あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part181

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1名無しさん@お腹いっぱい。
もしもゼロの使い魔のルイズが召喚したのがサイトではなかったら?そんなifを語るスレ。

(前スレ)
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part180
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1224604329/

まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/
避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9616/


     _             ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
    〃 ` ヽ  .   ・ここはあの作品の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!
    l lf小从} l /    ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
   ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,.   ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
  ((/} )犬({つ'     ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
   / '"/_jl〉` j,    ・ 投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
   ヽ_/ィヘ_)〜′    ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
             ・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!


     _       ・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
     〃  ^ヽ      ・クロス元が18禁作品であっても、SSの内容が非18禁である場合は
    J{  ハ从{_,     本スレへの投下で問題ないわ。
    ノルノー゚ノjし     ・SSの内容が18禁な展開をする場合はクロス元に関わらず、
   /く{ {丈} }つ      本スレではなく避難所への投下をお願いね?
   l く/_jlム! |     ・クロス元がTYPE-MOON作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
   レ-ヘじフ〜l      ・作品を初投下する時は元ネタの記載も忘れずにね。wikiに登録されづらいわ。
              ・作者も読者も閲覧には専用ブラウザの使用を推奨するわ。負荷軽減に協力してね。


.   ,ィ =个=、      ・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。
   〈_/´ ̄ `ヽ      ・1レスの限界最大文字数は、全角文字なら2048文字分(4096Bytes)。これ以上は投下出来ません。
    { {_jイ」/j」j〉     ・行数は最大60行で、一行につき全角で128文字までですって。
    ヽl| ゚ヮ゚ノj|      ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
   ⊂j{不}lつ      ・次スレは>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
   く7 {_}ハ>      ・重複防止のため、次スレを立てる時は現行スレにその旨を宣言して下さいね。
    ‘ーrtァー’     ・クロス先に姉妹スレがある作品については、そちらへ投下して盛り上げてあげると喜ばれますよ。
               姉妹スレについては、まとめwikiのリンクを見て下さいね。
              ・一行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えます。
              SS文面の区切りが良いからと、最初に改行いれるとマズイです。
              レイアウト上一行目に改行入れる時はスペースを入れて改行しましょう。
2名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 00:36:15 ID:ISmCNcUq
スレ立て終了
3名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 00:42:52 ID:ky4XgB48
テンプレは>>1のみ

他のは頭のかわいそうな人が荒らしてるだけなのでスルーで。
4名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 00:46:55 ID:O62GA4XO
>>1乙
5名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 00:47:09 ID:BCEL1dzb
>>1乙なんだぜ!
6名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 00:48:41 ID:Qn88F/YS
>>1
乙、それと便座カバー
7名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 00:50:20 ID:zKSY6CMu
>>1おっつでーす!
8名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 00:53:43 ID:UvjghLWz
>>1に乙を与える。
9名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 00:55:17 ID:tKPuw5dO
>>1
私見ですが、乙です
10名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 00:57:39 ID:jKXbbFhs
と、言うわけで小ネタ投下よろし?
11名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 00:58:55 ID:zKSY6CMu
レッツゴー支援
12りっぷる:2008/10/25(土) 01:00:44 ID:jKXbbFhs
魔法学院恒例の春の使い魔召喚の儀式。魔法学園近傍の草原で、ルイズは焦っていた。
「ははっ、ルイズ、気には無理なんじゃないのかい?」
ギーシュの馬鹿が薔薇を口に加えてくるくると回っていた。
「ゼロのルイズに召喚なんてできっこないさ!」
マリコルヌがふっくらとしたお腹を揺すって笑った。

むか。

「まあ、万が一召喚できたとしても可愛い僕のヴェルダンデに勝てるはずがないね」
そう言いはなったギーシュは地面を足で軽く踏みならした。
やがて、ぼこぼこっと地面が盛り上がったかと思うと、つぶらな瞳のジャイアントモールがひょっこりと顔を出した。
「ああ、可愛いぼくのヴェルダンデ! 君はなんて可愛いんだ!」
そう言うなりギーシュは小熊ほどもありそうなジャイアントモールをひっしと抱きしめた。
勝ち誇った目で、ちらっとルイズを見る。

むか。

ルイズのこめかみに青い十字が浮かび上がり、わなわなと肩が震える。握りしめた杖がぷるぷる震えてるのも怒りのせいか。
「まあ、ルイズだしね」
肩にフクロウをとまらせたマリコルヌの言葉がトドメだった。
「ああああ、あんたらねぇ、私がすっごいのを呼んであげるから覚悟しなさいよ。そんなもぐらやフクロウなんか目じゃない
すっごい使い魔を見せてあげるわよ。覚悟しなさい!」
「魔法も使えないゼロなのに、サモンサーヴァントが出来るはずがないだろ」
「なによっ」
「だってゼロだしな」
「はいはい、ミスタ・マリコルヌ、ミスタ・ギーシュ、君達はミス・ヴァリエールの集中を邪魔しないように少し離れてください」
本格的な喧嘩になる寸前に、付き添いの教師のコルベールが手をぱんぱんと打ち鳴らして間に入った。
この春の使い魔召喚の儀式ですら魔法が使えなかったら、留年すらあり得る。あの、ラ・ヴァリエールの嫡流が留年すると言う
自体はなんとしても避けてもらいたいものだ。コルベールはそんなことを考えながら魔法が使えないルイズに痛ましい目を向けた。
「ふん! 見てなさいよ」
ルイズはそう言って、ゆっくりと杖を掲げる。
(いいな、みんなちゃんと召喚出来てる)
ルイズの目の端に、既に召喚が終わった生徒達が自分の使い魔と戯れている姿が映る。
青い風竜が、立派なサラマンダーがひときわ目を引いている。
(ふ、ふん、私だって! ……でも、もし失敗したら……)
ルイズは、頭を振って雑念を振り払う。
「我が名はルイズ。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール! 五つの力を司るペンタゴンよ。我の運命に
従いし、神聖で美しく、そして強力な使い魔を召喚せよっ!」
にやにやと嘲笑を含んだ視線が集まる中、ルイズの詠唱が響き、そして杖が振り下ろされる。

「使い魔よっここに! サモンサーヴァントッ!」

13りっぷる:2008/10/25(土) 01:01:17 ID:jKXbbFhs
魔法学院恒例の春の使い魔召喚の儀式。魔法学園近傍の草原で、ルイズは焦っていた。
「ははっ、ルイズ、気には無理なんじゃないのかい?」
ギーシュの馬鹿が薔薇を口に加えてくるくると回っていた。
「ゼロのルイズに召喚なんてできっこないさ!」
マリコルヌがふっくらとしたお腹を揺すって笑った。

むか。

「まあ、万が一召喚できたとしても可愛い僕のヴェルダンデに勝てるはずがないね」
そう言いはなったギーシュは地面を足で軽く踏みならした。
やがて、ぼこぼこっと地面が盛り上がったかと思うと、つぶらな瞳のジャイアントモールがひょっこりと顔を出した。
「ああ、可愛いぼくのヴェルダンデ! 君はなんて可愛いんだ!」
そう言うなりギーシュは小熊ほどもありそうなジャイアントモールをひっしと抱きしめた。
勝ち誇った目で、ちらっとルイズを見る。

むか。

ルイズのこめかみに青い十字が浮かび上がり、わなわなと肩が震える。握りしめた杖がぷるぷる震えてるのも怒りのせいか。
「まあ、ルイズだしね」
肩にフクロウをとまらせたマリコルヌの言葉がトドメだった。
「ああああ、あんたらねぇ、私がすっごいのを呼んであげるから覚悟しなさいよ。そんなもぐらやフクロウなんか目じゃない
すっごい使い魔を見せてあげるわよ。覚悟しなさい!」
「魔法も使えないゼロなのに、サモンサーヴァントが出来るはずがないだろ」
「なによっ」
「だってゼロだしな」
「はいはい、ミスタ・マリコルヌ、ミスタ・ギーシュ、君達はミス・ヴァリエールの集中を邪魔しないように少し離れてください」
本格的な喧嘩になる寸前に、付き添いの教師のコルベールが手をぱんぱんと打ち鳴らして間に入った。
この春の使い魔召喚の儀式ですら魔法が使えなかったら、留年すらあり得る。あの、ラ・ヴァリエールの嫡流が留年すると言う
自体はなんとしても避けてもらいたいものだ。コルベールはそんなことを考えながら魔法が使えないルイズに痛ましい目を向けた。
「ふん! 見てなさいよ」
ルイズはそう言って、ゆっくりと杖を掲げる。
(いいな、みんなちゃんと召喚出来てる)
ルイズの目の端に、既に召喚が終わった生徒達が自分の使い魔と戯れている姿が映る。
青い風竜が、立派なサラマンダーがひときわ目を引いている。
(ふ、ふん、私だって! ……でも、もし失敗したら……)
ルイズは、頭を振って雑念を振り払う。
「我が名はルイズ。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール! 五つの力を司るペンタゴンよ。我の運命に
従いし、神聖で美しく、そして強力な使い魔を召喚せよっ!」
にやにやと嘲笑を含んだ視線が集まる中、ルイズの詠唱が響き、そして杖が振り下ろされる。

「使い魔よっここに! サモンサーヴァントッ!」

14りっぷる:2008/10/25(土) 01:02:11 ID:jKXbbFhs
直感があった、強力な使い魔を引き当てた感触があった。全身の力が一気に抜かれるような、そんな感触。
いつもの失敗魔法の様にルイズの向けた先に爆発が広がり、土煙が舞い上がる。
サモンサーヴァントで爆発が起きるなど、普通ではない現象に全員の目が吸い寄せられる。
やがて土煙が薄れ、何か影が浮かび上がる。
(やったぁ、成功したああああぁ!)
ルイズは初めての魔法の成功に言葉に出来ない喜びを感じ、体が歓喜に震えるのを押さえられなかった。そして、土煙の先にある
影に必死で目をこらす。
ゼロのルイズが魔法に成功した。そのことに級友達が目を剥く。
「お、おい、成功しちゃったよ」
「うそだろ」
風が流れ、土煙が巻かれて行く。
(何が召喚されたんだろう。あんまり大きくなさそうだから、鳥系かな、犬とかかな……え?)
想像していた巨大な使い魔では無いことに若干の未練を感じながらも、わくわくとしていたルイズの顔が硬直する。
「困ったの。ついうっかりしてしまったの。まさか、あんな所に巧妙な、おっとテレポーター。があるなんて、気がつかないの。
あれは反則なの」
そこにはどう見ても5〜6歳の少女が居た。
全員の視線が一点に集まる。青みがかった黒髪に白いケープの様な物を身にまとった少女がいた。

はたと目があう。
少女は小首を傾げ、辺りを見渡す。
魔法学院の生徒達。そして付き添い役のコルベールはあまりのことに、口をあんぐりと開けて呆けていた。
何か閃いたように、手をぽんと打ち鳴らした少女は、右を向いて手をふりふり、左を向いて手をふりふり。
ルイズの方を向いて。
「じゃ、そういうことなの」
脱兎のごとく駆けだした。
「ちょっとまてーい」
ルイズは駆け出した少女のケープの端を咄嗟につかんだ。それに引っ張られた少女はもろ顔面から地面に突っ込む。
「教官、わたしはドジでののろまな亀なの。と思いきや以外と素早いの。脱出しっぱいなの」
あ、やり過ぎた。と思った次の瞬間、少女はむくっと起き上がって、ぽんぽんと服をはたいた。
「ル、ル、ルイズッ、いくら魔法が使えないからって、こんなちんくしゃな子供を使い魔に仕立て上げるのは酷いぞ」
我に返ったギーシュが喚く。
ぴき。
「そ、そうだ、こ、こんなよ、よ、ようじょをつ、つ使い魔ぬするなんて」
何故か妙にどもる、マリコルヌだった。
ぴきぴき
「ち、ち、ち、違うわよっ! わたしはちゃんと魔法で召喚したわっ」
15りっぷる:2008/10/25(土) 01:02:59 ID:jKXbbFhs
ギーシュとマリコルヌの非難に、ルイズがきっと睨み付ける。
はん、どうだか? という風にルイズの抗弁を聞き流したギーシュとマリコルヌは肩をすくめて馬鹿にした目で見つめる。
悔しかった。せっかく成功したと思ったのに。手を握りしめてふるふると肩を振るわせた。
「訂正するの。幼女じゃないの。リップルラップルという立派な名前の魔人なの」
「ルイズ……いくら何でも、妄想癖の幼女を騙したらいけないよ」
悔しさで震えるルイズにケープを捕まれていた少女の妙に明るい言葉にギーシュは大げさに天を振り仰いだ。芝居ったらしく片手で
目を覆う。
ぴきぴきぴき。
異変に気がついたのはルイズだった。
少女がいつの間にか鈍い銀色の金属製の棒を持っていた。
「そ、それって……」
たしか、ついさっきまで何も持ってなかったのに。
「金属バットなの」
こくこく。
少女が金属の棒を掲げる。つられてルイズもその棒を見つめる。ギーシュも、マリコルヌも。
「ミズノ製なの」
ほー。なぜだか分からないけど、全員が感心した。
「これ一本で打つ、叩く、殴るができるの。とってもお買い得なの。今なら税込み、送料込みで1万4千165円なの」
真剣な目で少女は金属の棒を見つめ、ギーシュがふと首を傾げる。
「それって、全部同じ意味の様な……」
「野茂のトルネードは今宵も切れ味抜群なの」
少女の言葉に、なぜだか違和感を感じる。
「なんとなく、時代が違うような……」
「そこ、細かいことは気にしないの」
ルイズをきっと睨み付けた少女は、ぶんぶんと棒を振り回した後、ゆっくりとギーシュとマリコルヌに向かった。
ゆっくりと振りかぶる。その迫力と想像出来る未来に、二人は顔を引きつらせる。
「ち、ち、ちょっと待て……」
にじり。
「野茂のトルネードなの」
「お、おい……」
ずい。
「トルネードなの」
「ちょ」
ぶんっ!
うわああああぁぁぁぁぁぁ……

しーん。

16りっぷる:2008/10/25(土) 01:03:23 ID:jKXbbFhs
「とりあえず、気が済んだの。いい汗をかいたの」
少女の一線でギーシュとマリコルヌが森の方まで飛んでいったのを見送った少女が額ににじんだ汗を拭くまねをしながら振り返った。
手に持った金属の棒は、いびつに歪んでいる。
「ミミミス・ルイズ、とりあえずコントラクトサーヴァントを」
あまりの出来事に呆けていたルイズは、コルベールの耳打ちにはっと我に返った。
まだ儀式は半分しか終わってない。残り半分は……。
「あ、あのね」
こくこく。
「何も言わなくていいの」
「いや、わたしの話を……」
「もう気にしなくても良いの」
「えーと」
「悪はやっつけたの」
「あのね」
「強く生きるの」
「いや、だから」
「ヒーローは名前を告げずに去っていくの」
ぢゃ。
すちゃっと片手を上げた少女は脱兎のごとく駆け出す。
「ちょっと、またんかーい!」
逃走失敗。
ふるふると震えたルイズは、がっしと少女のケープをつかんだ。
「またもや、しっぱいなの。なかなか手強いの」
肩をすくめる少女。
「あのね、あんたはわたしの魔法で召喚されたんでしょ?」
「多分思い違いなの。気のせいなの」
座った目のルイズににじりよられた少女は、ふるふると首をふる。
「わ・た・し・の・ま・ほ・う・よ・ね」
「不幸な出来事なの。誠に遺憾なの」
「いいわ、とりあえず、コントラクトサーヴァンとしてから話を聞かせてもらうわ。おとなしくしなさい」
「百合の趣味はないの。それはへんたいなの。ろりこんなの」
「うるさーい! そこへなおれっ」
「全力全開でお話は聞かないの。逃げるの」
ルイズの一瞬の隙を突いて脱兎のごとく駆け出す少女。そして、それを追いかけるルイズ。

たたたた。
だだだだ。

たたたた。
だだだだ。

たたたた。
だだだだ。

「……さ、皆さん。とりあえず教室に戻りましょう」
妙ににこやかなコルベールに促され、あっけにとられてずっと置いてけぼりだった生徒達は我に返って教室へ向かう。

「まてーっ」
「またないの。脱兎のごとく逃げ去るの」

ルイズと少女の追いかけっこはまだ続いていた。
17りっぷる:2008/10/25(土) 01:04:46 ID:jKXbbFhs
おしまい。

妙な物を書いてしまった。たまには、息抜きにいいよね。と言うことで。
「お・り・が・み」 から 「リップルラップル」です。
18名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 01:16:46 ID:U6IbHFZ+
ごめん…マジでギップルと読み間違えた…
19名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 01:21:31 ID:jC4WRB7D
ギップル召喚だと、ギーシュが大ピンチだなw
20名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 01:21:40 ID:lOB3HfD7
>>18
俺も
21名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 01:23:46 ID:UTIW+nOy
>>18
「こいつはくせえッ―!ゲロ以下のにおいがプンプンするぜッ――――――ッ!!」
って言う妖精だっけ?
22名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 01:28:53 ID:yG9HzVTL
>>21
お前はギップルをなんだと思ってるんだwwwwwwww
りっぷる乙です
23名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 01:29:36 ID:qkdJk5jN
荒らしに荒らし文句の一部に組み入れられて結果スルーの憂き目に遭ってるが

ルールじゃないけどマナー上しておく方が良い事・システム上の注意事項
投下時はタイトルをコテハンとする、トリップ推奨
予告でクロス元他必ず説明する(一発ネタ等でばらすと面白くないならその旨明示)
 ※過去「投下してもいい?・投下します」等の予告から
  最低の荒らし投稿を強行した馬鹿者が居たため同類認定されるリスク極大

1時間に一定量超える投下は「さるさん」規制に遭うので注意
連投規制には有効な支援レスもこれには何の役にも立たない
文章量(kB)と分割予定数の事前申告をしておけば、規制に伴う代理投下をしてもらいやすい
投稿量カウントも規制も正時(00分)にリセットと言われている
他スレでの実験により規制ボーダーは8.5kBらしいという未確認情報あり

については現時点でもまだ未確定要素の多さゆえテンプレに入れるに入れられない「要留意」事項
さるさんの規制パラメーターは下手するといまだに現在進行形で変移中の可能性もある
そこだけは間違いの無いように
24名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 01:37:35 ID:HEEvIfsh
今、書いてるヤツを
そろそろ本気で
急がなきゃいけない気がしてきた
25名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 01:50:09 ID:ir5pPq3H
りっぷるの方、乙です。
元ネタ知らないのがちょっと悔しい。
26名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 02:00:52 ID:9ndMtMxD
亀だが久保の人乙
最後の一機が激しく気になるw
マサキ繋がりでシュウかな?
27PSYFERの人:2008/10/25(土) 02:02:20 ID:dzsLMczs
久しぶりに投下予告。

今回もチョイ短め。
28名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 02:02:44 ID:ISmCNcUq
ショタの人お久しぶり
29PSYFERの人:2008/10/25(土) 02:04:38 ID:dzsLMczs
追いかけたらトリスタニア

ギーシュは少し困っていた。
モンモランシーと一緒に店に入ったら、ルイズと修太が見たこともない大男と親しげに話していたから。

「あら、ギーシュとモンモランシーじゃない」
「やあ、ルイズ、シュータ。その人は、誰だい?」
「この人? オーゾラ・シズカっていって、シュータと同郷よ」
「よろしくな」

ルイズは、ギーシュとモンモランシーに大空を紹介した。
修太の服装を見たモンモランシーは、眉をひそめてこう言った。

「ルイズ、この子、男の子でしょ」
「そうよ。れっきとした男の娘よ、シュータは」

キッパリと言い切るルイズ。
どうあってもスカートをはかせる気のルイズを尻目に、修太は自分で服を見繕うことにした。
去年より性質が悪くなっている。
ギーシュは心の中でルイズをそう評した。
流石に不憫に思ったのか、ギーシュが修太に話しかける。

「君も大変だな」
「うん。結構苦労してるよ」

結局、修太は自分に合う子供服を見繕ったが、ルイズは「お仕置き用」の名目で、ヤバイ下着や服などもゴリ押しで買おうとしたところ、後ろから声が聞こえた。

「甘い甘い。目の付け所はいいけど、選り好みしすぎよ」

ルイズが振り返ると、そこにはキュルケとタバサがいた。
ルイズはファイティングポーズをとり、修太は両手の人差し指を向けて臨戦態勢に入る。
それを見たタバサが割って入った。

「大丈夫。今日は襲うつもりは無いみたい」

この一言に安心したのか、二人とも臨戦態勢を解除した。
かくして、キュルケの助言によりお仕置き用のヤバイ服と下着の購入数は一気に増えることとなる。
お仕置き用のやつを、こっそり焼却処分したくなった修太であった。
30名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 02:06:33 ID:ISmCNcUq
支援
31PSYFERの人:2008/10/25(土) 02:06:42 ID:dzsLMczs
昼飯時。
ルイズの馴染みの店で、みんなは昼食としゃれ込んだ。
無論、シュータはルイズの隣に座らされたが、彼の隣にキュルケが座ろうとしたため、ルイズがまた吼えた。

「ちょっと、何シュータのとなりに座ろうとしてんのよ!」
「別にいいでしょ! 減るもんじゃあるまいし」
「うるさい! 黙れ!! シュータに近づくんじゃねえよ!!!」

ケンカするほど仲がいいというやつであろうか。
もっとも、それを言った瞬間、公衆の面前であのお仕置き用のヒモパンを履かされかねないので、シュータは黙ることにした。
修太が心の中で呆れ果てているところに、大空が話しかけてきた。

(二人とも、醜い……)
「チビ」
「何?」
「マチルダ、って女、知らねえか? 緑色の長髪で、メガネかけてるんだが」
「知らないよ」

あっさり即答する修太。
しかし、それを聞いたモンモランシーが割って入った。

「私知ってるわ。名前は違うけど、今聞いた特徴に一致する人」
「本当か?」
「その人、ロングビルって名前だけど……」
「たぶん偽名だな。そいつ、何処にいるんだ?」

藁にも縋る思いで質問する大空。
モンモランシーは大空のあまりの必死さに引きながらも、答える。

「トリステイン魔法学院で、学院長の秘書をやってるわよ」
「そうか……。あいつ、真っ当に働いてるのか」

自分の予感が外れた思い、胸をなでおろす大空。
しかし、予感は残念ながら当たっていることを、彼は数日後に痛感することとなる。
32名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 02:07:24 ID:qhCx7djr
支援
33PSYFER THE BLAZE:2008/10/25(土) 02:07:57 ID:dzsLMczs
すったもんだの末に昼食を終え、ルイズたちは気ままに買い物を楽しむことにした。
タバサは本を漁りに、ギーシュとモンモランシーは宝石店に、ルイズとキュルケはまた口論、大空はドサクサに紛れて修太と一緒にチクトンネ街へ。
いつの間にか修太がいなくなったことに気付いた二人が慌てるのは数十秒後。

大空と修太は、武器屋に入った。
なんとも怪しげな雰囲気。
店主も怪しげであった。

「いらっしゃいまし、何をお求めで?」
「そろそろ素手じゃきつくなってきたんで、剣を買おうかと思ってな」

大空と店主が話す間、暇なので修太は店内の武器を見て回った。
あれこれ眺めているうちに、明らかに安物ばっかりが入れられているカゴが目に入る。
それに近づいた瞬間……。

「うわ、コラ、テメエ近づくな!!」

突然聞こえてきた怒声に、修太だけでなく大空も驚く。
その声は、明らかにカゴの方から発せられていた。
気になった大空は、その内の一本を手に取る。
結果は、大当たり。

「お前、使い手か!」
「……何だ、それ?」
34PSYFER THE BLAZE:2008/10/25(土) 02:09:14 ID:dzsLMczs
数時間後、学院の広場。
ロングビルことフーケは、屋外から下見をしていた。

「固定化がかかってるから、錬金は無駄っぽいね……。ん?」

何となく視線を別のところに移すと、学院に戻ってきたルイズたちが目に入る
一行の中に、思いっきり見慣れたのがいた。

(な、何でオーゾラがいるんだよ!)

パニックになるロングビル。
しかし、そんなことは露知らず、彼女の姿を確認した大空が話しかけてきた。
ロングビルは他人のフリを決め込もうとしたが……。

「おい、おマチ」
「おマチゆーな!!」

……大空の作戦にあっさり引っ掛かってしまった。

(ぎゃあああああああ! 思わず返事しちゃったー!!)


在りし日の思いでヒラリ。
けれど父も、彼が尽くした大公家も、もうない。
真夜中、土くれが虚無の使い魔二人に挑む。
次回、「あの頃…」
離れていても、分かれていても、まぶたと心の内に強く焼きついている。
この世の光と共に眩しく、あの日のティファニアが。
35名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 02:10:35 ID:qhCx7djr
支援
36PSYFERの人:2008/10/25(土) 02:11:58 ID:dzsLMczs
はい、投下終了。

ブランクが長いから感覚がどうも……。
37名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 02:33:49 ID:ISmCNcUq
サイファーの方乙

だんだん危ない人たちにw
38名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 08:02:08 ID:Yas/XvBq
久保の人乙です
虫ロボかあ…
あの暑苦しい第五惑星の連中か
そうなると必然的に三機目が
39名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 10:02:22 ID:fLO4PfpH
乙ー

地の文は全部銀河万丈なのかw
40名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 13:14:19 ID:Jql0wUfH
ロボ物を召喚したがハルケでも整備・補給問題に煩わされず、なおかつチート過ぎない
のってあんまりないな…聖刻伝の操兵や狩猟機は仮面以外はハルケ技術でも大丈夫
そうだけど、だったらそのサイズの土ゴーレムでいいじゃんって言われそうだ。
41名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 13:23:52 ID:QQvhDiuf
>>40
ロボ物といえるかどうかは微妙だがRシリーズは?クロノ・トリガーの。
ロボがあれだもの。きっとメンテフリーでいけるって。
42名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 13:34:58 ID:vcu/pR8u
>>41
ルッカが定期的にメンテしてんじゃねえの?
とおもったが400年はメンテなしで植樹事業やってたからな
43名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 13:51:51 ID:38v6CCYL
>>40
TRPGのワースブレイドだと操兵は低レベルの呪文を無効化できる
と明記されている。從兵機であってもかなり強いぜ。

デルフの出番は操兵が使えない時にたくさんあるし、
操兵の血液も段階的に進めれば面白くなるはず。
秘操兵は世界設定の問題があるからなるべく使わない方がいいだろうな。
44名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 13:54:48 ID:mexd64ev
ルッカが生きてる間は定期メンテナンスしてたんだろう。
ルッカの死後はその子孫達がメンテナンスしてたんだろう。
その後はがたが来て神殿で飾りになっていたんだろう。
45名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 14:15:02 ID:H+WfJZX5
ラピュタの機械兵とかメンテフリーそうじゃないか
いやいっそラピュタを召喚で
46名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 14:41:09 ID:tKPuw5dO
>>40
前々スレ読めば良いと思うよ
47名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 14:41:31 ID:xBdK0fP5
みんなが突っ込まないところをみると、りっぷるの「野茂のトルネード」は元ネタからそうなのだろうか?
投法の名称なのにバッティングしてるのは。
48名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 14:42:44 ID:D9R4Y6kE
サモンナイトの機械兵士とかは?
あれなら適度に強く、多少の損傷なら自己修復可能
定期的に日向ぼっこするだけでエネルギー切れの心配もない
49名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 14:46:46 ID:Abcp6YZy
>メンテフリーのロボ

ゴーバリアン@『サイコアーマー・ゴーバリアン』
とかw
レインボーセブン@『愛の戦士レインボーマン』
とかww
50名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 14:47:42 ID:r1pMrEYG
空気を読まずに投下したい。

元ネタ  NG騎士ラムネ&40

キャラ  ダ・サイダー、メタコ、(守護騎士)

OKならば10分後ぐらいに投下したい。
ちなみに、1話・2話はあえて蹂躙さえてもらってるので、読みたくない人は、NGとかしてほしい
51名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 14:52:17 ID:AOvE/EZJ
しえーn
52サイダー&ゼロ:2008/10/25(土) 14:57:23 ID:r1pMrEYG
ここ、トリステイン魔法学院で爆発音が響き渡る。
「留年だな」
「まぁ…『ゼロ』だから、予想していたけどな…」
などと言われているが、懸命に爆発させていた。
「はぁ…はぁ…はぁ……ぜ、絶対…せ…成功させるんだから…はぁ…はぁ」
肩で息をする桃色髪の少女は、杖を構え何か呟き出した。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
 五つの力を司るペンタゴン!我の運命に従いし、"使い魔"を召喚せよ!」
何回目かもわからないこのセリフを力強く叫ぶ。襲い掛かってくる運命を突き破る様に…
一際大きな爆発が起きたが、《いつもと違う》少女は何かを感じ、一歩も動かなかった。
(な…なんなの?この感じ…睨まれている?…何?)
爆煙が収まる頃には、異変の正体が徐々にだがわかるようになった。
(え?ひ…人っぽいけど…アレは?)
少女に威圧感を与えていたのは、紛れもなく人だった。
長髪で、見たこともない服装おまけに肩にヘビが居る。
(イ…イヤだ…絶対にイヤだ。人なんて、しかも…変)
「メタコ!ここが何所だかわかるか?」
「アララ王国周辺じゃないのは、確かジャン」
(ヘビが喋った…何アレ?マジックアイテムなの?…正直…関わりたくない)
「そうか…好都合だな。メタコ、収納してあるな?」
「ダーリン、バッチリジャン」
男とヘビの会話を呆然と見守る少女にやや禿げた男が話しかけた。
「ミス・ヴァリエール、早く契約してください」
「イヤです」
少女は、即答した。
「いや、伝統ですから…嫌でも契約してください」
「でも…アレ人ですよ」
少女は男を指差す。
「それに、変な服だし、ヘビと会話しているし、関わりたくないです!」
「しかし、これは伝統なのです。仕方が無いでしょう。諦めなさい」
「はい」
クルッと振りかえり、男の方へ一歩、また一歩と近づいた。
「ダーリン、こっちに向かってくる奴がいるジャン」
男は腕を組み、何かを考え始めた。
「アンタ!」
「45点だな…5年後に会おう」
53名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 14:58:00 ID:lUxn/Dff
矢尾支援
54サイダー&ゼロ:2008/10/25(土) 14:58:30 ID:r1pMrEYG
男が立ち去ろうとした時、少女の目付きが変わった。まるでライオンの様に…
「ま…待ちなさいよ。な…何が45点なの?…5年後?一生会いたくない無いのよ!こっちは…」
「あ…いや…それは…うわぁ…(レスカ以上か…厄介だな)あの…だから」
こんな険悪な空気の中、一人の勇者が現われる。やや禿げた男だ。
「こらこら、二人共やめなさい!」
「なんだお前は?この、俺様に何か用でもあるのか?」
「何?俺"様"?…ヘビ連れているからって良い気にならないでよ…」
ライオンの言葉についにヒョウも牙をむく。
「なんだと!ガキだからって偉そうに言うな!この俺様を誰だと思っている!」
「アンタみたいな変人、知らないし、関わりたくないの!!」
「この、ドキドキスペースに、その名を轟かす俺様を知らないだと!?」
「はぁ?ドキドキスペース?何よソレ?」
この時、男はある違和感に気付いた。
(変だな…俺様にここまで言うなんて、レスカか、ラムネスのファンぐらいだ…そうか!)
「お前…ラムネスかレスカのファンだな?」
「らむねす?れすか?誰よ!それ!」
ライオンは一気に戦闘態勢に入る。が…何時までもキリが無いので、勇者が止める。
「ミス・ヴァリエール。早く使い魔の契約をしなさい!
君一人で、どれだけ時間をかける気でし気ですか?」
ストレスがだいぶ溜まってきた、禿げっぽい男の一言。
「で、でも人ですよ?正気ですか?」
「諦めなさい。とにかく契約しなさい」
「わかりました。アンタ!」
だが、男は腕を組み何か苦しそうに悩んでいた。
(ツカイマ…どうすればいい?これは難しいお題だ…)
「ちょっと!どうしたのよ!」
「ツ……ツ……ツカ……ツカイ……ツカイマ……だ…駄目だ…」
「ダーリン??」
心配するメタコ、驚く少女、禿げっぽい男が近づく。
「君、大丈夫かね?」
男の肩に手を置こうとするも、払われる。
「ダーリン。しっかりするジャン」
メタコが懸命に励ます。
「出てこないんだ…もう駄目だ…力尽きた…メタコ…後は、頼む…ぞ・・・」
「ダーーーーリン!!!!」
ガクッとその場で倒れこむ男、それを見る少女と、禿げっぽい男。
55サイダー&ゼロ:2008/10/25(土) 14:59:38 ID:r1pMrEYG
少女がゆっくりと口を開く…
「あの…何やってんのよ?」
男が寝ながら答える。
「盛り上がるだろ?」
少女は黙り込み、体が震え始めた…
禿げっぽい男が先に進めようとがんばる。
「名前は、何と言うのですか?」
「何だ?失礼だな。このハゲ、まずは自分から名乗るべきだろう」
『ハゲ』この単語はかなり堪えたが、耐えた。
「失礼、私はコルベールと言う者です。彼方は?」
「ダ・サイダー。勇者ダ・サイダー様だ!」
しばしの沈黙・・・
コルベールと名乗った男が沈黙を無理矢理に破る。
「あ…あの、自称勇者さん…彼方は…えっと…このミス・ヴァリエールによって召喚されたのです。
ですので…使い魔にならなければいけないのです」
「ハゲ!一方的に決めるな!この勇者ダ・サイダー様が奴隷だと!!」
「そうジャン!そうジャン!ダーリンじゃなく『ツルッパゲ』がやるべきジャン!」
ダ・サイダーとヘビ(メタコ)の猛反発は予想していたが、ヘビに『ツルッパゲ』これが効いた。
「グダグダ言わないで、やりなさい!!ミス・ヴァリエールさっさと契約しなさい!!」
「はい。本当はしたくないけど、私の進級も懸かっているし、仕方なくやるんだからね!!」
「あまりにも一方的過ぎだ!少し考えさせてくれ」
(ドキドキスペースを知らないと言っていたな…本当かどうか気になる?
それに、奴隷…か。ロマンを探せないのも問題だな…条件次第か?
それに、いざとなれば…とんずらだな。)
「悪いが、条件を提示させてもらう。居・食・住は有るだろうが、それ以外にも俺様は…」
「なによ!条件なんて、ふざけないでよ!」
少女が怒るが、ダ・サイダーは話を進める。
「俺様は…ロマンを…そうロマンを探し、旅をしているのだ…」
遠い目をしながら語るダ・サイダー。
「はぁ?まあいいわ。早く契約するから、座りなさい」
ダ・サイダーは、その場に座った。
「ああ」
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール
 五つの力を司るペンタゴンこの者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
56サイダー&ゼロ:2008/10/25(土) 15:00:37 ID:r1pMrEYG
少女が呟き、そして顔を近づけ、そして・・・契約する。
「な…なにをするんだ!」
反論するダ・サイダーだが、直後に額に激痛が走り、のた打ち回る。
「今、ルーンが刻まれているだけ。すぐに終わるから、我慢しなさい」
ハゲ男もとい、コルベールはダ・サイダーに近づき、刻まれたルーンを見る。
「額にルーンか…しかも、珍しい」
そう言うとさらさらっと、額のルーンをメモして、ヘビをよく見る。
「な………これを、貸してください」
「バカな事を言うな!断わる!いくぞ!ガキ」
「ガキって言うな!ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールわかった!」
「・・・長いな、縮めてくれ」
「大きな……お世話よ―――!!!」
ルイズと名乗った少女の蹴りをみぞおちに受けダウンするダ・サイダー。



こうして、無事?にルイズは使い魔召喚を成功させた。
勇者ダ・サイダーは使い魔となり、己のロマンを追い求めて行く。
ルイズはまだ知らない。ダ・サイダーのロマン=禁断の駄洒落だという事も知らずに…
57サイダー&ゼロ:2008/10/25(土) 15:02:42 ID:r1pMrEYG
投下終了です。
58名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 15:05:32 ID:DieE9zv4
額のルーンってことはミョズ?
どちらかといえば憚られるほうでしょ、駄洒落的に考えて……
59名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 15:05:51 ID:vsaFCjh9
ダサイダーは好きだから期待。
60名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 15:58:56 ID:u4k9H9JL
>>40
青の騎士のケイン・マクドガルみたいに、メンテもままならない状態で
ボロボロになっても戦い続けたロボット物の主役だっているんだぜ
要は話の運びようじゃね?
61名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 16:28:18 ID:Co2eHknK
ダ・サイダーか〜
熱くて燃える奴だし、純情なとこもあって見栄を張るためには努力を惜しまないイカしたキャラなんだよね
バカだけどwww
62名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 16:45:27 ID:d0zovbdL
バカな使い魔ってのもいいなあ。
才人も底抜けの大バカだったが、ルイズの胃袋持ちこたえられるのかね
63名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 16:51:01 ID:sfYkh9Rg
この世界では言語体系が違うようだから
日本語のダジャレなんざ多分通じないと思うんだが
存在意義的にピンチじゃないか……?
64名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 17:01:53 ID:cA5YB7Ug
なあもしガンダじゃなくて憚られるだったら胸にルーンが刻まれるんだよな
召喚されたのが女の子だったらコッパゲはルーンのスケッチどうすんの?
その場で脱がしちゃうの?
65名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 17:04:02 ID:UOU5MMnM
そこをどうするか、作者の腕の見せ所というわけだ
66名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 17:11:11 ID:QZmAMWRS
使い魔に人権はないから問題ない
67名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 17:43:31 ID:d0zovbdL
コッパゲが
「よいではないか、よいではないか♪」
をするのですか!?
68名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 17:45:33 ID:tKPuw5dO
ミョズニトニルン剥き放題とかお前どんだけ変態だよ
69名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 17:49:36 ID:+osvDOOt
そこはおや?ルーンが見あたりませんね…でFAだろ…jk
70名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 17:52:54 ID:+osvDOOt
と思ったけどよく考えたらルーン刻まれる時気づきますよね^^
なにこれ…気持ちいいっ…!って言うはずですもんね。
71名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 17:54:49 ID:r1pMrEYG
>>70
合体する時のあいつ等の事か?
72名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 17:56:52 ID:611X92vq
なんかエルフを狩るモノたちを思い出した。
73名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 18:04:13 ID:3PiZZeUQ
医者が女性の患者を診察するように、完全に職業人の視線なら大丈夫かと
「使い魔として召喚された」「平民」の胸を見たところでコッパゲの評価落ちるとも思えん
74名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 18:15:59 ID:sfYkh9Rg
>>73
客観的に見て
女性を無理矢理脱がしておっぱいをガン見して書き写すハゲ教師だぞ
75名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 18:20:08 ID:8LfisSh1
人間を召喚したときの貴族連中は誰であれ評価最悪だろw
76名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 18:22:49 ID:Dl/czsJy
エグゼリカは整備施設付きの船ごと召喚されてたな。
復帰しないかな。
77名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 18:23:31 ID:T4wI0+0h
>>74
ギーシュ「平民とは言え、嫌がる女性の服を無理やり剥ぎ取り、
       その肌を衆目に晒すとは、貴族の男児にあるまじき仕儀!
       このグラモン家三男ギーシュ・ド・グラモンがその腐れた根性を叩き直してくれる!
       ミスタ・コルベール、彼女の名誉をかけて貴方に決闘を申し込む!!」
78名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 18:36:48 ID:UOU5MMnM
なんというきれいなギーシュ
79零姫さまの使い魔:2008/10/25(土) 18:40:03 ID:Al5bgApa
投下予告が無いようでしたら、50分から投下します。
80名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 18:42:21 ID:r1pMrEYG
>>77
コッパゲ「ギーシュ君、君は土のメイジだったね。
      彼女は、自然その物を体で表現している。
      よく見て、学び…そして、全てを開放しなさい」


81名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 18:42:23 ID:4Ic141q2
今日古本屋で「ラブやん」を見かけたので買った。結構面白い。
これとゼロの使い魔を組み合わせれば、きっとさらに面白く・・・!

「ゼロの使い魔・ヒラガサイト 見〜〜〜〜参ッ!!!」(ドン)
「…………」(記すことさえはばかれる格好)(ナイスミドルの挿絵付き書物)
ゴゴゴゴゴ……
「ぎっ……ぎゃーーっぎゃーーっうわーーーッ!!!」
「な……なんなのよアンタ!? ノックぐらいしなさい!!」
「そっちこそ○○○くらい隠せよ!!」
「ルイズーーっうるさいわよナニを騒いでるの!?」(ドンドン)
「!! キュルケ!!」
「聞いてよ あの変な男が突然……」(ガチャッ)
「……ダレもいないじゃない」
「い……いるじゃないの ホラそこ 部屋のド真ん中!!」
「ルイズ……(ホロリ)つかれてるのね……大丈夫!
 魔法くらいあなたなら使えるようになるわ!!
 永遠のライバル……ツェルプストーとヴァリエールの宿命でスもの……!!」
「いやそーじゃなくて……」

……無いな、これは……いろんな意味で……。
82名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 18:43:03 ID:r1pMrEYG
胃炎…じゃなく、支援
83零姫さまの使い魔 第三話@:2008/10/25(土) 18:50:20 ID:Al5bgApa
「あっしは手の目だ
 先見や千里眼で酒の席を取り持つ芸人だ

 そう…… あっし芸はあくまで余興 探偵の真似事はやってねぇ
 探偵の助手の 医者の真似事もね
 一体 何が言いたいのかって? 怪盗探しは本職に頼めってぇ事さ!

 フン 怪盗 怪盗ねぇ……
 あんまり古風な響きなもんで こっちも思わず吹き出しちまうってぇもんだが
 そいつが馬鹿デカイ土人形の繰り手と聞けば 流石に笑えた話じゃない
 ましてや そんな怪物 捕えてこいと言われた日にゃァ 益々もって笑えねぇ
 全く…… ウチのお嬢は 何考えてやがるんだ?
 蟇蛙みたいにペシャンコになってくたばるのは こっちは絶対御免だぜ」





「なあ お嬢 あっしにゃどうにも分からねぇ」

荷馬車の上で揺られながら、手の目が何度目かの愚痴を零す。
話を振られたルイズの方は、ただ、先に見える深い森を見つめ続けていた。

「学院の大事なお宝が 巷を騒がす大怪盗【土くれのフーケ】に盗まれた
 早いうちに取り返さなきゃあ 伝統ある魔法学院の面子に関わる……と ここまでは分かる
 だがなんだって その捕り物に お嬢が名乗りを挙げるかねぇ?
 下手打ったのは教師共だ あいつらに任せときゃいいだろうに」

「これは個人の責任問題ではないわ 手の目」

敢然と、ルイズが言い放つ。

「世の貴族は ただ単に魔法が使えると言うだけで 平民の上に君臨しているわけではないわ
 始祖から継いだ魔法の力で 弱者を保護し 世界の秩序を守っているからこそ 
 様々な特権を受ける資格を持つのよ
 その秩序の担い手達が 世を乱すメイジ崩れの力を恐れて野放しにしているなんて 
 本来 絶対にあってはならない事なのよ
 ここで誰かが杖を掲げなければ 私達貴族に 繁栄を謳歌する資格は無いわ」

見事な正論であった。
これで彼女に相応の実力が伴っていれば、なお良かったのだが。

更に反論しようとしていた手の目であったが、ふと、何事か思い出して口調を変えた。
84零姫さまの使い魔 第三話A:2008/10/25(土) 18:52:30 ID:Al5bgApa
「ときにお嬢 フーケの犯行を目撃したって言ってたが
 あんた等なんで あんな時間に中庭なんかに居たんだい?」

「え?」

「そういや昨夜 ものッ凄ぇ爆発音を耳にしたが 
 今にして思えば あれもフーケの仕業だったって事なのかい?」

「――プッ!」

手の目のとぼけた台詞に耐えかね、傍らにいたキュルケが盛大に吹き出した。
反射的にルイズが睨みつけるが、キュルケは耐えられないといった風で、口元を抑え小刻みに痙攣していた。
そんな友人の様子に、隣のタバサは少し顔を上げたが、すぐに手元の書物に視線を戻した。

(なんだ……)
手の目がため息をつく。
昨夜、何があったのかまでは分からないが、頑丈な宝物庫の外壁を破られ、
賊の侵入を許したそもそもの原因は、ルイズの魔法の暴発にあった、というわけだ。
それを、貴族の使命まで持ち出して取り繕っては、キュルケが悶絶するのも無理からぬところである。

(それにしても 高慢チキのキュルケに鉄面皮のタバサ ね
 妙な取り合わせだとは思っていたが……
 何でぇ お嬢も意外と 友人に恵まれているじゃあねぇか)

手の目が三人を見回す。
勿論、彼女達にもそれぞれに動機があり、相応の自負があって、秘宝の奪還に参加したのであろう。
が、そもそもルイズが志願しなければ、二人も行動に移ることはなかったはずだ。
留学生である二人にとって、今回の怪盗騒ぎは、対岸の火事のようなものなのだから、

「……なによ手の目 妙にニヤニヤして
 主人の決めた事に不服でもあるの?」

「ン いやぁ……
 魔法学院の至宝ってのは 一体どんなお宝かと思ってね」

問答にも飽きたのか、手の目は心にもない言葉を口にした。



85名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 18:55:18 ID:r1pMrEYG
支援
86零姫さまの使い魔 第三話B:2008/10/25(土) 18:55:50 ID:Al5bgApa
「ここが 件の怪盗がらしき人物が目撃された小屋ですわ」

鬱蒼と生い茂る森林地帯をしばらく進んだところで、先導役のロングビルが指さした。
確かに森の奥には、いかにもな雰囲気を出している小屋が見えた。

「フム 見たところ 人の気配は無さそうだね」
「あなた…… そう言う台詞は せめて中を見てから言いなさいよ」

やる気無さ気に右手をひらひらさせる手の目の仕草に、思わずキュルケが苦笑する。 
しばしの作戦会議の後、手の目、キュルケ、タバサが中に進入、
ルイズは入り口の見張り、ロングビルは周辺の偵察と役割を決めた。

「……たく なんで私が見張りなんか」

「そりゃあ メイジは重要な戦力だからね 
 魔法が使え無ぇので前後を固めて 不意打ちから守るためさ」

「なっ!」

ルイズの抗議を避けるように、手の目がそそくさと入り口のドアをくぐる。
その後ろを、慌てて二人が続く。

「はいはい どうせ留守だろ? 勝手に失礼しやすぜ
 しっかし こりゃまた 酷い有様だねぇ」

「ちょ ちょっと…… もっと慎重に動きなさいな」

「と言っても どうせこちとら罠の知識も無ぇんだ 余計な詮索するだけ無駄さ」

我が物顔で室内を物色する手の目に、キュルケもタバサも、驚きを通り越して呆れ顔を見せる。
これ程までに大胆な犯行は、それこそ件の、土くれのフーケですら行わないであろう。
尤も、狭い室内である。罠を仕掛ける場所もおのずと限られてくる。つまり――、

「……やっぱり この宝箱よね」
「あからさま過ぎる 迂闊に手を出すのは危険」
「ああそうだね でも もう開けちまったよ」
「あ…… あなたねぇ……」

――気を取り直し、三人が宝箱の中を覗き見る。
  箱の中には、つばの広い、上等そうな山高帽が一つ。

「間違いない 学院の至宝【破壊の帽子】」

「それにしても 何度見ても理解に苦しむわね
 そんな何の変哲もない帽子が 強力な力を秘めたマジックアイテムだなんて」

「これが……? いや…… 何となく あっしには事情が飲み込めてきたような……」

その時である。

「きゃあああああああああ!」
という悲鳴と共に、轟音が三人の頭上を通過し、部屋の屋根が丸ごと持っていかれた。
崩れ落ちてくる瓦礫の間に、やがて、ゆうに30メイルはあろうかというゴーレムが顔を見せた。

「土くれのフーケ!」
「ヤバいわね ゴーレムを使うとは聞いてたけど まさかこれ程のサイズとはね」
「借りるよ」

手の目は短く言い放つと、件の帽子を素早くひったくり、まっしぐらに走り出した。
87零姫さまの使い魔 第三話C:2008/10/25(土) 18:57:25 ID:Al5bgApa




眼前の巨体目掛け、ルイズがしっちゃかめっちゃかに杖を振るう。
小規模な閃光がゴーレムの胸元で弾け、土ぼこりが舞う。無論、効果は薄い。
やや煩わしそうに、ゴーレムがルイズ目掛け、左足を上げる。

「お嬢ッ!」

間一髪、横っ跳びで飛び込んできた手の目が、ルイズを抱きとめる。
直後、大地に爆音が響き、先刻までのルイズの立ち位置が、見る影も無いクレーターと化した。

「手の目! アンタ 何 その帽子?」
「そんな事ァどうでもいい! ズラかるよ!」
「だ だめよ…… 手の目」
「……何だって?」

ルイズはすっくと立ち上がると、震える両手で杖を構えなおした。

「私は貴族よ! ここで敵に後ろを見せるわけにはいかないわ!」

チッ、と、手の目が舌打ちをする。
魔法が使えないというコンプレックスゆえに、ルイズが貴族の在り方にこだわり過ぎるきらいがある事は
彼女が前々から危惧していた事であった。
ここまではっきりと言い切ってしまった以上、もはやルイズは梃子でも動かないだろう。

「ああ! そりゃァ確かに立派な事だ! だがね――!」

手の目は一歩前に出ると、やけくそ気味に声を張り上げた。

「こんな奴 お嬢が直接手を下すまでも無ぇ! 使い魔のあっし一人で十分だ!」
「え?」

気力を奮い立たすべく、手の目が両手で、自らの頬をはたく。
少女の異常な殺気に気付いたか、ゴーレムが少女に向き直り、その巨体を静止させる。

一瞬の静寂。
88名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 18:58:33 ID:r1pMrEYG
え?ルイズ達トンズラ
89零姫さまの使い魔 第三話D:2008/10/25(土) 18:59:05 ID:Al5bgApa
先を取って手の目が動く。
驚くべき事に 彼女は着物の裾を両手で捲し上げると、素早く踵を返し
その小柄な体からは思いもよらない程の速度で、一目散に駆け出したのだ。

「こういう時ャ逃げるが勝ちだ! ついて来な デカブツ!」

「……へっ?
 え? ええ! えええええっ!?」

去り去る少女と立ちすくむ土人形を、半ば呆然と眺めていたルイズであったが
彼女もすぐに正気に返り、脱兎の如く逃走を始めた。

「ア! ア ア ア アンタッ! バカじゃないのッ!?
 何処の世界に 主人を置いて逃げ出す使い魔がいるのよ!」

「五月蝿ぇ! そっちこそ貴族の誇りはどうした!?
 とっととペシャンコに潰されちまえ!」

「絶対イヤ!」

しかし、悲しいかな、ゴーレムと人間では歩幅が違いすぎた。
怒り心頭のゴーレムはたちまち二人に追いつき、小賢しい少女達目掛け右足を振り上げた。

直後、火球と疾風がゴーレムを襲う。
致命傷には程遠いものの、突然の奇襲に大きくバランスを崩し、ゴーレムがたたらを踏む。
何事かと振り返ったルイズの瞳に、宙を舞う竜の姿が映った。

「あれは タバサのシルフィード」
「ルイズ〜! 今の内に逃げなさい」

地上の二人を退却させるべく、風竜がゴーレムの周囲を飛び回る。
いかにも五月蝿そうに、ゴーレムが両腕を振るう。
動きこそ鈍重に見えるものの、直撃すれば命は無い。

「さ 手の目 二人が時間を稼いでくれているうちに……」
「いや……」

暫く肩で大きく息をしていた手の目だったが、キョロキョロと周囲を見回した後、断言した。

「もう逃げる必要は無いね ここでフーケを討つ」




90名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 19:01:34 ID:r1pMrEYG
やっぱ逃げた・・・
91零姫さまの使い魔 第三話E:2008/10/25(土) 19:01:41 ID:Al5bgApa
「さァて さて さて お立会い!
 是なるは 彼のとりすていん魔法学院が至宝
 【破壊の帽子】なる代物!
 見た目は単なる帽子だが、恐るべきはこの窪み!
 中は虚穴 魔界に通じ
 彼の地の異形 当地に自在に呼び出せると言う
 悪魔の如き道具に候!

 ここから先は 論より証拠 行うが易し!
 目の前にある泥人形を
 気合一閃! 屠って御覧に入れましょう!」

澄み切った少女の声が戦場に響く。
突然の手の目の豹変に、傍らのルイズも、頭上のタバサ達も、
敵であるゴーレムまでもが動きを止め、事態の行く末を見守る。
客を惹きつけるおどけた調子、それでいて、他の者が立ち入ることを許さない凛とした気配。
一同は紛う事無く、手の目の芸の世界に居た。

「盛者必衰 変幻自在 画竜点睛 えい! はァ! とァおぅッ!」

いい加減な呪文を捲くし立て、手の目が山高帽を放り投げる。
突風を受けた帽子は勢い良く上空へと舞い上がり、
あたかも蝶の如くひらりひらりと宙を待った後、力尽きたように、ぱさりと地面に落ちた。



――最初に現れたのは血溜りであった。

様子を探っていたフーケが、思わず息を呑む。
ひっくり返った帽子の中に、ゆっくりと真紅の液体が満ちていくのが遠目にも判った。
やがて液体は、容積を超えて滴り落ち、地面を徐々に紅く染め始める。
熟れ過ぎた果実のような、むせ返るほどの甘い香りが鼻腔を突く。
血溜りは既に、手の目の踝まで届いていたが、少女は魅入られたように笑みを浮かべるのみである。

やがて、血河の中からあぶくが生じ、なにやらぬらぬらとした泥の塊が浮かんできた。
塊は外気に触れた途端に脆くも崩れ、それらの中から、乳白色の骸骨が、
或いは昆虫のようなブヨブヨとした腹が、海月のような触手がと、思い思いに形を成し始めた。

同時に、先刻よりも更に強烈な腐臭が鼻を付き、フーケの視界がぐらりと揺らぐ。
血溜まりから飛び出した異形たちは、あたかも一つの生命のように群体を形成し
尚も増殖せんと、うぞうぞと全身をくねらせる。
92零姫さまの使い魔 第三話F:2008/10/25(土) 19:04:02 ID:Al5bgApa
「うわああああッ! 行けッ! ゴーレム!」

フーケが叫ぶ。
異形の正体が何であるのかを詮索している余裕は、今の彼女には無い。

ぐちゃり
ぐちゃり
ぐちゃり
ぐちゃり
ぐちゃり

恐慌を来たした巨体の連打が、痙攣する異形の群れを蹴散らし
大地を大きく抉り、少女の姿を挽肉へと変える。
どすん、と、最後に残った血溜まりを叩きつけた所で、ようやくゴーレムは動きを止めた。

ぜぇぜぇと、暫くの間、大きく肩で息をしていたフーケだったが、やがて異変に気付いた。
ゴーレムが動かない。
腕一本、指の一つも操ることが出来ないばかりか、元の土くれに戻す事すらままならない。
そんなフーケをあざ笑うかのように、徐々にゴーレムの右拳が、血溜まりの中へと引き込まれていく。
染み込んだ血液が土塊の腕を赤く染め、触手が根のように巨体に絡みつき、おぞましいばかりの肉の花を咲かせ始める。
フーケの眼前で、ゴーレムは巨大な異形と化して、やがて、血溜まりの中へと沈んで消えた。

「無駄な努力さ いかに土人形が大きかろうが 地獄の釜の底までは潰せやしねぇ」
「ヒッ!」

背後から聞こえた手の目の声に、フーケが咄嗟にナイフを振るう。
振り向きざまの一撃は、少女の首筋をばっくりと断ち切り、半壊した頭部が宙を舞う。

同時にフーケの右手首が引き裂かれ、鮮血が噴水の如く噴き出す。
茫然自失するフーケの眼前で、血液が少女の形を成していく。

「ヒデェ事をしなさる あっしらは既に一心同体
 気付きやせんか? 手前もとっくに異形の仲間入りをしている事に……」

少女に促され、フーケが俯く。
気が付いた時には、血溜まりは巨大な池となって、フーケの腰元まで浸していた。
じゅぶり、と何者かがフーケの両足を捉え、異様な力で池の底へと引きずり込む。

「あれなるは その名の通り【破壊の帽子】
 此方を魔界と繋いだ以上 もはや 世界の全てを破壊し尽くすまでは止まりませんぜ」

「ヒイィイイイイイイィィィ!」

――とぷん、という水音と共に、
  フーケは赤一色の世界へと沈んで行った……。




93零姫さまの使い魔 第三話G:2008/10/25(土) 19:07:02 ID:Al5bgApa
「茂みの奥で 確かにメイジが一人 気を失っていたわ
 ――手の目の言った通り 腰まで泥沼に嵌った状態でね……」

「まさか ミス・ロングビルが……」

キュルケからの報告を事も無げに聞きながら、手の目は山高帽を拾い直した。
勿論、帽子は血に濡れてなどいないし、彼女も生首ではない。
現実に起こった事を、順に並べるならば、手の目が帽子を放った途端、
ゴーレムが発狂したかのように暴れ出し、やがて勝手に崩れ落ちた――と、ただそれだけの事であった。

「ねぇ 手の目…… アンタはフーケの正体がロングビルだと 初めから知っていたの?」

「まさか ハナっからそいつが分かっていれば 他にもっと 手の打ちようもあったさ
 ――ただ先刻から 常に視線だけは感じていたよ
 眼前の土人形からではなく どこか後方の物陰からね
 彼女はメイジとしては凄腕だったが 黒子としちゃァ三流だったってわけだ」

「それでアンタ 帽子を前方ではなく 後ろに向って投げたのね」

ルイズが嘆息する。
先程の退却も、フーケの居場所を特定するための布石だったという事であろう。
この位置取りで身を隠しつつ、ゴーレムを操れる場所と言えば、後方の草影しか無かった。

「……それで あなたは一体 何をしたの?」

やや緊張した面持ちで、タバサが口を開いた。

「この 土くれのフーケを気絶させた力……
 これがその【破壊の帽子】の能力だと言うの?」

「いいや こいつは本当に 何の変哲も無い山高帽さ
 あっしが使ったのは まあ ちょっとした催眠術みたいなもんだよ
 もっとも ここまで綺麗に決まってくれたのは 帽子のおかげと言えるだろうがね」

「? なにそれ 手の目 どう言う事よ?」

「名物の『箔』が与えた心理効果さ
 なにせこいつは 国一番の識者であるオスマン老が 手ずから封印した学院の至宝だ
 ましてやフーケは 盗み出した張本人
 強力な力を秘めたマジックアイテムである事を期待する余り
 あっしが見せた幻を 何一つ疑うこと無く 帽子の力と決め付けちまったのさ」

手の目はそこまで話すと、両手を三度叩き、高らかと言った。

「さぁ 解決編も終わりだ! 日が落ちる前に 学院に戻りやしょうぜ」

「……でも それもおかしな話じゃない?」

小首を傾げるキュルケの動作に、皆の視線が集まる。

「それが本当に 何の変哲も無い帽子だって言うなら
 どうしてオールド・オスマンは 厳重に宝物庫に封印したりしたのかしら……?」

「……ここから先は 単なるあっしの推測だがね」

手の目はそう前置きをすると、帽子を目深に被り直し、妙に誇らしげな口調で言った。

「おそらくは 彼のオスマン老も 一杯喰わされたんだと思うよ
 そこに転がってる 土くれのフーケと同じようにね……
 本当に凄かったのは帽子じゃない 帽子の持ち主だったってぇ事さ」
94名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 19:07:40 ID:r1pMrEYG
フーケ今回が一番キツイ目に合ってるなぁ…
95零姫さまの使い魔:2008/10/25(土) 19:10:04 ID:Al5bgApa
以上で投下終了です。
破壊の帽子… ネーミングが酷過ぎる上に、元ネタを知らないと意味不明ですが
ルーン補正の無い手の目を支える小道具になればと思います。
彼女にデルフを持たせたら、全編スチャラカになりそうなので。
96名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 19:11:14 ID:WwH7Nef8
即死してるのもあるから、まだマシな方じゃない? 精神的に随分きついだろうけど。
作者の気分次第のキャラたち。生きていられりゃラッキーだ♪
97名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 19:11:32 ID:b58/6s5B
98名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 19:14:39 ID:sfYkh9Rg
正直殺された方がマシってこともあるがな

王蛇のおマチさんなんか最悪インペラーと同じ末路辿りそうだ
あれはいっそベノクラッシュくらった時点で爆死したほうがまだマシだった……
99名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 19:18:52 ID:DieE9zv4
JOJOスレだと至近距離からロケラン喰らってバラバラになった後、吸血鬼にされた作品があったよーな
100名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 19:19:43 ID:OmKzfEl2
うたわれワルドなんかは死ななくじゃなくて死ねなくなったからな
赤スライムで実験動物として永遠に生き続けるって死んだほうがマシだわ
101名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 19:31:42 ID:YhL7uuhh
おマチさん下手したらベルセルクのグリフィスだしなぁ
102名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 19:39:16 ID:DieE9zv4
>>101
そういえばムスタディオ召喚の話は、フーケの胴体が真っ二つになって聖石が輝きだした場面で終わってたな
103異世界BASARA:2008/10/25(土) 19:42:58 ID:RgDfafVD
もし誰も投下予約がないなら、投下してもいいですか?
104名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 19:43:35 ID:Bg9vl8Gn
零姫の人乙

ああ、ついに若旦那ゆかりの物が登場しましたな。
ていうかオスマンの前で何しでかしたのか気になり過ぎるw
105名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 19:44:29 ID:QQvhDiuf
>>103
支援だべ。
106異世界BASARA 1/6:2008/10/25(土) 19:51:21 ID:RgDfafVD
『それじゃあ、僕達は先に学院へ戻るとするよ』

氏政が昏睡状態から回復したので、ギーシュは魔法学院に帰っていった。
しかし、幸村は未だ目覚めない……
ギーシュと氏政が帰ってからも、ルイズは幸村の隣で起きるのを待っていた。
幸村の眠るベッドの隣にある椅子に腰掛け、一生懸命に何かを編んでいた。

と、カチャリと扉の開く音がした。
「ルイズ、入りますよ?」
開いた扉から、中にいるルイズに声を掛けながら誰かが入ってくる。
聞き覚えのある声にルイズは振り向くと、トリステインの王女であるアンリエッタがいた。
笑顔こそ浮かべていたものの、どこか哀愁を漂わせた表情であった。
「ひ、姫殿下!?」
ルイズは咄嗟に編んでいた物を後ろ手に隠した。が、はみ出た編み棒がアンリエッタからも見えてしまっていた。
「ユキムラさんに?」
「い、いやあの……これは……」
「そんなに恥ずかしがらなくてもいいじゃない。きっとユキムラさんも喜ぶわ」
ルイズはモジモジしながら赤くなった顔を伏せた。

「やだ、私ったら忘れてしまう所だったわ」
アンリエッタは我に返ると、ルイズに一冊の本を手渡した。
「姫殿下、これは一体」
「始祖の祈祷書よ」
ルイズは驚いて渡された本をまじまじと見る。
始祖の祈祷書といえば、王室に伝わる伝説の書物である。
そんな国宝級の書物を何故自分に渡すのだろうか。
「私がゲルマニアの皇帝と結婚するのはもう知っているでしょう?その式で、詔を読み上げる巫女を用意しなければいけないのですが……」
アンリエッタは一呼吸置くと、ルイズを見て言った。


「その巫女の役をルイズ、あなたにやって欲しいの」
「はぁ……ってええっ!わ、私がですか!?」
107異世界BASARA 2/6:2008/10/25(土) 19:53:30 ID:RgDfafVD
「あ、もちろん草案は王宮の者がちゃんと推敲するのよ。大変かも知れないけど……でも、私は親友のあなたにやってほしいの」
アンリエッタは不安そうにルイズを見つめた。
きっと、姫殿下は自分の事を信頼してくれているからこの役目をお願いしているのだろう。
ならば、自分は彼女の親友として応えなければいけない。
「わかりましたわ。この役目、謹んで拝命いたします」
ルイズはアンリエッタに微笑みながら言った。


場面は変わり、トリステイン魔法学院……


「うわあぁぁぁぁ〜〜持病の水虫じゃあ〜〜!!!」


早朝の学院に、氏政の叫び声が響き渡る。
その叫びを合図に、各部屋の生徒達が不機嫌そうに起き始めた。
最早恒例となってしまったこの氏政と、今は王宮で眠っている幸村の雄叫びは起床の合図代わりになっていた。
特に、氏政は朝、昼、晩と必ず決まった時間に叫ぶ為、最近ではそれに合わせて昼休み、就寝となっている始末だ。
そして、いつもならこの後にギーシュが飛び起き、氏政に文句を言ってくるのだ。

しかし、部屋はしんと静まり返っていた。
氏政は無言で部屋を見回すと、ギーシュの姿が見当たらない。
「……あいつめ、また外じゃな」
むくりと体を起こし、腰を擦りながら氏政は部屋を後にした。
108異世界BASARA 3/6:2008/10/25(土) 19:58:39 ID:RgDfafVD
魔法学院の「風」と「火」の塔の中間にある「ヴェストリの広場」。
幸村とギーシュが決闘をした人気のないこの場所にギーシュはいた。
「あ、そーれ!ふん!ふんっ!あ、そーれ!ふん!ふんっ!」
そこでギーシュは、一心不乱に腹筋を繰り返していた。
「これで……ふん!20回……!新記録だ!ふんっ!!」
汗だくになりながら、ギーシュは腹筋を繰り返している。

――今よりも、もっと強くなる――

あのアルビオンの港での戦いで、自分の未熟さを実感した。
そしてトリステインに帰ってから、彼は強くなる事を決心したのである。
とはいえ、今まで特訓などあまりした事のないギーシュは何をすればいいのか良く分からなかった。
そこで、とりあえず体力をつけようと朝の運動を始める事にしたのだ。

「今日も精が出とるのぉ」

腹筋を続けていたギーシュの後ろから声がした。氏政だ。
「ウジマサ……かい!?悪いけど、ふん!話し掛けないでくれ、たまえっ!!」
ぜえぜえと息を切らしながらギーシュは言った。
「無駄な事じゃと思うが……まぁ頑張るが良い。わしは朝飯を食いに行っとるぞ」
ギーシュは腹筋に集中しているのか、氏政の声が耳に入っていないようだ。
氏政はそれを横目に、ヴェストリの広場を後にした。

食堂に向かう道中、氏政は先程のギーシュを見て思った。
(ふん、初めて会った時から随分と立派になりおったな……)
ふと、今までのギーシュの行動を思い返してみる。
正直、頼りない奴だと思っていたが、意外に芯のある男だ。
「じゃが、戦は体だけ鍛えれば勝てる訳ではないぞ。頭を使わねば勝てん」
ギーシュのいる広場の方を振り返り、彼に言い聞かせるように呟いた。


「それに気づかねばいか「ゴオオオオォ!」ふぎゃああぁ〜!!!!」


「ん?忠勝、今何かいなかったか?」
「……??」ウィーン?
109異世界BASARA 4/6:2008/10/25(土) 20:01:55 ID:ZIJSGzA/
学院の厨房は、食堂から離れた中庭にある。
生徒達の食事を作るだけでなく、コック達の団欒の場にもなっていた。
その厨房から何やら老人の怒鳴り声が聞こえてくる。

「お前は!わしに何ぞ恨みでもあるのか!?いきなり忠勝で踏みつけおって!」
「す、すまん。それがしいつも気をつけてるんだが……」
怒鳴っているのは背中を擦りながらパンを齧る氏政。
謝っているのは利家であった。

利家が謝っているのはついさっきの出来事が原因である。
氏政がギーシュより先に食堂に行こうとしていた時、利家を肩に乗せた忠勝が上空から降りてきたのだ。
哀れ、氏政は降ってきた忠勝に思いっきり踏みつけられたのである。
しかし忠勝に踏まれたにも係わらず、重体になっていない氏政……このじじい頑丈である。

「でも凄いです!タダカツさんに踏まれて怪我ひとつもないなんて!」
食後のお茶を持ってきたシエスタが、カップを配りながら感嘆の声を上げる。
氏政もすこし恥ずかしいのか、髭をいじりながら注がれたお茶を飲んだ。
「……それで、前に言っておった南蛮人の事を聞き込みに言っておったのか?」
「……うむ」
利家は沈んだ表情で応えた。この様子だと何も情報は得られなかったようだ。
(やはり無理なのかな……)
利家の口からはぁ〜〜と溜め息が漏れる。
110異世界BASARA 5/6:2008/10/25(土) 20:04:20 ID:ZIJSGzA/
「トシイエさん、まだ探している人の手かがりが見つからないんですか?」
そこに、お茶のお代わりを持ってきたシエスタがやって来た。
「うむ、まったくな……だが帰る方法は必ずある筈なんだ」
お茶を受け取り、利家は応える。
「よーし!それがしもっともっと頑張るぞー!!」
「その意気ですよ!諦めないで頑張りましょう!!」
ぐいっとお茶を飲み干し、利家は力強く言った。


そうだ、何を弱気になっているんだそれがしは……
まつはきっと信じて帰りを待っている。
それにシエスタも応援しているし、忠勝だって手伝ってくれている。
なのに、それがしが弱気になっては駄目じゃないか!!


