸した機体のパイロットがマイクを握りしめ、イザベラ達を収容するため放り出した
荷物をかき集める爆弾処理班へ向けて通信内容を叫んだ。
「爆弾位置特定!病院下の倉庫!大型コンテナNo.21498DAT、酸素タンクに偽装!起爆ま
で…7分!解除コード不明!」
同じ情報は爆弾処理班の耳に付いた通信機からも届いていた。彼等の視線が一瞬泳ぎ、
すぐに病院の横にある大きなシャッター、車両用入り口に気付く。重装備を担いだ彼等が
駆け出そうとした瞬間、何かが地響きを上げながら爆弾処理班を抜き去った。
ゴオオオオアアアアアアアアアアッッ!!
病院前で野獣が咆哮する。大地を揺るがす程の咆哮を。
病院横の車両用入り口へ降下し始めた他の機体からは、車並みの速さで倉庫へ疾走する
ミノタウロスが見えていた。
ズガッ!
電子ロックされた鉄のシャッターは、ラルカスの大斧による一撃で切り裂かれた。数度
振り回すだけで彼の巨体が入れるほどの大穴が開く。シャッターの破片を撒き散らしなが
ら、彼は病院下の倉庫へ駆ける。背後から走ってくる隊員達の声は響き渡る耳障りな警報
音にかき消される。
車両用通路を駆け抜け、倉庫内に飛び込んだラルカスの血走った目が、目的の大型コン
テナを探す。闇を共とするミノタウロスの肉体は、暗視スコープもかくやというくらい薄
暗い倉庫内をハッキリと見渡していた。
牛の目がコンテナのナンバーを読み取る。他の隊員達が倉庫に飛び込んできた時、目的
のコンテナを発見していた。すぐ彼は駆け寄りコンテナの扉に取り付く。そのコンテナに
も電子ロックが付いていた。もちろんコードは分からない。
ガゴンッ!
彼は斧で扉を斬りつけた。激しい火花が散り、扉に穴が空く。だが少し歪んだだけで、
壊れる様子はない。
「扉を爆破する!離れろぉ!!」
後方からようやく追いついてきた爆弾処理班が殺到してきた。ラルカスは瞬時にコンテ
ナから離れる。隊員達は扉の各所に爆薬を仕掛け、即座に離れて物陰に隠れた。
「3,2,1,ファイエルッ!」
爆薬が炸裂する。閃光が倉庫内を照らし出す。
煙の中で扉は大きく歪み、かろうじてコンテナにしがみつき、入り口を塞いでいる状態
だった。ラルカスは一瞬でコンテナへ飛び出し、未だ高熱を持つ鋼鉄の扉を、自分の皮膚
が焼けるのも構わず握りしめ、無造作に倉庫の奥へ放り投げた。
コンテナ内には大人の体ほどもある巨大なボンベがズラリと並んでいる。
「あと4分!待避不能!隔壁閉鎖に間に合いません!」
隊員の中から悲鳴の様な叫びが上がる。
その時、隊員達の背後から、何者かが彼等の頭を飛び越えた。
その人物はコンテナ内に飛び込み、左手に持つ光源を頼りに、ボンベを次々と触ってい
く。そしてそのうち一つに触れた時、その人物は叫んだ。
「これだ!解除する!」
その声にはラルカス含めた全員が聞き覚えあった。だがそんな事を気にしている暇はな
い。隊員達と、何よりラルカスのパワーで邪魔なボンベは放り出される。そして特定され
たボンベと、それを操作する人物が露わになった。爆弾のモニターには隊員達のカウント
と同じ数字が表示され、刻々と減り続けている。
薄暗い倉庫の中の、さらに薄暗いコンテナの中。何故かスーツ姿の人物がボンベに付属
する制御機器を操作していた。
支援するっちゃ
>>736 ベイダー卿の作者氏もそういう事言う「頭の堅い」人がいるから
見切りをつけて別スレ立てちゃったのかもね
>>736 宣言通りならあと一回投下するはず、この小ネタ(?)は・・・。
そうしたら消えてくれるんですよね!
