あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part182

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1名無しさん@お腹いっぱい。
もしもゼロの使い魔のルイズが召喚したのがサイトではなかったら?そんなifを語るスレ。

(前スレ)
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part181
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1224862508/

まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/
避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9616/


     _             ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
    〃 ` ヽ  .   ・ここはあの作品の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!
    l lf小从} l /    ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
   ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,.   ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
  ((/} )犬({つ'     ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
   / '"/_jl〉` j,    ・ 投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
   ヽ_/ィヘ_)〜′    ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
             ・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!


     _       ・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
     〃  ^ヽ      ・クロス元が18禁作品であっても、SSの内容が非18禁である場合は
    J{  ハ从{_,     本スレへの投下で問題ないわ。
    ノルノー゚ノjし     ・SSの内容が18禁な展開をする場合はクロス元に関わらず、
   /く{ {丈} }つ      本スレではなく避難所への投下をお願いね?
   l く/_jlム! |     ・クロス元がTYPE-MOON作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
   レ-ヘじフ〜l      ・作品を初投下する時は元ネタの記載も忘れずにね。wikiに登録されづらいわ。
              ・作者も読者も閲覧には専用ブラウザの使用を推奨するわ。負荷軽減に協力してね。


.   ,ィ =个=、      ・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。
   〈_/´ ̄ `ヽ      ・1レスの限界最大文字数は、全角文字なら2048文字分(4096Bytes)。これ以上は投下出来ません。
    { {_jイ」/j」j〉     ・行数は最大60行で、一行につき全角で128文字までですって。
    ヽl| ゚ヮ゚ノj|      ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
   ⊂j{不}lつ      ・次スレは>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
   く7 {_}ハ>      ・重複防止のため、次スレを立てる時は現行スレにその旨を宣言して下さいね。
    ‘ーrtァー’     ・クロス先に姉妹スレがある作品については、そちらへ投下して盛り上げてあげると喜ばれますよ。
               姉妹スレについては、まとめwikiのリンクを見て下さいね。
              ・一行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えます。
              SS文面の区切りが良いからと、最初に改行いれるとマズイです。
              レイアウト上一行目に改行入れる時はスペースを入れて改行しましょう。

2名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 23:10:10 ID:MUUtz9Am
テンプレは1だけですよー。
スレ立てしゅーりょー。
3名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 23:13:03 ID:0zCXhSdD
スレ立て 感謝。乙でした。
4名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 23:14:22 ID:F6F4NWFm
>1 乙ー。
5名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 23:14:38 ID:EzN4+qk+
>>1
テンプレは>>1のみ
6名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 23:21:28 ID:fn+ZRcfF
>1 スレ立て乙
7名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 23:24:12 ID:813YEWev
乙です
8名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 23:42:00 ID:SNeAr3qw
>>1乙☆
てかスレの消化がはぇぇ
9名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 23:44:26 ID:FpovfdUJ
>>1
10名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 23:48:06 ID:6rN9aNIT
>>1乙!
11ゼロの少女と紅い獅子 第8話:2008/10/28(火) 23:54:21 ID:fbQUF8MO
ご無沙汰しております。
こちらで投下させてもらってよろしいですか?
12名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 23:55:20 ID:+TiX1LsF
荒らしコピペに関する説明

このぐらいまで単純化できそうな気がする。

(中略)
 対7万戦と再召喚(一度使い魔契約が切れ、まっさらな状態からルイズとの関係を再構築)

単なる荒らし文の一部抜粋
こんな物が役に立つと言う人間は常識が欠落しています


ルールじゃないけどマナー上しておく方が良い事・システム上の注意事項
投下時はタイトルをコテハンとする、トリップ推奨
予告でクロス元他必ず説明する(一発ネタ等でばらすと面白くないならその旨明示)
 ※過去「投下してもいい?・投下します」等の予告から
  最低の荒らし投稿を強行した馬鹿者が居たため同類認定されるリスク極大

1時間に一定量超える投下は「さるさん」規制に遭うので注意
連投規制には有効な支援レスもこれには何の役にも立たない
文章量(kB)と分割予定数の事前申告をしておけば、規制に伴う代理投下をしてもらいやすい
投稿量カウントも規制も正時(00分)にリセットと言われている
他スレでの実験により規制ボーダーは8.5kBらしいという未確認情報あり

さるさん規制への無頓着な書き手の多発に注意を呼びかける有意情報+α
荒らしが面白がってコピペに組み入れたためいまだにスルーされて役に立ってないだけで
ここだけは見る意味有り

【書き手の方々ヘ】
(中略)
・盗作は卑劣な犯罪行為であり。物書きとして当然超えてはならぬ一線です。一切を固く禁じます。
 いかなるソースからであっても、文章を無断でそのままコピーすることは盗作に当たります。
・盗作者は言わずもがな、盗作を助長・許容する類の発言もまた、断固としてこれを禁じます。
・盗作ではないかと証拠もなく無責任に疑う発言は、盗作と同じく罪深い行為です。
 追及する際は必ず該当部分を併記して、誰もが納得する発言を心掛けてください。

他所(リリカルなのはクロスSSスレ)のテンプレ丸コピ
まさに盗作そのもの
盗作者が盗作禁止を訴えるというまさに狂人の所業である
13名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 23:55:48 ID:+TiX1LsF
一つ抜けてた

4 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2008/08/17(日) 02:13:03 ID:9AxAAVZE
やる夫が小説家になるようです (以下略)

これも荒らしコピペの一部

荒らし本人以外に「役に立つ」人間など居ない
14名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 23:56:45 ID:+TiX1LsF
このぐらいまで単純化できそうな気がする。

爆発召喚
キス契約
「ゼロ」の由来判明(教室で爆発)
使い魔の能力が明らかに(ギーシュ戦)
デルフ購入
フーケ戦
舞踏会

最近はその流れでいかに飽きない話を作るかに凝りがち

爆発
平民プゲラ
コルベール問答無用さっさと汁
キス契約
フライに唖然とする
説明はぁどこの田舎者?
何者であろうと今日からあんたは奴隷
二つの月にびっくり
洗濯シエスタと接触
キュロケフレイム顔見見せ
みすぼらしい食事厨房でマルトー
教室で爆発片付け
昼食シエスタの手伝い香水イベント
オスマンコルベール覗き見
ギーシュフルボッコ場合によって使い魔に弟子入り
キュルケセクロスの誘いしかし使い魔はインポテンツか童貞w
ルイズ寝取られの歴史を切々と語る
休日街でデルフ入手 キュルケタバサがついてくる
ルイズが爆破訓練宝物庫破壊フーケ侵入お宝げっと
この段階でフーケは絶対つかまらない
翌朝捜索隊保身に走る教師一同
教育者オスマン犯罪捜索を未熟な子供にマル投げ
小屋で破壊の杖ゲットフーケフルボッコしかし絶対死なない
オスマンから褒章 舞踏会 終わり

途中飛ばすけど、

 対7万戦と再召喚(一度使い魔契約が切れ、まっさらな状態からルイズとの関係を再構築)
15名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 23:57:07 ID:+TiX1LsF
ルールじゃないけどマナー上しておく方が良い事・システム上の注意事項
投下時はタイトルをコテハンとする、トリップ推奨
予告でクロス元他必ず説明する(一発ネタ等でばらすと面白くないならその旨明示)
 ※過去「投下してもいい?・投下します」等の予告から
  最低の荒らし投稿を強行した馬鹿者が居たため同類認定されるリスク極大

1時間に一定量超える投下は「さるさん」規制に遭うので注意
連投規制には有効な支援レスもこれには何の役にも立たない
文章量(kB)と分割予定数の事前申告をしておけば、規制に伴う代理投下をしてもらいやすい
投稿量カウントも規制も正時(00分)にリセットと言われている
他スレでの実験により規制ボーダーは8.5kBらしいという未確認情報あり

4 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2008/08/17(日) 02:13:03 ID:9AxAAVZE
やる夫が小説家になるようです
ttp://urasoku.blog106.fc2.com/blog-entry-244.html

完結:やる夫が小説家になるようです
ttp://urasoku.blog106.fc2.com/blog-entry-245.html

やる夫が「売れっ子」ラノベ作家を目指すそうです
ttp://urasoku.blog106.fc2.com/blog-entry-284.html

やる夫が同人小説家になるようです
ttp://urasoku.blog106.fc2.com/blog-entry-371.html
16名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 23:57:15 ID:G/ST8WHv
かもーん
17名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 23:57:37 ID:+TiX1LsF
・行数は最大で60行。 一行につき全角で128文字まで。
・一度に書き込めるのは4096Byts、全角だと2048文字分。
・専用ブラウザなら文字数、行数を管理してくれるので目安がつけやすいかも。
・先頭行が改行だけで22行を超えると、投下した文章がエラー無しにザ・ハンドされます。 空白だけでも入れて下さい。
18ゼロの少女と紅い獅子 第8話:2008/10/28(火) 23:57:57 ID:fbQUF8MO
「騎馬の経験は?」
「問題ありませんよ」
 ゲンが跨りながら応える。
「ルイズはこちらに」
 ワルドに促されてルイズがグリフォンの背に収まりワルドがそれに続く。
「ルイズ、一応確認しておくが……」
「別にいいわよ。ササッとコソ泥を捕まえて、ササッと帰って来ればいいだけの話でしょう?
 それ程大したことじゃないわ」
 行き先がアルビオンでなければ、コソ泥が強力な魔法使いでなければ。
 色々とただして置きたい事はあったが、ルイズはそれらを全て飲み込んだ。
 一々気にしても仕方ない、そう結論した。正確に言うなら無理やりそうした。
 それでもとり合えず納得したことを確認したワルドは軽く頷く。
「では出発だ、急ぐぞ。ルイズ、しっかり捕まってるんだ」
 そういい終わると同時に「ハァ!」と二つの掛声が被さった。
 途端に駿馬とグリフォンは一目散に駆け出し学院を後にした。

「ふうん……」
 走り出してから暫らくして、後ろをチラッと見やったワルドは感心したように呟く。
「どうしたの?」
「イヤ、存外にやると思ってね」
「ゲンのこと?」
 首肯してワルドは続ける。その顔はどこか楽しげでもある。
「大したものだ。身のこなし一つとっても見事だが、あの騎乗ぶり。確かにグリフォンは全力ではないが
あれ程の速さで馬を御する事は中々出来ない」
 ワルドに倣ってルイズも後ろに目をやる。
 成る程、確かにゲンと駿馬はグリフォンに付かず離れずの一定の距離を保ってついて来ている。そして決して
暴走している風でもない。
「良い使い魔でしょ?」
 色々と問題は多くてもやはり自分が召喚したのには違いない。
 フフン、とばかりに鼻を鳴らす。
「使い魔は主を写すと言うな。まったく興味深い事だよ。君も、君の使い魔も」
 意味深な笑みを浮かべて、ワルドはグリフォンに拍車をかけた。
「それは私の力だけなの?」
「ハッハッハッ君の魅力はそれとは比べようがないな。無論良い意味で」

 馬がバテてしまわないギリギリの速さで走った結果その日の夕刻にはラ・ロシェールに到着した。
「今日は宿を取ろう。明日の朝、早々に出ることになるだろうから二人ともゆっくり休んでくれ
……どうした、オオトリ君?」
 ラ・ロシェールに着いてからキョロキョロ辺りを見回すゲンをワルドが見止めてたずねる。
「いえ、港と聞いていた割りに随分内陸に来た気がしましてね」
「あれ、言わなかった?」
 ルイズは意外なといった風にワルドと顔を見合わせた。
「まぁ、明日になればわかる。そう気にすることではない」
 首をひねるゲンであったが二人の様子からそう心配する必要はないと判断するのだった。


 「トゥアァァッ!」
 気合とともにデルフリンガーが正眼で振り下ろされる。見よう見まねの素振りであったが
それなりに様になっていた。
 マグマ星人の足取りがおぼろげながらも掴めた今、機を逃す事はできなかった。何よりマグマ星人の
足取り以上にブラックスターの欠片をどうするのかが気になった。あの夜のマグマ星人の口ぶりは
欠片の使い方――それも邪な考えのもと――を明らかに知っていた。
 マグマ星人がブラックスターを以前から知っていたのか、あるいはこちらに来てから知ったのか。
 だがそうなれば、マグマ星人単独ではなく別の勢力が知っていることになる。しかしこの世界の人間が知って
いるとは考えにくい。
『また別に俺たちの宇宙からこの世界に来た物がいるのか』
 可能性がなくはなかったが、それはすなわちそれなりの力と知能をもった物が何らかの形でゲンの知らぬところで
うごめいている事の証左であった。
 まだ見えぬ敵を見立てて彼はデルフリンガーを振り下ろした。
19名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 23:58:14 ID:+TiX1LsF
【書き手の方々ヘ】
・作品投下時はコテトリ推奨。トリップは「名前#任意の文字列」で付きます。
・レスは60行、1行につき全角128文字まで。
・一度に書き込めるのは4096Byts、全角だと2048文字分。
・先頭行が改行だけで22行を超えると、投下した文章がエラー無しに削除されます。空白だけでも入れて下さい。
・専用ブラウザなら文字数、行数表示機能付きです。推奨。
・専用ブラウザはこちらのリンクからどうぞ
・ギコナビ(フリーソフト)
  http://gikonavi.sourceforge.jp/top.html
・Jane Style(フリーソフト)
  http://janestyle.s11.xrea.com/
・投下時以外のコテトリでの発言は自己責任で、当局は一切の関与を致しません 。
・投下の際には予約を確認してダブルブッキングなどの問題が無いかどうかを前もって確認する事。
・作品の投下は前の投下作品の感想レスが一通り終わった後にしてください。
 前の作品投下終了から30分以上が目安です。

【読み手の方々ヘ】
・リアルタイム投下に遭遇したら、支援レスで援護しよう。
・投下直後以外の感想は応援スレ、もしくはまとめwikiのweb拍手へどうぞ。
・気に入らない作品・職人はスルーしよう。そのためのNG機能です。
・度を過ぎた展開予測・要望レスは控えましょう。
・過度の本編叩きはご法度なの。口で言って分からない人は悪魔らしいやり方で分かってもらうの。

【注意】
・運営に関する案が出た場合皆積極的に議論に参加しましょう。雑談で流すのはもってのほか。
 議論が起こった際には必ず誘導があり、意見がまとまったらその旨の告知があるので、
 皆さま是非ご参加ください。
・書き込みの際、とくにコテハンを付けての発言の際には、この場が衆目の前に在ることを自覚しましょう。
・youtubeやニコ動に代表される動画投稿サイトに嫌悪感を持つ方は多数いらっしゃいます。
 著作権を侵害する動画もあり、スレが荒れる元になるのでリンクは止めましょう。
・盗作は卑劣な犯罪行為であり。物書きとして当然超えてはならぬ一線です。一切を固く禁じます。
 いかなるソースからであっても、文章を無断でそのままコピーすることは盗作に当たります。
・盗作者は言わずもがな、盗作を助長・許容する類の発言もまた、断固としてこれを禁じます。
・盗作ではないかと証拠もなく無責任に疑う発言は、盗作と同じく罪深い行為です。
 追及する際は必ず該当部分を併記して、誰もが納得する発言を心掛けてください。
20ゼロの少女と紅い獅子 第8話:2008/10/28(火) 23:58:52 ID:fbQUF8MO
「精が出るな」
 振り向くとワルドが佇んでいた。かれは微笑を浮かべつつゲンに近づいてくる。
「どうも……どうか、しましたか?」
「イヤ、少し君と話をしたくなっただけだ」
 やや大げさに両手を広げて見せワルドはゲンの傍で止まった。
 ゲンは初めて会った時から感じていたワルドに対する違和感がいよいよ強まるのを感じていた。誰もが
自分に興味を持つのはある点では仕方がないのかもしれない。しかし、この男はゲンの事を別段意識していない様な
そぶりを見せつつ常に彼に対して注意を向けていた。

「ルイズの前ではああ言ったが、私も少なからず君に興味を持っている」
 乾いた靴音を立てながらゲンの周りをゆっくり回りだすワルド。口元にはうっすらと笑みを浮かべたままだ。
「人間の使い魔と言うだけでも珍しいが、君の戦闘のセンスは非常に非凡だ。単純にその能力だけでも
稀有なものだと言えるよ」
 腰にぶら下げた杖に手をやり弄びながら、ワルドはゲンの正面に回ると正面から彼を見据えた。
「だが今の状態なら到底ブラックスターは止まらんな。そうだろう? ウルトラマンレオ」
 驚き、そして心の底の疑念が一気に爆発した。ゲンは一気にデルフリンガーを引き抜こうとし――それは
刃が数サント程出た所で停止した。ワルドの杖が彼の大剣の鍔の部分に止まっている。
「フム、5サントと言ったところだな。完全に止めたと思ったが中々だ。しかしだ……」
 言葉が途切れると同時に、ワルドの杖に風が渦を巻いて集まりだす。
「貴方は一体何を知っているんだ……!」
「力ずくで聞き出してみたらどうかね?」
 にやりと笑うワルド。集中した風が鋭い唸りを上げている。その風塊を爆裂、ゲンに叩き込まんとワルドは
一気に杖を引き抜き振りかぶった。
 同時にデルフリンガーが抜刀される。身をそらしてその一撃を交わすワルド。そして、
「エアハンマー」
 腹のど真ん中を杖をで穿たれる直前に辛うじてデルフリンガーを引き付けることに成功したゲン。しかし
風塊はそのままゲンの前で爆ぜた。
「うおおっ!」
「このヤロ!」
 何とか両足で踏ん張り吹き飛ぶ事こそ免れる。芝生をえぐりながら後退したゲンはまとわりつく風を
振り払うと正眼に大剣をかまえてワルドに対した。
「中々やる、ってレベルじゃねーぜ?」
「分かっている」
 ブラリと杖を突き出したままのワルド。隙だらけにしか見えないが、身体は微動だにせず視線はキチッっとゲンを
見据えて動かない。
「舐められっ放しはよくねーぜ」
 けしかける大剣に頷いて見せゲンは、チラッと左手の甲に目をやった。が、そこにはいつもの模様が見えるだけだった。ゲンは小さく
舌打ちする。
(これに頼ろうとしてしまうなんてな)
「へっへ、左手はだんまりかい」
「もとから期待しちゃいないさ」
 ワルドを睨みながらゲンが応じる。
(期待しちゃいない、か。オイ、ブリミルよ随分頼りねえもんだな)
 表情が確認できるならばその時のデルフリンガーは何とも言えない苦笑を浮かべていたことだろう。

「ハアァッ!」
 大剣を振りかぶりワルドにとびかかるゲンに対し、彼は手首の運びだけで対応する。その動きは決して緩慢ではない。
 繰り出される一撃一撃を紙一重で受け流しながら再び詠唱を始める。
「させはしない!」
 ここぞとばかりに烈風のごとき回し蹴りがワルドに襲いかかる。幾分単調気味であった剣撃から繰り出された鋭い一撃に
やむを得ず杖でしっかりと防ぐ形になったワルド。そこにもう一つの刃が叩き込まれる。
「テェェイ!!」
 ゲンの手刀が唸りをあげて繰り出され、ワルドの胸元を襲う。これをワルドは大きく後ろに跳躍して辛うじてかわした。
 初めて両者の間に広い間合いが出来上がる。双方共にジリとも動かず相対する。
「……ハハハ、まあそう本気になるな」
 そう言ってワルドは杖をおさめた。もうやる気はないと両手を掲げて見せる。
 釈然としないながらも最早ワルドから殺気は感じられないので、ゲンもデルフリンガーを鞘に戻す。
 今度は若干刃をのぞかせておいた。
「怪獣の炎と違って切り結びながら撃ってくるから気をつけることだ。詠唱は隠そうと思えばいくらでも隠せる」
21名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 23:59:05 ID:+TiX1LsF
                                          ○________
                               支援          |:|\\:::::||.:.||::::://|
                                              |:l\\\||.:.|l///|
                         __ ィ   ,. -――- 、     |:|:二二二二二二二 !
                        /    L /        \.   |:l///||.:.|l\\\|
                / ̄ ̄ ̄ ̄ 7 / / f  / /   l l l lハ  |:|//:::::||.:.||:::::\\|
  ト、     ,.    ̄ ̄Τ 弋tァ―    `ー /   从 |メ|_l  l_.l斗l |ヽ V |:| ̄ フ  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  ヽ \__∠ -――く  __       .Z¨¨\   N ヒj V ヒソ l .l ヽ\| / /
   ヽ  ∠____vvV____ヽ   <   ≧__/ ゝ、t‐┐ ノ .|┐ ./ /
.    \\_____ivvvvvvvv|   V.    (  (  /Tえハフ{  V / /
       \!      |   / 入_.V/|      >-ヘ  \:::∨::∧   / ∠ ____
 __  |\       l/V  _{_____/x|    (_|::::__ノ   }ィ介ーヘ ./  ,. ---―――
  )-ヘ j ̄} /|        /___/xx|       _Σ___/| | |V::::ノ/ ∠___
  {  V  /`7.         /___./xXハ    ( |:::::::::::::::::ハ   >' ____二二二
.  \_   |/        /___l XX∧     __≧__::::::::/:∧/   `丶、
    |   ヽ        /____|]]∧  __|__L.∠ ム'  <`丶 、 `丶、
    |     ',         {     |]]]>'  __      ∧ l\ \   丶、 ` 、
   ノ     }       l ̄ ̄ ̄.|] >' ,. '  ̄ / .// :/  V'  \ ヽ    `丶\/
  / ∧   { \      |      .|>' /      // :/ :/ :   ', l   \ ヽ  ,.-――┬
 入ノ. ヽ  く  ヽ______7 ー―∠__    〃  l :/    :l l     \V
`ー′   \  `<  | {      /   | /〃   :|/  __V/ ̄| ̄ ̄{_
22ゼロの少女と紅い獅子 第8話:2008/10/29(水) 00:00:43 ID:KtbvaFxX
そう言いながらワルドはゲンの横を通り過ぎようとして、足を止める。
「今のままではブラックスターを追う事はおろか、ルイズを危険から守ってやれんかもしれんぞ」
「あなたは一体何を知っているんだ。本当にこの世界の人間なのか?」
「無論だ。私はトリステインの、ハルキゲニアの人間に間違いないよ」
 そう言って静かに立ち去ろうとするワルド。その背中にゲンが声を上げた。
「いったい、俺をどうしたいんだ!」
 その問いにワルドは歩みを止めたがすぐに高笑いをあげた。
「それは私にはわからんよ」
 そして今度こそその場を離れたのだった。

「食えねえ奴だ。ゲン、ありゃあまだ手加減してやがったぜ」
「……そうだろうな」
 そう言ってパシッとデルフリンガーを完全に鞘におさめる。
 最後に距離をとられた時にわずかに出来た時間にワルドが呪文を完成させるのは十分可能だった。
 実際完成していたかもしれない。
 しかしその事も然ることながら。
 先ほど喰らった風塊はフーケを取り逃がす原因となった件の魔法使いの物と似ていた。戦闘スタイルも酷似している。
 だからと言って決めつけるには根拠が薄すぎるし、それはゲンも分かっている。だが、いざ正体がそうであったとき、自分はともかく
ルイズに危害が及びそうになるならばそれは絶対に阻止しなければならないとゲンは思った。
 巻き込んでしまったと言う負い目もさることながら、自分が彼女に助けてもらっている現実を彼は少々情けなく感じていた。

 ゲンと別れたワルドは港に向かっていた。そして暇な船員が溜まり場にしていそうな酒場に目を付けた。
 店内に入ると同時に中にいた客が不躾な視線を寄越してくる。もっともワルドはそんな事は微塵も気にせず奥のほうでくだを巻いている
船員の集団に声をかけた。
「中々暇そうにしているな。どうだ仕事はいらんか?」
 唐突に声をかけられた船員たちは互いに顔を見合せ後胡散臭げにワルドに顔を向けた。
「貴族様とお見受けしやすが……状況はご存じでしょう?」
「イヤ、待て。知らせが入ったのは昼ごろだ。もしかしたら知らねえかもしれん。貴族様、この町に入られたのはいつ頃で?」
 口々に勝手なことを言う船員たち。不審に思いワルドは再び口を開く。
「……夕刻に入ったが。何かあったのか? アルビオンに出立するには日時は問題ないはずだが」
「ニューカッスルが陥落したんでさ。だもんでスカボローは王党派についていた傭兵や落ち延びようとしている
貴族様、難民なんぞでごった返してるって話で、へえ」
「ニューカッスルが陥落? 本当か」
「昼に戻った定期船の船員が言ってまさあ。まあ、アルビオンに行くこと自体は問題ありやせんが、停泊したら
最悪襲われるかもしれませんで」
「急用だ。腕利きが二人いる送り届けるだけでいい。謝礼ははずむぞ」
 ワルドの台詞に船員たちが再び相談を始めた。それを横目に見ながらワルドは黙考する。
『ニューカッスルが落ちただと? 予定よりずいぶん早いな』
『どうでもいいことだ。むこうに行くことには変わりない』
『知らせるすべはいくらでもあった。オレを軽んじているというのなら……』
『下らんプライドだな、犬にでも食わせてしまえ。早死にのもとだぞ』
 頭に響くもう一つの意思に投げやりに宥められワルドは完全に沈黙した。そして何気なく見まわした店内の片隅に
ある人物をみ止めた。

 フードをスッポリ被った後姿。細い身体から女性であることが見て取れる。思うところがあったか、ワルドはいまだ喧しく議論を続ける
一同をから離れその女に近づいた。
「こんな所をウロウロしていては早晩囚われてしまうぞ。王国はお前が考えているよりは必死だ」
 彼女にだけ聞こえるほどの声でそう囁いた。女はほんの少し動揺した風に体を強張らせたが、冷静を装ってフードに隠れていた顔を
ワルドに向けた。
「利用し終わったらついでに捕まえて手柄にするかい? だとしたら意外とセコイねえ」
 疲れ気味に顔を歪ませるフーケであった。

 学園での騒動の後ゲルマニアやガリアに逃亡を図った彼女であったが、国境は各国の異様に素早い連携によってアリの通る隙もないほどに
封鎖され、比較的緩かったラ・ロシェールに行くことになった。しかしここでもトリスタニアから直々に派遣された兵たちが出入りする
船員や貨物のチェックをピリピリと行っていた。
23名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 00:00:53 ID:vqVjGjbZ
ゼロの少女と紅い獅子GJ!!
ワルド格好いいよ
24ゼロの少女と紅い獅子 第8話:2008/10/29(水) 00:02:57 ID:KtbvaFxX
進退極ったかに見えたフーケであったが、どうも連中は自分を探している風ではない。とは言え手配書が出回っているのは確実であり、わざわざ
姿を現すことは極力避けねばならなかった。画してほとぼりが冷めるまでこの町で潜伏を始めたのだった。

「安心しろ。お前をとらえたところで私には何の得にもならん。むしろお前が捕まって尋問されされることのほうが厄介だ」
 その言葉にフーケの目がすっと細められた。
 彼女のマントの内側で何かに力がこもるのを感じ取ったワルドは薄く笑みを浮かべて続ける。
「安心しろ、私はそんなに短気ではない。ここに居るという事はいつかはアルビオンに向かうつもりだったのだろう? 付き合え。
今度は報酬は出んがな」
「相変わらず訳のわからん男だね。アルビオンが今どうなってるか知ってるだろう? 一体何をしにいくってんだい」
「何、大したことではない」
 胡散臭げに問うフーケに対し、ワルドは懐に手を伸ばしながら続ける。
「仮面の怪人がアルビオンに逃れたそうなのでな」
 そう言って取り出した白い仮面を装着する。それだけで口元のうすら笑いがひどく冷たい笑みに変わったようにフーケは感じた。
 仮面の怪人が続ける。
「さて、どうする?」
 

 時間が少し前後する。

「大いなる意思が騒いでいる」
 長身の男がつぶやいた。荘厳な装飾のこの部屋には男が二人、何をするでもなく黙していた。
「余に与するなとでも言っているのか」
 部屋の装飾に負けない豪奢な出で立ちの男が口だけで応じる。
「そんな事ではない。……異端だ。この世にとってのな。ここからは随分遠いようだが」
「クククッ、この世界に余や貴殿以上の異端がいるというのか?」
「異端が更なる異端を呼んだのなら、たいして不思議なことではない」
 その答えに豪奢な男は身を折って笑いだした。一方長身のほうは鉄面皮を崩さない。
「フフフハハハハッ、そうかそうか。この世界の成り行きを決める意思が何処かにあるなら、そいつは随分気まぐれなのだな。
虚無を揃えるだけでは飽き足らぬか」
 その高笑いに長身の男が初めて表情を浮かべる。困惑、蔑み、怒りの入り混じった複雑な表情だが。
「あまり愉快なことばかりではないかもしれぬぞ? 大いなる意思は明らかにこの異端を警戒している」
 それを聞くなり豪奢な男は手近にあった机に手を叩きつけていよいよ笑いの度を強めた。
 格好が違えば発狂したとしか見えなかっただろう。
 長身の男の相変わらずの視線も意に介さず男は笑い続ける。
「最高ではないか! 余や貴殿ですら測りかねる駒が舞い込んだのだぞ? これ以上の好機があるか。喜劇! 悲劇! 惨劇!
なんでもござれだ! アルビオンの仕掛けと動かせばハルキゲニアに舞い降りるのは聖地奪還成功も吹き飛ぶ上を下への大混乱よ!
これを愉快と呼ばずに何をもって喜ぶのかね?」
「その混乱に乗じて何を求めるというのだ」
 今度は明らかに侮蔑をこめて尋ねる。
 一しきり笑った息を整えた男は表情を浮かべた。一目では判別しがたい奇妙な笑みであったが。
「余にとって混乱は手段ではない」
 真意を測りかねる――と言うよりこれが真意であってはならないという願望――答えに三度表情を変えた長身の男は居住まいを正した。
「興を削ぐようで悪いが、彼の物、と言っても何者かもわからぬが。今の時点ではおらぬようだ。顕現に条件があるのやも知れぬ」
「構わぬ、もとよりいるはずのない道化が本当に道化かあるいは獅子であったとしても大して変わらぬ。道化なら道化の、
獅子なら獅子の働きをしてもらう。余の大道芸の駒であることに変わりはない」
 そう言っておもむろに使役しているフクロウを呼び寄せる。手早く文を書くとフクロウに持たせながら彼は続ける。
「とは言え、道化か獅子の区別くらいは付けて置かぬとな」
 そう言って窓を開けふと思い出したように振り返った。
「ところでそいつはどこに現れたのだ」
「北だ、海は越えぬ」
 気のない回答に男は満足げにうなずく。
「成程、ならばうってつけの計量機があったわ」
 そう言ってフクロウ放った。舞い上がった翼は北を目指した。
 トリステインを目指した。
25名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 00:03:07 ID:+TiX1LsF
原作のやられ役を活躍させる話は名作が多いですね
作者の思い入れを感じる
26ゼロの少女と紅い獅子 第8話:2008/10/29(水) 00:08:10 ID:KtbvaFxX
以上、第8話でした。
長らくお待たせした上に閑話休題的な話が続いてしまって申し訳ないです
当面私事でドタバタしてるので次はいつになることやら……
今回ほど待たせることはないと思いますが。

支援してくれた方々に感謝しつつそれではさいなら。

以下、チラ裏
M78星雲人がグリッター化できることが公式に映像化されて俺歓喜
レオもグリッター化していいよね? 答えは(ry
27名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 00:08:49 ID:vqVjGjbZ
乙でした
台詞回しも上手いと思います
イメージを言葉にするのが上手みたいですね
28名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 00:10:24 ID:pAEmq838
今日のNGID:+TiX1LsF
29名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 00:47:40 ID:Uek9CWMT
乙です!

その…ご存知でしょうがレオはL77星人でして…。
まぁ無関係ではないからできても問題ないだろうけど。
30名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 00:55:34 ID:eVISEJ4S
はっきり敵やってないワルドは珍しいなあ、乙です

>>29
俺はそれが分かってるからレオもしていいよね?って言ってるように見える
31名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 01:31:46 ID:6VFKc5OM
gj

グリッター化、やりたきゃどうぞ。
俺はしない方がいいけど。
32名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 02:40:43 ID:oMMJa1eH
・・・これで、ゴモラの人こと眠りの地龍が復活したら面白いのですが
33名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 10:09:19 ID:5zEyfMg0
7時間もカキコが止まるのも珍しい?
34名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 10:27:31 ID:ulzLrmrn
そんなに規制ひどいのか?
35名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 10:29:25 ID:5kIF62/B
>>33
君の活躍に期待している!
3633:2008/10/29(水) 11:10:51 ID:5zEyfMg0
>34
みんな帰省してるのかな?

>35
こんな俺に、何を期待してるんだw
37名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 11:13:06 ID:9vrpo29g
>>36
 | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
 |   次でボケて!!!   |
 |________|
    ∧∧ ||
    ( ゚д゚)||
    / づΦ
38THE GUN OF ZERO 16(0/5) ◆2OPVuXHphE :2008/10/29(水) 11:17:42 ID:Ynwx7QU0
>>33じゃなくて俺ですけど……大丈夫かな?

黒くぅうぅねぇるぅ〜時空のぉなぁみにぃ〜揺ぅらぁれながぁらぁ〜

スパロボって、銀河英雄伝説に追いつかんとするぐらいの勢いで、凄まじい質・量の声優が使われてる作品なんですよね。
で、やっぱりゼロ魔にも何名か同じ声優のキャラが居るんですね。しかもそのうちの一人である『彼女』はおあつらえ向きな技量持ち。これはむしろ、スパロボとのクロスを書く上で、やるなという方が無理!
声ネタが嫌いな方はNG推奨です。いや、今までもありましたけど、今回は話のメインに置いてるんで……

なお、前回の投下後にレスで突っ込みのあったR−1のパイロット云々ですが、アレはあくまで『久保にとって思いつくパイロットがリュウセイ以外居ない』という意味です。
数多の平行世界を彷徨ってる、なんて言ってますけど、所詮クォヴレーが行った世界なんて無限の可能性を内包する世界間の分岐に比べれば微々たる物です。
第一、この久保はゼロ魔『オリジナル』の世界に行ったことがないんですから。
まぁ、もし行ったことがあって、虚無の魔法に関する知識があれば、もう少しルイズの力にももっと気をつけていたんでしょうけどねぇ……

それでは、他にいなければ参ります。
39THE GUN OF ZERO 16(1/5) ◆2OPVuXHphE :2008/10/29(水) 11:18:50 ID:Ynwx7QU0
 最近、ルイズはゼロのルイズとは呼ばれなくなった。
 先日のアンリエッタからの任務を受けた際、ディス・アストラナガンがそこそこの数の人間に目撃されていたのが、その原因だ。
 しかも、あの時クォヴレーは外部スピーカーで話していたため、ロボットに『乗る』という概念のないハルケギニアの人々にとっては、
クォヴレーの声を目前の大悪魔が発していたということになり、悪魔=クォヴレーという図式が成立し、いつしかアストラナガンの姿がクォヴレーの本性である、という事になってしまった。
 故に、ルイズは今こう呼ばれている。『悪魔使いのルイズ』と。
 ハルケギニアに置いて悪魔という名前はシャレにならない呼び名である。普通に異端審問が開かれてしまいかねない。
(まぁ、それはいいのよ)
 自分は、あれが悪魔などではなく、自分の使い魔の操るゴーレムであることを知っているし、オールド・オスマンも知っているおかげできちんと教師陣にも説明は行き届き、大事には至っていない。
 そしてそもそも、ディス・アストラナガンを見た者が学院の一部の者でしかなかったため、ルイズの新しい二つ名も、噂以上のものではなかった。何しろ、クォヴレーを見る限りでは単なる気の利く平民以外の何物でもないのだから。
 ただ、件の使い魔が、最近、よく人を拾う。
 昨日、落っこちてきたこれまた巨大なゴーレムに乗っていた、猫二匹を使い魔にしている異国のメイジを皮切りに(ルイズは彼のことをメイジだと思っている。名乗った名前がミドルネームもある横文字なので尚のこと)、
今朝起きてみるとメイジの乗っていた白銀のゴーレムの隣に、トリコロールカラーのゴーレムが片膝を立てていた。
 で、そのゴーレムの主である異国の軍人は、今アルヴィーの食堂の厨房で皿を洗ったりしているらしい。
(何考えてんのかしら、あいつ)
 今後、こうしてどんどんゴーレムとその主が増えていくのかしら、と思い、呆れたように昼食時の今、給仕役で立ち回るクォヴレーを目で追っていた。

「ほー、上手いモンじゃないか」
「へへっ、まぁね」
 前菜のサラダを準備する作業が遅れていたため、皿洗いからかり出されたリュウセイの意外な包丁捌きの良さに、マルトーが感心した目を向けていた。
「お袋が病弱で、入院がちだったから、軍にはいるまでは結構自炊してたんすよ。可愛いくて料理上手な幼なじみでも居りゃ、少しは変わってたのかも知れませんけどね」
 ため息をつきながら、タンタンタンタンとリズム良く包丁がまな板を叩く。
 なお、幼なじみが居れば居たで確かに料理は出来るが、妙に健康マニアなので、お勧め出来ない。
「苦労してきたんだなぁ、お前も」
 うんうんとマルトーが頷く。
 そこへ、料理を運ぶトレイをとりにクォヴレーが厨房に入ってきた。
「おう!クォヴレー、このリュウセイって奴は、なかなか使えるな!」
「そうか、それは良かった」
「へへ、賽の目、短冊、何でもござれ、だぜ!」
 リュウセイをここに連れてきたのはクォヴレーだった。
 正直、厨房の手伝いなんてこのリュウセイは嫌がるかも知れないと思っていたのだが
『ふっふっふ、「取り捨てる」魔法学院厨房手伝いとは、世を忍ぶ仮の姿!その正体は、地球防衛軍極東支部基地所属のリュウセイ・ダテ少尉だ!』
『一応、「トリステイン」学院だ、と言っておく』
 妙にノリノリなリュウセイによってあっさりと快諾。
 マルトーも、クォヴレーの紹介ならばと使い始めたのだった。
「あ、クォヴレーさん、これお願いしますね」
40THE GUN OF ZERO 16(2/5) ◆2OPVuXHphE :2008/10/29(水) 11:19:55 ID:Ynwx7QU0
 盛りつけられた皿をトレイに乗せていたシエスタが、前菜の皿がのったトレイを差し出す。
「わかった」
「それにしても、おかしな噂が広がってますね。クォヴレーさんが悪魔だとかっていう」
 プッとリュウセイが吹き出した。
「こんないい人が、悪魔の筈無いじゃないですか」
「ああ、全くだな。一体何だってこんな話が出てきたんだか」
 マルトーが大仰に頷く。
「フフフ……判らないぞ?この姿が悪魔の擬態だったらどうする?」
 にんまりと笑いながら、シエスタに問いかける。
「えっと、その場合はつまり、本当にクォヴレーさんが悪魔なんですよね。でも、やっぱりクォヴレーさんみたいな優しい悪魔さんだったら、平気です」
「ははは!全くだな!」
「ありがとう、シエスタ、マルトー……では、出してくる」
 トレイを持って、クォヴレーが食堂の方に向かった。

 さて、食事が進む食堂の一角では、甘ったるい空気が流れていた。発生源は、ギーシュとモンモランシーである。
 なんだかよくわからないうちにこの二人、もと鞘になっていたらしい。
「はい、ギーシュ、これ!」
「おや?モンモランシー、なんだい?これは」
「この間、東方産の珍しい材料が届いたから、新しいポーションを作ってみたのよ。とっても体に良い、『健康』になるポーションよ!」
 給仕をしていたクォヴレーがピタ、と動きを止め、ギギギギギと錆びたブリキの玩具のようにゆっくりと首を回転させる。
「おい、どうしたんだよ給仕!早くその皿を……ヒッ!?」
 いつまで経っても料理がトレイから下ろされないことに腹を立てたマリコルヌが文句を言おうとするが、その給仕が噂の悪魔だったことで身をちぢこませる。
 だが、クォヴレーはマリコルヌの方を見ていなかった。
(『健康』……だと……!?)
 あの声で『健康』なんとおぞましい響きか。冷や汗が流れる。
「おお、モンモランシー、僕のことを気遣ってくれているんだね?ありがたく戴くよ」
 大仰に喜んでみせながらポーションの蓋を取る。
「……個性的な匂いだね」
 飲む直前になって気づくギーシュ。色は、まぁポーションとしては特別珍しい訳ではない。何かつぶつぶが浮いているが。
「その、あんまり印象は良くないかも知れないけど、効果は十分なはずよ」
 あの液体、間違いない。どうも、彼女は自分がここに来たために要らん因子を取り込んでしまった気がする。
「そうかい?それじゃあ……」
「待て!」
 配膳用のトレイも放り出し、ギーシュとモンモランシーの方を向くクォヴレー。
 だが、既にポーションの中身はギーシュの口の中に流れ込んでいて……。
「やめろぉぉぉぉぉ!」
 力の限りに叫びながら通路を走るクォヴレーの目の前で、
「げふっ……」
 椅子ごとギーシュの体が倒れ込む。
(……遅かったか……)
 一瞬の間の後、悲鳴が食堂に響き渡る。
「きゃあああああああああああ!?」
「ギーシュ!?」
「どうしたんだ!」
「ギーシュが、殺された!」
「ギーシュが、『香水』のモンモランシーに殺された!」
「浮気性に耐えられなかったんだ!」
41名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 11:19:56 ID:L+lCApIe
疎開…じゃなく、支援
42THE GUN OF ZERO 16(3/5) ◆2OPVuXHphE :2008/10/29(水) 11:21:12 ID:Ynwx7QU0
「ち、違う!違うわ!私は毒なんて……!」
「お前のポーションを飲んだ直後にこうなったんだぞ!?」
「他に誰がギーシュを殺せるって言うんだ!」
「何事です!?この騒ぎは!」
「ミセス・シュヴルーズ!モンモランシーが、モンモランシーが……!」
「ギーシュが殺されました!モンモランシーの毒で!」
「お……おお!ミス・モンモランシ!何という早まった事を……!確かに日頃の彼の行いは、あなたにとって耐えがたい物だったかも知れませんが……!」
「違う!違うんです!私じゃない!私じゃないっ!」
 もはや阿鼻叫喚の地獄絵図であった。
 そんな周りは無視して、しばらくギーシュの手首に指を当てたり、顔に手をかざしていたクォヴレーが、モンモランシーを見上げる。
「彼が飲んだものと同じ物はまだあるか?」
「え!?こ、これだけど……」
 突然の悪魔の使い魔からの問いに、慌てて同じポーションの入った瓶を差し出す。
 モンモランシーから受け取った小瓶の蓋を取って仰ぐように匂いを嗅ぐ。
(やはり……)
 間違いない。先程の冷や汗が止まらない。かつての苦い記憶が蘇る。
「これが原因だ」
「そ、そんな……」
 力なく倒れ込むモンモランシー。
「く、クォヴレー、あんた知ってるの!?」
「この症状には覚えがある」
 野次馬に混じっていたルイズの問いかけに答える。
「材料は――セイヨウサンザシ、ホンオニク、ローヤルゼリー、ナルコユリ、ドクダミ、ショウガ、ウナギの粉末、マグロの目玉、梅干し、セロリ、マソタの粉末、ムカデ、イオリとマムシ……違うか?」
 以前食通に聞いたレシピを諳んじる。
「そ、そうよ……東方から入った、体に良いものがあったから……!私……私、彼に元気でいて欲しいからって……!」
 うわーんとギーシュに縋り付いて泣くモンモランシー。
「早計だったな。体に良いからと言って、何でもかんでも混ぜれば良いというものではない」
「ごめんなさい!ごめんなさい!ギーシュ!私、私、知らなかったのよ!こんな……こんなことになるだなんて!」
 ふえーんとギーシュの体に顔を埋める。
「まぁ、効果だけは抜群だ。今後も精進して改善していけばいい」
 ぽん、と慰めるようにモンモランシーの肩に手を置きながら言うクォヴレーに、周りがどん引きになる。
――ルイズの使い魔が、モンモランシーを唆している……っ!
――あ、あの毒でもっと殺していけって事か!?
――や、やっぱり、あいつは悪魔だっ!
 周囲の言葉に慌ててルイズが声をかける。最も彼女もあまりの事態に引き気味だが。
「ちょ、ちょっとクォヴレー!物には言い様ってものが……」
「言い様?何がだ」
「も、モンモランシは、その……意図的じゃなくても恋人を殺しちゃったのよ?その原因になった毒作りを勧めるなんて……どうかと思うわ……」
 泣き続けるモンモランシーを見ながら次第に小さくなる声で訴える。
 だが、ルイズの言葉に立ち上がりながらクォヴレーは首をかしげる。
「毒?何を言っている。俺はただ、この健康ドリンク……もといポーションを作るのを頑張れと言っただけだ」
「健康になるポーションで人が死ぬかぁぁぁっ!」
「死ぬはずが無いだろう……ルイズ、何を勘違いしているんだ?ギーシュ・ド・グラモンは死んでいない。ただ気絶しているだけだ」
「……は?」
 クォヴレーの言葉にルイズだけでなく、その場にいる全員が固まる。無論、泣きくれているモンモランシーも。
「瓶を一目見た時から想像は出来ていた。俺はこれと同じ組成の飲料を飲んだことがあるからな。これはある特定の人物がこの原料で飲料を作成することで、気絶するほど不味い代わりに、間違いなく飲んだ人物を健康にしてくれる飲料だ」
43THE GUN OF ZERO 16(4/5) ◆2OPVuXHphE :2008/10/29(水) 11:22:10 ID:Ynwx7QU0
 すっとポーションを掲げてみせるクォヴレー。
「不思議なのは、俺が全く同じ手順で調合しても、ここまでの不味さにはならず、代わりに効果もそれほどでもないものしか出来ない点だが……」
 はてと首をかしげ、一体どういう仕組みだ。とぼやく。
「生き……てる……?」
 おそるおそるギーシュの顔に手をかざし、風圧を感じるモンモランシー。
「よ……良かったぁぁぁ〜」
 今度は安堵から泣き出してしまう。
 周りからも一気に緊張が抜け、人騒がせな、結局のろけかよ、といった文句が出始めるが、当事者は聞こえていなかった。

 騒ぎが終息して、食堂での配膳も終えたところで、クォヴレーはオートミールの乗ったトレイを渡された。
「何だ?」
「ああ、お前が昨日拾ったメイジ様さ。大分弱ってるらしくってな。さっきもってった料理は、結局はいちまったらしい」
 まったく、せっかくの料理を無駄にしやがって……と悪態を付くマルトーに、一応彼には言っておくべきかな、とクォヴレーは声をかける。
「マルトー、あいつはメイジじゃない」
「なに?だが、猫の使い魔が居たって聞いたぞ?」
「少々特殊な経緯でな。あいつの居たところでは、メイジでなくても使い魔を持ちうるんだ。ああいったゴーレムの操作などで補佐するためのな」
 サイバスターはマルトーも見ている。ふーんと唸って、マルトーは頭を掻く。
「我等が銃の居たところは変わってるなぁ。貴族様が料理を振る舞うわ、メイジじゃなくても使い魔を持つわ……」
 厳密に言えばマサキとは少し違うのだが、まぁ、ややこしくなるだけなので口にしない。
「異文化交流とはそういうものだ。他から見れば奇異に映ったりもする」
 それだけ言い残し、厨房から出る。その背に、マルトーからの昼飯を用意しておく旨を聞き、頭だけ半分振り返って頷き返した。

 やってきた医務室には、担当の水メイジが見あたらなかった。食事中なのかも知れない。
 医務室でベッドに横になっているマサキの顔は、やはり真っ青だ。一度吐いたことで余計に精神的にきているらしい。
「食事だ。マサキ」
 クォヴレーは、結局マサキのことを地上名で呼んでいる。
 昨日はラングラン名を名乗られたことで一瞬驚いたが、『マサキと言うのではないのか?』と尋ねると『そっちの名前の方を知ってんのか。こりゃいよいよホントに俺のこと知ってるんだな』と驚いた顔をして、
好きな方で呼んで構わないと言われたので、呼び慣れたこちらの名前で呼んでいる。
「……お?クォヴレーか……わりぃな。手間かけさせちまって」
 上半身だけを起こす。
「二食も病人食だったから、少しはまともなモンが喰いたいって思ったんだけど、ダメだ。まだ体が本調子じゃ無いらしい」
「あったり前よ!一日絶食の所でサイフラッシュにゃんて使ったんだから、体が変になってもおかしくにゃいわ!」
 マサキの言葉に、ベッドの上でクロが怒ったように言う。
「悪かったなぁ」
「悪いわよ!」
 クォヴレーの差し出すトレイを受け取りながらふてくされたように言うマサキに、追い打ちをかけるクロ。
「ちっ……」
 悔しそうに舌打ちするマサキを見て、ふむ、と首をひねりながらチョッキのポケットに手を突っ込む。先程の騒ぎのなか、返しそびれたポーションの瓶があった。
44THE GUN OF ZERO 16(5/5) ◆2OPVuXHphE :2008/10/29(水) 11:23:42 ID:Ynwx7QU0
「ん?にゃんだそれ?」
 シロが見上げながら尋ねる。
「……良ければこれを飲むか?」
「何だ?胃腸薬か何かか?」
 差し出された瓶を受け取りながら尋ねる。
「健康ドリンクだ」
「健康ドリンクぅ?」
 変な顔をして尋ね返すマサキ。
「そうだ。飲めば滋養強壮、自律神経の回復、体調の改善などが起こる」
「どんなスーパードリンクだそりゃ」
「ただ……」
 神妙な面持ちで口を開く。
「味の方が全く考慮されていないため、気絶するほど不味い」
「へっ、何バカなこと言ってやがる。不味いっつったって、気絶するようなことがある訳ねえじゃねぇか」
 ささっと瓶の蓋を開ける。
「ま、良薬口に苦しってな。多少の不味さは覚悟の上だ。ありがたく戴くぜ」
 夕方頃。目を覚ましたマサキは、どっかの破壊工作員のような口調でこう言った。
「死ぬほど不味いぞ」

以上です。
ええ。単なるギャグ回でした。一応マサキにとっとと元気になって欲しかったってのもあるんですけど。
それと現状の確認ですね。マサキとリュウセイの扱いだとか。
45名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 11:27:08 ID:3oDtuE48
乙でしたー!
クスハ汁の脅威、異世界でも拡大中……ガクブルww
46名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 11:35:41 ID:T/0O5y6F
お疲れ様です
ああ、そっか 「新」でのリュウセイには幼馴染いなかったのだな
しかし・・・・・・・おそるべしクスハ汁
47名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 11:43:20 ID:zrfMzTlo
クォヴレーの方、乙でした。
「死ぬほど不味いぞ」――トロワを爆笑させたヒイロの台詞を思い出しますな。
48名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 12:36:13 ID:5zEyfMg0
GJです
寒くなったスレの流れがもどりました



まあ、寒くしたのは俺なんですけどね
49名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 14:07:44 ID:Y8FrfJmr
投下乙です。
クスハ汁の威力は異世界でも抜群だなw
50名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 14:33:27 ID:f7Z3/V0a
久保の人乙
あんたの作品、俺はすでに一話から最新まで4回ぐらい読み返してる。
がんばってくれい
51名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 14:54:14 ID:gzx+zG6w
久保さん乙。
この場合、「クスハ汁」ではなく「モン汁」あるいは「モンモン汁」という名称になるのかな。
52名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 15:02:59 ID:FKWG0VWN
そのネーミングはさすがにヤバイ。いろいろと。
53名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 15:09:23 ID:T/0O5y6F
>>51
モンモン汁・・・・もんもんしる・・・・もんもーん!
ど、どどどどどどうかモンモランシーさま!
この愚かで哀れでブザマなブタたるマリコルヌめにモンモランシーさまのお汁をお恵みくださぁい!

などという幻影が見えた・・・・・・・・・
54サイダー&ゼロ:2008/10/29(水) 15:10:11 ID:L+lCApIe
予約が無ければ、10分後に投下します。
55サイダー&ゼロ 第2話:2008/10/29(水) 15:20:07 ID:L+lCApIe
時刻は夜。ここはルイズの部屋。
主である、ルイズは不機嫌な顔をしながらテーブルに肘を付きパンをかじっている。
今日ここに来た、ダ・サイダーとヘビのメタコは月を眺めていた。
「アンタ…何時までそうしてるつもりよ」
「ここは、月が2つか……」
「当たり前でしょ!月は二つなの!」
ルイズにとって、当たり前の答えだ。だが、ダ・サイダーにとって違った。
「少しは、理解をしたと思えば…ハァ…この程度か…」
ルイズは嫌な予感がした。
「この俺様の美しさを彩るのに、たった2つだけとはなぁ…」
「そうジャン、そうジャン。月の奴バカジャン」
嫌な予感は当たった。
「よし!俺様を華麗に彩る月を作りに行くぞ!」
「行くジャン、行くジャン!」
「ちょ!ちょっと!待ちなさいよ!」
召喚した時あれだけの人数の前で恥をかかされたのだ、これ以上は絶対に許さない。
そんな思いが、ルイズを動かした。
「なに!するつもりよ!」
「ん?月を作りに行くんだが…何か?」
ダ・サイダーの意味不明な回答にルイズが怒りだす。
「どうやって!そんなの出きるわけ無いでしょ!」
「いやできる。これを使ってな…メタコ!出せ!」
56サイダー&ゼロ 第2話:2008/10/29(水) 15:21:18 ID:L+lCApIe
ダ・サイダーがメタコに命じて出させた物は、紙とハサミと糸だった。
「これで、月を最低8個作る…手伝うか?」
「誰がそんなもん手伝うか―――!!!」
ルイズのキックがダ・サイダーの横腹に決まる。
「アンタねぇ…いきなりここに来たのよ!普通だったら『ここ何所ですか?』とか、
ご飯も食べてないんだから『ご飯を下さい』とか言うでしょ!」
しばしの沈黙…そして、ダ・サイダーは、真面目な顔で言う。
「お前…『パン』ばかり食べていて、お腹『パン』『パン』だろ?」
ダ・サイダーの禁断の力が発揮された。
ルイズの部屋が凍りつく。
ダ・サイダーは素早くマシンガンを取り出し、天井へ向け乱射する。
「笑えーーーーー!!!!!!」
「きゃーーーーー!!!!!!」
頭を抱え丸まるルイズ。騒動を聞きつけ、やってくる他の生徒達。
「な…何だ?」
「こ…これは?何の騒ぎだ!!」
「と、とにかくアイツを何とかするぞ!!」
1時間後………ルイズとダ・サイダーは、コルベールに説教を受け、ようやく騒動が収まった。
「ったく、何で私まで説教を受けなきゃいけないの?元はといえば、アンタが悪いんだから…」
「あのハゲ、理解に苦しむな。この俺様に説教とは一体何を考えている…」
「アイツ、バカだからツルッパゲになったジャン」
ただでさえ不機嫌なルイズは、ますます不機嫌になる。
「ア…アンタが悪いのよ!理解はしているわよね!」
「何のことを言っているんだお前は?」
57サイダー&ゼロ 第2話:2008/10/29(水) 15:21:56 ID:L+lCApIe
当たり前の様に答えるダ・サイダーにルイズは、何も言えなかった。
(コイツ…ここまでバカなの?どうやったらここまでバカになれるのよ??)
「アンタは私の使い魔よ、わかってるの!」
「奴隷だろ…で、どうした?」
カクッと肩を落とすルイズ。
「人聞きの悪い事言わないでよ!わかった?」
「だが、やっている事は同じだろ?」
こんな、時に限って正論を言うダ・サイダー。
ダ・サイダーはアララ王国の親衛隊長なので、以外とこんな事は詳しい。
「で…奴隷となっている以上何かするのだろう?」
ダ・サイダーの意外な一言。
「えっと…まずね…使い魔は主人の目となり耳となる能力が与えられるの」
「そうか…だが、俺様は、何にも変わらないぞ?もっと頑張れ!」
「逆よーーー!!!」
怒るルイズを優しく見つめるダ・サイダー。
「ギャグが聞きたいのか…仕方が無い奴だな…」
「やめんか―――!!!」
58サイダー&ゼロ 第2話:2008/10/29(水) 15:22:59 ID:L+lCApIe
横腹に2回目のキックを放ち、尚も話を続ける。
「主人の望む物を持ってくるのよ、たとえば薬とか」
「グゥ…店に行けば、売っているだろ?…ハァ…ハァ」
「売ってないし…仮に売っていても、高いでしょ?」
「悪いが…勇者として、店を襲うという行為はできないな…」
「そ…そんな事…望んでな―――い!!!」
3回目のキック。
「アンタは、弱し、頭悪いから雑務よ。わかった!!」
「ダーリンに何て事するジャン、この『ヒス板女』お前が雑務やるジャン!」
ルイズの視線が、鋭くそして…ゆっくりとメタコの方に行く。
「ヒィーーー!!!」
メタコはダ・サイダーの肩に有るパットの中に隠れた。
「明日、起こしなさい!それと、これ洗濯しときなさい!わかったわね!!」
そして、ルイズはサッサと着替え、明かりを消し、眠りに着こうとした。
ダ・サイダーは夜空に浮かぶ双月を見上げていた。
いつも一緒だった一人の女性の事を思い浮かべながら…
「レスカ…お前………大丈夫だよな?お前なら……きっと」
そんなダ・サイダーの独り言をルイズが聞いていた。
(レスカ??誰かしら?…無理して、明るく振る舞っていたのコイツ?明日詳しく聞いてみよう…)
そんな思いでルイズは、眠りに着いた…
そしてダ・サイダーもまた、眠りに着いた。
明日、ルイズをどうやって起こすかと考えながら…
59サイダー&ゼロ :2008/10/29(水) 15:24:03 ID:L+lCApIe
投下終了です。
60名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 15:25:33 ID:T/0O5y6F
さすがは勇者サイダーの血を引く男だな、天晴れ

な訳で支援
そういえばクイーンサイダロンはメンテも不要だしセイントボム無い以外は
あらゆる能力がキングスカッシャーを上回ってるんだよな
61名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 15:29:02 ID:T/0O5y6F
ありゃ?間に合わなかったか
しかしマシンガンやエレキギターなんか
コルベール興味持ちそうなんだがな

とってもダ・サイダーらしい展開でした
次も期待するのです
62名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 16:07:18 ID:0rj7eKk0
何故かこういう時のマシンガンは弾切れしない謎。
しかし実にダ・サイダー、実にあかほりですな。主が怒りすぎてぶっ倒れる日も近いか?
63名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 16:15:44 ID:cXs1JAWl
ダ・サイダー乙です。

ギャグだけでもないんだよな、マシンガンは。
VS騎士でギターマシンガン抱えて突撃したことあったから。すぐにふっとばされたけど。
64ベルセルク・ゼロ:2008/10/29(水) 17:12:59 ID:9SV2+g9Q
よっしゃあ、五分後から投下します
65名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 17:14:00 ID:cy03EtDx
支援
66ベルセルク・ゼロ22:2008/10/29(水) 17:16:38 ID:9SV2+g9Q
「ラ・ヴァリエールの娘を渡してもらおうか」
 ワルド、ルイズ、そしてガッツの前に立ち塞がった仮面の男。低くしわがれたその声は、幾人もの人間が同時に喋っているようで、それでいて妙にざらついた奇妙なものだった。
 ワルドはルイズを庇うように一歩先に出て、杖を抜き、構える。
「こちらの素性を知った上で付け狙うか。何者だ、貴様?」
 もちろん男は黙して語らない。ワルドはやれやれと首を振った。
「まあ何者にしろ…そんな立派な杖を持っているんだ。君も貴族なのだろう? 貴族ならば女性の誘い方くらい心得たまえ」
「どけ」
 短く一言だけ発して、男は地を蹴り、ワルドに踊りかかった。
「速いな―――だがッ!!」
 まるで風のように迫り来る男にワルドは杖を合わせる。
 しかし、そこで仮面の男は突然一歩後ろに跳び退ってワルドの一撃をやり過ごした。
「ヌゥッ!?」
「きゃあ!!」
 ワルドの杖をかわした男は、その背に羽根があるかのように大きく跳躍し、ワルドの頭上を跳び越すとルイズに手を伸ばした。思わずルイズは悲鳴を上げてしゃがみこむ。
「させるか!!」
 即座にワルドが杖を切り返し、男の手を払った。ワルドの杖が迫る刹那、男はチィ、と舌を鳴らし伸ばした手を引っ込める。
 そのまま男はワルドとルイズより少し後ろにいたガッツの頭上をも飛び越え、着地した。
 そこに―――無防備な男の背めがけて、ガッツのドラゴンころしが振り下ろされた。
 しかし男は『まるで後ろに目がついているかのように』、ガッツの方を振り返りもせず前方に飛び、ドラゴンころしをかわした。ドラゴンころしが地面を叩き、土煙をあげる。
 その場にいる者達の立ち位置は反転した。仮面の男の前にガッツが立ち塞がり、ガッツの後ろにワルドとルイズが位置している。
「先に行け。すぐに追いつく」
 ガッツは仮面の男から目を離さずに、背中越しにルイズ達に声をかけた。
 思わぬガッツの提案に、ルイズは驚いて首を振る。
「駄目よそんなの!! 無茶だわ!!」
「そうだ、その男は強い。君一人では……」
 ワルドもルイズに追随した。ガッツは視線を後ろに向け、にやりとワルドに笑ってみせた。
「朝の決闘はこういう時のための判断材料じゃねえのか? 『隊長殿』よ」
 ワルドは口ごもった。ルイズはそれでも納得がいかないらしく、その場から動こうとしない。
「行けッ!!」
 男の方に向き直ってガッツが声を張り上げた。
「やむをえん! さあ、ルイズ!!」
「あ、ちょっとワルド! ……ガッツ!!」
 ワルドが強引にルイズの手を取って駆け出した。巨大な樹木、『桟橋』を目指してワルドとルイズの背中が小さくなっていく。
 仮面の男は二人を追う様子を見せるわけでもなく、ゆっくりとガッツと対峙した。
「くくく……一人で俺の相手をするか。よくよく舐められたものだ」
 仮面の奥からくつくつと笑い声が響く。
「まあよい。ここは貴様の命をもらえれば、それでよい。ヴァリエールの娘を手に入れるチャンスはこれからいくらでもある。そうとも、『いくらでもある』のだ」
 愉快そうに男は笑う。そんな男の様子にガッツは眉をひそめた。ふぅ、とため息をついてドラゴンころしを握りなおし、男に剣先を向け、構える。
「てめえらがどんな理由でルイズを狙ってんのかは知らねえが……あいにく、あいつに目をつけたのはこっちが先なんだ。ほいほい渡すわけにゃあいかねえな」
 男もまた、杖の切っ先をガッツに向け、構えた。
「図に乗るな、愚か者め。どれほど身体を鍛え上げようと、どれほど技を磨き上げようと、所詮貴様は杖を持たぬ平民に過ぎぬことを教えてやる」
67名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 17:18:13 ID:gSPRMG0P
支援
68ベルセルク・ゼロ22:2008/10/29(水) 17:18:35 ID:9SV2+g9Q
 そう言うと男は杖を振り呪文を紡ぎ始めた。
 即座にガッツは距離を詰め、ドラゴンころしを振るう。風を切り裂き、振るわれた鉄塊は、しかし男の身体には当たらない。
 凄まじい速度で二度、三度と振るわれた鉄塊ではあったが、男もまた常人離れした体捌きでことごとくそれらをかわしていく。
 胴を払いに来た一撃目は身を沈めてかわし、追撃してきた二撃目は跳躍してやり過ごし、三撃目が振るわれるころには男は大きく後ろに跳び退り、ガッツとの距離をとっていた。
「杖持たぬ者には決して至れぬ境地を知れ。見せてやる。これがメイジの持つ真の力だ」
 男が杖を振る。同時に、その身体が光を放つ。
「『ライトニング・クラウド』」
 紡がれた言霊。瞬間、男の身体がさらに強く輝いた。その光はそのまま稲妻と化し、まさしく光の速度でガッツに迫る。
 轟音と共に光速で迫り来る一撃。その一撃をかわす術をガッツは持たなかった。
「がああああああああああああああ!!!!!!!!」
 バリバリと電気が弾ける音が響く。直撃だ。身体を駆け巡る強烈な電流に、ガッツは耐え切れず声を上げた。電流が熱を放ちガッツの身体を焼く。
 魔法で作られた擬似的なものとはいえ、雷鳴轟く稲妻をその身に受けて無事でいられる道理は無い。
 ガッツはがくりと膝を着き、その手を離れたドラゴンころしががらんと音をたてて地面に転がった。
 巨木の根元に辿り着いたワルドとルイズだったが、突如背後から照らされた光に、何事かと後ろを振り返る。
 ルイズの目に、ガッツが残って戦っているであろう辺りから強い光が放たれているのが映った。
 遠目からではどんな魔法なのかは確認できない。だが、鮮烈なその光は行使された魔法がちゃちなドット・スペルなどではないことを予感させた。
「ガッツーーーッ!!!!」
「ルイズ!!」
 無意識のうちに己が使い魔の名を叫び、駆け戻ろうとしたルイズの肩をワルドは押さえつける。
「離して! ワルド!!」
「落ち着くんだルイズ!! 今君が戻って何になる!!」
「でも……でも………!!」
「君は彼の主人なのだろう!? 君が彼のことを信じなくてどうするんだ!!」
 ルイズはぐっと唇をかんだ。再び後方に視線を戻す。
 放たれていた光は既に消え、月の光だけでは遠くの景色は薄暗く翳り、ガッツの様子を確認することは出来ない。
 ルイズはぐい、と目に溜まった涙を拭うと前に向き直った。
「分かったわ……行きましょうワルド」
 ルイズの言葉にワルドは頷き、二人は『桟橋』と呼ばれる巨木、その幹の中へ足を踏み入れた。
 『桟橋』と呼ばれた巨木は根元を中からくり抜かれており、空洞になっていた。木製の階段がいくつもあり、それぞれに鉄のプレートが備え付けられている。プレートには文字が書いてあり、これが案内板の役割を果たしているようだった。
 ワルドに手を引かれ、ルイズは階段を駆け上がる。
(すぐに追いつくって……そう言ったわよね、ガッツ……!!)
 ざわつく心を押さえつけ、ルイズは駆ける。
 後ろを振り返ることはしなかった。

69ベルセルク・ゼロ22:2008/10/29(水) 17:20:16 ID:9SV2+g9Q
 肉がこげる嫌な音を立て、ガッツの体が前のめりに傾ぐ。今にも途切れそうな意識の中、ガッツは咄嗟に手を伸ばし、倒れ行く身体を支えた。
 仮面の男はそんなガッツを見て少し驚いたようだった。
「まさか『ライトニング・クラウド』の直撃を受けてまだ生きている……それどころか、意識を保っているとはな。成程、素晴らしくタフな男らしいな、貴様は。だが……」
 男は再び杖を構える。
「我が渾身の魔術を受けて生きていられてはいささか不愉快だ。生存は許さぬ。完全なる止めを刺してやる」
 杖を振り、男は再び呪文の詠唱に入った。紡ぐ術式は先程と同じ『ライトニング・クラウド』。
 ガッツはドラゴンころしを拾い上げると、痛む体を引きずり、立ち上がる。
「無駄だ。足掻くな。その身体ではその剣を満足に振ることは出来まい。往生際を見極めよ。下手な抵抗は見苦しいだけだ」
 男の言うとおり、火傷で引きつった筋肉はうまく言うことを聞いてくれそうにない。
 男の紡ぐ魔法はもうすぐに完成する。次に電撃を身に浴びればおそらく即死。
 そんな絶望的な状況の中で、ガッツは笑った。
「あいにく……俺は往生際が『極めて』悪いもんでね」
「ふん、強がりを……ぐぅッ!!?」
 突然、仮面の男の顔面を衝撃が襲った。ばがぁん、と音を立て、男の顔を覆っていた仮面、その右半分が砕け散る。
「な…に……!?」
 男は咄嗟に己の顔を手で隠した。指の隙間から、地面に散らばる仮面の欠片と共に、小さな一本のナイフが転がっているのが目に入る。
 ガッツはいつの間にかドラゴンころしを手放していた。
「投げナイフ……貴様、こんなものまで……!!」
「なんだ、顔を見られちゃまずいのか?」
 続けざまにガッツはナイフを放つ。男は右手で顔を覆ったまま左手に持った杖で迫り来るナイフを打ち払った。
 人が仮面を被る理由は様々だ。醜い顔を隠すため。あるいは、その正体を隠すため。
 男が仮面を被って現れた理由を、ガッツは後者だと踏んだ。男の声は明らかに魔法で人為的に変えられたものだったからだ。
 そして、その予想は的中していた。
「くっ……!!」
 このまま戦闘するのは圧倒的不利だと知りながら、男は顔を隠す右手を離すことが出来ない。
 男には絶対に正体を知られるわけにはいかない理由があった。
(万が一…! 万が一にでもこの男とルイズがリンクしていたとしたら……!!)
 その可能性は低い、と男自身感じてはいた。
 だが、まさに『万が一』なのだ。万に一つでも可能性があるのなら、目の前の黒い剣士に己の顔を見られる訳にはいかない。
 自分の正体が先を行くルイズ・フランソワーズに伝わってしまっては男の抱える計画は破綻する。
 かといって、目の前の黒い剣士は既に手負いであるとはいえ片手が塞がって勝てる相手ではない。
 仮面の男は、そのことを『よく』知っていた。
(おのれ……! ここは退く……覚えていろ、黒い剣士……!!)
 男は身を翻すと、あっという間にガッツの前から姿を消した。
 ガッツは油断無く周囲に目を走らせる。
 完全に男の気配が去ったことを確認すると、ガッツはドラゴンころしを拾い上げ、背中に仕舞った。
 大きく身体を動かすと、火傷で引き攣った皮膚が引っ張られ、激痛が走る。
「ちっ……魔法ってのは、つくづく厄介なもんだぜ」
 想像以上に仮面の男の『ライトニング・クラウド』は強烈だった。ギーシュや『土くれ』のフーケとの戦いを通じて、少しメイジというものを甘く見ていたのかもしれない。
「さて…大分遅れちまったな。急がねえと」
 ガッツは腰元の鞄を開けた。
「おい、パック……」
 果たしてそこには『ライトニング・クラウド』の余波を受けていい感じに焼き上がった栗妖精が転がっていた。
「おい……おい!」
 ガッツが声を上げてもパックは泡を吹くばかりで返事をしない。
「こら、てめえがいねえとルイズ達の居場所がわかんねえだろが! 起きろ、オイ!!」
 むんずとパックを掴み上げ、目の前で怒鳴る。パックは白目を向いたままカクカクとその首を揺らした。
 パックの復活にはまだまだ時間がかかりそうだった。

70ベルセルク・ゼロ22:2008/10/29(水) 17:23:31 ID:9SV2+g9Q
 『女神の杵』亭に残り、敵の足止めをしていたギーシュ、キュルケ、タバサは終わり無く次々と押し入ってくる傭兵たちに、遂に悲鳴を上げ始めた。
「もう、ホントにキリがないわ!! 敵は一体何人引き連れてきてるのよ!!」
 キュルケは叫びながら杖を振るい、一番近くに居た敵を火達磨にした。もう随分敵を打ちのめしたつもりでいたが、店内に転がっているのはたったの五人だ。
 これまでに襲ってきた野盗の類とは違い、鍛えられた傭兵たちは、一度や二度魔法を食らわせただけでは斃れなかった。
「このままではごり押しされる」
 タバサが冷静に言った。
「さて、何か手を考えないといけないわね」
 キュルケは面倒くさそうに髪をかきあげる。
「ど、どどど、どうする? どうしよう? どーしたらいい!?」
 あっという間にワルキューレを一体ぼろぼろにされたギーシュは落ち着きが無い。
「う〜ん、確か厨房には油の入った鍋があるはずよね……おつまみに揚げ物が出ていたし……」
 キュルケは顎に手をあててぶつぶつと呟き始めた。
「何をそんなに落ち着いてるのかね君は! ああ、もうほら! 敵がすぐそこまで迫ってきてるのだよ!?」
「うるさいわね!! 今打開策練ってんだからちょっとくらい時間を稼ぎなさい!!」
 しかしキュルケが魔法を止めてしまっては、押し寄せる庸兵たちを完全に足止めすることは不可能だった。
 タバサが懸命に魔法をぶつけているが、討ちもらした傭兵がどんどん迫ってくる。

 ―――ドクン。

 迫り来る傭兵の姿に、ギーシュの中で昨日の嫌な記憶が甦る。
 『鉄屑』のグリズネフを相手に手も足も出なかった無様な自分。
 傍らでテーブルに身を隠すメリッサを見る。メリッサはその小さな肩を震わせ、襲い来る恐怖に健気に耐えている。

 ―――ドクン!

