あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part186
もしもゼロの使い魔のルイズが召喚したのがサイトではなかったら?そんなifを語るスレ。
(前スレ)
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part185
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1226326849/ まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/ 避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9616/ _ ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
〃 ` ヽ . ・ここはあの作品の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!
l lf小从} l / ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,. ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
((/} )犬({つ' ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
/ '"/_jl〉` j, ・ 投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
ヽ_/ィヘ_)〜′ ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!
_ ・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
〃 ^ヽ ・クロス元が18禁作品であっても、SSの内容が非18禁である場合は
J{ ハ从{_, 本スレへの投下で問題ないわ。
ノルノー゚ノjし ・SSの内容が18禁な展開をする場合はクロス元に関わらず、
/く{ {丈} }つ 本スレではなく避難所への投下をお願いね?
l く/_jlム! | ・クロス元がTYPE-MOON作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
レ-ヘじフ〜l ・作品を初投下する時は元ネタの記載も忘れずにね。wikiに登録されづらいわ。
・作者も読者も閲覧には専用ブラウザの使用を推奨するわ。負荷軽減に協力してね。
. ,ィ =个=、 ・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。
〈_/´ ̄ `ヽ ・1レスの限界最大文字数は、全角文字なら2048文字分(4096Bytes)。これ以上は投下出来ません。
{ {_jイ」/j」j〉 ・行数は最大60行で、一行につき全角で128文字までですって。
ヽl| ゚ヮ゚ノj| ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
⊂j{不}lつ ・次スレは
>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
く7 {_}ハ> ・重複防止のため、次スレを立てる時は現行スレにその旨を宣言して下さいね。
‘ーrtァー’ ・クロス先に姉妹スレがある作品については、そちらへ投下して盛り上げてあげると喜ばれますよ。
姉妹スレについては、まとめwikiのリンクを見て下さいね。
・一行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えます。
SS文面の区切りが良いからと、最初に改行いれるとマズイです。
レイアウト上一行目に改行入れる時はスペースを入れて改行しましょう。
テンプレここまで
このぐらいまで単純化できそうな気がする。
爆発召喚
キス契約
「ゼロ」の由来判明(教室で爆発)
使い魔の能力が明らかに(ギーシュ戦)
デルフ購入
フーケ戦
舞踏会
最近はその流れでいかに飽きない話を作るかに凝りがち
爆発
平民プゲラ
コルベール問答無用さっさと汁
キス契約
フライに唖然とする
説明はぁどこの田舎者?
何者であろうと今日からあんたは奴隷
二つの月にびっくり
洗濯シエスタと接触
キュロケフレイム顔見見せ
みすぼらしい食事厨房でマルトー
教室で爆発片付け
昼食シエスタの手伝い香水イベント
オスマンコルベール覗き見
ギーシュフルボッコ場合によって使い魔に弟子入り
キュルケセクロスの誘いしかし使い魔はインポテンツか童貞w
ルイズ寝取られの歴史を切々と語る
休日街でデルフ入手 キュルケタバサがついてくる
ルイズが爆破訓練宝物庫破壊フーケ侵入お宝げっと
この段階でフーケは絶対つかまらない
翌朝捜索隊保身に走る教師一同
教育者オスマン犯罪捜索を未熟な子供にマル投げ
小屋で破壊の杖ゲットフーケフルボッコしかし絶対死なない
オスマンから褒章 舞踏会 終わり
途中飛ばすけど、
対7万戦と再召喚(一度使い魔契約が切れ、まっさらな状態からルイズとの関係を再構築)
【書き手の方々ヘ】
・作品投下時はコテトリ推奨。トリップは「名前#任意の文字列」で付きます。
・レスは60行、1行につき全角128文字まで。
・一度に書き込めるのは4096Byts、全角だと2048文字分。
・先頭行が改行だけで22行を超えると、投下した文章がエラー無しに削除されます。空白だけでも入れて下さい。
・専用ブラウザなら文字数、行数表示機能付きです。推奨。
・専用ブラウザはこちらのリンクからどうぞ
・ギコナビ(フリーソフト)
http://gikonavi.sourceforge.jp/top.html ・Jane Style(フリーソフト)
http://janestyle.s11.xrea.com/ ・投下時以外のコテトリでの発言は自己責任で、当局は一切の関与を致しません 。
・投下の際には予約を確認してダブルブッキングなどの問題が無いかどうかを前もって確認する事。
・作品の投下は前の投下作品の感想レスが一通り終わった後にしてください。
前の作品投下終了から30分以上が目安です。
【読み手の方々ヘ】
・リアルタイム投下に遭遇したら、支援レスで援護しよう。
・投下直後以外の感想は応援スレ、もしくはまとめwikiのweb拍手へどうぞ。
・気に入らない作品・職人はスルーしよう。そのためのNG機能です。
・度を過ぎた展開予測・要望レスは控えましょう。
・過度の本編叩きはご法度なの。口で言って分からない人は悪魔らしいやり方で分かってもらうの。
【注意】
・運営に関する案が出た場合皆積極的に議論に参加しましょう。雑談で流すのはもってのほか。
議論が起こった際には必ず誘導があり、意見がまとまったらその旨の告知があるので、
皆さま是非ご参加ください。
・書き込みの際、とくにコテハンを付けての発言の際には、この場が衆目の前に在ることを自覚しましょう。
・youtubeやニコ動に代表される動画投稿サイトに嫌悪感を持つ方は多数いらっしゃいます。
著作権を侵害する動画もあり、スレが荒れる元になるのでリンクは止めましょう。
・盗作は卑劣な犯罪行為であり。物書きとして当然超えてはならぬ一線です。一切を固く禁じます。
いかなるソースからであっても、文章を無断でそのままコピーすることは盗作に当たります。
・盗作者は言わずもがな、盗作を助長・許容する類の発言もまた、断固としてこれを禁じます。
・盗作ではないかと証拠もなく無責任に疑う発言は、盗作と同じく罪深い行為です。
追及する際は必ず該当部分を併記して、誰もが納得する発言を心掛けてください。
偽テンプレ……非乙。
書き始めはやっぱり筆がノリますな。
それでは第2話、22:00から投下しようと思います。
……あれ、もしかして人いない?
作品クロス物の最低SSを語るスレッドです。
貴方が最低だと思ったゼロ魔SS作品を投稿してください。
・言うまでも無く踊り子さんには手を触れない事。
突撃は元より、「俺〜〜に○○書いてくるわ(きた)」等の書き込み宣言も厳禁です。
・貴方の好きな作品が叩かれてもスルーしてください。
・貴方の挙げた作品を最低だと思っているのは、貴方だけかもしれません。スルーされても泣かない。
・根拠の無い叩きや、イメージのみでの晒しは「嫉妬乙」と言われてしまいます。
なるべくどこがどう最低なのかを分かり易く書きましょう。
・自分の発言を叩かれても、顔真っ赤にして粘着しない。
また、そーいう血の気の多い人が出てきても徹底スルーすること。
・既出作品の紹介は嫌われるので既出作品かどうかはページ内検索を活用しましょう。
・対象のネタはスレタイ通り多岐にわたります。
ネタを振る場合ドコのサイトのネタか出所を書いてから振ると面倒が無くていいです。
・小説の捜索はこのスレの管轄ではありません。Googleなどを使って探してみましょう。
ココで挙がるようなSSの場所が分からないからといってArcadia等の捜索掲示板を利用するのはやめて下さい。
・ヲチスレ同士とは言ってお互いの晒しあいはダメです。
仮にもヲチャーを名乗るのならば、ヲチスレやまとめサイト程度は自力で探しましょう。
・ヲチャーたるものドSであれ。かまって君には放置プレイで挑みましょう。
※最近新しく来た人も増えているようですがテンプレに則り優雅にヲチしましょう。
まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/ 避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9616/ (前スレ)
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part185
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1226326849/ 前スレ
【GS住人】GSと型月以外の最低SSを語るスレ102【御用達】
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/5129/1225976086/
デッドエンド支援。
15 :
修正:2008/11/15(土) 21:59:54 ID:4iVggKL1
ゼロ魔クロスの最低SSを投稿するスレッドです。
貴方が最低だと思ったゼロ魔SS作品を投稿してください。
・言うまでも無く踊り子さんには手を触れない事。
突撃は元より、「俺〜〜に○○書いてくるわ(きた)」等の書き込み宣言も厳禁です。
・貴方の好きな作品が叩かれてもスルーしてください。
・貴方の挙げた作品を最低だと思っているのは、貴方だけかもしれません。スルーされても泣かない。
・根拠の無い叩きや、イメージのみでの晒しは「嫉妬乙」と言われてしまいます。
なるべくどこがどう最低なのかを分かり易く書きましょう。
・自分の発言を叩かれても、顔真っ赤にして粘着しない。
また、そーいう血の気の多い人が出てきても徹底スルーすること。
・既出作品の紹介は嫌われるので既出作品かどうかはページ内検索を活用しましょう。
・対象のネタはスレタイ通り多岐にわたります。
ネタを振る場合ドコのサイトのネタか出所を書いてから振ると面倒が無くていいです。
・小説の捜索はこのスレの管轄ではありません。Googleなどを使って探してみましょう。
ココで挙がるようなSSの場所が分からないからといってArcadia等の捜索掲示板を利用するのはやめて下さい。
・ヲチスレ同士とは言ってお互いの晒しあいはダメです。
仮にもヲチャーを名乗るのならば、ヲチスレやまとめサイト程度は自力で探しましょう。
・ヲチャーたるものドSであれ。かまって君には放置プレイで挑みましょう。
※最近新しく来た人も増えているようですがテンプレに則り優雅にヲチしましょう。
まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/ 避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9616/ (前スレ)
あの作品のキャラが最低なルイズに召喚されました Part185
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1226326849/
「ぐっ……!?」
けっこうな衝撃と共に、『呼ばれた先』の空間へと抜ける。
…随分と乱暴な転移であるが、因果地平の彼方からおそらく通常空間へと顕現させるのだ。逆にこれくらいの衝撃があってしかるべきだろう。
そして周辺を見渡せば、
「………む」
抜けるような青空。
豊かな草原。
遠くには地球で言えば中世ヨーロッパを思わせるような石造りの建築物。
ついでに自分を物珍しそうに見ている、外見年齢15〜18歳ほどの地球人タイプの人間が多数。
「………」
もっとおどろおどろしいシチュエーションとか、怨念などが渦を巻く異次元空間とか、物凄い力を秘めた超越的な存在とかを考えていたユーゼスにとって、この展開は拍子抜けだった。
とは言え、現状は確認しなくてはなるまい。
呼吸―――普通に出来る。特に息苦しいことはないため、大気成分は一般的な居住可能惑星とほぼ同じと思われる。
重力―――特に重くも軽くもない。約1Gほどだろう。
ついでに足下に生えている草を一本千切り、大雑把にではあるが観察してみる。
…地球の植物とかなり酷似している。という事は、ここは地球の並行世界か何かだろうか? …いや、そう判断するには材料が少なすぎるか。
「…ふむ」
そう言えば、ある意味では一番肝心な、自分の状態のチェックをしていなかった。
とりあえず身体全体をぺたぺたと触ってみる―――特に欠損がある訳でも、痛みが走るわけでもない。
そして―――
「…仮面が無いな」
服装は白衣。…地球を含めた数々の惑星の大気を浄化していた際に着込んでいた、バード星の科学者がよく着用するものである。
「………まさか………」
今度は顔をぺたぺたと触る。
…特に傷跡などはないようだが、そうすると…。
「鏡は―――見当たらないな」
今更『元の顔』に戻られても、それはそれで困る。精神的に。
機会があれば真っ先に確認しよう、と思いつつ、同時に最も大事なことに思い至る。
(…クロスゲート・パラダイム・システムは…?)
脳内に極小サイズのものをナノチップとして埋め込んである筈だが、アレが使えると使えないのとでは自分が呼ばれた意味合いが全く違ってくるのだ。
ユーゼスは目を閉じ、脳内のクロスゲート・パラダイム・システムへとアクセスを開始する。
(……………)
――――――――アクセスは可能。
機能は完璧とは言えない。だが、自分がガイアセイバーズとの最終決戦時において発揮した性能と同等程度の芸当は出来るだろう。
…そもそもこのシステムが『完璧』であれば、自分に不可能な事はほとんどなくなってしまうのだが。
これで限定的ではあるが因果律の把握や、光の巨人の力を満たしたデビルガンダムを呼び出し、超神形態への変身などが可能になるという事である。
ともあれ、余程のことが起きなければ超神形態になどなるつもりはないが。
(……しかし未来予測や時間移動は不可能か)
クロスゲート・パラダイム・システムの最大の機能である因果律―――事象における『原因』と『結果』の把握と操作。これにより、世界の過去や未来をある程度ではあるが予測でき、そして限定的ではあるが時間の移動すら可能になる。
しかし時間の移動、と一口に言っても簡単なことではない。
異なる空間、異なる時間への二種類のゲート。この二種類のゲートはクロスしている。
そして未来が無限の可能性を秘めているように、異なる時空間へのゲートも無限に存在するのである。
クロスゲート・パラダイム・システムはこの無限に存在するクロスゲートを『ある程度』ではあるが把握する機能を持っている。
だが、それでも把握できない、となると…。
(この世界周辺の次元交錯線が極度に不安定なのか…。…あるいはこの世界の未来が全く確定していないのか…。
……いや、それを差し引いてもクロスゲート・パラダイム・システムを使用できる時点で、私にとっては至れり尽くせりだな)
やたらと条件が良すぎることに、逆に疑問を抱く。
自分を利用して何をさせたいのかは知らないが、これほどの存在を使って何をさせようと言うのだろうか。
そもそも、クロスゲート・パラダイム・システムの機能は限定的なものであり、決して全能ではないのだが…。
支援
支援
ううむ、とアゴに手を当てて思考に没頭しようとすると、
「ちょっと、あんた!」
「?」
いきなり甲高い声によって思考を遮られてしまった。
声のした方に振り向いてみると、そこには何か怒ったような顔をした少女がいる。
外見年齢は周辺から遠巻きにこちらを見物している人間たちと、そう変わらない。
桃色がかったブロンドの髪と、鳶色の瞳。
美少女と形容して差し支えない顔立ちをしているが、ともあれそんなことはどうでもいい。
ユーゼスは少女へと歩いていき、まじまじと観察を始めた。
「………」
「…な、何よ?」
「一つ訊くが。私を呼んだのはお前か?」
その言葉を聞くや否や、少女はキッとユーゼスを睨みつけ、少し離れた位置にいる頭の禿げ上がった外見年齢40歳ほどの男に抗議のようなものを始めた。
「ミスタ・コルベール! もう一回召喚させてください!」
「それはダメだ。ミス・ヴァリエール」
(………)
聞き間違いでなければ、今確かにこの少女は『召喚』と口にした。
つまり自分はこの少女に呼び出された、ということである。
見たところ大がかりな装置を使った様子も、多人数で事を成した様子もない。ということは、
(……個人の力で私を呼んだ、だと?)
どんな力だというのか、それは。
確率はゼロではないが、しかしこの少女がそこまで強力な存在であるとも思えない。
………どうでもいいが、遠くからこちらに嘲笑のような笑いと共に投げかけられる『平民』、『ゼロのルイズ』などの言葉は、一体何なのだろうか。
クロスゲート・パラダイム・システムを造る際、『お前ごときに時空間を超えられるわけがない』と異星人連合ETFのメンバーから散々言われてきたため、あざ笑われることには慣れているが、あまり良い気分はしない。
まあ、ああいう手合いは無視するに限る。
「これは何かの間違いです! 第一、平民を使い魔にするなんて聞いたことがありません!」
支援
(……間違い、か)
有り得る話だ。
自分もまた、自分にとっての都合の良い世界を創造する際、それなりに取り込む世界を厳選したつもりだった。
その結果として敵になったのは、ウルトラ兄弟、宇宙刑事、人造人間、ガンダムファイター、ガンダムパイロットの少年たち、SRX、快傑ズバット。
ウルトラ兄弟と宇宙刑事、そしてガンダムファイター―――まあ、これは良い。自分の野望の始発点はそもそもウルトラマンとデビルガンダムであるし、宇宙刑事は元々自分が存在していた世界のものである。
人造人間たち―――おそらくイングラム・プリスケンが自分の支配から脱するためのキーとして用意されたのだろう。善と悪の狭間で苦しんだキカイダーや、友情を結んだメタルダーたちの助けがなければ、イングラムは自分に操られていたはずだ。
ガンダムパイロットの少年たち―――これは彼ら自身と言うよりも、ウルトラ兄弟などのいた世界と、そこから40年後のテクノロジーで造られたデビルガンダムを繋ぐためのクッションのようなものだろう。
実際、地球防衛軍TDFは40年の時を超えて存在していたし、OZもその中にあった。
SRX―――自分の『運命共同体』であるラオデキヤ・ジュデッカ・ゴッツォは彼らと戦っていたらしい。ならば世界を構成する要素として彼らがいても不思議はない。イングラムが駆るアールガン……R-GUNもまた、彼らの世界の産物であるらしいから。
しかし、快傑ズバットこと早川健。これは完全なイレギュラーである。
何しろ自分に対しても、イングラムに対しても、世界に対してもほとんど何の影響も及ぼしていない。極端な話、彼がいなくても自分は負けていた公算が高かった。
だと言うのに、その存在感。その戦闘力。その万能ぶり。
無視をするにはあまりにも異質であり強力。しかし、いなくても特に問題はない。
少なくとも、自分はあのような存在を取り込むつもりはなかった。
………もしかすると、自分もまたそのような存在であるのかもしれない。
(……いかんな、今の段階では判断材料が少なすぎる)
『これはこのようなものである』という固定観念は、時として取り返しのつかない過ちを生む。
これで地球の環境問題は全て解決する……そう確信していた大気浄化弾が、結果として地球のレーダー網を全滅させてしまったように。
とにかく、もっと詳しい話を聞くべきだ―――と、もう一度少女へと話しかけようとした時、
「あんた、感謝しなさいよね。貴族にこんなことされるなんて、普通は一生ないんだから」
逆に少女の方から話しかけてきた。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
「?」
よく分からないが長い口上を述べた後、少女が持つ杖がユーゼスの額に置かれる。
そして、
「ん……」
「む、…ぐ」
唇を重ねられた。
ユーゼスが呆気に取られていると、やがて少女が唇を離した。
「終わりました」
「『サモン・サーヴァント』は何回も失敗したが、『コントラクト・サーヴァント』はきちんと出来たね」
少女が禿げた中年に報告する。
『平民だから契約できた』、『高位の幻獣だったら契約できない』などと野次が飛び、その野次に少女が『バカにしないで!』と噛み付いた。
まあ、それはどうでもいい。
『貴族』や『平民』などのキーワードから察するに、どうやらこの世界には随分と厳然な階級制度があるようだが、それもどうでもいい。
問題なのは、先の話に出た『契約』という単語―――
「ぐっ!?」
再び思考に没頭しようとした時、唐突に身体が熱くなった。
しかも、異変は身体が熱くなるだけではない。
(これは…!? 私の存在を呪縛する…!?)
脳内のクロスゲート・パラダイム・システムが、自分に因果の鎖が絡みついてくることを警告する。
不明な点だらけであるが、このまま存在を束縛されてはクロスゲート・パラダイム・システムの機能を十分に発揮できない危険性が高い。
(何だ…? 先程の行為に一体何の意味がある…!?)
キーワードはおそらく『契約』。
しかし、口腔粘膜同士の接触に自分を束縛する効果があるとして、『契約』とは解せない表現である。
このような一方的なものを『契約』とは言えまい。双方にとって何らかのメリットがあるからこその『契約』なのだ。
少女の方は自分を使役、ないし隷属させるようなメリットがあるのは当然だろうが、自分の方には何のメリットがあると言うのか。
(……この世界に私を固定するために必要なのか?)
そうすると、因果律を操作してこの現象を消してしまうのも躊躇われる。
だが。
(……私の精神を操作しようというのは認められないな……)
今まで多くの人間を利用してきた自分がこういう考えをするとは傲慢もいいところだが、思考を捻じ曲げられるのは断固として抵抗したい。
因果律を操作する存在であるとか、光の巨人の力を手に入れたとか、そういう問題以前………一人の人間ユーゼス・ゴッツォとしての尊厳に関わるのだ。
(……フ、まさか私がこのように考えるとはな)
自分とてイングラム・プリスケンを意のままに操ろうとした。
しかしその行為は―――
支援
支援
―――かつての戦いが、脳裏をよぎる。
…自らが創造した空間において対峙する、仮面を被った自分と、自分の複製。そしてその仲間である、自分を打ち破る為に集った戦士たち―――ガイアセイバーズ。
自分はガイアセイバーズを始末するために、複製の意志を捻じ曲げ、ガイアセイバーズにぶつけようとした。
「さあ…回れ! 運命の歯車よ!!」
「ぐ…ぐあああああ!!」
もがき苦しむ自分の複製―――イングラム・プリスケン。
「イングラム!!」
「さあ…どうするのだ? ガイアセイバーズよ」
「そんな…ここまで来て…最後の敵が…イングラムだなんて!!」
「イングラムを攻撃出来まい。その甘さが…お前たち人間の愚かな所だ!」
下らない情に流され、時には自らの使命を遂行することすら躊躇する。
故に、人間は不完全で、不安定で、脆弱である。
だが、そこに異議を挟む者がいた。
「うるせえ! お前だって元はその愚かな人間じゃねえか! それが嫌だったからこんなことをしているんだろうが!!」
驚異的な力を秘めたサイコドライバー、リュウセイ・ダテ。
「……何?」
「てめえこそ…弱くて愚かな人間そのものだ! その事実から…てめえは逃げてるだけだ!!」
彼の言葉が突き刺さる。
愚かな人間である、彼の言葉が。
「貴様…何を言うか!!」
頭に血が上り、思わずリュウセイ・ダテに攻撃を加えてしまった。
……感情的に否定してしまった。
まるで彼が嫌悪した人間のように。
「へっ…どうやら図星だったらしいな…」
「おのれ! イングラム、奴らを始末するのだ!」
「う、ううう…!!」
……そのように彼らの存在を否定すること自体、自分もまた『愚かな人間』である、という事実の肯定となる―――薄々気付きながらも、しかし自分はもう止まれない。
呪縛を断ち切らせるため、複製に過ぎない存在に彼の仲間たちが叱咤激励の声をかける。
「自分を取り戻せ、イングラム!! 良心回路が不安定な俺は…君や、みんなのおかげでギルの笛の呪縛から逃れることが出来た!!」
「そうだ。人造人間の俺たちに出来てお前に出来ないはずがない!!」
善悪の狭間で揺れ動きながら、それでも正義の道を歩む人造人間。だからこそ、その言葉には誰よりも重みがある。
「う、うう…」
「自分を取り戻すんだ、イングラム! 君はそんなに弱い人間か!?」
「立て、イングラム!! 貴様もガイアセイバーズの一員なら、立ってユーゼスの呪縛を断ち切れぇぇぇっ!!」
しえん
仲間。
自分とは最も遠い存在。
それが、自分の複製の力となっていく。
そして、
「イングラム…」
「ううう…」
帝王と相打ちになり、その身を散らしてしまった超人機。
「君は僕や仲間たちに人間の素晴らしさを教えてくれた…」
「………」
その魂もまた、自分の複製と強い絆で結ばれている。
「君は、ユーゼスの複製という呪縛を背負いながらも自分の人格を持ち、仲間や地球を守って来た…」
自分も……あの青く美しい惑星を守りたかった。
「僕は君の姿を見て、人間とは、強く温かな存在であることを知った」
だが、その惑星で見た光の巨人の存在。それによって人間の―――自分の卑小さと愚かさを知ってしまった。
「そして、僕は君を見て人間に憧れたんだ…」
そして、自分は……地球人を、何よりも自分自身を見て人間に絶望したのだ……。
「だから…君は強い。君は負けない」
自分は弱かった…。だから自分に負けた…。
「必ずユーゼスの呪縛を断ち切ることが出来る…」
自分自身の呪縛すら、断ち切ることも出来ずに。
「!!」
呪縛が断ち切られる。
自分の手を離れ、自らの存在を確立した自分の複製は、自分と対峙する。
「俺は、もう…お前の操り人形ではない!」
「馬鹿な…複製人間のお前が私の命令に逆らうというのか!?」
「俺は、お前にとって…唯一ままならない存在なのだろう?今までも…そして、これからも!!」
「!!」
「それに…ユーゼス! お前が言うほど…人間は愚かでもなければ、弱くもない!!
俺はガイアセイバーズのみんなと出会って、それを知った!」
「貴様…」
自分が手に入れることの出来なかった物。それを、自分の複製は持っていた。
「この世界に超絶的な力を持つ存在など必要ない! そんな者がいなくても、俺たちは今まで生きて来た。そして、これからもそうだ!
絶対的な力の支配者が不必要なことを、地球人類はこれから…証明しようとしている!」
だが、自分とて今更、後には引けない。
故に、それを否定する。
「私が地球人にどのような仕打ちを受けてきたか、忘れたか!? 身勝手で凶暴なあの種族は地球だけでなく、宇宙をも滅ぼすぞ!!」
「もう一度言う! お前が言うほど…人間は愚かでもなければ、弱くもない!!」
「ふ…ふははは! やはり、貴様だけはこの手で始末しなければならないようだな!」
その後の結果は………ここで語るまでもないだろう。
支援
(…そうだな。人間は愚かでもなければ………弱くもない)
自分の複製として造られたはずの存在は、創造主である自分の呪縛を破った。
ならば―――その創造主である自分が、正体不明とは言え、呪縛を破れない道理はないはずだ。
(私に『仲間』はいないが…。…しかし私にも意地がある)
複製が苦労して成し遂げたことが出来ない、などとなれば、さすがに立つ瀬がない。
(……何かを私という存在に刻み込もうとしているな。
その最中であれば、あるいはその行為に干渉できるかもしれん……)
クロスゲート・パラダイム・システムを使い、自分に起きている事象の因果を分析する。
時間があれば細部に渡って把握する所だが、そんなことをしている余裕はない。
丸ごと消去してもいいのだが、この行為に重要な意味があった場合、取り返しのつかない事態になりかねない。
精神干渉に関わる部分のみを迅速に抽出し、その部分のみを封印、あるいは消去する必要がある。
(……これか)
数式や図式では表せない、概念的なものではあるが、抽出に成功する。
この部分を消去することにより、全体に与える影響を―――計測や予測をしている暇などない。
しかしその影響は未知数だ。
(……下手に消去や遮断、封印を行えば、この事象全体が変異するかもしれん……。……私自身にもどのような影響が起こるのか分からない……)
全体を残しつつ、しかし精神干渉は防ぐ。
(……これしかないな)
精神干渉を司る部分。それが発揮する力を、可能な限りゼロに近く薄める―――つまり、無力化する。
これにより、事象全体への影響を最小限に収めつつ、自分への精神干渉のみをカット出来るはずだ。
「……………」
事象が終了する。身体の熱は消えた。
自分の精神への影響は―――ほぼゼロだ。完全にゼロには出来ないが、なかなか上出来と言えるだろう。
「どれ」
「…む?」
大きく息を吐き出すユーゼスに、禿げた中年が近寄ってくる。
そして一通りユーゼスの身体を眺めた後、
「おお、あったあった」
「?」
ユーゼスの左手を取り、いつの間にかそこに刻まれていた図形……と言うか、記号の羅列ようなものを確認した。
「ふむ、珍しいルーンだな」
「ルーン?」
何だろうか、それは。
察するに、この記号の羅列のことを指しているのだろうが…。
「一応、念のため…」
禿げた中年は自分の左手の甲にあるルーンとやらをペンを使ってスケッチする。
(…これはこの世界にとっても希少なものなのか)
どうにも不明な点や不確定要素が多すぎて、判断のしようがない。
抵抗成功か!?支援
ユーゼスもいい加減に辟易しかけていると、
「さてと、じゃあみんな教室に戻るぞ」
禿げた中年がきびすを返し、宙に浮く。続いて周辺にいた他の少年少女たちも、宙に浮いた。
(…ほう、この世界の人間は飛べるのか)
自分にとっては飛行する存在など、別に珍しくもない。
ウルトラマンも、バルタン星人も、ものによっては宇宙犯罪組織マクーのダブルモンスターも、自分だって『反則』を使えば飛べる。
(…ここは超能力者が当然に存在する世界なのか?)
時空を超えて因果地平の彼方にまで手を伸ばして自分を呼んだことも、先程の精神操作にしても、そういう能力であると解釈すれば一応の辻褄は合う。
考えてもラチが明かないので、一旦思考を打ち切る。
とりあえずこれから自分はどうすれば良いのだろう、と誰もいなくなった草原をぐるりと見回してみると、
「………」
自分を呼び出したらしい少女が、悔しげに空を飛んでいった者たちを眺めていた。
不審に思い、少女に近付いて声をかけてみる。
「……なぜ飛ばないのだ?」
「うるさいわね! 別に飛ばなくたって歩いていけばいいのよ!!」
やたらとムキになって反論してくる少女。どうもこの言動から察するに、
「…飛べないのか」
「っ!!」
怒りどころか軽い憎しみすらこもった目で睨まれた。…どうやら図星だったらしい。
先程からこの少女が『ゼロのルイズ』などと呼ばれていたが、ルイズというのが少女の名前だとすると、ゼロと言うのは0、つまり何も出来ないからゼロなのだろうか。
(……そんな存在が私を呼んだだと?)
ますます解せない。
それこそ本当に間違いやイレギュラーであるのかも知れないが…。
「とにかく、行くわよ!」
自分の意向など聞こうともせず、ズンズンと少女は空を飛んでいった者たちと同じ方向―――石造りの建築物へと歩いていく。
軽い混乱を覚えつつも、ユーゼスは少女に随伴して同じ建築物へと入っていった。
そして『こんな使い魔なんか、恥ずかしくって見せられないわ!』と少女のものと思しき部屋の中へと入れられ、『私が戻ってくるまで大人しくしてること、いいわね!?』と言い含められ、放置される。
いい機会だから思考に没頭するか―――などと考えるが、それよりも部屋の中にあった鏡が気になった。
ユーゼスは恐る恐るその鏡を覗き込み……、
そこに映された髪の色が元々の自分のものである銀髪なのは良いとして、何よりも問題である『顔』が、イングラム・プリスケンと同じものであることに、複雑な感情を抱くのであった。
……もっとも、こちらがオリジナルであって、イングラムにはこの顔を複製したのであるが。
☆筆者注
クロスゲート・パラダイム・システムって一体何なの? とか、
因果律とかどうこう言われてもサッパリ分かんねーんだよ! とか、
こんな感想をお持ちの方の為に説明しますと、
この作品におけるクロスゲート・パラダイム・システムは、『お手軽に神様のマネゴトが出来ちゃうよ、ついでに限定的だけどタイムスリップも出来ちゃうよシステム』で、
因果律は『なんかこれ操作したり把握したりすると色々出来るもの』とお考え下さい。
これが後にどう影響するだろう支援
スバットが重要人物化しそうな支援
以上です。
……なんで召喚されて契約するだけなのにこんなに長くかかるかなあ。
まあぶっちゃけ、ズバットはスタッフの趣味げふんげふん、アクセントみたいなもんだと捉えておりますがね。
ちなみに回想シーンは、スパヒロのラストバトル付近の会話をそのまんま持ってきています。
ユーゼスの顔については、本来の顔よりはこっちの方が話を膨らませやすかろう、と思ってこんなんしてみました。
……つーか、理論派キャラってモノローグがえらい長くなりますな……。
それでは、支援ありがとうございました。
乙でした
これ他の使い魔のルーンも書き換えられるんなら最強だな
魔法も再現できそうだ
実はシェスタ・早川なんじゃないか?とおもいつつGJ!!
もしくは始祖=早川だったり
乙です!
他にもヒーローが召喚されていそうで、続きが楽しみです
あれ? WIKIが使えない…
現在、
http://www35.atwiki.jp/ は、大規模メンテナンス中です。
復旧完了予定時刻は、2008年11月16日AM7:00 となっております。
大変ご迷惑をおかけいたしますが、
ご理解ご協力を賜りますよう
よろしくお願いいたします。
猫が萌える(*'ω'*)
いい人なユーゼスキタwやっぱりユーゼスは基本こんな感じだよなあw
某所のロワのユーゼスを思い出すぜー、クロスパラダイムゲートはもしもボックス+タイムマシンの変態装置だからこんな感じなのがベストなのかも
超神形態になれるなら結局は因果律操作可能でほぼ全知全能になるから
さじ加減難しいかもと思ったり
スーパーヒーロー作戦からとはこれまたマニアックなw
今後の展開に禿しく期待してしてます!
ランブルフィッシュからD班とガンヒルダとウ゛ァージニティ召喚
いや単に沙樹にツッコミ入れるルイズと瞳子やらカトレアとまりあでW癒し系とかガンフィストで吹っ飛ぶ30メイルゴーレムを見たいだけだがw
部品とかは海里と悟郎がコッパゲールと組めばなんとかなりそうw
予約が無いようでしたら、20分くらいから投下します。
支援
支援、支援
wikiメンテのぬこカワイスwwww
「あっしは手の目だ
先見や千里眼で酒の席を取り持つ芸人だ
こう言ってしまえば えらく便利な技に思えるだろうが 実際の所はそうでもない
見通せる先には限りがあるし 見えた所でどうしようもないってェ事もある
手の届かない失せ物 変えようの無い未来…… 世の中そんな物ばかり
あっしの能力に 利点があるとすれば只一つ
……おまんまの種になるってェ事だけさ
ああ どうやら今回の一件でも あっしの先見は役に立ちそうもないね
何だろうね ウチのお嬢は 悪いモンにでも憑かれてるんじゃないのか……?」
「それにしても ワルド様が来て下さるなんて思ってもいませんでしたわ」
「僕の方こそ驚いたよ 王女からの託された密命の内容が
アルビオンに向かう君の護衛だったとわね
これほどの任務を託されるとは 暫く見ぬ間に 君も立派になったものだ」
「…………」
眼前で繰り広げられる感動の再開に、手の目は早くも辟易としていた。
うら若き主人、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールと
その婚約者、ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド
久方ぶりに再開した許婚者同士、積もる話もあるだろう。
だが、ここは上空、狭いグリフォンの背の上とあっては、手の目に逃げ場は無い。
「いやですわ ワルドさま 立派だなんて
私 まだ 初歩的な魔法も碌に使えないのに……」
「そんな事はないさ かわいいルイズ
君は現に 君はこんな可愛らしいお嬢さんを召喚して見せたではないか」
そう言うと、ワルドは手の目に向かい、爽やかな笑顔をちらりと向ける。
キザったらしい物言いに、手の目の全身がぞくりと総毛立つ。
芸人としてこれまで旨い事食ってきた手の目であったが、これほど相性の悪い相手に出会った事は無い。
虫唾が走るとはこの事か。
現在置かれた状況に比べれば、泥酔した助平親父を相手にしている方が遥かにましに思われた。
永遠に続く麗しい思い出話。
昨夜の出来事を思い出し、手の目が何度目かのため息をついた。
・
・
・
トリステイン王女、アンリエッタの来訪。
突然の旧友の再開、敬愛する王女が自分の事を忘れていなかった喜びに
感極まった表情のルイズが、思い出話に花を添える。
魔法学院の一室は、在りし日の宮廷の中庭へと変わっていた。
手の目がルイズの部屋を離れたのは、二人への気遣いのみではない。
一国の王女がお忍びで旧友を訪ねるという行為に、只ならぬ嫌な予感を感じたからだ。
尤も、もし、その予感が当たっていたなら、王女を避け続けたところでどうしようもないだろう。
半時ほど学院内を散歩した後、手の目は覚悟を決めて部屋へと戻った。
「あら手の目 いいところに戻ってきたわね
丁度 姫様とあなたの話をしていたのよ」
「はじめまして あなたがルイズの使い魔ね?
ルイズが人間の少女を召喚したとは 耳にしていたけれども……」
「……【土くれ】のフーケを倒すほどの手練とは思えない ですか?」
思考を先取りするような手の目の発言に、アンリエッタが思わず息を呑む。
ルイズは状況が飲み込めず、きょとんとした表情で王女の顔を見つめた。
「見ての通り あっしはしがないドサ芸人
そして あっしの主人は あの【ゼロ】のルイズでさァ
とてもじゃないが 心傷のお姫様の力になれるとは思えないがね」
「…………」
「ちょ ちょっと手の目! 王女様に向かってその物言いは」
「……いいのです ルイズ」
「姫様?」
俯くアンリエッタの姿に、手の目が一つため息をつく。
王女に対する無礼は百も承知であったが、こればかりはどうしようも無かった。
人は突然の不幸に対し「犬に噛まれたと思って」などと言うが、
初めから不幸な未来が分かっていたなら、そんなすました格言は持ち出せないはずだ、と手の目は思う。
やがて、アンリエッタはその胸中を、ぽつぽつと語り出した。
アルビオン大陸にて革命を目指し策動するレコン・キスタ
その隆盛に対抗するための、隣国ゲルマニアとの政略結婚
そして、同盟を破壊するスキャンダルとなりかねない
アルビオン王国皇太子・ウェーエルズに宛てたアンリエッタの手紙の存在……
孤独な王女には、余りにも大きすぎる悩みであった。
・
・
・
「――で お嬢 実際のところ どうするんで?」
王女が去り、二人きりとなった室内に、手の目の問いが響く。
「私の考えは さっき姫殿下に語った通りよ
王女の使者として アルビオンに赴くわ」
「……あんたが実力も省みずに どこぞでくたばるのも勝手だがね」
できる限りぶっきらぼうに、手の目が言放つ。
「こいつは一国の運命がかかった仕事 お嬢のミスは そのまま姫殿下の失態だ
愛しい娘が無謀な命令で殺されたとあっちゃァ
国一番の貴族のご両親は さぞや王女をお恨みなさるだろうねェ」
「…………」
手の目は敢えて、少女が最も苦しむであろう言葉を選んだ。
言うだけ無駄だと分かってはいたが、それでも確認しておかねばならない事項だった。
――しばしの沈黙の後、やはりルイズは、手の目の予想通りの答えを出した。
「それでも…… それでもよ 手の目
裏を返せば そんな大切な任務を私に託さねばならないほど
姫様は追い込まれているんだわ
私がここで かつての友誼を裏切ったなら
あの方はきっと 孤独に押し潰されてしまう……」
孤独の辛さを誰よりも知るルイズの言葉である。
室内に、重苦しい沈黙が流れる。
「手の目 あなたは――」
「あっしは元々はぐれ者だ
どこぞの誰かに忠誠を誓うつもりは無いし 危ない橋を渡るのも御免だ
だからよ……」
「…………」
「――だから 本当にヤバそう時は 勝手にトンズラするぜ
そこんところだけは承知しておいてくんな」
「!」
手の目の意外な申し出に、ルイズが目を丸くする。
手の目はあくまでぶっきらぼうな口調で続ける。
「まったく こいつは完全に契約外だ
うまい事いったら 給金ははずんで貰うよ」
「ええ もちろんよ ……ありがとう 手の目」
手の目はその日、最後まで仏頂面だった。
ただ、瞳を潤ませるルイズの視線に、むず痒そうに頬を掻いた。
・
・
・
アルビオン大陸への中継点、港町ラ・ロシェール。
出航を明日に控え、一行は酒場の一角で作戦会議と洒落込んでいた。
「ところで これはルイズから聞いたのだが……」
「あん?」
ワルドの問い掛けに対し、からむように手の目が応じる。
飲まなきゃやってられないとでも言わんばかりの態度である。完全に目が座っていた。
そんな少女の様子を気にも留めず、ワルドは自分のペースで話を続ける。
「君は何か 変わった芸を使う芸人らしいではないか
何か一つ ここで披露してはくれないか?」
「……今日は客で来てんだ 気持ちよく飲ませてくれないかね?」
「だが 君の芸は ただの余興じゃない
かの悪名高い土くれのフーケも その力で捕まえたのだろう?」
「……」
ワルドの言葉は、周到に執拗に手の目の逃げ道を奪っていく。
何が閃光だ、蛇にでも名前を変えろ。手の目が心中で毒づく。
「これは真面目な話さ 今のアルビオンの状態では どんな事件に巻き込まれるか分かったもんじゃない
もしもの時のために 君がどのような力を持っているのか この目で確かめておきたいんだ」
手の目がジロリとルイズの方を睨む。
ルイズはすまなそうに身を強張らせていたが、やがて、小さく頷いた。
手の目は大きく溜息をつくと、手にしたグラスの中身を一息に飲み干し、右拳をゆっくりと突き出した。
――が、
「あらん お髭がダンディな殿方!
酒癖の悪い小娘なんかほっといて 私と飲みません事?」
という、陽気な声とともに、開きかけた手の目の右手が押さえられた。
「お前……」
「だめじゃないの ヴァリエール
王女から託された秘密の任務なんでしょ
こんな人目の多いところで手の目の芸を見せて 隠密行を台無しにする気?」
「キュ キュルケにタバサ! どうしてここに?」
「ふふん! そもそも王女がお忍びで学院にくる事自体 無理があるのよ
昨夜の話 どこぞのバカに立ち聞きされてたみたいよ」
「どこぞのバカ?」
ルイズの問いに答えるかのように、酒場の扉が勢い良く押し開かれた。
「諸君! この僕が助っ人に来たからにはもう安心だ!
見ていてください姫殿下!
このギーシュ・ド・グラモンが あなたの苦悩を取り除いて差し上げます!」
先日の一件以降、妙にハイになっているギーシュの高笑いが室内にこだまする。
「隠密行…… 台無し」
一同が呆然とする中、タバサがぼそりと呟いた。
・
・
・
「先刻は助かったよ キュルケ」
屋上に抜け出し、ようやく一心地ついた風の手の目が、キュルケに言う。
「別に感謝されるいわれは無いわよ
アンタはただ 姫殿下の情報をギーシュに流しただけ
ギーシュの奴も 勝手に立ち聞きしただけ
そして私たちは ただ暇つぶしにについて来ただけですもの」
「そう言ってくれると助かる」
「まったく らしくもないわねぇ
あの御仁が癪だって言うんなら あんたの芸で 目に物見せてやれば良かったじゃないの?」
「……手の内を曝したくなかったのさ」
手の目の意味ありげな物言いに、一瞬、目を丸くしたキュルケであったが
やがて、声を潜めて切り出した。
「あの人の事 あんまり信用していないみたいね?
でも…… それだったら尚の事よ
得意の千里眼とやらで 子爵の本心を探れないの?」
「あっしの芸は そこまで都合よく出来やしねぇ
何でもかんでも見通せるわけじゃないし
あっしが見ちまったばっかりに 却って先が良くない方に変わっちまうって事もある
それに 仮に見えた所で 今回はあんまり意味が無ぇ」
「?」
「ワルドの旦那が白だろうが黒だろうが 無事にアルビオンに渡るためには あいつの助太刀が必要だって事さ
お嬢が任務を諦めてくれない限りはね……
今の所 旦那の心中は図りかねるが だったら尚の事 奥の手は隠しておくべきだろう」
手の目の淡白な推測を、キュルケは黙って聞いていたが、やがて、しみじみと言った。
「変わったわね アンタ」
「……何だって?」
先週だか先々週の日曜朝刊の新聞のコミックガイド欄で、もののけ草紙が紹介されてたね支援
望外のキュルケの言葉に、手の目が不審げな瞳を向ける。
「こっちに来たばかりのあなたは 何かもっとサバサバしてて
他人を寄せ付けないような雰囲気を出してたように思うけどね
ルイズに飼い慣らされて 少しは丸くなったのかしら?」
「どうだかね」
キュルケの邪推に対し、手の目がぶっきらぼうに応じる。
「ただ…… 偶然にせよ お嬢が命の恩人てぇのは事実だし
それなりに良い暮らしはさせて貰ってるからね
行きずりのドサ芸人だって 浮世の義理くらいはわきまえているさ」
「たったそれだけの理由で 命まで賭けるの?」
「まさか あっしの手に負えそうにもない時は 一目散に逃げるさ」
「へぇ……」
手の目の答えを聞き、キュルケが含み笑いを見せる。何か癪にさわる笑顔だった。
「……何だよ?」
「最初に見たときは 生意気な顔をした小娘だと思ったもんだけど
何よ なかなか可愛いところがあるじゃないの」
「――!?
フザけんな 莫迦!
あっしだってなァ 初めてテメェ見た時は 随分と底意地の悪そうな女だと思ったさッ!
尤も こっちは今でもそう思っているがな」
「あっはははははははは!」
キュルケは今度こそ、心底おかしくて堪らないといった風に、腹を抱えて大笑いした。
へん、と手の目はそっぽを向いた。
そんな、妙な取り合わせを見比べながら
やや神妙な面持ちで、タバサが屋上へと上がってきた。
「あら いい所へ来たわね 今なら面白い光景が見れるわよ」
などと、キュルケは軽口を聞こうとしたが、すぐに表情を曇らせた。
長い付き合いである。タバサは相変わらずの無表情であったが、
その微妙な仕草から、何が大事な話をしようとしているのが分かった。
「何か あったの?」
「……周りの様子がおかしい」
・
・
・
三人が階段を駆け下りた時には、既に眼下では戦闘が始まっていた。
店内に容赦なく討ち込まれる矢の雨に対し、ルイズ達は石造りのテーブルをバリケードにして持ち堪えていた。
「何があったの!」
「見ての通りさ ……どうやら我々の動向は 何者かに掴まれていたらしいな
あるいは 宮中に内通者がいるのか……」
「そんな!」
隙を見て飛び込んできたキュルケの問いに対し、あくまで冷静にワルドが分析する。
内通、という言葉に対し、ルイズの顔から血の気が引く。
「ともあれ 事態は急を要する
奴等に港を抑えられれば 任務の達成は不可能となる ……そこでだ」
ワルドが後ろを振り向く、一同の視線が後方の通用口へと集まる。
「ここで二手に別れよう 僕とルイズは一気に裏道を駆け抜け 桟橋を目指す
すまないが 君達には足止めを頼みたい
無理をする必要はない ある程度時間を稼いだら 君たちも脱出を図るんだ」
「…………」
手の目が顔をしかめる。
ワルドの信義を疑う彼女にとって好ましい展開ではないが、他に打つ手はない。
現状はワルドの思惑を危ぶむよりも、降り注ぐ矢を止める手を打たねばならなかった。
「フン 面白くなってきたわね」
「子爵! お任せあれ あなた方の背後はこのギー……ぐわっ」
「立たない」
思わず立ち上がろうとしたギーシュが、タバサにマントを引っ張られ、尻餅を突く。
友人を置き去りにする事に表情を曇らせていたルイズも、これには思わず吹き出した。
「さあ 急ごうルイズ あまり余裕は無い」
「ええ…… みんな 無理はしないでね」
飛び交う矢の途切れた一瞬を付き、二人は後方の闇へと駆け出した。
・
・
・
「さぁて と!」
大きくひとつ深呼吸して、手の目が覚悟を決める。
正直、手の目の【芸】では荷が勝ち過ぎる場面であったが、
状況を打破し、一刻も早く二人に追い付くためには、試さざるを得なかった。
テーブルの間から右手を伸ばし、ゆっくりと拳を開く。
その動きを、タバサの長い杖が遮る。
「!」
「それはまだ 使わない方がいい」
短く詠唱を完成させ、タバサが杖を振るう。
直後、後方から発生した追い風が見えざる障壁を生み出し、
飛び交う矢の軌道を左右へと逸らし始める。
「私もタバサに賛成よ
いくらなんでも状況が出来過ぎている
手の目 アンタがさっき言ってた悪い予感ってヤツ
私もビンビンに感じてるわ」
言いながら、キュルケが手元の椅子を手繰り寄せる。
「だが このままじゃ……」
「このままじゃ…… 何よ?
前々から言おう思ってたけどね アンタ メイジの事を舐めすぎよ」
そうぼやきつつも、キュルケは素早く詠唱を完成させ、手にした椅子を無造作に放り投げた。
軽く投げ放たれたように見えた椅子は、追い風に乗って敵の最前線に落下し、
直後、爆発的な炎を伴って燃え上がった。
「ようし! 今だワルキューレッ!
たとえ傭兵だろうと 剣の素人が相手なら!」
前線が混乱した隙を突き、ギーシュが戦乙女を繰り出す。
人知れず修羅場を乗り越えてきた乙女達は、混乱する敵勢を押し返し
戦いの場を店外へと移すことに成功した。
「ほら! さっさと行きなさいよ
浮世の義理とやらがあるんでしょ?
アンタが行かずに 誰があのこまっしゃくれを守るのよ?」
「あ ああ……
すまねぇ 恩に着るよ」
「あら? お礼はいいのよ その代わり……」
そう言うと、キュルケは素早い動きで手の目を抱きとめ、その耳元でポソリと囁いた。
「その代わり 無事に帰ってきたら
あの素敵なお兄様の事 ちゃんと私に紹介しなさいよ」
「……!?」
「なによ その顔……
知らなかった? 私は一度見た殿方の顔は絶対に忘れないのよ
それが例え 曖昧な夢の世界の記憶でもね」
ぽかんと口を開けた手の目を前に、勝ち誇るようにキュルケが赤髪をかき上げてみせる。
「……ははっ! 敵わないね
分かった もう一度先方に逢えた時に ちゃんと言づてしとくよ」
「なるべく急いでよ
恋は熱し易く冷め易いものなんだから!」
「了解」
キュルケの念押しに対し、手の目は右手をひらひらさせて応えると
そのまま振り返らずに、闇の中へと走った。
楽しみにしてました支援
以上、投下終了です。
キュルケは葉介作品だと、チートなヒロインタイプだと思います。
その煽りを受け、手の目は本来ルイズがすべき役回りになってたり。
お疲れ様でした!
うおっ、人がいねぇ…。
日曜の朝から懐かしい絵柄が脳裏に浮かんだぜ
おつかれー
天からトルテから
ルイズがトルテを
テファがプディングを
ジョゼフがマカロンを
教皇がグラニテを召喚…オリジナル展開確定だなw死人出ないしw
しはるじぇねしすから…誰を呼んでもチート確定です本当にありがとうございました。
アンチェインなオリバを召喚
すぐに逃げられるから無理だな
るるる作品ならせめてはいぱーあんなにしとけってw
さもなければミラクル高僧チベットちゃん
shuffleから凛召喚…
異世界版土見ラバーズ(ルイズ、キュルケ、タバサ、シエスタ、テファ、モンモン、エルザ、イザベラ)結成の図が見えるのはなんでなんだぜww
空鍋シエスタ、か…。
俺、今shuffle!の神王と魔王召喚でプロット構築中なんだぜ。
>>67 > るるる作品ならせめてはいぱーあんなにしとけってw
それは考えたんだが…確実にデルフ涙目&格闘系オリジナル展開になりそうだからボツにしたんだ
保管庫のお絵かき提示版を見たら、毒の爪と蒼い使い魔のコメが一番多いな。
やっぱり人気が高いんだな、どうやったら人気が取れるのか秘訣とか知りたい。
また需要やらなんたらですか
好きなものを好きに書けばいいんだよ
ルイズがマザーテレサみたいな聖母になるも、闇に飲まれて殺戮者になるのも使い魔しだい
何でも試してみるもんさ
俺は圧倒的に後者が好きなんだけどね……!
>>73 別に人気が無くても良いんじゃないかな?
ある程度の人たちや元ネタを知ってる人たち、それいがいの人たちも楽しめる作品や絵を描けばいいよ。
もちろん自分のこだわりや特徴を強調して、オリジナル性を出すと更にグッド。
逆に人気が出すぎると色々と問題が起こるから大変だぞ。
以前本スレと毒吐きスレでも大きな問題が起こったんだから。
ゲノムから…
女性キャラにセクハラしようとする度に爆発したり燃やされたり凍らされたりワルキューレにフルボッコされたり記憶を失う緑色のナイスガイの図がww
>>73 ビビっときたものをダイレクトにバーっと出して
グイっとひねってザーっと書けば人気が出るよ
>>78 その勢いで書くのは問題ないと思うが投下前にコトコト熟成させてからネットリ見直すのも重要だと思うぜ
投下してから「……この表現は失敗だったかなぁ」と後悔するってのはあるね。
そういう問題じゃないだろ…
「あーこれ微妙だわ」
↓
「これはベタすぎるよな」
↓
「これは・・・アレだな・・・・」
ってやってたら、最初に書いていた物語の面影は影も形もなくなるって事が良く有るよね
勢いだけで書いてすぐ止まるよりはマシだと思う。
リーダは…を使うように気をつけてるが
時々・・・をうっかり使っちゃってることがある
wiki補完してくれる方にはいらない手間を増やしてしまい申し訳ない
一方…は…になっていた
あれだけ本編毒吐きを祭り炎上させた提督ですら絵の投稿が無かったんだぜ
同じ作者で、あんまり人気無かった薔薇乙女の方が絵の投稿は多かった
人気は関係ないかもしれんね
ジーナ・デイヴィスを召喚して、ワルドに金を借りたりとか?
>>82 Wikiの場合は後から修正とかが出来るから便利だよな。
偶に修正とかしてる書き手もいるしね。
そして以前から誤字が多い指摘を受けている自分は、いい加減文章校正ソフトを買おうと健闘しているところだったりする。
3日くらい見直しても投下後10分で気づくんだよハハハ(´∀`)
こんにちは、ではウルトラ5番目の使い魔、第22話の放映の時間です。
15:05から、チャンネルはそのままで。
支援
第22話
踊れ! 怪獣大舞踏会 (後編)
カンガルー怪獣 パンドラ、チンペ
歌好き怪獣 オルフィ
風船怪獣 バンゴ
玉好き怪獣 ガラキング 登場!
「怪獣が、4匹!?」
いまや、トリステイン魔法学院は上に下にの大騒ぎになっていた。
現れた怪獣は、パンドラ、オルフィ、バンゴ、ガラキング、際立った凶暴性を持つものはいないが、魔法学院の
10個や20個軽く破壊してありあまるほどパワフルな連中ばかりだ。
才人は、それらの怪獣達の記録を脳内の怪獣図鑑から探し出した。幸い、どれも見たことのある奴ばかりだ。
まずパンドラ、オルフィ、ガラキングはどれもZATの時代に出現した怪獣で、パンドラは山で遭難した人間を
助けてくれる優しい怪獣、オルフィは現在でも出現し、音楽が好きで、年に一度近隣の村人に一曲披露する
気のいい奴、ガラキングは多少やっかいだが、人間とバレーボールで勝負するなどなかなかの知能を
持った面白い奴、いずれも倒されずにウルトラマンタロウやZATによって棲み家に帰されている。
残るバンゴはMACの時代に出現した奴で、暴れはするが、凶暴というよりも幼児が面白がって遊んで
いるだけのような奴で、ウルトラマンレオに宇宙のかなたに飛ばされている。
総じて、こちらから手を出さなければ危険性の低い奴ばかり、特にパンドラとオルフィは人間の味方といっても
よかったが、なぜ好んで人間に危害を加える気のない怪獣がこんなところに現れたのか? あのパンドラと
オルフィは地球のものと同じくおとなしいのか? 才人は迷っていた。
だが、その知識を持っているのは当然才人だけで、他の人間には、怪獣が4匹という脅威のみが映っていた。
明確な指揮官がおらず、その場のノリと勢いでやってきていたギーシュ達WEKCの面々は、どうしていい
か分からずに、早々に便宜上戦術的撤退に追い込まれていた。
それは当然、彼らだけではなかったが。
「ひ、姫殿下、いったいどうすれば……」
精強を持ってなる空中装甲騎士団も、さすがにこれにはどうすべきかわからなくなっていた。
しかし彼らには幸か不幸か命令を下してくれる上官がいた。
「ひ、ひるむんじゃないわよ。2匹が4匹になったくらい大したことないわ! 攻撃続行!」
ベアトリスはなかばやけくそ気味に命令した。団員達は、そんな無茶なと思ったが、指揮官の命令は絶対
である。覚悟を決めて、ほぼ絶望的な戦いに挑んでいった。
だが、いざその気になると彼らもトリステイン屈指の実力者達である。大きさの程度こそ違え、トロールや
オークなど、人間よりはるかに大きな相手との戦い方も心得ている。表皮の分厚そうな胴体などは避け、
目や鼻など急所に攻撃を集中した。
これは一見地味に見えるが、地球でも、かつて科特隊が怪獣バニラの目をつぶしてアボラスに倒させたり、
MATがツインテールの目をつぶしてグドンに倒させたり、またMACが鉄壁の防御を誇る怪獣ベキラの目を
集中攻撃して打撃を与えたりと、かなりの戦果をあげてきた戦法でもある。人間でも、目の前をハエやアブに
飛び回られたらうるさいのと同じことである。
20騎の竜騎士に顔を連打されて、驚くべきことに4匹の怪獣の進撃は学院の外壁の手前でぴたりと止まった。
「おお、止まった!?」
恐らくはまったく敵わずに、早々に蹴散らされて終わると思っていた才人は思わずびっくりして叫んだ。
そうなると現金なもので、浮き足立っていた生徒や教師達も、逃げることを忘れて声援をあげ始めた。
「がんばれー空中装甲騎士団ー!」
「すてきよー、ほれぼれしちゃう」
黄色い声援が飛んで、空中装甲騎士団の男達はがぜんやる気になった。まったく男という奴はこの世で
もっとも救いがたい生き物である。
「ほーっほっほっほ!! 全隊、正面から集中攻撃! クルデンホルフの力を見せ付けておあげなさい」
ベアトリスも、調子に乗ってさらなる攻勢の強化を命じる。
だが、女生徒の声援に、余計な対抗意識を燃やして、よせばいいのに身の程をわきまえずに怪獣に突進していく
一団があった。言うまでもなくギーシュ達である。
「我らも負けるな! みんな突撃だ!」
さっきまで尻に帆かけて逃げ出していたというのに調子のいいものだ。しかし、以前王宮で初めて戦ったときには、
まがりなりにもアニエスという指揮官がいたが、今回は気持ちのおもむくまま、各人が好き勝手に戦っているものだから、
攻撃というより、また空中装甲騎士団の邪魔をすることになって、戦場を引っ掻き回すことになってしまった。
「邪魔だ! 学生の騎士ごっこは引っ込んでろ!」
「なにを! お前らこそ人の学院で好き勝手するな!」
とまあ、こんな調子であるから、助け合いなど思いもよらない。
しかし、彼らは功を争うのに夢中になって大事なことを忘れていた。
自分達が戦っているのは、怪獣だということを。
突然、空中装甲騎士団に攻撃を受けていたガラキングが口から火花を吹き出した。
「うわぁ!?」
顔に寄っていた騎士数人が、まるでナイヤガラの花火に巻き込まれたかのように撃ち落される。全身を覆う鎧のおかげで
かろうじて軽傷ですんだが、騎乗していた竜は翼をやられてもう飛べない。
さらに、パンドラもうなり声をあげると、口から真赤な火炎を吐き出した。なぎはらうように炎の帯が右に左にと振り回され、
調子に乗っていた空中装甲騎士団も生徒達もあっという間に散り散りにされる。
「バカ! とうとう怒らせちまったか」
人間だって目の前を虫が飛び回れば不快になり、やがて怒り出す。
その有様に、とうとうキュルケとタバサも腰を上げた。
「もう見てられないわ。うちのバカ男達を連れ帰ってくる!」
ふたりはシルフィードに乗って、飛び出していった。それと同時にコルベールをはじめとする教師達も、生徒達の窮状を
救わんと、おのおの飛んでいく。
才人とルイズも、今度こそ飛び出そうと思ったが、やはりリングは光らない。
(エース、なにが足りないっていうんだ?)