「あの、トシイエさん」
「ん?」
「その探している人ってどんな人ですか?」
と、シエスタが唐突に問い掛ける。
利家がここまで必死に探す人物である。
シエスタは彼の探し人が、一体どんな人なのかが気になったのだ。
「そういえばまだ話してなかったなぁ。ええと、そいつの名前はザビーって言うんだ」
「ザビー……ですか?」
名前を聞いたシエスタは俯いて首を傾げた。
「え、えーとな、ザビーっていうのは目が2つあって、鼻の穴も2つあって……」
利家は必死に説明するが、シエスタは首を傾げたまま考え込んでいる。
横で氏政が「そんな奴大勢いるじゃろうが」とツッ込んでいた。
「すまん、やっぱり知らないよなそんな南蛮人……」
そう言って、利家は近くにあったパンを齧った。その瞬間


「あああぁぁーーっ!!!!」


と、いきなりシエスタが素っ頓狂な声を上げて叫んだ。
111異世界BASARA 6/6:2008/10/25(土) 20:06:08 ID:ZIJSGzA/
「どどど、どうしたシエスタ!?これ食べちゃ駄目なやつだったのか!?」
いきなりシエスタが叫んだ為、利家は慌てて齧っていたパンを皿に戻した。
だが彼女が声を上げたのは利家がパンを食べたからではない。
思い出したのだ。子供の頃のある出来事を。

「そのザビーさんって、頭がツルツルの人じゃないですか?」
「……お?」

利家の目が丸く見開かれる。
「そ、それで黒い修道服を着ていて、大柄で……」
「お、おお!おおおお!!!!」
シエスタの言葉を聞く度に、利家の心はどんどん昂ぶっていく。
そして、決定的な一言をシエスタは言い放った。


「でっかい大砲を持った変な人じゃないですか!?」
「そいつだあああぁぁぁぁぁーーー!!!!!!!」


「というかの……先ず身近にいる者から聞かんかい……」
シエスタと利家が盛り上がっている中、すっかり忘れられている氏政がいじけながら呟いた。
112名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 20:11:48 ID:5XnzoWev
北欧編、北欧チームメンバー

コペン・マッケー(♂) 
10回クリア。北欧チーム最強の男。メタルバンド「ダークフォレスト(略称DF)」のボーカル。29歳。ノルウェー人。
リッター・ハイデルン(♂)
8回クリア。DFのドラマー。31歳。デンマーク人。
ペタ・ニョッキ(♂)
6回クリア。28歳。DFでベースを務めるスウェーデン人。
ポッポ・スタコッタ(♂)
6回クリア。30歳。DFでギターを務めるフィンランド人。
トラファルガー・ロー(♂)
5回クリア。ニート。17歳。デンマーク人。
トール・ヘイエルダール(♂)
3回クリア。フリーター。23歳。ノルウェー人。
鶴野貴文(♂)
2回クリア。ノルウェー観光局職員。39歳。ノルウェー在住の日本人。
リヴ・ウルマン(♀)
2回クリア。殺人犯。36歳。スウェーデン人。
ニコラス・ペタス(♂)
1回クリア。有名な格闘家。38歳。デンマーク人。
コリン・ファレル(♂)
ミッション経験者。有名な俳優。31歳。アイスランド人。
ルマウェル・ハンセン(♀)
ミッション経験者。医者。ニョッキの恋人。25歳。スウェーデン人。
セイン・カミュ(♂)
ミッション初参加。英語教師。37歳。フィンランド在住のアメリカ人。
ターヤ・トゥルネン(♀)
ミッション初参加。インディーズ歌手。23歳。フィンランド人。
ベンニ・ヘム・ヘム(♂)
ミッション初参加。マフィア。45歳。アイスランド人。
ヴァン・ホルンボー(♂)
ミッション初参加。マフィア。50歳。デンマーク人
113名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 20:12:48 ID:5XnzoWev
吸血鬼伯爵
・ボス。得点は100点
・夫人が好き。夫人を愛している。自ら盾になって夫人を守る
・見た目はダンディなおじさん。人語が流暢で紳士的立ち振る舞いも心得ている
・分身を作ることができ、敵を翻弄する
・翼を生やして空を飛ぶ
・スマートな体型だが、大岩を片手で吹き飛ばす程の怪力を持つ
・日の光に当たっても消滅することのないパーフェクトバンパイア
・ただし血液だけは摂取しないと生きていられない
・体を刺されたり切断されたくらいじゃ死なない
・血を摂取すれば体の欠損部分は再生する
・正体は巨大なコウモリ

吸血鬼伯爵夫人
・得点は88点
・見た目は純白のドレスを着た女性。ただし顔はグロテスクな化物。
・人語は喋れず常に「コーコー」や「ヒューヒュー」といった呼吸音をあげている
・体中に戦闘用の蛇を飼っている。この蛇は人間の血を吸う
・敵を見つけると発狂し、奇声をあげて猛烈な勢いで襲いかかる
・血が大好物なので1日に伯爵の倍以上の血液を摂取する
・伯爵と同じパーフェクトバンパイア パーフェクトバンパイアは伯爵と夫人の2人しかいない
・血を摂取すれば体の欠損部分は再生する
・正体は灰色の大蛇

吸血鬼執事
・得点は35点
・吸血鬼伯爵と夫人に仕える執事
・見た目は紳士ぽっいが実はドS
・持ち運びが可能な拷問具を持っている
・たまに吸血鬼婦人に噛まれて血を吸われる
114名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 20:13:31 ID:5XnzoWev
吸血鬼3姉妹長女
・得点は55点
・黒いドレスを着た美女
・夫人を敵対視している
・傲慢で嫉妬深い
・影や闇と同化する能力を持つ
・妹達が嫌い

吸血鬼3姉妹次女
・得点は48点
・鎧を着て剣を装備している、女戦士のような格好
・常識人。真面目な性格
・眼で見た者を石化させる能力を持つ
・建造物や岩などと同化する能力を持つ
・度々起こる姉妹の喧嘩を止めている。苦労人

吸血鬼3姉妹三女
・得点は45点
・薄着で露出度が高い
・セックス狂
・水と同化する能力を持つ
・男を捕まえレイプする
・好みのタイプはイケメンか筋肉がある男
・姉が嫌い
・人間の精液が弱点。膣内に出されると即死する
115異世界BASARA:2008/10/25(土) 20:13:33 ID:ZIJSGzA/
以上で投下終了です。
次は番外編、シエスタの過去の話になります。
116名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 20:14:11 ID:5XnzoWev
ライカン(狼男)
・得点は83点
・ライカン達のボス
・普段は中肉中背の人間の姿をしているが、月の光を浴びることで巨大で恐ろしい正体を現す
・10km先の血の臭いすら嗅ぎ付ける強力な嗅覚を持つ
・鋭く長い両手の爪と、なんでも噛み砕く牙が武器
・フランケン・シュタインとは仲が悪い
・ギターを弾くのが趣味
・好きな音楽はヘビーメタル
・吸血鬼3姉妹三女に無理矢理セックスをさせられる。三女のフェロモンには抗えない。

フランケン・シュタイン
・得点は80点
・10mを越す巨体
・無口
・体中に機関銃や爆弾を仕込んである
・狼男とは仲が悪い
・ベースを弾くのが趣味
・好きな音楽はハードロック
・吸血鬼3姉妹三女お気に入りの巨大な男根を持つ。フランケンはそれを誇りに思っている。
117名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 20:14:58 ID:5XnzoWev
>>115
BASARAの人乙です
118虚無と金の卵:2008/10/25(土) 20:55:26 ID:XamLhEq6
BASARAの人、乙っす。

さて、予約なければ「虚無と金の卵」、21:05より投下させていただきます。
今回は長め。9レス分ほどです。
119虚無と金の卵 1/8:2008/10/25(土) 21:04:47 ID:XamLhEq6
 ルイズが学院に入学してから身に付けた癖――魔法の練習を人目に晒すのを徹底的に避ける。
 練習のたびに、魔法が出来ない自分をまざまざと自覚するためであった。
 そして虚無の曜日にも魔法の練習に励むルイズであったが、結果はいつも通り、無しのつぶてであった。

「はぁ……まったく、今日も成功しなかったわ」

 だが、珍しく声色に徒労感を滲ませていない。
 明日また頑張ろう――そんな気楽さが入り混じっていた。

 ルイズは努力家である。そして努力の積み重ねの結果、数限りない失敗を冒す。
 他のメイジの、自分の失敗に対する反応=嘲笑、揶揄、あるいは落胆――今まで、他の貴族の視線は目に見えぬ病いのように、
 常にルイズを脅かしていた。
 だがルイズは、ウフコックを召喚してからは、さほど気にしなくなっていた。
 自分の魔法への執着――無能である自分への歯噛みするような悔しさと、何かを成し遂げたいという渾身の思い。
 ウフコックにはそんな自分の感情が嗅ぎ取られている――そして、それを肯定してくれている。

 ルイズは変わりつつあった。
 余裕ができた、と見る人間が居た。確かに、学院に入学した頃のような針鼠の如き刺々しさは明らかに減っていた。
 怒るようになった、と見る人間も居た。確かに、ウフコックに安易に頼る人間に対して怒る場面が増えた。
 これまでルイズは癇癪を起こしたり、侮辱や侮蔑に反撃することはあっても、他人のために怒ることはあまり無かった。
 光明が差した――あるいは、そういっても過言ではない。
 誰よりも小さい体ながら強力な能力を持ち、そして決して驕らず、自己の在り方を問い続けるウフコック。
 ルイズは言葉にすることはなかったが、真摯なその姿に胸を打たれた。
 自分とウフコックは性格など全く違う。それ以前に生まれも何もかもが違う。
 だが、これこそと信じるに足る貴族の姿――ルイズは、その輪郭をウフコックに見ていた。
 その彼が自分を肯定し、側に居てくれている。
 自分が貴族であろうと思う限り、ルイズはウフコックに何も隠す必要は無かった。
 そして自分が貴族足り得ることに執着し、無駄とも思えるほどの努力を繰り返す自分を、心の何処かで受け入れつつあった。
 だから今だけは、地べたを這おう。自分の昇るべき正しい階段を見出し、見上げることから始めよう――ルイズは、そう思い始めていた。

 だが、努力が実らないことに落胆をしないわけではないし、人恋しいときもある。
 せっかくの虚無の曜日の午後、気分転換にウフコックと一緒に街へでも出かけてみようか。そんなことを思い、自室の扉を開く。

「ウフコック、帰ったわよ。今日はちょっと街に出かけま……あれ?」

 だがそこにウフコックの姿は無い。
 あったのはネズミの手による律儀で下手糞な字の書置き。
 『キュルケの部屋に招かれた』
 ウフコックを召喚してから得た平穏の日々で、久しぶりに食らう肩透かし感――歴史的とも言える、公爵家へのツェルプストーの横槍。
 ツェルプストーのキュルケがウフコックを呼び出す理由がマトモであるはずもなく、ルイズの予感は概ね当たっていた。

120名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 21:05:27 ID:QQvhDiuf
>>118
ネズミさん支援です
121名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 21:06:16 ID:efORdUvH
ウフコック支援
122虚無と金の卵 2/8:2008/10/25(土) 21:06:28 ID:XamLhEq6
 
 
  
 一目散にルイズは、キュルケの自室の扉を蹴破るが如き勢いで入り込んできた。

「あら、ヴァリエール。私の部屋に来るなんて珍しいわね。貴女も混ざる? 盛り上がってるわよ」
「虚無の曜日だってのに何を不健康な遊びしてるのよ、ツェルプストー」

 キュルケ――ひらひらとカードをもてあそぶ余裕の表情/タバサ――普段通りの無関心の仮面/
 ウフコック――びくりと震え、開けたた場所へ姿をさらしてしまった鼠の如く、たじろいでいる――もはや条件反射。

「キュルケ……カジノとか言ったわね。私の許可無く使い魔を唆さないでほしいわ」
「じゃあ一応聞くけど、いいわよね?」「ダメよ」

 ルイズの怒りに満ちた拒絶も気に留めず、しなだれかかるようにキュルケは部屋の奥へとルイズを連れ込む。

「ちょ、ちょっと何すんのよ」
「金持ちからは巻き上げるけど、貧乏な振りをすればそこそこ稼げるって噂なのよ。
 ねーえ、ルイズ? 貴女だって稼いでくればお家のためになるわよ?」
「イ・ヤ・よ! 第一、博打で財を為したってウチの実家じゃそんなの認められないんだから。
 第一、他人の使い魔を巻き込まないでほしいわ!」
「良いじゃないのよー。溢れる才能を埋もれさせる方が罪よ?」

 ウフコックの活躍の場を与えてやれているか――ルイズの頭に一瞬過ぎる。だがかぶりを振って反論を続けた。

「だとしてもね、そんな俗っぽいことに連れてってウフコックがグレたらどうするのよ!
 そもそも、使い魔をカジノに入れられるワケないでしょ」
「……いや、あまりグレるとかは心配してくれなくとも良いんだが、まあルイズの指摘は最もだろう。
 動物を連れ込めるカジノなんてあるのか?」

 ウフコックが冷静に指摘する。

「それに、念のため言っておくが……カードやサイコロに化ける、というのは無しだ」

 キュルケは、あらら、と言葉を零す。内心考えていたことが暴露され視線を逸らした。
 
123名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 21:07:31 ID:/66aCrV4
しえん
124名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 21:07:49 ID:URjTvfRo
かっこかわいいネズミきた
支援支援
125虚無と金の卵 3/8:2008/10/25(土) 21:08:33 ID:XamLhEq6
「個人的な利益のためにイカサマするつもりは無い。それはノーだ。
 利己的な目的で社会に実害を与えるような行為に手を染めてしまったら、俺自身、俺を許せない。
 それにカジノのような場所でイカサマが暴露されたら君らの身分や命を危険に晒してしまう。
 この国のカジノについて詳しくはないが、決して子供の悪戯で済ませるような穏便な場所では無いだろう?」
「そうよそうよ! ウフコックにそんな卑怯な真似をさせないでくれる?」
「うーん……じゃあ、手袋とかネックレスに化けるなんてどうかしら。
 私、ウフコックの人を見る目がとっても凄いと思うのよ。
 だから、ウフコックはこっそり小物とかに化けてタバサに助言するの。助言するだけよ。
 もしそれでも駄目って言うなら、稼がせてくれそうなディーラーを探すのを、ほんのちょーっと手伝ってもらうだけでも良いわ。
 どう?」
「……あんたとウフコック、引き合わせないが良かったわ」

 悪用法ばかり思いつくキュルケに、がくりとルイズは肩を落とす。
 何より嫌なのは、恐らく、いや、確実に効果を上げてしまいそうなところであった。
 タバサは魔法であれ何であれ勝負強いのは噂に聞いていた。だが、キュルケは別の意味で勝ちを拾うのが上手い。
 ルイズは、公爵家に連綿と渡る対抗心を感じずにはいられなかった。

「儲かったら3割、いえ4割は分配するわよ。ねぇ、良いでしょ?」
「だから、ダ・メ!」
「ヴァリエールは本当に頭が固いわね……せっかくギーシュとの喧嘩、秘密にしておいてあげてるのに」
「うっ……」

 キュルケが唇を尖らせる。痛いところを付いてきた、とルイズは思う。
 少なくとも気付く人は気付く。ウフコックの反転変身/ターンは、実際のところ変化とも錬金とも一線を画すことを。
 この場にいるタバサとキュルケは気付きつつ、敢えてそれを吹聴もしていない。
 実際のところはオスマンが抑えているとはいえ、コルベールのような学者肌の人間がウフコックに近づいていないことが、
 何よりの証拠であった。

「それじゃあこうしましょう、ルイズ」
「何よ?」
「魔法学園の生徒らしく、揉めたら魔法で決めましょう?」
 
 
126虚無と金の卵 4/8:2008/10/25(土) 21:10:29 ID:XamLhEq6
 
 
 
 魔法学院の堅牢な本塔に吊り下げられた、決してこの学院とは相容れないデザインの木札。
 敢えて言うならば、抽象的な人型の切り抜き/顔と心臓の位置に「ここを撃て」と自己主張する同心円状のマーク――明らかに射撃訓練用のターゲット。

「……なんだか物騒なデザインねぇ」
「文句言うんじゃないわよ、せっかく変身させてあげたんだから」

 キュルケの発案で、3人と1匹は魔法学院の中庭に到着していた。
 さらに加えれば、タバサが使い魔のシルフィードを呼びよせていた。
 今、彼女らが見上げるターゲットは、ウフコックがターンして作ったものである。
 タバサはシルフィードに乗って学院の屋根まで移動し、そのターゲットをロープにひっかけて釣り降ろした。
 ウフコックはターゲットに変身し吊り下げられたまま、中庭でやり取りする人間達を不安げに見守っている。
 だが対決に挑む当の二人にそんな思いは全く伝わっていなかった。
 一人は楽しげに、一人は怒り心頭のまま話をしていた。

「さーて、それじゃあ説明するわよ」

 気を取り直して、キュルケはルイズ向かって言った。

「ルールは単純。あのウフコックが用意した的を、屋根に居るタバサが揺らすわ。
 揺れ動いている的を、魔法で撃ち抜いた方が勝ち。
 で、私が勝ったら、ここにいる皆は楽しい楽しいカジノ旅行。
 ルイズが勝ったら、ここにいる皆はいつも通り学院でお留守番」
「……何かすごく引っ掛かる言い方だけど……っていうか私も入ってるの!?」
「あら、心外ね。ヴァリエールだからって仲間外れになんてしないわよ。
 それに使い魔を放っておいて寮で留守番してるつもり?」
「ぐ……そ、それもそうよね」

 ルイズは苦虫を潰すような顔で頷く。

「まあまあ、カジノ、楽しいわよー。ルイズもそろそろ大人の社交界デビューしなきゃ!
 それにねぇ、ディーラーが平民だけど、もの凄ぉーく格好良いのよ!」
「カジノの何処が社交会なのよ……で、ルールはそれだけ?」
「もう、ノリ悪いわね。それじゃあ説明続けるわよ。
 使って良いのは魔法だけ。属性・種類は何でも良し。とにかく魔法であの的を撃てればその時点で勝負は終わり。
 それだけよ」
「……ええ」
「あ、そうそう、あんたが先攻で良いわ。そのぐらいはハンデよ。それじゃあ始めましょうか」
「わかったわ」

 ルイズは頷く。
 そして杖を構え、それを見た屋上のタバサが的を降り始めた。
 タバサを中心として扇型の軌跡を描いて的が揺れる。時折強風が吹くらしく、的は不確定な揺らぎを見せていた。
 距離にして20メイル以上は離れている。動きも時折予測不可能となる。
 だがそれ以前のルイズの問題――魔法が当たる、当たらない以前に、そもそも魔法が成功するのか。
 だが魔法で勝負しろなどと言われて黙って引き下がることはルイズの選択肢に存在するか――全力で否。
 むしろ、自分を対決者として認め、焚き付けて来たキュルケに感謝すら感じている。
 外へ飛び立つには、殻を突き破る強い意志が必要なのだ。
 もし自分が火の属性に目覚めたら、親愛と感謝を込めてキュルケに火球を食らわせてやろうとルイズは決意した。
 集中――内心の毒づきも苛立ちも抑え、ルイズはルーンを唱える。
 ファイアボールの呪文。成功すれば杖先から火の球が迸るはずである。
 詠唱完了。ルイズは気合を込めて杖を振り下ろす。
 ――案の定、火の球が出ることはなく、タバサが揺らす標的の後ろの壁が爆発。本塔の堅牢な壁にひび割れを作る。
 爆風はロープを揺らした程度で治まり、また何事も無かったように的ははためいている。
127名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 21:11:28 ID:/66aCrV4
支援
128虚無と金の卵 5/8:2008/10/25(土) 21:12:58 ID:XamLhEq6
 
「あっはっは! ロープじゃなくて壁を狙ってどうするのよ! ゼロのルイズ!」
「ううう、うるさいわねっ! ちょっと狙い外したくらいじゃないの!」
「あー、おかしい。ちょ、ちょっと笑いが止まるまで待って……」
「こ、この……!」

 けたけたと笑うキュルケ/杖でぶん殴ってやろうとすらルイズは思ったが、勝負に水を指す行為に手を染めるのを、
 何とか理性で持って押し留めた。

「こほん、それじゃあ私の番よね」

 腹を抱えて笑っていたキュルケだったが、平静を取り戻して集中してルーンを唱える。
 杖を構える手つきも、唱えるルーンも、手馴れた鮮やかなもの――そして詠唱の完了。間違いようの無い魔法の成功。
 杖先から出たファイアボールがひゅんと音を立てつつ無駄の無い軌跡を描き、あっけなく標的の中心を貫く。

「さて、私の勝ちよね! 優勝商品はガリア旅行、カジノの旅! ってとこかしら?」
「……そうよ、私の負けよ……はぁ……」

 キュルケは勝ち誇り、笑い声をあげる。
 ルイズはがくりと肩を落とし、草をむしり始めた。




 ルイズとキュルケが対決を始める前。サンクでウフコックが猛威を振るっていた丁度その頃。
 ――フーケは、宝物庫の壁を丹念に調べていた。
 調べれば調べるほど隙の無さを感じる。
 フーケは、オスマンの飄々とした顔が憎らしくなる程、メイジとしての手強さを思い知っていた。
 落胆しつつあったその頃、ルイズ達が口喧嘩でもするような勢いで中庭にやってきた。
 ルイズ達の気配を察してフーケは壁からさっと飛び降り、そして本塔の側の茂みに身を潜める。
 そのまま、ルイズとキュルケの対決の一部始終を見守り、その対決の最中の奇妙な現象を目の当たりにした。

「何なのあの魔法……? あの壁にヒビを入れるなんて……」

 フーケの耳に届いたのは、ファイアボールのルーンを唱えるルイズの声であった。
 だが火の球は出ずに、ただ壁を爆破し、宝物庫のある辺りの壁にヒビを作る。
 爆発――どの系統にも、あのような魔法はフーケの記憶に存在していなかった。
 しかも効果範囲こそ狭いが、『固定化』された石壁を穿つ程の威力の爆発。
 トリステインの様々なメイジを相手し、様々な手練手管を知ったフーケ自身が違和感を持つほど、奇妙な出来事であった。
 しばらく考え込んでいたフーケだが、はっと気付く。
 始祖ブリミルに感謝したくなるほどの僥倖――まさに今日というタイミングで奇跡が起きたのだ。

「っと、教師どもの癖がうつったかしら。詮索は後回し、絶好の機会には違いないね……!」

 フーケはほくそ笑み、詠唱を始めた。
 長い詠唱の末、地面に向かって杖を振り下ろす。
 フーケの歓喜に応じるように、土が盛り上がり始める。恐らく、重さに換算してゆうに数10トンはあるだろう。
 『土くれ』の本領が今、発揮されようとしている。
129虚無と金の卵 6/8:2008/10/25(土) 21:16:12 ID:XamLhEq6
 
 
 
 火球の一撃で木っ端微塵となったターゲットの破片が、蠢くように歪む。物体の表と裏がひっくり返る。
 そこに現れる黄金色のネズミ――即ちウフコック。

「やれやれ……ルイズに勝ってもらいたかったところだが、仕方が無いな」

 変身後、どんな破片からも元に戻れるウフコックは、ターンした状態で破壊されようと何ら問題無い。
 火球の一撃など気にするわけもない。
 そんなことよりも、悔しさを滲ませて肩を落とすルイズを慰めてやらねば、それにカジノではどう振舞っておこうか――。
 そんな心配を患いながら、てくてくと二足歩行でルイズの元へ歩いていた。
 丁度その瞬間。
 全くの他人の意思の匂いがウフコックの鼻に届く。
 突き刺すような匂い/人が武器を携えて動く瞬間の、決意に満ちたソリッドな匂い。

「……誰だ!?」

 言った瞬間、ウフコックの目に映ったのは二本の巨大な柱であった。
 柱が震え、持ち上がる――そしてようやく気付く。壁などではない。見えていたのは人型の下半身であり、柱と思ったのは脚である。
 小さなネズミの眼には気付かぬほどの巨体。
 同時にキュルケ達も気付いて悲鳴を上げる。

「な、何よこれ!」
「きゃあああ!」

 そこに居たのは、爪先から頭まで30メイル程にも達しようとするゴーレムであった。
 明らかにトライアングル以上の練達のメイジによるゴーレム。地響きを立てて歩み寄ってくる。
 そのゴーレムの到達点――明らかに魔法学院の本塔。
 そのゴーレムの中間点――ターンを解除したばかりのウフコック。
 危ない――ウフコックがそう思った瞬間、駆け出してくるルイズの姿が目に止まった。

「まずい! 来るな、ルイズ!」

 ウフコックは叫んだ。
 だがもはや後には引けない距離であり、ルイズは後に退かない貴族である。
 ゴーレムの巨体で太陽が翳る。ウフコックも、ルイズも、その巨大な影に抱擁された。

「行かないわけがないでしょうっ!」
「くっ……仕方ないっ!」

 そして頭上にゴーレムの脚が迫る。
 無慈悲に、無関心に――人が足元の虫に気付かぬように、ゴーレムは一人と一匹を踏み潰す。
130虚無と金の卵 7/8:2008/10/25(土) 21:18:24 ID:XamLhEq6
 
 学院を震わせる轟音。
 完全に潰れた。その場にいた誰もがそう思った瞬間、ゴーレムの足元から卵状の物体が転がり出る。
 咄嗟のウフコックのターン/摩擦係数を極端に減らした表面/衝撃を分散させる卵型の防壁でルイズを包む。
 防壁はゴーレムの押し潰されることなく真横に滑り出る。
 ウフコックは外の安全を確認し、卵が割れるようにターンを解除。ルイズがふらふらと現れる。
 重篤な怪我――無し。
 軽微な損害――乗り物酔い。

「大丈夫か、ルイズ!?」
「う、うう……吐きそう……っていうか吐く……。どうなったの……?」
「生きている、怪我も無い! だからさっさと逃げるぞ!」

 朦朧としたルイズの耳元でウフコックはまくしたて、同時にタバサとキュルケを乗せたシルフィードが滑空し降りてくる。

「逃げるわよ! 早く!」

 キュルケはルイズを掴んで引っ張り上げる。
 タバサは地面スレスレまで風竜を降下させるが、キュルケがルイズを確保したのを確認し着地もさせず強引に急上昇。
 ゴーレムの手の届かない範囲まで即座に離脱――さらに目を回すルイズ。

「ああ、焦った……って、ルイズ、大丈夫? ちょっと!」
「いや、大丈夫だ。踏まれそうになった衝撃でショックを受けているが、怪我は負っていない」
「う、ええ……助かったのね、私達」
「ああ。もう大丈夫だ」

 渋みのあるウフコックの声を聞いて、ルイズは少しずつ平静を取り戻す。

「しかし、無茶をしないでくれ……。俺はターンしてしまえば破壊されようが問題無いんだ」
「……あ」

 ルイズはそのことが頭から抜けていたらしく、間の抜けた声を上げる。

「と、咄嗟のことだから良いじゃないのよ! 大体、使い魔を見捨てるようなメイジはメイジじゃないわ!」
「……そうか。だが、来てくれて嬉しかったよ。ありがとう」

 馬鹿ね、当然よ、と小さく呟いて、ルイズはそっぽを向く。
 喜びと安堵――ウフコックは、ルイズが放つ感情に安らぎを抱く。

「お二人さん、仲良いところ悪いんだけども」

 キュルケが溜息混じりにルイズ達に話しかけ、ゴーレムを指差した。

「あのゴーレム、どうやら宝物庫が狙いらしいわね。こっちは全然どうでも良さそう。
 助かったのは良いけど……何だか大事になりそうねぇ」
131名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 21:19:07 ID:URjTvfRo
支援
132虚無と金の卵 8/8:2008/10/25(土) 21:20:56 ID:XamLhEq6
 
 
 
 やっとの思いで到達した宝物庫に、フーケは笑みが零れるのを隠せなかった。
 風竜やキュルケが逃げ惑っている姿をフーケは見たが、この距離ならばフードで十分に顔は隠れている。顔を覚えられることはない。
 それに多少近い距離だとしても、しばらく学院長の秘書をしていたという顔と実績がある。
 早々バレはしないとフーケは踏んでいた。
 魔法でゴーレムを練成してからは足元にも特に気を払わず、一直線に宝物庫を目指した。
 フーケは目的の宝物庫へ向けて、ゴーレムの拳を鉄に変質させ、殴らせる――手応えあり。拳が壁にめり込む。
 ヒビが入ったとは即ち、固定化が解けたということ。そのフーケの想定は間違いなく当たり、壁には人が難なく通れる程度の穴が空いた。
 ゴーレムの腕を駆けるようにして伝い、穴から宝物庫へ侵入。
 狙うはトリステイン魔法学院の宝物の中でも異彩を放つ『破壊の杖』。
 フーケは迷わずに、様々な杖が収められたエリアを目指す――無い。
 コルベールから聞き出した奇妙な形状の杖を見紛うとはフーケには思えなかった。
 フーケは宝物庫を荒らすように探す。
 箒のエリア――無し。刀剣のエリア――無し。装飾品・小物のエリア――影も形も無し。ガーゴイルのエリア――当然無し。
 分類不可の宝物のエリア――どれもフーケ好みの珍品揃い。ただし目的の品は無し。
 フーケは足早に見回り、とうとう宝物庫の本来の出入り口付近にまで到達してしまう。
 諦めかけた瞬間、そこに宝物の目録らしき紙束が置かれた机を発見する。
 いや、目録だけではない。所蔵や持出しの履歴も管理されているようだ。
 何枚かは紙質が新しく、最近書かれたものらしい。フーケの悪い予感――机の一番上の一枚を手にとり、内容を検める。
 曰く。

『<トリステイン魔法学院 宝物庫所蔵マジックアイテム持出し申請書>

 〜 召喚儀式における調査のため、借用を申請します。
  調査目的の正当性について、また調査内容の詳細については別添の資料を参照願います。
  借用対象:破壊の杖(1挺)
  申請者 :ジャン・コルベール

  上記の者への貸与を特別に認める。
  ただし、
  (1)取り扱いの際は十分に気を付け、返却期日を厳守すること
  (2)調査報告書を添付の上、返却すること
  以上を命じる。
  承認者 :トリステイン魔法学院 学院長オスマン 〜』

「……あんのコッパゲとエロジジイがああぁっ!」

 美人秘書の肩書きなどかなぐり捨てるような罵声を上げ、激情のあまり机を蹴り飛ばす。
 杖のエリアにて、確かに何か持ち出されたような空白の棚があったのをフーケは思い出した。

「ぐっ……こうなったら行きかけの駄賃でも貰っておかないと、腹の虫が治まりやしない……!」

 巷を騒がせる怪盗らしからぬ雑な仕事ぶりに、フーケは気が滅入ってくる。
 少しなりとも役立ちそうな宝物を幾つか選び、フーケは自分の作った穴から脱出する。
 そして去る前に杖を振って壁に声明を残した。

 『眠りの鐘、確かに領収致しました 土くれのフーケ』

 外では風竜が飛び回っていたが、フーケは敢えて逃げることに専念する。
 ゴーレムの肩に戻り、学院本塔から離れた。
 魔法学院から大分離れた場所に存在する、うっそうとした森の中、隠れ家にするつもりの無人の廃屋を目指す。
 フーケは、追っ手が無いことを確認したところでゴーレムの魔法を解いて土に還し、目当ての廃屋まで森の中を歩く。
 そして廃屋にたどり着いたところで、羽織っていた黒いローブなど目立つものを廃屋に手早く隠した。

「さて、と……このまま引き下がるのも癪だね。次の手を考えようじゃないか」

 フーケは何事も無かったかのようにミス・ロングビルの仮面を被り直した。
133虚無と金の卵:2008/10/25(土) 21:23:55 ID:XamLhEq6
今回の話は以上です。
以下、小ネタにもならないNG集(第一章7話)



 学院を震わせる轟音。
 完全に潰れた。その場にいた誰もがそう思った瞬間、ゴーレムの足元から卵状の物体が転がり出る。
 咄嗟のウフコックのターン/摩擦係数を極端に減らした表面/衝撃を分散させる卵型の防壁でルイズを包む。
 防壁はゴーレムの押し潰されることなく真横に滑り出る。
 ウフコックは外の安全を確認し、卵が割れるようにターンを解除。
 中からルイズがふらふらと――現れることはなかった。
 ルイズと全く同じマントにブラウス、スカート――ルイズと全く異なる顔/髪型/性別。
 ややのんびりとした印象の男が転がり出てきた。
 重篤な怪我――無し。
 軽微な損害――乗り物酔いと変身の解除。

「ああ、全く、目が回っちまうだよ……」
「どあほ、レイニー! まだカメラ回ってんだぞ! カットだ、カット! フーケ! 壁を殴んな!」
「ええ、聞いてねぇだよ兄弟!」

 すぐ側の茂みに潜んでいた別の男がやおら姿を現し、明瞭かつ大きすぎる声でルイズの格好をした男を怒鳴る。
 また、ルイズの格好の男から発せられた声は、勿論お世辞にもルイズの声とは似ても似付かぬ、朴訥で舌足らずな男性の声。
 この二人、レイニー・サンドマン&ワイズ・キナード――元斥候兵&元通信兵。
 ウフコック達と共に、09法案の執行者となったメンバーである。

「あら。演技派のレイニーがNGって珍しいわねー」

 シルフィードにのったタバサとキュルケが上空から降りてきた。
 やれやれと言った感じで、タバサやフーケなどの出演者やスタッフがレイニーを冷やかす。

「すまねぇだ。でも、危ないシーンだけ呼ばれて代理でスタントするのは、ちょっと納得がいかねえだよ」
「仕方ねぇだろ。大体、出演できない連中や、外見だけで放送コードに引っ掛かる連中がうじゃうじゃ居るんだ。
 役があるだけでも満足しやがれ、ってことさ」
「それもそうだなぁ……」

 レイニーは、ルイズの格好のまま、ぼやきつつも表情を引き締める。
 いや、表情だけではない――輪郭/まぶた/髪の色と長さ/体格と身長など、諸々の外的特徴が一瞬で変化する。
 そこに居たのは、まさしくルイズであった。
 ”砂男”レイニー。粒子状に変化する皮膚・筋肉の持ち主。腕や脚の太さ、背の高さすらも操作が可能。
 また、さらに人口声帯で様々な声色を再現。
 あらゆる人間へと変身する、頼れる元斥候兵であった。

「気を取り直して、もう一回撮影行くわよ!」

 完璧なまでの釘宮ボイスが学院の中庭に響き渡った。



私の技量不足で、ルイズや他キャラの振る舞いが納得行かない! というケースが発生した場合、
以上のように実はレイニーが演技してたと思ってスルーの魔法を詠唱して頂ければ幸いです。
また、今回のように微妙なタイミングでひょっこりとNG編をたまに出すかもしれません。
以上で投下終了。ありがとうございました。
134名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 21:31:14 ID:v2XWtFDU
GJ!
ルイズにはこういう性格の使い魔の方が相性がいいのかもねw
135名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 21:56:08 ID:URjTvfRo

あいかわらずかっこいいネズミだウフコック
136名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 22:03:00 ID:oBeOv4OT
ウェールズのシーンも代理ですね。わかります。
137名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 22:27:36 ID:8qMru2TS
>>136
ワルドのシーンの方が向いているんじゃね?
138名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 22:38:12 ID:2cWUqQxg
今、今週から連載が始まった「風が如く」を見ながら思ったんだが、
別にクロスするキャラをルイズが召還するんじゃなくて
あらかじめ別の奴(教皇かテファ)に喚ばれた後契約前に逃亡して
逃げた先で誘拐なりされたルイズに出会うっていうのもアリかな?



別に糞尿まみれのルイズが見たいワケではないが
139名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 22:40:15 ID:tKPuw5dO
OKまずはスレタイを音読だ
140名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 22:42:15 ID:jC4WRB7D
避難所に投下するぶんには問題ないかと
141名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 22:50:51 ID:XQe+mcyK
そんなのifスレでやれよ
142名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 22:51:17 ID:4/ozgUjV
バーツがガンダールヴになったら普通の剣も握れるのだろうか
143名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 23:18:34 ID:3ZPwQsK4
ラブやんのジャモジさんが召喚されたらハルケギニアの事をアメリカの田舎の方の地方だと思ったまま話が進むんだろうなぁ
人が空を飛んでるのを見ても「ありゃあワイヤーアクションってヤツだな」程度の認識で済ましそうだし
144名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 23:27:54 ID:3MMgz3bN
西部警察が建物ごと召喚されたら西部騎士団になるんだろうか・・・
145名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 23:32:16 ID:jFXnSNGa
>>144
ルイズが爆破係になるんですね
わかります
146名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 23:34:54 ID:611X92vq
>>144
もちろん特殊車両付きだよな?
147名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 23:35:51 ID:h0ovl8D3
アルビオンへ旅立つ一行を、
ブラインドを指でちょいと押し下げた隙間から見送るオスマンとボスということか
148名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 23:39:27 ID:/ozeWDbv
ハルケギニアにでかいブランデーグラスはちゃっとあるのだろうか?
149名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 23:46:27 ID:3MMgz3bN
西部警察署ごとだから特殊車両は当然、なぜかヘリまで。
150名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 23:49:09 ID:usUh+LHy
>>144
もちろんナレーションは次元大介だよな?
151名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 23:54:14 ID:apVaXvX5
取りあえずおまえらが西部警察が大好きなのはわかった
152:名無しさん@お腹いっぱい:2008/10/26(日) 00:08:20 ID:NHWabZ2h
サモンナイトクラフトソードの続きが読みたいな・・・・・
153名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 00:22:49 ID:U0nkAjmI
警察なのに何故か面制圧しはじめる訳ですね
警察がショットガン使うなよと
154名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 00:52:19 ID:UhPbqiqR
そして毎週の決まった曜日に事件が起きて1時間位で解決するんですね
何日かかってても気がついたら1時間しか経ってないと
155名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 00:56:38 ID:vuAZop/8
フーケが射殺かゴーレムごと爆破されかねん・・・
156名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 00:57:02 ID:PzFH2hq3
なんで大門はショットガンで精密射撃ができるのかな
157名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 00:58:37 ID:pTea3okN
かっこいいだろう?
158名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 01:00:43 ID:5gK2GArh
そりゃいろいろと工夫してるに決まってるだろ。
角度とか。
159名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 01:05:02 ID:o50YMv49
ティアドロップのサングラスかけてるコッパゲ想像して噴いたw
160お前の使い魔:2008/10/26(日) 01:17:03 ID:oRQgLKF4
もし予定が無いなら、20分から三話目を投下してもいいかな?
161お前の使い魔:2008/10/26(日) 01:20:19 ID:oRQgLKF4
寒い。寒すぎる。何でこんなに寒いんだろう?
確か今は春だったような…うう、寒い。
冬場のような寒さを感じながら、わたしの意識はゆっくりと覚醒した。

「ん……」

朝日の射す窓と天井が見える。
間違いなくここは、魔法学校にある寮の中のわたしの部屋。
はて?何でこんなに寒いんだろう?
ふかふかの毛布を肩までかぶって…かぶって…?

「あれ…?もうふ…」

毛布が無い。
確かに昨日まであったはずなのに、今のわたしは肌着一枚でベッドの上に乗っている。
寝ぼけ眼で周りを見ると、わたしの横で、幸せそうに『わたしから剥ぎ取った』毛布に包まってすやすや眠る亜人が見えた。
寝起きで判断力の鈍っていたわたしの頭が、寒さと怒りで急速に回転しだす。

「起きなさいこのダメ使い魔ああああああっ!!!!!!」

わたしが叫ぶと、気持ちよさそうな表情から、凄まじく迷惑そうな表情へと変わり、めんどくさそうに目を開けるダネット。

「人が気持ちよく寝てるのに、邪魔するのは誰ですかもう…」

そう言って、ダネットは目をしょぼしょぼと擦りながら起き上がり、半分閉じたままの目できょろきょろと周りを見渡した後、わたしをじっと見つめる。

「お前…誰ですか?」

頭の血管が「ぷちん」と音を立てて切れた気がする。
わたしはぶるぶる肩を震わせた後、半分閉じていた目をまた閉じようとするダネットの肩を掴み、力の限りがっくんがっくん揺さぶりながら怒鳴りつけた。

「あんたの!!!ご主人様の!!!ルイズ様でしょうがああああっ!!!!!!」

すると、ようやく起きたのか、ダネットは怒りの表情になり、怒鳴り返してくる。

「誰が誰のご主人ですか!!!!」
「わたしがあんたのご主人様だって言ってるでしょうが!!っていうか、毛布さっさと返しなさいよ!!」
「あっ!何をするのですかお前!!返しなさい!!」
「これはわたしの毛布よ!!それと、またお前って言ったわねこのダメット!!」
「ダメットじゃないのです!!ダネットです!!人の名前も覚えられないんですかお前は!!お前こそダメです!!ダメルイなんとかです!!」
「あんたにだけは言われたくないわああああ!!!!」
162お前の使い魔 三話:2008/10/26(日) 01:22:50 ID:oRQgLKF4
そんな感じで、朝も早くからわたしとダネットが怒鳴りあいの喧嘩をしていると、突然部屋のドアがバンという音を立てて開いた。
驚いたわたしとダネットがそちらを見ると、そこには額に青筋を立てて、杖を構えるツェルプストーの姿。

「ちょっとツェルプストー!ドアには鍵がかかってたはずよ!さてはあんた、校内では禁止されてるアンロック使ったでしょう!!」

わたしが怒りながらそう言うと、横のダネットもぷりぷり怒りながらツェルプストーに怒鳴り始める。

「何ですかこの乳でか女は!!邪魔をするなら出て行ってください!!私達は大事な話をしているのです!!」

そう言ってダネットは、ツェルプストーのバストをびしっと指差す。
こうして、むんと胸を張ってツェルプストーを怒鳴りつけたわたし達は、また向き合って怒鳴りあいを始めようとした。
そこにツェルプストーの怒鳴り声が割って入る。

「朝っぱらからうるさいのよアンタ達っ!!!!」

その怒声にわたし達が動きを止めて、またツェルプストーの方を見ると、そこには、額に先ほどよりも多くの青筋を立て、火球を杖に纏わせたツェルプストーの姿があった。

「昨日の夜だけかと思ったら、朝っぱらからギャーギャーと…こっちの身にもなんなさい!!」

確かにわたし達は昨日の夜も騒がしかったし、今日も朝から騒いだのだから、隣室のツェルプストーはたまったもんじゃなかっただろう。
むしろ、昨日の夜に怒鳴り込んでこなかっただけ優しいといえるかもしれない。
でも、ツェルプストーに謝罪するというのはプライドが許さない。
そうやって、どうしたものかとわたしが考えていると、わたしとツェルプストーの間に緑色のきらめきが割り込んできた。
それは、エメラルドグリーンに輝く短刀を構え、わたしを庇うように立ち、鋭い目でツェルプストーを睨み付けているダネット。

「お前、焔術師だったのですか乳でか女」

そう言って、すぐにでも飛びかかれるような構えを取り、わたしの方を見ずに「お前、下がっていなさい」とだけ言った。
焔術師?何のことだろう?ダネットのいた土地特有のメイジの呼び方だろうか?
一触即発の空気がわたしの部屋に充満する。
だが、ツェルプストーは「はぁ」と溜め息を一つ付いて火球を消して杖を下げ、敵意が無いことを示す。
それを見たダネットは、警戒しつつもゆっくりと短剣を下ろした。
わたしは、部屋の中で乱闘が起きなかった事にほっと胸を下ろし、今度は幾分落ち着いた声でツェルプストーに言う。

「今度から気をつけるわ」

「悪かった」とは言わない。だが、一応は謝罪しておく。
そんな意思が伝わったのか、ツェルプストーはクスリと笑うと、今度はニヤリと意地の悪そうな笑みを浮かべ、わたしに向かって言った。

「ところでルイズ、もう朝食の時間だけど、ゆっくりしてていいの?」

部屋の中にわたしの悲鳴が響き渡った。
163名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 01:24:16 ID:BWcUyxqS
しえん
164お前の使い魔 三話:2008/10/26(日) 01:24:39 ID:oRQgLKF4
「お前、どこに行くのですか」
「食堂よ!」
「昨日の部屋ですか?」
「あれは医務室!ほら!急いで!」
「遅いのはお前です!急ぎなさい!!」

確かにダネットはむちゃくちゃ足が速かった。
わたしも必死になって走っているのだが、それを平然とした顔でスイスイ追い抜いていく。

「この…筋肉馬鹿使い魔!!」
「馬鹿!?馬鹿って言いましたか今!?」
「言ったわよ!!バーカ!バーカ!!バカダメットー!!」
「馬鹿って言う方がバカなんです!!バカルイなんとかー!!」

そんな騒々しい会話をしつつ、どうにかこうにかアルヴィーズの衝動に付くと、ダネットは「ほえー…」と気の抜けた声を出し、食堂を見上げていた。

「ほら、さっさと行くわよ。アルヴィーズの食堂は、本来は貴族しか入れないんだからね。感謝しなさい。」

わたしはそう言って、アルヴィーズの食堂の豪華さに驚いてるダネットに少し優越感を抱きつつ、自分の席へ移動する。
ダネットはキョロキョロしながらもわたしに付いてきた。
自分の席まで行き、ダネットに向かって言う。

「ほら、椅子を引きなさい」

しかし、ダネットは全くわたしの言葉が耳に入ってないらしく、まだ回りを「ほー…」等と言いながら見渡している。
少し口調を荒げ、もう一度ダネットに言葉を投げつける。

「椅子!!」

ようやくダネットはそれに気付いたらしく、こくんと頷いて『私の席に座った』

「な…!!」

あっけに取られたわたしがそう言うと、ダネットはキラキラした笑顔をわたしに向け、テーブルの上に乗せられた食事を指差しながら、幸せそうな声で言った。

「凄く美味しそうです!」

周りから、クスクスという笑いが聞こえる。
わたしは真っ赤になりながら、ダネットを席から引き剥がそうとした。

「な…何をするんですかお前!!」
「そこはわたしの席よ!!退きなさい!!」
「隣の席が開いてるではないですか!!お前がそっちにいけばいいんです!!」
「そっちの席はただの空席よ!ほら!食事が用意されてないでしょ!!」
「なら私が恵んでやります!!感謝しなさい!!」
「それはわたしの朝食でしょうがあああ!!!!」

わたしの抵抗も虚しく、ダネットはてこでも動きそうに無いぐらい席にしがみ付いて離れない。
わたしは、今後ダネットは決して食堂に入れない事を心に誓い、仕方なく隣の席に着く。
周りの嘲笑は最初よりも大きくなっていて、恥ずかしさで逃げ出したくなったが、こんな事で逃げてはヴァリエール家の名折れだ。
わたしはぐっと我慢をして、始祖ブリミルに祈りを捧げる。
祈りが終わり、ようやく食事を始めようかと、ダネットの座るわたしの料理を見ると…半分近く無くなっていた。
そしてその残りは、現在進行形でダネットの口に吸い込まれ、そりゃあもう凄い勢いで消えていく。
こうして、アルヴィーズの食堂に、今日何回目かもわからないわたしの怒号が響き渡った。
165お前の使い魔 三話:2008/10/26(日) 01:27:34 ID:oRQgLKF4
「全く…ご飯を少し食べられたぐらいで怒るなんて、お前は卑しいのです」
「卑しいのはあんたでしょうが!」

騒々しい食事を終え、わたし達は教室に向かっていた。
ちなみに、ダネットの今後の食事は、コックやメイドが食事を取る場所で行うという約束を取り付けたので一安心。
余談だが、食堂で騒いだ罰として、食事抜きを宣言しようとしたのだが、途中まで言ったところでダネットが笑顔で指をパキポキ鳴らしながら「首根っこへし折られたいですか?」と本気で言ってきたので止めておいた。
べ…別に怯えたわけじゃないんだからねっ!命あってのモノダネっていうじゃない!
わたしがそんな事を考え、ぐっとこぶしを握っていると、ダネットが言葉を続けた。

「ところで、今度はどこに行くのですか?」
「教室よ。朝食の後は授業だもの。」

ダネットは人指し指を頬に付け、首を傾げながらわたしに尋ねる。
昨日もしてた仕草だけど、結構かわいい。

「きょーしつ?じゅぎょう?」
「教室は勉強する場所。授業は勉強する事よ。あんたの住んでた所に、学校とか無かったの?」

それを聞いたダネットは「むぅ」とうなった後、わたしから少し目を逸らしながらこう言った。

「私は…両親が死んだ後、隠れ里でずっと過ごしてきました。そこではずっと組み手ばかりしてました。」

その答えを聞いたわたしは、思わず固まった。
ダネットは凄く能天気だ。悪く言えばバカだ。
だからきっと、今までの生活だってのほほんとしたものだったに違いない。
なんとなくそう思っていた。
でも、よく考えてみれば、ダネットはまだ若い。にもかかわらず、あんな短刀を手にし、一般常識が欠けている。
それはつまり、常識より優先して戦う必要があったという事だ。
あの話が本当だとは思わないけれど、少なくとも過酷な環境で育ってきたというのは間違いではないだろう。
それに今、ダネットは両親が死んだと言った。
わたしのお父様とお母様と、二人居る姉の上の姉様は元気で、下の姉であるちぃねえさまも体は弱いが生きている。
もし、わたしの家族の誰かが死んでしまったら、わたしはダネットと同じように笑えるだろうか?
いや、多分泣き喚いて、もしその傷に触れようものなら、それが誰であろうと怒り散らすだろう。
そう考え、ダネットに言葉をかけようとしたが、どんな言葉をかけていいかわからない。
ごめんなさい?元気を出して?忘れなさい?
言える訳が無い。
どんな言葉も、何一つ経験の無いわたしが言っても薄っぺらな偽物だ。
だから「あ…」と間抜けな声をあげる事しかできない。
そうして、固まったままのわたしに、ダネットは横を向いたまま言った。
166お前の使い魔 三話:2008/10/26(日) 01:28:37 ID:oRQgLKF4
「だから勉強は苦手です。で、でもバカではないのですよ?ちょっとだけ苦手なだけなのです。」

そして、少しだけ赤くなった顔をわたしに向けた。
そこにあったのは、自分の境遇を悲しむものではなく、単に勉強が苦手だと告白する事が恥ずかしいというだけの表情。

「へ?」

思わず出てしまったわたしの間抜けな返事を聞き、ぷうっと頬を膨らませたダネットは、少しだけ怒りながら言葉を続けた。

「上等です!そのジュギョウとやら受けて立ちましょう!私が優秀だというのを思い知るがいいのです!」

それを聞いたわたしは、自然と微笑んでいた。
その微笑みを、馬鹿にされたと思ったらしいダネットは、肩をいからせながらずんずんと廊下を歩いていく。
わたしは、そんなダネットの背中に、小さな声で喋りかける。

「あんたは強いわね…ダネット」

ダネットは振り向き、頬に指を当て、首を傾げる。

「へ?何か言いましたかお前?」
「別に、何でも無いわよ。さて、行きましょうか。早くしないと授業に遅れるわよ。」

こうしてわたしと、能天気なダメダメ使い魔は、朝日差す廊下を歩いて教室に向かうのだった。
167お前の使い魔 三話:2008/10/26(日) 01:30:50 ID:oRQgLKF4
以上で三話終了

あと、前回の投下後にあった、真のエンディングは封印エンドってのは同意見
それでは
168名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 01:32:03 ID:PrrPDCUm

クロス元知らないけどダネットが可愛いというのはすごくよくわかった
169名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 01:38:19 ID:OLQbC1j/
乙です。
ダネットのダメットがバゼットにみえて焦った。
170名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 01:41:21 ID:TxV5gLth
>>169
そりゃそのまんまだw
171名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 02:56:28 ID:vuAZop/8
次回予告
無防備学院    監督 渡辺拓也 脚本 永原秀一

トリステイン魔法学院から破壊の杖が盗まれた、
現場からはダネット(渡哲也)が取り逃がした強盗犯・フーケ(由美かおる)の落書きが検出される。
そんな折、捜査本部に犯人が利用したと思われるアジトを発見したとの報告が入る。
172名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 04:16:37 ID:5DnBsRc7
ウフコック乙!
揉めたら魔法で…というところで、「だったら麻雀で勝負よ!」をイメージしてしまったよ
173名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 06:46:40 ID:ScEzbHqK
ルイズ「モット伯爵、あなたがその地位を利用して女性を無理やりに召し上げて慰み者にしていることは、私の使い魔の手によって調査済みよ。
観念してお裁きを受けなさい」
モット「ふふん、何の証拠があるというのかね?」
使い魔「お前の書斎の机からこんな書き付けが出てきたぞ。これをマザリーニ枢機卿に見せればことははっきりするだろうさ」
モット「貴様!私の屋敷に勝手に入り込んで家捜ししたのか!汚いぞ!」
使い魔「私への罵倒は最高の賛辞さ」
174名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 07:23:46 ID:HQlRyYpJ
ダメット乙。
ダメット可愛いよダメット
次回にwktk。
175名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 08:04:45 ID:Bn2A9VeM
>>115
お疲れ様です。ザビーか…重くて使いにくかったなぁ。
ザビー教…ハルケギニアが文化侵略される!?

>>133
お疲れ様です。おマチさんの次なる策を期待してますぜ。ネズミの旦那

>>167
お疲れ様です。元ネタ知らないけど明るくてよい子ですな。
爆発にどういう反応を取るのか楽しみです。
176名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 08:42:16 ID:TdSfW4KC
最初はグーじゃんけんしねぇ!!ですね
177名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 08:43:15 ID:TdSfW4KC
ごめんsage忘れ
178ゲーッ!熊の爪の使い魔:2008/10/26(日) 11:40:13 ID:+1mJir5k
短いですが45分頃から投下します。
179ゲーッ!熊の爪の使い魔1/4:2008/10/26(日) 11:47:07 ID:+1mJir5k
第七話 その名はウォーズマン

静寂の中、最初に声を上げたのは「実況」だった。
「なんとー!
ベルモンドの中から何かが飛び出しワルキューレの胴体を圧倒的破壊とともに抉り開けたーー!
そして現れたのは……左手に爪をもつ鍛え抜かれた肉体をもった、仮面をつけた漆黒の男だーー!!」
この声を皮切りに回りも声を上げ始める。
「いやーー、クマちゃんがホラーになったー!」
「きゃーー、いやーー!!」
と女生徒が叫びをあげ、
「きゅ、きゅい、きゅいいぃぃ……ブクブク」
と、とある竜が泡を吹いて落下し、
「私、あれに添い寝してもらってたの……」
とルイズは絶句し、
「そ、そんな、嘘ですよねベルモンドさん……」
とシエスタは現実から目をそむけた。
そしてこの戦いを冷静に見ていた二人も、
「これがタバサが予感していた正体だってわけね、ってどうしたの?」
「クマちゃんが、クマちゃんが、クマちゃんが……」
「何であれだけ冷静に考察してたタバサがショック受けてるのよ!?」
とやはり混乱していた。
そんな中、ただ一人全く声を上げていない者がいた。
ギーシュである。
彼の真正面には件の使い魔。そしてその後ろには破壊されたワルキューレ。
はっきりいてこんな破壊をできる方法はギーシュにはそうそう心当たりはなかった。
ワルキューレは金属製とはいえ比較的強度の低い青銅だ。
メイジでなくとも大剣や斧でなら切り裂くこともできるだろう。
それなりのメイジなら風や氷塊を打ち出したり、より強いゴーレムで殴るなどして砕くことも可能だろう。
だが、この使い魔はワルキューレの胴体を抉り飛ばした。
完膚なきまでにずたずたに削り引き裂き、穿ち抜いた。
範囲こそ狭いものの徹底的に破壊して見せた。
高位の魔法でもそうそうできるものではない。
そしてこの行為をなした使い魔は今目の前に立っている。
180ゲーッ!熊の爪の使い魔2/4:2008/10/26(日) 11:49:02 ID:+1mJir5k
何かをしゃべろうにも口からはヒューヒューと音が漏れるだけだった。
全身がすくみあがり声を出すことも指一本動かすこともできない。
そしてその漆黒の男は表情のない仮面で正面の自分をとらえ、ゆっくりと歩み寄ってきた。
ついでに
「コーホー」
といいながら。
死ぬ。
殺される。
食堂でシエスタが感じたものよりも強く、圧倒的重圧と現実感を持った実感がギーシュを包んでいた。
そして眼前に立つと、
「今度こそ負けを認めるか?」
と声をかけた。
間違いなく殺されると思っていたギーシュはこの言葉がすぐには理解できなかったが、すぐに
「はい、僕の負けです!降参です、どうか許してください!」
と必死に許しを請うた。
「その言葉、うそ偽りはないな」
「はい、ありません!もうあんな真似はしません、間違いなく僕の負けです!」
「……そうか、ならいい。だが、ギーシュよ、これだけは言っておこう。
男なら一度口に出した言葉をたがえるべきではない。
戦いにおいてはフェイントをかけることは勿論、
他にも弱ったふりなどをして相手のすきを誘うといったこともよいだろう。
だが、そのためであっても負けた、などと口にすることは許されない。
ギーシュ、戦い続けるのであればおまえは先ほど敗北を認める言葉を口にするべきではなかった。
逆にそれを口に出したのならその言葉に自ら従うべきだったのだ」
「は、はい。もう二度と、口にしたことを違えたりしません!」
「そうか、じゃあ約束どおりまずはルイズたちに謝るんだ」
「……え?あ、は、はい!」
それを聞くと漆黒の男はボロボロになったクマの着ぐるみを抱え、ギーシュをつれてルイズたちのもとへと向かった。
181ゲーッ!熊の爪の使い魔3/4:2008/10/26(日) 11:51:00 ID:+1mJir5k
その周りにも生徒はいたが、彼が近付くと道を作るかのようにさっと後ろに引いた。
正直怖かったからだ。
そんな様子を無視すると彼はギーシュとともにルイズの前に来た。
なんというか、何を言えばいいのか分からないでいる二人に対し、
「その、ルイズ、君のことを侮辱して済まなかった。
それにメイドの君、先ほどはあのような振る舞いをして悪かった。
確かに彼の言う通りこのようなことは貴族のすることではなかった。
もう二度とこんなことはしないと誓う。どうか許してほしい」
とギーシュが詫び、頭を下げる。
「そ、そう、ならいいのよ。ええと、あんたシエスタっていったっけ?
シエスタももういいでしょ」
「は、はい。もう結構です、顔を上げてください」
「そうか、ありがとう。ではあっさりしているようですまないが次はモンモランシー達のところへ行ってくるよ。
僕のせいで傷つけた彼女たちにもきちんと詫びなくては」
そう言ってもう一度頭を下げるとギーシュは去って行った。
後には二人の少女と漆黒の使い魔が残された。
「ええと、それがあんたの本当の姿なの、ベルモンド?」
と、おずおずとルイズが問いかける。
「違う」
「え」
「ベルモンドではない。
俺の名はウォーズマン。
ファイティングコンピューターウォーズマンだ」
182ゲーッ!熊の爪の使い魔4/4:2008/10/26(日) 11:55:08 ID:+1mJir5k
一方そのころ、学院長室では
「そっそんなーー!ベ、ベルモンド君がー!ウッウッウアーーッ!」
と、こめかみに四つの穴を持つ超人のような叫びをあげるコルベールを尻目に
オスマンは遠身の鏡を見ながらわなわなとふるえていた。
「な、なぜあの使い魔が「破壊の爪」を……!?」
オスマンの視線はウォーズマンの左手に注がれていた。
183ゲーッ!熊の爪の使い魔:2008/10/26(日) 11:57:24 ID:+1mJir5k
以上で投下を終了します。
本編では明日あたりウォーズマンが大変なことになりそうですが、
この作品内では活躍させ続けたいと思います。
184名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 12:00:17 ID:Bn2A9VeM
>>183
熊さんが、熊さんがぁぁぁぁ
お疲れ様でした。次回も楽しみに待ってます。
185名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 12:15:15 ID:ocLVg1HC
戦争マンキタコレ!!!!

タバサの反応がいいな!
186名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 12:16:17 ID:VrRUksMc
コーホー乙!
187名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 12:20:42 ID:o50YMv49
この展開がいつか来ると分かっていても噴かざるをえないw
そして、手をにぎにぎして水を搾り出していたベルモンドがもういないことに一抹の寂しさが(´・ω・`)ショボーン
188名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 12:26:42 ID:dy+PRN5G
>表情のない仮面で
笑ってはいなかったか、何よりだw
189名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 12:33:48 ID:HQlRyYpJ
戦争男乙
シエスタとタバサカワイソスw
GJ
190名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 12:40:13 ID:BRrTeXPb
熊さん乙!!
やべぇ、おもしろい。
タバサいいな。


でも……クマちゃんが、クマちゃんがもういない。
191名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 12:57:09 ID:5L+VZoxm
遂に正体を現したウォーズマン!もうベルモントのオーバーボディは着ないのでしょうか?
192名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 12:59:28 ID:f/GmLier
ついに真名を名乗ってしまったか…
「アレは夢だったんだ」でクマちゃんが復活する事も無さそうだなぁ…
でもきっとタルブの村には相方が眠ってるんですよね!
193名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 13:38:54 ID:gUiG0XSu
タルブの村にはバトルマンか三太夫がいるんだよ
194ゼロ 青い雪と赤い雨 代理:2008/10/26(日) 13:40:08 ID:n3OdSakL
特に予約ないみたいなんで代理いきます。

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決闘が終わって一段落ついた所ではあるが、
それで「疲れたから今日はもう寝るわ」とはいかない所が、“書生”と呼ばれる身分の辛い所である。
ルイズは現在、目下教室の清掃作業に追われている。
その原因を説明するには、少し時間を遡る必要があるだろう。


決闘終了後間もなくの事、ルイズは休む間も無くミセス・シュブルーズによる土の講義を受けていた。
噂話の大好きな貴族の子弟達の学校なだけあって、終わって間もない決闘の噂は既に周知の所であったので、
(ギーシュの騎士道とも取れる雄姿は、女子生徒の間で往々にして誇張される所ではあったが)
化け物―――つまりアトリを伴っているルイズを、面と向かって貶す者は最早居なかった。
最も、ルイズに叱られている姿も彼らの知るの所であった為、必要以上に恐れられる事も無かったが。

授業内容については特に特筆するべき事は無かった。
“錬金”の復習である。
“錬金”とは物質の形質を変化させる、土系統で最も基本的とされる魔法である。
教師はそれを実演した際に、アトリを少なからず一驚に喫させる事に成功した物の、
その後に生起した事に対する“それ”とは比にならなかった。

その後に生起した事とは、生徒による“錬金”の実演である。
授業内容も、実演対象である魔法も多くの生徒にとって、至って平凡な物であった。
しかし、教師に指名され実演した生徒が平凡ではなかった。
ルイズである。

杖を持ち、精神を研ぎ澄まし、ルーンを紡ぐ。
それに起因する結果は、彼女の場合他者とは異なる。
それは“爆発”である。
そしてそれは“錬金”という魔法に限った事では無い。
彼女にとってハルケギニアに存在する、無数の魔法は全て等価値であった。
帰結する先が全て同じなのだから。


その際、アトリはレイズが急速に収縮したのち、まさに“爆発的”に拡散していくのを観測し、
驚駭の念を禁じえなかったのだが、周囲の目には『ルイズの失敗魔法を初めて見た為である』
と捕えられたため、特に記憶に残るという事も無かった。

ルイズにとってはアトリの驚駭の表情は、無論気分の良い物では無かったが、決闘の直後という時間帯もあいまって、
モンモランシーが授業中何か言いたげな面持ちで、こちらをちらちらと見ていた事の方が気になった。
しかし、授業が終わると同時教室を飛び出して行ってしまった為、真相はその時点では未だ不分明であった。
大方医務室で寝ているギーシュを見舞ってやっているのだろうが・・・。
195ゼロ 青い雪と赤い雨 代理:2008/10/26(日) 13:40:42 ID:n3OdSakL
兎にも角にも、教室を吹き飛ばしてしまったルイズは、その清掃を命じられたのだった。
ルイズの爆発により吹き飛ばされた教室の惨状は相当な物で、時間の面から言えば恐らく夕方位までは要する事が予測された。
それは、途方に暮れるに値する事だったが、その時間すら惜しいので、とにかく手を動かす事にした。
アトリはさり気なく重い物、危ない物を率先して処理してくれている様で、その無言の気遣いがとても心地よい物に感じられた。
相変わらず口は悪かったが。
そんな調子で清掃作業に従事していると、教室の扉が開く音が、来客を2人に知らせた。

タバサであった。
『雪風』と呼ばれる少女も、決闘の際に、観衆の「幽霊」発言により気絶してしまっていた為、医務室で寝かされていたのだった。
無論医務室にいた為に、授業が中止になった事を知らなくて来るに至った訳では無い。
彼女の親友のキュルケが、それを彼女に伝えていない道理は無かった。
「では、何をしに来たのか」ルイズの頭上に疑問符が浮かぶ。

ルイズの視線を気にする様子もなく、タバサはその蒼氷色(アイス・ブルー)の瞳で、教室を無言のまま水平に切る。
そして、アトリをその視野に収めると、接近し些かの言葉を交わしたのちに去って行った。
タバサがキュルケ以外と会話するなんて(キュルケともあまり会話する所を見ないが)、滅多に無い事である。
無論ルイズは即座に内容を詰問、アトリは「何でもねぇよ」と言うのみであった。

彼女としては、主人に対しやたらと説明責任を怠る上に、知らない間に他の女の子と仲良くなってしまっている、
このけしからん使い魔に何か罰を負わせたい所であった。
しかし、怒られている(というよりも、むしろ叱られている)時のすまなそうな表情を見ていると、どうも調子が狂ってしまうのだった。
尤も彼に対し、食事抜きや鞭での体罰が効果があるとは思えなかった、という側面もあるが。

だが罰を与えないにせよ、糾弾の調子は衰える様子は無かった。
愛嬌のある鳶色の瞳は怒りに燃え、愛くるしい口元からは容赦の無い言葉が掃射された。
ルイズのその不満に満ちた胸中には、に独占欲や、嫉妬心といった要素が多分に含まれている事は誰の目から見ても明らかだった。
その当人の目を除いて。
彼女の糾弾の奔流は無限に続くかと思われたが、2度目の扉の開く音がそれを断ち切った。

ルイズはブルー・アッシュの頭髪を持つ少女を想像し、臨戦態勢に入る。
しかし、予想は裏切られ視界に飛び込んだのは、光沢のある艶やかな金髪であった。
196ゼロ 青い雪と赤い雨 代理:2008/10/26(日) 13:41:16 ID:n3OdSakL
来客はギーシュとモンモランシーであった。
俯くモンモランシーの手をギーシュが引いている。
ギーシュはアトリをその碧眼にアトリを映したのちに、教室の惨状を見回し、少しばかり微笑み、言った。
「まぁ随分と派手にやった物だね」
「う、うう、うるさいわねっ!何の用なのよっ!」

ルイズの問いを受け、ギーシュの表情が質実な物へと変容し、彼自身の精神がそうである様にまっすぐに、アトリを見据える。
「モンモランシーから話を聞いたよ。僕の勝手な勘違いで決闘を挑み、あまつさえそれに負けた。君には本当に上げる頭が無い。本当にすまなかった」
「ごめんなさい・・・」
頭を下げたギーシュに続いて、少々戸惑いはした物のモンモランシーも頭を下げた。

これに驚愕の念を禁じえなかったのはルイズであった。
可愛らしい両手を口にあて、鳶色の瞳をまんまるに見開いている。
貴族が平民に頭を下げる等、本来ありえない。
尊大で、貴族としての矜持を守る為なら、自らをも含めた死人が出る事さえ厭わない、というトリステイン貴族なら尚更の事である。

彼等の誠意を尽くした謝罪に、(尤も、貴族が平民に対し頭を下げるという事の意味等、未だ知る由もなかったが)
アトリは表情を温かみのある、微笑寸前と言ったような物にする事で應えた。が、
言葉に出さなかった為ルイズが腰に手を当て、“出来の悪い弟に苦労する姉”といった風な表情を取り、世話を焼いて代弁する。

「いいわよ、もうそんな事」

「感謝するよ。そこで、まぁなんて言うか、負債を少しでも返済しておこうと思ってね」
穏やかな表情に戻ったギーシュが造花の薔薇を振り、素手の“ワルキューレ”を一体だけ生成する。

「まだ精神力が回復しきっていないんだ、僕とモンモランシーも含めて3人。まぁ居ないよりはマシだろう?」
ポーズを決め、気障ったらしく言い放つ彼の姿は、自称“薔薇”のそれに立ち返っていた。


ギーシュはワルキューレと共に、率先して重量のありそうな物を運び出していき、
ルイズとモンモランシーは箒や雑巾で、教室を綺麗にしていく。
アトリは3人はというと、談笑しながら片づけていくのを、教室の片隅でその瞳に優しい光を湛え見守っている。
そして言うまでもない事だが、その後アトリはルイズの怒りをその一身に受け、作業に復帰する事になるのだった。

「主人が作業に従事しているのに、休息を得るとは何たることか」とはルイズの弁である。
人差し指をピンと立て、アトリを怒った調子で睨み上げると(尤も、身長差の為にアトリからは上目使いにしか見えないのだが)、
柔らかなチェリーブロンドの頭髪を持つ少女は続ける。



「忘れないで!あんたは私の使い魔なんだからね!」
197ゼロ 青い雪と赤い雨 代理:2008/10/26(日) 13:41:49 ID:n3OdSakL
これで終わりです。
当初予定していたギーシュ編までがこれで終了しました。
相変わらず読みづらい文章 かつ 台詞の少ない文章ですが、
読んで下されば幸いです。

今後については、一応展開は考えてあるので書いてみるつもりではいますが、
間隔が少し空くかもしれません。

--------------------------------------------------------------------------------

以上。
198名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 14:16:34 ID:cq6t8x+M
乙!
199名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 14:17:10 ID:cq6t8x+M
おっおっおっ
だめもとでカキコしてみたら規制解除されてたお
OCNは規制されすぎ
200名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 14:24:38 ID:7xP5Ogh9
>>156
ショットガンではない

大門ガンだ
201青い雪:2008/10/26(日) 14:33:53 ID:U9vlrEvA
文章ガおかしな所を多々みつけたので
修正したものを自分で登録しました

お目汚しすみませんでした
202青い雪:2008/10/26(日) 14:35:34 ID:U9vlrEvA
さげわすれです
すみませんでした

代理してくださる方いつもありがとうございます
203名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 14:42:46 ID:v/+KfOj9
いえいえこちらこそごてーねーにどーも
204名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 14:43:51 ID:CqJfsjF6
またみみっちぃ荒らしだな・・・
205名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 14:57:05 ID:d8LWx5Xa
くまちゃん乙!
しかしモフモフが!
モフモフがもう・・・
206ウルトラ5番目の使い魔 第19話:2008/10/26(日) 15:23:16 ID:peE7jEXE
こんにちは、ウルトラ5番目の使い魔、第19話の投下を開始してよろしいでしょうか。
今回は前回に続きまして中編という形になります。
207ウルトラ5番目の使い魔 第19話:2008/10/26(日) 15:24:29 ID:peE7jEXE
あ、すいません。投下開始予定時刻は15:35ということにします。
208名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 15:26:09 ID:2WeqFjrc
こちら地球防衛軍、これよりウルトラマンAを援護する!
209名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 15:35:51 ID:1VdWxjH/
しえーん
210ウルトラ5番目の使い魔 第19話 (1/11):2008/10/26(日) 15:36:42 ID:peE7jEXE
 第19話
 遠い星から来たお父さん (中編)
 
 エフェクト宇宙人 ミラクル星人
 緑色宇宙人 テロリスト星人 登場!
 