 その姿に、ギーシュの心臓が一際大きく音を立てた。
(何をやっているんだ僕は! このままじゃ昨日と何も変わらない! 何も守れない!! 成長しろ、キュルケに頼るな、お前がやるんだギーシュ・ド・グラモン!!!!)
 己が杖としている薔薇の造花を振り、ゴーレムを錬成する。

 脳裏に浮かぶのは憎き敵であったグリズネフの言葉。
『ゴーレムに立派な鎧も兜も必要ねえ。人を殺すにゃあ―――』

 鮮烈に思い出すのはドラゴンころしを振るうガッツの姿。
 こともなげに巨大な鉄塊を振り回し、敵を吹き飛ばしていく男の背中。

 完成したゴーレムには、鎧も兜もついていなかった。
 それどころか、顔に当たる部分にも全く造形が施されておらず、のっぺらぼうだ。
 人の形をしてはいるが、間接の部分は球体がはめ込まれている。
 そしてその人形の手には、巨大な剣が握られていた。
 ガッツの持つドラゴンころしよりは一回りも二回りも小さいが、それでもその刃渡りは160サントを悠に超えている。
 のっぺらぼうのゴーレムがその手に持つ大剣を振るい、最も近くまで来ていた傭兵を吹き飛ばした。
71ベルセルク・ゼロ22:2008/10/29(水) 17:26:14 ID:9SV2+g9Q
 キュルケとタバサは呆然として新たに現れたそのゴーレムを見つめている。
「ギーシュ…あんた、それ……」
 ギーシュは横倒しにしたテーブルの縁に立ち上がった。
「聞け! 傭兵共!!」
 狭い足場に器用に立ち、胸を張って叫ぶ。
 当然、いい的である。ギーシュ目掛けて矢が殺到した。
「おぎゃぎゃ!?」
「馬っ鹿ッ!!!!」
 キュルケとタバサが慌てて杖を振るい、魔法で矢を叩き落す。
「考えて行動しなさいよ馬鹿! ノータリン!!」
「愚物」
 目を吊り上げてキュルケはギーシュに罵声を浴びせる。
 タバサもポツリと中々に厳しい言葉を吐いた。
「ふ、ふぃ〜〜」
 ギーシュは安堵の息をついて、流れた汗を拭った。それから気を取り直して胸を張る。
「我が名はギーシュ!! ギーシュ・ド・グラモン!!」
 かつて、アルヴィーズの食堂で初めてガッツと対峙した時は、自分を大きく見せるために名乗った。
 今は、家名をその身に背負うために名乗る。
「君たちの相手は我がゴーレムが務めよう! さあ、踊れ!!」
 ギーシュの号令の下、ゴーレムが動き出す。
 たった一体のゴーレム。だが、それ故にギーシュの意識はその一体に集中する。
 いつものワルキューレを半ばオートで動かしているのとは異なる、ギーシュの意識の下での完全マニュアル操作。
 ギーシュがイメージするのは脳裏に焼きついて離れない、ガッツがドラゴンころしを振り回し、敵を屠っていくその姿。ギーシュの記憶にあるガッツの動きをなぞるように、のっぺらぼうのゴーレムが踊る。
「なんだこいつは!?」
「突いても死なねえ、くそ!!」
 傭兵たちから悲鳴が上がる。一つや二つの刃を受けても、ギーシュのゴーレムは止まらない。
 これが本来ゴーレムの持つ有用性、人間には有り得ないタフネスだ。結局、ギーシュのゴーレムはその身に7つの刃を受けてようやく沈黙した。
 のっぺらぼうのゴーレムががしゃりと音を立て崩れ落ちる。その頃には、8人の傭兵がゴーレムによって打ち倒されていた。
「手間ぁかけさせやがって……!」
 怒りを露わにして傭兵たちがにじり寄ってくる。
 しかし、対するギーシュはあくまで余裕の表情だった。
 ギーシュが薔薇の造花を振る。杖を離れた赤い花びらが舞い落ちる。舞い落ちた花びらは、その全てがのっぺらぼうのゴーレムと化した。
 その数、11体。
 簡略された造りの新たなゴーレムは、錬成する際の精神力の負担を大幅に軽減した。結果、ワルキューレの時は7体が限界であった錬成数は大きく増した。
「あまりに無様なこのゴーレム。勇壮な戦乙女の名を冠するにはふさわしくない。これはただの『操り人形<マリオネット>』。僕の意思でもって動くただの木偶人形だ」
 マリオネットと名付けられた11体のゴーレムがその手に握る大剣を一斉に構えた。
「まだ…やるかね?」
 ギーシュが杖を掲げると、マリオネット達は大剣を構えたままじりじりと動き出す。
「じょ、冗談じゃねえ……!」
 一人の傭兵が後ずさる。たった一体を相手にするのでさえこれだけの犠牲を出したのだ。
 今度はそれが11体も同時に襲ってくる。どれ程の被害を受けることになるかわかったものではない。
 一人が下がれば後は早かった。傭兵たちは口々に恨み言を吐きながら、次々に退却していった。
 最後の一人が去り、酒場に静寂が戻る。
「勝った……?」
 呆然とギーシュは呟いた。キュルケ、タバサ、そしてメリッサもテーブルから顔を出す。
「やった……やれた……やれたんだ……」
 ギーシュの胸のうちにこみ上げるものがある。昨日の敗北から鬱積していた気持ちが晴れやかになっていく。
 守れた。今度こそ、守ることが出来た。
「やったぁあああ!!!!!!!」
 堪えきれず、ギーシュは叫んだ。マリオネット達もギーシュの喜びを表すように踊り始めた。
 ギーシュの目の端に涙が滲む。メリッサは微笑みながらそんなギーシュを見つめていた。
72ベルセルク・ゼロ22:2008/10/29(水) 17:28:23 ID:9SV2+g9Q
「こら」
「んがっ!」
 浮かれてはしゃぐギーシュの後頭部をキュルケが小突いた。
「なに格好つけてんのよ。私とタバサがいなかったらあんた蜂の巣になってたわよ」
「あはは…すまない、助かったよ。ありがとう」
「……まあ、結果オーライだからいいけど。これ、どうしたの? ワルキューレは?」
 まだ踊り続けているのっぺらぼうのゴーレム達を指差してキュルケは尋ねた。
「『操り人形<マリオネット>』。僕はそう名付けた。何の装飾も無い粗末なゴーレムだけど、今の僕にはこれくらいがふさわしい。守りたいものを守れなきゃ、どれだけ外見を繕っても意味はないと思い知ったからね」
 少し遠い目をしてギーシュは語る。キュルケはそれを少し意外そうに眺めていた。
(ふぅん……かっこつけのギーシュがいっちょ前に……ここに来るまでに色々あったみたいね)
 二人の会話にぼ〜っと耳を傾けていたタバサが、何かに反応した。
「まだ終わっていない」
 ぽつりと呟く。
「え?」
 キュルケがそう言ったのと同時に、巨大な岩の塊が酒場の入り口ごとギーシュのマリオネットを下敷きにした。
 轟音と共に、地面が激しく揺れる。
「な、何よ何なのよ!!」
「ぼ、僕のゴーレムがーーーーッ!!!!」
「きゃーーーーー!!!!」
「きゃー」
 余りにも大きな揺れに4人はバランスを崩して倒れこむ。
 もうもうと土煙を上げながら、岩の塊が動いた。開けた視界、瓦礫の山と化した入り口の向こうに、巨大な岩のゴーレムが立っていた。
 酒場の入り口とギーシュのゴーレムを潰した岩の塊は、そのゴーレムの拳だ。
 巨大なゴーレムの肩で、『土くれ』のフーケは笑う。
「まさかあんたらまで来るなんてね。忘れちゃいないよ。『雪風』のタバサ、『微熱』のキュルケ。このラ・ロシェールで待っていた甲斐があったってもんだ」
 キュルケは『土くれ』のフーケの姿を認めると、髪についた埃を払いながら立ち上がった。
「あーら、随分とお早い出所なのね『土くれ』のフーケ。だめよ、しっかりお勤めは果たさなきゃ」
「冗談。女の花は短いんだ。獄中で時間を無駄になんかしてられるかね」
「ふふ、それは同感だわ。だから私たちなんかに構わないでもっと有意義なことに時間を割いたほうがよくってよ?」
「そういうわけにはいかないさ。私は受けた借りは返さなきゃ気が済まない性質(たち)でね。ストレスを溜めるのはお肌の美容にもよくないし、早々に返させてもらうよ」
 巨大なゴーレムがゆっくりと動き出す。
 キュルケとタバサはゴーレムの正面に並び立ち、杖を構えた。
73名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 17:30:39 ID:X/hZ7IY/
しえん
74ベルセルク・ゼロ22:2008/10/29(水) 17:30:48 ID:9SV2+g9Q
「あなたはその子を連れて店の奥に」
 タバサがギーシュに指示を出した。
「ぼ、僕も戦うぞ!!」
「あれだけの量のゴーレムを錬成した。もうあなたの精神力は空っぽ。違う?」
 首を振るギーシュを、タバサは冷静に諭す。
 しかし、女の子に任せて自分は隠れるという状況に、ギーシュは容易に頷くことは出来ずにいた。
「しっかり守ってやんなさい」
 そう言って、キュルケがギーシュにウインクしてみせる。
 その瞳はとても優しい光を湛えていた。
「……わかった。君たちも気をつけて」
 ギーシュはメリッサの手を取ると店の奥へと走っていった。
 フーケの操る岩のゴーレムが、キュルケとタバサを纏めて押し潰そうと拳を振り上げた。
「1、2の3で散開」
「オッケーよ」
「1、2の」
「サンッ!!」
 キュルケとタバサは同時に駆け出し、ゴーレムの拳をかいくぐる。二人は勢いを殺さずそのまま外まで走り抜けた。
 ゴーレムの拳が『女神の杵』亭を半壊させる。
 それが開戦の狼煙となった。


 ギーシュとメリッサは既に裏口から『女神の杵』亭を飛び出していた。
 ゴーレムの拳によって吹き飛ばされた細かな瓦礫が飛んでくる。
「伏せて!!」
 ギーシュは己の体を盾にしてメリッサを庇った。
「大丈夫かい!?」
「ええ、なんとか……」
「とにかく安全なところへ。急ごう」
 メリッサの手を取り、立ち上がらせてから再び駆ける。
 駆けながら、ギーシュはちらりと後ろを振り返った。ゴーレムは巨大な腕を振り回している。既に二人との戦闘が始まっているのだろう。
 二人の無事を祈る一方で、ギーシュの頭の片隅に何か引っかかるものがあった。
 フーケの姿を見たときから、奇妙な違和感が拭えない。
 だが、今は後回しだ。今はとにかくメリッサを安全なところへ連れて行く。
 そう無理やり自分に言い聞かせて、ギーシュは走った。
75ベルセルク・ゼロ:2008/10/29(水) 17:33:14 ID:9SV2+g9Q
以上、投下終了
長くなりすぎて予告してたフーケ大暴れまで届かず
ちょっと冗長すぎるかなあ……
76名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 17:40:45 ID:BwrwOvAW
・・・げる
77名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 17:43:24 ID:BgfyACDE
>>75
お疲れ様です。
ギーシュが!ギーシュが漢だよ!
カッコイイギーシュ大好きです。
次回のフーケ大暴れの執筆頑張って下さい。
78名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 17:51:48 ID:T/0O5y6F
やっべー
ギーシュ格好良いよ格好良いよギーシュ

見栄え悪くててんでダメちんだけど、「でも」「しかし」「だから」
格好良いよギーシュ
てっきり引き返してきたガッツに助けられるかと思ってたんだが

そしてガッツvs謎(笑)の白仮面
ガッツの尋常でないタフさと抜け目無さ、そして全ての白仮面共通のツメの甘さが
出てきて双方痛み分け
次も期待しちゃいますので頑張ってくれさい
79名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 18:31:03 ID:IFw/QfEm
ベルセルクの人乙でした!
毎回楽しみにしてます!
80名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 18:33:44 ID:9dlJd3SF
今日33巻買ってきて読み終わったタイミングで来るとか凄すぎ。続編が待ちきれぬわ!
81名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 18:43:16 ID:OhYFA/Og
なにこの格好いいギーシュ
82名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 18:49:29 ID:RMysuzFr
ベルセルクの人乙です!
このスレでは貴方の作品が一番好きだったりするんで頑張ってください
83名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 19:05:37 ID:UzcU8ZpB
ギーシュには無限の可能性が秘められている
84名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 19:24:36 ID:feh5Xs4v
骸にするも良、黄金化するも良。調理しやすい素材
85名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 19:31:42 ID:5SBN7U4t
一番調理しにくいのは……フレイム?
86名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 19:35:12 ID:tofKGdNn
フレイムは原作で出番がない分オリジナル展開にもっていきやすいから
彼は彼で調理しやすい
87名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 19:35:51 ID:i7sVZpaq
ダ・サイダーの人&ベルセルクの人、乙!

ダ・サイダーのオバカぶりは笑えるな〜
このおバカなところとシリアスにキメるところのギャップが魅力なんだけどね
やっぱりレスカのことは気にしてましたか
意外と純情なんですよね、バカだけどw

ギーシュ、かっこいいな〜
見てくれを捨てて実を取るとは…
ギーシュの錬金がなくても倒せるかな?

>「きゃー」
このセリフってタバサか?
意外だw
88名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 19:38:32 ID:PuzD4rLC
ベルセルク激しく乙!
ガッツの戦術が素晴らしいな。最初は義手砲で顔面フッ飛ばしたのかと思ったw
ギーシュも特訓の成果が生きたな。しかしメリッサとのフラグが後々修羅場に発展しそうな……
89名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 20:35:56 ID:t3cLP0FG
ギーシュを強くするとフーケインフレが起きるんだよなぁ
ドットがこんなに強い!じゃあトライアングルは無敵だな!って感じで
90名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 20:42:11 ID:BgfyACDE
>>89
マリコルヌ効果さ!
まぁ、気合いでどうにかなる世界観だからさじ加減楽だよなそこら辺。
91名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 20:46:44 ID:e6Dqrczq
各系統を幾つ足せるかなんて単なる目安だ。あとは気合で補えばいい
92名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 20:54:16 ID:gfyfZKXj
真島の兄さんが召喚されました
93名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 21:02:22 ID:m+gCcwzx
>>91
どこの長官だw
94名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 21:08:28 ID:wjAfxAED
束ねた三本の矢も、強い力をかければ折れる!
95お前の使い魔 七話:2008/10/29(水) 21:11:14 ID:DXcf9enJ
予約が無いようなら15分から投下したいと思いまふ
96名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 21:12:01 ID:Xrgj1OSE
>>92
真島の兄さんを呼ぶ前に桐生さんだろ。
97名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 21:12:58 ID:tLamkyNH
ベルセルクの人乙
ギ―シュかっこいいよギ―シュ、さすが生きるそれすべて死亡フラグの漢。

前の人も言ってるけど、ゼロの使い魔の魔法はいまいちはっきりしないからしかたないっちゃ仕方ないな。
まぁ、このギ―シュはかっこいいし、マチルダさんもこの作品では救いがありそうだから好きだわ。

……ベルセルクって救いがないよねってことは気にするな。
98名無しさん@お腹いっぱい。 :2008/10/29(水) 21:14:32 ID:mdxVjqGW
>>96
タルブに行ったら
「会いたかったでぇ、桐生チャ〜ン」
99お前の使い魔 七話:2008/10/29(水) 21:15:49 ID:DXcf9enJ
 わたしとダネットは、キュルケのげんこつとタバサの杖で付けられたたんこぶを冷やす為、医務室に来ていた。
 なんか最近、医務室と縁があるわね。こんな縁は嬉しくないけど。

「全く……何なんですかあの青い髪したちび女は。お前より凶暴です。」
「誰が凶暴よ!!」

 怒鳴りつつも少しホッとする。どうやら、召喚した最初の時、タバサが風の魔法で吹っ飛ばして気絶させたのは知らないみたいだ。
 知ってたらタバサに掴みかかりかねないもんねこいつ。
 まあこんな感じでダネットと睨み合いながら、恒例行事と化してきている口喧嘩をしていると、医務室のドアからノックの音が聞こえた。

「誰よ?」

 ダネットと喧嘩していたせいで、若干怒り混じりの声を出すと、少し遠慮がちにドアが開いた。

「ギーシュじゃない。何よ? まだ決闘の横槍で言いたいことでもあるの? でもあれはむしろ感謝してもらいたいぐらいよ。全く……危うく目の前で惨殺死体見せられるとこだったわ。」

 わたしが一気にまくし立てると、ギーシュは少し頬を引きつらせ、「ハハ……いや、それはもういいんだ。そうじゃなくてだね」と言って、ダネットをちらりと見た後、何かを決心したような顔になり、わたしに向き直った。

「な、何よ? わたしに文句でもあるの?」
「すまなかったルイズ。」
「は? どうしたのあんた? 熱でもあるの?」

 いきなり謝られても困る。流れが全くわからない。
 本気で熱でもあるんじゃないかしらこいつ。

「いや、実はだね。決闘の前に彼女と言い合いになった際、僕は君を侮辱してしまってね。まあ、それが彼女に火を付けてしまい、ああして決闘騒ぎにまでなってしまったんだ。」

 おい、どういう事だダメット。わたしは何も聞いてないわよ。
 そんな目線をダネットに送ると、ダネットはばつが悪そうに頬を掻いてそっぽを向いた。
 ん?もしかして照れてる?

「聞いてないのかい? うーむ……いやね、僕はあの時、興奮して言ってしまったんだ。『ゼロ』のルイズと同じで、使い魔も無能だと。」
「あんた喧嘩売ってんの?」

 わたしが頬をひく付かせてギーシュを睨むと、ギーシュはぷるぷると顔を横に振って、必死に弁明しだした。

「お、落ち着いてくれルイズ。続きがあるんだ。それで、僕がさっきの侮辱の言葉を言ったら、彼女何て言ったと思う?」
「キザ男!! ぺ、ぺらぺらと何でも喋るんじゃありません!!、く、首根っこへし折りますよ!?」

 何故か真っ赤になりながら、手をばたばたさせてるダネットを睨みつけて黙らせ、ギーシュに話の続きを言うよう促す。

100お前の使い魔 七話:2008/10/29(水) 21:17:45 ID:DXcf9enJ
「彼女は、自分が侮辱されたことよりも、君が侮辱されたことに腹を立てた。『あいつはゼロじゃない。何も無いゼロなんかじゃない。その言葉を取り消しなさい。謝りなさい。』ってね。」

 それを聞いた後にダネットを見ると、真っ赤な顔で、何故か「うー」と威嚇の声をあげた。ダネットなりの照れ隠しなのだろうか。

「まあそんな訳で、僕は謝罪しにきたと言う訳だよ。そして改めて、すまなかったルイズ。それに使い魔の……」
「ダネットよ。ご主人様に大切な事を何も言わない、ダメな使い魔のダメットでもいいけどね。」
「だ、誰がダメですか!!ダネットです!!」

 ギーシュは、また「うー」と唸りながら頬を膨らませるダネットを見て微笑み、薔薇を模した杖を口元に近づけながら、最後に「いい使い魔を持ったね、ルイズ。」と言って部屋を出て行った。
 部屋に取り残されたわたしとダネットは、お互いに顔を背けながら無言になる。
 うー、ダネットにつられてわたしまで顔が赤くなっちゃうじゃない。何なのよ全く。
 5分ほど経っただろうか。突然、ダネットが沈黙を破る為か、赤い顔をしながら言った。

「お、お前!! お腹が空きました!! ご飯にしましょう!!」
「そ、そうね。そうしましょうか。」

 どこか他人行儀になりながら、わたしとダネットは医務室を出て、食堂に向かう。
 食堂の手前まで来て、ダネットは厨房の方に向かおうとした。
 多分、使用人の使ってる食堂に向かおうとしたのだろう。
 わたしは、そんなダネットに思わず声を掛けていた。

「だ、ダネット!!」
「な、何ですか?」

 お互いにぎくしゃくしながら向き合う。

「その……あり、あり……」
「あり?」

 『ありがとう』そんな簡単な一言がどうしても言えない。
 プライドが邪魔してるんじゃなく、単純に恥ずかしい。
 使いまに感謝の念を抱くなんて、わたしはメイジ失格かもしれない。
 いや、今はそんな事より言わなきゃ。『ありがとう』って。
 表情がコロコロ変わるわたしを見て、不思議に思ったのかダネットが怪訝そうな顔で尋ねる。

「どうしたんですかお前? お腹でも痛いんですか?」
「違うわよ!! その……あり……あり……有難く思いなさい!!今日の夕飯はわたしと一緒に摂る事を許すわ!!」

 違うでしょわたし!! ここは『ありがとう』でしょ!!ほら、ダネットもぽかんとしてる!!あーもう何でいっつもこうなのよ!!
 必死に弁解しようと、わたしは両手を振って訂正しようとする。

「あ、そうじゃなくてあのね。そのね。えっとね!!」
「仕方ありませんね。そこまで言うなら、一緒に食べてやらないこともないのです。感謝しなさい。」

 ダネットは、そんなわたしの心中を知ってか知らずか、微笑みながら言った。
 いや、あの笑い方はわかってやってる。いや待て、こいつはダメットだ。実はわかってないのかもしれない。きっとそうだ。うん。そういう事にしとこう。

「い、行くわよ!!」
「ええ。お腹一杯食べましょう!!」

 その後、ダネットの『お腹一杯』の基準を思い知らされ、また食堂にわたしの怒号が響き渡ったのは余談である。
101お前の使い魔 七話:2008/10/29(水) 21:19:17 ID:DXcf9enJ
 戦争のような食事も終わり、わたし達は部屋に戻った。
 ここで、重要な事にわたしは気付く。

「そう言えば、あんたの着替えって無かったわね。」
「言われてみればそうですね。じゃあ、明日は狩りにでも行きましょう。」

 斜め上の返事をされ、わたしの思考が止まる。

「は?」
「ですから狩りです。獲物の皮を剥いで服にするのです。もしくは、獲物と引き換えに乳でか女にでももらいましょう。」

 どこの原住民だこいつは。
 皮をなめして服にするなど、何日かかるかわからないし、わたしはそんな血生臭そうな光景見たくもない。
 引き換えと言っても、キュルケもいきなり動物の肉なんぞもらって服をよこせと言われたら困るだろう。

「服ぐらい買えばいいでしょ。」
「私、お金持ってませんよ?」
「それぐらいわたしが出すわ。使い魔の服も用意できないとか言われたら、ヴァリエール家の恥よ。」
「おお、お前いい奴ですね!!見直しました!!」

 こんな事で見直されるわたしって一体……。

「後、ベッドとかも用意しなくちゃね。いつまでも一緒のベッドっていう訳にもいかないし。」
「私は一緒で構いませんよ?」
「あんたと一緒に寝てたら、いつかわたしが凍死しそうだから却下。」
「お前はたまに、よく判らない事を言います。このぐらいの気温なら、毛布があれば凍死なんてしません。」
「その毛布をわたしから剥ぎ取ったのはどこのどいつよ!!」

 怒鳴られてふてくされたダネットを余所目に、今後の事を考える。
 買い物は明後日の虚無の曜日に行くとして、それまでは同じ服で我慢してもらおう。わたしだって凍死の危険がありつつもベッドを使わせるんだからお相子よね。
 でも、せめて寝巻きぐらいどうにかしないと、一緒に寝るのは抵抗がある。
 ここはキュルケに……いや、あいつに貸しは作りたくない。絶対に今後、何かある度にネチネチ言ってくるに決まってる。
 となると……。

「お前の服、丈が短くてスースーします。もっと大きいのはないのですか?」
「それが一番大きいのよ!! 小さくて悪かったわね!!」
「あと、胸がきついです。」
「う、うるさいわね!! な、何よその笑顔!! 喧嘩売ってんの!? 買うわよ!! 買ってやりますとも!! 表に出なさい!!」
「外は寒いから嫌です。こんなちっちゃい服じゃ凍えてしまいます。」
「ちっちゃいって言ったわね!? しかも胸の部分を見ながら!! 胸の部分は寒さと関係無いでしょ!!」
「ルイズ!! ダネット!! あんた達うるさいのよ!! 少しはあたしの身にもなんなさい!!」

 こうして決闘の夜はふけていった。
102お前の使い魔 七話:2008/10/29(水) 21:20:12 ID:DXcf9enJ
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 何だろうここ?真っ暗だ。わたし、どうしたんだっけ?あれ?
 あ、そうか。この感じは夢だ。

『……………………』

 誰よあんた? わたしに何か用?

『……た……す……ね』

 はっきり言いなさいよ。聞こえないわよ。

『時がき…・・・で……ね』

 は?何?

『あなた……らの性を望み……すか?』

 せい?せいって性?
 失礼な奴ねあんた。どこからどう見たって女でしょう?

『では、あなたの望みの名は?』

 名前って、わたしの名前はあれよ。あれ。
 あれ?名前……名前……あれ?

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「あれ?」

 部屋の外はまだ暗い。どうやら夜中のようだ。
 隣では、すやすや眠るダネットの姿。
 どうやらわたしは変な夢を見たようだ。
 とは言っても、夢の内容は思い出せない。まあ、思い出せないということは、取るに足らない夢だったという事だろう。
 
「寝なおそ。」

 二つの月が、とても綺麗な夜だった。
103お前の使い魔 七話:2008/10/29(水) 21:22:17 ID:DXcf9enJ
以上で7話終了
また短いですほんとすいませんorz
6話と7話足して一話分みたいになっちゃってます。猛省しなきゃ。

それでは
104名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 21:25:54 ID:MmOeaXcx
久保の人のをさっき纏めで見てきた。
中の人ネタでクスハ汁が出てくるとは・・・
乙でした
105名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 21:46:04 ID:O/qxIRrH
ダネットかわいいなあ
106名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 21:57:58 ID:2R9A8EsP
>>12
死ねよ荒らし
107名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 22:08:54 ID:PWGtxHuw
>>106
荒らしに反応するなよ。
108名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 22:11:45 ID:Qt6ttwPy
>>106
反応するから調子に乗るんだよ
無視しろ
109名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 22:20:35 ID:35lHwfpb
ダネットの人乙です。デルフの出番はあるのか?

そして町で何が起こるか気になります。
蹴るとか盗むとか誘拐とか合体とか。
110名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 23:32:48 ID:2R9A8EsP
>>108
>>107
不正や悪を見逃さないのが俺の信条なのだ
111名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 23:38:17 ID:zirtn902
なんという邪気眼…… これにはターゲット、思わず苦笑い。

ムスカ召喚ってもうあったっけ?
112名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 23:38:36 ID:cXs1JAWl
>>110
気持ちは判るが聞いてて恥ずかしいぞそれ……
113名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 23:43:10 ID:e6Dqrczq
ムスカ、アーチャーのサーヴァントか
114名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 23:46:26 ID:/S+YQqDs
>>110
マジレスしてやるが、
そんな事している暇があったら削除依頼を出す方が
正当かつまっとうな2ちゃんねらーの行動だぞ。

荒らしにかまうのも荒らしひろゆきの言葉だぞ。
115名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 23:55:43 ID:e6Dqrczq
ひろゆきっていうと、あの半年ROMってろとか言われる人か
116名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 23:57:16 ID:GXyPKzUW
>>114
知っててやってる荒らしに反応するのもどうかと思うね。
117ぜろろ:2008/10/29(水) 23:59:32 ID:7gta0GmV
投下したいですが宜しいでしょうか?
12:10辺りからお願いしたいです。
予約なかったですよね
118名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 00:01:01 ID:5z1v38kA
かもーん
119名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 00:01:08 ID:eVISEJ4S
どうぞどうぞ
120名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 00:09:01 ID:Bh5Fgj0U
待ってました!!
121名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 00:09:27 ID:3awKCP9b
ktkl
122ぜろろ 第十五夜 (1/12):2008/10/30(木) 00:10:04 ID:qaq0bSbO
いきます。以下本文

夜が明け、日が昇る。また一日が動き出す。

第十四夜 御免

百鬼丸の部屋にコルベールがやってきた。ノックをしドアを開けると、昨日シエスタに渡すよう伝えた服に百鬼丸は身を包んだ姿で、ドアの正面でコルベールを迎える。なかなか様になっている。

「おはようございます。昨日はどうでした?よく眠れましたか?」
「あぁ、おはよう。服と食事、ありがとう。久しぶりにいい夜だった。」

多少の厄介事はあったものの、概ね言葉通りだ。にこやかに返す。

「それはよかった。お召し物もなかなか似合っておいでですよ。さて、昨日の件の続きです。これから当学院の学院長に会って頂きたいのです。今からお願いしたいのですが、良いですか?」

途中からコルベールの顔つきが神妙なものに変わる。
もちろん、と頷きコルベールの後を付いていった。刀は左手に携えている。
百鬼丸が今着ている服には、刀を差せるような部分は無い。

コルベールが先導する形でしばらく歩く。長い階段を上り、また廊下を歩いた。かなり高い所にあるのだろう、一つの部屋に辿り着く。二度、コルベールがノックをした。中から返ってきた声は、しわがれながらも、妙に力強い声だった。

「入りたまえ。」

部屋の中に居たのは二人。部屋の中央奥に、大きな机があり、そこに一人の老人が居た。白く、伸び放題の長い髪と髭、眉も白い。それらの隙間から、皺だらけの、陽に焼けたのか年のせいなのか、少しだけ黒ずんだ肌が見える。大きな黒い外套に身を包んでいた。

荒れた山のように、そこに在るだけで、ずっしりと大きな存在感があった。

もう一人、こちらは若い女性だ。薄く緑に光る長い髪と整った顔立ち。横に細い楕円の眼鏡をかけ、そこから覗くの瞳は理知的な輝きに溢れている。老人の机に向かって左側に控えている。

「ミス・ロングビル。」

老人が自分の隣に控えた女性に声をかける。ロングビルと言う名らしい。ロングビルはすっとドアの入り口近くまで行くと、この部屋に入ってきた二人にすれ違いざまに会釈をして、そのまま部屋を出た。
123ぜろろ 第十五夜 (1/12):2008/10/30(木) 00:10:45 ID:qaq0bSbO
 

老人が百鬼丸とコルベールの方へ目を向ける。朽ちた体に見合わず、皺だらけの皮膚からぎょろりと覗く目玉だけは、生命が満ち溢れているかのように力強く、若い。
妙に緊迫した空気の中、老人が始めに口を開いた。

「まずは、はじめまして、じゃな。わしはオールド・オスマン。この魔法学院の学院長を務めておる。」
「百鬼丸だ。」

互いに少し頷く。
オールド・オスマンが少し目を伏せ、片目を瞑り、今度は先程とは違う少し鋭い目つきで百鬼丸を見据え話しかけてた。

「さて、いきなりで悪いんじゃが、当学院から早々に出て行ってもらいたい。」

オールド・オスマンのこの言葉に最も驚いたのはコルベールであった。昨日の夜、百鬼丸と魔神の話を報告に言った後、その対応と言うのはコルベールはまだ聞いていない。
俄かに信じられる様な話でもなく、判断も難しいと言うのは彼とて分かっていた。当の百鬼丸と対面して決める。そうとしかオスマンに聞かされていない。
慌てて何か言おうとするも、オスマンに一睨みされ、黙らざるを得なかった。
コルベールは百鬼丸に目を向ける。彼の予想と違い、百鬼丸の表情は揺るぎもしていない。

「昨日の話しは全てコルベール君から聞いておる。しかし魔神などと、正直わしには与太話にしか聞こえんし、仮に真実だったとしても、化け物と共に来た君も危険がないとは言い切れん。」

オスマンの一方的な言い様にも表情を変えず、百鬼丸は黙って聞いている。

「ここは貴族の子供達を集めた学び舎じゃ。そんな場所に、君のような得体の知れない人間を置いておく訳にはいかん。そういう訳じゃ。分かってくれたら出て行ってもらえるかな?」

一拍置き、また百鬼丸を見た。

「わかった。」

頷き、簡潔にそう答えると、百鬼丸は振り向き部屋から出ようとする。
124名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 00:13:12 ID:HPKHFWBA
支援
125ぜろろ 第十五夜 (3/12):2008/10/30(木) 00:13:42 ID:qaq0bSbO
百鬼丸にとって、追い出されるなど既に慣れたものだ。旅の初めのうちは己の体を他人がどう見るかという事が分からなかった為、迂闊に体を晒してしまった。
体の事は隠すようになっても、人前で妖怪と戦えば、体に仕込まれた武器を使う場合もある。それを見れば、彼がいかに人を守っても、結局は気味の悪いものを見るように、人々は遠巻きになった。

「待ってください、オールド・オスマン!」

耐え切れず、コルベールは声を上げた。オスマンに詰め寄ろうと目を向けると、奇妙なことにオスマンにも多少困惑の色が伺える。コルベールもつられて困惑する。

と、そこに百鬼丸の声がかかる。
ドアノブに手をかけたところで、振り返りコルベールに向かって言った。

「コルベールさん。別にいいよ。そうだ、俺の着ていた服は返して欲しい。それとシエスタと、多分知ってるよな、ルイズにもよろしく言っといてくれ。」

コルベール、シエスタ、ルイズ、この三人とこれっきりになるのは正直残念であったが、恐れられる前に分かれたほうが良いのかも知れない。あっけない別れだが、未練は残すまい。そう考えていた。

だが、百鬼丸の放った言葉はオスマンとコルベールを多大に驚かせた。正確には、その言葉の中のとある名前。ルイズとはルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールのことであろうか。彼と魔神を召喚した生徒の事であろうか。
いや、ルイズという名の生徒はこの学院には彼女を置いて他にはいない。使用人にも。

「なっ、どこでその名を!?」
「なんじゃと!?」

二人の声がかぶる。

「別に昨日知り合っただけだ。ともかくそう伝えといてくれ。」

二人の慌てようにいぶかしみながらも部屋を出ようとした。

「お、お、お落ち着いてください、ヒャッキマルさん。」
「お、おち、落ち着くのじゃ、ヒャッキマル君!」

また声がかぶった。落ち着くのは一体どっちだろうか。少なくとも百鬼丸は部屋に入ってからは終始落ち着いている。
126ぜろろ 第十五夜 (4/12):2008/10/30(木) 00:14:22 ID:qaq0bSbO
  
「俺は落ち着いてるよ。あんた達こそ落ち着いたらどうだ?何なんだ一体?」

振り返り再び体を二人に向けた。
オスマンは咄嗟に言いつくろった。

「い、いやすまん、予想外じゃったから驚いただけじゃよ。それにしても……いや、何処で知り合ったんじゃ?」

学生達の住む寮と、百鬼丸の泊まった来賓室は大分離れている。それに百鬼丸には部屋から出ぬように伝えた、とコルベールは報告していた。よもや事件の中心人物同士が触れ合うなどと予想だにしていなかったのだ。
じろりとオスマンはコルベールを睨むも、こちらも初めて聞いたようだ。慌てて首を振る。メイジと契約前の使い魔とは引き合うものなのだろうか。

「部屋に入る前に通りかかった所を、まあ、その、なんだ、少し話し込んだんだ。」

部屋に入れなかったなどとはさすがに百鬼丸も恥ずかしくて言えない。少し目を逸らして話した。
最もその様子は未だ驚いている二人には気にかからなかった。

「そうかそうか、それでどうじゃった?彼女は。」
「?いい奴だったぞ。ほんとに何なんだ?俺はもう行くぞ?」
「いやいや、待ちたまえ。先程の非礼は詫びさせてくれ。すまんかったの。」
「はぁ?何だって?」

首を突き出し聞き返した。百鬼丸は訳が分からない。ルイズが一体どうしたと言うのだ。彼女の名が出てオスマンの態度が一変したかのようにも思える。コルベールもオスマンの言動に対し戸惑いを隠せないでいるようだった。

「いや、君を試したかったのじゃよ。先程も言ったようにここには貴族の子供達が大勢おる。君の反応を見てから決めようと初めから思っておったのじゃ。不愉快な思いをさせてすまんの。」

先程と打って変わって穏やかにそう言う。
コルベールも少し驚いていた。オスマンの方をじっと見ている。

「それは別に構わんが、でどうだったんだ?」

口では構わないと言っておきながら、百鬼丸は少し不愉快そうだ。

「よく分からん。」
127名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 00:15:52 ID:tUPaK5aC
マイマイオンバしえん
128名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 00:16:04 ID:0itvTxZZ
支援
129名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 00:16:55 ID:lkrPzCXv
ついつい読むのに夢中になって支援がおろそかになる支援
130ぜろろ 第十五夜 (5/12):2008/10/30(木) 00:17:44 ID:qaq0bSbO
 
何ともとぼけている。百鬼丸もコルベールも呆れている。なんだそれは、と口々につぶやいた。

「じゃが害意も欲も無いと言うのは確かじゃな。当学院に対し不利益をもたらす意図は無い。と、思う。あまりにあっさり出て行こうとするから驚いたぞ。」

豪快に笑い出した。が百鬼丸は未だ不機嫌だ。

「ルイズの名前を出したからか?あいつがどうした。」

コルベールが、ぎょっ、とする。
オスマンも笑うのを止めた。再び真面目な顔つきに戻る。

「ふむ、まあその名がおぬしの口から出たときは驚いたが、試してから君の処遇を決めるつもりだったと言うのは本当じゃ。」

オスマンは目を瞑り腕を組み、うんうんと唸りだした。

「ヒャッキマル君、おぬし、しばらくこの学院に留まるつもりはないかの?」

話がすり変わっている。がそれ以上に驚いて百鬼丸は、なに、と聞き返した。

「おぬしはこの学院に住む。わしらが魔神の情報を集め、おぬしに提供しよう。何かそれらしい情報が入ればおぬしは魔神を倒しに行けばよい。が、事が済めばその度ここへ帰って来る。衣食住は全て保障するが、どうじゃ?」
「それは……俺にしてみれば願ってもないことだが、一体なんであんたがそこまでする?」
「なに、魔神どもの話、見ていないわしには未だに全て信じきることは出来ないが、本当ならば放っては置けん。その危険の可能性を放置する事と、君一人を養う事、比べてみたらどちらが良いか、という事じゃ。
君一人を養うくらいわしの財布から見れば訳はないんじゃよ。わし、金持ちだし。」

にかっと笑う。どうにも捉えづらい老人だと百鬼丸は思った。威厳があるかと思えば、愛嬌丸出しの冗談も言う。こんな老人、いや、こんな人間は初めて見る。

しかし、オールド・オスマンの言葉、実は全て本音である。他の教師から魔神の話を聞かされたのならともかく、他ならぬコルベールが必死に伝えてきたのだ。周りの人間が思っているよりも遥かに、オスマンは彼を信頼している。
金の事も本当だ。貴族の子供達を集めたこの学院に勤める者達は、差はあれども、殆どの者が、かなりの額の給金を受けていた。重要人物だらけのこの学院に勤めるには、それだけの信用なり、人柄なり、技術なりが必要だということである。
そこの最高位に位置するオスマンともなれば、人一人養うくらい訳は無い。

「そうか、だが断る。」
131ぜろろ 第十五夜 (6/12):2008/10/30(木) 00:18:32 ID:qaq0bSbO
コルベールとオスマン、二人は呆気にとられた。これだけの好条件を揃えて何を断る理由があるのか、想像も付かない。

「俺は誰にも仕える気は無い。」

平然と言い放つ。オスマンにしても余りにも予想外の返答だった。
コルベールが口を挟む。

「ヒャッキマルさん。あなたはこの国の事など何も分からないでしょう?第一お金もないですし、住む所や食べ物はどうするのですか?」
「今までだってそんなもの碌に無かったんだ。金なんかほとんど持ったことは無い。眠れる場所だって探せばある。何か食いたけりゃ狩りをすればいい。何とでもなる。」

見栄でもなんでもないことは、その態度から見て取れる。呆れるほどの逞しさだ。
今度はオスマンが説得にかかる。

「いやいや、硬く考える必要はないぞ。わしはおぬしを部下にしようなぞとは思っておらん。命令を聞けとも言わん。まあ、何か頼むことはあるかもしれんが、断ってくれても良い。
そうじゃな、協力しよう、と簡単に言うとそういうことじゃ。わしらは魔神を倒したい、がそれに割く人手は今のところおらん。いずれ、とは考えておるのじゃが。おぬしも魔神を倒したいのじゃろう?悪い話ではなかろうて。」
命令を聞かなくて良い。これが少し百鬼丸には魅力的に聞こえる。
彼にとっては今のところ魔神を倒すことこそ全てである。その障害となりそうなものなど邪魔なだけだ。要らぬしがらみなど持ちたくはなかった。

ふむ、と顎に手をやり考える。

「魔神の恐ろしさは聞いているんだろう?それに、知ってるだろうが俺は魔法は使えない。俺の腕を信じる根拠は?」

どうやら少しだけ前向きになってくれた様だ。

「なんじゃ、疑り深いのう。」
「茶化すな。で?」
「ミスタ・コルベールに聞いた。見事な腕前、と言うことじゃったが?」
「あんたは見てないんだろう?」

本当に疑り深い。これは百鬼丸の性格元来のものではない。妖怪に取り付かれた人間を相手にしたことも多々あるため身に付いた、生きていく手段のようなものだ。
余りに旨過ぎる話には話には飛びつかないようにしていた。

ふう、とオスマンは溜息をついた。
132ぜろろ 第十五夜 (7/12):2008/10/30(木) 00:19:54 ID:qaq0bSbO
 
「怒らんでくれよ?」
「何がだ?」
「怒らない、と約束してくれるかの?」
「……だから何がだ?」
「怒らない、と約束してくれるかの?」

上目遣いにそう言うオスマンに百鬼丸は尋ねる。要領は得ないが、そんなことはどうでもいいくらい、正直気持ち悪い。もう止めて欲しいと思って、怒らないと頷く。

ゆっくりと立ち上がり、オスマンの座る椅子の斜め後ろの壁に、大きな布が掛かっていた。それをばさりと取り外す。
布の下からは、壁に取り付けられた丸い大きな鏡が合った。縁に散りばめられた装飾が見事な逸品だが、奇妙なことに、鏡の部分が横に綺麗に避けている。コルベールが、あっと声を上げる。
本当は言いたくなかったのだがオスマンは話す事にした。

「この鏡、『遠見の鏡』というんじゃ。遠くのものを見ることが出来るんじゃが……。」

『遠見の鏡』、使用することでその名の通り、任意の場所をその鏡に映し出し、見ることが出来るというマジックアイテムである。
マジックアイテムとは様々な魔法が付与された品のことで、例えば人を癒す魔法が込められた指輪、使用者の姿に形を変える人形、命令を下すことで動く石像など様々な物がある。ちなみにどれも一概に値段が高い。

さて、オスマンの言葉をそこまで聞いて百鬼丸の目が釣りあがった。詰め寄ろうとオスマンの方へ歩き出した。コルベールは二人のやり取りを理解していない。しかし、只ならぬ百鬼丸の雰囲気に慌てていた。

「ヒャ、ヒャッキマルさん?」
「何!?あれはあんただったのか!!」
「怒らないって言ったよね?」

ぐ、っと百鬼丸が立ち止まる。結構律儀な性格のようだ。何より、演技であろうが、目を潤ませ、しなを作るオスマンが気持ち悪い。

昨日コルベールからの報告を受けたオスマンは、この謎の剣士、百鬼丸の危険性をはかろうと、コルベールが部屋から退出した後に、この遠見の鏡を使い百鬼丸を監視しようとした、が結果は先の通りである。
133名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 00:20:19 ID:lkrPzCXv
支援
134名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 00:21:15 ID:Bh5Fgj0U
支援します
135ぜろろ 第十五夜 (8/12):2008/10/30(木) 00:21:43 ID:qaq0bSbO
目が見えぬ、という話はコルベールから聞いていた。コルベールも言うか言うまいか迷ったのだが、今日初めて会った百鬼丸よりは、何年も勤め続けた学院と、可愛い生徒達を比べると、百鬼丸には悪いと思いつつも、目の見えぬことをオスマンに告げている。
一つの隠し事が何を生み出すかは分からないからだ。
その目の見えぬ筈の彼と、鏡越しに目が合ったときは、オスマンも、自身の頑丈と誇る心臓が止まるかと思った程に肝が冷えたものだ。斬りつけられた時など、少し声を出し涙目になったのは秘密である。
ともかく、昨夜から三度、百鬼丸の感じた視線、そして彼の切りつけたものの正体がこの鏡だったという訳だ。

「あ、あの、オールド・オスマン?」

一人だけ事情が分からず取り残されたコルベールが尋ねた。

「いや、すまんのヒャッキマル君。悪いとは思ったんじゃが、何度も言うように、この学院の大事な生徒達を危険な目に合わせるわけにはいかんのじゃ。怒るのはもっともじゃが、許してくれよ?それに、これ高かったんじゃよ?」
「俺が知るか!だが、覗いたのはまあ、頭には来たが、分かった。怒らない。」

オスマンが椅子に座りなおしそう言うと、百鬼丸も多少不機嫌そうにではあるが、納得した。このやり取りを聞いて、コルベールも大まかに何があったか理解はしたが、何故遠見の鏡が割れているのかがさっぱり分からない。

「オールド・オスマン、まさかその鏡、ヒャッキマルさんがやったのですか?」

物を壊したと言う負い目は多少あるのだろう、先程の怒りの余韻もあり、百鬼丸は声を荒げる。

「仕方ないだろう、魔神かと思ったんだ!」

そういう問題ではない。遠見の鏡で見られているという事が分かっただけでも異常な上に、その上あの鏡に切りつけ、壊したとでも言うのか。とても信じられない。

「見ての通り、ヒャッキマル君が切りつけた所為でこのようになってしまったのじゃよ。あぁ、高かったのになぁ……。」

百鬼丸の反応が面白いので、オスマンは少し意地悪くそう言う。

「だから!覗き見してた方が悪いだろう!」

まるで子供だ。昨日の夜のオスマンが感じた恐ろしい印象などまるでなかった。少し人物像を見直す必要が在る、とオスマンは長い髭を撫でながら、笑いに目を細め、考えていた。

「落ち着いてください、ヒャッキマルさん。そういうことではないのですよ。何故見られていると分かったのですか?どうやって壊したのですか?」

何、と百鬼丸が主張を止めて、答えた。
136ぜろろ 第十五夜 (9/12):2008/10/30(木) 00:22:17 ID:qaq0bSbO
 
「なんでって、分かったから分かったとしか言えん。壊したのだって、ただこいつで斬りつけただけだ。」

そう言って左手に持つ刀を、コルベールに見せるように前に持ってくる。
コルベールはしげしげとその刀を見つめる。ひょっとすると何かのマジックアイテムだろうか。そう思い百鬼丸に尋ねる。

「これはひょっとしてマジックアイテムですか?」
「まじっくあいてむ?」

魔法を知らない人間がマジックアイテムを知っているはずがない。マジックアイテムについて簡単に説明をしてやると百鬼丸は、へぇ、と驚いている。

「マジックアイテムってのはよく分かったが、知らんな。それにこれは確かに業物だが、普通の刀だぞ?」
「カタナ?」
「そう、こういうのを俺の国じゃ刀って言うんだ。」

百鬼丸の持つ刀は、寿海が彼に持たせたものだ。他に二振り持たせているが、そちらは体に仕込んである。どこぞの公方に、寿海が礼の品として譲り受けた、と百鬼丸は聞いているが、誰が打ったものかなどはよく分からない。
二年間肌身離さず携えた相棒だ。大事な形見でもある。

「少しばかり検分しても?」
「いや、すまん。一時たりとも放したくない。見るだけにしてくれ。」

何時如何なる時に妖怪に襲い掛かられるか分からない。そのため百鬼丸は刀を手放すことを嫌っている。今更コルベールを疑っているわけではないが、最早これは習慣である。

「そうですか、残念です。では探知の魔法を使わせていただいても宜しいですかな?魔法が掛かっているかどうかが分かるのです。影響は何もないので安心してください。」
「ん、まあそれなら構わないが……。」

オスマンも椅子に座ったまま二人のやり取りを興味深そうに眺めていた。
コルベールが呪文を唱えると、きらきらと光る粉のようなものがふわりと舞った。反応は微塵もない。

「はて、確かに普通の剣ですな。恐れながら、ヒャッキマルさんのほうにも何の反応も無い。ああ、失礼。わざとではありませんよ。」
「別に構わない。魔法が有ろうと無かろうと俺にはどうでもいい。」
137ぜろろ 第十五夜 (10/12):2008/10/30(木) 00:23:13 ID:qaq0bSbO
 
コルベールは考える。百鬼丸は、遠見の鏡に見られていることが分かった。これはまあ良いとしよう。目が見えぬ者はその他の感覚が過敏になる、と聞いた事がある。見えぬ体であそこまで魔神と戦いのけた彼ならばこそ、あるいは分かるのかもしれない。
しかし一体何故遠見の鏡を斬ることが出来たのだろう。
と、オスマンの落ち着いた声が掛かった。

「ミスタ・コルベール、そろそろ良いかね?君は好奇心旺盛なのは構わんが、それが高じると周りが見えなくなっていかんよ。」
「あっ、これは失礼しました。」

頭を下げ、すっと下がった。

「さて、話を戻そう。ヒャッキマル君。君の腕を信じるのは、まあ昨日の出来事、そしてこの鏡が根拠、という訳じゃ。普通の剣で斬る事なぞできない。それを君は、どういう理屈かは知らんが斬って見せたのじゃ。
君は魔神に対して有効な戦力であるとわしは判断したのじゃよ。どうじゃな?先程の話。」

百鬼丸の顔に、先程声を荒げていたときの子供のような表情は今は無い。落ち着いたようだ。

「まあ、納得したよ。わかった。協力、でいいのか。協力しよう。」

気に食わなければ出て行けばいい。が、今のところは百鬼丸としても得をする話ばかりでしかない。旨過ぎる話ではあるが、突き詰めてみれば、今のところ納得が入った。

しかし一つだけ分からない事がある。

「ルイズの事は?なんかあるんだろ?」

コルベールはすっかりと忘れていた。慌てた顔でオスマンを見る。がオスマンの方は落ち着いている。

「ふむ、話した方が良いじゃろうな。」
「オールド・オスマン!!」
「構わん。印象は悪くないようじゃ。」

コルベールとしては、ルイズの事はまだ話したくはなかった。何が起こるか分からない。百鬼丸だって突然連れて来られた身だ。彼女に対して百鬼丸がどう出るか不安だった。
しかし、彼の意に反して、オスマンが喋り出す。

「ヒャッキマル君。ミス・ヴァリエール、ルイズ嬢と話してどうじゃったかね?」
「さっきも言っただろ?良い奴だったよ。」

ちょっとした確認だ。本題は此れからだ。
138名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 00:23:26 ID:Bh5Fgj0U
支援!
139名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 00:24:39 ID:mRnf4sw3
支援
140名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 00:24:50 ID:do5Q6Ubi
支援!
141名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 00:26:03 ID:lkrPzCXv
支援
142ぜろろ 第十五夜 (11/12) (代理):2008/10/30(木) 00:27:15 ID:7yp21zXA
「使い魔召喚の義の事は聞き及んでおるの?」

百鬼丸は頷く。コルベールが息をのんだ。

「実はの、怒らんでくれよ、おぬしと魔神達を召喚したのは、」

オスマンが目を瞑り、言いよどむ。やはり実際に言う段になって少しばかり尻込みしたのだろうか。いや、もったいぶっている様にも見える。しばらく間を置き溜めた。
だが、ここまで言えば誰でも察しは付くだろう。くわと目を見開き、百鬼丸と目を合わせる。

ついに言った。

「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。彼女なのじゃよ。」

コルベールは恐る恐る百鬼丸の顔を覗き見る。もし自分が突然異国に訳も分からぬまま連れて来られたらどう出るか。悩むだろうか、恨むだろうか、怒るだろうか、温厚であると自他共に認めるコルベールも、自身がどういう行動に出るかは正直分からない。
オスマンは、初めに百鬼丸と話したときのように、真剣な面持ちだ。目玉がぎょろりと光った。

「へえ、そうなのか?縁があるな。」
「へっ?」
「ほっ?」

何でもないことのように百鬼丸がそう言う。実際彼にとっては何でもない。見知らぬ国であろうと、そこには魔神がいて自分もいる。充分だ。

一方、それなりの懸念と覚悟を抱きながらも、肩透かしを食らった二人は間抜けとしか言いようのない顔を晒している。
二人の驚いた様子に気付き百鬼丸が問いかけた。

「ん?なんだ?変な事言ったか?」
「い、いや、別に良いんじゃが、それだけ?」
「何か他に言わなきゃならんのか?」
「いや、そういう訳じゃないんじゃが、うむ、まあよいわ。それでじゃの、彼女の事、別に嫌いじゃないんじゃろ?どうかな?先程の条件に加え、彼女の使い魔になる、というのは?」

淡い期待を持ちオスマンが進めた。一人の生徒のためだ。聞けばルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは二年に上がろうというのに、未だに一つも魔法が使えない。
しかし、素行に問題なく、座学では学年首位を誇る。努力家、というのはそれだけ聞いても分かる。そんな少女が、使い魔一つ得られなかったというのは余りに可愛そうだ。
人の使い魔というのはかなり奇抜な発想だが、只者ではない彼なら、メイジをの力量をはかる使い魔としては充分だろう。少しでも自信をつけて、大きく羽ばたいて欲しい。そんな暖かい思いでこの話をオスマンは持ち出したのだ。
143ぜろろ 第十五夜 (12/12)(代理):2008/10/30(木) 00:27:58 ID:7yp21zXA
「断る。」

にべもない。

「何でじゃ、つれないのう。」
「さっきも言ったが俺は誰にも仕える気は無い。」
「いいやつじゃったんじゃろ?」

甘えたような声を出す。年相応の掠れた声が合わさり、気持ち悪さを見事に演出している。
コルベールと百鬼丸は知らず知らず、右手を強く握りこんでいた。

あ、ヒャッキマルさんの右手が震えている。

と、自分もいつの間にか拳が力強く膨らんでいる事に気付き、コルベールは右手をぶるぶると振った。

「なんじゃ、どうしたんじゃ?ミスタ・コルベール」
「いえ、虫がいました。とても気持ち悪いやつでして。」
「そうか、君が言うからにはよっぽどなんじゃろな。あとで駆除しておこう。」
「ええ、そうして下さい。オールド・オスマン。」

ふむ、とオスマンは再び真面目な顔で聞いた。

「して、ヒャッキマル君、ミス・ヴァリエールでも不満かね?」
「あいつはいい奴だ。だが、そんな事は関係ない。どうしてもと言うなら出て行く。」
「ああ、わかったわかった。使い魔にはならんでよい。すまんかった。無理を言ったようじゃ。」

オスマンは立ち上がり、百鬼丸の方へ歩み寄ると右手を差し出した。

「なんだ?なんか欲しいのか?金持ちなんだろ?」
「違う!」

不思議そうな顔で差し出された右手を眺めている。どうやら本当に知らないようだ。

「握手じゃ、握手。手を握るんじゃ。この国の友好の印じゃよ。これから協力して行こうというのじゃ。」
「ああ、なるほど。こうか?」

がしり、と握り合った二人の手を見て、コルベールはほっと一息ついたのだった。
144名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 00:35:12 ID:7yp21zXA
代理投下完了。
百鬼丸乙。
145名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 00:37:35 ID:LN9JZFX3
義手を握ったのならなんか違和感を感じるんじゃないのかな?
ともかく高クォリティです。乙です
146名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 00:39:12 ID:lkrPzCXv

いつもとても楽しく読ませてもらってる
147名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 00:39:23 ID:do5Q6Ubi
作者GJ、代理乙。
今、一番更新が楽しみなSSです。期待してます。
148名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 00:41:51 ID:3awKCP9b
どろろは見たこと無いけど、おもろいっす。
乙っす。魔神がどう動くか楽しみ。
149ぜろろ(代理):2008/10/30(木) 00:45:45 ID:7yp21zXA
今回思った以上に馬鹿な話になってしまいました。全部オスマンの爺が悪い!!
デルフとキュルケとギーシュが出たらどうなるんだろうか…。

ではでは

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ゴメン、完了とかいっときながらまだ残ってました
マジサーセン
150名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 00:49:15 ID:lkrPzCXv
代理の人も乙
あーすげえ続き楽しみだよ
使い魔にはならなかったけど、もしルイズが、
百鬼丸が自分に召還されたこと知ったらどういう反応するのかも気になる
151名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 00:53:36 ID:tUPaK5aC
魔神に奪われたボディパーツにCHINPOはふくまれますか。

いや昔から疑問だったんで
152名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 01:02:24 ID:ebPXS7rG
それはつまり、モノホンが戻るまでは先生が作ってくれたギュインギュイン動く
大人の玩具だっていうことですか。うん。ごめん。自重する
153名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 01:04:11 ID:q5+39jU5
>>151
奪われてるって本人言ってたぞ。
154名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 01:04:36 ID:Ql/WidFl
確か初期の百鬼丸は本気で何も無かったから、当然奪われてるだろ
……排泄とかどうしてたんだろ?
155名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 01:18:26 ID:4qrZcjdo
そもそも生きていたこと自体が奇跡みたいなモノだったわけで・・・・

ってかどうやって生きていたいんだろう。
体を奪われてから拾われるまで結構時間が空いていたような覚えが。。
156名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 01:20:06 ID:/hlqU08W
>>154
食べる→しばらくしたらお腹の引き出しを取り出してひっくり返す→洗う→戻す
157名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 01:21:33 ID:6KHEv91y
>>155
全て奪われた代わりに、超能力的な力を手に入れた。
それでどうにか川に流されても生き延びて医者の下へ。が原作だった気がする。
158名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 01:21:57 ID:Xsem1WMc
ぜろろ氏乙。読みごたえりますな。今後もこのクオリティを期待してます。
個人的希望を言わせてもらうならルイズとは何らかの形で使い魔契約してほしい。クロス元が「ゼロの使い魔」なんだからさ。
159名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 01:26:36 ID:5QWRR80v
ぜろろGJ
次回も楽しみに待ってます
160名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 02:24:01 ID:keCU52Ua
まあなんだ

作者に感想はいいけど要望はヤメロ
161名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 02:29:57 ID:e01aNSUi
ぜろろ乙。人物の描写がすごい。
次回も楽しみに待ってます。
162名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 02:38:47 ID:aJ0HtEMh
>>158
ぜろろ氏GJ、続きが楽しみだ。

スレタイ通りに行くなら、『召喚』されることが第一条件で、別に使い魔契約は結ぶ必要ないだろう。
契約を自力で破ったり、なぜか契約できないとか、力関係で逆にルイズが使い魔にされたりする作品もあるし

そこらは作者の匙加減に任せるべき
163名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 02:50:02 ID:4U6apeRm
どろろの人GJした!