今にも踏み潰されそうなギーシュ達を見るにつけ、才人は拳を握り締めて、その戦いを見守っていた。
怪獣達は怒って空中装甲騎士団とWECKを追い回している。ガラキングとパンドラの火炎はさして威力の高いものではなかった
のが幸いしたが、オルフィやバンゴも怪力の持ち主であり、歩き回って腕をぶんぶん振り回すだけで充分武器になる。
生徒達や竜を失った空中装甲騎士団は必死になって逃げていく。だが、暴れるオルフィの行く先に、出していた
ワルキューレをすべて踏み潰され、精神力の切れ果てたギーシュが根尽きて倒れこんでいた。
「危ない!!」
思わず才人は叫んだ。キュルケやコルベールも気づいたようだが、足が振り下ろされようとしている今、もう間に合わない。
しかし、思わず目を覆いかけたとき、オルフィは下ろしかけていた足を地面スレスレのところでぴたりと止めて、とっさに
後ろに重心をかけたためにバランスを崩して倒れてしまった。
だが、そのおかげでギーシュはなんとかつぶされずに助かり、それを見ていた才人は、彼らが暴れるためにやってきた
わけではないことを確信した。
「人間を踏み潰さないように気を使った……やっぱり、あいつらは暴れるために来たんじゃない」
「だったら、なんでこんなところに来るの? なんでこの魔法学院に?」
ふたりにも、エースが言おうとしたことがわかってきた。怪獣だって生き物だ、行動にはなにかしら理由がある。
ならば、この学院に、怪獣を呼び寄せるような何かがあるということ、それが何かを突き止めることが、ただ怪獣と
戦うよりも大事なのだと。
あいつらのうち、少なくともパンドラとオルフィは魔法学院に用があるのは間違いない。だが、それが何なのか。
才人とルイズは考えた、必死に考えて、そしてかつて才人はパンドラが暴れたときの事件の概要を、ルイズは
先程ベアトリスが言った台詞を思い出した。
『ではここで我が空中装甲騎士団の武を披露したいと思います……さあ、獲物をこれに!!』
「……もしかして!」
同時にそう言ったふたりは、それぞれの考えを話すと、すぐに避難誘導に当たっていたロングビルを探し出して
話しかけた。
「ロングビルさん!」
「なに? あなたたちも早く逃げなさい。学院の裏手からなら安全に逃げられるわ」
「それよりも、あの空中装甲騎士団の連中、ここに何か持ち込みませんでしたか?」
思わぬ問いに、ロングビルは一瞬きょとんとしたが、すぐに記憶の泉の浅いところからその答えを探しだしてきた。
「ええ、なにやら大きな物をひとつ運び込んでたわね。幕がかけられてたから何かはわからなかったけど、かなり
大きな物だったわよ。それがどうかしたの?」
「やっぱり、すぐにそれを探してきてください。恐らく、あいつらを呼び寄せたのはそれです!」
「えっ!? なに、どういうこと?」
「とにかくお願いします。学院がつぶされるかどうかの瀬戸際なんですから」
ふたりは、ロングビルにそう頼むと、再びバルコニーに戻ってきた。
怪獣達は、バンゴとガラキングはドタドタ走り回りながら空中装甲騎士団を追い回している、こいつらは暴れている
というよりただ遊んでいるだけだろう。だが、パンドラとオルフィは妨害を受けながらも、一心に学院の方向を目指して
やってくる。
そのとき、ついにウルトラリングが光を放ち、ふたりはバルコニーから身を躍らせた。
「「ウルトラ・ターッチ!!」」
夜空を赤い光が裂き、光の戦士が光臨する。
「ウルトラマンAだ!!」
着地の勢いで高々と土煙を巻き上げて、エースは中庭に降り立った。
ギーシュ達以外の生徒達にはベロクロン戦以来となるエースの登場に、いくつもの歓声があがる。
やっぱり目的は子供か?支援
「シュワッ!!」
エースは突進してくるオルフィとパンドラを正面からがっしりと受け止めると、そのまま外壁の外の草原にまで押し返した。
「ダアッ!」
2匹を押し戻し、エースは外壁の裂け目の前に、両手を広げて通せんぼをするように仁王立ちした。
それでも、オルフィとパンドラはなおもエースを押しのけてでも通ろうと突っ込んでくる。特にオルフィは攻撃能力こそ持たず、
性質もおとなしいものの、宇宙怪人カーン星人がZAT全滅のために利用しようとしたことさえあるほどの怪力の持ち主の
ため、エースも苦戦する。
「セアッ!」
オルフィを相手に真っ向から力比べをしては不利だと、エースは力をうまく受け流し、巴投げをかけて吹っ飛ばした。
だがそこへパンドラの放った火炎攻撃が来たからたまらない。
「ヌォォッ!!」
直撃を受けてしまったエースは高熱に焼かれて苦しんだ。
さらにそこへ起き上がってきたオルフィに体当たりされ、エースは外壁を破壊しながら、背中から倒れこんだ。
(くそっ、殺すわけにはいかないから光線技は使えないし、こいつら相手に時間稼ぎはきついか)
学院を守りながら、怪獣達を傷つけないように戦う、背反する目的にはエースといえども苦しい。
しかしそこへ思いも寄らぬところから援軍がやってきた。
「WEKC全軍、ウルトラマンAを援護しろ!」
なんと、散り散りになったと思っていたギーシュやギムリ達WEKCの生徒達が再び集結して、オルフィやパンドラの後ろから
魔法をぶつけて気を引いていた。
しかもそれだけではない、これまで戦闘に参加していなかった男子生徒達が精神力の尽きたWEKCの生徒達と代わり、
さらに女子生徒達が精神力の尽きたり、負傷した生徒や空中装甲騎士団の手当てをしている。それは完全に統制が
とれており、先程まで好き勝手に戦っていた者達とは思えない。
いったいどうして? とルイズや才人は思ったが、それは生徒達の中心に立って、全員を指揮している赤髪の少女と
頭上が寂しい1教師によって成り立つものだった。
「カリム、クルス、リッツォーはファイヤーボールで後方から攻撃! ルパート達はウィンドカッターで火炎をそらして!
いい、怪獣を倒そうなんて大それたことは考えないで、学院を守ることだけ考えて行動しなさい! あとはエースが
なんとかしてくれるわ!」
「ミス・モンモランシー、そちらの彼のほうが火傷がひどい、優先して治療してくれ。痛いだろうがもうしばらく我慢
するんだ、男だろう? ケティ君、この騎士殿に水を頼む。みんな、どちらの者でも関係なく治療するんだ、いいね!」
キュルケ、そしてコルベールが生徒達を見事に指揮して、まるで一級の軍隊のように見事に行動させていた。
それを見てルイズは思った。そうか、ツェルプストー家は何代にも渡ってヴァリエールと戦ってきた家柄、キュルケも
恐らくは将来ヴァリエールと戦うときのために指揮官としての修練を積んできたのかもしれない。しかし、それが
知らないこととはいえ、エースと同化したルイズを助けるために使われるとは、たいした皮肉だ。
一方のコルベールも、負傷した者を集めて適切な処置を施してゆく手腕は見事なものだった。彼の昔の素性は
ほとんど知られていないが、どこかで指揮者として活躍していたのは容易に想像できた。
パンドラとオルフィは後ろからちくちくと撃たれるのにいらだってぐるぐる回りながらもだえている。その隙にエースは
起き上がって構えをとったが、よく見たら攻撃を受けているのはその2匹だけで、あとの2匹の姿がいつの間にか
見えなくなっているのに気がついた。
(あれ? ガラキングとバンゴはどこに行った?)
才人はエースの視覚を借りて周りを見渡すと、その2匹が学院から離れた草原の端で、何かを追いかけるように
どたどたと大量の砂煙をあげながら走っているのを見つけた。
なにをしているんだ? 不可思議な怪獣達の行動に才人とルイズとエースも首をかしげたが、2匹の走る先から
蚊の羽音のような、か細く悲しげな声が聞こえてきて、そのわけを知った。
「たすけてくれー、なんでこの怪獣ぼくを追っかけてくるんだー!?」
なんと金髪で小太りな少年が、2匹の怪獣と必死になって鬼ごっこをやっていた。
(マリコルヌ……なーるほど、ガラキングは玉好き怪獣、あいつの丸っこい体が気に入られちゃったみたいだな)
どうやらガラキングには彼の体型がボールのように見えているのだろう。じゃれついておもちゃにしようとしているの
だろうが、追われるほうからすればたまったものではない。
(変わったものが好きな怪獣もいるものねえ。じゃあ、あっちの緑色の怪獣はなんで追っかけてるの?)
(バンゴはなんでも面白そうなものを真似る習性があるらしいんだ。ガラキングが楽しそうだから自分も真似て
追いかけてるんだろう)
(子供みたいな怪獣もいるのねえ。で、あれどうしましょうか?)
(ほっとこうぜ、2匹も怪獣を引き付けてくれるんなら大助かりだし、ダイエットにもなるだろ)
(そうね。こっちのほうが大事だし)
意外と薄情な奴らであるが、今はパンドラとオルフィを止めるほうが先決だ。
2匹は、火系統のメイジの作り出したフレイムボールの爆発の光、いわゆる閃光弾攻撃で視界を奪われて
立ち往生している。やるなら今だ!!
(エース、今だ!)
才人のかけ声とともに、エースはキュルケ達に気をとられているオルフィを背中から担ぎ上げると、パンドラに向かって
思いっきり投げつけた。
「テャァ!」
たちまち2匹がもつれあい、転がって学院から少し離れた。
オルフィは目を回したらしく、ふらふらよろめいて尻餅をついてへたり込んでしまったが、パンドラはなおもエースに
向かって火炎を吹きかけてきた。
『ウルトラネオバリヤー!!』
だがエースは火炎をバリヤーで防ぎ、パンドラはやがて炎を吐き疲れて、ゴホゴホとむせた。
オルフィも、暴れ疲れたとみえて、地面に座り込んでゼイゼイと息を吐いていた。
「ようし、とどめを刺すなら今よ!」
2匹が弱ったのを見て取ったキュルケは全員に総攻撃を命じた。
しかし、生徒達が一斉に魔法攻撃を仕掛けようとしたとき、エースはその前に立ちふさがり、両手を大きく広げて
2匹をかばい、そして殺してはいけないと言う様に、ゆっくり首を横に振った。
「エース……どうして」
キュルケ達は、杖を下ろしたが、なぜ怪獣をかばうのかと納得できない様子でエースを見上げていた。
憎まず殺さず許しましょう支援
だが、そのときロングビルがホールの奥から黒い幕で覆われた高さ3メイル、横幅およそ4メイルほどの大きな
箱をオスマンに手伝ってもらいながら運んできた。
「みんな!! エースの言うとおり、そいつらは悪い奴じゃないわ。彼らは、この子を取り返そうとしていただけだったのよ!!」
そう皆に向かって叫ぶと、ロングビルは箱を覆っていた幕を勢いよく取り払った。
「あれは!? 怪獣の子供か!」
誰かがそう叫んだように、そこには鋼鉄の檻に、パンドラとそっくりの身長2メイル程度の小さな怪獣が閉じ込められていた。
パンドラはカンガルー怪獣というとおり、子育てをする怪獣だ。怪獣の中にも親子というのは意外に多く、どいつも
親思い子思いなものばかりだ。地球でも当時パンドラにはチンペという子供がいたのだが、子供を勝手に連れて行かれては
そりゃあ親が怒って当たり前だ。
(やっぱり、チンペがさらわれたから、パンドラははるばるこんなところにまで取り返しにやってきたんだな。オルフィは気が
いいから、パンドラを助けるためにいっしょに来たんだろう)
才人の言ったとおり、子供の姿を見つけると、それまで荒い息を吐いていたパンドラとオルフィはとたんに大人しく
なり、檻の鍵が開けられてチンペが外に出てくると、エースは手のひらに乗せて優しくパンドラのもとに運んでやった。
親の元に戻ったチンペはパンドラに抱きしめられて、再会を喜び合い、オルフィもうれしそうに笑うような声をあげた。
「そういうことだったのね。やれやれ、これじゃあ、もう戦えないわね」
理由を悟ったキュルケ達は杖をしまい、楽しそうにじゃれあう親子の姿を見ていた。
しかし、そのどさくさに紛れて引き上げようとしていた、この事件の張本人を見逃してはいなかった。
「ところで、怪獣の子供をさらってきて、あげくこの学院に4匹も怪獣を招く結果になったのは、誰が原因なのかしらね?」
全員の視線が、後ろで小さくなっていたベアトリスに注がれた。
そうだ、そういえばこいつが余計なことをしなければ怪獣が学院を襲うことはなかったんじゃないか? 皆の視線は
一様にそう言っていた。
その視線に、ベアトリスは何も言えずに冷や汗を流して後ずさったが、そうはさせじと生徒達に囲まれてしまった。
「さて、それじゃあ説明してもらいましょうか。あの怪獣の子供を連れてきたのはあなたの空中装甲騎士団ね?
大方かませ犬にでも使うつもりだったんでしょうけど、なんでまた怪獣の子供なんて危険なものを連れてきたの?
ことと次第によっては、ゲルマニアのフォン・ツェルプストーが相手になるわよ」
キュルケに鋭い視線で睨まれて、進退窮まったと悟ったベアトリスは、ついに開き直って声高にしゃべりはじめた。
「そうよ! あいつはクルデンホルフ領内で、死の山に住む魔物と恐れられている奴、この空中装甲騎士団にとっては
この上ない獲物と思わない? 私はトリステイン貴族として、領民の害になりかねない獣の処理をしようとしていた
のよ! なにか問題があって?」
「あれが魔物? どこに目をつけてそんなことが言えるわけ? 子供を取り返したとたんにおとなしくなったじゃない。
それに、魔物というんだったら、これまで領民が被害にあったとでも言うの?」
ベアトリスは反論できなかった。当然だ、パンドラもオルフィも、人間の側から手を出さない限り、一切他者に
危害を加えたりしない。魔物などという表現は、彼らの大きさと容姿から人間が勝手につけた実体のない幻に
すぎない。
すると、周りの生徒達も口々にベアトリスに向かって非難の声をあげ始めた。
「そうだそうだ、危うく学院が壊されちまうところだったじゃないか!」
「トリステインの平和を守るが聞いてあきれるぜ、お前らが平和を乱してるじゃねえか」
「責任もってお前があいつらを連れて行けよな」
「そうだそうだ!」
一人が言い出すと、他の者もつられて次々に激しい非難をベアトリスにぶつける。その中にはこれまで彼女に
こびへつらってきた者も大勢おり、空中装甲騎士団も全員戦闘不能になった今、ベアトリスは自分が孤立無援
であることを思い知らされた。
そして、もはや吊るし上げられてもおかしくないほどに空気が殺気だってきたとき、母親と再会を喜んでいた
チンペがとことこと生徒達の元へと歩いてきた。生徒達の何人かは、驚いて杖を向けたが、エースがその間に
手をかざすと、彼らはそれを下ろした。
チンペは軽快な足取りでベアトリスの方へと歩いていき、彼女を囲んでいた人波がさあっと開かれた。
「ひっ!?」
小さくても怪獣である。ベアトリスは思わず後ずさったが、生徒達の壁に阻まれた。
周りを見渡しても、助けてくれる者は誰もいない。むしろ、いい気味だとこれまで見下してきた者達が
冷たい視線を向けてくるのに、彼女は足を震わせて立ち尽くしていた。
そして、ついにチンペが目の前すぐにまでやってきたとき、彼女は復讐される!! と思って目を閉じたが、
次の瞬間ベアトリスを襲ったのは、体を貫く痛みではなく、手のひらを包む温かい感触であった。
「え……?」
恐る恐る目を開いてみると、小さな怪獣は優しく彼女の手をとり、そしてきゃっきゃと笑いながら、その手を
引いてステップのように足踏みを始めた。
「えっ!? なっ、なに、なに?」
生徒達は、何が起きているのか分からずに、呆然とその様子を見ていたが、そのとき彼らの耳に、まるで
南国のタンゴのように、明るく軽快なメロディが飛び込んできた。
「歌?」
チンペは、それを待っていたように、メロディに合わせてベアトリスの手をとりながら、楽しげに踊り始めた。
ベアトリスも、始めはとまどっていたが、陽気なメロディと軽快なステップに、やがて自分もステップを踏んで
踊り始めた。
周りを取り囲んでいた生徒達も、その楽しそうな様子に、やがてこわばらせていた顔を緩めて、音楽に合わせて
にこやかな顔になっていく。
「見ろよ、あの怪獣が歌ってるんだ」
そのメロディは、オルフィの喉から発せられていた。体を揺らしてリズムを取りながら、怪獣界の大音楽家は
陽気な平和のメロディを奏でていく。
「なんて気持ちのいいリズム、まるで春の野原にいるみたい」
それは、今まで殺気立っていた生徒達や、空中装甲騎士団からも、戦意を急速に奪っていった。
そうして、踊っているうちに、これまで野薔薇のようにとげとげしく張り詰めていたベアトリスの顔からも、
しだいに険が取れて野の花のように明るく美しくなっていく。
やがて、生徒達の中からも、ひとり、ふたりと、隣の人に手を差し出す者が現れてきた。
「なにか楽しくなってきたな。僕らも踊ろうか、モンモランシー」
「ギーシュ、ええ、いいわよ」
「タバサーっ、わたし達も踊りましょ。おら邪魔よ男ども!!」
「……まわるー」
踊りの輪は、しだいに大きく広がっていき、メロディも皆が共に歌う大合唱へと進化していった。
「ミス・ロングビル、その……」
「くす、よろしくてよ。ミスタコルベール」
皆、生徒も教師も、うまい下手など関係無しに、思い思いに体を動かしていた。
そのうち、学院からも、非難していた生徒やメイド達もやってきて踊りに加わり、空中装甲騎士団も鎧を
脱ぎ捨てて、貴族も平民も共に手を取り合って、広大な草原は巨大なダンスホールになっていった。
見ると、ガラキングとバンゴも、音楽に合わせて体を右に左にと振り動かしている。
なお、追っかけまわされていた小太りの少年、名前はマリコルヌという彼はというと、いっしょに踊ってくれる
相手を探していたが、ことごとく拒否をもらい、最後に壮年の女性教師といっしょにようやく輪に入れていた。
そして、それを見守っていたエースは、誰にも見られることなく、静かに変身を解いた。
「にぎやかだな」
「まったく、伝統あるフリッグの舞踏会がとんだことになったわね。これじゃ平民の村の夏祭りよ」
才人とルイズは皆を少し遠くから眺めていた。
そこには、ギーシュも、ギムリもレイナールもいる。シエスタもメイド仲間達や厨房のコック達と手をつないで
踊っている、その中にはアイの姿もあった。また、オスマンがパチンコ玉のように女子生徒の間をはじかれて
飛び回っているのも見える。
「夏祭りか、懐かしいな。なあルイズ、俺の世界には盆踊りっていって、夏になったらみんなでいっしょに
踊る習慣があるんだ。ちょうど、こんなふうにさ」
「へえ、あんたの国にも……まぁ、どうせ平民の踊りなんだから、気品もなにもないんでしょうけど……
よ、よかったら、あんたにも少し、貴族のたしなみってやつを、教授してあげてもよくてよ」
「え?」
ルイズはなぜか顔をうつむかせたまま、手を才人の前に差し出して、そして言った。
「わ、わたくしと踊っていただけますこと、ジェントルマン」
顔を赤らめてそう言うルイズの顔は、とても魅力的で可愛く見えた。
「俺、ダンスなんて踊れないぞ」
「わたしに合わせればいいわ。それより、どうするの」
「……喜んで」
ふたりも、皆の輪に入っていき、ドレスが泥で汚れるのも構わずに、へたくそなワンツーステップで踊り続けた。
そんななかで、楽しげな声にまざって、たった一言、目の前の相手にしか聞こえない声で、喉から搾り出すような
声が流れていった。
「ごめんなさい……」
権威と虚栄の仮面がはがれて、少女がひとつ、大人への階段を登ったことを、一対の人ならぬ目だけが見守っていた。
続く
では、22話終了です。
これでやっと1巻分の清算が終わりました。いつも応援してくださる皆さんありがとうございます。
フリッグの舞踏会は、原作では短いですが好きなシーンのひとつなので、思い切りとりあげてみました。
今回は、ほかに酔っ払い怪獣ベロンや、虹怪獣レンボラーなどの登場も考えましたが、収拾つかなくなりそうなので
やめておきました。
では、次回からは、新展開になります。ただし素直に2巻に行くとは限りませんが。
ウルトラの人、乙。
ウルトラシリーズって、たまに「地球人(人間)の方が悪いじゃん」って感じの、
皮肉な内容とか社会的な問題作とか出してくるから好きさ。
ウルトラの人、乙かれ様です。
優しい怪獣と聞いてピグモンを思い出したよ。
ウルトラ乙です。
そう言えば、タロウに出てくる怪獣はモットクレロンやモチロンとかユーモラスな奴が多いよなぁ。
2巻かあ…ヤプール侵攻中の中、アルビオンはのんびり内乱中とも思えん
浮遊大陸ネタでかつウルトラネタなら「散歩する惑星」でリッガーあたりだが…
そういえばハルケギニアの魔法には強化系はないのだろか
あるとしたら「加速」みたく虚無に分類されるのかな?
ウボォーさんでも呼ぶ気か
>強化系
「持久」とかならあるかも。
乳酸を「解毒」し、筋繊維を「治癒」することで全力運動
し続けられるようなヤツ。
でも、メイジなら体動かす前にフライやレビテーション、
テレキネシスを唱えるから、使い手は存在しなさそう。
強化系の魔法なら存在するよ。
ただし、ゲーム版だがな!
身体のことだから担当は水系統かな?
土を錬金して短時間だけ鎧状にするスクルトの呪文とか
>>117 ワルキューレに入るギーシュだな
ワルキューレを人にかぶせるように作って無理矢理動かすのが出来ればかなり便利そうだがやっぱ無理かね
戦力にも盾にも出来るんだけど
ギーシュ「そして必殺のォォ―――ボンバー・タックル!!」
>>118 サイズ的にギーシュでは無理かとw
棄てプリの殺し屋に似た発想の奴がいたんで
高位メイジなら理論上は出来るじゃね?
>>66 刃牙系なら(人気無さそうだけど)今が旬のピクル召喚
「原人だ!ゼロのルイズが原人を召喚したぞ!」
「さすがゼロのルイズ!俺たちには出来ないことを平然とやってのける!」
「そこに痺れない!憧れない!」
ルイズ「ぐぬぬ・・・留年や退学を回避する為にはこんな原人とでも契約をしなければならないなんて・・・」
がばぁ!
―――悲しいほど野生―――滑稽なほど野生―――
と、公衆の面前でいきなりレ○○されるルイズ
翌日の朝、キュルケと顔を合わせた瞬間に
――――――悲しいほど野生――――――滑稽なほど野生――――――
と、朝っぱらからピクルに○イ○されるキュルケ
少年誌でやってたのと同じ内容をなぞっても避難所行きになるな
何となくだけど、オリバは召喚されたら召喚されたでファンタジー世界をそれなりにエンジョイしてそう。
それに、ちゃんと頼めば任務とかにも協力してくれそう。
あと、知識を披露してやったらコルベールが喜びそう。
フーケの巨大ゴーレムが出てきたら、自分も筋肉を押さえ込むのを止めればサイズ的には互角以上だろうしさ
ぱすちゃCから召喚
……一番無難なのはニィさんかな。普通にメイジ認定が結構いるし
個人的にはリカちゃんが楽しそうだが
落ちぶれて屋台で焼きそば焼いてる所を召喚とか
>>68 凛だけでなくシアやネリネもくっついてきてもはや大変な事に。
凛の悪口を言ったらネリネは攻撃魔法をぶっ放すし、シアはシアで笑顔のまま椅子で殴るし。
>>111 ジョゼフがどう動くかわからない。
手駒不足と情報不足で動かないだろうがあいつなら悪逆宇宙人でも組むだろう。
教皇も聖地の為なら裏で組む可能性もある。
>>121 ピクルはルイズを幼いと判断して雌として認識しなさそうだが
いっそのことピクミン召喚ってのはどうだろう。
ある意味いちばん従順。
引っ込抜かれて〜♪
あいつら実際はアリサイズなんだけど・・・
[4854] その選択の行方は
Name: 金色◆9b916594 ID:7e4c226f
Date: 2008/11/16 17:39
バックアップが跳んだので新しい物を用意しました。
現実〜オルタの世界に入る物語です
時系列を載せるのが違法と成る為に全て時系列は載せません
何年経っているかは想像にお任せします。
主人公は本編が始まる前より5年前に飛んでいます。
年号は書きません書けば全てが盗作となってしまい、また消されてしまうからです。
>>124 いやシアとネリネはヤバいw
ワルキューレや30メイルゴーレムを一撃で吹っ飛ばすネリネやワルドを椅子でしばき回すシアを幻視したww
>>129 アリサイズはアリサイズでもフォーリナーなアリサイズならどうだ!
>>131 ワルドはそんなギャグでは済まんだろうな…
ギャグパート多いので見落としがちだが小説版とか見ると神ちゃん&まー坊も
やること(稟囮にして反対派のあぶり出しとか)やってるし人知れず消されそう…
マジモードだと神ちゃん、まー坊、キキョウ辺りは敵対者はマジで容赦ないから…
>>120 棄てぷりのチャクル・タヴィとストジャのアルフレッド・スタインウェイですね、わかりますw
その方法だとトランスフォーマーのサイバトロン側の合体システムなワルキューレになりそw
>>125 逆にヤプールでも手を出すのは容易ではない、もしくは不可能に近い奴らというと、大体が昭和より平成のウルトラマンから出てくるなあ。平成のボスキャラは昭和と違って、ウルトラマン一人じゃどーにもならん様なのが殆んどだし。
@ガタノゾーア・デモンゾーアら「闇」の軍勢(ティガ)
A全ての生物を統合を目的とするスフィア(ダイナ)
Bゾグ率いる根源的破滅招来体(ガイア)
Cスフィア同様の目的で生み出されたカオスヘッダー(コスモス)
Dスコーピスを率いていくつもの生命を滅ぼしてきたサンドロス(コスモス)
F宇宙の秩序を司るデラシオン(コスモス)
Gノアのコピーにしてウルティノイド・ダークザギ&ビースト(ネクサス・ノアシリーズ)
H決して触れてはいけないパンドラの箱 イフ(マックス)
Iデロスの防衛システム バーサク
メビウスではヤプールはエンペラ星人の軍門に下ってましたが、あの時は25年間全ての怨念を結集させたU−キラーザウルスネオが倒されてしまったせいで弱体化していたので、しぶしぶ従っていたんじゃないかと。
>>133 アゴ先生と創造神ヤマグチ、両方の要素を持ったテキスト。
読んでみたいな。
>>122 彼女と離れ離れになってぶちキレルぞ
ってことでキレルくんを召喚だ
>>124 むしろ土見ラバーズ全員まとめて召喚される悪寒
あと、「凛」じゃなくて「稟」ね
自分も結構間違えてたりするorz
ちょっと毛色の違うウルトラマンを誰か召喚しないかね
ウルトラ超闘士激伝やウルトラ忍法帳、ウルトラマンキッズとか
>>139 「凛」「稟」で『まぶらほ』の神城凜を連想してしまった。
あれはあれで「凛」ではなく「凜」が正しいらしい。
で、まぶらほ系クロスはまだなかったのね。
『式森和樹』あたりだと魔法使用回数が初期値に戻されて召喚されて
使い切って灰になったりしそう。
復活後だと魔法使うだけで世界崩壊が始まるんでエルフがからんできそうな。
>>140 毛色が違うといえばウルトラマンStory0。
かなりシリアスな物語とディファレーター光線の真実などなかなかおもしろい。
あれのバルタンなら魔法に興味を持ってもおかしくないし。
ガンダールブはあらゆる武器を使いこなしたと言う
って事でHARERUYAUBOYから日比野晴矢を召喚
ギーシュとの喧嘩を除き中のオスマン&コルベール
コルベール「ゲゲェー!?背中からバットがー!?」
オスマン「ウヌウ、ありとあらゆる武器を使いこなし主を守ったと言うガンダールブ、まさにその名に恥じぬ能力よ」
こうしてオスマンとコルベールは「ガンダールブとは背中から武器を出す能力者」と勘違いするのであった
話が膨らまないな
>>143 ある意味チートというか俺Tueeeeの代表みたいなキャラなんだが、晴矢召喚は読んでみたいな
そういえば奴が持ち歩いてるフライパンとかバットはハルケギニア世界では
よく分からない打撃武器と妙に平べったい料理道具として認識されるんじゃね?
背中から、ガスボンベと蟹出したこともなかったか?
後ガムテープとか
>>138 それがあったなw
>>140 超闘士激伝でパワードさんが出てきて、手で触れられた相手が時間差でその場所にダメージ食らうのを見て痺れた。
パワードって元から毛色が違うよね。
アバドンやってるとライドウ召喚見たくなるなー
以前投下されてたのは更新停止状態だし
>>145 あったねw
ドラえもんかみたいな突っ込みもあったかな?
>>147 ライドウって言うかゴウトとかメイド服イッポンダタラ召喚したいwww
>>147 剣の腕だけでギーシュ圧倒
仲魔呼び出してワルド圧倒くらいな強さかな、あの美丈夫
アバドンでは筒は最大16本だっけ?仲魔は相当連れてこれそうだ
>>143 何気に武器を選ばないからデルフは喜びそうな予感。
デルフも背中に収納されるのかな?
陰陽大戦記から闘神機を召喚。
わけも分からずルイズがそれをいじっていると、突然亜人が現れ自身を白虎のコゲンタと名乗った。
というのを瞬間的に思いついた。
なんとなく
>>151 体育館のネットでさえ入る四次元な背中だからなw
154 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/16(日) 21:44:02 ID:PXmyh6AF
>147
そしてイザベラに召還される初代葛葉キョウジ
いや、初代キョウジはアギ系得意だからキュルケが呼び出すのか?
イッポンダタラと聞いて、おまもりひまりの一つ目ショタをおもいだした。
>>146 超闘士激伝で印象に残ってるのが、VSメフィラス大魔王戦で、メフィラスがウルトラマンに、
「お前の考えている事を当ててやろうか?
『…まさかここまで強いとは思っていなかった。
自分はもう全力だが、相手が更に底力を隠していた場合、もう打つ手が無い…』
教えておいてやるが…、俺はこれで全力の六割程度の力だ…!」(うろ覚え)
って言ったのがやけに強く印象に残ってるなぁ。
こんなセリフに痺れてしまう異端な私…。
メガテンならメアリ召喚を希望するな。
思い出した、俺はメアリのせいで二次元に魂を売ってしまったんだ。
余にメイド属性を植え付けた女性と申したか
>>152 いっそヤクモ(青年)召喚ルーンヴィンダでやってほしいぜ。
>>161 ヤクモ(青年)は本気で戦うと世界が滅ぶから大変だよ。
相手がウツホじゃなきゃ大丈夫なんだろうけど。
>>135 や、ゾグは別に率いているわけじゃないぜ?
奴は「破滅天使」。御使いにすぎん。
ヤプールのボスが超闘士激伝版だと、ノーマルのエース一人じゃどうにもならんな、ところで。
164 :
松下:2008/11/16(日) 22:18:59 ID:hLWCZOH5
いや、こんばんは。お久しゅう。三洋電機とは関係のない松下です。
ご雑談中のようですが、胸が革命するような話を投下しに参りました。10分後より。
>>158 ならスプーキーも。あの作品でメアリに次いで好きなキャラ。
アザゼル?戦死亡ルートでアクマ憑き状態なら戦力になりそうだし。
吸収合併支援
メアリで思い出した。
恐らくは歴代最弱のソウルハッカーズ主人公などを……
ダメだ、コイツをハルケギニアなんぞに放り込んだらハッカーという属性が完全に殺されてしまう。
そうなった場合に奴に残されるのは、他の主人公よりパワーバランス的に出し易いという利点だけだ……
クリアレベルが歴代に比べて極端に低いからなソウルw
イかしてる話で結構好きなんだけどね、ソウルハッカーズ。
ペルソナシリーズ辺りで続編チックな展開してくんないかな〜? とか思ってるし。
P5の主人公がスプーキーの従兄弟か何かで、スプーキーの墓参りの時にスプーキーズの面々と出会うイベントがあるとか、
主人公+ネミッサがソウルハッカーズのストーリーを追ってる横で、スプーキーズの面々がペルソナ使いとしてファントムと戦う話がP5とか。
>>165 アザゼルは西次官。リーダーに憑いてたのはサタナエル。
>>165 なにがどうなってそうなるんだよ馬鹿野郎
アザゼルじゃなくてサタナエルだし
そしてアルゴンの工場長はシェムハザ。…投下開始。
《地上には三つの力がある。これらの意気地のない反逆者(人類)どもの良心を、
彼らの幸福のために永久に征服し、虜にすることのできる力は、この地上にわずか三つしかないのだ。
その力というのは、奇跡と、神秘と、権威である》
(ドストエフスキー著『カラマーゾフの兄弟』第五編第五章「大審問官」より)
ハルケギニア外洋の3000メイル上空に浮かぶ『白き国』、アルビオン大陸。
その中央部に位置するのが、首都ロンディニウムである。
由緒あるハルケギニアの各都市と比べると、このロンディニウムは近代的な雰囲気を持つ街であった。
百年ほど前に、木材と塗土で出来た旧市街を焼き尽くす大火があり、以後この街は防火対策として石造りとなっていた。
狭かった道幅も拡張され、疫病の流行を防ぐため衛生面にも気を配った街造りがなされ、首都は見違えるほど美しくなった。
また石造建築の発達は木材の余剰を生み、これが空中艦隊の建造に振り向けられた。
農産物の生産も少なく、主として交易と略奪で国を成り立たせてきたアルビオンには、強い軍事力が必要であったのだ。
かくしてこのアルビオンは、難攻不落の軍事強国として地上の諸国から恐れられた……。
しかし、それは今や、過去の話である。
先のトリステインとの大戦により、神聖アルビオン共和国からは空中艦隊も竜騎士団も、数万もの地上兵力さえも失われた。
それでもまあ、ひとまず問題はなかった。侵攻してきたトリステインと連合していたゲルマニアが突如裏切り、
アルビオンと手を結んでトリステイン軍と戦ってくれたからだ。
さらにガリア王国もゲルマニアと密約を結び、手薄になったトリステインの本国を突くことになった。
だが。
サウスゴータ市とロサイス港を占拠し、スカボロー港のトリステイン敗残軍を火砲で吹き飛ばしたゲルマニア軍は、
その矛先を、なんとロンディニウムに再び向けてきたのだ。
神聖皇帝オリヴァー・クロムウェルは大いに慌てたが、兵力のほとんどを失っていたアルビオン側に、もう術はなかった。
ガリアから遣わされていた魔女シェフィールドも、自分に味方していた悪魔ベリアルも姿を消していた。
クロムウェルが『虚無の力』だと偽ってきた、例の指輪さえも失われていた。
ロンディニウムは、わずかな抵抗もむなしく、たちまちゲルマニア軍に占領されてしまう。
簒奪者・国王殺害者たるクロムウェルは、逃げ出そうとしたところを捕らえられ、司教の僧籍を剥奪されて破門された。
そして残っていた配下ともども、生かさず殺さずの凄惨な拷問にかけられる。
「はは、ははははは、あああははははは………ひひひひひひははは……ヘンラヘラヘラ」
牢の中のクロムウェルは、既に正気を失っていた。あまりに様々な事が、この三年ほどの間に起こりすぎた。
もともと彼はメイジでさえなく、富農あがりの一地方の司教でしかなかったというのに。
……そう、あれは三年前、届け物があってガリアの首都リュティスに赴いた時のこと。
とある酒場で一杯の酒を、偶然同席した老貴族に奢ってからだ。
「わしはべリアルと申す者。今はちと手元が不如意ですが、ガリアの宮廷にも少々顔が利きます。
司教殿、酒のお礼に望むものをなんでも一つ、貴方にあげよう。言ってごらんなさい」
「ははは、そうですなぁ。田舎の司教など実入りも少なくって、まったくつまりませんよ!
枢機卿や教皇とは言いませんが、一国の王様ぐらいにはなってみたいですなぁ。あはははは」
無論、酒の席での戯れだ。もともと肝の小さい彼にそんな大望はない。
ほんの冗談のつもりだったが、ベリアルはそれを聞いて、皺の多い顔に邪悪な笑みを浮かべた。
「ほう、大した望みで。若い者はそういう覇気がなくてはなりませんなぁ。
―――よろしい、貴方を国王にしてあげよう、オリヴァー・クロムウェル殿」
翌日。クロムウェルは老人に伴われてラグドリアン湖へ行き、『アンドバリの指輪』を手に入れた。
これを手にした者は一国をも支配し、莫大な富と破滅の運命を共に得るという、伝説の指輪だ。
そして彼は、ガリア王ジョゼフに密かに服従して後ろ盾とし、謎の魔女シェフィールドを側近につけてもらった。
ただの地方司教だったクロムウェルの人生は、それから猛烈な勢いで、とんでもない軌道を描き出したのだ……。
始祖ブリミル降臨暦6243年、第一月ヤラの月の末の日、快晴。
冬の朝の空気は刺すように冷たい。
ロンディニウム、ハヴィランド宮殿の西側、《宴会用別邸》前の広場は、何千人もの野次馬で溢れていた。
そこには飲食の屋台が出揃い、大道芸人が集い、朝市までもが開かれている。
刑吏らはいくつもの火刑台や薪、燃え盛る炎の坑、それに断頭台を準備していた。
兵士たちは輪になって歌い踊り、勝利の歌を高らかに歌う。
「「「♪ゲルマニア、ゲルマニア、万物に冠たれ、世界の万物に冠たれ……」」」
やがて、市内の寺院の鐘とラッパが、重く虚ろに鳴り響く。
すると、武装した騎兵隊に続き、始祖像を縫い取った幟を先頭に、経文を唱える黒衣の修道僧らがぞろぞろと現れた。
それに続いて、豪奢なマントを翻した上級聖職者らが粛然と進む。
最後に、とんがり帽子を被り首に綱を巻かれ、悔罪服を着た裸足の罪人たちが、火の灯されたロウソクを手にして出てくる。
よろめく足は鎖で繋がれ、傷だらけの体は鳥のように痩せ細り、眼窩はすっかり落ち窪んでいる。
すでに生ける屍のようだが、彼らはついに、最後の審判を下されるのだ。
野次馬が罪人たちに罵声と嘲笑を浴びせかけ、ゴミや小石を投げつける。
今やアルビオンは、ジェームズ1世、続くクロムウェルの圧制から解放され、新しくゲルマニアの支配下に入るのである。
異様な銃を携えた兵士らが警護する、高々とした特設の壇上に、ロマリアとゲルマニアの国旗が翻る。
傲然とそこに座しているのは、アルビオン総督に就任したハルデンベルグ侯爵と副総督、軍政補佐官ら。
それに教皇庁からゲルマニア軍中へ派遣されていた、枢機卿クラスの異端審問官たちだ。
罪人たちが彼らの前に連行され、恭しく跪拝させられる。再び鐘とラッパが鳴り響き、開廷を告げる。
―――とはいえ、実質的審判はとうの昔に下されている。これはただの宗教儀式、神聖な演劇のようなものだ。
「……彼、すなわちオリヴァー・クロムウェルの邪悪な企図、戦争、悪行の全ては、
彼自身の意思と力、さらに特権と称するものの私益を拡大・維持するために行われたものであり、
このアルビオンとハルケギニアの人民の公共の利益、共通の権利、自由、正義、平和に背くものである。
従って彼は、自然の摂理に背いた残虐で血なまぐさい戦争の火付け役であり、
この国に対してなされたあらゆる殺害・略奪・焼失・強奪・破壊・損失・危害に関して有罪である……」
判決の主文が、書記によって長々と読み上げられる。被告の抗弁も弁護もありはしない。
「……これら全ての反逆行為と罪過により、当《ブリミル教異端審問所》は、
忌むべき異端背教の徒、妖術師、共和主義者、煽動者、独裁者、裏切り者、国王殺害者、善良な人民の公敵として、
彼の身体から頭部を切り離して死に至らしめることを、判決として申し渡す。
また彼の死骸は火によって完全に焼き尽くされ、その頭部は晒しものとされ、全財産は教会に没収されるものとする」
火刑の前に、絞首ではなく斬首とは。
おお、自分を最期には王様として扱ってくれるのか。いずれ死ぬには違いないが、慈悲深いことよ。
ともあれ、上出来な傀儡の悲喜劇は、これで終わりだ。俺はなんとアホな男だったのであろう。
数十人の罪人への判決が終わると、放心状態のクロムウェルはロバに運ばれ、一足お先に断頭台につく。
脳裏に30余年の短い生涯が、走馬灯のように浮かんでは消える。
だが小心な自分にとって、王様、いや皇帝でいた僅かな時間は、何百年にも感じられた。
豪奢な玉座も寝台も針のムシロに等しく、頭上にはいつも抜き身の剣が吊り下がっていた。
そして今、全ての苦しみから解放される……いや、まだ死後の裁きが、地獄が待っているか。
「おい。『肩の荷を下ろす』前に、なにか言い残すことはあるかい」
大柄な首斬り役人に呼びかけられ、罪人はなにやら泣き笑いのような顔になり、か細い声でこう言った。
「……お、……王様になど、なるんじゃあなかった、な」
静まり返っていた野次馬は、爆笑の渦に包まれた。
しばらくして、大斧が彼の細首を打ち落とす。
その魂はまっ逆さまに、反逆地獄へと落ちて行った。
かくて、神聖アルビオン皇帝とまで名乗った革命家、オリヴァー・クロムウェルは処刑された。
だがそれは、さらなる戦乱の幕開けに過ぎなかったのである……。
《人は、新しく生まれなければ、神の国を見ることはできない。
…水と霊によって生まれなければ、神の国に入ることはできない》
(新約聖書『ヨハネによる福音書』第三章より)
―――――――………………………………………………………………………。
闇。
何も見えず、何も聞こえない。だが、五感は少しずつ回復してきた。
感じるのは、全身を包む温かさと柔らかさ、そして重さと……新鮮な果物のような、良い香り。
………………………………………………………………――――――!!
「う……んむぅ〜〜……」
唇から、呻き声が漏れる。おお、私は息をしている!
ルイズの魂魄と意識が、ようやく冥土から戻ってきた。体はまだ動かないが、どうやらベッドに寝かされているようだ。
しかし、目の前の闇は晴れない。
虚無の魔法によって、光に包まれて現世へ帰還したはずだが、今は夜なのだろうか?
いや……なんだ、これは。なにかこう、顔の上全体にずっしりと、重たい布の袋のようなものが乗っかって……?
む に 。
ぐっと顔を持ち上げようとしたルイズは、直感的に『それ』が何か、を理解した。
む……胸。人間の女性の胸、すなわち、ち、乳房。この感触、体温、さらには規則正しい寝息。間違いない。
小さい頃に抱かれた母の胸、大きくなってからは姉の(むろんカトレア姉様の)胸。
姫様の胸、シエスタの胸、忌々しいツェルプストーの胸。世界は胸に満ち、地上は乳に溢れている。
だ、だが、これは、そのどれよりも大きく、重い。有り得ないわ! ここここの無礼者、どんなデブ女よ。
自慢じゃないが、自分は胸が小さいというのに。そりゃ幼児体型のタバサよりはあるが、そういう問題ではない。
それが、ちょっとねえどういうこと、私の眼前、ていうか顔の上にこんなもん押し付けて眠って、どういうつもり?
ねぇこれ厭味? 殺す気? 生き返るなり死なせる気? こっ、こん畜生、死んでたまるかァァ!!
「ぷぐっ……どっ……どきなさああああい!!!」
「キャアアッ!!?」
金色の光。最初にルイズの瞳へ飛び込んできたのは、それだった。
目覚めてみれば、そこはこぢんまりとした民家の一室。窓から差し込む薄明るい光は、小鳥の声がするので暁光のようだ。
寝かせられていたのは、白いシーツに柔らかい毛布のベッド。部屋には粗末だが清潔な木製の家具が並んでいる。
そして、突き飛ばされベッドの脇に倒れた少女を見て、ルイズは頭をカナヅチで殴られたようなショーゲキを感じた。
長いブロンドの髪は光り輝き、額の真ん中で左右に分けられている。顔は完璧なシルエットを持つ彫像のよう。
見たところ同年代らしいが、背はルイズより随分高い。身に纏うのは粗末で丈の短い、清楚な空色のワンピース。
短い裾から、すらりとした脚が伸び、可憐な白いサンダルを履いている。
まるで奇跡と神秘が女性の、妖精か女神の形となり、衣服を纏っているかのようだ。神々しいまでに美しい。
とにかく細い。腕が細い、脚が細い、腰が細い、首が細い。
目も、鼻も、唇も、眉も、耳も、造作そのものが細く、かよわい。
その口から漏れる、声までもが細い。ルイズにも負けず劣らず、その少女はまさに、神の傑作だった。
―――で、でも、あの胸? いや、位置的には確かに、胸、だけれど。
だって、あれは、あんなのそんな、有り得ない、あってはならないわ。目の錯覚? 神様が酔っ払ってくっつけたの?
すごく不釣合いだわ、常軌を逸脱して、自然界の秩序法則に反しているわ。つまり反則。
どう見ても身体の各部分の細さと、胸の大きさが釣り合ってないじゃない。
つまり胸が身体に叛旗を翻している、言うなれば、胸革命(バスト・レヴォリューション)。
いいえ、あんなもの、私は胸だなんて認めない。もう断固認めない。胸っぽいなにか、と定義しなければならないわ。
そしてアレの存在こそは、胸が貧しくて悩んでいる、万国の女性に対する冒涜だわ、差別だわ!
おお、神よ始祖よ、ここにかような所得格差、富の遍在もとい偏在が!!
そうよ、この私は胸のサイズの大審問官。判決は、死刑! 死刑よ!! 死刑死刑死刑死刑死刑死刑!!!
プロレタリア胸革命万歳! 千年王国万歳!!
「きぃいえええええええええええええええええええええええええええええええええええーーーーーーーーーーーーッッ!!」
支離滅裂な思考を2秒で終え、激昂したルイズは怪鳥のような奇声をあげながら、目の前の少女に飛び掛った。
ぐわしッ! と彼女の信じられない胸を鷲掴みにし、マナジリを吊り上げて叫ぶ。
「ええ!? なによこれは、この非常識な代物は!!
こんなもんアレよ、ねえ、こんなのをぶら下げていたら、こんなッ!」
「ひぃう」
目が血走り、声が上擦り裏返っている。起き抜けにものすごい剣幕で当り散らされ、気の弱い少女は激しく怯えた。
「あああああの、わわ私ちょっと居眠りして、知らぬ間にあなたの顔の上に倒れこんでしまっていたみたいであの」
「謝りなさいよッ! 謝ってよ! 私に謝ってッ! ねぇ、世間様に申し訳ないって思わない!?
普通、こんなのをつけていたらごめんなさいじゃないの!! ねえッ!! 早く! 謝罪しなさい!!」
「あうあうあう、ご、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいいいいいいいぃぃぃぃぃ」
「ハァァ? ごめん? ごめんで済んだら異端審問官はいらないわよ!!」
「いッ……!? 済みません、もうしません、助けて、殺さないでーーーーッ! キャーーーッ!!」
すでに両者とも、涙目であった。
「痛い痛い痛い、やめて、もげちゃう、ちぎれちゃう!!」
「ええもう、こんなけしからんモノはねえ、引きちぎって平等に再分配するしかないわよねぇぇえええ!!」
揉み合うというかルイズが一方的に揉んでいるうちに、しゃらり、と少女の細い金髪が音を立てて動き、白い耳を露わにする。
そして、その耳の先は、尖っていた。ルイズはそれを見てサァッと顔色を蒼くする。
「え……エル、フ……!?」
エルフ。始祖ブリミルとその子孫たる人類の宿敵、否、天敵。
聖地への道を阻み、強大な先住の魔法を操り、不老長寿で男女とも美貌を持つ、ドラゴンよりも恐るべき亜人族。
聞くところではその耳は、このように尖っているのだとか。
攻撃の手が止んだ。巨大な胸を持つ少女はどうにかルイズから距離をとり、はぁはぁと呼吸を調える。
「…………ええ、そうよ。人間とのハーフだけれど、半分はエルフの血を引いているわ。
でも大丈夫、恐れないで、危害を加えるつもりはないから。
そんなつもりがあれば、あなたを助けてなんかいないでしょう?」
というか、ルイズに一方的に危害を加えられていたのは彼女なのだが。
立ち上がった少女にふわりと微笑まれ、ルイズは毒気を抜かれて敵意を失い、やっと正気に戻った。
「え、あ、うん、その、ごめん。助けてくれて、あの、ありが……とう」
「いいえ、こちらこそ、どういたしまして。……ああ、びっくりした」
あははは、と笑い合う二人。しかし、ルイズの胸中はまだ穏やかでない。心臓がバクバクしている。
そうこうしていると、床に敷かれた毛布から灰色頭の子供が起き上がった。
「ええい、なんだというんだ、生き返るなりうるさいぞルイズ。おはよう」
「マツシタ……ああ、おはよう?」
「相変わらずきみは、無駄に騒がしいな。ちったぁ見直してやったというのに。
こんな少女の一人さえ呑み込めないとは、きみの器とやらは上げ底か?」
「へん、あんたは相変わらず口が悪いわね、まったく」
ようやく、いつもの調子が戻ってきた。夢ではない、私たちは地獄から脱出し、現世に復活したのだ。
「む……どうやら、ぼくの右手の例のルーンも復活しているな。まぁよかろう、新たな契約の印だ」
着ていた衣服は洗濯されて、祈祷書やルビーとともに枕元に置かれ、素朴で清潔なものに着替えさせられている。
松下の枕元には占い杖もあるし、隣のベッドからはシエスタも起き上がってきた。
……ええと、なんかもう一人いた気もするけど。
「で、きみが助けてくれたのかな? ありがとう、そしてえらく迷惑をかけたようだな、すまなかった。
ぼくは松下一郎。この娘はルイズ・フランソワーズで、黒髪の娘はシエスタだ」
「あらあら、随分と大人びているわね。よろしくマツシタくん、ルイズさん、シエスタさん。
私の名前は、ティファニア。呼びにくければ、テファでいいわよ」
座り直し、落ち着いて彼女の話を聞けば、ここはアルビオン大陸の内陸部、サウスゴータ地方。
港湾都市ロサイスから50リーグほど離れ、街道筋からもやや離れた、ウエストウッドという森の中の小さな集落らしい。
あの戦いで、虚無の魔法が開いた次元の裂け目に落ちた際、肉体だけがここへ転送された、ということなのろう。
「あなたたちが近くの森の中で、血を流して倒れていたから、ここへ運び込んだの。
降臨祭明けのころだし、あれからもう三週間ぐらいになるわ。今は第二月、ハガルの月の初めよ」
「で、でも私たち、心臓を貫かれて死んでいたんじゃ……もう傷ひとつないわ」
「そうね、マツシタくん以外の外傷はそれほどでもなかったけど、確かに息はなかったわ。
せっかくだから、この指輪を使ったの。先住の魔法の、水の力を蓄えていた癒しの指輪よ」
ティファニア……テファはそう言うと、くすんだ銀の台座のみの、古ぼけた指輪を見せる。
かつては台座に水の魔力を秘めた石が嵌っていたのだろうが、今は力を使い果たして溶けてしまったようだ。
「見ず知らずの私たちのために……貴重なものを、使わせてしまったようね」
「ふふ、いいのよ。見知らぬ人でも見殺しにはできないし、道具は使うためにあるんだもの!
息を吹き返してから三週間も目を覚まさなかったから、けっこう心配していたんだけど」
なんとも、善良な少女である。物腰もどこか高貴な生まれを窺わせる。
世にも珍しいハーフエルフが、こんなところにひっそり暮らしているとは、なにか余程の事情があるのだろう。
「……ところで、今更だけど……あなたたちは何者なの? トリステインの人?」
「さて、どう説明したものかな。なかなか込み入った事情でね」
ひそひそとルイズが耳打ちする。
「マツシタ。この娘、ハーフエルフよ。しかも有り得ない胸をしているし、何者なのかこっちだって尋ねたいんだけど」
「どう見ても善良そのもので、敵意など欠片も感じないが。ありのまま話してみよう。
彼女にしても、いろいろ話したくない事情は抱えているだろうし」
当然といえば当然なのだが、ルイズはどうにも、テファをいまいち信用し切れない
善良で親切なのはよく分かる、しかしあの耳と、あの胸だ。目に入ると恐怖心とコンプレックスが著しく刺激されてしまう。
ルイズは自らの貧弱な平地に掌を当て、ハフゥと切ない溜息を吐き、暗澹たる表情を浮かべた。
《幸いなるかな、貧しき者。神の国はその人のものなればなり。
幸いなるかな、飢えたる者。その人は満たされん。
幸いなるかな、悲しむ者。その人は慰めを得ん》
(『平地の説教』:新約聖書『ルカによる福音書』第六章より)
(つづく)
とりあえず乙。
でも、一応投下予告はしようよ。
179 :
松下:2008/11/16(日) 22:45:40 ID:hLWCZOH5
投下終了、支援感謝。松下の親父は「太平洋電機」の社長でしたな。
さようなら、オリヴァー・クロムウェル。
そしてようやくテファが本格登場しました。いきなりえらい目に遭ってるけど。
では、また。
…申し訳ない。
>>142 つまりゾフィー隊長を活躍させればいいと言うことだな?
松下氏乙っす
そういやメフィストは?
悪魔くん乙です。いつ見てもルイズのこの行動はきでもくるったのかー!としか思えませんね、センセイ。
>>142 魔法使いが誕生したのはかつてディファレーター因子が降り注いだのが原因だった、というのを思いついた。
…しかしウルトラマンが相手じゃどんな魔法使いでも敵たりえないので没。
やっぱり怪獣ごと召喚しないと物語が成立しないよなぁ…。
いや、プレッシャー星人みたいなのもいるから魔法使いも侮れんぞ
トラトラトラ ワレ PW 入手 ニ 成功セリ(何
いえ、ちょっと言いたかっただけなんです(サガフロ2の設定集もどこかに流れてないものか…
まぁそれはさて置いて、続きが書けたので投下したいと思います。
23:15分から。
悪魔くん乙です
そしてギュス様支援!
