リリカルなのはクロスSSその82

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1名無しさん@お腹いっぱい。
ここはリリカルなのはのクロスオーバーSSスレです。
型月作品関連のクロスは同じ板の、ガンダムSEEDシリーズ関係のクロスは新シャア板の専用スレにお願いします。
オリネタ、エロパロはエロパロ板の専用スレの方でお願いします。
このスレはsage進行です。
【メル欄にsageと入れてください】
荒らし、煽り等はスルーしてください。
ゲット・雑談は自重の方向で。
次スレは>>975を踏んだ方、もしくは475kbyteを超えたのを確認した方が立ててください。

前スレ
リリカルなのはクロスSSその81
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1225016934/

規制されていたり、投下途中でさるさんを食らってしまった場合はこちらに
本スレに書き込めない職人のための代理投稿依頼スレ
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/anime/6053/1199025483/

投下直後以外や規制されている場合の感想はこちらに
全力全開で職人を応援するスレ(こちらは避難所になります)
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/anime/6053/1214480514/

*雑談はこちらでお願いします
リリカルなのはウロス雑談スレ46
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/anime/6053/1224073741

まとめサイト
ttp://www38.atwiki.jp/nanohass/

避難所
ttp://jbbs.livedoor.jp/anime/6053/

NanohaWiki
ttp://nanoha.julynet.jp/

R&Rの【リリカルなのはStrikerS各種データ部屋】
ttp://asagi-s.sakura.ne.jp/index.html
2名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/07(金) 18:24:29 ID:afBWeOv0
【書き手の方々ヘ】
・作品投下時はコテトリ推奨。トリップは「名前#任意の文字列」で付きます。
・レスは60行、1行につき全角128文字まで。
・一度に書き込めるのは4096Byts、全角だと2048文字分。
・先頭行が改行だけで22行を超えると、投下した文章がエラー無しに削除されます。空白だけでも入れて下さい。
・専用ブラウザなら文字数、行数表示機能付きです。推奨。
・専用ブラウザはこちらのリンクからどうぞ
・ギコナビ(フリーソフト)
  ttp://gikonavi.sourceforge.jp/top.html
・Jane Style(フリーソフト)
  ttp://janestyle.s11.xrea.com/
・投下時以外のコテトリでの発言は自己責任で、当局は一切の関与を致しません 。
・投下の際には予約を確認してダブルブッキングなどの問題が無いかどうかを前もって確認する事。
・作品の投下は前の投下作品の感想レスが一通り終わった後にしてください。
 前の作品投下終了から30分以上が目安です。

【読み手の方々ヘ】
・リアルタイム投下に遭遇したら、支援レスで援護しよう。
・投下直後以外の感想は応援スレ、もしくはまとめwikiのweb拍手へどうぞ。
・気に入らない作品・職人はスルーしよう。そのためのNG機能です。
・度を過ぎた展開予測・要望レスは控えましょう。
・過度の本編叩きはご法度なの。口で言って分からない人は悪魔らしいやり方で分かってもらうの。

【注意】
・運営に関する案が出た場合皆積極的に議論に参加しましょう。雑談で流すのはもってのほか。
 議論が起こった際には必ず誘導があり、意見がまとまったらその旨の告知があるので、
 皆さま是非ご参加ください。
・書き込みの際、とくにコテハンを付けての発言の際には、この場が衆目の前に在ることを自覚しましょう。
・youtubeやニコ動に代表される動画投稿サイトに嫌悪感を持つ方は多数いらっしゃいます。
 著作権を侵害する動画もあり、スレが荒れる元になるのでリンクは止めましょう。
・盗作は卑劣な犯罪行為であり。物書きとして当然超えてはならぬ一線です。一切を固く禁じます。
 いかなるソースからであっても、文章を無断でそのままコピーすることは盗作に当たります。
・盗作者は言わずもがな、盗作を助長・許容する類の発言もまた、断固としてこれを禁じます。
・盗作ではないかと証拠もなく無責任に疑う発言は、盗作と同じく罪深い行為です。
 追及する際は必ず該当部分を併記して、誰もが納得する発言を心掛けてください。
3名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/07(金) 18:25:30 ID:afBWeOv0
【警告】
・以下のコテは下記の問題行動のためスレの総意により追放が確定しました。

【作者】スーパーロボット大戦X ◆ByQOpSwBoI
【問題の作品】「スーパーロボット大戦X」「スーパーロボット大戦E」「魔法少女(チェンジ!!)リリカルなのはA'S 次元世界最後の日」
【問題行為】盗作及び誠意の見られない謝罪

【作者】StS+ライダー ◆W2/fRICvcs
【問題の作品】なのはStS+仮面ライダー(第2部) 
【問題行為】Wikipediaからの無断盗用

【作者】リリカルスクライド ◆etxgK549B2
【問題行動】盗作擁護発言
【問題行為】盗作の擁護(と見られる発言)及び、その後の自作削除の願いの乱用

【作者】はぴねす!
【問題の作品】はぴねす!
【問題行為】外部サイトからの盗作

【作者】リリカラー劇場=リリカル剣心=リリカルBsts=ビーストなのは
【問題の作品】魔法少女リリカルなのはFullcolor'S
         リリカルなのはBeastStrikerS
         ビーストなのは
         魔法少女リリカルなのはStrikerS−時空剣客浪漫譚−
【問題行為】盗作、該当作品の外部サイト投稿及び誠意のない謝罪(リリカラー劇場)
       追放処分後の別名義での投稿(Bsts)(ビーストなのは)
4名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/07(金) 21:57:36 ID:x4Tq2HNr
スレ建て乙!
5名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/07(金) 22:16:29 ID:DkpUu9X9
スターライト乙。
6THE OPERATION LYRICAL:2008/11/07(金) 23:45:13 ID:BuruDI2l
<<こちらオメガ11、スレ立て乙! で、いきなりなんだが
THE OPERATION LYRICAL最終話を2430に投下したい。可能ならば支援頼む!>>
7名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/08(土) 00:00:10 ID:xKK085FN
OK! 支援を開始する
8名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/08(土) 00:01:23 ID:ZEIkmW00
支援
9THE OPERATION LYRICAL:2008/11/08(土) 00:30:38 ID:+TQ9FdkY
<<では、最終話を投下する。
どうか心あらば、あなた方の持てる道具を持って、支援して欲しい>>

「行ってしまったな……」
「行ってしまったッスねー」
管理局管轄の更生施設、その隊舎のベランダで、二人の少女――ノーヴェとウェンディが、空を昇っていく次元航行艦を眺めていた。
結局、黄色の13は彼女たちの元に帰ってこなかった。はっきりと戦死と伝えればいいものを、更生組で一番年長のチンクは「魂だけが元の世界に帰ったんだ」と言っていた。
悲しみはあったか、と聞かれれば、そうだと彼女たちは答えるだろう。あの一見無愛想な――しかし不器用な優しさを持った、凄腕のエースパイロットにして彼女たちの教官
は、もうこの世にはいないのだ。
だが、それでいつまでも泣いている訳には行かない。彼は、未来を自分たちに託したのだから。
「おーい、二人ともー」
その時、後ろから声をかけられて、二人は振り返る。そこにいたのは同じく更生組のセイン、その後ろに何か大きな布を抱えたオットーとディード。
いったい何事だろうとノーヴェとウェンディは首を傾げたが、セインがにやりと笑い、オットーとディードが布を広げたところで、表情が一変する。
「あ、これは……っ」
「13の乗ってた戦闘機ッスか?」
「そーゆーこと」
布には、あの主翼や垂直尾翼の先端を黄色で彩ったSu-37、彼の愛機が描かれていた。しっかり機首にも黄色で「13」の文字がある。
そういえば、チンクが「更生組で旗を作ろう」とか言っていた。いわゆる隊旗だ。その旗の下に、自分たちは生きていこうと。
黄色の13は死んだ。だが、その魂は確かに受け継がれた。
後に管理局地上本部に、彼女たちを中核にした新生黄色中隊なる新部隊が創設されることになるが――それはまた、別の話である。
10THE OPERATION LYRICAL:2008/11/08(土) 00:33:23 ID:+TQ9FdkY
投下の順番間違えた(汗)

ACE COMBAT04 THE OPERATION LYRICAL


エピローグ THE OPERATION LYRICAL


頭上を、轟音が駆け抜けていった。
何だろうと思ってベルツが視線を上げると、地上本部戦闘機隊の主な面子――スカイキッド、ウィンドホバー、アヴァランチたちの乗った戦闘機が、眩い蒼空を駆け抜けてい
くのが見えた。
「……あぁ、"リボン付き"の見送りですね」
同じようにその光景を眺めていた部下の陸曹、ソープが呟いた。
そういえば今日だったか、とベルツは記憶を掘り起こし、最近のスケジュールを思い出す。確かに、"リボン付き"が元の世界に帰るのが今日だと言う連絡があったように思う。
あとで聞いた話だが、彼は自分と同じ世界出身だったらしい。それも同じISAF、陸軍と空軍と言う違いこそあるが、ユージア大陸で共に戦った仲なのだ。
「――二尉、よかったんですか?」
その辺の事情を察してか、ソープがベルツに問う。元はと言えば彼も次元漂流者、"リボン付き"の世界が見つかった時点で、帰ろうと思えば帰れなくはないはずなのだ。
しかし、ベルツは首を横に振った。
「俺は向こうじゃとっくに戦死扱いのはずだ、クラウンビーチで狙撃兵に撃たれたってな。今更戻りたいとは思わないし――」
言葉を途中で区切り、ベルツは視線を空から離し、今度は地面に向けた。
彼らのいる再建中の地上本部からは、クラナガン市街地が見えた。そこでは多くの人々が、未だ各地に残る戦火の傷跡にもめげず、復興と発展に力を注いでいた。
「……俺は、自分が命がけで守ったこの土地で生きたい。そのためにも地上本部を再建しなければならん。ソープ、悪いが付き合ってくれるか」
「はいはい、二尉の頼みならしょうがないですね」
頭をぽりぽりと掻いて、しかしソープは少し嬉しそうな表情。
ベルツはそんな部下と笑みを交わし、もう一度、自分たちが命がけで取り戻し、そして守り抜いた土地を見た。
――いいや、違う。俺たちだけじゃない。命を捨ててまで、この土地を守ろうとした、世界の秩序を守ろうとした男がいた。俺たちはそれを決して忘れない。だから、彼の意
思は俺たちが引き継ぐんだ。陸や海だの、縄張り争いをやってる場合じゃない。
ちょうどその時、風が吹き抜けた。久しぶりに感じた、暖かい春の風。
厳しい冬は、もう終わろうとしていた。

「行ってしまったな……」
「行ってしまったッスねー」
管理局管轄の更生施設、その隊舎のベランダで、二人の少女――ノーヴェとウェンディが、空を昇っていく次元航行艦を眺めていた。
結局、黄色の13は彼女たちの元に帰ってこなかった。はっきりと戦死と伝えればいいものを、更生組で一番年長のチンクは「魂だけが元の世界に帰ったんだ」と言っていた。
悲しみはあったか、と聞かれれば、そうだと彼女たちは答えるだろう。あの一見無愛想な――しかし不器用な優しさを持った、凄腕のエースパイロットにして彼女たちの教官
は、もうこの世にはいないのだ。
だが、それでいつまでも泣いている訳には行かない。彼は、未来を自分たちに託したのだから。
「おーい、二人ともー」
その時、後ろから声をかけられて、二人は振り返る。そこにいたのは同じく更生組のセイン、その後ろに何か大きな布を抱えたオットーとディード。
いったい何事だろうとノーヴェとウェンディは首を傾げたが、セインがにやりと笑い、オットーとディードが布を広げたところで、表情が一変する。
「あ、これは……っ」
「13の乗ってた戦闘機ッスか?」
「そーゆーこと」
布には、あの主翼や垂直尾翼の先端を黄色で彩ったSu-37、彼の愛機が描かれていた。しっかり機首にも黄色で「13」の文字がある。
そういえば、チンクが「更生組で旗を作ろう」とか言っていた。いわゆる隊旗だ。その旗の下に、自分たちは生きていこうと。
黄色の13は死んだ。だが、その魂は確かに受け継がれた。
後に管理局地上本部に、彼女たちを中核にした新生黄色中隊なる新部隊が創設されることになるが――それはまた、別の話である。
11名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/08(土) 00:33:32 ID:9pGrlgVD
支援砲撃します!
12名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/08(土) 00:36:10 ID:E/xCncPc
支援させていただく フォックス2!
13THE OPERATION LYRICAL:2008/11/08(土) 00:36:28 ID:+TQ9FdkY
次元航行航空母艦"アースラ"の格納庫。
振り返れば、長いようで短い日々だった。
メガリス攻略戦で損傷した愛機F-22の修理には数ヶ月を要したが、それも終わった。
これで、ユージア大陸に帰れる――そういう喜びの感情は、不思議と湧いてこなかった。
否、きっと心のどこかでは喜んでいるだろう。だが、それを心の底から歓迎していないのもまた事実だ。
何故だろうなと物思いにふけりながら、メビウス1はF-22のコクピットに潜り込み、最後の点検を行っていた。整備員たちを信用していない訳ではないが、やはり最後、自分
でやっておきたかった。
「最後、か……」
整備マニュアルにちらちら目配りしながら点検を行っていた手を動きを止めて、彼はふと呟く。
本当に、これがもう最後になるのかもしれないのだ。

ほんの数日前になって、はやてから聞かされた話である。
「実は……メビウスさん、ちょっと問題があって」
「問題? どんな?」
怪訝な表情を浮かべるメビウス1に、いかにもはやては歯切れが悪そうに切り出した。
「メビウスさんを元の世界に送るのは、簡単なことや。けど、問題はその先。メビウスさんの世界とこのミッドチルダ、本来なら絶対に行き来することは出来ん、非常に強力
な次元の"壁"があったんや。けど、何らかの原因でこの壁に穴が開いた。だからメビウスさんはこっちの世界にやって来れた訳で。んで、その穴がもうすぐ無くなろうとして
いて……」
「――分かった、要するに?」
このまま話を続けさせると長くなりそうなので、メビウス1ははやてに結論だけ言うよう伝えた。
はやてはわずかな逡巡の後、やがて意を決したかのように口を開く。
「ええと、まあ要するにやな……たぶんもう、こっちの世界には来れなくなるってことや」

その言葉を聞いた時、メビウス1は自分の心の中に動揺があったのを見逃さなかった。
だからだろう、ユージア大陸に戻れることに、素直に喜べないのは。
だったら帰らなければいい――そういう選択肢も確かにあった。だが、よりにもよって管理局の観測によれば、ユージア大陸ではまた何か戦争と思しきものが起きているらし
い。自身の故郷が、また戦火に晒されている。放って置く訳には、いかなかった。
だが戻ってどうするのだ。出来ることはたかが知れてる、戦闘機乗りとして精一杯戦うだけ。
そう思うと、またスカリエッティに言われた言葉が脳裏に蘇ってくる。所詮俺は「人殺し」と。
その通り、俺は人殺しだ――しかし、今ならメビウス1ははっきりと言える。殺した分だけ、救った命もある。それは、誇りに思っていいはずだ。
「――メビウス1、そろそろ時間です。ブリーフィングルームに」
点検のために開きっぱなしにしていた通信回線に、六課の副官兼メビウス1の管制官を務めるグリフィスの声が入ってきた。すぐに行く、と伝えてメビウス1はコクピットか
ら降り、後を整備員たちに任せてブリーフィングルームに向かうことにした。
14THE OPERATION LYRICAL:2008/11/08(土) 00:39:45 ID:+TQ9FdkY
ブリーフィングルームに入ると、はやてを始めとした六課の主要メンバー全員がすでに揃っていた。どうやら遅刻してしまったらしい。そのぐらい、ティアナが何か文句を言
いたげな視線を向けてくるから分かる。正直胸に痛いのでやめて欲しいのだが。
「……すまん、遅れた」
「別に構いませんよ。この時間にブリーフィングルームに集合ってあたしはちゃんと伝えたんですけどね」
むすっとした表情を浮かべるティアナに、メビウス1は再度「すまんすまん」と謝る。
「まあまあ、ティアナもその辺にしておいて。メビウスさんも早く座ってください」
ティアナとは対照的に柔和な笑みを浮かべ、メビウス1に席に着くよう促すのはなのは。メビウス1は言われるがまま、開いている席に座る。ティアナが一瞬なのはを睨んだ
ような気がしたが、きっと気のせいだろう、たぶん。
そんな光景を見て、一人ひっそりと冷や汗をかいていたはやてがわざとらしく咳払いし、ブリーフィングを始めた。
「ごほんっ……ええかな、ブリーフィング始めるで? じゃあゴーストアイ、いつものようにお願いします」
「了解した」
はやてに言われて、地上本部所属の空中管制担当のゴーストアイが端末を操作する。
「さて、今更多くを語る必要はあるまい。現在、本艦"アースラ"は特別演習空域"円卓"へ向けて航行中である。"円卓"に到着後、本艦が前方に転送用ゲートを設置する。その
後、スターズ1が砲撃魔法で転送用ゲートにショックを与える。通常の転送魔法では、メビウス1の元の世界には繋がらない。そこで、意図的に次元に乱れを起こすことで、
転送用ゲートと彼の元の世界を強引に"接続"する……」
ゴーストアイの解説を追う形で、ブリーフィングルームの大型モニターに、かつて地上本部と本局の合同演習が行われた地、"円卓"が表示される。続いて転送用ゲートの位置
とスターズ1、すなわちなのはの砲撃魔法のタイミングが表示されていく。
「接続できる時間は推定わずか十五秒や。メビウスさんは事前に発艦しておいて、準備が整ったらゲートに飛び込んでもらう……ええかな?」
はやてがメビウス1に確認するように問う。彼は当然頷いた。ブリーフィングと言っても出発前に一度、概要の解説は行っているので、今回は確認の意味を込めて行っている
ようなものだ。
「まあ、それはいいとして……この、作戦名はなんだい、オペレーション・リリカルって。呪文か?」
大型モニター右上に表示された今回の作戦名について、素朴な疑問を抱いたメビウス1が口を開く。問いに答えたのははやてでも無ければゴーストアイでも無く、隣に座って
いたなのはだった。
「あ、それ、私の魔法の詠唱に使う奴なんです。なんとなく語呂がいいかなって思ってこんな作戦名にしたんですけど」
なるほど、確かに今回なのはは重要なポジションに立たされている。彼女が作戦名を決めるのは、そう不思議ではない。
「ふむ、オペレーション・リリカルね……悪くないんじゃないか」
微笑を浮かべて、メビウス1は納得した表情を見せた。
その後、わずかに通信で使用する周波数など細かい規定をゴーストアイが解説し、ブリーフィングは解散となった。
あとは時間が来るのを――"アースラ"が"円卓"に到着するのを待つのみ。

そうして、その時は来てしまった。
メビウス1は最後に自身の装具を点検。いつもの飛行服、耐Gスーツ、サヴァイバル・ジャケット、ヘルメットに酸素マスク。あとは私物の類だが、これはF-22のウエポン・ベ
イの中に放り込んである。それと、脇に抱えるのはリボンのマークが入ったフライトジャケット。
「ハンカチ持った、財布も持った、トイレにも行った……」
言ってみて、彼は思わず苦笑い。これではまるで幼稚園の遠足ではないか。黄色の13がこの場にいたらきっと笑うか呆れるに違いない。
「おっと、そうだった」
サヴァイバル・ジャケットのファスナーを下ろし、飛行服の胸ポケットに手を突っ込む。メガリス攻略戦の前、黄色の13から預かった手紙は確かにそこにあった。
――13、必ず届けるからな。
胸のうちでひっそりと呟き、メビウス1はファスナーを上げ、格納庫へと歩き出す。
一歩一歩、しっかりと床の感触を確かめ、呼吸にすら神経を研ぎ澄ましながら歩く。ミッドチルダの空気は、ユージア大陸に比べてずっと綺麗だったように思えた。
格納庫に到着し、扉を抜ける――彼を出迎えたのは、いくつもの拍手だった。
「……っ」
分かってはいた。分かってはいたが。当直のものを除いて、"アースラ"の乗組員、そして六課の面々までもがこうして自分の見送りをやってくれる現場に直面してしまうと、
あっという間に彼の涙腺は脆くなってしまった。
15名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/08(土) 00:42:41 ID:bWGOLFAw
最後の花道だ、支援
16THE OPERATION LYRICAL:2008/11/08(土) 00:42:45 ID:+TQ9FdkY
地上本部と本局の者が入り混じった整備員たち、"アースラ"の乗組員、はやて、フェイト、シグナム、ヴィータ、スバル、エリオ、キャロ、ヴァイスたち。一人一人に敬礼と
別れの言葉を交わしながら、メビウス1は進んでいく。
「いっちゃうの、メビウスおじさん……?」
途中、幼い少女の涙声が聞こえたので視線を下げてみると、ヴィヴィオが涙と鼻水で顔をくしゃくしゃにしながら、こちらを見つめていた。
とりあえず"おじさん"はどうにかして欲しいかな、とメビウス1は苦笑いしながら腰を屈め、彼女の頭を優しく撫でてやった。
「ごめんな。向こうにも、大事な仲間がたくさんいるんだ」
「ヴィヴィオ、もっと……ひっく、ヴィヴィオ、もっとメビウスおじさんとお話したかった。ハーモニカ吹いて欲しかった……」
みっともなく鼻水をすするヴィヴィオに、しかしメビウス1は力強く、言ってみせた。
「――終わったら、また会いに来るさ。それまでヴィヴィオ、ママの言うことをよく聞くんだ」
「……頑張る」
「いい子だ」
泣き止むのをやめず、それでもヴィヴィオはしっかり頷いてくれた。最後にもう一度だけ頭を撫でてやって、メビウス1は歩みを進めた。
「……あっ」
ところが、次に出会った人物と目が合って、彼は気まずい表情を浮かべた。先ほどまでむすっとした表情を浮かべていたティアナが、そこにいた。
ついつい彼の右足は勝手に後退しようするが、それを見たティアナがいきなりため息を吐いた。
「――もう怒ってませんから。人をそんな目で見ないでください」
「あ、あぁ……すまない」
ひとまず謝り、しばしの沈黙。その間周囲の視線が自分たちに集中していることなど、メビウス1は知る由もない。
「……あのっ」
「あ、そうだ」
ようやくティアナが口を開くが、それを遮る形で彼は思い出したかのように、脇に抱えていたフライトジャケットをティアナに差し出す。
「やるよ。次に会う時は、それが似合うくらいになっておけ。お前さんなら出来る」
「え……?」
戸惑いながらも、ティアナは彼の差し出したフライトジャケットを受け取った。
リボンのマークが入った、フライトジャケット。正式な管理局員ではないため、制服代わりに彼がいつも着ていたもの。すなわち――エースの、証。
その意味を理解した時、ティアナは急がなければ、と顔を上げた。でないと、彼はもう行ってしまう。
だが、時間は無常だった。格納庫内に響き渡る艦内放送で、"アースラ"がいよいよ"円卓"に到着したことが知らされた。
「っと、時間か……じゃあな。また会おう、ティアナ」
最後に彼なりの親しみを込めてか、メビウス1はティアナをファーストネームで呼び、駐機されているF-22に向かっていった。
ティアナは呼び止めようとしたが、彼がコクピットに入ったのを見て、もう声は届かないことを悟った。
手元に残ったのは、まだわずかに彼の体温が残るフライトジャケットだけ。
「ティア……」
「――ごめん、ちょっとほっといて」
スバルが心配そうに声をかけてくれたが、彼女は一人格納庫の片隅に向かって歩き、フライトジャケットに自分の顔を押し当てて、泣いた。
誰に知られることもなく、ひっそりと声を押し殺して。そうでなくともF-22のF119エンジンが起動し、わずかに漏れる嗚咽はジェットの轟音の前にかき消されていった。
「……馬鹿!」
かろうじて、ティアナの口から零れた言葉は、ただそれだけだった。
17THE OPERATION LYRICAL:2008/11/08(土) 00:45:46 ID:+TQ9FdkY
"アースラ"から発艦したメビウス1は、F-22のAPG-77レーダーに反応があることに気付く。識別コードを確認してみると、地上本部戦闘機隊の連中だった。
「こちらアヴァランチ。見送りに来てやったぞ、メビウス1」
「ウィンドホバーよりメビウス1。寂しくなるが、仕方がないな。向こうでも元気でな」
「スカイキッドだ。また遊びにでも来てくれ」
「……ああ、お前らも達者でな」
周囲を囲むようにして飛ぶF/A-18FとF-16C、Mir-200にメビウス1はF-22の主翼を左右に揺らす、いわゆるバンクで応えた。
再びレーダーに反応があるのでレーダー画面に目をやると、ちょうど真正面に転送用ゲートがあることが分かった。そして、後方から急接近する魔導師の反応。表示される識
別コードは、スターズ1とあった。間違いなくなのはだ。
「こちらスターズ1、これより"オペレーション・リリカル"を開始します。メビウスさん、準備を」
「OK」
通信機を通じて耳に入ったなのはに言われるがまま、メビウス1はゲートへの突入準備を始めた。準備と言っても、やることはあまりない。せいぜい最後に機体に異常がない
か確認して、あとはいつでも飛び込めるよう、速度を上げておくだけだ。
エンジン・スロットルレバーを押し込み、機体の速度を上げていく。ゲートとの距離がある程度縮まったところで、なのはがレイジングハートを構えた。
「ディバイン……バスター!」
それは相変わらず見る者を圧倒する、桜色の閃光。初めて見た時はそれはそれは驚いたものだ。何せ十九歳の女の子が、ストーンヘンジもびっくりな大火力を振り回している
のだから。
放たれた桜色の閃光は、転送用ゲートの光の膜に命中する。これで次元に乱れが起きて、ユージア大陸とミッドチルダが繋がったはずだ。
「――命中、あとは飛び込むだけです」
「ああ……世話になったな、なのは」
「いえ」
F-22のキャノピー越しに、二人は別れの笑みを交わす。
「あの、メビウスさん……また、会えますよね?」
わずかな逡巡の後、なのはが唐突に口を開いた。気のせいか、彼女の眼が、潤んでいるように見えた。
もう、会えない。それは調査の結果、分かっているはずだった。だが、だからと言って「さようなら」を言ってしまっていいのだろうか。数々の戦いを共に潜り抜けた戦友に。
同じエースの名を背負った男性に。
「――ああ。必ずな」
メビウス1は頷き、力強く言った。その一言で、充分だ。
図らずも、ここは"円卓"だ。かつて演習にて、なのはとメビウス1が激突した空域。エースたちが交流するのに、言葉は要らないのだ。思い切り戦って、お互いの健闘を称え
ることが出来れば、それでいい。人は信じ合える、分かり合えるのだから。
「よし、もう行かないとな……全部終わらせたら、もう一度会いに来る。その時まで、待っていてくれ」
「はい……待ってます、ずっと!」
最後に互いに敬礼。そして、メビウス1はエンジン・スロットルレバーを叩き込み、アフターバーナー点火。機体はどっと加速し、なのははあっという間に見えなくなった。
音速突破、F-22は転送用ゲートに迷わず突っ込む。
「メビウス1、RTB……いや、訂正」
帰還を意味する言葉を放って、メビウス1はしかし首を振った。
帰るのではない。向こうではまた、戦場が待っている。ならば、もっと相応しい言葉があるはずだ。
酸素マスクを付け直し、メビウス1は誰に向かってでもなく、自分自身に向かって宣言する。

「メビウス1、交戦!」

視界が、かっと白熱した。あの時、この世界にやってきたのと同じ感覚。
"リボン付き"は、自身の世界に舞い戻っていった。
18名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/08(土) 00:45:52 ID:bOdplI7b
支援だー
19THE OPERATION LYRICAL:2008/11/08(土) 00:48:54 ID:+TQ9FdkY
「よく戻ってくれた、メビウス1」
帰還するなり、彼を待ち構えていたのは、やはり戦場だった。
エルジア軍の残党が旧エルジア軍事工廠を襲撃、多数の兵器を奪取した。彼らは"自由エルジア"を名乗り、ユージア大陸各地でISAF参加国に無差別攻撃を行っていた。
「本作戦のコードネームは、"カティーナ"だ」
自由エルジアは各地に散らばり、巧みにISAFの迎撃をすり抜けている。そこで、彼らを一網打尽にして、一気に殲滅する作戦が提案された。
「自由エルジアを、武装解除せよ」
ようやく復興への兆しが見えてきたのに、再び戦火を広げる訳には行かない。自由エルジアの殲滅は、ISAFにとって急務だった。
「この作戦の成功を、君に託したい――以上だ」
繰り返すが、自由エルジアは各地に散らばっている。そしてどこかの部隊が攻撃を受けると、他の部隊はただちに身を隠してしまうのだ。
徹底的なゲリラ戦、しかしそれゆえに、叩いても叩いても出現する自由エルジア軍に、ISAFは手を焼いていた。殲滅するなら一度に一気に。しかし戦力が足りない。
だから彼が選ばれたのだ。たった一機で一個飛行隊に匹敵する作戦行動力を持つ彼が。

結局、俺に出来ることはこんなことだ。人殺しと呼びたきゃ呼べばいい。だけど……俺が人殺しと呼ばれることで、助かる命があるというなら。喜んで、俺は戦おうじゃ
ないか。死神でも悪魔でも、鬼神でも凶星でも、好きに呼べばいい。
さぁ、舞い上がれ鋼鉄の猛禽類。空を駆け抜けろ。
それが、俺の――エースとしての、任務なのだから。


To be continued "OPERATION KATINA"...
20名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/08(土) 00:49:34 ID:ZEIkmW00
支援
21THE OPERATION LYRICAL:2008/11/08(土) 00:56:05 ID:+TQ9FdkY
はい、投下終了です。
最初は「20話くらいかな〜」と思っていたのがずるずると伸びて29話、プロローグ含めれば30話にwww
実は、最初は「聖剣伝説3」とのクロスを書く予定でした。その話では「ティアナをメインにしよう」と
考えていたので、メビウス1とティアナとの絡みが多いのはその名残ですね。
でも、実際にスーファミ引っ張り出して聖剣伝説3やり直しているうちに気付いたのです。
「こりゃ無理だwwww」
何せゲームは好きでも今までファンタジーの描写なんか経験皆無、そんなのであの偉大なる聖剣伝説3を
書こうと思うのは明らかに間違いです。
じゃあ、自分が書けるものってなんだろうと。そこで目をつけたのがエースコンバット04でした。もともと
戦闘機の描写は経験あったので、そこまで難しくはなかったです。
で、実際に書き出してみてどうもAC04だけではネタが少なすぎる。そこで、もういっそのことZEROも5も6も、
いっそのこと最近ハマってるCOD4のネタを入れちゃおうと思い、こんなのになりました。
結果的に、メビウス1がほとんど名前だけ使ったオリキャラ状態となってしまいましたが、これも一つの
「メビウス1」の形ってことで読んで頂けると幸いです。
あとがきを長々と書きましたが、ここまで読んでくださった皆さん、支援してくださった皆さん、本当に
ありがとうございました。番外編はちまちま書いていく予定ですが、ひとまず本編はこれで終わりです。
それでは、次回作のネタが浮かんだらまた来ますので、どうかよろしくお願いします。
最後にもう一度、大変ありがとうございました。
22名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/08(土) 00:59:45 ID:ZEIkmW00
GJ
完結おめでとうございます。
とは言え、メビウス1となのはについてもやもやしたものが残ってしまいました。
続きとか番外編とか期待してもいいのでしょうか?
23名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/08(土) 02:15:11 ID:VwCL8xy3
完結GJ!
勿論、故郷の戦乱が終わったらまたミッドに転移して魔のトライアングルゾーンに突入するですよね?w

聖剣3のクロスも何時か読みたいですー
24一尉:2008/11/08(土) 12:25:41 ID:XpIkDe6n
次回作にもよろしくね。
25なの魂の人 ◆.ocPz86dpI :2008/11/08(土) 18:08:05 ID:O60PNO90
どうもこんばんわです
18時30分頃から投下を開始致します
よろしいでしょうか?
26名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/08(土) 18:13:06 ID:8oqI2P5S
どうぞ、始まる前に風呂入ってきます
27名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/08(土) 18:27:50 ID:KyReQznY
支援
28名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/08(土) 18:28:30 ID:CoWLmNrB
なの魂の人きたああああああああ!!!!
もうすぐ始まるのか全裸で待機して待ってるwktk
29なの魂 ◆.ocPz86dpI :2008/11/08(土) 18:31:33 ID:O60PNO90
「ぶふォ!!」

彼、土方十四郎の夜の仕事は、咀嚼していたせんべえを噴出すことから始まる。
ここは海鳴臨海公園から程近い場所に存在する埠頭。
日も落ち、闇が辺りを支配するその場所は、ただ二つの例外を除いて静けさだけが辺りを支配していた。

「んがァァァァァ!! なんじゃこりゃぁぁ! 水っ……水ぅぅ!!」

高く積み重ねられた大型コンテナの上で、土方は喉を押さえて枯れた声を絞り出す。
四つん這いにくず折れる土方の隣では、何故か髪型を爆発ヘアーにした山崎が、
真っ赤なせんべえが満載された菓子受けを片手に、

「差し入れです。沖田さんの姉上様の"激辛せんべえ"」

「山崎てめェェェェェ! なめてんのか!! つーかなんでアフロ!?」

昼間に不審な少女達に煙に巻かれ、限界ギリギリまで迫っていた土方の不機嫌度は、山崎の一言で
あっさりとメーターを振り切った。

「俺に怒らんでください。怒るならミツバ殿に」

沖田の理不尽な砲撃の産物であるアフロヘアーに関しては何も応えず、山崎は双眼鏡を覗きながら諭すように言う。
その一言が影響したのかは知らないが、土方は黙り込み、バツが悪そうに懐から取り出したタバコに火を灯した。

「……副長、なんで会われなかったんですか? 局長に聞きましたよ。副長と局長、そしてミツバ殿は真選組結成前、
 まだ武州の田舎にいた頃からの友人だと」

探るように山崎は問うが、土方は黙りこくったまま応えない。
質問の意図など理解しているだろうに、しかし彼はただタバコを燻らせるだけだった。
ささやかな波の音だけが響き、紫煙が二人の身体に纏わり付くように蠢く。

「不審船調査なんてつまらん仕事は俺に任せて、ミツバ殿に会えばよかったのに」

痺れを切らした山崎がようやく胸の内に抱えていた言葉を吐き出すと同時、
ようやく土方が紫煙を吹き出しながら口を開いた。

「最近の攘夷浪士達のテロ活動に用いられる武器は、モノが違ってきている。
 中には俺達より性能の良い銃火器を所有している連中もいるって話だ」

特殊警察よりも上等な装備……つまり、純然たる軍事兵器を民間で入手するなど、このご時世では容易なことではない。
だが、これはあくまで民間での話。
民間人よりも圧倒的に上の地位に君臨する者……例えば、幕府関係者などに関しては、その通りではない。
――幕府の上層部が、兵器を横流ししているのか……!
その事に気付いたのか、山崎ははっと息を呑み、しかし双眼鏡からは目を離さないまま土方に問いかける。

「副長。ミツバ殿と何かありましたか」

「ああ……押収した武器の中に、管理局製の得物もあったという報告も入っている。
 何かある。間違いねェ」

「やっぱり……! やけぼっくいに火がついたとか?」

「そうだな、火がついたら大変なことに……」

そこまで言ったところで、土方はようやく会話が変な方向へ向かっていることに気付いた。
一瞬気の抜けたような目で虚空を眺め、そしてしかめっ面をして山崎を睨みつける。
30なの魂 ◆.ocPz86dpI :2008/11/08(土) 18:32:48 ID:O60PNO90
「……ん? アレ? オッ……って、んなわけねーだろ!!
 てめっ、何言ってんだ殺すぞコルァ! なんでアフロなんだお前! オイ殺すぞ!」

しかしそんな怒れる土方を華麗にスルーし、山崎はなおも双眼鏡を覗き込みながらポツリと呟く。

「ミツバ殿、結婚するらしいですよ」

「だから関係ねーって言ってんだろ! アフロ、オイ! なんでアフロなんだよ殺すよホントッ!!」

「相手は貿易商で、大層な長者とか。玉の輿ですなぁ」

「知るかよ! なんだよ「ですなぁ」って。イチイチ腹立つなコイツ」

もう何を言っても無駄だと判断したのか、土方はブツブツと文句を垂れながらタバコをコンテナに押し付け、
それが極自然なことであるかのように菓子受けのせんべえに手を伸ばす。

「ったく、監察がくだらねー事ばっか観察してんじゃねーよ。大体なんでアフロなんだよ。コイツ腹立つわ〜、アフロ」

「副長! あれ!」

相も変わらず文句を垂らし続ける土方が盛大にせんべえを噴き出すのと、
山崎が声を張り上げて双眼鏡に写りこんだ風景を指差すのは、ほぼ同時であった。



なの魂 〜第二十九幕 「当たり前」ほど尊いものはない〜



「今日は楽しかったです」

「そーちゃん、色々ありがとう。また近いうちに会いましょう」

虫の音が優しく響き、朧月の光が幻想的に降り注ぐ。
目一杯に秋を主張するその夜道から、一組の男女の話し声が聞こえてきた。

「今日くらい、ウチの屯所に泊まればいいのに」

街灯と僅かばかりの月明かりに照らされ、目の前の女性を引きとめようと沖田は言う。
しかし女性――ミツバは困ったような表情を浮かべ、申し訳なさそうに微笑んだ。

「ごめんなさい、色々向こうの家でやらなければならない事があって」

そう言って件の嫁ぎ先――彼女の背後に建つ、老舗の旅館のような巨大な屋敷の門へ目を配る。
月光のように儚い笑みを浮かべる彼女に、沖田は少し寂しそうに視線を落とした。
そんな彼の隣に立つのは一組の男女――銀時とシグナム。

「坂田さんもシグナムさんも、今日は色々付き合ってくれてありがとうございました」

その二人に、今日一日街の案内などに付き合ってもらったことに対する謝礼をミツバは告げる。

「あー、気にすんな」

「何か御用があれば、いつでもお伺いしますよ」

銀時は特に気にも留めていない様子で、シグナムは恐縮するようにそう言葉を返す。
そんな何の変哲も無い会話でさえも、ミツバは楽しそうに受け答えし、そして屋敷の方へと足を向け……
31なの魂 ◆.ocPz86dpI :2008/11/08(土) 18:34:10 ID:O60PNO90
「あっ……そーちゃん」

不意に、彼女は足を止めた。
目の前の門に手をかけ、そして僅かばかりの逡巡。
何度か声にもならない言葉を小さく口ごもり、そして意を決するかのように、ぽつりと呟く。

「……あの……あの人は……」

どこか落ち着かない様子で俯くミツバに、しかし沖田から返ってくる言葉は無い。
じゃり、と地面を踏みしめる音と共に足音が近づき、そしてその音はミツバの目の前で止む。

「野郎とは会わせねーぜ」

遠くからの車のエンジン音と虫の音だけが響く中、沖田は静かにそう告げた。
どこか険のある、冷たく突き放すような言い方だった。

「今朝方も、なんにも言わずに仕事にでていきやがった……薄情な野郎でィ」

沖田の物言いに顔を上げたミツバは、しかし彼には何も言わぬまま黙り込む。
俯き、前髪に隠れた沖田の表情を窺い知ることは出来ず、彼もまた何も言わぬまま、
朧月に照らされた夜道の闇に溶け込むように歩を進める。
その背中が消え行く様を、ミツバは何も言わずにただじっと見つめるだけだった。

「……仕事……か……。相変わらずみたいね」

目の前に広がる闇を見据え、ミツバは誰に言うでもなくポツリと漏らす。

「オイオイ、勝手に巻き込んどいて勝手に帰っちまいやがった」

唐突に聞こえてくる言葉。
思わず声のした方を振り向けば、そこには面倒くさそうに頭を掻く銀時と、
少しバツが悪そうに銀時をなだめようとするシグナムの姿があった。

「ごめんなさい、我が儘な子で」

銀時の言葉に何かしら思うところがあったのか、ミツバは申し訳なさそうに頭を下げる。

「……私のせいなんです。幼くして両親を亡くしたあの子に、さびしい思いをさせまいと甘やかして育てたから……。
 身勝手で頑固で負けず嫌いで。そんなんだから、昔から一人ぼっち……友達なんて、一人もいなかったんです」

その言葉に、シグナムは普段の屯所での沖田の様子を思い返す。
誰とつるむこともなく、どこか浮世離れをしたような言動で周りを掻き回す沖田の姿を。
誰かを引き寄せることも無く、自ら歩み寄ることも無く、自分の世界に浸る沖田の姿を。

「近藤さんに出会わなかったら、今頃どうなっていたか……今でもまだ、ちょっと恐いんです。
 あの子、ちゃんとしてるのかって……」

どこか思いつめた表情でミツバは呟く。
その様子を、シグナムはただ黙って見ているしかなかった。
誰一人として言葉を発することなく、虫の音だけが響く夜の中で、刻々と時間が過ぎてゆく。

「ホントは……あなた達も友達なんかじゃないんでしょ?
 無理やり付き合わされて、こんな事……」
32名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/08(土) 18:35:06 ID:KyReQznY
支援
33なの魂 ◆.ocPz86dpI :2008/11/08(土) 18:35:19 ID:O60PNO90
不意に顔を上げ、ミツバはそんな言葉を呟く。
そんなことはない、とシグナムは否定しようとするが、しかしそれよりも先に、銀時がぶっきらぼうに頭を掻きながら、

「アイツがちゃんとしてるかって? してるわけないでしょ、んなもん。
 仕事サボるわ、Sに目覚めるわ、不祥事起こすわ、Sに目覚めるわ。
 ロクなモンじゃねーよ、あのクソガキ。一体どういう教育したんですか」

「銀時殿……!」

まったく歯に衣着せぬその物言いに、思わずシグナムは顔をしかめて銀時を睨んだ。
しかし、銀時は彼女の抗議など意にも介さずに、

「友達くらい選ばなきゃいけねーよ。
 コイツならともかく、俺みたいのと付き合ってたらロクな事にならねーぜ、おたくの子」

シグナムを親指で指しながら、ため息混じりにそんなことを呟いた。
唐突に放たれたその言葉に、シグナムは目を丸くしてぽかんとする。
くすくす、と控えめな笑い声が聞こえてきたのは、その時だ。

「あ……」

間の抜けた顔のままシグナムは声のした方へ振り向く。
先程とはうって変わって、まるで儚く揺れる百合の花のように美麗な笑みを浮かべたミツバがいた。

「……おかしな人。でも……どうりで、あの子がなつくはずだわ」

柔らかな物腰、そして表情で銀時を見つめ、そしてどこか懐かしげに、ミツバはそっと目を伏せる。

「なんとなく、あの人に似てるもの」

「……あ?」

ミツバが呟いたその一言の意味を汲むことが出来ず、銀時は訝しげにミツバを見る。
言葉の真意を問おうと銀時はミツバに声をかけようとするが、しかしその直前、突如として聞こえてきた車の走行音と共に、
三人の周りが眩い光に包み込まれた。
ややあってブレーキ音と共に彼らのすぐ側に一台にパトカーが止まる。

「オイ、てめーらそこで何やってる?」

どこか不機嫌そうな声と共にパトカーのドアが開き、中から一人の男が出てくる。

「この屋敷の……」

そこまで言ったところで、その男はまるで金縛りにでもあったかのように身を強張らせた。
右手の指に挟んでいたタバコを取り落とし、男は目を見開き絶句する。
そして同じように言葉を失い、その場に凍りつく人物がもう一人。

「と……十四郎さ……」

狼狽にも似た焦りをのような表情を見せ、ミツバは小さく声を漏らす。

「!!」

不意にミツバが自身の口元を押さえた。
そしてそのまま激しく咳き込み、くず折れるようにその場に倒れ付す。
34なの魂 ◆.ocPz86dpI :2008/11/08(土) 18:36:21 ID:O60PNO90
「オイッ! しっかりしろ! オイ!!」

いの一番にミツバの異変に気付いた銀時が彼女を抱き起こそうとするが、しかし彼女は息も絶え絶えといった様子で
荒く呼吸を繰り返すだけだった。
やや遅れて事態の把握をしたシグナムもすぐさまミツバの傍へ駆け寄るが、状況は全く好転の兆しを見せない。
男――土方は、その様子を見、呆然と立ち尽くすだけであった。



「ようやく落ち着いたみたいですよ」

土方と共にパトカーに同乗していた山崎は、ふすまの隙間から隣の部屋を覗き込みながらそう言った。
隣の部屋の中では、苦しげな表情をし、だが身動ぎ一つせずに病床に伏すミツバと、彼女の看病をする医者の姿。

「身体が悪いとはきいちゃいたが、俺達が思ってるより病状は良くねェみたいで。
 倒れたのが屋敷前じゃなかったら、どうなってたことか」

安堵したようにため息をつき、山崎は後ろを振り返る。

「……それより旦那も姐さんも、なんでミツバさんと?」

どこか落ち着かない様子で萎縮しているシグナムと、彼女とは対照的に、
我が物顔で用意されたせんべえを齧りながらくつろぐ銀時がそこにいた。
ミツバが倒れたその後、外の様子が騒がしいことに気付いた屋敷の使用人が彼女らを見つけ、
そして大慌てで医者を呼び、ミツバを屋敷の中へ担ぎ込んで、今に至るというわけだ。

「それは……」

「なりゆき」

シグナムが言葉を発しきる前に、銀時が相変わらずせんべえを租借しながらそう答える。

「そーゆうお前はどうしてアフロ?」

逆に銀時は問い返す。
返ってきた答えは、実に簡潔であった。

「なりゆきです」

「どんななりゆき?」

適当にツッコミを返し、そして銀時は山崎が居るのとは正反対の方向――縁側の方へ目を向ける。
釣られるように、山崎とシグナムもそちらの方へ目を向けた。

「そちらさんは……なりゆきってカンジじゃなさそーだな」

銀時達に背を向け、夜空を見上げながら紫煙をくゆらせる土方が、そこにいた。

「ツラ見ただけで倒れちまうたァ、よっぽどのことがあったんじゃねーの? おたくら」

「……てめーにゃ関係ねェ」

振り向くこともせずに、土方は突き放すようにそう言い放つ。
銀時は何故か、どこか嫌らしい笑みを浮かべ、口元を押さえながらくぐもった笑いを漏らした。

「すいませーん、男と女の関係に他人が首突っ込むなんざ野暮ですた〜」

「ダメですよ旦那〜。ああ見えて副長、ウブなんだから〜」
35名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/08(土) 18:37:14 ID:KyReQznY
支援
36なの魂 ◆.ocPz86dpI :2008/11/08(土) 18:37:37 ID:O60PNO90
若い男女が織り成す目くるめくドラマ……何かしらの痴情の縺れでもあったのだろうと邪推した銀時と山崎は、
揃ってニヤニヤと土方に下品な視線を浴びせかける。
そこはかとなく雰囲気が悪くなってきたことに感付き、シグナムがおたおたと手を振って二人の妄言を止めようとする。
だが、彼女の行動はいらぬお世話だったようだ。
先程まで静観を決め込んでいた土方が突如として腰の刀に手をかけ、凄まじい勢いで抜刀し、
鬼のような形相で銀時達に向き直ったのだ。

「関係ねーっつってんだろーがァァァ!! 大体なんでてめェらここにいるんだ!!」

「ちょ! 副長! ストップストップ!」

「落ち着いてください土方殿! 隣に病人が!!」

「うるせェェェ!! 大体おめーはなんでアフロなんだよ山崎ィ!!」

尻餅をついて狼狽をあらわにする山崎。
決死の表情で土方を羽交い絞めにするシグナム。
それをなんとか振りほどこうと暴れる土方。
鼻をほじりながらヘラヘラと薄ら笑いを浮かべる銀時。
そんな四人のおかげで見事なカオス空間と成り果てた部屋の中に、不意にふすまの開く音が聞こえてきた。
先程山崎が覗いていたのとは反対の方向からだ。
四人は鳴りを潜め、音のした方へ視線を向けた。

「皆さん、何のお構いも無く申し訳ございません。ミツバを屋敷まで運んでくださったようで、お礼申し上げます」

ふすまの向こうには、こちらへ向けて深々と座礼をする一人の男の姿があった。

「私、貿易商を営んでおります、『転海屋』蔵場当馬と申します」

丸く切りそろえた髪。
角ばった輪郭に彫りの深い顔。
ふくよかというよりは、むしろどっしりとした体つきは、見る者に"質実剛健"という印象を抱かせる。

「ミツバさんの旦那さんになるお人ですよ」

訝しげにその男を睨みつける土方に、なんとか落ち着きを取り戻した山崎がそう耳打ちをする。
合点がいった様子で「ああ……」と気のない返事をした土方は、その時になってようやく、自分が抜刀したままだということに気がついた。
居心地悪そうに咳払いをし、刀を鞘に収める。

「身体に障るゆえ、あまりあちこち出歩くなと申していたのですが……今回は、ウチのミツバがご迷惑おかけしました」

蔵場は再び頭を深く下げる。
愚直なまでに生真面目な印象を受ける振る舞いだった。
ややあって蔵場は顔を上げ、そして土方達の出で立ちを改めて見て、僅かに一驚を喫したような表情を見せた。

「もしかして皆さん、その制服は……真選組の方ですか。 ならばミツバの弟さんのご友人……」

「友達なんかじゃねーですよ」
37なの魂 ◆.ocPz86dpI :2008/11/08(土) 18:38:57 ID:O60PNO90
唐突に部屋の中へ響く声。
その場に居た五人は、一様に声のした方――縁側の方へ視線を向けた。
土方達と同じ、黒いスーツのような真選組隊服。
普段の飄々とした表情とは打って変わった、険しい蘇芳の瞳。
真選組一番隊隊長、沖田総悟が、そこにいた。

「総悟君、来てくれたか。ミツバさんが……」

安堵の表情を見せる蔵場の言葉には耳を傾けず、そして部屋に居た銀時、シグナム、山崎のことを気にすることもなく、
沖田は無言のまま土方の側まで歩み寄る。
土方もまた物言わぬまま、沖田が自分へと向かってくる様をただじっと見るだけだった。

「土方さんじゃありやせんか。こんなところでお会いするたァ奇遇だなァ」

わざとらしいくらいに親近感溢れる口調。
しかし、その言葉を発した沖田の顔は、決して笑ってはいなかった。
沈黙が辺りを支配し、壁に掛けれられた時計の針の音だけが不気味に響き渡る。
時間にすれば三秒か、四秒か。
沖田は自身が招いた沈黙を、自らの口で、底冷えするような声で打ち破った。

「どのツラさげて姉上に会いにこれたんでィ」

それっきり、沖田と土方は再び口を開くことなくその場に佇む。
異様な空気だった。
まるで二人を中心にし、その二人以外の全ての者をこの部屋から押し出さんとする重圧が、
沖田達の身体から発せられているかのようだった。

「違うんです沖田さん! 俺達はここに……」

剣呑な空気に耐えかねたシグナムがその場を取り繕おうとするよりも先に、山崎が沖田に歩み寄ろうとする。
しかし、

「ぶっ!?」

土方の上段蹴りが、山崎の顔面に直撃した。
鼻血を噴きながらもんどりうって倒れる山崎の襟首を掴み上げ、まるでゴミのように彼を引き摺りながら
土方は沖田の脇を無言のまま通り抜ける。

「……邪魔したな」

そうとだけ言い残し、土方は部屋を去っていった。
山崎が何かを喚いていたが、そんなものに耳を貸すことはなかった。
床板を軋ませながら縁側を渡っていると、大きく障子の開かれた部屋から光が漏れているのが見えた。
誰が居るのか……は、確認するまでもない。
視線を移すことなく、ただ前だけを見て土方は部屋の前を去ろうとし――しかし自身の身体が完全に障子に隠れてしまう直前、
ほんの一瞬、視線だけを動かして土方は部屋の中を覗った。
見知った……よく見知ったその瞳からは、どこか寂しさを感じずにはいられなかった。


38名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/08(土) 18:38:59 ID:KyReQznY
支援
39なの魂 ◆.ocPz86dpI :2008/11/08(土) 18:40:32 ID:O60PNO90
翌日、銀時の一日は厠で盛大に吐瀉物をぶち撒けることから始まった。
気分悪そうに自宅の厠から出てきた銀時を待ち受けていたのは、普段と変わらぬ助手二人。

「ちょっとちょっと、ホントに大丈夫なんですか? 銀さん」

「私達に黙って勝手に遊びに行くからそうなるネ。天罰ヨ天罰」

先日のミツバの一件の後、何故だか無性に飲みたい気分になった銀時は、昼間に沖田から受け取った報酬片手に
夜の飲み屋に繰り出したのだったが、調子に乗って飲みすぎた結果がコレである。
なんというか、まるでダメな大人をそのまま具現化したような男である。
新八の肩を借り、うーうー情けない呻き声をあげながら、銀時は万事屋店舗から一階へ繋がる階段を下りる。

「……やっぱり、今日は休んだ方がいいんじゃないですか? はやてちゃんには僕が言っておきますし……」

「うるせーよ。『ボクチン酔いつぶれちゃったから今日は仕事にいけませーん』なんて言ってみろ。
 赤っ恥もいいところじゃねーか。だいたい銀さん酔ってないからね。いちご牛乳飲み過ぎてちょっと気分悪くなっただけだからね」

顔を歪めながら口元を押さえ、翠屋の脇に停めてある原付へと向かう。
こんな状態になっても仕事をこなそうとするその姿勢だけは、評価してやっても良いかも知れない。

「そんな状態でバイク乗ったら危ないネ。今日は定春に乗ってくヨロシ」

ポンポン、と定春の背中を叩き、そこに乗るように神楽が促す。
しかし銀時は素直に首を縦に振るようなことはせず、

「だから酔ってねーって言ってんだろ。妙な気ィ回してんじゃねぼろろろろろ!!」

屈み込み、胃の中で中途半端に消化されていた食物の一切合財をその場に吐き出した。
銀時の背中をさすり、グロッキーになった彼を定春に背負わせる神楽。
その様子を見て新八は額を手で押さえため息をつく。

「あーあー、何やってんですかもう。すぐに掃除道具持ってきますから、踏んだりしないで……」

そこまで言って、何気なしに翠屋の方へ視線を向け――そして眉をひそめた。
翠屋の店舗前の歩道。
そこに、一人の女性が立っていた。
その女性は白い小袖と深紅の緋袴を身に纏い、艶のある長い栗色の髪を一本結びにした――有体に言って、
巫女さんのような出で立ちをしていた。
その女性は店に入るでもなく入り口の前をうろうろと行ったり来たりし、そして不意に立ち止まったかと思うと、
何を思ったかまじまじとショーウィンドウを見つめながら、小さくため息を漏らした。
はっきり言って、挙動不審にもほどがある。
そんな謎の巫女さんをじっと観察していると、全く動かない新八を不審に思ったのか、神楽が声を掛けてきた。

「新八、何やってるアルか?」

「あ……ううん、なんでもないよ。神楽ちゃん、先に銀さんをはやてちゃんの所に連れてってあげてよ。
 僕はここの掃除してから行くからさ」

普通ならこの場で巫女さんのことを話すべきなのだろうが、下手に話すと暴走超特急神楽があらぬ方向へ話を持っていきかねない。
一応の常識人である銀時がダウンしている今、そうなってしまったら神楽を止める事が出来るのは自分しかいない。
さすがの新八もそんな面倒事は御免被りたいので、とりあえず神楽をこの場から遠ざけるべく、銀時をはやての家へ連れて行くように促した。
神楽は「分かったネ」と素直に返事をし、定春にちょこんと跳び乗って、

「それじゃ定春、出発しんこーアル!」

「わんっ!」
40なの魂 ◆.ocPz86dpI :2008/11/08(土) 18:41:39 ID:O60PNO90
「……おーい定春くーん、頼むからゆっくり歩いてくれよー。気分悪いからね。銀さんホント気分悪いからね」

銀時の真摯な願いも虚しく、定春は土煙を上げながら商店街の道を失踪していった。
当然のごとく銀時の情けない叫びが青空に響き渡り、道行く人々は何事かと、定春の方を見やる。
心の中で手を合わせて、引き攣った顔で定春の後姿を見送った新八は改めて翠屋の入り口を見る。
あれほどの大音響が響いたにも関わらず、先の巫女さんはそんな事などまるで聞こえていなかったかのように、
熱心にショーウインドウを見つめ続けていた。

「あの……」

後ろから近寄り、声を掛けてみる。
反応無し。
新八の存在にも気付いていないのだろうか。
相も変わらず巫女さんは、ショーウィンドウの一点に熱烈な視線を浴びせ続けていた。
一体何なんだろうか。
巫女さんが見つめていると思わしきその場所に、新八も同じく視線を送る。
そこにあったのは、なんとも高さのあるグラス。
全体を桜色で彩られ、グラスの内側にはたっぷりのチョコレートに苺のアイス。
そしてたっぷりのった大きな苺。
見ているだけで涎が出てきそうな、ボリューム満点のいちごパフェの模造品であった。

「……あの、ちょっと君?」

なんでこんなもの見つめてるんだろう? と不思議に思いながら、新八は再び巫女さんに声を掛ける。
今度はどうやらちゃんと声が聞こえたらしく、巫女さんはビクリと肩を震わせて新八の方へ顔を向け、

「あ、あの、違うんです! あたし別に怪しい人なんかじゃなくて、あの、その!」

何故だか顔の前でブンブンと手のひらを振り、しどろもどろになりながら慌てふためきだした。
とは言うものの、その姿はどう見ても怪しい。
新八があからさまな疑いの眼差しを向けると、巫女さんもさすがにこの言動は怪しすぎたと自覚したのか、
途端に口元に手を置いてしおらしい態度を取り始めた。
顔を俯き加減にし、上目遣いで窺うように新八を見つめ、そして時折チラチラと目を逸らす。
逸らした先にあるものは、先程まで彼女が見つめていたパフェの模造品。
そんな彼女の態度を見て、新八の脳裏に一つの予想が浮かぶ。

「……えーっと……もしかして観光か何かですか?」

「……え?」

きっと彼女は別の世界からやってきたばかりで、日本での勝手が分からないのだろう。
だからさっきも、商品見本を真剣に見ながら、しかし店に入ることをためらうような素振りを見せていたのだ。
もちろんこれは新八の勝手な推測なのだが、どうやらその予想は当たらずとも遠からず、といったところのようだった。

「……えっと……そんな感じです」

巫女さんはほんのり顔を赤らめ、恥ずかしそうに目を背けながら呟いた。
そんな彼女を見て、思わず新八は苦笑を浮かべる。

「あはは……でも、こーいう飲食店って、どこの世界でも利用法は変わらないと思いますけどね」

すると巫女さんは少しばかりばつが悪そうに、

「……あの……実はあたし、こういうところには来たことがなくて……」
41名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/08(土) 18:42:30 ID:KyReQznY
支援
42なの魂 ◆.ocPz86dpI :2008/11/08(土) 18:43:13 ID:O60PNO90
薄紅に染まっていた頬をますます紅潮させ、先程にも増して縮こまってボソボソ呟く。
放っておけば豆粒サイズにまで縮こまってしまうんじゃないかと思えるくらい萎縮する巫女さんに、
新八もどこか不憫さを感じたのだろう。
頬をぽりぽりと掻きながら困ったような表情を浮かべ、

「……なんでしたら、一緒に入りましょうか? ここの店員さん僕の知り合いですし、
 ちょっとくらい粗相をしても、大丈夫だと思いますよ?」

予想だにしなかった新八からの申し出に、巫女さんはただうろたえるだけだった。
「あの……」とか「ぅー……」とか、言葉にならない声を出しつつ目を泳がせる。
たっぷり十秒、悩みに悩んで頭を抱えていた巫女さんはぺこりと頭を下げて、

「えっと……じゃあ、お願いします……」

思っていた通りの返答に安心したのか、新八は柔らかな笑みを浮かべて翠屋の扉を開く。
とろんとした金色の瞳が可愛らしい、長い栗色の髪の巫女さん――ディエチは、おずおずと新八の後ろに付き従っていった。



カラン、という小気味の良いベルの音の響いた翠屋店内には、客の姿は一人も見当たらなかった。
平日のしかも昼休み前なのだから、まあ当然といえば当然なのかもしれない。
知り合いの姿はないかと店内を見渡そうとする新八の前に、お盆を持ったメガネの女性が現れる。

「いらっしゃいま……え゛?」

その女性、もとい美由希は新八の姿を認めるや否や、盛大にメガネをずり落としてその場に固まった。
いや、正確にはその背後か。
新八とそう変わらない背丈。
紅と白の対比が美しい、伝統的な巫女装束。
長く結わえられ、馬の尾のようになった艶やかな栗色の髪。
どこか幼さの残る、可愛らしい金の瞳。
おっかなびっくり店内を見渡すその女性と、彼女と共に店内にやってきた新八の姿は――何も知らない人間から見れば、そう、
おそらく"並々ならぬ関係"のように見えるのだろう。

「ええぇえぇええぇぇぇ!!?」

デッサンの狂った顔で大声を上げる美由希に、ディエチは思わずビクリと肩を震わせる。
あまりの大音響に新八は両耳を塞ぎ、顔をしかめる。
そんな彼の肩に、何者かの手が置かれる。

「……そうか、ついに新八くんにも春が来たか……」

後ろを振り向いてみる。
ほろりと涙を流しながら、どこかしみじみとした様子で言う恭也の姿がそこにあった。

「オィィィィィ!! 予想はしてたけどやっぱり勘違いしやがったよこの人達!!
 つーかアンタら学校はどーした!?」

「まさかこんなに早く弟分の彼女をお目にかかれるとはねぇ……ささ、どうぞこちらへ」

「人の話を聞けェェェェェ!!」

もはや新八の言葉など馬耳東風といった具合に、恭也はすぐ側の席へディエチを案内する。
ディエチはというと、にわかに混乱した様子で新八と恭也の顔を見比べていたが、ややあって恭也に従うように、
彼の案内する席へと着いた。

「アレですよ! 国外の方なんですよこの人! 日本(こっち)での勝手が分からなくて困ってたみたいだから、
 手を貸しただけで……」
43なの魂 ◆.ocPz86dpI :2008/11/08(土) 18:44:30 ID:O60PNO90
紳士的にレディのエスコートを行う恭也に対し、新八はもちろん誤解を解くべく熱弁を振るう。
しかし、恭也はどこか楽しそうにニヤニヤと笑みを浮かべ、

「へぇ。初めてで国際恋愛だなんて、なかなか冒険家だねぇ」

「呪われたヘッドホンでもつけてんのかアンタは!? ちょっと君も何か言って……」

と、助けを求めるようにディエチに向く新八。
だが視線の先の彼女には新八の声など届いていなかったらしく、ディエチは物珍しげに店内を見回し目を輝かせていた。
観念したように新八がため息をつくと、その様子を見ていた恭也が口元に手を置き、堪えるように笑いを漏らし始めた。
ああ、やっぱり分かっててからかってたんだな、と新八が理解すると同時、彼の脳裏に嫌な予感が走る。

「……そういえば君、ちゃんとお金持ってきてます?」

絵になるくらい行儀良く席に座っていたディエチに対し、新八はそんなことを問いかける。
例えばコメディドラマで世間知らずの外国人さんがこのような場所に来た場合、
財布を忘れてきてたり日本円を持っていなかったりするのがお約束である。
いくらなんでも現実でそんなドラマのお約束が適用されるわけないだろう、と思うかもしれないが、事実は小説より奇なりである。
一応確認を入れておくに越したことはない。
だが新八の心配はどうやら杞憂だったらしく、

「あ、はい。ちゃんとお財布も持ってきて……」

と、ディエチは袖の下に手を差し入れて、

「……あ……」

つるっ、という効果音が似合いそうなくらいに見事に手を滑らせ、小銭がたんまり入った財布を床に落としてしまった。
小さな金属がぶつかり合う音と共に、たくさんの小銭が辺りにぶち撒かれる。

「ご、ごめんなさい……」

慌てて小銭を拾い集めようと、ディエチは席を離れて床にしゃがみこむ。

「ああ、僕も手伝いますよ」

そして新八もまた、小銭を拾おうと勢いよく屈み込み……。
ゴツン、となんとも痛々しそうな音が店内に響き渡った。

(……お約束だな)

(お約束だね)

頭を押さえて悶絶するお馬鹿さん二人を眺め、恭也と美由希は揃ってそんなことを考える。

「いたた……だ、大丈夫ですか?」

「……っ。は、はい」

お互いに頭を押さえて目尻に涙を溜め、新八は苦笑いを漏らし、ディエチは申し訳なさそうに頭を下げる。
しばらくうずくまったまま痛みに耐えていた二人だったが、ややあって痛みが引いてきたのか、改めて小銭に手を伸ばし始める。
チャリチャリと小銭の擦れ合う音と共に、床に転がった硬貨が一枚、二枚と姿を消していく。
そしてようやく最後の一枚となったその時。

「……あ」

「あ」
44なの魂 ◆.ocPz86dpI :2008/11/08(土) 18:46:03 ID:O60PNO90
十円玉硬貨の上に、二人の手のひらが重なった。
途端に訪れる気まずい空気と沈黙。
新八は思わず顔面から脂汗を垂らして硬直する。

(……あ、あれ? 何この雰囲気。やだなぁ、こーいうのってむしろ恭也さんの領分じゃぁ……)

顔、というより身体中から"ヘルプミー"という文字を浮かべながら新八は助けを請うように後ろに振り向き、

「どうしたのお兄ちゃん? なんだかさっきから騒がしいけど……」

店の奥からやってきたなのはが、店内に広がるストロベリー空間を目の当たりにして硬直する。
ちなみに何故なのはがここにいるのかというと、今日は土曜日に行われた授業参観の振り替え休日だからである。
貴重な休日にも店の手伝いをする孝行娘ななのはだが、しかし神様は彼女のことがあまり御気に召さないらしい。

「し……」

ぷるぷると震えながらなのはは新八を指差し、大きく息を吸い込んだかと思うと突然顔を真っ赤にして、

「新八さんまで私の知らない世界にー!!」

「だから違うっつってんだろうがァァァァァ!! つーか"まで"って何だ!?
 アレか!? 銀さん辺りが似たようなことやらかしたんか!?」

それそのものズバリ的中なツッコミで新八は応戦をする。
その拍子にせっかく拾い集めた小銭が再び床に転げ落ちてしまったのだが、そんな事など意にも介さず、
新八は本日何度目かになる身の潔白の証明をしようとし……。

「あ、やっぱり新八さんやー!」

ベルの音と共に、可愛らしい関西弁が店の入り口から響いてきた。
その場にいた者達は途端に静まり返り、皆一様に声のした方に視線を向ける。

「……あれ? はやてちゃん?」

そう、そこにいたのは八神はやてだった。
いつも通りの愛らしい服を着込み、いつもの様に車椅子に乗り、シャマルに車椅子のグリップを握ってもらい、
そしていつものように満面の笑みを浮かべた彼女がそこにいた。

「え? あれ? な、なんでこんなところに?」

彼女がここにいる理由など察しがつくはずもなく、新八は心底不思議そうにはやて達に問いかける。

「銀ちゃんがいつまで経ってもこーへんから、迎えに来たんよ〜」

「一応住所は聞いていましたからね。それで、近くまで来てたんですけど……」

頬に手を添え、シャマルは困ったように愛想笑いを浮かべる。

「すぐそこで、定春ちゃんと物凄い勢いですれ違って」

「銀ちゃん、すごい悲鳴あげとったなぁ」

「何かあったのかと思って定春ちゃんが来た方向を見たら、新八さんらしい人が女性の方と喫茶店に入るところが目に入りまして」

「これは一大事や! って思って、急いで追いかけてきたんよ〜」

「結局アンタらも勘違いしてんのかァァァァァ!!」
45名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/08(土) 18:46:55 ID:KyReQznY
支援
46なの魂 ◆.ocPz86dpI :2008/11/08(土) 18:47:33 ID:O60PNO90
思わず声を大にしてツッコむ新八だが、はやてとシャマルは悪びれる様子もなく、

「まあ、よー考えたら新八さんに限ってそれはないもんなー」

「そうね。新八くんに限ってそれはないわよねぇ」

「ほんっと情け容赦ねーなアンタら!!」

割と悲痛な叫びを上げて激昂するが、しかし二人のかしまし娘は、そんな彼を見てニコニコと微笑むばかり。
もはや怒る気力も失った新八は、呆れたようにため息をついて頭を抱える。
そんな彼の服の袖を、何者かがクイクイと引っ張った。
誰かと思い、新八は袖の方へ視線を向ける。

