あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part184
もしもゼロの使い魔のルイズが召喚したのがサイトではなかったら?そんなifを語るスレ。
(前スレ)
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part183
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1225609682/ まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/ 避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9616/ _ ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
〃 ` ヽ . ・ここはあの作品の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!
l lf小从} l / ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,. ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
((/} )犬({つ' ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
/ '"/_jl〉` j, ・ 投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
ヽ_/ィヘ_)〜′ ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!
_ ・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
〃 ^ヽ ・クロス元が18禁作品であっても、SSの内容が非18禁である場合は
J{ ハ从{_, 本スレへの投下で問題ないわ。
ノルノー゚ノjし ・SSの内容が18禁な展開をする場合はクロス元に関わらず、
/く{ {丈} }つ 本スレではなく避難所への投下をお願いね?
l く/_jlム! | ・クロス元がTYPE-MOON作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
レ-ヘじフ〜l ・作品を初投下する時は元ネタの記載も忘れずにね。wikiに登録されづらいわ。
・作者も読者も閲覧には専用ブラウザの使用を推奨するわ。負荷軽減に協力してね。
. ,ィ =个=、 ・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。
〈_/´ ̄ `ヽ ・1レスの限界最大文字数は、全角文字なら2048文字分(4096Bytes)。これ以上は投下出来ません。
{ {_jイ」/j」j〉 ・行数は最大60行で、一行につき全角で128文字までですって。
ヽl| ゚ヮ゚ノj| ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
⊂j{不}lつ ・次スレは
>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
く7 {_}ハ> ・重複防止のため、次スレを立てる時は現行スレにその旨を宣言して下さいね。
‘ーrtァー’ ・クロス先に姉妹スレがある作品については、そちらへ投下して盛り上げてあげると喜ばれますよ。
姉妹スレについては、まとめwikiのリンクを見て下さいね。
・一行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えます。
SS文面の区切りが良いからと、最初に改行いれるとマズイです。
レイアウト上一行目に改行入れる時はスペースを入れて改行しましょう。
>>1 乙
ここのところは大体700代でスレが埋まるな。
このぐらいまで単純化できそうな気がする。
爆発召喚
キス契約
「ゼロ」の由来判明(教室で爆発)
使い魔の能力が明らかに(ギーシュ戦)
デルフ購入
フーケ戦
舞踏会
最近はその流れでいかに飽きない話を作るかに凝りがち
爆発
平民プゲラ
コルベール問答無用さっさと汁
キス契約
フライに唖然とする
説明はぁどこの田舎者?
何者であろうと今日からあんたは奴隷
二つの月にびっくり
洗濯シエスタと接触
キュロケフレイム顔見見せ
みすぼらしい食事厨房でマルトー
教室で爆発片付け
昼食シエスタの手伝い香水イベント
オスマンコルベール覗き見
ギーシュフルボッコ場合によって使い魔に弟子入り
キュルケセクロスの誘いしかし使い魔はインポテンツか童貞w
ルイズ寝取られの歴史を切々と語る
休日街でデルフ入手 キュルケタバサがついてくる
ルイズが爆破訓練宝物庫破壊フーケ侵入お宝げっと
この段階でフーケは絶対つかまらない
翌朝捜索隊保身に走る教師一同
教育者オスマン犯罪捜索を未熟な子供にマル投げ
小屋で破壊の杖ゲットフーケフルボッコしかし絶対死なない
オスマンから褒章 舞踏会 終わり
途中飛ばすけど、
対7万戦と再召喚(一度使い魔契約が切れ、まっさらな状態からルイズとの関係を再構築)
【書き手の方々ヘ】
・作品投下時はコテトリ推奨。トリップは「名前#任意の文字列」で付きます。
・レスは60行、1行につき全角128文字まで。
・一度に書き込めるのは4096Byts、全角だと2048文字分。
・先頭行が改行だけで22行を超えると、投下した文章がエラー無しに削除されます。空白だけでも入れて下さい。
・専用ブラウザなら文字数、行数表示機能付きです。推奨。
・専用ブラウザはこちらのリンクからどうぞ
・ギコナビ(フリーソフト)
http://gikonavi.sourceforge.jp/top.html ・Jane Style(フリーソフト)
http://janestyle.s11.xrea.com/ ・投下時以外のコテトリでの発言は自己責任で、当局は一切の関与を致しません 。
・投下の際には予約を確認してダブルブッキングなどの問題が無いかどうかを前もって確認する事。
・作品の投下は前の投下作品の感想レスが一通り終わった後にしてください。
前の作品投下終了から30分以上が目安です。
【読み手の方々ヘ】
・リアルタイム投下に遭遇したら、支援レスで援護しよう。
・投下直後以外の感想は応援スレ、もしくはまとめwikiのweb拍手へどうぞ。
・気に入らない作品・職人はスルーしよう。そのためのNG機能です。
・度を過ぎた展開予測・要望レスは控えましょう。
・過度の本編叩きはご法度なの。口で言って分からない人は悪魔らしいやり方で分かってもらうの。
【注意】
・運営に関する案が出た場合皆積極的に議論に参加しましょう。雑談で流すのはもってのほか。
議論が起こった際には必ず誘導があり、意見がまとまったらその旨の告知があるので、
皆さま是非ご参加ください。
・書き込みの際、とくにコテハンを付けての発言の際には、この場が衆目の前に在ることを自覚しましょう。
・youtubeやニコ動に代表される動画投稿サイトに嫌悪感を持つ方は多数いらっしゃいます。
著作権を侵害する動画もあり、スレが荒れる元になるのでリンクは止めましょう。
・盗作は卑劣な犯罪行為であり。物書きとして当然超えてはならぬ一線です。一切を固く禁じます。
いかなるソースからであっても、文章を無断でそのままコピーすることは盗作に当たります。
・盗作者は言わずもがな、盗作を助長・許容する類の発言もまた、断固としてこれを禁じます。
・盗作ではないかと証拠もなく無責任に疑う発言は、盗作と同じく罪深い行為です。
追及する際は必ず該当部分を併記して、誰もが納得する発言を心掛けてください。
理想郷にルイズヘイト物が投稿されていたが設定が特殊すぎてあまり楽しめなかった
killer7とゼロの使い魔クロス面白そうな気がする。
書こうとしたらkiller7側の設定やらなんやらが難解すぎて挫折したけどNE!
今日のNG
「JZC74dcI」
>>12 筋肉モリモリのマスクルイズとか
渋いオヤジルイズとか黒人ルイズとか
血まみれセクシーなルイズとか楽しそうだな
>>1 乙!
恒例の、頭の可哀想なヒトの公開オナニーも終わったのね
カトレアより難病だな。
カトレアの完治とエレオノールの結婚はどっちが難題なんだろう?
つまりちー姉さまを治しつつ、エレ姉さまを貰ってくれるような奴を召喚すれば万事解決
・・・誰か居たっけ?そんな奴
>20
そして忘れ去られるルイズ
医術もしくは治癒魔法が使え、そのうえ年上で、雰囲気が高貴だったり渋かったりする人?
エレ姉さんは年下無理だろうなぁ。
姉妹スレの某貴族の言葉を思い出すんだ!
>>23 紙袋被ったギルティ医が一通り当てはまるが……w
そこでドクターKかブラックジャックですよ
ふと思いついたんだが、タバサがGS美神のおキヌちゃん(幽霊)召喚したら、どんな展開になるんだろう
周囲から見たら微笑ましい光景で、かつ当人にとっては復讐どころの話じゃなくなるような気がするw
>>27 初めは怖がっていたけれど、いろいろ困難を乗り越えて仲良くなっていくハートフルストーリーですねw
汁フィの出番はどこぉ?
おキヌちゃんにできること斥候
手で持てる範囲の物の輸送
マリ姉ボイスで癒される
おおなんか有能な使い魔っぽい
オバケ系ならルイズがオバケのQ太郎を召喚してタバサがQちゃんを見るたびに失神するのを考えたけど
Qちゃんは逃げてばっかで話にならないから断念したなぁ
>>31 ネギま!から相坂さよ嬢を召喚。
「タバサがサモン・サーヴァントに失敗するなんて!」
だれも彼女の存在に気づかない。
お化けで強い奴…
シャーマンキングの阿弥陀丸とか馬孫しか思い浮かばん…
ストライダー飛竜とか召喚されたら面白そうだと思った
が、ジャガーのロボットやウロボロスはどうすればいいんだ
>>34 そんな玩具は必要ない!
サイファーとクライムシクルだけでなんとかなるでしょうなw
デルフは、あきらめるしか…
>>33 なにげにおキヌちゃんは強そう。
なんせ、死なない。
壁とか平気で抜けるからなあ。
勝てなくても、負けない。
新井素子の『絶句』から新井素子(能力に気付いた後)を召喚。
……あれってハルケギニアでも発動できるんかね?
実質全能だけど。
>>34 契約すら成り立たずそのまま逃亡なり何なりされて終了と言うのがオチだと思う。
40 :
虚無と金の卵:2008/11/07(金) 00:02:22 ID:G9LYfj09
予約無ければ、虚無と金の卵、0:10から投下しようと思います。
大体8レス分ほどで、これで原作一巻に相当する部分は完了っす。
魔界学園の"転校生"を召喚とか。
元々の"転校生"の定義からして
いずことも知れない世界から召喚される超戦士だったりするし。
ちなみにガンダールヴが一番ぴったりかもしれないね。
右手の槍は学院の宝物庫に安置されていたロンギヌスの槍・・・
左手のデルフの出番がヌェー
さっきベルセルクゼロを読み返して思ったけど、蝕中のガッツorキャスカor両方を召喚したらどうなるだろうか?
とりあえず二人ともならその場は「助かった」になるだろうけど。
キャスカだけだとルイズの介護生活が始まるかな?
介護……できるかな?
>>41 大丈夫、転校生が持てばデルフだって嫌でも大活躍しちまうぜ
つか奴を召喚するとギーシュが変態ボクシングをやった果てに死んじまいそうで怖いぜ
>41
タバサの眼鏡が魔法円を描くんですね
「ではまず君達の無事と、そして成果について祝おう。
おめでとう、ミス・ヴァリエール、ミス・ツェルプストー、ミス・タバサ。
君らの勇気と深い洞察力によって、ここに土くれのフーケを捕らえることができた。
いや、実に素晴らしいことだと思わんかね」
「ええ。まさに叙勲ものの快挙と言えましょう」
オスマンの喜びの放電。
そしてコルベールの追従――満面の笑みで三人を誉めそやす。
キュルケ、タバサがスキルニルに騙されていたことに気付いて戻った頃には、本物のフーケが捕らえられていた。
フーケを捕らえるはずだった立場が逆だったことにキュルケは悔しがり、栄誉を受けることを固辞したが、結局は3人の手柄となった。
『予定は狂ったが、結局皆で行動したことには違いない。それに、一番の功労者はウフコック』
そうタバサが宥め、
『俺はあくまで君らに追従しただけで、杖を掲げた君らが栄誉を固辞するのはとても忍びない』
とウフコックが答えていた。
そして彼女らは三人で学院長室へ赴き、オスマン、コルベールに報告を済ませたところであった。
「うむ、その通りじゃ。ミス・ヴァリエール、ミス・ツェルプストーにはシュバリエの申請をしておいた。
ミス・タバサは既に持っておるから、精霊勲章を申請しておいた」
三人の顔が輝く。
「本当ですか!?」 キュルケの喜びの声。
「いいのじゃ。君らはそれに値するだけのことをしたのじゃ」
「……あの、ウフコックには何も無いんでしょうか?」
遠慮がちなルイズの発言。弱ったようにオスマンは首を横に振って、すまんのう、と呟く。
「ルイズ、気にしないでくれ。こうして役立つことができただけで、十分に俺は嬉しい」
「すまないね……ただ、ウフコック君も含め、君らの名誉ある行動は誰もが覚えている。
それを忘れないでいてほしい」
コルベールが申し訳なさそうに言って、オールド・オスマンに向き直った。
「さて、次に被害について報告しようじゃありませんか」
「そ、そうじゃの……」
コルベールの表情は一転して仏頂面に。眼鏡と頭部が冷たく輝き、オスマンはつい目を逸らす。
「まず宝物庫からはスキルニルと眠りの鐘。
眠りの鐘は回収しました。ですがスキルニルは2体盗んでいたようで、1体はフーケが何処かへ隠したようです」
「ううむ、巧妙な盗人じゃの……」
「もちろん、これで終わりではありません。盗品の補填とは別に、破られた壁を修復し、さらなる固定化を図らねばなりません。
……そして私の研究室が、フーケに荒らされたおかげで滅茶苦茶です。
『破壊の杖』こそ無事でしたが、幾つか貴重な研究資料や実験器具がフーケの錬金で土となって消えてしまいましたな」
「と、とても残念なことじゃったな……」
「ところでオールド・オスマン、差し支えなければ私だけではなく彼女らにも教えて頂きたいのですがね。
なぜロングビルを秘書にしたのでしょう?」
コルベールの舌鋒――オスマンに防ぐ術も無く。
「その……飲み屋で優しくしてくれたし……お尻触っても怒らんかったしのう……」
「で、その素性もろくに調べもしなかったと?」
「そうじゃ」
「魔法学院の長が?」
「そ、そうじゃ」
「……そうですか」
「……き、君だってミス・ロングビルに粉かけとったじゃないか!」
オスマンの反論――だがそもそも責任論になった時点で、総責任者たる学院長の分は悪い。
「生徒の前であまりすべき話ではありませんなぁ。雇ったのはオールド・オスマンご自身ですな?」
「そ、そうじゃとも……」
「さて、研究室ではかなりの備品・機材が使用不可能になりました……というより、研究室自体を新築せねばなりません。
補償して貰えるものと考えて宜しいですかな?」
「仕方あるまいて……はぁ」
結局のところ保障・補填はオスマンの懐へと傾く。がくりと肩を落とすオスマン。しかし、かぶりを振って皆に話しかけた。
「まあ面倒な話はここらで止めにしておこうかの……。
さて、今日はフリッグの舞踏会じゃ。この通り眠りの鐘も戻ってきたことじゃし、平常通り、執り行おう」
「忘れてた、そうでしたわ!」 キュルケの顔がぱっと明るくなる。
「君らこそ今宵の主役じゃ。存分に楽しんでくれたまえ。せいぜい着飾るのじゃぞ」
オスマンの笑みに頷き、キュルケ、タバサは退室しようとする。
だがルイズとウフコックはその場を動かなかった。
「ルイズ? どうしたの?」
「ちょっと先生に相談したいことがあるの。気にしないで先に行ってて」
と、ルイズはキュルケの問いに返す。
「あらそう。でも身支度する時間も考えなさいよー」
手をひらひらさせて、キュルケはタバサを伴って出て行った。
「何か儂に聞きたいことがあるのじゃな? コルベール君、すまんが席を外してくれんか?」
「私もですか? ……ええ、承知しました」
やや名残惜しそうに、コルベールも退室した。
扉が閉まるのを確認し、ウフコックは口を開く。
「相談したいこととは、この眠りの鐘についてだ。俺はこれを使い、フーケを眠らせることが出来た。
……マジックアイテムとは、メイジでない限り使えないはずだと聞いている。
俺がこの道具を使える理由について、何かご存知ないだろうか?」
オスマンは話を聞きつつ、ぷかり、とパイプから煙をくゆらせる。
しばらく考え込んだ後、重々しい口を開く。
「……まず、君の額のルーンについて、説明する必要があるのう」
「この額の文字が?」
「それは、ミョズニトニルンの印。始祖ブリミルに仕えたとされる、伝説の使い魔の印じゃよ」
「伝説の使い魔……!?」 ルイズが驚きの声を上げる。
「ミョズニトニルンは、あらゆるマジックアイテムを操ったそうじゃ。眠りの鐘を使えたのも、そのためじゃろう」
「……この、眠りの鐘や、あるいはその人形など、魔法を動力にしている道具を俺にも使えるということか」
「そうじゃ」
「……全く実感がわかない。伝説と言われてもな……。そもそも、なぜ俺にミョズニトニルンの印が刻まれたのだろう?」
「それは儂にもわからん。じゃが、古い文献に載っているミョズニトニルンと君は、同じ能力を持っていることは確かじゃ。
逆にこちらから聞かせて貰いたいのだが……君の変身は、一体どういう能力なんじゃね?
それもミョズニトニルンの能力なのかもしれんが、儂には見たことも聞いたこともない」
「オールド・オスマン。それを答えるのは義務でしょうか……?」
遠慮がちにルイズは問いかける。引け目を感じているために、ルイズらしからぬか細い声だった。
「いいや。あくまで君らにお願いしているだけじゃ。ただ……儂にはこの学院を守るという使命がある。
そのためには、ウフコック君のような強い力を持っている者のことは知っておかねばならん。それを理解して貰えんだろうか」
心配げにルイズはウフコックを見た。ウフコックは、こくり、と頷く。
「今、君らが見ている俺の姿、それは俺の一部分にしか過ぎない。
理解し難いと思うんだが……俺の体は、ここではない別の空間と繋がっている」
「……ほう」
「俺の反転変身、ターンとは、その別の空間に溜め込んだ物質を元に、道具を作り出す行為だ。
そして、あらゆる道具を作り出す、万能道具存在として開発されたのがこの俺だ」
信じがたいものを見るかのように、オスマンは驚愕の目でウフコックを見つめる。
だが、ウフコックの言葉に嘘の色は全く無い。そしてそれを裏付ける変身能力――オスマンは溜息をつく。
「……まさに想像を絶するのう……。一体、君は何処から召喚されたんじゃ?」
「マルドゥック市、という場所を聞いたことは?」
「全く無い」
「俺も、実を言えばトリステインもハルケギニアも、聞いたことが無かった。恐らく、全く別の世界なのだろう」
「君の世界では、君のような存在がありふれておるのか?」
「いいや、そんなことはない。俺を作り出すためには、数多くの研究者と国家規模の予算が必要だった。
それでも、本当に俺が生まれるかどうか怪しかったらしい」
「ふむ、オンリーワンというわけか」
「こう見えても、<金の卵>などと呼ばれていた」
あまりの話の内容に、驚きの感情を隠さぬオスマン。ふう、と溜息をつき、背もたれに体重をかける。
「道具として作り出された……ということは、自分の意思ではなく、他人の望むものを作り出させる、ということはできるのかね?」
「可能だ。……まあしかし、この国、この世界にそれを実行できる人間など居ないだろう。
俺への変身命令を伝達する特殊な皮膚を移植した人間か、あるいは俺を作り出した研究室に匹敵する施設が無ければ不可能だ」
「特殊な皮膚を移植するなど聞いたことも無いし、君を作り出せる研究室など見たことも無い。
というより……魔法を伴わない研究室など存在しないから、まずもって有り得んじゃろうな」
ぷかり、とオスマンは自分を落ち着かせるようにパイプを吹かせ、また口から外す。
姿勢を直し、ルイズとウフコックを真剣な目で見つめた。
「で、その上で君に頼みたい。反転変身はできるだけ使わぬよう頼みたい」
「……まあ、もっともな話だろう」
ウフコックは、反論もせずに頷く。
オスマンは、ややほっとしたように話を続けた。
他人の作品中だから無理だろ
「顔や姿を変えるだけならば、ハルケギニアに存在する者にも可能じゃ。
だが、あらゆる機能を持った道具に――というのならば別じゃ。変化の魔法とは、所詮見かけを変えるだけに過ぎん。
その中身、構造や機能を再現するなど、想像の埒外じゃ」
わかるじゃろう? とオスマンは視線を投げる。ルイズもウフコックも、頷く。
「しかもその道具が、この国のメイジがどれだけ力を合わせたところで勝てぬほど精巧なのじゃ。
もし欲深い人間が君に目を付けたならば……これは恐ろしいことになりかねぬ」
「一つ、質問があります」
「なんじゃね? ミス・ヴァリエール」
「オールド・オスマンは、ウフコックのことを、王室に報告なさいますか?」
「……信じてもらう他はないが、儂は胸の内に秘めておくつもりじゃよ。もしこれを知った教師がいたら、その者にも厳重に口止めするつもりじゃ。
それに、その眼で見ないことには、ウフコック君の存在を信じる者など居らんよ」
ルイズの緊張が弛緩する――もし報告するとなれば、ウフコックの身柄が危うくなるなど簡単に過ぎる想像だった。
そしてそうでなくとも、学院長に対して挑戦的な物言いをしていたのだ。
「……ルイズ、ありがとう」
「ば、馬鹿ね、何行ってるのよこんなときに……!」
ルイズは咳払いし、オスマンに向き直った。
「お話は十分に理解しました」
「うむ」
「ですが、もしウフコックに危機が迫るようであれば、どうしても変身に頼らざるをえないときはあると思います……」
「まあ命には代えられん。死んでもその命令を守れ、とまでも言わんよ。
それと、服や飾り、日用品など無難なものに変身する分には良かろう。
むしろ、そうしてただの変化の魔法だと周囲に思わせた方が良いだろう。
……対外的には『エコー』と名乗ったほうが良いかもしれんな。ああ、変化が可能な幻獣のことじゃ。
稀有ではあるが居ても不思議ではない」
「エコー、そういうものがあるのか」
「……ただ、我々の世界にはありえぬような道具に変身し、それを利用するのは、できるだけ避けてほしい。
それと……君がミョズニトニルンだということも、重ねて秘密にしておこう」
真剣に悩むオスマンに、ウフコックは慎重に頷く。
「了解した。俺も、俺の世界の武器や道具などには変身しないよう気をつけよう。ミョズニトニルンというのも、黙っていよう。
ルイズは構わないか?」
「ええ。……話が大きすぎて、正直怖くて他言なんてできないわ」 と、溜息まじりにルイズは言葉を漏らす。
「それさえ守ってくれれば、今まで通り、ウフコック君はミス・ヴァリエールの使い魔として居てほしい。
正直、君らにとって秘密が重荷であることは承知しているのじゃ。すまないのう……。
何か困ったことがあれば何でも申し出なさい」
オスマンは、労わるように言葉をかけ、ルイズ達は頷いた。
「さて、堅い話はここまでとしよう。舞踏会に遅れぬようにな。楽しんできたまえ」
「はい!」
ルイズはオスマンとの話を終えて寮の自室に戻った途端、疲れた溜息を付く。
「あー、もう緊張したわ」
「……そうだな」
ウフコックは物憂げに反応し、のそのそと自分のベッド代わりの箱に寝そべった。
「なによウフコック。そんなにミョズニトニルンっていうのが驚いたの? それとも、ターンを控えろって話?」
「いや……。俺がミョズニトニルンというのはそれほど衝撃というわけでも無いんだ。もともと大概の道具には化けられるのだから、
マジックアイテムを操れるようになったとしても、まあ機能が一つ加わったくらいの気持ちなんだ。
それに、俺が反転変身する道具には元々法律などで制限がかけられていたし、オスマンの申し出も大体予想がついていた」
「貴方、よくわからないところで呆れるほど自信家よね……。私がミョズニトニルンを召喚しただなんてバレたら、
学院の皆が上へ下への大騒ぎよ。本当、悩みどころなんだから」
呆れるようにルイズは言った。
「そ、そうだろうか」
「まあ、貴方が凄いなんて初めからわかってたことだけどね」 言い捨てるように相手を褒める。ルイズなりの照れ方。
「君に認めて貰えるならば何より光栄だとも。だが……」
ウフコックは言葉を切る。やや躊躇うような口ぶりだった。
「今日は、あれだけ大口を叩いておいて君を危機に陥れてしまった……。正直肝を冷やした。
メイジといえど同じ人間と、俺は油断してしまっていたんだ。一歩間違えれば、俺達はお終いだった。そうだろう?」
「なによ今更。そりゃ確かに危険だったし、私だって……怖かったわ」
ルイズの声に怯えが混じる。綱渡りもいいところだったと、今更ながらルイズは恐怖を感じていた。
だが己の怯えを抑え、決然と話す。
「でも! それでも、誰かがやらなきゃいけないことをやった。そのために冒した危険だって、私たちがやらなきゃ誰かが肩代わりしてたのよ」
「だが、君である必要性は無い。そうだとしても?」
「……そうかもしれない。でも、あの場は私達しかいなかったわ。私は、自分にしかできない、って思ったら、居ても立ってもいられないの。
負けず嫌いとか、馬鹿にされるのが嫌いとか、確かに、そういうところもあるわ。
でもそれ以上に、何もしない、何も出来ないまま貴族として腐っていくのは……たまらなく嫌なの」
「そうか……」
しばらく、迷うようにウフコックは中を見つめる。
「だが、ルイズ、そのために犠牲になるものもある」
ウフコックは話しながら、自分のベッドから身を起こして腰掛ける。
「確かに、君の今日の行いは、誰もが認める正当なものだ。しかし行動には常に対価が求められる。
例えば、君自身の安全、俺やキュルケ達の安全なんかがそうだ。
あるいは、もしかしたらフーケが居るために、助かっていた人が居たかもしれない。
きっと今の時点で何かを犠牲にしているし、一歩間違えていれば、すべてが犠牲となっている」
やや一言置いて、ウフコックはルイズを見つめる。
「それでも、名誉を求める? 今日のように、君が危機にさらされたり、あるいは誰かを傷付けたりすることがあっても?」
偽りのできない問いかけ。ルイズは、悲しげに頷く。
「……うん。私は、名誉がほしい」
名誉――常にその一言で済ませてきたものであり、それこそが今の自分を模る欲望。
自分のあり方と表裏一体の、もはや人生と柱と言うべき何か。
薄々気付いていたその存在を、ルイズは直視した。
その正体は、言葉の響きとは裏腹に、決して清らかなものではない。
それは、ルイズにとって血肉であり、痛みを伴うほどに実体を持つものであった。
「両親から、姉から、常に貴族たるべし、って教えられて今までずっと生きてきたわ。
魔法が使えない私には貴族たる能力が欠けてる。それでも……いえ、だからこそ、公爵家に生まれた私は、
ただ安穏と生きるなんて許されないと思ってる。だから、名誉を取らずに生きる私は、きっと私じゃなくなるの。
それこそが私の欲で、目標で……それ以外の生き方は、少なくとも今は考えられない。
だから、何か犠牲や危険を冒すことが必要なら、きっと躊躇しない」
己の偽らない答えを思い、ルイズは瞳を伏せた。
「……でも、こうして名誉にこだわることが、私の卑しさや残酷さなんだわ。
貴方が居なかったら、きっと、もっとたくさんのものを犠牲にしているだろうし、周りの犠牲の存在すら気付かなかったと思う」
「誰しも、そうしたものを心の中に持っている。恥じることではない。……だが、君はそれが人一倍強い。
俺は……君の気高さが、君の大切な何かや、君自身を供物としてしまわないか、心配なんだ」
ウフコックはベッドから降り、ルイズの手の元へ赴く。
慰めるように、ルイズの細い指をそっと握った。
小さすぎるウフコックの手――大切なものが何かを気付かせてくれる微かな温かみを、ルイズは感じている。
「……うん、そうね。確かに、大事なことを犠牲にするのもイヤよ。覚悟しないといけないときは、今後あるかもしれない。
それでも、貴方も私も傷付いたり傷付けさせたり、死なせたりしない。救えるなら何だって救ってみせるわ」
「ルイズ……。君は我侭だな」
「実はそうだったのよ」
くすり、と一人と一匹は笑った。
「それとね」
ルイズは次の言葉を出すのに、苦労していた。口に出すことが少し怖い、と思っていた。
だが、ウフコックが優しく促す。
「ルイズ、遠慮することはない。君の思っていることは出来る限り受け止めたいんだ」
「うん……オールド・オスマンに言われたってのもあるけど、貴方の力に頼り過ぎるのは、止めておきたいの」
「ふむ……理由を聞こうか」
「その、貴方を武器として使って……凄く驚いたわ。今でも、あの土の腕を砕いた感触が手に残ってる。
貴方が居れば、きっと何だってできるんだ、って思った」
ルイズは、自分の手を見つめながら言った。ウフコックは黙って耳を傾ける。
「でもだからこそ怖いわ。自分で成し遂げたことなんだ、って錯覚しそうで。……貴方の力に頼るのは、慎重にならなきゃ駄目だって思ったの」
「……それに、気付けてくれたか」 感嘆したようにウフコックの呟く。
「それに、オールド・オスマンが言ったみたいに、欲に目が眩んで貴方を奪おうとする人だって出てくるかもしれないわ。
そんな人に貴方が狙われるなんてゴメンよ。貴方もそうでしょう?」
「そうだな。ぞっとする話だ」
「だから、私が何かしなければならないとき、貴方抜きで私がどこまで出来るか見守ってほしいの」
ルイズにしては珍しく、弱気な口調でウフコックに願い出た。凛とした口調で、ウフコックは応える。
「わかった。君の言う通り、俺は見守らせてもらう。危なければ口は出す。手出しは控えるが、ここぞというときは遠慮などしない。
それでも……君の可能性を見届けよう」
「ふふ、じゃあ改めて宜しくね。私の使い魔」
「マイ・プレジャー(御意に)」
執事のように大仰に頭を下げるウフコック。
その姿を見て、<金の卵>というあだ名の由来にルイズは思いを馳せた。
きっと、ウフコックの世界の人間は、このウフコックこそがあらゆる可能性を秘めているから、そう呼ぶのだろう。
だが、違う、とルイズは思う。この小さな鼠は、自分自身ではなく、自分を使う人間の可能性を見つめている。
この鼠のすべてを曝け出す嗅覚の前に、自分の魂を自覚しないものは居ない。
虚飾を剥ぎ取った先に残る可能性、それこそがきっと<金の卵>なのだ。
自分の場合、それが一体何であるのか、ルイズはその欠片を見出しつつあった。
そして、隣の小さな使い魔と共に、その欠片から確固たるものを形作っていきたい。ルイズはそう願った。
ウフコックは、優しい眼差しでルイズを見つめてる。
口に出さずとも、思いは伝わっているはずであった。
「でさ、ウフコック。……普通にこの世界にあるものに変身する分には構わない、ってオールド・オスマンは言ってたわよね?」
「ん? そうだが……」
「変身してもらいたいものがあるのよ」
舞踏会場に改装されたアルヴィーズ食堂の上階。
その壮麗な扉が開かれ、ルイズは大仰な呼び出しに答えて中へと足を踏み入れる。
小ぶりで整った顔立ち。宝石をあしらったバレッタに纏められた、桃色の流れるような髪。
高貴さを決して損なわない、意外とスタイリッシュな体。それを包む純白のパーティドレス。
男性陣は意外な人間の艶姿に、息を呑んで見つめている。
「あら、ルイズ。……凄く良いドレス着てるじゃないの」
先に会場に入っていたキュルケとタバサが近づいてきた。
三人の活躍はすでに多くの人間に知れ渡っており、自然と会場の中央に輪ができ始めていた。
「あら、これがトリステインのモードよ。知らなかった?」
と、自慢げにルイズは話す。男性陣の賛辞がこれ見よがしに聞こえてくる――絶好調。
だがキュルケとタバサが訝しむように見つめる。
「……っていうか、何か朝と明らかにスタイルが……。あっ」
「なるほど……」
キュルケの微笑み/タバサの鋭い視線/間違いなく気付かれている。
「ウフコック、ピスタチオでも食べる?」
「なななな、何言ってるのかしら!?」
「……間違いなく、サイズが大きくなってる」
「考えたものねぇ。……あとで、そのドレスの作り、教えてもらえるかしら?」
支援。
支援
よせて/よせて/上げて。
タバサの視線から逃げるように、ルイズは手で胸を隠した。
このメイド・バイ・ウフコックのドレス。胸の部分だけでなく縫製も実に丁寧な仕上がりで、女性陣すら溜息のでる出来栄え。
「な、何よ、悪いっ!? だいたい、使い魔を締め出して楽しむケチな舞踏会が悪いのよ!」
「悪いなんて言ってないわよー?」
「いいえ……とてもズルい」 ギラついた視線でタバサは睨んでいる。
「……いや、まあ、気付かれるだろうとは思っていたが」
渋みのある男の囁きが聞こえる/声の発生源――ルイズの着ているドレスの胸部。
「あはははっ。ま、ウフコック共々、楽しみなさいな。貴方達が主役なんだからね」
キュルケが楽しげに呟き、男達ととっかえひっかえ、躍りに興じる。
タバサは時折ルイズの方に鋭い視線を投げつつ、食事と格闘していた。
ルイズ達は夜が更けても、歓楽に身を委ね、躍り、遊び倒した。
とても長い一日――ルイズが使い魔と共に困難に立ち向かった日が、終わり行く。
やがてやってくる明日を、黄金の可能性に満ちた明日を迎える。
今日と同じように、小さな使い魔の手を取りながら。
第一章 使い魔は金の卵――了
パット入りドレスにw
きっとルイズくらいしかそんな使い道考えないぞw
59 :
虚無と金の卵:2008/11/07(金) 00:37:11 ID:G9LYfj09
投下完了です。
オリジナル一巻相当の部分はこれにて終了。
SSなんて初めて書いたもので、一区切り着けられてほっとしています。
感想や指摘くれる人、まとめに載せてくれる人、本当に感謝。
そして補足とか色々箇条書きで書いてみる。
・まず前スレ187氏へ。すみません、おマチさん死んでないです。むしろおマチさんは支援の方向で。
ところで末路って表現、死に際以外も使って良い……よね?
・ルイズと鳳の相性はバッチリだと思います。二人の通った後にはペンペン草も残らねぇぜ。
・1巻相当の部分だと綺麗な人物ばっかりです。もっと馬鹿とか変態とか書きたいです。
・ミョズニトニルンがルイズ側だと、プロットが原作からどんどん離れていく……。
当面は本スレで投下しようと思いますが、回を追うごとにIF要素が強くなるので、
場合によっては避難所に行くかもしれません。
ナイスウフコック
GJ!
末路。「その結果」「事の顛末は」とかと同じようなもんじゃねーのん。
タバサw
マジでお疲れSummer!
そしてこれからも楽しませて下さいね。
ゼロ魔ならではの使い道とかも楽しみにしてます。
>>59 乙、今回も面白かった
よせてあげるのは反則じゃない、立派な技だ
>>63 まぁ現代の女性でやっていないのはいn
あれ?誰か来たようだ・・・・・
>>65 それはなんと羨ましゲフンゲフン、恐ろしい事態だな……
昔は寄せてあげる技術がなかったから、
代わりに腹を絞って相対的に胸を大きく見せたんだよな
肋骨抜いたりしてたんだよな
こえー
問題なければ01:25から投下しようと思います
第2話への多くのレス、多謝であります。
支援だ!
ルイズが激しい後悔の念に苛まれている頃、リュウは中庭を歩いていた。
「ああ言ったはいいが、何を捕まえればいいのか判らんな・・・」
最初、野草やキノコは猛毒を持っている種類もあるだろうが、哺乳類なら見知らぬ種類でも大丈夫だろうと思っていた。
が、よく考えたらここは地球ではない。
哺乳類だからといって、必ずしも食べて大丈夫とは限らないのだ。
もしかしたら猛毒を持った哺乳類がいるかもしれない。
知識のない自分が知らずに食べてしまえば一撃でアウトだ。
「さて、困ったな・・・」
腕を組みつつ中庭をうろうろしていると、後ろから声をかけられた。
「リュウさん、何してるんですか?」
見ればシエスタが乾いた洗濯物を持って後ろに立っていた。
「食うものをどうしようかと思ってね。この土地の知識がないから、何を食えばいいのかわからなくて困ってる。
この辺りに食べることのできない動物なんてのはいるのかい?」
「う〜ん・・・毒をもった動物とかってあまり聞いたことないですけど、どうなんでしょう・・・?
少なくともこの辺りにはいないと思いますよ」
首をかしげてしばし考えるシエスタ。
「それよりも、食事でしたらこちらにいらしてください。私たちの賄い用の食事でも良ければお出しできますよ」
「そうか、すまない、お願いできるかな」
「はい!」
満面の笑みで答えると、シエスタはリュウを厨房に連れて行った。
「それにしても・・・ガタイも見事だが、食いっぷりも見事だね・・・」
厨房を預かる料理長であるマルトーが舌を巻いた。
「よく身体を動かすからね。食わんことには始まらん。それにしても美味かったよ。こんなに美味い飯は久しぶりだ」
数人分はあろうかという食事をあっさりと平らげると、満足して頷くリュウ。
「ははは!お前さん、気持ちいいヤツだな!気に入ったよ。好きなときに来てくれ。賄いでよければいつでも、好きなだけ食わしてやる!」
マルトーは豪快な笑顔で不器用なウィンクをすると厨房の奥に消えていった。
「マルトーさん、照れてますね。さっさと奥に行っちゃった」
そんな二人のやりとりを見て、シエスタも嬉しそうだ。
「さて、ご馳走にもなったし、何か手伝えることはないかな?」
「そんなのいいですよ!困ったときはお互い様ですから!」
シエスタは慌てて断ったがリュウもひかない。
「今までのところ、困ってるのは俺だけだ。何か力になりたい、手伝わせてくれ」
一向にひく気配のないリュウに、シエスタが折れた。
「じゃ、じゃあ、デザートを運ぶのを手伝ってもらえますか?」
デザートの乗ったカートをリュウが押し、シエスタがデザートをそれぞれ卓上に配る。
そんな作業を続けていると、フリルなどあしらったやたら派手なシャツを着た生徒の懐から落ちた小瓶がシエスタの足元に転がってきた。
「あの、落とされましたよ」
小瓶を拾い上げ、差し出すシエスタ。
が、聞こえなかったようで相手は気づいていない。
「あの、落とされましたよ」
先ほどより大きな声で再び小瓶を差し出す。
支援
「あれ?それはモンモランシーの香水じゃないか!ギーシュ!やっぱり君はモンモランシーと付き合ってたんだ!」
落とした本人とは違う生徒がそれに気づき、囃し立てた。
「ち・・・違うよ!美しい薔薇は誰か一人のためのものではない、皆のものなんだ、だから、誰か特定の人とは・・・」
マントの色の違う少女が一人、ギーシュと呼ばれた少年に近づく。
少女に気づくとギーシュの顔から一気に血の気が引いた。
「ケ・・・ケティ!違うんだ、これは・・・」
バチンッ!
言い切る前に頬に走る衝撃。
「ひどい!やっぱり私のことは遊びだったんですね!」
目には涙が溜まっている。
「ち・・・違うんだケティ・・・」
叩かれて赤くなった頬をさすりながら取り繕おうとするギーシュを尻目に走り去る少女。
「・・・何が違うのか、説明してもらおうかしら・・・」
ギーシュが声のした方を振り向くと金髪に縦巻き髪の少女が額に青筋を浮かべながらギーシュを睨んでいた。
ギーシュの頭にシエスタから奪った小瓶の中身をぶちまける。
「モ・・・モンモランシー・・・」
香水まみれになりながらも慌てて何か言おうとするが、口を開く前に先ほどとは逆の頬に再び衝撃が走った。
「やっぱり説明してくれなくてもいいわ。私よりあの女がいいってことは分かったから」
力いっぱい頬を叩くと小瓶をギーシュに投げつけ、モンモランシーと呼ばれた少女も肩を震わせながら去っていった。
「ち・・・違うんだ・・・」
力なくうなだれるギーシュ。
嫌な予感がしたシエスタはとばっちりが来る前に退散するべく、さっさと配膳を続けようとした。
「・・・待ちたまえ・・・」
そんなシエスタをギーシュが呼び止める。
「は・・・はいっ!」
飛び上がって返事をするシエスタ。
恐怖の為に直立不動のまま震えている。
まずい!貴族を怒らせてしまった!!
後悔するがもう遅い。
支援ボム、ホァ!
PAD長!
「僕が気づかないフリをしたんだ。それぐらいの機転は利かしてくれても良かったんじゃないかね?」
シエスタの顔からは血の気が引き、身体は傍から見ても判るほどブルブルと震える。
「も・・・申し訳ありません!!」
必死に頭を下げて謝るシエスタ。
「おかげで君は二人のレディを傷つけてしまった・・・どうしてくれるんだね・・・」
「申し訳ありません!!」
繰り返し、必死で頭を下げる。
逆恨みも甚だしいが貴族には逆らえない。
貴族にとっては平民のシエスタなど、立場的にも実力的にも気分ひとつで殺してしまえる相手だ。
ただ、もう、ひたすら謝って機嫌を直してもらう他ない。
「君はおかしなことを言うな・・・」
完全に萎縮してしまっているシエスタとふんぞり返ってそれを見下しているギーシュの間にリュウが割って入った。
「な・・・なんだね!?君は!?」
突然の闖入者にシエスタから目を離すギーシュ。
見れば身長こそ自分と同じぐらいだが、オーク鬼のような身体をした男が目の前に立っていた。
男としての本能がどう転んでも勝てないと警鐘を鳴らす。
思わず一瞬怯んだギーシュだったが、それでもすぐに考えを改めた。
勝てないのは生身同士の場合の話だ。
見たところこいつは平民、こちらは魔法が使える。負ける要素などひとつもない。
そこまで考えると、再びふんぞり返るギーシュ。
「おかしなこととはどういうことだね?」
威圧的にリュウを睨みつける。
「君は二股をかけた。そしてそれがバレた。確かにきっかけはシエスタだったかも知れないが、バレて困るようなことをしていたのは君自身だ。君にシエスタを責める道理がどこにある?」
ギーシュの視線を正面から受け止め、静かに語るリュウ。
そうだそうだと囃し立てる周りの生徒たち。
至極当然のことを言われて言い返す言葉に詰まる。
だいたい、理不尽なことはギーシュ自身にもわかっていた。ただ、たまたま関わってしまったメイドに八つ当たりしようとしたに過ぎない。
それに少々痛めつけたところで所詮平民だ。それで自分の気が晴れるならいいじゃないか。
そもそも、なんで平民風情にこんなことを言われなければならないのだ。
徐々に怒りのボルテージが上がるギーシュ。
そこで彼は気づいた。
こいつ、昨日の儀式でゼロのルイズに召還されたヤツじゃないか。
いちいち平民の顔など覚えてはいないが、こんな体格のヤツがそうそういるはずがない。
相手を馬鹿にした笑みを浮かべる。
おっと真空波動支援
「・・・そう言えば君は・・・昨日の儀式でゼロのルイズに召還された物乞いじゃないか。
あまりにみすぼらしいので覚えているよ。
そうかそうか、平民のクセに貴族に対する礼儀がなってないと思ったが、ゼロのルイズの使い魔か・・・
流石は”落ちこぼれ”のゼロ!使い魔の躾ひとつできないとはね!」
リュウは無表情のまま、まくし立てているギーシュを静かに見つめ続ける。
「君をこの場で処分してあげてもいいんだけど、一応は貴族の使い魔だ。土下座して許しを請うというのなら、考えなくもないよ」
周りに聞こえるように、ことさら大きな声で告げるギーシュ。
「躾がなっていないのは君の方だし、謝らなければならないのも君の方だ。そんなことでは貴族だなんだという前に、人としての程度が知れるぞ」
予想外の反撃にギーシュの顔が真っ赤に染まる。
もう許さん。この馬鹿は一度痛い目にあわなければ解らないらしい。
「申し訳ありません!!私ならどんな罰でも受けます!リュウさんは関係ないんです!!」
必死で取り繕うシエスタを完全に無視するギーシュ。
「わかった・・・そこまで言うなら、決闘だ。それでどちらが正しいかを決めようじゃないか」
決闘という言葉を聞いて更に蒼白になるシエスタ。
「リュウさん!謝ってください!今ならまだ間に合うかも知れません!!」
リュウに謝るよう、必死に懇願する。無表情にギーシュを見つめていたリュウは温かい視線をシエスタに向けると、笑顔で答えた。
「心配してくれて有難う。でも、大丈夫だ。安心してくれ」
そしてギーシュに向けて言い放つ。
「物事の正しい、正しくないを決闘で決めるというのは愚者の極みだとは思うが、それで君が納得するというなら仕方ない。相手になろう」
「どこまでも腹が立つヤツだな!今更謝っても遅いからな!ヴェストリの広場だ!広場を血で染めてやる!!逃げるなよ!!」
吐き捨てるように叫ぶと、怒りに肩を震わせながらギーシュは食堂から出て行った。
決闘と聞き、一気に盛り上がる野次馬たち。
甘やかされて育ってきた貴族の子供たちにとって、こんな面白そうなイベントなど滅多にない。
皆、我先にとヴェストリの広場に向かって食堂を出て行く。
よせ、奴はアメコミ超人と戦える…www支援
食堂の端の方で何やら騒ぎが起こっていたようだが、今のルイズにはどうでもいいことだった。
とにかく何とかしてリュウを探し出し、謝って仲直りしなければ。
でも、なんて謝ればいいのだろう。
どんどん沈んでいくルイズだったが、何気なく人がまばらになってきた騒ぎの方にふと目を向けた。
なんと、そこにリュウがいるではないか。
「え!?なんでリュウがここにいるの!?」
よくわからないが、そんなことは今はどうでもいい、きっとブリミルの思し召しなのだろう。
とにかく、行って謝らないと!
急いで席を立つとリュウの元に走る。
「リュウ!!」
泣き出しそうな顔でリュウに駆け寄るルイズ。
「ルイズか、いいところに来てくれた。ヴェストリの広場の場所を教えて欲しいんだが。シエスタに聞いても教えてくれないんだ」
突然の質問に目が点になるルイズ。
リュウは最初、シエスタにヴェストリの広場の場所を聞こうとしたのだが
「殺されてしまいます。行ってはいけません」
の一点張りで一向に教えてくれない。
そこに丁度ルイズが現れたのだ。
ルイズは謝ろうとしてリュウの元に来たはいいが、突然のことにワケがわからない。
何故にヴェストリの広場??
「えと・・・話が見えないんだけど・・・ヴェストリの広場に何の用があるの??」
「ちょっとな」
理由については答えないリュウ。益々ワケがわからない。
目を白黒させているルイズにシエスタがすがりつく。
「リュウさんを止めてください!!リュウさんが・・・リュウさんが殺されちゃう!!」
泣き喚きながらルイズの肩を揺さぶるシエスタ。
意外な腕力を発揮するメイドにルイズの身体ががっくんがっくん揺さぶられる。
「ちょちょちょ!!?ととととりあえずずずず落ち着きなさいいいいい!!もげる!!肩がもげる!!!」
半ば失神しかけているルイズに気づき、ようやく開放したシエスタは、事の顛末を説明した。
ことの重大さを理解するにつれて、ルイズの顔色も徐々に変わる。
「ちょっとバカリュウ!!!何考えてるのよ!!!」
謝る云々どころの騒ぎではない、このままでは本当に殺されてしまうかもしれない。
慌ててリュウを探して首をめぐらす。
「あの平民ならもう広場に行ったよ」
親切な野次馬が教えてくれた。
どうやら、広場の場所を野次馬に教えてもらってさっさと行ってしまったらしい。
「あああ!!もうっ!!」
ヴェストリの広場目指して駆け出すルイズとシエスタ・・・
だったが、スカートを両手で摘みあげて走るシエスタはあっという間にルイズの視界から消えた。
・・・何あのメイド、どんな脚してるのよ・・・
支援
「逃げずによく来たね。その勇気だけは褒めてあげよう」
やたらと芝居がかった口調と仕草でリュウに・・・というよりは野次馬たちに向けて言い放つギーシュ。
「僕に弱い者をいたぶる趣味はない。最後の忠告だ。泣いて土下座するなら今なら許してやらないでもないが、どうする?」
大見得をきりながら声高に言うギーシュ。
「お前はおしゃべりをしに来たのか?」
それを冷たくあしらうリュウ。
ギーシュの額に青筋が浮かぶ。
「いいだろう・・・後悔するがいい!!」
叫ぶと同時にギーシュは自分の杖である薔薇の造花を振る。
造花から1枚の花びらが落ち、地面に辿り着くと花びらは等身大の鎧を纏った女性の像となった。
「僕の二つ名は『青銅のギーシュ』。土のメイジ。
メイジはメイジらしく、魔法で戦うものだ。よってこの青銅のゴーレム・・・
僕は優雅にワルキューレと名づけているんだけどね、このワルキューレがお相手するよ。よもや卑怯とは言うまいね?」
ギーシュの顔に残虐な笑みが浮かぶ。
忽然と現れた青銅の像に「ほう」と感嘆の声を漏らすと、腰を落として身構えるリュウ。
「魔法とは随分と便利なものだな。別に構わんさ、本気でかかってくるといい」
ギーシュは自分のワルキューレを見た生意気な平民が顔面蒼白になる無様な姿を楽しみにしていた。
が、ワルキューレを見ても片眉を多少上げるだけで、余裕さえ感じさせるリュウにギーシュのイライラは更に募る。
もっと驚いたらどうだね!?思わず口から出そうになるが、そんなことを言えば負けを認めてしまうことになるので慌てて言葉を飲み込む。
だが、リュウにしてみてもギーシュは未知の相手だ。別に余裕でいるわけではない。
ただ、歴戦の勇士であるリュウにとって、特に戦いの場においてはあらゆる事象に対して常に冷静にしていなければならないという経験と本能が、第三者に対して余裕ある態度に見えているだけに過ぎない。
そして、恐ろしいスピードで対戦相手を分析していく。
・・・若いな・・・戦いの状況下で感情が完全に表に浮き出てしまっている。
それに実戦経験もほとんどないらしい。
視線がせわしなく動いているし、呼吸も荒い。
だいたい、相手の力量も解らないのに自分の手の内を最初から宣言するなど自殺行為だ・・・
そこまで考えてから、改めて気を引き締める。
ただし、だからと言って弱いかどうかとは別問題だ。
元々のポテンシャルが高ければ経験の差など埋めてしまうかもしれないし、魔法とやらがどのようなものかもまだ解らない。
相手が格闘家なら身体つきや筋肉のつき方、視線や微妙な筋肉の動きの変化である程度の予測はつくが、今回はそれが役に立つとも思えない。
とにかく、慎重にかかるしかないな・・・
シエスタ、この膂力で今まで普通に暮らしてきたのが不自然すぐるwwww
そして、支援仕る!
と、丁度そこにようやくルイズとシエスタが追いついた。
「ちょっとリュウ!!何してるのよ!早く謝りなさい!今ならギーシュも許してくれるかもしれないわ!!」
必死に叫ぶルイズ。
「ゼロのルイズ、残念だが、それはない。彼は僕の怒りを買ってしまった。最早、泣こうが土下座しようが、許すつもりはないよ。」
「ギーシュもギーシュよ!だいたい、貴族同士の決闘は禁止されてるじゃない!!」
キッと視線をギーシュに向け、非難の声をあげる。ゼロと呼ばれたことにも腹がたつが、今はそんなことを気にしている場合ではない。
「禁止されているのは貴族同士の場合だろう?彼は平民だ。なんら問題はない」
「それは・・・それは今までそんな馬鹿げたことがなかったからでしょう!ドットとはいえ、メイジのアンタに平民のリュウが勝てるわけないじゃない!!」
目に涙を滲ませながら尚も食い下がるルイズ。
「最初に口を挟んできたのは、そのリュウとかいうみすぼらしい物乞いだ。だいたい、僕に文句を言う前に、使い魔の躾ひとつできない無能な自分を責めるべきではないのかね」
無慈悲に告げるギーシュ。
必死に言葉を続けようとするルイズにリュウが声をかける。
「大丈夫だ、ルイズ。」
「でも・・・ホントに殺されちゃうのよ!アンタわかってないのよ!平民では貴族には絶対に勝てないの!!」
リュウは、最早溢れ落ちる涙を拭きもせずに必死で決闘を止めようとするルイズをじっと見つめた。
あの無駄にプライドの高いルイズが自分自身への中傷の言葉には反論すらせず、
ただひたすら決闘を回避させようとしている。
どうやらルイズは俺を本気で心配してくれているようだ。
流石に床で飯を食えと言われたときはどうかと思ったが、やはり根は優しい子なのだろう。
ならば俺も応えてやらねばならない。
暖かで優しい笑みをルイズに向ける。
「ルイズ、君はもう少し自分の使い魔を信じた方がいい。それに、自分で言っただろう?使い魔は主人を守るものだと」
リュウの言葉にきょとんとするルイズ。
リュウは何を言っているのだろう?
危機に陥っているのは私じゃなくて、リュウの方ではないか。
「詳しいことは解らないが、彼が君を馬鹿にしていることは解る。とりあえず、彼には君に謝ってもらうさ」
そう告げると改めてワルキューレに向かって構えた。
リュウはルイズの”誇り”を守ると言ったのだ。
そう理解したとき、ルイズの顔が熱くなった。
「ふん。いくらでも謝ってやるさ。まあ、僕に勝てればの話だけどね」
再び残虐な笑みを浮かべるギーシュ。
リュウの周りの空気が一気に張り詰める。
「俺は・・・俺より強いヤツに会いにきた」
>「俺は・・・俺より強いヤツに会いにきた」
……いないんじゃないかな?(支援
阿修羅閃空でヴェストリの広場へ走るシエスタ支援
以上で投下終了です。
吉崎観音の4コマネタのリュウ(リアル浮○者)とか最高に面白いんですけど、
一応リュウファイナル準拠なんで、ギャグテイストは極力避けようと思っています。
自分の中ではリュウは最高にかっこいい男なので。
そんなワケで各シリーズによって設定が異なっている場合はリュウファイナル設定を最優先にするつもりです。
場合によってはアッサリ覆すと思いますがw
とりあえず、魔龍や宇宙タコ、全身タイツ連中なんかには会ったことない前提です。
あれらとやりあってるなら真空波動拳1発で7万人粉砕しちゃいそうなんでw
ぼちぼちやっていきますので、見捨てずに読んでやっていただけると、私は小躍りしながら頑張ります。
支援波動剣
波動乙です
確かに、vsシリーズ経験してたら7万どころか70万でも相手に出来そうww
今だと、vsタツノコもあるからなぁ
>>88 乙
楽しかったお
エルフとのガチバトルに期待
激しく乙!
いいとこで終わってしまった〜!
続きが気になりすぎる!
>>自分の中ではリュウは最高にかっこいい男なので。
これには全く同意。
一刻も早く続きを!
本気で期待してますのでw
アメコミヒーロー相手に戦ってた頃よりリュウファイナルの方が恐ろしいような…。
リュウさん乙です。
対ワルキューレのBGMはボーナスステージかな。
急にコミゲの四コマ漫画思い出した。
「食物波動券!」
「リュウの手から、コ、コメがああああぁぁぁぁ!」
レス見てるとリュウファイナルのリュウも段々バケモノに思えてきた・・・
山の形変えたり、身体ぶち抜かれても生きてたりしましたね、そういえば。
リュウファイナル終了後だとたぶんワルド1万人ぶんくらいの強さはありそうだ
>>88 リュウ氏乙
>一応リュウファイナル準拠なんで
自分の中で基準となっている一番好きなリュウなので楽しみにしています。
・・・・勝てる奴いるのかなぁ・・・・・
vsタツノコでブレードやガウルと遣り合えるんならすでに人間じゃないレベルだしww
>>98 >>99 とりあえずギーシュ戦は書き終わってるんですけど
ホントに豪鬼に勝った後のリュウなら波動拳1発で全てを終わらせるぐらいじゃないとダメな気がしてきた・・・
困ったなぁw
乙です!
書き終わっているのなら早く投下お願いします!このままじゃ生殺しだぁぁぁぁぁぁぁ!!
>>101 寧ろやったら大人気ないリュウになるのでかえっておかしいのでは
>>101 強さではなく性格というか精神とかキャラクターとしての面であって
強さではないので自分の書き込みはあまり気にしないでください。
>>103 明日の晩に投下予定してます。
こんな文章を期待してくれて感謝感激であります。
>>104 納得!
やっぱ、これでいいのだ。
ではおやすみなさい。
>>99 派手さは皆無だけど、一撃必殺「風の拳」に開眼した驍ェ渋くてかっこいいよな。
豪鬼との死闘も手足をあっさり潰されたけど、捨て身のカウンター(?)で瞬獄殺破ったし。
台詞うろ覚えだけどギーシュ戦、豪鬼だったら…
豪鬼「こんな石人形などいらぬ!」
豪鬼「この手足も用をなさぬ!」
豪鬼「我が求むは真の一撃のみ…立てい小童!」
>>108 無茶言うでねえw
リュウファイナルの初期ですら自分の倍はある大きさの岩を担いで歩いたり
ヒューゴ戦で家屋が半壊する攻撃でも立ち上がったりと化け物じみてるからなあ
>俺より強い奴に会いに来た
良い台詞だよな〜これ、乙!
メガテン3からマロガレ召喚
って一瞬思いついたけどシナリオが全く成り立ちません。本当にありがとうございました
コイツぁ・・・シエスタがさくらに成る予感
波動の人乙でした、リュウは自分の中でも1番カッコイイ男です
波動拳は魔法です
オレはDOD&Mの人が来てくれればそれでいいんだ・・・・
戻ってきてくれー
金髪縦ロールのお嬢様もいるし、シエスタがんばる!ってことですか?w
モンモンが酷いことにwww
足を壁にさしながら登ったりとか?
モンモランシーはどう見ても本人だろw
波動痩身法乙
ファイナルって漫画なの?
泣けないのは哭くより悲しいのですね、わかります。
>>118 二巻で終わる漫画
昔ゲーメストに連載されてた
いかりや長介「え〜、使い魔、というものを皆さんご存知でしょうか?ファンタジーな物語に置いて
魔法使いを助ける者、魔法使いを見るなら使い魔を見よ、の言葉にある通り
主人の一生を決める大事な存在、しかしその使い魔がどこかおかしい、となると色々大変で」
…もしも使い魔が平民の男だったら…
この宇宙のどこかに居る神聖で強力で美しい使い魔よ、我の求めに応じて現れたまえ
ドカーン!
キュルケ(仲本工事)「平民よ!ゼロのルイズが平民を召喚したわ!」
タバサ (高木ブー)「…」
コルベール(いかりや長介「サモンサーバントは神聖な儀式だ、コントラクトサーバントを実行したまえ」
ルイズ(加藤茶)「ミスタ・コルベール!やり直しを要求します!」
サイト(志村けん)「…イテテテ…ここ、どこだ?」
<出オチなので以降の話は省略>
いかりや長介「続いては毎度お馴染み、コルベール、キュルケ、タバサの雷様をお届けします」
ザ・ドリフターズを召喚
>>121 ちなみにその外伝である「さくらがんばる」の最終回が同人誌で発売されてたのには驚いた
前スレのプライス大尉召喚ねぇ…軍事に精通しているなら書いてもいいんじゃない?