クロムウェル哀れだなぁ
イザベラ、ワルド、フーケが良い扱いになるSSは多いのにクロムェルが良い扱いな
SSが皆無なのは何故か
帝政ゲルマニア皇帝アルブレヒト三世とトリステイン王国王女アンリエッタ殿下の婚礼の儀式はトリスタニアの夕方から始まり、
ウィンドボナの朝日で以って終幕を迎える事となっている。
勿論たった一日の行程ではない。有力貴族を引き連れた遠大なる『結婚旅行』として企画され、総行程は6日、予備日2日を抑えたスケジュールが組まれている。
宮廷側ではその行程に管理される人間の便覧が用意され、その中にトリステイン側から選出された『祝いの巫女』役として、ルイズの名前も入っているのであった。
トリステイン魔法学院の早朝未明、まだ誰もいない学院の敷地で一人ギュスターヴがデルフを構えて立っていた。
彼は紫色にたなびく空が匂う中で中段に構えたまま、瞠目し静かに気を凝らしている…。
剋目、流れるような剣舞を放つ。飛び込み、或いは素早く身体を引く動作を繰り返す。
朝露の光る中で、ギュスターヴはかれこれ二時間はこうして剣を振っていた。鋼の王と呼ばれ、剣戟が達人の域になって久しいギュスターヴだったが、
こうして肉体の鍛錬を欠かしたことは無い。
何しろ、若々しい態度と余り老け込まない容貌で忘れられがちだが、齢49の肉体は怠けるとすぐに衰えてしまうのだ。ガンダールヴの刻印が肉体を強化すると言っても、
安心はしない。
最後、ぐっと踏み込んで一刀を振り込んでしなやかにデルフを納めた。
「…ふぅ……」
熱を持つ身体をゆっくり冷やすように静かに息を吐く。
「ご苦労さん相棒。そうやって剣として大事に使われると俺様なんでか涙が出そうだぜ。目、無いんだけど」
「何わけの分からない事を…。さて、そろそろルイズを起こしに行くか…」
学院の遥か遠くの山際に、朝日が昇り始めていた。
さて、そうして起こされるはずのルイズは、実はとっくに起きて――尤も、寝間着のままだったが――机に向かっていた。
机には開かれたままの本が数冊。ペンとインク壷、まっさらな便箋に加えて、丁寧に書き綴られた一枚の便箋が乗っている。
ルイズは本と書き取った便箋を読み比べて小さく呻っては、まっさらな便箋にちろちろと文を何度か書き、また呻ってを繰り返す。何度か繰り返してから、
書き綴った便箋に文章を加えていった。
「〜〜〜………〜〜……〜…で、できたわ…っ!」
ペンを置いて書き終わったばかりの便箋を取り上げる。便箋には美麗な語句をちりばめた音韻鮮やかな詩句が並んでいた。
恐る恐ると便箋を机の上に置いて、肩を揺らして大きく息をついた。
「やっと…やっと出来たわ〜……」
椅子から降りて身体を解しながら、ルイズはカーテンの隙間から漏れる蒼い朝日に目を細めた。
ルイズはこの半月の間、ギュスターヴを助手に図書館に潜りこんでは文法書や詩集を引っ張り出し、必死に祝詞の製作に励んでいた。
加えてオスマンの添削を受けての作業だった。オスマンは国一の頭脳らしく丁寧な指摘をルイズに与えてくれたが、
ルイズは中々規定の字数まで文を作ることが出来なかった。
そして今日の添削を以って締め切りと宣告と言われた中、早朝になってようやく完成したのだった。
ふらふらとベッドに倒れこんたルイズは、布団の柔かな感触に頭を埋める。
「後は…これをオールド・オスマンに見てもらえばいいわね」
ベッドの上にはまだ自分の温もりが残っていて気持ちいい。
「朝食の時間まで、まだ少し時間があるから…ほんのちょっとだけ……」
根つめすぎていたのか、ルイズはそのままベッドの上でとろとろと眠りはじめた。
机に置かれた『始祖の祈祷書』が開かれたまま、ぱらぱらと風ない中で繰られている…。
『大きな一歩、躓いて…?』
パナソニック乙でした
何気に原作通りのルートでテファ登場まで進んだのは初めてかもしれんなぁ
そして支援
その日の午前中、最初の講義はコルベールによる各種秘薬の取り扱い方について…のはずであったが、教室には生徒がかなり疎らに入っていて、
はっきり言ってスカスカだった。
実はここ暫くの間、コルベールは講義を殆ど休講にして自分の研究に時間を充てているのだ。
だから今教室にいるのは友人と談笑しに来ているような生徒くらいで、他の生徒は好きな場所に行っているのである。
そんな教室にルイズがやってくる。その姿は普段より服がよれ気味で、豊かなチェリーブロンドも少しぼさぼさしている。
…二度寝した結果朝食を食べ逃し、急いで仕度して部屋を出たのであった。お陰で今日もコルベールの講義が無いことをすっかり忘れていた。
「……もう、最悪。それもこれもギュスターヴがちゃんと起こしてくれなかったせいよ!まったくあの中年使い魔ったらどこに行ってるのかしら!」
ルイズの記憶では定時にギュスターヴが自分を揺り起こすところを覚えているが、その後がなんとも曖昧になっている。
もしかして起き切らない自分を放っておいて一人で朝食に行ったのかもしれない。
きゅうぅ、と下腹部が締め付けられる。空腹で苛々もしていた。
「…うぅ。お腹すいちゃったけど、どうしよう……」
途方にくれていると廊下からゆらゆらとした悪趣味のシャツがやってくる。
「…やぁルイズ。どうしたんだい、こんなところで」
色素の薄さが定着しつつあるギーシュは目の下のクマを濃くして壁に寄りかかった。
「なんでもないわよ…。ハァ、休講だし、食堂で何か作ってもらうかしら…」
ギーシュを袖にしてルイズは自分のお財布に今幾らお金が残っていたかを考えていた。因みに学院の食堂は三食以外について、
生徒教員が厨房に直接お金を払って料理をしてもらうようになっている。
ギーシュはゆらりと教室に入ると日誌らしきものを手に教室から出てきた。
「ははははは。…さぁ、僕も用事は済んだからコルベール師のところに行ってくるよ…」
日誌を片手に悪趣味なシャツはゆらゆらと去っていった。
再び下腹部が締め付けられる。
「…お腹すいた」
とぼとぼとルイズの足も教室から食堂へ向かっていく。
「そういえばミスタ・コルベールの実験ってどうなってるのかしら?飛翔【フライ】や浮遊【レビテイション】を使わないで空を飛ぶって行ってたけど…」
コルベール研究塔前は、天幕を中心として随分と様変わりしていた。
天幕の傍ではコルベールとギュスターヴの手で不可思議な物体が製作されていた。
それは木板を箍で半円錐状に締めた物体に、鉄棒で作った骨組みを乗せ、そこに布を張って翼のような形をとっている。
翼は大きく左右に張り出し、さらに円錐の先端に合うように後部にも二つの小さな翼がついている。すべての翼の後半分は可動できるように作られていて、
さらに各々にはワイヤーが繋がっている。ワイヤーはすべて、円錐の広がりの上部に張り出している二本のバーへ集まっているように見えた。
その部分だけを見ると、蝸牛の角のようでもある。
円錐の先端を挟み込む形で、16本の筒が付いている。『飛び立つ蛇君』改型噴射推進装置であった。
「右のレバーを引けば右方向へ、左のレバーで左方向に曲がれるはずです」
製作及び設計者コルベールは少々疲れた顔をしていながら、目に光が灯って溌剌としている。
円錐部には人が入り込めるだけのスペースがあり、そこにはいくつかのレバーが付けられていた。
今そこにはギュスターヴが収まっている。架台に置かれた巨大な乗り物の初の乗り手として、コルベールがギュスターヴに依頼したのである。
「コルベール師。この乗り物が風を掴んで浮き、空飛ぶ蛇とやらを動力に進むのは理解しましたが…これだけの物が本当にそれだけで飛ぶのでしょうか?」
動作を確認するように何度かレバーを引く。するとレバーに合せて、羽根と尾羽の末端が上下左右に動いた。
乗り物は最前端から後部まで3メイル、翼の端から端まで5メイル強、正面から見た厚みが1メイル弱とかなり大きい。恐らくちょっとした馬車並の重さがあることだろう。
問われたコルベールは羽根の可動部に油を注して答えた。
「うむ。残念ながら現在の『飛び立つ蛇君』型噴射推進装置の力だけでは離陸する事ができない。そこで」
と、コルベールが取り出したのは両端が板で閉じられた短い鉄の筒。
「機体の下部に4リーブルの風石消費器を設置します。離陸前に操縦部の脇にあるリールを回せば、消費器の中の風石に圧力が加わって約500リーブルの機体重量を
4分の一以下に減衰することができます。約125リーブル以下の重量であれば、16機搭載する『飛び立つ蛇君』型噴射推進装置を2機ずつ発動することで理論上は
離陸が可能なのです。離陸時は噴射推進装置によって機体は地面を滑走しますので、頃合を見て上昇下降レバーを引けば翼が風を掴んで空に上がる事が
できるはずなのです」
「仮定や推論が多い話ですな」
スルッとギュスターヴは円錐部から抜け出る。いつもの服の上から革のベルトを肩掛けになるように身体に巻いている。
操縦部で身体を固定するためのベルトだった。
「仕方がありません。古今、このような方法で空に上がろうとするのは我々が初めてですから」
大人二人が夢か無謀か、挑戦に向けて準備をしているのを尻目にギーシュは一人作業に没頭していた。
溶鉱炉に隣接するように、ふた周りほど小さなドームを作っているのである。
ギーシュの技量では一発で作れないので作る場所にはじめ土を盛り、そこから魔法で徐々に形作っていた。
「ふぅ…ギュスターヴ。これでいいかい?」
呼ばれたギュスターヴはギーシュの作ったドームを確認した。隣の溶鉱炉よりも小さく、すこし歪だが、要望どおりの出来だった。
「ふむ…あとは溶鉱炉の方から排煙を出してもらって、吸気を一緒にもらえるように管を繋げられればいい」
「鍛冶打ち用の炉が欲しいなんて、君は鍛冶師か何かなのかい?」
問われたギュスターヴは頭をかいた。
「まぁ、鍛冶打ちもできる…って言った方がいいのかな」
らしくなく煮え切らない返事にギーシュは首を傾げるのだった。
昼食時となって、一旦解散したギュスターヴが貴族用食堂を覗くといつもの席でルイズが食事を取っていた。
「ちゃんと起きれたみたいだな」
声をかけられたルイズは振り返ってギュスターヴを確認すると、顔を背けた。
「…なんだ、起こさなかったと怒ってるのか?」
「当たり前でしょ…どうして朝起こしてくれなかったのよ」
「起こしたさ。起こしてやったのに二度寝して寝過ごしたのはルイズ自身だろう?」
普段どおりのふてぶてしい態度のギュスターヴに、ルイズは段々ムカムカしてくる。自分が根すり減らして貴族らしき義務を全うしようと苦心しているというのに、
自分の使い魔はそんなことをまるで気に掛けない、と。
「人が…誰にも任せられない重要な仕事で大変な苦労をしているって言うのに、なんなのよあんたは!」
無意識に手に持っているフォークが飛んだ。フォークの先はギュスターヴの頬を掠めて床に音を立てて落ちる。
その雰囲気に食堂を一瞬ただならぬ空気が包んだ。ギュスターヴの目は厳しいものだったが、次にはふっ、と笑った。
「それだけ元気なら大丈夫そうだな。しっかりやれよ」
そう言ってギュスターヴは厨房へ行き、視界から居なくなった。
「……ばか」
一人癇癪を起こしたのが情けなくて、ルイズはそのまま食事をやめて部屋に戻っていった。
>>111 亀ネタで思い出したが作品の関係上?ミラーマン、ジャンボーグA、ウルトラマンタロウの世界は同一(ゴルゴサウルス)が出てるため
なおファイヤーマンのみ別世界・・・キングジャイグラスの改造怪獣がいるけど ヤプールがミラーマンのある話で亡くなった、アンドロサウルス(親)を復活させて、Aと激突させても違和感が無いと思う
「…で、頬に傷をもらってきたってのかい」
テーブルで静かに昼食を頂く脇で手の空いたマルトーが聞く。ギュスターヴの左頬には横一線に赤い晴れがうっすらと浮かんでいた。
「ま、人の手前説教するわけにもいかんだろう。あれでも主人だしな」
「でもよぉ。そのお嬢ちゃん、どう聞いてもギュスの主人にしておくにはもったいねぇな」
昼食に出した塩肉の余りを食べながらマルトーが続ける。
「…ギュスよ。俺の知り合いに侯爵家の料理番を代々やってる奴がいるんだ。そいつの主人は料理番風情の友人を家族みたいに優しく扱ってくれるんだとさ。
お前さんも剣の腕があるんならもっとマシな扱いをしてくれるところを探したほうがいいんじゃねぇか」
静かに食事をしていたギュスターヴはシチューのさじを置いた。
「ご馳走様。今日も美味かったよ、マルトー。…生憎と俺は暫く、主人を変える気はないよ。ルイズには色々と恩があるのは確かだし…それに……」
「それに?」
「……少しばかり気になるからな。色々と」
そういうギュスターヴの目は鋭さを佩びていた。
「…ま、ギュスがそういうなら俺は別にいいけどよ」
「気を効かせて悪いな。…じゃあ、俺は戻るから。美味い夕飯、期待してるぞ」
「へ!言われるまでもねぇな」
さくさくとギュスターヴは歩み、地下厨房を出て行く。
残された皿を洗おうと集めるマルトーは、ギュスターヴの出て行った先を振り返る。
「…堂々としたもんだよなぁ、ほんとに平民か疑っちまうね」
埒もないことをぼやいて、マルトーは頭をかいた。
食後しばらくして、ルイズは緊張した面持ちで学院長執務室へやってきた。手には今朝方完成した祝詞の原稿を手に持っている。
「失礼します…」
ルイズが部屋に入ると、既に執務室ではオスマンが待っていた。オスマンはいつもの調子で煙草を蒸している。
「祝詞の出来を見ようかの」
「は、はい。お願いします」
オスマンに渡す手が震える。渡されたオスマンはためつすがめつ原稿の文字列を読んでいるようだった。
直立して待つルイズは一秒一秒が非常に長く感じられた。皿に置かれた煙管の煙が揺れている。
「ふむ…」
「ど、どうでしょうか…」
普段は穏やかなオスマンの眼光が、今日はナイフのように鋭く見える。
「ミス・ヴァリエールや。短い期間でよくこれだけのものを書けたのぅ。これを持って儀礼上で殿下を寿ぐとよいじゃろう」
オスマンが暖かい語調でそう言うと、ルイズの足から力が抜けてフラリとした。
「あ…ありがとうございます」
脱力して腰を笑わせている生徒を細めで見ながら、オスマンはふと、彼女の傍に立つ意丈夫の使い魔を思い出した。
「ところでミス・ヴァリエール。君の使い魔君は最近どうしておるかの?」
「ギュスターヴですか?え、えぇ、とても元気にしてますわ」
何か空々しい風情でルイズは答えた。
「コルベール君とよくつるんどるようで、君としては複雑じゃろうな」
「は、はぁ…」
ルイズとしては答え辛かった。使い魔が構ってくれないなんてメイジとして情けなかろうという気持ちがある。
「ま、彼は君の使い魔じゃが一個の人間じゃ。扱いづらいところもあるじゃろうて」
「えぇ、そ、そりゃあもぅ……?」
話しかけたルイズが止まった。何やら外から轟音と微振動が伝わってくる。
「な、なんじゃ…?」
やおら窓に駆け寄る。ルイズの目下にはコルベール塔の脇を炎の尾を上げて蛇行する謎の物体が見えた。
「ああぁ〜〜〜!誰か、た、助けてくれぇ〜!」
がたがたと揺れながら走る物体から間抜けな叫び声が上がっていた。
コルベールの発明した空駆ける機(はたらき)、名づけて『飛翔機』に乗っていたのはコルベールでもギュスターヴでもなく、
悪趣味なシャツをはためかせるギーシュだった。
ギーシュは食事に出かけたコルベールとギュスターヴより先に戻って鍛冶用の炉を作っていたのだが、後は飛ぶだけと準備されていた飛翔機に
興味本位から乗り込んで色々と弄繰り回している内に推進器を発動させてしまったのだ。
「と、止まらない!だれか助けてくれぇ〜」
がちゃがちゃとレバーを引くギーシュに合せて蛇行して走る飛翔機。そこに偶々居合わせたのは以前渡した秘薬の残りを譲ろうと研究塔にやってきたタバサと、
それにくっついてギュスターヴに会いに来たキュルケだった。
「な、何あれ〜?!」
驚くキュルケに対しタバサはいつもどおりの無表情だったが、その目はぐっと凝らされ暴走する飛翔機を追いかけている。
「キュ、キュルケ!タバサ〜!た、助けてくれ〜」
ゴーゴーと火を噴きながら地面を走る物体からギーシュの声が漏れ聞こえる。
「ギーシュ!?何でそんなところに、っていうか、助けてって言われても…」
「私が止める」
困惑するキュルケを背にタバサが一歩踏み出て杖を構えた。ルーンを唱えると、飛翔機の軌道上の道に水が染み出してぬかるんでいく。
「わ!わ!ゆれ!ゆれる!あでぃ!し、舌、噛む、ぐへ!」
ぬかるみをガタンガタンと揺れながら、なおも走る飛翔機。タバサは次に別のルーンを唱えた。
するとぬかるんだ地面が段々と凍りつき、地面を走る飛翔機の車輪も一緒に凍り付いていく。
凍りついた車輪がギリギリ鳴りながら、徐々に飛翔機はスピードを落としていった。
偶然にも、火を噴いていた推進装置も徐々にその勢いを弱めつつあった。
「はぁ、はぁ、た、助かった…」
減速する飛翔機の中でギーシュが安堵の息をつく。…しかし今度は凍りついた車輪を軸に、飛翔機の後部が徐々に持ち上がっていく。
「あ…え…えぇ?」
抜けた声を出すギーシュを抱えつんのめっていく飛翔機は、ぬかるんでいた地面に頭から突っ込んだ。
「あ…」
キュルケのつぶやきも虚しく、飛翔機は泥の中に頭を突っ込んだまま推進器の力で地面にぐりぐりと押し付けられ、頭の部分がどんどんひしゃげていく…。
推進装置が完全に止まった時、ぬかるみの中で逆立ちし、まっさらな布張りを泥だらけにした飛翔機と、ベルトで固定されていなかったギーシュが円錐部から飛び出て、
頭をぬかるみの中にずっぽりと埋めている姿が出来上がった。
投下終了。歴史に残る一歩が悪趣味なシャツによって遅延されました(ぇ
次回からついに、というかやっと、タルブ戦編に入ります。なんかダラダラ書いてて済みません…。
許せるッ!!!!
同じく許せる!!
ギーシュ……無茶しやがって……
ぬかるみでの犬神家か…シュールな
あとルイズ、人に刃物をむけちゃいけません
鋼の人乙
>>188 エルクゥのクロムウェルが割といい待遇かな
あと、左手では切れ者っぽい感じだった
乙です
小説を書いてると予定外に長くなる時もあるからしかたないよ。
むしろ長くならないことのほうが少ないよ。
鋼の人乙!
さて、サガフロ2で風と樹の歌を習得させますかな。
かれこれ6時間ねばってるんだが、頼むから覚えてよコーディー……
って言うか、長くならないコツがあったら教えて欲しいよ。
断滅を覚えたためしがない。
あと、魂の歌。覚えたはずなのに、そのセーブデータが見つからない……
むかーしむかし、小ネタを書いていたら良い文量になってしまって、分割投下せざる得なくなって、結果的に小編になってしまったことがあったなぁ。
>>204 書いた文を半分くらい削れという格言(うろ覚え)があるんでそれを実践するとか
こんばんわ。
毒の爪の使い魔第17話の前半部分が書き終わりました。
予定その他が無ければ0:40より投下しますが、宜しいですか?
はとわを間違えてるのを見ると歯がむずむずするが支援
こんばんはでした……ミスった(汗)
まぁ、気を取り直して……投下開始します。
氷の矢<『ウィンディ・アイシクル』>がジャンガに向かって飛ぶ。
ジャンガはそれを避けようともしない。…ただ黙って見つめていた。
氷の矢がジャンガの身体を貫いた――と、思われた瞬間…。
氷の矢はジャンガの身体を”通過した”。
それと同時に風に吹き散らされる煙のようにジャンガの姿が掻き消える。
その光景にタバサの両目が見開かれるのと同時だった。…耳元で囁く様な声がしたのは。
「甘ェんだよ…ガキが」
チャキッ
――喉元に嘗て感じた、冷たい感触がした。
「俺の速さは前の”決闘ごっこ”で知りすぎている筈だろうが?成長して無ェなァ〜」
「…ッ」
喉元に背後から毒の爪を突き付けるジャンガをタバサは悔しそうに睨む。
ジャンガはタバサを自分に向き直らせると、その胸倉を掴み上げる。
「情けねェな…、親の厚意を踏み躙って復讐に走り、それで魔法の力をつけたってのに、
俺一人にも勝てやしない…。情けねェ…本当に情けねェ」
ジャンガの自分を蔑む声が聞こえる。
胸倉を掴み挙げられた事による息苦しさを懸命に堪え、タバサはジャンガを睨みつけようと目を開く。
そこでタバサは気が付いた…、ジャンガは先程までの嘲笑いの表情を浮かべていない。
――そこにあったのは”哀れみ”だった。
タバサの表情が変わった事に気付いたジャンガは、胸倉を掴む力を若干緩める。
「…さっきの疑問に答えてやろうか?」
「疑問?」
「お前が復讐を果たせない理由についてのだよ」
タバサの脳裏に、先程のジャンガの言葉がフラッシュバックする。
そして、ジャンガは静かに語りだした。
「お前が復讐を果たせないと断言できる理由はただ一つ…」
「何?」
ジャンガは一呼吸置くと、タバサの碧眼を覗き込みながら言った。
「”ガキだから”…さ」
このジャンガは間違いなくタバサマニア支援
支援。ジャンガシャアに!?
――その言葉に呆然となった。
「ガキ…?」
「ああ…そうさ」
タバサの呟きに、そうだと肯定する意味でジャンガは首を縦に振る。
「お前はガキだ…、年がどうのこうのじゃない。文字通りガキだって事さ」
タバサは話の意味を理解できない。
ジャンガは軽く鼻を鳴らす。
「面白い話をしてやる…、俺の知ってる奴に一人のガキがいる。いや…、”いた”と言うべきか?まァいい。
そいつはな、とある奴に親を殺されてな…復讐を誓い、賞金稼ぎとなった。…お前と似てると思わないか?」
僅かに顔を顰めるタバサ。
「そいつは、本当にお前と似てたゼ。復讐を考える余りに周りが見えずに突っ走り、復讐の為ならどんな事でもする。
自分の事は誰にも言わず、ただただ自分の親の敵を追いかけるだけだった」
「……」
「だが、そいつは親の敵に最初…まるで歯が立たなかった。軽くあしらわれ、バカにされるだけ。
…俺に適わないでいる、今のお前のようにな」
タバサは僅かに唇を噛み締める。
その様子をジャンガは静かに見つめる。
「だが……そのガキは最後には親の敵に見事勝ったのさ」
「…どうやって?」
タバサが興味深そうな表情で聞いてくる。
ジャンガは軽く鼻を鳴らしながら、笑みを浮かべた。
「ところで、話は変わるが……俺があのルイズ嬢ちゃんに召喚された時の事を覚えているか?」
突然の話題の変更にタバサは一瞬途惑ったが、頷いて見せた。
「その時、俺は気を失ってたんだが……右胸を銃で撃たれていたろ?」
「銃?」
「…そうか、”こっち”は俺のいた”向こう”と違って銃は殆ど発展してねェんだったな…」
「”こっち”…、”向こう”…?」
怪訝な表情を浮かべるタバサにジャンガは言った。
「教えてやる、俺はこのハルケギニアどころか、この世界の何処の出身でもねェ」
「え?」
「俺はあのルイズ嬢ちゃんに召喚で、こことは全く”別の世界”から呼ばれたんだよ」
別の世界……それは普通ならば理解し難い概念である。
だが、あの『土くれのフーケ』の一件で彼が使った『破壊の箱』……あんな物を自分は知らない。
それを何であるのか理解しているかの如く、彼は易々と扱って見せた。――信じない方が難しい。
理解したのか、タバサはジャンガに頷いてみせる。
「なら、話を続けるぞ。…俺は右胸を銃で撃たれていた、それは解ったな?」
頷くタバサ。
彼女を静かに見据えながら、一呼吸置いてジャンガは口を開いた。
「その銃を撃ったのは……今の話の、親の復讐を誓ったガキさ」
「……え?」
どう言う事だ?…いや、そう言う事なのだろう。
呆けた様な表情になったタバサの顔を見つめながら、ジャンガは言葉を続ける。
「そのガキの親の敵ってのは……俺の事だ」
開け放たれた窓辺から静かに吹き込む風が、カーテンとタバサの髪を揺らした。
短いですが、今回はここで投下終了です。
タバサと某金色の死神は、バックストーリーが良く似ていると思う。
>>212
あ〜…そう言えば、あの人言ってたっけな?そんな台詞…。意図はしてなかったのだが。
では、今夜はこの辺りで。アディオーーース!
毒の爪の人乙!
今回も続きが気になりすぎる
毒爪さんGJでしたー
しかし続きの気になる切り方をしてくれますな
ふと思ったんだが、今の1万円札や500円硬貨みせたらコッパゲ喜ぶよな?
時計とかも良いかもしれん。
ノートパソコンとかだと逆にマジックアイテムっぽく見えてダメかもしれん・・・
サイトはノートパソコンはもってったが、サイフやら時計は持って行かなかったんかな・・・
一万円札を見せても精巧にできたふくざつな絵札って認識だけで喜ばないんじゃないかな?
219 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/17(月) 01:16:18 ID:FQWBKhqR
普通に写真とかの方が良いか・・・
向こうにはカメラみたいなマジックアイテムないんかな・・・
6千年の魔法文化があるのに・・・
逆に考えるんだ。六千年も暗黒時代が続いていると。
スマン、あげてもーた…orz
六千年も中世の技術レベルで止まってるってのがありえないよな
魔法なら魔法なりの未来都市みたいな世界観になっててもおかしくないよな
SS書く上ではそういう不自然さがあった方が話を展開しやすい場合もある。
何者かが干渉して技術の発展を抑制してるみたいな。
六千年をかけて今のハルケギニアなのかもしれん。
どちらにしろハルケ住人の大多数(主に貴族なんだろうけど)は現状に満足しているから、
コッパゲ先生のように革新的な技術開発に挑む人が稀有な存在なんだろう。
それに貴族は平民が力をつけるのを快く思わないだろうし、意図的に進歩を遅らせている
節があるのやも。
>>218 その複雑な絵柄を、寸分たがわぬ大きさの紙に、これまた寸分たがわず印刷してあるのを見てコッパゲが刺激されんわけがなかろ。
そういえばまとめに載ってるSSのどれかに、おマチさんがサイトから札を貰って好事家に売って…ってのがあったような。
>>224 ああ、そうか、貴族しか先端技術に触れる者が居なくてその貴族が少なけりゃそんなもんか。
マスケット銃は在るんだし技術的には500年くらい遅れてる程度と考えると意外と進歩は早いのかも。
つーか産業革命後の進歩が異常なんじゃねーかな
本当にメイジ=貴族な社会だったら、完全に魔法に依存してしまって科学が発展しない
で、その魔法は遺伝依存だから魔法の進歩=種の進化
ゆえに科学も魔法も進歩が遅くなる
地球の歴史とは300〜400年、およそ350年ほどのズレがあるようだ
ということは、
ナポレオンが戦ってるころ(200年前、19世紀初頭)、ハルケギニアでは百年戦争末期(550年前、15世紀中期)
百年戦争やってるころ(550年前)、ハルケギニアでは十字軍時代(900年前、12世紀初め)
十字軍やってるころ(900年前)、ハルケギニアではフランク王国時代(1250年前、8世紀中期)
…みたいな感じでズレてるのかも
アニメのほうでグラビア写真が載ってる地球のエロ本が
物凄い細密画の謎の本として家宝になってたじゃないか
ちょっと聞いてみるが、猿さん回復するのって、午前0時くらい?
0時過ぎたらまた投稿できる?
いかにもその通りじゃよ
<<231
お返事感謝。
ならその時だけは代理投稿なしでも多く投稿できるんだな…
233 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/11/17(月) 03:25:52 ID:DRLseXg2
二重国籍を阻止するために議員に電話とメールとFAXしてください
さるさんは「毎時0分」解除だろ?
>>217 前に本スレでも話題になった
日本の技術で作った百円白銅貨の純度や鋳造とは思えない五円玉の彫金技術は驚愕モノだろうな
不純物コンマ・パーセント以下の青銅で出来た十円玉なんてギーシュが狂喜しそうだし
粘土から作った金属、アルミニウムの一円玉は完全なオーバーテクノロジー
アルミニュームを錬金すれば武器売ってくれる使い魔。
ジュピロの読みきりか、懐かしいな
硬貨の話題で思い出した。
表と裏が逆の10円玉をやろう…
文化や技術の発展を阻む存在が居るとか。
技術が進む事で戦争のような悲劇が起こるからと、研究者を殺して回るようなのがなんかのゲームで居たような……いかん、具体的に思い出せない。
クロノクロスは超存在が人間の発展を阻んでたな
>>235 さぞかし高名なメイジが作ったにで終わるんじゃないか
>>157 絶望だねッ!
そこからどう反撃したのか気になります。
>>239 人間の技術革新を邪魔するというのであれば現在仮面ライダーキバのファンガイアキングがやっています。
>>238 南条くんかw
交渉では大変お世話になりました。
>>239 棄てプリのピースメイカーは数えるのがバカらしくなる年月、
人類を中世レベルで固定してた
かなり異色だけど魔法も有るし相性はいいかも?
昨日チャクル・ダヴィが話題に上がってたけど殺人狂だから召還したら惨劇が待ってる……
召還するなら同じ暗殺者だったキダーフとかのが無難だよな
召喚しちゃいけない連中
エド・ゲイン
ヘンリー・ルーカス
大久保清
ソーヤー家の皆さん
ジェイソン・ボーヒーズ
フレディ・クルーガー
激伝のメフィラスはドラゴンボールのピッコロさん的ポジションだからな
>>222 >魔法なら魔法なりの未来都市みたいな世界観
ぱすてるチャイムContinueみたいなのかな?
あの世界は銃は火縄銃だけど、テレビや携帯“伝話”があるし
>>246 死闘をへて仲間になるっていう少年漫画の王道を見事にやりとげてたからな。
オリジナルでは合体怪獣シーダがかっこよかった。
思ったんだが超闘士激伝のブラックピジョンならおとなしいし、使い魔にピッタリじゃないか?
もっとも原作ではメタリウム光線を跳ね返してエースを倒しかけたほどに強力な超獣だけど。
>>245 >ソーヤー家の皆さん
“掃除屋”ソーヤーの家族話なんてあったっけ?と一瞬思ってしまった
青銅のゴーレムをチェーンソーで真っ二つにする使い魔ソーヤーたん
さぞ斬りがいがあるだろう
避難所の設定スレでは、ハルケギニア6000年はフカシで実際は600年くらいじゃね?という方向だったな
>>250 彼女が喉に付けてる人工声帯って電動式じゃなかったっけ
電池切れたら何も喋れんのだが。
…それはソレでネタになるなぁ。
>>239 スターオーシャンブルースフィアとか?
アクマが文明の管理をして、どんどん大陸削っていってた。
毒餃子とかダンボール肉マンとかありそうだな
>>251 そして地球のあらゆる物のハルケギニア起源説を主張するんだな?
もしも文明が発達しすぎて恒久平和とかが築かれちゃったりしたら面白くないから破壊するだろ、天使とか使って。
創造神フェイズ的に考えて。
多くの市長が大規模火災起こしたり宇宙人襲来させたくなるようなものか
>破壊するだろ、天使とか使って。
破壊天使とか使って大地をコジマまみれにする気か
ハルケギニアは難易度開拓者でやってるから
CPUの発展速度が異様に遅いだけなんだよ
天帝なら今頃恒星間移民を達成してた
>>259 やばいじゃねえか、プレイヤーが核ミサイル持って遊びに来るぞ
別大陸で面倒ならスルーされるかもしれんが
シャルバート星みたいに自ら超科学文明を捨てて自然とともに生きるってパターンもあるけど
14巻のブリミル達の話が引っ掛けでなければ
テクノロジストに追われたエスパー達、と言うのが立場が近いのだろうな。
元々道具が無くてもなんとかなると概念も育ちにくいのかもしれない。
国籍法とかで色々ゆれてもここはマイペースだなぁ、そこが好きだ。
始祖ブリミル・ル・スイジン・フッキ・ジョカ・シンノウ・ケンエン
【封神】
実はサイトが最初の人だったのかー!
>>264 ブリミルのイメージがあっと言う間に「働く位なら喰わぬ!」
な師父に塗りつぶされたんだが……
>>265 ジュリオと合体して最初の人の力を取り戻すんですね、わかります
となると、女?ポジションは・・・
・・・ルイズ?
すまん、うっかりUnicode使ったみたいだ
ジョカね
>>270 日本国民なら無関係じゃないってことじゃね?
時事問題語る自分に酔いたいなら他所でやれ
学院の黒板にXYZと書いたら…
ゼロ魔世界の文明発達が遅れてるって話はよく出るが、
ハルケギニアって後進地域なんだぜ?
大陸で最先端の技術力を持つエルフは火石燃料の社会。
街全体に暖房や街灯を配備しているらしい。
世界レベルで見れば、遅れはせいぜい100年くらいかと。
社会科学系で5%=300年以内なら誤差の範囲内だ。
>>274 それは最新巻のネタバレじゃねぇのか?
まだ読んで無い奴への嫌がらせか?そういうのは避難所の設定スレでやれよ
15巻が出てからどれだけ経ってると思ってんだお前
発売日に15巻買ったけどまだ呼んでない俺とか居るぜ?
とはいえ大分経ってるからネタバレ発言しても構わんと思ってるけどなー。
流石に「だったら関連スレ見るんじゃねぇ!」と、言われても仕方の無いレベル
俺まだ原作1冊も読んで無いんだけどなんでお前らネタバレしてるわけ?
今あるSSで、現在の最新刊まで到達するSSが出てくるんだろうか?w
とりあえず、最新刊が発売されて2ヶ月以上経っている。
本屋行けば読めるもんだし、コレはネタバレとは呼ばんぜ。
エスパーで思い出したんだがPSYRENのテレホンカードの行き先が未来じゃなくってハルキゲニアというのも面白いかも
召還されるごとにネメシスQから電話がかかってくんの
>281
それ面白そうだな。しかしやはりデルフ涙目か…
>>281 サイレンて定期的に戻ってくるんだっけ?
どうもです。
第3話、21:40頃から投下してもよろしいでしょうか?
最近しょっぱいのしかなくない?
ゼロの提督のように何度も読めるSSってねえかなあ?
>>285 ですよね。俺もゼロの提督を超える作品に未だに出会えない。
287 :
MtL:2008/11/17(月) 21:41:42 ID:WyecKwcE
ではその十分後に投下を予約しますー。
少女が立ち去って一人残された部屋で、ユーゼスは思案にふける。
この部屋の主である少女―――草原での会話からするに、おそらく彼女が自分を呼んだのだろう。
あくまで彼女の召喚は『きっかけ』であり、実際に自分を必要としているのは彼女ではなく『この世界』そのものである
という線もあるが、自分が呼ばれた意味についてはひとまず保留しておく。
(さて…)
クロスゲート・パラダイム・システムを起動させ、先程自分に施されたルーンとやらの詳細な調査を開始する。
……既に自分の身体に張り付いたと言うか、組み込まれたと言うか、刻み込まれてしまっているため、今更消去したり改
変するのはかなり困難だと言える。不可能ではないが。
理屈としては、物を造っている最中ならば、設計図の変更や製作自体の取りやめが容易であるが、完成してしまってから
細部を変更したりその物自体を完全に破壊するのには多大な労力がかかるのと同じことである。
(…ふむ)
精神操作以外にも何らかの仕掛けが施されているのは、先程の改変で気付いている。だが、着々と進行する精神への侵食
を防ぐのに精一杯で、他の仕掛けを確認する余裕がなかった。
今はとりあえず時間も余裕もあるので、その仕掛けとやらを確認しているのだが……。
(……何だ、これは?)
仕掛け―――いや、このルーンの『機能』はいくつかあった。
精神制御……と言うほど悪辣なものではない。完全に自我を奪って操り人形にするような類ではなく、思考の方向を『こ
の世界を重視する』、『自分の主人を重視する』ように誘導する機能。
『武器』や『兵器』を手にする、操作するという条件によって発動する、その武器の使用方法、および効率的な身体の動
かし方などの読み取り機能。
読み取り機能に連動して、感情の振れ幅……テンションの上下によって反応速度や身体能力を向上させる機能。
この世界限定ではあるが、言葉や文字……正確にはそれに込められた『意味』を、一度学習すれば簡単に習得させ、また
その『意味』を要約・翻訳させて脳内に出力させる機能。
主人が危機的状況に見舞われた際、その主人の視覚で捉えたものを『使役される者』の視覚に投影する機能。
主人が要求した場合に限定されるが、口腔粘膜などを通して身体的に深く接触した場合、『使役される者』が持つ情報を
主人に与える機能。
また、このルーンは刻まれた人間の心臓が停止した場合、『死んだ』と判断して消去されるようにプログラムされている。
(……一つ一つ検証してみるか)
まず精神制御であるが、これは自分のように異世界から召喚された―――自分のような存在が他にもいるのかどうかは不
明だが―――者に対しての枷のようなものだろう。
(せっかく呼び出したものが、勝手に自分の手を離れてしまっては意味がないからな…)
……自分もイングラムにこういう仕掛けを施しておけば良かったかも知れない、などと考えながら、ユーゼスは考案を続
ける。
次に、テンションの上下によって反応速度や身体能力を向上させる機能。
(…随分と非効率的なことをするものだな)
シャイニングガンダムやゴッドガンダムに搭載されていた、感情フィードバックシステムのようなものだろうが、あれの
不安定さは知っている。
確かにかなりのエネルギーを得ることは出来る。しかし下手に感情を高ぶらせれば、周囲の状況が目に入らなくなり、判
断を誤る危険性が高い。
現に『怒りのスーパーモード』を発動させた状態のドモン・カッシュは、東方不敗マスターアジアにとって敵ではなく
(そもそも東方不敗の『敵』となりえる存在はかなり希少なのだが)、逆に倒すべきデビルガンダムにエネルギーを提供し
てしまったのである。
デビルガンダム―――DG細胞の制御にも人間の精神力を必要としたが、ウルベ・イシカワなど、どう見ても制御に失敗し
ていた。独力でDG細胞を完全に制御下に置いたのは、後にも先にも東方不敗だけだ。
自分とて、ウルトラマンの力を使ってDG細胞を制御していたのだから。
……そして何より、自分自身が感情に任せて暴走に近い行動を起こした経験がある。
支援に専念しろ、戦闘豚ども! 支援
そもそも『人間の感情や精神』などという時間経過や状況、何気ない他者の一言など、多種多様な要因に多大な影響を受
けるものに起点を置く、という発想にユーゼスは疑問を抱く。
(……精神制御もこの機能に関連させているのか)
思考や感情の方向を操作して、その感情を原動力に力を発揮させる。しかし完全に精神を操っているわけではないから、
感情の振れ幅が小さければ発揮できる力も少ない。
イングラムやキカイダー、ドモン・カッシュなどを見れば人間の精神に限界はないと信じられもする―――だが、あのよ
うな存在がそうそう現れるわけがない。
ならば感情に関わらず、一定の力の発揮が出来るようにした方が効率が良いのではないか、と考えてしまう。……もっと
も、その場合は発揮できる力が減りもしないが増えもしないのだが。
(……製作者との見解の相違だな)
あらゆる『武器』や『兵器』の使用方法、および効率的な身体の動かし方などの読み取り機能。……これもまた、意図が
つかみにくい。
反応速度や身体能力の向上も『武器』を持たなければ発動しないようだが、これは『人間の感情』以上に曖昧な条件であ
る。
そもそも『兵器』はともかくとして、『武器』とは何だろうか?
剣やナイフや銃は『武器』である。
しかし世界にある大抵のものは、『武器』として使おうと思えばいくらでも使えるものばかりだ。
道端に落ちている小石、小枝、少し長めの布、ペンの金属部、部屋に並べられている本、食事に使う皿、メガネのツルの
部分―――極端な話、防御に使う盾や鎧であっても武器に出来る。
しかもこの機能、武器の使用方法・効率的な身体の動かし方が分かる『だけ』なのである。
仮に自分がモビルスーツやパーソナルトルーパー、ジェットビートルやウルトラホークなどに搭乗した場合、それをスム
ーズに動かすことが出来るだろう。
だが、それで例えばライディース・F・ブランシュタインやヒイロ・ユイ、アラシ隊員やソガ隊員を上回れるとは思えない。
……極端な話、剣や弓を持っても、同じ条件の早川健には絶対に敵わないと確信している。
戦いは身体能力や反応速度だけではなく、経験や勘から来る先読み、駆け引き、戦術の組み立て、一瞬の判断力や決断力
など、数え切れないほどの要因が複雑に絡み合うものである。
宇宙刑事と数々の犯罪者との死闘や、部下や協力者として接してきた者たちの戦いからユーゼスはそれを学んでいたし、
何よりも自分自身、ガイアセイバーズというこれ以上ないほどの強敵と命がけの戦いを行ったから理解が出来る。
………要するに武器の『使い方』が分かっても、それを利用した『戦い方』が分からないのだ。
(それに加えて、だ…)
身体能力と反応速度の向上は、この機能に連動している。
つまり、武器を持たないと、いくら感情を高ぶらせようが能力が向上しない。
緊急事態―――突然の襲撃を受けるなどの状況に陥った時、手元に武器がない場合は『ただの人間』のままで対処しなく
てはならない。
……第一、自分は戦う人間ではないのである。
(一体、何だというのだ…)
言語や文字の習得機能、これは分かる。いちいち考察するまでもない。
召喚された時点で言葉が通じるのも、おそらくはこれと類似した機能なのだろう。
試しに少女の部屋の本棚に並べられている本を一冊手に取り、読んでみる。
(……まったく読めないな)
どうやら一から学習する必要があるらしい。まあ、習得スピードは尋常ではないはずなので、後で少女に頼んで教えても
らえば良い。
続いて視覚の投影機能と、『使役されるもの』の情報の読み取り機能。……当然と言えば当然の機能である。これは少し
細工すれば、逆にこちらの情報を主人に送れる目算が高い。
粘膜同士の接触ではなく、念やテレパシーを通じて繋げた上でこの機能をイングラムに付け、イングラムの情報を逐一
確認していれば、あるいは自分の目論みは成功していたかもしれない。
(……未練だな)
つくづく自分は人間だな、などと自嘲しつつ、考察を続けるユーゼス。
とは言え、最後の一つ―――『心臓の停止に合わせたルーンの消失』は、そう深く考えることでもない。
心臓が停止する、イコール死ぬという図式は絶対ではない。
プロフェッサー・ギルはガイアセイバーズとの戦闘において心臓が停止するまで傷付けられたが、脳死には至っていなかっ
たためにギルハカイダーとして復活した。
だが、建築物から推察するこの世界の文明レベルからするに『心臓の停止』はこの世界にとって絶対の死なのだろう。
死んだ者にいつまでもルーンを貼り付けておく必要もあるまい。
(……理に適っている部分と、そうでない部分が明確に分かれているな)
ぜひ製作者に製作理念や意図を問い質したいところである。
……最初はあの少女がこのルーンを製作したのか、とも考えたが、『平民を使い魔にするなど聞いたことがない』、
『珍しいルーン』などの言動からすると、このルーンの機能や存在はほとんど把握されていないようだ。
施す処置の全容くらいは把握しておいて欲しいものだが、どうも自分の召喚やこのルーンはイレギュラーなものである
らしい。
とすると、少女自身もこのルーンについての知識はないと考えられる。
(………)
とりあえず、自分の現在の状態は分かった。
では次に、この世界についての情報を収集する必要があるのだが―――
ガチャッ
「……言われた通りに大人しくしてたみたいね」
自分の当面の主人と目される、桃色がかったブロンドの少女が部屋に戻ってきた。
「アイツの前に置いといて」
少女は後ろに控えていた黒髪のメイドに指示を出す。言われた黒髪のメイドは部屋の中に入り、パンが乗った皿と水の入っ
たコップを自分の前に置いた。
「どうぞ」
「……ああ」
どうやら自分のために用意してくれたらしい。
「食べ終わったら部屋の外に出しておくから」
「はい」
メイドを部屋から退出させる。バタン、とドアが閉まった時点で、少女はジーッとユーゼスを見つめてきた。
「……はあぁ〜」
ため息をつく少女。その顔には落胆や失望、諦観が見て取れる。
「なんで、こんなハズレを引いちゃったのかしら…。いくら使い魔になる生き物は自分じゃ選べないとは言え…」
「……私に言われても困る」
『使い魔になる生き物は自分では選べない』………聞き逃せない言葉である。加えてこの態度からすると、この少女は自分
を呼び出すつもりは毛頭なかったようだ。
「……一応聞いておくけど、アンタ、平民なのよね」
「その『平民』とやらの定義を教えてもらおう」
「……定義って……」
何だか小難しい物言いをする奴ね、などと呟きながら、少女はユーゼスに問いかけていく。
「アンタ、どこかの国に領地を持ってる?」
「無い」
「……じゃあ、魔法は使える?」
「先程見た空を飛ぶ能力が『魔法』だとするなら、『私には』使えない」
ユーゼス単体の特殊能力としては、バード星人特有のテレパシーが少々と、軽い透視能力がある程度使えるくらいである。
大体、それにしても宇宙刑事ギャバンのパートナーであるミミーに劣るものであるし。
クロスゲート・パラダイム・システムを使って効果を増幅することもできるが、それは『自分の能力』とは言えないだろう。
「じゃあ、やっぱり平民じゃない」
「……ふむ、成程な」
「何が『なるほど』なのよ?」
「……領地を持っていて、かつ『魔法』を行使できれば『貴族』なのだろう、ここでは。それに納得しただけだ」
「はぁ…。貴族を知らないって、どんな田舎から来たのよ、アンタ」
「説明すると長くなる上に、話がややこしくなるので詳細は省くが、『遠くから』と言っておこう」
「………」
何かうんざりしたような表情でユーゼスを見る少女。
アッー! 支援
支援
うるせー!支援だけはしてやる、ただし読まない
「……魔法を知らないってことは、使い魔のことも知らないのよね」
「ツカイマ?」
「アンタみたいにメイジに召喚されて、そのメイジと契約した動物や幻獣のことよ。
…普通はドラゴンとか、グリフォンとか、マンティコアとか、ワシとか、フクロウとか、そういうのが使い魔になるんだ
けど、人間が召喚されるなんて初めて見たわ」
少女は『しかもよりによって平民だし』と、再びため息をつく。
「ふむ」
やはり自分はイレギュラーな存在だったか。
(もしや…)
脳内のクロスゲート・パラダイム・システムを使用し、この世界における時空間を大まかにではあるが観測してみる。
すると、無数の地点で簡易的な、あるいは擬似的なゲートが開いた形跡が見つかった。
と言うか、現在もごく少数ではあるがゲートが開いてる反応があるが―――すぐ消えてしまう。
「その召喚とやらは、ここでは普通に行われることなのか?」
「? ええ、メイジと使い魔は切っても切り離せない関係だし、ある程度の年齢になったら私たちみたいに召喚するわよ」
「………ふむ」
「なんでそんなこと訊くのよ?」
(……別に隠すことでもないか)
「私にはその召喚時に発生するゲートを感知する能力があるからな。やたらとゲートが開いたり閉じたりしているようなの
で、疑問に思ったまでだ」
「………何なのよ、そのムダで役立たずの能力は………」
「私もそう思う」
これほど頻繁にゲートが出現するのであれば、ゲートを開くことはともかくとして、少なくともゲートの感知をする必要は
ないだろう。
加えて、ゲートの種類や発生した時期程度なら分かるが、そこから『何』が出て来たのかは実際に確かめてみないと分から
ないのである。
(まあ一応、ゲートの検知機能はオンにしておくが)
ユーゼスはパンをかじりつつ、そんなことを考える。
…そう言えば、まともに食物を摂取するのも随分と久し振りだ。
「そのゲートを開く魔法で呼び出すのは、この周辺の生物に限定されているのか?」
「ええ、召喚の魔法、つまり『サモン・サーヴァント』は、ハルケギニアの生き物を呼び出すのよ」
「……この周辺はハルケギニアという名称なのか」
例えば地球の『極東地区』であるとか『ヨーロッパ地区』のような地方一帯を指す言葉なのか、それとも『世界』そのもの
を指すのかは不明だが。
「………まあいいわ、それで、使い魔の仕事を説明するけど」
「頼む」
何しろ、自分が呼び出された取りあえずの目的なのだから、これは注意して聞かねばならない。
「まず、使い魔は主人の目となり、耳となる能力が与えられるわ」
「………」
向こうが見た物をこちらに投影する機能しかなかったが、それを説明すると『何でそんなことを知っているのか』を説明し
なくてはならなくなり、続いて『何でルーンの分析などが出来るのか』、『クロスゲート・パラダイム・システムとは何か』
―――と、かなり面倒な事態になりかねないので、あえて沈黙しておく。
「でも、アンタじゃ無理みたいね。わたし、何も見えないもん!」
「そうか」
「………っ」
何の感情も込めずにただ頷くだけの使い魔に、主人である少女のフラストレーションが地味に蓄積されていく。
「……それから、使い魔は主人の望むものを見つけてくるのよ。例えば秘薬とかね」
「秘薬?」
「特定の魔法を使うときに使用する触媒よ。硫黄とか、コケとか……」
「ほう……」
『触媒』という化学的な単語が出て来たことに、ユーゼスは興味をそそられる。
「アンタ、そんなの見つけてこれないでしょ? 秘薬の存在すら知らないのに!」
「確かにな」
生息している地点や、採取する対象の特徴など、詳細なデータを得られれば可能だろうが。
……と言うか、むしろ個人的に採取して色々と観察してみたい。
支援
「そして、これが一番なんだけど……」
『わたし、イライラしています』という態度を顔と声ににじませながら、少女は言葉を続ける。
「使い魔は、主人を守る存在であるのよ! その能力で、主人を敵から守るのが一番の役目!」
(………そういうことか)
だとすると、あの妙な付随機能にもある程度の納得がいく。
『武器の使用』など、ほとんど人間を使役することを前提にしているとしか思えない。
つまり、このルーンは確実に『人間を使い魔にすること』を前提に製作され、用意されたものと結論づけられる。
問題は、ただ『守る』だけならば、それこそ少女の言うように人間以外の動物でも十分可能であるという点だ。
(……『製作者』の使い魔が人間でなければならない必然性があったのか?)
例えば、自分がゼットンやパンドンなどの強力な怪獣を操るか、メフィラス星人やミリアルド・ピースクラフトなどの優秀
な知的生命体を操るかを選択するとして。……いや、知的生命体に関しては『協力』と表現するべきか。
ともかく、単純に使役するのならば怪獣だろう。ウルトラセブンだってカプセル怪獣を使っていた。
しかし意見を求めたり、臨機応変な対応を期待するのであれば、やはり知的生命体である。
もしくは、その個人を強化するための方法として『使い魔とする』という方法を取ったのだろうか……。
(……そうか、万一の可能性として、反抗してきた場合の弱体化を狙ったのか?)
武器があれば身体能力が強化される。つまり武器がなければ、ただの人間である。
魔法とやらを詳しく知らないため、どの程度のことが可能なのかは不明だが、その魔法を使って武器を取り上げてしまえば
簡単に弱体化も可能だ。
(……しかし)
目の前の少女は、このルーンの機能の重要な部分を知らないようだ。
自分が使い魔に与える能力―――見方を変えれば自分の能力も碌に知らないなど、そんなことがあるだろうか。イングラム
のように記憶喪失でもあるまいし。
偶発的に発現したのか、とも考えたが、こんな複雑な条件付けが人為的でなくて何だと言うのか。
『このルーンを与える』という能力がどの時点でこの少女に発現、あるいは何者かから与えられたのかは分からないが、そ
れにしても、もう少しやりようがあるようにユーゼスは思う。
「……でも、アンタは弱そうだし、無理ね……」
そんな内心の思考の回転など露知らず、少女は『こいつに戦闘は無理』と断ずる。
「………私の専門は頭脳労働だからな」
ユーゼスとしても、出来れば荒事は回避したいし、可能な限り自分の手は下さない主義である。
「? アンタ、学者か何かなの?」
「そうだな、研究者だ」
研究対象は汚染された大気の浄化であったり、光の巨人であったり、因果律であったりと、一定しないが。
「……平民の学者なんか、いてもいなくても大して変わらないでしょうが。
だから、アンタに出来そうなことをやらせてあげる。洗濯。掃除。その他雑用」
「………」
酷くプライドが傷付けられる内容だが、かつてのように独房に投獄されたりするよりはマシだ、と考えることにした。
それに、せっかく因果地平の彼方から再び顕現が出来たのだ。
何をすればいいのか、それ以前に何かをする必要があるのかどうかも不明なのである。ならばここでこの少女の世話をしな
がら、ゆっくりと暮らしてみるのも悪くはないかもしれない。
「それにしても……」
「何だ?」
「うん。考えれば考えるほど、人間が使い魔ってのは変だなって。だって、人間を使い魔にするなんて、古今東西、そんな例
はないのよ?」
「………」
聞けば聞くほど、この少女が本当に自分を使い魔にするつもりがなかったことが分かる。
「いっそのこと、トリステインのアカデミーにでも問い合わせてみようかしら」
「『トリステイン』? 『アカデミー』?」
いきなり不明な単語が二つも出て来た。……しかし、『アカデミー』とは懐かしい響きだ。
「……ああもう、そこから説明しないとダメなのね……。
トリステインって言うのは、今わたしたちがいるこの国。ちなみに隣にはゲルマニアとかガリアって国があるわ」
「ふむ」
「で、アカデミーって言うのは王室直属の、魔法ばっかり研究している機関よ」
「……………」
ここに来て、少女の前では初めてユーゼスの表情が動いた。
「ああ、アンタ研究者だったわね。興味でもそそられた?」
「その通りだ。……そうだな。可能であれば、ぜひ連絡して欲しい」
そのユーゼスの言葉を聞き、少女は意地悪そうに笑うと、
「いいの? 多分アンタ、色んな実験されるわよ。身体をバラバラにされたりとか」
常に超然とした雰囲気を持つ、この使い魔を少し脅してやろうとオーバーな表現を持ち出した。
しかし。
「いや、それはまず無い」
「え?」
即座に自分の脅しは否定される。
「『人間の使い魔』のサンプルは、今の所は私一人だけなのだろう? ならばいきなり解剖などはせず、徹底的に観察するは
ずだ。貴重なサンプルを即座に使い潰すわけがないからな。まずは体組織や髪の毛、血液などを調査したり、使い魔になった
ことで得た機能・能力などを分析するだろう」
「は、はあ……」
「そうだな……。解剖するのならば、もっとサンプルの数が揃ってからだな。泳がせるなどして観察するサンプル、解剖する
サンプル、念のために手元に置いておくサンプル、そして万が一の時のための予備。最低でも4体は必要だ。
……少なくとも、私ならそうする」
「………」
いきなり饒舌になった研究者の使い魔を見て、少女は呆気に取られる。
「無論、サンプルの数は多ければ多いほど良いのだが、そうすると希少価値が薄れるからな。『多ければ良い』という発想も
良し悪しだ。
……? どうした?」
「いや、アンタ、今まで口数が少なかったのに、いきなりペラペラ喋りだすから……」
「……どうも私は興奮すると口数が増える傾向にあるらしい。悪い癖だ」
ガイアセイバーズとの最終決戦の際にも、自分の動機、取った手段、その経緯に至るまでかなり細かく、自分で説明した覚
えがある。……はっきり言って、わざわざ説明する必要や意味などほとんど無かったにも関わらず。
―――今後は自重せねばならんな、などと自分を戒めるユーゼスであった。
「とにかく、そのアカデミーに連絡を取ってくれ。魔法の研究機関とやらは、私にとっても興味深い」
「……ああ、まあ、いいけど。アカデミーにはエレオノール姉さまもいるし」
知的好奇心が刺激されるのを自覚しつつ、ユーゼスはもう一つ頼みを申し出た。
「それと、非常に重要な用件があるのだが」
「な、何?」
「……ここの文字を教えてもらいたい」
アカデミーに行ったところで、自分がその研究内容を閲覧できる可能性はかなり低い、とユーゼスは踏んでいる。
何しろ先程から少女は自分のことを『平民』、『平民』と繰り返し呼んでおり、このことからこの世界において、貴族と平
民の間には身分的にかなりの隔たりがあると推測される。
魔法が使えるのは貴族のみ。
アカデミーは魔法の研究機関。
ならば、おそらくではあるがアカデミーにいるのは、ほとんど貴族だけ。
よって、自分が『研究内容を閲覧したい』と申し出たところで、大して話も聞かずに断わられる可能性が極めて高い。
だが、何かの拍子で閲覧できる可能性はゼロではない。
何しろ自分は因果律を操る存在、『確率』や『可能性』の専門家である。
さすがに因果律を操作してまで閲覧したいとは思わないが、ゼロではないならそれに賭けるのもありだろう。
そもそも研究内容の閲覧以前に、字が読めなければ日常生活で苦労することは必至である。
バード星から地球に赴任する際にも、地球の文字を猛勉強したものだ(言葉自体は翻訳機があった)。
幸いにして、今の自分にはルーンの効果による言語の習得を可能にしている。驚異的なスピードでハルケギニアの文字の習
得が出来るだろう。
「……もう夜なんだけど、今じゃなきゃダメ?」
「早ければ早いほど良い」
「………そうね、使い魔の面倒を見るのもメイジの務めだものね………」
少女はまず、文字を紙に一つずつ書きだした。
「これがアー、これがベー、これがセー」
一つ一つの文字を指しながら、その発音を教えていく。
発音が地球のドイツ語に似ているな、などと思いながら、ユーゼスは少女から文字の授業を受ける。
そして一時間後。
「……アンタ、物覚えがいいのね」
「……私自身も少し驚いているがな」
ユーゼスは既に、簡単な文章程度なら読めるようになっていた。
(これがルーンの効力か……)
やはり自分で実感するなり直接見るなりしてみなければ、効果という物はよく分からない。
机上の空論や理論だけでは、限界があるものだ―――などとユーゼスが研究者独特の思考をしていると、
「……とっかかりは覚えたみたいだから、あとはもう自分で出来るわね?」
そう言って、少女はユーゼスに分厚い本を2冊ほど渡す。
「そっちが普通の単語とかが書いてある辞書で、そっちがルーン文字の解説とかが書いてある本。じゃあ、あとは頑張って」
「分かった」
取りあえず基本さえ覚えてしまえば、そこを起点にした応用は十分に可能である。応用にも技術は必要だが。
「……この本棚にある本は読んで良いのか?」
「別に良いけど、それほとんど魔法についての本よ? 平民のアンタが読んでも、あんまり意味が無いと思うけど」
「……ならば一石二鳥だ」
文章を学べて、魔法についての知識も得られる。実に効率が良い。
「ふわぁ……。……それじゃ、わたしはもう寝るから。アンタは本を読み終わったら、そこのワラ束で寝てなさい」
「分かった」
ワラ束、というのが多少気に入らないが、ともかくユーゼスは早速、本棚にある本を一冊手に取り、辞書を片手に読もうと
すると、
「…………ふく」
「?」
「服、脱がせて」
「………そう言えばそうだったな」
雑用とは、こういうこともするのか―――などと考えながら、ユーゼスは少女の服を脱がせていく。
時折、手が少女の胸やヒップに触れたりするが、別にそんなことで興奮を覚えるほど、精神的に若くもない。
年齢を数えることなど止めてしまって久しいが、地球に赴任したのが27歳か28歳ほどのこと。そこから40年かけてクロスゲ
ート・パラダイム・システムを開発したので、単純な精神年齢は70歳近くになっているはずである。
今は、肉体の方は地球赴任時と同程度の年齢になっているようだが。
「じゃあ、これ、明日になったら洗濯しといて」
「………分かった」
寝具のネグリジェを着せると、少女は脱ぎ終わった肌着や下着を指差してそう告げる。
更に少女がベッドに潜ってパチンと指を弾くと、ランプの明かりが消えた。
それを目にして、ユーゼスの表情がピクリと動く。この現象に興味を覚えたらしい。
「……本を読むときは、そこの小さいランプを使いなさい。それじゃおやすみ、……えーと……」
「?」
「……そう言えば、アンタの名前をまだ聞いてなかったわ」
「私もそちらの名前を聞いていなかったな」
何しろ色々とありすぎ、状況把握や説明などで手一杯で、自己紹介などしている精神的余裕や暇がなかったのだ。
「わたしはルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。……呼ぶ時は『御主人様』って呼ぶこと。いいわ
ね?」
「承知した、御主人様。……私の名前はユーゼス・ゴッツォ。呼ぶ時はユーゼスで構わん」
「ああそう、それじゃ……おやすみ……、ユー…ゼス……」
精神的な疲労や、自分に文字を教えてくれた疲労が溜まっていたのだろう。すぐに、くうくうと少女―――ルイズの寝息が
聞こえ始める。
「……さて」
洗濯はかなり困難な任務だが、ともあれ今は何よりも知識欲が勝る。
ユーゼスは魔法の学術書と辞書とで何度も視線を切り替えながら、知識を吸収していくのだった。
以上です。
……原作1巻の第1章がようやく終わりました。
って言うか、3話のラストで自己紹介ってペース遅すぎだろ…。早い人ならもう決闘イベントが終わってるし…。
何でこんなに長くなるんだよう、短くまとめるスキルが欲しいよう、などと考える今日この頃です。
なお、ユーゼスの年齢に関しては、完全に独自のオリジナル設定で、宇宙刑事ギャバンのテレビ放映時、ギャバンこと
一条寺 烈を演じた大葉健二氏の年齢が27〜28歳くらいだったので、スーパーヒーロー作戦において一緒に派遣されたユ
ーゼスも同じ年齢だろうと勝手に推察しました。
それでは、支援ありがとうございました。
乙です
いきなりアカデミーと関係を持ちそうなのは面白いw
今後の展開も期待してます
元ネタは知らないけど、研究者・・・ですか
もしかして頭脳派で行くのかな?茨の道ですぞ。気張らずマイペースで行きましょう
非道い自演を見た
釣り臭いが
とりあえず乙です
305 :
MtL:2008/11/17(月) 22:10:48 ID:WyecKwcE
マジシャン ザ ルイズ 3章 (50)炎首のハイドラ
先に仕掛けたのはワルド。
魔力的な飽和状態に伴う強烈な発光現象。
放電及び発熱現象をも引き起こし、今や大空洞の内部は昼間のそれよりなお明るい。
いや、あふれ出す光は大空洞だけに止まらない。今やアルビオンそのものが光源となって輝きを放っているのだ。
ハルケギニアから半歩ずれた位相の闇の中、アルビオンは限界まで魔力を漲らせる。
はじける寸前の風船、膨らみ過ぎた魔力が、空間の許容量を遙かに超えて蓄積し、それがあわや暴発するという間際、膨大な力が一点に収縮した。
爆縮。
ワルドの右腕が、マナの塊と化す。
暴れ狂う魔力を拳大の大きさに圧縮させて、ワルドは力を溜めるようにその腕を体ごと振りかぶった。
「灰は灰に……、塵は塵に……、貴様は、虚無に帰れ!」
――投擲。
音速すらも軽く追い越し、神を罰する灼光が放たれた。
ワルドが放った魔法、それ自体は驚くに値しない、ごく有り触れたものだ。
火のメイジならば誰でも知っている、ラインのスペル「ファイアーボール」。
原理の上ではそれと何ら変わるところがない。
ただ一点大きく異なる部分があるとすれば、それはメイジが己の内面を拠り所に求める力を、ワルドは自身のみならず他者にも求めたところにある。
魔力の貯蓄先を自分自身に限定することなく、周囲の空間にまで広げ、アルビオンという大陸すらもマナのプールに利用して、ワルドは世界の創世に匹敵する力を扱って見せたのである。
それだけの力を注がれた「ファイアーボール」。
既にそれは似て非なるものと成っていた。
炎は、何もかもをねじ伏せて目標へ向かう。
空間の跳躍、敵を焼き尽くす火である神速の槍は音の壁をものともせずに、空間すらも貫いて外へ。
次元の断徹、何者も阻むことを許さぬ業火の剣は、アルビオンを隔てている捻れた時空の渦を断ち切って、あるべき次元へ。
神意の体現、偉大なる存在の意志を実現する為に放たれた一条の矢の如き火は、標的めがけて一直線に。
黙示録――天空を覆い尽した巨人の猛槌たる炎は、見上げた人間達の網膜に、終末の光景を焼き付けた。
恐るべき魔力、恐るべき火力。
いかな強力なプレインズウォーカーであっても、それを受けてはひとたまりもない。
いや、その威力はウルザの肉体を砕くに止まらない。
それだけの力が炸裂すれば、トリステインどころか、ハルケギニアに尋常ならざる傷痕を残すこととなるだろう。
明らかな、過ぎたる力。
故に、それが過信に繋がった。
「貴様の負けだ子爵」
306 :
MtL:2008/11/17(月) 22:14:34 ID:WyecKwcE
アカデミーの深部。
そこでウルザは小さく呟いて、引き絞った魔力を解き放つ為、最後の式の一欠片を完成させた。
すると、術の完成に伴い、周囲に配されていたアーティファクト達が数回強く瞬いた。
同時、トリスタニア周辺に渦巻き展開していた時空現象が収縮し、そのエネルギーを別のベクトルに置換する。
そうしてアカデミー上空から音もなく放たれたのは、一筋の青い光。
常人のそれとははるかにかけ離れた、ウルザの精神波。
ワルドの放ったものとは対極的な青い光が、空間を駆ける。
次の瞬間、
空間、時間すらも無視した反物理法則的な一撃が、ワルドの火の玉が開いた繭の隙間を突いて、次元の裏側に潜むアルビオンの巨体に直撃した。
ワルドの敗因。
それは一言で表すと経験の差。
後の先。
後から出でて、先に征す。
確かにワルドの術式は先に成立し、先に発動した。
ウルザの魔法は、後追いで発動したに過ぎない。
だがプレインズウォーカー達が行う、頂上の魔法戦において、時間などと言う些細な概念は容易に覆るものなのだ。
先に動くことは不用意に手の内を晒すことに繋がりかねない。ワルドはそれを識ってはいても実感として知らなかった。
故の、落ち度であった。
「繋がった!」
大きな声を上げてマチルダが振り返る。
彼女がいる場所は、戦場からは遠く離れた地、ガリア、ヴェルサルテイル宮殿グラントロワの一角。
ガラクタや調度品が無数に散乱し、積み上げられている薄暗い一室。有り体に言えばただの物置部屋であった。
最初から物置部屋として用意された部屋でもないのだろう、広さはかなりある。
その場所に、マチルダの他、数名からなる武装した一団がいた。
そして、彼らの眼前には白く輝く光の扉、ポータルがあった。
「この扉が、本当にアルビオン内部に繋がっているのね」
そうマチルダに聞いたのは、かつては長く流していた燃えるような髪を、今はセミロングにしている少女
「ええ、そうよ。私がアルビオンから脱出する際にここに繋げておいた扉だもの」
「じゃあ、いよいよ……」
言葉の途中、一度深呼吸をして落ち着ける。
「作戦開始ね」
そのようにキュルケが言葉を続けると背後の一団が一斉に頷いた。
マチルダを先導にして、ゲルマニア・ガリアのえり抜きで部隊で構成された突入部隊、それが彼らだった。
その目的は、アルビオン中枢の破壊。
「……生き残るわよ。まずは、それが前提。……いいわね?」
戦いを前に、静かに目を閉じる。
黙祷の気配を読み取って彼女の部下二人も目を閉じる。
鼓動三つ分ほどの祈りを捧げ、キュルケは目を開いて懐から杖を取り出した。
そして鋭い声を上げる。
「突入!」
その合図で、作戦が開始された。
支援
308 :
MtL:2008/11/17(月) 22:18:10 ID:WyecKwcE
ポータル抜けると、金属の質感を持った岩がごろごろと転がっているのが目に付く、洞窟らしき場所に出た。
辺りは暗い。しかし周囲に散乱する岩がぼんやりと光を発しており、近くにいる人間の顔を見分けられる程度には光量が確保されている。
「こっちよ!」
そう言って一点を指さして、暗がりの中を走り出すマチルダ。
彼女に続いて、その背を追いかけキュルケが走る。更に兵士達が後ろに続く。
アルビオンに進入した彼らの人員は、騎士で構成されたガリア勢九名、キュルケとその二人の部下からなるゲルマニア勢三名、道先案内人であるアルビオン貴族マチルダ、合計十三名。
彼らの一応の責任者は、キュルケということになっている。
裏にあるのはゲルマニア解放に関わる大事の重要な役割をゲルマニアの特使である彼女に割り当てて、少なくとも表立っての面子を立てたということにしておこうという各国の思惑である。
だが実際にはガリア騎士の中にはキュルケ以上に経験を重ねた、キュルケ以上の魔法の使い手も少なくない。
ガリア東薔薇騎士団団長、スクウェアクラスの風メイジ、カステルモールもそんな一人である。
その彼が、今、心中で舌を巻いていた。
(参ったな……思った以上に、早い、それに隙がない)
カステルモールが驚嘆の意を示したのはキュルケの後ろに寄り添うように走っている二人の背中にである。
キーナンとヘンドリック、そう紹介された二人の傭兵の名に、カステルモールは覚えがあった。
『伝説の傭兵』と呼ばれる「白炎≠フメンヌヴィル」ほど抜群の知名度は無いが、両者とも一昔前に戦場で活躍していた一流の傭兵だったと記憶している。
しかし、それもカステルモールが騎士として取り立てられた頃の話である。
ここ十年ほどはどちらも名を聞かなかったため、既に故人となっているとばかり思っていた名でもあった。
その為、部隊編成の際の自己紹介で二人の名を聞いたときも激しく驚いたものだった。
同時に、二人のロートルに不安も抱いた。
『本当に使い物になるのか?』
という疑問が頭をよぎったのだ。
だが、彼の疑問は驚きと共に解消された。
筋肉質の傭兵ヘンドリックは忙しなく周囲を警戒しながら走っている。
甲冑姿の傭兵キーナンは、重そうな年代物の甲冑を身につけながらも、全くと言って良いほど動きを鈍らせずに走っている。
どちらの動作も合理的で、隙がない。
その姿は、十年間も戦場から姿を消していたブランクを、微塵も感じさせないほどの自信に満ちあふれていた。
骨の髄まで戦闘者、カステルモールの目に二人の姿はそう映った。
ポータルの位置から、アルビオンの浮遊を司っている中枢部までは数リーグほどの距離があると、マチルダは事前のミーティングで説明していた。
何故彼女が、このような危険を伴う使命に同伴することを良しとしたか、その真実は誰にも分からなかったが、確かなことはそこまでの道順は彼女しか知らないということだった。
いくつもの枝分かれした道を数回選択し、開けた鍾乳洞のような場所に出たとき、誰かが叫んだ。
「吸血コウモリだ!」
その警告に全員が先を見る。
すると向かう先、鍾乳洞の暗がりの中を、びっしりと無数の赤い点が覆い尽くしているのが見えた。
それに気づいて、先頭を走るマチルダが躊躇って、足を緩めかける。
「駄目! そのまま走って!」
後ろを走るキュルケから叱咤が飛ぶ。
その声を聞いて覚悟を決めたのか、マチルダは体勢を低くして逆にその足を速めた。
大急ぎで駆け抜けて、どう猛な吸血生物たちにたかられるのを防ごうという魂胆だ。
だが、それをあざ笑うように無数のキィキィという鳴き声と、バサバサと羽ばたく音が壁に反響する。
比喩ではなく、文字通り視界を埋め尽くすコウモリの群れ。
あわやマチルダがその餌食になろうかと言うところで、キュルケの呪文が完成した。
「フレイム・ボール!」
マチルダの頭上を越えて、炎の塊が放たれる。
ごうっという音。コウモリの群れの中に投げ込まれた炎球がはじけて周囲に火をまき散らした音が響いた。
無数のコウモリが松明となって鍾乳洞を照らす。
残ったコウモリも仲間を焼かれて驚き散っていく。
そのタイミングを逃さず、一団はその中を駆けていった。
支援
310 :
MtL:2008/11/17(月) 22:21:19 ID:WyecKwcE
キュルケ達がアルビオンに潜入を果たしたのと同時刻、決戦の地ウィンドボナの上空に変事があった。
まず最初に世界を赤く染める炎が出現し、西の方角、トリステインへと向けて流れ始め、暫くすると今度は周囲を青い光が照らしたのである。
そして次に目を開けたとき、戦場にいる多くの者が、ウィンドボナ上空に突如として出現した大質量の存在に声を失った。
およそ高度五千メイルの上空に現れた、浮遊大陸アルビオン。
それが太陽の光を遮って、地上に巨大な影を落とす。
準備に準備を重ねた術式は破られた。
宿敵を焼き尽くすはずの火の玉は、ウルザの放った精神波によって霧散させられた。
のみならず、覆っていた次元の繭をはぎ取られて、居城であるアルビオンはハルケギニアに引きずり出されてしまった。
状況は傾いた、自分にとって悪い方向へと。
ワルドは自問する。
これは決定的な敗北であるのか?