「……あの、新八さん。お知り合い……ですか?」

なのはだった。
彼女はどこか不安そうな表情ではやて達の方を見て、新八にそう問いかける。

「ん? ああ、そういえば全然話したことなかったね。えーっと、なんていうのか……
 今の銀さんの雇い主の、八神はやてちゃんだよ。で、こっちがはやてちゃんの親戚のシャマルさん」

「よろしくな〜」

「よろしくお願いしますね」

新八からの紹介に与った二人は、先にも増して笑顔を浮かべる。
彼女らの底無しの明るさに少々気圧されつつも、なのはは若干緊張しながらぺこりと頭を下げて、

「えと……高町なのはです。どうぞよろしくお願いします」

行儀良く自己紹介をする。
するとはやてが不思議そうな顔をして、なのはの顔をまじまじと見つめ始めた。
下唇に人差し指を押し当て、うーんと何かを思い出すように頭を捻る。
不可解なはやての行動になのはが眉をひそめていると、突然はやてはぽん、と手を打ち、

「そっか! あのなのはちゃんか〜!」

「……ふぇ?」

諸手を挙げて万歳のポーズを取りながら、満面の笑みでそんなことを言った。
しかし元気一杯ご機嫌一杯なはやてとは対照的に、なのはは混乱しながら頭上にクエスチョンマークを浮かべるばかりだ。
まるで自分のことを知っているのかのような物言いをされたが、しかしこちらははやてのことなど一切知らない。
一体どういうことなのかと怪訝そうな顔をしていると、はやてが胸の前で手を組んで、

「銀ちゃんらから、話は聞いとったんよ。いっぺん会ってみたいって思っとったんや〜」

感動したのか興奮したのか、車椅子から身を乗り出そうとしながらそう言った。
相も変らぬ、まるでお日様のような温かな笑顔。
しかし、そんな彼女とは全く逆に、なのはの表情はどこか曇った笑顔だった。

「そ、そうなんだ……あはは……」

なのはの僅かな異変を感じ取ったのだろう。
すぐ側にいた新八が屈み込み、なのはの耳元で小さく問いかける。

「……どうかしたの? なのはちゃん」

なのははしばらく押し黙っていたが、やがて口篭るような素振りを見せ、そして遠慮がちに新八の耳元で
ボソボソと呟く。
47なの魂 ◆.ocPz86dpI :2008/11/08(土) 18:48:50 ID:O60PNO90
「あの……あの子が雇い主さんってことは、その……最近、銀さんがよくお店を空けてたのって……」

「うん。はやてちゃんの家に仕事に行ってたからだよ」

「それって……あの、毎日なんですか?」

「んー、そうだね。ほとんど毎日かな。……それがどうかしたの?」

「い、いえ! なんでもないですよ〜」

わたわたと手を振って、なのはは努めて平静を装う。
しかし、彼女の様子がおかしいのは、誰の目から見ても明らかであった。
新八の不思議そうな視線にいたたまれなくなったのか、なのはは新八から目を逸らす。
視線の先には、恭也達にも愛嬌を振りまいて自己紹介をするはやての姿。
そんな彼女をまじまじと見つめながら、なのはは最近めっきり顔を合わせることが少なくなった居候の姿を思い返した。
不器用で、だらしなくて、ぶっきらぼうで、でもどこか優しい侍。
物心ついた頃からずっと一緒にいた、もう一人の兄のような存在。
父と母が仕事で家を空け、兄と姉も学校に行って、一人で家に居ることを余儀なくされていた時、彼は時間を見つけては家にやってきて、
暇潰しと称して自分の話し相手になってくれた。
小学校に入学して、初めて学校に行った日の放課後。
他の子達と上手く会話が出来なくて、友達を作ることが出来なくて、一人でとぼとぼと校門をくぐろうとした自分のことを、
彼は笑いながら迎えてくれた。
「高嶺の花ってのも考えモノだなァ、オイ」などと彼は憎まれ口を利いてきたが、それでも、その時は本当に嬉しかった。
いつも面倒くさそうにして、何が会っても自分には関係ないと言いたげな態度ばかりとって。
でも自分が本当に困っている時や悲しい時には、必ずと言っていいほど手を差し伸べてくる彼は、
いつしか傍にいるのが当たり前な存在になっていた。
でも……。

(……そっか……)

今の彼は、自分の傍にはいない。
今の彼は自分ではない、目の前のあの子の傍にいる。
そのことが、ひどくなのはを不安にさせる。
まるでシャボン玉のようにフワフワと掴み所のない彼が、いつか自分の元に浮かぶのをやめ、
はやての元へ行ってしまうのではないかと、そんな漠然とした思いに駆られる。

(毎日会ってるんだ……銀さんと……)

胸のうちにもやもやとしたものを抱え、しかしそれを否定しようとなのはは首を振る。
三度目の来客が訪れたのは、その時だ。
ベルの音と共に扉を開いたのは二人の女性だった。
なのはとそう背丈も変わらない、長い銀髪の小さな女の子と、明るい空色の髪を短く切った、活発そうな女性。
二人はしばし店内を見回した後にお互いの顔を見合わせ、そして銀髪の少女が困ったような顔をして訊ねてきた。

「少々お伺いしたいのですが、この辺りで茶の長い髪を結わえた、巫女装束の女を見ませんでしたか?」

その言葉に恭也と美由希、そして新八は顔を見合わせる。
長い茶髪に巫女装束。
そんな最大公約数の最小値を狙ったような特徴、該当する人物は一人しかいない。
三人は一斉に、すぐ傍のテーブルに視線を向ける。
何故かテーブルの下でプルプルと震えるディエチが、そこにいた。
何をしているのか、と新八が問いかけようとすると、彼女は目に涙を溜めながら、怯えるような表情で訴えかけてきた。
すなわち、「ここにいることを絶対に教えないでほしい」である。
どうやら入り口の方からはテーブルの下の様子は窺えないらしく、二人組みの女性は怪訝そうな表情で新八を見ていた。
どうしたもんかと思案し、困ったように恭也と美由希に視線を配ると、二人は苦笑を浮かべ、揃って肩を竦めた。
その様子を見て新八もまた同じように苦笑し、二人組の女性の方を向き、

「すいません、ちょっと見てないですねぇ」
48なの魂 ◆.ocPz86dpI :2008/11/08(土) 18:50:45 ID:O60PNO90
「そうですか……」と銀髪の少女は残念そうにため息をつく。
二人の探し人を匿ったことはどうやら気付かれなかったらしく、銀髪の少女はペコリと頭を下げて謝辞を述べ、
空色の髪の女性を従えて、さっさと店の外に出て行ってしまった。

「……もう出てきても大丈夫ですよ?」

新八が笑いながらそう言うと、ディエチはホッとした様子でのそのそとテーブルの下から這い出てきた。
着衣の乱れを直し、深呼吸をして新八達にお辞儀をして、

「ありがとうございます。おかげで助かり……」

そこまで言ったところで、突如として彼女の背後から二つの足音が響いた。
顔中の汗腺という汗腺から冷や汗を流し、ディエチはゆっくりと傾けた上半身を起こす。

「……つっかまえた〜!」

ディエチが完全に直立するのと同時、悪戯っぽい女性の声と共に、何者かがディエチの身体を羽交い絞めにした。

「ふわぁ!?」

予想していた出来事だったにもかかわらず、ディエチは思わず上擦った悲鳴を上げた。
ぱたぱたと手足を暴れさせ、必死に拘束を解こうとするが、彼女の抵抗は全くの徒労に終わる。

「こんなところで何をやっている! あれほど無断で外出するなと言っていただろう!」

怒声を浴びせるのは、先程店を出て行ったはずの銀髪の少女――チンク。
頭から湯気でも出るんじゃないかと思えるくらいに憤怒している彼女からは、しかしその幼すぎる見た目のためか、
それほどの威圧感を感じることは出来なかった。
一頻りディエチに向かって怒鳴り散らしたチンクは大きなため息をついて恭也達の方を向き直り、
本当に申し訳なさそうに何度も何度も頭を下げる。

「申し訳ありません、妹がご迷惑をおかけして……」

そんな彼女の後ろには、空色の髪の女性――セインに、まるで悪戯をした子猫のように首根っこを掴まれたディエチの姿があった。

「ほら、キリキリ歩く!」

「むぁー……いちごパフェ……」

名残惜しそうな声を上げながら、ズルズルとセインに引き摺られていくディエチ。
さっさと店の外へ出ようとするセインの後を追うため、チンクもトコトコと扉へ向かう。
二人に追いつき、隣に並んだチンクは、ディエチに向かってたっぷりと説教をし、
そしてチラリと店内を――いや、はやて達を一瞥し、翠屋を後にしていった。
店内に残された六人は、ただただ呆然とその様子を眺めているだけだった。
49名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/08(土) 18:53:11 ID:gH9/SRGG
sien
50なの魂 ◆.ocPz86dpI :2008/11/08(土) 18:54:55 ID:h9+ujBZP
「……え? 妹? ……え?」

「なんだか、面白そうな方達でしたね」

ぽかんとした様子で、入り口の扉と先程までディエチが居た場所を交互に見ながら新八は言い、
シャマルはどこか楽しげに呑気なコメントを残す。
一体なんだったんだ? あれは。
高町三兄妹が「そもそもどこから入ってきたんだ?」と言いたげな顔をしていると、
不意に何かを思い出したかのようにはやてが胸の前で手を叩いた。

「あ、そういえば新八さん。さっき銀ちゃんらが走っていったのって……」

「ん? ああ、はやてちゃんの家にいくためだけど……あ」

と、そこで思い至る。
銀時達の目当ての人物は、今ここにいるじゃないか、と。

「大変や! 早く戻らんと、銀ちゃんらに待ちぼうけさせてまう!」

はやては大慌てでシャマルに移動を促し、そして急かすように新八を呼びかける。
彼女の焦りが伝染したのか、新八もまた慌てて、恭也に店の脇の掃除を頼んではやてのすぐ後を追う。
そんな彼を引き止めようと、声をかけようとするなのはなのだが、新八は彼女のことに気付かぬまま店の扉を開いた。

「それじゃ、行ってきます!」

「なのはちゃ〜ん! また今度、ゆっくりお話しよな〜!」

大きく手を振り、笑顔ではやてはなのはに別れを告げる。
なのはもまた遠慮がちに手を振りはやてを見送るが、しかしその表情に晴れ間は見えない。
胸の内で大きくなっていく、渦を巻いたような感情に戸惑いを覚え、彼女は思う。

(……なんだろう……この気持ち……)

それが幼い嫉妬心であるということに、今の彼女が気付くことはなかった。
51なの魂の人 ◆.ocPz86dpI :2008/11/08(土) 18:58:20 ID:jsedSE8t
投下終了です。
ディエチだってたまにはスイーツが食べたいです。女の子だもん。
チンクだってたまには怒ります。お姉ちゃんだもん。
なのはだってやきもち焼きます。まだ九歳だもん。

以上、そんな二十九話でした。
52名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/08(土) 19:01:47 ID:dMuhUazw
GJ!
1.2.3期のキャラが集合だなw
ところで、三期はやるんですか?
53名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/08(土) 19:01:51 ID:gH9/SRGG
GJ
ついになのはとはやてが会っちゃいましたねー
これがAs以降にどう関わってくるのか気になる所です
54名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/08(土) 19:33:31 ID:Bvou0IdV
なの魂乙GJっした!何このファーストコンタクトの嵐w
いつぞやの番外編からのStS編を期待せざるを得ないんですが!
55名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/08(土) 19:45:14 ID:+9bvkCey
>「あ、あの、違うんです! あたし別に怪しい人なんかじゃなくて、あの、その!」
>「……あ」
>「むぁー……いちごパフェ……」

ぐぬ、お、おぉぉぉぉ!(悶絶)

いや、もう、ね。ディエチかぁいいよディエチw
他にも色々と見所はあったのですが、全てディエチに持っていかれましたw
そしてちょいと新八にヤキ入れてくる(ぉ
56名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/08(土) 19:45:44 ID:kJBgspb4
GJ!
いやはやディエチがこれほどお約束がはまるとは。
それと銀さんがなのはちゃんが寂しい時に一緒にいるとは、これは良いですね。
57名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/08(土) 19:48:54 ID:QFIvKX8Q
ディエチと新八がフラグ立てたー
ミツバ編はそろそろ終盤ですね。シグナムがどんな風にからむの
か楽しみです。
58名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/08(土) 19:56:29 ID:BZpsaPTo
GJ!!
まさかここでなのはとはやてが出会うとは思いませんでした。w
闇の書事件、どうなるのかなあ?
59名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/08(土) 20:02:57 ID:02TPQKjK
なの魂さん、GJでござんす!!
にしても・・・

>「……あ」
>「あ」

・・・え、何これ?ディエチさん×ぱっつぁんのフラグ・・・?
な・・・、なずぇだぁ〜!?何故にぱっつぁんと彼女にフラグがぁ〜〜!??
・・・はっ!ま、まさか・・・、お互いに地味〜なポジション(ディエチ=砲撃手=なんか地味っぽい(を)&ぱっつぁん=ダメガネ=地味なんで・・・)、つまり『ジミー』という人種同士のカップリングという訳ですかこれは!?
60名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/08(土) 20:42:02 ID:mckTrKXd
なの魂氏GJ!としかいえねー!
今回見所多過ぎだい!

ミツバ編のこととか

なのはとはやての出会いとか!

ディエチの巫女服とか!!
ディエチの巫女服とか!!!
ディエチの巫女服とか!!!!
ディエチの巫女服とか!!!!

ぐわーーーーーー!(想像して発狂しました)
61名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/08(土) 20:44:41 ID:Z1WPd8Yq
なの魂氏GJ。何気に恭也ニーサンがいい味出してるなあw
62名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/08(土) 21:07:04 ID:QLVnORH7
ぱっつあんが!ぱっつあんがフラグおったておったぁっぁぁ!?
つーか、なのはの嫉妬に萌えた!
GJでした!!そしてAsでどうなるのかww楽しみです!
63名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/08(土) 21:44:55 ID:dHDf/Tzt
そういえば魔法少女のほうのなのはは家族から微妙に孤立気味なんだったな
そうなるとたしかに一人でいるときは銀さんが面倒見てることが多くなったわけで
なのはのほうから何かしら深い感情を抱くことも考えられるわけで
何が言いたいかというとなの×g(ry
64名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/08(土) 21:54:44 ID:fWKih+/d
GJ!
新八はとことんナンバーズに縁があるな。次は誰と交錯するのやら。
そして何よりディエチの巫女服!巫女服!
65名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/08(土) 22:21:45 ID:jKxjeE3q
>60,64
ディエチの巫女服……同志よっ!!!

(* ^^)人( ̄ー ̄)人(^^ *) トモダチ♪
66リリカルルーニー ◆fhLddwC5FM :2008/11/08(土) 22:43:12 ID:Lq2f6lVv
なの魂氏、GJ!
そして……

>60,64,65
ディエチの巫女服……仲間がこれほどいようとはっ!

ところで、23:30ごろから、「Lyrical in the Shadow」を投下しようと思っています。
よろしいでしょうか?
67名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/08(土) 22:54:53 ID:xzR0+S1W
支援なんだぜ
68名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/08(土) 23:13:54 ID:YRYUa9zf
ばか者め!
支援すると思った瞬間には支援する。
そして、投下すると思った瞬間にはもう投下してるんだぜ!!!

お待ちしてますw
69リリカルルーニー ◆fhLddwC5FM :2008/11/08(土) 23:31:21 ID:Lq2f6lVv
時間になりましたので、投下させていただきます。

以下注意事項
1.「SHADOWRUN 4th Edition」とのクロスです。
2.ようやく邂逅です。
3.時系列は、Strikersの後です。
4.ゲストとしてですが、オリキャラが出ます。
5.タイトルは「Lyrical in the Shadow」。15レス+1です。

(>)しかし、なのはの魔法は随分派手だな。
 隠密行動が基本のランナー向きじゃないな、あれは。
(>)フロッガー

(>)派手な魔法というのは、それだけでも役に立つ。主に囮にな。
 それに、幻影魔法まで使えるのなら、映像関係者から引っ張りだこだろう。
 彼らは、その手の魔法使いを常に欲しているからな。
(>)イーサノート

それでは、始まります。
70Lyrical in the Shadow(0/15) ◆fhLddwC5FM :2008/11/08(土) 23:34:03 ID:Lq2f6lVv
生き残れたんなら、たぶんうまくやったのさ
        ―――JKW、フリーランサー

Lyrical in the Shadow
 第1話「ウィザーズ・ストライク!」後編
  〜それは最悪の出会いだった〜



71Lyrical in the Shadow(1/15) ◆fhLddwC5FM :2008/11/08(土) 23:38:36 ID:Lq2f6lVv
[……ちょっとまずいかもしれないよ]
 目的地まであと数分、と言ったところで、不意に、黒ひげさんのブルドックに乗っているランドールから通信が来た。
「どうした、ランドール」
[セーフハウスのシステムを、誰かがハッキングしてるみたいだ]
 それはランドールも同じだ、とは思ったが、茶化していい事態じゃない。ハッキングをされているという事は、アタックチームは、すぐにでも突入可能、と言うことだろう。
「それじゃ、飛ばすよ」
『譲ちゃんは先行してくれ。こっちの速度(あし)じゃ、どうやっても追いつけん』
 同じ事を感じたのだろう。隣でフェイが運転するパトロール1と、後ろにいるブルドックが、スピードを上げる。
 だが、どちらも装甲付きとは言え、パトカーと輸送用バンだ。黒ひげさんの技能をもってしても、この差を埋めるのは難しいのだろう。
 だが、とりあえずやらなくてはいけないのは……
「ランドール。そのハッカーを落とせるか?」
[やって見るよ]
 確か、コムリンク破壊用だけでなく、殺傷系のプログラムも持っていたはずだ。ハッカーを落とす事が出来れば、相手の脅威はかなり減る。よしんばだめだったとしても、その後のサポートに支障をきたす事はまちがいない。
 ……まぁ、だめだった時、というのは、ランドールが危険にさらされたとき、ということなのだが……奴のことだ。無事に逃げおおせてくれるさ。
「それで、アレンはなにやるの?」
 何処となく楽しそうに(いや、恐らく楽しいのだろう)フェイが尋ねる。とは言ってもなぁ……
「今の状況で、俺になにが出来るって言うんだ?」
「先行してみてきたら? アストラルから」
 なんて事言い出すんだ、この娘は。
 確かに、その手はある。だがそれは、状況がまったく分からない時にこそ、真価を発揮する。
 ランドールのハッキングにより、セーフハウス内の状況がある程度分かっている今、どれほどの意味があるのか。
 とは言え、アタックチームの状況が分かってないんだよなぁ……えぇい、くそっ!
「それじゃ、身体は頼むぞ」
「りょーかい」
 フェイの声を合図に、俺は、意識を切り替えた。もう一つの世界――アストラル界(プレーン)の扉を開くために。
72Lyrical in the Shadow(2/15) ◆fhLddwC5FM :2008/11/08(土) 23:42:52 ID:Lq2f6lVv
 そこをもっとも簡単に説明すれば、「生命の光にあふれる世界」だ。
 物理界と平行に存在するこの次元界(プレーン)は、命ある物の光――いわゆるオーラによって輝いている。逆に、命のない物は灰色にくすみ、輪郭もぼやけている。
 この世界を知覚出来るのは、魔法使い以外にもいる。その中には、魔力に覚醒していない者さえいる、という。
 だが、その先――アストラル界に己を投射できるのは、俺達のような魔法使いだけだ。
 己の精神を肉体から解き放ち、アストラル界に投射する。そうする事で、物理界のあらゆる制約にとらわれることなく、自由に動き回る事が出来るのだ。
 だが、問題もある。物理界とアストラル界の壁が「硬い」ため、互いが互いに影響を与えることが出来ないのだ――幾つかの例外を除いて。そのために、孤立無援で闘うか、指をくわえて見ているかのどちらかになる事もある。
 とは言え、こちらに来たからには覚悟を決めるしかない。俺は車をすり抜け、記憶を頼りにレッドさんがいるはずのセーフハウスへと向かう。そのスピードは、車なんかよりもはるかに速い。本当に「あっという間」だ。
 とりあえず、近くに来たところで木々のオーラに隠れ、あたりを観察して見る。
 セーフハウスとはよく言ったもので、本来ありえないはずの光にあふれている。窓に取り付けられた格子に巻きつく蔦だけでなく、壁までもが光っているのだ。しかもただのオーラではなく、こちら側に存在する事を示す光り方だ。
 まぁ、この家の役割から、あれがなんなのかは想像がつく。「覚醒ツタ」のブラインドと、「二元性バクテリア」を封入した壁。そんなところだろう。
 こいつらがいわゆる「物理界とアストラル界に同時に影響を与える例外」――俗に「二元生物」と呼ばれるものだ。たかが植物とバクテリアだが、これだけでアストラルからの進入は面倒になる。
 とりあえず、アストラルからの警備を確認した俺は、周りにいるはずの人影を探す。そして出てきたのは、6つの人影。
 内4つは、オーラが極端に薄い。それはつまり、サイバーウェアなどによって身体改造を行っている――いわゆる「サムライ」達だ、ということだ。それが4人……この時点で厄介だな。今の俺には関係ないとはいえ。
 1つはまったく逆に、光にあふれている。しかもそれは、俺と同じ魔法使いのオーラだ。しかも、こんなところまで出張るという事は、恐らく戦闘魔法のエキスパート。魔法の助けとなる収束具の類を持っていないことが、救いだと言っていいだろう。
 最後の1つは……はっきり言って、「人」と言いたくない奴だ。何せそいつは、逆巻く炎をまとったトカゲ――恐らくもなにも、火の精霊だろう。古式ゆかしきサラマンダー、というわけだ。
 ……帰りたくなったな、おい。
 とは言え、ここまできた以上、逃げ出すわけにもいかない。精霊がいる以上、奴の相手は俺がするしかないんだし、その分、サムライ相手にがんばってもらおう。フェイあたりは喜んでやりそうだが。
 と、馬鹿な事を考えているうちに、あちらさんはなにやら相談を始めたようだ。恐らく、厄介な防衛能力を持つこの屋敷に、どうすれば良いのか対策を練っているのだろう。
 しばらくの後、1人が諦めたように首を横に振って、玄関前に集まる。正面からの襲撃か。あまり得策とはいえないだろうが、それだけ、搦め手からではここの攻略が難しい、ということだろう。
 さて、こちらものんびり構えている場合ではなくなったな。とりあえず、奴らをせかしておくか。
 といっても、一旦戻っていては時間がかかる。ここは1つ、奉仕精霊――ウォッチャーにでも伝言を頼むとしよう。
 俺はすばやく、召喚のための術式を組み上げる。そして、俺の呼びかけに応え、それが目の前ににじみ出てきた。
「……あ゛〜? 何の用ッスか、ご主人」
 ……なんでこんなんなんだよ……
73Lyrical in the Shadow(3/15) ◆fhLddwC5FM :2008/11/08(土) 23:46:17 ID:Lq2f6lVv
 だからと言って、誰を呼ぶのか選べない以上、諦めるしかないんだよなぁ、くそぉっ!
「あ〜、伝言をだな……」
「でんごん〜? んなことのために呼んだんッスかぁ?」
「……とにかく、静かに聞け」
「それが頼みごとッスか」
 こっいっつっはぁ〜ッ!!
 思わず叫びだしそうになるのを、懸命にこらえる。距離はあるとは言え、万一にでも向こうの精霊に聞かれたら、こっちの身がやばい。
 確認のために向こうを見るが、ありがたい事に、こちらに対しての動きはない。だが、いつでも突入しそ
 桃色の閃光が奔った。
 その奔流は扉を壊しただけでなく、その前に集結していたアタックチームを飲み込み、森の中へと消えていった。
 …………なんだ、あれは?
 魔法か? 魔法なのかっ?! あんな馬鹿げた魔法、見た事も聞いた事もないぞっ!
 どこかのアニメのビーム砲じゃあるまいに、あんなものが存在していいのか? そもそも、あれが魔法だとしたら、どんな魔力を持ってるんだ、あれを使った奴は。
 恐らく、間接攻撃魔法の一種なんだろうが、さすがにあんな魔法では、喰らった方を心配してしまうな……
 そんな恐怖の閃光が納まったあと、そこにいたのは……倒れる事のなかった4人と1匹。さすがに、魔法使いは耐え切れなかったらしい。呪文対抗は間に合ったのだろうが、それだけの高威力だったのだろう。
 こちらにいる精霊はともかく、サムライ4人は、よく耐えられたものだ。やはり、普段からの鍛え方が違う、と言うことか。あ、でも、魔法使いも起き上がるな。本当に倒れただけか。
 だが、あまり呆けてもいられない。何せ、精霊が今しがた出来た穴から突入したのだから。
 ……って、まずいっ!
「フェイに伝えろっ! 『パーティーが始まった』ってなっ!」
「え〜、んなこと伝えるんっスかぁ? しゃーないですねぇ」
 ……なんかもう一言言ってやりたいが、今はそれをBGMにして会場に向かう。はっきり言って、精霊が動いた事が、一番の脅威なのだから。
 なにせ、アストラル界にいる奴には、物理界の障害など、一切関係ないのだ。もちろん、攻撃だって意味がない。もっとも、物理界から見えないのだから、攻撃のしようがないのだが。

 そもそも、精霊の本体はアストラル界にいる――いわゆる「アストラル体」なのだ。「物質化」と言って、物理界に出る事も出来るが、その時でも、魔力のない攻撃はほとんど効かない。そして、レッドさんは魔力をもっていないと聞く。
 となれば、精霊のやる事は簡単だ。全ての障害をアストラル界で通過し、レッドさんの目の前で物質化する。そうすれば、いつの間にか炎に包まれて終わり、と言うわけだ。
 それを防げるのは、今現在、奴の動向を把握している俺しかいない。戦闘が得意とは言えない俺からすれば、はっきり言って損な役周りだ。だが、そんな事も言ってられない。これは仕事なんだ。
 ……人間、ある程度は諦めが大切なんだ。
 泣きたくなるのを堪え、アタックチームをすり抜けた俺は、玄関に開いた穴から中へ入る。そこから続く廊下の先には、先ほどの術を使ったのであろう魔法使いが1人。
 ……って、あれは本当に魔法だったのか……何か、自信を無くすな……
 だが、問題となる精霊がいない。やはり、一目散にレッドさんのところへ向かったのだろうか。となると……
「きゃぁぁぁぁぁっ!」
 上から聞こえてくる悲鳴。やはり2階かっ!
74Lyrical in the Shadow(4/15) ◆fhLddwC5FM :2008/11/08(土) 23:52:25 ID:Lq2f6lVv
 すかさず天井をすり抜け、2階へと躍り出る。するとそこには、物質化した火の精霊と、怪我をしているのか、身動きがとれなさそうな男(恐らくレッドさん)が。
 そして、その男を守るように障壁を張る少女の姿があった。
 その少女のオーラから伝わってくるのは、恐怖と使命感。こんなものがいきなり現れ、攻撃して来たのならば、当然だろう。それでも障壁を張った事は、驚嘆に値する。
 そのおかげで、レッドさんらしき人物を守ることが出来たし――なにより、俺にとってきわめて有利な状況になった。
 それは、精霊が物質化しているという事。
 物質界とアストラル界は、相互に影響を与える事が出来ない。だが、それには例外がある。
 それが、物質界とアストラル界の両方に、「同時に」存在している事。具体的に言ってしまえば、この家のセキュリティにもあった、覚醒ツタや二元性バクテリアのような、いわゆる二元生物がそれである。
 他にも、物質界に影響を与えられるようになったアストラル体――つまりは、目の前にいる物質化した精霊もそれに当たる。
 俺は、この幸運に感謝した。今の今まで気付かれなかった事。そして、精霊が物質化していた事。反動が怖いが、今は気にしない。
 すかさず、術の公式を組み上げる。神経に過負荷を与え、衰弱させる術、《喪神破/スタン・ボルト》。その公式に魔力を与え、視線に乗せて目標――火の精霊に送る。この一撃で落ちるよう、切実に願いながら。
 精霊が衝撃で震えた。ようやくこちらに気付いたようだ。振り向きざまに、その牙で喰らいつきにかかる。
 だが、さっきの呪文が効いたのか、その動きは緩慢だ。いくら戦闘が苦手だと言っても、こんなものを喰らうほどじゃない。
 炎の牙を躱したところに、今度は爪が振りかぶられる。だが、こちらがアストラル界にいて、そちらが物理界に影響されている事を忘れてもらっては困る。
 肉体の軛から解き放たれた魔法使いの速さ、忘れたわけではあるまい!
 すかさず、2発目の喪神破を組み上げる。そして、それは精霊に当たり……拡散して消えた。……って、あれぇ?!
 振り上げられた爪が、無情にも振り下ろされる。しかも、今度はかなりやばい!
「うぉあっ!」
 思わず上がった悲鳴と共に、後ろに下がってそれを何とか躱した俺は、3発目をぶち込んだ。今度はちゃんと発動し……短い咆哮と共に、精霊の姿が掻き消えた。
 何とか墜とせた。だが、その喜びに浸っている場合じゃない。下では、まだ戦闘が続いているのだ。俺はすばやく床をすり抜ける。
 ちらりと廊下の奥を見ると、魔法使いが障壁を張っているのが解った。それを破れず、四苦八苦しているようだが……ちょっと待て。
 アタックチームが使っているのは、恐らくSMGだろう。それを完全に防ぎきる障壁なんて、どうやったら張れるんだ?!
 あの魔法使い、ほかっておいても大丈夫なんじゃないか?
 ちらりとそんな事を考えたが、成り行き上、そうもいくまい。とにかく、今は肉体に戻ろう。そう思いながら、俺は外へ出る。
 ちょうどその時、フェイの車が姿を現した。嬉々迫るオーラをまといながら。
75Lyrical in the Shadow(5/15) ◆fhLddwC5FM :2008/11/08(土) 23:56:54 ID:Lq2f6lVv
「サミー4にウィズ1! 廊下奥にV1、2階に2!
 それから、止まれっ!」
 肉体に戻って開口一番、俺はそう叫んだ。
 だが、世の中と言うものは無情である。
「奇襲に速さは重要だよ」
 エンジンがさらに唸り、シートに押し付けられる感覚が強くなる。って、加速したぁ?!
 正面にいたサムライが、SMGを撃ってきた。フェイはハンドルをひねって躱そうとするが……頼むから、俺の方を敵に向けるなっ! しかも躱せてないっ!
「おわぁっ!」
 すぐ脇から聞こえる鉄のドラムに思わず悲鳴をあげながら、俺はこれを作ったクライスラー−ニッサンに感謝した。まったく、良くぞここまで頑丈に作ってくれた。装甲はへこみはしたが、中にまでは飛び込んでこないのだから。
 だが問題は、この妨害でもフェイは止まらないと言うことだ。
 エンジンの咆哮と共に大きくなる、ブラインド付の大窓。俺は、この先に起きる事を予感しながらも、叫ばずにはいられなかった。
「止めろぉぉぉっ!!」
「とっか〜んっ!」
 ブラインドがひしゃげ、ガラスが砕ける音を聞きながら、俺は考えた。

 フェイがこの暴挙を控えるのと、俺が慣れるのと、どちらが「進歩した」と言えるのだろうかと。

 車はそのまま部屋に飛び込み、家具を跳ね飛ばし、遮蔽をとっていたサムライごと扉を突き破り、廊下の向かいの壁にめり込んだところで、ようやく止まった。
 あまりの事に、銃声もが一瞬止まった。その隙をついてフェイは飛び出し(よかったな、廊下が広くて)、腰の両側に下げたホルスターから、愛用のヘビーピストル、マンハンターを引き抜く。
 銃声と共に二つの方向に向かって――すなわち、つぶされたサムライと魔法使いに向かって、炸薬入りの鉛を吐き出した。それが二つの命への止めとなり、同時に、銃撃戦の再開のベルを鳴らす。
 そして、フェイが叫んだ。
「香港警察だぁっ! 手を挙げろぉっ!」
 いや、違うだろ。
 呆れながら出ようとして、寸前で思い止まった。何せ、こちらは玄関側。つまり……こちらに向かって銃口が光っているのだ。開けたとたんに蜂の巣になるのは必至だ。
 仕方なく、車窓から敵の位置を確認する。手前の扉を遮蔽に1人、玄関に2人、か。ならば、とりあえず……

 と、その時、手前の扉に隠れたサムライが、こちらを確認しようと顔をのぞかせたところに、偶然目があった。
 だが、ロマンスが生まれる事はない。愛の言葉の変わりにプレゼントするのは、本日4発目の喪神破だ。
 見えざる魔力が相手の中で炸裂し、その衝撃に小さく震える。そしてそのまま、崩れ落ちるように倒れ、手から銃……ではなく、手榴弾が零れ落ちる。
 ……あれ?
 轟音と爆風が、辺りを嘗め尽くした。

76名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/08(土) 23:59:07 ID:Pbn6b7sY
支援
77Lyrical in the Shadow(6/15) ◆fhLddwC5FM :2008/11/09(日) 00:00:20 ID:A7FhG5F5
 遮蔽の向こう側にいる敵を倒すのに、手榴弾やグレネードはきわめて有効だ。まして、このような廊下では、壁が壊れずに衝撃を反射する事すらある。
 敵を一網打尽にするには、有効な手段である。
 だからこそ、サムライは銃弾を引き付け、後方の魔法使いやハッカーが狙われないように、前線を構築する。チーム全体の生存率を高めるため、自らを死地に置くからこそ、「サムライ」と呼ばれるのだ。
 衝撃に揺さぶられる車内で、俺はそんなとりとめの無い事を思い出していた。確かあれは、ローンスター時代だったような……
 まぁ、そんな事を考えていても、現実逃避以外の何物でもない。ただ単に、「手榴弾によって1人死んだ」。それだけだ。
 殺す気が無かったのに殺してしまったのは、少々胸が痛むが……殺るか殺られるかの状況だ。知り合いが死ぬより、随分とましだ。
 ……まぁなんだ。俺が言うのもなんだが……「運が悪かった」と言う事だな、うん。
「今のは凄かったね!」
 むしろ「歓喜の声」と言った方がいい声を、フェイがあげた。その間にも銃撃は続き、また1人が倒れる。
 あと1人か。さすがにそろそろ、向こうも撤退だろう。だが……

 更なる銃声が外から聞こえ、最後のサムライが倒れた。
『よぉ、大丈夫だったか?』
 そんなスピーカー越しの声と共に、その猛獣が姿を現す。
 ホワイトナイトと言う名のLMGの牙をもった、四足獣を模した黒ひげさんのドローン、ドーベルマンだ。
「えぇ、何とか。
 そちらのお嬢さんは?」
 俺は車から出ながら、奥にいた女性に声をかけた。
 まだ若い、日本人らしい少女……なのか?(日本人は若く見える、と言うしな)栗色の髪をツインテールにして、白を基調にしたジャケットを着ている。
 だが、一番目を引いたのは、その杖だ。
 魔力を使う行為を助ける、収束具のようだが……あんなでかいんじゃ、扱いにくいだろうに。だいたい、あのマガジンらしい装飾はなんだ? 製作者のセンスを疑うな。
「……大丈夫ですけど……誰なんですか、あなたたちは?」
 警戒を滲ませながら、その少女(と言う事にしておこう)は尋ねた。……あぁ。
「そういえば、名乗ってなかったな。とりあえず……
 フェイ、車をどけろ。いつまでもここにあったんじゃ、邪魔だ」
「はいはい。すぐに退けるよ」
 そう面倒くさそうに言って、フェイは車を下げる。これで多少は落ち着いて話が……
「! ガジェット?!」
 ……はぁ?


78Lyrical in the Shadow(7/15) ◆fhLddwC5FM :2008/11/09(日) 00:04:10 ID:A7FhG5F5
 そもそも、車が飛び込んできたときから、混乱しっぱなしだった。
 でも、それは当然かもしれない。目の前に車が飛び込んできて、冷静でいられる人間なんて、どれほどいるのだろうか。
 しかも、その車から飛び出してきたのが、地球にはいないはずの人だから、なおさらだ。
 シグナムさんよりも大きな、筋肉質の体。尖った耳。下顎から伸びた牙。ミッドチルダでも、あまりお目にかからない。そんな体格をした女性だ。
 そんな人が、発砲してから「香港警察だ」なんて言うから、余計に混乱して……
 だって、「発砲してから」だよ? 警告するなら、発砲する前にしようよ。しかも、ここはアメリカだよ? いくらなんでも、香港警察は出てこないんじゃない? 確かにこの人、中国系みたいだけど……
 何とか気を取り直し、魔法を使おうとしたところに、手榴弾が再び爆発。車とシールドがあったから、衝撃は大した事なかったけど、その音に一瞬、身が竦んでしまった。
 そうやって、手を出すタイミングを悉く失ったせいで、気付いたら、銃撃戦は終わってしまっていた。
『よぉ、大丈夫だったか?』
 そんな時に聞こえた、スピーカー越しのような声。でも、誰がしゃべっているのかは、車と女性の陰になっているせいで、よく解らない。
「えぇ、何とか。
 そちらのお嬢さんは?」
 そういって車から出てきたのは、彫りの深い白人男性だった。どこか茫洋としているが、探るような眼光が私を……と言うより、レイジングハートを射抜いた。
「……大丈夫ですけど……誰なんですか、あなたたちは?」
 思わず、警戒してしまう。結果としては助けてくれたのだから、お礼を言うべきなのかもしれない。だけど、どうしても、それをためらってしまう。
 あの銃撃戦の終わり方は、皆殺しのはずだから。
 この位置からじゃ、全部は見えないけど、多分、そうなのだろう。
 ゴートさんは「援軍がくる」と言ったけど、もしこの人たちがそうじゃなかったら……闘う相手が変わっただけだ。
 私の後ろにいるゴートさん、そして、ヴィヴィオのためにも、引くわけにはいかないのだから。
「そういえば、名乗ってなかったな。とりあえず……
 フェイ、車をどけろ。いつまでもここにあったんじゃ、邪魔だ」
「はいはい。すぐに退けるよ」
 そう言って、フェイと呼ばれた女性が車を動かす。そして、その車の陰から現れた、3人目の声の主。

「! ガジェット?!」
79Lyrical in the Shadow(8/15) ◆fhLddwC5FM :2008/11/09(日) 00:07:54 ID:A7FhG5F5
 その姿を見たとき、思わず声が出てしまった。
 ヴィータちゃんがゆりかごの中で見たって言う、W型と命名された、他脚型のガジェット。記録映像で見たあの機体ほど鋭角的なフォルムじゃないけど、どこか似ている機体。
 私の緊張が高まる中、当の2人――白人男性とガジェットは、不思議そうに顔を見合わせた。
「……『ガジェット』って言うほど、目新しいものでしたっけ?」
『戦闘用ドローンだからな。一般には出回らんから、そっちからすれば目新しいかも知れんが……
 少なくとも、電化製品では無いぞ』
 そんな会話の内容から、互いの認識に齟齬がある事に気付く。「ガジェット」の意味が、私とあの人たち(もしくは、この世界)では違うのだろう。
[ママッ!]
 ちょうどその時、ヴィヴィオからの念話が入った。
[ヴィヴィオ! どうしたの?!]
[ゴートさんが、下におりようとしてる!]
 えっ!
 いくらなんでも、この人たちが誰なのか分からない状況で会わせるのは、問題が……
「……どうかしたのか?」
 と、急に黙り込んだ私に、訝しげに尋ねてきた。
「いえ、それより……あなたたちは誰なんですか?!」
 ごまかすように、話を元に戻そうとする。声を少し荒げてしまったけど、これ以上に体裁を整える余裕が無い。
「……あぁ、そうだな。
 こっちにいる人の救援に来たんだが……会えるかな?」
 そういって、上を指す。……って……
「……ゴートさんの言ってた『援軍』ですか?」
「……『ゴート』?」
『別人か? 確か、『レッド』と名乗っているはずじゃなかったか?』
 まさか、違うっ?!
80Lyrical in the Shadow(9/15) ◆fhLddwC5FM :2008/11/09(日) 00:11:09 ID:A7FhG5F5
「いや、俺で当たってるよ」
 そういって階段から降りてきたのは、ゴートさんとヴィヴィオ。……って、
「ゴートさん! 動いちゃ……」
「いや、いい。
 それより、あんたたちが援軍なんだろ、ブルー?」
 駆け寄ろうとする私を手で制して、ゴートさんは、何事も無いように、あの男性に話しかける。
 ……って、「ブルー」って?
「えぇ。……え〜っと……『飛騨から助けに来ました』」
 ……飛騨?
 えぇ……と……合言葉……なんだろうか? ……向こうの人も、ちょっと困惑してるけど。でも、ゴートさんは納得してるみたいだし……
 とりあえず、援軍……でいいのかな?
「ゴートさん、これは……?」
 思わず、尋ねてしまう。

『……あ〜、つまり、だ。
 その小娘の言った『ゴート』っていうのは、偽名だ、って事だな』
「もちろん、『マスク・ザ・レッド』もそうだがね」
 納得したようなドローンの主に、苦笑しながらゴートさんは言った。
 ……って……
「なんでそんな事をっ!」
「……敵か見方か判らん状況で、本名を名乗るなんて、出来るわけないだろう?」
 今度は、呆れたように言った。
「あぁ、それで『スケープ・ゴート』からですか」
「咄嗟だったからな。とは言え、悪くないだろ?」
 なんだか、私だけ取り残されてるみたい……
「……なのはママ、どういう事?」
 あぁ、取り残されてるのがもう1人。
 そんな私達をちらりと見てから、あの男の人が話し始めた。
「とりあえず、黒ひげさん。車をもってきて、レッドさんを乗せて貰えませんかね。
 あの2人は、俺と一緒に、フェイのに乗せますんで」
『そりゃかまわんが、依頼を受けたのはお前だろ? お前がこっちに乗らなくて良いのか?』
「……あの車にけが人は乗せれませんよ。主に運転手のせいで」
「ほほぅ、それは悪かったね」
 そう言ってきたのは、先ほど車に乗って行った女性だった。威嚇するような、獰猛な笑みを浮かべているけど、目が笑っている。
 だからだろうか、男性はそれに怯まず、言葉を続ける。
「ランドールには、もう一仕事してもらわないといけないですから、こっちに乗せるわけにもいかないんですよ。
 それこそ、気付いたらどうなっている事か」
 ……「フェイ」と呼ばれるこの女性の運転は、そんなに酷いのだろうか……
「それに、2人に聞いておきたい事もあるもんで」
 そういって私を見たその目は……
 再び、探るような光を湛えていた。
81Lyrical in the Shadow(10/15) ◆fhLddwC5FM :2008/11/09(日) 00:14:06 ID:A7FhG5F5
「あぁ、燃やしておいてかまわんそうだ。……うん、頼む。
 さて……と。まずは礼を言っておかんとな。
 あんたがレッドさんを守ってくれたおかげで、こっちの仕事も何とか成功だ。ありがとう」
「あ……はい……」
 フェイさんの車の中、誰かとの通信を終えた男性が優しげに話しかけてくれるけど、私は、居心地の悪さを感じていた。
 何せ、パトカーである。しかも、家に飛び込んだせいで、フロントはぐしゃぐしゃ。横には弾痕まである。
 ……どう見たって「いわくつき」のパトカーに乗ってくつろげる人が、目の前の2人以外にいるのなら、見てみたい。
「でも、もう少し依頼が早ければ、簡単だったんじゃない?」

「それは向こうの都合だからな。こっちじゃ関与できん。
 なんにせよ、あんたにもそれ相応の礼金を払わなきゃならんと思うんだが……コムリンクはアクティブにしないのか?」
 そう訊かれたとき、ドキッ、とした。何せ、未だに「コムリンク」が何なのか、知らないのだ。とりあえず……
「……今は……持ってないんです」
「……まぁ、あんなごたごたがあったからな。なくしててもしかたがない、か」
 ……うん。何とかごまかせたみたい。
「……それじゃぁ、あんたが何者なのか、教えてもらえるかな。
 あぁ、ちなみに俺は、アレン・ブラッカイマー。しがない探偵だ」
 私の方を振り返りながら、彼――アレンさんは、そう言った。
「あたしはフェイニャン(飛娘)。香港警察だよ」
 車を運転しながら、フェイさんが続ける。……って。
「さらっと嘘をつくな、さらっと」
 呆れながら、アレンさんが突っ込む。やっぱりと言うかなんと言うか、警察ではないみたい。
「Boo。でも、探偵なのは間違いないんだけどね」
 ちょっと拗ねたように言った。でも……ごめんなさい、正直言って、可愛くないです。
「んで、あんたは?」
 再びこっちを見て、アレンさんが尋ねた。
 私は戸惑った。ゴートさん、(いや、レッドさんか)みたいに、また偽名を使われているのかもしれないから、警戒した方がいいはず。だけど、ちゃんと名乗ったほうがいい。そんな思いが、どうしても消えない。
 ……うん、ちゃんと名乗ろう。
「私は高町なのは。こちらはヴィヴィオ。私の娘です」
「高町ヴィヴィオです」
 ちょっとおどおどしながら、ヴィヴィオが続いた。
 慣れない状況の連続で、緊張しているんだろう。安心させようと、きゅっと抱き寄せてあげる。
「そうか。
 ……それで、なのは。なんであんなところに居たんだ?」
 アレンさんは、三度私を見つめ、尋ねてきた。とは言え……
「何処から話せばいいのか……」
 簡単に言ってしまえば、ミッドチルダから地球へ向かう際の転送事故のせいだ。
 地球とは別の次元世界ミッドチルダには、私の現在の職場「古代遺物管理部機動六課」がある。だから、普段はそっちで生活してるんだけど、今回は、ヴィヴィオの紹介も兼ねて、里帰りをしよう、という事になった。
 そこで、近くまで行く次元航行船に乗せてもらい、近付いた所で、長距離の次元転送をしてもらったんだけど……着いたら、まったく知らない世界だし、いきなり、あんな戦闘に巻き込まれるし……
「……まっ! なのはママッ!」
 ……と、そこまでいったところで、ヴィヴィオに引っ張られている事に気付いた。
「ん……あ、どうしたの、ヴィヴィオ?」
 すごく慌ててるけど、何かあったんだろうか?
「そんな事まで言っちゃっていいの?!」
 切羽詰った表情で、そんな事を言ってくる。でも……そんな事?
 私は、さっきまで自分が「言っていた」事を思い返して見る。そして……ぞっとした。
 私……なんて事をっ!


82Lyrical in the Shadow(11/15) ◆fhLddwC5FM :2008/11/09(日) 00:17:40 ID:A7FhG5F5
 その話を聞いたとき、ただの妄想だと割り切りたかった。
「……アレン、あの『なのは』ってのが言ってること、本当なの?」
 フェイが、訝しげに訊いてくる。まぁ、言いたい事は分かるが……
「生憎、言ってる事が本当かどうかを『知る』事は、俺には出来ん」
 確かに、《真偽分析/アナライズ・トゥルース》と言う呪文はある。しかし、俺はその呪文式を知らない。
 とは言え、
「知る事は出来んが、あっちの『ヴィヴィオ』って娘の言う事を考えると、本当なんだろうな」
 でなければ、あそこまで慌てる事は無いだろう。何より、あんな子供に、あんな演技が出来るとも思えない。
 まぁ、その高町親子はと言うと、こっちを相当警戒しているのだが。
「あの……今言った事は……」
「魔法で何とかなら無いの?」
 なのはの言葉を遮り、フェイが訊いてくる。……って、あのなぁ……
「魔法を使った結果があれだ」
 使ったのは、《感化/インフルエンス》。簡単に言ってしまえば、催眠術をかける呪文だ。もちろん、普段なら、使った事さえ打ち明けないものだが……
「! いつ使ったんですかっ?!」
 ヴィヴィオを庇うように抱きかかえながら、なのはが睨んでくる。まぁ、そうしたくなる気持ちは解るが……
「いつ……って言われてもなぁ……」
「目と目があった瞬間だよね」
 ……何処のラブソングの歌詞だ、それは? あながち間違っていないのが、余計に腹が立つのだが。
「まぁ、お前さんの言う『ミッドチルダ』じゃどうかは知らんが、こっちの魔法使いは、視認出来れば魔法をかけれる、と言うことだ」
 そこまで言って、アストラルから見た時にあった、あの奇妙な光景を思い出す。
「それに、あんな派手な魔法陣も出ない」
 そう、あの障壁を張っていたときに、なのはの足元にあったあの魔法陣。あんなものを見せる様式を、俺は聞いた事が無かった。
 だが、なのはの言う別の次元世界――こっちで言う上位次元界(メタ・プレーン)なら、有るのかもしれない。
「それじゃ、いつ魔法を使ったのか、分からないじゃないですか!」
 非難するような声が響く。あぁ、もう!
83Lyrical in the Shadow(12/14) ◆fhLddwC5FM :2008/11/09(日) 00:21:11 ID:A7FhG5F5
「あぁ、そうだよ。だから『覗き見野郎』って蔑まれるんだ、魔法使いは」
 つい、不貞腐れてしまう。こっちだって、こんな使い方が気持ちいいわけじゃない。不審な相手だからこそ、わざわざ使ったんだ。
「でもさ、手の内を明かしたって事がどういう事か、考えてみたら?」
 フェイ、いい事言った。
「……それじゃ、信用してもいいんですか?」
 さっきより幾分和らいだ様子で、なのはは尋ねてきた。とは言え、信用できるかと言われると、難しいと思うが……
「そういうのとは縁の無いのが、シャドウランナーだよ」
 フェイ、悪い事言ってる。って言うか、余計警戒されるような事言うなよ!
 俺は思わず、胃のあたりを押さえた。さっきからキリキリと痛んでるんだ。勘弁してくれ。
「あ〜、とにかく、だ」
 何とか話題を変えようと、俺は必死に頭を回した。
「なのはの言っている事が本当だとすると、俺たちは、『ありえないこと』を目撃している事になる。下手に企業に知られれば、どうなるか解らん」
「そうなの?」
 事の重大さに気付いてないのか、フェイが気楽に訊いてくる。
「なのは、さっき『転送魔法』って言ったよな。そいつは、メジャーなのか?」
「……あまり使われませんけど、存在自体だけなら……」
 なのはは警戒したままだが、質問にだけは答えてくれた。
「だがな、こっちの魔法じゃ、それが使えない。そして、それが出来れば、莫大な利益を生む可能性がある。
 金儲け至上主義の企業が、目を付けないわけ無いだろう?」
 「時空連続体を改変できない」……それは、魔術の基本法則の1つだ。時間も空間も、「操作できるはずが無い」のだ。
「それに、なのはの言う『次元世界』と、俺たちの言う『上位次元界』が同じと仮定すると、さらにとんでもない事になる。
 次元間を物理的に移動するなんて、『絶対に不可能』なんだからな」
 「アストラル界と物理界の境界は越えられない」……これは、上位次元界に対してもそうだ。だが、この法則を無視できる魔法を、なのはたちはもっている事になる。
「つまり、こっちの世界で出来ないような事が出来る、って事は、下手をすれば『研究材料』としてみられる可能性がある、と言うことだ」
「なっ……!」
84Lyrical in the Shadow(13/14) ◆fhLddwC5FM :2008/11/09(日) 00:24:18 ID:A7FhG5F5
 事の重大さにようやく気付いたのか、なのはが驚きの声をあげる。なんとも暢気な、と思わなくも無いが、今までの「当たり前」が、いきなり「非常識」になるのだから、思考が追いつかないのも仕方がないだろう。
「それじゃ、なのはたちをどうするの?」
 ……まぁ、フェイの疑問ももっともだ。とりあえずは……
「ここまで知ってしまった以上、企業に知られてモルモットにされるのを見るのは、忍びないしなぁ……」
「相変わらず、甘いね」
 からかうように言ってくるフェイに、「うるさい」と一言返しておき、俺は続ける。
「とりあえず、俺たちには緘口令を敷こう。で、なのはたちは、あまり魔法を使わないようにしてだな……
 そういえば、その杖も、向こうの世界の収束具なんだろ? あまり見せびらかすなよ?」
 とは言っても、窓からはみ出さなきゃ車に乗せれないような物を、どうやったら隠せると言うのだろうか。まぁ、無茶な注文かもしれないが……
「……解りました。
 レイジングハート、待機状態に戻って」
『All right. Jacket off』
 なのはが杖に向かってそう言うと、返答の後、光の粒子に分解され、赤い宝玉のついたペンダントになる。しかも、ジャケットも輝いたかと思うと、何処にでもありそうな服に変わった……って……
「……魔法って、便利だね……」
「あそこまで便利なのは、こっちにはねーよ」
 もはや、驚愕を通り越して、呆れるしかない。
 服はまだ分からなくは無い。確か《仕立て/ファッション》とか言う魔法があったはずだ。
 だが、杖はまったく理解不能だ。あんなに小さくなるわけ無いだろ! しかも、しゃべったぞ!
「と……とにかく、だ。その……レイジングハート、って言ったっけ? それも、他の奴に取られないように、注意しろよ」
『It's reliable. Since there is no mind used in addition to a master』
 「マスター以外に使われる気は無い」、ね。ははっ。
 俺、謎の物体と会話しちゃったよ。
 でもまぁ、バーチャル・パーソンで架空の人間と会話してる奴らもいるんだ。この程度、大丈夫だよな、うん。
 俺は何とか精神を落ち着かせようとして、早くレイチェルに報告しよう、と心に誓った。
 酒が飲みたい。その欲望を、一秒でも早く満たすために……
85Lyrical in the Shadow(14/14) ◆fhLddwC5FM :2008/11/09(日) 00:27:06 ID:A7FhG5F5
「……浮気は男の甲斐性、って言うけどね」
 開口一番、レイチェルは俺に向かってそう言った。その顔は……すごく優しい笑顔だった。
 ……逆に怖いんですが……
「いや、そもそも浮気とか言う以前にだな……」
「なのはさんにヴィヴィオちゃん……でしたっけ。コムリンクの件は、よろしければ、こちらで用意しますが」
 ……無視されたよ……
「いえ、それでしたら、アレンさんが……」
「まぁ、愛人の一人ぐらい養えないようでは、男として問題がありますからね」
 だからその笑顔怖いって!
「あの、私とアレンさんは、そんな関係じゃ……」
「……ママ、『愛人』って?」
「えっ、……いや、それは……」
「ヴィヴィオちゃん、人には『知るべき時』っていうのがあるの。解るわね」
「……ぁい」
 そんな小さい娘をビビらせんなよ! あ〜ぁ、涙目になっちゃってるよ。
「でも、そうすると、報酬なのですが……」
「あ〜、それなら、俺が一度預かってだな……」
「……手を付けないようにね」
 ……俺、そんなに信用無かったっけ?
 何で成功の報告なのに、こんなに神経に悪い状況になったんだ? 俺も泣きたくなってきたよ……
 今日は呑んだくれよう。そう心に誓った俺に、とどめとばかりにレイチェルは提案(という名の命令)をしたのだった。

「とりあえず、しばらくはアレンのところに住まわせてもらうといいでしょう。
 大丈夫ですよ。何せ……私のダーリンですから」
86リリカルルーニー ◆fhLddwC5FM :2008/11/09(日) 00:27:54 ID:A7FhG5F5
以上です。

レス数、数え間違えたorz
半分以上書き込んで、ようやく気付くって、何処まで抜けてんだか……orz

冒頭の一言のような台詞、3版から無くなってしまったのが残念です。好きだったのに……
ちなみに、アレン対火の精霊は、実際にサイコロ振りました。2発目の喪神破、本当に打ち消されましたw
なお、ランドールに頼んだ最後の仕事というのは、「アタックチームの車両が飛び込んだ事にして、家を燃やす」です。
派手にする事で隠せる事も、あると思うんですよ。

次回は、魔法使いたちに焦点を当てようと思います。
それでは、また。

(>)……おい、俺の台詞はなんだったんだ?
(>)フロッガー
87名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/09(日) 09:07:19 ID:b4L/JmWB
GJ!
カルチャーギャップが笑えるww
88ゲッターロボ昴 ◆yZGDumU3WM :2008/11/09(日) 10:40:00 ID:hmw3p6h4
GJ!! 二つの世界の魔法の差が興味深いです。
実際にサイコロを振るとは――気合い入ってますねw
今後、どういう風に物語が動くかワクワクします。


投下予告します。
10:50より闇の王女 第九章前編投下です。
支援を出来ればお願いします。
89闇の王女 ◆yZGDumU3WM :2008/11/09(日) 10:52:55 ID:hmw3p6h4
魔法少女リリカルなのは 闇の王女 第九章前編


子供だったときなんて、ない。


目をつむることも、気づかないふりをすることが出来た日々も、今は……


だから僕は演じよう、どうしようもない道化者を。


剣戟――救われぬ者どもの舞踏。
哀れな亡者のように、狂気の科学者によって改造され、自我を抑制された<子供達>は、武器を手に雷光の魔導師へ討ちかかる。
白いのっぺりとした仮面を被り、病的に白いボディスーツを身につけた、幼い少年少女達。
それら――何の感情も見せない操り人形であり、脳内のナノマシンによって思考を共有した群体生物――は、槍や剣、斧を手に金髪の美女を引き裂こうと迫る。
一閃――右手に握った長剣を振り下ろし、山吹色の魔力刃で敵の武器を断ち、返す刃と左手の長剣で討ちかかってきた<子供達>の一人を吹き飛ばした。
一対の細身の長剣、バルディッシュ・ライオットブレードの二刀流――長剣を振るう速度は音速域に突入し、一度とて立ち止まらぬ熾烈な戦いが巻き起こっていた。
デバイス、バルディッシュの魔力回路には主のリンカーコアから常に魔力が供給され、爆発的な加速を約束。
近接戦闘における優位を約束する圧倒的な旋回速度、加速能力は<子供達>を翻弄し、確実にその数を減らしていく。
金髪緋眼の魔導師――フェイト・テスタロッサ・ハラオウンは、ただひたすらに剣を振るう。
目の前にいる、異形の装束の子供達の正体――決して、一秒たりとも考えてはならないそれを感じながらも、愚直な意志を掲げて斬り結ぶ。
強き意志は、彼女に戦う意味を与えていた。

「私は――ユーノを守りきって見せる!」

《ソニックムーブ》

瞬間的に、魔導師に超音速の機動を可能とする加速魔法。
この決戦の最中において、最早出し惜しみする必要など無い。ただ、全力で敵を叩き潰せばいいのだから。
リンカーコアは精神の高ぶりに応じて幾らでも魔力素を取り込み、魔力として<力>に変換してくれる。
ましてや、<子供達>は如何に強化されていようと元は魔導師ですらない子供、そう大した戦闘能力は持ち合わせていない。
結果――フェイト・テスタロッサ・ハラオウンは、数十秒の間に十二人の<子供達>を戦闘不能へ追い込んでいた。
<聖王のゆりかご>内部の広い通路での戦闘は、フェイトの一方的な勝利に終わりかけた――そのとき。
超音速の刺突――馬鹿げた構造/噴射スラスターのついた突撃槍――噴射炎のもたらす圧倒的スピード、それを見切れたのはほんの偶然だ。
すぐそばを通り抜けた超音速飛翔体の衝撃波をフィールド魔法で軽減しながら、フェイトは長剣を構えて射撃魔法を詠唱する。
空中に生成される光の投げ槍――数本のプラズマランサー。照準し、射出のトリガーワードを唱えた。

「プラズマランサー、ファイア!」

飛び掛かるのは雷撃の塊であり、イオン臭を放ちながらそれは恐るべき速さで敵へ襲いかかる。
靴の擦れる音、急激なブレーキ音、逆噴射の爆音が鳴り響く場所へ着弾――だが、致命的なダメージにはなり得ない。
白い仮面が踊り、両手に握りしめられた突撃槍ストラーダにより噴射跳躍、ロケットのようにフェイトへ向けて肉薄せんと迫る。
ざんばらの赤い髪に、フェイトは見覚えがあった。ここ最近、忙しくてろくに連絡も取れなかったが――それでも元気だと聞いていた、あの子。
驚愕と共に、彼女は呟いた。

「エリ……オ?」

「ッッ?!―――」

唐突に突撃槍の狙いが逸れ、フェイトの頬を掠るようにロングコートが舞った。
キキキ、と甲高いブレーキ音が響き渡り、フェイトの背後十メートルほどの場所で急停止。
90闇の王女 ◆yZGDumU3WM :2008/11/09(日) 10:54:10 ID:hmw3p6h4
「やっぱり、フェイトさんか……」

少年はコートを翻して幽かに笑った。
仮面越しの、でもきっと純粋な笑い顔を想像していたフェイトは、戸惑いながらも少年へ呼びかけ、両手の剣を降ろした。
まだきっと言葉が通じると信じ、優しい笑顔を浮かべて。

「ねぇ……エリオ、だよね? どうして、ここに――」

コツン、と足を踏み出した瞬間。
エリオの背中が強張り、厳しい声が響いた。

「近づかないでください……! 僕は、貴方の知るエリオ・モンディアルなんかじゃないっ!」

深い懊悩の果て――拒絶だった。
エリオは思う。
自分はきっともう、彼女の側で笑うことなんて出来っこないのだと。
何故ならば、両親から引き剥がされたときよりも、深い絶望を知ってしまった。
何故ならば、良心の痛みが麻痺してしまった。
何故ならば、もう普通の身体なんかじゃない。
人造魔導師として調整され、多くの実験体の無念を背負った悪鬼の産物。
それが、己(じぶん)――醜い、生への執着と断罪されたいという願望によって生き存える、愚かな生き物。
振り返ると、フェイトの悲しそうな顔が目に入り込む。彼女は思っているのだろう、どうしてここに貴方がいるの? と。

「エリオ……どうして……」

「僕は――貴方と最後に会ってから、すぐに最高評議会の手でドクター、スカリエッティへ送られました」

淡々と語る少年の声音は低く、何の感慨も籠もっていなかった。
時空管理局に勤める者にとってはあまりに衝撃的内容――今世紀最悪の次元犯罪者と、時空管理局のトップが繋がっていた――に、
フェイトは声もなく唖然としている。

「何……それ……? ねぇ、嘘だよね――」

エリオは自嘲気味の笑みを仮面の奥に浮かべると、首を横に振った。
嘘などついていない。こんな自分に、嘘などつけるはずもない。

「嘘なんかじゃありません……僕の他にも子供達が何人も。
生き残れたのは、そこら辺で伸びている子と僕でたったの十三人。
みんな―――」
91名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/09(日) 10:55:55 ID:MI7rAk6f
支援
92闇の王女 ◆yZGDumU3WM :2008/11/09(日) 10:56:12 ID:hmw3p6h4
フェイトの自我が告げる、ここから先は自分が聞いてはいけないモノなのだと。
それでも聞かざるを得なかった、何故ならば、それこそがエリオに近づく唯一の術だから。
だから、震える手でライオットザンバーを握りしめる。

「―――フェイト・テスタロッサ・ハラオウンの保護した子供達でした」


そして、その果てに深い絶望があった。


自らが守ってきた笑顔が、人体実験の礎として消費されていた?
今まで斬り捨ててきた子供達は、フェイトが守りたいと願った笑顔の成れの果て?
遠くの施設で暮らしていると聞いていた子供達は、皆スカリエッティの手で―――

「―――い、いやぁぁぁあああ!」

バルディッシュが両手からこぼれ落ち、糸が切れた操り人形のように、フェイトの身体が崩れ落ちる。
やがて、彼女の瞳が潤み始め、涙がぽつぽつと<聖王のゆりかご>の床を濡らし始めた。
所々に少年と少女達が倒れた空間へ泣き声が木霊し、膝を付いてフェイトは―――


―――初めて絶望の色を知った。


エリオの言葉は続き、虚ろだった視線が徐々に妖しい熱を帯び始める。
それはきっと、恋に燃えるようなものだ。どれだけ歪もうと、エリオ・モンディアルにとって彼女は、フェイト・テスタロッサは女神だったから。
だが、眩しすぎる。ゆえに―――

「フェイトさん……僕は、貴方が好きでした。ずっと、誰よりも、父さんや母さんよりも!
だから――最期くらい、貴方の手で殺してください。僕は、もう嫌なんです……苦しむのも、苦しめるのも!」

矛盾した願いだった。願い、希求する本人が過ちだと気づいている願望。
苦しめることを厭いながら、その願いがより彼女を苦しめるとわかった上での、願望なのだから。
でも、きっと、当の昔に、誰もが幸せになる世界は失われていたのだ。
だから、より多くの不幸を撒き散らさぬために、エリオ・モンディアルは死にたい。

―――それが、どれだけ愚かな願いであろうとも。

「わ……私に、エリオが殺せるわけ無いじゃない……」

何処か、大切なモノを失ってしまった、という表情で彼女はそう言う。
その顔には驚愕と悲しみが浮かび、涙によって憔悴しきった表情になっていた。

「そう……ですか―――」

エリオは、白いのっぺりとした仮面越しに、薄く、悲しげな笑みを浮かべ、槍を構えた。
茶色のロングコートを纏った幼い身体――人工筋肉によって強化された肉体が、リンカーコアからの魔力供給によって起き上がる。
紅い結晶、レリックによって極限まで強化された魔力の供給に身体が打ち震え、それは肌でわかるほどの魔力の胎動となって伝わった。

「……何、を――」

「貴方が殺してくれないならば……僕には絶望しかないんだ……だから……」

《サー! 彼の体内魔力量が異常です、距離を!》
93闇の王女 ◆yZGDumU3WM :2008/11/09(日) 10:58:50 ID:hmw3p6h4
バルディッシュが警告音を発し、無理矢理、フェイトの身体に刻み込まれた戦闘本能を呼び起こす。
茫然自失としていたフェイトも異常を察し、反射的に大鎌となったバルディッシュを構えて跳び退る。
エリオにとって、その反応は好都合だった。そうだ、それでいい。

「……エリオ」

「さっき、ある子が言ってましたよ。どんなに残酷な世界でも生きる価値はあるって……。
でも! フェイトさん、僕はもう何もいらない! 父さんや母さんは僕を捨てて、僕はこんなにも――醜い自分に気づいてしまった。
どんなに他人が傷ついても、どんなに人が死んでも、自分が死ななければ安堵していられる自分に!
だから! 僕はこんな世界から、こんな自我の檻から解放されたい―――」

彼女は生きて、自分は死なねばならない――狂気にも似た執念。
フェイトの紅玉のような瞳は、真っ直ぐに、愚直にエリオを見つめていた。
悲しみと後悔しかない生を歩んできた、エリオ・モンディアルを、じっと見つめているのだ。
仮面越しに感ずる視線を振り払うように、エリオの持つ突撃槍後部、推進器のノズルが露出した。
エリオの持つ無尽蔵のレリックによる魔力を吸い上げ、始動する物理現象を書き換える原動力となるデバイスの演算機構。
そいつは悪魔のように唸りを上げ、主の意志に付き従わんと演算回路を構築、周囲の事象を加速のためだけに操作する。
結果、空気は魔力素の充填によって妖しく歪み、キィィィィン、とエンジン部たる駆動機関が噴射炎を吐き出す準備を開始。

「エリオ――だからって、私達が争う理由なんか、何処にもないよ?!」

「貴方には僕を殺すことは出来ない……なら、僕を殺してしまうように仕向ければいい……!」

「そんなの――」

「僕はね、フェイトさん。ずっと、今の自分の在る“意味”を考えて来ました。
でも、でも――幾ら考えても、そんなもの見つけられなかったんですよ。
僕は、空っぽで、誰かの代わりにしかなれない愛玩品。貴方にとって、僕は何だったんですか―――」

嗚呼、答えなくて良い。何であれ、僕は貴方が好きだから―――
瞬間――音の壁を打ち破り、エリオという存在は一個の弾丸と化してフェイトに襲いかかった。
圧倒的な踏み込みの速さ、そして推進器によって得られる爆発的な加速。
広い<ゆりかご>の通路を、爆音のような衝撃波が蹂躙し、破砕する。

「エリオ、私は―――ッッ!!」

フェイトの背中まで伸びた長い金髪が揺れ、バルディッシュが蒸気を噴き上げて一瞬で変形/山吹色の刃を展開。
バルディッシュ・ザンバーモード。巨大な剣と化したバルディッシュの、魔力刃を生成した姿。
両手で握りしめられた柄に詰まったカートリッジが相次いで消費され、刀身を大きく伸ばした魔力刃――最早飛び道具の間合い。
それが、身体強化によって腕力をあげ、空気抵抗をフィールド系魔法で軽減したことによって音速域に突入。
弾丸のように、愚直な超音速の刃となるエリオの突撃槍ストラーダと、攻撃範囲を限界まで高めた魔力刃の激突――それは、一突と一閃の交差。
ばちばちと高圧電流を纏った魔力刃と、シールドされた突撃槍がぶつかり合い、急激な減速によって生じた衝撃波が辺り一帯を粉砕していく。
鍔迫り合いの最中、フェイトは一人の人間としてエリオに向かい合うように叫んだ。
94名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/09(日) 11:00:07 ID:MI7rAk6f
支援
95闇の王女 ◆yZGDumU3WM :2008/11/09(日) 11:00:57 ID:hmw3p6h4
「貴方は、逃げようとしてるだけだよ、エリオ!
どうして! もう一度、やり直すことは出来ないの?!」

ああ、なんて優しい言葉だ。
幻痛すら覚えるほどの、ひどく甘やかな願い。
だが、『死』が脳裏から離れない―――

「五十六人」

「え?」

「ずっと、僕の脳裏に染みついて離れない。
僕の目の前で! 救いも慈悲も知らずに頓死していった“仲間”達の数です!」

その数字は、呪縛だ。

「それって――」

「“プロジェクトFの子供達”」

大剣と突撃槍の死合いは、僅かに鍔迫り合う力が抜けたフェイトの負けだった。
咄嗟に身を捻ったのが幸いして、傷を負うことはなかったが、槍の放つ圧倒的な運動エネルギーに吹き飛ばされ、左斜め後ろに着地。
次の瞬間には、フェイトの意思を読み取ったバルディッシュが加速魔法を使用、大剣の間合いへ持ち込まんと急接近する。

《ソニックムーブ》

風のように速く、衝撃波一つ起こさずに、彼女の姿は掻き消える。
ツヴァイハンダーに似た武器の使用法――すなわち大質量による蹂躙――最大のスピードで、相手に叩きつけることこそが最善。
彼女の胸中は如何なるものか。ただ剣を振るうために特化した、白いマントを羽織った彼女のバリアジャケットは、爆風で薄汚れていた。

「同胞の悲鳴しか、僕の夢にはない! 貴方にわかりますか、最初の“Fの遺産”!」

バルディッシュ――雷光を纏った剣閃が煌めき、エリオの小柄な身体に攻撃を叩き込もうと振り下ろされた。
その派手な輝きを感知したエリオの身体は、フェイトとまったく同じ術式で掻き消え、白い仮面が残像として残る。
慣性制御――下向きに掛かっていたベクトルをねじ曲げ、横向きの一閃に。飛行魔法における重力の制御技術の応用/一瞬で演算を完了する魔導師の大脳。
そんな化け物じみた斬撃を、エリオは待ち望んでいた。そうだ、それでいい――だが、足りない。
手加減されている/殺す前に止めようという手心/彼女の優しさ――その全てを否定して、自分が求めるのは。

「まだです、フェイトさん! 僕を殺せませんか、ならば、僕は貴方の限界を引き出すだけだ――」
96名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/09(日) 11:05:10 ID:MI7rAk6f
支援
97闇の王女 ◆yZGDumU3WM :2008/11/09(日) 11:05:10 ID:hmw3p6h4
「そんな、後悔しかない願い――私は否定してみせるよ、エリオォ!」

「――サンダーレイジ!」

雷撃を纏った槍の外殻が、推進炎による圧倒的な運動エネルギーを乗せて、バルディッシュ・ザンバーモードと衝突する。
ぶつかり合う一対、雷撃の刃同士の激突は、刃の接触点を中心に広範囲に雷をばらまき、
機械兵器を容易く破壊するほどの高圧電流で、空間に焦げた臭気を漂わせ――ストラーダとバルディッシュの刃が火花を上げた。
共に主の使用特性――雷に合わせてカスタマイズされたデバイスである。高圧電流やEMP程度で壊れるほど柔な作りはしていない。
ただし、予めバリアジャケットに耐電システムを組み込んだ上で自爆同然に範囲攻撃を行ったエリオと、軽装のフェイトでは消耗の度合いが違った。
前者のダメージが軽度なのに対して、後者のダメージは甚大だ。フェイトの纏う漆黒のバリアジャケットは、傷つきボロボロで、
白いマントはほぼ全壊し、肌は薄く火傷を負っている箇所もある。それほどの雷火であり、無差別なエネルギーの暴流だ。
かろうじてフェイトが無事なのは、ほとんどバルディッシュが咄嗟に張ってくれたシールドのお陰だった。
ストラーダの馬力に押し切られ掛けたフェイトは、自己の傷の治癒に向けていた魔力を全て身体強化に廻し、
馬鹿げたパワーを引き出す少年と突撃槍の組み合わせと拮抗、バルディッシュ・ザンバーモードの剣圧がエリオの身体を弾き飛ばす。
エリオは空中でストラーダの推進器を逆噴射、衝撃を押し殺すと、強化された人体が生み出す飛蝗のような跳躍で後方へ跳び退った。
フェイトの放つ追撃の射撃――プラズマランサーを、片っ端から人間離れした反射神経で叩き落とし、彼は叫ぶ。
心に抱いた、悪夢から逃れたい/醜悪な自我からの解放――という願望を。

「何故ですか、本気になってくれないと! 僕は! 貴方を殺してしまう!
厭なんです、奪うのも奪われるのも――どうしようもなく、全てが嫌だ!」

「ねぇ、エリオ……覚えてるかな」

フェイトは、肩で息をしながら、バリアジャケットの防具を解除していく。
インテリジェントデバイス――意思持つ演算機構、バルディッシュは己が主の願いを聞き届け、バリアジャケット軽量化、デバイスモード・リミットブレイクを開始。
最後に残ったのは、柔らかな肢体を包む黒い衣服のみ。見ようによっては妖艶とすら云える、最速最軽量形態。
バルディッシュの先端は二叉の刃となり、巨人の剣の如く金色を纏って光り輝く。
ライオットザンバー・カラミティ。一撃で全てを粉砕する、バルディッシュの最終形態である。

「あのときそうやって、何もかもを信じられなくなった貴方を――私は救ってあげられたと思っていた。
でも、違ったんだね――きっと、もっと遠くへ行けばエリオは救われると思ってるんだよね――」

《加速開始・ソニックムーブ・連続展開準備》

「僕は、僕は―――ッッッ!!」
98闇の王女 ◆yZGDumU3WM :2008/11/09(日) 11:07:19 ID:hmw3p6h4
嗚呼、どうして今更迷うんだ。

自分は死にたかったはずだろう?