ゲームで聞き齧った知識で実際に存在する組織に属する(という設定の)人物を
描くとなると、底が浅いキャラにしかならないかと。
プライス大尉を描くのなら彼のバックボーンとなるSAS連隊に纏わる事は最低限知っておくべきだと思う。
>>122 てめぇ、笑わせるんじゃねぇ
我慢してたおしっこをもらしそうになったじゃねーか
いかりや長介「続いては毎度お馴染み、コルベール、キュルケ、タバサの雷様をお届けします」
コルベール「私としては、これはあまりやりたくないんですけどね。
しゃべらないんですよ、一人。コントなのに。
でも、それがどうしても続けたいって頑固でしてね。
まあ、そんなわけで、つまらないかと思いますが、見てやってください」
あの幼き日、魔法を使えないことを知り、泣き疲れたルイズは湖上で幻を見る。
夢のような、現のようなまどろみの中、鏡の向こうに映るのは一人の男。
男は舞っていた。
いや、ルイズには舞っているようにしか見えなかった。
波打つ草原の中心で、拳に赤い籠手を身につけ、白い服に身を包み、赤く細長い布切れを
額に結びつけた男が舞っていた。
拳を突き出し、腕をひねり、足を跳ね上げ、時に回す。
ルイズはいつしか息を呑み、男の踊りに目を奪われる。
足を跳ね上げ、そのままかけるように宙を飛ぶ。
合わせた手のひらから、空気の塊が放たれる。
天へ突き出された拳が、風を切り裂くように浮き上がる。
荒々しいように見えながら実に繊細なその動きが、実は舞いではないことをルイズは知ら
ない。
だがルイズは、いつしかその得体の知れない舞いに魅入られてしまう。
頭に焼き付けたその舞いを真似はじめる。
16歳になったルイズが使い魔召喚の儀式で呼び出したのは一人の平民。
走りながら鏡から出てきた平民は、その拳で草原をなぜる風を切り裂いた。
あの舞いだ、とルイズは確信する。
しかしルイズの確信とは違い、その平民もまた、かの男の真似をしていただけだったのだ。
「はじめまして、ルイズちゃん。私の名前は春日野さくら。よろしくね」
時を同じくして、ガリアでも人の使い魔が姿を現す。
トリステイン魔法学院に籍を置く、モンモランシー・マルガリタ・ラ・フェール・ド・モ
ンモランシと似たような姿をしていながら、その瞳の力は獅子をも射抜く強さを持ってい
た。
「この神月かりんが、この世界の覇者になって差し上げますわ!!」
ロマリアでは緑褐色の肌をした獣と見まごうような人が召喚され、教皇を物理的にしびれ
させる。
「ウオッ」
アルビオンのとある場所では、亜人を上回るほどの膂力を持つ、記すことすらはばかる半
裸の男が召喚されていた。
「ハラショー!!!!」
そして聖地から、一人の鬼がやってくる。
「我こそ、拳を極めし者なり!!」
虚無の力と殺意の波動が合わさったとき、果たして何が起こるのか。
ルイズの口から叫びがほとばしり、その拳が天を貫く!!
「昇! 龍! 拳!!」
ZERO VS. STREET FIGHTER
COMING SOON ...
>>125 もしかして「スタンバァイ・・・スタンバァイ・・・」が書きたいだけとか
外見だけなら髭も立派だし貴族っぽいぞ
ドンドンドン!
アンリエッタ「ただいま、アンちゃんだぞ」
ルイズ「ほんとにアンちゃんか?」
アンリエッタ「ほんとにアンちゃんだ」
ルイズ「風・水・土・火・虚無、一番強いのは?」
アンリエッタ「カリンさま!」
ルイズ「アンちゃんだー!」
>>122 コルベールないかりやは見てみたいが、
高木ブーのタバサはいやだー!!w
えーと、実在の、しかも存命の人物団体の登場って。
これwikiに登録していいのかな?
小ネタはありでいいんじゃないかな(長編は厳しい
実は召喚ネタじゃないしな
じゃあ登録してくる。
やばかったら後で消去してくれ。
138 :
LFO作者:2008/11/07(金) 12:44:28 ID:CZkv79mo
今日は。今パソコンできる環境にいます。
一か月半ほど前に新作を投下しましたが不味い所があったので
その修正版を50分から投下したいのですが宜しいでしょうか?
カマン
支援の準備だ!
やってきた、1レスだから早いわ。
ドリフ関連だったらアンリエッタがバカ殿召喚とかも見てみたい。
アニエス「姫ーっ!!」
マザリーニ「姫ーっ!!」
アンリ&殿「あはははは、城下にお忍びでいってくるぞよ」
そして落とし穴に落とされるアニエスとマザリーニ
141 :
LFO作者:2008/11/07(金) 12:51:52 ID:CZkv79mo
では、行きます。一応言っておきますが召喚先はエルフェンリートより。
Deep River 第一回
―コツ、コツ、コツ―
―選定は終わったか?こいつか?―
―はい。……番が適任だと思います。性格もおとなしいですし……も未発達です。―
―……そうか…おれの好みだな。―
―は?―
―いや。それじゃ手術の前にちょっと遊んでいってもいい?―
一瞬の静寂。次に眩しい光と何かが滑り込む音。
そして……
―馬鹿な!……番が消えた?!―
―実験場内の生体反応が消えています!―
―まさかそんな……消えたというのか?!―
―施設内の全区域に非常警報を出せ!―
―警察と自衛隊に緊急出動要請を出すんだ!周辺区域を封鎖するんだよ!―
―緊急指令!緊急指令!実験中の……番が失踪した!発見次第射殺せよ!―
―これは訓練ではない!―
―繰り返す!実験中の……番が失踪した!発見次第射殺せよ!―
―あと一分で施設内部全区画の閉鎖が完了します!―
―チッ!お楽しみはお預けかよ……!―
しかしこれ以降それの存在はその世界で確認される事は無かった……
平和な日常が永遠に続く保証は何処にも無い。狂気は常に日常と紙一重の所に存在する。神がこの世に存在しないのなら誰もそれを予測する事など出来はしない。
ほんの少しの切っ掛けで互いの位置は簡単に逆転してしまう。問題はその狂気の中でどれ程の者達が正気を保っていられるかである。
少なくともルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールという少女の名前はその中に入っていなかった。
142 :
LFO作者:2008/11/07(金) 12:52:54 ID:CZkv79mo
今、ハルケギニアにあるトリステイン魔法学院では進級がかかった使い魔召喚の儀が執り行われている。そんな中、ルイズは目にうっすら涙を浮かべながら使い魔を召喚する為の呪文を唱えていた。
杖を振り直後に爆発が起きる度に失敗だと笑い呆れる同級生達。
彼女は自身に問いかける。眩しいくらいに青い空の真下で私は一体何をしているというのだろうか?これでは体の良い見せ物ではないか。
今までゼロのルイズと散々馬鹿にされても己の矜持を砦とし必死に耐えてきた。
手の皮が剥け、声が枯れてしまうほどに魔法の実技も練習したし、坐学も連日の徹夜を繰り返して最高の成績を修めるほど賢明に励んだ。
しかし肝心の実績が何一つ無いのではどうにもならない。このまま使い魔を召喚出来なかったら、進級どころか最悪退学になってしまう。
それだけは絶対に避けたかった。ちょうど一年前、入学して直ぐの頃不安と恐怖に押し潰されてしまいそうだった自分をすんでの所で救ってくれたのは、両親や長姉ではなくすぐ上の姉であった。
使い魔召喚だけは失敗する訳にはいかない。次に失敗し学院を追い出されてすごすごと実家の玄関に戻るような事になれば、両親は何と言うだろう?
それにせっかく励ましてくれたすぐ上の姉に申し訳が立たなくなる。
成功した生徒達を見ると、ある者はサラマンダーを、またある者は風竜の幼生を召喚していた。
正直な所ルイズもそういった立派なのが欲しかったが、この際贅沢な事は言ってられない。
例え苦手な蛙が出て来ようが、恐ろしい鬼や吸血鬼が出て来ようが、何が何でも御する覚悟でいなければならない。
試験の監督をしているコルベール氏はルイズに次が最後の機会である事をそっと告げた。半ば自棄っぱちになってルイズは召喚の呪文を唱えて杖を振り下ろす。
だがやはりそれまでと同じ様に目の前の地面は爆発してしまい、真っ黒な煙が周囲に立ち込めた。
ただ敢えて言うなら、それまでの爆発と若干違っていたのはその威力が明らかに大きかったという事だった。
ルイズは愕然とする。
ついにやってしまった。張り詰めていた緊張の糸はぷっつりと途切れ、頭はもう何も考えられないほど真っ白になった。これから自分は周りの貴族達や果ては領民からも蔑まれる惨めな生涯を送るのだろう。
考えただけで内臓が押し潰される様な感覚に襲われた。それから直ぐに一陣の穏やかな風が煙を爆発した地点から移動させていく。
ルイズは始め何も召喚出来なかったと思っていたがそれは大きな間違いであった。周囲の笑いも次第に治まっていく。
煙が去ったその場には半球状に削られた様な穴が開いていた。そしてその穴の中には……一糸纏わぬ少女が一人仰向けに横たわっていた。
そのあまりの展開に男子生徒は何人かが前屈みになり、何人かが目を背け、残りの者達は凝視しようとして女子生徒達から問答無用の鉄拳制裁を喰らっていた。
ルイズは少女の元へ歩み寄り、頭の先から爪先まで観察して見る。
年の頃は顔の造詣からして人間で言うなれば20手前辺りといったところだろうか。
肌はまるで白磁の様にまっ白で肌理も細かい。ルイズのコンプレックスを刺激するかのように胸もそこそこの主張をしていた。
そして離れていると気づかなかったが、少女の頭にはヴァイオレットのロングヘヤーに隠れる様に一対の突起が存在していた。
突起が角だとするのならばまさかこれは鬼?いや確かに雌の鬼も存在するが鬼なら図体はもう一回り大きくなければならないし、ここまで人間と遜色無い外見をしている筈が無い。
となると、これは鬼の亜種なのだろうか。それとも新種の亜人なのだろうか?
眠っているようなのでルイズは先ず、近くに来たコルベール氏に質問してみる事にした。
「コルベール先生。私、これを使い魔にしないといけないんですよね?」
「勿論だとも、ミス・ヴァリエール。春の使い魔召喚の儀は神聖にして絶対の伝統儀式だ。やり直しや変更なんて認めたら儀式自体を侮辱する事になってしまう。
君がこの亜人を好むと好まざるとに拘わらず、君はこれを使い魔にしなくてはいけないのだよ。それに君は今のこの結果に至るまで何回も失敗してきた。やっと成功したというのにそれを帳消しにしてほしいのかい?
加えて、使い魔となる生き物は召喚者の元に自ら望んで現れるという。折角この亜人が君の元に現れたというのに君が受け入れないのではあまりに酷という物じゃないかね?」
143 :
LFO作者:2008/11/07(金) 12:53:33 ID:CZkv79mo
万事休す。ルイズは何も言う事が出来ずに亜人と契約する事が決まったのである。さて、これから使い魔になる亜人は未だに起きる気配が見受けられない。仕方ないのでルイズは杖を振り呪文を唱える。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ。」
さああとは契約のキス、なのだがどうにも体が緊張してしょうがない。ファーストキスが同性とだなんて……これはノーカウントなのよ、私はノンケなのよー、と自分の心に言い聞かせをしても、心臓が早鐘の様に鼓動を打つのは止められなかった。
深呼吸を一つし、意を決してルイズは亜人と唇を重ねる。
嗚呼。一瞬の出来事の筈なのにこれだけ時間感覚の麻痺するものが他にあるだろうか?亜人の唇は暖かくて柔らかい。そして……なぜか塩っぱい味がした。
「終わりました。」
「うむ。『サモン・サーヴァント』は何回も失敗したが、『コントラクト・サーヴァント』は一回できちんと良く出来たね。」
コルベールは心底嬉しそうな表情を浮かべる。無理も無い。ルイズの事を彼女が入学して直ぐの頃から知っている彼は、いつか彼女の才能が開花して欲しいと願っていたからだ。
教師が特定の生徒に肩入れするなどあまり快く思われないかもしれないが、普段から失敗続きで成功した試しの皆無な彼女が何の魔法にせよ成功した事実は担任として喜ばしい事だった。
ルイズはルイズで口元を指でぼんやり触り、次いで服の袖で思い切り吹いている。そしてその段になって亜人が何も身に纏っていない事に気付く。
自分が身に付けているマントをかけてやりたかったが、貴族でもない、ましてや人間でもない者に貴族の証であるマントをかける事は出来ない。どうしようかとまごついていると亜人が眉を動かした。
見ると手の甲に使い魔のルーンが刻まれているところだった。その時ルイズは得体の知れない物を目にしギョッとする。
それは透明な手が、もっと正確に言えば型板ガラスで出来た手の様な何かが体の下から上へすうっと二本伸びていく様だった。
しかし何かの見間違いだったのか、50サントも行かない内にそれは空気の中に雲散霧消していってしまった。コルベール氏は興味深そうに亜人の手に刻まれたルーンを見ているので気づいた節は無さそうである。
同級生達を一通り見ても、反応したのは何事か呟いて気絶した青髪の少女くらいだ。
少ししてコルベール氏は生徒に亜人が身に纏える何かを持って来るように指示した。いくら『レビテーション』等の魔法で学院まで送る事が出来ても裸というのは不味いと判断しての事だ。
他の生徒達はルイズを嘲りながら学院まで戻って行った。
しかしルイズはそれらの言葉はただの一言も耳に入って来なかった。その場で共に留まったコルベール氏の方に向き直り恐る恐る質問をする。
「あの、先生。私が喚び出したこれって……一体何なんですか?」
「ミス・ヴァリエール。私は恐らく同じ質問を魔法生物学の講師の方にするよ。手に刻まれたルーンも気になるが、それ以上に私も君の使い魔が何なのかどうにもひっかかってね……」
そう言うとコルベール氏は亜人の元に屈み込み、自分の持てる範囲の全知識を使って調べ始めた。
「角はあるが体格は人間のそれとほぼ同じだし肌の色も違う。鬼などは大抵獣の皮を付けているが、彼女は何も身に纏ってはいないのも一考していて悪くはないだろう。だが体の成長具合に関してはバランス性に欠けている節が見られる。
特例を除き人間でも鬼でもこうはいかない。」
丁度自分の胸元と股座を交互に見ていたルイズにとってかなりグサッと来る言葉だったが、教師に手を上げる訳にもいかないのでぐっと我慢する。
それから一分と経たない内に生徒の一人、キュルケが簡素な作りの服を持ってやって来た。
彼女もやはりルイズの使い魔が気になるのか、何も言わずに服を着せつつも目に浮かぶ言葉は『奇異』の一言だけの様に見えた。そして着付けられた服を見てルイズは小さく苦言を呈する。
144 :
LFO作者:2008/11/07(金) 12:54:10 ID:CZkv79mo
「ちょっとあんた。何でうちの学院で務めているメイドが来ている服を着せるのよ?」
「何でって……学院に戻った時あなたの部屋の近くにいたメイドに頼んで貸してもらったのよ。」
「頼んで貸してもらったって……あんた自分の服でも良かったじゃないの。」
「ごめんなさいね。私亜人に着せられるような服なんて持ち合わせていないのよ。あなたの部屋に入って服を失敬して来ても良かったけど、パッツンパッツンになっちゃうでしょ?」
痛烈な言葉にルイズは悔しそうにキーッと悔しそうな声を上げる。その様子を見てコルベール氏は溜め息を一つ吐いた。学年が変わってもこの二人は相変わらずであった。まあ、悪友同士という言葉が相応しいとも言えるが。
その時使い魔がぴくりと動き、閉じられていた瞼をゆっくりと開けた。垂れがちで円く、褐色を帯びた目はくりくりとよく動き、癖の無いサラサラの髪は軽やかに顔の周りを舞う。
ルイズ達を見て人間に酷く怯えている様にも見えたがルイズは一応質問してみた。
「あんた、誰?」
すると使い魔からは予想の遥か斜め上を行く答えが返って来た。
「みゅう?」
145 :
LFO作者:2008/11/07(金) 12:56:49 ID:CZkv79mo
以上で投下終了します。エルフェンリートより28番。
原作では影の薄い彼女ですが、個人的には気に入ってるキャラでもあります。
13時05分から早いようですが二話目を投下したいと思います。
スケジュール上ここにいれるのはもうそう長くないので。
では。
146 :
LFO作者:2008/11/07(金) 13:05:00 ID:CZkv79mo
時間になりましたので投下します。
Deep River 第二話
進級がかかった使い魔召喚の儀が無事終わったことで、学院の彼方此方にはほっとする者達、これから過ごす使い魔との日々に思いを馳せる者達の姿があった。
ただ、たった一人だけルイズは夕陽の射し込む自室で頭を抱えていた。昼間自分が召喚した亜人の少女は一体何なのだろう?角はあるが華奢な体躯と美しい容姿からして鬼ではない。かと言って人間でもない。
自室に帰ってから様々な絵図付き辞典で調べたものの、ヒントを得られる様な物は何も無かった。また発する言葉は意思疎通としては全く役に立たない「みゅう」の一言だけ。
それに召喚時、身に付けている物が何も無かった為に何処から来たのかもさっぱり不明だ。おまけに……コントラクト・サーヴァントの時に見た、少女の体から伸びる不気味な透明の手は何だったのだろうか?
一度目を覚ましはしたがまた直ぐに気絶したために、今は確か医務室で横になっている筈……そろそろ迎えに行くべきか?
解決の糸口が何一つ見えて来ない謎について考えていると、部屋の扉が軽くノックされた。誰だろうと思いながら扉を開けると、そこには召喚された少女を「レビテーション」で連れて来たキュルケが立っていた。
笑顔で隠そうとしているが、なんだか疲れきった様な表情をしている。
「はい。あなたの使い魔。本塔の医務室から連れてきてあげたのよ。感謝しなさいよねー。」
そう言いながらキュルケはずかずかと部屋に入り込み、少女をルイズのベッドに横たわらせる。それはとても安らかそうな寝顔だった。美しさも加味すれば古代の宗教絵画だって裸足で逃げ出すかもしれない。キュルケは続ける。
「ルイズ。この子は手がかかるかもしれないわよ。」
「な、何でよ?」
「ただの従順そうな獣じゃなくて亜人だし、何を言っても言葉は通じないし、おまけに……」
「おまけに、何?」
ルイズがそう言うと、キュルケは顔を少し赤らめながら、ルイズに小声で耳打ちした。
その内容にルイズも赤くなる。
「ベッドでやらかしたですって?!」
「シーッ!声が大きいじゃないの!……兎も角、言う事ややる事がまるっきり赤ん坊みたいなのよ。あなた、本気で面倒見れる?途中で癇癪起こさないでしょうね?」
キュルケの言にルイズの心の中で急速に不安が膨らんでいったが、彼女は直ぐに一つの可能性を見出した。この者が只の亜人ではなく、成長するにつれて物凄い力を発揮する亜人なのだとしたら。
この者の自我がまだ誰の手も加わっていない、それこそ赤子同然と変わらぬ物なら。
これほど育て甲斐のある使い魔はいないだろう。
分からない事が多いという事は、それが一体何なのか知りたいという好奇心を突き動かし、また知った時の驚きをも生むという事でもある。
ルイズはキュルケの方を向き、微かな笑みを浮かべながら口を開いた。
「安心しなさいよ、キュルケ。私にとって初めて魔法が成功した証しでもあるこの子にそんな事する訳無いでしょ。この子は私が責任を持って育てるわ。その内にあんたの使い魔よりも優秀になる時が来るわね。
その時に今までの非礼を詫びに来たって知らないわよ?」
147 :
LFO作者:2008/11/07(金) 13:05:51 ID:CZkv79mo
ルイズの何とは無い余裕の態度にキュルケの口元が小さく弛む。
実は口にこそ出さなかったが、彼女は内心でルイズの事を心配していたのだ。
変な生き物を召喚したといって落ち込んでいないだろうか、卑屈になったり、自棄を起こしていないだろうか、と。
そうしていたなら、キュルケはどんな手を使ってでも彼女を叱咤激励するつもりだった。
だが、今の彼女の様子を見る限りどうやらそんな心配は杞憂に終わりそうだ。
いつもの調子を取り戻したルイズに、キュルケは流し目を送りながら澄ました声で言った。
「ふふっ、言うじゃない。まあ、いつになるか分からないけど楽しみにしてるわ。あ、あとまさかその子なんか幽霊が取り憑いている訳じゃないでしょうね?」
「そんな訳無いじゃない。どうしてそんな変な事訊くの?」
「私の友達がその子の体から変な手が伸びるのを見たって言うのよ。今は気分が悪いって部屋で横になってるんだけど……間違いだったら私がその子の所に行って説明してあげるからいつでも私の部屋に来てよ。それじゃあね。お休み〜。」
パタン、という音を残してキュルケは部屋の外へ出て行った。ルイズは今に見てなさいよという雰囲気のまま、扉に向かってベーッと舌を出す。しかし……勢いでああは言ったものの、問題は未だ山積みのままだ。
育て方といい、少女の素性といい何一つとして解決の兆しがある物は無い。ルイズはベッドに歩み寄り使い魔の少女を見下ろした。
コルベール先生は魔法生物に詳しい先生と一緒に調べてくれるとは言っていたが、果たしてどんな回答が返ってくるだろうか?もしも調べた結果が、こんな成りをしていても人間では手に負えない生き物だとしたら向かう所は只一つ。
―殺処分―
考えただけで身の毛がよだつ。幾ら何でもそれは無いとは思うが、実際そうなったらルイズ自身許す事が出来ない。例え人間を見境無く殺す様な生き物でも、この子は自分が初めて魔法に成功したという証であり一生を共にする使い魔だ。
周りが何と言おうと絶対に御してみせる。そう固く心に誓った。すると程無くして少女はゆっくりと両の瞼を開く。
「目が覚めた?」
「みゅっ?!」
少女を不安にさせないよう、ルイズは出来るだけ優しい声で少女に声をかける。だが少女はルイズの姿を視認したと同時に後退り、酷く怯えた様子で彼方此方をキョロキョロと見回し始める。
まるでこの部屋の日用品を、何一つとして眼にした事が無い様な雰囲気だった。
ルイズは不思議に思う。この部屋の中には彼女を攻撃する要素など唯の一つもありはしない。何をそんなに怯える必要があるというのだろう。そしてこんな時は如何すれば良いのか。
その時ルイズは、実家にいるすぐ上の姉が森で怪我をした動物を見つけた時にどうしていたかを思い出した。まったく同じとはいかないが状況はそれによく似ている。
ルイズは震える少女の手をそっと握り、それから眼を見つめて話しかける。
「恐がらなくていいのよ。わたしはあなたの御主人様。そしてあなたは今日から私の使い魔になるの。いい?」
目立った反応は返って来ない。少女は相変わらず、目を固く閉じてぶるぶると震えているだけである。だがルイズはたった一度の挑戦でめげたりはしない。少女をそっと自分の方に引き寄せてから、左手で背中を撫で、右手で頭も撫でてやる。
すると少女は目を見開き、ルイズの方をまじまじと見つめた。まるで生まれてから親に一度もそうしてもらった事が無い様な反応だった。ルイズは少女に対して憐憫の感情を抱く。
自分だって実家にいた時、魔法の才能をどうのこうの言われる前は、親によく可愛がってもらったものである。余程この子は薄情な親の元に生まれたのだろう。
そう思いながらルイズは優しく少女を撫で続けていたが、ふと大事な事を忘れていたのに気付いた。
支援
149 :
LFO作者:2008/11/07(金) 13:08:41 ID:CZkv79mo
「そうだ、名前。あなたの名前何にしようかしら?」
物には全てきちんとした名前がある。いつまでもあなたあなたと言っていたのでは埒が開かない。かと言って、少女の鳴き声ともとれる「みゅう」というのを名前にするのも芸が無いものだ。
他の者達が使い魔に、もっと洒落の利いた名前を付けていたら名前負けするかもしれない。
どんな名前にしようかしら。あれこれ考えてルイズは一つの名前に決めた。
「そうねぇ……サフィー……サフィーが良いわ。それにしましょうっと!」
ルイズは少女の目を見つめながらしっかりと言う。
「あなたの名前を決めたわ。今日からあなたの名前はサフィー。サフィーよ。」
しかしやはり少女はルイズの意を得ていないのか、ずっと不思議そうな表情のまま「みゅう?」と言うだけである。こうなれば後はもう根気比べの世界だ。
ルイズはサフィーを指差して「サ・フィ・ー・」、自分を指差して「ル・イ・ズ」とするのを繰り返した。格闘すること凡そ二時間。夕食も忘れるほどに没頭したルイズの努力は遂にある程度実を結んだ。
少女は自分を指差し
「し…しゅぁ…しゅぁぁ…しゅぃぁ…ふゅっ…ふゅぅ……うぃ、うぃぃぃ……しゅぃぁ、ふゅぅ、うぃぃぃ……」
そしてルイズの方を指差して
「りゅっ……りゅぅぅ……うぃぃぃ……ち、ちぃゅぅぅ……りゅ、うぃぃ、ちゅ……」
と言った。
一先ずは大進歩である。
ルイズの喜びようといったらない。まるで子供の成長に一喜一憂する親の様であった。
「凄いじゃない、サフィー!この分ならそうかからずにもっと沢山色んな事を言える様になるわ!」
サフィーに微笑みながらもルイズは決心した。昔から子育ては「這えば立て、立てば歩め」の精神でやれば良いと言うではないか。ならばこの子にはもっと沢山色んな事を教えてあげよう。そしてどんな人の前に出しても恥ずかしくない使い魔に育て上げてみせようと。
その後、ルイズによるお勉強は、皆が寝静まるまで続いた。
サフィーが自分の名前とルイズの名前を微かに言えるようになっていた頃、コルベール氏は魔法生物学の講師、ミスタ・エラブルと共に図書館で調べ物をしていた。内容は勿論、ルイズが召喚した使い魔についてである。
しかし、教師しか閲覧を認められていない書棚の本を漁っても、成果は今の所何一つとして無かった。
「如何ですか?ミスタ・エラブル?何か手掛かりはありましたか?」
「ミスタ・コルベール。そう簡単に見つかったら真っ先にあなたに報告していますよ。」
話をふったミスタ・コルベールは、それもそうかと思いなおし調査に再び取りかかる。
だが、これだけ既存の資料を調べて見つからないという事は、あの生物は本当に新種の生物だというのだろうか?
それなら何故ルイズ・ド・ラ・ヴァリエールがそれを召喚するのに成功したのだろうか?
考える暇も無く、下から司書の「閉館時間です」という声がかかった。
コルベール氏とエラブル氏は肩を落として図書室から退室する。
それから暫く廊下を進んでいると、反対の方向から学院長の秘書をしているミス・ロングビルが近付いて来た。
いい歳をした男二人が、夜の遅くに図書室で一体何をやっていたのだろうという表情をありありと顔に出しながらも、出て来た言葉はかなり友好的な物だった。
150 :
LFO作者:2008/11/07(金) 13:10:17 ID:CZkv79mo
「今晩は。ミスタ・コルベール、ミスタ・エラブル。こんな時間まで調べ物ですか?大変ですね。」
「いやぁ、ちょっと生徒の使い魔の事で調べ物をしていまして……」
忽ちコルベール氏の顔が赤くなる。
ミス・ロングビルはその様子をさも愉快そうに見ながら続けた。
「使い魔とは……今日行われた使い魔召喚の儀で喚び出された鬼の姿をした生き物の事ですか?」
「はは、実を言いますとそうなんですよ。本当に、噂という物は広まる物なんですなあ。」
「その使い魔の正体……もしかしたら私知っているかもしれません……」
「はは……今、何て仰いました?!!」
正に思ってもいない所から答えが出て来た。
驚きのあまり目を見開いたコルベール氏とエラブル氏を尻目に、ミス・ロングビルは訥々と語り始める。
「実は二年程前に、ある用事を言い遣わされてロマリアの方へ向った時に妙な噂を聞いたんです。
現在、次期ロマリア教皇候補でもあるヴィットーリオ・セレヴァレという人物が、使い魔を召喚した際に多数の死者が出たという噂なんです。
召喚した本人は無事だったのですが聖堂騎士団が100人近く犠牲になったそうで……その後何とか事態は収束したそうなんですが、その時に召喚された使い魔が……」
「まさか……角の生えた少女?」
エラブル氏の質問にミス・ロングビルはゆっくりと頷いた。
まるでその場の空気が瞬間冷却されたかのように凍りついた。
ミス・ロングビルは二人の表情を見つめながら続ける。
「今回此処で噂になっている少女とは、身長や髪の色、着ている物等違う所は多々存在しているんですが、一か所だけ、頭部に一対の角がある点が共通しているんです。それに……」
「それに?」
「いえ、なんでもありません。忘れてください。……兎も角、その少女は、今はそうでなくてもいずれ私達の命を脅かす事になると思います。
私の意見としましては不謹慎ながらもミス・ヴァリエールの使い魔を……」
ミス・ロングビルは大きく一息吐き、はっきりした口調で言い切る。
「殺すべきだと思います。」
151 :
LFO作者:2008/11/07(金) 13:16:26 ID:CZkv79mo
以上で投下終了します。
スケジュールの都合とは言え二話も続けてスイマセン。
今回出て来たミスタ・エラブルは完全にオリキャラですが、ガリアの言葉でエラブルという言葉を調べてみると、
何故そんな名前にしたのか理由が分かると思います(仏和辞典で見た方が早いかも(汗))。
ミス・ロングビルが口篭った理由は?教皇聖下は誰を喚び出したのか?
それはまた今度。
では、今度は夢幻竜かLFOで会いましょう。
わぁお、鬼のほうがまだましだよ。
小ネタでも登場しましたがよりによってアレ召喚ですか。
男連中の玉無しフラグが立ったー
超鋼戦紀キカイオーよりイェール召喚
「あのー、この機会に虚無に目覚めてみません?」
「間に合ってるわよ」
「そんな事言わないで。今虚無に目覚めればこの洗剤とチケットお付けしますから」
「間に合ってるって言ってんでしょ」
「ほら、この幸運のペンダントもお付けします」
なんでポリンルートなんだよw
「20万切ります!」
↓
「19万9800円!」
( ^ω^)・・・・・・・・・・・・・・・
誤爆
>>155 その流れだとルイズの使い魔がどんどん増えるのか?
アンリエッタ「ルイズの女殺油地獄ー!」
ルイズ「姫様ー!?」
ワルド「天使に会わせてくれよ」
>>159 それだと最初にルイズに手を出されたのは姫様だということにならんか?
ガンガンのWEB漫画読んでる?
10分後投下します。
しえん
読まないけど支援
授業に遅れて参加したルイズは、自分の使い魔ダ・サイダーという男の事を考えていた。
(このバカ…自分の事話さないし、それにいきなりここに来たら場所くらい聞くのに…何で?)
ルイズは、自分の机の横でボーッとしているダ・サイダーを見る。メタコは寝ている。
(このバカが言った事を挙げると、アララ王国・ドキドキスペース・勇者これは…何?
問題はここから、人の名前が入っている…ラムネスそれに、昨晩独り言で言っていたレスカ…一体?)
そんな事をルイズは考えていた。
「………エール!」
ダ・サイダーの事を考えていて、話を聞いていないルイズ。
「こら!ミス・ヴァリエール!!聞いていますか!!」
「ハイ!あ…いや…すみません…聞いていませんでした…」
教室から、かすかな笑い声が聞こえる。
「ミス・ヴァリエール…『錬金』を彼方にやって頂きましょう」
この提案に赤い髪の女性が反対する。
「先生、止めといた方がいいと思いますけど……」
と赤い髪の女性。
「何故です?彼女は真面目で勤勉だと聞いていますので、問題無いでしょう」
他の生徒も止めに入る。
「キュルケの言うとおりだ。止めた方が良い」
ルイズは人一倍プライドが高い性格なので、答えはただ1つ。
「やります!!」
ダーリン 支援するジャン
ルイズの答えを聞き、全員机の下に隠れた。(ダ・サイダー以外)
「ミス・ヴァリエール。錬金したい金属を、強く心に思い浮かべるのです」
「はい!」
そして…ルイズは杖を抜き上に向ける。何かを呟き、置いてある石に杖を向ける。
結果………大爆発。教室は大騒ぎになった。
ルイズを指名した先生は、倒れたまま動かない。
生徒達はルイズに文句。
寝ていたダ・サイダーはというと…
「ド…ドカンが…ドッカーン・・・」
と、言い残し気絶した。
爆発を起こしたルイズは、服が少し破れ、そして、顔に煤が着いているだけ。
「ちょっと失敗みたいね」
このルイズの言葉に生徒達はさらに文句。
授業は中断した。ルイズとダ・サイダーで教室を片付ける様に命じられた。
片付けと言ってもそのほとんどがダ・サイダーがやっている。
「はぁ…学校が嫌な所だとラムネスも言っていたが、よくわかった」
と、ダ・サイダーの独り言なのだが、ルイズが反応した。
「ね…ねえ…あの…レ…レ…レ…レ」
どう持ち出せば良いのか、ルイズも困ってしまった。
何故なら『ラムネス』と言う言葉に反応してしまい、とっさに話しかけてしまったからだ。
(どうしよう?…『ラムネス』こっちを先に聞いてからにしよう)
「あ…あの…ラムネスって誰?どんな人?」
片付けながら、ダ・サイダーは『ラムネス』について話し始めた。
「そうだな…この俺様がいないと無いも出来無い奴だよ」
「そ…そうなの?」
(コイツより、駄目な人がいるわけないじゃない)
ルイズは、まだ質問していく。
「アンタ…ここ…何所だか知ってる?」
「噂じゃあ…宝があるというが…」
「え?…そんな噂聞いた事が無いわよ?…本当なの?」
(私よりここの事、知っている?…まさか…メイジ?)
ダ・サイダーの意外な一言に驚くルイズ。ダ・サイダーは、後悔していた。
(しまった…何をやっているんだ…俺様は…何とか誤魔化さなくては)
「い…いや、だいたい…宝というのは…洞窟とかにある物で…多分無い…と思う」
と、ダ・サイダーは、何とか誤魔化そうと必死。
そして、ルイズは本題へ切り出す。
「まぁいいわ…じゃ…じゃあ…レスカって人は?」
ダ・サイダーの手が一瞬止まる。
「な…何で?お前が…知っているんだ?」
「だって…召喚の時、私にレスカのファンって言っていたし…
そ、それに…昨晩も…聞くつもりは無かったのよ・・・」
ルイズは、その場でうつむく。
ダ・サイダーは、窓から空を見上げる。普段では、決して見せる事の無い哀しそうな顔で・・・
「アイツなら…大丈夫…そう…大丈夫なんだ」
「嘘!!!」
ルイズの声が響き渡る。
「だって…だって…だったら…何で…そんな哀しそうに言うのよ!!」
「……話は…終わりか?…さっさと片付けるぞ…」
ダ・サイダーは再び片付けを始めた。そしてルイズは教室から走り去ってしまった。
(ドキドキスペースじゃ無いのは確かだ…不思議な力を持つ者は、レスカ達だけだろうから…)
「ラムネス…後は頼むぞ…」
教室から走り去ったルイズは、部屋に帰り、ベットで泣いていた・・・
(何でそんな哀しそうな声で『大丈夫』って言えるの?
大丈夫に聞こえないから心配してるのに…何で?何でよ?教えてくれたって良いじゃない…)
ダ・サイダーの哀しみと相反する答え。
それはルイズにとって当たり前の存在『メイジ』が、ダ・サイダーに絶望を与えた…
以上投下終了。
今回は、短め(かなり)
おかしな所あった為、まとめる時直しときます。
173 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/07(金) 19:08:41 ID:J/3JRWOI
荒らしに触れるお前も荒らし
>129
髭だけなのかよ平民と貴族を隔てるのはw
大尉の力を遺憾なく発揮するにはやはり現代兵器が必要だがそうすると現代兵器TUEEEEにしかならんなぁ
あじましでお召喚:うつうつ使い魔日記
福満しげゆき召喚:使い魔の小規模な生活
生存中の実在人物はダメとはわかっちゃいるが、小ネタでいいので見てみてえぇぇ
177 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/07(金) 19:52:35 ID:J/3JRWOI
>>177 とりあえずsageろ。話はそれからだ。
179 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/07(金) 20:57:33 ID:eEQVchcv
そろそろ誰かセフィロスを呼び出してくれないかな…
ニブルヘイム行く前のセフィロスなら会話も可能だろうし
と勝手に妄想してるよ…
>>179 sageることすら出来ないならチラシの裏にでも書いててくれ
CC前半のセフィロスなら普通に良い人だから困る後sageろ
むしろクラウドかザックスを召喚させて、他の担い手にセフィロス、ジェネシス、アンジールを召喚させては?
波動の使い魔 の方マダー?
明日の晩ゆーとるやんけ
クラウドと聞いて、ひぐらしがなく頃にの大石さんが思い浮かんだ。
「んっふっふっ。ミス・ロングビル。あなたはフーケが現れた事件の夜、どこで何をしていましたか?」
>>183 そか、前回の投稿は今日だったんだな
早ければあと2時間、遅ければあと26時間あるのか
クラウド……そういえば風船の使い魔の人も最近こないな。
笑顔が好きだからの人も来なくなってるし、ほのぼの系好きだから続き書いてほしいな。
ほのぼの系だったら、元ネタよく知らないんだけど
ゴブリンラッキーの宴はまろやかがすごく好きだ
ほのぼの系はいいよな
>>185 ブリミルの使いとか言われるんですね、よくわかります
ドラクエZの主人公召喚(ゴッドハンド職業レベルMAX)
ダブクロの人そろそろお願いしたい…
なまごろしだ〜
>>188 マジックザギャザリングっつーカードゲームの
しかも十年ぐらい前のバージョンに登場したカードのキャラクターだな
懐かしいなあの頃ギャザはまったなあ
不思議のダンジョンのチョコボだったらほのぼのかな?
ルイズを乗っけて走り回るチョコボとか可愛いだろうな。
>mtg
箱とパックの違いが分らず、レジで「5箱下さい」と言ってドン引きされたのは懐かしい思い出。
そして今更パックの方でとは言えずにクレジットカードでがっつり買ってしまったのもまた苦くて甘い思い出。
教訓:見栄を張るのもほどほどに
そろそろmtlの方も完結が近そうな雰囲気だし、それまでにまろやかも戻ってきてくれないかなー
5箱って7~8万くらいするんじゃないのかww
そんな高いのか、そりゃドン引きするよなw
ほのぼのという単語を見るとぼのぼのを思い出してしまう。
そういえばいがらし先生の作品から召還されたキャラはいないな
誰かアーミンのジバクくん召喚してくれないかなぁ〜
ピンク色の爆発する相棒だなんてマジでルイズの使い魔にピッタリだと思うんだが
アーミンのキャラって今までに召喚されたことあったっけ?
一方で、競技として参加している人間は10万20万ポンって出してダンボール単位で勝ってくんだけどな。
ゴルフよりは金かからんしな。
>>199 小ネタでいくつか
サービス様とかが呼ばれているはず
キャプテンコマンドーが召喚されたら
コマンドチームも皆来なきゃいけないんだろうか
アシスト専門で一番平和を乱していたコレダーか
あ、本当だw
ざっと見ただけでも小ネタに4つ、長編にも1つあったわ
結構忘れてるな
あーみんクロスと言うとどんな作品、キャラでも濃ゆい顔で鼻血垂らしてる姿を想像出来るから困る
初期シンタロー召還とかおもしろそうだな
ルイズ相手なら普通に眼魔砲ぶっ放しはそうだけどテファ等には撃てなさそうだし
……何故かシンタローで想像してた筈なのにヴィンダールブウマ子と言う禁忌な妄想が浸食ををを....
>>204 来てなくても必殺技(コマンドーストライク)使うと現れます。強制的に。
M v.s. C限定で。
この所為でコマンドーチームの間で労組間の争議が。
もえたんのアヒル召喚ってないな。
そのまんますぎるからか。
人修羅の人頑張って!
wktkしながら全裸で待つよ!
俺も人修羅の人待ってる
でもアバトンとマニクロ終わるの相当時間かかるよなぁ
ポイズンピンクからリベル・アウローラが召喚された場合、
エルザとかシルフィ辺り、魔神扱いになるのかなぁと妄想したり…。
…何かフレイム辺り序盤でリベルに食われそう。
目の前で振り下ろされるゴーレムの拳。
――ああ、死ぬんだわ。
わたしはひどく冷静にそれを見つめた。
周囲がゆっくりと動く。
手にした『破壊の剣』はまったく反応すらせず、このままだとわたしと一緒に潰されることとなるだろう。
走馬灯のように今までの日々が思い出される。
自分は、最後まで、魔法が使えず、貴族になることはなかったのだ。
もう眼前まで迫った拳を見て、わたしの頬から一筋の涙が伝った。
「――イクジスト!」
轟音は後から来た。
わたしの傍を通過した暴力は、容赦なく加減なく目の前を蹂躙し爆砕した。
「きゃあっ!?」
わたしはその爆風に地面を転がるように吹き飛ぶ。
「いつつ……」
そして痛みに唸るわたしの前に、ズシャリと鉄の足が踏み出された。
見上げた先にあったのは、黒い影。いや、それは甲冑だった。
だが全身を覆うそれは騎士が着る甲冑に似ているが、どこか洗練された印象と剥き出しの無骨さが目立つ。
そしてその手に持つものが異様だった。騎士ならランスやメイジなら杖を持っているものだが、それは違った。
見様によってはランスにも見えなくはないが、それにしては物々しすぎた。細かいパーツやギミックなどが施されたそれは物を切る突くなどできないだろう。
杖にしてもそんな装飾は不要だ。そもそも金属でできていると思われるそれは、重すぎて使い物にならない。
だが、わかる。それは暴力を。圧倒的な暴力を扱うための”武器”であると。
甲冑はそれを軽々と肩に担ぐと上を見上げる。
「よう。俺も仲間に入れてくれよ」
そして再びそれを構えると、レバーらしきものを引き。
「1人は寂しいんでな! ――イグジスト!」
その力を解放した。
レイオットを招喚
>>214 賢者石も無ければ封呪祖筒も無い、しかも魔法はほぼ単発使い捨て…
レイオットのみだときつ過ぎね?
せめてカペちゃんとキャリアー一緒に在れば良いんだけど
問題なければ00:20から投下しようと思います
第3話への多くのレス、多謝であります。
待ってました!!
支援
波動の人に対抗してガイル召喚。
タイトルは「しゃがむ使い魔」!
「さあかかってこい」
ギーシュのワルキューレ相手に、突然しゃがみこむ。
近づこうとすると足払い、離れたら手から衝撃波を放つ。
ジャンプすれば待ってましたのサマーソルトキック。
じゃあ、横から回り込めば…
「なぜだ!ワルキューレが横に動けない!」
「ふっ、"横"など無い!」
>>215 ハルケギニアには呪素が充満してないから大丈夫なのかも。
うわ、失礼!
波動の人、支援!
「行け!ワルキューレ!!」
ギーシュが薔薇の造花を振るとともに、ワルキューレがリュウに飛び掛る。
青銅製の右の拳がリュウを襲う。
「ふんっ!」
襲い掛かるワルキューレの右の肘の辺りを左手で内側に払いのける。
力の方向を変えられたワルキューレの拳は虚しく空を切り、その勢いで身体も内側に半回転する。
リュウが左足を半歩前にずらし、重心を前に移すだけでワルキューレはリュウに対して完全に横を向いた状態になってしまった。
リュウはすかさず右の拳でワルキューレの腹を、弧を描くように打ち据える。
ボゴンッ!!
尋常でない大きな音と共にワルキューレの腹にめり込む拳。
目にも留まらぬ速さで拳を引き抜くと、続けざまに左の拳を、同じく弧を描くようにワルキューレの背中に打ち込む。
ドゴンッ!!
再び大音響と共に背中にめり込む拳。
左手も引き抜くと、右手でワルキューレを押して距離を作りながら右の爪先を軸にして踵を前に出す。
「ふんっ!!」
左足が大きな円を描きながらワルキューレの首を背後から捉える。
ギチャッ!!
激しい音と共にワルキューレがもんどりうって倒れる。
一連の動作が終わるまでに一呼吸の間さえなかった。
目で追うことすらままならない雷光の攻撃。
先ほどまで口々に騒いでいた野次馬たちは一瞬で静まり返り、倒れたゴーレムに視線を落とす。
倒れて動かなくなったゴーレムを見てみると腹と背中が大きくへこんでいるし、首から上もおかしな方向に曲がっている。
「嘘だろ・・・いくら青銅が硬くはないとはいえ、金属には違いないんだ・・・殴っただけでこんなになるものなのか?」
野次馬の誰かが呟いた。
中が空洞のゴーレムとはいえ、装甲自体もそれなりに厚さはある。
人間が殴ったところで、へこむはずがないのだ。
静寂の中、リュウが告げる。
「もう一度言う。本気でかかってきたほうがいい」
リュウは拳を握り締めた。
流れるようなコンビネーションにうっとり支援!
支援
俺の拳が血を求めている支援
「何よ、メチャクチャ強いじゃない・・・」
拍子抜けしたように杖をしまうキュルケ。
リュウが本格的に危なくなったら援護しようと思い、親友のタバサを無理やり引き連れて身構えていたのだが、どうやら徒労だったようだ。
「全然本気だしてない・・・」
タバサが呟く。
先ほどまでは本から一切目を離さなかったタバサだが、リュウが身構えてからはずっとリュウを凝視している。
「あなたが本以外に興味を示すなんて珍しいわね」
ルイズよりも更に小柄な青い髪に青い瞳の少女――タバサは決闘が始まってからじっとリュウを観察していた。
「あの人・・・強い・・・」
「くっ!」
あっさりと倒されたワルキューレを見て、慌てて次のワルキューレを練成するための呪文を唱える。
「ならば、これでどうだっ!」
今度のワルキューレは2体。それも、それぞれ手に青銅製の長剣を携えている。
「続けっ!ワルキューレ!!」
号令と共に同時に襲いかかる。
自分の頭めがけて長剣を振り下ろしてくるワルキューレの懐に一瞬で潜り込むと、振り下ろされる剣を持つ腕を掴むリュウ。
太い腕が更に膨れ上がり、血管が浮かびあがる。
同時にミチミチッという鈍い音と共に指が青銅に食い込んでいく。
ワルキューレは腕を振りほどこうともがくがリュウの腕は微動だにしない。
リュウは身を沈めると、腕を掴んだまま自分の肘をワルキューレの脇の下にあてがい、背中に担いでもう一方のワルキューレに向けて投げつけた。
ガチィンッ!!
青銅同士がぶつかる激しい音と共に、2体のワルキューレは互いを潰しあう形になり、またもや動かなくなってしまった。
リュウは静かに構え直すと、再びギーシュを見据える。
ギーシュを射抜くその瞳には、激しく、熱く、眩しいほどに強い光が浮かんでいた。
支援
「そんな・・・馬鹿な・・・」
がっくりうなだれるギーシュ。
力なく降ろされる杖。
目の前で起こったことが信じられなかった。
青銅製のゴーレム3体を苦戦すらせずに、それも素手であっさり破壊するという信じられない光景にギーシュは取り乱しそうになる。
が、なんとか正気を保ち必死で思考を巡らした。
相手は魔法も使えない、ただの平民じゃないか・・・
その平民相手に何で貴族の僕が苦戦しなければならないんだ。
・・・いや、違う。
貴族とか平民とか、そんなことは関係ないな。
間違いない、彼は強い。
それも、信じられない程に、強い。
多分、自分が何体ワルキューレを練成しようとも、正面からでは彼には勝てない。
しかも、今の僕の実力で練成できるワルキューレは後4体だけ。
4体だけで勝てるか?
いや、勝てるワケがない。
ならば降参するか?
・・・いや、諦めるな。
僕は軍人の家系、グラモン家の人間なんだ・・・
負ける訳にはいかない。
勝たなければならない。
それは相手が平民だからではない。
僕がグラモン家の人間だから・・・いや、それすら違うな・・・
一人の男として、あの尋常ではなく強い男に出来得る限りの力をぶつけてみたい。
そして、勝ちたい。
いや、勝ってみせる・・・!!
この4体であの化け物のような男をなんとかするんだ。
なんとかしなければならない。
ならば考えるんだ。
きっと策はある。
・・・考えろ・・・考えるんだ僕・・・
ギーシュの顔つきが変わった。
瞳にはこれまでとは違う、強い意志の光が浮かぶ。
それは今までのような相手を小馬鹿にした、見下ろすような目ではなく、
自分よりも遥かに巨大なものに挑む者の目。
挑戦者の目だった。
一度は力なく降ろした杖を再び構え直すと、油断なくリュウを睨みすえる。
支援
リュウの力は対峙した相手を強敵にする!
ギーシュ覚醒か!
支援
here comes a new challenger!
支援
・・・良い面構えじゃないか・・・
リュウは穏やかな気持ちでギーシュの変化を見つめていた。
甘やかされて育った、傲慢で我侭な子供だった顔はそこにはもうない。
一人の戦士の顔が、そこにあった。
そういえばオロの爺さんが言ってたが・・・
俺には、相手に知らず知らずのうちに100%以上の力を引き出させる力があるんだっけな・・・
リュウは決めた。
「手加減はせんぞ」
真紅のハチマキを締め直すと宣言する。
本物の戦士相手に手加減するなど、侮辱以外の何物でもない。
一方ギーシュはそんなリュウの一挙手一投足を細かに観察し、必死に考えていた。
なんでもいい、とにかく、少しでも情報を得て、戦果に繋げてやる。
そして、認められたい。
この途轍もなく大きくて強い男に、認めてもらいたい・・・
「この俺を、倒してみろ」
新たに構え直すと、リュウの雰囲気がこれまでと明らかに変わった。
全身から目に見えない圧力――プレッシャー――のようなものが溢れ出し、ギーシュを圧倒する。
ともすれば押し潰され、気を失いそうになる。
ギーシュはその途方もないプレッシャーに必死で耐え、リュウを中心にじりじりと円を描くように回る。
リュウを中心に半円ほど回ったあと、突如ギーシュがリュウに向かって走り出した。
どんどんリュウに近づく。
リュウから発せられるただならぬ圧力と、それにも関わらずリュウに向かって走っていくギーシュに
周りの野次馬たちから「やめるんだ!」とか「殺されるぞ!」と静止の声が飛ぶ。
だがギーシュは止まらない。
もうあの男の射程圏内かも知れない。
今あの男が青銅すら軽く粉砕する拳を振れば、僕の身体には簡単に風穴が開くだろう。
顔を殴られたらあまりいい死に顔ではなくなるな・・・
いや、それ以前に首から上が消し飛ぶかな。
まるで他人事のようなことを考えながらリュウに向かってただひたすら走る。
まだ止まらない。
もう少し・・・もう少しなんだ・・・
ギーシュは必死に走る。
そして、走りながら呪文を唱えるとリュウの目の前でついに薔薇の造花を振った。
「ワルキューレよ!!」
支援
・・・・・・
だが、リュウの目の前には何も現れない。
ギーシュの杖が、ただリュウを指すだけ。
「そんな・・・走りながらで呪文を間違えたのか!?」
愕然とするギーシュ。
「闘いの最中に慌てるのは良くないな・・・」
リュウが拳を固め、ギーシュに狙いを定める。
そのとき、リュウの背後から青銅の剣が振り下ろされた。
ワルキューレは練成できていたのだ。
ただし、リュウの真後ろに。
ギーシュは自分の作戦が成功したと悟った。
リュウの視界の中にいたのではワルキューレに勝ち目はない。
だが、後ろからならば流石にかわせまい。
後ろから不意に切りかかるなど多少卑怯な気がしないでもないが、今の自分にこれ以上の策は思いつかない。
ただ、その為にはリュウに近づかなければならなかった。
錬金は自分の目の前でしかできないのだ。
そのために、まず自分の足元に花びらを1枚落としてからリュウの反対側まで移動した。
そしてリュウに近づく。
リュウの後ろにワルキューレを練成できるギリギリの距離まで走った。
桁外れた殺傷能力を誇る上にただならぬ圧力を撒き散らすリュウに近づくのは正直生きた心地がしなかったが、
勝てる可能性があるのはこの方法だけに思えた。
もし失敗して死んでしまったとしても、まあ仕方ないか。
ぐらいにまで覚悟はできていた。
だが、その覚悟は功を奏し、今、リュウ目掛けて剣が振り下ろされている。
しかし、リュウはまるで最初から解っていたかのように身体をずらして剣を避けると後ろに向かって蹴りを放った。
――ギーシュが造花を振るとき、俺の目の前ではなく、俺の背後を見ていた。
先ほどの3体は常にギーシュの視線の先に出現していた。
つまり、次に出現するのは自分の後ろ。――
そしてギーシュの瞳に歓喜の色が浮かぶ。
今、まさに銅像は自分を襲っているはずだ。
そこに右の足刀を叩き込む。
ガボンッ!!
大音響と共に右足がワルキューレの胴体を貫く。
が、ワルキューレは自分の胴体が貫かれたまま自分の両腕両脚を使ってリュウにしがみつく。
「今だ!!行け!!ワルキューレたち!!」
ギーシュは叫ぶと再び杖を振った。
杖に残っていた3枚の花びらが、リュウの目の前でワルキューレとなり出現する。
しがみつかれて咄嗟に身動きの取れないリュウに襲い掛かる3体のワルキューレ。
2段構えの策だった。
最悪、後ろからの攻撃を避けられてもその1体でなんとかリュウの動きを封じることさえできれば、残り3体のワルキューレで一斉攻撃ができる。
そしてリュウは都合よくワルキューレを足でぶち抜いてくれたのだ。
ここまで密着してくれれば、いくら人間離れした力とはいえ、ほんの少しの間ぐらいなら動きを封じることも不可能ではない。
ナナナナーウファイトァヌーライヴァールルルルルル…支援
自分を殺せる相手に向かっていくのは途方も無く勇気が要る行為だ!
ナイス作戦ギーシュ支援!
支援
「勝った!!あの男に勝ったぞ!!」
ワルキューレたちの剣が今まさにリュウに届かんとした刹那・・・
―――― 滅 ――――
突如、リュウの身体からこれまでとは比較にならないほどのプレッシャーが噴き出した。
それはあまりにも明確な殺気。
遍く全てを死に至らしめる負の波動。
自分が目指す”真の格闘家”への道の上で、最大の壁であった
”拳を極めし者”がその身に纏っていた”殺意の波動”と呼ばれるもの。
その入り口程度までならなんとか飼いならせるようになった、悪鬼羅刹のごとき力。
あまりにも濃厚な禍々しい殺気にリュウの周りが一瞬暗くなったような錯覚を覚える。
自由に身動きできなかったはずのリュウが、しがみついているワルキューレを何事もなかったかのように自分の身体から剥ぎ取る。
紙のように簡単に破り裂かれる青銅製のゴーレム。
そして、迫りくる3体のワルキューレに向けて刹那の間に放たれる無数の拳。
――― 一瞬千撃 ―――
何十とも何百とも知れない無数の拳を受けた3体のワルキューレは最早人形の形すらしていなかった。
そして最後の一発がギーシュの目の前、鼻先1サントで止められる。
と、同時に辺りを支配していた暴風雨の如き殺気も霧散する。
支援
殺意の波動ktkr支援
「おおおおおっっ!!」
静まり返っていたギャラリーたちから大歓声が起こる。
「平民が勝ちやがった!!」
「ギーシュ!情けないぞ!」
「じゃあお前ならあの平民に勝てるのか?」
「勝てるに決まってるだろ!相手は平民だぞ!」
「そうかな?僕には勝てる気がしないなぁ」
平民に負けたギーシュを非難するものもいれば、
多少理性のあるものはギーシュでなくともあの平民に勝つのは至難の技だと知り、ギーシュを庇う者もいる。
キュルケやタバサも後者だった。
もっとも、ギーシュを庇うようなことは言わないし、思いもしないが。
「タバサ・・・今の最後の見た?」
「見た」
「貴女ならあれが何か解る?」
「・・・解らない」
ふるふると首を振るタバサ。
幼くして数多の死線を乗り越えてきたタバサにも、今しがた何が起こったのか理解できなかった。
ただ、尋常ではない殺気が突然あの男から膨れ上がった。
あの殺気は常軌を逸したものである。
解ったのはそれだけ。
「気になる・・・」
誰ともなく呟いたタバサはしばしリュウを見つめたあと、再び本に視線を落とした。
再び本を読みふけりだしたタバサを見て、これ以上何を聞いても無駄だと思ったキュルケは肩をすくめるのだった。
殺意の波動がぶり返しちゃったよ
まあ電刃波動拳は殺意と通常の波動を合わせることによって起きる摩擦で電撃を起こしてるからこういう展開もありか
ちょwwwwww瞬獄殺キターーーーーwwwwww
本当に一瞬の出来事だった。
ギーシュには何がおこったのか全く解らない。
ただ自分の作戦はまったく通用しなかったのだということは理解できた。
「ま・・・参った・・・降参だ・・・」
花びらを全て失った杖を手放し、がっくりと項垂れるギーシュ。
真剣だった。
生まれて初めて、心の底から勝ちたいと願い、その為ならどんな犠牲を払っても、
たとえ死んでも構わないとまで思った。
だけど・・・
「ここまで次元が違うと、もう悔しくもないね・・・」
顔を上げると、笑顔で努めて明るい口調で語った。だが顔は蒼いし、目には涙が滲んでいる。
「いや、そんなことはない。いい勝負だった
”殺意の波動”を使わなければ危なかったかもしれないしな。あれはいい作戦だった。」
優しく声をかけるリュウ。
”かも”ね・・・
苦笑いしながらそれを聞き、同時に疑問も浮かぶ。
「サツイノハドウ??」
まだ蒼い顔をしたまま首をかしげるギーシュ。
「ああ、最後に使ったやつのことだ。俺の取って置きの技みたいなもんだ。
使うつもりはなかったんだがな、そうも言っていられなかった」
「そうか・・・僕は君・・・いや、貴方にほんの少しぐらいは本気を出させることができたんだね・・・」
リュウの言葉が自分を思いやってのものだとは判っていたが、それでも多少は救われる。
きっと、本当は”サツイノハドウ”など使わなくとも勝てたのだろう。
死ぬことすら覚悟して戦ってみて実感した。
この男の強さは常軌を逸している。
自分がドットメイジだからとか、そういう問題ではない。
なんというか、人間の範疇を超えているとしか表現のしようがないのだ。
それほどまでの強さを持ちながら、それでもわざわざ”サツイノハドウ”とやらを使ってくれたのだ。
リュウの心遣いが嬉しかった。
「今はまだ俺の方が強いかもしれないが、君は若いし、それに戦う男の顔をしている。そのうち追いつくさ」
リュウは笑顔で右手を差し出し、付け加えた。
「少しずつ強くなっていく、それがいいんだ」
ギーシュも右手を出そうとして・・・汗でドロドロの自分の右手に気づくと、自分のド派手なシャツが汚れることも気にせずゴシゴシと拭いてからリュウの右手を握った。
そして、全てを包み込むようなリュウの右手に、ギーシュは一生かかっても
強さ共々、この男の大きさには追いつけないと思うのだった。
竜巻旋風脚くらいで勘弁してやれよと思ったw
>「少しずつ強くなっていく、それがいいんだ」
名台詞きたー!
支援
「ちょっと!!どういうこと!?」
ルイズが半べそで叫びながらリュウに駆け寄る。
「何がだ?」
「ドットとはいえ、ギーシュはメイジなのよ?それなのにあんなにアッサリ勝っちゃうなんて、アンタ何者なの!?」
先ほどまではちょっと変わったただの平民だと思っていた。
だからギーシュに殺されると思い、本気で心配したのだ。
いざとなったら無理矢理にでも間に入って決闘を阻止するつもりだった。
それが蓋を開けてみればどうだ、あの強さは・・・戦う様などまるで鬼神ではないか。
「ただの格闘家さ」
涼しい顔で答えるリュウ。
「答えになってないわよ!!」
「ええと・・・ちょっといいかな」
ギーシュが遠慮がちに二人の間に割って入る。
「何よ!?まだなんか文句あるわけ!?」
「文句だなんて滅相もない、キミのことをゼロと罵ったことを謝ろうと思ってね・・・」
「え?」
「それに、君の使い魔をみすぼらしい物乞いだなどと蔑んでしまった。心底、自分を恥ずかしいと思うよ。本当にすまなかった。この通りだ」
「え?え?」
深々と頭を下げるギーシュに困惑するルイズ。
いつまでも頭を下げているギーシュ。
それにどう声をかけていいのかわからないでいるルイズだったが、リュウに背中を優しく押されて慌てて口を開く。
「べ・・・別にいいわよ。そんなこと。今度からは気をつけてよね!」
「そうかい、ありがとう。早々だけどこれで失礼するよ。あと3人に謝らないといけないからね」
恥ずかしそうに告げるとギーシュはその場を後にした
支援
鎖骨割り支援
249 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/08(土) 00:45:33 ID:YXZxeH3u
真空竜巻旋風脚でも良かったかも・・・って、ファイナル後だと本物の竜巻が出来上がるかw
支援
滅多に見れない一大イベントも終わり、野次馬たちも徐々に去っていく。
貴族の前に出ることなど出来るはずもなく、それまで後ろの方でハラハラしながら見ていたシエスタはようやくリュウのそばに辿り着くと、そのまま抱きついた。
「リュウさん!すごい!!すごい!リュウさん!!」
満面の笑顔でリュウの胸板に顔を擦り付けるシエスタ。
彼女の大きな胸も否応なしにリュウに押し付けられる。
どうしていいかわからず、苦笑いを浮かべるリュウ。
「なっ!?」
ルイズの額に青筋が浮かぶ。
「ちょぉぉぉっっっとぉぉぉっ!何してんのよっっ!」
リュウからシエスタを引き剥がそうとするがびくともしない。
「だって!リュウさんが無事で嬉しいんですもんっ!」
怪力メイドパワー全開のシエスタを引き剥がすには、ルイズはあまりに非力過ぎた。
さっきも思ったけど、何?使用人って皆こんなに力が強いものなの!?