 
 ミラクル星人を見送り、アイを引き取り手の商家に送り届けたルイズ達は、ブルドンネ街西のホテルに宿泊していた。
 彼女達のとった部屋は、その2階にあるベッドが4つある家族連れなどが利用するための、貴族用のレベルで
いえば中の中の一室で、ルイズのプライドと予算を天秤にかけて、一番安く出たここに6人が泊まることになったのだ。
割り振りはルイズ、キュルケ、タバサがそれぞれベッドがひとつ、ロングビルとシエスタがベッドひとつに
ふたりで入り、才人がいつもどおり床、ただしカーペットが敷いてあるのでわらの上よりは寝心地はいい。
 ちなみに、男女が同じ部屋に泊まるという問題については、仮にシエスタかキュルケが才人を誘惑したと
しても、残りの片方とルイズがそれを阻む。才人から手を出してくる可能性は限りなくゼロに近いということで
安全という結論が出た。
 
 時刻は地球時間でいえば午後8時を過ぎて、夕食を済ませた一行は、寝巻きに着替える前に部屋で雑談に興じていた。
「はー、それにしても今日はいろいろあったわねえ」
 ベッドに腰を下ろして、ルイズはため息といっしょにつぶやいた。
「そうですよねえ、ミス・ヴァリエールとミス・ツェルプストーがサイトさんを取り合って、商店街中駆け回ってましたから」
「そっちじゃないわ、まあ意識的に避けようとしてるのもわかるけどね」
 おどけた様子で話すシエスタに、ルイズは今はやめておけというふうに言った。
「あ、そうですね。でも、あんな亜人が人間に混ざって街の中に住んでたと思うと、頭では悪い人じゃないと思っても、
やっぱり少し抵抗感があります」
 少しうつむき加減でシエスタが言うと、キュルケもそれに同意するように言った。
「あたしもね。ついこの間人間に化けていた敵と戦ったばかりだから、いまいちバム星人とかぶっちゃってさ。
ねえダーリン、ほんとにあの亜人は悪い奴じゃないの?」
「ああ、俺のいた国でも、あの人の同族が昔やってきたことがあるそうだ。それにしても、こっちでも同じように
留学にやってきている人がいたとは驚いたな」
 宇宙という概念がないハルケギニアの人のために、才人はルイズ以外には宇宙人を亜人、彼らがやってくるのは
はるか東方の地ということにしてある。
 しかしそれにしても、この世界に宇宙人はヤプールを介して異世界からやってくると思っていただけに、ヤプールと
関わり無くハルケギニアに宇宙人がいるとは思わなかった。おまけに、彼の話が本当だとすると、この世界にも
才人の世界と同じようにミラクル星があるということになる。だが、考えてみれば地球にも大昔から少しずつ
宇宙人がやってきていたというし、ウルトラマンの同族が何千年も前に現れていたという記録もあるそうだから、
ありえない話ではないだろう。
 ウルトラマンダイナの例もある、ふたつの世界に同じような星が存在していても不思議はない。もしかしたら、
このはるかな星空のかなたに、ウルトラ兄弟のいない別の地球があるのかもしれない。
211ウルトラ5番目の使い魔 第19話 (2/11):2008/10/26(日) 15:37:48 ID:peE7jEXE
「なんだみんな、うかない顔して? 別に侵略者が現れたってわけじゃないだろ?」
 なにか暗い雰囲気に、才人が不思議そうにそう言うと、ルイズが首を振って答えた。
「そうじゃないのよ。確かに、ミラクル星人はいい人だったかもしれないけど、あなたも先週の王宮での戦いは
覚えてるでしょ。人間に化けて王宮を破壊しようとしたよね。基礎知識のあるあなたはいいかも知れないけど、
わたしたちには見ただけじゃ、いい星人か悪い星人かなんて区別つかないからね」
 それを聞いて才人ははっとした。確かに、もし目の前にいきなり見も知らぬ宇宙人が現れたら、警戒し、
恐れを抱いてしまうだろう。
 すると、キュルケとロングビルも重苦しそうに言った。
「まあねえ、あたしも誰かれかまわず敵を作る趣味はないけど、わたしたちと同じ姿になった敵が中には
いると思ったら、いやでも身構えちゃうからねえ」
「ミス・ツェルプストーの言うとおりね。ただでさえ、人間と亜人はそれぞれを蔑視して、それぞれ干渉しないように
住みわけてるんだから……それに、確かに一部にいい人はいるけど、エルフやオークとかほとんどの亜人は
人間と敵対してるし、人間に化けてくるやつには、吸血鬼みたいなひどいのもいる。ましてや、ヤプール
みたいなのがいるご時世じゃねえ」
 ふたりとも、理屈では共存の可能性を示唆しながらも、現実には亜人と人間は相容れないものだと
結論を出していた。
「わかったでしょ、人間と亜人は似てるけど別個の存在なのよ。平民と貴族はまだ同じ人間だけど、
まったく違った生き物といっしょに生きるなんて、しょせん無理、ミラクル星人だって、ずっと人間に
化けてたからハルケギニアにいれたんだから」
 ルイズにそう断言され、才人はなんだか悲しくなってきた。
「本当にそうなのか、違う者同士が仲良くするのって、そんなに難しいことなのかよ」
 才人のつぶやきには、悲しみと、静かではあるが怒りの感情が混ぜられていた。
 ルイズは、そんな才人に、再びこの世の中の在りようというものを説いて聞かせようとしたが、彼女が
口を開くより先に、もうひとつの声がふたりに話しかけた。ただし、外からではなくふたりの内から。

(そんなことはない)

(!? エース)
 それは、ふたりの心の中から、ウルトラマンAがふたりに向かって語りかけてきた声だった。
(この宇宙には、異なる星の者同士が手を取り合っているところがいくつもある。それに、私の兄から
聞いた話がある。かつて、ミラクル星人と同じく、孤児となってしまった少年を引き取り、共に生きていた
宇宙人がいたと)
(えっ!? それは本当ですか)
(本当だ。しかも、その少年は、彼が宇宙人であると知りながらも家族のように仲良く過ごしていた
という。恐れず、語り合えば、たとえ姿形が違おうとも友にも、家族にもなれる。それに、才人君、
忘れてはいないか? 我々ウルトラマンもまた宇宙人だということを、君達地球人は、我らと40年もの
間、共に歩んできたのだよ)
 エースの言葉に、才人はふつふつと勇気が湧いてくるのを感じた。
212ウルトラ5番目の使い魔 第19話 (3/11):2008/10/26(日) 15:39:09 ID:peE7jEXE
(そうだ、そうだよ。俺達は、ずっとウルトラマンといっしょにやってきたじゃないか、地球人にできたことが
ハルケギニアの人にできないわけはない!)
 思い起こしてみれば、ほんの数年前にも、GUYSがファントン星人と友好を結んだり、エンペラ星人との
決戦のときには、多くの宇宙人がメビウスの危機に駆けつけてくれた。星を越えた友情は、決して荒唐無稽な
ものではないのだ。
 だが、そんな才人にルイズは苦しそうに言った。
(そういえば、あんたの国には貴族と平民の違いはないんだったね。けれど、ハルケギニアでは、人間だけ
でも貴族と平民の中にもさらに細かく身分が分けられて、それらは絶対だとほとんどの人が信じてる。
ましてや今あたしたちが戦ってるのは、狡猾で卑劣なヤプール、友好的なふりをしてだまし討ちにしてくる
ことだって充分に考えられるわ。そんなことになったらどうするの?)
(それは……)
 才人には答えられなかった。地球人ならば可能なことでも、ハルケギニア人には困難なこともある。
さらにルイズの言うとおり、ヤプールがそんな卑劣な手を使ってきたとしたら、人間は人間以外の人々を
全て敵だと見るようになるかもしれない。
 だが、それに答えたのはエースだった。
(何度でも、信じてくれ)
(え?)
(例え相手が誰であろうと、信じて語り合おうと思う心を持ち続けてくれ。その思いが裏切られ、傷つけられても、
また手を差し伸べる優しさを失わないでくれ。たとえそれが、何百回繰り返されようと)
(エース……)
(人に裏切られるということは、大変な苦しみだ。だが、それで人を信じなくなるか、もう一度人を信じてみる
のか、どちらが本当に勇気のある選択か、よく考えてみてほしい)
 エースはそう言うと、心の中へと帰っていった。
 
「ルイズ、ちょっとルイズ」
「……え?」
「え? じゃないわよ。どうしちゃったの、急にぼぉっとしちゃって」
 不思議そうに自分の顔を見つめるキュルケの声に、ルイズは再び現実に戻った。
 ルイズはしばらく考え込んでいたが、やがてキュルケに向かって真剣な顔で話しかけた。
「ねえキュルケ」
「なに?」
「もし、もしもよ。あんたがさ、悪い男にだまされてひどい目にあったとしたらさ、あんたはもう男を信用しなくなる?
それとも、また信じてみる?」
 キュルケは、唐突なルイズの質問に、しばらくぽかんとしていたが、腕組みをして豊満な胸をさらに
持ち上げるようなしぐさをすると、微笑しながら答えた。
「まず、わたしが男にだまされる、そこのところは訂正してもらいたいわね。けれど、わたしも人にだまされた
経験が無くはないわ、容姿に恵まれた者は、ねたまれるのが常だものね、ね」
 そこまで言うと、キュルケはなぜかタバサのほうを向いて、軽くウィンクすると、タバサも軽くうなづいた。
「ま、それはいいとして、そうね。とりあえず、だました奴はただじゃおかないわね。けれど、ほかの人にも
それを適用したりはしないわ。どうあれ、人は人だもの」
「それなら、ある亜人にだまされても、ほかの亜人は関係ないと思える?」
「難しい質問ね。自分とまったく違うタイプの人と接した場合、その人そのものがその人の属するグループの
特徴だと思い込んでしまうのが、人の心理というものだしね。けど、あなたの言いたいことはわかったわ。
わたしも、気をつけることにするわ……けど、あなたらしくもなく丸い考え方ね。彼の影響かしら? ん」
213ウルトラ5番目の使い魔 第19話 (4/11):2008/10/26(日) 15:40:16 ID:peE7jEXE
「な、なにを馬鹿なことを! わ、わたしがこんな奴の言うことに、ふらふら惑わされるわけないじゃない!」
 顔を真っ赤にして言うルイズに、キュルケはわかったわかったと笑いながら言った。
 シエスタとロングビルは、ふたりの会話を黙って聞いていたが、その内容にはそれぞれ思うところが
あったようで、自分の胸に手を当てて、じっと考えていた。
 
 そして、瞬く間に夜は更けて、夜更かしなトリスタニアの街もすやすやと眠りにつき、ルイズたちも
そろそろベッドに入ろうかというころになった。
「そろそろ遅いわね……明日は朝一番で帰るわ、もう寝ましょうか?」
 ロングビルに言われて、ルイズ達はそれぞれベッドに入った。普段着のままだが、ここの寝巻きは
どうも質が悪かったので、誰も着替えようとしなかった。
 そしてシエスタが窓を閉めようとしたとき、階下のロビーがなにやら騒がしいのに気づいた。
「なにかしら、こんな時間に?」
 シエスタは不思議に思ったが、2階からではいまいちよくわからない。
 すると才人は、もしかしてまたツルク星人のような奴がと思い、デルフリンガーを担いで立ち上がった。
「また街でなにかあったのかも、ちょっと見てくる」
「あっ、ダーリン、じゃあたしも行く」
「ちょ、どさくさまぎれでサイトをどっかに連れ出す魂胆じゃないでしょうね、あたしも行くわ」
「そ、そういうことでしたらわたしも行きますとも、ええどこまででも!」
 才人としては、ちょっと見てくるだけのつもりだったのだが、またキュルケとルイズが張り合った
せいで、ぞろぞろと、しかも何故かロングビルとタバサまでついてきて、もうさっさと様子を見て
寝ようと、うんざりした。
 だが、ロビーに下りて騒ぎの原因を突き止めたとき、まぶたを覆っていた眠気も一気にどこかに
吹き飛んでしまった。
 
「お願いだから、お姉ちゃんたちに会わせて!!」
「だから、そんな人はここにはいませんと言っているでしょう。これ以上騒ぐなら、子供でも容赦しませんよ!」
 
「あの子、アイちゃんじゃないか!?」
 驚いたことに、日暮れに送っていったはずのアイがボロボロの身なりでホテルのボーイと怒鳴りあっている。
 ボーイは、あくまで紳士的に対応しようとしているようだが、汚い身なりの子供を相手にするのもそろそろ
限界にきているようだ。
「この、ここは貴族様もお泊りになるホテルだぞ。お前のような小汚いガキのくるところじゃない、さっさと出て行け!」
 とうとう我慢の限界にきたボーイは、薄汚い本性をあらわにしてアイに平手を向けた。だが、それが振り下ろされる
より早く、ルイズの声が鉄槌のようにボーイの耳朶を打った。
「待ちなさい!! その子はわたしの妹です。一切手を触れることは許しません!」
「!?」
「あっ! お姉ちゃん!」
 ルイズ達の姿を見つけたアイは、泣きながら駆け寄ってきた。ボーイは石像のように固まってしまっている。
214ウルトラ5番目の使い魔 第19話 (5/11):2008/10/26(日) 15:41:20 ID:peE7jEXE
「えっ、いえ、しかしお客様……」
「なにか?」
 ルイズに、豹のように冷たい視線を向けられて、ボーイは返す言葉を失った。だが、2流でもホテルのボーイ
としてのプライドがあるのか、まだ食い下がろうとしたが、そこにキュルケが立ちふさがって、穏やかな声で言った。
「ミスター、あたくしの友人に身分は関係ありませんわ。非礼はおわびしますが、ここは寛大な心で見逃して
いただけないでしょうか。お互いのためにも」
 そして、ロングビルが無表情でボーイの手に銀貨を一枚握らせると、ようやく彼もこれ以上食い下がる愚を
悟ったらしく、一礼して去っていった。
 
「お姉ちゃん、うっうっ……」
 アイはシエスタの胸に顔をうずめて泣いていた。よく見れば、彼女の身に着けているものは、まるで
雑巾のようなボロボロの衣服が一枚だけで、靴さえ履いていない。
 やがてロングビルが上着をかけてやり、才人がくんできた水を飲むと、アイはやっと落ち着いた。
「いったい何があったの、ここはもう安全だから、ゆっくり言ってみて」
 シエスタがアイの背中をなでてあげながら、優しく話しかけるとアイは思い出すのもおぞましい
とばかりに、のどから吐き出すように自分になにがあったのかを話した。
 それによると、彼女を引き取った商家というのは、ほかにも身寄りの無い子供を引き取って
育てたりと評判のいいところだが、その実、裏では子供を集めては奴隷として売りさばくという、
血も涙も無い奴隷商人だったのだ。
 才人達も、自分達でアイをその商家に送っていっただけに、驚きを隠せなかった。特にロングビルは
顔を紅潮させ、わずかだが歯軋りをしていた。元盗賊として長いこと裏家業に生きてきただけに、
その正体を見破れなかったのが悔しかったようだ。ロングビルでさえ騙されたのだから、気のいい
ミラクル星人にはなお見破れなかったのだろう。
 地下牢に放り込まれそうになったところで、かろうじて隙を見て逃げ出してきたのだと彼女は言った。
「子供を売り物にするとは、とんでもねえ連中だ」
「まったくね、それでわたし達のところへ逃げてきたの、まあこの辺で貴族が泊まれる場所なんて
そうはないからね。安心しなさい、弱い者を守るのが貴族の務め、そんな悪党にあんたを渡したりしないわ」
 才人とルイズも怒りをあらわにして言った。
 しかしアイはなおも興奮したままで、ルイズにつかみかかるようにして叫んだ。
「違うの、わたしはいいの、おじさんを、おじさんを助けて!!」
「おじさん……ミラクル星人か、あの人がどうしたんだ!?」
 ただならぬ様子に、才人はアイの肩をつかんで尋ねた。するとアイは、あのビー玉を取り出して、
彼の前に差し出した。
「このビー玉、これだけはなんとか取り上げられずに守ったの、でも、あそこから逃げてきたあと、
怖くて、これをのぞいたら、そうしたら……」
 才人はビー玉を取り上げると、ルイズと共に中をのぞきこんだ。
 
 また、ビー玉の中が泡立ったかと思うと、再び映像がふたりの脳に投影されてきた。
215名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 15:41:32 ID:2WeqFjrc
支援
216ウルトラ5番目の使い魔 第19話 (6/11):2008/10/26(日) 15:42:25 ID:peE7jEXE
 場所はどこかの森の中、そこをミラクル星人が歩いていると、突然彼の前の暗がりから巨大な
半月刀を持ち、緑色の体に、大きく吊り上った目を持つ怪人が現れた。
「!? お前は」
「ぐふふ、ミラクル星人、お前の持つハルケギニアの調査資料を渡してもらおうか」
 怪人は刀を振りかざして、下品に笑いながらそう言った。
(テロリスト星人だ!)
 才人はそいつに見覚えがあった。地球で愛読していた怪獣図鑑のZATの欄にあった写真とうりふたつ、
【緑色宇宙人 テロリスト星人】、好物の天然ガスを求めて、あちこちの星を襲っては住民を殺戮し、
ガスを強奪していく宇宙の盗賊だ。
 だがミラクル星人はひるむことなくテロリスト星人に言い放った。
「ヤプールの差し金か。断る、この資料を渡せば、お前達はこの美しい星を侵略するために使う
だろう。断じて渡しはせん!」
「ふん、生意気な、喰らえ!!」
 テロリスト星人は左手に仕込まれている機関銃、テロファイヤーをミラクル星人に向けると、
ためらいもなく銃弾をミラクル星人にあびせた。
「ぐわっ!!」
 それは致命傷ではなかったが、ミラクル星人は撃たれた肩を押さえて苦しんだ。
 そして、彼は踵を返すと、道を外れて森の奥へと駆け込んでいった。テロリスト星人はあざ笑いながら
自分も森の奥へと入っていく。
「ふははは、逃げろ逃げろ、簡単に捕まっては面白くないぞ、せいぜい楽しんでなぶり殺してやる」
 そこで再び視界が泡立ち、映像が終わった。
 
「テロリスト星人め!」
 才人はビー玉を握り締めて、ギリギリと音が鳴るほど強く歯軋りをした。
「そうか、このことを伝えるために、必死にここまで来てくれたのか、本当に不安で、苦しかっただろうに」
 アイの手のひらの上にビー玉を握らせてやると、アイは涙をいっぱいに浮かべながらルイズ達に
すがりついた。
「お願い! お姉ちゃんたち、貴族なんでしょ、魔法使えるんでしょ、お願い、おじさんを助けて!」
 けれど、突然のことにキュルケやロングビルは、まだ信じられないというふうに立ち尽くしている。
 だが、才人はすぐにルイズに向き直ると。
「ルイズ、さっきの場所はどこだ!?」
 すでに才人の心は、ミラクル星人を助けに行くと決まっていた。しかしトリステインの土地勘が無い
才人には、あれがどこの森だったのかはわからない。
「ちょっと待って…………まてよ、あの道にあった立て札は……そうだ、ラグドリアン湖への一本道、
ここから6リーグほどの場所よ」
 ルイズはそう断言した。
「わかった、ちょっと馬借りるぞ、朝までには戻る」
 才人はそう言って出て行こうとしたが、その前にルイズが立ちふさがった。
「ちょっと待ちなさい。あんた、こないだ次はわたしもいっしょに連れて行くって言ったのをもう忘れたの?」
217ウルトラ5番目の使い魔 第19話 (7/11):2008/10/26(日) 15:43:22 ID:peE7jEXE
「え、もしかしてお前」
「当然でしょ。彼は命を賭けてハルケギニアを守ろうとしてくれている。そこに住んでいるわたし達が
助けなくて、どの面下げて貴族と名乗れるの?」
「ルイズ、お前ってやつは……」
 いつも他人のことなど知ったことかといった態度をとるルイズの思いもよらぬ言葉に、才人は感極まって
しまった。
 すると、それまで成り行きを見守っていたタバサが。
「馬じゃそこまでは時間がかかりすぎる。わたしのシルフィードに乗っていくといい」
「タバサ、お前も手伝ってくれるのか!? てか、こんな話を信じてくれるのか?」
「子供が親のことでうそはつかない……」
 タバサがそう言うと、泣いていたアイの顔から悲しみが消えた。
 そして、それまで行動を決めかねていたキュルケとロングビルも才人の前に出て。
「タバサがそう言うなら、わたしも手伝わないわけにはいかないわね」
「秘書とはいえ、学院にいる者として、生徒だけに危ない橋を渡らせるわけにはいかないわね」
「ありがとう、ありがとうお姉ちゃんたち」
 すでにアイの目から涙は消え、満面の笑みだけがそこに浮かんでいた。
 
「よし、そうと決まれば善は急げだ。タバサ、頼む」
 ホテルから出て、タバサが口笛を吹くと、1分もせずに月を背にしてシルフィードが降りてきた。
ただ、シルフィードにとってもおねむの時間だったらしく、はれぼったい目をしていたが、あくびを
しそうになったところでタバサが杖で頭をこずいて目を覚まさせた。
「乗って」
 まずタバサが乗り込み、続いて才人、ルイズ、キュルケ、最後にロングビルがアイを抱いて
飛び乗った。
「あの、わたしはどうすれば」
 戦う力は無いために残されたシエスタが、才人達を見上げて聞いた。
「シエスタ、君は衛士隊の詰め所に奴隷商人達のことを訴え出てくれ。人間を商品にするなんて、
絶対に許しておけねえ」
 拳を握り締めて言う才人に、シエスタもそうですねと強くうなづいた。だが、ロングビルが
難しい顔でそれを止めた。
「待って、これだけのことを誰にも気づかれずにやり続けていられたのは、いくら偽装が
巧妙だったからといっておかしいわ。衛士隊にも裏金を回して口止めがされている恐れが
あるわ」
「そんな、女王陛下の衛士隊が」
 シエスタは、まさかと思ったが。
「別に衛士全員を買収する必要はないわ、命令を出す隊長、もしくはここら一帯を警備する
数人を篭絡すればことが済むことよ。アイちゃんみたいな脱走者がこれまで出なかったとは
考えにくいから、おそらく前者ね。訴えに行ったら、逆に捕まりかねないわよ」
 裏社会で生きてきたロングビルの言葉には説得力があった。しかし、だからといって悪党共を
のさばらせていいはずはない。才人は少し考え込むと、再びシエスタに言った。
218ウルトラ5番目の使い魔 第19話 (8/11):2008/10/26(日) 15:44:08 ID:peE7jEXE
「よし、じゃあ王宮に行って、銃士隊の隊長のアニエスという人に協力を頼んでくれ。
ルイズ・ド・ラ・ヴァリエールのヒラガ・サイトの紹介だと言えば、きっと力を貸してくれるはずだ」
「えっ、じ、銃士隊って、このあいだ大殊勲を立てたところじゃないですか! その隊長さんと
知り合いって、サイトさんいったい……?」
「あ、まあいろいろあってな。ともかく時間がない、頼んだよ」
「わかりました。サイトさんのお頼みですから、まかせてください。では、お気をつけて」
 シエスタが駆け出すのと同時に、シルフィードは宙へ飛び上がった。
 たちまち、うっすらと明かりの残るトリスタニアの街が眼下で小さくなっていく。南西の
ラグドリアン湖方面へ向かって、シルフィードは全速で羽ばたいた。
「うわっ!? は、速え!」
 風竜シルフィードの全力飛行は、才人の想像を超えていた。家々があっという間に後ろに
流れていく、まだ幼生体だというが、馬なんかとは比較にならない。
「頼むから、間に合ってくれよ」
 
 
 しかしそのころ、もはやミラクル星人の命運は今まさに尽きようとしていた。
「ぐ、うう……」
 ミラクル星人は、森の中の小川を川原づたいに必死に逃げ延びていた。
 すでにテロファイヤーを何発も体に受け、もう森の中を走り回る力は残されていない。
だが、なんとかこの先の川原の地下に眠らせてある宇宙船の元までたどり着こうと、
足を引きずりながら、あきらめずに歩いていた。
 対してテロリスト星人は、まるでネズミをいたぶる猫のように、ひと思いにミラクル星人を
仕留めようとはせず、その後ろから森の中を邪魔な木々を右手に持った半月刀、テロリストソードで
切り倒しながら悠々と追ってきていた。
「がっはっはっはっ、そらそら、早く逃げないと撃っちまうぞ。命が惜しければ、さっさと
調査資料を渡すんだな」
「……断る」
 だが、これだけ追い詰められてもミラクル星人の心は折れていなかった。
「ちっ、強情な奴よ。どうせこの星では貴様を助ける者なんて誰もいやいないんだ。
とっととあきらめやがれ」
 暴力こそ至上の喜びとするテロリスト星人は、ミラクル星人の絶望と命乞いの言葉を
聞こうと、わざと急所を狙わずにいたぶり続けてきたが、体中傷だらけになってもなお
あきらめようとしないミラクル星人に、そろそろ我慢ならなくなってきていた。
 そして、これ以上なぶっても無駄だとわかると、テロリスト星人はジャンプして
ミラクル星人の頭上を飛び越え、川原の前で道をふさいでしまった。
「さあ、これで逃げ道はないぞ。これが最後だ、調査資料をよこせ!」
「断る」
「ぬぅぅ、戦う力もないくせに生意気な、死ねぃ!!」
 とうとう怒ったテロリスト星人は、怒りのままに袈裟懸けにミラクル星人にテロリストソードを
振り下ろした。
「ぐわぁっ!!」
 左肩を切り裂かれたミラクル星人は、ひとたまりもなく川原の砂利の上に倒れこんだ。
219名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 15:46:06 ID:2WeqFjrc
sien
220名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 15:49:11 ID:dSGNJ7QU
高潔な魂に支援
221名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 15:54:44 ID:2xkeMgLe
ハラハラドキドキ、支援
222名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 15:55:23 ID:UW1jBwKI
今だ!支援!
223名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 15:56:48 ID:/ecVvzBv
代理スレにきてるよ
224ウルトラ5番目の使い魔 第19話 (9/11):2008/10/26(日) 16:02:54 ID:UW1jBwKI
 いままでのなぶるための攻撃ではなく、本気で殺しにきている。
「馬鹿な奴め、どうせこうなることは分かっていただろうに、調査資料はもらっていくぞ。
ヤプールは人間のマイナス感情につけこむのが得意だからな、お前の資料でこの星の
人間共の生態が知れれば、侵略のスピードはぐんと増すだろう。俺様はこの星の
手つかずのガスでもいただきながら、ゆっくり見物させてもらうわ。貴様は地獄で
精々歯軋りするがいい、ふははは」
 高笑いしながらテロリスト星人は、倒れているミラクル星人に向かって剣を振り上げた。
 
 だが、そのとき!!
 
「待てぇぇ!!」
「!?」
 突然真上から聞こえてきた声に、とっさに空を見上げたテロリスト星人の目に、月を背にして
急降下してくる何かが映り、本能的にテロリスト星人はその場を飛びのいた。
 次の瞬間、テロリスト星人のいた場所を銀色の一閃が通り過ぎていき、ミラクル星人の
足元に、何かが着地した。
「間に合ってよかった」
「き、君達は……」
 先頭をきってシルフィードから飛び降りてきた才人に続いて、降下してきたシルフィードから
ルイズ達が次々に降り立って、傷ついたミラクル星人を守るように陣をしく。そして最後に
ロングビルがアイを抱いて飛び降りると、アイは泣きながらミラクル星人に抱きついた。
「おじさん! おじさん!」
「アイちゃん……そうか、君が皆さんを連れてきてくれたのか」
 ミラクル星人は、苦しい息のなかで、アイの頭をなでてやった。
 その姿は、本当の親子のよう、いや、ふたりの心はすでに親子以上の絆で結ばれているのだろう。
 ロングビルは、懐から包帯と傷薬を取り出し、慣れた手つきでミラクル星人の傷を
治療していった。怪盗時代から手傷を負ったときのための備えだったのだが、こんな形で
役に立つことになろうとは。
 それを見届けると、才人は改めてテロリスト星人に剣を向けた。
「ここまでだテロリスト星人、もうお前の思い通りにゃさせねえぞ」
「ぬぅぅ、なぜこの星の人間が味方をする?」
「そんなことはどうでもいい。お前もヤプールの手先だな」
「ふん、手先とは言ってくれるな。俺様はそいつの持つ調査資料を奪うためにヤプールに
雇われただけよ。その代わりに、俺様はこの星に手付かずで眠っている大量のガスを
いただくのさ。ひ弱な人間どもめ、邪魔するというなら貴様らもまとめて皆殺しだ!」
「やれるものなら、やってみろ!!」
 瞬間、才人はテロリスト星人に斬りかかった。
 激しい金属音と火花を散らせてデルフリンガーとテロリストソードがぶつかり合う。
225ウルトラ5番目の使い魔 携帯から:2008/10/26(日) 16:02:57 ID:g+E7HXOb
申し訳ありませんが、あと数レスというところで規制を受けてしまいました。
避難所に投下してきましたので、代理での投下をどうかお願いいたします。
226名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 16:03:01 ID:hlIPuVSS
行ってくる
227ウルトラ5番目の使い魔 第19話 (10/11):2008/10/26(日) 16:04:55 ID:UW1jBwKI
「わたし達も、やるわよ!」
 才人がテロリスト星人と打ち合っている間に、キュルケ達も呪文の詠唱にかかる。
 自分の欲望のためだけに弱者を虐げ、親子の絆を断ち切りかけて恥じない残忍な
やり口に、彼女達の怒りも頂点に達していた。
 
「でやぁぁっ!!」
「ぐっ、人間風情が!」
 激しい打ち合いが両者の間で続く、攻めているのはテロリスト星人だが、才人は
その斬撃を全て受け止め、なおかつ押し返すほどの勢いを見せていた。
「はーははっ、おでれーたな相棒、いつの間にこんなに腕上げやがった!?」
 デルフリンガーも、決して遅いとは言えないテロリスト星人の攻撃をすべて的確に
跳ね返す才人に、例のおでれーたを口走る。
「ツルク星人の二段攻撃に比べればたいしたことはないぜ。人間をなめるなよ、テロリスト星人!」
 そう、あのツルク星人との死闘、アニエスとの猛特訓が才人の腕を格段に引き上げていた。
今の彼の技量は、単にガンダールヴの力で底上げされていた一週間前とは違う。全体的に
見ればまだまだ穴だらけだが、敵の攻撃を見切ることに関してだけは、すでに達人の域に入っていた。
「おのれこしゃくな、だが受けてばかりでは勝てんぞ!!」
 苦し紛れに攻勢を強化するテロリスト星人、確かに、才人が受けてきた訓練は受け止めること
までで、反撃にはいたっていない。
 しかし、才人は最初から自分だけで勝とうとは考えていなかった。
 テロリスト星人の打ち下ろしてきた斬撃を、下段からはじき返すと、彼はガンダールヴで
強化された脚力を使い、全力で後ろに飛びのいた。
 
「今だ!!」
 
「なに!?」
 才人が叫んだ瞬間、テロリスト星人は自分を三方から囲んでいる魔法の光を見たが、
そのときにはすでに手遅れだった。
『ファイヤーボール!!』
『フレイム・ボール』
『ウェンディ・アイシクル!』
 棒立ちのテロリスト星人に3人の魔法の集中攻撃が飛ぶ。ルイズのファイヤーボールだけは、
やはり失敗して爆発になったが、この場合とりあえず破壊力さえあれば呪文の成否はどうでもいい。
 高熱火炎、音速に近い速度で飛ぶ鋭利な氷の弾丸、とどめに巨大な爆発がテロリスト星人を包み込んだ。
才人は、ツルク星人との三段攻撃でアニエスの突破口を開いたときのように、最初から威力の
高い魔法攻撃でとどめを刺せるよう、呪文詠唱の時間稼ぎをしていたのだった。
「やったか?」
 爆炎に隠れて、テロリスト星人の姿は見えなくなっていた。人間ならば骨も残さず吹き飛んで
いるような攻撃だったが、相手が宇宙人ならその限りではない。
228ウルトラ5番目の使い魔 第19話 (11/11):2008/10/26(日) 16:06:18 ID:UW1jBwKI
「おのれ、おのれおのれぇ! 許さんぞ、人間共!!」
 怒鳴るようなテロリスト星人の声が聞こえたかと思った瞬間、煙の中が一瞬光り、
とっさに才人達はその場から飛びのいた。
 そして次の瞬間、煙を吹き飛ばして現れたテロリスト星人の姿がみるみるうちに巨大化していき、
あっという間に身長50メイルを越す巨体となった。
「ぐはは、踏み潰してくれるわ!」
 巨大化したテロリスト星人は怒りに任せて所かまわず足を振り下ろす。
「ちょ、こんなの反則じゃない!」
「……いったん退却」
 キュルケとタバサはこうなっては勝ち目がないと、森の木々の合間を利用して逃げに入った。
「敵に背を向けないのが貴族、とかいわねえよな?」
「言いたいけど、あんたは言わせたくないんでしょ。まあこんなのフェアじゃないしね。逃げるわよ!」
 才人とルイズも降ってくる巨大な足から逃げ回る。
 だが、そのときテロリスト星人の目に、ロングビルとアイ、それにミラクル星人を乗せて飛び立とうと
しているシルフィードの姿が映った。
「おのれ逃がすか!! 資料をよこせ!」
 振りかぶられたテロリストソードが一気にシルフィードに向かって振り下ろされる。
 シルフィードもそれに気づいたが、もう避けきれない。
「そうはさせるか!」
 才人は思い切りデルフリンガーをテロリスト星人の手に向かって投げつけた。
「!?」
 デルフリンガーは星人の手の甲に突き刺さった。それはテロリスト星人にとって痛覚を伴う
ものではなかったが、神経は反射行動を起こして剣線がわずかにずれ、テロリストソードは
シルフィードの翼の先端をかすめ、地面に深く食い込んだ。
「ぬぅぅっ!! 逃がすか!!」
 高く飛び上がるシルフィードに向かって、テロリスト星人は左手のテロファイヤーを向ける。
そのとき、迷わず才人とルイズはその手のリングを重ねた。
 
「「ウルトラ・ターッチ!!」」
 
 闇夜を割いて、輝く光が天に駆け上る。
 シルフィードに向けて放たれたテロファイヤーの間に割り込んだ閃光が、その全弾を叩き落し、
雄雄しき姿となって現れた。
 
「デヤァ!!」

 双月を背に、ウルトラ兄弟5番目の弟が光臨した!!
 
 続く
229ウルトラ5番目の使い魔 第19話 あとがき:2008/10/26(日) 16:07:43 ID:UW1jBwKI
今回はこれまでです。支援どうもありがとうございました。
本当はこの19話でテロリスト星人をやっつけてるはずだったんですが、書き始めたら予想を超えてどんどん長くなってしまい、
とても1話でまとめきれなくなったので、やむを得ず中編も作って分割することにしました。
そのためウルトラマンAも変身シーンのみになってしまいましたが、20話の後編で必ずまとめますのでご容赦ください。
230代理終了:2008/10/26(日) 16:08:43 ID:UW1jBwKI
代理完了 当方に反省の用意あり
231名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 16:10:36 ID:sIVFGjhw
ウルトラの人、代理の人、乙。

>かつて、ミラクル星人と同じく、孤児となってしまった少年を引き取り、共に生きていた宇宙人がいたと

…ああ、うん、その顛末までは話さなかったんだね、新マン兄さん。

しかし最近のウルトラマンはハートウォーミングばっかりで物足りないなぁ。
元地球人を躊躇なく水ぶっかけて殺したり、
地球人のせいで故郷の星を木っ端微塵にされた怪獣を斬り殺したり、
少年が飼っていたハトを元に作られた超獣を不意打ちで倒したりした、
あの頃の情け容赦のなさはどこへ行ってしまったのか…。
232名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 16:47:04 ID:ux1aFw14
ウルトラセブンで、海底にすんでいた人たちを……ってのもあったっけ。
233名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 17:17:19 ID:E6ZopsFi
5番目氏乙でした
孤児となった少年を……というと、穴を掘り続けていた彼でしょうか
メビウスであのエピソードが掘り下げられた時には
泣いてしまったのを思い出しました
234名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 17:17:40 ID:2ZUIgicf
メビウスは訓練終えたばかりの新人だから甘ちゃんでもしょうがないが
他はそれなりに歴戦だから戦いに情けはかけないだろう。
敵に情けをかけたら自分が死ぬ。

まあ、セブンは元々観測員で戦士じゃないから地球の先住民を倒した時微妙な顔してたな。
235名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 17:23:29 ID:C70vSk15
某星人の住む浮遊大陸が軌道を外れて、アルビオンと衝突コースに
ウェールズとアンリエッタの元に現れた使者が…

236"IDOLA" have the immortal servant 0/7 ◆GUDE6lLSzI :2008/10/26(日) 17:29:57 ID:M7Q0zcfh
5番目の人乙です。
ジャミラもそうですが、
子供向けだからこそシビアな話って昔は多かった気がするなあ。
ガンバの冒険とか……

予約がないようでしたら18話の投下を、17:35から始めたいと思います。
237名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 17:30:15 ID:q8l8Qc3m
>>235
少しの間アルビオンの軌道を変えてくれと来る訳か……
あの話が一番好きだわ
238名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 17:32:08 ID:sIVFGjhw
そう言えばセブンからはまだ出てなかったかな
239名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 17:32:24 ID:Bn2A9VeM
>>236
人造Iダークファルス支援
240"IDOLA" have the immortal servant 1/7 ◆GUDE6lLSzI :2008/10/26(日) 17:35:04 ID:M7Q0zcfh
 緑色に輝く燐光を纏いながら、変容していく。それは、侵食だ。
 何かに内側から蝕まれ、老剣士の姿が人外のそれへと変わっていく。
 眼前で、全てを目の当たりにしながら、何が起きているかわからない。
 ルイズだけでなく、ウェールズも、ジェームズも、ワルドも。理解などできなかった。
 右の掌から、黄色い光を纏う、黒い大剣が飛び出す。生物的で、有機的なフォルムを伴った、不気味な剣だ。飛び出した剣は、腕から一体化して生えているような格好だ。
 左の掌はというと、巨大な蝙蝠の羽のようなギザギザとした形状になり、それが左右に伸びて、端に緑の輝きを宿した。
 身体が蠢く。蠢きながら膨れ上がる。右肩から棘のようなものが飛び出す。人の肌であったものが、光沢と艶のある暗い色合いの、黒に近い藍色に変わっていく。
 尾が生え、足は四足にわかれた。最早、人である面影など、どこにも留めていない。
 肩から生える両の腕があり、頭がある。だから人型だと言われればそうだろう。しかし、あまりにも異形だ。人型に近い、としか言えない。
 それから、節々にぼんやりとした青や緑や黄色の淡い光が浮かび、連なり、輝き始める。
 それに似たものを、ルイズは以前にも見たことがある。マチルダと戦った時だ。フロウウェンが、フォトンブラストを使った時、呼び出されたフォトンミラージュは、あれにそっくりな輝きを持っていた。
 それに、あの夢。いつぞやの夢に出てきた化物は、あまりにも今のフロウウェンに酷似していた。
「ヒース!!」
 悲痛な叫びをルイズが投げかける。彼の背中を思い出して。
 あんな夢は、ただの夢だ。現実になっていいはずがない。
 フロウウェンは、フロウウェンであったものは振り向かない。
 ルイズの叫びとは無関係に、侵食は完了していた。見上げるような巨人。ゆうに、15メイル以上はあろう。
 腕や胴体は巨体に比して骨組みのように細い。それでいて、あちこちが尖った石のように、鋭角的なフォルムを有していた。
 ―――オルガ・フロウ。
 D因子。生体AIオル=ガ。そしてヒースクリフ・フロウウェン。
 それらが重なり合って生み出された、悪夢の産物。オスト博士という狂人の夢。
「な……なんなんだ。この化物……は……」
 ワルドが呆然と呟く。
 オルガ・フロウがワルドを見据えた。人間で言うなら、頭部に当たるところに黄色い輝きが宿っている。
 それが、目……らしかった。その下には口らしきものもある。四角く、細長い光の列が並んで、丁度、歯を剥いて笑った口のような形を造っていた。
 どうにも、悪意のある笑みに見えてならない。誰に対する悪意だ? 自分か? 人間か?
「くっ!」
 言いようのない怖気を覚えて、ワルドはグリフォンに向かって駆け出していた。自分が、虎の尾を踏んだことを知ったからだ。
 虚無の使い魔―――記すことすら憚られる―――。
 いつか読んだ書物の中にあった記述が頭をよぎっていた。
 遍在が足止めする為に、オルガ・フロウを遠巻きに囲む。
『エア・カッター』と『ライトニング・クラウド』がその巨体を捉えた。が、直撃を受けて、揺らぎもしない。
 恐ろしく強固な体表を持っている。『エア・カッター』は僅かにその体表に傷をつけたが、それで終わりだった。
「なんだと!?」
 ワルドは驚愕の声を上げていた。巨体が、宙に浮かび上がったからだ。冗談のような光景だ。
 右腕―――冗談のように巨大な剣を、大きさにそぐわぬ速度で突き込んで来た。
 それでも遍在は、剣が物理的に届く間合いの外にいたはずだ。
 剣の纏っていたフォトンが突き出された瞬間に巨大な衝撃波と化し、地面を這うように走って、その軌道上にいた遍在の一体を巻き込む。声をあげることすら叶わず、消し飛ばされた。
241"IDOLA" have the immortal servant 2/7 ◆GUDE6lLSzI :2008/10/26(日) 17:36:16 ID:M7Q0zcfh
 それに戦慄する暇も、オルガ・フロウは与えない。
 ブン、という奇妙な音を残して、オルガ・フロウが動いた。丁度、『女神の杵』亭で自分と戦った時のように、高速で視界の端へと消えていく。
 それを追って魔法を唱えようとした遍在は、次の瞬間には頭を粉々に打ち砕かれていた。
「お、おおお!?」
 最後に残された遍在の視界で、その全体像を捉えていたので、ワルドは何をされたか、かろうじて理解できた。
 背後に回ろうと動くオルガ・フロウを、遍在は目で追った。オルガ・フロウは側面に回りこんで急停止。それから、その場でコマのように高速回転。
 振り返ろうとしていた遍在の背後から弧を描いて飛来してきたのは、ゴツゴツとした岩のような塊を先端に備えた尾だ。それを鞭のように振り抜いて、遍在の頭部を弾き飛ばした。
 それより何より、ワルドが驚愕したのはその動きだ。
 空中は、風のスクウェアであるワルドの領域である。だから浮遊するオルガ・フロウの、先程の挙動が、どれほど異常で不可解なものかは、すぐに解った。
 移動を始めた瞬間から、目で追うのがやっとというほどの速度で動く。
 止まる時は、貼り付けられたようにぴたりと静止して見せた。
 高速移動に必要な、加速と減速という過程がすっぽりと抜け落ちている。慣性という言葉を嘲笑うかのような動きだった。
 これを、単なる巨大な化物に過ぎないとは言えない。
 先程の攻撃にしたってそうだ。遍在がオルガ・フロウの動きを追おうとすることを予想していたから、そして、そのように誘導されたから、尾の飛来を全く知覚することができず、みすみす攻撃を食らってしまった。
誘いの手を置いておいて、本命の攻撃を繰り出す。それは、確固たる知性を持っているということだ。
 巨大で、素早く、簡単に人間を消し飛ばすほどの攻撃力を秘める。その上知性を持ち、能力の全容も全くの未知数。
 戦う? あれと? 冗談ではない。
 グリフォンに跨る。そのまま疾駆させ、港の縦穴に飛び込む。
 オルガ・フロウが、それを追った。
「行かせるか!」
 最後の遍在が杖を振るおうとするが、それは叶わなかった。オルガ・フロウから、人間の頭ぐらいの大きさの、黒い塊が射出されたからだ。それ自体が意思を持つように遍在に向かって飛来してくる。
「何だこれは!?」
 黒い塊はオルガ・フロウの体表の質感にそっくりで、光の粒が表面を走っている。
 嫌な予感を覚えて、慌てて風の防壁を張る。正面から突っ込んできたそれは、防壁にぶち当たって爆発を起こした。
「爆弾? いや、機雷か!」
 それの正体を看破した時には手遅れだった。最初の一発に気を取られている間に、遍在の周囲を取り囲むよう、四方八方に浮遊機雷を展開されていた。磁石に吸い付けられるように、しかも時間差をつけて遍在に向かって飛来してくる。
「お、おおおおおおおお!」
 最初の四、五発を撃ち落とすが、いかに『閃光』のワルドとは言え、一人ではおのずと限界がある。一発着弾すると、もう止める手立ては無かった。轟音と爆風に遍在は飲み込まれ、跡形も無く消し飛ばされた。
 まずい。実にまずい。グリフォンに跨って縦穴を急降下しながら、ワルドは歯噛みした。
 遍在三体がかりで、足止めにすらならない。しかも『エア・カッター』ですら、かすり傷がやっとという表皮の堅牢さを持っている。
 あれにまともな手傷を与えられそうな風の魔法と言えば『カッター・トルネード』ぐらいだが、スクウェアスペルである為に、遍在五体を作り出した後に用いるのは、幾らなんでも無理だ。
 頭上を見上げる。オルガ・フロウの体表に輝く光が、暗黒の中に煌いている。やはり、追ってきた。自分を逃がすつもりは無いらしい。
 右手は衝撃波を放つ巨大な剣。尾は鈍器の重さを伴った鞭。更に意思持つ浮遊機雷を湯水のように射出。まるで全身が武器だ。
 では、あの、意味ありげな形状の左手はなんだ? 盾か?
 そう思っていると、緑色の輝きを放つ左手を、こちらに向けてくる。左右に広がるように展開し、弓を連想させる形状になった。
 ぞくりと、冷たい予感がワルドの背筋を駆けて行く。
242"IDOLA" have the immortal servant 3/7 ◆GUDE6lLSzI :2008/10/26(日) 17:37:08 ID:M7Q0zcfh
「は……はははは! あーはっはっはっは!!」
 どうしようもない死の予感に、ワルドは笑った。あんな化物どうしようもない。笑うしかなかった。
 あの距離から攻撃を仕掛けるつもりだ。間違いなく、あれは遠距離攻撃を行う為の『武器』だ。
 周囲から緑色の光が、左手の先端部に収束していく。
 咄嗟に、ワルドは自分の頭上に風の防壁を張った。それが、ワルドの命運を分けた。
 目も開けていられないほどの光の奔流に、縦穴が満たされる。
 ワルドと、ワルドの跨るグリフォンも、それに飲み込まれた。
 防御魔法を唱えていなければグリフォンごと消し飛ばされていたかも知れない。かろうじて、ワルドは死を免れた。
 しかし、防壁すらも突き破って降り注ぐフォトンの閃光は、それでも充分な攻撃力を有していた。
 じりじりと焦がされる。焼かれていく。膨大な量のフォトン光に焼かれながら、下へ下へと。防御魔法とグリフォンごと、手もなく押し流されていく。
「ぐあああああああああああっ!!」
 雲海を突き破って、アルビオンの下に広がる海へとワルドとグリフォンは墜落していった。アルビオンの直下は豪雨。つまりは嵐の海だ。
 それを見届けると、オルガ・フロウは縦穴を上昇した。
 さっき作り出したリューカーはオルガ・フロウに転じた時点で消えてしまった。どうも、Dフォトンが干渉してしまうようだ。それで、パイオニア1の陸軍があれと戦った時も、リューカーを作ることができなかったのだろう。
 であるなら、自分にはまだやることがある。
 上昇して、港に出る。ルイズと、ウェールズとジェームズの三人が、驚きと恐怖の混じった面持ちでオルガ・フロウを見上げてくる。
 その時だ。
 地中を進んで近付いてくる者の生体フォトン反応を、オルガ・フロウは感じ取っていた。それが、何者であるかを理解すると、言葉を紡ぐ。
 ―――囮、ニ、ナル。ソノ、隙ニ、脱出、シロ。
 聞き取りにくかったが、ルイズの耳には、確かにそう聞こえた。
 それは到底、人間の口が発する言葉とは思えない。くぐもった、地の底から響くような声だった。
「待って!」
 はっとした表情を浮かべたルイズが叫んだ。オルガ・フロウは振り返ることなく、縦穴を垂直に降下していった。
 フォトンの残光を残しながら、その姿は暗闇の中に見えなくなった。ルイズの、使い魔の名を呼ぶ絶叫は、フロウウェンには届くことがなかった。
 
 
 時は、正午。
 浮遊大陸の岬の先端に位置するニューカッスル城は、一方向からしか攻撃を仕掛けられない堅牢な城だ。敵はたかだか三百あまりとはいえ、ここまで王に付き従った者達だ。それが文字通り決死の覚悟で待ち受けている。
 攻め落とすのには多大な損害が予想された。
 が、レコン・キスタの空軍艦隊と、陸軍。合わせて五万。実に百六十倍以上の兵力を有している。大挙して押し潰せばそれで充分だと、クロムウェルの取った戦術は、力押しだった。
 陸からは傭兵を突っ込ませる。空からは絶え間なく艦砲射撃。それで終わる。王軍は全滅。レコン・キスタがアルビオンの新政府となる……はずだった。
 “それ”が大陸下部から舞い上がってきたのは、今まさに突撃の号令が下されようとするその時だった。
 ニューカッスルへの進撃を許さぬとばかりに、レコン・キスタの軍勢の前に立ち塞がる、黒い異形。
 誰も見たことも聞いたこともない巨大な亜人。それは禍々しかったが、どこか神々しく、根源的な畏怖を呼び起こす姿だった。
 ―――ココヲ、去レ。手向カイ、セネバ、追ウ、コトモ、セヌ。
 それが、右手の輝く大剣で、アルビオンの地平を指して、確かにそう言った。
 ゴーレムか、ガーゴイルの類か。正体は不明だが、翼も帆も無しに飛行してきたのが不気味だった。軍艦ですら風石は浮力を得る為のもので、推進力は帆に風を受けなければならない。でなければ、あれは忌まわしい先住の力で空を飛んでいるということになる。
 巨人が行く手を阻んだと報告を受け、発令所代わりにしていた『レキシントン』の船長室から後甲板に飛び出して、クロムウェルもそれを目にした。
243"IDOLA" have the immortal servant 4/7 ◆GUDE6lLSzI :2008/10/26(日) 17:38:38 ID:M7Q0zcfh
「ミス・シェフィールド! あれはなにかね!?」
 アルビオン中の貴族の系譜を諳んじることができるなどと嘯く、レコン・キスタの総司令官クロムウェルの言葉とも思えなかった。だが、知らないものは知らないのだ。
 王軍が秘密で建造したガーゴイルかゴーレムの類かと思ったが、そんな噂話、今まで耳にしたことも無い。軍事機密であれば指輪の力で洗いざらい話してくれるはずなのだ。
 ハルキゲニア中の伝承やおとぎ話を見回してみても、あんな異形の巨人はどこにも記述されていない。
 シェフィールドと呼ばれた、フードで顔を隠した女は呆然として首を横に振った。ロバ・アル・カリイエからやってきたと自称する彼女ですら知らないらしい。
「あの巨人は、我が軍に、ここを立ち去れと申しております」
 伝令の兵が言う。
「喋ったのか!? あれがか!?」
 巨人を指差してクロムウェルは頓狂な叫びを上げた。
「は、はい」
「ど、どうなさいますか? 猊下」
 クロムウェルの取り巻きの貴族が、問うてくる
「どうもこうも……ここまで王軍を追い詰めておいて、みすみす退けというのかね!?」
「し、しかし、敵は……」
 横目でそれを見やる。艦隊の遥か向こう。ニューカッスル城を背に、光輝く剣を携えた巨人が浮かんでいる。
 あの大剣なら、軍艦すら斬ってのけそうな気がした。しかも、あれだけの巨躯でありながら、翼も無しに浮遊している。
 軌道性がどれほどのものかわからないが、少なくとも陸軍は高空に舞い上がられたら、それだけで対抗手段が無くなる。一撃離脱を繰り返されるだけでも、どれほどの損害が出るかわからない。
 更に陸軍を背にされては艦隊からの大砲や魔法による援護射撃も迂闊にはできない。
「敵は未知数です。どれほどの被害が出るか解りません」
 空から陸軍が蹂躙される場面を想像して、貴族は生唾を飲み込む。
 が、クロムウェルは吐き捨てるように言った。
「我が方は五万だ。負けることは考えられん。―――そうか! 余には解ったぞ! あれは追い詰められた王軍のメイジが、総掛かりで作り出した張りぼてだ! 外面を土メイジが作り、レビテーションで浮かせているだけに違いない!」
「な、なるほど」
 貴族はクロムウェルの言葉に一応は頷いた。そう考える方がまだしも現実的かも知れないと思えたからだ。
 だが、隣で聞いていたシェフィールドは、本当にそうか? と訝しむ。
 ミョズニトニルンだからこそ、感じ得た予感であった。身体の奥底から、得体の知れない嫌悪と恐怖が、湧き上がってくる。
「攻められたら困るから、立ち去れなどと言ってくるのだよ。まったく奇策を弄したものだ! 全軍にそのように伝令せよ! 予定通りニューカッスル攻略に移る!」 
 ややヒステリックに、クロムウェルは叫んだ。元より、ガリアの手引きで『アンドバリ』の指輪を手に入れ、指輪の力でのし上がっただけの男だ。
決死の覚悟をしている相手に力押しなどという下策を選んだことといい、所詮は総司令官などという器ではなかった。
 
 
「どうして……どうして……」
 ルイズはぽろぽろと大粒の涙を、フロウウェンが消えた暗黒の淵に向かって零し続けていた。
 婚約者に裏切られ、信頼していた使い魔は行ってしまった。ラ・ヴァリエール嬢の心痛はどれほどだろうか。
 ウェールズは唇を噛んだ。それでも、悲しみにくれている時間は無いのだ。
 あの変貌したフロウウェンは、自分が囮になって、敵を引き付けると言っていた。どうにかして脱出の手立てを考えなくてはいけない。
 と、その時だ。突然ウェールズの目の前の地面が盛り上がった。
「今度は何だ……!」
 怪我をしていない左手で、杖を構える。が、顔を出したのは、何とも愛嬌のある茶色の生き物だった。
「ジャイアント・モール!? 何故こんなところに!?」
 それから続いて、金髪の少年が土に汚れた顔を覗かせた。
「こら! ヴェルダンデ! お前はどこまで穴を掘る気なんだね! って……うわああ!」
 杖を構え、自分を険しい顔で見下ろしているウェールズに気付いて、ギーシュは素っ頓狂な声を上げた。
 ウェールズはギーシュから視線を外さず、じっと凝視する。ギーシュは百合の刺繍が施されたマントを羽織っている。トリステインの貴族である証だ。
「ギー……シュ?」
 ルイズが泣き腫らした目で呆然と呟いた。 
244"IDOLA" have the immortal servant 5/7 ◆GUDE6lLSzI :2008/10/26(日) 17:40:15 ID:M7Q0zcfh
「知り合いかい?」
 ルイズはこくん、と頷いた。ギーシュの傍らにキュルケが顔を出す。キュルケはウェールズとジェームズの顔を知っていたらしく、慌てて恭しく膝を付いた。それにギーシュも倣う。
 それから、ギーシュは自分達が傭兵を倒した後、苦労してアルビオンに辿り着いた経緯を説明し始めた。モグラがここまでやってきたのは、ルイズの『水のルビー』の匂いを追ったからだろう、と言った。
「しかし、他の方々はどこへ?」
 キュルケが人気の無い港を見渡す。
「今は詳しく話している時間が無いが、ここにはもう僕達以外誰もいない。脱出する手を考えなければ」
「それでしたら、穴の先でタバサと風竜がお待ちしておりますわ」
 キュルケの言葉に従って、五人と一匹、それからルイズの手に大事そうに抱えられたデルフリンガーは、穴の中を進んだ。穴の外は空に通じていた。浮遊大陸アルビオンの下側だ。
 魔法の明かりを灯して待っていたタバサが、一行をシルフィードの背に乗せる。さすがに六人と一匹は重いらしく、シルフィードが恨みがましい目でタバサを見やるが、
タバサは指を立てて「後で生肉大盛り」と答えたので、シルフィードは目を輝かせて皆を背に乗せて飛んだ。
ヴェルダンデは大きいので口に加え、座る所が足り無いのでギーシュは足で掴まれている。
「ヴァリエール。あんたどうしちゃったの? おじさまはどこ?」
 まるで覇気の無いルイズの様子に、キュルケが問う。
「ラ・ヴァリエール嬢の使い魔は……あそこだ」
 ウェールズがもう遠くなったニューカッスル城の方角を指差す。
 一同は振り返り、そして目にする。
 黒い何かが、アルビオンの艦隊と竜騎兵を相手に戦う姿。魔法の光とフォトンの輝き、大砲の発射音が断続的に瞬いている。
「ヒース!!」
 ルイズが突然立ち上がって叫んだ。シルフィードの背から落ちそうになったので、慌ててキュルケがその身体を抑える。
「ちょ、ちょっと!?」
「あれは、ヒースなの! 戻して! あそこに行って! お願い!」
「あれが……おじさまですって!?」
 キュルケが目を丸くする。ルイズの様子はただ事ではない。
 タバサは戦場の様子をじっと見詰めて、冷静に判断を下す。首を、横に振った。
「無理。近付けば戦闘に巻き込まれる」
 これだけの荷物を抱えていては、シルフィードでもいつものようには飛べまい。
「使い魔を見捨てるなんて! いや! わたしはいや!」
「あたし達が行って、どうなるってのよ!」
 キュルケが説得を続けるも、なおも暴れようとするルイズに、ウェールズが言った。
「落ち着くんだ、ミス・ヴァリエール。要は、彼に我々が脱出したことを知らせられれば良い」
 そうすれば、フロウウェンには倒れるまで戦い続ける必要は無くなる。
「で、でもどうやって!?」
「この中に、火のメイジはいるかい?」
「あたしです」
 キュルケがそうだと解ると、ウェールズは頷いた。
「では、出来る限り巨大な火球を作って爆発させる。風の魔法で音を増幅させ、あそこまで届かせる。クロムウェルにもこちらの位置を知らせることになるが、その意味までは伝わらない。だが、彼には解るだろう」
「もし、レコン・キスタが追ってきたら?」
「トリステインまで逃げ切れるよう、祈るしかないな」
 それでも、手がある以上はやらないわけにはいかない。その点でウェールズとルイズの気持ちは一致していた。
「ツェルプストー……」
 ルイズが、縋るような目でキュルケを見る。キュルケは赤い髪をかき上げて答えた。
「わかってるわよ。あたしだって、おじさまを助けたいし、何もしないで逃げるのは性分じゃないんだから」
「タイミングは、キュルケに合わせる。マグの用意」
 タバサが言うと、一同は頷いた。ルイズは役に立てないので、自分のマグをウェールズの肩に取り付かせた。
 キュルケが両手を掲げて、呪文を唱える。一行の頭上に生まれた火球は見る見る大きくなって、ルイズ達を赤く照らした。
 タバサとウェールズ、ジェームズの詠唱がそれに重なる。
 キュルケの呪文が完成する。杖を振るって打ち出す。一瞬遅れて三人の風メイジの魔法も完成した。巨大火球が破裂して、大音響を轟かせた。続けざまにキュルケが巨大な火球を打ち出し、炸裂させる。
 空気がびりびりと震え、シルフィードとヴェルダンデが身体を竦ませた。
 こちら側でこれ程の音量なのだ。指向性を持たせて音量を拡大させた向こうでは、遥かに物凄い轟音を響かせているだろう。戦場まで、きっと届いたはずだ。あとは、フロウウェンが気付いてくれたことを祈るしかない。
245"IDOLA" have the immortal servant 6/7 ◆GUDE6lLSzI :2008/10/26(日) 17:42:11 ID:M7Q0zcfh
 
