あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part183
もしもゼロの使い魔のルイズが召喚したのがサイトではなかったら?そんなifを語るスレ。
(前スレ)
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part182
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1225202971/ まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/ 避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9616/ _ ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
〃 ` ヽ . ・ここはあの作品の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!
l lf小从} l / ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,. ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
((/} )犬({つ' ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
/ '"/_jl〉` j, ・ 投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
ヽ_/ィヘ_)〜′ ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!
_ ・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
〃 ^ヽ ・クロス元が18禁作品であっても、SSの内容が非18禁である場合は
J{ ハ从{_, 本スレへの投下で問題ないわ。
ノルノー゚ノjし ・SSの内容が18禁な展開をする場合はクロス元に関わらず、
/く{ {丈} }つ 本スレではなく避難所への投下をお願いね?
l く/_jlム! | ・クロス元がTYPE-MOON作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
レ-ヘじフ〜l ・作品を初投下する時は元ネタの記載も忘れずにね。wikiに登録されづらいわ。
・作者も読者も閲覧には専用ブラウザの使用を推奨するわ。負荷軽減に協力してね。
. ,ィ =个=、 ・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。
〈_/´ ̄ `ヽ ・1レスの限界最大文字数は、全角文字なら2048文字分(4096Bytes)。これ以上は投下出来ません。
{ {_jイ」/j」j〉 ・行数は最大60行で、一行につき全角で128文字までですって。
ヽl| ゚ヮ゚ノj| ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
⊂j{不}lつ ・次スレは
>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
く7 {_}ハ> ・重複防止のため、次スレを立てる時は現行スレにその旨を宣言して下さいね。
‘ーrtァー’ ・クロス先に姉妹スレがある作品については、そちらへ投下して盛り上げてあげると喜ばれますよ。
姉妹スレについては、まとめwikiのリンクを見て下さいね。
・一行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えます。
SS文面の区切りが良いからと、最初に改行いれるとマズイです。
レイアウト上一行目に改行入れる時はスペースを入れて改行しましょう。
このぐらいまで単純化できそうな気がする。
爆発召喚
キス契約
「ゼロ」の由来判明(教室で爆発)
使い魔の能力が明らかに(ギーシュ戦)
デルフ購入
フーケ戦
舞踏会
最近はその流れでいかに飽きない話を作るかに凝りがち
爆発
平民プゲラ
コルベール問答無用さっさと汁
キス契約
フライに唖然とする
説明はぁどこの田舎者?
何者であろうと今日からあんたは奴隷
二つの月にびっくり
洗濯シエスタと接触
キュロケフレイム顔見見せ
みすぼらしい食事厨房でマルトー
教室で爆発片付け
昼食シエスタの手伝い香水イベント
オスマンコルベール覗き見
ギーシュフルボッコ場合によって使い魔に弟子入り
キュルケセクロスの誘いしかし使い魔はインポテンツか童貞w
ルイズ寝取られの歴史を切々と語る
休日街でデルフ入手 キュルケタバサがついてくる
ルイズが爆破訓練宝物庫破壊フーケ侵入お宝げっと
この段階でフーケは絶対つかまらない
翌朝捜索隊保身に走る教師一同
教育者オスマン犯罪捜索を未熟な子供にマル投げ
小屋で破壊の杖ゲットフーケフルボッコしかし絶対死なない
オスマンから褒章 舞踏会 終わり
途中飛ばすけど、
対7万戦と再召喚(一度使い魔契約が切れ、まっさらな状態からルイズとの関係を再構築)
【書き手の方々ヘ】
・作品投下時はコテトリ推奨。トリップは「名前#任意の文字列」で付きます。
・レスは60行、1行につき全角128文字まで。
・一度に書き込めるのは4096Byts、全角だと2048文字分。
・先頭行が改行だけで22行を超えると、投下した文章がエラー無しに削除されます。空白だけでも入れて下さい。
・専用ブラウザなら文字数、行数表示機能付きです。推奨。
・専用ブラウザはこちらのリンクからどうぞ
・ギコナビ(フリーソフト)
http://gikonavi.sourceforge.jp/top.html ・Jane Style(フリーソフト)
http://janestyle.s11.xrea.com/ ・投下時以外のコテトリでの発言は自己責任で、当局は一切の関与を致しません 。
・投下の際には予約を確認してダブルブッキングなどの問題が無いかどうかを前もって確認する事。
・作品の投下は前の投下作品の感想レスが一通り終わった後にしてください。
前の作品投下終了から30分以上が目安です。
【読み手の方々ヘ】
・リアルタイム投下に遭遇したら、支援レスで援護しよう。
・投下直後以外の感想は応援スレ、もしくはまとめwikiのweb拍手へどうぞ。
・気に入らない作品・職人はスルーしよう。そのためのNG機能です。
・度を過ぎた展開予測・要望レスは控えましょう。
・過度の本編叩きはご法度なの。口で言って分からない人は悪魔らしいやり方で分かってもらうの。
【注意】
・運営に関する案が出た場合皆積極的に議論に参加しましょう。雑談で流すのはもってのほか。
議論が起こった際には必ず誘導があり、意見がまとまったらその旨の告知があるので、
皆さま是非ご参加ください。
・書き込みの際、とくにコテハンを付けての発言の際には、この場が衆目の前に在ることを自覚しましょう。
・youtubeやニコ動に代表される動画投稿サイトに嫌悪感を持つ方は多数いらっしゃいます。
著作権を侵害する動画もあり、スレが荒れる元になるのでリンクは止めましょう。
・盗作は卑劣な犯罪行為であり。物書きとして当然超えてはならぬ一線です。一切を固く禁じます。
いかなるソースからであっても、文章を無断でそのままコピーすることは盗作に当たります。
・盗作者は言わずもがな、盗作を助長・許容する類の発言もまた、断固としてこれを禁じます。
・盗作ではないかと証拠もなく無責任に疑う発言は、盗作と同じく罪深い行為です。
追及する際は必ず該当部分を併記して、誰もが納得する発言を心掛けてください。
【警告】
・以下のコテは下記の問題行動のためスレの総意により追放が確定しました。
【作者】スーパーロボット大戦X ◆ByQOpSwBoI
【問題の作品】「スーパーロボット大戦X」「スーパーロボット大戦E」「魔法少女(チェンジ!!)リリカルなのはA'S 次元世界最後の日」
【問題行為】盗作及び誠意の見られない謝罪
【作者】StS+ライダー ◆W2/fRICvcs
【問題の作品】なのはStS+仮面ライダー(第2部)
【問題行為】Wikipediaからの無断盗用
【作者】リリカルスクライド ◆etxgK549B2
【問題行動】盗作擁護発言
【問題行為】盗作の擁護(と見られる発言)及び、その後の自作削除の願いの乱用
【作者】はぴねす!
【問題の作品】はぴねす!
【問題行為】外部サイトからの盗作
【作者】リリカラー劇場=リリカル剣心=リリカルBsts=ビーストなのは
【問題の作品】魔法少女リリカルなのはFullcolor'S
リリカルなのはBeastStrikerS
ビーストなのは
魔法少女リリカルなのはStrikerS−時空剣客浪漫譚−
【問題行為】盗作、該当作品の外部サイト投稿及び誠意のない謝罪(リリカラー劇場)
追放処分後の別名義での投稿(Bsts)(ビーストなのは)
>>8 鍵SSでも盗作があったな
ごみはいつでも沸いてくるのか
いちおつ
荒らしどころか単なるスレ違いレベル…
>>1乙
前スレはとうとう700未満で終わったか。
投下数もそうだけど、各SSの容量の大きさがまたすごいな。
>>12 別の場所の盗作をココで知らせても意味が無いことに気づかない間抜けには触らないで
19:40から第4話を投下します。
にちあさには間に合いませんでした…
ルイズたちが冥獣人ピーヴィを倒してから数日が過ぎた。
この間の戦いは学院中の話題になっていた。
ハルケギニア中を騒がせている「冥獣」の親玉が姿をあらわし魔法学院の生徒を狙うと宣言したのだ。
各国から預かっている貴族の子弟にもしものことがあってはならないと、学院に魔法衛士隊が派遣されたり
国許に帰る生徒がいたりとゴタゴタはあったが、ほとんどの生徒は今までどおりの学院生活をおくっている。
ルイズが午後の授業を終えて中庭に出てみると、片隅に人だかりができている。
その光景を見て、ルイズは目を丸くした。
マントを羽織った女生徒が数人、ヒカルに何かを手渡しているところであった。
茶色のマントを羽織っているということは……1年生であろうか
「どうしたの?」
一人の茶色の髪が愛らしい生徒がヒカルの前に包みを手渡した。
「わ、わたしケティって言います。
あ、あの……お口に合わないかもしれませんが、ビスケットを焼いたんです。是非」
「ビスケット?」
包みからふんわりと甘く柔らかい香りが、包みから漂う。
おいしそうなので、ヒカルが包みをほどいた途端……小さな手がすっと横から伸びた。
…がしっ!
…ぼりぼりぼり!
なにが起きたのかとヒカルが横を向くと、ルイズがむすっとした顔でビスケットをさもまずそうに頬張っていた。
「な、なにするんですか!」
「なにこれ。まずっ!」
「ひどいっ!一生懸命作ったのに」
「人の使い魔に勝手なことしないでよ!」
ルイズはぎろっとケティを睨んでつぶやく。
「使い魔だなんて、ヒカルさまは英雄ですわ」
「英雄?誰が」
「ヒカルさまは、この間の戦いで恐ろしい冥獣を倒して学院を救ってくださいました。
それに、冥獣に立ち向かうあの大きな金色のゴーレム。あんな凄い光景ははじめて見ました。
金の巨人を駆って、冥獣に立ち向かうヒカルさまは、まさに英雄ですわ」
顔を上気させるケティの話を聞いていたルイズは低い声で言い返した。
「ちょっと待ちなさいよっ!
この間の『冥獣』を倒したのも、トラベリオンを動かしたのも、わたしじゃないの!
んじゃ、これはわたしのものね。まずいけど、そこまで言うならもらってあげるわ」
ルイズはそういってヒカルの手からビスケットの包みを奪い取った。
「ルイズ、ちょっとは彼女達の気持ちも…」
「ほら、今日はマルデヨーナ世界の授業なんでしょ」
ケティたち1年生が目を丸くしているのを尻目に、ヒカルの手を引いて強引に寮へと引きずっていく。
ルイズが立ち去った後、1年生たちは白けた顔でひとり、またひとりと去っていく。
やがて茶色の髪のケティだけが中庭に立ちすくんでいると、一人の金髪のメイジが現れた。
「ケティ!なんであんな奴のためにビスケットを焼いたりするんだ。
僕と君は、一緒に遠乗りに出かけた仲じゃないか」
「…で、でも、ギーシュ様は…」
「へー、初耳ね!」
いつの間にかギーシュの後ろに黒いマントを羽織った金髪巻き髪の生徒がものすごい表情で睨んでいる。
「も、モンモランシー…?!」
「その話、詳しく聞かせてもらいましょうか。こっちにきなさい!」
「ああっ!痛い、モンモランシー痛いって!!」
ギーシュは、モンモランシーに耳を引っ張られながら学院の裏の森のほうへ消えた。
「…モンモランシー様と付き合ってるって話ですし…」
中庭にぽつりと残されたケティは、一人つぶやいた。
学院の裏にある森でギーシュはボロボロになっていた。
「モンモランシーも、ここまでやることないじゃないか……
ただ一緒に遠乗りに行っただけで、やましいことは何もしてないのに」
モンモランシーはボコボコにした後、少しだけ『治癒』をかけていってくれたが、全身が痛いのは変わりない。
ギーシュは頭をさすりながら体を起こした。
そろそろ陽が落ちる。薄暗くなってきた森の中でよろよろと立ち上がった。
ふと、森の奥から不思議な歌が聞こえてきた。
……なんだかちょっぴり目障りなの……
……危機感ゼロの人間達……
「な、なんだ?」
ギーシュは、その歌に魅入られたように森の奥へと進む。
……Have Fun!ナイ・と・メア お気に召すままに……
ギーシュが見たのは、黒い服に身を包んだふたりの少女だった。
パンクルックの『ナイ』と、ゴスロリの『メア』
黒髪に青い唇の少女ふたりが、ギーシュの見たことのない楽器『エレキギター』をかき鳴らして歌っている。
ギーシュは、意地悪そうに笑う二人の少女に、フラフラと引き寄せられていく。
ルイズが立ち去った後、1年生たちは白けた顔でひとり、またひとりと去っていく。
やがて茶色の髪のケティだけが中庭に立ちすくんでいると、一人の金髪のメイジが現れた。
「ケティ!なんであんな奴のためにビスケットを焼いたりするんだ。
僕と君は、一緒に遠乗りに出かけた仲じゃないか」
「…で、でも、ギーシュ様は…」
「へー、初耳ね!」
いつの間にかギーシュの後ろに黒いマントを羽織った金髪巻き髪の生徒がものすごい表情で睨んでいる。
「も、モンモランシー…?!」
「その話、詳しく聞かせてもらいましょうか。こっちにきなさい!」
「ああっ!痛い、モンモランシー痛いって!!」
ギーシュは、モンモランシーに耳を引っ張られながら学院の裏の森のほうへ消えた。
「…モンモランシー様と付き合ってるって話ですし…」
中庭にぽつりと残されたケティは、一人つぶやいた。
学院の裏にある森でギーシュはボロボロになっていた。
「モンモランシーも、ここまでやることないじゃないか……
ただ一緒に遠乗りに行っただけで、やましいことは何もしてないのに」
モンモランシーはボコボコにした後、少しだけ『治癒』をかけていってくれたが、全身が痛いのは変わりない。
ギーシュは頭をさすりながら体を起こした。
そろそろ陽が落ちる。薄暗くなってきた森の中でよろよろと立ち上がった。
ふと、森の奥から不思議な歌が聞こえてきた。
……なんだかちょっぴり目障りなの……
……危機感ゼロの人間達……
「な、なんだ?」
ギーシュは、その歌に魅入られたように森の奥へと進む。
……Have Fun!ナイ・と・メア お気に召すままに……
ギーシュが見たのは、黒い服に身を包んだふたりの少女だった。
パンクルックの『ナイ』と、ゴスロリの『メア』
黒髪に青い唇の少女ふたりが、ギーシュの見たことのない楽器『エレキギター』をかき鳴らして歌っている。
ギーシュは、意地悪そうに笑う二人の少女に、フラフラと引き寄せられていく。
コピペ間違えました、こっちが正解
それから少しして、すっかり夜もふけた頃、魔法部屋でスモーキーが声を上げた。
「旦那!冥獣反応だぜ。かなりの大物だニャ!」
「裏の森か……行こう!」
すっかり暗くなってしまった学院の裏庭にヒカルたちが出てみると、そこにはモンモランシーがいた。
妙にそわそわして、男子寮のほうを見ている。
「どうしたの。モンモランシーこんなところで」
「あ、ル、ルイズ…な、なんでもないわ」
「裏の森に『冥獣』が出たらしい。危険だから部屋に帰っていたほうがいいね」
ヒカルの言葉にモンモランシーが蒼白になる。
「そ、それ!本当なのっ!!」
「さっき、裏の森でかなり大きな冥獣反応があった。今から確かめに行くところだ。
衛士に頼んで守りを固めてもらうから、自分の部屋に戻っていて」
モンモランシーは、すっかり血の気が抜けた顔でつぶやいた。
「ギーシュが…ギーシュが帰ってこないの。
食事のときもいなかったし、部屋の明かりもまだついてないし、
夕方、裏の森でケンカしたんだけど…まさか…」
弱弱しく呟くモンモランシーの話を聞いたヒカルは、真剣な表情でうなづいた。
「急ごう!」
一行が暗い森の中へ入ると、少し奥から悲鳴が聞こえてくる。
「ギーシュの声!」
モンモランシーが目を見開いて声の方を指差す。
すると、声のした方から、金髪のメイジが走ってきた。
かなり走ったのか、髪は乱れて服もドロだらけである。
「め、めめ、『冥獣』がっ!」
ギーシュはヒカル達の姿を見つけて駆け寄ってきた。
その後ろから、身長2メイルほどの黒い女が黒い翼をはばたかせて追いかけてくる。
「妖幻密使バンキュリア!なぜ、ここに」
「わたしは妖幻密使…ン・マさまの御指示があれば、どんな世界にだって飛んでいくわ」
バンキュリアと呼ばれた黒い女性は、ヒカルたちの前に着地すると、余裕の口調で話し始めた。
「ライジェル…いや、メーミィの命令でこの学院を襲いに来たのか」
「ま、そんなところね。あいつ生意気だから嫌いなんだけど、ン・マさまのご命令じゃ仕方ないわ」
バンキュリアはヒカルたち一行を嘗め回すように見ながら、話している。
ヒカルは、そんな姿を睨みつけるとマジチケットを取り出した。
「そんなことはさせないっ!天空変身…」
その瞬間、ヒカルの後ろで震えていたギーシュが弾かれたように彼に飛び掛る。
ヒカルの持っているマジチケットを奪い取ると、バンキュリアの方へと走り出した。
「よくやったわね。上出来よ、お前」
ギーシュは、バンキュリアの言葉に深々と礼をするとマジチケットをうやうやしく差し出した。
「ぎ、ギーシュ…どうしたのよ。なんで『冥獣』の味方なんて…」
呆然と呟くモンモランシーのほうにギーシュが顔を向けた。
その口には2本の鋭いキバが生えている。
「バンキュリア、貴様!ギーシュ君の血を吸ったのか!!」
「ふふ、ご名答」
「血をすった…って、吸血鬼!?」
その言葉に、ルイズとモンモランシーは蒼白になった。
ハルケギニアでは『吸血鬼』は恐怖の象徴である。
人と見分けのつかない姿で、人の血をすすって殺してゆく吸血鬼。
その先住魔法は、人には防ぎようがなく、その秘術で人を『屍人鬼』に変え操ることもできるという。
「うそ…ギーシュが、ギーシュが『屍人鬼』にされちゃったの…」
今にも倒れそうな声で、モンモランシーが呟く
「それどころじゃない。バンキュリアは何万年も生きている『クイーン・バンパイア』だ!
血を吸った人を吸血鬼に変えて操ることもできる。
吸血鬼に変えられた人は、次々と人を襲って数を増やしてゆく、
昔、バンキュリアによって1つの町の住民が1週間で全員吸血鬼に変えられたことすらある!」
「あら、懐かしいことを覚えてるわね、そんなこともあったかしら。
でも、安心していいわよ。こいつはそこまで気合入れて血を吸ってないから。
……そうね、朝日を浴びたら灰になって消えちゃうくらい……
それじゃ、お前、朝までこいつらと遊んでやりな!」
「かしこまりました…」
ギーシュは何一つ表情を変えず、抑揚のない声で応えると、ヒカルたちに襲い掛かった。
「どうするの!どうするのよっ!ギーシュが吸血鬼になっちゃうなんて!
しかも太陽の光を浴びたら灰になるなんて、そんな馬鹿なことっ!」
魔法部屋の中でルイズとモンモランシーは半狂乱になっていた。
部屋の中央の『結界』にはギーシュが拘束されている。
「マジトピアまで戻れば、ギーシュ君を元に戻す方法はある…」
ヒカルの言葉に、モンモランシーはすがりつくように飛びついた。
「じゃあ、すぐにそこに行って…」
「いや、バンキュリアにマジチケットを取られた。
あれが、メーミィの手に渡ればどんな悪用をされるかわかったものじゃない。
先にマジチケットを取り返さないと…」
「そんなことしてたら、朝になっちゃう!」
「だから、ギーシュ君をこの『結界』から出しちゃだめだ。
急いでマジチケットを取り返してくるから、それまで君たちで見張っていてくれ」
ヒカルはそういって、ルイズに1枚のマジチケットを渡した。
そのチケットには、先ほどギーシュを気絶させた魔法が封じられている。
「いいね、絶対にギーシュ君に触れちゃダメだよ」
そういい残して、ヒカルは魔法部屋を出ていく。
部屋に残されたルイズとモンモランシーは不安そうに見つめ合った。
すると、ポンっと音を立てて、二人の間にマジランプがあらわれた。
「たしか、バンキュリアの呪いを解く魔法薬の作り方が『魔法大図鑑』の6巻に載ってたニャ。
たぶんだけど材料もほとんど揃ってるはずニャ」
ルイズは弾かれたように、棚にある『魔法大図鑑』の方を見た。
「おおっと、急がないと旦那に追いつけなくなるニャ!」
再びポンっと音がして、煙と共にマジランプは消えた。
ルイズはすぐさま、『魔法大図鑑』の第6巻を棚から取り出してめくり始めた。
支援
「どう、ルイズ。なんとかなる?」
魔法大図鑑をめくるルイズにモンモランシーが不安そうに話しかける。
マジトピアの魔法文字は、モンモランシーには何を書いているか見当もつかない。
ルイズはしばらくページをめくっていたが、やがて目的の項目を見つけた。
「あった。『卑しいものの癒し薬』!」
「なに、そのネーミング…」
「仕方ないでしょ、そう書いてるんだから、えと、材料は…」
ルイズは手近な羊皮紙に、ちょこちょことメモすると、魔法薬の材料を置いている棚をチェックし始めた。
「ええと、朝一番の太陽の光を固めた『暁の結晶』の欠片…これね」
「そ、そんなのあるの…」
「これが吸血鬼の魔力を中和するんだって!
で、次は『汚い水のきれいな部分』1リットル…これ、この間集めに行ったやつだわ。
あのときは汚いわ臭いわヒルは出るわほんっとうに苦労させられたのよね」
「1『リットル』ってなに?」
「約1000立方サント、この容器1杯分よ。単位は頭に入ってるから、調合の時はすぐに換算できるわ。
それと『ナイスな歌を聞かせて育てた魔法のバナナ』を干したもの…これかしら」
「なんで『歌』なのよ…しかも『ナイス』って」
「わかんないわよ。とにかくあるんだからいいじゃないの!
えと、あとは…『マンドラ坊やの根』の粉末…あっ!?これ、まずいわ」
「どうしたのよ?」
モンモランシーがルイズの顔を覗き込んだ。
「『マンドラ坊や』ってのは、マジトピアに生えてるマンドラゴラの一種らしいんだけど、
こっちのマンドラゴラより、かなり魔力が高いらしいわ。
この間の虚無の曜日に町の秘薬屋で見てもらったら、『似てるけど魔法力が薄くて使い物にならない』って。
…ど、どうしよう、これじゃ調合できない…」
モンモランシーはルイズの顔を覗き込んでいたが、はっと表情を変えた。
「なんとかなるわよ。たしか部屋に樹齢500年のマンドラゴラの根の粉末があったはず。
あれなら、普通のマンドラゴラとは魔力の濃さも段違いだわ!」
ふたりは顔を見合わせて、力強くうなづいた。
「と、とにかく急がなくちゃ、朝までに完成させないと…」
「私の部屋の方が道具も揃ってるわ。材料は私が持っていくからルイズは『魔法大図鑑』を持ってきて!」
ふたりは、いそいそと荷物を取り上げると、あたふたと魔法部屋を出て行った。
…ふたりとも、魔法薬の事で頭がいっぱいで気づいていなかった…
…結界の中にいるギーシュがピクリと動いたことに…
ルイズとモンモランシーが魔法薬の調合を終えて魔法部屋の扉を開けると、中から獣のような唸り声が響いた。
部屋の中央の結界を破ろうと、ギーシュが呻きながら暴れている!
ガンガンと結界を乱暴に殴り、『結界』の光の隙間に爪を立てる!
「る、ルイズ…ヒカルにもらったチケット!」
あっ!と叫んでルイズはチケットを持っていないことに気づいた。
『魔法大図鑑』に夢中になって、部屋の反対側の机の上に置きっぱなしだ。
…ど、どうしよう…ルイズたちが震えた声で立ちすくむ眼前で、『結界』の光が破れた!
唸り声を上げながら、鋭い爪を生やしたギーシュがルイズに飛びかかる。
「ぎぎギーシュ、止めなさいってば!ちょ、ちょ、ちょっと待って!」
ルイズは叫びながらギーシュの攻撃をかわして、椅子の下にもぐりこんだ。
攻撃をかわしながらなんとか部屋の反対側に行こうとする。
「あんた助ける薬を作ってきたんだから、お、大人しくしなさいってば!」
ルイズがあまりにも逃げ回るので、ギーシュはもう一人のほうに目線を向ける…
薬の瓶を握り締めたまま、モンモランシーが固まる!
「グルル…」
大事そうに瓶を抱えたまま、怯えてゆっくりとあとずさるモンモランシーに、
ギーシュはニヤリと笑い、キバを見せるとじわじわと近づいていく。
…と、ギーシュに椅子がぶち当たる。ルイズが投げつけたのだ。
直撃を受けたギーシュは、床に転がったがすぐに起き上がり、凶暴な声で呻くとモンモランシーに飛び掛った。
逃げようとして足を滑らせて床に倒れるモンモランシー、それでも瓶は離さない。
ギーシュはそのまま、モンモランシーに押しかかる。
モンモランシーの顔に、荒い息と大きな白いキバがのしかかってきた。
「こ、ここ、このバカッ!!」
モンモランシーは、目の前の吸血鬼の顔を思い切り平手ではたいた!
「吸血鬼に血を吸われて、操られたまま、押し倒すなんて最低よっ!
ギーシュ、あんた、それでも私の好きな男なの?!
少しくらいは根性見せてみなさいよっ!!」
その瞬間、ギーシュの動きがピタリと止まった!
モンモランシーは持っていた瓶の中身をあおると、ギーシュの顔を掴んで自分の唇を近づけた。
暗い森の中で、マジシャインとバンキュリアの追撃戦はつづいていた。
「バンキュリア!マジチケットを返せ!」
「ったく、もうしつこいわねぇ!」
マジランプバスターの光が時おり煌くが、その光がバンキュリアを捕えることはない。
バンキュリアのほうはどうにも逃げる隙が見つからず、困り果てていた。
そんな最中、薔薇の『杖』を持った金髪のメイジが現れた。
「お前、いいところに!こいつの相手をしてやりな」
「…はい」
ギーシュは抑揚のない声で応えると、呪文を唱えて『杖』を振った。
すると、地面から3体の青銅の戦乙女があらわれる。
「…いけ」
ギーシュがもう一度『杖』を振ると、青銅の戦乙女「ワルキューレ」はバンキュリアに襲い掛かった。
「え?な、なに…わたしを襲ってどうするの!」
バンキュリアが目を白黒させている間に、ワルキューレはマジチケットを取り上げた。
そして、ギーシュとワルキューレは全力でヒカルの下へ走る。
「お、お前、どうやって術を…!?」
驚いたバンキュリアの前に、1本のキラキラ光る『氷の槍』が襲い掛かる!
その『氷の槍』は、バンキュリアの胸に刺さると、目を覆うような光を放った。
「や、やったっ!」
「残った『暁の結晶』の欠片をまぶした『ジャベリン』の呪文よ、これなら…」
近くの茂みに隠れていたルイズとモンモランシーが、手を取り合って喜ぶ。
「き、君たち…どうして?」
「さあ、ニャにがあったんだろうねぇ…旦那ぁ」
マジランプから顔を出して笑うスモーキーを見てヒカルはなにがあったかを悟った。
「まったく、君たちときたら…とんだ無茶をして」
ヒカルは軽く笑うと、ワルキューレからマジチケットを受け取った。
「もう、いったーいじゃないっ!」
「いたいじゃない〜!」
バンキュリアが吹き飛んだあたりで、少女の声がした。
一同が驚いて振り返ると、黒い服を着たナイ&メアがプンプン怒っている。
「つまんない、帰るっ!」
「かえる〜!」
ナイ&メアは、頬を膨らせるとプイと横を向いて消えてしまった。
「驚いた…。完璧だ、副作用もあまりないみたいだね」
魔法部屋の中で、瓶の底に残った魔法薬の成分を調べながら、ヒカルは声を上げた。
「良かった…間違えてたらどうしようかと思った」
「『卑しいものの癒し薬』を、こちらの世界の道具だけで調合するなんてすごいよ君たちは!」
「あはは、そ、それほどでも…」
「旦那は魔法薬の調合が苦手だからニャ!」
笑う一同の前で、スモーキーが顔を出して笑った。
「え?そ、そうなの」
「だから旦那は、マジトピアまで薬を取りに行くつもりだったんだニャ」
「スモーキー、余計なことは言わなくていい!」
「そ、そうなんだ…」
ルイズがぷっと吹き出すと、ヒカル以外の全員が笑った。
「なにはともあれ、一件落着だ。マジチケットも戻ってきたし」
「…結局徹夜しちゃったわ。今日の授業きつそう…」
「課外授業は、今日は中止にしようか」
「そうね、今晩はゆっくり寝れそう」
「ははは、言えてるかも」
ルイズとヒカルの会話を聞いて笑うギーシュに、モンモランシーがそっと近づいた。
「と・こ・ろ・で、あの吸血鬼の女の子かわいかったわねー。
なんであんたが血を吸われたのか詳しく教えてもらおうかしら…」
「ちょ、モンモランシー、待って、誤解だ!誤解だって!!」
喚くギーシュの首根っこを掴んでモンモランシーが魔法部屋から出て行く。
残されたルイズとヒカルは、顔を見合わせると、もういちど笑った。
【おまけ】
モンモン「今日の呪文は『ジャベリン』。水系統の基本的な攻撃呪文よ。
空気中の水分を凍らせて氷の槍を作り、相手を攻撃するの。
『ウィンディ・アイシクル』も氷の矢で攻撃する呪文だけど、こっちは風系統だから注意が必要ね」
ルイズ:「ちょっと、このコーナーって、系統呪文もありなの?
それより、なんであんたとギーシュが私の部屋にいるのよ!」
モンモン「あなたの部屋に入らないと、魔法部屋にいけないんだから仕方ないじゃない。
わたしとギーシュも、ヒカル先生の授業を受けることにしたの」
ルイズ:「な、なに言い出すのよ!」
モンモン「マジトピアの魔法薬もけっこう面白そうだし、ルイズにできるんならわたしにだってできるはずよね」
ルイズ:「ちょっと、勝手に決めないでよ!ヒカル先生もなんとか言って…」
ヒカル:「いいよ、人が多い方が面白そうだ。それに、こちらの世界の魔法薬の調合技術も見てみたいしね」
ルイズ:「だから、そうじゃなくてーー!」
今回はここまでです。
マジレンジャー本編では、バンキュリアに噛まれた人は「太陽の光を浴びても気分が悪くなるだけ」なんですが
この辺はお話の都合という事で…。
小津家の人間(親父含む)を出す気はありませんので、マジレンジャー側のメインキャラで登場するのは多分これで終わりです。
いやまぁ、そのうちに「冥府神」編に入るかもしれませんけどねw
それと、ゼロ魔の設定を一部誤解していましたので、設定を変更します。
×:スモーキーとメーミィがハルケギニアにきたのは2年前
○:スモーキーとメーミィがハルケギニアにきたのは5年前
なにが変るのかは、そのうちに…。
乙。吸血鬼ってあの二人組みか。不死身なんだよなたしか
乙です。
>いやまぁ、そのうちに「冥府神」編に入るかもしれませんけどねw
そうなったらハルケギニア終了の予感w
いや、万が一そうなってもルイズなら、ルイズならなんとかして(ry
しかし、ナイ&メア懐かしいな。
あと、モンモランシーが活躍する話っていうのもSSでは珍しいかも。
22:00くらいから、いいかな?
いいよ 支援
俺の全身全霊を振り絞って泣き系テキストに挑戦してみた
その甲斐あって、やりすぎってくらい効果的な文章になってるとは思う
それだけに自分で書いといてなんだけど、こんな最終兵器
落としてっちゃっていいのかな、とか、かなり本気で悩んでたり
こういう文章嫌いだったらスマンが、ぜひ終わりまで読んでもらいたい
最後の一行まで読み終えたところで、思わず
「ドラえもーん!!」
って叫びたくなったら俺の勝ちな
ドラえもんは肝心な所で必ずやってくれるヤツだぜ!!
第六話 『さようなら、ドラえもん』
学院の廊下を、一匹のどでかいネコとツインテールの少女が走り回っていた。
「こ、ここここのバカネコ! なぁにがいい音楽よ!
この『剛田武リサイタルコレクション』ってただの騒音じゃない!」
「なにをいうんだ! ぼくはきみが『刺激的な音楽が聴きたい』っていうから…」
誰あろう、ルイズとドラえもんである。
逃げるドラえもんを遅れて爆発が襲い、さらにその後をルイズが駆けていく。
「刺激的にもほどがあるわよ! 魔法も使ってないのに、『ゼロのルイズがまた魔法を失敗したぁ!』
ってまたバカにされたのよ! 全部あんたのせいだわ!」
「め、めちゃくちゃだ!」
もはやこのところの日課になっているドラえもんとルイズの追いかけっこであった。
ルイズの失敗魔法は校舎を削り、その威力はちょっとシャレにならないものがあるのだが、
止めても聞かない上にどうせ後になってドラえもんが直すので、みな見て見ぬフリをしている。
そして、みなが黙認している理由がもう一つ。実はこの追いかけっこ、大抵すぐに終わるのであった。
「今日という今日は許さないわよ!」
このルイズ。胸も魔法もゼロだが、すばしっこさには定評がある。
人間の男にならともかく、短足ロボットなんぞに負けるはずもない。
「うわあっ!」
あっというまにドラえもんをつかまえると、その上に馬乗りになる。
そしてドラえもんのしっぽに次ぐ急所とも言うべき四次元ポケットに目をつけ、
「なにをする! あっ…」
ベリッ、とお腹から剥がしてしまった。
そのまま、手の中で弄ぶ。
「こ、こここのポケット、破いちゃったらどうなるかしらね!」
「や、やめろ! それがなくなったら…」
ドラえもんがめずらしく切迫した声でルイズを止める。
だがルイズは唇の端を意地悪くにやあー、と歪めると、
「びりびりびり!」
「ぎゃあーーー!!!!」
聞こえてきた破滅的な音に、ドラえもんが思わず叫びをあげるが、
「……なあんてね」
本当にポケットを引き裂いた訳ではない。
ただ、切り裂くような指の動きにあわせて、ルイズが声を出していただけだ。
……実に古典的なイタズラであった。
「わるふざけはやめてくれ。まったくしんぞうにわるいよ」
ドラえもんの取り乱しように多少溜飲を下げたルイズがドラえもんにポケットを返すと、
ドラえもんはぶつくさと言いながらポケットを付け直した。
「にしても、このポケットがないと何も出来ないなんて、あんたも意外と不便ね」
「そりゃ、ずっとおなかにつけてるからなくしたりしないし、
のび太くんの家にはスペアポケットが……スペアポケット!!!!」
ポケットを破かれそうになった時より大きな声で、ドラえもんが叫んだ。
「スペ……え? なによそれ? 新しい道具?」
きょとんとしているルイズに、ドラえもんが大慌てで説明する。
「スペアポケットだよ! この四次元ポケットとおなじつくりの、よびのポケットなんだ!」
「……へえー」
一応そう言ってみるものの、ルイズには何がそんなに驚くことなのか、よく理解出来ない。
ドラえもんはそんなルイズの様子に焦れたように、
「わからないかなあ。このポケットとスペアポケットは、四次元空間を通じてつながっているんだ」
「つまり?」
「このポケットの中にはいれば、きっとのび太くんの家のスペアポケットに出られるんだ!」
そこに至って、ようやくルイズもドラえもんの興奮の理由がわかった気がした。
「それってまさか、あんたが家に帰れるってこと?」
「そうさ! ……ばんざーい、ばんざーい! スペアポケット、ばんざーい!!」
いつものやさぐれたような口調も忘れ、素直に喜びをあらわにするドラえもんの声を、
なぜだろう、ルイズはどこか寒々しい気持ちで聞いていた。
「のび太くんの家にやってきてからこのかた、こんなに長い時間、のび太くんとはなれたのは
はじめてだったかもしれない。でも、それももうおわりだ。
まってろよ、のび太くん。ぼくがいま行くから!!」
興奮冷めやらぬ、といった様子で無邪気に喜ぶドラえもん。
一方で、ルイズは複雑な心境だった。
「そう。よかったじゃない」
祝いの言葉も、ついついかすれてしまう。
――こんなおかしな使い魔、いなくなればいい、と最初はずっと思っていた。
しばらくして、ほんの少しだけドラえもんと親しくなってからも、もしドラえもんが
元の世界に帰る方法を見つけたら、快く送り出してやろうと考えていた。
しかし、それはもっともっと先のことで、しばらくはこのままの生活がずっと続くと思っていた。
なのにその時がこんなにも早く、こんなにも唐突に訪れるとは、ルイズは全く想像もしていなかったのだ。
(さっきまで、いつも通り、ふつうにバカやってたじゃない。なのに、こんないきなり……)
降って湧いたような事態に、ルイズは混乱していた。
「とにかく、部屋に戻りましょう。こんなこと、廊下でする話じゃないわ」
「ん? ああ、そうだね。帰りじたくもしなくちゃいけないし……」
ドラえもんの弾んだ声に、なぜが胸がずきりと痛む。
だが、ルイズはそれを無視して無言で廊下を歩き、自分の部屋のドアを開ける。
目の前に広がる、無人の部屋を見た時、つい、口から思いが漏れた。
「そっか。あんたが出て行ったらわたしまた、一人でここで暮らすのね……」
そんな弱音を口にしてしまってから、ハッとして後ろを振り返る。
「ルイズ…」
さっきまではしゃいでいたドラえもんが、今は申し訳なさそうな顔でルイズを見ていた。
――まずい、そんなつもりじゃなかったのに。
ルイズは焦って弁解して、
「ち、違うわよ! さびしいとかそういうんじゃないからね! 勘違いしないでよ、バカネコ!
ただ、わたしは…わたし、は……」
しかし、後に言葉が続かない。言うべき言葉は喉に詰まって、何も出てきてはくれなかった。
ルイズは大きく深呼吸して、何とか表面だけでも心を取りつくろうと、
「とにかく、なんでもないわ。いいから、早く帰りなさいよ。
……あんたには、ちゃんと必要としてくれてる人が、待ってる人がいるんでしょ」
ルイズはそう言って、ドラえもんから視線を外した。
そのままでいると、何だかドラえもんには見られたくない顔や、
聞かせたくない言葉を漏らしてしまう気がしたのだ。
「いや、ぼくは行かない」
「…えっ?」
意外なドラえもんの言葉に、一瞬ルイズの顔がほころびかけ、
「な、なに言ってんのよ! あんたがいないと、のび太ってのが…」
それを必死で押し隠して、怒ったようにドラえもんに食ってかかる。
しかし、ドラえもんは穏やかな顔で首を振った。
「帰るほうほうがわかっただけでいいんだよ。
ぼくにはタイムマシンやタイムベルト、ほかにもべんりな道具がたくさんあるからね。
帰るのがいつになったって、ぼくがいなくなった時間にもどればかんけいないんだ」
ぽん、とルイズの頭にドラえもんの手が乗せられる。
「どうせのりかかったふねだ。ここできみを見守って、きみのことがぜんぶかたづいてから、ぼくはもどるよ」
「ドラえもん…」
その優しい言葉を聞いた途端、ルイズの顔がふにゃっと崩れ、泣き出してしまいそうになる。
しかし、何とかそこで踏み止まり、自分が無防備な顔をさらしていたことに気づいて、ルイズは真っ赤になった。
「お礼なんて、言わないんだからね!」
その顔の火照りをごまかすように、ルイズはそんな捨て台詞を残して部屋の中に駆け込んでいった。
田○○恵支援
――その、夜のことだった。
「あれ、ドラえもん…?」
夜中に目が覚めたルイズは、ドラえもんが寝床を抜け出しているのに気づいた。
「もう、あの不良使い魔は…!」
そう毒づいて、もう一度寝てしまおうかと思ったが、どうにも気にかかって眠れない。
「これは別に、あんたのことが心配だからとかじゃないんだからね!」
誰も聞いていないのにそう言い訳して、寝台を降りる。
「ご主人さま置いて勝手に抜け出すなんて、使い魔失格……あれ?」
ぶつくさと言いながら、扉を開いたその先、そこに、ドラえもんはいた。
うっすらとした月明かりの下、一枚の写真を手に、何かを語りかけているのだった。
「やあのび太くん。きみのところにもどるのは、まだだいぶ先になりそうだよ。
でも、きっともどるから。ぜったいにもどるから、まっててくれよ」
ルイズは写真に話しかけるドラえもんを見て、思わず声を出しそうになった。
(あいつ…!)
それだけ、写真を眺めるドラえもんの顔は優しくて、それ以上に悲しそうだったからだ。
ルイズの見守る中、そうとは知らぬドラえもんは、空を見上げ、ぼそりとつぶやく。
「ああ、のび太くん。きみはいったい、どうしているかなあ…」
そしてその時、ルイズは見た。
血の通わぬはずの異世界のカラクリ人形の目から、透明な雫がこぼれ落ちていくのを……。
「……あの、バカ」
ぎゅうぅ、と唇を噛み締め、ルイズはうつむいた。
――どうして気づいてやれなかったのだろう。
ドラえもんはあんなにのび太のことを心配して、そして何より、あんなにのび太に会いたがっていたのに。
なのに自分は勝手な都合でドラえもんを引き止め、ドラえもんの気持ちも考えずに無神経に喜んでいたなんて。
ルイズは顔を伏せたまま、ごしごし、と涙をぬぐう。
「……よし」
そして、ふたたび顔をあげた時のルイズの顔は、さっきまでの甘えん坊な小娘の顔ではなかった。
誇り高い貴族の顔が、そこにあった。
sienn
これで帰れなかったら喜g……悲劇だな 支援
翌朝、めずらしく自分で起きだしたルイズは、何でもないことのようにドラえもんに告げた。
「そうそう。そういえば言い忘れてたけど」
「なんだい? またキュルケにからかわれた? それともじゅぎょうでしっぱいしたのかい?」
失礼極まりない質問だが、ドラえもんがルイズを気遣うような言葉をかけてくるのはめずらしいことだ。
決心が揺らぎそうになるが、それを必死で押さえ、ルイズはこう言い放った。
「そんなんじゃないわよ。そうじゃなくて、あんた、今日で使い魔クビだから。故郷帰りなさい」
出来るだけ冷たく、突き放すように。
ドラえもんはしばらくポカンとしていたが、
「ははあ。ルイズ、さてはきみ、きのうのことをきにしてるんだな」
「そんなんじゃないわ…」
「いいんだ、いいんだ。きみだってなかなかいいところがあるじゃないか。
でもだいじょうぶさ。いつだって帰れるんだ。いまじゃなくてもいい」
「そんなんじゃないって言ってるでしょ!」
あくまで強情なルイズに、ドラえもんはやれやれとばかりに首を振った。
「ねえルイズ。ぼくはもう、帰るほうほうがわかっただけでまんぞくなんだ。
時間なんてどうにでもなるんだから、このままきみのつかいまをつづけて…」
諭すようにドラえもんがそう言ってくれている。……はっきり言えば、嬉しかった。
今まで家族以外にこんな優しい言葉をかけてくれる者がいただろうか。
だが、だからこそルイズにはもう、耐えられなかった。
その言葉をさえぎって叫ぶ。
「でも、あんたは泣いてたじゃない!」
もし、ドラえもんがルイズの所に留まって、使い魔をしてくれたらどんなにかいいだろうと思う。
しかし、それは望んではいけないことなのだ。ドラえもんのことを思うなら、決して。
「たしかに元の世界に戻ってからタイムマシンとやらを使えば、
あんたが消えてた時間はなくなって、元の通りになるかもしれない。
あんたの大好きなのび太だって、悲しい思いをしなくて済むかもしれない。
――でも、あんたはどうするのよ!
これからずっと、そののび太っていうのに会いたいって気持ちを抑えて、
わたしの使い魔をやるって言うの!? そんなの、わたしは認めないわ!」
ドラえもんが驚いた顔をしている。だが、それは図星を突かれた驚きの表情であって、
見当外れのことを言われた驚きではなかった。
そんなドラえもんの顔を直視出来なくて、ルイズは下を向いた。
「やっぱりあんた、ほんとは帰りたいんでしょ。そんなやつを、わたし、使い魔にしていたくない。
していたくないから、だから、帰って。帰ってよ、お願いだから……」
それでもかすれた声で、最後まで言い切った。
「……ルイズ」
かけられた声にルイズが顔をあげると……ドラえもんが複雑な顔をしてルイズを見ていた。
それだけで、それ以上何も言われずともルイズにはわかった。
やはりドラえもんは帰りたいのだ。元の世界に帰って、のび太と会いたくてたまらないのだ。
「ルイズ。その、なんていったらいいか…」
「なんにも言わなくていいわ」
ルイズがそっけなくそう言い放ち、それきり、部屋に沈黙が満ちる。
「……おせわになったひとたちに、あいさつに行ってくるよ」
やがて根負けしたようにドラえもんがそう言って、部屋を出て行った。
――バタン。
その扉が閉められた途端、ルイズは堪え切れずにベッドに身を投げ出し、泣き出した。
「これで、いいのよね、ちいねえさま。わたし、正しいことをしたんだもの」
つぶやいてみても、心は晴れない。
優しいカトレア姉さまのことを考えて、涙を止めようとしてもダメだった。
(わたし、昔ほどちいねえさまのこと、考えなくなってた。
それってきっと、わたしが一人ぼっちじゃなくなってたから。
いつのまにか、あの使い魔はわたしの心に空いた虚無を埋めていたんだわ)
そんなことばかり考えてしまって、よけいに悲しくなる。
ルイズは一人、枕に顔をうずめて泣き続けた。
おや、規制かな?
さておき、終わったら投下予約を。ペース的に20分か30分くらいだと
感想タイム含めてOKかな?
戻って来たドラえもんに、『使い魔の見送りなんてどうでもいい、わたしは授業に行く』
と意地を張ったため、ドラえもんは授業の終わった夕方に元の世界に戻ることにした。
そのくせ出発が夕方だと決まると、なんのかんのと理由をつけて授業をサボり、
ルイズは最後の何時間かをドラえもんと一緒に過ごした。
だが、それはドラえもんも同じで、もうとっくに帰り支度なんて終わっているはずなのに、
部屋の隅でグズグズと何か作業をしていた。
――しかし、いつか幕は引かねばならない。
そして、それが長引けば長引くほど、別れのつらさは倍増するのだ。
ルイズは意を決し、往生際悪く作業を続けるドラえもんに呼びかけた。
「そんなとこで何してるのよ、ドラえもん! 元の時代に帰るんでしょ?!
だったら早く、しなさいよね…!」
最後の方が鼻声になってしまったが、今のルイズとしては上等だろう。
それでもまだ動こうとしないドラえもんに、出来るだけ苛立ちを込めて、
「ドラえもんー!?」
と呼んだ。
さすがに無視出来ないと感じたのか、ようやくドラえもんが立ち上がる。
そしてそのまま、ルイズの至近距離まで近づいてきた。
「…なによ」
泣きはらした顔を見られたくなくて、ぷい、とルイズはそっぽを向く。
「その、きみにはせわになったなあ、と思って…」
「ほんとよ! すっごく感謝しなさいよね! 貴族のわたしが、あんたみたいなヘンテコを
養ってやったんだから、もっと感謝して、もっと……」
最後までいつも通りにと思うのに、やはりどうしても言葉が出てこない。
代わりに目から水があふれてくる。
……かっこ悪い。
ルイズはごしごしと目元をこすった。
ドラえもんは、そんなルイズをからかうでもバカにするでもなく、優しく語りかけてくる。
「なあルイズ。そんなになくなよ」
「な、泣いてなんかないわよ! あんたなんかがいなくなったって、
何にも変わらない! だから、悲しくなんかないんだから、
さっさと行けばいいじゃないの!」
最後まで素直になれないルイズの肩に、ぽん、とドラえもん手が置かれた。
「四次元ポケットはここにおいていくよ。
これさえあればいつだってここにもどってこれるし、きみだって道具を使える」
驚いて、ルイズはドラえもんの顔を見る。
その顔は、どこまでも穏やかだった。
「で、でもこれ、あんたの大事なもの…」
「そんなものより友だちのほうがたいせつさ」
「とも…だち……」
その言葉に堪え切れず、ルイズの瞳からぶわっと涙があふれた。
貴族としてのプライドも、ご主人さまとしての体面も忘れ、体ごとぶつかるように、ドラえもんにしがみついた。
「……バカ、バカ! なんで行っちゃうのよ!
ポケットなんていらない! 道具なんてどうでもいい!
友達なんだったら、一緒にいてよ!」
「ルイズ…」
いけないと思っても、溢れ出した言葉は止められなかった。
「わたしにもようやく、居場所ができたと思ったのに…!
あんたと二人なら、ゼロだってバカにされてもがんばれるって、
そう、思ってたのに…!」
それからはもう言葉にならない。
ルイズは声をあげて泣き、ドラえもんも涙をこぼしながら、ひたすらルイズの頭をなで続けた。
「ルイズ、やっぱりぼくは…」
ドラえもんがとても困ったような顔で、口を開く。
ルイズはドラえもんが何を言おうとしているか悟って、首を振った。
「…やめて。さっきのは気の迷いよ。忘れて」
「でも…」
「ドラえもん。わたしに恥をかかせないで。……だって、わたしは決めたの。
自分の意志で、あんたを元の世界に帰すって。この選択は、誰にもくつがえさせはしない。
たとえあんたにだって、わたしにだって、ね」
「ルイズ…」
ドラえもんは一度口を開いて何かを言いかけ、しかしまた口を閉じると、
今まで見たことがないほど真剣な顔をして、一言一言を惜しむように、ゆっくりと口を開いた。
「ルイズ。きみはゼロなんかじゃない。
きみはぼくがしってる中でいちばんりっぱなきぞくで、ぼくのじまんの……ともだちだよ」
――そして、とうとう別れの時が訪れる。
「ぼく、行くよ」
ドラえもんが、ポケットを外し、そこに足をかける。
「あっ……」
それを見てルイズは思わずドラえもんに手を伸ばしかけ、しかし何も出来ずに下ろした。
どれだけつらくても止めてはいけないのだ。
それが、自分の決断なのだから。
……手は出せない。だからせめて、言葉をかける。
「も、もし、うまく帰れなかったら、ちゃんとここに戻ってきなさいよね!
その時は……わ、わたしの家で、ちゃんと雇ってあげるから! だから…」
ルイズのその言葉を聞いた時、ドラえもんは微笑んだように見えた。
そうして、
「――さようなら、ルイズ」
その言葉を最後に、ドラえもんの姿はポケットの中に消えた。
「ドラ、えもん? ……いっちゃった、の?」
ルイズの言葉に答える者は、もう誰もいない。
後に残ったのは、小さなポケットだけだった。
ルイズはずっと、一晩中ポケットの前で待ち続けた
このままあのヘンテコな使い魔と別れることになるなんて
ルイズにはとても信じられなかったのだ
「だってあいつ、間が抜けてるんだもの。きっとすぐに戻ってくるに決まっているわ」
だからルイズは、使い魔からのその小さなプレゼントを胸に抱き
帰ってきたドラえもんにかける言葉を一生懸命に考えながら
「ふふ…」
ときどき、穏やかで優しい妄想にほおをほころばせる
かけたい言葉はたくさんある。伝えたい想いも、また
だけど、時間はいつだって有限で
ルイズはいまだ決定的な言葉を見つけられないまま
時計は淡々とその時を刻む
やがて空には曙光がさし、いつのまにか夜は明けて
ドラえもんは結局、戻ってこなかった……
支援
支援
支援です。
泣かせてくれますなあ。
あ、投下するのはいぬかみっな使い魔です。
なんか1話で終わらせるはずの話が伸びて3話構成くらいになりそうなので
分割です。
次は明日か来週辺りに投下出来ればいいな。
「ん…。あさ…?」
ルイズが目を覚ました時、もう日は空に高く上がっていた。
「ドラえもん! あんたまたわたしを起こすの――!」
忘れたでしょ、と言いかけて、ルイズはようやく思い出す。
「そっか。いなくなったんだった。……あはは。これですっきりしたわ。
あんなナマイキな使い魔。こっちから願い下げだもの」
そんな言葉を口にして、なのになぜだろう。部屋の広さに、視界がにじんだ。
「あはは。わたし、ほんとに一人ぼっちになっちゃった……」
ふらふらとした足取りで、ドラえもんが寝ていた部屋の隅に向かう。
寝床にはあまりこだわりがないのか、そこに敷かれた藁の上で、
ドラえもんはいつも横になっていたのだった。
「こんなことなら、もうちょっとあったかい寝床、用意してやるんだった。……ん?」
そこでルイズは、ドラえもんの寝床に何か落ちているのに気づいた。
「なにかしら…」
ルイズがそれに手を触れると、いきなり空中にドラえもんの姿が浮かび上がった。
驚くルイズに、映像のドラえもんが語りかける。
『ルイズ。面とむかってはなすとてれくさいから、こうして手紙をのこすことにするよ』
その言葉を聞いて、ルイズは悟った。これは、たぶん未来の世界の手紙なのだろう。
帰る直前、ドラえもんはこっそりとルイズにこんな手紙を残していたのだ。
「あいつ、こそこそと何かやってると思ったら、こんなよけいな、こと…」
言っている間に、また涙が出てくる。グジ、とルイズは鼻をすすった。
『なあルイズ。きみはまったくわがままでへんてこなやつだったけど、その……
きみとすごした日々は、とても、たのしかったよ』
空に浮かび上がったドラえもんが、照れくさそうにそう言った。
「わたしも、よ。あんたこそヘンテコで、ご主人さまの言うこと、なんにも聞かなかったけど、
……でも、わたしだって楽しかった。あんたがいるから、わたしは一人ぼっちじゃなかった」
この先何があっても、たとえもう二度と、ドラえもんと会えなくなったとしても、
自分はドラえもんと過ごした日々を忘れたりはしないと確信出来た。
『ぼくが、もし、もしのび太くんにあうまえにきみとであっていたら……』
そこで映像のドラえもんが鼻をすすりあげる。
「なによ、いまさら。そんなの、ずるいじゃない…」
現実のルイズもつられてグズ、と鼻をすする。
後ろを向いて涙をぬぐったドラえもんが、無理矢理な明るい声で告げる。
『ルイズ。ぼくはきみのためにポケットをのこしていくつもりだけど、
ひとつだけやくそくしてほしい。なれないひとに四次元空間はきけんなんだ。
ぜったいに、ぼくをおってポケットの中に入ったりしないとやくそくしてくれ』
その言葉にルイズはぐっと息を飲む。
いざとなれば、ドラえもんを追ってポケットの中に入ればいい、心のどこかでそう思っていたのだ。
だが、他ならぬドラえもんの言葉なら、守らないわけにはいかない。
「…わか、ったわ。始祖と紋章に誓って、ポケットには入らない」
聞こえていないと知っていながら、律儀に誓いの文句を口にする。
『この世界には戦争や怪物、魔法を使うおそろしいエルフまでがいるらしいじゃないか。
そんな世界で、魔法も使えないのにくそまじめでうそもつけないきみがやっていけるか、
ぼくはしんぱいだ。だからひとつだけ、道具をのこしておくよ。
すごい力をもった道具だから、ぼくが行ったあとで、どうしようもなくなったときにだしてくれ』
そう言って、ドラえもんは藁束の一番奥のふくらみをたたく。
『これはぼくじしん、まだいちども使ったことのないとっておきだけど、使いかたはかんたんで…』
だが、その言葉は他ならぬルイズの声でさえぎられた。
『そんなとこで何してるのよ、ドラえもん! 元の時代に帰るんでしょ?!
だったら早く、しなさいよね…!』
その声の主は、今手紙を見ているルイズではない。過去のルイズが、ドラえもんをせかしているのだ。
その言葉に、ルイズは手紙の終わりが近いことを悟った。
なぜならこの後、ドラえもんはすぐに……
『ゴメン、もう時間がないみたいだ。道具のせつめいは紙に書いてはりつけておいたから…』
せめて一言、とドラえもんは身を乗り出すようにして、最後の伝言を残し、
『ドラえもんー!?』
遠くからまた、ルイズの声が聞こえて、
『…それじゃあね、ルイズ。ぼくはぜったい、もどってくるから――』
――ぷつん。
そこで、映像は途切れた。
一つだけ残したのか…… 支援
支援
まさか、最終回と言うのなら『アレ』なのか……支援。
映像が終わり、われに返ったルイズは、ぼんやりとした動きで敷き詰められた藁を見た。
そこには確かに、何かが隠されているようなふくらみがあった。
――ごそ、ごそ。
見るからに緩慢な動きで、藁の奥に隠された何かを引き出す。
「……なに、これ?」
何かの装置なのだろうか、縦長で、何かのケースのようにも見える奇妙な物体が置いてあった。
そのまんなかの辺りには付箋のような物が貼ってあって、道具の説明らしきものが書かれているが、
「バカね。あんたの世界の言葉、わたしが読めるワケないじゃない…」
翻訳こんにゃくを使えばトリステインの文字だって書けるだろうに、
ドラえもんは焦って日本語で字を書いてしまっていたのだ。
涙に濡れたルイズの顔に、くすりと小さな笑みが戻る。
こんな時でもドジなドラえもんが、あまりにもドラえもんらしくて、笑ってしまう。
「でも、いいわ。あんたの気持ち、受け取ったから……」
これではこの道具の使い方は分からないが、元よりルイズはこの道具を、
いや、ポケットの中に入っている他の道具も含め、ドラえもんの道具を使う気はなかった。
自分の、自分だけの力で、胸を張って生きていく。
いつか、ドラえもんと笑って再会するため、それが必要なことに思えたのだ。
次に会った時、ドラえもんが自分の使い魔であることを誇れるような、そんな人間になりたい。
――それが、ルイズの新しい目標だった。
「ドラえもん、あんたが帰ったら、部屋ががらんとしちゃったわ。
でも……すぐに慣れると思う。ううん、ぜったいにそうなる。なるように努力する。
だから、だから心配しないで」
ルイズは気丈に胸を張り、涙によごれた顔をあげ、過去のどんな約束よりも重い、誓約の言葉を紡ぐ。
「でも、その代わり、わたしがずっと、がんばれたら。
いつか、胸を張って笑えるようになった、その時には。
また、笑顔で…えがお、で……う、うぅ、ぐ、グス…ドラ、えもん」
しかしついには堪え切れず、誓いの言葉に嗚咽が混じった。
「ドラえもん! ドラえもん、ドラえもん、ドラえ…もん…」
どれだけ強がっても、幼い心に別れの痛手は重く、心の傷はまだジクジクと痛む。
それでも、ルイズはそれに必死で抗った。
耐えがたい胸の痛みがあふれる度、ドラえもんの残した道具を強く、強く抱き寄せる。
よぎる思い出の度にこみあげる涙の衝動に負けぬよう、一層強く、それを抱き締めるのだ。
朝の喧騒はまだ遠く、ルイズの前には密やかでちっぽけな、けれど過酷な戦いが待っている。
しかしそれでも、孤独ではない。
ルイズは別れた友の贈り物を抱え、静かに目を閉じる。
傷だらけの心を休ませて、また立ち上がるために。
……そして
その道具を大切そうに抱えたまま、ルイズが眠りに落ちてしまった後。
――ひらり。
ルイズの腕の間から、道具に貼られた付箋が落ちる。
その、一行目。
そこにはドラえもんの字で、こう書かれていた。
『地球はかいばくだん』と。
第六話『さようなら、ドラえもん』 おわり
これで終了(ハルケギニア的な意味で)
いやあ、最後のたった一行を書くために、ずいぶんと苦労したもんだよ
さてみなさん
長い間、お付き合いありがとうございました
そして何より、あたたかい支援、ありがとうございました
第六話までやってきたこの作品ですが、残念ながら
まだもうちょっと続きます
ではまた
乙…ってちょっと待てw
ヤンデレの手に一番握らしちゃいけねぇものを置いていくなw
ちょwwwww
よりによってそれかよ!www
お疲れ様でした。
ちょwwwwwwwwwwwwwウソ800じゃねーのかよwwwwwwwwwwwwww
なんてもの残しやがるwwwwwwwwwwwww
なんてもの残すんだよ。この青ダヌキ支援
お疲れ様でした!