どうして揺らいでいくんだろう。

コツリ、足音が響き渡り。
大剣を両手に握りしめたフェイトの、その優しい微笑みに恐怖を感じて、エリオは後退る。
本能が告げる、自分はアレに勝てないと。それで良いはずだと理性は告げるが、そんなものは問題にならないほどに――怖い。

「――でもね、それは違う。どんなに否定したって、醜い自分はついてくるって――私が、知ってるから。
死んでいった子達がどんなに苦しんでいたとしても――貴方が死ぬ必要なんて、何処にもないんだから―――ッッ!!」

今この瞬間だけ、フェイトの相棒は―――彼女の願いを届ける“剣(つるぎ)”だった。
剣とは本来闘争には向かぬモノだ。その起源はむしろ祭祀にあり、神と人を繋ぐ儀式の品だったという。
であれば――フェイト・テスタロッサが振るう剣は――彼の過ちを断つモノなのだろう。
エリオの装着していた仮面がひび割れていき、亀裂が広がり、決壊と共に――涙が―――

「死なせては――くれないんですね……」

「ごめん。私はきっと、優しくないんだよ――」

そう言って、フェイトはエリオを抱き寄せた。赤毛が金の髪と交わり、煌めいた。
エリオは、仮面を被ったときから捨てたはずの激情に任せて、泣き喚いた。

「う……ぁあ……ああああああああああっ!」

「――泣いて、いいんだからね……」




高町なのはにとって、この戦いは死合いに他ならない。
家族には別れを告げた。もう二度と会えないという予感が胸を掻き毟る。
生きて帰ること――そんな望みは捨てたはずだった。
でも、今は――

「――生きたい」

轟音――戦いの音――誰かが逝く音――嘆く暇もない死の連鎖。
かつての自分ならば心を痛めたであろう音が響き渡り、その度になのはは、今すぐ争いをやめさせたい衝動に駆られる。
アクセルフィンに魔力を注ぎ込み、背中の翼から魔力炎を吹き出して莫大な加速を得て、雑念を振り払う。
眼前の巨大な壁――探査魔法によって<聖王のゆりかご>中枢へ通ずる道を塞ぐ障害物だとわかっていたため、砲撃魔法をチャージ。
円形魔方陣が展開され、なのはの異常に肥大化したリンカーコアから魔力が注がれていき、砲撃はトリガーワードを待つばかりとなる。
加速、加速、加速――零距離で、言葉を放つ。

「ショート、バスターッッ!」

魔力で構成された光の槍が防壁に突き刺さり、圧壊させていく。
砕け散る防壁、その破片を騎士甲冑に浴びながら、なのはは―――泣いていた。
今更だった。別れを告げたはずの何もかもが愛しく、手放すことなどできなかった。
だから――

「――死にたくない」

呪詛のように、生への渇望を込めた声は響き渡った。
高町なのは、<聖王の玉座>到達まで、あと僅か―――
99ゲッターロボ昴 ◆yZGDumU3WM :2008/11/09(日) 11:13:58 ID:hmw3p6h4
投下完了。かなり久々の闇王女投下でしたが、完遂できて嬉しい限り。
エリオとフェイトのターン、ひとまず終了。
残りのサブキャライベントはスバルと再生怪人クイント、そしてギンガといったところ。

なのはさんの出番はちょっと先かも、です。
クロスらしく、ロボVS魔導師第二ラウンドとかも企画。
でもやるとヴァイスに死亡フラグ、そんな感じです。

ではでは。
100名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/09(日) 12:08:11 ID:qqk/7Ev0
投下乙、最高に乙。
ヴァイスに死亡フラグ? この状態でさらに死亡フラグ持ちが増えるのかwww
いいぞ! もっとやれ!!
101名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/09(日) 13:45:57 ID:CEKK91Nx
ひゃっはー!
闇王女が来てるぜよ! これで勝つる!(おちつけ)
久しぶりの闇王女でしたが、なんか文章表現レベルが上がっているような?
ユーノへの告白というか気持ちの吐露から、フェイトがいい意味で我侭になっていると思いました。
博愛はいい、慈愛も素晴らしい、けれど自分を押し殺していたようなフェイトが我侭故にエリオを救う。
いいんだ! その我侭は相手が拒もうが貫き通していい我侭だ!
原作のスカ博士のフェイトそんいびりの言葉も開き直りそうなフェイトがかっこよかったです。
あのソニックはれんちフォームがこんなにもかっこいいと感じたのは初めてっすw
そして、エリオが悲壮とも言える戦いぶりを見せてくれて凄まじく感動しました。
あれ? こんなにかっこいいエリオって今まで殆ど見たこと無いんだけどw
ストラーダの使い方といい、自爆覚悟の放出技術といい、救われたいがためにひたすら傷つけて死にたがる少年の心が痛いほどに伝わってきました。
今まで死んだものの思いを抱えながらも、それと共に心中しようとしたエリオも、それを聖母の如く両断したフェイトもカッコイイ。
素晴らしい話でした。
そして、次回はやばげな勢いの聖王VS黒なのはか、それともスバルVS再生クイントか。
どちらにしても気になります。
そして、ヴァイスー!! 死亡フラグがww やべえ見たい! いや、死なれるのは悲しいが活躍してくれるならみたいぜよ!
GJでした!
102一尉:2008/11/09(日) 15:05:02 ID:Ge3JScnZ
銀魂なのは面白すきるよ。
103名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/09(日) 15:31:15 ID:AserESac
GJ!!です。
エリオの自己否定が凄いなぁ。エリオが悪いわけじゃないのに、優しいからこその苦しみですかね?
あと、この事件をフェイトが生き残ったとして、局相手にどんな行動に出るか楽しみですw
104名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/09(日) 16:55:28 ID:L4A3FNnF
>>99
うおっしゃぁぁぁ!闇の王女来た!
まってましたよー、とうとう決着フェイトVSエリオ!
良かった!エリオが生きてる。そして次回はスバルVS再生クイントかな?
ってところですか、ロボVS魔導師は個人的にはやって欲しい!
ティアナに八神一家、ギン姉に出番を!
ちょっと興奮して日本語になってませんが、ともかくGJでした。
105名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/09(日) 17:27:03 ID:ZukUFI+N
>104
再生クイント……春日恭二三人分くらいの強さ?
106リリカル! 夢境学園 ◆CPytksUTvk :2008/11/09(日) 21:15:44 ID:CEKK91Nx
どうもお久しぶりです。
今回はちょっとエンドラインではなく、ビスケットシューターの番外編に当たるショートエピソードを投下してもよろしいでしょうか?
前後関係はあまりないですが、問題なければ30分頃から投下開始します。
107名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/09(日) 21:16:43 ID:WZctGY2K
支援
108名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/09(日) 21:17:59 ID:kB7v48cx
支援
109ビスケット・シューター ◆CPytksUTvk :2008/11/09(日) 21:31:47 ID:CEKK91Nx
投下開始します。



 夢を見た。
 それは大切な思い出。
 それは夢見る記憶。
 大切で。
 掛け替えがなくて。
 取り返しが付かなくて。
 キラキラといつまでも輝いていた。

 夢見る資格など既に無いのに。


                      ――獣の如き異形と化した誰かの慟哭より



 例えば、こんな日がある。

 待機任務もなく、呼び出しもなく、誰もいない部屋で飯を食うためにバイクに乗って、クラナガンに買い物にいく。
 特にこだわりは無いので、スーパーで適当な銘柄の煙草を買い、パスタ用のオリーブオイルとソースを買った。
 カチカチと手に持った袋の中で、缶詰とビンが音を立てる。
 正直言うとうるさい。
 けれど、どこか醒めている。さっさとバイクにのって、部屋に戻り、お湯でも沸かしてパスタを入れる。
 茹で上がったらオリーブオイルたっぷりのフライパンにパスタをいれて、くるくるとソースを巻きつかせるだけだ。
 そんな日常、そんな一日――

「こんにちは」

 ……を送れるわけがなかった。
 目の前にいる青い髪を靡かせたあどけない顔、どこかヒラヒラとした服装、短いスカート、手には日傘を持って丸っこい目で見上げた少女の姿。
 見覚えなどない。少女の顔に見覚えはなく、声もない。だけど、それが誰なのか、オレにはわかる。推測する。「お前か」 端的に告げる

「ドゥーエ」

 幼い少女の外見をした改造人間、潜入工作用の女性はニッコリと笑みを浮かべる。

「さすがね」

 幼い声が紡がれる、舌ったらずな声。
 狙っているのか、それともからかっているのか。オレには分からないし、どうでもいい

「何の用だ?」

 どこかイラつく、幼い外見、見かけが毎度違う女性。
 必要とあらば大人にも、子供にもなれる魔法のような存在。
 だけど、数十度となく顔を合わせ、その肢体の重さを知っている俺は何故か判別が出来た。
 煙草を咥える。
 流れるように火をつける、苦々しい味。

「だめだよぉ、子供の前で煙草なんて吸ったら」

 馬鹿馬鹿しい子供のような言葉で、彼女は俺を叱る。
 しかし、無視。
 苦い味、痛み、肺に染み渡る不味い味。
 ……煙を吐き出す。
 ゆるゆると痛みを吐き出した俺に、ドゥーエは肩を竦めた。
110ビスケット・シューター ◆CPytksUTvk :2008/11/09(日) 21:34:54 ID:CEKK91Nx
 
「人の話ぐらい聞きなさいよ」

 子供の外見が何を言う。

「んで、なんか用なのか?」

 二回目の問い。俺の前に現れるときは大体仕事、ナニカの依頼、それに限られている。そう想像して「違うわ」 彼女は予想外の言葉を吐き出した。

「ただ見かけたからね。話かけようと思っただけ」

 くるりと日傘を廻して、少女の外見をしたドゥーエがひらりとスカートを翻す。3日前に体を重ねた時よりも白い肌が、翻ったスカートの裾から覗き見えた。

「駄目かしら?」

 笑顔。
 どこか妖しく、どこか寂しげな笑み。怒られるのを我慢しているような子供っぽい表情。
 俺は 「いや、別にかまわねえよ」 どこか後ろめたくて、煙草を噛んだ。
 いつか見た妹の表情にそっくりだったから。

「今日は、ひま?」

 くいっとドゥーエが首を傾げる。まったくもっていやらしい。
 自分の外見を、その態度がどんな風に映るのか分かりきって行っている。
 これを断るのは、どこか罰が悪かった。

「一応非番だ。急な出動でもなければ平気だな」

 俺は答える。すると、ドゥーエはまぁとでも言わんばかりに口元に手を当てて、笑った。

「それじゃあ、少し歩かない?」

 そういって、少女が指を差したのはなんの変哲もない歩道。
 クラナガンに立てられた公園に続く道、何も知らない人々が通る道。
 
「別にいいが、どこにいくんだ?」

「付いてくればわかるわ」

 少女の唇から大人の色香を交えた言葉が紡がれる。日傘を左の肩に傾けて、ドゥーエの手がおもむろに俺の袖を掴んだ。

「歩きましょう」

「あまり引っ張られると困るんだが」

「あら? この程度で伸びるほど管理局員の制服は安い素材じゃないわよ」

 てちてちという言葉が似合う子供の手にひっぱられて、俺はドゥーエと共に歩道を歩き出した。
 周りを歩く人々がどこか微笑ましいものを見るような目つき。

 ……勘弁してくれ 。


【Unrimited EndLine】

 外伝 『Biscuit・Shooter』
  Short episode 彼と彼女の幕間
111名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/09(日) 21:35:42 ID:WZctGY2K
支援
112ビスケット・シューター ◆CPytksUTvk :2008/11/09(日) 21:37:48 ID:CEKK91Nx
 
 空は青く、太陽は晴れて、風は熱せられたアスファルトを拭うように吹いていた。
 世界はどこまでも平和なように思えた。

 ――一瞬だけ気が遠くなる。

 吐き気がするような過去。
 平穏の意味を忘れていた時代。のんびりと過ごす中で毒のように湧き上がる不快感。
 それにヴァイスは目元に手を向けて、振り払おうとした時だった。

「懐かしいわね」

「なにが?」

「……思い出さない?」

 思い出す? 記憶を探る、けれどひっかるものは――あった
 数年以上前、まだドゥーエのことを詳しく知らない頃、俺は彼女とここを歩いていた。
 今のような構図で、血なまぐさい話だったが、思い出す。

「あの時から、私たちは変わったのかしら?」

 寂しげに、歌うようにドゥーエが呟く。

「世界は変わらない、街は変わらない、私も貴方も年は取ったけれど、私は変わるだけで、貴方は成長し、年老いる」

 それは俺だけに聞こえる言葉だったのだろう。

「私たちは単なる仕事の付き合い。言葉を交わし、体を重ね、年月を積み上げても決して変わらないわ」

 歩く、歩く、歩く。
 子供の外見をした女が、どこか泣きそうだった。
 空は晴れているというのに、雨が降りそうだった

「ねえ、ヴァイス。貴方はどう思う?」

 日傘の端から、少女は俺に尋ねた。
 どこか泣きそうな顔で、告げた。何があったのだろうか、見たこともない、抱いた時にたまに嗚咽する彼女のことは知っている。
 その身は既に人間じゃない、限りなく人間に偽装した生体パーツで改造された改造人間である女性、いや少女。
 どこか猫のようにすりより、離れ、からかう妖艶な女性。
 それが俺の中の印象だった。
 変わらない本質だった
 それに対する俺の答えは――

「変わるさ」

 たった一言だった。
 俺は告げる、どこか嘘くさく、陳腐で、けれど当たって欲しい言葉を告げる。

「変わったのは多分自分だと気付けないんだよ、もうとっくに変わっているっていうのに」

 ああ、ああ、嘘くさい。
 俺が言うなんてまるで説得力がない。
 空を見上げる。眩しい、けれど視界の隅に雲があった。
113ビスケット・シューター ◆CPytksUTvk :2008/11/09(日) 21:40:53 ID:CEKK91Nx
 
「変わるとか、変わらないとか、そんなのは空のようなもんだ。年月が重なれば、思い出が積み重なれば、雲が掛かったように天気は、姿は変わるんだ」

 告げる、まるで言い訳でもするかのように。

 風が吹く。雲が流れる。

「今だって、確かに変わっている」

 少しずつでも、どこか変わっているのだと俺は思う。

「だから、俺は――」

「ありがとう」

 告げようとした言葉を、背伸びした少女の手が止めた。

「少し、元気が出たわ」

 にっこりと笑顔、どこか楽しげな笑み。

「確かに変わったわね」

 少女が歩く。誰もいない、平日の公園へと足を向ける。

「六年前の貴方、八年前の貴方、今の貴方。同じようで違う。八年前なら女心なんて分かっていない」

 少女が踊る。

「六年前なら私に優しくなんてしない」

 くるりと回る。

「今の貴方は誰かに優しく出来る」

 踊る、妖精のように。
 ひらり、ひらりと青い髪が、少女の衣服が風を帯びて舞い踊る。

「成長したっていうべきかしらね?」

 ドゥーエは足を止めて、からかうように呟いた。
 俺は歩み寄りながら言う。

「さあな。昔の自分なんて覚えてねえよ」

 荒れた時、幸せな時、泣き叫んだとき、苦しかった時。
 沢山の思い出はある。
 けれど、昔の自分なんてあやふやだから。
 だから、誰かが必要なのかもしれない。
 変わった自分を分かる人が欲しいから。

「お前も変わったんじゃないか? ドゥーエ」

 俺は多分それが正解だと思って告げた。
114ビスケット・シューター ◆CPytksUTvk :2008/11/09(日) 21:43:49 ID:CEKK91Nx
 
 ――からかうような態度。

 ――誘うような女。

 ――事務的な態度。

 ――ベットですすり泣く彼女。

 ――一度たりとも同じ顔ではない女。

 ……それが俺の知る彼女だった。
 けれど、昔と比べてずっと付き合いやすくなったとは思う。

「そうかしら?」

「多分、だけどな」

「あやふやね」

 彼女が笑う。俺は誤魔化すように煙草を吸って、煙を吐き出した。公園は禁煙じゃないから。

「ねえ、ヴァイス」

 彼女が踊るのをやめて、足を踏み出す。

「なんだ?」

「ちょっとしゃがんで」

「?」

 言われたままにする。

 不意打ちだった。

 唇が湿った音と柔らかい感触を伝えてきた――ドゥーエが唇を重ねていた。
 猫のような不意打ち。
 さっと飛び掛り、飛び去ってしまう気まぐれのような接吻。
 舐めるような口付けは一瞬で終わりを告げた。

「苦い、わね」

 唇を押さえて、ドゥーエが眉をしかめる。

「煙草はやめてよね。キスする時、苦いから」

 俺は反論する。
 勝手にキスをしたのは奴だから。

「苦いからいいんだよ」

 吸うための動機を告げる。
115名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/09(日) 21:45:18 ID:b8m2P3KV
支援
116ビスケット・シューター ◆CPytksUTvk :2008/11/09(日) 21:47:00 ID:CEKK91Nx
 
「痛みを忘れないで済む」

「痛み、ね」

 少女は嗤う。からかうように、同情するかのように。

「貴方の痛みは他人に与えるものなの?」

 彼女は言う、責めるように。

「貴方の痛みは貴方だけのものよ。煙草なんて、やめなさい。自分を汚して、空を汚すだけなんだから」

 彼女は説教する。
 らしくない態度で 。

「……わかってるさ。でも、やめらないんだよ」

 多分やめるとしたら死ぬ時だ。
 そう思う。

「そう」

 ドゥーエは呆れる。でも、笑っていた。

「今日は楽しかったわ」

 日傘をくるり、彼女は背を向ける。

「また、ね」

 一方的な通告。

「また、な」

 どこか不審に思いながらも、俺も別れを告げた。また出会うであろう女性に。

 俺は知らない。

 次に彼女と再会するときの運命を。

 泣き叫びながら、狂おしい悪夢の時間を。知らない。


「好きだったわよ」



 それが、彼女と次に出会った時の言葉だった。
117ビスケット・シューター ◆CPytksUTvk :2008/11/09(日) 21:51:38 ID:CEKK91Nx
投下終了です。
趣味丸出しのショートエピソードでしたが、楽しんでもらえたら幸いです。
このエピソードは現在のビスケット・シューターよりも少しだけ未来のお話です。
というわけで、まだ平和なドゥーエの出番はあるわけで(苦笑)

ストーリー一本道なアンリミデット・エンドラインですが、各話の合間合間に物語の登場人物を彩る短い幕間のような話を想定しています。
メインの本筋のほうが重要ですが、登場人物の思い入れやその心情などを理解してもらえるよう、たまにこういった話も投下させていただこうと思います。
支援ありがとうございました。
118名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/09(日) 21:57:54 ID:b8m2P3KV
GJ
夢境学園氏のヴァイスとドゥーエは素晴らしくて困る
本編も幕間もともに期待しています
119名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/09(日) 22:18:47 ID:qqk/7Ev0
なんというかもう、氏の書くヴァイスやドゥーエのアダルトな空気堪んないわぁ。
見てるだけで渋みが伝わってきます。

本編も楽しみにしてます、GJっした〜。
120名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/09(日) 23:12:09 ID:AserESac
GJ!!です。
二人の関係が良いなぁ。大人って感じw
121反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/11/09(日) 23:37:22 ID:DSVwjX+C
GJ!
いやはや、独特な大人の空気がたまりませんなぁ。
ハードボイルドなタバコの煙の中に、ほのかに漂うエロスのかほり……自分には到底真似できるもんじゃねえ(ぉ

さてと、では自分も12時半頃を目処に、ちょっとした予告を投下してもよろしいでしょうか? 1レス分くらいの短い物です
122名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/09(日) 23:52:01 ID:AserESac
支援
123反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/11/10(月) 00:25:18 ID:G7hXUxVl
んでは、ちょっぴり早いですが、投下します
124名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/10(月) 00:25:45 ID:4BvMqktU
支援だお
125反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/11/10(月) 00:28:12 ID:G7hXUxVl
 ――廃棄都市区画に「キング」が現れた。

 そんな噂が、ミッドチルダ首都クラナガンの中で、静かに広まり始めていた。

 廃棄都市。災害やテロリズムによってダメージを受け、破壊されることもなく取り残された街。
 いつしかスラム街と成り果て、時にはテロの温床ともなる、管理局にも見放された街。
 この貧民とゴロツキのうろつき回るごみ溜めのようなゴーストタウンに、1人の支配者が現れたというのだ。
 統率もなく、秩序もない、社会から抹殺された人々の群れ。
 当然その中でトップに立とうと、何かしらの社会的地位が得られるわけでもない。目立った肩書きが与えられるわけでもない。

 されど、そこに住む者達にとっては、その男の存在は絶対だった。
 地位でも肩書きでもない。そんなもの、この糞のような街ではまるで役に立ちはしない。
 すなわち――力。
 全てを砕き、全てを蹴散らし、全てを飲み込む絶対的な力。
 男の振るう力は、ありとあらゆる障害を粉砕してきた。男の発する言葉は、ありとあらゆる人間を虜にしてきた。
 唯、力故に。
 ある者は恐怖と共に。
 ある者は畏敬と共に。
 この廃棄都市に住む全ての人々が、男をそう呼び讃えるのだ。
 最強の呼び名を。
 支配者のみに許された称号を。

 ――キング、と。

 男は今日も廃棄都市を駆ける。
 朽ち果てながらもしぶとく生き永らえるこの街を、エンジンの放つ爆音と共に。
 天上天下、唯我独尊。
 何物にも屈さぬ絶対者は、唯一無二の称号と共に、最強の王者として君臨する。
 純白のコートを纏いし者。
 王冠のごとき眩い金髪を輝かす者。
 白銀のフォルムにただ1つの車輪。異界よりもたらされたかのような、異形のバイクに跨がって。
 魔法ですらも計り知れぬ、漆黒と灼熱の竜王を従えて。

 キングは、駆ける。


「――待たせたな!」


 「遊戯王5D's」のもう1人の主人公と、魔法の世界が織り成す物語。
 レッド・デーモンズ・ドラゴンの雄叫びが、クラナガンの空に木霊する!


 遊戯王5D's×魔法少女リリカルなのはStrikerS

 遊戯王5D's ―LYRICAL KING―


「キングは1人! この俺だッ!!」


 RIDING-DUEL Acceleration!
126反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/11/10(月) 00:29:26 ID:G7hXUxVl
というわけで投下終了。
キャバクラ氏のキャロとバクラ(無印遊戯王クロス)、GX氏のリリカル遊戯王GX(遊戯王GXクロス)に続く、
第三の遊戯王――「遊戯王5D's」のクロスです。
そして割とチキンな反目には珍しく、予告段階から既に連載を決定している作品でもある(ぉ
いや、5D'sはまだまだ放送途中なんですけれどもね、あのキングの強烈なキャラを見たら、そりゃあ書きたくなるのが男のサガでしょう!w(ぇ
そんなわけで、5D's主人公・不動遊星のライバルキャラ、ジャック・アトラスを主役にしたSSを書くことを決意したのでした。
今のところは反目R2同様、シャニウィンと.hackが完結してからの執筆を予定しているので、
まだまだ連載開始は先になってしまうのですが、周囲の反応如何では、ひょっとするともう少し早まるかもしれません。
というか魔王ルルーシュといい、拳王ラオウといい、やたら自分は王様に縁があるんだなぁ……(ぉ
まぁ、何はともあれ、キングのリリなの世界での大暴れを、あまり期待しすぎない程度に楽しみにしていてくださいw
ライディングデュエル・アクセラレーション!
127名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/10(月) 00:33:16 ID:AaK0ku3w
てっきり
「俺が欲しかったのは、ユリアだけだー!」
といって飛び降りる人かと思った
128名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/10(月) 00:47:22 ID:SH6fyNXg
あの世界の人らにはリリカルな人達じゃ勝てる気がせんwww
129名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/10(月) 00:52:09 ID:Jh2qboui
>>127
剛の拳よりストロングな柔の拳の使い手が医者として、スラムにいるんですね分かります
「命は投げ捨てるもの!」
130名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/10(月) 00:59:02 ID:1hxCOIPr
いいなぁw
なんていうか、リリなのキャラと殺しとかではなく、価値観が違いすぎるキャラは楽しすぎるw
131名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/10(月) 08:29:03 ID:O/VVmJyD
期待しています。問題はスピード・ワールドでなのは側がほぼ無力化されそうなことだけど……
132名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/10(月) 09:26:57 ID:l/lAL11j
キングと聞いて知らないのにキングゲイナーが出た俺。
133×DOD ◆murBO5fUVo :2008/11/10(月) 10:35:59 ID:M5JkHhkj
そろそろ「現実」とかいうのをファントムブレイブしたくなってきたわ

誰もいない時間帯なので近況報告。
DODクロスを超スローペースに書き溜め中です。
少し前に次節は書き上がったのですが、そちらはまだ寝かせてあります。
近日中(二、三日以内)に投下しますが、楽しみに待って下さっている方には申し訳ない……。
つられて遅くなっているピポの方もすみませんです。
書いてる時間帯はチャットに顔出ししてることが多いので、何かありましたらコメント欄かそちらまで。
134リリカルゾイド ◆rjU.EEAJoQ :2008/11/10(月) 10:54:07 ID:KvDQIbuZ
ども、お久しぶりです。
誰もいないようですが、リリカルゾイド第4話投下していきます。
前回からかなり間があいてしまい、申し訳ないです。
135リリカルゾイド ◆rjU.EEAJoQ :2008/11/10(月) 10:55:50 ID:KvDQIbuZ
「敵、完全に沈黙しました」

その報告を受けたクロノは安堵の溜息と共に艦長席に深く腰掛けた。
まったく想定していなかった事態ではあったが、なのはとヴィータの奮闘のおかげで、無事に殉職者を出すことなく本局に戻る事ができそうだ。

(それにしてもあのAMF搭載型の機械兵器、いったい何だったんだ?今回の魔力反応と何か関係が?第一、あの遺跡にあんな物がある筈がない。
間違いなく、外部からの介入によるものだ。だとしたら、一体何の為に襲撃してきたんだ?管理局に喧嘩を売るのが目的なら、僕達が生還できないようにする為にもっと多く送りこんでくる筈だ。
いや、管理局を唯の実験相手に選んだだけだとしたら?)

疑問は次々に湧いてくる。
その疑問に答えを出すには・・・

(まずは調査だな。だが、今すぐという訳にはいかないな。遺跡内部にあれがいる可能性もあるんだ。ここは一度報告してから、増援を待つのが得策か・・・)

そうやってクロノが今後の方針を考えていると

「はい、クロノ君お疲れ様」

補佐のエイミィがコーヒーを持ってやって来た。

「ありがとう、エイミィ」
「なーに、これくらいお安い御用だよ。それよりも、一体何だったんだろうね、あれ。さっき、データバンクにアクセスして調べてきてみたんだけど、全くのアンノウン。どこでも確認されてないね」
「だろうな。分かっているのはAMFを搭載してるってことくらいだ」
「あれ?そういえば、なのはちゃん達が捕まえたって言ってた男の子は?」
「いや、なのは達によれば次元漂流者らしい。だから無関係の可能性が高い。かといって、シロと決め付けるにはまだ早いんだが・・・」

クロノはそう言いながら、レイヴンとシャドーの画像をエイミィに見せた。

「うっわー。可愛げのない顔してるね〜。こりゃ、昔のクロノ君といい勝負だわ」
「・・・悪かったな、無愛想で」
「もー、そんなに拗ねないの!ハラオウン艦長!」

苦笑しながらクロノの背中をはたくエイミィ。

「でもよかったよ、一人も殉職者がでなくて。ホント、なのはちゃんとヴィータちゃんには感謝だね」
「そうだな。正直、あの二人がいなかったら結構危なかった」
「うんうん。あれ?そういえば、肝心のお二人さんは?」
「連絡がとれない。あの二人に限って、万が一なんてことはないと思うが・・・」

そう言いながらも、クロノは嫌な胸騒ぎを覚えていた。
最後に繋がりかけたヴィータとの通信。
あの時、ヴィータの声が必死だった様に聞こえたのだ。

(万が一なんてない。ない筈だ・・・!)

だが、万が一の事を考えて行動するのも艦長の仕事である。

「エイミィ、急いでなのは達との通信の復旧を頼む。それと、医療室に連絡。大怪我をした奴はいないらしいが、念のため、空きのベッドを5つ程確保するように伝えてくれ」
「了解。それじゃ、私も持ち場に戻るね」
136リリカルゾイド ◆rjU.EEAJoQ :2008/11/10(月) 10:56:39 ID:KvDQIbuZ
同時刻、遺跡周辺では、機械兵器の残骸の回収が行われていた。
しかし、戦闘直後であることに加え、雪がちらつく程の寒さのおかげで、作業は遅々として進んでいなかった。
そんな中、C班所属の一般隊員がやる気なさげに作業を行っていた。

「うー、寒ぃ寒ぃ。早く、アースラに戻りたいぜ」
「そーだな。大体、何だったんよこの機械兵器は」
「んな事俺に聞くな。それを考えんのは、ハラオウン艦長や高町隊長の仕事さ」
「違えねぇ」
「しかし、あれだ。高町隊長やヴィータ副隊。あの人ら、マジで人間か?って思っちまうぜ、ホント」
「あー、分かる分かる。俺らがあんなに苦戦してたのにあっという間に薙ぎ払っていくんだもんな。正直、あれは次元が違いすぎるわ」
「あれで俺らより年下なんだもんなぁ。末恐ろしいったら、ありゃしねえぜ」
「全くだ。・・・ん!?おい、あれ!」

と、タバコをふかしていた隊員の一人が空のある一点を指差した。
そこには・・・

「おーおー、噂をすればヴィータ副隊長・・・。ん!?高町隊長はどうしたんだ?」
「つーか、一緒にいんのはあの飛竜とガキじゃねえか!!」

事態を飲み込めないまま二人の目の前に、ヴィータとシャドーは降り立った。

「ヴィータ副隊長!ご無事でし・・・」
「敬礼はいい!!そんな事より、アースラと連絡できるか!?それと本隊の位置は!?」

慌てながら上官に対して敬礼をとろうとする二人を怒鳴りつけるヴィータ。
何故、彼女がこんな態度をとるのか全く呑み込めない彼らは、目を白黒させるばかりで質問に返答することすらすっかり忘れてしまっていた。
そんな二人の様子をみて焦りを募らせたヴィータが再び怒鳴ろうと一歩踏み出す。
しかし、レイヴンが機先を制するようにヴィータより早く口を開いていた。

「高町なのはが大怪我を負った。応急手当は済ませたんだが、意識不明のままだ。このままだと命に関わる。今、移送中だ」
「「・・・!!」」

レイヴンの言葉を信じられずにヴィータを見返すジョンとウィリアム。
しかし、否定の言葉は返ってくることはなかった。

「事実だ!それより急げ!早く本隊と合流したい!」
「り、了解しました!本隊は現在ポイントX0Y5にいます!おい、連絡を・・・」
「アースラ聞こえますか?こちらポイントX10・・・・」

叱責され、我を取り戻した隊員たちが即座に行動を開始する。
それを苛立たしげに見据えると、ヴィータは再び飛び立っていった。
137リリカルゾイド ◆rjU.EEAJoQ :2008/11/10(月) 10:57:44 ID:KvDQIbuZ
Another View (Raven)

いつの間にか雪は止んでいた。
しかし、気温は低いままだ。

(消耗してなければいいんだが・・・)

応急手当から既に10分が経過しており、体が冷えてきていても不思議ではない。
先程合流した隊員の話によれば、本隊はここからさらに10分程の場所にいるらしい。
怪我の具合を考えれば、正直ギリギリだ。

(問題は、治癒魔法とやらがどのくらい効果があるかってとこだな・・・。まあ、俺が考えても事態は変わらないんだが)

そんな事を考えながら空を見上げる。
惑星Zi(ズィー)と違い、月は一つしかでていないが、綺麗な夜空だ。

“あのオーガノイドの研究が終わったら、みんなでピクニックに行こう”

ふいに死んだ父の言葉が思い出された。
そういえば、あの日も今日の様な星の瞬く夜空だった。

「・・・」

次々に嫌な事ばかり思い出す。

―――自分の駆るジェノザウラーが惜敗し、右手に消えない傷跡を残したあの日
―――シャドーが度重なる戦闘の度に無理を重ね、終に赤熱化し、行動を停止したあの日
―――デススティンガーに無様にも敗北した、あの日

そのいずれの日も、雲一つ無い、月の綺麗な夜ではなかっただろうか?

(感傷だな。情けない)

苦笑する。
そんなことは唯の偶然に過ぎない。
今夜が晴れているからといって、高町なのはが必ず死ぬわけがないのだ。
だが、このままでは彼女が危ないのも確かである。
と、そこまで考えてレイヴンは自嘲的な笑みを浮かべた。

(何を考えているんだか・・・。彼女が生きようが死のうが俺の知ったことじゃあないだろう)

だが、自分がこの異世界で行動していくにあたって、恩を売っておくにこしたことはないのもまた事実。
その為には、彼女に助かってもらった方が都合がいい。

(結局、俺の本質は変わっていないってことなのか)

Another View End (Raven)
138リリカルゾイド ◆rjU.EEAJoQ :2008/11/10(月) 10:59:03 ID:KvDQIbuZ
いつまで経っても見えてこない本隊にヴィータの焦りは、最高潮に達していた。
実際には、まだ2分程しか経過していない。
しかし、今のヴィータには1分が1時間にも1日にも感じられた。

(くそっ!まだなのかよ!もたもたすれば、それだけなのはがヤバクなるってのに!)

後ろを見やるヴィータ。
そこには翼を広げ、ヴィータの最高飛行速度に遅れることなく追従してくるシャドーがいた。
そして、その中には未だに意識不明のなのはがいる筈だ。
彼女の状態を思い、焦りとは別に後悔の念がヴィータに芽生える。

(くそ!もっと私が注意してればあんなことには!いや、それより、なのはの不調に何で気付けなかったんだ!)

ヴィータは、速度を落とさぬままに自分を責め始めた。

(第一、予兆はあったじゃないか!あんなに消極的ななのはは初めてだったろ!なんであの時に注意しなかったんだチクショウ!)

そこまで考えてヴィータはあることに気が付いた。
そういえば、レイヴンはなのはの不調に気付いていた様なことを言っていなかったか?

“今一番気を付けなければいけないのは、お前だ”

そう、確かこう言っていた筈だ。
不安を紛らわせる為もあったが、ヴィータはレイヴンに思わず尋ねていた。

「おい!レイヴン!」
「何だ?」
「お前、確かなのはの不調に気付いたようなこと言ってたよな?一番気を付けなくちゃいけねえってよ」
「・・・ああ、言ったがそれがどうした?」
「何でなのはの状態が分かったんだよ?初対面だろ?」
「・・・」

沈黙するレイヴン。
しかし、彼の表情を見たヴィータは地雷を踏んでしまったと悟った。
なぜなら、どこまでも無表情になっていたからだ。

「い、いや。答えたくねーんならそれでいい。別に無理して話さなくても・・・」
「お前と同じさ」
「いい・・・え?」
「俺も今回と似たような経験があってな。あんな思いは二度としたくないからなのか、それ以来他人の不調には敏感になった」
「・・・」
「それだけだ。・・・おい、あれが本隊じゃないのか」

レイヴンがある地点を指差す。
そこには大勢の隊員が行き来しており、テントまで張られていた。
ヴィータとシャドーの姿を認めたのか、担架をもった隊員が向かってくる。
それを見て一安心したヴィータが先程のことを謝ろうとレイヴンに向き直った。

「ん?どうした?」
「・・・悪かったな、変な事聞いてよ」
「気にするな。俺は気にしていない」
「・・・」
「急ぐぞ、もたもたするな」
「ああ、分かってるよ!」
139リリカルゾイド ◆rjU.EEAJoQ :2008/11/10(月) 11:00:49 ID:KvDQIbuZ
レイヴンとヴィータが本隊と合流するほんの数分前、クロノはアースラの艦長室で彼の母でもあり、総務統括官でもあるリンディ・ハラオウンと通信を行っていた。
内容は勿論、なのはの負傷についてである。

「というわけで、本局医療班へ通達を。待機レヴェル3でお願いします」
「分かりました。すぐに手配します」

一見すると、とても親子とは思えないほど両者の会話は淡々としていた。
しかし、それは内心の動揺を必死に押し殺していることの表れでもある。

「それと高町なのはの親族への連絡を。最悪の場合も考えなければなりません」
「それは私が直接伺いましょう。・・・それはそうとクロノ?」

今まで見せていた総務統括官としての顔を消し、母としての表情になったリンディはクロノを柔らかく諭すような口調になって言った。

「今回の事はあなたの責任ではないわ。だからそう自分を責めるのはよしなさい」
「そんな事は・・・!」
「顔を見ればわかるわよ。“自分も現場に行っていれば”っといったところね。でもクロノ、今回のあなたの判断は決して間違っていないわ。私があなたの立場でもそうしていたに違いないもの」
「ですが・・・」
「過ぎたことを悔やんでも仕方がないわ。今は出来ることをするしかないのよ。だから、冷静になって。試しにこれからするべき事を言ってごらんなさい」
「・・・なのはを収容したらすぐに医療室に運ばせて、応急処置。後に本局へ転送」
「その後は?」
「武装隊の連中も動揺しているでしょうし、今日は引き上げさせます。事後調査は日を改めて行うことにします。むしろ重要なのは、ヴィータと一緒にいる、次元漂流者と思しき人物のほうです。今回の襲撃事件と何らかの関わりがないか、事情を聞くべきです」
「正解よ。でも、事情聴取はあなたがする必要はないわ」
「え?」
「あなたもなのはさんのことが心配でしょ?尋問に関しては、こちらから一人、執務官を送るから、あなたも本局に戻っていらっしゃい」
「母さん・・・」
「むしろフェイトやはやてさん達への連絡を頼めるかしら?さっきも言ったと思うけど、私はこれから高町さんのお宅に直接向かうから」
「分かりました。では・・・」
「落ち着いて行動するのよ、クロノ」

通信画面が消える。
途端、クロノは大きく溜息を吐いた。
リンディと会話していて疲れたというわけではない。
むしろ、今から本格的に心が疲れることをしなくてはならないのだ。

(ふう、フェイトやはやて達に何て言えばいいんだ)

もっともストレスのかかる仕事―――親族への直接連絡―――はリンディが行ってくれるとはいえ、義妹や親友へなのはの負傷を伝えるのも充分に堪える仕事である。
だからといって投げ出すわけにはいかない。
これは他の誰でもない、アースラ艦長クロノ・ハラオウンがやらなければならないことなのだから。

(ああ、本当に世界はこんな筈じゃないことばっかりだ)
140リリカルゾイド ◆rjU.EEAJoQ :2008/11/10(月) 11:08:32 ID:KvDQIbuZ
以上です。
自分の作品を楽しみに待っていらっしゃった方には、申し訳ない限りです、ハイ。
久しぶりに筆を(?)とったら、ぜんぜん進まないというこの罠orz。
必ず完結しますので、長い目で見てやって下さい。
以下、リハビリに書いた嘘予告。

新暦71年10月 ミッドチルダ臨海第8空港

ギンガ・ナカジマは、焦っていた。
見渡せば、辺り一面火の海である。
焦げ臭い匂いが鼻を突き、燃え上がる炎はそれだけで見ている者を恐怖に陥れる。
だが、彼女は決して止まることは無かった。
否、止まれなかった。
この猛威に晒されているであろうたった一人の妹の事を思えば、躊躇していることなどできるわけがない。

(待っててね、スバル。お姉ちゃんが必ず助けてあげるから!)

しかし、運命は非情にも心優しき姉に襲い掛かる。
妹の事を心配するあまり、ギンガは周囲の状況把握を怠っていたのだ。

「危ない!!」

どこからか怒鳴り声が聞こえてきた瞬間、突如頭上で鳴り響く耳障りな轟音。
見上げれば、コンクリートの塊と共に豪華なシャンデリアがいくつも、凄まじい勢いで落下してくる。
急いで離脱しようとするが、無理を続けてここまで移動してきたせいか、致命的なまでに自分の走りは遅かった。
このままでは、安全圏へ離脱するよりも先に押し潰される。
そう悟った瞬間、足を縺れさせて転倒してしまった。
慌てて立ち上がろうとするが、もはや手遅れだ。

(お父さん!お母さん!スバル!)

だがギンガを襲ったのは、上からではなく横からの衝撃。
目を開けてみれば、すぐそこにシャンデリアの残骸が転がっている。
恐らく自分が倒れていた場所だ。

「怪我はない?大丈夫?」

そう声をかけられてギンガは、自分が誰かに抱きかかえられている事に気付いた。
恐る恐る首を傾けると、命の恩人が心配そうに覗き込んできている。

「え、ええ。ありがとうございます。助けていただいて」

それを聞いて、安堵の溜息をつく男性。
非常に特徴的な人物だった。
長い髪を抑えるように帽子を被り、黒い外套を羽織っている。
左目には、鉤爪の様な奇妙な刺青(タトゥー)。
おまけに左耳にあたる部分には、訳の分からない機械部品がついている。

「まあ、無事でよかったよ・・・え〜と・・・」
「ギンガです。ギンガ・ナカジマ」
「リヴィオでぷぺ」
「噛んだ!?」
(噛んでない、大丈夫!)

かつてダブルファングと呼ばれた男の新しい物語が始まる。


まだまだやで、泣き虫リヴィオ。駆け上がれ、これからも・・・。

141一尉:2008/11/10(月) 12:04:02 ID:vXHfKLae
ほうこれはおもしろすきるよ。
142名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/10(月) 12:32:32 ID:OXN14Gsy
>>140
GJでした。
とりあえず管理局が歩く質量兵器であるゾイドをどう扱うかが気になります。
更新はマイペースで頑張ってください。
未完の大作より楽しみがありますから。
143名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/10(月) 14:00:23 ID:5U6ldbCo
質量兵器ってゆーなぁ!機械生命体だい!!
乙っした
144名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/10(月) 15:02:32 ID:bDS/E+pE
実は飛行型ゾイドは地球じゃ飛べないとかいうどうでもいい設定を思い出してしまった
145名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/10(月) 16:18:06 ID:33lk2fyo
レイヴンのかっこよさは異常
146名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/10(月) 20:04:23 ID:LbrKqzbb
ゼロ同人誌は、同人誌を売るためのココでの連載?
でもいいの?
147反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/11/10(月) 20:23:47 ID:G7hXUxVl
えー、二日連続となりますが、9時頃から投下したいと思います。
久々の更新になる、.hack//Lightningの最新話です。
また41KBというアホみたいな大容量なので、よろしければ支援をお願いします
148名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/10(月) 20:24:52 ID:E/e2Ozv5
>>146
場違いですから運営議論へいってらっしゃいです
149名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/10(月) 20:48:19 ID:FGp/fHsF
きた!.hackきた!
これで勝つる!支援
150.hack//Lightning ◆9L.gxDzakI :2008/11/10(月) 21:00:41 ID:QT6u8liD
んでは、投下いきます
151.hack//Lightning ◆9L.gxDzakI :2008/11/10(月) 21:02:49 ID:QT6u8liD
 自身の真実は持っていた。知り得なかったのは他者の真実だ。


―― .hack//Lightning ――

vol.5 業火の狂宴


 異端の科学者ジェイル・スカリエッティの研究所は、クラナガン郊外の山中にあった。
 とはいえ、それは山林の中にぽつんと建っている、一般的な白亜の建物を意味しない。
 そんなあからさまなものであれば、とっくの昔に管理局に捕捉されている。
 あからさまなものでないのが問題なのだ。スカリエッティのラボの位置は山の中。
 言葉通り、誇張も矛盾もなく、山の中に置かれているのだ。
 要するに、地下研究所。
 さながら一昔前の特撮ヒーローものに登場した、悪の秘密結社のアジトのごとく。
 山肌を掘削した洞窟の中に、スカリエッティは棲み処を構えていたのだ。
 そして、そこに出入りしているのは、何も白衣を纏った科学者本人だけではない。
 悪のアジトに潜んでいるのが、たった1人のボスだけでないように。
 このラボにも存在するのだ。首領を守り、手となり足となって戦う尖兵達。人外の力を持った怪人達が。
「みんなお疲れー。ルーお嬢様連れてきたよー、っと」
 薄暗い研究所の中、場違いなまでに陽気な声が響き渡る。
 ミントグリーンの長髪を揺らすのは、全身を暗色系のフィットスーツで覆ったうら若き少女だ。
 大体、14〜5歳といったところだろうか。明るい笑顔を浮かべた娘が、闇の中の仲間達へと手を振っている。
 その腕は紛れもなく、先刻エリオ達の目の前から、背後の幼女を連れ去った腕だった。
 <誘惑の恋人>の使い手を。恐らく彼の憑神鎌(スケィス)と同質である、憑神刀(マハ)を操る存在を。
 紫の髪と真紅の瞳を持った娘――ルーテシアを。
「お帰りなさぁい、セインちゃん」
 暗黒の中より湧き出るように。
 薄暗闇から姿を現したのは、これまた笑顔の少女だった。
 年齢はセインと呼ばれた娘よりも上だろう。その口元の含み笑いもまた、歳上の余裕を感じさせる。
 明るい茶髪を左右に結び、顔には透き通った丸眼鏡。
 セインとの最大の相違点は、マントのように羽織った白いコートだった。
 上質なシルクで織られたような外套は、首元の黒いファーも相まって、大人びた高級感を醸し出している。
「で、クア姉達の方はどうだった?」
「あたし達は散々だったよ」
 セインの問いに答えるのは、眼鏡の少女ではないもう1つの声。
 彼女のそれよりも長く濃い色をした、栗毛の髪を纏めた娘だった。
 黄色いリボンでしばられたそれは、さながら獣の尻尾を彷彿とさせる。であれば外側に跳ねた髪は、犬や狐の耳だろうか。
 ぼんやりとした表情は、これまでの2人と比べると、若干地味な印象を受けた。
「タイプゼロ達とやり合ってるうちは、まだまだマシだったんスけどねぇ〜」
「あそこで余計な横槍が入ってなかったら、ちゃんとレリックを持って帰れてたんだ! くそっ……」
 新たに割って入ったのは2人の赤毛だ。
 髪の色こそ同じだが、しかしその顔に宿された表情は、ひどく対照的だった。
 前者の赤毛は、ちょうどセインのような陽気な風貌。体格こそ違えど、性格はほぼ似たようなものと推測できるだろう。
 後者の赤毛からは、どこか粗暴な雰囲気が感じられる。鋭い視線を苛立ちに歪め、舌打ちと共に愚痴をこぼしていた。
 そして、それら全員に共通する特徴がある。その身に纏ったフィットスーツだ。
 青やら黒やらの暗色で彩られたそれは、ダイビングなどに使われるようなそれとは明らかに違う。
 さながら特殊工作員などが用いるような、戦闘用の無骨なフォルム。
152.hack//Lightning ◆9L.gxDzakI :2008/11/10(月) 21:04:33 ID:QT6u8liD
 ――戦闘機人。
 それこそが、彼女ら5人の総称だった。
 先天的に機械部品を埋め込まれ、培養液の中で誕生した改造人間。いわゆるサイボーグという存在。
 常人を遥かに凌駕した身体能力を持ち、魔法とも異なる特殊能力を操る異能集団。
 スカリエッティが生み出した、鋼の身体持つ12人の娘達だ。
 眼鏡と茶髪はナンバーW・クアットロ。
 陽気なミントグリーンはナンバーY・セイン。
 苛立った赤毛はナンバー\・ノーヴェ。
 栗毛の尻尾はナンバー]・ディエチ。
 独特な語尾の赤毛はナンバー]T・ウェンディ。
 それぞれがそれぞれに、異なる個性と特殊技能を持った、人外の姉妹の仲間達。
 この場において唯一、無個性なルーテシアだけが人間だったというのは、何とも皮肉な話だった。
 現在戦闘機人達――造物主からはナンバーズと呼称されている――が話しているのは、先の廃棄都市での戦闘についてだ。
 ちょうどルーテシアがエリオ達と交戦し、セインが救援に加わっていた間、彼女らもまた他の魔導師と戦っていた。
 スバルとティアナが回収に向かったもう1つのレリックと、キャロが保護した金髪の娘。その回収が目的である。
 クアットロが応援として駆けつけたなのは達を撹乱し、ディエチがヘリを破壊して金髪の娘を拉致。
 その間にノーヴェとウェンディが地下水道へと向かい、新人達から目標物を奪い取る。
 当初の目論見では、それで全て片付くはずだった。
 だがその計略は、予期せぬファクターの介入によって大きく崩されることとなった。
 スバルの姉ギンガ・ナカジマの救援と、出張に出向いていたはずの副隊長ヴィータの帰還。
 さらに魔力リミッター解除によるなのはのフルドライブ・エクシードモード発動。
 それらの戦力が作戦を破綻させ、逆にクアットロとディエチが逮捕される目前にまで追い詰められる事態となったのだ。
「全く手間をかけさせる……おかげで私のライドインパルスまで、奴らに晒してしまったではないか」
 厳格な女性の声が、闇の中よりかけられた。
 よく通る威圧的な声の持ち主は、これまでのナンバーズとは異なる印象を受ける長身の女性。
 青紫の髪をショートカットにした顔立ちからは、他の姉妹にはない威圧感が宿されていた。
 豊満な肢体を戦闘服に包むのは、ナンバーV・トーレ。実質的な、戦闘機人姉妹の戦闘隊長である。
 そして戦力秘匿のため、本来この作戦には関わる予定はなかったにもかかわらず、クアットロ達の救出に出向いた存在でもあった。
「ごめん、トーレ姉……」
「申し訳ありませぇん……」
 当の2人は厳格な姉を前に完全に委縮し、沈んだ表情をうつむかせる。
 手間のかかる妹達の不甲斐無い表情を目にし、トーレは不機嫌そうに鼻を鳴らした。
「――まぁまぁ。全員無事に帰って来られたのだし、よしとしようじゃないか」
 かつ、かつ、かつ、と。
 靴音を鳴らしながら、更なる声が現れる。
 これまで戦闘機人達が発してきたそれとは異なる、男性の声。すなわち、彼女らとはまた異質な存在。
 紫色の髪を白衣の肩まで伸ばし、金色の瞳を爛々と輝かせる男は――ジェイル・スカリエッティ。
 この男こそがナンバーズの産みの親にして、ルーテシアの協力者。
 ガジェットドローンとAIDAを操り、管理局に反目する次元犯罪者である。
「しかしドクター……我々戦闘機人6人に加え、巫器(アバター)まで晒すことになったというのに、収穫が一切なしというのは……」
「今回の失敗は、彼らの戦力を見誤った私にも非がある。それにあのマテリアルにしても、まだまだ入手できる機会はあるさ」
 苦言を呈するトーレを、笑顔のスカリエッティが制した。
 しかし、笑っているのは口元だけ。そのガラスのような瞳からは、一切の感情が読み取れない。
 常に顔に張り付いて離れない、仮面のように空虚な微笑みが、この男の最大の特徴でもあった。
153.hack//Lightning ◆9L.gxDzakI :2008/11/10(月) 21:06:15 ID:QT6u8liD
「そういえばルーお嬢様ぁ、どうしてレリックやマテリアルを見逃しちゃったんですかぁ?」
 と、それで思い出したように、クアットロの声がルーテシアへと問いかける。猫撫で声のような甘ったるい発音。
 そもそも今回の作戦だが、非があるといえばこの憑神刀の使い手にもあったのだ。
 彼女に課せられた任務はエリオとの交戦と、レリック及び金髪の娘の回収。
 つまりルーテシアがちゃんと仕事をしていれば、そもそもディエチはヘリに向かう必要がなかったのだ。
 であれば、スバルらとの交戦にも参加できただろう。そうなれば、地下水路のレリックも回収できたかもしれない。
 にもかかわらず、彼女はその2つをあっさりと見逃した。
 エリオと戦うためには邪魔になるとはいえ、回収対象を管理局に引き渡してしまったのだ。
 まるで、そんなものには一切興味がないとでも言わんばかりに。
 問いかけられたルーテシアは、沈黙。
 いつものようなぼんやりとした表情と共に、静かに口をつぐんでいる。
 一拍の間を置いて、大きな赤き瞳が動いた。
 レリックの輝きのように。したたる鮮血のように。
 真紅の視線が持ち上がった先には、無数に並べられた生体ポッド。
 培養液と人体の入れられた、透明なケースの陳列された中にあるただ1つを、見据える。
「必要なかったもの……]T番目のレリック以外は」

 聖王医療院の特別病棟は、2人にとってはすっかりお馴染みの場所だった。
 機動六課の職務に追われ、ここ最近は顔を出す機会も減っていたのだが、その間に使用中の病室が随分と増えたようにも思える。
 正体不明のロストロギア・AIDA。三角形の傷跡を残すもの。
 こうしている今においても、多くの人々があの魔物の餌食となっている。
 意識不明患者によって埋められていく病室は、そのことを如実に物語っていた。
 そして、今。
 その最初の犠牲者の病室に佇む者が、2人。
 機動六課ライトニング分隊構成員――エリオとキャロが、ベッドの上で眠るフェイトを見舞っていた。
 未だ昏睡状態の続く管理局のエースは、相も変わらず衰弱しきった様相を見せている。
 触れればそのまま折れてしまいそうな。風が吹けば、そのまま風化してしまいそうな。
 やせ細った恩人の身体は、そんな錯覚さえも思わせていた。
 体内に残留するAIDAが原因となっているのならば、憑神鎌のデータドレインで削除してしまえばいい。そう思ったこともあった。
 しかし、それで彼女の意識が回復するという確証はない。
 そもそもデータドレインは、理論上はリンカーコアさえも改変させることもできる危険な力だ。
 生身の人間に対して振るえば、いかなる影響が出るか分かったものでもなかった。
 そう。憑神鎌を手に入れたところで、それだけでは何も変わらない。
 力さえあれば、フェイトを救えるという話ではない。問題はその先にあった。
(必ず見つけ出す)
 この力を振るい。
 AIDAを駆逐し。
(その先にある……フェイトさんを救う方法を)
 意識不明者を回復させる手段を。
 それを手に入れるために戦い続けることを、エリオは今一度、病床で眠るフェイトに誓った。
 ここにいる仲間達と共に。
 この手に掴んだ<死の恐怖>と共に。
 新たな力を手にした今こそ、改めて誓わねばならなかった。
154.hack//Lightning ◆9L.gxDzakI :2008/11/10(月) 21:08:19 ID:QT6u8liD
 がちゃり、と。
 不意に病室の扉が開く。
「失礼するわよ」
 短い一言と共に入ってきたのは、1人の少女だった。
 管理局の茶色い制服に身を包んでいることから、彼女が局員であることは推測できる。年齢は十代後半といったところか。
 若干紫がかった深い青の長髪を持ち、そこには紺色のリボンが結ばれている。
 エメラルドのように透き通った緑の瞳には、どこか見覚えがあった。
「初めまして。ギンガ・ナカジマよ。……スバルからは、もう話を聞いてるかな?」
 そして、微笑みと共に発せられた自己紹介によって、ようやく2人は得心がいった。
「あぁ……スバルさんの、お姉さんですよね?」
 キャロが口を開く。
 ギンガ・ナカジマ陸曹。同僚のスバルよりも2つ歳上の姉で、確か陸士108部隊に所属する捜査官だったはずだ。
 大層自慢の姉だったらしく、スバルからは事あるごとに彼女の話を聞かされている。
 格闘技法シューティングアーツの先生だの、十代で既に立派に活躍しているだのと、耳にタコができるほどに。
 それでも、そうしたことを話す彼女はとても誇らしげで、とても活き活きとした笑顔を浮かべていた。
 恐らくスバルにとっては、とても大切な存在なのだろう。エリオ達にとってのフェイトのように。
「フェイトさんのお見舞いですか?」
 頷くギンガへとエリオが問いかける。
「うん。まぁ、そんなところ」
 ギンガはそれに答えると、エリオ達の隣――すなわち、フェイトのすぐ傍まで歩み寄った。
 これもスバルから聞いたことだが、ギンガは以前、彼女に命を救われたことがあったらしい。
 スバルがなのはに救出された、4年前の空港火災事件。あの時ギンガもまた、その現場にいたのだそうだ。
 偶然事件現場近くにいた2人によって、炎の中より助け出された幼い姉妹。
 そのうちなのはに助けられた片割れがスバルであり、フェイトに助けられたのがギンガだったのだ。
 そんな恩人がAIDAの毒牙にかかって以来、彼女もまた、108部隊でそれを追い続けてきたらしい。
 連続意識不明事件を。三角形の傷跡を刻むものを。
 沈痛な面持ちで、病床のフェイトを見つめるギンガの姿があった。
「――廃棄都市で、私達が戦った敵だけどね」
 そして、不意に口を開く。
 敵というのは、ルーテシアをかすめ取った、コンクリートより現われた腕のことだ。ルーテシア本人のことではない。
 そもそも、あの美しくも苛烈なる魔剣・憑神刀と、直接刃を交えたのはエリオだけである。ギンガはその姿を見てすらいなかった。
「隊に戻って、色々調べてみた結果……戦闘機人の可能性が高いって結論に至ったわ」
 戦闘機人とは、これまでずっとギンガが、AIDAと共に追い続けてきた存在であり、本来の彼女の担当案件でもあった。
 生まれる前の段階から、身体を機械に改造された人間。もちろん、人道的な立場から、違法研究の烙印を押された技術である。
 現代の技術においては、未だ実戦に耐えうるレベルではないと言われていたが、今回の戦闘にはその戦闘機人が現れた。
 Bランクのスバル達の前に立ちはだかり、互角の戦いぶりを披露してみせた。
「AIDAの件もある。私が六課に出頭するのも、そう遠くないことかもしれない」
 さらに、戦闘機人と行動を共にするガジェットには、あの忌まわしきAIDAの影もちらついていた。
 ギンガと戦闘機人研究との間に、一体どのような因縁があるのかは定かではない。
 だが、今まで自分が追ってきた因縁の相手と、フェイトの笑顔を奪った憎むべき相手。
 そのどちらもが、同じジェイル・スカリエッティと思しき存在の下で活動している。
 渦中にあるのは、スカリエッティと同じレリックを追う機動六課だ。ならば、自らそこに飛び込むしかない。
 決意を口にするギンガの姿は、まさしくエリオのそれと同じものだった。
「その時は、また色々とよろしくね」
 顔を持ち上げ、エリオ達に語りかけるギンガの顔は、笑っていた。
155名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/10(月) 21:09:03 ID:bUku0V2C
156.hack//Lightning ◆9L.gxDzakI :2008/11/10(月) 21:09:54 ID:QT6u8liD
「もちろんです。よろしくお願いします」
 満面の笑顔でキャロが応じる。エリオもまた、それに続くようにして頷いた。
 もしもギンガが六課に加入するとなれば、とても心強い助っ人になる。
 キャロのように口に出すことこそしなかったが、エリオとしても彼女の存在は大歓迎だった。
 憑神鎌を抜きにすれば、新人四人組の中でも最も高いポテンシャルを有するスバル。
 そのスバル曰く、戦闘技術の基礎を叩き込んでくれたギンガは、彼女自身をも更に凌駕した実力を持っているというのだ。
 加えて、これまでAIDA事件を追ってきたことによって得られた、知識や情報もある。
 捜査官というプロの立場にあるギンガの知恵は、いずれ役に立つ時が来るはずだ。
 熟練した技術も、明晰な頭脳も、いずれもエリオが持ち合わせてはいない要素。
 であればその力も知識も、フェイトを救うために利用しない手はない。
「では、僕達はこれで」
 言いながら、エリオは会釈と共に病室を後にする。キャロもそれに続いた。
 既に窓外の空は、夕暮れ時のオレンジに染まっている。今回の件の事後処理のためにも、六課隊舎に戻らねばならない。
 共にフェイトを見舞った後、保護した金髪の娘の様子を見に行ったなのはも、そろそろ帰還する頃だろう。
 廊下を歩き、階段を降り、エントランスを通って正面玄関から外に出る。
 窓越しではない、確かな温度を持った斜陽の光が、エリオ達の顔を直接染め上げた。