>>162
まー、無理に契約することはないというのは同意だが、ピンチの時にまだ契約していなかった相手が契約した途端にガンダ化して大活躍!ってのは燃えるものがあるかもしれんとちょっと思った。
164名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 02:54:10 ID:Xsem1WMc
たしかに。スレタイは「〜召喚されたら」だったね。
まぁゼロの使い魔好きの感想ってことで流してくれ。
165名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 03:04:42 ID:oDlSNR28
本来はどろろが持っていた役割をルイズやシエスタが彼女達だからこそできる形で
こなしたら、ゼロ魔である意味はあるんじゃないかな
166ゼロの氷竜 ◆Mzy8Osstcc :2008/10/30(木) 06:43:19 ID:Lly2RMEq
誰もいない……

投下するなら今の内……

06:50ぐらいから……
167名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 06:44:49 ID:6KHEv91y
>>166
ふっふっふ…朝型投下狙うのは一人じゃないぜ?
支援だ!!
168名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 06:48:41 ID:+wB5xFV9
氷竜さんはマジに早起きだなあ。
支援。
169ゼロの氷竜 ◆Mzy8Osstcc :2008/10/30(木) 06:50:36 ID:Lly2RMEq
ゼロの氷竜 八話

桃色がかった金髪を持つ少女が、あの誇り高い少女が、あの驚くような努力を積み重ねて
きた少女が、使い魔召喚と契約、二つの魔法に続けて三度目の魔法を成功させることを、
燃えるような赤毛と紅玉のような瞳を持つ少女、キュルケは確信していた。
だから不安に表情を曇らせることも、机を盾にすることもない。
しかしその確信は、ことのほか容易に、つい先刻教卓の上に置かれていた石と同じく、や
すやすと打ち砕かれた。
耳をつんざく爆音に驚かされる。
何故なら、それは石ではない何かに姿を変えるはずだったから。
驚きは思考を奪う。
そして本来行われるべき思考とは違う、第三者の視点に切り替わってしまった。
実際には声を発する間もなく突き刺さるはずの石の欠片を、キュルケの瞳はゆっくりと追
いかける。
視界を占める割合を徐々に大きくするそれを、キュルケはよけるでもなくただ見つめてい
た。
一体どういった力が加わったのか、平たい面を天井に向けた半球状の石は、恐ろしい勢い
で回転していた。
瞬きほどの短い時間で、間近まで迫る石。
向かい来るのはキュルケの顔。
鋭さを一部にのぞかせるその石は、瞳に当たれば失明を免れず、顔に当たればどのように
切り裂くのか。
鈍い傷口ほど、傷跡は醜くなる。
傷で済めば、運が良いのかもしれない。
そこまで理解していながら、キュルケの体はよけようともしない。
石が当たる直前、キュルケが出来た行動は歯を食いしばることと、きつく目をつぶること
だけ。

爆音が聞こえてからほんのわずか後、タバサの意識もキュルケと同じように、別の時間軸
に切り替わっていた。
いやにゆっくりと、回転する石が視線の先を飛んでいく。
学院の内外を問わず、唯一友人と呼べる人間の頭をめがけて。
石を防ぐ為に踏み出そうという意識も、防ぐ為に手を出そうという意識も、想起させるほ
どの時間の隙間は存在しなかった。
極端に視野が狭窄し、石とキュルケの姿しか認識できない。
目の前に広げた手のひらほどの距離が、考えを進める間もなく縮んでいく。
ふと気付けば閉じた手のひらほどの距離となり、瞬きを挟む隙間もなく、指の本数が基準
となる。
だが狭まる距離が指何本分になるか確認する間もなく、石はキュルケの目前に迫っている。
友人を守る猶予が、蝋燭の炎のように吹き消されていた。
タバサが出来たこと、それは誰かの白い手が、驚くほどの速度で友人へ向かう石を受け止
めたということだけ。

不安を集中によって押し殺していたルイズは、ルーンを唱え終わった瞬間に目を見開き、
教卓に乗せられていた石へと杖を振り下ろす。
それは、石ではない何かに変わるはずだった。
青銅や鉄、それどころか砂や粘土でも構わない。
ブラムドを召喚したことで、自分には変化が起こっているはずだ。
不安の中で、ルイズは杖へ全ての力を込めた。
結果として、それは災いをもたらす。
今までと何の変化もない反応をする、という災いを。
爆発した瞬間、ルイズは何一つ出来なかった。
爆風で吹き飛ばされ、後頭部を黒板に打ち付けること以外には。
170ゼロの氷竜 ◆Mzy8Osstcc :2008/10/30(木) 06:51:12 ID:Lly2RMEq
爆風で吹き飛ばされる直前、シュヴルーズは温かな笑顔を浮かべていた。
爆風で吹き飛ばされる瞬間、シュヴルーズは温かな笑顔を浮かべていた。
爆風で吹き飛ばされた後も、シュヴルーズの笑顔は何一つ変わっていなかった。
なぜなら、ルイズの魔法が爆発を呼ぶことを知らなかったから。
そして、呼び出した使い魔が恐ろしく強力だと聞かされていたから。
元々体を動かすのが得意ではないにしても、その体は何の反応も起こさなかった。
笑顔のまま吹き飛ばされ、後頭部を床に打ちつける。
腰の前で合わせた手も、温かく見守る表情も、何もかも変わることなく、シュヴルーズは
意識だけをなくしていた。
その傍らで、ルイズは意識を失うことなく、ただ後頭部に走る痛みに耐えていた。
不意に、後頭部を抑えたルイズの手を離させる誰かが現れる。
誰か確認する必要もない。
記憶が色あせるほどの時間も経っていない。
ルイズの想像した通り、その手はブラムドのものだった。
傷の状態を確かめたブラムドは、それが大した怪我ではないことを確認する。
安心したブラムドは、一方からの騒ぎに気付かされた。

入り口近くにまとまっていた使い魔たちが、爆音のせいでメイジたちの制御から外れてい
る。
割れた窓を目指そうとする、飛べる使い魔たち。
臆病であったのか、混乱して暴れる使い魔たち。
本能を刺激されたのか、他の使い魔を食おうとする使い魔たち。
状況を収拾するはずのメイジたちだが、昨日の今日でどれだけ使い魔のことを理解できる
だろう。
経験のなさから悲鳴を上げるか、慌てふためくばかりだ。
その様子を確認したブラムドはルイズの耳を塞ぎ、加減をした魔法を解き放つ。
『竜の咆哮(ドラゴンロアー)』
ブラムドが元々暮らしていたフォーセリア世界、その起源は一体の巨人から始まる。
世界そのものを生み出した巨人に名をつけるものはなく、それはただ始源の巨人と呼ばれ
た。
始源の巨人の死により、フォーセリアの大地、フォーセリアの神、そしてフォーセリアの
竜は生み出される。
フォーセリアの神が火や水や風や土、それらが司る力を精霊として分化するより以前、神
と同じく始源の巨人から生まれた竜は、その身に様々な力を宿している。
炎によって傷つくことのない体、口から放たれる炎のブレス、鉄の剣を弾くほどの強靭な
鱗、そして魔力のこもる咆哮。
聞くものの心を乱し、恐怖を植えつける。
時にその心を砕き、狂わせ、死をもたらすこともある。
しかし弱く弱く加減したその咆哮が、瞬間的に教室内を満たす。
混乱していたものたちが、その声を聞いて逆に心を静める。
強者への畏れが、心を冷やす。
爆音で我を失っていた使い魔たち、それに慌てていたメイジたち、その全てがブラムドの
咆哮によって我に返る。
ブラムドが落ち着けたルイズ、そして混乱にいたっていなかったが、運よくその魔力から
逃れたタバサ以外、メイジと使い魔を問わず混乱していた教室は、改めて静けさを取り戻
した。
171ゼロの氷竜 ◆Mzy8Osstcc :2008/10/30(木) 06:51:57 ID:Lly2RMEq
一部の生徒たちがシュヴルーズを起こした後も、教室内は静まり返っていた。
常であればルイズへ罵詈雑言が投げつけられるところであったが、主を守護する使い魔の
姿に口出しできるものはない。
何より、昨日ブラムドが召喚されたとき、その威容に畏れを抱かなかったものもいないし、
つい先ほどオスマンから宣告されたこともある。
安易に触れることなど、出来はしない。
意識を取り戻したシュヴルーズは、マリコルヌの制止を聞かなかった自分を恥じているの
か、特にルイズをとがめることはなかった。
ただ、教卓近辺の惨状を放置するわけにはいかなかったのだろう。
爆発の衝撃で傾いてしまった教卓の片付けや、倒れてしまった最前列の机を直すことなど
をルイズに指示し、午前中の授業の中止を生徒たちに告げた。
教室を出る際、ルイズへにらみつけるような視線を投げる生徒も幾人かはいたが、怪我人
らしい怪我人もなく、使い魔が多少暴れた程度で済んだためか、それ以上のことをするも
のはいなかった。
ルイズもまた普段通りとはいかず、口の端を引き絞りながら眉根を寄せ、破片の飛び散る
床をねめつけるだけ。
タバサに続き、最後に教室を出ようとするキュルケはブラムドへ先刻の礼を言おうとする
が、その様子に気付いたブラムドは視線を合わせながらかすかに首を横に振る。
確かにそれを今この場でする必要はない、気付かされたキュルケはブラムドに対してわず
かに頭を下げ、無言のまま教室を後にした。
やがて足音が消え、教室内に沈黙が落ちる。
ブラムドは教室を離れた風を装う誰かと誰かの気配を感じながら、ひざまずいてルイズへ
と声をかけた。
「ルイズ」
その一言が合図であったかのように、ルイズはブラムドをかき抱き、声ならぬ叫びを上げ
る。
集中して杖を振り上げたとき、ルイズには一片の希望があった。
それは、途轍もなく強力な使い魔の召喚、そしてその使い魔との契約、二種の魔法を成功
させたことで、十年以上にわたる失敗の積み重ねを少しずつでも取り返せるのではないか
というもの。
その希望は、キュルケが退避しようともしなかった理由と全く同じもの。
諦めかけていたルイズの前に垂らされた、ブラムドという名の蜘蛛の糸は、紐よりも縄よ
りも、鋼鉄よりも強靱に見えた。
だがその蜘蛛の糸は、天上へつながってはいなかった。
ルイズに残されていたただ一つの希望は、高所から落とされた陶製の人形と同じ運命を辿
る。
少なくとも、ルイズにはそう思えた。
強大な使い魔を従えながら、一切の魔法を使うことのできない主。
使い魔との契約を済ませ、使い魔へ畏怖と尊敬を覚え、使い魔に相応しい貴族たらんとし
たルイズにとって、それは目標にはなり得ないものだ。
堰を切ったかのように止めどなく涙を流し、その身の全てで叫ぶ。
しかしその泣き声は、赤子のそれとは違う。
生まれ出でてすぐ、何もかもがわからぬままにただ助けを求める泣き声ではない。
生きる喜びを知り、生きる苦悩を知る、一個の人間の嘆きの声だ。
嘆きは言葉となり、言葉は単語となり、単語はさらに分解される。
「ぶっ、ぶら、むどっ!! ……わっ!! わった、わったしっ、きぞくっ……きっぞ、くに
なれ、ない!?」
ブラムド、私貴族になれない?
ほんの一言が、幾多の音に変わる。
それは、まるで涙の雨音のようだった。
172ゼロの氷竜 ◆Mzy8Osstcc :2008/10/30(木) 06:52:39 ID:Lly2RMEq
長いような、短いような。
計るもののないその時間は、やがて終わりを告げる。
喉をしゃくり上げるルイズの耳元で、ブラムドが話し始める。
「ルイズ、お前は魔法を使うことができる。絶対にだ」
ルイズは泣き止みつつも、まだ返事をすることができない。
ブラムドへ絶対の信頼を置くとはいえ、先刻の衝撃から立ち直るにはもう少しの時間が必
要だろう。
「なぜお前の手に系統の魔法が乗らぬか、その理由を知らねばならん」
落ち着きを取り戻しつつあるルイズをいったん離し、ブラムドはその目元を流れる涙を舐
める。
頬をくすぐるその感触に、ルイズは思わず笑みを浮かべる。
「それができるのは、我しかおるまい」
「どっ、ど、うやって……?」
いまだ少し、声を操りきれないルイズが問う。
「この学院で、一番系統の魔法を知るものはオスマンであろう?」
ブラムドの問いに、ルイズがうなずく。
「なればオスマンに話を聞くしかあるまい」
「じゃぁ、学院長の部屋へ案内するわ」
その言葉に、ブラムドは首を横に振る。
「ルイズ、この状況を作ったのはお前だ。シュヴルーズの言うように、片付けぐらいはせ
ねばなるまい?」
言われて見回すルイズは、改めて惨状に気付かされる。
最前列の長机はいくつか倒れ、教卓は衝撃で傾き、爆発した石の欠片は四方に散らばって
いる。
「確かに、そうね」
「しかし、その細い腕ではできぬこともあろう。ルイズ、これが我の世界のゴーレムの一
つだ」
ブラムドは手に持ったままだった石を見せ、それにマナを通していく。
『石の従者(ストーン・サーバント)』
手から落ちた石の欠片は、その身を膨らませていく。
ブラムドよりも頭一つ分ほど小さなルイズ、それよりもさらに頭一つ分ほど小さな人型と
なったゴーレムに、ブラムドはルイズの知らぬ言葉で命令を下す。
『(倒れた机を他と同じように直せ)』
おそらくルイズ一人では手に負えない長机を、ゴーレムは軽々と元に戻していく。
大きさに似合わぬ力強さを、どこかほうけたような表情で眺めるルイズに、ブラムドが先
刻できなかった問いを口にする。
「ルイズ、お前はキュルケが嫌いか?」
ブラムドの口から不意に出た名前に、ルイズは不機嫌そうな顔を隠さない。
「嫌いよ」
「何ゆえだ?」
「あの女は、ずっと私を馬鹿にし続けてきたわ!! 魔法の使えないゼロだって!!」
先ほどと違い、悲しみではなく怒りにその顔をゆがめながら、ルイズは数ヶ月前までの出
来事をブラムドへ伝えていく。
「私が落ち込んでいるときに限って、くだらない挑発をするのよ!? 私はあの女と違って、
男といちゃついている時間なんかないのに!!」
ルイズの言葉に、ブラムドは笑みを浮かべながら得心する。
……なるほど、素直ではないのだな。
「ルイズ。我の言葉を聞いて、今一度思い返してみよ。お前ならば、我の言いたいことが
わかるであろう」
その言葉に不思議そうな表情を浮かべながらも、ルイズはブラムドの言葉を待つ。
「キュルケは他の連中と違い、机の下へ隠れはしなかった」
目を見開いて驚くルイズの頭をなぜ、ブラムドは扉へと向かう。
「では、食堂でな。お前がいなくては、我は飢え死にしてしまう」
その一言に、ルイズは頬を赤く染める。
それを見て微笑みながら、ブラムドは教室を出た。
外に出たブラムドは、扉の横に予想通りの人物がいることを見て取る。
少し頬を赤く染める燃えるような赤毛の少女と、友人の顔を伺いながらわずかに微笑んで
いるような空色の髪の少女。
ブラムドは二人に深く頭を下げ、二人もまたその意味を正しく理解する。
173ゼロの氷竜 ◆Mzy8Osstcc :2008/10/30(木) 06:53:25 ID:Lly2RMEq
ブラムドの投げかけた最後の言葉に頬を染めながらも、ルイズはその優秀な頭を働かせる。
……キュルケは他の連中と違い、机の下へ隠れはしなかった。
それは実技を促したキュルケの言葉が、挑発ではなかった証だ。
だが、とルイズは思う。
今までずっと挑発を繰り返してきたのは何だったのか、と。
ゼロと呼ばれ、肩を落としていたときに限り、キュルケは話しかけてきた。
そう、キュルケが話しかけてきたのは落ち込んだときだけ。
思いかえしてみれば、キュルケに挑発された後は落ち込むことも忘れていた。
ブラムドの言葉を受けて尚、キュルケの行動の意味が理解できないほど、ルイズは鈍くな
い。
…………まさか!?
ルイズはキュルケの行動の真意に気付いた瞬間、言葉にならないほどの衝撃を受ける。
キュルケはシエスタと同じく、自分を励ましてくれていたのだと。
途端に恥ずかしさに頬を染めるルイズだが、彼女を責めるものはいるはずもない。
あからさまな拒絶の言葉や態度を投げつけられていた、キュルケ当人も含めて。
ルイズとキュルケは、ある意味で似たもの同士だ。
どこか素直さに欠けるという面で。
だからこそキュルケは友になって励ますことではなく、敵となって挑発することを選んだ。
ルイズはいまだ、キュルケの性格にまでは思い至っていない。
しかし自身のしてきたことが、無礼きわまることと理解するには十分だ。
恥ずかしさにルイズが首元まで赤く染めたとき、教室の扉が開く。
入ってきたのはキュルケとタバサだったが、ルイズはキュルケしか目に入らなかった。
扉の横でブラムドとルイズのやりとりを盗み聞きしていたキュルケは、自分が今までして
きたことが遠回しな励ましであったと知られ、恥ずかしさに頬を赤く染めている。
ルイズもまた、キュルケの今までの態度が悪意を持ってのことではなかったと知り、顔を
首元まで含めて赤く染めていた。
それでも素直さの足りない二人の少女は、互いの顔を見ながら口を開くことがない。
ルイズがキュルケの顔を見やれば、キュルケは恥ずかしさでうつむいている。
キュルケがルイズの顔を見やれば、ルイズもまた恥ずかしさでうつむいている。
一瞬、二人の視線が交錯すれば、二人は慌てて顔を背けてしまう。
素直になれない不器用な態度に、一人蚊帳の外にいるタバサは笑いをこらえるのに苦心し
ていた。
ルイズは考える。
……シエスタに言ったようにありがとうって言えばいい。
……でも散々罵声を浴びせておいてそれでいいの?
……男がどうしたなんて言ったこともあったわ。
……事実だとしても胸のことを言われたこともあったわね。
羞恥が焦燥を呼び、焦燥が混乱を生み出す。
キュルケもまた考える。
……散々挑発しておいて、あなたのためだったのよなんて言えるわけがない。
……私は気にしていないから、あなたも気にしないでなんて押しつけがましいにもほどが
ある。
……男がどうしたなんて言われたこともあったわ。
……事実だとしても胸のことを言ったこともあったわね。
結局、混乱に至る過程は大差がない。
収拾がつきそうにない二人を眺めながら、タバサが吹き出しそうになるのをこらえ、仕方
なしに水を向けた。
「食事に間に合わなくなる」
その言葉に促され、先に口を開いたのはキュルケだ。
「ル、ルイズ!!」
さまよっていた二つの視線がかみ合う。
その視線の持ち主の顔は、どちらもはっきりとわかるほどに赤く染まっていた。
「仕方がないから手伝ってあげるわ!!」
キュルケはルイズに何か言われたわけではない。
何が仕方なしなのか、とタバサは思った。
だが、混乱したルイズは思い至らない。
「じゃ、じゃぁ掃除道具を持ってくるわ!!」
二人の少女のちぐはぐなやりとりは、普段表情を浮かべることの少ないタバサを、しっか
りと微笑ませるに十分な威力を持っていた。
174ゼロの氷竜 ◆Mzy8Osstcc :2008/10/30(木) 06:55:05 ID:Lly2RMEq
以上です。

支援感謝。

登録もどなたかお願いできればと思います。

時間がかかったのは話の流れが決まらなかったのであって、
K・C・マルトーとか書いてたからじゃないです。

次は早めに。
175名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 06:59:30 ID:j5o/7dv5
氷竜の方、朝からお疲れ&GJです
176名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 07:04:55 ID:exGcpXur
徹夜明けの身に、素晴らしい清涼剤だ
GJ!
177名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 08:23:56 ID:G+blQjx7
GJ!毎度楽しみにしてます。
ところで、「GIFT」ってどこに投下されてるんだ?なんかwikiに同じのが二つ載せられてたんだが。
178名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 08:27:44 ID:/RRAO+7D
避難所のSS投下スレだね。
179名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 10:25:33 ID:G+blQjx7
>>178どうも。
確認してきました。
180名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 11:09:37 ID:eruyRQwm
>>174
朝から待ち人来たる、良いもん見させて貰いました。
しかしK・C・ マルトー、あれの長編も読みたいな、シエスタを単独でDAKKANするマルトーとか。
181名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 11:18:56 ID:pV1hJoG9
マルトーさんの旧名がスティーブン・セガ(ry
182名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 13:05:26 ID:b2u7fJCJ
>>180
私も読みたい
ここでやるとさすがにスレ違いになってしまうから文句が出るかもしれないけれども

避難所なら文句言う人はいないと思う
183名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 13:10:59 ID:Fi113/Lc
少し前に出たジャガーさん召喚書きたいが・・・
うすたワールドを文字にすることは不可能だと悟った
184名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 13:13:15 ID:YIIYg+Sg
不可能とまではいわんだろうが、まぁ、かなり高いハードルではあるだろうな。
あのシュールな空気を書ききる技量があれば何だって出来る気がするぜ……。
185名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 13:33:25 ID:zo2Qt3e1
まあハト魔神召喚よりはハードル低いんでない?
186名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 13:37:00 ID:jdbLNQmA
シュール、『伝染るんです』のかわうそ一行を喚んで『虚無るんです』・・・。
文章化は無理か。
187名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 13:44:06 ID:zX9SgMt9
>>185
絶対バリアーには通用せん!
188名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 14:53:38 ID:aHzfqyBO
とりあえず召喚シーンだけ書いて……


続きはこれから考える
189名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 14:54:22 ID:mRnf4sw3
>>183
ということは、このスレ始まって以来の漫画投下スタイルか!
190名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 16:14:52 ID:G+blQjx7
お絵描き掲示板にならいくつかネタ漫画があるぞ。
191名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 16:38:22 ID:Y7Sj/Koh
吉田戦車図柄のヴァリエール一家……ヤベェ、すっげぇ見てェ!!!
192名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 16:42:36 ID:bROnur1r
えの素作画で変態集団となった魔法学院の面々が見たい
性転換王女にババ専ギーシュ、いまだ男として現役の校長
そして神業のムチ使いルイズ
193名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 16:46:49 ID:HPKHFWBA
ヘイト乙って言うべきだろうか
194名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 16:54:22 ID:mRnf4sw3
つまり、ヨネコ絵ですね。

サイトに腕を切り落とされ、婚約者まで奪われた上に
レコン・キスタのスパイだったという汚名を着せられた元子爵の復讐劇!
195名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 17:11:39 ID:jdbLNQmA
学長室で戯れるかわうそとオスマン。それを覗き見、オスマンに嫉妬するロングビル。
稼ぎ時だというのに客の無い魅惑の妖精亭。訝しがるスカロンのもとに様子を見に行ったジェシカが駆け込み叫ぶ!
店の前にやっとこを持った動物が!?
196名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 17:30:11 ID:JEa2iAwW
まとめの方
そろそろ整理せんきゃだめかね?

五十音順がそろそろバラバラに
197名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 17:33:09 ID:+8M5zNNN
ん?今見てきたけどだいたいは普通にあってると思うけど…
198名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 17:37:55 ID:JEa2iAwW
サ行とあともう何行か
最後の方の順番並んでないんだよな
199名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 17:41:13 ID:i4AjBKM9
氷竜の方、乙です。支援!!

ところで竜の咆哮って魔法の部類でしたっけ?
200名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 18:07:41 ID:fKpASLMT
ゼロの氷竜 リプレイってどんな雰囲気なんだろうね。
201名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 18:07:52 ID:zo2Qt3e1
>>199
魔法ではないがドラゴンブレスと同じ「魔力のこもった行動」になります
「呪い」に近い扱いでもありますね
ましてやエンシェントドラゴンともなれば
202名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 18:44:09 ID:/3YJEmVN
これがマイセンならサニティが・・・
マイセンって神聖魔法つかえるよねたしか
203名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 18:52:39 ID:d0JV8K/G
>>200
ルイズの中身が男性(心は15歳)ってのはカンベンしてください。
204名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 19:12:16 ID:MVKcKlZT
GM 『これを売って道中の資金にしてください』といってアンリエッタ王女はルイズに自分が嵌めていた大きなルビーの指輪を渡した。知力でチェック……はいいか、トリステインの国宝、水のルビーだよ
ルイズ ふーん、国宝って売りにくそうね。正直微妙だけどまあ適当に恐縮しつつ喜んで受け取ります。
ギーシュ まあいいじゃないか。そうそうGM、これ本当に売ったらいくらになるの?
GM え、売るの? 国宝だからそれなりのルートを知ってないと換金はできないよ
ギーシュ それならフーケさん(NPC)に貸しがあるし働いてもらおうよ。大体取り分はいくらかな
GM (そういやそんなのもいたな。殺すつもりだったけどなんとなく生かしていたけど失敗だったな)おーけー、盗品じゃないし仲介料3割で引き受けてくれた。
GM んで、えーと価格は……げ、大きさに応じて指数計算で金額上がるのか! ええっと……さ、さんじゅうさんおくエキューだね……流石に無理だコレ(助かった……)
ルイズ あっそう。そんなにいらないから砕いて売るわ。ギーシュ、錬金でハンマー作って砕いて
ギーシュ りょうかーい。まあ僕は貧乏貴族だから名残惜しそうに砕きます
GM (国宝ぶっこわしよったー!? バブリーズ再来かよ!)

こんなかんじ?

205名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 19:14:04 ID:ojsAGOIr
>>204
うーん実にTRPGリプレイ
206名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 19:21:31 ID:XtwvCugy
>>204
この感じ好きだwww
こんばんはー。投下よろしいでしょうか?
よろしければ投下は7時30分から。恐縮ですが、支援の方お願いいたします。
208名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 19:27:45 ID:PQ1S4HXG
リアルタイムに遭遇できるとは、支援。
209名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 19:28:24 ID:NEgn2Ema
支援

>>204
>アルビオン王家にトリステインの正使であるとの証明ができなくなりました
>虚無の魔法を習得できなくなりました(他のルビーを使えば可)
>四つの四の一つが壊れました

にアそれを うりとばすなんて とんでもない!! ましてやぶっこわすなんて!!
19.シヴァリング・ブルー

へー?何さそれ。ああ、もういい。もういいよ。魔法とか使わないから。
使わないからぶん殴って終わらせようじゃないか。死ね。とりあえず今すぐこの場で死んじまいなぁ!


イザベラの怒りは際限がなくなっていく。ノクターナルに言った。

「何なんだいあんた!あたしの邪魔ばかりしやがって!
そんなに死にたいなら、お望み通り殺してやるからそこをどきな!」

『常闇の父に創られし我は、何があろうと死ぬ事はない。あきらめよ、定命の者よ』

「すごぉい。すごぉい自信じゃあないか。そうかいそうかい。だからそんなに陰気なんだね?
あははははははははははははは。良いよ。今すぐ私が殺してやるよぉぉぉぉ!」

イザベラはノクターナルに詰め寄り、一撃を加えようと横っ面に殴りかかった。
しかし、それはスルリと影の女王の顔を抜け――イザベラは彼女の影の中に入る。
あまりに暗すぎて自分の色が変わってしまう影に。

『我が父を嘲るか?ならば逝け。シシスの元で許しを請い願うのだ』

淡々とノクターナルは言ったが、その周りにはいつも以上に暗くなっていた。
ノクターナルの影が彼女を包み込む――顔以外が影に浸かったイザベラは言った。

「これが、なんだってんだい…!」

力が解放され、影が弾けてイザベラが抜け出した。真っ赤な目のイザベラは、
今度こそノクターナルを殴りつけようと駆けた。
赤い目の光が、大気に残るほどの速さで音速の一撃を放つ。
早く、速く。このひどくいらだたしい相手を破砕するために。

ノクターナルは盾で拳を受け止めようと構える。
彼女は理解していなかった。確かに、これは素晴らしい魔法効果が付呪された盾だ。
おそらく世界で最も使いたくなる盾の一つと言えるだろう。

モロウウインド原産の、黒檀鉱石を使わずに、ここまで凄まじい武具を造り出せるデイドラは、
オブリビオン広しといえども、数えるほどしかいないだろう。かの鉱石が付呪に最も適しているのだ。
しかし、これを闘技場で使ったカジートは負けた。何故か?単純である。
闘技場では魔法より肉弾戦が好まれ、そしてこの盾は格闘戦においては、
ただの「鋼鉄の盾」だからである。タムリエルの武具は、
壊れたら魔法効果が発揮できなくなる。修理すれば大丈夫な話だが、
ノクターナルはアーティファクト(デイドラ王が素材から造ったマジックアイテム)
でもない品の修理の仕方なんて、当然ながら知らない。
やはり、どこまでも抜けているデイドラ王であった。

『な…』
「驚くところかいっ!?」

思わずフーケがツッコミを入れる。灰色のイージスは右腕の一撃で破砕され、
呆気にとられて実体化したままのノクターナルは、イザベラの左の一撃を受けて吹っ飛び船から落ちた。
「なぁ、船長」
「何だ?フーケ」
「今まで無茶聞いてくれてありがとさん。ちょっち逝ってくるよ」
「ああ、死に水はとってやれんがな」

笑って船長は見送る。いくら無謀でも何もせずに死ぬよりは何かして死んだ方が誇れるものだ。
精神力を全て使い、3メイルの鋼鉄製ゴーレムを20体程造りだす。

「へぇ、陰気女の次はお人形遊びかい――て、え…シャル?」

イザベラの視界の片隅に、怯えた妹分の顔が見えた。
びくん、とタバサの心臓がはねた。何でよりによってガーゴイルでも北花壇騎士七号でもなく、
昔の呼び名で呼ぶのか。おそるおそる、キュルケに抱きかかえられたままタバサは見た。

「何であなたがここにいるの?学院にいないと変じゃない」

笑った。昔見た仲の良かった頃の微笑みだった。
タバサが無言なせいか、イザベラは悲しそうに床に座った。

「そうだよね。私お姉ちゃんなのにシャルに酷いことばっかりしたもんね。話してくれなくても仕方ないよね」

ひっく、と泣き出した。周りの連中はどうしたものかと様子を見守る事しか出来ない。
皆がおそらくそうなのだろう。キュルケに抱えられたタバサを見た。
キュルケが心配そうにタバサの顔をのぞき込む。怖がっていた。
だから代わりにキュルケが話す事にした。

「ええと、その――蒼い死神さん?」
「イザベラで良いよ。シャルロットのお友達なんでしょう?」

泣きながらイザベラは言った。キュルケはタバサを見る。まだ震えている。

「この子。学院じゃ『タバサ』って名乗っているの。その、イザベラはシャルロットのお姉さん?」
「従姉よ。駄目じゃないシャル。ちゃんとガリア王家の留学生として名前を言わないと」

少し経って後。

「待てぇぇぇぇぇい!?」
『話を聞こうぞ。先ほどは見事なり』

一瞬の間の後、フーケ以下総動員でツッコミを入れる盗賊ギルドの面々と、
いつの間にやら戻って、怯える青い風韻竜の上に乗っかって欠伸をするノクターナルであった。

「あたし、精神力無駄使いかい?」
「ていうか姐御!早くゴーレム消して!テファ様の風石がなくなっちまうから!!」

格好良い見せ場が台無しのおマチさんであった。明日になるまで精神力は消え去ったままの様子である。
先ほどから通信が入らない事に不安を感じつつ、
グレイ・フォックスは空賊に見せかけた王党派の最後の船、
『イーグル』号で賊の真似事をしていた。

皇帝陛下以下三人は捕まって同じ所に入れられた様だ。
助ける――意味も無いか。その内あの桃色髪の少女と陛下がどうにかするだろう。
あの娘を見ると、妻の若い頃を思い出す。何事も決してあきらめようとしないあの高潔さは、
とても尊敬出来る物だ。誰もが出来ることではない。実力が伴えばもっと良い。
おそらくそろそろ目覚めるだろう。テファに会わせりゃ一発だが。
そんな事を考えながら、巡回しているフリをするグレイ・フォックスだった。


杖と隠していたナイフを取り上げられた三人は、
さてどうしたものかと船室を見渡した。
色々積んであるが、盗まれても良いのだろうか?
マーティンはそんな事を考えながら、荷物を物色し始めた。

「ねぇ、マーティン。鍵開けの呪文とか使えないの?」
「ん。あー使えない事はないけど、しない方が良いと思うな」

解錠の呪文も、物質の状態を魔法で変化させるという性質からか、
『変性』系統としてタムリエルでは認知されている。
しかし、この呪文は鍵のかけ直しが出来ないのだ。

「もし発見されたら私たちは終わりだからね。それに、どうも彼らが賊だとは思えないんだ」

いやいや、賊でしょどう見ても。そうルイズは思うが、マーティンはそうではないと真顔で言った。

「その割には統率が取れすぎているんだ。普通賊というのはもっと駄目な物だからね」

タムリエルの東に位置する、独立政府のモロウウインド。
そこは現在賊が乱れて、とても治安が悪い状態であるという。
ただでさえ、かの地で信仰されていた三人の現人神が死に、
自分達が信仰していた存在が消え失せているというのに、
異端な邪教として知られていた「ネレヴァル」だか、
「ネレヴァリン」だかの宗教団体が、大きく勢力を伸ばしているからだ。

彼の地は現人神の後見人として三人の「良いデイドラ」(人の話を聞くだけマシの『良い』)である、
アズラ(怒らせたら人生あきらめるしかない)・ボエシア(シロディール『では』極悪として知られる)
・メファーラ(基本的に吐き気を催す邪悪)の三デイドラ王を奉っていたが、
今はそれの体制すらマトモに維持出来ないらしい。

マーティンがクヴァッチにて働いているとき、
以前なら、絶対に九大神教団には来ないであろう、
ダークエルフ(東の地方は彼らの故郷なのだ)が現れて、
エイドラの神々を信仰したいと言い出したのだ。

あの地で何が起こっているのか詳しくは知らないが、
そういう混乱期にこそ賊というのは現れるものだし、
しかもこの集団は統率が取れすぎている。
何かおかしいと、さっきから観察していてマーティンは思った。
「まぁ、あちらから何か行動を起こすだろう。おそらくは」
「本当にこういうとき、あなたって楽観で物を見るわね」

「いやいや。ルイズ。もし私たちを殺すならさっさと殺すさ。
彼らは身代金と言ったんだ。しばらくの間は命を保証されるよ」

「早く届けに行かないといけないのに…まぁ、いいわ。ところでマーティン。『ペリナルの歌』って知ってる?」

聞いた瞬間、マーティンは思いっきり咳き込んだ。

「ちょ、ちょっと。どうしたのよ?」
「い、いやぁ、その」

悪名高きペリナル。アイレイドに支配された人間を救うために、
神が遣わしたと言われる彼は、物語によると、
決闘と言いながら、最初からアイレイドの武器や、
魔法がほぼ効かない無敵の防具に身を包んで勝ったり、
ちょっとした癇癪で街どころか国一つ滅ぼしたり、
新しく仲間になったスカイリム人との宗教観の違いで、
そいつの足下に唾吐いたり…等々。
とりあえず、良い所より悪い所の方が探しやすい英雄なのだ。

ハッキリ言って、何処ぞの鬼畜王の名を持つ槍の人が、聖人に見える程の極悪人である。
尚、この存在が着ていた防具は未だにシロディールに残っているが、
まぁ、こんなのが着ていたんだ。あまり着ない方が良いのかもしれない。

「『誰か』に聞いたの。オカートと話していた人と多分同じよ。
深淵の暁期に、人間が反乱を起こして第1紀が始まったって」

なぁ、友よ。君はまた良からぬデイドラ王達とつるんでいるんだね?
ヴァーミルナかい?彼女の領域であるクアグマイヤーは危ないから、
さっさと逃げた方が良いと思うよ。私がデイドラの秘宝を持ってきてくれと、
言ったのが悪いと分かってはいるけれどね。
そしてここがどこか、夢枕にでも立って教えてくれると嬉しいんだが。

はぁ、と思いながらマーティンは、ルイズにちゃんとした歴史をかいつまんで教えるのだった。
まず、深淵の暁期の後に神話期があり、そしてそこからアイレイドが第1紀を始め、
途中から聖アレッシアを名乗る人間が代わりになる。そしてその後アレッシアの子孫、
レマンが指揮を執るレマン朝の第2紀が始まり、レマン三世の代の時に、
暗殺組織『モラグ・トング』が暗殺を行い、東方のアカヴィリ人が帝都を支配。
しかし約400年後、やはり『モラグ・トング』によって彼は暗殺される。
後続が政治を続けたが、数90後『闇の一党』(dark brother food)を名乗る組織に、
後継者の親族一同皆殺しにされ、その後400年間は群雄割拠の時代となった。

「…話が全然違う気がするけど」
「まぁ、あの人は結構いい加減だっただからね。そこが良いとも言えるのだけれども」

そしてその後ティンバー・セプティムが現れ、各地を制圧し、第3紀セプティム朝が来る――

「名前が同じですね。マーティンさん」
「ええ、まぁ親族ですし」

あははと笑い合う男二人。ルイズもついでに笑っといた。
冗談にしか聞こえない様にマーティンは言ったのだ。
当然ワルドにはジョークとして聞こえている。
『おー?竜の子は気付いたようだな。あの桃色にばれないように変えるのは苦労したぞ』

マーティンが思った通り、クアグマイヤー。『誰か』はヴァーミルナと共にいた。
ついでに、何故かパーカーを着た日本人までいる。
さらにいうと、さっきからバイアズーラバイアズーラと辺りがうるさい。

『しかし、お前も変な奴だなぁ。良いじゃないか。
デイドラになっても竜の子はお前を忘れる訳もないだろうに』

現在、ヴァーミルナは金髪ロングで白肌の小さい女の子の姿をしている。
決して吸血鬼ではないが、しかし、吸えない事もなさそうだ。
何故こんな姿をしているか。それはマーティンがここに来る少し前までさかのぼる。


平賀才人がノートパソコンを修理した帰り。
鏡を見つけて色々と試してみた後、ちょっと触ろうとした時だった。

『やめよ』

背後から声がするかと思えば、いつの間にやら暗い世界にいた。
あら?と思う間も無く、次々に怖い怪物達が現れる。
しかし――イマイチだった。

シロディールの英雄にして新入りのデイドラ王や竜神に頼まれ、
魔法のゲートの追跡を彼女は行った。
そのゲートにマーティンが入るように操作するために。

タムリエルの魔法の源に、
大きな関係のある彼女だからこそ出来る技だった。
ハルケギニアはそこではないが、
ある程度関係性が『何故か』あるのだ。

ヴァーミルナは、今回のルイズの魔法によって、
ムンダス世界の別の星に、生き物がいると初めて知った。

親父がぶらついていた虚無(宇宙)には、別の星が最初からあったのか。
そしてこの星は、おそらくエイドラでもデイドラでもない、
我々の知らない別の何かによって造られたのだろうと思った。

実際には、進化論に即して変わっていったのだが、
そんな事は考えた事もないのだから、分かるはずもない。

さて、剣と魔法の世界では、オブリビオン内のヴァーミルナの領域である、
夢世界「クアグマイヤー」は、この世で最も恐ろしいと評判である。
だが、それは全ての存在にとって、果たしてそうなのだろうか?

平賀才人は21世紀の人間であり、いわゆるB級ホラーというのも、
それなりに見慣れている。昨今のホラーの進化は目覚ましい勢いで、
はっきり言って、彼女の造る世界のそれは、
確かにリアリティこそあるものの、
どうもお化け屋敷という枠組み内でしか感じられず、
いわゆる心からの恐怖を味わう事ができなかった。
215名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 19:34:03 ID:mRnf4sw3
ハイペースにビックリ支援
さて、質問がある。もしあなたが夢の国の王になったとして、
悪夢を基本的にそこで演出しなければいけないとする。
さらに、数分に一回ガラリと世界を変えなければならないとして、
果たして、どれほどのレパートリーを作る事ができるか?

彼女は、知的な定命の存在が世に現れてから、ずっと夢を見させている。
そして、必ず怖がらせる事を至上の命題としてきた。
だからこそ、何を見たかを起きたときに忘れさせて見せているのだ。
もちろん、6000年以上生きている彼女はある程度のレパートリーがあるが、
しかし、それまでである。リアルに即した恐怖ではあるが、
そういった物を才人は、怖いと言うより気持ち悪いと感じた。

「一体なんだよ。何がしたいんだ?怖くもないし。キモチワルイだけじゃねぇか」

ヴァーミルナは、体の全ての箇所に剣が突き刺さった気分になった。
彼女の命題は、悪夢の中で人を『怖がらせること』である。
拷問も管轄内なのは間違いないが、それよりこちらの方が重要なのだ。

生きている間、毎日人は必ず眠る。そして眠っている間に彼女は夢を見せて、
怖がっている定命の存在を見て楽しむのだ。拷問はその延長線上な為、
はるかにこちらに重きを置くのは当然だろう。

それを全否定された。しかも強がりとかではなく、本当に素の状態で。
存在の意味を初めて完全に否定された彼女は、少々消えてしまいそうになった。

タムリエルに存在する、いわゆる神といえる存在全ては、
信仰によってその力を増す。それは即ち己の自信の増幅である。
信仰によって己を鼓舞される事で、力を手に入れるのだ。

しかし、今それを完全に否定されてしまった。
ああ、とうなだれて姿を現すヴァーミルナ。幸運にも、
彼女はその時才人好みの乙女の姿だった。

「ええと、その、ここどこ?」
『もういい。すぐ返す』

いやいやいや。と才人は何かやる気の無い上に、
体が消えかかっている彼女を止めた。

「もうちょっとさ。こう、なんつーの?怖いっていうのはこういうのじゃないの?」

と、袋から取り出したのは、PCの修理と一緒に買ってきたDVD。静かな丘として知られるホラー映画だった。

『なんだそれは?』
「DVDだよ。知らないの?まぁいいや。帰って一緒に見よう。きっと参考になるからさ」

ヴァーミルナの領域から帰って後、才人は『恐怖』に関する書籍・映画・ゲーム等を、
彼女に見せてみた。彼女からしてみれば、この上なく新鮮な物ばかり。
まるで、一年に一度のハロウィンの演出に悩むカボチャの王が、
初めてクリスマスを知った時の様に情報を集めた。

元々定命の存在を怖がらせる為に、様々な事について熱心に学んでいたヴァーミルナである。
文字の壁は、そこまで難しい物でもなかった。偶然タムリエル公用語は英語と同一語でもあったし。
217名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 19:35:20 ID:mRnf4sw3
支援
『しかし、ゾンビはいつでも使えるな』
「ですねー」

嗚呼、まさかまんま闇の福音にもなってくれるなんて。
軽いオタク気質の持ち主であった才人は、
この数奇な巡り合わせに感謝していた。
今度あの呪文教えてみよう。そんな事を考えながら。


『アカトシュとも仲が良いんだろ?タムリエル助けたんだから』

ふぁぁ、といきなり現れた虫食いのベッドに、ヴァーミルナは横になった。

「バイアズーラ!バイアズーラ!」

タマネギ頭の小さなエルフ種「ウッドエルフ」の青年が『誰か』に助けを求めている。
ショッピングモール内にいる、大量のゾンビに襲われていて、為す術なしの様だ。

「今更ですけど、助けにいかなくていいんですか?」

ウィラメッテのドリンクを飲みながら才人は言った。
その内生き返る。そう言って『オブリビオンについて』を読みふけるシロディールの勇者兼、
闘技場グランドチャンピオンであった。
それなりに、デイドラ王としての生活に楽しさを見いだしているようだ。

この存在がどのような存在なのか。それは人によって異なる。
もしかしたら戦士ギルドの長かもしれないし、メイジギルドのアークメイジかもしれない。
盗賊ギルドに所属していたかもしれないし、聞こえし者という謎の人物かもしれない。
実は悪名高きペリナルの生まれ変わりかもしれないし、いや、絶対違うからと否定するかもしれない。
もしかしたらそれら全てかもしれないし、全部違うかもしれない。
だが、それらは誰にも分からない。今の狂神が行ったのかも、その代わりに誰かがやったのかも。

『書いた本人に聞いてこいよ。というより教えてやろうか?新しいシェオゴラス』

遠慮しておく。というニュアンスの言葉を言って何かの呪文を唱えると、
シェオゴラスの体は、戦慄の島経由でシロディールへと戻った。

『…まぁいいが、従者置いていってるぞ?本当に駄目な奴だな。
ジャガラクも、何であんなのにシヴァリングアイルズを…いや、あんなのだからか』

「あはは…あのタマネギ頭って、何かこう変にむかつきません?」
『まぁ、アズラも困っているらしいからな』

才人は彼女らの存在の凄まじさを知ってから、多少敬語である。
二人はのほほんと、助ける訳でもなく眺める。彼女は夢をつかさどると共に、
拷問もつかさどっているのだ。だから自分の世界で、
苦しんでいる人間を見るのも大好きなのである。
そこら辺は、骨のジャックと大きく異なる点だった。
才人は、こういうもんなんだろうと思って見ていた。

「バイアズーラァァァァ!」

タマネギの悲鳴が聞こえる。クアグマイヤーは今日も平和に地獄だ。
彼は、この地で死んだ後に、いつものようにアズラの下へ行き、
蘇らせてもらえるだろう。何故そんな事が許されるのか?
それは誰にも分からない。知っているのはアズラだけだ。
「何か、英雄とか神様ってすごいけど、俺もなれんのかなぁ」
『覚悟はあるか?』

死体を処理していた闇の福音の目が変わった。全体が黒くなり、瞳が相対的に白く見えている。

「え?」

『覚悟だ。一度力を得て、それを使えば最後まで筋を通さないとならない。
それはデイドラであれエイドラであれ人であれ変わらない。お前はそれが出来るのか?
デイドラになりたいというなら、してやらんこともないが?』

才人は言葉が詰まった。吸血鬼の真祖なヴァーミルナは優しく微笑む。

『やめとけ。それで身の粉にして最後までやって、
結局気が狂って死んだ奴もいる。同じ轍(わだち)は踏むもんじゃないぞ?』

「…はい」

ふふんとヴァーミルナは笑う。地球の恐怖をキチンと才人的に理解してから自信を取り戻し、
タムリエル全土の夢事情は、以前以上に恐ろしげな悪夢が多くなったようだ。

『ところで、もう買ったのか?』
「勿論。いつもすいませんね軍資金もらっちゃって」

と、最新のゲームソフトを彼女に渡す。
駄賃として彼女が渡すのは、傷のない大きな宝石の類。
信者に頼んで持ってこさせた物だ。

『これか。深海のホラーミステリーは』
「うん。どんでん返しがおもしろくって――」
『言うな!楽しみが無くなる』

さて、と才人をちゃんと送り返してヴァーミルナは、
クアグマイヤーの一角に、焼けたホテルを造り出して、
そこのテレビに以前買ってきた、
いくつかのゲーム機の内一つを繋げる。
おお、おおお!?おお!おー…ラプチャーか。良いなこれ。

新しいネタ作りに余念の無いヴァーミルナであった。
最近の彼女のお気に入りは、赤い三角形頭の彼である。
拷問用にも丁度良いからだ。電気がどうやってくるか?
気にしてはいけない。基本的に領域内でのデイドラ王は万能なのだ。


投下終了。毎日悪夢みせてやんよ。但し起きたとき忘れるが。
と言われたときに思いついたネタでした。
ネタに走りすぎたでしょうか?一応前フリです。伏線張りつつおもしろく作りたいとです…
また何かあったら言ってください。戦慄の島の王子に狂気あれ。

ランスはゼス崩壊までしかしたこと無いから、戦国わかんないけど、
お互いがんばりましょーねぃ。
220名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 19:37:49 ID:6KHEv91y
皆さん支援本当にありがとうございます。
おかげでさるさん喰らわずに済んだです。
221名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 20:05:02 ID:5msIjzui
GJ!
222名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 20:08:41 ID:qd+RS3Go
主人公は狂気の神シェオゴラスになったのか・・・
マーティンに会いたくても会えないよな
九大神からすればシェオゴラスは邪神だし
223名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 20:18:38 ID:S3swRCqE
そんな二元論で語っちゃダメだよw
224名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 20:22:08 ID:6KHEv91y
>>221
ありがとうございます。投下後の何もない時の空気って、
とても重いんですよね。

>>222
さーて、どうでしょう?
オブリビオンについて
モリアン・ゼナス 著 では、
悪魔的な性質のデイドラは、

メエルーンズ・デイゴン、モラグ・バル、
ペライト、ボエシア、ヴァーミルナだったりします。

あれは九大神と言うより、モロウウインドでのお話ですよ。

>>223
でおっしゃられているように、色々見たら案外変わるかもしれません。
グッデイ。
225名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 20:24:13 ID:8eqX9OGL
さて、もしサンライズ勇者系が召喚されたらどうなるんだろう?
とくにエクスカイザーや、ファイバード辺り。
カイザーズとガイスターは体が無いだろうし、ファイバードは火鳥の体が……
226名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 20:31:47 ID:C/X8hHYL
ピンチクラッシャーとか
227名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 20:34:44 ID:j8gVhxrw
サイズの問題があるだろう
つ鋼鉄重装女子学生 桜花
228名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 21:02:01 ID:CcS11lTn
召還された途端に熱線乱射、水島探して三千里コースか……
なんかハルケギニアの危機じゃね?
229名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 21:22:47 ID:13GtKljy
えぇ、がんばりましょう…。
応援してます。
230名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 21:23:35 ID:13GtKljy
おっとsage忘れ失礼。
ギコナビ再インストしてたの忘れてた…。
231MtL:2008/10/30(木) 21:46:04 ID:iZk9fV2T
何予約が無ければ、二十二時から投下を開始しますー。
232名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 21:55:34 ID:6KHEv91y
支援です!
233MtL:2008/10/30(木) 22:01:29 ID:iZk9fV2T
マジシャン ザ ルイズ 3章 (47)マナ接続

最初に現れたのは、米粒ほどの大きさの輝きであった。
教皇が更なる力を注ぎ込むと、それは手鏡ほどの大きさまで拡大した。
そのくらいの大きさまで広がれば、光の向こうもはっきりとしてくる。
輝きの先、見えるは摩天楼。

「これが異世界……これが『世界扉』、ただ覗き込むではなく、行き来をするための虚無魔法……」
異界へと繋がっている世界扉を凝視しながら、感慨深げに教皇は言う。
そう、これが彼の目的のために必要不可欠な力であった。
今のこの狂ったパワーバランスを正し、迷える世界を導くために求めたものであった。
全てが終わった後に、指導者が必要とする力、
 ――そのはずであった。

「……?」

そのとき、教皇はふと世界扉の向こう側の景色に、何かがちらついて見えた気がした。
確かに今は夜空に輝く天を突くような摩天楼が映って見える。
だが、それに混じって一瞬別のものが見えた気がしたのだ。
彼は怪訝に思い、世界扉をもう一度よく見ようと一歩近づいた。

途端に
 それが
  反転した。

『向こう側』にある巨大建造物群を、映し出されていたはずの映像が切り替わり、突如として真っ暗な闇が映し出されたのだ。
はじめ教皇は呪文が途中で失敗して、扉の向こうの『こちら側』の景色が透けてしまったのだと思った。
だが、違うとすぐに気がついた。
見えているのは塗りつぶされたような漆黒、月光に照らされたヴェルサルテイル宮殿の景色ではない。
では何か? その疑問を確かめるために、教皇は更に一歩、足を踏み出した。

そして、彼が見つめる中、 『眼』が開いた。

「っ……!」

教皇が引きつった声を上げて、一歩たじろぐ。
彼の眼前、ギョロリギョロリと眼が動く。
世界扉の『向こう側』から、一つの巨大な眼球がこちらを見ていた。
突然現れた奇怪な眼球の存在に、教皇は圧倒される。
だが、変化はそれだけに止まらない。
眼球がまばたきをして、再び眼が開かれたとき、それは二つに増えていた。
さらにその二つがまばたきし、二つが四つ、四つが八つ。
教皇が見ている前で、その目はその数を加速度的に増やしていく。

何か取り返しがつかないことが起ころうとしている。
邪悪な想像力を掻き立てられるそのような光景を前にして、教皇は薄気味悪さ以上の、切迫した恐怖を肌で感じ取った。
直ちに集中をといて、精神力の供給を停止。呪文の中断を試みる。
それはとても常識的な行動。目の前の現象が呪文によって引き起こされた以上、それで全てが決着するはずだった。

234名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 22:02:45 ID:GS9Iq3K4
支援
235MtL:2008/10/30(木) 22:04:52 ID:iZk9fV2T
「……何故だ」
誤算。

呆然と呟いた彼の前。
杖を降ろし、呪文を解いても、孔は閉じずに未だその場所に在った。
いや、彼の目には、むしろ先ほどよりもその直径が広がっているよう見えた。
そして気づく、円の縁が、小さく震えていることに。

「まさか……広がっている……?」

虚空に問う。
その答えは明らか。彼が述べたとおり。

孔は広がっている。
閉じようとする力、そして押し開こうとする力。
両者の衝突こそが、震えながら広がる輪の本質。

何かが力尽くで、この世界へと這い出ようとしている。
それは何者か?
そんなことは、少し考えれば分かること。

嗚呼、あの目≠フ主だ。



教皇は見た。孔の縁に黒いしみで出来たような、かぎ爪が突き立てられるのを。
教皇は見た。割り開いて這い出ようとしている、全てを塗り潰さんばかりの存在を。
教皇は見た。ただそこにあるだけで全てを腐らせ、滅ぼし蹂躙する虚ろな闇の片鱗を。
教皇は見た。孔の縁から無数に伸びる、黒いひび割れを。

そして聞いた。絶望の咆吼を。
確かに聞いた。世界の悲鳴を。




「あ、……うっ……な、何なの? これ……」
床に倒れていたルイズは早鐘を打つ心臓の鼓動を抑えるように胸に手を当て、何とかその場から立ち上がった。
意識を鮮明にするべく頭を振るい、周囲の状況を確認する。
タバサの部屋にいた他の者達は、一様にしてぐったりと脱力して倒れている。
唯一立ったままだったキュルケが、息も絶え絶えという様子でタバサに手を貸しているのが見えた。

ルイズが席を立とうとした瞬間に一同を襲った謎の窒息感。加えて体中の血が一気に沸き立つような感覚。
そして怖気が走るような嫌悪感。
形容しがたい感覚に、この場にいる者達――ひいてはハルケギニアの人々が戦いている中、ルイズだけは静かだった。

それは冷や水を浴びせかけられたようだった。
胸に去来したのは既視感。
ルイズにもはっきりと分かっていたわけではない。
だが、彼女は根本の部分で理解していた。
先ほどのそれが、以前夢で見た恐ろしい光景に連なるものであることを。

236名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 22:05:50 ID:GS9Iq3K4
ヴィットーリオの冥福を 祈って支援
237MtL:2008/10/30(木) 22:07:53 ID:iZk9fV2T
思い出すだけでも肌が粟立つ、あのおぞましい感覚。
先ほどのそれは、確かにそれに似ていた。
いや、似すぎていた。

ひらめき

「いかなくちゃ……」
『震源』はあの場所であるという、呪いにも似た直感。

もしも本当にアレ≠ネらば、ウルザがいない今、自分こそが立ち向かわなくてはならない。
それが伝説の使命、伝説の価値。
そうと信じてルイズは走り出す。

むかうは窓、最短距離――余計なことに割いている時間はない。
縁に足をかけて、彼女は勢いよく外へと飛び出した。



幸いタバサの部屋は二階であり、窓から地面までの高さはそれほどでもない。
ルイズは着地の瞬間にフライの呪文を唱えて衝撃を緩和した。
これも虚無を使えるようになって以来の成果。今のルイズはいくつかのコモンマジックが使えるようになっていた。
彼女は地に足を降ろしてすぐさま、行くなと叫ぶ本能の拒絶を理性でねじ伏せて、目的の場所へ向かって全力で走りだした。


百合花壇を抜けて、薔薇園を突っ切って、池のそばを走りながら、ルイズはそれを見た。
月光が照らす庭園の中、ぽっかりとそこだけくり抜いたように丸く黒いものが蠢いている。
その近くには人が一人倒れている。
最悪の想像が、自分の現実を侵していくのをルイズは感じた。


ルイズがその場に到着したとき、孔は既に子供が通れる程の大きさにまで広がっていた。
そこから少し離れた場所に、教皇が倒れ伏しているのが見える。
その顔が一瞬強張ったが、彼の胸が微かに上下しているのを確認すると安堵の息を漏らした。
だが、問題は何ら解決していない。
目の前にある孔、その向こうにいるのは夢の中で見た"アレ"に違いなかった。

一度でもそれを目撃したならば、忘れることなどできはしない。
多くの悲劇を生み出して喰らい、世界を汚し尽くさんとする、邪悪の意志の塊。
幸いそれはまだ完全にこちら側に現出していない、それどころか、孔ごしにしかその姿を見せていない。
だというのに、ルイズは手のひらがじっとりと汗で湿っていくのを感じた。

ほんの一部分だというのに、何という威圧感!
こんなものが溢れ出たら、世界はどうなってしまうだろうか!

いくつもの悲劇、夢の光景が蘇る。
思い出すだけで心が萎えかける。
しかし、ルイズは心が屈するのを、良しとはしなかった。

――やらせない。
――あんなものを見るのは、二度と御免だわ。
――だから、私が止めてみせる。
――例えこの身が裂かれようとも!

恐怖と絶望を、
誇りと勇気が、
高潔な意志の力が打ち消した瞬間だった。

238名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 22:10:10 ID:HPKHFWBA
支援
239MtL:2008/10/30(木) 22:10:27 ID:iZk9fV2T
ルイズは目を閉じた。
呪文詠唱。
高く杖を掲げ、朗々とした声でルーンを唱える、世界に刻む。
打ち破る力を求めて、邪悪を払う力を求めて
その声は力強く、強く、強く、強く!

イメージ/イメージ/イメージ。
自身の奥深く、深層へと飛び込んでいくイメージ。
イメージ/イメージ/イメージ。
煮えたぎる溶岩と、底抜けに深い海のイメージ。
イメージ/イメージ/イメージ。
混ざり合う白と黒のイメージ。
イメージ/イメージ/イメージ

焦る心を抑え、長い呪文に精神を集中させる。
呪文は全て暗記している。
祈祷書が手に無かろうと、詠唱が止まることなどあり得ない。
孔の向こうにいるそれは、蠢くのみ。
まだこちら側に直接手出しすることはできないようだ。
虚無の詠唱にかかる時間の間に、孔が広がりきらないことを祈り、ルイズは呪文を唱え続けた。

エオルー・スーヌ・フィル・ヤルンサクサ

オス・スーヌ・ウリュ・ル・ラド・ベオーズス

ユル・スヴュエル・カノ・オシェラ・ジェラ

イサ・ウンジュー・ハガル・ベオークン・イル……

ルイズにとっては長い長い時間、実際にはほんの数分ばかりの時間が流れ、やがて呪文は完成した。
集中する為に閉じていた目を開けて、ルイズは孔を睨みつける。
鎮座しているのはどこまでも落ちていきそうな深淵の黒。ルイズが覗き込む一方で、向こうからも覗き込まれている様な、そんな錯覚を覚える闇。

否、錯覚ではないかも知れない。きっとそう、それは本当に自分を見ているに違いない。
そう思うと、ルイズの背中をぞくりとしたものが駆け抜けた。

それでも、彼女は屈しなかった。
杖を振り下ろし、抑えつけている力の軛を解き放つ、契機となる文言を鋭く叫ぶ。

『爆発/Explosion』

直後、凄まじい爆発が起きた。




「ルイズ! ルイズ!」
その叫びでルイズは目を覚ました。
映る世界が傾いで見える。
どうやら呪文の完成と同時に気を失って倒れたようだった。
その視界の端には朧のように人影が映っている。ルイズはその声からそれがキュルケであると判断した。
妙に現実感がないのは、斜に見えているからか、自身の視力の低下のためか。

240MtL:2008/10/30(木) 22:13:40 ID:iZk9fV2T
身を起こす、近くに落ちてしまっていたタクト型の杖をのろのろと掴む。
指から伝わる堅い木の感触が、虚ろだった現実感をはっきりとさせてくれた。
そこでルイズははっと自分が何をして倒れたのかを思い出した。

そして、結果を確認するために勢いよく振り向いたルイズは、そこに絶望を見た。



闇は変わらずそこにあった。
彼女が自分に残された、全ての精神力を込めたエクスプロージョンは、なんの痛撃も与えられず、ただ孔だけがそこにあった。
闇は何事も無かったかのように蠢き、無数の目玉が笑う。

その目の一つと、ルイズは目が合った気がした。
彼女がそこから読み取った感情は嘲笑。


そんなものかそんなものかそんなものかそんなものかそんなものかそんなものかそんなものかそんなものか
そんなものかそんなものかそんなものかそんなものかそんなものかそんなものかそんなものかそんなものか
そんなものかそんなものかそんなものかそんなものかそんなものかそんなものかそんなものかそんなものか
そんなものかそんなものかそんなものかそんなものかそんなものかそんなものかそんなものかそんなものか
そんなものかそんなものかそんなものかそんなものかそんなものかそんなものかそんなものかそんなものか


嘲笑。


勿論、実際に笑っていたわけではない。
無数にあるとはいえ、目玉だけのそれが、自分を笑っているなどというのは、ルイズの単なる思い込みにしか過ぎない。
しかし、それでも彼女は、それが自分のちっぽけな抵抗を嘲笑っているように感じたのだ。

ルイズの血が、頭が、沸騰する。

「……いいわ。そうよね、これくらいで全部だなんて、甘かったわ。だったら……」
「ルイズ……」

キュルケが見ている前で、ルイズはゆっくりとだが、力強く立ち上がる。
そして吹っ切れた顔で、厚顔不遜に言い放つ。
「本当の全身全霊、全てをかけた一撃、お見舞してあげる!」
自信に満ちた顔で叫ぶ、自分の言葉を誇るように。
「サービスなんだからありがたく思いなさいよね!」
己のすべてをかけて、ルイズは再び呪文の詠唱を開始した。
今度こそ、最後の呪文を放つために。


両手の指にはめられた指輪が、闇を裂いて光を放った。

風が逆巻き、水がざわめく。
この場にある風が、水が……それだけではない、ハルケギニアの意志が自分の背を押してくれているのを感じる。
自分の内と外、自身と世界との境界が曖昧になっていく感覚を覚える。
どこまでも、どこまでも薄く伸ばされ広がっていく自分自身
伸張する感覚、その一端がパワーストーンに触れるのを感じた。
途端、流れ込む力の怒濤。

241名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 22:14:54 ID:HPKHFWBA
支援
242MtL:2008/10/30(木) 22:16:51 ID:iZk9fV2T
   繋がった!

確かな感触を掴んで、ルイズは呪文の詠唱を始める。
「エオルー・スーヌ・フィル!」
先ほどの詠唱とは違う、荒々しく吠えるような呪文詠唱。
「スーヌ・ウリュ・ル・ラド!」
先ほどの詠唱が子守歌だとするならば、これは戦人の歌。
「オシェラ・ジェラ!」
正に炎。
「イル!」

流れ込んでくる力を拒絶せず、己が身を炉として再生成。
濾過、純化、反転、転換。
天まで届けとばかりに、呪文を高らかに詠い上げていく。
どん欲なまでに力を飲み込んでいく。
限界まで、限界まで、限界まで!

「……っ」

一滴の血が、大地に流れる。
ルイズの口の端から、一筋の血が漏れていた。
体内のどこかが爆発した感触だけは感じていた、痛みはない。
頭が熱い。視界は先ほどから完全にレッドアウトしたまま。
それでもルイズは呪文を唱える口を止めようとはしない、かまわず詠唱を続ける。

「イル!」

再び爆ぜるような衝撃。
ルイズがよろめく。
意志の力は詠唱を続けようとする、しかし、その口に血が絡んで口が回らない。
「やめなさいっ! なんだか分からないけど、それ以上やるとあんた死ぬわよっ!」
キュルケがルイズの肩を掴んで制止の叫びを上げる。
祖国で地獄を目にしたキュルケが、ルイズの姿から見て取ったのは濃厚な死の気配。
だが、それでもルイズは呪言を止めようとはしない。

「イル!」

と、そこで前兆もなくルイズの両膝が力を失った。
崩れそうになる体を、キュルケが慌てて抱き留める。
そんな状態になっても、なおもルイズは呪文を唱え続ける。

その姿はあたかも神に祈る聖者。
ルイズの体は既に一人では立つことすらままならず、口からは何度も血塊を吐き出している。
それでも負けないという意志。かつて見た悲劇をなんとしても自分の手で回避させようという堅い決意。
それだけが彼女を支えていた。


けれど、この世界はそんなに優しくできていない。


彼女の精神力よりも、肉体が先に限界を迎えた。

243MtL:2008/10/30(木) 22:20:10 ID:iZk9fV2T
ごぼり。
体が震え、一際大きな血の塊をはき出すと、そこまで続いていたルイズの詠唱が唐突に止まった。

(――――あ、れ ?)
気がつくと、ルイズは口どころか指一つ動かせなくなっていた。
それだけではない、抱いてくれているキュルケの体温も、感触も感じられない。
そして唐突に知覚していた世界が狭くなっていくのを感じる。

繋がっていたはずのものが急速に解けていく。
何も感じられないくせに、自分に集まっていた力が霧散していくのだけは、いやにリアルに理解できた。

あまりにあっけない限界。
何の前触れもない終焉。

漠然としか捉えていなかった死神の足音が、はっきりと耳にこだました。



「しっかり、しっかりしなさいよルイズ!」
脱力したルイズを抱き起こしたキュルケは、そのあまりの軽さにぞっとした。
それに体温があまりに低い、まるで死体のような低さ。
浅くだが胸が上下していること自体が、悪い冗談のようだ。
と、そこでキュルケはルイズの胸元が微かに光っていることに気がついた。
「えほっ! げほっ、っ!」
「ルイズッ!」
ルイズが咳き込んだ拍子、胸元から光の正体がこぼれ落ちた。
それは、ルイズの首からかけられた小さな懐中時計だった。
長針と短針だけで構成された懐中時計。
本来文字盤が嵌め込まれるはずの場所には、精巧緻密な小さな無数の歯車と機械群がむき出しのままひしめき合っている。
他国に比べて『時計』というものが普及しているゲルマニアにおいてでさえ、お目にかかったことがないような、それは見事な精巧美。

キュルケが気づいたその時、爆音が夜空に轟いた。



二人の前、孔の開いている空間が白く爆ぜる。
閃光、爆音、衝撃。
それらを伴って無数の、それこそ無数と表現するしか無いような白い光が、次々大輪の花を咲かせていく。
鼓膜を破かんばかりの爆発音に紛れて聞こえた風を割くヒュゥッという音を耳にして、キュルケは何かが夜空の向こうから無数に飛来してきているのだと気づいた。
『大砲!?』
そう叫んだ声も大音響にかき消される。
慌ててルイズを抱いてその場から離れると、それを待っていたとばかりに、その勢いは俄然として苛烈さを増した。

キュルケはぐったりとしたルイズを十メイル以上も引きずって距離を取ってから、前方を確認した。
そこから見ると空から無数の輝く何かが怒濤のように打ち込まれているのが分かった。
その数は尋常ではない。
キュルケは先ほど大砲かと思ったが、彼女が知る限りハルケギニアの大砲はこれほどまでに同じ場所を狙って精密かつ連続に撃ち込むことはできない。
加えて斜線が白い柱に見えるような、高速の連射など夢のまた夢だ。
だから、彼女はそれを最初に大砲と判じたことを、間違いだと思った。

「……流星?」
空に浮かぶ星が、片っ端からそこへ流れ落ちてきているのだと思った。




244MtL:2008/10/30(木) 22:23:19 ID:iZk9fV2T
「接続」
高度二万メイル。
月と雲の狭間、鳥すらも飛ばぬ空。そんな場所に、一つのヒトガタがあった。
双月の光に照らし出されて、そのシルエットが浮かび上がる。
大きすぎる球体の頭を胴体部に埋没させ、そこから鋼鉄の手足を生やしたヒトガタ。
所々ケーブルやコードが露出しているソレは、人を模した機械であった。

それが高々度から行われた精密砲撃の射手だった。

右手を砲身として、マナの砲弾を撃ち出していたヒトガタが、その動きを止める。
「やはり効果無し」
分かっていたことだが、そう呟いたのはそのヒトガタの肩に立っていた小さな人であった。
白い髪に髭、皺を刻んだ彫りの深い顔、メイジ風のローブを着込んで杖を手にした老人。
次元を歩く者、ウルザ。
「召喚準備を済ませておいたのはやはり正解か」
ウルザはそう言うと、軽やかにヒトガタの肩を蹴って胸部に飛び移り、そのハッチを開いて中へと身を躍らせた。

彼が乗り込んだのは体長二〇メイルほどもある、ヒトガタの機械。
ウルザが第一次ファイレクシア攻撃作戦のおりに考案した鎧を、数千年かけて、応用、発展、再設計し続けた結果生み出された、規格外に巨大な全身『鎧』であった。
名はタイタン・スーツ。
九人のプレインズウォーカーがファイレクシアに攻撃をしかけた際に乗り込んでいたものである。

ウルザは滑らかに内部のスイッチ類を操作して、自立稼働にさせていたスーツを手動制御に切り替えていく。
これから彼が行う行動は、アーティファクトの自立に任せるわけにはいかないのである。
「これを受けても無傷でいられるかな、暗黒卿?」
彼は低く笑うと、手元のマニピュレーターパネルを操作した。
すると空中で砲撃姿勢のままで制止していたタイタン・スーツが一転、体勢を入れ換えた。
そして頭を下に、足を上にして墜落を始めた。
否、墜落ではない。それを示すようにして腰部に鮮やかに赤いフレアが灯る。
そうして鋼鉄の騎兵は、勢いを増しながら地上へ向けて一直線に降下飛翔を開始した。


目を光に焼かれないように顔を背けていたキュルケは、一連の着弾が途切れた頃合いを見計らって、その着地点を見た。
孔の周囲数メイルがクレーター状に削られているというのに、それでも孔は健在のまま。
だがしかし、果たして変化はあった。
変わらず禍々しさを放っていたそれが、唖然とした表情のキュルケの前で、初めて能動的な動きを起こしたのだ。
孔から、無数の黒い何かが、空に向かって飛び出した。


疾駆する鋼のモーターサイクル。
鈍く輝く金属の獣が吠え猛る。
落下数秒、背後にバーニアの尾をなびかせて、『鎧』は亜音速の最高速度まで加速する。
通常の人間ならば確実に意識を失うだけの重力加速度が中にいるウルザを襲うが、もとより人を超越して人を辞めた身、仮の姿に過ぎない人の限界など通じるはずもない。
エグゾーストをまき散らして落下するタイタン・スーツの中、ウルザは手元のマニピュレーターの上、指を細かく動かして操作する。
刹那、その機体が時計回りに半回転。すれ違いざまに、何かが交差して天へと昇っていった。
直後に鳴り響くアラート、接近警告。
しかしウルザは落ち着き払った様子で、続けざま十指を滑らせて緻密に命令を下す。
巨体は次々に地上の孔から打ち上げられて迫る攻撃を、最小限の動きで次々回避していく。
手元で光るパネルには飛来する弾幕の軌道予測が表示されている。しかし秒にも満たないコンマの時に、それが対応仕切れないことは開発者である彼自身が何よりよく知っていた。

よって、全ての回避は、彼の知覚に委ねられていた
245名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 22:25:05 ID:aHzfqyBO
支援
246MtL:2008/10/30(木) 22:26:21 ID:iZk9fV2T
タイタン・スーツの背面ノズルから更なる火が吹き上がり、その速度を一層高めていく。
地上からの迎撃を、針の糸を通すような精密さでかいくぐり進む様子は、正に妖精。
更にいくつものつぶてを避けて、ウルザはぐんぐんと地面へと近づいていく。

地表まで一秒。
『鎧』の視界の先が、一面黒に塗りつぶされる。
鳴り続けていたアラートがそのピッチを上げた。
スーツの進行上、そこに隙間のなく暗幕のように黒い霧が展開していたのだ。
宿敵の分身にして体の一部であるアレに触れては、いかなタイタン・スーツでも無事には済むまい。
だが、ウルザは/鎧はそれすらも予測していたように、滑らかな挙動で右手を掲げた。

タイタン・スーツの右手からマズルフラッシュが閃く。
音速を超えて打ち出されたマナの弾頭が、暗幕の一部と接触、対消滅を引き起こした。
そこにぽっかりと広がった隙間めがけて飛び込むと、標的は一寸の先。

そして、ウルザは最後の仕上げをするべく、機体に最後の命令を与えた。

突きだしたままだった右手が翻り、『鎧』の胸部へと向けられる。
再び数度瞬く発射光。
砕け散り、宙にばらまかれる金属片。
自らの装甲を破壊したタイタン・スーツが、今度はそこに、勢いよく己の腕を突き入れ抉った。
致命的な領域にまで破壊が及んだところで、それは内部から自身の核となる動力ユニットを引き抜いた。
スーツの各部が火花を上げる、部品が空へとばらまかれる、そして握られた心臓部が抑制と制御を失い暴走の前兆である強烈な光を放ち始める。
しかし、そのような姿になってもタイタン・スーツは、一辺の躊躇もなく亜音速で駆け下る。
己に課せられた使命を果たすため、果敢なフォールダウンを敢行し続ける。
そして最後の砲火をくぐり抜け、ついには孔へたどり着いた。

だが、狡猾なるは闇の王。
孔に突入しようかという直前三〇メイル、タイタン・スーツがけたたましい音を立てて、何かにその動きを止めた。
目に見えない壁に激突し、その突進を阻まれたのである。
衝突した拍子に頭部、肩部、胸部の一部の金属片が粉砕されてまき散らされた。
しかしそれでもタイタン・スーツは推力を弱めない。
限界を超えて酷使された各部からはオイルが流れ出し、その体を黒く染めていた。
脇に抱えた動力ユニットは、ついには制御限界を超えてスーツの右手を赤熱させ始める。
限界は近い。


キュルケはその姿を見上げ、
(太陽を抱えた巨人が、黒い涙を流しているよう……)
大破寸前のその姿を、心の底から美しいと思った。
そして、キュルケがそう思った瞬間、巨人は特大の咆哮を上げた。
そう、それはまるで断末魔のような……


暴走寸前の動力炉から定格量を遙かに上回るエネルギーがタイタン・スーツに流れ込む。
流れ込んだマナで駆動系・制御系全てがショートするまでの刹那の時間、それは確かに、定められた設計の限界を超えた。

限界を超えた動作に特大のエクゾースト。
タイタン・スーツはコアを掴んだままで、その手を大きく振りかぶる。
途端に全身から吹き上がる紅蓮の炎、それでも繰り出される渾身の右手。

そして、ガラスのような音を立てて砕け散る不可視の壁。

 障害は全て排除された。
 巨悪との戦いを宿命に生み出された機械。
 今、その使命が果たされる。

勢いそのまま、タイタン・スーツは孔の中へと真っ赤な右手を突き入れた。

247名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 22:28:15 ID:GS9Iq3K4
支援
248MtL:2008/10/30(木) 22:29:38 ID:iZk9fV2T
  『オーバーロード』


轟音と伴って最初の爆発。
とうの昔に限界を超えていたタイタン・スーツが、その役目を終えて巨大な火の玉と化して爆発四散。
そして、十分の一秒の時間差で、それすらも上回る巨大な爆発が巻き起こった。
黒々とした孔の内部から膨れあがった、白一色の光の濁流。
それがタイタン・スーツの爆発すらも押し流して、全てを輝きで埋め尽くしたのだった。


目をつぶっていても、なおも眩しい。
そのような光に晒されて、キュルケは覚悟を決めた。
せめて腕の中のルイズだけでも守ろうと、彼女の体を強く抱き寄せた。
だが、身構えた彼女に、それはいつまで経ってもやってこなかった。

代わりに、低く力強い声が耳に聞こえた。
「出力調整を済ませていなかったとはいえ、パワーストーン一機と引き替えとは、少々割に合わない交換となったな」
ルイズを抱いたキュルケが顔を上げると、そこには杖を掲げたウルザが立っていた。
「おじさま!?」


キュルケが目を開けると、周囲は凄まじいと形容するほか無い有様だった。
草木はあらかた消し飛び、爆発の中心となった孔のあった場所は抉られて地面がむき出しになっている。
周囲には焼け焦げた匂いが漂い、パチパチという音が響いている。
美しかった庭園の面影を残す場所は無い。

ただ一カ所、キュルケ達の周囲を除いて。
周囲の地面が真っ黒く焼かれている中で、ウルザの立っている場所からその背後だけは未だ瑞々しい緑が残されていた。
生き残れた驚きに、キュルケはそれ以上、何も口にできなかった。