……って青ダヌキ何のこしてんだwwww
いやあ面白かっt……ってちょっと待てやw
俺の感動を返せw
そして続くのは歓迎だ!
乙……ってよりによってそれかよ! この為に書いてきたのか!
やばい、またこの作所の手の上で転がされた。見事すぎる
何故星の数ほどある道具の中からあえてそれを選ぶwww
爆発か?ww爆発繋がりなのか!!?wwwwww
ちょww
最後の最後で爆笑したじゃないかw
いい話が台無しだよw
てっきりウソ8OOが来ると思ったのにw
ドラえもーん!!乙。
こんなもん使い方がわかっても使いようがないw
抑止力として使うにしても、どういう物か相手が見たことなけりゃ意味無いしなあ……
とにかく乙でした!
乙でした。って、ええー!?
なんかの拍子にハルケギニアが終わるww
なんてとんでもないものを残すんだ(w
さておきそろそろ投下したいと思います。
タイン陣地を撤退したレコンキスタ首脳陣は、敵の追撃をなんとか振り切る
ことに成功し、撤退を続けていたものの下がり続ける士気に頭を抱えていた。
「将兵に脱走が相次いでおります!」「いかがいたします、閣下!」
「脱走に歯止めをかけられません!」「かなりが敵に取り込まれております!」
「敵は3万5千ほどにも膨れ上がっている模様です。」
「わがほうの数はすでに2万5千にまで減りました。」
「これ以上の撤退は士気の決定的な低下を引き落とします。」
「さいわいもうすぐスコットランドの主城スコッチ城だ。」
「ここで踏みとどまって反撃するべきだ!」「うむ、そうですな。」
「スコッチ城は防御に適している。」「追撃が迫っているしな。」
レコンキスタは、スコットランドの中心都市にして最も堅固な城砦都市、
スコッチ城を目指し、何とか無事に入城した。一部の部隊はここを
素通りすると、シティ・オブ・サウスゴータに向かっていた。
連合艦隊が残した駐留戦力が申し訳程度に過ぎないと看破し、
一気に取り戻す予定で急行している。そこでも反撃の準備を整える予定だ。
いまだ保有している小さな港もさほど遠くない距離にあり、
そこをレコンキスタ残存艦隊の基地とした。
問題は二つ。
一つは、件の港は小さい規模であり、レコンキスタ艦隊の半分しか停泊できない点。
残りは交代で上空警戒任務に出すしかない。元から撤退援護に必要なので
今は問題ではないが、後々艦を停泊させるため盤木を土メイジに作らせている。
これらは敵が攻め寄せたらすぐに破壊されてしまいかねないものでしかないが、
無いよりはあったほうがずっとましなのである。風石の消耗がまったく違う。
もう一つが、この城に蓄えられた兵糧が心もとないことだ。
サウスゴータに向かった部隊が奪還に失敗すれば。あるいは連合艦隊が兵糧を
奪いつくしていれば。さらに言えば兵糧の輸送に失敗すれば、彼らに未来は無い。
綱渡りのような状況が続いている。
だ・・、大丈夫だ。ハルケギニアであって地球じゃないから、ハルケギニアは破壊されない。
なんてオチだったらいいな(汗)
そんな幕僚達の動揺しまくっている中でただ一人、いや、二人だけが泰然と構え、
落ち着き払っていた。まるで、この程度なんでもないとの態度である。
「やれやれ。君たちは、忘れてしまったのかね?」
レコンキスタ首魁、オリヴァー・クロムウェルが一言述べると、
その場がぴたりと静まった。
「…閣下?」
「我々は、旗揚げの直後から、長いこと寡兵で多くの敵と渡り合ってきた。
先日までのようにより多くの戦力で戦えたことなど、ごく最近になってからだ。
この程度の戦力差など、何だというのかね?」
その通りであった。王国軍に始めて勝てたのは、レキシントンの戦場での事。
それまで彼らは、地方の一揆か大き目のゲリラと大差ない存在であったのだ。
彼らレコンキスタは長いこと少ない戦力でより多くの王軍に勝利してきた。
クロムウェルの巧妙もしくは卑劣な作戦と王軍のなかから頻繁に現れる裏切り者の
活躍、豊富な資金と補給によって幾度と無く劇的な逆転勝利を成し遂げてきたのだ。
それまでと比べれば、いまだいくつもの都市を支配し、2万5千もの地上戦力と
大艦隊を持っている状況ははるかに良い。
「な、なるほど。」「しかし、士気の低下は深刻です。」「何とかせねば。」
「さよう、戦いになりませぬ。」「現状では敵が来ただけで降伏しかねませぬ。」
クロムウェルは一つうなずくと、脇に立つ青年と何事か相談し、うなずいた。
「良かろう、閲兵の準備を。私自身が将兵の士気を鼓舞するとしよう。
そう、その時には何か景気付けになるものを。そうだな、演説開始前に
全員に金貨2枚を支給。ワインを一杯与え、演説の後皆で乾杯するとしよう。」
その日の朝。レコンキスタ地上戦力全軍に対して閲兵が行われた。
その場で提供された酒は、一旦とあるテントに集められた。
その作業に従事した人夫達の中に、一人の黒髪の青年が混じっていたのであるが、
誰も特に気にしなかったという。
そう。アンドヴァリの指輪から滴った雫がぶどう酒の樽に入っても、
気にするものはいなかった。クロムウェルは演説と乾杯の後、
全軍の見守る中一人の伯爵を“虚無の魔法”によって生き返らせた。
それを見た将兵達は熱狂的な喝采を上げ、レコンキスタの士気は回復したのである。
マジックアイテムで虚無の担い手を装っているとの噂は、
彼らの頭からきれいに消え去っていた。
メモがあっても、ルイズには「惑星」という概念が理解できないだろうからなぁ。
威力を過小評価して、敵を倒すためにつかってしまうこともあり得る。
メモがなくってむしろ安全だったんじゃね?
73 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 22:36:41 ID:6Iws+ih8
ちょっと疑問に思ったんだけど、ハルケギニアというかこの世界での
科学の位置づけってどんな感じ?
コルベールみたいな一部の知識人のみに知られてて、他は科学そのものを知らないとか
それとも現実での魔法みたいに、存在しないのが常識みたいな認識なのか
第9日目早朝、ランスの港。この時、啓太は一人のゲルマニア商人と会っていた。
「やあ、トルネコさん、良く来てくれました。アンリエッタ姫殿下の軍事教師
をしております川平啓太です。よろしくお願いしますよ。」
「これはご丁寧に、ケータ殿。早速商談に入らせていただいてよろしいですかな?」
「ええ、時は金なり、リソースは常に足りない。手っ取り早いのは大歓迎です。」
戦争とは数の暴力と数の暴力が鬩ぎ合うものである。
現実世界よりも個人の力量差が与える影響が顕著なハルケギニアにおいても
それは変わらぬ真理であり、兵多ければ勝利の基本則は変わらない。
作戦で局所的に優位を作り、敵軍の士気や統制を崩壊させて勝利しようとしても、
数の差が絶対的に違えば話にならないのである。
となれば、数の暴力を維持しなければならない。すなわち、膨大な兵員を
食わせるための兵糧、武器弾薬、各種秘薬を必要なだけ集め、与えねばならない。
啓太は、各地で戦利品を獲得させ、大雑把な量で言えば充分すぎるほどの
物資を手に入れさせているのであるが、いかんせん細かいところではどうしても
足りないものが出てきてしまう。そのため、購入という手段も必要なのだ。
啓太は、華々しい戦闘の裏でこういった地味な部分に関しても抜かりなく
手配りをしていた。その一つが、このトルネコという太った大商人との商談だ。
本籍はゲルマニアで、ツェルプストー家の武装商船に混じってただ一隻、
他の商会から参戦している大型武装商船の持ち主だ。アルビオン内にも
多数の支店を持っているとのことで、啓太は大商人トルネコを呼んだのである。
平民出身で魔法がろくに使えないそうなのだが、大手柄を立てて貴族に叙勲され、
立派なマントを羽織ってそろばんの飾りがついたごつい錫杖を持っている。
最近ゲルマニアの商人系貴族で流行っている正義のそろばんという武器だ。
ゆったりとした上着の下には、戦地のためか軽めの鎧を着込んでいるようだ。
体の動きに無駄や隙がなく、歴戦の戦士である事にうなずける。
「このリストが当商会がすぐに供給できる主な商品の品目と量です。
こちらは多少の時間がかかるもの。こちらは確約は出来ぬものの供給できる見込み
のある品のリストです。連合艦隊に必要そうなものを選びましたので、
他にもご入用な物がございましたら承ります。物によっては他から買い取る等して
ご提供できるかもしれません。」
「ほう、これはすばらしい。これで時間がだいぶ節約できます。
おい、これを頼む。不足物資のリストと照合して(後略)」
啓太は、すぐにリストを薬草クラブ員達に渡し、あれこれ指示を出して
買取物資のリストを作らせ始めた。艦隊の参謀達とはすでにある程度の
相談を済ませ、段取りは整えてある。というより、参謀達のあまりに低劣な
補給計画に関する能力を知ってしまい、泣きたくなってしまってから数日たつ。
以後啓太は、各種の現代的な補給計算法などのレクチャーを
姫様や薬草クラブ員達はおろか将軍や提督、参謀達にする羽目になった。
この時代、補給計画とは将軍や提督の経験則による非常に大雑把なものでしかない。
正面戦力の必要物資の量等は割と正確に推し量れても、必要物資が距離や時間
などにより幾何級数的に増える事や、攻撃力が距離の二乗に反比例して減る事も
あまり理解されていない。そんな連中を教育して補給計画立案の補助まで
しなければならないのだから事実上の作戦参謀たる啓太の負担は
相当なものである。ストレスも溜まりやすいといえる。
しかし啓太は、とある事情からストレス解消の最大の方法を失っていた。
故に、ある種のイジメを薬草クラブ員達にすることでストレス解消をしていたのだ。
だが、それも限界に来ていた。これ以上は啓太とクラブ員、双方が持たない。
ゆえに。
啓太は、薬草クラブ員達にとある褒美を与えることを計画していた。
啓太の前述した悩みゆえにちょっとばかり伸びていたのであるが、
リストの中に書いてあったとある品名に気づいた時。
「これは!」
バ イ ア グ ラ !!
ご褒美の即日渡しが1ミリ秒で決まった。
いや、秘薬の名前自体はもっと別のものだ。しかし、自動翻訳能力を
付与された啓太のノウミソは、その比較的レアな秘薬の効果を理解したとたん、
バイアグラという名前以外には認識できなくなった。
なってしまったのである。
「おや、ケータ殿、なにか秘薬のリストに問題でも?」
啓太が突然大声を上げたので、トルネコは心配そうに聞いてきた。
薬草クラブ員達も手を止めて啓太のほうを見た。
「い、いや、それほどの事ではありません。おいみんな、作業の手を休めるな!
物資の調達と輸送にはどうしても注文してからタイムラグが生じる。
となればあらかじめ手配しておかなきゃ必要なときに物資が
届いていない事になる。物資の不足は戦場で致命的な隙をさらす
原因となる事はわかるだろう。時間との勝負だ、急げ!」
「「「「サー・イエス・サー!」」」」
啓太の一喝に、薬草クラブ員達は作業を再開した。
「見事な統制ですな。トリスティン魔法学院の生徒達は、みなこのように
即戦力となる優秀なものたちばかりなのですか。素晴らしいですな。」
トルネコが、感心したように言う。
「ええ、優秀です。即席で叩き込んだんですが、皆訓練にかじりついてくれます。
うん、がんばってくれてるし、これは例の褒美をやらないとな。」
「「「「(キュピーン)!!!!」」」」
突然機嫌が良くなった啓太の言葉に、薬草クラブ員達の目が光った。
啓太の言うご褒美とは、高確率でエロイ事関連なのである。
間接的にエロイ事、すなわち女にモテるために有用な金や知識の供与等も含めれば
その確率はさらに高くなる。その啓太が提示した今回の褒美は。
ある意味非常にでかかった。
薬草クラブ員達は、さらに猛然と作業を進めた。
sage忘れ失礼
「ほう! これはこれは。トリスティンの優秀さを垣間見させてもらいましたよ。」
トルネコがさらに褒める。
「はは、褒めすぎですよ、トルネコさん。さて、話を商談に戻しますが。
その、こちらの入手が不確実な秘薬のリストについてですがね。」
啓太は、勤めてさりげなくトルネコに探りを入れた。
「なんでございましょう?」
「ええ、ここからここまでの秘薬が欲しいのですが。量は、これくらい、かな。」
啓太は秘薬リストの一角を指差し、取り出した別の紙に品目と量を書いていく。
「どうです、いつぐらいまでにお願いできますか?」
啓太の目は、大いなる期待に輝いていた。
「そうですな、アルビオンの親交の在る商会と交渉して手に入り次第、ですな。
ものによっては私自身がダンジョンに直接もぐって探してきます。
期待されても困りますが、早ければこの期日、遅ければこう、(中略)それ以降は
短期間ではまず難しいためにですな、値段は(後略)」
「ふむ、おおよそ(後略)」
ダンジョンに自ら乗り込んで商品を手に入れるという、商人としては
およそありえない発言であったが、地下深くの洞穴でのみ手に入る秘薬も
注文リストにあったので、啓太は特に気にすることもなく詳しい商談に移った。
そして。
勤めてさりげなく、バイアグラ(仮称)の注文交渉を織り込んだのであった。
そして。それからしばらくの後。
すなわちアルビオン上陸9日目の朝、ランス港郊外。
啓太は、数十人の漢達を前に、訓示を垂れていた。
「諸君! ついにこの日が来た!」
マントをまとったメイジ達が整列する前を、威圧的にのし歩く。
「4つのレコンキスタ艦隊を撃破し、4つの港を陥落せしめ、
レコンキスタに占領されしロンディニウムを襲撃して捕虜を奪還し、
各地の資源集積地を襲って軍需物資を手に入れ…
我々トリスティン軍はまさに獅子奮迅、連戦連勝街道をひた走った!」
集まった漢達の顔に、強い誇りと自負が浮かんだ。
1週間前には祖国を小国と揶揄していた卑下の色は、もはやかけらほども無い。
感想割り込み済みません。
支援
「アンリエッタ姫はアルビオン王女として、アルビオン親征艦隊司令に正式になり、
レコンキスタから開放された多くの艦艇と人員が、ゆるぎない忠誠を誓ってくれている!」
先日、念のためにと啓太が正式な辞令をアルビオン国王ジェームズ一世に
求めるように進言し、直ちにその辞令と、アルビオン王国王位継承権
第2位の認定書が送られてきたのだ。これによって、トリスティン艦隊は
名実共にアルビオン王女の直卒する親征艦隊となり、寝返ったアルビオン艦隊への
正当な指揮権が発生し、取り込み工作は実に簡便な作業へとなった。
さらに、新たな“国王候補”が誕生した事により、多くの変化が在った。
王国を滅亡させるためには国王と皇太子、首都の3つを同時に押さえねばならない。
首都は押さえ、二人をすでに追い詰めている…はずだったのに、
強い戦略眼と指揮能力、巨大なカリスマを持(っているようにみえる)ち、
巨大な戦力を手にしたアンリエッタという皇太子の予備が出現したのだ。
これをも倒さねば目的を果たせないのだからレコンキスタは消沈もする。
逆にアルビオン陣営には希望と士気の上昇がもたらされていた。
今では、レコンキスタをきりきり舞いさせている“強い王女”が。
“未来の強い女王候補”が予備として存在しているのだ。アンリエッタ王女は、
敵の後方霍乱のみならず、ガリア傭兵3千と補給物資を送ってくれ、
両軍が対峙している戦場にも一度現れ、レコンキスタ艦隊に損害を与えてくれた。
アルビオン将兵の彼女への信頼は、すでに熱狂の域にまで達していた。
それらの作戦を練り、提示することで、軍師としての地位を確定しつつある
“アンリエッタ姫の軍事関連教師”である啓太は、戦闘の合間の補給と
休養のこの日…ナゼか、意欲満々な連中を前に訓示を垂れている。
「全ての作戦は、全ての戦闘は、今日この作戦の為の準備でしかなかった!」
全員、それを知って作戦の協約に署名した、固い結束を持つ連中だ。
中には、元帥の息子たる土のトライアングルメイジまでいたりする。
「わずかな齟齬が、この作戦の失敗にと繋がる。故に、間違いは許されない!
全員、充分な睡眠をとり、必要な秘薬と道具を用意してきているな!?」
啓太は厳しい目つきで、薬草クラブ員を中心として、
同じ志を持った王軍や空軍の高級士官たちを見つめる。
「段取りはきちんと頭に入っているな? よし、では、作戦開始!」
かくして、彼らは…
アンリエッタ王女殿下が最初に入る事になる『 お 風 呂 』
の新築作業に入ったのであった。
支援
なんでトルネコさんいるんだww支援
事の起こりは、ラ・ロシェールに到着した晩に船上で一泊した時に遡る。
フネを降りて、女神の杵亭にて休もうとしたアンリエッタ達女性陣を、
マンティコア隊隊長ド・ゼッサールが止めたのだ。
「殿下。現在ラ・ロシェールにはレコンキスタに雇ってもらおうと
アルビオンに向かう傭兵が多数おります。さらに、レコンキスタの間諜も
多数潜んで虎視眈々と監視をしております。アルビオンに攻めあがるには、
ここを拠点とする事になりますからな。となりますと、レコンキスタへの
示威行為をしているトリスティン艦隊は敵とみなされましょう。
暗殺を警戒せねばなりませぬ。襲撃しやすい地上の宿では危険すぎます。
ご不自由をおかけしますが、今夜は船室でお休みください。」
最もな話である。啓太も、すぐに賛同した。収まらないのはルイズだ。
「それでは姫様がお風呂に入れませんわ! それにベッドにせよ食事にせよ姫様に
ご不自由をおかけすることになるますわ! 警備を強化すればよい話でしょう!」
これも最もな発言だ。王女となれば身奇麗にしてその美貌を公開するのは公務だ。
美しい姫のために、と将兵は勢いづき、士気が上がる。
薄汚れた姫では士気が上がらない。これは戦術上の大問題なのだ。
姫様付きの女官となればその辺りを心配するのは責務である。
「そこは濡れタオルで拭いて洗面器で髪を洗うなどしていただいて、ですな。
工夫していただきたい。無論、入浴券は数倍お出し出来ますので。」
船の上における入浴券とは、銭湯のチケットとは違う。
洗面器を持って所定の場所に行くとお湯を一杯くれる、というものだ。
洗面器一杯のお湯で口をゆすぎ、顔を洗い、体を拭かなければならない。
量が少ないために結構コツがいる。船の上では水も燃料も貴重で、
水兵程度なら週に1枚、下士官で2枚、士官で数枚という配給態勢だ。
蒸気船時代以降の海軍であれば話は別だ。蒸気機関の余熱で海水を温め、
毎日でも風呂に入れるのであるが、ここはハルケギニア。
空の上では海水すら入手は難しく、雨を集めてわずかに風呂用水にしている。
港で停泊中といえど水事情は余りよくない。世界樹が生えるのはなぜか
岩山の上で川が遠い上に井戸を掘っても岩又岩。人工的に作られた鉄塔の港でも、
さびを防ぐために乾燥した土地が選ばれる。港は真水を得にくいのだ。
故に水はまず飲料水、それも長期移動のフネに積み込む飲料水に回される。
港は農業に今ひとつ適さない事が多いから生鮮食料も遠くから運ぶ事になる。
必然的にフネでは飲み水は配給制となって1日の量が決まっており、
食事も出航後日が経つにつれ生鮮食品が減り、カビや虫の沸いたビスケットと
硬い乾燥肉だけ、なんて事になる事が多い。
だから上陸して思う存分飲み食いでき、ゆっくり風呂に入れる上陸は、
船乗りにとって何よりの休暇であり娯楽なのである。
意外な事に女を抱けるから、というのはあくまで副次的な理由なのだ。
支援
ちなみに、庶民は蒸し風呂に入るのが普通だが、蒸し風呂は出た後冷水を
大量にかぶるのが常だ。垢をこすり落とすタオルをゆすぐのにも水が必要だ。
蒸し風呂だから温水は少なく済んでも水が大量に必要なのは
風呂に共通する補給上の問題なのである。
なおも抗議していたルイズに、啓太が懇々と諭した。
「ルイズ。これから姫様は当面こんな状況が続く事になる。
なにしろ、俺たちはレコンキスタの勢力圏に殴り込みをかけるんだ。
敵地で油断は出来ない。ずっと船にこもってもらうことになる。
幸い今日は、味方の港にいる。失敗してお湯を使いすぎても、
港から多少は補充できる。訓練のためにはいい条件だ。がんばれ。」
「それは…」
まっとうな事を言われて、言いよどむルイズに、アンリエッタが声をかけた。
「ルイズ、ルイズ、私のルイズ。国を守り民を守るは王族の義務。
そのために戦地におもむくことも義務。ほうっておけばアルビオンを
蹂躙した後に、トリスティンに襲い掛かるであろうレコンキスタを倒し、
後顧の憂いを払うのも義務。幸い私は、勝利の目算を得られた上で
戦いに望む事が出来るのです。望外の幸運です。わずかな不自由が
何だというのでしょう。この程度、甘んじて受けねばなりませぬ。」
「姫様…!!!」「きょろ〜!?」
毅然としたアンリエッタに、ルイズは尊敬と感動の眼差しを浮かべた。
二人して試練に打ち勝つのがどーのこーのと手を取り合って感動している。
その二人を見て、ともはねが
「お姫様、かっこいいです!」
とうんうんうなずいていた。
その脇で啓太は、暖かいまなざしで彼女達を見守っていた。
生徒が成長していくのを見るのは、師として実にうれしいことだからである。
(「とはいえ、こんな不自由をいつまでもさせるわけに行かないよな。」)
うれしくなった啓太はそんなふうに考えた。
そして啓太は、さらに考えを進める。
(「早めに姫様だけでも帰れるようにするか? ごく短期間の援護だけして
後はアルビオンに自力でがんばってもらえば…いや、それだと領土を得られない。
となると、絶対に暗殺されない方法でお風呂に入ってもらう?
キュルケみたいに小型のバスタブを持ち込んで入るとか? 姫様が満足するかな?
宿で暗殺される可能性の要素はアレとコレとソレと…あ!」)
啓太が、残り湯大作戦なるものを思いつき、色々と画策しだしたのには。
こんなきっかけがあったのであった。
支援
「と、いうわけでだ! 有志を募りたい!」
ある日啓太が執務室で計画を打ち明けると、皆が一斉につり込まれ、たりはしなかった。
「浴場を作って、褒美に二番風呂を使わせてもらう?」
「覗き部屋を作るわけでもないのにそんなかったるいことはなあ。」
「姫様たちの後に入れるだけじゃあ、さすがにやる気が起きないよ。」
「そりゃまあ名誉といえばいえるけど、2番風呂ってだけだろ?」
口々に否定の言葉を吐く薬草クラブ員達に、啓太はちっちっちっと指を振った。
「わかっていないな、君たち。2番風呂には入れるって事はだ。いいか。」
機密保持のために盗聴防止魔法を常動でかけているのに、
さらに耳を寄せさせ、声を潜めて言う啓太である。
「例えば。姫様が使った洗面器やタオルで、体を洗える!」
「おお!?」「なに!?」「姫様の洗面器で!?」「それは!」
早くも数名の男子が、前かがみになった。
「さらに。王族が入るとなれば、当然風呂用椅子を用意するよな?」
「あ、ああ。」「そ、そうだな。」「う、うん。」
「当然姫様はその椅子に座る。湯着だけのお尻で座る!
2番風呂となれば! その椅子にほお擦りなんか出来ちゃうんだぞ!」
湯着とはいわゆる脇や下が大きく開いていて体をこするタオルなどを
入れやすい、うすでの服だ。申し訳程度に体を覆う布地の裾は短く、
当然ながら下着=ぱんつはつけず、事実上椅子には生尻で座ることになる。
「「「「「う、うおおおおおおおおおおお!!!!!」」」」」
雄たけびが上がった。
すでに、ほぼ全員が前かがみである。
「さらに。あの高貴なアンリエッタ姫だけでなく、キュルケやタバサ、
ルイズなんかも一緒に入ってもらう予定だ。お姫様二名に女官が二名。
あとは、護衛としてともはねにも行って貰うかな。よりどりみどり!」
「「「「「う、うおおおおおおおおおおお!!!!!」」」」」
再び雄たけびが上がった。
支援
「そしてもちろん! 風呂の残り湯、すなわちアンリエッタ姫たちが
その身を浸し、汗を流した浴槽のお湯は、俺たちが好きにしていいわけだ!」
「「「「「う、うおおおおおおおおおおお!!!!!」」」」」
三たび雄たけびが上がった。
「そそそそ、それは、匂いをかいだりしてもいいのか!?」
「おう、嗅げ嗅げ!」
「ひ、姫様のあんなところやこんなところを浸したお湯を触っても!?」
「おう、触れ触れ!」
「あああああ、あまつさえ、のののののの、飲んだりしても!?」
「おう、飲め飲め!」
「ううううう(鼻血)」「す、すごいよ啓太君!」「い、生きてて良かった!」
「一生ついていきます!(鼻血)」「先生と呼ばせてください!(鼻血)」
「俺は今、モーレツに感動している!(滂沱の涙)」「俺もだ!(滂沱の涙)」
「お、おれ、一生壷に入れて宝物にするよ!」「俺も!」「おれも!」
「おう! 土メイジに頼んで固定化かけてもらいな!」
このあたり、純情な童貞少年達の心理を見事に突いた啓太の作戦勝ちである。
なお、建築員たちは童貞ではなくなっているものも多いが、1回のみな上に
素人童貞であることには変わりが無かったりするので注意されたい。
熱狂の最中とはいえ、中には冷静な奴も少しはいる。
金髪の風メイジ、レイナールが疑問を呈した。
「で、でも、それだけの物を建てるとなると、結構秘薬がいるよ?
それに、数時間で作るとなると、さすがに僕達だけじゃあ数が足りない。
それに設計図は? 装飾は申し訳程度で質実剛健に行くとしても、
必要なものは結構多いよ?」
「大丈夫だ。設計図は風呂屋作ったときのを取ってあるし、秘薬も在る。」
啓太は、自信たっぷりに言った。
「人数は、集めればいい。お前達は名門男子だ。コネはあるだろう?
それに、いくらなんでも俺たちでお湯を使いきれるわけが無い。
残ったお湯は一般水兵さんたちなんかにも分けてやらくちゃな。有償で。」
「それは!」「な、なんだかものすごく高く売れそうだな!?」
「下手をすれば1万エキュを超えるお金になるかも!?」「うん!」
「1万で済むか、売り方によっちゃ軽く数万になるぞ!」
「それって城が買えちゃわないか!?」「田舎なら結構な領地が!?」
「おい、コレってかなりすごくないか!?」「すごい!」
口々にうなずきあう男の子達である。
「あとな。お湯の処理が終わった後は、そろそろともはねのシャンプーを
してやらなくちゃいけない時期だな、と思ってるんだが、
何分時間は節約しなきゃならん。お前らと一緒にいれさせていいか?」
「「「「「う、うおおおおおおおおおおお!!!!!」」」」」
今まで出最大の雄たけびが上がった。
それまで興味なさそうにしていた連中を中心として。
支援
以上です、支援ありがとうございました。
なお、トルネコさんがいるのは俺がドラクエが好きだからです(w
ちょっとこんな脇役欲しいな、けどオリジナルで出してもな、
という時はなるべくドラクエから出しています。
そのほうがキャラを1から作るより楽ですから。
ちなみにトルネコさんは該出のミネアとマーニャ他と共にとある大手柄を立てて
貴族に叙任されてるという設定です。
新スレとドラえもんの人の投稿に乙!
ドラえもんは大変な道具を残していきましたwwwww
もう少しマシな道具置いていけww
まぁ確かにエルフもどうにかなりそうだが。
「地球はかいばくだん」
ガンダとしてサイト(サイト以外でもいいが)なら使用できるんだろうなあ…
ジョゼフの手に渡らないように願うしか
いぬかみの人乙。
>>73 硫黄とか火薬とかの「化学的」技術の初歩的な使い方とかは知ってるみたいだが、
機械とかの「科学的」な技術についてはほとんど概念すらない。コルベールみたいに着目しても奇人変人のような扱いされるのがオチでは。
錬金で剣も作れるみたいだし、工業レベルも発達しにくい。せいぜい火縄銃みたいなのを作れる程度。
小ネタのくりまんじゅうのジョゼフを思い出すなぁ…
と思ったらオチがそれかよw
俺の涙返せww
地球はかいばくだん、地球じゃないかぎりきっと効果がないのさw
>>93 科学を「体系化された知識や経験」って定義付けるなら、系統魔法も科学の一種だと言えるんじゃないか?
逆に虚無は非科学的な魔法ってことになるか
まあ、「地球で研究されてる科学」って意味ならそれでいいんだけどw
>>95 実際他の惑星とかで使ったらどうなるだろうなw
まあハルケギニアが惑星なのかどうかも分からないんだけど
>>73 コッパゲのびっくりドッキリメカに対する反応見る限り
「そんなの魔法で良いじゃん」って感じなんじゃないか
ゲルマニアはもうちっと進んでそうだけど
>>93 火縄銃っつかフリントロックじゃないかな
>>93 なるほどねぇ
機械を使ったやつ書いて、一話投稿したまま詰まっちゃったから
ためになったありがとう
ドラえもん終わってしまったか
ではまたか・・・・
ではまた!?
でも懐中時計とかオルゴールはあるだろ?
だから地球で言う18世紀の欧州位の科学技術はありそうだけど。
でも「地球はかいばくだん」って確か「核爆弾」の事だったはず。
って話が進んでたw
俺の中で科学って言ったらどうしても
物理学から発展したテクノロジーってイメージがあるんだけど
高度に発展した科学は魔法と見分けがつかないって言うよね
核爆弾にクレームついたから
単行本で地球破壊爆弾に変更されたんだっけか
…・・・もっとひどいやん
意表をついて某長瀬ちゃんのスーパー毒電波かもしれんが
どの道トンデモだな
>>100 コークスは19世紀の発明。
印刷された本の普及(メイドが買える程度)も19世紀くらい。
制服も産業革命で布地が安く大量に作られるようになり、
それに伴って既製服が大量に作られるようになった後に普及した。
女性がメイドなどとして社会進出してきたのも産業革命後だったかと。
ようするにメイドの制服って時点で19世紀。
ハルケギニアはファンタジー世紀さ
ハルケギニアで使っても地球が破壊されるに違いない!
ああ、納得。
…おい。
そういやハイパー熱核ミサイルも劇場版ではハイパー放射ミサイルに変わってたな。
核がからむといろいろうるさいな、反応弾って書けばいいのか?
マッチがないのもファンタジーだからさ!?
>>105 でも軍事に関してははパイク兵が現役だったりマスケットがようやく登場した頃だったりで精々17世紀前半くらいだと思う。
ハルケギニアの発明品って、メイジの優位性を損なわない分野で細々と発達してきた、って解釈できるのかな?
日用品はあるけど、武器の分野は発達が遅れてるみたいですし。
>>110 じゃあ銀狼怪奇ファイルから召喚しないとな
>>90 乙
なんかめちゃくちゃ久しぶりな気がするな
ルイズが召喚したのは平民の少年だった
そしてその少年はテンプレ通り、ギーシュと決闘することになった
倒れても倒れても立ち上がる自分の使い魔に思わず声援を送るルイズ
「きんたま けるな!きんたま けるな!きんたま けるな!」
青猫の人乙です。
一言だけ言わせてくれ。ドラえも〜ん!!
貴方の勝ちですww
てゆーかなんという基地外に刃物wwwww
次回にwktk
>>111 >>マスケットがようやく登場した頃だったりで精々17世紀前半くらいだと思う
現実世界でマスケットが実戦投入されたのは十五世紀前半だが。
>>118 ああ、ピーシャラチのことだな。
某FateSSで見た覚えが。
>>116 負けが多かったり、マスカット切ったり、回ったりするのかww
地球の命運はルイズの手に握られたわけか
彼女がどんな試練を前にしても踏みとどまってくれることを祈るのみw
123 :
代理の人:2008/11/03(月) 00:40:05 ID:XM7MoLLg
254 名前:ほしをみるひと[sage] 投稿日:2008/11/03(月) 00:35:15 ID:ur.CegcQ
何かセキュリティソフトの関係か、本スレに書き込めないので、代理投下お願いします。
おのれ2009……
とのことですので、予約が無ければ45分から投下開始します。
「結婚するのよ、わたくし。ゲルマニアの皇帝に嫁ぐことになるでしょうね」
「ゲルマニア! あんな野蛮な成り上がりどもの国に!」
「ええ、そう。けれど仕方が無いの。
トリステインとゲルマニアが同盟を結び、叛徒との戦争の備えねばならないのですから」
「そんな……ああ、アンリエッタ様……」
「いいえ、いいのよルイズ。物心ついた時から覚悟はしていました。
私は王女。好きな殿方と結ばれるなど、夢物語にすぎぬのだと」
(……まるで歴史の教科書だな)
なにやら芝居がかったやりとりを続けるルイズとアンリエッタとは対照的に、
一方のクロードは意外なほど冷静に二人の話を聞いていた。
二人の話から推測するに、トリステインとゲルマニアによる政略結婚によって軍事同盟が結ばれ、
それにアルビオンでは反体制を旗印に反乱が起こっているらしい。
下手をすれば、ここからハルケギニア全土に変革の嵐が吹き荒れるかもしれない。
まさかこんなところで歴史の節目に、それも当事者として関わることになるなんて。
「……ん?」
いつの間にか、シエスタに服の裾を掴まれていた。
「あっ……す、すいません!」
クロードの視線に気付いたのか、ビクリとして手を引っ込める。
まあ、いきなりこんな話を聞かされれば心細くなるのも無理はない。
ましてや、彼女は世情や国家などとは縁の無い庶民なのだから。
「それで、わたくしが今日ここに来たのは───」
はてさて、ようやく話が本題に入ったことで改めて一行が表情を引き締める。
「アルビオン王家のウェールズ皇太子から、手紙を受け取ってきて欲しいのです。
もしもその存在が公になれば、この縁談は破談となってしまうでしょう」
「……手紙、ですか? それもアルビオンに?」
首を傾げ、眉を寄せるクロード。
「いくらなんでも、危険すぎませんか?
それに、向こうで処分してもらうわけにはいかないんですか?」
「ええっと、それは、その……」
口篭るアンリエッタに対し、クロードの視線に避難がましいものが混じる。
それを察したルイズがすかさずクロードに肘鉄を入れる。
「この馬鹿、空気読みなさいよ!」
「……うぐっ。でもさ、ルイズ。冷静に考えてくれ。
紛争真っ只中の国に、特別な訓練を受けたわけでもない学生を向かわせるなんて……
死んで来いって言ってるようなものじゃないか。こんなの、正気の沙汰じゃない」
「何よ、別に命なんて惜しくないわ!
アンリエッタ様の期待に背けって言うの!?」
「犬死にに名誉も何もあったもんじゃないだろ。もう少し冷静に考えてくれよ」
「ああもう、うっさいわね! 使い魔は使い魔らしく、主人の言うことを聞いてればいいのよ!」
「その主人の身を心配してるから、こうして話してるんじゃないか!」
いつもは割とすんなりと折れるクロードにしては珍しく、今回はなかなか引き下がらない。
アンリエッタも口を挟めずにおろおろしている。
「あのう、ルイズ様、クロードさん……そ、そんなに興奮なさらずに……」
「悪いな、お嬢ちゃん。今回ばっかりはお前さんの出る幕じゃねえよ」
仲裁に入ろうとしたシエスタに、デルフが冷たく言い放つ。
思わぬところから入った横槍に、ルイズとクロードも口を挟めない。
デルフの言葉は続く。淡々と。
代理乙
しえーん
ほしをみるひとしえん
ゼルダの伝説よりゴシップストーン召喚
契約したあと何故か飛んで行き
ハルゲに点在するようになる
「…こっそり聞いた話だが…ギーシュはケティという一年生と付き合っているらしい…」
で決闘突入
「王女さんに娘っ子。悪いが、俺は全面的に相棒に同意させてもらうぜ。
勇気と無謀は別モンだ。こいつぁ荷が重いとか軽いとかってレベルじゃねえ。
せっかく出会えた相棒を、むざむざ野垂れ死にさせるような真似は御免蒙る」
一息(?)にそこまで言い終え、デルフは言葉を切った。
クロードもそれ以上何も言おうとしない。つまりは、そういうことなのだろう。
ルイズは唇を噛む。デルフの言葉は正論以外の何物でもない。
そして、間違っていないからこそ、気に食わない。
「……あぁそう、良いわよ! あんたなんかに頼まないから!」
「だから、人の話を聞けよ! 危険だって言ってるのが分からないのか!?」
「うっさい腰抜け! 死ぬのが怖いなら、ここで引き篭もってればいいのよ!」
「行けば死ぬと分かってる場所に、行かせられる訳が無いだろ!」
お互いに苛立ってきたのか、しだいに声のトーンが大きくなる。
ああ言えばこう言い、こう切り込めばそう切り返す。
既に話し合いと言うより口論、或いはただの痴話喧嘩だ。
すでに泥仕合の様相を呈し、蚊帳から放り出された二人は途方にくれるばかり。
と、そこでバン!と扉を開けて部屋に飛び込む人影が一つ。
「話は聞かせてもらったよ! ここは僕に任せて───」
「「お前は引っ込んでろッ!!」」
相変わらず空気の読めぬ男、ギーシュであった。
(……ダブル説教中につき、しばらくお待ちください……)
(……ダブル説教中につき、しばらくお待ちください……)
(……ダブル説教中につき、しばらくお待ちください……)
「ええっと……実は、この件については私の発案ではないのです。
一度、とある信用の置ける方に依頼したのですけれど、
その方から是非ルイズに助力を願いたい、との申し出があったのですよ」
何はともあれ、空気が変わったことを流石のアンリエッタも感じ取り、
そう言ったところでにっこりと笑う。
「私が……私の力が必要……?」
そう言って頬を赤くするルイズ。
自分のことを見てくれている人がいた。自分の力を認めてくれる人がいた。
それだけでぐっと胸が熱くなる。何だってやれそうな気がしてくる。
そんな主の様子を見て、クロードも諦めたように一つ息をつく。
ちなみに、ギーシュはその横で心底羨ましそうに唇を尖らせている。正座したまま。
「……わかった。そういう事だったら、僕からこれ以上とやかく言ってもしょうがないな」
「ふん、解ればいいの。ちゃんと付いて来なさいよ」
どうだ、と言わんばかりに胸を張るルイズ。
ナチュラルにクロードを頭数として入れている辺り、彼女らしいと言うか何と言うか。
デルフもこれ以上の説得は無駄だと考えているのか、何も言う気配が無い。
失礼、支援
もっとも、それを自然に受け入れている自分も、人のことは言えないのだろう。
これもコントラクト・サーヴァントの効果なのか、それとも自分自身の意思なのか。
アルビオン行きを止めようとしていたことにしても、
あくまで彼女の身を案じていたからであって、自分の都合は二の次だったような気がする。
どちらにしても、今のクロードにこの状況を覆すだけの力は無い。
何はともあれ、これは自分にとってもルイズにとっても一つの大きな経験になるはずだ。
今はそう思っておくことにしよう。生きて返って来られたなら、という条件付きだが。
とりあえずそこで一度考えを切って、半ば拗ねているギーシュに向き直る。
「それからギーシュ、君にも一緒に来て欲しい」
「なっ……!?」
「本当かい、クロード!?」
思わぬ申し出にルイズが絶句し、ギーシュが立ち上がってクロードの手を取る。
(ちょっと、どういうつもりなのよ!)
(だって、学校で変に口を滑らせても困るじゃないか)
興奮して両手を握り締めるギーシュの横で、こっそりとルイズに説明するルイズ。
それを聞いて、ルイズも納得したようにポンと手を打つ。
こういう任務にはルイズよりもギーシュの方が向いていると考えていたのは内緒だ。
もっとも、他にもっと頼りになりそうな人物が両手に余るほど挙げられそうな気がしないでもないが。
「ありがとう、ありがとうクロード! 心の友よ!!」
そんなやりとりを知る由も無く、クロードの手を握り締めてブンブンと上下に振り回すギーシュ。
「あだ、痛たたたた! お、落ち着けよギーシュ!」
「姫殿下の御前よ。自重しなさい」
「あ、ああ。すまない、ルイズ、クロード。僕としたことが……」
そう言ってギーシュは大仰に咳払いをし、改めてアンリエッタの眼前に跪く。
「アンリエッタ王女殿下、どうぞこの私、ギーシュ・ド・グラモンに、
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールと共にアルビオンへ赴く任を仰せつけなさいませ。
未だ未熟な身ではございますが、この魔法が姫殿下のお役に立てるようであれば、これは望外の名誉にございます」
「グラモン? まさか、グラモン元帥の?」
「はい、息子でございます!」
元帥の息子。
その言葉にクロードの表情が微かに歪んだが、気付いた者はいなかった。
「それにしても、このような格好で申しわけありません。
幼友達の前ならばともかく、元帥の子息の前でこのような服で……」
「何を仰せになります! 麗しき姫殿下のお召しになるものならば、例えいかな襤褸でも輝く錦となりましょう!
それにそのメイド服も真にけしから……ゲフンゲフンッ! いえいえ、可憐であらせられます!
慎ましやかな黒のロングスカートと純白のエプロンのコントラスト。
其に身を包むはトリステインの秘宝、ハルケギニアに咲く一輪の花!
そう! こんな素晴らしいものを目の前にしては、例え始祖ブリミルと言えども辛抱たまりませんともッ!!」
「……その辺にしとけ、ギーシュ。それ以上は色々とマズい気がする」
鼻息も荒く、嫌な方向にトリップしかけたギーシュの肩を掴み、そそくさと横に退けるクロード。
もっとも、アンリエッタはよく分かっていない様子でニコニコと笑っていたが。
支援
「では、姫殿下。手紙をアルビオンのウェールズ皇太子殿下より受け取って来ればよいのですね?」
改めて一歩前に出るルイズ。
「ええ、それから───」
そう前置きをして、アンリエッタは一通の手紙をしたためる。
始祖ブリミルよ、お許しを。そう呟いて封をしてルイズに手渡した。
意を得た、とルイズも無言で一つ礼をし、懐へと忍ばせる。
そして右手の薬指に填められた指輪をそっと抜き取り、ルイズの左手へと差し出す。
「母上から賜った『水のルビー』。これがきっと貴方たちを守ってくれるでしょう」
「姫殿下……!」
感極まってルイズの瞳に涙が浮かぶ。
後ろに立つギーシュも、表情をこれ以上ないほどに引き締めている。
「……正直どうよ、相棒?」
「……どうなんだろうな」
感激に身を振るわせる貴族二人を尻目に、ぼやくデルフとそれに他人事のように答えるクロード。
不安が無いといえば嘘になるが、あれこれ考えるには今晩は色々なことがありすぎた。
あとはルイズを推薦したという人物の器量と、せいぜい始祖ブリミルの加護にでも期待しておこう。
窓の外の空には、寄り添うように浮かぶ二つの月。
月の光は人を狂わせる魔力があるのだという。
ならば、この様に二つ月が並ぶ場合はどうなるのだろうか。
狂気が更なる狂気を呼ぶのか、はたまた狂気が裏返って正気に返るのか。
(……どう転んでもマトモじゃない、か)
そんな予感をひしひしと感じるクロードだった。
259 名前:ほしをみるひと[sage] 投稿日:2008/11/03(月) 00:45:25 ID:ur.CegcQ
本文は以上です。
どうか、よろしくお願いします……
・おまけ 描写の関係でボツにした部分
シエスタ「ちょ、姫殿下っ……ひゃぁっ! そ、そんなところを……ひんっ! や、やめっ」
アンリエッタ「あら? おかしいわね。この辺りに入れておいたと思ったのだけれど」
ギーシュ「……けしからんな」
クロード「……ああ、けしからんな」
ルイズ「……けしからんわね」
以上、代理でしたー。
ではではー。
代理乙でしたー
>>135 Wikipediaの内容見る限りだと、実戦投入は15世紀だそうな。
とりあえずこれ以降は避難所でやるべきかと。
フリントロックとマスケットがごっちゃになってるな、多分。
待ってたよ
投下乙です
物語的にしかたないんだけどこのシーンのルイズにはどうも腹が立つw
どらえもんの人いぬかみの人SOの人の代理の人乙
待ってるシリーズがいっぺんに投下されるのはうれしい限り。
カノントータスとかいるからなぁ
砲術士が前面に出てきたのは19世紀じゃなかったか?
細かいことは原作者(ノボル)はあまり考えていない、
と言うかあえて無視しているとか言っていたような。
この手の話は散々ループしているネタなんで
徹底的にやりたいのなら軍事板のゼロ魔スレか
避難所の考察スレで頼む。
>>116 エロゲ声優の金田まひるを召喚するんですね
>>142 広場まひるたん召喚と申したか。
金田まひるじゃないけど。
誰もいない、今のうちにこっそりひっそりと・・・
5分後にはれぶた行きます
このネタで一番やりたかったアンリエッタ話です
あとはラストのプロットまで一直線です
ていうか他所のスレに誤爆しちゃったよ恥ずかしー!
第2話 寝不足アンリエッタがアンアンアン
私はルイズ・フランソワーズ・ル・ブランド・ラ・ヴァリエール。この前使い魔品評会ではれぶたと一緒に歌ったよ。
私の歌唱力についてはノーコメントだ。もう一度言う。ノーコメントだ。
突然ですが、私の魔法の属性は虚無っぽいそうです。
最近プラカードのデルやんがよくブルってるので訳を聞いたら「あの相棒のルーンルーンが」とぶるぶるるーんるーん呟いてたのよ。
使い魔とは言うまでもなく我がスーパーベイビースーパースター・はれぶたの事である。
はれぶたのズルパゥワーで実質的に魔法通り越して何でもありの私だが、社会的にはないも同然でそれでは困る。
という事で、学院一光る男・コルベールせんせぇに訊いてみる事にした。冠詞に他意は本当はめちゃくちゃあるけど一応ないぞ。
ともかく、はれぶたのルーンやら動向を観察していたのだから色々掴んでいるだろうという事で、
悪友のキュルケ・性欲と頭髪にゃ因果関係ないと思うぞ・ツェルプストーと実は需要の高いボディ・タバサとそして当事者のはれぶたと
共に、コルベール先生のあばら家、もとい研究室に怒鳴り込んでみた。
当初はのらりくらりと追及をかわした先生だった。だが私の、いっそ髪の毛「錬金」して差し上げますわよとの脅しもとい提案に、
この世の終末でも迫るかのような悲鳴を上げまくり、側頭部を庇いながらようやく語ってくれた。
で、ぶっちゃけた話、はれぶたの胸にあるルーンは始祖ブリミルが従えた第四の使い魔のそれっぽいという事らしい。
「じゃルイズは始祖ブリミルみたいに虚無の属性かもしれないんじゃない?」とはキュルケの弁。
「その可能性は考えました。しかし如何せん虚無が何かすらさっぱり資料が残っていないのです。確信が持てるまでは生徒にぬか喜び
させる訳にはいきません」
調査は続けています、申し訳ないと頭を下げるコルベール先生であった。教職って大変なのねぇ。いや、他人事じゃない。
よし、この件は保留だ。
と言いたかったところだが、この件を、通りがかりで秘書のミス・ロングビルというかマチルダさんについ愚痴ってみたところ、
意外な返事が返ってきた。
「あぁ、虚無ですね。そういえばうちのテファが虚無っぽいんですよ」
「にゃんですとー!!」
妹分のテファは四系統のどれにも属さない魔法を使いこなすのだそうな。以前は私と同じように使えもしなかったという。
どういうからくりで魔法が使えるようになったかは謎だが、つまりはテファさんとやらが私と同じ体質の可能性がある訳だ。
魔法だけでなく特に胸。あの爆乳になれる可能性があるって事じゃないですか?そうだよねそうですよね!?
「何だか人生に希望が持ててきました」
ミス・ロングビルが何か言いたそうだったが、まぁいいか。
よってこの件は前向きに保留だ!
さて、先程から述べているように、キュルケとはキュルケルイズで呼び合う間柄になった。悪友というか、タバサも入れて
悪事を共有する仲だ。人それを悪友と言う。まんまやん。
例えば、メイドを妾にする非常識万年発情変態貴族紳士・モット伯がシエスタちんを持ち帰りやがったので、皆してモット伯邸に急襲し、
あのオヤジを私の妄想力&はれぶたの能力で必殺・デブショタ・サルガッソーに沈めてシエスタちんを救い上げたり。
ビジュアル的にあまりにおぞましいので詳細は秘すが、敢えて語るなら性癖転換を促す技とだけ述べておこう。少なくとももはやモット伯が
『メイドに』欲情しなくなったのは確実だ。あとマリコルヌという存在が至高らしいと吹き込んでおいた。
はれぶたシエン!
ときに、レアというかアレな使い魔ははれぶただけではないと判明した。具体的にはタバサのとこのシルフィードとか。風竜かと
思ったら実は韻竜だった。早い話が人語を喋る竜だ。
何で判ったかって?そりゃ使い魔が自分で喋ったからよ。というか歌ってた。こんな風に。
「きゅっきゅっきゅ〜 きの〜にーちゃんと寝たときに〜 へーんなところにイもはぶごっ!」
どこからともなくエア・ハンマーがぶち当てられてひっくり返ったけどね。変なところに何だ?変なところに何なんだ!?
ちなみにはれぶたは隣で振り付けを編み出していた。律儀なぶただ。
そんな緊張感あるのかないのかよく判らない学園生活に、いきなり緊張感がやってきた。アンリエッタ姫殿下がこの魔法学園に
行幸なさるという。学院は上へ下へ右へ左へと大騒ぎになった。しかも通達は当日ときた。酷い話だ。VIPの急な訪問は大変なんだよ。
特に事務関係が。物事は段取りとか準備とかそうポンポン決まるもんじゃないんだよ。どんなに遅くとも1週間前には通達が欲しい。
誰の代弁してんだ私は。
しかして姫殿下はやって来る。我ら一同、正門で整列してお出迎えをせねばなるまい。姫殿下とは幼馴染なんだけど、それはそれ、
これはこれ。
「アンリエッタ姫殿下の、おな〜りーぃ!」
衛兵の号令と共に私らは杖を掲げる。視界の奥に我関せずと本を読んでるガリアっ子を認めた気がするが見なかった事にしよう。
魔法衛士隊が操るグリフォンに守られて、白くて前後に超長い馬車「ハマー」が進入してきた。誰だこんな威圧感バキバキのゴツイ馬車
考えたの。
先導するグリフォン隊隊長はよく見ると何とワルド様だった。自慢じゃないが実家同士が決めた私のイケメン婚約者である。
今の今まですっぱりこっきり忘れていたけどね。
昔知り合った頃のワルド様は魔法の使えない私を馬鹿にしなかった。それどころか励ましてくれた。イケメンの鑑のような人物であった。
あとは性的に特殊な趣味の持ち主なら完璧だ。仮になくてもいっそ変えてしまえばいいさ。
つまり何だ、私は既に勝ち組だったんだ。アルビオンの方言で言うとビクトリーだ。光の翼を広げた青白のゴーレムが親指を立てて
応援する幻想を大空に見た気がした。ありがとう何だか知らないけど四本角ゴーレムのヴィクトリー2何とかさん。
突如、轟音というか破壊音が響いた。馬車の扉が吹っ飛んできたのだ。やたら頑丈だった筈の扉は生徒の間に飛び込んで、
マリコルヌに直撃した。幸い犠牲者はいなかったようだ。
私ら生徒教師一同は杖を掲げたまま、あぅ?と一斉に体を傾げてしまう。今私達の心は一つになった。ちなみにデルやんを掲げていた
はれぶたは、デルやんを落としてしまった。隣に転がっていた扉がデルやんにぶつかって真っ二つになる。
扉のなくなった馬車からは脚が突き出ていた。ハイヒールを履いた見事な脚線だ。蹴破ったのは女性という事になる。いや該当者は
1名しかいないけど。
一歩一歩踏み締めて降り立った女性の雰囲気を喩えるなら、ド迫力の作風で定評のある人気挿絵作家サルバドーレ・ハラテツオの描く、
怒れるバイヲレンスなお兄さんといったところだ。
今にもサイバービーイングとか言いそうな形相でアンリエッタ姫殿下は学院に降臨した。左手には何とマザリーニ枢機卿を
鷲掴みにして引き摺っている。枢機卿ぐったりしているけど生きてるよね?生きてるよね?
「わ〜た〜し〜寝てないのよー!もう3日〜!!」
宮廷随一のヒマ人とも称される姫様が寝られないとは、余程の事態のようだ。
「あんたのせいよマザリーニ!ゲルマニア皇帝に嫁げなんて、あなた何考えてるのよ正気正気正気ィ!?」
まずあなたが正気に戻ってくださいと突っ込みたかったが、寝不足でハイになりまくった人間の判断力に常識的なものを果たして期待
出来るのだろうか?この時点ではそう考えておりました。
姫様は枢機卿の両肩をがっしり掴んで揺すぶりまくって喚きまくっている。枢機卿の首が物凄い勢いで回転していた。姫様、国の屋台骨を
殺す気ですか!?
「おぉ姫殿下、しばし落ち着きなさいませ」
皆が唖然としている中で止めに入ったオールド・オスマンはさすが年長者といったところだ。
が、
「邪魔よ!」
速攻で振り返った姫様がオールド・オスマンの頭と髭を掴むと、
「むふん!」
「おごわ!?」
オールド・オスマンの首を真横に捻じ曲げた。ご老体は一発で崩れた。生きてるよね?生きてるよね?
また振り返り、馬車を牽いていたユニコーンの頭を勢い良く挟むと、眼を三角にして睨みつけながら姫様は延々繰言を述べていた。
ユニコーンが脂汗を流す場面を初めて見た。あれだけビビればそのうち一本角が割れて人の顔が現れそうだ。
実は姫様と幼馴染の私としては、姫様は昔からアレだな〜と思える節は色々あり過ぎていたが、成長した今となってもやっぱアレだな〜
…と思わざるを得ない。
しかも相手はザ・国家権力だから迂闊に諌める訳にもいかない。
諌める立場にないのは衛士隊長のワルド様も同じだった。替わりに、風の魔法で遍在、要は分身を生み出し計5人のワルド様が
姫様の周囲に陣取った。そして外側でどっ引いてる教師生徒一同に向かってキツツキのように頭を下げまくっていた。
これ以上ないくらい憐憫を誘う遍在の使い方だった。管理職がいかに大変か思い知らされたよ。後でワルド様には胃に効く薬を
プレゼントするとしよう。
引きつった表情でキュルケが私に話しかけてきた。
「何か…トリステインのお姫様って凄い方なのねルイズ」
「あー…ははは…」
乾いた笑いしか出てきません。
「ル、イ、ズ…!?」
地獄の底から響いてくるようなボイスが聞こえてきた。目の前の国家権力から。
姫様はこちらに振り返った。目が光ってる気がした。そうか人間って頭以外にも光るところあるんだ。
姫様はこちらに向かってくる。きっちり発見されていた。アレですか、サーチアンドデストロイとかそんな物騒な表現ですか。
当然ながら止められる者はいない。何の障害もなく姫様は私の前に立った。私達から同心円状に一斉に人が引いていた。たった今まで
私の傍にいたキュルケも含めて。そりゃ関わりたくないだろう。私もその輪の中に逃げたい。
「そうだわ、私にはルイズがいましたわ。あぁルイズ、私のお友達」
こっち向きながらあっちの世界に向けて語る姫様にまともな会話を期待するのは無理な相談でしょうか始祖ブリミルよ。
「ひ、姫様、お久しぶりです」
「イヤイヤイヤ姫様なんて他人行儀な呼び方!」
立場と状況を考えて叫んで下さい。いやマジで。
「昔のようにアンとかエッタとか!いっそアンリとかリエとかリリアン・ギッシュとかクワシマホーコとかアンダーテイカーとか
リオンネッターとかCATシャノンでもいいわ!」
女優はともかくレスラーとカニと傭兵の名前をあだ名にどうぞって示されても、非常に困る。いや突っ込むべきはそこじゃない。
病んデターだ。あなたのあだ名は病んデターに決めた。たった今決めた。私の脳内限定で。
「ルイズは小さかったあの頃からお変わりありませんのね。あぁ素敵な事ですわ、私のルイズ」
残念ながら今日から突っ込み体質に変わりました。主に目の前の国家権力のお陰で。
「楽しかったあの頃を思い出しますわ。あなたと一緒に遊んだあの日々…」
「えぇ、パラパラマンガとか」
つい突っ込みを口に出してしまった。
「パラパラマンガ!そうですわ、カックイイ騎士様を描いた私の傑作ね!今でも大事に保管してありますの!」
そりゃ大事に国家レベルで保管されているでしょう。落書きしたのが始祖の祈祷書なんですから。
「あのー、何かおっしゃりたい事があっていらしたのではないですか?」
あっちの世界で大回転しかけるのも結構だが、そろそろ本題に入って欲しい。そしてさっさとお帰りになって欲しい。
「そうでしたわ私のルイズ!実は私、結婚する事になったのです」
「えーと、ゲルマニア皇帝とですね」
「何故お判りになったのです!あぁ何て聡明なルイズ」
「いえ、皆知ってます」
「まぁ!魔法学院の方々は情報に聡い方が揃っておいでですのね!」
あなたさっきからウマ相手に延々そう愚痴ってましたやん。
「結婚といっても実はアルビオン王家を潰しに掛かっている逆賊レコン・キスタを抑える為のものなのです」
つまりは同盟だ。軍事的なものも含んでいるだろう。まぁ政略結婚は王家の義務だから議論の余地はない。こんなのを嫁にする
ゲルマニア皇帝アルブレヒト三世陛下が不憫に思えてきた。
実はさっきからずっと、姫様改め病んデターに抱きつかれたまま会話を続けている。胸に頬擦りまでしてくる始末だ。逃げられません。
「あぁ!駄目ですわ!あなたにこんな事頼めません!でも決めました。やはりあなたにお願いするわ」
出来れば社会的に可能な範囲でお願いしたい。昔やらされた嫌味たらしい女官の部屋を爆破とかそんな方面ではなく。
「実は私、心に決めた人がいるのです」
唐突に何言い出すのかと思ったが、不倫になりかねない話なのでただ事ではない。というか病んデターにロックオンされていた犠牲者が
私以外にもいた事実におでれーた。
「それはアルビオンのウェールズ殿下なのです。あぁウェールズ私のウェールズ」
今戦火的な意味でホットな国の王子様というか病んデターの従兄が犠牲者であったか。
「実はそのウェールズと恋文を交わしていたのです。愛を始祖の名で誓っていますのあぁ私のウェールズ」
つまり結婚宣言をした証拠がバッチリ残ったラブレターと。
「それ、物凄〜くマズいですね?」
「えぇ、物凄〜くマズいのです。手紙がレコン・キスタに渡れば間違いなくバクロされてしまいます。そうなれば結婚はおしまいです。
本当はちょっと嬉しいけど同盟がなかった事になるからやっぱりマズいのです」
始祖ブリミルの名でやっちまっては、それウッソ〜…なんて言えない。超罰当たりですから。いっそシソの葉にでも誓っておけば、
こんなややこし〜ぃ事にはならなかったのに。
「ですから私のルイズ、私のウェールズに会って恋文を取り戻してください!」
あぁ、そう来たか。ずっと落ち着いた状況で言われたなら、たとえ火の中だろうと水の中だろうと男風呂の中だろうと
謹んで行かせて頂きますくらいは言えたかもしれない。だがこれではどうしても引く。
「あの、そういう荒事なら魔法衛士隊とかの役目なんじゃないでしょうか?」
「いえ無理無理無理無理無理なのよ!今宮廷にはレコン・キスタに与する輩で溢れぼっくりなのよ!リッシュモンとワルドが
レコン・キスタの間諜と話してるのも見たわ!」
「ひひ姫様今さらっとやばい具体名出しませんでした!?」
「だーか〜ら!姫様じゃなくて!アンリとかリエとかリリアン・ギッシュとかクワシマホーコとかアンダーテイカーとかリオンネッターとか
キャット・シャノンとかアンドーモモフクとかアビタニレイジとか!」
あだ名の候補に偉人と奇人が加わった。あなた自分を何だと思ってるんですかという突っ込みは置いといて、さらっとやばい具体名の
当事者であるワルド様を見たら、
…青い顔をしてました。図星ですか、図星ですね。
どの道逃げ道はありません。ここはもう腹を括ろう。
「…謹んでお受けいたします」
「ありがとう私のルイズ!あなたは最高のお友達だわ!」
ていうかあなた私以外友達いないやん。
「この書簡をと水の指輪を私のウェールズに渡してください。私のウェールズ様へ向けた証明書です。秘密の任務をお願いします。
あなたは希望なのです。アルビオンの方言で言うとフリーダムなのです私のルイズ」
「希望はアルビオンの方言で言うとホープです」
大空に10枚の羽根を背負った白黒のゴーレムが大股開きで決めていた。すみません今ちょっと引っ込んでてください何だか知らないけど
フリーダム何とかさん。
それはそれとして、公衆の面前でここまでおおっぴらにでかでかと語られる「秘密」の任務もちょっとないだろう。
姫様は指にはめた指輪を抜き、スカートの下から封入りの書簡を抜いて、その2つを私に差し向けた。実に用意がいい。
いやそれよりも、その書簡が妙に生暖かいしで、物理的な意味で扱いに困る。しかも私の頬に押し当てられてる。
しかもかの権力の権化は頬が上気しまくってて息が荒い。
一瞬の隙を狙って拘束から抜け出し、書簡をむしり取ると高速でダッシュ!して距離を取った。今はもうこの場を逃げる事ばかり
考えてしまう。
「あぁ駄目よ私のルイズ。折角だから親交を暖めましょう!」
病んデターの両手の指が恐ろしく艶かしくくねりまくっている。まな板ショーか?まな板ショーやる気か!?