「――久しぶりだな、エリオ」

 その時、そこに、それはいた。
「!?」
 唐突にかけられた声。視線の先に、何者かが立っている。
 否、確認するまでもない。
 その存在を見間違うはずもなかった。
 ましてや、あのクラナガンの街中で、昼に見つけたばかりの顔なのだから。
 青色の髪を夕方の風に舞わせ、首からは青白いマフラーをたなびかせる男。
 白いレザーに身を包み、左腕には円筒型の巨大なギプスを嵌めた男。
 丸い色眼鏡の奥の視線に、いつもの謎めいた笑みを浮かべるのは。
「オーヴァンさん……!」
 異形の左腕を持った、もう1人の恩人の姿があった。
 エリオは瞠目する。突然街の中に姿を現して、そのくせ突然姿を消したばかりの男が、今目の前で笑っている。
 黄金の南京錠をかけた拘束具を、黄昏の光に輝かせながら。
「……久しぶりなのは、貴方が自分の用事だけ伝えて、すぐどこかに行ってしまうからじゃないですか」
 意を正すようにして、尖った視線と共にエリオが口を開く。
 強がりもあった。だが、この男に対する苛立ちは本物だ。
 もちろん、エリオにとってのオーヴァンは、フェイト同様に絶対の存在だ。恩義を感じているし、憧れてもいる。
 しかし、だからこそ、いつもすぐに行方をくらませてばかりのこの男には、苛立ちを感じずにはいられなかった。
 何故オーヴァンは共に戦ってくれない。一体何を考えている。
 身勝手なわがままだとは分かっていても、そう思わずにはいられなかった。
「そうとんがるなよ。久々の再会じゃないか」
 そしてそのオーヴァンはというと、エリオから向けられる鋭い視線にも、全く動じることなく口を開く。
 薄い微笑みを浮かべたまま。柳に風とはこのことか。
 悲しいかな、エリオとオーヴァンとでは役者が違う。高々10歳の子供が凄んだところで、この男をどうこうできるはずもない。
 そして残されたキャロは、会話の流れから完全に置いてきぼりをくらい、所在なさげに視線を泳がせていた。
 無理もないだろう。話には聞いていたが、彼女がオーヴァンと出会うのは、これが初めてなのだから。
157名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/10(月) 21:10:30 ID:bUku0V2C
158.hack//Lightning ◆9L.gxDzakI :2008/11/10(月) 21:13:33 ID:QT6u8liD
「貴方には、色々と聞きたいことがある」
 きっとオーヴァンを睨みつけながら、エリオが言葉を続ける。
 低く、唸るように。出来うる限りの精一杯の凄みを利かせて。苛立ちが眉へと皺を寄せさせた。
 もう逃げることは許さない。いつものように雲隠れさせることはしない。
 一度自分を救い出したのならば、それ相応の責任はあってしかるべきだろう。
 聞くべきことはたくさんあった。
 どうして自分を捨てたのか。あの両親のように裏切ったのではないか。まだ自分はこの男を信じていいのか。
 信じていたいからこそ、不安は募る。それを押し隠すように、気配を尖らせる。あまりに子供らしい態度。
 もう裏切られるのはごめんだった。これ以上誰かに傷付けられるのは嫌だった。
「洗いざらい喋ってもらいます」
 しかし、それらより先に、最初に尋ねるべきことがある。
 言いながら、エリオの手は制服のポケットへと伸びた。
 取り出されたのは1つの球体。
 なのはのレイジングハートのような、握り拳に隠れるほどの小さなサイズ。
 鉄ともガラスとも、それ以外の何ともつかぬ独特な質感。灰色の中で輝く3つの赤。
「……これは一体何なんですかっ!」
 憑神鎌。
 エリオがオーヴァンより授けられ、遂にその所有者として目覚めたデバイスの待機形態だ。
 漆黒と黄金の二色で塗り分けられた、身の丈に倍する長さを誇る月魄の刃鎌。
 人の操りし奇跡を砕き、人の命を一太刀で刈り取る、死神の魔力を秘めた大鎌(サイズ)だった。
「あの娘が言っていたのは……巫器とは、一体何なんだ!?」
 思い返されるのは、紅色の風に舞う紫の長髪だ。
 ルーテシア。エリオのそれと同質の力・憑神刀の使い手。
 紫電のごとき紫の刀身のもとに、麗しき薔薇を操る魔性の剣士。漆黒の甲虫戦士を引き連れし蟲召喚士。
 彼女が言っていた巫器とは、一体何を指すものなのだ。
 何故3年前に渡された力が、今まさに都合よくAIDAを倒しうる牙となるのだ。
 オーヴァンはそれらを全て知っているのではないか。だからこそ、あの街で自分とルーテシアを引き合わせたのではないのか。
 何のために。
 何を為すために。
「貴方は一体……僕に何をさせたいんだっ!」
 憑神鎌を与えたのはあくまで手段だ。憑神鎌と憑神刀を戦わせたのも手段だ。手段の先には目的が存在する。
 答えないことは許されない。
 もうこれ以上まどろっこしい態度を見せるのは許さない。
 エリオの青き双眸が、色眼鏡の奥の瞳を鋭く貫いていた。
 黄昏に佇むオーヴァンは、答えない。
 仮面のごとき無表情を崩すことなく、じっとエリオの視線を見つめ返している。斜陽と同じ、橙に輝くレンズの奥から。
 静寂。重苦しい沈黙。キャロの表情が不安に沈んでいく。
 赤と青。小さな子供と長身の大男。右手に憑神鎌を掴んだ者と、左手を拘束具に封じた者。
 エリオとオーヴァン。対立した2人の男の様は、そのまま夕暮れの光に溶け込むような錯覚さえ覚えさせた。
「……巫器とは、平たく言えば、超古代文明の8つの遺産だ」
 静寂を破ったのは、オーヴァンだった。
 その口を突いた言葉は、エリオが予想したものよりも、遥かに単純で遥かに明快な説明。
「超古代、文明……?」
 半ば呆気に取られながらも、エリオは何とかそれだけを呟く。
 どうせいつものように、自分の理解を撥ねつけるような、難解な言葉を投げかけられるのだろう。最悪、問いを問いで返すかもしれない。
 どこかでそう勘ぐっていただけに、この回答には拍子抜けさせられた。
 そして、そんな感想を抱いている辺り、自分は本当にこの男を信用したいのだろうかと、改めて内心で自問した。
159.hack//Lightning ◆9L.gxDzakI :2008/11/10(月) 21:17:18 ID:QT6u8liD
「そこから検知されるロストロギア――特定遺失物反応の名が指す通り、
 そのデバイスは今よりも、遥かに昔の文明によって生み出されている。
 魔力結合を破壊するデータドレインを始めとした、その驚異的な能力の数々は、さながら現代に蘇った神話の武具といったところか。
 憑神鎌は第一相、お前が戦った憑神刀は第六相。残り6つの所在は、今のところ明らかになってはいない」
 呆けたような表情をするエリオを尻目に、オーヴァンはつらつらと言葉を並べていく。
 そして紡がれていく言葉を読み解いていく中で、エリオは再度驚愕した。
 データドレイン。対象の魔力結合の術式に干渉し、それを改竄するスキル。
 あらゆる魔道の力を寄せ付けぬ、一撃必殺の禁断の術。その名は確か、シャーリーによって初めて命名されたものだったはずだ。
 何故それを、この男は知っている。やはりこの男は何もかも知り過ぎていた。
 未だ発表すらもされていなかった機動六課のことも、それを設立しようとしていた人間のことも。
 では何故、オーヴァンはそれを知ろうとした。一体何故、管理局の情報へとアクセスしたのだ。
「……これで満足かな?」
 薄い微笑を浮かべたオーヴァンの表情を見て、エリオは再びむっとした表情を作った。
 この妙に素直な態度も、結局はまた自分をからかうつもりでのことだったのか。それが苛立ちを加速させる。
「その憑神鎌がお前にとって、いかなる意味を持つのかは、お前自身のためにも口をつぐもう。
 お前の物語を語るべきは俺ではない。お前がお前自身の物語を進めようというのならば、真実はその先にある」
 そうすることでのみ、お前の望む真実を掴むことができる、と。
 それで終わりだとでも言わんばかりに、オーヴァンはすっと踵を返した。
 白いレザーの裾が躍る。やたら長いマフラーが風に舞う。
 ふわり、という擬音が似合うような動作で、憧れの男はエリオに背を向けていた。
 少年は男へと、より厳しい視線を送る。
 やはりまた逃げるのか。小難しい言葉で言い訳をして、肝心なことは何一つ語らずに立ち去ろうというのか。
 これはオーヴァンの常套手段だ。あえて答えを語らぬことで、相手の心を自分に引き付けようとする。
 そうだと分かっていながらも、その手段に乗らざるを得なかった。
 その手段の先にある目的が、一体何であろうとも。
「……じゃあ、その物語というのは、どうやって進めればいいんですか」
 より一層低い声で、エリオが問う。
 みっともなくオーヴァンをなじることはできなかった。憧れの男の前で、子供らしい駄々をこねる姿は見せられない。
 今の態度が、既に十分子供っぽいということにも気付かぬままに。
 その事実が、オーヴァンの口元へとなおも笑みを浮かべさせ、それがまたエリオの神経を逆撫でる。
「簡単な話だ。これまで通り、AIDAを追いかけ続ければいい」
 肩越しにエリオを見つめながら、オーヴァンが言った。
「巫器はAIDAを呼び、巫器同士は惹かれ合う」
 いつもと同じ謎めいた笑みで、謎めいた言葉を残して。
 エリオが戦い続けていれば、おのずとAIDAと巡り会うことになる。あのルーテシアとも戦う時は来る。
 進み続ける覚悟さえあれば、望んだ道は開かれていく。真実へと繋がっていく。
 恐らくは、そういうことなのだろうか。
 かつ、かつ、かつ、と。
 舗装された道の上で、ブーツの音を鳴らしながら。
 オーヴァンの白いレザーと金属のギプスは、そのまま黄昏の中へと消えていった。
「あれが、オーヴァンさん……」
 ぽつり、と呟く少女の声。
 後に残されたのは、顔をしかめたエリオと戸惑うキャロだけだ。
(上等だ)
 硬く拳を、握り締める。
(言われなくとも戦ってやる)
 これまでだってそうして来た。それで何かを掴めるのなら、今更やめる手などない。
 必ずフェイトを救ってみせる、と。
 病室で今一度打ち立てた誓いを、エリオはさらに強固なものとした。
160名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/10(月) 21:20:09 ID:bUku0V2C
161.hack//Lightning ◆9L.gxDzakI :2008/11/10(月) 21:20:20 ID:QT6u8liD
 エリオとオーヴァンの聖王医療院での邂逅から、何事もないままに数ヶ月が過ぎた。
 事は起こっている。相変わらずガジェットとレリックを巡って小競り合いは続いているし、AIDA事件も進行し続けている。
 保護した金髪の娘――ヴィヴィオと名乗っていた――は、なのはが一時的に預かることにもなった。
 つい1週間ほど前には、あのギンガの六課への転属がようやく実現してもいた。
 しかし、エリオの中での状況は進んでいない。
 フェイトを襲った犯人の糸口を掴むどころか、あのルーテシアとすらも再会してはいなかった。
 もどかしい。日に日にエリオの苛立ちは募る。
 それでも彼が、これまでほどに荒れることがなかったのは、ひとえに仲間のおかげかもしれない。
 フェイトの友人だった隊長陣も、フォワードの仲間達も、非常に良く接してくれている。
 あるいは彼らもまた、エリオと同じ、普通でいられなかった人種であるからかもしれない。
 そして何よりも、エリオと同じ恩人を救うために戦い続ける少女――キャロ。
 彼女の存在は、孤独な彼にとっては、次第に大きな支えになりつつあった(もっとも、本人は否定しているのだが)。
 ここには多くの仲間達がいる。
 自分と一緒にいてくれる人がいる。自分と同じ意志を共有し、同じ目的のために戦う少女がいる。
 傷つくことを恐れ、世界の全てを拒絶していたエリオの周りは、今はたくさんの人々で溢れていた。
 モンディアル家から連れ出されてから4年。六課は以来初めての、エリオの心休まる場所になりつつあった。

 新暦75年9月12日、機動六課隊舎。
 灰色に染まった曇天の空を、1人の娘が見上げている。
 燃えるようなオレンジの髪色。年齢も背丈もエリオより低く見えるというのに、鋭い視線はそれ以上の凄みを放つ。
 どう見ても小学生の容姿を有していながら、その小柄な身体はしっかりと管理局員制服を纏っていた。
 肩に担ぐは鋼のハンマー。鉄の伯爵、グラーフアイゼン。
 スターズ分隊副隊長、ヴィータ。
 これでもスバルとティアナのれっきとした上司であり、ライトニング隊長シグナムと同じヴォルケンリッターの一員だった。
「待つだけってのも、退屈なもんだな」
 曇り空を睨みながら、ヴィータが思いっきり不機嫌そうに呟く。
 その背後に立つ青き狼――もう1人の副隊長ザフィーラと、制服の上に白衣を纏った女性へと。
「仕方ないわよ、ヴィータちゃん。シグナム達がいないところを襲撃されたら大変だもの」
 金髪をセミロングにした白衣の女が言った。
 彼女の名はシャマル。機動六課の医務官である。
 とはいえそれは普段の業務であり、こうした有事の場合は、自ら前線へと立つことも少なくなかった。
 医師であり、騎士もある。シャマルもまた、ヴィータやザフィーラと同じ、八神はやての守護者の1人なのだ。
 守護騎士ヴォルケンリッターの3人が、こうして隊舎の外で臨戦態勢を整えている理由は1つ。拠点防衛である。
 この日は地上本部において、管理局の公開意見陳述会が開かれていた。
 六課部隊長たるはやてもまた、本局部隊隊長の一員として参加している。
 なのはやシグナム、そしてエリオ達新人組とギンガは、その会場の警護のために出払っていた。
 当然、隊舎の守りは手薄になる。ヴィータ達副隊長とシャマルは、そこを防衛するために隊舎に残されたのだ。
 六課がこうまでして陳述会の守りに躍起になるのには、ある理由があった。
「なかつ大地の法の塔は虚しく焼け落ち、それを先駆けに、数多の海を守る法の船も砕け落ちる……」
「やはり、予言の日が今日である可能性は高いな」
 呟くシャマルの声に合わせるようにして、ザフィーラが獣の口を開いた。
 予言――聖王教会の騎士カリム・グラシアのレアスキル、プロフェーティン・シュリフテン。
 彼女と月の魔力によってなされた未来予知の詩文こそが、六課の結成された理由の1つでもあった。
 そもそもこの予言、これまではよく当たる占い程度としてしか認知されていなかったのだが、今回のこれはあまりにも内容が不吉すぎる。
 大地の法の塔は地上本部。数多の海を守る法の船は本局。
 すなわち、管理局システムそのものの崩壊。鼻で笑い飛ばせるような内容ではない。
 故に機動力を重視した、少数精鋭の機動六課が結成され、こうして日々奔走しているのだ。
162.hack//Lightning ◆9L.gxDzakI :2008/11/10(月) 21:23:57 ID:QT6u8liD
「でも、あたしにゃまだ信じられねーな」
「どうして?」
 ヴィータが言った言葉に対し、シャマルが問いかける。
「そもそも今回攻めてくるとしたら、例のガジェットと戦闘機人共だ。
 これまでの戦闘を見ても、そんなに数が揃ってるようにも思えねぇ。そんな不利な状況で、わざわざのこのこ出てくるもんなのか?」
 彼女の意見も、あながち間違いではなかった。
 予言に従うならば、今回陳述会を襲う敵は「古い結晶」に関わる者――すなわち、レリックを追うスカリエッティ一派である。
 これまでにも連中とは、何度も交戦を続けてきた。
 だが、今までに見られた戦力は、6人の戦闘機人とガジェット、そして憑神刀の適格者たるルーテシアのみ。
 戦闘機人のうち、ノーヴェとウェンディの力量はスバル達と同程度だった。
 廃棄都市での戦闘から、クアットロとセインは直接戦闘向けのタイプではないと推測できる。
 ディエチの砲撃はなのはのエクシードモードで対処できた。トーレも隊長陣ならば対応可能だろう。
 ルーテシアも、今のエリオとキャロならば、決して手に負えない相手ではない。
 となると頼みの綱はガジェットの物量だが、それも圧倒的という言葉には程遠い。
 がちがちに守りを固めた地上本部を攻め落とすには、あまりにも頼りない戦力だ。
 この数で攻めてくる奴がいるとしたら、それはよほど戦術に自信がある者か、あるいはただの馬鹿だけだ。
 そしてこれまでの単純な行動を見る限り、敵は明らかに前者ではない。
「確かに、そう考えてみるとそれもそうね……」
 顎に指を添えながら、シャマルが呟く。
 そもそも、仮にその程度の戦力で本当に攻めてきたとして、果たしてこちら側まで手を回す余裕はあるのだろうか。
 そんな考えさえも脳裏に浮かんでくる。
「しかし、これまでに奴らが出してきた戦力……本当にあれで全てなのか?」
 口を挟んだのはザフィーラだ。
「敵が今まで本気を出してなかったってのか?」
「それが全力であると印象づけさせるために、あえて戦力を小出しにしていた……考えられないことではないだろう」
 青き守護獣の言葉に、守護騎士2人は頭をひねる。
 確かにそれならば、今までの散発的な行動も説明がつく。
 これまで数機のガジェットしか出してこなかったのは、自分達の戦力がそれだけであると思わせるため。
 後々に真に全力を発揮するために、あえて自分達を弱く見せていた。
 この陳述会での戦いのために。
 じっと息をひそめ、最高のタイミングで食らいつくため。
「でも、相手は一介のテロリストよ? そんなに多くの戦力、本当に隠せるものなのかしら……」
 更にシャマルの声が反論した。
 なるほど確かに、その線が通じるのは、ちゃんとした組織力の整っている集団であった場合の話だ。
 だが、今回の敵はどこかの軍隊というわけではない。ジェイル・スカリエッティという個人の兵力の可能性が高い。
 ではその個人が、それだけの兵力を用意するだけの組織力を持っているものなのだろうか。
 ガジェットや戦闘機人を生産する資金力は。それを秘匿できるだけのアジトは。
 それほどの力、個人の次元犯罪者が有しているとは、到底思えるはずもなかった。
 考えれば考えるほど、思考の糸は複雑に絡まっていく。
 さながら異端の科学者のフラスコの中で、右往左往と踊らされているような感覚。
『――召喚魔法の反応です』
「えっ!?」
 不意に響く、声。
 アームドデバイスの機械音声。
 思考の迷路に沈んだヴォルケンリッターの意識を揺り起こしたのは、シャマルのクラールヴィントの警告だった。
「どうやら、ザフィーラの線で正解だったみてぇだな」
 グラーフアイゼンを両手に構えたヴィータが、鋭い眼差しで天上を睨む。
163名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/10(月) 21:29:55 ID:XwfLoKmr
支援
164代理:2008/11/10(月) 21:34:28 ID:XwfLoKmr
 その先にあるものは――敵。
 敵、敵、敵。
 天空を覆い尽くす敵の群れ。曇天を埋め尽くす無数の目。視界全体に余すことなく広がっていく機械兵士。
 ガジェットドローン。
 空中に次々と展開されていく、紫の遠隔召喚魔法陣。そこから続々と現れる、自律兵器の大軍団。
 楕円形の身体を有したT型が。
 ステルス爆撃機のごときU型が。
 球状の巨体を転がすV型が。
 さながら闇のカーテンを切り裂くように。1機、1機、また1機と、灰色の虚空より湧き出てくる。
 そしてその数はというと、今までの戦闘など比較にならないほどのものだった。
 東より10機、西より10機、中央より10機。そうかと思えばまた東から10機。
 まさしくザフィーラの懸念通りだ。数十数百の鋼鉄の兵隊が、続々と機動六課隊舎へと集ってくる。
「そんな……これだけの数の機動兵器を、個人レベルで用意できるわけが……!」
 驚愕も露わにシャマルが叫ぶ。
 だが、事実だ。目の前の光景は、紛れもない真実だ。
 スカリエッティがいかなるからくりを使ったかは分からないが、現に眼前には、こちらの想像を遥かに超えた大軍勢が展開されている。
 では、どうするか。
 この雲霞のごとき大軍を前に、ヴォルケンリッターの三騎士にできることは何か。
「――上等だよ」
 論ずるまでもない。
 鉄槌の騎士が不敵に笑む。
 未だ10歳にも満たぬ容姿の表情を、凄絶な笑顔に歪ませる。
 滲み出るのは、闘志。この守護騎士達の集いし隊舎へと、のこのこ現れた無頼の来客達へ向けられしオーラ。
 ここをどこと心得る。自分達を誰と心得る。
 ミッドチルダの武装隊の中でも最強のエース達が集う、機動六課の本丸だ。
 数百年の長き年月を、常に闘争の真っただ中で駆け抜けてきた守護騎士だ。
「そっちがその気なら……」
 恐れ多くも、その自分達に戦いを挑むというのなら。
「何体で来ようと相手になってやらぁっ!」
 雄たけびと共に、グラーフアイゼンが煌いた。
 真紅の閃光。光輝に溶けるヴィータの身体。
 赤き魔力の輝きの中で、騎士の様相は激変する。
 分解される、茶色い管理局の陸士服。新たに装着されるのは、灼熱のごとき真紅のドレス。
 黒きフリルがスカートを彩り、大きなリボンが腰へと巻かれた。
 オレンジの頭をすっぽりと覆うのは、黄金の十字架輝く赤き帽子。瞳の上を、ウサギを模した白き装飾が飾る。
 騎士甲冑装着。鉄槌の騎士ヴィータ、臨戦態勢完了。
 幼き少女の様相は、影形もなく一瞬で立ち消え、誇り高き1人の戦士が姿を現す。
「シャマルは隊舎の防衛を頼む! 行くぞ、ザフィーラッ!」
「分かったわ!」
「心得た!」
 ヴィータの号令に呼応し、残る2人の騎士達もまた、その威を正し戦闘へと臨んだ。
 湖の騎士は若草色の法衣へと身を包み、両の手のクラールヴィントを油断なく構える。
 盾の守護獣はその身を躍動させ、ヴィータと共にガジェットへと真っ向から突撃した。
 加速。
 速く、より速く。
 さながら二陣の風となり、赤と青の2人の騎士が、敵の陣営目がけて猛烈な速度で殺到する。
 放たれる無数の光。ガジェット達が迎撃に放った、必殺の熱量を秘めしレーザーだ。
 物言わぬ戦闘人形より繰り出される光学兵器は、並の人間など容赦なく貫き、焼き尽くして火だるまとするだろう。
165代理:2008/11/10(月) 21:35:47 ID:XwfLoKmr
「その程度の攻撃で、ヴォルケンリッターの盾が崩せるかッ!」
 されど、吼える。
 鋼のごとき四肢を走らせ、鋭く大地を踏みしめて。鉄槌構えし同胞を守護するために。
 疾風怒濤のザフィーラが、自ら攻撃の矢面へと躍り出る。
 輝くは古代ベルカの三角魔法陣だ。
 蒼き狼ザフィーラは、確かに単独でも高い戦闘能力を持つ。
 廃棄都市での戦闘で、いかにダメージを受けていたとはいえ、あのガリューを一撃で殴り倒したのがその証明だ。
 されど、この男の称号は盾。猛き守護獣の本領は、敵の攻撃より味方を守ること。
 すなわち、防御。
 展開された障壁が、迫るレーザーの雨へと立ちはだかる。
 スコールのごとき一斉射撃も、守護獣の誇る鉄壁の防御の前では無力。両者を襲う全ての攻撃が、ことごとく弾き返される。
「雑魚はいくら徒党を組もうと雑魚なんだよ――」
 顕現。
 虚空へと広がる鈍色の列。
 ザフィーラの防御魔法を盾としながら、ヴィータが8つの鉄球を展開した。
 鉄の伯爵を、振りかぶる。渾身の力を両手に込め、グラーフアイゼンの鉄槌を構える。
 雨が止み、傘が閉じられた。
 ガジェットの砲撃が中断され、守護獣の盾が掻き消えた。
 その、瞬間。
「――三下ぁッ!」
 ヴィータが叫んだ。
 アイゼンが唸った。
 守護騎士の優れた筋力を最大限に発揮。遂に振り抜かれる鋼のハンマー。
 金属質の快音と共に、鉄の伯爵が、二往復。全身全霊の力を込め、空中で静止する鉄球を殴りつける。
 シュワルベフリーゲン、発動。
 剛力によって撃ち出された鉄球は、天駆ける高速の燕と化す。
 空気を切り裂く音。複雑に描かれる軌道。
 グラーフアイゼンより放たれた誘導弾が、猛烈な速度でガジェット達を叩き落としていく。
 一発、また一発。続々と命中する痛恨の一撃。
 幼い外見を侮らぬことだ。ヴィータは内心でほくそ笑む。
 外見年齢はヴォルケンリッターの中でも最年少だが、グラーフアイゼンの単純な破壊力では、逆に4人の中でも最強を誇る。
 鉄槌の騎士。破壊と粉砕こそが本分の突撃娘。それこそがスターズ副隊長のヴィータ。
「おらおらどうしたっ! 数だけ揃えりゃ勝てると思ったか!」
 怒号と共に繰り出される、ヴィータの鉄槌とザフィーラの四肢。
 これだけの大軍勢ともあれば、確かにAMFの濃度も並大抵ではない。下手な魔導師では障壁1つ張れぬだろう。
 だが、それがどうした。
 我らを何と心得る。古代ベルカの武士(もののふ)だ。
 たとえ魔力結合を阻害されようと、直接殴ればどうということはない。
 そして、この程度の雑兵など、幾世紀もの死闘を生き抜いた手練れにとっては、まるで敵になりはしない。
 ヴィータが殴れば、ザフィーラが裂く。
 ザフィーラが噛み砕けば、ヴィータが叩き潰す。
 まさに一騎当千。数の不利などものともしない。これこそが機動六課副隊長の実力。
166名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/10(月) 21:37:01 ID:bUku0V2C
167代理:2008/11/10(月) 21:37:18 ID:XwfLoKmr
 ――轟、と。
「!?」
 耳を打つ爆音。
 背筋をなぞるプレッシャー。
 同時に現われる2つの異常。
 不意に襲いかかった感覚に従い、反射的にヴィータとザフィーラはその場から飛び退いた。
 大地をえぐるは、雨。
 幾千幾万にも及ぶ光の雨。数多の光条が織りなす暴風雨が、数機のガジェットを諸共に撃ち貫く。
 これはガジェットの一斉射撃じゃない。威力が違う。気配が違う。不細工な鉄屑の砲火とは明らかに違う。
 何より、光の中に混じる漆黒の泡は。
 嵐の出どころ――遥か上空を、仰ぐ。
 2つの人影が、新たに姿を現していた。
 戦闘機人のフィットスーツを身に纏い、守護騎士達を見下ろす新手達。
 無表情に、無感動に。人形のごとき物言わぬ顔。
 髪の色や瞳の色、目つき、顔立ちなどには共通した特徴も多く、双子のような印象をヴィータ達へと与えていた。
 だが、それら以外の特徴はまるで異なっていた。
 1人は髪をボーイッシュなショートカットにしており、ジャケットをズボンを羽織った容姿は、女か男か判別し難い。
 対するもう片方は、豊かなプロポーションと長いストレートを持ち、その両手には赤き双剣を携えていた。
 首元に刻まれしナンバーは、[と]U――未だ管理局の知らぬ番号。
「広域攻撃持ちの戦闘機人だと?」
 思わず、ヴィータが呟いていた。
 これまでに交戦したナンバーズのうち、後方支援型と思われるクアットロとセイン以外は、いずれも1対1を前提とした兵装を有していた。
 ノーヴェは明らかに殴り合いのための装備だし、ディエチの砲撃も直射型。
 中距離射撃を得意とするウェンディも、手数こそ2人より多いものの、単独で敵部隊を殲滅できるほどではない。
 だが今まさに攻撃を仕掛けた8番目は、それら3人とは大きくに異なっていた。
 他のナンバーズ――それこそ、恐らく横に立つ12番目も――と違い、明らかに対多人数戦を主眼に置いているのだ。
 戦闘機人とはこれほどまでのバリエーションを有したものなのか。内心で驚嘆する。
 瞬間、びゅん、と。
 12番目が揺らめいた。
 そして程無くしてヴィータを襲う、激音。
「っ!」
 ほとんど条件反射で突き出したグラーフアイゼンと、真紅の双剣がぶつかる音。
 一瞬のうちに間合いを詰めた戦闘機人が、鉄槌の騎士へとその凶刃を振り下ろしたのだ。
 広範囲の敵を一瞬にして薙ぎ払うナンバー[・オットー。
 そのオットーへと迫る敵を斬るナンバー]U・ディード。
 後方からの範囲攻撃型と、最前線での接近戦型の、茶髪のナンバーズ姉妹。
 そしてその両者に付きまとう、黒き影。
 戦友を覚めることなき眠りへと誘った忌まわしき黒。
 グラーフアイゼンとつばぜり合いを演じる刀身から滲み出る、禍々しき黒泡(バブル)。
 ぎり、と。
 苦々しげな表情で、ヴィータが奥歯を軋ませた。
「スカリエッティめ……戦闘機人の身体に、AIDAを混ぜ込みやがったなっ!」
168名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/10(月) 21:38:42 ID:bUku0V2C
169代理:2008/11/10(月) 21:39:13 ID:XwfLoKmr
「サンダァァァァ――」
 駆け抜ける。
 闇に翻るは純白のコート。
 炎のごとき紅の髪を踊らせ、青く輝く槍を掲げ。
 少年は魔力の奇跡を体現し、さらに高次なる雷へと変容させる。
「――レイジッ!」
 一閃。刹那、瞬く極光。
 エリオの操るストラーダより、一挙に解き放たれた高圧電流が、一撃のもとに4機のガジェット達を一掃させた。
 騎士の突撃槍より突き出した棘は、更なる力・ウンヴェッターフォルムの証。
 エリオの魔力変換資質を最大限に発揮するため生み出された、電気エネルギーを増幅させるフォルムだ。
 地面へと叩きつけた雷撃で、複数の敵を撃破するサンダーレイジは、この形態でのみ扱える技だった。
 ミッドチルダの技術を経て、古代のそれより更なる発展を遂げた、近代ベルカ式のデバイス。
 魔力変換の力の増幅。その発想も機能も、憑神鎌が持ち合わせることのなかった、現代故の要素の1つ。
 エリオ達主力の配備されていた地上本部もまた、スカリエッティ一派の襲撃を受けていた。
 状況は六課隊舎と同じ。大量のガジェットによる物量戦。しかも全方位から攻めてくる分、こちらの方が性質が悪い。
「エリオ君、急いでっ!」
「ここは私が引き受ける! お前達は早く行け!」
 フリードの背から呼ぶキャロの声と、レヴァンティンを構えるシグナムの声。
 上官の声に背を押され、同僚の使役する竜へと駆け寄る。
 純白の巨竜の背へと跨ると、フリードは遂にその両翼を羽ばたかせた。
 上昇。空へと昇る飛竜。
 戦火に彩られた地上本部が、徐々に徐々にと遠のいていく。
 眼下で繰り広げられる戦闘は、まさに泥沼の様相を呈していた。
 なのはは配備された陸士達を率いてガジェットを迎撃に出ており、
 スバルとティアナの二名も、再び姿を現したノーヴェとウェンディを相手にしている。
 ギンガは地下動力部の異常を察知し、単身渦中へと飛び込んでいった。
 シグナムもまた、すぐ目の前でトーレと、新たなピンクの髪のナンバーZ――セッテを相手に剣を振るっている。
 どこもかしこも人手が足りない。本来なら、エリオ達も戦線を離れるわけにはいかない。
 しかしヴィータ達が戦っている六課隊舎から、AIDAの反応が察知されたと報告があったのだ。
 ロストロギア・AIDAを完全に駆除できるのは、現状エリオの持つ憑神鎌のみ。
 しかも六課隊舎の戦線には、あの召喚士ルーテシアが絡んでいる可能性がある。
 憑神刀と召喚魔法を持ち合わせた少女がいては、戦況がどこでどう転ぶか分かったものではない。
 故になのはとシグナムは、エリオとキャロの二名を、六課へと救援に向かわせるという判断を下したのだ。
 敵戦力はこちらの方が多い。だが、危険なAIDAは無視できない。苦渋の決断だった。
「くそっ……なんでこんなことに……!」
 苛立ちを隠そうともせず、エリオが呟く。
 この戦況は、敵の戦力を軽んじた自分達の甘さが露呈した結果だ。
 これまでに戦ってきた数だけを見て、敵を侮った隙を突かれた。
 呈示された事実だけを、そのまま真実として受け止めたが故に、ろくに対処することもできなかった。
 AIDAなんてものはただのおまけだ。それ以前の段階の問題だった。
 故に、エリオは憤る。AIDAや巫器ばかりを追いかけて、結果それ以外を軽んじ、こうして足元をすくわれた自分に対して。
 程無くして、フリードは六課隊舎の上空へと到達する。
「ひどい……!」
 思わず口を突いたキャロの言葉が、その状況を端的に物語っていた。
 隊舎が。自分達の砦が。帰るべき家にも等しき場所が。
 今まさに、地上本部同様、紅蓮の業火に焼かれている。
 戦地を埋め尽くすのは、雲霞のごときガジェット達。守護騎士達と争う戦闘機人。
 最初は善戦していたヴィータ達も、オットーとディードを相手にしているうちに、次第に数の暴力に圧され始めていたのだ。
170代理:2008/11/10(月) 21:41:24 ID:XwfLoKmr
「――っ」
 そして、息を呑む。
 エリオの眼前に現れたのは、紫。
 飛行型のガジェットに乗り、業火の空に立つ者がいる。
 見間違えるはずもない。
 美麗に輝く薔薇の刃を携えるのは、あの蟲召喚士ルーテシア。
 そしてその足元に、何かがある。
 否。誰か、だ。
 気絶した小さな身体をうずくまらせ、鮮やかな金髪を熱風に翻すのは。
「ヴィヴィオ……!」
 キャロの声も、もはやエリオの耳には届かなかった。
 同じだ。
 圧倒的な力の前に、どうすることもできないちっぽけな命が、今まさに母の手の届かぬ場所へと連れ去られようとしている。
 ルーテシアによって、ママと呼び慕うようになったなのはから取り上げられたヴィヴィオの姿は。
 あの研究員によって、両親から引き離された、何もできなかった弱い自分の写し身ではないか。
 ――許さない。
 沸々と、少年の胸に湧き上がる。
 熱が。怒りが。マグマのごとき灼熱の憤怒が。
 ストラーダを握る手に力がこもる。カートリッジがロードされ、高速形態デューゼンフォルムへと変異する。
 ――もうこれ以上、僕の前で何も奪わせはしない。
 ロケットエンジンを増設し、限定的ながら飛行すらも可能とする、ストラーダの第2形態。
 そのスラスターが静かに火を噴き、唸りのような轟音を鳴らす。
 ――許してなるものかっ!
「うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーっ!」
 エリオが吼えた。
 雄たけびと共に、少年騎士は暗黒へと躍り出る。
 騎士の突撃槍の炎を噴かせ、闇を切り裂く流星のごとく。
 フリードの背より飛び降りたエリオが、怒号を共にルーテシアへと飛びかかった。
 強烈な加速。びりびりと大気を震わせる超スピードは、これまでのストラーダの比ではない。
 デューゼンフォルムの猛加速は、一瞬にしてエリオとルーテシアの距離を詰める。
 瞬間、あの赤い瞳が、こちらを見据えた。
 きん、と。鳴り響くは金属音。
 ストラーダの鋭き刺突を、真っ向から受け止める憑神刀の太刀筋。
「――答えろ、ルーテシアァァァァッ!」
 獰猛な野獣の雄たけびのごとく。
 怒れるエリオが、刃の先のルーテシアへと絶叫した。
 否。彼女のみではない。
「お前達は何を望んでるっ!!」
 この混乱を引き起こしたスカリエッティへと。
 混乱をただ傍観するオーヴァンへと。
 これがあんたの望みだというのか。こんなことのために巫器を与え、戦いへと向かわせたとでもいうのか。
 自分のみならず、こんな罪もない小さな子までも巻き込んで。誰もかれも不幸にさせて。
 自身を取り巻く世界の全てへと、エリオは、叫ぶ。

「お前達は一体――何をしようっていうんだッ!!!」

to be continued...
171代理:2008/11/10(月) 21:45:03 ID:XwfLoKmr
投下終了。エリオ君怒る怒る(ぉ
実はここにきて、ヴィータ初登場だったりします。あとシャマル先生も。

元々はこの.hack、モルガナ八相にちなんでキレイに8話で締めようと思ったのですが、
今回の話が予想外に進まず、ここに来て当初の目論見が崩れる可能性が出てきました。
ホントにねぇ、最初は単発ネタだったのに、なんでこんなに長くなったんだろ……w

あと、ここまで一切出てきてないゼストとアギトですが……ごめん、そもそもこの世界にはいないんだorz
まぁ、G.U. TRILOGYにもエンデュランスや朔望がいなかったし、似たようなものだということで(ぇ
172名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/10(月) 21:45:07 ID:bUku0V2C
173反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/11/10(月) 22:08:51 ID:G7hXUxVl
代理投下確認しました。ありがとうございましたー
174名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/10(月) 23:21:56 ID:vBYaiWZK
代理投下の方、反目のスバル氏GJでした!
いやーほんとここのエリオってキレてるトコしか見た事ない気がw
だ が そ れ が い い
この歳で腕白でなきゃ将来が心配です)ぇ
うまくキャロがストッパーになってくれればいいんだけど。
次回が楽しみです。
予約等もないようなので投下します。
よろしくお願いします。

「ブルース・ウェイン氏の来日は、今回で二回目となっております。ウェイン氏はウェイン産業の社長であります。
 ウェイン産業は世界各地に支社を持つ大企業であり、その分野は軍事から薬品、食品等、様々なところに行き届いており、目に触れる消費者の方も多いでしょう。
 ウェイン氏の来日の目的は、日本支社の一周年パーティーです。
 ウェイン氏は今日の午後にも自家用機でナリタ空港に到着するそうです……」

「ウェイン産業の本社があるゴッサムシティでは、ウェイン氏以外にもバットマンと名乗る奇怪な男のことで有名です。
 ゴッサム警察は、彼に関する情報を集めており、懸賞金もかけて捜査にあたっています。また、それに呼応されるかのように複数の怪人と思われるような犯罪者も現れています。
 最近起きました通称『ペンギン』の事件においては…」

「日本の空港では既にかなりの人数のブルース氏のファンが集まっています。
 これはブルース・ウィエン氏が総資産額10兆円とも言われる大富豪であり、
 さらには、いぜんとして婚約者がいないためということもあり、かなりの女性の方がプラカードを持ち、アピールしているようです」

「ウェイン産業日本支社は、新たに建設されたお台場副都心にあり、その高層ビルは、50階立てに相当します。
 日本支社の一周年パーティーでは金融や芸能界の著名人のほかにも政府の閣僚のかたも訪れるということで、強固な警備が施されるということです。
 なお、近くのお台場ではテレビ局主催のお台場祭が開催されており、人手がとられると、関係者は語っています」

「ゴッサムシティにおけるバットマンは、警察に協力しているよう一見見えますが、その見方は様々であり、賛否両論ということです。
 一時期ゴッサムシティの犯罪の検挙率は世界でもっとも低かったのですが、バットマン登場後、検挙率は上昇している傾向にあります。
 ですが、その一方でジョーカー、ペンギン、リドラーといった凶悪犯罪者が出現しており、
 バットマンの存在が犯罪を助長しているのではないかという意見も聞かれています」
魔法少女リリカルなのは×バットマン

第1話 来日


「ブルースさま、ブルースさま…」
 そのステュワーデスの甘い声で、目をあける。
 まだ意識は完全に回復はしていないが、
 空の上では、誰にも襲われることはないと思っているせいか、ほんの少しだけ気を落ち着かせることができる。
 前面にある画面を見ると、もうそこは空港の映像を捉えていた。
 今日は、久しぶりに表の顔で仕事をこなさなくてはいけない。
 ついこの間までは、裏の顔として奮闘していたわけだが、力仕事もきついが…こちらのほうの仕事も大変だ。
 なんせ、よくわからないものにもしっかりと挨拶をしなくてはいけない。
 人前での愛想笑いはなれてはいるが、神経を使う。

「きゃぁー!ブルース様!」
「結婚してくださーい!」

 空港のロビーでの声援とカメラのフラッシュ…。
 日本の女の子は、こういったことには興味があるのだろう。
 テンション高く、声をあげながら、花束や、中には上半身を露出するような子まででてくる。
 歴史や礼儀を大事にする国というイメージがあるが、こういったところは時代の流れかもしれない。
 なかなかエキサイティングであることは認めよう。

「ブルースさま、本日の予定ですが…」

 リムジンの車の中、執事であるアルフレドが、ノートパソコンのテレビ画面の中で声をかける。
 予定を聞きながら、手前の書類に目を通す。
 ブルース・ウェインは仕事を平行に行うことは当たり前だ。
 今、こうしている間にも世界、数十社と契約をかわす動きがでている。
 休んでいる場合はない。

「……ブルース様、もしもの場合に備え、例のものを送っておきました」
「すまない。保険としては必要不可欠だからな」
「はい。出来れば使いたくはないものです」
「あぁ…なにかあったら連絡する」
「それでは連絡がこないよう祈ることにします」

 リムジンが止まる。
 フラッシュがたかれている…、その中、車をおり笑顔を忘れずに…日本支社の中にと入っていく。
 すぐに日本支社の幹部との挨拶、明日のパーティーのための会議がある。
翌日…
 その日、高町なのは、フェイト・T・ハラオウンは久しぶりの休暇をもらいこっちの世界にと帰ってきていた。
 そこには高町なのはの養子となったヴィヴィオも一緒である。
 本来ならこっちの世界に帰る必要はないなのは達だが、
 ヴィヴィオに自分の世界を見せておきたいということ、
 そして自分自身、こういった休暇でなければ見ることが出来ないということから、観光としてやってきたのだ。
 しかし、こちらのほうの現状についてはあまりよくわかっていないためか、
 今日がそのブルース・ウェインの来日のパーティーであることを2人は知らなかった。

「凄い人…こんなに混んでるの?お台場って?」

 フェイトもまた、あまり知らない場所に行くので、少し緊張をしている。
 しっかりとヴィヴィオの手を繋いで離さないようにしている…
 彼女の過去の経歴から、子を離さない、という一種のトラウマ的なものがあるからだ。

「おかしいな…もうお祭も終盤だから、あんまりいないとおもったんだけど…」
 
潮の香りを感じながら、ヴィヴィオはそんな、なのはやフェイトの心配をよそに二人の手を引っ張りながら進んでいく。
 見えてきたお台場…そして、人混みが吸い込まれてはいっていくウェイン産業の高層ビル。

「あっちいってみようよ〜」
「ダメだよ、ヴィヴィオ…あっちは私達ははいれないから」

 ヴィヴィオは、たくさんの人がいるほうが興味があるようで、なのはとフェイトの手を引っ張りながらその人混みの中にはいっていく。
「わぁ!ヴぃ、ヴィヴィオ?」
 その人の波に押されるようにフェイトはヴィヴィオの手を離してしまう。
 招待客と一般客に別れている、会場では、数万の人間が訪れていた。
 フェイトはあわてて、その人波に乗りながら、ヴィヴィオを探す。
 そうしている間に、なのはまでも見失ってしまう。

「あ、あれ…なのは?ヴィヴィオ?」

 あたふたしながら、フェイトはそのまま、会場の中にと入っていく。
 会場内は、広く芝生が敷き詰められており、中には出店も置かれている。
 一般客はそれこそ大人から子供まで様々だ。
 その芝生の向こうは招待客として、バリケードのようなものが作られ、一般客とを遮断している。
 フェイトは、その遮断された壁際にたちながら、周りを見る。
 そこに、なのはからの携帯電話が鳴る。
 もしもの場合とヴィヴィオとフェイトそれぞれに地球圏での携帯電話を渡してあったのを、フェイトは忘れていた。

「なのは!?ヴィヴィオは見つかった?」
「まだなの。電話にもでてくれないし……」
「とにかく、合流しよう?」
「うん…」
 
 そんなやり取りの中、会場が静かになる。前の大画面のスクリーンに映し出されたブルース・ウェインの姿。
 ブルースは蝶ネクタイに黒いスーツをしっかりときて、世界で5本の指に入る富豪と、そして二枚目の顔を見せていた。
 ヴィヴィオはブルースの話の中、なのはを探していた。
 さっきから携帯がなっているのだが、周りの歓声と、ヴィヴィオが動き回ることで振動、音ともに消されてしまっている。
 ヴィヴィオは、一般客と招待客の出入り口を小さい子供の背から警備に気づかれることなくとおりぬけていく。
 警備はそれに気がついていない……。
「私達は、こうしてこの日本という国に、私自身の会社を建てられたことを光栄に思います。
 これから先、何年もこの地にとどまれるよう、途中で見放さず、ついてきてほしいです。
 今日はみんなに感謝する日だ。ありがとう…乾杯」

 ブルースがそういって、グラスを上に持ち上げるのと同時に、周りから風船が割れるような銃声が鳴り響く。
 その音に周りの参加者も驚き悲鳴をあげながら、その場にうずくまる。
 ブルースは、危険を察知したのか、舞台から伏せながら飛び降り、人混みの中に姿を隠す。
 次に舞台に現れたのは、顔を白く染め、奇怪な化粧をする男…スーツを着たその男はマイクの前に立つと、咳をひとつする

「あー、あー…マイクテスト、マイクテスト。うぅ〜ん、やっぱり日本製はいいねぇ」
 
 だんだんと関係者の中には、そのものが誰なのか気づくものも出てきて、逃げ出そうとするが、
 それを阻むように、その奇怪な化粧の男の隣、そして客の横や後ろにピエロの仮面を被った機関銃を持つ男達が現れる。

「レディィス&ジェントォルメェェン〜、本日のウェイン産業のパーティーは残念ながらこれで終わりです。今から、世にも楽しい〜ジョーカー劇場をお送りします」

「ジョーカー!?」
「それって…ゴッサムの?」
 周りの観客がざわめくのを楽しそうに眺めるジョーカー。
 その視線は観客の顔をひとりひとり眺め、表情の変化を探っているようだ。リアクションを求めているのである。

「まずは、私の劇場に参加してくれる俳優を募集します。安心してください。立候補制ではないです。こちらで選ばせて貰いますから〜」
 
 すると巨大なトラックがウェインの庭園に突入してくる。
 芝生を荒らしながらやってきたその巨大なトラックは後からつっこんでくると、トラックの荷物をいれる箇所が開く。

「はぁ〜い、それでは参加者の皆様は至急、この中にお入りください!」

 銃をもったピエロたちが招待客を次々とトラックに押し込んでいく。
 悲鳴を雑踏の中で、強引にトラックに押し込んでいくピエロ。
 なのはと、フェイトはなにがおこったのかさっぱりわからないでいた。
 ただ一般客が逃げ惑う中でヴィヴィオを探すことに必死で…。

「アァ〜ハハハハハハ、それでは皆様、ジョーカー劇場第一幕をご覧頂き感謝します。第二幕をお待ちください〜。アァハハハハハ〜」

 高らかな声をあげ、トラック数台は走り抜けていく。混乱した場所に、誰もが逃げ惑っている。
 なのはと、フェイトは、そこで靴が落ちていることに気がついた。
 それはヴィヴィオの靴…。
 なのはは、まさかと思い、去って行ったトラックのほうを見た。


「……なのはママ…フェイトママ…」


 トラックの暗闇の中、膝を抱え叫ぶ大人たちの中でヴィヴィオはじっと泣くのを我慢していた。
 そう、信じているから…すぐに、なのはママとフェイトママが迎えに来てくれると…。

「…ジョーカー、何を考えている」

 ブルースは、携帯端末からトラックの動きを見つめていた。
 トラックの動きを見つめながら、その姿は既に表から…裏に変わっている。
 ゴッサムにおける犯罪者を狩る存在に…。

以上です。誤字や抜けている部分、確認していますがある可能性があります。
そこはご容赦ください。
182一尉:2008/11/11(火) 11:44:24 ID:DBg7tB5v
いい物のお話たね。
183名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/11(火) 18:37:16 ID:Tmetr79a
GJ!!です。
次元世界でも、中々お目にかかれない狂った犯罪者がw
厄介なのは、犯罪計画立案が神がかり的なことだwww
184トランスマスター:2008/11/11(火) 20:38:20 ID:mwca/Tvi
いずれリリカルなのはとバットマンのクロスオーバーが書かれると
思いましたよ。
185名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/11(火) 21:33:29 ID:g84ST/TE
初っ端から飛ばしてますなGJ。なのは側はStrikerSより後、バットマン側は&ロビン(Mrフリーズ)より前とは、考えた上での時間軸クロスと思いたいですね。応援します。
186名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/11(火) 21:36:40 ID:EVlB97qM
投下予約したいんですけど、他の人の予約あります?
187名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/11(火) 21:42:36 ID:Tmetr79a
ないと思いますよ。
188名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/11(火) 21:51:14 ID:EVlB97qM
誠にすいませんが、投下予定のSSが消えてしまいました……
投下は中止でお願いします
なにやってんだ俺………orz

本当にすいませんが後々、改めて出直して来ます……
189名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/11(火) 21:58:22 ID:DwMIDyqR
>>188
今すぐCtrl+Zだ!
190名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/11(火) 22:32:20 ID:h+oRz58M
投下予約がなければ22:45から投下したいのですが構いませんか?
191名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/11(火) 22:42:01 ID:RtX6Zq83
>>190
支援!!
192りりかるな黒い太陽_06:2008/11/11(火) 22:46:11 ID:h+oRz58M
時間になったので投下します。

日が落ちようとしていた。
廃棄区画に近い寂れた街の路地を抜け、歳月に負けて整然と並べられた面影を残しつつ所々崩れてしまっている道を光太郎は踏みしめていく。
顔見知りになった年かさの女性に挨拶して、光太郎は家路を急いでいた。
整った顔立ち。量販店の服ではない、ウーノが用意していたスカリエッティの研究所にいた頃に用意された服を身に着けた光太郎に彼女らは愛想良く挨拶を返した。

ウーノが転がり込み、光太郎の暮らしぶりは否応なく変わった。
光太郎だけなら構わなかったのだが、光太郎自身のなけなしのプライドにかけて廃墟で滝をシャワー代わりにして暮らすことは出来なかった。
たとえそれが快く思っていないウーノとはいえ、だ。

首都クラナガンの外れで光太郎は安アパートの一室を借りた。
地球より文明が発達したミッドチルダでは4畳半風呂なしなんて物件は存在しないらしく光太郎が予想していたよりは良い物件を紹介してもらうことが出来た。
身元不明の光太郎とウーノに妙に暖かい視線を向けた管理人が何か勘違いしていたような気もしたが、光太郎は深く考えないことにしている。

「光太郎、そんなに急いでどうしたの?」
「…ウーノ」

声を掛けられた光太郎は足を止めて振り向いた。
微かに眉を寄せた表情をしたウーノが買い物袋を抱えて、脇道から現れる。
光太郎も微かに件のある表情でウーノを待ち、彼女の持っていた袋を強引に持つ。
抱えていた荷物を何も言わずに取り上げて歩き出した光太郎の背中に苦笑を投げかけ、ウーノは光太郎を追いかけて隣に並んだ。

「余りいい気はしないでしょう? 別に手伝っていただかなくてもいいわ」
「この方がマシだ」
「そう? ならお願いするわ」

特に会話もなく二人は歩いていく。
並んで歩く姿は、他人が見れば若夫婦のように見えなくもない。
だが二人の間に流れているのは剣呑な雰囲気だった。

「ところで今日はちゃんと働いたんですか」
「…いや、ちょっと見過ごせない事件が起きてさ」
「……光太郎、まさか貴方またバイトを首になったの?」
「すまん}

深々とウーノはため息をついた。
肩を落とす光太郎を目を細め見上げる。

「ドクターの世話になりたくないと言う理由については理解しますわ。私も遠からず敵になる貴方をドクターが支援するのは納得がいきません。ですが」
「わかってる」

苦い顔をする光太郎に、ウーノは追及の手を緩めなかった。

「なら、何故遊んでいるんです?」
「遊んでなんてないさ」

苛立ったように微かに眉を動かしてウーノは隣を歩く光太郎を見た。

「私達を圧倒する程の改造人間が、普通の人間に混じってジャンクフードの配達をしているのが遊んでいるのでなくて何なの」
「……表立って管理局に目をつけられるようなこともする気はない」

ウーノは何か言おうと口を開き、頑固な光太郎の性格等を考えて諦めたように一層深くため息をついて「何か手を考えましょう」と言った。
それっきり二人は押し黙り、アパートの一室に戻るまで何もしゃべらなかった。

帰宅した二人は一人は食事の用意に、一人は風呂の用意をして食事が出来るまでの時間を潰す。
今日の食事当番はウーノで、光太郎は殆ど荷物のないキッチンと続いている居間で夕飯が出来るのを待っていることにした。
同じ部屋で寝るわけにもいかないのでウーノの部屋は付いているが、光太郎の部屋はない。

光太郎の分の小部屋が付いている物件には手が出なかった。
193りりかるな黒い太陽_06:2008/11/11(火) 22:48:23 ID:h+oRz58M
情けない話だがこの部屋自体もウーノが発見した物件である上に、バイトを次々に首になる為家賃もウーノと半分ずつ持ち寄っているのが現状だった。
大家も身分証も無い光太郎が、美しい妙齢の女性を連れた訳ありに見えたから部屋を貸してくれたようなものである。

余りに甲斐性なしの自分に少し凹む光太郎と自分の二人分の夕飯を作るウーノは、凹んでいる光太郎に少し感心していた。
嫌な女の為に部屋を借り、その為に増やしたバイトを首になっては小言を言われても未だにこの部屋に戻ってくるなんて、変わった男だと。
光太郎自身はあの廃墟で暮らしていてもなんら支障はなかっただろうに、とも思う。

ドクターの世話をしていた時の習慣で部屋は綺麗にしているが、情報端末はウーノの部屋にしかなく荷物も少ないこの部屋では娯楽も無く所在無げに座っている位しかできる事がない。
そんな部屋に帰ってくるなんて私ならしないわねと、苦笑が浮かんだ。

最近そんな風に思い、少しかわいそうになってきたので料理には手をかけるようになったせいで夕飯はまだ出来ない。
もう少しかかると、光太郎に言おうとしたウーノが振り向くと、光太郎の姿は無かった。

光太郎が着ていた服が脱ぎ捨てられ、床に散乱していた。
恐らく変身した時に破けてしまうのを嫌ってのことだろう。
開けっ放しの窓から吹く風が、ウーノの髪を揺らす。
予想通り、机の上にこれ見よがしに置いておいたスカリエッティの目的の邪魔になりそうな凶悪犯罪者の記事が床に棄てられているのを見て、ウーノの顔には自然と笑みが広がった。

光太郎が凶悪な事件に首を突っ込んでバイトをよく首になってしまうのを見かねたウーノはそれをドクターの為に利用することを思いついた。そう大したことではない。

ウーノの持つ先天固有技能フローレス・セクレタリーは、レーダーやセンサーの類に引っ掛かることの無い高性能なステルス能力と共に高度な知能加速・情報処理能力向上チューンの事でもある。
それとスカリエッティの研究所経由、管理局に潜入しているナンバーズ2番ドゥーエにも協力させて手に入れた管理局の情報を使い、ドクターの目的を阻害する要因となる犯罪者を光太郎の耳に入れることにしたのだ。

その結果光太郎は、ウーノから囁かれる情報に疑問を呈することもなく管理局も手を焼いているその犯罪者達を捕らえ、管理局へと引き渡している…

『光太郎が私と手を取り合う気になるまで戻ることは許さない』

スカリエッティを怒らせ、ウーノはそう言われ放逐された。
そんなことはありえないとしか思えないウーノは、途方にくれた。
スカリエッティに付き従う事以外に生きる理由は無いウーノにとっては死刑宣告のようなものだった。

だが今はこうして光太郎をうまく使いスカリエッティの夢を実現する手助けが出来ていると考えれば、この暮らしもなんとも楽しいものだった。
だから近所の住人に光太郎との関係を勘違いされていようが、光太郎が所謂駄目亭主状態だろうが構いはしない。
ウーノは「世話のかかる男だわ」と零しながら脱ぎ捨てられた衣服を一枚一枚集めていった。

戻ってきた時に下着まで丁寧に畳まれて置かれているのを見て光太郎は物凄く嫌そうな顔をするので、丁寧に畳んでいった。
ウーノに声をかけずに部屋を飛び出した光太郎は、RXの姿へと変身を完了しアパートや雑居ビルの間を飛び跳ねていた。
時速300kを超える速度で走り抜けることも可能とする両の足は、一般人の目には留まらぬ速さを維持しながら幾度も人家の屋根や古い柱を音もなく蹴っていく。

声をかけずに出てきたのは、ウーノへどう言うべきか決めかねているせいだった。

いつも料理を並べている小机に置いてあった紙面には犯罪者の情報が載っていた。
その犯罪者が何を行ってきたか、今何を行おうとしているのか。どのあたりにいると思われるのか。
どうやって調べたのかは光太郎にはわからないが、実に詳しく書かれていた。

情報の真偽に関しては疑っていない。
共に暮らし、何度か殴り込みをかけるのに協力してもらう内に光太郎の力を利用しようとしているウーノの思惑、その背後にあるスカリエッティへの忠誠をひしひしと感じているからだ。

(勝手極まりないが)光太郎にとっては知った以上は見てみぬふりなどできない。
そんな者の情報を、ウーノは的確に用意し…今夜もまた光太郎は動き出した。
だがこの犯罪者を見つけ出し、管理局に叩き出すのは間違いなくスカリエッティの利になる。
利用されているだけなのだと湧き上がる感情に、この犯罪者を捕らえる方がより悪い事態を招くのではという考えさえ浮かんでいた。

194りりかるな黒い太陽_06:2008/11/11(火) 22:50:08 ID:h+oRz58M
そのせいで気持ちがふらつき、少なからず情が移りつつある彼女へ礼を言うべきかそれとも不審を露にするべきか…光太郎は戸惑っているのだった。

この世界に来てから、自分は弱くなっている。
はっきりと気持ちを定められずにいる自分に、そう考えざるを得ない光太郎は高速で市街地を抜け、高層ビルの屋上で足を止めた。

建築されてから軽く百年以上は経過した街の高層ビルの一つ。
平らな屋上の隅で急停止した光太郎、RXは眼下に広がる古い町並みを見下ろす。

一見目新しく見えるビル群、遠くに見える廃棄都市区画…ミッドチルダに立ち並ぶ多くの建物は遠い昔に築かれたものだ。
廃棄都市区画などを含め景観の観点から、次第に文化財として、過去を伝える遺物として保護され、行政の区画整理も個人の建て直しも間々ならないのだという。
最近はそれに加えてデザイン的にも好まれているらしく、廃棄都市区画の整理が進むのはより遅くなる見込みだ。
そんな事情を光太郎に教えたウーノは『そのせいで未だに本局のエレベーターは紐で吊っているとか言うジョークがあるくらいよ』と苦笑していたが…

故郷の大都会に似た雰囲気の街並みは、光太郎の心に複雑な感情を沸きあがらせる。
ざわつく心は、しかし光太郎の目から見れば奇妙なデザイン…率直に言えば、角張ったデザインの車などを見て静まっていく。
光太郎の感性から言うと、格好悪いことこの上ない。

詳しい理由は知らないが、恐らくこの世界の人間達とは致命的なほど感性が違うのだろうなと光太郎は思った。

真下に広がる街並みのどこかに、今日わざとらしく教えられた犯罪者は隠れている。
RXの超感覚を総動員し、光太郎は目的の犯罪者を探していく。RXはビルの屋上から飛び跳ね、微かに腕を振るい位置を修正して高層ビルの天辺から路地へと飛び込んでいった。
目標を発見したからではなかった。

今度も、急激な落下に伴って発生したエネルギーを全て足だけでいなした光太郎は、気配に気付き顔を上げた男達に告げた。

「そこまでだ。その女性から離れろ」

二人の女性を囲み、押し倒している男達と、女性のバッグを漁る男達が耳障りな言葉で目の前に現れた怪人を罵り、刃物と杖をちらつかせた。
突然現れた怪しく、不気味なバッタ男に対する恐れが彼らの目の奥に見え隠れしていた。
何も言わず、光太郎は女性に跨っていた男の胸倉を掴み上げ、武器代わりとでも言ったようにバッグを持っていた男の頭に振り下ろす。

彼らの中である程度認められていたのか、反応する暇も無く崩れ落ちた男二人を見て恐慌に陥った男達が逃げていく。
光太郎は逃げていく男達の背中に二人を投げつけ、襲われていた女性にバッグを返した。

「大丈夫か」

衣服を肌蹴られた二人の女性はRXの、爛々と光る赤い瞳。逆光となった街灯に照らされた姿と男達を撃退した力に怯えていた。
襲われた直後だという状況も手伝い、彼女の一人が泣き叫んだ。
RXの感覚はやっと誰かがやってくることを理解させる…光太郎は床を蹴り、目標を探しに戻っていった。

一瞬でビルの上にまで到達したRXは目を凝らし、耳を澄ましていく。
彼女らが助けられたことがRX耳には聞こえていた。
それ以上の情報も知ろうと思えば知ることができたが、意識的に彼女らのことを除外して他の場所を探していく。

更に耳を澄ますと周囲の様々な声が届いてくる。
人々の営みの中に紛れる声や匂いや、生命の反応自体を拾い上げていく。

その中に、聞き覚えのある声もあった。

「あの時はもう駄目かと思ったぜ」

どこかの飲み屋らしい。
先日、管理局には突き出さなかった男の声だった。
195りりかるな黒い太陽_06:2008/11/11(火) 22:52:49 ID:h+oRz58M
「そんな化け物相手にどうやって切り抜けたんだ? まさか…またあの手か」
「勿論だぜ。あの話しにあそこまで見事に引っかかるような間抜けがまだいるとは思わなかったがな」

RXは先ほどとは別のビルの屋上に着地した。
目標ではないため普段ならすぐに別の相手を探る所だったが、なんとなく…なんとなく光太郎は耳を傾けた。
酔っているらしいことも伝わってくる彼らの笑い声からすると、気分良く飲んでいるらしい。

「ははッひっでー! お前も良くやるよ」

一緒に飲んでいる男が茶化した笑い声を上げた。
何かを飲み干して、誇らしげな声で逃がした男が言う。

「フフ、嘘は言ってないさ。まぁちょっとばかし大げさに言っちまったかもしれないけどな。見た目の割りに案外、人を信じやすい怪人でよぉ!」
「だけどお前。いい加減にしねぇといつか刺されるぜ? 俺は気にしないからいいが…俺みたいに本当にそんな目に会った奴もいるんだからな」

棘のある口調で言っていることが何なのか、光太郎にも直ぐにわかった。

「わかってるって! お前の話を聞いて俺も話を膨らませようとおもったんじゃねぇか…でもな、あーちっくしょう、嫌なことを思い出しちまった…」
「…なんだお前、まさかまだ引き摺ってんのかよ。シグナムだっけ? 振られてからもう何年たつんだ?」
「うるせー! 俺の兄貴をボコボコにしたくせに…糞ッあの女こそあの怪物に殴り殺されちまえばいい…!」

男が心底悔しそうにテーブルを叩く音がした。
連れの男は、その姿を見て堪えきれずにまた笑い出した。

「っくっく、あんま笑わせるなよ。…話は変わるが今度俺と一つでかいヤマを張らないか? 分け前は保障する」

逃がした男は、すぐには答えなかった。
だが「構わないぜ。そろそろほとぼりも冷めるだろうし、懐が寂しくて寂しくて…」

RXはそこまで聞いた所で、その男がもたれかかっていた壁を破壊した。
力任せに、強引に砕かれた建材が散らばり、粉々になった壁と共に席から吹っ飛ばされた男に降り注ぐ。
店の中が騒然とし、その場にいる全員が、壁を破壊して現れた黒い怪人から発せられる威圧感に息を呑んだ。

「懲りていないようだな。嘘だったなら、手心をかける必要もない」

建材に塗れた男が、体を起こすのはおろか、何か言うのさえRXは待たなかった。
腕を伸ばし、恐怖に引きつった男を持ち上げて店の外へ放り投げる。

引き摺り出され、道路に転がっていった男は、急いで逃げようとした。
RXは軽く床を蹴り、あっさりと追いつくと以前と同じように腹に一撃、男の体を貫きかねない拳を無造作に叩き込む。
胃の中身と血をぶちまけようとする男の顔面に殺さない程度に拳を叩き込んだ。

RXは興味を失ったように出来る限り弱めたパンチの威力で地べたを転がっていく男に背を向けた。
一緒に飲んでいた、こそこそと飲み屋の中に消えていこうとしている男の背中にRXは鋭い声で警告する。

「目が覚めたら足を洗えと伝えろ」

足に力をいれ、RXはまた目標の索敵に戻っていく。
店の修理代はその二人の財布から出ることになるのだが、そこにまで今の光太郎は考えることができなかった。
自分が逃がした男は、その場をごまかす為の嘘をついていただけだった。
連れの男の言を信じるなら男が言っていたようなこともあるらしいが…素直に信じることは出来ない。

ビルに着地した光太郎は、何故かこみ上げてきた笑いを我慢しなかった。

膝を突き、笑ううちに少しずつ気持ちが落ち着くようだった。

落ち着きが戻るにつれて、目標もすぐに見つかった。
196名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/11(火) 22:56:37 ID:Tmetr79a
支援
197名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/11(火) 22:56:40 ID:lT5h36kl
支援
198りりかるな黒い太陽_06:2008/11/11(火) 23:01:40 ID:h+oRz58M
落ち着きが戻るにつれて、今まで見つからなかったのが嘘のように…すぐに目標は見つかった。

光太郎が膝を突いている場所からそう離れていない場所だった。

一飛びに向かい、冷静さを取り戻した光太郎は障害を淡々と取り除いていった。

スカリエッティの所で戦わせられたカプセル型の兵器を壊し、杖を構えた魔導師を死なない程度に痛めつけて奥へと進んでいく。

RXが現れた当初余裕たっぷりだった犯罪者がうろたえ、逃げ出そうとしている様が超感覚を通して感じられる。

「逃がさん」そう呟いた光太郎は体を傾けて走り出す。程なく、光太郎は犯罪者を捕らえた。



その頃、時空管理局本局の一部が動き出そうとしていた。
久しぶりに航海から戻ったクロノは長年の友人を呼び出して、事の次第を説明していた。
テーブルを挟み、対面でクロノが入れた紅茶を飲みながら話を聞いたクロノの友人ヴェロッサ・アコース査察官は、半分ほど空いたカップを置く。

「本人も車も質量兵器扱いされかねないクライシス帝国の改造人間か。確かに放ってはおけないね」
「ああ、だが僕が話した限り彼はクライシス帝国の被害者であり、善良だった。脱走したとは考えにくい」

異世界から迷い込み、友人となった男のことを案ずるクロノに、対面に座るヴェロッサは優雅に寛いだまま薄く笑みを見せた。

「わかったよ。他ならぬ君の頼みだ。他の者に見つかる前に、僕が見つけて保護しよう」
「ヴェロッサ、すまないな」
「いや、通常のやり方では探知できないのなら、どうせ何時かは僕の所にきていたよ。まあ任せておいてくれ」

一点の汚れもない白いスーツを好んで着るヴェロッサだったが、彼は泥臭い仕事も得意としていた。
査察官は一般組織や施設の調査を行い、不正を発見するのが主な仕事となる役職で、調査能力・対人交渉に優れた者が配置される。
その調査を行う過程で後ろ暗い出来事に関わることも少なくはない。

個人的な頼みをすることに引け目を感じるのかすまなさそうにするクロノに手を振って、ヴェロッサは捜査を開始する。
大手柄となるテロリストを数名引き渡してくた怪人の存在を危惧したを地上本部のボス、レジアス中将が探していると気付くのは開始してすぐのことだった。



光太郎は捕らえた犯罪者を陸士108部隊長ゲンヤ・ナカジマに引き渡していた。
自宅近くで待ち伏せを受けた初老の陸士部隊長は気絶した犯罪者の顔を見て、直ぐにその人物が何者か悟った。
光太郎に目を向け、尋ねたいことがあるからと待つように言って彼は犯罪者を拘束する為に部下へと連絡を取った。

部下に命令している間、光太郎は黙って佇んでいた。
連絡を終えたゲンヤは部下が引き取りに来ると光太郎に言う。

「そうか」

素っ気無い返事を返すRXにゲンヤは苦笑を見せた。
腕を組み、ゲンヤは言葉を選ぶように虚空を見つめた。
何事かこの飛蝗を思わせる顔の怪人に起こったのだろうと言うことくらいは察していた。
家の明かりを避けるように影の中に立つ怪人の顔から感情らしきものはうかがい知ることは出来ない。
自分に打ち明けるはずもない…ゲンヤは自分の用件を済ますことにした。

「アンタに一つ聞きてぇんだが、アンタにこう、オレンジ色の体の仲間がいねぇか?」

他人から聞いた言葉では説明しづらい部分を手振りで表現しようとするゲンヤにRXは言う。

「…それは俺だ」
「あん?」

訝しがるゲンヤに、光太郎はロボライダーの姿となって影の中から一歩歩み寄った。
心が乾いていたゆえの投げやりな気持ちではない。
199りりかるな黒い太陽_06:2008/11/11(火) 23:02:33 ID:h+oRz58M
そう考えながら。

光太郎には、苦しさや苛立ちから自暴自棄な気持ちもどこかにはあった。
だが今は、ロボライダーである自分を知る…つまりは、空港で起きた事件に関係することだという予想が光太郎にそうさせた。
自分にも責任の一端がある。
今の荒んだ気持ちがそうさせているとは思いたくはなかった。