その疑問に対する回答として、ワルドは確固とした意志で立ち上がった。
表情に、敗者特有の負の情念は一切見受けられない。
「いいや。負けてなどいない」
そう、負けてなどいない。
ウルザは倒せなかった。アルビオンは不可侵の領域ではなくなった。
だが、 『ただそれだけ』である。
アルビオンは未だ健在。自分自身もここに健在。
であるならば、何をもって負けだと言うのか。
むしろ必殺だったはずの一撃を受けてこの被害。これはウルザとしても本来想定していた戦果からはほど遠いはず。
ならば互いに失敗しただけではないか。
アルビオンがハルケギニアから遊離した状態であったのを元の次元に引き戻されたのは痛手だが、それにしたところでラ・ロシェールでの貸しを返されたに過ぎない。
付け加えるなら、地を這う蟻のような存在に、アルビオンをどうこうできるはずがない。
よって条件はまだ五分と五分、戦いは始まったばかり。
ワルドの思考はそのように帰結した。
空間を転移すると、そこには既にウルザがいた。
上空八千メイル。
地上はもとより、連合軍、アルビオン軍の交戦空域、アルビオンの浮遊空域よりも更に更に高い空。
そこで二人のプレインズウォーカーは対峙した。
「加減はどうかな、ウルザ。私の方は万全だけれども」
強い風に髭をたなびかせ、帽子を押さえて軽い調子で話しかけるワルド。
着ている服は白一色に染め上げた、魔法衛士隊の制服。
堂々とした佇まい。
一方ウルザは強風に煽られながらも髭一つとして動いていない、まるで風の方が彼を避けているように。
その服は古めかしいローブ、手には滑らかなつやを見せる金属製の杖。
威厳を感じさせる静かな佇まい。
「悪くはない。君を捻るには十分すぎるほどだ」
抑揚を押さえてウルザは言った。
311 :
MtL:2008/11/17(月) 22:24:54 ID:WyecKwcE
最初に仕掛けたのはまたしてもワルド。
空間跳躍でウルザの後方へと回り込み、杖から丸太ほどの太さの熱線を迸らせて背中を狙う。
大気を焼きながら迫る熱線に対し、ウルザは熟練の船頭によるオールを捌きのような淀みない動作で、杖を手の中で一回転。
その動作を鍵として、杖に封じされた防御の魔法が発動し、ワルドの熱線はベクトルを狂わされ、上空へ昇っていった。
ウルザ――転化してから四千年を過ごした超大なる経験と力を有するプレインズウォーカー。
一方ワルド――転化して間もない、歩き出したばかりの赤ん坊のようなプレインズウォーカー。
両者の経験の差は歴然としており、それは子供が大人に挑むよりも無謀である。
だが、その差を埋めてなおあまりある存在がワルドの左手には埋め込まれていた。
最初の呪文が不発に終わったことに特別に反応を示すこともなく、ワルドはウルザの周囲で、頻繁に空間跳躍を繰り返す。
そうやってウルザの補足を逃れながら、その手の中にあるモノを操作した。
『接続』
口にした単語に反応して、ワルドの左手にあった球体から小さく光が零れた。
神経を繋げたコアが、演算を開始する。
ワルドを補うのは、暗黒の次元ファイレクシアの叡智。
ウルザが生まれる遙か以前、古代スラン文明に紀元を見ることのできるファイレクシアの蓄積された知識が、ワルドの盾であり矛であった。
演算一瞬、それを理解できる形に変換してコアはワルドに情報を伝達する。
そうしてコアから最適な魔法構造が、ワルドの内へと流れ込む。
完璧な構造体から導かれた完全な術式。
ワルドは己の計略の成功を確信して、ニヤリと笑った。
「まだまだ宴はこれからだ!」
声を大にして叫ぶと、ワルドは手にサーベルを模した杖を呼び出すと、それをくるくると回し、宙で舞を躍るようにして周囲の空間にマナを刻みつけて魔法を編み始めた。
大型の魔法儀式の兆候。
無論、そのような動作が隙でないはずがない。
ウルザが動いた。
これまで動くことのなかったウルザが疾風の速度で飛翔し、軽やかにワルドとの距離を詰める。
一方ワルドにとってもその行動は織り込み済み。
宙を滑ってアクセルスピン、描いていた『陣』の一部を利用して、炎で形作られた九頭の蛇を迎撃として呼び出すと、ウルザとの距離を離すべく後退する。
全長にして百メイルはあろうかという巨体が、ウルザとワルドの中間に姿を現す。
一つの胴体に九つの蛇の頭、その全てが炎で形作られている魔獣。
それがウルザに襲いかかる。
九つの猛火が伸びて次々迫るが、ウルザはそれらを巧みにかわしながらワルドを追う。
ウルザの目的は術の妨害、魔獣を相手にする必要はない。
しかし、振り切ったはずの炎は、向きを変えて追いすがるようにしてウルザを追尾する。
かわしても、かわしても追いかけてくる。
ここに至って『意志を持った炎』を相手に振り切れないと判断したウルザは一転、杖を掲げて迎え撃つ姿勢を取った。
炎が迫り、熱波が周囲を焼く中、ウルザは口早に呪文を唱えて、次元の向こう側から予め準備していた武装を召喚した。
喚び出されたのは片手剣・大剣・槍・矛・斧・矢・杖、それら七つの機械武器と、鎧一組。
そしてウルザが両手を顔の前で交差させると、七つの武具が目にも留まらぬ早さで飛び出した。
一つ、二つ、三つ四つ五つ六つ七つ。
宙空に光の軌跡を描いた武具が、次々に蛇の頭に突き刺さって炎を四散させていく。
けれど、放たれた武具は七つ、迫る炎は九つ。打ち消されなかった二つの炎蛇が左右からウルザを飲み込もうと肉薄する。
その牙が己の肉体を捉える直前、ウルザは左手で背中にあった大剣を抜剣。
「待ちくたびれたぜ相棒!」
歓喜の声を上げながら振るわれたデルフリンガーが、蛇頭の中心に突き刺さった。
デルフリンガーが膨大な火をものすごい勢いで吸い込んでいく――が、間に合わない。
魔剣が炎を食い尽くすより早く、残った一首がウルザの体を丸呑みにした。
312 :
MtL:2008/11/17(月) 22:28:24 ID:WyecKwcE
意外な展開にワルドも片眉を上げる。
ウルザがいた空間には何も残っていない。炭も残さず消滅したのか?
時間稼ぎにと召喚した炎のエレメンタルが思った以上の働きをしたのだろうか。
いいや、そんなはずがない。
ワルドの確信じみた直感。
その正しさを証明するように、次の瞬間炎の蛇が膨れ上がり、内部から破裂した。
火の粉が舞い散る中心にいたのは、機械でできた鎧を装着したプレインズウォーカー・ウルザだった。
さて、突如として上空に巨大な浮遊大陸が姿を見せ、プレインズウォーカー達が激闘を開始したとはいえ、それが地上及び空中の戦闘に大きな影響を与えることはなかった。
地上では相変わらず連合軍が亜人や死人達と戦い、対空戦力の無力化を図っている。
空中では連合軍の空軍戦力がアルビオン側の空軍戦力を押しており、ゆっくりだが着実に歩を進めている。
だが、それも全体的にみた場合のこと。
戦場の一画に、たった一騎の驚異的な活躍により、連合軍の進軍が抑えこまれている空域があった。
「ふんっ!」
筋肉に包まれた太い腕の中で、ゴキリッという音がした。
その『一騎』であるところの男、メンヌヴィルが新たなる戦果を生み出したところであった。
首をあり得ない方向に曲げた騎士を放り出して、メンヌヴィルは跳ぶ。
竜から竜へ、その背を伝わって移動しては、直接騎乗している騎士を葬る。
そんなことを繰り返して、周囲に展開していた竜騎士達を一掃してしまったメンヌヴィルは、一息をつくべく竜を操って進路を自陣に向けた。
確かにメンヌヴィルの働きで連合軍はその歩みを鈍らせた。
だが、それでどうなるという訳でもないということを分からぬほどに、メンヌヴィルも若くは無かった。
『メンヌヴィル……メンヌヴィルよ……』
と、突如として転進するメンヌヴィルの耳元で大音響。さしもの伝説の傭兵も、これには思わず耳を押さえた。
正確には彼の頭の中に直接話しかけてきているため、そのようなことに意味はないのだが、そんな細かな理屈は彼にとってはどうでも良い。
「竜殿かっ!? 相も変わらずやかましい魔法だなこれはっ! もう少し静かに話していただきたいっ!」
つられて応えたメンヌヴィルの声も大きくなる。
その魔法がどういった類のものか分からなかったが、こうして離れた場所にいる赤青の韻竜と話すことができる魔法なのだと彼も理解していた。彼からすればそれで十分。彼は、物事はシンプルであればあるほど良いと思っている類の人間なのだ
『メンヌヴィルよ。お前にアルビオン内に侵入した鼠の駆除を頼みたい』
抗議の声を無視しての大音声に顔をしかめながら、メンヌヴィルが問いかけた。
「……駆除だと? 中にいる亜人や機械どもにもそのくらいできるだろう」
『念には念を入れる、という言葉がお前達にもあるのだろう? 要はそれだ』
ガンガンと頭に響く大声に、メンヌヴィルは無駄に言葉を重ねる愚を悟り、早々にこの会話を切り上げることにした。
「俺は一兵卒だ。頭を使うのは人に任せる。以上だ!」
そう言って強引に会話を打ち切った。
メンヌヴィルは言った、『自分は一兵卒』であると。
だが、彼はそう言いながらも、ただ人に従っているだけでは生き残れないということを知っている。
従順なだけの『犬』は、戦場では長生きできないのだ。
指示に従うべく、竜の手綱を引いて進路を変更する。
視界が上へと持ち上がっていく。
その途端、正面に捕らえていた大型戦艦が火の手を上げた。
そして、あれよあれよという間に黒煙を上げ、最後には爆発四散してしまう。
その船は、先ほどの通話が無ければ補給を受けるために立ち寄る予定だったフネだった。
「……どうやらまだ運は俺を見放してはいないようだな」
言って、メンヌヴィルは犬歯をむき出しにして笑った。
頭が九つもあるというのは厄介極まりない。かかる手間が九倍だ。
――伝説の傭兵 メンヌヴィル
313 :
MtL:2008/11/17(月) 22:31:33 ID:WyecKwcE
以上で投下終了です。
>>301様
投下前の誤字チェックで支援出来なくて申し訳ございません。
それでも誤字というか、変更予定のまま換え忘れていた表現の箇所があってちょっとへこみました。
何カ所か、wikiに載ったら修正します……
乙です。
うーむ、ワルドがカッコイイですなぁ。
ラスボスの方、MtLの方乙です。
ラスボスの方、短くすれば短くするだけいいってもんじゃありませんよ?
長くすれば状況描写だって詳しく書くことができるんですし、まあ長すぎるのもよくないのでさじ加減が大変ですが、
ともかく私はそれくらいの長さなら十分読める分量だと思いました。この調子で頑張ってください。
規制解除してくれ
たしかユーゼスは攻略本に載ってる設定では65歳だからそう遠くないね
小ネタ投下OKですか?
元ネタは最後に発表したいのですが。
とりあえず、自分は支援するぜ!
「ゼロの恐怖症」
「ここがトリステイン魔法学院女子寮か」
男は小高い丘の上から女子寮を眺めていた。
「人間、やはり我らが警護した方が……」
「かまわぬ、私1人で行く」
警護と思しきエルフの言葉を遮り、男は女子寮に向かって歩いていく。
エルフは手にしたカードを通じて校舎の屋根に配置された部下に連絡する。
「国王が1人で建物に入る」
『了解、周辺は包囲した。侵入者があれば攻撃する』
「ようこそウエルカムじゃ!」
「あらあら、あんたの顔は見た事あるわよ。ガリア王国のジョゼフ1世国王じゃないの」
男……ジョゼフ1世を出迎えたのは、たてがみのようにつながった髪と顎ひげを持ち顔面に大きな傷跡の残る老人と、彼を召喚し助手となったルイズだった。
「トリステインに来訪していたとは聞いとらんが、お忍びかね?」
「すまんが時間が無い。私の願いを聞いてくれ」
「もちろん! さァ話したまえ!!」
「私は今決断を迫られている。我がガリア王国は開戦の準備が整っている。私の命令1つで全軍が戦闘に入るのだ。私も人の子だ、戦争は怖い。何万人もの人が死ぬ命令を出すのは怖い。
しかしやらねばならぬ。ガリア王国国王は腰抜けではいかんのだ。頼む、私から戦争の恐怖を取り去ってくれ!」
ルイズはジョゼフに呆れた視線を向け、
「えーと……、あなた本当は自分が臆病者だと思われるのが怖いんじゃないの? そっちの恐怖を取り除いてあげましょうか? 自分の男らしさを証明するために戦争始めるつもりじゃないでしょうね」
「そ、そんな事は無い! とにかく! 私の望みを叶えてくれたまえ!」
「もちろん! 患者の要望が全てに優先する! さァ治療に取りかかりますぞォッ!!」
校舎の屋根に配置されたエルフが、女子寮から出てきたジョゼフと思しき人影を発見した。
『国王が建物から出てきた。確認しろ』
「了解。国王を確認した。……な、何か様子が変だ。凄い力が入っている」
肩をいからせ大またでのしのし歩くジョゼフの姿に、エルフは違和感を覚えた。
「よっしゃあっ!! いっちょやったるでえッ!!」
横1列に並んだ細く長大な砲から凄まじい発砲炎が噴き出し、遥か前方で大爆発が連続して起こる。
巨大な亜人が行く手を塞ぐ全てを押し潰し立ちはだかる壁を突き破り、至近距離の敵を粉砕する。
海上には巨大戦艦が艦隊を形成、轟音と共に無数の砲弾が天へと昇っていく。
一際巨大な空船からは竜騎兵達が空へと舞い上がり、さらに甲板の端にはなおも多数のワイヴァーンがその翼を休めている。
ガリアから、そして各国から巨大な何かが放たれ、雲を抜け空を突き破り分解したそれの先端部が業火を纏い落下、都市上空にて閃光を放ち……ハルケギニアに終焉が現出した。
「死の恐怖……死を自覚しそれを恐怖するのは人間だけじゃ。他の動物は死を理解しそれを恐れる事を知らん。死を回避しようとする努力が人間を繁栄に導いたのじゃがのォ」
「それってつまり、臆病者ほど長生きするって事? よく言うわよ」
空中島・アルビオン王国落下によって生まれた島の海岸、寝そべった老人がルイズと会話していた。
「今度はちょっとやり過ぎよ!! 人類が全て滅んじゃったら、いったい誰がうちのお客に来るっていうのよ!?」
「心配するな。ほれ、遠来の客が来たぞ」
老人が指差した先で銀色のゲートが開き、ルイズと同年代の1人の少年がゲートをくぐって出現した。
「ようこそウェルカム!!」
「いらっしゃいませえ! 異界のお客様!」
「!」
荒廃した大地と突然の声に困惑の表情を浮かべて振り返る少年。
「何か怖いモノがあるかね!?」
「恐怖症でお悩みじゃないかしらァ!?」
〜 日本の漫画・アニメの中の"李"名の外国人比較 〜
〜 "李"名の中国人 〜
■星方天使エンジェルリンクス
・李 美鳳 中国風娘 ※主人公
■CCさくら
・李 小狼 返還前の香港 ※メインキャラ
■彩雲国物語
・李 絳攸 中国風ファンタジー ※メインキャラ
■デジモンテイマーズ
・李 健良 父親が香港出身 ※メインキャラ
※ 他にも"李"名の中国人キャラクターは沢山居ます。
〜 "李"名の台湾人 〜
■エンジェルハート
・李 香瑩 台湾の殺し屋 ※主人公
〜 "李"名の朝鮮人 〜
・メインキャラクターで朝鮮人キャラクターなんてそもそも居ない。
・打ち切り作品は除外しています。
★結果
日本漫画やアニメで"李"の苗字のメインキャラクターは、ほぼ100%朝鮮人ではない。(脇役でさえ朝鮮人より他のアジア人である確立のほうが高い)
朝鮮三大苗字の一つ"李"は、日本の漫画・アニメでは中国人・台湾人に取って変わられている。
日本人制作者から忌み嫌われているコリアン。
以上投下終了です。
「恐怖症博士」より「恐怖症博士」召喚です。
久々に小ネタ書いてみましたけど、いい元ネタ見つけるまでが勝負ですね……。
それともう1つ。
タイトルが仮タイトルのまま投下してしまいました。正式タイトルは「無能の恐怖症」です。
乙!
MtLの投稿に対応して、乙をスタックに乗せる!
ちんたらしたソーサリー呪文如きでMoMaに勝てる訳が無かろうなのだー
mtl乙
MtLさんGJでした
なんだか今日のワルドはSAN値が上昇してるうに見える
問題なければ5分後に投下しようと思います
第5話への多くのレス、多謝であります。
支援
真空波動支援!
「おお!”我らの拳”よ!よく来た!さあ、じゃんじゃん食ってくれ!」
厨房に入ったリュウを、マルトーを筆頭に皆が迎える。
特にマルトーなど超のつく上機嫌だ。
「リュウさん!」
ドオオォンッ!!
奥にいたシエスタもリュウに気づき、満面の笑みを浮かべながら飛びついてきた。
「おおっ!シエスタのハグを受け止めたぞ!」
「俺たちなら数メイルは吹っ飛ぶのにな!」
「流石は”我らの拳”だ!」
ルイズは一緒にアルヴィーズの食堂で食べるように薦めたのだが、
堅苦しい場所が苦手なリュウはそれをやんわり断り、厨房で食べることにした。
それで昼食をとりに厨房に来たところ、この大歓迎である。
「何だこの騒ぎは?」
ギシギシとリュウの胴を締め上げながら顔と胸を擦り付けてくるシエスタを困惑しつつ引き剥がして席に着く。
リュウの前に次々と運び込まれる、明らかに賄いとは思えない豪華な料理たち。
「なあに、祝勝会みたいなもんさ!まさかお前さん、貴族に勝っちまうとはな!」
「俺も見てたぞー!なんて強さだ!惚れ惚れしたぜ!!」
「よっ!我ら平民の希望!!」
貴族嫌いで有名なマルトーを中心に次々と囃し立てる。
「よしてくれ・・・」
ああだこうだと奉りたてられて辟易するリュウ。
こんなことならルイズと一緒に食堂で食べた方がマシだったと後悔するがもう遅い。
「シエスタに聞いたぜ、”ブドー”ってヤツを使ったんだろ?」
「まあ、そんなところだ」
一刻も早く開放してもらえることを祈りながら答えるリュウ。
「シエスタの爺さんも”ブドー”ってのをやってたらしいが、”ブドー”ってのはすげえんだな。あっさりメイジに勝っちまうんだもんなぁ!」
「そんなことはない、彼は強敵だった」
「おお!やはり達人は言うことが違う!達人は謙虚だ!あれだけ実力の違いを見せていながら決して偉そうにしない!」
「いや、別にそういうことでは・・・」
これはもうダメだと諦めるリュウ。
散々騒ぎ立てたあと、マルトーが急に真面目な顔になった。
「なんでも馬鹿貴族からシエスタを庇ってくれたんだってな。俺からも礼を言うぜ」
と言って頭を下げる。
隣でシエスタもそれに倣う。
「よしてくれ。そんなんじゃないんだ。俺はおかしいと思ったからそう言っただけだ」
「やっぱり達人は言うことが違う!!」
再び大喝采。
「ルイズ・・・助けてくれ・・・」
リュウの魂の呟きは喧騒に掻き消され誰の耳にも届かなかった。
ようやく開放されたリュウは中庭で一人立っていた。
足を肩幅に、肩と平行に開いて爪先を若干内側に向け、膝を軽く曲げて左の拳を前に、右の拳を腰に据える。
「ふんっ!」
パアンッと言う風を切り裂く鋭い音と共に凄まじい速度で突き出される拳。
一瞬、拳の先の空気が揺らぐ。
あまりに速いため、拳の先の気圧が跳ね上がって蜃気楼のような現象がおこる。
そこに近づく一人の少女。
碧い髪に碧い瞳でルイズよりも一回りほど小さい身体に、自分の身の丈ほどもある大きな杖を持っている。
確かキュルケと一緒にいた少女だ。
「君は・・・」
「タバサ・・・」
「そうか、で、どうしたんだ?タバサ」
「聞きたいことがある・・・」
年齢に似つかわしくない、全てを見透かすような瞳でリュウを見つめるタバサ。
顔には一切の表情がない。この齢にして、きっと幾つもの辛い思いや修羅場を経験したのであろう。
そしてまた、この少女が強さを求めるあまり、自ら修羅の道に進もうとしていることをもリュウは感じ取っていた。
「なんだい?」
「あなたは決闘のとき手加減はしないと言った」
「ああ、手加減はしなかった」
「でもあなたはまったく本気じゃなかった。なぜ?」
表情の無い顔のまま問うタバサ。
「本気じゃなかったワケじゃない。あれは俺の求める答えなんだ」
「答え?」
タバサが繰り返す。
―― 一撃必殺 風の拳 ――
この少女には伝えてやりたい。
そう思い、リュウは静かに語り始めた。
そもそも「必殺技」って響きが良くないよなw支援
「俺は”真の格闘家”を目指して生きてきた。
そして、その道の中で俺の前に立ちはだかったのは”拳を極めし者”と呼ばれる男だった」
黙って耳を傾けるタバサ。
「彼は無類の強さで全てを破壊しつくした。”殺意の波動”と共に。
ひとたび拳を振るえば全てが終わる。正に”一撃必殺”を具現した男だ。
その強さといい、生き様といい、確かに彼は”真の格闘家”だった」
「サツイノ・・・ハドウ・・・」
タバサが尋ねる。
「ああ、彼や・・・俺の中にもいる。あまねく全てを破壊しつくす、魂の化け物みたいなものだ。
それに取り込まれると・・・まあ、一言で言えば修羅になる。」
「修羅・・・」
タバサが繰り返す。
「そう、修羅だ。だがそれは俺の求める強さとは違った。」
自分の拳を見つめながら続けるリュウ。
「最初、俺は”殺意の波動”を俺の中から追い出そうと思った。
だが、それはできなかった。
”殺意の波動”は俺の中に流れているんだ。それを消し去ることはできない。
だったら飼い慣らすしかないだろう?
暴走する力を抑えつけるのもまた修行だな・・・
おかげでほんの入り口程度なら、なんとか理性を保ったまま扱えるようになった。
もっとも、あまり好き好んで使うような力ではないがな。
ただ、残念ながら単純な破壊力として”殺意の波動”を上回るモノが今の俺にはまだない。
だから、使うべきときには使う」
そう言いつつ複雑な表情で自分の拳を見つめるリュウ。
「だが、破壊することが全てではない。現に俺の暴走した”殺意の波動”によって一度倒れた男は、再び俺の前に立ちはだかってくれた。
”殺意の波動”では『倒す』ことはできても『勝つ』ことはできないんだ」
支援
リュウの話に引き込まれていくタバサ。
「そして、俺は真の強さとは何かを考えるようになった。
それを教えてくれたのが一本の大木だった」
「大木・・・」
タバサが呟く。
「風には色も形もない。
じゃあ風はどうすれば自分の存在を知らしめることができると思う?
大木をなぎ倒せばいいのか・・・?全てを吹き飛ばせばいいのか?」
タバサは首をかしげ、しばらく考え込む。
「ほんの少し、ほんの少し木の葉を揺らしてやればいい。それで十分だ」
リュウの言葉を聞いてタバサの顔が、何かに気づいたようにはっとする。
「それが俺の一撃必殺”風の拳”なんだ」
改めて自分の拳を握り締めるリュウ。
「ただ、魔法を相手に闘うのは初めてだったから上手くいかなかったけどな。
だから、俺が未熟だっただけで手加減してたワケではないんだ」
笑いながらタバサの頭をクシャクシャと撫でる。
その大きな手に、タバサは自分の中にある氷のようなものが溶けていくような気がした。
待ちガイル支援
タバサがリュウに対して心を開き始めていた頃、その一部始終を建物の陰から見ていた人影があった。
「何の話をしてるのかしら?ま、それはいいとして、ええと・・・確か・・・」
足を肩幅に開き膝を軽く曲げ、左手を前に、右手を腰に据える。
「こう・・・だったかしら・・・?見よう見まねで・・・」
腰を回転させ、同時に握り締めた右手を思いっきり突き出してみる。
「えいっ!」
グボンッ!
可愛らしい掛け声とは対照的に響き渡る轟音。
「ひっ!?」
驚いた人影は慌ててその場を離れた。
スカートの両端を指で摘み上げ、一目散に逃げる。
「なんだ!?今の音は?」
急いで音のした方へ向かうリュウとタバサ。
そこで見たものは、驚異的な速さで走り去っていくメイドの後姿と
建物の壁に開いた大きな穴だった。
後日談としては、固定化の魔法がかかった壁に穴を穿つなどという常識外れなことができるのはリュウぐらいしかいないとルイズに疑われたが、
同席していたタバサが彼の無実を証明してくれてほっと胸を撫でおろすリュウであった。
名前が……消し忘れたw
何この春獄殺とか使いそうなシエスタ支援
その日の晩のルイズの部屋
「・・・やっぱりわたしと一緒にアルヴィーズの食堂で食べれば良かったじゃない」
一通り話を聞いてふてくされたように言うルイズ。
「まったくルイズの言う通りだ」
厨房での扱いを思い出して苦笑いを浮かべるリュウ。
「それにしても・・・その服をまずなんとかしたいわね」
リュウの全身を見渡す。
「服もボロ布だし、だいたい裸足だなんて平民云々以前に蛮人よ・・・
ホント、物乞いと言われても仕方ない格好ね。どれだけ貧乏人だったのよ」
歯に衣着せぬ物言いのルイズ。
「これは道着と言ってな、これを着てると気が引き締まる。ボロなのは俺と一緒に修行の日々を過ごしてきたからだ。本当にダメになったら新調するさ。
それに、靴は好きで履かないんだ。買えない訳じゃない」
「ダメ。とにかく、そんなんじゃヴァリエール家の使い魔として相応しくないわ。
今度の虚無の曜日は授業がないから、町にアンタの服を買いに行くわよ」
「いや、だから、これは道着でだな・・・」
「ダメったらダメ!!買いに行くの!!ついでにアンタの剣も買いたいしね」
「剣?それはいらん。俺は剣の使い方なんて知らんしな」
リュウが困惑気味に答える。
「え?アンタ、それだけ強いのに剣の扱い方も知らないの?」
驚くルイズ。
「ああ、握ったこともない」
「へぇ・・・もったいないわねぇ・・・せっかくなんだしこの際、剣も覚えたら?」
――ううむ・・・ルイズはどうしても俺に剣を持たせたいらしい――
確かに何も知らない少女に格闘家のなんたるかを説明しても理解してもらえるとは思えない。
どうしたものかと考えた末、良い言い訳を思いついた。
「それにな、自分で言うのもなんだが、俺は割りと力が強い。俺が振り回したら剣の方が折れると思うんだが・・・」
青銅製のゴーレムをまるで紙細工のように扱っていたことを思い出し、ルイズも渋々納得する。
「確かにそうかもね・・・でも、やっぱり剣は買うわ。使わなくてもいいから持ってなさい」
結局、見た目を優先するルイズなのだった。
支援
ルイズとリュウの二人はトリステインの城下町を歩いていた。
すれ違う人々がマントを羽織ったルイズを見て、貴族に絡まれてはたまらないと道を空け
その斜め後ろを歩くリュウを見てその肉体の見事さに溜息をつく。
「ここがブルドンネ街よ。トリステインで一番の大通りなの」
自慢気にルイズが説明する。
「なるほど、確かに賑やかだな」
確かに人通りは多いがリュウの感覚としてはどちらかと言うと狭い通りだ。
機械技術など皆無のこの国でそれほど大掛かりな都市整備はできないのだろう。
だが一応、ルイズの機嫌を損ねないように話を合わせておく。
普段は学院内で生活している上、必要なものは全て揃っているので街まで来ることは滅多にないのだろう、ルイズも楽しそうにしている。
っていうか、これってデートってヤツなんじゃない周りからはわたしたちってカップルに見えてるのかしら平民のクセに貴族とデートできるなんて生意気ね
などと思いながら頬が緩みっぱなしのルイズ。
冷静に見てみると結構気持ち悪い。
幸いリュウはルイズの斜め後ろについているので、ルイズのニヤけた顔が見えていなかったが。
「じゃあまず、服屋さんね、アンタの服を見繕うわ」
「だから、何度も言うがこれは大事な服で、これ以外の・・・」
「しつこい!ダメ!買うの!」
がっくりと項垂れるリュウを連れてご機嫌で服屋に入るルイズ。
「いやぁ・・・旦那の体型に合う服なんてちょっと置いてませんねぇ・・・」
規格外の筋肉質であるリュウに合う服など置いているはずもない。
「じゃあ、仕立てて頂戴。デザインは・・・そうねぇ」
チラリとリュウの方を見る。
「今着てるのと同じデザインのでお願いするわ。できる限り頑丈な素材で作って頂戴」
どうやら道着を作ってくれるらしい
ほっと胸をなでおろし、「ゆったりと作ってくれれば、後は適当でいい」と言いながら店の主人の採寸に応じるリュウ。
採寸するために道着の上を脱ぐと、そこから現れたのは改めて主人の度肝を抜くような盛り上がった筋肉と
そしてルイズの度肝を抜くような大きな傷跡だった。
「ちょ・・・ちょっとリュウ?何、この傷跡・・・」
胸の辺り、ギリギリ道着で隠れるか隠れないかという辺りと、その丁度裏側にあたる背中の大きな傷跡。
どうみても身体を貫通しているようにしか見えない。
「ああ、ちょっと前にな」
こともなげに言うリュウ。
身体のこんな場所を貫かれても、人間は死なないものなのだろうか?
それ以前に、何をしたらこの途轍もなく強い男にこれだけの傷を負わせることができるのだろう。
ルイズのリュウに対する疑問、興味は増す一方だった。
そしてその興味と畏敬の念が、年頃の少女の例の漏れず恋愛感情を加速させつつある。
もっとも本人はそれを認めようとしなかったが。
支援
shien
待ち支援
次にルイズが目指したのは武器屋だった。
小さな路地裏に入り、どんどん奥の方に進んでいく。
ゴミや汚物が道端に転がり、すえた臭いが鼻をつく。
リュウは辺りに気を配りながらルイズの後をついていった。
物陰から手にナイフやら手斧やらを持った目つきの悪い男たちがルイズの頭から爪先までを舐めるように値踏みする。
「ありゃあ、どこぞの貴族の娘だな。あれだけの上玉だ、相当な額になるぜ。笑いが止まんねぇな・・・」
下卑た笑いを浮かべ、目配せし合う男たち。
それに気づいたリュウはルイズに危険が及ばないように、わざと抜き身の剣のような気迫を、それでもルイズでは気づかない程度に漂わせる。
それだけで危険に対しては鼻の利くゴロツキ共には十分に効果があった。
獲物のすぐ後ろにいるリュウの身体つきやそこから発せられる猛者の放つ気迫に諦め、舌打ちしながら去っていく。
「あまりいい場所とは言えんな」
「ホントはあまり来たくないのよ・・・」
苦い顔をしたルイズが辺りを見回す。
「確か・・・ピエモンの秘薬屋の近くだったから、この辺りのはずなんだけど・・・」
それから剣を模した看板を見つけ、嬉しそうにつぶやいた。
「あったあった」
リュウとルイズは扉を開けて中に入った。
「らっしゃい・・・ととと!?お、お貴族さまがなんの御用で?うちはマットウな商売やってますぜ」
カウンターに肘をつき、気だるげにしていた店主は入ってきたのが貴族だと判るや否や背筋を伸ばして揉手し、冷や汗をかきながら愛想を振りまく。
「客よ。剣が欲しいの」
愛想を振りまく店主とは対照的に無愛想に応じるルイズ。
難癖つけられてはたまらないとペコペコしていた店主は相手が客と聞いて素早く商売モードに切り替えた。
面倒くさい相手ではあるが、何しろ貴族は金を持っている。
しかも、金を持っている上に世間の常識に欠けている。
相場の2倍3倍・・・いや、上手くすれば桁ひとつ増やしたところで買っていく貴族もいる。
こんな葱を背負った鴨を見逃す手はない。
「ああ・・・なるほど、後ろの従者の方に持たせるんですね。最近、”土くれのフーケ”やなんやで物騒ですからねェ」
後ろに控えるリュウの身体を見て納得したように頷く店主。
「土くれのフーケ?」
首をかしげるルイズに答える店主。
「へぇ、最近巷を賑わしてる盗人でさぁ。金持ちの貴族しか狙わないってんで、平民の間ではちょっとしたヒーローでさあね。ちょいとお待ちくだせぇ」
そう言って店主は奥に引っ込んだ。
「盗人がヒーローだなんて不謹慎だわ!!リュウもそう思うでしょ!?」
プリプリと怒りながらリュウに同意を求めるルイズ。
「人間は権力に抑圧されると、その権力に歯向かう者を応援するもんだ。
街の人々が如何に貴族という権力に抑圧されているかということだ。とはいえ、確かに盗人とは褒められたもんではないな。」
尚プリプリ怒っているルイズをリュウが諌めていると、店主がゴソゴソと1本の剣を持って出てきた。
「こいつぁ、かの有名なシュペー卿が鍛えた逸品ものでさぁ。
並の人間じゃあとても扱いきれやせんが、そちらの従者の方にはお似合いの剣ですぜ」
2メイルはあろうかという刀身に宝石などで飾り立てられた煌びやかな剣を得意げに説明する。
「魔法がかかってますからね、鉄だって切れますぜ」
剣を見た瞬間、ルイズは魔法云々よりも見た目の豪華さに心打たれた。
「ねぇ、リュウ、これなんか良くない?」
一発で気に入り、すっかり買う気になっているルイズ。
「俺としてはもっと飾り気の無いものの方がいいんだが」
『質実剛健』や『実直』などの言葉をそのまま人間にしたようなリュウの趣味嗜好からは遠くかけ離れている剣を見て思わず呟く。
「却下。わたしが気に入ったから、これに決めた」
どうやらリュウの意見など端から聞く気は無かったらしい。
勝手に決める。
「これ、おいくら?」
「へぇエキュー金貨で2000でさぁ」
「高いわねぇ・・・それだけあれば森付きのお屋敷が買えるじゃない・・・」
剣の相場など知らないルイズは絶句する。
もっとも、相場を知っていればその金額が桁一つ多いことに気づけたのだが。
「命を預けるのが剣ですからね、命は金では買えませんや。しかも、名工シュペー卿の作ですから、これぐらいはしますやね」
言って愛想笑いを浮かべる店主。
「困ったわね。今日はエキュー金貨で100しか持ってきてないわ」
アッサリ所持金を白状する。
ルイズは自分で買い物をすることなどない大貴族なので、こういう交渉はしたことがない。
そして、ハルケギニアの相場を知らない上に交渉が下手ということに関しては、リュウも一緒だった。
ただ、剣一本に森付きの屋敷という値段には違和感を覚えたが、魔法が関わってくると全く見当がつかないので、そういうものなのかと納得せざるをえない。
「それじゃあ碌な剣は買えませんやねぇ・・・」
困った顔をした店主はそういうと再び奥に入っていく。
後ろを向いた店主の顔はニヤニヤしていた。
「せいぜいカモらせてもらうか・・・」誰にも聞こえないように呟くと、奥から別の一本を持ってきた。
「それでしたら、これなんかどうですかい?本当は120エキューなんですが、100にまけときますぜ」
ルイズの前に差し出されたのは1メイルほどの刀身の、何の意匠も凝らされていない細身の剣だった。
「なんか貧相ね・・・」
先ほどの剣が頭から離れず、あからさまに落胆の色が見えるルイズ。
「いや、俺はむしろこっちの方がいいと思うがな」
リュウが感想を漏らすと、背後から声が聞こえた。
「けっ。おめえみてーなド素人が剣なんざ持ったところで死ぬだけだ、やめとけ」
思わず振り返るリュウとルイズ。
だが、そこには誰もいない。あるのは所狭しと並べられた剣や槍などの武器。
「やいデル公!お客様になんて口利きやがる!!」
誰もいない場所に向かって文句を言う店主。
リュウとルイズの二人が頭に「?」を浮かべていると、またしても誰もいない場所から声が聞こえた。
「な〜にがお客様だ!そんなカスみてーな剣売りつけやがって!どーみたって金貨10枚もしねーよーなガラクタじゃねーか」
目を凝らすが、やはり誰もいない。
しかし、姿は見えずとも声はしっかりと聞こえてくる。
「おめえもこんなガラクタ見せられて『こっちの方がいいと思う』とか言ってんじゃねー。
ガラクタかどうかの見分けもつかねーヤツが剣なんて持ったって早死にするだけだっつーの」
リュウは剣が並べられた一角に行くと、錆の浮いた一本の古い剣を取り出した。
「お前が・・・喋ってるのか・・・?」
驚きながら、手にした剣に話しかける。
傍から見れば危ない人に見えなくもないが、近くで見れば彼が精神的にも健康であることが判る。
なぜなら、彼が手にしている錆びてボロボロの剣が喋ったからだ。
「おうよ。俺っちが喋ってるのよ。判ったか、ド素人」
剣の柄の部分をカチカチ言わせながら喋る剣。
「イ・・・インテリジェンス・ソード・・・?」
ルイズは噂で聞いたことがあった。高位のメイジが剣に人格を付与することがあると。
そしてそれはインテリジェンス・ソードと呼ばれている。
「おうよ!俺っちがインテリジェンス・ソードのデルフリンガーさまだ!おきやがれ!!」
まくし立てるように喋る剣。
後ろから飛ぶ店主の怒り声。
「いい加減黙ってろデル公!!溶かして鉄くずにしちまうぞ!」
「ああ!やれるもんならやってみろってーの!
どーせ6000年も生きてきて飽き飽きしてたところだ!いっそ溶かしてくれた方がせいせいするってーの!」
「お前・・・6000年も生きてるのか?」
「おうよ!最近はとんとつまんねーしな!もうこの世に未練なんてねーっての・・・ってか、おい・・・」
「ん?どうしたんだ?」
突然押し黙っってしまった喋る剣に尋ねるリュウ。
「おでれーた・・・おめえ・・・”使い手”か・・・」
「使い手・・・?何の話だ?」
いぶかしむリュウ。
「よし、おめえ、俺っちを買え」
それには答えず自分を買えという剣。
「わかった。親父、この剣はいくらだい?」
リュウは躊躇い無く答えると、店主に尋ねた。
「へぇ、それでしたらエキュー金貨100で結構ですぜ。うちとしても厄介払いができてせいせいしやすからね。
煩いときは鞘に閉まっちまえば大人しくなりまさぁ」
「っというわけだ、ルイズ。俺はこの剣がいい」
あまりの急展開に目を白黒させるルイズ。
「ちょ・・・ちょっとリュウ!!もうちょっとちゃんと選びなさいよ!だいたい、そのボロ剣、錆びちゃってるじゃないの!」
「ああ、ちゃんと選んださ。この剣が買えと言ったからな。年長者の言うことは聞くもんだ」
ボロ剣とはなんだ!と文句を言うデルフリンガーを鞘に収め
リュウは笑いながら、ルイズから預かっている財布の中から100エキューを取り出し店主に支払った。
以上で投下終了です
リュウファイナルを改めて読み直したんですけど
やっぱ、リュウファイナルの作中でも電刃波動拳使ってるし
別に殺意の波動完全封印じゃなくてもいいじゃんと勝手に納得することにしました。
もう書いちゃったし(苦笑)
どうにも納得いかない場合はゲーム版ストV準拠だと思っていただければよろしいかと。
リュウは剣を買うことに抵抗はないのか?
使いはしないだろうけど
史上最もデルフが空気化しそうな使い魔乙!
このシエスタに対抗できそうなのは大豪院シエスタと剣聖シエスタくらいか…
使うことには抵抗あるだろうけど買うのはルイズだしいいんでね?
MtL乙
ワルドが使ったのは悪魔火?黙示録?
MoMAは酷いw
乙
大丈夫だ、空気度ならべジータのデルフの方が上だろう
>>353 もし良かったら、その二つは何というタイトルのSSで読めるか教えてくれ
ラスボスは展開が速いし中身も面白いな
外の人間から見たハルケギニア分析がいい
>>355 ワルドのはプロスブルームだろうから、無難に火の玉か?
もしかしたらケアヴェクの火吹きかもしれんけど。
>>357 前者は男塾とのクロス、後者は知らない(「メイドさんと大きな剣」かな?)。
まとめで元ネタで検索してくれ。
後者は「ゼロと聖石」ですな
FFTとのクロスでタルブの近くにチョコボが群れてたりする
剣聖シエスタと聞いて、相手を石化させた後に全力でボコるシエスタを幻視した
リュウファイナルのサガットはカッコ良すぎだったなー
>>353 「ゼロのアトリエ」のアインツェルカンプ習得後シエスタとか
デルフに出番はあるぞ、丈夫なナタになるし、地面に突き刺して巻き藁がわりにもなる優れものさ!!
というわけで、波動の人GJ!!
あれ?もしかしてデルフって活躍させた方が反って地味化してr
デルフってそれなりに重要キャラの位置付けなのに空気化激しいよな
デルフが「剣」として目立って役に立ってるのは、蛮人とかぐらいだろうか?
バージル兄貴が結構使ってるかもな
なにげにデルフの台詞も多い気がする
阿佐ヶ谷zippyからトオル召喚…
シュウ゛ルーズ先生と烈風の人とタバサママ逃げてー!!
このシエスタの祖父ってタックルとハグから考えると本田臭いな
毒の爪の使い魔第17話、後半部分が書き終わりました。
予定その他が無ければ、直ぐにでも投下したいのですが、宜しいですか?
支援
かまん
すごく待ってる
では、投下開始します。
ジャンガは何の感情も表さないまま、タバサを見つめる。
「どうしたってんだ?…別に今更、驚くような事じゃねェだろうが」
そう言って、自嘲気味に笑う。
「他人を蔑み、傷つけ、嘲り笑う俺だゼ?一人や二人殺していたところで、驚くような事じゃねェだろうが」
言われずとも解っている。彼が”善人”ではない…”悪党”であるのは承知の上だ。
だいたい、自分の覚悟を”バカらしい”、”無駄”と言ったのだ。これはどうあっても許せない…。
――なのに、何故かジャンガが誰かを殺していたと知った時、胸が痛んだ。
注意しなければ気付かないほど、指の先を針で軽く刺した程度の痛みだったが…。
ジャンガは黙ったままのタバサの碧眼を見つめながら言葉を続ける。
「まァ、そういう訳だ…。俺はそのガキの銃で胸を撃たれ、月のクレバス…地面の裂け目に落ちた。
当然その時、死んだと思ったが…こんな所に召喚されて生き残るたァ…夢にも思わなかったゼ」
そこで一旦言葉を切る。
すると、タバサが口を開いた。
「…それで?」
「ン?」
「私が”ガキ”だから復讐を果たせない…。貴方の言ったその事が、今のその話とどういう風に関係するの?」
タバサの言葉にジャンガは、ふぅっと息を吐く。
「…そのガキは一人で戦っていた。お前も今は一人で戦っている。…一人で戦っていた、あのガキは俺には勝てなかった。
お前も、一人で戦っているから俺にすら勝てない。…解るな?」
タバサは静かに頷く。
ジャンガは遠くを見るように虚空を見つめ、目を細めた。
「…あのガキは途中から仲間を得た」
「仲間?」
「親友…相棒…まァ、言い方は色々在るがな…。ともかく、そのガキは仲間を得たんだ…解り合える仲間をよ。
何があったのかは知らねェさ…、だが…あのガキは仲間を得て、強くなりやがった」
「…仲間…強くなる」
「そして俺は負けた…、完膚なきまでに…、ボロクソに…」
そこでジャンガは目を閉じる。
悔しさに歯を噛み締めるのかと思いきや…、そんな様子は微塵も見えない。
ただ目を閉じ、静かに立ち尽くすのみ。
やがて、ジャンガは目を開き、タバサを見つめる。
「解るか?…別に俺も、今更解りたいとも思わないが……ようはそういう事だ。
一人で何もかも背負って、鉄砲玉のように飛び続ける奴は、誰にも勝てず…、何も成し遂げられない…。
ましてや……力が無く、意志も弱い奴がな…。そして、あと一つ…お前とあのガキの共通点がある」
「……何?」
「…親の思いを踏み躙った事だ」
「…ッ!?」
「詳しい事情は知らねェさ…。だが、少なくともそいつが自分の無念を…、
愛する子供に晴らしてほしいと考えるかどうか…、それ位は解るつもりだ。
…お前の親は、お前に復讐を望んだか?」
――何も言えなかった…、ただの一言も口に出来なかった。
タバサの碧眼が僅かに揺らめくのをジャンガは認めた。
そして、彼女の胸倉を掴み挙げる爪を放す。華奢な身体が力無く床に転がる。
床に落ちた際の痛みに顔を僅かに顰めつつも、タバサは顔を上げる。
そして…、タバサはその碧眼を大きく見開く事になる。…余りにも信じられない物を見たからだ。
――目の前の亜人は……ジャンガは泣いていた。
支援
「何で……テメェは、テメェのような奴は…復讐を考えるんだよ?命をわざわざ捨てようとするんだよ?
大体…復讐を果たして何を得られる?満足感、充実感、達成感、…それがあるのか?それとも別の何かを得られるのかよ?
――何も残らねェし…得られねェ…。残るのは空しさと空虚な心だけだ…。
そんな結果しか待ってないのは……テメェの頭なら解ってるんじゃねェのか?」
静かに涙を流しジャンガは語る。
「それによ……テメェには、まだ親が……母ちゃんがいるじゃねェか」
その言葉に、ついに堪えきれず、タバサも目から涙を溢れさせる。
「何で傍に居てやろうとしなかったんだ?何で復讐に…、母ちゃんを一人残す事になるかもしんねェ道を選んだ?」
タバサは何も言えない、何も考えられない。ただただ、涙を流すだけだった。
「くだらねェ…、くだらねェ…、本当にくだらねェ…。テメェはバカだ、救いようの無いバカだ!俺以上にな!!
…もしかすれば、元に戻るかもしれない親が居るだけ…テメェは幸せなんじゃないのかよ!!?」
その時…、先程の『ウィンディ・アイシクル』が突き刺さった扉が開き、キュルケが部屋に飛び込んできた。
「タバサ、どうしたの!?この扉の有様は――ッ、貴方は!!?」
床に座り込むタバサ、その目の前に立ち尽くすジャンガの姿を認めるや、キュルケは叫び、杖を向ける。
ジャンガは顔を袖で覆い隠し、開け放たれた窓から外へと飛び出していった。
それをタバサは呆然と見送るしかなかった。そんな彼女をキュルケが抱きすくめる。
「タバサ、怪我は無い?…泣いたりしてどうしたの?あいつに何かされたのね!?
何か大声や音が聞こえてきたから、気になって来たんだけれど――どうしたの、タバサ?」
キュルケは様子のおかしい親友を見る。
タバサは、キュルケの身体に顔を押し付け、嗚咽を漏らしていた。
――薄々…考えていた。復讐の道を選んだ事の愚かさ、空しさを。
それを…今、ハッキリと言われた……、認めようとしなかった事を…ハッキリと自覚させられた。
味わった事の無い無力感と悲しみに、彼女の心を覆う氷は融け、涙として流れていく。
そんな、泣き続ける友人を…キュルケは優しく抱きしめた。
森の木が一斉に切り倒され、岩が切り裂かれ、地面が踏み砕かれる。
鳥が、獣が、悲鳴を上げて逃げ惑う。
そんな周囲の騒ぎには目もくれず、ジャンガは息を荒くする。
「ガアアアアアァァァァァーーー!!!」
獣のような雄たけびを上げる。
そして、また暴れる。
雄たけびを上げる。
暴れる。
――それの繰り返しだった。
何をしているのか……自分でも理解できない。ただ、暴れていなければ気がすまない。
そんな彼の左袖からはルーンの毒々しい紫色の輝きが漏れていた。
「ハァ…、ハァ…、ハァ…」
時間にして約10分、ジャンガは暴れ続けた。
その結果、森は半径一リーグに渡って、まるで戦場の跡地であるかのような有様になっていた。
暫く肩で息をしていたが、やがて唾を吐き捨て、歩き出す。
歩きながらジャンガは思った…。
(結局……俺の関わる奴は皆、不幸の固まりか…。俺がそういう奴と会いやすいのか…それとも俺が原因で出てくるのか…。
どっちにしろ……いい加減ウンザリだゼ…)
「クソッ、クソッ、クソッ、クソッ、クソッ!」
「お、おい…」
背中に背負ったデルフリンガーが恐る恐るといった感じで声を掛ける。
「相棒…大丈――」
「ウルセェ…」
地獄の底から響き渡るかのような、低い声で威圧する。
一瞬で全身に震えがきたデルフリンガーは慌てて鞘の中に引っ込む。聞きたい事があったのによ…、と言い残して。
「クソッ…。くだらねェし…、つまらねェし…、アアアアアアァァァァァァーーーーー!!!クソがッ!!」
そんな風に荒れ狂うジャンガを、ジョーカーは空の上から見下ろしていた。
「ジャンガちゃん……荒れてますネ〜?まァ…色々とあるようですし、疲れているだけでしょう」
ジョーカーはそんな独り言を呟きながら、ベッドの上に寝そべるように、空の上で仰向けの姿勢になる。
「それにしても、最近のジャンガちゃんは少々らしくないような…?――環境の所為でしょうか?」
考えてみれば、”向こう”では魔法学院のような賑やかな場所に彼は身を置いてはいなかった。
自分と出会う以前も、陽の当たらない場所で生活していたようだし…。
今の状況は彼にとっては悪影響以外の何物でもないだろう。
何とかしなければ……。
「むむむむむ…」
暫し考え込み…、ポンッと手を打つ。
「そうですね……少々予定は早いですが、ジャンガちゃんのリハビリにはうってつけでしょう。
のほほ、そうとなれば善は急げ。…ワタクシ善人ではありませんがネ〜♪」
――その後、学院に戻ったジャンガと屋敷のタバサの二人に手紙が届けられた。
前者は招待状、後者は指令書の形で…。
以上で投下終了です。
まぁ、今回は泣くジャンガと、タバサが書けてよかった。
鬼の目にも涙、悪党の涙は何だか感慨深い物がありそうな気がする俺。
まぁ、女の子の泣く姿もいいですがね。
では、今回はこれで、アデュー!
GJ!!
まさかジャンガが涙を流すとは・・
強力なハグにシエスタの髪の色からすると…タレブの名物はチャンコか
ということはシエスタはふんどしか!!
>>384 フンドシ一丁トップレスなシエスタを幻視したじゃないか!
素晴らしいw
頭突きからハグとは凶悪なコンボだなw
波動さんと毒爪さん乙です
夜中だと支援出来ないのが残念だ
ザンギエフさんかもしれないじゃないか
登場するたびに声が別人なピエロが気になるぜ…
ともかく毒の爪氏乙!
シティーハンター呼ぼうぜ
キュルケの誘惑に股間をモッコリ。
そして、キュルケにルパンダイブして押し倒そうとしたところに、
ルイズが100tハンマーで撃墜ですね、わかります。
100tハンマーで、何故かオパオパ思い出した
遼にとってキュルケは射程範囲内なんだろうか
一応、未成年だし。
身体には目を奪われても、手は出さないってところかな。
最初の被害者はロングビルだろう。
>>393 「プロポーションが良くても一定年齢以下には手を出さない」がポリシーみたいですからね
おそらくは18歳辺りから(高校生には手を出さないらしい)
17歳なシエスタが微妙なラインだな
大人顔負けなスタイルの女子高生の時とか
空飛ぶお尻が高校生の時(大学生になって再登場)とか
全力で我慢していたな。
>もっこり
喚んだら何故かルイズが100tハンマーを振り回すようになるのだろうか?
マルトーさんも「我らの鉄槌」とか呼んでいたりとか。
冴羽リョウ(何故か変換できない)が作中で実際に手出ししたのって
どこぞの王族がくれたハーレムぐらいじゃなかったっけ。
デルフリンガーを構える冴羽リョウ・・・似合わねーw
フーケ戦になってようやく「もっこり開放〜〜!」となるリョウの姿が目に浮かぶ
彼女を倒しながら止めを刺さず連れ帰ってきたリョウがオスマンと助平同士の固い握手をしたり
後にシュヴァリエになって二つ名をつけることになり「新宿の種馬」と呼ばれるようになる
ヴィンダールフは見た目からしてミック、ミョズはルーンがお似合いな海坊主
口にするのも憚られるのはリョウのスケベの先生
>>398 デルフの構成要素としては
『ガンダールブの相棒』『虚無の解説役』『魔法吸収効果』etcがあればいいんだから
別に剣の形に拘らなくても大丈夫だと思うがね
歴代ガンダールヴがガンスリンガーになるのか……
ガンスリンガーと聞いてハーケン=ブロウニングが思い浮かんだ自分は色々とダメだorz
もっと他にもあるだろう!?マイラ=ベル・シャーリィとか!<それもどうよ
デルフを海底人類アンチョビーに出てきたオリハルコンみたいな
使い手にもっともふさわしい形状になる万能武器って設定にしちゃうとか。
万能武器だったらいっそウルトラブレスレットみたいにしてしまうか?
敵を切り裂くウルトラスパーク
貫くウルトラランスにウルトラクロス
防御だったら盾になるウルトラディフェンダー
役に立ちすぎて敵に操られたりするかもしれんが
>>404 そこまで便利なブツじゃなかったんで。
一度契約して形状を変えると再契約するまで変えることが出来ない
王家専用のインテリジェンスアイテムって設定だったんで。
アンチョビーの主人公はお笑い好きの平和主義者ってことでハリセン型になってたし。
(それでも海ぐらいは軽々割れるって代物だったけど)
>>404 あれは身体をバラバラにされても再生させるってチート武器だぞww
…夏の劇場版でVSスノーゴン戦が流れた時はビビった。
ガンスリンガー[ デルフリンガー(The Spell Wakannne)
ダーク・タワーだった……
ガンスリンガーか
と答えて欲しかったんだなw
もう〈カ〉がそうさせたということにしよう……
理由は、〈カ〉も話題になりたかったからだ!
カじゃしょうがないな。
というかダーク・タワーで書くにはキング作品に対する相当造形が深くないとダメだろうな……
リチャード・バックマンというコテが現れてだな
気になるんだが
アンアンをいじめればヘイト、有能君主にしたら改変
大豪院シエスタは魔改造
なのに、なんでデルフはどんなに改変してもヘイトだ魔改造だと言わないんだ
アイテムだから。
実はドラゴンと精霊に対して一撃必殺の効果がありますとか言われてもなんとなく納得できてしまいそうなんだよなぁ、デルフ
ルイズはシティーハンターから冴羽リョウ(Windows表示不可)を、
今は亡きジョゼフはジオブリーダーズから入江省三を、
テファはゴルゴを呼び出した
教皇はおもいつかなかった
バカボンから本官でも呼び出してもらおう
そんな中、何故か殆どやられていない
デルフとスカロンの漫才
>>415 なんせ6000年を生きる魔剣だしね
原作上でも結構チート臭い能力持ってるし、
今更多少パワーアップしたところで文句も出ないんじゃないかな
最近のデルフは特に空気
出てくるたびに愚痴ってるし
デルフを持たなくても強い、って奴が召喚された方がどうしても楽しいからねえ。
そこで強い=楽しいに至る論理が分からない。
安直で書き易いからねえ、つーのを言葉を選らんだんだよボケ
>>422 悪いがそれはお前の被害妄想に過ぎないよ
いつだったか、デルフのセリフ集みたいなのが投下されてなかったっけ?