「いかん!早く眠りの鐘を!」
さすがにここに来てようやくワルド様が止めに動いた。たーすーけーてー!
眠りの鐘が発動した。国家権力の頭上に間抜けな金属音が響き渡る。直接落ちてきたのだ。…ていうかそれ金だらい。
アレですか。はれぶた・ザ・ワールドの影響ですね。周りの皆様、眠りの鐘がすり変わった事に気付きもしません。
病んデターはふらつきながら馬車に戻り、水差しを取り出した後、実に優雅に飲み干し、実に実に優雅に倒れた。
かくして病んデターはアンリエッタ姫殿下へと戻られた。
「と、トリステインの姫様って、凄い方なのね。違う意味で」
キュルケの呆れ顔に応えるには勇気がいった。
「いえ、本当は姫殿下は見目麗しい方なのよ。黙っていれば」
すかさず金髪アフロのギーシュが何故かフォローする。
「そうだよ、姫殿下は本当は美しい方なんだ。黙っていれば」
微妙な雰囲気とはこの事でしょうか。
そんなこんなで、あっという間に秘密の任務の実行部隊が編成された。そして学院の正門では実行部隊と見送りの野次馬が集まっている。
「頑〜張〜れよ〜!秘密の任務を成功させるんだぞ〜!」
そんな声援が聞こえてくる。しかも横断幕まで用意する始末だ。どの辺が秘密だ、と突っ込む気ももはや失せた。
「はーい、皆さん整列ー」
「「「はーい」」」
ミス・ロングビルが手を叩きながら実行部隊を統括してくれる。一度「はーい」で皆の注意を惹いてから本題を切り出す手腕はさすがだ。
ここでメンバーを整理しよう。まず、直接依頼を受けた私、ルイズ。当然はれぶたも一緒だ。アルビオンに詳しくてというか出身の引率者
ミス・ロングビル。超速い使い魔を擁するタバサ。運転手は君だ。腕っ節の強い火の属性のキュルケ。本当は「面白そうだから」だとさ。
そして何でお前がいるアフロのギーシュ。見目麗しい姫様の云々言ってたがよく判らん。ただ軍人の息子という肩書きと本人の実力は
関係ないぞ。
支援ッたら支援!
そのアフロ野郎はモンモランシーと別れの挨拶を交わしていた。いちゃいちゃしやがってこの野郎ども。
「無事に帰ってきてねギーシュ。私たちの子供のためにも」
今凄く聞き捨てならない事を聞いた気がするが、全力で無視する。
「せんせー、全員揃いましたー」
キュルケが報告する。ミス・ロングビルは秘書であって教師じゃないんだけど、何故かついそう呼んでしまう。能力的に
いっそ教職に転職してもいいんじゃないか?寧ろ美味しくないか?とは学園中の生徒が概ね一致する見解だったりする。
そういやテファさんのいる隠れ里では孤児をわんさか集めて養っていたのよね。子供の扱いはお手の物という訳か。
「そういえば…魔法衛士隊の隊長さん、捕まったそうね?」
「まぁ、そうでしょーね…」
キュルケの世間話に、苦笑いで返すしかない。
そうなのだ。ワルド様はあの後逮捕されてしまったのだ。言うまでもなく国家反逆罪だ。しかもあの眠りの鐘というか金だらいを
姫様に直撃させた事が、姫様へのテロと受け取られたらしい。酷いものだ。あの場面に限って言えば、衛士隊としての職務を果たしたに
過ぎないというのに。
疑わしいからそれっぽい容疑も付けちゃおうっていう事なのだろう。レコン・キスタに与する連中がスケープゴウトにしたとも
囁かれている。逆説的だが、そりゃこんな国に仕えてられるかー、てなるよなぁ。
さようならワルド様、マイイケメン婚約者。今頃杖もベルトも取り上げられて、牢屋で臭い飯を食ってる事だろうなぁ。
ついでに婚約者の件を周りに語りそびれたお陰で、「男殺し」のルイズなんてふざけた二つ名に拍車を掛ける事だけはなかった。
「それでは皆さん、シルフィードに乗ってくださーい」
5人&1匹乗れるんか?と疑問も持ったが、人間何とかなるようだ。韻竜だけど。
そして秘密の御一行は魔法学院を飛び立った。きゅいきゅい、もといシルフィードでアルビオンまでひとっ飛びだ。いや、ルートの
途上にあるラ・ロシェール辺りで休憩を兼ねた情報収集をすべきだとはミス・ロングビルの弁。魔法学園ってぶっちゃけ田舎だから
情報に疎いんです。
道中、はれぶたは踊り、シルフィードが歌う。
「きゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅっ、とぉっとこ〜回すよゲンゴロー、滑車を〜回すよゲンゴロー
だ〜い好きなのは〜 オ〜ジサマのタレうごぎゃぼ!」
哀れきゅいきゅいは、タバサに杖のフルスイングでぶん殴られた。渾身の一撃だ。お陰で墜落しかけて、死ぬかと思った。ていうか
ゲンゴローって誰だ?オジサマの何なんだ〜!
次回予告
今そこにいる丸顔
今そこにいる丸顔
----------------------------
投下終了
みんなも聴きたいよね、好みの声優が歌う下ネタソング!
色々な要素をばっさり削って進行した(主にシエスタ)これも、ラストまであと2回の予定です
ルイズがあの人とあの人に会うというか合う下準備はこれで出来ました、主に突っ込み要員として
あと誤爆がむっちゃ恥ずかしい〜!
すみません、、話数は2話でなく3話でした
何て肝心なところを見落としてしまうのか
ようやくモスマンが手に入ったが、これをブックに入れるべきか否か……
入れてしまうと今の無風(+カリブ)侵略ラントラブックが、ただのモスマンブックになるしなぁ
ポールスターとライフジェムがそろえば自爆ブックを迷わず一択するんだけど
はれぶたのひと、GJでした。
いろいろ取り返しのつかないことになってる人々に敬礼。
>157
ごめんなさい、>155誤爆ってました
はれぶたの人乙ですー。
妙に冷静なルイズがどうにも不憫で…慣れたのか諦めたのか染まったのかそれとも全部なのか。
どれであろうと不憫だいろんな意味で。
>>143 カニアーマー召喚と申したか<S=Fメビウス自重しろ
はれぶたの人GJ
なんて不憫なルイズw
次回にwktk。
スタオーの人もはれぶたの人も乙
相変わらずろくなアンリエッタいないな。まともな姫さん出てこーい
>>161 それやると「キャラが壊れてる」とか「人格改変」とか「俺キャラ」とか叩かれるんじゃないか?
アンアン自身が変わらなくてもアンアンが強力な使い魔を得ればいいんだよ
砦蟹とかw
こうなると『アンリエッタ更正計画』を実行できる強力な誰かに召喚されてほしくあるな。
別スレになるけどアバン先生みたいに、ルイズだけでなく姫様にも物を教えられる『家庭教師』をやれる誰かに来てもらうとか。
マスターヨーダにでも来て貰うか?
マスターヨーダがありならダース・シディアス閣下もありだよな。
…いかん、誰に召喚されてもシディアスによるハルケギニア支配になりそうだ…
>>164 ヤン=ウェンリーみたいにアンアンの右腕をぶった切ってくれる人はダメですか?
それでもグリフィスなら…それでもきっとグリフィスならねんごろになった挙句幽閉されてくれる…
>>168 反対する父親が死んでるから大丈夫さ!
母子で取り合いになったりしなければな。
マインドアサシン奥森かずいに精神破壊してもらえば。
ウルトラの人に出てくるアンアンは有能だと思うよ。
しかしこんなに早くワルドが裏切り者だと判明するとは予想外w
姉妹スレの猫草だと速攻で捕縛されても再登場できたが
はれぶただとこのままフェードアウトしそうで不憫すぎるwww
174 :
虚無と金の卵:2008/11/03(月) 12:25:26 ID:2XwlRjly
予約無ければ12:30より虚無と金の卵、1章9回を投下します。
時間は、キュルケ達の出発前に遡る。
ロングビルが準備を整えるまでの間、ルイズ、キュルケ、タバサ、ウフコックの三人と一匹は、オスマンの指示で学院のすぐ外の草原で待機することとなった。
まさに快晴。草原は見渡す限り平和そのもの。だが刻一刻と時間は減り行く。
宝物を手に入れたフーケは逃げる算段など当然打っているだろう――ルイズは苛々とロングビルを待つ。
そんな折、ルイズの肩に乗ったウフコックが口を挟んだ。
「ルイズ……いや、キュルケ、タバサもだ。我々だけで話がある」
「何よウフコック、止める気?」
やれやれ、とウフコックは肩をすくめる。
「止められるのならばな。だが聞き入れてはくれないだろう?」
「わかってるじゃないの」と、ルイズは強気に応じる。
「ま、それは俺もわかっている。だからこそ話がある」
「ヴァリエール、そんな苛ついたって仕方ないじゃない。で、ウフコック、なに?」
キュルケが話を促す。
「フーケについて……と言うより、先ほどの場で、敢えて俺が言わなかったことについて、だ」
「……何ですって?」
「俺は、あの場に途中からやってきた女性、彼女がフーケだろう。昨日のあの場に居た人間と匂いが全く一致する」
「ミス・ロングビルが!?」
ルイズは驚いて声を上げる――すぐさまタバサが口を抑えた。
「もがっ……ご、ごめんなさい。周りに聞こえて……ないわよね?」
「まだ来る様子は無いわね……」
キュルケが周囲を見回す。人の気配が無いのを確認し、ウフコックに疑問をぶつけた。
「でも、なんであの場で問い質さなかったの?」
「言い逃れする算段か、あるいは確実に逃げるための算段が付いたのだと思った。
そうでなければ現場に戻ってくるといったリスクを負う必要は無かろうし、そこには強い自信を感じているようだった」
「でも、それでも敢えて戻ってくる理由がわからないわね」 と、ルイズが疑問を呈す。
「盗みを完遂させたという達成感は、味わっていないようだったな。眠りの鐘が目当てではなかったのかもしれん」
「別の目的ねぇ……そういえば、破壊の杖がどうとか言ってたわね」 キュルケの指摘にウフコックは頷く。
「コルベールがその話を持ち出した瞬間、ロングビルから『怒り』の気配が強く発せられた。
だが、破壊の杖の在り処を口に出した瞬間は、それが強い『喜び』と『何かを実行する決意』に転じていた。
元々はこれが狙いだったのだと思う」
「……ずいぶん詳しくわかるのね?」
興味深げに微笑むキュルケ。心配げにルイズはウフコックを見つめる。
「……そんなに話しちゃって良いの、ウフコック?」
「まあこうなってしまえば、俺達はチームのようなものだ。この能力が役立つならば隠す道理は無い。
もっとも薄々気付いていたとは思うが」
「教えてくれるなら、貴方の口から聞きたいわ」
「俺は、感情を匂いで嗅ぐことができる」
タバサ――ぴくり、とまぶたが揺れる。彼女なりの驚き。
キュルケ――ますます笑みが強くなる。何とはなしの予感が当たった表情。
「『サンク』のときは……その、正直、誤魔化した。まあ、半分は当たっているようなものなんだが。
実際はもっと直接に、人の『怒り』や『喜び』といった感情を嗅ぎ、その上で視線やちょっとした動作などを手がかりに人の思考を読み取る」
「……へえ、やっぱりそういうわけね」
「気付いてたの?」 ルイズが驚いた声で尋ねる。
「妙に匂いを気にするし、ウフコックと話す限り、気持ちとか感情に凄く敏感なのはわかってたから。
気付いてたわけじゃないけど、不思議とも感じないわね」
と、キュルケは自慢げに指を立てて答えた。
「……皆、驚かないものなんだな。
ともあれ俺がロングビルと話すことができれば、彼女の素性を聞き出すなり、盗んだ宝物の隠し場所を引き出すなり、できるだろう」
「ま、貴方に隠し事できる人間なんてそうそういないわ」 と、ルイズのもっともな指摘。
「もっとも、大きな問題が残っている。
ロングビルが実はフーケ、という話はあくまで俺の認識というだけで、人に見せられる何一つ証拠など無い。
髪の毛や指紋などを拾っても、ここで有用な証拠とはなりえないし……」
「指紋?」 タバサが興味深そうに尋ねた。
「人間の指の皺のことだ。
例えばガラスを触ったとき、手の脂のせいでガラスの表面に指の皺が写ることがあるだろう?
あれは、ガラスのみならず、実際は手に触れた様々な箇所に付着する。目には見えないことが多いが。
それを浮き上がらせて、皺の形状、分岐や端などの特徴点を調べることで、かなりの確率で個人を特定できる」
「初めて聞いた。実に興味深い……」
「俺のいたところでは一般的な捜査手法だったんだ。だが、この国で認知されていない方法で証明したところで、何の効力もない。
そして、それは俺の嗅覚も然り。そうだろう?」
「私にはそれで十分だけどね」
ルイズは既にウフコックを信じている。当然じゃないの、と付け足すようにルイズは言い放つ。
キュルケとタバサは、嗅覚云々を抜きにしても、サンクを通してウフコックの慎重さ、善良さを認識していた。
それに結局はのるかそるか一蓮托生であり、ならば二人とも、賭けに出ることが信条であった。
「うん、私も信じるわよ」
「右に同じく」
三人の言葉に、ウフコックは喜びを覚える――だがそれもすぐに隠し、冷静に答える。
「そうか……だがそれでも、赤の他人にとっては根拠の無い戯言に過ぎない。
俺の言葉を信じたところで、フーケが一枚上手だったら君らが貧乏籤を引くだけだ」
「なら結局、やることは一つじゃないの」
「そうよね」
「その通り」
「「「私らがフーケを捕らえて証拠を見つければいい」」」
三人の重なる声――杖を掲げたときほどの緊張は無く、その代わりとても明るく力強い唱和。
「構わないんだな?」
「ウフコックも優柔不断よねー。そんなんじゃ女の子は付いてこないわよ?」
「全くよ。臆病でもエスコートするくらいの勇気がほしいわ」
うら若き乙女の辛口批評/本気で面白がっている。
「勘弁してくれ……。俺はただのネズミであって、いわゆる男性的な観念を期待されても困るんだ」
「もう、そういうところが情けないのよ。
こういうときはバシっと決めなさいよ。私らはもう杖を掲げて、覚悟決めたんだからね」
ルイズの不敵な微笑み。見る者の不安を払拭させる魅力に満ち溢れている。
「ああ、十二分に分かったとも。
盗人と臆病風に吹かれた教師たちに、君達の行動がどれだけ正しく、そして誇り高いか、ご覧じてもらおうじゃないか。
そのために俺も全力を尽くす。誓って、誰にも君達を傷つけさせず、そして君達の名誉を汚させはしない」
「それで良し」
ウフコックの宣誓に、ルイズは満足げに頷いた。
「で、具体的にはどうする? 今からでも『破壊の杖』が取られないように何とかしたいところだけど……。まずはロングビルを先に探しましょうか?
一応は私たちの馬車を用意しておくって話になってるから、もし準備していないようなら良い口実になるわ」
そうキュルケが話を持ち出したとき、タバサが口を挟んだ。
「……あ、来た」
タバサが指を刺す方向に、蒼髪の女性が馬車を曳いているのが遠目に見える。
ミス・ロングビル/フーケであるはずの女性。
「ふむ、こちらにやってくるようだ。ということは、今すぐ破壊の杖を探して盗む気は無いな。
恐らく、フーケは逃げ出してしまった……という既成事実を作る気なのだろう」
「なら、逆に言えば今こそチャンスよ。こちらが先にフーケと、『破壊の杖』を押さえる。
あとは眠りの鐘の所在さえウフコックが聞き出せば何とかなるわ」
と、ルイズが提案する。
「じゃ、私とタバサがミス・ロングビルについていって捕らえるわ。ルイズとウフコック、貴女は『破壊の杖』をお願いね」
「大丈夫か?」
「メイジ相手の喧嘩なら私もタバサも慣れてるし、今この瞬間ならフーケの正体を知ってる私達が有利よ。
ま、上手く騙すわ。できるだけ危険も避ける」
ウフコックの心配を宥めるように、キュルケは答えた。
「でもオールド・オスマンには3人で行くってことで話が決まったから、言い訳なり何なり考えなきゃ」
「そうねぇ……ミス・ロングビルに不自然に見えない理由がほしいところね」
「貴女達は、仲が悪い。良く知らない他人からすれば」
タバサが口を挟む――示唆に飛んだ一言。
「何よ、本当は仲良いみたいな口されても困るわよ! ……で、つまり?」
「喧嘩別れすれば良い」
そうしてルイズは、キュルケ達と喧嘩別れしたかに見せかけ、馬車が走るのを見届けてから学院内に戻っていた。
ウフコックと相談しながら校舎を駆ける。
「全くキュルケのやつ、途中から本気になってたわ。後で言い返してやらないと」
「その……君が言うのか……?」
「何よウフコック、文句あるの?」
「いや、無い。無いとも。それよりも早く行こう」 ウフコックの戦略的撤退。
「そうね、早くオールド・オスマンに話を通さないと……何て伝えようかしら」
「うむ、それもあるが、まずはコルベールに話して、その『破壊の杖』とやらが盗まれないよう対策を取ろう。
それからでも遅くは無い」
「そうね……。じゃあ、コルベール先生の研究室に行きましょう」
ルイズは学院内を駆ける。たまに教師に目撃され驚かれたが、気にも留めずルイズはまっすぐコルベールの研究室へと向かった。
そして遠慮もなく飛び込むように、コルベールの研究室の扉を開く。
「コルベール先生、お話が!」
入室の許可も聞かずにルイズは足を踏み入れた。
そして中に居る人物と目が合う。
「……ミス・ヴァリエール?」
「え、ええっ!」
中に居たのはロングビル=状況的に土くれのフーケ。
明かりもつけず、引出や棚に収められた物を引っ掻き回していたようだ。
乱雑な部屋の中、宝石か何かを手にとって見つめている=どうみても泥棒の所業。
「くっ……!」
ロングビルが杖を振るう=床板を突き破り、ルイズの背丈ほどの“手”が出現。
昨日のゴーレムほどの大きさはないが、相手取るには十分な脅威。明瞭な敵意を持ってルイズに接近する。
「ルイズ、右手で『ぶん殴れ』!」
ウフコックが叫び、ルイズの肩から右手へと器用に移動/黒光りする篭手へとターン。
「な、殴るって言ったって……!」
「俺を信じろ! この右手ならば何の問題も無い、思い切りやるんだ!」
「ええいっ!」
ルイズの細腕から繰り出されるストレート――になっちゃいない、へっぴり腰のパンチ。
だがその衝撃でルイズも“手”も一歩分ほど後ろに下がる。
轟音と共に土くれでできた手の平が陥没している。そこを中心にクラッキングが拡大/威力は絶大。
「……あれ?」
「そういう機能の『篭手』だ! もっとだ、もっと殴れ!」
「わ、わかったわ!」
ルイズの右手の篭手/実際は高性能な超振動型粉砕機。
拳の握り、関節のブレはウフコックが調整/何も気にせずルイズは連打。
土でできた手など何の問題にもせず粉砕/爆砕/木っ端微塵。
「す、凄いわコレ……」
「……う、嘘でしょ? くっ、畜生っ……」 盗人の合理的な判断――逃げるが勝ち。
「逃げる気だ! ルイズ、俺を“構えろ”!」
フーケがルイズの方向に駆けてくる。
錬金で作られた手を破壊されたが故の判断/盗人の嗅覚。だがウフコックの咄嗟の行動が間に合う。
ウフコックは篭手から銀色の杖――スタンロッドへと反転変身。
ルイズの手にぴたりと納まる。ルイズはとにかくウフコックの言葉に倣い杖先を向ける。
その先はウフコックの仕事。杖先/電撃の放出部を伸張。フーケは当然回避――ルイズの素人同然の手捌きなど問題無しのはず。
だがウフコックがそれを許さない。杖自身が長さと方向を調整。相手の避ける方向へ追従、接触。
ざらついた刺激音/スタンロッドからの放電――失神レベルの電圧。
「きゃああああっ!」 フーケは叫び声を上げて倒れる。
「や、やった、の……?」
「失神させただけだ」
ルイズに説明するウフコック。この一瞬の行動に、ルイズはやっと頭が追いついてきた。
状況を整理――引き出しや棚が荒らされたコルベールの研究室。そのコルベールの研究室に居たロングビル。
ロングビルがフーケであり、部屋を荒らして『破壊の杖』を探しに来ていたと述べるに十分な状況証拠。
「しかし、凄いのに変身したわね……。破壊の杖ならぬ、破壊の拳、そして電撃の杖ってところかしら」
ルイズは興味深げに手にした杖を眺める。
トリステインでは滅多にお目にかかれぬほど奇妙な金属。ルイズが片手で簡単に触れるほど軽いのに頑丈で、艶やかな銀色をしている。
「実際は振動型粉砕機とスタンロッドと呼ばれる。それより、ルイズ」
「そ、そうね。まずはミス・ロングビルよね。でもどうして……? キュルケとタバサと一緒に行ったはずなのに……」
「ああ、その通りだ。何らかの手段で帰ってきたのか……?
ともあれ、確かに彼女の匂いと昨日ゴーレムを操っていた人間の匂いは一致する。
……しかし、彼女の匂いが妙に強いな。ずいぶん部屋を探し回ったのだろうか」
ウフコックはスタンロッドの柄の一部を自切し、ネズミの姿に戻る。そして周囲の匂いを嗅ぎ、怪訝な表情を浮かべた。
「また起き上がるかもしれない。杖は君が持っていてくれ。……くそ、匂いがごたついているな。
火薬や薬品の匂いもきつい。それに、まるでフーケと同じ匂いが二つあるような……ううむ……」
確かに、コルベールの研究室は妙な匂いがした。燃料油の研究をしているという話をルイズは聞いていたが、それは真実だったらしい。
妙に揮発臭が強く、それがウフコックの鼻を混乱させているようだった。
「……ともかく、ミス・ロングビルが破壊の杖を狙っていたことには違いなさそうね。
まずはオールド・オスマンとコルベール先生にこの有様を見せないと」
「それもそうだな……」
「そうは問屋が卸さないよ」
その言葉と共に、研究室の破れた床板から再び土が盛り上がり、先ほどと同じ程度の大きな手を模る。
完全な奇襲。華奢なルイズの体を背後から容易に捕縛――強い力で胴体ごと握り締められ、ルイズはスタンロッドを手放す。
「いやあっ!」「ルイズ!」
ルイズの悲鳴、そしてウフコックの行動を抑えるようにもう一本の手の出現――ルイズを捕らえたものよりは幾分細い腕が現れ、ウフコックを捕らえる。
「……まさかここでネタが割れちまうとはね。驚いたよ」
研究室の奥から、足音も立てずに近づく人影――土くれのフーケ。
興味深そうに、ウフコックの作り出したスタンロッドを拾う。
「さて、ネズミちゃん、貴女の主人が大事なら、下手に動くんじゃないよ。ちょっとでも妙な動きを見せたら握りつぶす」
「な、何で何人もあんたが居るのよ!」
微笑を浮かべ、捕らわれていない方のフーケは杖を振るう。
それに応じるように、捕らえたはずのフーケが煙と消える――残ったのは小さな魔法の人形。
「このガーゴイルさ。スキルニルって言って便利な奴でね」
フーケは人形を拾い、愛しげに撫でる。
「血を与えれば、その血の持ち主そっくりの姿・性格に変身して、それを操る人間の命令を何でも聞くのさ。
私程度のメイジでも2、3体くらいは操りながら魔法も使える。さっきはこのお人形に見せかけて、私が隠れて杖を振るってたわけ。
囮に使って良し、芝居に使って良し。まったく、泥棒稼業にはもってこいの道具だよ」
「……そんなものすらあるのか……! くっ、それも宝物庫から盗んだものだな!」
フーケはまるで出来の良い生徒を褒めるように、ウフコックに優しげな声で答えた。
「勘が良いじゃないか、ネズミちゃん。なかなか賢いし、珍しいマジックアイテムを持ってるようね。
一体どうやって私の行動を知ったんだい?」
「余計なお世話よ! 盗人に褒められたって何よ!」
「口の減らない娘だね。ちょっと黙ってな」
人間の胴ほどもありそうなゴーレムの指先が、ルイズの口を塞いだ。
出てきた超振動雷撃器!<それはシュピーゲルシリーズだ
ともあれ支援
「むがっ…………!」
「ま、なるべく殺しはしないよ。でも骨の一本や二本なら躊躇わないし、私の手先が狂うことだってあるだろう?」
「乱暴はよせ……それだけ口を開くんだ、俺と話す気なのだろう?」
「話のわかるネズミちゃんね」 艶然とフーケは微笑む。
「残念ながら、この状況ならば俺には話をするくらいしかできないからな。要求は何だ?」
「そうね。出来れば私の行動を読んだ手口なんか、ゆっくり茶か酒でも持ち出して話したいところだけど……生憎と多忙な身の上でね。
まず、この杖の使い方を教えてもらおうか」
フーケは、床に落ちたスタンロッドを慎重に拾い上げる――宝物を見つけ出した盗人の喜悦の表情。
「それを?」
「……ええ。まさかこんな一品が手に入るなんてね。無名だとしても十分に盗む価値があるわ。
ああ、何となく使い方はわかるわよ。私のコピーがやられるのは見てたんだからね。
ただ、ちゃんとした使い方を教えておいてほしいのよ」
「……取っ手のスイッチを押せば杖先から電撃が出る。柄の下の目盛りで電撃の強さを調整することが可能だ。
長さは鍔元のネジを緩めればある程度伸び縮みする。
電撃の威力はさほど強くはない。目盛りが最大でも失神させる程度だ」
「なんだ……。ま、あんまり強すぎても取り回しに困るからね、構わないさ。
さっきの篭手もほしいところだけど……。本当に残念さ。変身を許したらこっちが不意打ちを食らいかねないからね」
フーケはウフコックの指示の通り操作し、電撃を放出――素直に驚きを覚えたようだ。
だが、やがて興味をなくしたようにフーケは鞄に仕舞う。それに代わるように、古めかしい小さな鐘を取り出した。
「さて。要求はもう一つ。そう難しいことじゃないよ。……私が逃げ出すまで、気持ち良く眠ってもらおうかしらね」
眠りの鐘――学園の秘宝たるマジックアイテム。
それが今、ウフコックの目の前にあった。
ふと湧き上る額の熱。目の前の道具と何かが通じ合う。
まるで目の前の鐘が、自分の身体の延長のような感覚。
それの構造や使用法が、手に取るように頭へと流れ込む。
(なんだ……これは……? まるで、反転変身を覚えたときのような……)
「この学院の秘宝、『眠りの鐘』さ。流石に使い勝手の良い道具だよ……さあ、お眠り……」
ウフコックの脈動を裏切るように鐘は鳴らされ、眠りへの誘いが襲い掛かる。
魔法の力が込められた音色が、小さく、だが段々と大きく響き渡る。
フーケが鐘の操作に集中していた瞬間――爆音。
「勝手にぃ……話を進めてるんじゃないわよ!」
ウフコックが話している間、体も締め付けられたままルイズはもがき、締め付けられた口を開放させる。
そしてルーンも全く滅茶苦茶に詠唱――当然の失敗魔法/失敗こそが正解。
固定化すら吹き飛ばす爆発がウフコックを掴んでいる手を襲う。
衝撃で土くれの手は半壊し、ウフコックが這い出られる程度には緩んだ。
「今よ! ウフコック!」
ルイズには何も具体的な考えなど無い。
だが自分がどうにかなっても、ウフコックが無事ならば手段はあるはずだった。
ルイズは一縷の希望だけ託し、自分を掴む手を敢えて狙わなかった。
そしてウフコックの手は、手段など幾らでも用意されていた。
「くそっ! ……な、何っ?」
ウフコックの飛びついた先――眠りの鐘。
マジックアイテムはメイジにしか使用できない。それが不文律。
だが、ウフコックが飛びついた瞬間に眠りの鐘が輝く。フーケが手にしたとき以上に力強い光。
小さな鐘の鳴動――先ほどの音色とは異なる響きがフーケを襲う。
「そ、んな……?」
がくり、とフーケは膝を付く/ばたりと倒れ、規則的な寝息を立て始める。
「や、やったの……?」
意識の消えた証拠――ルイズを掴む手が、手としての形を保てずただの土となり、崩れていく。
つっぷしたフーケの上に土が降り注がれる――土くれと呼ばれた盗人の末路。
二人はあたりを確認し、倒れた人間こそ本物のフーケであることを確認した。
184 :
虚無と金の卵:2008/11/03(月) 12:53:25 ID:2XwlRjly
涼月なみにパンチを連打するルイズを妄想しました。でもやはりへっぴり腰。
というわけで投下終了。ありがとうございました。
そしていつも纏めに登録して下さる方に惜しみない感謝を。
さて、第一章は次で終わりです。今週中には投下できるかな、と。
おつじゅしたー。
涼月はアレで意外に面倒見がいいから「気に入らない相手の殴り方その1」くらいならルイズに伝授してくれるかもしれんw
でも一番ルイズと気が合うのは鳳だと思うんだ。…鳳も結構なトリガーハッピーだよなぁ…。
乙であります!
今後も楽しみですね!
乙でしたー。
って『末路』?! おマチさん死亡ですか……いや、例え意識が無くとも、このおマチさんなら何か備えをしてくれているはず……いや、うっかり属性も持っているから……どっちだ?!
>ルイズの右手の篭手/実際は高性能な超振動型粉砕機。
オイレンめ!シュピーゲルめ!黒犬め!大好きだ!
アルビオンってイギリスの古名だったんだな、今日の読売新聞で知った
>>189 元はといえば、ギリシャ神話のポセイドンの子供の名前だな。
巨人で、ヘラクレスに退治されたはずだ。
フォモール族の始祖だという話もある。
ついでに、アルビノの語源だったりする。
>>189 一応知識としては知ってたが、アルビオンの単語で脳裏に浮かぶのは断罪の搭とかの場所なんだ。
ベルセルクゼロでアルビオンが“そういう場所”になってたら笑うけどw
ベルセルクゼロで使徒になりそうなキャラというと誰がいるだろ?
ジョゼフと教皇は贄となりそうな相手を既に殺しちゃってるしな
今読み終わった
乙
>>192 いや、その相手を贄に捧げ済みとかあり得る
>>192 モットとかよくね?
ナメクジ型使途に。そして……。
そんな大量に人殺すようなキャラ出したらゼロ魔とは合わんだろうに・・・
避難所ではたまに見かけるが……。
使い魔の品評会って小説であったっけ?
覚えが無いんだけどどこらへんよ
>>194 それはありそうだが、贄として捧げられた人は使徒に喰われちまうわけだから
設定を若干変える必要があるな
シャルルと教皇の母は突然姿を消した、もしくは大型の獣に喰い散らかされた無残な姿で発見されたとか
>>198 あれはアニメのオリジナルだよ
一期の第五話
ノボルの文体とサイトルイズのバカップルとかで覆われて見えなくなってるだけで
ゼロ魔の世界観は結構暗いよな
俺は逆にアニメしかみてないんだけど
小説だとアンアンが手紙の依頼にくるときの理由ってどんなん?
>>202 ゲルマニア訪問の帰りに寄ってみた。
そこでルイズに手紙の依頼を行うという感じです。
こんにちはー投下構わないでしょうか?
よろしければ50分くらいに。
21.最高の盗賊に栄光あれ
最近、才人は家に帰ると自室の押入を開けその中に入る。
オブリビオンの門がそこに開いているのだ。
正確にはヴァーミルナの領域、クアグマイヤーへの門が。
『おお、ぼーやか。おもしろかったぞこれ』
と、ヴァーミルナはご満悦そうに言った。
ドリルが格好良くて怖かったらしい。たしかにそうだ。
「また怖くできそう?」
『ああ。もっともっと怖くできるだろうなぁ』
にんまり顔の彼女はひどく可愛らしい。
そりゃ、才人が頼んだ姿形に変わってくれるのだから当然だが。
「ところで、ここっテさ」
『なんだ?』
「いや、ヴァーみルナが創った化け物とかは見るケど、
元からいルのっておマえだけダよなって思ってさ」
時間が経って二人の仲は良くなった。ヴァーミルナからしてみたら恐怖の情報源であり、
自身の信奉者なのだから、それなりに礼は尽くそうと思っている。
才人からしてみれば、何というか姿形もそれはそうだが、
どこか儚げな感覚が常に付きまとう彼女に、面と向かって見られると、
顔が赤くなってしまったりもする。
それをネタにからかわれたりもしているが。
『ああ、いらないからな。寂しくなんかないぞ。全くな。全然寂しくなんかないからな』
これ以上ないくらい寂しいから、
構ってくれオーラを出しながら言う彼女を見て、
案外、神様っていウのも人間くサい所があルんダな。
頬を膨らませながらも、何もしないヴァーミルナの頭を撫でながら、
そんな事を才人は考えた。
言うべきかナあ。昨日何かコこで出来ないカなト思ったら、
何デか知らないケど俺にも『創レた』っテ事。
『どうした?ぼーや』
「イや、何デもナいヨ」
そんなこんなで、また二人で悪夢の世界を過ごすのだった。
『Welcome to Quagmire』と書かれた霧の町の中の、
綺麗な湖の畔、二人は佇んでのんびりと過ごす。
何もせずにただ、それだけで何となく二人とも気分が良い。
車が湖に落ちた。だが、それが彼にとっての幸せなのだ。
例えそれが妻の望みでないとしても。
才人の精神は摩耗しているかもしれない。
マーティンのような英雄でもない常人の身で、
人でない存在の領域、オブリビオンに居続けるということはどういう事か。
彼はまだ理解できていないのだ。ヴァーミルナは気付いてすらいない。
あいつは、いなくなった。私よりもどこかに消え去る事を選んだ。
エセリウスにすらいない。どこに行ったか未だ分からない。
けど、こいつは。いや、何を考えているんだ私は。
ヴァーミルナに芽生えたそれは、ずっと昔に忘れた感情の一つであった。
アルビオン王国最後の砦、ニューカッスル城。
『イーグル号』と『マリー・ガラント号』は、
その城の隠された港を通り、ルイズ一行は現在、
ウェールズの居室にいた。
ここが王子の部屋?私の寝室よりひどいぞ。
マーティンはそう思いながら、曇王の神殿を思い出す。
北国故食う物はワイン以外悪く、オブリビオンの門を完全に塞ぐ為に、
デイドラ研究の毎日だった。しかしそれでも寝床は、
ちゃんとした皇帝らしいベッドで眠れた。
皇帝直属の護衛部隊である、ブレイズ側からしてみれば、
これぐらいはしないといけない。と考えていたらしかった。
「これが姫からいただいた手紙だ。このとおり、たしかに返却したぞ」
「ありがとうございます」
ルイズが恭しく手紙を受け取ってから、明日の便でトリステインに帰りなさいと、
ウェールズは言った。
「その、殿下。王軍に勝ち目は無いのですか?」
「ああ。万に一つすらね。今我々に出来ることは、勇敢な死に様を奴らに見せる事だけだ」
言いながら笑うウェールズを見て、マーティンはいたたまれなくなった。
自分も、下手をすればこうなっていたのだ。そう思って。
「殿下…この手紙は――」
それは恋文であり、アンリエッタとは恋仲だった。そうウェールズは言った。
ルイズは彼に亡命を勧めたが、結局彼は折れようとはしなかった。
「君は正直だね、ミス・ヴァリエール。だが、亡国への大使としては適任だろう。
もはや我らに隠す事などない。誇りと名誉だけが我々を支えているのだ」
さぁ、パーティが始まる。最後の客である君たちを是非とももてなしたい。
ウェールズの言葉を聞き、マーティンとルイズは部屋を後にした。
ワルドがウェールズに頼み事をして、ウェールズはそれを引き受けた。
「諸君。忠勇なる臣下の諸君に告げる――」
王の言葉がパーティ会場のホールに響く。
彼はおそらく、本心から皆の事を気遣っての事だったのだろうが、
むしろ、余計に明日の最後の戦いへの士気を上げる事となってしまった。
だが、それで良いのかもしれない。
彼らは、もう助けることが出来ないのだ。
もしトリステインに入れてしまったら何が起こる?
貴族派へトリステインを攻め入る口実を作るだけだ。
それに、ここで助ける事ができても彼らはどう生きていけば良い?
最後の最後まで残った彼らは、決して他の王へなびきはしないだろう。
一人の君主に仕える、彼らの意地と誇りを汚そうとする真似なんて、
マーティンには出来なかった。もしかしたら、デイゴンを倒せなかったら、
自身がこのような事を言っていたかもしれないのだ。
だからこそ、マーティンは彼らの勧める物を一つ残らずいただく事にした。
「おお、良い飲みっぷりですな!それでこそ勧めた甲斐があるという物。ささ、もう一杯!」
彼らは、悲しみだとか恐怖を忘れ、どうやって格好良くあの世へ逝くかを考えているのだろう。
この雰囲気は北の街『ブルーマ』近く、決戦場と今では呼ばれる、あ
のデイゴンの軍隊と戦った時の空気と殆ど同じだった。
勝てるかどうか。そんな事は全くもって分からなかった。
だが、勝たなければ定命の存在全ての命が脅かされてしまう。
勝つ他無かった。あの時も友がいたからこそ何とかなったな――
昔を思う。皆と、かの英雄がいたからこそ上手く行ったのだな、と。
ふと、辺りを見回してみると、ルイズの姿が見あたらない事に気付いた。
おそらく、この空気が嫌になったのだろう。分からないでもない。
だが、ワルド子爵も気付いたらしい。私に礼をすると、
彼女を探しにホールから出て行った。
気が付いたら、隣にウェールズ皇太子がいた。
「人が使い魔というのは珍しいものですね」
「いやはや、トリステインでも珍しいそうですよ」
違いないでしょうね。ウェールズは笑った。心からの笑みだった。
彼も恐怖が無いわけではない。ただ、忘れて進もうとしているだけだ。
だから彼は司祭だという彼に祈って欲しかったのだ。
「貴男の様な若い方に先に逝かれるのは聖職者としてでなくても悲しい事です」
「そうですかな?けれど、おそらく私たちは祖先の下へ行く事が出来るでしょう。祈って下さいますか?明日の為に」
「その、私はこの辺の国の司祭では無いので――」
おお、とウェールズは驚いたらしい。目を見開きしっかりとマーティンの顔を見た。
「いや、失礼。では、あなたの国の神でも構いません。祈ってくださいますか」
「ええ、分かりました。九大神よ、民草を守り導いた戦神タロスよ。どうかこの者達にご加護をお与え下さい…」
マーティンの古い祖先、ティンバー・セプティムが神格化した存在、タロス。
北の竜の異名を持つ彼は死後、神格化して後戦いの神となり、
旧八大神に加わって、今のタムリエル帝国の国教『九大神』に奉られる神の一つとなったのだ。
「ありがとう。始祖と更に異国の神の加護を得られたのだ。
明日の戦は敵に目に物見せることが出来るだろう。感謝するよ。ミスタ・セプティム」
どういたしまして。本来なら負け戦になんてなって欲しくないが、
しかし、もうどうしようもないのだ。ほんの少しの人間で、
どうすれば大勢の敵にかなうと言うのか。
マーティンは、ウェールズが遠のいた後、
自分の寝床はどこかを給仕に尋ねていると、ワルド子爵に肩を叩かれた。
「マーティンさん。すこしお話したいことが」
「ええ。どうかしたのですか?ミスタ・ワルド」
ウェールズ皇太子を仲人に、明日結婚式を挙げるとの事だった。
勇敢な戦士、もしかすれば英雄になりえる者からの祝福は、
とてもありがたい物だ。マーティンはそう思い、
邪魔者にならない様に先に帰るべきか聞いた。
「いえ、問題はありません。グリフォンでも滑空で帰りますから」
それならあまり労力を使わないで帰ることが出来るらしい。
なるほど。そういう事なら出席しよう。マーティンはホールを離れ、
今日の寝床へと、ロウソクの燭台を持ちながら進んだ。
嗚呼、何故己はこうなのであろうか?
ジェームズ王は、ベッドの中一人ため息をついた。
いつも、いつも自分の行いたい事を伝える事が出来ぬ。
思えばモードの時も――
「夜分遅く、申し訳ありません陛下」
何人かの従者が困惑する中、扉から男が現れた。
嗚呼、なるほどな。王はこの男を見たことが無かったが、
おそらく先ほどのパーティで、
本当の所逃げたいと言いたかったのだと思った。
熱狂とは怖い物だ。いつだって正常な思考判断を無くしてしまう。
何故、私はこの様な事ばかり…己が無能だからだな。
コホンと王は咳をして、人払いを命じた。
立ったままの男と、ベッドに入った王が対峙する。
「用件は、先ほどの席の話かね?」
「いえ、プリンス・モードについての事です」
心臓が、凍った。
「な…」
「娘がまだ生きているのです。そして、何故かような事をしたのか、何があっても聞いてきて欲しいと」
ああ、そうだった。何が王に続くが良い、だ。
自身に戦場で散る様な名誉が、
残っているはずなかろうというのに。
「ああ、全て話そう。何があったか。全てをな」
マーティンが廊下を歩いていると、ルイズが廊下の窓を開けて、
月を見ているのを見た。涙を流している。
マーティンは何も言わず、彼女の近くへと行った。
ルイズは彼に気付いて、どうにか泣くのをやめようとしたが、
止めどなく涙があふれ出し、どうにもやめることが出来なかった
「泣きたい時は泣けるだけ泣いた方が良い。後で泣かなかった分後悔するからね」
優しく諭すようにマーティンは言った。
ルイズはマーティンに抱きつき、声を上げて泣き出した。
彼はルイズの頭を優しく撫で続けた。
少し落ち着いたらしい。ルイズが口を開いた。
「いやだわ…あの人たち…どうして、どうして死を選ぶの?
わけわかんない。姫さまが逃げてって言ってるのに、
恋人が逃げてって言ってるのに…」
「逃げたとして、どうするね?」
「トリステインで、匿えばいいじゃない。バレたりしないわ」
「彼らも貴族だよ。誇りや意地を無くす事は出来ない」
それでも、それでも。とルイズはまた泣きそうになって言う。
よしよしとマーティンは頭をなで続けた。
ルイズも理解はしている様だ。ただ、
それを是とは何があろうとしたくないのだろう。
当たり前だ。どうして今日知り合った友人の死を許すことが出来るか。
だが、どうしようもないのだ。本当に、どうしようもないのだ。
「それが、真でございますか」
真実が語られ、沈黙に包まれた寝室の中、見知らぬ者が小さく言った。
「うむ。さぁ、朕を討て。あの娘にはそれをするだけの理由がある」
「何か勘違いしておりますな。陛下」
男はニヤリと笑った。
「何が違うと言うのか。汝は朕の命を狙いにあの娘から頼まれたのであろう?」
「残念ですが、命を盗む事は我らの流儀に反するのです」
「何…盗むだと?」
男は灰色頭巾を被った。途端に王の顔色が変わる。
「き…貴様まさか!!」
「待たせたな!と言うべきだろうかな。テファにあんたと王子を助けろと言われて来たのだ。手ぶらで帰る気は全くないぞ?」
グレイ・フォックス。彼が起こすは不可能な任務の成功劇。
やがて起こる、一連の伝説的な時代の幕開けを飾るとも言えるこの事件は、
後の世では歌劇として親しまれた。灰色狐の伝説が、今また一つ書き記されようとしている。
クエスト『灰色狐の強奪』が更新されました。
投下完了。最後のシーンはMGSのテーマのアレみたいなのが合うと嬉しいです。
16才でも19才でも6000才でも、心が綺麗なら少女だと思うのです。
へ、汚かったら?洗って綺麗にするのが惚れた男の仕事です。
アルビオンは悲しい所です。泣きそうになりながら書きましたよ。
それでは影のご加護があらんことを。さぁさぁワルドだワルドだー
投下乙です
ところで
>『Welcome to Quagmire』と書かれた霧の町の中の、綺麗な湖の畔、
>二人は佇んでのんびりと過ごす。何もせずにただ、それだけで何となく二人とも気分が良い。
>車が湖に落ちた。だが、それが彼にとっての幸せなのだ。例えそれが妻の望みでないとしても。
ここでサイレントヒル2を思い出したのは俺だけ?
>>209 何気にする事は無い、オレもだ!
そして投下乙。
空気王ことウッドロウ・ケルヴィン?
>>209-210 見てくれてありがとうございます。
ヴァーミルナと才人はホラーネタで行こうかと。
彼女悪夢ですから。
>>211 見てくれてありがとう。今ぐぐったけれど、
テイルズはよくしらないんだ。ごめんよ。
すんごいお久しぶりです。毒の爪の使い魔の第15話、とりあえずその前半部分が書けました。
予定その他が無ければ投下したいのですが、宜しいですか?
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では、投下します。
ジャンガとルイズの二人が、他の生徒に混ざり優雅にダンスを楽しんでいる一方…、
そんな周囲の空気とは全く無縁の存在がホールの一角に居た。…タバサである。
普段、キュルケ以外の者とは人付き合いが皆無な彼女は、これまでもこのようなパーティの席では、
只管に料理と格闘して過ごしてきたのだ。
そして、今回もその例に漏れなかった訳であり、明るい緑色のパーティドレスに身を包んだ彼女は、
今も現在進行形で料理を平らげ続けていた。
「貴方、踊らないの?」
魅力的な肢体を豪華なドレスに包み、発せられる魅了のオーラに釣り合う男子生徒を引き連れ、
キュルケがタバサの元へとやって来た。
タバサは料理から視線を逸らさず、こくりと頷く。
「この祝賀際の主役は、フーケを捕まえたあたし達なのよ。今日は少し位、貴方も楽しんだらいいじゃない」
しかし、タバサはキュルケのそんな誘いの言葉にも無関心。ふぅ、とキュルケはため息を吐く。
「まったく…貴方はいつも通りと言うか。あたし達はこの場に居る誰よりも、楽しむ権利があるって言うのに…。
見なさいよ、あのルイズだって踊っているのよ?…相手はあのいけ好かない化け猫だけど」
そう言ってキュルケが指差した先では、ルイズとジャンガが踊っている。
華麗なステップを踏みながらジャンガは優雅に踊り、ルイズはそんな彼を見上げながら頬を微かに染めている。
「ルイズったら、あいつを踊りの相手に選ぶなんて…、酔狂どころの話じゃないわね。
まぁ、あいつがあんなに踊りが上手なのは意外だったけれど」
ジャンガの優雅な踊りにキュルケは少なからず驚いていた。だからといって彼に対する認識が変わるわけではないが…。
キュルケはタバサに向き直ると、目を細めて肩に腕を回す。
「いいこと?これは親友としての命令よ。たまには貴方も料理を食べてばかりでなく、こういう場を楽しみなさい。
今貴方のパートナーを見つけてきてあげるから、待ってなさいな」
そう言ってタバサの頬にキスをすると、キュルケは人込みの中へと消えていった。取り巻きの男子生徒も後を追う。
彼女達を見送った後、再び一人になったタバサは再び料理へと向き直り、サラダの皿へと手を伸ばす。
その時…、祝賀際の喧騒の中、窓から何かが飛び込んできた。
それは踊りや恋の駆け引きで盛り上がる生徒達の真上を飛び、タバサの元へと辿り着くと、その肩へと留まった。
肩に留まった物を見てタバサは顔を僅かに顰める。――それは一匹の幻獣だった。
緑色の丸くずんぐりとした身体に鳥類を思わせる足、付け根がオレンジで先端が緑色ののトゲトゲした羽、
ウサギのような耳を持っており、とても特長的な姿をしている。
その足に括り付けられた書簡を見つけ、タバサの表情は僅かに硬くなった。
幻獣の足から書簡を取り上げ、その内容を確認する。そこには短く、こう書かれていた。
『出頭せよ』
ぼんやりとしていた目に強い光が宿る。肩に留まっていた幻獣が羽ばたき、肩から飛び上がる。
タバサはそのまま幻獣を伴い、人気の無いバルコニーへと向かった。
「ン?」
ジャンガは視界の端に、パーティ会場から離れていく小柄な人影を見つけた。タバサだ。
明るい緑色のパーティドレスに身を包んだその姿は、見ようによってはそれなりの美しさを感じさせる。
だが、ジャンガにはそんな事はどうでも良かった。問題なのは、彼女の隣に並ぶようにして飛んでいる幻獣だ。
――あいつか…。
瞬時にジャンガは自分の長年の付き合いである、相方のピエロを思い浮かべた。
逡巡し、踊りの相手を見下ろす。
「オイ…」
「ん…何?」
唐突に掛けられた言葉に顔を上げるルイズ。
ルイズの目を見つめ、ジャンガはニヤリと笑う。
「悪いな、急用が出来たんでよ…」
ルイズの片手を掴み、高々と上げると、物凄い勢いで回し始めた。
「ちょっ、ちょっ、ちょっとぉぉぉぉーーー!!?」
突然の回転運動にルイズは悲鳴を上げる。物凄い勢いで回る周囲の景色に目が、脳がついていかない。
脳がミキサーに掛けられたようにシェイクされ、目があっと言う間に回っていく。
「後は一人で踊っときな」
十分に勢いがつき、ジャンガはルイズの手を放す。
コマのように回り続けるルイズを尻目に、デルフリンガーを背に挿したジャンガはその場を離れていった。
暫く回転運動を続けていたルイズは、ようやく回転が止まった後も目が回ったままだ。
目を渦巻きのようにし、酔っ払いの千鳥足のようにフラフラとした足取りで覚束ない。
「ま、まひなひゃい〜〜……、ひょの…ばひゃねひょぉぉぉ〜〜……」
呂律の回らない口調でジャンガを罵倒しつつ、ルイズは耐え切れずに床へ仰向けに倒れた。
余談だが…目を回し、あられもない姿で倒れるルイズを見て、彼女に対する評価が一気に落ちたのは言うまでも無い。
「ハァ〜…、何であんな事をしたんだ?」
タバサが消えた方へと向かいながら、ジャンガはため息混じりに呟く。無論、原因は先程の踊りだ。
ジャンガにも何故、ルイズの誘いに付き合ったのか解らなかった。
「左手も痛むし…、ああ〜ったくよ。調子狂うゼ…」
ぶつぶつと文句を言いながらも、ジャンガは頭の中身を切り替え、タバサと幻獣を探した。
人気の無いバルコニーへと近づいた時、口笛がジャンガの耳に聞こえた。
その口笛は前に聞いた事がある物である事に気付き、駆け出すジャンガ。
バルコニーへと出るが、誰の姿もそこには無かった。手すりから乗り出し、辺りを見回す。
すると、夜空の向こうに少女を乗せた竜の後姿が見えた。
「何処かへお出かけか〜?キキキ」
ニヤリと笑い、ジャンガは手すりを乗り越える。地面へと降りたつや、疾風の如く駆け出した。
トリステインの南西に位置するハルケギニア一の大国であるガリア。
その首都リュティスの郊外…、そこに築かれている壮麗なヴェルサルテイル宮殿の一角に、
プチ・トロワと呼ばれる桃色の壁の小奇麗な小宮殿があった。
…その中では今、小宮殿の主である少女が首を長くして訪問者を待ちわびていた。
腰まで伸びた長く青い髪、透き通るような碧眼と一目見た限りではとても美しい少女であった。
ガリア王ジョゼフの娘イザベラである。
イザベラは巨大な赤いクッションに寄り掛りながら大きく欠伸をした。…その仕草には品の欠片も無かった。
「ああ退屈ね……、あの人形娘はまだなの?」
不機嫌なのを隠そうともしない声で、イザベラは傍に控える召使の少女に尋ねた。
そんな不機嫌な姫に恐れをなし、召使はぶるぶると震える。
「もう、そろそろかと…」
そんな召使の様子にイザベラは、実に意地の悪そうな笑みを浮かべた。
「そうだね…、退屈しのぎに、賭けでもしようか」
「ひっ!?」
そんな何気ない言葉にも、召使の少女は恐怖に怯える。
イザベラは、そんな召使の反応がたまらないと言った感じで笑い、その頬を杖で撫で上げる。
「あと十分以内に、あの人形娘が来たら、お前の勝ち。来なかったら私の勝ち。どう?
私が負けたら、お前を貴族にしてやるよ。なぁに、爵位の一つや二つ、どうとでもなるわ」
召使の少女の身体の震えは、いよいよ地震にあっているかのような物になった。
「でも、もしお前が負けたら――」
パンッ!パンッ!
その場の雰囲気にそぐわぬ、軽い調子で手が叩かれる音が部屋に響いた。
続けて、イザベラと召使の少女の顔の前に、白い手袋をしたような手が現れる。
「はいはいはい、そこまで」
そんな事を言いながら、ピエロを思わせる姿の幻獣が二人の間に割って入った。…ジョーカーだ。
ジョーカーを認め、イザベラは不機嫌に表情を歪ませる。
「お前…一体何のつもりだい!?」
「まァまァ、そんなに怒らないでください、イザベラさん?折角のカワユイ顔が台無しですよ」
「うるさい!」
怒鳴るイザベラ。しかし、ジョーカーは何処吹く風、全く変わらない表情で召使の少女へと向き直る。
「あ〜、メイドさん?ここはもういいですから、向こうの方で手の足りていない、掃除を手伝ってあげてください」
「え、は、はぁ…。…ですが…」
召使の少女はジョーカーの言葉に困惑しながら、イザベラを恐る恐る見る。
イザベラは変わらず不機嫌そうだった。
「宜しいですよネ、イザベラさん?」
のほほんとしたジョーカーの言葉に、イザベラはイライラしながらも召使の少女に、退室を促すように手を動かした。
召使の少女はまだ震えていたが、一礼をして部屋から出て行った。
「お前は…相変わらず私をイライラさせてくれるね?」
「おやおや?これは異な事を…、ワタクシは貴方の忠実な使い魔の積もりですがネ〜」
イザベラの言葉にジョーカーは、やはりいつもと変わらぬ調子で答える。
「全く…私が気まぐれにやったサモンサーヴァントで召喚したから、アンタは助かったんだよ?」
「勿論、その事に関しては感謝していますよ…。いや、もう本当に。のほほほほ♪」
そう言ってジョーカーは笑った。イザベラはそんな彼の態度に鼻を鳴らし、そっぽを向く。
聞けば、この自分の使い魔は、こことは全く違う異世界から来たのだと言う。
”ぼるくのろけっときち”と言う場所での戦いに敗れ、ハッタリをかまして逃げた。
その際に自分のサモンサーヴァントによってこちら側へと呼ばれたらしい。
(異世界ね…、最初は信じられなかったさ…)
だが、彼はこのハルケギニアに生息する数多くの幻獣の、どれにも当て嵌まらない。それに――
(まぁ、こんなのも召喚するんだからね…、信じるほか無いじゃないか?)
そう言ってイザベラは自らが身を預ける、赤い巨大なクッションを撫でた。否、それはクッションではなかった。
――それは赤い巨大な幻獣だった。大きさは三メイルはあろうかという巨体だった。
クッションと思われたのは、丁度その幻獣の腹に当たる部分である。
イザベラはその幻獣の腹に身体を擦りつける。
「はぁ…相変わらず、お前のお腹は心地よいよ、ビッグ」
「ムゥ」
ビッグと呼ばれたクッション代わりの巨大な幻獣は、その巨体に似つかわしくない可愛らしい声で鳴く。
すると、その巨大な幻獣の影からもう一匹、巨大な幻獣をそのまま小さくしたかのような、幻獣が現れた。
寄り添うように歩み寄って来たその幻獣を、イザベラはいとおしそうに抱き上げ、頬擦りする。
「あぁ…お前の身体もまた、良い感触だよ…リトル」
「ムゥ」
その幻獣もまた、巨大な幻獣と変わらぬ可愛らしい声で鳴く。
小柄なのはモット伯の屋敷でも使役されていた『ムゥ』であり、
巨体はそのムゥが巨大化した『ジャイアントムゥ』と呼ばれる種類だ。
巨体なだけあり、ムゥと比べてタフであり、その爪による攻撃も数段強力になっている。
ジョーカーが用事などで自分が居ない際、寂しがらないようにとペット代わりに召喚した物であり、
リトル、ビッグという名前は彼女が二匹に対して付けた名前である。
(本当に…こいつは、私に良く尽くしてくれるよ。…相変わらず、イライラはするけどね)
そんな事を思いながら、イザベラは横に控える使い魔を見る。
変わらぬ慇懃無礼な態度にはイライラするが、その一方で自分に良く尽くしているのも事実だ。
彼に怒鳴りつけ、それをのらりくらりとやり過ごされるのも、最早一つの習慣となっている。
そんな毎日を過ごしているので、イザベラの高慢な態度も、少しずつ和らいで……いるのだろうか?
その時、呼び出しの衛士がイザベラに駆け寄り、何事かを耳打ちする。
イザベラはそれに顔を歪め、鼻を鳴らす。
緞子の影からタバサが顔を見せ、彼女へ書簡を届けた幻獣も姿を現した。
パタパタと羽ばたきながらイザベラの元へと真っ直ぐに飛び、イザベラが差し出した腕に留まった。
この幻獣もジョーカーが召喚した物であり、翼が生えて飛行能力を有するムゥ…『フラムゥ』である。
「ご苦労だったね、フェザー。ほら、ご褒美だ」
「ムゥ〜♪」
そう言い、イザベラは傍らの皿に入っているナッツを手に取り、フェザーと呼んだフラムゥの口元へ運ぶ。
フェザーはそれを嬉しそうに頬張る。
その様子を満足げに見つめていたイザベラは、ベッドの傍に控えたタバサへと視線を移す。
「珍しく着飾っているじゃないの」
しかし、タバサは答えない…彫像のように立ち尽くし、命令を待っている。
その様子にイザベラは舌打ちをする。相変わらず、何を考えているのか解らない。
「フン、今回の任務を特別に、私の口から直々に説明してやるよ」
そう言ってイザベラは、寄り掛っていたビッグの腹から身体を起こし、ベッドから立ち上がる。
そして、タバサの元へと歩み寄った。
「今回はラグドリアン湖さ。…そこがゆっくりとだけれど増水しててね、村が一つ水没してしまったのさ。
勿論…このまま増え続けたら、村一つじゃすまない。そこでお前の出番って訳さ。
増水の原因を調べ、それを止めるんだ。増水に水の精霊が関与してるんなら、そいつも何とかするんだよ」
「……」
「今回はいつものオーク鬼なんかのような、軽い気持ちで相手が出来る雑魚とは勝手が違うからね?