そう考える光太郎はゲンヤに自分がロボライダーでもあることを隠すことはできなかった。
一瞬で姿を変えたRXに酷く驚いたゲンヤだったが、顎を撫でつけ感慨深そうに呟いた。

「そうかい…お前ぇさんが」

目の前の男が何故自分を知っているか考えた末、光太郎は言う。

「俺に用があるということは、空港の事件についてか?」
「あぁ。そうだ」

頷くゲンヤが次に何を言うのかわからない。
目の前の男の力で体を傷つけられるはずもなかったが、光太郎は警戒し身構える。
神妙な顔をしてゲンヤは言う。

「礼を言いたくてな。あの時はありがとうよ」
「…なんのことだ?」
「この二人に見覚えはねぇかい?」

戸惑うRXにそう言いながらゲンヤはいつも持ち歩いている家族の写真を見せた。
そこにゲンヤと共に写っている少女らを光太郎はよく覚えていた。
その少女らはスカリエッティの元にいたナンバーズの少女達と同じ改造人間…戦闘機人と呼ばれる存在だった。
この初老の域に達した父親がそのことを知っているのかどうか、光太郎は知りたいと思ったが写真に写る二人に向ける柔らかい表情を見て疑問を飲み込んだ。

「二人とも可愛いだろう? 嫁に欲しくなったか? やらねぇぞ」
「…覚えているが、礼を言われる資格はない。アレに関しては、俺にも責任の一端がある」

妙なテンションで捲くし立てていたゲンヤはそれを聞いて眉を潜めた。
素早く写真を懐に仕舞いこみ、彼は警戒心を覗かせる。
「なんだって…どういうことでぇ?」
「落ち着いて聞いてくれ」

そう言って、気の進む行為ではなかったがゲンヤに光太郎は簡単な説明を行う。
自分があの惨状を引き起こしたロストロギアを受け取りに行ったことや、共に引き取りに向かった者がああなることを知って逃げ出したのに全く気付かなかったこと。
反応が後れ、アレを押さえ込もうとすることさえできなかったと…時折ゲンヤが質問をしたが、光太郎はそれについても明確な返事を返した。
灯りに照らされ、意識の戻らない犯罪者を足元に転がしたままゲンヤは何度も頷いていた。

「ふむ、わかったぜ。それなら…俺が言うことにかわりはねぇな」

一しきり話を聞き、自分の聞きたい事も尋ねたゲンヤはそう言って再び人懐っこい笑みを見せた。

「ありがとうよ。お前さんのお陰で俺の娘は助かったぜ」
「……だが!」

罪悪感からか正義感か、苦しげな声を絞り出す男にゲンヤは首を振った。

「固いこと言うなや」

ゲンヤは気安い態度でロボライダーの肩を叩いた。
強い力を込めていたらしく、金属の硬い体を叩いたゲンヤは微かに顔を顰めて手を見る。少し赤い手を見て可笑しそうに笑った。
再びロボライダーの肩に手を置き、目を細めたゲンヤは言う。

「娘に言ったって同じことを言うはずだ。お前さんが悪くねぇことくらいわかる。なんなら、直接お前さんに礼を言いたがってるんだが…」
「すまん。そろそろ俺は行く…もう貴方の部下が近づいてきているようだ」
200りりかるな黒い太陽_06:2008/11/11(火) 23:03:43 ID:h+oRz58M
光太郎は管理局の車が近づいてくるのを感じて、首を振った。
遠くを見るRXに釣られるようにしてゲンヤも同じ方向を見たが、普通の人間であるゲンヤには何も見えなかった。
だが、この怪人が言うのならそれは本当のことなのだろうと、ゲンヤは判断して息を吐いた。

「そうか。じゃあ後一つだけ、聞いてもいいか?」
「なんだ」
「なんでお前さんは俺に犯罪者を引き渡す。もっと他の奴がいるはずじゃあないかい?」
「俺は、管理局を信頼出来ない。だが、人の噂で貴方は信頼できる男だと聞いた」

その言葉にゲンヤは少し残念そうな顔をした。
自分が長年勤めた組織が信頼されていないことや、選ばれた理由が少しだけ…いや、かなり残念だったのだ。

「俺も他人に尋ねられたらそう答えよう」
「そうかい」

管理局の車両が近づいてくる音がゲンヤの耳にも聞こえ始めた。
RXはゲンヤが音に振り向いた瞬間に姿を消した。

「やっと来た見てぇだな…」

そう言って顔を戻してもうRXがいなくなったことに気付いたゲンヤは、気絶したままの犯罪者の隣で薄く笑みを見せていた。
光太郎は再びビルの屋上、人家の屋根を走り抜けていった。
周囲を最大限に警戒し、可能な限り素早く光太郎は部屋を目指した。
夜もふけ静まり返った住宅街に光太郎が屋根を蹴る微かな音だけが、風に紛れていく。

アパートの明かりは消えていた。ウーノはもう眠ってしまったのか部屋の中に姿は見えない。
無用心だが、仕方なく開け放たれた窓から光太郎は部屋に飛び込んだ。
誰かに見られていないか気がかりで、部屋に入ってからも光太郎は超感覚を駆使して些細な空気の流れや近隣の住民の生命の気配にまで意識を向ける。

幸い、怪しい動きは見られない。
暫くしてようやく納得した光太郎は変身を解いて、ウーノが畳んでおいてくれた服を持ってシャワーを浴びに行く。
熱いお湯をかかりながら、今日あった出来事を思い返す。
頭と体を洗い、光太郎は湯には浸からずに風呂を出た。
薄い青色のパジャマを着たウーノが、テーブルに食事を並べて光太郎を待っていた。

「貴方も早すぎるわ。まだお茶も淹れ終わらないのに」
「休んでいて良いって、それくらい俺にも出来るさ」
「そう? でもどうせ待っているのだから、気にしなくていいわ」

ウーノは気のない返事を返しながら陶器のマグカップを並べてポットからお茶を注ぐ。
光太郎がシャワーを浴びる間に暖めた料理と一緒に置いて、ウーノは光太郎がテーブルに着くのを待った。

「首尾は良くいったわけではないのね」

席に着いた光太郎の表情を見て、ウーノはそう言った。
情報を教えた犯罪者がどうなったか知りたくてウーノはうつらうつらしながら光太郎尾を待っていたのだ多。

「いや、ちゃんと管理局に突き出したぜ。レジアス・ゲイズとゲンヤ・ナカジマにね」
「何故その二人に?」
「彼らがこの地上の治安維持に貢献していると聞いたからだ。貴様のように逃がされるのも困る」

険のある顔で答える光太郎にウーノは食事を勧めた。

レジアス・ゲイズは確かに有能で貢献しているが、スカリエッティのスポンサーの一人でもある。
暖かいごはんに箸をつける光太郎を見ながら、少し考えたウーノはそれを黙っていることに決めた。
201りりかるな黒い太陽_06:2008/11/11(火) 23:07:31 ID:h+oRz58M
「…妹たちから連絡があったわ」
「え?」

不意にお茶を飲んでいたウーノがそう呟いた。
突然変わった話題に食事の手を止めて、間の抜けた返事を光太郎は返した。
少しだけ笑い、ウーノは続ける。

「貴方の世話をしていた子は貴方を心配してるみたい。またドクターと…」
「それは出来ない」
世話になったチンク達のことを思い返しているのか光太郎は少し苦い顔を見せた。
でしょうねとウーノは困ったような顔を作り、自分用にいれたお茶に口を付けた。
黙々と光太郎はウーノが作った食事を平らげていく。
その間ウーノは次の目標をどうするか考えながら光太郎が食べる姿を眺めていた。
お茶を飲み干したウーノは、食器の洗浄を頼んで席を立った。

「じゃあ私はもう休むわ。光太郎、おやすみなさい」
「おやすみ…ウーノ。今日は食事と……情報をありがとう」

礼を言われたウーノは一瞬何を言われたかわからないように眉を寄せて光太郎を見た。
光太郎は屈託のない笑顔をウーノに向けている。

次第にウーノの顔から、白い首筋までが赤く染まっていく。
だがウーノの表情は、利用している負い目からか歪み、伏せられた。
逃げるようにしてウーノは隣の部屋へと姿を消した。

慌てて自分の部屋に戻るウーノを見送った後、光太郎は無理に浮かべた表情を消した。
やせ我慢をしてウーノに礼を言う程度には、光太郎は落ち着きを取り戻そうとしていた。


そして…「クロノが預かったバイクが消えて一月、母さんは心配ないって言ってるけど…」

まだ学生であるにも関わらず溜まりに溜まってしまった休暇を使い、時空管理局本局からミッドチルダの首都クラナガンに一人の執務官が下りた。
フェイト・T・ハラオウン。クロノの義理の妹に当たる彼女はクロノが友人から預かったバイクと車を探していた。
倉庫のシャッターをブチ破り、二台が消えたのはもう一月も前のことだったが、やっとまとまった休暇を取ることが出来今日から捜索を開始しようとしていた。
長い足の付け根の辺りで纏めた金色の髪を揺らして歩く彼女の姿は美しく、自然と人目に引いていたがフェイトにそれを気にする様子はない。

手に握られている手がかりに意識は集中していた。
ミッドに住む数少ない親友の八神家から興奮気味に送られてきたメールをプリントしたその紙面には画像が添付されていた。
ミッドチルダのゴシップ誌が偶然撮影に成功したというその一枚に目を落とし、そのメールを送ってきた時の友人、はやての興奮した声を思い出してフェイトは苦笑した。

「マスクド・ライダーやー!…、か。よくわからないけどこんなデザインのバイク、ミッドにはないし間違いないよね」

貼付されていた画像には、アクロバッターに乗り空に逃げた犯罪者の背中をタイヤで踏む怪人の姿が映っていた。
少し鮮明さには欠け、細部はわからないが亜人のようにも奇妙なプロテクターを着込んでいるようにも見えたが、フェイトはどちらでも構わなかった。
仕事柄似たような存在に会った経験もあり怯えるようなことはないし、最悪一人で奪い返すだけの実力を持っているという自信もフェイトにはあった。


以上です。
202名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/11(火) 23:17:40 ID:Tmetr79a
GJ!!です。
何というか、上手く言葉に出来ないですが、凄く面白かったです。
ウーノと光太郎の奇妙な同棲にびっくりw
次回はVSフェイトか……何ていうか、自分の予想だと圧倒的な力の差で負ける気が。
攻撃が悉く、効かない奴なんかに会うの初めてだろうし。
203名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/11(火) 23:19:48 ID:tnWWiuzz
投下乙です

自信が砕かれるフェイトさんに超期待
204名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/11(火) 23:29:04 ID:lT5h36kl
RX相変わらず面白いです。相手が生身の人間だと逆にやりづらそうですな。
205名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/11(火) 23:31:24 ID:ItytmPXo
投下乙です

さて、チートフォームのバイオライダーの登場はいつになることやら……
バイクも車も一応本人のなんですがね……フェイト、奴に手を出すことは敗北を
意味するぞ。いや冗談抜きで
206名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/11(火) 23:41:07 ID:hqDBXcd+
乙です。
写真によるとRXがポーズを決めているように思えますねw
はやてもファンなのでしょうか。

>>205
まあ知らないのだから仕方あるまい。
207×DOD ◆murBO5fUVo :2008/11/11(火) 23:41:44 ID:DwMIDyqR
0:15辺りから投下をしたいと思います。
DODクロスの方の新しいの。
208名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/11(火) 23:43:36 ID:2ZQcHF5e
RXに勝てる奴はいるのか?(奇跡でひっくり返しそうだしどんなチートも)
ともあれ投下乙であります。
209名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/11(火) 23:44:53 ID:hqDBXcd+
>>207
支援
210名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/11(火) 23:45:38 ID:Tmetr79a
支援
211名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/11(火) 23:52:43 ID:oh45/jja
GJ!です。
なんか、そこはかとなく漂う暗い気配が仮面ライダー!って感じで好きです。

ウーノはマジにスカに追い出されてたのね。
てっきり情報収集とか光太郎の観察とかをスカに命令されてきたと思ってたので驚きでした。
ウーノがスカの側を離れるのってすっごい新鮮。
がんばってください。
212名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/11(火) 23:55:32 ID:92027yLA
支援
213×DOD ◆murBO5fUVo :2008/11/12(水) 00:17:40 ID:DivncUjX
そろそろ投下を開始したいと思います。
20kb 8分割
214名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/12(水) 00:17:53 ID:6jbqsWuL
支援
215×DOD 六章六節 1/8 ◆murBO5fUVo :2008/11/12(水) 00:18:30 ID:DivncUjX
 白と黒の声紋。
 それが「母」の唄う、滅びの歌を打ち消すものであるという以外に、ドラゴンが知ることは今こ
の瞬間まで何一つとして無かった。
 歌に声で返す未曾有の戦い、幕開けがあまりに唐突だったという事実。地上にそびえる異界の建
造物、最後の三十秒ほどの怒涛の唱歌――そのような当時の情景なら、竜はまだかろうじて思い出
すことができる。しかしユーノやフェイトに語った通り、術の組成はおろか、当時それを放った最
中の記憶が曖昧になってしまっていた。
 竜にもその理由はわからないが、再現も分析することもできない。使用は不可能だ。異形の秘法
は完全に消滅したのだ。
 ドラゴンはそう信じたが、現実は違った。
 精神を混乱から回復させることが出来ぬまま、アグスタから住処たる森へと戻り、カイムが竜に
届けた声なき言葉は俄には信じがたいものだった。
 夜の静寂に包まれた森林に、珍しく混乱した声をドラゴンは響かせた。逆に無音にて『声』を返
す男の表情は怪訝そうなそれである。
 双方が疑念と困惑に心を乱されて、暫しの間ができた後、二人は全く反対の問いをお互いに投げ
掛けた。

「憶えているのか??」
――憶えていないのか。

 夜の帳が降りた後。精神を摩耗したカイムとそれを案ずるドラゴンが、久方振りに見えた旧敵に
ついて言葉を交わしている時のことだった。
 命を分かち合う契約者といえども、記憶すべてを共有することは出来ない。死した筈の精霊、出
現し得ない友の剣の存在を、カイムはドラゴンに、『声』にして伝える必要があった。
 逆に竜の方も――それらの存在に驚きと、終幕が訪れぬことへの諦念じみた確信を抱きつつ――
半身の預かり知らぬ出来事をはじめ、フェイトたちとの会話、交わした言葉の内容を細やかに語っ
ていた。
 「声紋」のすべてを憶えている。
 音の無い会話の最中に、カイムの『声』がそんな全く予想外の事実を明かした。
 封印の秘術は失われたという、フェイトたちに対する竜の言葉。ドラゴン自身信じて微塵も疑わな
かったそれを、根底から覆すものだった。

「今、ここで出せるか」

 百聞より一見、とばかりに竜が静かに言うと、カイムは外套の隙間から腕を出す。
 己の炎に焼かれた両腕には既に薬草が擦りこまれ、シャマルがドラゴンに預けた包帯によって白
く包まれている。抵抗力の高さ故に魔法による治療が意味を為さないカイムへの、シャマルからの
せめてもの気遣いであった。
 今出来ることはこれくらいしかと言い、軟膏の類いを持って来ていればと悔いていたが、傷は全
て魔法で治せるという意識が前提にある以上、仕方のない話である。
 むしろこれ程に気を遣ってくれていること、その事実がドラゴンにとっては有難かった。後から
知った当人たるカイムも、僅かにではあるが感謝の意思が『声』から読み取れた。
 その痛々しい右腕の周囲に、漆黒の輪環が唐突に渦を巻いた。

「………………」

 苦痛もなく労もなくといった様子のカイムに対し、ドラゴンは沈黙したまま、愕然たる視線でそ
の様を見つめた。
 カイムの記憶の間違いであることを心の何処かで望んでいたからだ。世界の生滅に関わる秘法な
ど必要ない。持たぬ方がこの者のためだと思っていた。
 しかしこうして、黒き声紋は再び現界した。扱い方のすべてを失ったドラゴンとて見紛うことは
ない、新宿上空で彼等が用いた、あの時のかたちをそのままに。
216×DOD 六章六節 2/8 ◆murBO5fUVo :2008/11/12(水) 00:20:08 ID:DivncUjX
 声紋のリングはカイムの手首の部分を中心に、まるで巨大な手枷のように径を留め、ゆっくりと
回旋している。知る者が見ればバインドの一種かと思うであろう、ミッドチルダでそう呼ばれる魔
法と似通った形態をしていた。
 新宿上空では水上を伝う波紋の如くに広がっていくだけであったが、同じ円を保っているのはカ
イムが御している故か。
 実際『声』で問うと、肯定の返答があった。己の意思により拡散を止めていられるとのことだ。
もっともそうでなければカイムも、ここで出せるかという竜の問いに応じることはなかっただろう。
 本物だ……!
 ドラゴンは確信した。魔術による幻覚や錯覚の類いではない。記憶に残る姿形に似せた贋作のそ
れでもない。
 紛れもなく、正真正銘同じものだ。驚愕しつつも、まじまじと見つめてその思いは深まっていく。
何もかも変らない。回転する様、難解な構成、表面に浮かぶ天使文字――。

「もう……よい」

 目を向けていたドラゴンは前触れなく首をもたげ、目を背けて不快感を言葉に乗せた。

「?」
「消せ。消してくれ。気分がすぐれぬ。理由は、解ら、ぬが……」

 口調には苦痛の気配が色濃く在った。このように己の願いを明らかにし、不調を訴える竜の姿を
カイムは知らない。
 弾かれたようにはっと目を見開き、腕の回りで回転する黒いリングを消し去った。消える刹那に
金属同士をぶつけ合った時のような、高く響く音が耳をついた。

「今解った」
「?」
「それは『時間』だ。お主の中で刻む、歪んだ『時間』、そのものだ」

 苦しみの尾を引くドラゴンの言葉は、その身を気遣うカイムが理解できるものではなかった。
 契約を果たし人の域を超えた力を保持するとはいえ、もともとはただの人間として生まれた存在
である。世界が崩壊する前は少なくとも、神のつくる理や「大いなる時間」などとは全く疎遠なる
生を送ってきたのだ。いきなり時間だの歪みだのと言われても、直ぐにそのすべてを把握できるも
のではない。

「我が今、苦痛に感じたのは、我の『時』が正常を取り戻したからだ。お主も覚えていよう、母な
 る者を葬ったあの時に」

 理解できない、とカイムの思念は訴えた。その時の記憶なら確かにあるが、そのようなことを感
じ取った覚えはない。
 第一その「時」とやらをどうやって感じるのかも、カイムは全く知らないのだ。この辺りはドラ
ゴンの失敗とも言えよう。この竜は具体的に、簡略に物事を説明したことがあまりない。
 分からぬか、とドラゴンは続けて言った。対して返される男の『声』は、当然ながら肯定に翻る
ことはない。
 竜は少し思案する素振りをすると、おもむろに首を伸ばし、その見事な赤い羽翼を広げて見せた。
 そして言う。

「この翼がその証だ。漆黒が元の真紅を、唐突に取り戻したのは何故だ?」

 カイムは大きく目を見開いた。
 今まで考えたこともなかった。
 当然の事実として受け止めていた。何の疑問も抱かなかった。「母」を屠り混沌の世界から解放
されたが故の、何ら不思議のない当然の帰結だと思っていた。
 或いは「母」から奪った魔力が、何らかの影響を与えたのかもしれない。そのような程度にしか。
217名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/12(水) 00:20:59 ID:NKOeyVvy
背印
218名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/12(水) 00:20:59 ID:NKOeyVvy
背印
219×DOD 六章六節 3/8 ◆murBO5fUVo :2008/11/12(水) 00:23:08 ID:DivncUjX
「我が翼が黒く染まったのは丁度、世界が理を失った時と同じだ」
「…………」
「そうだ。司教の死の直後……世界の調和の消滅が、住まうもの全てに影響したとしても不思議
 ではなかろう?」

 では。
 カイムは無言のままに問いかけた。「時」が歪む歪まない、その本質的な意味はさておき、仮に
それが起こっているのなら。
 では、その「歪んだ時間」が――竜の中では正常を回復したそれが、何故己の身の内にだけ残っ
ているのか?
 母体を倒したのはカイムもドラゴンも同じだ。あれは協力して打倒したのだ。証拠にその膨大な
魔力は、二人に等しく吸収された。だというのに、この差異は何だ。
 それに今思うに、声紋の白黒に優劣は無い。違いは単なる正負、方向性の差であった。細かい点
は分からないが、異なる点はといえばその色と回旋の向きくらいのものだ。ドラゴンの白とカイム
の黒、それだけがこうまでも決定的な差をもたらすとは到底考えられない。

「我が知る筈もなかろう。ただ」

 ドラゴンは一旦言葉を切り、何かを思い出すような仕草をして続けた。

「思い出せ。最後の声紋の色は何であったか」

 黒だ。
 放ったのは、カイムだった。
 直後、沈黙がたゆたった。ドラゴンにはそれ以上、かけるべき言葉を見つけることができない。
 「時間」が歪む――直観によってドラゴンはそう表現したが、それが具体的に何を意味するのか
は、竜自身にもまだわからなかった。
 当たり前である。今のカイムはドラゴンとて経験のない状況に置かれている。「時」を止めて不
老の身となったセエレの例はあるが、あれは契約により強いられた永遠である。この件の参考とは
なり難い。
 彼は今こうして、表向き正常に生きながらえている。その事実だけを捉えるのなら、カイムの体
に起きた変遷は、生死そのものにはあまり大きく影響を与えはしないのかもしれない。
 しかし全く何事も無く時は過ぎてゆくまい。
 彼の肉体が少なくとも、声紋の記憶を持ち合わせている時点で、正常な人間の状態にないことは
確かだ。そして何より突然出現した、かつてからの敵の件もある。内憂に外患。
 その考えは竜だけでなく、カイム本人も同じだった。己の身体に起きた事実すら解らない、未来
は黒い霧の中……項垂れたカイムから、ドラゴンに投げられる『声』は無かった。思考による言葉
は無音のままに、錯綜する心理が念となって届くだけであった。
 ひゅぅ、と冷たい風が二人の間を走り抜けた。
 カイムは顔を上げた。その風に押されてか、こつんと彼の足に何かが当たっている。
 視線を落とすと、そこには背の低い円筒形の、小さな金属のケースがころころと転がっていた。
 カイムの所持品ではない。そもそも彼の持ち物は、過去にクロノ経由で手に入れたわずかな金、
捕えた獣の肉が少し、あとは服と武具防具だけだ。このように細やかな、小物の類の持ち合わせは
ない。

「火傷の薬だ。竜の娘が渡して行きおった」

 拾い上げて見つめるカイムの背に、ドラゴンが肉声を投げやった。それを背後に聞きながら、脳
裏の闇に小さな召喚士の姿が浮かび上がった。
220×DOD 六章六節 4/8 ◆murBO5fUVo :2008/11/12(水) 00:24:07 ID:DivncUjX
 と、そこで不意に、カイムはある事実を見い出す。
 ドラゴンの言葉を裏付ける、ひとつの確かな証拠であった。地獄の釜の底を見つめてきた彼をし
て、その心胆を寒からしめる事実だった。
 渡された薬は火傷のそれだけである。
 在るべき傷が、己の身体の何処にも見つけられなかった。
 氷雪を見舞われた直後には確かにあった全身の凍傷が、既に跡形もなく消え失せていたのである。
221×DOD 六章六節 5/8 ◆murBO5fUVo :2008/11/12(水) 00:25:40 ID:DivncUjX



 フェイトはふと顔を上げた。
 親友と共同で生活するいつもの部屋、壁に掛かっている時計をちらと見る。日付が替わるまであ
と一時間もなかった。夜はとっくに更けていて、すぐ近くの窓から外には星が見えていた。
 目の前にあったマグカップを思い出したように手に取ると、厚手の硝子はもう既に冷たかった。
中のコーヒーは温くなっていて、飲み干した舌には優しい。ただその心中は少々波立っている。こ
れを本来飲むはずだった人物の姿が脳裡に浮かぶ。
 今度こそは説教の一つでもかまさなければ気が済まない。
 そう思い立って先ほどヴィータに連絡を入れたら、「彼女」は既に休息を取っているとの返答を
受けた。
 任務直後のレポートを超特急で処理できるだけ処理し、訓練メニューに修正を加え自身のデバイ
ス調整を済ませ、きっかり定時に業務を終えたとたん、デスクに突っ伏して寝入ってしまったらし
い。タオルケットをかけてやったと言うヴィータの声には若干の呆れが含まれていた。仕事の早さ
に対してか量に対してか、あるいはその両方かもしれない。
 前回の任務後に割ときつめに、ミッション後はとっとと仕事を終えて休めと言ったのが、やっと
奏功したようだった。とはいえ例の大怪我から彼女も休息の重要性は認識しており、六課成立以来
の多忙は本人の意思ではないので、彼女ばかりを責められることではないのだが。
 高町なのはの話である。

(一難去ってまた一難、か)

 やっと休養に入った親友に対して安堵しながら、新たな懸案事項にフェイトは頭を抱えていた。
 カイムである。
 他に問題になりそうな人物は六課にはそういない。帰りのヘリには同乗せず竜の背に乗って去っ
ていった、子供たちが心配するあの男である。
 その様子を寂しげな瞳で窓越しに見送ったキャロと、それを慰めていたエリオの横顔が思い出さ
れる。ティアナもスバルも、目を向けながら複雑そうにしていたっけ。
 そう思いながら、ペンを置いた。目の前の机にはたった今片付けた、本日の任務の報告書の束が
山となって積み重なっている。
 カイムとドラゴン、機動六課。
 フェイトたちとドラゴンとの会話が、この日の双方の最後の交流となった。
 それ故彼らは知らない。任務後のオフィスで、幾つかの会話が交わされていた。



 依頼内容が完遂されたからといって、それで全ての作業が終わったと言えるほど時空管理局員の
仕事は簡単ではない。任務の中で後方支援にあたった者はそのとき得られたデータを報告書にまと
めることが、前線に配置された者には行動全般を見直すブリーフィングが、それぞれ任務後に義務
付けられている。その他諸々の作業もてんこ盛りだ。
 組織が巨大になればなるほど、こういう細々とした作業は重要性を増してくるものだ。事件や事
故への可及的速やかな対応を理念とする機動六課も、決してその例外ではない。むしろ迅速行動の
ためにはそのような、事後処理の類を詳細に行うことが非常に重要性を持ってくる。ずさんな報告
しか出来ぬような者に先鋒は務まらない。
 六課に限らず他の部署にも当てはまることだが、それらは通常部内の隊長たちの主導によって行
われる場合がほとんどである。
 つまり任務完了直後は、そういった隊長格のメンバーにとって疲労のピークだ。様々な後始末に
奔走したうえ平常の作業も片づけなければならないからだ。部下に任せられる種のものもゼロでは
ないのだが、それだけで全ての仕事が立ち回っているわけではない。
 だがそれにしても、

「は、はやて、大丈夫? 完璧に死んでるけど」

ブリーフィングを終えてレポートの束を抱え、部隊長室にやってきたフェイトがそう評した通り、
書類の山に囲まれてデスクに突っ伏すはやての姿は並々ならぬ疲労を周囲に訴えていた。
 普段から機動六課の仕事に追われ多忙な日々を送っているのに加え、そこに重なった任務の忙し
さは相当なものであるということか。リインは小さな両手で懸命にはやての肩をたたき、シャマル
やシグナムなどは甲斐甲斐しく温かい茶やら何やらをを運んでいるものの、まだ手はつけられない
ままである。
222×DOD 六章六節 6/8 ◆murBO5fUVo :2008/11/12(水) 00:27:12 ID:DivncUjX
「……ッサに…………ん」
「聞こえないよ、はやて。本当に大丈夫?」

 伏せたまま、はやてが口を開いた。しかし口の下にあるデスクとはやて自身の体に遮られてしま
い、くぐもっていてあまりよく聞こえない。
 それでも上半身を机に預けたまま、ペンを持った手だけが報告書類の上を往復し続けているのは
流石というより不気味だ。
 部隊長の責務がそうさせるのかそれとも身体が勝手に動いているのか、いずれにせよ非常に奇妙
な光景であった。

「ロッサに絞られてん……もう、こってり……こってり」

 顎を机に載せたままだが、ようやく顔を上げて、はやてはくたばった声を上げた。
 リインから肩揉み任務を引き継ぎながら、フェイトは、

「アコース査察官が……どうしたの?」
「結構キツく言われたらしいんだ。部隊の保有ランク、明らかにオーバーじゃねーかって」
「我々については確かに、制限にはギリギリかかっていないが……例外がな」

 問いかけには胸の前に腕を組んだヴィータと、主を視線で気遣うシグナムが答えた。困っている
ような迷っているような、そんな雰囲気が言葉と表情からうかがえる。
 誰のことを言っているのか、フェイトには嫌でも分かったし内容も瞬時に見当がついた。はやて
の肩に置いた手が、一瞬の間硬直した。
 シグナムなどはひどく悩み、どうしたものかと思案しているようにフェイトには見えた。
 そういえば是が非でも手合わせを、と息巻いていたなと思い出す。多忙になった自分との戦闘訓
練が出来なくなって結構な時間が経っていた。折角相手が見つかった所に、一旦おあずけにも等し
いこの状況は結構堪えるものだろう。尤もシグナムもそこまでイっちゃったバトルマニアではなく、
純粋に彼らの今後を案じているという側面がありそうではある。

「テスタロッサ。まさかとは思うが、今私に対して非常に失礼な考えを抱いてはいないか」
「いえ何も。ただ事実を考察していただけですよ」

 嘘は言っていない。問うべき糸口もない。というよりそういう場でもない。
 疲労しきっている主を挟んで追及するするわけにもいかず、シグナムはしぶしぶ矛をおさめた。
フェイトのこのあたりの身の躱し方は長年の付き合いがあってこそだ。初対面の者が相手ではこう
はいくまい。
 が、しかしそれでこの場が、明るさを取り戻せる筈はない。

「……なのはは?」
「知ってる。『はやてに任せる』って言ってたけどな……」

 ヴィータはそこで言葉を切った。当たり前だ。あの高町なのはが、見過ごすことではない。一度
でも仲間と認めた者を絶対に放り出さない、彼女の信条は身に染みて理解していた。
 だがそれでも、彼らの処分は如何ともし難い事柄であろう。時空管理局に所属する以上、内部の
法と秩序は守らねばならない。たとえどんなに自分が正しいと思っても、それが良いと信じても、
法が黒だと言えば黒になる。
 とすると、と、フェイトは思った。彼ら……竜と竜騎士は、この先どうなるのだろう。まさかこ
のまま、機動六課から放逐されることになるのか――そうなったら、彼らの後見はどうなる?
 義兄クロノの保護にも限界はあろう。キャロやエリオと違って一人で生きていくことについては
心配ないが、果たして彼らを受け入れる人間が現れるだろうか。人間の社会に居場所はあるのか?
 それに何より、まがりなりにも管理局内部に接触した彼らが、仮に放たれた後も自由でいられる
保証はどこにもない。
 住処を追われ、宛もなく彷徨することを強いられたりしないだろうか。そう考えるとフェイトは
背中に悪寒を感じた。それはかつて、キャロが故郷を追われたときの扱いと、全く同じだったから
である。
223×DOD 六章六節 7/8 ◆murBO5fUVo :2008/11/12(水) 00:29:38 ID:DivncUjX
「それは、まだええんよ」

 しかしそこで、おもむろにはやてが口を開いた。周りにいた仲間、守護騎士一団の視線とフェイ
トの意識が集中する。

「今回のアンノウンの情報、彼らが持っとるんは間違いない。それにこの先、まだまだ未知の敵が
 出てくることは簡単に想像がつく……っちゅうのは推測やけど、偶然とは思えへんしな」

 へこたれた声から一転して凛とした調子になり、最後に、せやから――と言葉を切った。
 そこから先は皆聞かなくとも分かった。機動六課はレリック関連の事件を追う、いわば管理局の
先鋒としてのカラーが強い。となれば、カイムとドラゴンの力はともかく、知識を最大に活かせる
のは機動六課の向かう戦場で間違いはあるまい。
 という論理は、例の未知の敵がレリック絡みの事件に今後も出現し続けることで初めて成立する
のだが、はやては何故だかその確信があると言った。このタイミングでの新種の敵は予想外にも程
があるが、しかしガジェット・ドローンは繰り返し出現してきた、という前例もある。今後も出て
くる可能性は大だ、と。

「問題というか、ほんに悩んどんのはな。その後なんや」

 その後ロッサに、引き続いて正面から言われたことがある、とはやては言った。

「言われたんよ。『病人が居るべきは戦場じゃない、病院だ』って」



 うそ寒さを伴う思考が頭の中に去来して、フェイトは視線の焦点を合わせて戻した。
 半分眠りの中にいたような、呆然としていたような気がする。ただ今日という日を思い出してい
たにしては、時計の長針がかなり動いているように思った。
 自分も疲れていたのだろうか? 疲労は思考を鈍らせる。だとしたらなのはのことは言えないか
な、などと思いながら、フェイトは机の上に手を伸ばした。
 ライトを消して立ちあがる。やわらかなベッドに身を投げ、明るいままの部屋で目を閉じた。
 悲しいことだ。
 過去の悲惨な経験からフェイトは、人間の多くがそれほど強い生きものでないということを知っ
ている。砕け散った心が二度と戻らないことも、その直前まで行った自分はよく分かっている。
 しかし、だからこそ人は群れるのだと、彼女はそう思っていた。互いに補い支え合い、そうして
生きていくのが人間の本質なのだと骨身に沁みて分かっていた。
 彼にはきっと、助けてくれる人がいなかったのだろう。竜が彼と出会ったとき、カイムは既に精
神に異常を来たしていたと聞いていた。どれほどの苦しみが彼を苛んだのか、そう思うと己の胸も
が締め付けられるような気がした。
 どうか、近しい者と接する中で、支えとなるものを見出してほしいと思う。
 彼の近くにはドラゴンが居るはずで、それでいてなおあの様子だという点からは、彼の心の平穏
に並々ならぬ困難があるのだと感じずにはいられないのだけれども。
 そんな時に思い出したのが、キャロとエリオの顔だった。あの可愛い子供たちは、帰りのヘリの
中、滑空する彼らが見える窓にしきりに視線を向けていた。
 今日は怪我も無く任務を終えることができたが、ゆっくり休養を取っているだろうか。深夜は外
出が止められているから、寮に帰って直ぐに森に足を運ぶことはないはずだが。
 それでもキャロはきっと、明日にでもカイムの様子を見に行くのだろう。エリオももしかしたら、
深く気にかけているかもしれない。どうしてだか、フェイトにはそんな気がした。
 二人とも優しく、たくましく育ってくれた。
 もし子供たちが今、新たに人の力になろうというのなら――まだ幼すぎる身のようには思うけれ
ども、こんなに嬉しいことはない。
 男の心身を不安に思いつつ、彼ら子供たちの存在に安らぎを感じながら、明かりも消さずにフェ
イトは眠りに就いた。



 まさか翌日自分が、そのカイムに本気で刃を向けることになるとは、この時彼女はまだ知るはず
もなかった。
224×DOD 六章六節 8/8 ◆murBO5fUVo :2008/11/12(水) 00:30:30 ID:DivncUjX



 そして夜が明け、フェイトが考えた通り、キャロはフリードリヒを連れて森を訪れた。
 早朝の、飛行の手解きを……というのもあるが、やはりカイムが気になって仕方が無かったから
だ。昨夜は訓練こそなかったものの、ブリーフィングやら何やらで意外と時間を食った。気がつい
たらもう夕食の時間が来ていて、あとは雪崩のように睡眠へと流れていくだけだった。今日だって
訓練がある訳だから、動けるとしたらこの早朝か、今日の訓練が終わった夜しかない。
 カイムに会えることを信じたわけではない。期待はあったが確信はなかった。
 キャロは何度も朝の森に足を運んだが、そのうちほとんどがドラゴンとの交流に終始していた。
彼が一緒に姿を見せることは非常に稀であった。昨日のこともあるのだし、顔を見せづらいという
ことだってある。
 それでも何かをせずにはいられなかっただけだ。
 結果がどうなるとか、無駄じゃないのかとか、そういう考えはキャロにはなかった。あったかも
しれないが気にならなかった。そういう点、キャロは子供であった。自分の思いに正直で、そして
健気だったのである。
 そしてその健気さが通じたのかどうなのか。
 キャロがいつもドラゴンと会うその場所に辿り着いた時、視界には彼の姿があった。

「何を呆けておる?」

 ドラゴンの第一声がそうであったことから分かるように、キャロはその時大いに狼狽した。目の
前にはドラゴンがいて、その下の大きな岩にカイムが腰かけてこちらを見ている。
 今まで森を訪れた時にも、カイムが竜の傍らに姿を見せたことはあったが、というのもかなり頻
度は稀だったからだ。それにこのように正面から、まっすぐに自分を見据えてきたことはなかった。
 怪我の具合はどうなのか、昨日渡しておいた薬の効きはどうか等、ここに来る前に訊いておきた
いと思っていたことが全部、頭の中からすっぱりと抜け落ちてしまっている。

「……怯えておるぞ」

 我に立ち返らせてくれたのは、ドラゴンがカイムにかけたその一声だった。
 聞いたカイムは例の如く無表情のままであるが、キャロは慌てて、

「違います! 今のはその、ちょっとびっくりしちゃっただけです!」

と力一杯に否定する。朝の涼しい空気に大きな声が響いた。
 すぅはぁと息をして自分を落ち着かせる。

「昨日は、お疲れさまでした。あの、火傷の方は、大丈夫ですか?」
「ああ。大丈夫だ」

 半身の異常はおろか、己の内心すら何一つ感じさせないドラゴンの言葉だった。
 直後、カイムが手の中から、何かを放ってよこす。

「カイムがここにいるのは、それを返す為だ。礼を言っておる」

 放物線を描いや銀色のケースは、軌道の上にいたフリードリヒの口の中におさまった。
 対して、キャロはあたふたとした声を上げた。渡した薬は確かによく効く代物ではあるが、魔法
の類とは違う。これほどの短期間に傷を癒す力はないはずだ。

「え? でも、まだ」
「時間が余っているわけでもなかろう。さっさと始めようぞ」
「あ……は、はい……」

 どうしてか有無を言わせぬ気配を含んだドラゴンの声に、キャロはそれ以上問い返すこともでき
ない。フリードリヒを真の姿に解放し、巨大なその背に身体を乗せた。
 おおきな翼がはためき、白竜とともに天空へと舞い上がるその最中も、キャロは眼下で微動だに
しないカイムのシルエットから、目を外すことができなかった。

225×DOD あとがき ◆murBO5fUVo :2008/11/12(水) 00:32:48 ID:DivncUjX
遅くなって申し訳ないです。
ドラゴンの翼の色、赤に戻ってたのはこういう訳でして。

ではまた。
226名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/12(水) 01:08:27 ID:022NLVvq
投下乙!
なんか果てしない悲劇の足音がwwつーか王子が何をやらかすか楽しみすぐるww
227名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/12(水) 01:16:36 ID:6jbqsWuL
GJ!!です。
なんか嫌な予感がしますが、それが楽しみw
本編からの流れだと、頭冷やそうかの回ですね。
カイムさんが、どんな事をしでかすか楽しみで仕方ありません。
228名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/12(水) 07:35:24 ID:2QQd37rV
GJ
カイムがなにをやらかしてフェイトが本気で刃を向けるのかが気になる終わりです
続きが楽しみです
229名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/12(水) 07:40:23 ID:VyQb7o/u
GJ
うん、王子どうなるんだろうこれ
相変わらず不穏だなぁ。
次回も楽しみにしてます
230一尉:2008/11/12(水) 14:54:27 ID:fnLy8LOG
王子はこれからどうなるかな。
231名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/12(水) 23:10:41 ID:XUq5pwl1
王子どうなるんでしょう。
なんか不穏な雰囲気が。
予約もないようなので投下します

「午前中に東京都お台場で行われていた、ウェイン産業の一周年パーティーにて、複数の男が乱入。
 ウェイン産業関係者、政府関係者、金融関係者などを拉致し、逃走を図りました。
 現場に巻き込まれた人の話では、乱入した男の1人が、ゴッサムシティの犯罪者である『ジョーカー』と名乗っていたということもあり、
 警視庁は一刻も早くの拉致された方の救出、犯人逮捕を行うと……」

「今回の事件に対して、首相は、日本政府への挑戦であり、
 警視庁、警察庁に対して直ちに対応し、犯人の逮捕に努めて欲しいと厳命したことを記者に発表しました。
 また今回の拉致事件の被害者で、パーティーに列席していた金融副大臣、与党の中堅議員、野党の議員などもおり、身の心配が案じられます」

「ウェイン産業のパーティーの防犯カメラからの映像を、
 アメリカ政府を通じてゴッサムシティに送ったところ、
 犯人はゴッサムシティで殺人、放火、誘拐などの罪で指名手配を受けている通称『ジョーカー』であることが判明しました」

「通称『ジョーカー』は、その姿をトランプのジョーカーのように顔を白く化粧していること、
 また犯罪現場にトランプのジョーカーを置くことからその名前がつけられました。
 『ジョーカー』はゴッサムシティの犯罪者の中において、
 もっとも凶悪といわれており、刑務所からの脱獄も三回にのぼるとして、その危険性による、人質への安否が懸念されます」

「ウェイン産業のブルース・ウェイン氏は、人質の解放のために全力を尽くすとして、
 警視庁に協力を約束し、積極的に捜査に協力すると発表しました」
第2話 裏


 高町なのはと、フェイト・T・ハラオウンは、警察と救急車でごった返す、ウェイン産業の敷地を離れ、人が少ない海辺に来ていた。
 潮の香りを感じながら、二人の気持ちとは裏腹に、海は穏やかで、青い空の中、陽が傾き始めていた。
 暫く、何も言葉に出来ない二人。
 自分のせいでヴィヴィオは連れ去られた…。なのはも、フェイトも自分を責める。

「…なのは、探そう?ヴィヴィオはまだ、近くにいる」
「うん……」

 今は悩んでも何にもならない。今自分ができることを考えないと…。
 そう、ヴィヴィオを探して取り返す。それが今の私たちができる唯一のことだから。
 絶対に…。
「だけど…どうやって?探そうにも手がかりまったくないよ」

 フェイトは何も出来ない自分の無力さに怒りが湧く。
 ここでは自分の力も遠く及ばない。執務官という肩書きだって、ここでは使うことが出来ない。
 世界がかわるだけで、ここまで無力な存在になるなんて。

「大丈夫。私たちには、これがあるよ」

 なのはは、そんなフェイトの心配を他所に笑顔を向ける。
 なのはは、こうやっていつも心配や不安に陥るフェイトを無意識に助けている。
 そのことがフェイトにとって、なのはに対する強い想いを持たせ続ける原動力となっているのだ。
 
 なのはがそういって、取り出したのは携帯電話…。
ヴィヴィオはうずくまりながら、見つめていた。
トラックに揺られ下にさがっていくことを感じながら、車が止まった場所は、広いコンクリートに囲まれた空間だった。
トラックの後ろの扉が開かれ、ピエロの仮面をした男たちが銃を持ち、下りるよう指示する。
前にいるのは、自分たちを攫ったピエロの大ボス。

「君が、ジョーカーか…、私たちにこんなことをしてどうするつもりだ」
 
 1人のスーツを着た人が、前に出てそのピエロの大ボスにいう。
 ビエロの大ボスは口の周りの赤いペイントから常に笑っているように見える。

「君は?」
「私は日本国の野党の国会議員だ。君たちの要求を言ってみろ。人命を優先し解放するのなら、私が直接交渉に当たる。なんだ、金か?権力か?」
「フフフ……フハハハハハハハハハハ」
 
 高らかな笑いが、そのコンクリートに囲まれた場所で響き渡る。
 ピエロの大ボスがその人の襟首を掴み、顔を近づける。

「金?権力?そんなものに興味はない。俺はただ楽しめれば良い。みんなハッピーに笑顔をみせてもらえれば、一番だ」
「バカな。犯罪をすることが目的だとでも言うのか?」
 
 ピエロの大ボスは、その議員から手を離して、距離をとり、全員が見えるよう、車の上に立つ。

「皆さん、改めて…始めまして。皆さんは私を知っていますが、私は皆さんのことを余り知らない。
 一方的な新聞やテレビでしか知らず、まるでアニメやドラマ、映画の世界のような好奇な目で見ている………俺はそれが我慢できない!!」
 
最後の言葉に強い感情がこめられている。
ヴィヴィオは、怯えながら、そのビエロの大ボスを見る。

「俺は笑うことは好きだが、笑われることは大嫌いだ。だから、第三者を気取るお前たちにも同じように笑ってもらうことにした。
 それがジョーカー劇場の目的だ!!君たちには道化師として、踊ってもらおう。フハハハハハハハハ〜」
 
 恐怖に怯えるものたち、そんなものたちを見ながら、ビエロの大ボスは笑い続ける。大人たちは、悲鳴を上げながら逃げ出そうとする。
 だが、それは銃口を持ったものたちによって阻まれ、そして、別のトラックの中にと再び詰め込まれていく。
 ヴィヴィオも大人たちの狭間に紛れながら、流れていく。
 そんなヴィヴィオのポケットの中、携帯電話が点滅して光っている。
 トラックが出発したとき、何かの影が駐車場で揺れ動いた。

「わああぁ!?」

 悲鳴とともにピエロ仮面の誰かが消えた。
 車に乗り込もうとしていたジョーカーは、その悲鳴にあたりを見回す。
 下水道工事のための地下駐車場…。
 こんなところに、警察がいるはずがない。

「うわぁぁ!!」
「ぐぅぅ!!」

 再び消える声に、ピエロ仮面たちが銃を向け、あたりかまわずに撃ちまくる。
 だが、そのピエロ仮面の上から現れた巨大な黒い影にピエロ仮面は不意をつかれ、殴り飛ばされる。
 ジョーカーの表情に笑みが浮かぶ。こんなことをするのはあいつしかいない。

「蝙蝠男、こんな異端の地までよくやってきたな?」

 だが、そこに現れたのはジョーカーの知るものではない。
 黒いマントをなびかせ、長い金色の髪をなびかせる女。

「…あなたが捕まえた人質を返しに貰いにきた」
「ふ、フフフ…フハハハハハハハハハハ」
 
 フェイトの姿を見たジョーカーは再び大きな声で高らかに笑う。

「バットマンの新しい女か?それとも猿真似上手な日本の犬か?
 趣味の悪さも似ているみたいだな。だが、顔をそんなにはっきりと見せるところだけは、性格が良いと褒めてやる」
 
 笑いながら、拍手する…そんなふざけたジョーカーに対して、フェイトはバルディッシュをジョーカーに向け、鋭い眼差しを向ける。

「もう一度言う、大人しく人質を解放して、抵抗をやめなさい」
「アハハハハハハハ。残念だ、お嬢ちゃん…断る」
 
 ジョーカーは指を鳴らすと、両脇にたつピエロ仮面が機関銃を鳴り響かせる。
 フェイトは、バルディッシュを高速で目の前で回転させると銃弾をすべて弾いていく。
 そしてそのまま一気に近づき、機関銃を持つ男たちをバルディッシュで腹部や背中をたたき、気絶させる。
 そしてジョーカーの襟首を、掴み車の上に押し付ける。

「わぁっ!わぁっ!わかったから、こ、殺さないでくれぇ!」
「人質はどうした?」
「別にトラックにのせた」
「目的地はどこだ」
「そ、それはいえん」
 フェイトの手に力がはいる。
「あ、あ……わかった、わかったから…あんたの強さには恐れ入った。まさか日本にこんな強いお嬢さんがいるとは……今回は素直に負けを認める」
 ジョーカーは両手をあげながら、震えた声でそうつげる。
 フェイトはそのジョーカーの言葉を信じて、手の力を緩める。

「やめろ!」

 誰かの声が聞こえた、その瞬間…
 ジョーカーの服の隙間から、手榴弾のような丸いものが落ちると凄い勢いのガスが噴射する。
 その勢いに手を離してしまうフェイト…。
 催涙弾?よくわからない…

「アハハハハハハ、お嬢さん、また会おう!」

 煙の中、車の走り出す音と、笑い声だけが頭に残った。
 そしてフェイトの意識はそこで途絶えた。
 高町なのはが現場の下水道駐車場に辿り着いたのは、それからすぐのことだった。
 なのはは、フェイトとは別に、ヴィヴィオの持つ携帯の発信機を元に近辺の人質が乗っていそうなトラックを探していたのだが、
 トラックを乗り換えられたことで、その電波もまたトラックの防護壁か何かによって遮断を受け、電波を失ってしまっていたのだ。
 倒れているフェイトに駆け寄るなのは。
 フェイトを抱きしめ、なのはは、そのフェイトのぬくもりを確認する。

「…ガスを少し、吸い込んだだけだ」
 
 その声に振り返る、なのは。
 そこにたつのは、黒きマント…顔を覆った黒きマスク。
 すべてを黒に覆うそれは、こちらを睨む。

「お前たちが何者か、検索する気はないが……、私の邪魔をするのは、やめてもらおう。ジョーカーを捕まえるのは私の仕事だ」

 その姿は、どこかおぞましいものを感じる。
 とてもヒーローというものとはかけ離れた存在…そして気配。

「……私たちの助けたい人たちも人質の中にいるの」
 
 なのはは、それに負けずに告げる。そう、ヴィヴィオがいる。
 ヴィヴィオは私たちの娘。大切な存在。
 幾多の戦いの中で、手に入れた…存在。

「…君たちではジョーカーには勝てない」

 冷淡に、はっきりと告げる黒きマスクの男。
 なのはは、言い返そうとするが、フェイトちゃんから発せられた声で、視線を移す。

「なのは……ごめん、私」
「うぅん…大丈夫だよ。だから今は…休んでいて」
 
 なのはは、なぜ、そこまではっきりと自分たちではジョーカーを倒せないか問い詰めようと、再び視線を移すが、
 既にそこには黒きマスクの姿はない。
 なのはは、悔しさに心を震わせながら、ヴィヴィオの奪還のために次のことを考え始めていた。


 一般道を走る車の中で、ハンドルを握るジョーカーは、先ほどのことを考えていた。
 日本政府にあのようなものがいるとは考えていなかった。
 そもそも、あれは本当に政府の存在であるのか?
 目的はなにか……政府の要人。蝙蝠男と比べると負ける気はさらさらないが、面倒そうな存在ではある。
 ジョーカーはそこでニヤリと微笑む。
 相手が何を求めているか、そして最高のショーにするためのものを同時に考えついた。
 ヒントはそう、アメリカのつまらないヒーロー漫画よりも、よっぽど面白い日本の漫画から考えついたものだ。


「バットマン〜♪タ〜ララララ、タ〜ララララ、バットマン〜♪」


 ジョーカーは口でそんな事を歌いながら、車を走らせていく。
 その崎に見える、光り輝く彼の根城を目指して。
以上です。誤字や抜けている部分、確認していますがある可能性があります。
そこはご容赦ください。

感想等ありがとうございます
239一尉:2008/11/13(木) 14:45:59 ID:L1rkoYhW
バットマンがんばれ支援。
240名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/13(木) 17:04:41 ID:kj3ivHSy
投下乙です。
バットマンならなのは達の魔法を知っても、尚も「敵わない」と言いそうです。
更に言えばジョーカーも今回のようになのは達を出し抜いてしまいそうです。
241名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/13(木) 17:41:05 ID:hrYc5G1E
GJ!
まあ、バットマンはスーパーマンとだって知り合いですしねえ。
普通に魔導師にも対応しそうですw
242名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/13(木) 18:02:41 ID:5XvINHZ4
そういや初代バットマンはグリフィス提督と同年代ぐらいなんじゃね?
まあ、最近のマーベルでどうなってるかはしらんが。

とはいえ、乙&GJ
243名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/13(木) 19:55:15 ID:nAzE+lVD
とりあえず、検索(けんさく)ではなく詮索(せんさく)ではなかろうかね?
244名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/13(木) 20:42:45 ID:p/1Iwoty
>241
バットマン達DCヒーローはどうだか知らないけど、マーベルヒーローにはDr.ストレンジという魔術師のヒーローがいるからね。
245名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/13(木) 20:53:31 ID:6uZuh3gJ
>>244
バットマンには泥で出来たクレイフェイスという敵キャラいたな。
ラザラス・ピットなんて死者蘇生できるアイテムあるし。
246名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/13(木) 21:48:16 ID:r3+J7hPm
アメコミの魔法は本当に魔法だからな
なのはの魔法は理論の違う科学だから相手になるまい

やっぱりジョーカーはいいねえ
247名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/13(木) 22:00:23 ID:gyQ9N/s1
>>241
え?あの弾よりも機関車よりも機動性が上を行き、
毎度毎度悪を倒すという名の地球破壊活動をくたびれるほど致す理不尽の権化と知り合いですかwww
それならあの物言いも納得ですな。
248Black短編 ◆DZeBKLWqME :2008/11/13(木) 22:24:50 ID:vsC85Zcy
他に予約が無ければ、22時50分から投下したいと思います。
249名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/13(木) 22:28:50 ID:RKoJd1Q7
やはりバットマンの犯罪者たちはキャラが良いですね〜ジョーカーがいるならハーレクインもいるんでしょうか?個人的にはスカーフェイスが好きだが
250Black短編 ◆DZeBKLWqME :2008/11/13(木) 22:50:35 ID:vsC85Zcy
―魔王、復活―



○月×日
面白い物を拾った。
いや、者と言うべきだろうか。
頭部だけしか残っていないというのに、よく生きているものだ。
後の戦闘機人作成の折に役に立つかも知れない。
再生槽に入れて、経過を見ることにしよう。



○月△日
素晴らしい。
たった二日で、上半身がほぼ再生してしまった。
昆虫の見た目通り、生命力が強いのだろう。
それにしても……ああ、素晴らしい。
この鎧は後付けの武装ではなく、皮膚の細胞が変化して発生したものなのだ。
筋細胞の強靭さも、ナンバーズとは比べものにならない。
ルーテシアのガリューは既に調べ尽くしてしまったし、良い研究材料を手に入れたものだ。
しばらくは、退屈とは無縁になるだろう。
彼――もしくは彼女が完全に再生する日が待ち遠しい。
個室に移して、よりに強力な再生槽に入れてみよう。
251Black短編 ◆DZeBKLWqME :2008/11/13(木) 22:53:25 ID:vsC85Zcy
「ごちそうさま……少し、席を外すよ」

そう言って、ジェイル・スカリエッティは食卓から離れた。
ナプキンで口元を拭い、胸元を払う。
食事が始まって二十分も経っていないが、皿の上の料理は綺麗に無くなっていた。
彼と同じく既に食事を終え、コーヒーカップを口元に寄せていたウーノが、食堂の出口に向かう背中を呼び止めた。

「また、あの部屋に?」

声には、苦味が含まれている。
スカリエッティは振り返らなかった。
青い長髪を揺り動かすのももどかしいと言うように、背中を向けたまま返す。

「そうだよ。再生の進み具合が気になるからね」

聞くまでも無かったようである。
ならば、少しという言葉に反して、この食堂に戻ってくるつもりはないのだろう。
戻るのは研究室か寝室か、時には戻らずそのままあの部屋で夜を明かすことさえあった。
ここ最近ではいつもの事、しかしそれがウーノは嫌だった。
だから、彼の望まぬ言葉も、口を衝いて出る。

「ドクター、何度も言いましたが……あれは危険です。今すぐに廃棄するべきです」

それでやっと、スカリエッティは振り返った。
額には皺が寄せられている。
楽しみに水を差された子供は、こんな顔をするのだろうか。

「ウーノ……今の彼に何ができるというんだい? 下半身はないし、再生槽に何かあれば高圧電流が流れるようになっている。一瞬で黒焦げさ」

口辺に笑みを寄せ、スカリッティは自信も露わに言った。
まるで、この世に自分の予想を超えるものなど無いとばかりに。
その態度が、逆にウーノを不安にさせた。
彼の優秀さは、秘書を務める身である以上知っている。
そこに疑いを挟む余地はなかった。
だが、数日前にスカリエッティが拾って来たあれは、ガジェットや戦闘機人とは全く違う。
彼の自信もウーノの信頼も全て飲み込んでしまいそうな、そんな不安を胸に生むのだ。
人が、人などが触れてはいけない、禁忌を目の当たりにしているような―――
252名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/13(木) 22:53:38 ID:b8kAVdO8
支援
253Black短編 ◆DZeBKLWqME :2008/11/13(木) 22:55:36 ID:vsC85Zcy
ウーノとスカリエッティの間に、沈黙が流れる。
妹達の視線を集めているのを肌で感じた。
やがて、スカリエッティが小さな笑いで沈黙を破った。

「もしかしてウーノ、君は彼に嫉妬しているのかい?」

ウーノは答えなかった。
黙するのは、そうであると言っているに等しい。
たしかに、スカリエッティの関心の殆どを占めるあれに、複雑な思いを抱えていたのは事実である。
第二、第三の理由が、彼の言う嫉妬であるのは否定しない。
だが第一は、やはりあれに対する不安なのだ。
邪魔者を言い負かせたことに満足し、スカリエッティは再び扉に向かった。
自動ドアが開き、皮靴を履いた足が廊下に出る。
そこで、思い出したように振り返り、

「何も心配する必要はないのさ。何もね」

不敵な笑みを一つ残し、スカリエッティは閉じゆく自動ドアの向こうに消えた。
無機質な扉が、物理的にも精神的にも、彼と自分を隔てるようだった。
舌に、鉄の味が染みる。
知らず噛み締めていた下唇が、薄く出血していた。
彼が一度何かに興味を持てば、自分の言葉など木端のように蹴散らされるのは分かり切っていたことである。
それでも、心配を無下にされるのは、やはり悲しい。
254Black短編 ◆DZeBKLWqME :2008/11/13(木) 22:56:58 ID:vsC85Zcy
「ドクターの言ってた彼って何すか?」

食事に手を付けていたウェンディが、誰にともなく疑問を飛ばす。
呆れ顔で受けたのは、右隣に座っていたセインだった。

「知らないの? ほら、おととい個室に運ばれたの」

二人のやりとりがきっかけだったか、食堂が妹達の声でざわついた。
音色は様々たが、内容は皆一様だった。
すなわち、研究所の一室に眠る、忌まわしき黒い怪物である。

曰く、気味が悪いからどこかにやって欲しい。

曰く、前に見た時は頭しかなかった。

曰く、夜中部屋の前を通りかかると、奇妙な音が聞こえる。

決して食卓の上で交わされるような、穏やかな話題ではない。
どんよりとした瘴気が、部屋内に蔓延するかのようだった。
食卓を挟んでセインの前に座するノ―ヴェが、ぽつりと零す。

「あたし………あれ、怖い」

瞬転。食堂が静まりかえる。
ノ―ヴェの言葉が、どうやらこの場にいる全員の総意のようだった。
255名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/13(木) 22:59:13 ID:orpuu9ZV
支援
256Black短編 ◆DZeBKLWqME :2008/11/13(木) 23:01:14 ID:vsC85Zcy
ウーノの心配症にも困ったものだ。

長い廊下に、スカリエッティの足音が尾を引いて響く。
仮に、「彼」が危険な存在だったとして、所詮は死に損ないである。
再生槽の強化ガラスさえ破れるかどうか怪しい。
それに、何か害を与えようとしてきたなら、その場で処分してしまう用意はあるのだ。
心おきなく刃の上で踊るために、保険は怠らない。
例えば、投身自殺とバンジージャンプは違う。
足を綱で結ばれ、下にクッションがあるからこそ、バンジージャンプとは娯楽足り得るのだ。

「まあ、少しくらい予想外なことがあった方が楽しいかな。くくく」

不遜でさえある自信を笑みから零しながら、スカリエッティは歩を進めた。
靴底が床を踏む音さえも、世に敵うなどいないと言っているかのようである。

事実、管理局の陸士を束ねるレジアス・ゲイズはスカリエッティの掌で踊り、彼の創造主でさえ企みに勘付いてさえいないのだ。
この世を動かすのは、武力ではない。頭脳だ。
それだけでは掃えない小蠅もいるだろうが、近々強力な殺虫剤が手に入る予定である。
ミッドチルダは、いや全ての次元世界は、自分の実験場、あるいは遊び場だとスカリエッティは思っていた。

心配事など、何一つない。
257Black短編 ◆DZeBKLWqME :2008/11/13(木) 23:02:53 ID:vsC85Zcy
やがて、スカリエッティは巨大な鉄扉の前に辿りついた。
デバイスにも使われる金属で作られた扉は、内と外、両方からの衝撃に備えた物だ。
無粋な侵入者に気安く入られても気に障り、中にいるものが突如暴れ出しても困る。
備えは、いくらあっても足りないのだ。

壁に取り付けられたコンソールを操作すると、十センチの厚みのある扉が、重たげな音を立てて開く。
スカリエッティが中に入ると、設定通り自動的に閉まった。
白く、間広い部屋である。
天井のライトから降る白光が、内部を万弁なく照らしていた。
それをやや疎ましい物と感じながら、スカリエッティは前に進む。
奥には、巨大なガラスの円筒があった。
特別に用意した再生槽である。
底の部分からは、無数のコードやパイプが円筒を中心に四方八方に伸びていて、まるで奇怪な大樹のようだった。

再生槽の前まで寄ったスカリエッティは、表面をそっと手で撫でた。
返るのは、冷たさのみ。
しかしスカリエッティの胸内は、これ以上がない程に煮え滾っていた。
258名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/13(木) 23:02:56 ID:xuWF0smO
支援
259Black短編 ◆DZeBKLWqME :2008/11/13(木) 23:04:22 ID:vsC85Zcy
「どうだい、調子は?」

返る筈のない言葉が、円筒の表面で踊る。
だがスカリエッティの声は、円筒に向かって放たれたものではない。
その、中身に向けられたものである。
再生槽を満たす緑色の液体。その中に、黒い人影があった。
顔らしき部分には、真紅の光が二つ、輝いている。
その下には体、腕、腹があったが、そこから下が無い。
「彼」はまだ、再生途中なのだ。

「せめて、鳴き声くらいは上げて欲しいがね」

心底から楽しげに、スカリエッティは再生槽の中身を観察していた。
とはいえ、昨日と変わるところはない。
完全に肉体が再生されるのは、まだ先のことのようだった。
しかしそれも、頭部のみの状態から数日で上半身が戻ったことを思えば、そう長くはかかるまい。

「まあ、一度にではつまらないからね。じっくり、ゆっくりとが面白い」

命で遊ぶ楽しさに酔うように、スカリエッティはくつくつと喉奥で笑った。
その時である。
260名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/13(木) 23:06:20 ID:ZHCEX4yY
それ治しちゃらめぇぇー!
支援
261Black短編 ◆DZeBKLWqME :2008/11/13(木) 23:07:16 ID:vsC85Zcy


―――――足りぬ。


脳に、直に声が響く。
はっとして、スカリエッティは再生槽の内部を見遣った。
どういった作用か、声の主が彼であるとすぐに理解できた。

「………君なのかい? 何が足りないんだ?」


―――――血肉が足りぬ。


彼の渇望が、手に取るように分かる。
言葉のみならず感情さえ伝える、高度な念話だ。
スカリエッティは、再生槽を狂喜して再生槽を抱き締めた。
腕の回る太さではなかったが、そんなことはどうでもいい。
肉体は強靭であるとは知っていたが、人類に匹敵する、いやそれ以上かも知れない知能を、「彼」は有しているのである。
他の全てを忘れて、スカリエッティは言葉を返した。

「では、もっと養分を送ろう。それで、残りの体も」


―――――ある。


今度の声は、彼をして要領を得ないものだった。
スカリエッティは怪訝さを込めて「彼」を見た。
数秒前に足りぬと要求していたものが、今はあるという。
考えても分からぬ疑問を、スカリエッティは口に出した。
262Black短編 ◆DZeBKLWqME :2008/11/13(木) 23:09:57 ID:vsC85Zcy
「どこに、あると言うんだね?」


―――――目の前だ。


声の内容を吟味する時間はなかった。
何の前触れもなく、再生槽が爆ぜた。
同時に、警報がけたたましく鳴り響く。

「なっ」

頬に走った痛みは、飛び散った破片が肌を裂いたようだ。
瀑布となって押し寄せる緑の液体に足を取られ、スカリエッティは転がった。
何が起きたのか。
明晰な筈の頭脳が、あまりの予想外に最低限の働きしかしない。
濡れたズボンが肌に貼り付いて気持ちが悪い。
濡れた白衣の裾が重い。
その程度である。

スカリエッティは、横たわった液体が部屋各所に設置された排水溝に飲み込まれていくのを見ていた。

「まずい食事ばかりしていてはな。たまには、馳走が欲しくなる」

聞き慣れない、つい先程聞いた声が、スカリエッティの鼓膜を震わせた。
低い、老人の様な声に引かれるように上体を起こす。
再生槽の残骸の上に、「彼」が浮かんでいた。
一定以上の衝撃がかかった時、内部の存在に高圧電流を流し込む機能も、一瞬で粉々にされては感知さえできなかったらしい。
人の、人に似たものの上半身が宙空に浮かぶ光景は、まるで趣味の悪い戯画のようだった。
263名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/13(木) 23:10:42 ID:ZHCEX4yY
ドクターオワタ/^o^\
支援
264名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/13(木) 23:11:44 ID:DKgzNOfC
これはドクターオワタと言わざるをえない

しーえんしーえん
265Black短編 ◆DZeBKLWqME :2008/11/13(木) 23:12:42 ID:vsC85Zcy
「まずい食事ばかりしていてはな。たまには、馳走が欲しくなる」

聞き慣れない、つい先程聞いた声が、スカリエッティの鼓膜を震わせた。
低い、老人の様な声に引かれるように上体を起こす。
再生槽の残骸の上に、「彼」が浮かんでいた。
一定以上の衝撃がかかった時、内部の存在に高圧電流を流し込む機能も、一瞬で粉々にされては感知さえできなかったらしい。
人の、人に似たものの上半身が宙空に浮かぶ光景は、まるで趣味の悪い戯画のようだった。

「……私は、君をそこまで再生させたんだぞ?」

スカリエッティは、恩を盾にするように言った。
これから何をされるか。
ようやく働き始めた頭脳が、「彼」の言葉から答えを弾き出していた。
「彼」は、自分を喰うつもりなのだ。
それで、下半身を再生させるのだろう。
空調も効いて、暑くはないというのに、冷たい汗が止まらなかった。
気付けば、全身が瘧のように震えている。
それらが、死への恐怖から来るものであることは明確だった。
最前まで、世界はこの手にあると自身に溢れていたスカリエッティは、この世のどこにもいない。

不様だった。自身、泣きたくなるほどに不様だった。
266Black短編 ◆DZeBKLWqME :2008/11/13(木) 23:15:09 ID:vsC85Zcy
「だから、貴様に栄誉をやろうというのだ」

「彼」が、表情を変えずに笑う。
背後の扉は、スカリエッティが出る分には入力も何も必要ない。
立ち上がり、部屋の外から出て、コンソールを使って扉をロックする。
下半身の無い「彼」がどれほどの速度で動くかは分からないが、それは賭けである。
このまま、何もせずに喰われるよりはずっと良い。
唐突に、食堂で自分を心配していた秘書の顔が脳裏をよぎる。

(ウーノ……君に、謝らなければな)

だが、彼の謝罪がウーノに届くことは、永久になかった。
「彼」の額が光る。
同時に、スカリエッティの右胸に穴が空いた。

「…………え?」

呆然として、スカリエッティは顎を引いた。
穴からは、細い白煙が棚引いている。
痛みはない。
しかし喉奥から込み上げる感触で、それが致命傷であると分かった。
血が、口腔から漏れて白衣を容赦なく汚す。
視界が、闇に包まれていく。

「そう、儂の血肉となる栄誉をな」

それが、ジェイル・スカリエッティの聞いた、最後の言葉だった。
267名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/13(木) 23:17:14 ID:6uZuh3gJ
(ノ∀`) アチャー 支援
268名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/13(木) 23:17:50 ID:m0J4T8CQ
ドクタァァァァァァァァッ?!
支援せねば!
269名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/13(木) 23:18:01 ID:ZHCEX4yY
よりによって魔王w
支援
270Black短編 ◆DZeBKLWqME :2008/11/13(木) 23:19:55 ID:vsC85Zcy
警報を聞いたウーノは、ナンバーズの中で特に戦闘能力の優れた三人を連れて廊下を駆けていた。
狭い場所では、大人数は逆に弱みとなる。