毎日肉体労働やってるのは伊達じゃないってわけね・・・
そもそもコイツ、わたしがさっきから引き剥がそうとしてることに気づいてるのかしら?
・・・行動で解らないなら言って解らすまで。
「アンタ!!貴族に逆らう気っ!?」
貴族という言葉を聞いて「はっ」とするシエスタ。
慌ててリュウから離れる。
「も・・・申し訳ありません!!その・・・あまりに嬉しくてつい・・・」
ひたすら頭を下げるシエスタ。
「まあ、リュウを心配してくれてたみたいだから、今回は見逃してあげるわ。でも、次はないから覚えときなさい」
ゼェゼェと肩で息をしながら告げる。
シエスタは「ありがとうございます!」と嬉しそうに言うと、深くお辞儀をしてからパタパタと走り去っていった。
あ・・・今あのメイド、スキップした・・・
ルイズはなんとも複雑な気持ちでメイドを見送るのだった。
すげえ……かっこよすぎる……真空波動支援!!!!
あげてしまった・・・申し訳ない支援
支援
騒動も一段落し、授業を受けるため、教室に向かうリュウとルイズ。
「あのメイドとはどういう関係なの!?やけに仲良さそうじゃない!っていうか、いつ知り合ったのよ!」
「ああ、洗濯する場所を教えてもらったり、飯を都合つけてくれたりな。
彼女にはいろいろと世話になりっぱなしだ。何か、彼女の力になれればいいんだけどな」
飯の都合・・・思い出した!
決闘騒ぎで完全に頭から離れていたが、自分はリュウを怒らせたのだった。
謝らなければ・・・でも本人も怒ってないみたいだし、何もなかったように振舞っても・・・
いや、それはダメだ。
これはケジメなんだ、ちゃんと謝らないと。
「ちょ・・・ちょっと、リュウ?」
「なんだ?」
爽やかな笑顔を向けるリュウ。
うう・・・謝りづらい・・・
元々人に頭を下げるなど殆どしたことのないルイズにとって、謝るという作業はなかなかに難しいものだった。
「あ・・・あのね!ご・・・ご・・・ごごごごめごめごめゴメ」
ダメだ・・・たった一言ゴメンナサイと言うだけなのに、言葉が出ない。
「ん?」
ルイズの発する謎の呪文にいぶかしむリュウ。
「ご・・・ゴメス!!」
「誰だよ・・・」
何言ってるんだわたし!?リュウが気味悪がってるじゃない!
「じゃなくて!ご・・・ごご・・・合格よ」
「ん?」
「わわわわたしの使い魔として、ごごご合格って言ってるの。ご主人様を守るには、十分ってことよ!」
だあああああっ!違う!言いたいのはそんなことじゃない!!
心の中でブンブンブンと頭を振る。
「そうか。それは何よりだ」
リュウは優しい。メイジをものともしないほど強いのに怒るでもなく、わたしを受け入れてくれる。
わたしもそれに応えなければ・・・
ルイズは意を決した。
「・・・それと・・・めん・・・さい・・・」
消え入りそうなルイズの声。
「ん?」
聞き返すリュウ。
「ごめんなさい・・・次からは、食事のとき、ちゃんと私の隣に席を用意するから・・・」
下を向いて弱々しく謝るルイズ。
「そうか」
リュウは笑顔でルイズの頭に手をおき、桃色の髪をクシャクシャと撫で回した。
先ほどの恐ろしいまでの破壊力を秘めた手と同じとはとても思えない、大きくて暖かな手だった。
違う!ここでわざわざ殺意の波動の具現たる瞬獄殺を使って見せることに意味があるんだよ!
支援
リュウかっけええ
以上で投下終了であります。
殺意の波動を使わせるかどうか迷いましたけど、手加減しないと言っちゃったことだし、せっかく使わせちゃいました。
一応、リュウファイナル設定ではどうやら殺意の波動も多少は制御可能みたいですし。
ところで、ゲーム内のリュウのセリフを言わせるのが密かに楽しみだったりします。
どこかにストU、スパU、ZEROシリーズのリュウのセリフ集ないかなぁ。
普段着買ってやってくれ支援
乙
GJっした!
セリフ集、スト3のは結構ネットにあるんですけどねぇ……
リュウの胴着は礼装であり普段着であり寝巻きでもあるんだぜ
乙
乙でした
リュウは相手によって使う技も変化するよなぁ
真空波動拳がレーザーになったり
乙です
「靴?いや、裸足の方が楽なんだ 買えないわけじゃない」
関係ないけど最近はこんな勝ち台詞を
激しく乙です
リュウって超有名だけど嫌われていない珍しいキャラだよね
だからこそ扱うのは難しそうだけど楽しませて頂きました
龍哭波動拳はどの作品だっけ?
RYUFINAL後のリュウが自分から殺意の波動使うとか無いだろ
一回見直したほうがいいんじゃないの
リュウかっこよすぎwwwwwwww
俺の幼稚園の頃のヒーローだったのを思い出した
乙です
>>262そうは言ってもだなぁ・・・あの格好は流石に浮くだろう
パンツ一丁でコインランドリーの洗濯機の前で仁王立ちしてたよな……
少しずつ強くなっていく、それがいいんだ
リュウのキャラクターを表す名セリフでとてもよかったです。
ただそれだけにギーシュの成長スピードは異常かと
積み重ねなく、いきなり覚醒するのはリュウのセリフとの矛盾を感じました。
別に覚醒したわけじゃなくて、覚悟が決まっただけだろう。
jojo理論だな
正直そろそろ家庭を持って貰いたい
セリフ集か…カプエス2の攻略本ならキャラも多いしいいかも。
古本屋で安く手に入らないかな?
>>267 そうですね、もう一回読み直してみます。
>>271 ギーシュは別段強くなったワケじゃなくて、単純に覚悟完了しただけです。
多分リュウ的には同じようにあしらってます。ただ、漢と認めたからちょっと真剣になったみたいな。
>>267 追記。
一応、2話後(予定)にその殺意の波動についてのリュウの考えみたいなのもチラっと出ますんで
まあ、そのときに「ケッ」と思うか「そうかもね」と思うかしてください。
>>274 しかし中平版だと彼はさくらが高校教師になるくらいの頃になっても
定職も持たずに格闘三昧な男だからなぁ
>>272 だよな。
スペックが上がったんじゃなくて、勇気を絞り出しただけだって言う。
しょうりゅうけんを やぶらぬかぎり おまえに かちめはない
予約が無ければ40分より小ネタ投下します。
漫画『ワルキューレの降誕』より、
ドゥンケル・イナー・ドゥンケルハイト召喚で
そういえば、リュウって全ての格闘ゲームキャラの基本ともいえるキャラだよな(カプコン以外でも)
技もだが戦闘スタイルから容姿、立位置にいたるまで。
リュウから全て派生していったと言っても過言じゃないだろう。
>>265 普通こういうキャラは無個性気味であまり人気はでないもんなんだが、リュウだけは別なのは
こういう理由からなんだろうな。
どうやってもリュウを超える様なキャラクターは中々出てこない。
――ニューカッスルのホールでは、いつ果てるとも知れぬ宴が続いていた。
贅を尽くした料理に舌鼓を打ち、上等な酒を水のように流しこんでは大言を吐く。
城内には、総勢数百名にすぎないアルビオン全軍。
そして城外は、その百倍以上の数からなる、レコン・キスタの大軍により包囲されていた。
盤上においては、既に大勢が決していた。
後は彼らが、物見遊山で乗り込んでくるであろう敵に対し
どれほどの貴族の意地を見せつけることが出来るか、ただそれだけであった。
ともすれば胸中を締め上げんとする恐怖に対し、彼らは酒と、勇気と、自慢の諧謔精神でもって耐え続けていた。
そんな城内の乱痴気騒ぎを、騒ぎを引き起こした張本人である
アルビオン王国皇太子、ウェールズ・テューダーは、どこか冷めた視線で眺めていた。
勿論彼もまた、この一戦で、誇り高く死ぬつもりであった。
大それた野望を抱く敵に対し、己が命を賭して一矢報いるという、その言葉に嘘はない。
それが偽りであったならば、ウェールズはこれほどまでに、彼らを戦いに酔わせることは出来なかっただろう。
だが、仮に彼らの命を救う術があったならば、確実に飲み込んでいた言葉でもあった。
救うことが出来ないから、せめて酔わせる。
それだけが、無能な指導者が唯一選ぶことが出来た、愚かな選択肢だったのだ。
「孤独を知り 憂いを知らねば 人は真の勇気を得ることが出来ない
お前は漸く 歴代の戦士に肩を並べる資格を得たのだよ ウェールズ・テューダー」
「え……?」
聞き覚えのある声に、ウェールズがテラスの方を振り返る。
彼女がウェールズの元を訪れるのは、いつだって突然のことだった。
見る者に、どこか死神を連想させる長い漆黒の黒髪。
視線だけで相手を試すかのような、高潔な精神を閉じ込めた鋭い瞳。
白い肌に良く映える、血のように赤い唇。
出会った頃と何一つ変わらない、凛とした黒髪の乙女。
唯一変ったのは、ウェールズの背丈がいつの間にか、彼女の長身を追い越していた、と言う事だけだった。
「ああ……」
万感の思いを込め、ウェールズが呟く。
「来て下さったのですね 漆黒の女神よ」
・
・
・
幼い頃のウェールズは、英雄譚や冒険譚が大好きな子供だった。
小さな体に無限の勇気を宿し、強大な竜に立ち向かう勇者が好きだった。
流浪の果てに仲間を集め、故国奪回のために戦う王子の姿に憧れた。
見たことも無い使い魔を従え、世界中を飛び回り、美しいお姫様を救い出す英雄になりたかった。
その日、人知れずサモン・サーヴァントを行うなどと言う暴挙に出たのも
元を正せば、ささいな英雄願望から始まった、突発的な行動に過ぎなかった。
ゲートが放つ輝きと共に、幼き王子の前に現れたのは、
そんな、憧れの世界から飛び出してきたかのような、異装の乙女であった。
淀みの無い、冷たく澄んだ双眸は、何かを推し計るかのように、幼いウェールズを捉えていた。
風にたなびく乱れた黒髪は、どこか死神を連想させた。
傷つき歪んだ黒光りする胸甲、大きく欠けた肩あて。
所々刃こぼれし、亀裂の入ったハルベルト。
袖口の破れた上着に、血が染み込み、誇りと泥にまみれた白いスカート。
腕と言わず顔と言わず刻まれた、大小さまざまな傷痕……。
ウェルーズは純粋に、彼女を美しいと思った。
くすんだ風体も全身の傷も、彼女の魅力を損なうには至らない。
むしろ、それらの傷のひとつひとつが、彼女が自らの高潔さを試し続けた証にさえ見えた。
ゆっくりと辺りを見回したあと、乙女は低く、くぐもった声で、ウェールズに語りかけてきた。
「汝が我を こちらの世界へ呼んだのか……?」
「え……? は はいッ! 多分
あの サモン・サーヴァントで……」
「サモン?」
「あの 使い魔を呼ぶ魔法 で……」
使い魔、と言う言葉に、乙女の眉が釣り上がる。
しまった、と咄嗟にウェールズは思った。
暫くの間、信じられないといった表情で、乙女はウェールズを見つめていたが、
やがて、両肩を小刻みに震わし……、
「……ふっ はは はははは」
と、弾かれたようにからからと笑いだした。
異国の死神が、突然、うら若き乙女に変貌した。
ウェールズがそう思うほどに、屈託のない、無邪気な笑顔だった。
「そうか そういう事もあるのか
居場所を失ったこの身を 人の子が呼び出して使役しようとはな
出来過ぎだ 今は無き盟主の意思すら感じられるようだ」
ひとり納得した風の乙女に対し、恐る恐る、ウェールズが問い掛ける。
「あなたは…… 女神 なのですか? それとも まさか…… 死神?」
「どちらも正解だ
我は闇の中の闇…… 破壊と殺戮を司る戦乙女だった事もある
もっとも 今はもう 何者でも無いがな」
乙女はゆっくりと屈むと、その澄んだ鋭い瞳で、ウェールズの瞳の奥を覗き込んだ。
「使い魔の件 委細承知した お前 名は何と言う?」
「ウェ ウェールズです ウェールズ・テューダー」
「ウェールズか……」
「あの…… あなたは?」
ウェールズの問いに対し、乙女は何事か考えこんでいたが
やがて、冷めた視線を虚空に投げかけながら呟いた。
「私はもはや 名乗るべき名前すら持ち合わせていない
お前の好きに呼べ ウェールズ」
・
・
・
――そして、女神はウェールズの使い魔となった。
もっとも、彼女は他の使い魔のように、四六時中、彼と共にあった訳ではない。
彼女は神出鬼没で、いつもウェールズが気づいた時には、忽然と姿を消していた。
初めの頃は、自分は使い魔を呼ぶ夢を見ただけではないかと、ウェールズは頭を捻ったものだった。
それでいて、ウェールズが何か悩みを抱え込んだ時には
気が付けば、彼女の姿がウェールズの傍らにあった。
些細ないさかいから、従者と喧嘩をした時
簡単な魔法の実演に失敗した時
頼りにしていた近臣の陰口を耳にしてしまった時
王家の暗部の一端を目にした時
父王が病に倒れた時
全てを見透かすかのような彼女の瞳の前では、ウェールズは嘘をつけなかった。
悩み、苦しみ、葛藤、憤り…… しどろもどろになりながらも、ウェールズは己の心情の全てを吐露した。
そんなウェールズの告白を、乙女はあくまで毅然とした態度で、だが辛抱強く聞いた。
大抵の場合、彼女は安易な叱咤激励をしたり、彼に適切なアドバイスをくれたりはしなかった。
その代わりに、自分が居た世界の話をウェールズに聞かせた。
神々の盟主が下した英断、恐るべき執念を宿した巨人、公正さと慈悲深さを併せ持った誇るべき友――。
いつしかウェールズは、それらの話の中に、彼女が伝えんとしているテーマが含まれている事に気付いていた。
彼女は自らの意見を述べる事も、使い魔として直接的に主を守る事もしなかったが
彼女の話の中には、常にウェールズを自分と対等に扱おうとする、戦士としての思いやりが会った。
ウェールズは彼女の事を、決して他人に話したりはしなかった。
始祖ブリミルの加護に成り立つハルケギニアでは、彼女の存在は余りにも異端過ぎた。
彼女の言葉が真実であるかはウェールズにも分からないし、それを確かめる術もない。
だが、そんなくだらない詮索で彼女を失う事は、ウェールズには耐えられなかった。
ウェールズは、彼女の話が好きだった。
彼女の聞かせてくれる、人間の勇者の話が好きだった。
彼女の述懐する勇者達は、かつての御伽噺のような、無欠の英雄ではなかった。
誰もが心に憂いを抱え、拭いきれぬ悲しみを背負いながら、最後の尊厳を守り抜くために剣を取る、誇り高き戦士であった。
ウェールズはいつしか、自分も彼女の詩の一部となれる事を願っていた。
・
・
・
運命は残酷なものである。
彼女の在り方を手本に、ウェールズが立派な青年へと成長した時には、
既に、王家の滅亡は避けられぬものとなっていた。
事ここに至って、ウェールズに迷いは無い。
彼の知る異世界の勇者達は、こういう場面でこそ、強く、大きく、偉大であった。
そして、心の底に沈んでいた無力感すらも、こうして彼女に会えた事で、すっかり取り払われていた。
「こんな時にいう事でもありませんが あなたに出会えて本当に良かった
幼き日に あなたと会えなかったならば
私は運命を呪い 孤独に震えながら死なねばならなかったでしょう」
「そうか……」
と、ウェールズの謝意に対し、黒髪の女神は淡白に応じた。
その仕草に、ウェールズが疑問を覚える。
未だかつて、彼女がウェールズの前で、こんなにも曖昧な態度をとったことは無い。
あるいは、別離の寂しさが彼女の表情を曇らせているのかとも考えたが、それも即座に否定できた。
彼女は戦士の誇りを何よりも重んじる存在である。
本来の彼女ならば、目の前に避けられぬ別れが迫っているからこそ、
その剣先が鈍らぬよう、晴れ晴れとした笑顔で見送ってくれるはずだった。
こんなにも儚げな彼女の姿は、ウェールズは見たことが無かった。
しばしの沈黙の後、おもむろに彼女が口を開いた。
「――かつて 古の神々の時代が終わりを迎えた日
私は仲間達と共に 強大な隻眼の巨人と対峙していた」
「!」
ウェールズが思わず目を見張る。彼女が自分自身の話をするのは、これが始めての事だった。
・
・
・
支援
「その巨人は地上の ありとあらゆる負の感情を纏ったような 粗暴で邪悪な怪物だった
多くの仲間の命を犠牲に 私は奴を討ち果たしたが 肉体を失って尚 そいつの怨念は生き続けた
大神も巨人族も皆死に絶え 地上の全てが灰に還っても その妄執だけはこの世に留まり
やがて 漸く再生を始めた世界を再び滅ぼさんと 実体を伴って動き出した
私は奴を結界に閉じ込め 今度こそ その魂を消滅させるべく闘いを続けた」
ウェールズが息を呑む。それは、古の邪神と古き軍神の、果てることなき永劫の死闘の記憶だった。
「その頃 私同様 終末を生き延びていた かつての同胞たちは
地上に新たな秩序を築くべく 努力を積み重ねていたが 私はそれを一瞥にもしなかった
無用の混乱を避ける為とはいえ 彼らが かつての勇者達の戦いの記憶を
忘却の彼方に捨て去った事が許せなかった
大神の去った世界に 勇者のいない地上に 私は何の価値も見出せずに居たのだ」
「…………」
「だが それらは全て過ちだった
無限の闘いの果てに 傷つき倒れた私を救ったのは 脆弱な体しか持ち得ぬはずの地上人だった
そして 強大な怨念を葬ったのは私ではなく 新しい世界で生まれた まだ名も無き女神だった
彼女たちは皆若く 未熟で 不安定だったが
自分たちが生きる『今』を守ろうという 純な意思に満ち溢れていた
かつての私や 私の同胞たちのように……
結局 私自身も件の巨人と同様 過去の妄執に囚われた怨霊だったのだ
かの女神が最後に放った一太刀は そんな私のくだらぬ執念をも斬り落としてくれた
私はもはや 自分がその世界に居るべき存在では無い事を悟った
始めにお前と出会った時 名乗る名を持ち合わせていないと言ったのは つまり そういう事だったのさ」
・
・
・
支援支援
「……あなたは 過去を悔いているのですね
神々の列に加われなかった事ではなく 友の力になれなかった事を」
「私は後悔とは無縁の存在だ
だが 愚かではあったと思う
過ぎ去った日々に囚われる余り 私は真に守るべき者を見失っていたのだ」
「真に 守るべき者……」
それっきり、女神は口を閉ざした。
テラスを吹きぬける夜風が、ウェールズの熱狂を奪い去っていく。
ウェールズはふと、かつて彼女が一度だけ、愛馬に乗せてくれた時の事を思い出していた。
その漆黒の天馬は、翼を雄大に羽ばたかせ、二人の体をたちまち上空へと運んだ。
広大な畑を耕す農夫が見えた。賑やかな街並みを行きかう人々の姿が見えた。
草原を駆け抜ける子供達が見えた。
黒き女神はただ一言「あれが、お前の守るべき世界だ」と言った。
はるか高みから見下ろしたアルビオンは、どこまでも美しい世界だった。
「……私が間違っていました 女神殿
あなたが来てくださらねば 私はまた 大きな過ちを起こすところだった」
「…………」
「私は 生きてみます
生き延びて 奴らから守らねばならぬものが 確かに私の中にもありました
今更ここを生き抜ける術があるとは思えないし 死に恥を晒すだけかも知れませんが
その最後の瞬間まで必死に足掻きぬく事を この場であなたに誓います」
長い沈黙の後、ウェールズはその言葉を口にした。
仲間を犠牲にする事も、父王を裏切る事も、生き恥を晒す事も恐れず生き延びる。
それはウェールズにとって、何よりも勇気のいる誓いであった。
変節漢の汚名を被る恐怖に比べれば、眼前に迫る死は、救いそのものにすら思えた。
「……すまぬな」
「何を謝る事があるのです? 私にとって あなたはかけがえの無い師だ」
「私はそんな者ではないさ」
そう言って、女神はどこか悲しげに星空を仰いだ。
「お前を使って 己が過去を清算させようとしているのだよ 私はな」
・
・
・
しえん
別のワルキューレのagapeを聞きながら支援
重臣達の中に、ウェールズの変節を咎めるものはいなかった。
ウェールズが、己がかわいさ故に信念を曲げる主では無い事は、誰もが知るところである。
むしろ、この戦いで、最も強く自らの死を望んでいるのは、他ならぬ彼であろう。
ウェールズが、自らの無力さゆえに部下を巻き込んだ事を憂いていたように、
兵士たちもまた、自分達の我侭に主人を巻き込む事を憂いていた。
彼らは皆、等しく憂いを抱えた勇者であった。
最大の問題は、ニューカッスルからの脱出の方法であった。
イーグル号――城に残った唯一の戦艦を使う事は出来ない。
その船には、女子供といった非戦闘員を乗せねばならない。
ウェールズが乗りこめば、同乗した者も地の果てまで追われる事となる。
「やはり 替え玉を使うしかありますまい」
「…………」
老臣・パリーの提言に、ウェールズの顔が悲痛に歪む。
兵士達の中から顔立ちが似た物を選び、影武者に仕立てた上で夜陰に乗じて脱出させる。
無論、敵に補足される事を前提に動く。
敵が影武者の一団を見つけ、包囲の輪を乱した隙を狙い、ウェールズ本人は、搦め手より単独で脱出する。
余りに悲しい策である。
囮となる兵達は確実に全滅し、しかも脱出できる公算は限りなく低い。
さらに悲しいことに、その策こそが、現状考えうる最善の手であった。
ウェールズが頷きかけたその時、後方より、木戸を押し開く乾いた音が室内に響いた。
「無用 王子の晴れの門出に 逃げ出す算段は要りませぬ」
居合わせた重臣達が、思わず息を呑む。
彼らはまるで、自分達が神話の一部に立ち会っているかのような畏怖を感じていた。
室内に現れたのは、戦支度を整えた、黒き乙女であった。
簡素な装飾が施された黒色の胸甲は、長年使い続い込んだ重みを感じさせるように、鈍い輝きを放つ。
背丈よりも長いハルベルトを片手に、悠然と闊歩する姿は、あたかも歴戦の兵のようだ。
羽飾りのついた漆黒の兜、フェイスガードの奥で、相の眼が、どこまでも澄んだ輝きを放っている。
白い肌に生える、血のように赤い唇。風を孕んだ長い黒髪が、見るものに、どこか死神を連想させる。
黒一色で纏めた威圧感あふれる容姿に対し、純白のスカートだけが、乙女の凛然とした心根を感じさせた。
そこに居たのは、あたかも書物の世界から飛び出してきたかのような、美しくも逞しい軍神であった。
「女神殿…… なぜ?」
「陛下」
黒き女神は玉座の前まで進むと、恭しく肩膝を突いた。
「陛下があくまで 誇り高き死を望んだならば もはや私に出来る事はありませんでした
けれど 貴殿は生を望んだ
ならば私も 一切の立場を捨て 使い魔として 貴殿に尽力致しましょう」
ウェールズもまた、彼女に呑まれていた。
長い付き合いである。彼女の美しきも逞しきも知る彼ではあったが、
甲冑を纏った彼女の勇士が、これほどまで震えるものとは想像しなかった。
「なんという 見事な姿
あなたはまるで…… まるで 伝説のワルキューレのようだ」
ウェールズの感嘆に対し、乙女は出会った時以来の、無邪気な笑みを浮かべ呟いた。
「なんだ 知っていたのか? 我等の呼び名を」
・
・
・
「ハルケギニアが人類の父 大いなる始祖・ブリミルよ!」
戦乙女の澄みきった声が、戦場に高らかと響く。
「かつて『神』を名乗った身でありながら 今 使い魔の約定に従い
人の子の争いに介入する無礼 まずはご容赦あれ!」
乙女の堂々たる口上に、嘲笑が止む。
城門が開き、鎧姿の乙女が現れた時は、散々に罵倒を浴びせた彼らであったが
その口上は、既に笑い飛ばせる域に無かった。
自ら神を名乗り、始祖ブリミルに対しその進退を述べる。
傲慢を超えて狂人としか思えぬ物言いだが、目の前の黒き乙女は、真剣に天意を問うように振る舞った。
「革命の子らよ!」
乙女は戦場に向き直ると、今度は敵である彼らに対し、その信念を問うた。
「我が名はグングリーズ
殺し 破壊し 奪い取り 捧げる者 破壊と殺戮の戦乙女なり
汝等の理想に 真の志あるならば その一念を刃に変えて 我が歩を止めて見せよ!」
口上が終わると同時に、乙女は悠然と歩みだした。
あたかも眼前に、万を越す大軍など存在せぬかのような、自然な歩みで……。
手近の一団が、弾かれたかのように跳び出していた、問われた答えを示すかの様な、本能的な動きであった。
黒き乙女は尚も歩みを止めず、ゆっくりと得物を振り上げた。
直後、横薙ぎのハルベルトの旋風に前衛の数名が薙ぎ払われ、後続を巻き込んで大きく吹き飛ばされた。
戦斧の一撃は当たってすらいない。
乙女の膂力が引き起こした烈風が、対手の剣を、鎧を砕き、全てを弾き返したのだ。
直後、敵陣から恐声が上がる。
恐怖は時に、人を残酷にする。恐るべき数の殺意が、眼前の戦乙女に向けられた。
その段になって尚も、乙女は悠然とした歩みを止めない。
一斉に放たれた矢の壁は、乙女が軽く体を捻ると、手品のようにすり抜けていった。
彼女を刻まんとする烈風の刃は、大地を砕く瀑布の如き一撃に阻まれた。
乙女を飲み込まんとした巨大な火球も、叩き付ける様に振るわれた大盾に阻まれ、周囲に炎を四散させただけだった。
攻城用に準備されていた三体のゴーレムすらも、乙女の歩みを止める事は出来ない。
戦乙女は、時に邪悪な巨人にすらも生身で立ち向かう任を負う。
いかなる巨体を誇ろうとも、魂篭らぬ土人形が、神に連なる戦士に拮抗できるはずがなかった。
一体は右足を砕かれて派手に転倒し、もう一体は腹部に風穴を開けられ砕け散り。
最後の一体は、天空からの一撃で、唐竹割りに両断された。
・
・
・
奇跡のオンパレードとしか呼べぬほどの、乙女の八面六臂の活躍に、城兵が沸き立ち、歓声が上がる。
そんな中、主であるウェールズだけは、丸っきり別の事を考えていた……。
これ程の力を持ちながら、この土壇場まで彼女が助力してくれなかったのは何故か。
答えは、彼女自身が口上で示していた。
彼女は、その圧倒的な力を用いて、人の戦に介入し、その運命を揺るがすのを忌避したのだ。
それが神なる者の矜持によるのか、何らかの理ゆえなのかは分からない。
一つだけ確かなことは、彼女がウェールズの為に、己が信念を曲げたと言う事だった。
戦斧を振るう彼女の勇士が、余りにも悲しかった。不甲斐ない己が身を呪いたかった。
「ストルムヴィンド! 主の下に飛んでくれッ!」
――そして、気がついた時、ウェールズは周囲の静止を振り切り、信念も計算も無く跳び出していた。
「殿下!」
家臣の声が後方に消える。
暴風の名を持つ漆黒の天馬が、一直線に前線を駆け抜けていく。
「ウェールズ!?」
天馬にまたがり、自らの前に現れた主人の姿に、初めて乙女が動揺の声を上げた。
彼女がストルムヴィンドを託したのは、万が一の時、ウェールズを脱出させるためであった。
だが、愛馬は主人を裏切り、守るべき王を伴って眼前に現れた。
「黒き女神よ! あなたはこれ以上戦っては駄目だッ!
これは私の 私たち人間の戦いだ!
あなたが矜持を捨ててまで やらねばならぬ事ではないッ!」
「陛下……」
やがて、ウェールズの意思に呼応するかのように、鴇の声が後方より上がり、
凄まじい形相の一団が、主と女神を守護するように突っ込んできた。
「女神殿! お見事な戦ぶりでござった」
「殿下の申されるとおり ここから先は我等の戦い!」
「我等の戦いぶり とくとご覧あれ」
ウェールズが吼える、付き従う兵士もまた、全身を震わせ咆哮を上げる
数百名からなるアルビオン王国全軍の突撃に、今度こそレコン・キスタは震え上がった。
戦術も、打算も、信念もない。ただ一太刀ごとに己が命を刻み込むような、狂人たちの行軍。
それはまさに、触れるもの全てを黄泉路に送る死の壁だった。
初めに乙女が望んだとおり、敵の中に、真剣に国家を憂い、革命に命を捧げた者がいたならば、
或いは、この突撃も支えられたかもしれない。
だが、彼らは所詮、烏合の衆であった。
皆、指導者の奇妙な力に恐怖し、大勢に流され、欲望に酔いしれて従軍していたに過ぎない。
本物の軍神、そして、本物の狂人達が起こした奇跡に、対抗する術を持ち合わせてはいなかった。
・
・
・
一行が気がついた時、万を越す敵の大軍は、既に地平の彼方にあった。
『見事な突撃だった 感服したよ
最後にこのような友人達と同じ戦場に立てた事 本当にうれしく思う』
「女神殿……?」
誰もが事の成り行きに呆然とする中、ウェールズは乙女の声に振り返った。
漆黒の女神の姿は、既に戦場には無かった。
やがて、自分達の勝利を確信し、兵士たちの中から、喚起の声が一斉に沸きあがった。
『暴風は 貴殿の事がいたく気に入ったようだ
暫くの間 貴殿に預けておこう
貴殿がもう一度 私に戦乙女としての役目を与えてくれた事 心より感謝する』
熱狂の中、乙女の声が風に乗って聞こえてくる。
ウェールズは天馬の頬を撫でながら、寂しげに中空を見上げた。
「ありがとう…… さようなら 私の偶像」
もう二度と、彼女と出会うことは無いだろう、
そう確信めいた予感が、ウェールズの心中でざわめいていた。
最後の支援
風の如く支援
以上、投下終了です。
当初はエピローグを考えていましたが、無いほうがいいかと考え直しました。
遍在対分身という展開も考えていましたが、結局トリステインサイドは丸ごとカット
ウェールズが生き残ったのに、アンアンが何かかわいそうな事に……
乙!原作は知らんが楽しませてもらいました。
やっぱウェールズは死なすには惜しいやつだ。
同じく原作は知らないけど、乙でしたー。
物凄く投下乙です! 朝からとても良い物見させて頂きました。原作知らんですけど。
ご幼少のみぎりにこういう女性と出会ってしまっているウェールズの目にアンアンがどう映っているんだろうというそこはかとない疑問が………
戦乙女は儚く消える……乙でした。
というわけでどうも、久保の書き手です。
以前ちらっと仄めかしていましたが、今回ちょっとグロ描写がきつめなので避難所の方に投下させて頂きました。
いつもこちらに投下させて頂いているので、あまり人のいない時間のうちに報告をば……
ほひィーーーー乙でした
読んできたー。
すごく…ユーゼスらしいです…
なんという鬱展開・・・
誰かが言うであろうから先に言っておく。
避難所ってどこだ〜!
第三次にあったな、これ……いやマブラヴオルタネイティブか?
なにその内まとめに入るさ
一言だけ言うと、覚悟は完了しとけとしかorz
久保の人乙です。
次回にwktk
ま、まあどうせ終わりで久保がなんとかしてくれるさ!
色んな世界を回ってきているんだからきっと・・・・・・ 乙です
まあ、ユーゼスが持ち出したネビーイームの設備を使えば体組織の培養は出来るかもしれんけどなー。
まあユーゼスならあらかじめ使えないように壊しておくとかやりかねんがなーw
>>311 >誰かが言うであろうから先に言っておく。
同じことを訊く誰かの存在を免罪符にしてアホなこと言いなさんな。
避難所が分からない人のほうが圧倒的少数だろJK……。
たとえ分からない人がいたとしても、それはそいつがテンプレも読まない(読めない)ド低脳というだけの話。
それはド低脳に失礼では?
こういうのは無能と言うんです
ユーゼスヤバスwwwテファとマチさんがぁぁぁ!
サルファ世界に戻ってGGGとネルフとビルドベースの技術を結集すればなんとかなるかな?
マチさんが初期ルネ化しそうだけど。
避難所見てきた
316の可能性を考慮した上であの状況を救うには・・・
アインスト?そういえば仲間3機であと一人残ってたな
久保の人って提督書いた人?
>>322 いえいえ、とんでもございあせん。
あの人ほど微に入り細を穿ってはいませんからね。
ハザル「来い、エイス!
エイス「だが断る」
非難所見てきた。何というかね・・・、もう蹂躙だな。
少なくとも俺にはゼロ魔原作への敬意は感じられなかった。悪いがこれからの投下は非難所でやってくれ。
非難→避難
スマソ
気持ちはよくわかるが、そういうことは非難所こと毒吐きでするんだ
別に本スレでいいよ。
避難所なんて人少なくて、途中で投げる可能性高くなるし。
読んだこと無いけど
久保の方乙です!
私は別に面白ければ何でも構わないので気にせず本スレに投稿していただきたいです。
次の更新、wktkしながらまってます!!
つまりここでのいろんな作品への毒吐き解禁ってことだね?
>>325 カキコ読んだ。何というかね・・・、ただのいちゃもんだな。
少なくとも俺には作者への敬意は感じられなかった。悪いがこれからのカキコは毒吐きでやってくれ。
作品の鬱展開はそういう話なんだと割り切れるが
野次馬の毒吐きなんざ見てて不快なだけだ
専用スレあるんだからそっち行ってこい
本スレでまで毒吐きなんざ見たかないわ
露<だが、断る
むう、割り込まれた。
漏れのレスは>330に対してのものと言うことで。
スレの使い分けも出来ない奴は「荒らしたいだけの馬鹿」呼ばわりされるのがオチかと。
>>331 カキコ読んだ。何というかね…、ジャマなレスだな。
少なくとも俺にはこのスレへの敬意は感じられなかった。悪いがこれからはこういうレスにはスルーしてくれ。
何のための肥溜めスレだよ…
使い方くらいわきまえてくれ。
避難所で久保の人のを読んできた。
司馬宙(鋼鉄ジーグ)のお父さんを思いだしてしまった・・・
ティファ「姉さんは鋼鉄ジーグに変身するのだ!」
マチルダ「( ̄□ ̄;)!! 」
今に見ていろロマリア皇国全滅だぁ!
徹夜明けの頭にまたあの男の声が降りてきたよ。
降りてくる必要性は全くないんだが。
というわけでK・C・マルトーの新作ができました。
避難所の方がいいかな?
久保さん乙です〜
首から上と脳だけって描写を読んで思ったのが、
『アヤみたいになってんじゃね?』
後、一つ疑問なんですけど
ゼロ魔の世界の魔法発動って、媒介は杖ですよね?
で、トリガーは声。となると確かに肉体は不要なんですが・・・・
何でだろう?肉体が発動媒介に必要な気がして仕方がないww
そして能登ボイスで首から上だけが想像できないww
魔法の仕えない家系からは魔法使いは絶対生まれない。
この事から血液やDNAが関与してると見える。
杖自体は魔法を発生しない、声はトリガーみたいな物。
つまり魔力自身は体がないと生まれない。
こう推測するがな。
だから肉体が無いと発射はできないんじゃね?
気温もすっかり下がって、冬らしくなってきたな。
夏場は室温が上がる所為で、あまり作ることが出来なかった煮込み料理も
冬となった今では、低い気温のおかげで、とても作りやすい。
昨日はタイのグリーンカレーを作った。
カルディで買ったグリーンカレーのパウダーに、玉ねぎを入れてさっと炒めて
タイの魚醤(ナンプラー)とブイヨンの顆粒を加え、さらに炒める。
そこに、牛挽き肉と。業務スーパーで買ったココナッツミルクを注いで
牛挽き肉の色が変わるまで、弱火で煮立てる。
火が通ったら更にココナッツミルクを加え、玉ねぎ、ナス、パプリカを加えて煮込む。
仕上げに黒砂糖とナンプラーで味を調整する。 これで完成だ。
今回は、隠し味に少量のウスターソースとケチャップを入れてみたが
入れないほうが、良かったかもしれない。
これはこれで日本向けな味で美味しかったが、前に作ったグリーンカレーの方が
タイらしさが出ていたように思う。
まだまだ修行が足りない。
なんで、この程度で避難所に?
マルトー支援
避難所だと思うよ……
了解。
避難所にしときますー
>>336 俺の話を読め、反論は許さんって連中なんだろ
だからわざわざこっちに湧いてきてピンポンダッシュしないと気が済まない
そんな事よりおっぱいの話しようぜ
おっぱいぱい。
可能姉妹を召喚
ゴージャスになる修行をつむルイズ。
「まだまだね、ルイズ」
「おねぇさま……あたし、頑張ります!!」
かくして可能三姉妹復活
ごきげんよう。
薔薇姉妹を召喚
ロサキネンシスになる修行をつむルイズ。
「まだまだね、ルイズ」
「おねぇさま……あたし、頑張ります!!」
かくしてロサキネンシスアンブトゥン誕生
ごきげんよう。
久保の人め!
貴重なおっぱいになんて事を!
貴様なんか乙だ!
>>337 むしろティファニアをサイボーグにすべきだろ。
テファ「マッチー、マッハドリルだ!」
マチルダ「だれがマッチーだい!」
鋼鉄テファニアが久保達と一緒にユーゼスを倒すんですね。 わかります
僕は、エロゲの冒頭にまず最初に登場する主人公の男友達のような存在になりたい。
誤爆した。首吊ってくる
怪物に脳移植したメイジが魔法使ってたってのがあったみたいだし
サイボーグになっても使えるだろうな
そして、テファ・ブリーカーなら是非食らって圧殺されたいと思った俺も首を吊ってくるとしよう・・・
ジーグ以外で頭部以外機械のサイボーグと言うと…獅子王凱とか、草薙素子とか、仮面ライダーZXとか、ギルハカイダーとかか?
ゼロゼロナンバーは微妙に違うかね。
バトーも全身義体じゃなかったか。
銃夢のサイボーグ連中とか
しかし酷いSSだな
色々二次創作読んだがこんだけ不愉快なSSはゼロ魔じゃ初めてだ
>>359 どの程度かはよく知らないけど、
9課で生身が一番少ないのは素子ってなっているな。
素子は確か脳味噌と脊髄(?)以外全部義体。バトーは知らんけど確か全身義体。
キャラが原作以上に酷い目にあうとかスパロボですら無いぞ
生存ルートはあっても、凄惨ルートなんて無いだろ……
「お釣りはとっといて、いっけぇ〜。」
キョウスケとエクセレンの合体技は心が震えたなー。
後、ハガネが敵の包囲網突破したりとか
クロガネの戦艦ドリルには本気で燃えてたな。
>>364 スパロボだとカテジナさん、ここだと小ネタに結構悲惨なやつあるんだが
パロディ上等を謳っていながらみなさん実にナイーブですねw
「この世界は実験室のフラスコなんだ…そして実験は…失敗したんだ」
このスレの場合、実験の結果を観測する人間によって、成功か失敗かが割とハッキリ分かれるからなぁ。
>>331 原作を尊重できない作者と作品には敬意は持てないね。
>>334 原作あってのこのスレだと思うぞ。
仮にスパロボ世界にゼロ魔キャラが登場してもこんな惨い扱いにはしないわ。
ゼロ魔を尊重しなきゃただのヘイトだよね
ギーシュが負けたりワルドが負けたりする展開は本来ならヘイトだし
勝ってもいいけど、勝ち方やり方ってものは確実にあるよな
戦闘でも展開でも、蹂躙するなら避難所でお願いしたいな。
だから避難所に行ったんじゃないの?
要するに何だ。
貴様らはティファにアが好きなんだよな。
安心しろ俺も好きだ。
>>373ギーシュもワルドも原作で負けてる。
違うのはギーシュが一方的に負けるかどうかと、ワルドとフーケが死ぬことがあるというところ。
原作の展開もロクに知らないようなやつがヘイトだのなんだのと語るな。
ティファのおっぱいでアイアンブリーガー (´Д`;)ハアハア
ていうか原作的に考えてあれって玉アヤでしょ?
こういっちゃ何だけど全く心配する必要ないような……
ある程度の期間のとき祭りのようにここでは怒涛の話し合いがあるよな。
何かの本能かね。
ランスのLv事件からゼロのレボリューション〜幽白、テンプレ荒し、で今に至る。
自身の脳に残ってる出来事はこんな事ぐらいだな。
ティファのぱいぱいは男のロマンが詰まってて。
ルイズのちっぱいは男にロマンを与えてる。
そしてアンリエッタのロイヤルおっぱいは気品を男に埋め込んでるのだ。
ゼロ魔側で活躍するのはルイズだけってのはあり?
てかおまいらよくそこまで熱くなれるなw
俺もテファは好きだがw
嫌ならスルーすればいいじゃないの
ヘイトヘイト言う奴って半分くらいの確立でヘイトの意味分かってないよね
ヘイト=自分が気に入らないという意味だと思ってるんだろうなあ。
俺が正しい例を見せてやろう。
ゼロ戦が竜騎士より強いなんて、ファンタジー世界に対するヘイトだ!!
あれ・・・正しい?
>>382 本当にそうならいいんだけどね・・・・・・
それとも急遽話を修正して「そんな事は無かったぜ」みたいにしたりして
>>387 テファ「ジーグブリーカー死ねェェェ!」
ムニュゥゥゥゥゥッ!!
ですねわかります。
おっぱいに潰される人生…悪くないw
>391
原作の50倍くらい強力になってそうな技ですね
後、擬音は夢乳でお願いします
破ろうにも破りたくない必殺技……なんと恐ろしい
>>392 愚息も迷わず昇天ww
テファ好きにはヘヴィーな内容だったし
これ位の夢を見させてくれorz
394 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/08(土) 17:06:16 ID:RU5j4owt
>>389 困った時には近代兵器でファンタジー兵器蹂躙するのがゼロ魔のコンセプトだから問題ない
多分
というか、こんな言い争いしてて作者様が来なくなることの方が心配……
これっくらいでケツまくるならハナからやってないと思うよ。
だから続けていいってことには勿論ならんが。
内容については別にかまわないけど、
久保の人はこっちに報告したのは間違いだったんじゃないの
避難所でやるべきだと判断して、避難所に投下したのに、
こっちから誘導したんじゃなんの意味もないでしょ
確かに、避難所に行った作品で、それをわざわざ本スレに報告して宣伝した例は記憶にないな。
あったかもしれないけど。
寧ろアレだ。ドMもとい、向上心が旺盛な作者さんが喜び勇んで来てくれるかも知れんぞ。
ルイズ「ジーグブリーカー死ねェェェ!」
無乳ゥゥゥゥゥッ!!
ワルド「つ…つるぺった〜ん♪」(昇天)
スマン俺が悪かった。反省している。
>>401 だけど、下手したらトラウマで二度と書けなくなる諸刃の剣
エロパロ板で一度投下した後の反応にガチで泣いた^q^
でも正直ここまで話題になれるGUNZもうらやましすぎるのです。
だって…俺…、おや客が来たようだ。
確かにナァ、書き手的には話題にならないよりなってくれたほうが嬉しいからな。
無視ってのが実は一番きつい。これ体験談
反応があった方が嬉しいし、次に書く時の参考になるしな。
避難所の感想
マルトーさん、カッコいい
反応が欲しくて自分で毒はいたのにフォローもされず同意も無かった……
空気読まないヘイターですらスルーされないのにくやしぃっ、でも(ビクンビクン
ダイモスの三輪長官はA以外では死んでるぞ>スパロボで原作より不幸
しかもサルファ以外ではプレイヤー部隊に引導を渡される。
これはタイムふろしきを使わざるを得ない
Vガンは最近のスパロボにだしてもらえなくてある意味不幸
これはティファニアに「ゆっくりしていってね!!!」って言わせる伏線なんだよ
用が済んだらアイン・ソフ・オウル撃って時間逆行させて調度いいとこで中断。
テファは元に戻る。これで勝つる!!
それにしてもきつい展開だ
マチルダがリュウセイとか邪険にしなきゃいくらでも避けられた事態だったのにな
それでも久保なら・・何とかしてくれる
と続編を期待しての支援
人修羅さんも待ってます><
こうなったらCV生天目の百合キャラをテファに召喚させてやるぜ!
駄目だ、百合キャラと聞くと神無月が真っ先に思い浮かんでしまう……
テファに召還して貰えればソウマもヒーロー出来るだろうか?
421 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/08(土) 19:08:59 ID:eFkZVtln
ぶっちゃけサイト以外が召還される時点で蹂躙もへったくれもないわなwww
つーかテファも何とかななるだろ…玉アヤ的な意味で
強者は強者でしゃあないやろ。α版のクソ外道ユーゼスが黙ってる訳がない。
世界同士の力量バランスを考えれば、気の毒だけど、起こるべくして起こった事だと思う。
むしろ問題は、これからの久保さんとこの、ゼロ魔キャラの見せ場である。
おマチさんとテファは桃姫ポジションだから高優遇だとしても、他の連中がどうなるか…
…ガリア製のアレが大躍進とか…
>420
神無月の巫女の二人を召喚
ルイズそっちのけでイチャラブ、いざというときはCV田中敦子の妙にエロい声の
ロボに乗ってラブラブ石破天驚拳のような技で切り抜けるんですね
おマチさんやちち革命(元)の人がブレインデバイス化?
フロントミッションを思い出す。S型だと逆らいそうだからカレンみたいなB型の様な扱いにされるのかな
予約が無いようなので35分から投下するッス
久保の人のテファ末路描写にて
「ウチが喚び出したキャラの末路にクリソツだ……」
お陰で皆よりショックは少なかったとは思っているけど、テファ好きだったんで今でも来るものは来る……
カテ公とか三輪とかは虐めたくなるキャラだからな
覚醒した話とかも見たこと無いし
「さ……寒い。」
清々しい朝の光ではなく、肌寒さでわたしは目を覚ました。
ぼーっとしたまま目を横にやると、わたしの毛布を剥ぎ取って、ぐーすか寝こけるダメダメ使い魔の姿が目に入る。
「起きなさ……!!」
そこまで言って、わたしはこのダメ使い魔こと、ダネットを起こすのをためらい、昨日のことを思い出す。
「あー……まあ、今日ぐらいは勘弁してあげるか。で、でもこれはご主人様としての使い魔への計らいっていうだけだから、勘違いしちゃ駄目なのよ?」
別に誰に聞かれる訳でもないのに、言い訳をしてしまう。
うーむ。昨日のアレはご主人様としてかなりアレだったんではないだろうか? 威厳というものがゼロだった。
泣くにしても、もうちょっとこう目上の者の泣き方みたいなものがあったんではなかろうか?
「んー……まあいっか。それなりに感謝もしてるし。光栄に思いなさいよね?」
昨日、わたしが泣き止むまでずっと抱きしめてくれたダネットを見て、少しだけ笑う。
「むー……」
わたしの独り言がうるさかったのか、ダネットは僅かに眉間にしわを寄せて唸った。
「あ、起こしちゃったかしら。」
だけれど、また夢の世界に旅立ったようで、幸せそうな顔をして寝息をたて始める。
全く、ご主人様から毛布を剥ぎ取ってすやすやと……。どんな夢を見てるのかしらこの使い魔は。
「おまえー……」
あら寝言? しかもわたしの夢みたいね。
きっと優しいご主人様に感謝しまくってる夢ね。
「おまえー……ホタポタを胸に入れても乳でかにはかないませんよー……」
ほほう? 中々に楽しい夢を見てるみたいねえこのダメットは。というか、この寝言には作為すら感じるわ。実は起きてるんじゃないかしらこいつ。
それよりも、っと……確かこの辺に乗馬用の鞭が……お、あった。さぁて、使い魔の調教でもしましょうか。
「ああもう……まったくおまえはバカですねえ……」
「馬鹿はあんたよ!! このダメットおおおおおお!!!!!!」
少しだけ優しくなれたはずの朝は、一転してわたしの怒声から始まった。
>>422 スパロボ本家でも一次の主要キャラを生首状態とか脳だけとかの扱いにはしません。
ゼロ魔は無論、スパロボに対しても冒涜だよ。
「お前、私の頭を何だと思ってるんですか? 楽器みたいにポンポンと。」
「楽器なら綺麗な音が出るだけマシよマシ。ほら、さっさと起きる!!」
昨日までのことが悪夢だったかのように、平和な空気が部屋を満たす。
このままの日常が続けばいいなとちょっとだけ思う。ちょ、ちょっとよ? ほんのちょっぴりよ?
「うー……まだ眠いです。お前、ちょっと顔を洗いたいから水を用意してください。」
「そういうのは使い魔の仕事でしょうが!! 顔を洗いたいならわたしの分まで部屋に持ってきなさい!!」
「たかが顔を洗う為の水を部屋に持ってこさせるなんて、贅沢ですねお前は。親の顔が見たいっていうものです。」
「あんた喧嘩売ってるでしょ? 支払いは金貨でいいかしら?」
「随分と逞しくなりましたねお前。」
「おかげ様でね。はあ……全く……」
全く、この使い魔ときたら、普段はダメダメなのに、こういう時は変に気を使う。
そもそもダネットは、こうやって人をおちょくるタイプではない。どっちかというとおちょくられるタイプだ。
あの笑顔を見るに、多分、少しでも明るくして気分を変えようとしてるのだろう。ただ、問題は
「バレッバレなのよね。全くもう。」
「え? 何かいいましたかお前?」
「何でもないわよ。ほら、早くしないと朝食が食べれないどころか、授業に遅れるわ。」
部屋の外からは、他の生徒の声が聞こえ、窓からも何人かの生徒の声が聞こえる。
早い生徒は、もう食堂に行ってることだろう。わたしも急がないと。
「あれ? でもお前、今日はジュギョーお休みじゃないんですか?」
「あ……そうだったわ」
思い出した。
昨日、泣きながら部屋に戻るとき、騒ぎを聞きつけたミスタ・コルベールに、大事を取って今日は休みなさいと言われたんだった。
「でも、別に平気なんだけどね。」
そう言いながら、わたしは腕をくるくる回してみる。
「はー……お前って丈夫なんですねえ。それとも、こっちの療術師が凄いんですか?」
「何よそのリョージュツシって?」
「怪我を治してくれたりする術師のことです。知らないんですか?」
「知らないわよあんたの田舎の事情なんて。そのリョージュツシってダネットのいたとこの水のメイジの呼び方? でも、何で水のメイジが関係してくるのよ? わたしは怪我なんてしてないわよ?」
それを聞いたダネットは、少し考え込んだ後、笑って手を振りながら答えた。
「あ、何でもないです。お前は気にしないで下さい。ええ、お前は元気いっぱいです。さて! ご飯にしましょう!!」
「待ちなさい。」
「う……。お前? その目ちょっと怖いですよ?」
「なぁにを隠してるのダネットぉおお?」
「か、隠してなんかいません!! お前が凄い怪我をしていたなんてこと、これっぽっちもありません!! ありませんとも!!」
「なるほど。よーくわかったわ。それで? わたしが怪我をしてた理由は何なの?」
「け、怪我なんてしてません!! お前は元気いっぱいです!!」
「ダネット? わたしは真剣に聞いてるの。」
「……言えません。言いたくないです。」
それっきり、ダネットは頬を膨らませて口をつぐんでしまった。こうなると、原因は自分で考えるしかない。
「わたしが怪我をして、その理由をダネットは言いたくない……となると、理由はあの『黒い剣』かしら?」
「……私は黒い剣なんて知りません。知ったこっちゃないです。」
ダネットはそう答えながらも、表情を険しくした。
全く……素直というか、つくづく嘘が付けない使い魔だ。
「ダネット、もしかしてあんた、あの剣に関係してることを秘密にして、わたしを傷つけないようにとか考えてない?」
「…………。」
無言。つまり肯定。
ほんと世話の焼ける使い魔というか何と言うか……。
「あのねダネット。言っとくけど、わたしは誇り高きヴァリエール家の三女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ?」
「そのルイなんとかがどうしたって言うんですか。」
わたしは、そっぽを向きながら、膨れっ面で返すダネットの顔を両手で掴んでこちらへ向けた。
「な、何をするんですか!! 離しなさい!!」
「黙りなさい。あのねダネット? この名前はわたしが貴族であるという証。そして、貴族というのは」
「木が頭からもしゃーっと」
「違うわよ! いいから聞きなさい!! あのね、貴族っていうのは背を向けないの。それがどんなことであっても。例え、自分が傷つくようなことでもね。」
しかし、ダネットは納得がいかないようで、まだ顔をしかめている。
仕方ない。恥ずかしいけど言ってやろう。
「それにね。もし、もしもよ? その……わたしが傷ついちゃった時はその……」
「その何ですか?」
ああもう!! ちょっとは察しなさいよ馬鹿!! アホ使い魔!! ダメット!!
でも、それがダネットか。はぁ……。
「わたしが傷ついたり危ないときは、あんたが守るんでしょ!? 違う!? あんた言ったわよね? 『お前の使い魔』だって。だったらご主人様を守りなさい!! わかった!?」
わたしは一気に言った後、赤くなった顔を見られないようにダネットから顔を背けた。
横目でダネットをちらっと見ると、わたしの言ったことに呆気に取られたようで、口をぽかんと開けている。実にアホっぽい。
「そっか……そうですよね。」
「そうよ。わかったんならさっさと話しなさい。」
ようやく話す気になったのか、ダネットは姿勢と表情を正すと、真剣な口調で話し始めた。
「まず怪我のことですが、お前はあの剣を使って石の化け物を倒したっていうことは覚えてますか?」
「石の化け物ってゴーレムのことね。うん、覚えてるわ。」
ダネットはわたしの返事に頷くと、言葉を続けた。
「私はその時、気絶していて見ていなかったんですが、乳でかやタバサに聞きましたし、お前も覚えてるなら間違いないでしょう。じゃあ、続けて聞きます。お前は、石の塊を斬りつけましたが、それで手は平気だったと思いますか?」
なるほど、そういう事か。
「無事じゃすまないでしょうね。」
「ええそうです。お前の手の骨にはヒビが入っていて、他にも足の骨やら肩や腰まで凄い状態だったそうです。」
「う……想像したらなんか痛くなってきた。」
「おまけに、手足の筋肉とかはもう凄まじかったそうです。ぐっちゃぐちゃのハンバーグって感じだったそうです。」
「ストップ。大怪我をしてたことはわかったわ。じゃあついでに聞くわね。あの剣は一体なんなの? あれを使ったせいでわたしはああなって、凄い力でゴーレムを倒した。そして……あんた達を傷つけようとした。」
ついでと言いつつも、実際はこれが本題だ。
あの剣を持っていた時の最後の記憶。ダネットがわたしを説得して止めたときのこと。
ダネットはあの剣のことを知っている素振りを見せた。だからこそわたしを止められた。
多分、いや絶対にダネットとあの剣には何か関係がある。
「……わかりました、教えます。あの剣というのは」ぐぅ
「はい? なに今の音?」
何かダネットの言葉の後に凄い音がした気がする。
「い、今のは気にしないで下さい!!」ぐきゅるる〜
「気にしないでって、無理言わないでよ。」
慌ててお腹を押さえるダネットを見て見当が付いた。
「あんた、お腹空いてるんでしょ? 取り合えず朝食を食べに行きましょうか。」
「うう……真面目な話の時にすいません。」ぐきゅるるるる〜
「気にしないの。わたしもお腹が空いてたし、ちょうどいいわよ。ほら、先に顔を洗ってから食堂に行くわよ。」
未だに恥ずかしそうに顔をしかめるダネットの手を取り、顔を洗いに向かう。
顔を洗い、食堂に向かう途中、空腹の為なのか先ほどのお腹の音のせいか、今も顔をしかめるダネットをふと見る。
「何ですかお前? 私の顔に何か付いてますか?」
「べっつにー」
「あ! お前笑いましたね!! 言いなさい! 私の顔に何を付けたんですか!! 言わないと首根っこへし折りますよ!!」
「ほらほら、急がないと朝食なくなっちゃうわよ?」
「ま、待ちなさい!! 教えなさい!!」
朝の学院を走りながらわたしは思った。こんな日常はきっとずっと続くのだと。
支援
「はー、あんたもダネットもよく食べるわね。タバサも良く食べるけど、負けてないんじゃない?」
「三日も寝てたんだから、お腹空いてるのよ。仕方ないじゃない。」
「太る。」
「タバサ、何か言った?」
「言ってない。」
「ふぉーむむふぁふふぁふふぉ!!」
「ダネット! 口に食べ物を詰めながら喋らないで!! ああもう! こぼれちゃってるじゃない!!」
わたしとダネットは、食堂で会ったキュルケとタバサと一緒に、賑やかな朝食を取っていた。
本来、席は決まっているのだが、キュルケが変に気を使って一緒の席で食事をしようということになったのだ。
「なんか逆に疲れるような気がするのは気のせいかしら。」
「ふぉふ?」
「だから食べ物を口に入れたまま喋るな!!」
朝にしては騒がしく食事を終え、授業の時間が近づいてきた。
わたしは休みだが、キュルケとタバサは通常通り授業がある為、席を立って移動しようとしのだが、そこでふとキュルケが立ち止まり、わたしの方を見て言った。
「ルイズ、あんた達がさっき部屋で話してた事だけど。」
「あ、あんた聞いてたの!?」
「聞こえたのよ。朝からあんなに騒いでたら誰だって気になるじゃない。」
わたしは鞭を手にダネットを追い掛け回したことを思い出し、頭を抱えた。
「それでね、今日の授業が終わった後に、あたしとタバサもダネットの話を聞いていいかしら?」
「何でよ? あんた達には関係な」
「ある。」
わたしの言葉を遮り、タバサが言った。
「タバサの言う通りよ。あんたもダネットもあたしもタバサも、アレのせいで危険な目に会った。無関係じゃないわ。なら、今後のことも考えると、あたし達にも知る権利ってのはあるんじゃない?」
言われて見るとそんな気もしてくる。更に、原因はわたしなので強くも言えない。
「ダネット、どうする?」
わたしに拒否権は無いと悟り、ダネットに決定権を渡す。
話をするダネットが拒否するなら、流石に二人も諦めるかもしれない。
「……関わったら危険かもしれないですよ?」
「危険は承知。」
ダネットの問いにタバサが短く答える。
その答えを聞いたダネットは、珍しく考え込んだ後に言った。
「わかりました。乳でかとタバサにも教えます。」
ダネットの返事を聞き、満足したのかキュルケは笑うと、タバサと二人で食堂を後にし、残るはわたしとダネットの二人だけになった時、わたしはダネットに聞いてみた。
「よく話す気になったわね。」
「…………。」
わたしの問いに、ダネットは無言で悔しそうに唇を噛む。
多分、二人を巻き込んでしまうことが悔しかったんだと思う。なのに二人に話そうと決めた。つまり、それほどあの剣が危険だということ。そして、ダネットだけでは、ああなったわたしをまた止められるとは限らないこと。
しかし、そこでわたしは一つ疑問が浮かんだ。
「あれ? でもあの剣を使わなかったら、もう大丈夫なんじゃないの?」
しかし、ダネットはわたしの言葉を聞いてうつむき、呟く様に言った。
「……後で話します。」
その後、ダネットとわたしは無言で食堂を後にし、ダネットは昼食の時も部屋から出る事無く考え事をしていた。
わたしがシエスタに言って部屋に持ってこさせた食事も、いつもの半分も食べずに残した。
それから時間は流れ、授業の終わりの合図が鳴る。
そんな時、部屋のドアがコンコンとノックされ、わたしはキュルケ達が急いで来たのかと思い、ダネットにドアを開けさせた。
ダネットがドアを開け、来訪者の姿を見ると、体をピクンと震わせて一点を見つめる。
「ミスタ・コルベールに……学院長?」
来訪者は顔を強張らせたミスタ・コルベールと、難しい顔をした学院長であるオールド・オスマンの二人。
わたしは二人の姿を確かめた後、動かないダネットに疑問を持ち、今も動かない視線の先を見た。
「学院長……それは……。」
視線の先にあったのは、学院長が手にしている、『破壊の剣』の名を持つ錆びの浮いた長剣だった。
面白けりゃ原作レイプ上等!