本気で掛からないと、どうなるか解ったもんじゃないよ?」
しかし、タバサは表情を変えない。イザベラは舌打をし、ジョーカーを見るや顎をしゃくる。
ジョーカーは頷き(?)タバサの元へと歩み寄る。
「今回の任務は内容が内容ですので、ワタクシもご同行させてもらいますよ。
宜しくお願いしますネ〜シャルロットさん、のほほほ♪」
笑うジョーカーをイザベラは睨む。目の前の人形娘を本名で呼んだのが気に喰わないのだ。
しかし、ジョーカーはそれに気付かず…いや、敢えて無視し、イザベラへと向き直る。
「では、行って参りますネ〜、イザベラさん」
「…せいぜい、頑張ってくるんだね」
「はいな〜♪」
そうして、タバサとジョーカーは部屋から出て行った。
二人が出て行くのを見届けるとイザベラはベッドに戻り、ビッグのお腹に寄り掛り、リトルを抱く。
「はぁ…」
イザベラはため息を吐いた。その表情は先程までと打って変わり、疲れきった物だった。
「…いつまでこんなのが続くんだろうね、なぁ…リトル?」
「ムゥ?」
心配そうな声で主人を見上げる小さな幻獣。
そんな、いとおしいペットにイザベラは(普段の彼女らしからぬ)寂しげな笑顔を向ける。
そしてイザベラはリトルの身体に顔を埋めると目を閉じた。
以上で前半部分の投下終了です。続きは”なるべく”急ぎます。
あ、ちなみにイザベラのペットの幻獣三匹は、デジモンアドベンチャー02のマメモン三兄弟がモチーフです。
毒の爪の人乙です。
後半にwktk。
イザベラが丸くなってる?今後に興味津々。
というわけでどうも、久保の書き手です。
てっん〜しぃのぉ〜顔のぉ〜どっくうぅばぁちぃがぁ舞うぅ〜
あっくまのはっなぁぞのぉ〜そぉらぁおぉかぁすぅ〜
サブタイは有名な日本歌謡より。
新スパの取説では、アヤだけが念動力者で、T−LINKシステムもR−3だけについてるような話になってるんですが、これっておかしいんですよね。
だってそれならR−1がT−LINKナックルを使えるはずが無いんですから。故に、この話ではリュウセイも普通に念動力者、というかサイコドライバーの素養を持つ男です。
では他にいらっしゃらなければ50分頃より参ります。
やべ、トリップ付け忘れてた……
この日は、なぜかやけに寒かった。
朝。先日の健康ドリンクのおかげで完全に復調したマサキが、学院近くの草原にR−1と並んでおかれている愛機の中で目を覚ます。
メイジ扱いされている上に、クォヴレーからの口利きでアンリエッタ王女に身柄を保証されているマサキが望めば、学院内に個室が与えられたかも知れないが、
同じく異世界人であるリュウセイがR−1で寝起きしているのに自分一人だけが安穏と部屋を貰う気にはなれなかったので、体調が改善してからはサイバスターで寝泊まりしている。
クォヴレーは自分たちとは違い、きちんと使い魔の契約を結んで、なおかつそれに従っているのだから別だろうと認識していた。それでも床に寝てるらしいし。
というか空調の働く機動兵器のコクピットの中の方が快適かも知れない。
コクピットハッチを開いて外に出る。
「うわ、寒っ!」
慌ててジャケットを羽織る。
「おう、おはようはん、マハキ」
サバイバルパックに入っていた歯ブラシで歯を磨いているリュウセイが歯ブラシを口に銜えたまま放した右手をしゅたっと挙げる。
こいつと初めてあった時、この学院の頭髪の薄い教師と一緒になって興味深そうにサイバスターのことを尋ねてきた。何でも大のロボットマニアらしい。なお、同じく教師がR−1のことを聞いてきた時には、嬉しそうに自慢たらしくR−1のことを語っていた。
ちなみに、語っている最中、
『ふーん、こんなガンダムもあるんだな』と言ったところ、
『ガンダムって言うなぁぁぁ!』と全力で怒られた。気にしているらしい。
「ああ、おはよ……やけに今日は冷えるなぁ」
「ほだな……」
リュウセイが手にしたコップで口をゆすいでペッと吐き出す。
「……ん?何だそのコンテナ」
R−1の隣にあるコンテナを指さす。この世界ではついぞお目にかかれない大きさだ。
「ああ、昨日の夜クォヴレーが持ってきたんだ。戦闘時用の緊急リペアキットとカートリッジなんだと。サイバスターやディス・アストラナガンと違ってこいつは単なるロボットだからな。ちゃんとメンテしてやらないと……」
ぽんぽんとR−1のボディを叩きながらリュウセイが言った。
「こんなもんどっから持ってきたんだ、あいつは」
「さぁ?まぁあのディス・アストラナガンてロボットは好き勝手世界間を移動出来るって言うし、どっかから貰ってきたんじゃないのか?顔広そうだもんな」
暢気にそう返しながら、濡れたタオルでごしごしとリュウセイは顔を拭いていた。
ディス・アストラナガン……毎晩自分たちの居る目の前のこの草原に現れ、いずこかへ飛んでいく悪魔王。シュウのネオ・グランゾン並みに底がしれねぇなと、ため息をつく。
まぁ、少なくともパイロットの方はシュウほど底が知れ無くない分マシだが、それでも何だか悪戯好きな部分もあるような……と先日のドリンクの味を思い出して口を押さえた。
朝食も終わって、厨房に今日の昼から明日の朝にかけての食材が届き始める。
「こいつはメニューも練り直さなきゃいかんなぁ」
肌寒い冷たい風が吹くなか搬入される食材を見ながら、マルトーは唸る。
やはり寒い時には野菜たっぷりのシチューか。
だが、そうなると今普段よりも多めに運び込まれている肉が余ってしまいそうだ。
「……ま、たまには賄いに肉が多くても良いだろ」
腐らせてしまうよりはずっと良かろう。と、後ろ頭を掻きながら結論づける。
「コック長ー、なんかいつもより肉多くありませんー?」
食材の入った木箱を搬入しながらリュウセイが尋ねる。
「ああ。今日は肉料理にしようと思ってたからな。だが、この寒さだ。メニューは暖まるモンに変更して、俺たちで多めにいただくとしよう」
「お!コック長太っ腹ー!」
いよっ!憎いよこの色男!などと囃し立てるリュウセイ。他の厨房の面々が苦笑いしながらそれを見る。
こうしたその日の季候に合わせた料理への変更は、貴族を相手取る料理人としてはいたって普通の事であるし、良いことばかりでもない。
「世辞はいいんだよ!とっとと運べぇ!」
「へーい」
気の抜けた返事をしながら、木箱を運び始める。が、それも二周したところでリュウセイがマルトーに声をかける。
「コック長コック長」
「何だ?」
「今日、肉多めなんすよね?……晩飯なんすけど、材料だけ貰って、俺が自分で作っていいっすか?」
昼過ぎ。トリステイン魔法学院衛兵の詰め所近く。
「お前等情けねえぞ……」
木剣を肩に担いだマサキ・アンドーが、周りでへばっている衛兵達を見て呟く。
「み、ミスタ・ゼノサキスは……何でメイジなのにこんなに剣が強いんですか……?」
「だぁから、俺はメイジじゃないっての。ちょっとばかし剣が使えるだけの、ただの人間だよ」
腰に吊した剣の柄を叩きながらそう言う。
そこでぱちぱちと、拍手が響く。
何だと首を向けると、日に焼けた肌の赤毛の少女が居た。
「お見事ですわ、ランドールさん」
「誰だ、アンタ」
「あら、これは申し遅れましたわね、ごめんなさい。私はキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。その剣をクォヴレーに送らせて貰った者ですわ」
「ああ、アンタが。わりぃな、ちょっと借りてるぜ」
今マサキが腰から下げているのは例のシュペー卿作という剣である。
生身では何ら護身用の武器を持っていないというマサキに、今のところ行き場を無くしていたこの剣をクォヴレーが貸与していた。
「いいえ、お気になさらないで。それよりも、お強いんですね」
「こいつ等が弱すぎるんだよ。久しぶりに手合わせでもって思ったんだが……」
確かに学院の衛兵の練度は低いが、そうでなくともマサキの相手を務めるのは無茶である。
元々高校総体クラスのボクシングの腕を持つマサキが、僅か二年足らずとはいえ剣皇ゼオルート・ザン・ゼノサキスにより鍛えられたのだ。義妹や肉体派の方の妻との鍛錬も怠っておらず、そこらの剣持で敵う相手ではない。
しかし、そこらへんの腕の差も承知した上でマサキは叱咤する。
「お前等な、そんなんでいざって時どうするんだよ!?衛兵なんだろう?この学院の!」
「め……面目次第もございません」
ようやく復活した衛兵頭が立ち上がりながら頭を下げる。その態度にむしろ頭を抱える。
「あのな、俺に謝って済む問題じゃないだろうが。そんなんじゃあ、本当にやばい時に自分の身も守れやしねぇ。
そりゃあ、ハルケギニアじゃあメイジの力が圧倒的で、こうした魔法学院てのは結構な戦力のたまり場になっててここを襲う奴なんざほぼいなくってアンタ達の力が必要になる事は無いのかもしれねぇ。けど、それで衛兵の質が落ちて良いって話にはならねぇだろ」
「仰るとおりで……」
「自分の仕事に誇りを持て。ここを守ってるのは自分たちなんだって、胸を張って言えるぐらいの腕もな」
「は……精進いたします」
再び深々と頭を下げる衛兵頭に、ホントに判ってんのかなとマサキは頭を掻いた。
(変わってるわね、平民に誇りを持てだなんて)
ハルケギニアでこうした言葉を口にするのは普通貴族のみである。
「ねぇランドールさん?あなたのお話、聞かせて貰っても宜しいですか?」
「あん?話って……?」
わざと胸を強調させるポーズを取りながらキュルケが近づく。
「遠いところからいらしたメイジなのでしょう?是非お国の話など、賜りたく思いますわ」
「べ、別にそりゃ良いけどよ……」
どうも嫌な空気を感じながらマサキが後ずさる。
いつまで経っても自分になびくどころかルイズとすら関係に変化の見られないクォヴレーから目を逸らし、キュルケはその友人に目を向けていた。
「それではあちらのテラスにでも」
それよりも深くキュルケが踏み込み、マサキの腕を抱きしめる。自然と、その胸がマサキの腕に当たる。
「だぁっ!ひっつくな!」
「あら、私のことお嫌いですか?」
腕を放しながら悲しそうな顔をしてみせると、てきめんにうろたえる。
「いや、そうじゃなくてだな……!妻帯者なんだ、俺は!……身持ちは固くしねぇと」
木の下で欠伸をしながらシロが言う。
「マサキは恐妻家だからにゃあ」
「うっせぇぞ、シロ!」
「あら、残念だわ」
シロの言葉に、惜しそうに呟くキュルケ。マサキはようやく胸をなで下ろした。
「わかったかよ。だから、話をするのは別にいいけど、さっきみたいなのは……」
「でも、ここは遙か離れた異境の地。人肌恋しくありませんの?」
再びぎゅうっと腕を捕まれる。
「だからくっつくなーっ!離れろ!頼むから!」
照れではなく、本気での嫌悪すら混じり始めているその反応に、仕方なく再びキュルケは手を放す。
先程までグロッキーになっていた衛兵達も呆れ気味である。
「もう、一途なんですのね」
「というか!赤毛の女に良い思い出がねぇんだよ俺は!」
モニカは早々に裏切っていき、サフィーネは端からシュウの側にいて、テューディには危うくウェンディを奪われるところだった。
ついでにキュルケの肌の色が、ある意味一番厄介な女。自分を玩具にしてからかうベッキーを連想させる。
マサキ・アンドー、赤毛の女との相性は最悪であった。
「あら、それは偏見ですわ」
流石に気分を害したように顔を不機嫌にさせるキュルケ。
「偏見なもんか!」
現に今エライ目に遭っている。
「それでは、そんな思い違いを正すためにも、私と楽しい思い出を……」
「だから寄るなぁーっ!」
馬鹿馬鹿しくて付き合っていられないと衛兵達が三々五々に散っていき、猫二匹にサラマンダー一匹が眺める追いかけっこは、リュウセイがマサキに声をかけに来るまで続いた。
闇の中、声が響く。
『……イズ、……ルイズ・フランソワーズ……』
誰だ?自分を呼ぶのは?
『俺の名は……ン。……よ、ルイ……』
良く聞き取れない。声の主の姿も見えない。
『……ラ……ト……』
なんだ?何が言いたい?
『……の……き……せま……』
「あぁーっもう!言いたいことがあるならはっきり言いなさいよっ!」
自分の絶叫で、ルイズは飛び起きた。
揺れる馬車の中。しばし目をしばたたかせていたクォヴレーが尋ねる。
「……夢でも見ていたのか?」
「う……そ、そうよ……」
気恥ずかしくてそっぽを向く。
朝早くから呼び出されて、王宮からの帰りの馬車。使い魔に無様な姿を晒してしまった自分を責める。
(うぅ〜!なにやってるのよ私はぁ!)
「お、おかしな夢なのよ!誰かが私に話しかけてきてるんだけど、話は良く聞こえないし、姿も見えないの!」
照れ隠しに夢の内容の理不尽さを訴えかける。
「そうか」
だが使い魔の方は、いつものように淡泊な反応だった。
……何だか一々恥ずかしがってる自分の方が馬鹿馬鹿しくなってくる。はぁー、とため息をつきつつ額に手を当てて、コンと固い感触が触る。
自身がシュヴァリエに叙せられた先の出来事。あれから、水のルビーはルイズの指に填ったままだ。
今日はアンリエッタに直接呼ばれた機会だったので返却しようと思ったのだが、これは自分が持って然るべき報酬なでとそのままにしておくよう言われていた。
(でも……ウェールズ様は……)
「もうじき付くぞ、ルイズ」
馬車のカーテンを開け、学院の建物を確認したクォヴレーが呼ぶ。
「ええ」
ブルーになった気分を振り払うように一度首を振って意識を外に向けた。
「おう、クォヴレー。おかえりさーん」
先に馬車から降り、ルイズが降りる際に手を取っていたクォヴレーが呼びかけに振り返る。
「リュウセイか。何か用か」
「ん、あのさ、買い物頼まれてくれないかな?」
「ちょっと、リュウセイとか言ったかしら?」
ずいっとルイズがクォヴレーとリュウセイの間に割り込む。
「クォヴレーは、私の使い魔なの。勝手なことしないでくれる?」
「勝手な事って……別に俺はただ単に買い物を……」
「だから!使い魔であるクォヴレーの行動は私次第なの!友人だろうと私の命令が優先!」
「ちぇっ、なんでぇ、横暴な奴だなぁ」
「何ですってぇ!?」
「リュウセイ」
喧嘩に発展しそうなのを見て取り、妥協を図る。
「その買い物は、すぐに必要な物か?」
「ん、いや、夜までになんとかしてくれりゃあいいんだけど」
「……夜になったら二時間ほど自由時間がもらえる。ルイズ達の夕食の後ぐらいになるが、それでも構わないか?」
「おう!全然平気!むしろ調度良い?」
「ルイズも、自由時間内なら、別に構わないな?」
「う……」
心情としてはすっごく構う。自分以外のためにクォヴレーが動くだなんて……だが、まぁ、約束は約束な訳で。
「し、仕方ないわね……その代わり、私にも何か買ってきなさい!」
どこをどう押したら、代わりに何か買ってくるという発想が出来たのかは判らないが、ともかく素直に頷く。
「構わない。何を買ってこよう」
「そうね、夕食後の時間でしょう……?デザートが欲しいわ」
「判った」
そのやりとりに呆れ顔のリュウセイ。
「クォヴレー、甘やかし過ぎじゃねぇの?」
「ルイズは俺の主人だからな。俺は応えられる範囲でその命令に従うだけだ」
「ええ、全くだわ」
満足げに頷くルイズ。
「ま、いいや。ところでクォヴレー、2時間もとれてるんだろ?だったら、今日は一緒に晩飯くわねぇか?」
「誘いなら乗るが。それでリュウセイ、俺は何を買ってくれば良いんだ?」
「おおっとそうだった!えっとだな……」
「リュウセイさん、何やってるの?」
貴族達への料理が出し終わり、今度は務めている平民達がが食べる時間になって、リュウセイは賄いをもらいに行くこともなく、自分で切った肉と野菜を携えて厨房から出て行った。
それを視界に捉えたシエスタが不思議そうに追ってくる。
「ああ、シエスタか。いやな、今日はほら肉が多めだろ。だからいっそのこと俺の郷土料理でも作ろうかな〜?って思ってな」
「郷土料理?」
そのままリュウセイはR−1やサイバスターの置かれている草原へと向かう。
「リュウセイ、鍋の方準備出来たぞ」
石を積み上げて作った即席の竈のそばでマサキが呼んだ。
「おう、こっちも材料の準備が終わったとこだ」
手にした材料を、これまた木の枝から削りだした即席の割り箸で竈に据えられた煮立った鍋に入れていく。
「これって……ヨシェナヴェ?」
呆然とした様子でシエスタがつぶやく。
「え?いや、寄せ鍋じゃなくてスキヤキなんだけど……」
少し情けない表情でぼやくリュウセイ。
「ま、味付けがまだ何も入ってないからな。今は似たようなモンだろ。ていうかアンタ、何で寄せ鍋なんて知ってんだ?」
意外そうにマサキがシエスタに尋ねる。
「え?あ、その、東方の料理らしくて、私達の村に伝えられてるんです」
「へぇ〜、やっぱ、この世界でも極東は日本的なんだなぁ」
「というかアジアンテイストって奴だろ?」
シエスタ置いてけぼりで好き勝手言い合う男達。
「待たせたな……シエスタ、何故ここに」
「あ、クォヴレーさん」
そこへLAWS○Nのロゴが入ったビニール袋をぶら下げ、パイロットスーツ姿のクォヴレーが現れた。
「お!待ってました!醤油と砂糖!」
満面の笑みで中身を取り出し、ペットボトルの蓋を開ける。
「俺はキッ○ーマンじゃなく○大豆派なんだがな……ま、今回は立案者の顔を立ててやらぁ」
「へへ、悪いなマサキ。さて……」
とくとくと醤油を注ぎ込み、今度は砂糖のビニール袋を破って入れ始める。
「皆さんが何かしてるみたいだったのでちょっと様子を見に来てたんです」
シエスタがクォヴレーに事情を話す。
「ああ、そうか。何でもスキヤキを作るそうで、醤油や砂糖などの足りない材料の調達を俺が任されていたんだ」
「砂糖って……え?この真っ白いもの……こんな上質なお砂糖をクォヴレーさんが買ってきたんですか!?」
リュウセイが側に置いた砂糖の袋を手に取ってみて驚愕の声を上げるシエスタ。さながら粉雪の如しだ。
「大した物ではないぞ。ハルケギニアの通貨換算で、50ドニエしない程度の代物だ」
「これで50ドニエかからない!?」
口をあんぐりと開けてしまう。
「出来れば、全部ハルケギニアの材料でそろえたかったんだけどな」
「豆腐だとかは代わりの具材を入れるとしても、醤油がないのは痛いしな。砂糖もやたらめったら高くて、料理のついでにちょっと調味料借りますって雰囲気じゃないもんな」
しみじみと頷く日本人二人。
「お、美味そうな匂いがしてきたぜ」
「やっぱ醤油を入れると違うよなぁ」
ぐらぐら煮込まれる鍋の中で加熱されていく具材達。
その後、シエスタに味見させてみたり、様子を見に来たマルトーが醤油の風味に感激してみせたりしながら、食事の時間は進んでいった。
ある程度腹が満ちてくると、食べ物よりも酒の方が飲まれていくようになる。
未成年であるリュウセイの飲酒にマサキはいい顔をしなかったが「日本地区じゃないんだぜ?俺ぐらいの奴で酒飲んでる奴なんざゴマンと居るぜ」と押し切られてしまった。
「それにしても敵さんこねえなぁ……」
リキュールを飲みながらリュウセイがぼやく。
「何、馬鹿言ってやがる。来ないなら来ないで別に良いだろうが……そっち煮えてるぞ」
「ありがとう」
マサキに指摘された箇所の肉を拾う。
「いや、こう敵がどばばーって来てさ。メイジでも太刀打ち出来ないロボットの登場に、どうしよう!?ってとこで俺たちがやっつけちまって。それでグイッと俺たちの評価が上がると思ってたんだけどねぇ……」
やれやれとため息をつくリュウセイに、マサキは呆れ顔で言い返す。
「こっちがやれやれだぜ。あのな、それでどんだけ被害が出ると思ってんだ。確かにお前のいうとおり、こっちの魔法なんかじゃ到底太刀打ち出来ないようなロボットだったんだ。死者だって出かねないぜ?」
「だーい丈夫だって。俺たちがぱぱっとやっつけちまえば良いんだからさ。そうすりゃもう少し扱いも変わるってモンだ」
ダメだこりゃ、と頭を抱えるマサキ。実に見事なリュウセイの増長っぷりであった。
「なんでーなんでー。自分はメイジ扱いされてるからってさー。しかも女の子にももててるし。羨ましいねぇ」
「別に好きこのんでメイジ扱いされてる訳じゃねぇよ。むしろ訂正して回ってる最中だ。って待て。誰がもててるって?」
顔を歪めながらマサキが問う。
支援
「さっき赤毛の女の子とおっかけっこしてたじゃねーか」
「んな平和なもんか!あれが!しつこく人にまとわりついて来やがって……」
「赤毛……キュルケか」
肉を溶き卵に浸しつつクォヴレーが尋ねる。
「そうだよ。ったく、寄るなっつってるのに……」
「かぁーっ!これだよ、寄るなっていってもまとわりついてくる?もててる奴は自覚がねぇからなぁ」
それはひょっとしてギャグで言ってるのか?とクォヴレーがリュウセイを見たが、このリュウセイにとっては間違いなく正しい言葉である。
まぁ、性格の方に大きく難があるためなのだが。
「あのな……誤解すんなよ?いっとくけど俺は、妻帯者だからな?」
「そうだったのか」
咀嚼した肉を飲み込んでから顔を上げ、笑いかけながらクォヴレーが尋ねる。
「それで、相手はどちらだ?リューネ・ゾルダークか、ウェンディ・ラスム・イクナートか?」
マサキの顔が驚愕に染まる。
「な、何でお前がその名前を……!」
「俺の世界のお前とサイバスターのことを聞いたことがある。同世代の元気な女の子が一人と、10才ほど年上の優しい女性が一人居たと。そういえば、義理の妹も居たと聞いているが」
「元気っコに年上のお姉さんに義理の妹だとぉ!?お前それなんてエロゲだ!」
「誰がエロゲだ!」
マサキがである。
「それで、妻は誰だ?」
改めて、邪気のない問いにうっと詰まる。
しばし箸を銜えたり唸ったりしていたが、やがて観念したようにぽつぽつと話し出す。
「ラングランでは、ミドルネームのザンってのは戦士階級を意味するんだよ」
「? ああ」
突然何を言い出すんだと思うが、とりあえず黙って聞く。
「……で、この戦士階級の人間てのは、消防士だとか軍人だとか危険な職業の人間がなるもんなんだよ」
「ふんふん」
「その危険の代償として……」
再び目一杯考え込むように溜めた後、マサキは口を開いた。
「……二人まで配偶者を持つことが認められてるんだよ」
しばしの間があって、立ち上がったリュウセイがつかつかとマサキの背後に回り、ヘッドロックをかけた。
「死ね!世のもてない男達に死んで詫びろぉっ!」
「は、離せって!零れるだろうが!」
取り皿を必死で押さえるマサキ。しばらくそれを黙って眺めていたクォヴレーは、一つため息をつくと再び箸と口を動かした。
「……ホントに平和だな」
「にしてもおかしなもんだよなぁ……」
またしばらく経って、今度はラム酒をちびちびやりながらマサキがぼやく。
「こうしてロボットに乗ってる奴らが揃って異世界に召喚されてよ、スキヤキ囲んでんだから……肉追加すっぞー」
「ああ、ちょっと待て……ほんとだよな。偶然って恐ろしー」
葉野菜を取り分けつつリュウセイがしきりに首を振る。
「いや、偶然ではないだろう」
「なに?」
「え?」
新しい卵を割って取り皿に入れているクォヴレーに二人が視線を向けた。
「偶然じゃねぇって……それはつまり、俺たちを意図的にここに呼んだ奴がいるって事か?」
「ああ」
ゴミ袋代わりとなっているコンビニの袋に卵の殻を入れつつ頷く。
「昨日までは全てが推測に過ぎなかったが、今日ルイズと城に呼ばれて判った事実で裏付けがとれた。アルビオンの王党派、レコン・キスタ両軍が黒い人型の機動兵器によって壊滅したらしい」
「黒い、ロボット?」
「だから今日お前が王宮に呼ばれたのか!」
「ああ。そして周りの連中はわからんが、少なくとも王女は俺がやったのではないと信じてくれているようだ」
ひょいと肉を溶き卵に浸しながら言う。
「そりゃあな。お前が、アルビオンの王子さんとこっちのトリステインの王女さんと会わせた立役者なんだろ?それで王子さんを害するのが筋がとおらねぇぜ」
「だが、問題なのはその黒いロボットの方だ。生き残りから伝え聞く特徴を総合していくと、俺には一体しか思い浮かぶ機体が無く、そのパイロットにも一人しか心当たりがない」
肉を口に運んで咀嚼して飲み込む。
「それじゃあ要するに、クォヴレーの想像してる奴もこの世界に呼ばれてるってこったろ?」
「そうなる。……そして確かに奴ならば、お前達二人がこの世界に呼び込まれるように仕向けられるし、仕向けるだけの理由もある」
「こんな世界に連れてきて、俺たちをどうしようってんだよ」
ほうれん草を卵に浸しながら、リュウセイ。
「まず、マサキを呼んだ理由は、正確にはその搭乗機であるサイバスターが欲しかったんだろう。サイバスターに積まれているラプラスデモンタイプ・コンピュータがな」
「俺はおまけかよ!」
面白く無さそうにカップの残りをあおる。
「何だ?その、ラブラブ天驚拳て」
「ラプラスデモンタイプ・コンピュータだって」
「そう、それそれ」
「簡単に言えば、未来予知の出来るコンピュータだ」
「へー、明日の天気でも知りたいのかね?」
混ぜっ返すリュウセイを、今度は指さす。
「そしてリュウセイ。お前が呼ばれた理由はお前自身にある」
「え?俺?おいおい勘弁してくれよ〜。お婿にいけなくなっちまうぜ〜」
身をくねらしながらニヤニヤとリュウセイが言う。
「……言っておくが、奴は男だ」
「うげー、冗談じゃねえ。ライじゃねぇんだ。そっちの趣味はねぇぜ」
「あってたまるか」
憮然とした表情でマサキが呻く。
「……ライの方にもそんな趣味があるとは思えんが、ともかく奴の目的はお前の体ではなく、脳だ」
「脳?」
自分の頭を指さして尋ねる。
「狙うほど頭が良いとも思えねえけどな」
「ひでぇなあ」
二人の漫才はスルーして、説明を続ける。
「自分が、念動力者であることは認識しているな?」
「ああ。R−1のT−LINKナックルで使う念動フィールドも、俺の念動力があるから動いてるんだよな」
「何だ、念動力って?」
「元々人間が持ってたって言う脳みそを使った力で……まぁ、ちょっとしたエスパーみたいなモンだ」
「ふーん、ニュータイプみてぇなもんか」
いや、それともちょっと違うんだけど、と話そうとするリュウセイを制する。話が進まない。
「ともかくその念動力と呼ばれる力は、リュウセイの持っている力のほんの一部が発現しているのに過ぎない」
「俺の持ってる力?」
「俺たちはそれをサイコドライバーと呼んでいる」
「サイコドライバー……」
「はぁ」
どうにも気のない頷きを返す二人。
「サイコドライバーの力は強力だ。時として、因果律すら変えてしまう」
「因果律を変えるって……!おいおい、それじゃあリュウセイは、世界を思い通りに出来るって事か!?」
「思い通り、とまではいかないが、世界の大まかな流れを決定づけることぐらいは、サイコドライバーに覚醒すれば容易だろう」
「そりゃいい!んじゃ、そうだな……この世界にもっとスーパーロボットを呼び込んで……」
「何を考えているのかは大体判るが、今のお前ではまだ無理だ」
「あらら……」
クォヴレーに掣肘され、がっくりと肩を落とす。
「とはいえ、リュウセイにそれだけの可能性があるのは事実だ。今後、その能力が成長してサイコドライバーとして力を振るえるようになれば出来るかもしれない」
「ちょっと待てクォヴレー!お前最初こう言ったよな?俺たちがこの世界に呼ばれるように『仕向けた』奴が居るって!」
「あ……!」
二人の酔いが覚める。
「それじゃあつまり、そいつは力を発揮しているサイコドライバー……?」
「いや、あいつはサイコドライバーではない。ある程度因果律を操る術を持っているがあくまでも限定的なものだ。だからこそ奴は完全に力を発揮出来るサイコドライバーを、未来を見るラプラスデモンタイプ・コンピュータを求めている。
自分の力をより強固にするためにな」
クォヴレーの言葉に黙り込む二人。
「仮に、そいつの思い通りになったらどうなるんだ?」
「奴が因果律を握るために、もはや誰も逆らうことが出来なくなるだろう。ラプラスデモンタイプ・コンピュータで先の世界を見、自分の障害になるであろう事象は因果律を操作して発生しないようにすればすむわけだからな」
(俺は別だが)
アストラナガン共々因果律より外れているクォヴレーは、因果律による影響を受けない存在だ。
「冗談じゃねぇ。そんなこと許す訳にはいかねぇぜ」
「ああ。だが奴は今、間違いなくその力を弱めている。でなければわざわざこんな書き割りの世界を使わないはずだ。限定的とはいえ、以前は宇宙一つそのものに干渉していたはずだからな」
「書き割りぃ?舞台の?」
「そうだ。
……これはあくまでも現在の状況をもとに、俺が推測したに過ぎないことを予め話しておく。
俺の世界でロンド・ベルとの戦いに破れ、次元の狭間に落ち込んだ奴は再起の機会を伺っていた。
そんなときに、俺たちを呼び出したようなメイジという魔法使いが居る世界を見つけ、目を付けた。使い魔の召喚時に、世界の壁すら越えてみせるメイジの力に引かれてな。
出来れば直接その世界に干渉したかったが、奴の因果律を操るための機械、クロスゲート・パラダイム・システムは敗戦時の故障でそこまでの力が発揮出来ない状態だった。
そこで奴は、自らの力が絶対的となりうるだけの小さな世界を作り上げ、そこにメイジ達の居るこの惑星を含んだ星系を転写した」
「しつもーん、転写って何?」
リュウセイが手を挙げた。
「読んで字の如くコピーだ。世界の情報が全て記されているアカシック・レコードと呼ばれるデータがある。そこに記されていたこの星系のデータを、自身のまだ何もない小世界のアカシック・レコードに書き写すことにより、奴は星系をこの世界に取り込んだ。
そしてまずは、因果地平の彼方に落ち込み虚ろな存在となっていた自分を、俺たちのように誰かにこの世界に召喚させることで、安定させた。
その後……おそらくクロスゲート・パラダイム・システムが復調したか何かしたのだろう。
お前達を襲った虫型のロボット達。イルメヤやメギロートといった機動兵力を内包した自動攻撃衛星ネビーイームをこの世界に取り込んで自身の手駒とし、準備を整えていった。」
「んー……つまり、宿題のレポートの提出が間に合いそうにねぇから、ネットで適当な文章を見繕ってコピペして、それにちょちょっと手を加えてさも自分が書いた文章ですとでも言いたげな奴って事か?」
リュウセイの言葉にしばし二の句が継げない。
「……凄まじく乱暴な比喩だが、おおよそその認識で正しい」
「宿題ぐらい真面目にやれ」
「俺はちゃんとやってたって!お袋心配させる訳にはいかなかったんだから!……成績は低かったけど」
マサキの突っ込みに必死に反論するリュウセイ。
「ともかく、そこから先はお前達も知っての通りだ。お前達二人もこの世界のメイジに呼び込ませ、ラプラスデモンタイプ・コンピュータを手に入れるためマサキを追い回し、サイコドライバーの力を手に入れるため召喚して間もないリュウセイを狙った」
とはいえまだ、疑問は残る。王党派とレコン・キスタを壊滅させる際に、艦隊を使わずに自ら赴いた理由は判る。
巨大な艦が戦列を成していれば目立ちすぎるだろうが、奴の機動兵器ジュデッカならば単体でしかも空間跳躍して目立たずに目的の場所まで行けるだろう。
だが、なぜわざわざ両軍を壊滅させたのか?その理由が未だに不明だ。どちらかに肩入れしているのならば、壊滅するのはどちらか一方だけの筈だ。
(……あるいは、何か全く別の目的があるのか?)
「けどよ、最近全く手を出してこないのはどういう訳だ?」
マサキの質問で思考から引き戻される。
「十中八九、奴は俺を恐れている。正面からやり合えば、9・1で俺の勝ちだろうからな」
「大した自信だ事で」
やれやれと首を振って、またスキヤキに手を伸ばすリュウセイ。
「別に自惚れている訳ではない。冷静な戦力分析に基づく推測だ」
「待てよ、そういやお前は何で呼ばれたんだ?そいつにとっちゃ、お前は驚異なんだろう?」
「俺が呼ばれたのはおそらく奴にとってイレギュラーだ。俺がこの世界に来るとは想像だにしていなかっただろう」
フッとクォヴレーが不敵に笑った。
「状況は大体判ってきたけどよ、それじゃあ俺達は帰る算段がついても無駄じゃねえのか?どうせまた召喚で呼び戻されちまう」
「そうなる。むしろ、再召喚されて気づかないうちに敵の手に落ちているよりは、俺の目の届く範囲にいてくれた方がありがたいからな。すまないが、この件が片づくまではここにいて欲しい」
「なーに、気にすんなよ。世界の調和を守るために戦うのが魔装機神とその操者だ。いざって時には手を貸すぜ」
「言われなくたって、俺はそのつもりだぜ?悪者を倒すのは、異世界から召喚された勇者ってのがお決まりだからな?」
マサキが親指で自信を指さし、リュウセイが満面の笑みで応えた。
「ありがとう、二人とも……といかん、そろそろ時間だな」
パイロットスーツの時計を見て、腰を上げるクォヴレー。
「そっか、二時間だけだっけ。大変だなぁ、使い魔も」
しみじみとリュウセイが呟く。
「あ、ちょっと待った!」
思い出して慌ててマサキが制止する。
「そういやまだ名前を聞いてないぜ。誰なんだ?この世界を作って、俺たちを引きずり込んだのは?」
「ユーゼス・ゴッツォだ」
今回はここまで。マサキの鍋奉行ッぷりが足りなかったなぁ……。
それもわしが育てた
実に納得です、乙でした!
久保の人乙。
自分も負けずに投下できるようにしたいぜ。
乙。
ユーゼスはαのユーゼスなんね。
てっきりヒーロー作戦だと思ってたが、よく考えたらジュデッカ出ないよな。
ヒーロー作戦だと、ユーゼスはウルトラマンに変身するからロボいらずだぜ
それにヒーロー作戦のユーゼスだと、自然大好き人間だから別に何もしないと思う
ただ、自然破壊な科学技術の発展は妨げるだろうけど
ここいらで一つ。
わたしははわわ軍師召喚が怖い。
ヒーロー作戦のユーゼスが召喚されたらエルフの住んでる砂漠を緑化してエルフの英雄になってるかも
乙です!
何の因果か、今日の私の夕飯もすき焼きです……ま、まさかユーゼスがクロスゲートパラダイムシステム
でこのssを見た人間がすき焼きを食べるようになるだとか……!?
乙
俺は一昨日すき焼きだったよ。
いやむしろ寄せ鍋かな。豚と鳥と生シャケと貝(w
下の毛もしっとりつやつやの関羽(アニメ版)はいかかですか
あえて一刀様じゃね?
あいつ一日に最高7発出したことあるぜ?
今日は牛丼だったぞ…………繋がりは肉だけか
乙ー
今晩飯に羊羹一本食べたけど吉牛、できればすき焼き定食が食べたくなってきた
タバサのおまんこ
ぷるぷるまんこー
>>247 牛丼はもともと関東風のすき焼き(当時は牛鍋だな)を飯に乗せたものだから、無関係とは言えないな。
その割には今の牛丼には豆腐も白滝も春菊も入ってないがな!
食べ物談義中に割り込んでごめんよ。書けたから投下したいんだ。
30分から予約なければさせていただきますね。
22. The Nightmare Before Marriage
泣きはらして一夜が過ぎた。ルイズは泣きながら寝ていたらしい。
ベッドに入った覚えがない。きっとマーティンが運んでくれたんだろう。
立派な貴族になる。そう決めたがやはり出来ないのだろうか?
私は、やはり「ゼロ」のまま。泣くしか出来ない子供なのだろうか。
嫌な事が続くと、頭の中まで嫌な考えに染まる。
ふと周りを見ると、何故かワルドがいた。
「いやはや、死ぬ前にこのような事を頼まれるとはね」
良い記念になる。そう言ってウェールズは笑った。
マーティンは隣で礼拝堂を見渡している。
「なるほど。これが始祖ブリミル…」
様式こそ色々と違ったが、やはりこういった神像みたいな、
神を奉る物がないとな。そんな事を思いながら、
今日の主役の登場を待った。
「ああ、いらっしゃった。では式を始める」
マーティンは備え付けの長いすに座り、二人の門出を静かに祈る事にした。
「姐御!艦船二隻、今出て行ったぜ!!」
フーケは笑う。さぁて、と沸き立つ盗賊共に言った。
「騒ぐんじゃないよ!今からが大事な所さ。
帰りの事は考えなくていいから、残っているお宝は全部もらってくよ!」
話はついているはずだからね。予定通りここに集めてるはず。
とフーケは城の見取り図の一カ所を指差した。
「姐御ぉ!いっちょ号令を頼むぜ!!」
にぃと顔を歪ませて笑う。確実に悪人の笑い方である。
『エマー・ダレロス号、アルビオン城へ潜入せよ!』
「お前が言うなぁぁぁぁぁ!!!」
美味しいところだけを持って行くノクターナルに、
どこから取り出したのか、ハリセンでツッコむフーケ。
爽快感のある音が空に響いた。
ノクターナルは頭をさすりながら、恨めしそうな声で言った。
いつの間にか、肩に停まっているカラス達も痛そうに鳴いていた。
『痛いぞ…』
「ああ?何だったらもう一回やってやろうかい?」
これだから粗忽者は。守護するのも楽じゃないのね。
人外共め。そうフーケは思いながらまぁ、アレだから。
こいつこれでも盗賊ギルドの守護神らしいから。
何でこんなのが…そう思いながら号令をかけ直し、
船は秘密の通路を通るのであった。
「き、貴様…『レコン・キスタ』…」
マーティンもルイズも、一体何が起こったのか分からなかった。
ルイズが我に返り、結婚の取り消しを求めたところ、
ワルドが激昂し、そして3つの目的を言って後、
ウェールズに魔法を放ったのだ。
そして、彼は倒れた。おそらくもう息はないだろう。
「…想定外とは正にこの事か。あの白い仮面は君だったのだね?ワルド」
マーティンは立ち上がりデルフリンガーを抜く。
ワルドは、ルイズの事を気にする素振りもなく、
マーティンの方を向いた。
「おお、お解りでしたか。いやはや、異国とはいえやはりメイジ。風の『遍在』の特性はご存じでしたね?」
そう言って、ワルドは二体の遍在を造り出す。
「ああ、風は遍在する。風の吹くところ、何処ともなくさ迷い現れ、その召喚距離は意志の力に比例するのだったな」
「その通り。残念ですがこの至近距離だとほとんど精神力を使わず造る事ができるのです。
私はあなたの手の内を知っている。苦しまずに済ます事も出来ますが?」
マーティンはにらみつけ、笑った。皇帝として号令を飛ばすあの雰囲気に戻ったと、ルイズは理解した。
「そういう事はもう20年は生きてから言え。青二才」
「言うねぇ相棒。なんだい、カッコイイじゃねぇか。こりゃ、俺もウカウカしてらんねぇな!」
急に、デルフが光を放ち始めた。光が収まると、まるで今研がれたかの様に光り輝いていた。
「やはり、そういう剣だったのだね。さて、マーティン・セプティムが参る。命が惜しければこの場より去れ!」
豪と唸るは皇帝の叫び声。デイゴン子飼いのドレモラ部隊に我先にと突撃した勇敢なる皇帝の声。
圧されながらも、ワルドは負けじと言った。
「ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドが参る!行くぞ!」
「その名は変えろ。お前はただのジャックだ」
王家を裏切り、あまつさえ婚約者の命まで奪おうとしたこの男を許す気など、
最初からみじんもない。ルイズがワルドから離れたのを見て、
マーティンは赤い球体の魔法を放った。
「ふん。所詮は老いぼれの口だけか!当たっても何も起こらんぞ!!」
三人のワルドの内一人が『エア・ニードル』でマーティンに向かい、
二人が杖を構えた。魔法を使うつもりらしい。
「遍在の使い方だ!ライン二つでスクウェア一つぅ!」
『風』の系統が強いと言われるのは訳がある。
遍在による多重連続攻撃。それとその中でも、
一部のスクウェアにしか使えない合体魔法があるからだ。
支援
支援。
本来のスクウェアスペルは、消費精神力が尋常でないため、
そうバカスカ使える物では無いが、
彼らはラインスペルを重ねる事で消費精神力を落として、
大量に使う事が出来るのだ。
タイミングを合わせ、ワルドは風のラインスペルを同時に放った。
接近戦を仕掛けたワルドが離れたとき、もう目の前まで風の嵐は来ていた。
「くぅっ、しまった!」
防御の魔法をかけても、これの中無傷で済むとは思えない。
そうなると次の一撃でワルドに倒されてしまう。
マーティンは、咄嗟にデルフを構えた。
「正解だ相棒!俺に任せとけ!」
風の嵐は刀身にのまれ、消えていった。ワルドは訳の分からない様な顔をしている。
不意に、爆発音が鳴り一体ワルドが消えた。ルイズの爆発だった。
「おのれぇぇぇ!」
「よそ見とは、まだまだ青いな」
激昂したワルドの一体に素早く詰め寄り、斬りかかった。
音もなく倒れ、そのまま消える。残っているのは、
赤い魔法がかけられたワルドだけである。
「そろそろか…?」
「ふん、まだだ。まだ終わらんよ!!」
ルイズは先ほどの爆発の反動で気絶しているらしい。
後で感謝しないとな。そう思いながらマーティンはワルドを見た。
「さっきの魔法だが、私の国では色々こことは違っていてな」
「ほう?」
「攻撃の為の魔法は『破壊』の系統と呼ばれるのだ。そして、
それには純粋に相手に攻撃する魔法と、相手の耐性を下げる魔法、それと――」
ワルドの杖が、急に崩れた。ワルドはハッとしてマーティンを見る。
「相手の武具を破壊する魔法だ。チェックメイトだな、ただのジャック。どう死にたい?一応聞いてやろう」
タムリエルの魔法は、即効性よりも遅効性の方が消費を少なくでき、
大量の変化をもたらしやすいのだ。また、マーティンはアルケイン大学に、
長い間通っていたため魔法構呪装置が無くても、
自身の覚えている魔法なら作り直す事が出来る。
「ハハハ…まさか、ここまでとは。いやはや、僕の負けです。潔く認めましょう」
「そうか。ならば行くぞ」
ご心配には及びません。そう言ってワルドはまだ笑う。
何がおかしいのだ?マーティンは聞いた。
「なに、最初から僕はここにいなかったということですよ。では、また会いましょう。ここを突破出来たなら、ですがね」
そういって、ワルドは消えた。全て、遍在であったのだ。
ああ、マーティンは納得した。
そう言えば、私が何か言う前に彼は私に握手を求めてきたな、と。
そして私は、あの時先に喋ってしまったな、そう思った。
「遍在の遍在って…そんな事よりウェールズ様は!!」
いつの間にか、気が付いていたらしいルイズが、ウェールズの下へ駆け寄った。
「ああ、もう息をしてらっしゃらないわ…」
「せめて、戦場で死なねばならなかったというのに…」
「ええ、全くです。惜しい人を亡くしました」
二人が悲しそうに言っている中、背後からうんうん頷いて、
ウェールズが言った。
「ウェールズさまぁぁぁ!?お、おばけぇぇ!!」
気付いて、ルイズは叫び声を上げる。マーティンもハッとして剣を構えた。
「心配しなくて良い。それはスキルニルさ」
ああ、こちらのマジック・アイテムを調べた時に何度か聞いた名前だ。
古代の王家が、これで争ったり何かやましい事に使ったりしていたらしい。
今もそれなりに発見報告があり、時たま魔法店に売られたりもするようだ。
「すまなかったね。もしかしたらと思ってすり替わっておいたんだ」
何か嫌な気配が彼からしていてね。
ウェールズの言葉に、ああ、とマーティンはうなだれた。
基本的にマーティンは人を信じる性質である。
そもそも、身元が分からない人間に、
あなたは皇帝のお世継ぎだから着いてきて下さい。
と言われて、何かよく分からないけど、
嘘と思えないから着いていくよ。
と言い切った人物である。相当お人好しの部類なのだ。
「ミスタ・セプティム。貴方を悪く思うつもりは無い。
かの祈りは確かに聞いた。さ、行きなさい。先ほど賊の船らしいのが、
港に入ったようだ。おそらく盗賊ギルドだろう」
何故知っているのかは知らないが、まぁ、彼らなら君たちを乗せるだろうとも。
そう言ってウェールズはその場を後にした。
「しかし…盗賊ギルドか」
「どうしたの?マーティン」
港へ向かって走る。そう言えば、フーケも盗賊ギルドか。
そんでもって、グレイ・フォックスか。
「いや、こっちにもグレイ・フォックスという名前の盗賊がいたなぁと」
「ええええええ!?」
まぁ、落ち着いて。そう言ってマーティンは走りながら叫ぶルイズに言う
「落ち着いてられないわよ!どうしてそう言うこと先に言わないのよ!!」
「いや、だって伝説で、本当にいると信じている人なんてほとんどいないよ」
盗賊が組み合いを造るっていうのも変な話じゃないか。
まぁ、確かにそうだけど。そう言って二人は走る。
決して腕組みしながら足だけを高速で動かしたりしない。
そんな事出来るのは大きな炎の十人だけだ。
「殿下!何処へ行っておられたのですか!?貴方様がおらねば何も始まりませんぞ!!」
「いや、全くだ。すまないね、パリー」
戦の準備を整えたウェールズはパリーに笑ってそう言った。
「さぁさぁ、殿下がいらっしゃった。各々方!王家の生き様、
かの下劣なる貴族派の連中に思い知らせましょうぞ!!」
応!!と号令がかかる。その傍らにはジェームズ王もいた。
「すまぬな、ウェールズ。この様な事になってしまって」
「何を言うのですか父上。何も問題ありませぬ」
そう言って戦場へ出ようとした。その時だった。
「もし、そこの方」
見慣れぬ司祭服を着た老人が立っていた。
呼び止められたウェールズは、はて、と思いながらも立ち止まった。
「貴方様の勇敢なる活躍に、どうかこれを持って行ってはもらえないでしょうか?」
手に乗るはコインが一枚。受け取れるのなら受け取ろう。ウェールズはそう思い、
それを預かった。
「ご武運を、貴方はエセリウスに行く事が出来ませんが、私は見ていますからね」
老人はそう言って消えた。場所とタイミングさえ合えば、良い話になる例である。
ちなみに、彼はこれが本人だと思っている。
不思議そうにコインを見て、気が付いたら老人はいなくなっていた。
何かは分からぬが、まぁいいか。と、もう一人の『スキルニル』のウェールズは思い、
戦場へ行った。
「くそったれが!!大赤字だぞ!スキルニル一つ1000エキューだ!それを三つも使ったんだ!!」
「今は金の話より命の話じゃないのかいマスター!」
砲撃の音が響く中、フーケと合流したフォックスが、
砲撃の音よりも大きな声で叫び、負けじとフーケも大声で叫んだ。
どうやっても説得出来なかったため、二人とも気絶させて数人がかりで運んでいる。
タバサとキュルケも目的地まで連れて、お宝を魔法で運ばせながら、
船の近くまで持って行く。そして近くではノクターナルとシルフィードに運ばせる。
ブチブチ言っているが気にしない。しないったらしない。
盗賊ギルド総掛かりの今回、さて、次の一手はと思ったとき、
フォックスとしては見知った顔がいた。
「皇帝陛下!」
「え、本物のグレイ・フォックス!?」
驚くのも無理はない。著者不明の『伝説か脅威か』を始め、
様々な文献から、フォックスの存在は否定されているのだ。
もちろん、それは工作である。有名になりすぎると、
伝説になった方が、色々しやすいのだ。
何せ300年前からいるのである。
もういないと考えてもらった方が盗みをしやすい。
「ここで会ったのも何かの縁!ささ、我が船にてお運び致しましょう」
「ああ。ありがたいけど、気のせいかな、あそこで物体浮遊の魔法使っているのって」
「お気になさらず!」
どう考えてもアレだよな。デイドラ王の。あれー?とか何とか思いながら、
船に乗り込みホッと一息付くマーティンだった。
『おお、竜の子か。よくぞデイゴンを打ち倒した。竜になった気分はどうだった?』
個人的には何であなた様がいらっしゃるのか。そちらの方が聞きたいのですが。
マーティンはそう思いながらも、なかなか素敵でしたよ、と無難に解答しておいた。
デイドラ王は何を考えているのか基本的に人間には理解出来ない。
そして更に、機嫌を損ねると死に繋がるパターンが多いのだ。
「ホラ!!口動かさずに魔法使え、魔法!!」
フーケに言われ、粗忽者の癖に…と恨み節を吐きながら念動の魔法を使うノクターナル。
ああ、そう言えば彼女はアレな子という学説があったなぁ。
流石にそれはないだろう。と言う意見が圧倒的多数な中、
むしろそれが良い。とするカルト的な人気を誇った学説だったな。
以前、大学にいた時代に見たデイドラ論文の一つを思い出しながら、
マーティンは、真実って何があるのか分からない物なんだなぁ。
と思いながら荷物運びを手伝い始めた。
「よし、十分だ。逃げるぞ!」
『後は任せたぞ、我より頭巾を奪いし者よ』
もー疲れた。寝る。と言ってそこら辺でぐうぐう眠り始めた。
あれか、本当にアレなのか。マーティンは、
何となくデイドラ王に対する考えを改めるべきなのか、
少し考え始めた。
「ああ、お疲れさんノクターナル。後は…『リコール』!」
グレイ・フォックスが叫ぶと、船の紋様が光り始め、空間が歪んでいく。
『神秘』系統の転移魔法。シロディールでは治安上と機密保持の為に、
使用することも教える事も禁止されている魔法である。
『マーク』という魔法と対になっており、それでどこか特定の場所を指定し、
この『リコール』を唱えるとそこへ戻る事が出来る。
登録している場所はタルブ。気が付けば船は、ワインとオレンジの名産地に着いていた。
「さて、とと」
王宮の自室にいた女官を殺し、ワルドは確認を始めた。
「アンリエッタをさらい、僕のグリフォンで撤退。完全じゃないか」
邪魔だったから殺した。それだけの話である。
自身の『使い魔』のグリフォンも既に待機状態。
そして、ここに姫が来る手はずになっている。
「最後に笑うのは僕ですよ。マーティンさん」
彼は知らない。最近特別訓練官として、
先代マンティコア隊長が、マンティコア隊に特別訓練という名の、
悪魔も泣き出すしごきをやっていると言うことを。
「勝ったも同然じゃないか。あっはっはっはっは!」
彼は知らない。今、彼女はマンティコアに乗り、
隊のメンバーを絶妙な加減で死なない程度に特訓しているのを。
投下終了。格好良かったのに抜けています。逃げてーワルド超逃げてー。グッデイ
皆さん支援ありがとう。松屋は美味しいのだろうか。今度食ってみるかー
しえん
>>261 乙&GJでしたー。
個人的にはなか卯の方が好きですー>松屋
>>ジ・エルダースクロール外伝 ハルケギニア ◆to3bNwX3cw
一体どうやったらそんなに早く書けるのか教えてくれw
オブリの人乙
ワルド終了のお知らせ
>>712 見てみたが、確かにひどいな。
現地人は皆殺しにしろ、とか、SSの感想じゃないだろ、これwww
いや、俺もチョン嫌いだけどwww
>>263 なるほど。牛丼と言えばあの吉野家しか知らないんです。
今度食べてみますねー
>>264 アニメ三大兄貴とも四大アニキとも言われる、
ストレイト・クーガーの言葉を実行してるのです。
けど、時間を掛けて書くと言うのはやる気が持続するかどうかの問題から、
実行できる人は凄いなぁって思うのです。
自分なら途中でやめてますぜ。
それに、待たせるのって嫌じゃないですか。
かの黒田は一晩でアニメ一話分の脚本を書き上げたという
270 :
魔法陣ゼロ:2008/11/03(月) 21:16:49 ID:XvvSzv0W
週一を予定してたけど、無理だった……
魔法陣ゼロ、第5話を10分後に投下しようと思います。
271 :
魔法陣ゼロ:2008/11/03(月) 21:26:24 ID:XvvSzv0W
5 教室
教卓の破片が飛び散り、ススで汚れた教室の中。
罰として魔法抜きでの片付けを命じられたルイズは、ニケ達に片付けを命じていた。
「お前が失敗して爆発させたんだろ? だったら、自分でやれよ!
破片が飛んできたせいで、頭が痛いんだ」
「主人と使い魔は一心同体。わたしに与えられた罰は、あんたへの罰でもあるのよ」
「そんな横暴な!」
二人は言い争うばかりで、一向に片付けが進まない。
床を掃いていたククリが、横から口を挟んだ。
「ねえ、あたしの魔法で片付けてみようか? この教室全部をきれいにするのは、大変そうだから」
教室は、机の破片が散乱した上に、ススで汚れている。
新しいガラスや机を持ってくる手間も考えると、昼休みまでに終わるかどうか怪しい。
「だめよ、魔法での修理は禁止って――あれ?
禁止されてるのは、わたしの魔法よね?
じゃあ、ククリは魔法を使っても、いい!」
「なんだか、さっきの発言と矛盾してるような……。
でも、楽ならいいや。ククリ、できそうか?」
「うん、やってみる。
部屋を片付けるんだから……そうだ!」
ククリが既に掃除を終えていた部分に、魔法陣を描く。
光の中から現れたのは――
「メイド……よね?」
「シエスタ……なのか?」
召喚されたのは、シエスタだった。特に顔は、間違い無くシエスタだった。
だが、色々とおかしい。
メイド服は、筋肉でパンパンに膨れあがっている。
肌は赤黒く、ツヤツヤしている。
背中には、恐ろしい量の掃除用具を背負っている。
そして何より問題なのは、身長が本物の1.5倍ほどあることだ。
シエスタ(?)は、ゲラゲラと笑いながらひび割れた窓に突撃し、教室から消えた。
272 :
魔法陣ゼロ:2008/11/03(月) 21:27:31 ID:XvvSzv0W
「ククリ、何でこんなことに……」
「メイドさんだったら、片付けとか得意そうだな、って思って。
それで、片付けが早く終わるように、力持ちなイメージで作ったんだけど……
ちょっと失敗しちゃった」
ククリの話の途中で、シエスタ(?)がバケツに水を持って戻ってきた。
ここが何階かとか、水場までの距離とか、そういった条件を明らかに無視した速さだった。
その後。
箒を両手に持ったシエスタ(?)が教室を走り回ると、一瞬で破片が一箇所に集まった。
楽々と天井まで手を伸ばし、雑巾がけをした。
教卓を右手に、ガラスを左手に、まとめて一回で持ってきた。
長い歴史を持ち、数々の著名なメイジを生み出してきた教室は、ものの数分で建設当時の輝きを取り戻した。
〜〜〜
「あんたの魔法って、本当にヘンね……」
「グルグルは、ハートのドキドキを力にする魔法なの。
あたしが好きな物なら、なんでも魔法にできるのよ」
掃除が終わると、メイドのような何かは消滅した。
今から授業に合流するのも面倒なので、二人は教室でダラダラとしている。
ニケは学院内の探索に行って、まだ帰ってきていない。
「異世界から来たってのも、嘘じゃなさそうね。こんな魔法ありえないわ。
どうやって魔法を覚えたの? グルグルを使えるのがあんただけってことは、魔法を習う先生もいないんでしょ?」
「初めのうちは、魔法オババとグルグルの経典を読んで練習してたの。
でも、経典には2つしか魔法が書いてなくって。
修行ハウスでの修行もあったけど、旅をしながら魔法を探したり、自分で作ったりしてたよ」
「大変だったのね」
「最初は失敗ばっかりだったけど、だんだん自然にグルグルを描けるようになったわ。
今でもときどき失敗しちゃうけどね」
失敗。
それは、幾度と無くルイズが繰り返してきたもの。
そして、ククリも繰り返してきたもの。
「失敗、かあ……。
失敗って、嫌よね」
「うん。なかなかグルグルがうまく使えなくて、ちょっと落ち込むこともあったけど、でも――」
「でも?」
「ニケくんが、いつもいてくれたから……。
あたしが魔法を失敗しても、それを責めたりせず、笑って励ましてくれて。
成功したときは、すっごく喜んでほめてくれる。
だから、いつも安心して失敗できたの」
「安心して、失敗できる……?」
「失敗を怖がらなくていいの。
だから、緊張せずリラックスして魔法陣を描ける。
それに、失敗しても、結局はそれで良かったこともあるのよ」
273 :
魔法陣ゼロ:2008/11/03(月) 21:28:40 ID:XvvSzv0W
ルイズは、ククリが羨ましかった。
失敗を責めるばかりの親や教師たちと比べると、雲泥の差だ。
下の姉が、唯一の例外だった。
遠い昔の婚約者も優しい言葉をかけてくれたが、今はもう自分のことなど忘れているだろう。
「いいカップルね」
「えへへ……」
二人の話は続く。
「ずっと、ニケと二人で旅してたのよね?」
「だいたいは、ね。
時々、ジュジュちゃんやトマくんや、あとオヤジさんもいたこともあったけれど。
……あ、そうだ。ギップルちゃんは、よく一緒にいたよ」
「へえ。どんな人?」
「人じゃないよ。ギップルちゃんは、風の精霊なの」
「か、風の精霊ですって!?」
ルイズは、話に聞いたことがある水の精霊のようなものを想像した。
強力な風の先住魔法を使いこなす、高貴な存在を。
「道案内をしてくれたり、いろんなことを教えてくれるのよ」
「人間と共に旅をして、知識を分け与える風の精霊! 一体どんな姿をしてるの? どんな魔法を!?」
「小さくて、マントを着てるの。魔法は…人の心を読んだりしてたかな?」
「心を読む!?」
「あと、空中で消えたり、一瞬で遠くまで移動したり」
「すごい……」
「そして、ふんどしだ」
ちょうど戻ってきたニケが口を挟んだ。
「ふんどしって何かわからないけど、気になる!」
「いや、そんな面白いもんじゃないぜ?」
「あたしも気になるわ」
ニケの後ろから、キュルケが教室に入ってきた。
「ちょ、ちょっと、キュルケ! なんでわたしの使い魔と一緒にいるのよ!」
「他人の使い魔に手を出したのは、そっちでしょ? お返しに、あたしの部屋まで案内してあげようと思ってね」
「な、ななな……!」
「冗談よ。授業がつまんなかったからサボってたら、すぐそこで会ったのよ」
「そ、そう。一瞬びっくりしたじゃないの!」
「そうだぞ。一瞬期待したじゃないか!」
「ふーん、何を期待したのかしら」
ククリがニケに冷たい視線を送る。
そんなククリに、キュルケが近づいた。
274 :
魔法陣ゼロ:2008/11/03(月) 21:29:50 ID:XvvSzv0W
「そんなことより、ふんどしよ。
ふんどしって、何なのよ?」
「なんていうか……細長い布?」
「それを、どうやって使うわけ?」
「体に巻くの」
「それで?」
「え?」
「巻いて、どうするのよ?」
「どうするって……それだけよ。
すごく大事にしてたよ」
「……」
キュルケは困った顔をしたが、突然何かをひらめいた。
「そうだ! 昨日は一緒にいたのかしら?」
「うん」
「じゃあ、これが役に立つかもしれないわね」
キュルケがポケットから、虫眼鏡のようなものを取り出した。
それを見たルイズは驚く。
「そ、それって、『夕べの水晶』じゃない! どこでそんなもの手に入れたのよ?