「一体、何があったというのだ?」

銀の髪を揺らすチンクが、緊迫を露わに言った。
冷静を常とする彼女も、創造者の危機には感情が先に出るようだった。

「わからん。だが、何があってもおかしくはない」

声に苦みを滲ませるトーレは、あれを個室に移す際、運搬を手伝った一人である。
この中で最年少のセッテは、ただ黙々と姉達の背を追っていた。
彼女の機械的な性格は、今の状況では頼もしい。

やがて、スカリエッティが毎日入り浸っている部屋に辿り付いた。
警報は、この部屋の異変を指し示すものだ。
ボタンを押す時間も惜しいと、ウーノは荒々しくコンソールを操作する。
壊せば速いが、内部がどうなっているかわからない以上、軽率なことはできない。

「ドクター!」

扉が完全に開き切らない内に、ウーノは部屋に飛び込んだ。
三人がそれに続く。

「これはっ……!」

むせ返るような鉄の臭いに絶句したのは、やはりウーノだった。
トーレとチンクが同意を示すように唸り、セッテはただ無言である。
部屋は、辺り一面血の海だった。
一歩踏み出せば血の滴が跳ね、飛び散った赤が白い壁に気味の悪い装飾を施している。
地獄の入口は、これと同じ光景なのではないか。

そして、その中央に立つのは。
271名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/13(木) 23:21:16 ID:6uZuh3gJ
オワタ支援
272Black短編 ◆DZeBKLWqME :2008/11/13(木) 23:21:54 ID:vsC85Zcy
「貴様はっ!?」

トーレが鋭く声を放つ。
声には、驚愕の色が強かった。
当然である。
部屋の中央に立つそれは、昨日までは上半身しかなかったのだから。

「……王に向ける言葉としては、礼儀がなっていないな」

老人のようにしわがれた声音である。
途端、ウーノの背骨を凄まじい嫌悪感が走った。

血よりも紅い複眼。
闇よりも黒い鎧。
頭部の触角が風もないのに揺れ、鋸のような牙がかちかちと鳴る。

人でない、人であってはならない者が、人の言葉を話す。
悪夢のようにおぞましかった。
だがそれよりも、ウーノには優先すべき事柄があった。
嫌悪感を振り切って、一歩前に出る。

「ドクターは…ドクターはどうした!」

砕けた再生槽以外、設置物は何もない部屋である。
成人男性が隠れ得る場所などない。
だが、スカリエッティの姿は部屋の何処にもなかった。
張り出す声は、最悪の予想を隠すためだったろうか。

「ドクター? ああ、スカリエッティのことか」

黒に身を包んだ男は、心底から愉快そうだった。
鉤爪の生えた指を二本、自身の口に突っ込む。
すぐに引き抜かれた指は、白い布を挟んでいた。
男の手が下降する度、ずるりずるりと布が面積を増していく。
それが全体の半分以上を晒した時には、ウーノはそれが何であるか、半ば気付いていた。
だが、認めたくはない。認めるわけにはいかなかった。
四人が緊張して見守る中、とうとう布の全容が明らかとなる。

べちゃりと床に落ちたそれは、血に汚れた白衣だった。
血の池に浸されて、白い部分に新たな沁みが生まれた。
273名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/13(木) 23:22:38 ID:DKgzNOfC
ドクター南無…
274Black短編 ◆DZeBKLWqME :2008/11/13(木) 23:23:33 ID:vsC85Zcy
ウーノの膝が、力無く折れる。
男が、悪意を吐き出した。

「これしか残らなかったが、いるか?」

「――――――あああああああああっ!」

叫ぶウーノの背後で、気配が三つ、床を蹴った。

「よくもドクターを!」

「許さん!」

「……排除する」

トーレが、チンクが、セッテが、それぞれの武装を展開し、それぞれの軌道を描いて男に迫る。
三人ともが、高位の魔導師に匹敵する実力者である。
如何なる相手であろうと、打破できる筈の三人である。
彼女達ならば、スカリエッティの仇を討ってくれるだろう。
きっと。

「愚か者どもが」

男が、溜息をつくように言った次の瞬間。
妹達は消し炭になった。
悲鳴はなかった。ただ、室内であり得ない筈の風が吹く。
真っ黒になった三人は、突撃の勢いのまま男の脇を擦り抜け、壁にぶち当たって砕けた。
男には、傷一つない。
275Black短編 ◆DZeBKLWqME :2008/11/13(木) 23:25:14 ID:vsC85Zcy
「…………え?」

呆然としたウーノの呟きは、奇しくもスカリエッティの末期ものと同じだった。
ただ、言った者が生きているか死んでいるかの違いである。
スカリエッティを喰らい、妹達を殺めた男の哄笑が、部屋の中を回る。

「噛みかからなければ生きれたものを。あのような男が作ったのなら、出来も悪いか」

妹達の死を汚されても、スカリエッティを貶められても、ウーノは動かなかった。
度重なる凄惨に、魂が失せてしまったのか。
男が、ウーノの前に立つ。
黒光りする鎧に映る自身の顔は、死人のように生気が抜けていた。
雷鳴のように、声が降ってくる。

「さて、お前はどうする。儂に逆らうか、それとも服従するか―――」

床に落ちていた白衣――赤く染まり、もはや白衣とは呼べないが――がふわりと浮かび上がり、男の背に貼り付いた。
鎧に接した部分から、まるで波打つように白衣が変形していく。

出来たのは、マントだった。
赤い血の色はそのままに、新たな主の体を包み込む。
ウーノが顔を上げると、飛蝗に似た顔が迎えた。

「―――この、ゴルゴムの魔王の前に」
276名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/13(木) 23:27:46 ID:ZHCEX4yY
ゴルゴムの仕業ですねわかります
支援
277名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/13(木) 23:28:19 ID:9omkH9Gi
とんでもないやつが来た!
278Black短編 ◆DZeBKLWqME :2008/11/13(木) 23:29:55 ID:vsC85Zcy
以上、投下終了です。
ちなみに本編ではなく、光太郎の代わりに魔王が来ちゃったって設定の世界です。
風呂敷畳むの得意じゃないので。
スカとナンバーズ好きな人ごめんなさい。
279名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/13(木) 23:30:46 ID:ZHCEX4yY
投下乙。
光太郎vs魔王の再来かと思ったw
280名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/13(木) 23:31:23 ID:6uZuh3gJ
GJ!
なんというミッドチルダオワタwww
ま〜、世の中には触れてはいけないものがあるってことですよ、スカさん…
281名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/13(木) 23:33:39 ID:xuWF0smO
GJ!魔王様怖カッコいい
282名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/13(木) 23:37:44 ID:LfQbSGlq
GJ!!です。
これこそ王って感じだw
こいつが動き出したら、どうしようもないだろうなぁ。
外観を忘れてしまったのですがブラックとそう変わらない感じなのだろうか?
283名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/13(木) 23:45:28 ID:xFdhX8oH
魔王?なんか憶えてないなって思ってググッテ見たらサンデーに連載してた奴があったのか・・・
面白かったけど、原作のほうも読めばもっと面白く感じるんだろなー古本やめぐってみよっと
GJでしたー
284名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/13(木) 23:45:44 ID:b8kAVdO8
GJ
って光太郎の方はずっとほのぼのだったのに、なにこの落差……
とりあえず来たのはシャドームーンじゃなく本編ラストで倒された創世王の方か
というか、もう短編の文字はとって良いんじゃないのでしょうか?
285Black ◆DZeBKLWqME :2008/11/13(木) 23:49:14 ID:vsC85Zcy
>>282
ブラックと魔王の外観は同じ。
能力も魔王の方が豊富ですが、この作品ではブラックも使える能力だけ使ってます。

>>284
では今度からこれで。
286魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS:2008/11/13(木) 23:53:59 ID:VlGGGzay
>>285
GJ!
お疲れ様でした。
かなりハードな展開になりそうですね、がんばってください。
ところで前の方を確認しましたら、投下予定の方が居ないようでしたので、24:00より
自作SSの投下をしたいと思いますが、いかがでしょうか?
287名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/13(木) 23:57:52 ID:JGmNOaYD
>>286
支援
288名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/14(金) 00:01:05 ID:0agmqnmJ
支援
289名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/14(金) 00:02:34 ID:0agmqnmJ
>>285
お答えありがとうございます。
そして、連投と上げてしまい申し訳ございません。
290名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/14(金) 00:05:25 ID:ajOi+QQf
支援します
291魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS:2008/11/14(金) 00:05:59 ID:4lFyaQVL
―――6

カリム・グラシアの視界に最初に入って来たのは、聖王医療院の真っ白に塗装
された天井と、暖色系の光を放つ据え付け型の室内灯だった。
「騎士カリム?」
その声に顔を向けると、傍らにはシャッハ・ヌエラが居て、心配そうにこちらの
顔を覗き込んでいる。
「シャッハ…」
カリムは一言呟いた後、窓の方を振り向く。
空は夜の帳に覆われ、正面に見える大聖堂が、キャンドルライトで仄かにライト
アップされているのが見えた。
カリムは、シャッハに顔を向けて尋ねる。
「私…どれ位気を失っていたの?」
「丸一日眠られてました」
「正確には10時間42分29秒です」
シャッハの後ろに控える、同じ修道士服を着たロングのストレートヘアーに感情
の読み取れない表情をした若い女性が、空間モニターを操作しながらシャッハの
言葉を訂正する。
「と、いう訳です。騎士カリム」
シャッハが苦笑しながら両手を広げて“お手上げ”のポーズを取ると、カリムも
笑みをこぼしながら言う。
「相変わらず、ディードの体内時計は極めて正確ね」
「恐れ入ります」
ディード・ハルベルティルダは、丁寧に頭を下げた。

「失礼します」
ディードと同じ顔立だが、ショートヘアーと執事の格好で一見男女か判別の
付かない、中性的な雰囲気の女性が、病室に入って来た。
彼女は、ティーポットと二つのカップに、食べやすいように切られた、赤い色の
林檎のような実が並べられた皿の載るカートを持っている。
ディードが空間モニターを操作すると、窓側のベッドサイドから折り畳み式の
テーブルが迫り出し、同時にカリムのベッドも上半身部分が持ち上がる。
デザートの皿をテーブルに乗せ、紅茶をカップに注いだ後、頭を下げて退出しようと
する二人を、カリムは手で制した。
「オットー、ディード。あなた達も一緒にどう?」
カリムの言葉に、ディードとオットー・ハルベルティルダは顔を見合わせると、これ
以上ない見事なユニゾンでカリムに尋ねる。
「よろしいのですか?」
カリムは微笑みを浮かべながら、首を縦に振った。
292名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/14(金) 00:08:21 ID:0agmqnmJ
支援
293魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS:2008/11/14(金) 00:14:40 ID:4lFyaQVL
湯温、葉の匙加減共に完璧なオットーの紅茶と、ディードが選んだ丁度いい甘さの
デザートがその場の空気を和ませ、暫くの間は和気あいあいとした雑談が続いた。

「今朝は何故、気を失われたのですか?」
シャッハの言葉に、カリムは自分のティーカップに視線を落として考え込む。
「はっきり言って、私もよくわからない」
そこで一旦言葉を切ると、今度はシャッハの方を振り向いて言葉を続ける。
「起きた時から、目覚めているのに…まるで意識に靄がかかったかのような感じが…」
今度は天井を見上げ、目を細めて何かを思い出そうとする。
「…心が体から切り離されて浮遊しているかのような感覚…何て言ったかしら?」
「夢遊病…ですか?」
シャッハがそう言うと、カリムは頷いて話を続ける。
「そう、まさにそんな感じね。
最後に覚えてるのは、礼拝所でオルガンを弾いてる途中、聖王様のステンドグラス
を見なければ…という義務感が突然湧き上がった事。そこから先は覚えてないわ」
「そう言えば、ステンドグラスを見上げられてた時、何か口走ってられる様子が
見受けられましたが、その事は?」
ディードの問掛けに、カリムは首を横に振りかけたが、ふと何かを思い出したらしく、
顎に手を当てて言った。
「ひとつだけ、覚えている言葉があるの」
「何でしょう?」
「“トランスフォーマー”」
「トランス…フォーマー?」
シャッハがオウム返しに答えると、カリムは頷いた。
「どういう意味なのでしょうか?」
シャッハが尋ねると、カリムは首を横に振った。
「私にも分からない。オットー、ディード、あなた達は?」
二人とも首を横に振って、“自分たちも知らない”と意思表示する。
「無意識の中でそれだけ覚えてた…って事は、相当重要な言葉なのでしょうけど…」
294名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/14(金) 00:16:18 ID:0agmqnmJ
支援
295名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/14(金) 00:17:21 ID:ZOnUQFeO
メガトロン様支援
296魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS:2008/11/14(金) 00:17:40 ID:4lFyaQVL
突然、カリムの目の前で金色の輝きを放つカードの形をした物体が現れた。
「“プロフェーティン・シュリフテン”!?」
カリムは自らのレアスキル“預言者の著書”が何の予告も無く突然発言した事に、
戸惑いの表情を見せた。
「二つの月の魔力が揃っていないのに…、何故!?」
カードは二枚、三枚、四枚と次々に分裂し、やがてカリムの周囲を輪のように囲んでグルグルと回る。
しばらくして、その中からカードが一枚飛び出して、カリムの眼前で止まる。

旧い結晶と無限の欲望が交わる地
死せる王の下、聖地より彼の翼が蘇る
死者達は踊り、中つ大地の法の塔は虚しく焼け落ち
それを先駆けに数多の海を守る法の船は砕け落ちる

「これは…“JS事件”の予言!?」
発現されたカードの文を読んだシャッハが、怪訝な表情をする。
「すでに終わった筈の予言が、何故今になって―――」
シャッハの言葉を、カリム
「オットー、ディード、急ぎ着替えの用意を」
二人が頭を下げて退出する。
「騎士カリム!?」
尋常でないカリムの様子に、シャッハが戸惑った様子で尋ねる。
「この予言が、“JS事件”を指していないとするなら…」
カリムの言っている意味を理解すると、シャッハの顔から血の気が引いて行く。
「予言は、まだ終わってない…?」
カリムは頷くと、更に言葉を続ける。
「もしかしたら、始まってすらなかったのかも知れない。
いずれにしても、至急法王様に報告しなければ…」
オットーとディードが外出着を持ってやって来ると、カリムはベッドから降り
ながらシャッハに言う。
「シャッハ、あなたも立ち会い人として同行して」
「かしこまりました」
シャッハは頭を下げると、空間モニターを開いて法王直属の秘書官に、至急法王
への面会を取り次ぐよう依頼した。
297名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/14(金) 00:20:09 ID:ZOnUQFeO
映画第2弾はまだですか支援。
298名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/14(金) 00:20:19 ID:0agmqnmJ
支援、これはw
299魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS:2008/11/14(金) 00:22:36 ID:4lFyaQVL
シャーリーはコンソールに両肘を付いて、目の前でリピート再生されている、
フレンジーのクラッキング信号をじっと眺めていた。
「これを解析できる可能性のある人間と言えば…」
シャーリーはそう独り言を呟くと、モニターから顔を上げて周囲を見回す。
誰もが仕事に没頭している事を確認すると、シャーリーは空間モニターを
もう一つ開いて、コンソールを操作する。
“コピー完了”
その表示が出ると、シャーリーは次には右手首上の時計型空間モニターを操作し、
タイマーを起動させる。

1:29:59

タイマーがカウントダウンを始めると、シャーリーは急ぎ足で部屋を出ていった。
300名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/14(金) 00:23:32 ID:0agmqnmJ
支援
301魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS:2008/11/14(金) 00:26:20 ID:4lFyaQVL
私服に着替えて本局ビルを出たシャーリーは、交通渋滞著しいクラナガンで一番
最近人気の“シュランピーゲ(運び屋)”という動物や人力によるタクシー便を、
ビルから少し離れた大通りで待ち構えていた。
暫くしてシャーリーが居る側の路側帯を、黒衣のフードで身を包んだ人間を乗せた
馬がやって来る。
シャーリーは両手を大きく振ってその前へ出た。
「ねぇ、待って待って!」
馬が動きを止めると、シャーリーは騎手が何か言う間も与えず、後ろに素早く飛び
乗る。
「どちらまで?」
フードで顔も見えない騎手が、低い、歯車の軋りのような声で行き先を尋ねる。
「43区のイトゥメヌゥ通り、大急ぎで!」
騎手はそれを聞くと、馬を軽快に走らせる。
「時間はどれぐらい?」
シャーリーの質問に、騎手は前を向いたまま答える。
「大体30分ですな」
「チップは弾むわ、20分で行って!」
シャーリーはそう言って、財布から高額紙幣を取り出し、騎手に突き出す。
騎手はちょっとの間紙幣を見つめた後、それを受け取って言った。
「かしこまりました、しっかりおつかまり下さい」
その言葉と同時に、騎手は気合いの声と共にたずなを激しく振る。
それに反応して、馬はそれまでとは段違いの速さで走り始めた。
302名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/14(金) 00:26:45 ID:ZOnUQFeO
キューブ支援
303名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/14(金) 00:30:00 ID:0agmqnmJ
支援
304魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS:2008/11/14(金) 00:32:56 ID:4lFyaQVL
イトゥメヌゥ通りのある43区は、機能性を重視したモダン様式の建物が主流の
行政・経済区域とは対照的に、アラビアや東南アジア様式が混ざりあったような、
独特の民族様式の建物が密集する区域である。

その裏通りは、イスラム教のモスクと同じ形の屋根をした一軒家や、どこかの
次元世界の神々のレリーフが壁一面に彫られた高層アパートなどが、所狭しと
立ち並んでいて、陽は路面まで射し込む事はない。
蛙か何だかよく分からない生物の干物がびっしりと吊り下げられたり、得体の
知れない不気味な生き物の切身や背開きが並べられた、怪しげな露店がズラッ
と立ち並んでいる裏通りを抜け、シャーリーは更に細い路地へ入る。

路端のゴミを漁っていた羽の生えた恐竜が驚いて物陰に身を隠し、安楽椅子に
座って水煙草を味わっていた、シャーリーと同じ身長の人間に似たゴキブリ型
生物が、触角を振るわせながら興味深く見やる。
タイの仏教寺院に似た尖搭の屋根をした比較的大きな一階建ての家の前に来ると、
シャーリーはドアチャイムを3回鳴らす。
ドアを開けたのはシャーリーとほぼ同年代だが、体格は彼女の三倍はあろうかと
言う黒人男性。
シャーリーの姿を見た途端、男性は慌ててドアを閉めようとするが、シャーリーは
すかさずドアに足を挟み込んで、それを食い止めた。
「シャ、シャーリー!? 何しに来たんだ」男性はドア越しに、シャーリーを疫病神を
見るような目つきでた尋ねる。
「グレン、あなたの助けが必要になったの」
シャーリーの言葉に、グレン・ホイットマンは表情を歪ませて言った。
「勘弁してくれ。以前、そっちの頼みで交通システムにクラッキングした時、危うく
こっちの位置がバレそうになったんたぞ」
「だから、バルゴア社の超高密度チップをプレゼントしたんじゃない。あれ、幾ら
掛ったと思ってんの?」
「そういう問題じゃ――」
グレンがそこまで言いかけた時、家の奥から老婆と思われるしわがれた、しかし
ドスの効いた低い怒鳴り声が響いてきた。
「グレンー! 誰が来たんだい!?」
「友達だよ、お婆ちゃん! 心配しないで!」
それに負けじとでかい声で怒鳴り返した後、グレンは意を決したように、ドアを
開けてシャーリーを中に入れる。
「ったく、此処は俺の心の安息所なんだぞ。外界の面倒事は一切持ち込まない事に
してるのに…」
「突然お邪魔したのは悪かったわよ。でもそれだけの価値は――」
シャーリーの言葉を遮って、再び祖母の金切り声が廊下の奥から響いてきた。
「グレンー! ロダの実のジュースは何処だい!」
それに対して、グレンも負けず劣らずの大きい声で場所を教える。
「冷蔵庫の二段目の棚の奥だよ、お婆ちゃん!」
「…心の安息所?」
シャーリーの疑わしげな視線に、グレンは笑いで返した。
「ちょっとしたBGMさ」
305名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/14(金) 00:34:09 ID:ZOnUQFeO
オプティマスはマジいいお方支援
306名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/14(金) 00:39:26 ID:0agmqnmJ
破壊大帝こそが真の死せる王、ヴィヴィオとは格が違う本物の帝王が復活するのかw
支援。
307魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS:2008/11/14(金) 00:39:43 ID:4lFyaQVL
グレンはシャーリーと議論しながら、自分の部屋へと入って行く。
そこは、様々な次元世界から集められた品々が溢れ、ちょっとした博物館のような
雰囲気を呈していた。
部屋には二人の他、グレンの友達で外骨格型の体をした半漁人似の生物が、
レイジングハートの形をしたコントローラーを両手で持ち、大型の空間
モニターにそれ向けてゲームをやっている。
彼はグレンを見ると、モニターを指差して叫んだ。
「おい見ろ! “ブラスターモード”まで来たぞ!」
それを聞いた途端グレンの眼が輝き、シャーリーを放ったらかしに、巨体に
似合わぬ猛スピードで部屋を突っ切って友達の横に立つ。
「マジか!? 俺、“エクシード”が精一杯だったのに!」
「マジマジ!! もう少しでスターライトブレイカーが射てる!」」
「おおお! スゲェ!!」
エキサイトするグレン達を、シャーリーは呆れた眼で眺めながら呟いた。
「小学生か…」
そんなシャーリーの事など意にも介さず、二人は画面内のなのはが、ゆりかご内
でスターライトブレイカーを放とうするのを夢中で見入っている。
「スターライト―――」
画面内上なのはが、クアットロに照準を合わせて永唱するのに合わせて、二人も
唱和する。
「ブレイカーッ!」
なのはの凛とした声を、シャーリーの言う小学生レベルの青年二人組の野太いダミ声
が掻き消す。
画面がピンク一色に染まると、グレン達は手の平を叩き合わせて、歓声を上げた。
308名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/14(金) 00:42:46 ID:ZOnUQFeO
メガトロン様こそ真の王よ!支援
309名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/14(金) 00:43:12 ID:Ue/t5F0Q
なのはゲーム化www
支援
310魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS:2008/11/14(金) 00:46:27 ID:4lFyaQVL
余韻冷めやらぬまま、幾つも空間モニターが表情されている自分の席に座った
グレンに、シャーリーはフレンジーの信号が映る小型の空間モニターを開き
ながら、猫撫で声で言う。
「ねぇグレン? 国家機密を覗いてみたくなぁい?」
次の瞬間、グレンの眼の色がまたしても変わり、シャーリーのモニターに手が
伸びかけるが、何かを思い出したかのように手を停めた。
「いやいやいやいやいやいや、その手には引っ掛からないぞ! こないだので
懲りたからな」
グレンは誘惑を振り切るかのように目を閉じ、首を横に激しく振るが、動揺して
いるのは誰の目にも明らかだった。
「あらそう? それは残念ねぇ」
シャーリーはそう言いながら、匆体付けた動作でモニターを消して席を立とうとする。
「待った、待ってくれ!」
グレンは慌ててシャーリーの腕を掴むと、ゲームを一時停止させる。
友達が難詰するような眼でグレンを見ると、肩をすくめて申し訳なさそうに言った。
「悪いが少し席を外してくれないか?」
シャーリーも、両手を合わせて頭を下げる。
「ごめんなさいね」
友達はグレンとシャーリーを交互に見比べると、肩をすくめて言った。
「データはセーブしといてくれよ」
友達が退出すると、グレンは周囲を見回してから、シャーリーに声を潜めて尋ねる。
「機密レベルはどれぐらいだ?」
グレンの問掛けに、シャーリーも声を潜めて答えた。
「あんたに洩らしたのがバレれば、あたしは軌道拘置所送りの後、どっかの管理外
世界の無人惑星に永久追放されるレベル」
それを聞いたグレンは、一番欲しかった玩具を手に入れた子供のように、両手を
上げてはしゃぎ回った。
311名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/14(金) 00:47:12 ID:ZOnUQFeO
機械生命体支援
312魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS:2008/11/14(金) 00:53:41 ID:4lFyaQVL
本日はここまでになります。
クラナガン市街でも、地区ごとに文化のことなるエリアがあるのではないか…
と考えて、オリエンタル様式の地域を設定しました。
次はグレンと管理局員のドタバタ劇を入れたいと思います。
お読みいただいてありがとうございました。

今回のオリキャラの元ネタ。
グレンの友達:『シンジェノア』シンジェノア
シャーリーを送ったタクシー:『ロード・オブ・ザ・リング』ナズグル(指輪の幽鬼)
水煙草を吸うゴキブリ型生物:『ミミック』ミミック
313名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/14(金) 00:55:49 ID:ZOnUQFeO
GJ!
この預言はメガトロン様復活の狼煙!
314名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/14(金) 00:57:06 ID:0agmqnmJ
GJ!!です。
もう、メガトロン様がいつ復活するか楽しみすぎるw
力こそ全てを体現する破壊大帝に敬礼w
2:00に投下します。

「未明の早朝、全マスコミに向けてジョーカーと名乗る男からの声明が発表されました。まずはその一部をご覧ください」

「アァハハハハハ!おはよう、日本国民の皆様、私、ジョーカーは…はるばる遠いゴッサムからやってきた。
 自分たちが他人事ばかりと、私とバットマンの戦いを娯楽大衆の見世物のようにして笑っていた…。
 私はこれが許せなかった。だから少しだけお仕置きをしたかったのだ。
 だが、それももうやめようとおもう。日本政府の隠し玉の力を見せてもらい、私も心底疲れてしまった。
 人質を順に解放し、私は祖国に帰ることにする」

「このジョーカーの発言の真意を警視庁、首相官邸は『人質が解放されていない以上は、何も始まっては居ない』とコメントするにとどまっております。
 ジョーカーの声明からは警視庁の特殊部隊による介入があったかもしれないという憶測がでており、
 ジョーカーの今後の行動が警察の動きを決めていくものだと思われます」

「ブルース氏は、今回のジョーカーの発言については広報を落として慎重に、様子を見ていたいとコメントするにとどまっております」

「人質の解放の時刻等については明言が避けられていますが、
 近いうちに、何らかのアクションがあるのではないかと、警視庁では見ているようです」
第3話 歩み、止まるとき…。


 警視庁、マスコミに出された声明後…3時間後。
時刻16時20分。
場所、井の頭公園…。

 ワゴン車から、ゴミのように投げ出される1人の男。
 それを呆然と見つめているホームレス。
 ワゴン車から下ろされた男は、口にガムテープを張られており、意識を失っているようだった。ワゴンはすぐに出て行く。
 下ろされた男はスーツを着たままの状態だった。

 時刻17時00分

 近隣警察に、倒れている男の人を確認したという連絡が入り交番警察が確認、拉致されていた政府の金融副大臣であることを確認。
 至急、救急車から搬送されることになる。
 金融副大臣は、怪我もとくにないようである。
 この間に、ゴッサムシティのジェームズ・ゴードン市警本部長から、解放された人質にたいして徹底的な危険物等の確認をという要請が入るが、
 解放による一時期の興奮状態によるものと、情報の錯乱により、その警告は届かない。

時刻17時30分

 救急車で搬送される金融副大臣の容態を含めた緊急特別番組が編成され、報道される。
 ジョーカーの人質解放ということに、マスコミは一斉に報道を開始し、事件の経緯や、
 今後も人質が解放されていくのではないかという、肯定的意見が占める。

 高町なのはは、自宅にてフェイト・T・ハラオウンのガス摂取による容態を見ながら、テレビを眺めていた。
 あのジョーカーという人間が……どこか釈然としないが、
 それでも自分たちの行った行動が一定の成果をあげたのではないかということを少し嬉しく感じてはいた。

時刻17時40分

 救急車が都内の大学病院に到着…。
 報道陣が集まる中、救急車からでてくる副大臣の姿。
 そこに黒い影が現れた。
 カメラが映し出したのは、黒きマスクの存在…バットマンの姿。
 バットマンは、移動ベットに寝かされている副大臣の服をめくり、そこに大きな手術跡があるのを見つける。
 バットマンはその長年の勘…なのはやフェイトとは違う、
 その強い心と供に…知り尽くしたジョーカーという存在から、その移動ベットを蹴り、関係者から離す。
 警備がバットマンを拘束しようとするが、そこで起きた光景に誰もが目を奪われた。

 爆発……。

 そう、それは人間の身体に設置された爆弾である。
 拉致した人間の内部に爆弾を設置し、解放、人が集まってきたところで爆発させる。
 効果的かつ、恐怖、そして自分自身はまったくリスクがないというおぞましい人間爆弾。
 その光景は、日本中が注目する中で最悪の形で起きてしまった。

『アァハハハハハハ〜〜!!私は、約束どおり人質を解放したぞ?これがお望みだろう?
 日本国民の諸君!!これからも、1人ずつ解放していってやる。
 そして蝙蝠男、久しぶりだな〜?お前も含め、この俺に戦いを挑んだものすべてを屈服させてやる。
 アァ〜ハハハハハハハハ!!!』

 ジョーカーの声明は、憎悪を通り越して恐怖を植えつけた。
 警視庁は声明を避け、今後の捜査方針を大きく考え直す必要が出てきた。

 なのはは、言葉を失った。
 いまだかつて、このような敵とは戦ったことがない。
 これが…私たちの今の敵。空を飛ぶことも、魔法という力を持つことも出来ない相手だというのに…
 その存在は私たちを凌駕しようとしている。
 これがあのバットマンという人が言っていた私たちではジョーカーには勝てないという意味?

『…君たちではジョーカーには勝てない』

 そんなことはない。
 確かに、あの狂気は凄まじいものがあるけれど…私たちには私たちのやり方がある。
 人を救うこと、誰だって話しをすればわかるはずだから。

 都内の警察官の増員を行い、すぐに解放された人質を見つけ出せるようにする一方で爆発物処理班を待機させ、
 すぐに処理できるように準備を進める。
 だが、広範囲をまわせる余裕も無く、テレビでこの様子をみた人たちは、怯えと恐怖を抱きながら生活を送ることになる。

「!?」

 なのはの、パソコンの画面にヴィヴィオの携帯の電波が再び受信される。
 ヴィヴィオや、フェイトの携帯は特殊であり、その場所がすぐ特定できるよう、管理局の技術を用いている。
 再びこれを受信した…。まさか!?ヴィヴィオが…。
なのはは、立ち上がり、レイジングハートを持つ。
今度こそ…止めないと。

「なのは…私も」
「フェイトちゃんは…待っていて」
「だけど!」

 なのはは、頭を振って起き上がろうとするフェイトの身体を優しく抱きしめ

「…今度は私の番。絶対にヴィヴィオをつれてくるから」
「うん……気をつけて、なのは。あの人は…」
「わかってる」

 夜空に飛び出すなのは。
 そう、わかっている…あの人は……私たちの考えが通用できる人じゃない。
 腕時計型のレーダーでヴィヴィオの位置を探るなのは。
 東京都内のネオンの光の中…この中で再び、被害者が解き放たれ、爆発するようなことがあれば、パニックになる。
 レーダーの示す場所は、旧テレビ局跡地。
 ここは…解体工事が行われるといわれながらも、その莫大な費用の前に、なかなか取り壊しが行われていない場所である。
 なのはは、警戒を緩めずに、レーダーの示す場所を目指す。
 暗闇の中で、なのははレイジングハートを握り、止まる。
 銃撃…、ピエロ仮面のものたちが機関銃を撃ちこんで来る。
 なのはは、レイジングハートを床に差して、床を破壊する。
 バランスの崩れたピエロ仮面たちはそのまま落ちていく。
 なのはは、やはりここにジョーカーがいるのだと思い、先に進む。

「…なぜ、来た?」

 振り返った、なのはは、レイジングハートを向けかまえる。
 そこに立つ黒きマスク…バットマンに向けて。
 バットマンは、動揺する様子もせず、なのはを見つめる。

「ジョーカーを止めるのは私だけだ。邪魔はするな」

 そういってバットマンは、なのはの、隣を通り過ぎようとする。

「私の仲間を助け出すためまでは、諦めない」

 なのは、通り過ぎようとしたバットマンを見ずに、そう告げる。

「…お前の力、能力…どれをとってもジョーカーには敵わないだろう。だが、お前の仲間はジョーカーに負けた。なぜだとおもう」
「……」
 なのはは、答えられない。
 ここにくるまで自問自答してきた。
 あの場所で言われた言葉…バットマンにはあって私にはないもの。
 それは一体なにかと…。
「…それは、お前にある心の弱さだ」
「!」
 なのはは、バットマンを見る。
 バットマンは歩き続けながらはっきりと答えていた。
「アハハハハハハハ、蝙蝠男。はるばる異国の地にようこそ。俺のショーは気に入ってくれたかな?」
 
 正面の扉が開き、そこにたつ、ジョーカー。
 にやけた表情でジョーカーは私たちを見つめる。

「…御託はいい。来るならこい」

 バットマンは冷静に答える中で、なのはには、そんな余裕が無かった。
 焦り…、ヴィヴィオがいつ、何時にあの人間爆弾にさせられるかわからないからだ。そのときジョーカーの後ろにいる人質たちの中にヴィヴィオの姿がはっきりと見えた。

「ヴィヴィオ!!」

 なのはは、コンクリートを蹴り、その距離を一気に縮める。
 レイジングハートを持ち、そこにいるジョーカーに振り下ろした。
 相手を気絶させるくらいなら。だが、そのレイジングハートはジョーカーの身体にあたったにもかかわらず、すり抜けてしまう。
 なのはは、息を呑み、人質達に手をやるが、それらもすり抜けてしまう。
 これはグラフィックス映像…。

「アハハハハハハハハ、なるほどお嬢さんの狙いがよくわかったよ。
 なんで俺をつけ狙うのかわからなかったからな。アハハハハハハハハ」

 ジョーカーの声だけが響きわたる。
 なのはは、自分がとんでもない過ちを犯したことに今になって気がつく。
 そう、これは罠だったのだ。
 私たちを呼び出して、そして…私たちが誰を助けだしたいかという…罠。

「それでは、お嬢さん、バットマン…ごきげんよう」

 バットマンはすぐに何が起こるか気がついて、呆然としているなのはを抱え、建物から飛び降りる。
 それと同時に、あちこちの柱が爆発し、建物が崩れていく。
 噴煙の中、なのはを、地上に下ろすバットマン。
 なのはは、地面にたちながらも、なおも、ふらついた足取りでいた。
 自分のせいでヴィヴィオを危険な目に合わす事となったことへの絶望…。

「…どんな敵にも、話せば通じる…そう思っているんじゃないか」
 うつろな顔でバットマンを見る、なのは。
「正義の味方では、そこまでが限界だな」
「…あなたは違うの?あなたは…正義の味方じゃないの?」
 バットマンは、なのはに、顔を向ける。

「違う。私は…悪人にとっての『恐怖』だ」

「きょう…ふ?」
「すべての人間に優しい、正義の味方では…悪人はのさばり続ける。私はそんな悪人の恐怖として存在している」
 すべての人間に、なのは達のやり方は通じない…。

「悪に憎まれることを…恐れるな。人間には様々な面がある。
 友人、仲間、社会…それらに向ける顔が全て同じではないのと同様に、これもまた違う1つの面。
 私という存在を、ある人はヒーローと唱え、ある人は犯罪者と罵る。
 それでいい…それが私、バットマンという存在だ」

 そういうと、バットマンは噴煙の中、姿を消す。

「…私は」

 なのはは、答えが出ない状態で…ただ、立ち尽くすことしか出来なかった。
以上です。誤字や抜けている部分、確認していますがある可能性があります。
そこはご容赦ください。

感想、ご指摘等ありがとうございます。
322名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/14(金) 02:22:18 ID:jEVvSos1
投下乙です
なのははバットマンから何を学んでいくのか…
323名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/14(金) 02:26:00 ID:3QjiOJyQ
そっか、バットマンの根本には「悪人に両親を殺された怒り」があったはずだから
別に正義の味方でもなんでもないんだよなぁ
シンボルに蝙蝠を選んだのだってたしか幼少期の自分の恐怖が元だし

ていうかバットマンの敵ってどれも基本的に行くとこまで言っちゃったもう引き返すことの出来ないやつだよなぁ

ともかくGJです
324名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/14(金) 02:26:52 ID:dIpeDi1F
乙。
警視庁相手じゃジョーカーには対応できません><

なんか教官時代のなのはにしては行動も意思もぬるい気がする
325名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/14(金) 04:19:50 ID:lYoaVBP9
パニッシャーもいいぞ!
326名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/14(金) 06:50:17 ID:dj4qp/E3
ハイペースの投下乙です。
魔導師もデバイスも無い魔力は感知できないだろうし、手品に近い物理的、視覚的なトリックでジョーカーが遅れを取る訳はないでしょうし、やはり苦戦は必至でしたね。
327名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/14(金) 07:14:47 ID:Ue/t5F0Q
GJ!やべぇバットマンかっけぇ!
なのは達にはいない存在だな
328名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/14(金) 09:56:42 ID:rUMnYIP7
まさにダークヒーロー!かっこいい
GJ!
329名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/14(金) 11:49:29 ID:0agmqnmJ
GJ!!です。
なのはたちは、こうゆう策を使う相手は初めてだろうか?スカ博士とクアットロなんか相手にならないほどの、
邪悪さと狡猾さを持つジョーカーにどう立ち向かうのか楽しみです。
ジョーカーとかバットマンに出てくる奴は、話を聞いた上でそれを踏みにじる野郎だからなぁ。
通常の犯罪者とは、行動原理も違いすぎるし。利益の為じゃないって恐ろしすぎる。
330名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/14(金) 13:21:30 ID:h0eZCj+x
バットマンはビギンズしか見たこと無いけど、これは続き楽しみだ。
GJです。
331名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/14(金) 13:49:10 ID:BJ5pWs9G
GJ!
さすがはジョーカー!バットマン初期からいる名物ヴィランだぜ!
そこに憧れるぅ!
そしてさすがバットマン!かっこいい!あるスーパーマンとのクロスオーバー作品じゃ、
55歳にして持てる力と作戦を駆使し、スーパーマンをあわや倒すところまで追いつめただけのことはある。
332名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/14(金) 15:09:54 ID:Ay2+abav
GJ
バットマンはあんま知らないけどおもしろく読ませていただきました
今度バットマン借りて見てみようかな
こういうタイプはリリカル世界の連中は苦手そうだな
>>323
別に両親殺された怒りがあっても正義の味方でもいいんじゃないか?
昭和ライダーの大半もそんな感じだし
まあバットマン詳しくないからあんま言えないけど
333名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/14(金) 15:41:35 ID:ydnKsiJa
バットマンSS、まとめになくね?
334一尉:2008/11/14(金) 15:42:12 ID:zfsutmtO
さずかバットマン支援。
335名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/14(金) 15:53:41 ID:fcCEvmId
>>333
お前かやりたい奴が更新すれば良いだけ

いつも更新してた人がしばらく更新出来なくなるみたいだから、一部の作品は誰かが動かない限り放置みたいな扱いになる
「待ってれば勝手にまとめ更新されるだろう」という意識はどうにかした方が良いな。
336名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/14(金) 18:21:47 ID:RI5G/e9X
>>332
バットマンは正義を尊びながらもその正義に根深い無力感を抱いている
彼の父親がスーパーヒーローではないにせよ
心優しく全ての人に手を差し伸べようとする「正義の味方」だったことが深く関係してる
337名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/14(金) 18:52:49 ID:JEqiuUQ9
ジョーカー相手じゃなのはは、勝負にならないな
338名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/14(金) 19:04:17 ID:h0eZCj+x
確かに。なのは戦いをしない的には弱そうだ。
339名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/14(金) 19:59:23 ID:rA5Q+jHK
GJ!
バットマンはあくまで常人として築いた力を駆使して戦う人だから、なのはとは正反対だ。
340名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/14(金) 20:22:42 ID:vu6apI4A
面白いんだが文法がおかしい所や誤字が多いのが残念だな。
341名無しさん@お腹いっぱい:2008/11/14(金) 21:47:39 ID:2zYTcEbk
●国籍法改正案とは?
 D N A 鑑 定 な し に、男親が「俺の子です」と認知さえすれば、
 外国人の子供が誰でも日本国籍を取れてしまうようになるザル法案。しかも、罰則は超緩い。

●成立すると起こりうる問題
 DNA鑑定不要→偽装認知が簡単 / 母親と結婚していない人でも認知可能→1人の日本人男性で何百人もの認知が可能
 その結果…
 ・人身売買・児童買春など悪質なビジネスが横行
 ・偽装で取得した子供の日本国籍を盾に続々と外国人親族が日本に大挙
  →外国人スラム街が誕生し、治安が悪化。いずれ日本のことを外国人に決定されるようになる。
 ・巨額の血税が、偽装認知で生活保護の権利を得た外国人親族のために公然と使われる  など多数
この様な日本にしないためにもこの事を知らない人たちに知らせてください。
ご協力をお願いします。
342名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/14(金) 22:08:56 ID:U9fu78Dp
>>341
自重すべき
343名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/14(金) 22:24:29 ID:ZOr11jdT
>>342
こういうレス他のスレでも結構あったから荒らしっぽいね。
反応しないで無視してようよ。
344名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/14(金) 23:03:21 ID:PxBNK92W
>>342
ここは無視して投下を待ちましょうよ
345名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/14(金) 23:22:08 ID:U9fu78Dp
>>343
>>344
過剰に反応してしまい申し訳ない…
346名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/15(土) 01:03:39 ID:LwTj37SR
GJ!
ジョーカーめ『ザンボット3』を見やがったなw
投下します

第4話 光と闇

 人質が乗せられているトラックの扉が開かれる。
差し込む光の中で、ピエロ仮面が銃を向け、立っていた。
「……お前、でろ」
「た、助かった……」
 男は嬉しそうに、振り向きもせず、自分が助かることを喜びながら飛び出していく。
 男はピエロ仮面にいわれた指示通り服を着替えさせられる。
 男はよくわからないようだが、それでも助かるならば…命があればいい。
 そんな男を笑いながら見ているジョーカー。男にはその笑いの意味がわからない。

 男は腕を背中に回されて縄で縛られたまま、目隠しをされる。
 さらに、口にはガムテープを貼られた状態で、ピエロに連れられていく。
 ピエロは、男を擬装用のゴミ収集車に乗せて、連れて行った。
 揺れる車の中で、男は自分がどこに連れて行かれるのか不安になるが、解放されるというジョーカーの言葉を信じるしかない。
 だいたい、もし嘘であり、殺すというのなら、その意味がない。
 自分には人質としての価値があるからだ。きっと日本政府の交渉が上手く言ったに違いない。

 車が止まり、路上に下ろされる男。
 ピエロに目隠しを解かれ、男を置いて路上から去っていくゴミ収集車。
 男はそれを横目で見ながら、腕は縄で縛られた状態でよろめきながら、路上に出る。正面から車がやってくる。
 男は身体をむちゃくちゃに動かして、自分が人質であることをアピールする。そう、俺は犠牲者だといわんばかりに。
 すると、男は目の色を変えてアクセルを踏み込む。男はなぜ?という顔をしながら、車に撥ね飛ばされた。
 男の身体はコンクリートに叩きつけられ…動かなくなった。

『…悲劇が起きました。人質の金融商社の取締役が、幕張駅前にて車に跳ねられ死亡しました。
 運転手は、人間爆弾と思い、引いてしまったと告げています。引かれた男性からは、爆弾は見つかっておらず…』

『警察は、人質が解放された場合、慎重な対応を求めるようしていますが、都内に住む人の話を聞いたところ、今回の出来事について怖い、逃げてしまう。
 同じことをしてしまうかもしれない。という意見が大半を占めており、今後の人質解放では同じようなことが起きる可能性があると予想されています』

『野党議員からは、政府に対して人質の解放のためには、
 国民の不安を払拭するのが優先されるべきだと意見を述べ、早朝、夜の外出禁止令をだすよう提言しました。
 与野党からもこれについては、賛否両論であり、今後の国会審議が待たれることになります』
 右往左往する警視庁、日本政府の対応は、国民さえも動揺させる。
 動揺は混乱をよび、混乱は恐怖を生み出す。
 疑心暗鬼…誰も信用することが出来なくなる状態。

「アハハハハハハ、楽しいな。あの困った顔、何も出来ず、手も足もでずに見守ることしか出来ないものの顔。
 最高だぁ!フハハハハハハ。そうだ、そう…もっと迷え、疑え…そうすれば、この国は、第二のゴッサムになるぞ。
 ハハハハハ……お前たちも口が裂けるほど笑わしてやる」

 ジョーカーの前にはイスに縄で巻きつけられたヴィヴィオの姿があった。
 ヴィヴィオは疲労し、息を漏らし、目には涙を浮かべている。
 眠気が襲うが…そうなると。
 ジョーカーは、スイッチを押す。
 するとイスが振動してヴィヴィオの足の裏やわき腹などをくすぐり始める。
 幼いヴィヴィオの皮膚は敏感である。くすぐったさに笑うしかない。

「そうそう、子供は笑わなくては元気になれないぞ?」

 ヴィヴィオに対する拷問は、先ほどから永遠続いている。
 慣れないように、休みをいれながら、眠りそうになったらこれで強制的に目覚めさせる。
 ジョーカーは、ヴィヴィオからなのはやフェイトの正体を聞き出そうとしていた。
 だが、ヴィヴィオはそれを拒んだ。ジョーカーにとっては、この拷問もショーの1つ。
 幼い子供がどれだけ耐えられるか、見ものだ。
 高らかに笑うヴィヴィオを見物しながら、ジョーカーは食事を取る。
 ヴィヴィオの目から流れ落ちる涙…。そこにあるのは、なのはママとフェイトママの想いだけ。


 日本支社…ブルース・ウェイン滞在先の一室において、ブルースはパソコンを開いていた。
 そこに現れるのはブルースの理解者であり有能な執事アルフレッド。

『…ブルース様、ここ最近の日本首都圏内におけるジョーカーの出現地域を追ってみました』
 データにだされる出現地域…そして人質が解放された場所をあてはめる。
 それらをみながら、ブルースはイスに座りながら息をつく。
『さすがに疲れましたか?』
「…ジョーカーもよくやる。日本政府の、治安の良さを逆に利用している。
 日本警察では、この事態を収拾は出来ないだろう」

 日本政府は治安が良いためもあり、このような大規模な行動に対しての免疫力がない。
 結果、事態を甘く見たために…それはジョーカーの思い通りの混乱から恐怖という連鎖を作り出す。

『例の二人組の女の子でもですか?』
 ブルースは立ち上がり、昼間の東京を全面に見渡すことができる窓の前に立つ。
「彼女達は僕とは違う。僕の真似をすればいいというものでもないさ。答えは彼女達が見つけるべきものだ」
 彼女達は若く、それにその目には強いものがあった。
 あとはそれに気がつけるかどうかである。
 心配は必要ない…きっと彼女達は見つけ出せるだろう。
 彼女達にはまだ、あるだろう。自分にはないものが…。
 そこで窓を見つめていたブルースは、あることに気がついた。
 夜と昼…これらで違うもの。ブルースはイスにつくと、あるデータを取り出す。それは電力消費。
 あれだけの人間を移送して爆弾の設置を施したりしているのだ。
 相当の電力が必要となるはずだ。そうなると…電力消費の高い場所が、ジョーカーの巣となる可能性が高い。
『しかし、日本は、どこも夜になると電力消費は世界でトップクラスの利用が施されています。それらでは、わかりづらいのでは?』
 ブルースは首都圏内の地図を見ながら、あるところを見つける。
 そこは電力消費量が他と比べても随一である。
「なるほど…、ここか」
『見つけましたか?』
「あぁ、夢の国だ」
 ブルースの視線の先…そこにあるのは、電力消費が最も激しい場所である日本の首都圏で最も巨大なテーマパークである。

 満月の出る夜…
 既に、パレードは終了し、テーマパーク自体の営業は終了している。
 それまでの明るい場所とは裏腹に、静まり返る園内。
 ゆっくりとその場所を歩く影…。電力の制御室があるのは、園内の中央にある城を模した建物。
 ここから園内全体に電力を送っている。
 おそらく、ここの電力を使い、爆弾などの製造を行っているのだろう。
 これ以上の被害は防がなければならない。本来ならゴッサムだけの出来事…それを世界中に広めるわけには行かない。
 再び自分のようなものをつくらせないためにも…。

 突然、照明がつく。
 遊園地のすべての照明がつき、今まで動いていなかったアトラクションの乗り物が一斉に動きだした。
 そして軽快な音も鳴り出しはじめる。
 夜の中、光に照らされる黒きマスク…バットマン。
そのバットマンに対して、聞きなれたあの笑い声が聞こえてくる。

「アハハハハハハハハ、蝙蝠男は、光が苦手かな?」

351名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/15(土) 02:07:45 ID:lrcrkcCS
永遠じゃなくて延々とだな。支援
 目の前のメリーゴーランドから降り立ったジョーカーはポテトチップスを食べながら、バットマンに向かって歩いてくる。
「不法滞在、誘拐、殺人……それらを含め、お前を捕まえる」
「フフ…アハハハハハハハ。かまわんぞ、どうせすぐに逃げ出す。よく聞け。My Friend 」
 ジョーカーは、路上においてあるベンチに座り、バットマンを見る。

「俺は、人間の悪の部分の代弁者に過ぎない。人間は誰しも持っているもの。
 憎悪、疑心、それらすべてを俺は解き放っているだけに過ぎない。
 それは世界共通だ。お前も見ただろう?あの哀れな男を…。
 あれは俺のせいじゃない。あれはお前が守ろうとしているものたちのせいだ。お前が守ろうとしているものが、解き放った人質を殺した。
 何にも知らない、解放されたと思った男をひき殺した。
 フフハハハハハハ…ハ。そんな奴らを守るほどの価値はあるのか?」

「……全ての人間がお前の言う人間ではない」
 ジョーカーは拍手しながら、ポテトチップスを食べる。
「素晴らしい、素晴らしい〜なんとも模範的な回答だ」
 パリパリとポテトチップスの砕ける音が響く。

「お前は、全ての人間がそうではないという。
 しかし、そういった危険性はすべての人間に平等であり、結果…危険性を伴う人間に対して、そうではない人間は巻き込まれる被害者でしかない。
 たった一人で、それらを止めることなどできないだろう?
 犯罪者は俺が捕まろうがゴキブリのように這い出る。
 いや、犯罪者じゃないな。お前が言う『悪』という存在だ。
 お前のような人間が頑張れば、頑張るほど悪はでてくるんだ。
 永遠に終わることのない、ワルツのように…フフ、フハハハハハハ。
 お前のやっている行動は、無意味なのさ」

「少なくとも、お前が今、捕まえている人間の命は救える。それだけで十分だ」
「いいだろう。やってみるがいいさ…少なくとも、人質は俺の手を離れぞ」
「なに!?」
 ジョーカーはポテトチップスの袋を、顔を上げて残さず食べ終えると立ち上がる。

「人質の半分は人間爆弾、もう半分は普通の人間。
 フハハハハハハ…時間はあまりないぞ?その前に勝手に殺されるかもしれないが…クックック、アハハハハハハハハ!」

 ジョーカーは笑いながら、バットマンにナイフを握り飛び掛る。
 バットマンはそんなジョーカーの攻撃にスーツの襟首を掴み、投げ飛ばす。
 ジョーカーは地面にたたきつけながら、腰をさすり、立ち上がろうとする。
 バットマンはジョーカーの背後から捕まえようとするが、
 ジョーカーは向かってきたバットマンの片足を、足で挟み込みバランスを崩して倒す。
 その上に乗りかかり、ナイフを握り、バットマンの顔に向けて刺そうと力をこめる。
 その手をバットマンは、両手で掴んで、防ごうとする。

「あきらめろ!蝙蝠男、お前のやろうとしていることは無意味なんだ!
 これからはこのジョーカー様がお前の代わりに世の中を見守ってやる」
「っ!」
 バットマンは、そのジョーカーのナイフを持つ腕を持ち上げていく。
「往生際が悪い奴だ!!さっさと引退しろ!」
 足を曲げ、ジョーカーの胴体を蹴り上げて、体を離すバットマン。
 ジョーカーは、蹴られた、胴体をさする。
「フフ……フハハハハハハ」
 立ち上がったジョーカーの笑い声はそのテーマパーク中に響きわたる。
 高町なのはは、窓の外を眺めていた。

 自分のせいで…ヴィヴィオを危険に晒してしまった…

 夜の町並みが見える。このどこかにヴィヴィオが…いる。
 自分がしてきたとの否定。
 今までやってきたこと…フェイトちゃんと戦ったときも、はやてちゃんと戦ったときもそうだった。
 戦うことだけが全てじゃない。
 戦うその先にあるもの……私はそこでフェイトちゃんや、はやてちゃんと出会えた。
 それが……あの人には通じない。その先が暗闇で見えない。
 うぅん、その先がない。

 そんな相手に、どうやって勝てるのだろうか…。
 バットマンが言った自分の面はひとつだけじゃないという言葉。
 私の今までなんだったのだろうか…。友達、家族、社会……。
 私にとって大切な人たち。それらは…私のことをどう見ていてくれたのか。

「なのは」
 お姉ちゃん、お兄ちゃん、お父さん、お母さん…
「なのは」「なのはちゃん」
 フェイトちゃん…はやてちゃん。
「なのはさん」
 スバル、ティアナ、キャロ、エリオ……

「なのはママ」
 ヴィヴィオ…

 私にとって、かけがえのない大切な人たち…。

 それは、私が私でいたから…、誰でもない、私という存在でいたから…みんなとこうして出会えた。
 私の捕らえ方は人それぞれ…だけど、私のやることは、変わらない。
 きっと変えてしまったら、それは私ではなくなってしまうから。

「……フェイトちゃん、私を叩いて」
「え?」
「……お願い、今のままじゃ、私は私が許せないから」
「……わかった。だけど、その代わり、私も…お願い…なのは」

 乾いた音とともに赤くなる頬。

「…今まで私たちはこうしてやってきた」
「気持ちも何も変わらず…ずっと」

 だから私たちの気持ちも、やり方も変わらない。
 私たちの為し得て来た、作り上げてきたものは…決して間違ってはいないから。
 それが甘いと言われても良い。蜃気楼のように儚いものと思われても良い。結果はここにある。
 たくさんの大切な仲間がいる。頼ってくれる人がいる…強い絆を持つ人たちがいる。
 私たちに、足りなかったのは…バットマンのいう強い心。
 そしてそれは、バットマンのようになることじゃない。
 強い心…それは、自分たちの積み上げてきたものを信じること。  
 ジョーカーの放つ狂気、そしてヴィヴィオを助け出すためという焦りが…恐れにかわり、
 私たちの本来揺ぎ無いものを崩し、それを見失わせていた。
 だけど今の私たちにはそれがある。
 はっきりと…『自信』を持つことができる。

「いくよ、フェイトちゃん!」
「うん……今度こそ、負けない」


 今は前だけ見ればいい

 信じることを信じれば良い

 愛も絶望も羽になり、不死なる翼へと

 …蘇る私たちの心
以上です。誤字や抜けている部分、確認していますがある可能性があります。
そこはご容赦ください。

たくさんの感想、gj、支援ありがとうございます。
これもすべてキャラクターの素晴らしさにあると思います。
本当にありがとうございます。
356名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/15(土) 02:23:23 ID:Mdu1pB6e
そんなキャラクターのすばらしさをしっかりと表現してみせるあなたにGJ
357トランスマスター:2008/11/15(土) 02:31:48 ID:uirC6zKV
犯罪王とも、怪物とも呼ばれるジョーカーになのは達は
どう立ち向かうのか? それが気になりますね。
後、私はジョーカーの恐ろしさを知る人間の一人です。
358名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/15(土) 07:17:39 ID:Z3OkI+13
映画ダークナイトのレビューページみたいなトコに、ジョーカーの超絶的な悪党ぶりを記した文を発見した。
集団で銀行を襲った後、他のメンバーを皆殺し。更に盗んだ札束の山にキャンプファイヤーの如く火をつけるのだとか。
359名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/15(土) 07:32:23 ID:e+4zyc0t
>ヴィヴィオに対する拷問は、先ほどから永遠続いている。
「永遠」じゃねえ「延々」だ
その他「てにをは」レベルで根本的に日本語としておかしい所多数
一々指摘してたらキリが無いほど大量だ

いわゆる「ふいんき(なぜか変換ry」を素でやらかしてる
もっと根本的に確かめないと恥晒し続ける事になるぞ
360名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/15(土) 08:05:18 ID:g9/x2Q2A
>>355
俺もGJです。
361名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/15(土) 11:28:23 ID:8zg2ZyqQ
ジョーカーは格好いいんだよなあ
ヒーローから何度も大切な人奪ってるんだもんなあ
法律で裁くことが出来ないから不滅ってのも不条理で
362名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/15(土) 12:24:44 ID:WJ2BNjzM
誤字とか直してから投下しろよ
多すぎる
363名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/15(土) 12:39:43 ID:WJ2BNjzM
内容以前の問題だな
日本語が不自由すぎる
文章もまともに書けないようなのがSS投下すんじゃねえ
364×DOD ◆murBO5fUVo :2008/11/15(土) 12:57:16 ID:7Z5JbM3g
ご報告。
個人の保管庫ができましたので、作品の方はそちらにも掲載させていただきます。
議論スレの結論は「確…定…?」な状況ですが、少なくとも個人保管庫なら問題ないとの判断です。

URLはWikiの中に置いておきます。
365名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/15(土) 13:53:01 ID:XFBuliAD
>>362
>>363
2回も書かんでいい
366一尉:2008/11/15(土) 14:02:12 ID:3ygxh/ok
バットマン支援。
367名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/15(土) 15:15:08 ID:EaqDNSA5
予約がないようなので15:40頃から投下します
ホーリーブラウニーの一発ネタです
368367:2008/11/15(土) 15:40:27 ID:EaqDNSA5
時間になったので投下開始します


彼らはあらゆる時 あらゆる場所に―――
ときには老いた職人の為に靴を作り ときには継母に狙われた姫君を救い またあるときには1945年のニューメキシコでキノコ雲を巻き上げさせる―――
語り 創り 惑わし 導く―――
彼らは人と関わる 人知れず―――
だが人は彼らを伝える―――
知恵ある者の言葉を借り『妖精』と呼んで―――



ホーリ−●ラウニー  
369367:2008/11/15(土) 15:44:03 ID:EaqDNSA5
新暦XX年   某管理世界

暗く長い洞窟を赤と青の光に包まれた妖精が飛ぶ。
二人は手のひらに載ってしまうような小人を模った人形の体をしていた。

「地球じゃなくて、管理世界に飛ばされるなんて珍しいわね。 変に発達してるからやりづらいってのに」
「だいじょーぶ、今回も地味な仕事だからー」
「あんたの言葉は全然信用ならないのよ。 例によってメルヘンなんて欠片も無い仕事なんでしょ?」
「まだメルヘンを期待してるのー? ボクらにそういう仕事回ってくるはずないじゃん」
「誰のせいよ! いいから仕事するわよ! で、今回は何をするの!?」

多くの仕事をこなしてきた赤の妖精―――ピオラは不本意ながら腐れ縁になりつつある相棒のフィオに仕事の内容を確認する。

「ちょっと待って、もうすぐだから」

そうして二人がたどり着くのは洞窟の最奥にある大きく機械的な扉。
そこをくぐった先にあったのは無数に並ぶ2メートル程の大きさのカプセル。
透明な液体に満たされたそれらの中で多くの老若男女が眠っていた。もっともまともな人間の形をしているのは少なかったのだが。
あまりの光景に愕然となりながらもピオラは問いかける。

「何……なの、これ?」
「何って、大規模生体実験施設〜。今回のお仕事はここで研究を続ける若き天才に成功を与えてあげることさー」
「やっぱりろくな仕事じゃないじゃない! で、具体的には!?」

襟首を掴みあげるピオラにフィオが示したのはTとナンバリングされた一つのカプセル、その中に浮かぶ妙齢の美しい女性。
よく見れば無数のカプセルの中でナンバリングされたものはたった12個。
それだけその中で眠る存在が特別なものだと知れた。
370367:2008/11/15(土) 15:46:03 ID:EaqDNSA5

「この女性型生体サイボーグを完成させればいいのさー。ぶっちゃけ9割がた完成してて僕らが手を出さなくても半年もあれば完成するんだけどね」
「だったら私たち来なくても良かったんじゃない?」

フィオは首を振る。
カプセルの脇のデスクに突っ伏して眠る白衣を着た長髪の男を見やりながら、

「その半年ってのが問題でね。実はあと半月ぐらいしたら治安組織がこの施設に踏み込んじゃうんだー。
それまでにこの科学者さんに脱出してもらわなきゃいけないんだけど―――」
「それにはこのサイボーグを完成させなきゃいけないってわけね……。ってやっぱりこの施設、違法なんじゃない!
 なんだってそんな犯罪者のフォローしなきゃいけないのよ!」
「んー、今から十年後くらいにこの人結構大きな事件を起こすんだけど、その事件で保護される幼児が更に数十年後にここらの世界で最大の宗教組織の最高指導者になるんだ。しかもその子供を保護した治安機構の人間もその後かなり出世する人でねー」
「つまりまだ捕まっちゃ困るって事ね……」

うなだれるピオラを尻目にフィオは作業を開始。
事前に与えられていたスペック情報を基にカプセル内の女性の体を弄りまわす。
ピオラも諦めた表情で追随する。

「9割完成してるだけあって楽だねー」
「というか、固有の特殊装備の搭載にてこずってただけじゃない。理論は完成してたし、本当に優秀みたいねそこの男」

普段担当する仕事を思えばあまりにも楽な仕事。
順調に作業が進んでいたが、ふとピオラの手が止まる。

「ねぇ、フィオ?」
「何―」
「このサイボーグの計画書見ると、個体ごとの適正や固有装備の機能で差異が出るみたいだけど概ね用途は戦闘用よね?」

ピオラのモニターに表示されていたのは女性の腹部、その内部の情報。
生命維持に必要な臓器に混じって、純粋に戦闘用に用いるなら無駄とも言える存在があった。

「……何で『子宮』があるの?」
「ああ、それはやっぱり―――」

和やかに答えようとするフィオに手を向けて『止めろ』とジェスチャーするが、悪趣味な相棒は見事にスルーして続けた。
371367:2008/11/15(土) 15:48:08 ID:EaqDNSA5

「―――やっぱり色々と『入用』なんじゃ―――」
「分かったからわざわざ口にしないでいいわよ!」

ピオラはどこからか取り出した小さな人形の体で扱うには大きすぎるカッターナイフで眼前のロクデナシをずたずたに切り刻む。
お気に入りの体だとよく言っているが構う事は無い。どうせ謎のギミックですぐに修復するのだから。
ぶーぶー言いながら切り落とされた首を抱えるフィオを無視して作業を完成させる。微妙に不愉快な気分になるが計画書通りに完璧に仕上げた。
仕事が済んだらさっさと撤収。朝日が昇る前に帰らなくてはならないのだ。
ピオラはいつものように体を繋げたフィオと共にカプセルの並んだ部屋を出て、洞窟の外へと向かう。

「そういえば疑問に思ったんだけど、いくら優秀でも拠点をとっかえひっかえして逃げ回ってるような奴によくあんな規模の施設が用意できたわね」
「あーアレ? だってさっき言った治安機構の指導者が裏で支援してるし」

本当にただなんとなく口にしただけなのだがフィオの答えはピオラの考えの斜め上をいっていた。
今度こそ凍りついたピオラにフィオは説明を続ける。

「実はあの科学者さんもその連中が作らせた人造生命でさー。色々目的があるらしくてこき使ってるみたいなんだけど、ベタな事に暴走してね?
十年後くらいに起こるって言った事件でそのお偉いサンも殺されるんだー」

アハハと何が楽しいのか愉快げなフィオの言葉の続きを、どうにかピオラが引き取った。

「で、暴走したソイツを何も知らないその連中の部下が逮捕するのね……。マッチポンプで焼死した挙句に部下に鎮火させるってその連中バカでしょ?
 本当に碌でもない仕事だわー」
「いつもの事じゃん。ボクらのお仕事は神様の尻拭いのための便所紙〜」



―――そうして妖精たちは何処とも知れぬ場所へ帰っていく。
小さな小さな彼らが去ったあとには―――

―――――――――何かが終わっている


372名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/15(土) 15:48:13 ID:5XfqsxPg
支援
373367:2008/11/15(土) 15:49:57 ID:EaqDNSA5
投下完了です。微妙にあのシュールというかブラックな雰囲気を再現しきれなかった感じですが・・・
誤字などには気を使ったつもりですが、あるかもしれません
374名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/15(土) 16:08:01 ID:5XfqsxPg
GJでした。
375名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/15(土) 18:20:58 ID:lrcrkcCS
あぁ、あの人を馬鹿にするのが得意な(褒め言葉)人の漫画ね!!
376名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/15(土) 19:57:07 ID:2roAewuT
まあこんな話になるよな、あの妖精ならw
もう一波乱あるかと思ったけど綺麗に仕事が終わってて驚いた。
377名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/15(土) 20:11:36 ID:kT+oejLd
乙。
戦闘機人は妖精さんがつくったのか!
フィオ達が仕事したわりには平穏に済んだと思ったが、これからのことを考えるとそうでもないなw
378名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/15(土) 20:55:57 ID:bkXOZF2X
GJ!!です。
皮肉が効いてるなぁw
379名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/15(土) 22:37:16 ID:27a+uvr4
まとめサイトにつながらない
鯖落ちなのかな?
380名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/15(土) 23:00:46 ID:6wgrxiis
>>379
明日までメンテですね
381名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/15(土) 23:51:34 ID:vEVF9eYU
メンテ終了予定時刻は明日のAM7:00の予定となってますね
それまでまとめサイトに作品を載せたりするのも無理ですね
382379:2008/11/16(日) 01:17:09 ID:nRSEaWKR
>>380-381
遅ればせながら、情報サンクスです
383名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/16(日) 07:43:05 ID:K7ACf3nb
ロックマンゼロさんのクロス作品に非常に似ている作品を書いている人を
モバゲータウン内の小説のコーナーで見つけたのですが
この作者はご本人様なのでしょうか?もしくはご存知でしょうか?
題名は『紅き戦士と魔法少女達』です。投稿小説の検索でこの題名または『リリカルなのは クロス』
で調べると出てきます。

一応報告した方が良いと思い報告させていただきました。
384反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/11/16(日) 10:05:58 ID:QKY7k0Cm
おはようございます。
ご意見承りました。現在対応を検討中ですので、勝手な行動をしないよう、ほかの皆様方におきましてもご了承願います
385リリカルギア ◆l/Ps/NPPJo :2008/11/16(日) 13:57:22 ID:T9jq36CN
こんにちは。
投下したいのですが、盗作関連の事態が鎮静化するまで止めておいた方が良かったりしますかね?