生き残ったのはウルザ、ルイズ、キュルケの三者。
その他は、全ての生きとし生けるものが消し飛んだ。
正に焦土。

そのような場所に、居るはずのない者の声がした。
「こんな厄介ごとを引き起こしてくれるとはね。きちんと殺しておくべきだったよ」

声に驚いてキュルケがそちらを見ると、少し離れた場所に、白い服と濃厚な闇を纏った男――ワルドが立っていた。
その足下には隻腕の青年、教皇が倒れている。
「まさかこのような馬鹿な真似をするとは思わなくてね……そういう意味ではこちらの落ち度だ」
やれやれといった調子で、大げさに肩をすくめるジェスチャー。
そしてワルドは腰を曲げて教皇の首に手をかけると、ペンでも拾う軽さでその体を持ち上げた。

「安心して欲しい。始末はきちんとつけさせてもらう」
言ってワルドは力を込める、すると気を失ったままの教皇が苦悶の表情を浮かべた。
ウルザはその様子を眺めて無言で佇み、キュルケは初めて目にした生まれ変わったワルドの姿に息を飲む。

だから、やはりこの場で声を上げたのは彼女だった。

「……やめ、させて……、ミスタ・ウルザ」
いつの間にか目を覚ましたルイズが、キュルケに抱きかかえられたまま、ウルザのローブの裾を掴んでいた。
「あの、ままじゃ……死んじゃうっ!」
喘ぎながらウルザを見上げ、彼女は涙を浮かべて必死に呼びかけた。
「間違ったのかもしれない、でも、あの人は、世界の為って……」
「………」
だが、その言葉を聞いても老人は微動だにしない。

249MtL:2008/10/30(木) 22:33:34 ID:AbBdlEYH
「彼にはできないさ。今、私とこの場で直接争えば被害が大きすぎるからね。そうなっては元も子もない」
ワルドからの、含みのある声が飛ぶ。
そしてルイズが見上げているウルザの姿は、その言葉に肯定を示しているようだった。

ならばと、ルイズはワルドに目を向けた
視線を向けられてワルドは、満足したように悠然と微笑んだ。
「私はそいつとは違う。君がそう願うなら、これを助けてやるのもやぶさかではない」
そう言ってワルドは掴んでいた教皇の首から手を放して解放した。
ドサリと音を立てて地面へ落ちる教皇。
その白衣は土や泥、炭に汚れて見るも無惨な様相。
だが、それでも生きてはいる。
ルイズは安堵の吐息を漏らした。

しかし、ここでまたもやルイズは彼らの本質を見誤った。

「しかし、また厄介事を引き起こして計画を狂わされてはたまらないからね。最低限の処置はさせてもらおう」

気づいたルイズが叫ぶより先に、ワルドはその場に屈み込み、教皇の頭に手をかけて。
そして、すっとその手を引いた。


『ギッ……!』

絶叫が、はじける。

『………アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!』



中庭だった場所に、この世のものとは思えぬ叫びが迸る。
キュルケとルイズが驚きに息をのんだ。
その前で展開された光景は、生涯忘れることが出来ないであろうというほどに、おぞましいものだった。

ワルドは倒れた教皇の頭にかけて、そこから一気に力任せに引き起こした。
否、引き起こすなどという生やさしいものではない。
それは、引き剥がしたという方がこの場合は適切であった。
ワルドの手に捕まれて掴み上げられたのは、半透明をした教皇エイジス三十二世。
それが、悲鳴の主だった。
「霊体を肉体から無理矢理引き剥がされたのだ、その苦痛は格別だろうっ!?
 何せ肉体ではなく精神と神経に直接刻まれるものだ、生きている内にはまず経験することの出来ない貴重な体験だ! 存分に苦しむといいさ!
 はっ、はははははははハハハハハハハハハハハハハハ!!」

悲鳴をコーラスにして、ワルドは夜空に笑う、ただ高らかに、高らかに、高らかに。

引き剥がされた霊体から響く絶叫がか細くなり、その半透明の姿が輪郭を失い始めたところで、ワルドは狂笑を止めて手を放した。
「これで十分だ。彼にはもう虚無の魔法は使えない」

そう言って、ワルドは、ウルザのローブを握ってカタカタと震えていたルイズに微笑みかけた。
「怖がらせてしまったかな、僕のルイズ。でも仕方なかったんだ、君を守るためには仕方がないことだったんだ。今は分からなくとも、いつかきっと分かってくれると信じているよ、愛しいルイズ」
柔らかく微笑みかけならが、ワルドは胸の前で小さく手を振った。
するとそして全員が見ている前で、さっと強い一迅の風が吹き、次の瞬間にはそこにあったはずのワルドの姿が消えていた。
まるで風に溶けて消えたように。
そうして後に残されたのは、口から血の泡を吹きながら目を剥いて小刻みに痙攣を繰り返す教皇と、

『ルイズ……僕のルイズ。待っていて欲しい、双月が満ちる日、僕は必ずその邪悪な男の魔の手から、君を救い出してみせるから』

そう残された、ワルドの言葉だけだった。

                        危難には備えが必要だ。何より強い力の備えが
                                    ――ウルザ
250MtL:2008/10/30(木) 22:37:37 ID:AbBdlEYH
以上で投下終了です。

直前の話題だったからではありませんが、今回はロボでしたロボ。

待っていると書き込んで下さる方、ありがとうございます。
その書き込みが一番の原動力です。

それでは、次回からは最終決戦ですー、派手になるように頑張ります。
ではー

(ワルドの台詞に一カ所修正が……wikiに載ったら直します……)
251名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 22:39:18 ID:HPKHFWBA
乙でした
タイタン・スーツってあれかしら、ウルザの激怒のイラストに居るロボ
252MtL:2008/10/30(木) 22:41:03 ID:AbBdlEYH
う、ロボが分からないとの指摘を受けましたので下に画像を置いておきます。

力の鎧/Power Armor
http://mtg.takaratomy.co.jp/cgi-bin/autocard/acjp.cgi?card=Power%20Armor

『ウルザの激怒』とかに映ってる、アレです。
253名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 22:42:43 ID:MZ5UQxvS
特攻シーンがアイアンマンみたいだった
254名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 22:47:55 ID:aHzfqyBO
>>252
ファンネルですね。わかります。
255名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 22:55:28 ID:HPKHFWBA
>>252
わざわざありがとうございます、やっぱアレでしたか
イラストと言えば霊体引っぺがされる教皇で立ち上がるアーボーグを連想してしまった
教皇は廃人コース確定なのかな
256名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 23:44:28 ID:8WclKzLf
なんだーロボかぁーーー 安心したーー
ゴーレムかと思っちゃった
257名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 00:08:31 ID:smoxcDf5
MtL 乙!
しばらく投下が無くて、首をながーーーーーくして待ってました
258名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 00:31:36 ID:i2YDFGsW
いぬかみっ!の続きとバベル二世の続きを楽しみにしてます・・・
259名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 06:24:58 ID:CDQ/5bqk
バカな……
夜中に書き込みがないだと……
260名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 06:34:04 ID:H1GX7ZSQ
規制そんなに激しいのかな。とりあえずmtlの人乙です。

物語も佳境…自分も早くそこまで持って行きたいです。
261絶望の街の魔王、降臨 代理:2008/10/31(金) 07:05:39 ID:v5VVpJdp
代理スレに依頼が来ていたのでいきます。

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ルイズは完全にグロッキー。眼を回し、今は自室のベッドで眠っている。
流石にいじめ過ぎたかな、とジルは反省する。科学を鼻で笑ったルイズに、その素晴らしさを誇示しようとしたのだが、これでは次から乗ってくれなくなる可能性もある。遅くて乗り心地の悪い馬になんか、本当は乗りたくないのだ。次にルイズを乗せる時には、
もう少し抑えようと思っていた。
それにしても、だ。彼女は不思議に思っていた。先ほど買った剣の事だ。150cm程の長剣、にも関わらず、非常に軽い。
「……フッ!」
軽く、片手で振れる。
「ねえデル?あなたが軽いのって、魔法?」
「どうだったかね。今までこんな軽々扱われたことなんてねーし……いや……あった、かな?」
「またお得意の『六千年のボケ』?」
「いやいや、ボケなんかじゃないやい!ただちっと忘れてるだけだ!」
「痴呆症の剣か……買って早々後悔するとは思わなかったわ」
「人の話を聞け……ん?どうした相棒?」
ジルの雰囲気が変わった。デルフから興味が別の物に移った。
「思えば、この世界のこと、まだよく知らなかったと思ってね」
視線の先には蒼い竜。風竜が空から降りてくるところだった。
「見たことあるわね。ルイズの同級生の使い魔だったかしら」
「へえ、風竜召喚したのがいんのか。でも珍しさに関しちゃ、相棒に勝るものはねーな」
「そうね、人なんて前代未聞だって」
会話しながら、風竜に近づいていく。
「きゅい?」
「あ、怪我してるわね。結構深いわね……」
竜の足に、切り傷があった。鋭いものではなく、鈍いエッジの様なもので深く抉られたような切り傷。かなり痛いだろう。
「きゅい……」
ジルはサイドパックから紙包みを取り出す。魔法より不可思議な混合ハーブ、完全回復薬だ。
「相棒、それはなんでい?」
「地上最強の薬よ。人間じゃないものに効くか判らないけど、ほっとくよりマシよ」
包みを開くと風竜が騒ぎ出した。確かに黒っぽい、どこか毒々しい粉末は危機を感じるには充分だ。
「きゅいきゅい!」
「あー、暴れない!」
「きゅい!?きゅいい!!」
足をがっしと掴まれる。その異常な怪力に、竜は恐慌に陥る。
「おい、相棒……」
がりがり。
「くあっ……」
その爪で引っかかれる。頬から胸元まで、かなり深く。
262絶望の街の魔王、降臨 代理:2008/10/31(金) 07:06:17 ID:v5VVpJdp
「きゅ?」
「ちょ、相棒!?」
「痛いわね。よく見てなさい」
竜に引っ掻かれて『痛いわね』程度で済む人間を見て、デルフは呆れ返った。どれだけタフなのか。
それよりも驚いたのは、その回復力だった。紙包みを口元に近付け、一気に含む。喉が動き、飲み込んだのが判った。
と、傷がみるみるうちにふさがっていく。
「おでれーた!なんだそれは?」
「凄いのね!!」
はしゃぐ一匹と一本。そのうち一匹をジト眼で見つめるジル。
「内服でも外用でもあるのよ。苦いわよ。飲む?」
「苦いのは嫌なのね!塗ってほしいのね!」
「判ったわ。全く、わがままな竜ね」
しゃがみこみ、新たな混合ハーブを取り出し、
「少し染みるわよ」
塗る。粉末を塗りたくる。
「い、痛いのね!痛いのね!!」
また暴れる。
またとばっちりを食らうわけにはいかないと、緊急回避でとっとと離れる。
「痛いの!きゅいきゅい!」
「落ち着きなさい。もう傷は無いわ」
「あ、ほんとですわ。ありがとう!きゅい!」
「よかったわね」
本当に万能薬だった。最早種族にも縛られない、それを知ったジルは、次は救急スプレーでも試そうかしら、などと考えていた。デルフはまだ「おでれーた、おでれーた」と感心していた。
さて、心中穏やかではないのはこの風竜、シルフィードである。彼女はただの風竜ではない。高い知能を持ち、人語を操り、先住の魔法を使う韻竜だ。しかし、韻竜は非常に希少な種だ。世間一般の常識では、絶滅したというのが定説である。つまり、
シルフィードの存在自体が伝説の様なものなのだ。
故にシルフィードの正体がばれることを、彼女の主は非常に恐れ、シルフィードに人前で話すことを禁じていた。もしばれれば、ガリアであれアカデミーであれ、実験室送りになるのは間違いない。
なのに、だ。混合ハーブの効能を目の当たりにしたことで、一瞬ではあるがその禁を破ってしまったのだ。主人のお仕置きで済めば僥倖、下手を打てば研究材料として解剖である。
しかし……
「ねえ、あなた、人を乗せて飛べるかしら?」
「きゅい?」
ジルに驚いたりする様子は無い。
「……」
「……」
返答のタイミングを逸し、微妙な沈黙が流れる。
「あれ?おまえさん、韻竜か?」
その空気を軽く無視して、デルフが訊いた。
「きゅ、きゅい〜〜〜〜〜」
「逃げるな」
飛び立とうとしたシルフィードの足を左手でがっちり掴み、右手でデルフを地面に突き刺す。
「ギャアアアアアアアアアアアアアアア!!折れる折れる折れる!!」
263絶望の街の魔王、降臨 代理:2008/10/31(金) 07:07:01 ID:v5VVpJdp
「アンカーは黙ってなさい!」
「きゅい!落ちる〜〜〜〜」
地面に縫いつけられた形のシルフィードは、さながら繋がれた犬が勢いよく駆け出してひっくり返るように、落ちた。びたーんと。
「相棒、ひでえぜ……」
「凄い馬鹿力なのね!」
「何で逃げるの?」
「そら相棒、喋る動物がいたら珍しいだろうがよ?下手したら実験室行きだ」
「連れ戻されるんじゃなくて?」
ジルの常識では、珍しい『動物』は大抵、実験室から逃げてきたものだ。B.O.W.とか、ウィルスキャリアのネズミとか。
「相棒が何を言ってるか判らんね。まあこいつは韻竜ってやつで、今じゃ伝説クラスの生物だ。人語を解し、先住魔法を操る」
「そうなの。竜って普通に喋るものだと思ってたわ」
成程、と、シルフィードは思った。驚かないはずである。
「マジかい……非常識にも程があるぜ」
「この世界の常識なんて知らないわよ」
元の世界でも、彼女は非常識な存在だが、そんな事はこのインテリジェンスソードには知る由もない。
「この世界?別世界から来たみたいな言い方なのね」
この韻竜、なかなか鋭い。
「正解よ。だから、この世界のことはよく知らなくてね。この近辺の地理も知らないし、上空から位置関係を見たかったのよ」
「きゅい?」
ジルの遠まわしな要求に気付かない。
「乗せてくれないかしら?」
「秘密にしてくれるなら、お安い御用なのね」
「誰にも言わないわ。私に利益はないもの」
快諾とほぼ同時に、その背に飛び乗るジル。
「いくのね〜〜〜〜〜!!」
ジルの返事も待たず、急上昇。シルフィードが予想した悲鳴は、誰も上げなかった。



「――――それで、あっち側がガリア。ラグドリアン湖って湖があるのね。……!」
上空で位置関係を説明していたシルフィードが、止まる。さっきまで絶えることの無いマシンガントークが止み、滑空する。
「お姉さまがお呼びなのね」
ほぼ垂直に降下し、ある程度高度を下げる。無論、そんな事では鋼の心を持つジルを脅かすに至らない。
「残念ね。ガリアって国が見てみたかったけど、そう遠くには行けないし」
「お姉さまとなら任務でちょくちょく行ってますわ」
聞き慣れた、しかしこの世界では一度も聞かなかった単語が、ジルをわずかながら変貌させた。
「……任務?」
「!聞かなかった事にしてほしいのね」
「気をつけたほうがいいわよ。さっきもうっかり口を滑らせてたし」
「きゅい……」
女子寮の周囲を旋回しながら、目標に近付く。『ご主人様』の部屋の窓に。
「……」
264絶望の街の魔王、降臨 代理:2008/10/31(金) 07:07:38 ID:v5VVpJdp
蒼い髪の少女が、韻竜をじーっと見つめていた。
「おねえ……ぐぇ」
喋ろうとしたシルフィードの声が、潰された牛蛙の様に歪む。目標の隣の窓が開かれていたのに気付いたジルが、喋らせまいとチョークスリーパーをかけたのだ。いや、その太い首をロックできてはないが、その細い右腕だけで絞めている。どれだけの馬鹿力なのかは
知らないが、大抵の攻撃では凹みすらしない竜の外皮越しに気道を潰している。
ひゅるひゅると高度が下がり、女子寮の外壁にぶつかりやっとシルフィードは解放されるが、ダメ押しの衝撃で完全に気絶していた。
「えげつねぇ……」
デルフの呟きに、
「やりすぎちゃったかしら……?」
前衛的な格好で地に伏しているジルは返す。放り出され、派手に着地を失敗したのだ。
すぐに立ち直り、シルフィードに駆け寄る。竜イコール頑丈という先入観が力加減を誤らせていたと感じたジルは、下手をすると殺したかも、などと冷や汗をかきながら思うのだった。
そしてそこには、
「……」
恐らく『お姉さま』がシルフィードの傍らに立っていた。
「ごめんなさい、生きてる?」
「ナイスワーク」
抑揚の無い声で褒められた。
「聞かれなくて済んだ。ありがとう」
どうやら感謝されているらしい。
「どういたしまして、でいいのかしら?」
コクリと頷く少女。そこでジルは思い出す。
「どこか行くんじゃなかったの?」
「……暫く無理」
気絶したまま身じろぎすらしないシルフィードを一瞥して、囁くように言う。
「お詫びといってはなんだけど、乗る?」
「?」
乗る、の意味が判らず、顔を上げる少女。ジルが微笑みながら、親指で後ろの方を指していた。
「あの竜よりは速いわよ」
地上最速の市販バイク、Y2Kが芝生の上に鎮座していた。



偶然通りかかったギーシュにルイズとシルフィードへの伝言を託し、ジルは甲高く啼く鉄の馬に跨る。タバサは渡された兜を被り、縄で杖を躯にくくりつける。
「しっかり掴まって」
シルフィードより速い、そんな事は無いだろう。この世界に、風竜より速い存在なんて無いのだから。しかし、さっきから感じるこの危機感はなんなのだろうか。
キィン、キィンと、ジルはガスタービンエンジンをふかす。その度にタバサの不安は増加する。
「いくわよ……」
265絶望の街の魔王、降臨 代理:2008/10/31(金) 07:08:16 ID:v5VVpJdp
ルイズの時同様、ウイリーしないギリギリの加速でアクセルを回す。その加速性能は、タバサにジルの言葉を信じさせるに足りた。本当に、シルフィードより速い。が、一気に失速する。
「ねえ、どっち?」
門を出たところで、ジルが訊いてきた。



地上を順調に巡航するバイクは、日が落ちる前にガリアの首都リュティスに到着した。
道中自己紹介をしたが、それ以来言葉は交わされていない。ただ単に、タバサに余裕が無かっただけなのだが。
風圧、体感速度、その機敏な動き、全てがジェットコースタークラスなのだ、ヴェルサルテイル宮殿に到達する頃には、今まで無い程に疲弊していた。しかし、それを表には出さない。いつもの平然とした無表情に、
「え?」
と、疑問符を浮かべる。そしてその後について来る、おかしな格好の美女にも驚く。恐怖どころか、動揺すらしていない。
「今回の相手、何だったか伝えたはずよね?言ってみな?」
「吸血鬼」
「へえ、吸血鬼なんているの。ファンタジーね」
この澄ました顔が恐怖に歪むのを楽しみにしていたのに、全く変わらない。傍らの女も、今知ったというのに愉快そうに笑う。
「だったら判るだろ?ピクニック気分でできる任務じゃないのは」
「ピクニックって言うより旅行気分ね」
タバサは答えず、代わりにジルが答えた。
「うるさい!というか、あなた、一体何なの?」
「人に先に名乗らせるのがこの世界の流儀なのかしら?」
「無礼者!私を知らない……」
「うるさいわね、あなたなんか知らないわ」
「衛兵!この無礼者を殺れ!」
「はっ!」
鎧を着た衛兵が槍を手に駆け寄ろうとするが……
「馬鹿ね」
馬鹿でかい破裂音と閃光か幾度か瞬く。マズルフラッシュをもろに見たイザベラは網膜を灼かれ、真っ白になり痛む眼を押さえ蹲る。
「眼が!眼がぁ〜〜〜」
どこかで聞いた様な悲鳴をあげるイザベラには眼もくれず、タバサはその全てを見ていた。今、その視線の先には、脚を撃ち抜かれた衛兵が転がっていた。
「脆いわね、AP弾でもないのに貫通するなんて」
地上最強のオートマティックピストルを手に無茶をいう、この場で最も暴君と呼ばれるに相応しい女。暴君(タイラント)を倒すのは、それ以上の暴君だ。
「くう……」
ホワイトアウトから復帰したイザベラは、その惨状を見て、青褪める。
「私から訊いてあげる。私はジル・ヴァレンタイン。ちょっとした手違いでこの娘の竜代わりをしているわ。あなたは?」
王族だろうが、いや、いかなる人間も逆らえそうにない笑顔で問われる。世間知らずの王女様には、それに抗う術は無かった。
「い、イザベラ……」
「OK。これからは、ちゃんと名乗るのよ。で、もう用は無いのね?」
「いや……」
タバサに書簡を渡す。その後、何のアクションも無い。
「これで終わりね?」
恐怖に染まり切った眼でジルを見ながら、コクコクと頷く。
「そう。じゃあ、行きましょ」
ジルが歩き出し、一礼したタバサがそれについていく。イザベラや使用人達は、その様を呆然と見ていた。



日が落ちて辺りが暗くなる頃に、やっとシルフィードはガリアに着いた。
「置いていくなんて酷いのね!先回りして使い魔の偉大さを教えてやるのね」
266絶望の街の魔王、降臨 代理:2008/10/31(金) 07:08:59 ID:v5VVpJdp
と意気込むも、二人が偉大な科学の結晶を使った事を知らないシルフィードは、待ち合わせのタバサの実家で幽霊でも見た気分になった。
「なんでいるんですの!?」
「あれ」
タバサの指し示す先には、見覚えのある機械。
「あの鉄の馬で?」
「あなたより速い」
シルフィードは頭に鉄槌を食らった気分になった。自分のアイデンティティが奪われた。
「お姉さま、短い間でしたけど……」
「本が読めない。怖い。あなたの方がいい」
わずかながら、タバサの顔に恐怖が鬱る、いや映る。ほんのわずかで、よっぽど注意深く見なければ判らない程度だが、シルフィードはその変化を見逃さなかった。本当に怖かったのだろう。
「よかったのね。じゃあ明日は……」
「ジルも連れて行く」
「ジル?」
「あなたを絞め落とした人」
蒼いシルフィードの顔が蒼くなる。
「あの人、凄い力なのね!人じゃないのね!魔王なのね!」
「魔王?」
「竜を絞め落とすなんて魔王以外の何者なのね!?」
「あら、悪い竜を討つのは人間以外にないわ」
びくっ、とシルフィードは固まる。
「ばれないよう協力してあげたのに、とんだ言い草ね」
「なんでここにいるのね!?」
「タバサを運んできたのよ。あなたを落としたお詫びに、ね」
悪い人ではない。悪い人ではないが、恐ろしい。怪我も治してくれた。方法に難はあるが、韻竜であることをばれない様に協力してくれた。タバサも運んでくれた。
「落ち着いた?」
「ごめんなさい。私がどうかしてたのね」
「よかったわ。早速友達に嫌われるなんて嫌だったの」
「友達?」
267絶望の街の魔王、降臨 代理:2008/10/31(金) 07:09:34 ID:v5VVpJdp
「あれ?私の勘違い?」
ジルはしょぼんとする。どこか孤高の狼の様なイメージがあるが、仲間想いである。そして一応人間なのだ、凹むこともある。
「ち、違うのね!友達なのね!」
「そう、よかった」
慌てて否定する。ここに人と竜の友情が誕生した。
「それで、明日の移動はどうする?」
ジルの問いに、タバサは無言でY2Kを指す。
「ひどいのね〜〜〜〜〜!!」
友情に亀裂が入った。



次の日、朝早くに出立した二人と一頭は、一頭が遥か彼方に置き去りにされる現象が発生し、ひたすらプライドを破壊された風韻竜は、しかし健気にそれを追う。背中に誰も乗っていなくても、どんなに羽ばたいても、それに追いつくことはできない。
ドップラー効果つきで小さくなっていく鉄の馬の甲高い咆哮が、非常な現実を彼女に突きつけるが、今では小さな点くらいにしか見えないそのシルエットが視界から消える寸前にそれは止まった。
そこは目的地――――サビエラ村の数百メイル手前だった。
――――お姉さまは私を見捨てなかった……
疲れていた躯を奮わせ、全力を以て主の元へ。
「遅い」
「遅い」
死の魔王と氷の女王。少なくともシルフィードにはそう見えた。
「ひ、ひどいのね〜〜〜〜」
「ふふ、冗談よ」
「……」
フォローするジルと無言のタバサ。何も言わない分、真意が測りづらい。もしかしたら冗談ではないかも知れないが、今はジルの言葉だけが救い故に追及できない。
「で、どうするの?下手にY2Kで村に突入はできないし、歩いて行くの?」
「そう」
「……それだけじゃないわね。何か企んでるでしょう?」
「……」
おもむろにメイジの証であるマントを脱ぎ、杖と一緒にジルに渡す。
「成程、偽装って訳ね」
「きゅい?」
「ジル、騎士。私、従者」
その偽装の意味を、シルフィードは最後の最後まで理解できなかった。



サビエラ村では、あまり歓迎されてはいないのか、遠巻きに一行は見つめられていた。村人はひそひそとなにやら話しているが、どうせ『弱そう』とか噂しているのだろう。傍から見れば、確かにジルは華奢だ。しかし、元警察特殊部隊隊員であり、更にその前は
軍人だった。この世界に来る前はバイオハザード対策部隊に在籍し、生物的に非常識な連中を相手に余裕で渡り合っていたのだ。その任務に付随する、調査や一般人の救出に於いて、ジルは今のこの村と同じようなシチュエーションを経験していた。
268絶望の街の魔王、降臨 代理:2008/10/31(金) 07:10:16 ID:v5VVpJdp
つまりは、前任者の失敗からくる、自分への信頼の失墜。ラクーンシティで置き換えれば判り易い。村人はダリオ・ロッソ、前任者はRPD、そしてジルはジルのまま。この場合村人は非協力的か、或いは消極的に協力してくれる程度だ。
所詮は、群衆心理。
魔王も騎士も、彼らには全く興味を見せずに歩く。
「ようこそいらっしゃいました騎士様」
案内役が来て、村長の家に、そして村長の家の居間に通され、歓迎の言葉を受ける。
「ガリア花壇騎士のジル。ジル・ヴァレンタインよ。早速だけど、状況を」
「あ、はい」
急かされ、村長は説明を始める。タバサから聞いた報告書の内容と、ほぼ一緒だった。
二ヶ月前に十二歳の少女が殺られ、それから九人が犠牲になったという。
「二人犠牲になった後、誰も夜歩きはしなくなったんですぢゃ。しかし……夜にこっそり忍び込まれるのですぢゃ。どんなに厳重に戸締りをしたとしても」
このときジルの脳裏にあったのは、どこかの教団の透明になれる寄生虫だ。
「おそらく昼間は森に潜んでおるのでしょう。この近くの森は深いので、昼でも真っ暗ですぢゃ。森に出る者もいなくなる始末で」
ニンニクとか十字架は効くのかしら、などと考える。デルフリンガーで杭を作り、全武器無限化アイテムの中にあった純銀弾頭のカートリッジを装填しておく事を決定した。
「下の街の神官様に訊いたんですが……吸血鬼は血を吸った一人を“屍人鬼”に、下僕にできるそうですぢゃ。つまりは……村に誰か一人、屍人鬼がいると……皆、疑心暗鬼になって、村を捨てるものも出る始末」
そういえば……と、ジルは昔の事を思い出した。バイオハザード被災者が避難してきた場所で一人が発症、他の人間も感染してるんじゃないかと疑った一人が暴れ、それを射殺したことを。
「目新しいことといえば、九人目に、胸にナイフか何かで、『04121』と刻まれておったくらいですぢゃ」
いきなり報告にないことが村長の口から出る。ジルはその報告から『シリアルキラー』の単語を連想した。いや、どこかで聞いたことが……
「そんなところですぢゃ」
ジルは少しだけ考え込み、踵を返す。
「な!?」
「?」
予定では、村長が屍人鬼かどうかを調べる為に、躯を検めるはずだった。探偵や依頼主など、最も犯人から遠い存在であるはずの彼らが犯人の可能性もあるからだ。しかし、ジルはその工程をスルーした。
269絶望の街の魔王、降臨 代理:2008/10/31(金) 07:11:38 ID:v5VVpJdp
「調査を始めるわ。タバサ、ついてきなさい」
断られたと思った村長は安堵の息を漏らす。
「検査は」
タバサが耳打ちする。といっても、身長差がありすぎるために小さな声で訊くという結果になったが。
「無駄よ。どうせ虫刺されとかで誤魔化されるわ。どっちにしろ決定的証拠にはならない。それに、吸血鬼は狡猾なんでしょう?そんなへまをやらかすとは思えない。やるなら現行犯で殲滅するのが一番よ」
「……?」
ジルの動きが止まる。
「覗き見はあまり感心しないわよ」
ゆっくりと、奥の扉を向く。少しだけ開いた扉の隙間から、五歳くらいの少女が覗いていた。美しい金髪の、人形の様に可愛い少女だ。
「あら、可愛い娘ね。でも覗きなんてしていたらレディになれないわよ」
少女はジルの言葉にびくんと身を振るわせると、どこかに逃げていった。
「エルザ!」
逃げた少女――――エルザを村長は呼ぶが、戻ってくる気配はない。
「おどかしちゃったかしら」
覗かれていると判った一瞬の殺意……いや、威圧的なオーラは、長く生きている村長をも脅かした。
「失礼をお詫びします。でも勘弁してやってください。あの娘は両親をメイジ殺され、以来恐れておるのですぢゃ」
「あら、村長の娘じゃないのね」
「養子ですぢゃ。一年ほど前に寺院の前に捨てられとったのです。早くに子を亡くし、連れも死んだわしには家族がおりませんでしてな、引き取ることにしたんですぢゃ」
そして、村長は遠い目になる。
「わしはあの娘の笑顔を見たことがないのですぢゃ。躯も弱く、外で遊ばすこともできん。一度でいいから、あの娘の笑顔が見たいものですぢゃ。なのにこの吸血鬼騒ぎ、早く解決してほしいもんぢゃ……」
そんな境遇の少女に思いっきり殺意の波動を当てたにも関わらず、ジルは何かを考え込み、タバサはどこ吹く風。もっとも、ジルはどうやって吸血鬼を『見つけ殺す(サーチ・アンド・ジェノサイド)』かを考えていた。仕事柄、どんな敵であろうと(例えそれが
同僚や知り合いの、成れの果てであろうと)それに対する容赦は1ppm程も無いのだった。
270絶望の街の魔王、降臨 代理:2008/10/31(金) 07:12:20 ID:v5VVpJdp
「ねえタバサ、吸血鬼に十字架やニンニクは効く?」
「効かない」
「なら銀は?」
「……判らない」
調査中に、突然そんな事を訊くジルに、タバサは僅かながら困惑していた。
そんな事はお構いなく、ジルは『自分の世界』の吸血鬼退治のセオリーに従い、最後のグレーである銀弾を装填しだした。ハンドガンは無論、ガトリングガンに至るまで。全て強装弾で弾頭には十字の傷が切られていた。十字架効果ではない。ダムダム弾である。
非常時の予備として持っているその一つを弄ぶジルを尻目に、タバサは現場を調べ上げる。元警察特殊部隊のジルは、めぼしい場所を既に調べ終えていた。例え、傍からはそう見えなかったとしても。
「……眠りの先住魔法……」
証言から、唯一判ったのはそれが使われたことだけだった。窓という窓、扉という扉を封じ、歩哨を立てても、吸血鬼はどこからとも無く忍び込み、歩哨を眠らせて血を吸う。
ターゲットは判っている。前任の騎士を除けば若い娘だけ。ならば、上空のシルフィードに警戒させればいい。
「どこから入ってきたのかしらね」
惨劇の舞台は寝室。窓には板が打ち付けられ、破壊された痕跡は無い。扉の前には家具が積まれ、普通の人間の力で動かせる状態ではない。つまりは、密室。
「……」
タバサはその疑問に仮説すら答えない。
ジルとタバサは、ほぼ同じ思考をしていた。違いは、ジルの戦闘能力の評価による、結論だけだった。
最も手っ取り早いのは、『村の消去』。しかし、それは確実に取ってはならない手段。ラクーンシティの様な致命的汚染で無い限り使えない。如何に犠牲を出さずに、吸血鬼だけを殲滅するか。
タバサは、ジルの戦力を当てにしていなかった。ギーシュに勝っても、所詮その程度。囮以外に役には立たないだろうと。何せ相手は吸血鬼なのだ、『かなり強い平民』程度では、倒すのは無理、と。
そしてジルは、全く別の発想で結論を出していた。
結局、この日の調査は何の進展も無く終わった。



そして、翌日。



「へぇ……やってくれるじゃない」
高高度から監視していたシルフィードに悟られず夜を歩き、家人を眠らせ、若い娘の血を吸った吸血鬼に、ジルは感心していた。
「何を暢気な事を!」
村人の一人が怒鳴る。しかし、ジルは涼しい顔で検死する。
「見ての通り失血死。死後硬直が胸くらいまできてるわね。大体真夜中くらいにやられてるわ。抵抗の形跡は無いから……寝ていたみたいね。前の娘みたいな刻印は無いから、もうここでの目的は果たしたのかしら?さて……」
部屋を見回す。やはり密室。出るのは苦労するし、入るのは不可能。
粗方調べ尽くし、現場を出る。村人がわらわらと集まっていた。
271名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 07:39:40 ID:bDNqzIQS
支援
272名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 07:48:23 ID:reezf+9g
サルサンか・・・・
273絶望の街の魔王、降臨 代理の代理:2008/10/31(金) 07:57:14 ID:reezf+9g
「タバサ。周囲の調査と聞き込みを。見落としがあったら承知しないから、そのつもりでね」
「はい」
主であることを演じる。
「後……昨夜の警戒で疲れたから、少し寝てくるわ。何かあったら教えて。どうせ魔法使えないから、杖は貴女に預けるわ。暇ができたら磨いてて」
「はい」
更に囮を演じる。
その言葉に、当然ながら村人が反応する。
「んだァ!魔法が使えないのか!?」
「んな騎士様がいるんかよ!?」
数人の村人が怒鳴りながら詰め寄ってくる。
「この御方は、音に聞こえた偉大なメイジである」
「ガキは黙ってやガッ!?」
いきなり胸倉を掴まれ、ガタイのいい男が宙に浮く。
「うるさいわね。最近何とか退治とかで休みも無くあっちこっち回されてるの。精神力が溜まる暇なんて殆ど無いの。Do you understand?」
「お城は何考えて……」
「優秀な人手が足りないからよ。まともに化物退治ができる騎士なんて、数人しかいないの。でもね……」
殺意を向けられ、浮いている男が怯む。元の世界でのハードワークの鬱憤が、ここに来て爆発した。しかし、最低限の理性は残っている。『疲労の回復』ではなく『精神力の回復』と言ったのは、最低限の信用(メイジで、騎士であること)を失わないためだった。
「魔法が無くても、ある程度の化物は消せるの。魔法があったほうが遥かにいいのは確かだけど。だから、『たかがそれだけの事』であまり怒らないで欲しいわ」
タバサのシナリオに無い台詞。しかし、かえってこれはよかったかも知れない。
「う……」
「Ok?」
微笑んで、返答を待つ。男はこくこくと頷き、そして地に降り立つと、へなへなと崩れ落ちた。
「じゃあタバサ、頼んだわよ」
杖を渡し、宿へ向かう。
「何だ、あの馬鹿力は?」
「おい、大丈夫か?」
「あの女、普通の人間じゃねぇ……本当に素手で化物を倒した事があるぜ……」
ジルに持ち上げられた男が呻く様に呟く。底知れぬ闇の淵を覗いた様な顔で。
「おい!」
「あの方は、多少の無礼には眼を瞑る。それよりも、話を訊きたい」



ジルは本当に眠っていた。村人達がアレキサンドルとかいう男を疑い、騒ぎを起こしても起きない。それもそのはず、夜通し屋根の上に潜んで警戒していたのだから。
それを、彼女は狙おうとしていた。自分を討とうとする者、しかも若い女。それが無防備に眠っているのだから、やらない手は無い。
宿にも、周囲にも誰もいない。わーわーと遠くで聞こえる以外は静かなものだ。
274絶望の街の魔王、降臨 代理の代理:2008/10/31(金) 07:58:22 ID:reezf+9g
音を立てない様に扉を開け、ゆっくり忍び寄り、魔法で眠りを深くして、その首に噛み付こうとした。
刹那。



「――――え?」



抜ける様な間抜けなくぐもった破裂音。腹には激痛。そしてシーツには、穴。
「言ったでしょう?覗きをする様な娘は、素敵なレディになれないって」
何かに貫かれた傷は、何故か治らない。
「なん、で……?」
それは、様々な現実に対する疑問だった。
何で、起きてるの?
何で、判ったの?
何で、痛いの?
何で、治らないの?
何で――――。
「あんなに殺意満々で近寄られたら、誰だって起き……ないか。村の娘はしっかりやられちゃたものね。まあ、最初から怪しいと思ってたのよ。いつも妙に視線を感じたし、現場への進入経路からも、子供だと思っていたし。用心して眠りの魔法を使ったのは
褒めてあげるわ。いまもすごく眠いのよね」
そう言って、大欠伸をするジル。左手だけ伸ばして、右手はしっかりベレッタを握り、サプレッサー付の銃口を『彼女』から離さない。
「相棒、えげつねーぜ……て、その脚、大丈夫か?」
ずっと鞘か、宿に置きっぱなしで喋る機会が無かったデルフが、一言。ジルの太腿には、フォークが突き立っていた。
「さて、ちょっと面白い話があるんだけど」
完璧に無視して、彼女――――エルザに語りかけた。



その日の夜。
芝居の最終段階(クライマックス)が始まる。

「本当だった!エルザだ!」
「あの野郎!」
「逃がすな!追え!追え!」
ジルの言葉で、村全体がエルザを監視。襲撃を未然に防ぎ、逃げるエルザを村人達が追うが、先住魔法を駆使した足止めにてこずり、森に逃げられる。
『森には入らないこと。もし逃げられたら、可能な限り包囲すること』
ジルの指示通りに動く村人達。半信半疑だったエルザへの容疑か確実になった事で、村人達のジルへの信頼は非常に厚くなっていた。
「いいわね、絶対に森には入らないこと」
更に念を押し、杖を持ったジルは森に入ってゆく。
暫くして。何回も爆音が轟き、流れ弾の魔法らしい爆発が外にまで及び、村人はその戦闘に巻き込まれることを恐れ、誰一人としてジルの言いつけを破らなかった。
そして爆音は止み、どうなったか村人が心配する中、ところどころ焼け焦げた金髪を手に、ジルが森を出てきた。
村人達が上げる歓喜の咆哮が、茶番劇の終幕だった。



「生きたい?」
「……」
275絶望の街の魔王、降臨 代理の代理:2008/10/31(金) 07:58:56 ID:reezf+9g
苦しくて、頷くのが精一杯のエルザ。それに更にジルは問う。
「少し、話をしない?暴れないなら、助けてあげるけど」
痛みでまともに考えられないエルザは、これにも頷いた。
「Ok」
くいっと、ジルはエルザの顎を持ち上げ、口移しで『黒っぽい粉末』を飲ませた。
「……?」
不思議なことに、傷は殆ど『瞬時』といっていいほどの速さで塞がり、痛みが消えた。
「さて、エルザ。私の使い魔にならないかしら?」
「え?」
思わぬ提案に、一瞬凍りつく脳。それは、ジルが絶対的に取り得ない選択肢であり、エルザの予想を遥か数光年先をいった提案だった。
「ちなみに、嫌と言ったら永遠にさようなら。なれば私の下で働く事になるけど、定期的に血は飲めるし、生活は保障するわ。どう?」
ジルがこの提案を思いついたのは、吸血鬼が子供である、その確証を得たときからだった。誰にも気付かれずに目標を殺す、なんて高等技術を持っているということは、即ち諜報員に向くということ。ルイズは、今までどこをどう調べても送還魔法が見つからないと
言った。そして、ジルは禁書や立ち入り禁止の場所に『手がかり』がある可能性を示唆したが、ルイズの権限ではどうしても不可能がある。ならば、背に腹は変えられない。
忍び込み、盗むのだ。
今の彼女なら、盗賊だろうがB.O.W.でさえ利用するだろう。現に、これを利用した任務もあった。毒を以て毒を制す。
そして、それに適役をここで見つけたのだ。
「使い魔……人間の下僕なんて……」
「幾つかの約束を守れば、こそこそせずに生きていけるけど」
「約束?」
「人間を殺さない。私の命令に従う。これだけ。ああ、破ったら地獄の底まで追いかけてきっちり息の根を止めるから、そのつもりで」
ここで大人しく従う振りをして逃げ出す策は消えた。約束を――――契約を破ったら、本当にこの人間は――たとえ世界の果てに逃げようとも――私を殺すだろう。そして、この人間は絶対に殺せない。あらゆる感覚が、エルザにそう伝えていた。第六感までもが。
「で?どうかしら。悪い話じゃないと思うけど」
そう、確かに悪い話じゃない。人間に狩られる心配も無く生きてゆける、そして、血も吸える。これほど幸せなことは無い。
「あ、忘れてたわ。幾つか訊きたい事があるのだけど」
「な……何?」
答えを言おうとする寸前に声をかけられ、背筋に冷たい物が走る。
「どれだけ血を吸わないでいられるか。死なない程度に血を吸ったらどうなるか。血を直接吸うんじゃなくて、たとえば袋とかで保存したもので代用できるか。最低どれぐらいの頻度でどれくらいの量が必要か。教えてくれない?」
そう、前提条件。これで、問題があれば即射殺しなければならない。
「三年は飲まないで大丈夫だった。でもなるべく毎日がいいわ。死なない程度に吸ったら逃げられて、逆襲されそうになったから吸い殺してるだけだから、普通に生きていられるわ。屍人鬼には望まないとならないし。血の保存は……やってみたけど美味しくないから
あんまりやりたくないわ。一年に一回、人一人分くらいで大丈夫だったわ。でもそれじゃきついから、一週間にちょっとはほしいわ」
これならいける。救急セットの中には、輸血パックが幾つかと、輸血セットがある。いざとなれば、コルベールに複製を頼めばいい。平行世界ではガソリンの複製ができたのだ、輸血用血液の生産も可能だろう。
276絶望の街の魔王、降臨 代理の代理:2008/10/31(金) 07:59:27 ID:reezf+9g
「うん、問題ないわね。で、どうかしら?」
再び問う。既に選択肢はジルの示した道にしか無い。
「使い魔に、なってあげるわ」



「吸血鬼を使い魔にするなんて、あの魔王は凄いのね!!さすが魔王なのね!!」
上空、タバサとエルザを乗せたシルフィードがきゅいきゅいとはしゃぐ。
タバサは、髪を切られ少しだけ活発そうな印象になってしまったエルザを見て、複雑な気分になった。
――――吸血鬼を飼うなんて、正気じゃない。
そう、普通の人間、いや、メイジならそうだろう。
しかし、ジルは吸血鬼を、魔法すら使わず、しかも殺さず、己の力のみで従えてしまった。
「吸血鬼には、銀が効くのよ」
笑顔でそう言ったジルは、銀弾頭の9mmパラベラムをタバサに寄越した。月の光に反射して、手の中の其れは妖しく鈍く光り、何かの力を感じさせた。
「ま、魔王!?ジル、魔王なの!?」
エルザが蒼い顔でシルフィードに訊き返す。あの栗色の髪の化物の力を受けたもの同士、通じるものがあるのだろうか、先程からずっと話している。
下で咆哮が聞こえる。ジルが勝利宣言をしたのだろう。証拠は、エルザの髪。肉片すら残らず吹き飛ばした、そういうシナリオ。あれだけ派手にロケットランチャーをぶっ放していたのには、理由があったのだ。
後は、ジルが村長に報告して、そしてすぐにヴェルサルテイルに向けて発つだけ。あまり長く学園を開けていると、ルイズがオーガーになりそうだから、というのが理由だ。
「まさか、お姉ちゃんが騎士だったなんて。すっかり騙されちゃったわ」
「そう」
「でも……だったら、マスターは何者?お姉ちゃんの従者?」
277絶望の街の魔王、降臨 代理の代理:2008/10/31(金) 07:59:59 ID:reezf+9g
マスターという呼び名に一瞬迷い、それがジルの事だと思い至り、彼女に最も適切な代名詞を考える。
「……同行者?」
「何で疑問形なの?」
「判らない」
「だから魔王なのね〜」
余計謎を深め、風韻竜は夜空を飛ぶ。
考えても無駄だと、思考を切り替え、タバサは騒がしいのを我慢しながら月明りで本を読み出した。



「っきゃああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…………」
ドップラー効果で低く小さくなっていく悲鳴は、無論タバサのものではない。上空でその声を聞いていたタバサは、彼女を不憫に思った。
ジル曰く、「便利そうだから」らしいが、タバサは真意が他にあるように感じた。つくづく、何を考えているのか判らない。
しかし、この『魔王』についていけば、彼女の求めている物が手に入る、そんな予感がしてならなかった。どうやって手懐けたかは知らないが、少なくとも力だけでは無い。もしかすれば……と、タバサは思う。有り得ない事だと思いつつも、彼女が関われば現実味を
帯びてくる、その予想の先には。
タバサの中のイーヴァルティの騎士が、ジルの顔をして、笑っていた。
278絶望の街の魔王、降臨 代理の代理:2008/10/31(金) 08:00:44 ID:reezf+9g
246 名前: 絶望の街の魔王、降臨 [sage] 投稿日: 2008/10/30(木) 14:00:35 GiexnDNI
以上です。
247 名前: 絶望の街の魔王、降臨 [sage] 投稿日: 2008/10/30(木) 14:01:52 GiexnDNI
番外なので、6.5話です。
タイトル書き間違えた……
279名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 09:38:08 ID:eQdTJTEQ
魔王の人乙!!


エルザが使い魔になるとは‥‥社長の人とはまた別の新たな選択肢の誕生だな。
幼女が増える‥‥うむ、良い事だ。
280名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 10:37:08 ID:g/pM69uz
幼女が増えるよ!やったねタバちゃん!
281名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 10:41:51 ID:QVuho5JN
>>280
その台詞を言うなー
282名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 11:12:32 ID:2yrm4nvx
幼女?幼女と聞いては黙って居れんな
クワトロ・バジーナ、出る!


何時から何処から彼はロリコン呼ばわりされるようになったのだろう・・・・・・・

しかし実際大佐・・・・・もとい大尉が召喚された場合危ないのはタバサだけか?
283名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 11:14:16 ID:54mNdik1
>282
たぶん適当に手を付けられる2号さんがおマチさんに……
あるいは、戦艦つながり(レウルーラ)でキュルキュルが2号かもしれんが性格がなぁ
284名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 11:17:55 ID:q6SdHRlG
大佐ロリだが大人でも食える二色デッキなお人や
285名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 11:24:56 ID:v5VVpJdp
>>282
ララァの年が数字で出たあたりからじゃね?
でも赤い人ってどっちかってーとマザコンだと思うがなw

ゼロ魔キャラだと眼鏡にかなうキャラはおらんと思う
だってニュータイプいないし母親になれそうな包容力のあるキャラっておらんべwww

カトレアぐらい?
286名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 11:33:20 ID:2yrm4nvx
実際のところ大佐が幼女に手ェ出したのはララァ(年幾つだっけ)だけでない?
あとは・・・・・・ミネバ(0歳から2,3歳くらい?)と遊んだのとローティーンの
ハマーンとデートしてたの、あとクム(おまけのシンタも)を何処からともなく連れてきた
それから・・・・・・・クェスくらい?

結構実績あるな
ただ幼女スキーかはともかく女関係で無責任なのは確かだ。
しかし30半ばで「ララァは私の母親になってくれたかもしれん女性だ」って発言はマズいよなぁ
287名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 12:00:07 ID:y4bkOsp1
マザコンでロリコン…
あれ?どこかで聞いたような
288名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 12:08:03 ID:g/pM69uz
ルイズはなぁ…俺の母親になってくれるかもしれない女なんだ!
289名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 12:15:42 ID:Ow3N4rVa
>>288
ワルド乙
290名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 12:18:05 ID:MkLbMn9Y
ゼロ魔世界の幼女は貴重なのだよ。
291お前の使い魔 八話:2008/10/31(金) 12:26:36 ID:FdrLUHOv
予約が無いようなら、30分から投下しますわ
292名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 12:28:22 ID:MkLbMn9Y
てか、他幼女いたっけ?
293名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 12:29:10 ID:E7KF06VA
あとはエルザくらいか、幼女。
そして支援準備
294お前の使い魔 八話:2008/10/31(金) 12:30:09 ID:FdrLUHOv
 決闘の日の翌日、わたしは暇な時間を使って図書館に来ていた。

「お前、こんな所で何をするんですか?」

 ダネットが露骨に嫌そうな顔をして尋ねる。
 どうやら本という物事態に拒絶反応を示しているようだ。

「あんたの住んでた場所を調べに来たのよ。もしかしたら、セプー族っていう種族が住んでる場所の載ってる本があるかもしれないでしょ。」

 それを聞いたダネットは嬉しそうな顔をして、その後に寂しそうな顔をした。

「どうしたのよ?住んでた場所が判れば、あんただって帰ったりできるでしょ?」
「それはそうですが……そうなったら、こことも、お前ともお別れだと思って。」

 全く、こいつは何を言ってるんだ。
 使い魔の契約とは、一生を共に生きるということ。
 第一、わたしはダネットの住む場所がわかったとしても、素直に帰すつもりはない。
 わたしだってダネットの住んでた場所を見てみたいし、ダネットの知り合いに事情を話して、今後も使い魔として一緒に過ごす許可ぐらい取りたい。
 別に寂しいからとかじゃないよの? 単に使い魔に逃げられたとあっては、ヴァリエール家の名折れというか、ほら、まあアレだ。うん。

「言っとくけど、住んでた場所がわかったって、あんたとの使い魔の契約は一生消えないのよ? たまーに帰ることを許すっていうだけよ?」
「え!? 一生って言いましたか今!? わ、私聞いてません!!」

 あ、そう言えば言ってなかったっけ。

「諦めなさい。何なら、あんたの友達とかこっちに呼んで暮らせばいいじゃない。土地は……うん、わたしがどうにかするわよ。」
「むー……、でもこっちはホタポタありませんし……」
「そのホタポタって何なのよ? あんたが言うには食べ物みたいだけど?」
「えっとですね、ホタポタっていうのは……」

 そこから、ホタポタについての講釈が始まった。
 話をまとめると、どうやら、ダネットが住んでる土地特有の果物らしく、凄く美味しいとの事だ。
 うーむ。ここまで力説されると一度食べてみたいわねホタポタ。
 一通りの説明が終わった後、ダネットはポンと手を叩いて、さも名案が閃いた様に言った。

「そうだ!! お前も私の住んでる所にくればいいのです!! そうすればお前とも一緒だし、私もホタポタが食べられます!!」
「うーん……確かに食べてはみたいけど、わたしはその……」

 言いよどむわたしを見て、ダネットは何かに気が付いたかのようにハッとなる。

「そう言えばお前には家族がいましたね……。すいません。」
「べ、別に謝る事じゃないわよ。うん。あ、でも一度は行ってみたいわね。その時は案内してよねダネット?」
「はい!! 案内は任せとくのです。きっとお前も何度も行きたくなるのです。」

 満足したのか、ダネットはふらふらと図書館を回り始め、わたしも土地の事が書かれた書物を中心に調べ始めた。
 わたしが、適当に目星を付けて何冊かの本を机に持っていった頃、図書室のドアがガラリと開く。
295お前の使い魔 八話:2008/10/31(金) 12:32:20 ID:FdrLUHOv
「あら、あんた」
「あー!! お前はちび女!!」

 図書室に入ってきたのはタバサだった。
 タバサはちらりとわたしとダネットを見ると、興味が無さそうに移動し、自分の持ってきた本を机に置いた後読み始めた。
 うーむ……こいつ、何を考えてるかよくわかんないから苦手なのよね。
 ダネットはそんなタバサの所にずんずん突き進み、机をバンと叩いた。

「ちび女!! あの時はよくもやってくれましたね!!」

 あの時とは決闘の時かしら? 確かダネットの頭を杖でぶん殴ったのよねタバサ。
 わたしが止めようと席を立つと、タバサはダネットを見て、眼鏡をくいっと持ち上げ行った。

「タバサ。」
「きゅ、急になんですかちび女!!」
「タバサ。」
「う……」
「タバサ。」
「た…たばさ?」

 満足したのか、タバサは頷いた後に目を本に戻し、また読み始める。
 わたしはそれを見て驚いていた。
 あのダネットに名前をちゃんと呼ばせるつわものがいたなんて……なんか負けた気がする。
 ちょっとわたしも実戦してみよう。

「ダネット、ちょっといい?」
「何ですかお前。今は忙しいのです。」
「いいから。ちょっといらっしゃい。」

 しぶしぶわたしの所に来たダネットに、すぅっと息を吸い込んで言う。

「ルイズ様。」
「急に何ですかお前。お腹でも痛いんですか?」
「ルイズ様。」
「お前、熱でもあるんですか?」
「る、ルイズ様!」
「大丈夫ですかお前?」
「ルイズ様って言ってんでしょこのダメット!!」
「何で急に怒るんですか!! お前は訳がわかりません!!」
「何!? わたしが悪いの!? ほら言いなさいよ!! ルイズ様!!」
「嫌です!!」

 そんな感じで喧嘩を始めだしたわたし達を見て、タバサが笑った気がするのは気のせいだきっと。うん。
296お前の使い魔 八話:2008/10/31(金) 12:34:13 ID:FdrLUHOv
 結局、その日はろくに調べ物が出来ず、そのまま一日を終えた。
 そして虚無の曜日、わたしとダネットは学院の前から動くことが出来なかった。

「あんた、馬に乗ったことが無いならまだしも、馬を見たことが無いってどこの田舎物よ?」
「ば、馬鹿にしないで下さい!! こんな動物ぐらいあっさり乗りこなしてみせます!!」

 ダネットは馬に乗れなかったのだ。
 そんな訳で、わたし達は予定を少しずらし、乗馬の訓練をしていた。

「お、お前!! こいつ今、私を噛もうとしました!!」
「あんたが顔を触ろうとするからでしょ!!」

 結果は、今のところ芳しくない。
 わたしが今日の予定を乗馬の訓練で終えてしまうかもしれないと考え始めた頃、学院から見知った顔の二人が出てきた。

「何やってんのあんた達?」
「あ!!乳でかとタバサ!!」

 ダネットの言葉を聞いて、目を丸くするキュルケ。
 そしてタバサの方を見て、興味深そうに聞く。

「タバサ、どんな魔法使ったのよ?」
「ち、乳でか!! お前は私を馬鹿に……うわあ!! お前!! こいつまた私を噛もうとしました!!」

 溜め息をついたわたしを見て、キュルケがニヤリと笑いながら言った。

「もしかして出かけるつもりだったのルイズ?」
「そうよ。でも、今日は一日これかもね。」

 キュルケのニヤケ顔にむっとしつつ、後ろで四苦八苦しているダネットを見てまた溜め息をつく。
 するとキュルケが、更に顔をニヤつかせて言った。

「だったらさ」
297お前の使い魔 八話:2008/10/31(金) 12:36:18 ID:FdrLUHOv
「お前!! 気持ちいいですね!!」
「そうね。だからじっとしてなさいダネット。」

 わたし達は今、タバサの風竜に乗ってトリスタニアを目指している。
 ダネットは子供のようにはしゃぎ、目を離すと落ちてしまうんじゃないかと気が気ではない。
 まあ……竜に乗って空を飛ぶのは気持ちいいから、その気持ちもわからないでもない。
 わたしだってちょっと羨まし……いや、何でもない。
 気分を変えるために、風竜を始めて見たダネットの反応を思い出す。

「凄く食いでがありそうです!!」

 うん。思い出すんじゃなかった。
 いつかこいつは、他のメイジの使い魔を食べつくすんじゃないかしら。
 美味しそうにバグベアーを食べるダネットを想像し、溜め息を付いた後、心に引っかかっていた事をキュルケに尋ねる。

「それでキュルケ、交換条件は何?」

 この風竜はタバサの使い魔ではあるのだが、キュルケが許可を貰ってわたしとダネットが乗せてもらっている。
 どうも二人もトリスタニアまで行く用事があったらしいから、ついでと言えばついでなのだけれど、交換条件も無しに、あのキュルケがわざわざわたし達まで乗せるようにとタバサに頼むわけが無い。
 だからこそのあのニヤケ顔だ。

「あら失礼ねルイズ。あたしは親切心からタバサに頼んだのよー? 別に、最近美味しいって評判のクックベリーパイのお店がトリスタニアに出来たとか全くこれっぽっちも関係ないのよ?」
「あーそーですか。」

 そういう事かコノヤロウ。
 でもまあ、クックベリーパイぐらいなら別にいいか。わたしも好きだから一緒に食べようかしら。

「美味しい!? 私もそのクックなんとか食べたいです!!」
「わかった!! わかったから暴れないで!! お、落ちる!! 落ちちゃう!!」
「ちょっとルイズ!! 危ないわよ!!」

 そんな、空の上でまで騒がしいわたし達をチラっと見て、タバサが一言呟いたのが聞こえた。

「騒々しい。」
298お前の使い魔 八話:2008/10/31(金) 12:38:30 ID:FdrLUHOv
 風竜のお陰で予想以上に早くトリスタニアに到着したわたし達一行は、別に行くところがあるというキュルケとタバサに集合場所を言った後、別行動となった。
 取り合えず、わたしとダネットは、最初の目的である服屋へと行くことにする。

「本当は財布を持たせようかと思ったけど、ダネットに持たせるのは自殺行為よね……」
「ん? お前、何か言いましたか?」
「何でもないわよ。それより早く行きましょう。寝具も注文しないといけないんだから。」

 てくてく歩いている間、ダネットはキョロキョロと周りを見ていた。
 危なっかしいことこの上ない。
 いい加減わたしが注意しようと後ろを振り向くと。

「ダネット!! あまり余所見してると……っていないし!!」

 ちょっと目を離した隙に、ダネットはどこかに消えていた。
 あのダメット、一回痛い目見ないとわからないらしいわね。
 わたしがそんな事を考えていると、わたしを呼ぶダネットの声が聞こえた。

「お前、はいこれ。」
「あんたどこに……って、これ何?」
「これ美味しいです。さっき食べた私が言うんだから保証付きです。」

 手渡されたのは、平民が好みそうな串焼きだった。
 いい香りがして、確かに美味しそうだ。しかし。しかしだ。

「あんた……これ、どこから持ってきたのよ?」
「あそこのオッサンからですよ? 『お嬢ちゃん、食ってきな!!』って言って渡してくれました。」
「それは売りつけられたって言うのよこの馬鹿!! ダメット!!」

 串焼き代を店主に払い、本日何度目かの溜め息を付く。
 今更だけど、ダネットは大きな子供みたいなものだ。
 興味を引けば、それが何であろうと手にとってみたり、騒いだりする。
 貴族に対しての恐れすらなく、誰彼構わず感情だけで物を言う。
 学院だから許されるようなものの、本来なら貴族に対して『お前』なんて言おうものなら、場合によっては侮辱したと罪にすら取られる。
 でも不思議なことに、わたしはダネットから『お前』と呼ばれる事に、最初よりも不快感を抱いていなかった。
 今更『ルイズ様』何て呼ばれたら、逆にむず痒くなりそうだ。
 今はとても楽しい。それでいいじゃないか。
 そんな事を考え、何となくダネットに声を掛けてみる。

「ねえ、ダネット。あんたって本当に……って、またいないし!!」
「お前ー!! これ!! これ美味しいです!!」

 前言撤回。
 あのダメットには、一回きっちり常識っていうものを教えなきゃいけない。と、わたしは誓うのだった。
299お前の使い魔 八話:2008/10/31(金) 12:40:27 ID:FdrLUHOv
「やっと付いた……何かいつもの数倍疲れた気がするわ。」
「お前、運動不足ですね。」
「誰のせいよ!!」

 ようやく服屋に着いたわたし達は、早速選び始める。
 とは言っても、ダネットは服に無頓着なのか、どれが良くてどれが変というのがわからないらしい。

「お前、これ!! これがいいです!!」
「それ男物でしょうが!! いいから適当に見てなさい。わたしが選ぶから。」

 手に持っていたタキシードをしぶしぶ戻し、またふらふらと店内を見回り始めるダネット。

「うん。これなんかどうかしら。ダネット、試着してみなさいよ。」
「これですか……? ヒラヒラしてて動きづらそうです。」
「試しよ試し。ほら、着てみなさい。」
「わかりました……うー。」

 ぶつくさ文句を言いながらも、ダネットはわたしが選んだワンピースを持ち、試着室で着替えた後、ひょこっと顔だけ出して恥ずかしそうにわたしに聞いてきた。

「お前、これはやっぱりやめましょう。スースーします。」
「いいから出てきなさい。」
「うー……」
「あら、結構いいじゃない。」

 ダネットに派手な物は似合わないだろうと考え、薄い桃色のワンピースを渡したのだが、なかなかどうして似合っている。
 まあ、長い耳や角や、足の毛や蹄があるので、よーく見ると亜人だとわかってしまうのだが、パッと見では年頃の女性に見える。

「じゃあ今度はこっち着てみなさい。」
「またヒラヒラ……お前、なんか楽しんでませんか?」
「気のせいよ。ほら、早くしなさい。」
「うー……」

 その後も何着か試着してみたのだが、結局ダネットが選んだのは、シンプルな藍色のシャツとズボンだった。
 本人曰く、スカートは動きづらいから嫌だそうな。
 他にも、何着か下着を買って店を出た後、寝具の発注をしに行く。
 こちらはあっさりと決まり(最初、ダネットは寝袋を選ぼうとしたのだが、わたしが止めた。)集合場所の広場へと向かう。

「遅いわよルイズ。」
「文句ならダネットに言ってよね。」
「わ、私が悪いって言うんですか!? お前の足が遅いのが悪いんです!」
「どう考えてもあんたが原因でしょうが!」

 そのまま四人でクックベリーパイを食べに、新しく出来たお店とやらに向かった。
300お前の使い魔 八話:2008/10/31(金) 12:41:16 ID:FdrLUHOv
「これがクックなんとかですか!! 気に入りました!!」
「はいはい。わかったから、もっとゆっくり食べなさい。クックベリーパイは逃げないわよ……って、あんた!! それわたしのパイよ!」
「賑やかねえ。」
「騒々しい。」

 その後、パイを平らげ、紅茶をすすりながら今後の予定を話し合う。

「それで、この後は何か予定あるのルイズ?」
「特に無いわね。あんた達はどうなのよキュルケ?」
「あたし達も欲しかった物は買ったし、パイも食べられたから、特に予定は無いわよ。」

 どうしたものかと考えるわたしとキュルケに、タバサが割って入ってきた。

「これを読みたい。」
「お前、本ばかり読んでますね。いつか本になっちゃいますよ?」

 タバサの言葉に、ダネットが反応する。
 ん?どこかで笑い声が聞こえたような……気のせいか。

「じゃあ、ちょっと早いけど帰りましょうか。キュルケもそれでいい?」
「そうね。じゃあタバサ、お願いできる?」

 キュルケの問いにタバサは頷き、わたし達はトリスタニアを後にしたのだった。
 そして、その日から一週間が過ぎた時、事件は起きた。
 わたしとダネットにとって、とても大きな事件が。
301お前の使い魔 八話:2008/10/31(金) 12:43:50 ID:FdrLUHOv
以上で八話終了

本当なら別分けにする予定だった決闘後日と虚無の曜日を一つにまとめたら、長すぎたんで大幅カット
そしたら合わせても短くなったよ!ふしぎ!
ここまでのほほんとした流れでしたが、次は少し雰囲気かわると思います。

それでは
302名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 12:44:06 ID:qU5pDZ55
支援
303名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 13:04:05 ID:dRFXp9Xv
GJ!
相変わらず良い駄目ットでした。
素朴な疑問、デルフの出番は何時になるんだろ?二人の掛け合いが凄い楽しみ。
304名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 15:02:13 ID:JEnNy9dy
絶望の魔王の人乙
エルザは登場率高いけど、原作に輪をかけて虐殺パターンが多いだけに、生き残ったらこの先楽しみです。

ところでほかにエルザ生存する作品ってありましたっけ?
305名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 15:16:36 ID:54mNdik1
エルザどころかイザベラとタバサとすらきゅんきゅんしているロリコン退魔士がいるぞ
306名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 15:43:25 ID:dCe1D0WM
最後、ダネットのタバサの呼び方戻っちゃってますね
307名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 15:59:21 ID:MkLbMn9Y
エルザ生存って言うとイザベラ管理人かの
308名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 16:30:17 ID:3pdsf3bv
そう言えばカジノもエルザとだったな
309名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 16:41:07 ID:74TZ9AcI
ロリカードでは普通に食い尽くされてるし
兄貴の場合は踏まれてイっちゃったしな
310名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 17:09:00 ID:MkLbMn9Y
イザベラ管理人の作家カムバックしてほすぃ
311名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 17:27:19 ID:3peNBaiF
ダメットの人GJ!
相変わらず貴方の書くダメットは愛くるしいですハァハァハァハァ
次回にwktkしつつ全裸待機してます
(*´д`*)ハァハァ
312名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 18:32:02 ID:Mrcqpx/x
>>286
一年戦争当時、シャアが19歳で、ララァが16〜17歳なので実はロリコンでも何でもなかったりする。
とはいえ、シャアはその後10年以上ララァの事を引きずってるので、女々しいとなら言われても仕方がない(w
313名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 18:56:13 ID:cfAg8fCf
>>312
すいません、クエスやハマーンの件はどうすれば。
314名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 18:57:39 ID:DzukU55y
クェスも言ってたけどララァの代わりなんじゃねあの二人は?
315名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 19:15:02 ID:C/34zs26
>>313
劇中で描かれハマーン15歳の回想シーンが、ブラウス1枚でシャアにしなだれかかっている辺りjから
あのシーンは事後だという解釈で以下略
316蒼い使い魔:2008/10/31(金) 20:06:51 ID:8cT7K+wi
30話完成いたしましたので投下したいと存じます
またもちょっぴり長いです、さるさん喰らうかもしれないので
規制されてしまいましたら、代理の程、よろしくお願いいたします
予約がなければ15分あたりに投下します
317名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 20:10:14 ID:QVuho5JN
まあ富野作品には8歳児に慰めてくれとお願いする28歳のおっさんもいるし
318名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 20:10:24 ID:X5ohTDNx
待ってました!支援します。
319名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 20:11:58 ID:C/34zs26
おお、支援
320蒼い使い魔 第30話:2008/10/31(金) 20:15:05 ID:8cT7K+wi
「あれ…?」
ルイズは見知らぬ場所で一人ぽつりと佇んでいた、
ここはどこだろうか? ヴァリエール家の秘密の場所?
いや…違う、まるで見覚えのない場所、
辺りには板状に切りだされた不気味な石のオブジェが不規則にいくつもいくつも並んでいる。
「なにここ…なんだか不気味…」
そう言いながらとぼとぼと歩きだす。辺りは薄暗いが空には血のように紅い月が不気味に輝き
足元を照らしているため転ばずに済んだ。
周囲は静寂に包まれており、ルイズの足音だけがさみしく響き渡る。
「誰かいないの? ねぇ? バージル!? いたら返事してよ!」
孤独感に耐えられなくなり大声で己が使い魔の名前を叫ぶ、
だがその声は闇の中に吸い込まれ誰も返事をする者はいなかった。
「もう…なんで誰もいないの…? バージル…どこにいっちゃったのよ…」
ルイズはさみしさに押しつぶされそうになりながら、また歩き出す、だが歩けど歩けど一向に周囲の景色が変わることはなかった。
「なんなのよ! ここは!」
ついに我慢しきれなくなり大声を上げる、そして地面にへたり込むとあたりを見渡した
「それにしても…なんなのかしら、この石のオブジェは…まさか墓石だったりとか…」
ルイズはそう呟きながらふらふらと立ち上がりオブジェへと近づいて行く、
調べてみると何やら馴染みのない異国の文字が書いてある、
そこになんと書いてあるのかはルイズには読むことができなかった、
「やだ…これってやっぱり墓石…」
だがそれだけでも墓石と判断するには十分だった、ルイズは呻くように後ずさると再び地面にへたり込む。
「じゃ…じゃあ…こ…これ全部…?」
ルイズはとたんに恐ろしくなり周囲を見渡す、そこにはまるでルイズをぐるりと取り囲むように墓石が並んでいた。
「あ…あぁ…こ…これは夢よ…! そう…夢…! だ…だからすぐ醒める…こんなっ…!」
ルイズは恐怖心にかられながら、頭を抱えうずくまる。
そうだ、昔ちいねぇさまに教えてもらったことがある、怖い夢を見た時は楽しい事を考えるんだ、
そうすれば自然に怖い夢が楽しい夢に変わる。
思い出したルイズは必死に楽しい事を考えようと努力する。だが…
―ボコッ…ボコボコッ…
何かが、地面から這い出る音がする。
ルイズが思わずその方向へ顔を向けると…
手に大鎌や槍、大剣などを持った悪魔の群れが、墓石の下から這い出てくるのが見えてしまった。
「ひっ…!!」
恐怖に身体がすくみあがる。周囲に存在するすべての墓石から悪魔達が這い出てくる。
見渡す限り悪魔、悪魔、悪魔、その全てがルイズへとにじり寄ってくる。
「こ…こないで! こないで!」
ルイズが杖を抜こうとすると。いつも杖があるべき場所に杖がない。
「う…嘘っ!? そんな…い…いや…た…助けて…バージル…」
ルイズの体を絶望と恐怖が支配する、このまま悪魔に殺されてしまうのだろうか? 
にじり寄る悪魔の一体がルイズに向け剣を振り上げる、ルイズは恐怖で目をつむった。
321蒼い使い魔 第30話:2008/10/31(金) 20:16:16 ID:8cT7K+wi
「ッ…!」
―ガキィンッ! と言う剣と剣がカチ合う音が響く。
ルイズが恐る恐る目をあけると…
目の前にはルイズよりも小さい銀髪の少年が悪魔の振り下ろした剣を刀で受け止めていた。
「逃げろ! ×××!」
少年は振り向くとルイズに向け叫ぶ、誰かの名前を呼んだ気がしたがよく聞き取れなかった。
「え…だ…だれ…?」
ルイズは驚き少年を見るが髪の毛が目元を隠しており誰だか識別することはできない。
腰を抜かしたルイズはそのまま少年を見守るしかできなかった。
十歳くらいの少年が、自分の背丈よりも遥かに長い刀を振りまわし必死に悪魔を斬り倒している。
その刀にルイズは見覚えがある、閻魔刀だ、ではあの少年は…?
「バー…ジル…?」
悪魔達はすでにルイズのことは視えていないらしく次々少年へ襲いかかる。
斬り飛ばされた悪魔の首が少年の腕にガブリと噛みつく、
―ベキッ…! ベギッバキッ! という骨が噛み砕かれる嫌な音、
「がっ…!」
短い悲鳴をあげ、右手から閻魔刀を取りこぼす、が、すぐさま左手で受け止めると
柄頭で腕に噛みついた悪魔の頭を叩き潰す。
「ハァッ…! ハァッ…! ハァッ…!」
少年の息は荒い、すでに満身創痍だ。
―ボコッ…
少年の足もとの土が盛り上がる
「っ!?」
少年が気がついた時には遅く、地面から生えた槍が深々と少年の胸部を貫いた。
「ぐあっ…!」
短い悲鳴をあげながら少年は地面に倒れ伏す、
―ヒューッ…ヒュッ…ヒューッ…
肺から空気が漏れる音がする、少年は墓石に背中を預けながらも地面に突き刺さった閻魔刀へと必死に手を伸ばそうとする…
だがその少年の眼に映ったものは閻魔刀ではなかった、手を伸ばした閻魔刀のさらに先にあるもの…
小高い丘の上に建つ一軒の家屋、それが勢いよく炎を上げ燃え盛っている様子が目に入った…
少年の眼が絶望で染まる、おそらくは彼の家なのだろう、
「ぁ…ぁ…か…ぁ…さん…」
彼が消え入りそうな声で母を呼ぶ。
悪魔達が彼を取り囲む、その中の一体が地面に突き刺さった閻魔刀を引き抜くと…
彼の心臓目がけ突き刺す、それを合図とするように次々と悪魔達は彼の体に武器を突き刺していった。
その様子をみながらルイズは声にならない悲鳴を上げることしかできない
墓石にはりつけられた少年の指がピクリと動く…
「か……かあ…さん…××…×…」
少年はゴブッと大量の血を吐き出しながら燃え盛る家屋に向け弱弱しく手を伸ばすと…ガクリと崩れ落ちる
322蒼い使い魔 第30話:2008/10/31(金) 20:17:24 ID:8cT7K+wi
奇しくもルイズは彼が寄り掛かる墓石に刻まれた文字を読むことができた…
そこにはただ一つ