そう簡単に手に入る代物じゃないわよね」
「いいえ、違うわ。これは『昨日の水晶』。
見た目はほとんど同じだけど、根元のデザインが違うでしょ?
彼が『僕には君しかいないんだ!』とか言いながら、これをあたしにくれたのよ。
どっちにしても、あたしには必要のない物なんだけど」
「なあ、何なんだそれ?」
ニケの質問に、キュルケが答える。
「『夕べの水晶』で誰かを覗くと、その人の夕べの様子が映るのよ。浮気してないか調べるのに使えるから、巷で大人気。
でも、これは安物の『昨日の水晶』。昨日の様子が映るんだけど、どの時間が映るか分からないから使いにくくて、あんまり人気がないのよ。
あいつ、違いが分かってないのね。それとも、わざとなのかしら?」
「じゃあ、これをオレかククリに使うと――?」
「うまくいけば風の精霊を見れるのね!」
「そうゆうこと。じゃあ、さっそく使うから、ニケはじっとしててね」
キュルケが昨日の水晶をニケに向ける。
水晶は光を発し、ニケの額を照らした。
「さあ、風の精霊さん、出てきてちょうだい……」
そして、そこに出てきたのは――
しえーん
支援
277 :
魔法陣ゼロ:2008/11/03(月) 21:31:38 ID:XvvSzv0W
∧
┌、 | || /|ヽ
ト、\ | | | ,r───-、 | | //ト、
\\ヽ!| | / \ | / / //
\__Lレ' ∨// /
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|/⌒ヽ、, 、、_/⌒! ├、
∧─┰ ─┰ /ヽi
Y r‐、_r─-、 レ'
| i(lllllllllllllllllllト、 ノ
\ ,イ´
┌──-、 `ー‐ァ‐─-' `十──---、
`ニニ_ \ /\ ノ | \
`T ヽ/\ ヽ/ ├──‐‐ヘ \
ヽ ヽ/ | \ \
\_____,/ | し、_ノ
r─‐┤ ト、
/// `⌒⌒⌒⌒⌒ ヽ
////川i ii iミヽ
/ヾレ巛巛川川川川川川リリリ!
| 、/`ゞW人八从川川リリ
|、、ヽ | | |
小ヽ、 | \ ヽ
ト、′〈 ヾ、ヽ `ー、
| ) \ ノ
| / _| /
⊂,__」 (__ノ
上半身裸で、束ねた植物だけを腰に巻いた、高速でダンスする変態だった。
周囲に風が吹き荒れている。
278 :
魔法陣ゼロ:2008/11/03(月) 21:32:55 ID:XvvSzv0W
「ククリ、これが風の精霊……?」
「違う、これはキタキタオヤジさん。
ギップルちゃんはこっち」
ククリは、恐怖する自分達の横に浮かぶギップルを指差した。
「これ……」
「じゃあ、ふんどしは?」
「この黒いの」
キュルケとルイズが、脱力した。
「だから言っただろ? 面白いもんじゃないって」
「そうね……
あ、あんたたちがゲートに入ったわね」
一旦画面が暗くなったあと、儀式の様子が映った。
「あれ? ニケくん、先に目が覚めてたんだ」
「そうよ、この後、わたしが契約を――」
ここで、ルイズは気付いた。この二人が恋人同士だということは、この後の契約は、ククリにとって――
「え、契約って……」
ちゅっ
「そんな……ひどい……」
ククリの顔が、青ざめる。
「あ、ククリ、もしかして見ちゃった?」
「ククリ、これは契約の儀式で――」
空気が、震える。
「ひどいよ!」
ちょ、挿絵ならぬ挿AAw
支援。
おいwwwなにかと思った
281 :
魔法陣ゼロ:2008/11/03(月) 21:34:09 ID:XvvSzv0W
要塞のような学院が、衝撃に揺れた。
轟音と揺れが収まった後、教室に残ったのは……
呆然とするキュルケ。
涙を流すククリ。
割れたガラス。
吹っ飛んだ机と椅子。
そして、
二枚の、帯状の布のような物体。
床に張り付く、巨大な×印だった。
〜〜〜
少し時間が戻って、闇魔法結社。
「クッサアアァ!」
「ギップルよ、勇者達が見つかったか!?」
「今度はククリさんです! 探知機で増幅されたせいで、かなりハッキリとクサいです!」
「そうか、ではプードル3号の照準を合わせるのじゃ!」
「いえ、それは無理です! まだクサさが足りません」
「なんじゃと!?」
「行き先は異世界なんですよ? 正確に照準を合わせないと、時空の狭間に転送されてしまい、送ったアイテムは実質的に消滅してしまいます。
もっと強烈なクサさがあれば、照準をあわせられるのですが」
「そうか……ならば、待つしかあるまい。
彼らのクサさはこんなものではないと、信じようではないか……」
282 :
魔法陣ゼロ:2008/11/03(月) 21:35:17 ID:XvvSzv0W
以上、投下終了です。
シエスタ(?)の外見は、メイドガイ的なイメージです。
メイドガイ・シエスタwwww
しかしまとめに登録する時、あの挿しAAはどうなん?
21:45頃から投下します。
>>283 想像したらイヤ過ぎるww
>>284 シューティングスターの“なぎはらえー”の前例があるから問題なくない?
>>285 支援!
……あー、疲れた。
287 :
魔法陣ゼロ:2008/11/03(月) 21:47:41 ID:XvvSzv0W
>>284 AA用の機能があるので、それを使う予定。
ただ、文字サイズの変更がうまくいかないので、少し調整が必要なのかも。
「ZERO BOY’Sサーヴァントセレクション 第2話」
「それじゃ改めてよろしく、アキミ、ユズ」
「よろしくお願いします!」
「……は、はい……」
「そうそう、私はまだ自己紹介してなかったわね。私はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。……まあ、さっきみたいに『姉様』とか『お姉ちゃん』って呼ばれるのはちょっと嬉しいかしら。私3姉妹の末っ子だったから」
「そうだったんですか」
「そういえば、アキミは4人兄妹の3番目だったわよね? ユズへの自己紹介も兼ねてちょっと話してくれる?」
「あ、はい。まず1番上が春人兄様。お仕事で留守がちだった父様や母様の代わりにボク達3人の面倒を見てくれたとっても優しい兄様で、ボク大好きなんです!
2番目が千夏姉様。世話焼きだけど不器用なんですよね……。元気がよくって運動が得意です。千夏姉様ももう何でそうなのかわかんなくなるほど、兄様の事が大好きなんですよ。
それで末っ子が美冬。生まれつき体が弱くて病気がちだけど、可愛がられて育ったからなのかちょっとわがままで……」
「そうなの、同じ病弱でもカトレア姉様とは随分違うのね。ねえユズ、ユズの家族の事も聞きたいけどいいかしら?」
「……ユズにはママしかいなくて、パパはいないんです……。でも大好きな先生がいるから……、寂しくなんかないんです……」
「そう……。その先生ってきっと素敵な人なのね」
「はい……、先生のお薬がたくさん飲めると思うとそれだけで元気がでてくるんです……」
ルイズは秋巳とゆずの事が気に入った。なぜなら2人はルイズにとって可愛い妹のような存在になったのだ。先程本人が言った通りルイズは3姉妹の三女。妹が欲しいと思った事は1度ならずある。
そこに現れた2人は、ルイズの庇護欲をかきたてるのに充分な魅力を持っていた。
そんなルイズが早速した事は、2人に近付けさせたくない人物の名前を連ねたブラックリスト作成だった。
(まずはツェルプストーのとこのビッチね。あの女見境無いから特に注意しないと。いつも小柄な青髪の子連れ回してるけど、あの子もう餌食にされたんだわ……。
後はギーシュにマルコメ……本名何だっけ? まあ、思い出せないって事は大した事無い奴だろうから別にいいわ。この辺を注意すれば大丈夫ね)
「ルイズ姉様、どうしたの? ぼんやりして」
「いえ、何でもないわ。……あ、もうこんな時間じゃない。そろそろ寝るわよ。2人ともベッドに入って。特にユズはあんまり体が丈夫じゃないんでしょ? 召喚されて疲れてるだろうから」
「……あ、はい……」
「え、いいの……? ルイズ姉様」
「何言ってるの。女同士なんだから遠慮しないの!」
『………』
ベッドに潜り込んだ2人の沈黙の意味をルイズはまだ知らない……。
翌朝、秋巳が目覚めた。とても清々しい朝、絶好の洗濯日和だろう。
ルイズ・ゆずはまだ寝ている。
横には洗濯物が丁寧に置かれていた。
秋巳はまずルイズの寝姿を覗き込んだ。
昨夜、もし先に起きたら起こしてほしいと頼まれたのだ。
「ルイズ姉様、朝だよ」
体を揺らしたり耳元で声をかけたりしてみたが、ルイズは相変わらず寝息をたてている。
「乱暴にお布団剥がしちゃったら、きっと怒られるだろうなあ……。……兄様を起こしてたみたいにやってみようかな?」
まず秋巳はゆっくり布団を剥いで、ルイズに可能な限り体重がかからないよう注意しつつ馬乗りになる。
「ルイズ姉様……」
そしてそっとルイズと秋巳の顔と顔、唇と唇が接近していき、あとわずかで触れ合いそうになった時、ルイズの目が開いた。
「ア、アキミっ!? 何すんのよ!?」
「あ、起きた起きた。朝だよ、ルイズ姉様」
「そこにある服取って! ……アキミ、何であんな起こし方したのよ?」
「ご、ごめんなさい……。ルイズ姉様なかなか起きなかったから、家にいた時いつも兄様を起こしてたやり方ならきっとうまくいくかなって……」
「アキミ、あんた家でそんな起こしかたしてたの……?」
「う、うん……。それで時々ベッドの中に引っ張り込まれて……、それで、その……、学校お休みしちゃったり……」
「……アキミの兄ってもっと立派な人だと思ってたけど、考え改めた方がいいみたいね……」
そんなこんなでルイズ・秋巳・ゆずは一緒に部屋を出た。
廊下には同じような木製のドアが壁に3枚並んでいた。
そのドアの内の1枚が開いて、中から炎のような赤髪の少女が現れた。
「おはよう、ルイズ」
「おはよう、キュルケ」
ルイズは顔をしかめて嫌悪感もあらわに返事をした。
「ルイズの使い魔ってその子達?」
「そうよ」
「本当に2人も平民の子供を召喚したのね! 本当に凄いじゃない。私なんかこーんな立派なサラマンダーを召喚しちゃったわよ。いらっしゃい、フレイム」
キュルケが呼ぶと後ろのドアから大トカゲが出てきた。尾には炎が燃えていて非常に熱そうだ。
ゆずはキュルケに尋ねる。
「……キュルケお姉ちゃん、熱くないんですか……?」
「大丈夫、私にとっては涼しいくらいよ」
「とっとと行くわよ!」
「何をそんなに怒ってるの?」
「あ、そうそう、あなた達名前は?」
「ボクは志木秋巳です。こっちが橘ゆずちゃん」
「そう、変わってるけど可愛い名前ね。じゃ、お先に失礼。教室で会いましょうね」
そう言うとキュルケはフレイムを連れて颯爽と去っていく。
キュルケがいなくなるとルイズは拳を握り締めて吼える。
「何なのあの女! 自分が立派なサラマンダーを召喚できたからって!!」
「……あの……、ゆず達何か悪い事しちゃいましたか……?」
ルイズの剣幕に若干怯えたようにおずおずとゆずが声をかけてきた。
自分の憤怒がゆずの表情を曇らせた事にはっとしたルイズは、笑顔を浮かべてゆずの頭を撫でる。
「……大丈夫よ、何でもないわ。それより食堂に行きましょう。朝食が待ってるわ」
以上投下終了です。
ところで次回あたりシエスタを出す予定ですが、シエスタの祖母(と思われてる祖父)は誰がいいですかね?
>シエスタの祖母(と思われてる祖父)は誰がいいですかね?
いやその……
それくらい最初に考えといたほうがいいと思うよ
>>291 しばらく進んだら詰みますけど、なにか?
と言われても・・・・・。
294 :
MtL:2008/11/03(月) 22:01:22 ID:Mtav+i0r
予約が無ければ10分後に投下を開始しますー。
前回から大分間が空き、申し訳ありません。
MtLさんの投下終了後、10分ほどを間を置いて投下を始めたいと思います。
>>292 いえ、何人か候補はいるんですけど決まらないまま始めたので……。
候補としては、
白姫彼方(おと×まほ)
宮小路瑞穂(処女はお姉さまに恋してる)
市川吉香(ぼくのご主人様!?)
あたりを考えてるんですが……。
>>294 MtLの作者さん、どうぞ。
>>297 候補がいるのならせめてそれを先に言ってくださいませw
それはそうとMtL支援
mtl支援
>>297 ばっくれませんよね?期待して待ってますよ。
497 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2008/11/03(月) 22:01:23 ID:thvjTMZE
あの、あれ、なんだ、元ネタ知らんけど、ZERO BOY'Sっていうのは
そんないきあたりばったりで書き始めて大丈夫なのか
498 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2008/11/03(月) 22:08:52 ID:zOrTUuzQ
放置して投げても別にペナルティないし
いいんじゃないの?
301 :
MtL:2008/11/03(月) 22:12:01 ID:Mtav+i0r
マジシャン ザ ルイズ 3章 (48)戦いの火
トリステイン四万。
ガリア一万七千。
ロマリア八千。
それが地空合わせた、集結する予定の連合軍の全容であった。
「……壮観なものですね、これほどの船舶が一同に会するというのは」
アンリエッタが呟いた。
白地に百合の描かれたトリステイン国旗を掲げる多数の軍艦、その中でも一際壮麗にして巨大なフネ、旗艦『メルカトール』。
そのブリッジに、今女王としてアンリエッタは立っていた。
「ガリアとロマリアの先遣隊も続々合流しております。本隊も合流するとなれば、この倍にも膨れあがりましょう」
脇に控えたマザリーニの言葉。
「分かりました……先発している地上軍の様子はどうですか?」
続けてアンリエッタはもう片方に控えていた軍服の軍人に顔を向けて、その軍人――将軍ポワ・チエが答えた。
「はっ。先頃対空施設への攻撃を開始したとの報告が入ったところです。我々が到着する頃には制圧している頃かと思われます」
「……そうですか、兵達の士気はどうですか?」
「そちらも万端、何の問題もありません。我が軍の兵士達は皆、女王陛下の元で戦えることに気を漲らせています。このたびの戦、必ずや我々の勝利に終わるでしょう」
「わかりました……」
その発言に、アンリエッタは心中にて思う。
(やはり、ポワ・チエ将軍は無能ではありません……が、有能でもありませんね)
彼が言ったような生やさしい戦いではないことを、アンリエッタは予感していた。
「そうなると、やはり最大の懸念事項が気になりますね……」
「……懸念、ですか?」
「ガリアとロマリアです」
(……若い人材の育成と確保は、我が国の今後の重要課題事項となるでしょうね)
アンリエッタの言葉通り、ガリア軍は万全の体制とは呼びがたい状態にあった。
ガリアは虎の子の両用艦隊を今回の戦に駆りだしている。
しかし、その士気は低い。
その理由を記すにはまず背景となっている事情を知らねばならない。
元々、近年のガリアは王であるジョゼフに従う勢力王党派と、それに反発する謀殺された弟シャルルこそが王に相応しかったとするオルレアン公派との間で、軋轢が広がっていた。
表だっての内戦にこそ発展していなかったものの、それは宮廷内部だけではなく地方領主にまで及んでいた。
何かの契機があれば王家がひっくり返る、そう言う瀬戸際にまで、王家とりまく情勢不安は拡大していたのである。
加えて、王宮は先王ジョゼフの浪費のためにひっ迫した財政状態にあり、そのツケが民衆に跳ね返ってきていたことで、貴族の間だけではなく、平民達の間でも国王に不満を持つ者がほとんどという有様であった。
このような状態で、先王ジョゼフの娘として即位したイザベラへの風当たりも相当に強いものであった。
更に悪いことに、イザベラ自身もあまり評判の良くない王女であったこともこれに拍車をかけた。
特に、隣国トリステインの王女アンリエッタとの比較は彼女の評判を大いに貶める原因の一つとなっていた。
その後、先王ジョゼフの謀殺された弟、その忘れ形見である一人娘のシャルロットを身内として遇し、オルレアン公爵家の名誉を回復し、彼女を新設した近衛騎士団の騎士団長に任命したことで、多少風向きも変わった。
変わったが、それだけである。
それまでの不信を拭い去るほどのものではない。
シャルロットを側に置いたのは、狡知に長けたイザベラの人気取りと取る見方も強く、
特に強硬な反王党派貴族の間では、弱みを握られたか魔法で心を操られたシャルロットが、イザベラに無理矢理に従わされているのだという流言が流布し、イザベラを打倒してシャルロットを王にせよと声高に叫ばれるほどであった。
支援
遅いけどウルトラ5番目の使い魔さんGJ!
今回は目頭が熱くなりました!子供の頃ミラクル星人がテロリスト星人に殺されて
子供に送ったビー玉にミラクル星人の姿がに泣いた私ですが!
今回はミラクル星人が助かって嬉しかったです!
ウルトラ5番目の使い魔さんありがとうございました!
304 :
MtL:2008/11/03(月) 22:14:58 ID:Mtav+i0r
このような内政不安を抱えた情勢で、イザベラが国外へ動かせる兵士の数にはやはり限界がある。
頼みの綱は諸侯の提供する兵力であったが、これも拒否する者が現れる始末。
特に先王ジョゼフに領地を没収されて、かねてから不満を募らせていた貴族は断固としてこれを拒否、無理強いをすれば内戦に発達しかねないという体たらく。
士気が低い理由は他にもある。
ガリア王国はこの戦が始まった当初、アルビオン神聖共和国と軍事同盟を締結し、トリステイン王国・ゲルマニア帝国に敵対して宣戦布告まで行い、一度は矛まで交えた。
それが短期間の間に翻され、敵であったはずのトリステインと同盟を結んで、アルビオンを裏切ったのである。
これに対して『大義はどこにあるのか』という疑問が末端の兵士の間で拡大し、それが全体に普及するのにそう時間はかからなかった。
結果、両用艦隊を中心として数の上こそ一万以上の兵力が揃えられはしたが、その士気は著しく低いものとなっていた。
両用艦隊の旗艦、アルビオンの超大型艦『レキシントン』が沈んだ今となってはハルケギニア最大のフネである『シャルル・オルレアン』の甲板の上で、イザベラは向かい風を浴びながら、腕を組んでまっすぐに先を見つめていた。
目線の先には、帝都ウィンドボナがあるはずだった。
既にゲルマニア領空に入ってから一日近くが経過している。トリステイン軍と合流する手はずとなっているウィンドボナ南西の空域は近い。
「本当に、付いてきて良かったのか?」
イザベラは、そう背後に居るはずの少女に声を掛けた。
「……いいの」
言葉を返したのは、マントを羽織り、肩にオルレアン公を示す紋章が刺繍されている学生服風の制服を着ている少女。
タバサことオルレアン公爵家当主、シャルロットであった。
「トリステインに母上を残してきているんだろう? そっちについていた方がいいんじゃないのか?」
その言葉にシャルロットは首をふるふると横に振ると、続けて言った。
「……こっちの方が、心配」
心配、あの人形娘が心配である。
その変化に、イザベラはくつくつと笑いをこぼした。
「はんっ、お前に心配されるほどあたしは耄碌しちゃぁいないよ。私はお前の力なんかこれっぽっちも必要としちゃいないんだよ。だからさっさとどことなりでも好きに行くといいさ」
それでも、ポーズは崩さない。
自分と従姉妹の、そんな関係もわりかし気に入っているのだ。
「素直じゃない」
「その方が格好良いだろ?」
そう言うと彼女は前を見たままニヤリと笑った。
さて、ガリアは兎も角、トリステインがそれだけの大軍をこの戦に動員できたことには訳がある。
通常、敵国領土内に軍を派遣する侵略戦争の場合、周辺諸国に隙を見せないために、ある程度の防衛戦力を国内に残すのが普通である。
これは、その戦略上の基本を無視したからこその大軍であった。
防衛最低限の兵力すらも攻撃に割り当てる。なりふり構わぬ捨て身の攻撃。
それが、参謀達が提案し、アンリエッタが承認した秘策であった
宗教庁から『聖戦』こそ引き出すことこそできなかったが、連合軍にロマリアを引き込んだから今だから成り立つ戦略である。
宗教庁が事実上認めた戦争で、同盟国を背後から攻撃するなど、ロマリアにもガリアにもできはしない、少なくともアンリエッタはそう思っていた。
事実、内部に情勢不安を抱えるガリアにはその余力は無かったし、宗教庁を実体上の長としているロマリアは、面子にかけてそのような真似はできなかった。
支援
306 :
MtL:2008/11/03(月) 22:18:26 ID:Mtav+i0r
だが、それでトリステインを攻撃可能な国が無くなったわけではない。
地理上、トリステインに隣接している国はガリア、ロマリアと、もう一国あるのだ。
ゲルマニアである。
大きな音を立てて門が破られる。
トリステインを東西に走る街道の街セダンに、敵が雪崩れ込んでいた。
攻撃を仕掛けたつもりで、その実仕掛けられていた。
強烈なカウンターアタック。
アンリエッタの誤算、それはゲルマニアの速すぎる『足』であった。
『あ゛ぁぁぁぁぁぁぁ』
『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ーーー」
『お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛』
甲冑を身につけた腐った死体達が、街の中を全力疾走していた。
その行軍速度は常軌を逸している。
武装した不死者の大軍、それが、疲れを知らぬことを良いことに、整備された街道を恐ろしい早さで移動しているのだ。
この勢いなら途中にあるいくつかの都市を踏みつぶして街道を踏破し、一両日中には首都トリスタニアまでたどり着いてしまうだろう。
その様はゾンビと聞いて緩慢な動作しか出来ないと思い込んでいる人間にとっては、驚愕以外の何者でもない。
だが、幸いにしてそれを前にして卒倒するような人間は一人もいなかった。
いや、街道の街セダンには、人っ子一人残っていなかった。
アンリエッタの誤算、それすらも読んで手を打っていた者が一人いたのだ。
ウルザである。
ウルザは街の全ての住人を、呪文を使って強制的に避難させ、そこの一つの秘策を施した。
その策の要となる人物が街の中心部、高い尖塔の上から地上を見下ろしていた。
「なんてことだ……」
彼は、手足をちぎれるほどに振って、腐汁をまき散らしながら駆け込んでくる完全武装の不乱死体を目にして絶句した。
はげ上がった頭、手には彼がメイジ出あることを示す杖、そしてローブを纏っている。
彼は眼下で起こっている、決壊した川のように死体が雪崩れ込んでくる光景を前に、立ちすくんでいた。
学院の教師、コルベールであった。
その姿はやつれ、疲れた印象を受ける。
いや、事実、彼は全てに疲れ果てていた。
驚きに開いていた目を閉じる。
頬に冷たい風が当たる。その冷気がひんやりと心地よい。
不安にざわめく心を宥めてくれる。
「行き着く場所がこんなところなら、悪くはないのかもしれません……」
暗い過去に思いを馳せながら、そう呟いた。
支援
308 :
MtL:2008/11/03(月) 22:21:37 ID:Mtav+i0r
ジャン・コルベールという人間の半生は、苦悩と共にあった。
タングルテールにあった村を焼いたあの日から、コルベールは常に後悔の炎にその身を焦がし続けてきた。
もしも誰かがそのことを責めてくれたなら、彼の気持ちも多少楽になったのかも知れない。
しかし、幸か不幸か、二十年間彼を弾劾する者は現れなかった。
その間、コルベールは償いとして自分にできる精一杯を尽くしてきたつもりだった。
希望ある若者達に道を示し、破壊と悲しみしか産まぬ火の力を、人々のために役立てる方法は無いかと探ってきた。
全ては償いのためだった。
だが、それこそが相対の連鎖の始まり。
罪の意識に駆られて、代償行為としての贖罪を行う。
しかし加害者としての記憶は、癒えることのない罪の傷跡となり、新たな罪の意識を生み出していく。結果として終わることのない連鎖が生まれてしまう。
罪を償っても償っても、自分が自身を許せはしない。
永久に終わることのない無限贖罪、それが彼を苦しめているものの正体。
彼が強い、あるいは弱い人間だったならば、円環を形成する前に、忘れてしまえたかも知れない。
しかし、コルベールは強くもなければ弱くもない、ただの凡人だった。
彼がここでウルザに頼まれたのは、王都へと迫る脅威の足止めだった。
つまり、今、街を蹂躙している者達を、コルベール一人で止めねばならない。
軍隊相手に、たった一人で足止めを行うなど、聞いたこともない。
しかし、心当たりが無いわけでもない。
結局コルベールは、その頼みを断らなかった。
契機はこれまでいくつもあった。
復讐に取り付かれた狂人、ウルザの姿――自分には想像もつかないような長い時間を、復讐に執着して生きてきた狂人の姿は、彼に復讐と贖罪の違いはあれど、その行いに終わりがないことを告げていた。
道徳の守護者、教皇の言葉――悔いながら、死ぬまで贖罪に全てを捧げ尽くせという、彼の未来を絶つ言葉。
それらは一つの理由にしか過ぎない。だが、彼の選択の後押しをするものとなった。
コルベールは杖を床に置き、足下に置いてあった革袋から、金属の光沢を放つ一組の籠手を取り出した。
そしてゆっくりとそれを手にはめる。杖を取る。
準備は整った。
さあ、終わらせよう、何もかもを。
「ウル・カーノ・ジュラ・イル……」
基本は発火。
それを複合的かつ持続的に掛け合わせてルーンを構成、イメージを形にしていく。
両手につけたグローブのような籠手が、精神力を増幅し、より明確にイメージを現実にしていく。
本来では扱えぬであろう秘奥の境地まで、コルベールを導く。
「ウル・カーノ……」
胸の前で一度手を組み、それから徐々にそこを放していく。
放した両手の間、その何も無い空間を目標に精神を集中させる。
するとそこに小さく光が灯った。
コルベール、支援
支援
311 :
MtL:2008/11/03(月) 22:25:43 ID:Mtav+i0r
「ウル・カーノ……」
イメージするのは、細かく小さな粒の加速、加速、加速。
呪文を重ねがけするたびに、光の勢いが増していく。
そこで起きているのは、基本の応用、ようは発火の魔法と同じことである。
ただし、本来のそれとは質と規模が違う。
精密精緻。コンマの誤差も許されない呪文操作によって、目的とする空間の温度だけを加熱していく。
「ウル・カーノ……」
最強の系統は何か? そう問われて、メイジならば大体は己の系統を答えるだろう。
コルベールもそう、彼の場合は火だと思っている。
彼の場合、それは何も自信や慢心からそう思っているのではない。
理論や経験でもって、火であると確信を持ってそう答えるものである。
風は偏在し、水は蘇生させ、土はどんなものであっても形作るであろう。
だが、火はそれらとは根本的に次元が違う。
「ウル・カーノ……」
火は、何もかもを焼き尽くす。
それは術者ですらも、例外なく。
「ウル・カーノ・ニエル・ゲーボ」
コルベールの絶望を乗せて呪文は完成し、
『オビリスレイト』
世界は赤い炎に包まれた。
「……嗚呼、神よ……」
最初に気がついた男、行商人の呟き。
セダンの街から十リーグ離れた山中を歩いていた彼は、世界が壊れたような音と衝撃で異変に気がついた。
何を起きたのかを確認するためにその方角を見たとき、彼は生涯に渡って忘れられぬ光景を目にすることとなった。
空がオレンジに染まっている。
地上から天へと、見たこともないような形の巨大な雲が伸びている。
それはまるで大きな笠を持ったきのこのような形をしていた。
何が何だか分からない。だが、恐ろしく冒涜的な光景であることは確信できた。
『きっと地の底から、地獄がこの世に顔を出したに違いない』
そう思った男は、その場に膝を突いて体を震わせながら神に祈りを捧げたと後に語っている。
その日から、地図の上で、一つの街が抹消されることになる。
戦いの始まりだ! 女王を称える、ときの声をあげろ!
――トリステインの兵士
>>303が半角にするのは、sだけでなくsageだった支援
314 :
MtL:2008/11/03(月) 22:29:54 ID:Mtav+i0r
>>306に誤字発見……11行目、早すぎるのはゲルマニアではなく、アルビオンでした。
ということで、今回から最終戦開始です。
次も早く投下出来るように頑張ります。
ではー。
ああ、コルベール。
投下乙です。
エベレストからも飛んだんだよな
間違えました ごめんなさい
コルベール、もろともに?
MtLさん、投下お疲れ様でした。
毎回、楽しみに読ませていただいています。
それでは、予約の通り、22:45から投下を開始したいと思います。
今回から、不評だった40字改行をやめ、長い文章は適当に読点で改行しています。
抹消(Obliterate)ktkr!
穏やかな日差しが、破れた窓から差し込む。
ルイズとリューマの二人は、黙々と雑然とした教室の掃除をしていた。
結局、至近距離で爆風に吹き飛ばされた講師のシュヴールズが意識を失ったため、授業は中止。
ルイズは罰として、滅茶苦茶になった教室の片付けをする羽目になり、リューマもまた、それを手伝っていた。
どちらが言い出すでもなく、力仕事はリューマ、細かい拭き掃除などはルイズ、というように分担が決まり、
意外に効率よく掃除は進んでいく。
それでも、それなりに手こずりながらようやく掃除も終わった頃、ふと手を止めたルイズが、ぽつり、と口を開いた。
太陽が、中天に差し掛かろうしていた。
「あんたは、笑わないの?」
「……え?」
互いにずっと黙りこんでいたため、リューマは咄嗟にルイズの言葉の意味が理解できなかった。
気がつけば、箒を手にしたルイズの背中が、細かく震えていた。
「わたしが、魔法使えない事。
あんたは、笑わないの? ねぇ、可笑しいでしょ。
名門のヴァリエール公爵家に生まれて、わたしだけが魔法が使えないのよ?
あはは、ちゃんちゃら可笑しいわ。みんなが笑うのも納得ね」
笑えるはずがないと、そう言えば良かった。
ルイズが、日々努力を重ねている事は知っていると。
ルイズの部屋、本棚に詰み込まれた本は、どれもこれも手ずれがするほど読み込まれていた。
文字は読めないものの、あの本の背を見るだけでも、ルイズがどれだけ日々勉強していたか、
魔法を使えるようになる事を切望していたか、良く分かる。
その努力を笑う事など、自分に出来るはずがないのだ、と。
だが、言えなかった。
震える背中が、何もかも拒絶している気がして。
何を言っても、傷つけてしまいそうだったから。
たとえ年若い個体とはいえ、地上最強の生物種であるドラゴンを前にしても臆することはなかった。
少なくとも、リューマは自分を臆病であると思ったことはない。
だが、ルイズの背中を前にして、リューマ=バステソーンは、確かにあと一歩踏み込むことを恐れた。
ナイフで自らの傷口を抉るように、ルイズの言葉は続く。
或いは、自分でも止められないのかもしれない。
「今日もね、ちょっと期待しちゃったの。
あんたを召喚出来たんだから、もしかしたら、錬金くらいなら使えるようになってるんじゃないかって。
出来るわけないのにね。
何時もそうよ。今なら出来るんじゃないか、今度こそは、って。
馬鹿よね。大馬鹿だわ。それで出来た例なんてないのに」
治りかけたかさぶたを掻き毟る様にも似て、ある種の自傷は快楽を伴う。
それは精神的な物でも同じだ。
いや、目に見える痛みがない分だけ、溺れやすいのかもしれない。
323 :
MtL:2008/11/03(月) 22:46:01 ID:Mtav+i0r
>>321 隣接している国はゲルマニアなので、そこは合っています。
というか、そこでそう書いたから勢いで
>>314の場所で間違ってしまったのです……。
(´・ω・`)
そして若獅子さんの支援です。
「本当に馬鹿、とっとと諦めればいいのにね」
……でも、諦められないのよ。
最後のつぶやきは、昼休みの開始を知らせる鐘の音に紛れてしまいそうなほど小さかった。
元々大きいとは言えない背中が、ますます小さく見える。
リューマの脳裏に、オールド・オスマンの言葉が蘇る。
“虚無の属性”
それは、ハルケギニアの伝説。
それこそが、オールド・オスマンが、この疑似次元界に今だ留まっている理由。
そして、ルイズに宿る力。
百数十年に渡る研究と観察の結果、オールド・オスマンは、虚無の属性の発現条件をある程度絞り込んでいた。
一つ、トリステイン、アルビオン、ガリア、いわゆる三王家に連なる血筋であること。
一つ、にもかかわらず、“属性魔法に対する適正”がきわめて低いこと。
ルイズは、そのどちらにも当て嵌まる上に、極めて特異な“失敗”の仕方をする。
虚無の属性について、独自の研究を行っていたオスマンにとって、ルイズは待望の手元に置いておける虚無属性のメイジ候補であり、
客人として遇しているリューマに対して、ルイズの傍に居て欲しいと要請したのは、それ故だった。
ことに情報提供という点において、オールド・オスマンはきわめて誠実だったといえる。
リューマが戸惑う事の無いよう、様々な事柄を教授していた。
自分の研究成果を包み隠さず話す機会が、あまりにも長い間存在しなかった事も、影響しているのかもしれない。
だが、事情を知ってしまったがために、言えなくなる言葉もある。
例えば、“ルイズなら、何時か魔法が使えるようになるよ! あれだけ努力してるんだから!”とか。
文字通り気休めでしかない事を知っていながら、慰められるほどリューマは器用ではなかった。
「あの……ええと」
実を言えば、リューマにはルイズの気持ちが痛いほど分かる気がしていた。
『ゼロ』のルイズという言葉の響きに見え隠れする悪意の影は、
リューマの長くない半生の中で幾度も投げつけられてきたそれとよく似ていたからだ。
功名に焦った挙句の愚行により、東西戦争の終結を一年遅らせた張本人、功名乞食バステソーンの子。
家名に纏わりつく父の汚名の所為で、物心ついた時から、リューマは嘲笑と侮蔑に晒されてきた。
その悪意を跳ね除けるためにこそ、リューマ・バステソーンは血の滲むような努力を重ねてきたのだ。
それはルイズも同じだ。
違うのはただ一つ。
その努力が報われたか否か。
支援
幸いにもリューマには才能があった。
得難い仲間にも恵まれた。
だが、ルイズには……。
結局のところ、リューマの思考はそこに行きつくのだ。
報われたリューマが、報われないルイズに果たして何を言えばいいのか。
何を言っても、それは傲慢でしかないのではないか。
だが、震える小さな背中を前に、何かしなければならないという義務感が、リューマの大きいとは言えない胸の中で吹き荒れていた。
このまま放っておいたら、今にもルイズは折れてしまいそうだったから。
それを見過ごすことだけは、どうしても出来なかった。
しかし、リューマは、まだ若く、それを補えるほどの知識もない。
何か言わなければという気持ちと、何も思いつかないという事実が、リューマを追い詰める。
どうしようもなく煮詰まったリューマの脳内で、そういった諸々が奇妙な化学変化を起こした。
「えと、あのね。ルイズは、剣術とか興味無い?」
リューマ・バステソーンは、悲しいほどにどこまでも体育会系だった。
「……は?」
一度口にしてしまった言葉は、決して取り返しがつかない。
たとえ後から取り消しても、口にしたという事実は残るからだ。
リューマにもはや退路はなく、その戦闘スタイル同様、突撃するよりほかはない。
「ほら、身体を動かさないと考え方が暗くなるって言うでしょ。
ルイズも身体を動かした方が良いかなって。
でも、ぼくに教えられるのは、それくらいだから……」
がらんとした教室の中に、何とも言えない沈黙が流れた。
ルイズは驚いたように目を丸くしている。
リューマの背中に、冷たい汗が流れ落ちる。
沈黙を破ったのは、小さな笑い声だった。
最初は小さくクスクスと、やがて、堪え切れないというように声を上げて。
ルイズだった。
何がそんなにおかしいのか、目尻に涙まで浮かべて、大笑いをする。
ひとしきり笑ったあと、目尻を拭いながら、ルイズはしっかりとリューマの目を見た。
そこには、さきほどまでの小さな背中の面影はもうどこにも残っていない。
支援
「お、思い詰めた顔で何を言うかと思ったら。
そうね。最近、乗馬もご無沙汰だったし、ちょっと気が塞いでたのかもね。
でも、だからって、剣術の稽古って……」
まだ可笑しいのか、話しながらも笑いがこぼれる。
ようやく明るくなった雰囲気に安堵しながら、リューマもわざとらしく膨れてみせる。
「でも、剣を振ってると、段々頭の中が真っ白になって、嫌な事とか全部忘れられるよ?
すっごく気持ちいいんだから」
「ごめん。馬鹿にしたわけじゃなくってね。
思いもよらなかった事を急に言われたから、つい。
あ、そうだ。リューマも騎士を目指してたなら、乗馬は達者なんでしょ?
今度、遠乗りにでも出掛けましょ。案内するわ」
ようやく笑いがおさまったのか、ルイズは一つ深呼吸をすると、大きく伸びをした。
それに合わせるように、昼休みの始まりを知らせる鐘の音が響く。
「あー、こんなに笑ったのは久しぶり。
なんだかお腹すいちゃったわ。お昼のメニューは何かしら?」
笑いの余韻を残したまま、ルイズはリューマと共に颯爽と歩きだした。
ぼろぼろの制服を覆うクロークの端を摘まみながら、食事の前に着替えなきゃね、と一人呟く。
上機嫌に鼻歌でも歌いだしそうな足取りが、教室の扉の前で、ふと、止まった。
ドアを見つめたその顔には、奇妙な強張りがある。
ルイズは、もごもごと口の端を動かしたのち、不思議そうな表情を受かべるリューマに向けて、意を決したように口を開いた。
ぼそぼそという呟きに近い言葉は、それでもなんとかリューマの耳に届いた。
「……その、ありがと、励ましてくれて」
耳たぶが赤い。
きっと、頬も赤くなっているはずだ。
良くないと思いながらも、思わずマジマジと見つめてしまう。
「そっ、それだけ……って、何よ、その顔っ!」
「ルイズって、可愛いよね」
ぽろりと本音が零れおちた。
その言葉に、ほんのり赤い程度だったルイズの顔が、真っ赤に染まった。
「な、ななな何、言ってるのよっ! ば、馬鹿な事言ってないで、ほら、急ぐわよっ!」
昼休みが終わっちゃうじゃない、と一息で言い切って、そのまま走りだす。
クロークが風にはためくのも、お構いなしに。
その背中が、どこか楽しげに見えたのは、決してリューマの気のせいではない筈だ。
食堂は、若者ばかりが集まる学院に相応しい活気にあふれていた。
その中でも、特に騒々しいのが、二年生の男子が集まる一角だった。
興奮ぎみに語られるのは、『ゼロ』のルイズが呼び出した平民の話題。
より正確に言えば、平民が持っている大剣の話題だった。
ある者は、実戦で使い物になるはずのない虚仮脅しだと言い、
またある者は、あれだけの重量があれば、振り上げ振り下ろすだけでも驚異足り得るはずだと主張する。
「大体、あの平民は盾も持っていたんだろう? それこそ、端から実戦であの大剣を使う気がない証拠じゃないか!」
「それは……あの盾の意図は良く分からないが、でも、俺は見たんだ、教室であいつが剣を振るところを。
通り一遍の熟練で、ああも見事に扱えるわけがない!」
喧々諤々と議論を続ける友人たちを眺めながら、ギーシュはぼんやりとスープをかき回していた。
料理人が精魂込めて作り上げたスープは、もうすっかり冷めてしまっている。
思い出すのは、教室の天井についた一筋の傷。
あの平民は、薄く、浅いとはいえ、石造りの天井を斬ってみせたのだ。
一見、軽薄でキザな馬鹿であり、内実もおおよそその通りなギーシュだが、これでも一応武門の出である。
父が元師職まで勤めた軍人である事もあり、戦場上がりの平民と接する機会は、案外に多い。
それだけに、武器の力とその限界を十分に知っているつもりだった。
だが、その限界が目の前であっさりと乗り越えられたという事実は、ギーシュに少なからぬ衝撃を与えていた。
こと戦闘において、平民に対する己の優位を疑うメイジはいない。
無論、この確信は容易に過信へと変質する。
思わぬ罠に絡めとられ、平民の前に斃れるメイジが後を絶たないのはその所為と言っても良い。
とはいえ、真正面からの一対一ならば、必勝は約束されたようなものだと言える。
魔法を持つものと持たない者の力の差は、文字通り大人と子供のそれに等しい。
そう、自然に信じてきた。
だが、それは、誤りなのではないだろうか。
もしかしたら、自分は、いや、自分たちは、上げ底靴を履いた子供に過ぎないのではないだろうか。
恐ろしい疑問だった。
それは、貴族の貴族たるを否定する疑問とさえ言える――。
勿論、それはギーシュの考えすぎである。
そもそも、長弓や弩の精度・威力の向上により、メイジの戦闘における優位は、必ずしも絶対とは言えなくなって久しい。
だが、建築や医療など、平民の技術がメイジの振るう魔法に及びもつかない分野など、まだ幾らでもあるのだ。
武門の出であり、また、分かりやすい“力”に憧れがちな、少年期という時間を過ごすギーシュならではの短絡だと言えた。
とはいうものの、客観的に見た時に、底が浅く、意味がないものだとしても、悩める本人にとって、
それがアイデンティティーに関わる深刻な懊悩であることに変わりはない。
悩めるギーシュを置き去りにして、議論はぐずぐずのまま収束しようとしていた。
結局のところ、リューマの力――並外れた大きさの大剣――を認めるにせよ、
否定するにせよ、どちらの論拠も、これという決め手に欠けるのだ。
「確かめるために、決闘をするわけにもいかないしなぁ」
「いや、禁じられてるのは、貴族同士の決闘だろう」
平民と貴族の決闘なら何も問題はないはずだ、などと乱暴な意見まで飛び出し、
ならお前がやれよ、いや、お前こそ、とふざけ半分に押し付け合う。
その矛先が、不意にギーシュに向けられた。
「なぁ、ギーシュ。君、どうだ。あの平民に決闘を吹っかけてみる気はないか?」
ヒーローになれるぜ、と太目の人の良さそうな友人――マリコルヌ――が、ギーシュの肩を叩いた。
「ああ……それも良いかもしれないな」
「へ?」
思わぬ返答に、呆然とするマリコルヌを尻目に、
ギーシュの眼差しは、ルイズと共に食堂に現れたリューマへと注がれていた。
ズボンの隠しに忍ばせた、愛しい恋人からの贈り物のことが、ちらりとギーシュの頭の隅を過った。
〜ギーシュの馬鹿ギーシュの馬鹿ギーシュの馬鹿ギーシュの馬鹿ギーシュの大馬鹿!!
――――モンモランシー・マルガリタ・ラ・フェール・ド・モンモランシの日記より
以上になります。
次はなるべく早くお会いできたないいなぁ、と思っています。
それではまた。
乙ー
お疲れ様です!
頑張れギーシュ。
待ってました乙
そしてギーシュ、君の事は忘れない・・・
乙でした
乙です
このギーシュは微妙に一味違いますね。
待ってました!乙
GJです
ギーシュがんばれよー死ぬなよー
ジョゼフがff4からゴルベーザ召還を考えてみた
風のワルド
炎のメンヌヴィル
土のフーケ
水の・・・クロムウェル?
>>339 ルイズ側ならあっさり埋められるんだけどな
風のタバサ
炎のキュルケ
土のギーシュ
水のモンモランシー
風にはマリコルヌを推したい
まさかのジェシカ
>>341 なんか水だけしょぼい上にみんなレコンキスタのメンバーだぞw
ボーウッドが水のトライアングルだ。
忠誠度は問題ありだが、職務はこなしてくれるぜ。
水の使い魔か、シタターレの人思い出した。あれはおもしろかった。数少ない完結作だし。
水関係なら、トリトンはまだ呼ばれてなかったよな。
>184 こと『虚無と金の卵』の人
投下乙。
一部言い回しがおかしいように思えるので、下に列挙してみる。
>俺は、あの場に途中からやってきた女性、彼女がフーケだろう。
「俺は、あの場に途中からやってきた女性、彼女がフーケだと思う」かな?
>ロングビルが実はフーケ、という話はあくまで俺の認識というだけで、人に見せられる何一つ証拠など無い。
「ロングビルが実はフーケ、という話はあくまで俺の認識というだけで、人に見せられる証拠など何一つ無い」かな?
>その……君が言うのか……?
「その……それを君が言うのか……?」か「それを……君が言うのか……?」かな?
>そしてウフコックの手は、手段など幾らでも用意されていた。
「そしてウフコックには、手段など幾らでも用意されていた。」かな?
誰もいない……?
投下するなら今の内……
03:00ぐらいから……
寝る前に支援
もう寝なきゃだけど支援
ありがてぇ……! ありがてぇ……!!
むしろ誰かいないと投下はキツくなるんだと思いつつ支援
よろしい、ならば支援だ!
投下を!
一心不乱の投下を!
ゼロの氷竜 十話
トリステイン魔法学院のとある場所に、四人の男女が集っていた。
困り顔で沈黙しているのは、薄い頭を持つ教師、コルベール。
微笑みながら少女の頭をなぜるのは、銀髪の女、ブラムド。
困ったような、照れたような表情で頭をなぜられているのは、金髪を縦に巻いた少女、モ
ンモランシー。
憮然とした表情を浮かべ、ブラムドへ鋭い視線を投げかける少年、ギーシュ。
正確にいえば、その視線は彼の愛しいモンモランシーの頭をなぜる、ブラムドの右手へと
注がれていた。
常であればその視線に気づいたであろうブラムドだったが、先刻生じた疑問に思考の大半
を割かれ、右手は意識せずに動かしているだけでしかない。
ただ、ギーシュがそれを知る術はない。
彼にとっては目の前の事実だけが存在する。
つまり愛しいモンモランシーが、自分以外の誰かに触れられているという事実が。
とはいえ、朝食の際にオスマンにいわれたことを、ほんの数時間で破るわけにはいかない。
しかし、そこで踏みとどまれないのがギーシュという人間だった。
それは若者故の血気にはやる一面か、もしくはモンモランシーへの愛情か、はたまた彼の
そこはかとない頭の悪さか、あるいはその全てか。
何にせよ、ギーシュは行動することを決めた。
それでも直接的な手段に出ない程度の分別はある。
頭を働かせたギーシュはブラムドの言葉に思い至り、少し口をゆがませた。
「ブラムド様、よければあなたの知る破壊の力を、私たちに見せていただけませんか?」
「ミスタ・グラモン!?」
「コルベール先生、先刻ブラムド様はただの客人でおられるつもりはないと仰いました。
魔法学院でのメイジの仕事といえば、魔法を教えることではありませんか?」
建前としてみれば、ギーシュはそれほどおかしなことを言ってはいない。
コルベールには、とっさに反論の言葉を思いつくことはできなかった。
そのやりとりを、ブラムドはどこか楽しそうに眺め始める。
「魔法を教えるのであれば、まず手本を見せて導くことからはじめるのが常道ではありま
せんか?」
困り果てるコルベールと対照的に、ブラムドは存分に稚気を刺激されていた。
「よかろう」
「ブラムド殿!?」
空いた手でコルベールをとどめるブラムドだが、その右手は未だにモンモランシーの頭の
上にある。
当然ギーシュの視線はその右手に注がれ、ブラムドは少年の若々しい嫉妬に気付かされた。
「教師として働くかどうかはわからぬが、手本を一つ見せる程度のことはしてもよい」
ブラムドが自分の言葉に乗るかどうか、ギーシュは一つ目の賭けに勝利する。
「我の知るのは破壊の魔法ばかりだ。故になにか的がいるが」
ブラムドの言葉に、ギーシュが手を挙げる。
「それはわたくしが。……ワルキューレ!!」
ギーシュの高らかな声とともに振るわれる造花の杖、バラを模したそれから七枚の花びら
が落ち、みるみるうちにそれらが人型を成す。
「一度に七体も!?」
モンモランシーの小さな驚きの声に、ギーシュは満足げな表情を浮かべていた。
だがギーシュはワルキューレを出したその後のことを、特に考えているわけではない。
彼がそのそこはかとない頭の悪さを見せつける瞬間である。
「ほぉ、これがこちらのゴーレムか」
さすがにモンモランシーの頭から手を離し、ブラムドはつぶやきながら手の甲で軽くゴー
レムを叩く。
内部で反響する音を確かめ、その中が空洞であることを看破する。
さて、とブラムドは考える。
ルイズを始め、シュヴルーズもモンモランシーもギーシュも、魔法を使うときには杖を持
っていた。
ルイズの味方と呼べるかわからないものたちの前で、あまり手の内をさらすのは得策では
ないだろう。
「コルベール、杖を貸してくれ」
「は? いや、しかしこの杖は私が契約したものですので、ブラムド殿には……」
……面倒なものだ。
と思いはしたものの、ブラムドはさらに言葉を重ねた。
「魔力が通る杖であれば、大した問題はない」
その強い語調に、コルベールも反論することなく杖を手渡す。
「それではグラモン、少しゴーレムたちを離れさせてもらおう」
そういいながらブラムドは、密かに『魔力感知』を使う。
ギーシュから伸びるマナの線が、ゴーレムたちにつながっていた。
ゴーレムたちが動こうとする直前、その線が太さを変える。
……作りだし、それを保ち、命令を下す、そのそれぞれにマナを使い続けるのか。
……あまり効率的とは思えぬが、不意の戦にも対処できると考えれば利点もあるか。
フォーセリアのゴーレムとの違いに、ブラムドは強い興味を感じていた。
「しかし金属か……」
そのつぶやきを弱気の現れとみたギーシュは、口をゆがませながらブラムドへ問いかける。
「青銅ではありますが、ブラムド様の知る破壊の魔法では打ち壊せませんか?」
後先を考えずにブラムドを挑発したギーシュだったが、勝算もなしにワルキューレたちを
出したわけではない。
元の姿が巨大なドラゴンであれば、人間へ化けるのにそれなりの魔力を使っているだろう。
であれば、破壊の魔法といってもそう大したことはできないに違いない、と。
だが、ギーシュにとっては大きな誤算が存在する。
ブラムドが人の姿へ変えた『変化』の魔法は、人間へ化けるための魔法ではなく、人間に
なるための魔法であり、人間で居続けることに魔力を消費しない。
つまり、人間の魔術師ブラムドは、その破壊の力を存分に発揮することができた。
人間である以上、竜としての能力は一部しか使えず、しかも発揮するためには竜語魔法を
使うという形をとらざるを得なかったが。
「いや、折角なので我の知る水に関する魔法を見せようと思ったのだが、凍らせる魔法は
ゴーレム相手では効果が薄いのでな」
いまだ自らの誤算を知らないギーシュは、ブラムドの言葉が強がりにすぎないと思い、そ
の頬はゆるんだままだった。
「ひとまずは、もっとも弱い魔法を見せよう」
ギーシュの視線の先で、ワルキューレたちは防御のために腕を十字に構える。
『光の矢(エネルギーボルト)』
モンモランシーとコルベールの視線の先で、ブラムドの持つ杖の先端が光を放った。
ブラムドの視線の先で、『光の矢』は十字に組んだワルキューレの腕とその胴体を貫き、
その背後にいたワルキューレの肩口を吹き飛ばす。
腰から上を粉砕されたワルキューレの下半身が、頼りなく膝から崩れ落ちた。
四人は一様に驚きの表情を隠せない。
ただ、三人のメイジと一人の魔術師の驚きは、同一のものではなかった。
……威力が強すぎる。
ブラムドの知る『光の矢』は、ブラムドの魔術としての技量が高いとはいっても、青銅の
ゴーレムを貫通し、その背後にまで影響を与えるほど強いものではない。
全力で放ったのなら話は変わるだろうが、そうでなければ十字に組んだ両腕を砕けるかど
うかという程度のはずだ。
しかし目前で起こった破壊の結果は、ブラムドの予想を遙かに上回る。
だがその驚愕は、その人となりを知らないメイジたちの手前、ひとまず誤魔化す必要があ
った。
ギーシュの視線の先を、ワルキューレの腕が飛んでいた。
肩口を吹き飛ばされた衝撃のせいで、腕はゆっくりと回転しながら飛んでいる。
……もっとも弱い? もっとも弱い魔法が僕のワルキューレを一撃で粉砕する?
ギーシュの思考に合わせるように、重苦しい音を立ててワルキューレの腕が落ちた。
それを合図に、ギーシュの視線がブラムドへと向けられ、その驚きの表情をみる。
……何を驚いている?
……予想外の結果?
……じゃぁこの威力は偶然か?
……そう偶然に違いない。
……運良くすごい威力が出ただけだ。
ギーシュの考えは、一部正鵠を射ていた。
メイジの魔法のように精神状態で威力が変わるというものではないが、確かにブラムドに
とってこの結果は予想外に違いない。
しかしブラムドのつぶやきで、ギーシュはその答えを捨てさせられる。
「……もろいな」
それは自らの力へ自信を持っていたギーシュにとって、心の平静を崩しかねない言葉だ。
心の崩壊を招かないために、ギーシュは虚勢を張るほかない。
「で、ですが一斉にかかられては、今の魔法では対処できないでしょう?」
その力に敬意を表し、矛を収めれば傷は浅かった。
だがギーシュは、ブラムドをけしかけるという下策をとってしまう。
『光の矢』の予想外の威力で心を乱していたブラムドに、その挑発を受け流すことはでき
なかった。
「魔法の理を知っていれば、こういったことも可能だ」
視線をワルキューレたちに向け、ブラムドは魔法の効果を拡大した『光の矢』を放つ。
そしてワルキューレの隊列に、三つの穴が穿たれる。
『光の矢』の道筋に重なっていた二つの頭が砕かれ、片腕のワルキューレは胸を貫かれ、
腰を砕かれたワルキューレはその上体を大地に投げ出す。
メイジ同士の戦いを知らない二人の生徒と違い、かつて軍人として生きていたコルベール
にとっても、その威力には戦慄を禁じ得ない。
さらにはこれがもっとも弱い魔法だという。
では他の下位に属する魔法や、中位、上位の魔法はどれだけの威力があるのか。
コルベールは朝のオスマンの言葉が、決してブラムドやルイズのためだけではなく、学院
に所属する全ての人間のためでもあったことを知った。
その巨大な体に由来するドラゴンの力だけでなく、これほど強力な魔法まで操るその能力
は、学院のみならずトリステインという国そのものへの驚異となりかねない。
……オールド・オスマンに、確かめる必要がありますね。
背中に冷たい汗をにじませるコルベールを尻目に、ブラムドの講義は続いた。
「それでも止まらぬのであれば、別の魔法を使わざるを得まい」
頭上に掲げた杖の先に、拳大の赤い玉が回り始めた。
メイジたちが知る火の魔法、ファイヤーボールはその威力に伴って大きさを変える。
中位のラインクラスであれば大人が抱えられる程度、トライアングルクラスともなれば、
放つ前から人を飲み込むほどの大きさだ。
普段の冷静さをもっていれば、先刻の魔法の威力に比して強力なものだと予想がついただ
ろう。
だが心理的に大きな衝撃を受けていたギーシュは、この程度のものならばと口元に笑みを
浮かべていた。
無論、放たれた『火球(ファイヤーボール)』はトライアングルクラスであるコルベール
のそれと同等の威力を発揮する。
しかしコルベールは予想よりも低い威力に、ブラムドが加減をしたのではないかと疑問を
浮かべる。
そしてコルベールの感じた通り、ブラムドは最低限に威力を加減していた。
ただの一撃でワルキューレたちを全滅させられたギーシュは、心神喪失状態に陥っていた。
呆然としてワルキューレたちのいた場所へ視線を送るギーシュの様子をみたブラムドは、
やり過ぎたようだと苦笑を浮かべる。
ひとまずコルベールへ杖を返し、モンモランシーへささやきかける。
「少しやり過ぎてしまったようだ。手間をかけさせてすまんが、慰めてやってくれぬか」
その申し訳なさそうなブラムドの態度に、モンモランシーもまた苦笑を浮かべてうなずい
た。
支援
再びブラムドをオスマンの部屋へ案内しながら、コルベールは思考の羽を広げていた。
何事かをつぶやきながらも、壁に当たることもなく階段につまずくこともない。
器用なものだと感心するブラムドと対照的に、コルベールの心は深刻そのものだった。
……あのファイヤーボールはおそらく加減したものに間違いない。
……光の矢という魔法は一度にいくつも放つことができる。
……であればファイヤーボールもいくつも出せるのか?
……全力で放ったとすればどれだけの威力になるのか……。
……いや、それより重要な問題がある。
……光の矢という魔法はもっとも弱いものだといった。
……あのファイヤーボールはどの程度の魔法なのか。
……上位のものであれば良いが、中位や下位のものであったなら?
……軍隊を相手にすることもできるのではないか?
……人の姿で軍隊を相手にできるのであれば、ドラゴンの姿に戻ったときには?