 
 一度は巨人の出現により膠着状態が作られたかに思えたが、それは束の間の事で、すぐにレコン・キスタは進撃してきた。
 敵は張りぼて。ただのこけおどし。そう全軍に伝達された。
 クロムウェルが認めなかったから、まず陸軍にのみ進軍の令が下った。
 そして、その判断が間違っていたことを、開戦してすぐに思い知らされる。
 巨人は陸軍の矢や魔法の射程外ギリギリを旋回しながら、左手の『弓』で雨あられと光球を振り撒いてきた。光球の正体は一発一発が人の頭ほどの大きさを持つ、超高濃度のフォトン弾だ。
 極限まで圧縮されて物理的な破壊力を有している。同じ大きさの岩を絶え間無く投げつけられていると言えば、その威力の程が想像できようか。まるで流星群が降り注いだようだった、と後に一人の傭兵が述懐している。
 密集隊形を取っていたレコン・キスタ陸軍には、それを避ける術が無かった。反撃もままならず、ただ一方的に撃ち抜かれて行くだけだ。
 地形が岬である為に左右に逃げることはできない。空中を自在に飛び回っているから陣形を立て直すより先に、頭上を悠々と飛び越えていき、あらゆる方向から射撃してくる。
 勝ち目が無いと悟り、我先にと逃げ出して押し合いへし合い、突き飛ばし、踏まれ、更に怪我人が続出される。
 レコン・キスタの貴族が予想したように、艦隊は陸軍頭上の低空を飛び回るオルガ・フロウへの援護射撃は不可能だった。
 しかも、弾丸をばら撒くような大雑把にも見える射撃でありながら、その実、照準は異様なほど精密だった。利き腕か足。それから、兵器や軍馬。それらに優先的に狙いをつけて撃ってくる。
 それも当然だ。フロウウェンの戦闘経験に、パイオニア1に僅か三基しか存在しない高性能生体AIの一角、『オル=ガ』による弾道と射角の計算が補助として上乗せされるのだから。
 おかげで致死率は低いが、戦闘を続けられない怪我人は短時間で山のように量産された。
 それは、オルガ・フロウが狙ったものだ。
 対人地雷と同じだ。殺してしまえばそれまでだが、フォトン弾の殺傷力を敢えて弱め、致命傷にならないよう当てることで、怪我人の搬送と治療に人員と時間を割かねばならない状況を作り出す。
 戦争は金勘定でもある。資金の調達は国力の疲弊を招くが、順調に勝ち続けられている間は利益の方が大きい。
 その点で言うならレコン・キスタは快勝続きで潤沢な資金があった。そうして利益をもたらすから、戦争の強い指導者は民衆に支持されるのである。
 だが、治療には物資が、物資を調達するには資金が必要だ。損害が利益を上回れば、民に節制を強いる。それは組織の弱体と指導者が基盤を失う結果を招く。
 だからまずは、損害を大きくするように戦って、戦争を続けようという気概そのものを削ぐ。レコン・キスタが掲げるハルキゲニアの統一、聖地の奪還という理想など、実現しなければ絵に描いた餅に過ぎないということを知らしめる。
 そうすれば……ルイズにまで戦火は届くまい。
 被害が甚大になり始めてようやく竜騎兵が艦隊から出撃してきた。戦力の逐次投入など、愚の骨頂だ。
 元より三百の王軍を、五万の軍で圧倒的に揉み潰すなど、トリステインやゲルマニアといった、後に控える国への示威の意味合いか、或いはクロムウェルの自己満足でしかない。
 傭兵を中心に構成した陸軍と、遠巻きにした艦砲射撃で事足りると思っていたのだろう。
 クロムウェルにとって「予想外の事態」など、この革命戦争が始まってからこちら、一度も無かった。全て『アンドバリ』の指輪の力に頼った出来試合で勝ってきたのだ。
 不測の事態を、クロムウェルは知らない。元々ただの一介の司教には戦争の仕方など何一つ解っていない。得意なのは後ろ暗い陰謀だけだ。
 だからクロムウェルは作戦を修正するまでに、オルガ・フロウにとっては充分過ぎるほどの時間を与えてしまった。既に陸軍は軍隊としての体裁を保てなくなるほどに叩かれていた。
 その点、竜騎兵はオルガ・フロウに対しても有効な戦力であった。慣性を無視した飛行を行うオルガ・フロウ相手では、いかに竜騎兵といえど単騎では勝負にもならないが、数では圧倒的に勝る。
246"IDOLA" have the immortal servant 7/7 ◆GUDE6lLSzI :2008/10/26(日) 17:43:30 ID:M7Q0zcfh
『ファイア・ボール』に『フレイム・ボール』、『ウィンディ・アイシクル』に『ライトニング・クラウド』、『エア・ハンマー』といった多彩な攻撃魔法と竜の灼熱の吐息。オルガ・フロウの放つフォトンの閃光が、空中に乱れ飛んだ。
 攻撃魔法やブレスは確かにオルガ・フロウにも有効だった。その内の幾つかは手傷を与えて紫色の体液を飛び散らせる。が、その動きは一向に衰える気配がなかった。
 フォトン弾で数騎の竜騎兵を撃墜すると、オルガ・フロウは高空へ上昇し、艦隊の浮かぶ高度に戦闘域を移す。
 甲板に控えていたメイジがこの時とばかりに魔法を放つ。巨体ゆえに命中はするが、流れ弾も生まれる。味方の艦や、それに乗っていたメイジに降り注いで、新たな破壊の轟音と悲鳴が広がった。
 艦隊の間を自在に縫うように飛ぶオルガ・フロウを、竜騎兵は終始上手く追撃できずにいた。ある艦はすれ違いざまマストを巨大な剣で叩き斬られて航続能力を失くす。
ある艦は船体を下から串刺しにされ、そのまま船体ごと滅茶苦茶に引っ掻き回された。混乱をきたした砲兵が、味方を火線上に置いたまま大砲をぶっ放して同士討ちを起こした。
 それでも多勢に無勢だ。積み重ねた攻撃は、少しずつ確実にオルガ・フロウを追い詰めていく。いずれ限界は来る。そんな時だ。
 大砲の発射音とは違う大音響が大気を揺らした。二度、三度。
 オルガ・フロウがそちらに目をやれば、豆粒のような大きさの竜が一頭、アルビオンを離脱していく所が見えた。
 それで、察した。では、自分の役目も終わりだ。
 戦いながら、オルガ・フロウは気付いていた。アルビオンの艦隊の一番奥。大軍勢に隠れるように位置する『レキシントン』号の甲板から、網の目のように艦隊全域に広がる、奇妙なフォトンの糸。それがオルガ・フロウの感覚には「見えて」いた。
 そこだ。敵は、そこにいる。
 机上で、何の痛みも払わずに人の命を駒の様に扱った男。
 戦士の領分に土足で踏み込み、彼らの魂をも愚弄した男。
 なめるな―――! オルガ・フロウは激情に身を任せて咆哮した。
 引き絞られた矢のような速度で、一直線にオルガ・フロウが駆ける。旗艦『レキシントン』号に向かって。
 それはアルビオン全艦隊の中央突破を意味する。途端、四方八方から砲弾と魔法の火線が集中し、オルガ・フロウの身体を捉え、炎上させた。
 だが、もう回避を考える必要などない。時間を稼ぐ必要もない。だから滅べ。オレも滅ぶ。それで狂った夢は終わりにしよう。
 クロムウェルは、それを見ていた。見て、恐怖した。
 あの化物は、真っ直ぐに狙いを定め『レキシントン』号へ向かってくる。何故あれだけの艦隊を以ってして、ただの一騎を落とすことができない!? 身体が炎に包まれているのに、何故未だ動く!?
 止まらない。ただの一瞬たりともオルガ・フロウは速度を落とさなかった。
 オルガ・フロウは見る間に『レキシントン』号に肉薄した。旗艦を砲撃の巻き添えにすることを恐れて、攻撃の手が弱まる。
 その意図はただ一つ。すれ違いざまに、『断ち切る』こと―――!
「ひっ!」
 クロムウェルは甲板の上で頭を抱えて蹲る。
 その頭上を、オルガ・フロウが疾風のような速度で突っ切っていった。
 次の瞬間―――レコン・キスタ全軍は大混乱に陥っていた。
 オルガ・フロウが『断ち切った』のは『レキシントン』号でもクロムウェルでもない。
『アンドバリ』の指輪から延びるフォトンの網だ。それを根本からまとめて切り裂いていった。
 指輪の統制化から離れた傀儡は、死者へと還る。心と尊厳と名誉を、彼らの身体に還す。
 そのまま、オルガ・フロウはフォトンの煌きを放ちながら、アルビオン大陸の内陸部の上空へ上空へと、遥か高く、一直線に飛んでいく。やがて、点のように小さくなってからようやく失速し、黒煙を上げながら墜落していった。
247"IDOLA" have the immortal servant ◆GUDE6lLSzI :2008/10/26(日) 17:44:08 ID:M7Q0zcfh
以上で18話の投下を終了します。
248名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 17:48:27 ID:Bn2A9VeM
>>247
お疲れ様でした。
…考えてみればこんな奴を4人で倒したのかPSOの連中は。

ヒースクリフはどうなるか。このまま終わるかそれとも…楽しみにまってます。
249名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 17:51:48 ID:5DnBsRc7
フロウウェン カワイソス
250名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 17:52:48 ID:HQlRyYpJ
フロウウェンの人GJ!
貴方って人は何でこんなところで切るんだよGJ!
次回に超wktk。
251名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 18:03:38 ID:rmAL83RY
竪穴での戦闘(っていっても一方的だけど)のBGMはやっぱ第一形態のアレだな。
252名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 18:12:32 ID:5DnBsRc7
ところで
「軌道性がどれほどのものかわからないが」の中の「キドウセイ」は「機動性」では?
253"IDOLA" have the immortal servant ◆GUDE6lLSzI :2008/10/26(日) 18:15:57 ID:M7Q0zcfh
>>252
ありゃ、失礼しました。指摘ありがとうございます。
後で訂正しておきます。
254名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 18:19:44 ID:5DnBsRc7
テファに拾ってもらえるといいね
255名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 19:09:09 ID:IkQcRDiu
まだだ!次の形態が出てない!!
きっと拾ってくれる・・・乙でした
256名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 19:19:19 ID:XLK3uXvY
フロウウェンの人乙
このまま殺したりしたら許さんぜw
257名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 19:23:12 ID:u5ViwvTQ
激しく乙です・・・乙なのですが
まだもうちっとだけ続きますよね?DB的な意味で
ルイズの覚醒までおじいちゃんの活躍をみたいお・゚・(ノД`)・゚・。
258名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 19:51:50 ID:Bs2K7D6z
エースの人、乙でした
セブンネタで行くなら、ヤプールからの技術貸与で密かにガリア国内で建設された巨大ゴーレム”エースロボット”の建設現場に忍び込んだサイトの戦いを描く
「サイト対エースの決闘」が見たいっす
259名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 19:57:43 ID:UW1jBwKI
セブンネタとくれば、まさかのサイト上司!?
260名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 20:04:13 ID:Bs2K7D6z
巨大ルイズ隊員とかもいいなあ
261名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 20:18:00 ID:QW2hD4XQ
一部だけ巨大になってるとか
262名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 20:22:45 ID:mR70rxA3
態度ですね、分かります
263名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 20:24:27 ID:bn/t/jlz
巨大化してぴちぴちぱっつんのエロコスチュームに身を包み、服だけを溶かす溶解液を
吐き掛けられたり触手に絡め取られてぬるぬるねちょねちょになるんですねわかります。

確かそういうアニメが前にあったな。アルティメットガールだっけ?
ルイズ、シエスタ、キュルケ、タバサ、アンリエッタが巨大化して怪獣と戦うとか夢があるな。
264名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 20:28:52 ID:gUiG0XSu

それ、既にあるぜ。
265名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 20:54:05 ID:7ivgqVO+
覚悟のススメより強化外骨格が脱げた時の覚悟召喚
全裸のまま契約
266名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 21:01:41 ID:MUU1p/Zp
全裸でも強いじゃないか。
267名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 21:03:48 ID:SsuRFotp
「さらば左!」でガンダールヴ消失の予感w
268名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 21:08:57 ID:UW1jBwKI
人類最強の男を召喚
269名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 21:11:25 ID:HQlRyYpJ
>>265

> 覚悟のススメより強化外骨格が脱げた時の覚悟召喚

因果で砕け散るワルキューレ×7や大義で粉微塵になる30メイルゴーレムを幻視したw
となると宝物庫に零が破壊の箱として眠っていると…戦術神風で5万一掃する姿を幻視したw
270名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 21:23:25 ID:GfPr+F/8
覚悟は人間相手に神風つかわんだろw
271名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 21:24:25 ID:Bs2K7D6z
全裸で召喚だとけっこうな仮面の人だな
オスマンら学院の教師達の度重なるセクハラ事件に怒った使い魔が…”おっぴろげ”た中央部分が”武器”としてガンダ化す…スマン避難所逝ってくるわ
272名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 21:26:52 ID:HQlRyYpJ
>>270

そりゃそうだw
まぁ神風ナシでも無双状態になる希ガスw
273名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 21:37:56 ID:+hp9Gnbi
>>268
竜「武器は使わないカラテだ!」

ガンダールヴ意味ねえな
274名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 21:44:18 ID:rqZqo56x
フロウエンGj!
ああ、アルビオンがD因子に侵されるわけですね?
そしてかっての使い魔を、彼の魂を救うためにルイズ、キュルケ、タバサ、ギーシュで挑む、とw
うはwww全員フォースwwwww
275名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 21:46:53 ID:UW1jBwKI
>>273
それは地上最強の男では……
276名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 21:59:28 ID:dy+PRN5G
となると、
召喚ゲートから便器をかぶってゾンビの真似をしながら登場するロシアンラストエンペラーか>人類最強
277名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 22:02:42 ID:GNAK05y6
セブンネタをやるならウルトラマンを出さないタイプの話とかが良いな。

あと忘れちゃならない「狙われた町」でしょ。
ウルトラマンマックスの「狙われない町」にも出てきた初代メトロン星人。
眼兎龍(メトロン)茶を飲みながらジャンケンしたりする。
278鋼の使い魔(前書き) ◆qtfp0iDgnk :2008/10/26(日) 22:04:19 ID:MUU1p/Zp
どうもー。
プロットがタルブ戦役に入ったあたりで止まっちゃってどうしたものかなー…。
予定では10月中には完結させる予定だったのに…。
さて、続きが出来たので…22:15分から投下します。
279鋼の人 ◆qtfp0iDgnk :2008/10/26(日) 22:15:27 ID:MUU1p/Zp
 パッカパッカ、のんびりとした歩調で馬車が坂道を進んでいく。馬車と言っても小さなものだ。荷馬車に毛の生えたような粗末な馬車が
林をわずかに切り開いて作った道を進んでいる。
 その馬車の上に、ギュスターヴ始め学院からの一行が乗り込んでいた。御者はシエスタである。
「いやぁ、わくわくするなぁ。切り出したばかりの原石や、石をどうやって切り出してるのか早く見てみたいよ」
 年の割に幾分かはしゃぎすぎの感が出るギーシュに対してキュルケは冷ややかに言った。
「そこで焦ってもしょうがないわよ。山までの道はシエスタしか知らないんだし。シルフィードで乗り込んだりしたらエドさんのせっかくの好意を無駄にするし。
…でも、シルフィード置いていってよかったの?タバサ」
 言われたタバサは馬車の一角で本を広げていた。それは以前手に入れたイーヴァルディ異伝本。盗み見るに『異界に追放された七人の勇者』と題名が振ってある。
「少し疲れていたから、大丈夫。水を飲ませて、静かに寝かせておいた」
「寝かせておくって…」
 シルフィードはタバサの言うとおり、シエスタの実家に併設されている厩舎を間借りして運動後のお昼寝に興じている最中である。
「本当は食事をさせたいけど、出先では無理」
「それもそうね…」
 さて、ギュスターヴは手綱取るシエスタの隣に座り、ぼんやりと空を見ていた。
(果たして、エド氏の母親はサンダイルと関係がありそうではあるが…)
 よく晴れた空を見ているのに、心はどこか曇りがちだった。
 そんなギュスターヴを見かねたのか、シエスタが声をかける。
「ギュスターヴさん。父と何を話してたんですか?」
「え?…いや、そんな大したことじゃないよ」
「そうですか?」
 怪訝に思いながらも、馬車は休まず進んでいた。
 
 
 
 『老獪とふたつの遺物』
 
 
 
280鋼の使い魔 ◆qtfp0iDgnk :2008/10/26(日) 22:17:32 ID:MUU1p/Zp
 馬車は山道を縫うように進み、やがて斜面を拓いて作ったらしい開けた場所に止まった。
「皆さん、石切場に入る前にこれをつけてください」
 そう言ってシエスタが手渡したのは皮で出来た髪留めのようなものだった。両端に皮でできた袋のようなものがあり、それを弓のように曲げられた木で繋いである。
「こうやってつけるんです」
 実演してみせるシエスタ。皮の袋の部分で耳を覆い、木の部分が頭に掛かる。
 渡された一同も真似して着けてみると、外部からの音がまるきり遮断されるのがわかった。
 全員、うまく装着できたのを確認すると、シエスタの手招きを先導に一同は斜面を登った。
 石切場はあちらこちらに木材が並べられ、今切り出している斜面まで木材が敷かれているのだという。一方視界を広げると、まだ切り出したばかりで表面がごつごつした石、表面が均されてつるつるとした石が、板木を噛ませて大小、さまざまな形で並べられていた。
 ギュスターヴ達は珍しげに、並ぶ石を眺めながら歩いていた。話をしようにも耳に当てられた物で音が聞き取り辛い…。
 その時、足向かう先から爆音が飛び込んでくる。
「「「「っ!」」」」
 あて物越しにも聞こえる巨大な爆音は空気を震わせて肺腑を響かせた。驚く一同は、シエスタに案内されてさらに現場の奥へと歩いていった。
 
 
281鋼の使い魔 ◆qtfp0iDgnk :2008/10/26(日) 22:19:18 ID:MUU1p/Zp
 ギーシュの目に見えた光景は、一流の美術品に劣らぬ美しさを持っていた。
 一面、石が切り出され、削り取られたような白い岩壁。岩壁に添う様に木で組んだ足場が張られ、そこを子供達が歩き回っている。
 子供達はノミやハンマーを取り、炭で線の引かれた岩壁に穴を開けたり、溝を切ったりしている。
「注文に見合う大きさに合わせて岩に溝と穴を開けて、そこに火薬玉を差し込むんです」
 見上げる一同の傍でシエスタが語る。
「穴を繋げるように溝を切って、穴で火薬を爆発させると、溝の線に沿って石が切り出せるんです」
「…驚いた。普通、石切は欲しい石の周囲を錬金【アルケミー】で削り落とすものなんだ。此処じゃ全部、こうやっているのかい?」
「はい。貴族の…いえ、メイジの方の力は殆ど借りません。切り出した石はコロに載せて運び出して、表面の凹凸は手作業で均すんです。だから山一つ持ってても、
年に取引が終わるのは精々2,3件くらいなんです。外の石はそろそろ出荷ですけど、この辺りの石はあと3年くらい先にならないと出荷できないんです」
「…しかし、よく御領主は君の一家にここを渡したものだね」
「……えと、政の方はよく知りませんけど、お父さんの話だとここは領主様から『貸してもらっている』のだそうです。
ですから、毎年度『賃貸料』という形で税金を払って使わせてもらってるんです」
 トリステインでは原則、平民は領地と官位を手にすることは出来ない。耕作地であっても、それは全て領主の貴族の持ち物であり、
そこに住む平民は土地を『借りて』営んでいる、という体裁である。この石切山も、そういった体裁に組み込まれた形なのだろう。
 一同はただただ、驚いていた。
 
 
 シエスタの声がかかり、石切り場で働いている家族達が集まってくる。ギュスターヴ達はそれぞれに挨拶をし、シエスタも家族一人ひとりを紹介してくれた。
母親に、父の弟夫婦、甥っ子に、妹や弟達。シエスタは8人兄弟の年長なのだという。
 
 現場の脇に建てられた休憩小屋ではシエスタの母親が菓子を振舞ってくれた。香草と乾し葡萄が混ぜられた焼き物や、森で執れるという杏のジャム、
粒が大きめの豆が混ぜてあるパンなどに、ここでも実家の方で出された甘苦い薬湯が出される。
 キュルケとギュスターヴが椅子に腰掛け、タバサは薬湯を飲んでいた。ギーシュはと言うと、現場を仕切るシエスタの叔父に色々と質問をしていた。
 しかしシエスタは、家族の中をきょろきょろと見渡し、さらに石切の現場も出歩いて何かを探しているようだった。
「……大爺ちゃんは?」
 どうやら、シエスタはまだ紹介していない家族がいるらしい。タバサに薬湯のおかわりを注いでいたシエスタの母が答える。
「大爺ならまたお墓だよ」
 墓、と聞いてギュスターヴの挙動が止まった。隣のキュルケは部屋に飾られた石に目が行っている。
 タバサに薬湯を渡していたシエスタの母が続ける。
「もう大爺様も年だからね。仕事場には来るんだけど、危ないから現場には立たせないでるんだよ」
「そうっか…」
「あの…」
 すっ、と手を挙げて二人の会話に挿し込んだギュスターヴは、らしくなく神妙な雰囲気で言った。
「済みませんが、そのお墓を見せていただけますか」
「……あの人に話はされましたか?」
 シエスタの母は少し顔を逸らして聞く。そこにもやはり、どこか常ではない空気が混じっている。
「はい」
「……そうですか。ヴィ……『シエスタ』や。この人を案内しておやり」
「あ、はい。こっちですよ」
 
 
282鋼の使い魔 ◆qtfp0iDgnk :2008/10/26(日) 22:21:09 ID:MUU1p/Zp
 シエスタに案内されて、ギュスターヴは石切り場から離れ、林の中に入っていった。
 暫く歩くと、林を切り開いて作られたらしい小規模な墓苑に出る。
「私の一家のお墓なんです。祖父と祖母が此処にお墓を作ってから、皆此処にお墓を作るようになって…」
 墓苑と言っても精々、4,5ほどの墓標が区切りの中に並んでいるだけだ。そして一番奥の墓石の前で、一人の老人が屈みこんでいる。
「大爺ちゃん!やっぱりここにいたのね」
 彼がシエスタの一家が言う、「大爺さん」だった。すっかり腰が曲がり、肌は垂れて皺が寄りあがっている。大爺さんは石の一つに腰掛け、屈みこんでいるものの、
死者へ祈っているようでもなく、静かにたたずんでいた。
「大爺ちゃん?」
 少し声を張ったシエスタに、彼は今始めて気が付いたらしく振り向いた。
「……おお、私を呼ぶお嬢さんは、誰かな」
「私だよ、…『シエスタ』」
「『シエスタ』か。随分、久しぶりだ。いつ帰ったのだい」
「さっき帰ったばっかりよ。大爺ちゃんは最近、いつもここに居るって」
「ははは。もう仕事場に立てないからな。お前のお祖母さんとお話でもしようと思ってな……」
 朗らかだが、それなりに矍鑠としている大爺さんは杖を突いて立ち上がる。
「さて、休憩所で少し休んで、私は帰るとするよ」
「あ、待って。こっちの人を紹介するわ。ギュスターヴさん。奉公先で親しくしてくれてるの」
「はっはっは、大人をからかっちゃいかんよ。此処に一家以外のものを入れるなんぞ……んん?」
 大爺さんはその衰えた目で、シエスタの傍に立つギュスターヴを見た。
「ぉぉ……おおぉ!」
 いきなり大爺さんは声を震わせると、おぼつかない足取りでギュスターヴに駆け寄る。
「お、大爺ちゃん?」
「お前…グスタフじゃねーか!」
 叫ぶや大爺は曲がった腰を精一杯伸ばしてギュスターヴの腕にしがみついた。
「も、もし…」
 突然の事に動揺するギュスターヴに、大爺は構わず皺枯れた声でまくし立てた。
「俺だよ、ロベルトだよぉ!もう随分会ってないから忘れちまったのかぁ?そうだよなぁ。もう70年、80年も昔になるからな。そうか、お前が来たって言うことは、
そろそろ俺もお迎えってことなんだろう?」
 震える大爺ことロベルト氏は、涙を細くなった瞼から流しながら、うん、うん、と頷きながらギュスターヴの腕を握り締め続ける。
「お前が先に逝っちまって、俺は凄い淋しかったんだぞ。しかもお前の大事なあれをここで盗まれないようにずうっと護ってやったんだ。感謝しろよこの野郎…」
 呆然とするシエスタと、そしてギュスターヴの前で、ロベルト老人は一人、友人との再会に涙していた。
 
 
283鋼の使い魔 ◆qtfp0iDgnk :2008/10/26(日) 22:23:16 ID:MUU1p/Zp
 「『シエスタ』の家で待つ」
 そう言ったきりロベルト老人は、一人で墓苑を後にして帰っていった。大爺の始めて見る様にシエスタは何を言っていいか判らず、ギュスターヴもまた、
エド氏に感じたものよりも濃い、良く知った何かを感じて動揺が口を硬くしていた。
「……シエスタ」
 風が流れ、木々を揺らす中でギュスターヴはようやく口を開くことができた。
「ぁ、はい」
「君のお祖母さんのお墓はどれだい」
「一番、奥です」
 聞くとギュスターヴは墓苑を進み、奥まった場所に作られた一つの墓石の前に立った。
 何気ない、何処にでもある墓石に見えた。そこには墓石らしく、字が刻んである。
「……これはっ……」
 それを見た瞬間、ギュスターヴの声は再び、封印された。目の前に綴られた文字が、ひとたび彼の言葉を引き止めさせるほどの衝撃を与えた。
「…祖母のお墓は、祖母が生前に自分で作ったものなんです」
 硬直していたギュスターヴの傍にシエスタが寄った。
「誰にも読めない謎の文字を刻んだもので、村の人たちは亜人の文字だと騒いだんです。だから祖母は、村から離れた此処に墓を…」
「…『る』……」
 動揺に震えきったギュスターヴの表情が、わずかに崩れた。
「え?」
「……『ヴァージニア・ナイツ。異界に渡り、此処に眠る。私と我らのアニマがふるさとへ帰れることを願って』」
「読めるん…ですか?」
 疑いながらシエスタがギュスターヴに聞くが、ギュスターヴの目は墓石の銘に釘付けになって離れない。
「…シエスタ。君のお祖母さんは……」
「はい?」
「君のお祖母さんは……何処の生まれだい?」
「祖母はタルブの生まれじゃないんです。なんでもずっと遠くから旅してきたって…」
「……そうか。そう…なのか……」
 波の様に揺れる木漏れ日の中、ギュスターヴは暫くの間立ち尽くしていた。
 
 
 休憩所に戻ると、キュルケとギーシュがげんなりとしてうな垂れていた。どうやら、先に戻ってきたグスタフ老人となにやらあったらしい。
 ため息をついていたキュルケ曰く、
「あのおじいさん、休憩所に入ってきたと思ったら『なんで此処に貴族の娘や餓鬼がいるんだ!』って怒鳴り始めて。
それをシエスタのお母さんや親戚の人たちが止めて、説得するまでにこりともしないんだもの」
 で、いろいろ騒いだ挙句さっさとシエスタの家に行ってしまったのだという。
 さらに老人は一枚の手紙を置き残していった。キュルケにはそれがさっぱり読めないらしく、手の上でくるくると遊ばせている。
 ギュスターヴはそれを受け取って目を通した。
『渡すものがある』
 そう書かれていた。
 
284名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 22:23:22 ID:UABZ8c5K
ファイアブランドか?支援
285鋼の使い魔 ◆qtfp0iDgnk :2008/10/26(日) 22:25:13 ID:MUU1p/Zp
「来たなぁ、グスタフ〜」
 カッカッカ、と笑いたげなグスタフ老人は、シエスタの実家の出入り口で一行を待ち構えていた。
 どうやらキュルケ達の説明でギュスターヴが知り合いとは別人であると理解したらしい。
先ほどとは一転、ひょうきんな身のこなしをしている。
 それを見た瞬間ギーシュとキュルケの顔が白むのが見える。
一方、当のロベルト老人はニカリを笑うと突っ立っていたギュスターヴに近寄ってくる。
「待っとったぞ。…その様子だと、ジニーの墓碑も読めたと見える」
「えぇ…『ヴァージニア・ナイツ。異界に渡り、此処に眠る』と……」
「ほぅ。合格だな、エドや」
「はい」
 老人とエド氏が何やら目配せしているのをキュルケが捉える。
「話が見えないんだけど…説明してもらえる?」
「さて、どうすべきかな…?」
 白髭を撫でながら老人はキュルケ達学院生徒三人を観察していると、ギーシュが胸を張って前に出た。
「ご老人。僕たちは人に怪しまれるところは何もない。不肖このギーシュ・ド・グラモン。父と祖父と家名に誓って――」
「それよ」
「は?」
 ギーシュの言葉に割って入ったロベルト老人は、不敵な半目でギーシュを見ている。
「『こっちの』貴族という連中は、どうもそうやって家名だのなんだのと立てる。私はそういうのが胡散臭いと思っているのさ」
「『こっちの』…?」
 それはギュスターヴの勘に引っかかる物言いであった。
「で、では、どうすればいいのだね?始祖に誓えと?」
「誰に誓おうと同じよ。そうやっているうちはな」
「か、からかわないで頂きたい!」
 飄々と言葉をはぐらかすロベルト老人に、ギーシュはだんだんと顔を赤くしてむきになって声を張り上げる。
「…ふむ。ではそこの若いの…ギュスターヴ、だったな」
「えぇ」
 ニッと笑う老人。健康的な白い歯が見える。
「お主とヴィ…あ〜『シエスタ』は私についてきてもらおう。そこで話した事をどうするのかはお主に任せるよ」
 そういうとロベルト老人はつっ、と家を出てしまった。
「はよこい」
 と言われて、ギュスターヴはシエスタと一緒にロベルト老人の後を追って外に駆け出した。
 
 
 「私とジニー…シエスタの祖母はサンダイルという場所からここにやってきた」
「……やはり」
 疑問は確信に変わった。目の前の老人はサンダイルの住人だったのだ。
「こう見えても昔はブイブイ言わせてな、ヴィジランツもやっとった。…お前さんは何処の生まれだい?」
「……テルム」
「ほぉ。あそこはいいところだ。ハン・ノヴァが出来てから活気が減ったっても、上玉の娘が多くてよかった」
 獣道無き茂みの中をロベルト老人の後を歩くギュスターヴとシエスタ。
「大爺ちゃん。お話がよくわからないんだけど…」
 付いてきてはいるものの、話の意味が判らずシエスタは困惑している。
「んー、つまりな。この若いのと私は同じ生まれだということよ」
「大爺ちゃんとギュスターヴさんが?」
 不思議そうにギュスターヴを見るシエスタ。
「どうやらそうらしい」
「お祖母ちゃんとギュスターヴさんが……」
「そうだな。あいつはヴェスティアというところの生まれだが、同じものよ」
 色々と得心が行くギュスターヴだった。シエスタの祖母がサンダイルの人間なら、その息子であるエド氏が自分のアニマゼロに違和感を持つのは当然だった。
 
 …もっとも、真実は少し違う。良質の、高いアニマ感知力を持つナイツの血統だからこそ、ギュスターヴのアニマゼロに対して違和感を感じ取る事ができるのである。
 

286鋼の使い魔 ◆qtfp0iDgnk :2008/10/26(日) 22:27:16 ID:MUU1p/Zp
 薮路を歩く中、ギュスターヴは聞いた。
「……ヴァージニア・ナイツとはどんな方だったんだ?」
「あいつは代々続くディガーの生まれだよ。こっちに来ても山歩いたりしてた。あいつの祖父はタイクーンなんて呼ばれてた凄い人だったよ」
(タイクーン…ナイツ……)
 ギュスターヴの脳裏に浮かぶ人物は一人。黒髪に真摯な瞳を持った青年ディガー。
「その人はウィリアム・ナイツと言わなかったか」
「ああそう。ウィリアム・ナイツさ。伝説のディガー『タイクーンウィル』その人よ」
 つまり、ここにいるシエスタはタイクーンの5代目の孫でもあるのだ。しかしシエスタは二人の会話がまるでわからない。
「ディガーってなんですか?」
「ディガーというのは…なんていえばいいのかな……」
 問われたギュスターヴも困った。グヴェルやツールが無い以上、ディガーという職業を説明するのは難しい。
 その様を見て笑いながらロベルト老人が歩く。
 困惑しながらもギュスターヴははたと気付いた。
「でも奇妙だ…俺がこっちに来たのは1269年だ。ウィリアム・ナイツはまだ老人というほどの年嵩じゃなかった」
「ほぉ…妙だな。私らが来たの時、世間じゃ1310年だったよ。まぁ、そんなことはどうでもいい」
 やがて視界に一つの祠が見える。
「遠い異界で出会えたお主に、渡すものがある。本当は持つべき人物がいたんだが、もうそいつも死んだ。…お前さんに会った時に言った『グスタフ』って奴さ」
 祠に掛けられた鉛色の鍵に老人が手をかける。
「よいしょ…っと…」
 
 
 祠はそれほど大きくない。天井が低く、まるで物置だった。戸棚があり、そこには石で出来た剣や、朱色をした槍、弓、指輪等、さまざまなモノが置かれいてる。
ギュスターヴには一目で、それがサンダイルに普及する『ツール』や『グヴェル』だと判った。恐らくロベルト老人が若かりし頃、ヴィジランツとして使っていたものだろう。
「大爺ちゃん…ここ…なんだか不思議」
「『シエスタ』。お主は時々、物言わぬ木や石から何かを感じたりはしないかな」
「ぇ……うん。あるよ」
「それはアニマという。世界に普く染み渡る、命の力だ」
「精霊みたいなもの?」
「さてな。私は精霊など見たことがない。さて…」
 祠の一番奥に置かれているのは、分厚い鉛で出来た箱だ。老人はそれをぐっと開く。
「ふー…」
 中には色々な大きさの袋が入っていた。そのうちの二つを取り、ギュスターヴに手渡す。
「明けてみるといい」
 ギュスターヴは一方の袋を開けた。そこにはボッキリと二つに折れた大剣が入っていた。
「かのギュスターヴ『鋼の13世』その人が使ったと言われる鋼鉄の剣だ。…色々あって折れちまってるがな」
 ギュスターヴは信じられないと言わん目で、恐る恐る袋に手を入れ、柄を握って取り出した。忘れるはずもない、手に馴染んだ感触が甦ってくる……。
(あの日、あの砦の最後の日。炎の中、意識の途切れる最後まで握り締めていた、俺の剣がここに……)
「…間違いなく本物だな」
「当然だ」
 ギュスターヴは自分の剣を静かに袋に戻すと、もう一方の袋に手をかける。
「……で、こっちの袋はなんなんだ?」
「あ、そっちはな」
 老人が説明するまもなく、ギュスターヴが袋を開ける。
「っ!!!」
 瞬間、ギュスターヴは手の袋を投げ落とした。
「これ!何をする」
 口が開いて中身が覗く袋をロベルトが拾う。
「……こいつはな。お主の故郷テルムを治めるフィニー王国伝来の炎のグヴェルよ」
「グヴェル…?」
 聞きなれないシエスタは意味がわからず困惑している。
 ロベルト老人が拾い上げたものを袋から出した。灰を練り固めたような、白い剣。陽炎がうねった様な鍔が広がり、やがて握りで一つになる形をとる。
「『ファイアブランド』…じゃったかな」
「……知ってるさ」
 ギュスターヴは動揺を鎮めて老人の手を見た。絶対に忘れたりしない。己の運命を決めたその石剣を……。
 
287名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 22:29:09 ID:+hp9Gnbi
エッグ殺し、再び!
288鋼の使い魔 ◆qtfp0iDgnk :2008/10/26(日) 22:29:11 ID:MUU1p/Zp
 そこでふと、ギュスターヴに疑問が浮かぶ。
「…待て。何であんたがファイアブランドを持てるんだ」
 ロベルト老人は火の消えた灰のようなファイアブランドを難なく持っている。
「ファイアブランドはフィニー王家の人間しか持てないはずだ」
「うむ。そのとおり。しかし現に私はこれを持っている」
 ロベルト老人は袋にファイアブランドを戻し、ギュスターヴに渡した。
「此処には他にもツールやグヴェルが保管してある。しかしそのどれをとっても、今は私であっても術を使うことは出来ん」
「何…」
「此処は私達サンダイルの住人が操る事の出来るアニマが殆どない。しかし私らはこの世界に広がるアニマを感じる事ができる」
 ギュスターヴは一応、頷いて見せた。
「なぜかは知らん。しかしサンダイルの人間はこちらのアニマで術を使うことが出来んのだ。グヴェルを使えば多少は出来る。
しかしそのグヴェルとて今は殆ど力を失っておる。だから私でもファイアブランドを持つことが出来る」
「よく…分からないんだが……」
「つまりだ」
 箱から一本の杖を取り出すロベルト老人。取り出した杖をいとおしげに指先で撫でた。
「私達はこのハルケギニアでは『異物』なのだよ。だから世界に根ざすアニマを引き寄せることが出来ない。だから術が使えない。
…此処で死んでも私達のアニマは世界に還ることが出来ない。ハルケギニアが私達が宿すアニマを拒む。
…グスタフも、プルミエールも、そしてジニーも、そのアニマは今もこのハルケギニアのどこかを漂っておる…」
 淋しげに杖を撫でて、箱に戻した。
「…グスタフ。ギュスターヴ15世。正真正銘のフィニー王家の血を引く男。同時に鋼の13世の鉄剣を任された傑物だったよ」
 友人のことを話すロベルト老人は、どこか嬉しそうで、やはりどこか淋しげだった。
289名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 22:29:56 ID:UW1jBwKI
>>284はsageを半角にしなければなりま支援
290284:2008/10/26(日) 22:31:13 ID:UABZ8c5K
ありがとう>>289
291鋼の使い魔(後書き) ◆qtfp0iDgnk :2008/10/26(日) 22:33:41 ID:MUU1p/Zp
投下終了。
ここでロベルトを出すのは個人的にかなりの冒険だったりするのですが、んー、いかんせん題材が地味すぎて(書き方も冒険しない地味な書き方だし…)
シエスタの家族が『シエスタ』って呼ぶのはちゃんと理由があります。
ナイツの直系は皆イギリス王室の君主の名前を捩ってたり、当てはめたりしています(ヘンリー→ウィリアム→リチャード→ヴァージニア(エリザベス))
その流れからヴァージニアの息子の名前がエド:エドワード、という風になってます。
さて、判るでしょうか。シエスタという名前もここでは偽名になっています。今回の話で何度か親族が言い直しをしてますね。
では、次回。
292名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 22:37:28 ID:e+zINJ5u
>>265
散様のほうがネタとして面白くないか?
「散様の口付けを受けて、人ではいられなくなったのだ!」
が出来るぜw
293名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 22:43:22 ID:LlmW41Ib
支援。
THE HOUSE OF THE DEADよりなにかボスキャラを召喚。
でも魔法相手だと結構弱いかも・・・・ 
294名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 22:44:27 ID:E3hF5ekm
>292
それ、契約の瞬間からルイズが人間じゃなくなってしまうんじゃ?
いや行動からするとジョゼフの方が適当か?
295名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 22:46:16 ID:UW1jBwKI
>>291
乙です。

朝ですか?
296名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 22:59:47 ID:Q7vgmVRT
つーか散召喚も覚悟召喚もどっちもあったよな
297名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 23:02:35 ID:+hp9Gnbi
鋼乙ー
>『異界に追放された七人の勇者』
クイックタイムの使い道はまだあるぜーっ!!
298名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 23:13:45 ID:rsw3CX7O
>>292
つ まとめサイト見れ
299名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 23:25:20 ID:D8R+9VTN
メトロイドプライム3よりランダス召喚
誰かあの人を助けてあげて…最期が無残すぎる……
300名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 23:28:19 ID:q8l8Qc3m
>>299
いや召喚するんだろ?
何とかしてやれるのはお前だけだ
301お前の使い魔 四話:2008/10/26(日) 23:31:32 ID:oRQgLKF4
予約が無いなら、35分から投下していいかな?
302名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 23:33:35 ID:HQlRyYpJ
ダメット支援
303お前の使い魔 三話:2008/10/26(日) 23:35:09 ID:oRQgLKF4
「こ……これがキョーシツですか……」

教室の前まで来たわたしと、やや青ざめた表情で教室のドアを見つめるダネット。

「ほら、入るわよ。」

わたしがそう言って教室のドアを開けると、ダネットは表情を硬くし、パンと顔を叩いてわたしに付いてくる。
そして、教室の中に入った瞬間に叫んだ。

「な…何ですかこれは!!怪物だらけじゃないですか!!」

そして、懐から短刀を抜き放ち、瞬時にわたしを庇うような体制になる。

「くっ…!迂闊でした。まさかジュギョーとやらが、私達をハメる罠だったなんて!!お前!!一旦引きます!!」
「落ち着きなさい。」

平手で打ち据えたダネットの頭から、スパーンといい音がした。

「な…何をするのですか!!はっ…!!もしやお前……グルだったのですか!!」
「違うわよ。」

ダネットの頭をスパーンスパーンと二度はたく。
おお、結構いい音がするわね。

「あれは怪物じゃなくて、他の生徒の使い魔よ。害は無いから安心しなさい。」

教室の中には、生徒の他に、昨日の召喚の儀で召喚された使い魔達がいた。
若干生徒よりも少ないのは、教室の中に入る大きさの使い魔だけ教室に入っていて、大型の使い魔は別の場所で待機させているからだろう。
でもまあ、初めてこの光景を目にしたら、少しは驚くかもしれない。
わたしも少しだけ驚いたのは内緒だ。

「ルイズー、ほら、こっち空いてるから来なさいよ。」

この声はツェルプストーだ。
わたしが声の方を見ると、周りに男子生徒をはべらせたツェルプストーが、手をひらひらさせてこっちを見ていた。
確かにツェルプストーの前の席は空いている。でも、ツェルプストーの傍で授業を受けるのは気に入らない。でも席が空いているのはあそこぐらいだ。
わたしが思案していると、横で頭をさすっていたダネットがツェルプストーに気付いたらしく、人差し指をツェルプストーのバストに向けながらこう言った。

「あ!!お前は朝の乳でか女!!」

この言葉に、言われたツェルプストーではなく、横の男子生徒が顔を赤くしている。
304お前の使い魔 四話:2008/10/26(日) 23:37:14 ID:oRQgLKF4
「恥ずかしいわね!ちょっと黙りなさい!」

わたしはそう言ってダネットを制した後、取り合えずダネットを座らせて黙らせようと考え、仕方なくツェルプストーの前に移動する。
その間、生徒達の小さなクスクスという笑い声が聞こえたが無視した。

「で?わざわざわたし達を呼んだのは、席が空いてただけっていう訳じゃないんでしょツェルプストー。」

わたしがそう言うと、ツェルプストーは豊満なバストをぷるんと揺らしてダネットの方を見て言った。

「まあね。朝はあんなだったから、ロクに挨拶もしてなかったでしょ?自己紹介ぐらいはしといて損はないって思ってね。」

言われたダネットは、少し警戒しながらツェルプストーに返事をする。

「ダネットです。また火を出したら、今度は首根っこへし折りますよ乳でか女。」

ツェルプストーは少し肩をすくめ、不敵な笑みを浮かべながら返事を返す。

「あなた達が騒がなけりゃ大丈夫よ。それと、あたしの名前はキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。二つ名は微熱。微熱のキュルケよ。」

すると、ダネットが指を頬に当て、首を傾げて思案しだす。
何だか頭から煙が出ているように見えるのは気のせいだろうか?

「きゅ…きゅきゅ?きゅ……」

動物の鳴き声みたいな声を出し、固まるダネット。
そして、頭からだけではなく、耳からも煙が出ているように見えた後、頭のてっぺんからボンという音が聞こえそうな感じになった後、勢いよく机に突っ伏した。

「ちょっと!大丈夫!?」

驚いたわたしが倒れたダネットの体を揺すると、ダネットは頭を押さえながら立ち上がり、またもやびしっとツェルプストーのバストに指を突きつけ宣言する。

「お前は乳でか女です!!それ以外の名前なんて言ってやりません!!お、覚えられないのではありません!言わないだけです!!」

そう言った後、憮然とした表情で席に座りなおした。
それを見たツェルプストーは、あっけにとられた顔をした後、笑いを堪えきれないといった感じの笑顔で笑い出した。

「あっはっは!!あんた面白いわねダネット。気に入ったわ。名前はいずれ覚えればいいわよ。」

そして「そう言えば」と言った後に、自分の足元に向かって呼びかける。

「フレイム、あんたも挨拶しとく?」
305お前の使い魔 四話:2008/10/26(日) 23:40:08 ID:oRQgLKF4
わたしが視線を落とすと、そこには尻尾に炎を灯した真っ赤な火トカゲがいた。

「これってサラマンダー?」

少し悔しかったが、別にダネットを召喚した事は後悔してなかった(まあ多々問題はあったが)ので、興味本意だけで尋ねてみる。

「そうよー。火トカゲよー。見て?この……って、ダネット?どうしたのよ?」

多分、自慢をしようとしていたと思われるツェルプストーが、変なものを見る目でダネットの方を見ていた。
わたしも見てみると、ダネットは何故か目を輝かせながらぺたぺたと火トカゲを触っている。
気のせいか、少し火トカゲが怯えているようにも見える。
しばらく「おー」とか「これは……」などと言いながら火トカゲを触った後、わたしとツェルプストーを見ながら、満面の笑顔でこう言った。

「凄く美味しそうです!!」
「食うな!!」「食べるんじゃないわよ!!」

とまあ、わたしとツェルプストーが二人でツッコミを入れた時、教室のドアがガラリと開き、先生が入ってきた。
あの先生の授業は始めてだ。
名前は確かミセス・シュヴルーズで、土の属性のメイジだったはずだ。
そんな事を考えていると、ダネットがわたしの袖をくいくいと引いて尋ねてきた。

「お前、あいつも焔術師ですか?」
「あいつじゃなくて先生と言いなさい。それで、エンジュツシだっけ?朝も言ってたけど、それってあんたの土地でのメイジの呼び方なの?」

質問を質問で返すのもどうかと思ったが、エンジュツシとやらが何なのかわからないと、どう返していいかわからない。
そんなわたしの問いに、指を頬に当て、考え込むダネット。

「めいじ…それって焔術師なんですか?」
「いや、だからそれがわからないから聞いてるんだけど。ちなみにメイジっていうのは……」

このままじゃ話が続かないので、わたしがメイジの説明をしようとした時、ミセス・シェヴルーズの声が響き渡った。
何やら、使い魔召喚が大成功で嬉しいとか、その使い魔を見るのが楽しみだといった内容だ。
そして、ぐるっと教室を見渡した後、わたしとダネットの方をじっと見て言った。

「おやおや。変わった使い魔を召喚したのですね。ミス・ヴァリエール。」

それを言った途端、教室がどっと笑いに包まれる。
その笑いの中で、少し小太りのマリコルヌが立ち上がり、わたしを指差しながらこう言った。

「ゼロのルイズ!その亜人、本当はどっかを歩いてた平民に角付けただけだろ!平民を連れてくるなよ!」

これにカッとなったわたしが立ち上がり、マリコルヌに反撃しようとした時、横のダネットがダンと音を立てて席を立った。
306お前の使い魔 四話:2008/10/26(日) 23:42:41 ID:oRQgLKF4
「私はセプー族です!」

それを見てあっけにとられたマリコルヌが、キッと表情を変え、ダネットに向かって反撃する。

「嘘つくな!どうせゼロのルイズが『サモン・サーヴァント』ができなくて、その辺の平民を連れて来たに決まってる!!」

それを聞いていた回りの生徒が笑い出し、口々にわたしとダネットを馬鹿にする。
絶えかねたわたしが、立ち上がってダネットに加勢しようとすると、それをツェルプストーが手で制した。

「邪魔しないでよツェルプストー!」
「まあ見てなさいよルイズ。」

そして、視線をダネットに向ける。
わたしもダネットの方へ視線を向けた。

「上等です。なら、私がセプー族だという証拠を見せるまでです。」

そう言って、緑色の短剣を取り出し、マリコルヌに突きつける。
それを見たマリコルヌは、小さな悲鳴を上げてたじろいだ。
ダネットはそんなマリコルヌを見た後、教室をぐるりと見渡し、よく通る声ではっきりと言った。

「わたしとルイなんとかを笑ってたお前たちもかかってきなさい。疑うというなら証明してみせます。片っ端から首根っこへし折ってやります。」

相変わらず名前は覚えていないものの、それでもわたしを守ると言った事は忘れていない。
わたしはそれが嬉しくて、思わず目頭が熱くなる。
今まで、この学院で味方なんていなかった。
でも、昨日突然召喚されたばかりのこの使い魔は、わたしを守ってくれている。
たった一度、守ったから。それも、見方によっては無理やり使い魔にされたにもかかわらず、なのにだ。
そんなわたしを知ってか知らずか、ダネットは今もゆっくりと教室を見渡している。
いつの間にか、わたし達を笑う声は消えており、教室内が静寂に包まれる。
そんな静寂を破ったのは、ミセス・シェヴルーズだった。

「申し訳ありませんでしたミス・ヴァリエールの使い魔さん。ミスタ・マリコルヌも、他の生徒の方々もお静かになさい。」

それを聞いたダネットは、今も納得がいってなさそうな表情をしていたが、わたしが服を掴んでくいっと引くと、しぶしぶといった感じで腰を下ろした。
それを見ていたツェルプストーのニヤニヤした表情が気に入らなかったが、取り合えず無視しておく。

「それでは授業を始めたいと思います。」
307お前の使い魔 四話:2008/10/26(日) 23:44:29 ID:oRQgLKF4
そう言ってミセス・シェヴルーズが杖を振ると、小さな石ころがいくつか机に転がった。
それを見たダネットは「ほー」と言ってそれを興味深々に見つめる。
それから授業は進み、四大系統や失われた『虚無』の話をし、最後に『土』系統の講釈を始めた。
ドットやライン、トライアングルやスクウェアといったメイジのレベルの話をした後『錬金』の実演をして見せるミセス・シェヴルーズ。
隣のダネットは、最初の内はミセス・シェヴルーズの話す内容にコクコクと頷いたり、驚いたりしていたのだが、今では耳からぷすぷすと煙をあげていた…ようにも見えた。
こうして授業は終盤に差し掛かる。
その最後の内容は、生徒による『錬金』の実演。
わたしが最も嫌う内容だ。
そしてこの日は、運が悪いというか、ミセス・シェヴルーズがわたしを受け持ったのが始めてだった為か、実演する生徒にわたしが指名されてしまった。
騒ぎ出す生徒に、後ろの席で青ざめるツェルプストー。
それはそうだろう。
わたしが魔法を使うと、どんな魔法でも爆発してしまう。
そしてその爆発は、大爆発と言っても差し支えない範囲だったりもする。
それが自分でもわかっているから、わたしは辞退しようと考えた。
だって、また爆発してしまったら、隣のダネットにも被害が出てしまうかもしれない。
それにきっとわたしの事を軽蔑する。
所詮、魔法の使えない『ゼロ』だと馬鹿にする。
そんなのはきっと耐えられない。
そう思って、ダネットの方をちらりと見てみた。

「お前!頑張るのですよ!!」

ダネットは目を輝かせながらわたしに向かって言った。
その目を見て、わたしはぐっとこぶしを握る。
そうだ。最初から諦めていたらずっとゼロのままなんだ。
わたしはダネットを召喚できた。
だから、もしかしたら今日は成功するかもしれない。
いや、きっと成功するに決まってる。
そう思ってわたしは、強い決心をして教壇に向かった。
後ろからツェルプストーの「やめてルイズ」という声が聞こえたが、それでもわたしは止まらない。
机の上の石ころを見つめ、詠唱し、杖を振り下ろす。
大丈夫。きっと大丈夫。
308お前の使い魔 四話:2008/10/26(日) 23:45:46 ID:oRQgLKF4
以上で四話終了

元ネタ知ってる人だけじゃなく、知らない人までダネットが可愛いと言ってくれる人がいて嬉しい限り。
それでは
309名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 23:48:49 ID:Bs2K7D6z
「 どうして行っちゃうんだよぉぉぉぉぉーー!!ロベルトーー!!」
310名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 00:10:06 ID:caA5wT0g
ダメットの人乙です
自分も元ネタ知らないけどキャラが良い味出してて好きです
311名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 00:12:54 ID:saEBMxwm
鋼ここでロベルトが出るとは…剣が帰ってくる展開燃えました
そしてダネット可愛すぎるよダネット
でも元の世界で主人公が心配してると思うと複雑に
312名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 00:46:21 ID:iHWxV1Fe
ダメット乙です。
なんか心配顔の主人公と悪態つきながらもどこか寂しそうなギグを幻視したw
ふと思ったのだが合体技は出るのだろうか?
次回にwktk
313名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 00:49:22 ID:nu05LEKK
本編終了後ってことは主人公との子育ての訓練はまだってことか。
314名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 02:34:20 ID:jnj6Q5+U
一年ぐらい前から、Arc The Ladのキャラが召還されないか期待してるんだけど…
古いゲームだし、今の人は知らないのだろうかと思ったり
文才があったら自分で書けるのに、文才が無いから orz
315名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 02:39:38 ID:mOb2DX1f
>>314
アーク召還は前に考えた事ある
ただ、現時点でまともに出てる精霊って水だけだから、ちょこっと剣が振るえるトータルヒーリングしか出来ない回復役にしかなれん

……………あれ?でもそれってアークらしさ全開?
316名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 02:40:49 ID:My6yExX3
>>314
読みたちゃ自分で書け、としか言えんなぁ。
俺も文才がないので、気持ちはわかるが。

ネタとかアイディアを提示したら、誰かそれをベースに短編を書いてくれる人ぐらい現れるかもよ?
317名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 02:43:29 ID:jnj6Q5+U
低レベルのアーク=トータルヒーリングとマジックシールドによる援護キャラだと思ってます
でも…
アーク2でLv1000まで上げるとアークが最強キャラになった気が(汗

ちなみに、機神復活だとチョコを除けばリーザが最強な気がして仕方が有りません
318名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 02:49:27 ID:8NpFV5MO
>>314
ルイズがアークUから「闇の王」をうっかり召喚。
クロムウェルが唆されてハルケギニア全土を掌握。
そんな中、強制収容所に連れ去れた家族や他のメイジ達を救うため、ルイズが立ち上がる。

ってのを考えてプロットも作った。
本連載が忙しすぎて書いてないけど。
319名無しさん@お腹いっぱい。::2008/10/27(月) 02:58:47 ID:jnj6Q5+U
>>318
…ルイズがどうやって倒すのかが気になって、スッゲェ読みたいです。
本連載が終わって、気が向いたら是非書いて下さい。
お願いします
320名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 03:03:37 ID:VwOJBj1C
黄金バットを召喚する話を書いてみたら性質上ルイズ専用魔法『黄金バット』になるから困る。

プロットも未だかつてないシロモノになってしまうのが黄金バットクオリティ。
ここまで難物とは思わなくて心が折れそうだ。
321名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 03:20:23 ID:8YOFNDFG
では代わりに粉砕バットを召喚しませう。
322名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 03:32:29 ID:9bbuOptc
おや、wikiにアバン先生のが・・・・・・
323名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 03:34:35 ID:/7aSPlrn
あれはただの誤字修正か何かだろ?
324名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 04:28:57 ID:k2OvdVv9
>>291
鋼の人乙。

気になったことを少々。
ロベルトのギュスターヴの名前に対する反応の薄さは何故?
確かにジニーの時代はギュスターヴの子孫を名乗るものが数多く出てはいたけど
わざわざ異世界に来てまでそれを名乗る必要はないのだから、何らかのリアクションを見せても良いのでは?。
やってきた年代やギュスターヴへのアニマ感知と照らし合わせれば鋼の13世と思ってもおかしくないはず。
その辺を「そんなことはどうでもいい」で片付けてしまうのはロベルト爺さん呆け過ぎかと。
何か理由があってそう書いていらっしゃるのでしたら申し訳ないです。
325名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 04:56:40 ID:Ko0UdhM1
>>322
お騒がせしました
旧作のいくつかにnavi追加中です
この時間なら投下もないだろうし
326ジ・エルダースクロール外伝 ハルケギニア:2008/10/27(月) 05:58:47 ID:937OZEzu
誰もいないか…?投下するなら今の内ということで。
予約無ければこのままさせてもらいますね。
17,盗賊ギルドの秘密

「おお、何と…」

マーティンは言葉を失って、ただ目の前に浮かんでいる大陸を見やる。
空に浮かぶ「白の国」アルビオン。書物で確かに浮かんでいるのは知っていたが、
実際に見るのとでは大違いであった。

「どう?凄いでしょ!」

ルイズが楽しそうに笑う。さっきの事もあって、どうにか気楽になろうとしていた。
驚いているマーティンはルイズの方へ向いて、感激した風に言った。

「ああ、全くだよルイズ!しかし――ここまで大きな物が何で浮かんでいるんだろうか?」

「色々学説があるらしいけど、始祖ブリミルが風の精霊に頼んで、
このアルビオン大陸で聖地へ行ったって伝説がよく言われるわね。
昔はハルケギニアのどこへでも行けたらしいけれど、
今は精霊が、最後に始祖に頼まれた様にしか動かさないんですって」

「始祖ブリミルか…もし生きていたなら一度お会いしたかったな」

その原理や方法、例え伝説でも浮かんでいるこの大陸がその証拠だ。
その大いなる力をほんの少しは知りたいと思ってしまうのは、やはり彼もメイジだからだろう。
残念ながら、始祖ブリミルは神格化されて信仰されているものの、魂は神とならなかったらしい。
そうでなければもっと九大神が行う様な奇跡を起こすものだろう。

タムリエル独特の考え方が決して抜けないのは年のせいだろうか。
隣で同じように感動しているコルヴァスに気づかず、二人は白の国を眺めていた。
しかし、そんな和やかな雰囲気をぶち壊すかの様に、鐘楼に上がった見張りの船員が大声をあげた。

「右舷上方の雲中より、船が接近してきます!」


「旗を掲げていないだとぉ!?」

船長は焦った。現在後甲板でワルドと共に操船の指揮を取っていた彼は、
こちらに砲門を向ける空賊の船を、確かに目視で確認した。

「いかん、逃げるぞ!取り舵いっぱい!」

だが、時既に遅し。あれよあれよという間に船は空賊の手に落ちた。
頼みの綱のメイジは残念ながら打ち止めだったらしい。
ああ、くそったれ。船長はそう思いながら舌打ちした。


「空賊だ!抵抗するな!」

どこにそんな行儀良く歩く賊がいるんだよ。軍属だろお前ら。
そもそも賊のくせに何だその半年前から始めました的な服装は。

一般人には間違いなく恐ろしい空賊として見える彼らの格好は、
しかしコルヴァスには全く恐れを感じさせない。年季が違うのだ。
軍も賊も知り尽くしている彼にしてみれば、彼らが何者か手に取るように分かった。
そもそもこの時期に船襲うか普通。賊が暴れるのは崩壊後が相場だ。
その前にやり始めると、通商船より軍艦に見つかって落とされる可能性が高い。
賊共は金よりは、自分の命の方が大事だからこんなヤマ張らねぇよ普通。

ま、情報流したのは俺なんだけどな。姫さんめ、奇襲されるとかどこかで漏れてやがる。
だから、アルビオンにいて大丈夫な連中に機密輸送船が朝方こっちに来る。
と流すようアイテムで伝えたら案の定食いついた。
王党派が切羽詰まっているのは間違いないらしいな。

しかしながら彼の頭は愚痴しか出さない。襲うにしても空気を読んで欲しかった。

今回の話は断るつもりだったのに、ティファニアがねじ込んだんだ。
俺の恩人である彼女と関係深いアルビオン王家。
その王様も救出して欲しい。と言われたからにはそりゃやるが、
俺は普通後方から指示出しだろう。ああ、くそ。
何か皆してテファばっかり崇めやがって。
胸か、胸なのか。胸力なのかやっぱり。

本当はそんな訳でもないが、彼としてみれば何となく「負けた」気分がしていて、
何ともため息をつきたい気分になった。なのでため息をつく。
少し冷静になった。いかんな。ついついやってしまう。
そう思って今空賊に囲まれている皇帝の事を考えた。

マーティン陛下は動く気配無し。空気を読んでおられるのか、
それともお気づきになられているのか…まぁ、俺は雲隠れとしゃれ込むがね。

灰色狐は気配を消して空賊に真似た王党派の船に忍び込む。問題は無い。
たかだかこの程度の連中にバレてしまっては、
グレイ・フォックスの名を継ぐものとは言えないのだ。
勘違いしないで欲しいが、彼は強化外骨格で身を包んだりはしない。
お気に入りは革の防具である。

ショウタイムだ!気を取り直してそう思いながら、
船室で見つけた予備だろう連中の服を着込み、
空賊になりすますフォックスであった。


「あん?もう一人いなかったか…いや、いねぇか」

確認していた空賊の男は、何か違和感があったものの、
すぐに忘れてしまった。後からやってきて、
船長の帽子をかぶった空賊の頭はルイズ達に近づき大げさに言った。

「へぇ、貴族の客まで乗せてるのか!こりゃ――」
「黙りなさい下郎」
「驚いた!下郎ときたもんだ!」

マーティンは普通に立っているようで、
既に魔法をいつでも唱えられるようにしていた。
裾に隠したナイフは後三つで、投げれば急所に当てられる様に、
相手がどう動くかを常に見ている。
灰色狐に言わせれば「空気を読んでおられる」状態だった。

「てめえら。こいつらも運びな。身代金がたんまり手に入るだろうぜ」
所変わりタルブ。現在昼をまわる少し前。ワイン用のブドウと、
瑞々しい甘さと舌に優しい酸味のオレンジが名産の村である。
特にオレンジは平民貴族問わずに人気で、
アストン伯は、最近一箱2エキューで固定化宅配サービスまで行いだした。
良い感じに潤っているようだ。オレンジ自体の値段は一つ8ドニエである。
大きさは、成人男性のてのひらに収まるか収まらないかくらいの物で、
味も良く量も多いと人気を集める要因となっている。

「そんな訳でオレンジです。どうか食べていって下さいティファニアさん」
「まぁ、ありがとうございます。シエスタさん」

タルブにある盗賊組織、旧『影の一党』本部で、
現『盗賊ギルド』タルブ支部の小屋にて、
何故かメイド姿のままのシエスタが、
椅子に座る普段着のティファニアにオレンジを渡し、
テーブルにワインを置いた。

今、トリスタニアにはほぼ盗賊がいない。
お上の目もあるからということで、
作戦が始まる少し前に、ティファニアはタルブへと移ったのだ。

シエスタはというとあの後、どうにも手元がおぼつかずに作業が進まない事を、
マルトー経由でオスマンに知られ、事情を知っているらしい彼に、
一週間ほど暇をいただいたのだ。

「いやー素晴らしいですな。甘いオレンジがワインに合うとは」
「あの、何故いらっしゃるのですか?チュレンヌ様」

はっはっは。とチュレンヌは高らかに笑った。

「このチュレンヌ!ミス・ノクターナルに忠誠を誓った身。
例えそのお姿がエルフであろうとも揺るぎはしませぬ。
それに、今ギルドはほとんど機能停止を余儀なくされている状態。
ティファニア様をお守りするのは私以外誰がいると言うのかね?」

現在、ほとんどのギルド員がラ・ロシェールにて待機状態になっているか、
フーケに連れられアルビオンでの仕事中である。
ティファニアは一応『容姿を魔法で変えられる』ようにはなったが、
万が一を備えてここにいるのだ。アストン伯もこの件については良く理解している。
彼もまた、今の王家に多少思うところがあるらしかった。

「左様でございますか。お仕事の方は?」
「何、手の者に任せておるよ。皆良く働いてくれる。私は良い部下を持っていたのだな」

「素晴らしい事だなチュレンヌよ。しかし、ティファニア様。
貴女の様な方がこのようなところで匿われないといけないとは、
今私は初めて始祖に怒りを覚えておりますぞ」

「お、落ち着いて下さい。も、モット伯さん」

ティファニアが慌てたように言った。
フードもローブも纏っていないいつもの服装の彼女は、
いつも通りの優しいハーフエルフだった。
シエスタは心の中でため息をつく。もうチュレンヌがいる事はいい。いや、良くないけどいい。
何でこの人までここにいるんですか。というより何処から嗅ぎつけてきたんですか。
ジュール・ド・モットも、チュレンヌの様な感じでギルドに入った仲間であった。
しかし、今は公務中のはずである。当然、この件は知らない…はずだ。

「はっはっは。何、どうせまた学院に突っぱねられて終わりだろうに。
適当に流した方がどちらにも良いという訳だよ。」

『お前達も大変なのだな。我には到底真似できぬ』
「いやはや。夜の女王様は冗談がお上手ですな」

まぁ、百歩、いや千歩譲って上記の二人はアリとしよう。うん。
何なんだ。本当に何で貴女様までここにいますか。
シエスタは、最近フラリと現れては、
いい加減に返せとグレイ・フォックスに突っかかる彼女を見て、
頭が痛くなってきた。祈ったけど。確かに祈ったけど。
ここにいてくれとは一言も言ってないんですけど。

夜の女王と言われたその人物は、見た目麗しい女性だった。
真っ黒なローブで身をつつみ、黒い髪で白い肌、
大きくも小さくもない胸を持ち、
両肩に白にも黒にも見えるカラスを一羽ずつ立たせ、
もうあらん限り隙だらけでオレンジをほお張っていた。

『意味無き事を気にするな、我の信者シエスタよ。我は影のある所であらばどこであろうと現れる』
「いや、私のお願い聞いてくれましたよね?」
『無論』
「なら何でここにいらっしゃるのですか?ノクターナル様」
『未だ彼奴らは苦難に陥ってはおらぬ故。それに眠い』

さっき用意をしているとき、気が付けばいつの間にか座っていてオレンジをほお張っていた。
デイドラにしてみても、それはおいしいらしかった。

デイドラ王、そうマーティンは言っていたが彼ら(または彼女らか、両方持ち)は基本的に
『王子』の敬称が彼らに関する書物では記されている。それは階級的な物なのか、
儀礼的な物なのかは別として、とても何というか。
つまり、何で王子と呼ばれているのかを説明するのは面倒なのだ。

タムリエル地方の一つエルスウェアに住んでいる者達である猫人族のカジート
(正確には違うが、シロディールには猫型しかいない)
は、デイドラ『アズラ』をエイドラとして信仰していたりする。
デイドラの認識は、誤解を生みやすく色々とややこしいのだ。

おさらい的なものだが、デイドラは不死にして異世界オブリビオンに住む。
形状は様々だが、大抵暴力的なのが好みである。
定命の者の「祖先」と、言う意味を持つエイドラは死ぬ可能性を持ち、
やはり形状は様々だが、めったに人の世界に姿を見せない。
彼らは人にとって、オブリビオンよりさらに離れた異世界エセリウスに住む。

「デイドラ」というのは、元々タムリエルの古代エルフが、
「魔物」を意味する言葉として作った単語、「デイドロス」(Daedric)の複数形である。
今は、オブリビオンに住まう者達の総称として「エイドラ」の反語「祖先で無い」を意味し、
「デイドロス」はあまり使われなくなった。尚、種族としてデイドロス(Daedroth)と言われる、
二足歩行の白くてワニっぽいデイドラがいたりもする。
そんな訳で、マーティンはデイドラについて全く知らないハルケギニア人に、
分かりやすく、かつ返答が難しい質問をされないように、
領域を持っている者を『王』として教えたのだ。
本来は王子だが、なら王様は誰?とか聞かれるとそれはとても困るからだ。
誠実に生きよ。と『九大神の十戒』には書かれている為、あまり喜ばしい行いとはいえないが、
無用な混乱を招く真実は、嘘よりよほど質が悪いのを彼は経験上良く知っていた。

別段、デイドラの王子達を必ずしもそう呼ぶ必要は無い。
デイドラの『主』と呼ばれることも、『王』と呼ばれる事もあるし、
つかさどるものにちなんだ様々な異名をかの存在は持っているし、
また、単に『神』と言われることもある。ただ、
『王子』の方が良く使われるているだけなのだ。

オブリビオンにおいて、力のあるデイドラは皆『王子』と呼ばれる。
例外になりうるだろう存在がいるような気もするが、
何故そうなのかは記すことすらはばかれる。
まぁ、誓いを破った三人のエルフの罪の証として、
その種族を一人残らずダークエルフに変える程度の力を持っているのだから、
特別扱いでも構わない気がしないでもない。


『かような理由で我はいる。駄目か?』
「いえいえノクターナルさん。大丈夫なら一緒にオレンジ食べましょう」
『我が影は優しいな』

肩のカラスが一羽、ティファニアの肩へ停まった。
チュレンヌとモットは、麗しき二人の夜の女王に見とれている。
全体的に、穏やかで和やかな雰囲気だ。


ノクターナル。何を考えているのか分からないデイドラの中でも、
最も理解できないデイドラ王「ハルメアス・モラ」と同じくらい、
何を考えているのか分からない存在である彼女は、
神学者達の間でも時折話題になる。

ある時、一人のデイドラ学者が、
ノクターナルを信仰する青年と話したところ、彼はこう言ったという。

「ノクターナル様はあれです。何か考えているようで、実際何も考えていないんです」

包み隠さず言った彼は、その後色のない色の影に飲まれて再び現れると、
イエイエ、チガイマスヨ。カンガエテマスヨ。と言い出したそうだ。
学者はこれをネタに論文を発表したが、結局笑い物にされて終わりだったらしい。

彼女は、夜や影等の闇を司ると言う性質上、
秘密や、隠密行動に関することに支配力を持っている、と言われている。
盗賊等というのは、普通一匹狼で神より自分の腕を信じるが、
実際に神がいるタムリエルだと話は変わってくる。
かの存在の気分次第で相手にバレるとまずいので、
無言の内に、彼の地の盗賊達の多くは、
ギルド員でなくても彼女の庇護を受けようと、
例えば、常に黒い衣装に身を包んだりして、
彼女からの祝福を何とはなしに求めている。

だからといって彼女は特に何もしない。
タムリエルまで一々出向きたくないからだ。
そんな彼女は、何故か盗賊達からの盗難被害最多のデイドラ王でもある。
ちなみに、装飾のセンスはあまりよろしいとは言えない。
おそらく、暇つぶしを兼ねてクラヴィカス・ヴァイルという、
人間の商談などの契約を司るデイドラ王から、
「タダで」教えてもらっているからだろう。

比較的有名な話だと、今から300年くらい前の時代、
信者達の前で自慢の肢体を見せようと身体を覆う夜のマント一枚に、
お気に入りの頭巾をかぶって召喚され、マントと頭巾を脱ぎ捨てた際に、
隙を付かれてかぶっていた「ノクターナルの灰色頭巾」を盗まれた。

ほんの数年前には、自分を奉っている祠の神像から目を盗まれたりもした。

どうしてそんな物まで盗まれるのだろうか。信者達にも、彼女にも分からない。
あるトカゲ人間(アルゴニアン)が行った窃盗であった。

幸い、目は今や英雄となった者が取り戻してくれたが、
頭巾はグレイ・フォックスが被っている。お気に入りだから返して欲しいのだが、
上手い具合にやり込められた。他のデイドラ王なら、盗んだ時点で終わりだろう。
ノクターナルは、あまり荒事が好きではなかった。