                   ‐ VERGIL ‐

とだけ刻まれていた。
「いやぁああああああ!!!!!」
ルイズはあらん限りの声をあげて涙を流す。今すぐにでも倒れ伏した少年のもとへと走っていきたい
だがルイズの足は動かない、動かす事が出来ない、まるで過去の映像を見るかのように
場面が切り替わるのをただただ見ているしかできないのだ。
「もうヤダ! やめて! おねがいやめて! こんなの見たくない!」
ルイズは涙を流しながら頭を振りまわす、しかし夢は一向にさめることはなかった
「う…うぅ…う…もうヤダぁ…ヤダよぉ…こんなの…バージル…助けて…」
目の前で起きたショッキングな場面にルイズは蹲った。
―クッ…ククッ…クククククク…ハッ…ハハッ…ハハハハハハハ!!!
突如墓石にはりつけられ息絶えたかに見えた少年が声をあげて笑いだす。
ルイズが驚いて顔を上げると、少年が自身の体に刺さった武器など意に介さないように立ち上がり
一本一本抜き取っていく、少年の眼はまるで血のように紅く染まり、口元を大きく歪め…笑っていた…
そして最後に心臓に突き刺さった閻魔刀を引き抜と、自分に襲い掛かった悪魔の群れに猛然と走りだした。
悪魔の群れを斬り倒し、薙ぎ払い、殺しつくす、目の前で行われているのはただただ一方的な殺戮。
悪魔達は抵抗らしい抵抗もできず少年に斬り殺されていく。その中で少年は、楽しそうに笑っていた、
ルイズはそれを、『恐ろしい』と感じる。やがて全ての悪魔を殺し終えた少年がふらふらと歩きだした。
そして不意に立ち止まると…燃え落ちた民家の方向を見て、場面はそこで停止した。
呆然と紅い月をバックに立ち尽くす少年を見ていたルイズの頭に突然声が響く。

―力は素晴らしい

―どんな悪魔もスパーダの力の前にはひれ伏す

―凡百の悪魔などスパーダの力の前では赤子と同じ

―無残に母を殺し、残酷に弟を害した悪魔に死を

―憤怒、後悔、哀惜、絶望、疑問、戸惑い

―その『痛み』が快感であり、その『痛み』こそが力となる

―全てを守るために選んだ道

―暴虐に終止符を打たせる力

―父の名に誓い、俺はそれを求めている

―俺の決意も力も、決して壊せはしない

『更なる力を望むや否や?』

「失せろ」

―ガシャァン!! というまるでガラスが砕け散るような音が響きわたる。
323蒼い使い魔 第30話:2008/10/31(金) 20:19:54 ID:8cT7K+wi
見るとあたりの風景がその音とともに崩れ落ち漆黒の闇に閉ざされる。
ルイズが驚いて周囲を見回す、すると闇の中に誰かが立っている。
そこには閻魔刀を抜き放ったバージルが立っていた。
「バージル!!」
ようやく見つけた、この悪夢から救い出してくれる己が使い魔
ルイズは使い魔の名前を叫びながら駆けだす、
そしてバージルにおもいっきり抱きついた。
「どこに行ってたのよ! 呼んだらすぐに来なさいよ! このばかぁ!」
ルイズは泣き叫びながらバージルの胸板を叩く。
バージルは微動だにせず、ただ自分の胸で泣くルイズを見下ろし…静かに口を開いた、
「ルイズ…お前も…俺の邪魔をするのか?」
「えっ…?」
その言葉にルイズが顔を上げる、言葉の意味が分からない。
バージルの髪は垂れ下がり目元を隠しているためその表情をうかがうことはできなかった。
「邪魔だなんてそんな…。私はただ…」
そこまで言うとルイズの頭の中に再び声が響く。

―あの日、『人間の』俺は死んだ

―俺の決意はなにも変わってはいない、俺は俺の道を征くだけだ

―邪魔をする者は、誰だろうと斬る

「な…なに…? なんなの…これ…」
ルイズがバージルから離れるようにふらふらと後ずさる、すると…目の前で何かが光った、
―ポタッ…ポタッ… となにかが滴り落ちる音が聞こえる
「え…?」
ルイズが恐る恐る視線を下へ向ける…そこにあったのは…
バージルの手に握られた閻魔刀が自分の腹を深々と刺し貫いていた。
あぁ、さっきの音は血の音か…ルイズはまるで他人事のように考える、
夢だからだろうか? 不思議と痛みは感じない、だが、閻魔刀の冷たい感触が体を貫いているのだけは感じることができた。
「な…なん…で…バージル…」
ルイズが何が起こったかわからないといった表情でバージルを見る、
二つの視線が交錯した。
ルイズの瞳は起こったことが信じられないと言いたげに時折歪み、バージルはルイズをただ冷たく見下ろしている。
一拍置いた後、ルイズの腹から情け容赦なく刃を引き抜いた、
ルイズは一瞬大きく身体を泳がせて、後はそれきり硬直し…膝をつき前のめりに倒れこんだ。
バージルはそれを見た後、暫し額に片手の指先を這わせ…
何やらもの思わしげな風情だったが、すぐにその考えを振り払うようにそのまま前髪を掻きあげる。
そうすることにより現れた彼の顔は、表情などカケラも無い冷たい空気をまとっていた、
「ど…どうして…? バー…ジル…」
ルイズが振り絞るように声を出す、
「ルイズ…警告だ、俺の邪魔をしないでくれ」
彼には珍しく―それこそ一度も聞いたことがないほど優しく諭すような口調でそう言うと、閻魔刀に付着した血を振りはらう。
そして後ろを振り返ると右手の閻魔刀を強く握りしめ、強い歩調で歩きだす。
彼の視線の先には紅く輝く三つの眼、そして視界を埋め尽くすほどの悪魔の軍勢があった。
「だめ…行っちゃ…だめ…お願い…行かないで!」
ルイズはバージルに腹部を貫かれながらも必死に這いつくばりバージルを追おうと足掻いた、
だが彼の背中はどんどん遠くなる。眼が霞む、瞼が…重い…、闇が…降りてくる…。
324名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 20:20:39 ID:X5ohTDNx
支援
325蒼い使い魔 第30話:2008/10/31(金) 20:21:26 ID:8cT7K+wi
「バージルッ!!」
―ガバッ、とルイズが勢いよくベッドから跳ね起きる。
「ハァッ…ハァッ…ハァッ…ハァッ…!」
心臓がうるさいほど高鳴っている。息が苦しい…
全身は汗でぐっしょり濡れており、眼がしょぼしょぼする、夢を見ながら泣いていたらしい
「夢…」
ルイズは呟きながら部屋の中を眺めまわす、そこはいつもと同じ、自分の部屋。
少し離れたところにあるソファにはバージルが横になっている。
「(あの夢って…バージルの…過去…?)」
とにかく落ち着こう、そう思いテーブルの上の水差しからコップに水を注ぎ、飲みほす。
今まで見たことがないほどの、過去最悪の悪夢だ。今でも鮮烈に思い出せる、あの恐怖。腹部を貫いた閻魔刀の冷たさ。
ルイズは自分のお腹をさする、夢の中とはいえ、バージルに刺されたのはかなりショックだった。
「…バージル?」
ルイズはソファで横になっている自分の使い魔に声をかけてみる
するとバージルは静かに目を開いた
「どうした?」
「あ…う…その…夢…そう…夢を見たの…そのなかでね…わたし…あんたに殺されちゃった…」
ルイズは絞り出すように今見た悪夢の内容をバージルに話す。
普段なら「夢の中でご主人さまを殺すなんてどういうつもりよ!」と癇癪を起こすところだが
あまりにも悲惨で壮絶な彼の過去と覚悟を目の当たりにしたせいかそんな気力は消え去っていた。
「これも…ルーンの効果か? くだらんことを…ますます気に入らん…」
それを聞いたバージルは眉間に深い皺を寄せ左手のルーンを睨みつける。
バージルはルーンによって過去を心を勝手に覗き見られたことに強い不快感を示す、当然だ、
彼にとっては最も触れてほしくない、トラウマに当たる部分だ
かといってルイズも自ら望んでそれを見たわけではないので責めるわけにもいかない。
自傷防止の効果がなければ即座に閻魔刀でルーンを左手の肉ごと削ぎ落としているだろう。
「その…ごめんね…」
険しい表情のバージルにルイズが恐る恐る謝る。
「なぜお前が謝る必要がある、すべてはこのルーンが原因だ、
…元をたどればお前にも責任はあるが、そこまで責める気はない、
夢の中で俺に殺されたのなら、それでチャラにしておいてやる」
「もう…人が謝れば調子にのって…すごく怖かったんだから…」
ルイズはそう呟くとベッドの中へと戻る、
そしてシーツをかぶると再びバージルを見る、
「ねぇ、ちょっとこっち来なさい」
「なんだ…」
「あ…あんたのせいで怖くて寝れなくなっちゃったのよ! だから…その…そ…そばにいてほしいの!」
「殺された相手にか? 変わった女だ」
バージルは呆れたようにソファから立ち上がるとベッドに寄りかかるようにドカッと腰を下ろす
「朝までここにいてやる」
「…ありがと」
「世話が焼ける…」
ルイズはバージルの背中に身体を寄せると、静かに寝息を立て始めた。
326蒼い使い魔 第30話:2008/10/31(金) 20:23:30 ID:8cT7K+wi
翌日
トリステインの王宮でアンリエッタは客を待っていた。
女王へ位を上げたとはいえ、のんびり玉座に腰をかけているわけではない
王の仕事は主に接待である。戴冠式を終え女王となってからは国内外の客と会うことが多くなった。
内容は何かしらの訴えや要求、ただのご機嫌うかがい、
アンリエッタは朝から晩まで誰かと会わなければならない羽目になっていた
しかも不幸なことに今は戦時中のため普段より客が多い、
どのような相手であれ威厳を見せねばならないため大変に気疲れしていた。
マザリーニの補佐がなければとっくにダウンしているだろう。
しかし、次に自分の目の前に現れる客は違う。先のような対応をしなくてもいい、だけどとても大事な客。
部屋の外で待機している呼び出しの声が聞こえた。客がこの場に到着したのである。
アンリエッタは溢れる嬉しさを少しばかし我慢した。もう少しだけ女王の態度をとらなければ。
無理矢理作った口調で、「通して」と告げる。すると、固く閉ざされていた扉がゆっくりと開いた。
ルイズが立って恭しく頭を下げる、その隣には彼女の使い魔、バージルの姿が―見えなかった。

「ルイズ! あぁルイズ! 会えて嬉しいわ!」
ルイズは頭を下げたまま、応える。
「姫さま……、いえ、陛下とお呼びせねばいけませんね」
「そのような他人行儀を申したら承知しませんよ。ルイズ・フランソワーズ。
あなたはわたくしから最愛のお友達を取り上げてしまうつもりなの?」
「ならば…、いつものように姫さまとお呼びいたしますわ」
「そうしてちょうだい。ねえルイズ、ホント女王になんてなるんじゃなかったわ。退屈は二倍。窮屈は三倍。そして気苦労は十倍よ…」
アンリエッタは疲れ切った表情を浮かべながらため息を吐く。
「そういえば…ルイズ、あなたの使い魔の方は?」
「あ…えと…バージルは別室で待機させています、その…そう! た…体調が悪いとかで…!」
その問いかけにルイズは目をすごい勢いで泳がせながら答える。
「そう…残念ね、一言お礼を申し上げたかったのだけれど…」
無論嘘である、まさかバージルがアンリエッタとの謁見を拒否した、とは言えない
「あの女に膝をつくのは死んでも御免だ」
とバッサリ言われあきらめることにした、アンリエッタの前で空気を読まない発言を連発されるよりは遥かにいい。
バージルがアンリエッタをあまりよく思ってないのは確かだ、そもそもあの男に気に入られる人間がいるかどうかは甚だ疑問だが…。
「あの…姫様? お礼…と仰いましたが…?」
ルイズは先のアンリエッタの言葉を聞き返す。
そもそもここに呼ばれた理由はなんだろうか? 
今朝がた急にアンリエッタからの使者が魔法学院にやってきたのである、
二人は授業を休みこうしてアンリエッタが用意した馬車に乗りここまでやってきたのだった。
やはり呼ばれた理由は『虚無』のことなのだろうか?
するとアンリエッタはルイズの手を握る、
「先のタルブでの勝利は、あなたと彼のおかげだもの、お礼をしなくちゃ」
ルイズはアンリエッタの表情をはっとした表情で見つめる。
「わたくしに隠し事はしなくて結構よ。ルイズ」
「わたし…なんのことだか……」
それでもとぼけようとするルイズにアンリエッタはほほ笑むと羊皮紙の報告書をルイズに手渡した。
327名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 20:23:53 ID:C/34zs26
支援
328蒼い使い魔 第30話:2008/10/31(金) 20:24:46 ID:8cT7K+wi
その報告書をかいつまむとこう書いてあった。
『所属不明の風竜から飛び出した蒼い衣を纏った銀髪の騎士が次々と敵竜騎士隊を撃墜、駆逐』
「(あれだけムチャクチャやればそりゃ目立つわよね…)」
それを読んでルイズは大きくため息を吐く
「ここまでお調べなんですね…といっても、この蒼い衣の剣士って時点でバレバレですよね…」
「あれだけ派手な戦果をあげておいて隠し通せるわけがないじゃないの、
兵たちの間では黙示録の騎士とも呼ばれていますが、わたくしにはすぐにわかりましたわ。
だから彼にもお礼と恩賞を与えたかったのですけれど…、体調不良では仕方がありませんね」
アンリエッタはそこでクスクスと笑うと、もう一度ルイズの目を見て言った。
「多大な…本当に大きな戦果ですわ、ルイズ・フランソワーズ。あなたとその使い魔が成し遂げた戦果は、
このトリステインはおろか、ハルケギニアの歴史の中でも類を見ないほどのものです、
本来ならあなたに領地どころか小国を与えて大公の位をあたえてもよいくらい、
そして使い魔さんにも特例で爵位を与えることもできましょう」
「わ…わたしはなにも…手柄を立てたのはあいつ…使い魔で…」
ルイズはぼそぼそと言いづらそうに呟く。
「あの光はあなたなのでしょう? ルイズ、城下では奇跡の光だと噂されていますが
私は奇跡を信じませぬ、あの光が膨れ上がった場所にあなたたちが乗った風竜がいた、
あれはあなたなのでしょう?」
ルイズはアンリエッタに見つめられこれ以上は隠せないと判断し、
「実は…」と始祖の祈祷書のことを話し始めた。

「では…間違いなく私は『虚無』の担い手なのですか?」
「そう考えるのが正しいようね」
ルイズは溜息をついた。
「これであなたに、勲章や恩賞を授けることができなくなった理由はわかるわね? ルイズ」
「はい」
「だからルイズ、誰にもその力のことは話してはなりません。これはわたしと、あなたとの秘密よ」
すると、考え込んでいたルイズが何か決心したかのように、アンリエッタを見つめ口を開く。
「おそれながら姫さまに、わたしの『虚無』を捧げたいと思います」
「いえ…、いいのです。あなたはその力のことを一刻も早く忘れなさい。二度と使ってはなりませぬ」
「神は…、姫さまを…トリステインをお助けするためにこの力を授けたはずなのです!」
しかし、アンリエッタは首を振る。
「母が申しておしました。過ぎたる力は人を狂わせると。『虚無』の協力を手にしたわたくしがそうならぬと、誰が言いきれるのでしょうか?」
ルイズは昂然と顔を上げる、自分の使命に気がついたような、そんな顔であった。しかしその顔はどこか危うい。
「わたしは、姫さまと祖国のためにこの力と体を捧げなさいとしつけられ、信じて育って参りました。
しかし、わたしの魔法は常に失敗しておりました、ついた二つ名は『ゼロ』。嘲りと侮蔑の中、いつも口惜しさに体を震わせておりました」
ルイズはきっぱりと言い切る、
「しかし、そんなわたしに神は力を与えてくださいました。わたしは自分の信じるものに、この力を使いとう存じます。
それでも陛下がいらぬとおっしゃるなら杖を陛下にお返しせねばなりません」
そんなルイズの口上にアンリエッタは心を打たれた。
「わかったわ…ルイズ、あなたは今でもわたくしの一番のお友達、
あなたがわたくしを信じてくれている限り、わたくしもあなたを信じ決して裏切らないことを始祖に誓いますわ…」
「姫様…」
ルイズとアンリエッタはひしと抱き合った。
329蒼い使い魔 第30話:2008/10/31(金) 20:26:15 ID:8cT7K+wi
謁見を終えたルイズがバージルを迎えに別室へと向かう。
ルイズがドアをあけると、部屋の中に『体調不良』で休んでいるはずの男が
優雅にティーカップ片手に足を組みながら本を読んでいる光景が目に入った。
「バージル、終わったわ、帰るわよ」
バージルはその言葉を聞くとテーブルにティーカップを置き、部屋を出た。
王城の廊下を二人で歩いているとルイズがバージルの横腹を肘でつつく
「姫様があんたに『お体にお気をつけてくださいね』ですってよ」
「……ふん」
バージルはつまらなそうに鼻を鳴らすと横目でルイズを見ながら話しかける、
「ルイズ、なにか下らんことを言ったのではないだろうな?」
「何よ下らないことって、ただこれからも変わらず姫様に忠誠と『虚無』をささげるって誓っただけよ」
「それが下らんと言うのだ…」
呆れたように吐き捨てるバージルにルイズはキッとなって睨みつける
「貴族が陛下に忠誠を誓うのは当然のことよ! 姫様も私が信じている限り決して裏切らないと始祖に誓ってくれたわ!」
ツンと胸を張って答えるルイズはなにやら書面を取り出した
「なんだそれは」
「許可証よ、女王陛下公認のね、簡単にいえば女王の権利を行使する権利書ってところね、
あぁ…姫様はそれほど私を信頼してくださってるんだわ…私もそれに答える、姫様のためにね」
そう言いながら悦に入るルイズをみるとバージルは小さくため息を吐いた。
「あ、そうそう、忘れるところだったわ、はいこれ」
ブルドンネ街に入ったところでルイズは思い出したかのようにバージルに何やら皮袋を手渡す、掌に収まる大きさだがなかなかに重量がある
「…これは?」
「姫様からあんたにだって、タルブでの恩賞、ありがたく受け取っておきなさい」
「金と…宝石か、まぁいいだろう」
バージルが袋の中を確認するとコートのなかにしまい込む、彼にとっては貴族の地位よりも価値のあるものだ。
「あんたも姫様のご期待にちゃんと答えるのよ! 私の使い魔なんだから!」
「断る、俺はお前とは違ってあの女に忠誠を誓う気など毛頭ない、今回はたまたま利害が一致しただけだ」
やっぱりこいつをアンリエッタに合わせなくて正解だった、その言葉を聞きルイズは心底そう思った
「何言ってるの!? ご主人様が生涯忠誠を誓う相手には使い魔も忠誠を誓うのは当然でしょ?」
「知らんな、俺は魔界に行く、いつまでもここに留まる気はない」
「口を開けば魔界魔界! 勝手に行けばいいじゃない、だれも残ってほしいなんて頼んでないわ」
ルイズはぷいっと顔をそらすとバージルより歩調を速めて歩き出した
「そうか、ではそうさせてもらおう」
バージルは事もなげに言う、まるでその言葉を待っていた、と言わんばかりだ
「えっ!?」
その言葉が聞こえたのかルイズが立ち止まり振り返る、あまりにあっさりバージルがその言葉を受け入れたからだ
「なっ…て…手がかりはあるの!? ないんでしょ? 
行けないかもしれないじゃない…! そんな場所にどうやって行こうっていうのよ!?」
「手がかりならある」
バージルはそう言うとコートから一冊の本を取り出す、それは昨晩読んでいた本だ。
「な…なんの本?」
「『魔剣文書』、スパーダが封じた魔界への道が書かれている。この世界にもあるとは思わなかったが、
つい先日見つけた、この世界にも魔界への道が存在するのは確かだ」
「う…そ…」
「解読が終わればすぐにでもここを発つつもりだ、路銀もこの通りだ」
バージルはにべもなくそう言うと呆然と立ちすくむルイズの横を通り過ぎ、人込みをかき分け消えていった。
330蒼い使い魔 第30話:2008/10/31(金) 20:27:42 ID:8cT7K+wi
バージルは歩調を緩ませることなく人込みをかき分け歩いて行く。
城下は戦勝祝いで未だにお祭り騒ぎ、酔っぱらった一団がワインやエールの入った盃を掲げ
口々に乾杯! と叫んではカラにしている。
ルイズはバージルの口から出た言葉にしばし立ち尽くしていたが、バージルの姿がないことに気がつく、
長身で銀髪にロングコートという割と目立つ格好とは言え人ごみに紛れてしまい、まるで姿が見えない。
ルイズは慌てて駆けだした。
「いてぇな!」
勢いあまって、ルイズは男にぶつかってしまった。
どうやら傭兵崩れらしい、手には酒の壜をもって、それをぐびぐびラッパ飲みしている、
相当出来上がっているようだ。
ルイズはそれを無視し男の脇を通り抜けようとしたが、腕を掴まれた。
「待ちなよ、お嬢さん、人にぶつかって謝りもしねぇで通り抜けるって法はねぇ」
傍らの傭兵仲間らしき男が、ルイズの羽織ったマントに気がつき
「貴族じゃねぇか」と呟いた。
だが男は動じず、まだルイズの腕を強く握っている
「今日はタルブの戦勝祝いのお祭りさ、無礼講だ! 貴族も兵隊も町人もねぇよ。
ほれ、貴族のお嬢さん、ぶつかったわびに俺に一杯ついでくれ」
男はそう言うとワインの壜を突き出した。
「離しなさい! 無礼者!」
ルイズが叫ぶと男の顔が凶悪に歪んだ
「なんでぇ、俺にはつげねぇってか。おい! 誰がタルブでアルビオン軍をやっつけたとおもってるんでぇ!
『聖女』でもてめぇら貴族でもねぇ! 俺達兵隊さ!」
男はそういうとルイズの髪をがしりと掴もうとしたその時
男の頭の上からワインがどぼどぼと浴びせられる、
いつの間にか男の後ろに立っていたバージルがワインの壜を奪い男の頭の上から浴びせかけていたのだった。
「ぶっ…なっ…なんだテメェ! なにしやがっ―」
男がそこまで言い切る間もなくバージルの手が男の首をガシリと掴み上へと持ち上げる
首を掴まれ立つべき地面を失った男がジタバタともがく、がバージルの手はまるで万力のように男の首を締めあげた
「あ…がっ…ごっ…」
「お…おい! てめぇ! 何しやがる! は…離しやがれ!」
締め上げられた男が顔を蒼白にしながら泡を吹き始め、それを見て慌てた傭兵仲間達がバージルを取り囲む。
バージルは首を掴んでいた手をパッと離し、男を地面に放り出す。
地面に放り出された男はビクビクと痙攣し口から泡を吐いている
「お…おい…コイツはやばい…」
バージルの眼をみた傭兵の一人が顔を蒼くして呟く、
長年戦場を生き抜いてきた長年の勘が、いや、生命の本能部分が告げる
―この闇と戦ってはならない
今まで味わったことのない濃厚な死の気配、この男は数多の死を振りまいてきた魔人だと直感する
その恐怖は周囲を取り囲んだ傭兵達に伝染したのかじりじりと後ずさる。
「ひっ…ひぃいい…」
その中の一人が逃げ出すと傭兵達は気絶した男を無視し蜘蛛の子を散らすように逃げだした。
「………」
それを見送ったバージルは無言のままルイズの横を通り過ぎて行ってしまった。
ルイズはハッと我にかえるとバージルを追いかけコートの袖をぎゅっと握る、
離したら今度こそどこかに消えてしまいそうで不安になったからだ。
「その…ごめん…」
「なぜ謝る」
「………」
怒ってるのかな? そう考えたルイズはバージルの顔を覗き込む
その横顔は、やはりというべきか、氷のように無表情だった。
引きずられるようにルイズは歩く、助けに来てくれたことはこれが初めてではない
けれど来てくれたときは本当にうれしかった。冷たくされた分だけ気持ちは弾んだが
それを悟られたくないと思ってしまうルイズだった。
331名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 20:32:42 ID:TQCN2sOg
しえん
332名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 20:34:32 ID:X5ohTDNx
支援
333名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 20:34:34 ID:lx5Afidl
さるさんかな?
334名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 20:35:22 ID:C/34zs26
さるさん行ったみたいね
難儀なものだなぁ
335代理:2008/10/31(金) 20:35:31 ID:AW3OBLmK
気がつけばルイズはバージルの手を握っていた、バージル自身が握り返してくることはなかったが
鬱陶しそうにもせず、振り払うこともしなかった。
ルイズはそんなバージルと歩くうちにだんだんとウキウキしはじめた。
街はお祭り騒ぎで華やかだし、楽しそうな見世物や珍しい品々を取りそろえた屋台や露店が通りを埋めている。
その中をバージルとルイズが手をつないで歩いて行く、バージルは相変わらず前のみを見て歩いているが
ルイズは物珍しそうにあたりを見回していた。
もしこの場に彼の弟―ダンテがいたらなんと言うだろうか?
『オイオイ…俺は夢でも見てんのか? あのバージルが女と手をつないで歩いてるよ!
どうりで妙な天気なわけだ…こりゃ空から女の子が降ってきそうだな!』
その言葉を皮切りに壮絶な兄弟喧嘩が幕を開けるだろう。
…それは置いておいて、辺りを見回していたルイズが「わぁっ」と叫んで立ち止まる
「……?」
バージルがルイズの見ている方向を見ると、そこには宝石商の露店があった。
建てられた羅紗の布に指輪やネックレスなんかが並べられている。
バージルが視線を感じ下を見るとルイズが頬を染め上目遣いでみつめていた
「ねぇ…見てもいい?」
「好きにしろ」
ルイズは顔をぱぁっと輝かせるとバージルの手を引き露天へと近づく。
すると商人が客だと判断たのか、声をかける。
「おや! いらっしゃい! 見てください貴族のお嬢さん!
珍しい石を取り揃えましたよ。『錬金』なんかで作られたまがい物じゃございません!」
並んだ宝石は貴族がつけるにしては少々派手すぎて、お世辞にも趣味がいいとはいえないものだった。
ルイズはペンダントを手に取る、貝殻を彫って作られた真っ白なペンダント、
周りには大きな宝石がたくさん埋め込まれている
しかしよく見ると少々ちゃちな作りである、宝石もあまり上質なものは使っていない、安物の水晶だろう
でもルイズはそのペンダントが気に入ってしまったようだ。
バージルが目ざとくそのペンダントに張られている値札を見る、そこには小さく4エキューと書かれていた。
スッとバージルがルイズの横に出る、ルイズが少し驚いたようにバージルを見る。
するとバージルは一つのペンダントを手に取った。
それは珊瑚色の細長い石を包み込むように絡んだ一対の金の羽、そしてその上にもう一対、
広げた金の羽があしらわれたペンダント。
ルイズが手に取ったペンダントと比べると幾分おとなしめな装飾だがその分上品で洗練されている
値札を見ると1エキューと小さく書かれていた。それを素早く外すと店主に1エキューを指ではじき飛ばす。
「これをくれ、金はこれでいいな?」
「へぇ、まいど」
「くれてやる、それで我慢しろ」
「えっ…えっ…? あ…」
バージルは突然の出来事に呆然とするルイズにポイとペンダントを放り投げると
人込みをかき分けさっさと歩いていってしまった、
ルイズはしばし呆気にとられていたが、思わず頬が緩んだ。
"あの"バージルが自分のために買ってくれた、それがとてもうれしかった、
ペンダントを愛おしそうになでると、ウキウキ気分で首に巻いた。
「お似合いですよ」と商人が愛想を言った。
バージルに見てもらいたい、そう思い人ごみの中のバージルの背中を追いかける、今度は見失わない。
一方そのころ、歩き去るバージルに一部始終を見ていた背中のデルフが声をかける
「相棒…お前意外とケチだな…」
「………あの空気だと支払わせられるのは俺だ、出費と時間は最小限に抑えるに限る」
バージルの本音は人ごみの喧騒にまぎれ、消えていった。
336代理:2008/10/31(金) 20:36:03 ID:AW3OBLmK
251 :蒼い使い魔 あとがき:2008/10/31(金) 20:31:45 ID:.HCg4.06
これにて投下終わりです、支援ありがとうございました
はい、彼、根本は全然変わってませんね、
冒頭の夢の部分は漫画版から推測した作者の勝手な妄想なのでご了承を…
彼が決して語らぬ過去と本心を夢という形でルイズにおとどけしてるんだけど、
こ…こういうのも使い魔との信頼関係を築くために必要よねっ!ってことで
ルイズにとっては彼の壮絶な過去は悪夢以外の何物でもないでしょうが…
ちなみにバージルがルイズに渡したペンダントはネロがキリエに渡したものと
同じものってことでここはひとつ…
では次回またお会いしましょう
337名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 20:37:46 ID:C/34zs26
兄貴乙

恋ですのう
338名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 20:39:02 ID:lx5Afidl
ニヤニヤ

兄貴&代理人乙!
339名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 21:05:07 ID:4Kbwo7Iw
蒼い人、及び代理の人、乙でしたー!

しかしこう蒼い人が続くと、
長らく更新が途絶えている悪魔も泣き出す使い魔の人も恋しくなってきますな。
340名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 21:12:37 ID:RYu1BPO1
バージルは溶けてきているのか観念したのかどっちだろうね?
書き手さんと代理さん激しく乙です。
次の話に向けてぜんらたいk
341名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 21:19:16 ID:AW3OBLmK
wiki重くね?
342名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 21:19:46 ID:rZMBdPrE
蒼い人&代理の方、乙であります!

あのバージルがプレゼントね…と思いきや違ったかw
ルイズのことだからタバサに見せびらかしそうだな〜
それに対抗してタバサも「私にも」とか言いそうw

そういえば今後エルザ戦以外にもタバサの任務に付き合うことはあるのかな?
個人的に読んでみたいけどね
343名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 21:27:58 ID:vOSvneDc
>エルザ生存系

管理人の人と姉妹スレの銃の人…
意外にもパナソニック氏は生存系、再登場するかな?
344名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 21:33:15 ID:DzukU55y
>姉妹スレの銃の人
メインヒロインとして頑張ってるのはこれだけだったかな?
345名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 21:44:08 ID:YXGhjbwh
つか、エルザ生存系のパイオニアじゃない?>銃の人
346名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 21:49:03 ID:C8hjux5J
姉妹スレに最近投下された小ネタでも生き残ってたな>エルザ
347名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 21:53:58 ID:1umdqnai
藻前らホントにエルザ好きだな。
人によって好き嫌い分かれる外伝の一登場人物でしかないのに。
他のキャラとの格差とは一体何なのだ?
348名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 21:56:26 ID:r69xfhkp
ぅゎょぅι゛ょっょぃ
349名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 21:57:40 ID:wlC1R8QW
>>347
吸血鬼
幼女
350名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 22:03:04 ID:JEnNy9dy
意外と生存系もあるものだね。
まあ確かに大量殺人犯で、言ってることもやってることも悪質ではあるけど、なにか憎みきれないんだな。
351名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 22:03:41 ID:cnj9nIpL
>>347
見た目は幼女 頭脳も幼女 その名は吸血鬼エルザ
352名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 22:17:37 ID:r69xfhkp
婆朗
353名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 22:29:52 ID:/S2hTU5U
おぜうさま効果ですね分かります
354虚無と金の卵:2008/10/31(金) 22:36:45 ID:wGxgP+wj
予約無ければ、22:45から「虚無と金の卵」の8回目を投下します。
今回は9レス分ほど。
355名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 22:39:41 ID:wpvbuSO2
>>350
所詮世の中見た目が9割です、人類殲滅が目的の殺戮機械とかでも
見た目が萌え幼女なら和解を試みて惨殺されるべき
356名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 22:41:46 ID:vOSvneDc
奇面組の「痩猪エルザ」なんかどうか

最終回でうたたねから覚めたルイズが
「はっ、ここは魔法学院…サイトとか虚無とか、今までのことは全部夢だったって言うの?」

”ゼロの使い魔”は夢だったのかも知れない…
でも私はまた彼らに会えそうな予感がする…ほら、いまにも…
357虚無と金の卵 1/9:2008/10/31(金) 22:46:19 ID:wGxgP+wj
 
 優秀なメイジ揃いの魔法学院の宝物庫が破られる――前代未聞。
 だが崩れ去った宝物庫の壁/刻まれた犯行声明を見て、誰もがその事実を認めざるを得なかった。
 ここまで強引な手段と、それが実行可能な実力の持ち主が居るとは、誰も想像すらしていなかった。
 結局、教師陣の誰もが責任問題の議論に終始し、同じく誰もが責任回避するための論理を考えあぐねていた。
 特に風の属性の教師、ギトーが前日の当直担当のシュヴルーズを責め立て、シュヴルーズが弁償すべしとの意見で纏めようと画策し誘導していた。
 オスマンが現場に入ってくるまでは。
 現場に集まった教職員を見回し、オスマンは、落ち着いた声で問いかけた。

「さて、この中でまともに当直をしたことのある教師は何人おられるかな?」

 オスマンの視線を受け止めるもの――皆無。

「これが現実じゃ。
 もし責任があるとしたら我々全員じゃ。勿論儂も含めて。誰もが、賊が入るなどとは夢にも思っておらんかった。
 何せメイジ揃いのこの場所、虎穴に入るようなものじゃからな。しかし……」

 オスマンは壁の穴を見つめる。

「この通り、大胆にも賊は忍び込み、『眠りの鐘』は盗まれてしまった。
 大分荒らされているようじゃから、他の被害状況もはっきりと確認せにゃあならんが……。
 ともあれ、この通り全員が油断していたのじゃ」

 責任を覚悟していたシュヴルーズは感涙も隠さずにオスマンを見つめる。
 照れくさくなったのか、オスマンは二、三度咳払いし、話を再会した。

「さて、犯行現場を見ていたのは誰だね?」
「この三人です」

 コルベールが、後ろに控えていたルイズ、キュルケ、タバサ達に前へ出るよう促す。
 ウフコックがルイズの肩に乗り、また上空をシルフィードが飛んでいたが、当然数には入っていない。

「ふむ……君達か」

 ちらり、とオスマンはウフコックを見据える。
 だが、自嘲気味にすぐに視線を外した。

「では、状況を説明してくれたまえ」

 最も状況を冷静に見ていたのはタバサだった。
 タバサの説明は的確かつ端的で、ところどころキュルケが具体的な補足を入れつつ説明をしていた。

「ふむ……では、ゴーレムの魔法を解いた後の足取りはわからない、と?」
「そうです、オールド・オスマン。深い森の中を進んでいったようで、風竜から追いかけるのは限度がありました」
「……ふむ、他に手がかりは無し、か」

 オスマンは己の白い髭を撫でつつ思案な表情をとる。

「そういえば、ミス・ロングビルは何処じゃね?」
「朝から姿を見かけておりませんな……」
 
358名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 22:46:58 ID:YXGhjbwh
支援の心
359虚無と金の卵 2/9:2008/10/31(金) 22:47:39 ID:wGxgP+wj
 コルベールに何気なく尋ねた頃、この現場へ駆けて来る女性の姿があった。噂に上っていた、ロングビルであった。

「申し訳ありません。朝からフーケの件で、調査をしておりましたので」
「おお! 流石、仕事が早いのう。……して、結果は?」
「はい。フーケの居所がわかりました」
「何ですと!」

 コルベールが頓狂な声を上げる。

「近所の農民が、森の廃屋に入る黒いローブ姿の男を見かけたそうです。恐らく、フーケの隠れ家かと」
「それは近いのかね?」
「徒歩で半日、馬車で4時間といったところでしょうか」
「うむ、これはすぐ王室から応援を呼んで、兵隊を差し向けて貰わねば」
「馬鹿者!」

 オスマンの鋭い叱責――魔法学院を統べる者の威厳に満ちた声。

「応援を呼んでいる間に逃げられてしまうわい。降りかかった火の粉は自分で払うのが貴族じゃ!
 この件は儂らの手で解決する!」

 高らかなオスマンの宣言に教師はどよめく。
 誰しも魔法学院の建物の堅牢さを知っていた。それを力任せに破壊するフーケの手並み――まさに想像の埒外。

「では、フーケ捜索隊を編成しよう。我こそと思う者は杖を掲げよ」

 誰もが見合わせ、沈黙する中、さっと一振りの杖が上がる。
 ルイズの鳶色の瞳――普段以上に真剣で、固い意思に満ち溢れている。

「ミス・ヴァリエール! あなたは生徒ではありませんか! ここは教師に任せて……」
「誰も掲げないじゃないですか」

 誰もが、無理だ、と思った。
 だが、止めておけと身を案じる声、生意気と侮る声、ただ痛ましげに見る視線――あらゆる意思をはねのけ、ルイズは屈さない。

「ふん、ヴァリエールには負けていられませんわ」

 キュルケが続いて杖を掲げる。
 そして物言わずにタバサが続く。

「タバサ、貴方は良いのよ? 関係はないんだから」
「心配」

 タバサの偽り無い淡々とした答えにキュルケは感動し、ルイズも、唇をかみ締めて感謝した。

「ありがとう、タバサ……」
 
360虚無と金の卵 3/9:2008/10/31(金) 22:49:26 ID:wGxgP+wj
 その光景を微笑ましげに見ていたオスマンが口を開いた。

「うむ、ではこの三人にお願いするとしよう」
「オールド・オスマン!」

 危険すぎる、とシュヴルーズが中心に抗議の声を上げる。だがオスマンはそれを制した。

「彼女らは敵を見ている。それにミス・タバサは若くしてシュバリエの称号を持つほどの者じゃ」

 シュバリエとは、決して金では買うことのできない、明白な実績に対して贈られる称号。
 タバサは、メイジの実力を裏付けるに十分な爵位であるシュバリエのの持ち主である。
 その事実に、キュルケ、ルイズ、そして事情を知らぬ教師陣が驚いていた。

「ミス・ツェルプストーはゲルマニアにて優秀な軍人を輩出する家系じゃ。
 ミス・ヴァリエールは……ああ、その、優秀なメイジを多く排出する公爵家の生まれで、将来有望じゃろう。
 それに」

 オスマンは、ちらりとルイズの肩に乗るウフコックに視線を移す。

「彼女の使い魔は、その小さき体で、グラモン家のギーシュ・ド・グラモンを圧倒するほどの剛の者であるとの噂じゃ」
「そうですぞ! 何せかれはミョズ」

 コルベールの軽い口を、オスマンは慌てて押さえる。

「おほん……さて、この三人に勝てると言う者は居るまい。
 ……ミス・ヴァリエール、ミス・シュヴルーズ、ミス、タバサ…。儂からお願いしよう。
 魔法学院のために、フーケを探し、捕縛してくれるか?」
「杖に賭けて!」

 オスマンの真剣な視線を受け止め、三人の少女は力強く唱和した。

「ミス・ロングビル。彼女らが出立するための馬車などを準備してやってくれんか?」

「ええ。畏まりました」

「ギトー君、宝物庫の被害状況を調査してくれたまえ。
ミセス・シュヴルーズ、君は本日の授業はすべて臨時休講とする旨を伝えて、またできる限り外出せぬよう生徒と使用人達に周知してくれるかの?」
「ええ、了解です」

 ギトー、シュヴルーズが前に出て首肯する。

「……しかし、ちと不謹慎かもしれませんが……『破壊の杖』が盗まれなかったのは不幸中の幸いでしたな」

 話がまとまり、コルベールがやや安堵した声で言葉を漏らす。
 ロングビルが密やかに耳をそばだてた。
 
361虚無と金の卵 4/9:2008/10/31(金) 22:50:40 ID:wGxgP+wj
「全くじゃ。コルベール君も悪運が強いのう。君に貸しておいて本当に良かったわい。
 眠りの鐘は、そこそこに強力なマジックアイテムではあるが、破壊の杖ほどの希少な財産というわけでも無し。
 怪盗などと世間は噂しておるが、フーケの審美眼も案外大したこと無いのう」

 ざらついた空気を払拭するため、敢えてフーケを皮肉るオスマン。
 ほとんどの教師がオスマン同様、この不祥事による重い空気を払拭したかった。
 皆、緊張が解き解れ、オスマンにつられて笑っている。
 ぴくり、ぴくりとロングビルの耳が何故か動く――残念ながら目撃した人間はゼロ。

「はっはっは、全くです。まあ破壊の杖は自分の研究に役立てるつもりでしたが、こんな形で学院に役立っているならば光栄ですとも。
 それに私の研究室で鍵付きの金庫に入れ、さらに固定化して保管しておりますから、ご安心くださいませ」

「うむ。……さて、本題に戻ろう。
 今、我々が直面しているのは、まさにトリステイン魔法学院の危機である。各々が結束してこの危機を乗り切ろう。
 まず、現場の検証に当たる者以外は解散じゃ。諸君らの努力と、貴族の義務に期待する!」

 誰かの静かな怒りの気配、そして喜びに転じる気配――気付いた人間、当然の如く無し。
 現場を取り纏める者/討伐隊となり、心の内の戦意を高めている者/そして、己の職業意識に燃える者――皆、それぞれの行動を開始した。
 
 
 
362虚無と金の卵 5/9:2008/10/31(金) 22:51:50 ID:wGxgP+wj
 
 
 まだ学生の身分ながら、威風堂々たるルイズ達の姿がフーケ/ロングビルの網膜から離れない。
 決して他人には明かさぬ過去。
 彼女にも、貴族らしく振る舞い、家のため、国のために誇り高く生きた頃があった。
 羨望すら感じるほどの青さ。輝かしいほど潔く掲げられたルイズ達の杖――自分の中に一つも残っていないもの。
 遥か過去に人の手によって捨てられたものであり、そして己の手で捨てたもの。
 複雑な胸の内を抱きつつ、彼女は自分の仕事をこなす。
 残る仕事を無事終えれば、魔法学院秘書としての生活はそこで終わりであった。
 悪くない職場であった。嫌いではない人間も多かったし、嫌いな人間には吠え面をかかせることもできそうだった。
 この生活も、自分で捨てるとはいえ惜しいものだった。
 結局、何かを盗むたびに、何かを捨てていることには違いなく、今更その性分を変えられるはずもなかった。
 これから先、この学院に踏み入れることはあるまい――彼女はそんなこと感慨を込めて最後の仕事へと取り組んでいた。
 そして馬車や食料など諸々の準備を整え、フーケの捜索隊との待ち合わせ場所へ馬車を寄越した。
 そしてロングビルは、フーケとしての準備を整える。





 ――待ち合わせ場所の光景。
 醜い罵りあいがロングビルの耳を突き刺す。三人の女性の甲高いわめき声が響く、刺々しい空気が待ち合わせ場所を覆っている。
 ――3人の子供の喧嘩が繰り広げられていた。

「私は行くっていったら行くのよ! 私に遅れて杖を掲げたくせにでかい口を叩かないでほしいわね!」
「……身の程知らず」
「魔法が使えない癖に、何を生意気言ってるんだか。あんたなんかフーケの指一本で死んじゃうのよ!?」
「うるさいわねっ、ここまで来て後に退けるワケないでしょう! こっちこそ面白半分で首を突っ込まれちゃ迷惑なのよ!
 あんたは街に言って男でも引っ掛けてれば良いじゃない!」
「口が減らないわねっ……! そんなんだからアンタの先祖は寝取られるのよ!」
「なによ、泥棒猫のツェルプストーの癖に!」
「何ですって! この寝取られヴァリエール!」
「……ボキャブラリーが貧弱」
「タバサは黙ってなさいよ!」
「そうよ、ヴァリエールなんかと話してたら下品な口調が移るわ。タバサは話しちゃ駄目よ」

 ルイズとキュルケ、ついでにタバサは、互いに一歩も譲らずに罵り合っていた。
 貴族としての威厳――無し。
 オールド・オスマンの面目――無し。
 フーケと対峙するという緊張感――何処にも無し。
 誇り高く杖を掲げた生徒の醜態――理解不能。
 大人の威厳を見せて生徒を叱る――至難。
 だが、このままでは互いに杖を向けかねない。
 ロングビルはこんな喧嘩と係わり合いになるなど避けたかったが、流石に止めないのは不自然だと気付く。
 
「あー、そ、その、皆さん……落ち着きましょ? ね?」

 ロングビルは、何とも嫌そうな表情を何とか隠しつつ宥めようとして近づく。

「なによ横から煩いわね! ……って、ミス・ロングビル、来てましたの」

 言い争いに業を煮やしたキュルケがそれに気付き、ぱっと表情を輝かせた。
 
363虚無と金の卵 6/9:2008/10/31(金) 22:53:46 ID:wGxgP+wj
「丁度いいところに来たわ。ほら、タバサ、馬車に乗って」
「え、え?」

 驚くロングビルを尻目に、キュルケとタバサは無理矢理馬車へ乗り込む。

「ちょっと、私も……!」
「てやっ」

 キュルケは杖を振るって威嚇程度の小さい火を放つ。
 避けるのは造作も無い速度だったが、血が登ったルイズを驚かせ、時間を稼ぐには十分であったらしい。
 ルイズがのけぞった隙に、タバサとキュルケは馬車に飛び乗る――間髪居れずの、タバサの風によるめくらまし。
 砂塵を巻き上げ、馬車とルイズの距離をさらに引き離す。

「ミス・ロングビル! 早く馬車を出して!」
「え、ええ!? 良いんですか?」
「ちょ、何するのよ、待ちなさいよっ!」
「ホラ早く!」

 キュルケは急かしておきながら、ロングビルの握っていた手綱を奪う。
 急な手綱捌きに驚いた馬は、驚いて走り出す。
 ルイズだけをその場に残しつつ、馬車は去っていく。

「帰ったら土産話くらいは話してあげるわよー! じゃっあねー!」

 凱歌を上げるような勝利宣言。キュルケは、地団駄を踏むルイズを満足げに眺めていた。
 はっと気付くように、ロングビルはキュルケから手綱を取り戻す。

「……あのう、私知りませんよ……?」
「大丈夫ですわ、ミス・ロングビル。私もタバサも、こう見えてもトライアングルなんですから。
 大船に乗った気でいてほしいですわ」

 何処までも楽しげなキュルケに、ロングビルは疑わしげな視線を向ける。

「でもですね……オールド・オスマンに選ばれた以上、足りないというのは問題と思うのですが……?」
「ミス・ロングビルはご存知無いかもしれませんが、ミス・ヴァリエールは魔法が使えないんです。
 この場は無理にでも止めてあげるべきなんです。全く、あのフーケと戦うなんて」

 優しさと冷徹さ。からかいと思いやり――それらのない交ぜになったキュルケの表情に、ロングビルは思わず感心するように頷いた。

「友達思いなんですね……。でも恨まれますよ?」
「芝居するのは得意ですから。それに、あのくらいの悪態だって日常茶飯事ですの。全然気にしまわせんわ。
 それに……」
「それに?」
「貸しを作っておくには、悪くない相手ですから」

 キュルケはそう呟き、意味ありげに微笑む。
 ロングビルは、つられて微笑む。
 
 
 
364名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 22:53:55 ID:GCb8x5Ny
兄貴にはずっと孤独のままでいてほしいな
365虚無と金の卵 7/9:2008/10/31(金) 22:55:45 ID:wGxgP+wj
 
 
 キュルケ達を乗せた馬車は魔法学院近辺の草原を抜け、昨日フーケが消えた森に差し掛かっていた。
 道中は何事も無かった。フーケどころか、人も獣も、全くキュルケ一行に姿を見せない。
 ただただ、平和で閑静な森が広がるばかり。
 馬の足音、馬車の車輪の軋み、そして何処かの鳥の囀りだけが響き渡る。
 タバサは時折注意深く耳をそばだて辺りをうかがっていたが、異常が無いとわかると、本を開いて読書に勤しんでいる。
 キュルケなどは暢気に欠伸しながら、のどかな空気を味わっていた。
 緊張感の無さそうな二人に物言いたげに、ロングビルは馬を御しながらちらちらと振り返る。
 だが視線を感じてもキュルケもタバサも全く動じない。
 それどころか、暇つぶしを求めるように、キュルケはロングビルに向かって雑談をもちかけた。

「何とも平和ですわねぇ。フーケ捕縛なんてお堅い目的じゃなくて、殿方と遊びに来たいところですわ」
「あの……だいじょうぶですか? あと一時間くらいでフーケの隠れ家に着きますよ?」
「大丈夫、幽霊の正体見たり……って言うじゃありませんの。警戒ばかりして消耗していたら、勝てるものも勝てませんわ」

 キュルケは何とも暇な様子で、爪にやすりをかけ始めた。
 爪先が滑らかな曲線を描くのを見て取り、満足げに微笑む。

「ねえタバサー、今はどう? 周囲に何かありそう?」
「異常なし」

 タバサは呼ばれた瞬間のみ、ふと顔を上げる――端的に返事し、また読書に没頭する。

「まあ、良いならば構いませんけど……」
「ええ。全然問題ありませんわ……あふぅ」

 また一つ、キュルケは欠伸をかみ殺す。

「しかし、ミス・ロングビルも今朝からお忙しかったのに、御者なんてやらせて申し訳ないですわね」
「いえ。これも秘書の仕事ですから」
「オールド・オスマンも良い人材に恵まれてますわ」

 衒いの無い賛辞に、ロングビルは微笑だけを返す。

「でもあれだけの助兵衛ジジイの相手も大変でしょう?」
「…そうなんですよ! 全く、この学院の男性陣は本当、ロクでも無い連中ばっかりで……」
「コルベール先生は何か変ですし……ギドー先生も実力はあるんでしょうけど、ちょっと……ですわね」
「本当、そうなのよ!」

 ロングビルとキュルケは口々にこの場に居ない男性教師の愚痴を吐き出しつつ、暢気な馬車の旅は続く。
 タバサは興味なさそうに読書したままだが、ロングビルは随分と不満を溜め込んでいたようだ。
 しばらく話していただろうか。辛辣かつ気楽な愚痴もあらかた出尽くした後で、キュルケはフーケの話に戻した。

「ところで、ミス・ロングビル。フーケってどんな人なんでしょうね。世間を騒がす怪盗の素顔、なんて凄く気になりません?
 しかもその怪盗をこれから捕まえようっていうんですから」
「さあ……噂は聞きますが、容姿など全く話に昇りませんからね」
「怪盗と言うくらいですから、きっと渋いオジサマじゃないかしら、って思いません?」
「はぁ……」
「意外と若かったり、あるいは私たちと同じくらいの年だったりしたら驚きよね。タバサはどう?」
「……メイジの実力は、年齢や見かけで判断してはいけない。
 同い年の可能性も、老人の可能性もある……」
「おじいちゃんやおばあちゃんだったらガッカリよねぇ」
「年下よりは良い」
 
366名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 22:57:34 ID:/S2hTU5U
しっしっしえええん
367虚無と金の卵 8/9:2008/10/31(金) 23:00:23 ID:wGxgP+wj
 タバサの冷静な指摘――のように聞こえるが、実際はキュルケと息の合った会話。
 やれやれ、とロングビルは肩をすくめる。だがキュルケは悪びれもせず楽しげに話す。

「じゃあ当たったら金貨1枚なんてどうかしら?」
「私は賭け事はちょっと……」 と、ロングビルは撤退。
「構わない」 タバサは頷く。
「あら、ミス・ロングビル、残念ですわ。じゃあ私とタバサ二人で勝負よ」
「了解」
「私は、そうね……フーケの人相は……」

 キュルケは親しげにロングビルに近づいた。

「貴女みたいな人だと思うのよ」

 そして同時に、炎を放ってロングビルの杖を燃やす。

「タバサ!」

 タバサの行動――呼ばれるまでもなく、ロングビルの腕を極めて杖を首元に突きつける。

「動くな」
「い、一体なにを……!」
「残念でした。もうバレてるのよ。土くれのフーケさん?」

 キュルケは距離を取り、油断なくロングビル/フーケを見据える。
 長閑な森の空気が凍ったように張り詰める。異常を感じた馬が嘶き馬車を揺らす。誰も動揺を見せない。

「この通り、杖は燃やしたわ。
 もし他に隠し持っていたとしても、ここで下手な動きをしたら魔法の撃ち合いになるわね。
 タバサは風のトライアングル。錬金の魔法なんかでタバサに不意打ちなんてできるかしら?」

 キュルケによる、牽制と誘導を込めたフーケへの説明。反撃の意思を奪うために、キュルケは敢えて攻撃的な物言いをする。

「それにこの場から逃げても、今頃はルイズが教師達を説得してここに引き連れて来るはずよ。
 残念だけど、泥棒稼業は今日で畳んでもらうことになるわね」

 楽しげな口調――視線は真剣そのもの。
 唇をかみ締めるフーケを油断なく見据える。怪盗として巷を騒がせた彼女が、どんな魔法、どんな技を隠し持っているか――。

「……何故私を?」
「鼻の効く仲間が居たのよ。ゴーレムの上に居た貴方は見えなかったでしょうけど。
 ああ、『破壊の杖』も諦めてくださいます?」
「くっ……!」
 
368虚無と金の卵 9/9:2008/10/31(金) 23:01:12 ID:wGxgP+wj
 
 キュルケの視線を受け止めていたフーケ――不意に、怒りに満ちたその表情が緩む。
 はあ、と溜息を一つ吐く。

「ふふ、ふふふ……全く、一本取られちゃったわ。まあでも……私の役割は大体果たしたから。
 私の首なら貴女達にあげるわよ?」

「……何ですって?」

 キュルケの警戒――そしてフーケの驚きの敗北宣言。

「ずいぶん物分かりが良いのね……でも油断させる気なら無駄よ」
「いいえ、本当よ。……人形で良いなら、だけどね!」

 ぽん、と音を立てて、ロングビルの体が煙と消える――馬鹿な。
 何処へ消えたのか、キュルケは周囲を見渡す。フーケの姿は何処にも無い。めくらましと移動――違う。

「なんでっ? 何処へ行ったの!?」
「……違う、そうじゃない」

 タバサが、足元の何かを拾う。
 それは手に乗る程度の大きさのアルヴィーであった。

「私たちは騙された」 タバサの声に焦燥が篭もる。
「……それは何?」
「……スキルニル。ガーゴイルの一種。血を吸った人間に変身して行動する、古代のマジックアイテム」

 ぎゅ、と力を込めてタバサはアルヴィーを握り締めた。
 
369虚無と金の卵:2008/10/31(金) 23:02:59 ID:wGxgP+wj
以上、投下終了。
応援ありがとうございました。
しかし、もーちょいでテンプレ展開抜けられそうで書いてて楽しいっす。
370名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 23:14:14 ID:YG7WwepA


ルイズ達が最初から芝居を組んでたんだね
でも、このフーケも一筋縄じゃいかなそうだな
371名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 23:19:33 ID:FSzouCXd
乙です。
ウフコックにかかればおマチさんの悪巧みなんてバレバレだよなーと思ってたら、そう来るか。
これはワルドのときも楽しみだぜ。
372狂蛇の使い魔:2008/10/31(金) 23:41:54 ID:XJwPuQhO
予約等なければ23:50くらいから投下したいです
373名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 23:45:52 ID:r69xfhkp
>>369
投下乙!

毎度楽しく読ませて貰っているよ!
こういう頭を捻った展開はいいね、テンプレを突き抜けてオリジナルの方に流れても応援するよ!
374名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 23:49:25 ID:H1GX7ZSQ
>>372
支援なんだな。

>>369
お疲れ様。スキルニルをここで使うか!
いやはや。良い物見れました。
375狂蛇の使い魔:2008/10/31(金) 23:51:47 ID:XJwPuQhO
では、投下します

第十話


「仮面……ライダー?」
ルイズの纏った白虎の鎧をまじまじと見つめながら、キュルケが言った
その横にいるタバサも、じっとルイズの身につけた鎧を観察している。
「……ええい、この際なんだっていいわ! あのゴーレムには魔法が効かないみたいだし、これを使ってダーリンを助けてきなさい」
そういって渡されたのは、キュルケが買ってきたという豪華な装飾が施された大剣であった。
重そうな見た目とは裏腹に、片手で難なく持ち上げることができた。
「……よし!」
タイガは苦戦している王蛇の方を見やると、一直線に駆け出した。



「はっ!!」
右腕から繰り出される一撃を、王蛇は横っ飛びでかわす。
直後、王蛇が元いた地面が剛腕によって抉られた。
「埒があかんな……」
ゴーレムから距離を置き、何か手立てはないものか、と考える。
すると、後ろから何者かが掛け声とともに近づいてきた。
「やああああああ!!」
王蛇が何事かと振り向くと同時に、声の主がその横をものすごい勢いで通り抜けていった。
その姿は、紛れもないライダーであった。

「あれは……」
ゴーレムに向かっていく後ろ姿を見ながら、王蛇は呟いた。
376狂蛇の使い魔:2008/10/31(金) 23:54:01 ID:XJwPuQhO
 
「たああああああ!!!」
ゴーレムの元にたどり着いたタイガは、両手で持った大剣を頭上に構えると、勢いよく振り降ろした。
土でできた右足を、大剣が一刀のもとに両断する。



……ことはできなかった。
バキンという鈍い音とともに大剣の刀身が真っ二つに折れ、吹き飛ぶ。
「お、折れたぁ!?」
半分から先がなくなってしまった剣を見て、タイガは思わず叫んだ。
「なによコレ! 全然役に……んぐわっ!!」
文句を言おうとしたタイガを、ゴーレムはその巨大な手のひらで容赦なくなぎはらう。
弾き飛ばされたタイガは、一瞬空中を舞った後、様子を見ていた王蛇の前まで転がっていった。

「い、いててて……」
「馬鹿か? お前は」
足元でうずくまるタイガを見ながら、王蛇が呟く。
その時、ふといい考えが浮かんだ。
「まあいい。……それより」
「? なに?」
立ち上がりながら、タイガは応える。
見に纏った鎧のおかげで、それほどダメージを受けなかったようだ。
「お前、あいつの動きを止めろ」
「えっ!? ど、どうやって……」
「カードを使うに決まっているだろう!!」
そう言い残すと、王蛇は再びゴーレムに向かって走り出した。
377名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 23:54:56 ID:nJ57xXyD
支援しなければ生き残れない!
378名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 23:55:27 ID:L+GF+Ct4
>「お、折れたぁ!?」 
お美事にございまする支援
379狂蛇の使い魔:2008/10/31(金) 23:56:20 ID:XJwPuQhO
 
一人残されたタイガは、王蛇の残した言葉に困惑していた。
「カードを使え、って言われても……」
以前彼が戦っていた姿を思い出す。
確か、紫色をした蛇の杖にカードを入れて効果を発動していたはずだが……。
(そんなもの、一体どこにあるのよ……)
ルイズが心の中で呟く。
と、その瞬間、左手に何かが触れた。

突然の感触に驚きつつ、左に顔を向ける。
するとそこには、己の背丈ほどもある巨大な斧が転がっていた。
柄は青色で、中央にある黒い持ち手の部分が周りよりも一回り細くなっている。
牙を剥き出しにした白虎の顔が、斧の刃の根本を覆っている。
デストバイザーと呼ばれる、タイガの主要武器であった。

「これは……斧?」
タイガが両手で柄を掴み、持ち上げる。
この奇妙な形をした斧をしばらく眺めた後、柄の先を地面に真っ直ぐ突き立てた。
すると、カチャリという音とともに白虎の顔が上に押し上げられ、覆われていた青く四角い中身が姿を現した。
カードを差し込むらしい隙間も存在している。

(そうか、これを使って……)
タイガは右手をカードデッキにあてると、ゆっくりとカードを引き抜いた。
380狂蛇の使い魔:2008/10/31(金) 23:58:17 ID:XJwPuQhO
 
引き当てたのは、美しい結晶が描かれた一枚のカード。
タイガはそれをデストバイザーに差し込むと、白虎の顔を右手で押し戻した。
それと同時に、バイザーが音声を発する。

『FREEZE VENT』



「やっとか……役立たずめ」
眼前で止まっているゴーレムの拳を見ながら、王蛇は呆れたように呟いた。
タイガの発動したカードの効果により、ゴーレムは今や完全にその動きを止めていた。
その身は凍っているかのように、うっすらと青みを帯びている。
「相棒、これは一体……のわぁぁぁっ!!」
持っていたデルフリンガーを横に投げ捨てた王蛇は、紫の杖を取り出すとデッキからカードを引き、杖に装填した。

『UNITE VENT』

杖から音声が鳴るとともに手鏡から現れる、蛇、サイ、エイの三体の怪物。
「うわっ!!」
側にいたキュルケとタバサは、突然の怪物の出現に目を丸めながら、その異形の者たちから遠退くように後ずさりした。
三体の怪物たちは、互いの身を一ヵ所に集めると、まばゆい光を放ちながら一体の巨大な怪獣へと変貌していく。



光の中から現れた怪獣―獣帝ジェノサイダー―は、雄叫びとともにその赤い羽を広げた。
381名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 23:59:03 ID:4WSJLKbV
オレには文才がない。でもな、支援をすることはできる!
382狂蛇の使い魔:2008/11/01(土) 00:01:50 ID:TWtmGkcT
 
「フン、そろそろ人形遊びもおしまいだ……」
王蛇はそう言うとデッキからカードを引き、再び紫の杖に装填した。

『FINAL VENT』

先ほど出現した怪獣が、唸り声とともに自らの胸部を食い破る。
すると、食い破られた胸部から風を切るような音が鳴り出し、辺りの空気を吸い込み始めた。
シルフィードに乗って避難したキュルケとタバサ、そして王蛇のすぐ後ろにいるタイガの三人は、その光景をただ茫然と眺めていた。

準備が整ったのを確認した王蛇は、未だ微動だにしないゴーレムに向かって走り出した。
「ウオオオオ!! ハァッ!!」
助走をつけて勢いよく跳躍し、ゴーレムの目の前まで飛び上がると、体を回転させながらの飛び蹴りを繰り出した。
「ダアァァァァッ!!」
ゴーレムの顔面に直撃すると、その凍りついた巨体が傾き始める。
そして、後ろにいるジェノサイダーに倒れかかった瞬間、ゴーレムの体がぐにゃりと歪むと、みるみるうちにジェノサイダーの胸部の穴へと吸い込まれていく。

しばらくすると、跡形もなく消滅してしまった。
383名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 00:03:23 ID:mYCgb3XP
不動の不発率を誇るドゥームズデイじゃないか! 支援
384狂蛇の使い魔:2008/11/01(土) 00:04:33 ID:TWtmGkcT
 
「ふぅ……」
タイガがため息をつくと同時に変身が解除され、ルイズの姿に戻る。
前方では王蛇も変身を解き、浅倉の姿に戻っていた。
未知の力が引き起こす驚きの連続に、ルイズの頭は少々混乱気味であった。
「ルイズ、大丈夫? 一体何がなんだか……」
手鏡とデルフリンガーを回収する浅倉の後ろ姿を見ながら、ルイズが物思いに耽っていると、後ろから声をかけられた。
振り返ると、キュルケとタバサがこちらに向かって歩いてくるのが見える。
こちらも困惑していることを伝えようとしたが、それは予想外の人物によって妨げられた。

「皆さん、ご苦労様でした」
「ミス・ロングビル!?」
ルイズたちのすぐ横にある木の陰から、緑の髪をした理知的な女性、ロングビルが姿を現した。
突然の登場に驚くルイズたち。
ルイズたちのもとへ戻ってきた浅倉も、彼女を怪しむように目を細めた。
それらに構うことなく、ロングビルは続ける。
「破滅の箱は無事だったのかしら?」
「え? あ、はい。無事です」
そういうと、ルイズは手にしていたタイガのデッキをロングビルに手渡す。

手渡した後で、なぜロングビルが破滅の箱の所在を知っているのか、という疑問がルイズの頭に浮かび上がった。
385狂蛇の使い魔:2008/11/01(土) 00:07:44 ID:TWtmGkcT
 
「ミス・ロングビル。なぜ、私が破滅の箱を持っていることを知っているのですか? もし見ていたのなら、なぜ助けて下さらなかったのですか?」
タイガのデッキを手にとり眺めていたロングビルは、ルイズの問を聞くや否や、ニヤリと口元を吊り上げこう答えた。
「それはね……私が『土くれ』のフーケだからさ! 全員、杖を捨てなっ!!」
フーケが素早く杖を取り出すと、その先をルイズたちに向けた。
ルイズたちは状況を理解すると、渋々と杖を目の前に投げ出す。
浅倉は杖の代わりにデルフリンガーを投げ出した。

「そこにいるヴァリエール家の末っ子のおかげで、このお宝の使い方から安全性まで何もかも確かめることができたよ……ご苦労だったわねぇ」
嘲るような笑いをルイズに向けた後、そこから少し離れた位置にいる浅倉に視線を移す。
「さてと……そこの使い魔! 手に持ってる手鏡をこっちに寄越しな! 歯向かったら容赦しないよ!!」
浅倉はフーケの命令に不気味な笑顔で返すと、ちょうど浅倉とフーケの間に位置するように、手鏡を放り投げた。
同時に、王蛇のデッキを鏡に向かってかざす。

「貴様から指図を受ける筋合いはないが……戦いたいなら歓迎するぜ? 変身!!」
フーケが反応するよりも早く、ベルトにデッキを差し込んだ。
386名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 00:10:15 ID:KbSLVxqM
支援!!!
387狂蛇の使い魔:2008/11/01(土) 00:11:20 ID:TWtmGkcT
 
ガラスの割れるような音とともに、浅倉の体が再び蛇の鎧に包まれる。
(くっ! こいつに人質なんて意味ないし……こっちが不利になっちまったじゃないか!)
フーケは思わず顔を歪ませた。
この劣勢な状況をどう覆すか、或いはどうすれば無事に逃げ切れるのか。
目の前にある二つの選択肢のどちらが最善策なのか、頭をフル回転させて考える。
対するルイズたち三人も、杖が使えない現状を打破しようと必死に思考を張り巡らせていた。

お互い睨みあったまま、硬直状態が続く。



しかし、終わりは突然訪れた。
「……ッ!!」
突如として強烈な耳鳴りがルイズとフーケの二人に襲い掛かったのである。
ルイズは両手で頭を押さえ込む。
「なっ……!! これは一体……!?」
一方のフーケは、慣れない感覚に思わず頭を抱え、地面にへたりこんだ。
その隙を逃さず、タバサは杖を拾い上げると素早く呪文を詠唱する。
「エアハンマー」

見えない空気の塊がタバサの杖から放たれ、フーケを後ろへ一直線に押し飛ばす。
そのまま後ろにあった一本の木に叩きつけられ、どうやら頭を打ったのか、地面に崩れ落ちると突っ伏したまま動かなくなった。
388名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 00:13:44 ID:5IpKnTP2
オイオイあっさり従うなよ…
389狂蛇の使い魔:2008/11/01(土) 00:14:10 ID:TWtmGkcT
 
「またあいつらか……。おい、お前」
王蛇は手鏡からルイズの方へと視線をずらし、ルイズも顔を上げて王蛇の方を振り向いた。
「お前もライダーになったんなら……わかるな?」
それだけ言うと、王蛇は手鏡に向かって歩き出し、鏡面に飛び込んだ。

ルイズは以前聞いた、怪物との契約の話を思い出す。
(餌をあげなければ、殺される……)
タイガのデッキが破滅の箱と呼ばれていた理由。
それはおそらく、この契約が正常に履行されていなかったためだろう。
このデッキの持ち主、すなわち契約者がきちんと餌を与えなかったため、怪物に補食されてしまったのだ。

ルイズはフーケのすぐ側に放り出されているデッキを見つけると、耳鳴りに頭を押さえながら駆け寄り、拾い上げる。
そして手鏡の方を振り返ると、手に持ったデッキをかざした。
ベルトが腰に装着される。

「変身!!」

掛け声とともにデッキをベルトに差し込むと、ガラスの割れるような音とともに白虎の鎧がルイズの体を包み込んだ。



心配と困惑が入り交じった表情でこちらを見つめるキュルケと、相変わらず無愛想だが若干心配の色が表れているタバサ。
二人に向かって一度頷くと、タイガは王蛇の後を追い、鏡の世界へと飛び込んでいったのだった。
390狂蛇の使い魔:2008/11/01(土) 00:17:42 ID:TWtmGkcT
以上です。次はルイズのミラーワールド初体験ですね。
支援ありがとうございました!
391名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 00:20:07 ID:tEp40kuU
王蛇の人乙です。
次回にwktk。
392名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 00:29:34 ID:eWKaiJei
王蛇の人乙!
なぜタイガなのかようやく理解したw
393名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 00:31:20 ID:kcOsxHJs
つまり毎日の遊び相手はギーシュからルイズになるんですね、わかりますw
394名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 00:43:53 ID:tEp40kuU
なんという死亡遊戯w
395名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 00:48:57 ID:rZb1qhoI
これは理不尽ww
396名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 01:57:47 ID:x9TPzqR1
>>392
手乗りタイガーか、言われて気付いたわ
397名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 03:00:27 ID:7SQloM9y
タイガー、タイガー、じれっタイガー!!
398名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 03:19:18 ID:/048osC+
モンスターに食われるorライダーに殺されるor事故死
まさに破滅の箱

なんという最初からアウト
このルイズはメイジにはなれない
399THE GUN OF ZERO 17 忌むべき訪問者(0/1) ◆2OPVuXHphE :2008/11/01(土) 06:32:42 ID:/Tft90/A
狂蛇の人乙でした。半端ねー。

ということでどうも、久保の書き手です。今回もサブタイはスパロボ劇中BGMより。やっぱり曲そのものよりもタイトル優先の選曲ですが。

くっろい帆にぃ〜やぁしんというぅ〜かっぜうけぇ〜なぁがれるぅ〜まぁまぁにぃ〜

幕間的話の第二弾。
前回より更に短いんですけど、以前書いた通りウェールズの話です。
久保がマサキとリュウセイを味方にしている間に、こんな事が起きてた、というお話。
400THE GUN OF ZERO 17 忌むべき訪問者(1/1) ◆2OPVuXHphE :2008/11/01(土) 06:33:44 ID:/Tft90/A
 ディス・アストラナガンのディス・レヴによって、多くの兵士と5割近い貴族が失われたレコン・キスタ。
 元より烏合の衆でしかなかった連中だが、これによって指揮系統はめちゃめちゃに寸断され、とりあえずの纏まりすら、欠いている状況であった。
 クォヴレーの助言に従って、敵陣の状況を察したウェールズは、好機と見てイーグル号による艦砲射撃を敢行しつつ、地上部隊僅か200を率い敵陣を襲撃。
 1割近い損害を出しながらも、それ以上の3000名に上る被害をレコン・キスタに与え、勝利の勝ち鬨を上げることとなった。
 明朝にあった、正体不明の大悪魔の襲撃と早朝のアルビオン王軍の奇襲により危機を感じたレコン・キスタ首脳部は撤退を敢行。20リーグもの後退を余儀なくされた。
 この後退の最中に、尚も艦砲射撃は続けられ、混乱の中からどうにか援護要請を受けた艦隊が戦場に急行するまでの3時間、散々に撃たれ、押っ取り刀でレキシントンを旗艦とするレコン・キスタ艦隊が到着した時にはイーグル号は既に後退していた。
 翌日になり、レコン・キスタがどうにか再編成を終えた時点で確認されたのは、敵の攻撃と逃げ出した傭兵達のため、既に兵力が三万を切っている現状だった。
 僅か一晩で、4割の兵を失ったことになるのだ。
 更に別の問題も発生していた。
 王党派壊滅を目前とし、レコン・キスタ内部での勢力争いは徐々に終局に向かいつつあったのだが、先に述べたとおりに5割もの、それも有力貴族が失われたレコン・キスタは、再度内部で勢力争いが勃発。
 利権を巡っての議会論争が発生しつつあった。
 一方の王党派は、レコン・キスタより逃げ出した傭兵を逆に取り込み、一時的にとはいえ勢力を拡大。旗色が悪くなればすぐに離反するこれらの傭兵をより深く獲得するために、ウェールズは再度の奇襲を敢行。
 利権争いのため、まともに連携を取ろうとしない貴族の陣営を一つ潰し、悠々と凱旋して行った。
 ここに至って、利に賢い一部のレコン・キスタ側貴族達は流れは王党派にあると見なし、傘下の傭兵もろとも王軍に帰順を求めた。ちなみにこいつらは、そろいも揃って指輪の力では無しに一番最初にレコン・キスタ側に付いた連中でもある。
 ウェールズの本音としては、こんな連中は片っ端からエア・ハンマーでぶん殴ってやりたいところだったが、戦況を鑑みて帰順を認可。それらの戦力も取り込んで王党軍はより躍進した。
 一度こうなると脆いもので。
 はせ参じる傭兵も増え、艦隊戦力を除けば、あっという間に戦力バランスは王党派側に傾いていった。
 なお無傷の艦隊は強力だが、平野部に置いての戦争というものは結局は陣地の取り合いである。いくら敵を倒しても、敵が居なくなった後の占領が出来なければ意味がない。
 加速度的に王党派は勢力を増していき、やがてフネごと王党派につく者も現れ始め、レコン・キスタは追いつめられていった。
 そんな、タイミングで。
 戦場の空。ウェールズは見慣れぬものを見た。
「あれは……」
 一面四臂の巨大な黒いヒトガタ。だが、その下半身は蛇の如く。
 姿は違うが、あの大きさ。まるであれはあの夜の悪魔のようだ。
 あのヴァリエール家の三女が連れていた使い魔の物であった悪魔と似た巨大なゴーレム。
「もしや、再び味方してくれるのか?」
 期待を込めた目で見上げるウェールズに、否、その戦場にいた全てのものに重苦しい男の声が聞こえた。
『第二の地獄、アンティノラ』
 この日アルビオン王党派は、その総領とも言うべきウェールズ皇太子もろとも主力を失い、壊滅した。
 同時にオリヴァー・クロムウェルを失ったレコン・キスタにも、アルビオン全土を統括するだけの力は残されておらず、これより『白の国』は傭兵残党の山賊化、治安の悪化により混迷へと突き進むこととなる。


今回はここまで
401名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 06:44:31 ID:jKlLXIb+
ウホッ、リアルタイムで遭遇w早起きしてよかったww
402名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 06:49:01 ID:tEp40kuU
久保の人乙です。
黒ってことは…奴か…よりによってラスボスかよ…
次回にwktk。
403名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 07:47:54 ID:REis3UAe
久保の人、乙です。

クロムウェルも死んだんですかw
いったい、どうなってしまうんですかw

ところでリュウセイが新スパロボ版だとすると、ユーゼスとの関係はどうなるんだろうか?
R−1にあのシステムは搭載されているのか!?