戦慄を覚えたコルベールが、血の気を失ってブラムドへ振り返ろうとした瞬間、横合いか
ら誰かにぶつかってしまう。
ばさばさと本や紙束が落ち、ブラムドの足下へ眼鏡が滑る。
「あ、や、も、申し訳ない!!」
「いえ、こちらこそ」
本を拾いながら声の主をみたコルベールは、その頬に先刻失った以上の血の気を取り戻す。
「ミ、ミス・ロングビル!!」
「これはコルベール先生、申し訳ありませんでした」
声を裏返すコルベールと対照的に、ミス・ロングビルと呼ばれた女性は冷静なものだった。
足下の眼鏡を拾い上げながら、ブラムドは見覚えのある顔と聞き覚えのある名前の女性へ
と話しかける。
「これはお前のものか?」
二人の視線が絡まり、ロングビルの瞳に鋭い光が一瞬浮かぶ。
「ええ、ありがとうございます」
だがその光が浮かんだのはほんの一瞬に過ぎなかった。
当然、ブラムドはその探るような光を見逃していない。
幾多の冒険者たちと戦い、そのことごとくに勝利した竜は、その態度に盗賊かそれに近し
いものの気配を感じていた。
昨晩の様子からも推察し、ブラムドはロングビルがおそらく盗賊であろうと見抜く。
ただし盗賊としての気配を消し切れてない以上、盗賊ギルドなどの組織に属し、特殊な訓
練を経たものではないことも感じ取れる。
つまり、組織だって魔法学院を探っているわけではない、ということだろう。
二人の協力で本と紙束を再び抱えたロングビルは、コルベールへと話しかける。
「ありがとうございました。まとめて用事を申しつけられると大変ですわ」
「もしやこれから学院長のところへ行かれるのですか?」
「ええ。ひょっとしてコルベール先生も?」
たったそれだけの短いやりとりで、なぜか頬をさらに染めたコルベールは、焦った挙げ句
についそれを否定してしまう。
「いえ!! 私はこれから調べ物がありますので!!」
言い放ってしまった瞬間、コルベールは視線を突き刺すブラムドの案内に思い至り、困り
顔でロングビルへ依頼する。
「申し訳ないが、ブラムド殿を学院長のところへ連れてもらえないだろうか」
「ブラムド様、とおっしゃいますの? 初めまして、私はロングビルと申します」
ブラムドを知らないようなその言葉に、コルベールはロングビルへ問いかける。
「やや? ミス・ロングビル、朝食の際、食堂におられなかったのですか?」
「私は貴族の名をなくした身ですので、貴族用の食堂では食べられませんわ」
目を伏せるロングビルに、コルベールは悲しげな表情を浮かべる。
「学院長の許可は出ているのではありませんか?」
その言葉にも、ロングビルは首を振るだけだった。
沈滞する空気を振り払うように、ブラムドがロングビルへ声をかける。
「我が名はブラムド。ロングビル、これからよろしく頼む」
「あ、はい。ではコルベール先生」
「え、ええ、よろしくお願いします」
そういって寂しげ笑顔で二人の女性を見送ったコルベールだったが、無論のことその胸中
には血涙を流さんばかりの後悔を浮かべる。
だがひとまずは、と頭を切り換え、ブラムドに刻まれていた珍しいルーンの正体を確かめ
るため、図書室へとその足を向けた。
「召喚された!?」
あまりのことに荷物を取り落としそうになり、ロングビルはあわてて体勢を整える。
「それほど驚くことなのか?」
ブラムドはそれと対照的に、静かに問いを口にした。
「え、ええ。そんなことは生まれてから一度も、噂すら耳にしたことはありませんわ」
そういいながら、ロングビルははたと気付く。
「いえ、でも始祖ブリミルは人間を使い魔にしたと聞いています。ブリミルはご存じです
か?」
「軽くはな。だがロングビル、お前は一つ勘違いをしている」
「勘違い?」
訝しげに眉をひそめるロングビルに、ブラムドはことさら真剣な表情で答えを返す。
「我は人ではなく竜だ。雲を貫くような、な」
「え?」
思いもよらない言葉に、ロングビルは目をしばたたかせる。
その様子に、ブラムドは笑い声を上げた。
「ふっ、ははははは……」
笑い声にあわせ、ロングビルもまた笑顔を浮かべるが、その内心は穏やかなものではない。
からかっているのか、探りを入れているのか、油断のできない相手と心の中で身構える。
ブラムドもまた、表情や態度ほど気を抜いているわけではない。
虚偽というものは押し隠そうとすればするほど、その存在を悟られやすくなる。
ブラムドは自らが竜であるという事実を織り交ぜることによって、その全てが冗談である
かのような錯覚をロングビルにもたらした。
「おからかいにならないでくださいまし」
「すまぬな。だが召喚されたことは事実だぞ」
そして会話に含まれた二つの真実、召喚されたこと、巨大な竜であること、その一方をあ
えて明かすことで、今一方の真実を押し隠す。
「本当ですか?」
苦笑いを浮かべながらただすロングビルに、ブラムドは真顔で応じる。
「うむ。オスマンは事故といっていたがな」
「珍しいことがあるものですのね」
感心するように返事をしたロングビルだが、とらえどころのない人物だと警戒を強める。
先刻ブラムドがその正体を見透かしたように、ロングビルは盗賊だった。
しかも貴族を専門に狙う、土くれのフーケ、と称される盗賊。
当然ロングビルという名前もまた偽りのもので、学院でその本名を知るものはいない。
トリステインのみならず、近隣諸国に名の知られたトリステイン魔法学院。
その宝物庫に眠る宝は、さぞかし貴重なものだろう。
それでいて学院という性質上、王宮や王立魔法研究所などよりも遙かに警戒が緩い。
魔法の教育機関である以上メイジも多いが、実戦経験はほとんどないというのが一般的な
評価で、また全てではないにしろ真実をとらえていた。
つまりロングビルこと土くれのフーケにとっては、危険の少ないおいしい獲物といえる。
「では、ブラムド様は韻竜でございますのね」
含み笑いを漏らしながら、ロングビルが問いかける。
「ここではしゃべる竜はそういうそうだな。それほど珍しいものなのか?」
「ええ、遙か昔は多少いたようですけれど。ブラムド様の故郷では多いのですか?」
「多いというほどはおらぬが、どこの山には竜が住む、という噂程度はよくあった。お前
の故郷ではどうだ? 近隣の生まれか?」
故郷、と問われたロングビルの目に、郷愁が香った。
「アルビオンです。といってもご存じないでしょうね」
「知らぬな。父や母はアルビオンなのか?」
家族、という言葉に、ロングビルの瞳には先刻と違う光が一瞬浮かぶ。
「両親は、亡くなりました」
それは、悲しみと、怒り。
「許せ、すまぬことを聞いた」
陳謝するブラムドに、ロングビルは努めて明るく返す。
「昔の話です」
「では今は天涯孤独の身の上、という訳か?」
「いえ、妹が、故郷におります」
妹、とつぶやいたロングビルの顔には、先刻と同じ郷愁と、おそらくは会うことのできな
い寂しさが、多分に含まれていた。
支援
半分寝ながら支援
本編は以上。
とうとう大台だけど決闘前にギの字がぼろぼろだよ!
支援感謝!
ゆっくりお休みください。
あと感想とかお褒めの言葉があると小躍りして喜びます。
本日の鞄にはまだ若干のよy(ry
あと誤字とか表現のおかしなところとかいってもらえると、
鼻水垂らして泣きながら直しますので。
ここで今回のビックリドッキリボツコーナー
いや、別に毎度やる訳じゃありませんよ?
資料的な価値もあるかなーと思って。
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「モンモランシ、これが我の知る、水に属する魔法だ」
ギーシュ、モンモランシー、コルベールの見つめる先に、打ち砕かれた一体のワルキュー
レと、立ち尽くす六体のワルキューレが存在した。
『氷嵐』
氷雪の魔法が解き放たれた瞬間、三人は空気がこすれるような音を聞き、ついで空気が軋
む音を聞いた。
モンモランシーの肌に冷たい風が触れ、ワルキューレたちの中心に氷の結晶が生まれる。
三人が驚きに呼吸を忘れた正にその時、氷の結晶が弾けた。
指先ほどの小さな粒がワルキューレたちにあたると、ワルキューレたちは氷の彫像のよう
に砕け散る。
青銅の二つ名を持つ年若いメイジは、自らのゴーレムが砕け散る様子に、ブラムドの魔法
の威力を思い知らされる。
小さな氷の粒が当たるだけで、青銅が砕けるわけがない。
かといって、青銅を砕くほどの威力が込められていれば、あの氷の粒はワルキューレたち
を貫通していただろう。
穴だらけになり、脆くなったワルキューレがくずおれたのならともかく、今の砕け方はそ
れとは全く違うものだった。
それはつまり、青銅としての状態が保てないほどの低温にさらされた、ということに他な
らない。
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なんでボツかというと、銅は低温に強いらしいのでw
詳しくは「低温脆性 銅」とかでググってください。
鋼には上記の特性があるため、低温に対しては銅の方が強いみたいです。
ウォーターカッター的な魔法なら銅にも通用するけど、
SWやロードス島にそんな魔法はありませんでしたのでw
ロードス島本編のブリザードの表現を見ても、
極端な低温で生物に影響を与えるような描写しかなかったので、
低温だけではワルキューレに影響を与えるのは無理と結論づけました。
以上。
次回はまたゆっくり目で。
ミスとかに関しては個人の見直しだと限界あるしねー。
10話目だから、登録するヒトは長編(話数順)-02の変更も忘れずに…
もう眠いからオレは寝る
乙でした。というかGJした!
眠いので感想はまたおきてから…。
どうも。朝も早いですが、15話後半部分が書きあがりました。
ので、予定その他が無ければ、20分から投下開始します。
では、投下開始します。
プチ・トロワの前庭に出たタバサとジョーカーは、待機していたシルフィードと合流した。
「では早速、ラグドリアン湖へと参りましょうかネ、シャルロットさん」
相槌を打つでもなく、タバサは無言でシルフィードの背に乗る。
その様子に、やれやれ、といった感じで両手を広げ、首(身体?)を左右に振るジョーカー。
そしてジョーカーもシルフィードに乗ろうとした時、
「キキキ…、こんな夜中に逢引か〜。イイ御身分だなァ、タバサ嬢ちゃんよ〜?」
小馬鹿にするかのような声が響いた。
タバサとジョーカー(と、シルフィード)は、声の聞こえてきた方へ顔を向ける。
暗闇に浮かぶ紫色の影がそこにあった。
「おやおや?ジャンガちゃん、こんな所へ何用ですか?…まさかワタクシにお会いに――」
「あいにくと、そっちのガキが目当てでな」
「あらま」
ジョーカーは全く変化の無い表情で、落胆したかのような声を上げる。
ジャンガはシルフィードへと歩み寄り、タバサを見上げる。
シルフィードは低いうなり声を上げて威嚇した。が、ジャンガは軽く流している。
「こんな夜中にこんな所で…一体何をしてるんだ?」
「…貴方には関係無い」
「オイオイ、随分と冷てェなァ?昼間、協力してあの盗人を捕まえた仲じゃネェかよ?」
「……」
黙るタバサにジャンガはニヤニヤ笑いを浮かべながら、言葉を続ける。
「まァ、今し方のあの意地の悪そうな嬢ちゃんとのやり取りは見せてもらったからよ…。
大体の所は理解してるさ。…面白そうじゃネェか?」
「…何が?」
「お前の任務って奴がさ…」
「キキキ、こいつは快適だなァ〜。実に気分がいいゼ」
シルフィードの背鰭を背凭れにし、風で飛ばないように帽子を押さえながら呟くジャンガ。
タバサ、ジョーカー、ジャンガを乗せたシルフィードはラグドリアン湖へと向かっていた。
最初、シルフィードはジャンガを背に乗せるのを激しく拒否した。
だが、余計な揉め事を回避したいタバサの説得により、しぶしぶ乗せる事にしたのだ。
暫く飛び続け、ラグドリアン湖の上空へと差し掛かり、タバサの指示でシルフィードは岸辺へと着地した。
シルフィードを降り、ジョーカーは目の前の光景に驚きの声を上げる。
「これは凄いですね〜?村が丸まる一つ沈んでいるのは…。見ると聞くでは違うと言いますが、いやはや」
目の前に広がる湖の所々から木々や藁葺きの屋根が突き出ている。
暗くて解り辛いが、水面の下にも家を初めとして、様々な物が沈んでいるのが見えた。
そんな湖の状況を冷静に分析するかの如く、先程からタバサはジッと湖を見つめている。
「で、どうするんだ?」
湖を一通り見渡し、ジャンガは呟く。
ジャンガの言葉に、ちょっと待ってください、と答えジョーカーは波打ち際に近づき、水面に手を翳す。
暫くそうして、手を戻すや口元に手を当てて考え込む。
「どうしたんだ?」
「いや……どうやら、増水の原因は水の精霊さんの、ご機嫌斜めが原因のようですね」
「あン?」
ジョーカーの言葉にジャンガは怪訝な表情をする。
「…水の精霊が怒っているの?」
「そうなのね!きゅい!」
タバサの言葉にシルフィードが太鼓判を押す。
「水の精霊が怒っているのがハッキリと伝わってくるのね。きっと、罰当たりな誰かが失礼な事をしたのね。
だから、村が沈んだのも当然な事なのね。これは人の言葉で言う自業自得なのね、きゅい!」
そう言ってシルフィードはタバサの顔を覗き込む。
「お姉さま、今回は正直不味いのね。水の精霊はお姉さまの風の魔法では傷つかないのね」
「あの〜」
シルフィードの話の腰を折るようにしてジョーカーが割り込む。
「何も最初から退治する方向で、考える必要は無いかと思うんですがネ〜?」
「きゅい?」
「どうするの?」
首を捻るシルフィードを余所に、タバサは尋ねる。
「まァ、取り敢えず探してきますね」
「あン?おい、何をだよ?」
ジャンガが聞き返す。
「勿論、精霊さんをですよ。では、ちょっと行って来ますネ〜」
そう言い残し、ジョーカーは湖に飛び込んだ。
支援?
「チッ、一人で勝手に行きやがって…」
ぼやきながら、ジャンガは波打ち際に座り込んだ。
増水し、村を一つ飲み込んだ湖は、夜空に掛かる二つの月を鏡の如く映し出す。
夜空と湖面、四つの月が淡い輝きを放つそれは一種、幻想的な光景でもあった。
時折、風が吹く以外はとても静かであった。…そう、本当に静かだ。
ジャンガはチラリと横を見る。
タバサは先程から立ち尽くしたままだ。
先程のイザベラとの会話の時も…いや、いつもそうだが、必要な事意外は何もしようとしない。
まるで”向こう”のルナベースで使われていた自動機械のようだ。
ジャンガは軽く鼻を鳴らす。
「オイ…」
「……」
「お前…シュヴァリエだとか言う称号は、こんな仕事をしているから与えられたのか?」
「……」
「あの二人はお前が騎士だって聞いた時、豪く驚いていたよな?しかもだ…、
この仕事に来る際、誰にも見つからないようにあのパーティ会場を抜け出していたな?
あの”雌牛”にすら内密で出てきてよ…」
タバサは答えない。ちなみに、ジャンガが言った”雌牛”とはキュルケの事である。
「なんで…秘密にしてるんだ、こんな仕事をしてるのをよ?」
タバサは答えない。――代わりにシルフィードが口を挟んだ。
「お姉さまにはお姉さまの、人には言えない深〜〜〜い事情があるのね!
人の事を馬鹿にして、傷付けて、笑っているようなお前なんかに話す理由は無いのね、きゅい!」
そんなシルフィードの訴えも何処吹く風。ジャンガは完璧に無視すると、タバサの隣に座った。
「言えない理由か……どんな理由だ、教えろよ…あの意地の悪い小娘に仕えている理由をよ?
まさか…”恥ずかしい秘密を知られたから仕方なく”ってか?
それなら、確かに言えないよなァ〜、格好悪くてよ…キキキ」
「…貴方には関係無い」
そんなジャンガの、からかいの言葉も一言で切り捨て、タバサは湖を見続けた。
ジャンガも、フンッ、とつまらなさそうに鼻を鳴らし、湖に視線を戻し、それっきり口を開かなかった。
――それから数分後…
「きゅい!?」
シルフィードが湖の方を鋭い目で見つめる。
「来たのね!」
「何がだ?」
ジャンガがそう聞き返すと同時だった。
ザバァッ!!!
大きな水音がして、湖面の水が天高く、噴水のように吹き上がる。
そんな湖の異常にジャンガは弾かれる様に立ち上がる。
「な、何だァ?」
突然の事に驚き目を見開くジャンガに、タバサはポツリと呟く。
「水の精霊…」
「こいつが…?」
タバサの言葉にジャンガは改めて吹き上がる水を見つめる。
と、ジャンガの背に差されているデルフリンガーが鞘から飛び出した。
「おう、懐かしいな?」
「あン?テメェ…知ってるのか」
「ああ…、もっとも何となく昔に会った事がある…って位だがな」
「ほゥ?」
と、湖面から何かが飛び出してきた。――ジョーカーだ。
岸辺に降り立ち、身体を振り、水滴を落とす。
ジャンガはジョーカーに歩み寄る。
「よう、見つかったみたいだな?」
「ええ、意外と簡単に見つかりましたよ、のほほ」
そのまま、ジョーカーは波打ち際まで歩くと、吹き上げる水を見つめながら話しかける。
「突然のご訪問、失礼しますネ。ワタクシ…ジョーカーと申しまして。
実は少〜しばかり、貴方に話があるのですよ…水の精霊さん。
ですから、ワタクシ達に解るような形と言葉でお相手願いませんかネ〜?」
ジョーカーの言葉を理解したのか……吹き上がっていた水がこねられる粘土のように形を変え始める。
暫くそんな事を繰り返していた水の固まりは、やがて一つの形を成した。
――それは水で出来た透明なジョーカーだった。
「我に如何なる用か、単なる者の使いよ?」
水の精霊が口を開く。透き通るような女の声だったが、ジョーカーの姿では些か違和感があった。
ジョーカーは水の精霊の問いかけに答える。
「いやいや、大したようではあるのですがね。この湖の増水は貴方がしていらっしゃるんですよね?」
「そうだ」
「何で、いきなりこんな事を?今までは上手くやってきたんじゃないですかね。
今頃になって、陸を水で侵食する事に何の意味が有るというのですか?」
「貴様達に話していいものか、我は悩む」
「悩む事なんかねぇ、こいつらに話しやがれ。お前の言う単なる者達よりか、頼りにはなるんじゃねぇか?」
そう言ったのはデルフリンガー。その言葉に水の精霊はデルフリンガーに視線を向けたようだ。
「貴様は、そうかガンダールヴの使いし剣」
「おうよ。俺を覚えててくれたか?嬉しいね」
デルフリンガーは金具を鳴らして笑う。
水の精霊はそれまでのジョーカーの形を崩し、水の塊と化す。
グネグネと粘土をこねる様に暫く動いていたが、やがてジョーカーの姿へと戻る。
「良かろう」
その言葉にジョーカーは満足げに笑う。そして水の精霊は語りだした。
「数える事も愚かしいほど月の交差する時の間、単なる者達の同胞が我の守りし秘宝を奪い去ったのだ。
それは月が三十ほど交差する前の晩の事」
「おおよそ二年前…」
タバサがポツリと呟く。
そのタバサの言葉を聞きながら、ジャンガは水の精霊に言った。
「んじゃ何か?テメェはその事に対する復讐で、人間が暮らしてる土地を水に沈めようってのか?」
「復讐?我にはそのような目的は無い。ただ、秘宝を取り戻したいと願うだけ。
水が秘宝に触れれば、我はその所在を直ぐに突き止められる。故に、我は水を増やしている」
「それはまた…気の長い話だな?二年間でこんだけの規模じゃ、この先どんだけ掛かるんだよ?」
「我にはお前達とは時の概念が違う。我にとって全は個、個は全。時もまた然り。今も未来も過去も、
我である事に変わりは無い。何れも我が存在する時間ゆえ」
「ふ〜ん…」
この水の精霊とやらには、そもそも寿命と言う物が存在しないらしい。
だから、このような気の長い方法で、広い世界から秘宝を探し出そうとしているのだろう。
ようするに…根本からして、普通の生き物とは違うのだ、何もかもが。
「まァ…理由は解った」
そう切り出すジャンガ。
「で、その秘宝とやらは何だ?」
「秘宝の名は『アンドバリ』の指輪」
「『アンドバリ』の指輪…聞いた事があるのね」
そう言ったシルフィードに視線が集中する。
ジャンガはシルフィードの顔を覗き込む。
「どういう物だ?」
「顔を近づけないでほしいのね!
…偽りの命を死者に与える、『水』系統の伝説のマジックアイテムなのね、きゅい」
「偽りの命だ?」
「つまり死者を蘇らせる事が出来ると?」
ジョーカーが聞き返すと、水の精霊が口を開いた。
「そのとおり。誰が作った物かは解らぬが、我と共に永き時を過ごした秘宝だ」
「思い出の品…って訳か」
そう呟き、ジャンガは首に巻いたマフラーを掴む。
逡巡し…水の精霊に言う。
「いいゼ?この俺が…『毒の爪のジャンガ』様がその秘宝とやらを見つけ出してきてやる。
…持っていったのはどんな奴だ、名前位は解らねェのか?」
「固体の一人は、こう呼ばれていた。『クロムウェル』と」
「聞かねェ名だな?…まあいい。テメェは不死なんだよな?だったら期限は俺の寿命まで…って事で良いか?」
「構わぬ。ガンダールヴは前に我との誓いを守った。故に信ずるに値する」
「なら交渉成立だ。それじゃあ、この増えた水も元通りにしてくれるよな?」
「約束しよう」
そうして水の精霊はゴボゴボと音を立てて湖の中に戻ろうとする。
と、タバサが水の精霊を呼び止めた。
「待って、水の精霊」
これにはジャンガも驚いた。無理も無い、目の前のガキが誰かを呼び止めるなど見た事が無いのだから。
「何だ、単なる者よ?」
「貴方は『契約』の精霊と呼ばれている、その理由を知りたい」
「我にはお前達の考えは理解できぬ。我とお前達では存在の根底が違うのだから。
だが、察するに我が永き時を変わらず存在するが故に、そう呼ぶのだろう。
変わらぬ何かを誓いたいが為に」
タバサは頷き、そして跪くと手を合わせて目を瞑る。
誰に何を約束しているのか…それを窺い知る事は出来ない。
だが、この少女がくだらない事を誓うような者ではない事を、ジャンガは察していた。
(変わらぬ思い…か)
暫し考え、ジャンガも胸に片腕を当て、目を閉じた。
その時、脳裏には桃色髪の懐かしい顔が浮かんだ。
ズキンッ!
「ぐっ!?」
走った激痛に左手を押さえるジャンガ。
その様子にジョーカーやタバサも顔を上げる。
「ジャ、ジャンガちゃん!?どうしたんですか!?」
「どうしたの?」
「…チッ、なんでもねェ…」
そう言ってジャンガは平静を装う。
そんなジャンガを見て、タバサとジョーカーは顔を見合わせた。
水の精霊の一件が解決し、イザベラへの報告をジョーカーに任せたタバサとジャンガは、
シルフィードに乗り、魔法学院への帰路についていた。
「あ〜あ……面倒な約束をしたもんだゼ」
背鰭に凭れ掛かりながらジャンガは一人ごちる。
タバサもシルフィードも相槌すら打たない。
「まァ、いい暇潰しが出来たと思えばいいか…キキキ」
ジャンガの笑い声を聞きながら、タバサはポツリと呟く。
「一つ借り……不本意だけど」
「あン?何か言ったか?」
ジャンガは尋ねたが、タバサはもう何も答えなかった。
所変わって、ヴェルサルテイル宮殿の中心――グラン・トロワ。
青色の大理石で組まれたそれは、見る物の心を奪う美しさと神々しさに溢れている。
そんな宮殿の中……僅かに明かりが照らし出す薄暗い部屋にジョーカーは居た。
「と言う訳で、ワタクシからの報告は以上ですよ」
それまで自分の見聞きした事を、ここの主に伝えたジョーカーは相手の反応を待つ。
奥の方で玉座に座り、話に耳を傾けていた人物=ガリア王ジョゼフは笑みを浮かべた。
「興味深い話だな。爆発させる事しか出来ない『ゼロ』と呼ばれる無能のメイジの少女の爆発が、
強固な”固定化”が掛けられた上で魔法の障壁に守られた壁を、一撃で砕いたか…」
「ええ…それはもう、驚きのパゥッワァーーでしたよ。
…色々と御事情があって、お伝えるのが遅れましたけどね…のほほ♪」
そう言って笑うジョーカーを見ながら、ジョゼフも笑う。
「そうか、そうか、なるほど…。間違いない、そやつは担い手だ」
ジョゼフの言葉にジョーカーは片方の目の形を変え、口元に片手を当てる。
「ほうほう?やはりそうでしたか」
「よもや、学院の生徒などが担い手として選ばれるとはな…。しかし、トリステインの奴等は情報が無い。
故に、そやつの爆発を”失敗”の一言で片付ける。傑作だな!伝説を失敗の一言で片付けるのだからな。
まだ目覚めておらぬだけだと言うのに、制御ができていないだけだと言うのに、実に傑作だ!」
そう言ってジョゼフは高らかに笑った。
「…そんな文字通りの『無能』共よりは、余の手元に置いていた方が良いとは思わぬか?」
「同感ですネ。風のルビーも時期が来れば手に入るでしょうし…のほほ」
そんなやり取りをしながら、ジョーカーとジョゼフは笑う。
「何より、そやつは『ゼロ』と呼ばれて周りから蔑まれているのだろう?
余も同じだ…、そやつの悔しさなどは良く理解できる。だから、手を差し伸べてやろうではないか」
「物は言いようですネ〜。解りました、ですが…こちらの用事の片付けなどもありますので、
今直ぐにとは行きませんネ。もう暫くお待ちいただきたいのですが…宜しいですか、ジョゼフさん?」
「構わぬ。余のミューズと共に上手くやれ、ジョーカー」
「はいな〜了解です♪それでは失礼しますネ、のほほほほ♪」
笑い声を残し、ジョーカーは暗闇に消えた。
一人になったジョゼフは傍らの台座に置かれた、一冊の書物を手に取った。
古ぼけたその書物のページをジョゼフは捲っていく。
「シャルル、ようやくだ…ようやく準備が整ってきたぞ。駒も盤も、全てが揃いつつある。
全ての準備が整ったその後は、このハルケギニアを舞台にした素晴らしいゲームが始まるぞ。
ああ、そうだとも!素晴らしいゲームがな!全ての命と信仰と、それらを踏み躙る物がな!
それが始まれば、あの時の後悔に、あの時の苦しみに、あの時の悲しみに、
匹敵する物を俺は得られるだろうか?再び涙を流す事が出来るだろうか?
…全ては始まってみないと解らぬな。所詮、俺も人の身なのだ。だがな、シャルルよ…もっと簡単な解決策があったよ」
パタン、と閉じた書物を高々と掲げる。
「この書物にはこう記されている。”英雄は夢に飢え、他者の悪夢を求めた”と。
そうだ、簡単な事だったのだ。自分だけで得られぬのであれば、他人の悪夢を…苦しみを味わえばよいと!
数多くの人間が経験する苦しみや悲しみ、後悔、恐怖、絶望……それら『悪夢』を集めれば、
俺が涙を流せる物が一つ位ありそうではないか?そうさ、在るとも絶対にな!」
そこまで言って、ジョゼフは懐から円盤のような物を取り出す。それは金色に輝いていた。
「シャルル、俺が望む事は人としてもう一度泣きたい。ただ、それだけだ」
以上で投下終了です。ようやくジョゼフ出せました!それだけで、満足ですよ。
では、今回はこれにて、アディオ〜ス♪
毒の爪の人乙です
次はワルドか・・・遍在対分身っ・・・!
今から待ち遠しいです
毒の爪の人、乙。
それにしてもこの作品のガンダールヴのルーンって、忌々しい事この上ないですな。
毒の爪の人、乙。
『月と夢の伝承』のナハトの闇を復活させるとかガーレンいないと無理じゃねとか
そもそもあのピエロがそう簡単にうまくいかせるわけないんじゃねとかいろいろ考えるとことがあって楽しみです。
ジャンガがいい具合にルーン調教されてきたな……。
382 :
虚無と金の卵:2008/11/04(火) 10:37:49 ID:1qMOnVOB
毒の爪の人、乙。
>>349 指摘感謝。
明らかに私のミスです、申し訳ないorz
三つ目の指摘は把握してましたが、口語体だから良いかと思ってそのままうpしてました。
でも指摘してもらった内容の方が自然なんで纏めのほうで直してます。
毒の爪の人乙です。
ジョゼフが動き始めましたな。さて、ルイズにどんな影響を与えるか。
ちょっと待て今気づいたが最後の円盤ってヒーローメダル!?
ヒーロー(主人公サイド)全然でないのに!?
札幌にも初雪が降った今日この頃。
…本当は連休中に何本か上げるつもりだったのに。タルブ戦の推移について現役自衛官にアドバイス貰ったら大幅な修正を余儀なくされ…;
まぁ、それは置いておいて、投下を12:00から。
『ファイアブランド』と『折れたギュスターヴの剣』をギュスターヴに渡したロベルト老人は、もう一つ、袋を取り出してから鉛の箱を閉じた。
「その二つはな。本来、人が常に持っていなくちゃいけない代物なのさ」
彼はそういうと、取り出した三つ目の袋をシエスタに手渡す。
「こっちは『シエスタ』。お主への贈り物だよ」
受け取ったシエスタも袋を開けた。中身は使い込まれた一本の杖だった。
「ジニーがまだ若い頃に使っていた杖だ。こいつも元は強力なグヴェルだったが、今じゃ只の丈夫な杖でしかないな。
…あの墓碑が読めた奴が居た代の者に渡してくれと、ジニーに頼まれていたんでな」
「お祖母ちゃんの…杖…」
杖は白と黒、そしてうっすらとした緑と蒼の四色で出来ていた。質感は木材のような木目を感じさせるのに、ひんやりとしていて、まるで石のようでもあった。
ギュスターヴにもシエスタにも、それが一体何で出来ているのかまったくわからない。
「『プリムスラーヴス』…だったかな。ジニーはそう言っていた」
「…でも、どうして私?お父さんが持つものだと思うけど…」
「あやつはお主に持っていて欲しいとさ。ま、大事にしなさい」
「…うん」
大事に杖を抱えるシエスタだった。
「…さて。これでもう此処の用はない。一度家に戻るぞ」
帰りの藪道を降りていく中で、シエスタはギュスターヴの隣に並ぶと、木漏れ日にプリムスラーヴスを空かしたりしながら話しかける。
「ギュスターヴさん。アニマってどんなものですか?」
「え?…うーん、そうだな…」
はっきり言って、ギュスターヴに答えられるはずもない質問ではないのだが、シエスタにとってはそんな自覚があろうはずもない。
「…多分、シエスタのほうがよくわかると思う」
「そうですか?」
困り顔で話を濁すギュスターヴ。そんな話を聞いて、ロベルト老人は呵呵と笑った。
シエスタの家に戻ってみると、出入り口、つまりシエスタの父エドの仕事場には見慣れない人物が立ち寄っていた。
「ただいまー。…お客さん?」
見えた客人らしき人は、煌くラメラーコートに、同じ素材で出来た帽子を被っていた。
両手両足はがっちりとくみ上げられた手袋とブーツが嵌められている。風貌はコートの襟と帽子の陰になっていて、よく分からない。
背はそれほど高くなかったが、背がまっすぐ伸びていて、それほど年嵩があるわけではないらしい、位は分かった。
「この辺の地理について、色々と聞きたいことがあるんだが」
意外にも声の調子から見て女性らしかった。
「ここより先はあなた方の一族が管理していると聞いた。中を歩かせてはもらえないだろうか」
単調直入に聞いた訪問客だが、エド氏はギュスターヴ達に見せたのとは打って変わった渋い表情を見せる。
「悪いけど知らない人間を山に入れるわけには行かないんだよ。まぁ、他に聞きたい事があるなら聞いてやらんでもないが」
「そうか…」
一言言うと訪問客は懐から折りたたまれた大きな一枚の紙を取り出して広げた。一辺が一メイルは裕に超える紙には
微細なタルブの村を中心とした地図が書き込まれていた。
訪問客は広げた地図のうち、南西の部分を指した。シエスタの一家が管理する山の周辺だ。
そこも他の部分と同じように地図が書き込まれてはいたが、他の部分よりも大雑把で空白が多い。
「はて、貴方は地図屋か何かなのですか?」
「まぁ、そのようなものだ。で、このあたりについてなんだが…」
と、訪問客はエド氏に対して色々と質問を投げかける。この辺りに木々は生えているのか、生えているならどの程度か。岩地なのか土砂でできているのか。
斜面の傾斜はどれくらいなのか……。
エド氏は質問一つ一つを値踏みながら答えている。慎重に質問の意味を考えて答えているようだった。それだけエド氏は一族の管理する山を大事にしているのだろう。
同時に、そこをみせてくれたということがどれだけ大きなことなのか、という事にギュスターヴの思いは向く。
下衆な考えかもしれないが、自分のアニマゼロを感じ取ったからエド氏は山に入れてくれたのではないだろうか、などとも思ってしまうのだった。
『seventy years ago/fortytwo years ago』
暫くの間エド氏と訪問者が質問の応酬を繰り返すと、訪問者は地図をしまいこんで頭を下げた。
「ご協力感謝します。助かりました」
「いえいえ…」
礼を言い終わると、奇妙な訪問者は何事もなかったようにシエスタの家を出て行った。
店先の話し声が静かになると、それに耳を傾けていたギュスターヴ一行とシエスタ、ロベルト老人も一息つく。手元の薬湯の注がれたカップを転がす。
「帰ったみたいだな」
カップに口を付けていたロベルト老人は、そういうと空のカップを残してテーブルを立つ。
「…んじゃ、私は帰るぞ」
「帰る?」
「大爺ちゃんは村の方に家があるんです」
「うむ」
ギュスターヴはてっきり、この老人はシエスタの一家と一緒に暮らしているのだと思っていた。
「『シエスタ』や。おぬしは暫く居るんじゃろ?」
「うん。おやすみをもらったから」
「そうかい。…なら、心配は要らんな…」
そう言って、ロベルト老人は愛用らしい杖を突いて家を出て行ってしまう。
「…変なご老人だ」
「そうね」
キュルケとギーシュは翻弄されっぱなしだったことを思い出して秘かにため息を漏らす。
「…ところでギュスターヴ。君は一体彼に何をされたんだい?」
ギーシュの視線はギュスターヴの抱えている二つの袋に注がれている。
「それは?」
「これは…あのご老人が俺にくれたものだ。シエスタにもな」
「なんだ。結局貴族に財宝をせしめられるのが嫌だったと見える」
ふん、と鼻を鳴らすギーシュ。
「ま、いいんじゃない。貴族の嫌いな人なんてざらに居るわよ」
「しかしだねー、こう、無碍に扱われるのはトリステインの貴族としてはだねー…」
勝手にお邪魔しておきながら随分と好き勝手な事をいうギーシュである。
そんな具合に色々、キュルケとギーシュが何やかやと話し始めている中、店先からエド氏が戻ってくる。
「お帰りなさい。お父さん」
「ふぅ。たまにああいうお客さんが来て困るのさ。石切の弟子にしてくれとか、山の中を見せろって迫るから」
エド氏はテーブルについているギュスターヴに向かい合う。
「…ロベルトの爺さんから、色々と贈り物があったみたいで」
「えぇ、まぁ…」
どこか曖昧にギュスターヴも答えた。
「実は私からも一つ、お見せしたいものがありましてね」
「あら、面白そうね」
身を乗り出して間に入ってきたキュルケが上目がちにエド氏を見た。緩く明けられた胸元から逃げるようにエド氏は席を一度立つと、
部屋に掛けられていたレリーフに手を添えた。
「ふふふ…お嬢様方もご覧になりますか?」
「いいんですか?」
そう聞いたのは誰でもなくギュスターヴだったが、エド氏は変わりなく頷いた。
「構いませんよ。…もっとも、これが何なのか、分かるのであれば、ですが…」
意味ありげに言葉を濁したエド氏は、手を掛けたレリーフを裏返す。レリーフの裏は物入れになっていたようで、そこから一冊の本を取り出すと、テーブルに置いた。
「これです。どうぞ、ご覧になってください」
サッとキュルケは本を手にとってページを捲った。そのまま暫くの間、開いたページと睨みあいをしていたが、やがてテーブルに本を戻した。
「…いいわ。これ」
「そうですか。…では、ギュスターヴ殿、どうぞ」
キュルケの挙動に不審を感じたものの、ギュスターヴは渡される本に手を掛けてページを開いた。
「これは…」
「もぅ、エドさん。もったいぶって悪戯するなんて酷い人ですわね」
膨れ面で咎めるキュルケにエド氏は苦く笑う。
「いえいえ。これは私の母、つまり『シエスタ』の祖母が残したものでして。何でも古い友人が自分に譲ってくれたとてもありがたい本だと言うのですが、
母以外に誰も読むことが出来ない代物なのです。今では一家の誰も読むことが出来ない有様で、貴族の方なら読めるかと思ったのですが…」
と、エド氏は話したが、ギュスターヴの注意はその『誰も読めない本』に書かれている文章に注がれていた。
「…どうかしまして、ミスタ」
「…ぇ?あ、いや…」
キュルケの声に答えながらも、やはりギュスターヴの意識は本に向かっていた。
(すこし癖があるが…これはサンダイルの文字だ)
誰にも読めない本…それはまさしく、サンダイルで使われる文字で書かれていた。
長い間に虫食いや紙魚でかなり紙が劣化してはいるものの、中の文字を読み取る事は十分に可能だった。
村の作るブドウ畑の丘陵が夕陽を受けて黄金色に輝いていた。
最初に宿を取ろうと提案したのはキュルケだった。
「せっかくタルブまで来たんだし、ワインの一本でも手土産にしたいじゃない?」
そこで一行は一晩をタルブで過ごし、翌朝ワイン倉を巡って各々ワインを手に入れてから帰ろうということになった。
タルブの村主幹部で尋ねた宿は集落の規模から見ると随分と立派だった。
掲げられた看板には『北の門』亭と書かれている。
「一番いい部屋を用意できる?一晩でいいんだけど」
キュルケが店に立っている若い女性に話しかけていた時、店の奥に続く扉が開けられた。
「なんだおぬし等。うちに泊まるのかい」
店先の扉から出てきたのはロベルト老人だった。シエスタの家で見たときよりも心持ゆったりとした格好だったが、受付にいた女性は恭しくロベルト老人に頭を下げている。
「あらお爺さん。ここの宿の人?」
「ここは私の店だよ。タルブはそれなりに来客が多いからな、繁盛して助かってる」
「ではご主人。一番上質の部屋を用意してくれます?」
「生憎一番上は二部屋しかないぞ」
老人の目は四人を統べるように眺める。
「それじゃ僕とギュスターヴは辞退しようじゃないか」
ギーシュがかっこつけて言ってみせる。
「ま、いいけどな。っていうか胸張って言う事でもないだろ」
「ぅ」
「あらんギュス。相部屋でもいいのよ?」
「からかわないでくれ」
手を振って答えるギュスターヴだった。
暮れなずむ空の下、丘から村まで続く斜面に作られた葡萄畑からタルブ全体を見渡すように、ギュスターヴは立っていた。
ギュスターヴはデルフを抜くと、路傍に転がる大きな石に向かって突き立てた。デルフは石に剣先が突き刺さって止まり、畑を区切る石垣に腰掛けると、
デルフの鍔がちょうどギュスターヴの顔の部分に並んだ。
「ん?どうしたよ相棒」
「ご老人からの贈り物をどうしようかと思ってな。少し話がしたくなった」
宿に置いておく気が起きなかったので、今もギュスターヴの手元には二つの袋がある。
「どうしたらいいかね?まったく…」
「さーな。俺様は剣だからな。振るう人間の悩みまで背負ったりしねーよ」
「勝手なことを。…こっちは打ち直してみるかな……」
袋から取り出された折れたギュスターヴの剣。剣身の中ほどから綺麗に二つに折れている。
「グスタフという男はよほど剣の腕があったんだろう。俺の剣が折れるくらいだからな」
「もしかしたらすっげー硬いものを切ろうとしたのかもよ?」
「おいおい。自慢じゃないが、サンダイルで俺の剣より硬いものなぞ、滅多にあるまい」
はは、と笑うギュスターヴ。
「…問題は、こっちだな……」
折れた剣を袋に戻すと、もう片方の袋から生白いFBを取り出した。山際に沈みかけた太陽に掲げて見せると、あたかもFB自体が光り輝いているかのような錯覚を一瞬、
ギュスターヴに見せたが、やはりその刀身は変わらず塗り固めた灰の如き白だった。
「使えないのかい?」
「俺はな。……使えたとしても使いたくはない」
グヴェルを始めとした術社会が嫌いなわけではない。しかし、今手元にあるこれだけは、自分の側にあるものとして容認できない気持ちが、ギュスターヴにはあった。
「……とはいえ、捨て置くわけにも行かないし…」
「相棒、俺様にそれをちょっと当ててみてくれ」
変なことを言う、と思いながらギュスターヴは白いFBをデルフの剣身に重ね当てた。
「ほー……こいつぁすげー。おでれーたよ。この剣、周りから何かを引き寄せようとしてるぜ。うまくできてないみてーだけど」
「よくわかるな」
「これでも一応、伝説の剣だしな」
FBが機能を発揮していないというのはある意味幸運だ。間違って誰かが手にすれば大惨事を起こす可能性もある。
「やれやれ…」
FBを袋に戻しながら、夕日に光る丘を眺めつつギュスターヴのため息が漏れた。
「ギュスターヴさーん!」
「ん…?」
遠くから自分を呼ぶ声に振り向くと、バスケットを抱えたシエスタが手を振っている。
シエスタはバスケットをひざに乗せ、ギュスターヴの傍に腰を下ろした。
「大爺ちゃんの宿に皆さんが泊まったと聞いたので、差し入れをしようと思いまして」
「気を利かせてもらってすまないな」
バスケットの中には陶器の器が入っていた。
「野鴨のオレンジクリームパイですよ。皆さんで召し上がってください」
ほのかに漂うパイの香ばしさが胃を刺激してくれる。
「あと、これも…」
といって、シエスタはバスケットのそこからあの『読めない本』を取り出した。
「どうしてこれを…?」
「お父さんが、ギュスターヴさんは読めるみたいだからって」
どうやら顔色をしっかりと見られていたらしい。
「そうか…ありがとう。でもこれは受け取れないな」
「えっ…」
ギュスターヴは半目でシエスタを見て言う。
「一晩、借りることにしよう。ロベルト老人に渡しておくから、後で受け取ってくれ」
「どうしてロベルト老人は、一人で村に住んでいらっしゃるのかな」
バスケットを代わりに持ち、シエスタと並んで歩いたギュスターヴが問うた。
「そうなんですよね…もういい年だし、一緒に住まないかってお父さんも言ってるんですけど…」
「首を縦に振らない、と」
シエスタは静かに頷く。
「あいつの家に世話にはならん、とか何とか言ってるんです」
「あいつの家、ね…」
宿に着き、食堂を見ると既にキュルケたちが卓を囲んでいる。
「あら、お帰りなさいミスタ。先に頂いているわよ」
ギーシュはワインを愉しんでいるらしく静かで、タバサは食べるのに真剣で静かだった。
シエスタの差し入れを美味しく頂いてから、一同は部屋に戻ろうとした。
「それじゃ私も家に帰りますね」
「パイ、ありがとう」
律儀にタバサが礼を言っていた。
振り返って再度頭を下げ、シエスタが宿の出入り口から続く闇の中に消える。
「…じゃ、明日は早いから、私もう寝るわ…」
あくびを殺しながらキュルケが食堂を出ていくのを皮切りに、それに続くようにタバサ、ギーシュも食堂を辞した。
食堂には窓際の安楽椅子に座るロベルト老人と、テーブルでワインを傾けるギュスターヴだけが残った。
「……お主は部屋に行かんのかね」
「まだ寝るには早い。女子供と同じに見られては困ります」
「私から見ればおぬしもあの娘子らも大して違わないさ……」
支援
ランプの明かりと窓からの月光が食堂の二人に掛かっていた。
「ご老人は幾つになるので?」
「ん…こっちに来た時が32かそこらで、もう70年も昔になるな…」
「随分とお若い」
「褒めてももう何もやらんよ」
カップの中でワインが減っていく。
「…とはいえ、そのお年では日々も大変でしょう。なぜシエスタの家に行かないのですか」
「……忌々しい。ジニーを掠め取った憎らしいあの男の家に、老い衰えたからと厄介になるのつもりなどない」
老人はふん、と鼻で息を切ってみせる。ギュスターヴはロベルトの言葉を手繰り寄せるようにして考えた。
「……シエスタの祖父ですか」
「そうさ。…勤勉で朴訥とした男でな。少しの間タルブを離れた隙に、まんまと取られてしまったよ!このロベルト様一生の不覚さ」
そう言って笑ってみせるロベルト老人はどこか若々しく、ギュスターヴの脳裏に見たことのない飄々とした若者を想像させた。
「…シエスタもエドも、ジニーの家族だ。だから私は仲間が皆逝った今もこうして彼等を見守ることにしたのだ。しかし同時にあの男の家族でもある。施しを受けようとは思わんよ」
「……矜持ですかな」
「意地だよ。男としてのな」
遠く去った過去。ヴァージニア・ナイツへの想いを語るロベルト老人を前に、ギュスターヴは思う。
はたして自分だったら、遠い異界でそのようにして生きられるのだろうか、と。
それほどまでに、ロベルト老人はヴァージニア・ナイツを愛していたのか、と。
既に夜も更け切り、二つの月が天頂を過ぎて徐々に西に下がろうと言うほどの頃。
トリステイン魔法学院、ルイズは当然、女子生徒寮の一室に眠る。普段なら近くでもう一つの寝息がするのだが、今日はルイズ一人の寝息だけが部屋を渡っている。
毛布の裾を手繰り寄せ、ルイズは眠っていた。身体を丸め、夏が近いはずなのにまるで寒さに耐える幼子のようだった。
部屋主の寂心を見透かすように、引き出しに仕舞われた『水のルビー』が、『始祖の祈祷書』が仄かに、光を漏らしていた……。
その時、ルイズはどこかの神殿に居るようだった。
点在する蝋燭の光だけが薄暗い神殿の中に浮かんでいる。
左右の壁に添うように石の兜を被った兵隊が立ち並び、次に年嵩の高い男性が数人立っていた。
その服装はいかにも上質で、物腰からも高位の官職を得ているような人たちだとわかった。
左右に並ぶ人の列の中心を一人の男が歩いていた。
周囲の兵隊が一斉に敬礼していき、そして進む男がそれを一目もしないところから、男がこの人たちの上に立つ人間だとわかった。
その顔がどこか、ギュスターヴを思わせるところがある。
男は列の途切れた先にある、祭壇のような場所に上った。
祭壇は周囲がガラスが入っているかのように外界を見渡せる展望を備え、祭壇の中心部にはなんと剣が置かれていた。
剣はなんらかの力によってなのか、台座に置かれず浮遊している。
台座に上った男は浮遊する剣を手に取る。剣を天井に高く掲げると、静かに目を閉じた。
すると漆喰のように真っ白だった剣の周囲にゆらりと陽炎が立ち、次に純白の剣身が焼けた鉄のように赤く光った。
男は満足したのか剣を台座に戻した。
暫くすると左右に並ぶ人の中を、一人の子供が歩いてくる。かわいらしい服装ながら、上質の生地と、その顔立ちから、祭壇に登った男の子供であろうことがわかった。
子供は緊張した様子で祭壇に登り、台座をはさんで男――父親の反対側に立った。
すると不思議なことに、祭壇から外界を見渡す大きな窓が石壁でふさがれる。
そして父親が今さっきしてみせたように、台座から剣を降ろし、天に向かって掲げてみせた。
目をぎゅっとつむり、一生懸命父親のように剣を光らせようとしているのがルイズにも判った。
(……がんばれ!がんばれ!)
ルイズは神殿を取り囲む空気と、子供の真剣な、緊張した姿を応援したかった。
しかし声がでない。それどころか、自分が神殿の何処から子供を見ているのかも、はっきりとしなかった。
子供は暗くなった神殿の中で一人、懸命に剣を光らせようとしていた。
しかし父親がものの数秒で光らせたのに、子供は数分を過ぎても剣には何の変化も起こせなかった。
子供は手が痺れてきたのか、掲げた剣がふらふらとして、…ついに剣は降ろされる。
「なんということだ!」
それを見た父親は子供にに向かって怒鳴りつけた。子供は驚いて身をすくませる。
父親は驚愕と同時に、言葉にするには重過ぎるほどの軽蔑をにじませて子供を見ると、脱力したように身を投げてどしどしと歩いて神殿を出て行った。
その姿を見て動揺する配下の兵士や高官たち。その誰も祭壇に残された子供を見ず、各々が神殿を後にしていく。
そして子供は数人の女官とともに神殿に残される……。
視界が暗転し、気が付くとルイズは別の光景を見ていた。
さっきまで神殿に居た子供は身の服も代わり、父親らしき男の代わりに女性の傍らに立って大きな石の門の前にいた。
女性はルイズの目で見ても美しく、またどこか繊細な雰囲気を与えていた。にも関わらず、その目はぱっちりと輝くような力が込められていた。
彼女は傍らの子供を撫でて、ともに石門をくぐっていく…。
石門の先は広い通りになっていた。トリスタニアを二回りは広くしたような、立派なものだ。
だが、通りには人影がまったく存在しなかった。それどころか建てられた家という家の窓や扉が閉められていて、淋しい空気を作っている。
暗い夜道を歩くように、女性と子供は身を寄せて通りを歩いていく。
不意に窓の一つが開けられて、暗くて見えない家の奥から誰かの声が飛んだ。
「このできそこない!フィニー王家の面汚し!」
そう叫ぶとまた始めのように窓を閉め切った。
子供はビクッと身体を縮めたが、女性が背中を促し、通りを耐えるように歩いていった…。
通りを囲む住宅はあんなに立派だったのに、二人が歩いていく先の家はどんどんとみすぼらしく、貧しいものになって言った。
女性が足を止めた時、子供が見上げた先にある家は朱塗りの板葺き屋根が所々剥げ落ち、窓が割れて蜘蛛の巣が貼っていた。
「今日から此処が私たちの家よ……我慢できるわね?」
女性が始めて声を出した。その声は今にも掻き消えそうなのに、凛としてルイズにも聞こえてくる。
「うん。僕、お母様と一緒ならどこでも大丈夫だよ!お父様はあの日以来、僕とお話してくれなくなったけど…」
「お父様が此処に住むようにとおっしゃったのよ…これからは、今までのように好きにして上げられないと思うけど…ごめんなさいね」
母親と言われた女性は子供を抱き上げると、そのくすんだ金髪を優しく撫でる。
「良い子よ、良い子……ギュスターヴ。私の子」
ギュスターヴと呼ばれた子供は無邪気に母親に身を預けていた。
「ギュスターヴ……?!」
バッとルイズが飛び起きた時、外はまだ夜だった。
遠くに見える山際がようやく明るくなってきたか、というほどだった。
「……夢…だったのよね」
ルイズは夕食を過ぎても帰ってくる様子が無いギュスターヴ達に憤慨しつつも、明日になれば帰って来るでしょ、と見切りをつけて早々に寝床に入ったのだった。
無論、それは無意識にとった強がりでしかなかったのだが。
「なんだったのかしら…今の夢」
くしくしと頭を掻きながらルイズはベッドに身を投げる。
「今の夢…ギュスターヴの夢?……子供の頃のギュスターヴ……だったのかしら?」
変な時間に眼が覚めてしまったルイズは、暫くベッドの上でごろごろしていたが、寝苦しくなってきたので寝間着のまま起き上がり、机に向かってみた。
「……ギュスターヴぅ……」
(まったく、変な夢見ちゃったわ。これも全部ギュスターヴのせいよ!きっとそうよ。ご主人様がとっても大事な仕事を任されたっていうのに、手伝いするどころか、
ツェルプストーなんかと遊びに行っちゃって。…まぁ、それを良いって言ったのは、私なんだけど……)
べたっと机に突っ伏したルイズは、視界の端に見えるギュスターヴの持ち物に目をやった。
「……ギュスターヴって、私に召喚される前は何をしていたんだろう……」
夢で子供の頃っぽいギュスターヴを見たせいかもしれないが、ルイズはそんなことを考えていた。
(前に話した時、焼け落ちる砦にいたって言ってたわね。格好は立派な鎧を付けて…礼儀作法はまぁ、それなりに出来ているのよね、悔しい事に)
ふと、夢の中にでた子供のギュスターヴが脳裏をよぎる。
「……案外、大貴族とか、王様の子供だったりしてね。…ないか、あいつ魔法使えないっていうし…」
ましてや話に聞くにギュスターヴの世界では誰もが魔法を使えるというではないか。と、ルイズは自分に結論付けようとした。しかし…
「………」
夢で見た謎の儀式。剣を掲げた少年ギュスターヴが父親に向けられた落胆と軽蔑の表情が頭を離れない。
「……あれは只の夢、よね……」
突っ伏していたルイズは徐々に催してきた睡魔をたたえたまま、再びベッドにもぐりこんだ。
「…さっさと帰ってきなさいよね…ほんと……」
二、三の言葉を呑みながらルイズは再び眠りにつく。
…引き出しの中で祈祷書とルビーは、ルイズの見えぬところで静かに、だが確かに光っていた。
投下終了。サブタイトル付け忘れて時間を食ってしまった。
ロベルト御年102歳。長生きですね。でもウィル・ナイツは設定上101歳まで生きるのでどっこいかなぁと。
或いは執念で生きながらえているのかも…。
では、次回に続く。
乙でしたー!ついにルイズがギュスターヴの過去を…どうなるやら
やっと鋼の人に遭遇した!
激しく乙!
いやはや、
つい昨日エッグを倒したとこでテンションMAXなんです。
398 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/04(火) 14:19:33 ID:prurh9RM
エッグマン?
>>398 まずった。ネタバレ要項だ!
詳しくはサガフロ2を最後までプレイして確かめてくれ。
サガフロの伝統……攻略本見て育てないとボスで詰むんだよな〜
>>400 危うくラスダンで詰むとこだったけど、
ウィル爺さんを盾にして3連携連発で辛勝したんだぜ!
ファイヤブランドがどの様に物語に組み込まれるか……
楽しみだ。
サウスマウンドトップ・・・辛かった・・・。
サウスマウンドトップは死ねた。いや、死んだけど(ゲームオーバー的な意味で)
ラスボスはLP耐性持ってねー、って叫んだ記憶がある。ラストリーフよありがとう。
遅ればせながらグルグルの人乙
やっぱり異世界に行っても腰ミノとふんどしの因果からは逃れられないのね
ルイズが「Z」のマスク召喚
「Z」の強さは着用者の精神力に比例するからなぁ
ヒネてはいるけど序盤の精神の弱さは定評あるから・・・・・・・どうしましょ?
で、ジョゼフが「神皇帝地獄」と融合してしまう、と
だからこそルイズの成長物語にできるじゃないか
指導役の適任者があんまりいないけど、学園のくせに
>>406 現実の学校にもそうそういるもんじゃないからな。
うみねこのなく頃にから右代宮戦人召喚
召喚されても魔法は存在しねぇ!と頑なに服従を拒否
「ホラホラァ!人が空飛んでんだろォ?爆発してんだろォ?
さっさとメイジはいるって認めちまえよォ?バトラァァァァ!!」
「認めねぇ…こんなの…認められるかってんだよッ!!」
うん、無理だ話が続かない
まぁ創作物でそういうのが居ないってのは珍しいな
いたらいたでルイズはその人に依存してそうだが・・・
>>408 うまく話が続けばそれはそれで面白そうだw
>>408 そういや二話だけで止まってるけど、超現実主義者のバンコランもパタリロから呼ばれてたな。
ゼロ魔世界だとバンコランの餌食になるのは誰だろう
>>412 なるとしたら・・・・・・ギーシュと教皇とその使い魔くらいかな
ワルドは多分年齢制限ひっかかるしマリコルヌは色々論外だろうし
>>412 そりゃ、まずはギーシュだな。それから右手の人。このあたりはガチ。
そこでマリコルヌのダイエット奮闘記ですよ。痩せれば美形というのはよくある話だし。
バンコランのために頑張って痩せようとするマリコルヌ。一見美談だけどよく考えると色々おかしいな、うん。
>>408 ひぐらしから羽入を妄想したことがあるなー
フーケに殺されたり、ワルドに殺されたりしても
ひたすらループしてあがくルイズというのを
まあ考えだけですが
>>414 あの人一応フリーの相手しか手を出してないはず
バンコランってパタリロの母に襲われた事がありましたよね。
つまりカリーヌに…
惚れ薬を飲まされると女性だろうがパタリロだろうが美少年に見える男バンコランw
筋金入りのホモだ
子供とかできると危険な任務に飛び込んでいけなくなるからじゃなかったっけ
たしかザカーリあたりがそう言ってたような
ザカールかあSPTレイズナーか懐かしいな
ハルケギニア人との混血の異星人の少年が父の母国に危機を知らせる為、わざとルイズに召喚される話から始まる第一部と
3年後、レジスタンスとして活動するルイズ達と占領軍に仕官しているギーシュから始まる第二部と…
ワルド「俺は人殺しがだぁい好きなんだよ」
メンヌヴィル「脳が痛ぇんだよ、たいちょぉぉぉお」
>>422 それも理由かもしれんが、
既に目的と手段が逆転しているか両立させている状態だw。
427 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/05(水) 00:10:16 ID:h7FCMqvp
30mゴーレムとポン刀一本でガチで切りあいする悪魔召喚師は呼ばれたっけ?
・・・下手するとご立派様再びとか、御柱様とダブル召喚しでかす危険人物だけどなーw
喚ばれている。
正直メジャーどころで喚ばれていないキャラ探すほうが難しい。
>>427 それをやるとな。
果たしてご立派様と比較されて、耐えられる出来になるかっていう問題があるんだよ。
あと、下げろ、な。
やっとかめ探偵団からまつ尾ばあちゃんを
メジャーすぎるか
じゃあ卵王子カイルロッドからカイルロッドを
「悲しみは黄昏とともに」のラストからで。
メジャーすぎるよな。
よな。
>>431 あの少年をルイズにこき使わせるなんて酷すぎる!
胡散臭いおっさんを喚んで弄られまくるほうがいいと思います!!
冴木キャラは不幸すぎるか厨設定か両極端だからなぁ・・・・・
もちろん知ってるさぁ
だって俺達おっさんだもんげ!