「けど、何か変わってますよね。信仰によって強弱が変わっていくって」
『我らからすれば当たり前の事。故にそう言われても困る』

ずっと昔に、グレイ・フォックスに盗まれたノクターナルの灰色頭巾。
別に盗まれた事はどうでも良い。気にしてはいないが、
返してくれないか?と盗まれて数日したある日、信者に言付けて行かせてみた。


通常、ドラゴンファイアが灯っているタムリエルに、
デイドラ王が自力で姿を現そうとするのは、実際のところはとてもしんどい。
『不可能』ではなく『しんどい』だが、
デイドラ王達は、面倒なので自分から行かないで、
そこで信仰している自分の信者達を使うのである。
敢えて戦いに来ては、半殺しにされてオブリビオンに戻っていく、
本当にはた迷惑な破壊の権化である『メエルーンズ・デイゴン』を除いて。
基本的にデイドラ王達は享楽的な側面が大なり小なりあるのだ。
デイゴンも破壊と敗北が楽しくて来ているらしい。人間には訳の分からない話である。

祠の前にやって来たグレイ・フォックスは、ノクターナルの神像に跪いてこう言った。

「あなた様のかけた呪いにより、私はこれをはずすと誰にとっても、
『見知らぬ者』となるのです。ですので、これはお返しできません」

はて、そんな呪いかけただろうか。彼女からしてみれば、
それは呪いでもなんでもない。自分の力でどうにでも出来る、
頭巾にかけた魔法効果の一つなのだった。

「ですが、そのままでは私の命が危なくなるのも重々承知しております。
ですので、どうかあなた様を信仰する団体を創りますから、
これを私に賜ったという事にしてくださいませんか?」

どうしてかは知らないが、彼はデイドラの力がどうやって増幅するのかを知っていた。
力が増幅するのはありがたいので、ノクターナルは何となくOKサインを出した。
彼女は、色々面倒だったので自身から熱心に信者を集める口ではなく、
この申し出はありがたい事だったのだ。
こうして、初代グレイ・フォックス「エマー・ダレロス」は、
シロディールの盗賊ギルドに入り、ギルドは彼女を崇めるようになった。
第三紀433年より約300年前に、このギルドは彼によって作られたと言われているが、
実際の所、それよりさらに700年くらい前から細々と存在していた。
ギルドマスターになった彼は、グレイ・フォックスの噂を様々な手段で流し、
その結果グレイ・フォックスと盗賊ギルドは、誰もが知る有名な伝説となった。

盗んだ本人から呪いなぞかけておらぬが?と言われて、
ではどうしたものかと彼は悩み、結局その「呪い」ともいえる魔法効果を解除出来なかった。

盗賊ギルドにとって、グレイ・フォックスとノクターナルはその象徴と言える。
誰も名を知らぬ長と夜の女王。それがいなければ話にならぬのだ。
だから頭巾を次の長に渡し、その後に真相を伝えるようになった。
それが何代も続き、いろいろな理由から盗賊ギルド員になった、
地方都市アンヴィルの伯爵「コルヴァス・アンブラノクス」の代で、
ようやくこの忌まわしい魔法を解除する方法を見つけたのだ。

しかし、彼は魔法を解除するアイテムを手に入れることは叶わなかった。
失意に浸り、もはや全てがどうでもよくなったときにハーフエルフに呼び出され、
彼は生きる希望を見いだした。彼女だけは自分の名を覚えていてくれるのだ。


『ん』
「どうかなさいましたか?ノクターナル様」

ざわざわと、ノクターナルが作る影『だけ』が震える。純粋な黒よりさらに黒いそれは、
まるで、近づく物を全て飲み込む奈落の底の様な色であった。

『少し見てくる。もしや何か起こるやもしれん』
「気を付けてくださいね。ノクターナルさん」

ああ、我が影よ。そう言ってノクターナルは自身の影に包まれ消えた。


どうでもいい没ネタ

『英語圏では普通にDaedric Princeと言われているがな』
「しーっ。メタ発言ですノクターナル様。スパイクは基本的にデイドラ王子で訳してますから。
ていうかDaedrothとDaedricの訳がごっちゃになってて非常に不親切です」


投下終了。
強化外骨格が『ドワーフ製防具』として売られている世界。それがタムリエルです。
ノクターナルはこんなのか?といわれれば、まぁこんなのということで。
ギルドのネタは半分くらい設定基準の創作ですが、
こうでもしないとゲーム内の設定がおかしくなって説明できません。
また次の投下まで。シャドウハイチュー 
334名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 06:25:31 ID:lM30h0d3
すげえ時間に乙
335名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 06:26:00 ID:+KGN+d/X
オブリオンの人、乙でした。
胸力はいいよね。男なら逆らえないよね。
336名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 06:54:12 ID:937OZEzu
>>334-335
こんな時間に人が!?
読んでくれてどうもありがとう。
サァ仕事仕事だ。皆さん気を付けていってらっしゃいです。
337335:2008/10/27(月) 07:00:01 ID:EOiyZSvR
>>336
仕事終わって帰ってきたところです。
さてお休みなさい。
338鋼の人 ◆qtfp0iDgnk :2008/10/27(月) 07:15:34 ID:oAnm8DLD
>>324
えー、まずいくつか私なりのサンダイル世界の解釈がありまして…
・ジニーの時代では「ギュスターヴ」という名前が珍しくない
これは原作での「ギュスターヴ13世の子孫を名乗る」というくだりからの想定ですが、時の偉人から名前を貰って子供につける、というのは民衆の中では割と判的な行動
なんじゃないかなと思っています。
現実にも同じような事例がありますし。
・ロベルトのアニマ感知力が低い
実は原作のジニーパーティのステータス表を見ると(極端に低年齢なジニーを除いて)ロベルトは下から二番目に
JP(ゲーム中のMPに相当、アニマを操る力)が低いのです。ロベルトより低いのはプルミエールですが、プルミエールも(本編中に一応出しますが)「鋼」ではあるキャラの
バックボーンに登場します。
あと、老齢になるとアニマが研ぎ澄まされるらしい描写が原作にもありますが、ウィリアムが老齢になっても戦闘をこなせる程度に身体機能を持っているのに対し、
ここでのロベルト老人は石切作業に参加できないくらいに身体機能が衰えています上、原作中のウィリアム老人よりも年齢が上がっています
(これは次回で書く話に少し被るんですが)
もっとも、JPの基本能力値でいうと、ナイツの一族がそれほど卓越しているわけではないのですが、とりあえず上記のように考えてもらうとありがたいです。
339名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 07:17:12 ID:mo0EKo3B
今度は鋼か
340名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 08:40:00 ID:ll8anFP5
>黄金バットを召喚する話を書いてみたら性質上ルイズ専用魔法『黄金バット』になるから困る
安心しろ
黄金バットはああ見えて奥が深い
問題はやり様だ

最近バットさんが生前は古代王国の邪悪な王子で
死後、神官たちによって生まれ変わったら正義の人になるという呪いをかけられた存在だと知った
まあ戦争直前〜実写映画版の前くらいまでの設定だが
341名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 08:40:17 ID:k2OvdVv9
>>338
解説ありがとうごさいます。
そういった前提条件でしたら納得です。
今後も楽しみにしてるので頑張ってください。
342名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 09:16:40 ID:sUIJt5Tr
つーか黄金バットは小ネタで一回出てたよな
343名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 09:24:30 ID:SWa6MfiZ
あったなぁ
そういや黄金バット召喚が元ネタと言えば、某ワッハマンから長沼さん召喚とかどうだろ?
344名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 09:32:08 ID:0X4zO7EV
ガンダ長沼さんとか何それw
てか契約のキスしようにも、ルイズの顔面鷲掴みにしてあさり画風の嫌そうな顔で「あんたコレ何とかしてくれ」とかハゲに言ってる所しか想像できねぇ。
345名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 09:34:00 ID:caA5wT0g
そういやワッハマン止まってたんだよな
続きプリーズ!!
346名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 10:25:03 ID:3ct38FOQ
リスのたーくん召喚してルイズ涙目。
チカちゃん召喚してアルヴィーズの食堂は阿鼻叫喚。
とかそんなんばっかなんだが。
347名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 10:38:29 ID:IWtKCgmK
チカちゃんでーす

くぱぁ
348魔導書が使い魔-02:2008/10/27(月) 11:19:50 ID:Ps7q5CSc
投下予定がないなら11時30分から投下を開始したいのですが、よろしいですか?
349名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 11:25:36 ID:5XUbuzv0
どうぞどうぞ
350魔導書が使い魔-02:2008/10/27(月) 11:30:20 ID:Ps7q5CSc
ペラ――
そこは砂と風と熱と寒と太陽と月が苛む砂漠という地上の地獄。
小さな小屋、月も差さぬ夜の帳、頼りにもならぬランプの灯火、這い拠る寒気、
薄く壁にもならない壁に守られ。誰にもはばかれぬことなく、誰にも気にかけ
ることなく、その老人は筆を進める。
ペラ――
1枚、また1枚。まるで誰かに急かされるように、まるで誰かを急かすように、
書は止まらず、ペンは止まらず、指は止まらず、老人は止まらない。
顔は凝り固まり、目は血走り、唇はひび割れ、肌は垢にまみれ、ぼさぼさとな
った髪がその異様さを浮き出させる。
老人は急かされている、老人は急かしている。
それは誰か、誰か、誰か、誰か?
ペラ――
そう、老人は老人を急かし、老人は老人に急かされている。
1枚、また1枚。書は空白を埋められていく。
なにが老人をこうも急き立てるのか。
なにが老人に書を書かせるのか。
ペラ――
ペンを走らせるその姿から漏れ出すもの。
意地、鬼気、執念、恐怖、焦燥、使命、義務、憤慨。
おそらくはこのどれかであり、このどれもであり、このどれでもないのだろう。
そう、もしこれらを総称して言うならば――『狂気』。その一言につきる。
狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂
気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気
狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂
気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気
狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気――
351魔導書が使い魔-02:2008/10/27(月) 11:31:10 ID:Ps7q5CSc
老人は指でペンを走らせるたびに狂い、手で書を捲るたびに狂い、息を吸うた
びに狂い、息を吐くたびに狂い、乾いた唇を舌で濡らすたびに狂い、目で字を
追うたびに狂い、蝋燭の火が揺らめくたびに狂い、火が書を照らすたびに狂い、
隙間から風が吹きかけるたびに狂い、物音が聞こえるたびに狂い、書が進むた
びに狂い、脳内にある“アレ”を書>言葉>単語>文字に変換するたびに狂い
直している!
ペラ――
狂気に犯されてもなお老人を急き立てるもの、それは――

――オオォォォーーーーォォオンッ!

どこからともなく獣の咆哮が響いた。



「――っ!?」
目を開けて、飛び込んできた景色は馴染みのある天井だった。
どこだろうとルイズは視線をさまよわせる。
見覚えのあるクローゼットに机に本棚。それで自分の部屋だとわかった。
ゆっくりと体を起こすと、冷や汗が首筋を流れる。
軽く頭を振る。あまり気分は冴えない。
(なんなのあの夢……)
今しがた見た夢。人を寄せ付けぬ環境、砂漠のただ中にある小屋、絶対的孤独
に晒されながら書に向き合う老人。
その老人を侵した狂気……いや、狂気を貪る老人の鬼気迫る迫力は、ルイズの
たった16の年月では理解できない。
意思を、力を、知恵を、意味を、存在を、自身の命までも削るように書を綴る
その姿を思い出し、ルイズの背筋に冷たいものが通る。
得体も知れぬ恐怖ともつかぬ感情に流されそうになったとき、ふとルイズは自
分がなぜここにいるのかと現実に帰る。
352魔導書が使い魔-02:2008/10/27(月) 11:32:22 ID:Ps7q5CSc
周囲には誰もおらず、なぜここいるのかわからない。なにかすごいことがあっ
たような。
とりあえず、枕元の呼び鈴を手に取ろうとして――左手の甲にあるそのルーン
に気がついた。
「――えっ」
その瞬間、ルイズの脳内に朝の出来事が駆け巡る。

2年生進級の使い魔召喚の儀式。

何度とない失敗。

確かにつかんだ手応え、その直後の轟音と魔方陣。

召喚された巨大な、かつ傷だらけなゴーレム。

そのゴーレムの持ち主だと思われる少女。

落胆しながらも交わそうとした契約。

儀式の途中で突如起き上がる少女、確かに契約を交わ(キス)し。

だけど、その瞬間に左手に痛みが……

改めて左手の甲を見た。
そこには見知らぬルーンがある。
もちろんルイズはルーンがなんなのかは知っている。だけど大抵ルーンという
ものは本や剣といったマジックアイテム、または契約した使い魔に現れるもの
である。わざわざ自分の肌に書くような人物は酔狂である。当然ルイズはそん
なものを自分に書いたことはないし、書かれた記憶もない。
ではなぜ左手にルーンが?
思い出すは契約の後、左手に奔った痛み。
(……まさか、コントラクト・サーヴァントの失敗……っ!?)
そのことを深く考えるごとに段々と顔が青くなっていくルイズ。
(つ、つつつ使い魔との契約に失敗したとなるとっ……り、りりり留年……さ、
ささささ最悪退学もっ!!)
そして更に考えが悪い方向へと転がりそうになった時。
コンコンという控えめなノックの後、間を空けてドアが開かれる。
「ミス・ヴァリエール。よかった、気が付いたのですね」
「み、ミスタ・コルベールっ!」
ドアからコルベールが顔をのぞかせ、ルイズを見てほっと息をつく。
「あれから大変でしたよ。気絶したあなたと――」
「み、みみみみミスタ・コルベールっ! 契約の儀式はっ!!」
優しげに話しかけるコルベールに、ベッドから飛びださん限りに詰め寄ろうと
するルイズ。
「け、契約の後すぐ痛みが走ってっ、そ、そそそそそれで気が付いたら手にル
ーンがっ!」
353名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 11:32:26 ID:5XUbuzv0
支援
354魔導書が使い魔-02:2008/10/27(月) 11:33:30 ID:Ps7q5CSc
その顔は真っ青で今にも倒れそうなほどだ。
それにコルベールは真剣な顔になるとルイズの肩をしっかりつかみ。
「落ち着きなさい」
と、どこかしら迫力のある声で言い放つ。
「――あ。す、すみません……取り乱しました」
その声に、まるで水をかけられたように心は落ち着く。
それを確認したコルベールは、静かに言う。
「それについて話し合わねばならないことがあります。少し付いてきてください」
「そ、それはどうしてっ」
思わず聞くルイズにコルベールはにべもなかった。
「説明は後です」
さあ、とまたルイズの顔から血の気が引く。
(ま、ままままさかっ。ほ、ほほほほほんとに退学っ!!??)
よく見るとコルベールの横顔はなにか興奮を抑えるような、教師としてではな
くなにか命題を出された研究者のようなそれである。少なくとも一人の生徒を
留年、ましてや退学させようという顔ではないのだが。すでにマイナス思考ま
っしぐらの彼女にそれをよく観察する余裕などこれっぽちもない。
(ああっ!! 始祖ブリミル様っ! ちいねえさまっ! 姫様っ! どうかお
助けくださいませっ!!)
ルイズの脳内ではまるで菩薩のように光り輝く3人が出てくるが。黒い黒い煙
が3人を覆いつくし、その後にマンティコアに跨り無表情で睨む母カリーヌと
ギラギラと目を光らせる長女エレオノールが現れる。
2人はただ無言で腕を組みルイズを見下ろしているが、その迫力はもう熊や虎
といった猛獣、いや竜や吸血鬼といったものの比ではない。
(ゆ、許してっ! 許して母さまっ! 姉さまっ!)
「……ミス・ヴァリエール?」
先に進もうとしていたコルベールが振り返り、動かず震えているルイズに声を
かける。
「は、はははははいっ!」
飛び上がるような反応に少しコルベールは怪訝に思うが、多少のことは気にし
ないことにした。
「早くついてきなさい」
355魔導書が使い魔-02:2008/10/27(月) 11:34:04 ID:Ps7q5CSc
どこかギクシャクと立ち上がるルイズを見て、コルベールはドアをくぐる。
「どうしようどうしようどうしようどうしよう……」
その後ろに付いていきながらブツブツと呟くルイズの顔色は真っ白であった。

「ここですミス・ヴァリエール」
そう言ってコルベールが止まったのはドアの前だった。
想像の中で追われ吹き飛ばされ捻られ抉られ千切られ潰され斬られ刺され砕か
れ剥がされ押し潰され捩じ切られ切り刻まれ終わることなき死を極限の断罪場
を彷徨っていたルイズは、そこでようやく現実へと帰る。
「……来賓室?」
あまり縁はないが、ルイズの記憶ではそこは来賓室であるはずだ。
先ほど言ったように、コルベールの顔をよく見れば、留年や退学といった出来
事を話すような表情ではないことはわかるのだが、先ほどからのマイナス思考
によりそこまでルイズは気が回らない。
(なんでこんな場所に? 留年や退学を言い渡すのにわざわざこんな場所で……)
そう思うルイズを時間も展開もコルベール(禿げ茶瓶)も待ってくれることは
なく。
「さあ、中へ」
軽くノックをした後、コルベールはドアを開けルイズを促した。
緊張により凝り固まっていたルイズは、一目で質が良いとわかる調度品が配置
された部屋の中、高級なソファーに傲慢不適に座る少女を見つけた。
「……え?」
銀の髪にフリルのついた服、その容姿は未発達であるが完成していると言う矛
盾を孕み、その横顔は微笑めば儚い花を咲かせるだろう。
だが、まさに偉そうに足と腕を組み、見るからに不機嫌そうに座りイライラと
指で組んだ腕を叩くその姿は、容姿を完全に裏切っている。
ルイズはその姿に見覚えがあった。
356魔導書が使い魔-02:2008/10/27(月) 11:34:39 ID:Ps7q5CSc
それもごく最近のことだ。
そう、自分が気を失う直前に……。
気を取られるルイズに気がつかず、コルベールは少女をルイズへ紹介する。
「彼女はミス・アル・アジフ。先ほどあなたが召喚した方です」
召喚……? ということは、あの時にことは……っ。
「ミス・ヴァリエール。ミス・アル・アジフに挨拶を」
一瞬思考の渦に入りそうになったルイズをコルベールが促し。
「は、はい。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ ド・ラ・ヴァリエールと
申します。その、ミス・アル・アジフ」
少女――アルはルイズにジロリと刺すような視線を向けると、ふんと鼻をなら
し言い放った。
「汝か。妾を無理やり呼び出した下郎は」
「――だっ」
余りにも見下したようなアル・アジフの言葉にルイズは。
「誰が下郎ですってっ!!」
当然のごとく憤慨した。
それを見てアルはこれもまた苛立たし気に言う。
「汝だ汝。汝以外にどこにいる小娘」
「こ、今度は言うに事欠いて小娘ですって! ちょっと訂正しなさいよ!」
「ええい。囀るな小娘、鬱陶しい」
「また言った! それをいうならあんただって十分小娘じゃない!」
「ふん、妾を汝のようなものと一緒にするな」
「なんですってぇ!」
「本当にこの小娘は五月蝿いな」
「わ、わたしより貧相な体付きしてるくせに小娘なんて言われたくないわよ!」
「なにぃ!」
「ふん、どうせその体を見て興奮して愛してくれる人なんて最低の下衆野郎
(ペドフィリア)だけでしょうねっ!」
その言葉にアルは立ち上がると、烈火のごとく怒りをあらわにする。
「な、汝ぇ! 少し(大いに)事実だがそこまで言うか! 起伏のない平地の
ような体の癖に!」
「あ、あんたよりは胸はあるわよっ!」
「ふぎぎぎぎっ!」
「むぐぐぐぐっ!」
そうして双方とも己のウィークポイントを抉りながらも牽制し攻撃し合ってい
く中。
「あー、こほんっ」
「なによカルデラのような胸のくせに!」
「だからそれは汝も同じであろう! 桃色頭脳め!」
「えー、ミス・ヴァリエール。ミス・アル・アジフ」
「桃色頭脳ですってぇっ! 他の暴言は許せても、今のは許せないわっ!!」
「なにかと人の体つきを指摘するような輩には十分だ!」
「ミス・ヴァリエール。ミス・アル・アジフ」
「この程度のことも許容できんとは所詮は浅き器よ!」
「言わせておけばっ!!」
2人の闘気は極限まで熱し反発し交じり合い高め合い。
「「こ、この――っ!」」
「――2人とも落ち着きなさいっ!!」
そんな空気をコルベールが断ち切った。
「なにをそんなに言い争いますか! 会話とは知性ある我々が操る高度なコミ
ュニケーションです! 少なくともそんな不毛かつ低レベルな言い争いをする
ために発達したものではありません!」
そう言い、たじろぐルイズへ向き直り。
「ミス・ヴァリエール!」
「は、はい!」
357魔導書が使い魔-02:2008/10/27(月) 11:35:10 ID:Ps7q5CSc
「あなたも貴族であるのならば容易く挑発に乗ってはいけません。今はわから
ないかもしれませんが、本来あなたの肩には領民の命が乗っているのです。貴
族であるあなたの一言一言はその命を左右することとなりましょう。一時の感
情に振り回されるのはいけません」
「……はい、ミスタ・コルベール」
ずーんと肩を落とすルイズ。
「あなたもですミス・アル・アジフ」
「なぬっ」
そしてルイズの様子を得意気に見ていたアルにもコルベールの説教は続く。
「なぜ、妾が攻められねばならぬ」
「そもあなたがミス・ヴァリエールを不用意に挑発しなければ言い争いに発展
しなかったのですから」
「ぐむっ」
「先ほども言いましたように、会話は知性ある我々が操る高度なコミュニケー
ション。知性あるからこそ我々は多くのことを伝え合い、共感し合い、感受し
合うことができるのです。会話とは相互理解、コミュニケーションとは歩み寄り、
それを怠ることはなりません。我々は争いを言葉によって解決できるです!」
そうして沈黙した2人にコルベールは一転して優しく言い放つ。
「さて、2人とも座ってください。我々は知性あるものとして話し合いをしたい
と思います。彼女も、あなたについて聞きたいことが多々あると思いますから」
アルは、ふんと鼻を鳴らすとドカリとソファーに座り直し、それに続くように
コルベールが向かい側に座り、隣にルイズを誘い。
「ではまず、こちらの状況からお話しましょう」
静かに口を開いた。

コルベールは春の使い魔の儀式、それによりアルが呼び出されたこと、あれほ
ど巨大かつ精緻なゴーレムを所有していることはそれ相応のメイジであること
はわかるが、契約の儀式は神聖であり、なによりもそれを優先しなければなら
ないことであった。そして同じ魔法使いならその重要性も理解してほしい、と
順序だてて説明した。
358名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 11:35:12 ID:5XUbuzv0
支援
359魔導書が使い魔-02:2008/10/27(月) 11:35:38 ID:Ps7q5CSc
話を聞き終わると。
「それで、その使い魔の契約とやらはうまくいったのか」
結果がわかっているとばかりに聞くアル。
ルイズもそれが気になるのかコルベールと自身の左手の間を視線が行き来する。
コルベールは薄くなっている頭を掻くと。
「ミス・ヴァリエール。少々失礼します」
躊躇なくその左手を取る。
「このように、なぜか使い魔に刻まれるはずのルーンが、なぜか彼女に刻まれ
てしまったのです」
晒されたルイズの左手の甲。そこには図形と文字が入り混じったかのような痣
があった。
「どうしてこうなったのかは、わから――」
「――当然の結果だな」
言葉を続けようとするコルベールに被せるようにアルは言い放つ。
「……当然の結果とは?」
怪訝になるルイズとコルベール。
それにアルはあっさりと言う。
「なんの準備もなく二重契約なんぞしようとして、弱い方が押し流されてしま
っただけだろう。まあ、実際はもっと複雑なのだがな」
ぽかんとあっけに取られるルイズとコルベール。
いち早くそれを脱したコルベールはアルへ問い詰める。
「そ、それではなにかの偶然か。契約を試みようとしていたあなたをミス・ヴ
ァリエールが呼び出してしまい、さらにミス・ヴァリエールがあなたに契約を
しようとしたことで二重の契約になってしまった、と?」
そうだとしたらなんたる偶然かつ悲劇。あまりの不運さに顔に指す影が濃くな
るルイズを他所に。
「それは違う。妾は使い魔なんぞ欲しない」
だがそれをアルは切って捨てる。
「そもお前たちの話の前提が間違っている」
「……なにが間違っているんですか?」
「妾は魔法使い(メイジ)などではない」
その言葉に沈黙する2人。だがルイズは耐え切れないというように立ち上がり。
「メイジじゃないんだったらなんでこんなことになったのよ!」
ルーンの掘り込まれた左手を掲げるが。
「落ち着け小娘。そもそも妾は人間ではない」
ルイズは目の前の少女の言葉で大いに混乱した。
この子はなんと言ったのだろう。メイジじゃない? 人間じゃない? なにを
言っている。メイジじゃなければこんな二重契約なんて話題にはならないだろ
うし。どう見ても目の前の少女は人間である。たしかに韻竜のような幻獣には
人に化けれる物もいるらしいが、先住魔法に契約なんて概念があるのかも怪しい。
脳内でグルグル回る思考はルイズを苛立たせ、その苛立ちは言葉にでる。
「じゃあ、あんたはなんなのよ!」
その言葉にアルは薄く笑い。
「よく聞け人間」
扉を閉めた密室に、どこからともなく風が吹いた。
「我は書にして外道、外道にして知識」
風は湿り冷たい空気を孕み、渦を巻く。
「我は外道の知識にしてその集大成」
360魔導書が使い魔-02:2008/10/27(月) 11:36:23 ID:Ps7q5CSc
その風の中心、アル・アジフの右半身が光り――バラけた。
「――っ!?」
バラけた部分は本のページとなって部屋中を駆け回り。
「我が名はアル・アジフ。 外道の知識を持って外道を駆逐する最強の魔導書也!」
驚愕する2人を倣岸不適な笑みを浮かべながらアルは言い放った。

その後のコルベールの興奮のしようは凄まじかった。持ち前の研究魂や知的好
奇心などを大いに刺激されたのかまるで機関銃のごとく数々の質問を浴びせア
ルとルイズを辟易させた。
しばらくは質問と自問と自己解釈のサイクルを繰り返していたコルベールだっ
たが、時間も立ち返答もない状態が続くと次第に冷静になったのか、2組の冷
たい視線に気がつくと取り繕うように咳をした。
「こほん……それでミス・アル・アジフ。あなたがメイジでも人間ではないこ
とはわかりました。それで、二重契約とはどういったことですか」
そう、問題の焦点はそこにあるのだが。
「本来なら我を所有するための契約がある。それは聖約と共に口付けを交わす
ことにより、我が知識と力を刻印するものなのだが」
アルは気難しそうな顔を浮かべ。
「そこに聖約も告げず無理矢理に契約を結ぼうとしたうえ、さらに流れる力に
抗って従僕の契約を流し込もうとした結果。そこの小娘はそのような状態にな
ったわけだ」
その言葉にコルベールはゆっくりと情報を整理して。
「つまりは、本来なら交わされるはずの使い魔の契約は、あなたの契約の力に
負け。ミス・ヴァリエールに跳ね返ってしまったということですか?」
恐る恐る言うコルベールにアルは偉そうに頷き。
「うむ、付け加えるなら。その使い魔の契約の力のせいで、妾の契約も不完全
となっているな」
「それは……契約を再びやり直すことはできないのですか? 先ほど言ったよ
うに、使い魔の儀式は我々メイジにとって神聖なものなので」
これを逃せばルイズの留年が決定する。コルベールは教師である。教師は公平
なものであるが、やはりその公平さも発揮するのは生徒だけである。
だが。
「契約をやり直すといってもな。このまま契約を上書きすればなにが起こるか
わからん」
ちらりとルイズのルーンを見ると。
「それに一見だが。我の契約と使い魔の契約は絡まり合い縺れ合っておる。
これを解すのは骨どころではない」
「――っ!」
それはルイズにとってやり直しの機会さえも与えられず、ほぼその先の未来を
閉ざすのと同意であった。
361魔導書が使い魔-02 代理:2008/10/27(月) 11:42:42 ID:5XUbuzv0
代理来てるんで行きます
でも投下するのは応援スレじゃなくて投下スレのが宜しいかと




「じゃあどうすんのよ! 契約が交わされてないなら、わたしは……わたしはっ」
ルイズは怒り心頭と立ち上がるが。
「騒ぐな小娘。契約は不完全だとは言ったが、誰も失敗だとは言っておらん」
「……へっ?」
アルは非常に不快そうに苦々しく顔を歪め。
「不意打ちであり、不用意ではあり、不本意ではあり、不完全ではあったものの
――契約はなされた」
「そ、それじゃあ……っ」
まるで我が事が信じられないと、ほうけたように聞くルイズ。
「ああ、汝は我が所有者となっておる」
それにアルははっきりと答えた。



「ふぎぎぎぎぎっ!!」
ルイズは上機嫌だった。
「むぐぐぐぐぐっ!!」
それはもう上機嫌だった。
「きしゃーーっ!!」
使い魔の召喚で巨大なゴーレムを呼び出し、それに乗っていた少女と契約をし
なぜか自分にルーンが刻まれて気絶。そして失敗したと思っていた契約は実は
(不完全だが)成功しており、契約した少女は意思があり人の姿を取れる1000
年の時を過ごした高位の魔導書であった。
「ふぅーーーっ!!」
そうルイズは、それはもうとても上機嫌“だった”のだ。
「ちょっとは言うこと聞きなさいよ! このバカい……バカ猫っ!」
威嚇しあっている2人。その1人、ルイズは怒りを顕に怒鳴った。
「なぜ童がそのようなことを聞かねばならん小娘!」
それに打てば響くように言い返すアル。
「使い魔はご主人様に絶対服従ってもんでしょうが!」
「だーれーがっ! 汝に絶対服従などしたか! 戯言もほどほどにしろ小娘!」
「なによ! わたしはあなたのご主人様よ!」
「童は汝を完全に主人とは認めてはおらぬわ!」
「なんですってー!」

時は遡ること数分前。

あれからコルベールの配慮により詳しい話はまた後日ということでルイズはア
ルを連れて部屋に戻っていた。かなりの時間を気絶していたのか、話が終わっ
た時にはすでに日は落ちていた。
朝の召喚のせいか体はくたくたであったが、ルイズの心は高揚し眠気はあまり
ない。
ベッドに腰掛けたルイズは改めて目の前に立つアルを見る。
長くまるで銀で織られたような髪、白く純白という言葉をそのまま表したよう
な肌、まるで人の魅入る美を神の采配で組み立てたような容姿。
362魔導書が使い魔-02 代理:2008/10/27(月) 11:43:31 ID:5XUbuzv0
たしかにそれは人ではないと言われると、納得するしかない美しさではあった。
それが、自分の使い魔となったのだ。
胸を占める興奮を隠し。物珍しいのか、ただたんにこれからの寝床を隠してい
るのかキョロキョロと部屋を観察しているアルにルイズは話しかける。
「さて、これからあなたに使い魔としてやってもらうことを言うわ」
「童は厳密には使い魔ではないのだが。まあよい」
偉そうに胸を張るその姿はそこはかとなくムカつくが、それを一々気にしてい
てはしかたがない。ここは聞き流すことにした。
ルイズは少し成長した自分の大人な態度に満足しながら言う。
「まず使い魔は主人の目となり、耳となる能力を与えられるわ」
「感覚の共有というやつか」
「そういうこと」
そう聞くと何度かルイズが集中するように、うんうん唸るが。
「ふむ、童には見えんし聞こえんし。どうせ汝も同じであろう」
「そのようね……」
そこは契約が不完全ということで予想はしていた。だが、それぐらいでは諦め
ない。
「それから、使い魔は主人の望むものを見つけてくるのよ。例えば秘薬とかね」
アルは少し考えるようにし。
「ふむ、秘薬か。それなら見つけることは出来ずとも多少の製薬法なら童の記
述にあるが」
ルイズはそれに早々に興味を持った。
「へえ……例えばどんなの」
「例を挙げるならば――」
語られること数十秒後、ルイズは聞いたことを後悔する。
「ひ、秘薬のほうはいいわ」
勤めて平静を装い言うが、内心は秘薬の原材料に対して大いに引いていた。
(200年以上前の遺体とか一匙で100人を死に至らしめる草なんて触りたくない
わよ!)
材料はどうかと思うが、決して手に入らない物でもない。作りたい……という
か触りたくはないがそこらへんは中々優秀と言える。
そして一番重要なことをルイズは語る。
「それで、これが一番なんだけど。使い魔は、主人を護る存在であるのよ!
その能力で、主人を敵から護るのが一番の役目!」
そう、多少小憎たらしいが目の前の少女は1000年の時を経た魔導書なのだ。
自分を護るぐらいの力は十分すぎるほど備えているのだろう。
363魔導書が使い魔-02 代理:2008/10/27(月) 11:44:11 ID:5XUbuzv0
そう思い、言ったルイズだが。アルの反応は思いのほか冷淡であった。
「汝、なにか忘れておらぬか?」
「な、なによ」
「童の本質は書にして、外道魔導の知識。所有者がいるからこそその力を発揮
する」
突然始まった講義にわけがわからず困惑する。
「そ、それがどうしたのよ!」
戸惑うルイズにアルは深くため息をつき。
「世界のどこに書を戦わせる所有者がいるのだ」
「あ」
「いいか小娘。童たち魔導書は所有者に人外の力と魔術と与え、戦う力を“与
える”ものなるぞ。そこら辺を履き違えておらぬか?」
アルはジト目で見た。
「う、うるさいわね!」
ルイズはそっぽを向いた
向いた先には窓から覗く二つの月。
もうかなり高い位置にあるそれは、自然とルイズの眠気を誘った。
後ろのほうでアルが呟く。
「いい月だ。このような夜は怪異さえも寝静まろう」
実際アルは二つの月には関心したが、様々な――それこそ人知の想像を軽く超
越した宇宙の数々を知っているゆえ、二つ月があるぐらいでは驚くに値しない。
「まあ、いい月ね」
ルイズは怪異とはなにかわからないが気にしないことにした。
そしてままベッドに横になる前に、ルイズはしなければいけないことを思い出す。
ベッドの上でゴソゴソと動き出すルイズに、アルがなにかと目を向けたとき。
「これ、明日洗濯しておいて」
パサ……、と頭上になにか布が複数かけられた。
「なっ!?」
頭にかけられた物を手にとってみる。白いパンティとフリルのついたキャミソ
ール、ただそれだけである。
「な、なななななな……なっ」
頬が、顔が高揚する。無論それは羞恥や性的興奮などではなく、屈辱と怒りを
絶妙にブレンドしたものであった。
声は自然と低く重くなっていく。
「汝……一つ聞くが。この下着を童にどうさせたいと申した?」
それにルイズは気がつかず。
「言ったでしょう、明日洗濯しておいてって」
「――ふっ」 
364魔導書が使い魔-02 代理:2008/10/27(月) 11:45:18 ID:5XUbuzv0
あっさりと言われる言葉に。
「そんな戯言を申すかこの小娘ぇっ!!」
最強の魔導書アル・アジフはパンティとキャミソールを床に叩きつけて吼えた。

「はぁ……っはぁ……っはぁ……っ」
「ぜは……っぜは……っぜは……っ」
そうして今に至る。
数十分の間、互いの罵詈雑言を駆使して言い争ってきたが、さすがに2人とも
疲れていた。
「い、いいから。明日……それを洗濯……しときなさい……よ」
最後にそう言うと、ルイズはベッドに倒れるようにして寝転がった。
体には朝の召喚や晩の驚きをはるかに凌ぐ疲れが溜まっている。
そうして疲れに身を任すルイズの背後から。
「ふっふっふ……この小娘よくまあ、童を侮辱してくれよる。下々の世話など
……こやつで十分だ!」
そんな声の後、不気味な呟きとなぜか粘着質の音が聞こえたが。それ以上争う
気力もなく、ルイズは目を閉じる。
眠りにつく間際、アルの寝床をどうするか決めてないことに気がついたが、
ルイズは夢の淵へあっけなく落ちた。
365名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 11:45:58 ID:IWtKCgmK
支援
366名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 11:49:28 ID:72t9MKNY
てけり・り支援
367魔導書が使い魔-02 代理:2008/10/27(月) 11:49:35 ID:5XUbuzv0
ここまでです。遅筆だった上。今回は規制にもかかってしまいすいませんでした。
次回はもっと早くできれば……いいなぁ……。

ここまで代理

魔導書の人乙でした
>粘着質の音
ダンセイニですね、わかります
某探偵一家ではあのショゴスが一番人格出来てるように思えてならない
368名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 12:03:04 ID:Hf1O9VHV
GJ!

>マンティコアに跨り無表情で睨む母カリーヌとギラギラと目を光らせる長女エレオノールが現れる。
あさりちゃんのOPが目に浮かんだ。
369名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 12:10:19 ID:3Ajkl/1k
一家に一匹欲しいね、ダンセイニ
370名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 12:20:25 ID:IEUZd5tR
遍在はオワニモで消せる気がする。
371名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 12:22:28 ID:caA5wT0g

専ブラ使いましょう、無駄にageる事が無くなります。
372名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 12:26:38 ID:ALyWHw+5
よっつくっついたら消えるのか?
373名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 12:52:06 ID:Z7nh+t89
>>367
探偵一家どころか、名前付ではあのゲームで一番じゃね?w
対抗馬は警官コンビくらいしか思いつかないぞww
374お前の使い魔 五話:2008/10/27(月) 15:20:21 ID:Q+M2N1+T
予約が無いなら、25分から五話投下しようかと思いまふ
375お前の使い魔 五話:2008/10/27(月) 15:25:18 ID:Q+M2N1+T
石ころが光る。
一瞬、もしかして成功したのかと希望を抱いた。
でも、その光は膨れ上がり、爆発の予兆を示す。
ああ、やっぱりわたしは『ゼロ』なんだ。
これでダネットにも愛想を尽かされる。
閃光と爆音が教室に響き、わたしとミセス・シェヴルーズは黒板に叩きつけられた。
痛みで顔をしかめるが、それよりも胸が痛かった。
立ち上がりはしたけれど、ダネットの方を見れない。
どんな顔をしていいかわからない。
そんな事を考えていると、生徒達が騒ぐ声の中に、どたばたという足音が聞こえ、わたしは肩を掴まれた。

「大丈夫ですかお前!」

顔を上げると、そこには顔と服をすすまみれにした心配そうな顔のダネットがいた。

「え?あ、うん。」

わたしがあっけに取られながらも返事をすると、ダネットは心底安心したような顔をした後、黒板に打ち付けられた衝撃で気絶してしまったミセス・シェヴルーズの方へ行き、外傷が無いか確かめだす。
ミセス・シェヴルーズは、どうやら気絶してしまっただけで、目立った外傷は無いと判断したらしいダネットは、またわたしの方へ来た後、わたしの頭をぺしんとはたいた。

「な、何すんのよ!」

驚いたわたしが文句を言うと、ダネットは眉を上げ、ボロボロになった教室と生徒達を指差し、一言「謝りなさい。」とだけ言った。

「い、嫌よ!何でわたしが謝んなくちゃいけないのよ!」

納得がいかなかったわたしがそう言うと、ダネットはまたわたしの頭をぺしんとはたいて、先ほどよりも強い口調でわたしを諭すかのように言った。

「お前は乳でかや太っちょや、そこで気絶してるおばさんや他の人達に迷惑をかけました。だから謝りなさい。」

太っちょとはマリコルヌの事だろうか?
だが今は、そんな事よりも、謝るという事に抵抗があった。
わたしは誇り高きヴァリエール家の三女。
そんな簡単に頭を下げていい訳が無い。
いつもなら「ちょっと失敗しちゃったわね。」とか言って済ます。
きっとそれが正しいのだ。
でも、そうしたらきっとダネットはわたしを許さないだろう。
何となくわかった。だから。
376お前の使い魔 五話:2008/10/27(月) 15:27:17 ID:Q+M2N1+T
「…………ごめんなさい。」

わたしは、教室の生徒の方を見て、小さな声で謝罪の言葉を口にした。
そんなわたしを見たダネットは、満面の笑顔になった後、自分もぺこりと生徒に頭を下げ「ごめんなさい。」と言った。
それを見て呆気に取られた生徒達は、いつもならわたしを責める言葉を言うための口をぽかんと開け、ばつが悪そうにしぶしぶ納得する仕草を取る。
そしてわたしが、隣のダネットをちらりと見ると、彼女はとても嬉しそうな顔をしていた。

あれから、気絶したミセス・シェヴルーズを医務室に運んだ後、わたしとダネットは教室の片付けを命じられた。
掃除の間、魔法は禁止というのは、片付けを命じた教師の皮肉だろうか?
ダネットは文句一つ言う事無く片付けを手伝い、わたしも机を拭いたり、軽いものを運んだりする。
ダネットは簡単そうにひょいひょいと重いガレキや机を運ぶ。
あの細い身体のどこにそんな筋肉が詰まってるのだろうか?と不思議になるぐらいだ。
片付けの間、わたし達は簡単なやり取り以外、口にしなかった。
というか、わたし自身が話すのを拒絶していた。
だって、結局魔法は失敗してしまい、わたしがダメメイジだとダネットに知られてしまったから。
爆発の直後はわたしの身を案じてはくれたが、あれから時間も経ち、落ち着いた今は考えもまとまっているだろう。
嫌だ。初めて成功魔法の結果である使い魔にまで、自分を拒絶されたくない。
そんな事を考え、自然と俯いていたわたしに、ダネットが話しかけてきた。

「お前、あの爆発ですが」

来た。とうとう来た。
どうしようどうしようどうしよう。
でも、いくら考えてもいい返事が思いつかない。
どうしていいかわからず、無言のままのわたしに、ダネットは言葉を続けた。

「凄い術ですね!お前、やるじゃないですか!見直しました!」

は?何を言ってるんだこいつは?
凄い?何が?見直す?何を?誰を?
なる程、こういう回りくどい嫌がらせをする奴なんだこいつは。
そしてわたしを笑うんだ。『ゼロ』だと。
わたしの中に怒りが渦巻き、ダネットにぶつけようと顔を上げる。
キラキラした目がわたしを見ていた。
ダネットは馬鹿になんかしていなかった。
心底、驚いて、感心して、尊敬してる目だった。
377お前の使い魔 五話:2008/10/27(月) 15:29:10 ID:Q+M2N1+T
「あれはどうやるんですか?他の術師も同じ事をできるんですか?あ、それとお前は焔術師では無いのですね。という事は、お前もレナ様みたいな凄い術師ですか?」

ダネットの口から次々に飛び出す質問にどう答えていいかわからず、取り合えず判るところだけ返す。

「あ、あれはただの失敗魔法よ。わたしだけ…わたしだけが爆発するの。どんな魔法を使ってもね…」

それを聞いたダネットは、目を丸くする。

「失敗であれですか!?じゃあ成功したら、もっと凄い事ができるんですね!!お前、本当に凄い術師なんですね!!」

どうして彼女は、わたしが今まで聞いたことの無い言葉ばかり口にするのだろう。
そこには悲観的なものなんて一つも無く、希望や幸せといったものばかりが見える。
それはとても眩しい。わたしには耐えられないぐらいに。
だからわたしは、悲観的な言葉を返す。

「凄くないわよ…。わたしの二つ名、『ゼロ』っていうの。どんな魔法を使っても爆発しちゃう。だから『ゼロ』。ゼロのルイズなのよ。」

その言葉を聞いたダネットは、指を頬に当てて首を傾げ、またわたしが予想してなかった返事をする。

「それ間違ってますよ。」

どうして彼女はこうなんだろう?
次にどんな言葉を返してくれるのだろう?
それが知りたくて、言葉の続きを促す。

「『ゼロ』っていうのは、何も無いってことですよね?でも、お前は術で爆発させる事ができます。さっきお前は、お前だけが術で爆発を起こすと言いました。それは、お前しかできない術ということでしょう?」

それから、更に言葉を続ける。

「第一、お前は私を召喚しました。しかも支配無しにです。これは凄い術なのです。召喚と爆発。ほら、お前は『ゼロ』じゃありません。えっと…にのルイなんとか?つー?うー…何か変ですね…何かいい呼び方は……」

そう言って、「うー…」と唸りながら必死にわたしの二つ名を考え出す。
その様子が可笑しくて…嬉しくて、わたしは笑う。

「あ!お前!今、笑いましたね!?上等です!私が凄い呼び名を考えてやるのです!首を洗って待ってなさい!!」

そしてまた「うー……」と唸って考え込む。
そんなダネットを見てわたしはまた笑い、笑われた彼女はぷりぷりと怒るのだった。
378名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 15:30:37 ID:nu05LEKK
殺・神・支・援
379お前の使い魔 五話:2008/10/27(月) 15:31:17 ID:Q+M2N1+T
教室の片付けも終わり、昼食の時間になったので、わたしとダネットは食堂に向かった。
食堂の前でダネットと別れ、一人で席に向かう。
朝の一件で、ダネットの食事はメイドやコックといった使用人と同じ場所で行うという事になっていたからだ。
始祖ブリミルへの祈りをし、豪勢な昼食を口にする。
料理はどれも素晴らしく、わたしのお腹を満たしていく。
でも何故か物足りない。
一人で取る、静かな食事は今までと同じはず。
寂しくなんか無い。うん。大丈夫。
そんな感じで食事を終え、食後の紅茶を口にする。
確か、今日のデザートはケーキだったかしら?

「お前!このケーキ美味しいですよ!!」

そうそう。今日のケーキは、前に食べた時も確かに美味し……って!!

「ちょっとダネット!あんた何やってんのよ!!」
「へ?ケーキを運んでるんですよ?変ですか?」

確かにケーキを運んでる。それは変じゃない。
しかし、それは使い魔の仕事じゃないだろう。

「何であんたがケーキの配膳なんかやってんのよ!」
「はいぜん?運ぶことですか?えっと、ご飯を食べさせてもらったお礼に手伝ってるのです。」

そして、笑顔で配膳を続けようとする。
いや待て。待たんかこのダメット。
食事が終わったら、速やかにご主人様の元に戻ってくるのが使い魔ってもんでしょう。
まあ、ご飯のお礼にっていうのはダネットらしいと言えばらしいけど…何か気に入らない。
なので、わたしがダネットを連れ戻そうと席を立つ直前、見知らぬメイドが声をかけてきた。

「あの…ミス・ヴァリエール、よろしいでしょうか?」

それは、黒髪のメイドだった。
そう言えば、何度か見かけた事があるような気がする。

「誰よあんた。」

わたしの問いに、慌てた様子で答えるメイド。

「あ、失礼しました!私はメイドのシエスタと申します。」

そしてペコリと頭を下げた後、言葉を続けた。

「その、ミス・ヴァリエール。差し出がましい事とは思いますが、ダネット様の配膳を続けさせてはもらえないでしょうか?」
「はあ?何でよ?何であんたがそんなお願いなんてするのよ?」
380お前の使い魔 五話:2008/10/27(月) 15:32:59 ID:Q+M2N1+T
怒気混じりのわたしの言葉に、ビクっとしながらも、シエスタは答える。

「それは…ダネット様、何やら皆さんに迷惑をかけてしまったから、そのお詫びにと……」

迷惑?お詫び?何の事だろう?
今日といえば、朝、食事をして、その後は授業で……。

「あ」
「ミス・ヴァリエール?」

シエスタとかいうメイドの言葉も頭に入らない。
迷惑…それはきっと、さっきのわたしがやった教室爆破の事。
わたしが掛けた迷惑を、ダネットは少しでも詫びようとしているのか。

「そんな事聞いちゃったら、止めるわけにいかないじゃない……」

シエスタはそれを聞いて満足したのか、「では、仕事に戻ります。」と言って去っていった。
ダネットの方を見ると、今も笑顔でケーキを配って回っていた。
全く、普段はダメダメなのに、何でこういう所だけはしっかりしているんだろう。
いつの間にかわたしの頬は緩み、笑顔になっていた。
ふふ、楽しそう。あら?何かを拾ったみたいね。
それを誰かに…あれはギーシュかしら?ん?あれはモンモランシーと、一年生の女子?何か……揉めてる?
おお、ギーシュがぶっ飛ばされて……ダネットとギーシュが言い合いしてる!!
やばい!!止めなきゃ!!
しかし、わたしの考えもむなしく、食堂にギーシュとダネットの声が響き渡り、その内容を聞いたわたしは机に突っ伏した。

「け……決闘だ!!」
「上等ですキザ男!!首根っこへし折ってやります!!」

381お前の使い魔 五話:2008/10/27(月) 15:34:20 ID:Q+M2N1+T
以上で五話終了
まとめてくれてる人、意見をくれた人、感想を言ってくれる人にこの場を借りてお礼を

それでは
382お前の使い魔 五話:2008/10/27(月) 15:35:56 ID:Q+M2N1+T
書き忘れ
当然ながら支援をくれた人にも感謝

ではでは
383名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 15:56:56 ID:URs0QnFJ

新しく登場するキャラをダネットがなんて呼ぶか結構楽しみにしてるw
384名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 15:57:51 ID:nu05LEKK
お前の人、乙でした。

一対七はかなり不利ですね。(一部屋九人的な意味で)
これは究極絶命拳を使わざるをえない!
385名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 16:01:00 ID:iHWxV1Fe
ダメット乙です。
確かクリア後の召喚だよな…成仏しろよギーシュww
次回にwktk
386名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 16:38:17 ID:qlchZ4Ke
わらわって変換しても童しか出ないけど
妾みたいな字じゃなかったっけか?
387名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 16:39:09 ID:qlchZ4Ke
リロミスで一瞬割り込んだかと思って血の気が引いた
ダネットさの人お疲れさまー
388名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 17:41:23 ID:qzJaxcLv
ダメット強いの?
弱いイメージしか浮かばない・・・
389名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 18:00:49 ID:saEBMxwm
ダネット強いよ萌え的な意味で
390名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 18:20:01 ID:6nZ9o7fZ
公式サイトでイラスト見たけど小説のキャラと違和感無くて良い感じ。
元ネタ知らない人は覗いてみたほうがいいかも。読み込みの度に癒されるし。
391名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 18:53:12 ID:Dk7wjoYD
ソウルクレイドルってゲームはおもしろいの?
お前の使い魔が面白いから気になったんだけど
392:名無しさん@お腹いっぱい:2008/10/27(月) 19:07:24 ID:qTR6UTMk
サモンナイトクラフトソードの続きが早く見たいなぁ
393名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 19:14:25 ID:iHWxV1Fe
>>391

ディスガイアが好きならばおK
オススメは2周目以降の闇ルートw
394名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 20:06:02 ID:mK9KdP06
お前の人投下乙です。
原作は全く知らないけれど、何か物凄く良い娘に思えるのですがダネット。
395名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 20:12:52 ID:937OZEzu
>>381
ダメだ。ダネットみたいな子はすんごく良いぜ。
そんな訳で調べてみたが公式のロード画面この娘じゃねーか!

自分もキャラクターをらしく動かす為に頑張らないとなぁ
お疲れ様でした。次の投下も頑張って下さいです。
396名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 20:51:33 ID:i+sSB5+D
みんな裏ルートいい、裏ルートいいっていうけど表ルートもED曲直前のダネットとのやり取りで目から汗かくぞ!
まあ、裏ルートヒロインは間違いなくダネットなんだけどさ。

>>391
初代ディスガイアは面倒で駄目だった自分も楽しめたよ>ソウルクレイドル
ベスト版でるしやっても損はないと思う。
ダネットは声もぴったりだし。
397名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 21:01:25 ID:saEBMxwm
ベスト版でるのか
買いなおそうかと思ったが少し待つかな
398狂蛇の使い魔:2008/10/27(月) 21:40:17 ID:GHOiDbVk
予約等なければ21:50くらいから投下したいです
399名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 21:41:15 ID:6nZ9o7fZ
>>396
日本一のゲームはディスガイアで躓いてから敬遠してたけど同じ状況の人が良いって言うのを聞くとやってみたくなる。
ベスト出るなら買ってみようかな
400名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 21:45:30 ID:fG5KZAvz
>>398
支援致します
401狂蛇の使い魔:2008/10/27(月) 21:51:23 ID:GHOiDbVk
では、投下します

第九話



フーケが破滅の箱を盗み去った、その翌日。

学院長室にて、目撃者であるルイズたち三人と教師一同、そして学院長のオスマンらによる臨時会議が行われた。
ルイズたちによる証言の後、フーケの居場所を突き止めたと途中から部屋に入ってきたロングビルの情報を元に、オスマンがフーケ討伐隊の結成を提言。

本来なら、教師たちが率先して名乗りを挙げるべきであった討伐隊。
しかし、相手が強力なメイジであることや事後処理などの責任問題で、誰も杖を上げようとしなかった。
その代わり、今度こそ周りを見返してやろうと燃えるルイズが真っ先に杖を上げた。
ルイズには負けられないとキュルケ、皆が心配とタバサの二人も杖を上げ、結局三人でフーケの討伐に向かうことになったのである。



「あー、ミス・ヴァリエール。君の使い魔を呼んできてはくれんかね。……少々話があるのでな」
会議も終わり、一人また一人と学院長室を出ていく中で、ルイズはオスマンに声をかけられた。
402狂蛇の使い魔:2008/10/27(月) 21:53:46 ID:GHOiDbVk
 
「オールド・オスマン。使い魔をお連れしました」
「……俺に何か用か?」
話がある、と聞かされた浅倉は、ルイズに連れられて学院長室にやってきた。
浅倉の無礼な態度を、ルイズが慌ててたしなめようとする。

「よいのじゃ、ミス・ヴァリエール。……ところで使い魔殿。突然で悪いが、破滅の箱について話があるのじゃ」
オスマンが学院長席で手を組み合わせながら、浅倉に尋ねた。
扉の横の壁に寄りかかり、腕と足を組んだ浅倉がそれに応える。
「破滅の箱……ああ、あのカードデッキのことか。それについては俺も聞きたいことがあったな」
ふむ、とオスマンが考える。
「それなら、わしの質問が終わった後で答えることにしよう。まずはあの箱について知ってることを教えてくれんか?」
「それならこいつに聞け。知ってることは全部こいつに話した」
浅倉がルイズの方を向き、再びオスマンに目線を戻す。

「えっ、私!?」
いきなり話をするようにと言われ反論しようとしたルイズであったが、逆らえそうにもないと分かると渋々と口を開いた。
403狂蛇の使い魔:2008/10/27(月) 21:56:11 ID:GHOiDbVk
 
ルイズが一通り話し終えると、オスマンは椅子にゆっくりともたれ掛かった。
「なるほどのう……。にわかには信じがたいが、信じる他なさそうじゃ」
ギーシュと浅倉の決闘の様子を思い出しながら、オスマンが言った。

「今度はこっちの質問に答えてもらおうか。……お前、どこであれを手に入れた?」
浅倉の質問に、オスマンは白髭を撫でながら答える。
「そうじゃのう。あれは数年前のことじゃ……」



オスマンが言うには、数年前、とある村に見慣れない格好をした男が倒れていたという。
男は既に死亡しており、村人らによって葬られた後、彼の持ち物は村人たちの手に渡ったらしい。
その内の一つが破滅の箱である。

見た目はただの奇妙な箱だが、この箱を手にした者は、どのような呪いなのかはわからないが、幾日かの間に忽然と姿を消してしまうというのである。
当初、男の持ち物を所持していた村人も消えてしまったという。
そのため、気味悪がった村人たちによって売り払われ、破滅の箱という名で取り引きされるようになったのである。

それ以来、秘宝という価値に惹かれた者、呪いの正体を暴こうとする者、興味半分に手を出す者などが後を絶たず、犠牲者は増えるばかりであった。
404名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 21:56:44 ID:Zy6tmuAl
よんでますよ、アザゼルさん から
あの三匹
405狂蛇の使い魔:2008/10/27(月) 21:58:12 ID:GHOiDbVk
 
オスマンもまた、呪いの原因を突き止めようとした者の一人であった。
最近になって闇市場に出回っているのを見つけたオスマンは、ようやくこの呪われた秘宝を手にすることができたというわけである。

「なるほどな。……そうだ、一ついいか?」
浅倉がオスマンに向かって尋ねた。
「なにかの?」
「あのデッキを俺によこせ。呪いでないことがわかったなら、もう必要ないだろう?」
そう言って、浅倉が口元に笑みを浮かべた。
「そうじゃのう……。フーケを捕らえられたなら、箱は好きにするがよかろう。扱いを知っている者なら、これ以上犠牲者を出さずに済むじゃろうて」
オスマンが軽く頷いた。

「話が分かる。で、用事というのはこれだけか?」
言いながら扉に向けて歩き出す浅倉を見て、オスマンが思い出したように言った。
「そうじゃ、もう一つ。君が毎日やっている決闘の相手に、もう少し休みを与えてやってはくれんか。このままだと死んでしまうからのう」
「……気が向いたらな」

オスマンに背中を向けると、浅倉は扉を開けて部屋を出ていった。
ルイズはオスマンに向かって一礼すると、慌ててその後を追うのであった。
406名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 22:00:39 ID:UoTFXftB
地球で一番危険な男か!
支援。
407狂蛇の使い魔:2008/10/27(月) 22:00:47 ID:GHOiDbVk
 
会議から一時間ほど後に学院を発った、ルイズたちと浅倉。
彼らはロングビルの案内のもと、フーケが逃げてきたという森へとやってきた。

「情報によると、あの小屋に『土くれ』のフーケが潜伏しているとのことです」
ロングビルが、少し離れたところにある古びた小屋を指さしながら言った。
草木に身を隠しながら、ルイズたちは作戦を練り始める。
「誰かが囮になって中のフーケを誘きだし、出てきたところを皆の魔法で叩く! これでいけるはずよ」
「でも、ルイズ。肝心の囮役はどうするのよ。もちろん言い出しっぺのあんたが……」
「わたしが行く」
挑発しようとするキュルケを遮り、タバサが名乗り出た。
「ケンカはだめ。作戦は調和が大事」

作戦会議が一段落したところで、ロングビルが「辺りの様子を見てきます」と言い残し、森の奥へと消えていった。
ルイズたちは作戦の準備に取りかかる。
「ところで、アサクラを見ないんだけど……どこにいったの?」
キュルケがルイズに尋ねた。
「そういえば姿が見えないわね。どこにいって……あっ! アサクラ!!」
いつの間にか小屋の前に立っている浅倉に向けて、ルイズが叫ぶ。
と同時に、小屋の扉が勢いよく蹴破られた。
408狂蛇の使い魔:2008/10/27(月) 22:03:34 ID:GHOiDbVk
 
「無人か……」
デルフリンガーを背負った浅倉が呟いた。

誰かがいたような後が見られるものの、最近使われていなかったのか、部屋の至るところが埃をかぶっている。
テーブルに目を向けると、盗まれたはずのカードデッキが置いてあった。
浅倉がデッキを手にとると、デルフリンガーがカチャカチャと喋りだした。
「相棒、どうやらこの状況は……」
「そのようだな」
浅倉が小屋を飛び出したのと、小屋の天井が吹き飛んだのはほぼ同時であった。



突如目の前に現れたゴーレムは、フーケがいるはずの小屋を破壊すると、ルイズたちがいる方向に向けて歩き出した。
キュルケとタバサが魔法で応戦するも全く歯がたたず、動きを止めることができないでいた。

浅倉は懐からルイズに借りている手鏡を取り出すと、デルフリンガー、盗まれたデッキとともに地面へ放り投げた。
そして自らの持つ蛇のデッキを鏡に向けると、右手を胸の前で前後させ、叫んだ。

「変身!」

ベルトにデッキを差し込み、ガラスの割れるような音とともに王蛇への変身が完了する。

王蛇はデルフリンガーを拾いあげると、鞘から刀身を抜き、巨大なゴーレムに向かって駆け出した。
409狂蛇の使い魔:2008/10/27(月) 22:06:04 ID:GHOiDbVk
 
「ウオオオオッ!!」
ゴーレムが反応するよりも早くその足元に近づくと、浅倉は土でできた右足をがむしゃらに斬りつけた。
二度、三度と斬りつけるうちに足が切断され、ゴーレムが態勢を崩す。
しかし、すぐにまわりの地面から土を吸収し、元の無傷な状態へと戻ってしまう。
左足や胴体でも結果は同じであった。
ゴーレムの攻撃は単調で避けることは容易いが、これでは一向に勝負がつかない。
「チィッ……イラつかせるっ……!!」



ルイズは焦っていた。
せっかく自分が提案した作戦も決行前にご破算。
魔法は危ないから使うなとキュルケに釘を刺され、現れたゴーレムに逃げ惑うことしかできないでいる。
これでは役立たずのままではないか。
(何か……何かできることはないの!?)
そう考えながら、ルイズは辺りを見回す。
ふと、浅倉に貸しっぱなしだった手鏡が目に入った。
そして、その傍らにあるのは……
(破滅の箱……?)
フーケに盗まれたはずの秘宝。
手にした者を破滅させるという呪われた品。
しかし、浅倉の言う通りならばこれを使って変身できるはず……。

(これなら私だって……私だって戦える!!)
思い立つやいなや、すぐにデッキを拾い上げると、鏡に向かってその白虎の紋章をかざし、叫んだ。

「変身!!」
410名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 22:07:26 ID:NGCAddPl
しえん
411狂蛇の使い魔:2008/10/27(月) 22:08:17 ID:GHOiDbVk
 
「あれは……破滅の箱!?」
タバサが呼び寄せたシルフィードに乗り、上空に避難していたキュルケがルイズの方を見て、叫んだ。
タバサも珍しく驚いた顔つきでルイズの方を見つめている。
ルイズが腰に巻かれたベルトに破滅の箱を差し込むと、ルイズの姿が一瞬にして青と銀の鎧に包まれた。
「近くへ寄って」
タバサはシルフィードに指示を出し、ルイズの元へと急ぐ。

「これが……破滅の箱の力……」
自身の姿が映った手鏡を覗き込むようにして見ながら、ルイズが呟いた。
その姿は、胸に青と銀の、肩に鋭い爪を模した装甲を纏い、顔は虎をイメージさせるような形の面を被っている。
両手を動かすと、チャキチャキと装甲が擦れる音がした。

「ルイズー!」
ルイズが鏡に見入っていると、上からキュルケの声が聞こえてきた。
振り返ると、シルフィードから降りたキュルケとタバサがこちらに向かって走ってきていた。
「ルイズ、この格好は……」
驚きの表情で尋ねるキュルケに、ルイズ―仮面ライダータイガ―は答えた。

「これはアサクラと同じ、『仮面ライダー』よ」
412名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 22:10:45 ID:NGCAddPl
クリスタルブレイク期待支援
413狂蛇の使い魔:2008/10/27(月) 22:10:45 ID:GHOiDbVk
以上です。いつも読んでくれてありがとうございます。
では、支援ありがとうございました!
414名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 22:12:52 ID:4w/8AtmQ
狂蛇の人、乙。

タイガかぁ……当たりと言うほど当たりでもないけど、ハズレと言うほどハズレでもないなぁ…。
でも蟹じゃなくてよかったね、ルイズ。
415名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 22:13:26 ID:NGCAddPl
貴族ってのはね、なろうとした瞬間に失格なのよおちゅ
416名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 22:16:03 ID:9jDGDyX3
狂蛇の人、乙でした。
仮面ライダーになる――なんという明確すぎる死亡フラグ。
417名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 22:16:25 ID:nu05LEKK
次回はルイズに破滅が訪れる訳ですね。わかります。
418名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 22:21:22 ID:7T34Dk8k
東條は車にはねられた後こっちに来たんかね。
虎はわりと契約者に忠実っぽいから当たりじゃないか?
419炎神戦隊ゴーオンジャー ◆955ynBBa1I :2008/10/27(月) 22:28:27 ID:6ARsdoUt
狂蛇の作者さん、お疲れ様でした。
よろしければ**:**頃にGP−08を投下したいのですが?
420炎神戦隊ゴーオンジャー ◆955ynBBa1I :2008/10/27(月) 22:29:13 ID:6ARsdoUt
すいません、時刻を入れ忘れてました。
今から投下してもいいですか?
421名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 22:31:48 ID:jh2b9wLk
進路クリア。
どうぞー
422炎神戦隊ゴーオンジャー@ ◆955ynBBa1I :2008/10/27(月) 22:32:12 ID:6ARsdoUt
次回予告
「ガンパードだ。秘宝『ルサールカの鎧』を狙うフーケ。阻止はできるか」
「ヒロインといっても、1人ではないんでおじゃろう?」
「GP−08 奇襲ツチクレ
 ――GO ON!!」
423名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 22:32:55 ID:GHOiDbVk
ありがとうございます
支援です
424炎神戦隊ゴーオンジャーA ◆955ynBBa1I :2008/10/27(月) 22:34:45 ID:6ARsdoUt
「炎神戦隊ゴーオンジャー BUNBUN!BANBAN!クロスオーBANG!!」

 モット伯邸を壊滅させ(シエスタを除いて)意気揚々と学院に帰還するルイズ達。
 しかしもうすぐ学院が見えてくるという時、突然蛮ドーマ機内に警報が響いた。
「な、何!?」
「む、あそこは確か宝物庫!」
 操縦するキタネイダスの言葉にルイズが宝物庫に視線を向けると、身長30メイル近い巨大な土人形が宝物庫の壁を殴りつけていた。
「ゴーレム!?」
 急加速して蛮ドーマをゴーレムに接近させたルイズ達は、呆然としつつもその様子を見守っていた。
 一撃で宝物庫の壁が崩壊し大穴が空いたかと思うと、ゴーレムの腕の上を人影のような何かが駆け抜け穴に飛び込んでいった。
「泥棒!?」
 聞こえないはずのシエスタの言葉に反応したかのように、ゴーレムは蛮ドーマめがけパンチを放ってきた。
「くらうぞよ!」
 蛮ドーマの砲撃でゴーレムの腕の一部が弾けたものの、即座にその傷が修復された。
「再生能力かよ……」
「少々分が悪いでおじゃるな……」
「ミス・ヴァリエール、相手が悪すぎます。ここは逃げましょう」
「蛮ドーマ、最大出力ぞよ!」
「駄目! それじゃ泥棒が逃げちゃう!」
「何言ってんだお嬢! あいつに勝てるわけねえだろうが!」
「メイジがいればそいつを狙えばいいが、中に入られては蛮ドーマの火力であいつの相手は無理なり」
「キタネイダスの言葉通りなり。あの大きさから見て、トライアングルかスクウェアクラスのメイジなり。蛮ドーマでは勝算が無いなり!」
 残念ながらヨゴシュタインの正論は仇になった。「トライアングルかスクウェア」の忠言は、ルイズの心を煽ってしまったのだ。
「トライアングルの土メイジって……、まさか『土くれのフーケ』?」
「そ、そうかもしれません……。そんな相手じゃ奇跡でも起きないと……」
「それならなおさら逃がすわけにはいかないわ!」
425炎神戦隊ゴーオンジャーC ◆955ynBBa1I :2008/10/27(月) 22:36:22 ID:6ARsdoUt
 ――GP−08 奇襲ツチクレ――

「相手に後ろを見せないのが貴族よ! 奇跡が起きなきゃ勝てないなら奇跡を起こして――」
「ルイズ」
 そんなルイズの言葉を遮ったのは、それまで沈黙していたケガレシアだった。
「ギーシュとの決闘の時やさっきのモット伯邸での時、奇跡が起こったと思うでおじゃるか?」
「えっ……?」
「自分とわらわ達を誇ろうとするルイズのため、シエスタを助け出すため、わらわ達は一丸となったでおじゃる。そんな結束の結果でおじゃる」
 脳裏に嬉々としてセンプウバンキを作ろうとしているキタネイダス達の姿、モット伯邸侵入の際巡回の衛兵を始末したデルフリンガー・イカリバンキの姿が浮かび、ルイズは思わず目を閉じた。
「ヒロインといっても、1人ではないんでおじゃろう?」
「……ケガレシア……。……わかったわ。起こらないから奇跡って言うのよね。だから全力を尽くすわよ」
「違うでおじゃる、ルイズ。奇跡は起こるでおじゃる。でも最高の奇跡は既に起きているでおじゃるよ」
「もう? 最高の奇跡が?」
「わらわ達がルイズに召喚されて使い魔になった。それが最高の奇跡でおじゃる! それ以上は……無いでおじゃるよ!」
「ええ!」
 ルイズの言葉に満足げな笑みを浮かべケガレシアは頷いた。そして砲撃でゴーレムへの牽制を続けるキタネイダスに、
「キタネイダス、シエスタを安全な場所まで頼むでおじゃる。わらわ達はフーケとかいうあのゴーレムを使っているメイジを追うでおじゃる」
「任せるぞよ」
「ケガレシア、行くわよ!」
「無論でおじゃる!」
 そう言い終えるが早いか、2人は蛮ドーマから飛び降りていった。
426名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 22:37:23 ID:T0ytA7r3
ヨゴシュタイン…支援です
427炎神戦隊ゴーオンジャーC ◆955ynBBa1I :2008/10/27(月) 22:38:43 ID:6ARsdoUt
「こいつが『ルサールカの鎧』かい」
 水晶にも似た透明で堅固な物質でできた箱の中から取り出した目的の物を抱え、フーケは呟いた。
 全体的に薄い赤銅色、どこの家の家紋なのか随所に渦巻き模様の紋章らしき意匠が施された鎧。手甲には盾と一体化した騎槍が握られていて、兜の支えらしい青い仮面は左半分に亀裂が入り端整な容貌を不気味な雰囲気に変えている。
 ワイバーンすら打ち倒す魔力とは、この鎧が装着者に与える魔力とはいったいどれほどなのだろうか。
(まあ、自分で使うよりは売った方が金になるだろうね)
 長居は無用とばかりフーケは入ってきた穴に向かった。外からは轟音が聞こえてくる。追っ手の動きが予想以上に早かったようだ。
「土くれのフーケ!!」
「観念するでおじゃる」
 穴から出たフーケの視線の先で大剣を手にした薄桃色の髪の少女と、鞭を構え銀色の部分鎧を纏った女性がゴーレムの腕の上に立ちはだかっていた。
 即座に2人を排除するための計算を脳内で開始する。
(宝物庫の中に戻って本来の出入口から脱出する……こんな騒ぎになってたらすぐ見つかる。却下)
(ゴーレムに腕を振らせて振り落とす……私も落ちるじゃないか。却下)
(ゴーレムを土に戻して生き埋めにする……だから私も生き埋めだろ。却下……待てよ)
 その時、フーケの頭に却下しかけた作戦の改良案が閃いた。
 即座に杖を振り、宝物庫の穴にかけているゴーレムの手首を石化させる。
「足場の確かさの差が戦力の決定的な差じゃない事を教えてあげるわ!」
「待つでおじゃる、ルイズ!」
 ゴーレムの腕の上を駆けてフーケに迫ろうとするルイズだったが、
「目障りだ、埋まれ!」
 その言葉と共に石化していた手首を除くゴーレム全体が土に還元された。ルイズは手首目指して咄嗟に跳躍したものの、わずかに及ばず腕を構成していた大量の土砂と共に落下していった。

「ああ! ちょっと、埋まっちゃったじゃない!」
 2人の様子を地上から見上げていたキュルケは冷や汗をかいた。
 これだけの騒動に彼女達が気付かなかったわけがない。魔法を使っても致命傷にならないならばフーケを狙うしかないと、シルフィードで上空を旋回していたのだ。
 ゴーレムの手に立つフーケらしい人影が積極的にルイズ達を狙っているようなのでその隙に、と思った途端に土砂の大量落下だ。
 ルイズ達が埋まったのを見て、フーケらしき人物は満足そうに頷き塔に開いた穴から飛び降りる。どうやらこのまま逃げるようだ。
「タバサ! 追いかけなきゃ!」
「……助けないと……」
「そうね……」
 タバサの指差した場所に視線を向けると、校舎の3階部分に届こうかという土の小山が見える。先程フーケのゴーレムが土に戻った場所、ルイズ・ケガレシアが埋まっているだろう場所。
 それを見てキュルケは額に手を当て溜め息を吐きつつ、恨めしげに逃走するフーケを睨みつける。
 学院の外壁を飛び越えフーケは姿を消した。
428炎神戦隊ゴーオンジャーD ◆955ynBBa1I :2008/10/27(月) 22:40:43 ID:6ARsdoUt
『「ルサールカの鎧」、確かに領収いたしました。 土くれのフーケ』
 夜も明けぬうちに、トリステイン魔法学院は蜂の巣をつついたような騒ぎになった。
 何しろ宝物庫に納められた「ルサールカの鎧」が盗まれたのだ。それもゴーレムで壁を破壊するという大胆不敵な方法で。
 口々好き勝手喚いて責任の擦り合いをしている教師達のもとに、ミス・ロングビルが近所の森をうろついていた不審者の情報を持ってきた。
「では捜索隊を結成する。我と思うものは杖を上げよ!」
 オスマンの宣言に呼応するかのように1本の杖が上がり、それに2本の長い杖と1本の鞭が続く。
 周囲の教師達の視線が4人の人物に注がれた。最初に杖を掲げたルイズ、そしてそれに続いたヨゴシュタイン・キタネイダス・ケガレシア。
「ミス・ヴァリエール、ミスタ・キタネイダス、ミス・ケガレシア、ミスタ・ヨゴシュタイン! あなた達は生徒とその使い魔ではありませんか! ここは教師に任せて……」
「その教師の誰が杖を掲げているんですか、ミセス・シュヴルーズ? そう言うのならあなたも同行しますか?」
「ふん、ヴァリエールには負けられませんわ」
「……心配……」
 負けじと杖を掲げるキュルケを見てタバサも杖を掲げた。さらにギーシュも、
「僕にも手伝わせてもらおう、ミスタ・ヨゴシュタイン。僕も決闘以来修行を積んでいるのでね。足手まといにならない程度の力は付けたと自負しているよ」
 オスマン・コルベールは不安を覚えた。
 強力な炎メイジのキュルケ・シュヴァリエのタバサ・そして何より「蛮機獣」という強力なゴーレムを作り出せるルイズの使い魔達……。戦力としてだけなら楽勝とはいかないまでも不安はほとんど無い。
 問題はそれ以外の部分……特にルイズの使い魔達だ。
 コルベールは魔法に依存しないでマジックアイテム同様の効果を発揮する道具を開発する技術(ヒューマンワールドにおいて「科学技術」と呼ばれている技術)に大きな関心を持っている。
 魔法に依存せずとも魔法と同じ力を得られれば、魔法を使えない多数の平民も魔法と同じ恩恵が得られると信じている。
 しかしそれも魔法同様使い方次第の単なる「力」であり「道具」、悪用・暴走によって大きな悲劇をもたらすものだという事も知っている。
 決闘の時3人が見せつけたのは、コルベールには求めてやまない異界の技術の暗黒面を見せつけられたように思えた。
(私の危惧が的中していたら、ミス・ヴァリエールは……)
 自身の使い魔とそれを召還した自身の力に恐怖のあまり心を閉ざす、それは重大な問題だがまだ最悪ではない。
 幼少の頃より魔法が使えない事に苦しんだだろうルイズが魔法によらない強大な力を得た事で、使い魔達と共に自分を苦しめてきた魔法と疎んじてきたメイジに復讐の牙を剥いたら……、
(私には彼女を止められるだろうか……?)
 実時間にして1分足らずの間にコルベールはこの先一生分と言えるほども考え抜き、
「……私も行きましょう。大人達は子供を守る、それが私の子供の頃も私の両親が子供の頃も変わらない常識です。子供達に戦わせて大人が後ろで高みの見物と決め込むなど、あってはなりません」
「よし、決まりだ。討伐隊はこの8名。ミス・ロングビル、案内役を」
「はい」
「今すぐ出発と行きたいがこの闇夜では不利じゃろう。夜明け頃に到着するように出発は3時間後じゃな。……よいか! わしが許可するのは『ルサールカの鎧』の奪回だけじゃ。無謀な行動はするのではないぞ。そして皆、必ず生きて帰ってきてくれ」
『杖にかけて』
429炎神戦隊ゴーオンジャー@ ◆955ynBBa1I :2008/10/27(月) 22:42:32 ID:6ARsdoUt
 以上投下終了です。
 当初サブタイトルを原作8話そのままの「最高ノキセキ」にしようかどうか悩みましたが、結局こちらに。
 次回はいよいよ巨大蛮機獣VSゴーレム、ご期待ください……と言える出来になるのか?
 なお、>>425で番号が1つ飛んでいるのは単なるナンバリングミスです。すいません。
430THE GUN OF ZERO 15 EVERYWHERE YOU GO(0/7) ◆2OPVuXHphE :2008/10/27(月) 22:47:16 ID:IqKLCcUd
ゴーオンジャー乙でした!