もし大丈夫なようでしたら、14:40頃に投下予約をお願いします。
386名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/16(日) 14:00:22 ID:CqqfqHbk
>>368
GJ
てかそいつらはクロスさせちゃいけないだろ、腹筋崩壊的な意味でw

理想郷でマブラヴオルタとのクロスやってるのがいたよ。ドリアン+ウォッカばりに危険な組み合わせなのに…。
387名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/16(日) 14:09:33 ID:mwU5aQst
支援
ついでに盗作疑惑の見てきたがほんとにそっくりだった。
388名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/16(日) 14:20:31 ID:Pe0MwQmk
モバゲーって確か前にもゲームの盗作で問題になってたよな?
どうなってんだあそこは一体
389リリカルギア ◆l/Ps/NPPJo :2008/11/16(日) 14:43:15 ID:T9jq36CN
遅れました、それでは投下開始します
390リリカルギア ◆l/Ps/NPPJo :2008/11/16(日) 14:44:05 ID:T9jq36CN

酷く心が重く感じる。
以前に味わった事のある、懐かしい感覚だ。
ただ、傍観しているしかなかった八年前。
辛い現実を前に苦しんでいる大事な人へ、笑顔を取り繕って大丈夫、と励ますしかなかった事件。
恐怖と悲しみに身が凍り付き、喉の活動制御が困難になって。
彼女の前で、平静を装って喋る事がどんなに辛かった事か。
――そして今現在も。
恋人の娘、さらに大事な親友も手の届く所にいない。
だが以前のように、負い目を胸にひたすら悲しんでいるつもりは無い。
『傍観』という名の逃避はもうしないと決めたのだ。

それは世界で最も嫌悪すべき物なのだから。

第十四話「決戦へ」

ユーノが重たい目蓋を持ち上げると、ぼんやりとした視界が広がった。
自分はどうやら眠っていたらしい。
おぼろげな意識を覚醒させようと体を起こし頭を振った所で、ずり落ちる毛布に気が付く。

「……仮眠室か」

ユーノはボソリと呟いて、毛布を拾い上げた。
最後の記憶は、聖王のゆりかごについて纏めたデータを各部署に送った所で途切れている。
――スカリエッティがゆりかごを保有していると仮定。
恐らくそれが二つの月の魔力を最大限活用出来る場所、衛星軌道上へと飛び立つ筈だろう、と。
次元跳躍攻撃さえも可能になるそれを許すのは非常に危険であり、予言の完成に一役買う事は間違い無い。

「……ふぅ」

起きて早々重い溜め息をついて立ち上がる。
誰かが寝てしまったユーノをここまで運んでくれたのだろう。
ここ、無限書庫備え付けの仮眠室は幾度と無く世話になった場所だ。
もしかしたら、局の寮よりも使用頻度は高いかもしれないな。
ユーノはぼんやりとそう考えながら、別のベッドで鼻提灯を揺らし爆睡している司書を横目に無限書庫へと戻った。

「アルフ、ごめん。寝ちゃってたみたいだ」

無重力空間。
ユーノは緩やかに揺れているふさふさの尻尾に向かって声を掛けた。
声に反応して振り返った、頭から耳を生やした少女は軽い挨拶の後、苦笑しつつ手を振ってみせる。

「いいんだよ、ユーノは陳述会の後からずっと働きっぱなしだったじゃないか」

むしろもっと寝てな、と容赦の無い言葉を浴びせられてしまい、思わず苦笑する。
十年来の友人であるアルフも、以前からちょくちょく手伝いに来てくれているのだ。
感謝の念が絶える事はない。

――公開意見陳述会が襲われ、地上本部と機動六課が壊滅してから四日が経っていた。
正に、歴史的大敗と言える。
マスコミもこの事件について朝昼晩引っきりなしに騒ぎ、一向に止む気配は無い。
怪我人多数、行方不明者三人。
行方不明者の内訳はギンガ・ナカジマとヴィヴィオ、そしてソリッド・スネーク。
前者二人は襲撃で誘拐されたのだが、スネークは違う。
彼はスカリエッティのアジトに単身潜入して、今も通信が繋がらない状態になっているのだ。
皆ユーノと顔見知り以上の仲であり、心配で心配で堪らないのだが。
391リリカルギア ◆l/Ps/NPPJo :2008/11/16(日) 14:46:39 ID:T9jq36CN
――ともかく、六課が態勢を立て直したら、本局は総攻撃を仕掛けるつもりらしい。
現在も地上は単独調査を主張しているが、状況が状況だ。
世論も本局を後押しする事だろう。
その為ユーノは事件後、無限書庫に籠もってゆりかごの情報収集に努めてきた。
いつ総攻撃が開始されても支障の無いように。
それもなんとか間に合ったようで、安堵の息をつくばかりだ。
ようやくこの事件における、無限書庫司書長ユーノ・スクライアの仕事は終わったのだから。

「……アルフ、それでちょっと六課に行ってこようと思うんだけど」
「おー、行ったれ行ったれ。通常業務は任せときな、仮眠室の奴も叩き起こすよ。なのは達も大変だろうけど、顔くらいは出しときなー」

ありがとう、と頷いてアルフの頭を撫でる。
照れ臭そうにしながらユーノの手を払い除けるアルフが何とも微笑ましい。
事件後なのはとは軽く通信で会話した程度だから、彼女の顔を直接見たかった。
他の六課隊員も気になるところである。
現在は次元航行艦アースラに拠点を移し、六課隊員達がぞくぞく乗り込んでいるのだろう。
ユーノは通信ではやてを呼び出して、疲れ気味の、それでもやる気と負けん気は衰えていない顔に声を掛けた。

「やぁ、はやて。送ったデータ、見てくれたかい?」

勿論、と勢い良く頷くはやて。
そのまま決意の籠もった表情で、絶対に止めてみせる、と眼光鋭く言い放った。
――現状、機動六課がそれを食い止める際に重要な位置にいる事は明白だ。
部隊長であるはやての肩にも相当な重圧が掛かっているのだろう。

「う、うん、そうだね。……あー……他の隊員は、大丈夫かい?」

ユーノは思いがけず深刻な雰囲気になった事を後悔して、無理矢理話題を変える。
――もう少し自分には話力があると思ったのだが、これは我ながら苦しいな。
はやてもそんなユーノの心情を見抜いたのか、真剣な表情を崩して明るく笑った。

「プッ……フフフ、私は大丈夫やから、ありがとな。んー、まだフォワード陣で治療しとる隊員がおるけど、他は大体何とかなったかな」
「決戦は近いみたいだね。……そっちにちょっと行きたいんだけど、いいかな?」
「ん、大丈夫や。なのはちゃんもやっぱり落ち込んでるみたいやし、励ましてあげてな」

連絡しといてあげるな、とからかうような笑みを浮かべたはやてに苦笑する。
了解、と一言告げて、ユーノは転送の準備を始めた。

懐かしいな、とユーノはアースラの通路を歩きながら呟く。
初めてここに乗船してからもう随分と年月が経っている。
思えばユーノが十歳かそこらの頃、スネークは二十四歳程。
一回り以上も年が離れている彼は、実は気が置けない友人だなんて少しおかしいとも思う。
……だが、他に形容する言葉が見つからない。
ユーノが苦笑していると、不意に目の前から歩いてくる人影に気が付いた。
何処か大人びた雰囲気を持ち、なのは曰く、スネークを特に尊敬している少女。

「……ティアナ・ランスターさん、だっけ?」
「す、スクライア司書長!」

慌てて敬礼をするティアナに、堅くならないで、と優しく声を掛ける。
正直、そこまで堅くなられても困るのだが。
ユーノはスネークとの初対面で、彼に敬語で話していた。
そんな記憶はユーノの体に鳥肌が立たせる物として十分過ぎ、ブルッと震えてしまう。
もし今スネークに敬語で話せと命令されたら、大事な段ボールを三階建てのビル屋上から川へ投げ捨ててでも拒否してみせる。
――色々な意味で、随分と毒されたものだ。
392名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/16(日) 14:49:01 ID:3A1fxyLs
>>388
あそこはリア厨とDQNの集まりだから仕方ないといえば仕方ない…

支援
393リリカルギア ◆l/Ps/NPPJo :2008/11/16(日) 14:49:28 ID:T9jq36CN

「……あの、スクライア司書長は何か御用があってこちらに?」
「うん。なのはや他の隊員達の様子が気になったからね」
「あぁ、成る程。なのはさん、喜ぶと思いますよ」

可愛らしい笑顔を向けてくるティアナ。
……何だか、周りの皆からそう言われているような気がしてならない。
ユーノ自身は、そこまでバカップルだとは思っていないのだが、からかわれているのだろうか?
ハハ、とユーノは乾いた笑いを返す。

「ティアナさんは怪我とか、大丈夫なのかい?」
「はい、私は掠り傷程度で……これからシャーリーさんの元へ行く所です」
「……え?」

まだ病院にいてもおかしくない筈の名前が出て来て、ユーノは軽く耳を疑った。
彼女は、スネークから送られた情報をハードコピーする為最後まで残り、負傷したのではなかったか?

「シャリオさんって、確かスネークの無線サポートに付いてて……怪我したんじゃ?」
「ええ。シャーリーさん、まだ完治していないのにスネークさんから送られた情報の纏め作業をしてるんです」

だからせめて私はそのお手伝いを、とはにかみながら答えるティアナ。
ユーノはふうん、と呟いて顎を撫でる。

「……僕もなのはと会った後に、行かせてもらって良いかな? ちょっと気になるし」
「あ、はい。全然構いませんよ、お待ちしています」

――意外にも、すんなり了承された。
こうも信用されている事を喜んで受け取るべきか悩みつつ、ユーノは笑顔でティアナと別れる。

そのまま居住区画へ向かって数分歩き、目当ての部屋の前に人影を確認する。

「――ユーノ君っ!」

笑顔と共に、意気揚揚と栗色の髪を揺らしながら走り寄ってくる女性。
彼女を見て、ユーノも大いに頬を緩ませた。

「なのは!」

ブレーキを掛けずに突っ込んでくる恋人。
ユーノはその衝撃をしっかりと受け止める。
――鼻孔をくすぐる女性特有の甘い香り。
だがそれも一瞬で、すぐに離れていってしまう。
公私混同はよろしくない。
いつまでもここでくっついている訳にもいかないだろう。
とりあえず、と部屋の中へ入る。

「……ごめんね、押し掛けちゃって」
「ん、大丈夫。嬉しいから。……送られてきた資料、見たよ。大変な事になっていきそうだけど……」

僅かだが、なのはの顔に不安の色が浮かんだ。
攫われたヴィヴィオの事。
聖王のゆりかごの事。
彼女も色々な不安と戦っているのだろう。
だが、ユーノはその為にここまでやって来たのだ。
なのはの肩に手を置き、その澄んだ瞳を見据える。
394リリカルギア ◆l/Ps/NPPJo :2008/11/16(日) 14:52:21 ID:T9jq36CN

「……なのはも、スネークみたいに気遣われたりするのは得意じゃ無いから――」
「そんな事は無いけど……」
「――だから、一言だけ。……大丈夫。きっと、大丈夫だから」

なのはが息を呑んだ。
少々の照れ臭さに襲われて誤魔化すように、熱が籠もり始めた頬を掻く。
なのははそのまま、ボスッとユーノの胸に顔を埋める。

「余計なお世話かもしれないし、スネークの励まし程説得力は無いと思うけど……ね」
「ううん……元気、出たよ。ありがとう」

彼女の声が潤んでいくのを感じながら、何も言わずに抱き締める力を強める。

「……この事件を無事解決出来たら、ヴィヴィオを正式に娘にしようと思うの」
「……なのはも母親かぁ」

少女もいつの間にか大人の女性となっている事に、年月の流れが早い事を実感させられる。
なのはが穏やかに笑いながら、ユーノを見上げた。

「ユーノ君も、ユーノパパなんて呼ばれるようになるんだよ?」
「そうか。……そうだったね」

ハハ、と互いに笑いあって。

「ああ、そうだユーノ君。大事な話があるんだけど」

――気付いたらすっかり、頼れる高町一等空尉殿の顔に戻っている。
事件関連かい、と問い、なのはの微妙な表情での頷きに首をかしげる。

「とりあえず、フェイトちゃんの所に行こう? そこで詳しく話すよ」
「……わかった」

アースラの廊下を仲良く肩を並べてしばらく歩き、目的地に辿り着くとなのはが扉を開ける。
――幾つも展開されたモニターと、忙しなく手を動かし続けている女性達。
頭に包帯を巻いたシャーリーと、ティアナ。
その隣に、フェイトがいた。
ティアナが真っ先にユーノ達に気付いて振り返り、軽い敬礼で迎える。
それによって残りの二人もドアへ振り返る。

「あぁユーノ、なのは、来たね」
「ユーノ司書長、こんにちわー」

思い思いの挨拶。
ユーノはそれに軽く手を振って答えた。

「やぁ。……シャリオさん、怪我は大丈夫なのかい?」
「はい、休んでなんかいられませんよー。任務は終わってませんからね、スネークさんの頑張りは無駄に出来ません」
「……そうだね」

――皆、強いな。
自然とそう呟いてしまったが、誰にも気付かれなかっただろうか心配になる。
それはどうやらユーノの杞憂だったようで、シャーリーがユーノに向き直った。
それで、と早速話を切り出す。

「スネークさんから送られた情報、最後の方は映像は正常に受信仕切れてなくて、音声も途切れ途切れなんです」
「……それで最後の部分だけざっと確認したら、こんな言葉が残されていたの。はやてちゃんにも伝えたんだけどね……」
395リリカルギア ◆l/Ps/NPPJo :2008/11/16(日) 14:54:54 ID:T9jq36CN

なのはの緊迫した声に、ユーノは唾を飲み込んだ。
フェイトがシャーリーに視線をやる。
神妙な面持ちで頷くシャーリーが、手元のモニターを操作。
雑音と共に、音声が再生される。

『シャー………そ…し………イツ……!?』

――何を言っているのかさっぱりだ。
音声の中に雑音が混じっているのではなく、雑音を掻き混ぜるようにスネークの音声がちりばめられているといった感じか。
それでも、緊迫した空気は音声越しによく伝わってくる。
ユーノはしばらくの間続いたそれから最後にはっきりと、一つの単語を聞き取った。

『……レール、ガン』

何だって。
ユーノはモニターを前に大声を上げた。
――その単語には聞き覚えがあった。
いつかスネークから聞かされた、シャドーモセス事件における重要なキーワード。
シャーリーが、音声の停止したモニターを消す。

「――そう。スネークさんが話してくれた、磁場で核爆弾を発射する質量兵器」
「……奴は、スカリエッティは核攻撃をするつもりなのかっ……?」
「……」

ユーノが呆然と呟いた言葉を誰も否定出来ないのか、無言がひたすら返ってくる。
しかし、とんでもない話になってきていないか。
ユーノは頭を抱えたくなりながらも、それを何とか抑えつけて一呼吸置く。
自分自身凄く動揺しているのがよく分かるな。
どうやらそれはフェイト達も同じようで、深刻な表情の奥に不安が見え隠れしている。
ユーノは荒い呼吸を整えた。

――狼狽していても仕方がない。
明るい声になるように努めて、眼鏡を押し上げる。

「……まぁ、でも。スカリエッティがどこへ核を撃ち込むつもりでも、頑張って止めるしかないよね?」
「ユーノ、言うね……」

ポジティブ思考の発言に、フェイトが唸る。
感心しているのか呆れているのかは分からないが。
微笑しているなのはがいる事だし、胸を張る事にする。

「スネークなら、おまけに『なんとかなる』『どうにかする』って自信満々に付け加えてるよ」
「……ふふ、そうかも」

楽観的なスネークの事だからそう言って、自分と周りを奮い立たせるだろう。
違いない、と数か月もの間スネークを見てきた女性陣の穏やかな笑いが零れる。
レールガンについて、知ったような顔をしているティアナやシャーリー。
ユーノはふとそれが気になって、フェイトとなのはに視線を向けた。

「フェイト、なのは。……スネークの事、皆に話したの?」

スネークも必死に隠したがるような過去でも無い、別に話しても構わない、とは言っていたが。
気軽に話すような事でもないし、隊長陣三人とユーノは、極力話さないでいた。
他にスネークの出自を知っているのは、クロノとカリム、ヴェロッサだけである。
396名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/16(日) 14:55:58 ID:75Z5oFmL
支援
397リリカルギア ◆l/Ps/NPPJo :2008/11/16(日) 14:57:44 ID:T9jq36CN

「……うん。スカリエッティがスネークさんに固執してたっていう事やレールガン。それに……」

なのはがちらりと視線を向けると、フェイトがどこからか本を取り出した。
久しぶりに見る日本語で書かれたそのタイトルは――

「『シャドーモセスの真実』……?」

シャドーモセス。
聞き間違えるはずもない地名がタイトルになっているその本を受け取って、ぱらぱらと捲る。
以前にスネークが話した内容が、彼を無線でサポートした女性の視点で詳細に記されている。

「海鳴のエイミィから送られきてね、翻訳版が日本でも話題になっているんだって」
「……向こうではどんな反応なのか、エイミィさんに聞いた?」

答えが大体予測出来るが、聞かずにはいられなかった。
友人として、スネークが侮辱されるのはどうしても我慢出来ない。

『一々反応して、どうにかなるものでもあるまい』
『気にしていても仕方が無い』

そんな風にスネークは言うのだろうけど。

「ん、荒唐無稽っていう意見が殆ど。……最初はね」

――最初?
今は八割が信じているとでも言うのか?
ならばその八割が信じるに至った経緯は?
湧き続ける疑問を早口で捲し立てるユーノに、フェイトはこれ以上無い位にたじろいで話を続けた。

「じ、事件日の米軍の異常行動が、最近報道されたんだって。アラスカ近海に出現した原子力潜水艦や爆撃機……」
「……」
「色々な報道機関で『第三国の軍事侵攻』だとか『軍の一部によるクーデター』だとか憶測が飛んだらしいんだけど……」

シャドーモセス事件の詳細を語ったこの本が、それらを一蹴したという事か。
何たって事実を元に書かれているのだ。
パズルピースのように上手くはまる辻褄によって信憑性が高める事は間違いない。
ユーノは顎に手をやりそう呟き、フェイトも同意の頷きを見せる。

「米政府は事件を否定しているけど、それで結構信じる人は増えちゃったみたい。信じる人達は、スネークさんを英雄視しているか、もしくは……その……」
「……嫌悪感?」

うん、と小さく頷くフェイト。
自分達とは違う存在へと向ける、異形を嫌うという、人間の、生物の本能。

――スネークが何時、それを望んだというのか。
スネークが父親を殺し、戦友を殺し、心身共にボロボロになるまで戦って世界を核戦争から守り、今も必死に歩みを進めている。
奴らに、そんなスネークへと嫌悪の視線を向ける資格があるのか。
そう考えれば考える程ユーノは心が冷え込むのを感じ、表情が堅くなるのを実感する。
それに気付いたのかなのはが不安そうにユーノの横顔を見上げ、握り拳をそっと手の平で包み込む。
それだけで心が暖かくなるのだから、心強いものだ。
念話でありがとう、と一言送る。
更にティアナが一歩前に乗り出して、力強い表情をユーノへ見せた。
スネークを尊敬している少女の想いの強さが滲み出ている。
398リリカルギア ◆l/Ps/NPPJo :2008/11/16(日) 15:01:16 ID:T9jq36CN

「スネークさんがどんな生まれ方をしていても、あの人が尊敬に値する人だという事に違いは無いです!」
「……ティアナさん」

柔らかい微笑の後、シャーリーも動かし続けていた腕を止めユーノを真っすぐ見て、ティアナに同意する言葉を吐く。
あの人は信用出来ます、と。

「あの人は『何か』を持っています」
「……『何か』?」

反射的に聞き返すが、それは以前からユーノも思っていた事だ。
スネークやなのはが持つ、言葉に表せない『何か』。

「強い人。信じるに足る人。他人の期待に応える事が出来る人だけが持つ『何か』を。……それに、見た目よりもフランクでしたしね」
「……うん、そうだね。ありがとう、ランスターさん、シャリオさん」

逆に励まされてしまったな、と照れ臭さを感じて、彼女達に笑い掛ける。

見ず知らずの他人がどう思おうが、そんな事はユーノやなのは達には関係無い。
ユーノは改めて決意を固める。
もう逃げない。
傍観は終わりだ。
――これ以上何も失う事無く事件を終わらせてみせる。



公開意見陳述会から一週間後。
刻む足音が強く耳に残る程、静かな空間。
少し薄暗いそこには、二人の男がいた。
ジョニー・ササキと呼ばれる男、そしてその視線の先、格子の付いた扉を挟んで半裸の男。
『不可能を可能にする男』『伝説の英雄』等と持て囃された兵士。
ベッドに腰掛け黙って俯いているその男の名はソリッド・スネーク。
――寝ているのだろうか?
違う、とジョニーはその考えを振り払う。
スネークはシャドーモセスの独房にいた時、無線で何か話していたかと思えば、シャドーボクシングの真似事をしたりしていた。
壁を飽きる事なく何度も叩いていた様はまるで、誰かに操られていたかのようだった。
ジョニーが何度大声で注意した事か。
それでも言う事を聞かなかった事を考えると、このスネークの状態は異常。
少し心配しつつ、少々抑え気味に声を掛ける。

「おい、スネーク」
「……お前か」

スネークが顔を僅かに持ち上げ、バンダナの下に覗く鋭い瞳でジョニーを射貫いた。
ピリピリした空気が流れ、ジョニーは一瞬だがたじろぐ。
何でもない様子だったスネークを確認して、ジョニーはポケットをまさぐった。
目当ての物をスネークに投げ渡して、選別だ、と一言。
スネークの装備から抜き取った、ライターとタバコだ。
スネークは微かに困惑した表情でタバコの箱とジョニーに視線を行き来させる。
やがて軽くタバコの箱を掲げて、ジョニーに感謝の意を示した。

「俺の装備は?」
「纏めて置いてあるよ。……気分はどうだ?」
「……最悪だよ。ここ一週間変態科学者に加えて、お前の仲間の美女達にまで裸体をじっくり観賞されたからな」

タバコをくゆらせながら皮肉気に話すスネークへ、それは災難だったな、と苦笑する。
スカリエッティはクローンとして造られたスネークに大層な興味を抱いていた。
あんな奴にじっくりと、なぶるように身体検査されるのを想像したら、同情の一つもするさ。
399リリカルギア ◆l/Ps/NPPJo :2008/11/16(日) 15:04:28 ID:T9jq36CN

それでも、シャドーモセスで行われたオセロットの拷問よりはマシなのだろう。
――身動き出来ないよう回転ベッドに縛り付けて、気の向くまま電流を体に流す。
数十秒の間断続的に響き続けたスネークの、人間が上げるものとは思えないぞっとするような悲鳴。
そして加虐の喜びでオセロットの顔に浮かぶ、官能味のある恍惚の表情。
ジョニーはそれをありありと思い出して、体を襲う寒気に身震いした。
そんなジョニーへ、おい、とスネークがだしぬけに声を掛ける。

「お前、地球人だろ?」
「えっ? あ、そ、そうだが……よく分かったな?」

ピシャリと言い当てられて、訳もなくどもってしまう。
この異世界では、人間に猫耳が生えているなんて事はない。
ジョニーを一見して、どこの出身なのかなんて分かり得ないのだ。
まさか、シャドーモセスで捕まった時からずっと俺を覚え――

「――GSRはこの世界に無いからな」
「……ああ、成る程ねー」

一度はスネークに奪われたジョニーの愛銃が、奇しくも主人の出身証明書になった訳だ。
説得力のある言葉に、下らない考えを一蹴する。
よくよく考えたら、多くのゲノム兵の中の一人なんて覚えている筈もないか。

「お前はどうやってこっちに?」
「……トイレから」
「……」

沈黙と共に、痛々しい空気が流れる。
トイレに駆け込んだら、不思議な光に包まれてこっちに来た。
――脚色しようの無い事実だ。

「ケツはちゃんと拭いてきたのか?」
「……出す前に飛ばされた」
「……それは残念だったな」

それっきり、沈黙。
対話と言う物は、黙っていたら進まない。
二人きりの時なら尚更だ。
ジョニーは困ったような呻き声を上げる。
スネークも押し黙っていたのだが、ふと思い立ったように一歩前に乗り出した。

「……何故奴は、スカリエッティはメタルギアを……俺を知っている?」
「うっ、それは……」

スネークからしたら、当然の疑問である事には間違いない。
思わず閉口。
冷や汗が背中を伝う。
そもそも、ジョニーが『シャドーモセスの真実』をスカリエッティに手渡した所から、奴の暴走が始まったのだから。
口籠もるジョニーに、スネークは不審そうに眉をひそめさせた。

「どうした?」
「……その、俺が奴に『シャドーモセスの真実』を渡したのが原因で」
「……『シャドーモセスの真実』?」

何だ知らないのか、と問い直し、スネークの首が縦に振られる。
地球、先進国でなら噂位聞く筈なのだが。
――こいつ、いつからこっちにいるんだ?
そんな疑問がジョニーの脳裏を過る。
400名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/16(日) 15:06:00 ID:+pQLLy2U
支援
401リリカルギア ◆l/Ps/NPPJo :2008/11/16(日) 15:08:31 ID:T9jq36CN

「あんたのサポートをした、ナターシャだったか、ロマネコンチだったかがあそこで起きた事件の全てを記した本さ」
「……ナスターシャ・ロマネンコ?」
「ああそう、それ。その本のタイトルが『シャドーモセスの真実』ってんだ」

今やあんたは知らぬ者のいない有名人なんだぜ。
そう付け加えると、複雑な表情が返ってくる。
やはり良い気分はしないのだろう。
スネークは疲れたように唸り、目蓋を揉んで座り直した。

「奴が作ったメタルギアにはREXの情報が色濃くあった。彼女がその本に、設計情報を綺麗に印刷したとでも言うのか?」
「いいや。フォックスハウンドの生き残りがREXの情報を、モセスから持ち出して売り捌いてるんだよ。……誰だか分かるか?」
「まさか……」

オセロットさ、と小声で呟くと、スネークは苦渋に顔を歪ませて鼻を鳴らした。

「オセロットめ、ふざけた真似を。……奴は何が狙いなんだ?」
「金を集めて国を作るんじゃないのか? 『戦慄! 恐怖のロシア大帝国』なぁんてさ」

どこのB級映画だ、と間髪入れずに突っ込みが返ってきて苦笑する。

「……まぁオセロットはともかく、スカリエッティは多分奴から情報を買って、作るのに役立てたんだろうさ。その……SOLIDをな」

『SOLID』という言葉でスネークの眉がピクリと動いたのを、ジョニーは見逃さなかった。
自分の名前が付けられているのだ、相当な嫌悪感を持っていても仕方がないか。

「それで奴は『メタルギア』を作れたという事か。……それで?」
「……え?」
「お前は何がしたい?何故奴らに協力しているんだ」

ここへ世間話をしに来たのか、と
スネークはタバコの火を揉み消してそう言った。
ジョニーはここへ来た目的を思い出して、真剣な眼差しをスネークへ向けた。

「俺の爺さんは元GRUの兵士だった。エリート兵士って奴さ」
「……GRU。旧ソ連軍参謀本部情報部か。お前が兵士になったのは、祖父の影響か?」
「ああ。爺さんは俺の憧れだった。だから俺は兵士になった。でも……」

――それは戦う理由には成り得ない事に気が付いた。
紆余曲折を経てここへ飛ばされ、スカリエッティやナンバーズと邂逅を果たし。
その後、ナンバーズ達を守りたいと思うようになった、と。
スネークはおもむろに立ち上がって、ジョニーに負けず劣らずの真剣な眼差しのまま近付いた。

「彼女達は、少なくとも五番からは、スカリエッティの計画に直接賛同していない」
「……生みの親の命令を聞いているだけ、か?」
「彼女達が自分の意志でスカリエッティの言う事を聞くなら、俺はそれでも構わなかった。……でも聞いちゃったんだよ」
「……何を?」

低い声で問うスネークにジョニーは壁に寄り掛かって、数時間前の事を思い出した。
――成功に終わった局の襲撃だが、一人だけ出た重傷者。
ナンバーズの五番・チンク。
ボロボロになってアジトへ帰ってきたチンクは、メンテポッドでずっと眠ったままだった。
数多いナンバーズの中で、取り分け異色の雰囲気を放った戦闘機人。
『此処』に飛ばされて半ば放心状態だったジョニーにも良くしてくれた。
最大の作戦開始が数時間後に迫る中、彼女が目を覚ましたと聞いて嬉しくない筈が無い。
ジョニーは飛び上がって喜び、彼女の元へ向かって――それを聞いた。

『外の世界を、見たいと思うか?』
402リリカルギア ◆l/Ps/NPPJo :2008/11/16(日) 15:11:03 ID:T9jq36CN

妹達にそう質問するチンク。
チンクを慕うノーヴェを始めとして、そこにいた誰もが数秒、答えに詰まった。
それも仕方がない、初めてそんな事を考えたのだろうから。
チンクの妹達が出した答えは、皆と一緒にいれれば良い、という至極単純明快な物。
対して少しだけ寂しそうな微笑を返したチンクの横顔をこっそり覗いて、ジョニーは確信した。

――チンクは外の世界へ解放される事を心のどこかで願っているだろう、と。

「……どうやら、そいつらにもまともな思考力はあるみたいだな」
容赦無く毒舌を吐くスネークに向き直る。

「あんたが伝説の傭兵として聞きたい事がある。……俺は彼女達を外の世界に導きたい。だが、本当にそれは正しいのか? 彼女達の為になるのか?」

それを肯定するだけの自信が無い。
彼女達の為を思い、少なくとも自分の意志で戦う彼女達へ牙を剥くのだから。
本当はやはり、彼女達を守るために局をボコボコにのめすのが正しいのかもしれない。
ジョニーは俯いて再び壁に寄り掛かり、背中の気配が答えを言う事を待った。

「……俺は英雄じゃない。英雄であった事もない。今までも、これからもな」

スネークはまずそこから否定した。
俺は只の兵士に過ぎないんだ、と。
そして只の兵士が、自身の考えを一言一言、噛み締めるように話し出す。

「正しいという事に規範は存在しない。……大事なのは、信じる事だ。正しいと信じる思いがどんな形であれ未来を作る」
「……正しいと、信じる?」
「スカリエッティも自分が正しいと信じて行動しているし、俺も奴を止める事が正しいと思っている。……誰に聞く事でも無い、お前が判断するんだ」

……要は自分で考えて、それを貫け、という事か。
予想外の回答に苦笑しつつ、思考を巡らせる。
何が本当に彼女達の為になるのか、自分が何をしたいのか。
――そんなの、分かり切っているじゃないか。

「……彼女達が、スカリエッティの元にいる事が良いとは思えない。――外の世界を見せてやりたい!」
「それがお前の信じる事か」
「心のどこかで、『外の世界で普通に暮らしてみたい』と思っているのはきっと何人もいる筈だろっ?」

落ち着け、とスネークにたしなめられる。
ジョニーは荒くなった呼吸を抑えつける。

「スネーク、時間的に作戦はもう始まっている頃だ。……だが、あんたは今こうして捕われている。絶望的な状況だと思わないか?」
「……いいや。まだだ、まだ終わってない。必ず奴を止める」

力強く拳を握る『伝説の英雄』と直接話して、ジョニーは確信した。
伝説の英雄は、ソリッド・スネークは、まだ諦めていない。
内面で燃え盛る闘志、絶対に折れる事の無い不屈の意志。
これ程頼れる仲間はいないぞ。
だったら、賭けてみようじゃないか。
――不可能を可能にする為に。
扉の横に取り付けられた端末を操作して、ロックを解除する。

「スネーク、彼女達をスカリエッティから解放させる。……あんたの力を貸してくれ」

独房からゆっくりと出て来たスネークは頼れる目付きで、黙って頷いた。
――それぞれの思い、様々な思惑を交錯させた戦い。
それの始まりを示す狼煙が、立ち上る。
403リリカルギア ◆l/Ps/NPPJo :2008/11/16(日) 15:13:31 ID:T9jq36CN
おまけ

それほど長くなかった話も終わり、再びモニター上をシャーリー達の手が踊り始める。
ユーノはその様を少し眺めて、おもむろに声を上げた。

「……じゃあ、僕はそろそろ退散しようかな。ごめんね、忙しいところを邪魔しちゃって」
「ああ、いえいえ。ぜんぜ――」
『――これはっ!!』

シャーリーの言葉を遮るように、いる筈の無いスネークの声が響いた。
モニター上のスネークが発した、様々な感情を含ませた声。
視線がモニターに集まり、モニター一杯に映し出されたそれを見て、全員が一様に固まる。
ロッカーに貼り付けられている、際どい水着を着用した女性の写真。
――所謂、グラビアアイドルの写真。
ごそごそ、とモニターの中のスネークは荷物をまさぐり、取り出したデジタルカメラを構える。

じじー。
かしゃり。
ぴぴっ。

スネークは保存されたデジタルカメラの映像を素早く確認、仕事をやり遂げた表情で一言。

『……よしっ』
「よしっ、じゃない!」

その場にいたユーノを除いた、四人の綺麗にハモった突っ込みが響いた。
そう、ユーノも男だ。
ぶら下がったメロンには否が応でも目を奪われてしまう。
なかなかだな、と内心で水着女性に拍手を送る。

「……?」

なのはが唯一突っ込まなかったユーノに訝しげな視線を向け、彼のそんな心境に気付いてしまった。
そして、ユーノはなのはの様子に気付かずに、じっくりとモニターを観賞している事が致命的だった。
なのはが目を吊り上げる。

「――っ痛ぅ!?」

グリグリと断続的に足を襲う痛み。
ユーノは足を踏んでいるなのはの顔を見て、ようやく事態を把握したのだが、時既に遅し。

「ユーノ君、随分熱心に見てるね!? ……全く、前も部屋にイケない本を隠し持ってたし……!!」

なのはの暴露に、うわぁ、と痛々しい視線がそこかしこからユーノへと降り注いだ。
違うそれはスネークから拝借したものだ、男は皆そういうものだ、なんて言い訳も逆効果。
ユーノが全てを諦め掛けたその時――何故かなのはが表情を崩した。
顔を赤らめ微笑を浮かべながら、上目遣いにユーノを見る。

「――もぅ。そんなに興味があるなら、一言言ってくれれば良いのに……」
「え。……い、言ったら?」

ユーノはごくりと唾を飲み込んで尋ねる。
なのはは、事態を見守っているシャーリー達でさえ真っ赤になる程の艶めかしい表情でクスリと笑って顔を近付けた。

「……フフ。『我慢しなさい』って言ってあげる」
「ぁー……」

……女は恐ろしい。
そうだろ、スネーク?
ユーノの嘆息が部屋中に虚しく響いた。
404リリカルギア ◆l/Ps/NPPJo :2008/11/16(日) 15:15:01 ID:T9jq36CN
第十四話投下完了です、支援ありがとうございました。

おまけの話に関連して、MGS2の写真ネタは個人的にかなり好きです。
グラビア写真を見たオタコンさんも「……保存しとこ!」なんて言ってて笑わせて頂きましたw
ことわざ解説時のふざけた言動もあれば、ジーンとくる台詞も吐けるオタコンさん。彼も大好きなキャラの一人です。

それでは、次からは戦闘ばっかりです。
最終回もぼんやり見えてきましたが、次回もよろしくお願いします。
405名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/16(日) 15:20:34 ID:75Z5oFmL
GJ!!
盛り上がってきました〜。はたしてスネークの作戦はどうなるのでしょうか。
悪女ななのはさんにも笑いました。
406反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/11/16(日) 15:30:47 ID:QKY7k0Cm
報告です。
モバゲータウンにおける盗作の件ですが、ロックマンゼロ氏本人と連絡を取ることができました。
以降は我々で対処しますので、引き続き勝手な行動を取らぬよう、よろしくお願いします。
407名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/16(日) 15:50:44 ID:Mdxsawyj
チンクたちとジョニーには幸せになって欲しいです
408一尉:2008/11/16(日) 15:58:50 ID:yPbPesPu
オマケなら最後です。
409名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/16(日) 16:02:53 ID:/ydidjRr
投下乙です。

是非ともジョニーには最後まで生き残って欲しい……
誰かの命と引き換えの自由なんて、嫌だろう?
410THE OPERATION LYRICAL:2008/11/16(日) 17:52:28 ID:fdnAqETf
GJ! こ、これはジョニーとスネークのタッグバトル!?
MGS4でのあの大活躍が見れたりするんでしょうかw
それはそうと、艶めかしい表情のなのはさん想像して思わずイジェクトしてしまいました。
責任とってください(ぇ

<<まぁそんなことはいいとして……オメガ11は今回短編と言うか次回作への予告と言うか、そんなもの
を書いてきたそうだ。1830に投下予約したいが、よろしいか?>>
411名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/16(日) 18:26:30 ID:CVI5RxHp
やったりやったり
412THE OPERATION LYRICAL:2008/11/16(日) 18:30:12 ID:fdnAqETf
<<それでは投下を開始する。今回は予告だから非常に短い>>

OK,まずはいいニュースから行こう。
その日、世界は素敵な状態だった。
ロシアでは現在の政府支持派と超国家主義者たち――スターリンを崇拝し、旧ソ連復活を目論んでいるテロリスト集団が衝突して内戦状態。
一万五〇〇〇発もの核弾頭が、危機に瀕している。
で、中東のアル・アサドとか言う権力者と手を組むつもりらしい、この超国家主義者たちは。
別にいつものことだから、大して気にしてない。
もう一つ、こっちは悪いニュースだ。
俺は明日には第二二SAS連隊に配属される予定だったんだ。
だと言うのに、列車は人身事故で止まってしまっている。
SASの選抜試験を奇跡的に抜けたのはいいが、変なコールサインをもらって挙句この様だ。
神よ、いるなら答えてください。俺、何かしました?


その日、二人の若者が出会った。

「――お宅も足止め食らったクチ?」
「ああ、これから故郷の国に帰る予定だったんだが……」
「そうか……まぁ、列車が動くまでの間ゆっくりロンドンを観光してなよ。何だったら案内するよ。俺は――」

出会った二人の若者の名。
片方はジョン・"ソープ"・マクタヴィッシュ軍曹。第22SAS連隊所属の、新米SAS隊員。

「いや待ってくれ、僕は未成年――」
「固いこと言うなよ。ほら、ビールは冷えてるのばっかりが美味い訳じゃないぞ」
「一応仕事の帰りなんだけれどな……」

もう片方は、クロノ・ハラオウン執務官。時空管理局所属の、次元航行艦"アースラ"の切り札。


二人の出会いは、それだけで終わるはずだった。
思わぬ足止めを食らったおかげで、いい奴に会えた。あとは思い出の一部となって、記憶の片隅に留めておくだけ。
――そのはず、だったのだが。

「ソープ、飛び乗れ!」

嵐の大洋、荒れる海に飲み込まれつつある貨物船の甲板上。
――誰かいる!
脱出のヘリに飛び乗ろうとしたその時、ソープは不意に背後から人の気配を感じた。
この手の分野では傑作と名高いMP5の銃口を素早く振り回し――彼は、引き金にかけた指の動きを止めざるを得なかった。

「……クロノ!?」
「――ジョン!? なんでここに……っ」

再会。しかし、その真意を問うには、お互い残された時間があまりに少なかった。
413THE OPERATION LYRICAL:2008/11/16(日) 18:33:14 ID:fdnAqETf
場所は変わって、中東。
一人の兵士が、戦っていた。
理由なんて、後から考えればいい。目の前の敵を撃つ、撃つ、撃つ。ひたすらに撃つ。そうしなければ、やられてしまう。
だけども、仲間を見捨てようとは思わなかった。
例え核兵器が目の前で爆発する恐れがあったって、構うものか。一人の仲間も、見捨てない。

「ジャクソン、彼女を救助するんだ! 一分以内に連れて来い!」
「了解、援護頼む」

彼の名は、ポール・ジャクソン軍曹。海兵隊第一偵察大隊"フォース・リコン"のベテラン兵士。

だが――仲間を見捨てない、それ故、彼は地獄を見る羽目になってしまう。
彼を地獄に送り込んだのは――

「――ザカエフ」
「え? プライス大尉、今なんて……」
「イムラン・ザカエフだ」

「一五年前だ、ジョン……いや、ソープ。僕の世界の方で、あるロストロギアがこっちの方に流出したんだ」

全ての元凶は、一五年前から始まっていた。

「リーダーは我々を売り飛ばした……文化を汚し、経済を崩壊させた。名誉も――我らの血は、祖国の土に染み込んだ。私の血も」

全ての元凶が、動く。自らの理想を実現させるため、世界を破壊する。

「アメリカとイギリスの全軍隊は即刻ロシアから立ち去るがいい。さもなくば苦しむ結果になるだろう……」

予想される損害は、アメリカ本土東海岸一帯が全滅。予想死亡者数は、四十万人を超える。
食い止めなくては。
組織の壁など、もはや関係なかった。今動かなければ、未来はお先真っ暗だ。
SAS、海兵隊、そして管理局。三つの組織の精鋭たちが、動き出す。

「ソープ、ジャクソン、クロノ、ザカエフを追え! ここは俺とギャズ、グリッグが抑える――元凶を断つんだ、これで終わりにしろ!」

世界を滅ぼすのは人間の力。
それを止めるのも、人間の力。
兵士たちは、紛れもなく"人間"だった。

「ソープ、了解」
「ジャクソン、了解だ」
「クロノ、了解した」

飛び交う銃弾、魔力弾。全ては世界の未来のため。
交わるはずのない線が交わった時、兵士たちの戦いは、もう一つの結末を迎える。


Call of Lyrical 4


戦いは、まだ始まらない――。
414名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/16(日) 18:34:02 ID:T9jq36CN
支援
415名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/16(日) 18:34:40 ID:CVI5RxHp
COD4キタァァァアア
416THE OPERATION LYRICAL:2008/11/16(日) 18:36:05 ID:fdnAqETf
おまけ1

「――プライス大尉、一つ質問があります」
「僕もです、プライス大尉」

ブリーフィングが終わった直後。
指揮官のプライスが最後に何か質問はないかと皆に問うと、真っ先に手を伸ばす者がいた。ソープ、それにクロノだ。

「何だ、二人とも」
「このザカエフの息子なんですが」

ソープは配布された資料の中から今回の作戦目標、ザカエフの息子の写真を取り出す。
SASの隊員皆が興味津々とした視線を送ってくる最中で、クロノが口を開く。

「どうして戦場のど真ん中で上下ジャージなんでしょう?」

ブリーフィングルームに、ため息と罵声が響き渡った。
詳しくは「Call of Duty4」をプレイしてね!

おまけ2

「ブラボー6、聞こえるか? プライス大尉、航空支援を送った。活用してくれ」
「航空支援だって? コールサインは?」

<<Omega11 Engage>>

「帰れ、お前は」

サーセン。

おまけ3

「ブラボー6、聞こえるか? さっきはすまなかった。プライス大尉、今度こそ航空支援を送った。活用してくれ」
「さっきのはイジェクト(脱出)して落ちたな、何しに来たんだか……で、今度の航空支援のコールサインは?」

<<Mobius1 Engage>>

「――ちょ、マジで?」

嘘です、たぶん。
417THE OPERATION LYRICAL:2008/11/16(日) 18:39:04 ID:fdnAqETf
投下終了です。
はい、クロス元はFPSの「Call of Duty4」ですね。
コメントで次回作はこれを!という声が多かったので、試しに予告編と言う形
で書いてみました。
プロットはまだ出来てないのでいつ本格的に始められるか分かりませんが、その
うち始めるとしましょう。
418名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/16(日) 19:02:45 ID:75Z5oFmL
むむむ、クロノもでてくるようですね。
これは興味深いです。
419名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/16(日) 19:07:29 ID:vSLD8D7N
あのジャージはこの手のロシアンマフィアの象徴ってことで
それはともかく乙です!続編期待してます!
420名無し@お腹いっぱい:2008/11/16(日) 23:13:09 ID:xxD9NKp5
SSのネタでCoD4クロスさせてるの書いてる自分としては期待せざる負えないwww


アレですね、オメガ11の空爆支援はベイルアウトによる特攻(ry
421名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/16(日) 23:53:01 ID:s0Y4fZJY
GJ!!
ザカエフの息子の息子はなぁ、なんか映画のポスターかよ!!って感じの写真になってなかったっけ?
最強の航空支援、メビウス1が来たら何もかも吹き飛ばしてくれるぞ。
敵陣地の高射砲もSAMも無視してなぎ払ってくれる
422名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/17(月) 00:25:06 ID:VB0I2Lh3
日向玄乃丈辺りを呼んでキャロと組ませて、セプテントリトンとか絡めたオリジナル展開の話を書きたいなぁ、と思った。
セプテントリトンとか世界調査局とか、時空管理局と親和性高すぎる設定でかえって話が作れなかった。
つーか設定多いよ! なのはも大概だけどそれより更に多いよ!
構想練ろうと思って調べたけど、調べれば調べるほど訳分かんなくなったよ!
あの会社は中二病の巣窟か!?
423名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/17(月) 01:07:27 ID:jlCSJoFT
えっ、核じゃなくてロスロトギアでジャクソンは死なないということですか!!
なに、その燃える展開……
えぇとゲーム本編と同じ結末じゃないといいなぁ……なんて思った
アレはホント涙出てきたもん……


ふと、ソープ、メビウス1、ストーム1がミッドで大暴れ なんていうとんでもないのが思い浮かんだ
424名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/17(月) 01:29:41 ID:JvEN6rd/
小ネタであった、パンプキンシザーズとのクロスも面白そうだw
ハンスは寝返らない方向でw
425名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/17(月) 02:45:08 ID:7int3OEe
>>422
全ての設定を正確に理解しようとしてる時点で奴らの思う壺だ
一見さんから見たアレの意味不明さは一種の様式美みたいなところがあるから
クロスSSを書く程度なら、各作品の一般公開設定ぐらいで済ませたほうがいい

まず間違いなく、設定の全てに忠実に話を作れる奴なんていないよwww
ただ忠告しておくと、セプには手を出さないほうがいい
だってあの組織が何なのか、現在進行形で完全に理解してる奴なんて一人もいないんだぜ?
426名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/17(月) 05:48:22 ID:4PktcqAB
αは痛い設定に定評のあるメーカー
427名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/17(月) 11:17:11 ID:ppe93gTI
>>404
GJ!
やっぱりユーノにはスネークが必要なんだぜ。
428名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/17(月) 12:02:04 ID:A7C6EFrZ
投下された作品に関する話題以外はウロスでやったほうがいいですよ
URLは>>1にありますので
429一尉:2008/11/17(月) 12:03:00 ID:1wfxK8Xx
スネークなら最強支援たよ。
430魔装機神  ◆BbNMlcrDFw :2008/11/17(月) 17:46:31 ID:DOgq1aQX
投下した皆さん、まとめてですみませんが本当にGJです。

そして、本当にお久しぶりです。
ようやく続きが出来たので、本日の11時ごろにラディカルノーヴェを投下したいと思います。
431魔装機神  ◆BbNMlcrDFw :2008/11/17(月) 17:47:19 ID:DOgq1aQX
すみません、下げ忘れました
432名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/17(月) 18:27:22 ID:NGViZHzs
魔装機神さんお久しぶりです!
そしてお帰りなさい!!
投下待ってますよ!!全裸待機だヤッホイ\(・∀・)/
433名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/17(月) 18:54:39 ID:8B1BTB4K
15分後に投下してもよろしいでしょうか?
一発ネタを投下したいのですが、もし予告がなければ15分後にします。
434名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/17(月) 19:03:17 ID:kOdeZvMI
>>433
支援
435名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/17(月) 19:18:12 ID:8B1BTB4K
失礼、それでは投下させていただきます。クロス先はSGA。海外ドラマ「スターゲイト アトランティス」

僕がこの資料を見つけたのは偶然だった。
その文献はただ、そこに存在していた。
本と呼べない、人によってはただの石にしかみえないだろう。しかし、僕はこれを本と表現する。
おそらく右下に書いてあるのは数字と思われるものだ。そして文章とおもわき物と挿絵。その挿絵はリングの形をしていた。
しかし、僕にこれは読めなかった。“これ”に興味をもった僕は自分の部屋に持ち帰り調べることにした。

ジェイル・スカリエッテの事件が終了し、六課が解散した。
僕も最後の作戦にはなのはへの援護と思い参加した。そして、事件が終わるとともに僕は自分の興味に没頭した。
興味の先、それは事件が起こる前に見つけた本。見つけてから半年、僕は何一つその本を解読することが出来なかった。
本の物質は、現在では何か見当がつかないもので作られているということが調べで分かった。
しかし、それが何なのかはわからない。

436名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/17(月) 19:20:35 ID:8B1BTB4K
僕は本を見つけてから2年がたとうとしていた。
その本に没頭することで僕は自分の関係を崩し始めていた。
数日前、ジェイル・スカリエッテの事件後から恋人関係になったなのはとの関係に終止符を打った。
すべては自分の研究の所為であることは理解していた。彼女に最後に言われたのは厳しいものではなかった。
しかし、彼女は寂しそうな顔をして、「互いの仕事もあるし、忙しいから別れよう」と伝えられた。
胸が痛まないといえばウソになる。しかし、僕は自分の研究を止めることを止めることが出来なかった。
いつしか、僕はこの本から興味とともにこの文献の内容がすごく重要ではないのかと思い始めた。いや、感じていたのだ。

 なのはとの関係が終わってから半年、本を見つけてから3年たっていた。
そこで僕はまた本を見つける。その本は僕が過去に見つけた物と同じ、石でできていた。
前回と違うことはそれが読めたことだ。その文字は地球、なのはの出身世界で言う、古代エジプト文字といわれるものだ。
地球で生活する時、自分ひとりであの世界を回って、興味をもったことがあり、読むことができる。
しかし、それはしっかりと読むことができるわけではなく、なんとなくであった。

それから2ヶ月後、僕は学会で発表をする。
次元世界の否定、自分たちの世界の存在、すべてにおける否定。僕が発表した論は否定されておわった。
奇人、変人と言われ、その論文のおかげで時空管理局「無限書庫」司書長としての地位を剥奪。
危険思想者を重要な仕事の位置に置けないというのが一番の理由ということらしい。
僕の研究は無限書庫から出てくる、この世界の古文から考えたものだ。
そして、僕はそこでまたあの本と同じようなリングを見つけ出す。しかし、それが何なのかはまだ分からなかった。

437名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/17(月) 19:23:50 ID:8B1BTB4K
無限書庫の地位を剥奪されたが、ある種のコネで以前の事件の首謀者、ジェイル・スカリエッテとの面会ができことになった。
自分が望んだことだ。ここ数年で何度も世界を渡り歩いてきたが、あの本になる話は聞かなかった。
最終的にこの人に辿りついたのだった。

「これはこれは、司書長様じゃないですか」
「元、です。何で知っているかは聞かないでおくよ、ジェイル・スカリエッテ。お前に聞きたいことがあってここに来たんだ」
「それは、どのような御用件で? こんな遠いところまで」

「ユーノ・スクライア氏、ここでの会話は記録されますが」
「構わないです、ジェイル・スカリエッテ。あなたはこのようなものを見たことがあるか?」

そういって僕はリングの絵を印刷してきた紙を看守にわたし、スカリエッテの手元に行くようにした。
それを手にした瞬間、彼は驚いた顔をして僕を見た。

「これを知っているんだな」
「まさかこれを発見する人間が管理局にいるなんて思いにもよらなかったよ」
「…おほめの言葉、どうも。しかし、管理局員ではないのでね。っで、これはなんなのですか?」
「私にもわからないさ。ただ、“星の扉”とだけは知っている。
もともと、これは聖王のゆりかご内にあったものだがね。そこから調べたさ」

聖王のゆりかごの中に?

「僕の研究施設はまだのこっているかい?」
僕は記録をとっている局員に目を向けると彼はまだ残っているといった。
「君がこれを何なのか気になるなら、直接見に行くといい」

そういって、彼は看守にメモを渡した。

僕はそれを受け取り、その場を後にした。
438名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/17(月) 19:26:04 ID:8B1BTB4K
彼が僕にくれたメモ、それはこの世界を変えた――――――――


 彼がくれたのは地下への道だった。研究施設の地下に行く道。
転送技術が必要だったのだが、爆破と砲撃で穴をあけ、そこに行った。
それがこの世界の命運を分けていた。

地下には“星の扉”は存在していた。
それが存在する部屋にの前にはすごく分厚壁があった。
彼に言われたメモに書かれたパスワードを打ち込み、僕は中に入って行く。

このとき、僕には護衛が付いていた。クロノから派遣されたの20名。
やけに多いが、それはスカリエッテの隠された研究施設を調べるためのものであった。


しかし、ここに入って帰ってくることができたのはたった5名だった。

中に入って、リングはすぐに見つかった。そして、リングとともに台のようなものもの。それはボタンを押すようになっていた。そこまではみた。しかし、
見ている最中で、”星の扉”は光はじめ、そして、その中から化け物が出てきた。

彼らが撃つ攻撃は僕たちが使う非殺傷とにかよったものだった。
直接的な傷はなく、気を失う。違うところといれば、バリアの上から僕たちの意識を奪うことができていたことだ。
僕以外に10名ほどの最初の攻撃から逃れることができた。そして、狭い部屋での戦闘がはじまった。
439名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/17(月) 19:28:41 ID:8B1BTB4K
戦闘員のうち、近接戦闘が主なものは大半がやられた。近接の場合、彼らが出すビームには弱いのだ。
距離をとり、僕たちはひとりずつ、始末していく。

敵が全員倒れたところで僕は安心していた。
それがあだとなった。リングの中から出てきた飛行物体に油断していたのだ。僕はあせって横の影に飛び込み、隠れて交戦しようとした。
他の局員たちも隠れようとしたが、飛行物体が発する光につつまれ、消えていく。
意識を失った者たちもそのようにして消えていき、飛行物体は僕たちが入ってきた穴から出て行た。
怒涛のような出来事に動きが遅れた。僕はあせってクロノに念話を飛ばし、連絡。4機の未確認飛行物体が外に出たことを伝えた。



4機の飛行物体は近隣の街を襲い、そこに住んでいた人たちは人だけがあとかたもなく消えていた。
そして、その4機も消えていた。
440名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/17(月) 19:31:14 ID:8B1BTB4K
時空管理局はこれを重く見て、リングの前に部隊を置いた。
破壊すればいいという声も出たが、壊すことでの危険性が分からないために研究チームとともに配備することになった。
そこにはエースオブエースである、なのはも参加していた。そして研究チームには僕、ユーノ・スクライアを筆頭とした考古学者チームと犯罪者・ジェイル・スカリエッテを筆頭とした科学チームを起用した。
当然スカリエッテは両腕を動かせないようにされ、口頭だけでの参加としていれられた。
名目上、アドバイザーである。


あれからリングがたびたび起動することがあった。
そのたびに出てくる化け物たちをぼくたちは倒し、捕獲していった。
しかし、捕獲した化け物たちに殺される看守たちが増え…やむえなく、捕獲された化け物たちはその後殺され研究されるようになっていった。
あまりいい話ではないが、これは時空管理局もやむえないと感じたのだろう。批判もあるが、
自分の世界の人々を守ることを前提としなくてはならないのだ。

そもそも、一度は交渉に出ようとしたが、その時にひとりの士官が殺されてしまったのが始まりだ。



リングを見つけてから数日、このリングの名前がわかった。

スターゲート

星を移動するためのものらしい。
そして、同じように一つわかったことがあった。
時空管理局、すなわち僕たちがいるこの場所は違う次元の世界ではなく、地球からは遠く離れた銀河に存在する星にひとつだということがわかった。
これは管理局、技術主任が発表したことにも基づいている。
441名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/17(月) 19:32:29 ID:8B1BTB4K
スターゲートから化け物が出て、1年。僕たちは出てくる化け物たちと戦い続けた。そして、新しい部隊が出来上がっていた。旧六課と言われるぐらいの面子。それは時空管理局がこのプロジェクトにどれだけ力を入れているかわかる。

それは、「SG課」。そう言われるものだった。


そして、僕たちはスターゲートから現れた地球人たちと接触する。SGA、僕たちの部隊名は大体のものからSGAの援護として、SGAに加入し、互いに助け合うための部隊になった。



SGAには旧六課と、旧ナンバーズ、そしてジェイル・スカリエッテが行くことになった。
SG課にはエリートを集めたバックアップチーム。
そうして、銀河をまたにかける戦いが始まった。

442名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/17(月) 19:33:15 ID:8B1BTB4K
「ふむ、おれも日本語を勉強したほうがいいかな」
【念話で会話できるからいいじゃないですか?】
「フェイトみたいな美女と話すならその声を聞いたほうがいいじゃないか?」
【いつもお上手で】

基本の会話が念話で行われた。それはSGAと時空管理局の言葉がちがったから。

「ユーノさん、最近どうなの?」
「なにがだい?」
「高町さんとのことさ」
「普通、聞くかい? こんな状況で」

互いにレイスに捕まることもある。

【強いな…ロノン、不思議とあなたに興味がわいたよ】
「シグナム、お前とやりあうと俺も練習になるからいいぜ」

ライオンとシグナムはたがいを磨き合い交流を深めていいた。
ナンバーズも、そしてジェイル・スカリエッテも…

「しかし、“ゆりかご”がエンシェントの船かぁ。言われてみればレイス対策のためだったのかもね。ヴィヴィオがエンシェントだったってのも驚きだけど…」
 マッケイが独り言でそれを言いながらヴィヴィオのがいるところに向かって歩いていくのを横目で見ながらゼレンカはため息をついていた。
「ゼレンカ、そっちはどうだい?」
「そろそろできそうだよ、あとはマッケイだけだね。そっちはおわったの?」
「当然さ、私をなんだと思っているんだ?」
「天才なんて、ここにはたくさんいるさ。でもおどろきだよ、ジェイルのすごさは」
「はは、私もゼレンカとマッケイには驚きだよ。生まれてはじめてさ、こんな喜びをえてるのは」
「こんなのが楽しいのかい? ジェイルは変わりものだね。僕はつかれたよ」
「寝てこいよ、ゼレンカ。マッケイがここに来たら伝言を伝えておいてやるよ」
「ドクターお茶持ってきましたよー」
「あぁ、ありがとう、セイン」

443名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/17(月) 19:34:34 ID:8B1BTB4K
一番変わったのは彼かもしれない。彼は友ができ、喜びを覚えていた。
しかし、彼は時よりなやんでいた。自分だけがこんな幸せを感じていいものなのか、自分が犯罪者であることを忘れそうになるのが。

「ドクター、どうかしましたか?」
アトランティスのブリッジで彼が空の二つのつきを見ながらコーヒーを飲んでいると後ろからウーノがうしろから声をかけてきた。
「いや、気にしなくていい」
「…また悩んでいるのですか」
「私がやったことで苦しんだ人がいた。あの時はこんなことを感じなかったのにな」
「…ドクター、過ぎたこ」
「過ぎても罪は消えないさ。 アトランティスのやつらはいいやつらばかりだよ。ゼレンカも、マッケイも、シェパードも…私を仲間と呼んでくれる」
ウーノは暗い顔をしている彼をうしろから見つめることしかできなかった。
「つぶれてしまいそうだよ、自分の罪に。こんなにも仲間ができると人は、もろくなってしまうんだな。…仲間が出来たからこそ喜びを感じれてよかったよ。そう思える自分もいる」
ウーノはゆっくりと歩いていき、ジェイルの背中に抱きついた。抱きついた時の拍子で、ジェイルの長い白衣が揺れた。
「私が支えます、ドクター、いえ、あなたをナンバーズのUNOとしてではなく、女性のウーノとして」

彼を悩みを支えるものもいた。しかし、彼は自分の罪を許せなかった。
444名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/17(月) 19:35:01 ID:jLhpbgG8
とりあえずスカリエッティじゃないか?
445名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/17(月) 19:38:23 ID:8B1BTB4K
「ゲートをあけろ!!」
「だめだ、バリアを外すな!」
「ジョン! まだ、向こうにジェイルがいるんだぞ!!」
「あの状況で今ゲートを開ければアトランティスをレプリケーターに占拠されるだけだ!!」
「だからといって、向こうで作業している彼を見捨てるのか!!」
「誰もそうとはいってないだろ!!」
「今やっていることはちがうのか!」


…たった一つのミスが起こした、大きな意味。


≪…聞こえるか、アトランティス≫
「ジェイルっ!生きていたのか!」
「ドクター!」

≪少しうるさいよ、大丈夫さ。まだ生きている。もうすぐいなくなるがね≫

通信が来た。それは助かった合図でもなく、援護を頼む合図でもなかった。

≪レプリケーターの船にいるんだよ。逃げることはできない。でもできることはある≫

そういって、彼は船と周囲にある6機丸ごと破壊する方法を話した。
自分を犠牲にして。そして、彼は語り始めた。ゆっくりと、自分が過去にしたあやまちに謝罪するかのように。




446代理:2008/11/17(月) 20:17:27 ID:H3VC+OVb

≪…済まなかった。今だから言える。いっても許されないのはわかっている。しかし、いま言わなくてはならないと思った≫
「そんなのは面と向かって聞かせてください!」
≪はは、エースオブエースは厳しいな≫
「あなたがそんな風に笑うなんてあのときでは信じられないですよ」


≪フェイト・T・ハラオウン、君にはあやまらなくてがならないことがたくさんあるな≫
「いいんです、私は自分が自分であることに自信を持っています」


≪マッケイ、ゼレンカ、すまないな。こんど地球で飲みに行く約束は守れなくなったよ≫
「おいおい、やめろよ。まるで死ぬ前のセリフじゃないか」
「そうだよ、ジェイル。帰ってこいよ」


≪ウーノ…≫
「…」
彼女は涙を流していた。顔をうつむかせて、画面に顔を向けることが出来なかった。
≪娘たちのことは任せたぞ。お前の妹だからな、お前がいれば大丈夫だ≫
「…」
彼女は声を殺しながら泣いた。他のナンバーズも、涙を流した…

≪…SGA、作戦の成功を祈っている≫

それとともに、通信は爆発音とともに消えた。

「レプリゲーターのオーロラ、6機が消滅しました」

その声を聞いてもあたりはシーンとしていた。
全員はゆっくりだが敬礼していた。その眼には涙を浮かべるものもいた…






SGAの戦いは長い。その戦いで敵を倒すことがあれば、仲間を失うこともある。それでも彼らは星のために、戦っていくのだ。自分たちの信念のために…
447代理:2008/11/17(月) 20:17:57 ID:H3VC+OVb
代理投下終了
448名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/17(月) 20:51:42 ID:zcLzkxEe
とりあえず「てにおは」からなんとかしろ
わけがわからん事になっている
449名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/17(月) 20:59:12 ID:4sQFpXl5
>>448
お前の読解力が壊滅的なほどに無い、ということが分かった。
450名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/17(月) 21:05:03 ID:Cj4t4hze
>>448
「てにをは」だよ。
451名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/17(月) 21:30:38 ID:me+ZVkyY
とりあえず・・・
「スカリエッテ」とひたすら同じ語尾「た」が気になって仕方なかった。
452リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w :2008/11/17(月) 22:49:33 ID:vqnmHktj
一か月ぶりのご無沙汰です。
もうね、本当に筆が進まないのなんの、皆様大変長らくお待たせいたしました。
魔装機神氏の次に投下させていただいてよろしいでしょうか?
453魔装機神  ◆BbNMlcrDFw :2008/11/17(月) 22:52:55 ID:DOgq1aQX
少しばかり早いですが、そろそろ投下したいとおもいます
454魔装機神  ◆BbNMlcrDFw :2008/11/17(月) 22:54:44 ID:DOgq1aQX
「………」

ただ、彼女は大の字になって倒れていた。
体が自由に動かない。
動かそうとすると、ミシミシと体から悲鳴が聞こえるような気がする。
これ以上は限界だ、動かすな……と体が警告している。

(も、もう無理)

もう、息をするのも辛い。
しかし、呼吸をしなければ、人は生きていけない。
辛さに耐えながら、彼女は息をしつつ夕焼けに染まっていく空を見る。
普段は意識してみないけど、空ってこんなにきれいなんだ……と彼女はしみじみと思う。
少女は感慨にふけりながらも、体の警告を無視し首を横に倒す。
そこには、自分と同じように倒れこんでいる姉妹達の姿。
どの姉妹も、もうほとんど虫の息。
その光景はまさに阿鼻叫喚、地獄絵図。
少女はそんな姉妹達を、そして自分の体を見て、ポツリとつぶやく……

「あの人達……人間じゃない………ティアナたち、よく毎日受けられるな……」

ここは、機動六課の訓練スペース。
現在、ナンバーズ更正組は大絶賛訓練中であった……


最速少女ラディカルノーヴェ  2話


「ぜぇ……ぜぇ……」

もう日が暮れようとしているとき、ナンバーズ更正組は木にもたれかかっている。
J・S事件以降、更正施設に入ってからはろくに体を動かしていないような気がする。
しかし……それでもだ。
このエースオブエースと呼ばれる高町なのは一等空尉の教導は、今まで自分達が行ってきた訓練よりも、確実にきつい。

「スバルたちが……あれだけ成長するのも……はぁ…納得だよね」
「ど、同感っす……ひぃ……」

セインは視線を移すと、今度はスバル達フォワード陣がなのはたちにかかっていっている。
自分達のときとは打って変わって、本気でかかっている隊長陣。
毎日あれだけやっていればそりゃあ強くなるはずだ……と、この訓練をほぼ毎日受けているフォワードたちを見る。
当初は、ガジェット1型ですら苦戦していたと聞いたとき、そのときの彼女達が想像できない。
説明が遅れたが、現在、ナンバーズがこの六課の訓練場にいる理由。
一言で言えば、慣らしのためだ。
先のJ・S事件から、彼女達はろくに体を動かしていない。
そんな鈍っている体を動かすために、と訓練に参加させているのだ。
その件で、隊長と副隊長陣はもちろんのこと……

「ふぅ、いい汗かきました」

ほぼ毎日が実戦形式という事で、ナンバーズの監視という名目で、聖王協会のシスター、シャッハ・ヌエラも訓練に参加している。
そのシスターは、まるであの訓練を運動のように、すがすがしいまでの汗をかきながら、開放感に満ち溢れた笑顔をさらけ出している。
455魔装機神  ◆BbNMlcrDFw :2008/11/17(月) 22:56:07 ID:DOgq1aQX
「…………」

しかし、そんな彼女を、セインは恐ろしい目で見る。
今度、いつその矛先が自分ひとりにむけられるかわかったものではない……
なぜか、彼女は自分の事をなぜか気に入っているように見える。
何をされるか、わかった物ではない。
今のうちにいろいろなことに対策を立てなければいけない……

「けど、これだけ動くと、さすがにおなかが減るッスねぇ……」

ふぁ〜〜、とウェンディはおなかをさすると、同時にと気持ちのいいほどにお腹から音が聞こえてくる。
これだけ動けば、嫌でも腹は減る……

「……よく食べ物のことが連想できるね。僕は逆に何も入りそうにないんだけど」

のだが、後衛ポジションで、サポートがメインのオットーは違った。
かつての訓練でも、彼女は主にISのコントロールがメインで、飛んだりはねたりはあまりしない。
そんな彼女が、いくら戦闘機人といえども1日中暴れまわれば、一番先にへたれこむのは明白だった。

「お、オットー、大丈夫?」
「う、うん……」

もうへとへとを通り過ぎ、完全に青ざめているオットーを、ディードは心配そうに見る。
こう見ると、まあ確かに仲がいい双子の姉妹なのかもしれない……髪はともかく目が似ている。

「……」

ただ、そのやり取りを眉一つ動かさず、疲れている表情を除けば、ポーカーフェイスで行っているのだ。
なにか、素人役者が演技をしている、というイメージが浮かび上がってしまう。

(けど、最近は二人ともよく喋るようにはなったよね?)
(ああ、あの二人も少しずつだが変わってきている。姉としては嬉しいことだ)

そのうち、感情も表に出すようになるだろう、とこの中では長姉のチンクは笑みをこぼす。

「は〜〜い、皆さん、お疲れ様でーす」
「で〜〜す」

そこに、やけに明るい女性の声と、無邪気な声が聞こえてきた。
それに一同は反応すると、そこにはスポーツドリンクをもつ二人の女性。
一人はメガネをかけた、六課の制服を着用している女性。
もう一人は、6,7歳位の女の子で、こっちの方は普通の私服姿。
前者は、六課の管制、さらにはフォワード陣全員のデバイスの面倒を一手に引き受けているシャリオ・フィニーノ陸曹、通称シャーリー。
後者は、J・S事件の後、本格的に高町なのはが養子として迎えた、高町ヴィヴィオ。

「はい、これ」
「あ、ありがとう」

ディエチはヴィヴィオを見て、少々複雑な顔を浮かべてドリンクをうけとる。
自分達は、彼女にひどいことをしてしまった。
それで、少しは根に持っているだろうとディエチは思っていたのだが、当のヴィヴィオはまるで気にしている様子もなく、満面の笑みを自分に浮かべてくる。
そんなヴィヴィオに、ディエチは微妙な笑みしか返せない。
しかし、そんな笑みも、次のシャーリーの言葉に身を凍らせる。
456名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/17(月) 22:57:28 ID:nYAXOTod
支援
457魔装機神  ◆BbNMlcrDFw :2008/11/17(月) 22:58:00 ID:DOgq1aQX
「なのはさんの訓練はどう?あれでもまだゆるいほうなんだけど」