支援
以上で12話終了
原作に無い日なので、朝から晩までオリジナルな一日です。
昼間のルイズの行動とかも最初はありましたが、冗長すぎると思ったんで投下前に思いっきりカット
それでは
お礼を忘れてたッス
支援大感謝
ダメットの人乙
あぁもうダメット可愛いよダメット
(*´д`*)ハァハァ
次回にwktk
ダメットいいなー
それに比べルイズのウザいさは異常、ダメットに完全に依存して何もしないくせにくせに貴族だ何だの
建前だけ一人前で見苦しいぜ。
お初ですが、予約がなければ21:00から投下します
召喚キャラは、「マップスネクストシート」のミュズ
愛憎版マップス発売記念として書きました
6スレ+おまけですので、よろしくお願いします
おおマップスだ! 超期待支援!
メジャーとマイナーの中間みたいな作品を持ってきたな支援
なに、マップス愛蔵版なんて出てたのか!
買わねば。
支援。
マップスは作者の性癖さえなければ世界に誇っていいスペースオペラだと思う。
それはともかく、支援!
>>429 とりあえずお前がスパロボやってないのはわかったからもう来なくていいよ
450 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/08(土) 20:50:01 ID:/WoRaLPi
最近は提督のような一級品がなくなったよな
気長に待つしかないか
>>447 長谷川の旦那かw
なんという漫画家。ルイズなら間違いなく剥かれる。
ダメット乙。
おばかさんだけどマジかわいいよ
第1話 『そしてトリステインに流星が降った』
《その日 私の人生は終わりを告げた――》
「ねぇ、ルイズ。私が召喚したこのコ、とっても可愛いわよ」
モンモランシーが、ルイズに手の平に乗せた蛙を見せびらかす。
「きゃ、そんなもの、見せないでくれる!『洪水』のモンモランシー」
ルイズは軽く悲鳴を上げて、嫌がりながら言う。
「誰が『洪水』ですって!わたしは『香水』のモンモランシーよ!」
「あんた小さい頃、洪水みたいなおねしょしたって話じゃない。『洪水』の方がお似合いのよ」
ルイズは同じ歳の学友に軽口を叩く。
《直前まで―― そんな気配も なかったのだ》
「ルイズ。まだあなた、召喚が出来ていないの?」
キュルケがこれみよがしに大きな火トカゲの頭を撫でながら、ルイズを冷やかす。
「あんたなんかに負けない位、立派な使い魔を召喚してやるんだから、待ってなさい!」
ルイズは宿敵に負けじと、声を張って言い放ち、鼻をフンッと鳴らす。
《貴族の子弟が集うこのトリステイン魔法学院で―― どうにかやってきたのだ》
「ミス・ヴァリエール、あなたで召喚の儀式は最後です。心して使い魔を呼び出すのですよ」
監督役の教師であるコルベールは、穏やかにそれでいて厳しく、ルイズに召喚を行う様に促す。
《なのに 春の使い魔召喚の儀式―― その日》
ルイズは何度目かの召喚呪文を唱え、杖を振るう。
「宇宙の果ての何処にいる私の下僕よ。神聖で美しく強力な使い魔よ。私は心より求め訴えるわ。我が導きに答えなさい!」
《多くを望んでなどいなかったというのに》
杖を振るった時、空の一点が瞬き、そこから何かが物凄いスピードで落ちて来たのを、その場にいた面々で気付く者は少なかった。
ルイズの目の前に、これまでを超える大きな音と土煙が広がる。
その中心に、子供の様な人影とその後ろに控える大きな影が見えた。
土煙が晴れると、そこにはコップを持った年端のいかない『鎖が繋がった首輪を付けた』少女が立っていた。
《突然に その少女は やってきたのだ》
「お水を…ください…」
「な、に?」
ルイズは、自分が召喚したものと、それの発した言葉に惑乱する。
・・
「ぼくは――”力”、あなたが望む全てを手に入れられる”力”。だから、ぼくとひきかえに水を…いっぱい…」
その少女は、真っ赤な大きな布で体を包み、右肩でその布の端を結び、腰や脚に沢山のベルトを巻き付けた、身窄しい格好をしていた。
背や体型からして、12歳位だろう。茶を帯びた金髪のショートヘアで、顔には、手入れされていない太めの眉毛と、明るい緑色の大きな瞳が目立つ。
「なん、ですっ…て?」
《そして私は混沌と とまどいの中で…》
《その日コップ一杯の水と その中に映る”全て”とを交換したのだ》
紫煙を
「うわっ、なんだ?あの娘?」「ルイズが召喚したの?」
周りで見ている生徒達から次々に疑問の声が上がる。
「”主(マスター)”が…傷ついています…。お願いです…水を」
少女が手に持ったコップを差し出しながら、心細い声を発した。
「その娘の後ろ!何かいる」
誰かがそう叫ぶ。
布を覆われた大きなものが呻き声を上げ、躯を引き擦りながら少女に近寄っている。
生徒達は驚懼の声を出して、ルイズが召喚したものから離れていく。
それは布を被った、躯が甲殻で形作られた、首の長いドラゴンだった。
布の下から見える脚や複眼、光沢を持つ青黒色の甲殻が昆虫を思わせる。
「きゃあぁ!怪物っ!」「生きてる?ドラゴンだぁ」
離れた生徒達から悲鳴が上がり、最も近くにいたルイズも後退る。
「待ってください。お願いっ…”主(マスター)”は…、もう命の火が消えかけています!じきに…死んでしまう!最後の願いなんです。ぼくに何かしてあげられる最後の機会なの。」
少女は叫び、瞳に涙を溜めて嘆願する。
(なぜ…その時、そんな気になったのかは…自分でもよくわからないけれど、その娘の瞳と、息苦しそうなそのドラゴンの姿をみていると…)
「……水?ね」
ルイズの言葉に少女は深く首肯する。
そして、ルイズは少女からコップを受け取った。
「ねぇ、モンモランシー。水を作ってくれるかしら?」
ルイズは生徒達の方を向き、知り合いの水メイジに水の初歩的な魔法を使う様に頼む。
「お願い、貴女が頼りなの。『香水』のモンモランシー」
「判ったわ、ルイズ。水メイジの魔法を見てなさい」
モンモランシーは、他人にそうそう頼る事のないルイズの願いに答え、杖を振るう。
宙空に水の塊が生じ、コップの中に注がれていく。
それをルイズは少女に渡そうとした瞬間、横からルイズ達の手を噛み付かん勢いで、息苦しそうにしていたドラゴンがコップを咥える。
ルイズは手を噛み付かれそうになり、恐怖から尻餅を突いてしまう。
ドラゴンはその長い首を高々とのけ反らせ、喉を鳴らして水を飲み、空のコップを口で投げ捨てる。
四円
試演
「うまい…水であった」
ドラゴンは躯が軋む音を立てながら、湧き出る泉の様にこつこつと喋り出す。
ルイズ達はそのドラゴンが喋る事に驚いていた。
魔法成功確率0%のルイズが、伝説的な幻獣の韻竜を召喚したからだ。
その場に居たもの全てが、韻竜の弱々しい声を聴き漏らさんと、耳を傾ける。
「かつて、千の星をめぐり、千億の命を殺めた…。その名を轟かせ、銀河そのものをも手にせんとしたわれが、最後に手にせしものが…、たった一杯の水だったとはな…」
しかし、その韻竜の口から漏れ出る言葉は、狂人の譫言より理解しがたい話であった。
ルイズを含め耳を傾けていた多くの生徒達は、『ルイズ(自分)』が何処の芝居小屋から『連れて来(召喚し)』た、物乞い役の少女と張りぼてのドラゴンだと思った。
「だが…それは今われが望みし、全てのもの…。裏切りと謀略の人生にあって…、手に入れた唯一の真実」
『龍』は、少女を突き飛ばし、腰が抜けたルイズにその少女を寄越す。
「受け取れ!全てには全てをもって応えよう。”黄金の下僕”ミュズ…、わが手に残る最高傑作!銀河最強を誇る”黄金の船”ネクシート号の”舵輪(ヘルム)”にして、”黄金の地図”ネクストシートそのもの!」
抱き留めたルイズと受け止められたミュズは、『龍』の言葉と、見知らぬ人と抱き合っている状態に、お互い困惑の表情を浮かべている。
「宇宙の…全ての神秘と真実を手に入れる。そのチャンスと力をおまえは今…、手に入れた。おまえのような奴にやっても無駄だろうがな! ハハハ! くだらない! 意味がない! おもしろい…」
『龍』の躯は、ジュウウジュウウと音を立て、濁った泥の様な煙を吹かし、甲殻の隙間からドロドロとした液体を垂らしている。
「だが…、われを裏切った者どもにだけは…くれてやらぬ…のだ。ハ ハ ハ あとは…好きにしろ…」
『龍』の硬そうな甲殻がボロボロに崩れ、ドロドロとした液体が滝の様に流れ出す。
「きゃあっ、とっ とける」
ルイズは『龍』の様子に驚き、悲鳴を上げる。
「ファ…”一枚目の地図(ファーストシート)”に気をつけろっ」
『龍』は不可解な言葉を残して事切れ、グッシャアァと音を立て、その躯が自重から地面に叩き付けられた。
燃えるぜ! 私怨
コルベールや幾人かの生徒がルイズに近寄ってくる。
「ルイズ!」
「あ…とけちゃった、完全に。ううう」
ルイズは緊張の糸が解け、今更になって恐ろしくなりブルブルと震える。
「ミス・ヴァリエール、ケガはありませんか?」
コルベールに名を呼ばれ、ルイズは混乱した頭が現実に引き戻されて、ミュズをぎゅっと抱き締めている事に気付く。
ミュズは眼を潤ませ、ぼんやりと虚空を見つめていた。
「きっと、ヒトはこれを悲しいというのでしょうね…」
ミュズはルイズの視線を感じ、まるで自分が『ヒト』では無い様な口振りで呟き、手の甲で目尻を拭う。
「こんなヒトでも、ぼくの親だったから。でも、ぼくは…生まれたてだから、まだよくわからない…や……」
「生まれたて え?」
ミュズは愛想の良い顔をして、不思議な事を言いながら、ゆっくりと立ち上がる。
ミュズのその不思議な言葉から、既に立っていたルイズの頭に疑問符が浮かぶ。
「ありがとう、願いをきいてくれて。これでぼくはあなたのものになりました。さあ!どこへなりとも」
「ちょちょちょっと待って!まだ話がさっぱりみえないわ」
ルイズは、上目使いで緩く握った右手を胸に当てた異国の礼儀の様な振る舞いをするミュズの、隷従発言に当惑する。
ミュズと呼ばれる少女、ドロドロに溶けた張りぼてのドラゴン、その一人と一頭の不可解な言葉。
何が事実で何が偽りか、ルイズは冷静にこの事態を考えれば考えるほど、納得のいく話が思い浮かばない。
「きゃー。何を言っているの、あの娘」「そーだ!ずるいぞ、ルイズ!」
「ちゃんと説明し「そんなのゆるさないぞ」「ひとりじめはいかん!みんなでわけるのだ」」
「うるさい!外野は黙ってなさいっ!」
周りの生徒達、特に男子の一部が騒ぎ立てるので、ルイズは腹を立て怒鳴り声を上げる。
故に支援
人間味溢れるルイズにSIENを
ミュズに待つように告げると、ルイズは状況を静観しているコルベールの方に詰め寄って行く。
「ミスタ・コルベール!」
「なんだね。ミス・ヴァリエール」
「あの!もう一回召喚させてください!」
「それはダメだ。ミス・ヴァリエール」
「どうしてですか!」
「一度呼び出した『使い魔』は変更することはできない。何故なら、春の使い魔召喚は神聖な儀式だからだ。好むと好まざるにかかわらず、彼女を使い魔にするしかない」
「でも!平民を使い魔にするなんて聞いたことがありません!それに私が呼び出したのは、溶けてしまったあのドラゴンかも知れません!」
ルイズは自分が偽物だと思っている事を棚に上げ、『ドラゴンを召喚した』と主張する。
「何を言っているのかね、ミス・ヴァリエール。彼女は『ぼくはあなたのものになりました。』と言ったではありませんか?これこそ、彼女が使い魔として召喚に応じた証拠ですぞ」
「そんな……」
ルイズは、コルベールの強引な理屈に押し込まれ、がっくりと肩を落とした。
「さて。では、儀式を続けなさい」
「えー、彼女と?」
「そうだ。早く。次の授業が始まってしまうじゃないか。君は儀式にどれだけ時間をかけたと思ってるのだね?いいから早く契約したまえ」
そうだそうだ、と外野から野次が飛ぶ。
ルイズはミュズの顔を困ったように見つめ、諦めた様に目をつむる。
手に持った小さな杖をミュズの目の前で振った。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴンこの者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
朗々と呪文を唱え、すっと、杖をミュズの額に置いた。
そして、ゆっくりと顔を近付けていく。
「何をするんですか?」
「いいからじっとしてなさい」
戸惑うミュズに怒り声で、ルイズは叱り付け様に言った。
ルイズはミュズの頭を左手でがっと掴み、唇を合わせる。
「終わりました」
ルイズが唇を離すと、恥ずかしそうに言い放つ。
「『サモン・サーヴァント』は何回も失敗したが、『コントラクト・サーヴァント』はきちんとできましたね」
コルベールが嬉しそうに言った。
「相手が只の平民だから、『契約』できたんだよ」「そいつが高位の幻獣だったら、『契約』なんてできないって」
何人かの生徒が笑いながら言っている。
sien
ミュズは、ルイズが野次っていた生徒達を睨みつけ怒鳴っている光景を、未知の現象が起きたかの様に珍しそうに見つめていた。
その時、不意にミュズは自らの頭を抱える様にうずくまる。
「あ、ああ…。『データ』が流入する…!『プログラム』が書き加えられる…」
ミュズは途切れ途切れに弱々しい声を漏らすと、ずるりと地面に横たわった。
その様子を見ていたコルベールは慌ててミュズに近寄る。
ルイズもコルベールに続くと、倒れているミュズに心配そうな顔をする。
「ふむ……。『使い魔のルーン』が刻まれた痛みで、気を失ってしまった様ですね」
片膝を付いたコルベールはミュズの口元に手を近付け、呼吸をしている事を確認した。
「ふむ……。珍しいルーンだな」
コルベールは、気を失っているミュズの左手の甲をしげしげと確かめる。
そうすると、素早く立ち上がり踵を返し、生徒達に号令を掛ける。
「さて。じゃあ、皆さんは教室に戻りますよ」
多くの生徒達は宙に浮かび、トリステイン魔法学院に向かって飛んでいく。
「ミス・ヴァリエール。この娘は私が医務室に運んでおきますから、貴女も教室に戻りなさい」
コルベールは杖を振るい、ミュズを宙に浮かべると、ルイズ次の授業に参加する様に促す。
やむを得ず、ルイズはコルベールの言葉に頷くと、とぼとぼとトリステイン魔法学院へ戻って行った。
紫炎
おまけ
リプリム … ルイズ
エイブ … 才人
スソクホウ … シエスタ
ゲン … ギーシュ
リム(一人二役) … ケティ
星見 … モンモランシー
リプミラ … キュルケ
シアン … タバサ
息子たち … ギーシュの悪友
ゲン「なんだこりゃ?」
エイブ「ああ、新しい寸劇のキャスティングですよ。地球のファンタジーを題材にしてみたんです」
リプミラ「私の衣裳の露出、少ないな」
リム「主役はいいんだけど、ややこしい役ね」
星見「私の役、出番少なくない?」
ゲン「俺はこんな浮気者じゃない!」
(全員の意見を無視して)エイブ「問題がありまして、話が長くなりそうなんですよ」
ゲン「それは『指輪物語』より長いのか?」
エイブ「小説が文庫で15冊、漫画が単行本で5巻、アニメで3期38話」
ゲン「ミョーに具体的だな…」
ちゃんちゃん
以上で、第一話投下終了です
支援していただいた皆様に感謝!
SS書くのも初めてなので、ひんぬー万歳な展開にはなりそうもありませんorz
ここまでだとまだ先が読めないけど、この先はルイズとミュズの心の交流が描かれていくのかな?
文章的にも構成的にも、まだまだ改善の余地が残されてると思うけど、そこも含めて応援してる。
とりあえず頑張れ。
俺は応援している!
>>467 乙。続き期待してます。
>>448 俺はゼロ魔もスパロボも好きだが、スパロボにはシリーズ通し根底に原作への敬意がある。それも分からず上っ面しか見てない様ならお前さんこそ来ない方がいいんじゃないのか?
>>469 自分の一方的な基準で作られた敬意だの何だのはどうでもいいです
アヤが脳みそ(偽物)だけになったことを言いたいんじゃないかな?
いつまでこの話題続けんの?そろそろ他所でやってほしいんだが
さすがスパロボですね
近所に珍走団が来た感じだわw
>>469 しつけーよ
これ以上スレ汚しするくらいならもうくるな
続きは毒吐きで存分にやってくれ。
もうその話題は飽きた
KOFより草薙京召喚
なんか波動を読んでたらふと…
第18代宇宙戦艦yamatoを召喚
全宇宙を支配するという旧ゴーダ文明の遺産を求めて竜座銀河へ旅立つルイズ
アルビオン? プラズマ波動砲で一蹴に決まってる
>>478 つまりシエスタの家系は寿命が短いのですね。
草薙京を見ると心の底から沸々と何かが湧いてくるですね。
蒼い炎を扱う魔改造シエスタですね。
>>481 せめて京の彼女(ユキだっけ?)の家系にしてやれよw
>>478 KOFならアメリカチーム召喚はどうだろう。
いや単にダンクで破壊されるワルキューレや30メイルゴーレムや遍在を見たいだけだがw
サムスピより、チャムチャムの相方パクパク召喚を真剣に考えていたことがあったが
気がついたら全く新しい格闘技を使うシエスタの話にスライドしていたんだ
パクパクっつーことは、あの「あぉあぉあおぉぉ」なおにーさん召喚か...
敷居は高いぞ。なにげに。
エレクトリッガー!使いのマルコ
大門走りをする身長2M越えのシエスタ
燃えたろ?とか聞いてくるキュルケ
魔法は使えないけどジェノサイドカッターは使えるルイズ。
そして呼ばれた真吾
>>364 >>372 >>373 >>469 OK、お前らがスパロボをまったくプレイしていない事がわかった。
エンジェルハイロウがノウミソだけにされたエスパーで作られてる事もしらんとは。
それで照射対称にされた連中は皆廃人だ。
この程度ぜんぜんOKだろ。
>>486 > 大門走りをする身長2M越えのシエスタ
ガクガクブルブル
あとルイズは血に狂う方希望w
なんでもいいが、いい加減毒吐きいけよ
>>485 火炎放射する兄さん猿と、破壊の仮面を身につけたルイズと、ブーメランを担いだシエスタ・ハヤテが
モット伯の屋敷を襲うというストーリーだったんだ。
> 魔法は使えないけどジェノサイドカッターは使えるルイズ。
なぜかCV若本を幻視した…2002ぐらいのはずなのに
きっとこの頃出たドラキュラのせいだ
>>483 地球意志にバスケットボールをぶつけて倒す幸運な奴だな。
でもアメリカチームこういう展開になるはず。
ラッキーはメイジの見せた隙に必殺の一撃を放った。
「ヘルバウ…、なっ!」
……アンリエッタの手紙を奪われた。
ルイズ「魔法なんて使ってんじゃねぇ!」
若本?
>>492 Σ( ̄□ ̄;)!!
確かに…
ではキム・カッファンを…って左右にフーケとワルドを従えた図が見えるのはなんでなんだぜw
グルグル鉄球を振り回しながらティファニアが一言
「オラ!乳デカい!!」
それを見たマチルダ
「テファどうしたでやんす」
じゃあ人間バスケットボールをするモヒカンリーダーを召喚しようか
>>498 剛の拳よりストロングな柔の拳のほう? それともブーンループを決めてくるほう?
人間バスケで思いついたんだが、ザベルみたいに既に死んでる奴にコントラクトサーヴァントすると、どうなるんだろう……
「死ぬまで使い魔よ!」
「俺はもう死んでるぜー!」
>>500 小ネタで召喚されているな。ワルドを圧倒してスマイルビームを撃ってる
タン・フールーが呼ばれて八極聖拳を継承したルイズが「OK!!」って叫ぶネタがここまでないのに絶望した。
>>503 後は長編を投下して這い上がるだけだな!
サニーパンチとか言ったり、プロレスブーツとかはいてるルイズだな。
>>501 クイーンブレードの死霊の人が呼ばれてなかったっけ?
あと、吸血鬼がらみが結構来てるな。
ヘルシング完結したことだし、ロリカードの人来てくれないかなぁ?
ギーシュ「僕はメイジだから魔法で……」
ルイズ使い魔「サニーパンチ!ライジングアッパー!サイドカー!!」(ゴシャア!)
ギーシュ「うぎゃっ!うぎゃっ!うぎゃーーっ!!」
ルイズ使い魔「男なら拳一つで勝負せんかい!!」
ワルドの裏切りを知ったるルイズ「うっおー――!!くっあー――!!ざけんなー――っ!!」
避難所にランスの最新話が投下されとるな。
またランスの毒牙にかかるキャラがw
はいはい、作者乙
>>510 普段なら説得力がないレスだが、これは・・・・・
よし、こいつを召喚しよう。
ルイズが巨大な奴を召喚した。
その名前は『く・さ・れ・外道』
巨大な奴がルイズに攻撃。
ルイズ『ぎゃあ〜。た、助けて』
巨大な奴『い、いただきます』
避難所に人が少ない、誰か来てくれってよくこぼしてるランスの作者本人乙ですか?
ペルソナのピアスの少年が召喚されてないことにびっくりだ
ミュズかー
バスターマシン7号とかの単体でブラックホールをどうにか出来るレベルは
星の中の物語だと扱い辛そうだね
15話が完成したので、予約がなければ0時半に投下したいと思います。
社長ktkr
支援せざるを得ない
おお、この殺伐とした空気を換える投下が・・・・!!!
社長来た!
支援するぜ。
「それは、どう言う意味だ?」
「言葉どおりの意味よ。この村で起きている吸血鬼事件は私が原因じゃないわ。」
目の前の少女…いや、少女の姿をした吸血鬼、エルザははっきりとそういった。
暗闇の部屋の中、思いも寄らぬ答えを口にしたエルザはそのままこう続けた。
「さて、貴方の質問には答えた。次は私の番ね。」
「待て、ちゃんと説明を―――」
「貴方のその左手のもの…どこで手に入れたの?」
エルザは言葉と同時に、恐ろしい殺気を放った。
まるで海馬のデュエルディスクこそが、世界でもっとも憎むべきものであるかのように。
だが、海馬はその殺気に臆することなく答えた。
「どこでも何も、これは俺が開発したものだ。そして俺の世界では、これは一般的に広まっている。
デュエリストであれば誰でも持っているものだ。」
「…そう。じゃあ、あれは…」
そう言うとエルザは、少し考えるように目を伏せた。
「……俺のターンだな。先にこっちを聞いておこうか。なぜ、このデュエルディスクについて聞いてきた?」
「……」
「これは俺の知っている限り、このハルケギニアには俺のものともう一つしか存在しないはず。
にもかかわらず、貴様はこれの存在を知っている。
俺のもっているこれは数日前にこの世界に来た。そしてもう一つは30年前に1度使われて以来倉庫にしまわれていた。
貴様が知るタイミングは皆無のはずだ。」
「…………」
エルザはゆっくりと瞳を開き、遠い過去を…忘れられない過去を語りだした。
「50年前、私はそれに良く似たものを見たわ。あなたのよりもけばけばしく、蝙蝠の羽のような特徴があったわ。
それを持った女の姿を、私は決して忘れないわ。
…いいわ。少し、昔話に付き合ってもらえる?」
50年前、ゲルマニアの南の方に大きくはないけれどそこそこの領土を貴族が治めていた。
領主は人望もあり領民から慕われ、妻と一人娘の3人で幸せな生活を送っていたし、それが永遠に続くものと思っていた。
しかしある日、領内のある家が吸血鬼に襲われた。
しっかりと施錠されているはずのその家に、どうやってかその吸血鬼は忍び込み、そこの家の娘の血を吸い尽くした。
当然領主は村人を集めて討伐隊を編成して吸血鬼狩りをした。
しかし、全く手がかりのないまま日にちが過ぎ、その間にも一人…また一人と犠牲者が増えていった。
領民たちは恐怖と疲労に負け、次々とその地を離れていった。
そしてある日、領主が自分の城に残った住人達を集め、今後について話し合っていた夜に、本当の悲劇は起こった。
その吸血鬼は堂々と、城の正門から入ってきて、従えていた獣人や巨大な蝙蝠を操り、
その城にいたほぼ全ての人間を皆殺しにした上に、城に火を放った。
もちろん、村人達も抵抗をしたけれど、モンスターたちには敵わずに殺され、城は一面血の色で染まった。
そして、両親が目の前で殺された後、娘も自分の死を覚悟した。
しかし、吸血鬼は娘を殺さなかった。
吸血鬼は娘をかかえ上げると、その血を吸いつつ自らの血を送り込み吸血鬼へと変えた。
そして、その歪んだ笑顔で娘に「お前は吸血鬼となったのだ」と告げたのだった。
娘は絶望した。
自分だけ生かされた事に。
日の光を恐れて生きなければならないことに。
何より、自分の家族を、友人を、周りの全てを奪ったものと同じモノに変えられてしまった事に。
いつのまにか吸血鬼は姿を消し、後には娘と炎に包まれた城があるだけだった。
そして娘は燃え盛る自分の家を眺めただ涙するしかできなかった。
「それが、貴様の過去と言うわけか。」
「……私は呪ったわ、あの吸血鬼を…。そして恐れたわ、自分自身を…。
もし他人から血を吸ってしまったら、私もあれと同じモノになってしまうんじゃないか。
人をただの食料としか見れない、悪魔のような生き物に。
だから、私は…今まで一度も血を吸った事は無いわ。
吸血鬼って言っても、普通の食べ物でも案外生きられるものらしいわ。」
支援
避難所はふつうに人いるじゃん。
ソーサリーの人の投下の後に大量のレスが付くあたり。
……つまりはそういうことだ。
と、いってエルザは自重気味に笑った。
「そして…1年前、私はアイツに遭遇した。
私が村長に拾われた数時間前、森の中で出会ってしまった。
いや、アイツが意図して私の前に現れたの。
私は怒りに任せて吸血鬼に襲い掛かったわ。
でも、体格の差もあるし、何よりも血を吸わずに生きてきた私には、吸血鬼らしい力は残っていなくて、結果は惨敗。
ボロボロに痛めつけられた上に、また生かされて捨てられていたわ。
そして、アイツはまた、歪んだ笑顔でこう言ったわ。」
『貴方のその憎悪はとても愉快。貴方を生かしたかいがあったわ。
不死である私には、ここでの永遠はとても退屈。
だからね、貴方が私を憎悪するその感覚はとてもいい退屈しのぎ。
まぁ、そうするために貴方を吸血鬼にしたんだけどね。
でも少し興ざめ。何で血を吸わないの?血を吸って吸血鬼の力をもって私に挑みなさい。
こんな弱さじゃ退屈。それとも、私に対する憎悪がまだ足りない?』
それはエルザにとって耐えられない悔しさだった。
自分が吸血鬼にされたのも、領地全ての人間を殺されたのも、全ては吸血鬼の退屈しのぎだった。
そんな事のために…私は…家族は…そう思っているうちにまた、吸血鬼は姿を消していた。
そして森の中に吸血鬼の声が響いた。
『そういえば、自己紹介がまだだったわね。私の名はヴァンパイア・カミューラ
私の名、忘れない事ね、エルザちゃん。私の退屈しのぎのためにも』
そしてカミューラの笑い声が森に響いた。
エルザはその声を、涙を流し歯を食いしばりながらただ聞く事しかできなかった。
「あとはさっき村長が言ってた通り、通りがかった村長に拾われて今に至るわ。」
一通り過去の説明を終え、エルザはまたベッドに腰掛けた。
「このデュエルディスクに似たものを持ち、多くのモンスターを従えた吸血鬼…
なるほど、おそらくそのカミューラとか言うヴァンパイアは、認めたくはないが俺のいた世界から来た様だな。
この世界と俺の世界には、何か因縁めいたものでもあるのだろうか…?」
「…なにそれ?あなた、異世界から来たとでも言うの?」
うげ…リロ忘れ。支援!
危ないものでも見るような視線で海馬を見るエルザ。
いくら吸血鬼といえど、異世界などと言うものが存在するなど考えた事もなかったのだろう。
が、そんな質問を無視し海馬は続けた。
「……そう考えると、この吸血鬼騒ぎも、貴様を苦しめるためだけに50年前の事件の形を小規模に再現しているように見えるな。」
「おそらくそうでしょうね…悔しいけど、直接目の前に現れない限り、私にはどうする事もできない。
このまま黙ってみているしか…」
ギッと唇をかむエルザ。
だが、海馬はそれに異を唱えた。
「奴が同じシナリオを繰り返すと言うのなら、それをこちらで加速させてやればいい。」
「……まさか!?」
「そうだ、村人をこの屋敷に集めて、奴が姿を現したところで叩く。むらに複数の標的があるからこそ、相手の位置をつかめないのだ。
1点に絞ってやれば奴はそこを狙わざるを得ない。」
だがそれは、同時に危険な一手でもある。
カミューラが過去のシナリオどおりに集まった村長の屋敷を襲うとすれば、それは過去の惨劇の最終幕と同じ。
敗北すれば、一夜にして村全てが全滅する危険な一手である。
「…それは…駄目。悔しいけれど、私にはカミューラに勝てるほどの力は―――」
「そいつの相手は俺がする。」
はっきりと通る声で、海馬は宣言した。
エルザは、一瞬驚いたが、すぐに怒りの表情を見せて声を荒げた。
「馬鹿にしているの!?あいつはたかが人間のメイジが闘って勝てる程度の相手じゃない!」
とても外見からは想像できないような怒りの声が、部屋に響いた。
だが、その声を真正面から受け止めた上で、海馬は答えた。
「吸血鬼だろうがヴァンパイアだろうが、デュエルディスクを持っている以上はデュエリストだ。
そして、デュエリストを相手に、俺が負けることなどありえん!」
はっきりと、堂々と勝利を信じゆるぎない海馬の瞳。
その瞳と言葉に、エルザの心は動かされた。
エルザには全く根拠のない言葉のはずだが、その言葉には、そしてその海馬の態度には、なぜか信頼できるような力強さがあった。
「……わかったわ。お願い、カミューラを倒して。」
「当然だ。俺は俺の進むロードのために、こんなところで敗北するわけにはいかん!」
バッとエルザに背を向け、扉の方へと向かっていく海馬。
エルザにはまぶしく敵対するはずの日光を受けた海馬の姿が、とても神々しく見えたのだった。
海馬は、情報収集に行っていたタバサ達が戻ってきてすぐ、作戦を提案した。
その内容は
『村長を通じて村の若い娘、及びその家族をできるだけ集め屋敷に匿い、そこを狙ってきた吸血鬼を逆に撃退する』
と言うものだった。
どうやらタバサも、おおむね同じ作戦を考えていたようだった。
村長にも早速話をし、客間の方に村の若い娘達を集めておく事にした。
そして、その家族達も村長の屋敷に集まり、屋敷はまるでパーティー会場のように人であふれていた。
タバサは、戦闘に備えるためにと早々に眠りにつく事を提案し、そそくさと布団に入ってしまった。
タバサが眠りについた頃、海馬はシルフィードを部屋の外へと呼び出した。
「村の様子はどうだった?」
「…ぎすぎすしてたのね。次は誰が襲われるのかって言う恐怖と不安でみんな疑心暗鬼になっていたのね。
これじゃ、エルザだけじゃなく村のみんなが笑顔になれないのね。」
寂しそうにシルフィードは呟いた。
明るい性格のシルフィードにとって、この街の重い空気は、気持ちを沈ませてしまうものだった。
「だろうな。だが、それも今夜までだ。全ての決着は今日つける。」
「……」
このとき、シルフィードは全てを知っていた。
強い聴力のおかげか、偶然聞こえてしまったのだ、エルザと海馬の会話が。
普段ならおしゃべりなシルフィードはすぐにでもタバサに話していただろう。
だが、内容を聞いているうちに、話していいものか迷っていた。
今回のタバサの受けた命令は『吸血鬼退治』だった。
真犯人ではないとはいえ、エルザも立派な吸血鬼である。
もしタバサに話したら…あの小さな主人はどうするだろうか。
そんなことをたくさん考えていた。
その時、海馬のほうから口を開いた。
「聞いていたんだろう?俺とエルザの会話を。」
シルフィードは動揺した。それはもうわかりやすいくらいに。
「しっ…知らないのね。エルザのことなんか何も―――」
「お前がどこまで知っていようとも構わん。…だが、この事件が片付くまで、邪魔をするな。」
「…え?どういうことなのね?」
それだけ言うと、海馬は部屋に戻ってしまった。
一人取り残されたシルフィードは、余計に頭を抱える事となってしまった。
夕方、タバサが目を醒まし部屋の外に出てみると、不思議な格好をしながらう〜んう〜んと唸って頭を抱えているシルフィードが、中庭にいた。
シルフィードはタバサの視線に気づくと、慌てて視線をそらした。
タバサはシルフィードに近づき、声をかけた。
「どうしたの?」
「………」
シルフィードは両手で口をふさいだ。
そうでもしないと、エルザのことを喋ってしまいそうだったからだ。
いや、そもそも喋っちゃいけないのか?
しかし…
などとまた考えはじめて、もう頭がパンク寸前だった。
「……今夜は朝まで徹夜になるから、早く寝ておくべき。」
「……あのままじゃ、寝ようと思っても眠れないのね」
そういって、シルフィードは口を開いた。
そしてシルフィードはそのままタバサに、聞いてしまったエルザと海馬の会話の内容を伝えた。
「……」
「おねえさま、どうするの?そもそもあのエルザって子が吸血鬼かどうかだって本当かわからないのね。
でも、メイジ…って思われてるセトに、自分が吸血鬼だなんて言うはずないし…」
「その答えは、今夜出る。もしエルザが不意打ちを狙って彼に嘘をついているのなら、そのときは私の出番。
でも、本当にその『カミューラ』と言う吸血鬼がいるのなら…」
タバサは、ギーシュと海馬の学院の中庭での決闘を思い出していた。
常識を覆すようなドラゴンたちを巧みに操る海馬。
そして、あの白竜の力。
もしも『カミューラ』が彼と同じような力を持っていたとしたら…。
不安要素は残る。
だが、始まってみなければわからない。
「……………」
タバサはふと空を見上げ、沈み行く太陽をじっと眺めていた。
支援
その数時間後。
日はすっかり沈み夜となっていた。村長の屋敷では、ちょっとしたパーティーのような状態になっていた。
不安と恐怖により笑顔が消えていた村人達が、少しでも元気になれるようにと、村長が取り計らったのだ。
食事や酒のおかげか、少しづつ人々に笑顔が戻ってきて、いつしか笑い声が漏れるようにもなっていた。
海馬やタバサ、シルフィードもそのなかで食事をとっていた。
その時、扉が開き村長が入ってきた。
「みんな、少し聞いてくれんか。」
村長が声を上げると、いっせいに視線が村長の方に集まった。
「今村では、吸血鬼騒ぎで大変な事になっている。だが、こうして騎士様がたが来て下さっている。
だが…わしが気がかりなのは、それだけではなく別の事もなのじゃ。
姿が見えない吸血鬼のせいで、村中が疑心暗鬼になっている。
わしはそれがどうしても嫌だったのじゃ。……入ってください。」
村長に促されて部屋へと入ってきたのは、車椅子に座った体が細く老いた老婆と、屈強な大男の青年だった。
室内は一転して、不穏な空気に包まれた。
それもそうだろう。その老人達こそが、今村の中で吸血鬼と噂になっている、マゼンダ婆さんとその息子アレクサンドルだった。
「吸血鬼がなんのようだ!」
「でていけ!この化け物!」
といった罵声があたりから飛び交った。
海馬がふと目線を変えると、エルザが悲しそうに目を伏せていた。
「黙らんか!!!」
いつも温和な村長の口から、思いがけない大声が出たので、辺りはしんとなった。
村長はマゼンダ婆さんに謝ると、もう一度村人の向きなおり、言葉を繋げた。
「マゼンダさんとアレクサンドルは吸血鬼などではない。それは騎士様にも確認していただいた。
今村で恐ろしい事件がおきているのに、なぜ村人同士で疑心暗鬼にならねばならんのだ。」
「でも、その婆さんは昼間は出てこねぇし…」
「その思い込みのせいで、二人がどんなに辛い気持ちだったか…。
いや、それを放置していたわしにも責任がある。
しかし、このままではいかんと、そう思ったのじゃ。
今夜のこの集まりも、それを無くしたいと思ってのことなのじゃ。」
村人は下を向いて黙った。
村長はこの集まりの前に、海馬たちとともにマゼンダ婆さんの家に行き、この集まりの話をした。
海馬の見立てで吸血鬼ではない事も証明されたことだし、なによりも村人同士として一緒に暮らしていきたいと、
そのためにも、一緒にきて欲しいと頼んだのである。
始めは嫌がったアレクサンドルだが、村長の必死の訴えにより、提案を受ける事にしたのだ。
「おっかあは大きな声が出せねぇから、俺が…。
この村は、おっかあの生まれた村なんだ。いっしょに旅をしてきたけど、最後は生まれた村に帰りたい、おっかあはいつもそう言ってた。
おっかあはこの村の事がずっと好きだったんだ。なのに、そんなおっかあを捕まえて吸血鬼だの化け物だの…。
俺はこんな村、さっさと出ていこうって何度もいったんだ。
でも、おっかあいつも、『大丈夫だから…信じよう。』って言ってた。
だから…俺は…」
そこまで言いかけたときに、一人の青年がアレクサンドルの前に出て土下座をした。
薬草師のレオンだった。
「すまなかった!俺が悪かった!俺が軽軽しく吸血鬼だなんていいだしたせいで…。どうかゆるしてくれ!」
「おれもだ!」
「おれも!本当にすまなかった!」
と、そこにいたみんながアレクサンドル達の方へと駆け寄った。
「お前ら…。」
「マゼンダさん、アレクサンドル、彼らを…いや、わしらを許して欲しい。
そして、この村で、一緒に暮らしてはくれないか。」
「……許すも何もありませんよ。」
その時、小さな、でも誰も聞き漏らさなかった声がした。
声の主はマゼンダ婆さんだった。
「おっかあ…」
「私は、この村に帰ってこれただけで幸せです。そして今、こんな多くの人たちに囲まれている。
こんなに嬉しい事はないですよ。」
ごほっごほっと咳き込みながらも、マゼンダ婆さんは笑顔で言葉を紡いだ。
それから程無くして、マゼンダ婆さんとアレクサンドルは村人達と打ち解けていた。
村長は海馬たちの元へ来てこう言った。
「騎士様方、ありがとうございます。おかげで村が今ひとつにまとまりました。
本当にありがとうございます。」
「俺は何もしていない。俺がしたのはあの婆さんの潔白を証明しただけだ。
それだけでは、この問題の解決にはならなかった。
結局は村人同士の問題だったのだ。俺たちがしなければいけないことはむしろこのあとだ。」
そう、まだ吸血鬼は退治されてはいない。
それでも、村長は礼を言わずにはいられなかった。
「村人が一つにまとまれば…恐ろしい事はありません。
結束は何者にも負けることのない力です。」
そう言うと村長はまた人々の輪の中に戻っていった。
(結束は力…か。以前に奴に教えられた事だったな。異世界でもそれは変わらない…。そうだろう、遊戯[アテム])
双月が輝く空を眺めながら、それを教えた強敵のことを海馬は思い出していた。
そして……夜はふけていく。
15話、完であります。
寸止めになってないよね…(どきどき
どうやら寸止めは嫌いな人が多いようなので、ちゃんと一区切り終わらせるように
やって見ました。
にしても、カミューラにしろエルザにしろ、そう言う作品じゃないからか吸血鬼的描写が
少なくて困った…ので、もう開き直って装備カード勝手な設定を装備!
それでは16話で〜
乙です
楽しみにしてます
なん・・・・・だと・・・・・・・。
上下構成だと思ったら、上中下構成かYO!
いや、まぁいんですけどね。
社長、乙であります。
ううっ、寸止めじゃなくても、待て、次回! には変わりないじゃないですか〜!
もしや、エルザちゃん幸せバージョンも期待できるかも。
続き、楽しみにお待ちしています。
幻魔の扉のせいで異世界に来たんですね わかります
やっぱりカミューラでしたか。
カイザーを卑怯な手で倒した事が今でも忘れられない・・・
こうもりの羽っぽい形のディスク・・・ね。
1.ドーマの中の人の使っていたもの。
2.覇王十代の部下が使っていたもの。
知ってるのこれだけなんだけど、ほかにもあったっけ?
覇王を思い出したのは俺だけじゃなくてよかった
あとクロノス呼んでこーい
負けたけど
光属性の嫁なら楽勝か?
異世界なら三沢の本領にある
4期ではアモン、ジムと共に画面からフェードアウトしていったが
社長の人乙です
いつも自信満々な社長、現実世界では只のカードゲームだから行き過ぎてギャグになってしまうけど、ここでは何故こんなに格好良く見えるんだw
完結編も期待しています!
社長乙ー
社長ワールドだとハルケ世界と遊戯世界の時間は逆行してるのかしら
単純にゲートの違いかもだけど
ふと、地獄少女召喚とかいうのを思いつく。
学園全体で次々に死人が出てしまうな、さすがに
>>544 自分も地獄行きになってもかまわない、ってくらい恨み抱いてる奴はそんなにいないだろさすがに
というわけで、黒髪ロングロリのメイド服姿をだな
着物の上からエプロンつけた和風女中さんスタイルでもいいけど
このロリ(ry
自分で宣伝なんかする訳ないじゃない…。
ほんとに…。
これだけは…酷い。
っていうか、方々でそういう奴らを見かけるけど、何を持って作者だとか決めつけてるんだろうな…。
勘だろ
あと思い込み
>547
ですよね
心無い事を書き込む人がいるようですね
気にするな…とはいえませんがスルーでいいかと
>>547 俺は昔投下した作品にアンチすらコメントしてくれず、自分の作品に毒を吐いてみた事がある。
……それすらスルーで一層悲しくなり、俺は筆を置いた。
まあ、場所はこのスレの関係じゃないけど。
スルーするんだ
酷い自演ダナ
>>548 そうした方が自分に都合がいいから
見下すために
557 :
509:2008/11/09(日) 11:36:21 ID:FySeWg/1
ランスの新作が来てるのを書いた
>>509ですけど、私は作者さんじゃないですよ。
単に、新作来てたので「新作来てるよ〜」と書いただけだったんですが・・・
申し訳ありません。
作者の方もすいませんでした〜。
___
,r' `ヽ、
,i" ゙;
!.(●) (●),!
ゝ_ _,r''
/ ;;;;;; ・・ ;;;;) <それは報告しなくてもいいです。
/ (_
| f\ トェェェイノ  ̄`丶.
| | ヽ__ノー─-- 、_ )
. | | / /
| | ,' /
/ ノ | ,'
/ / | /
_ノ / ,ノ 〈
( 〈 ヽ.__ \
ヽ._> \__)
今スレは1000行くかな?
こんにちは、それでは私も今週の分の投下をおこないたいと思います。
量は前回並なので、さるさんを受けるかはギリギリという線です。
開始予定時刻は12:30です。
支援しますねー
第21話
踊れ! 怪獣大舞踏会 (前編)
カンガルー怪獣 パンドラ、チンペ
歌好き怪獣 オルフィ
風船怪獣 バンゴ
玉好き怪獣 ガラキング 登場!
この事件の発端は、才人達がツルク星人と戦った、その3日後に、魔法学院を遠く離れたある山奥で始まっていた。
誰も立ち入らないような深い渓谷の奥を、鋼鉄の鎧を身にまとった竜騎士が低空で飛んでいく。
ここは、クルデンホルフ大公国領内、オットー山。魔物が住んでいるといわれ、現地住民すらめったに足を
踏み入れないという魔の山であった。
そんなところを、5騎の竜騎士は何かを探すようにきょろきょろと首を振りながら、ゆっくりと飛んでいた。
「おい、本当にこの辺なんだろうな?」
「ああ、道に迷って奥地に入り込んだっていう猟師の話が確かならな」
彼らは、手に持った山岳の不確かな地図を頼りに飛んでいく。
「まったく、それにしても旦那様の思いつきにも困ったものだ、いるかどうかも分からないものを探して来いとは、
見つからなかったら我らはなんとお詫びすればよいことやら……」
騎士のひとりが、兜の裏からうかない声を出すと、他の仲間達も同意するように首を振った。
「やむを得まい、我らは所詮雇われた身。それに……ん? おい、あそこの山肌を見ろ!」
突然、編隊右翼を飛んでいた騎士が、切り立った山肌の一角を指差した。
その声に、仲間の竜騎士も、竜をホバリング状態にして、そちらの方向を見て息を呑んだ。
「あれは……どうやら目的のものらしいな。よし、仲間がこないうちにさっさと済ませてしまおう。眠りの煙と
檻の用意はいいか?」
「準備はいいです。いつでもいけます」
「よし、かわいそうだがこれも仕事だ。煙玉を投擲しろ!」
これが、その数日後どういう事態を招くか、そのとき彼らは知るべくもなかった。
それから3日後、トリステイン魔法学院
いつもは退屈な授業に眠そうな顔を並べる生徒達も、今日この日ばかりは朝から顔を輝かせ、日が昇る
ころから夕暮れを楽しみに友と飽きることなく語り明かす。
今日は、魔法学院年に一回の春の行事『フリッグの舞踏会』の日、学年も家柄も関係なく、親睦を深めるために、
男女は皆着飾って語り、食べ、飲み、そして踊る。それは新たな友情や、時には恋が生まれる大切な日なのだ。
特に今年は、本来この1月半前におこなわれるはずだったのが、超獣ベロクロンのトリスタニア襲撃により、
それどころではないと延期されてきたために、おあずけを喰らった生徒達の盛り上がりようは例年にないものがあった。
この日は授業も午前中で切り上げられ、貴族の若き紳士淑女達は、秘蔵していたスーツやドレスを引っ張り出す。
会場となるのは、アルヴィーズの食堂の上の大ホールで、全校生徒を収容しきれる広さのそこに、学院の使用人や
メイド達がいすやテーブル、ほかの様々な小道具を何往復もして運び込んでいく。
そんな様子を食堂外の壁際で物珍しそうに観察していた才人は、貴族のお祭りというのはさすが平民とは
違うなあと考えていた。
「おーおー、たかが学生の行事だってのに、すごい量の飾りつけだなあ。俺達が必死こいて買い込んだ
ものが、たった一晩で使い果たされると思うとなんかやりきれないよ」
昨日、馬車いっぱいになるまで買いこんできた食料品や小道具は、あっという間にからになって、会場に
運び込まれ、普段殺風景なそこを優雅に飾り立てていた。
しかし、日本の高校生にとって、舞踏会なんてものはテレビの中にしか存在しないために、すでに異世界にいるのに
異世界の出来事を見るかのように、才人はぼんやりとその様子を眺めていた。
そんなときに、たまたま通りかかったのか、両手いっぱいに洗濯物を持ったシエスタが横に並んで話しかけてきた。
「サイトさん、お疲れ様です。どうですか、フリッグの舞踏会は? 春の使い魔の召喚と並んで、学院の名物なんですよ、
ああ、わたしもあのホールで着飾って、サイトさんみたいな人と踊ってみたいなあ」
シエスタは、ぽーっと遠いところを見るように言った。メイドのシエスタにとっては、舞踏会など手伝いはあっても
参加など夢の話。しかし華やかな舞台に憧れるのは、女の子にとって永遠の夢である。地球でも、シンデレラの
物語がいまだに絶大な支持を持つのがその証拠だ。
「シエスタのドレス姿か、すっごくよく似合うと思うよ」
「えっ! ほ、ほんとにそう思いますか! ミス・ヴァリエールやミス・ツェルプストーより! やったあ!」
「いや、そこまでは言ってないんだが……」
普通に思ったことを言ったつもりだったのだが、どうやら自分に都合のいいように解釈するのも世界の違いは
ないようだと才人は思った。
「う、うん……ところで、シエスタは今から洗濯かい?」
これ以上シエスタを舞い上がらせると危険だと判断した才人は話題を変えることにした。
「はい、今日はお天気がいいので今からでもすぐに乾いちゃうでしょう。天気のいい日にはお布団を干すものです」
「そうだね、あ、そうだ、ところでアイちゃんはどうしてるかい?」
「ロングビルさんが預かってるはずですが、ここにいる間に教養をつけておくって、暇なときに読み書きを
教えるって言ってましたから、今頃図書館じゃありませんか」
ハルケギニアでは平民の識字率は低い、シエスタは学院に来る前に修道院で学んだそうだが、彼女いわく
字が読めるおかげで学院での仕事も読めない人に比べて多いそうだ。日本で漢字や英語検定が就職に役立つ
のと同じようなものだろう。どうやら、ロングビルは本気でアイの保護者をする気のようだ。
「そうか、ミラクル星人も安心するだろう。けど、俺もそうだったけど、この学院で平民は肩身が狭いじゃないか。
ロングビルさんも、始終つきっきりというわけにはいかないだろうし、大丈夫か?」
才人がそう言うと、シエスタは難しい顔をした。この学院はとかく貴族というだけで平民の使用人やメイドを
見下す者が多い。才人がギーシュとの決闘に勝ってからはそれほどでもなくなったが、悪習というものは
なかなか消えないものだからだ。
もし、自分達の見えないところでいじめられでもしたらと、才人は心配だったが。
「そのことなんですが、実は事情を聞いたオスマン学院長が自分の親戚の子だと言って、面倒を見ている
そうです。まあ、暇はありあまってる人ですし、学院長の身内となれば手を出す人はいないと思いますが」
「学院長が? あのじいさんそこまで守備範囲広かったのか?」
才人はオスマンが関わっていると聞いて悪い予感がした。確かにやっていることは美談だし、オスマンが
悪い人ではないのはわかっているが、オスマン学院長といえば、女子生徒から女教師まで日中から胸や
尻を平気で触ってくるセクハラジジイとして学院では知らない者はいない。そんなのにいくら子供とは
いえ、女性を預けていいものか。
ふたりが、もはや想像するだにヤバすぎる光景に慄然となったとき。
「あら、ご両人、こんなところでデートの相談かしら?」
と、いつの間に現れたのかキュルケが二人の前に立っていた。
「あら、ミス・ツェルプストー、生徒の皆さんは今頃みんな舞踏会の準備にお忙しいと思ってましたが」
「あたしはこういうの慣れてるから、余計な時間は必要ないのよ。ところで、なんのお話してたのかしら?」
そして二人から事情を聞くと、あははと笑って言った。
「そりゃ大丈夫よ。大方、幼いうちにつばつけて10年後に自分に惚れさせようっていう魂胆でしょうよ。
多分、言い出したのはミス・ロングビルのほうね。将来絶世の美女になるとか、うまいこと言って
その気にさせて養育費を出させる腹でしょ」
「はぁ? 300年も生きてるくせに、まったく呆れたじいさんだ。だがまあそれなら安心だな。それにあんな
ジジイに女が惚れるなんてありえないし」
才人は悪い予感がはずれていたとわかってほっとした。
だが、キュルケはチッチッチと、才人の目の前で指を振って見せた。
「あら、そこのところは違うわよ。女は年齢や顔なんかで生涯の男を選んだりしないわ。上っ面に引かれる
のはお子様だけ、まあそれも駆け引きのひとつなんだけどね。だからダーリンも、もっと自信を持って
いいわよ。あの野蛮な空中装甲騎士団の連中なんかより、よほどいい男なんだから、ねえシエスタ?」
「そうですよ。サイトさんほど男らしい人なんていませんって、ミス・ヴァリエールだって、ああ見えて
サイトさんが気になってしょうがないんですよ、きっと」
「ルイズが? まさか、ないない」
シエスタの言葉を、才人は一笑にふした。あの高慢ちきな貴族様が、俺のことが気になる? まあそりゃあ
短い付き合いだけど生死を共にしてきた仲だが、いつもは犬よばわりで、あるだけ雑用を押し付けてくるような
鬼が? ありえないだろと思ったが、シエスタとキュルケは顔を見合わせて、やれやれとうなづきあっていた。
「そういえば、空中装甲騎士団ってなんだ?」
ふと才人はさっきキュルケの言葉の中に出てきた、聞きなれない単語について質問してみた。
「あら、知らなかったの? ほら、あれよ」
キュルケが指差した先には、先日まで見受けられなかった多数の野営用テントと、係留されている
数十頭の飛竜、それの世話をしている無骨な騎士達の姿があった。
「空中装甲騎士団(ルフトパンツァーリッター)、クルデンホルフ大公国の私設竜騎士隊、トリステイン王軍の
グリフォン隊を除けば、現在トリステイン最強と言われる空中騎士団よ」
「つまりトリステインNo2の戦力ってわけか、しかし軍隊だろ、ここは学校だぜ?」
よくわからなそうに答える才人に、キュルケは舞踏会のおこなわれるホールを指し示して説明していった。
「ダーリンはトリステインの事情にあんまり詳しくないんだったわね。んーと、簡単に説明すると、
クルデンホルフ大公国ってのは、トリステインの貴族のひとつなんだけど、大公国ってつくように名目上は
独立国なの、それで、大変な資産家でもあるから数多くの貴族が借金をしてるし、1月前にトリタニアが
壊滅したときには大量の復興資金がクルデンホルフから入ったわ、つまり、トリステインの貴族達は
クルデンホルフに金貨でできた首輪でつながれたようなものなの」
「金持ちには貴族も逆らえないってわけか、なるほど、それであいつらはその貴族の子弟らに」
「そう、将来にわたって影響力を行使するために威嚇しに来たってわけ、かくいうここの運営資金も
かなりな量クルデンホルフからの寄付でまかなってるっていうし、学院長も断りきれなかったんでしょ」
キュルケはつまらなさそうに鎧を光らせている騎士団を眺めていた。
と、そのときひときわ大きいテントの中から、金髪をツインテールにまとめた小柄な女の子が
出てきて、才人は目を丸くした。
「え、女の子?」
「あれが、その空中装甲騎士団の指揮官で、クルデンホルフ大公国の長女、ベアトリス・イヴォンヌ・
フォン・クルデンホルフ、本来魔法学院には来年入学だけど、顔見せでやってきたんでしょ」
そこまで言うと、説明にくたびれたのかキュルケはふわあとあくびをした。
どうやらキュルケはベアトリスのことは完全にどうでもいいらしい。まあ元々ゲルマニアからの
留学生である彼女にとっては、トリステインの貴族の事情など他人事だ。
また、シエスタにとっても普段いばりくさっている貴族が借金で首が回らなくなっても、別に
同情には値しないために、どこ吹く風、考えてみれば才人にとってもどうでもいい。
遠くて、何を話しているのかはわからないが、ベアトリスは自分の親ほどにも歳の離れた
髭面の騎士にあれこれと偉そうに命令している。
(あれま、どうやらありゃまた簡単に友達になれそうにないタイプだな)
才人達が遠目で眺めていると、ベアトリスは何人かの騎士を連れてどこかに行ってしまった。
そして、シエスタも洗濯物を干すために行ってしまい、残ったキュルケが才人を自分の部屋に
連れ込もうとしていたところで、もはや血に刻まれた宿命か、砂煙と地響きを猛ダッシュで引き連れて、
額に青筋を立てたルイズがやってきた。
「サイトぉ!! ご主人様のドレスの着付けも手伝わないでどこほっつき歩いてたの!! し、しかもまた
キュルケと……そんなに死にたいなら今ここで楽にしてあげるわよ!!」
息を切らしているところから見ると、どうやら学院中を才人を探して走り回っていたらしい。端から
見たら可愛らしいものだが、目を血走らせて乗馬鞭を持っている点で減点100点がついている。
「い、ルイズ落ち着け、ドレスの着付けって、俺にそんなことできるわけねえだろ」
冷や汗を流しながら才人は必死に弁解した。キュルケがいるせいか、ルイズの怒りもいつもの
5割増しに見える。乗馬鞭がぶっちぎれそうなくらい張り詰めて、このままではバードンの前のケムジラ
さながらに息の根を止められてしまう!!