そっびえたぁつぅ目のまぁえのぉかぁべぇ〜

どうも、お絵かき掲示板に久保が書かれて有頂天な久保の書き手です。
『激励』+『祝福』+『応援』な気分です。全部まとめて『礼賛』とかいう新しい精神コマンドがあったら面白そうです。こんな馬鹿なこと考えるくらい舞い上がってます。

さて、役者をそろえるため、今回も新たな召喚キャラです。
サブタイでもう誰だか判るかも知れませんけど、実はちょっとだけ、違うんですよ?
どこがどう違うかは、見てのお楽しみって事で。
それでは、他にいらっしゃらないようでしたら22:55より参ります。
431名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 22:52:10 ID:QgL9GUY0
今日はおそろしく多いな
支援準備
432THE GUN OF ZERO 15 EVERYWHERE YOU GO(1/7) ◆2OPVuXHphE :2008/10/27(月) 22:55:19 ID:IqKLCcUd
 その日、クォヴレーはアルビオンに向かっていた。
 王党派の軍勢の様子を見るためである。流石にあそこまで肩入れしては、行く末が気になっていた。
 だが、その途中
「!?エネルギー反応!」
「あん?何だ、相棒?」
「近くで戦闘が発生している」
「そりゃ、今戦場に向かってる訳だからな」
「違う、『俺たちの』戦いだ」
 ディス・アストラナガンの進行方向を歪め、反応のある方角へ向かう。
 向かう先に爆光が見えた。
 Z・Oサイズをディス・アストラナガンに握らせ、更に近づく。
「! あれは!」
 20機近くのメギロートに囲まれた機体には、見覚えがあった。
「念動集中ぅ!リュウセイオリジナル!ナックルパァーンチッ!」
 森の中、飛び上がった人型ロボットが、手近なメギロートを叩き落とす。
「AR−1,いやR−1か!」
 数回程度だが、見たことのある機体だ。そしてそのパイロットは一人しか思い浮かばない。というか今全力で名乗った。
 ここまで接近してきて判ったのだが、R−1が立っているのはただの森ではない。開けた場所で、4軒ほどの家がある小さな小さな村だった。
 そしてそこで、R−1の後ろ。死角になっているところにメギロートが一機降り立ち、その村の住人だろうか。金髪の少女に迫っていた。
「切り裂けっ!そして打ち砕けっ!」
 瞬時にメギロートを分断し、念を入れてラアム・ショットライフルも至近で撃ち込む。
「大丈夫かっ!」
 外部音声出力を入れ呼びかけると、尻餅をついた少女はかくかくとしきりに頷いていた。そこへ緑色の髪をした女性が駆け寄り、引き起こして離れていく。
「新手か!?」
 振り返り様にG・リボルヴァーを向けてくるR−1の右腕を左手で軽く押しのけつつ、銃口をR−1のコクピットすぐ脇を通して、ライフルを一射。すぐそこに迫っていたメギロートを撃破した。
「味方だ」
 外部音声のままでそう呼びかける。
 するとR−1の右腕が動いてやはりディス・アストラナガンの後ろに迫っていたメギロートを打ち抜いていた。
「そりゃすまねぇ」
 そのまま互いに機体をくるりと回転させ、背中合わせになる。
「へへ、いいねぇこういうノリ!」
「村人は?」
「そこにいるのが全員だ」
 リュウセイの言葉に右下を見下ろす。先程の少女と女性の他は子供ばかりで10名ちょっと。
「下手に動けんな」
 ディス・アストラナガンには広範囲のディフレクト・シールドがあるとはいえ、それも広さには限界がある。
「いや、何か考えがあるみたいだけど?」
「なに?」
 尋ね返すクォヴレーの横で巨大な土のゴーレムが立ち上がった。頭頂高だけならディス・アストラナガンやR−1よりも大きい。
「メイジが居たのか……!」
 今まで出ていなかったと言うことは、クォヴレーは本当に戦闘が発生した直後に来たのかも知れなかった。
 そのゴーレムは、村の面々を守るように蹲る。
「成る程、これなら多少の破片は問題ないか」
「この世界の魔法って、こんな事まで出来るのか!んじゃ、心おきなく!おちちゃいなちゃ〜い!」
 残っていたメギロート達は、またたく間にラアム・ショットライフルとG・リボルヴァー、ブーステッド・ライフルで、駆逐されていった。
433THE GUN OF ZERO 15 EVERYWHERE YOU GO(2/7) ◆2OPVuXHphE :2008/10/27(月) 22:58:08 ID:IqKLCcUd
 戦闘で飛び散ったメギロートの破片のため、村の家々は全てある程度傷ついていたが、奇跡的に破壊された家は皆無だった。まぁ、最初クォヴレーが切り払ったメギロートを除いて、全てを村の外で打ち落としたという部分が大きいが。
 機体から降りたクォヴレーだが、そこへ積極的に近づこうとする者はあまり居なかった。やはり外見が悪魔であるディス・アストラナガンから降りてきたのが問題だろう。
 話しかけてきたのは、
「なんか敵っぽいデザインだなーって思ったけど、かっこいいなぁ。こう、ダークヒーローって言うの?名前は?……ディス、アストラナガン……なーんかどっかで聞いたことがあるような。あ、写真とって良い?」
 クォヴレーの許可を貰うと、機体のカメラで撮影するのだろう、R−1の方に戻っていったリュウセイと
「誰だか知らないけど、一応礼は……ってあんたは!?」
 クォヴレーの顔を見て驚く緑色の髪をした女性だった。
「……ようやく思い出した。確か、学院長秘書の、ロングビルだ」
 先程の戦闘中見かけてからずーっと気になっていた。
「何だ?相棒知ってんのか?」
「ああ。俺が使い魔になって間もなく、止めてしまったが、それまでに何度か見かけたことがある」
「な、何でこんな所に……!いや、あんたもあんなゴーレムを持ってたのかい!?」
 驚きに目を見開くロングビル。
「ああ。これは俺のアストラナガンだ」
 どうする?と思考を走らせるロングビル、もといマチルダ・オブ・サウスゴーダ。自分の『妹』のことがばれては厄介だ。何しろこの男は、ばりっばりの大貴族の使い魔なのだ。
 ……まぁ、平気でネビーイームの事をルイズに黙っているクォヴレーには、実に杞憂な心配だったのだが。少なくとも彼女にとっては大問題だ。
(とりあえず、まだテファの事は気づいてないはず……!このまま帰せば……!)
 子供達には、近づかないように言ってある。どうにかなるだろう。
「先程子供達を守っていたゴーレムは、そちらの出した物か?おかげで助かった」
「あ、ああ。まぁね。そっちこそ、あのリュウセイっての同じで、人が乗るゴーレムを持ってるんだねぇ……随分、その、怖い顔だけど」
 若干引きつりながら話を振る。実際、あんまりあの悪魔のような姿は夜闇の中では視界に入れたくはない。
「ところで、何しに来たんだい?」
「先程の戦闘を関知したので、助太刀に来ただけだ」
「そ、そうかい!ああ、おかげでみんな無事さ!何の礼も出来ないけど、ありがとうよ!」
 ついでにとっとと帰りやがれ!と内心叫ぶ。
「そうか、それは良かった」
「いやー」
 そこへ後頭部をかきながら現れるリュウセイ。
「こんな魔法の世界に連れてこられて、俺のスーパーロボットライフはどうなるんだって思ってたけど、捨てたモンじゃないなぁ」
 満面の笑みで微笑む。
「酷いなぁ。『マチルダさぁ〜ん!』ロボットなんか知らないって言ってたくせに、敵も味方もロボットばっかりじゃねぇか」
「そのおかしな呼び方止めろって言ってるだろ!?」
「いや、やっぱロボットオタクとして、例えリアル系だろうとその名前の人を見た以上やらない訳にはいかねぇよ」
 何故か妙に真面目な表情でうんうんと頷くリュウセイ。
 実に哀・戦士。
「連れてこられた……やはりお前も召喚されたのか」
「おう、ついさっきな。って、『も』ってことはそっちも?」
「ああ。一月と少し前になるか」
 こくりとうなずくクォヴレー。
「それと、先程言っていたことだが、彼女がロボットを知らないのも当然だ。理由は不明だが、ああいったロボット兵器が、この世界に入り込んでいる」
「んじゃつまり、ここはやっぱり本来は剣と魔法の世界な訳?」
「ああ……少々魔法の比重が大きいがな」
「そんでもって!つまり俺やお前ってのは、そういった本来存在しないロボットをどうにかするためにこの世界に呼ばれたのか!?燃える展開じゃねぇか!」
434名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 22:58:11 ID:ItyinfKf
支援
435THE GUN OF ZERO 15 EVERYWHERE YOU GO(3/7) ◆2OPVuXHphE :2008/10/27(月) 22:59:42 ID:IqKLCcUd
「……違うと思うが」
(というより、こいつ……本当にリュウセイか?)
 何というか、ノリが軽すぎる。そういや戦闘中もやけに軽い発言が目立っていた。『おちちゃいなちゃい』だの『こ、こいつ……弱すぎる』だの。
「すまないが、お前の名前はリュウセイ・ダテで合っているか?」
「あれ?俺、名前言ったっけ?」
 一応言っていたが、フルネームまでは口にしていない。
「極東支部SRXチーム少尉の?」
「あれ?何で知ってんの?」
 不思議そうな顔をするリュウセイと顔をしかめるクォヴレー。
 何というか、自分の知ってるリュウセイならば、ここまでプロフィールを言い当てられたら少しは不信感を抱くと思うのだが……。
(つまり、このリュウセイは俺の知っているリュウセイとは全く別の歴史を辿った世界のリュウセイ、ということか)
 いくつもの世界を回っていると、時たまこういう事がある。
 特に、流竜馬なんかは世界によってその人物像に差がありすぎる。
「おっかしいなぁ。あんな特徴的なロボット、一目見たら忘れないと思うんだけど……おたく、なんてーの?」
「俺の名はクォヴレー・ゴードン。いくつもの世界をまたぐ旅人で、今は使い魔をやりながら、先程のロボット部隊を追っている」
「いくつもの世界?あ、それで俺のことも知ってる訳か。平行世界の俺に会ったことがあるってことね。俺のことをちゃんと理解してくれる奴が居る、やっぱその辺はお約束だなぁ。
 ってことは……おお!異世界に呼び出された俺!そんでもって目の前には今後の行動を示してくれそうな先導キャラ!ついでに可愛い魔法使いのヒロインも居て、正にRPGの王道的展開!?」
「相棒、こいつが何言ってるか通訳してくれねえか?」
「悪いが俺にも半分も判らん」
 デルフリンガーの問いかけに首を横に振る。
「とりあえず、お前の居た世界がどの次元か特定出来れば、すぐにも送り返せるが」
「本当かい!?」
 何故か、これにはリュウセイよりもマチルダが反応する。なんというか、クォヴレーをとっとと帰す考えもどこかにすっ飛んでいる。
「あんた、こいつを送り返せるのかい!?」
「ああ。少々時間はかかるが……」
「え〜?やだやだぁ〜。せっかくこんな面白そうな世界に来れたのに、すぐにかえっちまうなんて、ありえねぇだろう?」
 逆にこちらも何故かごねるリュウセイ。あまりの反応に絶句するクォヴレー。
「冗ッ談じゃないよ!テファだって何を間違えてこんな男を召喚したんだか!とっとと帰ってくれ!」
「いいじゃねぇか。今の見ただろう?俺は強いぜ?ちゃんとティファも守るからさぁ。使い魔の契約、させてくれよ」
「使い魔の契約をどうやるか知っててよくそんなことが言えるね!?テファのファーストキスをお前みたいな男にやってたまるもんかい!」
 元学院長秘書と、戦友の平行世界同位体の口げんかをしばし絶句したまま眺めていたクォヴレーがようやく口を開く。
「……ライやアヤが心配するんじゃないか?」
「へっ!いいんだよ。いつもいつも人のこと馬鹿にしてさ。ここらでいっちょ、普段どれだけ俺が役に立ってるか思い知らせてやる。誰がオフェンス担当してると思ってんだ」
 呆れるほど仲が悪い。
(……このリュウセイの居る世界のSRXチームは、これで大丈夫なのか?)
 他二名も十分すぎるほど強烈なので中和されている。
「あの、姉さん、リュウと喧嘩しないで?」
 そこへ金髪の、やたら巨乳な少女が仲裁に入る。なお、クォヴレーから見れば少女のサイズも『まぁ大きい方か』である。
 しかし、と首をひねるクォヴレー。
 彼女の声でこのバストには些か違和感がある。こう、無限の開拓地のヘソ出しルック的意味で。
「テファ!?あっちでみんなと待ってろって言ったろ!?」
 先程から会話に出てくるテファだかティファだかは彼女のことらしい。
436THE GUN OF ZERO 15 EVERYWHERE YOU GO(4/7) ◆2OPVuXHphE :2008/10/27(月) 23:01:01 ID:IqKLCcUd
「ん?その耳は……」
「!?しまった!」
 慌ててロングビルが少女の頭を抱えるが、もう遅い。
「ああ、あの子が俺を召喚したティファニアってメイジなんだけど、ハーフエルフって奴なんだってさ。ほら、やっぱエルフと人間って仲が悪いのがお約束だろ?だからこんな風に隠れ村で暮らさなきゃならないんだって。嫌だよなぁ、イジメって」
 と、自身もつい先程教えられた、この隠れ村が隠れ村である理由をべらべらとしゃべり出すリュウセイ。最悪である。
「こんの馬鹿ーっ!」
「どわぁっ!」
 力一杯蹴っ飛ばされるリュウセイ。パイロットスーツを来ていても、物理的運動までは殺せず、倒れてしまう。そこへ容赦なくスタンピングを敢行するマチルダ。
「何、考えてんだい!?余所の人間にべらべらべらべら!」
「いててっ!大丈夫だってえ!あだ!俺と同じであいた!異世界から来た奴はったぁ〜!この世界の連中みたくいてっ!エルフだとかこだわんねえから!あいたたたた!」
「こいつがそうだからって、こいつの主はこの世界のメイジだろうがぁぁぁぁ!」
 まぁまぁと、今度はクォヴレーが止めに入る。
「話して都合が悪いなら別にルイズには言わない。それにリュウセイの言うとおり、俺は別段エルフに対して何ら含むところはない」
 クォヴレーとて、この世界に一月もいるしルイズの授業を聞いたりでエルフのこと、人間との確執も知っている。そして本日昼間に助けたマサキ・アンドーからもエルフの話を聞いていたところだ。
 それらから総合すれば、クォヴレーにとって人間がエルフを敵視するのも、エルフが人間を見下すのも、それぞれが白眼視すべきものと思える。
 バルシェムとしての自身の出自も、この考え方には無関係ではあるまい。クォヴレーもまた、人間のなかでは異質なのだ。
「そうだといいんだがねっ!?」
 蹴り疲れたのか、肩で息をしながらマチルダが怒鳴る。。
「うう……、アヤといい、緑がかった髪の女にはろくな奴がいないぜ……」
「しっかり聞こえてるんだよ!」
 再度踏みつけてくるロングビルの足を、体を回転させて避けるリュウセイ。
「はっ!」
「なにっ!?」
 そのままぽーんと反動を付けて立ち上がり、ぎゅっとティファニアの手を握る。
「ティファ」
「え?な、何?リュウ」
 真面目な顔のリュウセイに、とまどい気味に尋ねる。
「あのクォヴレーって奴の話によると、さっきみたいなロボット軍団が、この世界を征服しようとしているらしい」
 そんなことは欠片も言っていない。
「そうなの?」
「ああ。だから、君を守る意味でも、俺を君の使い魔にしてくれ!」
「い・い・加減にしろーっ!」
「がはっ!?」
「リュウ!?」
 ゴーレムがリュウセイを殴り飛ばす。
「やりすぎだわ!姉さん!」
「殺す気か!?死ぬぞ!ふつー!」
 助かったのはパイロットスーツのおかげである。
「何であれを喰らってぴんしゃんしてんだい!?アンタは!」
「殺す気満々かよ!?」
 それでもふらつく頭を抱えながら立ち上がる。
「リュウ、ここに居ちゃダメよ。あなた、姉さんに殺されちゃうわ」
 心底心配そうな顔をしながら美少女にそういわれるのは、本気で恐ろしいので勘弁して欲しい。
「んなこと言ったってさぁ。俺、ここを出たら行くところ無いんだぜ?」
「そっちの使い魔に、帰してもらえば良いだろう!?」
 ばい菌のように扱うマチルダ。まぁ、気持ちは判る。
「まぁ、無理矢理帰したりはしないが……俺と来るか?リュウセイ。一応食うに困らないくらいの働き口は口添えしてやるが」
437THE GUN OF ZERO 15 EVERYWHERE YOU GO(5/7) ◆2OPVuXHphE :2008/10/27(月) 23:02:27 ID:IqKLCcUd
「はぁ〜、やる気出ねぇなぁ……」
 ぐでーっとした態度をとるリュウセイに、本気でぶっ殺しそうな顔をしているマチルダ。心配げに姉とリュウセイを見比べるティファニア。
 これはいけない、とおもって頭をひねる。
「……俺と行くと、もう一機、かっこいいロボットが見られるぞ」
「やだなぁ、そういうことは早く言ってよ、久保くん」
 ガッと肩を組んでくるリュウセイ。
「クォヴレーだ」
 一応、訂正しておく。
「んじゃティファ、こんな面白い世界に呼び出してくれてありがとな?こっちの世界で悪者退治が終わって、元の世界に帰る時にはまた声かけるからよ」
「二度と来るな!」
 マチルダの心温まる一言を最後に、ディス・アストラナガンと、R−WINGに変形したR−1は東の空に飛び去っていった。
「まったく……!」
 忌々しげにマチルダは舌打ちをした。二度とあんな男に会いたくはない。
「しかし……こいつはまいいったねぇ……」
 二体のゴーレムが暴れ、巨大な虫共の破片が降り注ぎ、建物はともかく小さな畑は壊滅状態である。
 この村を放棄するのも止む無しか?実際、貴族の使い魔に見つかってしまってもいる。
「とにかくみんな!片づけるよ!」
 自身のゴーレムを小さく分割して、大きい破片の撤去に当たらせながら、言いつけ通りに一カ所に居た子供達に声をかける。
 はぁーい、とばらばらに返事を返しながら子供達が辺りに散る。
 そんな中でティファニアが一人、二体の飛んでいった夜空を見上げていた。
「リュウ……無事でいてね」
 ……大切にしてきたのは良いけど、ちょっとは世の中の男って物を教えといた方が良かったかなぁ?と今更ながらに後悔するマチルダ。
 とりあえず声をかけようとしたその時、森の方から人影が駆けてきた。
「! 何だい!?」
 とっさに手近なゴーレムの一体をそちらに向かわせる。
 頭全部を覆うヘルメットのような仮面を付けた人影はスライディングの要領でゴーレムの股下をくぐると、勢いを殺さずに再度立ち上がり、尚駆ける。行き先は
「テファ!逃げろ!」
「え?」
 マチルダの注意に、振り返る間もなく、その人物がティファニアを担ぎ上げる。
「きゃあ!?何!」
 速度が落ちることなくそのまま走り抜けようとする。
「待ちな、お前!」
 また手近なゴーレム一体を自分の近くに寄せ、その肩に乗って仮面を追う。その他のゴーレムも追撃に回す。
「嫌っ!姉さん!下ろして!下ろしてっ!あっ!?」
 小さく悲鳴を上げて、ティファニアの声が聞こえなくなった。殴られて気絶でもしたのだろうか。
「テファ!貴様ぁ!」
 森の中、ゴーレムを左右から先回りさせ、囲い込む。
 そこでスッとその仮面の男が懐から出したのは、杖だった。
「メイジ!?」
 現在自身を囲みつつあるゴーレムの一体、進行方向右側にいる物に向けると、なにやら呟く。と、風が吹いて水を飛ばし、土くれのゴーレムが泥になって流れ出す。
「水と風のラインメイジかい!?」
 慌ててそのゴーレムに修復を施すが、明らかにそちらの移動速度が鈍った。
「くぅ!させるかい!」
 一番手近な数体のゴーレムを組み合わせて、10メイルを越えるゴーレムを作り上げて自身もそちらに移る。歩幅が広がり、一気に距離を詰める。
「にがしゃしないよ!?」
 木々の間から、仮面の男が見えた瞬間、火の玉が飛来した。
「うわぁっ!?」
 ゴーレムの上でバランスを崩し、落っこちそうになったところで、ゴーレムの腕で自身を捕まえる。
438名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 23:03:01 ID:sAm4yMVq
SRXチームが結成したころのリュウセイかw 支援
439THE GUN OF ZERO 15 EVERYWHERE YOU GO(6/7) ◆2OPVuXHphE :2008/10/27(月) 23:04:05 ID:IqKLCcUd
「火!?そんな馬鹿な!?」
 今の魔法は火のドットクラス、ファイア・ボールの筈だ。だが、先程あの仮面の男は水と風で自身のゴーレムを泥にしようとしていたはずだ。
「あいつはいくつの系統が使えるんだい!?」
 火・水・風の三系統が扱えるメイジなど聞いたことがない。
 普通そのメイジにとって主軸となる系統があって、系統を増やしていく。他の系統を操る術を身につけたとしても、その主軸となる系統をメインとした組合せ魔法が定石だ。後から習得した系統は単体で使う場合にはずっと力が落ちてしまうためだ。
 だから、普通メイジはこんな系統の習得方法はしない。何か一つに絞るか、せいぜい二つの系統を組み合わせて駆使するのが最も効率が良い。
 実際、仮面の男が先程から駆使しているのもドットやラインクラスの魔法ばかりだ。
 なおも逃亡を止めぬ仮面の男に再び追いつこうとした時、今度はニードルの石が飛んで来た。
「土まで!?」
 4系統全てを扱う正体不明の仮面のメイジ。一体、何者だ?だが、そんなことは関係ない。
「何を考えてるんだかは知らないけどね!そんなむちゃくちゃな系統で、虚は突けても勝てはしないよ!」
 今回は先程のファイア・ボールもあったので、反撃には警戒していた。ニードルが飛んで来たくらいで驚きはしない。距離も開かれなかった。至近!
 スッとゴーレムの腕を伸ばし、捕まえようとしたところでくるりと仮面が振り返る。
「系統選択、火・水・風」
 そして口早にルーンを紡ぎ、
「フリーティック・エクスプロージョン!」
「何だって!?」
 仮面の向けた杖の先で、ゴーレムの右腕肘から先がふきとばされた。フリーティック・エクスプロージョン(phreatic explosion)即ち水蒸気爆発。
 水の系統で集めた水分を、火の系統で急激に熱する。これにより一瞬で水分が気化し、爆発が発生する。とはいえ、ラインレベルの術式では普通そこまでの反応は起きない。
 そこで風の系統で爆発の術者側を高圧の空気で覆い、指向性を持たせることで、ゴーレム側に爆風を集中させたのだ。
「系統選択、土・風」
 先程よりも短いルーン。砂埃が竜巻状に、一気にマチルダへ迫った。
「うわっ!目がぁっ!?貴様ぁ!」
 驚きに固まってしまっていたので反応が遅れた。
 ゴーレムの右腕修復に意識を向けながら必死に目に入った埃を払うが、目を開いた時には仮面の男、そして勿論ティファニアの姿も、無かった。それまで村を守ってくれていた森が、今はあの仮面の足取りを判らなくさせていた。

 村に戻ったマチルダに、半泣きの子供達が尋ねた。
「マチルダ姉ちゃん、テファ姉ちゃんは……?」
「テファ姉ちゃんはどうしたの?」
 血が出そうなほど唇を噛み締め、マチルダは子供達を出来るだけ抱き寄せる。
「……いいかい?テファはね、絶対にあたしが連れ帰るよ。だから、それまで、みんなで村を守っててくれ。出来るかい?」
「うん!」
「出来るよ!ちゃんと、村をやってく!」
 しきりに頷く子供達に、優しい笑顔でマチルダも頷き返す。
「よし……」
 もう一度ぎゅっと抱きしめると、マチルダは立ち上がって、歩き出した。拐かされた『妹』を、助けるために。
 ――もし、この場にクォヴレーが居れば、全力で彼女を止めるか、自分も付いていくと申し入れていただろう。クォヴレーなら、あの仮面が、かつてバルシェムと呼ばれていた自分が付けていた事もある仮面だと、気づいただろうから。
440名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 23:05:13 ID:YNMv8WZx
子供と話すときは裏声支援
441名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 23:05:50 ID:N6b8GscM
新スパのリュウセイか
442THE GUN OF ZERO 15 EVERYWHERE YOU GO(7/7) ◆2OPVuXHphE :2008/10/27(月) 23:06:20 ID:IqKLCcUd
おまけ ガンゼロにおける機体 対メイジ戦の考察 その3

REAL PERSONAL TROOPER TYPE-1(R−1)

防衛軍、連邦軍、呼称はいろいろあれども、ともかく地球軍の極東支部、SRX計画の下で開発された機体。
対異星人用であったり、対怪獣用であったりするが、基本的に同計画他二機との小隊連携、あるいは合体形体で真価を発揮する機体。
……その前提で判るが、単体のポテンシャルとして見ると味方三機中最低ランク。
しかも呪的な防御は皆無に等しい。パイロットの思念によって発動される念動フィールドならば、魔法を防ぐことも出来るが、ひとたびリュウセイが降りるとその脆弱さを露わにする。
物質的に形を持つ系統魔法による攻撃はまだ装甲で防ぐことが出来るが、『錬金』で装甲材質そのものを劣化されては手も足も出ない。
火力も乏しく、本来確実に敵にダメージが与えられるようにと装備されている実体弾のリボルバー、ライフルが完全に裏目に出ており、弾切れの危険性がある。

あんまりといえばあんまりな状況に、リュウセイの設定とは相反するが作者より天上天下念動破砕剣を贈らせてもらった。が、それでも割と焼け石に水の観が強い。
ゲーム中の数値的火力はともかく、設定的にはコスモ・ノヴァ、アイン・ソフ・オウルとくらぶるべくもない武器であるためだ。
一発しか撃てないコスモ・ノヴァやアイン・ソフ・オウルに比べて燃費が良いのは魅力ではあるが、サイバスターにはアカシック・バスターがあるし、ディス・アストラナガンはエネルギー切れの心配が殆ど無いため、やっぱり見劣りしてしまう。
まぁ対メイジ戦やハルケギニアの戦力を相手取るには、十分すぎる火力なのだが。生憎と今回の敵はそれに留まらない……


今回はここまで。
ちなみに、俺はこのリュウセイを書くため『だけ』に新スパを買いました。
馬鹿ですねー。頭悪いですねー。
……今絶賛プレイ中です。
リュウセイだけが「ティファ」と呼んでいるのは仕様です。きっと魔法の世界繋がりでロックハート辺りを想像してるんでしょう。胸とか。
謎の仮面メイジは半オリキャラなんですが、ラスボスのことを考えると、こういったキャラが居ないとどうしても不自然になってしまうんですよね。こいつの正体は4話ぐらい後でばらします。

あと、今回からトリップ付けました。
443名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 23:09:12 ID:oAnm8DLD
久保の人乙
新スパリュウセイとは懐かしすぎる。α以降だとかなり丸くなったからなぁ…。
444名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 23:09:59 ID:NGCAddPl
なんという投下ラッシュ
GJGJGJ
445名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 23:12:02 ID:QgL9GUY0

がんばれおマチさん
446名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 23:27:54 ID:4w/8AtmQ
久保の人乙。

…Zに友情+応援+祝福を合わせた「希望」って精神コマンドがあるのは秘密にしておきます。
447名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 23:29:38 ID:BxPWVlYr
乙、まあ新スパの同僚二人もリュウセイとどっこいとはいかないが素敵な性格だからなぁ

しかしR-1(この面子じゃあ)弱機体か
どっかの作品ではミニSRXといえる改造がされたR-1があったっけなぁ
448名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 23:33:15 ID:/7aSPlrn
ところで読んでて思ったんだが、ここまで行くとこのスレでやる必要なくね?
449名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 23:35:25 ID:hhGfcOQT
久保の人乙
誰が来るかと思ったら新スパリュウセイとかw
新スパはロード地獄だった記憶が…最近のは改善されまくってて嬉しい限り
ともあれ次回以降の展開も楽しみにしております
450名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 23:41:19 ID:p5jsO4u5
>>448このスレでやってはいけないっていうルールがあるわけじゃないんだし、召喚という条件を満たしてるんだから別にいいだろ。
第一そういうことばっか言ってると作者の人が減るぞ。
451THE GUN OF ZERO ◆2OPVuXHphE :2008/10/27(月) 23:49:19 ID:IqKLCcUd
>>448
はい。
いつかは来ると思っていました。そういう突っ込み。
『これじゃあただ単に間借りしてるだけのスパロボじゃねぇか』
ご指摘ごもっともです。
でも、何故このハルケギニアで戦いが起きねばならなかったのか?
何故、わざわざこの世界は箱庭なのか?
あと三話ぐらい後でちょっとだけ解説がでます。
最終決戦を前に残りも全部説明もするのでもうしばらくご辛抱下さい。
452名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 23:52:47 ID:4w/8AtmQ
という事は、そう遠くない内に終わるのか、THE GUN OF ZERO。
…まあ、ダラダラ続けて終わり時を見誤るよりはマシかも知れぬなぁ。
453名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 23:59:37 ID:vuSjmTwK
>>451
そう言う指摘が来るのが想像ついていたのなら、自発的に避難所に行くとかの
対処をあらかじめしておいた方が良かったと思うよ。
それだけでも随分変わってくる。
454名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 00:02:24 ID:iZgOc6kq
新スパのアヤといえばアムロに惚れてたな。
そしてリュウセイは竹尾ゼネラルカンパニーの事務の姉ちゃんにコナかけてたな。
ライってどんなダメなやつだっけ?あんまり印象ないな。
455名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 00:03:23 ID:LzRmgArP
>>453
十分原作イベント消化してるじゃん。
なにが不満なわけ?
456名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 00:05:02 ID:uk8BhzTg
ところでR-1はゾルオリハルコニウム製だったと思うんだが…
材質的にはオリハルコニウム製のサイバスターよりも物防はありそうなのにな。
457名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 00:05:54 ID:2yc8IdY1
>>454
ホモ疑惑かけられてた
458名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 00:06:40 ID:mU/0Dn1A
>>450
何を仰るうさぎさん
そういうルールはちゃんとあるよ

>・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです
459名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 00:06:50 ID:sgH4Er4C
>>456
ただのオリハルコニウムじゃね?ゾルは液状で剣に使ってたはず
460名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 00:07:47 ID:u7UqRueI
久保の人乙です

リュウセイってαやOGのアレで落ち着いてる方だったのか……
461名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 00:08:35 ID:EzN4+qk+
>>455
あんまり広げると毒吐き向けになりそうだから止めとけよ。
他の人も話を変えようとしてるんだしさ。
462名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 00:17:47 ID:DWORihbD
というよりは、毒吐きでやれって話だよね
463名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 00:18:09 ID:QLbn/Pqg
久保の人乙
毎度おもしれえぇぇぇぇ!
464名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 00:20:03 ID:EzN4+qk+
>>462
久保がどうかはさて置き、スレの趣旨と違うんだったら突っ込まれても仕方が無いんじゃね?
今回に関しては作者も「ご指摘ごもっともです」って言ってるし微妙な感じ。
465名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 00:21:36 ID:e2WvlwsS
>>460
OGのリュウセイとテンザンを足して2で割ったのが新スパロボのリュウセイと思っていい
つかテンザンはまんまリュウセイの負の部分がモデルだしな
466名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 00:23:23 ID:D5ZdWpPk
>>453
お前個人の基準なんて知らんて
467名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 00:27:32 ID:EzN4+qk+
作者の基準からして「ご指摘ごもっともです」だったわけだけどな。
468名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 00:28:43 ID:6hU8/XoX
久保の人乙!
新スパか懐かしいなあ
東方不敗が宇宙人だったり
ゴステロコアのデビルアクシズは出るわ
ラストでシャアは亡命するわ
色んな意味でキテタ作品だなあ

しかし、アストラナガンやサイバスターはともかくR-1はきちんとメンテしたり交換備品が無いとすぐに動かなくなるんじゃね?

メンテいらずのロボとしてレイアースの人に復活して欲しいが無理か…

しかしこの世界のロマリアの地下宝物庫は…?リュウセイ大喜びしそうな予感
469名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 00:29:04 ID:u7UqRueI
>>459
いちおう装甲もゾルオリハルコニウムだね
http://ja.wikipedia.org/wiki/SRX%E8%A8%88%E7%94%BB#.E6.A9.9F.E4.BD.93.E6.A6.82.E8.A6.81
αとOG設定だから、新のR-1とは違う設定の可能性が高いけど

>>465
なるほど、どうもありがとう
ゲーム感覚で戦争してるのか
470名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 00:32:59 ID:sgH4Er4C
>>469
αもだったか?無印のαだと合体制限の説明の時の会話でゾルついてなかった気がするが…
以降の作品で修正されたか?
471名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 00:33:45 ID:/cEXR/Fg
>>468
久保の人が只今絶賛プレー中らしいってのに、そんなネタバレ言っちゃって良いのか?
472名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 00:36:03 ID:mU/0Dn1A
クロスSS書くくらいスパロボが好きなら、その位の情報は流石に持ってるんじゃないか?
473名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 00:39:02 ID:/cEXR/Fg
それもそうだな
俺も新やったことないけどデビルアクシズを知ってたからな
474名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 00:41:18 ID:GCdBhMm6
このスレがそもそもスパロボ的
475名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 00:46:26 ID:2TxHPmyS
なんでスパロボ的やねん
いい加減スパロボ厨はうざいよ
476名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 00:47:23 ID:D5ZdWpPk
>>467
でも久保の人はハルケギニアでやる必然を用意しているから
見守ってみるのがベターだと思うがね
寧ろ「指摘ごもっともです」を盾にネチネチ突っ込み続けるのはどうかと思う
477名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 00:54:09 ID:EzN4+qk+
>>476
それは説明が入った今だから言えることじゃね?
「ご指摘ごもっともです」という考えなのに、15話まで何の説明も無しに続けていたのはどうかと思う。

>>453個人の基準は知らんってのは同意するけど、作者がそういう考えなら話は別じゃね?
478名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 00:54:36 ID:jHXldH7j
なんでみんなおとなしく読めないの?
479名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 00:57:57 ID:wvTCYvxM
ぼうやだかr
480名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 00:58:28 ID:EzN4+qk+
暴力は良くないと言われながら思いっきり殴られた気分
481名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 00:59:19 ID:fZGRfmuI
482名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 01:01:03 ID:l97eQcng
>>475
まあ、スパロボってのがそもそもクロス目当てのゲームだからな。
ゼロ魔とのいろんなクロスが目的のこのスレも確かにスパロボ的といえる。
483名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 01:01:43 ID:D5ZdWpPk
>>477
何にそこまで拘っているのかは今ひとつ判らないが、あなたの一連のレスを読み返して・・・

毒吐きスレに行くのが適当なのでは?
どうぞあそこでお気の済むまま作品と作者の批判をなさってください
484名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 01:02:57 ID:e2WvlwsS
久保の人、変なのに粘着されても気にしないで
作品投下して下さいね……
485名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 01:03:20 ID:fZGRfmuI
誰かこの場の雰囲気を変えるために投下を!!小ネタでもいいから!!
486名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 01:05:02 ID:4jBAs9W2
>>482
クロスでスパロボに直結するのが当たり前みたいな言い方するから批判されると思うんだけどな
スパロボ以外のクロスなんて幾らでもあるのに
487名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 01:05:11 ID:2TxHPmyS
ごちゃまぜの多重クロスは忌避されてるはずなんだがな
488名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 01:06:38 ID:EzN4+qk+
>>483
こっちの言い分には答えず、毒吐きに行けは無いわw
せめて>>477に答えてくれ。
489名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 01:06:46 ID:2TxHPmyS
まあ、
クロス=戦いの図式でシミュレーション的に戦力がどうの、とかしか考えない作品だったら
スパロボ的かもね
490名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 01:07:26 ID:B++UmuHW
俺はペドフィリアじゃない。でもアル可愛いよね。
491名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 01:09:29 ID:D5ZdWpPk
>>489
小ネタは別にして、クロスといえど結局描くのは人間ドラマなので
そこの匙加減でどう見えるかによるんじゃないかな
あとは個人の好みの問題がかなりのウェイトを占めると思う
492名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 01:09:46 ID:TkQd01ND
>>490
嘆かわしいな、レディ
493名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 01:10:09 ID:l97eQcng
>>490
なんでそうなるwww
でもアルが可愛いのは真理。
494ハルケギニアの撃墜王:2008/10/28(火) 01:10:52 ID:Fe0oY23i
他にいなければ15分より投下予定です。(初投下)

『ストライクウィッチーズ』より『ストライカーユニット(のみ)』を召喚。
495名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 01:11:51 ID:D5ZdWpPk
それをやる気か

支援
496名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 01:12:46 ID:jHXldH7j
>>488
むしろ雰囲気を悪くしてまでこだわる理由を知りたいね

作者がネタバレをする必要もないし、設定とか理由付けを全部本編外説明する必要なくね?
497名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 01:12:49 ID:l97eQcng
ルイズパンチラ支援
498名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 01:13:42 ID:e2WvlwsS
>>488
15話もたってからいちゃもんつける頭がどうかしていると思う

答えてやったから毒吐き行ってもう帰ってくんな
499ハルケギニアの撃墜王:2008/10/28(火) 01:18:00 ID:Fe0oY23i
―ハルケギニアの撃墜王― 

―Prologue FIRST STRIKE!―

 『ごろん、ごろん』
 
 そんな擬音で表されるべきか、召喚された物言わぬ2本の『筒』らしきものは勢い良く地に転がった。

 ここはハルキゲニア大陸に存在する王制国家トリステイン。

 王都トリスタニアより馬車で2日ほどの距離に在るトリステイン魔法学院は、
王国内部のみならず世界各国から公式非公式を問わずに魔法使いの卵―要する王侯貴族の子息達―が集う学び舎。
当然の如く設備も教育も高水準を誇り、卒業生達は世に出た後は各方面で活躍することを約束された身ばかり。
言うなればエリートの集団にも近く、在校生達も何れ劣らぬ優秀な生徒ばかり――の筈だった。

 が、少なくとも第2学年に所属する『ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール』
に対しては今のところ全く当て嵌まらない評価でもある。
 何せまともな魔法が唯の一つも使えないのだ。
座学では極めて優秀と云う評価を下されようとも、重要な実技が壊滅的ではかなり厳しい。

 魔法が使えるという事はある意味で貴族の象徴とも言える側面を持っており、
ルイズ自身もそれに近い認識であるが為に、幼い頃より貼られた不愉快なレッテルを剥がすべく努力は怠らない。
しかし、努力すれば必ず叶う程甘い現実が得られるでも無く、結果として劣等生の立場に甘んじている。

 そして常ならば出来ないなら出来ないで次があった。

 ただし今回は事情が大きく違う。
『使い魔召喚の儀式』と呼ばれる恒例行事は2年生になると誰しもが受ける一種の試練だが、
使われる魔法であるサモン・サーヴァントは然程難度の高くないコモン・スペルであり、
本来は召喚できるか否かを問うものでは無く、召喚した使い魔を以て生徒の適性を視る部分が強い。

 要するに通過して当然の試練であり、失敗は最悪で退学にすら繋がりかねないのだ。
 
 だからこそ少女は焦っていた。
 
500ハルケギニアの撃墜王:2008/10/28(火) 01:18:55 ID:Fe0oY23i
 焦りが本来の負けず嫌いな人格と混ざり合い、教師の日を改めるよう促す声も、
耳障りな同級生達の揶揄の言葉も無視し、プライドもかなぐり捨てて幾度も杖を握りしめて振り翳す。
 そうして失敗を繰り返した果てに、漸く現れた被召喚物は――淡くも期待していた竜やグリフォンのような
高等幻獣ではなく、ましてやどう見ても生物とすら呼べないような冷たい漆黒の金属筒だった。

「う、そ……」

 一瞬声を失ったその場に居た全員は、動揺が失せた直後に再び活気付き始めた。
 「ガラクタ」だの「ゴーレムの失敗作」だのと、無慈悲な揶揄と嘲笑が背後に控える生徒たちから発せられるが、
そんな下らない諸々は僅かな希望を粉々に砕かれ、地面に崩れて打ちひしがれる少女の耳には届かなかった。
 心中一杯に満ちる絶望感が、余計な雑音を完全に遮っていたのだ。

「ミス・ヴァリエール。……契約の口付けを」

 やや間を開けて耳に届いた男性の声に、ルイズは肩を小刻みに震わせた。

 声をかけた教師。やや寂しくなった頭頂部を抱えたコルベールという名の壮年の彼は、
少女に纏わり付く仄暗い感情をひしひしと痛い程に感じながらも、事実をはっきりと告げる他に無い現実を呪う。

「契約を。さぁ、起きて……起きなさい」

「先生……召喚のやり直しを、やり直しをさせてください!
 こんなの、こんなのあんまりです! 契約なんてこんな『物』と出来る筈がありません!」
 
「しかし、ミス・ヴァリエール。これは神聖な召喚の儀であり、如何なる場合もやり直しは出来ない規則ですぞ」

「そこをなんとかお願いします。おねがい、します……!」

「……駄目です、例外は認められません。さぁ、契約を」

「……」

 目の前の現実を拒絶し、悲痛な声を張り上げて再召喚の許しを懇願する少女と、
どこかバツ悪そうに顔を曇らせながらも、退くことの出来ない教師の言い争いは程無くして決着がついた。
 ついに逃げ道を失ったルイズは脱力し、俯きがちの面を上げると、
鳶色の瞳に陰鬱な影を映して鈍い所作で金属の傍に寄り、練習を繰り返した呪文を諳んじる。
 
501ハルケギニアの撃墜王:2008/10/28(火) 01:19:40 ID:Fe0oY23i
 コントラクト・サーヴァント。
 
 どこか上の空のまま、投げ遣り気味に金属筒の片方に口付けた。
詠唱が成功しているならば直ぐに対象には使い魔のルーンが刻み込まれ、契約が完了する筈だ。
 筈なのだが、幾ら待とうとも何の変化も訪れる気配が無い。
 
 口さがない生徒の一人が、また失敗かと早速囃し立てようと口を開いたその時だった。
 先程より身動きを止めてしまった少女の唇から苦悶の唸り声が零れ出し、
前髪が影を生む目元は痛みに歪められたかと思うと、数秒も経たぬ内に体がぐらりと傾きを見せて倒れ伏す。
 左手に生まれた熱い疼きと、体を貫かれたかのような鋭い痛みをはっきり知覚した彼女の精神は、
ストレスの蓄積と重なった苦痛に耐えきれず、容易に意識を手放してしまったのだ。
 
 「ミス・ヴァリエール……!?」
 
 ただならぬ気配を察し、素早く少女の許へと駆け寄る担任教師を茫然と見つめる生徒達。
 所詮は学生か。自分達の眼前で起きた事態がどこか異世界の出来事のようで、
平静を取り戻した誰かの声を発端に動揺が広がり始めるまでの間、皆が一様に言葉を忘れて棒立ちとなったまま。
 蒼い髪の小柄な少女を筆頭に、不安を滲ませながらも状況を見守るほんの極一部を除いては。

 
 数分か、数十分か判らないが、名を呼ぶ数名の声に誘われ目覚めた頃には既に混乱は大分収まりかけの状態。
 しかし、起きてみれば周囲に人だかりが出来ているこの状況を理解し切れず、少なからず面喰った様子で、
戸惑い気味に周囲を眺め回しながらも、意識を失うまでの断片的な記憶を寄せ集めにかかる。
 その最中にも注がれる気遣わしげなものから、単なる好奇まで数多の視線に居心地悪げに肩を竦めながら、
先程感じた強烈な痛みの根源たる左手の甲への目を向けて。
 
 
 
502名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 01:20:05 ID:D5ZdWpPk
支援
503ハルケギニアの撃墜王:2008/10/28(火) 01:20:28 ID:Fe0oY23i
 焼けつくような強烈な痛みこそ失せようとも、滑らかな白肌に刻まれたルーンは変わらず浮かび上がっている。
 本来使い魔にあるべきそれが何故――? と明らかな異常事態に、許容限界を超えそうな思考との戦いが始まった。
 
 そんな教え子を横目にコルベール教諭は、覚醒したからには意思気が戻ったことに一応の安堵を覚えながらも、
念の為にと見知らぬルーンを手早くスケッチとして記録を残し、取り囲む生徒達へ召喚儀式の終了と解散を告げた。
 徐々に彼らの興味は身を起こした少女から逸れ、三々五々に学院へ戻るべく『フライ』で飛び去っていく。
 茫然とした少女に追い打ちを掛けるのは憚られるからか、今度はからかいの一つが飛ぶ事は無いままに。


「……ミス・ヴァリエ――」

「ミスタ・コルベール!」

 二人を残して人が掃けた頃に、俯いたまま微動だにしないルイズへと掛けられた声は、
より大きくも切実な響きを伴った高音に遮られた。
 話の先を促したコルベールに対し、ルイズは恐る恐るといった調子で語る。
 
「あの、もしかしてこれは……失敗、でしょうか……?」

「……とんでもない! 見事な成功ですぞ、ミス・ヴァリエール!
 そうで無ければ、コントラクト・サーヴァントを命じることなどしませんからな」
 
「……そう、ですか。よかった……」

 ルイズの表情は相変わらず沈鬱なままだが、少なくとも安堵しているらしきことは明らかで。
知らず知らずにコルベールの顔にも労いの笑みが浮かぶ。
 彼自身も成功か否か、一抹の不安を抱いてはいたがこの生徒の努力が並々ならぬものである事は、
担任をしている自分自身が誰よりも知っている自負を持っていた。
仮に万が一の事態があれば、学院長に直談判してまで認めさせるだけの覚悟を持った一言だったのだ。

 とはいえそんな事情は億尾にも出さず、数度言葉を交わしてコルベールは踵を返し、単身空に舞い上がった。
当然それ以前に少女の様子も気遣いはしたが、しばらく一人にしてくれとせがまれた以上、強制は出来ない。

 後ろ髪引かれる思いで時折此方を振り返る姿を見送った後に、ルイズは改めて召喚された代物を見遣り。
504ハルケギニアの撃墜王:2008/10/28(火) 01:21:01 ID:Fe0oY23i
「本当に、何かしらこれ……? 全然見たことが無い形なんだけど……」

 全体がマットブラックで塗装された金属の筒。
 重厚な外見に反して重量は意外に軽く、少女の細腕でも持ち上げるのは十分可能な程度。

 中を覗き込んでみると筒に思えたのはどうやら勘違いだったらしい。
孔に手を入れ確かめた結果、途中で仕切りがあり先には何か機器でも詰まっているようで、
試しに側面から叩いてみると酷く鈍い音がした。
 ひっくり返して反対側を調べてみると、先端付近には深い溝がぐるりと彫り込まれている。
 彼女に知識があれば、それはとあるレシプロ戦闘機の先端部分に似た形状をしていると判っただろうが、
航空機自体が未だ存在していないこの世界では詮無い話でしかない。

「……、うーん……」

 そしてしばらく金属のブツを弄繰り回していた彼女は、とある思いつきを抱くことになった。

―To be continued―
505名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 01:21:13 ID:EzN4+qk+
>>496
ネタバレする必要は無いけど、予想していたなら対処は出来たろうし、
しておいた方が良くね?って言ってるのよ。
拘る理由は、特に無い。

>>498
そういうことじゃなくて、読み手個人の考えならまだしも
作者自らがそう思うのなら対処しといた方が良くね?ってことよ。
506ハルケギニアの撃墜王:2008/10/28(火) 01:22:09 ID:Fe0oY23i
以上で投下は全て終了です。
507名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 01:23:07 ID:D5ZdWpPk
ズボン乙

どうやって履くものだと気付くか期待していいのかな?
508名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 01:25:49 ID:EzN4+qk+
>>494-506
投下中に失礼しました。
乙です。
509名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 01:26:15 ID:3Kxv+V+e
>>506
乙です。
あのスカートでそんなもの着けてたら
カリンが凄い形相追っかけてくるだろw

次回にwktk
510名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 01:28:03 ID:jGPTRMvu
てすと
511名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 01:28:46 ID:xoevdOg5
>>505
いや、もういいからw
熱くなるのは時と場所を。
COOLに行こう。
512名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 01:29:19 ID:aoVyvanP
乙んぬ

>>509
何を言ってるんだ、余分なものなど脱ぐのが正装だ。
いやズボン重ね履きしてる娘もいるけどw
513ゼロの社長 14:2008/10/28(火) 01:33:17 ID:f2RilvWS
14話完成しました。
予約なさそうなので45分ごろ投下します
514名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 01:35:44 ID:fZGRfmuI
当方に支援の用意あり
515名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 01:35:55 ID:bFmFeuGi
投下乙です。

そして、ちと遅れたけど、久保の人。
α外伝で合体機能のオミットされたR-1が出てくるので、R-1のパイロットはリュウセイ以外あり得ないというのは違うのでは?
まぁ、いかなアストラナガンであろうと、並行世界唯一のアストラナガン自身が色濃く影響した世界の、
ありえたかもしれないもう一つの可能性にはアクセスできないでしょうが。

しかし、新のリュウセイじゃイングラムネタも通用しないしなぁ。
516ゼロの社長 14:2008/10/28(火) 01:42:45 ID:f2RilvWS




サビエラ村に新たに派遣されてきた騎士(海馬)とその従者(タバサとシルフィード)と言う設定で、3人は村へと足を踏み入れた。
村人達は早く吸血鬼を退治して欲しいため、その新しい騎士の姿を、遠巻きに眺めていた。
だが堂々とした姿でやや短めなマントを纏い、鋭い眼光で村を見回しながら村長の屋敷に向かっていく海馬を見ながらも、
村人達はおのおのの不安を隠せずにはいられなかった。

「今度の騎士様は何日でお葬式かねぇ…」
「やけに若い男じゃねえか。あんまり腕っぷしが利くようには見えねぇな。」
「あら、子供まで連れてきているわ。」
「けしからんな。あっちの娘っ子のあの胸は非常にけしからん。」
「やっぱり騎士なんか当てにならねぇ!おれたちの手で吸血鬼を…」

などといった声がそこかしこから聞こえてくる。

「きゅい。当てにならないって言われてるのね。人に頼んでおいてそう言う言い草は無いのね。きゅい。」

噂話が聞こえていたシルフィードは文句を言った。

「人間とはそう言うものだ。前の騎士とやらが頼りなかった事も踏まえて、恐怖が悪い方に作用しているんだろう。
噂話の中には、村の誰かが吸血鬼なんじゃないかとでもほざいているだろう?」
「…マゼンダ婆さんって人が怪しいって言ってるのね。
3ヶ月ほど前からこの村に来た人だけど、昼間もずっとこもりきりだって言ってるのね。
それに大男の息子が屍人鬼なんじゃないかとも言ってるのね。」

さすが伝説の風韻竜、シルフィードの聴力は、村の噂話程度なら聴けるほど高いものだった。

「ほう、なかなかの聴力だな。脳は足りないと思っていたが、少しは役に立つらしい。」
「えっへんなのね!誉めても何もでないのね!」

冷静に考えればあまり誉められてはいないのだが、胸を張るシルフィード。
だが、それにあえてつっこまずそのまま道を進むと、大きな屋敷が見えてきた。
そしてその入口では年老いた長老が待っていた。
517ゼロの社長 14:2008/10/28(火) 01:44:12 ID:f2RilvWS





「ようこそいらっしゃいました。騎士様」

サビエラ村の村長は、白く長い髭を蓄えた高齢の老人だった。

「ガリア花壇騎士、白竜のセト・カイバだ。挨拶は早々に、早速事件について詳しく聞かせてもらおう。」

村長が語った吸血鬼事件の顛末は、タバサが報告書で聞き、それを海馬に伝えた内容とほぼ一緒であり、特に目新しい事実は無かった。
被害者は討伐に来た騎士を含めて9人で、騎士以外は若い女。
その姿を見たものは折らず、神出鬼没の吸血鬼であった。

「どうやら吸血鬼は、夜に出歩く村人がいなくなると、今度は夜な夜な家の中に忍び込み、血を吸うようになったのです。
朝になると、ベッドに寝ていたはずの被害者は、血を吸われた死体となって、醒めない眠りについているのです。」

想像したのか、シルフィードの顔色がさーっと青くなった。

「なにより、この村の回りは昼間でも光を通さない深い森があるので、そこに隠れているのではないかと、村人達は森にも寄り付かなくなりました。
しかし…本当に恐ろしいのは、屍人鬼《グール》の存在ですじゃ。」
「屍人鬼…吸血鬼は血を吸った人間を一人意のままに操れる。見た目には生きている人間と変わらないが、事実上生きた死体…人形だな。」

タバサから借りた本の中にあった知識を海馬が口にすると、村長は頷いた。

「村の人間の中の中に屍人鬼がいるのではないかと、村中が疑心暗鬼の渦中にあります。
何かのきっかけで村人同士が殺しあうような事にもなりかねませぬ。」

村長の顔色が翳った。
実際にすでにそんな風潮が見え隠れしているからこそ、不安が尽きないのであろう。

「了解した。吸血鬼と屍人鬼を即刻見つけ出し退治する。
そのためにはまず屍人鬼が村人の中にまぎれていないかを一人一人確かめなければならん。
村長、失礼だがまず村長から調べさせてもらう。」

518ゼロの社長 14:2008/10/28(火) 01:45:32 ID:f2RilvWS

海馬の言葉に村長は目を丸くした。

「わしを屍人鬼と疑っておいでですか?」
「この村の長であるからこそ、吸血鬼にとって利用価値があると判断したまでだ。
もっとも、この村にいる人間は老若男女問わず調べる必要がある。
むしろ、調べられて潔白を証明できた方が好都合だろう?」
「わかりました。騎士様がそうおっしゃられるのならば。」

村長はそう言うと、服を脱ぎ生まれたままの姿となった。
もっとも、海馬は外見から屍人鬼と人間を見分ける事などできないため、それをタバサとシルフィードに任せつつ、
瞳の力を持って村長の能力を確認した。
先ほどシルフィードの魔法の力で変身した姿を確認したところ、やはり風韻竜として表示された事から、
外見に影響せず、種族も判別できる事は確認済みである。
しかし、内心海馬は、吸血鬼や屍人鬼を発見できたとしてもタバサに伝えるつもりは無かった。
理由は、あまり他人に自分の力を晒したくないためである。
瞳の力で確認して、『こいつが屍人鬼だ、吸血鬼だ』とタバサに言ったならば、その根拠を答えなければならない。
『相手の能力を情報として得る能力』というのは、知られていないからこそ強みとなる能力である。

(まぁ、仮にも騎士と呼ばれる階級にいるほどなのだ。放っておいてもタバサ自身で勝手に見つけるだろう。
俺は俺自身が不利にならないように、確認するだけだ。)

などと考えているうちに、村長の潔白が証明されたようである。
と、その時。
海馬は、村長から視点をずらし、部屋を見回していると、扉の陰に隠れ、こちらの様子をうかがっているものがいることに気がついた。
5歳ほどの金髪の少女であった。
人形のように愛らしい姿をした少女の存在に、タバサとシルフィードも気がついたようだ。
シルフィードはその愛らしさに惹かれ

「かわいい〜!おいでおいで〜」

などと素っ頓狂な声を上げてじりじりと近づいていった。
その状況に不安を感じたのか、少女は村長の方に目線を送った。
519名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 01:48:00 ID:EzN4+qk+
支援
520ゼロの社長 14:2008/10/28(火) 01:48:38 ID:f2RilvWS

「お入り、エルザ。騎士様方に挨拶をなさい。」

うながされた少女は、おずおずとおびえた表情で入ってきて、硬い表情で3人に挨拶をした。
3人は、三者三様の反応を返した。
シルフィードはその様子に益々気に入り、ぎゅーっとエルザと呼ばれた少女を抱きしめた。
タバサはいつもどおりの無表情のままシルフィードと少女を眺めていた。
海馬は、少し驚いた表情をしていたが、すぐに冷静さを取り戻した。
そしてタバサにこう言った。

「あの少女も調べる必要がある。」

こくんと頷き返すタバサ。

「えええええ!この子も調べるの!?…ですか?」

と、とってつけたように敬語を交えつつ驚き返すシルフィード。
当然、と言うように頷くタバサ。
だが、そこに村長が割って入った。

「この子は勘弁してやってください。」

そうなのそうなの!と返そうとするシルフィードだったが、海馬とタバサの無言の眼力によって、
口を閉ざさざるをえなかった。

「残念だが、例外を認めるわけにはいかない。タバサ、シルフィード。俺は部屋の外に出ているから、さっさと調べておけ。」

そういって海馬は、扉の外に出た。

(なるほど…吸血鬼は老化しないというのはむこうでも良くある伝承の一つだな。
村人も前の騎士も想像はしていなかったのだろう。)

そう、エルザが姿を現したとき、海馬の瞳が映し出したエルザの名前のところには、『ヴァンパイア:エルザ』という文字が刻まれていたのだった。
さて、どうしたものかと考えているうちに、部屋からエルザが泣きながら飛び出していった。

521名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 01:49:08 ID:EzN4+qk+
支援
522ゼロの社長 14:2008/10/28(火) 01:49:59 ID:f2RilvWS
「失礼をお詫びいたします。実はエルザは私の実の子ではないのです。
エルザは1年程前、傷だらけで、この村にやってきたのです。
なにやら詳しい事情はわからないのですが、わしも早くに家族を無くしてしまっていた。
そこでわしはエルザを引き取ることにしたのです。」

エルザの正体さえ知らなければ、ちょっとした美談に映るような話であろう。
実際、シルフィードなど、かわいそう…と言った表情を浮かべていた。

「エルザは体が弱く、あまり布団から出ることができないのです。
そのため日の当たる外で他の子供達と遊ばせてやる事もできない。
また、何があったのか、あまり笑ったりもしない。
わしはあの子が笑顔でいられる日が早く来るようにと願っている。
それなのに吸血鬼騒ぎとは…なんという…。」

そのエルザこそ吸血鬼だ、と言うわけにもいかず、とりあえず3人は村長の家を出て、調査を開始した。
まずは最後に犠牲者が出た家の部屋へ入った。
調査、とは言ったものの、海馬自身にはタネが割れている手品を一から調べるようなものであった。
釘を打ち付けてある窓や家具で厳重に封じている扉をすり抜けてどうやって入ったか?
あの小さな体だ。煙突からもぐりこむのも出るのも簡単だろう。
だが、タバサは煙突の中までもぐって、煤だらけになって戻ってきた。

「お姉さまなにやってるのね。そんな狭いところ通り抜けられるわけないのね。」

シルフィードを無視したまま、タバサは海馬の前まで来た。

「ふむ…煙突を通過できれば、決してこの部屋は密室ではない。
だが、吸血鬼に姿を小さく変身したりする魔法は使えないのだろう?」

そうなのですか?と、襲われた娘の母親がおずおずと問う。
こくんと頷くタバサ。
と、海馬が窓をのぞくと、荷物をまとめて引越しをしていく馬車が見えた。

「吸血鬼事件以来、若い娘を持つ家は次々に引っ越していきました。
私たちも、引越しの準備をしていたのですが…結局、間に合いませんでした。」

そう言うと母親は泣き出してしまった。


523名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 01:51:05 ID:fZGRfmuI
しえん
524ゼロの社長 14:2008/10/28(火) 01:51:13 ID:f2RilvWS
その家から離れ、村人から情報を得ようと3人は村の中をうろうろしていた。
そして、丁度村の真中辺りについた頃、海馬が口を開いた。

「ふむ…情報収集は別れてした方が効率がいいだろう。
そうだな…昼頃に村長の家に集合と言う事でどうだ?」

その提案にタバサは無言で賛成し、シルフィードもしぶしぶそれに従った。
そしてお互いの姿が見えなくなった頃、海馬は一路村長の家へと向かった。
村長の屋敷の前についたとき、丁度村長は出かけるところだったようだ。

「おお、騎士様。どうかされましたか?」
「少し調子が悪いのでな、いったん休みに寄っただけだ。」
「そうでしたか。私は少し家を離れますが、気にせず使ってください。」

そういうと村長はどこかへと出かけていった。
そして、海馬が向かったのは、エルザの部屋だった。
ノックもせず強引に入った扉の中は、暗闇であり、そしてその闇の中に、眠っているエルザがいた。
ばたんと言う扉の音で目を醒ましたのか目を擦りながら海馬のほうを見た。

「え…?あの…騎士様?」
「茶番はもういい、吸血鬼。」

その言葉を聞くと、エルザから怖がっていた病弱な少女の表情が消え、
笑顔になった。
どこまでも子供らしい無垢で無邪気な笑顔。
さっきまでと人が替わったような口調で話し掛けてくるエルザ。

「ふぅん…。どうやって気づいたかは知らないけど、たいしたものね。
今まで一度だって気づかれた事がなかったのに。
その功績に敬意を表してちゃんと名乗るわ。
私はエルザ。エルザ・スカーレット。闇に紛れ人の生き血を吸う吸血鬼。
って、まぁ姓のほうは私が好きで名乗っているだけだけど。」
「………意外だな、問答無用で襲い掛かってくるかと思えば、意外と紳士的な態度だな。」
「私は別に人間と敵対しているつもりはないわ。
闘わずにすむなら、その方がいいもの。」
「……?」

海馬は、想像と違うエルザの対応に少し戸惑った。
その戸惑いの間にエルザの方から口を開いてきた。

「それで騎士様?何のご用?私この時間はいつも寝る事にしているの。
眠りを妨げられるのはあまり愉快ではないのだけれど。」

と、エルザの鋭い瞳が輝き、口元からするどい犬歯が覗かせた。
殺気が一層強まり、ぞくりという悪寒が海馬の背を走ったが、それだけで逃げ出すような海馬ではなかった。

「言っておくけど、昼間だからって、室内で人間に遅れをとるようなことは決してないわよ。理解したなら―――」
「なるほど。その殺意。ここだけで9人も殺しただけの事はあるな。
ふん、やると言うならばちょうどいい。吸血鬼らしく、塵芥へと返して――――」
「違うわ。」

と、デュエルディスクを構えようとした海馬に対し、ストップをかけるエルザ。

「なに?」



「確かに私は吸血鬼だけれど、この村で起きている吸血鬼事件は私が原因じゃないわ。」
525名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 01:52:34 ID:OolI0Ds9
SIEN
526ゼロの社長 14:2008/10/28(火) 01:53:09 ID:f2RilvWS
14話完です。
また寸止めか!
さてさて、ストーリーの先々を考えるのが最近凄く楽しくなってきました。
支援ありがとうございます。
そりでは〜
527名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 01:54:08 ID:fZGRfmuI
おつ
528名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 01:55:56 ID:EzN4+qk+
乙です。
思わぬ展開にワクワクしてます。
529名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 01:56:36 ID:0F8Xddio
おつ
ゼロの社長、覚醒したように面白く文章量も増えた。
だから、この調子で寸止めもやめて欲しい
530名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 01:57:17 ID:0Lc+vciH
なんという寸止め乙
エルザ退場してしまうのかと思ったらまさかの展開
次回もお待ちしてます!
531名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 01:58:07 ID:pcxIx/fN
社長の人乙!!