避難所にあったな
ギーシュのセリフ抜き出しと比べると……セリフ無し、なんて巻まであるしw
各場面には必ず出ているのにここまで空気なキャラも珍しいよな
避難所の雑談スレの414にて発見。
そして612にギーシュが。
………うん、デルフは泣いていいと思うんだ。
「ブラック・ブラッド・ブラザーズ」のカーサ(九龍転化前)が召喚される話を書いてみたのですが
投下よろしいでしょうか?
初投下です
呼ばれたキャラにあわせてデルフをパワーアップすればいいんだよ。
ファイアーエムブレムから召喚して、
デルフリンガー 各種ステータスアップ 残り使用回数50
とかいう風に。
他に投下される方もいらっしゃらないようなので、19:25辺りから投下させていただきますね
支援
春の使い魔召喚
それは、ここトリステイン王国トリステイン魔法学院にて行われる神聖な儀式である。
それを行うのは2年生への進級を控えた魔法学院に通う生徒であり、この儀式によって己の使い魔を召喚し、専門課程へと進むのである。
そして、今一人の少女が使い魔召喚に挑んでいた。
トリステイン魔法学院近くの草原、ここで春の使い魔召喚は行われている。
すでに多くの学生が召喚を終え、使い魔との契約―コントラクト・サーヴァントも済ませていた。
そして、まだ召喚の終わらぬ生徒の周りに、半円を描くように立ち、全員が終えるのを待っている。
昼過ぎから始まった使い魔召喚の儀式であるが、日が傾く頃になっても、召喚を終えていない生徒が一人いた。
生徒達に囲まれているのは、桃色がかった髪と、透き通るような肌を持つ少女である。
彼女の名は、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
通称、「ゼロのルイズ」
全く魔法が使えない彼女は、現在22回目の召喚を失敗したところであった。
「……ケホッ」
ルイズは、自分の魔法の失敗によって起こった爆発の煙で咳き込んだ。
「また失敗かよ、ルイズ!」
「何度失敗したら、気が済むんだよ!」
周りの生徒達から野次が飛ぶ。
言い返してやりたいが、実際に召喚に失敗している以上何も言えない。
自分が彼らを待たせているのは確かなのだから…
そんな悔しさから、ルイズは唇をかみ締めた。
「ミスタ・コルベール!ルイズは放っておいて、授業を終わりましょう!」
そんな声が生徒の中からあがった。
それは困る、とルイズは焦った。
なぜなら、この儀式は必修であり、これを無事に終えられなければ2年生に進級できないのだ。
もしも、留年ということになってしまえば、名門たる自分の実家から、何を言われるかわからない。
何か言われるだけならばまだいい。
おそらくそれだけでは済まず、恐ろしい母と姉にお仕置きされてしまうだろう。それだけはなんとしても避けたい事態であった。
ルイズは慌ててコルベールと呼ばれた男に振り返った。
コルベールは黒のローブをまとった、髪が薄い中年の男である。この場で唯一の教師であり、召喚の儀式を監督している身であった。
コルベールの判断によっては、ルイズの使い魔召喚は打ち切られ、留年ということになってしまう。
だからこそ、ルイズは不安と焦りが混じった目でコルベールに訴える。
433 :
ゼロと黒蛇:2008/11/18(火) 19:28:21 ID:UQp6DDA2
だが、ルイズの心配は杞憂であった。
コルベールは芯から教師であり、自分から儀式を打ち切って生徒を留年などさせるつもりはなかった。
また、彼は、魔法が使えない分誰よりも努力しているルイズを高く評価している一人でもあった。
「ミス・ヴァリエール」
コルベールは不安を与えないように、なるべく優しい声で語りかける。
「心配することはない。納得するまで続けなさい。仮に時間がかかっても、生徒達を帰して、最後まで私が見ていよう」
その答えにルイズは安心する。
そして、そこまで言ってくれたコルベールのためにも、早く召喚を成功しなければならないと、改めて決意をした。
(次があると思っちゃだめよ……これで最後だと思ってやらなきゃ……)
召喚される使い魔とは、自分に最もふさわしい者が召喚に応じるという。
では、召喚できない自分はなんなのだろうか?
どんな動物も幻獣も虫でさえも、自分の使い魔になんてなりたくないというのか?
(そんなことない!きっと私にふさわしい使い魔がいるはず!)
ルイズは願う。
(お願い!絶対大事にする!あなたにふさわしい主人になってみせる!だから応えて!)
そして、自分の全精神力を費やすつもりで呪文を唱える。
「宇宙の果てのどこかにいる私の僕よ!神聖で美しく、そして強力な使い魔よ!私は心より求め、訴えるわ!わが導きに答えなさい!」
ドン!!
と、いつもと同じ爆発が起こる。
また、失敗か…と落ち込むルイズ。
しかし、今回の爆発は今までと違っていた。
爆発がおきたところには、いつものように抉られた地面ではなく、代わりに人が倒れていた。
「……人?」
自分の目が信じられず、ルイズは思わずつぶやいた。
使い魔召喚とは、基本的には動物や幻獣等が召喚されるものであり、他の生徒達の使い魔も例外なくそれらであった。
しかも、ルイズが召喚した人間は、ローブもマントも身につけていない―現代で言うところの、カットソーとジーンズを着ていた。
どう見ても平民の格好である。
爆発の衝撃で気絶しているのか、ピクリとも動かないが、背格好をみるとどうやら女性のようである。
434 :
ゼロと黒蛇:2008/11/18(火) 19:33:37 ID:UQp6DDA2
ルイズが予想外の事態に立ち尽くしていると、周りから再度野次が飛んだ。
「おいおい!平民を召喚してどうするんだよ!」
「失敗するからって、金で雇ったんじゃないか!」
静かに、と野次を注意して、コルベールはルイズに歩み寄った。
「おめでとう、ミス・ヴァリエール。使い魔召喚は成功だ」
やっと努力が報われた生徒を慈しむように、ルイズに声をかける。
「で、でも!ミスタ・コルベール!あれはたぶん平民です!しかも、女性ですよ!」
「そのようだ。しかし、君は彼女と契約をしなくてはならない」
「平民が使い魔なんて聞いたことがありません!もう一回やり直させてください!」
しかし、その頼みにコルベールは残念そうに首を振った。
「それはできない。この召喚の儀式は神聖なものだ。例え何を召喚しようとも、やり直すことは認められない」
「そんな……」
「安心しなさい、ミス・ヴァリエール。使い魔は貴女に最もふさわしい者が召喚されます。今思うことは色々とあるかもしれませんが、きっとこの事を後悔はしないはずです」
「さぁ、コントラクト・サーヴァントを」とコルベールが促す。
コルベールにそこまで言われると、ルイズとしては反論ができない。
やり直しが認められない以上は、彼女と契約をしなければ留年となるため、ルイズに選択肢は無かった。
ルイズは、己が召喚した使い魔に歩み寄り、顔を覗き込んだ。
(うわ……この人、すごい美人)
呼び出された女性は、年は20代前半であろうか、黒く艶やかな長い髪を持つ、どこか冷たい雰囲気が感じられる美人であった。
目が閉じられているため瞳の色は見えないが、例え何色であったとしてもこの美貌を引き立てはしても、損なうことは無いだろう。
そんなことを考えているうちに、ルイズは気持ちが落ち着いてくるのを感じた。
あまりに、予想外の使い魔を召喚してしまったため取り乱してしまったが、今では自分が召喚した使い魔に納得していた。
なにしろ、生まれてから今まで魔法に成功したことがないのである。
「ゼロ」とさえ揶揄されている自分の召喚に応じてくれた使い魔に、感謝の気持ちさえ抱いていた。
例え平民だろうが、自分の召喚に応えてくれたのだから……
しかし、それでも、こう思わずにはいられなかった。
(私のファーストキスが女の人となんて……)
せめて美人でよかった……などとよくわからないことを考えながら、杖を振りコントラクト・サーヴァントの呪文を唱える。
435 :
ゼロと黒蛇:2008/11/18(火) 19:36:55 ID:UQp6DDA2
「わが名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。5つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
そして、杖を額の上に置き、口づけをした。
(さよなら、私の初めて……)
などと、内心落ち込んでいると、ルイズの成功を喜んでいるのか、コルベールがうれしそうに話しかけてきた。
「おめでとう。ミス・ヴァリエール。コントラクト・サーヴァントは上手くいった様だね」
「はい」と、ルイズは答えた。
今になって、召喚に成功した喜びと、安心感が湧いてきていた。何はともあれ、これで進級はできるし、平民とはいえ、使い魔を持つことができるのだ。
「ルーンが刻まれたら、この人を起こさなければならないね」と、コルベールが、女性の顔を見ながら言った。
「特に外傷も無いから、そのうちに目が覚めるだろう」
「ミスタ・コルベール、使い魔のルーンはまだ刻まれないのですか?」ルイズが尋ねた。
「すぐに刻まれるはずだが……ほら、刻まれ始めた」と、コルベールは女性の左手の甲を指差した。
確かに、左手の甲にルーンが刻まれている。これで、後は女性が目を覚ませば全て解決となる。
すると……女性から「うっ」と声が上がり、うっすらと目を開けた。意外と切れ長の、翠の瞳をしている。
使い魔のルーンが刻まれるときには痛みを伴う。おそらく、そのショックで目が覚めたのであろう。
女性は、上半身を起こすと辺りを見回した。自分がどうしてここにいるのかわかっていない様子である。
そして、立ち上がり、最も近くにいたルイズに話しかける。
女性はだいぶ長身のため、自然とルイズを見下ろすような感じになった。
女性が何かを尋ねるように口を開こうとするが、
「はじめまして、ミス」
と、ルイズがそれより先に声をかける。
相手はおそらく平民である。
しかし、それでも、初対面の身分もわからぬ明らかに年上の同姓に、乱暴な態度を取るような教育をルイズは受けていなかった。
「私は、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールと申します。どうぞお見知りおき下さい」と、スカートの裾をつまみ、恭しく礼をする。
自分の召喚に応じてくれた使い魔に感謝をこめて、せめて礼だけでも尽くしたいと思ったのだ。
それに対して、女性はあっけに取られたようであった。
しかし、それも一瞬。すぐに口元を手で隠し、フフフと妖艶に微笑んだ。
そして、表情を改め、ルイズに向かって言った。
「丁寧な挨拶痛み入る。聞きたいこと、言いたいことはいろいろあるが、名乗られたからには、こちらも名乗らなければならないだろう」
そして、姿勢をただし、まるで執事のように右手を胸に当てて礼をした
「はじめまして、人の子よ。私の名は、カサンドラ・ジル・ウォーロック。以後、見知りおきを願う」
支援
437 :
ゼロと黒蛇:2008/11/18(火) 19:38:37 ID:UQp6DDA2
これで投下終了です。
最初、タイトル入れ忘れてしまいました…
438 :
ゼロと黒蛇:2008/11/18(火) 19:39:35 ID:UQp6DDA2
読んでくださった方ありがとうございました〜
439 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/18(火) 19:48:29 ID:huyncxE5
どうせなら、ゼルマン様を召喚すればよかったのに
一瞬姉妹スレの白蛇かと思った
442 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/18(火) 19:54:17 ID:huyncxE5
緋眼のゼルマンなら最後の後に召喚可能
今DSでクロノトリガーをしてるので一段落したらクロノを償還しようと思います。
445 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/18(火) 19:56:28 ID:huyncxE5
主人公最強の作品の場合
キャラによっては話がつまらないけど
ゼルマン様ならカッコイイから問題なし。
乙です。
以前、BBBネタが出た時、カーサ召喚されたら。
と、書き込んだら、本当に来て下さるとは!
カーサって結構、女の子の面倒見いいから、この先期待してます
サウスパークのケニー召喚させてみたら召喚時の爆発に巻き込まれて殺されちゃった!
この人でなし!
>>444 一々age荒らしの相手してんじゃねえよ
sageてね
450 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/18(火) 20:11:23 ID:huyncxE5
ゼルマン召喚の場合
ゼルマンは、霞む思考で考える
そして結論を導いた。
ひょっとして・・・
自分は次をを求めているのだろうか?
勝ってしまったから。それで満足したからじゃあとばかりに、次の何かを?
たぶん、次の『戦いを』だから、命を、血を、繋げたがっているのか。
もう一度検証してみる。自分の取った行動と、そのときの判断を。そして
もう一度結論を導いた。
どうやらそれっぽい。
またしても、自嘲。何もかも犠牲にしても意味のない何かを求めながら、
満足したら今度はすぐに、『次』。まるでガキだ『闘将アスラ』。
名前のイメージと、だいぶ違うのではないか?
まあ、自分だって始祖の悪口を言えるほど大人じゃないが。
血溜まりに沈みながら、ゼルマンは穏やかに微笑んだ。
心音が途切れ始める。
頼りなく、心細い。
ああ、とゼルマンは思う。
この音を消したくないな、と
どうにかできないどおうか。
いや、どうにもならないのは分かっているが。
それでも誰か。
この音をもっと
もっと
もっと・・・・
あんた誰
mugenから呪子召喚考えたが、オチが全部同じになったので止めた
sageてね
諫山黄泉を召喚してルイズとデルフ涙目とか見てみたい
454 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/18(火) 20:26:29 ID:huyncxE5
ゼルマンなんか召喚したら
どんな敵も螺炎で終わりなので話が続かない。
>>453 召喚された当初ルイズに姉のように接し、姉妹のように仲良くなるんだけど、
七万戦で行方不明になって、帰ってきたときには、
「私を姉と呼ぶな!」
と言って斬りかかってくるようになるのか?
457 :
狂蛇の使い魔:2008/11/18(火) 20:42:48 ID:AHVs7wWf
予約等なければ20:50くらいから投下したいです
ハイドベノン支援。
>456
さすがに再度壊れる黄泉はあんま見たくないなw
でもラングレンに嫉妬しつつも仲良くなったり百合百合になってるところは見てみたい
しかしちょっと考えてみたが、ギーシュが生き残ってる姿が想像できない・・・
460 :
狂蛇の使い魔:2008/11/18(火) 20:50:55 ID:AHVs7wWf
第十四話
いきなり目の前に現れた、浅倉、タバサ、ギーシュの三人。
アンリエッタは突然の出来事に目を丸くし、不安げな顔でルイズに状況の説明を求めた。
要求に応じたルイズが三人をそれぞれ紹介していくと、しだいにアンリエッタの緊張が解け、元のにこやかな表情に戻っていった。
そして、ギーシュがアンリエッタに協力の意を示すと、彼女は改めて事情を説明し、彼やタバサにも任務を依頼。
二人とも快く引き受けたのだった
乗り気でないルイズだったが、三人が進んで引き受けたのと、何より親友であるアンリエッタたっての願いである。
結局、姫様の為なら、と渋々受諾したのだった。
一方、浅倉はその一部始終を見ると、床で大の字になったまま、ルイズに向かって「俺も連れていけ」と声をかけた。
暇潰しの相手がいなくなることに加えて目的地が戦地であるため、欲を満たすには好都合だと考えたのである。
彼の何かを企んでいるような怪しい表情を見て、ルイズは一度その申し出を断ろうと考えた。
しかし、傍若無人な彼の性格からして逆らっても無駄だろうと判断し、やむを得ず了承したのであった。
ついていく気なのか支援
462 :
狂蛇の使い魔:2008/11/18(火) 20:52:42 ID:AHVs7wWf
「ねえ、アサクラ。起きてる?」
晩餐会も終わり、学院中が寝静まった頃。
自分も眠ろうとベッドに横になっていたルイズは、顔だけを浅倉に向けて問いかけた。
浅倉も同様に、顔だけをルイズに向ける。
「あんた、いつも私の部屋で寝てるけど……何か理由でもあるの?」
ルイズが引き留めているわけでもないのに、わざわざ彼女の部屋で寝る浅倉。
給仕に掛け合えば、食堂での気に入られ具合からして寝室の一つくらいは用意してもらえそうなのだが。
少しの間を置いた後、浅倉が口を開いた。
「お前といると、落ち着くんでな」
「……えっ?」
思いがけない言葉に、ルイズは思わずベッドから上半身を持ち上げた。
「ふ、ふざけないでよ……」
「別にふざけてなんかいない。そんなことをしてなんになる。
お前といるとなぜかイライラが和らぐような気がする……ただそれだけの話だ」
ルイズは呆然としていた。
なんの気なしに側にいると思っていた浅倉が、実は自分を心の拠り所にしてくれていた……。
今までぞんざいに扱われてきた分、ルイズはその言葉に少しだけ好意を抱いた。
だまされないでルイズ、その優しさはきっと勘違いよ支援
464 :
狂蛇の使い魔:2008/11/18(火) 20:54:32 ID:AHVs7wWf
しかし、同時に新たな疑問が浮かびあがる。
「そ、それじゃなんであの時私に襲いかかったのよ」
「お前がライダーだったからだ」
浅倉がさも当然というように言い放つ。
「言わなかったか? 俺はな、ライダーと戦っている時が一番幸せなんだよ」
「それなら、今の私は……」
「襲う価値など微塵もないな」
つまるところ、浅倉にとってルイズはどうでもいい存在、ということだった。
ルイズはなんだ、と肩を落としたが、前よりもいくらか気分が楽になった気がした。
ルイズと浅倉が眠りについて、しばらくした頃。
自我を持った剣、デルフリンガーは、ルイズが眠っていることを確認すると、その身を揺らし浅倉の枕元でがちゃがちゃと音を鳴らし始めた。
しばらくすると浅倉が目を覚まし、呟いた。
「……その耳障りな音を止めろ。へし折られたいのか?」
「相棒、やっと起きたか。すまねぇな、少し話があるんだが……」
「後にしろ。俺は眠い」
そう言って、浅倉は再び目を閉じる。
「そう言うなって! お前の能力について話しておこうと思ってんだ!」
「……何?」
浅倉が古びた剣へと顔を向けた。
465 :
狂蛇の使い魔:2008/11/18(火) 20:56:25 ID:AHVs7wWf
「相棒、あんた最近武器を持った時に体が軽いと感じたことはなかったか?」
浅倉は今までの戦いを思い出す。
……確か、ギーシュと最初に決闘をしてからだ。
体が妙に動かしやすいと感じるようになったのは。
「……あったらどうなんだ?」
「やっぱりな。その左手のルーンといい、あんた、『ガンダールヴ』だぜ」
「なんだそれは」
耳慣れない単語に、浅倉は思わず顔をしかめる。
「知らねえのか? いいか、ガンダールヴっていうのはな……」
そう言って、デルフリンガーは語り始めた。
伝説の使い魔、ガンダールヴ。
あらゆる武器や兵器を自在に操る力をもち、使えるべき主である虚無の担い手を守るといわれている。
その能力は、例え見たことのない武器でさえ一瞬で使いこなせるほどらしい。
さらに、ひと度武器を持てばその身体能力は飛躍的に上昇するという。
「なるほど……。ずいぶんと都合のいい能力だな」
左手に刻まれた奇妙な印を見ながら、浅倉が言った。
「それで、その虚無の担い手とかいう奴は……まさか、あいつか?」
浅倉の視線が、自身の左手からベッドの上のルイズに移る。
466 :
狂蛇の使い魔:2008/11/18(火) 20:58:35 ID:AHVs7wWf
「今のところ確証は持てねぇ。ただ、一つ言えることは……あの娘っ子がいるからこそ、相棒は使い魔としての力を行使できるってことだ」
ルイズの方を見つめ、何かを考えるような仕草をしたまま動かない浅倉。
構わず、デルフリンガーが続ける。
「今まで乱暴にしてきたみてぇだが、これからは優しく扱ってやんな。あの娘っ子が死んだら、お前の力もなくなっちまう。
間違っても殺そうだなんて思わないこった」
そう言って、デルフリンガーが話を終えた。
しばしの静寂の後、沈黙していた浅倉が再び古びた剣に視線を戻すと、口を開いた。
「別にライダーになれるだけで十分だが……そうだな。もっと力を得るのも悪くない。奴が俺の邪魔をしなければ、特に何もしないとだけ言っておくぜ。
……それにしても、お前もずいぶんと割り切った奴だ。俺の耳には、あいつのことを道具のように利用しろというように聞こえたぜ?」
ニヤリ、と笑みを向ける浅倉。
デルフリンガーは押し黙ったまま答えない。
そのまま二人の間で会話が途切れ、部屋は再び夜の静けさに包まれたのだった。
(すまねぇな娘っ子。俺にできるのは、これだけだ……)
デルフリンガーが心の中で呟いた。
467 :
狂蛇の使い魔:2008/11/18(火) 21:00:45 ID:AHVs7wWf
翌朝。
アルビオンに向かうため身支度を整えたルイズたちは、学院の門の前に集合していた。
アンリエッタによって手配されたという護衛を待つためである。
「おはよう、ルイズ。もう大丈夫なの?」
「おはよう……ってあれ? なんでキュルケがここに?」
キュルケに声をかけられ、驚いた表情を見せるルイズ。
タバサから事の詳細を聞いたキュルケは、ルイズへの心配と浅倉への警戒心から、勝手についていくことにしたのであった。
「そう……。いろいろと迷惑をかけちゃったわね」
「ふふっ。これで借り一つね。……ところで、本当に彼も連れていくの?」
キュルケが後ろを振り向き、厳しい視線を投げかける。
その先には、ギーシュに荷物を押しつける浅倉の姿があった。
「どうせ言ってもきかないし……。ま、なるようになるんじゃないかな」
そう言って、ルイズは苦笑する。
少し前まではあれだけ彼を怖がっていたのに、今のルイズにはあまり不安が感じられない。
何かあったのかとキュルケがルイズを問い詰めようとしたその時、朝もやの奥から何かが羽ばたくような音が聞こえてきた。
皆が視線を向けると、そこにはグリフォンから降り、こちらに近づいてくる何者かの姿があった。
デルフいい人…じゃなくて剣だ支援
469 :
狂蛇の使い魔:2008/11/18(火) 21:02:44 ID:AHVs7wWf
以上です。今回は短めでした。
では、支援ありがとうございました!
狂蛇の人、乙。
そう言えばトリックベントと偏在って似てるよね。
投下乙です
浅倉はこの時点でワルドと決闘しかねんなw
乙〜
逃げて……ワルド逃げてーーっ!!
ワルドもライダーになれば解決
ワルド子爵は変身することで謎の侍ロボット、ワルダーになるのだ!
>>474 それだと弱点がオバQと同じになるぞww
使い魔が浅倉だと、むしろデルフが人情味溢れるキャラになるのか……
ワルドがライダーになるとすればやっぱ蟹?
トリックベント的な意味でナイト
ワルドは世紀王シャドームーンで、ルイズがBLACKというサプライズ!
説明のところはどうしようかと常々思う。
FFだし、知ってる人が殆どだろうから、原作でもう既に説明されていることへの説明は控えてもいいのか、それとも体裁を整える為に入れた方がいいのか。
インペラーで101匹ワルドちゃん
>>479 あれって同じ年同じ日同じ時間に生まれてないとダメなんじゃないか
スーパー1はファイブハンドが理解されるかな。
火、冷気、電撃と土以外の系統が使える優れものだが。
>>483 スーパー1は重力制御と言う土系統の機能を本体が持ってるょ。
シルバー、パワー、エレキ、冷熱、レーダーだっけ?
>>482 じゃ、じゃあワルドが世紀王シャドームーンなだけで良いです……
その代わり、コルベールをジエンドに……
そして赤心少林拳!
シエスタの祖父が秋月信彦。
幼い頃、重い病になったシエスタを助けるためにキングストーンを………
こんな事を考えていたこともありました。
安易にシエスタを超人キャラにするのはどうかと思うがねえ
クロスSSの定番とはいえ
491 :
蒼い使い魔:2008/11/19(水) 01:20:16 ID:0qy44y5J
少々短めですが第32話完成いたしました
予約がなければ1:30に投下しとうございます
>>490 しかし、大豪院シエスタや、シエスタ・サカザキは面白かったぞ。
さっき、ゼロの波動を読んで来たんだが・・・
サイト居ないのに誰がシエスタにブルマを履かせるんだ?
夜、バージルがルイズの部屋へと戻り、ソファに座ると
タバサから受け取った伝説が書かれている文献を静かに読み始める。
そうして本を読んでいるとその横にルイズが座り中身を覗き込むのもいつの間にか習慣になっていた。
「何を読んでいるの?」
「イーヴァルディの勇者…、子供向けの文献、童話か…こんなものなんの参考にもならんな…」
「その本、平民に人気がある本よね、あんたがそんなものを読むなんて思わなかったわ」
「…タバサが持ってきた本だ、こんな文献に興味はない」
バージルはそう言うと本をパタンと閉じ、テーブルに放り投げソファの背もたれに背を預ける。
「…ねぇ、ちょっと読んでみてよ」
ルイズはその本を手に取るとバージルに差し出す
「…なぜだ」
「いいから、私が聞きたいの、読んで聞かせなさい」
ルイズの要求にバージルは一瞬眉を顰めるも渋々と本を開き読み始めた。
イーヴァルディの勇者の内容は、有体に言えば英雄譚の一種。
始祖ブリミルから加護を受けた 勇者イーヴァルディが剣と槍を武器に竜や悪魔などの強大な敵を次々に倒していく物語だった。
静かに聞いていたルイズは不意にバージルへ話しかける
「イーヴァルディって」
「………?」
「案外、スパーダだったりしてね」
「親父が? まさか」
くだらない、といった感じにバージルが鼻で笑い否定する。
「案外否定もできないんじゃない? あんたのお父様、
スパーダは人間界ではどういう姿をしていたの? まさか悪魔の姿のままってわけじゃないでしょ?」
「…人間の姿をしていた、この世界に降臨していたころはどうだか知らんがな」
「あー、スパーダは人間の姿をしてたぜ、そのままでも十分強いくせに相棒みたく姿が変わった瞬間
見てわかるぐらいに強さが跳ね上がるんだからな…。マジに折られるって思ったね、あんなのとは二度と戦いたくないぜ…」
今まで黙っていたデルフが思い出したかのように口を挟む
「でもその息子がこんな性格してるんじゃちょっとそのイーヴァルディの伝説もありがたみが薄れるわよね」
ルイズがクスクスと笑いながらバージルを見る、
「好きに言え、お前も似たようなものだろう…」
つまらなそうにバージルが言うと今度こそ本を閉じテーブルへと投げる、
「終わりだ、寝ろ」
ぶっきらぼうにバージルは言うとソファへと背中を預ける。
ルイズはソファから立ち上がるとベッドへと歩いて行く、そして着替え終わるとベッドに横になりシーツをかぶった。
「それじゃあ、明かりを消すわ、おやすみ」
「あぁ」
バージルはそう言うとソファに横になり目をつむった。
支援!
―深夜
誰もが寝静まり明かり一つない夜の学院にひとつの大きな影が舞い降りる
「(確か桃髪の部屋は…ここらへんかしら?)」
その影は何やらぼそぼそと呟きながら、寝ている人間を起こさぬように羽ばたく音を極限まで抑え窓から内部を覗き込んでゆく、
ベッドに寝ているおめでたい桃色の髪をもつ女の子…ビンゴ、この部屋の主であるルイズだ、
「(見つけたのね!)」
目的の部屋を見つけたのかちいさな声を上げると、目的の人物がいるかしっかりと確認した。
「(あら? 窓が開いてる、不用心!)」
ルイズの部屋はどういうわけか窓がほんの少しだけ開いていた、どうやら戸締りを怠ったのだろう
それを確認すると、口で器用に窓をあけ、侵入を試みる。
大きな影はぼいんっ! と音をたて一糸まとわぬ女性の姿へと変わりながら部屋の中へと転がり込む。
その姿は今日の昼にバージルの前に現れた女性だった。
女性はすすっと部屋の中へと忍び込み中を確認する、
「起こさないように、そーっとそーっと…」
そして本当の目的であるソファで眠っている銀髪の男を見つけた。
「うふふ、寝てる時は眉間にしわが寄ってないのね…」
小声でソファで眠るバージルの頬を優しくなでる。
普段ならこの時点で飛び起きるはずのバージルだったがどういうわけか目を覚まさなかった。
彼はこの世界に来てようやく安眠を得ていたのだ、つまり、熟睡である。
それでも殺意や敵意というものを少しでも持っていれば跳び起きるのだろうが、
この女性は敵意や殺意、といったものをまるで持っていなかった。それゆえバージルが跳び起きることはなかったのである。
そして女性は静かにバージルに抱きつく様にソファへ横になると
「ふぁああ…眠くなっちゃったのね、おやすみなさい…」
そう言いながらバージルの頬へ口づけし眠りへと落ちて行った。
朝、やわらかな朝の陽射しが部屋の中へと差し込む、外はさわやかな晴天である、
そんな中、珍しく二人は同時に目を覚ました、
部屋の主、ルイズは優しく頬をなでる風と、さわやかな朝の陽射しに気が付き、むくりと起き上がる。
もう一人、バージルは自身にのしかかる妙な重さ、そして柔らかさに目が覚めたのだった。
そして、驚きのあまり二人の声が見事に調和した。
「「なっ!!」」
この部屋にゲリュオンでもいるのか、時間が、空間が停止する。
そんな時の止まった空間を動く、この部屋にいるはずのない人間が一人…
「あ…おはよう…おにいさま…」
バージルの上に覆いかぶさるようにして眠っていた全裸の女性が目を覚まし艶っぽく声をかけたその瞬間
ドンッ! とバージルが女性を突き飛ばし瞬きする間も与えずに即座に閻魔刀を抜刀する。
「い…痛いのね〜…」
「なんだ貴様は! どうやって入った! いや、なぜここにいる! 答えろ!」
バージルは殺意全開で閻魔刀を女性の首に突き付ける。
「ひどい! おにいさま! 私を忘れるなんて!」
「ウッヒョー! やるじゃねぇか相棒! いつの間にそんな美人捕まえたんだよ! 見直したぜ!」
茶々を入れるデルフを無視し、バージルは女性を睨みつける
「貴様など知らん! 真面目に答えろ! さもなくば…! …っ!?」
凄まじい魔力を感じバージルがとっさにルイズの方向へ顔を向ける
「ふっ…うふふふ…ふふふふふ………」
ゴゴゴゴゴ…という音がルイズから聞こえてくる
「何を考えているかは知らんが、俺はこんな女など知らん」
油断なく閻魔刀を女性に突きつけながらバージルが静かにルイズに話しかける。
「へぇ…驚いちゃったわ、バージル…」
「ルイズ」
少々うんざりした表情でなだめるようにルイズの名を呼ぶ、穏やかな口調とは裏腹にルイズからはドス黒いオーラがあふれ出ていた。
「わたし、あんたのこと誤解していたみたい、こーゆー事に関してはとことん無関心な奴だと思ってたけど…まさかそんな女を捕まえてくるなんてね…」
ルイズはにっこりとほほ笑むと、両手を胸の前で組み演じるように女性の真似をする。
「『ひどい! おにいさま! わたしを忘れるなんて!』 ふふっ…最っ高…恋愛小説みたい…
劇のコンテストがあったら入賞間違いなしね!」
「だからこんな女知らんと―」
そこまで口を開いた途端、ルイズから何かが弾ける音がした
「不潔! 変態! なによ! いつの間に女なんて作ったのよ!
しかもよりにもよってわたしの部屋に連れ込むなんていい度胸してるじゃないの!!!!
スパーダの血がなによ!! そんなもの今ここで絶やしてやるわ!!!!!
こぉぉぉぉぉのぉぉぉぉ……………馬鹿犬ーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」
ついに真魔人に覚醒したルイズは部屋中所かまわず虚無を乱射する。
もはや部屋の中は戦場だ、前回タルブの上空で虚無を放った際に16年分の精神力を使い果たしたが
現在のルイズの精神力は今起こった現象ですでにフルチャージになったようだった。
「落ち着け!」
彼には珍しく声を荒げ、ルイズから杖を取り上げる。
「なによこのエロ犬!!!! じゃあそこの女は一体何よ!」
「これから聞き出すところだ! そもそも、そんなくだらんことをしている暇も余裕も、俺にはない! それはお前がよく知っているはずだ!」
荒い息をつきながら掴みかかってくるルイズをバージルがなだめる、
「た…確かに…ここ最近あんたは私のそばにいたし…それに…こんな女、学院で見たことないわ…」
その一言でなんとか落ち着きを取り戻すとルイズが殺意のこもった目で女性を睨みつける、
しかし見れば見るほど目の前の女性は腹が立つスタイルをしている、特に胸とか! 胸とか!! 胸とか!!!
「あああああ!!! もう許さない! なによなによ! そんなに胸の大きい女がいいの!?
わたしだって成長するわよ! あとで後悔しても知らないんだからぁ!!!!」
再び暴走魔人化を始めたルイズをなんとかなだめ、とにかくこの女性から話を聞くことにする。
油断なく閻魔刀を突きつけながら、バージルは数歩下がり顎でクローゼットを指す
「まずは…ルイズ、お前の服の予備があったな? こいつに着せてやれ」
「ええっ!? きっとサイズ合わないわよ…?」
「他に着せるものがない、仕方がないだろう」
なにせ目の前の女性は生まれたままの姿だ、このままにしておくのはいろいろとまずい、
それにルイズとしても、女性の持つキュルケにも勝るとも劣らない体つきを見ているのもなんだか面白くないので渋々服を出すことにした。
「…き…きついのね…」
女性が無理やり着たルイズの服に文句を言う、サイズが全然違うせいでもうぱっつんぱっつんだ。
これはこれでかなり際どい格好である、しつこいようだがとくに胸のあたりとか…。
「しょうがないでしょ! あんたのサイズに合うものなんてない… って何言わせんのよぉ!! 悪かったわね! 成長はこれからよ!!」
再び杖を抜こうとしたルイズをバージルが腕で制する。
「落ち着けと言っている…、では、答えてもらう、少しでも妙な真似をしてみろ…、即座に首を斬り飛ばす、
貴様は誰だ、昨日も俺の前に現れたな、何が目的だ」
バージルは表面上は冷静を装っているが、殺気は全開だ。もし女性が妙な動きをしたら即刻斬り捨てるつもりだろう、
「バージル…いつでも手伝うわよ…塵一つ残さないんだから…」
ルイズまで始祖の祈祷書を開き臨戦態勢に入っている。
しかしその殺気を感じているのかいないのか、床に女の子座りをしながらあっけらかんとした口調で女性は口を開いた。
「もう…忘れるなんてひどいのね…わたしはシルフィなのね!」
「シルフィ…? …シルフィード…? タバサの使い魔のか?」
「えっ…? ど…どういうこと? だってこの人、人間じゃない」
女性が名乗った名前に少々驚きながら二人が聞き返すと女性は大きく頷く
「きゅいきゅい、そうなのね、でももうシルフィはおにいさまだけのものなの!!」
抱きついてこようとするシルフィードを名乗る女性の頭を押さえ近寄れないようにしながらバージルは質問を続けた。
「俺が知るシルフィードは竜だったはずだ、なぜそんな恰好をしている」
「"変化"の魔法を使えば人間の姿になるくらいかんたんなのね! えっへん!」
「…本当か?」
バージルがルイズに視線を戻すと、ルイズが軽く頷く。
「えっと…先住魔法には姿かたちを自在に変える魔法があると聞くわ、でもそれじゃあ…シルフィードは風韻竜…なの…?」
「そう言えばそんなことを言っていたな、タバサが他言するな、と言っていたが…、この際そうも言っていられん」
「むっ! 信じてないのね? 元に戻って証拠を見せるのね!」
「なっ! ちょっとやめてよ! 服が破けるし第一部屋の中が大変なことになるわよ!」
元に戻ろうとするシルフィードをルイズが全力で止めている横で閻魔刀を納刀しながらバージルは考えた。
「(こいつが本当にシルフィードだとして…なぜこうなっている? タバサにはしっかり忠誠を誓っているように見えたが…)」
少々疑問を感じつつもバージルは質問を続けた
「で、貴様が本当にシルフィードだとして…だ、なぜここにいる、そもそもどうやって入ってきた、答えろ」
「窓から入ってきたのね、窓が半分開いていたの、不用心!」
確かに、昨日は窓には近寄っていない、開いていたことに気がつかなかったのだろう。
「……それで? 何故ここにいる」
「目的? んもぅ、シルフィの目的は…お・に・い・さ・ま、なのね!」
シルフィードはそう言うが否やバージルに抱きつこうとするも
当然受け流され、シルフィードはそのままルイズのベッドへとボンっと倒れこんだ。
「きゅいきゅい…おにいさまったら積極的なの…、シルフィ…ついに奪われちゃうのね…
いいの…望むところなのだわ! あ、桃髪、出て行ってくださる? きゅい」
「ルイズ…やれ」
「Alright...」
「急にバージルに会いたくなったぁ? なによそれ…」
「けほっけほっ…そうなの、昨日からおにいさまのことが頭から離れないの…これが恋なのね! 愛なのね!」
ルイズの虚無をくらいボロボロになったシルフィードから事情を聴くと、昨日バージルに文句を言いに行ったところ
顔を見た瞬間、急にバージルのことが愛おしくて仕方がなくなってしまったらしい、
それでついに耐えきれなくなり深夜に部屋へ忍び込んだのだという。
「ねぇ、バージル、何か心当たりないの? 昨日あんたに文句を言いに行った、とか言ってるけど…」
「…知らん、昨日俺の前に突然現れ、はしばみの茶を飲んで逃げて行ったことくらいしか覚えていない」
「…どういうことなのかしら?」
「そんなことはどうでもいいのね! シルフィはおにいさまと一緒にいたいの!」
シルフィードはそう言うやいなやバージルの腕にしがみつく、振り払おうとしてもなかなか振りきれないほどガッチリと腕をホールドしていた。
シルフィードの豊満な胸がバージルの二の腕に押し付けられているのを見てルイズが凄まじい目つきで睨みつけてくる。
相手がシルフィードではさすがのバージルも手が出せない、
シルフィードは重要にして貴重なハルケギニアにおける移動手段だ、
今までもシルフィードのおかげで助かってきたし、この先も必ず必要になる。
そんなわけで閻魔刀でバッサリ解決…というワケにはいかないのである。
「とにかく…タバサに話を聞くぞ、まずはそれからだ…」
痛む頭を押さえバージルがドアノブへと手をかける
「バージル、ちょっと待って…」
「なんだ」
腕にしがみつくシルフィードをそのままにドアを開けようとしたバージルをルイズが呼びとめる
「その…そのまま廊下を歩くつもりなの?」
「この状況だ、仕方あるまい」
「ま、待ちなさいよ! そのままでていったら…その…いろいろと問題になるわよ!」
「何が問題になるというんだ」
バージルが(美人でその上とんでもなくスタイルのいい)恋人を連れて歩いている、
などという噂が流れてはバージルは兎も角、
プライドの高いルイズにとって耐えられることではない、むしろ許せないことである。
特にキュルケに見られた日にはもう目も当てられないだろう。
「タバサは私が呼んでくるから、あんたはここにいなさい! いいわね! 一歩も外に出ないこと!
それと、絶対に変なことしないでよ!? したらお仕置きだからね! っていうか塵一つ残さないから!!」
その言葉とともにバタンッ! と勢いよくドアを閉めルイズが部屋から出て行ってしまった
「そんなくだらん事をすると思ってるのか…?」
少々イラついたように吐き捨てると、腕に絡みつくシルフィードを引きはがし
ソファへとドカっと腰を下ろし大きくため息を吐いた。
「うふふ…やっと出ていったのね! 二人っきり!」
シルフィードはついに邪魔ものがいなくなったことに喜び、ポンっとバージルの隣に座ると
これでもかと腕を絡め脚を絡め体を摺り寄せてくる、耳元や首筋にシルフィードの熱い吐息がかかる。
健全な男子ならばこのままR指定ライブ…と行くところだが生憎とバージルはそうはいかなかった
生物の三大欲求のうちのほとんどが力への欲求へとベクトルが働いている彼にとっては
今のシルフィードは非常に鬱陶しい存在でしかない。
「こういうのは…ダンテ…お前の役目だ…」
吐き捨てるようにそう言うと仰ぐように天井を見上げた。
500 :
蒼い使い魔:2008/11/19(水) 01:36:52 ID:0qy44y5J
今回は少し短いですがキリがいいと思うのでここまでです、ご支援感謝!
下地はできているのですがそれを飾る文章が出てこないこの悲しさ
しばらくの間、魔人化したルイズをお楽しみください
ではまた…
乙。
ちょっと前までシリアスだったのにはっちゃけすぎw
そもそも三大欲求は食欲睡眠欲性欲乙www
性欲肉欲支配欲
ぶっ飛び展開素晴しすぎ
バージルほどギャグが似合わないキャラはいないのにそれをやるとは
作者さんはきっとダンテ並みにぶっ飛んだ部分があるにちがいない
>>493 ルイズとタバサにブルマを着せたキャラがいたな。
たしか、エグゼリカだっただと思うが。
蒼い人、乙。
バージルにも苦手なジャンルってあったのか…。
蒼い人乙
惚れ薬の効果だとはいえ、バージルの寝込みを襲うなんて、シルフィは恐ろしい子だ・・・
>>504 場違いなことをやらせるのはギャグの基本だよ。
ダンバインのガラリアに水着審査をやらせたり。
ポカリスエット飲んで吐きそうになってたシーンが一番印象深いぜガラリア
ズバットと柊蓮司はどこにいてもおかしくないよね。
【おかしいです】
TRPGネタとしてはそろそろアルシャードを出しても良いよなー…とか思ってる<自重しろ卓ゲ者
グラーフ船長とかな!異世界に行ったしあの人も!
蒼い人乙です。
しかし、バージルもずいぶん丸くなったよなぁ。
ルイズがいつ気絶させられるかとヒヤヒヤしていたのだけど。
丸くなったっていうより、
観念したって感じかすごい漂ってくるように感じるのは俺だけだろうかw
バージルもすっかりオリキャラ最強主人公と化してるなw
シュラト呼ぼうぜ
ラダムが抜けた後の相羽シンヤ=テッカマンエビルは?何故か兄に渡したはずのクリスタルを持っているからテックセット可能で。
榊作品でカスール兄姉とかどうかな
妹の位置にルイズがくるとしっくりきそう
でもハルキじゃラクウェル魔法使えないか?
>>517 ゼフィが付いてきてくれるかマウゼルシステムの類似品が有れば魔法使用可能だ
むしろ6000年前にハルキが封印されたんだよ
・・・・・・・ここはひとつ、あの人を呼んでみよう
「ふむ、ルイズとやら、理解したぞ。
よかろう、しばらくの間貴様の使い魔とやらをやってやろう。
もはや貴様の未来はバラ色が約束されたも同然!
なんせこの凶華さまは全知全能なのだからな」
まかせた
狂乱って何気に展開がハードだぞ。
凶華さまかと思いきや優歌召喚。
…学園にもふもふできるような生物ってヴェルダンデぐらいしか居ないような…。
ギーシュ「ヨーシヨシヨシヨシヨシヨシヨシ(ry」
やりながら思いっきり頭をなでてる姿を幻視した。
バグベア
マクミラン大尉でも呼んで来い
カスール姉弟とゼフィがいっしょなら魔法使えるだろけど
シャノンは魔法を制御するための感覚、才能がないから姉抜きだとゼフィに主の精神に干渉することは出来ないから魔法使えないと思う
バージルの人乙
タバサの反応が楽しみだ・・・
バージルってひょっとして道程?
榊一郎作品なら、まじしゃんず・あかでみいから「福音を告げてしまうもの」がいいな。
ルイズにどんな扱いをされても喜びます。
使い魔プレイか。
「刃鳴散らす」から「チームニッポン(略称チムポ)」の三人を……
「18歳以上です」
>>532 魔法的にも物理的にも精神的にも最強な使い魔だな…
>>529 シャノンはキャパシティのみラクウェル以上だから困る
下手したらデルフが魔法制御アイテムと化す可能性も……
>>532 少なくともルイズと他数名が祝福されて精神崩壊しそうなんだが……
ヤバい想像したらあのEDがフラッシュバックしry
ゲフッ.......
おいおい、デルフは役立たず扱いされがちだけど、対7万戦のときは才人をウェストウッドの森までテレポートさせてるぜ。
まあ常時できたら普通の人間でもチート化しそうな設定だからその後使われてないが。
純太をテファに召喚させたら面白いかも、と思ったが皆ドールガンなんて知ってるのだろうか。
そこで憚られる使い魔「大太郎」ですね
レヴィを召喚してオートマティックからマッチロックかフリントロックに転向させようと言う壮大なドラマがだな・・・・・・
ロベルタは問題は多分ないです。
>>538 テレポートなんかしてないよ。
サイトの体を操って走らせただけだよ。
それはアニメ版だな。
・・・んなスゲエ技があると、以降の話が破綻する・・・
そんな事にも気付かない製作スタッフの馬鹿ッぷりを象徴する設定だ
そういえばシャノンてフラグは立てまくってたけど
直接的に誘惑されたことなかったな
キュルケとかにどういう反応するだろ
フラグを立てるだけ立ててスルーする使い魔と申したか。
上条当麻と柊蓮司とあと他には…
>>544 ゼロ魔はアニメ版が最高の原作レイプだよなぁ・・・
ほんと原作に対する敬意ってのが全く無い。
>>547 オーフェンのアニメに比べリャマシっすよ・・・
>>519 マウゼルの位置にブリミルを置くのか
HIについては結局不明だし、実はハルキも封棄世界でも問題ないな
虚無が世界を滅ぼす猛毒で、エルフが秩序守護者の代わりをするのだろうか
ゼロ魔もオーフェンもクラウザーさんが原作をレイプしてアニメができた。
クラウザーさんが始祖だったわけだな。
ノボル神さえレイプしてのけるだろう。
>>545 少なくともアムネーゼには心揺らいでたな
まあ精神は幼女状態だったし大分条件違うけど
原作後のカスール将軍だったら獣姫とかからの見合い話が大量って話だが、
作中で浮いた話全然無いから……
難しいな
>>551 >マウゼルの位置にブリミルを置くのか
それだとブリミル信仰が虚無の担い手を殺そうとしなきゃならん気がするんだが。
こんばんは。
第4話の投下を22:40から行ってよろしいでしょうか?
なお、今回の投下で、バンプレスト製の2007年12月27日に発売されたゲームと、同じくバンプレスト製の2008年5月29日に発売
されたゲーム(今の時点ではあえてタイトルは出しませんが)の、かなり盛大なネタバレを行っております。
その箇所になったら冒頭に<ネタバレ注意!>という記述を行いますので、ネタバレされたくない方はスルーしてください。
こんばんは。
随分と遅くなってしまいましたが10時40分ごろから最終回を投下したいと思います。
>>555 アムネーゼのは肉欲の類じゃないからなあ
基本的に面倒くさいで終わる人だしw
予約が被ってしまったようなので、私はまた後できます。
ラスボスだった使い魔さん気にしないで投下してください。
どちらも楽しみでwktk
>>560 EVILの方、申し訳ありません。23:00までには投下も終わっていると思いますので…。
ペラ。
ルイズの就寝より、1時間ほど経過した頃。
ペラ。
ユーゼスは、辞書と魔法の学術書とで何度も視線を往復させつつ、その内容を読み取っていく。
ペラ。
(魔法を使用するには媒体として『杖』が必須である。『杖』を使用せずに放たれる魔法は、エルフや妖魔などが扱う『先住魔
法』であり、その威力・効果はメイジの使う魔法の比ではない)
ペラ。
(五大系統―――火、水、風、土、失われた系統である虚無。
虚無は始祖ブリミルが使った系統とされているが、始祖以外に扱った者は確認できず、あくまで伝説とされ、実質は四大
系統である)
ペラ。
(コモンマジック。ごく簡易的、かつ基本的な魔法。いずれの系統のメイジであっても等しく使えるため、いずれの系統に
も属さない)
ペラ。
(メイジの能力は遺伝によって伝承される。平民が魔法を使えないのは、そもそも根本の血統が異なるからである)
ペラ。
(一概には言えないが、メイジの実力はおおむね『系統を足せる数』によって決まる。ドット、ライン、トライアングル、ス
クウェアの四段階。系統を足すことによって、より強力な魔法となる。五段階目以降は存在しないが、王家のみに扱える『ヘ
キサゴン・スペル』が伝えられている。
なお、メイジの実力によっては『トライアングル』が『スクウェア』を、『ドット』が『ライン』を上回る可能性もある。
二段階以上ランクが離れている場合、それを覆すのは非常に困難である)
ペラ。
(ランクを上げる条件は、個々人によって差はあるが、一般的には大きな感情のうねり、またはメイジの修練が必要とされる。
ランクは一段階ずつ、ある程度の時間をかけて上昇するものであり、一度に二段階以上ランクが上昇することは、まず無い)
ペラ。
(魔法の使用には、メイジ本人の『精神力』を消費する。これはレベルが上がるごとに増大するものではなく、今まで使用し
ていた魔法の精神力の消費量が半減する仕組みである。
使用する魔法によって多少の差はあるが、基本的に消費する精神力はドットスペル:ラインスペル:トライアングルスペル:
スクウェアスペルの比率で表すと1:2:4:8。一つランクが上がるごとに、自乗式に増大する)
ペラ。
(精神力を限界まで使用すると、メイジの意識は失われる。これを回復するには、十分な睡眠を摂取する必要がある。一日眠
れば全てが回復するわけではなく、例えば金の『錬金』のためのスクウェアスペルは一ヶ月分の精神力を必要とする)
ペラ。
(同時に複数の魔法を行使することは出来ない。これはドットでもスクウェアでも共通している)
「…………ふむ、水を蓄えたタンクに対して、『放水量』や『水の質』、『放水パターン』、『放水させた後の形状』などは
ある程度の操作が出来るが、『蛇口』は一人に一つだけということだろうか」
基本的な前提条件を読み進むだけで、かなり苦労する。
今日だけで本棚の一列くらいは読みたかったが、これでは2冊か3冊がいいところだ。
やはり単語や文章の基本だけでこのような長文を読み解くのは、少々無理があったか。
だからと言って、読むことを止める理由にはならない。
深く考察するのは後にするとして、まずは知識を溜め込むことに専念する。
……欲求と好奇心の赴くまま、とにかく本を読む。
それでは次のページをめくろう、とユーゼスはページに手をかける。
ユーゼスは当時かわいそうだと思った支援
(!!?)
ドサッ
その時、突然、脳内にナノチップとして埋め込んであるクロスゲート・パラダイム・システムが強烈な反応を伝え、驚いて
思わず本を落としてしまう。
「……何だ!?」
かなり大規模なゲート……いや、クロスゲートに近い物が開かれた反応である。
しかも、そこから現れた存在―――通常であれば『出て来たモノ』の詳細については感知など出来ないのだが―――は、自
分を含めたこの世界全体の因果律に絡みつき、歪ませ、破壊しかねない、とシステムが最大限の警告を送ってくる。
「馬鹿な……」
帝王ゴッドネロス、大帝王クビライ、異次元人ヤプール、そしてラオデキヤ・ジュデッカ・ゴッツォなどとは比べ物になら
ない。……これだけ強力な存在など、少なくとも自分のいる世界にはいなかった。
超神形態の自分ですら、これに比べれば『小物』と言えるだろう。
(……逃げるか?)
即座にこの世界からの逃亡を考える。まともに戦って―――策を弄して戦ったとしても、勝てる可能性は極めて薄い。自分
なら死んでもまた因果地平の彼方に戻るだけかも知れないが、下手をすると『存在』自体が抹消されかねないかも知れない。
(……いや、別の世界に逃げたとしても、追いかけて来る可能性もあるな……)
因果律に干渉できるということは、次元の壁を破る方法を知っているということでもある。
つまり、どれだけ逃げても無駄かも知れないのだ。
「…………どうする…………!?」
もはや魔法の知識などそっちのけで、この強力無比な存在にどう対処すれば良いのか、ということに混乱しつつも頭脳をフ
ル回転させるユーゼス・ゴッツォ。
しかし。
「…………………………む?」
パニックに陥りかけていると、その『謎の存在』の因果律への干渉が消えてしまった。
(???)
一瞬で。綺麗さっぱり。跡形もなく―――いや、跡形(アトカタ)というか形跡(ケイセキ)くらいはあるが。
「………何だったのだ?」
―――たまたまそのような『超存在』が、どこかの世界へと向かう途中でフラリと立ち寄った………などと考えるが、そん
な確率は何兆分の一だろうか。
大まかな出現地点くらいは分かるし、直接、転移して調べてみようかとも思ったが、地球の言葉には『触らぬ神に祟りな
し』とか『薮をつついて蛇を出す』というものもあると言う。
ラスボスの人キタコレ!!
わくわく支援・・・
「………うぅむ」
もしかすると、自分はとんでもない世界に呼ばれたのかも知れない―――などと考えながら先程のクロスゲートの探知を行
っていると、また妙な反応を検知した。
「………あれ以外のクロスゲートだと?」
正確に言うと『クロスゲートが過去に出現した』反応と、『これから出現が予測される反応』である。
過去に出現した反応は、この世界においては数百年、数千年に渡ってポツリポツリと確認が出来る。先程の大規模な反応と、
自分が召喚された時のものを除くと、一番最近の反応は一ヶ月ほど前。先程に比べれば小さいが、それなりに大規模なものだ。
それ以降は約33年ほど前、約60年前……と、かなりの頻度でクロスゲートが発生している。
(………やはり、この世界は次元交錯線が不安定なのか?)
小規模な反応については、今自分がいる地点から東の方にやたらと多い。
(……まあ、そういう地点は地球などにもあったのだから、別に不思議ではないが)
バミューダ海域、カリフォルニア沖、小笠原沖、チベット上空、アルジェリア上空。これら五つの地点は、地球でも割と有
名な不思議スポットであるが、次元境界線が極度に乱れているのが原因と目されている。
つまり、これらの海域なり空域なりに接近して『消失』してしまったものは、別の世界に飛ばされた可能性がかなり高いの
だ。
また、宇宙のとあるポイントには空間が非常に不安定なウルトラゾーンと呼ばれる空間があり、そこには宇宙中の怨念やら
亡霊やらが集まる『怪獣墓場』という異次元空間にも似たものが存在するのだとか。
自分がガイアセイバーズとの最終決戦のために用意した異空間も、この怪獣墓場に近い特性があるらしい。……他でもない
ハヤタがそう言っていたのだから、まあ間違いないだろう。
閑話休題。
ともかく、そのような特殊地点と『東にある地帯』が同じものだ、と考えると、取りあえずではあるが納得はいく。
「……むう」
『これから出現が予測される反応』は、やはり東からのものが多いが、大規模なクロスゲート反応は一つだけだ。
先程の反応があったのは、南に1100キロ〜1200キロほどだろうか。正確な距離の算出には時間がかかるから分からないが、特
に次元交錯線が不安定である様子も無い。
一ヶ月ほど前の反応は、そこから更に南に進んだ地点から検出されている。
『未来の反応』は、西の―――上空から、である。一週間ほど後に出現するようだが、時空間の転移には特に場所を選ばない
から、そういうこともあるだろう。
―――この時、もしユーゼスにハルケギニアの地理についての知識があったとならば、『先程の反応』はガリア王国、『一ヶ月
前の反応』はロマリア皇国、『未来の反応』はアルビオン王国からのものであると気付いていたのだが、それはあくまで仮定の話
であり、また知っていた所で対処のしようもなかっただろう。
(………まあ、私が消えるなら、それも良いかも知れないな………)
そもそも自分はガイアセイバーズとの戦いで敗北し、消滅していたはずなのだ。
それが何の因果か、こうして別の世界に存在している。
その事実だけでも望外の幸運なのだから、これ以上の高望みは止めるべきかも知れない。
……もし自分が消されることがあるのなら、その時は潔く受け入れるべきか。
では、ひとまず転移反応のことは忘れて、また魔法について調べよう―――と、ユーゼスは再び本の内容に没頭するのだった。
<ネタバレ注意!>
赤い世界。
生物の残骸―――化石のような大地の上で、その戦いは行われていた。
しかし、戦いは既に佳境。
今まさに、決着はつこうとしている。
「ぐぅぅうううぅうううう……!!」
『彼』は、人間ではない。
その姿は異形。
骨と殻だけで構成されているような赤い身体に、ところどころに生えた黄色い角のようなモノ。
これを『人間』と称する者はいないだろう。
『彼』は生命を監視するために、ある『思念体』によって生み出された人造生命体である。否、正確に言えばその人造生命
体が作り出した端末のようなモノだった。
この人造生命体の役目は『世界の監視』である。世界そのものにとって有害であったり、世界そのものを脅かすような存在
が現れた場合、または『世界そのもの』が何らかの変調をきたした場合、これに対処し、『害悪』の排除や『変調』の修正な
どを行う。
―――今となっては原因はもう分からないが、その人造生命体の内の一体は、何かの手違いで本来の世界とは違う世界に漂
着してしまう。
漂着した人造生命体は、元の世界へと帰るべく、クロスゲートを何度も何度も開いた。
しかし、それは自分がいるべきだった世界と、自分が漂着してしまった世界とも異なる世界同士を、繋げるだけの結果に
終わる。
……そして、その『繋げた世界』の住人たちが、自分のことを『害悪』と判断し、この自分のいる世界に乗り込んできた。
人造生命体は『彼』という抗体を作り出して対抗しようとしたが―――結果は『彼』の敗北で終わろうとしていた。
「この一撃で決める…!」
黒いハットと黒いコートを身にまとった男が、ボロボロになった『彼』の懐に飛び込んでくる。
「……認めぬ……!」
『彼』は傷付いた身体を急速に再生させ、男を迎え撃とうとした。
「世界は修正される……一つになるのだ……!」
それが『彼』の役目。『彼』の使命。『彼』の存在意義。
だが。
「ここが俺の世界だ…! …それでいいのさ!!」
男はその彼の成すべきことを否定し、その手に持つ銃をこちらに向けた。
「―――アディオス!!」
過ち一家か?支援
支援したのも私だ支援
<ネタバレ注意!>
ドゴォオオオオオオオオオオオ!!!
放たれる膨大なエネルギー。
それは再生しかけていた『彼』の身体に、致命傷を与える。
「我は……ぬおおおおおおおおっ!!」
『彼』の身体が崩れていく。
もはや、自力の再生は適わない。
「おおお……なぜ……だ……! この世界を……世界の……この我が……なぜ……なぜ……敗れる……」
『彼』は、自身をここまで痛めつけた存在へと問いかける。
「俺たちを甘く見た……おまえの傲慢だ」
二本の刀とショットガンを連結させた武器、そして金色の拳銃を持つ、頭に傷のある赤いジャケットを着込んだ男が言い放
つ。
「ちゅうか、ぬしは最初から負け犬ムードだったってことじゃ!」
こちらは茶化すような口調の、錫杖と銀色の銃を武器とし強力な術を行使する狐めいた少女。
「これでは……戻れない……静寂の……世界へ……帰る……ことが……」
―――戻って、自分の使命を果たすことが出来ない。
「私たちも、元の世界へ帰りたい。ですが、そのために犠牲になるものがあってはならない。……私は、そう思います」
美しい青い髪と、赤い瞳―――時折青く変化するが―――を持つ、その外見に似合わぬ強大な力を秘めたアンドロイドが、
痛ましい様子で告げる。
「私も艦長も、異邦人だった。だが、今の『故郷』……守るべき場所は、決まっている……!」
『故郷』を守ると言い切る、先程のモノと同じく女性型であるが全身が兵装のカタマリである戦闘用アンドロイド。
「我は……創造主たりうる……存在……それが……それを……なぜ……」
―――この者たちが生きる世界を創造したのは自分であるのに……なぜ、この者たちは自分を滅ぼすのか?
「……このエンドレス・フロンティアを結果的に形作ったのは……確かにアインストだったかも知れないさ」
やれやれ、という言葉をそのまま態度に表したような、自分にトドメを刺した男。
「だけど、そこで生きる私達は、あなたの手駒なんかじゃないんです……!」
自分の身長ほどもある巨大な大剣を振るう黒髪の女性が、強く言う。
「それを思い違いしたのが……そちの不覚であるぞ」
頭に角を生やした、巨大機動兵器を操る少女が諭すように言葉を送る。
そして。
「帰りたいなら、一人で帰りな……どこか、俺たちの知らない所へな!」
「ォ、ォオオオオオオオオオオオオオオ………………!!!」
もはや、意識を保つことも難しい。
壊れていく赤い世界。
『彼』は無念を抱きながら、その存在を加速度的に消失させていき―――
―――消える寸前、最後の力を振り絞って、目の前に現れたゲートへと飛び込んだ。
支援
転移した先は、どこかの建築物。
ステンドグラス越しの陽光が、自分を照らしている。
…失いかけている視覚は、目の前に重厚なローブを着込んだ金髪の男を捉えている。
「……お、お下がりください、聖下!!」
「何を言うのです、これは―――いえ、『彼』は私がたった今、『サモン・サーヴァント』で呼び出したのですよ?
