あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part179
もしもゼロの使い魔のルイズが召喚したのがサイトではなかったら?そんなifを語るスレ。
(前スレ)
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part178
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1223938939/ まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/ 避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9616/ _ ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
〃 ` ヽ . ・ここはあの作品の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!
l lf小从} l / ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,. ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
((/} )犬({つ' ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
/ '"/_jl〉` j, ・ 投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
ヽ_/ィヘ_)〜′ ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!
_ ・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
〃 ^ヽ ・クロス元が18禁作品であっても、SSの内容が非18禁である場合は
J{ ハ从{_, 本スレへの投下で問題ないわ。
ノルノー゚ノjし ・SSの内容が18禁な展開をする場合はクロス元に関わらず、
/く{ {丈} }つ 本スレではなく避難所への投下をお願いね?
l く/_jlム! | ・クロス元がTYPE-MOON作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
レ-ヘじフ〜l ・作品を初投下する時は元ネタの記載も忘れずにね。wikiに登録されづらいわ。
・作者も読者も閲覧には専用ブラウザの使用を推奨するわ。負荷軽減に協力してね。
. ,ィ =个=、 ・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。
〈_/´ ̄ `ヽ ・1レスの限界最大文字数は、全角文字なら2048文字分(4096Bytes)。これ以上は投下出来ません。
{ {_jイ」/j」j〉 ・行数は最大60行で、一行につき全角で128文字までですって。
ヽl| ゚ヮ゚ノj| ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
⊂j{不}lつ ・次スレは
>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
く7 {_}ハ> ・重複防止のため、次スレを立てる時は現行スレにその旨を宣言して下さいね。
‘ーrtァー’ ・クロス先に姉妹スレがある作品については、そちらへ投下して盛り上げてあげると喜ばれますよ。
姉妹スレについては、まとめwikiのリンクを見て下さいね。
・一行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えます。
SS文面の区切りが良いからと、最初に改行いれるとマズイです。
レイアウト上一行目に改行入れる時はスペースを入れて改行しましょう。
1乙
俺たちがテンプレだ!
1乙!
>>1乙。
素晴らしいスレ立て&テンプレです。
ダブクロゼロを読んでるとルイズがロイスを結んでない事にビビる。
ちぃねえさまとキュルケと隼人ぐらいにしかなくない?
悪魔の秘薬の容器のサイズが凄く、気になります……
姉妹スレを見渡してたら座談会があった。
アトラス座談会にこっそり紛れ込んでる久保とか想像してニヤニヤしたが、話として仕上げるのは無理っぽい組み合わせだ。
>16
普通にアンプルサイズじゃない?
ケースの中に複数の小型アンプルが入っていたケースを文中で「薬」と表していたと考えれば