気になりますな〜。

404名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 07:50:51 ID:7SQloM9y
そう、それも私だ
405名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 07:56:02 ID:30zbfGWd
遂にイングラムとクォヴレーの宿敵キター!!!
406名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 09:27:38 ID:ZptcH3/I
蒼い人乙。

傭兵の人が少しかわいそうwww
悪い事してないのにwww
407名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 09:43:28 ID:rZb1qhoI
久保乙
アルビオン救世主伝説
ゼロ魔の拳ですね
408ゼロの氷竜 ◆Mzy8Osstcc :2008/11/01(土) 10:02:45 ID:3vNMlx6O
誰もいない……?

投下するなら今の内……

10:10ぐらいから……
409名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 10:03:30 ID:ZptcH3/I
sien
410名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 10:07:40 ID:0KPPq3fV
だが俺がいるぜ!
つーかリアルタイム遭遇支援だ!
411名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 10:10:36 ID:S7beH+IZ
久保さん乙
氷竜支援。
412ゼロの氷竜 ◆Mzy8Osstcc :2008/11/01(土) 10:10:57 ID:3vNMlx6O
ゼロの氷竜 九話

ルイズに召喚された日の晩にタバサたちと別れた後、ブラムドは確信と共に一つの魔法を
使う。
それは自らを探知する魔法を打ち消し、魔法の種類と術者の居場所を探る魔法。
『感知対抗(カウンターセンス)』
確信通りその身を探る術者の存在を知り、ブラムドは再び『飛翔』を唱えて術者のもとへ
と飛ぶ。

突然、鏡が本来の姿を取り戻す。
そこに映るのは年老いた男、学院の長であるオスマンの姿だ。
「はて?」
とつぶやき、オスマンは再び鏡を働かせて先刻の場所を映させる。
しかしそこにはすでに人影はない。
「むぅ……」
眉根に皺を寄せながら、オスマンは辺りを映して目標を探す。
『解錠(アンロック)』
窓の鍵が外から開かれ、そこから輝くような銀髪を持つ一人の女が姿を現した。
「どこの世界にも、似たような品物があるのだな」
窓の開く音、そしてかけられた声に、オスマンは頭をかきながら顔を向ける。
それはまるで、いたずらを見つかった子供のように見えた。
銀髪の女は笑みを浮かべながら室内を見渡し、視線の先にあった応接用の座席へと座る。
オスマンもまた、銀髪の女の向かいに腰掛ける。
「似たようなもの、というと鏡ではないのですかな?」
「魔術師たちが持っていたのは、遠見の水晶球という品だ。鏡を見た後であれば、その方
が広く見渡せそうだがな」
銀髪の女は自らの身長ほどある鏡を指差しながら、不意に顔をしかめる。
「いかがなさいました?」
「いや、思い出したくないものを思い出してな」
オスマンはこの偉大な竜をして不快にさせるほどの何かに、強い興味を引かれたようだっ
た。
「差し支えなければ、お聞かせ願えまいか」
銀髪の女の姿をした竜、ブラムドは大きなため息をつき、訥々と語り始める。
自らが、かつて一つの魔法の品に囚われていたこと。
その身を縛る魔法によって、ことあるごとに激痛にさいなまれていたこと。
いくつもの命を、激痛のため意に沿わず奪ったこと。
そしてその縛り付けていた魔法の品が、真実の鏡ということ。
「真実の鏡?」
「うむ。どのような場所でも映し出し、人を映せばその心までもあらわにするといわれて
おった」
「なんともはや、恐ろしい代物ですな」
オスマンは、額ににじむ汗を袖口でふき取る。
「我のような竜と違い、お前たち人間にとっては喉から手が出るような品ではないの
か?」
微笑みながらいうブラムドに、オスマンは苦笑を返す。
「否定することは出来ませぬがな。人の心を暴くような品は、あってはならぬものです」
苦笑を浮かべながらも、オスマンの言葉も目も、真意を語っている。
それは『虚言感知』を使うまでもない。
その様子に、ブラムドは改めてこの老人を信頼することに決めた。
413ゼロの氷竜 ◆Mzy8Osstcc :2008/11/01(土) 10:11:36 ID:3vNMlx6O
「オスマン、我はルイズに感謝しておる。故に、ルイズの生ある限りは忠誠を誓おう」
その言葉を聞くまでもなく、オスマンもまたブラムドを信頼している。
この強大な竜が、何の利があってルイズに従うだろう。
たとえどんな利があったとしても、人が地を這う蟻に従うようなことはないだろう。
ブラムドにとっては地を這う蟻の一種でしかないオスマンに、こうまで礼を尽くす意味は
ない。
その行動は、ブラムドのオスマンへの信頼をあらわしている。
何よりもこの竜は、人を殺したと口にしたとき、はっきりと苦悶の表情を浮かべていた。
それをわかっていながら、オスマンはブラムドを監視せざるを得ない。
オスマンの力では、どうやったところでブラムドをとめることが出来ないからだ。
そしてこの学院に通う生徒たち、いや教師も含め、選民意識に凝り固まった人間たちは、
ブラムドの逆鱗に触れかねない。
たとえどれほど強くオスマンが言ったところで、可能性をなくすことなどできないだろう。
いっそのこと、一度ブラムドに力を振るってもらうか。
しかしそれをしてしまえば、ミス・ヴァリエールはさらに孤立することになりかねない。
であれば。
「頼みが、あるのではないか?」
口を開こうとした瞬間、オスマンはブラムドに先手を打たれた。
それは、あたかもブラムド自身が真実の鏡を使ったかのように、オスマンの心を見抜いて
いた。
「かないませぬな」
オスマンはどこか諦めたような、それでいてどこか晴れやかな表情を浮かべる。
「はっきりいいまして、この学院にいるメイジたちは幼い。それは実際の年齢ではなく、
精神のありようとしてです」
カストゥールの時代を生きたブラムドにとって、オスマンのいいたいことの予想はついて
いた。
「確かに、メイジと平民との間には決して越えられぬ壁があります。だがそれは絶対に、
人間として上等か下等かということではありません」
魔術師たちが、それ以外の存在を奴隷として扱った歴史を見ていれば、力を持った人間の
醜さを知らぬはずもない。
「しかし、そうとは思わないメイジがこの世界の大半を占めています」
それでもブラムドは、その醜い面が人間の一面に過ぎないことを確信している。
「無論、ミス・ヴァリエールをはじめとして、メイジも平民も等しく人間だと知っている
ものもおります」
カストゥールの時代に生まれながら、自らに魔法を教えたアルナカーラがいた。
オスマンのいうように、平民を人と思わぬ人間が大半を占める世界で、シエスタという平
民を大切な友と呼んだルイズがいる。
「もしブラムド殿の機嫌を損ねる人間がいたときには、たしなめる程度にとどめていただ
きたい、というのがわしの望みです」
オスマンは、私闘を禁じないと明言した。
ただし、その言葉には別の意図も含まれている。
増上慢をたしなめられるのも、一つの勉強だと。
ブラムドはオスマンの言葉を正確に理解し、どこか人の悪い笑みを浮かべながら首肯する。
「尻を叩く程度に我慢すると、約束しよう」
その言葉に、オスマンは自身の言葉がことのほか正しく伝わったことを理解した。
つまり、決して殺すような真似はしないと。
二人の年経た存在が、鏡に映したかのようにどこか人の悪い笑みを浮かべていた。
414ゼロの氷竜 ◆Mzy8Osstcc :2008/11/01(土) 10:12:35 ID:3vNMlx6O
ルイズが石を爆発させた後、教室をでたブラムドはオスマンの部屋を目指していた。
しかし、その歩みは確信を持ってはいない。
さらにいえば、最短の道を進んでもいない。
端的に言えば、迷っていた。
昨晩一度いっているため場所の見当はついていたが、基本的に洞窟や洞穴で生活する竜に
にとって、人間の住む建物の構造はどこか理解しがたい。
かつて魔術師に囚われていたときも、移動の際には案内役がついていた。
……まぁいざとなれば飛べばよいか。
そんなことを考えるブラムドの行く先に、見覚えのある薄い頭の男が現れる。
「やや、ブラムド殿。ミス・ヴァリエールは一緒ではないのですか?」
「ルイズと授業に出ておったが、中止になった。ルイズは教室を片付けておる」
授業の中止、そして教室の片付けという言葉に、薄い頭の男は表情を曇らせる。
「もしやミス・ヴァリエールが……?」
「うむ。石を爆発させた」
「そうですか……、もう爆発することはないかと思っていたのですが……」
その言葉に、ブラムドは目の前の男がルイズに気をかけていたことを知る。
「そのことでオスマンに話がある。おぬし、名はなんと言う?」
「私はジャン・コルベールと申します。コルベールとお呼びください」
コルベールは朝食の際、オスマンに言われたからか、それとも元々そうなのか、どこか緊
張したような動きでブラムドへ挨拶する。
「ではコルベール、オスマンのところへ案内を頼む」
「は、や、あの……」
「どうかしたか?」
言いよどむコルベールに、ブラムドは怪訝な表情を浮かべる。
「ミス・ヴァリエールの片付けの手伝いなどは?」
その言葉に、ブラムドはコルベールに笑顔を向ける。
コルベールはブラムドの正体を知っているとはいえ、現在の姿は妙齢の女性であり、自分
が見た中でも一、二を争うほどの美女である。
それゆえ、異性とあまり交流のないコルベールは二の句を飲み込んでしまう。
「それは我が従者がしておる」
「は?」
とっさに言葉を返すことの出来ないコルベールを尻目に、ブラムドは自ら言葉を継ぎ、オ
スマンの部屋へと歩みを進める。
「それにな、ルイズを手伝う人間もいる」
教室内で孤立していたルイズを思い返し、コルベールは頭に疑問符を浮かべて立ち尽くし
てしまう。
「案内はどうした?」
ブラムドの言葉に、コルベールはあわてて先導する。
……従者? 昨日はそんなものはいなかったはずだが。使い魔に従者か……
「おぉ!!」
先導しながらも、どこか考え事をしている風情だったコルベールが突然立ち止まった。
不意に声を上げて立ち止まるコルベールに、ブラムドは不審な顔をする。
「ブラムド殿、使い魔のルーンを見せていただけないでしょうか?」
「使い魔のルーン?」
「ミス・ヴァリエールとの契約の際、体に刻まれているはずなのですが」
契約といわれたブラムドは、そういえば、と左手をあげる。
そこには刻まれたルーンが、鈍い光を放っていた。
「これか?」
「おお、珍しいルーンですな」
いいながらブラムドの手を取ったコルベールは、手のひらの感触に違和感を覚える。
そしてその違和感の通り、ブラムドの手のひらには傷がついていた。
「これは!?」
「先刻の事故の折であろう。大したことはない」
「いや、そういうわけにもいきません」
とはいうものの、火のメイジであるコルベールに怪我の治療は出来ない。
手近な布を破ろうにも、メイジの服には固体化がかかっている。
困り果てて辺りを見回すコルベールは、窓の外に二人のメイジがいるのを発見した。
415ゼロの氷竜 ◆Mzy8Osstcc :2008/11/01(土) 10:13:13 ID:3vNMlx6O
一人はギーシュ・ド・グラモン、シュヴルーズと同じく土を司るメイジ。
人間関係、特に男女関係に課題を持つが、土のメイジとしての能力は低いものではない。
だが彼はコルベールの助けにはならない。
少なくとも今は。
しかしもう一人、その向かいで笑顔を浮かべる長い金髪を縦に巻いた少女、モンモラン
シー・マルガリタ・ラ・フェール・ド・モンモランシは、コルベールにとってまさに天の
助けといえた。
「ミス・モンモランシ!!」
窓から呼ばれる声に、二人の年若いメイジはどこか不機嫌そうな表情を浮かべて振り向く。
もちろん、呼んだ人間が教師であるコルベールだとわかり、不機嫌そうな表情だけは押し
隠していたが。
かすかに笑顔を浮かべながらコルベールに近づいたモンモランシーは、その傍らにいた人
間がブラムドであることを見て取り、ほんの一瞬その身を固めた。
咆哮による恐怖が、払拭されていなかったのだろう。
その後ろから歩み寄るギーシュもまた、表情や態度に表すことはないものの、瞳ににじむ
畏れを隠しきれてはいない。
二人のおかしな態度に、気付いていながら気付かぬ風を装うブラムドと違い、コルベール
はまったく気付いていない様子だった。
その観察力のなさに、ブラムドはコルベールの教師としての能力に疑念を抱く。
教師というものは、ただ生徒のことを心配していれば良いというものではない。
そしてその疑念は、直後に形となって現れる。
「彼女はモンモランシー・マルガリタ・ラ・フェール・ド・モンモランシ、彼はギーシ
ュ・ド・グラモン、二人ともミス・ヴァリエールと同じクラスです」
モンモランシーはスカートの裾を摘んで少し広げ、小首をかしげるように挨拶をする。
「モンモランシとおよびください」
ギーシュは右手を前に、左手を後ろにし、軽く腰を曲げる。
「グラモンとおよびください」
貴族らしい優雅な挨拶に、コルベールは満足げに微笑む。
「ミス・モンモランシ、ブラムド殿が左手に怪我をしているようなので、みてやってもら
えるかな?」
コルベールはモンモランシーに事情を説明し、ブラムドへ歩み寄るその背中越しにブラム
ドへと説明する。
「水のメイジは怪我の治療などを得意としまして、彼女はその使い手としてなかなか優秀
な生徒なのです」
「ほぉ、水はそういった力を持つか」
ブラムドがかつていたフォーセリアでは、神に仕える司祭がその役目を果たし、魔術師は
回復や治癒に属する力、他者を癒すような力を持つことはない。
対象の精神力を奪うような魔法もあるが、それは相手に精神的な打撃を加えるのが主な目
的であって、自身の精神力を回復させるのはあくまで副次的なものだ
四大属性の内で水に関する魔法も、氷雪によって敵を凍らせる『氷嵐(ブリザード)』く
らいしかない。
ハルケギニアで常識的な水の力も、ブラムドにとっては興味深いものにうつる。
416ゼロの氷竜 ◆Mzy8Osstcc :2008/11/01(土) 10:14:11 ID:3vNMlx6O
傷の状態を確認したモンモランシーは驚かされる。
裂けているのは手の平の中心だが、少しずれれば骨に食い込むような深さだったからだ。
しかもその傷の深さに比さず、異様に出血が少ない。
したたり落ちるではなく、あふれるように流れ出ていてもおかしくないはずだ。
だが、その出血は手の平ににじむ程度に過ぎない。
おそらくルイズの爆発で傷付けられたのだろうが、モンモランシーは頭に疑問符を浮かべ
た。
四人が今いるこの場所と教室、そして医務室は延長線上にはない。
それをこの深い傷を放置したまま、何故こんなところに?
「どうかしたか?」
傷を見た瞬間に動きを止めてしまったモンモランシーに、ブラムドが声をかける。
「い、いえ。傷が随分と深いので」
「大したことはあるまい。骨にも筋にも問題はない」
こともなげに手を握ってみせるブラムドに、モンモランシーは目を見張る。
「と、とりあえず治します」
マントの内側に入れてある緊急用の水の秘薬と杖を取り出し、モンモランシーはルーンを
唱え始める。
不思議そうな表情を浮かべるブラムドに、説明好きのコルベールが言葉をかけた。
「小さな傷であれば無用ですが、大きなものになると水の精霊の力を秘めた水の秘薬が必
要になるのです」
水の精霊、という言葉に反応し、ブラムドもまた魔法を使う。
『力場感知(センスオーラ)』
それは魔法の源であるマナだけではなく、精霊力をも感知する魔法。
傷口に垂らされた水の秘薬には、確かに水の精霊力が感知できた。
しかしその力は異常なほど強い。
身近な周囲に満ちる下位の精霊ではなく、自然界の法則を司る上位精霊の力だ。
あまりにも無造作に巨大な力を振るう水メイジの姿に驚くブラムドの表情を、コルベール
は怪我の治癒に対しての驚きと勘違いする。
「東方にはこのような魔法はないのですか?」
問われた言葉で勘違いに気付くブラムドだったが、勘違いを正すのも面倒と思って話を合
わせる。
「うむ。我のいた場所では、破壊の魔法ばかりだった」
破壊の魔法ばかり、という言葉に、コルベールの表情にわずかな影が差す。
ブラムドだけがその影に気付いたが、生徒たちに聞かせたい話でもないだろうとあえて問
うことはなかった。
やがて、モンモランシーの治療が終わる。
「終わりました」
「ほぉ、跡形もないのう。礼を言おう、モンモランシ」
傷の様子を確かめ、ブラムドは微笑みながらモンモランシーの頭をなぜる。
「その水の秘薬とやらも、安いものではあるまい? いずれこの借りは返そう」
「や、私が頼んだことですので」
コルベールは慌ててその言葉に応えたが、ブラムドは笑みを消して反論する。
「コルベール、我はオスマンのいうように客分ではあるが、出された食事をただはむよう
な真似をしているつもりはない」
そしてブラムドはモンモランシーに向き直り、笑みを浮かべて言葉を重ねる。
「今すぐに、というわけにはいかぬが、この借りは我の力で返させてもらおう」
その言葉には高い誇りがうかがえ、コルベールは反駁することができない。
一方でブラムドは、一つの疑問を抱えている。
コルベールの言葉からすれば、自身の傷は浅いものではなかったといえる。
しかしそれほど強い痛みは感じていなかったし、出血も激しいものではなかった。
人の体はそれほど痛みに強く、強靱なものだっただろうか。
答えを見出せないブラムドを笑うように、左手のルーンが鈍く輝き続けていた。
417名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 10:15:04 ID:Wx/FhrJV
しえーん
418ゼロの氷竜 ◆Mzy8Osstcc :2008/11/01(土) 10:15:47 ID:3vNMlx6O
以上。

支援感謝。

みんな大好きギの字の登場だよ!
文字通りギの字しか出てない感じだがな。

次も一週間はかからんと思いま。
419名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 10:17:50 ID:3vNMlx6O
次で話数が大台に乗るのに、決闘までいってないってどういうことだ>俺

つーてもまぁ今更ペース変えてもおかしなことになるので、
ゆっくりおつきあいいただければと思っております。

コンゴトモヨロシク……。
420名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 10:33:25 ID:0KPPq3fV
氷竜の人マルカジリ乙
展開ゆっくりでも丁寧な描写が良いですね〜
巨大過ぎる力を持つブラムドが何処まで影響を与えていくのか。次回も楽しみにしております
421名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 10:34:42 ID:S7beH+IZ
氷竜の人乙。
知人は『続いてくれて居るだけで在りがたい』と言ってました。
422名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 10:41:37 ID:NQTC3sMM
というか、決闘イベントあるのか?
ギーシュ男前過ぎるw
423名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 10:48:36 ID:2+bpaZ/m
氷竜のひと、おつでしたー。
最後の場面。ただ飯食いはしないとコルベールに宣言しながら
延々とモンモンの頭を撫でてるブラムドさん、という情景を連想してしまったw。
そーいえば人間形態のブラムドさんって身長どれくらいなんだろうか。
424名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 10:57:22 ID:3vNMlx6O
ブラムドの身長はキュルケより大きいぐらいをイメージしてます。
今wiki調べてみたらルイズタバサが150ぐらい、
キュルケが170ぐらいはいいとしてもギーシュ175もあんのね。

まぁ白人だから平均が日本人より上なんだろうけど、
なんかこう、あのギーシュがそんなにでかいの?
ってちょっと思ったw
425名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 11:03:16 ID:2+bpaZ/m
おおっと。
作者さん返答ありがとうございます。
となるとギーシュと同じく175くらい…ちょっぴり背が高くて176とか177あたりでもいいかもしれませんね。
ちなみにモンモンは166だとか。…ずっと168と勘違いしてたなぁ。
426名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 11:41:56 ID:BWXHZ4EG
それいったらオールドオスマンなんて180だぞ
あの爺かなりでかいんだぞ
427ドラえもん(マンガ版):2008/11/01(土) 11:54:25 ID:U1EPB9I5
皆様お疲れ様であります
つい昨日2ケタ以上のコンテニューの果て
ようやく3のDMDクリアして兄貴をハルケギニアに送り込んできてやったぜ
って、しまった! これじゃ蒼の使い魔違いじゃないか!!
……てか蒼の人紹介文パクッてすみません、DMDクリアがあんまり嬉しくて

とまあ寒い小ネタはともかくとして、DMC3も卒業して第五話を書いてきた
前にずいぶん展開予想とかされてたみたいなんで「予想通り過ぎて噴いたw」
とか言われないか戦々恐々だが、問題ないようなら12:00くらいから投下させてもらいたい
428名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 11:54:53 ID:ZptcH3/I
新説「オスマンはマッチョ」

あのローブを脱ぐとその下はムキムキ。

最強の弟子ケンイチの
師匠みたいなヤツっぽく。
429ドラえもん(マンガ版):2008/11/01(土) 11:59:23 ID:U1EPB9I5
第五話 『ルイズとすこしふしぎな手紙』

「けっこんするからスキャンダルになりそうな手紙をとりかえしてこいって?
 そんなものベイカーがいのたんていにでもたのめばいいじゃないか。
 すくなくともぼくにはかんけいないね」
 アンリエッタ王女の話を聞いたドラえもんは、身も蓋もなくそう言い切った。
「あ、あんた! 姫さまに向かってなんて口の利き方…!」
 当然ルイズはそんなドラえもんに怒りをあらわにするが、
「いいのよルイズ。その通りだわ。……わたくし、自分の過去のあやまちの始末を
 他人に任せようとしているのだもの。責められても仕方ないわ」
「姫さまがそう言うのなら……」
 敬愛する姫さまにそういさめられ、しぶしぶ口をつぐむ。
 だが、こんなことで引き下がったワケではもちろんなかった。
「ドラえもん。この前の取り寄せバッグってやつを貸しなさい」
 あいかわらず、主人としての傲岸な態度でそう命じる。
「いやだね。きみもきぞくなんだったら、じぶんでなんとかすればいいだろ」
 当然のように拒否られるルイズ。しかし、それはルイズの予想の範疇だった。
 ――実は今回、ルイズには秘策があったのである。
 ドラえもんのどこだか分からない耳に口を寄せ、小声で交渉を始める。
「あんた、なんでもおかしに目がないらしいわね。
 ……どらやき、って食べてみたくない?」
 と、ルイズが口にした瞬間だった。

「ドラやきっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 ドラえもんが、ネズミに驚いた時の二倍の高さ(約2.6メイル)まで飛び上がる。
 それからルイズにつかみかかると、そのえりをぐいぐいと揺さぶった。
「あるのか!? この世界に、ドラやきがっ!!!!!!!!!!!」
「ちょ、ちょっと、目が怖いわよ! 普段タヌキみたいな顔が
 今はヤクザなアライグマみたいになってるじゃない! いいから落ち着きなさいよ!」
 しかし、そんなことで止まるドラえもんではなかった。
「ええい! このさいクマでもタヌキでもなんでもいい!
 そ、それより、ドラ、ドラ、ドラやきっ!!!!!」
 ますます力を増してルイズを揺さぶるドラえもんにルイズもキレて、
「ああもう! いいかげんにしなさいこのバカダヌキ!」
 トスッ!
 ドラえもんの標準より大きな目に、ルイズの指が刺さる。
「ぎゃああああああ! 目が、目がぁ……!」
 地面をのた打ち回るドラえもん。
「……まったく。しつけがなってないんだから」
 えげつない技でドラえもんを轟沈させたルイズは、乱れた服を整えて話し始めた。
「それで、あんたもこの前会ったでしょ。あそこのメイドのシエ…シエ…シエ…」
 そういえば、結局名前を聞いていないことに気づいた。
「とにかくシエなんとかの家に、『どらやき』というめずらしいおかしの製法が
 代々伝わってるらしいのよ。作るのはちょっと面倒みたいだけど、
 そんなの貴族のわたしが手配すればすぐだわ」
 ルイズの言葉に、ドラえもんがごくりとつばを飲み込む。
「つまり、ぼくが手紙をとりかえせば……」
「どらやき食べ放題」
 ドン、とドラえもんは力強く胸をたたいた。

「やろうじゃないか! 国のいちだいじとあっては、ぼくも力をかさずにいられない!」
「よく言ったわ! それでこそわたしの使い魔!」

 まるで芝居の稽古のような光景に、唯一の観客であるアンリエッタ王女がぱちぱちと拍手をする。
 というか、傍から見れば怪しいことこの上ないやり取りだっただろうが、アンリエッタは
天然なのか、それともそれが王族の品格なのか、にこにこ笑って見守っていた。
430名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 11:59:53 ID:REis3UAe
支援する。

関係ないが、自分でも書いてみたくて挑戦したがプロローグだけで挫折したw

書いてる皆さん、すげえよw
431ドラえもん(マンガ版):2008/11/01(土) 12:00:01 ID:U1EPB9I5
「――アンリエッタ王女がウェールズ皇太子にあてた手紙!」
 ルイズはそう言って勇んで取り寄せバッグに手を突っ込むが、
「なによ、何も出てこないじゃない!」
 取り出したその手には何もつかんでいなかった。
「そんなばかな!」
 叫び、今度はドラえもんがバッグを使ってみるが、
「……ほんとだ。なにも出てこない」
 やはり効果はない。
 愕然とするドラえもんに、ここぞとばかりにルイズが噛みつく。
「やっぱりそれ、故障してるんじゃないの? ほんと、肝心な時に使えないんだから」
「そんなはずは……。ほかのものでちょっとためしてみよう」
 気を取り直したドラえもんは、
「ギーシュのばら!」
 と言いながらバッグに手をつっこむ。
 すると同時にドアの外で「うわっ」という声が聞こえて、
「ネコ君! 君はいったい何をしたんだ! 突然空中から君の手が降ってきて……あ」
 扉を開けて、ギーシュが部屋に飛び込んできた。
 それを見て、アンリエッタがまあ、と口を押さえ、ルイズが髪を逆立てる。
「さいってい! 盗み聞きしてたのね!」
「いや、その、これは……」
 ようやく今の状況のまずさを悟ってギーシュがうろたえるが、ルイズは当然容赦しない。
「あんた、運がよかったわね。本当なら処刑されても文句は言えないところだけど、
 今回のこと、きれいさっぱり忘れて部屋でおとなしくしてるって言うなら許してあげるわ。
 ……ドラえもん!」
「しようのないやつだなきみは」
 ため息をつきながらドラえもんはポケットを探る。
「ええと、こういうときはわすれろ草かワスレンボーか……いや、こっちのほうがいいか」

「さいみんメガネ〜!」

 迷いに迷い、最終的にドラえもんが取り出したのはだっさいメガネだった。
 しかし、ドラえもんはそれを自慢気にかかげると、嬉々として説明を始める。
「このメガネをかけるとだれでもかんたんにさいみんじゅつを…」
「そんな説明はいいから、早く!」
 ルイズの声に急かされて、
「まったくきみはロボット使いがあらいなあ」
 ドラえもんはしかたなく説明もそこそこにメガネをかけ、ギーシュに向き直る。
「いいかいギーシュくん。きみはここでなにも見なかったし聞かなかった。
 というかここにはこなかった。王女なんてしらない。……わかったかい?」
「君は何を言って……はい。僕は何も見てないし聞いてません。
 王女なんて聞いたことないです、はい。…それ、食べ物かなんかですか?」
 これでいいか、とドラえもんがちらりとルイズを見ると、ルイズはうなずいた。
「よろしい。じゃあじぶんのへやにもどってあしたまでぐっすりねるんだ」
「はい。ぐっすり寝ます。明日までぜったい起きません」
 そう言うとギーシュはカクカクとした動きで部屋を出て行く。
 それを見届けると、廊下を見回して今度こそ誰もいないことを確かめて、
「まったく、バカのせいで無駄な時間を取ったわ」
 ルイズはあらためて取り寄せバッグが効かなかった理由を考える。
432名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 12:00:59 ID:/Wi9QXaP
これはじつに支援だなあ
433名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 12:01:48 ID:52vJJJOA
餡子つくれるのか支援
434ドラえもん(マンガ版):2008/11/01(土) 12:02:48 ID:U1EPB9I5
「道具の故障じゃないとなると、どういうことなのかしら?」
「もしかすると手紙がやぶかれたりもやされたりしているのかもしれないぞ。
 いくらとりよせバッグでも、なくなったものはとりだせないからなあ…」
 それは、いかにもありそうな意見だったのだが、
「そ、そんなはずはありません! あの人が、わたくしからの手紙を破るだなんて……」
 いつになく激しい口調でアンリエッタが反駁した。
 王女の言葉にうーん、とルイズは腕組みをして、
「こうなったら、直接会って話を聞くしかないわね」
 と言いながら、ドラえもんに視線を投げかけた。
「もういいじゃないか。手紙なんてどうせなくなったんだよ、だったら…」
 しかし当然ながらドラえもんは全く乗り気ではなく、だが、
そこでルイズはドラえもんにだけ聞こえるくらいの声で、ぼそっとつぶやいた。

「…どらやき」

「よし! ぼくがちょっと行って、はなしを聞いてくるよ!」
 ……それは実に、ドラえもんにとって魔法の言葉であった。
 すぐさまドラえもんはポケットを探り、
「どこでもドア〜!」
 そこから大きなドアを取り出した。
「まあ、あんなに大きなものがポケットから……」
 アンリエッタはそれを見て驚くが、対してルイズの反応は冷淡だ。
「それ、最初に使おうとして失敗してたやつじゃないの。そんなのが役に立つの?」
 自慢の道具をバカにされ、ドラえもんが怒る。
「ば、ばかにするなよ! さいしょに使えなかったのはちがう世界に行こうとしたからだ!
 もうこのあたりの地図データは入れたし、となりの国までならすぐに行けるはずさ!」
「ふーん。どうかしらね」
「ぜったい使えるさ! いいかい、このどこでもドアは使うひとのあたまの中から
 もくてきちをよみとって、そのざひょうにドアをあけてくれる、べんりな道具なんだ」
「じゃ、やってみなさいよ」
「ふん。いわれなくてもやってやるさ。いざ、アルビオンへ!」
 ドラえもんはドアを開け、一歩を踏み出し――
「でもだいじょうぶかしら、ルイズ。だって、アルビオンって動いているじゃない?
 もしデータを取った時と違う場所にあったら…」
「な、なんだってー! ぎゃ、ぎゃああああああ!!」
 ――ドラえもんはそのまま虚空へと転がり落ちていった。
435ドラえもん(マンガ版):2008/11/01(土) 12:04:32 ID:U1EPB9I5
「ひどいめにあったよ。もし、タケコプターがなかったらぼくはいまごろ……ぶるるっ!」
 心底恐ろしい、と言いたげにドラえもんが体を震わせる。
 だが、ルイズの失敗魔法で粉々にされても次の話には平然と生き返っていたドラえもんだ。
 ルイズとしてはあまり心配するのも馬鹿らしいというのが本音だった。
「それよりどうするのよ? それ、使えないんでしょ。アルビオンまで歩いていくの?」
 ルイズの言葉に、ドラえもんは首を振った。
「いいや。やっぱりこれを使う。……ルイズ、ドアはきみがひらいてくれ」
「いいけど。でも、わたしだって今のアルビオンの正確な位置までは覚えてないわよ」
「もしずれていたらタケコプターで空をとんでいく」
 決然としたドラえもんの言葉に、アンリエッタが思わず口をはさんだ。
「そんな、危険ですわ! もし風で流されたりしたら……」
「ふほんいだがしかたない。ドラやきのためだ」
「……どらやき?」
 耳慣れぬ単語にアンリエッタは思わず聞き返し、
「ひ、姫さまが気になさるようなことではございませんわ。
 そ、その、やる気。そう、『ドラ』えもんは『や』る『き』になっている、
 と申しているんです。この使い魔は言葉足らずで、おほほほほ!」
 それを慌ててルイズがごまかす。
 かなり苦しい言い訳だが、アンリエッタは感心したように手を叩き、
「まあ、あなたはとても勇ましい使い魔さんなのね。
 ありがとう、勇敢なタヌキさん」
 チュ、とドラえもんのテカテカの頭にそっと口をつけた。
 やわらかい唇の感触に、ドラえもんの顔はふにゃっとふやけ、
「でへへ。それほどでも……ってぼくはタヌキじゃなぁーい!!」
 一転、王女相手でもお構いなしに怒り狂う。
 まあいつものことであり、ドラえもんの王女相手の暴言にも慣れたのか、ルイズは、
(こいつ、ノリツッコミまで出来るようになったのね)
 となんだかズレたことを考えながら、自らの使い魔を冷めた目で見ていた。

「アルビオンを思い浮かべながら、ノブを回せばいいのよね。
 でも、本当にだいじょうぶなの? 違う方法を考えた方が…」
 そうは言っても、いざ出発という段になると、さすがにルイズも心配そうにドラえもんを見る。
 だが、ドラえもんの決意は固かった。
「いいや、もうすぐそこまでドラやき…じゃなかった、国のききがせまっているんだ。
 これいじょうまてない! ……なむさんっ!!」
 止める暇もあればこそ、ドラえもんはどこでもドアを開けて、一気にドアをくぐってしまう。
 それを見送ったルイズとアンリエッタは、不安そうに顔を見合わせる。
「……本当に、だいじょうぶかしら?
 わたくし、まだウェールズ様に事情を説明する手紙も渡していないのに……」
 おかしなタヌキが一匹向かっただけで、王女からの使いだと信じてもらえるのだろうか。
 王女の瞳は、そう語っていた。
「そうですね…」
 アンリエッタの問いかけに、ルイズは少し首を傾け、
「ダメなんじゃないでしょうか」
 ……自分の使い魔には意外と容赦のないルイズであった。
436名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 12:06:34 ID:+oyPI6Up
>天然なのか、それともそれが王族の品格なのか、にこにこ笑って見守っていた。
流石はアン様支援
437ドラえもん(マンガ版):2008/11/01(土) 12:10:26 ID:U1EPB9I5
「そういえばあの時は……」
「もう姫さまったら、あの時のことは忘れるって…!」

 ……ガチャ!

 三杯目のお茶を飲み終え、二人共すっかり当初の目的を忘れかけていた頃、
ようやくドラえもんが帰ってきた。
「あら、おかえり。遅かったわね…・・って、どうしたのよ! ひどい格好じゃない!」
 もどってきたドラえもんは、体中煤まみれでボロボロのひどい有様だった。
「たいへんだったんだぞ! いわれた場所にウェールズ王子はいないし、
 たずねびとステッキでさがしてたら、いろんなやつが魔法でおそってきて…」
「ちょ、ちょっと待ちなさい! それって貴族派のメイジだったんでしょうね!?
 もし王党派のメイジたちだったら…」
「しるもんか! あいつらぼくのことを『あやしいタヌキだ』とかいって、
 いきなりおそいかかってきたんだぞ!
 むかついたからショックガンで気ぜつさせたあと、チャンバラ刀でくびをちょんぎってやったよ!」
 ちょっと過激なドラえもんの報復に、思わず絶句するルイズ。
「それで、あの方は!? ウェールズ皇太子にはお会いになれましたか?」
 代わりに尋ねてきたアンリエッタに、ドラえもんは気炎を撒き散らす。
「そうだ! ウェールズっていうのもとんでもないやつだぞ!
 空ぞくのまねごとをして、敵から宝をうばいとっていたんだ。
 ぼくもあやうくつかまりそうになって、おそってくる空ぞくたちをちぎってはなげ、ちぎっては…」
「そんなことより! 手紙は? 手紙は取り返したの?」
 ドラえもんの言葉を遮って、肝心なことをルイズは聞く。しかし、
「いや、じじょうを話したらなっとくしてくれたんだけど、もってないそうだよ。
 それでめんどうになったからもどってきたんだ」
「なんですって!」
「おお、始祖ブリミルよ! あなたの慈悲も罪深いわたくしには届かないのですね!」
 ドラえもんの報告に、ルイズが叫び、アンリエッタがよろめいて倒れそうになる。
「それで、誰に、一体何者に奪われたって言ってたの?」
 ルイズは慌てて王女を支えながら、ドラえもんに尋ねた。
「ええと『仮面をつけた賊に奪われた』っていってたなあ。
 しかもそいつは『風のせんざい』とかいうのを使うみょうなやつだったとか」
「仮面をつけた賊! きっとレコン・キスタだわ! ……でも、風の洗剤って何かしら?」
 首を傾げるルイズに、立ち直ったアンリエッタが耳打ちする。
「ルイズ、もしかすると、この使い魔さんが言っているのは風の偏在じゃないかしら?」
「風の偏在! 風系統の高等魔法じゃない!?」
 ごくり、とルイズは唾を飲み込む。相手はあのレコン・キスタ。それもウェールズ皇太子から手紙を奪ったほどの使い手だ。
 そんなやつの相手を、ドラえもん一人だけに任せていいものだろうか。
 ――迷っていたのは一瞬だった。
「しょうがない。わたしも行くわ!」
「なんだって、きみが?」
「だって、相手は強力なメイジなのよ。ドラえもん一人に任せてはおけないわ」
 怖いが、仕方ない。国のため、王族のために命を懸ける、それは貴族の義務なのだ。
 それにほんの少しだけ、ドラえもんだけを危険な場所に送り出すわけにはいかない、という気持ちもルイズの中にはあった。
「ルイズ、だったらわたしも…」
 それを見て、ルイズに続いてアンリエッタまでもが名乗りをあげるが、
「いいえ姫さま。姫さまはここで待っていて下さい」
 それはルイズが許さなかった。
「ルイズ! その扉を使えばわたくしでもすぐにアルビオンまで行けますわ!
 わたくしだって水の魔法の使い手。戦いともなれば…」
「お聞き分けください姫さま。姫さまの身に何かあったら、それこそ国の一大事ですわ」
 激していたアンリエッタが、ルイズの言葉にハッと息を飲んだ。
「……そうですわね。わがままを申しました。でもルイズ、気をつけてくださいね」
「もったいないお言葉にございます」
 ぺこりと貴族の礼をしてみせるルイズを見ながら、ドラえもんが毒づく。
「……きみがきても足手まといなだけだと思うけどなあ」
「なんか言った?」
「いいや、なんにも…」
 そうして、どうにもチームワークに不安が残る二人は、どこでもドアをくぐっていった。
438ドラえもん(マンガ版):2008/11/01(土) 12:13:32 ID:U1EPB9I5
「きみは…!」
 扉からやってきたルイズを見て、ウェールズが一瞬緊張した表情を見せるが、
「…いや、気のせいだな。どうやら私は気が立っているらしい。
 そのタヌ…いや、ネコくんと一緒に来たところを見ると、きみもアンリエッタの使いかな?」
「はい、殿下。ヴァリエール家の三女、ルイズと申します」
「そうか。知っているだろうが、私がウェールズ。滅び行く国の皇太子だ」
「そんな、滅び行くだなんて……」
 ルイズが思わず言葉を失うが、ウェールズは何でもないといった様子で今度はドラえもんに向き直り、
「ああ、ネコくん。さっきは悪かった。どうもこの前に見た賊と顔が似ているような気がしてね。
 よく見れば似ても似つかないのだが、突然の出会いだったので動転してしまったのだ。すまない」
 それだけでほれぼれするような仕種で頭を下げる。
 しかし、ルイズの心を射止めたのはもっと別のことだった。
「それ! それです! 失礼ですが殿下、姫さまの手紙を奪ったという賊について、
 詳しく説明していただけませんか? わたしたちはそのために来たのです!」
 ルイズのただならぬ剣幕に、ウェールズはうむ、とうなずいて、
「あれは実に不可思議な賊であった。風の偏在を使うようであったが、
 高等魔法ゆえ習得が不完全だったのか、現われた分身ひとつひとつの大きさは人の半分ほどだった。
 もしやあれは偏在ではなく、アルヴィーやガーゴイルなどの魔法人形か、ゴーレムであったのかもしれない。
 いや、しかし……。うむむ。なんとも言えないな。
 何しろ手紙を奪うとすぐ、まるでけむりのように消え去ってしまったのだから」
 それを聞き、ルイズはいよいよ覚悟を決めた。
「あの、殿下。殿下が手紙を奪われた時間を、正確に覚えていらっしゃいますか?」
「ああ。実に印象的な出来事だったからね。しっかりと覚えているが……」
 怪訝そうな顔をするウェールズの代わりに、ドラえもんが尋ねる。
「そんなこときいて、きみはいったいどうするつもりだい?」
「もちろん、ウェールズ皇太子が手紙を盗まれた時代まで戻って
 手紙を盗まれるのを阻止するのよ!
 そうしたらレコン・キスタの目的もわかって一石二鳥じゃない。
 あんた、そういう道具も持ってるでしょ! ほら、さっさと出す!」
 ルイズに急かされ、ポケットに手を突っ込みながらドラえもんがぼやく。
「……なんだかオチが見えたようなきがするなあ」
「なんか言った?」
「いいや、なんにも…」
 ドラえもんはさっと目を逸らし、やはりドラやき目当てなのか、
めずらしく従順に道具を取り出す。
 
「タイムベルトとスパイセット〜!」

 ドラえもんが取り出した道具を受け取りながら、
「さあ、レコン・キスタの盗人の顔、おがんでやろうじゃないの!」
 ルイズはまるで野生の獣のような獰猛な笑顔を浮かべるのだった。
439名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 12:15:26 ID:0ypOHbgP
俺もオチが見えたw支援ww
440ドラえもん(マンガ版):2008/11/01(土) 12:15:53 ID:U1EPB9I5
 過去に戻ったドラえもんたちは、近くの部屋からスパイセットで
ウェールズ皇太子の様子を見守っていたのだが。
「――もう、なんで来ないのよ!」
 せっかくウェールズが一人で手紙を読んでいる最大のチャンスなのに、
賊は一向にやってこなかった。
「そんなこと、ぼくにいってもしようがない。
 きっとちょくぜんでおなかでもいたくなったんだろ」
「そんなわけないでしょ! ……あ、読み終わっちゃったわ! しまっちゃう!」
 今にも小箱にカギをかけそうな皇太子の様子に、焦れたルイズがとうとう立ち上がる。
「しょうがないわ。こうなったら手紙だけでも持っていきましょう」
「でも、どうやってじじょうをせつめいするんだい?」
「……この際、少し乱暴にでも取っていっちゃいましょう。
 それを見たらレコン・キスタも動き出すかもしれないし」
 そう言って、ルイズはドアに向かう、と思いきや、なかなか動き出さない。
「……あの、やっぱりわたしがそのまま行くのも危険だし、バレるとまずいじゃない?
 なんかいい道具ないの?」
「そうくると思ったよ」
 もはや慣れたのか、ドラえもんは文句も言わずにごそごそとポケットを探り始める。

「クローンリキッドごくう〜! …と、えんにちのお面」

 ドラえもんは取り出した物の内、まず薬品の方をルイズに渡す。
「これをかみにふりかけると、ぬいたかみの毛いっぽんいっぽんがじぶんの分身になるんだ。
 いくらきみでもなんにんもいれば、手紙をとることくらいできるだろ」
「……口の利き方は気にいらないけど、使い方はわかったわ。それで、こっちのお面は?」
「お祭りで売ってるただのお面だよ。かおがばれるとまずいんだろ?」
「ってこれ、あんたの顔じゃない! ……なんか異様に縦長で気持ち悪いんだけど」
「もんくいうなよ。それともそのまま出ていくかい?」
「……いい。これで我慢するわ」
 ルイズはドラえもんのお面をつけ、クローンリキッドごくうを頭に振りかける。
「これでよし。さて、それじゃ…」
「行ってらっしゃい」
 スパイセットのモニターから離れないまま、ドラえもんがパタパタと手を振った。
 それを見て、ルイズはムッとする。実はルイズ、一人では怖いのでついてきて欲しいのであった。
 しかしまさか、使い魔相手に、『怖いのでついてきて』などと言えるはずもない。
「いいわ! 一人で行ってくるわよ! レコン・キスタにやられたら、
 化けて出てあんたに一生付きまとってやるんだから!」
 そんな捨て台詞を吐きながら部屋を出て行く。
「そんなことにはならないと思うけどなあ」
 それでもドラえもんは全くこたえた様子もなく、そんなことを言いながらモニターを見続ける。
 やがて、
 
『な、なんだきみたちは…! こ、この手紙は……返せっ!』
  
 大量のお面をつけたルイズがウェールズから手紙を奪い、
「そろそろか…」
 ドラえもんがちょうどスパイセットをポケットにしまい終わった途端、
「ドラえもん! 早く! 元の時代にもどるわよ!」
「そうなるだろうと思ったよ」
 手紙を手に、逃げ出してきたルイズが部屋に飛び込んできた。
「では現代へ!」
「早く早く!」
 次の瞬間、二人は元の時代にもどり、
「この部屋か! 賊め、手紙を……消えた?」
 駆けつけたウェールズは、誰もいない部屋を前に、呆然と立ち尽くすしかなかった。
441名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 12:17:34 ID:0ypOHbgP
だと思ったよw支援
442名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 12:20:03 ID:3vNMlx6O
sien
443ドラえもん(マンガ版):2008/11/01(土) 12:21:10 ID:U1EPB9I5
「それで? 『れんこんしすたー』とやらは出てきたかい?」
「レコン・キスタよ! ……出てこなかったわ。でも、手紙だけはばっちり」
 そう言って胸を張るルイズに、ドラえもんははあ、とため息をつく。
「やれやれ。やっぱりこうなったか。……どうりでとりよせバッグがきかないわけだ」
「なにそれ? どういうことよ」
 せっかくのいい気分に水を差され、険悪な声で聞くルイズに、
「どういうこともこういうことも。つまりきみがかこの世界から手紙をとったせいで、
 さっきの時代には手紙がなかったんだよ」
 その言葉に、ルイズはハッとする。
「そうか、わかったわ! わたしがウェールズ殿下から手紙をもらってから
 現代にもどるまで、手紙はこの世界からなくなってたのね!」
 しかし、そこでルイズはもう一つ大事なことに気づいた。
「で、でも待って! それじゃ、レコン・キスタはどこにいったの?
 最初にウェールズ皇太子さまから手紙を盗んだのは…」
 それを見て、呆れたようにドラえもんが言う。
「レコン・キスタ、なんて、そんなのさいしょからいなかったんだよ。
 ウェールズがぞくについて、なんていってたかおぼえているかい?」
「あんたの顔と、わたしの格好をした小人…。そうか! だからウェールズ殿下、
 わたしたちを見た時、あんなに警戒してたんだわ!
 だって手紙を取っていったのは、あんたのお面をつけたわたしの分身だったんだもの!」
 ドラえもんが『ようやくわかったか』とばかりにうんうんとうなずく。
 ルイズも『謎が解けたわ』と、にこにこ笑顔を見せ、

「って、ちょっと待ちなさいよ!!!!」

 とんでもないことに気づいたルイズは、城中に響きそうな大声を張り上げる。
「じゃ、じゃあ何?! 手紙を盗っていったのは、わたし自身だったってこと?」
「そういうことになるね。だからちゅうこくしたのに……」
「ちょっ!? あんたわかってたの?!」
「こういうのはのび太くんでなんども体けんしたからなあ…」
 あっけからんと、ドラえもんは言う。
 それで納得出来ないのはルイズである。
「なんで言ってくれなかったのよ!」
「きかれなかったし、せつめいするのもめんどうじゃないか。
 ぼくはにんむがおわってドラやきさえ食べられればいいんだ」
 衝撃の事実に、ルイズはがっくりとうなだれる。
「そんな……。ああ、姫さまになんてご報告すればいいのかしら」
「いいじゃないか。むねをはって帰れば。きみはにんむをはたしたんだから…」
444名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 12:22:41 ID:0ypOHbgP
ドラえもん手馴れてるなw
445ドラえもん(マンガ版):2008/11/01(土) 12:26:26 ID:U1EPB9I5
「ううぅ…。こんな、こんなことって……」
 ルイズは一人でしばらくうんうんうなっていたが、ふと気づいて顔を上げた。
「ちょっと待って。……ねえドラえもん。わたしたち、
 取り寄せバッグで手紙が手に入らなかったから、過去に行くことになったのよね?」
「うん。そうだね」
「でも、わたしたちが取り寄せバッグで手紙を取れなかったのは、
 わたしたちより先に過去に行った未来のわたしたちがいたせいでしょ?」
「う、うむ。未来なのにかことかややこしいなあ」
「だけど、それだとおかしいじゃない?
 未来のわたしたちがわたしたちの時代の手紙を取ったのは、
 もっと未来のわたしたちが未来のわたしたちの手紙を取ったからだろうけど、
 じゃあ、そのもっと先、一番最初のわたしたちは?
 一番最初のわたしたちの手紙は、いったい誰が取ったのかしら?」
「ん? ううう? むむ…。むずかしいしつもんだなあ…」
 ドラえもんもひとしきりうなった後、
「でも、そういうときのために、いい手がある」
「へえ。さすが未来の『ろぼっと』ね。ま、未来も何もそもそも別の世界だけど。
 ……それで? どんな方法なの?」
 ドラえもんはとてもいい顔で言った。

「かんがえなければいいのさ!」

「……は?」
 目を点にするルイズを置いてけぼりに、
「さ、それよりはやく帰ってドラやきたべさせろよ。やくそくしたんだからな」
 さっさと歩き出してしまうドラえもんを見てため息をつき、
「わたし、最近あんたのことわかってきたような気がするわ…」
 ルイズは疲れた顔でドラえもんの後を追うのだった。


第五話『ルイズとすこしふしぎな手紙』HAPPY END……?
446ドラえもん(マンガ版):2008/11/01(土) 12:28:31 ID:U1EPB9I5
投下終了
めずらしくハッピーエンド
……うまく落ちなかったとも言う

次回、渾身の第六話『さようなら、ドラえもん』は近日公開予定
447名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 12:30:13 ID:A9VPfwIE
ついに次で最終回か……とにかく乙!
うん、オチが秀逸でしたw
448名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 12:38:32 ID:/Tft90/A
実にドラえもん的でした。乙
449名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 12:39:02 ID:52vJJJOA
タイムパラドックスですね、わかりません
ドラえもん乙。
450名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 12:40:12 ID:3vNMlx6O
考えるな、感じるんだ。乙
451名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 12:44:11 ID:ViX+3eUl
あはん
452名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 12:48:27 ID:mddB94ej
ウェールズは?ねぇアルビオンは?ww
453名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 12:51:14 ID:rXU95CuG
TVや劇場版のドラなら助けたかもしれないけど漫画版だからな
454名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 12:58:36 ID:73ZrIzV8
ドラえもんの世界の時間理論は一様じゃないしなぁ。
いくつか抜け穴は思いつくけど、まぁ、そういう投げっぱなしのパラドックスが持ち味だし、余計な推論はやめておく。

とにかくGJ。
455名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 13:14:13 ID:XbEiQ/y8
相変わらずおもしろいw
笑わせていただきましたGJ!!www

ドラえもんとルイズはいいコンビだと改めて認識したわw

そしてDMDクリアおめでとうw
強いよね・・・DMD兄貴・・・
456名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 13:21:14 ID:0ypOHbgP
乙。
暴走魔人化と絶刀で回復+幻影剣でダメージ与えられないのエンドレスループだしな。

いよいよ次回か……ってジカイで変換してなぜ自壊が真っ先に出る。
457名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 15:47:53 ID:3vNMlx6O
個人的にはオスマンの外見はなぜかネテロ会長が思い浮かぶ。
本当はダンブルドアとかガンダルフとかのイメージだってわかってるんだが。

だから九話の頭のところでも危うく

オスマンは照れくさそうにつるりとした額を撫で

とか書いてそのままにしそうになったw
458名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 15:51:38 ID:cbt4njcg
>>457
あ、俺も禿頭でヒゲもさってイメージだった
459名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 16:18:35 ID:3qMfM/vu
エロジジイだと亀仙人イメージするもんな
460名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 17:11:11 ID:h03XvhI1
>>430
自分もそう思ってたが音速丸程度なら書けた。
頑張ってみるべし。

あと関係ないが、傾者の人とか三成の軍師の人を召喚したらギーシュは最初の決闘で殺されるよな?
461名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 17:14:26 ID:rZb1qhoI
>>459
あるある
462名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 17:15:22 ID:UY8uLWYr
>>460
傾奇者の彼だったら死なない程度に殴るだけで許してくれるよ。
ポスト村井陽水。
463名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 17:27:28 ID:1u6V8GqT
>>くびちょんぎる
>>ちぎってはなげ、ちぎ(ry

ドラえもんKOEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!!
464名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 17:54:55 ID:qDOtaV0T
>>460
むしろ馬だけで上等

>>463
ちゃんばら刀では首は切れても死なないよ。
465名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 18:00:38 ID:iYiVx+Ab
ドラの人乙
しっかしあれだなー。
ドラえもんは今までルイズに召喚された連中の中でも色んな意味でぶっちぎりだなw
アニメ漫画界の大御所にして最強と言われるだけのことはある。
466名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 18:01:41 ID:ogJSDCTM
>>457
某クイズゲー儲の俺には、どうしてもオスマン氏のセリフが郷里大輔氏の声で再生されてしまう…
467名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 18:03:10 ID:NdOxLMmh
IDOLAの人は書き溜めの時期にはいったんかな、永く続くのを願ってます
468名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 18:46:15 ID:fV10cfez
第七話は「帰ってきたドラえもん」ですね、わかります
469名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 18:53:25 ID:uQSx+QUq
いろいろなシーンは妄想できるが、ひとつのストーリーとなると難しいな
特にこのスレは、被召喚キャラを元の世界に帰すか帰さないかをきめとかないと、話が終了できないからな

>>465
戦闘能力も高いが何より汎用性がすごすぎw

>>468
ああ、みんなが思ってても言わなかったことを
470名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 18:57:09 ID:BZH6dtJP
しかも、ageてるっていう
471名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 19:03:27 ID:84Hr/YUJ
ドラって戦闘力もあれだが映画じゃ指揮官やってみんなをまとめたりすることあるよな。

でも奇襲に弱いからてっきりワの付く人に苦戦する展開になるかと思いきや何てことなかったぜ!
472名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 19:05:32 ID:RgiF1Ov7
のび太とルイズの共通点……特技以外が全滅とか?
でも銃の技術に開眼してからののび太と、虚無の担い手と判明してからのルイズの、特定の場面における活躍の度合いも似ているかも。
473名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 19:09:02 ID:1u6V8GqT
ポケットがなきゃただの中古ロボット

ところでタバサママはドラえもんにかかればすぐ治るんじゃね?
474名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 19:15:17 ID:6BV+7sei
ドラえもんは確か江戸時代に行って肺結核を一発で治してたから
タバサママくらい簡単に治すだろう。
まあそれ以前にタイムマシンで薬を飲む前までさかのぼればいいんですけどね。
エルフの妨害も精霊指輪で撃退できるし。
475名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 19:20:29 ID:dvb6btoX
>>473
お医者さんカバンだな
476名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 19:30:52 ID:vlg51Uz+
ビッグライトで巨大化したドラVSスモールライトで小さくなったレコン・キスタ軍は
見れないようだな
477名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 19:33:57 ID:ncFJeWJN
>>475
お医者さんかばんはあまり重い病気には効かなかったはず。
それよりもタイムふろしきで……
478名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 19:36:07 ID:plz+WRNr
イカれてから以降の記憶が吹っ飛びそうな気がしたが
ドラえもん作中の描写だと若返る以前の記憶も持ってた事があった様な
言うのもなんだがドンな仕組みだ
479名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 19:37:32 ID:rUZTDgJB
お医者さんかばんはむしろカトレアに使うべき
480名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 19:38:32 ID:6RoHcQoU
死んだ人間、もしくはアンドバリの指輪で蘇った人にタイム風呂敷使ったらどうなるんだろう。
となんとなく思った。
481名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 19:42:15 ID:ELXhhKXZ
無人島に10年取り残された後に
タイムマシンで10年遡ってタイムふろしきで肉体を10年戻して
めでたしめでたしって話があってだな・・・
482名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 19:43:45 ID:mYCgb3XP
そういや妖怪の呪いはお医者さんカバンで治せてなかったな、公式かどうか知らんが
483名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 19:45:53 ID:rUZTDgJB
死体はタイム風呂敷じゃ駄目だった気がする。
484名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 19:47:28 ID:pJM7UEAX
ドラえもんに無理なことでも、キテレツは解決できそうな気がする
485名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 19:48:42 ID:6RoHcQoU
>>483
そうなのか。
化石は生きた卵に戻せるくせに不自由なアイテムだ。
486名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 19:49:46 ID:84Hr/YUJ
じゃキテレツ召喚
コッパゲ先生と一日中研究室に篭ってそうだが
487名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 19:51:35 ID:73ZrIzV8
うそつ機とか、ソノウソホントとか、現実改竄系のアイテムを使えば、タバサママだって直せるだろうと思うが。
488名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 19:52:27 ID:IYpj6dT6
>477
かぶせたのをすっかり忘れてたらタイムふろしきの下にタバサによく似た女の子が出現します
489名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 19:52:35 ID:PccFTNzY
というかドラえもんで人生き返らせたことあったっけ?
490名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 19:56:53 ID:GmQQOBz5
ドラえもんは孫悟空と並んで(ルイズにとって)当りキャラだと思うけどどう?
他に誰かいる?
491名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 19:57:12 ID:ncFJeWJN
うそつ機は嘘を信じさせる道具。
ウソ800なら言ったことを嘘にできる。
492名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 19:57:15 ID:68Xm6vBp
>>489
洗脳したことならいくらでもあるし、クローンを作ったこともあるが
生き返らせたことはないはず
493名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 20:07:51 ID:zY6l2LTs
>>490
久保とか?帰る気ないし
494名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 20:11:30 ID:bgU9oKAu
ただ今デビルサマナー葛葉ライドウvsアバドン王攻略中
で、お約束のように葛葉召喚を考えてしまう

でも、「悪魔や妖怪がいない。だからただの剣士にしかならない」という事に気が付いた
だって幻獣といっても実体の肉体を持つ普通の動物なんだもん。管に入んねーや
495名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 20:19:01 ID:7DTSZLCG
人はないが犬が死んじゃったのを過去に戻って薬あげて
死ななかったことにした事はあった気がする
<どらちゃん
496名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 20:27:44 ID:DfMzunnc
うろ覚えだが、たしかアニマル惑星でえらいピンチになったときに、

「ドラえもん早く次の手を!」
「ない!」
「え?」
「次の手なんてない! ぼくを何だと思ってるんだ、魔法使いか神さまか!?」

みたいなセリフがあった。
こういうのがあるからドラえもんは何気にあなどれん。
497名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 20:32:30 ID:KqvIpj6d
それなりに万能だが全能ではないって事。
天才策士というわけでもなし、仕方がないわな
498名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 20:33:08 ID:6RoHcQoU
ジョゼフにタイムベルトをプレゼントしてシャルルに会わせるんだ。
499名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 20:35:54 ID:r5XSsN3p
ドラえもんの万能さは結構危険だからな
願いかなえる系でも下手に使用すると破滅する
たしか原作でテスト中止と願う→関東壊滅というのがあった
500名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 20:37:51 ID:kNVzcGNG
本当に万能なのはドラミだなw
501名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 20:37:57 ID:1u6V8GqT
もしもボックスはどうだ!?
ハッ!このスレがつぶれる!
502名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 20:39:02 ID:OOIweqAF
少なくとも俺は魔法使いより神様より、道具が万全に揃ったドラえもんの方がよっぽど怖い。



映画で道具が万全だったためしはないけどな!!w
503名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 20:44:45 ID:68Xm6vBp
>>497
策士どころかあれだけの道具があっても追い詰められたりする
ネジが一本足りないダメロボットw
504名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 20:45:06 ID:ncFJeWJN
>>497
ソノウソホントはほぼ全能だけどね。

>>502
万全だったら、話があっという間に終わるからな。
505名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 20:45:09 ID:73ZrIzV8
魔法大辞典とか、あらかじめ日記とか、物語のプロットすら粉砕する超アイテムが盛りだくさんだしなぁ。

宇宙完全大百科とかも、使い方を間違わなければすべてを台無しにできるし。
506名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 20:46:49 ID:8WhmcDkI
銅鑼衛門は道具が万全であっても
パニクッた状況ではまるっきり無関係な道具をばらまく癖があるからな。
いざという時にはダメなイメージがつきまとう。
507名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 20:56:16 ID:REis3UAe
とりあえずバリヤーポイントで身を守ってれば大丈夫のようなw
508名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 20:57:42 ID:0ypOHbgP
>>499
テストを受けたくない⇒未来操作機だかでレベル10に設定したら
関東をマグニチュード9の大地震が襲い……となって、
あわててレベル最低にセットしたら遅刻してテストはもう終わった!廊下に立ってろ!ってオチのあれか。
509名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 21:13:04 ID:AlP34Fmb
恐怖の戦場伝説喋る生首メイジ
510名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 21:13:16 ID:kbyGDg77
>>483
狐の毛皮で作ったコートにタイム風呂敷をかけたら狐が蘇った話があったよ
511名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 21:14:17 ID:h03XvhI1
とりあえずオマエらがドラえもん大好きっ子ということは解った。
512名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 21:14:18 ID:r5XSsN3p
>>501
よくドラえもん最強説であげられるけど
あれってあくまで平行世界移動だと思う