彼は私の呼びかけに応えてくれたのです。ならば私が拒絶して何としますか」
禍々しい『彼』の外見に臆することなく、目の前の男は自分に歩み寄ってくる。
「かなり傷付いていますね……。……誰か、早急に水のメイジをここに! 彼を治癒するのです!!」
「し、しかし……」
「……このままでは、この私、ロマリア教皇聖エイジス三十二世の名の下に命を発さねばならなくなるのですが」
「しょ、承知いたしましたぁっ!!」
ローブを着込んだ男のそばで、あからさまに『彼』を警戒していた聖堂騎士は、渋々さと慌ただしさを合わせた様子で駆
けていく。
「……さて」
男は更に自分に近寄り、ゆったりと言葉を紡いだ。
「まずは私から名乗るのが礼儀ですね。……私の名はヴィットーリオ・セレヴァレ。これからあなたの主になるものです」
「ぉ…………ぁ…………」
「ああ、無理に喋らなくとも構いません。まずは傷を癒すことに専念していただかなくては。
……とは言え、契約は先に済ませておきましょうか」
そしてヴィットーリオと名乗った男は、躊躇もせずに『彼』へと口付けした。
途端、『彼』の身体に熱が走り、何かが刻まれていく。
それと同時に、先程の戦闘で失われたはずの右腕が、いきなり再生を始めた。
「ァァァアアアアアアアアア……」
その様子を見て、満足そうにヴィットーリオは微笑む。
「今はまだ、その時期ではありません……。
……しかし逆に言えば、あなたの傷が完全に癒え、備えを万全にした時こそが、その時……」
その未来予想図を胸に、『彼』―――ヴァールシャイン・リヒカイトを見つめながら。
「―――共に、異教徒たるエルフを滅ぼすのです」
ある意味でハルケギニアの頂点に君臨する男は、敵対する勢力の殲滅を宣言した。
―――――時に、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールが、ユーゼス・ゴッツォを召喚する一ヶ月
ほど前のことである。
<ネタバレ注意!>
「…………!!」
ガリア国王、ジョゼフ一世は驚愕している。
自分が『虚無』の系統である、と八割がた確信はしていた。
ガリアに伝わる『始祖の香炉』と『土のルビー』、そして様々な手を尽くして手に入れた『始祖のオルゴール』。
それらを使って『爆発』や『加速』の虚無の魔法を習得し、そう言えば使い魔は召喚してなかった、と思い出したのがつい
先日のこと。
あらゆる武器を操る『ガンダールヴ』、あらゆる獣と心を通わせる『ヴィンダールヴ』、あらゆるマジックアイテムを操る
『ミョズニトニルン』、そして記す事さえ憚られる存在……。
出来れば『憚られる存在』が出て来てくれれば面白い、と考えつつも『サモン・サーヴァント』を行ってみた。
まず、通常の鏡のようなゲートが出現する。
伝承によると人間が召喚されるらしいが、さてどんな奴が……などと考えていると。
いきなりそのゲートから赤黒い稲妻が放出され、まるで無理矢理にこじ開けるかのごとくゲートが拡大される。
ジョゼフが目を見張っていると、その稲妻の中心に、同じ色の強い閃光が走った。
やがて周囲の空間が赤く染まり、もはや『鏡』ではなく『黒い大穴』と表現するべきゲートから、『それ』はやって来た。
「お、おお…………!!」
その巨体も十分に圧倒的だが、何よりもその『存在感』が物凄い。
白い鎧のような身体はかなりボロボロの状態だが、それでもその絶大なる威厳と、邪悪さを兼ね備えた威容は健在だ。
そして、その存在は言葉を紡ぐ。
「……古の賢者たちは云った……『闇在れ』と……」
「………!!」
声を聞くだけで、身体どころか魂の底から震え上がる感覚がする。
……それと同時に、ジョゼフはこの存在と『言葉が通じる』ことに、ある程度の知性があることを分析していた。
話に聞く『水の精霊』と同類の存在なのやも知れぬ、などと考えながら、更にその存在の言葉を聞くべく、耳を傾ける。
「我らは暗邪眼にて世界を看破し、開明脳にて英知を集積す……。我らは闇黒の英知……至高の想念集積体……ダークブレイン」
「おお、ダークブレインというのだな、お前は!」
感激すら覚えて、ジョゼフはその存在―――ダークブレインとコミュニケーションを図った。
「お前は……」
「ん? ああ、俺か? そうか、そちらが名乗ったのに、俺が名乗らぬのは道義に反するな! 俺の名はジョゼフ。このガリア
の王などをやっている!」
全く物怖じも気負いもせずにダークブレインと話すジョゼフ。
「……お前が、我らとこの世界を繋げるゲートを開いたのか?」
「どうやらそうらしい。しかし驚いたぞ! まさかこんなモノがやって来るとは思わなかった!」
「……この世界は次元境界線が極度に不安定な状態にある」
「ジゲンキョウカイセン? なんだ、それは?」
「異なる世界同士を隔てる壁だ。また、この世界にはゲートを開くために必要な因子が揃いつつある……」
ジョゼフはふむ、と大きく頷くと、ダークブレインの言葉を噛み締めるようにして会話を続ける。
「要するに、部屋と部屋とを繋ぐ壁が薄く、その壁に穴を開ける道具があったのだな?
面白い、面白いぞ! ……ところで、お前はなぜそれほど傷付いている?」
「我らに楯突く愚か者との戦いの結果だ。
ほぼ相打ちに近い状態だったが、『奴』には深手を負わせたことは確実だった。
……しかし我らの損傷も重く、逃亡する『奴』を追うことは出来なかった。そこにお前がゲートを開いた」
「ふむ? では俺はお前の邪魔をしたことになるのか?」
「この状態では『奴』を追うことは出来ない。治癒に専念すると結論づけていたのだから、特に問題はない」
ジョゼフは、ほうほう、としきりに感心する。
「で、お前は何のためにその『敵』とやらと戦っていたのだ?」
「我らは知的生命体の痛み、苦しみ、悲しみ、憎しみ、蔑み、妬み、怒りを糧とし……。
夢、希望、心、勇気、優しさ、善、想い、信頼、絆、友情、願い、愛を滅ぼす。
そして……闇黒の秩序を作り上げ、我らがその頂点に君臨するのだ」
それを聞いたジョゼフの瞳が、くわ、と見開かれる。
「おお……おお!! それらは全てこの俺が失ったものだ!! お前もそれを求めるか!! ハハハハ、何だ、気が合うな!!」
……既にジョゼフは、この闇黒の叡智に対して親愛の情すら抱いていた。
「………お前も我らの糧となり、我が開明脳と同化せよ」
「む、お前と一つになるのか? ……ふむ、それも面白そうだがな、出来ればそれは後回しにしてもらいたい」
「……何が望みだ?」
「お前は『痛み、苦しみ、悲しみ、憎しみ、蔑み、妬み、怒りを糧とする』のだろう? つまり、傷を癒すためにはそれらの
感情が必要なわけだ」
「……………」
「どうせなら、お前にそれらを与えてやると言っているのだ。そもそも、俺一人の感情などたかが知れている。……第一、俺
はそのような感情を亡くしてしまった。
ならば、この世界全体から負の想念を集めた方が効率が良いだろう」
「………お前はこの世界の破滅を望むか」
「その通りだ!」
ダークブレインの問いかけに、ジョゼフは即答した。
「俺の心はな、弟を―――シャルルを失った時に、その色を失ってしまった。中身がからっぽになってしまった。ほとんど動か
なくなってしまった。
ならば大きな刺激を与えればまた満たされることもあるかと思い、試しに『レコン・キスタ』という連中を使ってアルビオン
に内乱を起こしてみたが、これが大して面白くもない」
「……………」
「ではその対象をこの世界そのものに拡大すれば―――と思い至って、手始めに使い魔を召喚しようとしたら、お前が現れたの
だ!」
興奮した様子でジョゼフはまくし立てる。
「率直に言うと、俺はお前の存在に感動した。もう震えぬと思っていた心がな、震えたのだ。
………そしてどうせなら、お前がこの世界で成すことを見てみたいと思っている」
「……良いだろう、ジョゼフ。お前の望みを叶える。そして、この世界のお前以外の存在を滅ぼし尽くしたならば……」
「そうだな、その時は最後に、この俺をお前の開明脳とやらに食わせるが良い!! ハハハハハハ!!」
ダークブレインはその言葉を聞くと、その身体を青白い光に包み始めた。
「ん、どうした?」
「この姿では世界に対しての影響力が強すぎる。また、我らの存在を感知する者もいるようだ」
「ほう、そんな奴までいるのか」
「傷を癒す目的もあるため、姿を変える」
バチン!
稲妻が走る。
思わずジョゼフが目を瞑り、再びその目を開くと、そこには黒いローブに身を包んだ白髪白髭の老人がいた。
「……よし、これで世界への影響は最小限に抑えられるはずじゃ」
「ほぉ……」
外見が変わったことにも驚いたが、何よりその雰囲気、人格に至るまで変化していることに驚く。
……またそれと並行して、ダークブレインが自分のことを『我ら』と複数形で表現するのは複数の人格、あるいは多数の思
念があの存在に同居しているためか……と、ジョゼフは推測していた。
「よし、それではまず色々とお前の話を聞かせてもらおう! 俺の知らない、ここ以外の世界のことを教えてくれ!」
「ま、いいじゃろ。ワシもこの世界の情報は欲しいしの」
二人は、まるで長年からの友人であるかのように連れ立って歩いていく。
―――――時に、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールが、ユーゼス・ゴッツォを召喚した、その
日の夜のことである。
それ召還したららめぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!
支援するにゃん!ごちそうさまっす
支援
浮遊大陸アルビオン、サウスゴータ地方にある森。
その中にある小さな村は、その少ない人口のほとんどが大混乱に見舞われていた。
「うわぁあああ〜!!」
「怖いよ、テファ姉ちゃん〜!!」
「バカ、俺たちがテファ姉ちゃんを守るんだよ!」
パニックに陥る子供たち。そんな子供たちの保護者であるハーフエルフの少女、ティファニアは必死に自分を奮い立たせて
いた。
(わ、私が呼び出したんだから、私が何とかしないと……!)
一応魔法が使えるんだから、試しに『サモン・サーヴァント』でもやってみたらどうだい―――と姉代わりの女性に言われ、
せっかくだからその女性がいない内に使い魔を召喚して驚かせてやろう、失敗しても別に困るわけでも………などと考えたのが
間違いだった。
姉代わりの女性に教えてもらった呪文を唱えてみると、やたらと大きい―――40メイルほどのゲートが開き、そこから現れた
のは―――
「ゴーレム……!? じゃなくて、ガーゴイル!?」
どちらなのかは分からないが、とにかく少なく見積もって30メイルは超えている。
青い鎧をまとい、金色の輪を背負ち、空を飛ぶ人型のモノ。
……自分は一体、何を呼び出してしまったのだろうか?
しかもどうにかしようにも、自分に出来るのは、特定の相手の記憶を消去することだけ。
はっきり言って、直接的な戦闘行為においては何の役にも立たない。
……せめて、姉代わりの女性がいる時にやるべきだったと後悔する。
だが、それでも。
(それでも、この子たちだけは……!)
少なくとも逃げさせる時間程度は稼がなくてはならない。
囮となってアレの目を引き付けなければ―――などと、ティファニアが悲壮な決意を固めつつあったその時。
「じ、地面におりた……!」
子供たちの一人が、青い鎧の巨人の挙動を説明する。
もしかしたらこちらに近付いて、自分たちを捕まえるつもりなのではないか……と、ティファニアが子供たちに逃げるように
叫ぼうとした、その時。
ガシャンッ
「?」
腰の部分のあたりが突然に開き、そこから人影が現れる。
性別は男。紫がかった髪の色、長身痩躯、服装は白衣を着込んでいる。年は―――20歳過ぎほどだろうか? 肩に青い鳥を乗
せているが……。
男は地面に降り立つと、自分たちに向かってゆっくりと歩いてくる。
「……申し訳ありません。どうやら怖がらせてしまったようですね」
「え、あの、えっと」
「ほう…。エルフ、というものでしょうか。地上のファンタジー小説などではお馴染みの存在ですが、ふむ」
「っ!」
バッ、と男に対して身構えるティファニア。
自分の母の受けた仕打ちが脳裏をよぎり、この男の記憶を消そうか、などと考えるが、
「御主人様、いきなり登場したワケの分からない人が、思わせぶりなセリフを言ったりしても警戒されるだけですよ」
「……それもそうですか」
肩に乗った青い鳥が、早口で男に忠告を送った。
(……メイジ?)
あの青い巨人がゴーレムかガーゴイルだとして、この青い鳥が使い魔だとすると、この男はやはりメイジなのだろうか。
ティファニアが子供たちを庇いつつ、男の正体を測りかねていると、
「では、先に名乗らせていただきましょう」
男が自己紹介を始める。
「……私の名前はシュウ・シラカワ。こちらは私の使い魔でチカと言います」
―――――時に、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールが、ユーゼス・ゴッツォを召喚した、その
一週間ほど後のことである。
ちょwwwダークブレインキタコレ支援www
支援
なんつーかホントにバンプレ系ラスボス大集合だなこれはwww支援
あー久保さん、炉亜さんぼすけてー!?!
株が大暴落し放しの彼も来たのか。
支援
ある意味怪獣大決戦ktkr
ダクブレってそんな凄かったっけ
おいおい、久保が裸足で逃げ出すような連中を揃えるんじゃねえよwwww
すみません、さるさん食らいました。どなたか代理お願いします。
以上です。
実は、私は前にSSモドキを書いた経験がありまして、その時に次から次へと新しい謎だの伏線だのを投入しまくり、気がつい
たら収拾が付かなくなってフロシキを畳みきれずに途中で挫折したことがあります。
ならば、最初から『これ以上ないほどのフロシキ』を広げておけば、あとはその畳み方を考えるだけだ……と思い、このような
形にしてみました。
私がスパロボやその類の作品が好きなので、何かえらく偏った編成になってしまいましたが、使い魔として召喚される存在は、
スーパーヒーロー作戦、無限のフロンティア、ザ・グレイトバトル(ダークブレインは実質スパロボのような気もしますが)、
スーパーロボット大戦のラスボスとなります。
なお、ダークブレインが変身した姿は、一番最初のザ・グレイトバトルでダークブレインが最初に取っていた姿のつもりです。
……最初はイングラムあたりを呼ぼうかな、と思ったのですが、変に話がややこしくなりそうな予感がしたので止めて、そう
言えばこの作品のタイトルは『ラスボスだった使い魔』、じゃあラスボスからチョイスしてみよう、と結論づけました。
………小ネタにシュウが召喚された話があることは、承知の上です。
……ちなみに、コイツらはまず状況の把握やダメージの回復に専念するため、しばらくは出番がありません。
それと最後に一つだけ。
アルフィミィは、出ませんので。
それでは、支援ありがとうございました。
>>554 ラスボスの人がとてつもなく凡テンプレ展開やったみたいになっちゃったぢゃないかww
ダークブレインを召還するとは!!
ん?
スーパーヒーロー作戦にダークブレインって出てましたっけ?
クリアはしたけど、覚えてない・・・。
続編の方かな?
それでも、それでも久保ならなんとかしてくれる…
ラスボスさん乙
あの幼女は外伝で復活したみたいですね。
本当にタイトル通り「ラスボスだった」連中が続々と召喚されてますなw
ラスボスなら個人的にはギリアムとかよんでほしいなぁ
>>594 おっと、シラカワ博士の悪口はそこまでにしてもらおうか
>>593 >>590は「スパロボに」じゃなくて「スパヒロに」DBが出てたか聞きたいんじゃないのか?
>>597 シュウなのか、良かったら理由もお願いします
600 :
590:2008/11/19(水) 23:08:10 ID:dYdJjxEg
>>593 ご丁寧にありがとうございます。
OG外伝での出演は知ってるんですが、スパヒロに出てたかな〜と。
どうやらこの方のSSはバンプレストラスボスオールスターになるわけですね。
めっちゃwktkしてきたんですがw
楽しみ楽しみw
後は・・・・
GUN OF ZEROの方、 щ(゚д゚щ)カモーン
ベルモンドの方、щ(゚д゚щ)カモーン
戦国ランスの方、避難所にщ(゚д゚щ)カモーン
乙
しかし因果律の番人が来てもおかしくない状況だな
>>511 アルシャードなら種族:メロウがやたらチートな気がする。
オアンネスの冒険商人なら全然居ても不自然じゃないし、あいつら1レベルから射程:視界、対象:場面の攻撃が出来るからな……
ダークブレインはOG外伝より前、
シュウは魔装機神の第二章の後なのかな
>>603 クエスターがハルケギニアにきたら自動的にオーヴァーランダーを取得してしまうんじゃないか、ということが気になっててだな?
そうなると加護:マリーシがゲットできちゃうわけで。…逃がせちゃうなぁ、王党派…。
11時45分よりスーパーロボット大戦Zから、オリ主を召喚して腐った貴族社会に正義の鉄槌を下したいと思います。
着想はここの某人気SSから得ました。ちなみにここのSS何点かとアニメしかしりません。
では、EVILの方どうぞ。
うまい麦飯じゃのぅ
それでは投下したいと思います。
アルビオンがオディオと名乗る魔王に占領されてしばらくたったある日、一匹の風竜がアルビオンに向かっていた。
その風竜の背には青い髪の小柄な少女が乗っている。本を読んでいるその姿は、これから魔王のいる国に向かうとはとても思えない。
その時、どこからともなく少女に話しかける声が聞こえてくる。だが、風竜の背には少女以外の姿は見当たらない。
それもそのはず、少女に話しかけていたのは人間ではなく、少女が乗っている風竜だったのだから。
「お姉さまは魔王が怖くないの?」
「……別に」
「シルフィは怖いのね。国を一つ占領しちゃうんだもん、きっと恐ろしい姿の怪物なのだわ」
怖がる風竜の頭を少女は優しくなでる。そして、そっと呟いた。
「大丈夫」
この言葉で風竜は少し落ち着いたようだ。今は今晩のご飯はお肉がいいと少女にねだっている。
だが、少女の心から不安が消えることはない。先程の言葉は、出発してからずっと自分に言い聞かせていた言葉なのだから。
青い髪の少女、タバサがアルビオンに向かうのは、彼女のもう一つの顔である北花壇騎士・七号に任務が下されたからだ。
任務の内容はアルビオンにいる魔王の偵察。だが、この任務を言い渡した北花壇騎士団団長、ガリア王女イザベラの様子はどこかおかしかった。
いつもならタバサに対して、嫌がらせや皮肉たっぷりの言葉をぶつけるイザベラが、今回はどこかばつの悪い顔でただ任務を言い渡すだけだったのだ。
そのイザベラの態度でタバサには、この任務を自分に与えたのがイザベラではなく、別の人物であることがわかってしまう。
王女であるイザベラよりも権力を持ち、北花壇騎士に自由に命令を下せる人物。そう、ガリア王ジョゼフだ。
いち早く魔王に対して不可侵を決めたトリステインに続き、他の国々も次々と中立を宣言していく中、ガリアだけは魔王に対する方針を定めていなかった。
魔王からはガリアに侵攻する気はないと書状が送られてきていたが、ガリア王ジョゼフはそれをまったく信じていない。
ガリアの多くの国民が他の国のように中立を宣言してほしいと願っているのに対し、ジョゼフは中立を宣言するどころか魔王と戦う気さえ見せ始めている。
ガリアでは王が裏で秘密兵器を開発し、魔王と戦うつもりだという噂で持ちきりであった。
そんな中、タバサに命じられた魔王への偵察任務。タバサが成功しようが、失敗しようがジョゼフに損はない。
タバサの本当の名前は、シャルロット・エレーヌ・オルレアン。ジョゼフの弟、シャルルの一人娘だ。
すでにシャルルが暗殺されている今、ジョゼフに対して不満を抱く人間が旗頭にするのはシャルロットしかいない。
魔王がシャルロットを始末してくれれば、ジョゼフは後顧の憂いを絶つことができ、魔王との戦いに専念できる。
よっしゃ、EVILの人来た
これで勝つる!支援
そんなジョゼフの思惑がわかっていても、タバサは任務を断ることはできない。
彼女には毒で心を狂わされた母親がいる。任務を断ったり、逃げ出したりすれば母がどんな目に遭うかわからないのだ。
断るという選択肢がないタバサは、憮然とした表情のイザベラから任務の内容が書かれた紙を受け取り、その場を退出しようとする。
その時、イザベラからタバサに声がかけられた。
「そんな任務、さっさと終わらせてきな。あんたにはあたしの用意した任務がたっぷり残ってるんだからね」
タバサにはイザベラの言葉の真意はわからなかった。彼女のことだから、自分が用意していた任務をふいにされたのが気に食わないだけかもしれない。
それでも、嫌がらせや皮肉を受けずに出発できたことは、タバサの心をほんの少しだけ軽くしてくれたのだった。
「お姉さま、アルビオンが見えてきたのね」
シルフィードの声でタバサは我に返った。前方には空に浮かぶ大陸の姿が確認できる。
いよいよ魔王のいるアルビオンに潜入する時がきたのだ。
「雲に紛れて上陸、その後は合図があるまで隠れてて」
「了解なのね。でも、危なくなったらすぐにシルフィを呼ぶのね」
「わかってる」
「絶対なのね! お姉さまは一人で無茶をするから、シルフィはいつも心配なの。きゅいきゅい!!」
そのシルフィードの心遣いにタバサは感謝していた。もし、自分一人だけだったなら不安に押し潰されていただろう。
「無茶はしない、心配しないで」
そう言って、タバサは再びシルフィードの頭をなでた。頭をなでられたシルフィードは、目を細めてきゅいきゅいと嬉しそうに鳴いている。
使い魔召喚の儀式で風韻竜を召喚した時は、面倒なことになったと考えたこともあった。
絶滅したといわれている韻竜を召喚したことがばれれば、厄介ごとに巻き込まれるのが目に見えていたからだ。
だが、今ではシルフィードに感謝している。つらい任務も彼女と一緒なら失敗することはなかったし、一人で任務をこなしていた時より随分楽になった。
今回の任務もシルフィードと一緒ならきっとうまくいく。例え相手が恐ろしい魔王だったとしても。
その後、特に問題なくアルビオンに到着したタバサは、情報収集のためにかつて王都と呼ばれていたロンディニウムに向かった。
しばらくして、ロンディニウムに到着したタバサの目に飛び込んできたのは、魔王の国にあるとは思えない平和な街の姿だった。
談笑しながら歩いている人の姿も見えるし、開けた所にある広場では子供達の遊んでいる姿が確認できる。
大通りでは露店が開かれており、多くの客で賑わっていた。表情は皆明るく、買い物を楽しんでいるのが見ているだけでも伝わってくる。
タバサはアルビオンの街がここまで平和だとは思ってもいなかった。
てっきり、魔王に占領された国のことを悲しみ、毎日を怯えながら過ごしているとばかり考えていたのだ。
だが、タバサがそう考えていたのも無理はない。圧倒的な力を持ち、人々から恐れられている魔王が、平和な街を作るという想像ができる人間がいるだろうか。
その時、困惑しているタバサに声がかけられた。
「そこのかた、今日は新鮮な果物が揃ってるよ。一つどうだい?」
どうやら話しかけてきたのは露店の店主のようだ。確かに、店には色とりどりの果物が並んでいる。
思わず果物に目が行ってしまうが、今は買い物をしている場合ではない。
「いらない。それより聞きたいことが……」
「こんにちは、おじさん」
タバサが店主に話を聞こうとしたちょうどその時、後ろから店主に話しかける声が聞こえてきた。
おそらく買い物客だろうと思い、何気なく振り向いたタバサはその人物を見て固まってしまう。
「いらっしゃい、ティファニアちゃん。今日もおいしい果物が揃ってるよ」
「本当、おいしそう!」
タバサは目の前の光景が理解できなかった。ティファニアと呼ばれた人物の耳は細長く、一目でエルフだとわかる。
エルフは強力な先住魔法の使い手であり、このハルケギニアで一番恐れられている存在だ。
だが、店主は目の前のエルフをまったく恐れていない。それどころか、エルフと親しそうに話している。
「ん? お客さん、もしかして旅の人かい?」
固まってしまったタバサに気付いた店主が声をかけてくる。タバサは黙って頷くことしかできなかった。
「まさかこの魔王の国にやってくる人がいるとは……あ、この娘はあなたに危害を加えることはないから、警戒しなくても大丈夫だよ」
店主と親しそうに話していたエルフは、今は不安そうな顔でタバサのことを見ている。
その姿からは、タバサのことを攻撃しようという意思はまったく感じられない。どうやら、店主が言っていることは本当のようだ。
「エルフが怖くないの?」
「そりゃあ最初は怖かったよ。でもね、あの恐ろしい魔王に比べたら、大人しくて優しいティファニアちゃんは天使に見えるってもんさ」
確かに、今この国は魔王という正体不明の存在に占領されている。
恐ろしい力を持ち、姿形がまったくわからない魔王に比べたら、この大人しそうなエルフの方がましだといえるだろう。
それに、このエルフは十分に美少女といえる顔立ちをしているし、なにより胸が大きい。これなら、男性に人気が出るのもわかるというものだ。
「それに、ティファニアちゃんはマチルダさんの家族だからね。この街の恩人の家族を邪険にはできないよ」
「マチルダさん?」
「ああ、あの人のおかげでこの街の人間は安心して暮らしていられるんだ」
そして、店主は魔王がアルビオンに現れてから起こった出来事をタバサに話してくれた。
店主の話では、最初は魔王を倒すために多くの人間が魔王の城に向かっていったという。だが、ほとんどの人間がその日のうちに逃げ帰り、それ以来魔王の城に向かう者はいなくなってしまった。
魔王が街に危害を加えることはなかったが、いつまでも魔王が何もしてこないとは限らない。不安に駆られた住人達は、この街から次々と逃げ出していった。
残った住人達は、これ以上この街から人がいなくなるのを防ぐために魔王と話し合うことを決意する。だが、ここで問題が発生した。
残っている住人のほとんどが魔法の使えない平民だったのだ。力をまったく持っていない平民相手に魔王が話し合いに応じてくれるとは思えない。
その時、困り果てていた街の住人達の前に現れたのがマチルダだった。土のトライアングルのメイジである彼女は、住人達の代わりに魔王との話し合いに臨んでくれるというのだ。
マチルダに全てを託すことにした住人達は、祈るような気持ちで彼女の帰りを待つことにした。
次の日、住人達は街に戻ってきたマチルダから話し合いが成功したという報告を受ける。
彼女の話では、魔王はこの街の住人に危害を加えないことを約束してくれたらしい。さらに、それを証明するために、今日の夜住人達の前に魔王が姿を見せるというのだ。
そしてその日の夜、鳥の顔をした巨大なゴーレムに乗って約束どおり魔王は街に現れた。
「魔王はどんな姿をしていたの?」
謎に包まれていた魔王の姿がわかるとあって、普段は無口なタバサも思わず店主に質問をしてしまう。
「体格は大柄で、真っ黒なローブに鎧と兜を身に着けてたよ。顔は暗くてよく見えなかったな」
魔王は住人達に姿を見せてからすぐに立ち去ってしまったため、魔王の顔を見た者は誰もいなかったらしい。
その後、この街から住人が逃げ出すことはなくなり、王党派と貴族派が争っていた時よりも平穏な暮らしができるようになった。
街の恩人であるマチルダは、住人達の願いでこの街に住むことになり、現在は家族と一緒にこの街で暮らしている。
ティファニアはマチルダの家族のハーフエルフで、最初は住人達も対応に戸惑ったが、今では誰も彼女を怖がる者はいない。
それどころか、その愛らしい容姿と優しい性格ですっかり街の人気者になっているとのことだった。
「これで俺の話はおしまいさ。他に何か聞きたいことはあるかい?」
「魔王のこと、本当に信じてるの?」
「魔王を完全に信じてるわけじゃないよ。ただね、魔王に怯えて暮らすよりも、魔王なんか気にしないで笑って暮らした方がいいって、みんな吹っ切れたんだろうね」
だからそのきっかけを与えてくれたマチルダにみんな感謝している、最後にそう付け加えて店主の話は終わった。
タバサは話を聞かせてくれた店主にお礼を言うと、最後に一つ質問をする。一番重要な魔王の居場所についてだ。
「魔王はニューカッスル城にいるよ、もっとも今はみんな魔王城って呼んでるけどね」
それを聞いたタバサは再度店主にお礼を言い、足早にその場を去ろうとする。
だが、店から少し離れた場所である人物に呼び止められてしまう。タバサを呼び止めたのは、先程の露店にいたハーフエルフのティファニアだった。
「ま、待って。もしかしてお城に行くの?」
タバサはいつものように無表情で何も答えなかった。この後、夜になってから魔王の城に行くつもりだったが、それをこの少女に言う必要はない。
ティファニアは何か言いたいことがあったようだが、何も答えないタバサに戸惑っているようだ。
しばらく二人の間で無言の時間が続いたが、やがて意を決したティファニアがタバサに話しかけた。
「あ、あのね、魔王は本当はとても優しい人なの。だから、お城に行っても魔王を退治しようだなんて思わないで」
そのティファニアの言葉でタバサはある噂話を思い出していた。魔王の正体はエルフではないかという噂だ。
もし魔王がエルフなら、同属であるこの少女に酷いことはしないだろう。そう考えたタバサは、ティファニアに何も答えずその場を去っていった。
夜までに色々準備をすることもある、こんな所でぐずぐずしている時間はタバサにはないのだ。
そんなタバサの背中をティファニアは悲しそうな顔で見つめていた。
そして、辺りがすっかり暗くなった頃、タバサは魔王の城の近くまでやってきた。
今回の任務はあくまで偵察だ。ハーフエルフの少女に返答はしなかったが、魔王を倒す気など最初から頭にない。
あとは、魔王の居場所が本当にこの城で間違いないのかを確かめれば、偵察としての任務はこなせたといえるだろう。
もし魔王に見つかって戦闘になるようなことになれば、すぐにシルフィードを呼んで脱出するつもりだ。
シルフィードは近くの森で待機している。タバサの合図があればすぐにでも駆けつけてくれるだろう。
すべての準備を整えたタバサは、魔王の城へと目を向ける。
明かりはほとんど点いておらず、城門前には門番らしき者もいない。だが、中庭には鳥の顔をしたゴーレムの姿が確認できる。
おそらくあれが見張り番なのだろう。城に侵入するには、あのゴーレムを避けて通らなければならない。
タバサは一つ息を吐くと、ゴーレムに見つからないように魔王の城へと向かっていった。
支援
運良くゴーレムに見つからずに、タバサは城に侵入することができた。
あとは魔王を探すだけだが、この広い城内で魔王を見つけるのは容易なことではない。それに、城内に魔王の手下がいないとも限らないのだ。
タバサは気合を入れなおすと、静まり返っている城内を歩き始めた。
しばらく歩いていると、薄暗い城内の中で明かりが灯っているのが目に飛び込んでくる。
素早くその場所に向かったタバサだったが、そこは魔王の部屋ではなかった。
明かりが灯っていた部屋はこの城の厨房のようで、中ではメイド服姿の少女が一人で料理を作っている。
後ろから見た少女の耳は細長くはなく、少女がエルフではないことがすぐにわかった。魔王が人間の少女に食事を作らせているのは驚いたが、今は少女を気にしている場合ではない。
タバサはすぐにこの場所を離れようとしたが、あることに気付き途中で足を止めた。少女の後姿をどこかで見たような気がしたのだ。
だが、すぐに気のせいだと思い、その場を離れる。いつまでもここで無駄な時間を使うわけにはいかなかった。
次にタバサが訪れた場所は城のホールと思わしき場所だった。魔王が現れる前は、ここで華やかなパーティーが開かれていたのであろう。
タバサが薄暗いホールを進んでいくと、中央に何かあるのに気が付いた。近付いて見てみると、それが台座に乗った石像であることがわかる。
石像は剣を手に持ち、鎧を身に纏った男の姿をしていた。なぜこんな物が城のホールにあるのか、タバサには検討もつかない。
その時、ふと辺りを見回したタバサは、他にも石像があることに気付いた。中央にある男の石像を囲むように、全部で七体の石像がホールに置かれている。
石像の姿はすべてばらばらで、普通の人間から翼のないドラゴンのような生物まで実に様々だ。中庭にいたゴーレムの姿と同じ物もある。
嫌な予感がしたタバサは、この場からすぐに立ち去ろうとしたが、どうやら少し遅かったようだ。
すでに魔王はタバサの前にその姿を現していたのだから……
「我が名は……魔王オディオ……」
魔王の姿は街で聞いた話と同じだった。大柄で黒のローブに鎧と兜を身に着けている。
だが、魔王の声はその姿とは裏腹に甲高く、まるで少女のようだ。
(早く逃げないと……)
魔王の正体は気になるが、今はそんなことを考えている場合ではない。見つかってしまった以上、この城から脱出するのが先決だ。
すぐさまタバサはシルフィードを呼ぶために口笛を吹こうとする。
「逃げられないわよ……この私からは……」
次の瞬間、まるで地震が起こったかのようにホールが揺れ、辺りが暗闇に包まれる。
何も見えない暗闇の世界が晴れた時、タバサの前には常識では考えられない異様な光景が広がっていた。
「どうなってるの?」
タバサがいたはずの城は跡形も無くなり、外は夜のはずなのに夕焼けのような赤い空が広がっている。
辺りを見渡しても、前方に大きな穴が開いている以外はでこぼこした地面が広がっているのみで、城どころか木の一本すら生えていない。
シルフィードを呼びたくてもこれではどうしようもない、この場所は先程いた場所とは明らかに異なっている。
突然変な場所に飛ばされてしまったタバサが戸惑っていると、目の前に恐ろしいものが姿を現した。
現れたのは巨大な目と大きな口、そして鳥の羽のようなものに包まれた奇妙な物体である。目は二つあり、タバサのことをじっと見つめていた。
あまりの恐怖と驚きで、その場に尻餅をついてしまったタバサの目にさらに恐ろしいものが飛び込んでくる。それは地面から伸びている人間の手だった。
今まででこぼこした地面だと思っていたものは、石になってしまった人間が折り重なってできたものだったのだ。
恐怖で固まってしまったタバサの前に巨大な目が迫ってくる。
それに気付いたタバサは魔法を詠唱しようとするが、巨大な目に見つめられた瞬間、急に眠気が襲ってきた。
それが巨大な目の攻撃だとわかっていても、耐えられない強烈な眠気の前に、タバサはあっけなく意識を手放してしまう。
タバサの目に最後に映ったのは、鋭い歯と光る目を持つ魔王と呼ぶに相応しい怪物が空に浮かんでいる姿だった。
「いつまでもそんなところで寝てると風邪ひくわよ」
その声を聞いた瞬間、タバサは跳ねるように飛び起きた。目の前には、黒いローブを着た小柄な人物が立っている。
声で女性だとわかるが、ローブのフードのせいで顔はよく見えない。
「ここは……」
タバサが立っていたのは魔王の城のホールだった。周りを見渡しても、巨大な目や人間でできた地面は確認できない。
唖然としていたタバサだったが、すぐに足元に落ちている杖を拾い上げ、目の前にいる人物と距離をとる。
「あなたは誰?」
「さっき名乗ったでしょ」
「……魔王」
「そうよ。あの世界に戻りたくなかったら、今すぐここから立ち去りなさい」
この人物が本当に魔王なのかはわからない。だが、今は魔王の正体より、この城から脱出するほうが先である。
罠の可能性もあるが、もし本当に見逃してもらえるのならば素直に従ったほうがいいだろう。
それに、ここで逆らって命を落とすわけにはいかない。やらなければいけないことはまだたくさん残っている。
そう考えたタバサは、辺りを警戒しながらホールの出口に向かっていく。
支援
その時、魔王を名乗る黒いローブの人物がタバサに話しかけてきた。
「一つ忠告しといてあげるわ」
黒いローブの人物がその言葉を発した瞬間、今まで静寂に包まれていたホールに異変が起こる。
ホールに置いてある石像の目が一斉に光りだしたのだ。その異様な光景にタバサは思わず身構えてしまう。
だが、黒いローブの人物はそんなタバサの様子を気にもせずに、ある言葉を告げる。
それは、全てに裏切られ魔王となってしまった青年が英雄達に語った最後の言葉と同じものだった。
「憎しみがある限り、誰でも魔王になる可能性がある。あなたも魔王にならないように気をつけることね」
ルイズはタバサが城から出た後もホールに残っていた。その手にはデルフリンガーが握られている。
「相棒。さっきはなんであんなこと言ったんだ?」
「別に深い意味はないわ。ただ、あの子も憎しみを抱いているようだから、少し助言してあげただけよ」
デルフリンガーの問いかけにそう答えると、ルイズは目深に被っていたローブのフードを脱いだ。
「あの娘っ子も魔王退治に来たのかね?」
「そうは思えないわ。最初から戦う素振りは見せなかったし、おそらくは偵察でしょうね」
「ガリアの王様の命令でやってきたって訳か」
「たぶんね。やっぱりガリアの動向には注意しないといけないようね」
他の国と違い、ガリアだけは書状を送っても魔王と戦う姿勢を見せている。
なんとか戦いを避けようとしていたルイズだったが、ガリアとの戦いは避けられそうになかった。
「しばらくはトリステインに帰れそうにないな」
「そうね。ガリアの件もあるし、テファが女王になってアルビオンが落ち着くまでは帰れないわ」
ルイズはティファニアにアルビオンの女王になってもらおうと考えていた。
マチルダから、ティファニアは前アルビオン国王ジェームズ一世の弟の娘であると聞いているので、血筋的にも王家を継ぐには申し分ない。
すでにロンディニウムでは人気者なっているようなので、これからアルビオン中にティファニアのいい評判を流していくつもりだ。
ちなみにマチルダは土くれのフーケの本名である。
マチルダの父親がティファニアの家に仕えていたらしく、ティファニアとエルフである彼女の母親を匿っていたらしい。
だが、そのせいでアルビオン王家により家名を取り潰されてしまう。
その後、マチルダは盗賊になり、両親を殺されたティファニアは森の中の小さな村に隠れ住んでいたとのことだった。
しばらくルイズとデルフリンガーが話していると、誰かがホールに入ってきた。
といってもタバサが去った今、この城にいるルイズ以外の人間は一人しかいない。
「ルイズ様、食事の用意ができましたよ」
「今、行くわ」
ルイズが魔王になった後も、シエスタは今まで通りルイズの世話をしている。変わった事といえば食事を一緒にするようになった事ぐらいだ。
もうルイズにはシエスタがいない生活は考えられない。魔王となってしまったルイズの心の支えがシエスタだった。
もし、シエスタがいなかったら間違いなくハルケギニアを滅ぼす魔王になっていただろう。
「今日はルイズ様の好きなクックベリーパイもご用意してますよ」
「本当! シエスタのクックベリーパイはおいしいから楽しみだわ!」
「普段はクールに振舞ってるけど、まだまだ相棒は子供だな」
「う、うるさいわね!」
シエスタはルイズとデルフリンガーが騒ぎ出したのを微笑みながら見守っている。
その時、ふと視線を感じたシエスタが振り向いてみると、中央にある石像が目に映った。ルイズがよく眺めている剣士の石像だ。
このホールにある石像は恐ろしい姿をしているものが多い。だから、シエスタは普段はあまり石像を見ないようにしている。
だが、剣士の石像は想像していた恐ろしい表情ではなく、どこか薄く微笑んでいるような優しい表情をしているようにシエスタには見えた。
これから先、ルイズには様々な困難が待ち受けている。
いずれは再び力を使い、魔王オディオとなる時が来るかもしれない。
だが、ルイズが本当の魔王になることはないだろう。
彼女のことを信じてくれる人が一人でもいる限り……
支援
支援
支援
627 :
代理の人:2008/11/19(水) 23:36:03 ID:tqOBaw7j
代理スレにレスがあったので転載します。
286 名前:ZERO A EVIL[sage] 投稿日:2008/11/19(水) 23:34:06 ID:AI8mSuAc
すいません、さるさんをくらってしまいました。
どなたか後書きだけ代理お願いします。
以上で投下終了です。支援ありがとうございます。
なんとか完結できたのも感想を書いてくれたり、まとめに登録してくれたり、支援をしてくれたりしてくださったみなさまのおかげです。
今回の経験を活かして、次は明るく楽しい物語を書きたいと思っています。
乙でした〜。
タバサの次はメンヌヴィルあたりが威力偵察として送り込まれてきそうだと感じた自分w
乙です。
ここでティファニアが主人公連中の誰かを呼び出したりすると、話がややこしい方向に向くなw
EVILの人、乙でした。
ところでラスボスの人の新話についてだが…<ネタバレ注意!> ←これ、どうしよう。
登録時に取っ払っちゃったが、重要だよなコレ。目次とページトップに貼り付けとこうか
こんばんわ。
ガルム発売記念も兼ねてブラスレイター コンシート 二話
23時50分から投下OKですか?
ガンゼロの人とラスボスの人の夢のクロスオーバーが見たいと思うのは俺だけだろうか?
乙かれさま
そうか、完結か……なんだか寂しいが嬉しい複雑な気分だ
ZERO A EVILの人お疲れ様でした。
LIVE A LIVE好きにはたまらない作品だったよ。
トリステイン魔法学院。
トリステイン王国に有る由緒ある学院である此処には、国中から貴族の子息が集い、そして他国からの留学生も迎え、魔法を学ばせている。
全寮制であるこの学院では、貴族達の生活を支える為に、メイドやコックなどの使用人、衛兵等、多くの平民達が働き生活している。
この日の昼過ぎ、夕食の準備に取り掛かっている厨房はいつもより騒がしかった。
「くそっ、今日もあの忌々しい貴族ども料理を作らにゃあかんと思うと腹が立ってくる! そうだろお前ら!」
怒鳴り声で周囲の料理人達を怒鳴りつける、四十過ぎの太った体にたいそう立派にあつらえたコック服を着た平民の男の名はマルトーと言う。
平民であるが、魔法学院のコック長である彼の収入は身分の低い貴族が及びもつかない位に羽振りがいい。
トリステインの平民が貴族に対して抱くのは嫌悪か恐怖、もしくはその両方だ。
マルトーは魔法学院のコック長という地位にいながら、羽振りの良い平民の例に漏れず貴族と魔法を毛嫌いしていた。
いや、むしろ貴族に対して敬意や好意を抱く平民という話自体、トリステインではあまり聞かれない。
「くそっ、貴族、貴族って威張り腐りやがって!」
だが、その日のマルトーの機嫌の悪さはあまりに異常だった。
そもそも、厨房の使用人たちを始め学院内の平民仲間には慕われているマルトーは、確かに大きなミスなどをしたらそれなりに怒りはするが、いつもは、こうも八つ当たり同然に捲し立てたり怒鳴り散らしたりなどしないからだ。
周囲のコックや使用人達は、追い立てられるように作業しながらも、そんなマルトーの姿に違和感を覚える。
「おいおい、マルトーの親方、今日はなんであんなに荒れているんだ?」
「知るかよ。朝からずっとあの調子だ」
確かにマルトーは貴族嫌いではある。
しかし、それ以上に料理人としての自分に対するプライドが高く、彼の仕事であり誇りである料理中にはそれに集中する事を考え、貴族への文句を口にした事はこれまで一度も無かったからだ。
それではそんな彼がここまで不機嫌になる出来事があったであろうか?
少なくとも厨房に用も無く貴族がやってくる事などまずは無い。
魔法学院の子息達にとっては平民のいる場所であって自分達の足を運ぶ所などでは無いという意識は在ったし、マルトーの仕事は学院が彼の今の立場と扱いをするにふさわしい完璧なものであり、これまで料理にケチをつけられた事も無い。
他にもマルトーが学院側と話をする際でも、マルトーの方から出向くのが常でこちらに学院管理側の貴族が来る事は無い。
よって、誰もこの場所で貴族の姿を見た記憶は全く無く、マルトーが貴族に対して何かあったかどうかを知る事が無いのだ。
しかも、一体何がそんなに腹立たしいのかとマルトーに問うても、彼が毎日口に出すありふれた不満が並べられるだけで、具体的な事態が見えないのだ。
ラスボスの人乙
なんという怪獣大決戦www
次回にwktk
EVILの人お疲れ様です。
次回作に超wktk
そしてブラスレイター支援
「畜生が、一体俺がどれだけ苦心しながら料理を作っているのかっ! 貴族どもは全く理解しちゃいねぇ!」
顔を興奮で赤くしながら、包丁で鶏肉を切るというより既に叩き潰す有様のマルトーの姿に、使用人達は顔を見合わせる。
もしかしたら、学院長のオスマンなら何か事情を知っているかもしれないと思いつく者もいたが、流石に平民が貴族にこの程度の事ででお伺いを立てるなど非常識であるとされ、結局は本人が語らない以上は彼らには何も判りようが無いのだ。
だが、流石にこれでは埒が明かないと料理人の一人がマルトーに近づく。
「親方、少し落ちついて下さい」
「クソ貴族がっ! 俺の仕事場に入るんじゃねェッッ!!」
が、その近づいてきた料理人を、マルトーは半ば魘されるようにその太い腕で力いっぱい振り払った。
「――お、親方っ!?」
突然の暴力に尻餅をついてあっけに取られる料理人の目の前で、マルトーは包丁を持った手を振り上げていた。
「親方っ! 一体何やっているんですか!」
「お、親方を、マルトーさんを取り抑えるんだっ!」
突然に暴力を振るい出したマルトーを周囲の使用人達が取り押さえる。
4、5人が取り囲み折り重なるよう抑える事で、すぐさま興奮するマルトーの動きは抑えられたかのように思われた。
「な!?」
突如、未だに尻餅をついたままの料理人が驚きの声を上げる。
「クソッ! 放せぇっっ! クソッ! 貴族どもがぁ! 俺の前から――」
料理人の目には、先程から振り上げられたマルトーの手が、手にある包丁の持手にめり込むさまが――
いや、マルトーの手の皮がまるで溶けるようにして包丁に纏わり、そのうち包丁と手が一体化するように癒着――
いや、これは実質的に一体化、つまり融合している――
いや、そればかりか、仲間の料理人に遮られマルトーの姿はその腕の部分しか見えないが、その腕が何か禍々しいモノに形を変えていた。
『――消えろぉおおおっ!!』
くぐもったマルトーの咆哮と共に、取り押さえていた料理人達が振り飛ばされた。
「ひ、ひぃーーーーーっ!!」
尻餅をついたままの料理人は、仲間が振りほどかれる事によって姿を晒すマルトーが、いや“マルトーだったモノ”が視界に入るなり悲鳴を上げた。
その料理人は自分の頭上に振り下ろされる、包丁の様な手を視界に映し、最期の瞬間まで悲鳴を上げ続けた。
男が召喚されてから3日経っていた。
2日の間謹慎していたルイズとコルベールには特に異常は見当たらず、男は相変わらず牢で大人しくしていた。
それからコルベールは馬で、王宮への報告に出向き、続けてその足で王立魔法研究所へと協力申請に向かった。
研究所から派遣されたのはエレオノール・アルベルティーヌ・ル・ブラン・ド・ラ・ブロワ・ド・ラ・ヴァリエールという、金髪長身の気の強そうな女だ。
名前から判るように、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの姉である。
本来ならば、伝染病の事前調査確認の為などに、公爵家のゆかりでもある彼女ほどの立場の者が出てくる事は無い。
だが、学院の特使として派遣されたコルベールの説明で、それが『前例の無い使い魔として召喚された人間』であり、なおかつ『自分の妹が数日前に召喚した』と聞かされれば話は違う。
密書なり使えばいいものを、わざわざ教師であるコルベールがエレオノールの元に足を運んだのは、それらの他者には説明すら出来そうに無い特殊な事情に付け足し、伝染病の事実の隠蔽、伝染病の特定の不可、そして可能な限りの秘密裏にして確実な処理等を考慮してである。
エレオノールは公爵家の長女にして結構な美人であるにも関わらず、次々と相手から婚約破棄される程に、異常な傲慢な女であるとの話ではある。
が、彼女の妹にしてルイズの姉にあたる、カトレアの先天病を治療する為にアカデミーの優秀な研究員となったという話もあり、コルベールとオスマンは、エレオノールないしヴァリエール家の家族への情に頼ったのである。
その目論見どおり、エレオノールは口には出さないものの、妹の為ならばとすぐさま協力を承諾し、大急ぎで秘薬等の必要な用具を持参しながらも、いつもは従者を必ずつき従える彼女がそれを忘れるほどの体で駆けつけた。
だが、そんな彼女ではあるが、いや、そんな彼女であるからこそだろう。
地下牢の格子の向うに立ち、真直ぐにエレオノールとコルベールを見る男に対し、殺意にも似たどころか殺意そのものを向けるのは。
激しい気性ではあるものの優秀な水メイジ、つまりは身体の組成を司るメイジであるエレオノールであったが、
研究所から貴重な秘薬やマジックアイテムを持ち出し、それらを駆使してジョセフの伝染病の正体を見極めようとしたが、結局は『未知の感染症』である事だけが判っただけであった。
己の妹への病の治療どころか、解明も未だに満足のいかない彼女だけに、謎の伝染病など不愉快極まりない。
それだけでなく、出来の悪い末の妹なれどそれでも大切な妹の“初めて成功した魔法”によって召喚されたのが、このような自分達に一利どころか害にしかならない平民の男というのも彼女を更にいらだたせる要因であった。
「平民、名前は?」
お手上げになってから、目の前の平民の名前も知らない事に気付いたエレオノールは、初めて彼に言葉を向ける。
その態度は、手のつけられない家畜に対して見当違いな文句を垂れるのと大差が無いものだったが、男は全く気にするそぶりも見せずに名乗った。
「ジョセフ・ジョブスン」
逆に、男が名乗るなり二人の貴族が驚愕の表情を浮かべる。
「な……」
「……ジ、『ジョゼフ』ですって……あ、貴方、学が無い平民とはいえ、隣国の王の名を名乗るなんて……ななな、なんて不遜!」
コルベールはあまりの突拍子の無さに言葉が出ず、エレオノールも最初は絶句するものの、怒りのあまりに呂律も回らない程でありながらも叫びを上げる。
理由は簡単だ。
このトリステインにおいて、いくら他国のものとはいえ、彼らの信仰する始祖ブリミルに連なる王家の者の名を騙るなど、あまりに恐れ多くて貴族であろうと平民であろうと常識的にありえないからだ。
「いや、『ジョ“ゼ”フ』じゃなく『ジョ“セ”フ』だ」
目の前の二人の激昂の理由を、なんとなくではあるが理解出来たのだろう、“ジョセフ”を名乗る男は訂正を促す。
その彼は、エレオノール達の態度が過剰に映っているせいで少々困惑の表情を顔に浮かべていた。
「平民の癖に口答えなどっ!」
だが、その言葉も、エレオノールの怒りを更に煽るだけであり、激昂に任せるようにエレオノールは杖を引き抜きジョセフに向ける。
確かにエレオノールの気性は荒いが、彼女意外の大概の貴族でも恐らく同じような反応であっただろう。それだけ貴族と平民の立場の差はトリステインでは絶対的と言えた。
「このような始祖ブリミルをも恐れぬ無礼者、即刻処分します!」
「いけません、ミス・ヴァリエール! まだ彼の出身地の特定が出来ていません!」
呪文を唱え始めたエレオノールを、我に返ったコルベールが抑えようとする。
どうやらコルベールは大概の貴族の例からは漏れた存在のようではあった。
だが、エレオノールの呪文はすぐさま完成しており、コルベールの妨害はジョセフの首を刈らんとする水の刃の狙いを逸らす形になった。
刃はジョセフのすぐ横を凪いで、壁に切り裂いたような跡をつける。
だが、ジョセフは魔法という暴力を目で確認しながらも、全く表情を変えずに淡々と彼女達に言葉を紡いだ。
「以前も話したが、俺はこの国の出身では無い。……信じる信じないはそちらに任せるしか無いが」
彼が言いたいのは、疫病がある村は少なくともトリステインには無いという事であり、そうある以上は彼らも直接手が下せないという事だ。
勿論エレオノール達からしてみれば近辺諸国に対して伝染病の警告を促す必要が無いわけでは無いが、彼の話を信じるならばその近辺諸国ですらないらしい。
それならば“東方”の出身なのかもしれないと想像するも、そうなると今度はトリステインないしハルケギニア諸国にとって未到達の地である。
それこそ手の出しようがなくなり、これ以上の追求も無駄でしか無い。
「それでは決まりね」
伝染病の研究は死体にしてからでも構うまいと言わんばかりに、エレオノールはジョセフに杖を向ける。
対するジョセフは杖を向けられる意味が理解出来ていないかのように、全く表情を変えない。
いや、先程魔法を放って見せたので意味が判らない筈は無い。
「まるで、死人ね」
あくまで表情を崩さないジョセフに対し、不可解さから来る不快な感覚を隠そうともせずにエレオノールは吐き捨てる。
事前に聞いた話では己の身元をでたらめに語る事で自分の延命を図っていたとの事だが、実際はまるで自分の命に興味が無いかのように淡々としている。
「まぁいいわ」
だが、エレオノールにとって目の前のジョセフの態度は不可解なだけのものであり、さして興味を惹くものでは無かった。
そして、いざジョセフに必殺の魔法を放とうとしたその時だ。
「――! ―く―だッ!!」
地下牢に届くまでの騒ぎ。しかも、何やら慌しいなどという生易しいものではなく、悲鳴や絶叫、そして魔法が入り混じる、、まるで戦場の様な騒がしさだ。
「何事!?」
コルベールとエレオノールが外の騒ぎに気を逸らしたせいで、ジョセフの表情が険しくなっている事には気付かない。
「ミス・ヴァリエール! まずは外に出て状況を!」
「わかりましたわ! ミスタ・コルベール!」
この緊急の事態で、二人は目の前の平民の事など綺麗さっぱり思考から捨て、外へと駆け出した。
彼らの足音が遠のいて聞こえなくなるのを確認するなり、ジョセフは目前の鉄格子を掴む。
格子を掴むジョセフの手が手袋ごと、格子に癒着するようにして侵食を始める。
そのままジョセフに侵食された格子は、格子として用を足さないひしゃけた鉄棒となって彼の足元に転がった。
支援
ZERO A EVILの人、お疲れ様でした!
きちんと物語を完結させて、なおかつ読んで面白い!