納得できる罠
予約がなければ5:45から15話の投下をしたいと思います。
どうぞ、どうぞ!
狭い通路を通り、細い階段を上り、四人が連れて行かれたのは空賊の船には似つかわしく無いほど立派な部屋だった。後甲板の上に設けられた、そこが船長室らしい。
豪華なディナーテーブルの一番上座に、先程の空賊の頭が腰を落ち着けている。その手には大きな水晶の飾りのついた杖だ。あれが戦利品でなければ、メイジであるということだろう。
その周りにはガラの悪い空賊達がニヤニヤと笑みを浮かべながら、ルイズ達を見やっている。
「お前ら。頭の前だ。挨拶しな」
案内役の空賊が促すが、ルイズは頭を睨みつけるばかりだ。そんなルイズの態度を見て、頭はにやりと楽しそうに笑う。
「気の強い女は好きだぜ。子供でもな。さてと、名乗りな」
「あんた達に名乗る名前なんて無いわ」
ルイズの返答に、ますます頭は笑みを深めた。
「まあ、名前なんざどうでもいい。トリステインの貴族が、何だって今の時期にアルビオンなんざに向かうんだ?」
「旅行よ」
「聞いたかお前ら。旅行だとよ」
空賊達の間から笑い声が漏れる。頭は始めから信じてはいないという口振りだ。
「なあ。お嬢さんよ。素直に話した方がお互い得だぜ。目的を話せないってこたぁ、何かあるんだろ? 例えば、トリステイン内部の、貴族派の協力者だとか」
「貴族派ですって? 馬鹿言わないで。あんな恥知らずな連中に加担するような貴族は、トリステインにはいないわ」
ルイズは毅然と言い放った。それでも空賊相手に虚勢を張るのは怖いのか、肩が小さく震えている。
「もし、あんたらが貴族派の協力者だってことが証明できるなら、安全なところまで送ってやってもいいんだぜ。俺たちは連中と協定を結んでるんだ。
俺らの商売を見逃してもらう代わりに、王党派に加担しようなんて酔狂な連中を捕まえて引き渡すって条件でな」
「……本当に、貴族派は恥知らずね。メイジとしての誇りもないのかしら」
自分はトリステインを代表してやって来た王党派への使いだと、怒鳴ってやりたい気持ちでいっぱいだった。が、ルイズはそれを寸でのところで堪える。
自分は出立前にフロウウェンと約束を交わしたのだ。勝手な真似で仲間を危険に晒すような真似はしないと。
今だって、フロウウェンが何も言わずに自分に交渉を任せているのは、ルイズがアンリエッタから受けた、自分の任務だからだ。
こんな連中に嘘をついてまで命を永らえるくらいなら啖呵を切って死んだ方がマシだが、それではアンリエッタとの約束を果たせないし、フロウウェンの約束も守れない。
こんな連中に命惜しさで嘘はつけない。けれど、癇癪を起こして自分のせいで状況の悪化を招くような真似もしない。
だから、ルイズは言う。
「わたし達の目的はさっきも言った通り、旅行よ。他に話すことは何も無いわ。あんた達は身代金が貰えればそれで充分でしょう」
「身代金ね。確かに。だが、貴族派にメイジを紹介するって手もあるな。あいつら、メイジの手を借りたがってるんだ。たんまり礼金も弾んでくれるだろうよ」
ルイズは答えない。頭は勝手に言葉を続ける。
「どうだ? 旅行のついでに貴族派に雇われて、死にかけの王党派どもをちょいと叩いて、金を貰うってのは。
何。ぼろい話さ。俺らは貴族派に恩が売りて礼金も貰える、あんたらは小遣いと土産話ができるって寸法だ。誰も損をしない。悪い話じゃないと思うがね」
不快極まる申し出だ。もう、頭の顔を見るのも嫌だった。
「くどいわ」
ルイズはきっぱりと言い放つと、もう話すことは無いとばかりに顔を逸らした。
「もう一度だけ聞こう。貴族派につく気は無いんだな? でなきゃ、あんたらは俺たちがトリステインの貴族どもと身代金の交渉するまでの間、船倉にぶち込まれて、お前の言うとこの楽しい旅行とやらも台無しだ」
ルイズの返答は、顔を背けたままの無言だった。
今は、それで良い。連中が油断して、反撃や脱走の機会を待つのが自分にできることの全てだ。
頭はルイズをじっくりと観察するような目でルイズを眺めていたが、今度はルイズの一歩後ろに居並ぶフロウウェン達に向かって問う。
「そっちのお嬢ちゃんはああ言ってるが、お前らはどうなんだ?」
「僕は彼女の婚約者だ。従って、君らの申し出は受けない」
「私は……王党派と貴族派の戦いに、興味なんてありませんね」
ワルドとマチルダが澄ました顔で答えた。
頭の視線がフロウウェンに移る。
「使用人の爺さん。あんたは? 帯剣してたところを見るとちょっとは使えるんだろ? 貴族派の傭兵になるってのはどうだ? はっきり言うと、身代金の価値はあんたには無いんだ。言っている意味はわかるよな?」
そう言いながら、鋭い眼光でフロウウェンを睨む。