茂野ごr
以前バウンティソードのソードとテティス召喚とか考えてたな。
破壊の杖とかシエスタの曾祖父が誰とかちゃんと設定考えてたけど、
あの雰囲気と台詞回しを再現出来なかったので断念した記憶がある。
さすがにこの作品知ってる人はいないだろうな。
グリュウの方呼べば、中身がまるっきり子供だからルイズがしっかりせねば、と頑張って、
案外いいコンビになりそうな気がする
悠久パーペチュアルブルーのルシードアトレーとか…
実際は彼本人よりあのゲームに出てきた
『魔法がないとつよく信じることで本当に魔法発動不可にしてしまった』あの人が…サブキャラすぎるんだよなー…
438 :
ゼロと波動:2008/11/05(水) 00:44:37 ID:Mq+p3AXS
読んでみたいと思ったんですが、ないみたいなんで自分で書いてみました
ストリートファイターV RYU FAINAL より豪鬼に勝った後日のリュウを召喚です
0:50から投下してもいいでしょうか
>>435 俺はいまだに第三弾の製作を待っている口だが。
期待しようではないか
441 :
ゼロと波動:2008/11/05(水) 00:50:24 ID:Mq+p3AXS
「へ・・・平民??」
爆発と共に現れた使い魔は、人間だった。
元は白かったであろう、上着と呼べるかどうか怪しい布を身体に巻きつけ、丈夫そうな黒い紐を使って腰の辺りで縛りとめている。
腕を通すために開けられた穴もズボンも、裾は破れてボロボロだ。
そして頭には赤いハチマキ。
「はは!ゼロのルイズが平民を召喚したぞ!」
「しかも物乞いのオッサンだよ!」
「流石はゼロ!」
周りから漏れる失笑、揶揄。
確かにボロ布を纏った姿は物乞いにしか見えない。
「ミスタ・コルベール!!やり直しを!召喚のやり直しをさせてください!!」
桃色がかったブロンドの髪の少女――ルイズ・フランソワーズは目に涙を浮かべながら頭が多少寂しい責任者らしき男に訴えた。
「ミス・ヴァリエール、残念ですがそれはできません。貴女も知っている通り、春の召喚の儀式は神聖なものです。やり直しは認められません」
「でも!」
「確かに平民を召喚したというのは前代未聞ですが、規則は規則です。彼が死なない限り、彼はミス・ヴァリエールの使い魔です」
にべもないコルベールの言葉にルイズはがっくりと肩を落として、自分が召喚してしまった男を改めて見てみた。
年齢は・・・ミスタ・コルベールよりいくらか若いぐらいだろうか。
身長は決して低くはないけど、それほど高いわけでもない。まあ、それでも自分と比べれば随分と高いが・・・
ただし、体格は並外れている。
オーク鬼のような横幅と厚み。
首は顔よりも太いし背中も盛り上がっている。筋肉の筋がはっきり浮き出た腕なんてまるで丸太だ。
いや、丸太なんて柔らかそうなものじゃない。石・・・そう、土のメイジが石や鋼で錬金した彫刻のよう。
はぁ、せめてコイツにツノでも生えてればなぁ・・・首から下だけなら亜人みたいなのに・・・
ルイズは不満全開な顔で男を睨みつける。
442 :
ゼロと波動:2008/11/05(水) 00:51:17 ID:Mq+p3AXS
他の生徒が召喚した使い魔であるサラマンダーや風竜を見て目を白黒させていた男は、ルイズの視線に気づくと初めて口を開いた。
「そんなに睨み付けないでくれ、あと、教えて欲しいんだが、ここはどこだ?なぜ俺はここにいる?そして、キミ達は何者だ?」
桃色髪の少女は黙って睨み付けてくるだけで一向に口を開こうとしない。
「ここはトリステイン魔法学院です。彼らは学院の生徒、そして、私は教師をしているジャン・コルベールです。貴方はここにいるミス・ヴァリエールに召喚されたのですよ」
無言で睨みつけるルイズに代わり、コルベールが答えた。
「とりすていん?聞いたことがないな・・・それに召喚ってなんだ?俺はアマゾンのジャングルにいたはずなんだが・・・?」
「召喚は召喚よっ!私がアンタを召還したのっ!だいたいトリステインを知らないなんてどんだけ田舎者なのよ!」
割って入ってルイズが叫ぶ。
勝手に召喚しておいてそんな言い草もあったものではないが、そこは典型的な貴族であるルイズ、平民の事情なんて考えない。
そんな彼女も大声を出したことで多少は吹っ切れたのか
”平民を使い魔にしなければならない”ということに諦めがついたらしい。
「平民のアンタを使い魔にしてあげようってんだから感謝しなさいよね!!」
ルイズは意を決すると、コンストラクト・サーバント<契約>の呪文を唱えて男の顔に手を伸ばす。
届かない。
「しゃがみなさいよ!」
訳の解らないまま言われた通りしゃがむ男。
ルイズは改めて男の顔を両手で挟むと、唇を合わせた。
「な!?何をするんだ!!?」
突然キスされた男は慌てふためいてルイズから離れた。
突如、左手の甲に激痛が走る。
「な・・・!?」
手の甲と拳の部分のみを覆うグローブを外すと、手の甲に光と共に不思議な模様が浮かび上がりつつある。
「ルーンが刻み込まれているだけです。すぐに収まりますから少しの間だけ我慢してください」
しばしの間、光を放ちながら模様は刻み続けられたが、なるほどコルベールが言った通り、激痛はすぐに治まった。
自分の手の甲に浮かんだ不可解な模様を消そうとこすったり叩いたりしてみるものの、模様が落ちる気配はまったくない。
戸惑う男に告げるコルベール。
「これで貴方は正式にミス・ヴァリエールの使い魔となりました。それにしても・・・変わったルーンですね・・・ちょっと見せてもらっていいですか」
コルベールは取り出したスケッチブックに浮き出たルーンを模写しだす。
自分の描いたスケッチに間違いがないかを確認したコルベールは満足気にうなずいた。
「さて、全員召喚の儀式を済ますことができましたね。では皆さん、学院に戻りましょう」
その場にいた少年少女たちは返事をすると、何事かをつぶやいて棒切れを振る。
すると突然、自分にキスした少女を残して全員が宙に浮き始めたではないか。
そしてそのまま学院と思しき建物に向かって飛んで行ってしまった。
443 :
ゼロと波動:2008/11/05(水) 00:52:31 ID:Mq+p3AXS
男は唖然とした。
自分も宙に浮いたり瞬間移動したりする魔人やヨガ行者には会ったことがある。
が、彼らは・・・特に前者は常識を超越した特殊な存在だった。
しかし、今目の前で起こった出来事は、どうみても普通の少年少女たちの所業だ。
「・・・何がどうなってるのか・・・まったく解らん・・・」
見たこともない生き物や少女からのいきなりのキス、空を飛ぶ生徒たち、自分の左手に突然現れた刺青・・・
もはや理解の範疇を超えていた。
本来ならもっと取り乱してしかるべきなのだが、長年の修行で身につけた精神力がなんとか理性を保たせていた。
いや、もしかしたら、余りに常軌を逸していたせいで返って冷静でいられたのかもしれない。
空飛ぶ少年たちを見送りながら思考を巡らし、とりあえず緊急的に自分の身に危険が及んでいる訳ではなさそうだと判断する。
だとすると、不可解極まりないこの場所で下手に動き回るのはあまり得策とはいえない。
しばらくはこの場所で様子を伺った方がいい。
それに元々、ジャングルに篭って修行するつもりでいたのだ、その修行が多少険しくなったにすぎない。
厳しい修行なら望むところだ。
コルベールと名乗った男の話によれば、今の自分はどうやらこの少女の使い魔ということらしい。
使い魔というものが何をするものなのかは解らないが、未知の経験もまた修行。
そう、万物全てが修行である。
しばらくはこの少女についてみるのもいいだろう。
「俺はリュウだ、よろしく頼む。ヴァリエール」
笑顔で右手を差し出す。
「私のファーストネームはルイズよ・・・っていうか!アンタは私の使い魔なのよ!?私のことはご主人様と呼びなさい!!」
文句を言いながらも、一応、出された右手に握手で応える。
無骨でゴツゴツしたリュウの分厚い手は、とても暖かく、優しくルイズの手を包んだ。
「そうか、わかった、よろしく頼む。ルイズ」
「だからご主人様だって言ってるでしょ・・・まぁ、いいわ・・・」
思わず顔を背けるルイズ。頬が熱い。
何故だろう、この男の手に包まれていると広い広い草原に寝転んでお日様の光を浴びている・・・そんな穏やかな感覚に陥る。雰囲気がちょっとちぃ姉さまに似てるかも・・・
いやいやいやいやそれはない!
平民が、それもこんな薄汚い男がちぃ姉さまに似てると思うなんて私は馬鹿ですか阿呆ですか。
ブンブンブンと首を振りつつも、すっかり怒気を抜かれてしまい、思わずルイズと呼ぶことを認めてしまったではないか。
まあいい、これからみっちり使い魔として教育してやるんだから!でも、ご飯はちゃんとあげようかな・・・などと思いつつ学院に向かって歩を進め始める。
「ルイズは彼らみたいに飛んでいかないのか?」
「うるさいわね!歩きたい気分なのよ!」
前言撤回。やっぱ、コイツむかつく。ご飯は床決定。
リュウはリュウで、それにしてもよく怒る娘だなと思いつつ桃色がかったブロンドの髪を持つ少女、ルイズに続くのだった。
444 :
ゼロと波動:2008/11/05(水) 00:53:43 ID:Mq+p3AXS
以上で投下終了です
設定上ではリュウよりギーシュの方が背が高いんですね
意外な。
ちなみに、体型はストリートファイターWぐらいのガチムチをイメージしてます
ですんで、予想体重は設定よりも重く、80〜90キロぐらいあるかも
乙
ってかその表現はヤメレw
>ガチムチ
X-MENや魔龍ハウザーと戦ったリュウなら微塵も驚かないだろうなあしえん
>>444 っと確かリュウの体重は100Kgオーバーのはず。
筋肉が多いからどうしても体重は大きくなる。
(筋肉は脂肪より重い。ちなみに筋肉>水>脂肪だったりする。)
つまり俺が乗った体重計の針が回りすぎるのも筋肉の……!
449 :
ゼロと波動:2008/11/05(水) 01:03:13 ID:Mq+p3AXS
っと思ったら、ギーシュとリュウって身長同じ175センチでした。
あれ?昔見たプロフィールじゃ172センチだったと思うんだけど、背、伸びた?
>>446 確かにw
あのリュウならエルフでも殴り勝ちできそう
>>447 正道会館の角田師範が174センチ90キロなので、まあ、リュウもそれぐらいではないかと予想してみました。
あの辺りのバケモノ体型の人の体重なんてわかりませんw
乙 ルイズの自己紹介
ファーストネームがファイトネームに見えたw
現代の野蛮人に期待
須藤元気が確か175センチの73か4キロ。
あの体型ならリュウは少なくとも85以上はなきゃおかしいな。
じゃなきゃものっそい骨スッカスカってことになる。
>>450 別に野蛮人じゃないだろ
あまりにもストイックすぎる格闘馬鹿なだけだ!
・・・ケンは結婚して子供もいるってーのに未だにプーなのもアレだが。
ウィキペディアみたら身長175cm、68Kg。
K-1の魔裟斗が174cmで70Kg。
たしかに80〜90Kgぐらいかもしれないな。
溝口はブランカより野蛮人だと思う
ちなみにザンギエフは大統領の後輩という設定が現実に則してるとすると
スーパーエリートしか入れないモスク大学卒であり、あの世界有数のインテリって事になる
455 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/05(水) 01:26:44 ID:rgxM72+6
愚地独歩は178センチ体重は110キロだぞ
これは、あれですな。
切りのいいところでいつでも「リュウがいない!」ENDにつなげられますね。
>>453 ちょwwwwwwwww
あまりにも軽すぎるwwwwwwwww
一般人と大差ないってあんまりすぎる
波動の分じゃない?
波動拳打つごとにやせんの。打ち止め時の体重が80キロほど。
で飯食うか寝たら回復。
ちょっと馬鹿すぎるか……
>あまりにも軽すぎるwwwwwwwww
226センチ78キロのサガットと比べればまだ普通だ……
おめえらに理想の空手家像ってやつを教えて(ry
豪鬼との戦いの後でアマゾンで修行?と思ったけど豪鬼戦→アレックスとの朱雀城での再戦まで開きがあるから別におかしくはないね
どこぞの格闘ゲームには282cm、55kgの人間(?)がいるしさ!
462 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/05(水) 02:10:39 ID:rgxM72+6
お前ら、究極の空手家の体とは身長185センチ以上体重うっすら
脂肪を残し115キロだぞ
ダルシムはヨガで体重を自由に変化できるんだから波動だって
そういやストWで剛拳は生きてることになったんだよな
>461
あれはもはや人間とは呼べない紙袋だろwww
つーか、そもそもリュウは「空手家」なのか?w
古来から伝わる暗殺拳と空手をベースにした独自の格闘技だから当たらずとも遠からず
サガットも大概ガリガリだけど
226cmの78kgって
海外のシルバーアクセサリーのブランドのアトリエに
ゲッターロボのフィギアが置いてあった
ゼロ魔世界の時間って現実準拠?
474 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/05(水) 03:28:09 ID:N4H+VCl1
ブラックブラッドブラザーズとか聖なるかなの需要はありますか?
テンプレも読めないような人の作品に需要はありません。
そうですか…
sageなくてイイスレなんて
質問スレ、初心者スレ、vipかニュース系の板のスレぐらいじゃ。
>>477 ほんとだ…sage忘れてました
すみません
需要はあるか? じゃだめなんだ
俺はこういうのを書いてやるぜ! 貴様らついて来い!
こうじゃないと
>>479 そういうものでしょうか?
あんまりマイナーすぎるとイマイチかなぁと思いまして…
せっかくなので頑張ってみたいと思います
こっちは好きなものを書いてくれとしか
まぁ、気にせずに好きなの書けってこった
スキなら書けばいいさ!
>480
むしろ好きなマイナー作品をワゴンから救い出す為に需要はないけどゼロ魔クロスで死ぬ気で良作を書いてやるぜ!
と頑張った人も居たりいなかったりするよ!
え?オプーナとのクロスだって?
究極戦隊ダダンダーンから小鉄を召喚とかどうだろう?
フーケのゴーレム程度なら素手で何とか出来ると思うんだが・・・
>>457 格闘ゲームのキャラの体重を重くすると文句をいう人たちがいると
以前聞いた覚えがあるからそれが原因かもしれん
春麗の足を見ると相当重そうだしな・・・
不思議パワーで重力を軽減していると思えば特におかしな点はない
春麗もう四十か・・・
なんかガメラが大きさの割りに
発泡スチロールで出来てるくらい軽いとか
ゴジラが鉛で出来てるんじゃないかって位重いって議論みたいだな
このスレにおいて初投下に必要なもの
sage>>>>>>(越えられない壁)>>>>>>クオリティー
作者自身が触れちゃったからな。
リアリティを求めてると思って、おせっかいにも検証したくなるさ。
クロスは作者自身もノリで行くのがいいと思うな。
アマゾンのジャングルってきいたときに、ピラルクを食いあさってブランカに泣かれてるほうのリュウを連想してしまった。
リュウなら極端に強すぎることもないし
熱いバトルモノになりそうだ
いやファイナルの最後で豪鬼と戦ったときは
波動拳の撃ち合いで山の形変えてたぞw
ゲームのエンディング描写でも豪鬼は物凄いインフレ起こしてるからなぁw
エアーズロックをぶっ壊したのに驚いていた頃が懐かしいwww
格ゲーキャラの強さ+かわいらしさ=はいぱーあんなのおろし丸を召喚。
波動拳、竜巻旋風脚や雷光拳、龍虎乱舞、地獄極楽落とし何でもあり。
普通に格闘家と殴り合いをする恐ろしい犬。
でもかわいいポメラニアン。
知らんかった。いつの間にかドラゴンボールみたいになってんのな
>>496
>>496 そういやそうだった。
7万相手でも普通に勝てそうだな。
>499
媒体によっては磁界王やシュマゴラスやオンスロートやサノスとステゴロで殴り合いするんだぞ
連中の強さは底知らず
ある意味ドラゴンボールよりひどい
>>452 よく勘違いされるが、ケンはちゃんと職はある。
というか、とんでもない金持ちだぞあいつは。
マスターズ財閥の御曹司で、3じゃ社長業やってるし
しかし……リュウは好きだから別にいいが、デルフ涙目だなこりゃw
これはストリ−トファイタ−だけでスレが立てられそうな勢い
というか中平版のリュウは一作目のストZEROで都庁を真空竜巻旋風脚で半壊させている
>>501 というかそれってコメディアンはおろかダンでも可能だし
・・・・・・・よく考えてみるとダンって助走無しのジャンプで4,5Mもの高さのジャンプかますんだよな
若干リアルよりのスト3シリーズでも
豪鬼が隕石打ち落としたり海を真っ二つにしてたなw
そういう世界観のゲームなんだよなw
そんな無茶区茶やらかすのってゲーム中でも豪鬼だけなのに
その豪鬼と勝負が成り立っちゃうから結局みんな化け物ってことになるんだね
デルフの出番は?w
ストリートファイターどもの話を考えてたらなぜか鉄乙女さんを思い浮かべてしまったのですよ
「万物悉く切り刻め、地獄蝶々!」
「デルフリンガーだっつの」
違和感無いな
テニプリ並のファンタジーだなw
ヨガで手足が伸びたり手から気を飛ばす作品に今さら何を
ダン召喚したらかなり遊べそうな気がした。
ギーシュに負けたり、フーケに勝ったり、
サイキョー流を広めようと嫌がるシエスタを無理やり弟子にして
なぜかそのシエスタに負けたり、でもワルドには勝ったり
ダンを喚ぶならジミーとセットだろ
デルフリンガーの形を剣に固定するから
応用効きにくいんじゃね?
どうせ話いじるんだし剣でなくて良いかもしれんね。
リュウだったら籠手とかカイザーナックルとかw
カプコンだったら伝統的に鉄パイプかポン刀じゃね?
>>496 >>500 リュウのすごいところは、
小学生から世界滅ぼす大魔王とも、
対等に戦っていて全く違和感のないところだと思うw
>>518 なんせ彼の特殊能力は「相手をパワーアップさせる」ですからね
たぶんリュウだと7万と戦わないよ
七万 ROUND ファイッ
とかそんな感じで
>520
MUGENのカンフーメンみたいなのを連想したよ。
ふと思ったんだが、映画ではなくゲームの方のスパルタンXから主人公(トーマスだっけ?)召喚して対七万やってみてえ
時系列の話だけど、3rdのリュウとゼロのベガとかがいっしょに召喚されてても
問題なさそうだよな
むしろ対7万戦ってボーナスステージ扱いじゃないか?
魔改造なゼロ魔キャラもでてきそうだ。
サイコパワーを手に入れたイザベラとか。
物覚えが凄く良いシエスタとか。
コサックダンスが得意なスカロンとか。
待ちワルドとか。
空気読まずに登場!
10分後投下OK?
スーパーコンボが斜め上に衝撃波が飛んでいくサマーソルトキック連発なワルドですね
okさ。むしろそろそろ話題を変えたい。支援する
ルイズの部屋に光が差込む。その光によって寝ていたダ・サイダーが目を覚ます。
時刻は朝だとしか、わからない。
ダ・サイダーは寝るのを止め、肩のパットを開けてみる。まだメタコが寝ている。
「…まだ寝ているのか……ここは…そうか…45点いや…25点女の所に居るのか」
ルイズが聞けば、怒り出すような事を平然と言う。
とりあえず25点女もとい、ルイズを起こすことにした。昨晩、練った計画で…
ダ・サイダーは、アイテムを求めて旅立った。
ここはダ・サイダーにとって未知の場所。地図も無ければ、アドバイザーメカのメタコは寝てる。
ダ・サイダーにとって、状況は最悪だった。
(これでは不味い…何とかしなければ…)
唯一の武器マシンガンを装備し辺りを警戒しながら、一歩そして、また一歩と進んでいった。
周りから見れば異様な光景なのは、言うまでも無い。
「何だ?アイツ何しているんだ?」
「バ、バカ…アイツ、昨晩『ゼロ』の所で暴れた奴だ…何かまたするつもりだ」
「え?確か…俺達、全員に刃向かおうとしたって聞いたけど…」
などなど、この男はもう有名人だ。(悪い意味で)
ダ・サイダーは状況を打破する為、色々と考える。
(このまま歩く?…いや、早くしなければ意味が無い…どうする…そうか!聞こう)
ダ・サイダーは、薔薇を持った男に銃を突き付けた。
「おい!お前!撃ち貫かれたくなければ、俺様に従え!」
「こ…断わる!貴族にもプライドという物がある。お前のようなふざけた奴に従うか!」
「まあ、話を聞け。実はだな………」
ダ・サイダーは薔薇を持った男に耳打ちをする。
「バカな!確か…君は使い魔だろ?主を何だと思っている!」
「フン…何を言う…これは、アイツの宿命でもあり才能だ」
薔薇を持った男は考え込む。
(宿命…才能か…確かにそうだ。僕には真似できない…それに…それに見てみたい)
「今回だけ協力しよう。ただし、君が持っている鉄砲をしまってくれ。
ここは君が思っているような所ではない」
ダ・サイダーはマシンガンをしまい、協力者を得た。
「君の探している物は厨房に行けば、揃うと思うが…時間との勝負だな…着いて来たまえ!」
薔薇を持った男を先頭に、ダ・サイダーも続いた。
厨房前にて………
「何としても、手に入れるんだ。僕は人を集めて来てあげよう。10分後…ここで待ち合わせだ」
と、薔薇を持った男。
「フ…任せておけ。10分後だな?わかった」
と、ダ・サイダー。そして2人は散っていった。
いざ、厨房の中に入ろうとした矢先、アドバイザーメカのメタコが起きてきた。
「ダーリン?何しているジャン?」
「メタコ、黙っていてくれ…超一流のエンターテイナーの見せ場なのだ」
そして………10分後。
薔薇を持った男は、大勢の人数を集めてきた。
赤い髪の女性や青い髪の女性、金髪で髪を巻いている女性。ほとんどが女性で構成されている。
ダ・サイダーは道具を揃え、準備万端。なぜか、ダ・サイダーの側にメイドがいる。
「フフフ…さぁ、お前の才能を開花させてやろう…この俺様がな…フフフ」
支援
不適な笑みを浮かべながら、ダ・サイダー達はルイズの部屋に向かった。
ダ・サイダー達がルイズの部屋の前に来た時、薔薇を持った男が呟く。
「これだけの大人数が一斉に部屋に起きるのではないか?」
赤い髪の女性が答える。
「なら、聞こえない様すれば良いのよ。ね、タバサ?」
タバサと呼ばれた青い髪の女性は、赤い髪の女性見て溜息をする。
何かを呟き、自分より大きな杖をクルッ回す。
「サイレント…」
赤い髪の女性が、ダ・サイダーの肩を軽く叩き、ルイズの部屋の扉を指差す。
ダ・サイダーも察したのか、ルイズの部屋に入っていき、ベッドに近づく。
赤い髪の女性は、再びダ・サイダーの肩を叩く。ダ・サイダーもまた察したのか、左手を上げる。
タバサと呼ばれた女性は、再び大きな杖をクルッ回す。
ダ・サイダーは厨房で手に入れたアイテムを使う。鍋(熱湯入り)・おたまを…
「ククク…さぁ…ダンスの時間だ…激しく踊れ…ククク」
ダ・サイダーは、おたまで熱湯をすくい、ソ〜ッとルイズ顔の上に近づける。
「アンタ…何やってんの…」
決して、聞こえてはいけない声が聞こえる。しかも、殺気に近い物を感じる。
「もう一度聞くわ…何をする気?」
ベッドに仰向けになり、殺気を放ちながら言うルイズ。
ルイズから放たれる殺気にダ・サイダー達は、黙ってしまった。
そして…禁断の時が来た。ルイズが目を開けてしまった…
「ダ・サイダー…アンタ…何やってんのよ!!!」
支援
ルイズから殺気…ではなく、ドス黒いオーラが放たれた。
「い…いや…俺様は…その…あ…う…」
(ヤバイ…この感じ…レスカを本気で怒らせた時と同じだ…)
「この、おたま退けなさい!今すぐに!!」
ルイズの頭上にあるおたまを退けるように命令する。
「あ…ああ…」
ソ〜ッと退けようとするダ・サイダー。
(か…体が…動かない)
歴史に名を残す、伝説がおきた・・・
「あっつーーーーー!!!」
笑いを堪えるギャラリー、メタコは大爆笑。ルイズはベッドの上を二転三転。
そしてダ・サイダーは、恐怖のあまり沈黙。
約3分後…
「ダ…ダ・サイダー?この私にこんな事をしてただで済むと思っている…」
(こ…このままでは、俺様は…マズイ…何とかしなくては…)
「ま…待て…話を聞け…お…俺様は…その…あの…その…」
「キイテアゲル…メイドノミヤゲニネ…」
「だから、俺様は普通に起こしたかったんだ…だが、脅迫されたんだ」
ダ・サイダーの意外な一言に、ルイズを始め皆驚く。
「ほぅ…誰に…答えなさい…」
(この辺に俺様の知り合いなんて…居た!!)
「薔薇を持った男だ…間違い無い」
薔薇を持った男などこの建物でも1人しか居ない。しかも、その男はここに居る。
「ギーシュ…彼方…なの…」
支援
赤い髪の女性が白々しく、その他のギャラリーに話しかける。
「ああ…そういえば…私達も忙しいから、退散しましょ」
赤い髪の女性を先頭にルイズの部屋から出ていった。
薔薇を持った男もまた、立ち去ろうとする。
「それでは、『ミス・ヴァリエール』さらばだ」
「ギーシュ…何が…『さらばだ』よ…生きて帰れると思わないことね…」
ギーシュの悲痛な叫び声が、この建物に響き渡った。
「フ…自業自得と言うものだな…」
「そうジャン、そうジャン。自業自得ジャン」
ダ・サイダーとメタコが言う。
昔の人は言いました〔1度走り出しだした『ルイズ』は止まらない〕と…
「アンタもよ…ダ・サイダー?覚悟はいいわね…」
ダ・サイダーの悲痛な叫び声が、この建物に響き渡った。
ようやく、理性を取り戻すルイズ。
「ああ!!!授業間に合わないじゃない!!ギーシュ!そんな所で寝てないで、出てってよ!」
ルイズは、ギーシュにとどめの蹴りをいれ、部屋から追い出した。
「この…薔薇の様に…美しい…この…僕を…許さんぞ…『ゼロ』…そして使い魔…」
ギーシュは廊下で気を失い、授業に遅れた。
ルイズもまた、手当て等で時間をロスし、授業に遅れた。
この朝の出来事は、『使い魔反逆事件』と命名された。
今回の出来事は、この国はもちろん近隣諸国まで広くそして、長く伝えられる事になる。
ギーシュは、ルイズとダ・サイダーに殺意を抱くことになる。
ルイズとダ・サイダー達の伝説の始まりに過ぎない・・・
以上投下終了。
支援
お疲れさまなのです
そういえばあのマシンガンは主にギャグシーンで使われるから装弾数無限なんだよなぁ
クィーンサイダロン召喚が楽しみだぜィ
乙
あれかな、「押すなよ!? 絶対に押すなよ!?」
とかやってくれんのかな?
予約が無いなら30分から投下するッス
これはどこかの物語
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ああ……いらつきます。」
ダネット? ダネットじゃない何してるのよあんた?
「お前も私と同じ17歳でしょう。」
え? わたし16歳よ? それよりあんた! これ何よ? どうなってんのよ?
「私はもう充分に戦えます。セプー族の戦士としてやっていけますでもレナ様は……」
ちょっと? ねえダネット? ダネット!! 聞こえてないの……?
あれ……? 景色がぼやけて……
「お待たせしました。レナ様。」
「あなた達がここに来て、10年になりますね。」
ダネットはいいとして、このお婆さん誰? ダネットはレナ様とか呼んでるけど……レナ? どこかで聞いたことがあるような……
『お前もレナ様みたいな凄い術師ですか?』
そうだ。ダネットがわたしに前に言ったあの名前だ。でも何でわたしがそのレナとかいうお婆さんと会ってるのよ?
「今日はあなた達に、この里を守るための武器を授けます。」
「では、やっと私達も正式に、この里の守部にしていただけるのですか!?」
ねえ、里って、前にダネットが言ってた隠れ里とかいうの? ……って、聞こえてないか。
あーもう! 何なのよこれ!!
「……あなた達に、守りの力を授けます。」
空中に武器!? 何これ錬金!? 一気にこの数を出したっていうのこのお婆さん? 凄いメイジじゃない!
あれ? あの武器の中にある短刀って、確かダネットが持ってるやつよね?
「さあダネット、この中から自分にふさわしいと思う武器を選びなさい。」
良くわかんないけど、あの短刀はこのメイジから貰ったって事かしら。あ、ダネット喜んでる。
「私はこの短剣にします、レナ様。」
「糸凪の刃……。持ち主の危機を救うという剣です。」
へー。そんな曰くがあったのねあの短刀。マジックアイテムかしら? ダネットっておっちょこちょいだから、ちょうどいいかも。
ん? このメイジ、何かもう一つ出そうとしてる……? あれは……
「あなたにはこれを授けます。」
黒い剣? どこかで見たような……駄目だ、思い出せない。
あ、また景色がぼやけて……
「よくも……よくも……。殺してやる、殺してやる!」
ダネット……? 何言ってるの? 何でそんな目でわたしを見て……ちょっと何よこれ? 赤い……血? わたしがダネットを剣で……? 待ってよ! これ何なのよ!! ねえダネット!! ダネット!!
ちょっとあんたダネットに何するのよ!! 嫌……やめてよ!! こんなの見せないでよ!!
『いいから消えてね。』
「あぐっ……! お、ま……え……」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
支援
「うああああっ!! ぐっ!! ああああああっ!!」
「お前、しっかりしなさい!! お前っ!!」
あの日、ルイズがあの剣に取り込まれそうになった日、私もルイズと一緒に気絶してしまい、乳でかとタバサに学院に連れてきてもらったそうです。
泥んこ盗賊もルイズが気絶させていたので、難なく捕まえることもでき、取られていた剣も戻ってきて一件落着。だったはずなのに。
あの日から三日経っても、ルイズは目を覚ましません。
ルイズはたまに、発作のような感じでうなされます。
私はそんなルイズに、声を掛けてやることや、汗を拭いてやることしか出来ません。
「私は……役立たずです……」
この三日間の間、私は色んなことをヒゲの爺さんに聞かれました。
私がいた場所、そこであった出来事、そして剣のこと。
ごめんなさいルイズ、私はお前に嘘を付いていました。本当は私……。
「もういや……やめてよ……たすけて……」
「お前、大丈夫です。もう大丈夫ですよ。」
またうなされています。今日はいつもより辛そうです。
私が髪を撫でると、安心したのかルイズは少しだけ穏やかな顔になって、すぅすぅと寝息を立て始めました。
でも、いつまたうなされるのかわからないので、油断はできません。
「ファイトですダネット!」
「ファイトってあんた、もうずっと寝てないでしょ?」
「あ、乳でか……」
いつの間にか部屋に入ってきていた乳でかが、心配そうな顔で私を見ていました。
乳でかはたまに様子を見に来てくれます。
部屋が隣だから仕方ないのよって言ってますが、本当は心配して来てくれてることを知ってます。
だってほら、今みたいに
「全く、使い魔にも他のみんなにも心配ばっかりかけさせて……早く目を覚ましなさいよあんた。」
凄く優しい顔でルイズを見ています。
乳でか以外にも、ハゲのおっさんやタバサやメードの女や、キザ男や太っちょや、他にも色んな人がお見舞いに来てくれました。
きっと、お前に言ったら照れちゃうんでしょうね。
「ダネット、少しの間はあたしが診とくから、あんた少し寝ときなさい。」
「で、でも!」
「でもじゃないの。いいから寝ときなさい。それとも……また頭叩かれたい?」
「うう、それは嫌です。……じゃあちょっとだけ寝ます。でも、すぐ起こして下さいね!?」
「はいはい。ほら、自分のベッドに行った行った。」
私は、ルイズの買ってくれたベッドに行き、少しだけ横になりました。
ああは言いましたが、身体は疲れていたみたいで、すぐに私の意識は途切れ、夢も見ないほどに深い眠りに落ちました。
どれぐらい時間が経ったでしょう? すっかり暗くなった部屋で目を覚ました私が、ぼーっとする頭を振りながら辺りを見渡すと、ルイズのベッドにもたれかかるようにして眠る乳でかが見えます。
「乳でかもあまり眠ってなかったんですね。」
それなのに私を心配してくれた事が嬉しくて、思わず顔が綻んじゃいました。
「乳でか、こんなとこで寝てると風邪をひきますよ? ほら、私のベッドに寝てください。」
「ん……ああ、寝ちゃってたのねあたし。ごめんなさいね。ルイズはまだ目を……ルイズ?」
「え……? あれ? お前っ!! どこに行ったんですかお前!!」
ルイズはいつの間にかいなくなっていました。
私は慌てて乳でかと一緒に探しました。
騒ぎを聞きつけたタバサやキザ男なんかも一緒に探してくれましたが、どこにも見当たりません。
一時間ぐらい経ったでしょうか。私の所に、タバサなんかと同じように、騒ぎを聞きつけたメードの女が来ました。
「あの、ダネット様、もしかしたらミス・ヴァリエールは学院の外にいるのかもしれません。」
話を聞くと、メードの女はふらふらと外に出て行く誰かを見たらしいです。月の光がピンクの髪に反射して見えたと言っていたので、多分ルイズで間違いないでしょう。
「でかしたのですメード!」
「あ、でも外に出てどこに行ったかは……」
メードが何か言っていた気がしますが、いても経ってもいられなかった私は、外に駆け出し、必死にルイズを探しました。
外を探して10分ほどでしょうか。開けた場所に、桃色の髪が見えました。
「お前!!」
月明かりの下、ルイズはびくんと肩を震わせ、ゆっくりと私の方を見ました。
その瞬間、私は嫌な想像をしてしまいました。
『もしかしたら、ルイズはあの日のままかもしれない』
もしそうだったら、私はどうすればいいのでしょうか?
でもそれは、心配するだけ損だったようです。
「ダネット……わたし……」
今、ルイズはセプー雌じゃなくて、ダネットと言ってくれました。
つまり、私のことを覚えてるということです! きっとそうです!
「お前、部屋に戻りましょう? 夜は毛布無しじゃまだまだ寒いです。ほら。」
「来ないで!!」
ルイズは、私を拒絶しました。
私はなんで拒絶されたかわからず、オロオロしてしまいます。
「どうしたんですかお前? もしかしてどこか痛いんですか? ならお医者さんに診てもらいましょう。ほら、行きましょう?」
「違う。違うの。」
「違うって何がですか? どこも痛くないんですか? なら部屋に戻りましょう? ね?」
「違うのよ……」
ルイズは見た目、いつもと一緒です。髪もあの日とは違う桃色をしています。様子は少しおかしいですが、寝起きでちょっと混乱しているだけのはずです。
「ダネット! ルイズいたのね!?」
後ろから、乳でかやタバサが来ました。ルイズは、そんな乳でかやタバサを目を広げて見ると、急に泣き出しました。
「お前!? やっぱりどこか痛いんじゃないですか!? やっぱりお医者さんに」
「違うの!!」
ルイズは叫んで、泣きながら私たちを見た後、凄く辛そうに言いました。
「わたし、今度こそあんた達を傷つけちゃうかもしれない……」
私たちの表情が、さっと硬くなりました。
ルイズはあの日のことを覚えていたのです。
だから、いつまたああなってしまい、その時こそもしかしたら私たちを……殺すかもしれない。そんな自分が怖くて、私を拒絶した。
それが判ったとき、私はこの子の優しさを改めて知りました。
あの日の記憶が全てあるなら、きっとルイズは今もとても怖いはず。
なのに、私たちの事を心配して遠ざけようとしている。一人で戦おうとしている。
「大丈夫ですよルイズ。私はお前なんかに怪我させられたりしません。ちっちゃなルイズなんて、私が本気を出したらちょちょいのちょいです。だから、一緒にいてください。」
「ダネット……でもわたしは……」
「忘れましたか? 私は……『お前の使い魔』なんですよ? これから先、ずーっと一緒です。ルイズが嫌だと言っても一緒にいてやるのです。感謝しなさい。」
「わた……わたし……」
「帰りましょうルイズ。特別に今夜は一緒に寝てあげます。大サービスです。」
月明かりの下、泣き崩れるルイズを私はそっと抱いて、泣き止むまで抱きしめてあげました。
でも、私の胸の中には、大きな大きなしこりが二つ残ったまま。
一つは、いずれ言わなくてはいけないルイズに秘密にしていた事。
そしてもう一つ……もしルイズが万が一にもあの剣に飲まれてしまった時、その時……私は……。
以上で11話終了
今までで一番時間かかったのに、一番短いよ!ふしぎ!
支援ありがとでした。
それでは
ダネットが相変わらずいい……。そして今回タイトルの由来となる言葉が!
これからも楽しみにしてるぜ!
あと今更で悪いが、波動の使い魔の人へ。
最後から二番目の行、ルイズの心の中での言葉↓
>>前言撤回。やっぱ、コイツむかつく。ご飯は床決定。
一瞬床をリュウに食わせるのかと勘違いして笑ってしまいましたw
普通に考えれば、ご飯は抜きと寝床は床が混じったのか、ご飯は床で食わせるなのか、のどっちかですよね。
ちょっと分かりづらかったので一応。
普通ご飯は床でと解釈すると思うけど…
ムジュラの仮面の時のリンクとチャット召喚
…駄目だ、どうしてもゾーラリンクの活躍が想像出来ない。
>>550 あくまで個人的な意見だけど、普通に床で飯食わせるつもりだとわかった
必ずしも修正しなければならないほど分かりづらいとは思わない
>ご飯は床決定
「ゆか」じゃなく「とこ」で、ルイズは性的ないm(ry
>>550 その発想は無かった
>>552 SSってことは多少のオリジナル展開も問題ない
そしてゾーラリンクのバリアは触手攻撃に有効だ
あとは分かるな?
トワイライトの狼リンクは妄想したことがあるな
ミドナは便利すぎるのでリンクだけ
ルイズは普通の狼だと思って接してるけど、
ルイズがピンチになると・・・てな感じで
ゲームの主人公召喚するとキャラ付けに作者の技量が問われるよな
RPG主人公とか難しいよ。
ドラゴン一撃で倒せる強さのくせに洞窟に転がってる岩を破壊することも移動させることもできない不思議腕力とか。
今までのSS読んでみると召喚された奴でも色々タイプが違うな。
策略と頭の切れで勝負する頭脳派あまり戦わない。
ヤン提督、野原しんのすけ
ただひたすら力で押す肉体派しかし人間とは比べ物にならない戦闘力の持ち主。
悟空、バージル、アイオリア、ガッツ、ウルトラマンAとレオ、仮面ライダーV3
上記の連中に比べると各能力は劣るが召喚主と不思議な絆が築ける。
ギュス様、クロード、水銀燈、ダネット、生物
ギャグキャラだけに強さとか気にならない。
ご立派さま、パタリロ
存在そのものがチートかつ反則・・・こいつにはだれも勝てねーYO
ドラえもん
>>557 それは私へのあてつけですか(ぇ
と、今回は本編ではなく『ライブラリィ』の追加を行いたいと思います。
何もなければ19:00から。
・主人公(君)とルイズが酷い目に遭いまくる
ソーサリー
・ルイズが表舞台で大活躍、クロス先キャラクターは裏でこそこそ
MtL
ギュスは性格描写されまくってるじゃん
『2.石工一家所蔵、怪文書物の一項』
あの事故でこの世界にやってきて既に20回目の春を迎えた。
昨日は数年ぶりにタルブにやってきてジニー達と再会することができた。
なんとジニーは結婚して子供をもうけていた。旦那さんも優しい働き者で、村の中でも裕
福な家を建てていた。私は今日、ジニーの家の一室を借りて筆を取っている。
長い長い20年だった。私が皆と別れてこの異世界を放浪する事を決めたのもこんなうらら
かな風の吹く日だったと思う。
もう私は長くない。あてどなく国々を歩き回る内に、どうしようもないほどに身体を壊してしまったようだ。
アニマが湧き上がらず次第にしぼむように衰えていくのがわかるから。
だからここに私がこの20年を賭けて調べたこの世界の特異についてここに記し、友人に贈ろうと思う。
この世界にはいくつかの古くからある国があり、タルブもその一つの中にあるのだが、私はいくつかの手段でそれらの国が所蔵する資料を探し集め、私達のようにサンダイルからやってきた人間が居なかったのかを調べた。
特にゲルマニアという国は新興国だったが素性の知れない人間にも生活しやすく、たびたび滞在して情報を整理する為に立ち寄った。
そのゲルマニアの北部にあったある貴族公領で、私は不思議な形式で建てられた祠を見つけた。
その形式はこの世界に数多あった建設技法にも似ているような、似ていないような不思議なたたずまいをみせていた。祠の石柱を触れてアニマを感応させると、数千年単位で昔に
作られたものだというのがわかった。
祠を暴き調査した結果、そこは古い支配者がその地の精霊を鎮めるために作ったものらしいと判明した。
しかし私を驚かせたのは、その精霊を鎮めるための祭壇のくみ上げ方や、祭壇に捧げられた壁画の図法が、まるで遺跡奥に作られたメガリスのようになっていたことだ。
この世界にメガリスが存在するはずがないのに。
(ここから紙が途切れ数ページに渡って腐食によって食い破られている)
私が長い時間をかけて分かった事はそれほど多くなかった。それはとてつもなく昔に私達の世界からこちらにやってきた何者かが居たということ。それも複数人が一度に。
メガリスの形式が古い遺跡に残されているのを見ると、私達よりもずっとメガリスに精通した人たちだったのかもしれない。
私が亡くなったあとでこの本を発見するだろうジニーへ。
私は貴方と一緒に冒険をしたことを少しも後悔していないわ。
一緒に飛ばされてきて、貴方と殆ど喧嘩別れしたようにタルブを出て行ったようなものだ
けど、数十年ぶりにやってきても温かく迎えてくれた事は、感謝してもしたりないわ。
ありがとう
この数十年の放浪生活で、本当にいろいろなことがあったわ。字も文化も全然ちがう世界を歩き回るのは苦労と死がずっと付きまとっていたけど。
私は幸福ではなかったかもしれないけど、家を捨てて旅を始めた時からずっと、そんなものから逃げていたのかもしれない。
あなたは結婚して子供もいるんだから。私みたいに無理して早死にしちゃ駄目よ?
生きなさい。生きて、生きて、貴方はベッドの上でたくさんの親戚、息子娘の夫婦、孫達に看取られて死ぬの。そうじゃなきゃ許さないわ。
私達のアニマはあの懐かしい故郷に還ることも無いかもしれないけど、私は先に行ってあなたを待っているわ。
premiere de langford
投下終了。今回は少なめ。
…(秘かに悶絶)…自分で書いてて「こんなのギュス様じゃない!」と言われる恐怖と戦いながらガンバッテマス、はい。
鋼の人おつー
乙乙。
おお、プルミエールも居たのか〜
>>557 とりあえず、べアルファレスから行方不明期間の主人公召喚で
あまりにもアレ(家畜に神はいない!がデフォルト、住民虐殺も余裕)
な貴族に対する認識に立場上貴族擁護に走らざるを得ない
マルトーさんとシエスタぐらいのことは考えた
X-FILEからモルダー・スカリーが迷い込んできました
日本の都会で少年が突如失踪 突然鏡に吸い込まれた
というネットの噂を確かめにモルダー捜査官は休暇を利用して秋葉原に来ていた
「ふむ、ここは何故か異常な磁場変動が存在しているようだ」
「モルダー、休暇くらい楽しみなさいよあなた仕事中毒じゃないの?」
「ハッ、いいかいスカリー、日本で人が突然姿を消すなんて北の拉致か宗教くらいのもんさ」
「だから工作員が」
「それはCIAに確認した所、今のところ動きは無いらしい」
「ちょ、モルダー、鏡ってこれかしら?」
ふたりで周辺を調査していると路地に入った所に鏡が出現した
「・・・、入ってみよう」
取り合えず、石を投げて消えたのを見て思わず入りそうになるモルダー
「ちょっとまちなさい、このベルトをポールに結び付けてと」
ベルトとネクタイとスカーフで数メートルの紐をつくると命綱とばかりに鏡に入る
しゅぽん
二人を飲み込んだ鏡は消えてしまった
ベアルファレス…七万を素手で圧倒できそうな冒険者達の巣窟ががが。
おつー。
ウィル以外の最終パーティメンバーは全員召喚されてるのかね。
ミーティアの出番マダー?
X-FILESから捜査官が迷い込みました
「なんだここは?」
どうやら学校のようですが、生徒たちは聞いたことも無いような言葉を喋り
二人を棒で脅しています
「どうやら、彼らは僕たちを追い出したいようだ」
「ええそうね」
魔法で無力化され、学院長の元に送られる
「どうやら、歓迎しているムードでは無さそうだ」
「・・・ついてくるんじゃなかったわ」
そして禿頭の男がモルダーの服をあさり、連邦捜査官のマークを見ると
熱心にスケッチをし始める
それをたしなめ、その絵を見ると引き出しから同じマークのついた身分証明書を取り出し見せる
「これはどうやら僕らの先輩のようだ、さて、これはいったいどういうことだ」
考え始めるモルダー
とそこにサイト少年がルイズと連れ立って部屋に入ってきた
「アメリカ人じゃないか!アメリカ人じゃないか!」
「日本人か? SAMURAI GEISHA FUJISAN!」
「ここはアメリカだったのか!ヤンキーゴーホーム!家に帰してくれ!」
「帰れだとさ、スカリー」
「よくわからないわ」
>>571 エピローグで数万の軍隊二人で追い返してたな…
あの後世界中に散った冒険者達によるパワーゲームが起きてそうだ
住人が多いだけあって元ネタのカバー範囲が半端ねえな
ルカが女にしか見えん
>>557 というか、ドラクエに代表される名無しで喋らない主人公召喚はただのオリキャラだと思う
まぁ、漫画や小説なんかがあると話が変わってくるけどな
DQやFFは小説やゲームブックがあるから、そういうのを参考にして書くと俺みたいな年寄りは喜ぶ。
ベアル>戦闘力もそうだがあの壮絶な鬱展開を踏み越えた精神力も異常
一応大体の連中はルイズをほっとけない程度にはお人好しなので
ファトゥムとガイウス以外はだいたい当たりか
>>502 「ケンのほうは子持ちなのにリュウは未だにプー」って事だよ、
>>452は。
確かにちょいとわかりにくい書き方だが。
デルフはまぁ、突っ込みとボケ要員ってことでw
リュウじゃなくて敵側が使うってのもありかもしれん。そう言う展開を自分でも考えたことがある。
580 :
狂蛇の使い魔:2008/11/05(水) 22:29:16 ID:kKCwgstJ
予約等なければ22:40くらいから投下したいです
581 :
狂蛇の使い魔:2008/11/05(水) 22:40:46 ID:kKCwgstJ
では、投下します
第十一話
ミラーワールドに降り立った王蛇は、木々の合間から迫り来る、四体の白い怪物をその目で捉えた。
学院にも現れた怪物、シアゴーストである。
王蛇は右腕に持ったベノサーベルを構え、怪物たちに向かって駆けだした。
対する怪物たちは、腕を振り上げて迎え討とうとする。
その腕が振り下ろされるよりも速く、王蛇は右手の大蛇の尾を突き出すと、怪物の一体が火花を飛び散らせながら吹き飛んだ。
地面に叩きつけられた怪物が呻き声をあげる。
続く二体目も、王蛇に向かって伸ばしたその白い腕を振り払われ、横になぎ倒された。
残った二体は前後から両腕でしがみつき、王蛇の動きを封じようとする。
王蛇は前から抱きついてきた怪物に膝蹴りを当て、自身の体から引き剥がした。
後ろの怪物にも、脇腹に向かって左腕で肘鉄をくらわせ、怯んだところに回し蹴りを叩き込んだ。
怪物は一回転して地面へ倒れこむ。
拘束から脱した王蛇が周りを見回すと、倒れていた怪物たちがのろのろと起き上がろうとしていた。
すかさず攻撃を仕掛けようとしたその時、後ろから何かが回転するような音が聞こえてきた。
鋼の人乙!
貴方はサガフロ2の世界感、人物像をとても理解して書いてると思うよ。
プルミエールは己が人生を全うしたか……
そうなるとグスタフのその後が気になる事この上ない。
特に髪型……いや、生き様が。
そして狂蛇の人支援!
583 :
狂蛇の使い魔:2008/11/05(水) 22:43:23 ID:kKCwgstJ
王蛇が振り返ると、こちら目掛けて突撃してくる、一台の半円形をした二輪車の姿が目に飛び込んできた。
仮面ライダー専用の異次元転送マシン、ライドシューターであった。
「止めてっ! 誰か止めてぇっ!!」
搭乗者の悲鳴とともに近づいてきたその二輪車は、王蛇や四体の怪物がいる場所に向かって、超スピードのまま突っ込んだ。
「うおっ!?」
王蛇は横に転がり回避したものの、四体の怪物たちは突然の出来事に反応しきれず、弾き飛ばされてしまった。
それでも勢いの衰えないライドシューターは、そのまま一直線に進んでいくと、一本の大木に激突した。
そして、その木をへし折りながらようやく動きを止めたのだった。
「いててて……。もう、何なのよコレ!?」
タイガが額に手を当て、文句をいいながらライドシューターから地面に降り立つ。
途中何かを轢いたあたりを振り返ると、起き上がった怪物たちと王蛇が再び戦闘を始めていた。
ふと、怪物の一体がタイガの存在に気づくと、標的を王蛇から変え、タイガの方に向かってくねくねと歩き出した。
584 :
狂蛇の使い魔:2008/11/05(水) 22:46:20 ID:kKCwgstJ
「か、怪物! 倒さなくちゃ……」
近づいてくる異形の生物を前にして、タイガがここにやってきた目的を思い出す。
何か武器は……と心の中で呟くと、左手に何かが触れた。
慌てて掴み、持ち上げると、それは前回のゴーレムとの戦いでも使用した不思議な武器、デストバイザーであった。
タイガはそれを両手で持ち直すと、こちらに向かって来る怪物を見据え、駆け出した。
「えいっ!! このっ!! このぉっ!!」
怪物の目の前まで迫ると、タイガはデストバイザーを上から何度も振り下ろした。
斧の刃先に触れた怪物の表皮から火花が飛び散り、不気味な悲鳴をあげながら後退していく。
「やあぁぁぁっ!!」
思い切り持ち上げた斧を振り下ろすと、怪物が吹っ飛び、地面を転がっていった。
「そろそろか」
三体の怪物がよろよろと起き上がろうとしているのを見ながら、王蛇は紫の杖を取り出した。
デッキからエイの紋章が描かれたカードを引くと、杖に装填する。
『FINAL VENT』
音声とともに、どこからともなく赤いエイが飛来する。
王蛇はその背に飛び乗ると、猛スピードで怪物たちに突っ込んでいった。
辛うじて逃れた一体を覗き、怪物たちはその身を赤い刃のようなヒレに切り裂かれ、轟音とともに爆発し、消滅した。
しえん
586 :
狂蛇の使い魔:2008/11/05(水) 22:48:25 ID:kKCwgstJ
「そうだ、私も!」
王蛇がいる方向から聞こえてきた音声に、タイガは思い立つと、デストバイザーにある虎の顔を押し上げた
そして、デッキからカードを引く。
引き当てたのは、デッキと同じ白虎の紋章が描かれたカードであった。
バイザーにカードを差し込むと、虎の顔を元の位置に押し戻した。
『FINAL VENT』
王蛇のものと同じ音声が鳴り響くと、起き上がったばかりの白い怪物の背後から巨大な虎の怪物が出現した。
銀と青で彩られたボディと、両手に生えた長く鋭い爪。
小さめの青い顔には、鋭く光る二つの黄色い目があった。
タイガと契約したミラーモンスター、デストワイルダーである。
「!!」
出現と同時に、タイガの両腕に白虎の爪を模した武器、デストクローが装備された。
デストワイルダーは、その気配に振り向いた白い怪物に飛びかかると、その胸部に右腕の爪を立て、地面に押し倒した。
押し倒したまま、白い怪物をタイガに向かって引き摺っていく。
白い怪物は抵抗を試みたものの効果がなく、そのままガリガリと背中から火花をあげながら、地面に引き摺られていった。
587 :
狂蛇の使い魔:2008/11/05(水) 22:50:08 ID:kKCwgstJ
「えっ? えっ?」
こちらに向かってくる二体の怪物を前に、タイガは何をすればいいのか戸惑っていた。
(両腕の武器を使うのかしら? でもどうやって……)
考えあぐねているうちに、二体の怪物がすぐ目の前まで迫る。
タイガは思考がまとまらないまま、顔をあげた。
「もういいわ! ええいっ!!
半ば投げやり気味に、タイガが引き摺られてきた白い怪物に向けて、右腕の爪を突き出した。
デストワイルダーが怪物を持ち上げ、タイガの構えた爪に突き刺すと、その場から飛びのく。
すると、白い怪物の全身が輝きだし、次の瞬間、怪物の断末魔とともに爆発した。
「うわっ!」
目の前で起こった爆発の衝撃に、タイガは思わず左腕で顔を覆った。
しばらくして、顔を覆っていた手を下ろすと、そこには僅かな白煙しか残されていなかった。
「終わった……」
ふぅ、とため息をつきながら、タイガはデストクローを装備したままの両腕をだらりと垂らした。
これで自分が食べられる心配は、当分ないだろう。
タイガはそう思いながら、そういえばアサクラはどうなったのかしら、と彼のいた方を振り向く。
それと同時に、巨大なサイの角がタイガに向かって振り下ろされた。
588 :
狂蛇の使い魔:2008/11/05(水) 22:52:19 ID:kKCwgstJ
「わっ!! な、なにするのよ!!」
タイガが両腕のデストクローで王蛇の攻撃を受け止めながら、叫んだ。
わなわなと震えながらも、押し込まれないよう武器を持つ腕に力を込める。
「ようやくライダーと戦えるんだ……これ以上の快感はない! 例え、相手が貴様のような馬鹿でもなっ!!」
そう言い放つと、王蛇はがら空きの腹部に思い切り蹴りを入れた。
「ぐっは……!!」
タイガが両腕で腹部を抑え、数歩後退りする。
その隙を突いて、王蛇は手に持った角を左から勢いよく振り回した。
角はタイガの左肩に直撃し、火花を散らしながらその体を地面になぎ倒した。
倒れたタイガに追い討ちをかけるように、王蛇はその右脇腹を蹴り飛ばす。
地面を二転三転し、仰向けの状態でタイガの体は動きを止めた。
「ぐぅっ……!!」
鈍い痛みが腹部と左腕に広がっていく。
タイガは、仮面の下で苦痛に顔を歪めながら立ち上がった。
(なんで、なんでこんなこと……)
『FINAL VENT』
考える間もなく聞こえてきたその音声に、タイガははっと顔をあげる。
見ると、巨大なサイの怪物に乗り、此方に向かって猛スピードで駆けてくる王蛇の姿が目に飛び込んできた。
589 :
狂蛇の使い魔:2008/11/05(水) 22:55:13 ID:kKCwgstJ
「いやあっ!!」
悲鳴をあげながら、タイガは両腕のデストクローを目の前に並べ身構える。
直後、凄まじい衝撃がタイガを襲った。
重圧を乗せたサイの角が、立ち塞がる白虎の爪を粉砕し、タイガの体を弾き飛ばす。
宙を舞ったタイガは、背中を大木に叩きつけられ、地面にどさりと倒れこんだ。
「う……あぁ……」
満身創痍の体を無理矢理立ち上がらせようとするが、腕にうまく力が入らない。
それでもなんとか目の前の脅威から逃れようと、必死に手足を動かして地面を這い進もうとする。
すると、耳元で砂を踏み潰す音がした。
「無様だな、お前」
タイガが顔をあげると、そこにはメタルホーンを構えた王蛇が立っていた。
フン、と鼻で笑うと、王蛇は足をあげタイガの左腕を踏みつけた。
「うわああああああ!!!!」
タイガの絶叫をよそに、王蛇は笑いながら、足にぐりぐりとさらに力を込める。
「ッハハハハハ! そうだ! この感覚だ……!! 全身から沸き上がる、この快感が俺は欲しかったんだっ!!」
この時の浅倉は、契約を交わした主、ルイズを虐げることで生じるイライラよりも、ライダーとの戦いで感じる快感の方が上回っていた。
590 :
狂蛇の使い魔:2008/11/05(水) 22:58:15 ID:kKCwgstJ
王蛇は踏みつけていた左腕から足を離すと、代わりに右腕のサイの角をタイガの頭に当てた。
「戦う相手がいなくなるのは残念だが……そろそろ消えろ」
そう言うと、王蛇はタイガの頭目掛けてメタルホーンを振り下ろそうとした。
が。
「ん? ……時間切れ、か」
サラサラと砂がこぼれ落ちるような音とともに、王蛇の体のあちこちから粒子が発生し、消え始めていた。
王蛇は舌打ちすると、地面に落ちている手鏡に向かって歩きだした。
「運が良かったな、お前。……だが、戻れないと死ぬぜ?」
それだけ言うと、王蛇は手鏡に飛び込んでいった。
(かえら……なきゃ……)
タイガはデストバイザーを右手に持ち、杖代わりにしてよろよろと立ち上がると、おぼつかない足取りで手鏡に向かって歩き始めた。
「ルイズ!!」
手鏡から吐き出されるようにして出てきたルイズを、タバサとキュルケが出迎えた。
鏡の割れるような音とともに白虎の鎧が消え、ルイズの姿が現れる。
「ルイズ、大丈夫……」
キュルケが声を掛けると同時に、ルイズが地面に向かって崩れ落ちた。
「ルイズ!? ねえどうしたのよルイズ!! しっかりして!!」
キュルケとタバサが慌てて駆け寄った。
そんな光景を尻目に、浅倉は両腕を広げ、歓喜に満ち溢れた表情をしながら、大声で笑い始めた。
人気のない静かな森の中で、浅倉の笑い声だけが、辺りに響き渡っていた。
非情というか逝っちゃってるというか……支援
592 :
狂蛇の使い魔:2008/11/05(水) 22:59:36 ID:kKCwgstJ
以上です。ボドボドになったルイズの運命やいかに!?
では、支援ありがとうございました!
狂蛇の人乙。
やっぱり浅倉はこうじゃないと!
乙でしたー。
まさに外ど……いや、まさに龍騎! 例え相手が何者であろうとも、自分の『願い』をかなえるのが何よりも優先してしまう彼らの意思がはっきりと見えてきますね。
ベアルネタ便乗。
フリップパネルでおマチさんのゴーレムふっとばし。
バキュームでワルドの偏在を吸い込み。
七万に至ってはノックバック系装備で主人公無双。
逆剣装備なら二刀流できてデルフも陽の目を見れる。
……いかん、PS引っ張り出して始めたくなってきた。
GJ
597 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/05(水) 23:38:20 ID:ND2yLcgc
ちょっとばかし聞きたいんですが…。
ここに載せる小説の中でオリジナルの魔法って認められるんでしょうか?
なんか色々な小説を読んでいるとたまに原作で見ない魔法の名前が出てきたりするんで。
いや、自分が見落としているだけって事かもしれないですが…。
いいのでしょうか?あ〜、勿論駄目なら駄目でいいんですが…。
エターナルブリザード:相手は必ず死ぬ
みたいな魔法ですか?
狂蛇の人、乙です。支援!!
ところでルイズが凹されて、もっとやれと思ってしまうのはオレだけですか?
じゃがいもの皮むき魔法とかじゃね?
>>600 俺も。てゆーか今回読んでて凄いスッキリした。
王蛇の人GJ!
>>600 >>602 初期(っていうか根っこの部分が)のルイズは基本的に自分の事しか考えてない人だからなー
成績が良いのが不思議なくらいバカだし
でもそれだけに横暴なんじゃなくてちゃんとした意味で貴族らしい振る舞いをするルイズとか
後先を考えた上で自分の行動をするルイズを書いてるSSを見たら逆に感心する
>>601 それって大ドロボウホッツェンプロッツ(うろ覚え)の魔法使いが作ろうとして無理だったやつじゃんw
>>598 ペルソナの時間門とか鋼の氷河剣みたいなのか?
ゼロ魔サイドならある程度までは容認されてるみたいだけど
クロス先作品の方での捏造は見たことないな
井戸の東西南北に杭を打ち込んで水を枯らす魔法とか
デラメシーラ:山のような魔神がフルコースをたらふく食わせてくれる
メシーラ・ピッチピチギャルがご飯を作ってくれる。必要…キメラの翼、美女の靴下
>>598 書き方次第じゃないのかね?
それっぽくて、みんながあんまり使わないような理屈が通ってて
なおかつパワーバランスを崩さない程度の自然さがないとちょっと引っかかるかも
う〜む…解りづらかったようで、すんません。
『ゼロ魔のキャラにオリジナルの魔法を使わせるのはいいのか?』と言うのを聞きたかったんです。
いや、原作ではちょいと数が少なすぎる気がして…。
炎のトライアングルスペルやスクウェアスペルも見ないですし。
>>598見て思い出した。
虚無の使い魔と煉獄の虚神で『ストーン・ブリッド』なる魔法をフーケが使っていたけど、
あれって原作にあるの?
「支援」と打てば投下中に雑談が許されるとおもっているのか?
>>610 609も言っているが、世界観を壊さない程度の物であれば別にいいんじゃね?