エルザが犯人じゃないとは、これは新しい。
この先の展開に超期待。
532名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 01:59:04 ID:iVpKof0Q
吸血鬼でないとしたら天狗の仕業か?
533蒼い使い魔:2008/10/28(火) 02:09:43 ID:w6qOsUMe
皆様お疲れ様であります
つい先日3ケタ近いコンテニューの果て
ようやく3のDMDクリアして兄貴をハルケギニアに送り込んできてやったぜ
ちょっと長いかもしれません。
予約ないようでしたら
2:20に投下します
534名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 02:17:43 ID:C8Plv2pf
社長の人乙!
社長の人の寸止めは先が気になる終わり方だぜ。
テレビアニメを見てる感じ
これはエルザがどう動くか、真犯人は?気になりすぎる
535名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 02:18:12 ID:Hj4zg0st
社長の人、乙!
事件の犯人がエルザじゃない!?
これは今までにない展開ですな
続きが気になる!

そして蒼い人支援! 
536蒼い使い魔 第29話:2008/10/28(火) 02:20:18 ID:w6qOsUMe
バージルはシルフィードから降りた後、バージル達はタルブの村人達と合流、
ルイズの介抱をタバサや村人に任せ、ゼロ戦が奉納されている祠へと向かう。
アルビオンの竜騎兵により焼き払われたものの、
固定化がかかっているためもしかしたらゼロ戦は無事ではないか?
という淡い期待を抱き様子を見に来たのである。
「…………」
「あー…相棒…こりゃダメだな…」
バージルが焼け落ちた祠へと足を踏み入れる
そこにはわずかに原形は保っているものの無残に焼け落ちたゼロ戦の姿が。
それを見たバージルが眉間にしわを寄せそれに触れる
「……エンジンはかろうじて無事みたいだが…これではどうしようもないな」
ルーンの力で確認すると舌打ちし踵を返す、人の気配を感じ顔を上げるとそこにはシエスタの姿があった。
「バージルさん…あの…ひいおじいちゃんの竜の羽衣は…?」
「見ての通りだ」
泣きそうな表情でうつむきながら話しかけてきたシエスタににべもなくそう言うと横を通り過ぎようとする。
「もう飛べない…んですよね…」
「…これでは聖地へは行けん」
「バージルさんは…これで…聖地に行くつもりだったんですか?」
「そうだ、それももう叶わないがな」
それだけ言うとバージルは泣きそうな表情のシエスタへのフォローもなしにさっさと来た道を戻ってしまう。
それを見送りながらシエスタは小さく呟く
「バージルさん…まだ学院にいてくれるなら…壊れてしまったほうがよかったのかなぁ…?」
そう呟くと、ゼロ戦へと力なく歩み寄り、今は亡き曾祖父へ想いを馳せ、涙を流した。
537名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 02:20:34 ID:EzN4+qk+
支援
538蒼い使い魔 第29話:2008/10/28(火) 02:21:52 ID:w6qOsUMe
場面は変わり魔法学院、タルブから帰還したルイズ達を待っていたのは
戦勝で沸く城下町とは裏腹にいつもと変わらぬ日常であった。
王軍の勝利を祝う辞が朝食の際オスマン氏の口から出たものの取り立てて特別なことも行われなかった
やはり学び舎故、政治とは無関係なのだろう、生徒たちものんびりとしている。
ハルケギニアにおいて戦争はとくに珍しいものでもなく、いつもどこかで小競り合いが起きている
いざ始まれば騒ぎもするが、戦況が落ち着けばいつものことである。

そんななかバージルは一人学院を出て、少し離れた場所にある人気のない森の中へと足を運ぶ
そして周囲に人の気配がないことを確認すると、左手をじっと見つめた。
あの日、タルブの草原上空でルイズ放った魔法を見て以来、自身の魔力に変化が起こったのだ。
あの時、ルイズを支えるために左手でルイズの手を握った時に何かが起きたのだろうか?
それを確かめるべく、自身の魔力を開放し、魔人となる。
「試してみるか…」
静かに呟き左手に魔力を集中する、すると突如彼の左掌の上で漆黒の炎が燃え上がる。
さらに集中し魔力を凝縮させ、目の前の岩目がけ左手を前に突き出し放出する。
―ドォン! という爆発音、バージルが放った魔力の塊は爆発し岩は粉々に砕け散った。
「やはりか…」
それをみて得心がいったようにバージルは呟き、再び左の掌を見つめる
「どう思う?」
魔人化を解除したバージルが立てかけておいたデルフに尋ねる。
「おでれーた…なんでお前さんが使えるんだよ…? 虚無だぞ? 伝説の系統だぞ?」
「倒した悪魔の魔力を自分のものとして使うことはある、武器であれ能力そのものであれ形は様々だがな、
この『ベオウルフ』もそうだ。俺の弟…ダンテも時を操る悪魔を倒しその能力を得ている。
あの時、俺は手と魔力の媒体となる杖を握っていた、おそらくその時にこの力を吸収したんだろう」
事もなげにバージルはさらりと言った。
「ってことはアレか? 虚無の力は悪魔の力だってのか?」
「知らん、だが、おそらくは違う、もっと別な理由だろう」
ルイズの魔力がルーンを伝わってきたのだろうか? それが流れ込み自身の魔力と同化したのだろう。
バージルはそう見当をつけると左手を握り締める。
「しっかし…スパーダの血族は何でもアリなんだぁね…まさか虚無の力まで取り込んじまうなんて…」
「所詮劣化コピーだ、100%引き出せるわけではない、撃てたとしてもこの程度だ。それに少々勝手も違う、
俺のは魔力の塊自体が爆発しているだけだ、虚無の力はトリガーに過ぎんのかもしれん」
先ほどの爆発で粉々になった岩を一瞥しバージルは言う。
「それに、虚無が悪魔の力であるか否かなど俺とってはどうでもいいことだ、
利用できるものは利用する、今までもそうしてきた、そしてこれからもだ」
そう言うとデルフを背負い、学院へと戻っていった。
539蒼い使い魔 第29話:2008/10/28(火) 02:23:33 ID:w6qOsUMe
学院へともどったバージルはその足で図書館へと向かう。
聖地についての本は粗方読み終わり、今度は魔界への手がかりを探し伝承の部類を探しているのだ。
生徒はおろかオスマンの許可がなければ教師すら立ち入りを禁じられている禁書エリアにまで足を運ぶ。
「なぁ相棒、これ以上なんの本を読むって言うんだよ?」
暇さえあれば図書館へ足を運び本を読み漁るバージルに呆れたように背中のデルフが声をかける。
それを無視し興味深い本がないか物色していると…
ふと埃にまみれた一冊の薄汚れた本が目に留まった、それを手に取り降り積もった埃をはたき落とす。
本の題名を調べると、彼には珍しく驚きのあまりそのまま本の題名を口にした
「『魔剣文書』…?」
かつてヴァチカン禁書図書館で読んだ本が何故ここに? 題名"は"ハルケギニアの古代言語で書かれている
「なぜこんなところに…」
疑問は尽きないが逸る気持ちを抑えつつページをめくる、
中身にはとても文字とは思えない難解な模様が何行も、否、全てのページに亘り描かれていた。
「おい相棒、なんだよその本」
「黙ってろ」
話しかけてきたデルフを短く一蹴しつつ、文章の中から食い入るようにあるフレーズを探す。―あった。
「スパーダ…」
「お? スパーダだって? その本、スパーダについて書かれてるのか?」
「俺の世界にもあった本だが…中身が少し違う? どういうことだ…?」
その『魔剣文書』はかつてヴァチカンで読んだものとは中身が違う様だった。
どうやら同一のものではないらしい。
「へぇ、なんでこんなとこにあるんだろうな、スパーダ関連の本っつったら見つかったら焚書だぜ。なぁ、ちょっと読んでみてくれよ」
「無理だ」
読み聞かせるよう急かすデルフに短く答える
「なんでだよ?」
「前に一度解読を試みたが…、これは俺には"読めん"、『スパーダ』という単語は知ることができたがな…
どの古代言語とも違う言語体系、おそらくこの文字、言語ですらない」
「どういうこった?」
「文字に見えるのは伝説を象徴するレリーフの集まり。しかも比喩が深い。これを読み解くには膨大な知識が必要になる。
…おそらくはそう簡単に読ませないためだろう。」
そう言いながらパタンと本を閉じる
「なるほどな、中身が意味不明なんじゃ検閲のしようもないか、焚書を免れてるわけだぜ」
デルフが納得したように呟く、
「だが中身はスパーダの伝説について語られている、この『魔剣文書』にもスパーダのフレーズがあった。」
そう言うと魔剣文書を持ち図書館を後にすべく踵を返す
「読めるかどうかはわからんが…、解読を試みるのも悪くはないだろう、もしかしたら、魔界への手がかりがあるかもしれん」
そう言いながら『魔剣文書』をコートに忍ばせ司書の目を掻い潜る。
「今度は俺が本で頭を悩ませることになるとはな…」
「違いねぇや」
外に出て吐き捨てるように呟いたバージルにデルフがカタカタと笑うように音を立てた。
540名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 02:24:04 ID:EzN4+qk+
支援
541蒼い使い魔 第29話:2008/10/28(火) 02:25:28 ID:w6qOsUMe
『魔剣文書』を手に図書館を出たバージルだったが、やはり手がかりもなしにいきなり解読に挑むのは難しい、
地図と方位磁石なしで砂漠を横断するのと同じくらい無理がある。
まずは中身だけでも目を通してみるか、そう考え一度部屋へ戻りデルフを壁に立て懸け、外に出る。
普段あまり人が来ないヴェストリの広場に行き、ベンチに腰かけ『魔剣文書』を開いた。
空には雲ひとつなく青空がどこまでも広がっており温かい日差しが心地よい、だが彼にはそんなことは関係なく
眉間に深い皺をよせ『魔剣文書』を睨みつけページをめくっている、
やはり、と言うべきか、どのページにも彼の知る言語は書かれておらず、難解な幾何学模様が何ページにもわたり描かれていた。
ハァ…と大きくため息を吐き目頭を軽く指で押さえる、魔界への手がかりがあると思い期待して持ってきたが…
前途多難だ、いきなり難破したといっても過言ではない。
「やはりそううまくいくものではない…か…」
静かに呟きふと横を見ると、何時の間にいたのだろうか、隣にタバサが座り静かに本を読んでいた。
「何を読んでいるの?」
バージルがようやく自分の存在に気がついたからか、
タバサが読んでいた本から顔をあげ、バージルが読んでいた本について尋ねる。
彼が周りに気が付けなくなるほど真剣に読んでいた本だ、多少気になったのだろう。
「これだ、お前に読めるかはわからんがな…」
そう言うとベンチの背もたれにドカッと背中を預け、タバサに『魔剣文書』を手渡す
タバサはそれを手に取るとページをめくり…静かに閉じた。
「お前にも読めんか」
もしかしたら…と思い少々期待したが、やはり無理だったのだろう。
「あなたは読めるの?」
「無理だ、これが読める人間がいるかどうかすらも疑問だな、大方オスマンも読めんのだろう、でなければ図書館にあるはずがない」
いや…一人だけ、彼の世界にいた、既に死んでいるが。
「(殺す前にアーカムから解読法を聞き出しておくべきだったか…)」
死人に口なし、今さら悔やんでも仕方がない、そう考えながらタバサから『魔剣文書』を受け取る。
「何故読めない本を?」
タバサが当然の疑問を口にする。
「これがスパーダについて書かれている本だからだ、俺のいた世界にもこれはある、
中身は違うがな…ここだ、ここの部分が『スパーダ』を意味している。」
そう言いながらページをめくり、『スパーダ』を意味する部分を指でなぞりタバサに見せる。
はたから見れば身を寄り添い合っているように見えるその光景、それを背後から睨む魔人の姿があった…。
542名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 02:25:42 ID:EzN4+qk+
支援
543蒼い使い魔 第29話:2008/10/28(火) 02:27:27 ID:w6qOsUMe
バージルとタバサが腰掛けたベンチの後十五メイル程離れたところにぽっかりと大きめの穴があいている。
その中で荒い息を吐き続ける魔人、ルイズの姿があった、
ルイズは穴の中で地団太を踏んだ、その隣にはこの穴を掘ったギーシュの使い魔のヴェルダンデと
先ほど「邪魔だ」の一言とともに部屋に置き去りにされたインテリジェンスソードのデルフリンガーがいた。
ルイズはヴェルダンデに穴を掘らせ中に潜み、こっそりバージルを監視していたのであった。
デルフはいろいろ聞きたいことがあったのでついでに持ってきたのだった。
「なによ! あの使い魔!!」
ルイズは穴の壁にストレイトをたたき込みながら、う〜〜〜〜〜〜! っと唸っている。
壁にはギルガメスでフルチャージでもしたのか惨たらしい窪みが出来上がっていた。
本来ならばデルフを使いバージルの心臓目がけソードピアスを放っていたところだが、
それよりも先に次元斬か幻影剣が飛んでくることを危惧したデルフによって止められていたのであった。
事実、バージルの手元には閻魔刀が置いてある。
「なによう! あいつなら心臓貫かれたって死にゃしないわよ!」
「だからって娘っ子! この穴に幻影剣の雨が降ってきてもいいのかよ!」
「あんたかそこのモグラを盾にすればいいじゃない!」
「あ…悪魔…」
デルフとヴェルダンデがガタガタと恐怖で震える、ルイズからはデビルトリガーを開放したのかどす黒いオーラが立ち上っていた。
「な…なぁ貴族の娘っ子?」
「あによ…、ところであんた、いい加減私の名前覚えなさいよ…、その呼び方あいつ思い出すから気に食わないんだけど?
人のこと小娘小娘って! なんでタバサだけ名前で呼んでんのよ! あんたもワルドのこと言えないじゃない!
あんたこそもっとマシな趣味持ちなさいよ!! あのヴァカ〜〜〜!!!」
ドゴォン! ともう一発、壁にストレイトを叩きこむ。今なら大悪魔ですら裸足で逃げ出すであろうオーラがルイズからあふれ出ていた。
「よ…呼び方なんてどうでもいいじゃねぇかよぉ…。ところで、最近は穴を掘って使い魔を見張るのが流行りなのかね?」
「流行りなわけないじゃない」
「だったらなんで穴を掘って覗くんだね?」
「見つかったらかっこ悪いじゃない」
ルイズは剣を睨みつけ話しかける。
「だったら覗かなきゃいいんじゃねーのか? 使い魔のすることなんざほっときゃいいじゃないか…
それに…あの相棒のことだ、多分気がついてるぜ…?」
「そう言うわけにもいかないの! あいつったら…あの馬鹿使い魔! 私の相談にも乗りもしないで…
いちゃいちゃいちゃいちゃ…」
「相棒の性格を考えろよ…別にいちゃいちゃしてるわけじゃねーと思うんだが…」
「あんたは黙ってなさい!!!」
「ヒィッ…!」
ルイズの迫力にデルフが恐怖ですくみあがる。
「私ってば伝説の『虚無』の系統使いなのかもしれないのに、でも誰にも相談できなくて、
仕方なく、身勝手で気がきかなくてこれ以上ないほど朴念仁な使い魔相手に相談しようとしてるのに
タバサなんかといつまでもいちゃいちゃ…!!」
「やきもちか?」
「殺すわよ?」
「すいませんでした」
本来ならルイズを茶化すところだがそんな度胸はデルフからは霧散していた
「ねぇ…仕方ないからあんたに尋ねてあげる、由緒正しい貴族の私が、
あんたみたいなボロ剣に尋ねるのよ、感謝してね?」
「はいっ! なんでございましょう!?」
ルイズはこほんと咳ばらいをし、顔を真っ赤にしながら精いっぱい威厳を保とうとする声でデルフに尋ねた。
544名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 02:28:36 ID:EzN4+qk+
支援
545蒼い使い魔 第29話:2008/10/28(火) 02:29:08 ID:w6qOsUMe
「わたしより、タバサが魅力で勝る点を述べなさい、簡潔に、要点を踏まえ、わかりやすくね。」
「やっぱやきもち…イデデデデ! 折れるっ折れるっ! わかった! 答えます!」
ミシミシッという音がデルフから聞こえてくる、このままでは本当にへし折られかねない。
「ったく、しょうがねぇ娘っ子だな…、うーん…なんだろうなぁ…まず、あのタバサって娘っ子は優秀だ」
「どこら辺が優秀なのよ?」
「身の回りはほとんど自分で片付けちまう、頭の回転も速いしな。おまけに戦闘能力もそこそこ高い、
相棒は自分の身の回り以外のことは一切関与したがらないからな、言いかえれば、手間がかからないってところさね
多分とことん尽くすタイプだぜありゃ」
「次」
「あとは…魅力か? って言わればちと疑問だが、無口ってところかねぇ、相棒と似てるんだよ、無口で無表情、
感情的になることがほとんどない、お前さんとは正反対だぁね。」
「次」
「顔はまぁ、好み次第だあね。お前さんもタバサもまあまあ整ってるしな、
けど相棒の好みは…これがまたわからんね、おそらく今までそういう環境に一切身を置いていなかったんだろうな、
敵かそれ以外か、敵でなければ己にとって利用できる存在か否か、それが相棒にとっての判断基準だろうよ。
あの相棒の眼を見りゃわかんだろう? あの眼には何も映っちゃいないよ」
「……………」
たしかにこのボロ剣の言うことにも一理ある、確かにバージルはこの学院に召喚されたころに比べれば、ずいぶん穏やかになった
召喚されたころは寄らば斬る、といったオーラ全開だったのだが最近は閻魔刀を抜くことがめっきり減った。
それでも片時として閻魔刀を左手から離さないが…。
だが一つだけ変わらない点がある、それが眼だ、召喚された時からあの眼つきが変わっていない。
何者も映さぬ氷のような、半人半魔である自己の存在に一切の価値を見いだせず、深い怒りと悲しみを湛えたあの眼。
そこまで考えたとき、ルイズは頭をブンブンと振ってその考えを吹き飛ばす。
「ちょっとヘヴィな話になってきたわね…、まぁいいわ、次は対等と思えるところを言ってみなさい。」
「うーん…」
デルフは少し考え…そして気がついたようにその言葉を口にする
「むね」
「たっ…確かに対等ね…って何言わせんのよ! それに人間は成長するわ!」
ルイズは胸を張って答える、だがそれはみごとに平坦だった。
「ところでお前さん、幾つだね?」
「16よ」
「タバサは?」
「15じゃなかったかしら?」
「…相棒の趣味が分からんから何とも言えんが…成長は絶望的だな…」
キッと睨むルイズをよそにデルフはさらに続けた。
「つか、お前さんさっき相棒にもっとマシな趣味をもてって言ってたが…お前さんもタバサと一歳差じゃないか…
それに相棒もそんなに歳いってないと思うぜ?」
「むっ…そういえば…あいつって幾つなのかしら? あんたは知らないの? 相棒って呼んでるくらいだから知ってるんでしょ?」
「いや…悪いが実は俺っちも知らねーんだ、たぶん20は行ってないと思うんだけどな…18…いや19くらいか?」
確かに、普段眉間にしわを寄せた仏頂面のおかげで少し歳が上に見えてしまうが、
髪を下ろすだけで随分若く見える、髪型を変えるだけで印象もずいぶん変わってくるものだ。
546名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 02:30:57 ID:EzN4+qk+
支援
547蒼い使い魔 第29話:2008/10/28(火) 02:31:04 ID:w6qOsUMe
「ま、俺っちが言うのも何だが…相棒はかなり手ごわいぜ? さっきも言ったがお前さん達みたいな環境にいままでいなかったんだ、
常に悪魔共との戦いの中にあった、信じられるのは己の力と信念、そして閻魔刀のみだったんだ、
そんなだから色恋に関しては天然のロイヤルガード、下手すると超反応のジャストブロックでぜーんぶ受け流しちまうだろうよ。」
「意味が分からないわよ」
「まぁなんだ、お前さんも、相棒を振り向かせたいんなら、腕の一本くらい失う気持ちでいかんとダメってことさ
同じ嫉妬する者としてお前さんの気持ちもよーく分かるぜ、相棒の野郎…俺っちより閻魔刀ばっか使いやがって…」
「なによそれ、腕一本って、タバサは無傷じゃない」
「あー…娘っ子は知らないんだったな…あのタバサって娘っ子、実は一回、相棒に腕へし折られてるんだぜ?」
「えっ!?」
「俺っちが相棒に買われたその日、タバサが相棒に喧嘩吹っ掛けてな、
それを相棒が返り討ちにして腕へし折ったんだよ、ま、授業料ってところさね。」
「よく殺されなかったわね…」
バージルにデルフを渡した時期といったら反抗期真っ盛りの時期だ、腕一本で済んだのがタバサにとって幸運だったのだろう。
「でも、たしか次の日タバサはどこも怪我してないみたいだったけど?」
「そうなんだよなぁ、あん時相棒がなにか落としたが…たぶん秘薬だったんだろ?」
「ふ…ふーん…や…優しいのね…アイツ…私にはそんなこと一度もしてくれたことなんてないわよ…?」
再びルイズの中の魔人が目を覚まそうとしていると…
隣のモグラががばっと頭を出した。自分を捜しに来ていたギーシュが歩いてきたのだ、
ギーシュはズサッと地面に膝をつくと自らの使い魔を抱きしめ頬ずりをする。
「あぁ! 捜したよヴェルダンデ! こんなところに穴を掘ってどうしたんだい?
おや?ルイズじゃないか、なんで穴の中にいるんだね?」
ギーシュは穴の中にルイズの姿を発見し怪訝な顔をする。
ヴェルダンデは困ったような目でギーシュとルイズを交互に見比べる、
まるで主にこれ以上詮索するなと言いたげな目で。
ギーシュはうむと頷くと分別くさい口調で言った。
「わかったぞルイズ、きみはヴェルダンデに穴を掘らせてどばどばミミズを探していたんだな?
それで美容に良く効く秘薬を調合するつもりだったんだね? なるほど、君の使い魔はタバサと仲がいいようだしね」
ギーシュはちらりとベンチから立ち上がり図書館へと歩いて行く二人の姿を見つめて言った。
「あっはっは! 精々美容に気をつかって取り返さないと! 
君の家の恋敵はツェルプストー家だと聞いていたけど、これは意外な伏兵だったね!」
「おい…それ以上はマズイ…」
デルフが警告の声を上げるよりも早く、ルイズのスナッチがギーシュの足首をガシリと掴み穴の中へ引きずり込む。
「You shall die...!(―死になさい…!)」
ギーシュを穴の中に引きずり込むや胸倉を掴み薔薇を奪い取る
そこでギーシュが見たものは…ニューカッスルでみたバージルと同じくらい恐ろしい…魔人の姿だった。
「ちょ…やめっ…ぎゃああああああ!!!」

「Let's rock!」   【Dope!】
「Die!」       【Crazy!】
「Blast off!」  【Blast!】
「Go down!」 【Alright!】
「Crash!」  【Sweet!】
「Be gone!」    【SShow time!】

「Adios,Amigo.(―さよなら、ギーシュ)」
倒れ伏したギーシュに背を向け奪い取った薔薇を上空に放り投げる、そして―
「And the rest is silence. ("そして残るは、沈黙のみ")」   【SSStylish!】
素早く杖を抜くと、ボンッ! と軽い音とともに薔薇が爆発、花びらがひらひらと舞い落ちた。
モグラが心配そうにルイズのクレイジーコンボのフルコースを食らい肉塊と化したギーシュの顔を鼻先でつつく。
「あーあ、運が悪かったな…」
そんなギーシュだった"もの"を見てデルフが呟く、
「まぁいいわ、今ので多少頭も冷えたことだし…とりあえずあいつから直接問いたださないとダメね
タバサなんかには絶対負けないんだから…」
ルイズはそう呟くと穴から這い出て、寮塔へと歩きだした。
548名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 02:32:35 ID:Hj4zg0st
バージルとルイズは水と油だよなぁ…
支援
549蒼い使い魔 第29話:2008/10/28(火) 02:33:08 ID:w6qOsUMe
バージルが図書館から部屋へと戻るとルイズはベッドの上で正座をして窓のほうをじっと見つめていた。
時間的にはもう夕方で部屋の中は薄暗いのにも関わらずルイズは灯りをつけていなかった
そんなルイズを気にかけることもなく、バージルは最近手に入れた古びたソファへと腰をかけ『魔剣文書』を開いた。
そこには解読を試みたのであろう、彼による注釈がいくつか書き足されていた。
ルイズはそんなバージルを見ずに静かに口を開いた。
「遅かったじゃない、今までどこで何をしていたの?」
「図書館だ」
それにバージルは一言だけで済ます
「そう、図書館で、誰と、何をしていたの?」
「本を探す以外に何がある、それより灯りをつけろ、見づらくてかなわん」
少々呆れ気味にバージルは言うとぺらりとページをめくった。
「それに誰といたか、など、お前は知っているはずだが? 気が付いていないとでも思ったのか?
監視をするならもう少しうまくやるんだな…」
「ありゃぁ、娘っ子…ばれてるよ」
デルフにまで言われ顔をかぁっと真っ赤にしたルイズが勢いよく立ちあがりバージルに詰め寄った、
「そ…それはあんたが私のことほっといてふらふらどっかにいっちゃうからでしょ!?」
「なにをしようと俺の勝手だろう…」
バージルは詰め寄るルイズに気だるそうに視線をやると小さく呟く、
「何言ってるのよ!? 使い魔はご主人様のそばにずっといなきゃダメなの! 他の誰かといるなんてもってのほかよ!」
ルイズの金切り声に眉間にしわを寄せ方耳を抑えながら適当に受け流す。
「わかった…考えておく…」
「え…? そ…そう? わ…わかればいいのよ…」
ルイズはバージルのその態度に拍子抜けしたような声を出す、あのバージルが譲歩した?
どういう心境の変化だろう? いつもなら何かしら悪態をつくはずなのに…
「気は済んだか? 俺は忙しい、まだ話があるのなら後にしろ…」
「後って…あんたいつも私のこと相手してくれないじゃない…」
「…特に話題がない、…つまらん話題しか浮かばん、仕方ないだろう…」
バージルはそう言うと『魔剣文書』に再び視線を戻す、
「つまんなくてもいいから、なんか話しなさい、め…命令よ」
顔を真っ赤にしながらルイズはバージルから『魔剣文書』を取り上げ、バージルの隣にどさっと座った。
バージルは小さくため息を吐くと、天井を見上げる、それを見たルイズは彼なりになにか話題を探しているのだと感じる
それがなんだか嬉しくて、無愛想な使い魔の意外な一面を見れた気がして、自然と笑みがこぼれる。
「つまらん話だが…スパーダの…親父の話でかまわんな? 生憎、人に聞かせられる話は、それしか知らん…」
「何でもいいわ…話して…」
バージルはぽつぽつと、スパーダの伝説をルイズに語り聞かせる、
ルイズはスパーダの伝説について語るバージルの横顔をじっと見つめた、
その顔は、いつもと同じ仏頂面だが、どこか誇らしげで、楽しそうな表情をしていた。
550名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 02:34:14 ID:Hj4zg0st
さよならギーシュ…
支援
551蒼い使い魔 第29話:2008/10/28(火) 02:35:08 ID:w6qOsUMe
夜、消灯の時間になりルイズはネグリジェに着替え部屋の明かりを消すとベッドに横になると
いままで気になって仕方がなかった事をバージルに聞いてみることにした。
「ねぇバージル、あんたタバサのことどう思ってるの?」
ルイズはシーツから顔を出しバージルに尋ねる。
「…なぜそんな事を聞く」
「だって…あの子のことだけ名前で呼んでるし…それになんか親しいみたいだし…」
「別に何も思っていない、…強いて言うなら、まともな存在といったところか…」
「え…? そ…それだけ…? あの、じゃあ名前で呼んでるのはなんで?」
「そう呼ぶよう頼まれただけだ、断る理由もない」
即答である、バージルの口調からは一切感情は感じられない。
「じゃ…じゃあ、いつも一緒にいるのは? き…今日だって一緒にいたけど…」
「知らん、気がつけばいる、誰かとは違って喧しくないからな、気にもならん」
「ちょっ! 喧しいってどういうことよ!」
「…自覚はあるらしいな、そう言うことだ。」
「うっ…」
ちょっと痛いところを突かれた、だがすぐに気を取り直し考える、
バージルは本当にタバサのことをそれだけにしか見ていないのだろうか?
だけど嘘をついているようには見えない。どうでもいいことは口にしないし、
第一バージルは嘘は言わず思っていることを正直に言うタイプだ、
それが本人を目の前にしようとも…。
そしてルイズは勇気を振り絞り最大の疑問を口にする
「あ…あのさ、そ…それで、私のことはどう思ってる…の?」
「……考えたことがない」
「っ……」
一刀両断である、あまりにも冷たい一言にルイズが凍りつく、ちょっと涙まで出てきた。
「だが…」
そんなルイズをよそにバージルが口を開きそこで一度区切る、
「少し興味がわいた」
そう言いながら自らの左手のルーンを見つめる。
バージルの顔は相変わらず無表情で感情をうかがい知ることはできない、
ルイズは恐る恐るバージルにその言葉の意味を尋ねる、
「それって…利用できるって意味?」
「……俺にもわからん、…だがそれは違う、少なくともお前を利用する意味がない」
その言葉を聞いたルイズの胸中は心臓が破裂するのではないかというくらい高鳴っていた。
あの無口で無愛想で冷徹なバージルが自分に対し興味を持ってくれた、
バージルが人間の心を持ってくれたのかもしれない、そんな希望が生まれる。
顔はもう真っ赤っかだ、とてもじゃないがバージルには見せられない。
それを隠そうとシーツを頭からかぶると…、急に何かを思い出したかのように
もう一度頭を出し、バージルに話しかける。
「ね…ねぇ、バージル?」
「なんだ…」
「あ…あの…その…、こ…これからは私のことも名前で呼びなさい…いいわね!?」
「別にかまわんが…急にどうした?」
「べっ…別になんでもないわよ! お…おやすみっ!」
そう言うとルイズはまたまたシーツを頭からかぶってしまった。ベッドの中で足をバタバタさせているのが見える。
「妙な奴だ…」
バージルは小さく呟くとソファに横になり目をつむった。
552名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 02:35:47 ID:EzN4+qk+
支援
553蒼の使い魔:代理:2008/10/28(火) 02:42:35 ID:Hj4zg0st
代理投下します。


蒼い使い魔 あとがき

規制食らいました…
"そして残るは、あとがきのみ"
というわけでこれにて投下終わりです、嗚呼素晴らしきかなご都合主義
どうやらネロ・アンジェロのメテオをハルケギニアで習得したようですね
スパーダの血族皆ロリコン、まともなのはネロだけだった。
まだ少し…リハビリには時間かかりそうだなぁ…
ところで作中でも触れられていますがバージルはいくつくらいなんでしょうか、
ダンテのあのイカレ…もとい、やんちゃぶりからして19歳位じゃないかと勝手に仮定して話を進めてますが…
よくよく考えたらこんな怖い19歳いないよな…
ではま(Blast!

554名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 02:42:58 ID:clSVOXIK
さるさんかな?
555名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 02:43:06 ID:EzN4+qk+
作者さんも代理さんも乙です。
556名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 02:45:14 ID:clSVOXIK
乙であります!
相変わらずニヤニヤがとまらんwww
557名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 02:49:35 ID:Hj4zg0st
無事代理投下できて一安心

投下乙です!
う〜む、ゼロ戦はやっぱりダメでしたか
無事だったらすぐ飛んで行っちゃいそうですしねw
558名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 03:02:32 ID:6Um9aJlF
夜中に乙
559名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 03:10:45 ID:1HFBiLU4
>>553投下乙
ルイズとデルフ自重w
パパーダは年の差数百分倍の若い子好きだったけど、
ダンテはロリコンじゃなくてマザコンじゃね?
560名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 03:16:27 ID:clSVOXIK
そういえばアニメのヒロイン枠は幼女だったよw
561名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 07:57:58 ID:6juIccWR
>>448は自分が読まなきゃいいんじゃない?
オレは特撮物、ロボット物は端から読んでないけどね
自分が嫌いだからって文句は言うつもりもないな

ただ作者さん達にはトリップ付けることをお願いしたいな
NG登録できるし
562名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 08:39:58 ID:7FVFWVgQ
ゼロ魔世界が箱庭ってとこで随分下に見てるなとは思ったな
563名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 09:18:23 ID:T/CJLWUL
 ゴキトラと久保の話が、どういうオチをつけるかは興味ある。
564ニニンがゼロ伝・音速の使い魔 第二話:2008/10/28(火) 09:21:35 ID:ufLsm+2v
遅筆だなぁ・・・
これから投下しようと思う
565名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 09:22:24 ID:/73fPbSQ
>>562
気にしすぎだろ
実験室のフラスコと上手いことかけたんじゃねーの?
566ニニンがゼロ伝・音速の使い魔 第二話:2008/10/28(火) 09:32:06 ID:ufLsm+2v
ニニンがゼロ伝・音速の使い魔 

第二話 ルイズ、怒るの巻

ここは学校の正門。
二人の少女がたどり着いた。
一人はマントを羽織った学園のメイジ。
もう一人はピンクの服を着た黒髪の少女。
二人とも服は破れ体中傷だらけ。一言で言えば『ボロボロ』だった。

「はぁ、はぁ・・・やっと着きました〜いい汗かいた〜」
達成感に満たされた表情でピンクの服の少女、忍が爽やかに言った。
「あ゛ー・・・死ぬかと思ったわ・・・」
もう全てに疲れたと言った表情のメイジの少女、ルイズが呟いた。
「途中、森に落ちて大変でしたね〜」
「途中じゃなくて学園飛び越えたじゃないの・・・狼にも襲われるし・・・」
ジト目で忍を睨むルイズ。
「えっと、その、良い思い出はお金じゃ買えないですよね、えへへ!!」
「どこがいい思い出よーーーっ!!」怒鳴るルイズ。
「ごっ、ご免なさい・・・」しゅんとする忍。
「えっ、あっ、その・・・は、反省してるみたいだから今回は許してあげるわ!今度失敗したら許さないんだから!」
「ありがとう!ルイズちゃん!忍はアナタの優しさに感動です!!」ルイズの手をとり瞳をキラキラさせる。
「うっ・・・」頬を赤らめるルイズ。
(だっ、ダメよ、甘やかしちゃ!貴族と平民・・・コイツらニンジャとか言ってたけど、ちゃんと躾て差を思い知らせてや

らなきゃ!だけど・・・だけどっ)
「あの、どうかした、ルイズちゃん?」
ニコッとして首をかしげる忍。
(だっダメだぁ・・・・)
ルイズの表情はふにゃりとなった。

正常な思考をなんとか取り戻したルイズは忍と話しながら自室へと向かった。
「良い?もうあの『ムササビの術』は使っちゃダメ!使う時は一人でやんなさい!解った?」
「は〜い、これからはちゃんと気を付けま〜す」
(ホントに解ってんのかしら・・・)

ブツブツ良いながら自室のまえにたどり着く。
扉の鍵を開けようとするが・・・
あれ?鍵が掛かって無い?
おかしい、鍵は掛けたハズなのに。
ノブを回し扉を開ける。
がちゃり。
567ニニンがゼロ伝・音速の使い魔 第二話:2008/10/28(火) 09:37:50 ID:ufLsm+2v
「おい遅ぇぞルイズ何処をほっつき歩いていやがった!」
テーブルの上で黄色い生物が鎮座していた。
「お邪魔してまーす」
「ルイズちゃん、忍ちゃん、お帰りーっ」
忍者たちがテーブルの周りでくつろいでいた。

   ○| ̄|_   <ルイズ

「・・・てけ・・・」
何か良いながら、ゆらりと立ち上がるルイズ
「出てけぇぇぇぇぇぇ!」
怒り狂い音速丸を追い回し始めるルイズ。
「大変だ、音速丸さんを助けなきゃ!」
「音速丸さん!今助けます!」
がしっと二人の忍者が音速丸を確保する。
「ルイズちゃん、はいコレ」
一人の忍者が鞭をルイズに手渡す。
「テメェら見事なフォーメーションでオレ様に何しやがる!っていうかその鞭は何だオイ!?」
「やだなぁ、気のせいですよ。偶然ですよ偶然」
「嘘付け!ぜってぇワザとだろうが!」
ジタバタ藻掻く音速丸。
「あら・・・気が利くじゃない・・・ウフフフフ・・・」
完全にイッちゃった目で鞭を受け取るルイズ。
「イヤーッお止めになってぇー!」
「バカな使い魔には・・・お仕置きよ!!」

ビシーン、バシーン
「アヒーーーッ!!、ウヒィーーーッ!?」
鞭の音が音速丸の尻に響き渡った。

時間が経過して・・・
「アンタたちソコに並びなさい」
音速丸の尻を鞭でたたいてストレスを発散したルイズはいくらか落ち着いて忍者たち目の前に整列させていた。
ちなみに音速丸の尻が素敵な事態になっていた為、まだ倒れたままだ。
(羨ましい・・・)
(なんて羨ましい・・・)
(自分が女の子だからって、なんて羨ましい・・・)
「・・・と、言うわけでアンタ達には使い魔をやって貰うわ。ちゃんと私の命令に従うのよ。解った?」
音速丸の尻を鞭でたたいてストレスを発散したルイズはいくらか落ち着いて忍者たちに言い放つ。
だが忍者たちの耳には届いて居なかった。
何が羨ましいのか?
ルイズの後ろで忍が後ろからルイズを抱きしめるように立っていた。
むにっ。
忍の胸に埋まるルイズの後頭部が羨ましくてしょうがない。
「何よ、アンタたち聞いてるの?」
「ズルイ!ズルイですよルイズさん!何ですかその後頭部に押しつけられたシロモノは!?」
「見せつけられる我々の身にもなって下さいよもう!!」
「コレは何かの罰ゲームなんですか!?いや、ボーナスゲーム!?一体どっちなんだーっ!?」
身悶え、興奮し、混乱する忍者たち。
「うっさいわね!話聞けって言ってんでしょ!良いのよこれは使い魔に対するご主人様の特権なんだから!」
いや、契約したのは音速丸だけなのだが・・・
あんなヤツ、使い魔にするなんて願い下げよ!
ごもっとも。
どうせならこっちの忍みたいに・・・その・・・
はいはい。
568ニニンがゼロ伝・音速の使い魔 第二話:2008/10/28(火) 09:40:59 ID:ufLsm+2v
「なんか自己完結してるところを悪いんだけどルイズちゃん」
頭の上から声がした。
「ん?なーに?シノブ」
ちょっと甘えたような声になるルイズ。
「えっとね、使い魔さんってのをやるのは良いんだけど、何をすればいいのかしら?」
「んっとね、使い魔は主人の目となり耳となる・・・感覚の共有が出来るハズなんだけど・・・出来ないみたいねー」
契約は音速丸としかしていないから当たり前なのだが、当の音速丸とも出来ていない。
それ以前に音速丸と感覚の共有など以ての外。論外。
「諜報活動ですね、忍者のお仕事の基本です!何処でも忍び込んでヒミツを探っちゃいます!」勘違いする忍。
「ちょっと違うんだけど・・・ま、良いか」
「次は〜?」
「あとは主人の為に望む物を探してくるの。秘薬の材料になる薬草とか鉱物とか・・・」
「それなら大丈夫です!忍者はお薬を作るのもお仕事のウチですから!」
「あら、なかなか役に立つじゃない。見直したわ。」
「へへへ、任せてください!」
この忍者たちは誰も『コチラの世界』の薬草や鉱物を知らないのだが。
「最後に、ご主人様を危険から守る事よ」
「もちろん!影ながら君主を守る事こそ忍者の本分!使い魔の指命!」
目をキラキラさせる忍。
(うっ、ちょっと心配かも・・・)
ムササビの術のトラウマがちょっと心をよぎる。
「まぁ、とりあえず洗濯とか掃除をとか、雑用をして貰うから」
「了解致しましたっ」シュタッと敬礼する忍。
「はぁ・・・怒ったり、話したりしたら疲れたわね・・・もう寝るわ・・・」
そういうとルイズはブラウスのボタンに手を掛け外していく。
「「「うぉぉぉぉぉ!?」」」
忍者たちから歓声が上がる。
「・・・・・。」睨むルイズ
「「「(どきどき・・・)」」」
目が合う忍者たち。
「アンタ達は外よ!!」
「ええっ!これからイイとこなのに!」
「ヒドイや、ヒドイやルイズさん!」
「お願いです!もうチョットだけでイイから!」
「うるさい!出てけーーー!」
ゾロゾロと出て行く忍者達。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・ふぅ・・・、ねえ忍、着替えさせて」
「はぁい。」
てきぱきとルイズを着替えさせる忍。
「ねえ、ルイズちゃん。」
「何?」
「ベッド、一つしか無いんだけど、私は何処で寝れば・・・」
「使い魔はゆ・・・」床と言おうとして止めた。
「い、イイわ、私と一緒のベッドで寝ることを許してあげる。感謝しなさいよねっ」
「えへへ、ありがとうルイズちゃん」頭なでなで。
(あぁぁぁ、良いわ〜)ふにゃりとするルイズ。
だがルイズの心の平穏が打ち砕かれた。
「あーもう!何ですかアナタ達!女の子同士でフトンに入るときは服を脱ぎなさい服を!お父さんこれ以外認めませんよ!

あ〜柔らけぇ、柔らけぇ」
ガラガラッ、窓を開け、むんずと音速丸を掴むルイズ
「死ねぇぇぇぇぇっ!」
ごしゃっ、
「うぼぁ!?」

ルイズに蹴り上げられた音速丸は天空にある双月に向けて一直線に飛んでいった。

たぶん、つづく。
569ニニンがゼロ伝・音速の使い魔 第二話:2008/10/28(火) 09:42:42 ID:ufLsm+2v
以上でした。
自分で書いてみて、何十話とか書いてる人たち、改めてすごいと思うわ・・・
570名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 09:45:36 ID:xoevdOg5
音速丸乙w
571名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 09:51:39 ID:lekYVyvf
音速丸GJ
貴方って人は仕事中なのに吹いたじゃないかまったくもってGJ!
次回にwktk
572名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 10:13:09 ID:0+5LkiP1
音速丸乙です
会話が脳内再生されすぐるwww
573名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 10:51:45 ID:yO3Z+vF9
沢山の皆様投下お疲れです
ところでシャチョさんの
>「あっちの娘っ子のあの胸はけしからん」
ってどっちの娘っ子ですか?個人的にはタバサのつるつるぺったんな胸もかなりけしからんです。
 
それからって音速の人GJ
なんつーかこの音速丸さんの台詞が若本ヴォイスで再生されてしまうな
で、テファ・・・・は色々ヤバいので教皇がパクマンさんを召喚してしまうのですね
音速丸vsパクマン 史上最低の決戦!
574名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 11:58:49 ID:G7mYc792
音速丸乙
575名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 12:39:39 ID:4RmNfPH0
>>562
箱庭なんてSF等でも比較的定番のネタの一つだろうに・・・

被害妄想とまでは言わんが、作品の描写と作者の分別は付けた方がよくない?
576お前の使い魔 六話:2008/10/28(火) 13:53:17 ID:xlntZANM
予約が無いようなら、55分から投下したいと思いまふ
577お前の使い魔 六話:2008/10/28(火) 13:55:14 ID:xlntZANM
わたしは、ヴェストリの広場で頭を抱えていた。
周りの生徒に聞いた、決闘にいたる過程はこうだ。
ギーシュが香水の瓶を落とし、それをダネットが拾い、ギーシュに渡した。
しかし、その香水をギーシュは受け取るのを拒否し、ダネットはギーシュが落としたと言い張った。
それを見た周りの男子が騒ぎ出し、その香水は、ギーシュと付き合っていたモンモランシーがギーシュに送ったのものだとわかった。
そこで済めば良かったのだけれど、このギーシュ、一年生の女子と二股を掛けていて、それをたまたま見ていたその一年生の女子が怒ってギーシュを張り倒す。
んで、今度はそれを見ていたモンモランシーが怒り狂ってギーシュを張り倒し、二股がバレた上に、二人の女子が傷ついたと言ってダネットにいちゃもんを付ける。
当然、ダネットは怒って反論し、あれよあれよという間に決闘に至ったと。

「どう考えてもギーシュが悪いじゃない……」

わたしの呟きに、騒ぎを聞きつけたらしいツェルプストーが、わたしの隣で頷いた後、心配そうに呟く。

「でも、ダネット大丈夫なの?止めなくていいのルイズ?」
「止めたわよ。でも、あんたもダネットの性格、少しは知ってんでしょ?」
「あー……なる程ね。」

わたしも、ついでにメイドのシエスタも必死に止めたのだが、ダネットの返事はこんな感じ。

「悪いのはあのキザ男です。私は悪くありません。」

確かに事情を聞いた今、そうだと思うし、その上でいちゃもんまで付けられたのだから怒るのもわかる。
わかるけれど……。

「相手はメイジだってのに…ああもう!ほんとダメットなんだから!!」

それが聞こえたのか、ダネットはギーシュからわたしに視線を移し、声高らかに宣言した。

「私はダメじゃありません!このキザ男なんてちょちょいのちょいです。乳でかやメードの女と一緒に見てなさい!!」

メイドとは恐らくシエスタの事だろう。
ちなみにシエスタはというと、後ろで目に涙を浮かべながらあうあう言って、右往左往していた。
自分がやらせた仕事の結果、こうなってしまったのだから無理も無い。

「あちゃー…今のでギーシュ、完全にキレたわよ。」

ツェルプストーが言って、頭を抱える。
今やギーシュの顔色は、ツェルプストーの赤髪のように新っ赤になり、頭の上に鍋でも乗せたら熱湯ができあがりそうなぐらい怒っていた。
ギ−シュはドットメイジだ。だからメイジとはいえ、強力な魔法は使えない。
だが『メイジ』なのだ。
亜人とはいえ、戦闘力で魔法の使えないダネットとは天と地の差があるだろう。
ダネットの身体能力は少し知っていたが、下手をすれば、それが中途半端にギーシュに本気を出させ、結果としてダネットは大怪我を負ってしまうかもしれない。
ならわたしはどうするべきか?
少しでもダネットの怪我が軽く、尚且つギーシュの気が晴れたかという所で止めるしかない。
そんな事をしたら、自分も無事ではすまないかもしれないけれど、ダネットの大怪我を見るぐらいならその方がマシだ。
578お前の使い魔 六話:2008/10/28(火) 13:57:09 ID:xlntZANM
「ツェルプス……いえ、キュルケ。危ないと思ったら止めるわ。その時は手を貸して。」

悔しいが、自分の実力では止められないかもしれない。
だから隣のツェ……キュルケに頼む。
ヴァリエール家の者が、ツェルプストー家の者に頼みごとをしたなんて、お母様に知られたら勘当ものね。なんて考える。
だけれど、今はそんな事言ってる場合じゃない。
プライドを優先させて使い魔を死なせました。なんて事になったら、わたしは一生後悔する。
第一、そんな事でダネットを失いたくない。

「…………わかったわ。タバサ、あんたも手伝ってくれる?」

この前から家の名前でのみ呼ばれていたのに、わざわざ名前を言いなおしたという事は、それだけ真剣なのだろうとキュルケは察してくれたらしく、真顔で頷くと、自分の隣にいつの間にかいた青髪の生徒、タバサに協力を求めた。
タバサは小さく頷き、肯定の意思を示す。
そうこうしてる内に、ギーシュが決闘の宣言をする。

「諸君!!決闘だ!!」

沸き立つ生徒。
そんな生徒の姿を見て、わたしは唇を噛み締める。
こんなのがわたしと同じ貴族?
亜人とはいえ、女を寄ってたかってリンチするのがメイジの姿?
納得できない。納得できるもんか。

「僕はメイジだ。だから魔法で戦う。よもや文句はあるまいね?」

ギーシュが杖を振り、そこから現れた青銅のゴーレムを自分の前に出し、ダネットを小馬鹿にした顔で見ながら言う。
それを見たわたしは、しめたと思った。
ギーシュの魔法は、ゴーレムの同時数対召喚だったはず。
まだ一体ということは、ギーシュは本気を出していない。
恐らくはギーシュも、女相手に本気は出せないという事だろう。
これなら、酷い結果にはならないかもしれない。
そんな事をわたしが考えていると、ダネットはエメラルドグリーンに輝く二つの短剣を片手に一本ずつ持ち、器用にくるりと回した後に不敵に微笑んだ。

「文句なんてありません。」

それを聞いたギーシュは、少しの驚きや怯えも無いダネットを見て、少しだけ怯んだが、薔薇の造花を模した杖を口の高さまで上げ、尚も口上を続けようとする。

「言い忘れたな。僕の二つ名は『青銅』。青銅のギー」
「やあっ!!やあっ!!」

ギーシュの口上を遮り、ダネットの気合いというには可愛い声が広場に響く。
ダネットはゴーレムに斬りかかり、澄んだ音がしたかと思った時には、タンという音を立ててくるくると回転しながら自分が立っていた場所に戻っていた。
斬りかかられたゴーレムを見てみると、胸のあたりがざっくりと十字に斬られ、緩慢な動作で地に崩れ落ちようとしていた。

「ちょっとルイズ…何よあれ……むちゃくちゃ強いじゃないあの子……」

キュルケの驚きが隠せない言葉が聞こえたが、驚いてるのはわたしもだ。
あいつ、あんなに強かったんだ。
わたしの脳裏に、召喚した後に言っていたダネットの言葉が蘇る。
『世界を破壊しようとした三体の巨人を倒した。』
今も信じてはいない。
信じてはいないけれど……でも、もしかしたら……。
呆気に取られたわたし達や、他の生徒が口を開けてぽかんと見ている中、まさかゴーレムをあっさり破壊されると思っていなかったギーシュは半狂乱になり叫んだ。

「わ、ワルキューレエエエっ!!」
579お前の使い魔 六話:2008/10/28(火) 13:59:12 ID:xlntZANM
杖を振り、薔薇の花弁を落として六体のゴーレムを繰り出し、ダネットと距離を取る。
マズい。本気だあのバカギーシュ。
視線でキュルケに合図し、キュルケも悟ったのか、タバサに目配せする。
そしてわたし達が決闘の場に飛び込もうとした時、ダネットは言った。

「ようやく本気を出しましたか。ならば私も手加減しません!!」

何ですと?まだ何かあるっていうの?
もしかして、亜人特有みたいな変な魔法とか使えたりするんじゃないでしょうね。
ダネットは二本の短剣をくるくると回して握りなおした後、ギーシュに向かって短剣を突きつけ、その名前を口にした。

「迅速の刃をくらうがいいです!秘剣、くる鈴斬!!」

ヴェストリの広場が静寂に包まれる。
しっかり10秒ほど経過した後、どこからともなく笑い声が聞こえだした。

「……ぷっ!!くるりん?」
「駄目よキュルケ!笑っちゃ……プッ!!」
「み、ミス・ヴァリエール?し、真剣なんですから笑ってはいけないかと」
「…あんただって肩が震えてんじゃないのよシエスタ」
「凄いネーミングセンス」
「た、タバサ、勘弁してよ…ぶふっ!!」

最初、何で笑いが起きてるか理解できないという表情だったダネットは、ようやく技の名前が原因だと気付き、真っ赤になりながら反論しだした。

「ば、馬鹿にしないでください!!ええい!!お前達に目にモノ見せてやります!!いきますよキザ男!!」

駆け出したダネットの姿を見て、周りに釣られて笑いそうになっていたギーシュの顔が真剣になる。
わたし達も笑うのをやめ、その動きを見た。
いや、見えなかった。
ゴーレムとギーシュの中に飛び込んだのまでは確認できたのだが、その後に見えたのは、空高くに打ち上げられたギーシュの前にいたゴーレムの姿。
そして、打ち上げられたゴーレムの下に向かって、緑色の塊のように丸まったダネットが飛び込んでいく。
くるくると回りながら、遠心力で何度も何度もゴーレムを斬り裂き、一瞬でゴーレムだったものは青銅のガラクタとなってしまう。
回転は勢いを増し、もはや最初の形さえわからなくなってしまったゴーレムに向けて、「沈めてやります!」と叫んでゴーレムの身体をぶち抜いた。
いや、青銅だぞそれ。金属の中では柔らかいとはいえ、それなりに硬いんだぞ。
わたしが心の中でツッコミ入れた時には、粉々になったゴーレムがバラバラと地に落ち、同時にダネットもスタっと着地していた。
着地したダネットは、ゴーレムを破壊されて放心しているギーシュに向かって短刀を突きつけ言った。

「キザ男に喰らわせて首根っこへし折ってやるつもりでしたが、ちょっとだけしくじりました。なのでもう一回!!」
「あんたはギーシュを殺す気か!!」

こっそりダネットの後ろに回っていたわたしが、ダネットの頭に平手打ちを食らわせ、スパーンと心地よい音が広場にこだまする。
叩かれたダネットは涙目になりながらわたしを見て、真っ赤になりながら怒り出した。

「な、何をするんですかお前!!…ハッ!!もしやお前、このキザ男とグルだったのですか!!」
「違うわよ!!」

スパーンスパーンと立て続けに平手を食らわせる。
教室に入った時のようなやり取りをしていたわたし達を、ギーシュの言葉が遮る。
580お前の使い魔 六話:2008/10/28(火) 14:00:16 ID:xlntZANM
「ルイズ!!なぜ決闘の邪魔をした!!」
「いや、あんなの食らったら死ぬでしょあんた。」

わたしの反論に、「うっ……」と言って固まるギーシュ。
そして、俯いたまま、小さな声で呟くように言った。

「僕の……負けだ……」

こうして、ギーシュとダネットの決闘は、ギーシュの敗北宣言により幕を下ろした。……ら、良かったんだけれど。

「で?あんたあれを本気でギーシュに食らわせるつもりだったの?」
「当たり前です!首根っこへし折ってやるのです!!」
「短刀を抜くな!!しまいなさい!!ギーシュもいちいちビクビクしない!!」
「どうしてそのキザ男を庇うのですかお前!!やっぱりお前、そのキザ男とグルなんですね!!」
「違うって言ってるでしょうが!!この!!この!!」
「痛っ!!痛っ!!何をするのですかお前!!おのれ…こうなったらお前もくる鈴斬を受けなさい!!」
「上等よ!!あんたなんて爆破してやるわ!!このダメット!!」
「へーんだ!!お前のへなちょこ術なんて怖くありませーん!!」
「言ったわねえええ!!食らいなさい!!」
「きゃあ!!お前っ!!本気でやりましたね今!!」
「本気も本気。大本気よ!!今日という今日は、わたしがご主人様だって身体に染み込ませてやるわ!!」
「上等です!!泣いたって許してやりません!!」
「いくわよダメット!!!!」
「来なさいダメルイなんとか!!!!」

こうして起こりかけた、第二回ヴェストリの広場の決闘は、わたし達の後ろに回っていたキュルケのげんこつと、タバサの杖の一撃で幕を下ろしたのだった。
581お前の使い魔 六話:2008/10/28(火) 14:02:16 ID:xlntZANM
以上で六話終了
今回はちょっと少なかったですね。すんません。

このssを読んで、ソウルクレイドルに興味を持ったという人がいるのは嬉しい限り
それでは
582名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 14:03:11 ID:FsBljgoG
乙、そしてGJまじGJ
583名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 14:22:24 ID:Rr2/A4QE
>>581
ダメット可愛いよダメット(;´Д`)ハァハァ
ちょっくらソウルクレイドル買いに行ってくる
584名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 14:59:44 ID:0F8Xddio
ダメット可愛いけどルイズのウザさは異常
585名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 15:10:11 ID:ouDQXnSf
ルイズにはぜひはりせんを常備していただきたい
586名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 15:13:25 ID:ufLsm+2v
ダネット乙。
ソウルクレイドルを知らなかったが興味持った!

そしてパクマンさんはカエルのロボであらせられるのでモンモンが召喚する手も合ったかなぁと今更思ったが手遅れだった。
587名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 15:47:00 ID:03odfmAf
>586
一瞬にしてギーシュがバッタ男に変換された。

そしてヴェルダンデに食われた。
588名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 16:03:50 ID:utGuMuRA
所長を召還したテファ手篭めにされるが浮かんできたぞ
589名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 16:05:35 ID:utGuMuRA
さげ忘れれてた
ごめんなさい
590ルイズが武器屋に拾われました:2008/10/28(火) 17:51:52 ID:aZs+5aho
規制が解除されたようなので、ようやく投下できそう。
オチもなんもないけど、これからにつなげようと思います。
五分後に投下!
591名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 17:52:58 ID:aZs+5aho
って、よく見たらスレ間違えてるorz
とりあえず何も見なかった事にしてくれ……
592名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 17:54:34 ID:hcj/mpHX
向こうのスレでお待ちしています。
593名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 17:56:03 ID:YW4E3HGJ
惚れ薬で発情したダメットとアルを楽しみに待ってます。

ぺドフィリアではないです。
594名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 18:31:44 ID:RcoOt24I
魔導書に発情するビブリオマニアですね、わかります
595名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 18:35:10 ID:zzbklCvn
紙使い読子さんの出番ですね。
596名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 18:43:24 ID:GLtutlyu
あれ、RODは無かったんだっけ・・・どっかで見たような気がしてたんだけど
597名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 18:45:53 ID:YW4E3HGJ
本フェチタバサ

タバサ「・・・・」
(不思議、アルを見てるとドキドキする。
これが恋?)
598名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 18:50:05 ID:hcj/mpHX
読子さんは扱いを気をつけないと禁断症状で暴れ出すか、
図書室に立てこもるか引きこもりかねないような気がする。
アルビオンあたりには希少本があるとか言えばノコノコついて行きそうだけど。
>>594
マイナーだけど、モリアン・ゼナス氏に一票。禁書の知識の為に自分の人生捨てました。

応援があったからハイテンションになって書くと、
気が付いたら午前1時50分でした。こんな経験ありますよね。
よろしければ午後7時より投下したく思います。


600名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 18:57:33 ID:WZI8u7B+
待ってた
18.ブルースカイ・ハイ

とぉぉんでるよ〜そぉらぁをとぉぉんでるんだ〜
クリフ・レーサーは空高く飛ぶんだぁ〜とぉぉんでるよぉぉ〜
ところで、クリフ・レーサーってなんなんだろう。後でマニマルコに教えてもらおっと。


「なぁ、犬」

レキシントン内の密室。吐き気をこらえるクロムウェルに向かって、ぞんざいにマニマルコは言った。
犬きた。クロムウェルはさて、何かしたっけと自分の秘書兼雇い主のマニマルコを見た。

「何かご用でしょうか?マニマルコ様」
「ワルドだったか。本当に使えるのか?」

いや、そんな事言われても連れてきたのはあなたですし、
水の精霊を従わせる為に、ラグドリアン湖に行ったのも俺・ワルド・貴女様でしょうに。
とは言えず、柔らかく言うクロムウェル。

「あなた様と一緒に水の精霊をどうにかしたのですから、使えるのでしょう?」
「ああ、そういえばそうだったな」

彼女は興味の無いことをすぐに忘れてしまうらしい。
その性格は便利だろうなぁ。最近胃薬の使用が絶えない彼からしてみれば、
羨ましいことこの上ないものだった。

オリヴァー・クロムウェル。今や貴族派の首領となった彼は、
元々はアルビオンで、司教という高い地位についていたのだが、
本人曰く「何で俺こんな席に座っているのか未だに分からない」だそうだ。
元々彼は、口の上手く手先の器用なこそ泥で、当時はオリヴァンと名乗っていた。
彼はアルビオンを渡り歩いて、少々ばかりの金銭を得て暮らしていた。
孤児院生まれの孤児院育ちだった彼は、働くことを嫌って小悪党になったのだ。

ある時、ひょんな事からある村の司祭を助け、それからトントン拍子に出世が続き、
いつの間にやらこの地位を得ていた。棚からぼた餅と一緒に大量の金塊が落ちてきた様な物である。
ちょっと調子に乗った彼は酒場で一言もらした。「王になるのも悪くないかもしれないな」と。
本当に現在進行形でなりつつある。少々マズイと思っていた。
自分はそんな器じゃない。司教の通知が届いた時も寝込んだというのに。

口の上手さは演説の上手さ。彼のそれは多くの民衆を魅了し、
信心深き者は尚更に敬虔なブリミル教徒へとなっていった。
俺の経歴知ったら傷つくだろうなぁ…今となっては誰にも言えない話である。

「マニマルコ?ここにいたんだ。クロムウェルも」
「ああ、イザベラか。どうしたのかね?」

マニマルコが唯一優しく接する彼女――青い髪のイザベラ。
凄まじい「先住魔法」の使い手にして、火竜すら素手でなぎ倒せるだろう程の力を持った彼女。
しかし――とクロムウェルは思う。あの薬を本当に使い続けて良いのだろうか。
「クリフ・レーサーって何?」
「ああ、空を飛ぶ化け物だ。人を襲う」

人ならざる気配を放つマニマルコは、イザベラの発作を押さえる為と称して、
赤い液体をクロムウェルに渡していた。飲ませろとの事だった。

どうにも危険な気がしてならない。以前見たスクゥーマなる薬に似た匂いだからだ。
エルフの地にある木。それの樹液が原料だという薬を飲むと、
とてつもない高揚感と共に幻覚を見て、飲み過ぎれば死ぬと言う。
自分は飲めなかった。怖いから。

時たま彼女が帰ってきた時、苦しそうに呻きながら暴れるのを、
クロムウェルはどうにか押さえ、薬を口に流し込む。
すると少々頭のネジがはずれたいつもの状態に戻るのだ。
大抵、彼女を押さえ込むときに骨をいくつかやったりするが、まぁ慣れた。
その後涙ながらに治してくれるし。可愛い女の子の涙は反則なのである。

「さっき教えてくれた歌って素敵ね。おもしろくて……」
「ん?どうかしたのか」

目の色が変わり、獣が怯えるだろう笑みをイザベラは浮かべた。

「いる」「どこに」「あっち」「ワルドは?」「いる」

たった三言でマニマルコは理解できているらしい。
話によると先住の魔法の中には生命力を放つ存在を、
探知する魔法まであるとか。おそらくイザベラは、
それを使って探知していたんだろう。
メイジでないクロムウェルにはあまり分からない事だった。

「ならダメだ。そいつらはワルドの獲物だ」
「えー…あ、もう一ついるよ!」

マニマルコの表情が変わった。私は何も聞いていないのだが。そんな顔だった。

「犬?」
「お、おそらくワルドが女官を使って姫殿下を操ったときに用いた『盗賊ギルド』の船かと…」
「そうか。ここにもいたか」
「は?」

メイジギルドにすら劣る連中を助けて何が起こると言うのか。
まぁ、そんな連中でも潰しておくことは大切だ。
もうあのような失態を犯すつもりは、マニマルコにはなかった。

「いや、いい。イザベラ、場所は分かっているね?」
「うん。やっつけていいの?」
「ああ。ジョゼフ様もお喜びになるだろうしね」

心からの笑みを浮かべて、イザベラは辺りを飛び跳ねだした。

「では、後を任せたぞクロムウェル。私は少々こいつをいじりたいんだ」
「ええ。分かりました…では」

先ほどから続く吐き気をおさえつつ、クロムウェルはイザベラと部屋をでた。
密室の名は遺体保管室。マニマルコのコレクションルームともいえるそこで、
舌なめずりをしながらどんなアンデッドにするか、考えるマニマルコであった。
人を殺し過ぎた人間は、ある日凶悪なドラゴンになるという。
ただでさえ酷い力を持つ蠱の王は権力と金を持ち、
さらなる力を求めてさまよっている。
もはや、人の言葉が通じぬ彼女を倒すドラゴンころしは、
未だ一人も目覚めてはいない。


「いぬ〜いぬー。クロムウェルは何いぬなの?」
「さぁ、何だろうね?」

むーと口を膨らませるイザベラ。可愛らしい。まだ二十代のクロムウェルは、
いかんいかんと思って彼女から目をそらした。命令は伝えた。後は目的地に着くのを待つのみと思いながら。

「犬の癖にこのあたしに逆らうってのかい?」

うわ、スイッチ入った。彼女は時たま思い通りにならないと口調が荒くなり、目が赤くなる。
マニマルコの話だとこっちの方が素らしい。ガリア王家はどういう教育をしているのだろうか?
いや、あの無能王の――

「きいてんのかい!」
「あ、ああ。聞いてるよ。だから少し落ち着いて。皆怯えている」

イザベラははっとして辺りを見回した。戦場での彼女をよく知る兵達は震えを止めようともしない。

「あ、その、えと、ごめんなさい。駄目だなぁ。わたしって」

おしとやかじゃないとだめなのに。そう言って床に座り、のの字を書き出した。
彼女は、色々あったらしい。決して全てを語ろうとはしないが、
しかし、『シャル』という子にとてもひどい事をしたと、悲しそうに話してくれた事があった。

「大丈夫だよ。君はとても優しい女性だとも。始祖に誓って言おう」
「本当!?クロムウェルってお上手なんだから!!」

よくもまぁ、あんなのにそんなセリフを吐ける物だ。
流石は聖職者、ネジが飛んでやがる。そこにいた兵士は一人残らずそう思った。

少しして、レキシントンが目的空域に到達した後、
甲板まで出たイザベラとクロムウェル。そこにいた兵達は敬礼して、一人が言った。

「クロムウェル様。『ブルー』を出すのですか?」
「ああ。彼女が敵を見つけたからね。すぐに片付けて来るとも」

ガリア王家とは絶対に言えないから、偽名である。
彼女は美しかったが、決して誰も近寄ろうとはしなかった。
別に、マニマルコに何か言われた訳でもなく、彼女と話すクロムウェル以外は。

どことなく、昔の自分を見ているのかもしれない。
そう思って彼は話しかけているつもりだが、
彼は未だに恋をした事がなかったりする。
つまり、そういうことなのだ。彼自身気がついていないし、
イザベラも…まぁ気がついていないだろう。おそらく。
「分かりました。ミス・ブルー。どうかお気を付けて」
「ええ、ありがとう。それじゃクロムウェル――」

クロムウェルの首根っこを、強引にひっつかんでその場に座らせると、彼女は頬にキスをした。

「いってきまーす!」

風を切る音のみが響く。竜すら越える速度で飛ぶ彼女から逃げ切れる存在など、
少なくともハルケギニアにはいなかろう。

「だ、大丈夫ですか閣下!」
「ん?ああ、慣れっこだとも。なかなか役得だと思えてきた」

こいつ筋金入りの変態だ。一部でそう思われている事を、
クロムウェルはこれっぽっちも知らないのだった。


エマー・ダレロス号は現在雲海の狭間を航行中である。
グレイ・フォックスが乗る船より彼の定期的な通信がフーケに届くため、
今の所遭難等の問題はなかった。

「しっかし、このマジックアイテムは便利だね」
「何ですの?それ」

キュルケはフーケの持っている人形を見た。
手あかの付いたそれは良く使われているらしい。

「ああ、サウスゴータの宝物庫にあってね。
これに向かって話すと遠くにいる相手に声が通じるのさ。
あたしが持ってる様なのはいくつかあってね。
ギルドの中で特殊な任務に就いてる奴が持って、
いつでも持ってる者同士で話が出来るって訳さ」

「なるほど、ところで――」
「姐御ぉ。何かまずいんだが」

哨戒ルートを知っているはずの太っちょが言った。

「何があったんだい?」

「さっき雲の隙間から見えたんだが、近場に何故かレキシントンがいる。
今日のルートは、ここより遠い場所でニューカッスル城を撃つ予定のはずなのに」

「ガセを掴まされたってことかい…?」
「いや、それならこっちがバレてるはずなんだが…」
「何もしてこない?」
「そうそう。賢いねゲルマニアのお嬢さん」

ふむ、とフーケは頭を捻らせる。
相手の狙いが何か、だ。
そもそも傭兵は誰から頼まれて襲撃した?
今徹底的に調べさせているから誰かが尻尾を掴むだろうけど――
「姐御!相手が分かった。メイジだ!風のメイジ!」
「風…ねぇ」

まさか――ワルドという男はグリフォン隊の隊長で、風のスクウェアメイジと聞いた事がある。
最近どうも王宮の動きがリッシュモンを中心にきな臭くなっているが――

そう考えてみれば、あの姫様がいきなりあまり知らない野郎に、おともだちの婚約者と言っても頼み込むか?
フーケの思考は疑惑から確信へと変わりつつあった。

「ちょいと聞きたいんだがね、ゲルマニアの。ワルドって男はどんな奴だったんだい?」

「そうね。何かヤな感じがしたわ。私になびかなかったし、
婚約者って言っていたけれど、ルイズの事、物としてしか見ていなかったもの」

「何か言ってなかったかい?力がどうのとか」
「聞いてないわね」

押しが弱い。それなら家名の為に物扱いしていると考えられる。
う〜んとうめくフーケに、二回目の報が入った。

「姐御、スカロンからの連絡だ!人相が割れた。聞いた感じだとこんな奴みたいだ」
「流石は『影滅』のスカロン。平民なのに二つ名持ちは伊達じゃあないね。見せてみな」

言って、頭巾の男が持ってきた紙に書かれた人物を見る。ふむ…白い仮面を被った黒っぽい服とマントでこの体格の男は――

「ワルドじゃない!」

キュルケが叫んだ。フーケは即座にグレイ・フォックスを呼び出し、
そいつが裏切り者である可能性が高い事を教えた。

「分かった。まぁそれならこの船は大丈夫ということか」
「何がだい?」

「『蒼い死神』の話だ。もしかしたらここら空域に現れるかもしれん。
レキシントン周辺での目撃回数が多いからな。そっちは気を付けろよ」

蒼い死神。クロムウェルが東方から呼び出したと言うそいつは、
数週間前から現れ、王党派の船を単騎で轟沈させてきたと言う。
また、杖も無く空を飛び、竜騎兵を素手で竜ごと葬り、
空からの魔法の一撃は、地上の兵を跡形無く消し去ったという。
そんな、それ何て『烈風』?という話から付けられたあだ名が『蒼い死神』なのだ

「…マジかい。それ」

「心配するな。その船にはノクターナルの魔法がかかっている。
色々とアレなデイドラ王子だが、付呪の腕前だけは絶対に間違い無い」

「その言葉信じるよマスター。それじゃ、影の導きがあらんことを――」
「きゅいー!!!」

通信を閉じてから、急にタバサのシルフィードが暴れ出した。
「な、何だい?」
「おねーさま!だめなのね!早く逃げるのね!あれは、あれは――」
「しゃべったぁ!?お前韻竜なのか?」
「そんな事どうでもいいのね!きゅい!大いなる意志の敵がくるの!シルフィ達が敵いっこないのね!」

それは、初め風の音だった。だが、それが近づくにつれてもっと違う音だとタバサは分かった。
空を飛ぶ音。しかも高速で何かが近づく音。やがて皆が気付く。何かがいるという事に。
しかし、暗い雲海の狭間では音はすれども姿は――いや、見えた。
赤い目の残光が、船の後方を亡霊の様に走る。
全身が青で統一された軽鎧に身を固め、
肩のみを真っ赤に染めている。暗くてまだ顔が見えない。
ゴクリ、と誰かがつばを飲み込んだ。何が東方だ。
あんな奴この世の存在じゃねぇ。冥府の死神に違いない。そう思いながら。

船が雲海を抜けた。
未だに尚それの音が近く、大きくなる。
タバサがその音の方を見ると、見知った顔がいた。

「イザベラ…?」

彼女はタバサに気づく訳でもなく、船を楽しそうに眺めていた。
どうしようかなぁ。炎で燃やす?氷でカチンコチンもいいなぁ。
稲妻でしびれさせて――ゾクゾクしちゃう!