>>508
そうそれ。たしか名前は「望み実現機」
513名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 21:25:05 ID:DfMzunnc
そう言えばよく有名な作品にはアンチがつきものだが、ドラえもんのアンチって聞いたことがないような…。
514名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 21:25:53 ID:8GJi8dy1
連休でひまなのでSSを書いてみました。
エヴァ劇場版を友達に落とせてもらったのを見終わったのでシンジを召喚しようと思います。
人気がなかったりあきたらやめます。いちゃもんつける馬鹿がわいてもやめますのでそのつもりで。
515名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 21:27:23 ID:sRFKZqRZ
>>514
まずはsageろ、話はそれからだ
516名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 21:27:33 ID:pJM7UEAX
先生!釣り針が大きすぎて飲み込めません!
517名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 21:28:16 ID:vpc/wC0/
>>513
サザエさんやチビまるこちゃんにアンチがいるか?
同じ理由さ。


アトリとバージル楽しみにしてます。
続き待ってます。
518名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 21:28:30 ID:AeXH9BrV
いちゃもんとか言う前にsageましょう。

て言うか、エヴァ板の方がいいんじゃね。
519名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 21:28:42 ID:p8g/rf5Z
ドラえもん談義がうざかったんですねわかります
520名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 21:29:07 ID:dvb6btoX
>>513
江川達也ってのがいてな
521名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 21:30:32 ID:uQSx+QUq
>>490
ルイズ的には、なのはさんかブラムドの方があたりじゃないか
なのはさんは誠実に接するし、魔法に関しても教導するし、戦闘能力チートだし
氷竜ブラムドは何といってもしゃべる竜で、こっちも戦闘能力チートだし

しかしドラえもん相手だと分が悪すぎる
大体、過去に戻れるやつにどうやって勝てと

・・・・・もしかして召喚前の時間に戻って儀式を邪魔すれば召喚されない?
522名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 21:33:17 ID:/Ofl9yc0
>>521
邪魔して召喚されないと召喚を邪魔する必要がなくなって、召喚を邪魔しないと召喚されるわけだ
523名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 21:34:11 ID:a6z5kWKy
未来や過去を変えようとすると。タイムパトロール隊に捕まります。
524名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 21:42:18 ID:ncFJeWJN
しかしドラえもんはなぜか見逃されています。
525名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 21:42:18 ID:j57WEUdX
炎のブレスもヘキサゴンスペルもヒラリマントで華麗にスルー。


しずかちゃんの愛犬が死んだ話で、「死んだものは生き返らせることができない」って言ってる……けど、なあ?
526名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 21:45:57 ID:h03XvhI1
タイムパトロール隊か・・・

ルイズ「やぁっておしまい!」
ギーシュ・マリコルヌ「「あらほらさっさ!」」

・・・いや、何でもないッス。
527名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 21:47:02 ID:wT3aJZcf
ドラえもんは市販品だからでしょ。掴まるならセワシって事だね。

歴史自体を変えようとしてるんだから。
528名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 21:47:22 ID:BZH6dtJP
>>521
過去に戻ろうとする前に機能を完全に停止させるとか?
尻尾を引っ張って停止させたルイズも勝ったっちゃ勝ったしさw
529名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 21:48:03 ID:BZH6dtJP
>>527
サイバーパンクドラえもんの続きが読みたいです……
530名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 21:48:56 ID:UY8uLWYr
>>521
ブラムドは尊敬してあまりある存在だからねぇ。
その強大さに甘えず、釣り合う存在になろうと努力している彼女も良い。

>>524
彼が変えた未来が本当の未来とみなされているからです。
531名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 21:52:53 ID:T2eT19To
>>514
日記帳にでも書いてろ
532名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 21:56:35 ID:NdOxLMmh
するーするー
533零姫さまの使い魔:2008/11/01(土) 22:00:45 ID:nBIBV/s+
投下予約が無いようでしたら10分くらいから投下します。
534名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 22:01:25 ID:ojVwm4d2
>>494
あれは管に入ってるんだからその時の手持ちの仲魔はついてくるんじゃね
535名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 22:02:04 ID:rLi4S5ee
使い魔同士が戦ったら みたいな話はこっちですればいいんじゃないかな?
一応専用スレだし。

http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1220112466/
536零姫さまの使い魔 第四話@:2008/11/01(土) 22:10:29 ID:nBIBV/s+
「あっしは手の目だ
 先見や千里眼で酒の席を取り持つ芸人だ

 やって来ました舞踏会
 年に一度の催しとくりゃァ あっし達芸人にとってもカキ入れ時ってぇもんだが
 なにやらこの祭典 長い歴史と伝統を誇る
 やんごとなき方々のための まこと雅やかなる『ぱぁてぃ』なんだそうで
 つまるところ あっしみたいなドサ芸人はお呼びじゃないとさ

 そんなわけで 哀れなシンデレラは帰ってフテ寝さ
 それじゃさよなら おやすみなさい」





フリッグの舞踏会は、トリステイン魔法学院における最大規模の催しである。
この日は食堂二階のホールが解放され、贅をこらした料理がテーブルに所狭しと並び、
国中でも名うての楽士達が流麗な音楽を奏でる。
そしてその場に、思い思いに着飾った貴族の子弟が集い、歓談にダンスにと華を咲かせる。
彼らにとってこの一夜は、日常を離れ初めて体験する、夢のような貴族の世界であり
後々社交界で名を馳せるための、実質的なデビューの舞台でもある。
その立ち居振る舞いに、常ならぬ気合が入るのも当然の事と言えよう。

そんな華やかなる貴族達の世界を、少女はバルコニーから眺めていた。

ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
トリステイン最大の名門、ヴァリエール家の三女であり、未だ蕾ながら、目を見張るほどの美貌の持ち主であった。

本来なら、ホールの中央こそが彼女にふさわしい居場所であろう。
実際彼女は、返答に辟易するほどのダンスの誘いを少年達から受けた。
そして、それらの全てを断って、彼女は舞台の片隅にいた。

勿論それは、貴族の令嬢がとるに相応しい行動ではない、
現に、ホールのいくつかのグループは、壁の花と化したルイズを端目にしながら、何事か囁き合っている。
「ゼロのクセに」と言う呟きまでが聞こえるようだ。
日頃、嘲笑の対象としている少女がとった高飛車な態度だけに、その反発もまた根深かった。

もっとも、彼女がそんなお高く止まった態度をとった所以も、『ゼロ』のふたつ名にあった。
常日頃、自分を馬鹿にしていた男達が、目の色を変えたように誘いをかけてくる様は、彼女にとって却って堪えた。
もって生まれた器量と、名門貴族の肩書きが、彼女のコンプレックスをナイフのように抉る。
魔法が使えない事を面と向かって罵倒されている方が、遥かにマシであった。
御伽噺のような貴族達の世界にあって、彼女はどこまでも孤独であった。



537零姫さまの使い魔 第四話A:2008/11/01(土) 22:12:26 ID:nBIBV/s+
「まるで舞台劇のワン・シーンのようだ」
「え……」

――ルイズが気付いた時、その男は既に彼女の傍らにいた。

切れ長の瞳に、何処か儚げな光を宿した青年であった。
漆黒の黒髪に黒のスーツ、その上に、更に黒の外套を纏うという黒づくめの異装が
かえって男の肌の白さを強調し、まるでこの世の者ではないような、どこか超然とした印象を与えていた。

ルイズは咄嗟に思考を泳がせる。
彼女が知る主だった貴族の子弟たちの中に、彼の顔は無い。
更に不思議な事に、これ程人目を引く容姿でありながら、周囲は彼の存在を気にもしていない。
まるで、そんな男など、この場に存在しないかのように……

「目の前の光景ですよ
 バルコニーから室内までは 距離にすれば5歩もありません
 だが 此処と向こうでは 取り包む空気がまるで違う
 まるで 見えざる舞台でも存在するかのようにね」

「…………」

自身の心境を丸裸にするような男の呟きに、思わずルイズが息を呑む。
確かに、男と自分がいるバルコニーだけが、この祭典の観客席であるかのように、静寂に包まれていた。

「あの あなたは……?」
「人攫いです」
「え……?」

思わず目を丸くして固まったルイズの姿に、男が無邪気な笑顔を見せる。
その笑顔で、ルイズはようやく、それが男の冗談であることに気付いた。
ルイズの反応の楽しむかのように、男が言葉を紡いでいく。

「とある悪玉から頼まれたのですよ
 バルコニーに閉じ込められたウチのお姫様を 退屈な舞台劇から救い出して
 こちらのパーティーに攫ってこい……と
 僕はまあ その悪玉の使いの者 というワケです」

「……そのお姫様っていうのが 私の事?」

さすがにルイズが怪訝な表情を浮かべる。
今宵、学院の付近の集落で、何らかのパーティーが開かれているなどと言う話は、耳にしていない。
だが、男の言葉には、少女を御伽噺の世界に導く兎のような、奇妙に魅惑めいた響きがあった。

「それで その パーティーって」

ルイズが更に問いかけようとしたその時、徐々にホールの喧騒が収まり出し、楽士達が準備を始めた。
そのタイミングを見計らっていたかのように、男はルイズの言葉を遮り、右手を差し出した。

「その質問に答える前に 一曲 お相手願えませんか?」
「…………」

538名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 22:12:34 ID:ncFJeWJN
支援
539零姫さまの使い魔 第四話B:2008/11/01(土) 22:14:22 ID:nBIBV/s+
ルイズが逡巡する。

普段の彼女であれば、ここで見知らぬ男の誘いを受けたりはしないだろう。
だが、男の言う『パーティー』には少なからぬ興味があったし
このまま一曲も踊らずに、周囲から陰口を叩かれ続けるのも癪であった。
勿論、今更同級生達の相手をする気は毛頭ない。
ならばいっそ、この見知らぬ色男をパートナーに、
お高く止まった貴族のダンスを見せつけてやるのも悪くないかも知れない。
そんな事を考えながら、ルイズはやや緊張した面持ちで、男に手を差し伸べた。

男はルイズの手を恭しく包むと、そのままホールには向かわず……

バルコニーの欄干へ足を掛けた。

「さあ Shall We Dance?」
「え……!」

やがて、流麗な音楽の響きに合わせ、ふたりの体が、
まるで重力の枷から放たれたかように、鮮やかに上空へと舞い上がった。

地上からの歓声を受けながら、ふたりは何処までも昇っていく。 
磨かれたように冷たい空気が、ルイズの全身を吹き抜けていく。
大地の支えを失った不安感から、ルイズは身動きがとれず、男の外套に思い切りしがみついた。

「どうしました? 普段のあなたなら もっと優雅に踊れるはず」

「だって これ…… これは……? 私 飛んで……」

咄嗟にルイズは、フライの魔法を思った。
だが、男に詠唱を唱えた気配は無かったし、そもそも彼は、杖すら手にしていなかった。
それに、男の奔放な動きは、飛ぶと言うより、宙を舞うといった形容の方が正しかった。

「これこそが 本当の魔法ですよ」
「本当の…… 魔法?」

彼方から打ち上がった花火の輝きが、男の頬を、紅に緑にと染め上げる。
二人の周囲で、大きな双つの月がグルグルと回る。

「人の持つイメージに限界はありません
 杖も詠唱も イメージを現実の形にするための手段に過ぎない
 現実の殻さえ脱ぎ捨ててしまえば 人は 何処までも自由に飛べるのですよ」

男の言葉は、ルイズには理解できない。
だが、ルイズの体は男の言葉を肯定するかのように、自然と動き出していた。

ゆっくりと、男の懐から離れる。
始めは硬い動きで、足場を確認するかのようにおそるおそる、
そのうちに音楽を聴く余裕ができ、徐々に動きが流れるような柔らなものへと変わる。

心の内から湧き上がる歓びが、彼女のダンスにダイナミックな躍動感を与える。
指先一つで男とつながり、小さな体を精一杯伸ばし、自由な魂を全身で表現する。
窮屈な礼法の世界を抜け出し、ルイズは生まれて初めて『踊って』いた。



540名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 22:16:28 ID:NdOxLMmh
支援
541零姫さまの使い魔 第四話C:2008/11/01(土) 22:16:40 ID:nBIBV/s+
――トン、と

曲の終わりと共に、ふたりは見知らぬ異国の街へと降り立っていた。
行き交う人々が皆足を止め、ふたりに万雷の拍手を送る。

色とりどりのネオンに、ほのかな潮の香り、
巨大な尖塔から怪しげな屋台までが混じ入った、魅惑的なオリエンタルな街並み。

歓声を挙げるギャラリーの顔も一様ではない。
馴染み深い金髪の白人から、異国情緒溢れる褐色、東洋人と思しき黒髪
中には明らかに人間では無さそうなものまで混じっている。
そして、ルイズもまた不思議な事に、その様を当然として受け止めていた。

「やんや やんや」

と、くだけた拍手を掛けながら、一人の女性が人ごみを掻き分けて近づいてくる。
見た目は二十歳前後と言った風の、可憐さの中に妖艶な蕾を秘めた黒髪の乙女。
ドレスから除く白い背が魅力的ではあるが、ルイズは何か、彼女に形容のし難い違和感を感じた。

「若旦那 暫く見ないうちに女の趣味が変わったのかい? 
 小便臭いのは閉口……だろ」

「お前こそ 随分と口が悪くなったもんだ 
 どんなに旨く化けたところで 口を開けば里が知れるぞ」

へん、と女が舌を突き出す。いかにも馴染みらしい他愛のないやりとり。
そんな会話の中から、ルイズは先の違和感の正体を突き止めた。

「あんた もしかして手の目なの?
 な なな何よ その格好?」

「へぇ? そりゃあ折角の『ぱぁてぃ』だからね
 たまにゃァ あっしだって 綺麗なベベぐらい着ますさ」

そういう問題ではない、とルイズは思う。
ただでさえルイズは、年下の手の目と変わらない体型なのだ。
このような日に、一人だけ見事なレディに変身して現れるなど卑怯ではないか。

「そんな事より この場はお前の仕切りなんだろう
 ゲストがたったの一人とは 片手落ちじゃないのか?」

「勿論 手前の仕事に抜かりはありませんぜ 若旦那」

手の目の言葉と同時に、ボォン、ボォン、という時計塔の鐘が轟き、
通行人を掻き分けながら、大きな南瓜の馬車が一台近づいてきた。
542零姫さまの使い魔 第四話D:2008/11/01(土) 22:19:00 ID:nBIBV/s+
「あらァ! そちら ステキな殿方」

弾んだ声を響かせながら、先ず、蝶ネクタイを付けたサラマンダーが
次に、胸元の大きく開いたドレスを着こなした赤毛の少女が、
最後に、用心深く周囲を見回す青髪の少女が、トランプの従者のエスコートを受け馬車から降りた。

「フゥン 中々面白そうな所じゃないの」

「キュ キュルケ アンタ なんで……?
 って言うか この唐突な状況にいきなり馴染んでんじゃ無いわよ!」

「なによ ヴァリエール 私達は手の目の招待で来たんだからね
 一人だけ夢の世界で良い目を見ようったって そうは行かないわよ」

「夢の世界……? 招待ですって?」

「夢の中に彼女が現れて 無理やり着替えさせられた……」

ルイズの問いに対しタバサが答える。
彼女は周囲を警戒していたのではなく、単にドレス姿に落ち着かないだけだったらしい。

「もう! 手の目 なんだってツェルプストーを呼んだりするのよ」

「お嬢 その物言いはいけないよ 御三方にはこの間も散々世話になってるんだ
 受けた恩義にはキッチリ報いるのが筋ってもんさ」

「お三方……?」

「きゅい! お姉さま〜!」

ルイズの疑念を遮るように、彼方の屋台から聞き覚えの無い女性の声が響く。

「ハンバーガーにフライドチキン フランクフルトにドネルケバブ!
 きゅい! お肉! お肉がいっぱい!
 お姉さまの好きなハシバミ草も たっぷり用意してあるわ〜!」

一同が呆然と見つめるその先では、謎の女性が、漫画のような骨付き肉をぶんぶんと振るっていた。

「……もう一人は 声をかけたら勝手に飛んで来ちまった」
「え…… 誰 ?」
「何かしきりにこっちを見てるわね タバサの知り合い?」
「知らない娘」

キュルケの問いに、珍しく強い口調でタバサが答える。

「更に! 今日は出血大サービスだ
 今宵のお嬢の相手に相応しいスペシャル・ゲストを用意したよ」
543零姫さまの使い魔 第四話E:2008/11/01(土) 22:20:56 ID:nBIBV/s+
いつの間にか、手の目はルイズの杖を手にしていた。
一同が注目する中、手の目が出鱈目な詠唱を始めた。

「宇宙の果てのどこかにいるルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの僕よ
 神聖で美しく強力なお嬢の使い魔よ あっしは心より求め訴えるよ とっとと観念して出てきやがれ!」

直後、まるでルイズの魔法のような爆発が起こり、広場が悲鳴に包まれる。
やがて、黒煙が晴れた先には、呆然とその場にへたり込む、謎の少年の姿があった。

「え? な な なんだ! ここはどこだ……!」

「いや…… だから誰よ?」

謎の少年は暫くキョロキョロと周囲を見回していたが、
その視界に手の目の姿を捉えると、不意に素っ頓狂な声を上げた。

「あーッ! お前 さっきの誘拐犯……!」

「誘拐とは何だ! 人聞きの悪い
 どうせこいつは夢だ! 朝になったら忘れちまわァ 
 さァ 分かったらウチのお姫様の相手をしねぇか!」

手の目はそう言って少年を無理やり引き起こし、その尻を勢い良く蹴り飛ばした。
少年はバランスを崩しながら前方に投げ出され、ルイズの眼前でかろうじて静止した。
初対面の相手との、息も掛かるほどの間近での接触に、二人の動きがドキリと止まる。

「え…… あれ? お前……」
「な な 何よ…… アンタ……」

微妙な静寂。
例えるならば、慨視感という言葉が近いだろうか。
何か、因縁めいたような懐かしさを、ふたりは互いの瞳から感じていた。

「も もう! こんなヤツを連れてきてどうしようって言うの? 手の…… あ あれ?」

緊張感に耐えかね、咄嗟にルイズは手の目に抗議しようとしたが、彼女の姿は無かった。
いつの間にか、黒づくめの青年も姿を消している。

そして、ふたりと入れ替わるかのように、後方から歓声が沸き起こった。




544名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 22:22:55 ID:AlJ799db
ルイズのつるぷたおまんこ

やーらけー
545零姫さまの使い魔 第四話F:2008/11/01(土) 22:23:29 ID:nBIBV/s+
巨大な音色を響かせながら広場に現れたのは、異形の楽団であった。
いつの間にか姿を見せたその一行は、ルイズ達が見たことも無い多様な楽器を手にしている。

そして、楽団員は、皆、人間ではない。
多彩な楽器に負けず劣らず、個性的な格好をした妖怪達であった。

長いトロンボーンを見るからに窮屈そうに吹く、長い首の女。
阿吽の呼吸で見事な連壇を披露する、つがいの獅子顔。
自慢の陰嚢で重低音を轟かす古狸。
三台のマリンバを、複数の尻尾で打ち分ける化け猫。
前の口でクラリネットを、後頭部の口でオーボエを吹く女性。
トランペットを吹いた勢いで、回転しながら飛んでいく一本足の傘。

色とりどりのパーカッション、胸躍るリズム、
個性と個性がぶつかりあって奏でられるハーモニー。
百鬼夜行のパレードに、花火が上がり、観客が沸き立ち、広場が興奮に包まれる。

「きゅい! きゅい! 体が勝手に!」

楽団のパワーに本能を刺激されたのか、知らない娘が中央に躍り出て、カクカクと全身を動かし始める。
それを合図に、周囲のギャラリーも曲にあわせ、思い思いに踊り出す。

陽気で奔放なゲルマニア人の血がそうさせるのか、
キュルケも颯爽と中央に飛び込み、邪魔なドレスの長い裾をナイフで切り裂くと
とても即興とは思えない激しいダンスを披露した。

タバサは何とか平静を装おうとしていたが
一団のメロディにあわせ、うずうずと手足を動かしている。

「……ねぇ アンタ これは夢…… なのよね?」

「し 知らねぇよ そんな…… でも 多分……」

「ただの夢なら 見知らぬ少女のエスコートをして下さってもいいんじゃない?」

「……俺 踊れねぇぞ」

言いながらも、少年はルイズの手を引き、一行の興奮の中へと加わった。




「おい手の目 何だこの騒がしいのは」

「ハハ 若旦那! 夢 夢 夢でさァ!」

巨大な牛鬼の背に乗って、サクソフォン片手に手の目が叫ぶ。

「あれも夢 これも夢 みィーんな夢でさァ!
 今宵はハチャメチャな夢の一夜だ
 踊る阿呆に見る阿呆 同じ夢なら踊らにゃソンソン!
 さァ若旦那 あっしとも一曲お相手しておくれよォ」



546零姫さまの使い魔 第四話G:2008/11/01(土) 22:25:13 ID:nBIBV/s+
「ン……」

朝の光をまぶたに感じ、ルイズが瞳を開けた。
何の変哲も無い天井、普段通りの自分の部屋。

漠然とした記憶をゆっくりと整理する。 
昨日は…… フリッグの舞踏会。ルイズは一晩中、壁の花と化していた。
にも拘らず、何故か体の節々が痛い。
それに、確かに昨日の宴で味わったはずの熱狂の残滓が、未だ胸中で疼いていた。

「ようやく起きなすったかい? いくら虚無の曜日だからってだらけ過ぎですぜ」

聞き覚えのある軽口に顔を傾ければ、
案の定、彼女の使い魔がティータイムに興じていた。

とっさに言葉を返そうとして、ルイズが彼女の格好に気づいた。

「アンタ…… その帽子 どうしたの?」

「ああ これかい?
 今回の探索の礼にって 学院長がくれたのさ
 ただの帽子と分かったからとは言え あの爺さん 中々太っ腹だねェ」

「それで嬉しくて 室内でも被ってるの?
 やあねぇ ……もしかして 寝るときも被ってるんじゃないでしょうね?」

「へへ……」

手の目が無邪気に笑う。
寝ぼけ眼のルイズには、彼女の笑顔に、見知らぬ大人の女性の面影がダブって見えた。

「おかげさまで い〜い夢見れましたぜ」
547零姫さまの使い魔:2008/11/01(土) 22:27:06 ID:nBIBV/s+
以上で投下終了です。
何か最終回っぽいですが、もうちょっとだけ続きます。

しかし、気が付いたら夢オチばかり書いている……
548名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 22:27:52 ID:md9nKN4F
いいね、こういう話大好き。
549名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 22:39:22 ID:HjRVUsWW
投下乙
この若旦那ってひょっとして夢幻魔実也?
550名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 22:43:17 ID:/Tft90/A
まさかの才人登場www
551名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 22:44:15 ID:G7nE9LY3
>>549
素敵なお兄様と呼べ
552名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 22:44:23 ID:/Wi9QXaP

正直言うと、このSSはスルーしてた
でも面白いねこれ
後で全部読み返してみよう
553名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 23:06:28 ID:B9wB8S32
>>523-524
とある同人誌のドラえもん最終回は、のび太とドラえもんの出会いが未来に重要な影響を与えるから黙認してるとかだったな。
紛いもんだがあの最終回は、小学館に毒された今のドラえもんよりよっぽど藤子テイストでちょっと感動したよ。
554:名無しさん@お腹いっぱい:2008/11/01(土) 23:16:41 ID:w2bu8l3o
行き成りですみませんがサモンナイトクラフトソード物語の続きは何処にありますか?ある場所が分かる人は教えてください
お願いします
555名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 23:23:37 ID:SkB4owsf
ご立派様がいるのになぜアリオク様がいない?
556名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 23:25:01 ID:gxlCttHt
>>555
自分で書けばいいのだわさ
557名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 23:47:37 ID:3vNMlx6O
>>555
そりゃあんたご立派様の二番煎じにするか
魔王だからルイズが毒されてゼロ魔ヘイトにするか
の二択しかないからじゃね?

しっかもつかさどってるの復讐だからなぁ
シリアスにやったらキュルケはじめ学院の生徒に復讐って流れしか思いつかん

ギャグにするにしてもご立派様ほど見た目がアレじゃないし
強いっちゃ強いけど基本物理反射に物理攻撃しかないから対メイジで考えると相性が悪い

ある意味腕の見せ所だとは思うけど

ハードルはえらく高いと思う
558名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 00:14:53 ID:N5w90p+F
「個人的な復讐」を司ってる悪魔かぁ。
ブリミル教やハルケギニアの貴族制を復讐対象にできれば、
大河ドラマ級の大作に仕立て上げることもできるかもしれんな。
559名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 00:17:23 ID:EYdb7RkI
>>558
つまり無能王withアリオッチですね、わかります
560名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 00:19:34 ID:fja4nd0N
革○ですね。
こちらへどうぞ。

ttp://www.jrcl.org/
561お前の使い魔 九話:2008/11/02(日) 00:48:45 ID:xv2Uytds
予約が無いようなら、55分から投下したいと思うッス
562名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 00:54:05 ID:tFYleksF
零姫様お疲れさんでござんした。
どうせなら手の目のお父っつァんにも一芸披露していただきたかったところでw

>>555
アリオクじゃなくてアリオーシュ様で書こうとしたことはあったんだが、
結末がグロしか思い当たらなかったから断念した次第だぜ
563お前の使い魔 九話:2008/11/02(日) 00:55:07 ID:xv2Uytds
 街へ出かけた日から、一週間後の虚無の曜日、わたしとダネットは朝から図書館に来ていた。
 どうにかダネットの住んでいた場所のヒントだけでも知りたかったのだが、結局は徒労で終わり、ダネットは若干沈んだ顔になっていた。

「ダネット、まだ本は沢山あるわ。だから……」

 『元気を出して。』言葉には出さなかったけれど、それを察してくれたのか、ダネットは表情を明るする。

「そうですね。まだまだ時間は沢山あるはずです。」

 わたしは、そんなダネットの期待に答えなくちゃいけないと心の中で思う。
 気分を変える為か、ダネットはわたしに質問してきた。

「そうだ。お前の術は、狙った場所を撃つことはできますか?」

 ダネットの考えが読めないまま、取り合えず返事をする。

「試したことはないわ。だって、失敗魔法が操れたとしても、誇れる事でもないしね。」

 それを聞いたダネットは、暫し何かを考えて言った。

「だったら、少し試したいことがあります。」


 夕食が終わり、日が暮れた頃、わたしとダネットは広場に来ていた。

「それで? 何を試すのよダネット」
「特訓です。」

 こいつはまた意味の判らない事を……。

「特訓って何のよ?」
「私のくる鈴斬とお前の爆発を合わせたら、結構な威力になると思うんです。」
「はあ? ちょっと、何でそんな事しなきゃいけないのよ?」
「えっと、特に意味はないんですけどね。えへへ。」

 そう言って笑った後、ダネットは何かを準備し始めた。
 どうも標的の棒のようだ。
 でも、急にそんな事を言われても困るし、第一、意味の無いことをやらされるのは真っ平御免である。
 なので、わたしが断ろうとダネットに声を掛けようとしたら、ダネットはわたしに背を向けたまま、ぽつりと呟く様に言った。
564お前の使い魔 九話:2008/11/02(日) 00:58:02 ID:xv2Uytds
「こうして身体を動かしてたら、あまり考え事もしなくなりますし。」

 その言葉で理解した。
 ダネットはダネットなりに悩んでいたのだ。
 急にこんな場所に呼ばれ、未だに自分の住んでいた場所の目星どころか、ヒントらしきものも見つからない。
 彼女は、こんな遠く離れているであろう場所で、一人ぼっちなのだ。

「しょうがないから付き合ってあげるわよ。でも、遅くなる前に止めるからね?」
「はい!! 頑張りましょう!!」

 こうして特訓とやらは開始された。が、それは思っても見ない事となった。

「凄いじゃないですか! これならキザ男ぐらいなら一瞬で首根っこへし折れますよ!!」
「いや、別にギーシュの首は折りたくないけど……確かに凄い威力ねこれ。」

 驚くことに、わたしとダネットの合体技とでも言うべき技はいい感じだった。
 わたしが最初に軽い爆発で目くらましをし、そこにダネットが突撃する。そして、ダネットが離れた瞬間にわたしがもう一発大きな爆発をお見舞いするという感じだ。
 単純ではあったが、ダネットの素早さに目くらましと止めも付いて、これって結構効果的なんじゃないだろうか?
 問題は、わたしの爆発に若干のムラがある点か。
 何度かやって、少しは制御できるようにはなったのだが、どうにもうまく定まらない。

「こういう時は、数をこなすしかありません! もういっちょいきますよお前!!」
「あ、待ってダネット。今日はこれで終わりにしない?」
「何を言って……って、もうこんな時間でしたか。」

 いつの間にか、特訓を始めた時から随分と時間は経ち、わたしも連続で失敗魔法を使ったことにより、結構疲れていた。
 そして、ダネットも納得し、じゃあこれで最後! という時に、招いてもいない客が二人現れた。

「ルイズ、あんた何やってんの?」
「何かの練習。」

 現れたのは、キュルケとタバサ。
 何でこんな時間に二人でふらふらと? と思ったが、よく考えてみれば、さっきからどっかんどっかんやっていたのだから、気になって見に来たという所だろう。

「タバサの言うとおり練習みたいなものよ。ほら、これで最後なんだから、邪魔しないであっち行ってて。」

 わたしが二人を部屋に戻るよう促すと、ダネットが横から割り込んできた。

「どうせなら乳でかとタバサにも見てもらいましょう。お前が凄いって所を見せてやるのです!」
565お前の使い魔 九話:2008/11/02(日) 00:59:58 ID:xv2Uytds
 凄いって言っても、失敗魔法なんだけどね。
 でもまあ、凄いと言われて嫌な気はしない。

「へー、何か面白そうじゃない。これで最後みたいだし、ここに来たついでに見て行きましょうよタバサ。」

 タバサはこくんと頷き、眼鏡を上げてこちらを見つめる。
 う、見られるとやり辛いわね。

「では行きますよお前!!」

 ええい! こうなったらヤケだ!
 杖を振り標的の前の地面を爆発させると、もうもうと砂煙が上がった。
 そこへダネットが飛び込んでいく。
 この時、横から見ているキュルケ達にはわからないかもしれないが、わたしには砂煙しか見えていない。
 ならばどうやって次の爆発のタイミングを計るのか?
 それは音だ。
 詠唱をしつつ、耳を澄ませ、ダネットの振るう短剣の小気味良いリズムを注意して聞き取る。
 大きな音、そして小さな音が二回。また大きな音、少し間を置いてまた大きな音が二回!

「食らいなさい!!」

 言葉と共に、ありったけの精神力を込めて杖を振り下ろす。
 同時に起きる、大きな爆発音。
 横で見ていたキュルケとタバサがあんぐり口を開けて見つめている。
 ふっふっふ。どうだ。これが『ゼロ』と呼ばれてたわたしの真の実力というものよ!!

「これは凄いわ……」

 ふっふっふ。キュルケめ、もっと褒めろ褒めろ。

「威力だけならライン……いや、トライアングル以上かも。」

 はっはっは。タバサ、そんなに褒めるな褒めるな。

「そうね。威力『だけ』ならね。」

 うむうむ。キュルケ、明日からはもっとわたしを……って、何か様子が変ね。
566お前の使い魔 九話:2008/11/02(日) 01:01:31 ID:xv2Uytds
「お前!! どこ狙ってるんですか!!」

 え? どういことよダネット? わたしはちゃんと標的に……あれ? 砂煙の向こうの棒は、ダネットの攻撃の後はあるけど、爆発を受けた様子は無い。
 という事は、わたしの失敗魔法はいずこへ?

「上よルイズ。あたし知ーらない。」
「ご愁傷様。」

 キュルケとタバサの言葉で、わたしの視線は上へと向かう。
 そこに見えたのは、もうもうと煙を上げる本塔の壁。
 確かあそこは……。

「ほ、宝物庫……」

 大変だ大変だ大変だ。
 あ、でもでも、宝物庫っていうぐらいだからきっと固形化の魔法とかかかってるはず!!

「ヒビ入ってますね。でも、ヒビだけならきっと許してくれますよ。お前、一緒に謝ってあげますから諦めましょう。」
「大丈夫な訳無いでしょ!! この能天気!! 馬鹿!!」
「どうして私が怒られるんですか!! お前の爆破が原因でしょう!!」
「う、うるさいっ!! こうなったらキュルケ! タバサ! あんた達も一緒に謝って……ん? どうしたのよキュルケ? 口パクパクさせて。下品よ?」

 キュルケだけじゃなく、タバサも様子がおかしい。あら? ダネットの様子も変ね。
 わたしの後ろの方を見て、何だか驚いている。
 後ろって本塔のある方よね。
 所で、さっきからうるさい地響きは何? 全く、こっちはそれどころじゃないってのに。ん? 地響き? 何で地響きがするのよ?

「る、ルイズ!! 後ろ!! 後ろよ!!」
「お前! 何をボサっとしてるんですか!! 走りなさい!!」
「危険。」

 えっとー、後ろ?
 振り向くとそこには、30メイルほどはあろうかというゴーレムの姿。

「な、な、な、何よこれ!!」
「踏み潰されたいんですかお前は!! ほら行きますよ!!」

 驚きで足がすくんでいたわたしを抱え、ダネットがキュルケ達の方へ駆け出す。
567お前の使い魔 九話:2008/11/02(日) 01:03:25 ID:xv2Uytds
「何だって学院にあんなのがいるのよ!?」
「あたしが知る訳無いでしょ!!」

 確かにキュルケの言う通り、わたし達に理由なんかわかる訳が無かった。
 だが、その目的が何なのかは、ゴーレムが宝物庫の壁を殴り始めたことで判る。

「もしかして、宝物庫を破ろうとしてる?」
「お前、それ凄くまずいんじゃないですか?」

 ダネット、確かにマズいわよ。でも、あんたが言うと全然緊迫した感じがしないのは何故?

「ともかく、このまま放って置く訳にはいかないか。」

 そう言ってキュルケが杖から『ファイヤーボール』を撃ち出す。
 しかし、それは表面に小さな焦げ目を付ける事しか出来なかった。
 キュルケはそれを見て舌打ちし、肩をすくめ「これはダメね。」と言う。

「だ、駄目かどうかはやってみないとわかんないでしょ!! ダネット!!」
「ええ! 行きますよお前!!」

 声を掛けただけでわたしの言葉を理解したのか、ダネットはわたしと一緒に駆け出そうとした。が、キュルケに制服の襟を掴まれてつんのめる。

「ケホッケホッ! な、何すんのよあんた!!」
「それはこっちの台詞よ! あんたもダネットも何する気よ!!」
「決まってるじゃないですか! あのデカブツの首根っこへし折ってやるんです!!」

 わたしに代わり、ダネットがキュルケに怒鳴るように言った。
 いい事言ったわダネット! たまにはあんたもやるじゃない!
 しかし、その言葉はキュルケの怒声であっさりかき消される。

「常識的に考えなさい! あんな奴の首をどうやって折るのよ! それ所か、下手したら足元でぺしゃんこにされちゃうぐらいわかるでしょ!!」

 う……確かにそれはそうだ。わたしにもダネットにもそれぐらいはわかる。
 だが、今や宝物庫の壁を破壊し、後は中身を運ぶだけとなったゴーレムに、破壊させる機会を与えてしまったのはわたしだ。
 隣のダネットも同じ気持ちだったらしく、納得がいかない表情でキュルケを見つめる。

「逃げる。」

 ぽつりと呟かれたタバサの一言でわたしとダネットは我に返り、ゴーレムの方を見る。
 どうやら、先程までは見えなかったローブを着たメイジらしき人影が、宝物庫から何かを持ち出してゴーレムの肩に乗って逃げる所のようだ。
568お前の使い魔 九話:2008/11/02(日) 01:05:28 ID:xv2Uytds
「もしかして、あれが『土くれのフーケ』かしら?」

 なす統べも無く、その逃走劇を見守ることしか出来ないわたし達の中で、キュルケが呟く。
 聞き覚えのない名前にわたしが首を傾げると、気付いたキュルケが『土くれのフーケ』について教えてくれた。
 何やら、最近街で噂になっている、錬金やゴーレムの召喚といった手で、土の魔法を使って盗みを働く盗賊だとか。この前行ったトリステインで噂を耳にしたらしい。

「その……泥んこ盗賊が犯人なんですね! 今日は逃がしましたが、必ず私が首根っこへし折ってやります!」
「盗賊って所以外、覚える気ないでしょダネット。」

 力強くこぶしを振り上げて宣言するダネットと、冷静にツッコミを入れるキュルケを横目に、今後の事や原因を作ってしまった事を思い出し、わたしは頭を抱えるのだった。


 翌日、学院の中は蜂の巣をつついたような大騒ぎとなった。
 キュルケの予想通り、犯人はやはり土くれのフーケであったらしく、証拠に宝物庫の壁にはでかでかと『破壊の剣、確かに領収しました。土くれのフーケ』と刻まれていた。
 宝物庫には学院長であるオールド・オスマンや教師達が集まり、事件の成り行きや当直の教師についてもめている。
 目撃者であるわたし達も呼ばれ、この盗賊への対策というより、罪の押し付け合いのような会議とも呼べない話し合いを見て、先程からイライラしっぱなしのダネットをなだめつつ、自分達が見ていた事件の流れを説明した。
 そんな実の無い話し合いは、息を切らせながら事件現場である宝物庫に飛び込んできた、学院長の秘書であるミス・ロングビルの一言で更に大混乱となる。

「フーケの居場所がわかりました!」

 ミス・ロングビルによると、馬で四時間ほど行った先にある、森の中の廃墟が土くれのフーケの隠れ家ではないかとの事だ。
 こうして、居場所の判明した土くれのフーケを討伐する為、オールド・オスマンが志願を募った。
 しかし、土くれのフーケの噂を聞いていたのか、教師達は誰一人として杖を掲げようともしない。
 情けない。これでも貴族なのかあなた達は。こんなもの、わたしが目指す貴族ではない。
 残念そうなオールド・オスマンの表情と、情けない教師達の姿に業を煮やしたわたしが、杖を上げようとしたその時、オールド・オスマンの目がわたしの所でぴたりと止まった。
 あれ? わたしまだ杖を上げてないんですけど?

「君は確か……」

 驚きの混じったオールド・オスマンの声に、元気良く答える聞きなれた声。

「私に任せなさいヒゲのじいさん! 泥んこ盗賊なんて、私にかかればちょちょいのちょいです!!」
「ヒゲのじいさんじゃなくて、学院長でしょうがこのダメット!! あんたって奴は……あんたって奴は……今日という今日は、目上の人に対する口の利き方徹底的に教育してあげるわ!!」
「お、お前! 急に何を……ハッ! もしやお前、盗賊とグ」
「それはもういいわああああっ!!!!」
569お前の使い魔 九話:2008/11/02(日) 01:06:11 ID:xv2Uytds
 ばっしんばっしんダネットを平手で叩くわたしを見て、学院長が「ふぅむ……」と言って考え込む。

「あ、あの、申し訳ありません学院長! この罰は後ほど必ず受けます。それと……土くれのフーケ討伐の志願者として、わたしが立候補しても宜しいでしょうか?」

 わたしが慌てて言うと、学院長は目元をピクンと震わせた。
 あーもう! 杖を掲げて、もっとかっこよく宣言するつもりだったのに!!
 しかも学院長、何だか怒ってる!? それとこれと言うのもダメット!! あんた……後で覚えときなさいよおお!!!!

「ミス・ヴァリエールと、その使い魔の他に志願者はいないかね?」

 わたしはハッとなって学院長を見た。
 そこにあったのは、怒りではなかった。
 そんな学院長の表情を見て察したのか、教師達が騒ぎ出す。
 しかし、学院長が「ならば君達が代わりに行くかね?」と聞くと、一様に黙り込んだ。
 その中で、他の教師達と黙りこんでいたミスタ・コルベールが驚いた声で言う。

「ツェルプストー! 君は生徒じゃないか!」

 わたしが振り向くと、キュルケが杖を掲げていた。

「ヴァリエールには負けられませんわ。それに、そこのダネットと一緒にいると、何をするかわかったもんじゃありませんもの。」

 うう、未だにあの特攻しようとした事を言うかこいつは。
 そんなキュルケの横にいたタバサも、同じように杖を掲げる。
 止めようとするキュルケの言葉に「心配」とだけ返し、わたしとダネットを見る。
 ううう、こいつ実はキュルケと同じぐらい性格悪いんじゃないだろうか。

「お前たち良く言いました! さあ眼鏡のおばさん! 私達を泥んこ盗賊の元へ案内しなさい!!」
「眼鏡のおばさんじゃなくてミス・ロングビルでしょ!! 第一、おばさんじゃなくて他に言い方があるでしょう!! 妙齢とか!!」

 ダネットとわたしの言葉に顔を硬直させ、全身を震わせたミス・ロングビルを横目で見つつ、学院長が遠慮がちに小さな声でわたしに言った。

「あー、ミス・ヴァリエール? あまりフォローになってないような気もするんじゃがのう……?」
570名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 01:08:13 ID:RJDHLQzK
支援
571お前の使い魔 九話:2008/11/02(日) 01:08:16 ID:xv2Uytds
以上で九話終了
次回はのほほんじゃなくてとか言ってたのにのほほんになっちゃいました。すんません。

それでは
572名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 01:09:36 ID:UxxsgNiz
妙齢=(女性の)歳が若いこと。
573お前の使い魔 九話:2008/11/02(日) 01:13:39 ID:xv2Uytds
>>570
せっかく支援もらったのに終わっちゃってもうほんとすんませんorz
>>572
/(^o^)\
自分のボキャブラリーの低さ反省してきます・・・・・・orz

ではでは
574名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 02:06:03 ID:+thFJmOE
>>513
某監督の嫁がアンチっぽい発言を
575名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 02:13:13 ID:x53qBLGp
投下乙です。
使い魔が討伐に乗り気なのって珍しい気がする。
576はぴねす!ぜろ(1レスのネタ):2008/11/02(日) 02:15:53 ID:5ixGl2CC
ルイズは使い魔召喚の呪文を唱えていた
宇宙のどこかに居る神聖で美しく、強力な使い魔が召喚されることを祈った

爆発の煙の中から出てきたのは人間、一人の少女だった

「人間だ!ゼロのルイズが人間を召喚したぞ!」「カワイイなぁ、それに凄いナイスバディだ!」
その少女は、この世界では魔法を使える貴族しか持っていない魔法の杖を持っていた、そして服装は
「あんた…まさか…」  「えぇ、魔法使いです♪」
その魔法使いの少女は意外とあっさり契約を受け入れ、ルイズの使い魔となった

ルイズの使い魔となった異世界の魔法少女は、メイドのシエスタを助けるために
ギーシュと決闘をすることとなる、彼の作ったゴーレムに囲まれた魔法の少女は
微笑みを絶やさないまま魔法の杖を振る、杖の先端が外れ、ゆっくりと漂い始めた

「…タマちゃん…ごー♪」
「はいな〜♪」


                      「はぴねす!」より高峰小雪召喚
577名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 04:02:01 ID:KN91pn2e
ダイレンジャーの大神龍を召喚!!
・・・やっぱトリステインごと壊滅かね?
578名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 04:33:46 ID:fja4nd0N
ローストビーフは基本的に低温160〜200度くらいで作った方が美味しい。
じっくり30〜40分くらいかけて焼き上げる。
焼き時間が6.下ごしらえが3くらいの割合で下ごしらえも重要。
基本的な作り方はググればいいけど、鉄則は冷蔵庫から出しておいて必ず常温にしておくこと。
塩は岩塩か、できればクレイジーソルトを使うのがベスト。

オーブンレンジがあるならそれを使えばいいけど、調理に当たってお勧めは100均で売ってるトースター網と皿のセット。
何キロにもなると難しいけど、2k程度ならこれで作れる。
網の下に、輪切りにしたタマネギ、ニンジンなんかの野菜を入れておくと、肉汁と塩っ気が合わさって美味しくできる。

焼けたらすぐにアルミホイルで3重くらいにして、常温で保存。
この時肉汁が出てくるから、先ほど使ったトースターの上にのせておくと汚さずにすむ。
579名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 04:45:14 ID:fja4nd0N
gobaku
580名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 05:07:43 ID:tFYleksF
虚無の曜日だからってこんな時間まで何やってんすかマルトーさん
581名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 05:49:30 ID:7p/uQdWw
マルトーさんを召喚しろということですね、わかります
おはようございました。本当なら、もうコンシューマでガクブル島が発売されて『いた』んですよね…
ちくしょう。高橋め…もしよろしければ7時より投下。
交響詩編「イザベラ7」!CV.中田譲治で再生して下さい。
とか何とか言ってみます。すいません。あんま寝てないからテンション高いです。
気が付けば20です。おめでとう私。
20.ブルーディスティニー

まだ泣いてる。でも私がどうにかできる訳ないもんね…
ごめんね。ごめんねシャル。お姉ちゃんどうしようもなくてごめんね。


とりあえず、話は終わった。このイザベラ姫の話が正しければ、の話だが。
まぁ、結果は日を見るより明らかだ。多分この娘は何も知らされてはいない。
大方あの無能王と、マニマルコとかいうのに利用されているんだろう。
杖無し魔法はマニマルコにか…マスター何か知ってるかね?さて――

「で、あんた」
「き、きゅい」

フーケはシルフィードの頭を一発殴る。

「い、痛いのね!暴力反対!」
「なら話し合いに応じてくれるかい?」
「う、しまったのね…」
『すまぬな。この者は粗忽者で』
「影におわす半分大いなるお方も大変なのねー」

人外同士で気が合うのか?とりあえずぶん殴りたくなる衝動を抑えて、
フーケは言った。

「さっきの、大いなる意志の敵ってなぁおだやかじゃないね?」
「けど、そんな感じがしたのね。ん〜あれなのね。こう…」

不明瞭すぎる。身振り手振りで、
どうにか伝えようとしているのだろうがまるで分からん。

「きゅい〜。こんな時にソルがいてくれたら楽なの。あの弟は頭が良いの」
「へぇ、弟がいるのかい?」
「そうなのね。妹にアルク。もう一人の弟がヴィヴって言うのね」

韻竜。数千年前突如現れ、すぐに消えた伝説の喋る竜である。
だが、それは彼らが人間から身を隠しただけに過ぎない。
本当のところ、彼らはたくさんいるし、
時たま、魔法を使い人に化け、平民として暮らしている物珍しいのもいるのだそうだ。
それと、機械人形を造ったりもするとの事だった。

「で、いないんだからあんたが喋ってくれないと困るんだけどね?」
「きゅい…お姉様ぁ」

今はキュルケから離れてイザベラと目線を合わせているものの、
タバサはどうイザベラと話すべきか迷っていた。
どうにも、今までの行いに罪悪感があって、
私に謝りたいらしいのだが、どうもおかしい。

今、確かに自身の使い使い魔が何故ああ思ったか、
タバサは少し分かる気がした。

「その、ね、シャル。あの日の約束…覚えてる?」
「…ごめんなさい」
「い、いいのよ。別に。覚えている方が無理な話だもの」
どうにも気まずい。辺りは蒼い死神とその妹分がどう動くかが、
怖くて怖くてたまらなかった。

「でも、どうしよう。この船を落とさないといけないのに…」
「あー…落ちたって事にするのはどうだい?」

イザベラはなるほど。といった風に頷き、空を飛んだ。

「それじゃ、その。ええと、またね?シャル」

気まずそうにイザベラは飛んで帰っていった。
ほっとする一同。タバサのお陰で助かった様な物である。

「それに引き替えあんたときたら…」
『ぬぅ…盾が割れた』

どうしよっかなーといった風で、
灰色のイージスを直そうともがいてみたが、
やがて飽きたのかノクターナルは空にぶん投げた。

『しかしリッチとはな。ナミラの仕業か?』
「へ?」

爆弾発言の後、タバサの意識が遠のくのはとても早かった。


「おい、お前たち、頭の前だ。挨拶しろ」

三人は空賊頭に呼ばれて、メイジらしき空賊の頭の前にいた。
一人異質な雰囲気の船員がいるような気もするが、
多分気のせいだ。

「王党派だと?何しに行くんだ。あいつらは明日にでも消えちまうよ」
「あんたらに言う事じゃないわ」

数瞬の間の後、頭は話題を変えた。

「貴族派に付く気は――」
「死んでも嫌よ」

頭は歌うように言おうとしたが、途中でルイズが強く否定する。
ハハハと、頭は笑った。

「トリステインの貴族は――」

そう言いながら頭は、頭の黒髪を取った。カツラだったらしい。
そして眼帯と付けひげを外すと、現れたのは凛々しい金髪の若者だった。

「私はアルビオン王立空軍大将、本国艦隊司令長官…ウェールズテューダーだ」

ほら見ろ。やはり当たっていたじゃないか。とマーティンはルイズに微笑んだ。
う、うっさいわね。わ、分かるわけないじゃない。とルイズは顔を赤くした。
ルイズは、姫より携わった密書についてウェールズに言った。

「なるほど…では、その密書とやらを」
「あの…本当に皇太子様でしょうか?」

うむ、と頷き、皇太子は言った
「確かに――さっきまでの顔を見せれば無理もない。だが、
今証明出来る物を持っていなくてね。ニューカッスル城まで運ぶから、
それを証拠と言う事にしてくれないか?」


「ノクターナルさん。大丈夫でしょうか」

現在、風のルビー保有者のティファニアが言った。
2年前、忘却の魔法の事をフォックスが聞いた時、
すぐに彼はオルゴールと指輪を宝物庫から盗み出した。
彼曰く、酷く手ぬるい。これなら楽勝だ。とのことだった。

タムリエルでは、ドワーフが造った鍵から始まる施錠技術と解錠技術。
元のドワーフがおらず、平民が入る事なぞあり得ないという、
慢心した思想による隙が、彼のような盗賊には丁度良かったのだ。

「私は死なぬ、何度でも蘇るさ。とか言っていましたから、
おそらく平気なんじゃないんですかー?」

むしろ死んでくれた方が、心身の健康方面でありがたい。
そんな不埒な事を考えながら、シエスタは答えた。

「ところで、ティファニアさん。やっぱりアレを使って皆さん帰ってくるんでしょうか?」
「緊急手段だから、そう使わないと思いますよ?アレって」

アレというのは船に備わっている魔法効果の事だ。
グレイ・フォックスがノクターナルに頼み込んで付呪させた物である。
何でも船の大きさから一回しか使えないらしい。もう一度使うには、
魂石なる物で、「マジカ」と言われる精神力の様な物を、補充しないといけないのだそうだ。

「まぁ、明日までは大丈夫でしょう。ティファニアさんも、子供達と遊んで来たらいかがですか?」

現在、モット伯とチュレンヌは子供達と元気いっぱいに遊んでいる。
腹ごなしの運動らしい。そうしますねーとテファは外へ駆けて行った。

「さて、後片付けとしますか」

メイド姿のシエスタはそう言って部屋の片付けを始めるのであった。
「おお、ご主人様。シロディールへ行ったかと思ったらお早いお帰りで」

シェオゴラスがいない間、シヴァリングアイルズを管理する執事、ハスキルは言った。

シヴァリングアイルズ。戦慄の島、ガクブル島等で知られるそこは、
狂気のデイドラ王子、「シェオゴラス」の領域である。

「え?前のご主人様が作った秘宝をお探しでございますか?
ああ、ワバジャック以外はネレヴァリン様が持っていらっしゃるようで――」

しかし――実際の所、「シェオゴラス」なる存在は最初からいなかった。
全ての世界の秩序をつかさどり、もううざったいことこの上ないデイドラ王、
「ジャガラク」にかけられた呪いこそが、シェオゴラスの正体だったのだ。

彼は、彼以外の全てのデイドラ王と敵対していると言っても良い。
彼はルールを作り、それを他者に課すのが大好きなのだ。
基本的に混沌な存在であるデイドラ達に、そんな事をしたらどうなるか。
つまり、うざいからアレにしよう。と言うノリで珍しく王達の意見が合い、
彼以外の殆ど全てのデイドラ王が頑張って創ってみたのが、
現在のシェオゴラスの領域「シヴァリングアイルズ」なのである。

流された噂に引っかかって、ジャガラクは計略にはまり、
狂気の王子シェオゴラスとなり、時たまジャガラクに戻っては、
不毛な争い『グレイマッチ』を繰り返す存在になったのだ。
この件には、全てを知るデイドラ王「ハルメアス・モラ」までもが、
絡んでいるとも言われるが、詳しくは分からない。

尚、現在ジャガラクの領域だった箇所は、オブリビオンの秩序をそれなりに管理している、
下級デイドラの頼れる「親方」ペライトの領域になっている。彼も秩序を担当してはいるが、
いわゆる親分肌で、義理デイドラ情に厚い秩序と言う奴だし、
基本的に空気を読むので問題はない。

「え、ご主人様。探しに行かれるので?」

すまない、あまり仕事しなくて。とシェオゴラスは言った。

「ああ、もちろん信者も使われるのですね。ですが、ええ。
『苦い慈悲の槍』ですか?確かにあの方が創られましたが」

場所はモロウウインドか。はたまたアカヴィリまで持って行ったか。
首の骨を鳴らしてシェオゴラスは領域を後にした。
マーティンには、最後の休暇を渡したつもりだったが――
どうにもまずい。『奴』が行ったみたいだ。そう思いながら。

「バイアズーラ!」

酷いじゃないですか!置いて行くなんてとでも言うかのように、
タマネギこと、闘技場からずっとついてくる熱狂的なファンが、
門を出たシェオゴラスの前に立っていた。

ああ、悪い悪い。と言って、手紙を渡す。
こいつを友に届けてくれるか?

「バイアズーラ!」

そう言って、シヴァリングアイルズの門へタマネギは入っていった。
敬虔なアズラの信者らしいが、何故生き返るのだろうか。
まぁ、知らなくて良い事もあるか。見送りながら英雄はそう思った。
『だ・か・ら!何で俺の領域をお前が管理してるんだよペライト!』
『うるさい。とにかく一旦口を閉じろジャガラク。そして二度と開くな』

オブリビオン最下層、『奈落』の名で知られるそこは、
キチンとしたペライトの領域である。ここに、
口論を繰り広げるデイドラ王が二神。
そこの管理者、緑色の肌に赤い目をした、
ハルケギニアの意味でのドラゴン『ペライト』と、
シェオゴラスの呪いから解き放たれ、
元に戻った白銀のゴーレムっぽい『ジャガラク』である。

「親方。こいつらどうしますか?」

ジャガラクの兵隊、「オーダー」と言われる機械兵を居住者の一人が指さした。
いつの間にやら、無限生成用のオベリスクまで立ててやがる。
管理が面倒なので、『元』彼の領域内にあるそれらはそのままになっているのだ。
だからジャガラクがいつでも呼び出せるのだが。
辺りが結晶化していて、居住者には大迷惑である。

『ジャガラク…これ壊して良いか?答えは聞いてないが』
『やめろ!全く。さっさとあの領域を俺に返せばそれで済む話だろうが』
『また暴れるだろ。ただのデイドラくらいで丁度良いんだよお前は』

オーダー召喚用のオベリスクを片手で粉砕しながらペライトは言った。
基本的にデイドラ王は、その領域内では無敵の力を得る事が出来る。
ただ時たま、狩りをつかさどる王子様の様に、
調子に乗りすぎて、本格的に負けてしまうのもいるそうだ。

狩人の王ハーシーンは最近、それでプライドがズタズタにされてあまり元気が無いらしい。
自分から攻め込んでは負けたーとか言って、笑いながら帰ってくるデイゴンを見習うべきだろう。
常習しろとは決して言わないが。

『だからやめろっつってんだろうが!!』
『黙れこの秩序馬鹿。いい加減にしないとお前ごと領域に変革をもたらすぞ?』

遠くから眺めていたが、おもしろそうだったのだろう。一番喧嘩を売ってはならない存在が言った。

『やれるもんならやってみな。今まで人間に勝てた試しが無いデイゴンさんよぉ?』

マーティンから受けた傷を癒すため、
危険な自分の領域より、比較的のどかなペライトの地で、
療養しているデイゴンがジャガラクとにらみ合った。
お供のドレモラ部隊は、自身の持つ連中でも最強のを引き連れている。
ジャガラクも、残っているオベリクスからオーダーを無限生成し始めた。

お互いににらみ合いが続き、やがてどちらかの手下が手を出した。
そのまま軽く戦争が起こる。ジャガラクはブチ切れながら。
デイゴンは豪快に笑いながら。どちらが手をだしたかは分かるだろう。
居住者はいい迷惑である。ため息をついて後、咆哮をあげながら、
ペライトが超広範囲魔法で馬鹿共全員を凍らせた。

こいつらかもしたい。タムリエルでは一般的な疾病をつかさどるペライトであった。
「どうすれば仲直りできるかなぁ…」

レキシントンに帰って後、イザベラはそれだけを考えていた。
下手に謝っても効果は無いだろうし。
自分だってされたら嫌な事をしたんだもの。じゃあ、どうすればいいのかな。

「あ、そうだ。シャルのお母さん病気だったよね。マニマルコに治してもらうようお願いすれば、
きっと前みたいになってくれるわ!」

これ名案!とばかりにイザベラははしゃぐ。
蠱の王は自分の身分を東の地にいる『治癒師』と偽っているのだ。
もちろん、死霊術の中に回復の技があるのは事実だし、やろうと思えば、
死にかけの人間を治療するのも不可能ではない。

ただ、それは魂を別の死体に入れたりだとか、人の魂を使って自身を強化したりするとかで、
確実に人間の道を外れた外法であるのは間違いない。

勘違いしないで欲しいが、メイジギルドはこれだけでなく、
一般的な外科手術まで黒魔術認定している。死霊術師でない存在まで、
それであるとして殺そうとする連中も存在しているのだ。
なので、メイジギルド側にもそれなりに危険な節はある。

「シャルは嬉しがるだろうな〜。この戦いが終わったら、マニマルコに相談してみよっと」

ルンルン気分で駆け出すイザベラ。クロムウェルに背中から抱きつき勢い余って押し倒したりする、
お転婆なガリアのお姫様であった。


投下終了。
これにて、青の三部作はおしまい。フォーリン・ラブってやつは出来るでしょうか。
しますとも。ラブコメさんならきっとする。
デイドラ王達の性格は一部というか全部と言うか、
多大に改変が掛かっております。私の解釈の仕方と言うことでご了承下さい。
イメージ変わった人ごめんなさいね。では、また次の投下まで。
メエルーンズ・デイゴン!!
589名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 08:58:25 ID:OZFJaCLA
乙です
しかし・・・オブリビオン側の侵食が多くてよくわからなくなってきた・・
590名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 09:04:11 ID:L0MFEQpl
>>589
読んでくれているのに、そんな事言わせて本当にごめんなさいね。
神様だけどどんなんよこいつら。というのの導入みたいな物として、
書いているつもりなのです。次から王城中心の話に戻しますので。

もちろん。ちゃんと世界観の説明を後からしていきますから。
591名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 10:01:59 ID:FJHO5aQR
>>582
投下乙です。
そして、二十歳おめでとう
592名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 10:34:29 ID:ITC4mviz
>>591
20話目まで達成したって意味じゃない?
593名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 10:38:36 ID:L0MFEQpl
>>591
勘違いさせてごめんなさい。
>>592
の方を言いたかったんです。
594名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 11:20:35 ID:5IWsg3Na
マーティン乙
障壁がないみたいだから王子達やりたい放題だな
アカトッシュが障壁をはるまではタムリエルもこんな感じだったんだろうな
595名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 12:17:45 ID:tePHgHC/
ここはアレだ、いっそ蟷螂召喚なんてどだろ?