にっこりと手に持っているドリンクを渡しながら、シャーリーが口にした言葉に、一同はえ?と彼女を見る。
まあ、今やっているスバル達を見れば、当たり前なのだろうが……

「まずは、今まで動かさなかった分の体力を取り戻して、それから本格的な訓練に移るんじゃないかな?」

スバルたちの訓練もほとんど付き添いで見ていたシャーリーの予想だから、おそらくあっているだろう。
まだきつくなるのか……と深さはそれぞれだが、ため息をつく一同。
確かに、今回はただ走ったり飛んだりするだけだったから、次からは戦闘を交える、ということだ。

「本来だったら、もっとゆっくりと、確実にいきたいんだけど……今回ばかりは時間がねえ。
教えたいこともたくさんあるっていてたし」

本来、なのははこのような突貫的な訓練を嫌っている。
まずは基本からこつこつと教えていくのが彼女の教導方法だ。
しかし、今回は全くといってもいいほど時間が足りないのだ。
名前も素性も全くわからない謎の男が、どのような理由でノーヴェをさらったのか……
それを含めて、今現在ではわからないことだらけである。
彼が次の動きを掴むまでに、彼女達を以前のように動かせるようにはしたい、となのはは思っている。
運よく、多少腕はさび付いているが、彼女達は基本の体が出来ている
だからこその、現在の突貫訓練だ。

「確かに、私たちもまごまごして入られないからな」

チンクは、訓練中のスバルを見て、決意を秘めた顔をする。
全ては、大切な妹をさらって行った男に、一撃お見舞いするため。


丁度そのころ。別のところにいる姉妹も、ひとつの決意を胸に秘めていた。

「で、話したいことって何だよ?」

ミッドチルダ南部の森で、ストレイト・クーガーとノーヴェはいる。
二人は、お互いに向かい合うように立っている。
いつものように周囲を散策していると、ノーヴェの方から「話がある」とここに呼んだのだ。
少々の静寂が訪れた後、ノーヴェはゆっくりと口を開く。

「あたしは、前にたくさんの人に迷惑をかけてきた……」

ノーヴェは、自分の手を忌々しげに見る。
自分は、以前この手で数々の悪行に手を染めてきた。
さもそれが、当然の事のように。
自分は戦闘機人。所詮は戦うことしか出来ない存在。
そう思っている。

「収容所に入ってからも……普通に暮らせていけることが出来るのか、ちょっと不安だった」

自分達と同じ戦闘機人でありながら、普通の人となんら変わらない生活を送ってきた、タイプゼロと呼ばれる二人。
しかし、彼女達と自分達とでは、これまで生きてきた環境がまるで違う。
そんな自分達が、いまさら彼女達のように社会に溶け込めることが出来るのか、とても不安なのだ。
珍しく弱気なノーヴェの話を、クーガーは黙って聞いている。

「そんな事を考えてたらお前と会って……それから、いろんな所を旅して……笑ってる人たちを見た」
458魔装機神  ◆BbNMlcrDFw :2008/11/17(月) 22:59:18 ID:DOgq1aQX
ノーヴェは、ずっと見ていた手を握り、クーガーを見た。
それからは、クーガーといろいろなところを旅して、そこに住んでいる人たちをこの目で見てきた。
幸せに暮らしている人々を、将来を夢見ようと奮起している人。
本当に、いろんな人を見てきた。

「そんな人たちを見て、あたしは、自分に出来ることをしたいって思った」

以前、川辺で少年を助けたように、自分のできる事をしてみたい。
それが、彼との旅を通しての、彼女なりの決意。

「う〜ん、いい決意だ。俺がわざわざ連れ出した意味がある。ノーウェ」
「ノーヴェだ」
「ああ、悪い悪い」

ノーヴェの決意に、クーガーは感動したようにうんうんと頷く。
もしかしたら、最初から仕組んでたんじゃないのか?と疑問を持ちたくなるように……
それもつかの間、うんうんと感動していたクーガーが、不意に彼女を見る。

「で、俺を呼んだのはその事を聞いてほしいからなのか?」
「!?」

彼の突然の言葉に、ノーヴェはうつむいて黙り込む。
これからが話すことが、彼を呼んだ本当の理由。
最初は彼女も戸惑っていたが、意を決してクーガーを見る。
それは、何かを決意した澄んだ目。

「あのとき、助けてくれたお前を見て、改めてお前がすげえ奴なんだなって思った」

数日前、襲ってきた熊をいとも簡単に撃退したクーガー。
あの目にも止まらぬスピードと、その速さが合わさった強烈な蹴り。
それを目の当たりにして、ノーヴェは自分がどれだけひ弱な存在なのかを思い知らされた。

「だから……たのむ!!あたしを強くしてくれ!」

ノーヴェは、頭を深く下げる。
彼女がここまで頼み込むのは珍しい。
それほどに切実な願い、ということだろう。

「あたしは、もっとつよくなりてぇ。強くならなきゃいけないんだ!だから……頼む」

ノーヴェが、誰かに頭を下げるという事は滅多にない。
それほど、彼女の思いは強い。
そんな彼女を見て、クーガーはにやり、と笑みを浮かべる。

「それぐらいならお安いごようだ」
「ほ、ホントか!」

少々あっけに取られたが、クーガーの二つ返事に、ノーヴェは満面の笑みを浮かべて彼を見る。
彼女は素直になれないところがあり、照れや嬉しさなどが来る前に、つっけんどんな態度を取ってしまう。
そんな彼女が、ここまでの笑顔を見せるのは珍しいケースだ。
それほど彼を信頼し、また自分の心から素直に彼を認めているということだ。
彼女は、頼れる人に弱いのかもしれない。

「まあ、俺にとっても暇つぶしに丁度いいし、何より少々口が悪いが美少女の頼みだ。断るほうが野暮ってもんだからな」
「な……び……びしょ……」
459魔装機神  ◆BbNMlcrDFw :2008/11/17(月) 23:00:18 ID:DOgq1aQX
美少女、という言葉を聞いて、ノーヴェの顔がトマトのように真っ赤になった。
自分をこのように呼ぶ人がいないから戸惑っているのか、それとも美少女と呼ばれて単に照れているのか。

「そんじゃ、早速始めるか?」
「え……」
「早く強くなりたいんだろ?だったらまずは練習あるのみだ」

あっけの胃取られているノーヴェを楽しむような目で見て、クーガーはとんとんとつま先をたてる。
ノーヴェはきょとんとしながらも、ああと頷いてファイティングポーズをとる。
しかし……

(や、やる気あるのかよ……)

さっきから手はポケットに突っ込んだまま微動だにしないクーガー。
いくら足技がメインだといっても、本当にやる気があるのだろうか、と思えてくる。

「そういや、お前にひとつ言い忘れていた事がある」
「あ?」

クーガーは、眼鏡にかかっている髪を払うと、意識を集中させるように下を向く。
くる……と瞬時に悟ったノーヴェは、緩めていた気を引き締めなおす。
それと同時だった。
彼の周囲から、虹色の光の粒子が突然あふれ出した。

「なんだ……?」

その、彼女の目から見ても見とれる輝きを持つ粒子は、クーガーの周囲にある地面をえぐった。
それだけではない、周囲の木々もその粒子に触れた瞬間、分解されるように消えていく。

(あれは……)

あのえぐれた地面、中途半端に残っている木々。
それは、彼に助けられた時に見たふと見た光景と一緒なのだ。

「俺も、お前のようにちょっと代わった特殊能力を持つ」
「なに?」
「それは、物質を分解し自分に合った能力に再構成させる力。それはアルター能力と呼ばれる。そして!」

彼の周囲に漂っていた虹色の粒子は、だんだんと彼の足に収束していく。
収束していくとともに、彼の靴が、今まで履いていた靴とは別のものに構成されていく。

「俺のアルターの名前は、ラディカル・グッドスピード!!……脚部限定!!」

粒子が消えると、そこには、いつも彼が乗っている車に似たような形の靴が装着されていた。

「お前にはひとつ体験してもう事がある。それは!」

クーガーは、陸上で言うクラウチングのポーズをとり、戦闘体制にはいる。
鍛える前に、彼女にはひとつ体験してほしいことがある。
それは、彼が故郷「ロスト・グラウンド」と呼ばれる地域で「最強のネイティブアルター」と呼ばれた所以。

「受けてみろ、俺の速さを!!」
「!?」

ただ、一言も言えず、彼が視界から消えた瞬間、強烈な衝撃が遅い、彼女は天高く宙を舞う。
その意識を落としていった。
訳が解らないまま、彼女は意識を闇に落とした。
460名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/17(月) 23:01:40 ID:NLY4Sw6I
支援
461魔装機神  ◆BbNMlcrDFw :2008/11/17(月) 23:01:45 ID:DOgq1aQX
「それで、私に協力してほしいこととは?」

時空管理局、その本局にあるひときわ暗い通路を、数人の魔術師、そして研究者が一人の男を取り囲むように歩いている。
男は囚人服のままでそれ以外は何も着用しておらず、手には手錠、さらにはバインドがかけられている。
それにしては、余りにも異様な人数だった。
しかし、男はそれに何も疑問を持つことはなく、腰まで伸び、少々汚れている紫色の髪を揺らしながら歩いている。

「それはもうすぐ解る。黙っていてもらおうか」

研究者の一人が、彼の言葉に眉を吊り上げながらも、その歩むペースを乱す事は無い。
しかし、その研究者の言葉に、男はくくく……と醜悪な笑みを浮かべる。
獄中生活で気でも狂ったのだろうか……

「なにがおかしい」
「いや、君達は人に頼み込む姿勢がなってない、と思っただけだよ」
「!!」

男の言葉に、研究者はかっとなり、おもむろに男を殴りつけた。
彼の手は拘束されてるので、まるで吸い込まれるように地面に倒れる。
それを見た武装局員がさっと二人の間に割って入る。
研究者は怒り肩で息をしつつ、その男を睨みつける。

「ジェイル・スカリエッティ……礼儀がなっていないのは君の方だ。君は今の立場というのが未だにわかってないようだな?」

その男こそ、先のJ・S事件の主犯、ジェイル・スカリエッティ。
スカリエッティは一人の局員の手を借りて立ち上がると、もう一度その研究者をみて笑みを浮かべる。

「解っているさ……ただ、投獄されているただの一犯罪者に過ぎない私を出向かせる、管理局の人材不足は相変わらずのようだな」
「な!……」
「一つ言わせてもらおうか。私は君達に「協力」する気は一切無いという事を忘れないでもらおうか。
あくまで、私はノーヴェの行方を捜す条件のために「取引」しているだけさ」

スカリエッティは、研究者のすぐそばまで近づき、すれ違いざまにポツリとつぶやいた。

「それに、そんな事件を起こした男を作ったように命じたのは、どこの組織だったかな?」
「ぐ……」

スカリエッティの言葉に、研究者は黙り込んでしまう。
そう、彼は普通に生まれてきた人間ではない。
彼もまた作られた存在。
それも、管理局によって……
スカリエッティは、何もいえない研究者をみると、今度は今までとは違う笑みを浮かべる。

「重犯罪者でも、作られた存在であっても、わたしとて人の子でね。ずっと監獄で生活してて。話し相手がいなかったものでね。
少々おしゃべりが過ぎたようだ」

そうつぶやくと、彼は静かに歩き出し、それにつられるように武装局員と研究者も続いていく。
先ほどまで彼と口論をしていた研究者も、しぶしぶついていく。

「ここだ」

そして、局員に案内されたのは、とある研究施設だった。
そこには、数人の人が入ったカプセルや機材がいくつもあり、研究員がせわしなく動いている。
しかし、そんな研究員達も、スカリエッティを見ると動きを止める。
462魔装機神  ◆BbNMlcrDFw :2008/11/17(月) 23:02:48 ID:DOgq1aQX
(あれがジェイル・スカリエッティか)
(その力をちゃんと使っていれば、天才といわれていたものを……)

仕事中にもかかわらずひそひそと話を始める研究員を無視して、スカリエッティは真っ直ぐ、その責任者であろう研究者へと歩み寄る。

「君がジェイル・スカリエッティか……私は今回の件の主任のラーボ・ルクスという」

その主任と名乗る人物は、何か微妙な表情を浮かべ、お互いは握手する。

(ルクス……)

その中、スカリエッティは彼のファミリーネーム、「ルクス」という名前に少し違和感を覚えた。
管理局に属する一研究者など知るはずが無い。
しかし、何か懐かしい……ずっと前に聞いたことがあるような気がする。

「それで、見てほしいのはこの先にある。来てくれ」
「この先?あれはなんだね?」

スカリエッティは、首だけでポッドの中に入っている誰かを見る。
話とは、彼等のことではないのか……

「あれはまだ意識が無い。向こうに意識を回復させた唯一の男がいる。まずは、そいつから詳しい話を聞いてくれ」

ラードは、静かに彼をその目的の場所まで案内する。
それと同時に、先ほどの魔道師もぞろぞろと同行していく。
なんでも、この先には危険なものがあり、念のために武装隊に待機してもう、との事。

(結局、最後まで何か教えるつもりは無い、か……)

まあ、いいだろう、とスカリエッティは気にせず彼等についていく。
その時、ラーボは彼に聞こえないようにしたのだろうか、小さくつぶやく。

「まさか、彼とこのような形で会うとはね」

もしかしたら聞き逃していたかもしれないしラードの言葉。
それを聞いて、スカリエッティはああ、と小さく頷いた。
先ほどから気になっていた「ルクス」という言葉。
そして、さっきのラードの言葉と自分を見たときの奇妙な表所。

「なるほど……」

一人小さく納得し、それを聞いた彼の近くにいた魔道師はスカリエッティを見るが、彼は気にせずそのまま歩みを止めず、ラードの後をだまって追う。
彼が「自分を作った」者の一人の弟か、はたまた子か、孫かは定かではない。
だが、その血族というのは大まか正しい判断だろう……
彼も、その事を知っているはずだ。
でなければ、先ほどの言葉の意味が理解できない。

「ここだ、くれぐれも注意してくれ」

そこには、重々しいほどまでに厳重に魔力による鍵が施された大きな扉。
よくもこれだけの封印をするものだ、とスカリエッティは感心してそれを見る。
自分ですら、ここまでの事はされていない。
いったい、どれほどの人物はここにいるのか……
463名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/17(月) 23:03:40 ID:NLY4Sw6I
支援
464魔装機神  ◆BbNMlcrDFw :2008/11/17(月) 23:04:05 ID:DOgq1aQX
「あ、主任」

門の前にいる、数人の門番も。自分達に気付き、さっと一礼する

「あれから、何か変わった事は?」
「いえ、なにも……今は静かなものですよ。ようやくここが別世界だということを判断したのでしょう」
「そうか……まあ、おとなしいならそれに越した事はないか」

門番とラーボの話を聞くと、その人物は時限漂流者か何かだろうか……
なにか、特殊な能力でも持ってるのか……よほどの危険人物なのだろう。

「もう一度彼と話をしたい、扉の封印をといてくれ」
「は!」

ラーボの言葉に、門番と数人の武装隊は、扉に施された封印を解除に取り掛かる。
これだけの封印だ、解除をするにもかなりの時間を要するだろう。

「ずいぶん大した封印じゃないか。ロストロギアでも封じているのかね?」

現在、取り残された形となったスカリエッティは、ラーボにこれから会う人のことについてたずねる。
少しくらいの知識は欲しいところだ。

「いえ、中にいるのはロストロギアどころか魔力すらも持っていない人ですよ。ただ……」
「ただ?」

ラードは、いかにも目の前の人物を睨むような形相で睨む。

「奴は、魔力とは別の、恐ろしい力を持っている」
「力?」
「はい、おそらく厄介度で言えば、ISよりも……」
「ほう、それは……」

スカイエッティは、少し興味を持ってその扉を見る。
自分が開発した戦闘機人が使う特殊能力、ISよりも厄介といわれれば、一研究者として興味を持ってしまう。
やはり、自分は今でも「無限の欲望」であるようだ。

「封印は解除されました。毎度のことですが十分に注意してください。武装隊は後ろで待機させておきます」
「ああ、解ってるよ」

いつの間にか封印は解除され、扉には無骨で重々しい扉だけが残った。
二人の局員が、慎重に扉を開ける。
その重厚な見た目と同様に、重々しい音を立てながら、ゆっくりとその扉が開かれていく。
その部屋を見ると、それは凄惨なものだった。
部屋中が抉れており、もう部屋などと呼べる状態ではない。
その部屋の真ん中に、幾重ものバインドで拘束された一人の男がいた。
その男は奇怪な、どこかの制服らしいものを纏っていて、ぐったりとしたまま下を向いている。
この部屋は、彼が一人でやったのだろうか?
ならば、ここまで厳重な封印をしていてもおかしくは無い。

「なんだよ……飯の時間には、まだはえぇんじゃねのか?
それとも釈放でもしてくれんのか?」

男は、ゆっくりと視線を上げながら、その顔をさらす。
見た目は、30前後といったところだろうか。

「今日は、君に合わせたい男がいてね」
「なんだ……釈放じゃねえのかよ」

男は、さもがっかりした様子で肩を落とす。
よほどこの部屋が不便で仕方が無いようだ。
465魔装機神  ◆BbNMlcrDFw :2008/11/17(月) 23:05:11 ID:DOgq1aQX
「君が常識ある人なら、すぐ釈放なんだがね……残念ながら、君の力は危険極まりない上に、性格も非常に危険だからね」
「ちっ……いつでも俺等は嫌われ者かよ」

男は、自嘲気味に笑いながらラーボを見る。
反論しないという事は、それを認めているのだろうか。

「で、俺に話したい奴って言うのは誰なんだよ?」
「私だよ、私はジェイル・スカリエッティ。かつては科学者だったが、今はただのしがない一犯罪者だよ」

スカリエッティは男の前に立ち、大げさに手を広げて自己紹介をする。
さも、自分は偉いんだぞ、といわんばかりに。
男はそんな彼を奇異な目で見る。
男にとって、彼の第一印象は「変なやつ」だ。

「で、その元科学者の私は、君の変わった能力というものに興味があってね」
「へえ、俺のアルター能力にかい?」

アルター能力。
今まで聞いたことも無い言葉に、「無限の欲望」である自分が、目の前の「アルター」という言葉に喜びを、ときめきを感じている。
管理局に手を貸す、というのは腹が煮えくり返るほど腹が立つ。
しかし、一瞬だけこれがノーヴェを助けるため、というのを忘れそうにもなるほどスカリエッティは興奮している。
そんな彼を見て、後ろで待機している研究者は、ただ呆然と彼を見る。
あれが、道さえ間違えなければ間違いなく天才とされ、後一歩のところまでミッドチルダを危機に陥れた「無限の欲望」そのもの。

「やっと見つけましたよ、HOLY所属のC級アルター使い、立浪ジョージ」

そこに、彼の興奮を邪魔するように、突如後ろから謎の声が聞こえてきた。
そこには、黒いスーツを見に纏った、蛇を思わせる特徴的な目をした男。

「誰だお前は!?ここは立ち入り禁止のはずだぞ!!」

入り口で待機していた武装局員は、すぐさま男の方へ向き、デバイスを構える。
突如現れた男はそれに意を解さず、ただにやりと笑みを浮かべるだけだった。

「申し送れました。私は無常矜持と申します。以後、お見知りおきを……ああ、もうその必要はありませんね。
あなたたちは、ここで死ぬのですから」

その後、そこを見かけたものが見た光景は、局員と研究者の屍骸だった。
その報告では、その屍骸の中に、ジェイル・スカリエッティ、そして投獄されていた男は含まれていなかった……
466名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/17(月) 23:06:45 ID:qgwUCWFW
支援
467魔装機神  ◆BbNMlcrDFw :2008/11/17(月) 23:07:20 ID:DOgq1aQX
これにて投下終了。
久しぶりに投下するので、新鮮な気持ちで投下できた。
次は早く投下できればいいと思ってます。
468名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/17(月) 23:11:18 ID:NLY4Sw6I
>>467
GJ!!
なのはさんとの訓練を受けて数の子達はどう変わるのか。
他のアルター使いも出てきて楽しみです。
469名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/17(月) 23:18:05 ID:qgwUCWFW
GJ!!です。
立浪か、こいつは砲撃は強いですが接近戦がなぁ。そして、無常wスカ博士の手で量産型戦闘機人兼アルター使いが生まれるのかな?
ただ一つに気になったのは、ナンバーズが肉体的に訓練についていけなかったことですかね。
精神的になら分かるんですけど、肉体的についていけない場合、最新型戦闘機人なのに筋力が魔導師以下、
そんなのを中将は期待し、スカ博士は誇ってたとしたら……相当のアホ?
ただ、骨格に金属を使用しただけの人間になってしまいますから、筋肉や心肺機能も強化や人工的なもので作っていると思いますし。 
470名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/17(月) 23:25:18 ID:NLY4Sw6I
>>469
う〜んそうなるとスバルはどうなるんだろう。

>>467
前は粗野な感じがしたノーヴェが、またとても可愛くてよかったです。
471名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/17(月) 23:29:14 ID:qgwUCWFW
>>470
ここだと、投下の邪魔になってしまうので、ウロスにいきませんか?
472名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/17(月) 23:42:49 ID:NLY4Sw6I
皆さん失礼しました。
473リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w :2008/11/17(月) 23:50:45 ID:vqnmHktj
魔装機神氏、GJでした。
ではそろそろ自分の投下、行かせていただいてもよろしいですか?
474名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/17(月) 23:52:17 ID:8+KArqza
ばっちこーい
475リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w :2008/11/17(月) 23:52:19 ID:vqnmHktj
では行きます!
======


 女は問うた。
 「FATE」ではないのか? と。
 異形の仮面に素顔を隠した男は答えた。
 「FEIT」でいいのだ、と。
 プロジェクトF.E.I.T.……Far-dimensional Enhanced Intelligence Tenantry.
 遠き次元の優れた知性を借りた者。
 いかにもこじつけ臭い単語の羅列。
 しかし、男はこの時すでに気付いていたのかもしれない。
 フェイトと読みながらFATEという綴りを与えられなかったこのプロジェクト。
 借り物は所詮借り物……本物には決してなりえない、という事に。

 そして、今。

「鉄仮面が呼び寄せた過去の闇の一族の反乱から、調整もままならないまま
 超時空転移装置で逃げのびた私は、今から十年前のミッドに辿り着いた」

 時の庭園、最深部。
 虚数空間に喰われた空間が生物のように蠢く、この世の地獄。
 冥土の土産に、とでも言うつもりなのだろうか。
 聞いてもいないのに、バインドで空中に固定されているなのはとフェイトに向けて、
プレシアはここに至るまでの長い日々を語り続けていた。

「鉄仮面から手に入れたホムンクルスの技術も加えて、プロジェクトFはあなたという成果を得た。
 けれど、しょせんそれはまやかしに過ぎない。
 借り物の命と、本物の命はやっぱり別のものだから。
 だから私はこの十年、本物のアリシアを蘇らせるこの秘術の研究に没頭したの」

 クン、とプレシアが指し示したその先。
 宙に浮かんだ巻物を、六色の光……紅、青、橙、緑、白、黒。
 そう、「黒」の光という、なんとも形容しがたい輝きもそこに混じっている。
 それら色とりどりの光球が紡ぐ、ミッド式とは違う独特な魔方陣が包み込んでいた。

「そう、ジボウリュウ……未だ人類のたどり着いた事のない私だけが見つけた世界の、最高位の秘術。
 それを同時に手に入れたアルハザードの古代魔法を介する事で、ミッドの術式に不足する部分を補い、
 魔法儀式の精度を高めるの。ジュエルシードには私の思念を増幅する役目を担ってもらう」

 狂気に彩られた眼をぎらぎらと輝かせ、プレシアは暗闇の深淵にまで届くかのように声を張り上げる。

「もう少しよ、アリシア……もう少しで、あなたに……」

 しかし、シリンダーに浮かぶアリシアを見つめるその眼は、どこまでも慈愛に満ちたそれであった。



 巻之弐拾六「閃光の中の鉄機武者やでっ!」



「虚数空間の侵食がどんどん進んでる……急がないと!」
「けど、一体どうしたら……」

 際限なく現れ続ける傀儡兵の集団を切り抜けながら、
出口の見えない迷路を進み続けるクロノ、ユーノ、そして斗機丸。
 残された時間はもう少ないという事を理解しながらも、彼らの目指す先は
未だヴェールの下に隠されたままだった。
476リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w :2008/11/17(月) 23:53:35 ID:vqnmHktj
「足を止めるな、ユーノ! 一寸先は闇だからと言って、俺達に立ち止まる事は……」

 三体もの敵から一斉に振り下ろされる、槍やハルバートといった
重量にまかせ相対したものを粉砕するポールウェポン。
 それらをナギナタライフルで受け止めながら、斗機丸は弱音のこぼれるユーノを叱咤する。

「許されないっ!!」

 気合い一発。
 吹かされる背部の姿勢制御バーニアの炎とともに、勢いをつけて武器を跳ね飛ばし、
そのまま勢いに任せて空中から敵を一刀両断にする。
 力任せの技は本来武者丸の得意技だったなと、苦笑しながらも心のどこかでは
この場で唯一の希望であるその彼と合流する事を祈っていた……ちょうどその瞬間であった。

「見つけたぜ、斗機丸!!」

 派手な爆発とともに、なぜか壁ごと傀儡兵を突き倒しながら現れた白い影。
 それは紛れもなく斗機丸の無二の戦友、武者丸の姿だった。
 やっとの事で勝利の鍵を握る友に巡り合い、柄にもなく感傷的になって駆け寄っていく斗機丸
 それに対して武者丸は。

「武者丸か! ずいぶんと心配しへぶらっ!?」

 何の前振りも前置きもなく斗機丸を左ストレートで殴り飛ばした。

「……これが、俺の答えだ」

 じんじんと、金属の塊を殴りつけた痛みに腫れあがる拳を微動だにさせる事なく、
武者丸は斗機丸をただじっと、言葉少なに見据えている。
 当の斗機丸はこの理不尽な行為に思い当たる節があるのか、真っ向からその目を見つめ返している。
 一触即発。
 この状況を一言で表すならばそう呼ぶのが一番ふさわしいだろう。
 とても仲良しこよしの関係にある二人とは思えない、剣呑な空気が両者の間でせめぎ合っていた。

「ちょ、ちょっと、二人とも……?」

 両者の間に挟まれた格好のユーノは二人の放つ威圧感に気押されながら、遠慮がちに声をかける。
 が、その言葉はすでに二人の耳には届かない様子だった。
 しかし、少なくとも今日のフェイトの襲撃によって別れ別れになるまでは
こんなに険悪な仲になるような要素は何一つなかったはず。
 だとすると、今日これまでに斗機丸が行った「何か」に武者丸は激怒している可能性が高い。
 一体、斗機丸の行為の何が武者丸の逆鱗に触れたというのだろうか。
 そうやって悩んでいる間に、二人の様子は一触即発の「発」にまで至ってしまっていた。
 武者丸と斗機丸は互いに右手を振りかざし、弾かれたように相手に向かって飛びかかっていく。
 よもや同士討ちか? と、ユーノが思わず目を背けると。

「とりあえず、文句は!」
「全部後回しだ!」

 武者丸の拳が、斗機丸の手刀が派手な金属音を巻き起こす。
 しかし、その一撃に傷つき、倒れたのは当の二人ではなかった。

「えっ!? これって……」

 そう、武者丸達は互いに殴りつけあったのではない。
 二人の背後から音も立てずににじり寄っていた傀儡兵にその一撃を加えていたのだ。

「おいアルフ! 聞こえてたら返事しろ!」
「何だい!? 今こっちも……忙しいんだっ!」
477リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w :2008/11/17(月) 23:55:01 ID:vqnmHktj
 壁の向こうから、フェイトの使い魔であるはずのアルフの叫び声が聞こえてくる。
 傀儡兵がちぎっては投げちぎっては投げられている一角があるので、恐らくその辺りからであろう。

「そこをなんとか! 仲間と合流できたみたいなんだが、知っている顔が一人しかいない!
 これは一体どういう事だー!?」
「なにー? よく聞こえない!」

 武者丸の様子がおかしい。
 いや、さっきからかなりおかしいのだが、今度は自分の考えとかみ合っていない。
 しかし、これには思い当たる節がある。
 その事に気がつくと同時に、ユーノはポム、と開いた左手を握った右手で軽く叩き、
その結論を言葉に変換して口から紡ぎだした。

「……あー。そういえば武ちゃ丸ってあの場にいなかったっけ。
 僕だよ僕、ユーノだよ」
「ユーノだって? お前が? ハッハッハ……坊主、つまらねぇ冗談はよせやい」

 と、その言葉通りに全く笑っていない声音で、傀儡兵をなます切りにしながら武者丸は答える。
 だめだ、完全に信用されていない。

「本当だってば! あーもう……」

 仕方なく、傀儡兵の団体さんのど真ん中で、すでに本日何度目かになる
自らの正体についての説明を行わされる羽目となった。

「……了解了解、とりあえずオッケーだユーノ!
 おいアルフ、本当に聞こえてるか? 聞こえてるんなら出て来い!」
「だから、さっきから何なんだい!? 今こっちも大変だって言ってるじゃんか!!
 くぉんのぉーっ!」

 気合いの一声とともに、何体もの傀儡兵をまとめて吹き飛ばしながら、
武者丸たちの下に躍り出るアルフ。
 長い髪を振り乱し、疲労をあらわに大きく息をする姿は、ある種異様な気迫を醸し出している。
 若干引いているユーノをよそに、武者丸はそれを気にも留めず、自然体を保ったままに
アルフと会話を続けていた。
 
「仲間とも合流できたし、俺と斗機丸は駆動炉ってのをぶっ潰しに行く!
 あとはプレシアとフェイトだ!
 フェイトはなのはと一騎打ちの真っ最中らしいが……お前はどうする?」

 そんな武者丸の問いかけに、さっきまでの勢いはどこにやら。
 シュンと耳を寝かせて寂しそうに、そして申し訳なさそうにアルフは重い口を開く。
 ただし、その腕は背後から迫りくる傀儡兵に恐ろしい速度で裏拳を叩きこみながら。

「……ダメ、さっきの情報はもう古いよ。だって、フェイトの事を近くに感じない」
「何だって? オイ、それって一体……」
「じゃ、じゃあなのはは!? なのはは一体今どうなってるの!?」
「えぇい、邪魔だ! どいてろ使い魔モドキ! フェイトがなのはを倒したのか?
 それとも倒されたのか? どうなんだ!?」

 ユーノが血相を変えて、武者丸の頭を両手で押さえつけながら、
そして敵を一手に引きつけていたはずのクロノが、自分で「無駄遣いをするな」と言っていたのを
忘れたかのように、たった一瞬で傀儡兵の群れを一掃し、二人揃ってアルフに詰め寄っていく。

「あぁ、もう! 質問はまとめてやんなよ! ずっと下の方……庭園の最下層にいるみたいだ。
 あっちの奥にある通路から行けるはずだよ」
「最下層……? じゃあ、もしかしてそこになのはやあのオバンも!?」

 頭の上でやいのやいのとうるさいユーノとクロノを跳ねのけて、武者丸が問いかけた。
478リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w :2008/11/17(月) 23:56:14 ID:vqnmHktj
「多分ね。だから……」
「二手に分かれる、と言う訳だな? いいだろう、僕はプレシアの確保に向かう。
 駆動炉の場所は?」

 格好をつけているつもりなのか、武者丸に吹き飛ばされた時についた細かなゴミを掃いながら、
クロノは普段の調子で目的の場所を問いかける。
 はっきり言って格好良くもなんともないのだが、本人の名誉のためにこの場は不問とする。

「そっちと真逆。向こうにある螺旋階段を昇りきったその先……最上部に!」
「よし、そっちは俺と斗機丸で行く! ユーノはそこの生意気そうな黒服の坊主と、
 アルフ達と一緒にプレシアのオバンの所に行って……なのはを迎えに行ってやれ」
「武ちゃ丸……うん! そっちも気を付けて!」

 武者丸の心遣いに心が暖かくなるのを感じながら、ユーノはその想いに応えようと、
決意も新たにクロノの下へと向かい、そして彼につぶやいた。

「……言っておきますけど、貸し借りとかそんなのじゃないですからね」
「もちろんだ、ハッキリ言ってそんな問答をする余裕はもう無い。それと……」

 行く手を遮る傀儡兵を前に並び立ち、標的から視線をそらさぬままクロノはそれに答える。

「一々突っかかってくるくらいなら、もう敬語とかはナシにしてくれ!
 そんな事に気を使う奴が競争相手なんて、僕は納得しない!」
「……分かったよ、クロノ! これでいい?」

 一拍の間をおいてもたらされたユーノの返事に、クロノは満足そうに頷くと力強く声を張り上げた。

「結構だ、ユーノ! そこの使い魔、確か……アルフだったか。道案内を頼む!」

 アルフもまたそんな二人に微笑ましい目を向けながら、後方で奮戦している舎弟達を呼び集める。

「聞こえたね、あんた達! ボサっとしてないで行くよ!」
「アラホラサッサー!!」

 呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン! な三人組。
 だが、どう見てもそこに立っているのは……

「傀儡兵!?」
「違う違う! 敵違うよ俺ら!!」
「清く正しいが美しくはない外道の道を歩む者……堕悪の抜け忍カルテットのエース三人よぉ!」

 傀儡兵達はどこぞの鷲鮫豹の戦隊ヒーローのように決めポーズをとり、例の堕悪武者を名乗った。
 そのシュールな様を見て呆れるやら力が抜けるやら。
 弛緩しきった体に今一度喝を入れ、ユーノはどうにかその鉛のように重くなった口を開く。

「はぁ……けど、どうしてそんな大変な事に?」
「話すと長くなるんだな」
「それでも聞きたい? ねぇ聞きたい、坊ちゃん?」
「な、長くなるって……?」

 傀儡兵と同じ姿を、しかも複数の種類の特徴を併せ持つちぐはぐな姿。
 いったい彼らの身に何があったというのか。
 知らず知らずのうちに神妙な面持ちとなり、耳を傾けると。

「傀儡兵の残骸に堕悪融合しました」
「短ッ!?」
479リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w :2008/11/17(月) 23:57:22 ID:vqnmHktj
 わずか十五文字で説明完了してしまう程度の事であった。
 そういえばそうだった、彼らはやせても枯れても堕悪武者。
 周囲の物体を取り込んでパワーアップするのがその最大の特徴だった。
 名古屋への道中で新幹線と融合したこのへっぽこどものリーダー、堕悪圧愚のように。

「んー。細かい原理を説明すると日が暮れるくらいの長さに……」
「できないよね? 絶対君達それ説明できないよね!?」
「もう夜だぞ……って、んな事はどうでもいい! それよりススムはどうしたんだ、ヘッポコトリオ!」
「また何やら失礼極まりない罵詈雑言が聞こえたような気がするのですが?」
「いやはや、今日の我々は至極機嫌がよろしい。ここは出血大サービスで教えてあげなくもない」

 ちょっと強くなったという事でどうやら調子に乗り始めている堕悪どもは、
武者丸の問いかけに対して恐ろしく不真面目な態度で接している。
 そんなお馬鹿さぁんに対して向けられるものはもはや説明するまでもなく。

「この場で斬リ捨てられたくなかったら今すぐ吐け」

 まるで捨てられた仔猫を見て「可哀想だけど家では飼えないし、これから保健所で始末されるのね」
というように表現できる遥か高みからの冷酷なまなざしと、鈍く光を反射する刃の輝きだった。

「サ、サーイエッサーッ! 調子乗ってスンマセンしたッ、サー!」
「前もそうだったけど、この武者頑駄無カルシウムが足りてないと思うんだな」
「コ、コラ! 余計な事は言うな圧愚害! かの少年は自分の腹の中に匿っております、サー!」

 体に染みついた負け犬根性では苛立ち最高潮の武者丸に立ちはだかる事は不可能。
 慌てて背筋を伸ばし、姿勢を正すと堕悪武者のうちの一人……恐らく堕悪雑獄愚が
腹の部分の装甲を開き、中からススムを降ろす。だが、しかし。

「外界から隔絶された空間にボクはただ一人身動きをとる事すら許されずただただ膝を抱えて丸くなっていたボクに感じることができたのは激しく上下に揺り動く感覚と金属と金属がぶつかり合う激しい衝突音
 そしてその瞬間伝わる激しい衝撃ボクはいつ果てるとも知れない終わりのない悪夢の中でただひたすらにこの無限獄が終わる事だけを願っていると堕ちてみれば心地よいものだと全身黒ずくめの男の人がおいでおいでと手招きを」
「わかった! ほったらかしにした俺が悪かった! だから正気に戻ってくれススムゥゥゥゥッ!!」

 ぐったりと柱にもたれかかるススムは、虚ろな目に乾いた笑みを浮かべながら、ただひたすらに
ぶつぶつと何やら怨み言らしき呪詛のような文字列を呟き続けていた。
 もはや何物も寄せ付けぬほどの近寄りがたいオーラを放っている。
 先程からどうも傀儡兵が手を出してこないと思ったらこういうカラクリだったのか。

「……もしかして、その駄目そうな……エフン! 失礼」
「すみません、今こちらの坊ちゃん俺らの事『駄目そうな』とはっきりのたまいませんでしたか?」
「彼らも連れて行くことになるのか?」
「スルーした!」

 自らの理解の範疇を超える存在を前に、思考回路がショートしていたクロノは、これから先も
恐らく自らの脳細胞を蝕むであろうと予測される存在の処遇について問いかける。
 自分のペースを極力乱されないように振舞いながら。

「あぁ、まぁ、その、成り行き上……」
「イエス、アイドゥー! 我ら堕悪武者、コンゴトモヨロシク!」
「まるでできの悪いB級映画を観せられたその夜の悪夢を目の当たりにしたような感覚だ」

 片手で頭を押さえ、やれやれと言わんばかりに首を横に振るクロノ。
 一言で言い表すなら「次元が違う」存在を前に、彼は胃薬の処方の算段をすでに始めていた。
480リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w :2008/11/17(月) 23:59:14 ID:vqnmHktj
 
「エルガ・オルフェ・マーキュ・クエリ・ジュピ・ガンティ……
 七曜万象の創世を司どりし神元素よ、六つの誓いを今一つの力に……」

 再び時の庭園、最深部。
 
(レ、レイジングハート……わかる……?)
<<Analysis were impossible. This is unidentified masic system.>>

 ユーノの部族とともに数多の古代遺跡を巡ってきたはずのレイジングハートでさえ
見た事も、聞いた事もない不可思議な呪文。
 それに応えて六つの輝き……紅・青・橙・緑・白・黒の光柱が魔方陣の六方から立ち昇り、
プレシアの周りに浮かんでいた同じ色の光球とアーチを結ぶ。
 その光を浴びたプレシアの放つ魔力の光が大きくなったことから、
何らかの魔力強化呪文であろう事に察しはつく……が、それだけだ。
 どちらにしろ、バインドでがんじがらめに拘束されているなのは達には
指をくわえて見ている事だけしかできない。

(お願い……フェイトちゃんのお母さんを……止めて……!)

 結局、力が足りなければ足手まといにしかならないというのか。
 ……そう、足手まとい。逆に言えば自分は一人ではない。
 自分は負けても自分「達」が負けたわけではないのだ。
 だから、心だけは決して屈してはならない。
 なのはは目の前のプレシアを凛とした目で、ただじっと見つめていた。



「……?」
「おい斗機丸、ボーッとしてんじゃねぇ!」
「あ、あぁ……悪い」

 螺旋階段を半ば以上昇り詰め、駆動炉はもうすぐそこ。
 激化する傀儡兵の攻撃の中、斗機丸は確かに誰かの悲痛な叫びを聞いた気がしていた。

「ねぇ、二人とも! あれがアルフの言ってた……」
「おぉ、きっとそうだ!」
「さっきから膨大なエネルギー量を感知している。あの奥が駆動炉に間違いない!」

 つい先程まで心神喪失状態であったススムをまさか一人で放り出すわけにもいかず、
二人だけで護衛対象を抱えつつ危険地帯への侵入という困難な道。
 だが、それもあと少し。
 目の前のに立ちはだかる不必要なまでに巨大な扉をくぐれば、この煩い傀儡兵たちも沈黙する。
 互いに顔を見合せて頷きあい、扉を開きその中へとなだれ込もうとした……まさにその時。

「……ッ!! 伏せろ、ススムッ!」
「えっ? わ、わわっ!!」

 武者丸は、自分と斗機丸に挟まれるように進んでいたススムが
その一歩を踏み出そうとするのを半ば強引に押しとどめる。
 ススムが目を白黒させて顔をあげると。

「何、これ!? シャッター!? あ、あっぶなかったぁ〜……」

 ススムと斗機丸の間を、まるで断頭台のように分厚い鋼鉄の隔壁が雪崩落ち、通路を遮っていた。

「あんの性悪ババア……戦力の分断たぁ、念の入った真似をするじゃねーか!
 オイ、斗機丸、聞こえるか? 斗機丸!?」
481リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w :2008/11/18(火) 00:00:08 ID:vqnmHktj
 対象が所定の位置に踏み込むことで作動するブービートラップ。
 どこまでも周到なプレシアの手口に毒づきながら、隔壁の向こうの斗機丸に武者丸は
必死で呼びかけを試みる。

「あぁ、聞こえてる。こっちは無事だ。今のところは……な」

 友の叫びに、平静を装いながら答える斗機丸。
 その眼前には見渡す限りの地形を埋め尽くすほどの傀儡兵の集団が彼を待ち受けていた。

「待ってろ! こんな薄壁、すぐにブチ抜いて……」
「駄目だ! そっちに残っている傀儡兵だってゼロじゃない。ここは……俺一人で切り抜ける!」

 ススムという守るべき存在を抱えている武者丸に、次々に迫りくる雑魚の掃討をしながら
壁を突き破るような器用な真似はできないはず。
 悠長に待っている時間も、もはや残されてなどいない……ならば。
 そんな斗機丸の決意を見透かしたかのように、壁を隔てた向こう側から武者丸が
隠しきれないモヤモヤとした感情をこめて話しかけてくる。

「斗機丸……ここ最近のお前、どうかしてるぞ。
 さっきだってそうだ! 人に断りもせずに我致止飛やらかそうとしたり……
 俺が起動スイッチを押してたらどうなってたと思ってるんだ!?」
「だが、そうはならなかった」
「そんな事を聞きたいんじゃねぇ! お前、アレがどういう意味なのか本当に分かってんのか!?
 へたすりゃ俺達……なのはやユーノだって巻き込む事になるんだぞ!?」

 だんだんと過熱していく武者丸の口調とは裏腹に、斗機丸の声はどこまでも事務的に響いた。
 そんな彼らのただ事でない状態に耐えられなかったのか、半ば無意識のままに
ススムは両者の間に割って入ってくる。

「武者丸、さっきから巻き込むとかなんとか……それってさっき言ってたガチャ○ンって奴の?」
「だから我致止飛(ガチャンピ)だって!
 いいか、斗機丸は俺達とはちょっと違う……設計図から作られた人造武者、鉄機武者なんだ」

 斗機丸に対するそれとはまるで逆の態度で、諭すようにぽつぽつとススムに語り出す。
 右手に握った刀にじっとりと汗を染み込ませ、散発的に襲いくる傀儡兵を蹴散らしながら。

「人造……? それって、トッキーはロボットって事? シンヤはその事を知ってるの!?」
「黙って聞け! 昔、俺達の世界で鉄機武者を動かす魂とも呼べるぷろぐらむ……
 『鉄機心得』が改竄されて、鉄機武者軍団が丸ごと頑駄無軍団の敵に回るって大事件が起きた。
 それ以来、鉄機武者に搭載が義務付けられた暴走を外部から止める手段。それが我致止飛だ」

 壁の向こうの斗機丸は何も語らない。
 ただ武者丸の言葉と、その手に握られた刃が敵を斬り裂く甲高い音ばかりがその場を支配していた。

「それを使うと体内に蓄えられた強大なエネルギーの開放とともに、斗機丸は……」

 そこまで話すと武者丸は口ごもってしまう。
 怪訝そうにその背中を見つめるススムも、その先にある言葉の重みを薄々感じとりながら続きを待つ。

「死ぬ」

 長い、とても長い一瞬が過ぎて。
 からからに乾いた喉から絞り出すようにその一言が告げられた。

「それって、自ば……!?」
「その起動スイッチを握るのが、俺と鎧丸だ。
 このスイッチの信号はちょっと特別でな、俺達三人の心の絆で伝わるようになっている。
 例えどんな時でも、互いがどこにいても伝わるようにな」

 絶句するススムに言い聞かせるようにそこまで語ると、ふっと武者丸の纏う雰囲気がその趣を変える。
482リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w :2008/11/18(火) 00:01:12 ID:dIZGdX1M
「……いい加減、だんまりを決め込まれるとこっちも我慢ならねぇんだけどな。
 えぇ? 斗機丸!?」

 何も語ろうとしない斗機丸にしびれを切らしたのか、それとも説明することに飽きたのか。
 積もり積もった苛立ちが頂点にまで達した武者丸は、ついにその矛先を斗機丸へと向ける。
 しかし斗機丸はあくまで冷静だった。

「……武者丸、俺はお前たちをとてもかけがえのない存在だと認識している。
 お前だけじゃない。生きとし生けるもの、その全てが無為に失われるべき存在でないと」

 分厚い壁に遮られ、斗機丸の表情を窺う術はない。
 それでも、言葉だけは二人に届いてくる。

「だが、俺はどうだ?
 俺は鉄機武者……誰かに作られた命なき存在、いくらでも取り換えの利くカラクリ人形だ」

 斗機丸は一歩、また一歩と歩き出す。
 武者丸達の喚く声が、そのたびに少しずつ遠くなっていくのを感じながら。

「数ヶ月前、シンヤが事故でひどいけがを負った時、その事を嫌と言うほど思い知らされた。
 俺だったら部品を取り換えればすぐに復帰できる。だが、お前たち生き物はそういうわけにはいかない」

 この庭園に突入した時に比べ、明らかにぎこちなくなっている自らの動作を確認しながらも、
紡がれ続ける言葉だけは流れる川のように止まる事がない。

「そして、この世界では俺がまともに戦い続けることはできない。
 天宮の工廠はこの世界にはないから、正規の交換部品は存在しないんだ。
 俺は生きものじゃないから、自然治癒はできない……つまりは、俺はどんどん足手まといになっていく」

 右手にはナギナタライフルを、左手には拳銃を握り締めて敵の数をざっと頭に入れ直す。

「俺れでも、俺の存在に意味を見出すとするなら……」

 組み込まれたプログラムが、出番を待ちかねていたかのように躍りだしていく。
 体中の装甲板が開き、封じられた力を解き放つように内部機構が鳴動し、唸りを上げた。

「お前たち命あるモノを! この鋼の体の全てを以て守り抜いてみせる!!
 鉄機力増幅装置(じぇねれーたー)……最大戦力(まきしまむ)ッ!!」

 斗機丸の武者魂が視認できるほどの勢いを持ち、青く燃え上がる。
 それと同時に、斗機丸の視界の片隅にデジタル表示によるある時間が記されていた。

 ――残り、三十秒。

 自らの応急処置を手がけた月村忍が課した、駆動部品が最大稼働状態に耐えうる限界を示す表示。
 傀儡兵がそれに反応して一斉に攻撃を仕掛けてくるが、そのことごとくはむなしく宙を切った。

「行くぞっ!!」

 ――残り、二十五秒。

 左手より撃ちだされた拳銃の弾よりも速く、発生した衝撃波によって数多くの傀儡兵を
鉄屑へと駄せしめながら、それにも揺るがない巨躯を誇る鈍色の傀儡兵に肉薄する。

「大江戸! 刻閃斬ッ!」

 「Ζ」の刻印が一つ、また一つと隔壁と駆動炉を結ぶ直線状に浮かんでは消える。
 次々と巻き起こる爆発からなる閃光の中、ただ一つの青い炎だけがその存在を示していた。
483リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w :2008/11/18(火) 00:02:07 ID:dIZGdX1M
 ――残り、二十秒。

「おぉぉぉぉぉぉッ!!」

 接近しては駄目だと判断したのか、後方からの魔力弾による狙撃と、地形の破壊による足止めに
戦術を切り替える傀儡兵の集団。
 しかし、その全てが今の斗機丸には止まって見える。
 ただ己の速度を高めるだけでなく、それに応じて知覚機能も強化されているのだ。

 ――残り、十五秒。

「邪魔をするな!」

 とっさにナギナタライフルを射撃モードに切り替え、射線を少しずつ右から左へとそらしながら
幾筋もの光軸を紡ぎだす。
 いや、それは「筋」と呼べるような姿を持ってはいなかった。
 発射の瞬間、高速で銃口が動きながら撃ち放たれることによってビームは弾丸としてではなく
弧を描いた小さな光の形を持たされて撃ち出される。
 よって、その閃光に撃ち抜かれた傀儡兵の胴体には、風穴とはほど遠い横長の大穴が刻まれていた。

 ――残り、十秒。

「……何だ!?」

 駆動炉まであと一歩。
 そこまで辿り着くと、壁をぶち抜いてこれまでで最も大きな巨体を見せつけながら、
両肩に巨大な砲塔を備えた金色の傀儡兵がその姿を現した。

「なるほど、こいつがプレシアの切り札という訳か……だが!」

 ――残り、五秒。

 自慢の砲塔におびただしい魔力を集束させながら傀儡兵が迫る。
 しかし、それに対峙する斗機丸に恐れの色は微塵も見られない。

「俺の後ろには仲間がいる、友がいる!
 心を持たない木偶人形に、様々な人の思いを託されてきたこの俺が!
 負けるものかぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 咆哮をあげて、燃え上がる武者魂の炎とともに斗機丸は飛翔する。
 大気を焼き尽くしながら放たれる魔力の閃光をかいくぐり、斗機丸の切っ先は
金色の傀儡兵の左胸……人間で言えば心臓に当たるその部位を寸分の狂いもなく貫いていた。

 ――残り、0秒。最大戦力状態、緊急停止。

 白い蒸気を吹き上げながら、斗機丸は現状を確認する。
 動体反応、無し。
 金色の傀儡兵の砲撃によって、生き残っていた傀儡兵も全て吹き飛ばされてしまったのだろう。
 ゆっくりと見上げるその視線の先には、ただ不気味な唸りを上げる駆動炉だけが残されていた。

「あとは、こいつを止めるだけか……さて」

 その瞬間、斗機丸は完全に失念していた。
 先程自分と武者丸達が分断された時も、金色の傀儡兵が姿を見せた時も、
「駆動炉に接近する」という条件で仕掛けられていた罠が作動したという事を。
 故に、現状脅威となるものがないと判断し、警戒を緩めた事……それが命取りとなった。
484リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w :2008/11/18(火) 00:03:17 ID:dIZGdX1M
「こ、これは……!?」

 二度ある事は三度ある。
 作業用のクレーンアームと思しき万力のような強靭な「腕」が、斗機丸の胴体を掴み上げていた。

「ぐ、ぐあぁぁぁぁっ!?」

 ばきばきと、嫌な音を立てながら自らの胴体を締めあげる腕に力がこもるのがわかる。
 両手の自由は利く。利くのだが武器は……ない。
 突然掴み上げられたその瞬間にナギナタライフルも拳銃も取りこぼしてしまった。
 最後の切り札となりうる最大戦力状態も使ってしまい、使用はできない。
 万事休す。
 このまま誰も救う事なく自分はあの傀儡兵たちと同じく鉄屑へと還るのか……
 もはや足掻く事すら許されず、諦めかけたその時、斗機丸の状態を示すステータスウィンドウに
見慣れない文字列が並んでいる事に気が付いた。

「こ、れ、は……?
 全く、忍さん! あなたはとんでもないお嬢様だ!
 だが、今は……ありがたい!!」

 それは最大戦力状態の使用後に、初めてその封印が解かれる隠し武装。
 月村忍が斗機丸の無茶を見越して設定した、彼女なりの無茶と浪漫の結晶だった。
 霞む視界の中、しっかりと照準を妖しく輝く駆動炉の中心核に定め、右腕をそこに向けて
音声入力をトリガーに発射されるその武装を放つために、残された全てを振り絞って叫んだ。

「『ロケットパンチ』……ファイエルッ!!」

 古くから、フィクションの世界で数々の人型ロボットが腕部に隠し持っていたその機能。
 ロケットパンチ。
 一言でいえば、腕をロケットのように撃ち出すというシンプルかつシュールな武装である。
 まともに考えれば華奢な駆動部分に深刻なダメージを与える非合理的な機能だが、
どうせ出撃すれば交換しなければならない部品。ならば最後の最後まで使い倒してやれ。
 そんな忍の想いが託された、本当の意味で最後の切り札であった。

「やった、か……?」

 鉄拳の突き刺さった駆動炉が静かに動きを止め、沈黙が立ち込める。
 魔力の供給が断たれ、斗機丸を締めあげていた鋼鉄のアームも動きを止めていた。
 ゆっくりとその中から這い出すと、彼に向って駆け寄ってくる二つの人影が見える。

「斗機丸ーっ!!」
「大丈夫だった?」
「武者丸、それにススムか……まぁ、見ての通りだ」

 二人の姿を認め、斗機丸はワイヤーで肩と繋がった右腕を掃除機のコードの要領で巻き戻すと、
その手には紅い魔力の結晶体が握られていた。
 どこかジュエルシードを思わせるそれは、おそらくこの駆動炉の中枢であったのだろう。
 ぼぅっとそれを眺めていると、いつの間にかそばに立っていた武者丸が話しかけてくる。

「斗機丸……お前が自分の事をどう思おうと勝手だけどよ、これだけは言っとくぜ」
「何だ?」

 いつになく真剣な様子で、武者丸はまっすぐ斗機丸の目を見て呟いた。

「お前が守るって言った人の数だけ、お前がいなくなれば悲しむ奴がいる。
 それだけは忘れるんじゃねぇぞ」
「……心得ておこう」

 果たしてその言葉の意味は本当に伝わったのかどうか。
 武者丸は、満身創痍の斗機丸の姿をただじっと見つめる事しかできなかった。
485リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w :2008/11/18(火) 00:06:35 ID:dIZGdX1M
「……あら?」

 プレシアは自らを取り巻く空気に生じた異変を敏感に察知し、起こったであろう事態を推察する。

「そう、駆動炉が落ちたのね。けれど、もう遅いわ」

 しかし彼女の行動の手順に何ら影響は見受けられない。
 そう、もう彼女の術式はすでに完成の段階へと達していたのだ。

「私は、私とアリシアだけの時間を今こそ取り戻すのよ!
 時防流の代表の名を借りて、ここに命名す!!」

 蓄えられた魔力の光が融けあい、混じり合って虹色の光となる。
 虹色の光は魔方陣の円周上を走り、渦を巻いて巨大な柱を作りだす。
 そして。

「『活殺裏葛篭』! 転生!!」

 古の文明が遺し、数奇な運命を辿りながらプレシアの下に辿り着いたその秘術はついに唱えられた。
 唱えられてしまった。

 ――次回を待て!!



======
以上、投下させていただきました。暖かいご支援ありがとうございます!
サブタイトルは劇場版Ζのサントラの曲名から。
広い映画館という場で繰り広げられるバトルシーンに相応しい、とても重厚かつ勇ましい名曲です。
なお、おいおい動力炉の結晶って赤くないだろと言うツッコミはご容赦くださいませ。
話も大詰め、次回もご期待くださいませ!
486名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/18(火) 00:11:19 ID:kx3+Pxlg
GJ!!
トッキーあちいよトッキー。
武者達は例外なく皆漢だから大好きだ。いっつもオレの心を揺さ振りやがるw
次回、トッキーどうなってしまうんだ!? 期待します!


あ、あとスレの容量がそろそろ寿命っぽいのでスレたててきました。
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1226934006/

では、改めて武者〇伝氏、GJでしたー!
487名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/18(火) 01:10:03 ID:/v1HQUr7
>>486
スレ建て乙!
スレたてお疲れさまです。

どっちに投下しようか考えましたが。
いちおまだこちらのほうが容量あるので、埋めるついでに投下したいと思います。

第5話 信じるものの戦い

 爆発がテーマパークのあちこちで起こる。
 ピエロ仮面が乗るテーマパークの華やかなパレードの車に取り付けられた重火器による攻撃に、バットマンは近づくことが困難となっていた。
 ジョーカーは、そもそもバットマンを倒そうという気持ちはない。
 時間さえくれば良い…。
 そこでバットマンは、思い知るのだ。
 自分はいかに無力か…そこで光は闇に墜ちていく。
 それを見ることができる…まさに、笑いが止まらない光景を見ることができるのだ。

 都内では、ジョーカーから解放された人たちが、口にはガムテープ、手を縄で縛られた状態で彷徨っている。
 助けを求める、その人間たち…その身体には爆弾が仕掛けられたもの、逆に、まったく無害なものが混在し…街を歩く。
 一般市民は怯え、どうして良いのかわからずに戸惑い、立ち尽くす。
 助けるべきなのか?自分の命のために逃げるべきなのか?
 本当なら、答えはない。だが…ジョーカーはこう思うだろう。
 見捨てるものは、結局、わが身可愛さで、その人間を殺めた殺人者となんら変わりはないと。

 光と闇は常に正反対でありながら、密接に関係している。
 人間の心は、この二つの存在に揺れ動かされながら…存在しているのだ。

 目の前で、助けを求める存在…。
 だが、それには、爆弾が仕掛けられているかもしれない。
 自分の身を危険に晒すことになったとしても、助けようとするものが、この安全の国、日本において…どれだけいるだろうか?
 ジョーカーの問いかけは、そこにある。
 テレビを前にして戦争の光景を見て、『可哀想だ』『戦争はやめよう』と容易くえるのは、所詮は第三者としての視線でしかない。
 その環境、情勢を知らずに、容易く言うことは、そこにいるすべてのものに対しての冒涜なのだと…。

 さんざん自分を笑いものにした第三者の国は、今まさに自分たちが、その当事国となった。
 今度は自分たちが他の国に、興味の目に晒され『可哀想だ』『何も出来なかったのか?』と言われることになる。
「…結局は、俺たちのやっていることなんかショーなのさ!バットマン。誰もお前に同情するものなどいないし、誰もお前を助けるものなんかいないのさ」

 ジョーカーの部下であるピエロ仮面の機銃掃射を前にして、人間爆弾の制御スイッチを持つジョーカーに近づけないでいた。
 時間はあまり残されていない。

「フハハハハハ!焦っているか?焦るだろうな、お前は無力だ、たった一人で、何も出来ずに、くたばれ!!」

 ジョーカーは頭をあげて、大声で笑う。
 そんなジョーカーの視線に入るもの…笑い声は途切れ、目を丸くする。
 視界に入ったのは、月が見える夜空に浮かぶ、白き女の姿。
 その女は、槍のようなものを握り、こちらに標準を定める。
 そして空から放たれた巨大な光が、ジョーカーの乗るパレードの華やかしい車を貫き、少しの間をおいて、爆音とともに、火の玉となる。

「はああああ!!!」

 他のパレード用の車も、黒き女の持つ巨大な剣の形をした道具により、切り裂かれる。
 ピエロ仮面は爆発に逃げ惑いながら、爆風に巻き込まれ吹き飛ばされる。
 空から降り立つ白い服の女…高町なのは。
 切り裂いた、黒き服の女…フェイト・T・ハラオウンがバットマンの前に立つ。
 なのはとフェイト…2人の視線の先にいるジョーカーは、立ち上がり、埃を払う。

「……ックックック、素晴らしい、素晴らしいな〜〜その力…。君たちの力を持ってすれば、俺など容易く殺せるだろう?」

 ジョーカーは拍手をして、目の前の二人に頭を下げる。
 ジョーカーは、自分の前に集ったバットマン、そしてなのはとフェイトを見つめながら、
 紅蓮の炎の光に照らされつつ、ゆっくりと歩き出す。

「ここまできたお嬢さんたちには、ひとつ、教えてあげないといけないな」

 ジョーカーは、歩きを止めて振り返りなのはとフェイトのほうに視線を向ける。

「お嬢さんの、娘…名前はヴィヴィオだったか」

 フェイトは怒りを感じ、拳を強く握る。
 自分たちのせいで巻き込んでしまったヴィヴィオ。
 彼女を早く救い出したい。彼女を助けたい…。
 その気持ちを抑えこむ反面、相手に対する憎悪は増していく。

「かわいらしい子だ。フフフ…、お嬢さんのことを何一つ話そうとはしなかった。
 きちんと教育をうけたいい子だったな。どんなに痛めつけようが、苦しめようが……
 涙を堪えて話さない姿……俺は、感動さえ覚えたよ。フフ…フハハハハハハハ」

「くっ!!」

 聞くに堪えないその言葉にフェイトは道具であるバルデッィシュを握り、距離を縮め相手を切り裂こうとした。
 だが、そのフェイトの行動を察知したのか、
 なのはが握るレイジングハートがフェイトの身体を抑えるように前に出される。

「…怒り、憎悪を表に出せばあいつの思う壺だ」

 後にいるバットマンは、冷静に告げる。

「わかってはいるけど……」
「いや、君じゃない。本当に怒りで我を忘れかけているのは、むしろ…もう1人のほう」

 フェイトは隣にいる、なのはを見る。
 なのはは冷静そうな顔をしているが、レイジングハートを握っていないもう1つ手は怒りを抑えるために、
 強く拳を握りすぎたためか、血が流れて、地面にと落ちている。

「…何も躊躇う必要はないぞ。俺は丸腰も同然…。お前の力を持ってすれば、俺など蝋燭の火を吹き消すように、
 一瞬で終わらせられるだろう。フフフフ……」

 ジョーカーは、高町なのはにターゲットを定めた。
 怒りと憎悪は、あの黒き女よりも強く根深い…。
 バットマンに見せてやれる、光が闇に落ちていくさまを…。

「それは、俺にだけ向けられるものではない。この国の警察官が、お前の娘を助けるためになにをした?
 動揺を煽り、今も事態は進行中……誰も助けられない、誰も、救えない。
 クフフフフ……、お前たちの力を持ってしても、1人の人間を助けることも出来ないんだ。
 ならば、なんのために戦う。なんのために…。
 お前が倒すべき敵は俺ではなく、無能で理不尽なこの世界じゃないのか?」

「あいつの話を聞くな…」

 バットマンは正面に立っている、なのはに言う。
 怒りにすべてを忘れてはいけない。
 ジョーカーのペースに乗ってはいけないのだ。
 だが、彼女は、それができるのか?
 やはり…ここは、自分がジョーカーを止めるしかない。時間も迫っている。

「…私は」

 なのはは、ジョーカーに向かって語りかけるように声を出す。
 それは憎悪も怒りも感じられない…。

「…私の力は、そんなに強いものじゃない。私1人の力でできることは、あまりにも少ない。
 だけど…、大切な仲間がいれば、1人じゃ出来なかったことも…できるようになる。不可能が可能となる」

 なのはは、隣にいるフェイトを見つめる。その表情は、穏やかなもの……。なのはは、知っている。
 今まで戦いで…フェイトから、そして、はやてと戦って得た強い絆。
 1人で苦しんでいたことも…同じように受け止めてくれる人がいること…
 それがどれだけ自分にとって強い力となるか。

「…私は、あなたのようにはならない」

強い眼差し…その眼を見て、ジョーカーは唸り声をあげる。
なのはが自分を見る目、それは…哀しみの目。
そう自分を哀れむ目…。

「そんな目で俺をみるなぁ!!!」

 ジョーカーは、そういうと以前、フェイトに使った手榴弾のようなガスをだすものを投げつける。
 しかし、それはフェイトにより、切られる。
 ガスをださないように、起爆装置だけを完全に…。

「なに!?」
 驚くジョーカーは、逃げ出そうとするが、その足にワイヤーが巻きつけられる。
 バランスを崩し倒れるジョーカー。
 バットマンの放ったそれに、ジョーカーは今度こそなすすべなく、捕まる。
 バットマンは、なのはとフェイトを追い抜き、ジョーカーを見下す。

「フハハ…、アハハハハハハハ…。気持ちがいいだろうな、蝙蝠男。
 俺が、あんなガキにやられるさまは?」

「……ジョーカー、人質を解放しろ」
 バットマンはジョーカーの問いには答えず、時間が迫っている人間爆弾について聞く。
「…ヴィヴィオは、どこ?」
 
 なのはも、ジョーカーに問い詰める。
 ジョーカーは…心のどこかでは焦っているであろう二人に向かって、笑いながら…。

「いいだろう、教えてやる…起爆装置はジェットコースター内にある。
 お嬢さんの娘が座っている座席そのものだ。
 お嬢さんが座席から降りた瞬間、どかーんと吹き飛ぶ、だが…ジェットコースターも一定速度が落ちると爆発するようセットされている。
 どっちを助けたいか、お前たちで選べ…。
 おっと、二つとも、時間が来れば勝手に爆発することも忘れずにな。
 フフフ…フハハハハハハハハ」

 ジョーカーの襟首を捕まえ、身体を起こさせる、バットマン。
「貴様、他に方法はないのか?」
「ない。一人の命を助けるか、多くの人の命を助けるか、好きなほうを選べばいいさ〜ヒヒヒヒャハハハハハハ」
 バットマンはジョーカーの襟首を離す。

 テーマパークにあるジェットコースター…。
 ジョーカーとバットマンが戦いはじめたときから、動いているそれは、もう既に30分以上が経過しようとしていた。
 ヴィヴィオは目を伏せて、酔わないようにしている。
 そのヴィヴィオの座っている真下…そこに起爆装置が赤く点滅している。
 ヴィヴィオの重さにより、1つの起爆装置は止まっているが、もう1つ…それはジェットコースターの速度に反応している……。

「…卑劣な」

 フェイトは吐きすてるように言う。
 なのはは、ジェットコースターがある方角を見る。

「どうするつもりだ?」

 バットマンはなのはと、フェイトに問いかける。
 なのはとフェイトは、バットマンのほうを見て

「…両方を助けます」
「今までそうしてきたように……」

 バットマンは二人の言葉を聞き、なのはとフェイトが空を飛んでヴィヴィオを助けにいくのを見送る。
 今の彼女達に言うことは何もない。
 強き心…自分の行いを信じ、そして今の自分にはない、大切な強い仲間がいることが……その心の力を何倍も倍増させる。

 普段、人を信じることをしない、私も今日だけは信じてみよう。
 信じる心を持つものの、力を。
以上です。誤字や抜けている部分、確認していますがある可能性があります。
そこはご容赦ください。

指摘があったように、見直したのですが…申し訳ありません。
494名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/18(火) 02:34:04 ID:KSHzP8J9
魔法で解決めでたしめでたしには合わない題材だよな"バットマン"
495名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/18(火) 04:16:38 ID:aHEOAuq4
やたら甘いなのはどもが現実を知るかと思ったのに・・・
期待はずれだったな
496名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/18(火) 09:18:09 ID:1KjJsCnm
>>493
これぞクロスの醍醐味。GJでした。
497名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/18(火) 13:08:44 ID:dKduEQWO
>>493
GJ!
ジョーカーいいキャラしてるな
498一尉:2008/11/18(火) 14:45:41 ID:5msAxLFf
ジョーカー、許せねえキャラたよ。
499名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/18(火) 14:45:58 ID:Gpy35wsf
GJ!!です。
ジョーカーがいいなぁ。
人の心の闇を自覚させたり、呼び起こす為にショーと称する手の込んだ犯罪行為を実行なんて。
明確な何かをする為に、手段を選ばない悪は卑劣と思いつつも、ある種のカッコよさがあるw
ふと、気になったのですが、なのはたちが現地の人間のジョーカーとバットマンの前で魔法を使用した場合、
管理局はどうゆう評価を下すのだろう?身内が攫われたとはいえ、処分は下りそうですし、まぁ助けられるなら、その程度気にしないと思いますがw
仮に、魔法を知ったジョーカーを管理世界につれてこないと駄目ってなった時、次元世界でとんでもない犯罪が起きそうだw
500名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/18(火) 15:03:21 ID:vSPVq8Fk
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501名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/18(火) 15:04:56 ID:vSPVq8Fk
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502名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/18(火) 15:06:21 ID:vSPVq8Fk
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503名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/18(火) 15:07:12 ID:vSPVq8Fk
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504名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/18(火) 15:07:55 ID:vSPVq8Fk
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505名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/18(火) 15:08:49 ID:vSPVq8Fk
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           Liノ