「蒼い…蒼い死神だ!まずい、船長!スピード上がらねぇのか!?」
「こんな時だけワシ頼りかいっ!ダメだ。これ以上はもう上がらん!!」

すぐに追いつくだろう。曲線と直線を混ぜながらイザベラはこっちに飛んでくる。
遊んでいるらしい。上昇したり下降したりしながら、
速度に緩急をつけつつこちらに近づいていた。
船の鼻の先まで近づいたイザベラは、ふいに手を掲げた。
船より大きな火の球が手の先より現れる。

「なぁ船長。ちょっと聞いてくれるかい?」
「何だフーケ」
「この船にかけた魔法効果って何だっけ?」
「敵から逃れる奴だろ?」

忘れてしまったか?という風に船長はフーケを見る。

「発動条件は?」
「ノクターナルかグレイ・フォックスが乗っていること」
「どっちもいないじゃないかぁ!マスターのばかぁぁぁぁぁ!」

基本的に抜けているデイドラ王ノクターナル。それの性格は灰色狐にも伝播しているようだった。
フーケの嘆きを余所に、火球はイザベラの手を離れてエマー・ダレロス号へと向かう。

「回避!回避ぃぃぃぃぃ!」
「無理だ!!追ってきやがる!ちくしょうがぁぁぁぁぁぁ!」

本来、シロディールの魔法に誘導性能は無い。
そう、シロディール『だから』無いのだ。
マニマルコ秘伝の魔法は、彼女が万全な時であっても、
マジックアイテムの補助無くしては唱えられない物も多い。
この誘導性能付き炎魔法もそれの一つだった。

「燃えちゃえ!燃えちゃえ!船ごと燃えちゃえぇぇぇぇ!」
607名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 19:05:09 ID:hcj/mpHX
シャドウハイチュウ支援
イザベラは楽しそうに笑っている。タバサは彼女が怖くなって震え始めた。
それを見たキュルケがタバサをきつく抱きしめた。あれには敵わない。
本能的に理解できたため、無駄な抵抗ができなかった。

「ちょ、ノクターナルゥゥゥ!何とかしておくれよ!!」

しかし、返事は無かった。

「いやぁぁぁぁ!!」

フーケが叫び、船が炎で包まれるかと思われたその時、
炎は止まり、少し小さくなった

「へ?何よ。何よそれぇ?」

何が起こっているのか、イザベラすら分からない。
皆の時間が止まり、炎球を見る。色が段々と変わり始めた。
みるみる内に灰色へとそれは変わり、炎に照らされた船とその乗組員やイザベラは、
脈打ちながら降り注ぐ灰をかぶったようになった。
炎の色はますます暗くなり、炎球の周りはまだ昼だというのに、
まるで真夜中の森のような暗さになっていく。しかし、
未だその変化はとどまる所を知らず、とうとう炎の色は漆黒よりも黒い、
『虚空のような名付けようのない色』になった。

炎は周りの全てを照らしたが、しかしその光は普通のそれとはほど遠い物だった。
タバサとイザベラの青い髪は白く輝く色になり、透き通る白い肌は闇よりも黒く光る。
キュルケの髪の色は緑色に輝き、肌は本来のタバサの様に白く輝いた。
フーケの髪は真っ赤に変わっている。

夜の女王ノクターナルが色のない色の炎から進み出ると共に炎の球は消えて、全てが元に戻る。

『待ったか?』

とても気楽そうに言う。フーケは少し怒鳴り気味で言った。

「ああ、もう寿命が10年は縮んだね」
『なに、英雄は・少し遅れて・やってくる。と聞いたからな』
「誰にだい?」
『決まっているであろう。英雄だ』

フーケは頭が痛くなってきた。いつもこいつはこんな感じだ。
神様特有というかそんなもんだとグレイ・フォックスには聞かされたが、
しかし、こう、何というか…そうフーケが考えていると、蒼い死神が動いた。

「何よ、何よあなた。邪魔よ、邪魔なんだよ。どけよそこうざいから。いや、もういい。失せろぉぉぉぉぉ!!!」

イザベラの目が赤く光って魔法を放つ。先ほどよりさらに大きな炎がノクターナル目掛けて投げられた。
しかし――ノクターナルがどこからか取り出した盾が、まるで吸い込むかのように魔法を消し去った。

『「灰色のイージス」なり』

その効果、全魔法完全無効化。その力、完全なるメイジ殺しの為の盾。
作りし者が不明の闘技場の戦士の品は、
最近ノクターナルが普通の盾に付呪して造った物であった。
勿論、これを持たせて闘技場に行かせたのも彼女である。
装飾はともかく、付呪師としては驚異的な才能を誇るノクターナル。
デイドラ王と超リッチの戦闘が、今、ここに始まろうとしていた。
投下終了。一番好きなジムは青くて目が赤いのです。ジム頭なだけですけどね。
冒頭の歌はオブリ内の酔っぱらいの歌。しかし本当にこんな字幕が出るため結構逝ってます。
フラァァァイ インザフラァァァァイってな感じで歌うんです。美声です。
ではまた次の投下まで。常闇の父を称えよ!
消えそう?『それがどうした!』の心持ちで突っ走りたいと思います。はい。
何かあったらまた言って下さいね。では。
610名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 19:13:07 ID:6rN9aNIT
乙でした!

>一番好きなジムは青くて目が赤いのです。ジム頭なだけですけどね。

蒼い死に神キタコレ
611名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 19:15:23 ID:0F8Xddio
>>590のスレってどこ?
612名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 19:19:59 ID:hcj/mpHX
>>611
【IF系】もしゼロの使い魔の○○が××だったら5
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1224849874/

クロスは原則禁止スレです。
613名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 19:25:37 ID:0F8Xddio
ありがと
614名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 19:36:43 ID:wZ9NkYZf
>>600
待っててくれてありがとう。これからも頑張りますね。

>>607
上手く影を味方に付けていらっしゃいますね。
支援ありがとうございます。

>>610
せっかく青いので、ちょっとやってみましたがいかがでしょうか?
気に入ってもらえたら幸いです。
615名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 20:07:24 ID:rlmZWP8z
>>609

イザベラ好きなんでどうなるかはらはらしてるよ
616名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 20:16:34 ID:ySRbnS2U
ゼロ魔は色々なスレがあるなぁ
617名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 20:54:11 ID:I7GyKFz7
>>609
投下乙
イザベラがアネモネに見えるから困る
618名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 21:05:52 ID:+13GdLhA
ルイズが刹那Fセイエイを召還しました
619名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 21:06:39 ID:+bXks6nT
>全身が青で統一された軽鎧に身を固め、
>肩のみを真っ赤に染めている。
ニムバスシュターゼンww
620名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 21:19:10 ID:OlA5YkDm
>>618
こちらにどうぞ

ガンダムキャラがルイズに召還されました 2人目
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/x3/1205871030/
621名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 21:29:48 ID:Y+koxMjB
>620
別にガンダムはここでスレチじゃないんだから
それに向こうは基本的にはSSスレじゃねえんだが
622名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 21:34:20 ID:4RmNfPH0
>>620
スレ貼って誘導するならまずそのスレを自ら見てみるべきでは?
623名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 21:39:07 ID:4jBAs9W2
ガンダムスレだとハルキゲニアに召喚だったのか
624名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 21:42:02 ID:FWYblDnm
ばあさんや、MtLの更新はまだかのぅ。
スターライト・マナバーンの更新はもう来たのにのぅ。
625名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 21:45:08 ID:wZ9NkYZf
>>624
のんびり待とうぜ。その内いらっしゃるさ。
626未来の大魔女候補2人 ◆kjjFwxYIok :2008/10/28(火) 22:04:23 ID:xPpalJw1
第9話が書き上がったので、投下したいと思います。
22:20からいいですか?
627名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 22:10:17 ID:sT95kCPf
どうぞ
628名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 22:13:00 ID:BllQVNye
蒼天航路の合肥ver張遼って需要ある?
書いてみたいんだが
629名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 22:13:57 ID:sT95kCPf
他人の需要あるなしじゃなく自分が投下したいかどうかで判断ドゾー
 
「ほら、知ってる事をキリキリ話しなさい」
「そうは言ってもよぅ 昔のことは殆ど忘れてんだから、話しようがねぇんだわ。これが」
「忘れてんなら、思い出しなさいよ。早くしないと溶かしちゃうわよ」
「おお怖。娘っ子は怖いねえ。お嬢ちゃん助けてー」

 ルイズとジュディは学院へと帰っていた。場所はルイズの部屋、時は夜。
 部屋の真ん中にあるテーブルの上には、抜き身のデルフリンガーが置かれていた。
 本来ならばサイトが持ち主なのだが、尋問するべくルイズが借り受けてきたのである。
 無論、サイトは拒否したのだが、説得と言う名のコンビネーションパンチを受けると、快く差し出したのであった。
 そういうわけで、2人はデルフリンガーを前にして話し合っていた。
 デルフリンガーが尋問を受けている理由は、ジュディの発した言葉に反応した事に起因する。
 その単語とは、ハルケギニアでは用いられていない単語であり、それを知るデルフリンガーは、ジュディと同じ所から来たのではないかと考えたからである。
 学院長の考えが正しいならば、東方でもない未知の土地の情報を引き出せるかもしれない。
 そう期待していたルイズだが、ソレは瞬くうちに失望へと変わり、やがて苛立ちへと変化していった。
 なぜなら、デルフリンガーは外見だけではなく、頭の中も錆びついていたためだ。




            未来の大魔女候補2人 〜Judy & Louise〜

            第9話 『魔剣とガントレットと魔女2人』




「デルフ君、本当に何も知らないの?」
「ホント、ホント。マジに憶えてないんだわ。この眼が嘘を吐いてるように見えるかい?」
「なに言ってんのよ、屑剣。アンタに眼なんかないでしょ」
「おお! そうだった。しっぱいしっぱい。
 んで、何の話だったっけ?」

 惚けた様子のデルフリンガーに、ルイズは苦虫を噛み潰したような表情を見せる。
 認知症の老人と対話するためには、根気が必要不可欠である。自分にそう言い聞かせ、ルイズは叫びたい衝動を何とか堪えた。
 夜風に吹かれた窓枠がカタカタと鳴る。それが笑われているように聞こえ、ルイズはどうにも落ち着かない。
 不機嫌な目で黙りこくっているルイズに代わって、ジュディが話を続ける。

「デルフ君は、魔生命体じゃないの?っていう話だよ」
「おう、そうだったそうだった。
 魔生命体ねぇ…… うーん。なーんか、聞き覚えがあるんだけどよぅ、どこで聞いたのか、サッパリ憶えてないんだわ。これが」

 その単語には、忘れた記憶を刺激されるものがあるらしく、デルフリンガーは唸る。
 しかし、全く思い出せないようで、『聞いた事があるかもしれない』という曖昧なものであった。

「私も魔生命体っていうのは、聞いた事がないわね。こういう喋る剣は、インテリジェンスソードって呼ばれてるけどね」
「インテリジェンスソード?」

 ジュディは聞いたことのない言葉に疑問符を浮かべ、ルイズの顔を見上げた。
 目と目が合うと、ルイズは頷き説明する。

「ええ、誰が何のために造ったのか知らないけど、そういうのがあるのよ。
 今じゃ、造り方は失伝していて、ごく少数しか現存してないわ。
 好事家の中じゃ高値で取引されてるらしいけど、剣を知性を持たせるなんて悪趣味も良いトコよね」
「ふーん。喋るだけなの? 自分で動いたりは出来ないの?」

 その疑問にルイズは答える。
631名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 22:21:25 ID:XarmV9Tg
「喋るだけよ。
 その、魔生命体だっけ? それは、勝手に動いたりするの?」
「うん、するよ。
 わたしは見た事ないけど、オジイチャンはそう言ってたよ」
「ふーん。大体、その魔生命体っていうのはなんなわけ? 生き物ってわけじゃないでしょ?」

 ジュディは目を瞑り、祖父から教えられた知識を思い起こす。そして、そのまま語り始める。

「えっとね……
 長い年月を経た器物に、魂や精霊、魔族などが宿って仮初めの命を得た存在を『魔生命体』って呼ぶの」
「魔族? 魂や精霊は何となくわかるけど、魔族って御伽噺にしかいないでしょ?
 それに、物に宿るっていうのが分からないわ。それじゃ、お化けじゃない」
「魔族はいるよ。
 図鑑で見たことあるし、オジイチャンもおかあさんもいるって言ってたもの。嘘の筈がないわ!」

 その言葉には、祖父への信頼と尊敬に溢れている。
 その瞳は、自分が姉(優しい方)に向けるモノと同じだという事にルイズは気が付いた。
 ルイズには2人の姉がいる。
 長女のエレオノールはルイズに輪をかけたキツイ性格をしてるのだが、次女のカトレアはたおやかで、何者からも好かれる性質の女性である。
 そんな彼女の様になるのが、ルイズにとって父母以上の目標であり、理想とする姿でもあった。
 今のジュディの姿は、ルイズを映す鏡だ。その無垢な瞳を通じ、ルイズは自分の中にあった理想を改めて見た気がする。
 熱い何かが胸一杯に広がる。が、それは一気に冷え込むこととなった。 

「それよりよぅ。そっちばっかり質問するのはフェアじゃねえんじゃねえかい?
 俺っちの頼みも聞いて欲しいんだがね」

 デルフリンガーが、妙に媚びた様な声を上げる。
 それが気に触り、ルイズはつっけんどっけんな態度でデルフリンガーを見下ろす。養豚場の豚を見るような目だ。

「……何なのよ?」
「なに、難しい事じゃねぇ。お嬢ちゃんに俺を持って貰いてぇんだよ」
「アンタ鉄の塊なんだから、ジュディが持ち上げられる訳ないでしょ。私でも重たかったんだから」
「うん。持ち上げるのは、ちょっとムリかな?」

 剣先から柄頭までの長さは、優にジュディの身長を超えており、ルイズと比べても殆ど変らない。
 そんなモノをジュディが持てるはずもなく、素気無く断られる。子供に大剣を持たせるというのが無理な話なのだ。
 しかし、デルフリンガーは諦めない。

「そんじゃ、柄を握ってくれるだけでいい。それなら出来るだろ?」
「うん。じゃあ握るよ」

 持ち上げる必要なないと聞くと、ジュディは即座に了承し、デルフリンガーの柄を握ろうと手を伸ばす。

「あっ! 待って!」

 ルイズは慌てて声をかけるが、既にジュディの手はデルフリンガーの柄を握っていた。

「えっ? もう持っちゃったよ?」
「気をつけるよう言いたかったんだけど、遅かったようね……」

 柄を握ったままの姿勢で、ジュディはキョトンとした顔を返す。ルイズは肩を落として項垂れる。

「かっかっか!
 娘っ子は過保護だねぇ。危ねぇことなんか何にもねえよ」

 過保護だとからかわれ、ルイズはバツが悪い。再び窓が軋んだ音をたてる。
 それを無視してデルフリンガーを問い詰める。これで下らない用件ならば、ただでは済まさない心積もりのルイズであった。
 
「それで、どうなのよ? 握ったからって何かが変わる訳じゃないでしょ」
「いやー 俺って剣だろ? だから、握ってくれたヤツの力量は大体分かるんだよぅ。
 鍛えりゃモノになるとか、全く剣の才能はないとかがな。そういう意味では、あの坊主は全く駄目だね。鈍臭いったらありゃしない」
「それがどうなるっていうのよ」

 ジュディは魔法使いであり、武器の扱いが上手くなろうがなるまいが関係がない。
 よしんば才能があるとしても、ソレに時間を費やすのはナンセンスだ。そんな時間があるならば、魔法の習熟に割り当てるのが正しいメイジの在り方というものだ。
 大体からして、無骨な武器を振り回すメイジは、軍人ぐらいしかいない。普通のメイジは、好き好んで武器など持たない。持ったとしても儀礼的なモノや、装飾品の様なモノだろう。
 ゆえに、ルイズはそんな才能などには、価値を見出すことは出来ない。
 そんな一般的な見解など、デルフリンガーは考慮していないようだ。

「うん。お嬢ちゃんに俺を振り回すのは無理だね。短剣とか弓がお似合いだね」
「……それだけ? 確かめたかったことは、それだけなの?」

 確認するように、極めて丁寧にルイズは問うた。
 その顔には、表情というものが欠落しているのだが、全くの無表情というわけではなかった。見る者が見れば、その仮面の裏に隠されたモノが分かっただろう。
 まさしく、嵐の前の静けさといったモノである。
 今、ルイズの中では暗黒が渦を巻き、解放される時を、今か今かと待ち望んでいる。

「うん」
「怒るわよ?」

 ルイズの視線に、剣呑なモノが混じる。小動物ぐらいなら、ストレス死させることが出来るくらいの凄みをきかせている。
 それに気が付いたデルフリンガーは、粛々と説明し直す。

「えーとですね。もしかして、『使い手』かもしれないと思って握って貰いました。
 でも、どうやら違うようです。なんか違和感を感じるけど、たぶん『使い手』じゃありません」
「使い手? なにそれ?」
「忘れました」

 デルフリンガーは即答する。
 強風が吹いたのか、窓が激しく揺さぶられ、ガタガタと音を立てた。その音に驚いたジュディは、そちらに目をやる。
 それよりも、ルイズには告げなければならない事があり、そんな瑣末な出来事には注意を払わない。

「……ポッキリいくわよ?」
「忘れちゃったんだから、仕方あるめぇ。長生きしてたら忘れ事の2つや3つあるものだろ!?
 だから、デルフ悪くない! デルフ悪くないもん!
 って、こらっ、杖を取り出すんじゃない!」

 聞くに堪えないデルフリンガーの言葉には耳をかさず、ルイズは袖元から杖を取り出す。
 逃げようにも、自分では動くことが出来ないデルフリンガーは、鍔元の金具を激しく動かしながら抗議の声を上げる。
 金属の擦れる音に比例してか、窓が更なる悲鳴を上げる。それは、窓枠にはまったガラスを割らんばかりの激しさだ。

「ねえ」
「みっともない命乞いはやめて法の裁きに身を委ねなさい!」
「法って何の法だよ!?」
「ねえったら」
「私が正義よ!」

 ルイズは傲然と言い放つ。

「酷ぇ! 横暴にもほどがあらぁ!」
「問答無用! ヴァリエール流躾術を喰らいなさい!」
「もうっ! ねえってば!」
「キャッ!? な、なに?」

 右手を後ろに引っ張られ、ルイズは目を白黒させて驚く。
 振り向いた先には、両手を腰にあてたジュディがいた。眉を吊り上げ、少し怒った様子だ。
 ジュディは、カーテンの閉まった窓を指差して告げる。
 
「お客さんだよ」
「えっ?」

 奇妙なことを言うジュディに、ルイズは耳を疑う。
 なぜなら、ルイズの部屋は3階にあるのだ。一体誰が窓から訊ねてくるというのだろうか。ルイズに思い当たる人物はいない。
 しかし、ジュディが下らない嘘を吐くとも思えず、言われたとおり窓辺に寄るとカーテンを少しずらし外を覗く。
 だが、窓からは夜の景色が見えるのみで、来訪者の姿はない。

「誰もいないじゃない……」
「下だよ、下」
「下?」

 その言葉に促され、目線を下にずらしていくと、真っ赤な小さい瞳と目が合った。
 それは、白い毛並みを持ち、長い髭と尻尾を持ったげっ歯類。毛が生えていないピンクの尻尾には、何かの文字が浮かんでいる。

「ちゅう」
「これは…… たしか、学院長の使い魔ね。なにしにきたのかしら?」

 来訪者はハツカネズミであった。どうやら、窓が揺さぶられていたのは風のせいではなく、このネズミの仕業だったようだ。
 ネズミが学院長からの使いだと判断したルイズは、窓を開けて迎え入れる。開け放たれた窓からは月光が差し込み、穏やかな夜風が吹きこむ。
 部屋に入ってきたネズミはテーブルの上に飛び乗る。その口には、手紙が咥えられており、それをジュディに向かって差し出す。

「手紙? わたしに?」
「ちゅうちゅう」
「なにかな?」

 ジュディは手紙を受け取ると、黙読を始めた。



 ◆◇◆



 朝食の時間が終わり、1限目の授業が始まろうとしている時間の学院長室に、3人の人影があった。
 老人と中年と女の子という組み合わせだ。老人とは、この部屋の主であるオスマンの事である。そして、当然、中年とはコルベールのことであり、女の子はジュディの事だ。
 オスマンは、座り心地のよさそうな革張りの椅子に腰掛けていた。その眦は下がり、柔和な笑みを湛えている。
 セコイアの大机を挟んで、オスマンはジュディと対面していた。ジュディの格好は、学院の制服姿であり、何時も被っているとんがり帽子は、入り口付近にある帽子掛けに掛けてある。
 そして、ジュディの傍らには、コルベールが直立不動の体勢で立っていた。

「ジュディちゃん、よく来てくれたね」
「はい。学院長先生、コルベール先生、おはようございます」
「うむ、おはよう。ところで、ミス・ロングビルはどうしたんじゃろうな? 今まで、遅刻なんぞしたことがないから心配じゃのう」
「はて? 朝食の席でも見かけませんでしたし、案外、寝坊ではありませんか?」
「わたしも今朝はまだ会ってないから、わかりません」

 ジュディとコルベールは首を横に振る。
 ロングビルの居ないせいか、学院長室の空気が緩んでいる様な気がする。
 あの理知的な雰囲気の美人秘書がいないだけで、こんなにも場の空気が異なる事にオスマンは、一抹の寂しさと張り合いのなさを感じる。
 コルベールとは打てば響く間柄だが、やはり隣に置くのなら女性、それも美人ならば言う事はない。
 オスマンは、残念そうな声でロングビルの不在を嘆く。

「うむむ…… そうか。まあ良い。時間も惜しいし、ロングビル抜きで始めるとするかの。
 今日呼んだのは、他でもない。
 ジュディちゃんに見てほしいものがあるのじゃ」
「はい、何ですか?」

 昨晩受け取った手紙にも、見せたいものがあると書かれており、ジュディはその要件は知っていた。しかし、何を見てほしいかまでは、手紙には書かれていなかった
 返事を聞いたオスマンはひとつ頷くと、大机の引き出しから、布に包まれたモノを取り出した。
 それをジュディの前に置くと、開けてみるよう目配せをする。
 ジュディはその視線に促され、巻きつけてあるだけの布を取っ払い、中身を確認する。

「これって……!?」
「どうじゃろうか?」

 ジュディの発した声には、軽い驚きが含まれていた。
 布に包まれていたモノは、指輪と石板であった。指輪の台座には真っ白な石がはめ込まれていた。しかもその石は、綺麗な球体に磨き抜かれていて傷一つ付いていない。
 石板は、横に長く、所々が欠けて幾つかの細かい罅が走っているが、大きな破損は見られず、記されている文字列と図形を読み取ることが出来た。
 ジュディはそれが何かを瞬時に把握した。同時に、何故オスマンが、コレを持っていたのか疑問に思う。

「魔道、板? でも、どうして?」
「やはりか……
 ジュディちゃんが魔道板を見せてくれた時、ティンときたんじゃ。見せて正解だったの」

 オスマンは軽く笑ってみせる。
 予想もしていなかった出来事にジュディは困惑を隠せず、ただ呆然と手元の魔道板を見つめるのみだ。
 頭の中に疑問が渦を巻き、動きを止めているジュディに代わり、コルベールがオスマンに問いただす。

「オールド・オスマン、何故そんなモノを持っているのですか?」
「まあ、その疑問は当然じゃな。
 ふむ? では少し、昔話をしようか……」

 オスマンは厳かな声でそう告げると、遠い眼をして語り始めた。

「そう、あれはもう何年前になるかのう…… たしか、80年ほど前の事じゃ。たぶん……
 当時のワシはの、武者修行とか言ってこのハルケギニア中を旅しておった。
 まあ、今思えばどうしようもない愚か者じゃった。自分の力を過信して、何でも出来ると思っておった」
「オールド・オスマン、貴方が? とても信じられませんな」

 とても信じられないといった表情をコルベールは浮かべている。それを見てオスマンは苦笑いを浮かべる。

「そうかね? まあ、昔の話じゃよ。魔法の腕で、自分に敵う者など居ないと自惚れておる井の中の蛙じゃったよ。
 おっと、こんな事言ってもどうしようもないの」

 仕切り直しとばかりに、オスマンは咳払いをした。

「ある日、ワシは山賊が出没するという村があると聞いて、森の中に入っていった。
 ああ、山賊を懲らしめてやろうとかを考えておったわけではないぞ。理由は忘れたが、ただ単に魔法を使いたかっただけじゃろうな」

 オスマンは自嘲する。改めて過去を思い出し、かつての自分に呆れているようだ。
 誰しも思い出したくない過去の1つや2つは有るという事だろう。
 2人は、無言で続きを促す。

「たしか、夕方じゃったかな? 夜にはなっていなかったはずだが、山賊共のアジトを見つけて正面から乗り込んだんじゃ。
 アジトは、天然の洞窟に手を加えたものじゃった。
 妙な事に、そのアジトはシンと静まり返っておって、猫の子一匹いなかった。留守なのかと思ったが、そうではなかった。
 山賊達は殺されておったのじゃ。しかも、そのどれもが炭化する程に焼き焦げておった。
 ワシはそれを見て、手練の火メイジの仕業だと思った。じゃが、それは間違いだと後で分かった。
 慎重に奥へと進んで行くと、アジトの奥で怪物と出会ったのじゃ」
「怪物、ですか……?」

 怪物という単語を聞き、コルベールは言葉を失う。
 このハルケギニアには、怪物と呼ばれる生物はいない。そんな言葉は、比喩や形容的に用いられるモノであり、単体で用いるモノではない。
 平民ならば、幻獣や亜人を見て怪物だと言ったりはするだろう。
 しかし、いまその単語を口にしたのは他でもない、齢300を数えるとさえ言われるオールド・オスマンなのだ。彼の持つ知識は半端ではなく、並みのメイジでは足元にも及ばないだろう。
 そんな老メイジが、怪物などという単語を使わねばならなかったのだ。身構えぬ方がおかしいだろう。
 オスマンは重々しい口調で続ける。
 
「そうじゃ。それは、火を吹く巨大なトカゲじゃった。
 おっと、サラマンダーではないぞ? サラマンダーとは似ても似つかぬ姿じゃったし、何よりも物凄くタフじゃった。
 やっとの思いでその怪物を倒したたあと、近くに転がっておったのが、その魔道板と指輪じゃ」

 オスマンはジュディの抱えている魔道板を指差して、最後に締めくくる。

「ワシはどうにかそれを解読しようと試みたのじゃが、結局、解読できず、長い間倉庫にほったらかしにしておったのじゃよ。
 曰く付きの代物じゃが、それを使える者が持っている方が良いじゃろう。その2つはジュディちゃんにあげよう」
「わたしに?」
「そうじゃ。ぜひ解読してみてほしい。その時は、ワシにも教えてほしい」
「…………」

 朗らかに笑うオスマンに対し、ジュディは無言で魔道板を見つめている。
 何時もの元気良さは鳴りを潜め、そのの瞳には、脅えが浮かんでいた。

「ど、どうしたんじゃ!?
 もしかして、昔話で怖がらせてしもうたか?」

 焦るオスマンに、ジュディは頭を振って応える。そして、大机の上に魔道板を戻す。

「心配させてごめんなさい」
「何を言うんじゃ。悪かったのはワシの方じゃよ。あんな話、せんほうが良かったのぅ」
「ううん、違うの。話が怖かったんじゃないの」

 ジュディは両肩を抱いて震えを止めると、脅えを僅かに残した顔を上げる。

「良く分からないけど、その魔道板から嫌な感じがするの。
 五行の力も感じるんだけど、それとは違う嫌な気を感じたの」
「ふむ? もうちっと、詳しく聞かせてくれんかね?」

 オスマンはジュディの顔を覗きこみ、詳しい話を聞こうと大机に身を乗り出す。
 その時、学院長室の扉が勢いよく開かれた。開かれた扉の先には、肩で荒い息を吐くロングビルの姿があった。
 ロングビルはオスマンの姿を確認すると、ツカツカと詰め寄り両手を大机に振り下ろす。どうやら、オスマン以外の姿は見えていない様子である。

「どういう事ですかっ!」
「な、なんじゃね? いきなり?」

 いきなり殺人的な視線に晒されたオスマンは、目を白黒させてうろたえる。
 コルベールは、見た事のないロングビルの剣幕に唖然とし、ジュディは呆然と見上げる。

「どうもこうもないです!
 何なのですか、このガントレットは!?」

 そう言って、右腕にピッタリとはまったガントレットをオスマンの鼻先に突き付ける。

「そ、それは……っ!?
 ……なんじゃったかのぅ?」
「知るかーーっ!」

 それを見て、一度は目を見開くオスマンであったが、どうにも思い出せず首を捻る。
 その惚けた態度を見たロングビルは、一気に感情の沸点まで達し、大声を張り上げる。

「何なのですか、これは!?
 いきなり暗い場所に引きずり込まれるは、怪物に襲われるはで、散々だったんですよ!」
「怪物ですと?」

 意図せずして、本日2度目の単語を聞いたコルベールは目を見張る。
 しかし、オスマンはそれどころではなく、どうにか宥めようと四苦八苦している。
「まあまあ、落ち着くんじゃ。
 一体それをどこで手に入れたのか聞かせてくれい」
「ああっ!?」

 剣呑な視線に射竦められ、オスマンは石像のように固まる。
 あまりの迫力に、コルベールも口を挟むことが出来ない。
 それほどに、ロングビルは頭に血が上っていた。
 下手に声をかけては、とばっちりを受けかねない。コルベールは心の中で謝り、遠巻きに見守る事に決めた。

「宝物庫ですよ、宝物庫!
 全く! 整理さえされていたなら、こんな事にはならなかったんですよ!? どうしてくれるのですか!
 前触れなく不思議空間に引きずり込まれたかと思えば、怪物と戦わされて……!」
「ごめんなさい。ごめんなさ…… どうしたんじゃ?」

 唐突に言葉が止んだ事を不思議に思い、平謝りに謝っていたオスマンはロングビルの顔を覗きこむ。
 ロングビルは、先ほどとは打って変わって憔悴しており、同時に戸惑いの表情を浮かべていた。周りを見渡し3人の姿を確かめると、ホッと安堵の溜息を吐く。
 余りの態度の変わりように、オスマンは心配になり、労わるように言葉をかける。

「どうしたんじゃ? 急に黙ってしもうて。具合でも悪いのか?」
「……どのくらい経ちましたか?」
「へっ? そうさの……
 ほんの数秒じゃよ。憶えておらぬのか?」

 オスマンは、質問の意味を測りかねて怪訝な顔をするが、素直に答えた。
 その言葉を聞くと、ロングビルは愕然とした表情を浮かべて呆然と呟く。

「そんな……?
 だって…… さっきまで亜人と戦っていたのに……
 数秒のわけがない。一体、どういう事なの……?」
「一体どうしたというんじゃ。しっかりしなさい、何時もの君らしくないぞい」

 元気づけようとするオスマンだが、ロングビルの耳には届いていないようだ。
 どうしたものかと手を拱くオスマンに先んじて、ジュディがロングビルに近づく。
 そして、ロングビルの右腕を持ち上げ、ガントレットをまじまじと観察し、ポツリと呟いた

「これ、一緒だ」
「えっ?」

 オスマンには全く反応を示さなかったロングビルが、ジュディを見つめる。それは、酷く頼りなく、何かに縋ろうとする瞳であった。

「うん。このガントレットから、変な気の流れを感じるの。
 うまく言えないけど、光と闇がごちゃ混ぜになっている様な感じ。魔道板とも似ているけど、一番似ているのはこの魔道板よ」

 大机の上に置いてある魔道板を再び手に取り、ロングビルに見せる。
 ロングビルは、力なくその魔道板を見つめる。だが、その瞳には僅かに生気が戻ってきていた。

「魔道板……
 なら、これを外すことが出来ますか?」
「……ゴメンナサイ。
 そのガントレットは、ロングビル先生の気と複雑に混じり合ってるみたいだから、無理に外すことは出来ないみたい」
「そうですか……」
「でも安心して。きっとわたしが何とかしてあげるから!」

 落胆するロングビルを見て、ジュディが元気づける。
 それを受けて、ロングビルは今更ながら自分の行動を把握し、自嘲気味に笑う。

「ふふ…… そうですか。頼みますよ」
「ダイジョウブ! わたしにまっかせて!」
「さて、落ち込んでばかりもいられませんね。今日も厳しくいきますよ」
「はーい。お手柔らかに」
 
 2人は互いに微笑みあう。どうやらロングビルは完全に立ち直ったようだ。
 彼女がジュディを見る目は優しく、知らない者が見れば、姉妹か親子に見えたかも知れない。

「うむうむ。一時はどうなるかと思うたが、なんとか解決の目処が立って何よりじゃな!」
「まったくそうですね。これで一安心ですな!」

 オスマンとコルベールは、互いに乾いた声で笑いあう。
 しかし、ロングビルは、のほほんと笑うオスマンを鋭い眼で見据えると、酷薄な笑みを浮かべる。まだ終わったわけではない。と、その眼は告げていた。

「何を言っているのですか?
 まだ許したわけではありませんよ。どうしてあんな風になるまで放って置いたかを聞かせてもらいますからね!
 あと、今すぐの宝物庫の大掃除を上申します」
「ひええ…… 勘弁してくれい」

 オスマンは縮みあがり、コルベールは難を逃れて胸を撫で下ろす。
 部屋に何時もの空気が戻ってきた。
 ジュディはクスリと笑う。

「ロングビル先生って、お母さんにちょっと感じが似てるかも」

 それを聞いてロングビル23歳は、少し切なくなった。結婚の適齢期から外れる瀬戸際の、微妙な女心である。



 ◆◇◆



 鐘が5回響き渡り、学院に本日の授業が終了したことを告げた。
 陽は西に傾いてはいるが、未だに陰りを見せず、空には青空が広がっている。
 講義室から出てくる生徒達の波は、途絶える事を知らない。しかしそれも出口までであり、塔から出ると、生徒達は思い思いに散っていく。
 さっさと寮へと戻る者もいれば、中庭で使い魔と戯れる者もいる。講義という重い枷から解き放たれた者達は、存分に自由を満喫していた。
 幾つもの人波の中の1つに、キュルケとタバサの姿があった。
 2人は談笑しながら、周りの速さに合わせて歩を進めている。とは言っても、殆んどキュルケが喋っているようなもので、タバサは時々頷きを返すだけだ。

「それでね、そいつったら未練がましく言うのよ『君だけが僕の全てなんだ!』てね」
「…………」
「冗談じゃないわよね、軽々しく全てなんて使わないでほしいわ。私は誰かを縛ったり、縛られたりするのって好きじゃないのよね」
「…………」
「モノの試しに付き合ってみたけど、案外面白味のない奴でガッカリしちゃったわ」
「…………」

 大仰な手振りを交えて喋るキュルケとは対照的に、タバサは沈黙を保っている。
 しかし、それは無関心からではなく、親友の言葉を一語一句しっかりと聞いているためだ。
 その事をよく理解しているキュルケは、気にせず話を続けている。噛み合っていないようでも、2人にはこれ位の距離感が丁度いいのだ。
 不意に言葉を切り、キュルケが立ち止まった。何かを見つけたらしく、遠くを見やっている。
 タバサもそれに倣い立ち止まると、キュルケの視線を追う。その先には、特徴的な紫のとんがり帽子が風で揺られていた。
 
「あれは、ジュディね。と、いう事はルイズも一緒よね。
 ふふっ…… 行きましょうか」
「…………」

 キュルケは、大好きなおもちゃを見つけたように眼を細めて笑うと、軽い足取りで近づいていく。
 タバサは、小脇に抱えている大きな本を持ち直すと、キュルケの後を追った。
 ジュディは木陰に座り込んでいた。鍔広の帽子から覗く顔は、安らかに目を閉じている。どうやら眠っているらしい。
 突如、突風が吹いた。樹は枝をざわめかせて多数の葉を散らせ、小鳥は飛び立つ。
 ジュディの頭の上でユラユラと揺れていたとんがり帽子は、その風で為す術なく舞い上げられた。
 キュルケは素早く杖を振ると、魔法で帽子を手繰り寄せた。そのまま横まで歩いていくと、ジュディに帽子を被せてから肩を揺すって呼びかける。
「ジュディ、ジュディ? こんな所で寝てたら、風邪引いちゃうわよ?」
「……っんぅ?」

 短く声を発して、ジュディは目を覚ました。
 眼を軽く擦ってから、周りを見回す。そして、2人に気が付くと、軽々と立ち上がった。
 お尻についた草を軽く払ってから、2人を大きな瞳で見上げる。

「こんにちわ。キュルケさん、タバサさん」
「お目覚め?」
「うん。おはようございます。えへへ……」

 眠っていたのを見られていたのに気が付いたジュディは、照れくさそうに笑う。
 その笑みを見て、キュルケの顔も自然と綻ぶ。
 不意に頭上が陰る。
 俊敏な動作でタバサは顔を上げる。すると、赤い鱗を持つ竜が視界に飛び込んできた。その竜は体に対して翼が小さく、鼻先には角が付いている。
 竜はジュディの傍らに舞い降りた。そして次の瞬間、絵具が水に溶けるようにして輪郭がぼやけ、一瞬にして掻き消えてしまった。
 一陣の熱風が吹きぬける。
 2人は目を見張り、ジュディを凝視する。

「それもジュディのファミリア?」
「そうよ。名前はイアぺトスよ」
「ふーん。本当に何体も持ってるのね…… 他にもいるの?」
「アストライオスは見せたよね? ポセイドンがいなくなっちゃったから、この2体だけだよ」

 ジュディは素直に答える。
 キュルケは感心した様に頷くと、先日のポセイドンを思い出し訊ねる。

「へー。そういえば、ポセイドンは小さくなってたみたいだけど、大きさって変えられるものなの?」
「ある程度は自由に変えられるよ」
「なかなか便利そうね……
 んっ? どうしたのタバサ?」

 成程と頷くキュルケは、タバサが何かを言おうとしている事に気が付いた。
 それは、ほんの微かな目の動きであった。他の人間であったなら、なにも気が付かなかっただろう。
 しかもキュルケは、気配の静から動への僅かな移り変わりすら、敏感に察知したのであった。

「……迂闊。もう少し、気をつけるべき」
「……? ああ、そう言えば秘密なんだっけ? 忘れてたわ」
「あっ!」

 簡素に紡がれたその言葉の示すところを、しばし考え込む。程なくして、その言葉の意味に辿り着く。
 キュルケはのんびりとした声を発し、ジュディは焦った声をあげて辺りをキョロキョロと見渡す。
 既に人波は引いていたが、それでも中庭には、多くの生徒が屯していた。だが、幸いなことに、3人に注意を払っている者はおらず、それぞれのお喋りに夢中になっているようだ。

「どうやら、誰も見てなかったようね」
「よかったぁ。注意してくれてアリガトウ」
「……次からは、気をつける事」

 ジュディにお礼を言われるタバサであったが、その表情はピクリとも動かなかった。
 無言で怒っているともとれるが、タバサの纏う雰囲気は、静かでいて掴み様がなく、それは、氷のようであり、風のようでもあった。

「そうそう、ルイズは一緒じゃないの?」
「ルイズさん? お昼に会ったきりで、知らないよ」

 思い出したかのように訊ねるキュルケに、ジュディは首を横に振る。
 キュルケは残念そうな素振りも見せず、しょうがないと肩を竦めて続ける。
640名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 22:34:11 ID:NpPyZPkR
sien
641名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 22:37:05 ID:onf3gKNL
代理投下いきます
「そう…… まあいいわ。
 これから食堂でお茶するつもりなんだけど、どう? ジュディも?」
「うん。一緒に行く」
「…………」
「それじゃ、行きましょうか」

 ジュディが快諾すると、キュルケは踵を返し、先導するように先を行く。ジュディは小走りでキュルケの横に付くと肩を並べて歩き出す、そして、その反対側にはタバサが肩を並べる。
 3人は連れ立って、本塔の方へと歩いて行った。
 雲が早くに流れていく空では、蒼い鱗を持つ幼風竜が踊るように自在に空を翔けている。
 夕方に傾いていくこの時間、風はその勢いを増し、白い綿帽子を空へと舞い上げた。



 ◆◇◆



 草原に一際強い風が吹いた。夕方前の風は少し冷たく、ルイズは思わずマントで身を包んだ。
 その状態のまま、風が止むのを待つ。その間に体温を取り戻したルイズは、再び目的地に向かって歩き始める。
 午後の授業が終わった後、ルイズは真っ先に学院の外に出ていた。
 学院の周辺の草は、歩くのに邪魔にならない程度に短く刈られている。
 春の陽光を存分に浴びた草は、存分に緑の匂いを薫らせ、落ち着いた気持ちにさせてくれる。
 柔らかい草と土を踏みしめてルイズは進む。
 学院の縁沿いを半周ほど行ったところで、ルイズは足を止めた。 
 その場所は、先週末にコルベールの実験が行われた場所であった。
 デフェルメされたヘビの石像が幾つも立ち並び、雑草が周囲よりも長く伸びている。
 『耐えるヘビ君』と命名された石像は、無傷なモノが2体、焼き焦げた黒い跡が残っているモノが1体、そして、バラバラなったモノが3体存在していた。
 ルイズは無傷な石像の前に立ち、杖を取り出した。
 口元は引き締められ、双眸は石像を睨みつけるように見据えている。

「ここなら、誰にも見られないわね……」

 ルイズは誰に聞かせるでもなく独り言を呟く。

「特訓なんて人に見られたら恥ずかしいし、ここなら的もあるしね」

 どうやら、魔法の練習をするために、わざわざここまで足を運んだらしい。
 誰にも努力する姿を見られたくないと思うのは、彼女の自尊心からくるものか。それとも、失敗を見られることを恐れているからか。おそらく、そのどちらかではなく、両方が入り混じっているのだろう。
 もしかしたら、ジュディに見られたくないと思ったからかもしれない。しかし、それを指摘したならば、彼女は全力で否定することだろう。

「さあ、いくわよ!」

 凛とした声で自分に気合を入れる。
 ルイズは右足を前に出して、半身に構えた。
 眼を閉じて呼吸を整える。
 深呼吸を繰り返し、体中を魔力が駆けるイメージを思い浮かべる。
 瞼をゆっくりと持ち上げ、石像に意識を集中させた。視界が狭まり、石像を中心とした半径数メイルの範囲しか見えなくなる。
 指揮棒の様な杖を持った右腕を振り上げ、小さく可憐な唇でルーンを紡ぐ。
 杖の先をクルクルと回しリズムを取る。そのリズムに合わせてルーンを一語一句確実に詠唱する。
 ルーンに意識の大半を割くが、その瞳は石像を捉えたままぶれる事はない。
 必要以上の力を込めず、かといって力を抜きすぎもしない。それは、先日『赤土』のシュヴルーズが褒め称えた通り、理想的なスタイルであった。
 詠唱しているのは『コンデンセイション』 水系統の初歩魔法であり、その効果は大気中の水を掻き集める事である。
 詠唱を続けたまま、ルイズは頭の片隅で漠然と考える。

『考えてみればおかしいわよね。どうして、火系統を使おうなんて思ってたのかしら?』

 ルイズが魔法の特訓をするのは、今日が初めての事ではない。
 そしてその度に、ルイズは決まって火系統の魔法を使おうとしていた。他の系統を試すことはあったが、火系統が圧倒的にその割合を占めていた。
『そうよ。アイツが使い魔なんだから、水が私には合ってるのかもね。そういえば、姫様も水……
 おっと、いけない。集中しなきゃ』

 脇に逸れていく意識を引き締め、改めて魔法に集中する。それでも詠唱が中断しなかったことは、いままで彼女がしてきた努力の賜物であろう。
 間もなくして、詠唱は完了した。 
 石像に意識を極限まで集中させ、ルイズは叫んだ。

「コンデンセイション!」
『コンデンセイション!』

 声帯を震わせる肉声と、魔力を飛ばす意識の声。それが同時に迸る。
 ルイズは確かな手ごたえを感じ、会心の出来だと確信した。
 しかし、その感覚は幻であった。
 閃光が網膜を焼き、轟音が耳朶を打つ。
 光と音が消え去った後には、爆発に耐え切れず粉々に砕け散った『耐えるヘビ君』が無残な姿を晒していた。
 地面に膝を着き、肩を落として項垂れるルイズの頭にポセイドンが降ってくる。
 ルイズはわなわなと震えると、憤然と立ち上がった。
 頭にしがみ付くポセイドンを鷲掴みにすると、見事な投球フォームで放り投げ、叫ぶ。

「カエル、な・ん・て! 大っ嫌いよぉ〜!!」

 悔し涙で震える声が、見渡す限りの草原に響き渡った。



 ・
 ・
 ・



 今回の成長。

  ルイズは、恐怖症L4(カエル)が恐怖症L2(カエル)にランクダウンしました。
  ジュディは、ナチュラルL2を破棄して魔道板L3(禁)のスキルパネルを手に入れました。
  魔道板を読み解き、『デテクトアンデッド』『デテクトブラッド』を習得しました。聖石の指輪を手に入れました。


 第9話 -了-
 補足 〜アンリミテッド:サガの世界観〜

 数千年前、世界は文明の発展を極め、人は今よりも高度な文明を築いていた。いまの人々は、当時を『黄金時代』と呼ぶ。
 しかし、隆盛を極めた文明も、悪しきモノの侵攻により終わりを告げた。それは『終末の日』として、後世に伝えられている。
 乾燥しきった砂漠地帯、極寒の氷原地帯、峻厳な山岳地帯、怒涛の大海洋は、悪しきモノが侵攻してきた時の名残と言われている。
 『終末の日』を境に、世界は荒廃の道を歩んでいく。
 魔物の出現、異常気象の続発で文明は衰退し『黄金時代』は過去のものとなった。
 悪しきモノの侵攻で、世界は破壊しつくされるかと思えたが、創造神が自らの消滅と引き換えに世界を存続させた。以後、世界には低級神が残るのみとなった。
 『黄金時代』の文明は、完全に破壊されたわけではなく、幾つもの遺物が残されている。それらはすべて『七大驚異』と呼ばれる巨大建造物から発見されたものである。。
 『七大驚異』の最奥には、今は亡き神の力が眠っているとされ、その力を全て解放した時、再び『黄金時代』は訪れると言われている。
 現在では、以上の事を信仰のように妄信している者から、全く信じていない者まで多種多様な人々がいる。

 今から1000年前、人類社会には、かつての繁栄など微塵の面影も残してはいなかった。
 世界は未知の恐怖と人外の暴力に分断され、人は闘争に明け暮れていた。
 しかし、希望を見失った世界に、1人の英雄が彗星の如く現れた。英雄『イスカンダール』である。
 彼は瞬く間に各地を平定し、当時知られていた地域の約半分と、広大な未踏破地域を征服した。
 これにより、世界は今日の姿となった。
 卓越した武芸と、豊富な知識と人脈により、英雄は人々を纏め上げ、王国を築き上げる。その王国の首都は、英雄にちなんで『イスカンダリア』と名付けられた。
 しかし、そんな偉大な英雄は、ある時を境に忽然と歴史から姿を消してしまった。それによって、一代で築き上げられた王国は、一代で崩壊することとなった。
 『イスカンダール』亡き後、世界は再び乱れ、混沌たる情勢に戻っていった。
 イスカンダールの側近であった2人の騎士は、国を纏めようと尽力したが、それは2つの勢力を作り出しただけであった。
 2人の思惑とは裏腹に、彼らの元に集った者達は争いを始め、やがて、勝者と敗者を生みだした。
 勝者は『エスカータ』という新たな王国を築いた。
 敗者は故郷のエルベ島に戻り、そこに『イスカンダール霊廟』を造る。街の名を守りの地『ヴァフトーム』と名付けた。
 2人は争いを後世に残すことを良しとせず、死した後は、『イスカンダール』の棺を互いに守ろうと取り決めたのであった。

 『征服王』他、数々の異名を持つ英雄は、その大部分がいまなお謎に包まれている。
 彼は存命期から既に伝説の存在であったし、後世においてはさらに多くの伝説を生み出した。
 大陸に秩序をもたらし、人間主導の世界の基礎を築いた英雄の成功を『七大驚異』の遺産に結びつける説がある。
 『イスカンダリア』の地下には『七大驚異』の1つ『ファロスの地下都市』が広がっている事実と、彼の部下が特殊な武器や魔法を使っていたという伝承が根拠に挙げられている。
 彼の死には不明な点が多く、暗殺、病死、駆け落ち、はては非存在説すら提唱されている。だが、何らかの理由で死亡したと考える説が有力である。

 今現在『イスカンダール』が築いた王国の各地方は、それぞれの都市を中心に細かく独立している。
 いまの世界で最も力を持っているのは『騎士団』だろう。
 神殿の成立とほぼ同時期に『騎士団』は誕生した。
 魔物との戦いや、国同士の戦いで騎士達は活躍した彼等は、『イスカンダール』の遺志を継ぐ者と名乗っている。
 現在では、『ヴァフトーム』の守りにつく神殿騎士団、各都市を守る守護騎士団、地方を巡回し村落を守る辺境騎士団の3つに分かれている。
 『黄金時代』の遺物は、日常生活にも活用されており、それを見た事のない者は稀である。
 『イスカンダール』によって、大幅に版図を広げた人間であったが、辺境と呼ばれる地域はまだ多く『冒険者』と呼ばれる人種が生まれ出た。
 そんな『冒険者』にとって、『七大驚異』は征服したい対象である。
 世界は、いまなお未知と脅威に溢れていたが、人々は平和と呼べる時代を謳歌していた。
 しかし、『エスカータ王国』の滅亡。若い神殿騎士達の暴走。禁断の術を追い求める老人の妄執。魔道に人生を捧げた男の狂気。不死者の暗躍。遺物に潜む邪悪。滅びの預言……
 それらが世界に七筋の亀裂を入れた時、七人の旅は幕を開ける。
645名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 22:39:43 ID:onf3gKNL
代理終了。
投下お疲れ様でした。
646名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 22:41:27 ID:AFdqGi6r
一瞬宇宙戦艦ヤマトかと思った。
647未来の大魔女候補2人 ◆kjjFwxYIok :2008/10/28(火) 22:42:25 ID:xPpalJw1
 代理投下、ありがとう御座いました。代理投下してくれる人には、頭が上がらねぇなぁ……

 第9話投下完了。

 今更ながら、アンサガの世界観の説明をさせてもらいました。なお、レジナ・レオーヌ祭については、このお話には出てこないので省略します。
 おマチさんの右腕のガントレットも、この黄金時代に造り出された代物です。どういう目的で作られたかは、後々作中で。
 あと、ネガティブなスキルパネル(恐怖症、不殺の誓約など)はゲームだとL4しかありません。
 ですので、今回ルイズが習得した恐怖症L2(カエル)は、恐怖が薄らいだという単なる演出です。
 別にステータスとかをガチガチに組んでいるわけではないので、ご容赦を。
 それにしても、だんだん題名が苦しくなってきたなぁ…… 次の題名はどうしよう?
 第10話もなるべく早く投下したいですね。ちなみに、自分なりの締め切りを決めているので、一ヶ月より後にはならないと思います。
648名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 22:42:59 ID:XarmV9Tg
ちなみにイスカンダルとはアレキサンダー大王の事
テストに出るぞ
649名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 22:50:50 ID:UIbyEZ8a
あのガントレットって確かアンサガ内には2個あったはず
もう一人、同じような境遇の奴がいるのかな
650名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 22:56:30 ID:Jr8CIyYc
2008/10/28(火) 01:35以降の心境

(;゜д゜)

(つд⊂)ゴシゴシ

_,._
(;゜Д゜)

(つд⊂)ゴシゴシゴシゴシ

( д )

(; Д )!!!

(; Д )カオカオカオ
∪_,._∪
゜ ゜

_,._
(つд⊂)ゴシゴシゴシゴシ

_,._
(;゜Д゜)


;y=ー( ゚д゚)・∵. ターン
651名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 22:56:41 ID:0zCXhSdD
イスカンダルってのはアレキサンダー大王の死後、アラブ・ペルシャあたりで作られた名前らしいな。
もともとは誤読だったのが定着したものらしい。
652名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 23:02:46 ID:onf3gKNL
もう479kbだ。
まだ700レスにもなってないけどほどなくして次スレの時期だからよろしくNA-
653名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 23:08:49 ID:MUUtz9Am
では立てますね。
654名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 23:10:36 ID:MUUtz9Am
立てましたー。

あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part182
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1225202971/l50
655名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 23:11:20 ID:mU/0Dn1A
>>654
スレ立て乙
656名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 23:19:43 ID:6b5mEb3c
アンサガ乙です。制服ジュディ見てぇー
魔剣と言えばグリランドリーを思い出すな。能力アップおいしいです
サイトの活躍フラグがボッキリ逝ってるなw
657名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 23:49:17 ID:fKmIyZjZ
>>650
誤爆?
658名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 00:13:06 ID:cXs1JAWl
>>657
……ぽいね。

>>654
乙!
659名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 00:23:04 ID:35lHwfpb
500なら何か書く
660名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 00:23:37 ID:Lch2CQ88
BBBと絡めてみたいんだけど、みんな知ってる?
661名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 00:28:06 ID:hBls9EF7
吸血鬼のやつだったかな?
662名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 00:29:25 ID:YRJ9hIF/
ブラック・ブラッド・ブラザーズ?
663名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 00:31:36 ID:Lch2CQ88
そう。略称でスマンかった
ブラックブラッドブラザーズ あざのこうへい著 富士見ファンタジア
664名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 00:31:37 ID:OHwhz/DU
>>660
見たい
がんばれ
665名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 00:34:26 ID:pAEmq838
つまり召還早々、兄者が日光で骨になるということですね。わかります。
666名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 00:35:15 ID:Lch2CQ88
>>664
そっか、頑張ってみるよ〜うまくいくかわからんが…
問題は誰を出すかだけどなw

>>665
日中動けない兄者は使いづらいとおもふw
667名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 00:42:16 ID:fN1p+cDl
別に、ルイズだけ召喚できなくて放課後(夜中までずれ込む)に居残りという形でもいいんじゃないのか?
それなら吸血鬼関係の日光問題は解決できる。
668名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 00:45:00 ID:pAEmq838
一巻見る限りでは骨だけになってもすぐに死ぬわけじゃなかったような。
ルーン補正で日光はなんとかなるとかでもよさそうな気も。
んで、本領発揮できるのはやはり夜。
669名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 00:46:45 ID:Lch2CQ88
すぐには死ななかったはず
ただ、兄者だけだと絶対に速攻で帰りたがるからなぁ
別キャラのほうがいいのかねぇ
670名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 00:53:55 ID:v+nT1C46
九龍になる前の、カーサは如何でしょうか?
いま見直していたら抜けていた部分を発見。
10/12と11/12の間に以下の文章が入ります。

‐‐‐

『いま思えば、あの女と同じ系統を使おうとしてたなんて、ゾッとしないわ。
 でも、今日からは違う。水系統に力を入れていこう。
 ……ポセイドンが使い魔だし』

 召喚した当初より、ポセイドンに対する恐怖は薄らいでいた。全く平気というわけでもないが、無闇矢鱈に怖がることはしなくなった。
 それは、ポセイドンのサイズが小さくなったのが原因だろうか。もしかしたら、他の理由もあるのかもしれない。ただ、恐怖が麻痺した結果だとは考えたくはない。
 理由はともかく、ルイズはポセイドンを使い魔だと思える様には成っていた。

‐‐‐

672名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 01:11:01 ID:MJxcPsx6
>>670
いいなそれ!
クロウとかケインはどうよ?
673名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 01:35:41 ID:aot4lxxa
500ならトルテ召喚
674名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 01:36:51 ID:eVISEJ4S
弱点が日常生活にさほど支障無くて残した事が無くて何とか御しきれるブラックブラッドっつーと
ジローに負けてからエリーゼに拾われる前のキリマくらいしか思いつかんな
675名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 02:05:25 ID:Qp1ljryv
512kbに気が付かなすぎワロタww

さて、ログ読むか
676名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 02:30:19 ID:Qp1ljryv
テスト
677名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 08:53:54 ID:35lHwfpb
埋め
678名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 09:37:45 ID:cXs1JAWl
あら、まだ埋まってないのか。

679名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 10:19:23 ID:5kIF62/B
スレ埋め職人の朝は(ry
680名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 10:30:25 ID:ulzLrmrn
ガンパレの方々がんばれまけるな
681名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 11:51:16 ID:L+lCApIe
SS作家のみんな、頑張れ!
埋め
682名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 11:55:11 ID:eVISEJ4S
まだ結構残ってるんだな
埋め
683名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 12:27:32 ID:CSXutinG
まぁ雑談だけで20kは結構長居しな
684名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 12:52:55 ID:5kIF62/B
埋め支援
タバサと魔導書

最近ルイズの召喚したアルと言う少女から目が離せない。
彼女を見ているとドキドキする。
「変」
私は別に同性愛の趣味は無い。
でも彼女を見ていると・・・

手に取って手触りを確かめたい・・・
静かな所で彼女の全てを見てみたい・・・
ベッドの上で彼女を見つめながらまどろみに包まれたい・・・

彼女を・・・めくりたい。

彼女にもっと近付きたい私は行動に移す。

アルを補足、物陰から一気に距離を詰め、そして

「・・・あげる」

彼女に愛用のしおりを手渡す。
ガリアの花で装飾した手作りの魔法のしおりを。
685名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 13:19:40 ID:e6Dqrczq
                               /  /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/ /
                              /  /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; / /
                        ./ /"\;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:/ /
       ,.-<二二ニ=ー        / /  \. \;;;;;;;;;;;:/ /
    /        \        \"    \. \;/ /
   /            l           \  @  \   /
   l ・      ・    .l       r~ ̄`ヽ    / /
   l   ・       に二ニ=  ,. -'     リ\ ,/ /
    i______●  ^} _,..- '"   /ヽ /,  \/
    \        ノラ '     /:::/-'"
     ` ァ-―''7"(      _,/:::/     それは 剣というには あまりにも大き過ぎた
      /|::|  {::::::ヽ__,,..- '/丶/      大きく ぶ厚く 重く そして 大雑把すぎた
      / .i|    \:::::::::::::::::::\/.--─-,,,   それは 正に 鉄塊だった
     i   |     \:::::::::::::::::::::`::::::::::::::::::}
686名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 14:49:33 ID:35lHwfpb
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part182
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1225202971/l50
687名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 17:17:18 ID:X/hZ7IY/
500kbならいつぞや超鋼女セーラからベッキー召喚と言ってた人が投下する
688名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 17:34:58 ID:m6jBYQVI
                               埋め尽くせー     |:|\\:::::||.:.||::::://|    /イ
                                              |:l\\\||.:.|l///|  .///
                         __ ィ   ,. -――- 、     |:|:二二二二二二二 !// /
                        /    /          \.   |:l///||.:.|l\\\|/  /
                / ̄ ̄ ̄ ̄ 7 / / ./  / /   l l l lハ  |:|//:::::||.:.||:::::\\l    /
  ト、     ,.    ̄ ̄Τ 弋tァ―   `ー /  l从 |メ|_l  l_.l斗l |ヽ V |:| ̄ ̄ ̄ ̄ フ  ̄ ̄    |                  イ
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 入ノ. ヽ  く  ヽ______7 ー―∠__    〃  l :/    :l l     \V       ヽ       \    ,.  '´
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689名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 17:40:25 ID:YGEmkwgF
まだだ!
まだ埋まらんよ!
690鋼の人 ◆qtfp0iDgnk :2008/10/29(水) 17:41:23 ID:Xrgj1OSE
おいっす。どうにかプロットをしこしこ作っております。
埋めついでにまた作りました地図を公開しようかと思います。
「鋼の使い魔」版、タルブ周辺図です
ttp://roofcity.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/upload/src/up0083.jpg

毎回ペイントで書いているのでかなり容量を食ってしまうのが難点で申し訳ありません。
一応レイヤーソフトとかも導入はしてみたんですが、結局ペイントの方が書きやすいものでして…。

なにかご質問があったら埋めついでに。
691名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 17:59:46 ID:e6Dqrczq
ピーマンは食べられますか?
692名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 18:06:42 ID:uDX95+NZ
   埋め尽くせー     |:|\\:::::||.:.||::::://|    /イ
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693名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 18:07:20 ID:uDX95+NZ
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694名無しさん@お腹いっぱい。
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