凄く良い作品だと思いました、次回作も頑張ってくださいね。
「どうした? 何があった?」
「な、なんだよこれ……」
「ひ、ひでぇ……」
厨房からの絶叫を聞きつけ、逃げ惑うメイドや使用人達を押し分けるようにして、厨房の出入り口に駆けつけた衛兵達が見たのは、五体が分断されたり潰されたりして原形を留めない使用人達の惨殺死体であった。
「急いで学院長に通達だ!」
厨房に続く廊下の中ほどにいる衛兵の一人が先頭から聞こえる悲鳴にも似た呻きを聞くなり、廊下の先で遅れて駆けつけた衛兵の一人に指示を飛ばす。
「な、なんだあれは!」
入り口前から厨房を確認していた他の衛兵が、飛び散る鮮血で彩られた厨房の中心に立つ人影に気付き驚愕の声を上げる。
そこには、身長が2メイルを超える巨躯に返り血を浴びた異形の人型が立っており、返り血で紅く染まりきった太い腕が振るわれると、声を上げた衛兵の頭をトマトの様に潰した。
「ひ、ヒィッイ!?」
先頭の衛兵が、目にも留まらぬ速さを以って屠られる光景を目の前にして悲鳴を上げる。
その声に呼ばれるようにして、厨房の入り口から大柄な体躯を覗かせた異形が、悲鳴の主を踏み潰すと共に、その顔を衛兵達に向ける。
額の左右から伸びる角、不気味な揺らめきで蒼く光る双眼、頬まで広がる牙だらけの口、そして全身を覆う硬質にして禍々しい甲羅の如き皮膚。
その姿はまさに――
「あ、あ、悪魔だ……」
衛兵達の悲鳴と怒号と犠牲を合図として、トリステイン魔法学院は戦場と化した。
衛兵の持つ剣や槍は、悪魔の皮膚をまるで傷つけることは出来ず、悪魔が腕を振るうだけで、その炭塵ながらも恐ろしいまでの怪力で人間の衛兵は成す術無く一方的に嬲殺しになる。
狭い通路の中だけに、衛兵は前から順番に倒されていく。それが悪魔がこの場から離れない少ない時間を作り出す。
「くそ、だから平民の衛兵などあてに出来んのだ!」
厨房の衛兵達が次々と一方的に殺されていく中、その少々の時間で、真っ先に厨房への通路まで駆けつけた魔法使い<メイジ>の教師が悪態をつきながら杖を振るう。
杖から真空の刃が生まれ、その刃が衛兵達の死体で埋まった通路の中に立ち、手に掴んだ衛兵の首の骨を握り折る瞬間だった大柄な人型を切り刻まんと襲い掛かる。
『グゥウゥ!?』
狭い通路の中、巨体のせいもあり、避ける場所が無い悪魔を直撃する風の刃、兵士の使う剣や槍などよりずっと鋭く疾い魔法の刃は鉄の鎧さえも切り裂く程である。
だが、その刃は悪魔の厚い甲羅の様な皮膚を軽く裂いた程度で消滅する。
「な、き、効かないだと?」
驚愕するメイジの目前で、更にその皮膚が再生を始める。
『き……き、き……』
あまりにもおぞましく恐ろしい悪魔の姿に恐れ後ずさるメイジの姿を見た悪魔は、手に持った首の骨の折れた死体を無造作に投げ捨てるなり、その体躯に合わぬ程の疾さで通路を駆ける。
『貴族がぁあああああっ!!』
叫びながら迫り来る悪魔の姿に半狂乱になりながらも、咄嗟に次の魔法を打ち込もうとメイジは杖を向けるようと腕を持ち上げると同時に、鋭利な刃物でその腕を切り飛ばされ、それを把握する前にメイジは巨大な腕で壁に叩き潰された。
「一体何なんだよあれは!」
広場に躍り出た悪魔の姿を見た小太りの生徒、マリコルヌ・ド・グランドプレは泣きそうな顔で隣の同級生に叫ぶ。
「知るかよかぜっびき!」
声をかけられた生徒も負けじと悲鳴交じりに怒鳴り返す。しかもわざわざ二つ名を言い換えてだ。
しかし、それに文句で返せないほどにマリコルニは動転していた。
最初は何の騒ぎか判らずに野次馬根性でやってきた、彼らを含む数名の生徒であったが、
彼らの目の前で繰り広げられるのは、学院の教師メイジや生き残った衛兵達と、2メイル以上の体躯の異形の悪魔の『殺し合い』であった。
火メイジと水メイジが『ファイヤーボール』や『アイス・ニードル』の魔法を投げつけて、風メイジが『エア・ハンマー』で牽制する。
土で障壁を創る事でその悪魔を自分達に近づけまいとする土メイジ達。
だが、悪魔はその巨躯に似合わずに“疾い”。
人間の持てる運動能力では絶対に追いつけない身のこなしで地を蹴り、四方から遅い来る魔法を次々と回避していくばかりか、隙を見ては一人、また一人と犠牲者を増やしていく。主に魔法も使えなず飛び道具すら無い衛兵達が目をつけられ絶命していく。
それでも駆けつけたメイジ達の数が数だけに、いくつかの魔法が悪魔の体に命中するも、炎は皮膚を焼くに至らず、氷は貫く前に砕け、真空の刃も、雷も、その悪魔の体をほとんど傷つけるに至らない。
「くそっ! ならこれで――グゲッ……」
業を煮やしたマリコルヌの隣の生徒が、広範囲の魔法を使おうと長い詠唱を始めたが、その途中で蛙が潰れるような声で遮ってしまった。
「お、おい!?」
その奇妙な声に引かれるように振り向いたマリコルヌは目を恐怖で大きく見開く。
その生徒が立っていた所には、細身の異形が彼の頭を足で踏み潰し、こちらに顔の無い頭を向けて立っていたのだ。
「うわぁああっ!? よ、よくもおぉぉおお!」
頭を潰され絶命した学友を見てしまったマリコルヌは、腰を抜かして地面に転がるように座り込むものの、恐怖と怒りとが織り交ぜた絶叫と共に無我夢中で、目前にまで迫った異形の頭に向けて杖を振るった。
瞬間、杖に纏わる風の渦が、鋭い槍となって、そののっぺらとして顔の無い頭に突き刺さる。
高収束度の『エア・ニードル』によって、外に向けて飛び散る血飛沫と共に顔無しの頭は微塵に砕け、残った胴体が地に倒れる前に“崩れた”。
目の前で灰と化し粉々に砕け散る悪魔の末路に、目を見開きしばし呆然とする。
そして、先程の高威力の魔法により疲労を覚え、少しだけ気が静まる事によってマリコルヌはやっと自分の目の前の事態を実感する。
「や……やった……のか?」
そう呟き、自分の中で敵の消滅を認めた彼の精神は緩みきり、全身の力が抜けるようにしてマリコルヌは気を失った。
「一体なんなんだこいつは!」
魔法の連発により、疲労の色が濃くなっていくメイジ達。
「くそ、『眠りの鐘』はまだかっ!」
誰かが悪態をついたその時。
「お待たせしました!」
本塔から『フライ』の魔法でやってきた教師が悪魔の近くまで駆け寄る。
彼の手には学院長から携帯の許可を貰い持参した、秘宝『眠りの鐘』。
名の通り、その音を聞いた者を眠りへと誘う強力な魔法の小さな鐘である。
その小さな鐘を手に持ち、悪魔に向かって振るった。
透き通るような小さな音ではあったが、その音は確かに悪魔の耳に届く。
が、
「眠りの鐘が効かない!?」
だが、その音は届いた“だけ”であり、つまり学園の秘宝である『眠りの鐘』は悪魔の注意を教師に引き付けるだけの結果のみを生んだのであった。
悪魔に目をつけられたそのまま首根っこを折られ、死に至った。
「ミスタっ!」
眠りの鐘が効かない事によって、悪魔への攻撃をそのまま続けるしかなくなったメイジ達が先程より激しい抵抗を見せる中、
傍から様子を見ていた生徒のモンモランシー・マルガリタ・ラ・フェール・ド・モンモランシは、彼が死んだ事には気付いてはおらず、いや気付こうともしないで、治癒魔法をかけようと彼に駆け寄る。
モンモランシーが事切れた教師の前まで近づいた瞬間、死んだ筈の教師の体が痙攣を起こす。
その不自然なまでの体の動作に驚いたモンモランシーが思わず足を止める目の前でそれは起こった。
直後、死体である筈の教師の体が、ゆっくりと手で体を支えながら立ち上がろうとする。
だが、地をつけた教師の手が痙攣と共に何やら硬質の皮膚に変化していく様を皮切りに、彼の体がみるみるうちに変態を始め、遂には耳元に沿った双角を持つ、面無しの悪魔の姿へと成った。
「え、ええっ!?」
そのあまりのおぞましい光景に、モンモランシーは無意識に後ずさるが、恐怖のあまりに震えた足がもつれて尻餅をついてしまった。
その音に気付いた異形が、尻餅をついたまま這いずるように後ずさるモンモランシーに、のっぺらとした顔面、いや、その額上あたりで青く光るガラス玉の様な双眼を向けた。
「こ、来ないでっ!」
強がりでやっと出たのは相手を拒否する言葉だけだった。だが、それは合図にしかならず、異形はモンモランシーに襲い掛かる。
目を瞑るモンモランシーめがけ、異形の手が彼女の頭を握りつぶさんと迫るのを、青銅の腕が遮った。
「ワルキューレッ!」
異形とモンモランシーの間に立つ青銅の戦乙女。
それは、この学院の生徒であり元帥の息子である、ギーシュ・ド・グラモンの魔法によって生まれたゴーレムであった。
「逃げるんだモンモランシー!」
ギーシュが叫ぶが、腰を抜かしたモンモランシーは這いずるようにしか下がる事しか出来ない。
支援
「モンモランシーっ!」
涙目でギーシュに助けを求めるモンモランシーの姿にいてもたってもいられずに、ギーシュは駆け出す。
「な!? 僕のワルキューレが!」
モンモランシーに駆け寄るギーシュの目前で、ワルキューレの腕が異形に握りつぶされるのを見て、ギーシュは思わず足を止める。
「くそっ!」
薔薇の形をした杖を振るい、新たなワルキューレを生み出す。
モンモランシーの盾となっていたワルキューレが振り払われようとする寸前、新しく生み出されたワルキューレの持った槍が悪魔の脇腹を刺す。
そこで悪魔の注意は槍を持ったワルキューレに完全に逸れた。
「いけっ、ワルキューレ!」
後先は考えずに目の前の化け物を倒す為にワルキューレを自分の精神力の限界まで作り出すギーシュ。
6体の槍を持ったワルキューレはその異形を取り囲み、容赦なく全身を貫く。
体液を流して動きを止めた異形は、青銅の乙女像の囲いの中、灰となって崩れ落ちた。
「大丈夫かい? モンモランシー」
片腕が無くなった事で戦闘をこなせなくなったワルキューレと自分の肩を使ってモンモランシーの両肩を支えるギーシュ。
「ぎ、ギーシュ……先生が、先生が……」
「――!」
涙を流しながらギーシュに訴えるモンモランシーを宥めようと何か言おうとして言葉を止める。
『逃げるんじゃねぇぞ!』
先程までメイジ達と交戦していた筈の巨躯の悪魔が目前に現れたからだ。
「逃げるんだ! ミスタ・グラモン!」
恐怖がギーシュの足を絶えず震わせる。
がくがく音が聞こえそうなまでに震え、ともすれば崩れそうな足を、貴族としての意地が、そして何よりも肩に担ぐ少女を救おうとする勇気が支える。
「ワルキューレ! この敵を切り刻めっ!」
しかし、現実は残酷なまでに淡々としている。
すぐさまワルキューレは悪魔の周囲を取り囲み、先程と同じように槍で突き刺す。
だが、先程の異形の皮膚は通った青銅の槍ではあったが、巨躯の悪魔にはまるで歯が立たずに折れてしまった。
そればかりか、悪魔の腕の一振りで正面側の4体がひしゃけながら吹き飛び、ギーシュに歩み寄る巨躯を止めようと組み付いた2体のワルキューレも子供を振り回すように解いた後、同じようにバラバラにされてしまった。
『貴族、貴族って威張り腐りやがって……』
蒼い目を向ける悪魔のぐぐもった声に、ギーシュは気圧される。
だが、振り上げられる悪魔の腕を見るなり、咄嗟にモンモランシーの肩を支えていたワルキューレを盾として前に立ちはだからせる。
咄嗟に片腕を失ったワルキューレが前に出る事により、その振り下ろされる凶器の如き腕から、モンモランシーとギーシュを護る盾となって砕けた。
だが、それがギーシュに出来る最後の抵抗であり、今や悪魔とギーシュ達を隔てる物は何も無い。
「……くそっ! ワルキュー……レ!」
それでも、どうにかして戦おうと、ワルキューレを再度練成しようとするギーシュだったが、力なく杖が振るわれるだけで、何も起こらず、そのまま限界を迎えたギーシュは気を失った。
それでも、モンモランシーを護るという意思がそうさせたのだろう。
自らの体をモンモランシーの盾にするように、彼女の上に仰向けに覆いかぶさった。
『少し運動した程度でおねんねとは、なんともざまぁないなァ!』
そんなギーシュの姿を見て悪魔は嘲笑う。
「ギーシュ、逃げろ!」
迫る悪魔の先にいるギーシュに向かって、誰かが叫ぶ。
だが、文字通り精神力を使い果たし、気を失ったギーシュの耳には届かない。
その代わり――
「――えっ……」
その誰かの叫びによって意識を呼び戻されたモンモランシーの目に映ったのは、自分を庇うようにして倒れ込んでいるギーシュの背中。
そして、その向う……
振り下ろされようとした悪魔の、大包丁と同化した右腕に絡みつく、蒼く光る蛇。
「……ま、また、別の悪魔だ!」
誰かの呻きが引き金となって、モンモランシーはさらに向うに立つ影に気付いた。
『エア・ハンマー』に対してさえほとんど怯む事の無かった悪魔の巨躯が、右腕ごと蛇によって宙に引上げられる。
「な……」
そこには、蒼い蛇を鞭の如く操る蒼い悪魔が立っていたのだ。
支援
以上、投下終了です。
流石に、パーフェクトピース ガルムの全長35cmは大きくて置く場所に困るんですよ。
乙
投下乙です。
EVILの人、最後に凄く良いものを読ませていただきました。
シエスタとルイズのやりとりで、目頭が熱くなりました。
友情って題材として扱うと陳腐ですけど、その実書くのは凄く難しいんですよね。
特に女の友情は……
本当に、お疲れ様でした!
>>648 二話にして学園がデモニアック大変なことにwwww
次も期待してます
デモニアックは下手に倒すと血液感染で増えてくからな…ホラー以上に性質が悪い
あとマルトーのおやっさんのイメージが隊長になってしまった
次回も期待しています
願わくばエレアの出番が有る事を……
>>650 氷竜の人はそこらへん上手いよなー
百合にならない程度で読んでてニヤニヤするw
百合ん百合ん
ZERO A EVILの人は完結でいいのかな?
お疲れ様でした。
>>648 乙ラスレイター
ああやっぱり名前ネタやったんだなw
しかしおやっさんが見事に融合体に…確かに隊長っぽい
カーサ出てたやつってまとめ入ってないよね?
第十七話が書きあがりましたのでお届けにあがりました。
なんか前の更新から随分間が空いちゃったので覚えている人いないかもしれませんが……
他に予約なければ、20分より投下させていただきます。
>>658 気がついた人がやるもんだ。
できないならログを見つけて誰かにやってもらうとか。
>>659 お面かぶって支援
一人は未だ呆け、一人はつらそうに俯き、残りの三人は呆気に取られたように遥か天空を見上げる。
その先には月がある。
一つに重なり、白い光を放つ月はさきほどから時が止まったように天の頂でその運行を完全に停止していた。
「ついに始まっちまった……」
焼けた鉄でも飲むようなサイトの言葉に、問いかけたのはキュルケだった。
「説明して貰いましょうか」
「ああ。分かった」
サイトはくるりと踵を返すと、女子寮塔の方角へと向かって歩き出した。
「ちょっと何処行くのよ!?」
「安心しなって、逃げやしないさ」
サイトは僅かに苦笑を浮かべながらキュルケを見た。
「こっちの方が都合がいいんだ、全部説明するには……見て貰った方が早い」
「見てもらう――マヨナカテレビ?」
「ああ、そうだ。今なら見れる筈」
「不可能、あれは午前零時しか見ることが出来ない」
タバサは冷静にその事実を指摘する、第一先ほど他ならぬサイトを助けるためにマヨナカテレビの直後に迷宮の探索を行ったばかりだ。
マヨナカテレビが雨の夜の午前零時しか映らない以上どうしようもない。
だがサイトはその言葉を否定した。
「見れるさ、だって月が重なったあの時からおれたちは一日と一日の狭間の終わらない夜のなかにいるんだから……」
「それは――どう言うこと?」
「見れば、全部分かる。俺のしでかしたことも、あいつのしでかしたことも、そして」
始祖ブリミルのしでかしたことも。
間違いなくサイトはそう言った、突然出てきたことに皆が皆一様に驚いた顔をしたが、しかしルイズだけはなにかに耐えるような表情でただじっとサイトを見ている。
「それじゃあ、行こ……」
その時、メンヌヴィルが立ちあがった。
「なにっ!?」
体のシャドウすべてをはぎ取られた、もはや完全に死体になっていると思っていた相手が立ちあがった。
その衝撃は筆舌に尽くしがたい、メンヌヴィルが折れた腕で杖を振りあげる。
そんな状態で魔法が使えるのか? そもそもなんでそんな状態で生きているんだ!?
さまざまな疑問が胸をよぎるがしかし何よりも優先すべきことは体がちゃんと覚えていた。
「あぶねぇ!」
咄嗟にルイズの前に飛び出し壁となる、以前もこんなことがあったなとサイトの脳裏にかつての世界の記憶がフラッシュバックする。
あれは確かジョゼフは火石を持ち出した時だった、教皇様がミョズニトニルンのマジックアイテムでやられて、ジョゼフがエクスプロージョンの詠唱を唱え終わった時せめてルイズだけでも守ろうと飛び出して……
そこから先は断片的にしか覚えていないが、しかし断片となったその記憶はサイトに己が一体何を為したのかを何よりも雄弁に弾劾する。
火石を食らい、ミョズニトニルンを八つ裂きにし、暴走した自分を止めようとした者たちを焼き滅ぼし、そして真っ黒に焦げたその亡骸を食った。
そして止まらなくなった。
結局、そんな自分を止めてくれたのは……
サイトは目の前の桃色の髪の少女を見る、切なく哀しい瞳でかつての主人と寸分違わない少女を見る。
サイトだってわかっている、わかっているのだ。
このルイズは自分が愛し、守り続けてきた「あのルイズ」ではないと言うことぐらい分かっている。
だがそれでも心の底から湧き上がる幾多の想いはどうしても止められなかった。
世界が違っても、時が移っても、ルイズは自分にとってかけがえない人。
それはどうしたって変えられない真実なのだろう。
もしもこれでまたルーンが暴走したら――せめて今度こそ自分の始末は自分でつける。
そんな悲壮な決意を前にメンヌヴィルの前に立ちふさがったサイト。
だがやってくる筈の火球はいつまで経ってもやってこず……代わりに天高く流れるのは聞いたことのない異国の詩。
「天に、瞬く、昴の星に、凍った刻は動き、出す」
それがメンヌヴィルの顔の上でかたかたと震える仮面が紡ぎだしていることに気づいたのは、暫し後になってからだった。
「享楽の舞、影達の宴、異国の詠」
天に掲げたメンヌヴィルの右手から、その肉自体をたいまつとして赤々と炎が燃え上がる。
仮面から啼くようにほとぼしるその声はまるで闇夜に獅子が吠えるがごとく。
「贖罪の迎え火は天を照らし、獅子の咆哮あまねく響く」
長く長く尾を引きながら消えていく。
「天に昇りて、星が動きを止めるとき――マイアの乙女の鼓動も止まる」
あまりにもぴったりとこれまでの出来事に符号するその言葉の数々。
ならばメンヌヴィルがこれから告げることは、自分たちの未来の暗示だとでも言うのか?
「後に残るは地上の楽園、そして時は……」
そこでメンヌヴィルは力尽きたようだ、どうと再び地面に倒れ今度こそ完全に生命活動を停止させた。
同時にその顔から仮面が剥がれおち。
「そして刻は繰り返す!」
仮面はそれだけ嘲笑うように告げると、ただその場にいる者たちの心に暗雲のみを残し仮面は沈黙した。
額の宝石が急速に色あせていくところを見ると、これになんらかの魔法なり仕掛けなりがしてあったようだ。
「行こうか、すぐどうこうって訳じゃないがそれほどゆっくりもしていられない」
バキンと音を立てて、仮面を踏み砕きサイトは歩きだした。
数歩歩いて振り返り、キュルケたちに向かって言った。
「全部、話すよ。俺に起こったすべてを……」
――その言葉をすべて聞いていた。
――その光景をすべて見ていた。
「さぁ来い、ヒラガ・サイト再びその絶望で俺をシャルルの元へ導いてくれ……」
塔の最上階、手をのばせば月に届くその場所で。
祈るように眼を瞑り、虚無の魔法を低く低く唱えながら。
サイトの後ろ姿をまるで恋をする少女のような熱っぽい瞳で、まっすぐにまっすぐにサイトの背中を眺めていた。
始まりにして最後の鍵は、やはりこの少年。
俺と同じように始祖に貧乏籤を引かされた哀れな使い魔以外あり得ない。
だからジョゼフは待ち続ける。
「その呪わしい“虚無”の力で!」
“加速”と“爆発”に続く第三の彼の“虚無”
その力でサイトの“すぐ後ろにいる人物”に視界を繋ぎながらチェックメイトの為の一手を練る。
どうすればこいつを絶望させることができるのか?
どうすればこいつにもう一度時を遡りたいと思わせることができるのか?
いくつものいくつもの策を思い浮かべ、どうすれば相手より一歩上をいくことができるのかを考え続ける。
ふと気付く、ここまで考えに考え抜いたのはあいつとの最後の対局以来だな、と。
「ハハハハ、ハハハハハ、待っていろ、待っていろシャルル、今……会いにいくぞ」
三つへ絞った策、それを決めきることが出来ずにジョゼフは賽を振るった。
正五面体のダイスは硝子のように半透明な床を軽い音を出しながら転がり、やがて止まる。
出た数字は0
始まりと終わりを示す数字だった。
「0か、ならば……」
チェスボードの上の黒の僧兵を白の騎士へと叩きつけ、作った道の上を女王が滑る。
「こうするとするか!」
ジョゼフは手に持った短剣で白の女王を黒の女王と共に串刺しにした。
それこそが塔へ登るサイト達を前に、無能と呼ばれた王の最期の罠。
だがサイトたちはそのようなものが待ち受けているなど知る由もなく……
ジョゼフの片目のなかのサイトたちは、今まさに塔へと向かって踏み出そうとしているところだった。
「ご自分の欲望を満たすのは勝手ですが、我らとの盟約もお忘れなく」
ふと思い出したように、ジョゼフは振り返る。
そこには白い聖衣に身を包んだ青年と、その背後に影のように着き従う黒衣の青年。
そして虚ろな目をした蒼い服の少年が立っている。
「ほう、ヴィンダールヴか」
「えぇ、全く先住の力とは恐ろしいものです」
そう言って微笑を浮かべる青年の右手には濃紫の指輪が妖しい光を放っている。
「その先住の代表であるエルフを絶滅させようと言うのだから、貴様も相当狂っているな」
「出来るのでしょう? 貴方の言葉が真実ならば」
「無論だ、俺が行った後は好きにするがいい。憚られる者に封印された“死の化身”を開放しようが、サハラから聖地への道を開こうが俺にはもはや関係ないからな」
「それは僥倖、これでやっと我々が真の故郷を奪い返すことができると言うものだ」
薄い微笑を崩すことのない青年に向かって、ジョゼフは言った。
「信仰のためなら教祖も殺す、フハハ、全く神官と言う者は今も昔も狂った奴ばかりだな!」
「貴方こそ、己の願望のためならこの世界すべてを滅ぼして構わないと言うのは狂気の沙汰ではないですか?」
「お前に言われたくないな、第一お前の計画はこの世界〈ハルケギニア〉の滅亡が前提ではないか」
青年は悲しそうに己の手を見る、夜風で冷えきったその蒼い掌の向こうには、今まで救えなかった者たちの姿があまりにも鮮明に焼き付いていた。
「わたしが救えるのはほんの一握り、ならば救えなかった者たちにも意味を与えてやりたいのです」
「彼らの死は無駄死にではない、なぜなら彼らの死が、聖地奪還のための、故郷へ帰るための礎となった? そう言う訳か?」
青年は聖具を握りしめ、まるで落ちてきそうなほど近い白の月を睨む。
「幻想は打ち捨てねばなりません、この世界は始祖が魔法で生み出した泡沫の夢、わたしは一人でも多く助けねばならないのです、この方舟〈ハルケギニア〉が沈む前に……」
「壁を抜けた先に理想郷があるとは限らんぞ? いや愚問だったな」
そう言ってジョゼフは隣の青年がするように天を仰いだ、そこには六千年の昔と変わらぬ白い月が輝いている。
「それほどの狂信、それほどの妄執がなければ始祖は殺せない――全く大したものだよ、大したものだよブリミル教会は! 始祖の秘宝の中身を書き換え、俺のような無能王を生み出し、あまつさえ世界を滅ぼすか!」
ジョゼフはパチパチと手を叩く、それはつまらないと思っていた劇が終わりになって思いもよらないどんでん返しを食らった観客に似ている。
つまりはただ感嘆し、称賛する拍手だ。
「よかろう好きにするがいい、お前たちの行く先はそこに居る“人の影”が見届けてくれるであろうよ」
「もとよりそのつもりです、わたしたちには元より信仰以外何もありません」
そう言いきる白衣の青年〈ヴィットーリオ〉の後ろで、黒衣の青年〈ジュリオ〉は固く固く唇を噛み締める。
暗い情念を灯したその瞳は、悲壮なる決意で満ち満ちていた。
月の光はすべてを等しく照らす。
零時で止まった時計が、明けない夜が動きだす瞬間を待っていた。
物語は佳境、決着は間近。
そんな時間と時間と空白で、
「あーあ、ぜーんぶ思い出しちゃった……」
誰かがそんな風に呟いた。
支援
「帰ってきたのか?」
夏の日差しが照り返すアスファルトの上に立ち尽くすサイトの回りを、周囲の通行人が訝しげな顔で通り抜けて行く。
立ち並ぶビルの一階に作られた様々な店舗の軒先からはけたたましい音量でゲームやアニメの音楽が流れ、その登場人物らしい扮装をした女性たちが額に汗を浮かべながらチラシやティッシュペーパーを配っていた。
東京、秋葉原。
日本一の電気街にして一部の趣味を持つ者たちにとっての聖地。
その一角に銀色に輝く鏡が何かを待つようにぽっかりと口を開けている。
これを潜れば間違いなく再び会うことが出来るだろう、
あの日、あの時、あの場所で、
望まぬ今生の別れを迎えた愛しい愛しいご主人さまに。
ルイズに。
「馬鹿かっ、俺はまた繰り返すつもりなのか……!」
手を触れようとして慌てて引っ込める、名残惜しくしかし断固たる動きでサイトは光る鏡から背を向けた。
「これでいいんだ、俺とルイズは出会わなかった――そうすりゃあルイズが死ぬことだけはないんだから」
「果たして、本当にそうかな?」
後ろ髪を引かれながら振り向いた先に立っていたのは、自分と同じ顔をした存在。
にやにやと厭らしい表情を浮かべたもう一人の自分。
「はじめまして、と言っても二度目だな。平賀才人、どうだね? 並行世界の別の時間軸の自分の肉体を奪い取った感想は」
「奪い、取った……」
「そうだ、その肉体は“お前”のものではない」
そう言って向かってくるもう一人の自分に、サイトは思わず後ずさる。
「お前はなんなんだ……いったい俺に何をしたんだ」
「夜に吠えるもの・闇に棲むもの・千の貌を持つもの私には様々な名前があるが、そうだな這い寄る混沌、ニャルラトホテプと言う名がもっとも馴染み深い。人間の心の無意識の奥に潜む様々なほの暗き感情、その統括者だ」
そうしてニャルラトホテプは一歩サイトへと歩みよる。
「何をしたか? その問いについては簡単だ。お前の願いを叶えてやった、はじめから全部やり直したい。そう願っただろう?」
「それは……」
「もっともいくら水で洗い流そうとも背負った罪は消すことは出来ん、だが今ならばまだ罰を逃れることだけは出来るぞ?」
ニャルラトホテプは己のすぐ右手側を指差した。
陽気なBGMを流すゲームとホビーの店先、そこにいくつも並べられた液晶モニターに砂嵐が吹き荒れ、成人向けのゲームの販促を流してその画面が突如として血で染まった。
「あ……」
モニターの向こうからこちらを見つめてくる金色の二つの眼。
その悲しくもおぞましい姿にはサイトは確かに見覚えがある。
「あああああああああああ!?」
そしてサイトは逃げ出した、光る鏡が閉じる光景を見届けぬままに。
「つま……らん……な………」
這い寄る混沌がその体を薄れさせるのを見届けぬままに。
支援
ふと苦い回想からサイトは眼を醒ました。
思い出の世界から戻ってきたその場所は、やはり先ほどと変わらない塔の内部。
どこまでもどこまでも終わらない階段が続く、悪夢のような迷宮の一角だ。
「けどテレビを見るたびにあの影は俺を追ってきた」
静まり返った階段を登りながら、サイトは己が罪を紡ぎだす。
そしてその罪に与えられたあまりにも過酷過ぎる罰を。
「もう一つのハルケギニアに残してきた俺の体が、何をしようとしているのかまざまざと見せつけてきたんだ」
すべてを皆殺しにしてでもルイズを守る。
アレのなかにはそれしか残されていなかった。
「そしてとりあえず俺がこちら側へとくれば無闇に暴走することだけは避けられるって知ってしまった」
異世界にあるこちら側のルイズにルーンが同調したように、正常な状態のサイトの精神と接続されたことで僅かなりとも肉体のみとなった体は人の心を取り戻したのだ。
もっともそれは奇跡などではなく、より一層サイトを苦しめる死のカウントダウンにすぎなかったが。
「それでルイズが守れるのなら行こうと思った、でもそう簡単に来られるもんでもねぇ」
「じゃあ君はどうやってこの世界に来たんだい?」
カツカツと靴が石畳を叩く、ギーシュの問いにサイトは僅かに自嘲じみた表情を浮かべ
「声が、聞こえたんだ」
「ひょっとしてルイズの?」
サイトは首を振り、階段の続くその先を見上げる。
その視線の先ではどこまでも続く緑を基調した階段は一旦途切れ、大きく口を開けた奈落のなかに白い光の足場が頼りない様子で浮かんでいた。
そこに立っていたのは二人の青年。
「待っていましたヒラガサイト」
降り注ぐ白い光を浴びながら、その顔に穏やかな雰囲気を湛えたブリミル教の主とその従僕だった。
「我が使い魔よ」
「教皇聖下……!?」
驚いて声を上げるギーシュのことを薄く笑うと、ヴィットーリオはゆっくりとサイトたちに向かって手を差し出した。
「俺はあんたの使い魔になんてなったつもりはねぇ!」
穏やかなヴィットーリオに対してサイトは敵意を漲らせる。
だがギーシュやキュルケには何故そこまでサイトが目の前の相手に敵意を向けるのかが分からない。
サイトの反応から敵だとは分かるが、この穏やかな雰囲気を纏わせた青年に“敵”と言う言葉が繋がらない。
まるで月に祈るように真摯に、どこまでも気高いその姿。
まさしく聖人と言うべきその姿からは一切の邪気が感じられなかったから。
「そうですね、私の使い魔は彼ですから」
その言葉に従うように背後から現れたのはもう一人のサイト。
まるで夢見るような不確かな足取りでヴィットーリオを守る様にジュリオの隣に陣取った。
「まさかそれは……」
「アンドヴァリの指輪」
その紫色の輝きを誇るようにジュリオは右手を掲げた。
「君の記憶では確かクロムウェルが使っていたんだっけ? 死者に偽りの命を与えるマジックアイテムさ」
「わかんねぇ、そんなものまで持ち出して一体何をしたいんだ!」
サイトの問いにすっとジュリオの眼が細まる。
「君たちに譲れないものがあるように僕たちにも譲れないものがある、ただそれだけのことさ」
「その通りですトリステインの虚無の担い手よ、我らはこの世界の人々を救わねばなりません」
微笑を投げかけるビットーリオの姿には限りない優しさと慈愛に溢れている。
「余計に分からねぇ! だったらなんでジョゼフなんかに肩入れするんだ! あちら側とこちら側を繋げて何もかもをぶち壊すことなのに!」
「いいや、違うね」
その声は背後から聞こえてきた。
一体何時の間に背後へと回ったのか? ジュリオは誰にも気づかせず一瞬の間に影のようにぴたりとサイトの背中に銃身を突きつけていた。
「それはあくまで君たちをおびき寄せるための餌に過ぎない、気づかなかったかい? あの無能王の本当の狙いに」
カチンとリボルバーが回る音。
「動かない方がいい、この銃はこのキミたちの世界の武器だから殺傷力が段違いだからね、しかし人を殺すために平和の作り手と名付けるなんてなかなか狂ったネーミングセンスじゃないか」
ジュリオがその手に握っているのは奇しくもかつてサイトの手にあったあの銃と同じ“ピースメイカー”の愛称を持つコルト社が作り出した傑作銃だ。
西部開拓時代を支えたこの拳銃は回転した輪胴のなかの弾丸を撃鉄が順番に叩くことで、引き金を引くだけで連続射撃を行うことができると言う画期的な能力を持っていた。
あまりにも出来すぎた偶然にあの悪魔の哄笑を聞いた気がして、サイトはぎりりと歯を噛み鳴らす。
「虚無の呪文の一つに記録と言う魔法があります」
いきなりの言葉に戸惑う一同に向かって、ゆっくりと教皇は語りだした。
儚く脆くそして尊い幻想〈ハルケギニア〉の真実を。
「それは物体に込められた強い思いを読み取り、現実の光景として再現する魔法。私はそれによって知ってしまったのです、この世界はアナタ達の世界を雛型に作られた、まるでうたかたの泡のような不安定で脆い仮初めの故郷なのだと言うことを」
「何を……」
反論の言葉を吐こうとしたが、しかしサイトには思い出してしまった。
かつて自分が見たブリミルとエルフのガンダールヴの夢、彼らは自分の故郷をハルケギニアではなくまったく別の名前で呼んではいなかったか?
「かつて異世界から現れたヴァリヤーグと言う悪魔たちとの大戦がありました」
教皇は語る、この世界の真実を。
「メイジや平民は云うにも及ばず、エルフやハルケギニアに住む幻獣たちすら参加したその戦争の行方、貴方なら知っているでしょう?」
教皇は杖の先でサイトのルーンを指差した、胸で明滅する黄金色のルーンが熱を持ち、サイトの脳裏にかつての戦場の光景を映し出す。
「結局戦いは勝者を生まず、始祖は我々は荒れ果てた故郷を封印しこの世界にやってきたのです。魔法で作りだした方舟、この幻想の大陸へ」
ビットーリオ言葉は嘆くように、憂いを帯びて空へ広がる。
「そう、此処は魔法で作り出された偽りの楽園、やがて来る滅びを忘れ去り、繰り返す日々を噛み締める忘却の園」
「それはあまりにも救われない……」
「じゃあどうしようって言うんだ!」
しえんぬ
返ってきたのは一発の銃声だった。
はたりはたりと赤い液体が零れ石畳の床の上に落ちて行く。
「簡単さ、こうすればいい」
「――どう言うつもり?」
タバサの手のひらから伝う血の滴、空気の流れからジュリオの行動に気づき咄嗟に庇わなければルイズの間違いなく心臓を穿っていたその一撃は、タバサの右腕の骨に食い込んで止まっていた。
痛みから脂汗をにじませながら問いかけるタバサに、ビットーリオは答えた。
「我らには力が必要だ、エルフを滅ぼし、信仰を忘れた者たちの心を打つための――禍々しいまでに大きな力が」
「ふざ……けるな!」
もう一度あの光景を繰り返そうと言うのか?
すべての命あるものが等しく死を迎えた、地獄の果ての果てのようなあの光景を。
「そんなことはさせねぇ! 絶対に絶対にこの世界は俺が守る!」
「分からないな、この世界にしがみ付いていてもやがて全員が死んでしまうのなら1%でも可能性があればそれに賭けてみようって話なのに」
「だからって、そんなこと許せるはずねぇだろうが」
サイトはデルフリンガーを引き抜き、ジュリオに向かって斬りかかる。
袈裟に振りおろしたその一撃をジュリオは手にした短刀でかろうじていなし、慌てて背後へと飛びずさった。
「危ない危ない、ガンダールヴでなくとも剣の腕も油断できないってことか」
ヒュウと口笛を吹く、ハラリとその金色の髪が幾本が切れて風に流れ、その頬からは血が伝っていた。
「ならこっちも、虚無の使い魔の力を使わせてもらうよ!」
その言葉と共にジュリオの右手のアンドヴァリの指輪が輝き、ビットーリオの背後のもう一人のサイトが吠えた。
何が起こるのか? そう身構えたサイトの横から蒼い巨体が突っ込んできたのは次の瞬間のこと。
――きゅぃぃぃぃ!
「シルフィード!?」
それはタバサの使い魔である風韻竜の幼体であるシルフィードだった、普段のとぼけた感じからはとても想像出来ない興奮した様子でシルフィードはサイトへ向かって牙をむいた。
とっさのところでサイトは地面に伏せたが、シルフィードはその体を踊り場の石畳に擦りつけるように高度を下げ。
「がはっ!」
その巨体でもってサイトの体を押しつぶす、だがそんなことをすればシルフィードとて無傷のはずがない。
体中に生傷を刻まれた夥しい生傷、全力で自分から地面にぶつかりに行けばいかな竜の巨体とて、いや巨体故に傷を負う。
だがシルフィードはそんなことに頓着することなく、血走った眼で最後空中へと舞い上がった。
その体を弾丸とするために。
――きゅぃぃぃぃ
再びシルフィードが高く高く天に吠える、その刹那に確かにタバサは聞いた。
「――っ!」
――いやなのね、こんなことしたくないのね! 誰かシルフィを止めて、助けてお姉さま!
支援
自分の大切な使い魔の、あまりにも悲痛なその思いを。
一刻も早く助けてあげないと……その焦りが油断を生んだのかもしれない。
唐突に顔に向かって飛んできた炎にタバサは反応出来ず、まともにその炎を浴びてしまった。
灰まで熱く焦がす灼熱、すぐにキュルケが治癒魔法〈ディアラマ〉をかけてくれてくれていなければタバサの顔は二目と見れないものになっていたに違いない。
――きゅるきゅる
闇の奥で光る二つの眼、それがゆっくりと増えていく。
踊り場から繋がった通路に潜んでいたのだろう、そこから現れたのはフレイムをはじめとする数多くの幻獣たちだった。
幻獣たちはルイズとサイトの間を分断するように立ち並び、二人の間を裂く絶対の壁となる。
「さて、君たちは傷つけられるかな? 自分の大切な大切な使い魔たちを!」
「卑怯じゃない! これがブリミルを崇める神官のやることなの!」
「ああ、そうさ……」
僅かに顔を歪ませながらジュリオは右手の拳銃を握りしめ。
「聖下の為なら、僕はなんだってやってやる」
その銃口を再びルイズへ向かって突き出した。
「それしか僕の生きている意味はないのさ」
「どうして、それほどまで……」
「それは、君には……!?」
何かを答えようとしていたジュリオの顔が驚愕に歪み、慌ててその銃口をシルフィードに押しつぶされ痙攣を続けていたサイトへ向ける。
気づいたのだ、巨体に潰され口から血の泡を吐きながらも、サイトはシューシューと漏れるような呼吸で魔法の詠唱を続けていたように。
「遅ぇよ――」
見えない何かが波のように広がる、それと同時にこれまで牙を剥いていたフレイムやグリフォン、マンティコアをはじめとする幻獣たちはとろんとした眼つきでその体を弛緩させた。
それはティファニアが使っていたものと〈忘却〉の呪文。
「さて、どう……する?」
デルフリンガーを杖代わりに、震える足でサイトが立ち上がる。
その姿にジュリオは意を決したように懐から何かを取り出し……
「こうなっちゃしょうがないね」
「おい、坊主――まさかそれは、やめろっ、おいっ」
取り乱したデルフリンガーの言葉になど耳を貸さず、ジュリオは手の中にある肉色の宝玉を握りつぶす。
ぷじゅると血の色をした液体が零れ、ジュリオの体を伝う。
「始祖は己の使い魔のために様々な武器やマジックを残してくれた」
こぼれた液体が肉感を持ち、まるで自ら生きもののようにゆっくりとジュリオの皮膚の上でうごめきだす。
「それはたとえばガンダールヴの『槍』であったり、ミョズニトニルンの『本』であったりと様々だけどね」
針のように硬化したその先端がジュリオの皮膚を突き破り血管へもぐりこむ。
「教えてやるよガンダールヴ、何故“獣を操ることしか出来ない程度の“ヴィンダールヴ”が虚無の使い魔の一席に身を置いているか!」
その言葉がきっかけとなったのか、一斉にジュリオの体がその体に食い込んだものと同じ肉色の触手が生えた。
もはや人の形をした触手の塊となったその姿は思わず眼をそむけたくなるほど醜悪だったが、変態はそれで止まらない。
そしてわさわざと広がる肉色の触手が目指したのは、周囲にたむろすあまたの幻獣たち。
「これがヴィンダールヴの鞭だ!」
さるさん?
676 :
代理:2008/11/20(木) 01:49:03 ID:njPpzVt5
288 名前:Persona 0[] 投稿日:2008/11/20(木) 01:46:34 ID:diYl022M
すいませんさるさん食らったので投下終了宣言だけ代理お願いします。
これで17話の投下を終わります。
なんか話が進めば進むほど迷走しておりますが、もうすぐ最終回の予定ですのでなんとかお付き合いくださいませ。
それでは支援ありがとうございました!
こんな拙作を読んでくださることを励みにし、次はもうちょっと早くお目見えできるよう努力します。
乙
なんか、終了宣言だけさるさん食らうことが多いなオイw
ペルソナの方、そして今更ですがブラスの方も乙であります。
隊長とは細部で異なりますが、親方もフォラス 系統のブラスなのでしょうか?
っつーか、今回ヒロインなし!!・・・まぁ、いらねーけどw
しかし、タバサはブラスレイターの存在を知れば代償を覚悟でその力を求める気がします
wikiに登録する際に最初に「ペルソナ0 第十七話」を付加した。
従来は題名の記載があったが、この回だけ漏れていたため。
>>作者のヒト
不要ならば削除してください。
超神ゼストが小物っていったい何者だよ!?
sageは半角な
>>677 ずっと続いて欲しいという読者の想いがそうさせるのです
EVILの方乙かれ様でした
しかしアルビオン全体の政務とかどうしてるんだろ?
住民の自治に任せるだけじゃ内乱が終わったばかりで傭兵くずれの夜盗とかも多いし治安が…
おマチさんあたりに丸投げかな?
卑弥呼も普段は民衆に姿を見せず、実際に政務を取ったのは弟だったそうだから一種の神官政治か
天皇と関白の関係ね
ダクブレはヒーローが総がかりでドッヂボールで対決しないと勝てない相手だからねぇ。
毎回負け役なダークブレインじゃ超神さんには勝てなさそうだが
はっきり分かってない以上はなんとも言えんか
なにおー、ダークブレインさんはな外野の子だから何回もボールぶつけても退場しないくらいすごいんだぞー
ビビデじゃなかったっけ?
なんかアメコミ思い出すなw
あれは上を見たらきりがないからなあ
ドッジ2は外野のはず
1はネオだっけ、あのBGMがかっこよくてよく放置してたな
黒いルイズにしたいから、ルイズが壊れていく過程を描写してるんだけど
かなり鬱になりそうでヘイトといわれるのが怖い。こんなにルイズを愛してるのに!
ルイズ!ルイズ!ルイズ!ルイズ!ルイズぅぅううううわぁぁああああああああああああああああん!!!
好きなキャラをとことん虐めたくなる気持ちは分かる
>>690 書くのは別にいいんじゃない?俺は読まないけど。鬱展開超嫌いです
や、既に散々言われている事かもしれないとは思うのですが・・・
"A EVIL"じゃなくて"ANうわなにをするやめウヴォァー
気になるなら避難所でやればいい。
1、2話で停止するような3日坊主以下の作品でなければ書いてみたら
つまり
貴様の愛は侵略行為!
ですね
遅くなったけどジョセフの人乙カレイターGJ!
早くも感染拡大で大変なことに…
しかもぞくぞくと脇キャラにフラグ立って行くこの感じこそまさにブラスレイター
通常融合体相手ならちょっと強いメイジなら勝てるやつも多そうだけど
融合後も元の特徴を継承するからメイジが融合体、まして刻印持ちにでもなろうものなら…
これは新たなリョーガのための良い寝たきりフラグにw
ラスボスのパワーを凌駕したと思ったら全然そんなことなかったぜ
>>690 改変したらヘイトヘイトと騒ぐ連中は、一種の処女崇拝だからそっとしてあげましょう
>>690 ルイズが壊れて黒くなって鬱展開で愛が溢れてる作品……
「ヘルミーナとルイズ」がそのまんまで成功例としてあるじゃないか。
あれは別にヘイトも何も言われなかったし大丈夫だと思うよ。
煽り交じりのレスは、対象が何であれ「毒吐きスレ」でやるべきだと思うんだけど、
「毒吐きスレで言うべきことに対してのレス」なら、こっちでもokと思ってる人が居るよなぁ
左の頬を差し出せとまでは言わないけど、スルーするか煽り無しで忠告する方向でお願いしたい
「仮面ライダー電王」からオーナー召喚……すげぇチート化しそうだと自分で言って思った。
ライダーつながりで立花藤兵衛を召喚
ルイズが鼻の穴に黒いシールを張って悪い魔法使いと戦う
敵はジョゼフの召喚した電車男
>>704 それノリダーw
どうせならファンファン大佐でよくね?
そしてジョゼフがノリダー召喚w
ちびノリダーって、今何してるんだろう…
何年か前は電車男だったな
いまはチームバチスタのドラマ版で主演やってるよ
黒蛇カーサ召喚話きてたとは・・・
ゼルマンの話も出てたしBBBを知ってる人多いんだな
710 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/20(木) 16:51:45 ID:gGfz/yeU
ゼロ魔でもディレイスペルあったら便利なのにね。
って今オモタ
ふと思ったんだが、作品に公式なデフォルトネームがない主人公キャラ
(開始時に自分で名前を決めるような奴)は、どう名前つけりゃいいの?
>>710 開放しないってのは既にそれなんじゃないか?
>>711 たぶん準オリキャラ扱いになるから、このスレではそういうの書かない方が無難。
ああ、思いっきりネタ名前にしてギャグやるなら可かもしれんが。
『主人 公』とかw
公式にナナシって名前の主人公もいるよね
>>711 ・オリネームを使う
・小説・漫画版などで使われているネームにする
・主人公の一人称で押し通す
これくらいしか思いつかん
・主人公はわけあって名前を名乗らない。主人公以外のキャラの三人称一元視点で押し通す
ここまで来ると苦しいなw
>>632 クロス作品同士の更にクロスって、何次創作になるんだ……?
ルイズ「あんた、名前は?」
???「俺は……」
>名前を入力してください
>______
>>718 いっそのこと、安価ででも決めるか?www
犬とか言われると某忠犬が召喚されて
アルビオンに旅立ったきり帰ってこないルイズを
雨の日も風の日も待ち続けるという展開が思い浮かぶ
>>720 涼宮ハルヒ方式でいくんですね
「さっさと来なさいこの犬」
「犬犬言うな!俺の名前は
「アンタなんか犬で十分よ」
「あのー、犬さん」
「シエスタ、君まで」
「ヴァリエールさまがあなたの事は犬と呼ぶように、それ以外の呼び方してたら罰する
とおっしゃいまして」
「おう、『我等の犬』!」
「称えてんのか貶してんのか!」
ピアスの少年の名前はピアスの少年がいいよな?
>>722 おもしろいなw
どっかの国の「犬」って言葉にするとかどう?
ほんで
「それってどっかの昔の言葉で『犬』って意味なんだけど……」
という設定に無理やりつなげる。
なんとか小説とか漫画とかを探してそれの名前を使うのも手だ。
最終兵器としてときメモ方式の主人公(ぬしびとこう)というのもありだw
>>724 漫画版だと藤堂尚也だったか。あのイケメン。
もょもと
729 :
711:2008/11/20(木) 18:02:20 ID:nwLImdSQ
>>726 なるほど、それもひとつの手か
ちなみに俺が召喚しようとしている予定の作品は、ゲームソフトのみの展開です
(超がつくほどマイナー、シリーズとして続いてはいるけど)
遅くなりましたがEVILの人お疲れ様でした
色々とプレイ当時のこと思い出しましたよ・・・
願わくばルイズたちが幸福であり続けられることを祈ります・・・
ラスボスの人のスーパーラスボス大戦に期待します
赤黒い稲妻とか出たときはてっきりルイーナの誰かかと思いました
完璧親父は下手するとゲートが開いた時点でやばそうですね
個人的にはユキムラや絶望総代の登場に期待したいですw
>>729 まとめのソーサリー・ゼロあたりを参考にすればいいじゃないか?
犬っていうんだったら、里見八犬伝から八犬士を召喚したら?
ゼロ戦も制空八犬士なら扱えるだろうし。
>>717 ネタ元のスパロボやスパヒロもクロスオーバーものだし、考えようによっては
ユーゼスや久保なんかの設定もそれらバンプレ系のクロス作品同士のクロスオーバーから出来たものだし、
クロス作品同士のクロス設定を用いたクロス作品同士のクロスオーバー……
もはや訳が分からんなww
>729
ウルトラバロックデプログラマーの主人公が「解体屋」
クーロンズゲートの主人公が「風水師」と呼ばれるように職業名で呼ばれるとかどうだろう
投下前から意見やアドバイス求める長編はゴミSSの法則
SS初心者です。原作はアニメとSSしか把握してません。クロス先もうろ覚えです。
(゚∀゚)カエレ!
んー同意しとこうか
>>719 某板住民を召喚
何故かネットが出来るノーパソ持ってて
「ちょwwwwwwwwwルイズに召喚されたwwwwwww」とスレ立てて
安価行動するんですね
「アンタなんか『犬』で十分よ!」
「はい!私はルイズさまの犬ですワン!」
F.S.S.プロムナードより、エミリィことヒュートラン召喚
モーターヘッドなくても十分すぎる
イヌの話で新星市のブラックハウンドから誰か呼びたいな、と思った。
ゼロを呼んでゼロのゼロとか。
猟犬ならクラックハウンドの郵便屋おすすめw
弾薬の補充の心配ナッシンw
猫の糞一号から韓国軍召喚。
ハルケギニアに国技の嵐が。
東方projectからお空召喚…
ハルケギニア終了のお知らせww
犬の韓国軍召喚!!
お前らの特亜嫌いは理解したので、巣にカエレ。
>>741 こんな話題をする俺偉い!ですね
わかります
ばーか
犬キャラか姉妹スレのバオー犬とバンパイア・ナイトのノワールが来てるが…
ザフィーラとか犬神明とかあるが今はやりの仮想戦記ものでいくならのら犬黒吉だろう
犬……名探偵ホームズとか?
いやいや、猟犬といったらアイツしかいないだろw
あの、角から来るティンダロスの……あれ、部屋の隅から変な臭いが。
あ! 青い煙みたいなのもでてきt
アニメは駄目だという意見は圧倒的に多いし、9割方同意するが、
キャラの声が頭に浮かぶのとそうでないのは天と地ほどの差があるぞ。
みんな多分忘れてるんだろうけど、ここってライトノベル板とかじゃなくて
アニメキャラ総合板なんだよな
昔は「ワンワン三銃士」なぞというアニメもあったなぁ
犬夜叉だとそのまんまだし
すぐ話がループしますな
文章だけじゃ、脳味噌の中で世界を補完しようとするとどうも難しい。
建物の構造とかさ、実際に映像として見た方が新しい展開も作り易いし
モット伯や日食、品評会ネタはアニメが由来だからな。
三期からで、
>>528のデルフのテレポートのほかに使えそうな独自設定ってあったっけ?
>>755 キュルケやらギーシュやらが精霊の力を借りて魔法唱えてたな
デルフのテレポートは、魔力吸い込みまくったから出来た訳で、7万とぶつかった時ぐらいしかそんな魔力たまらないだろうから、別に設定ぶち壊しって訳でも無いよな。
デルフのあれって走って逃げただけじゃなかったのか…
アニメだとテレポ
アニメでは知って逃げるとかっこ悪さ100倍になりそうな気はする
なるほどアニメ版か、原作しか読んでないから焦ったよ。
しかし困ったな、デルフの重要度が跳ね上がるけど、あまりに便利になりすぎるぞ。
扱うとしたらどう熱かったものか。
>>762 魔法100発吸ったら1Mテレポできるとか
あの時は必至だったけどテレポの仕方忘れたとか
そもそもSS読むのって原作基準のつもりで読んでるのとアニメ基準で読んでるのどっちが多いんだ?
俺は普通に前者のが多いと思ってたんだが
>>762 ここは原作の設定を採用、ここはアニメの設定を採用、とチョイスすれば良いのでは。
>>763 どちらであっても、SS側で必要に応じて設定が改変されたケースは山ほどあるから
今更と言えるかもよ
ポイズンピンク辺りとクロスさせたら、実はデルフ魔神でしたとかってオチもありそうだな……。
1巻「おでれーた。見損なってた。てめ、『使い手』か」
2巻「懐かしいねえ。泣けるねえ。そうかぁ、いやぁ、なんか懐かしい気がしてたが、そうか。相棒、あの『ガンダールヴ』か!」
3巻「こいつは『武器』だろ? ひっついてりゃ、大概のことはわかるよ。忘れたか? 俺は一応、『伝説』なんだぜ?」
4巻「そりゃそうさ。勘違いすんなよガンダールヴ。お前さんの仕事は、敵をやっつけることでも、ひこうきとやらを飛ばすことでもねえ。『呪文詠唱中の主人を守る』。お前さんの仕事はそれだけだ」
5巻:セリフなし
6巻「いやぁ、相棒。すんごいお久しぶり。ほんとに寂しくて死ぬかと思った」
7巻「そりゃ、どう贔屓目に見たって、あのロマリアの神官のほうがかっこいいさ。顔はもう、そりゃ比べものにならねえよ。空飛ぶ生き物のレベルでいえば、ハエとフェニックスだよ。地を這う生き物でいえば、オケラとライオンだよ。水の生き物でいえば、ミジンコと白鳥だよ」
8巻「相手してよ」
9巻「おれは六千年も変わらずにやってきた。退屈だったが、それなりに幸せな時間だったのかもしれねえ。お前さんたちの歴史とやらも同じさ。なにも無理に変えるこたぁねえ。そのままにしておくに、越したことはねえよ」
10巻「もう。俺に話しかけるの、こういうときだけじゃねーか」
11巻「あんだよ。もうほんと、聞きたいことがあるときだけ呼ぶんじゃねーよ。切りたいものがあるときだけ抜くんじゃねーよ。もう俺に飽きたんだろ?」
12巻「相棒……、遅いよ……」
13巻「だってよう……、ずっと鞘に入りっぱなしでイライラしてたし……。第一おりゃあこの国がきれえなんだよ。この国をつくったフォルサテって男が、そりゃもういけすかないヤツで……」
14巻:セリフなし
15巻「やあ相棒。もう、俺が寂しいと言っても、誰にも届かないんだね」
>>764あくまで個人的な印象だが、いままで読んだSSは基本は原作で、その中にモット伯の事件や使い魔品評会などのイベントを
織り交ぜていっているような気がする。(これらが後々重要になるときもあるが。)
>767
全ハルキゲニア(動物)が鳴いた
1.ルイズがキャラを召喚するのみ
2.他の虚無もキャラを召喚する
3.ゼロ魔キャラにもクロス先からの影響が
4.ゼロ魔の世界でクロス先の話をしているだけ
1が一番多くて、2と3は同じくらいかな?
>>771 提督あたりが1で、ラスボスとかが2(後々どうなるかは分からんが)、蒼い使い魔などが3、……4て何かあったか?
今夜は投下まだかなー
>>767 え!? マジでそれしかデルフのセリフって無いの?
俺の持ってる原作が埃被って久しいけど、そんなにセリフ少なかったっけ?
だよなー、いくらなんでも少なすぎるよな。
久々に原作も読み返してみるか……
各巻よりセリフ抜粋・ギーシュ
1巻「確か、あのゼロのルイズが呼び出した、平民だったな。平民に貴族の機転を期待した僕が間違っていた。行きたまえ」
2巻「うむむ、ここで死ぬのかな。どうなのかな。死んだら、姫殿下とモンモランシーには会えなくなってしまうな……」
3巻「んー、きみはあれだな、ろくでなしだな」
4巻「なあに、ぼくなんか今学年は半分も授業に出てないぞ? サイトが来てからというもの、なぜか毎日冒険だ! あっはっは!」
5巻「白! 白かった! 白かったであります!」
6巻「ちょ、ちょっと大隊長どの! ぼくは学生仕官ですよ! そんないきなり中隊長なんて!」
7巻「……む、武者震いと言いたいが……、恐いだけだな。うん」
8巻「きみは平民だが、ぼくは友情など、抱いていたんだよ」
9巻「理想の自分っていうのかね。まぁ、ぼくは自分が理想だけどな! なんてったって、ぼくは世界一美しいからな! あっはっは! ああ! 何人ぼくの姿になるんだろう! ああ! ああああ! あ!」
10巻「きみってやつぁあああああ! ああああ、捕まっちまったじゃないかよぉ……! よりによって敬愛する女王陛下にぃいいいいい!」
11巻「ぼくはね、きみを友人だと思う。だからこそ、こうしたほうがいいと思うんだ」
12巻「なんというかね……、きみのいた国はどうか知らないが、こっちにだって可愛い女の子はいるし……、貴族にだってなれたじゃないか。もしルイズに放り出されるようなことがあったら、ぼくの領地に来ればいい。きみ一人ぐらい、養ってやるぜ」
13巻「まだ未完成の花束だ。最後の一本は……、キミダヨ」
14巻「笑って見送っておくれ。ぼくは貴族なんだよ」
15巻「そうだな。そうかもしれん……。でも、見ろサイト。ここに集まったロマリア、ガリア両軍の姿を! ここで一発格好いいところ見せてみろ! ぼくと水精霊騎士隊の名前は、子々孫々まで語り継がれるようになるぜ!」
>>777 ギーシュかっけぇ!
デルフよりかっけぇ!
……当然か
>>772 4なんて有名どころであるじゃないか。しもべとか17とか…
クロス先のキャラを召喚するのをルイズだけぐらいにしとかないと、
結構4に陥りやすい作品は多いと思うぞ。
>>777全部サイトに向けて言ってるんじゃないよな?
花束の所とかww
読んでると友情→アッーな展開に見えてくるwww
>>779 正直クロス先のキャラクターが複数名出ている作品で、上手に展開させてるの一作品か二作品くらいしか思いつかねぇ……
かなりバランス感覚難しいだと思うな。
>>783 お前の所為で、
>きみ一人ぐらい、養ってやるぜ
給仕兼肉奴隷としてですね、分かります。
なんて腐臭い妄想がだな
犬呼ばわりで問題ないといえば特機隊
マリコルヌのセリフ集って無いかな?
性癖が進化する過程が見れそう
ガンダム00から刹那Fセイエイ
「俺がガンダムだ!」
「あそう、ガンダム、服脱がせて」
「・・・」
流石にBL的な展開になったクロスSSはあまり見たことない。
ABEさんとかはまぁ、アレBLっていうかガチホモだから。
のび太呼んで「あんたなんかのび犬で十分よ」てな展開
自分で書き間違えるぐらいだし
BLなら原作にあったじゃん。
マルコメがセーラー服着た自分にはぁはぁしてるシーンが。
デルフが空気って言うんならガンダールブの武器はデルフリンガーの変わりにモンハンのデルフ=ダオラでいいかな
で、せっかく買ってもらったから召喚されたハンターが早速装備
でも防具は剣士装備しか持ってなかったからデルフを使うときはインナー姿にならないといけない
だったら最初から持ってる武器でいいよね
って事で結局部屋の片隅で埃をかぶるデルフ
>>771 3で真っ先に思い浮かぶのがゼロのガンパレードだな
逆に考えるんだ、「ルイズがデルフを召喚すればいいさ」と考えるんだ
武器屋には歴代のデルフリンガーを振り回してきた人型兵器、平賀才人が眠っているわけか
00:35から投下しても大丈夫でしょうか?
支援
夜、学院の中庭で中空に拳を放ち続けるリュウ。
リュウの放つ拳が風を切る音だけが延々と続く。
近くの木に立てかけられたまま黙ってそれを見ていたデルフリンガーが痺れを切らして口を開く。
「なあ、相棒」
「なんだ?」
「おめえ、俺っちを使わねーの?」
寂しげに問いかけるデルフリンガー。
リュウは先ほどから蹴るだの殴るだのを延々と繰り返すだけで、一向にデルフリンガーを握るそぶりがないのだ。
「使わん」
短く一言答えるリュウ。
「え・・・?いや、あの・・・?もしもし??」
顎があれば地面まで落ちたであろうほどのショックを受けるデルフリンガー。
「・・・おめえ、なんで俺っちを買ったの?」
「アンタが買えと言ったからだな」
デルフリンガーの問いかけに悪戯っぽく笑いながら答えると、黙々と見えない相手を殴り続けるリュウ。
「いや、使わないんなら買うなよ・・・っていうかさ、せっかく買ったんだから普通は使おうとしねー?」
「俺は剣なんて握ったこともないからな。自分の拳が一番だ」
「相棒は”使い手”なんだからよ、使い方なんて知らなくても俺っちを構えさえすれば、ちゃあんと使えるんだよ」
「じゃあ、そのときはよろしく頼む」
「はぁ・・・俺っちが人間なら、溜息でもつきたいところだあね」
暖簾に腕押し。
まったく自分を使おうとしないリュウにデルフリンガーは諦めて再び黙り込んだ。
デルフ…せつないな。支援
「なあ、相棒」
再びリュウに話しかける。
「なんだ?」
「おめえ、いつまでそうやってんの?」
結構な時間が経つというのにリュウは一向に止める気配がない。
今回の相棒はどういうスタミナをしているんだろうかと考えながら尋ねる。
「ルイズの部屋の明かりが消えるまでだ」
「なんで?」
「ルイズはおそらく今勉強している。そばにいられたんでは気が散るだろうからな」
「主人思いな使い魔だあね」
「そうでもないさ。俺は好きでやってるだけだからな。それに・・・」
「それに?」
「俺を見て稽古している者もいるようだしな。今止めると悪いだろ?」
「あれ?おめえも気づいてたの?」
「まあな」
小さく笑みを浮かべながら、リュウは黙々と拳を振り続けた。
「あれ?わたし、もしかして気づかれちゃってる??」
建物の陰からこっそりリュウを観察し、見よう見まねで自分も同じように手足を振り回していた少女は苦笑いを浮かべるのだった。
一方ルイズは魔法学の勉強が一区切りついたところで、本を閉じる。
「リュウってばいつもこんな夜中にどこに行ってるのかしら・・・」
前から気になっていたが、夜、ルイズがそろそろ勉強を始めようかという時間になると決まってリュウは
「散歩してくる」と言って部屋を出て行ってしまう。
どうやらルイズが寝た後に部屋には戻ってきているようだし、朝にはちゃんと起こしてくれるので問題はないのだが、ルイズ的には気になって仕方がない。
しばし考えた後、頭に浮かんだのはリュウにやたら懐いているあの巨乳のメイドだった。
「まままままさかあのメイドとっ!?」
ルイズの頭の中にメイドの胸に顔を埋めるリュウの姿が浮かぶ。
「ブチ殺すっ!!」
蹴破るように扉を開け、部屋を飛び出すルイズだった。
支援を開始する!