「使い魔・・・ああ、なんて卑しい仕事なんだ・・・・」
イヤー!逃げてェ!ギーシュはともかくワルド逃げてェ!
596名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 12:35:09 ID:1S7IzGmQ
ゼロ魔にあう個性じゃない気が
597名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 12:49:27 ID:NPYcSW0L
気がついたらPart182か・・・

Part200で完結作品の人達が戻って来てお祭りにならないかな
598ルイズと無重力巫女さん:2008/11/02(日) 12:50:36 ID:6Hst5Ej0
どうも皆さん、こんにちわです。
話が大体できあがったので後十分後くらいに投稿を行いたいと思います。
もし出来るのであらば支援の方頼みます。
599名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 12:51:08 ID:O99dNQTA
>>595
めぐみさんだったらギーシュあたりが美味しくいただかれちゃいますよ(アレ的な意味で)。
600名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 12:55:48 ID:jenfA5eg
>>598
お久です、支援しますです
601ルイズと無重力巫女さん:2008/11/02(日) 13:00:15 ID:6Hst5Ej0
午前11時

――学院長室
普段ここは午前の時間帯なら学院長と秘書だけしかおらず非常に静かな場所だ。
しかし今はここの学院で勤めている教師達が全員部屋に集まっていた。
それぞれの手にはメイジとしての証とプライドである杖ではなく、ただの紙切れが握られていた。
それは椅子にドッシリと構えている学院長が前に出している右手で握っている紙の束である。
少し頭の髪が死にかけている中年の男性教師が前に出、老いているとはとても思えないガッシリとした学院長の手が握っている紙の束から一枚だけ引き抜く。
それを終えると彼は一歩下がり手に取った紙を確認する。紙の先端には赤いインクで「アタリ」と書かれていた。

それはいわゆる「くじ引き」というものである。
縁日やお祭りの時、一回三百円程度で箱の中に手を入れて紙を一枚取って確かめる。
紙に書かれた一等賞や三等賞で区別された大小様々な景品が貰えるのだ。
誰もがこれに挑戦し、望みの物が手に入らなくて泣いたり悔しがったりしただろう。

しかし…。

当たり紙を引いた男性教師は少し顔色が悪い。
そう、この赤マークの紙は正確には「当たり」ではない、むしろ「ハズレ」の部類だ。
手にはいるのは景品ではなく任務である。それもかなり危険な。
学院長はそんな彼を見ると重い腰を上げ、しっかりとした歩みで彼の傍の寄った。
そして動かない肩をぽんぽんと手で叩くとなんとも言えない笑顔でこういった。

「ミスタ・コルベール。わるいがミス・ロングビルと共にフーケ捜索へと向かってくれ。」
コルベールは学院長のオスマンの言葉にただただ頷く事だけしかできなかった。

602名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 13:04:33 ID:jenfA5eg
ゆっくり支援
603ルイズと無重力巫女さん:2008/11/02(日) 13:04:58 ID:6Hst5Ej0
学院を囲っている外壁を抜けた先にあるのは広大な自然。何百年も人が触れていない森だ。
大きい木が何本もそびえ立っている。ライカ欅では無いため伐採を免れているので樹齢は相当なものである。
学院が完成した後外壁に沿って散歩道が作られ生徒達は勉強などで疲れたときにはいつもお世話になっている。


――午後一時を少し過ぎた頃。
太陽が少し真上の時間帯。
地上にある巨大な木々が陽の光を受け更に成長を続けていく。
そんな森の上空を飛ぶ一匹と一人がいた。

一匹の方は蒼い鱗に大きい翼と巨大な体躯は立派である。
それはハルケギニアの幻獣でもトップクラスを誇る風竜であった。
この風竜もなかなかの大きさだがこれでもまだ小さい方。これからグングンと大きくなっていく。
そしてその背には三人の少女が乗っていた。三人とも首元に五芒星のエンブレムを付け貴族見習いであることを示す。

ピンクブロンドの少女の名はルイズ・F・ヴァリエール。
素直ではなく、ついつい手足が先に出てしまう。
得意な物は乗馬と編み物、しかし編み物だけは恐ろしいほどに駄目。

次に、紅い髪と黒い肌を持つ少女――というより女性はキュルケ。
他国からの留学であるためか入学当初は他の生徒達に嫌われていた。
実力は折り紙付き、実家はルイズとお隣同士。だけどいつもいがみ合っている。

最後に、三人の中でも特に身長が低くこの風竜の主であるタバサ。
まだ子供と見間違えてしまいそうなスタイルのうえ、サファイア色の髪は短めに切られており、それが一層彼女を子供っぽく見せている。
何事に対してもあまり動じず学校内の小さなハプニングには無関心。何を考えているのかよく判らない。



一人の方はというと風竜より少し先行して飛んでいた。
まだ少女とも呼べる小さい体、腰まで届く滑らかな黒髪と同じ色の瞳。
そして腋部分を大胆に露出している紅白の服はこういう年齢が好みの者なら堪らないだろう。
肌は少し黄色が掛かった白だが余程目をこらさなければ石けんのような白い肌に見えてしまう程綺麗だ。
そして背中には丁度彼女の身長と同じくらいある黒一色の筒を背負っていた。


彼女の名は博麗 霊夢
科学と文明により忘れ去られた幻想の世界から遙々魔法文明が闊歩する世界に召喚された博麗の巫女。
実力は恐らく前述の三人より遙か上であろう。多少他人に対して冷たいところもある。
今彼女は自分が本来居るべき場所へと帰る為、ある場所を目指していた。
604名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 13:05:35 ID:P4Onvy/Q
てゆーかマンティスはヤベェつか無理ww
まだ蜘蛛かヤクザか武闘家辺りが…あまり変わらないかw
605名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 13:07:02 ID:P4Onvy/Q
失礼しました。
霊夢支援
606ルイズと無重力巫女さん:2008/11/02(日) 13:09:21 ID:6Hst5Ej0

事の始まりは4時間前に遡る。
キュルケが暇つぶしにと、持ってきた宝の地図をもとに宝を探しへ行こう。というのが発端だった。
そこに記されていた財宝―もといマジックアイテム――の名前とその詳細を聞いた霊夢はそれに大きな興味を持った。
もしかしたらそれを使って自分は元の世界に帰れるかも…。と思いこの宝探しに乗る事となった。
そして霊夢を召喚したルイズも見送りという形で付き添うこととなった。
タバサはというと最初拒否したもののキュルケに色々と頼み込まれ結果、自分の使い魔と共にこれに参加した。
そんな事をしている内にもうすぐ十二時を示すところであった。
どうせなら昼食を食べてから行こう、とキュルケが提案した。

霊夢はいつものように一人で飛んで行きたかったのだが…
まぁお腹も空いているので昼食の後、宝探しに行くこととなった。

そんでもって昼食の後、今に至る。
シルフィードの乗り心地は中々良いもので普通に乗っていればまず落ちることはない。
ふとルイズが霊夢に話しかけた。
「ねぇレイム、さっきから気になってたけどその背負ってる物は何なの?」
「え?あぁこれの事、土産として持って帰るのよ。」
「中身はいいとして…それ、何処で拾ったの?」
「学院の端っこにあったゴミ捨て場みたいな所よ。」
「ゴミ捨て場ぁ…?」
ルイズは一瞬ポカンとなるが、すぐに納得したような顔になる。
「あぁ、あの物置ね。」
物置という言葉を聞いて霊夢が怪訝な顔をする。
「あそこって物置なの?どうりで綺麗な物ばかりだと思ったけど、置き方が乱雑だったわね。」
「……まぁあそこは誰も手を出さないからほぼゴミ捨て場よね〜。」
ルイズは苦笑しつつそう言った。
その数分後、一行はようやく目的地である小屋を見つけることとなった。

一方、森の中では一台の馬車が小屋を目指して走っていた。
手綱を握っている緑髪の女性は後ろを向き、荷台の方でため息をついている男性教師の方へと顔を向けた。
607名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 13:09:54 ID:dOtwkqJf
しえん
608名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 13:11:01 ID:ZMUWAzUk
モンドくんと死織さんのコンビ…いやなんでもない
そして霊夢しえん!
609名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 13:15:46 ID:YpJYXC+q
>「使い魔・・・ああ、なんて卑しい仕事なんだ・・・・」
それマンティスやない
蜘蛛や
610ルイズと無重力巫女さん:2008/11/02(日) 13:15:57 ID:6Hst5Ej0
「ふぅ〜…まさかこの私がフーケを捕まえに行くなんて。」
彼、コルベールは不安そうな顔で呟き、自分の足下に置いている杖の方へと目を向ける。
「大丈夫ですよミスタ・コルベール。もしもの時は私がなんとかしますから。」
彼女、学院長の秘書であるミス・ロングビルは男として少し情けない彼を励ましていた。



不運にもくじ引きによって選ばれたコルベールは秘書のロングビルと共にフーケ捕獲に向かっていた。
場所は既に彼女が特定してくれているので後はそこへ行き、盗まれた『破壊の杖』の確保と盗賊「土くれのフーケ」の捕獲を済ますだけだ。
それで済めばいいのだが最悪フーケとの戦闘になる。その為「火」系統のメイジであるコルベールは非常に頼もしい―――筈だった。
しかし、コルベールは客観的に見れば、とてもじゃないが「火」系統のメイジには見えない。
よく皆がイメージする、火の使い手は情熱的だったりやけに前向きだったりただの放火魔だったりetc…
つまり今目の前でため息ついて不安がっている彼のような性格の持ち主は少なく、どちらかというと荒々しい性格の奴らばかりである。
彼は決してメイジ、平民など関係なく魔法を使って攻撃することはしない、大抵は話し合いへと持ち込んでいく。

――彼には一つの夢があった。
――――それは系統魔法をもっと日用的にすることである。


火や風系統の強力なスペルは学院の生徒達には憧れの目で見られるほど恐ろしい力を持っている一方、その万能性は乏しいのだ。
風系統などは若干日用的なスペルがあるのはあるが火の系統は大半が攻撃スペルで占められている
それを嘆いたコルベールはもっと戦闘向きの系統魔法を一般の生活に役立てようと日夜研究している。
オスマンはそれを理解し、わざわざ彼専用の掘っ立て小屋を作ってくれたのだ。
一見変わり者のコルベールだが、生徒達には非常に人気で教師としても非常に優秀な部類に入る。
だからこそ彼は人を自らの魔法で傷つける事などはしない。それが祟って今のような柔らかい性格になってしまった。

なら何故こんな危険な任務についたのかだって?
コルベールは臆病に見えるが心は強い、武器なんかで脅されなければ決してその心を曲げない。
だからあの時もし強く反対していたらオスマンもそれを了承してくれただろう。
しかし…

――これ以上、グダグダ話していても埒があきません。
――――どうです?これからくじ引きをして、赤色のマークが付いた紙を引いた者が行くことに…――

なんせ、あのくじ引きを提案したのがコルベール自身なのだから。
自分でやったことは、自分で責任を持つしかないのだ。
611名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 13:16:45 ID:jenfA5eg
支援
612ルイズと無重力巫女さん:2008/11/02(日) 13:19:40 ID:6Hst5Ej0
「ミスタ・コルベール、そろそろ準備をしていてください。目的地に到着します。」
「あ、あぁ…。」
時間は午後の一時過ぎ、もうそろそろたどり着く頃合いである。
近づきすぎるのはかえって危険なのでここからは馬車を降り、徒歩で行くことになる。
コルベールは傍らに置いていた杖を手に取り、馬車の荷台から降りる。
あと二メイルくらい進めばひらけた場所へと出る、そこにポツンとたてられた小屋がある。
そこにフーケが潜伏していると…ロングビルは言っているのだが。
(まだここからだとよく見えないな…。)
馬車から降りたコルベールはその場から目をこらしてみるがよくわからない。
大木のせいでまるでその先にも森林が続いているように錯覚する。

「ここからじゃよく見えませんね。」
ふと同じく馬車から降り、いつの間にかコルベールの横にいたロングビルが呟く。
「どうやら少し接近するしかないようですね…。」
コルベールは口の中に溜まっていた唾をゴクリと音を出して飲み込むと杖を突き出し前進し始め、ロングビルもそれに続く。
時に近くの木に身を隠し、亀の歩みにも負けるような足でそれでもゆっくりと目指す。
そしてようやく小屋を見れる位置に来るとコルベールはサッと身を伏せると小屋の近くを見回し、目を丸くする。
小屋の出入り口に蒼い風竜がいるのだ、それもただの風竜ではない。

春の使い魔召喚の儀式。
コルベールどころかハルケギニアでは前例がほぼないハプニングのあった日。
そのとき一番物静かなミス・タバサが召喚した使い魔は彼の視線の先にいる風竜であった。

ロングビルもそれに気づき驚いた。
「あれはミス・タバサの使い魔じゃありませんこと?どうしてこんなところに…。」
「私にもわかりませんよ…多分、あそこで休んでいるのでしょう。」
コルベールはその他に思いついた嫌な考えを拒絶し、そういう事にしておいた。
よもや「生徒達が学院を抜け出して森の中をほっつき歩いている」という事は考えたくもない。
「とりあえずミス・ロングビルはそこで見張っていてください。私が小屋の中に…。」
ロングビルは冷や汗を流しながらもコクリ、と頷き。コルベールは茂みから出た。
ひらけた場所だけ妙に地面の土が乾燥していて、堅い感触が靴を通して足の裏に突き刺さる。
先ほどの森林地帯とは違いここは荒野といってもよく、隠れる場所は何処にも居ない。
やがて小屋まで後二メイルの所で休んでいた風竜がこちらに気づき、キュイ?…とその体からは想像できない可愛らしい鳴き声を上げてコルベールの方に顔を向けた。
とりあえずコルベールは今はその風竜を無視すると気配を殺し、更に近づこうとする。
613名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 13:20:07 ID:P4Onvy/Q
コッパゲール貧乏くじw支援
614名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 13:21:22 ID:jenfA5eg
コッパゲ大活躍フラグ支援
615ルイズと無重力巫女さん:2008/11/02(日) 13:25:42 ID:6Hst5Ej0
「あら、アンタも宝探しに来たの?」



右から鈴のような澄んだ少女の暢気な声が聞こえた。コルベールはその声に聞き覚えがあった。
コルベールは足を止め、小屋の右側に付いているガラスが外された窓に視線を向けた。そこには忘れたくても忘れられない姿が在った。

黒いロングヘアーに赤いリボン、紅白の服。ミス・ヴァリエールがあの召喚儀式の日に呼び出した博麗霊夢だ。窓から身を乗り出してこちらを見つめている。
良く見ると背中になにやら長い筒を背負っていたが今はその事は置いておこう。
コルベールは見知った相手であった事に安堵したのか今まで固まっていた顔の筋肉が緩み、なんとも情けない表情になった。
「……はぁ、あなたでしたかぁ。」
コルベールの言葉を聞き、霊夢は少し嫌な顔をする。
「何よその態度は…まぁ別に良いけど。」
少なくとも彼女は小屋の中にいる。これでフーケが小屋の中にいるという可能性はゼロになった。
敵がいないと言うことに余裕が出てきた彼は先ほどの言葉が霊夢の気に障ってしまったと思い、首を横に振った。
「いやいや、安心しただけですよ…。」
そう言いコルベールは小屋の方へと軽い足取りで近づいていく。
小屋まで後5サントという所でふとコルベールは足を止め、霊夢に質問をなげかけた。
「一つだけ聞いて良いですか?あなたは一人でここに…」
言い終える前に、今彼が最も想定したくない事態が起こった。。

「誰かいたのレイム?外から男の声が聞こえたんだけ―――ど?」
そう言いながら霊夢の後ろから姿を現したのは彼女を召喚した生徒、ルイズ・フランソワーズであった。
途端にコルベールの顔がサッと青を通り越して白くなった。そしてルイズの方も教師の姿を見てその場で体が硬直してしまった。
「?……どうしたのよ二人とも。」
何がなんだかよくわからない霊夢は振り返って愕然とした顔で硬直しているルイズを小突いた。
まるで氷の彫像のように固まったルイズからは何の反応も返ってこない。
「あら、あら…。ミスタ・コルベールじゃあ、ありませんこと…。」
続いて小屋の出入り口からキュルケが冷や汗を浮かべながら出てきた。
そしてその後を子猫のようにトテトテと付いてくるタバサもコ少しだけ目が丸くなっている。


その後、馬車の近くに待機していたミス・ロングビルが突然小屋の方から聞こえてきた怒声にビクッと体を震わていた。
616名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 13:27:50 ID:jenfA5eg
たまの授業サボりは心のオアシス支援
617ルイズと無重力巫女さん:2008/11/02(日) 13:35:02 ID:6Hst5Ej0
多数の支援有り難うございます。今回のお話はここで終わりです。
最近スレを見忘れていたので見てみると新しい作品がドシドシと増えてますね。
特にドラえもんの人は少しだけ懐かしい感じを思い出せたので嬉しいです。

まぁこれからも自分のペースを保って完結までルイズ達や霊夢を書いていきます。
ボムを持ったまま抱え落ち…みたいなことなどは絶対にするつもりはありません。
では、ここら辺で…また近いうちにあいましょう。
618名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 13:37:10 ID:P4Onvy/Q
霊夢の人乙です。
しかしなんという生殺し
次回にwktk。
619名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 13:41:18 ID:jenfA5eg
ハクレイの人乙でした、いいとこで切られたなあ……
でも続きはゆっくりでいいので頑張って下さい
620名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 14:05:53 ID:6ID5Uia/
横山光輝の『項羽と劉邦』から鐘離昧を召喚。
おマチさんやエレオノールに伝説の名言を・・・おや?誰かき来たようだ
621お前の使い魔 10話:2008/11/02(日) 14:11:11 ID:xv2Uytds
予約が無ければ15分から投下しまッス
622お前の使い魔 10話:2008/11/02(日) 14:15:20 ID:xv2Uytds
 わたし達はミス・ロングビルが手綱を握る馬車に乗り、土くれのフーケの隠れ家に向かっていた。
 その道中で、ミス・ロングビルがダネットに質問してきた。

「あの、ダネットさんで宜しかったでしょうか?」
「そうですけど? 何ですか眼鏡のお姉さん。」
「その耳……エルフではないのですよね?」

 あの後、何とかダネットに呼び方を変えさせることに成功し、二人は一見自然に話している。
 少−しだけミス・ロングビルのダネットを見る目が鋭いようなのは気のせいだと思いたい。

「えるふ? 前にも言われたんですが、そのえるふって何なんですか?」

 あ、そう言えばダネットに話してなかった。
 エルフを知らないダネットに驚いた顔をしたミス・ロングビルを横目に、ダネットにエルフについて説明する。
 ある程度理解したのか、ダネットは眉を吊り上げながら怒り始めた。

「そのえるふって奴は悪い奴なんですね。もし会ったら首根っこへし折ってやります!」

 ダネットの言葉に、ミス・ロングビルが一瞬だけ悲しそうな顔をした……気がする。

「でも、もしかしたらエルフにもいいエルフがいるのかもしれませんよ?」

 すぐに明るい表情になったミス・ロングビルがそんな事を言い出した。
 いいエルフ? そんなものいる訳が無い。
 わたしはそう考えていたが、ダネットは違ったようだ。

「そうかもしれませんね。じゃあ、えるふに会ったら、いいえるふか悪いえるふか聞いて、悪いえるふなら首根っこへし折ることにします。」

 その答えに何を思ったのか、ミス・ロングビルはちょっとだけ優しい顔になって言った。

「ええ。ぜひそうして下さい。」
623お前の使い魔 10話:2008/11/02(日) 14:17:58 ID:xv2Uytds
 馬車に揺られて数時間、わたし達はようやく目指す場所の近くまで来ていた。

「あそこがフーケの隠れ家と思われる小屋です。」

 ミス・ロングビルの言葉に、全員が身体に緊張を走らせる。
 そんな中、ダメットは弾かれた様に走り出そうとした。

「ちょ、ちょっとダネット! 待ちなさい! 落ち着きなさい!!」
「お前!! 邪魔をしないでください!! あそこに泥んこが」
「はいストーップ。」

 キュルケのげんこつがダネットの頭に打ち下ろされ、頭を抱えたダネットはようやく静かになる。

「うう、最近、私は叩かれてばかりのような気がします……」
「あんたが落ち着きがないから悪いんでしょ? さてと、じゃあ皆、どうする?」

 キュルケがぐるりと全員を見渡すと、ダネットは頭を押さえていた手を振り上げ、ぴょこぴょこ飛びながらまた騒ぎ出した。

「決まってます! 突撃あるのみです!!」
「はい却下。タバサ、何か案はある?」

 あっさり自分の案を却下されたダネットが、唸りながらタバサを睨み付ける。
 そんなダネットの視線を流し、タバサは簡潔に作戦を説明した。
 作戦の内容はいたって簡単。
 誰かが偵察兼、囮となって小屋を覗き、中を確認する。
 中にフーケがいるようならおびき出し、もし留守のようなら他の誰かと一緒に小屋の中を調べる。

「じゃあ、偵察と囮役だけど……」
「はい! はい! 私やります!!」

 そんな、キュルケの言葉に元気良く返事をするダネットを見て、一同が顔を合わせる。
 表情は全員が『不安だ』というもので、取り合えず別の誰かを立てようという結論に至った。 

「じゃあ、いざって時は風竜で逃げれそうなタバサっていう事で。」

 キュルケの提案に全員が頷き、わたしはダネットと報告待ちの役になる。

「じゃあダネット、わたしから離れないで……っていないし!!」

 忽然と消えたダネットを探して、わたしがキョロキョロと辺りを見渡すと、タバサがちょんちょんとわたしをつついて、小屋の方を指差しながら言った。

「あっち。」

 嫌な予感がして小屋を見ると、いつの間にか小屋まで移動していたダネットがぶんぶん手を振りながら、わたしに向かって大声で叫んだ。

「お前ー! 中には誰もいませんよー!!」
624名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 14:19:07 ID:fYHYwUlc
中に誰もいないじゃないですか支援
625お前の使い魔 10話:2008/11/02(日) 14:21:24 ID:xv2Uytds
 もうやだこの使い魔……。
 キュルケも同じ思いだったのか、溜め息を付き、疲れた声でわたしに言った。

「まあ結果オーライって事で。ルイズ、タバサと一緒に様子を見てきてくれる? 今の声でフーケに気付かれた可能性もあるから、くれぐれも油断しないでね?」

 その言葉にわたしとタバサは頷き、小屋の方へと移動する。
 どうやらキュルケは小屋の近くを見張り、ミス・ロングビルは周囲にフーケがいないか捜索するつもりのようだ。
 移動の途中、わたしはタバサに気になった事を聞いてみる。

「キュルケの性格だと、わたしとタバサじゃなくて、自分とタバサで小屋に行きそうなもんだけど、珍しいわね。」

 するとタバサは、小屋の方で今も元気に手を振るダネットを指差し「あの使い魔を止められるのはあなただけ。」と言った。
 確かに言わんとすることはわかる。わかるけど、いつからわたしは猛獣使いになったんだろう?
 そんな事を考えていると、いつの間にやら小屋の前まで来ていた。

「確かに中には誰もいないわね。」
「だから誰もいないと言ったでしょう。じゃあ行きますよ。」

 ダネットはそう言って、何の注意も払わず小屋のドアをがちゃりと開けた。

「ば、バカ!! 罠があったらどうするのよ!!」
「はっ!! 言われてみればそうですね。お前、頭いいです。」

 ああもう好きにしてちょうだい。
 運がいい事に罠は無かったものの、幾分疲れた表情で小屋の中をわたし達三人が探索すると、タバサが小屋の隅で錆びた長剣を見つけた。

「何これ? まさかこれが『破壊の剣』?」

 その剣は鞘に入れられており、試しにタバサが抜いてみると、錆だらけの片刃があらわになる。

「何ですかこのボロ剣は?」
「わかんないわよ。でも、取り合えずもって行きましょうか。」

 わたしが言って、その剣をタバサから受け取り、小屋のドアをダネットが開けた。その瞬間。

「みんな!! 早く逃げなさい!!」

 キュルケの切羽詰った声が聞こえた。
626お前の使い魔 10話:2008/11/02(日) 14:24:00 ID:xv2Uytds
 そこからはまるで時間が緩やかになったように、ゆっくりと壊れる小屋と、石で出来た巨大な腕と、わたしとタバサに飛びつくダネットが見えた。
 遅れて大きな音が聞こえた時、わたしの顔に何かが滴り落ちてきた。
 それが何なのかわからず、目をつぶったまま拭ってみると、ソレは生暖かく、ぬるりとし、続いて嫌な臭いがする。
 この臭い、いつか嗅いだ事がある。
 確か、小さな頃に魔法を失敗させ、大怪我をしてしまった時だ。
 思い出したくない。この臭いが何の匂いなのか。誰がコレを流しているか。
 その思いを杞憂だと知る為に、わたしはゆっくりと目を開いた。
 そこにあったのは赤い色。
 わたしとタバサを庇い、代わりに自分の緑の髪を血に塗らしたダネットの姿。

「ちょっと……ダネット? あんた何やってんのよ……?」

 わたしの質問にダネットは答えない。

「ダネット!? ダネット!?」

 ふざけるな。こんな事があってたまるか。
 ついさっきまでダネットは笑っていた。
 馬鹿な事をやって、わたし達が頭を抱え、反省しないダネットがまた馬鹿をやる。
 きっとこのフーケから破壊の剣を奪取するという任務も、ドタバタ騒ぎながら笑って怒って騒いで終わり。
 そうよねダネット? ねえダネット?

「答えなさいよ……返事しなさいよダネット……」

 ダネットの頭からは、今も真っ赤な血が流れて、ダネットは答えなくて。
 ぼんやりと顔を上げると、そこにはゴーレムの大きな手があって。
 向こうには真っ青な顔で叫ぶキュルケがいて。
 隣には、わたしとダネットを逃がそうとしているタバサがいて。

「あ……ああああ……あああああっ!!!!」

 誰? この獣のような声を出しているのは?

「うあ……ああああああああああっ!!!!」

 静かにしてよ。ダネットが目を覚ましちゃうじゃない。いや、目を覚まさせないとね。うん。

「あああああああああああああああああああっ!!!!!!!!」

 あ、叫んでるのわたしだ。
 それを理解した時、わたしの横でガレキの下敷きになっていた何かが……目を覚ました。

「カカ……カカカカカカ!!!!」

 その耳障りな声が聞こえた瞬間、わたしは暗い場所にいた。
627お前の使い魔 10話:2008/11/02(日) 14:27:05 ID:xv2Uytds
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 ここどこ?

『よお人間。』

 あんた誰?

『そんな事はどーでもいい。それよりお前、助かりたいか?』

 助かりたい? 何から?

『チッ! じゃあ質問を変えてやるよ。お前、あのセプー雌の敵を討ちてえか?』

 セプー雌? セプーって何だっけ? ああ、ダネットの事か。

『そうそいつだ。お前、敵を取りてえだろ?』

 敵……そうだ、ダネットはあのゴーレムに……。

「…………たい。」
『ああ? 聞こえねえよ。ハッキリ言えよ弱っちいに・ん・げ・ん』
「敵を……敵を討ちたい。いえ、殺してやる!! 許さない!! 絶対に許さない!!」
『上等だ人間。じゃあお前の力をちょーっとだけ分けてくれよ。』
「力? 力って何? わたしにはそんなものは無いわ。」
『あるじゃねえか。上等な力がよぉ。ソレは生かすことも殺すことも出来る力だぜ?』
「信じられない……でも、もしそんなモノがわたしにあるというのなら……」
『ああ。言ってみな……人間。いや、相棒よぉ……』
「力を貸すわ。だから、あいつをぶっ殺しなさい!!」
『任せな。ああそうだ、お前は大人しく見てな。終わったら……きっとスッキリしてるはずだからよ……クク……』

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
628お前の使い魔 10話:2008/11/02(日) 14:29:59 ID:xv2Uytds
 闇が晴れ、目の前には血で汚れたセプー雌。
 邪魔なので横に放り投げる。
 横を見ると、青い髪のゴミむしが、呆然とした顔でこちらを見ている。安心して。あのデカブツを壊したら、お前も殺してあげる。

「こいつはいい。よく馴染むぜ相棒……クク……」

 思わず口から笑みと言葉がこぼれる。
 取りあえずはっと、そうだ。この目の前のデカい石の塊をブッ壊さないとね。

「よっと。やっぱコレがないとねわたしは。」

 そう言って、先程まで忌々しい錆びた剣だった『黒い両刃の剣』を手に取る。

「それじゃあ始めましょうか?」

 跳ねるようにわたしは身体を前にやり、邪魔な石の腕を数回斬り付ける。
 そんなわたしの姿を見て、赤い髪のゴミむしが叫ぶ。

「ルイズ!! 何やって……って……あんた……誰よ?」

 失礼なゴミむしだ。
 わたしは『赤い』髪をかき上げ、優雅に答えてやる。

「誰って、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール様に決まってるじゃない?」

 それを聞いた赤髪のゴミむしは、真っ青な顔になり、唇を震わせる。何となくムカついたから、コイツ先に殺しちゃおうかしら?
 おっといけない。先にこっちを壊しとかないとね。

「ゴーレムの後に相手してあげる。せいぜい逃げなさい? 逃げても無駄だけどね。あはっ。」

 そうそう。その目を見開いた表情のゴミむしが最高なのよね。っと、油断してたらゴーレムが再生しちゃってるじゃない。いけないいけない。

「何回耐えられるか試してあげるわ。」

 そこそこの速さでわたしを狙いにきた腕を斬り飛ばす。あら? 案外脆いのね。
 じゃあ足はどうかしら?あら、こっちも脆い。

「じゃあ次は……うん、胴体ね。」

 足を斬られた衝撃で、すっかりトロくなったゴーレムの懐に飛び込んで、何度も斬りつける。
 他と同じように脆いけれど、広くて分厚い分斬り応えがあるわ。なかなかいい感じじゃない。

「あは、あははは、あははははははははは!!!!」

 いけないいけない。思わず笑ってしまった。貴族ともあろうものが下品だったわ。よし、胴体はこんなものかしらね。
 ん? 少しずつ再生してるのコイツ?
 じゃあ、一気にブッ壊しちゃいましょう。そうしましょう。
629名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 14:32:38 ID:wOoQAs1Q
支援ッ
630お前の使い魔 10話:2008/11/02(日) 14:33:01 ID:xv2Uytds
「ちょっと距離を取って……よし、この辺りね。」

 足場を固め、全身に力を溜める。

「砕け散れ。」

 一気に距離を詰め、斜めに斬りつけ、続いて上段へ。
 貫いて斬りつけ、また貫く。
 力を込めて斬り付けるというよりも吹き飛ばすような斬撃を加た後、溜め込んでいた力を剣に流し込む。

「もっと……もっとチカラを引き出しなさい!」

 剣に流れ込んだ力は黒い光となり、溢れ出し、振るった瞬間に標的へと流れ込む。
 一際大きな光が標的を包んだ瞬間、また距離を詰め、今度は先程とは比べ物にならない量の斬撃を叩き込み、貫き、削り取る。
 最後に吹き飛ばした後、この黒い剣のもう一つの姿を思い出させる。
 それは真っ赤な刃を持つ巨大な鎌。
 今まで、何匹もゴミむし共を殺してきた力の塊。
 それを振りかぶり、最早、元の形がわからなくなってしまった標的に向かって振り下ろす。

「邪魔なのよあんた。」

 その声が先か、斬りつけたのが先か、標的が崩れ落ちたのが先か。
 まあどっちでもいっか。

「ね? そう思うでしょ?」

 土の山と化したゴーレムを背に、いつの間にか二匹で寄り添っていた赤髪と青髪のゴミむしに尋ねてみる。
 今や赤髪の方はぶるぶると震え、怯えきっている。
 青髪の方は、意外にもわたしを睨みつけ、どうにか打開策を見つけようとしているのか、眉間に皴を寄せて何かを考えているようだ。
 よし、青髪の方は楽しめそうだから、赤髪にしておこう。デザートは最後にってね。
 一歩わたしが近寄ると、二匹はビクンと身体を震わせた。

「み、皆さんご無事でしたか!?」

 誰よ? わたしの楽しみを邪魔する馬鹿は?

「み、ミス・ロングビル!! 逃げて!! 早く!!」

 赤髪の叫びが聞こえる。だけど残念、もう遅いのよね。
 わたしにとっては軽く近づいただけだけれど、この緑の髪のゴミむしには早すぎたみたい。
631お前の使い魔 10話:2008/11/02(日) 14:36:00 ID:xv2Uytds
「ヒッ!! み、ミス・ヴァリエール……?」

 喉もとの剣が見えたのか、怯えた表情をする緑髪。よし、殺っちゃおう。

「クッ!! させないよ!!」

 おや? この緑髪のゴミむし、この距離から飛びのいた?
 ゴミむしにしちゃあなかなかやるじゃない。楽しめそうだ。

「どこで気付いたんだい?」

 緑髪の言っている事の意味がわからず、首を傾げて聞いてみる。

「何をよ? あんたを殺そうとしてるってとこ? もしそうなら今さっきかしら?」
「ふ、ふざけるんじゃないよ! チッ!! ガキかと思って油断したわ。」

 あー、そう言えば、ここに来る前に誰かが何か言ってたような気がするわ。確かアレでしょ? アレを捕まえにとか何とか。

「あー、土くれのなんちゃらだっけ? あんたもしかしてそれ?」
「なっ!! お前、気付かずにあたしを……? クソッ! 予定外もいいとこだよ!!」
「あー、わかったわかった。取り合えずさ」

 面倒くさい奴だなこのゴミむし。弱っちいのにウゼエ。

「死んでよ?」
「なっ!!」

 逃げようとした緑髪に一瞬で近付いて首を掴み、ギリギリと持ち上げる。ミシミシ音をたてる首の骨の音が心地いい。

「かっ……!! ゲッ!!」

 あはは。蛙みたい。あ、でもわたしって蛙嫌いなのよね。

「あら? 気絶しちゃったの? つまんないわね。」

 余計な事を考えすぎたのか、緑髪は手足をだらりとし、目には光が無かった。
632お前の使い魔 10話:2008/11/02(日) 14:37:02 ID:xv2Uytds
「じゃあ一思いに」
「やめなさい!!」

 また邪魔? いい加減にしてよね。温厚なわたしでも流石に怒るわよ?

「お前、やめなさい。」
「何よ? 死に掛けのセプー雌じゃない。」

 わたしを止めたのは、最初に放り投げた血だらけのセプー雌だった。なんだ、死んでなかったんだ。ラッキー。
 死に掛けのセプー雌は、わたしの言葉に驚いたのか、目を丸くしたが、すぐ表情を硬くして言葉を続けた。

「お前、その剣をいつどこで手に入れたんですか?」
「剣? 剣ってこれ? いつってさっきよ。ほら、あの錆びててきったない剣あったでしょ? あれの中に閉じ込められてたのよ。」

 わたしが手に持っていた黒い剣をひょいと上げると、セプー雌の目がまた驚きで丸くなる。
 さっきから何だというんだこのセプー雌は。っつうか、何だか見てるとイライラしてくる。ウゼエ。

「その剣を仕舞いなさい。」
「はあ? お前が何でわたしに命令するの?」

 あーもうウゼエ。こいつ先に殺そう。
 ほーら、ふらふらしてるから一瞬で近づけた。後は剣でバッサリと。あれ? バッサリ……あれえ?

「何で動かないのよ! ほら! さっさとこのセプー雌殺すのよ!!」
「お前……なのですか?」
「あぁ!? 何よそれ!? 意味わかんないわよ!!」
「聞きなさい!! お前の中のお前、殺したら……駄目です。」
「うるせえ! 俺様に命令すんな!!」
「駄目です! もう……もう絶対に殺させません!! 目を覚ましなさいお前!! いえ、ルイズ!!」
「う…うるせえ!! ウゼエ!! ウゼエ!!」
「ルイズ!!」
「うあ……あ……」

 こんなセプー雌一匹にわたしは何で?
 そこまで考えた後、わたしの意識はゆっくりと闇に落ちていった。
633お前の使い魔:2008/11/02(日) 14:42:18 ID:+GV87VVA
ここで規制ッスかorz
取りあえず携帯で

以上で10話終了

という訳でデルフ?登場です
ルイズの使った技はまあアレです。文章にするの難しかったッス
あと支援ありがとでした

それでは
634名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 14:48:18 ID:mrlB8bz0
乙でしたー。
しかし『これ』がデルフ? だとしたら……本来あるべきあの愛嬌のあるデルフリンガーが最初から『これ』だったと言うことに。つまり、ブリミル時代の『敵』の正体は……これは詮索のし過ぎか。
635名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 14:48:23 ID:lpMAf5eA
あれ、なんでまたギグ黒くなっちゃってんスか?

とにかくGJ!
636ウルトラ5番目の使い魔:2008/11/02(日) 15:04:16 ID:EsX4O/1B
こんにちは、第20話が完成したのですが、重さが前回並の大きさなんですが、
このスレの残り容量で大丈夫でしょうか、それとも次スレを待ったほうがいいでしょうか?
637名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 15:11:53 ID:EUNqW9Nu
次スレの方がいいと思います。

このペースなら遅くとも今夜には移行するでしょうし。
638ウルトラ5番目の使い魔:2008/11/02(日) 15:19:37 ID:EsX4O/1B
そうですか、ですが少々時間的に余裕がなく、できれば16時までには投下したいのですが、次スレの作成どなたか願えないでしょうか。
無理なようでしたら明日以降に持ち越します。
639名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 15:24:07 ID:xUaJKwk/
>>638
甘えるな、自分でやれ
640名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 15:30:27 ID:ULWtFDGe
>>639
何威張ってんだあんた
641名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 15:32:13 ID:EUNqW9Nu
>>638
立てたいところですが、まだ容量的に早いので無理ですね。

今日は間が悪かったと言うことでまた次の機会にお願いいたします。
642名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 15:32:43 ID:rp3Wk8Td
残り容量が40KB弱。
前回と同程度なら30KB程度だ、このスレ内でいける。
次スレは投下中に俺が立てておこう。
643名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 15:33:06 ID:i4zr5t8Q
・次スレは>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
644名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 15:33:45 ID:P4Onvy/Q
>>638

スマソ。なんとかしてやりたいんだが…携帯なんだ。
誰か頼む。
645名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 15:36:01 ID:rp3Wk8Td
前回の投稿の総容量を調べてるうちに投下中止しちゃってるし……orz
646名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 15:36:35 ID:xUaJKwk/
>>640
俺は偉いわけではないが、相手が下すぎる
規制されているなどの理由も告げず他人に次スレ立てろとか、>>638は頭が足りないのか?
647名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 15:37:27 ID:mkmkRail
>>646
偉くはないが偉そうだな
648名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 15:41:20 ID:yvvqI41B
作家さんがテンプレ読んでないのはわかった
649名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 15:41:43 ID:ULWtFDGe
>>646
あなたがそこまで偉そうな態度で、しかも怒っているポイントが的を外れているのではなぁ・・・
650名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 15:43:20 ID:jfw/8YQL
スレ立ててくる
651名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 15:44:16 ID:rp3Wk8Td
>>650
まだ立てなくていい。
652名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 15:45:23 ID:jfw/8YQL
了解。

後一本くらいの投下分くらいはありそうだな
653名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 15:45:23 ID:yvvqI41B
>>650
ルール破らないでね、ここで次スレ立てたら5番目の人の立場ないよ?
654ウルトラ5番目の使い魔:2008/11/02(日) 15:46:32 ID:EsX4O/1B
了解しました。
スレは立てた経験がないのでつい頼ってしまいました、申し訳ありません。

では、15:50より投下開始します。
前中編と合わせて、今回が後編になります。
655名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 15:48:10 ID:ULWtFDGe
では、支援の準備
スレ使い切ったなら残りは改めて次スレ以降でお願いします
656名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 15:48:21 ID:xUaJKwk/
支援
657名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 15:51:33 ID:xrPPpB24
イチローレーザービーム支援
658ウルトラ5番目の使い魔 第20話 (1/10):2008/11/02(日) 15:52:11 ID:EsX4O/1B
 第20話
 遠い星から来たお父さん (後編)
 
 エフェクト宇宙人 ミラクル星人
 緑色宇宙人 テロリスト星人 登場!
 
 
「ウルトラマンA……相変わらずいいタイミングで来てくれるわね」
「……でも、かっこいい」
 ふたつの月を背にして空に立つエースの姿は、銀色の体に金色の光をまとい、神秘的な
美しさすら持って、雄々しくテロリスト星人を見下ろしている。
 キュルケとタバサは、へし折られた木の影から、その勇姿を見て顔をほころばせていた。

 さらに、エースの背にかばわれて、ロングビルとアイ達も、驚きと喜びに目を輝かせていた。
「ウルトラマンA……」
「エース、おじさん! エースが、ウルトラマンが来てくれたよ!」
「ウルトラマンA……私達のために」
 
 エースは、シルフィードが安全なところまで逃げ延びたのを見届けると、テロリスト星人の
目の前に着地した。
「シュワッ!!」
 油断なく構えを取るエースに、テロリスト星人も動揺しながら剣を構えなおす。
「うぬぬ、どいつもこいつも邪魔をしおって、こうなったら貴様もいっしょに倒してくれるわ!!」
 猛然とテロリストソードを振りかざして向かってくるテロリスト星人を、エースは真正面から迎え撃った。
「ダァッ!!」
 テロリストソードが振り下ろされるより早く、エースの右ストレートパンチが星人の顔面にめり込み、
そのまま紙切れのように吹き飛ばす。
「ハァッ!!」
 よろめいたテロリスト星人に、エースは容赦なく、怒涛の連続攻撃を叩き込む!!
「シャッ!!」
「グハッ!」
 エースの正拳突きが腹を打つ。
「デヤッ! ハッ!」
 チョップの連打が星人の顔面をしたたかに打ち付ける。
「トオーッ!!」
 そしてふらついたところに猛烈な勢いのジャンプキックが打ち込まれ、星人はひとたまりも無く
吹き飛ばされた。
 もちろんそれで終わりではない。起き上がってきたところでさらなる連撃が始まった。
 パンチ、キック、膝蹴り、投げ技、テロリスト星人は切りかえす余裕もない。
659ウルトラ5番目の使い魔 第20話 (2/10):2008/11/02(日) 15:53:22 ID:EsX4O/1B
「すごい、なんて強さなの」
 今回初めてエースの戦いぶりを見るロングビルも、自分の土ゴーレムなどとは比較にもならない
別次元の戦いに瞬きするのも忘れて見入った。
 そのとき、エースの背負い投げがテロリスト星人に炸裂、星人は地面に叩きつけられると、
5回も森の中を転がされて、ようやく止まった。
「く、なぜだ……なぜこうも、食らえ!!」
 まるで歯が立たないことに愕然としたテロリスト星人は、苦し紛れにテロファイヤーをエースに
向かって放った。弾丸は、エースの体に突き刺さり、爆発を起こし、キュルケ達は一瞬顔を
しかめたが、エースは身じろぎもせずに仁王立ちでそれを振り払ってしまった。
「な……」
 驚愕するテロリスト星人だが、同時にそれを見守っていたキュルケ達も驚いていた。
「き、今日のエースはいつにも増してすごいわね。なんというか、闘志がみなぎってるというか」
 先の才人と星人の戦いを見て、キュルケはテロリスト星人は決して弱くなく、むしろ武器を
持っている分だけエースより有利だと思っていたが、エースはそんなハンディなどものともしていない。
「エースも、怒ってる……」
 タバサがぽつりとそう言った。
 そう、怒りを燃やしているのは何も才人達ばかりではない。エースも、非道なテロリスト星人に
対して怒っていた。善良なミラクル星人をいたぶり、小さな子供を泣かせ、これで怒らずにいつ
怒れというか、悪に対して怒らずに、人はどうして正義を貫けるか。
 
「こいつだけは、許さん!!」
 
 それは、才人の意思であり、ルイズの心であり、エースの思いでもあった。
 もちろん、ただ怒るだけでは駄目だ。しかし、怒りを力に変えて、なお冷静に戦う術も、また存在する。
 二人の思いがエースに伝わり、エースはその思いを力に変えて戦う。
 テロリスト星人は、自らの非道によって自らの寿命を縮めていたが、いまさら実力差に気づいた
ところでエースは容赦はしない。
「デャッ!」
 エースが両手を高く掲げると、その手が雷光のような超高温のエネルギーに包まれた。
『フラッシュハンド!!』
 強化されたエースのパンチとチョップが嵐のようにテロリスト星人に叩き込まれる。
 星人は全身を瞬く間にボロボロにされて倒れ掛かるが、エースの攻撃はなおもやまない。
 今度は、高圧電流を帯びさせたエースのキックが、スパークを起こしながら星人の腹に
打ち込まれた。
『電撃キック!!』
 蹴られた場所からすさまじい火花を上げて、星人は蹴り上げられて宙を舞った。
 並の怪獣や超獣なら、これですでに絶命しているだろう。テロリスト星人はなんら反撃のできぬまま、
森の中へと崩れ落ちた。
「強い、強すぎる……」
 あまりにも一方的すぎる戦いに、呆然とキュルケはつぶやいた。
660名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 15:54:08 ID:xUaJKwk/
専ブラ使っているのかな支援
661ウルトラ5番目の使い魔 第20話 (3/10):2008/11/02(日) 15:54:26 ID:EsX4O/1B
 テロリスト星人は、森の中に仰向けに倒れたまま動かない。
 
 だが。
 
「まだ、生きてる……」
 タバサが言ったとき、テロリスト星人は棺から身を起こすミイラのように、ゆっくりと起き上がってきた。
もうすでに全身がズタズタで、テロリストソードも持っているのがやっとのようだったが、それでもまだ生きて、
剣を振り上げ、狂気を目に宿らせてエースに襲い掛かった。
「このテロリスト星人が、こんなところで負けるはずはないぃぃ!!」
 もう剣術もなにもない、でたらめに剣を振り回しながら、闘牛のようにエースに突進してくる。
「シャッ!!」
 エースは飛び上がって攻撃をかわしたが、星人は狂気に身を任せたまま反転するとまた迫ってくる。
まるで命そのものを燃料にして戦っているようだ、これではエースも反撃の余地がない。
 
 だがそのとき、戦いを見守っていたキュルケとタバサの前に、どすりと重い音を立てて、何かが落ちてきた。
「な、なに?」
「あ、おう、娘っ子たち。無事だったかい」
 それは、才人に投げられて、テロリスト星人の手に突き刺さったままだったデルフリンガーであった。
「あんたどうしたのよ、こんなとこで?」
「あ、いやあ、相棒に投げられて、奴の手に刺さったままそのまんまになってたんだけどな。
あいつがあんまりぶんぶん振り回すもんだから、とうとう振り落とされちまったのよ」
 デルフはカタカタつばを鳴らしながら、そう説明した。
「あんたはのんきでいいわねえ、エースがピンチだってのに」
「ああ、知ってるよ。まったく仕方ねえな、おい、俺をエースに向かって投げろ!」
「え、まさかあんたアレをやる気?」
「おう、早くしろ!」
「わかったわ、タバサ!」
 キュルケはデルフリンガーをレビテーションで思いっきり投げ上げた。
 打ち上げ花火さながら、デルフリンガーはきらきら輝きながら月を目指して飛んでいく。
「エア・ハンマー」
 ぐんぐん上昇していくデルフリンガーに、タバサは風魔法で圧縮された空気の塊をぶっつけた。
 方向転換は見事に成功、狙いはもちろん、エースの頭上。

「あいぼ……エース!! 俺っちを使え!!」
 うっかり才人のほうを呼びそうになりながらも、エースの真上でくるくる回転しながらデルフは叫んだ。
662名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 15:54:51 ID:ULWtFDGe
支援
663名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 15:55:54 ID:xUaJKwk/
効力射支援開始
664ウルトラ5番目の使い魔 第20話 (4/11):2008/11/02(日) 15:57:05 ID:EsX4O/1B
 頭上から聞こえてきたその声に、エースは星人の攻撃をかわして天高くジャンプ、4万5千トンの
巨体が羽根のように軽々と宙に舞い上がっていく。
「シュワッ!!」
 空中でデルフリンガーをつまみあげ、天頂で一回転するとエースは、あのホタルンガとの戦いのときの
ように、落下しながらデルフリンガーを振りかざし、ウルトラ念力を込めた。すると、エースの手の中で
デルフリンガーがぐんぐん巨大になっていく。
『物質巨大化能力』
 たちまちデルフリンガーは全長60メイルもの巨大な剣に変化、高度300メイルから、エースは月を
背にして渾身の力でデルフリンガーをテロリスト星人に向かって振り下した!!

「イャァァ!!」
「おのれぇぇぇっ!!」

 テロリスト星人も渾身の怒りと憎悪を込めて、テロリストソードを落下してくるエースに向かって振り上げる。
 瞬間、エースとテロリスト星人の剣が交差、その激突で生じた白い閃光が、見ていた者の目を焼いた。
 それは、時間にすればほんの1秒にも満たなかったのかもしれないが、そんな瞬き一回分程度の時間の
うちに、戦いの決着はついていた。
 眼を開いて見たとき、エースはデルフリンガーを振り下ろした姿勢のまま、星人はテロリストソードを振り上げたまま、
まるで石像のように膠着した姿でそこにいた。
 
「ど、どっちが勝ったの?」
 見届けられなかった両者の激突の結末を、誰もが息を呑んで待った。
 
 エースか、それともテロリスト星人か。
 その結果は、星人のテロリストソードがひび割れて、中央からへし折れたことで明確となった。
「こ、こんなはずでは……」
 そのとき、テロリスト星人の頭頂部から股下にまで、すうっと赤い線が走り、そして、その線に沿って、
星人は鉈を突き立てられた薪のように、その体を左右に真っ二つに分断されて崩れ落ちた。
「ぐぁぁぁっ!!」
 そのわずかな断末魔を残し、これまで数多くの罪なき人々を切り裂いてきたテロリスト星人は、自分が
やってきたのとまったく同じ方法で、彼らの恨みの念の渦巻く闇の底へと落ちていった。
 
 
「やったぁ!!」
 ウルトラマンAの勝利に、このときばかりは誰もが身分もつつしみも忘れて歓声をあげた。
 地面の上ではキュルケがタバサを抱いて踊っている。
 空の上では、シルフィードがきゅいきゅい楽しそうに笑いながら、エースの周りを飛んでいる。
665名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 15:57:52 ID:xUaJKwk/
支援マン
666名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 15:58:04 ID:ULWtFDGe
支援
667ウルトラ5番目の使い魔 第20話 (5/11):2008/11/02(日) 15:58:11 ID:EsX4O/1B
 その背で、アイはミラクル星人にうれしそうに言った。
「おじさん、ウルトラマンが、エースが勝ったよ」
「ああ、おじさんももう大丈夫だ。これもアイちゃん、君のおかげだ、ありがとう」
 ミラクル星人の傷は、もう安心のようだ。自分のした手当てが適切だったとわかって、ロングビルも
ようやく息をついた。
「やれやれ、亜人の手当てなんて初めてだから緊張したよ。けど、親子か……やっぱ、いいもんだな」
 
 エースはテロリスト星人が完全に絶命したのを確認すると、デルフリンガーへのウルトラ念力を解いた。
「ジュワッ」
 縮小し、元の大きさに戻ったデルフをキュルケ達が回収する。
「さすが伝説の剣ね。なかなかやるじゃない」
「はっはっはっ、大きくなるっていうのも悪くねえ。なんかくせになりそうだぜこりゃ!」
 すっかりエースに使われるのが気に入ってしまったデルフは、カラカラとつばを鳴らしながら笑った。
 
 そして、エースは最後にミラクル星人の無事を見届けると、夜空を目指して飛び立った。
「ショワッチ!!」
「エース、ありがとう! ありがとう!」
 まるで月に向かって飛んでいくようなエースの姿に、アイのお礼の言葉が確かに追いついていっていた。
 
 
 やがて、変身を解除した才人とルイズはキュルケ達と合流し、シルフィードに乗って、ミラクル星人の
宇宙船の埋めてある川原へと降り立った。
 けれども、そこでは当然、ミラクル星人とアイとの最後の別れが待っていた。
「もうここで大丈夫です。皆さん、本当にお世話になりました。なんとお礼を言ってよいやら、このご恩は
生涯忘れません。そして、星で待つ仲間達に、ここにはこんなにすばらしい人達がいるんだということを
伝えて、私の得た知識と資料で、私の故郷もハルケギニアに負けないくらい美しくしたいと思います」
「いや、そういわれると……」
 そういうふうに礼を言われると、面映くて才人もルイズも思わず頭をかいて照れてしまった。
「でも、大丈夫ですか、またヤプールに狙われたとしたら、もう俺達では助けようがありませんが」
「心配いりません。飛び上がってしまえば、あとは超空間飛行でミラクル星まで一直線です。そうしたら、
もうヤプールも手出しはできません」
 彼はそう言うと、川原の一角に向かって手を向けた。
 すると、足元から突き上げるような振動が伝わってきたかと思うと、川原の砂利が持ち上がっていき、
そこから光り輝く全長30メイルほどの円盤が現れた。
「これが、あなたの船?」
「……!」
「ど、どういう原理、これ? 風石を使っているようには見えないけど」
 キュルケもタバサもロングビルも、初めて見る宇宙船の姿に圧倒されていた。
 才人は、そんな彼女達の様子に、ちょっとだけ笑ってみたが、すぐに真顔に戻って、後ろで決心がつかずに
うつむいているアイの背中を押して前に出した。

 アイとミラクル星人の間にわずかな沈黙が流れたが、やがてミラクル星人はアイの目線にかがんで、
優しく、そして寂しそうに話しかけた。
「アイちゃん、本当のお別れだ」
「……どうしても行くの?」
「ああ、これはおじさんにとって、星の未来がかかった大事な使命なんだ。たぶん、もう二度と会えないだろう」
 そう言われて、これまで必死に押さえ込んできたのだろう、涙がぽろぽろとアイの目からこぼれおちた。
668名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 15:58:39 ID:xUaJKwk/
支援
669ウルトラ5番目の使い魔 第20話 (6/11):2008/11/02(日) 15:59:39 ID:EsX4O/1B
「やだ、そんなのやだ。だったらアイも、アイもおじさんの国に連れてって!」
 しかし、ミラクル星人はゆっくりと首を横に振った。
「それはできない。いいかい、人にはそれぞれ生きるべき場所というものがある。君はこの星で生まれた
この星の住人だ。それに、私の星は君が生きていくにはあわないところもある」
「いや、もうひとりぼっちにはなりたくない!」
「アイちゃん、それは違う。目を開いてまわりを見渡してみなさい。君はもう、昨日までの君が持っていなかった
すばらしいものを、すでに持っているじゃないか」
 彼はそう言って、アイの涙を拭き、優しくふたりを見守っていたルイズ達を指し示してみせた。
「もう君はひとりじゃない、君のために、君を大切に思ってくれる友達が、もうこんなにいるじゃないか」
「……とも、だち?」
 アイは恐る恐る才人達に向かって、その言葉を口にした。
「ああ、いっしょに遊んだ仲じゃないか、これが友達でなくてなんなんだ、なあルイズ?」
「ふん! 平民が貴族に向かって、お友達? そんなおこがまし……で、でも、どうしてもっていうなら、その、
なってあげてもいいかな……」
「なあーにぶつくさ言ってるのよ、仲良くなったらそれで友達、ほかにいるもの何かあるの? 自慢じゃないけど
この微熱のキュルケ、国では平民に混ざってガキ大将になったこともあったわね。あのときはお父様に
めちゃくちゃ叱られたっけ。よく見たらあなた、なかなか素材がいいわね、レディの手ほどき、わたしが
してあげてもよくってよ」
「……教育上よくない」
「……私は……なによあなた達その目は? こう見えても私は子供好きなほうなのよ、信じてないわね、この!」
 アイは、ようやく自分が願っても手に入らなかったかけがえの無いものを得ていたことに気がついた。
「お姉ちゃんたち……ありがとう」
「そう、生きている限り、ずっとひとりぼっちなんてことは決してない。それに、君はおじさんのために必死に
なって彼らを連れてきてくれた。その勇気がある限り、君は誰にも負けはしない。でも、どうしても寂しくて
我慢できないときには、そのビー玉を見てごらん、少しの間、思い出の世界に連れて行ってくれる。そして、
いつの日かそのビー玉も必要なくなったとき、君は大人になるんだ。わかってくれるね?」
「うん!」
 アイは決意を込めた目で、強くうなづいた。
 そして最後に、彼は才人達に向かって深々と頭を下げた。
「この子を、頼みます」
「わかりました。道中、お気をつけて」
 ミラクル星人は、アイをロングビルに預けて、ゆっくりと円盤から下りてきた光の中へと入っていった。
 すると、その姿が円盤に吸い込まれていくように、しだいにぼんやりとなり、透けて消えていき始めた。
 まるで蜃気楼のように消え行く中、ミラクル星人は右手を軽く上げてアイに最後の別れを告げた。
「さようなら、アイちゃん」
 ミラクル星人の姿がどんどん透明になっていく。
 アイは、くちびるをかみ締めてそれを見つめていたが、最後の瞬間、のどが張り裂けそうなくらい大きな声で、
ため込んできた思いを吐き出した。
 
「おとうさーん!!」
 
 そのとき、消え行くミラクル星人の姿が一瞬ぶれ、姿が消える瞬間、彼の瞳に、アイの流したものと
同じものが光るのを、才人達は確かに見た。
 そして、ミラクル星人を乗せた円盤は、静かに宙に浮き上がると、高度50メイル近辺で停止し、数回
点滅したかと思うと、一瞬で空のかなたへと飛び去っていった。
 後には、空に輝く双月と、幾億もの星が、何事も無かったかのように輝き続けていた。
 
 
「行ってしまったな」
 しばし呆然と見送っていた才人達は、まるで夢を見ていたようにつぶやいた。
670名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 16:00:09 ID:xUaJKwk/
自分の作品が何バイトか調べなかったのか支援
671ウルトラ5番目の使い魔 第20話 (7/11):2008/11/02(日) 16:00:48 ID:EsX4O/1B
「無事にふるさとに着ければいいわね」
「きっと大丈夫よ、さあ私達も帰りましょうか。そろそろシエスタも戻っているころでしょうし」
 気を取り直したキュルケとロングビルも、軽く息を吐いた。
 だが、アイの顔を見ていたルイズが、根本的で深刻な問題を口にした。
「ちょっと待って、その前にこの子はどうするの? あそこに戻す訳にはいかないし、もちろんわたしも
協力は惜しまないけど、学生の身の上じゃあ……」
 確かに、金銭的には子供の一人くらい問題ないが、経験、時間的には難しい。現実的に考えれば、
また引き取り先を探すか、修道院にでも預けるのが妥当に思えるが、ミラクル星人との約束は、アイの
将来も含めて任せるということと意識していたから、自分達で見て本当に安心できる場所と人間に
預けたいと思ったので、当分は自分達で面倒を見なくてはならないだろう。
「この子は、私がしばらく預かるわ」
「え? ロングビルさん」
 思わぬところからの助け舟に、ルイズ達は正直びっくりした。
「こういうことには、少なくともあなた達より経験があるわ。そんな顔しなくても、知り合いに信頼できる
人がいるから、夏季休校で暇ができたらそこに連れて行くわ」
「本当でしょうね。あんたの知り合いって……」
 その先は言わなかったが、元盗賊であるロングビルの言葉に信用がないのは明白であった。
 ロングビルは苦笑したが、無くした信用は誠意を持って取り返すしかないことも知っている彼女は、
怒らずに、あくまで穏やかに話を続けた。
「心配しなくても、いい子よ、私よりずっとね。私がトリステインでなにをしていたのかも、その子は
知らないわ。いえ、私が知らせなかったんだけど、なんならあなた達も来てみる? あなた達なら
信用できるから、会わせてもいいわよ」
 彼女はそのあとに、ルイズ達には聞こえないようにぽつりと「それに、そろそろあの子にも外の
人間と触れ合わせたほうがいいしね」とつぶやいた。
 ルイズ達は顔を見合わせたが、疑うも、信ずるも、結局は人の心にかかっている。
 裏切られて、それで人を信じなくなるか、もう一度信じることに懸けてみるのか、目を合わせて
考えて、彼女達はその答えを出した。
「わかったわ、そういえばあんたがやってたことも、何やら訳有りだったみたいだし……私はあんたを
信じる」
 ルイズがそう言うと、残りの3人もうなづいた。
「じゃあ、あなたの身柄はしばらくわたし達がトリステイン魔法学院で預かるわ。貴族ばっかりの
ところだから不自由させるかもしれないけど、少しの間我慢してね」
「うん!」
 元気に答えるアイを、強い子だとルイズは思った。思い出してみれば、自分も小さいころ母親に
叱られて悲しくなったとき、いつも優しい姉に慰めてもらっていたなと、自然と表情が優しくなっていた。
 ただキュルケは、あの頑固だったルイズがなぜこんな心の広さを見せたのか、どうも不思議で
しょうがなかったが。
 やがて、彼女達の答えを聞いたロングビルは、一度大きく頭を下げて、その後アイを抱き上げて笑った。
「じゃあ帰りましょうか、魔法学院へ。明日はようやく来たフリッグの舞踏会、みんな揃って楽しみなさい!」
「おおーっ!!」
 明るい叫び声と笑い声が、暗い森の闇をも照らして、空高く響き渡った。
 
 
 しかし、この事件にはもうひとつ、記しておかねばならない戦いがあった。
 
 時系列を少し巻き戻し、才人達がミラクル星人のもとにたどり着いたのとほぼ同じころ、シエスタも王宮、
直接は入れないから非常用の受付のところに駆け込んでいた。
672名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 16:01:33 ID:xUaJKwk/
支援
673ウルトラ5番目の使い魔 第20話 (8/11):2008/11/02(日) 16:01:51 ID:EsX4O/1B
 対応した兵士は、こんな夜中に平民がひとりと追い返そうと思ったが、銃士隊隊長アニエスの名前と、
王国筆頭貴族であるヴァリエールの名を出されて、半信半疑ながらもアニエスの下へ報告に行った。
「なに、ヒラガ・サイト、本当にそう言ったのだな……よし、会おう」
 アニエスは深夜の訪問に驚いたが、同時にただごとではないとも勘ぐり、副長ミシェルも連れて
シエスタと会い、緊張して固くなっている彼女から事情を聞かされてうなづいた。
「事情はわかった。ミシェル、イース街のジョンソン商会といえば」
「はい、以前から脱税の疑いがありましたが、証拠がなく放置されてきたところです。しかしまさか
人身売買とは……」
「被害者がいる以上、認めるべきだ。それに、あそこは善意の看板の影に隠れて怪しげな外国人の
出入りもしばしば聞く。密告があったのなら都合がいい、この期に害虫どもを一気に駆除してくれる!」
 アニエスは剣を鳴らし、全員出撃の命令を下した。
「た、隊長、お待ちください。街の治安維持は衛士隊の任務、我らが出て行っては越権行為になりますが」
「その衛士隊が欲に汚染されているからこんなことが起きたのだろう。だが、一応筋は通す必要があるな、
私は枢機卿に許可を得てくる。その間に出動準備を整えておけ」
「はっ!」
 ミシェルは全員を集めるために部屋を駆け出していき、アニエスも腰に剣を挿して、シエスタに礼を言った。
「よく知らせてくれたな。これでトリステインの毒虫どもの巣をひとつつぶせそうだ」
「あ、は、はい! ありがとうございます!」
 いまや平民達の間では英雄視されているアニエスと話して、緊張してガチガチになっているシエスタは
震えながらなんとか答え、それを見てアニエスは軽く笑った。
「そうびびるな。私も君と別に変わりはしないさ。それに、サイトとミス・ヴァリエールには借りもある。あいつらの
ためにも、トリスタニアの害虫は叩き潰さねばな」
「はい、がんばってください!!」
 あたふたと言うシエスタの肩をぽんと叩くと、アニエスはその部屋を出て行った。
 後に残されたシエスタは、役目を果たしたという達成感よりも、「あの銃士隊の隊長に認められているサイトさんって
やっぱりすごい」、などとややずれた感想を抱いていた。
 
 だが、一度動き出した銃士隊の行動は、電光石火のごとくすばやかった。
 アニエスがマザリーニ枢機卿に特別行動の許可を得ると、すぐに城を出撃し、音もなく目的の商家を包囲した。
 そこは、外国からの物品の輸出入を取り扱っているという看板で、日本でいえばスーパーマーケットのような
店構えを持つ2階建ての建物であったが、よく見ると窓にはすべて頑丈そうな格子がついていて、ものものしい
雰囲気を放っていた。
 それで確信を得たアニエスは、包囲網完成とともに自らが先頭となって一気に斬りこんだ。
「王宮警護団銃士隊である!! この屋敷で不法な商品を扱っていると密告があったことにより、これより強制捜索を
おこなう!!」
 たちまち店内になだれ込んだ隊員達が、止める店員を押しのけて証拠物件を探そうとする。
 むろん、表向きに並べてあるものは合法的なものだけだろうが、蛇の道は蛇という、銃士隊はそういうものを
探索する術に長けており、やがて戸棚の隠し扉や二重の壷の底などから次々違法な薬物が見つかった。
674ウルトラ5番目の使い魔 第20話 (9/11):2008/11/02(日) 16:03:06 ID:EsX4O/1B
 だが、この程度のものなら裏に手を回せばさして問題なく手に入る程度のもの、本当に見つけるべきものは
他にある。
「地下室があるはずだ、探せ。それから店主を拘束しておけ」
 シエスタから聞いた情報により、奴隷を秘密の地下室に拘束してあることを聞いていたアニエスは、店の床を
重点的に調べさせた。
 そして、遂に厨房の床に、カモフラージュされた地下への扉を見つけた。
 しかし、いざ突入してみると、そこには確かにいくつもの牢があったが、奴隷どころか人影などひとつもなかったのである。
「これは、どういうことだ?」
 さしものアニエスも予想外の出来事に唖然としたが、隊員のひとりが持ってきた報告によって理由を悟った。
「隊長、店主の姿が見当たりません」
「なに、逃げたのか?」
「いえ、この包囲網は突破できるはずもありません。店員に問いただしましたところ、我々が突入する寸前に、
なにやら慌てた様子で地下に駆け込んでいったとのことです」
「ちっ! 感ずいて奴隷を連れて秘密通路を使って逃げたな。探せ、このどこかに入り口があるはずだ!」
 ここまできて逃がしてたまるか、アニエスは焦りを抑えながら、自らも地下牢の壁や床を探し回った。
 
 そのころ、間一髪銃士隊の攻撃から逃れた店主は、持てるだけの現金と、奴隷の子供達を鎖で引きずりながら、
地下通路を必死で逃げ延びようとしていた。
「おのれ銃士隊め、正義感ぶっていらぬことにまで首を突っ込んできおって。こうなったらこの商品だけでも
守らねば。街外れには、ガリアのギルモアの手下が待っているはず、そいつらにまとめて売り飛ばしてさっさと
高飛びだ」
 店主は、子供達が泣き喚こうと転ぼうとかまわずに引きずっていく。その目には人間らしい哀れみなど
ひとかけらもなかった。
 だが、彼の行く地下通路の先から、黒いローブで身を隠した人影が現れて、店主の前に立ちふさがった。
「だ、だれだお前は?」
 店主は警戒して、たいまつの明かりをそいつに向けると、その人物はローブをまくって顔を見せた。
「あ、あなた様でいらっしゃいましたか! 失礼いたしました」
 いきなり卑屈な態度になった店主は、頭をぺこぺこと下げながら、その人物に弁解の言葉を述べた。
「申し訳ありません。これまでひいきにしていただいたというのに台無しにしてしまいまして、トリステインの
子供は奴隷や妖魔と取引するための生け贄として高く売れますから、反省しております」
「私は、知らなかったが?」
 そこで、黒ローブの人物は短く言った。重く、突き刺すような口調だった。
「秘密厳守でございます。敵をあざむくにはまず味方から、とも申しますな。ですが、あなた様が銃士隊の
出動を知らせてくれましたので、ギリギリ逃げ出すことができました。この後は、ガリアに逃げ延びて再起を
計り、よりいっそうの利益をもたらす所存ですので、どうかあのお方にもよろしくお伝えください」
「その元手が、それというわけか?」
「はい、ガリアの知人に売り渡し、それで向こうで商売を起こします……ええいうるさいぞ、泣くな!!」
 店主は泣き叫ぶひとりの子供の顔を張り飛ばした。骨と皮ばかりにやせ衰えて、体中傷だらけになった
子供の体は簡単に飛ばされて床に投げ出された。
「さあ、ここはもうあぶのうございます。この通路もいつ奴等に見つかるか、急いで脱出いたしましょう」
「いや、お前はここまでだ」
 黒ローブの人物は、そう言うと懐からすばやく杖を取り出して店主に向け、店主が「なにを!?」という間もなく、
杖の先から強烈な魔法の光がほとばしり、店主と子供達の目を焼いた。
675名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 16:03:11 ID:ZMUWAzUk
ウルトラ超合金のAで遊びながら支援
エースブレードがへにょいのがちょっと不満w。ガスタンク爆弾とバケツが付いてるのは良いんだけどね!
676名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 16:03:40 ID:xUaJKwk/
15榴支援
677ウルトラ5番目の使い魔 第20話 (10/11):2008/11/02(日) 16:04:21 ID:EsX4O/1B
「うわぁっ! 目が、目が、うぐっ!?」
 暗闇の中で、突然胸に走った痛みに、店主がおそるおそる胸に手を当ててみると、そこには自分の心臓に
深々と突き刺さった冷たい剣の感触があった。
「な、なぜ……ぐぶっ!」
 剣が引き抜かれ、急速に力を失っていく体が固い床の上に崩れ落ちたとき、店主の魂は悪人にとっての
唯一の楽園、地獄と呼ばれる異世界に向かって旅立った。
「私は悪党だが、悪魔の手助けをするつもりはない」
 黒ローブの人物は、そう言うと店主の死体に『発火』で火をつけた。
 子供達は、さっきの光でまだ視力が戻っていなかったが、炎の暑さに自然に元来たほうへと下がっていった。
 それから数十分後、ようやく地下通路の入り口を見つけた銃士隊員達によって子供達が保護されたとき、
黒ローブの人物はすでに影も形もなくなっていた。
 
「隊長、子供達は無事保護、店内にいた店員も全員捕縛しました」
 制圧を完了し、犯人達を連行していく姿を見ながらアニエスは部下から報告を受けていた。
「ご苦労、しかし主犯の店主を捕らえられなかったのは残念だ、いろいろとしぼりだせると思ったのだが」
「報告によりますと、逃走通路の先に黒こげの死体となって発見されたそうです。目撃していた子供達の言に
よれば黒いローブの人物だそうですが、メイジということ以外わかりません」
「口封じか……」
 店主を捕らえられなかったことで、画竜点睛を欠いたという感じをぬぐいきれなかった。店員のほとんどは
捕縛したが、どいつも店主に言われて動いていただけのチンピラで、どこの誰と取引していたのかなど重要な
情報は持っていそうになかった。
「ところで子供達の目は大丈夫なのか?」
「衛生班の診る所によると、一時的なもので、あと小一時間もすれば全員見えるようになるそうです。目くらましを
して一突きとはずいぶんえぐいことをします。ですが、子供達にとっては見えなかったことがよかったのかも
しれません。人の死ぬ光景というのは、子供にとって大変なトラウマになるものですから」
「そうだな。しかし、目撃者のはずの子供達をそのままにしていったのは解せんな。それに……いや、
ご苦労だったな。任務に戻れ」
「はっ!」
 その隊員を見送ると、アニエスは今口に出さなかったことを考えた。
 なぜ店主は銃士隊が出動したのを事前に知ることができたのか、そして店主を殺害した刺客はどうやって
この店に異変が起きたことをかぎつけたのか、用心深いだけでは説明できない迅速さに不可解さを禁じえなかった。
678名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 16:04:39 ID:xUaJKwk/
支援
679名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 16:05:11 ID:jfw/8YQL
後10kb
680ウルトラ5番目の使い魔 第20話 (11/11):2008/11/02(日) 16:05:16 ID:EsX4O/1B
(あと考えられる可能性があるとしたら……ずっと共に戦ってきた者たちばかり、信じたくはないが)
 そこまで考えたとき、包囲部隊の指揮に当たっていたミシェルが駆け寄ってきた。
「隊長、逃走を計っていた店員2名を捕縛、これで全員の逮捕が完了しました」
「ご苦労、包囲網を解体し、全員を連行しろ。それから、子供達はいい医者のところに連れて行ってやれ、
経費は私の給金からさっぴいてかまわん」
「隊長……了解いたしました。ですが、それでしたら私も半分お持ちします! 任せてください」
 ミシェルはアニエスの言葉に感動したのか、堅物そうな顔にほんのわずかだが笑みを浮かべて駆けていった。
 アニエスはそんな信頼する副長の後姿を、ただ黙って見送っていたが、そこに店の捜索をおこなっていた
隊員が一冊の冊子本を持ってやってきた。
「隊長、店主の部屋を捜索していたらこんなものが……」
 アニエスは、その冊子のページをペラペラとめくってみて驚いた。
「これは、裏金、賄賂を流した役人の名簿じゃないか、金額も丁寧に書き込んである。衛士隊西隊の隊長から
徴税官のチュレンヌまで……」
「はい、奴め相当焦っていたと思われまして、めちゃくちゃに散乱した物の中に、これが置き忘れられておりました」
 そこには、トリステインの名だたる貴族の名前がずらずらとすき間もなく書き込まれていた。
 アニエスは、勤めて冷静にそのページをめくっていったが、最後のページに、他の貴族のおよそ3倍もの量の
賄賂を、毎月にわたって受けていたある名門貴族の名前を見つけて、一瞬だがその顔を憤怒に歪ませた。
「……やはり、貴様もだったか……リッシュモン!」
 
 
 続く
681名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 16:05:44 ID:xUaJKwk/
支援
682名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 16:06:20 ID:jfw/8YQL


さて次スレ立てるか
683名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 16:06:28 ID:xUaJKwk/
ちゃんと収まったな
良かった
684名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 16:06:41 ID:zav8d0t7
支援&乙
685ウルトラ5番目の使い魔 あとがき:2008/11/02(日) 16:07:14 ID:EsX4O/1B
以上です、たくさんの支援ありがとうございました。
それから、今回はどうもご迷惑をおかけしてすいませんでした。
 
最初は短編で思いつきのままに書き始めたウルトラ5番目の使い魔ですが、気づいてみればとうとう20話にまで
到達できていました。
これも本スレ、避難所で応援してくださった大勢の皆様のおかげです。本当に感謝しています。
ですが、よく考えてみたら、いろいろオリジナルエピソードを入れたおかげで、まだ原作本の1巻分すら
終わってませんでした。
ですから、次回は話を原作よりに戻して、フリッグの舞踏会をやります。
もちろんただではすまないので、何が起きるかはお楽しみに。
それでは、今後も30話、40話を目指して頑張ります。来週までしばしさようなら。
686名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 16:08:54 ID:jfw/8YQL
次スレ

あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part183
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1225609682/
687名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 16:09:58 ID:ZMUWAzUk
エースの人乙ですー
すれた手の人も同じく乙ー

バケツが付属してるのはタロウのほうだったことを思い出したよ!
道理で探しても無いはずだw
688名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 16:10:04 ID:ULWtFDGe
5番目の人乙
何とかなるもんですね
あと変に煽ってたアレな連中は気にしないでください
689名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/02(日) 16:12:16 ID:QXTNwSfM
   埋め尽くせー                                        |:|\\:::::||.:.||::::://|    /イ
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  ト、     ,.    ̄ ̄Τ 弋tァ―   `ー /  l从 |メ|_l  l_.l斗l |ヽ V |:| ̄ ̄ ̄ ̄ フ  ̄ ̄    |                  イ
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 入ノ. ヽ  く  ヽ______7 ー―∠__    〃  l :/    :l l     \V       ヽ       \    ,.  '´
`ー′   \  `<  | {      /   | /〃   :|/  __V/ ̄| ̄ ̄{_     \_      ` <
        \  `' ┴ヘ     {    .レ__r‐|ィ‐┬、lレ' |    /  ノ`y‐一'  >、_/   / ̄ 7丶、_   丶
         \    ヽ   /`ー「と_し^´ |  |    }  ム-‐'  /     /    \_/  /  /  ヘ    \
           ヽ   _>-ヶ--∧_}   ノ  j   /` 7 ̄ ̄ ̄{      (         ̄ ̄`ー‐^ーく_〉  .ト、_>
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690名無しさん@お腹いっぱい。
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  )-ヘ j ̄} /|        /___/xx|       _Σ___/| | |V::::ノ/ ∠___           {     /      `<  /  \|
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    |   ヽ        /____|]]∧  __|__L.∠ ム'  <`丶 、 `丶、       /       \_____/    /
    |     ',         {     |]]]>'  __      ∧ l\ \   丶、 ` 、   ∠ -――-  ..____ノ   /
   ノ     }       l ̄ ̄ ̄.|] >' ,. '  ̄ / .// :/  V'  \ ヽ    `丶\/                 /
  / ∧   { \      |      .|>' /      // :/ :/ :   ', l   \ ヽ  ,.-――┬      \         /
 入ノ. ヽ  く  ヽ______7 ー―∠__    〃  l :/    :l l     \V       ヽ       \    ,.  '´
`ー′   \  `<  | {      /   | /〃   :|/  __V/ ̄| ̄ ̄{_     \_      ` <
        \  `' ┴ヘ     {    .レ__r‐|ィ‐┬、lレ' |    /  ノ`y‐一'  >、_/   / ̄ 7丶、_   丶
         \    ヽ   /`ー「と_し^´ |  |    }  ム-‐'  /     /    \_/  /  /  ヘ    \
           ヽ   _>-ヶ--∧_}   ノ  j   /` 7 ̄ ̄ ̄{      (         ̄ ̄`ー‐^ーく_〉  .ト、_>
            ', /     人__/   .ィ  {__ノ`ー'    ヽ    人     \__              {  }  |
            V     人__/  / | /           ̄{ ̄  >‐ ァ-、    \             〉ー}  j
                {  / ./  ∨      __      ̄ ̄ >-</  / ̄ ̄         廴ノ  '
      <ヽ__      /し /        < )__ \   _r‐く___/  /    < ) \     {__ノ /
        Y__>一'    /         ___r―、_\ >'   `ー' ,.  ´       >.、 \__ノ    {
     ∠二)―、       `ー‐┐    ∠ ∠_r‐--―      <__       ∠ )__          \_
       ∠)__ノ ̄`‐⌒ヽ__|>      ∠)__r―――-― ..__{>        ∠_廴,. ⌒ー'  ̄ \__{>