なんとかしなければ!! まだ死にたくはない!! 才人の生存本能は盛大に警鐘を鳴らしていた。
そんな怒り心頭のルイズの前に、風前の灯火の才人だったが、そんな面白そうなものをただ見物して
いるだけでは我慢できないのがヴァリエールの仇敵のツェルプストーである。
「あはは、ねえルイズ、あなたお馬鹿? ドレスの着付けを一番見てもらいたい人にやってもらっちゃあ
見せる楽しみがないじゃない」
「なっ!?」
瞬間的に、過剰運動と怒りで赤くなっていたルイズの顔が、別の意味でさらに真赤になった。
「ななな、なな」
何か言いたいようだが、パニックで舌がもつれて言葉にならず、なを連発するばかり。
それを見てキュルケはさらに愉快そうに笑う。
「あなたって本当に面白いわねえ。着付けだったらシエスタに頼めばいいじゃない、わざわざ
そんな汗まみれになって探しにくるってことは、近くにいてくれないと不安なんでしょう?」
「ななっ……なに根も葉もないこと言ってくれてんのよあんたは! ええい、さっさと来なさい
サイト! 言っとくけど、今夜の舞踏会に特別待遇で参加できるからって調子に乗るんじゃ
ないわよ。へらへら他の女の子に見とれてたりしたら叩き出すからね!」
そんなことを言う時点で才人のことを意識してるのだと公言しているようなものだが、本人には
当然自覚がないため、さらにキュルケに笑われるばかり。
才人も、人が大勢いる舞踏会で人に目をやるななんて無茶だと思ったが、理屈の通用する
相手ではない。だがこのまま連れて行かれて折檻されるのもやだと思った彼は、常人の
0.7倍くらい詰まっている脳髄をこのときフル回転させた。
「いや、ルイズ、悪いがそれはできないぜ」
「なんですって、もう一度言ってみなさい?」
ルイズの目が蛇のように下から睨みあげてくる。ここで対応を間違えたら死ぬ、彼は本能的に
それを察知し、精一杯の笑顔を見せてこう言った。
「だって、そんなことしたらお前がほかの誰よりも輝いているのが確認できないじゃないか、
月が瞬く無数の星の中でこそもっとも美しいみたいに、星々の中で輝くルイズの姿を俺は
見たいんだよ」
それを聞いて、怒り心頭だったルイズの表情が一瞬で変化した。
夢を見ているように視線が宙を舞い、やがて、ねめあげていた顔がしだいにうつむき加減に
なっていく。
「そ、そう、そんなに言うんだったら、まあ……わたしも鬼じゃないし、けど、だったら誰よりも
わたしを見てなさいよね。わかった!?」
「ああ、わかってるって!」
才人がそう答えると、ルイズはまだ、ぽけーっとした様子で、千鳥足をしながら、どこかに
ふらふらーっと歩いていった。
そして、完全にルイズの姿が見えなくなると、一気に緊張が抜けた才人は腰の力が抜けて、
土の上にへたりこんでしまった。
「はー、死ぬかと思った……」
「なかなかやるわね。でも、とっさによくあんな口説き文句思いついたわね」
「さっきギーシュが金髪縦ロールの女子に同じこと言ってたの思い出したんだ。まったく、あいつは
よくもまああんなクサい台詞を平然と言えるもんだぜ。うー、気持ち悪」
さっき自分が言った台詞を思い出して、才人は全身に悪寒が走って、ぶるっと震えた。
「あっはっは、なるほどね。ま、陳腐な内容だからそんなことだろうとは思ったけど、ルイズには
効果はあったみたいね。ほんと単純なんだから」
「まあ、ここまでうまくいくとは俺も思ってなかった」
ふたりは顔を見合わせて、笑いあった。
だが、しばらくするとキュルケは真顔になって、才人の額と自分の額がくっつきそうになるくらいまで
顔を近づけて言った。
「でもね。例え苦し紛れの嘘でも、それを本当にしてあげるのが立派な男ってものよ。今夜は約束
どうり、あの子を一番に見てあげなさい。いいこと?」
「……そうだな、だますのはよくない。今夜は、あいつに付き合ってやろう」
こういうところでは、才人もまたいっぱしの男であった。
そして、時間はあっという間に過ぎ、日が暮れて月も高く上がり、フリッグの舞踏会は盛大に
開催された。
学院長のあいさつが適当に聞き流され、主賓となる生徒達が、きらびやかなドレスに身を飾って
次々入場してくる。
「ヴァリエール公爵が息女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール嬢のおなーりー!」
ルイズも、白いパーティドレスに身を包んで現れ、いつもとは違うフランス人形のような可憐さを
かもし出す姿に、馬子にも衣装だと期待していなかった才人も、一瞬我を忘れて見入ってしまった。
「お、お前ルイズか?」
「ほかに誰がいるっていうのよ?」
思わずそう聞いてしまった才人に、ルイズは顔をふくらませて言った。
「ふん、どうせ似合わないとか、あっちの子のほうがきれいとか思ってるんでしょ。わかってるのよ」
「いや……正直想像以上だった……お前、こんなにきれいだったんだな」
それはまごうことなき才人の本音であった。女の子は着るものが違うだけで、ここまで印象が変わる
ものなのか、こっちのほうがよっぽど魔法だと、ルイズから目が離せなくなっていた。
「ふ、ふん、あんたにしちゃ上出来のお世辞じゃない。まあ、素直に喜んでおいてあげるわ!」
思いもよらぬ才人の言葉に、今度はルイズのほうが我を忘れてどぎまぎする。
ふたりはそのまま、お互いに話しかけられずにもじもじしていたが、そうして無駄な時間をとってしまったおかげで、
そんなふたりを見つけたキュルケが、間に割り込んできた。
「ご両人! なーにマネキンみたいに突っ立てるの、せっかくの舞踏会の雰囲気が台無しよ」
「い!? キュルケ」
いきなり肩を叩かれてそう言われ、ふたりはびっくりして飛び上がった。
キュルケはルイズと正反対に胸元をはだける扇情的なドレスを着ていて、別の意味で才人の目が
釘付けになり、ルイズはいきなり現れたキュルケに対して不快感を隠そうともせずに怒鳴った。
「キュルケ! あんたはどうしてもういつもいつも、ずかずかと乗り込んでくるのよ。あんたは普通にもてるんだから、
その辺で適当な男と踊ってればいいでしょう!?」
「そうするつもりだったんだけどね。見てご覧なさいよ、舞台を無粋なやからが占拠しててそれどころではないわ」
ふたりは、ホール中央部に目を向けた。今までお互いしか見えてなくて気づかなかったが、ダンスホールの
中央に、鎧姿の騎士達、例の空中装甲騎士団が陣取っていて、華やかな舞台に不釣合いな重苦しい雰囲気を
放っていた。
「なんだありゃ? 仮装パーティのつもりか?」
「違うわよ、なんでもこの機にトリステインの将来を担う空中装甲騎士団の威光をご披露なさるそうよ、まあ
貧乏貴族の子弟に脅しをかけて、あわよくば借金のかたに空中装甲騎士隊に入隊させて、戦力の増強を
計ろうっていうことじゃない?」
「はっ! 成りあがりの三流貴族の考えそうなことね。金銭と打算だけで世の中が動かせると思ったら大間違いよ」
ルイズは伝統あるフリッグの舞踏会を、無粋な鉄くずで汚すやからに、激しい嫌悪を見せた。
ほかの生徒達も、ホールの中央を占拠する騎士達に不快な様子を示していたが、その中にはかなりの割合で
クルデンホルフに首根っこを押さえられている貴族達がいたし、完全武装の戦闘のプロ集団に手を出そうという
無謀なやからもいなかったので、彼らはホールの主のようにそこに君臨していた。
だがそのとき、呼び出しの衛士が、高らかに彼らの主人の名を告げると、ホールの全員の目が入り口の門のほうに
集中した。
「クルデンホルフ大公国が息女、ベアトリス・イヴォンヌ・フォン・クルデンホルフ殿下、おなーりー」
ホールの大きな門が開き、昼間見たツインテールの少女が、きらびやかに無数の宝石をちりばめたドレスをまとい、
5、6人の彼女よりやや年上の少女を連れて入場してきた。
「あれがクルデンホルフのお姫様か、ものすっげえ金持ち主義」
才人はそのルイズの衣装すら安物に見えかねないほど豪華に飾り立てられたドレスを見て呆然とした。数百の
ダイヤを中心に、ルビーやサファイヤが赤と青のアクセントをとり、まるで歴史の教科書で見た大英帝国黄金時代の
エリザベス女王のようだった。
しかし、ルイズとキュルケは、それに対して、きらびやかというより、けばけばしいという印象しか抱いていなかった。
「はあ、気品もなにもあったものじゃないわね。あれじゃ宝石が着てる人間を飾り立てるんじゃなくて、人間が宝石の
付属物みたいじゃない」
「今回はあなたと同意見ね。ドレスはすばらしいけど着てる人間が追いついてないわ、あの子には10年早いわね。
それより、後ろのお付の5人、あれ1年のシーナと2年のメディナ、うちのクラスのキャメルもいるわ。みんな領地
経営が苦しくて、クルデンホルフに多額の負債を抱えてるところの子よ」
「金貨と権力と負けて、強い者にすりよって保身をはかるなんて、貴族の風上にもおけないわね。トリステインの
貴族も落ちたものだわ」
ルイズはそう吐き捨てたが、困窮して家と家族を守るだけで精一杯の貴族がいるということを理解していない
辛辣な台詞でもあった。
やがてホール中央の、周りを見渡せる壇上に立ったベアトリスは気分よさそうに皆を見渡すと、高らかに
演説をぶりはじめた。
「皆様ごきげんよう。お初にお目にかかります、わたくし、ベアトリス・イヴォンヌ・フォン・クルデンホルフと申します。
まずは、このすばらしい席にお呼びいただいたことを感謝いたしますわ」
誰が呼んだんだよ、と多くの者が思ったが、当然口に出す者はいない。むしろ、クルデンホルフに頭が上がらない
者達から拍手があがるほどだ。
「ありがとう皆さん。わたくしも来年にはこのトリステイン魔法学院に入学し、共に国の将来を背負うべく学びにつく
のですから、ここで先輩の皆様方と親交を持てるのは至上の喜びですわ。昨今、この国は外敵の脅威にさらされ、
隣国は今なお内戦のただなかにある今、我がクルデンホルフも私財を投げ打って国の平和のために尽くしていますが、
それも皆々様のようなご立派な貴族の方々の協力なくしてはなしえないこと、今後ともトリステインに恒久的な
平和と繁栄をもたらすために、共に手を携えていきたいと考えております。そして、賢明な皆様方でしたら、必ずや
よりいっそうのご協力をいただけるものと確信しております」
「なんだありゃ、まるでトリステインを守っているのは自分みたいないいぐさじゃないか」
才人はベアトリスの演説の、あまりにも居丈高で高慢な内容に唖然とした。
ルイズやギーシュも高慢という点では同じだが、それでもまだ貴族として自分を律しようというところがあった、だが、
これではまるで弱虫泣き虫を従えるガキ大将のようだ。
「だから、成り上がりって言ったでしょ。クルデンホルフは元々ゲルマニアの者だけど、功あって時のトリステイン王から
独立を認められて、それ以来ゲルマニアならではの経営戦略と貿易で急成長してきたんだけど、昔からの貴族との
つながりがないから、金で弱小貴族をクモのように絡め採ってきたのよ。聞くだけ馬鹿馬鹿しいわ、ホールが
空くまで飲むから、酌をしなさい」
ルイズはクルデンホルフの自慢話と恫喝など興味はないと、バルコニーのテーブルについて、ワインを要求した。
才人とキュルケも同じくどうでもよかったので、近場のテーブルからいくつかのワインボトルを取ると、ルイズの
テーブルに運んだ。
「サイト、あんたも座りなさい」
「えっ、いいのか?」
てっきり酌だけさせられて、後は立たされて用事を言い使わされるだけだと思っていた才人は思わず聞き返した。
「いいわよ。一人で飲む酒は悲しみを忘れるためのもの、楽しむ酒は大勢でいっしょに飲むもの、お父様の教えの
受け売りだけど、あんたみたいなのでもいないよりはましでしょ。さっさと座りなさい」
「じゃあ、遠慮なく。ワインは赤のほうが好みだったな、確か」
才人はルイズの隣の席に座ると、グラスにワインを注いでやった。
と、そこへどこから見つけてきたのか、キュルケが皿に山盛りのサラダを大事そうに抱えて口を膨らませている
タバサを連れてやってきた。
「そういうことだったら、わたし達も仲間に入れてもらうわよ。せっかくの舞踏会、踊れないんじゃつまらないからね。
んじゃ、さっそく乾杯しましょ。はい、かんぱーい」
キュルケの音頭で、4人はカチンとグラスを合わせて、ワインを口に運んだ。
壇上ではまだベアトリスの演説が続いている。校長先生や政治家の話も大抵長くてつまらないが、その理由としては
短くわかりやすくまとめる才能がないのか、単なるしゃべりたい病の独演であるからかだが、今回の場合両方で
あるようだ。
才人達は、他愛もない話で時間をつぶしながら、度数低めで口当たりのいいワインを楽しんでいた。
やがて、何分過ぎたかは分からないが、ほどよくアルコールが回って体があったまってきたところで、ようやく
長いだけの演説もきりがきたようだ。
「さて、ではここで我が空中装甲騎士団の武を披露したいと思います」
ベアトリスがそう言って壇上から降りると、直立不動で待機していた空中装甲騎士団が一斉に、剣のように凶悪な
形をした杖を取り出して構えをとった。
なんだなんだと、生徒達は、ただならぬ雰囲気にざわざわと騒ぎ出す。ベアトリスは武を示すと言っていたが、
こんなところで模擬戦でも披露しようというのか。
また、離れて様子を見ていた才人達も、その物々しい雰囲気に気づいていた。
「あの姫さん、なにか始める気みたいだな」
「どうせろくなものじゃないでしょ。はーあ、今年のフリッグの舞踏会は最悪ね。しかも来年にはあの馬鹿が正式に
この学院に来るっていうし、お先真っ暗だわ」
ぐいとグラスを飲み干して、しらけた様子でルイズは言った。
「しかしいったい何をする気かしら? 見て、彼ら庭に下りていくわ」
空中装甲騎士団は、バルコニーから見下ろせる学院の中庭に下りていく。まあホールの中でドンパチやられるよりは
ましだが、舞踏会を武道会にするつもりなのか?
しかし、そんな冷ややかな視線に気づいていないのか、ベアトリスはルイズ達のとなりから空中装甲騎士団を見下ろして
高らかに宣言した。
「皆さん、近年トリステインを初めとするハルケギニア全土において、怪獣による災害が多発しておりますが、我が
空中装甲騎士団は、そんなものには屈しない強さを持っていることを、ここに証明いたしましょう。さあ、獲物をこれに!!」
ベアトリスはそう言って、右手を高くかかげた。
まさに、そのとき。
突如足元から突き上げるような衝撃が伝わってきたかと思うと、大地がうなり、学院全体を巻き込んで激しく振動
しはじめたではないか。
テーブルの上のグラスや皿が床に落ちて乾いた音を立てる。立っていられなくなった生徒が転んで、豪華な
ドレスやスーツを散乱した料理で汚して悲鳴をあげる。
「じ、地震か!?」
だが、それはそんな生易しいものではなかった。
「あっ、あれを見ろ!!」
バルコニーにいたひとりの生徒が外を指差して叫んだ。
その先には、この間怪獣アングロスが暴れて破壊されたままになっていた外壁から、学院の外の草原の土が
盛り上がり、そこから2頭の巨大怪獣が姿を現すのが見えたのだ。
一匹は、白く柔らかそうな体毛に包まれて、頭に生えた一本角がコアラのようなユーモラスな顔と不釣合いな怪獣、
もう一匹は全身土色で、ラクダみたいな顔と眠そうな目つきに、なんというかお腹からぷっくり突き出た出べそが
目立つ怪獣だった。
「か、怪獣だ!?」
怪獣の出現に生徒も教師達もざわめきたった。
早くも逃げ出そうとして門に駆け出す者、コルベールのように賢明な教師連は生徒達の避難経路を確保しようと
迅速に行動し始めていたが、そのときある一人の生徒が、なにをどう勘違いしたのか、とんでもないことを叫んだ。
「さすがクルデンホルフの空中装甲騎士団、怪獣を倒すところを我々に披露していただけるというわけですね!!」
それを聞いて場の空気が一気に変わった。
なんだ、あれはベアトリス殿下の演出か、それならば安心だ、すごいサプライズを用意していたんだなと、
衆目の目が一斉にベアトリスに向けられた。
もちろん、いくら権勢を誇るとはいっても一介の貴族が怪獣など用意できようはずもない、しかし集団心理が
働いてすっかりその気になった群集に見つめられて、ベアトリスも後には引けなくなってしまった。
「ほ、ほーっほっほっ、そ、そのとおりですわ、わたくしの空中装甲騎士団にかかれば怪獣の一匹や二匹、
さあ、全員竜に騎乗しなさい。空中装甲騎士団前へ!!」
空中装甲騎士団の団員達は、その命令に一瞬躊躇したが、鎧のおかげでそれを気取られずにすんだ。
だが、彼らにもトリステイン最強と名をつけられている自負があるし、なにより主人の命令は絶対である。
口笛を吹いてそれぞれの竜を呼び寄せると、勇ましく飛び上がっていった。
その勇壮な姿に、少年少女の間からは歓声もあがるが、最初から冷めた目で見ていた才人達はなんの
期待も抱いていなかった。
「馬鹿だな、ベロクロン一匹に王軍が壊滅させられたのに20騎そこらの竜騎士でどうなるっていうんだ」
「自分達は違うって特別意識を持つものなのよ。それよりも才人、あれも超獣?」
ルイズの問いに、才人は空中装甲騎士団の照らした明かりにまぶしそうにしている2匹の怪獣の姿を、
かつて愛読していた怪獣図鑑の内容と照らし合わせてみた。
「いや、白っぽいやつはパンドラ、茶色いのはオルフィ、どっちもヤプールとは関係ないはずだ。ハルケギニアに
元々住んでたやつじゃないか?」
地球もハルケギニアも、馬もいればネズミもいる。だったら同じ怪獣がいてもおかしくはないだろう。
と、そのとき同じように2匹の様子を見ていたキュルケが楽しそうに言った。
「でもさあ、なんか2匹とも可愛くない? 特にあの白いほう、ぬいぐるみみたい」
「キュルケ、あんたなに言ってるの? 怪獣は所詮怪獣でしょ……けど、なんか気の抜ける顔をしてるわね」
ルイズも、パンドラとオルフィにはいまいち敵愾心が湧かないようだ。それもそのはず、パンドラもオルフィも
森の木などを餌にする草食性の怪獣で、すりつぶす臼歯は持っていても切り裂く犬歯は持っていない。
それを証明するように、才人も笑いながら言った。
「心配しなくても、あいつらはどっちも大人しいはずだ。人間に危害を加えたりはしないさ」
この2匹は、どちらもZATの時代に事件が起きているが、どちらも原因は人間側や宇宙人の仕業で、
彼らはむしろ被害者として扱われている。
また、オルフィは怪獣頻出期が終わった後も、生息地が保護下に置かれて、年に一度姿を見せる特別な
怪獣として、才人も幼いころから親しんできた怪獣だ。
しかし、解せないのは、普通なら2匹とも人目を避けて山奥に住んでいるはずなのに、なぜこんなところに
出てきたのか。
だが考えている間もなく、ルイズは席を立った。
「そんなこと言っても、学院が壊されちゃうかもしれないじゃない。行くわよサイト!」
支援
すいません、あと1レスとあとがきを残して規制を受けてしまいました。
代理投下のほど、どなたかお願いいたします。
だそうですので代理投下しますね。
「お、おい、ちょっと待てって!」
駆け出そうとするルイズを抑えて、才人もやむを得ず変身しようかと思ったが、その手のウルトラリングは
光ってはおらず、再び心の中からエースの声が響いてきた。
(あの怪獣からは悪意は感じない。もうしばらく様子を見るんだ)
(エース!? でも)
(才人君の思うとおり、怪獣も暴れるにはそれなりの理由がある。あの2匹がなぜここに現れたのか、それを
探ってからでも遅くはない)
エースの心には、かつて超獣バクタリと戦ったときに、ウルトラセブンに教えられたことが蘇っていた。
怪獣といえども、むやみに殺してはいけない。冷静な目で、助けられる方法がないか見極めなければならないと。
だが、そこにギーシュやギムリを初めとする男子生徒達が集まってくるにして、悪い予感がひしひしと高まってきた。
「諸君、学院の危機に我ら貴族の子弟が黙って見ていることができようか! 皆に問おう、この学院を守るのは
空中装甲騎士団か? それとも我ら水精霊……いや、WEKCか? 答えは決まっている。さあ、行こう!!」
ギーシュがいつもの調子で演説し、十数名の少年達は、わっと2匹の怪獣に向かっていった。
「いたよ、こっちにもバカが……」
呆れ果てた表情で4人は突撃していくギーシュ達を見ていた。勇敢なのは大変けっこうだが、考えなしに
突撃して、怪獣を怒らせたらどうする気なのか。
たった一人残った良識派のレイナールが寂しそうにやってきて、才人は同情をこめてなぐさめた。
「ごめん、僕は散々止めたんだけど」
「君のせいじゃないさ。まあ、死にゃしないだろ」
外壁の外では、空中装甲騎士団、WEKC、そして2匹の怪獣の乱戦になっていた。
だが、騎士達と少年達はそれぞれの存在が邪魔になりあってうまく戦えないでいた。WEKCも空中装甲騎士団も、
共に相手を誤射する危険があってうかつに魔法が使えない。
そんな様子を見て、ベアトリスはバルコニーから金切り声を上げて空中装甲騎士団を叱咤した。
「なにやってるの! もっとしっかり戦いなさい!! クルデンホルフの名に泥を塗る気!!」
黙っていれば可愛いのだろうが、怒りのせいですっかり地が出てしまっている。ルイズはそんなベアトリスを
見て、「淑女としてなってないわね」と、すっかり自分のことを棚にあげた批評をしていた。
しかしいくらベアトリスが怒鳴ったところで、一度混乱状態になった戦場は容易に復元できない。
一方のパンドラとオルフィは蝿を追い払うように手を振り回しているが、積極的に反撃しようとはしていない。
だがパンドラは口から黄色い煙を吐き出して、それが周囲にもうもうと立ち込めはじめた。
「ゴホッ、煙幕か?」
「こしゃくな! ええいウィンドカッター!!」
「エア・ハンマー!」
風系の使い手が放った魔法の突風で、パンドラの煙幕が振り払われると、彼らは再び杖を振るって立ち向かっていった。
しかし、2度目の地震が学院を襲ったとき、事態は才人の予想すら超えた方向へと進展していった。
再び大地が揺れ動き、大きく裂けた草原の亀裂から丸っこい体つきをした緑色の怪獣が現れた。
さらにそれだけではない。
「あっ、あれはなんだ!?」
空を見上げると、そこには月が3つ浮かんでいた。
いや、1つはどんどん大きくなりながら地上に落ちてくる。とてつもなく巨大な球体が空から降ってくるのだ!!
それは、草原のはずれに地響きを立てて落下すると、まるでアルマジロが元に戻るかのように、身長57メイル
の鳥のような顔をしたとぼけた姿の怪獣に変わった。
「バンゴ……ガラキング」
さすがに引きつった顔をして才人がつぶやいた。
空中装甲騎士団も、生徒や教師達、ルイズ達でさえ、怪獣が4匹というあまりにもあんまりな状況に、ただ呆然と
している。
そして、4匹の怪獣はまるで示し合わせたかのように、魔法学院へ向かって前進を始めた。
立ち向かおうとする者、逃げ出そうとする者、どうしていいかわからない者などでパニックに陥った場を見て、
才人はぽつりとつぶやいた。
「こりゃ……祭りだな……」
続く
では、前編終了です。
今回で、原作1巻最後のイベントであるフリッグの舞踏会ですが、当然この話なりにアレンジを加えました。
しかし空中装甲騎士団って、ああみえて女生徒をナンパするような連中なんですよね。
代理投下終わり。ウルトラの人お疲れ様でした。
>>574 ウルトラの人、代理の人、乙です。
予約ないなら使い魔の炎8話、13時30分から投下します。
支援
ブータの人〜!待ってます。
「姫に近づくんじゃねえ…!!」
傷だらけの烈火。 身を挺して君主であるルイズを守ろうと、渾身の炎を目の前の男に放つ。
しかし、不気味な仮面の男は微動せず、徐々にふたりに詰め寄ってくる。
「レッカ…」
怯えるルイズは烈火の服の裾をギュッとつかむ。
すでに烈火の体は傷だらけだったが、何とかルイズを守るために再び立ち上がった。
なんで…こいつには俺の炎が効かねえんだ!?
この男には、自分の炎がまったく通じない。
その事実に、烈火は恐怖を覚えた。
しかし、その恐怖も長くは続かなかった。
次の瞬間、堕天使の姿をかたどった炎に、烈火は飲み込まれたからだ。
そんな…なんでコイツも炎を…!?
「うああああああああ!!」
「ど、どうしたの!? レッカ!?」
烈火は目を覚ました。 いつも通り、ルイズの部屋の藁の上で。
ルイズはベッドの上で体を起こしていた。烈火の悲鳴に驚いたらしい。
「い、いや…なんでもねえ。ちょっと目覚めの悪い夢をみただけだ」
ルイズに心配をかけないために、多少無理矢理気味に烈火は嘘をついた。
「…そう、アンタも夢をみたのね」
微妙な表情でルイズが呟く。
「アンタ"も"? 姫もなんか夢を見たのか?」
烈火の問いかけに、ルイズの顔が一瞬にして赤くなった。
「そ、そんな訳ないでしょ!? 私が夢なんか見るわけないじゃない!」
ルイズは烈火に背を向け恐ろしいスピードでベットに潜り込んだ。
「何怒ってんだ…?」
烈火は考え込んだが、理由がわからなかった。
夢の中の婚約者が、烈火になっている夢をみたなどと、ルイズに言えるはずがなかったのである。
次の朝、いつも通り朝食をとった烈火とルイズは授業に向かった。
授業では、"風"系統の教師であるミスター・ギトーとキュルケが風と炎、どちらが最強の系統であるかを議論、いや口論していた。
口論の始まりは、ミスター・ギトーがキュルケが最初に最強だとあげた"虚無"と呼ばれる幻の系統をただの『伝説』だと言い、自分の"風"系統こそが最強だと言ったことによる。
烈火は、まあ何が最強であろうと関係ねえけどキュルケが危なくなったら助太刀してやろう、ぐらいしか考えておらず、ぼんやり授業を聞き流していた。
そんなことより気になるのは、今朝の夢のこと。
一体あの男は誰だ?
ただの夢だと言ってしまえばそれまでだが、あの炎…烈火のものとは似て非なるもの。
不意に、ルイズに肩を叩かれた。かなり長い時間考え込んでいたらしい。
烈火が気づくと、教室は一色触発の空気に包まれていた。
すでにギトーとキュルケからは闘気が溢れでている。 ルイズはこの雰囲気を察して烈火に知らせたのだろう。
「風が最強たる所以を教えてやろう。 ユビキタス・デル・ウィンデ…」
ギトーが呪文を唱え始めた。
これは危ねえな…烈火が立ち上がり、戦いを止めようとした、そのとき。
「あやや、失礼しますぞ!!」
あまりに場違いな声に、思わず烈火はずっこけた。
声と共に教室に姿を見せたのは、似合わないカツラをつけたコルベールだった。
「おや、取り込み中ですか? まあよいです…おっほん。 今日の授業はすべて中止であります!」
コルベールは、トリステインの王女、アンリエッタ姫が魔法学院に来ていることを告げた。
急な事態にキュルケとギトーの争いもなし崩し的に終了し、生徒たちは次々と教室からでていく。
ルイズはふう、と息をついた。
「何も起きなくてよかったわ。 私たちも部屋に戻るわよ、レッカ」
「御意、姫」
烈火とルイズも部屋に戻ることにした。
その夜、夕食を終えたふたりは寝る支度を始めていた。
藁の上、手持ち無沙汰になった烈火は、無意識のうちに右手にはめられた手甲を撫でていた。
その様子が気になったルイズは、烈火に問いかける。
「その手甲、いつもつけてるわね。 何か意味でもあるの?」
「いや…なんかこれ付けてると温かいっていうか…お守りみたいなもんだな」
さすがに母ちゃんと一緒にいるみたい、という子供じみたことは恥ずかしくて言えなかったが、烈火はほとんど思ったままを口にした。
ルイズはふーん、と興味なさそうに呟いただけだった。
そのとき、いきなりコンコン、とドアがノックされた。
ルイズの体がビクッと反応する。
「誰だ? こんな時間に」
烈火が立ち上がってドアに向かう。
ノックは規則正しく、初めに長く二回、それから短く三回…。
ルイズがはっとした表情で立ち上がり、烈火を押しのけて扉を開いた。
扉が開かれるやいなや、真っ黒な頭巾をかぶった少女が、そそくさと部屋に入ってきた。
「…あなたは?」
ルイズが問いかけると、頭巾をかぶった少女は静かに、と口元に指を立て、杖をマントから取り出して軽く振った。
光の粉が部屋に舞う。
「…ディティクトマジック?」
ルイズが尋ねると、少女は静かに頷いた。
「どこに耳が、目が光ってるかわかりませんからね」
周りを確認し終わると、少女は頭巾を外した。
現れたのは、神々しいほどの高貴さを持つ美少女だった。
「…誰だ?」
烈火が間抜けな声をあげるのと、ルイズが使い魔の頭をぶっ叩いたのはほぼ同時だった。
「姫殿下!」
ルイズは慌てて膝をついた。
それを見て姫殿下、アンリエッタは笑みを浮かべた。
「お久しぶりね。 ルイズ・フランソワーズ」
支援
「つまり、こちらの王女様と姫は、幼なじみってわけか」
幼少時代のふたりのおてんばという表現では済まされない思い出話を聞いた烈火の言葉に、ルイズは頷いて答える。
「姫さまがご幼少のみぎり、恐れ多くもお遊び相手を務めさせていただいたのよ」
王女はその言葉を聞いて、深いため息をついた。
「あの頃は、毎日が楽しかったわ。 何にも悩みがなくて」
声には深い疲れと憂いが滲んでいた。
「…結婚するのよ、わたくし」
事態を字面通り読みとった烈火は、明るい声をあげた。
「おお、そりゃ良かったじゃねえか!」
「あんたは黙ってなさい!」
烈火は再び、後頭部を強かに殴られた。
「いてえええ! 何すんだよ姫!?」
そんな烈火を無視し、ルイズは沈んだ声で言った。
「おめでとうございます…」
そこでようやく吹っ飛ばされた烈火の存在に気付いたアンリエッタは寂しさを隠すように笑い、ルイズに話しかけた。
「そこの彼はあなたの恋人なの? ごめんなさい、もしかしてお邪魔だったかしら」
今朝の夢を思い出して真っ赤になったルイズは、慌てて否定しようとする。
「いや、俺は恋人じゃねえ、忍だ」
しかし、烈火はルイズが言うする前に自ら否定した。
「そうです、彼はただの使い魔です」
「使い魔じゃねえ、忍」
「どっちだっていいでしょ!?」
「よくねえよ!」
「いいの!」
「よくねえ!」
つまらないことでにらみ合う二人。
そんな様子を見て、アンリエッタの口元には自然に笑みが浮かんだ。
「ルイズ・フランソワーズ、あなたって昔からどこか変わっていたけど、相変わらずよね」
しかし笑みはすぐに消え、再びアンリエッタはため息をついた。
「姫さま、どうなさったんですか?」
「…わたくしは、ゲルマニアの皇帝に嫁ぐことになったのですが…」
アンリエッタの言葉に、ルイズが驚いたような声をあげた。
「ゲルマニアですって! あんな野蛮な成り上がりどもの国にどうして!?」
「しかたないことなのです…同盟を結ぶためなのですから」
ここで烈火もようやく気付いた。 結婚するというのに、アンリエッタが少しも嬉しそうな顔をしない理由。
昔は日本でもしばしばあったこと…政略結婚だ。
「姫さま…」
「しかし、アルビオンの貴族たちは、トリステインとゲルマニアの同盟を望んでいません。
血眼になって婚姻をさまたげる材料を探しているのです」
神妙に話を聞いていたルイズが尋ねる。
「…もしかして、婚姻をさまたげる材料が?」
その言葉を聞いたアンリエッタは、床に崩れ落ちた。
「おお、始祖ブリミルよ…この不幸な姫をお救いください…」
芝居がかった様子で臭いセリフを呟くアンリエッタ。
烈火はわざとらしいその仕草に少しあきれた。
しかし、どうやら君主であるルイズは違ったらしい。
「言って! 姫さま! 何が姫さまの婚姻を邪魔する材料なの!?
このルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、姫さまの危機となれば、何処なりと向かいますわ!」
興奮した様子でアンリエッタに駆け寄るルイズを見て、烈火は思った。 また面倒くさいことに巻き込まれそうだな。
「で、結局俺らが行くわけか」
朝もやの中、鞍をつけた馬を引っ張り歩く。
「仕方ないでしょ。 他ならぬ姫さまのためなんだから」
予想通りのルイズの返事に、烈火はため息をついた。
烈火は、王女や国を守ることには興味がない。
ルイズの正義感の強さやプライドの高さは承知していたし、そこを気に入って彼女を君主にしたともいえる。
しかし、今回の戦いはギーシュとの決闘のときや『破壊の杖』の件とは事情が違う。
アンリエッタは、明らかにルイズを利用したいだけだ。
この任務はあなたにはやらしたくないだのなんだの言っていたが、部屋に来た時点でやらせる気満々である。
ルイズはアンリエッタを盲目的なほど信頼しているから気づいていないらしいが、烈火は任務とはいえ親友を戦地に送り込むアンリエッタがいまいち気に入らなかった。
それに、いくら本人が望んだとはいえ、本意でない政略結婚のための任務をやる気にはなれなかった。
しかし、大切な君主が自ら動くとなれば自分も行くしかない。
烈火は指を立てた。
「質問もう一個」
「何よ」
「何でコイツがいるんだ?」
烈火は自分の隣を歩く金髪の少年を指さした。
気合い十分の顔でふんぞり返っている。 "青銅"のギーシュだ。
「部屋の外で立ち聞きしてたらしいのよ。 可憐な姫さまを救うって、すっかりその気になってるみたい」
はあ、とルイズはため息をついた。
「二人とも、僕がついているんだから大船に乗ったつもりでいたまえ!」
はあ。
烈火もため息をついた。
「あ、そういえば願いがあるんだが…」
「なによ」
ギーシュにルイズが無愛想に言葉を返す。
「使い魔を連れていきたいんだよ」
「お前に使い魔なんかいんのか?」
烈火がさして興味もなさそうに言う。
「もちろんさ。もう来ているよ」
烈火とルイズは辺りを見回し、それから顔を合わせた。
「「どこに?」」
綺麗にハモった。
「ここだよ! でておいで、ヴェルダンデ!!」
すると、地面が盛り上がり、巨大なモグラが姿を現した。
「ああ、ヴェルダンデ! 可愛いヴェルダンデ!
なんて愛らしい! ああ!!」
すさっ!と膝をついてヴェルダンデに頬ずりするギーシュ。
そんなギーシュを烈火とルイズが冷ややかに見つめる。
そのとき、突然巨大モグラがルイズに向き直り、飛びかかった。
「きゃあ! 何すんのよ!」
ルイズの体を鼻でまさぐるヴェルダンデ。 どうやら目的はルイズの指にはめられたアンリエッタからの預かりものである"水のルビー"らしい。
「ああ、ヴェルダンデは宝石が大好きだからね」
ギーシュは納得という顔。
「主人と同じで女好きなのかと思ったぜ…」
烈火が毒づく。
「あんたら、喋ってないで助けなさいよ!!」
ルイズが悲鳴をあげる。
「いや〜、モグラに押し倒される美少女というのも良いもん…フガっ!?」
最後まで言い終える前に烈火はギーシュを殴った。
「良いわけねえだろ!! 姫、大丈夫か!?」
烈火がヴェルダンデをルイズから引き離そうとしたそのとき。
強風がヴェルダンデを襲い、吹き飛ばした。 目を回している。
魔法!?
烈火が振り向くと、そこには剣のような形の杖をかまえた精悍な顔つきをした、長身の男が立っていた。
「誰だ貴様はッ! ぼくのヴェルダンデに何をする!?」
ダメージから立ち直ったギーシュがヴェルダンデを抱きかかえて叫ぶ。
「婚約者がモグラに襲われてるのを見て見ぬ振りは出来なくてね」
冷静な男の言葉を聞いて、烈火とギーシュは目を見開いた。
「こ…婚約者!?」
「ワルドさま…」
ルイズが震える声で呟いた。
「久しぶりだな! ルイズ! 僕のルイズ!」
ワルドはルイズを軽々と抱き上げた。
「お久しぶりでございます、ワルドさま」
ルイズは頬を染めている。
それから、男は烈火たちに向き直って言った。
「驚かせてすまない。 君たちに同行することを命じられた。
女王陛下の魔法衛士隊、グリフォン隊隊長、ワルド子爵だ」
投下終了。
毎回短くて申し訳ない…支援ありがとうございます
間ってたかいが合った。次回も期待
>>574 投下乙です
こうなったらシーボーズやガバドンにスカイドンも出しちまえw
特に暴れたりしてないのにトリステインは滅亡だwww
真面目な話、ウルトラQの怪物も出てきて欲しいな
あのレベルならエース抜きでもなんとかなる……かな?
>>588 おっと声だけ怪獣王なゴルゴスの悪口はそこまでだ。
>>589 そんなやついたっけ?と思ってググってみたら……
中心核がある限り不死身ってスゲェ
↓
しかし野生児タケルに中心核を取られ、警官の銃撃で破壊されるって強いのか弱いのかわかんねぇw
↓
ウルトラマンに登場予定あったけど、レッドキングに取って代わられる
……何て不遇な怪獣なんだ
子供にリンチされて死んだボスにくらべりゃマシさ。
592 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/09(日) 15:59:09 ID:8J+z5fqb
5時くらいに投下します、GBのビタミーナ王国物語の主人公です。
594 :
蒼い使い魔:2008/11/09(日) 16:08:01 ID:V1wIYBJ1
31話完成しました
今回キリのいい場所が見当たらずすんごく長くなってしまいました…
1時間後に投下予定が入っているようなので
早めに終わらせるように16:15くらいに行います。
さるさんくらいましたら…申し訳ありませんが代理の程、よろしくお願いいたします。
では支援だ
部屋に戻ったルイズはベッドの上に横になると、鼻歌交じりに始祖の祈祷書を開く。
どうやらかなりご機嫌のようだ、その横でバージルはコートを脱ぐとデルフとともにソファに投げる。
そして外へと出ようとしたが杖を振って『ロック』をかけたルイズによって鍵をかけられてしまった。
「なんの真似だ?」
ルイズとは逆に足止めされたことに少々不愉快そうな顔でバージルが振り向く。
「こんな夜中にどこに行くのよ?」
「考え事だ、出来れば静かに考えたい」
「ここじゃダメなの?」
「お前もその本について調べたいのだろう? お互い邪魔になるかもしれん
それに少々夜風にも当たりたい」
そうまで言われてしまうとルイズも認めざるを得ない、
『ここにいてほしい』たったその一言が出なかった。
「わ…わかったわ、でもすぐ戻ってきなさいよ!」
そう言うと杖を振り鍵をあける、バージルは閻魔刀を手に外へと出て行ってしまった。
「勝手なんだから…」
ルイズはそれを見送ると、ふと何かを思いついたかのようにベッドから降りた、
そしてソファに歩いて行くと、バージルのロングコートを羽織ってみる。
ルイズには大きすぎでぶかぶかだが、まだ温かかった。
「へぇ、似合ってんじゃねぇか」
それを見ていたデルフがカタカタと音を出す
「そ…そう? 似合う…かな? でもあんたに言われてもね…」
口ではそう言いつつもルイズはまんざらでもなさそうに頬を赤らめる。
そして腕を組み眉間に皺をよせしかめっ面になった
「くだらん…俺には関係ない」
「ハッ! 相棒の真似か! やるじゃねぇか!」
デルフがカタカタという音とともに笑い始める、ルイズもそれにつられて笑い出した。
「………?」
部屋から出たバージルが後ろを振り返る、ルイズの笑い声が聞こえた気がしたのだ
気のせいか…、そう考え広場へと歩いて行く、
魔剣文書の解読はあまり進んでいないが、それでも少し見えてきた部分もある。
とはいえ比喩が深く、人によってはまるで違う解釈もできてしまう故、正しいかどうかはわからないが…。
かつてスパーダは"ある物"の力を使いハルケギニアと魔界を時空ごと切り離したらしい、
それ故、もともと不安定だった魔界とハルケギニアとの境界がさらに希薄になりお互い干渉しにくい状態になっているという、
ムンドゥスの力を持ってすら未だ少量の悪魔しか送り込めていない状況を見ると、時空の壁がいかに厚く高いものかは想像に難しくない。
そして、その時空の壁を超える方法が地獄門である、スパーダが破壊した地獄門は"魔界"側の地獄門であり、
ハルケギニア側の地獄門は無傷だが現在機能を失っているという。
あくまで推測に過ぎないが地獄門を再起動させない限りハルケギニアから魔界へ赴くことが出来ない。
起動の方法はまだ明らかになってはいないが、確実に、少しづつではあるが魔界へと前進しているのだ。
そこまで考えたとき、ふと夜風がバージルの頬をなでる、
初夏とはいえ少し肌寒い、だがバージルにとってはそれが心地よかった。
『魔剣文書』には地獄門を起動させる手段も書かれているのだろう、それはそれで解読を進めればいい。
だがそうやって考えていくうちにバージルの中で一つの懸念が生まれた、
―もし地獄門を起動し、魔界への道を開放した際、この世界が闇に呑み込まれることになるとしたらどうなる?
テメンニグル起動時と同じ事が起こるとすれば? あの時は一時的に魔界と繋がったとはいえ
すぐにアミュレットが分離したため、魔界からあふれ出た悪魔に蹂躙されずに済んだが、今回はその保証はない。
「何を迷う…俺としたことが…」
バージルは頭を軽く振りその考えを振りはらう。
「魔界への道が開けるのならば、この世界など知ったことか…」
そう言いながらも別な方法はないか? もしかしたら地獄門の起動意外にも魔界へ行く方法があるのではないか?
そう考えてしまう自分がいる、それがバージルにとって腹立たしかった。
「次々! 不機嫌な時のアイツの真似!」
「ハハハ! 傑作だ娘っ子! 隠し芸大会なら一等賞ってところだぜ!」
部屋の中でロングコートを羽織ったルイズがバージルの物まねを楽しそうにデルフに披露していく
「じゃあ次は…何にしようかしら?」
「随分と楽しそうだな」
ノリノリで物まねをしようとしていたルイズの背後から声がかかる
「えぇ、そりゃそうよ、楽しいに決まってんでしょ!」
「それはよかったな…ところで人のコートを勝手に着て何をしているんだ?」
その低い声を聞きサー…っとルイズの顔から血の気が引いてゆく、いつの間にかデルフも押し黙っている
ルイズはゆっくりと後ろを振り返る、そこには彼女の使い魔…バージルの姿があった。
「え…ええと…これはその…ち…違うの!」
「ほう? 何が違うんだ?」
バージルの顔にはなんの表情も浮かんでおらず、淡々と言葉を返してくる、それがかえって恐怖心を煽る。
「あ…う…そ…その…って! いつの間に帰ってきたのよ! 戻ってきたらノックくらいしなさいよ!」
伝家の宝刀、逆ギレ、だがその宝刀をバージルはいとも簡単に切り落とす
「それはすまなかった、ずいぶん楽しそうな笑い声が聞こえてきたんでな、
水を差すのも悪いと思い静かに入ってきたんだが…、それで? 人のコートを着て何をしていたんだ?」
「あ…あ…」
―チキ…と鯉口を切る音が部屋の中に響き
窓から差し込む月の光がバージルを照らし影が浮かび上がる、
その姿は人の形をしておらず…悪魔の姿をしていた…。
「きゅう…」
あまりの恐怖にルイズが意識を手放しバタリと倒れこんでしまった。
「あーあ、相棒、そんなに脅かすことねーじゃねーか…」
それを見ていたデルフが声をかける、それに答えずバージルはルイズを抱き抱えるとコートを着せたまま
静かにベッドに横に寝かせる。そしてゆらりと立ち上がると振り返らずにデルフの名を呼ぶ、
「………デルフ」
「な…なんだ? 相棒…?」
その声のトーンにデルフが凍りつく
「……貴様も同罪だということが分かっていないようだな」
その言葉を聞いたデルフが慄く、かつてスパーダと対峙した時と同じ感覚、
今、デルフの視界(?)にはバージルがスパーダとダブって見えた。
「え…ちょ…ちょっとまって…? 話を聞いてお願い! ぎゃあああああああ!!!!」
その晩、寮塔にデルフの悲鳴が響きわたった…。
「ハッ!!」
朝、ルイズが跳ね起きる、昨夜とんでもなく恐ろしいことがあったような気がしたが…、よく思い出せない。
気がつけば何故かバージルのコートを羽織っていた、
「(あれ? なんでバージルのコートなんて着てるんだろう?)」
とりあえず制服に着替えるためにコートをいつもバージルが寝ているソファにかけておく、
バージルの姿が見えないが水を汲みに行っているのだろう。
そう考えていると、今にも消え入りそうなデルフの声が聞こえてきた。
「む…娘っ子ぉ…た…助けてくれぇ…」
「…? ボロ剣? どこにいるの?」
あたりを見回してもデルフの姿は見えない
「こ…ここだよ…天井だよ…」
その声にルイズが見上げるとデルフが柄の部分まで深々と天井に突き刺さっていた。
「何やってんの? っていうか天井には固定化がかかってるんだけど…どうやって…」
「その時点で相棒しかいねぇよ…っていうかこうなったのも娘っ子のせいなんだけどな…」
「なんのことよ…?」
そう言いながら椅子にのりデルフに手を伸ばそうとするが届かない、
「ダメね、あとでバージルに頼みなさい、本当、何があったのかしら?」
そう言いながら昨夜のことを思い出そうとするが、思い出してはならないと本能が叫ぶので中断する。
「と…とにかくあいつの前で恐ろしいことをしてしまったのは確かみたいね、うん…」
顔を蒼くし、首をカクカクを縦に振りながらルイズは独りごちた。
時は少しさかのぼり、太陽がようやく顔を出しはじめた早朝のヴェストリ広場、
朝霧の中、対峙する二つの人影があった、一方は銀髪長身の青年、バージルと
そしてもう一方は蒼い髪をした小柄な少女―タバサだ。
逢引…とは思えない剣呑な雰囲気が二人の間を漂う。
まるでお互いが初めて対峙した時と同じ空気が二人の間に流れていた。
バージルの一日は自身の顔を洗うための水汲みから始まる、
そのため水汲み場に移動した際、タバサと会ったのだった。
「タバサ、何か用か」
「お願いがある」
バージルは静かに振り向きタバサを見る、するとタバサが静かに口を開いた。
「あなたの戦い方を教えてもらいたい」
「断る」
タバサのその頼みをバッサリと切り捨てる、タバサもまさかこうまではっきり拒絶されるとは思っていなかったようだ。
「俺の戦い方をお前が知ってどうする? 戦い方は自身で練り上げ磨くものだ、他者に教わりどうにかなるものではない、
そのくらい、お前ならばわかっていると思っていたが…どうやら見当違いだったようだ」
その言葉にショックを受けたのかタバサが俯く。
「だが…」
バージルは一旦そこで言葉を切ると静かにタバサに向きなおる。
「戦いの中から盗むのならば、話は別だ」
そういうとバージルの前に一本の幻影剣が現れ、それを掴んだ。
空気が変わる、とたん弾けるようにタバサが飛びのき杖を構える。
「先に言っておく、もうバイタルスターはない、気を抜くと…死ぬぞ?」
「わかった」
タバサが頷くとバージルはタバサに向かいゆっくり歩きながら間合いを詰め始める。
悠然と歩いてくるその姿がただでさえ強い彼の圧迫感をさらに増加させる。
「ウィンディ・アイシ…!」
タバサが牽制として魔法を放とうとした瞬間、バージルの姿が消える、
上? いや、背後! タバサが瞬時に振り向き背後からの一撃を杖で受けとめる、
杖で受け止める瞬間、即座に後ろへ飛びのき衝撃を和らげると同時に距離をとる、
「ジャベリン」
後ろへ飛びのいたタバサが即座に巨大な氷の槍を生成、バージルへ向け飛ばす、
精神力を大きく消費するが気を抜いたら一瞬で殺されかねないためそんなことは言っていられない。
氷の槍がバージルへと襲いかかる、おそらく彼のことだ、きっと閻魔刀で砕くはず、タバサはそう確信した。
案の定、バージルは閻魔刀の鞘で払い、氷の槍を打ち砕く、すると砕けた氷の槍は細かい破片としてバージルに襲い掛かった。
だがバージルは瞬時に閻魔刀を抜刀、飛んできた氷の欠片を器用にからめとり、勢いよく振りぬく、それによって生じた剣圧を利用し
こともあろうかタバサに向け全て叩き返す。ジャベリンの魔法の特性をそっくりそのまま利用された。
バージルの剣圧も追加された氷の欠片はまるで散弾のようにタバサに襲い掛かる
「アイス・ウォール」
目の前に氷の壁を作り出し、飛んできた氷の破片を凌ぎ切る、そのまま目の前の氷の壁に向かいエア・ハンマーを放った。
空気の塊が氷の壁に叩きつけられると氷の壁が勢いよく砕け、巨大な氷塊がバージルへと殺到する。
―ガキィン! という音とともにバージルが飛んできた氷塊を真っ二つに叩き斬る、
縦に泣き別れになった氷塊が後ろへと飛んで行った。
「なるほど、少しはマシにはなったか…では」
バージルがすっと右手を出し幻影剣を突き付ける。
「これはどうだ?」
するとタバサの周囲をぐるりと幻影剣がとりかこむ、急襲幻影剣だ、すべての切っ先が円の中心…タバサに向けられている。
「エア・ストーム」
タバサが自分を中心にして竜巻を巻き起こす、強烈な風が吹き荒れ全ての幻影剣を弾き飛ばした。
風が収まり、吹き飛ばされた幻影剣が消滅する、すると今度は何を思ったかタバサが居合いの構えをとり
そのままバージルへと素早く距離を詰め、彼の胸元で杖を刀に見立て振りぬいた、
それは彼の技、疾走居合いを真似たもの、オリジナルに比べると幾分見劣りはするが一応形にはなっていた
「何をするかと思えば…」
バージルはその攻撃を見て、フッと鼻で笑うと、軽く後ろへ飛びのき杖での一撃を回避、したかに思えた
「エア・カッター」
風による不可視の刃が杖の軌道をなぞる様に飛び出し、バージルへと襲いかかる。
「ぬっ…!」
予想外の攻撃に驚いたバージルは反応が遅れ、風の刃をもろに食らってしまった。
服が裂け、切り裂かれた胸部から血が流れる。
だがそれを見てもタバサは油断なくバージルから視線を外さない、この程度では彼を倒せないことをよく知っているからだ。
風の刃を食らい、体勢を崩したバージルにタバサが接近戦を挑む、
お互い、杖と幻影剣で切り結ぶ、タバサが必死に杖を振り素早く打ち込んでいくが、右手に持った幻影剣に全てはじかれ、いなされる
―ズキリと体に痛みが走る、気がつけば全身のいたるところに何かで打たれたような痕跡がある、
杖を振った拍子に生じる僅かな隙、その開いた所を左手にもった閻魔刀の鞘で打ち抜かれていたのだ。
「ぐぅっ…」
鳩尾に柄頭を叩き込まれ後ろへ大きく仰け反ったタバサが身を翻し杖を剣に見立てスティンガーを放つ、
がバージルは体を翻しタバサの後頭部を踏みつけ足場にし頭上を飛び越えた。
小馬鹿にするように後頭部を踏まれたタバサはそのまま地面にべちゃっと前のめりに倒れこんでしまった。
杖がからん、という音とともに転がって行くのが見える、つまり、勝負がついたのだ。
時間にすれば3分もかかっていない、だがタバサにとってはとにかく長い3分間だった。
支援
「終わりだな、気は済んだか?」
バージルの冷たい声が聞こえる、タバサはゆっくり立ち上がり頷く、
「ありがとう」
やはり強い、だけど前回とは違いバージルに一矢報いることができた、それだけでもかなりの前進だ。
攻撃の隙を突かれ、ボロボロにされてしまったが…
「服、ごめんなさい」
タバサが破けたバージルのシャツを見て謝罪する、傷口はすでに再生しているため問題はないだろう。
いつも着ている服ではないが、破いてしまったことには変わりがない。
「気にするな、代わりならある」
バージルはそう言いながら破れて血のついたシャツを脱ぎ棄て上半身裸になると、タバサに振り向いた
「お前も戻れ、俺もそろそろ戻らなければならん」
バージルはそう言うとなぜか固まっているタバサを尻目に水汲みのためのバケツを手に取り水汲み場へと歩いて行ってしまった。
呆然と立ち尽くすタバサの近くに彼女の使い魔、シルフィードが降りてくる
「おねえさま、大丈夫なのね? きゅいきゅい」
声をかけられハッと我にかえる
「大丈夫」
タバサが踏まれた後頭部をさすりながらそう言うと、
鼻血がツーっと流れおちる、それを見たシルフィードが素っ頓狂な声を上げた、
「おねえさま! 鼻血が出てるのね! まったく、女の子の頭を踏みつけるなんて、
おにいさまは少しやりすぎなの! こんどシルフィが注意してやるのね!」
「…眼福」
一人憤慨するシルフィードをよそにタバサはぽつりと呟くと持っていたハンカチで鼻を押さえた。
タバサとの手合わせを終え、水を汲んだバージルがルイズの部屋に戻ると、
すでに着替え終わったルイズが、鼻歌交じりに先日購入したペンダントを首にかけている、
バージルに気がついたのかルイズがぱっと振り向いた。
「あ、戻ったのね…って…あ、あんたまさかその格好で歩いてきたの?」
均整のとれたバージルの頼もしい体つきを見たせいか顔を紅潮させながらルイズが尋ねる
「破かれてしまってな」
「や…破かれるって…一体何をしたのよ…」
「少し遊んでやっただけだ」
バージルはにべもなくそう言うといつも着ている服へと袖を通していく、そんなバージルにルイズは少し顔を赤らめながら尋ねる
「ね…ねぇ、に…似合う…かな? ペンダント…」
「俺のコートを着るよりかはな」
そんなルイズをチラとみるとバージルはすぐに視線を外しコートを羽織ると、さっさと外へと出て行ってしまった。
「もう! ちゃんと見てよ…」
ルイズは少し頬を膨らませながらペンダントをいじる、そして朝食をとるべく部屋を後にした。
「おい! 俺っち放置かよ! 助けてくれ!」
支援
朝食を取り終えたルイズは授業へと出席すべく教室へと入る
「なんだか久しぶりに授業に出た気がするわ…」
実際はそんなことないのだが、机についたルイズがひとりごちる、
すると隣の席にキュルケとタバサがやってきた
「あらルイズ、今日もダーリンと一緒じゃないの?」
「だーれがダーリンよ、あいつなら図書館よ、毎日毎日、
本ばっかり読んで、何が楽しいのかしら?」
ルイズは愚痴っぽく呟くとうーんと軽く伸びをする。
「それ」
タバサがルイズの胸に光るペンダントに気がついたのか指差す
「どうしたの?」
「これ? 昨日バージルに買ってもらったの、あいつが選んで買ってくれたのよ」
すこし自慢するように胸を張り答える。
「へぇ〜、ダーリンからのプレゼント? なんだか歴史的瞬間を見逃した気分だわ。
いいなぁ、私も彼にねだって何か買ってもらおうかしら?」
「ふふん、きっとあんたには頼んだってなにも買ってくれないわよ」
バージルとしては出費を抑えるために適当に安いものを渡したつもりだったのだが
ルイズにとっては何物にも代えがたい宝物になったのだろう。
何しろ"あの"バージルが自ら選んで買ってくれたのだ、
寝る時や入浴時以外ずっと肌に離さずつけているありさまだ。
「そう」
短くタバサは答えると少し俯き読んでいた本に視線を戻す。
その顔は相変わらず無表情だがほんの少しだけうらやましそうにしているようにも見える。
「(ちょっと悪いことしちゃったかな…でも、バージルは私の使い魔だし…)」
ほんの少しだけ胸が痛んだが、自分にそう言い聞かせた。
さて、場面は切り替わりその日の夕方
長い金色の巻き毛と鮮やかな青い瞳が自慢のモンモランシーは寮の自室でとあるポーションを調合していた。
『水』の系統メイジである『香水』のモンモランシーの趣味は魔法の薬…ポーション作りである、
そして二つ名の通り香水作りを得意としていた。彼女の作る香水は独特の素敵な香りを醸し出す逸品と騒がれ
貴婦人や街女たちの間で大人気なのであった。
この日モンモランシーはとあるポーション作りに熱中していた。
それはただのポーションではなく、なんとご禁制、国のふれで作成と使用を禁じられているものである。
モンモランシーは自分の作った香水を街で売り、コツコツとお金をため、
その禁断のポーションを作るための高価な秘薬を購入したのであった。
趣味は道徳に勝る、との言葉のとおり、普通のポーションを作り飽きたモンモランシーは
見つかったら大変な罰金が科せられると知りつつも禁断とやらを作りたくなってしまったのだ。
滑らかに磨り潰した香木や竜硫黄、マンドラゴラ…そして大枚はたいて購入した肝心要の秘薬を入れる。
こぼさぬように細心の注意を払い…一滴一滴、慎重にるつぼの中へ落としていき、慎重にかき混ぜる。
「ふ…ふふ…できたわ、ついに完成よ!」
大きな事を成し遂げたかのような満足そうな顔でモンモランシーは大きく頷く、どうやら目的のものが完成したようだ。
支援
「でもこれ、本当に効き目あるのかしら? 資料に書いてある通りに作ったつもりだけれど…ちょっと不安ね…」
まぁいいか、単なるコレクションに加えるつもりで作ったのだから…とそう考え、
モンモランシーは瓶の中にポーションを移し替え、今まで作ったコレクションの入った棚の中に入れようとしたその時、
―コンコンッとドアがノックされ、モンモランシーは瓶を落としそうになるくらい跳びあがった。
「だ…誰よ…こんな時に…もう…」
机の上の材料や器具を引き出しにしまい、髪をかき上げながら扉へと向かう。
「どなた?」
「僕だ、ギーシュだ! 君への永久の奉仕者だよ! この扉を開けておくれ!」
誰が奉仕者よ、永久が聞いてあきれるわ、とモンモランシーは呟いた。
ほとほとギーシュの浮気性には愛想が尽きていた、並んで道を歩けばきょろきょろと美人に目移りするわ、
デートすっぽかして他の女の子と遠乗りに出かけるわでほとほと嫌気がさしていたのだ。
「何しに来たのよ、もうあなたとは別れたはずだけど?」
「僕はそんなことこれっぽっちも思っちゃいないよ! でも…君がそう思うなら僕の責任だ!」
芸術が好きで〜、君は最高の芸術だ〜と扉の前で語るギーシュに、
「趣味が悪いくせになにが芸術を愛するよ…それじゃ私は趣味悪い芸術ってことになるじゃない」
とモンモランシーは心の中で悪態をついていた。
「帰って、私忙しいの」
モンモランシーが冷たくそう言い放つとしばらく沈黙が走る、
そしておいおいおいと廊下でギーシュが泣き崩れる声が聞こえてきた。
「わかった…そう言われてしまえば、僕はここで果てるしかない、愛する君にここまで嫌われたら
僕に生きる価値なんてこれっぽっちもないからね」
「勝手にしなさい」
ギーシュがフラれたぐらいで死ぬわけがない、むしろ殺しても死にそうにない、
そんなわけでモンモランシーはつれない態度を崩さない、
「さて…ではここにせめて君が暮らす部屋の扉の前に僕が生きた証を…
君を愛した証拠を刻みつけることにしよう」
「ちょちょちょちょっと! 何するのよ! やめて!」
ガリガリガリと何か固いもので扉を引っかく音が聞こえてくる、
「愛に殉じた男、ギーシュ・ド・グラモン、愛に破れここに果てる…っと」
「と、じゃないわよ! 恥ずかしいからやめてよ!」
モンモランシーが扉をあけると、そこには満面の笑みを浮かべたギーシュが立っていた。
「モンモランシー! 愛してる! 大好きだ! 愛してるったら愛してるんだ!」
そしてぎゅっと自分を抱きしめてくる、一瞬モンモランシーはうっとりしてしまった。
ギーシュはとにかくしつこいくらい「愛してる」を連呼してくる、
こうまで連呼されると陳腐を通り越して安っぽく感じてしまうが
そう悪い気はしなかった。
それからギーシュは持っていた包みをモンモランシーに手渡した
「何これ?」
「これは君のために用意した最高級のワインだよ、お金をためて買ったんだ、
どうかこれを僕と一緒に星空の下で飲んでくれないかい?」
どうやら外で星を眺めながら一緒にワインを飲みたいらしい
包みを開けてみると、なるほど、かなり価値の高いワインだ、
ギーシュが自分のために買ってくれたと思うと不思議と悪い気はしなかった。
「そうねぇ…あなたのこと完全に許したわけじゃないけど…別に一緒に飲むくらいならかまわないわ」
「あぁ! ありがとうモンモランシー! やっぱり君は僕だけの天使だよ!」
さぁ行こうか、とギーシュがモンモランシーの手を取る、するとモンモランシーは何かを思いついたかの様に立ち止まった。
「あ、ちょっと待ってて」
「どうしたんだい?」
「まだ部屋の片づけが終わってないの、すぐ終わるから待っててくれる?」
「いいとも、君のためなら永遠にここで待ち続けるよ!」
「はいはい、すぐ戻るから」
そう言いながらモンモランシーは部屋の中に戻ると、棚の中から先ほど作り出したポーションの瓶を取り出す。
そして小さな香水用の小壜に移し替えると静かにポケットのなかに忍ばせた。
「ふふっ…あいつで効果を試すのも悪くないかもね、一時的にも浮気性が治るなら御の字だわ…」
そう呟きながらモンモランシーは部屋を後にし、ギーシュとともに外へと向かった。
支援
双月の下、ギーシュとモンモランシーが姿を現しテーブルへとつく、
テーブルの上にはワインと薔薇の花が飾られている。
テーブルに着くや否やギーシュはモンモランシーをこれでもかとほめたたえ始めた。
立てば薔薇、座れば薔薇、歩く姿はこれまた薔薇、とにかく薔薇を並べて褒め称え
水の精霊まで引き合いに出して褒める褒めるわお世辞のバーゲンセールである。
モンモランシーは、もういいだろうな、と考えすっと左手を差し出す、
あぁ…と感嘆の呻きをもらしギーシュはその手に口づける、許されたのだ。
「あぁ、モンモランシー…、僕の瞳には君以外もう映らないよ…」
そういうや否や唇を近付けようとしたがすっと指でさされた、
「その前にワインで乾杯しましょ、せっかく持ってきてくれたんだから」
「そ、そうだね!」
ギーシュはあわててワインをグラスに注いだ、二人分注いだところでモンモランシーがいきなり別な方向を指さした。
「あら、裸のお姫様が歩いてる」
「え!? どこ!? どこどこ?」
ギーシュは必死になって眼を見開きその方向を凝視する、
「なんだ…どこにもいないじゃな―」
そして何もいないことがわかるりモンモランシーに視線を戻した直後、
―ブスリ、とモンモランシーの指がギーシュの両眼をついた、
「ぎゃあああああああああ!!! 眼! 眼がぁ! 眼がぁ〜〜〜〜!! 」
モンモランシーはどこかで聞いたような悲鳴をあげ転げまわるギーシュを冷たい目で見下ろしながらポケットをまさぐる
「何が永久に私しか映らないよ…さっそく目移りしてるじゃ……あれ!? あれれ!?」
ポケットをまさぐっていたモンモランシーが素っ頓狂な声をあげ体中をまさぐり始める。
「ひ…ひどいじゃないかモンモランシー…ん…? どうしたんだい?」
「ない…! ないのよ!」
制服のポケットの部分を必死にポンポンと叩いているモンモランシーを見てギーシュが怪訝な表情で尋ねる。
「何がないんだい? 財布でも落としたとか…」
「違うの! ポーションよ! さっき作ったばっかりのポーションがないの! あ…」
モンモランシーが何かに気がついたような表情をする、それはさっきポーションを入れたポケット、
そこには穴があいていたことに気がついたのだった。
「あぁぁ…どうしよう…ポケットに穴があいてるなんてそんなベタな…あぁ…落したんだわ…」
「はぇ? そんなに大事なポーションなのかい?」
「そうよだってあれは! …あれは…え…えーっと…何と言っていいのか…その…そ…そう!