やったッ!
オレたちにも頑張ればやれそうなことをどうにかやってのけるッ!
そこに別段しびれも憧れもしないッ!
「あと3分!…あんた、解除コードを知ってるのか!?」
駆け寄る隊員の言葉に、その男は飄々と答えた。あと数分で熱核兵器に焼かれるという
この時に。
「いや、今、調べてるんだ」
そう言って男は右手でパネルを操作し続ける。
隊員達は彼の左手に気付いた。彼が左手に持つ光源の正体に。彼は左手に長い鉄の棒を
持っていたが、それは光源の正体ではなかった。
光っていたのは左手の甲で輝くルーン文字。
おまけに左手に持っているのは棒ではなく長剣。
「全ての武器を操る、か。確かに熱核兵器だって武器だもんね」
ボンベに立てかけられた長剣がツバを打ち鳴らした。
「しっかしよぉ。いくら俺が『ひっついてりゃ大概の事は分かる』つってもよー。解除の
呪文を読み取らせようたーねぇ。おでれーたわ」
「おしゃべりはここまで。さぁ、たまにはボランティアもやってみようかな!」
「おうよ!」
ヤンのルーンとデルフリンガーの刀身が輝きを増す。
彼等は爆弾処理班と共に病院へ急行していた。解除コードを得られなかった場合、かつ
核を要塞外へ排出する等の時間が残らなかった場合の保険として。
だが解除コードが分かっても、入力すれば良いだけだと分かっていても、狂信者が世界
へ向ける悪意には太刀打ちしがたい事もある。今、ヤンとデルフリンガーが直面した事態
がそれだ。
「な…これ、デル君…」
「お、おでれーた…なんて、なんて腐った連中なんだ!」
その言葉に、周囲でヤンとデルフリンガーの叫びを聞いている隊員とラルカスは胃が痛
くなるような不吉さに囚われる。そんな周りの人々を気にする余裕もなく、ヤンはコード
を入力し始めた。
「くー!やるしかない…あーもー。皇帝陛下には、絶対ボーナスを出してもらうんだ。年
金だって帝国予算から出してもらう!でないと、でないとやってられるかー!」
ヤンの手が高速でパネルを弾き続ける。だが、いつまで経っても入力が終わる様子はな
い。
ラルカスが控えめに長剣へ尋ねた。
「あの、解除コードは分かったんですか?」
「あー、分かったよ分かったよチクショー!こんなクソ長い文章、爆発までに打ち込める
かー!」
「なぁ!」
ラルカスだけでなく、隊員達からもどよめきと悲鳴が上がる。隊員の一人が情報端末を
取り出す。
「コードを教えてくれ!こちらでも入力する!」
「ムリ」
答えたのはガンダールヴのルーンを激しく輝かせるヤン。その指の動きはルーンの肉体
強化のおかげで目にも止まらぬ速さだ。
「これ、パネル以外の入力をできなくしてあるよ。端子も何も、全部塞がれたり壊されて
る」
ヤンが言うように、核爆弾の制御装置にはタッチパネル以外は何もない。コードを繋ぐ
穴も赤外線やレーザー通信を受けるレンズもない。そして分解してコンピューターに直接
接続する暇もない。
自身がこのスレにたどり着いた時には既に2スレ前に投下が終わってたから。
提督って人がどんな人か知りたかったんだが…。
まさか…ねぇ、
色々言う人もいるけれど、個人的には好きな作品なので支援せずにはいられない支援!