空飛ぶ全裸の
皮なめし魔法とか
畑耕し魔法も
オリジナルといえばオリジナルだったな
ストーリーをいじってるんだから、オリキャラもオリ魔法もオリモンスターもOKさ
ただ、それが妥当かどうか。違和感がないかどうか。って感じかね。
>>611 それ読んでないからよくわからないけど、
直訳すれば「石つぶて」だから支障のない範囲じゃないかな。
威力とか次第だろうけど。
蒼の人の作中にある、タバサが幻影剣を真似て出した氷剣とかがいい例なんじゃね、
スティンガーの動作でエア・ハンマー出したりとか。
あーでもどっちかってとアレンジか、これは
問題なければ00:45から投下しようと思います
たくさんのお返事、ありがとうございます。
大変参考になりました。
おっと、支援です。
「で、使い魔ってのは具体的に何をすればいいんだ?」
リュウが召還された夜、ルイズの部屋で二つある月にひとしきり驚いた後――ここで初めてリュウはこの場所が地球ではないことを悟り
いよいよもって大事になってきたと自覚し、本格的に元の場所に戻る方法を模索する覚悟を決めた――訊ねた。
「使い魔の仕事は大きく分けて3つあるわ。まず一つ目、使い魔はご主人様の目となり耳となるの。使い魔の見たもの、聞いたものはご主人様にも見えるし、聞こえるのよ」
「で、見えてるのか?」
しかしルイズの目や耳には一向にそれらしき情報は入ってこない。
「・・・どうやら見えないみたいね。アンタは平民だし、そういうこともあるのかも、まあいいわ。次二つ目、秘薬の材料になる珍しい鉱物や薬草なんかを集めてくるのも使い魔の仕事よ」
「食べられる野草なんかを見つけるのは割りと得意な方なんだが、流石にここまで知らない土地だと見つけようにも見分ける知識がないな」
「使えないわねー。じゃあ、三つ目、これが一番大事なんだけど、使い魔はご主人様を身を挺して守るものなの。で、アンタは強いの?」
「俺が強いかどうかは解らんけどな、ルイズを守るというのなら、多少はなんとかなるかも知れん」
「もう、頼りないわね。まあいいわ。明日もあることだし、もう寝ましょう。アンタはそこで寝るのよ」
今日召還する”はずだった”幻獣のため、あらかじめ用意していたのだろう、部屋の片隅の藁束が敷かれている一角を指すと、ルイズは着ていた制服を次々と脱ぎ捨て、リュウに投げてよこす。
「こ・・・こら!何をしてる!?」
いきなり目の前で服を脱ぎ始めた少女に狼狽するリュウ。
「何をしてるって、寝るから脱いでるのよ。これ、明日の朝、洗濯しときなさい」
さっさと制服を脱ぎ捨てて下着姿になると、大きなベッドに潜り込むルイズに諭すリュウ。
「年頃の女の子が男の前でそんなことするもんじゃない」
「男ったって、アンタ平民じゃない。犬と一緒よ。犬相手に裸を見られて恥ずかしがる人なんていないわ」
犬と同列の扱いを受けて思わず絶句したリュウは昼間ルイズに聞かされたことを思い出した。
貴族は魔法が使え、平民は使えない。
そして貴族と平民の間にある絶対的な立場の差。
まさかとは思っていたが、ここまで徹底しているとは・・・
リュウはかつて拳を交えた仮面の貴公子と呼ばれる男を思い出しつつ、藁束の中に身を沈めた。
なかなか寝心地は良いな・・・などと思いつつ。
ルイズはベッドの中で考えに耽っていた。
ルイズは魔法が使えない。
両親は共に、特に母親などは若かりし頃には”烈風カリン”と呼ばれたほど才に溢れたメイジだ。
二人の姉もその血を色濃く次いだ優秀なメイジである。
そんな中、ルイズだけが何故か一切魔法が使えない。
どんな魔法を使おうとしても必ず爆発――失敗してしまうのだ。
屋敷の使用人たちが「いい気味だ」だの「魔法も使えないのになんで自分が仕えないといけないのか」
だのと陰口を叩いているのを偶然聞いてしまい、こっそりその場を離れてベッドに突っ伏し、一晩泣き明かしたこともある。
最初の頃は両親も姉たちも「気にすることはない、そのうち使えるようになる」
と励ましてくれたし、魔法学院にも入学させてくれた。
だが、今はそれすらも言わない。
気を使ってその話題自体出さないようにしてくれているのだ。
ルイズにはそれが痛いほど解っていた。
だから、勉強した。
夜遅くまで机に向かい、図書館に篭り、虚無の曜日には朝から晩まで魔法の練習をした。
しかし、ただの一度も成功したことはない。
それでも猛勉強のおかげで実技以外の成績はすこぶる良かった。
入学当初、周りの生徒たちも「流石はヴァリエール家の息女」と一目置いていたが、それも実技が始まるまでの短い間だった。
授業に実技が組み込まれるようになってから、ものの数日でルイズの評価は地に落ちた。
「あれだけの家柄でありながら、魔法が使えない」
「魔法の才能ゼロ」
「ゼロのルイズ」
皆がからかうようになった。
魔法は使えなくてもプライドは人一倍高いルイズ。
からかわれる度、その全てに噛み付いた。
そのうち、からかわれる機会も減った。
先祖代々の仇敵であるツェルプストーがからかう以外には誰もルイズに話しかけなくなった。
こうして、ルイズから友達はいなくなった。
それでもルイズは構わなかった。
元々魔法を使えるようになる為に入学したのだ。
友達なんて別にいなくたっていい。
そう思っていたし、それでいいと思っていた。
だが、リュウという男に出会ってしまった。
彼は確かに平民だが、ルイズに普通に接してくれる。
そして、出会ってからまだ半日しかたっていないというのに
彼のそばにいると不思議なことに大きな安心感を得ることができる。
自分が人一倍我侭なのは知っている。
それでも、そんな自分にリュウは普通に接してくれる。
それがルイズには嬉しかった。
ただ、元来の性格からそれを素直に表現できない。
どうしても毒づいてしまう。
それに、不安もあった。
まだ出会ってから半日しかたっていない。
リュウは自分のことをほとんど知らない。
自分が魔法を使えないと知ればリュウは軽蔑するだろうか。
他の人たちと同じように、自分から遠ざかってしまうのだろうか。
リュウに限ってそんなことはないと信じたくても、どうしても不安になる。
ルイズは生まれて初めて、他人に辛く当たってしまう自分の性格――本人は気づいていないが、それは魔法が使えない劣等感が生み出した性格だった――を呪った。
翌朝、太陽がようやく顔を出し始めた頃にリュウは目覚めた。
大きくひとつ伸びをする。
「さて、洗濯か・・・」
それにしても人のものを洗濯をするなど、いつぶりだろう。
かつて、師匠であった剛拳の胴着を毎日洗っていたことを懐かしく思い出す。
ひとしきり感慨に耽ると、昨晩ルイズから受け取った服を持ってとりあえず建物の外に出ることにした。
水場を探して辺りを歩くリュウの前を一人の少女が横切る。手には洗濯籠を持ち、大量の洗濯物が山のように詰め込まれている。
「すまない、ちょっと聞きたいんだが」
「きゃっ!」
突然声を掛けられて驚いたらしい少女は大荷物を持っていたこともあり、バランスを失って倒れそうになった。
それをリュウが右手で支えてやる。
「え!?」
こんなところに手すりなんてあったかしら?と怪訝に思いつつ見てみると、それは人の腕だった。
大量の洗濯物と共に全体重がかかったにも関わらず、微動だにしなかったので手すりか何かと間違ってしまったらしい。
「ああ!ごめんなさい!ごめんなさい!!」
慌てて飛びのき、ぺこぺこと謝る黒い髪に黒い瞳の少女。
「いや、こちらこそ驚かせてしまってすまない。キミが洗濯物を持っていたから、洗濯できる場所を尋ねようと思ったんだ」
ようやく謝るのをやめた少女はにっこりと微笑むとまじまじとリュウを見つめた。
「あの・・・失礼ですけど、もしかしてミス・ヴァリエールが召喚された平民の使い魔って、貴方ですか?」
「ああ、そういうことみたいだ。キミもここの生徒なのか?」
「とんでもありません!私はここで使用人をさせていただいている平民で、シエスタって言います」
「そうか。俺の名はリュウだ。それにしても、よく俺が召喚された使い魔だと判ったね」
「そりゃあ、もう、私たちの間でも噂になってますよ。ミス・ヴァリエールが人間の平民を召喚したって。それに、私と同じ黒い髪に黒い瞳なんて珍しいですから」
嬉しそうに答えながらシエスタはリュウを洗濯場に案内する。
リュウは案内してもらう代わりにシエスタが持っていた大きな洗濯籠を持ってやった。
最初シエスタは「これ、結構重いんですよ、それに貴族の使い魔さんにそんなことさせられません」と断ったが、リュウは笑いながら「これぐらいのことはさせてくれ」と言ってシエスタから籠を受け取る。
毎日こなさなければならない力仕事なので、持ち方のコツを覚えているシエスタは女性とはいえ、かなりの重さの洗濯物を持っていた。
それをリュウは事も無げに片手で担ぐ。
「そういえばここに来てから黒髪に黒い瞳に会うのはキミが初めてだな。そんなに珍しいのか?」
改めて思い出して見れば、こちらに呼ばれてから出会った人間は皆、桃やら赤やら青やらとやたらカラフルな頭をしていた。
「そうですねー・・・少なくとも、私が今まで見てきた中では私と私の祖父ぐらい・・・と言っても、私の記憶にあるおじいちゃんは白髪で真っ白でしたけどね。
でも、おじいちゃんも若い頃は黒かったそうです。それ以外では黒い髪の人はリュウさんだけですね。
だから、なんだか他人の気がしません・・・さ、着きましたよ、リュウさんの洗濯物も貸してください。一緒に洗っちゃいます」
弾けるような笑顔で答えるシエスタ。
「いや、自分の分くらいは自分でするさ」
「大丈夫ですよ、これだけたあれば今更少しぐらい増えたって一緒ですし。それに・・・」
シエスタがリュウの洗濯物に視線を落とす。
「それに、男性の方が女性の下着を洗うのはちょっとどうかと・・・」
今まで他人の洗濯物といえば師匠の胴着しかなかったリュウはここで初めてその事実に気づいた。
「た・・・確かに・・・すまないが頼めるかな・・・」
ばつが悪そうに頭を掻くリュウ。
「任せてください!これからもリュウさんの洗濯物は私がやっちゃいますから、いつでも言ってくださいね」
「助かるよ」
シエスタは袖をまくり、可愛らしく「むんっ!」と腕を曲げて力コブをつくる真似をすると、洗濯物に取り掛かった。
その横でリュウは座禅を組んで目を瞑る。
「それって『ザゼン』ですか?うちのおじいちゃんも生前「自然と一体となる」とか言って、”カタ”っていう踊りみたいなのと、その”ザゼン”っていうのをよくやってました。私には何のことだかサッパリでしたけど」
「ああ、こうやって精神を落ち着かせて自然と一体となるんだ。そうすると大地の力を感じ取り、風の声を聞くことができるようになる」
目を閉じたまま答えるリュウ。
「キミのおじいさんはきっと強かったんだろうな。一度お会いしてみたかったものだ」
「私がまだ小さいときに亡くなりましたから、あまり記憶には残ってないんですけど、とんでもなく強かったそうですよ。なんでも、村を襲ったオーク鬼の集団を素手で簡単に蹴散らしたとかなんとか・・・。
尾ひれがついて話が大きくなってるんでしょうけど、オーク鬼に勝ったのは本当みたいです。なんとなく雰囲気がリュウさんに似てましたよ」
懐かしむように遠い目をするシエスタ。
シエスタは知らない。
自分の祖父が本当に十数匹に及ぶオーク鬼の集団を素手で葬り去ったことを。
小一時間ほど瞑想したリュウはシエスタに別れを告げ、ルイズを起こしに部屋に戻った。
「ほら、ルイズ、朝だぞ」
肩をゆすってもムニャムニャと言うだけで一向に起きる気配がない。
無理もない。
ルイズはリュウが眠ったのを確認するとベッドから起きだし、明け方近くまで机に向かっていたのだ。
もっとも、ルイズは気づかれていないと思っていたようだが、リュウは気配でそれを感じていた。
「勉強熱心なのは結構なことだが、それで寝坊したのでは本末転倒だな」
リュウは多少荒っぽい方法をとることにした。
寝ているルイズの両肩を掴み、ひょいと持ち上げて無理やり座らせると、正面に立って中腰に構えた。
座らされたまま、いまだ夢の中のルイズ。
右の拳を腰に据えると「フンッ!」という気合と共にルイズの眼前に突き出す。
右の拳に押し出された空気は突風となってルイズの顔を叩く。
メイジが見れば、きっと”エア・ハンマー”の亜種だと思ったことだろう。
もちろん、リュウは”エア・ハンマー”など知らないが。
「ぎゃんっ!?」
顔に突風を受けたルイズは奇声と共に後ろに2回ほど転がった。
「ななななに!?何があったの!??」
一気に夢の世界から現実世界に連れ戻されたルイズは頭に大量の「?」を浮かべる。
どうも身体がくるくる回ったような気がするが、別にどこも痛くはない。
「夢でも見てたんじゃないのか?それよりも、そろそろ起きる時間だと思うが」
「そ・・・そうね・・・」
いまだ頭に「?」を浮かべたまま、もぞもぞとベッドから這い出る
「じゃあ、着替えさせてちょうだい」
ベッドに腰掛けると、さも当然のように下着姿のまま無い胸を反らす。
「何言ってるんだ。小さい子じゃあるまいし、それぐらい自分でするんだ」
リュウはタンスから制服を取り出すと、ルイズに向けて放り投げた。
「昨日も言ったでしょ!貴族は召使がいるときは自分で着替えたりしないのよ」
「ダメだ。そんなことでは碌な大人にはなれんぞ」
思わぬ強い口調のリュウに一瞬気押されたが、それでも言い返す。
「ななな何よ!!わわわ私は貴族なのよ!へへへ平民のアンタの説教なんかかかか」
「俺は貴族のことはよく分からん。だが、自分でできる最低限のことすらせずに、ただ威張り散らすのが貴族なのか?」
言葉に詰まるルイズ。
「魔法を使える者が貴族で使えないものが平民ということは解った。だが、魔法が使えないだけで人間性まで否定するのか?魔法を使えない者の言うことからは何も学ぶことはないのか?」
至極マットウな意見に何も言い返せない。
いや、普段ならそれぐらい言われても「平民のクセに!」で片付けるのだが、強い意思の光を湛えたリュウの目で真っ直ぐに見つめられるとそれができない。
理由の無い反論は逃げているだけで、してはいけないような気がする。
「俺はお前の倍は生きてる。年長者の言うことは聞くもんだ。さ、俺は外に出ているから、さっさと着替えるんだ」
固まったまま何も言い返してこないルイズを見て、リュウは表情を和らげて締めくくった。
「わ・・・解ったわよ・・・」
なんなのよアイツなどとブツブツ言いながら、それでも言われた通り、おとなしく自分で服を着替えたのだった。
リュウが扉の前で待っていると、ほどなくしてルイズが出てきた。と同時に隣の部屋の扉も開く。
中から出てきたのは燃えるような赤い髪と瞳を持ち、よく日焼けした褐色の肌の、美女と言って差し支えない女性だった。
「あら、おはよう、ルイズ」
制服に収まりきらない胸をシャツから半分ほど飛び出させて、これ見よがしにルイズに見せ付ける。
彼女はルイズの天敵だった。
先祖代々においても仇敵であったし、ルイズ個人としてみてもやはりこの女は敵だった。
何よりも、魔法が使えない自分と違ってこの女は魔法の才に長けている。
悔しいが学年でもトップクラスのメイジだ。
その上、ことあるごとにニヤニヤ笑いながら自分につっかかってくる。
腹立たしいことこの上ない女。
それがツェルプストーだった。
「おおおおおはよう、ツェルプストー」
しまった、よりによってこんなヤツと出くわすなんて・・・などと思いつつも一応、仕方なく挨拶を返す。
キュルケは自分の足元にいる大型のトカゲのような生き物の頭を撫でながら嬉々として話を続けた。
「見てよ、これがあたしの使い魔のフレイムよ、この尻尾の炎は間違いなく火竜山産のサラマンダーね、好事家に見せたらきっととんでもない値がつくわよ」
やっぱりきた!使い魔自慢。ああ、早くどっか行ってよねまったく・・・
負のオーラ全開のルイズを気にするでもなく続けるツェルプストーと呼ばれた女性。
「あら?そこにいるのは、昨日ルイズに召喚された彼かしら?」
「ああ、リュウだ、よろしく頼む。ええと、ツェル・・・」
「キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーよ、親しい人はキュルケと呼ぶわ。貴方もキュルケって呼んでくれていいわよ。リュウ」
「そうか、よろしく頼む。キュルケ」
そう言って笑顔で右手を差し出す。
妖艶な笑顔で握手に応えたキュルケはリュウの手に触れた瞬間、不思議な感覚に陥っていた。
とてつもなく大きく、優しく、穏やかななにかに包まれているような感覚・・・
「ちょっと!そんな乳だけ女と仲良くしてないで、さっさと行くわよ!リュウ!」
ナニよ!あんな乳だけ女にニヤニヤしちゃって・・・いや、まぁ、顔はニヤけてなかったけど・・・
きっと内心はニヤニヤしてたわちょっとは良いヤツかもと思ったけど所詮は男ねまったくなってないんだからブツブツ・・・
またもブツブツと、それもかなり勝手なことを言いながらスタスタと歩き始めるルイズ。
「あら、つれないわねぇ」
さして気にした風でもなくルイズに向かってヒラヒラと手を振るキュルケ。
「あの娘は礼儀がなってない。ちゃんと躾んといかんな。無礼は俺が代わりに詫びる、許してやってくれ」
キュルケに向かって頭を下げるリュウ。
「別に謝らなくていいわよ。気にしてないわ、いつものことだもの」
キュルケはケラケラと笑いながら答えていたが、不意に真面目な顔になって言葉を続けた。
「最初は平民が召喚されたのを見て、またあの子が馬鹿にされると思って心配だったけど、実際に喋ってみると召喚されたのが貴方で良かったのかもね。
ルイズってば愛想は悪いし我侭だし自分勝手ですぐ癇癪起こすし背は低いし胸は幼児並みだけど、悪い子じゃないのよ。あの子のこと、よろしくね」
後半に至っては本人の努力ではいかんともしがたい悪口ではあったが、慈愛に満ちた目でルイズの後姿を見送るキュルケにリュウの顔もほころぶ。
が、ひとつ気になることがあった。
”また馬鹿にされる”とはどういうことだろう。
ルイズは皆から馬鹿にされているのだろうか。多少とっつきにくいところはあるが、夜遅くまで勉強しているところ見ると勤勉なのも確かだろうし、快活で可愛らしい少女ではないか。
キュルケの言葉がどういう意味か考え込もうとしたリュウだったが、しかしそれはかなわなかった。
ルイズから視線を外したキュルケがリュウの分厚い胸板にしなだれかかってきたのだ。
――やはり勘違いではなかった――リュウの胸板に触れた瞬間、大きな安堵感がキュルケを包みこむ。
その安堵感の正体が解らないまま、うっとりとした顔でキュルケがつぶやく。
「それにしても、貴方、よく見るといい男ね・・・逞しい男って好きよ」
リュウを見つめるキュルケの瞳が急に潤い始める。
突然の展開だったのと、終生のライバルであるケンとは違って元々異性関係には疎かったこともあり、どうしていいのか解らずにたじろぐリュウ。
支援
支援
「ちょっと何してるのよ!早く行くわよ!」
リュウがおろおろとしていると、タイミング良くルイズが戻ってきてリュウの手を引っ張った。
「助かった」と漏らすリュウを連れて、ヅカヅカと食堂に向かいながら言い捨てるルイズ。
「ツェルプストー!人の使い魔にちょっかいかけないでくれる!?どうせその気も無いくせにすぐ手を出すんだから!リュウもリュウよ!あいつは先祖代々の仇敵なんだから、デレデレしないの!」
「おお、怖い怖い」
肩をすくめるキュルケ。振り返りもせずにずんずん進むルイズ。
「その気も無い・・・ね・・・」
自分の右手とひっぱられていくリュウを見比べながら一人つぶやくキュルケだった。
規制かかった?
ギーシュが死んじゃう・・・(ぶるぶる
この早さだから多分規制
三分感覚ぐらいにしとかないと
「たいしたもんだな」
それが朝食をとるためにルイズと共にアルヴィーズの食堂に入ったリュウの第一声だった。
特大のホールに何十メイル(ここでの距離の単位らしい。リュウの感覚ではメートルとメイルはほぼ同じ長さと思って間違いないようだ)もあるテーブルが3つ並んでおり、
その上には豪華絢爛な料理が所狭しと置かれていた。
それぞれのテーブルには色の違ったマントを羽織った生徒たちが座っている。
どうやら学年別にマントの色が決まっているらしい。
空いている席のひとつにルイズが座る。
「俺はここに座ればいいのか?」
ルイズの隣の席に座ろうとするリュウ。
「そこは貴族が座る席よ、アンタはこっち」
ルイズが指差したのは床。
そこには小さな鶏肉が一つ浮かんだスープが一皿、床に置かれているだけだった。
「使い魔は本当は食堂にすら入れないんだから、有難く思いなさい」
何か言い返してきたら、「仕方ないわね」などと言って自分の食事を分けてやろうと思っていた。
が、現実は違った。
「・・・使い魔というよりも、これでは奴隷だな。わかった。外で適当にイノシシでも捕まえてくる」
無表情で言い捨てると食堂を出て行ったリュウを見て、流石にやりすぎたかと後悔するルイズ。
でも時既に遅し。
「な・・・何よ、せっかく分けてあげようと思ってたのに・・・使い魔のクセにご主人様の言うことが聞けないなんて・・・」
口では悪態をつきながらも、ルイズの顔は焦っていた。
今のでリュウに嫌われたらどうしよう・・・せっかく私にも普通に接してくれていたのに。
リュウに嫌われたら、またひとりぼっちになってしまう。
どうすればいいのか解らない。
リュウを追いかけて謝ればいいのだろうか?
でもなんて謝ればいいのか解らないし、そもそもリュウがどこに行ったかも解らない。
結局、たっぷりとられた食事の時間中にリュウは戻ってこなかった。
並べられた料理は初めと同じ状態で、その前にはただ俯いているルイズが座っている。
そのうち料理は次々と下げられ、代わりにデザートが運ばれてくる。
自分の目の前にあった手付かずの料理がデザートと交換されるのを、ルイズはただじっと見つめていた。
投下終了です。
3分ぐらい空けて投下・・・
覚えました。
なんか、思ってた以上にレスがあったのでもっそ嬉しい。
ストリートファイターってやっぱり人気あるんですね。
>>550 「床でご飯」という原作の光景が頭の中にあるせいで解りにくい表現になってしまったかもしれません。
申し訳ない。
GJ
やっぱリュウはかっこいいな
ブランカやダルシムだったらルイズも喜んだのかな?
強さを聞かれたなら強いと答えるリュウが見たい
ストU時の勝ち台詞
「お前が弱いんじゃない。俺が強すぎただけだ。」
っていうのなかったっけ?
ともかく乙
リュウ、近くで動物捕まえたらそれはほぼ使い魔だぞw
再び誰かの使い魔が飯になる危機にさらされるのかw
なぜか教室爆破のシーンで混乱した使い魔が他の小さな使い魔食っちゃうシーンでリュウが捕食する場面が浮かんだ。
我ながら意味がわからん。
>>640 さすがに非動物が多い使い魔なら安全じゃね
牛が使い魔だったらご愁傷様だなw
>>639 なんか、自分の中ではリュウって謙虚なイメージがあるんですよね。
静かな中に熱い血が滾ってるような。
で、ケンはオレってすげー!
な昇竜拳バカってイメージが・・・w
リュウにとってはワルキューレなんてボーナスステージの樽同然だろうな・・・
リュウ氏乙
>>640 とりあえずでっかいモグラさんあたりが犠牲者(?)になるのかな?w
リュウの人乙でした
>>644 モグラはアレで中々に強力だから
誰かが気付くまでは戦い続けるかも知れん
乙です。
リュウはやっぱりいいですなぁ……
しかし、シエスタの祖父が微妙に気になる。
リュウに雰囲気が似てて、おまけにオークを素手で……
まさか、ゴウケンか豪鬼……?
色々と今後が楽しみです。
まさかのザンギ
そういえばベガも無印IIの頃は結構謙虚だった
表彰台に潔く立ってたり「お前も俺を倒す事は出来ないのか」と嘆いたり
鉄拳からゲスト出演平八だな
>>642 乙
実際、リュウ ファイナルでは謙虚な性格だから問題ないかと
シエスタの祖父は黒髪
ストキャラで黒髪の男・・・・ああ、相撲を学校の授業にしようとした銭湯がステージのあの人か
王蛇乙です〜
個人的に、ムカつくラブコメより血泥臭い殺し合いの方が好きなのは、
矢張り男だから?
個人的に浅倉みたいな奴は好きです
被る側からしちゃたまったもんじゃないですが、見てる分には面白いww
ストU四コマ劇場のリュウはフェイロンのステージの龍まで食ってるぞ。
アマゾン川のピラルクは絶滅寸前に追い込まれるわ水族館の魚に食いつくわ、食欲の権化だったな。
リュウの人、乙!
リュウは信義と礼節を重んじる人、というイメージが自分にはあります
ルイズ関しては挫けずに勉強を続けてきた努力家、といった事を知ればその点ではルイズのことを認めるでしょうね
ただ、貴族としての原作のような態度はリュウは絶対に受け入れないでしょうね
『礼儀がなってない』とはよく言ったものですw
リュウといえば水羊羹
蜘蛛が苦手なんだっけ?
納豆も嫌いだったかな
>>656 確かそれはガイル。
確か原因はリュウに無理矢理食わされたからとか。
手製の納豆作って学院の人間に食わせまくるってどうだろう?
どうだろう?って、書くの?
いや、ごめん。なんでもない。
波動の人乙です
ファイナルのリュウだと内に熱さを秘めてる、ってかんじですよね。
ケンってスト2の時出てた公式?本じゃ金持ちじゃなかったはず
豪拳がリュウか俺の父だったかも、とか書いてあったっけw
>>646 豪鬼は違いますな。髪の色的に。
豪拳の髪の色ってどうなんだろう。
じいちゃんはきっとまこと
まことは女じゃー!
とまことスキーが絶叫してみた。
黒髪…フェイロンとか!?
落ち着きとは無縁の人ですが。
黒髪……ダン?
黒髪……つんりの仇敵の自慰遺産?
時系列無視するならE・本田もアリだろうけど
本文中には無いけど、このシエスタって隈取とかしてないのかな
ここでアンダーカバーッコップスの連中召喚ですよ。
小動物なら何でも回復アイテムです。
歩き回るヒヨコ>掴む>デリシャス>回復
歩き回るニワトリ>掴む>デリシャス>回復
大型の使い魔以外なら大概は回復アイテムになるんではないでしょうか?
ストシリーズって、あまり無茶な髪の色っていないから
やっぱ剛拳は黒髪なんじゃないんかな
リュウって結構誇り高い人間ってイメージがあるから
自分が奴隷ってきづいたのにルイズの元に戻ってくるのはよっぽど何かが
なければ違和感を感じるな。
そういえば豪鬼も殺意の波動に目覚めるまでは黒髪だったらしいな。
ハッ!?神人・豪鬼の髪の色は白…コレが指すのは…
>>672 つまりシエスタの祖父は武神流のガイだったんだよ
>>671 自分が奴隷とは思ってないんじゃない?
コーマンチキで礼儀がなってないから躾けてやらねばぐらいに思ってるんじゃないかな
>673
スモークボム、ホァ!ですね、わかります。
ストシリーズで、だいぶ昔に本編から居なくなっていてもおかしくない人と言うと
ゴウケン(リュウ・ケンの師匠。豪鬼の実兄)、ゴウテツ(ゴウケン・豪鬼の師匠)あたりでせうか。
まぁゴウケンはストIVに出てきたみたいですけど(汗
でもシエスタの祖父の年代で当時黒髪と言うと両者とも微妙ですね。
世界間移動でタイムシフトや若返り等が起こってないと。
>>651 なんか女でつらい思い出でもあるのか?w
波動の人のリュウはゲームキャラのイメージで読んでいたんだが、
>>652のせいでボンボンのストU4コマのがちらつく様になっちまったw
アウトドアに強いキャラが使い魔になると、ルイズのアドバンテージがもりもり下がっていくなぁ
名前欄が・・・!
ごめん
ブロッキングって文章にするとどうなるのかな
小足見てから昇竜余裕でしただろ?
パットン大戦車軍団召喚
>シエスタの祖父
ミスターカラテという線はどうだろう
>>684 ワルド戦で攻撃を全てブロッキングで捌いて、
真昇竜拳でKOする情景がうかんだ。
ブロント様召喚
>>683 こんな感じかね?
ワルドの突き出してきた鋼鉄の杖を、リュウが手刀ではじく。
鋭さと早さ、そして意外なまでの重さを兼ね備えたその一撃に杖を持つワルドの腕は引っ張られ、思わずたたらを踏む。
彼が体勢を立て直そうとしたとき、すでにその懐には身をかがめたリュウが潜り込んでいた。
「しまっ・・・!」
「昇・竜・拳っ!」
ブロッキングって攻撃を受け止めたり耐えたりする動作じゃなくて(こっちはガード)、
攻撃してきた腕や足を払ったりさばいたりする動作で、それによって相手がバランスを崩すのがあの硬直時間だと思うんだよ。
>>671 逆に誇り高いから、他人が自分をどう扱っても気にしない部分がある気がする。
うまく言えないが。
>>689なーるほど
となるとZEROカウンターも同じような表現でいけるね
目つきの悪い使い真は傑作だったが
オーフェンファンの俺はルイズに召喚されるオーフェンがみたいぜ
過去に二作くらいあったが連載とまってるしなあ
内原富手夫を召喚!
珍しい食材が沢山あって喜びそうだ。
……いや、丁度今日入手したから言ってみただけ。
>>693 俺以外にその名前を出す者がいたとは驚きだ。
俺が覚えてる限りでも過去に三人は出した奴がいるw>内原
>>690 ああ、それはわかる。
普通の「プライドが高い奴」は「他人がそれを認める(つまりへりくだられたりちやほやされたりする)」ことによって
自分のプライドが正しいものであると証明されるためのプロセスを必要としているが、
リュウみたいに自分の存在に確固たる自信を持ってる場合、わざわざそれを他者に補強してもらう必要がないんだな。
他人がどう扱おうと俺は俺だ、みたいな感じで。つまり超然としてるわけだ。
もちろんああいう扱いをされて好意は抱かないだろうが、それで激怒したり心底愛想を尽かしたりすることはないと思う。
>>693 学院の使い魔が毎日減っていくぞ・・・
幻獣系は真っ先に・・・
俺も知ってる人の反応があったことに驚きだw
邪神すら手にかけるイカモノ料理人の手に掛かれば、冗談抜きでフレイム調理されそうだなw
そして彼はハルケギニアで最高の食材を探す旅に出るのであった。ちゃんちゃん。
……最高の食材って何だろ? 韻龍……は学院で手に入るけど。
きゅいきゅいの料理……女体盛りで!
>>688 恥知らずなゴーレム使いがいた!
俺はルイズを使い魔なんだが相手が残念な事にワルキューレを使ってきたので
「お前それで良いのか?」と言うと「何いきなり話かけて来てるわけ?」と言われた。
俺の弟がゴーレムの熟練者なのだがおれはいつも勝つから相手が気の毒になったので聞いただけなんだがむかついたので「お前ハイスラでボコるわ・・」と
言って開始直後に力を溜めて前ハイスラしたら多分リアルでビビったんだろうな、、ガード固めさせてたからキャンセルしてカカッっとダッシュしながらハイスラしたらかなり青ざめてた
おれは一気に空中にとんだんだけどワルキューレが硬直してておれの動きを見失ったのか動いてなかったからコマンド投げでガードを崩した上についげきのグランドヴァイパでさらにダメージは加速した。
わざと距離をとり「俺はこのままタイムアップでもいいんだが?」というとようやく必死な顔してなんか薔薇のはしっこから花びら落としてワルキューレ増やしてきた。
おれはしゃがみダストで回避、これは一歩間違えるとカウンターで大ダメージを受ける隠し技なので後ろのギャラリーが拍手し出した。
俺は「うるさい、気が散る。一瞬の油断が命取り」というとギャラリーは黙った
ワルキューレは必死にやってくるが、時既に時間切れ、下段ガードを固めた俺にスキはなかった
たまに来る下段ガードでは防げない攻撃もキックで撃退、終わる頃にはプライドがズタズタにされた金髪の雑魚がいた
「いつでもハイスラでトドメは刺せた、あの時ワルキューレ増やそうとしたときにも実はズタズタに出来た、」とかいった
そしたら「いや今のハメでしょ?貴族の決闘じゃ今のノーカンだから」とかいったので俺がヒト睨みするとまた俺から視線を外した、2戦目は俺のハイスラを先読みしてたみたいでいきなりバックステッポで回避された
「ほう、経験が生きたな」と少し誉めるとワインをおごってくれると言う約束をしたので空中でダストを当てて一気にかけよりダストと足払いの二択を迫り
5回くらい足払いしたら死を感じたのかガードしようとしたので近づいてハイスラ投げをお見舞いしてやった、絶望でダウンしているところにギロチンのハイスラがダブルで入れた。
「今のがワルキューレで良かったな、お前狙いだったらお前はもう死んでるぞ」というと想像して圧倒されたのか動きが鈍くなったのでガンフレで動きをコントロールしさらに時間までコントロールしていることにも気付かせずにタイムアップさせた。
そしたら「まただよ(笑)」とか負けたくせに言いワケ言ってたから「限られたルールの中で勝利条件を満たしただけ」といったら顔真っ赤にして3戦目はけっこう攻撃的だったけど挑発に軽々と乗ってくる馬鹿には確実な死が待っていた。
ハイスラの恐怖が完全に摺り込まれている為思うように近づけないでいるようで空中来たらキックでけん制し飛び込んできたら前ハイスラでいつの間にかガードゲージは光っていたから「グランドヴァイパでトドメさすよ」と言うとワルキューレ達に必死にガードさせたから
狙い通り3段目くらいをロマキャンすると予想通り青ざめてガードさせてたから投げで強打したのちハイスラでトドメ。
あとはタイムアップまで粘った。俺の下段ガードは固く、隙を見せなかった。ワルキューレ達も下段ガードできない攻撃してきたけど反撃もここまで。残念ながら前半の遅れを取り戻す事が出来なかった。
ネタが判らないのもあるけど、読みにくいな…。半角カナとか。
“時既に時間切れ”とかもよくわからないし。
ブロントさんならデルフに見向きもしないだろうなぁ。
グラットン持ってるから。
もう460kbか…
あぁ規制が辛い…
>>700 そういう頭の可哀想な奇形を嘲笑うコピペなんだよ
一部の厨房が勘違いして持ち上げてるけど
704 :
ジル:2008/11/06(木) 17:05:07 ID:AmV5Qd0D
投下します
1715時
支援
支援
707 :
7話:2008/11/06(木) 17:17:11 ID:AmV5Qd0D
ジルが甲高いエンジン音と共に帰ってくると、怒髪天を突かんばかり形相のルイズが出迎えてくれた。
「ジルぅぅぅぅぅ……ご主人様に黙ってぇぇぇぇぇぇぇ……」
「ギーシュに伝言を頼んだ筈だけど」
「そういう意味じゃない!それに、その娘誰よ!?」
ギャーギャー騒ぐルイズを軽くあしらい、コルベールの研究小屋へ向かう。
「話を聞けェェェェェェェェェェェェ!!」
「コルベール、いるかしら?」
呼び捨てである。いつの間にそんなに親しくなったのか。しかし、ファミリーネームなのは何故だ。
「おお、ミス・ヴァレンタイン。どうでしたかな、その……Y2Kは?」
夢溢るる少年の瞳輝く満面の笑顔で現れたコルベールは、真っ先にY2Kの心配をした。容姿以前に、これはもてない。ミス・ロングビルへの恋はブレイクアウト間違いなしだ。
「ガリアまで行ってみたけど、問題なかったわ。燃料が切れないのは魔法かしら?」
「はて?燃料ですか」
首を傾げるコルベール。乗り物であることはジルに教えられたが、それに『燃料』が必要なのは知らなかった。
「軽油……といっても判らないわよね?」
「それが燃料ですかな?」
「そう。もしもの時のために、増産しておいてくれると嬉しいわ。暇な時は手伝うし……あ、それよりも」
四次元サイドパックから、輸血パックを取り出す。
「これを複製して欲しいのよ。なるべく早く」
「これは……血の様にも見えますが」
「ご名答。中身は私の血。重傷の時、流れた血の補填に使うのだけど……」
そこでジルは言葉を切り、小屋の外に出る。日陰でルイズと話していたエルザと、ついでにルイズを呼び込む。
「さて、ここから先は他言無用よ。いいかしら?」
何がなんだか判らないまま連れてこられたルイズはともかく、コルベールは頷く。
「この娘、吸血鬼」
「…………」
世界は、確かに止まった。
「便利そうだから従えてみたの」
そして時は動き出す。
「ななななんあなななななななんあななんななあななん……」
あまりの事に混乱し奇声をあげるルイズと、好奇心で冷静にエルザを眺めるコルベール。断じてロリータ・コンプレックスではない。
「成程、だから血が必要なのですな?」
「そうなの。血さえ定期的にあげれば基本的に無害だし、魔法を使えるし、外見は子供だし、とっても役に立ちそうだから」
「な、なんで吸血鬼を!?」
やっとある程度頭の冷えたルイズが、人間語を話す。
「何でって、前述の通りよ。意志の疎通もできるし、なんら問題は無いわ」
「ありまくりよ!!よりにもよって、この世で最も忌むべき存在、吸血鬼を!!」
「ああもううるさいわね。エルザ、眠らせて」
「らーじゃーだっと!」
「なにをする!?」
ジルの命で眠りの魔法を唱えるエルザ。その従順さに、コルベールは感心する。
「ほう……いったいどうやって従えたのですかな?」
「飴と鞭よ。言う事を聞いたら安全と血を保障する、だけど悪さをしたら殺す。それだけよ」
静かに寝息を立てるルイズを負い、エルザの頭を撫でる。エルザは眼を細めて、嬉しそうに笑う。
708 :
7話:2008/11/06(木) 17:18:30 ID:AmV5Qd0D
「それに、マスターの血は美味しいの。人間が私を狩らないなら、殺す必要もないし、マスターの近くなら安全なの」
確かに、これ以上安全な場所は無いだろう。
「それで、できるかしら?」
コルベールは、渡されたそれがもたらす苦悩を、今はまだ知らない。
その夜。
ルイズはジルの真摯な『説得』により、エルザを部屋に置くことに消極的同意をせざるを得なかった。
「何か変な事したら、容赦なく爆殺すること!いいわね!」
過程と手段はともかく、了承してしまったのだ。それを違えることは貴族としての沽券に関わる。
「じゃあ、明日からジルと一緒に仕事すること。いいわね?」
ルイズの命に、エルザは反応しない。
「ねえ、聞いてる?」
「何故?ルイズはマスターじゃないのに、私に命令するの?」
結論は簡単。ルイズはエルザにとってマスターか、それ以上の存在ではない。それだけだ。
「なっ……」
「エルザ、働かざる者食うべからず、よ。一応、普通の食事をくれるのはルイズなんだから」
ルイズの堪忍袋の緒が切れる寸前に窘める。
「わかりました、マスター」
これではっきりした。エルザは、ジルの言う事しか聞かない。
「わかればいいのよ」
「何故偉そうなの?ルイズ」
「ご主人様と呼びなさい!!」
「嫌よ。私のご主人様はマスターだけ」
「くぬう……」
迂闊に文句を言って血を吸われてはかなわない。にらみつけるルイズとどうでもいいといった様子のエルザ。その状態は、意外なことで終了した。
「?」
最初に気づいたのはジル。窓を開け、外を伺う。
「どうしたのよ……な!?」
外で生徒と教師が何人か騒いでいる。彼らの視線の先には、三十メートルはあろうかという土人形、ゴーレムだった。
709 :
7話:2008/11/06(木) 17:19:08 ID:AmV5Qd0D
「もしかして……フーケ?」
「何?そのフーケってのは」
「泥棒よ!」
ルイズがそう口にした瞬間、頭を押さえつけられる。
「何すんのよ!!」
「エルザ、耳を塞いで伏せて」
「はい!」
既に手にはM134。非常識な連射速度を誇る、ガトリングガンである。
「ルイズも!」
「え?」
戸惑っていたのが痛かった。瞬間、ルイズの視界は途切れぬマズルフラッシュで真っ白に染まり、鼓膜は爆音に叩かれる。反射的に眼と耳を塞ぐが、もう遅い。ズキズキと痛む眼と耳を押さえ、床を転げまわる。
「眼が!耳がぁ〜」
「駄目ね。なら」
最終手段、ロケットランチャー。バックブラストが部屋に吹くために使いたくなかったのだが、効果が確認できない以上、これで爆破するしかない。泥棒を逃がすくらいなら、これくらいの対価、安いものだ。
「You lose big guy!(貴方の負けよ、デカブツ)」
同僚の妹の台詞を借りて、トリガーを引く。
「――――というわけです」
翌日の学院長室での報告では、フーケの犯行現場を目撃したキュルケとタバサ、そしてゴーレムを破壊したジルとルイズ、役立たず共(教師達)が呼び出された。もっともルイズに関しては、部屋での小火騒ぎの件が大きい。
バックブラストの煙を目撃した生徒が火事と勘違い。寮からの総員避難命令が出た。
「結果としては良かったの。あのゴーレムが暴れでもしたら事じゃったからな」
学院長のオールド・オスマンが慰めるように言う。小火騒ぎの責任はルイズに無いと。
「しかし、破壊の杖は盗られたままです」
「当直は誰だ!?」
「ミス・シュヴルーズ!あんたって人は!」
「そんな……」
「よさんか!!」
オスマンの一喝で、場は収まる。動じなかったのはジルくらいか。
710 :
7話:2008/11/06(木) 17:19:42 ID:AmV5Qd0D
「誰も真っ当に見回りなんぞやっとらんだろうに。ミス・シュヴルーズを責めるのはお門違いじゃ」
その場の教師全員が、ばつの悪そうな顔をする。全てその通りでございます、と言わんばかりに。
「それよりも……ミス・ロングビルはどこかの。朝から姿が見えんのじゃが」
「そういえば……いつもなら真っ先にここに来そうなものですが」
と、タイミングよく扉が開かれる。
「遅くなりました」
何食わぬ顔で現れたのは、件の人物だった。
「おお、ミス・ロングビル。今までどこにおったんじゃ?」
「早朝から、周囲の聞き込みにいっておりました。近隣の村人から、森の奥の小屋にフーケらしき黒いローブの人物を見たという情報を入手しましたので、その報告を」
「なんと!?」
再びざわざわと騒がしくなる学院長室。
「ええい、静まれ!」
二度目のオスマンの一喝でまた静かになる。
「で、それは何処じゃ?」
「ここから馬で四時間ちょっとの場所です。……!?」
ゾクリ。
背筋に嫌な、冷たい汗が流れた。一瞬だが、絶対的な存在感を持つ殺意に似て非なるもの。恐らくそれは自分にのみピンポイントで放たれたらしく、他の者は気付いた風に見えない。そして、誰が放ったのかも判らない。
「どうしたのかね、ミス・ロングビル?」
「いえ、何でもありません……」
すぐに平静を取り繕って、オスマンににこやかに返す。
「ふむ、そうかね。では……討伐隊を出す!我こそはと思うものは杖を掲げよ!」
「は!?王室に連絡して衛士隊に……」
ギトーが『はぁ?何いってんのこのジジイ』という内心を押し隠して提案するが、
「バカモン!!間に合うものか。衛士隊が着くころには逃げられてしまうわ。それに、大恥を大々的に曝そうというのかね?」
「ぐぅ……」
たかがコソ泥に振り回されて、王室に泣きつく。これほどの恥がどこにあろうか。
「さあ、誰かフーケを捕らえて名を上げようというものはおらんか?」
しかし教師連中は微動だにしない。所詮彼らは魔法を使えるだけのチキンだ。一部例外はいるが。
と、その並んだ役立たずの頭の上に、異形のものが掲げられる。
「は?」
「ちょ、ちょっとジル!?」
杖の代わりになりそうなものを適当に掴んだらこれが出ただけで他意は無い。六銃身の回転式機関銃を掲げるのは、ゴーレムを爆破した女、ジルだった。
「泥棒を捕まえるのは警察の仕事よ。手段が過激であるなら尚更私の出番ね」
その場の誰よりも誇り高く、貴族然とした態度に、しかし無能どもは口汚い。
「平民は黙っていろ!」
「貴族の決め事にしゃしゃり出るな!」
「平民ごときに何ができる?」
ああ、こいつらがこうだから生徒もああなるのか、と納得したジルは、実力行使に出ることにした。
「レビテーション」
最初に文句を言った教師、ギトーに、渾身の力を篭めたアッパーをぶちかます。
それは確かにギトーを空中浮遊させた。ほんの一瞬、滞空した後、学院長室の天井に頭をめり込ませ、静止。そして瓦礫と共に落ちてきた。
711 :
7話:2008/11/06(木) 17:21:57 ID:AmV5Qd0D
気絶している。生きているのが不思議だが、世界の鉄則、ファンタジーというものはそう簡単に人を死なせてはくれない。死亡フラグさえ立てなければ、エピローグまで生き残れるのだ。
「私の『魔法』、ご覧になったかしら?」
地獄の『ぢ』の字も見たことの無い教師達は、ジルがいったい何をしたのか、それすら理解できなかった。ただ、『ギトーが飛んで、天井を破壊して、落ちてきた』、それだけ。
得体の知れない、明らかに魔法じゃないその『力』に、恐れ戦くだけ。
「ま、まあよかろうて。フーケのゴーレムを破壊した彼女なら、全く問題ない」
野郎が一人傷だらけになろうと、オスマンには関係ない。一見派手だが、命に別状はないのもスルーに拍車をかける。
「しかし、一人では……」
杖が、三本掲げられた。
「ミス・ヴァリエールに、ミス・ツェルプストー、それにミス・タバサまで……」
「貴方たちは生徒じゃないですか!?ここは彼女と我々に……」
「誰も上げないじゃないですか。それに、使い魔に先を越された上、使い魔だけ送り出すなんて真似、それこそ恥もいいところです」
「ヴぁリエールに負けられませんもの」
「心配」
そこに、テルミットを注ぐようなジルの一言。
「役立たずで腰抜けの貴方たちよりよっぽど強そうだけど」
ジルの言い放った一言で、その場の温度が一気に下がる。
「よろしい。ならば決闘だ!」
「だが断る。帰ってきてからにして。今は面倒だわ」
「貴族の誇りを賭けた決闘を……面倒だと?」
「あーあー。エルザ」
ジルは面倒臭そうに――――本当に面倒臭そうに指を鳴らす。
「きしゃまは……」
ジルに反抗的だった教師達が、バタバタと倒れる。残っていたのは、討伐隊候補の四人と、シュヴルーズとコルベールを含む数人の良識的(親ジル派)教師、そしてロングビルにオスマンだけだった。
「あー、ミス・ヴァレンタイン。いったい何を……」
オスマンが恐る恐る訊いてくる。
「どうせこうなると思ったので、少し仕掛けを。『スリープ・クラウド』の亜式だと思ってくだされば結構よ」
「そ、そうかね。ならばいいが……」
数百年の軌跡をここで途切れさせたくないオスマンは、追及をやめる。あと百年は、まだ見ぬ美女とキャッキャウフフしたいのだ。このエロジジイ。
「……ま、まあ、ミス・ツェルプストーは優秀な軍人を輩出している家系での出で、彼女自身の炎の魔法も優秀と聞いておる。ミス・ タバサは若くしてシュヴァリエの称号を持つ騎士じゃ。ミス・ヴァリエールは……」
言葉に詰まるオスマン。褒めるべき箇所を必死で探している。
「あの爆発の威力は素晴らしいわ。少なくとも、狙われて避けられる者なんていない。対人戦闘で右に出るものはそういないはずよ」
「そうじゃ!それにミス・ヴァレンタインという優秀な使い魔を召喚したのじゃ、文句はなかろう!」
苦しいが、ジルのフォローに乗る。
「よし、では……魔法学院は、諸君の努力に期待する」
「杖に賭けて!」
メイジの三人は直立し唱和。ジルは無言で敬礼した。
712 :
ジル:2008/11/06(木) 17:24:23 ID:AmV5Qd0D
終わりです。
少し短いですが、あまり暇が無いもので。
どうもジルがやたらと凶暴化しているような……
ジルさん乙です。
レビテーションの魔法がおもしろかったです。
乙。地獄のラクーンシティを生き延びたお姉さんをなめちゃいけませんね。
物理魔法レビテーションですね
>レビテーション
魔法名を叫びながらどう見ても物理攻撃で敵をなぎ倒すマンガ思い出したぜ
乙。
レビテーション吹いたwwww
>>683 ワルド「ライトニング・クラウド!」
パシパシパシパシパシパシパシパシ
とか想像してしまった
720 :
ジル:2008/11/06(木) 18:14:35 ID:AmV5Qd0D
「エア・ハンマー」
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ……」
個人的には風の拳がどんな風に文章で表現されるのか気になる
知的で凶悪でなおかつムチャクチャ強い。小ネタであった妖星のユダ様みたい。
考えてみたらユダ様も使えそうだとエルザを下僕にしそうだな。
ジルの人乙。
しかし、彼女を止められるゼロ魔キャラはいないものか……。
吸血鬼と言う名の便利ツールまで従えちゃ、チート以外の何者でもないわなw
風の拳、それは、風のスクウェアメイジと格闘をくみあわせた、
まったく新しいメイジ専用近接戦闘術である。
医者がルイズに召還されたら
心臓の肥大化をバチスタ手術
数ヵ月後そこには元気なカトレアの姿が
>726
学院の秘宝は破壊の杖ならぬ生命の箱(人工心肺)ですね
……無理だ、近代医術やるには足りないものが多すぎる……スーパージャンプの仁はよくやってるよ
今度のリュウはゴールドライタンとも戦うぜ
>>727 大丈夫だよ!
自分で自分の脳移植が出来る世界だから、人工心肺なんて楽勝だよ!
どうやって自分の脳を自分で取り出して自分で移植させたか、は聞くな
>>727 OVAの黒男さんは戦国時代に飛ばされて外科手術しました
風の拳は風魔法を
総合的に使用する
格闘技である
(゚д゚)
(|y|)
この格闘技を
極めることにより…
(゚д゚)y=- y=-
(\/\/
攻撃効果は120%上昇
(゚д゚)y=-
(\/\
\y=-
防御面では63%上昇
ー=y―
|
(゚д゚)
ー=y_/|y|
風の拳を極めた者は
無敵になる!
ー=y (゚д゚) y=-
\/|y|\/
医者物は面白くなりそうな題材ではあるんだが、いかんせん作者の知識と技量が問われるからなあ。
医者呼ばなくても高崎隼人に頼んでレネゲイドウィルスに感染してもらえばカトレアは健康になれるんじゃなかろうか。
そんなことを考える俺はダブルクロスに詳しくない。
医者に頼らずにカトレアが健康かつ強靱な肉体を手に入れるにはどんな奴が召喚されると良いだろうか。
>>733 HPは回復するが、病気が治る保障はないんだぜ?
「病人をオーヴァード化したけど、暴走したあげく寿命はむしろ縮みました」なんて話もある。
>>735 強靱な肉体と聞いて世紀末から天才が来たようです。
姉妹スレのバオーでエラいことになってた。
スパイダーマンの遺伝子組み換え蜘蛛とか。
ルイズが蜘蛛を召喚するんだが小さすぎて誰も気付かないんで退学に。
蜘蛛はルイズの髪の毛に潜り込み、そのままルイズの実家へ。
で、カトレアが失意に沈む妹を慰める為に頭を撫でようと手を伸ばした際にチクリと蜘蛛に噛まれ…
武装錬金のホムンクルスを召喚して寄生させるとか。
ただし、体は頑丈になるけど、病気はそのまんま。
>>735 胸に七つの傷持つとか武術を医療に役立てたい人とかそういうのか
>>733 ちがうよ、共生生物に寄生してもらうんだよ。
コレでありとあらゆる病魔から開放されるよ!
【馬鹿はデモンパラサイトを混ぜた】
>>735 カトレアが召喚されてガンダールヴ化するのが一番だね
>>736 どっかに「治癒魔法で病原菌やウィルスも活性化するから『元気な病人』が出来るだけ」という話があったな
Narutoなら細胞分裂の促進により怪我は治るが消費した細胞分裂分の寿命が縮む、というお話も
治癒魔法で活性化しすぎたがために自壊する、というのを利用した攻撃がダイの大冒険にあった
>>742 つまり、変身すると服が破損するタイプの共生生物を寄生させるんですね、よくわかります
>>745 服がびっしょりと濡れるブリガンダインだろうが、jk
>>745 そのとおり。
クレイモアかヴォージェだと変身すると全裸になるのでお勧め。
>>740 いや、あれは未完成品を使ったから病気がそのままになっただけで完成品なら病気の問題はないぞ。
デモンパラサイトから八頭桜子を召喚すればカトレアを健康にできるわけか。
7万戦のあと生きて帰ってくる桜子。何故か死亡するカトレア。
こういう時、キン肉マンのフェイスフラッシュって出ないな。
>>750 ドブ水も綺麗になるアレなら、ワルドも無能王も綺麗になるかも。
ウルトラマンと合体すると死人でも蘇るけど、病気はどうかな?
EVER17から、つぐみとか
年取らなくなったり太陽光に弱くなったりするけど
>>751 さすがにフェイスフラッシュではそうならないと思うけど、
取って付けた様な悲劇が追加されるかもしれないなw
……さすがにフェイスフラッシュで改心した奴はいないよね?
そういえばフェニックス生き返らせてたな
>>754 それでも、ゆでたまごなら、ゆでたまごならやってくれる
……ワケないよねーwww
そうとも言い切れないのがゆでの魅力
>>755 そうか、一度殺してから生き返らせれば病気も無くなっているのか!
次スレやってみるわ
デモパラなら、リプレイ1stシリーズから、「脱げ脱げあくま」を定着させた功労者、
アキラとかなで、ついでにタッシェの三人娘を召還するべきだと
それと、台無しなネーミングの必殺技を持つ『北城の黒い稲妻』も捨てがたい
才人君がロマリアのカタコンベで「ユニットガイバー」を見つけました。
カトレアさんにあげたら、カトレアさんが元気になりました。
……一人でエルフを駆逐できるほどに。
なぜカトレアさんにあげたのか、それは不明です。
>>760 宏文スマッシャーだっけ?w
…あ、あれ?速水先輩は??
デモパラ混ぜるのはいいがカトレアが異様な大食漢になるのはいいのか
>>763 食べても太らないから大丈夫!
貴族だし、食費は問題ないだろ
>>760 何気に絵師がゼロ魔と同じだったなあと、ふと思った。
>>735 強靭にはならんだろうし、関連スレ向けになるが
ティファニア(指輪付)を召喚すれば治療できるかも。
あれが病気に効くかわからんけど。
武装錬金でもパピヨンが(不完全な)ホムンクルス化した時に、
『身体は超人になったが根底にセットされた病気は変わらない』って状態だったな。
>>735 つ白皇
契約で直るけど身も心も捧げる事に
つジョセフorティオなどのブラスレイター
凄い少ない可能性だが……
生き残ったとしても死ぬより酷いかもしれん
個々はドラゴンボールからシェンロン喚んでギーシュなんかのしょうもない願いを聞き届けて消えるって展開もまた……
テイルズ系のエリクシールみたいな超万能薬ならカトレア治せるかな?
病弱の話を見ていると、どうしても『不治の病にかかった病人を召喚、結果ハルケギニアに病気が蔓延』――って想像してしまう。
いっそのこと最初から死んでいる展開はどうだろうか
物語開始前に死亡
というか今それで書いている
カトレア「わたしを……不老不死にしろーーーーーっ!!!」
ルイズ「しっしまったーー!!」
サイト「俺を家に帰してくれ!!(日本語)」
ポルンガ「わかった。お前を家に帰そう」
レフトハンドウイルスがハルゲキニアに・・・
書こうと思ってるのですが・・・
正直何が需要あるかまったくわかりません。
↓この中で需要出そうなものってあります?
1、ゼロの下痢男 (MGSシリーズよりジョニー佐々木)
2、Call of duty0 Magic warfare (cod4よりキャプテン・プライス)
3、ワンダと虚無 (ワンダと巨像よりワンダ)
4、ゼロと間黒男 (ブラック・ジャック)
参考にさせて下さい、よろしくお願いします!
3か4が見たい特に黒男がきになる
1
4で。でも医学知識がないと辛いね
需要気にして書くとか、あり得ない。
>771
黒蟻の人?
4
できるものならやってみろ
つーか、人に言われて書いて面白い?
そういう事聞く方の作品に需要なんてありませんのでお引取り下さい
需要ってんじゃなく、書きたい物を書く、が正しい
>>778 >>772 すいません、迷ったので質問しました。
全て書きたいのは山々ですが・・・
スレ汚しすいませんでした
ポルンガだと日本語じゃダメじゃね?
ボコボーコwww
>>785 どんな作品でも面白ければ需要はあるし、つまらなければ需要は無いよ。
迷ったら全部書けばいいじゃん
結局さ、自分が本当に読みたいものって、自分で書くしかないんだよな。
やっぱそうだよなぁ、伊武さんなんて召喚する人はいないもんなぁ……
>774
5、筆を折る。SSを書かない、読まない、関わらないまま一生を過ごす。
トキ?「ん?間違ったかな?」
カトレア「ちにゃ」
需要が無くても書き続けることはできる
とあるエロゲから召喚、でSS書いてたが、資料用に元ゲームプレイしようと思ってインストールしたら……
古いソフトな所為か、起動しません!
vista許せん。
メジャーな漫画はクロス先としてほとんど出ているなか、幽白が出てないな。
カトレア治せそうなやつ居るんじゃね?
>>796 今話題のネットブックでっれっつちゃれんじ!!
まさかのDr.イチガキ召喚ですね
その発想はなかったわw武道家たちを改造したやつか、忘れてたw
「美しき魔闘家鈴木」
>>787で思いついた
FFからボコ(チョコボ)召喚
ゼロと聖石のチョコボくらい強いのにするとルイズ幸せデルフ涙目
ルイズが子山羊を召喚しました。
「使い魔になんてしないで下さい。 僕の次に召喚される兄さんの方が大きくて強いですよ」
子山羊はそう言って去って行きました。
人語を話したのはとりあえずスルー。
ふたたびの召喚。
今度現れたのは、角も立派な大きなたくましい山羊でした。
しかし。
「僕を使い魔にするより、次に召喚される兄貴の方が大きくて強いからそっちにしなよ」
山羊はそう言ってまた去っていきました。
なんでしゃべれるんだお前。
そして三度目の召喚。 爆発。
土煙の中からぬうと現れたのは。
それは山羊と言うにはあまりにも大きすぎた。
大きく険しく重く、そして大雑把すぎた。 それはまさに以下略。
「使い魔にしてやるわ!」
ルイズが怒鳴りました。
『やってみろオラァ!こっちにゃ二本の槍がある!これで目玉は田楽刺し!
おまけに大きな石も二つある!
にくも! ほねも! こなごなにふみくだくぞ! 谷底にブチまけてやる!』
こうして、すさまじいたたかいがはじまりました……。
一方ティファニアはすてきな三人組を召喚して孤児の王国を作り上げ幸せに一生を送った。
おわり。
埋め
うめえwwww
>>774 2が読んでみたい、プライス大尉は軍人だけど普通の人だよ
>>804 ルイズ、トロル扱いwww
って書いて気になったけど、これがらがらどんネタだよね?
違ってたらはずかしー///
髪の毛の色繋がりでキュルケに召喚させたいキャラがいたんだが
何かもう最近ギーシュは勿論のことエルフの精霊ぐらいなら
気迫でどうにかできるようなキャラ設定になってしまってきているのでスッパリ諦めた。
が、もし500kgだったら次スレ終了までに第1話書いて投下する。
>>810 ああ!そうだった!昔、おかんに呼んでもらった記憶がーっ!
なぜかつくってあそぼでやったときの記憶の方が先に出てきちまったー!
ルイズが召喚したのは平民の女性だった
彼女はハルケギニアとは違う世界から来たといい、自分の腕時計を見せた
しかし、召喚時のショックからなのか時計は壊れていた
ルイズ「おまんこ われているわよ」
つボイノリオ作、「極付け!お万の方」より、お万さん召喚
>>815 他にも吉田松陰が呼ばれてシンガポールを恋しがったり、シンドバット見せたり、(鉛筆の)芯を舐めたりするんですね。
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ヽ ∠____vvV____ヽ < ≧__/ ゝ、t‐┐ ノ .|┐ . \ / / \ / l
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