はしばみ! ひと振りすればどんな料理でもはしばみ草の味になるおっそろしいポーションなの!」
「うっ…それは恐ろしいね…で、なんだって君はそんなものを持っていたんだい? まさか僕に…」
もう少しではしばみ草の味がするワインを飲まされていた、そう直感したギーシュは震えあがる、がすぐに気を取り直した。
「あぁ! モンモランシー! それが君から課せられた愛の試練なのだとしたら、
僕ははしばみ草の味のするワインの一本や二本! …あー…流石にちょっとキツイかなそれは…あぁいやなんでもないです飲みますハイ喜んで!」
キッと睨みつけるモンモランシーに気がついたのかギーシュが直立不動になる。
「だから万が一! 本当に万が一だけど! 人が飲んだら大変でしょ!? お願いギーシュ! 一緒に探して!」
「わかったよモンモランシー! 必ず探し出して見せる! グラモン家の名にかけてっ!」
すがるようなモンモランシーの頼みにギーシュが薔薇を加えながら気障なポーズをとった。
「カッコわる…」
やっぱコイツでいいのかな? モンモランシーは首をかしげながらどこか遠い目でギーシュを見つめた。
「とはいえ…見つかんないなぁ…」
廊下で目を皿のようにしながら小壜を探していたギーシュがため息を吐く
とりあえずモンモランシーとギーシュは二手に分かれポーションの入った小壜を探しているのである。
「はぁ…誰かに事情を話して手伝ってもらおうかな…流石に二人じゃ効率悪いよなぁ…」
ギーシュがそう呟いていると、廊下の向こう側から歩いてくる人物を見つけた。
「あら? ギーシュじゃない、なにしてるの?」
ギーシュに話しかけてきたのはルイズとキュルケとタバサの三人だ、丁度いい、彼女らにも手伝ってもらおう、
そう考えギーシュは三人に事情を話すことにした。
「実は、モンモランシーの落としたポーションを探しているんだよ、この位の小さな小壜らしいんだけど…」
指で小壜の大きさを再現しながらギーシュは事情を話す、
「へぇ、大変そうね、まぁ、道すがらそれらしいものが落ちてないか探しといてあげるわ」
キュルケが髪をいじりながら了承する、それにつられるようにルイズも頷いた。
「あいつが探すかわかんないけど…一応バージルにも伝えといてあげる」
「いやぁありがとう、助かるよ」
「でもそんなに必死になって探すなんてどんなポーションなの?」
「それが…モンモランシーが言うにはひと振りするだけで
どんな料理もはしばみ草の味になってしまうという恐ろしいポーションらしいんだ…
だから万が一、人が拾って使ってしまったら大変だろう? 直飲みしたら胃と口の中が爛れて死んでしまうよきっと…」
はしばみ草、その言葉を聞きタバサの目が輝く、だがそれに誰も気がつかなかった。
「落ちてるポーションを飲む人間なんていやしないわよ…、でもまぁ、拾ったらちゃんと届けるから安心なさい」
キュルケが苦笑しながら後ろに立っているタバサに話しかける
「タバサ? 拾って飲むとかそういうみっともないマネはやめなさいね?」
「…………わかった」
キュルケに釘を刺され渋々だがタバサが頷く、
「それじゃあ、お願いするよ、僕も探さなくっちゃ…」
三人に礼を言うとギーシュがとぼとぼと中庭へと歩いて行った。
翌日…バージルが熱心に解読を進めている魔剣文書の中身に興味を持ち
時折解読を手伝っているタバサは解読のため彼に頼まれた資料を片手に廊下を歩いていた。
そんな中、広場に出る途中、廊下の隅でキラリと輝くものが目に入る。
「…みつけた」
屈みこみ小さな小壜を拾い上げ呟く、中身は透明の液体が入っている。
間違いない、モンモランシーが落としたというポーションだろう、
「…はしばみ」
タバサはきょろきょろとあたりを見回すと、一度部屋へと戻る
そしてポーションの入った壜よりもさらに一回り小さい小壜を手に取ると慎重に中身を移す、
量にしてわずか2〜3滴、この位失敬してもバチは当たらないだろう、そう考えほんの少しもらうことにする。
そしてその壜を大事そうにポケットのなかへ忍び込ませた。
支援
「これ」
タバサが途中立ち寄ったモンモランシーの部屋に小壜を届け彼女に手渡す
「そう! これ! これよ! ありがとうタバサ〜〜〜助かったわ! これで罰金…ゲフンゲフン! 死者が出なくて済んだわ〜!!」
やけに喜ぶモンモランシーを残し用は終わったとばかりにタバサは部屋を後にする。
「やっぱり悪いことはできないわね…、でもあの子…よく飲まなかったわね…」
モンモランシーはそう呟くと小壜を大事そうに棚の中に封印することにした。
― 同時刻 ―
森の中でねぐらにしている木造の小屋でタバサの使い魔、シルフィードは周囲を確認しちょこんと座ると、
なにやら呪文を唱え始めた。メイジが唱えるルーンとは異なる、口語に近い呪文の調べ
「我を纏う風よ。我の姿を変えよ」
"先住"の魔法だ、メイジの使う四大系統魔法とは違う、ハルケギニアの先住民族、エルフや妖魔が扱う魔法である。
しゅるしゅると風がシルフィードの体にまとわりつき、青い渦となって包む、
渦が消えると…大きなシルフィードの体は掻き消え、代わりに二十歳ほどの若い女性の姿が現れた。
"変化"と呼ばれる、詠唱者の姿かたちを変える先住魔法であった、
古代種たる風韻竜のシルフィードだからこそ唱えられる高度な呪文である、
「う〜〜〜、やっぱりこのからだきらい…歩きにくい!」
シルフィードは美しい女性の姿になると、準備運動を始める、そうしなければまともに動けないからだ。
「でもこれもおねえさまのためなのね! おにいさまにガツンと注意してやるのね! きゅい!」
準備運動を終え、シルフィードは改めて気合を入れると、前回サビエラ村で使うことのなかった着替えを引っ張り出しそれを着る、
「う〜ごわごわするの〜」
シルフィードは文句を言いながら服を着終わると、学院へむけ歩きだした。
「資料」
タバサが広場にあるテーブルに歴史や伝説が書かれている本を置く
「礼を言う」
そのテーブルの椅子に座っている人物、
バージルが短く礼を言うと資料や文献を一冊一冊取り出し目を通し始めた。
それを見たタバサも向かいの椅子に腰かけ本を読み始める。
しばらくそうしていると、トレーにティーポットとカップを乗せたシエスタが歩いてきた、どうやらお茶を淹れてきてくれたようだ。
「バージルさん、お茶が入りましたよ」
「そこに置いておけ」
シエスタがバージルとタバサにお茶を淹れ資料で敷き詰められているテーブルにカップを置く。
「それじゃあ、私はお仕事に戻りますので、また何か用があったら呼んでくださいね」
お茶を淹れ終わったシエスタはペコリと一礼すると学院の中へと戻って行く。
タバサがポケットから小さな壜を取り出すとふたを開ける
「なんだその薬は」
「モンモランシーのポーション、ひと振りするとはしばみ草の味になる」
その言葉を聞き、あの味を思い出したのかバージルは眉間に深い皺を寄せる。
そんな彼に気にすることもなく、タバサはお茶の入ったティーカップへトントン、と小さな壜からポーションを1滴垂らす。
「理解できんな…」
呆れるようにバージルが呟くと手元の本へと視線を戻す、
のこり僅かになった小壜をポケットにしまい込みタバサはティーカップを手に取るとバージルをみる。
支援
「飲む?」
「いらん」
「おいしい」
タバサはそう言うと身を乗り出しバージルのカップに残ったポーションを入れる
「おい…」
「飲んでみて」
「…………」
毒だったらどうするつもりだ、と心の中で毒づきながら…といっても彼にとってははしばみ草も毒であることには変わりがないが…
うんざりするような表情でバージルはタバサを見る、早く飲め、と言わんばかりにタバサが視線を送ってくる
それを無視しバージルが資料へと視線を戻す。
タバサは少し残念そうにすると空になった壜をポケットに戻しカップに口をつけようとしたその時、
一人のメイドがこちらへ歩いてくると、タバサを呼んだ。
「ミス・タバサ、書簡が届いております」
「…………すぐ戻る」
それを受け取ったタバサは席を立ち学院の中へと姿を消した。
タバサの姿が見えなくなったことを確認すると、バージルはカップの中身を念入りに地面に捨てポットのお茶を淹れなおす。
すると見慣れない女性がずんずんと歩いてくるのが見える、その女性はバージルの前に立つと、ストンとタバサが座っていた椅子に腰かけた。
「……誰だ貴様」
席を立ったタバサと入れ替わるように目の前の席に座った女性を睨みつける、
歳はバージルと同じくらいだろうか? タバサのように青い長い髪をした美しい女性だ
「そんなことはどうでもいいの! 今日はちょっとお話があるのね!」
女性はどうやらひどく憤慨しているようだ、バンッ! とテーブルを叩き、負けじとバージルを睨みつけてくる。
「…俺は貴様など知らん、話すこともない、失せろ」
軽く舌打ちをしながら冷たく言い放つ。
「無視しようったってそうはいかないのね! 話を聞くの!」
女性は子供っぽい口調で怒鳴りながらバンバン! とテーブルをひとしきり叩いた後、テーブルの上のティーカップに気がついたのかそれを手に取った。
「ふう…喉かわいた!」
そう言うとタバサが飲もうとしていたお茶を一気に飲み干す。
女性はぷはーっ! と大きく息をつくと再びバージルを見据えた
「今日という今日ははっきり言わせてもらうの! いくら手合わせとはいえ…おねえ…さま…を……ん…あ…あれ…?」
「…なんだ?」
目の前で憤慨していた女性が急に色っぽい声を挙げながら顔を赤くしている。
それをバージルはいぶかしげな表情で見ていると、空になったカップをみてはしばみの味にやられたのだと解釈する。
「…自業自得だな、水場は向こうだ、わかったらさっさと失せろ」
バージルは水汲み場の場所を顎で示し、別な本を手に取る。
「き…き…きゅいーーー!!」
「………?」
どこかで聞いたような声を出し、急に席を立ち手で顔を隠しながら走り去ってしまった女性を
バージルは無表情で見送ると…静かに資料へと視線を戻す。
するとこれまた入れ替わるようにタバサがもどってきた。
「誰かがいた?」
バージルは首をかしげながらページをめくる。
「…知らん女だ、なにやら喚いていたが、知るところではないな」
「そう」
タバサは空になってしまったティーカップを見て再びバージルへ尋ねる。
「…お茶は?」
「さっき言った女が飲んでいった、おそらく舌でもやられたんだろう、飲んだとたん走っていった」
「…………はしばみ…」
タバサが心底落胆したような声を出すとがっくりと項垂れた。
これにて投下終わりです、ご支援ありがとうございました
戦闘スタイルにつきましては、カッコつけるのがデビルメイクライの伝統です。お察しください。
クリア後に使用できるコスチューム違いのバージル、実はダンテ同様、上裸の予定だったそうです、
しかしそれをやると世の女性プレイヤーの皆様が鼻血で大変なことになるとのことでボツになったそうで。
そしてモンモンの惚れ薬を飲んだのは………タバサかとおもったか!?シルフィなのね!!
というわけでバージルの運命やいかに、ではまた…
ということで代理終了
>>610で名前欄を変え忘れました、申し訳ない
なんという禁断の愛ww
バージルの人GJです。
次回にwktk
>>611 sageは半角な
最初のageといい、一時間以上も空けての投下予約といい、
もうちょっと考えないと投下前から変な目で見られて損だぞ
蒼い人乙。
バージルが飲むんじゃないかと思ったのはきっと俺だけだな…。
乙
>>616 兄貴が飲んだら正気に戻したあとが一番恐ろしいなw
>>617 いや待て正気を失った方が怖くないか?
何かヤンデレ状態のバージルがルイズを追いかける姿が見えるんだがw
プロローグ時空のハザマ悪有漢 バキゴスドバ暗殺者(ばばあ!添加物様にはちかづきせんぞ!)
ババロア「ええいどけい必ず秘密をあばいてやるぞ」暗殺者(そうはさせるかしねえ)
ババロア「くやるなワープだ「ぽわわーん暗殺者「まてえばあば!」
人間の世界の森
おやじ(とうさんは森のよごれを調べてくるからな。たかしはここで休んでなさい、)
???「ここはどこじゃ?」暗殺者(ばばあ見っけたぜ!)しつこいのまだやるか?バスガス
ババロア「まきぞえはぜせん!ここは退散じゃ暗殺者「そうはさせんぞどがーん
ババロア「うわあいかん!魔法が暴走するぞい!ぴきゅいーん
異次元の世界???「うう何とか戻れたか頼む森へ連れてってくれ?」
おんぶしてあげますか?
はい
⇒いいえ
???「えちょw
たかしは光る鏡にすいこまれた・・・・・・ つづく
現在の主人公の状態です
たかしレベル1HP15/15MP0/0
けいけんち〇 次のレベルまで4ポイント
もちきん〇ソルト
つよさ8しゅび3すばやさ3
ぶき果物ナイフテンガロンハットよろいふだんぎたてなし
せっとまほう上なし左なし右なし下なし
これはひどい
革命的な臭いがするね
45分ごろから投下します。
支援の準備は出来てるぜ
さてどうフォローする気だろファイティングコンピューターさんはw
クマ…もといウォーズマン支援。
支援
結局ショートしたロシアのポンコツコンピュータ支援
うひょ熊キタァ
ウォーズマンに対する反応が気になるw
気ぐるみの中でぶりっ子しながらクンクン言ってるウォーズマン想像したら涙出てきたw
DMC3乙です
取り敢えず、近づいてくる奴は老若男女膾にしておく兄貴は多分・・・・
まぁ、竜の活造りも風流ですよ
そして支援
>>628 対ネプチューンマン戦やマンモスマンに不意打ちを食らった時の屈辱に比べたらこの位(´Д⊂)
本編があんなことになってしまったぶん、激支援するぜ!
本編で余計なことしかしていないような気がする戦争男さんじゃないか
では、次から投下を開始します。
第八話 使い魔からの期待
「ウ、ウォーズマン、それがあんたの名前?」
使い魔の新たなる名を聞いたルイズは、むしろ自分の中で反芻し確認するために彼の名を口にしてみた。
「そうだ」
「え、えーと、ウォーズマン、その、いろいろ聞きたいことがあるんだけどいいかしら」
「ああ、構わない。だが、少しだけ待ってくれないか」
「え、ええ、いいけど」
未だに調子が出ず、どうにか受け答えをしたルイズからの返事を聞くと、
ウォーズマンはもう一人のほうへ向き、話しかけた。
「シエスタ、頼みがある」
「え、あの、はい、何でしょうか?」
突然話が降られ、こちらも戸惑いながら返事を返すシエスタ。
そんな彼女にウォーズマンは脱ぎ捨てたベルモンドの着ぐるみを差し出した。
「さっきの戦いでボロボロになってしまった。すまないが修繕を頼めないだろうか?
俺はそういうことが得意なほうじゃないんだ」
「え、ええ、そういうことなら任せてください、きちんと直して見せます」
かわいいクマちゃんとの幻想をぶち壊されたし正直爪をもった黒ずくめの男ということで正直怖くもあるが、
ふと気付くと怖い手の爪もいつの間にかなくなっている、引っ込んだのだろうか?
とにかく実際助けられたこともありシエスタの親切心も相まって彼女はそれを引き受けた。
「そうか、すまない。またこの礼は今度する」
「そんな、先ほど助けてくださったわけですし、この程度じゃまだまだ恩を返していませんよ。
また、何かあったら何でもおっしゃってください」
「ありがとう、その言葉に甘えるつもりはないが場合によっては頼むこともあるかもしれない」
「はい、そのときはまかせてください。それじゃ、きちんと直しておきますので」
そう言ってシエスタは着ぐるみを抱え駆けて行った。
クマちゃんじゃなくなって怖そうになっちゃったけど、
何だか優しくていい人かもしれない、そう感じられた。
「えーと、じゃあいいかしら?」
「ああ、かまわない」
話が終わったため、ルイズは中断されていた自分の質問を再開する。
「ねえウォーズマン、あんた、その、なんで、クマの格好なんかしてたの?」
「ああ、もといたところで少々正体を隠してベルモンドとして演じていたからだ」
「もといた場所の都合なら、なんで召喚されてからもずっとそんなことしてたのよ」
「ベルモンドとしてクマの姿で召喚されたからな、そうふるまうのはあたりまえだろう」
「大体さっきの決闘でクマの格好の時たくさん血を流していたのにどうして今は傷一つないのよ!?」
「それはあくまでオーバーボディの時に受けた傷だからな」
「なんか全然キャラが違うんだけど?」
「先ほど言ったようにベルモンドを演じていたからな」
「なに、それで今までくうーんとか言ってたの、変だと思わないの!?」
「すまないルイズ、お前が何を問題にしているのか、何がおかしいのか正直よくわからない」
「いやいやいや、どう考えてもおかしいでしょ!」
はっきりいって話が噛み合っていなかった。
それもそのはず、ウォーズマンが元いた世界ではそんなことを問題にするものはいなかった。
オーバーボディを着ていれば性格が変わってもおかしくはない、
例えばヒカルドという超人などは善悪すら変っていた。
それに中身が出てもそこまでショックを受けられることもなかった。
クマの中から彼や象が出ても取り立ても正体に驚かれたことはあれど、
クマから中身が出たということで騒ぎになったことはなかった。
ついでにいえばオーバーボディを脱げばそれまでのダメージがリセットされるのも当然だった。
だがこの世界では違う。
そう、このハルケギニアは「ゆでだから」の通じない世界だったのだ。
結局二人の押し問答はこの後しばらく続いたのだった。
その日の晩、ルイズたちが食堂へ行くと、なぜはウォーズマンがコックたちから熱烈な歓迎を受けた。
「ウォーズマンさん、クマの修繕はまだですが、それとは別に昼間のお礼があるんです。
どうかこちらに来てください」
そう言ってシエスタがウォーズマンを厨房へ引っ張っていく。
それが気になったルイズは食事を後回しにして少し離れた所から様子を覗うことにした。
「おお、よく来てくれたな、我らの爪」
厨房では、コックのマルトーがそう言ってウォーズマンを迎えた。
ついで回りの者たちからも賛辞が述べられる。
それらの内容は要約すると、
ウギャアー支援
シエスタを助けてくれてありがとう、
同じ平民の身でありながら貴族を倒したあんたの姿に感動した、
御馳走を用意したから食べてくれ、
というものだった。
だが、ウォーズマンは彼らに水を差す事実を告げた。
「すまない、感謝してくれるのはうれしいが俺は平民どころか人間ですらない。
俺は超人、いわゆるこちらで言う亜人のようなものだ」
ウォーズマンは210サントの身長をもち鍛えられた大きい体格であるとは言えまだ人間の範疇と言えるし、
彼らにはマスクをかぶった平民と捉えられていたのだった。
「え、じゃあなんで貴族の使い魔がわざわざ平民を助けたんだ?」
彼らはその事実に対し、そう疑問を持った。
貴族の使い魔とはいえ同じ平民だからこそシエスタを助けたのだと彼らは思っていたのだった。
だが、そうでないのならなぜ平民の上に立つ貴族の使い魔が平民を助けたりするのか?
「確かに俺はお前たちの一員ではない。
だが俺のこの力は理不尽な者たちから弱き人々を守るためにある。
俺はずっとそうやって生きてきた。シエスタを助けるのは当然のことだ」
「で、でも今は貴族の使い魔なんだろ」
「ああ、今の俺はルイズの使い魔となった身だ。
だが、彼女に力を貸すのはそれだけが理由ではない。
まだ召喚されて日は浅いがルイズは立派な貴族になろうと志し、そのために努力している人間だ。
立派な行いによって自然に尊敬されるような、そんな真の貴族に。
俺はその手助けをしたいと思っているし、道を踏み外すようなら止めるつもりだ」
そう、当初は使い魔にならなければルイズが困るという理由で契約をしたウォーズマンだったが、
ベルモンドとして過ごしたわずかな時間の中にも、多少高慢な部分が見えたことがあるものの、
魔法の勉学にはげみ、欠点を克服して向上しようとするルイズの姿を見てきた。
だからこそ真に力を貸し、戦ってもいこうと思ったのだった。
「というわけでもし、これ以降も平民だからと言って理不尽に苦しめられるようなことがあったら遠慮せずに言ってくれ。
貴族の使い魔がどうとかいうことは関係なしにいつでも力を貸そう」
それを聞くとマルトーは感極まったように震え、再び話し出した。
「……いいねえ、感動した!亜人だか超人だか知らないがやっぱりあんたは我らの爪、だ。
ほら、あんたのために腕によりをかけたからじゃんじゃん食べてくれ」
「いや、用意してもらって悪いが、俺は食事を必要とはしないんだ」
「そ、そうなのか、残念だな」
「これだけの立派な料理を無駄にするのは忍びない、料理はみんなで食べるといい。
その代りに俺には、そうだな。酒をくれないか」
「おう、そういうことならとっておきを用意するぜ。
一緒に飲み明かそうや!」
そう盛り上がる厨房を横に、ルイズは頭を抱えていた。
ルイズはウォーズマンの先ほどの話を思い返していた。
ウォーズマンて私にとても期待してる。真の貴族を目指す立派な人間だって。
それでもって道を外したら止めるって。
ということはなにか?私が貴族だからってウォーズマンや平民に偉そうな態度をとったりしたら……
「平民の分際で逆らうんじゃないの、貴族には従いなさいよ」
「……貴族であることを鼻にかけるなど、お前には失望したぜ、ルイズー!」
そう言ってウォーズマンはルイズに飛びかかる。そして、
グサ!
ウォーズマンの爪がルイズのこめかみにつきたてられる。
数日後、ルイズは車椅子に乗り物言わぬ身となって父、ヴァリエール公の前に現れた。
「残念ですがお嬢さんは植物メイジになってしまわれたのです」
「おおルイズ、何という姿に」
数ヵ月後、そこにはマスク(霊命木製)をつけて元気に走り回るルイズの姿が。
「もう二度と貴族にふさわしくない行いはしないわ」
「……はっ、いったい何を?」
なんだか妙な未来図を幻視してしまったルイズは正気に戻ると頭を振った。
とにかく、もう今後下手な行動はとれないということだ。
かといってウォーズマンに文句をつけることもできない。
主人に、驕らず偉ぶらず向上心を持った立派な貴族であることを期待する。
素晴らしいことだ。文句をつけるべき点はない。あと反論するのも怖い。
い、いやでも大丈夫、私はまさに立派魔貴族でありそんなことだできて当然、心配することはない。
あー、でもあいつコックやメイドとも仲良くなってるし何かやってしまったらそこからウォーズマンの耳に入るわよね。
もう一時も気が抜けないんじゃ、いやいや私なら大丈夫よ、で、でももしかしたら……
厨房で盛り上がる彼らを尻目にルイズは頭を抱えていたのだった。
ドクターボンベ乙支援www
いろいろと自重しろwww支援
以上で投下を終了します。
明日のプレイボーイでいよいよウォーズマンが終了になりそうですが、
こちらでは元気に活躍させていく予定です。
>そう、このハルケギニアは「ゆでだから」の通じない世界だったのだ。
そんなもん通用する世界なんて一つしかねーよwww
熊の爪の人乙です。
なんというプレッシャーww頑張れルイズw
GJ
お疲れ様でした。
「ゆでだから」魔法の言葉ですよねw
内容も大いに笑えましたよ。次回も期待してますねー
熊の爪の人乙。
>「残念ですがお嬢さんは植物メイジになってしまわれたのです」
俺の腹筋を返せwwwww
乙です。
彼は本編よりこちらに召喚された方が幸せなのかもしれないw
>642
あれ、俺いつ書き込んだ?
648 :
狂蛇の使い魔:2008/11/09(日) 18:12:08 ID:Qg6hkWLg
熊の爪の人、乙でした!
ルイズがこれからどう接するか楽しみです
それと、18:30くらいから投下したいです
>>648 そっちの方のルイズもどう対応するか楽しみだぜ支援。
車田だからもあるぞ!
ゆでのが酷いけど
そして蛇の人支援
ルイズの幻視にウォーズマンスマイルが出なくてよかったな
652 :
狂蛇の使い魔:2008/11/09(日) 18:30:20 ID:Qg6hkWLg
では、投下します
第十二話
気絶したフーケを捕らえ、タバサとキュルケは元来た道を大急ぎで戻ると、意識を失ったルイズを学院に運び込んだ。
キュルケが強引に引っ張ってきたモンモランシーのおかげで大体の傷は治り、特に別状はないという。
それでも、ルイズは目を覚まさなかった。
結局、事の報告は後回しとなり、タバサとキュルケの二人はつきっきりでルイズの看病にあたることとなったのだった。
そして、その日の夜
「ぅ……ん……」
ルイズが目を覚ますと、そこは見慣れた自分の部屋であった。
キュルケが上からこちらを覗き込んでくる。
その傍らにはタバサもいた。
「やっとお目覚めね。まったく、いつまで寝てるんだか」
おかげで舞踏会に行けなかったじゃない、とキュルケは腕を組みながら言った。
「……ごめんなさい」
ルイズがしょんぼりとした表情で謝る。
それを見て、キュルケは微笑んだ。
「ま、いいわ。それより、あのカメなんとか……」
「仮面ライダー」
タバサが突っ込む。
「そうそう、それそれ。あれって一体何だったの? 詳しく話してみなさいよ」
ルイズは一瞬顔を曇らせたが、しばらくすると体を起こし、ゆっくり口を開いた。
653 :
狂蛇の使い魔:2008/11/09(日) 18:33:03 ID:Qg6hkWLg
ミラーワールド、モンスター、仮面ライダー……
キュルケは、ルイズの口から語られる信じられないような話に目を丸くしていた。
一方のタバサは、表情一つ変えずに話を聞いている。
「……なるほど。だから、そのカードデッキは破滅の箱なんて呼ばれてたのね」
ルイズの話が一段落すると、キュルケがルイズの手元にあるタイガのデッキを指差しながら言った。
「多分、そうでしょうね。……それで、今日あったことだけど……」
ルイズがミラーワールドでの出来事を話そうとした時、突然部屋の扉が開かれた。
「ひっ! あ、アサクラ!?」
扉の前に立つ浅倉を見た途端、ルイズの顔から血の気が引き、青ざめる。
それを見ると、浅倉は笑いながら彼女がいるベッドへと近づいていった。
「いつもの偉そうな態度はどうした? 俺に叩きのめされたのが、そんなに怖かったのか?」
「い、いやっ! 来ないで、来ないでぇっ!!」
ミラーワールドでの恐ろしい体験が脳内に甦り、ガタガタとその身を震わせるルイズ。
そんな彼女と浅倉との間に、キュルケが割って入った。
「ちょっとアンタ! 一体ルイズに何をしたのよ!?」
キュルケがきっ、と浅倉を睨み付ける。
654 :
狂蛇の使い魔:2008/11/09(日) 18:35:16 ID:Qg6hkWLg
今まで浅倉をダーリンとよび、恋心を抱いていたキュルケであったが、今の彼女にそんな気持ちは微塵もない。
むしろ、友を傷つけたことへの怒りの感情の方が強くなっていた。
そんな彼女を浅倉はフン、と鼻で笑う。
「そのデッキを手にした今、こいつも一人のライダーだ。ライダー同士、戦うのは当たり前だろう?」
「なら、これからもルイズと戦い続けるとでもいうの?」
「いやっ!」
キュルケの問いかけにルイズが反応し、膝を抱えて体を縮こまらせた。
その目には涙が湛えられている。
「もう戦いたくない……! もう戦いたくなんかないよ……!」
浅倉はそんなルイズに冷めた目を向けると、再びキュルケの方へと視線を戻した。
「だとしたら、どうする?」
怒りの形相で睨み続けるキュルケに、浅倉は余裕の表情で問い返す。
「……なら、容赦しないわ!」
「ほう、やるか?」
そう言って、キュルケは杖を、浅倉はデッキをそれぞれ取り出した。
そんな二人を、ルイズは心配そうに見つめている。
「待って」
不意に聞こえてきたタバサの声に、皆の視線が彼女に集中する。
そして、タバサの口から思いがけない言葉が発せられた。
「……私が仮面ライダーになる」
支援
656 :
狂蛇の使い魔:2008/11/09(日) 18:37:45 ID:Qg6hkWLg
「ダメよタバサ! 危険よ!!」
タイガのデッキに伸ばされたタバサの手を見て、ルイズはタバサに渡すまい、と両手でデッキを抱きしめた。
しかしタバサが杖を一振りすると、デッキはルイズの元を離れタバサの手に収まった。
「誰かがライダーにならないと、ルイズが食べられてしまう。でも、今のルイズに変身は無理」
タバサが淡々と理由を述べていく。
「それに、まだアサクラに助けてもらったお礼をしてない。私なら、相手をしてあげられる」
浅倉の方を向き、微笑みかけた。
「……本気なの? アサクラには摩訶不思議な怪物がいるし、下手したら死んじゃうのよ?」
納得のいかないキュルケがタバサに尋ねた。「こういうのには慣れてる」
「でも……」
「俺なら誰だって構わないぜ。」
尚も食い下がろうとするキュルケを、浅倉が邪魔をした。
「それに、こいつよりもよっぽど楽しめそうだしな」
そういうと、浅倉はルイズの方へ顔を向けた。
支援
658 :
狂蛇の使い魔:2008/11/09(日) 18:39:23 ID:Qg6hkWLg
「情けない奴だ。周りの人間にまで迷惑をかけておいて、役立たずにもほどがある」
浅倉の放った言葉が、ルイズの胸にぐさりと突き刺さる。
「そのくせプライドだけは人一倍、か。笑わせるな。……少しは身の程を知ったらどうだ?」
ルイズは堪らず、目から涙をポロポロとこぼし始めた。
「私は……私は……」
「ルイズ! ……アサクラ、あんた何てこと言うのよ!! 誰のせいでこんなことになったと思ってんの!?」
キュルケが再び浅倉に食って掛かる。
「俺は事実を言ったまでだ。……寝るぜ?」
それだけ言うと、浅倉は部屋の隅まで歩いていき、床の上に寝転がる。
そして、キュルケが投げ掛けてくる憎しみのこもった視線をよそに、浅倉は深い眠りへと落ちていった。
翌日。
ルイズ、タバサ、キュルケの三人は、学院長室にてフーケ討伐の報告を行っていた。
しかし、いつも通り無口なタバサに加え、ルイズも終始沈んだ表情で黙りこんでいたため、報告はもっぱらキュルケによってなされていた。
ある意味ここまで他人の事が眼中に無い奴も珍しい支援
660 :
狂蛇の使い魔:2008/11/09(日) 18:42:30 ID:Qg6hkWLg
「……というわけで、今回の成功はルイズとその使い魔の活躍があってこそのものなのです」
『ルイズ』の部分を特に強調して、キュルケが報告を終えた。
「なるほどのう。まさか、あのロングビルが……」
オスマンが残念そうに溜め息をつく。
「ともかく、ご苦労じゃった。……そうじゃ、王室にも報告しておこうぞ。きっと何かしらの褒美がもらえるじゃろうて」
先ほどの表情から180度変わって、ニッカリと笑いながらオスマンが言った。
キュルケとタバサの顔にも、それぞれ笑みが浮かぶ。
が、ルイズの表情は相変わらず沈んだままだった。
「ミス・ヴァリエール、どうかしたかの? 元気がないようじゃが……」
「え? あ、いえ。何でもありません。ありがとうございます」
「……そういえば、破滅の箱を君の使い魔殿に渡す約束じゃったな。約束通り自由にしてよいと伝えておいてくれ」
ルイズはそれを聞くと、コクリ、と力なく頷いた。
「それと、ついでじゃ。これも渡しておいてくれ」
そう言って、オスマンは一枚のカードを取り出した。
「これは……?」
「荒らされた宝物庫の整理をしてたら出てきたものでの。破滅の箱に入っていたものとそっくりじゃから、君の使い魔なら使えるじゃろう。
わしには無用の品じゃ。もっていくがいい」
「……ありがとうございます」
ルイズは小さな声でお礼を言いながら、手渡されたカードを懐にしまった。
そりゃトラウマになるわなw支援
662 :
狂蛇の使い魔:2008/11/09(日) 18:45:53 ID:Qg6hkWLg
「ルイズ。ちょっと」
「……なに?」
学院長室からそれぞれの部屋へと戻る途中、ルイズはキュルケに引き止められた。
――バチン!
振り返ったルイズの頬を、キュルケの手のひらが思い切りはたき、赤く染めた。
ルイズが驚いた顔で頬に手を当てる。
「アンタ、いつまでくよくよしてんのよ! らしくもない!」
キュルケが腰に手を当て、ルイズを見据えながら言った。
「いい? フーケに勝てたのはルイズが破滅の箱を使って、ゴーレムの動きを封じたからなの! ルイズのおかげ! わかる!?」
「でも、それは破滅の箱の力で……」
「破滅の箱を使って戦おうと勇気を出したのはアンタでしょう? もっといつもらしく誇りなさいよ!」
ルイズの反論を遮り、キュルケが続ける。
「例え魔法が使えなくても、諦めずに一生懸命頑張ってきたのが今までのアンタじゃない! そんなルイズはどこに行っちゃったのよ!?」
呆然と話を聞いていたルイズが、暗い表情のまま顔を下に向けた。
名門貴族に生まれながらも魔法を使えず、優秀な家族との落差に悩んだ日々。
失敗ばかりで散々ゼロのルイズと馬鹿にされ、劣等感に苛まれ続けた学院での毎日。
やっと成功したサモン・サーヴァントでも、呼び出した使い魔の扱いすら上手くいかず、逆に虐げられる始末。
それらの辛い記憶がルイズの頭の中を駆け巡り、涙となって目から溢れ出てきた。
「……何がわかるのよ」
俯いたまま、ルイズが震えた声をあげた。
「あなたに私の何がわかるのよぉっ!!」
顔をあげてその泣き腫らした表情をキュルケに向けると、ルイズは大声で言い放ち、自室に向かって勢いよく駆け出した。
「あっ、待ってルイズ!」
キュルケが止めようと手を伸ばしたが、走り出したルイズには届かず空を切る。
「ルイズ……」
自らの思いが友の心に届かなかったことを歯がゆく感じながら、キュルケはその場に立ち尽くすのだった。
>呼び出した使い魔の扱いすら上手くいかず、逆に虐げられる始末。
まあ流石に誰が召喚しようが(烈風除く)同じ結果になったような気がせんでもない
可愛そうなルイズ支援
664 :
狂蛇の使い魔:2008/11/09(日) 18:50:08 ID:Qg6hkWLg
同じ頃、ミラーワールドのとある森の中。
フーケとの戦いの最中に気配を気づかれた白い怪物のうち、王蛇の攻撃から免れた一体がそこにいた。
くねくねとした動きで怪物が森の中を歩いていくと、しばらくして広大な湖が目の前に現れた。
トリエステンとガリアに跨がる湖、ラグドリアン湖である。
水の精霊がいることで知られる湖だが、鏡の中の異世界では異様な光景が広がっていた。
今しがた辿り着いた白い怪物と同じ怪物があちこちから集まり、続々と湖へと向かって行ったのである。
不気味な唸り声をあげながら、無数の怪物がひたすら前に進んでいく。
たどり着いた怪物も湖に向かおうと動きだした、その時。
怪物が突然どさりと前のめりに倒れると、手足をピクピクと動かしながら体を丸め始めた。
そしてしばらくすると、背中がボコボコと盛り上がり、固い表皮にヒビが入る。
次の瞬間、白い怪物の体を破り、羽の生えた青い怪物が姿を現した。
青い怪物はすぐに頭に生えた羽を羽ばたかせ、湖の上を飛び始める。
それから、同じようにして数匹の青い怪物が現れ湖の上を舞うと、何処へともなく飛び去って行ったのだった……。
665 :
狂蛇の使い魔:2008/11/09(日) 18:51:23 ID:Qg6hkWLg
以上です。恐怖心 ルイズの心に 恐怖心
では、支援ありがとうございました!
狂蛇の人乙。
このモンスターは……意外と早く終わるのかな?
投下乙です
この様子ではお姫様が来てもアルビオンに行きそうにないですな
……浅倉が勝手に行っちまうのもアリだが
いや、喜んでいくんじゃね?
勿論食う寝る戦うのが目的で、何も気にせずウェールズを船ごと破壊しそうだが。
なんかサイヤ人みたいだな
まあ浅倉は喜んで行くだろうけど、主の方が行きたがらないんじゃないかなと
>>641 おつです。
大丈夫、ウォーズマンにはまだシべリアの地吹雪という奥の手がある。
きっと2人を道連れに・・・あれ?
熊の爪の人乙
かっこいいぜウォーズマン
ゆでだからがなくてもあんたはすげえよ
>>591 そんなのに全滅させられたチームはシリーズ一不遇だな。
リュウやウォーズマンみたいなしっかりした大人ならともかく朝倉だったらこうなるよな・・・
674 :
sage:2008/11/09(日) 21:31:45 ID:H3jD/wpK
熊の爪の人、狂蛇の人、乙です。とくにモンゴルマンネタ死ぬほど笑った。
ところで、10分後より3レスほどの一発ネタを投下してもよろしいでしょうか?
>>674 sageを正しい場所に記入できるのなら許可する。
テンプレも読めない人はお断りします( ゚ω゚ )
>sageを正しい場所に記入できるのなら許可する。
てぃひやぁ、申し訳ありません。ハズカシイ...
3時間ほど廊下で正座してきやす。
/|\
/. | \ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
/ .. .......| ゚ω゚ \ <お断りします!お断りします!
/_.............| _\ \_________
\ ;;;;;;─_|_─:::../
\ ;;;;;; ;;;|:::::: .../
\ ;;;;;!::.../
\|/
>>678 \\
\\/|\
/. | _\
/ .. .......| 能 \
/_.............| \\\
\ ;;;;;;─_|_─ \\
\ ;;;;;; ;;;|:::::: .../ \\
\ ;;;;;!::.../ \\
\|/ \\
ってかただでさえ容量圧迫してるスレで無駄AAとかどうなの?
>>674は反省してるみたいだし
俺は別に投下してもいいんじゃいかと思うがどうよ?
3時間正座したら日付が変わる。
つまり別のIDになってからさりげなく投下するのでは?
んー、ルールを守るなら別にいいじゃないか。
わざと破るようなやつならいかんが。
兄貴乙。
まさかのシルフィか……龍⇒魔人の片思いとか
ちょっとwktkが止まりませんよ!
人間と半魔人より竜と半魔人の方が相性的に良い気がする
・・・色々な意味で
獣姦になるのかな?
竜、魔、人か……
どっかで聞いたような
まっさきにスレイヤーズが浮かんだ
熊の爪の人乙!!
ルイズのラーメンマン化妄想に、俺の腹筋が崩壊しちまったぜww
おマチさんやワルドが、ラーメンマン化する可能性が残っているのんだよなぁ…。
それはそれで面白いがw
>688
エルフにバカウケの駄洒落ドラゴンか。
クマーッ!!!乙
ゆで世界のハルケギニア侵略が進んでるww
>>688 モーニングスターと壷屋をはじめるんですね、わかります
>>664 気になって一気に一話からよんでみた
主人公がフリーダムすぎて噴いたw
ワンピースから神・エネルを召喚したとして
やっぱルイズは「私は貴族よ!神とか言っても所詮平民のアンタは私に逆らう権利なんて無いのよ!!」
見たいに言うのかな
即効でエルトールくらいそうだけど
>>695 悪党キャラ召喚したら大体そういうパターンになるだろ。
ルイズの力で屈服させられるような悪党なんてそうはいないし、いても常人と大差ない。
むしろ自分の欲を満たすためにルイズが利用されるほうが自然だ。
正座してきた674です。
チンケな単発ものですが1:30より投下してもよろしいでしょうか?
支援の影武者
支援しようじゃないか。
では、いかせてもらいます。ギャグ……と言うかシュール系?
ゼロのエスパー(モテモテ)
学生時代には「ゼロのルイズ」、そして後世の歴史書には別の字名で記されることと
なる少女が呼び出した、前代未聞の「人間の使い魔」。
しかし……と、彼を呼び出した少女は考える。アレを人間の範疇に含めてよいもの
か、と。
その男は、ひと目見ただけでは、ちょっと変わった外套を着ただけの平民に見えた
のだが、実際にはトンデモな代物だったのだ。
まず最初の異変は呼び出した日の夜、いや正確にはその翌朝。
妙な肌寒さを感じて目を覚ましたルイズは、自分の部屋……どころか、トリステイ
ン魔法学院の女子寮そのものが壊滅し、あたりが瓦礫の山になっていることに気づい
て唖然とする。
貴族の子女を預かるこの学院の建物をここまで徹底的に破壊するとは、スクウェア
メイジの1個師団でも襲ってきたのだろうか。
しかし、その後、妙に使い魔が挙動不審なので問い詰めてみたところ、この惨状は
彼の仕業だと言う。しかも、その理由が「悪夢にうなされて、ついうっかり」らしい。
無論、その時、ルイズはそんなホラ話を信じたりはしなかった。むしろ「見慣れぬ
異郷の地に呼び出された揚句、寝ているあいだに建物が倒壊するなんて災難にあって、
おそらく気が動転しているんだろうなぁ」と同情し、ちょっとくらい優しくしてやろう
かと思ったくらいだ。
しかし……幾多の出来事を経た今ならわかる。彼はまぎれもなく事実を語っていた
のだと。
その次に起こった事件は、「中庭でのギーシュとの決闘」だが、このパッと見タダの
冴えない(自称・カッコいい)平民の男は、手も触れず、それどころか呪文さえ唱えず
に、離れた位置から薔薇を象ったギーシュの青銅の杖を捻じ曲げてみせた。
……まあ、杖だけでなく、ギーシュの手足の骨まで捻じれて折れてしまっていたが、
それは些細なアクシデントだ。いや、冗談や誤魔化しではなく、その後、彼女の使い
魔が起こした数々の奇跡とも災厄とも呼べる出来事を思い起こす限り、むしろ骨折く
らいですんで幸いだったと言えよう。
彼が起こした騒動のうち、主なものをあげただけでも次のようになる。
・学院を襲撃してきた盗賊フーケのゴーレムの手足をちょん切って、代わりにギーシュ
のワルキューレの手足を生やす。
(無論、自重を支えきれなくてゴーレムはコケて潰れた)
・フーケを撃退した功績で舞踏会に出席したが、豪華な煮込み料理を目の前にして
なぜかスプーンがひとりでに曲がってしまい食べられず、癇癪を起こした彼は、
学院中のすべてのスプーンを曲げてしまった。
(そのあと、プライドを捨てて手づかみにしようとしたが、なぜか手を押えて悶絶
していた。料理が熱かったのだろうか?)
・学院にアンリエッタ王女が来た際の使い魔披露で、ウケを狙って空の月を2個とも
破壊し、そのあと元通りに組み立てた。
(ただし、パズルが下手なのか、パーツが大量に余っていた)
・アンリエッタ王女の密命でアルビオンに行くことになったが、空気を読まず、
アルビオンまで瞬間移動し、勝手に手紙を取って来て王女に手渡し。
(結局、王女の真意──ウエールズ王子に亡命してほしいという伝言を伝えるため、
もう一度ルイズとともに行くことになったが)
・瞬間移動を禁止したため、彼が呼んだ巨大な鳥?みたいなモノに乗っていくことに。
大きさに見合ってとても速かった。
(その日のうちにアルビオンから帰ってくると、なぜか、タバサとワルド様が学院の
中庭の隅っこで体育座りしてブツブツ言っていた)
・アンリエッタ王女の結婚式典の祝賀に来ていた他国の戦艦(おもにアルビオン船籍の
もの)を勝手に動かして、戦争ゴッコして遊ぶ。
(この間乗った「ロプロス」とかいう鳥より速く動かしたりしていたが、しばらくしたら
飽きたのか放り出していた。中に乗っていた人たちのことは怖くて聞いていない)
・イチャモンをつけてレコンキスタが攻めてきたことを知ると、突然「はいっ」とか
「えい」とか「ねーんーりーきー」とか言いながら床をゴロゴロ転がりだした。いい加減
彼の奇行には慣れてたので放っておいたが、しばらくしたら、いかにも何かをやり遂
げたような顔で床から起き上がってきた。
(あとで聞いた話によると、なぜかその時間にトリステインに攻めてきていたレコン
キスタの船が一隻残らず爆発四散したらしい……な・ぜ・か!!)
704 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/10(月) 01:36:51 ID:lePJl+P4
ほかにも細かいことを数えていけばキリがない。
もっとも、己の使い魔の非常識さに慣れた(あきらめたとも言う)ルイズは、
いまさらちょっとやそっとでは驚かなくなっていた。
それに、有能とも優秀とも言い難いし、手綱をとることはとんでもなく困難だが、
強大な(それこそブリミルに匹敵するくらい)力を持つ存在であることは確かなのだ。
ただひとつだけ気になることがある。それは……。
「ねぇ、リンゲー、あなたの後ろにずっといる、涙を流しながら拳を構えている
軍人風の男は何なの?」
「──B・B」
* * *
以上終了。「チャッピーと愉快な下僕ども」より、連作短編の主人公「笛座輪芸」氏を召喚。
ながい閣下のシュールさを文章で表現するのは、わっちには無理と思い知りました。
一応、彼はヴィンダールヴ(ロプロスとロデム、ヨミを呼べるから)という設定。
ちなみに、当初は、ガンダールヴがゴメスでロマリアに、ミョズニトニルンが
ファーザーでジョセフに、そして「記すことさえはばかられる」のが"らすかる"で
テファに呼ばれた……と、ながいけんワールドで妄想してましたが、シュール
過ぎて断念しました。お目汚し失礼。
懐かしいネタできたなぁ。
心の魔王召喚を夢想してあきらめた事を思い出す。
誰もいない。
10分くらいに投下してみよう。
ボクと魔王のスタン書こうとして諦めたな
いるから支援できる
その日の朝。
段取りをあらかじめ整えていた啓太は、軍議の席で満を持して
アンリエッタ姫たちにかねてよりの計画の核心を提案した。
「姫様、明日は決戦です。故に姫様には、一肌脱いでいただきたい。国家百年の
繁栄のため、本日ご入浴なさり、入念に体を磨き上げていただきたいのです。」
軍議の主だった顔ぶれは、戦列艦の艦長達、艦隊指令とその副官達、ルイズ、
啓太等だ。いずれもわかったようなわからないような顔できょとんとしている。
「失礼、最初から説明いたしましょう。連合艦隊がアルビオンに上陸した際には
レコンキスタ艦隊の戦列艦は本隊45隻、分散警戒に40隻程度ありました。
このうち、我々は10隻を大破もしくは撃沈。8隻が中破拿捕して後送修理中、
17隻をほぼ無傷で捕らえ補修の後連合艦隊に組み込んでおります。」
現在(偽装)連合艦隊の陣容と司令官はこのようになっている。
ロマリア黒色枢機卿艦隊(=トリスティン第1艦隊)司令マザリーニ枢機卿。
旗艦:戦艦メルカトール号改 戦列艦9 等
トリスティン艦隊(=トリスティン第2艦隊)司令アンリエッタ・ド・トリスティン王女
旗艦:元レコンキスタ戦艦ニューヤーク→タイコンデロガ 戦列艦9 等
アルビオン親征艦隊(=元レコンキスタ艦隊)副司令サー・ヘンリー・ボーウッド
旗艦:元レコンキスタ重巡洋艦ワシントン→ヴァンガード 戦列艦9 等
ゲルマニア武装商船団(=ツェルプストー商船団+)司令キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー
旗艦:大型武装商船 我が愛しのヒルディア号 戦列艦4 等
ガリア輸送船団(ガリア商船の寄せ集め)司令ガリア義勇傭兵団長シャルロット・シュヴァリエ・ド・エレーヌ・オルレアン(タバサ)
旗艦:大型客船シャンパーニュ 戦列艦2 等
戦列艦合計33隻。
いずれの艦隊もピケット艦、輸送船、客船等の補助艦艇多数、
他にスループ船やガレー船、大型武装商船などが補助戦力、という陣容である。
元レコンキスタ艦隊の半分はアルビオン親征艦隊の名の下に配備されている。
残るレコンキスタ戦列艦は他艦隊の戦力増強のため分散配備されていた。
アルビオン親征艦隊とトリスティン(第2)艦隊は大抵行動を一つにしていた。
アンリエッタの元では、彼らの士気と忠誠が大いに上がるからだ。
これに、当事者たるアルビオン本国艦隊の生き残り40隻を加えると、
戦列艦の数は73隻にまで膨れ上がる。
対してレコンキスタの戦列艦は80隻から50隻に激減。
しかし艦のサイズと砲門数、竜騎士数で言えばなお連合艦隊と充分に渡り合える。
特に全長200メイル、砲門数100に及ぶ巨艦レキシントンの存在が
この数の差を補う中心であり、連合艦隊にとっての脅威だ。
「さて、計画は、いよいよ最終段階一歩手前まで来ました。ほぼ予定通りです。
艦隊は補給と将兵の休養のために1日こちらで待機。そして明日はいよいよ
スコッチ城のレコンキスタに総攻撃をかける、という予定となっております。」
一同、うなずいた。
現状通りの戦略を、いくつかの予想の一つとして以前聞かされていたからだ。
が、啓太の目算としてはかなり予定が狂った、と考えている。
本来ならスコッチ城までの間に追撃で大きな戦果を上げて戦力差を大きくし、
包囲兵糧攻めの構えを見せることで寝返りを誘い、スコッチ城を内から開門させて
一気に殲滅するつもりだったのだ。敵を城に追い込んで一網打尽。
これなら、後顧の憂いはきれいさっぱり無くなる。
計画では明日で完全勝利だったはずなのだ。
しかし、意外と統制が行き届いているのか、あるいは充分な金を渡しているのか
(おそらく後者だろうと予想しているが)レコンキスタに雇われている
傭兵達の離散が予想よりはるかに少ない。レコンキスタ貴族の離反も少ない。
その上内通貴族からの情報がさっぱり入ってこなくなった。
(「上のほうのかなりが心を操られているのか? だとすればかなり厄介だ。」)
と啓太は考えている。しかも、後ろに控えるサウスゴータには
運び出しきれなかった兵糧が充分あり、街を奪い返されてしまった。
現在兵糧の輸送が行われている。妨害部隊を出してはいるが、どうなるか。
そしてスコッチ城は防御のしやすい都市だ。
市民兵を集められでもしたらさらに厄介な事になる。
それでも、やるしかないのだ。策は、まだまだ尽きていない。
「すでに我が方の地上部隊はアルビオン軍と共に陸上を移動しつつあり、
今日の夕方にはスコッチ城近辺に展開予定です。
また、アルビオン本国艦隊、地上軍に輸送船を差し向けて補給を行っており、
明日の決戦に必要な物資は充分、感謝するとの返書を受けております。」
啓太は、黒板にチョークで図解し、明日の戦略をいくつかの想定ごとに書き、
いずれの場合でも主だった者達が間違わずに動けるよう入念な説明を行った。
質疑応答の時間も随時とり、間違いや見落としがあれば随時変更を加えていく。
しばしの時間の後、少なくとも前日としては最高の意思疎通が図られた。
「さて、問題はこの後です。」
一同は、又も怪訝な顔になった。ド・ゼッサールが質問する。
「この後といっても、勝利の後は宴をはって祝うのではないのかね?」
「さすがですな、ド・ゼッサール殿、満点の答えでございます。」
啓太は、にこりと笑った。
「ですが、それは軍人としての採点であれば、でございます。」
啓太は、顔を参謀の表情から教師の表情へと変えた。
「そも戦争とは政治的問題解決手段の一つに過ぎませぬ。話し合いでどうしても
合意妥協できぬ相手、解決出来ぬ相手に力ずくで要求を飲ませる手段です。
そして政治とは国家の経済活動を円滑に発展させるために存在するのです。
貿易によって足りないものを買い取り、余ったものを売ってやれば物価が安定する。
生産性が良くなり下層の国民が豊かになれば経済が活性化する。
生産、輸送、売買が活発になれば税は増え、貴族は豊かになる。
もちろん、領地が増えればそこからの収入が増えるのでより豊かになる。
これらを推し進めて貴族の収入を増やすことこそが政治の目的です。」
啓太は、普段公の場ではけして言われぬ統治の核心をずばりといった。
名誉在る戦いと慈悲と賢明さによる統治。美化され、糊塗された本質をさらした。
身もふたも無い言い方であるが、統治を学ぶ者は知るべき真実である。
「すなわち戦争とは商売のための交渉手段が一つ、ともいえるのです。
であれば戦争をするからには儲けねばならず、赤字を出すなどもってのほか。
政治的背景を考え、必要な戦果と費用対効果を推し量って、戦争の後どうなるか、
と常に考えねばなりませぬ。」
軍人達が、納得の顔になったり、興味なさそうになったりと千差万別の顔をしていた。
対して政治家の分類に入る思考を持つものたちは大いにうなずいている。
「我々は、風石と硫黄を初めとする秘薬や兵糧などの軍需物資、金貨を大量に
手に入れました。ですが足りません。姫様が救援に来た以上領土を奪うはならぬ、
それでは道義に外れると難色を示しておられますしね。
よって私はここに、史上最大の戦利品を手に入れるための作戦を提案したい。」
啓太は、アンリエッタの顔をひたと見つめた。
「姫様には、体を磨き上げ、着飾って戦勝の宴にご出席いただき、
プリンス・オブ・ウェールズ殿下よりプロポーズの言葉を引き出していただきたい。
そして、戦勝の宴をそのまま結婚式の宴とするのです!」
「「「「な!!!」」」
一同、絶句した。
啓太の計画の意味を、皆の脳味噌が理解するまでの間に、説明を続ける。
「勝ち取る戦利品はすなわち未来の王! トリスティンが失って久しい国家の要、
女王の隣に立つべき国王を、姫様の美貌を武器として手に入れていただく。
そして、両国ともただ一人しか正当な継承者がいない以上、いつかアルビオンと
トリスティンは一つとなり、水と風の連合王国が誕生する事になる!」
すでに立つ事すら間々ならぬといわれるジェームズ一世が崩御した暁には。
啓太はアルビオン系艦長達の顔を見渡した。
「我らはレコンキスタの占領する領土を数多く解放しました。普通ならそれは
占領した者、開放した者の領土であり、トリスティンの物となる。
姫様は渋い顔をなさいますがそれが通常。これだけの軍を動かし犠牲を払い、
領土の一つも得られないとなれば逆に姫様の責が問われましょう。
王子の持参金として、一部領土を、という申し入れをした場合、
ジェームズ一世陛下はどのようにご判断をなされると思われますかな?」
彼らアルビオン貴族は、“アルビオン王女”アンリエッタの元で戦いながら、
常に領土を失う不安を抱えていた。しかし。ウェールズ王子の持参金ということは、
彼の直轄領として機能することを意味する。これは両国の仲が険悪となり、
離婚ということになればアルビオンに領土が復帰することを意味する。
王子が二人以上生まれれば、片方にアルビオン王として立ってもらい、父王から
領土を継承した、という形でアルビオン領に復帰させることも出来る。
できずとも2代に渡ってアルビオンの血を受けた“アルビオンの王子”
の所領となるだけ。血脈でトリスティンを乗っ取ることすらありえるという
願っても得られ無い素晴らしい提案だ。しかし、これにまともに答えるのは僭越だ。
促されたサー・ヘンリー・ボーウッドは、慎重に答えた。
「わたくしは軍人、そのようなことを判断する立場にありませぬ。
ですが、お二人のご結婚に関しては、真におめでたいと感じる次第であります。」
これで彼らは、充分な根回しに動いてくれると思われた。
啓太はトリスティン貴族達の顔を見渡した。
誰もが、実にうれしそうな顔をしている。王太子の持参金となれば
広大な領土が得られる。王太子の直轄領とはいえ、戦争で貴族の減った
アルビオンなら人材が枯渇しているだろう。領主としてトリスティン貴族を
滑り込ませるのは容易だ。貧乏貴族あるいは次男三男以降で軍人として安月給で
働くしか生きる道の無かった彼らが爵位持ちとなる道筋が示された事になる。
そして、最前列に座るアンリエッタは。
「ケータ殿、素晴らしい妙案ですね。わたくし、がんばってみるつもりですわ。」
事前に聞かされていて心積もりしていたとはいえ、衆目の前で公にされると
また格別だ。アンリエッタは真っ赤な顔でこの上なく満足そうに微笑んだ。
啓太は、マザリーニを中心とするロマリア神官達を見た。
偽ロマリア艦隊の体裁を整えるために乗り込ませた彼らは、浮き立っている。
「挙式の際には、是非とも皆様にご尽力いただかねばなりませぬが、
ご了承願えますかな? 無論、取りまとめはマザリーニ枢機卿にお願いしたい。」
事前に相談を受けていたマザリーニが、冷静な目でうなずいた。
「無論です。戦場ゆえ満足な式は挙げられませぬが、なに、方法はあります。
荘厳かつ質実剛健な式を取り仕切って見せましょうぞ。」
「お任せあれ!」「見事な式にして見せましょう!」「大任じゃな!」
名目上とはいえ艦長として幾多の手柄を立てた上に華やかな式典を取り仕切る。
彼らロマリア系神官達の目には、栄光の未来と寄進の山が見えていた。
啓太は、ゲルマニア武装商船団の船長達を見た。
彼らは、巨大な儲け話が目の前にあることに気づき、舌なめずりをしていた。
「結婚式は戦場でやる以上戦勝の宴とさして変わらないものになりますな。」
「はい。ですので、落ち着いたら披露宴を別に行う事を提案するつもりです。」
「(儲け話を目の前に積んでくださるか!)物資の調達はお任せくだされ。」
「万難排して必要な物を調達しましょう。(両王家に取り入るチャンスだ!)」
「おお、お引き受けくださいますか。実に頼もしい、ありがとうございます。」
強大な軍事国家となるトリスティン=アルビオン王国がゲルマニアを圧倒し、
さらに領土を大きく広げようとするかもしれない。
しかし彼らは気にしていなかった。ゲルマニア皇帝にとっては災難だろうが、
彼ら商人にとっては好機だ。今回の手柄を武器に連合国の商人として軍需物資を
供給して勢力を拡大すれば良いだけだ。ゲルマニアはもともと成り上がりの
寄り合い所帯、一体感の希薄な国なのだ。キュルケは、うっそりと笑っていた。
啓太は、ガリア義勇傭兵艦隊より打ち合わせのためにこちらに来て、
ただ一人会議に参加しているタバサを見た。
タバサは、啓太がここまでしてくれた事に感動していた。
(「両国が合併すれば、なんとかガリアに対抗できないこともなくなる。
ゲルマニアやロマリアが牽制をしてくれるのが前提とはいえ、正面からガリアと
戦うことも可能。ほんの数日でここまで状況が好転するなんて!」)
タバサは、無言で立ち上がると、啓太に向けてお辞儀をした。
一同を見渡した啓太は、問うた。
「偉大なる指揮官、勝利の女神の化身、アンリエッタ姫殿下を女王と仰ぎ、
アルビオン本国艦隊総司令官として活躍するウェールズ殿下を国王と仰ぎ、
いずれはアルビオン=トリスティン連合王国国民となる事に賛同するものはいるか!」
「「「「「「諾! 諾! 諾! 諾! 諾! 諾!」」」」」」」
すさまじい拍手と口笛、軍靴踏み鳴らす足音とともにシュプレヒコールが
部屋を満たした。全員総立ちである。
「明日、勝利をアンリエッタ姫殿下の名の下祝おうぞ! トリスティン、万歳!」
「「「「トリスティン、万歳! トリスティン、万歳! トリスティン、万歳!」」」」
「アルビオン、万歳!」
「「「「アルビオン、万歳! アルビオン、万歳! アルビオン、万歳!」」」」
相変わらず消費はぇーなこのスレ
いぬかみが相手なら支援翔吼拳を使わざるを得ない
この後、啓太はアンリエッタ姫の部屋で男を追い出すと、説明を行った。
「明日から3夜はウェールズ殿下を離しませぬ様、心してくださいませ。」
新婚となるのだから当然睦まじく過ごすのに?