「とにかく手打ちで入力するしかない。時間をカウントしてくれ」
「分かった!あと82…81…80…」
「デル君!入力間違いをチェック!」
「おう、今のところ間違いはねーぜ!」
「他の人も!爆弾を解析して、他に解除方法が無いか調べてくれ!」
即座にその場の全員が動き出す。ヤンの邪魔にならないように様々な機器が爆弾周囲に
置かれ、幾つものモニターが光を放つ。
「透過開始、表示します」「どこかにこいつを捨てれるシェルターはないか!?」「起爆装
置を探せ!」「メインコンピューターへ直通回線、データを送れ!司令部に解除方法を探さ
せろ!」
熱核兵器のモニターには入力される文字列が高速で流れてく。
Tibi Cherubim et Seraphim incessabili voce proclamant
Sanctus:Sanctus:Sanctus Dominus Deus Sabaoth
Pleni sunt caeli et terra majestatis glori...
それは西暦の時代、キリスト教において神を讃えるための歌の一つ、グレゴリオ聖歌の
一部。そしてその他にもケルト聖歌・モザラベ聖歌など、大量の歌詞が目にも止まらぬ速
さで入力されていた。
「神の世界へ旅立つ人のための歌ってわけか…あいにくだけど、僕はブリミルのバカ面な
んか見る気はないよ」
軽口を叩きつつも、ヤンはパネルを叩き続ける。滝のように汗を流しながら。
この光景は司令室のメインモニターにも表示されていた。悲鳴混じりの怒号が室内を埋
め尽くしている。
「急げえ!検索は終わらないのか!?」「時間が足りなすぎます!」「隔壁を閉鎖させろ!」
「ま、まだです!まだできません!隔壁下でドミノ倒しになり、待避が遅れています!」「構
わん、閉じろ!」「そんな!!避難し遅れた人達だって、まだ中にぃ!!」「バカ野郎!こ
のままじゃ全員死んじまう!!」「衝突事故発生!待避する車列に割り込もうとした車で玉
突きを!」
司令部の怒号と悲鳴の割合は、だんだんと理性や知性に基づく冷静な言葉を上回り始め
ていた。それでも隔壁・シューター・エレベーター周囲で起きる悲劇には及ばなかった。
それは、まさに地獄。
現場で一人でも多く助けようとする者、他人を押しのけて我先に逃げる者、人の波や車
列に跳ね飛ばされて動けない者、あまりに密集しすぎた人の群れに押し潰される者、はぐ
れた子を必死に探す親、泣き叫ぶ子供。壁に衝突し炎上する車、人を詰め込みすぎたエレ
ベーターの扉が目の前で閉じてしまった女…。
そこに見られるのは文明人の理性でも知性でもなく、ただ生を求める動物の本能。
ラインハルトは何も言わず、ただ黙って椅子に座りモニターを見つめる。全ての出しう
る指示は既に出し切ってある。大声を張り上げ腕を振り回すワーレンとキャゼルヌに改め
て言うべき事など残っていない。この段階で皇帝に出来る事は、部下達に安心感を与える
ため平静を装う事だけだ。
ヤンが高速で撃ち込み続けるコードが間に合う事を信じ、メインコンピューターが停止
方法を表示する事を期待し、一人でも多くを避難させられることを祈り、彼は密かに拳を
握りしめる。
41…40…39…
大主教の端末を解析した結果と、爆弾のモニター上のカウントが同一の時間を示し続け
る。それは、時の女神は人間の生死などお構いなく冷徹に職務を実行し続けている証。
またキチガイ降臨か
支援
アンドバリの指輪があれば殺害後に操ってコード聞き出せるのになw
>>738 あんた「頭の堅い」の意味ちゃんとわかって使ってるのか?