デルフの活躍を見たければ姉妹スレの仮面のルイズを読めばいいと思うよ。
人ならざる存在にしてともに永遠を生きる者としてある意味だれよりルイズの傍にいるし。
飛び出したはいいが、どこを探していいものか見当もつかないルイズはとりあえずそこらじゅうを走り回っていた。
アルヴィーズの食堂、厨房、馬小屋、とにかく走りまわった。
「ぜぇぜぇ・・・どこに・・・ぜぇ・・・いるのよ・・・ぜぇ・・・まったく・・・ぜぇ・・・」
フライなどの魔法が使えないので自分の脚で走るしかないルイズは息も絶え絶えに、それでも走るのを止めようとしない。
そして、ブリミルはそんな彼女を見捨てはしなかった。
やがて中庭で何やらやっているリュウをめでたく発見。
どうやら一人でいるようだ。
とりあえず、自分の頭の中にあった事態にはなっていなかったので一安心し、走るのを止めて呼吸を整えてからリュウに近づく。
「あんた、こんなところで何してんの?」
「ん?稽古してるんだが」
「夜になると毎日どこか行くけど、いつもこんな所でやってるの?」
「ああ、昼間やると目立つからな」
不思議そうにリュウを見つめるルイズ。
「そんなに強いのに練習なんて必要なの?あんたより強い相手なんてそうそういないと思うけど・・・」
「俺より強いヤツなんていくらでもいるさ」
謙遜した風でもなく、ごく当たり前のように答えるリュウ。
「それに、約束もあるしな・・・」
「約束?」
「ああ、俺のライバルたちだ。サボったりしていたのでは彼らに申し訳がたたない」
リュウは拳を握ると、二つの月を見上げて続けた。
「それに、彼らは強い。俺が元の世界に戻って、次に彼らにまみえたときにがっかりさせない為にも、な」
握った拳に力を込める。
「元の・・・世界・・・?」
元の世界とはどういう意味だろう?思わず聞き返すルイズ。
「ああ、どうやら俺はこことは違う世界から来たようだ。俺がいた場所では、月はひとつしかない」
最初、リュウが自分をからかっているのかと思った。
だが、リュウの目は真剣でまっすぐを見ている。
別の世界があるなどという話は信じ難いし、まるで御伽噺だ。
だが、リュウが言うのならきっとそうなのだろう。
不思議とルイズにはそう思える。
「・・・戻っちゃうの・・・?」
「ああ、ライバルたちが待っているからな」
「そう・・・」
俯いて黙り込んでしまったルイズだったが、しばらくしてポツリと呟いた。
「わたし、また一人ぼっちになっちゃうのね・・・」
あからさまに落ち込んでしまったルイズの頭に無骨で大きな手を置く。
「戻ると言っても、別に急いでいるワケでもないしな。もうしばらくはいるつもりだ」
そして、キュルケがルイズに向ける慈愛に満ちた眼差しを思い出しながら優しく語り掛けるリュウ。
「それに、君は一人なんかじゃない」
ルイズは目に涙を浮かべたまましばらく黙ってリュウを見つめていたが、やがて横を向くと涙を拭い、近くの小石に向けて呪文を唱え始めた。
「あんたでも練習するんだもんね。わたしなんて、その何倍もやらなきゃ・・・」
その日、明け方近くまで爆発は続いた。
待ち支援
竜巻支援脚
ルイズが眠い目をこすりながら授業を受けている間、中庭で座禅を組んでいたリュウに後ろから声がかかる。
「貴方がミスタ・リュウでよろしいかしら?」
緑色の美しい長髪に眼鏡をかけた、スラリと背の高い理知的な美女が事務的に告げた。
美女はリュウが本人であることを確認すると、そのまま続ける。
「私はここの学院長の秘書をしております、ロングビルと申します。学院長がお呼びですので、ご一緒にいらしていただけませんでしょうか」
一瞬、ほんの一瞬だが眼鏡の奥から刃物のような鋭さを持った視線がリュウに向けられる。
相手の次の行動を予測する手段として視線というものは重要なファクターであり、女が向けた視線にリュウが気づかないはずがなかった。
だがリュウは気づかなかったフリをすると「わかった」と言って座禅をやめ、
後ろの木に立てかけていたデルフリンガーを掴むとロングビルの後に着いていった。
――秘書・・・か・・・それにしては先ほどの視線は鋭すぎるな。注意しておくか――
――青銅のゴーレムを素手で殴り壊す男・・・ね・・・どの程度のものか探っとく必要があるわね・・・――
二人の思惑が交錯する。
「ミスタ・リュウはとてもお強いと伺いましたわ」
リュウの方を向くと笑顔で話しかける。
「そんなことはないさ」
こちらも笑顔で返すリュウ。
「私は見ることができなかったのですけど、素手でゴーレムを破壊したと聞きましたわ」
はっきり言って、ロングビル――その正体は巷で噂の”土くれのフーケ”に他ならない――には信じられなかった。
青銅製のゴーレムを素手で破壊するなど人間業ではない。
どうせ噂話にありがちな、尾ひれがついて話が大きくなっているだけだろうとは思ったが仕事を間近に控えているので不確定要素は極力なくしておきたい。
そのためにはこの風変わりな男の能力を見極めておく必要がある。
「たまたま上手くいっただけさ」
こともなげに答えるリュウ。
『たまたま上手くいった・・・?』
裏の世界を一人で生き残ってきたフーケである。人を見る目には自信がある。
この男は自分を大きく見せたり、誇張するようなことをいうような男ではないと断言できる。
――ってことは、信じられないけど素手で破壊したというのは本当ということか・・・やっかいね・・・。
杖を持っていないところを見るとメイジではないみたいだし、まともにやりあえばトライアング・ルメイジのわたしが負けるとは思わないけど、
素手でゴーレムを破壊できる腕力がどう絡んでくるかは未知数・・・か・・・
なら、”この男がいない”というのも仕事を決行するための要素の一つに入れておいたほうが良いわね――
表面上は他愛もない会話をしながら案内を続け、やがて学院長室の前へと辿り着いた。
>>785 人狼は名作だよな。
なんだか召喚された瞬間に攻撃されなくもないような気が。
プロテクトギアで思い出したけど、スプリガンの御見苗優とかありかも知んね。
それか、コミックの四巻に出てきたバーサーカーとか。
失礼、支援
ミスタ・ホシでよくね?www支援
「オールド・オスマン。ミスタ・リュウをお連れしました」
「よろしい、入りなさい」
決して大きくない、しかし威厳のある声が聞こえる。
「失礼します」
ロングビルが扉を開けると、中にはこの部屋の主であるオールド・オスマンと、その隣にコルベールが立っていた。
「おお、ミス・ロングビルではありませんか・・・」
コルベールの顔が頭まで紅くなる。
――そう、この男は女に抵抗力がない。
おかげであたしが少し優しくしてやっただけで宝物庫とお宝の情報をペラペラ喋ってくれた――
コルベールと目が合ったロングビルが微笑むと、コルベールはさらに頭を赤く染めた。
「さて、早速で悪いんじゃがミス・ロングビルは少し席を外してくれんかの?」
あからさまに残念な表情を浮かべるコルベールを完全無視するオスマン。
「かしこまりました。それでは失礼します」
ロングビルは恭しく頭を下げると、退出際にコルベールに向けてウィンクをする。
コルベールの頭はもはや赤を通り越して赤黒くなっていた。
「・・・君、そのうち女で痛い目にあうんじゃろうなぁ」
酒場でお尻を触っても怒らなかったという理由でロングビルを雇った自分のことは完全に棚にあげ、
赤黒くなったコルベールをジト目で見るオスマン。
「さて、ちょっと失敬するよ。ミス・ロングビルがいると健康に悪いとかなんとか五月蝿いからのう」
オスマンは改めてリュウに向き直ると、リュウに席を勧め、自分も席について引き出しから水キセルを取り出し、ふかし始めた。
「儂がこの学院の学院長を務めておる、オスマンじゃ。よろしくの。さて・・・リュウ殿と言ったかの。わざわざ来てもらって悪いの」
飄々とした顔と言葉だが、その目は鋭くリュウを射抜いている。
隣に控えるコルベールも、先ほどまでとは別人のような真剣な顔をしていた。
オスマンとコルベールはある決意をしていた。
――もし彼が学院に害なす存在だとすれば、全力で阻止しなければならい――
彼が伝説の使い魔であるかどうかはともかく、決闘の際に一瞬だけ放った殺気の禍々しさは只事ではなかった。
今でこそ教師をしているが、元軍属で”炎蛇”と呼ばれ恐れられていたコルベールにはその殺気がいかに常軌を逸したものであるかが判る。
それと同時に彼の戦闘能力が楽観的に見ても自分と同等か、あるいはそれ以上であることも・・・
そしてそれは、オスマンにしても同様だった。
”炎蛇”コルベールと、200年とも300年とも言われる年月を生きてきた最高峰のメイジであるオスマン。
場合によっては学院の最高戦力であるこの二人で、刺し違えてでも止めなければならない。
でなければ魔法学院が地獄になる。
しえん
シエスタはショーンみたいだな支援
「突然で悪いんじゃが、君にいくつか質問がある。良いかね?」
唐突に切り出すオスマン。視線が一層鋭さを増す。
「どうぞ。俺に判ることならお答えします。それに、俺もいくつか聞きたいことがあります」
オスマンの刺すような視線を正面から受けて答えるリュウ。
「かまわんよ、とりあえず儂から質問させていただこうかの。単刀直入に訊こう。君は何者じゃね?」
張り詰める緊張の中、オスマンが口を開く。
「ここの生徒の・・・ルイズ・フランソワーズの使い魔ということらしいです。実感はありませんが。」
自分よりもそっちの方が詳しいんじゃないのか?と戸惑いながら答えるリュウ。
「ああ、質問の仕方が悪かったのぅ。すまなんだ。では、こう訊こう。
儂とここにおるコルベール君は先日の君と、うちの馬鹿生徒との決闘騒ぎを観とった。
・・・いや、決闘に関してどうこう言うつもりはないんじゃ。怪我人もおらんしの。
ただ、君はドットとはいえメイジにアッサリ勝ってしもうた。
その強さにも驚きだったんじゃが、最後に使った・・・あれは術か何かかの?あれがなんじゃったのかを知りたいんじゃ。
すまんが、儂とコルベール君はあの術に非常な危機感を感じておる」
リュウには二人が”殺意の波動”を警戒しているということがわかった。
なるほど、確かに”殺意の波動”は死んだ者を尚殺す忌わしき力。
二人から、いざとなったら自らの命を賭してでも自分を倒そうと、学院を守ろうという覚悟を感じ取った。
彼らの覚悟にはしっかり応えなければならない。
ルイズからは『異世界から来たなんて言ったら頭がおかしくなったと思われるから、東方から来たってことにしときなさい』と言い含められていたが、この二人には全てを話すことにした。
「信じてもらえるかどうかはわかりませんが・・・俺はこことは違う世界から来たようです」
リュウは全てを語った。
ジャングルで鏡のようなものを見つけ、手を触れるとこちらの世界にきていたこと
自分が暗殺拳を源流とした格闘技を使うこと、そしてその修練を積めばこの程度の戦闘力は身につくこと。
修行の過程で”殺意の波動”が自分の中に存在することを知ってしまったこと。
”殺意の波動”とは何か。
どうにかある程度までは”殺意の波動”を制御できるようになったが、基本的にはそれを使うつもりはないこと。
ギーシュを相手にしたときは「見せるべきだ」と判断した上で、敢えて”殺意の波動”を使ったこと・・・
「以上が、俺にわかる全てです」
しばらくの間、沈黙が部屋を支配したが、やがてオスマンが口を開いた。
「違う世界から来たとは驚きじゃな。まったく、驚きじゃ。じゃが、君が嘘を言っているようには思えん。
それに違う世界というのにも驚きじゃが、その格闘技とやらを使えば平民でも容易くメイジに勝てるようになるというのも驚きじゃ。まったく驚き尽くしじゃのう」
顎鬚をしごきながら呟くオスマン。
「ついでにもう一つ教えてくれんかの?その格闘技というのは、誰でも、たとえば、この学院の使用人たちでも修練させ積めば使えるようになるもんかの?」
「誰でもとは言いませんが、ある程度の素質さえあれば後は努力次第だと思います」
「これは・・・ボンクラ貴族どもの時代が終わるのも時間の問題かの・・・」
もっとも、現実はちょっとやそっとの素質ではリュウほどの領域に達しようはずもないのだが
そこまでは解らないオスマンはざまあみろといった風で再び顎鬚をしごく。
既に彼からは刺すような視線は消えていた。
「こちらの質問に真摯に答えてくれたことに感謝するぞい。
あまりに禍々しい殺気を見てしまったとはいえ、儂は君という人間を誤解していたようじゃ。
儂も長いこと生きとるしの、人を見る目はあるつもりなんじゃよ。短い時間じゃが話していて判った。君は信用に足る人物じゃ。
ただ、”サツイノハドウ”は儂らメイジから見てもあまりに危険なものなんじゃと確信しておる。そこだけは解っていただきたい」
「肝に銘じておきます」
長年”殺意の波動”と戦ってきたリュウは重々しく頷いた。
「そうじゃな、儂などより君の方がよほど”サツイノハドウ”の危険性を熟知しているはずじゃな。
余計なことを言ってしまったの。今の言葉は気にせんでくれ。
さて、儂の方の話は終わりじゃ。君も儂に聞きたいことがあるんじゃろ?」
先ほどまでのような命を賭した真剣さはなくなったものの、相変わらず真剣な表情のままのオスマン。
「はい、まず、さっきも言った通り、俺は召喚によって別の世界から来ました。
召喚で来た以上は、同じことをすれば戻れるのではないかと思ったのですが、ルイズは一度召喚したものを戻す方法はないと言っていました。
貴方がたから見ても、やはり戻る方法はないのでしょうか?」
「そうじゃのう・・・そういった話は聞いたことがないのう・・・
普通、使い魔の契約というのは一生もんじゃからの・・・じゃが、簡単ではないじゃろうが不可能かどうかは判らん。
時間はかかるじゃろうが、調べておこう」
「ありがとうございます。もう一つは、単なる俺の興味本位なんですが・・・」
「大丈夫じゃよ。儂は極力君の力になってやりたい。君は誠実じゃからな。
誠意には誠意で応えねばならんと、儂は思うとるからの」
「ありがとうございます。では尋ねます。
使い魔は召喚した者の属性によって決まると聞きました。火のメイジなら火に連なるもの、風のメイジなら風に連なるもの。
では、ルイズに召喚された俺は何なのでしょう?
自分にはそのようなものはありません。強いて言うなら”殺意の波動”でしょうが、それはどれにも属さないと思うのです」
リュウの好奇心からの質問を、オスマンとコルベールは思った以上に真剣な顔で聞いていた。
「今から言うことは、まだ確たる証拠がないことじゃ。じゃから、話半分程度に聞いてほしい」
コルベールの「いいのですか」という声を手で制し言葉を続ける。
「魔法には4つの系統がある。それはすなわち『火』『水』『風』『地』じゃ。
じゃが、伝説の中ではもう一つ、”失われた系統”があるとされとる。それが『虚無』じゃ。
文献などもほとんど残っとらんからの、『虚無』がどういった系統だったのかは謎じゃ。ただ・・・」
そこで一度区切ると、リュウに左手の篭手を外すように促す。
篭手を外したリュウの左手の甲に刻まれたルーンがあらわれる。
支援。
支援!
「『虚無』の担い手が使役したと言われておる伝説の使い魔に、”あらゆる武器を使いこなす”『ガンダールヴ』というのがおってな」
オスマンがリュウの左手を見やる。
「その『ガンダールヴ』の左手に刻まれたルーンと同じものが、君の左手にも刻まれとるんじゃ・・・」
言われ、自分の左手を見るリュウ。
『相棒は”使い手”なんだからよ、使い方なんて知らなくても俺っちを構えさえすれば、ちゃあんと使えるんだよ』
デルフリンガーの言葉を思い出す。
「で、じゃ。君を召喚したミス・ヴァリエールは今のところ、魔法がまったく使えん。じゃが、彼女がもし『虚無』の系統なら、それも納得できる。
もっとも、それにしても基礎であるコモン・マジックまで使えんのは説明がつかんがの。
まあ、つまるところ、ガンダールヴに虚無。辻褄は合っとるんじゃな、これが」
オスマンは再び水キセルを取り出すと一服してから続けた。
「ただ、君がガンダールヴの力を使えるのかどうかが判らんし、ミス・ヴァリエールにしても虚無魔法を使ったことが一度もない。
もっとも、教えてもらってもないものを使えるワケがないんじゃがな。じゃが教えようにも虚無の使い手なんぞおらんのだから、それもできん。
辻褄は合っても証明ができんのじゃ」
そして大きく溜息をついてから
「それにこの話自体、はっきり言って御伽噺のような話なのでのぅ。儂らからして信じられんというのが正直なところじゃ。こんな程度のことしか教えてやれんですまんの」
オスマンが申し訳なさそうに告げる。
「いえ、十分です。ありがとうございました。それでは俺は、これで」
礼をして学院長室を出て行こうとしたリュウにコルベールが声をかける。
「そこまでご一緒してもいいですかな?」
廊下を歩きながら語るコルベール。
「オールド・オスマンは貴方をとても高く評価なさっているようですな」
「俺はそんな大層なもんじゃ・・・」
否定しようとするリュウを遮って続けるコルベール。
「私もオールド・オスマンと同じ意見です。貴方からは誠実さと、思慮の深さを感じるのです」
そこで一度区切ると、改めて話しだす。
「ミス・ヴァリエールはこの学院にやってきて以来、とても熱心に勉強しています。図書館にも足げく通っていますし、虚無の曜日には一日中魔法の練習をしていることもざらです。
おそらく、教師の私たちも含めてこの学院で一番勤勉でしょうな。だというのに、どういうわけか魔法がまったく使えません。
私としては、彼女には魔法が使えるようになるだけでなく、偉大なメイジになっていただきたいのです。努力することは決して無駄ではないと、私は信じていますから。」
コルベールのルイズに対する、教師としての愛情がリュウにも伝わる。
「ミスタ・リュウが本当にガンダールヴなのかどうかは判りません。
ですが、ミス・ヴァリエールの使い魔としてミスタ・リュウが召喚されたのはブリミルの思し召しだと、私は思います。
ミス・ヴァリエールのこと、よろしく頼みますぞ」
リュウは力強く頷いた。
以上で投下終了です。
リュウってオロとかにも平気でタメ口きいてますけど、
基本的には目上の人間には敬語使ってるんじゃなかろうかと思ったのでオスマン相手には敬語を使ってもらうことにしました。
次回は久しぶりにリュウに暴れてもらう予定です。
しえん
波動乙!
大暴れってのはvs30mゴーレムか、はたまたモット伯涙目か
>>806 バーサーカーなんぞ召喚したら学園どころかトリステインが火の海になりそうだ
個人的にはスプリガンからならティア・フラット召喚が見てみたいな。
〆は何百年後かに、異世界から来たオーパーツを封印する目的で設立されたヴァリエール財団、
その中でも最強のエージェント「遺跡を守る妖精」の一人にルイズ・フランソワーズと名乗るうら若い女性の姿があったとか
波動乙
シエスタはこのまま第二の桜化するんだろうか
少なくともモット伯は大変な事になりそうな気がするんだ
(ジークブリーガーなヘル&ヘヴン的な意味で
次回も楽しみにしています
書き上がったので、01:30から投下します。今回はいつもより短め。
波動の人お疲れ様でした。
リュウの世界は女子高生がムエタイの王者をKOしかねないし、サラリーマンが銀の力で変身したり、アイドルがゾンビや妖怪に開脚キックしたり、ホアァ!とか生身でカタパルト発射したりと……あれ、なんか混ざっているがまあすごい世界だもんな。
デルフはもはやおしゃべりの相手かナタ代わりになるしかない?
>>819 ティア・フラット召喚はまず話が成り立たないだろうな。
空間とか余裕で操れちゃうから「自力帰還とか余裕でした」とかになりかねない。
つーか、スプリガンとしての任務とか、原作終了後だとアーカムの会長の仕事とかで
相当忙しい身の上だから、異世界で使い魔なんかやってる余裕自体が無いし。
波動乙
>>819 スプリガンの中だとネオナチのボーかな
ルイズと相性は良さそう
しかし、恋には発展しなさそうだが
「血肉を持つ者、光の下に生きし者、呪うなるかな生なる力を、捧げるなり虚無の闇へ……」
闇に沈んだ部屋に声が響く。
静かな夜であった。月は雲に遮られ、月光は地上に届いていない。吹く風は生温く、過分に水分を含んでいる。
森の獣は息を潜め、草原からは虫の音が微かに響いてくる。時折、強い風が吹くが、月を覆い隠す厚い雲を吹き飛ばすには至らない。
殆どの部屋の明かりは消え、学院内は静まり返っている。しかし、全くの静寂というわけではなく、ぽつぽつと明かりが漏れている部屋も存在していた。
そして、ルイズの部屋も、その少数派の中の一つであった。
閉ざされたカーテンから僅かに漏れ出でるのは、柔らかい橙の光。その光源は、窓際に置かれている勉強机の上に存在していた。
頼りないランプの明かりが勉強机を闇に浮かび上がらせている。
その机に陣取っているのは、ジュディであった。
机上には、魔道書とノートが広げらている。
「何なの、この術? 『スポイル』っていう術みたいだけど、すごく嫌な感じがする」
解読してた『常闇の魔道板』から顔を挙げ、ジュディは眉根を顰める。
そして、魔道板を机の上に置くと、膝を抱きかかえるようにして椅子の背にもたれた。その体勢のまま前後に体を揺すり、椅子を軋ませながら考え込む。
ジュディは、オスマンから魔道板を受け取って以来、少しづつ読み解いていっていた。
魔道板を読み解く基本は、心で捉える事だ。それが基本であり、極意でもある。
もちろん、記されている魔道文字は、文字としての機能も持ち合わせている。だが、魔道文字とはそれ自体が魔道の産物であり、記し手の移し身だ。
魔道板を読み解くという行為は、記し手を知るという事であり。そして、記し手を知るという事は、自らの気の流れを変える事に繋がる。
そうする事によって、初めて術を習得する事が出来るのだ。
「オジイチャンから貰った魔道板にも、同じような術がのってたっけ? あれと同じような術かなぁ?
五行の術じゃないみたいだけど……」
術を使うのには、気の流れを制御するための発動体が必要になる。
例えば、火行術を使うのには、火行の気を操る杖や腕輪が必要であり、火行の発動体では他の術を行使する事は出来ない。
基本的に発動体は、獣石と呼ばれる石で造られている。獣石そのもので造られている物から、獣石を埋め込まれている物まで幅広く、形に決まりはない。
一般的な形は杖や腕輪であるが、それ以外の形状が珍しいというわけでもない。
だが、マイノリティなのは否めないだろう。誰だって、わざわざ使いにくい物を選んだりはしない。
「でも、どうやって使うんだろう?」
ジュディは小首を傾げて考え込む。
いかに異質な術であろうと、その気の流れ制御する発動体がなければ術を使う事は出来ない。そして、そんなモノが存在するなど、ジュディは聞いた事がなかった。
しかし、ジュディは自分たちが使う『術』とは違う『魔法』が存在する事を知っている。だが、この術は異質な気を有してはいるものの、ハルケギニアの『魔法』ではない。
そして、この魔道板には異質な術だけではなく、五行の術も記されていた。それは、ハルケギニアの魔法使いが記した物ではない事を示している。
それを読み解く過程で、ジュディは祖父から渡された魔道板からも、同質の気が感じられる事に気が付いた。
それは微かなモノであったが、件の魔道板や例のガントレットから感じられたモノと同じであった。
異邦の地で見つけた物と、祖父から与えられた魔道板。それらから同じ気を感じることが出来るのは、それらがハルケギニアの外からもたらされたという事実を示唆していた。
「オスマンさんが言ってた怪物って、もしかしたらこの魔道板に引き寄せられたのかなぁ?」
ふと思いつき、呟く。陰陽の気が入り混じり、五行の範疇におさまらない術が記されたこの不気味な魔道板なら、あり得るように思えた。
改めて魔道板を手に取ると、再び解読を始める。
刻まれた文字をなぞりながら、ジュディの胸中には、言いようのない不安が渦を巻いていた。
『これはいったい何? 私の知らない秘密が魔道の世界には隠されているみたい』
心の内にあるのは、謎を解き明かし先へ進もうとする欲求と、踏み止まろうとする理性。そして何よりも、未知への恐れが存在していた。
まだ未熟なジュディであるが、魔道士としての心得は、祖父から、そして母から教えられている。
未知を探究し、世界の理を紐解く。それが魔道士の在り方だ。
しかし、人が全てを知り尽くす事など、到底出来はしないという事も同時に教えられていた。故に、魔道士はどこかで線引きをして、踏み止まることも必要なのだと。
ジュディは悩む。魔道の世界には、五行法則の範疇を超えた何かが存在していると、気が付いてしまった。
気付いたからには、知りたいと思ってしまうのが人のサガだろう。その欲望を抑えるには、ジュディはまだ幼く経験も足らなかった。
「ジュディ? まだ起きてるの?」
後ろからジュディを呼ぶ声が聞こえる。ルイズの声だ。
ルイズは、ベッドから上体を起こしている。
ランプの明かりは、そこまで十分に届いてはおらず、どんな表情をしているかは分からない。かろうじて、体の輪郭が分かる程度だ。
「早く寝ないと、起きられないわよ?」
「はーい。ごめんなさい」
言い含めるような口調のルイズに、ジュディは素直に従う。
手に持っていた魔道板を魔道書を重ねてノートの上に置くと、羽織っていたカーディガンを脱ぎ、椅子の背もたれに引っかける。
そして、椅子を机に押し込むと、ランプの明かりを消した。
完全な闇が訪れる。
「毎晩、頑張ってるみたいだけど、程々にしなきゃ体を壊すわよ?」
「うん。おやすみなさい」
「ええ、お休みなさい」
暫くの間、闇に沈んだ部屋には2人の話し声が聞こえていたが、やがて規則正しい寝息が1つ、2つと生まれ、闇は静寂が包まれた。
いつの間にか厚い雲は晴れ、2つの月が弱々しい光で地上を照らす。それは、静かな夜であった。
未来の大魔女候補2人 〜Judy & Louise〜
第10話 『王女と髭と魔女2人』
朝露に濡れた森の中に、粗末な小屋が存在していた。その小屋は、人の手で造られた物ではなく、ただ丸太を積み重ねただけの物であった。
地面には、柔らかい藁が敷かれ、その端の方には、水の張られた飼い葉桶が置かれている。そして、その小屋には、巨体を持つ何かが横たわっていた。
幾重にも木の枝を重ねて拵えられた天蓋の隙間から、眩しい朝日が降り注ぐ。
朝日は、巨大な何かにも平等に降り注ぎ、その姿を照らしている。
朝日に照らされるその姿は、蒼穹の鱗を持ち、鋭い牙と爪を持つ巨大な竜であった。巨大とはいっても、同族からしてみれば小柄なほうであり、まだ幼生であった。
その竜が、体に鼻先を埋め、丸くなって寝ているのだった。
薄っすらと朝靄がかかる森に、朝が来たと告げるように小鳥たちが囀る声が聞こえてくる。
竜の寝ている小屋の上にも、小鳥はとまり、囀っている。それに反応するかのように、竜はその巨体を身じろぎをし、痙攣するかのように目蓋が震えた。
「ふぁああぁーああぁ……」
竜は大口を開けて欠伸をする。開かれた口は、子供ならば丸呑み出来てしまう程に大きく、鋭く尖った牙が生え揃っていた。
竜は欠伸をしたままの恰好で動きを止める。五体を投げ出し、大きく口を広げるその格好はだらしがない。
そのままの体勢で少し待っていると、小屋の屋根にとまっていた小鳥たちが近寄って来た。
小鳥たちは鋭い牙の上にとまり、歯の隙間に挟まった食べかすをついばみ始めた。
小鳥たちは竜の餌になるという恐怖は感じておらず、竜もまた小鳥たちを餌とはみなしていない。
それは、お互いの利益がかみ合っているからだ。竜は歯の掃除をして貰い、小鳥は餌にありつける。見事な共生関係であった。
やがて歯の掃除が終わると、小鳥たちは飛び去って行く。
それを見送ると、竜は再び大きな欠伸をした。次いで、大きく伸びをして凝り固まった体を解きほぐす。
竜は飼い葉桶の水を一口飲んでから、小屋から顔を出した。陽光が直接降り注ぎ、目を細める。
「太陽さん、おはようなのね……」
竜はのんびりとした口調で、太陽を見詰めながらそう呟いた。
支援
通常、竜が喋ることはない。
人外の者が喋れる様になるには、メイジの使い魔になる事がまず初めに挙げられる。
この森が、トリステイン魔法学院の隣にある事を鑑みれば、竜は使い魔なのかもしれない。
だが、使い魔の契約で喋れる様に成れるのは、犬や猫に代表される長い間人の傍にいた種族だけである。
竜などという、人の身近にいなかった種族が使い魔になって喋れる様になる可能性など、微塵もない。
だが、人語を操るという竜が存在しなかったわけではない。
とうの昔に絶滅したと言われる韻竜は、人語を自在に操り、人と意思の疎通が可能だったという。
以上の事から、この竜は韻竜であり、それは間違いではない。
これで、韻竜は絶滅したという通説は覆されたわけである。しかし、その数が少ないのは事実であり、彼女も同族を見た事は、親を除いてはない。
彼女、つまりこの竜の事だが、の名前はシルフィード。
シルフィードとは、風の妖精の名前であり、彼女の本当の名前は別にある。だがしかし、彼女はこの名前を気に入っていた。
何故ならば、それは大好きなご主人様に付けてもらったものだからだ。
シルフィードが脳裏に思い浮かべるのは、蒼髪で年の割には小柄な体格の少女。暇さえあれば本を読み、何が起こっても感情を露わにすることはない少女。
無愛想で無口な少女だが、本当は優しい人間だという事を、シルフィードは本能で悟っていた。
召喚の門を潜り抜け、初めて会った瞬間からシルフィードは少女の事を気に入ってしまった。一目惚れと言っても良いだろう。
シルフィードの方が遥かに長い年月を生きているが、まるで姉が出来た様な気持ちになり、使い魔になって以降、姉と呼び慕っているのであった。
陽光に巨体を晒して、温まるのをじっと待つ。やがて、霞がかかったように朦朧としていた意識が覚醒していく。
目が覚めていく心地よい感覚に身を任せているシルフィードであったが、突如ある事に気が付き、慌ただしく周りを見渡した。
左右に首を振り、前と後ろを挙動不審気味に振り返る。そうして、周りに人がいないことを確認出来ると、安堵の溜息を吐き出した。
「ふぅ…… 焦ったのね。ついうっかり喋っちゃったのね。
あっ! また喋っちゃったのね! お口にチャックなのね」
シルフィードは、主人であるタバサによって人前で喋ることを禁じられていた。それは、無用な軋轢を生みださないための処置であり、面倒だったからではない。
喋っていいのは、上空3000メイル以上の場所だけと決められていた。
あたふたと慌てるシルフィードの耳が、ガサガサと木の枝が揺さぶられる音を捉える。慌てて見上げると、太い木の枝に赤い鱗の竜がとまっていた。
赤い竜は、シルフィードよりも小さく、1メイル半ほどしかない。
「オハヨウ、シルフィード」
「きゅい。おはようなのね、イアぺトス。
あっ! また喋っちゃったのね。早く空に行くのね」
挨拶をされて、つい人語を喋ってしまったシルフィードは、一目散に大空へ飛びあがった。それに一拍遅れて、イアぺトスが後に続く。
シルフィードは、イアぺトスの飛び上れる限界高度まで上昇すると、目を三角にして説教を始めた。
「きゅい! オマエ、何時になったら分かるのね!? 地上じゃ喋っちゃダメなのね!」
「ダイジョウブだよ。周りには誰もいなかったし、聞かれてないよ」
「そういう問題じゃないのね! こういうのは、普段からの心がけなのね。うっかり人前で喋って、解剖されても知らないのね!」
「そんな細かいこと気にするなんて、若さが足りないよ」
シルフィードが説教をしてイアぺトスが軽く受け流す。既に日課となったやり取りだ。
「きゅい!? もう怒ったのね。そこに居直るがいいのね!」
「アハハ シルフィが怒ったー」
蒼と赤の軌跡が絡み合いながら、大空を縦横無尽に翔ける。
2匹はお互いの周りを飛び回り、じゃれ合う。ぶつかり合う事なく位置を入れ替え、踊るかのように飛び回る。
無論、シルフィードは本気で怒っているわけではなく、スキンシップの一環だ。
暫く2匹は、大空での追いかけっこを楽しむ。
ふと、イアぺトスの動きが止まる。何かを見つけたらしく、地上を見下ろしている。
「あっ! サイト君だ。ここんとこ、毎朝走ってるよね?」
その呟きを聞いて視線を追うと、大剣を背負った黒髪の少年が学院の内周を走っている姿をシルフィードはその大きな双眸で捉えた。
サイトは両手に水桶を抱え、水を零さないように腰を落として走っている。
雑用係であるサイトは、毎朝忙しそうに仕事に励んでいる。だがそれとは別に、仕事が始まる前に走り込みをしているのをイアぺトスは知っていた。
しかし、シルフィードはそんな事には興味も湧かない。
「何が楽しくて、あんなことやってるのか分からないのね。きゅい。ご飯の時間さえ忘れなかったら、シルフィはそれで良いのね」
「シルフィは食いしん坊ね」
「何とでも言うがいいのね。今日はお魚の気分なのね。あの黒頭、今日も間違えないかしら?」
食い意地が張っていると笑われるシルフィードだが、そんな事に痛痒も感じていないようで、澄ました顔をしている。
そんなシルフィードの態度が可笑しいのか、更にイアぺトスはクスクスと笑う。
シルフィードは無言で、学院の方角へ滑空していく。
既に草原を覆っていた朝靄は晴れ、朝露に濡れた草が朝日を反射して輝いていた。学院にも生徒達の姿がちらほらと見え始め、活気が満ち始めてくるのを感じる。
朝の時間が動き出す。
「きゅい。もうすぐ朝ごはんの時間なのね」
「もうそんな時間? じゃあ、もう戻るね」
「一緒に行けばいいのね」
「ごめんね。戻らなきゃいけないの」
引き留めるシルフィードであったが、イアぺトスは本塔の影へと消えて行く。
追いかけるが、イアぺトスの飛行速度はシルフィードにも引けを取らぬものであり、そう簡単に追いつくことは出来ない。無論、最高速度は比べるべくもないが、一瞬でそこまで加速する事など出来はしない。
シルフィードは一足遅れて本塔の影に入るが、既にイアぺトスの姿は影も形もなかった。
1人残されたシルフィードは、憮然とした面持ちで呟く。
「きゅい。いっつもこうなのね。
たまには、一緒に御飯を食べればいいのに付き合いが悪いのね。
何時も何処でご飯食べてるのかしら? きゅいきゅい。」
毎度の事であったが、シルフィードは言わずにはいられない。食事時になると、何時もこうだ。
使い魔仲間にも聞いてみたが、イアぺトスが食事をしているのを見た事がある者はいなかった。
それどころか、姿を見る事も稀であり、誰の使い魔なのかも分からないというのだ。
流石のシルフィードも気に掛かり、直接訊ねた事があったが、はぐらかされるばかりで何一つ分かっていない。
「……あいつ、本当に韻竜なのね? なんだか違う様な気がするのね」
言葉には出来ない違和感を感じ、誰にも聞こえない小声でそう呟く。
その疑問に答える者が居るはずもなく、シルフィードは暖かい風を感じながら再び空へと昇っていった。
◆◇◆
学院の全生徒が正門前に整列していた。
その中には、当然ルイズの姿があり、その傍らにはジュディとキュルケ、そしてタバサの姿があった。
多くの生徒が緊張した面持ちをしているが、ちらほらと雑談をする声が聞こえてくる。その都度、監督役の教師が注意するのだが、それは一時的なものでしかなく、雑談が止むことはなかった。
そして、雑談をする者達の中には、ルイズ達も含まれていた。とは言っても、主に喋っているのはキュルケであり、返事をしているのはジュディくらいのものだ。
ルイズは頑なに返事をするのを拒み、タバサは相変わらず表情の読めない顔で本の世界に没頭している。決まり切った日常だ。
ジュディが学院に来てから、既に2週間が過ぎていた。その間、ロングビルに勉強を教えてもらったり、コルベールの実験の手伝いをしたりして、ジュディはルイズ達と日々を過ごしていた。
コルベールの実験は思うようには進んでいないらしく、未だに帰還するための手立ては見えてこない。だが、ジュディには待つより他はないのだ。
そうこうしていると、雑談がピタリと止んだ。正門から2台の馬車が入場してくる。
馬車を先導する騎馬隊は、白地に意匠化された金の百合の旗を掲げていた。それは、トリステイン王家の紋章である。
つまり本日は、王族が来校するという事で、学院の総力を挙げて歓迎をしているわけであった。
正門より厳かな雰囲気を引き連れて、まず入場して来たのは、4頭立ての白い馬車である。
その至る所には、貴金属がふんだんに使われたレリーフで飾られ、その中の1つ、ユニコーンと水晶の杖が組み合わさった紋章は、それが王女専用の馬車であると示していた。
王女の馬車を引くのは、ただの馬ではない。真っ白な毛並みを持ち、額には螺旋状に筋が入った長く鋭く尖った一本の角をそびえ立たせている。
それは、穢れを知らぬ乙女しかその背に乗せぬと言われるユニコーンであった。ユニコーンは乙女の純潔の証であり、それゆえに、王女の馬車を引く役割を果たすのに相応しいとされている。
後ろに続く馬車は、王女のソレと比べても遜色ない、いや、それ以上に立派な物であった。
それは、先王亡き後、政治を一手に引き受けているマザリーニ枢機卿の馬車である。乗っている馬車の風格の差が、今のトリステインの力関係を表しているのである。
そして、2台の馬車の四方には、王家直属の近衛隊-魔法衛士隊-が護衛に付いていた。
グリフォン、ヒポグリフ、マンティコアの名を冠する3隊から成る魔法衛士隊は、名門貴族の子弟、その中でも選りすぐりの者達で構成されていた。つまり、エリート中のエリートというわけだ。
彼等は、各隊を象徴する幻獣に騎乗しており、羨望の眼差しを集めている。
しかし、それ以上に注目を集めているのが、先ほどの王女の乗った馬車である。
馬車にある小窓には、純白のカーテンがかかっており、中の様子を窺う事は出来ない。しかし、それでも多くの生徒達は声高に王女の名を呼び、力の限り讃えるのであった。
やがて、馬車が本塔の玄関に横付けされる。玄関先で出迎えているのは、学院長であるオスマンだ。その後ろには、秘書のロングビルが控えている。
停止した馬車に召使が駆け寄ると、馬車から本塔にかけて赤絨毯が敷かれた。
馬車の傍らに立った若い衛士が、何度か咳払いをして声を整えると、声を張り上げて王女の登場を告げる。
「トリステイン王国王女、アンリエッタ姫殿下のおなーりぃ〜っ!!」
その声は緊張により、少し震えていた。
その緊張が伝わったのか、生徒達も息を潜め、王女の登場に身構える。
だが、その期待とは裏腹に、馬車から姿を現したのは、灰色のローブに身を包んだ痩せぎすの中年であった。
髪も髭も既に真っ白であり、指も骨ばっている。その風貌から、『鳥の骨』と揶揄されるマザリーニ枢機卿その人であった。
待ち望んだ王女で無かった事に、一同は一斉に深い溜息をついて、あからさまに落胆する。
一同の反応を見て分かるように、マザリーニの評判は余り高くなかった。その理由は、先王が崩御して以来、彼が内政と外政を担っているからに他ならない。
そのお陰で、一時期は国を乗っ取ろうとしているなどと囁かれていたものだ。
しかし、実情は違う。先王が亡くなって以来、喪に服し続ける王妃と、政治的知識に乏しい王女に代わって政治を引き受けているのであった。
内情を知っている者ならば、トリステインはマザリーニによって何とか存続していると理解していることだろう。
陰口を叩かれ、王家の代わりに政治的不満の的に成っている彼は、トリステイン一の忠臣なのかも知れない。
初のリアルタイム支援
馬車から降り立ったマザリーニは、自身に向けられる視線など意にも介さず周りを一瞥する。
そして、出口の傍らに寄り添うと、そこから降りてくる王女の手を取り、エスコートする。
姿を現した王女は、白いドレスを身を纏い、その上から紫のマントを羽織っていた。細身ながらも、ボリュームのある胸がそれを持ち上げ、存在を主張している。
先端に大きな水晶が付いた勺杖を片手に携えてた王女は、肩に掛かる程の明るい茶色の髪を揺らして馬車から降り立った。
そのアクアブルーの瞳と、形の良いピンクの花びらのような可憐な唇には微笑みを湛え、白魚の様な細腕を優雅に振って挨拶とする。
すると、生徒の間から、特に男子生徒からは、大きな歓声が上がった。
それに応えて、アンリエッタは微笑みを崩さず、生徒達を見渡しながら手を振り続ける。
「ふーん…… あれがトリステインの王女?
まあ、確かに綺麗だけど…… ふふん、あたしの方が美人ね!」
周囲が歓声に沸く中、キュルケは勝ち誇った様にそう言い捨てる。
それはひがみによるモノではなく、ただ純粋に、彼女が持つ容姿への絶対の自信と驕りから来るモノであった。
キュルケは余裕綽々と言った具合で軽く鼻で笑い、艶めかしくその肉感的な肢体を捩る。
「ねえ、ジュディもそう思うでしょ?」
「うーん…… どっちが美人かなんて比べられないよ。
でも、王女様って綺麗だね。私も大きくなったら、あんな風に、キュルケさんみたな美人になれるかなぁ?」
綺麗なドレスを着飾り、周囲に微笑みを振りまく王女の立ち姿は、まるで白百合のように儚く揺れ、ジュディの目を奪う。
美しく、柔和な微笑みを浮かべる王女の姿は、女の子の理想を体現した様なものであるのだろう。
対して、キュルケの妖しく艶っぽい雰囲気は、大人の女性を体現している。
そのどちらにもジュディには憧れを感じ、どちらが優れているかなど決められはしない。
微笑ましいモノを見るように、キュルケは目を細め、色っぽく微笑む。それは、同性でも思わず赤面してしまいそうな魅力を含んでいた。
「きっとなれるわよ。元は良いんですもの。今から磨いていけば、きっと美人になるわ」
「ほんとう? 私もおねえちゃんみたいになれるかな?」
「ジュディのお姉さんは美人なの?」
「うん。いろんな人から言い寄られてたみたいよ。でも、全然気が付いてなかったみたい」
「あらら…… 自分の武器に気が付いてないのは頂けないわね」
茶化すようにキュルケはそう言うと、異性の心を掴むレクチャーを始める。
「そうなんだけど、いま思い出してみると、もしかしたら演技だったのかも?
いっぱいプレゼントとか貰ってたみたいだし、それなのに誰かと付き合ってるようでもなかったから、ワザとやってたのかなぁ?」
思い返してみると、姉のマリーは気が付いていないようでも、思わせぶりな言動があったように思う。
そして、姉の姿をキュルケと重ねてみると、2人の間には何処か相通ずるものが有るようにジュディは感じていた。
「へぇー…… まあ、いいわ。
それよりも、今夜は『フリッグの舞踏会』よ。ジュディはちゃんと用意してる?」
感心した様な声で相槌を打つが、此処にいない人間の話にはあまり興味がないようで、話題は今夜の舞踏会の事に推移する。
フリッグの舞踏会とは、年に何度か行われる舞踏会の1つである。なんでも、この舞踏会で踊ったカップルは結ばれるという噂があり、毎年、悲喜交々の出来事が起こることでも有名であった。
学院で行われる舞踏会の中では、一番学生に楽しみにされているイベントである。勿論、待ち望んでいない者もいるが。
つまり、王女が来校しているのは、この舞踏会に招かれたからである。まさか、本当に来校してくれるとは、夢にも思わなかったオスマンであった。
「学院長先生がドレスを用意してくれてるって。でも、踊ったことなんてないのにダイジョウブかな?」
「まあ、雰囲気を味わえば、それで良いんじゃない?」
「それもそっか」
無理に踊る必要はないのだと納得する。
心配事が1つ減って気が楽になったジュディは、ルイズの方を見上げて朗らかに話しかける。
「ルイズさんは誰かと踊ったりするの?」
「…………」
だが、ルイズは前を向いたまま微動だにしない。
ジュディは小さくため息をついてから、ルイズの着ているマントの裾を軽く引っ張る。
無視をされて機嫌が悪くなったというわけではない。大抵こういう時は、何か悩み事に没頭しているのだと、ジュディは今までの経験から判断した。
得てして、悩み事というのは、1人で悩んでもどうしようもない事も知っていた。
故に、返事のない事などには構わず話し掛ける。
「ねえねえ、ルイズさんはダンス得意?」
「…………」
「んもうっ!」
何時にない手強さに、ジュディは軽く怒って見せる。強めにマントを引っ張ってみるが、反応は返ってこない。
何時もならば、ここまでやれば流石に気が付く筈なのだが、全く気が付いた様子はなく沈黙を保っている。
ジュディが片腕に飛びつこうかどうか迷っていると、見かねたキュルケが助け船を出した。
「ねえ、なんとか言いなさいよヴァリエール」
「…………」
キュルケが肩を揺さぶるが、ルイズは微動だにせず、視線すら向けようとはしない。
見れば、ルイズの頬は朱を帯びて熟れた桃のようだ。そして、切なく潤んだ瞳を一点に注いでいる。
しょうがなくルイズの視線を辿ると、その先には、鷲の頭と翼、そして獅子の体を持つ幻獣に跨った青年の姿があった。
グリフォンと呼ばれるその幻獣に乗った者は、他にも何名か居るが、彼の乗っている個体が一番体が大きく、立派な体格をしている。
青年は、立派な羽帽子と漆黒のマントを身に付けており、ルイズより10ほど年上のようだ。しかし、口周りと顔の輪郭に沿って生えている髭の所為で、実際の年齢よりも年嵩に見えてしまう。
そして、彼の羽織るマントには、翼を広げたグリフォンを意匠化した模様が施されており、彼が魔法衛士隊の1つ『グリフォン隊』に所属している事を表していた。
その青年は、凛々しい顔つきで周囲を警戒し、凛とした空気を生み出していた。
その威風堂々とした立ち振る舞いは、見る者を引きつける。それが女性ならば尚更だ。
「あ、あら。良い男じゃない」
「はぁ……」
キュルケですら青年に魅力を感じ、そう呟く。
青年を見詰めるルイズの頬は益々赤く染まり、恥じらう様な表情を覗かせて悩ましい溜息を吐く。
キュルケもそれ以上は何も言わず、彼女の二つ名に相応しい、微熱を帯びた視線を注ぐのみであった。
その青年は男女問わずに視線を集める。その種類も様々で、憧れ、羨望、嫉妬、…… そして、恋。
だが、身長が足りずに満足に視線を追えないジュディには、何が起きているのかが分からない。必死で背伸びをするが、全く足りていない。
やがて、背伸びをするのをやめたジュディは、言葉をなくした2人を見上げる。
「2人とも、どうしちゃったのかなぁ?」
「……何時もの病気。気にする事はない」
その疑問に答えるよう、タバサは静かに本を閉じて視線を合わせると、そう呟いた。
・
・
・
今回の成長。
ルイズは、立ち直りL1を破棄してナチュラルL2のスキルパネルを習得しました。
ジュディは、イアぺトスがL3に成長しました。
魔道板を読み解き、『スポイル』を習得しました。
第10話 -了-
第10話投下完了
そういえば、ルイズのセリフ殆どない…… ま、いっか。こんな事もあるよね。
次回は出来るだけ早めにお届けしたいと思います。
それでは、お休みなさい ノシ
誰もいない・・・
初投稿するなら今のうち・・・
Wild Arms XFより本編終了直後のフィアースが召喚されるようです。
問題がなければ、6時からスタートします。
――しかし、見ている人間はいるのだった。
よかろう。支援だ。
これで、全て終わりだ。
あの時から続いてきたアイツとの因縁も、異世界同士が食い合うこの異常も。そして、仲間たちと過ごしてきたこの旅も。
赤色灯とアラートの鳴り響く中、万感の叫びとともにジェネレーターの起爆スイッチに拳を叩き付けた。
つい先ほど地上に帰した、大切な家族である少女のことが頭をよぎる。
嘘つきになんかさせない―――――
その誓いを守ることは、恐らくできないだろう。
もちろん約束は守れるものなら守りたい。死にたくもないし、仲間達とももっと一緒に過ごしたい。なにより彼女と旅を続け、豊穣の地を見つけるというその夢を叶える手伝いをしたい。
とは言え、この直後に起こる爆発から生還する術など、一つとして思いつきもしなかった。
だが。
―――――お願い……ッ―――――
こんな時に、こんな場所で、見知らぬ少女の声が聞こえた。
泣きたい気持ちを隠しただ必死に呼びかける声。
その呼び声と爆発の衝撃とともに、視界が輝きに包まれた。
◇◆◇
「えぇ〜、これで全員ですかな?」
「いいえ、ミス・ヴァリエールがまだですわ。ミスタ・コルベール」
ぐっ、ツェルプストーめ。何もあんな馬鹿にしたような言い方しなくてもいいじゃない。
あぁ、勢いに任せてあんな啖呵切るんじゃなかったわ。昨夜も同じ後悔をしたけど。
でも召喚の儀式を成功させなければ退学。どっちにしてもやらざるを得ないのには変わりは無いわ。どうせなら気合が入っていた方が、いい使い魔を召喚できるでしょ。
人の輪の中に立つ。
周囲から「何度やってもできるわけない」とか「また爆発するだけだ」とヒソヒソ声が聞こえる……がいつものことだ。
もうそれにも少し慣れてしまったのが、自分でも嫌になる。
―――――お願い……ッ―――――
知らず、杖を握る手に力が入る。
一呼吸置いて気を落ち着け、そして詠うように語りかけるように詠唱する。
「世界の果てのどこかにいる、わたしの僕よ!神聖で、美しく、そして強力な使い魔よ!」
周りが馬鹿にしている気がするが、集中集中!
「わたしは心より求め、訴えるわ!我が導きに、答えなさいッ!」
言葉とともに、杖を振り下ろす。
一瞬の静寂。
これは!と思った直後、いつものように爆発が起きてしまった。ううん、いつもより心なしか爆発が大きい気がする。
周りからは「またかよ!?」とか「やっぱり爆発するのか!」と非難轟々。
しかし、舞い上がった土煙の中に何かがいるのが見えた。
土煙が段々と晴れていく。そこには……
ゼロの使い魔 × Wild Arms XF
約束は次元を超えて
第1章「終わりから始まる、新たな物語」
おはよう支援
支援
「今の光は……?」
爆発の物とは違う突然の輝きに思わず閉じた目を開いて見えた風景は、コックピットではなく抜けるような青空。
少し体を起こし辺りを見渡すと、ファルガイアではめったに見られないほどに緑豊かな平原や森や山々、そして古めかしい建物。
それと杖を持った少年少女。大人の姿も見えるがその姿はみな少し風変わりだ。
統一感のある服装は何かしらの制服を思い起こさせるが、それと同時にどことなくスペルキャスターのクラスも彷彿とさせる。
「あんた誰?」
問いかける声がする。彼らの中でも一番俺の近くにいる、ピンクがかったブロンドの少女からのようだ。整った風貌と少しだけきつく吊り上った瞳。年はクラリッサと同じくらいか、少し下か。
「俺は、フィアース。フィアース・アウィル」
「ふぅん、平民にしては気の利いた名前じゃない」
「ここはどこだ?俺はどうして生きている?」
俺はロンバルディアの爆発に巻き込まれたはずだ。奇跡的に死ななかったにしても、無傷というのはおかしい。
ふと見ると、目の前の少女が俺の言葉にイライラしているのが見て取れる。
「ルイズ!『サモン・サーヴァント』で平民を呼び出してどうするんだ!」
誰かの声とともに、笑いが巻き起こる。
「ちょ、ちょっと間違えただけよ!」
「間違えたってなんだよ!流石はゼロのルイズだ!」
少女の慌てた反論にも、すぐに反論が飛んでくる。と同時に周囲の人々の笑いが爆笑に変わる。
「ミスタ・コルベール!」
少女―――先ほどの野次からすると、ルイズ、というのが彼女の名か?―――が声をかけると、人ごみの中から少し年を取った男性が進み出てきた。
大きな木の杖、長めの黒いローブ。こちらは宮廷魔術師のような格好だ。
「なんだね?ミス・ヴァリエール」
「あの!もう一度召喚をさせてください!」
召喚、ということは、俺はこの少女に召喚されたのか。
あの爆発の瞬間に辺りが輝いたのは、この少女の魔法の影響だったということだろうか。
思考に沈む俺を余所に、二人の会話は続いていく。
「それはダメだ、ミス・ヴァリエール」
「どうしてですか!」
「それが決まりであり、伝統だからだ。召喚の儀で呼び出された『使い魔』によって属性を固定し、専門課程へと進む。これは神聖な儀式であり、例外は認められない」
ふと辺りを見回してみると、少年少女は火トカゲやらカエルやらといった、なるほど使い魔という言葉にふさわしい生物とともにいるのが見て取れる。
「でも!平民を使い魔にするなんて聞いたことがありません!」
その言葉に、またも周囲で笑いが起こる。
「ミス・ヴァリエール、もう一度いいます。例外は認められない、やり直しは無しです」
強い口調に、少女は肩を落とす。
「ですが」
だが、彼の話はまだ終わっていないようだった。
「確かに前例のない事態ではあります。どうやら意思疎通には問題が無いようですし、一度彼と話し合うのもいいでしょう。この後の授業は免除と
しますが、コントラクト・サーヴァントが成功したら私のところまで来るように」
「……はい」
不満そうな声ではあったが、少女は承諾の返事を返す。
「それでは、皆さんは教室に戻りましょう。ミス・ヴァリエールは、この後は自由行動とします」
その声で周囲の人だかりが動き始める。中には嘲笑や悪口を隠さない輩もいたが。
浮き上がり、空を飛んで建物へと戻っていく集団には驚いた。これがここの魔法の一端か。暴走後のカティナも宙に浮いた状態でいたが、人が浮
くのを見ることなどめったにない。
それを、悔しさを堪えながら唇を噛んだままうつむいてやり過ごす少女。
その姿に、あの瞬間の必死な声が思い出される。
間違いない、やはり俺は彼女によってこの世界に召喚されたようだ。
「あぁもう!なんであんたみたいな平民が呼び出されるのよ!?」
周囲の目も無くなり、苛立ちが限界に達したか。こらえきれなくなった様子で声を荒げる。
「まぁ仕方ないわ。先生もああ言ってることだし。付いてきなさい。部屋に戻るわ」
そういうと、少女は背を向けて勝手に歩き出した。
手元には愛用のポールアームは見当たらない、もちろんロンバルディアも無い。
あの瞬間、俺は身一つで呼び寄せられたらしい。装備していたガントレットといくつかのアイテムはちゃんと付いてきていたが。
見知らぬ世界で武器もなく一人きりというこの状況は正直心もとない。俺はおとなしく彼女の後について行くことにした。
重ねて支援
「で、あんた何?どこの平民?」
部屋に着き椅子に腰を下ろしすなり、彼女は唐突に訊いてきた。
「その前に、お前の名前はルイズでいいのか?」
「平民が貴族にお前なんて言うもんじゃないわ。ホントに一体どこの田舎者よ!?でも、そうよ。ルイズ・ド・ラ・ヴァリエール」
貴族に平民か。どうやら社会的には、貴族が平民を統治する形式であるらしい。その二つにも明確な線引きがあるようだ。
「分かった、すまない」
「で?」
三度目の問いかけ。いい加減イライラしているのがよく分かる。
「名前はさっき言ったな。俺はここではない別の世界……ファルガイアという世界からルイズに召喚されてきた」
「は?どこそれ?」
む、異世界という概念が無いのか?
「世界というのは、一つだけではない。世界は並列的複数に存在し、通常であればそれぞれが独立した形を保って形成され、完結している。信じられないかもしれないが、俺はここではない世界の住人だった」
「証拠は?嘘を吐いているようには見えないけど、信用できる根拠が無いわね。そもそもサモン・サーヴァントはハルケギニアのどこかから動物を呼び寄せて使い魔にする魔法よ?」
なるほど、確かに証拠無しでは信じられないか。何か証拠になりそうなものは。
そうだ、ARMを見せるのが丁度いいだろう。
俺は懐から、円盤のような形をしたソレを取り出し、見せる。
「何これ?」
「これはArtificial Reincarnate Medallion、通称ARM<アーム>という機械だ」
「機械?これが?」
どうやらこの世界は、機械文明はほとんど発達していないようだ。ルイズの反応もそうだが、機械らしいものがほとんど見当たらなかったことからも推測できる。
「これにクラスを記録し、それを所有者に展開することでさまざまな戦闘方法を身につけることができる、一種の武器のようなものだ」
「てことは、何?それさえあればどんな武器でも使いこなせるようになるってこと?」
「勿論、所有していないクラスには対応しかねるが、まぁ大体はそういうことだ。剣や手斧での近接戦闘であればウォーヘッド、魔法戦ならスペルキャスターといった……」
「ちょっと待って!魔法!?あなた魔法が使えるの!?」
今までのルイズからは少し違う、焦ったような声が紡がれる。
「魔法が使えるってことは、あなた貴族なの!?」
「ここでは、魔法が使える人間が貴族なのか?」
「そうよ。貴族は魔法をもってその精神となす。魔法によって平民にはできない仕事をこなし、また統治することが貴族の仕事よ」
なるほど、機械文明が発達していないのはその辺に鍵がありそうだ。できることできないことがある限り、平民が貴族を脅かすことはできないだろう。
だが、スペルキャスターのクラスというのは少し違う。
「ARMに記録されているのはあくまで戦闘方法でありその技術だけだ。それに、俺はこの世界の出身ではないからその貴族には当てはまらないのではないか?貴族とは血によって受け継がれるものだろう?」
「そう……そうよ、ね。ちょっと動転しちゃったわ。でも、まだ信用したわけじゃないからね」
「何故だ?」
「だってそれ、ARMだっけ?それ使って見せてもらってないもの。効果が実証できなければ、できの悪い作り話と変わらないわよ。そうじゃない?」
確かに、もっともだ。
「ではARMを使うところを見せればいいのか」
「そうね。そうすればさっきあなたが言ったこと、とりあえず信じてあげる」
さて、どうしたものか。クラスチェンジしても外見が変わるわけでもなし、使いましただけでは信じてくれないだろう。
続けて支援
「そうだな、ではどこか証明のできる場所へ移動したいのだが」
「何で?」
「クラスチェンジでは外見は変わらない。能力の変化を見せるには実演して見せるのが一番だろうが、エレメントを室内で使うのはよくないだろう」
「なるほどね。わかったわ、ついてきなさい」
そういうと、ルイズは部屋を出る。
「とりあえず、その魔法を見せてみなさい。見た感じは平民のあなたが魔法を使えれば信じてあげるわ。武器なんかは使い慣れてそうだから判断できないし」
そう言いながら、歩いてきたのは最初に俺が召喚された、召喚の儀式を行っていた平原だ。
「ここならいいでしょう」
「あぁ。では……アクセス!」
ARMを握り締め、スペルキャスターのクラスを展開する。瞬間、周囲から光が集まり俺の体を覆う。見慣れたクラスチェンジの瞬間だ。
「何!?急に光が」
「これがクラスチェンジ、スペルキャスターのクラスを展開したところだ」
「ふ、ふぅん、本当に外見は変わらないのね。で、魔法は?」
「ではあの石に。ファイア!」
術式を展開。と同時に、小石を中心として炎が勢いよく燃え上がる。
「ほ、他にも使えるの?」
「では、フリーズ!」
今度は氷柱が立ち上がる。
「他にも土属性のクラッシュ、風属性のヴォルテックがあるが」
「わかった、わかったわ。なによそれ、杖も無しに、しかも四属性全て使えるなんて反則じゃない!」
憤慨している様子のルイズに、どうしたものかと考える。
「だが多様性は無い。今見せた通り、攻撃にしか使えない術式だからな」
納得はしてないだろうが、効果は実証して見せた。これでARMのことは信じてもらえるだろう。
「ね。もしかしてそのARMを使えば、誰でもそんなことができるの?」
「個人の脳波への調整が必要だから、これ自体を誰か別の人が使うことはできない。だがファルガイアではARMを購入さえすれば誰でも使用は可能だ。
あとはクラスさえシェアリングしていれば……もっとも、今のスペルキャスターは基本クラスだから、ARMに初期状態で登録されてあるのだが」
その説明に、なぜか落胆の色を隠せないルイズ。
「……?どうかしたのか?」
「な、何でも無いわよ。とりあえずそのARMの能力と、あなたが別の世界から来たって話、信じてあげるとするわ」
あからさまに何かを隠しているのが分かる。が、詮索するのもよくないだろう。人には言えないことだってある。
「あと、その魔法は他の人には見せないようにしなさい」
「何故だ?」
「杖も使わずに魔法を使うなんて、メイジには不可能だからよ。魔物とか、ヘタをすればエルフと間違えられたり、そうじゃなくてもアカデミーでモルモットにされかねないわよ」
それは流石に困るな。
「わかった、気をつける」
「じゃ、とりあえずわたしの部屋へ戻るわよ」
「では、今度はこちらから質問させて欲しい」
部屋についてルイズが腰を下ろしたところで、今度は俺が切り出す。
「何?」
「この世界のことと、使い魔の仕事についてだ」
「わかったわ」
ルイズは、ここがハルケギニア大陸のトリステイン王国であること、貴族と平民がいて魔法を扱い平民を統治するのが貴族であること。
そしてここがその貴族の子女が集まって魔法とともに貴族としての振る舞いを勉強するトリステイン魔法学院であることを語った。
「他には国は無いのか?」
「もちろんあるわよ。始祖を祀る教会を司るロマリア、空に浮かぶ白の国アルビオン、軍事力も強い魔法大国ガリア、それに隣国の帝政ゲルマニア」
ふむ。表情から見るに、最後のゲルマニアという国への言及に躊躇いがあったのは、個人的な感情か?
それに、空に浮かぶ国というのは一体どういうことだ?まさか国土ごと浮いているわけではあるまい。大方、空軍が強い国といったところか。
「とりあえずこの国の周辺ではそのくらいね。他にも細々とした国もあるし、はるか東方にはロバ・アル・カリイエなんてのもあるって聞くけど」
「わかった。次は」
「使い魔の仕事ね」
そう言って、ルイズは使い魔の役割について話し出した。
曰く、主人の目や耳となり主人を助けること。曰く、主人に代わって秘薬やその材料を見つけてくること。曰く、その力を以って主人を守ること。
「まだ契約してないから、感覚の共有とかについては何も言えないから置いておくとして。秘薬とかのことって分かる?」
「む……そうだな、ここでどんなものが薬の原料となるのか知らないが、あまり期待しないでくれ。多少の知識はあっても、実際に採取できるかど
うかについては疑問だ」
「でしょうね」
はぁ、とため息一つ。
「まぁいいわ。人間の使い魔なんだから、それはあまり期待してなかったし……それに、護衛なら大して問題はなさそうだし。幻獣相手になるとさすがに心もとないけど」
「そうだな、確かに会った事の無いような相手ならどうなるかは分からないが、全力を尽くそう。ところで、もう一つだけ質問を付け加えさせてくれないか?」
「まだあるの?何よ?」
ふと浮かんだ疑問。それは
「使い魔の契約とは、いつからいつまでの効果なんだ?」
「契約してから、主人か使い魔が死ぬまでよ」
死ぬまで?
「途中で契約を破棄することは?」
「不可能よ。前例も無いわ」
それは困る。俺はクラリッサに、必ず戻ると約束をした。死んでしまったならともかく、生きている限りはその約束を果たすべく行動したい。
難しいかもしれないが、説得してみるしかないか。
「ルイズ」
「何よ?」
呼びかけに何かを感じたのか、不機嫌な受け答えが返ってくる。
「少し、話を聞いてくれないか」