と疑問を呈するアンリエッタに、啓太は東方の秘占儀だといって、オギノ式で
計算したアンリエッタの受胎確率の高い3日間をもっともらしく伝えたのである。
ちなみに、姫の生理周期はルイズに調べさせた。
姫の女官として、姫が体調を崩される周期を知っておかなければならない、
とうまいこといって、姫様付きの女官達から聞き出させたのだ。
目的はもちろん、コマした姫様と効率よく子供をこさえて愛人(できれば国王)
の座を不動のものとするためである。
これが、別の男相手ではあるが非常に役立ったわけである。
こうして啓太は、姫様に
「是非ともお風呂に入らなければならない!」
と思い込ませたのである。早速バスタブの手配をと騒ぎ出すルイズに、
啓太は待ったをかけた。
「それはちと無理がある。」
「え、なんでよ? 姫様がご入浴なさるだけなら充分でしょ?」
「何を言ってるんだ、ここにお姫様が4人も揃ってんだぞ? それで済むもんか。」
(中略)
「じゃあどうするのよ? 危ないから港の宿でお風呂に入るのは無理なんでしょ?」
「うん。その通りだ。つい先日まで敵地だった故に地の利が悪すぎる。
老舗故に宿の内部構造が敵によく知られていて、モグラ戦法なり抜け穴なり
隠し部屋なりで侵入や工作をしやすい場所で姫様を無防備な裸にする
なんてとんでもない。警護をする武闘派女官もいないしな。」
「ブトウハ女官って何、ケータ?」
「私も始めて聞くわね。何なのダーリン?」
「要するに護衛役もできるように戦闘メイジとしての訓練を積んだ女官だ。
男じゃあ女性を護衛できない場所や場面がどうしてもあるだろう。
…そうか。女官は戦闘訓練なんて積まないのか。つまり姫様のご入浴時の護衛は
元からいないと。道理で止めるはずだ。そうなると、やっぱりあれしかないか。」
「あれ?」
ルイズの問いに、啓太が説明した。
「浴場を荒野のど真ん中に一から建てる。それも数時間で。これなら
地の利の差は無いも同然。新しいから内部構造は探られようが無い。荒野だから
地上や空中から近づけば一発でわかるし、モグラ戦法で穴を掘ろうにも
時間がかかりすぎて無理だ。やっつけ仕事で装飾なんかはほとんど無い、
質実剛健な作りになるけど、たった一度のご入浴のために浴場を建てるなんて
贅沢もまず無いだろうからその辺りでグダグダ言う権威主義者も黙るだろう。」
そういうと、ルイズからアンリエッタに向き直った啓太は請合った。
「建設に従事した者達が周囲の警戒もしますので、安全性は保障できます。」
女性陣は、ぽかんとして啓太に聞いた。本当に出来るのかと。
すでに段取りを万端整えていると胸を張る啓太に、女性陣は反対できようも無く。
啓太の要求した極ささやかな褒美、すなわち建設に従事した者達に二番風呂を許す、
との許可はすぐに下りたのであった。
「何とかできたね、これも兄さんのおかげだよ。」
「いつでも頼れ。俺はお前の兄なんだからな。」
ギーシュ・ド・グラモンとルルーシュ・ド・グラモンは、完成した浴場を
見上げて肩を組んでいた。お互い土ぼこりで薄汚れ、へろへろに疲れている。
しかし、その顔はやり遂げた爽快感に満ち溢れ…もとい、これから得られるだろう
すばらしい“ご褒美”を想像して欲望にぎらついていた。
本来なら一生一度すら得られぬであろう千載一遇の好機、期待するのもわかるが、
ドットで二股がばれて恋人に振られ、いまだよりを戻しきれていない
ギーシュはともかくとして、トライアングルで王軍の高級士官たるルルーシュが
なぜ欲望をぎらつかせてこんなところにいるのは大いにナゾである。
聞いてはいけない。特に本人に直接聞くのはタブーである。そっとしておいて
あげなければならないので説明は省略だ。けして妹のナナリーは関係ない。
小型のスループ船が荒野のど真ん中に建てられた浴場へ向かって移動してくると、
いくつもの美しい花が飛び降りた。白銀のマントをまとった白百合、アンリエッタ。
襟だけ赤い青と白のドレスをまとった青い水仙花、シャルロット。
黒と緑を基調としたドレスをまとった桃幻花、ルイズ。
真紅のマントとスカートをなびかせた大輪の赤い薔薇、キュルケ。
おまけに元気一杯黄色のキュロットスカートとツインテールの犬神ともはね。
一泊の間をおいて男たちの間から「「「おお〜〜」」」とどよめきが走る。
次いで姫様達が地に降り立つと、浴場の前まで人垣がざざっと割れ、
素早く整列が行われる。玄関前に待っていた啓太から号令がかかった。
「一同、姫様方に、捧げ〜杖!」
ざっと全員が杖を構え、直立不動の姿勢になる。
アンリエッタ、シャルロット、ルイズ、キュルケ、ともはねという順番で
お姫様方が静々と歩む。この順番は何の打ち合わせもなく、極自然にそうなった。
居並ぶ男たちはシャルロットが通り過ぎると杖を下ろし、キュルケが通り過ぎると
顔を正面入り口のほうに向ける。これもまた極自然にそうなった。
啓太が出迎え、施設内を一通り案内する。
「左右のテントは作業のために設置したものです。後で将軍や士官方を
お入れする際にはこちらで順番をまっていただくつもりです。
入り口は念のため青銅製の分厚いものにしました。トライアングルの固定化も
施してあります。外壁もかけてありますがラインどまりです。
こちらが玄関ホール、左右の入り口が脱衣場へのドアです。
女性用と男性用に分けましたが、浴室そのものは時間の関係で一つのみです。
まあ、姫様方が1回使うためだけに脱衣所を別に作ったということです。
(中略)こちらが女子脱衣室です。トイレは一つのみですがご容赦ください。
ロッカーはそれぞれ専用のものをご用意しました。紋章を施してございます。
お着替えもご用意させていただきました。ダストシュートはこちらです。(中略)
伝声管はこちらも含めて給湯室に通じておりますので、御用の際はなんなりと
お声をおかけください。返事はこちらの管から(後略)」
4人とも、装飾までは施されていなかったものの小さな邸並の浴場に大満足した。
ちなみにともはねは一人だけ護衛兼お背中流し係ということになっている。
しかし、事実上世話を焼かれるのはアンリエッタのみだ。他の3人は
トリスティン魔法学院で身の回りの事を自分でできるよう学んでいるし、
アンリエッタには女官のルイズが、シャルロットにはキュルケがついているという
体裁にすることも出来るのであるから本来不要なのである。
啓太は、念のため杖を浴室内まで持ち込むように頼むと、
「では、ごゆっくりどうぞ。」
と言い残して退室した。
4人の美姫達はきゃあきゃあ言いながら浴依に着替え始めた。
やはり女性、お風呂はうれしいものだ。ずっと我慢していたのならなおさらである。
「ふ〜〜ん、そこそこの浴依ね。戦争中に手に入れたにしては、だけど。」
とキュルケ。
「姫様にはちょっと。紋章の一つも刺繍してないなんて。」
「いいではありませんの、ルイズ。これで充分ですわ。それよりも明日のために。」
とルイズをたしなめるうっとりしたアンリエッタ。
「替えの下着は、さすがに上等。」
と用意してあった紋章付きの下着を確認すると着替え始めるタバサ。
キュルケの肉感的極まりない豊満で扇情的な肢体が、アンリエッタの豊かで
清楚な肢体が、ルイズの…あ〜〜〜、えっと引き締まった肢体が、タバサの
幼い肢体がドレスの下から露になり、ついで裾がなまじなミニスカートより短く、
脇が空きまくって体を洗うために手を入れやすいように設計された浴依に包まれる。
丁度程よいサイズの浴依がロッカーの中に入っていた。
ともはねは時折手伝ってと言われたときのみだれかれと無く手伝っている。
マロちんはここでお留守番だ。暑いのが苦手だからである。
皆はタオルを取ると浴室へ移動した。ともはねは各人が脱衣かごに入れた下着を
かごごと重ねてダストシュートに放り込み、タオルや石鹸セットを持って
浴室に入った。こちらは着替えない。湯女役だからだ。
その頃。
「おい、蓋は閉まったな?」
地下で、ひそひそ話す声がした。
「下蓋も閉めろ。隣室に移動するんだ。」
「うん。」
そして。無駄に防音を施した地下の隣室に移動した脱衣かごを持ったクラブ員は。
静かだか熱烈な歓迎を受けた。
「よ、よくやった!」「こ、これが姫様方の脱ぎたてほかほか下着!」
「ううう、す、すばらしい!」「ケータ君、あなたすごすぎるよ!」
「ふ、俺に惚れるなよ。」
「こここ、これ、触ってもいいのか!?」
「おう、くじの順番どおりにな。喧嘩するなよ。」
「に、匂いを嗅いでも!?」
「おう、くじの順番どおりにな。喧嘩するなよ。」
「ああああ、あまつさえ顔に被っても!?」
「おう、くじの順番どおりにな。喧嘩するなよ。」
「ここここ、これが女性の!」「ううう、見てるだけで立ってきた!」
「俺も!」「お、俺もうしんぼうたまらん!」
「別にかまわないがたこ部屋か男子トイレでやれ。男子トイレは脱衣場から入らず
必ず玄関ホールから入れ。脱衣場に足を踏み入れたら覗きと誤解されかねん。」
ちなみにたこ部屋は本来イカ部屋とでも呼称するのが正しいのだが(検閲削除)
「りょ、了解!」「行ってきます!」「仕切りの無いたこ部屋よりトイレに!」
ダッシュする者が多数出た。ちなみに先頭は金でアンリエッタの下着1番の権利を
買い取ったルルーシュ・ド・グラモンだったりするのであるが、トライアングルで
王軍の高級将校である彼がなぜそこまでするのかは深く聞いてはいけない。
けして妹のナナリーは関係ない。
さてその頃、アンリエッタ達はお風呂で寛いでいた。
「姫様、薔薇の香料をもっと入れますか?」
「充分よ、ともはね。」
リラックスした顔で返事をするアンリエッタ姫は、髪をたゆたうようにお湯の中に
広げてぷかっとお湯に浮いていた。顔はお湯の外に出ているわけだが、
当然というかなんと言うか、その豊満な二つの丘とその頂も薄い浴依の(検閲削除)
覗いている男がもしいたら鼻血をジェット噴射して失血死間違いないだろう。
しかし苦い経験の在る啓太が厳禁事項だと懇々と諭したため、不心得者はいない。
「は〜〜いい湯ね、タバサ。」
「(無言でコクリ)」
こちらは普通にお湯に浸かっているキュルケとタバサである。
お湯の揺らぎと浴依でその肢体はほとんど見えない。
しかし胸の上部や滑らかな肩等はお湯から出ており、薄い浴依越しに見て取れる。
水着で泳ぐことすらネタのかたまりのコンシューマゲームか一発ネタのイラスト
でしかありえ無いハルケギニアにおいて、これだけでも結構そそる光景である。
「姫様、お湯加減はいかがですか?」
「ありがとう、ルイズ。丁度いいわ。」
「じゃあちょっとお湯を止めたほうがいいですね。」
ともはねがすいっと宙を飛んで伝声管に取り付き、蓋を開ける。
「丁度いい湯だそうですので熱いお湯を止めてください。」
「了解しました。」
伝声管からややくぐもった返事が来ると、ややあってお湯が止まった。
この浴室の間取りだが、北側に大きな浴槽が部屋の幅一杯にある。
浴槽が終わる所からは体を洗うために給湯口が東西の壁に沿ってずらりと並ぶ。
蛇口とコックは無いので、熱いお湯を流す溝と冷たい水を流す溝があり、
そこから樋でお湯や水を桶に入れる仕組みだ。樋の口は木の板を上下させて
開け閉めする方式で、当然ながら完全に閉めることは出来ない。
しかしハルケギニアであれば充分なギミックだ。何しろその場で水とお湯を
両方汲めるのだ。普通は浴槽からお湯を汲み、熱いときは水を張った大きな桶から
水を取る程度でしかない。まあ、使用人を雇える貴族かブルジョアしか
お湯を貼った浴槽でお風呂に入る等という事は出来ないので、
その程度で充分という意味でもあるのだが。
南側の壁の左右には脱衣室への扉がある。曇りガラスが填められており、
覗きをするものなどがいれば即座にわかるようになっている。
東西の壁に設けられた明り取りの窓も分厚い曇りガラスでサイズは小さく
人が侵入する事が出来ないと同時に外部からの狙撃に対処している。
「タバサ、いらっしゃいよ、体洗ったげるわ。」
「(無言でコクリ)」
キュルケが浴槽から立ち上がって誘うと、その豊満すぎるほどの双丘とY(検閲削除)
タバサの若いというより幼い(検閲削除)紋章付きの風呂用椅子に腰掛けた
二人はお互いに体を洗い、背中を流し合った。当然ながらそれは
お湯を吸って肌に張り付いた浴依の隙間から石鹸をつけて
ぬるぬるしたタオルと手を入れて(検閲削除)ということでり(検閲削除)
それに誘われたかのようにアンリエッタとルイズが(検閲削除)
二人はキャーキャーいいながら戯れるようにして(検閲削除)
ちなみに、浴室の声は伝声管の給湯室側の蓋を開ければ丸聞こえになる。
あるいみ非常に生々しいその会話は、特に本人達のご容姿を良く知る男達、
すなわちくじに負けて地下ではなく給湯室で待機していた連中にとって、
鼻血をジェット噴射して失血死間違いないだろうほどにすばらしいもので、
給湯室を飛び出し、トイレやたこ部屋に駆け込む者が続出したりしたのであった。
「いい湯でしたわ、ケータ殿。」
「恐縮にございます、アンリエッタ姫。」
「それでは私たちは戻ります。」
「は。では、我々はこの後少し掃除をした後二番風呂を使わせてもらいたく
存じますが、かまいませんでございましょうか。」
「ええ、もちろんですわ。」
「ありがとうございます、アンリエッタ姫。」
こうして、アンリエッタ達は大満足してスループ船に乗って帰っていった。
アンリエッタ達を見送った啓太達は。
「よし、計画は第5段階に突入する。者ども、かかれ!」
「「「「サー・イエス・サー!」」」」
男たちが即座にてきぱきと動き始めた。
ちなみに。
人を募集したり設計図を用意したり場所の選定をしたりした準備が第1段階。
姫様達をたきつけて誘導、浴場建設と2番風呂の許可を得るのが第2段階。
目的達成のためにとても都合のいい浴場を建設するのが第3段階。
第4がご入浴中の役得を堪能することである。
テントの中から、いくつもの大きな樽が運び出された。
テントで順番待ちしている士官などへ供出するワインを準備している、
との名目で積んでおいた樽の中に隠しておいたのだ。
てきぱきと運び込まれたいくつもの大樽に、浴漕のお湯が一杯にくまれた。
「よし、売却用のお湯は充分汲んだ。後は好きにしていいぞ。」
「「「サー・イエス・サー!」」」
女日照りの続いていた薬草クラブ員男子達は浴槽に殺到した。
「ああ、なんていい匂いなんだ!」「こ、これが姫様達の匂い!」
「スーハースーハー」「スーハースーハー」「スーハースーハー」
「スーハースーハー」「スーハースーハー」「スーハースーハー」
「スーハースーハー」「スーハースーハー」「スーハースーハー」
お湯に入れた薔薇の香料の匂いをいつまで吸ってんだと突っ込んではいけない。
「そそそそ、それではちょっと一杯最上の白湯を!」「俺も!」
「お、俺も!」「ぷは〜〜〜、う、うまい!」「神の飲み物ネクタルだ!」
「今まで飲んだどんな美酒よりうまい白湯だ!」「うむ、格別だ!」
「なまじな蒸留酒より酔いそうだぜ!」「すでにベロンベロンだよ!」
一応、人は強い感動などでも酔ったような状態になる事があることを記載する。
「そ、それよりも姫様が生尻で座った椅子!」「ほおずりほおずり。」
「俺もほおずりほおずり!」「ほおずりほおずり。」「ほおずりほおずり。」
「お、俺はやっぱりキュルケ嬢の!」「あの胸はすごいよなあ。」
「ほおずりほおずり。」「ほおずりほおずり。」「ほおずりほおずり。」
「ほおずりほおずり。」「ほおずりほおずり。」「ほおずりほおずり。」
「俺はあの氷の美貌たるシャルロット姫の椅子を!」「俺はルイズだ!」
「タバサはさすがに幼すぎだよ。」「ルイズくらいが丁度いいよな。」
「君たちはわかっていないな。」「紳士たるもの胸に惑わされずにだな。」
「うむ、あの青い髪はなんとも言えず…」「ちっぱいは偉大だ!」
ともはねに触発されてロリコンになってしまった多数のクラブ員が
長蛇の列を作っていた。そしてこのロリコンたちは皆啓太の弟子である。
「胸の大きさはやはり男の本能で!」「胸のいいキュルケの椅子だよな」
「いやいややはりだな」「それより俺は」
皆思い思いのお目当てに夢中である。変な談義も始まっていたりするのであるが、
別室にダッシュする者が多数なのは先ほどまでと同じである。
支援
支援!!
すいません、さるさん規制にひっかかりました。
誰か代理投下お願いします。
こうして。啓太は、薬草クラブ男子の尊敬と人望をさらに集め。
それまで面識のなかった実力者達とのコネを作るきっかけをも得たのである。
この後には、姫様達を旗艦まで送ってきたともはねのシャンプータイムである。
幼い体とはいえ女性の生裸体を間近で堂々と見れる。その手の事にうとく、
恥じらいというものをまだ知らないともはねは、まったくの無防備であられもない
姿を無邪気且つ惜しげもなくさらして一部の男子達に強力なインパクトを与えた。
ともはねは今回のシャンプーで、多数の男性達の陰性だった幼女趣味やケモノフェチ
属性を陽性にしてしまうという罪深い事を意識せずに達成したのであった。
赤道斎のマントの呪いは深く、啓太の周りにいるものたちをどんどん変態として
嗜好改造(思考改造にあらズ)してしまうようなイベントが頻発していた。
地球と同じく、啓太を慕う変態紳士が群れ集い、あるいは発症しつつあった。
そして当然のことながら、啓太からしばしばマントを借りていたアンリエッタの
周りにも、変態紳士が増えていたのであった。
その大多数が戦争が終わると共に学院に帰るため、啓太ほど多数が
周りに増えるのでない点は、啓太と違ってたまにしか着ない分、増しな点である。
さてその夜のことであるが。
今回手に入れた姫様汁入りのお湯や使用済み下着、使用済みタオル、
使用済み浴依等を、啓太達は高額で艦隊将兵達に密売。褒美をもらって
懐のあったかい男たちは高額でこれを購入。膨大な儲けを得る事になる。
後に啓太は雑貨屋チェーンをハルケギニア中に展開し、
収入源と情報源とすることによって一大勢力を築くのであるが。
「ほう、“あの”ケータ殿系列の店を出したい?」
「ええ、ご領主様。もちろんご許可をいただければ例の方面の商品も
お取り扱いいたします。」
「ほう! 性なる伝道師、エロアイテムのエンパイヤ、変態道のオーソリティー
と呼ばれたケータ殿の店が! つまりはその手のグッズが手に入りやすくなると!」
と、出店をスムーズにするのに大いに役立ったり。
逆に蛇蝎のごとく嫌われて出店が不可能な地域が出来たりしたのであるが。
それはまた、先の話である。
おまけ:
「お姫様が4人? 二人じゃないのですか、啓太様?」
ともはねが、ちょこんと首をかしげて疑問を呈した。
「お。わからないか、ともはね。いい機会だ、ちょっと教えておくか。」
歴史が得意な啓太は、社会システムについて簡単に教授することにした。
「ともはね、昔日本の江戸時代や戦国時代で、大名の娘はお姫様といったか?」
「はい啓太様、お殿様の娘ならお姫様です。」
「うん、正解だ。けど、日本国の王様の娘じゃないのにお姫様だよな?」
「それは、お父さんが一国一城の主ですから…いっこく!?」
「そうだ。日本という国の中にまた国がある。語弊を恐れず言えば、
大名領が一つの国だ。なぜなら独立した統治権と立法権、軍事権、徴税権、
裁判権等を保有しているからだ。これは立派に国として通用する社会システムだ。
藩札といって、お札の発行もしていたりする。戦国時代なら本当に独立してた。」
ともはねがふんふんうなずく。
ムジナのマロちんもうなずいているが理解しているかははなはだ怪しい。
「徳川幕府を開いた徳川家も、元は一大名だった。うまく同盟を組んだり
手下を増やしたり、なにより関白豊臣家をうまく翻弄して全国の大名を従わせた。
そして、征夷大将軍に任命され全ての大名達のまとめ役になった。
将軍職を朝廷に返上した後はまた普通の大名に戻った。
全国統一していた頃の徳川家が、西洋で言う国王に相当する。
対して、大名が伯爵に相当する。大名領が西洋での伯爵領に相当するんだ。
王様ってのは、伯爵(=大名)連合のまとめ役の大伯爵(=大大名)でしかないともいえる。
伯爵ってのはある意味格の低い王様で貴族の基本となる爵位なんだ。
現に、公国、候国の例がるのは当然として、トリポリ伯国、エデッサ伯国
ねんて例もある。伯爵領程度で一国を構えられるほど軍事力の在る
場合はほとんど無いから、大抵は伯爵連合を組んで国王を立てるんだけどな。
侯爵ってのは強力な伯爵、公爵は王家の傍流の伯爵、子爵は伯爵の長男。
男爵は村の一つも治めていればいいような伯爵の庇護下に在る下級貴族。
準男爵は男爵に準ずる者でしか無いからさらに下。
騎士は土地を持たないか持っていても地名を個人として占有できない者。
さらに爵位持ち貴族の親族であるだけの平貴族、というのが主な分類だ。
さてそこでだ。
トリスティンで絶大な権力を持ち、王家の傍流である公爵家の娘であるルイズ。
成り上がり帝国の中でヴァリエールに対抗できる程の家の姫、キュルケ。
この二人もまた、立派なお姫様なんだよ。
シャルロット姫とアンリエッタ姫を合わせれば4人なんだ。」
「なるほど。わかりました、啓太様。
代理投下終了。いぬかみっな使い魔の人お疲れ様でした。
乙でした
いぬかみの人、代理の人、乙です。
そして、毒の爪の使い魔第16話前半部分が書き終わりました。
ので予定などがなければ3:00に投下しますが、宜しいですか?
支援する
では投下開始します。
暑くなってきた、夏真っ盛りの時期。
トリステイン魔法学院は二ヵ月半に及ぶ、長い夏期休暇に入っており、
学院内には学院長のオスマン氏や教師、給仕の平民が居るだけで、生徒達は一人としていなかった。
静まり返った魔法学院に強い日差しが照りつける中、ジャンガは本塔の屋根の上に座り込んでいた。
立てた膝の上に肩肘を付き、何をするでもなく、ボーッとしている。
彼はここ最近の出来事を思い返していた…。
アンリエッタ姫からのお呼び出しを受け、『街での貴族の横暴な振る舞いを調べて欲しい』と
密命を言い渡されたのは、フーケを捕まえた日から幾日も経たない日だった。
平民に雑ざっての御忍びの任務であるにも拘らず、高級な物に拘るルイズは、
アンリエッタ姫に貰った活動資金をアッサリと使い果たし、途方に暮れる二人はスカロンと言う男に誘いを受ける。
宿を営む彼は、同じく経営している『魅惑の妖精』亭という酒場の手伝いをすれば部屋を提供すると言うのだ。
その提案に最初は乗り気で無かったルイズだが、「またお姫様に不幸を届けるのか〜?」と言うジャンガの言葉に憤慨。
働く事を決意したのだが、そこはそれ…何不自由なく生活してきた貴族の娘。
平民の仕事…ましてや酒場でのご奉仕などした事など当然無く、キレて酒をぶちまけたり、
平手や蹴りを食らわせたりなど大暴れの連続だった。
そんなこんなで、とてもじゃないが任務など果たせそうに無かったのだが、世の中は都合良く出来てるらしく…、
偶然に近い形で任務は(一応)果たされる事となった。
店で恒例のチップレースの最終日に店を訪れた徴税官のチュレンヌとか言う貴族。
噂の横暴な振る舞いをする貴族を指しているかは定かではなかったが、その立場を利用しているのは間違いなかった。
”空気を読めない”ルイズは最初、チップ目当てでご奉仕するも、胸を触られそうになり、顔面に蹴りを放つ。
周りの部下は杖を抜くも、ジャンガにあっさりと叩きのめされた。
怯えるチュレンヌにルイズは身分を明かし、アンリエッタの許可証を持ち出し、
今回ここで起きた事を忘れて大人しく帰るようにと命じた。
必死の形相でチュレンヌは頭を縦に何度も振り、ほうほうの態で逃げて行った。
そうして、チュレンヌを追い返した事により、ルイズはスカロンや店で働く他の女の子から賞賛を浴び、
チュレンヌとその部下達が去り際に財布ごと置いて行った金貨でチップレースの優勝も得たのだ。
(…余談だが、ルイズは一応優勝商品である『魅惑の妖精のビスチェ』を纏ったが、
ジャンガにはまるで効果が無かった事を付け加えておく。)
成り行きとは言え、正体がばれた事で任務継続が不可能となったルイズとジャンガは、『魅惑の妖精』亭の皆と別れた。
そして、姫様に報告をして任務は終了となり、二人は学院へと帰還した。
支援!
「ッたく…あれは疲れたゼ…」
ジャンガは大きく伸びをする。
「そういや、あんな事もあったな?」
そう呟き、別の日の事を思い返す。
それはまた別の日の事。
その日の朝の授業はミスタ・コルベールが嬉しそうに、珍妙な物体を教卓の上に、でんっ!と置いた事から始まった。
円筒状の金属の筒やパイプ、ふいご、車輪、扉がついた箱などが組み合わされた、
一見しただけでは何に使うのか解らない物だった。おそらくは何かの装置だろうと、ジャンガはあたりをつけた。
その物体=装置を生徒達は興味心身に見つめた。
コルベールは自分の持ってきた装置に生徒達が興味を示したのに満足した様子を見せると、
『火』系統の開帳を生徒達に促す。
生徒達の視線が『微熱』のキュルケに集まる。『火』と言えばゲルマニア貴族であり、
更にキュルケのツェルプストー家はその中でも名門であったがゆえの事だった。
事実、彼女は『火』系統が得意であった。
授業中だというのに爪の手入れを続けていたキュルケは「情熱と破壊が『火』の本領」と、気だるそうに答える。
そんな彼女の答えにコルベールは「破壊だけが『火』の司るものでは寂しい」という。
そしてキュルケに、それは何か?と聞かれ、装置の説明を始める。
曰く”油と火の魔法で動力を得る装置”だそうだ。その言葉に、ジャンガは装置が何であるのか検討がついた。
(なるほどな…エンジンかよ)
装置を動かしながら説明を続けるコルベールを見ながら、ジャンガは思った。
”向こう”では飛行機械や船、バイクなど様々な物に動力源として組み込まれている。
『魔法』が発達し、『科学』という概念その物が無いようなハルケギニアでは動力と言えば、
人か、馬か、魔法もしくはそれに等しい力を持った物しかなかった。
そう考えると、彼の作った装置はまだ魔法を使う必要があるとはいえ、画期的であると言えるだろう。
装置の働きで、扉の箱から『愉快なヘビくん』なる人形が飛び出すのを見ながら、説明をするコルベール。
それを、それがどうした?とばかりに、無関心な表情で見ている生徒達を見ながら、ジャンガは思った。
(まァ…魔法に染まりまくった貴族が、それもガキ共が理解できるはずねェか…)
魔法で動かせばいい、と言う者もいた。その意見にジャンガは笑った。
(精神力が尽きたらどうするんだよ?そもそも、物動かし続けるだけの奇特な貴族がいるのかよ?キキキ)
結局、コルベールの装置や”『火』は破壊だけではない”という彼の考えは生徒に最後まで理解されなかった。
(破壊以外の『火』の活躍ねェ…。そんな物あるかよ…、破壊を生むのが『火』だろうによ…)
皮肉な事を言うジャンガもコルベールの考えを理解しなかった。
…いや、受け入れなかったと言うべきだろうか?
支援?
「くわぁぁぁ〜〜」
唐突に欠伸が出た。くだらない事を思い返していたから、眠気が出てきたのかもしれない。
ジャンガはコートの裾で目を擦る……と、視界に映りこんだ物に眠気が失せた。
「ありゃ…」
眼下に本塔の入り口近くに停まる一台の馬車、それに見覚えのある赤髪と青髪の人影が乗りこむのが見えた。
もう誰一人としていないかと思っていたが、まだ残っているのが居たとは驚きだ。
二人が乗り込むと馬車は走り出し、正門を抜けていった。
「何処へ行くんだ?」
興味があるとばかりにジャンガは去り行く馬車を見据える。
すると、巨大な何かが空へと飛び上がった。…シルフィードだ。
ニヤリと笑い、ジャンガは本塔の屋根を蹴り、大きく跳躍する。
そして、寸分違わぬ正確さで、シルフィードの背中へと着陸した。
「きゅっ、きゅい!?」
「俺だ」
突然の事に驚き叫ぶシルフィードは、ジャンガの言葉にあからさまに嫌な表情を浮かべる。
「なんなのね!?いきなりシルフィの背中に飛び乗ってきて!!」
「これからご主人様とご旅行だろ?俺も連れてけ。なァに問題無ェだろ?この火トカゲだっているんだしよ」
そう言いながら、低い唸り声で威嚇するフレイムを見る。
「ふざけないでほしいのね!シルフィは誰でも乗せたりはしないのね!直ぐに降りるのね!」
「…いいのかよ、そんな事ほざいて?」
低い声でジャンガは脅しをかける。その言葉と発せられる殺気にシルフィードは身体を震わす。
「考えてみれば、空の上で竜の”解体ショー”ってのも中々楽しそうだなァ〜?…キキキ」
シルフィードの中の何かが伝える、――こいつは冗談は言わない――と。
「この際だ……やってみるか?」
「解ったのね!!好きにするのね!!!」
シルフィードは半ば自棄になって叫んだ。その言葉にジャンガはニヤリと笑う。
「話が解ってもらえて嬉しいゼ。キキキ、なら後は頼んだゼ」
「きゅい〜…」
元気の無い返事を返すシルフィード。
ジャンガは適当な背鰭を背凭れにし、大きく伸びをした。
「……」
シルフィードは考えた。このまま眠ってくれれば、隙を見て落とす事も出来ると――
「言っておくが、落としたら容赦しねえぞ?」
――釘を刺され、シルフィードはため息混じりに悲しげな泣き声を上げた。
支援
しえん
以上で投下終了です。
何か、過去回想シーンばっかりになっちゃいました…(汗)
まぁ、後半はもう少し見直してお送りします。
ようやく、タバサの実家でのお話です。
では、また!
乙でした
こんな時間にこっそりひっそり30分から投下したいと思いまつ
「入らせてもらってもいいかね? ミス・ヴァリエール。」
わたしの耳に、学院長の声が聞こえる。でも、口が震えて返事が出来ない。
「ヒゲ爺さん、何のつもりですか?」
ダネットの声が聞こえる。ヒゲ爺さんなんて失礼なことを言うダネットを注意しなきゃ。でも、注意すら出来ない。
「ミス・ヴァリエールに話がしたいと言われての。」
「その話に、なんでその剣が必要なんですか。さっさと持って帰りなさい。」
学院長とダネットのやり取りが聞こえるけれど、わたしには別の世界の言葉に聞こえる。
心にあるのはどろりとした黒い何か。この黒い何かは何なんだろう? なんだっけ? ああそうだ、これは殺
「ミス・ヴァリエール、大丈夫ですか?」
誰かがわたしの肩に手を置いた。この声はミスタ・コルベール?
「あ……、いえ。何でもありません。」
「そうですか。ああ、こんな時間に、しかも女子寮に来てしまい申し訳ありません。」
頭を下げるミスタ・コルベールの姿に我に返り、慌ててわたしも頭を下げる。
あれ? わたしさっき何を考えてたんだっけ? うーん……まあいっか。
「い、いえ。それはいいんですが、学院長は話があるということですが、ミスタ・コルベールは何か御用でしょうか?」
「ええ。私は、そちらのミス・ダネットに少しお話がありまして。」
「私に何の用ですか?」
学院長を睨み付けたままのダネットが、顔を向けずに返す。
「ダネット! 失礼でしょ!」
「いえ、構いません。このような時間に突然来てしまった訳ですし。」
そう言って苦笑いをするミスタ・コルベール。
そして事態は、新しい来訪者によって更に面倒な方向へ進む。
「学院長にミスタ・コルベール? ルイズ、あんた何したの?」
「修羅場。」
「え!? ちょっとルイズ!! あんたちょっと説明なさい!!」
部屋に入ってきたキュルケとタバサに、わたしはどうしたものかと頭を抱えた。
「あの時の娘っ子達か。ちょーどいいや。そっちの娘っ子達にも聞いてもらうとしようぜ。」
聞きなれない声に、わたしやダネット、キュルケにタバサが周囲を見渡す。
「誰ですか! 姿を見せなさい!! 首根っこへし折りますよ!!」
「残念ながら、俺には首って無いんだよね。」
謎の声に、苛立ちを隠せないダネット。あれ? 何故かタバサの顔色が悪いのは気のせいかしら?
「いいから姿を見せなさい!!」
「あー、こっちだこっち。」
声の先を辿ると、学院長の姿。でも、学院長ってこんな声だっけ?
「ヒゲ爺さん! 私をおちょくって面白いんですか!! ええい、この場で首根っこへし折ってやります!!」
「ぐふぉお! ま、待った! 私じゃなくて!! ごふぇっ!!」
「ちょっとやめなさいダネット!! 絞まってる! 学院長の喉完全に絞まってるから!」
「離しなさいお前! このヒゲ爺さんに引導を渡してやるのです!!」
必死に止めるわたしを払い、学院長の首をぐいぐい締め付けるダネット。あ、学院長の顔色が青から紫になってる。でも、何でちょっと幸せそうなのかしら?
「おーい、そっちの爺さんじゃなくてこっちこっち。」
のん気な声が聞こえ、ダネットが動きを止める。
確か今の声、学院長より下から聞こえたわね。
「破壊の剣が喋ってる。おそらくインテリジェンスソード。」
タバサが土気色をした学院長の傍まで行き、手に持った剣を指差す。あれ? タバサの顔色が元に戻ってる?
インテリジェンスソードってあれよね、確かメイジが魔法で剣を喋れるようにしたってやつ。
「サビ剣が喋ってるんですか? でも、何でそんな声なんですか?」
「そんな声って言われても、俺は昔っからこんな声だぜ? つうかサビ剣って酷くね?」
汚いものを触るかのように、ダネットが短剣で破壊の剣をつんつん突っつく。っていうかダネット、それって一応は宝物庫に入れられてる品よ?
「サビ剣をサビ剣と言って何が悪いんですか。それともお前には名前があるっていうんですか。」
「俺さまにはデルフリンガーっつうカッコイイ名前がある。」
「でる……ええい! お前みたいな危ない剣はサビ剣で充分です!!」
「危なさとサビ剣って関係なくね!?」
ダネットと自分をデルフリンガーと言った破壊の剣のコントで、話が全く進まないのに焦れたキュルケが口を挟む。
「それで、そのご大層な名前の破壊の剣が一体なんの用なの? こっちはこっちでダネットに話を聞きにきたんだから、手短に話して頂戴。」
「ああ、じゃあ短くね。えっとだな、そこの胸の小さな娘っ子。いや、青い髪の方じゃなくて桃色の方だ。」
「ダネットー、その剣捨ててきちゃっていいわよー。」
「異論は無い。」
「そうですね。こんな剣は無い方がいいです。お前もたまにはいいこと言いますね。」
わたしとタバサとダネットのコンビネーションによって、燃えないゴミの日にでも回収されそうになった破壊の剣が慌てて止める。
支援
「ま、待った! 捨てないで!! 窓を開けないでくれ!!」
「っていうか、あんたってそんなに軽い奴……じゃなくて軽い剣だったっけ?」
本気で窓から投げ捨てそうなダネットを仕方なく止め、さっきから不思議に思っていた事を聞いてみる。
あの時に聞こえていた声は、少なくともこんなに軽くも無く、もっと重圧的なものだったはず。
「ああ、それなんだけどさ、まずは俺の役目から話す。つっても、ほとんど忘れちゃってるんだがな。」
「ダネットー」
「投げないで!! いや、だからってゴミ箱に入れて欲しい訳じゃなくて!! 思い出す!! 必死に思い出すから捨てないで!!」
デルフリンガーと名乗る破壊の剣は、大慌てで自分の役目を話し出した。
その内容とは、恐らくどの文献にも載っていないであろう恐ろしいもので、一度聞いていたという学院長やミスタ・コルベールでさえ顔色を悪くするものだった。
「じゃあ、あんたは世界を壊そうとした黒い剣を封じ込めてたってことなのね。」
「そういうこった。それが、どういう事かおめによって中途半端に封印が解けちまったって事。」
デルフリンガー曰く、あの黒い剣は、始祖ブリミルの時代に突如現れたらしい。
目的は世界の破壊。とは言っても、剣の持ち主に聞いた訳じゃないから真実はわからない。何故なら、相対したものは全て帰ってこなかったから。
しかし、剣の持ち主はある日突然姿を消した。理由はデルフリンガーにも、その場にいた誰にもわからなかったらしい。
最後に破壊されたのは、現在サハラ砂漠と呼ばれる場所の中心で、今もそこは砂漠のまま。
その破壊され、一面の砂漠と化した場所であの黒い剣だけが発見され、数多くのメイジによって、魔力を吸収するという特性を持ったデルフリンガーの中に封印されたそうな。
それから時は流れ、人から人へ、様々な場所を経て学院の宝物庫に封印されることになり、それをフーケが盗み、わたしが見つけて中途半端に封印を解いてしまった。という事らしい。
「でも、中途半端にってどういう事よ?」
「それなんだけどな、あの剣、まだ俺の中にあるっぽいのよ」
「じゃあ封印解けてないじゃない。」
「まあ聞け。でな、こっからが本題だ。娘っ子、おめ自分の中に何かを感じねえか?」
自分の中に何か? このフレーズ、どこかで聞いたことがあるような……。あ、確かダネットが前にわたしの中のわたしがどうのこうの言ってたような。
「魂の融合……ですか?」
搾り出すようなダネットの声が聞こえ、見てみると、今にも泣きそうな表情のダネットがいた。
「魂の融合? どういうことよダネット?」
「何か知らんが、こっからはそっちの娘っ子の方が詳しそうだな。」
話し手が剣からダネットへと移り、部屋の全員がダネットへと向き直る。
「その剣の使い手と剣の中の奴は、恐らく……私の知ってる奴です。」
驚くわたし達を見ながら、ダネットは自分の知っていることを話し出した。
それは以前、召喚されたときに話してくれた事よりももっと詳しく、そして悲しい話。
黒い剣を手にした青年と、剣に封じ込められていた世界を破壊しようとしていた者と、二人と一緒に旅をしたダネットや仲間の話。
だが、その話を最後まで聞いた後、疑問が残った。
「ねえダネット、その話の最後はめでたしめでたしで終わりじゃないの? 少なくともあたしにはそう聞こえたけど?」
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そう。キュルケの言う通り、剣を持った青年と剣の中にいた者は世界を救い、剣の中にいたという者も人へと生まれ変わり、皆で幸せに暮らしていた。
そんな平和な暮らしをしていた中のダネットをわたしは呼び出してしまい、今に至る……というのが今の話だ。
正直、荒唐無稽も良い所で、信じられるようなものでもなかったが、真実だったとしてもハッピーエンドなはず。
これでは、デルフリンガーの話してくれた事とは食い違いが生じる。
「はい。そしてもう一つ、私が話していなかったことがあります。」
「もう一つ?」
「ええ。私自身もあやふやで、ただの気のせいだと思っていましたが、もしかするとそれは……本当にあったことなのかもしれません。」
ダネットの話してくれたもう一つの話は、とても救いの無い話だった。
黒い剣を受け取り、自分の運命を聞いたとき、世界を恨み、人を呪い、生きているもの全てに殺意を抱いてしまった青年の話。
あったかもしれないもう一つの運命。もしもの世界。
ダネットはその記憶がはっきりしないらしく、色んな事があやふやで、説明するのが大変そうだった。
でも、わたしにはわかる。わかってしまう。何故ならわたしは見てしまったから。
「以上です。お前、今まで黙っていてすいませんでした。」
「以上ってあんた、それ全然解決どころか終わってないじゃない。」
話し終えたダネットに、キュルケが横槍を入れる。
ダネットの話の最後は、暴走して世界を破壊していた青年を何とかしばらく封印することに成功し、世界中の人が結託した後に封印を解き、青年と全面戦争を始めるという所で終わったからだ。
「その剣の持ち主は封印されたわ。」
突然口を開いたわたしを、皆が驚きの表情で見る。
「お前……何故それがわかるんですか?」
できれば聞きたくないという顔をしたダネットがわたしに問う。
「わたしが三日間寝ている間、ずっとわたしは見てきたの。その剣の持ち主の全部をね。」
「じゃあ……お前は、やっぱり……」
「魂の融合だっけ? 多分、それもしてるんだと思う。自覚は無いんだけどね。あはは。」
「ちょ、ちょっと! 笑ってる場合じゃ無いでしょルイズ!? 第一、あたしにはさっぱりよ? 二人で納得してないで説明してちょうだい。」
話がわからないキュルケが慌てて横から入る。
わたしが説明しようとすると、ダネットが先に話し出した。多分、ちょっとでもわたしの負担を減らしたいという所かしら。
「あの黒い剣の中にいる奴は魂だけらしいんです。そして、持ち主は魂がゆっくりと同化していくのです。」
「待ってよ、それってルイズがいずれはああなっちゃうってこと!? 以前の持ち主ってああなっちゃったんでしょ!?」
「なってません!! ならなかったんです……そのはずなんです……」
ダネットはキュルケに強く言い返した後、目に涙を浮かべうつむき、言葉を続けた。
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俺にも支援させて下さい!
「剣の中のあいつは、本当はいい奴だったんです。私をいっつもからかったりいじめたりしましたけど、いい奴だったんです!!」
「でも、今は違う。」
タバサの言葉に、返す言葉が無いのか、ダネットはうつむいたまま涙を床に落とした。
「ダネット、もしわたしがそうなりそうだったら、止めてくれる?」
「……お前、その意味をわかって言ってるんですか?」
わたしの言葉に、涙をこぼしつつダネットが返す。
今の言葉の意味なんてわかってる。そして、ダネットが話してくれたハッピーエンドの話や、わたしが見たもう一つの話の中でのダネットを見たことで、ダネットの役目も何となくわかってる。
何よりも、わたしはダネットの知らないもう一つの話の結末も知っている。だからこそ、あんな結末にしてはいけないとわたしは思う。
それなら、そうなる前にわたしは。
「ええ。ちょっと怖いけどね。」
「だからって何でお前がそんな目に会わなくちゃいけないんですか!!」
ダネットは涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔を上げ、叫ぶように言った。
「確かに理不尽よね。でもね、もしかしたらダネットはそんな理不尽な目に会いそうなわたしを止めるために来たんじゃないかしら?」
「そんな事に呼ばれても嬉しくありません!」
「盛り上がってる所に悪いんだけど、一つ聞かせて。ルイズ、あんたもしかして今、どうしようも無い時はダネットに自分を殺せって言ったの?」
キュルケの言葉に、わたしは曖昧な表情しか返せない。
「ふざけるんじゃないわよ!!」
目の前に星が見えた気がした。それほどの勢いでわたしはキュルケにひっぱたかれたようだ。
「痛いわね!! 何すんのよ!!」
「はあ!? わからないならもう一発お見舞いするわよ? あんた使い魔を何だと思ってんの!? 自殺の道具じゃ無いのよダネットは!!」
キュルケの言うことは最もだ。だけど、わたしだって死にたい訳じゃない。そう簡単に死んでなんかやるもんか。だけど、アレの封印が完全に解けたら、わたしの魂が乗っ取られたら洒落じゃ済まないのだ。
「乳でかの言う通りです。私はお前を殺すなんてまっぴらごめんです」
興奮したキュルケを抑え、涙と鼻水を拭いたダネットが、わたしの目を見ながら言った。
「でも!」
「でももヘチマもホタポタもありません。私はきっとお前を守りに来たんです。お前を殺すために来たんじゃありません。絶対そうです。」
「守るってあんた、もしわたしがああなったら守りようがないじゃない!」
「させません。もしとかでもとか知ったこっちゃ無いです。決めました。お前を殺すなんて絶対に嫌です!!」
「じゃ、じゃあどうするって言うのよ!! どうやって魂の融合を止めるって言うのよ!!」
「わかりません。」
「なら無理じゃない! 何よ!! 結局はどうしようもないんじゃない!! 後で殺せないって言うんなら今殺しなさいよ!! そうよ! そうしなさいよ!!」
支援です
言いながらわたしは泣いていた。
今まで頑張って泣かないようにしていたけれどもう無理だった。
不安で怖くて悲しくて。どうして自分がこんな目に会うのかと理不尽を呪って。
だからすがりたかった。いざと言う時はダネットに任せて安心したかった。
でもそれすらも拒絶された。わたしはどうしていいかわからなくなってしまった。
「お前は言いましたよね? きぞくは背を向けないって。逃げないって。今のお前は逃げてませんか? それがきぞくなんですか?」
逃げてる? わたしが?
「私はそんなお前は嫌いです。お前はワガママで贅沢ですぐ私を叩いたり怒ったりします。でも、私はそんなお前が好きでした。そんなだけれど優しくて強いお前が好きでした。」
「……あんた失礼よね。」
「知ったこっちゃありません。嫌いなお前に嫌われてもどうって事ないです。」
「上等よ。喧嘩売ってるのね。いいわよ。やってやるわよ!!」
「来なさい!! 首根っこへし折ってやります!!」
言うが早いか、わたしは手元にあったデルフリンガーを投げつけた。
「え!? ちょっと待って!!」
「そんなサビ剣なんて当たりません!! 今度はこちらから行きます!!」
「ちょ、ちょっと!!」
ダネットは、わたし達の様子に呆気に取られてたキュルケを凄い怪力で持ち上げ、わたしに向かってぶん投げてきた。
「そんな胸に脂肪の塊を付けたもの当たるわけないでしょ!! 投げるならこっちよ!!」
「させない。」
掴まれる事を予測していたのか、タバサはいち早く反応し、エア・ハンマーで反撃してきた。
でも、手元が狂ったのかそれはわたしの横にいたミスタ・コルベールを直撃し吹き飛ばす。
「ぐはぁっ!!」
「へーんだ!! タバサも捕まえられないお前なんて私に勝てるわけありません。今度はこれを食らいなさい!!」
ダネットはわたしの本棚から何冊か本を抜き出し、それを投げつけてきた。
だが甘い。わたしは最初にダネットに首を絞められ、今も足元で伸びていた学院長をぐいっと持ち上げ本を防ぐ。
「あいだぁっ!!」
「やりますねお前!! それでこそお前です!!」
「あんたもねダネット!! いくわよおお!!!!」
「いい加減にしなさい!!」
投げられた拍子にぶつけたのか、腰をさするキュルケのげんこつがわたしの頭を直撃し、ダネットの方もタバサの杖の一撃がクリーンヒットしていた。
支援!
「なんでいっつもいっつも喧嘩になんのよあんた達は!!」
「だってそれはダネットが!!」
「私は悪くありません! お前が悪いんです!!」
「なんですってええええ!!」
「上等です!!」
「だからやめなさい!!」
わたしとダネットは仲良く二発目を食らい、ちょっとだけ涙を浮かべた顔を見合わせた。
「ダネット、あんたちょっと鼻水出てるわよ。」
「お前だって出てます。」
情けない顔を見合わせたまま、わたしとダネットはどちらとも無く笑い出す。
不思議とわたしの中にあった不安は消え、代わりに別の温かいものが宿る。
「ダネット、魂の融合なんて止めてやるわよ。方法なんかいくらでも見つけてやるわ。絶対にね。」
「ええ。方法を見つけるぐらいへのかっぱです。お前、頑張りますよ!」
「えっと、盛り上がってるのはいいんだけどよ、抜いてくんない?」
情けないデルフリンガーの声が聞こえ、声の方を見ると、わたしが投げた拍子に刺さったのか、ダネットのベッドの横に突き刺さっていた。
ダネットが抜いてやり、一安心した後、この錆びたボロ剣はわたしに無茶苦茶な事を言いやがった。
「そんで、これが本題なんだけどよ。娘っ子、てめ、俺を使え。」
部屋の中にわたし達(本の直撃を食らい、また気絶した学院長と、エア・ハンマーを食らって気絶したミスタ・コルベールを除く)の驚きの声がこだました。
もひとつ支援
以上で13話終了
本当はここで一日終わらせたかったけれど、どうしても分けないと長すぎるというorz
それと、こんな時間にもかかわらず支援してくれた方に大感謝ッス!
それでは
GJでした。次も期待してます!!
ふと思った事。デバイスレインからオーギュメント召喚とかしたらどうなるんだろ?
ゴートゥーDMC!!
異世界では知名度0なんだから・・・
BF2のMEC支援兵が召喚されたら、「坂田晴美ジャン」と「コンボラッ」しか言わなさそうだな
>>759 1942の兵士なら零戦の翼に兵士沢山乗っけて手榴弾投げまくって地上攻撃とか
上陸用舟艇に対戦車地雷付けまくって数メイル進んで自爆とか
ジープに爆弾ありったけ乗せて突撃とか。
なんでもありの世界になりそうだな。
自爆する使い魔なんているかな
孫悟空(いやセルか)
ウルトラマンタロウ
ウルトラマンメビウス
アバン先生
てとこかな
ジバクくん
火引ダン
悟空を挙げてベジータを挙げないだなんて……
あと、16号も自爆できる場合がある
バトル漫画やアニメで自爆技が通用するのは、章の締めかラストバトルの最中ぐらいしか無いのが世の常。
物語序盤や中盤で仲間キャラが決死の覚悟で自爆技使っても、相手はピンピンしてるケースがほとんどである。
ブウ戦のベジータ、ハドラー戦のアバン先生とかね。
「やさしくしてねちゃん」
「もう子供じゃないわちゃん」
「友達の家に泊まるって言ってきたのちゃん」
ウルトラマン関係の自爆は危険はあるけど自分が生き残る前提の前向きすぎる自爆じゃねえか
>>766 sageは半角でお願いします。
そういえば、DBで自爆といえば餃子とサイバイマンも居たね。
ヤムチャの印象が強すぎるがなw
ウイングガンダム……ってありゃモビルスーツか、ロボットは自爆させやすいからなぁ。
頑張れば脱出できるし。
>>767 ギーシュが真っ先にやられそうだなwww
アーマードコアFAの自爆技は滅茶苦茶実践的だぞ
だからもうアサルトアーマー止めて
年がら年中自爆してしかもそれが効果的なんてジバクくんくらいのものだな
>>771 ヤムチャって、ギーシュに勝てるかな……
一応あれでも目に捉えることが出来ない素早さで動くくらいは出来るんだぞw
亀仙人に弟子入りする前ならバランス的にちょうどいいかもな
(ガンダ効果無しでワルドに勝てるくらいの強さだと思う)
>>776 無茶言うな!!
お前はヤムチャを殺す気か!!
一応言うが栽培マンと対峙した時のヤムチャの戦闘力は千単位はいってたはず。
>>778 ヤムチャを馬鹿にすんな! 僅差で負けるくらいだ!
ラディッツ戦時のヤムチャの戦闘力は177。
ちなみに同じ時期のクリリンが206(ナッパ戦時には1083)、天津飯で250、餃子150、ピッコロ329(ナッパ戦時1220)、亀仙人139だな。
…しかし何でこのスレはこう、あっちこっちに話題が行くのかね。
………扱ってるジャンルが多すぎるからか。
>>777 それでもヤムチャなら……、ヤムチャならきっと何とかしてくれる
仮にヤムチャの戦闘力が5桁に到達していたとしても、
ヤムチャのヤムチャ力はそれを大幅に上回っているはず!
アニメのヤムチャはセルよりも強いが、どうもヤムチャが勝つ姿が思い浮かばないな
さっきからヤムチャがギーシュに負けるとか本気で言ってるのか?
>>784 勝つと思うけどそんなのヤムチャじゃ無い
ネタにマジレスって言葉を知っているか?
でも飲茶ならギーシュにはワルドには勝てそうじゃね?
だってあのワルドさんですよ
789 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/10(月) 18:49:48 ID:vjgyrVTU
勝てるはずの所で、負けるのが彼
ワルドは一応メイジの中じゃジョゼフ、カリン、カステルモールに次ぐぐらいの実力はあると思うけど。
そしてsageなければならない所で、ageたのが
>>789
ドラゴンポールから召喚だとデンデが一番当たりな気がする。
どんな大怪我も即治療、ドラゴンボールも作れる、種族特性として成長すれば普通に戦闘力が1000くらいになる。
是非ともジョゼフさんに召喚してもらいたい。
>>790 そうは言ってもヤムチャは肉眼で捉えられないレベルだろうから、
例のアレさえ無ければ、その四人が束になっても敵わないんじゃない?
自爆ではなく、墓穴を掘る使い魔なんてどうだろう
何故かグロ魔術士殿の知り合いの地人や無能警官しか浮かばなかったがw
まあ本編で活躍してる場面が思いだせんしな、彼w
悟空の尻尾切ったときや占いババアの館で一勝したくらいしか
ヤムチャ「今の俺なら烈風カリンにも勝てる!」
とりあえず熊の爪の人がザ・ニンジャを召喚して
一勝させることに成功したなら
ヤムチャだって勝てるさ
「今の俺なら烈風カリンにも勝てる。」
この言葉によって、地が天が海が山が歴史が揺れた。
そしてヤムチャは、今その本人たる烈風カリンと対峙していた。
「へへ、楽勝だぜ。」
で、コマとコマの間で倒されてるのがヤムチャ。
おまえらヤムチャ馬鹿にするけどさあ
ぶっちゃけサイバイマンに自爆されて無様に転がってたときのヤムチャって
サイバイマンと互角かそれ以上の強さで戦ってたわけで
戦闘力1200以上あるわけだよ
ラディッツ襲来時の頃のゴクウが416で
ピッコロ大魔王の戦闘力がそれ以上行くって事はないだろ?
って事は、なにげにヤムチャはゴクウやクリリンなどZ戦士がいなけりゃ
サイバイマンと戦ってたときの戦闘力で
軽く世界征服できるだけの戦闘力を持っているわけだよ
何しろピッコロ大魔王より強いわけだからな
ヤムチャが召喚されるんなら、当然他のキャラが力のインフレ起こすだろ
失敗魔法でシュルヴーズごと教室消し飛ばすルイズとか、ギーシュのワルキューレも8体じゃなくて8000体くらい呼び出すとか
キュルケのフレイムがサラマンダーじゃなくて魔竜シューティングスターだとか、シルフィがFS世界のドラゴンだとか
ワルドがロリコンでマザコンの変態さんだとか
>>799 お前ほど2行と3行の内に皮肉を込めた男はいないだろうな。
理屈ではヤムチャがゼロ魔世界の物差しだと敵無しだって理解してる
でも願望としては…なあ
ファンの間での印象を誇張した二次創作は駄作の温床
お前等はヤムチャを何もわかっちゃいない
最初の召還時の衝撃に耐えられる訳がねえだろうが!!