削除申請が通れば、綺麗に消えるさ
何もかも、綺麗に
>>738 "頭が固い"な、まるっきり人の意見を聞かない人が投下してるようだが?w
「く…くそ!あと10秒、いや5秒!ああもう、3秒でもいいんだ!入力が、時間が足ら
ない!!」
27…26…25…
カウントは進み続ける。
ヤンの指の速さは衰えてなどいない。むしろ加速している。ルーンの輝きは次第に増し
て、人外の力を彼に授け続けている。だからこそ本来は絶対不可能な速度で入力できてい
る。だが、それでも入力終了までには時間が足らないのだ。あと数秒という単位で。飛び
散る汗の量が見る見る増えていく。
周囲の隊員達も必死に解除方法を模索している。その時モニターを凝視していた隊員が
一際大声を上げた。司令部から解除方法の回答が来たのだ。
「返事!…起爆装置だけ破壊…今からどうやって!!?」
「破壊方法も!早く!」
「ちぃっ!受信が!」
司令部からの返事は来たが、解除方法の受信までもが既に間に合わない。加えて隊員達
はデルフリンガーの叫びにも仰天してしまう。
「ムリ!その周りを僅かでも傷つけたら爆発!!おでれーたあ!!もうダメだっっ!!」
長剣が早口で諦めの叫びを上げてる間にも、非情なカウントが進む
13…12…11…
隊員達の間から、悲鳴と祈りと家族への別れの言葉と大嫌いな上司同僚への罵詈雑言が
聞こえてくる。だが彼等の後ろから突然、彼等の絶望の呟きと叫びを吹き飛ばす大声が上
がった。
「起爆装置はどこだ!?」
「え?」
「急げ!!」
聞かれた隊員は慌ててモニターに表示される爆弾の透過画像を指さす。
「ここだ!」
他の隊員達も酸素ボンベに偽装された熱核兵器の底部から上15cmを指さす。その人物
はカウントも確認する
6…5…4…
牛男が大斧を振り上げた。
「どけえっっ!!!」
「うわああっ!!」「や、やめ!」「斬りつけてもダメェエッ!!」「バカうしぃ!」
叫びつつも隊員達は慌てて飛び退く。
バォッ!!
大気を切り裂き、大斧が振り下ろされた。
カウントは確実にゼロへと進む。
ヤンは必死に入力をしている。
3
2
1
0
好きなものを支援して何が悪いんディスカ支援
(落ち着いたらまた後でじっくり読ませていただきます作者殿)
カウントは、ゼロを示した。
隊員達は頭を抱え、抱き合い、必死に祈りと呪詛と別れの詞を呟き続けている。
ヤンは、まだ入力を続けていた。カウントがゼロになったのも気付かず、入力し続けて
いた。
そう。ゼロになったのに彼等は死んでいなかった。
熱核兵器は爆発しなかった。
斧がボンベ型熱核爆弾へ振り下ろされていた。
ボンベに向けてではなく、正しくはボンベの数p手前に。
起爆装置へ向けて振り下ろされた斧型の杖が、ボンベに向けて光を放っている。
「入力終了!間に合ったあっ!!」
一歩遅れて叫んだヤンが、喜びに打ち震えながら隊員達をみやると、その異変にようや
く気が付いた。
「・・・あ、えと・・・どう、したんだい?」
彼等は何も言わない。まるでゼロになった瞬間を切り取ったかのように、そのままの体
勢で動かない。
さらに一歩遅れてデルフリンガーがツバを鳴らした。
「…解除、成功…だぜ。おでれーた…『錬金』だ」
「え?『錬金』って…あ!ラルカスさんっ!」
ヤンに名を絶叫されたミノタウロスのメイジは、ゆっくりと体が後ろへ傾く。
そして床に仰向けに大の字で倒れてしまった。彼が握りしめていた斧がガランと音を立
てて転がる。
「や・・・やった・・・。やったぞ…『錬金』で、起爆装置を、土に変えてやったぞ…」
大きな牛の口から激しい呼吸音と共に漏れたのはハルケギニア語。その言葉は帝国公用
語の人工音声に変換されて、術衣の襟元にあるマイクから流れ出した。
『錬金』。それは科学では困難で危険な技である元素変換。膨大なエネルギーと多大な放
射能汚染を引き起こすことを代償に、物質を別の物質に変える。だが、ハルケギニアでは
『土』系統の基本であり、子供の頃に習得を済ませるメイジも多い簡単な魔法。
イゼルローン要塞を歓喜の叫びが満たした。
支援しえん・・・
支援、ただ、支援するのみ
作者投下の妨害をする輩は何様のつもりなんだろうね?
スレ的にどっちがいらないかと言えばあんたらだろうに…
B、投下終了
最後のCは二時間後に・・・って、470踏んでた
次スレ、初めてなんですが立ててみます
投下乙、アンチを気にせず頑張ってくれ
投下乙でした〜
科学から見れば、魔法という存在がいかにチートかよくわかる
提督投下乙
>>756 あんたはスレの支配者かなんかか?
ちょっと待ってくれ、内容についてアレコレ言うつもりはないが、ペースが速すぎやしないか?
>>757 乙っす!前回のフィナレーから後日談を密かに楽しみにしていたので、
本当にそれが実現してwktkしっぱなしですw
>>755 禿同っす。
やっぱり読み手はあくまでも読み手に徹するべきであって、
読み手側は基本的に職人諸氏の邪魔をしてはいけないなと思う。
>>757 投下するのも結構だが、運営議論スレで作品の削除申請出てるよあんた
顔くらい出してきたら?
投下乙です
罵詈雑言が酷すぎて逆に支援したくなったwww
すると、職人が職人の邪魔をするのは可なんだな?
乙です。
さぁ文句のある方は俺と一緒に毒吐き行こうぜ
あと作者にダメージ与えたいなら無視するのが一番と思われ。
>>757 変に間を開けた時間指定しなくて良いよ
他に投下する人の迷惑になるから。
前にもそうやって言われてただろ?人の話はちゃんと聞くんだな。
>>657 どなたかこの画像の詳細キボン(*´д`*)
>>765 このスレは何の為にあるんかね?作
作品が投下される為でしょうよ。それを否定しちゃったら、
今までここに投下されてきた宝石のような作品の数々を根底から否定する事になるんでは・・・。
嫌なら嫌でどうしてスルーの魔法を唱えようともせんのだ
テンプレに書いてあることを守りもせずに人のマナーがなってないだのなんの……
気持ちはわかるがもう少し落ち着いたほうがいいと思うよ
>>770 そりゃ正論だけど、人の感情って不確定要素が入るとまともに機能しないことが多い
ま、騒いでるのは提督を非難する側と肯定する側両方だけど
お互い、肩の力を抜いて相手の意見を尊重しようぜ
俺が正しいんっだ、てわめくのが一番いけない
あなたもそのきらいがある
誰も、提督を投下するなといってるわけじゃない
騒ぎになるから落ち着いた場所で投下しようという話になったはず
提督の作者さんもその約束は守るべきだった
余計なことして、覚悟と言ったけど、敵を増やす真似はよくない
妥協すべきときは妥協しよう。wikiに登録さえされればファンは読んでくれるよ
偽 者 疑 惑
>>770 誰が他の作品を否定した?
この後2時間は誰も投下できないと言ってるんだ。よくスレ全体を見れ烏賊墨野郎。
>>770 概ね同意ですが、投下する上でのマナーやルール、作者が以前自分で言った事くらいは順守して欲しいと思います。
>>778 ??
提督さんが次の話投下するまで二時間あれば、充分他の話を投下する余裕はあると思う
提督の作者の行動が目に余るから批難されている、ただそれだけの事。
>>770 このスレ以外にも作品を投下する場所は存在するし、現在のようにスレが荒れてしまわないように
次善の策を提示した者も今までにそれなりにいたと思いますが、それこそこれからも投下される
であろう宝石のような作品の数々が生まれるべき場を踏み荒らす結果になってしまった今回の騒動の
発端とその熱烈な支援者さまとしては、些かも心が痛まないと?