>>805 いや、ネズミだって問題なくたえられたんだから、その理屈はおかしい
真面目な話ヤムチャ一人でヨルムンガント程度なら倒せる気がするんだが
……でも七万は傷は負わないが過労死しそう
ネズミよりヤムチャが強いって言うのか!
ヤムチャとアモロ君とレオパルドンとN・B・フォレストで
ゼロの使い魔やってみれば面白いのかもな
ネタキャラでもギャレン橘さんみたいに実力や活躍度が
ここぞという所で確立変動するならなぁ
あースマソ
ヤムチャ出してからこんな流れにしちまったw
それだけヤムチャが愛されてるって事さ
このスレがDB直撃世代のオサーンばかりだということはよく分かった
そういえばレオパルドンって何万パワーなんだろ?
一万以上あれば人間じゃ歯が立たないよな、多分
ヤムチャがだめなら天さんは?
815 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/10(月) 20:02:06 ID:Jf7BvLfN
お前ら、忘れたのか!!!
亀仙人のじい様でさえ月をかめはめ波で壊しているんだぞ!
その弟子であるヤムチャが7万の一般人に負けるわけがないだろうが!
流れをぶちぎって
もしルイズが男の娘だったらなぁと妄想した事ある奴挙手
男の娘とはいかに!?
>817
「こんなに可愛らしい子が女の子な訳ないじゃない!」を地で行くのでありますよ。
>>817男の娘 おとこのこ
スカートの中にはオティンティンが…
それは上級者すぎて無理www
>>813 レオパルドンの超人強度は460万パワー
ちなみにマンモスマンは7800万パワー。
準にゃん召喚と申したか。
しかし、愛しの雄真と離れ離れにさせるなんて外道な事、俺には出来ねぇぜ……。
あ、でも、男になったIFの世界のルイズとかを召喚……
って、オリキャラと変わらないか。
というわけで、恋楯の妙子希望。
男の娘で戦闘力も有しているといえば、広場のまひるさんでしょう
で…筋肉の使い魔の続きはまだなのかね。…言わなくていいぞ。
そういや、男の娘だったら今週のCLANNADで出てたな。
他所で実は男のルイズが実は女のサイト召喚って話見たことが・・・
ショタの気はないんだが、男の娘のルイズがキュルケとくっつくってのも、
面白いやもしれんと思うのは俺だけか?
GP−09 投下OKですか?
支援いたしまする!
ルイズが性転換アイテムを召喚すれば……。
>>828 カモーン
男のツンデレ、ですね、わかります。
ルイズが男なら、まだ可愛げがあるなあ、でも、あの女の子のルイズも可愛いんだよな。
……早く続き書かなきゃ。
投下支援、っと。
次回予告
「スピードルだ! さあみんなでフーケ退治だ……って、ミス・ロングビルがいねえ!? 『何とかしないと』って何とかなるのか?
GP−09 急襲ゴーレム
――GO ON!!」
出発30分前、ヘルガイユ宮殿広間。
対巨大ゴーレムの切り札たる第3の蛮機獣が誕生しようとしていた。
「ドリドリクリクリドリクリクリ、ドリルバンキ!!」
その言葉と共に出現したのは、頭・両手・胸・股間・膝等全身にドリルを装着した蛮機獣。
「ドリルバンキ、我らはこれより『土くれのフーケ』討伐に向かうなり。お前はいざという時の切り札なり」
「かしこまり。しかし……」
「どうしたの?」
自分の姿を映すモニターを見つめるドリルバンキに怪訝な表情でルイズが問いかけると、ドリルバンキは自分の顔面を指差し、
「鼻がドリルじゃないというのは私の趣味ではありません。付けてください」
「……鼻ドリルなど飾りなり。偉くない者にはそれがわからんなり!」
――GP−09 急襲ゴーレム――
3時間後、8人はロングビルを案内役に出発した。
蛮ドーマならあっという間なのだが、ヨゴシュタインが「可能な限り手札は見せたくない」と言った事、さらには定員オーバーな事もあり馬車での移動となった。
馬車といっても襲撃に備えて屋根無しの荷馬車だ。手綱を握るのはミス・ロングビル。
「ミス・ロングビル、手綱なんて付き人にやらせればいいじゃないですか」
「いいのですよ。私は貴族の名を無くした者ですから」
「あら、オールド・オスマンは貴族や平民だという事にあまりこだわらないのね」
「するとミス・ロングビルもメイジなりか?」
そこに荷台最後部に座っていた3人組の中で、ヨゴシュタインがロングビルに視線を向けて尋ねた。
「ええ。とはいえたいした実力ではありませんし、戦いは苦手なのですけどね」
「じゃあいざゴーレムが出てきたら後ろに下がっていてください、ミス・ロングビル」
「ルイズ、昨日のような無茶はやめるでおじゃるよ?」
「わかってるわよ、ケガレシア。昨日はちょっと頭に血が上ってしまっただけよ」
森の入り口で馬車を降りてしばらく歩き続けると、一行は開けた場所に出た。森の中にできた広場という感じの場所でなかなかの広さだ。
中央やや奥にある廃屋が目的地だろう。先頭のロングビルが木の陰に隠れながら振り返り、
「あそこのようですね」
と告げた。
全員廃屋を確認し見える程度に距離を置くと作戦会議を開始した。
廃屋内部にフーケがいれば奇襲すればすむが、外にいた場合無闇に攻撃してはフーケが逃走する危険性がある。建物に攻撃して「ルサールカの鎧」を破壊してしまっては無意味だ。
最終的にタバサ提案の「囮兼偵察が小屋に接近し中を確認、フーケがいれば挑発で外におびき出し集中砲火」という作戦が取られる事になった。小屋の中に巨大ゴーレムを作り出すほどの土があるとは思えないので、出てきてゴーレムを作るまでの隙を狙うというわけだ。
囮兼偵察役はルイズ・ケガレシアの2人。
静かに廃屋内部を確認するが誰もいなかった。床に大きな何かが置かれているのが見えるだけだ。
地下室への隠し通路でもない限り隠れ場所があるようにも見えないので、とりあえず全員呼び寄せる。
「……罠は無い……」
タバサが扉に向かい杖を振って言った。
内部に入って遺留品を探そうという事になって、ルイズ・ケガレシア・キュルケ・タバサ・ギーシュが中に入り、ヨゴシュタイン・キタネイダスが見張りとして外に残リ、コルベール・ロングビルは周辺の偵察と役割を分担した。
「え、ちょっと待って。これって……」
「……『ルサールカの鎧』……」
どうやら先程覗き込んだ時によく見えなかった何かが、「ルサールカの鎧」だったらしい。2人に近付いて覗き込むとケガレシアも、
「こいつは……。こいつが『ルサールカの鎧』でおじゃるか?」
それを見て思わず怪訝な様子で問いかけた。それは確かに鎧にも見えるだろうが……。
「ケガレシア、何か知ってるの?」
ルイズが尋ねたその時、
――ズドオオン!
猛烈な地響きに屋外に出ると、小屋の前に高さ30メイルもあるゴーレムがそびえ立っていた。
「うわあ!? 何だ!? どうした!?」
「フーケよ!!」
「ついにお出ましでおじゃるな!!」
「ミスタ・コルベールとミス・ロングビルは無事かしら?」
鼻ドリルw
支援
タバサが真っ先に反応し素早く呪文を詠唱、巨大な竜巻でゴーレムを攻撃するがびくともしない。
次にキュルケが胸に挿した杖を引き抜いて呪文を詠唱する。杖から伸びた炎がゴーレムの上半身を包み込むが、ゴーレムの腕の一振りで全て消し飛んだ。
「……無理……」
走ってゴーレムから離れる5人の元に、キタネイダス・ヨゴシュタインが駆けつける。
「ルイズ、出発前に準備しておいた切り札を出す時なり」
「ええ!」
「あいつを出すでおじゃるな」
「待ってましただ!」
「出番なり、ドリルバンキ!」
ヨゴシュタインの声に応えるかのように7人に接近するゴーレムの間の地面が盛り上がり、
「かしこまり!!」
ドリルバンキはその声と共に飛び出し……、
――ズウウウン……
……あっさりゴーレムに踏み潰された。
『………』
「あら、負けちゃったわね」
「大丈夫ぞよ、元々等身大の蛮機獣であのゴーレムの相手になるとはヨゴシュタインも思っていなかったぞよ」
「……見るなり! これがドリルバンキの切り札たる所以なり! ビックリウムエナジー発動!!」
次の瞬間、周囲一帯が激しい地震に揺さぶられる。
「な、何!? 何がおこってるのよ!?」
「落ち着けキュルケ。僕にもはっきりわからないが……、ヨゴシュタインが何かした事は確かだ」
そしてゴーレムが足元をすくわれたかのように大きくのけぞったかと思うと、
「サンギョーカクメーイ!!」
なんと踏み潰されたはずのドリルバンキがゴーレムと遜色無いほどに巨大化して、復活を遂げたのだ。
「弾ける……、力が弾ける……」
「えっ!? ミスタ、急に本気モードじゃないの」
「……下がらないと……」
そう告げて駆け出したタバサを先頭とする一行が広場を囲む森に入った時には、既に巨大ドリルバンキ・ゴーレムの戦端は開かれていた。
「………」
「ふん! 痛くも痒くもないわ!」
ゴーレムが渾身の力を込めて放った拳は胸のドリルにあっさり砕かれた。
「今度はこちらの番だ!」
「………!!」
お返しとばかりくり出したドリルバンキの右腕のドリルが、ゴーレムの胸に風穴を開ける。
再生はしているものの流石に大穴だけあって時間がかかっているようだ。
「状況は不利か……。さて、どう出るか」
小屋のある広場から少々離れた場所にそびえる大木。その樹上からフーケはゴーレム・ドリルバンキ戦の様子を見ていた。
「ここまで厳しくなるとは予想外だね」
状況ははっきり言って不利の一言。ゴーレムの攻撃はことごとくドリルバンキのドリルに打ち砕かれ、逆にドリルバンキの攻撃は一撃でゴーレムの体に風穴を開ける。何か突破口は無いものか……。
そう考えていたフーケの視界にドリルバンキの中でただ1ヶ所、ドリルの無い部分が入った。
「あそこを狙いな」
その声に答えるかのように、体勢を立て直したゴーレムはドリルバンキの顔面に拳を叩き込んだ。
「ぐわあっ!」
大きくよろめくドリルバンキ。すかさず追撃をかけようとするゴーレム。
間一髪体勢を立て直して、全身のドリルを駆使しゴーレムの体を削り取っていく。
2体の巨人の戦闘は防御を無視した殴り合いと化していた。
そしてそれにもやがて決着の時が訪れる。
数度に渡る殴り合いの末、ドリルバンキは両腕のドリルを使いゴーレムの胴体に今までに無い大穴を開けた。
「やったわ!」
思わず歓声を上げたキュルケ。
しかしドリルバンキの方もそこまでが限界だったようで2〜3歩大きくよろめき、
「だから顔にもドリルを付けてくださいと言ったのです……」
そう言い残して大爆発してしまった。
『………』
「共倒れ……」
大爆発w
支援
「それより土くれのフーケはどこだ?」
「……それに、ミスタ・コルベールとミス・ロングビルは?」
ギーシュの言葉にルイズもそれに気付いた瞬間、一行は自分達の足が動かなくなっているのに気付いた。
いつの間にか足元の地面が異常に盛り上がり足に絡まっている。
「さて、そのまま土に埋もれて死にたくなかったら、全員杖を投げ捨ててもらいましょうか。それとあなた達は得物を捨てなさい」
背後から声がした。振り返るとミス・ロングビルがそこにいた。
ルイズ達は仕方なく杖や得物を投げ捨てた。これでメイジは呪文を使う事ができないのだ。
「ミス・ロングビル……、まさか……?」
「そう、私が『土くれのフーケ』。さっきのあれは凄かったわね。私のゴーレムを打ち破るなんて。でも、こうなるとあなた達も手も足も出ないでしょう?」
フーケは、先程小屋に残してきた「ルサールカの鎧」を背負っている。
「どうして!?」
ルイズがそう怒鳴るとフーケは、
「そうね、説明してあげる。この『ルサールカの鎧』を盗んだはいいけど、使い方がわからなかったの。持っていても、使い方がわからないんじゃ宝の持ち腐れじゃない。そうでしょ? そこで魔法学院の者に教えてもらおうと思って一芝居売ったってわけ」
ルイズがフーケを睨みつけるが、フーケはそしらぬ顔で視線をケガレシアに向けた。
「そこのお嬢さん? この鎧について何か知ってそうだったわね? 教えてくれない?」
「教える事など何も無いでおじゃる」
「それに私達にはもう1人仲間がいるのよ」
「ふふふ、あのコッパゲならそこで足止めされてるわよ?」
「どこを見ているなり? もっと近くなり」
ヨゴシュタインの声に後方を振り返ったフーケだったが、先程の自分の言葉通り足を固められているコルベール以外には投げ捨てられた杖・鞭・大剣といった得物以外無かった。
「ハッタリはそのくらいにし――っ!」
向き直ったフーケがその言葉を最後まで言い終わらないうちに、彼女の腹部を激痛が襲った。
大剣形態のデルフリンガーが背後からフーケの腹を貫いたのだ。
フーケは命に別状は無かったものの、そのまま為す術も無く取り押さえられたのだった。
>「だから顔にもドリルを付けてくださいと言ったのです……」
マイトガインだっけw支援
しえん
蛮機獣ドリルバンキ
【分類】害地目
【作成者】害地大臣ヨゴシュタイン
【作製モデル】ドリル
【口癖】「ドリドリクリクリ」
【身長】211cm(産業革命時31.7m)
【体重】236kg(産業革命時350t)
「ドリル」をモデルとして製造された蛮機獣です。
ドリルとは、(土砂や岩石を掘り取って穴を開ける事のできる)道具です。
ドリルバンキは、頭・両手・胸・股間・膝等、全身にドリルを持っています。
このドリルを利用して地中を掘り進む事で危険な地盤沈下を招く地下空洞や地下水脈・溶岩等を都市に送り込むトンネルを簡単に作る事ができます。
注)ドリルを付けるよう請願したものの却下された顔面にはドリルがありませんのでご注意ください。
以上投下終了です。
ドリルバンキは原作にも登場してますが(GP−32〜33)、
SSの設定ではヒラメキメデス登場前に召喚された事になっているのでデザインの違いはご了承ください。
ところで皆さん、「ルサールカの鎧」が何かわかりましたか?
次回は「トリステインゼミナール」と称して、「ルサールカの鎧」の正体等の説明エピソードにするつもりです。
おちゅー
乙。イースのアドル召喚とかは無いかな?
いや、召喚後即座に聖地経由で東方探検に出発してしまいそうであるがw
>>817 男の娘ならうたわれるもののドリィとグラァ召喚
弓の名手で俊足、体術にも優れ大軍の指揮もできる
しかしルイズの注目は本当にツいてるか否か
なぜ皆無難に鰤を選択しないのか…
男の娘はメンタリティはおにゃのこであることが肝要だと思うが如何に。
>845
オボロもつけてくれよ
で、ルイズが朝目を覚ますと、酔いつぶれたオボロに艶っぽく肢体を絡めて彼の胸板に
頭を預けて眠る双子の姿が…
んじゃ、秀吉召喚?
相手の気の流れを狂わせたり、軽気功で木の葉の上に乗ったり?
乙でしたー
股間にドリルは想像したら噴いたw
鎧はえーっとあのオムライスお供えされてたお地蔵さま?
(馬鹿はうろ覚えだ!)
853 :
MtL:2008/11/10(月) 22:13:48 ID:MMuPe/E8
予約がなければ30分から投下を開始しますー。
容量は20kほどなので、このスレ中で大丈夫だと思います。
支援
支援
856 :
MtL:2008/11/10(月) 22:30:56 ID:MMuPe/E8
マジシャン ザ ルイズ 3章 (49)意志力
トリステインの大艦隊。
その中央、周囲の船に守られるように一隻のフネがあった。
百メイル級以上の大きさを誇る大型艦、その形は周囲のフネとはやや趣を異にする。
船体は流線型、細長い木の実のような形をしたフネ。
一般的なハルケギニアのフネとは違い、その甲板上にマストがない。
また、船側に取り付けられる船翼が、通常のそれよりも後方部に設置されている。
このような際だった差異を有する船は、現在のハルケギニアにおいてはただ一隻。つまりは、ウェザーライトU号である。
そのブリッジでルイズは、ただ一人、椅子に座っていた。
薄暗い無人のブリッジ。幽霊船じみた不気味な光景ではあるが、それでもこの船に限っては、それで航行に支障が出ることはない。
その証拠に計器類は正常に動いているし、操縦席の操縦環は必要に応じて回っている。
全ては、自動操縦。
今この船で動く全てのものは、機械仕掛け。
エンジンルーム他、動力室や制御室で稼働に必要な最低限の整備に従事しているのもアーティファクト。
全自動航行システム。ウルザが初代ウェザーライトの教訓を生かし、『生ける船』から『死せる船』へとコンセプトを変更するに当たって組み込んだものの一つである。
彼女に出来ることはなにもない。
ルイズはそこで、ただ独り、孤独に船が目標地点へ到達するのを待っていた。
帝都ヴィンドボナは、帝政ゲルマニアの首都にして、芸術の都の二つ名を持つ、ハルケギニア最大級の規模を誇る都市である。
同時に周辺には複数の衛星都市を有し、帝都そのものは堅牢な城壁で囲っている、防衛に適した都市でもある。
そこからほんの数リーグ離れた場所が、最初の戦場。
そこではトリステインとアルビオン、両軍の旗を掲げた兵達が、命をかけた戦いを繰り広げていた。
片方の目標は西の空を狙って巨体を晒す、四機の長距離対空砲台の破壊。もう片方はその防衛。
モット伯爵は、そんな戦いの最前線に立っていた。
「ふんっ!」
裂帛の気合いと共に、『ブレイド』の呪文を纏わせた杖を横に振り抜く。
赤い血が吹き上がり、豚の首が二つ、宙を舞った。
「お見事!」
馬上のモットに声がかかる。
その背を守るようにして、馬に乗った一人の士官がモットの背後についた。
「しかし前に出すぎですぞ! 伯爵殿!」
「はははっ! まだまだ行けるぞ副長! この波濤、この程度では止まりはせんよっ!」
晴れやかに叫ぶその姿に気圧されたのか、周りを取り囲んでいた者達はじりじりとその輪を広げていく。
「はっ!」
そこに隙を見つけて、すかさずモットが馬を走らせた。
途端に輪が乱れる。背を見せて逃げ散らすオークの一団。
モットはすくい上げるように杖を振るい、一匹のオークの背を切り裂くと、そのまま馬を走らせた。
続いて副長も行きがけの駄賃とばかりにオークの首を一つばかり刎ねると、その背後を追走する。
鬼神の如き二騎が、自陣の内深くに切り込んでいくのを見ながら、オーク達は呆然と立ち尽くしていた。
つむじ風。
次の瞬間、矢の雨が降り注ぎ、残ったオーク達は残らず絶命した。
そして崩れ落ちる屍体を蹴散らしながら、十騎ばかりの甲冑を着込んだ兵士達が先行して走る二人を追いかけていった。
857 :
MtL:2008/11/10(月) 22:34:08 ID:MMuPe/E8
次の瞬間、矢の雨が降り注ぎ、残ったオーク達は残らず絶命した。
そして崩れ落ちる屍体を蹴散らしながら、十騎ばかりの甲冑を着込んだ兵士達が先行して走る二人を追いかけていった。
「隊長! お歳の割には元気ですなぁ! まるで二十歳過ぎのお盛んな少年のようですぞ!」
「はっはっはっ! 下の方はまだまだそのつもりだよ副長! それより他の者達はどうした!」
「はっ! きちんと我々の後ろを付いてきていますよっ!」
「よろしいっ! では我々でアレを落とすぞっ!」
言ってモットは高々と杖を掲げ、それで前方に威容を見せる巨体を指し示した。
数十メイルはあろうかという、規格外に巨大な大砲、それを狩ると宣言する伯爵の言葉に、彼の元について十日ばかりの副長は身を震わせた。
「ははっ! これまで口先だけのお貴族様は沢山見てきましたがっ!」
「惚れるなよ副長! 私に惚れて良いのは若い娘だけだよっ! それもできればメイドが良いっ!」
そう叫んでモットが馬の進路を変えようとしたとき、件の巨砲が轟音を立てて火を吹いた。
その音に驚いて、モットの馬がヒヒンと啼いて、前足を上げて足を止める。
「おおっとぉ!?」
モットは手綱を掴んで危うく落馬を免れる。
轟音の元凶となったと思われる方角を見る。
するとその視界の先では、もうもうと黒い煙を上げる鋼鉄の巨体が鎮座していた。
「くそっ! 早すぎる、もう空の連中が射程に入ったのかっ! 急ぐぞ副長! これ以上聖女を危険にさらすわけにはいかんのだっ!」
せいやと声を掛け、再びモットは馬を走らせる。
その背中は、正に波濤の名に相応しかった。
最初にドンッという音。続いて襲った衝撃で、椅子に座っていたルイズは床に投げ出された。
「……つっ」
何かが起こったらしいが、倒れたままの姿では、確認することすらままならない。
ルイズは立ち上がろうとして腕に力を入れたが、それは適わなかった。
力を込めて体を起こしていた肘がかくんと折れて、再び床に突っ伏してしまう。
既に病魔の進行は、取り返しのつかないところまで進み、ルイズの体から四肢の自由すらも奪い去っていた。
それはウルザの言いつけを守らずに虚無の魔法を強行した罰か、元々の病の進行具合なのか、それともそれすらも彼の中で織り込み済みだったのか、
ルイズには分からない。
悔しさのあまり、ルイズの目に涙がにじむ。
色のない世界、思い通りにならない手足、そしてウルザにワルド。自分をさいなむ全てに、ルイズは無力だった。
それでも彼女は、一人の力で立ち上がろうとする。
そこに、すっと何かが差し伸べられた。
「馬鹿ね。ほらっ、掴まりなさいよっ」
ルイズの驚きをよそに、声は続ける。
「差し出された手を掴むのは、恥じゃないわよ」
それはここにいないはずの少女、モンモランシーの手だった。
858 :
MtL:2008/11/10(月) 22:37:12 ID:MMuPe/E8
「も、モンモランシー!? 何であんたがここにいるのっ!?」
「よっ、と。ふぅ。……ルイズ、あんた軽いのは羨ましいけど、もうちょっと食べなきゃ駄目よ。体壊しちゃうもの」
「そんなことより! 答えなさいよモンモランシー!」
椅子に座り直させてもらってから、ルイズは唾を飛ばす。
対してモンモランシーは腰に手を当てて言った。
「別に私だけじゃないわ、ギーシュだっているもの」
それだけ口にすると、モンモランシーは『悪いのは私だけじゃないもん』と言外に語ってそっぽを向いた。
そちらの方角を目で追うと、ブリッジと船内を繋ぐ扉から、ギーシュが顔を半分だけ出していた。
「や、やぁ」
「ギーシュッ!? あんたまでっ!」
「いや、僕ぁやめようって彼女に言ったんだよ。それなのに彼女ときたらちっとも聞いてくれなくて……」
「こんの馬鹿っ! そう言うときはふん縛ってでも止めるものでしょう!?」
「縛るって……そんな嬉し、じゃない、酷いこと……」
と、口にしてギーシュがその身を現すと、今度はルイズの口がぽっかりと開いた。
「あんた……一体それ、どうしたのよ……」
そう言ってルイズが指さしたギーシュは、背に背嚢、腰にはいくつも布袋をぶら下げている。おまけに胸には彼自身の背丈ほどもあろうかという大剣を抱いていた。
その上、背嚢や布袋の口からは、ものが入りきらずにものが多数飛び出しているのが見える。
まるで火事場泥棒のようなていである。
と、そこでぽかんと見ていたルイズが気づいた。
「あんた! それ、ミスタ・ウルザのものじゃないっ!?」
ギーシュの体がビクンと震える。
彼が抱えている大きな剣、それはウルザが手にしていた「シュペー卿の作った剣」に違いなかった。
「いや、その、これは……ええと、何かと物騒かと思ってね。備えあれば憂い無し、転ばぬ先の樫の杖と言うじゃないか」
「だからって、勝手に持ち出していいと思ってるのっ!?」
再びドンという音、三人の足下が揺れた。
ルイズの怒りが船を振るわせた訳ではない。先ほど同様に衝撃が船を襲ったのだ・
先ほどのものに比べれば小さかったのだが、それでもやはり気になるのか、ギーシュは落ち着き無く、ちらりちらりと外を見た。
「ぼ、僕は外の様子を見てくるよ、君達はごゆっくり……」
言って、ギーシュは荷物を抱えたまま、入り口から窓を目指して壁沿いに蟹歩きに動いていく。
ギーシュがそう言ってそそくさとと移動を始めてしまうと、今度はルイズの激昂の矛先がモンモランシーに向いた。
「大体! どうやってこの船に忍び込んだのよ! 出航前には一通りミスタ・ウルザが魔法でチェックしてたのに!」
「あー、えーと、そこはこれ、ポーションを使ったの」
そう言ったモンモランシーがポケットから取り出したのは小さな小瓶だった。
「ちょっと! あんたまさか、またご禁制のポーション調合したの!?」
「ご、ご禁制って、人聞きが悪いわね! これは材料の入手が困難なだけで、別に法に触れる代物じゃないわよっ!」
そこで更に再び小刻みな揺れ。
大きさは先ほどと同じくらいだが、今度の方が長い。
「おいっ! 君たちっ、大変だ!」
二人から距離を離すようにブリッジの外縁部、窓の近くまで逃げていたギーシュが血相を変えて叫んだ。
「戦闘が始まってる!」
トリステイン第二飛竜大隊は、三騎編成の小隊を三つで中隊とし、その中隊を三つ合わせて大隊とする、トリステインで最高位の機動力と連携力を有する部隊の一つである。
その彼らが、最初に敵と会敵していた。
支援
860 :
MtL:2008/11/10(月) 22:40:24 ID:MMuPe/E8
風を切って恐ろしい早さで空を駆け上る三騎の竜騎兵。
彼らは螺旋運動を取りながら、敵である彼らの竜より二回りは大きい赤い鱗の竜を追い詰める。
逃げるものと追うものの距離が、ぐんぐんと縮まっていく。
逃げ切れないと判断したのか、火竜は反転。追いすがる敵に対して灼熱のブレスを吹き付ける。
だが、愚直な一撃は、追跡者達を捕らえられずに空を焼く。
迎撃のために大きく失速した巨体を、螺旋を描いた三騎が火竜を追い抜いた。
次の瞬間、空に赤い血がしぶく。
火竜の体がばらばらに切断されて地表へと落下していく。
その様子を確認してから、三騎の竜騎士達はその上昇をやめた。
「火竜程度、俺たちの敵じゃねぇぜ!」
無鉄砲という若さゆえの特権に溢れた声がそう叫んだ。
その声に、厳格な父親のような貫禄を感じさせる声で注意が飛んだ。
「油断するな! 次の敵へ向かうぞ!」
「南西の方角、21時の方向。味方小隊が交戦中です」
最後に落ち着き払った青年の声がかけられた。
見ると確かにそちらでは三対一で苦戦する友軍の姿が見えた。
しかし、リーダーである男は暫くじっとそちらを見てから、いいやと口にした。
「我々は別のを狙う。あれは後ろにひよっ子をつけて相手するには少々荷が勝ちすぎる」
彼らミッチェラン小隊は、後にトリステイン第二飛竜大隊のエースとして呼び称されることとなるが、彼らの隊長ミッチェランが、敵を前に躊躇ったのは後にも先にもこの一度だけだったという。
よく訓練された竜騎兵達。
その連携はかのアルビオンの竜騎兵隊と比べても遜色ないというのが、彼らの自負ところであり、意地でもあった。
そして、それは今空を駆けている勇者達が等しく信じる神話でもあった。
三騎に対して単機で交戦している男が、危機的状況の中で喜びの笑いを上げる。
「ハッハァッ!」
男が騎乗していた竜が放った炎のブレス、それを風竜は軽々とかわしてみせる。
だが、男はその回避すらも読み切って、避けた先に火線を放つ。
とっさ、トリステインの風竜はピッチを上げることで、皮膜を焼かれながらも主人を守った。
竜と人の連携、竜は人を信頼し、人も竜を信頼する。
竜騎士の本領発揮。
「遅い!」
そんなことを歯牙にもかけず、無慈悲な戦闘者は距離をつめる。
男の乗る竜の鱗は赤い、けれどもそれは、とても火竜とは思えないような速度の飛翔で、きりもみに落ちる竜へと迫る。
苦し紛れで放った騎兵のエアカッターが、恐るべき早さで滑空してくる火竜に向かってカウンター気味に放たれ、回避運動すら許さず火竜に直撃した。
男の騎乗する竜の顔、首、胴体、手足が切り裂かれ、そこに深い裂傷が走る。
だが、血は出ない。
「浅いわっ!」
そう叫びが上がった頃には、既に彼我の距離は数メイル。
男の持つメイス型の杖から勢いよく炎が吹き出して襲いかかり、騎乗していた兵士を瞬時に炭化せしめた。
ついで、男の騎乗していた火竜の顎が、風竜の喉を抉る。
「ふん。死ぬときも仲良く一緒か、竜騎士の鏡だな」
伝説と呼ばれる傭兵メンヌヴィルが凄惨な笑みを浮かべて呟いた。
861 :
MtL:2008/11/10(月) 22:43:52 ID:MMuPe/E8
そんな彼に、雲に紛れて上空から肉薄せんと降る影。
「よくもぉおおおおおおお!!」
竜騎士は通常三から四騎で一部隊。
戦友を失った二騎が、上天から、矢のようにメンヌヴィルに迫る。
先ほどのメンヌヴィルの焼き直し。
または、先頃ミッチェラン小隊の竜騎士達が行った連係攻撃を、天地逆さまにしたような構図。
二騎ないし三騎の風竜と竜騎士をもって螺旋飛行を行い、至近距離にはすれ違い、僚騎との直線上を結ぶ空間を切断せしめる。必殺の連携技。
二匹と一匹、二人と一人が交錯する。
必ず殺すと並べて必殺。それを受けて無事で済むものなどいるはずがない。
バラバラに切断された肉塊が空で散ったのをすれ違いざまに確認して、若い騎士が気勢を上げた。
「やった!」
「いいや、残念だ」
声の直後、青年騎士は自分の顎部が粉々に砕け散る音を聞いた。
「タネの割れている手品は、退屈に過ぎる」
後ろへ向けて崩れて倒れる騎士、その後にはまっすぐに伸ばして上げられた丸太のような足だけが残された。
よっ、と上に伸ばした足を曲げ、腕の力だけで体を持ち上げる。メンヌヴィルは軽業のように体を入れ替えると、超然と風竜にまたがった。
騎士の方は死んでこそいないものの、ヒューヒューという息を漏らして気を失っている。
彼が真っ逆さまに落ちていかないのは、騎士と竜を固定している鞍のおかげである。
「誰にも死んで欲しくないなら、こんなところにこなければよいものを……ぬ」
言いかけたメンヌヴィルの体が、左右に振られる。
「っと、まだお前が残っていたか」
主人を襲われた竜が、背の上の敵を振り落とそうと蛇行飛行を開始したのである。
メンヌヴィルはその手綱を右手で掴んだ。
「畜生にしては悪くない判断だ。だが、果たしてこれに逆らえるかな」
メンヌヴィルの右手に刻まれたルーンが、怪しく輝きを放つ。
するとそれまで激しく暴れていた竜が急に大人しくなった。
そう、これがメンヌヴィルの右手に刻まれたルーン、ヴィンダールヴの効果。
どのような獣であろうともたちどころに従えてしまう能力だった。
「くくく、悪くない、悪くないぞ。……だが、まだだ! まだ俺の熱はあの温度には遠い!」
残虐で知られる伝説の焼却者は、トリステインの竜を駆って、次の被害者へと狙いを定めたのだった。
「メンヌヴィルめ。派手に暴れているではないか」
視線の先ではメンヌヴィルが縦横無尽に戦場を飛び回り、次々に敵を撃墜していくのが見える。
彼の中の獰猛性、顕示欲が刺激されて、ざわざわと心がさざめく。
だが彼はそれを抑えつけ、知性の宿る眼によって戦場を見渡していた。
周囲を睥睨しているのは、一匹の竜。
赤と見えれば青にも見える、青と見やれば赤にも見える。
両極端な色合いを持ちながらも、不思議な調和を保つ鱗を纏う、人語を喋る竜。
そのようなものは、ドミニアを探しても彼しかいない。
「どれ、次は私も混ぜてもらうとしよう」
分析を終わらせた竜がそう呟いて羽をうつ。
空域に、もう一つの脅威が牙を向く。
862 :
MtL:2008/11/10(月) 22:47:07 ID:MMuPe/E8
想うようにして、その実想われている。
仕掛けているつもりで、仕掛けられている。
そして、見渡しているつもりで、見透かされている。
竜が戦場を眺めていた様子を、観察している者が遙か彼方に一人いた。
「はじまった、か」
映し出された立体映像を前に、そう口にしたのはウルザだった。
そこはトリスタニアにあるアカデミーの地下魔法実験場。
病室のように白い壁が周囲を覆われている、見晴らしの良い広い円形をした部屋。
普段は殺風景なその場所に、今は様々な機器や魔法具がそこかしこに並べられていた。
ウルザの計画の重要な位置を担うその場所にいるのは、彼ともう一人。
助手として選ばれて隣に立つ女性もまた、戦場から遠く離れた場所にいて、始まった戦いの様子を目にしていた。
「ミスタ・ウルザ……」
顔を青くして横に立つ老人に何かを言いかけた彼女は、ウルザに選ばれたアカデミーの才女だった。
長くウェーブのかかったブロンドの髪、白く清潔そうなブラウスに、今はアカデミーの研究員であることを示す白衣を身に纏っている。
普段は勝ち気につり上がった目をしているが、今は不安そうに眉をひそめている彼女は、ルイズの姉、エレオノールであった。
「あの子は大丈夫でしょうか。ミスタ・ウルザ……」
語る目は、目の前に繰り広げる凄惨な戦いに釘付けられている。
このような場所に、自分の可愛い末妹がいるかと思うと、いっそ今からでも駆けつけて、無理矢理にでも連れ出したい衝動にかられる。
そんなエレオノールの肩にぽんと、大きな手が置かれる。
「安心したまえ、君の妹は強い」
ウルザだった。
「何よりも、これから執り行う儀式が成功すれば、彼女に危害を加えようとするものを打ち倒すことができる。その為には君の協力が必要だ」
心中にまで力強く響く言葉に、エレオノールは一時躊躇った後に頷いた。
「よろしい、ではこれより『トリステイン・ブルー』を開始する」
そう言って、ウルザは床に手をついた。
途端に地面から彼へと流れ込む莫大な量の、魔力の塊。
凡百の魔術師なら処理しきれずに、内部から焼き尽くされる魔力を、ウルザはいとも平然とその内部に溜め込んでいく。
しかも、それが一度で終わらない。
強大な精神力でもって、それを何度も繰り返す。
決して倒れぬ不屈の精神力。
途中、いくつものアーティファクトが部屋の中に召喚される。
エレオノールは事前に指示されたとおりに稼働させたり、場所を動かしたりする仕事に翻弄される。
その間も、ウルザの動作は止まらない。
自身が立てた行動計画に則って、術を積み重ねていく。
事前に想定仕切れなかった揺らぎや不確定要素に対しては、その都度天才的なひらめきでもって解決。意外な幸運に際しては、それを利用してより多くの実りを得てゆく。
緻密にして大胆。
正に、ウルザという人物像そのままの行動計画。
ウルザがアカデミーから引き出したマナは、知識に変換されて流れ込む。
そして知識でもってより的確に、より効率的にアカデミーのマナを刺激し活性化させる。
それをウルザは不屈の精神力で汲み上げる。
繰り返される魔法の連鎖。
しえん
864 :
MtL:2008/11/10(月) 22:50:13 ID:MMuPe/E8
魔力がどんどん膨らんでいく。
知識はマナへ、マナは知識へ。
廻る廻る、魔力が廻る。
いつしか実験場を中心として、トリスタニア全体が輝ける渦の中にあった。
いつか見たあの島の再現。
時間が捻れ、絡み合った、あの惨劇の再来。
そう、ウルザを中心にして起こっているのはあの災禍の――時間実験際に観測されたもの。
即ち『時のらせん』と呼ばれる時空現象。
「己を過信したな老人め」
闇の中に、瞑想状態であったワルドから、嘲りを含んだ声が漏る。
トリステインでウルザが宿敵を屠るべく術技を組み上げていた頃、同様にワルドもまた、宿敵を討ち滅ぼすための策を練り上げていた。
ワルドが舞台として用意したアルビオンの中枢は、地下に存在する大空洞。
その中心に据え付けられた赤石の椅子に腰掛けて、ワルドは暗くほくそ笑む。
「貴様が私を倒すために小細工を巡らしていたのは知っていたさ。だが、何も切り札を準備して備えるのは、年寄りの専売特許じゃない」
口にして、左手を掲げる。
広げた手のひら、そこに同化するようにして埋め込まれた眼球が、ぎょろぎょろと動いて回った。
「一撃で相手を倒す必滅の技。貴様だけのものではないことを教えてやる」
ワルドは椅子に座ったまま手を伸ばし、その足下、すぐ傍にあったものを掴み取った。
彼は掴んだものを眼前に持って行き、その成長具合を確認する。
手の中のそれは、ワルドの求めるところを完全にクリアしていた。
機は熟した
ワルドが手にしているのは甘い匂いを発する、手のひらに余るほどの大きさの、一輪の花であった。
それだけではない。花はワルドの足下で、その下にあるものを埋め尽くすように一面に咲き狂っていた。
「ふふふ。美しい花だ。ルイズ、君にも見せてあげたいくらいだ、この花の咲き誇る様を。君はこの美しさが、死体を栄養分にするものだと知ったら驚いてしまうかな?」
そう、彼の言葉の通り、それは死体にのみ根を生やす寄生植物の花。
彼の周囲を埋め尽くす花の園。その下にはいくつものいくつもの死体が、年齢、性別、体格、死因、どれも共通するところのない無数の死体がうち捨てられているのである。
「確かに、貴様の時間実験によって生成される余剰エネルギーは、熟達のプレインズウォーカーであっても一撃で焼き尽くすものだ。
だが、それももう千年も昔のこと。貴様は知らぬのだろうが、同じように大量のマナを生成・集約する秘儀はいくつも生み出されている。これがその一つだ!」
ワルドは花を掴んだその手を掲げると、それを頭上で握りつぶした。
死体を養分にして成長する植物の花、その中には生命を効率よく魔力変換した液体が流れている。
握りつぶした花から、血のように赤黒い、その汁が垂れ落ちる。
口を開け、ワルドは喉を鳴らしてその液体を嚥下した。
「漲る……っ、漲るぞっ! 力が五臓六腑に染み渡る! は、ハハハハハ! これは思った以上に爽快な気分だ!」
ワルドはそう叫ぶと席を立ち、近くにあった大きめの花から力任せに摘み取って、片っ端からその汁を啜り始めた。
「足りない、この程度では足りない、もっと、もっとだ!」
白い制服が汚れるのも気にもとめず、一心不乱にどす黒い液を啜る、絞り尽くす。
そうして、あらかた手の届く範囲にあった採取するのに適した大きさのものを摘み終えてしまうと、今度は両手を掲げて天井に向かって、野獣のような叫びを上げた。
865 :
MtL:2008/11/10(月) 22:53:16 ID:MMuPe/E8
「まだだ! もっと力を!」
ワルドが叫びが大空洞にこだまする。
すると彼の足下が発光し、それが地面を伝わり波紋のように広がっていった。
体内に大量に集められたマナが、両の足を伝わってアルビオンへと流れ込んでいるのだ。
そうして根のように張り巡らされたマナ=神経が、様々な情報をワルドに伝える。
ワルドの目的はその膨大な知識の中にある、土地の核となる大いなる脈動の情報。
これに力を注いで、力を吸い尽くして枯渇した土地を、再び活性化させるのである。
途中、不要になった土地を分離したことで、アルビオンの外殻の大地はがれ落ちて落下していったが、ワルドはそんなことは気にもとめない。
力を注がれた土地は新たな活力を生み出し、それがワルドの足下に転がる死体を伝わって、花をつける。
そうしてワルドは死体の花の収穫を再開する。
知識はマナへ、マナは知識へ。
廻る廻る、魔力が廻る。
奇しくも二人が選んだ手段は、共に同じ類のもの。
純粋に破壊に費やすならば、世界すらも打ち砕くほどの力の結集。
そこに込められた意志はただ一つ。
反撃をする暇すら与えず、徹底的に滅ぼしてみせる
渦巻く怨忌、絡み合う憎悪。
引き絞られたマナは、飽和の末に火花散らす
――そして
「獲ったぞ!」
赤光が、走る。
エレオノールは隣の人影の方を向いて言った。
「あの子は大丈夫でしょうか、わたしにしてやれることはないのでしょうか」
「できることはただ一つ」とウルザは言った。
「待つのだ」
支援
867 :
MtL:2008/11/10(月) 22:57:58 ID:MMuPe/E8
シャッフル、コイントス、1ターン目、ゲーム終了。
そんな冬の時代がありました……。
ということで、一年以上前に誰かが予言していた通り、ニューヨークメトロポリタン美術館並の美しさを誇るアレです、ハイ。
なにやら遠いところまで来たなー、やっとここまで来たなーという感じです。
ではではー。
乙でしたー
乙
MoMaとカタベラスドレインかな?
やっぱりヤムチャが負けるのはおかしい
ゼロ魔キャラでヤムチャの動きについていけるやつなんていないだろ
乙
1ターンキル5%、2ターンだと20%のアレですね
>>870 ヤムチャには「凄み」が足りない、でおk。
最近「無茶しやがって」が「ヤムチャしやがって」に聞こえてしょうがない
えー、そろそろ容量ヤバそうですが初投下よろしいでしょうか?
召喚するのはブラスレイターより、本編アニメで寝過ぎで有名な無能王と同じ名前の彼です。
現在475KB残り25KB
投下量の確認求む
14KBですので間に合うと思います。
では支援、ついでにスレ立て行って来ます
「ここはあの世か?」
それが、この世界での、男の最初の一言だった。
広い草原で、黒いマントを羽織った少年少女達に遠巻きで囲まれる中、黒い衣服の黒髪の男が、両膝を地につけ背を伸ばした格好であたりを見回していた。
「あんた誰?」
そんな挙動不審にも見える男に、最初からいたのだろう、桃色がかったブロンドの可愛らしい容姿の少女が声をかける。
が、その顔は不機嫌さがありありと浮かび、男を見る目は明らかに他者を見下すものであった。
そして、傍目からも心地良いものではない少女の態度に対する男の態度も、律儀に答える義理は無いとばかりに無愛想に、右目の下に奔る蒼い傷跡のある紅い瞳を向けるだけで無言であった。
「あんた、平民の癖に何よその態度……」
実際の所、男の表情は元来のものでしかなく、無言の理由も現在の己の状況に混乱して思案しているのが大きい。
しかし、少女にそんな理由など判る筈も無く、――仮に理解出来たとしても彼女にとっては無言である理由にはなりえないであろう――それは侮辱にしか受け取れない態度であった。
「おい見ろよ、ゼロのルイズは平民を呼び出した挙句に、反抗されているぞ」
そんな二人を見て、周囲を囲む少年のうち一人の嘲りの声を皮切りに、次々と罵声とも嘲笑とも取れる言葉がルイズと呼ばれた少女に投げつけられる。
あまりに、あまりにも酷い周囲の少年少女の嘲笑と、それに対抗する少女の悲鳴にも似た甲高い怒鳴り声が、男の耳に痛ましく響く。
その音は、異民として蔑まれてきた男の境遇を思い出させるものでもあったからだ。
だが、男が何かを言おうとする前に、目の前の少女――ルイズが、傍らにいた、大きな木の杖を持ち黒いローブを着た頭の禿げた男に怒鳴った。
「ミスタ・コルベール! あの! もう一回召喚させてください!」
コルベールと呼ばれる男は、どうやら彼らの監督役のような人間らしい。
「それはダメだ。ミス・ヴァリエール」
「どうしてですか!」
「決まりだよ。二年生に進級する際、君たちは『使い魔』を召喚する。今、やっているとおりだ」
それからのルイズとコルベールの会話の意味は男の理解の埒外にあるものであったが、少なくとも男の意思は全く無視されているのは間違いなかった。
「あー」
だから、男はそんなルイズとコルベールに、せめて事情を説明してもらおうと声をかけるが、二人は男の声が聞こえていないように無視をして取り合おうともしない。
そればかりか、男を無視したまま、コルベールとの会話に決着がついたルイズが、肩を落としながら男をに睨み付けてこう言い放った。
「あんた、感謝しなさいよね。貴族にこんなことされるなんて、普通は一生ないんだから」
一方的に突然感謝しろなどと言い出すルイズの姿は男にとって理解の外であった。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・プラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
理解が追いつかずにどうしたものかと思案する男にはおかまいなしに、ルイズは手に持った小さな杖を振るい、何らかの呪文を口にしながら、唇を男の顔に近づける。
そのルイズの一連の行動に対し、脳裏で『わけがわからない』と呆れていた男であった。
が、
「――くぎゅ!?」
ルイズの唇は、男の唇に届く前に布越しの感触に押し当てられる。
そう、男の思考は混乱の中にあっても、反射的、むしろ生理的に、手袋をはめた右手でルイズの顔を遮ぎったのだ。
「な、何抵抗してんのよ! こんなことしていいと思ってんの!」
文字通り『出鼻を挫かれる』ように、鼻頭を男の掌に押し当てる形となった少女が反射的に怒りを露わに甲高い声で怒鳴る。
「何をしようとしたのかはよく判らないが、俺に直接触れるのはやめたほうがいい」
だが、いや、やはりというべきか、男の言葉に、ルイズは耳を貸すそぶりを見せる事は無い。
男とルイズの遣り取りが可笑しかったのか周囲から再び嘲笑が巻き起こり、そのせいで激情に駆られたルイズの『平民風情が貴族に逆らうな』といったニュアンスの様々な暴言悪言が飛ばされる中、男は思案する。
正直な所、相手の事情も理解出来ない上に、目の前の少女は事情を説明しようにも聞く耳すら無い状態だ。というか話を聞いてくれそうな人間すらいそうにない。
だが、それでも断じて“感染”の危険のある行為を許容できない男は単純<シンプル>に相手が自分との接触をあきらめてくれるであろう一言を口にした。
「――俺は伝染病持ちなんだ」
確かに、男のその一言は、目の前の騒がしい少女と近くにいた教師の動きを一瞬で止める程に効果覿面ではあった。
「ふうむ、人間……それも伝染病持ちが召喚されるとはのう。で、ミスタ・コルベール。その男の処遇は?」
セコイアのテーブルに腰掛けた、長く伸びた白い髭と髪を持った老人が、鋭い視線をコルベールに向けて問う。
コルベールの隣では、召喚した男に対しての怒りをまるで抑えられないルイズが眉を吊り上げながら、ブツブツと男を罵る独り言を口にしていたが、それも仕方ないかと周囲の大人は特に注意する事はなかった。
「はい。男は衛兵詰め所の地下牢に隔離しました。ミス・ヴァリエールの『コントラクト・サーヴァント』に抵抗していたのですが、地下牢への隔離の際は抵抗無く同意してもらいました。むしろ思い返しますと感染を防ぐ為の抵抗だったのでしょう」
コルベールは、男が『伝染病持ち』だと告げた直後、すぐさまルイズ以外の生徒を学院に帰して件の男を地下牢へと隔離した後、報告と今後の指示を仰ぎに、ルイズと共にトリステイン魔法学院の本塔の最上階にある学院長室に訪れていた。
「その召喚された男の話では、伝染病持ちの血液や体液に直接触れたり怪我をした状態で近接した場合に感染する症状との事ですので、今の所は隔離をしておけば問題は無いかと思われます」
「取り敢えず現状では感染は無いという事かの?」
「彼の言葉を信じるならばですが。念のために、彼の言う潜伏期間である二日において変調が無いか、至近にいたミス・ヴァリエールは自室謹慎としまして、自分もこの報告の後は二日、自室待機としたいのですが」
コルベールの言葉にオスマンと、部屋の隅の机で黙って話しを聞いていた秘書のロングビルの表情が固まる。
「あ、ちゃんと私とミス・ヴァリエールの周囲には、空気感染を防ぐ魔法をかけていますので、感染の心配はありません。勿論自室謹慎中には部屋に対して感染防止魔法をかけておきますのでご安心を」
伝染病を治療する為の魔法とそれに伴う秘薬ともなれば相当高価かつ希少なもので、それこそ、その魔法が使える人間すらもかなり限られてくる。
だが、伝染病の蔓延を防ぐ為の感染遮断の為の魔法というものは、あまり一般的では無いものの、高位の治癒魔法と比べれば比較的低い難度で存在する。
只、特定分野の専門的な魔法であり、それを使うコルベールはその専門という事になる。
「そうじゃったの、君は――すまぬ。失言じゃったの、ミスタ」
オスマンが何か言いかけるが、普段のコルベールからは想像できない程の“鋭い”気配が漏れるのを感じると共に、謝罪を口にする。
「いえ、私の方こそ失礼しました……、ミス・ヴァリエールも、ミス・ロングビルも申し訳ありません」
「い、いえ。お気になさらず、ミスタ・コルベール」
ロングビルは全く予想外の事に驚くものの、すぐに気を取り直す。
「……あ、は、はい……」
対するルイズは、コルベールのすぐ隣にいたせいもあるのか、先程までぶつぶつ言っていた独り言などピタリと止めており、この瞬間もなんとか返事が出来たものの、怯えた表情がなかなか収まりきれない。
そんなルイズの姿に、申し訳なく思ったのだろう、コルベールが話を進める。
「あの、オールド・オスマン。ミス・ヴァリエールの進級の件にも関係する、件の男への対応ですが」
「ふうむ、さすがに伝染病持ちとは契約など出来はすまい。始祖ブリミルもその事は許してくれるじゃろう」
召喚自体は出来たものの、相手は伝染病持ちの平民だ。
契約の口付けが原因で感染などした日にはヴァリエール家がどのような報復をするか判った物ではない。
儀式を強行したコルベールや学園の責任者たるオスマンからしてみたら、もしその平民が儀式時に抵抗をしなければ、そして地下牢への隔離におとなしく従わなければ、どのような事態になったのか考えただけでも背筋が凍る思いだった。
「で、その伝染病持ちの男へのこれからの処遇は?」
「はい。伝染病持ちである彼が召喚されたという事は、何処かに彼が住んでいた地域で伝染病が流行っていた可能性があるという事です。ですので、王宮から専門の部隊を派遣してもらう為にも、王宮への報告を許可が欲しいのです」
そう告げるコルベールは、顔に苦悶の色が浮かぶのを隠し切れないでいた。
ハルケギニアにて、伝染病への対応法は中世ヨーロッパのものとそう大差は無い。
確かに、先にも述べたように、伝染病を治療する魔法と秘薬というものはあるにはあるし、貴族の子息達を預かる学院だけに、それだけの実力を持つ水メイジも常在している。
が、それも“種類が特定できれば”の話で、当然、コルベールは感知魔法を男に使ってみたものの、確かに何らかの感染症を患っている事実までしか判明できなかったのだ。
となると、魔法による治療が不可能な場合の対処はおのずと限られてくる。
それは、これから失われるであろう人々の命への哀れみもあったであろうが、伝染病という単語が、コルベール自身の過去の罪の傷跡に触れていた所も決して少なくは無い。
「そうじゃな。流石に放置するわけにもいかぬからの……ミス・ヴァリエールには気の毒な事じゃが、不幸中の幸いかもしれんの」
この部屋で唯一、コルベールの苦悶の意味を理解出来るオスマンは溜息を漏らす。
「伝染病を放置すれば、被害が拡大して多大な犠牲が出る恐れがあります。仕方ありません。それに、確かに不名誉な事ではあるものの、これで再召喚を行う事は出来るわけですから……」
「それはどういう事ですか? 再召喚は使い魔が死なない限り――」
ルイズは、教師達の言葉から、その意味を理解“してしまい”思わず口に出してしまう。
「ま、まさか……つ、使い魔を殺すという事…ですか?」
ルイズのストレートな言葉を濁すようにコルベールが口ぞえをする。
「不名誉な事になるのは申し訳ないと思っておりますが、これはミスや国民の為でもあるのです。それに、幸いまだ使い魔の契約は済んではおりませんから、“使い魔を死なせた”事にもならないかと」
詭弁なのは口を開くコルベール自身が承知している。それどころか先刻は『神聖な儀式だ』と儀式続行を強制した身だけに、己の言葉に苦笑も禁じえない。
「……」
“死”
それもこちらの都合で男に突きつける、あまりに一方的なそれに、先ほどまで男への怒りばかりが占めていたルイズの感情が急激に冷える。
その中で、ルイズは男について思考する。
男は死の可能性を理解せずに宣言したのだろうか?
いや、『コントラクト・サーヴァント』を拒否したのも、地下牢への隔離にあっさり同意したのも、彼自身既に納得している事だ。
恐らく数日のうちに、自分が殺され遺体も焼かれる事になるのさえも納得済みなのかもしれない。
そう、“仕方ない事”なのだ。そもそも、伝染病持ちという事は、悪魔に取り付かれたも同然であり、それを放置する事こそ問題だ。
思い返せば、無礼な平民ではあったかもしれないが、よく出来た人物だったのだと、ルイスは理解出来た。
それ以外に今のルイズにとっては、もう一度使い魔を呼びなおせるという特例が出てきた事による安堵感もあった事も否めない。
だからこそ、今もルイズは、数日のうちに失われるであろう男の命を哀れむ事も出来た。
「……判りました。お心遣い感謝します」
オスマンとコルベールに頭を下げた
更にルイズにとって幸いだったのは、男の『伝染病持ち』の事実が、目の前のルイズと近くにいたコルベールのみに聞こえたものだった事だ。
そうでなければ今後、ルイズに悪魔のごとき二つ名がつけられていたかもしれない。
貴族、それも名高いヴァリエール家三女である彼女にとって、それは間違いなく今彼女につけられている不名誉な二つ名より更に酷いものになったであろう。
だが、そんな男のさりげない気遣いまでは、流石にルイズが気づく事は無い。
せいぜい思い出したのは、他の事を優先しすぎて、結局男の名前をも聞いていなかった事だった。
それも、今のルイズにとって幸運だったのかもしれない。
しかし、その時のルイズは知る由も無かった。
彼女にとって最も不幸だった事は、召喚してしまった男は別の意味でも“悪魔憑き”と呼ばれた存在だという事だった。
壁の天井と側面の間の通気口から漏れる月光以外、一切の光源の無い地下牢。
冷たい石床に敷かれた藁に横たわりながら、先程ルイズに召喚された男は自分の身に起きた出来事を思い起こし、自分なりに状況を整理していた。
自分が『伝染病持ち』だと宣告した後、自分から距離を取って癇癪を起こしながら無いやら怒鳴り散らす少女の姿に、それも仕方ないかと割り切りながらやっと会話に応じてくれるようになったコルベールといくつか言葉を交わした。
だが、幾度か言葉を交わすにつれ、致命的なまでに彼らと“常識”が噛み合わない事に男は眩暈を覚る事になる。
曰く、ここはハルケギニアのトリステイン魔法学院という場所。
曰く、自分は使い魔としてルイズと呼ばれる少女に呼ばれた事。
曰く、平民は貴族に絶対服従である。
そして、この地下牢に入れられるまで、目にするのは、妙に時代遅れの代物だった。石造りの建物、剣や槍を武器とする衛兵、それから、彼らの言動から垣間見える『貴族と平民』という身分制度意識。
極めつけは“魔法”という存在。
まるで、昔に孤児院にいた子供達の為に読んでやった童話のような世界だ。
いや、人間単体で空を飛ぶ“程度”なら、自分の知識の枠で括る事も出来ない事も無い。
だが、括っていいモノかどうかは、“科学者”でも、ましてや”魔法使い”ですら無い男が考えた所で正しい解答に辿りつけるわけもなく、意味は無い。
長年己と共にいた相棒の“少女”ならば解析出来たかもしれないが、いない以上は無いもの強請りでしかなく、やはり意味は無い。
その中で男の存在はどう映るのか。
少なく交わした会話のうちに、男の出身地を“平民”の筈の彼に対し、何処か申し訳なさそうに尋ねるコルベールの顔を思い出す。
言っても無駄だとはなんとなく思いながらも己の出身地を語った時の反応は訝しげなものであった。
それとなく、伝染病を治療する手段は無いのかと尋ねるが、自身に何かも魔法をかけた後に難しい顔で言葉を濁すコルベールの顔色で、思い浮かぶのは自身だけでなく、己のいる地域を特定し、“処置”をする事。
男の見立てでは、彼らには“一般的な伝染病”への治療法さえ確立しているとは思えない為、この場合の対処法はやはり殺されて体を焼かれるのだろうと予想する。
尤も、男の体は死を迎えれば即座に灰に還るので火葬の手間は必要無いのだが。
そうなれば、コルベールの反応も当然であろう。恐らくコルベールは男が村を焼かれるのを恐れて適当な嘘をついているものだと思ったのだろう。
どちらにしろ、その点において、これ以上心配しても仕方が無いと男は考える。
仮にコルベールが男の言う事を理解出来てもその地に行き着くことはまずありえないからだ。
こんな所に来てしまった事に何の意味があるのかすらも判らぬまま、自分は殺されてしまうのだろうか?
だが、それも仕方ないのかもしれない。
手袋を外し、己の右掌を見る。
掌に刻まれ、青白い光を微かに放つのは『アンドロマリウスの紋章』。
ソロモン72柱、序列第72位の悪魔を意味するその紋章は、男が人では無い事を証明する“悪魔の焼印”だった。
万が一、誰かに己の身に宿る“悪魔”の力が感染する危険を考えれば、このまま“処分”されるのを受け入れるのも、間違った選択では無いかもしれないと思う。
が、それは、自分と同じように悪魔の力に己の体を侵されようとも人の心を失わなかった人達をも否定する事になるのでは無いかと、かぶりを振る。
(それと、あの少女にも少し気の毒だったか……)
自分の生きる意味さえも、この世界には否定されたかのような、今の男に一つだけ救いがあるとすれば……
彼らの話では、人間が召喚された事などこれまで聞いた事すら無かったという一点だ。
ならばせめて、ここにいる“悪魔”は後にも先にも自分一人だけであって欲しいと、男は願わずにはいられなかった。
だが、それすらも既に、叶う事無い、無知から来る“盲言”でしか無かった。
以上、今回は投下終了です。
それではお目汚し失礼しました。
ほうほう、ブラストレイターは知らないけど支援
って、終わってた。乙
次回もよろしく
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\ ノラ ' /:::/-'"
` ァ-―''7"( _,/:::/ それは 剣というには あまりにも大き過ぎた
/|::| {::::::ヽ__,,..- '/丶/ 大きく ぶ厚く 重く そして 大雑把すぎた
/ .i| \:::::::::::::::::::\/.--─-,,, それは 正に 鉄塊だった
i | \:::::::::::::::::::::`::::::::::::::::::}