昨夜とて荒れたスレの雰囲気を少しでも癒そうと作品を投下された職人様方がおりましたな。今日の
それは、そういう職人様の心遣いすら踏みにじられた行為に映りましたが、そう思われないのであれば
残念であります。
宝石を守るためにも、自分としては次善の策を今後も提示しますが支援はできませぬよ。
>>781 この空気で投下しろと?
アンチと信者がガスガスやりあってて
投下し終わったら感想どころかまた投下するのに?
作品としてはいいんだろうけど、発表するためにはどんな手段でも取るというのそのエネルギーは凄いな
「たとえ他人を不快にさせても」という冠詞が付くが
コミュニケーションを軽視するというのは素敵ですね
そういう価値観が人生の足を引っ張らないよう頑張って生きてください
>>781 時間的な観念のほかに、雰囲気という観念があるのよね。
とにもかくにも投下乙です。Wikiに上がったら落ち着いて読みます。
>>781 今のように荒れてる状況じゃ投下し辛いでしょう?
次の話を投下した後も荒れるのは目に見えているのだから、
避難所ではなく本スレに投下するなら、
せめて早く終わらせて欲しいってことでしょうね。
>>781 あなたの脳みそは永谷園味噌汁なのかい?
勝手に投下時間を指定されると、かえって他の作者が投下し難い雰囲気になるのは以前から問題視されていたが。
>>783 自分は、好きな作品の作者氏が外野からの野次に元気を無くして
創作意欲をなくしてしまうんじゃないかって事が一番怖いんですよ。
だから出来るなら皆にもそういう、「創作魂を殺す」ような事は言って欲しくないんで
自分なりに反対意見で対抗しているつもりなんだけれど・・・。
いい作品が、適当になげつけられた一言で封殺されてしまうのはなんとも忍びない・・・。
>>783 今日どこか昨日の時点で踏みにじっていませんでしたか?
提督番外編1投下 → 荒れる → 他作者さん投下 → スレが落ち着く → 番外編2投下 →荒れる
こんな流れだったような
>>781 理屈だけで考えないで、投下する作者の立場になって考えてみましょう
でもゾフィーは本編でもなんか微妙に嫌われてたぽいしなあ
みんなが集まった時「ゾフィーは?」って聞かれたら
「ゾフィーの事はいいよ!」って……
てかスレ違いだから俺と一緒に毒吐きか運営議論スレに行こうぜ
ゾフィーを馬鹿にするな! ゾフィーだって怪獣を沢山倒してるんだぞ!
アリブンタとかギロン人とかアリブンタとかギロン人とかアリブンタとかギロン人とか
後6kbだし埋めよーぜ
埋め埋め
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` ァ-―''7"( _,/:::/ それは 剣というには あまりにも大き過ぎた
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/ .i| \:::::::::::::::::::\/.--─-,,, それは 正に 鉄塊だった
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>>791 ええ、まさに。昨日の時点で、そういう心遣いされた職人様の気持ちは踏みにじられておりましたね。
>>790 創作意欲を満たすだけならですね、御自分でHPなりブログを立ててそこに載せれば済むんですよ。
身も蓋もない言い方になりますけど。
それでもこういう場所、こういうスレに投下されるってことは、明文化されていないとしても、要らぬ
衝突を避けるための智慧やマナーがあるのではないかと思うのですよ。
残念ながら、この作者様はそういう面での問題行為を起こされたように思うのです。それは、創作魂
とか創作意欲とは全く別個に考えなきゃいけないし、貴方の述べた意見ではまるで擁護になっていない
ように思われます。本当に残念なんですが。
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.,⌒ γ⌒., 。
[皿 ・´] 。
⊂| |つ 。僕、ドルーガード!
| ヽ_,rァ 。
丿 λ 、´ヾゝ 。
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終われえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ
804 :
名無しさん@お腹いっぱい。:
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` ァ-―''7"( _,/:::/ それは 剣というには あまりにも大き過ぎた
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