役に立てないなら、生かしておく価値が無いと、そう言っているのだ。
「反乱軍が仕えるに値するとも思えんな」
頭の視線を正面から受け止めると、にべもなくフロウウェンが答えた。
ルイズがその横顔を見上げると、フロウウェンは笑みを浮かべて主に答える。
全員の答えが出揃うと、頭は大声で笑った。心底、楽しそうに。
「トリステインの貴族ってのは気ばかり強くてどうしようもないな。ま、どこぞの国の恥知らずどもより何百倍もましだがね」
頭の態度が豹変したので、ルイズ達は顔を見合わせて首を傾げる。
その中にあって、マチルダだけがその笑い方を見て何かに気付いたらしく、「あっ!?」と声を上げた。
「やれやれ。気付かれてしまったかな。では、この変装も意味が無いな」
頭は苦笑いを浮かべると、襟を正す。
「失礼した。どうやらあなたたちは立派な貴族のようだ。ならば、こちらから名乗るのが礼儀というものだ」
控えていた空賊達の顔から笑みが消え、一斉に直立した。
頭は自分の黒髪に手をやる。丸ごとそれがずれて、下から金色の髪が現れる。眼帯も取り外し、それから、作り物だったらしい髭も剥がす。現れたのは精悍な顔つきの、金髪の若者だった。
「私はアルビオン王立空軍大将、本国艦隊司令長官……といっても、我が艦隊はもうこの『イーグル』号しか存在しないがね。
そんな肩書きより、こちらの方が通りがいいだろう」
それから佇まいを直し、堂々たる名乗りを上げた。
「アルビオン王国皇太子、ウェールズ・テューダーだ」
ルイズはあんぐりと口を開けて、言葉を出せずにいた。マチルダは険しい顔付きで俯き、ワルドは興味深そうにウェールズを見やる。
なるほど、とフロウウェンは得心した。
先ほどまでの言葉は探りを入れていたわけだ。特にマチルダとウェールズは面識があり、マチルダは王家に良い印象を抱いていない。貴族派の内通者かと疑うのは寧ろ当然のことだろう。
正体を見破られることも承知の上で直接尋問したのは……部下には任せられないと思ったからだろう。
「アルビオン王国へようこそ」
ウェールズは人懐っこい笑みを浮かべると、ルイズ達に席を勧める。
ルイズが呆けた顔で自分を見詰めていることに気付くと、ウェールズがつらつらと答える。
「どうして空賊風情に身をやつしているのか、という顔だね。金のある反乱軍には次々と物資が送り込まれる。
補給を断ち、物資を奪うのは戦の基本だが、堂々と王軍の軍旗を掲げたのではあっという間に反乱軍に取り囲まれてしまう。空賊を装うのも致し方ない」
まるで、手品の種明かしをするかのような調子だった。
「きみたちを試すような真似をしてすまない。どうも、裏切り続きで用心深くなっていてね。勿論、きみたちの身の安全は保証しよう。スカボローの近くで解放することを約束するよ」
ウェールズが説明しても、ルイズは目的を切り出すでもなく、呆けるばかりだった。いきなり目的の人物に会えたので心の準備もできていないし、思考の切り替えも付いていかないのだろう。
「アンリエッタ姫殿下より、命を帯びて参りました」
代わりにワルドが優雅に頭を下げて、ウェールズに用向きを告げた。
「姫殿下とな。君は?」
「トリステイン王国魔法衛士隊、グリフォン隊隊長、ワルド子爵」
それからルイズ達をウェールズに紹介する。
「そしてこちらが、姫殿下より大使の大任を仰せ付かったラ・ヴァリエール嬢と、その使い魔の老人。それから、トリステイン魔法学院のミス・ロングビル嬢にございます。殿下」
マチルダをロングビルと紹介されて、ウェールズは怪訝そうな顔を浮かべる。マチルダは険しい顔つきのまま、ウェールズから視線を逸らして俯いた。
ウェールズは何故かを問う気にはなれなかった。アルビオン王国を不名誉な形で追われた、サウスゴータ家の令嬢だ。
本名を名乗るわけにもいかずに偽名を名乗っているのは、考えるまでも無く当然のことだった。
そんなマチルダが何故アルビオン行きの船に来たのか。その理由は分からない。
だが、ここでそれを問いただせば彼女の立場を微妙なものにしてしまうかもしれない。だから、マチルダのことは何も聞かなかった。
マチルダが優しい女性であったことを覚えている。サウスゴータの家の者も、モード大公家の者もだ。優しかった。優しすぎた。だから、父はあんな決断を下さざるを得なかったのだ。
そして、父は表向きは王国の為に仕方の無いことだと公言しながらも、それを心の奥底で悔いていたことを知っている。
次々に重鎮が反乱軍に寝返り、王家の敗色が濃厚になりつつあった頃、ジェームス一世は力無く笑ってウェールズに漏らしたことがあった。
大公を裁かねば、こうまで臣下の人望を手放すこともなかったかも知れぬな、と。
ウェールズは小さく頭を振って思考を切り替えると、ワルドの先ほどの言葉を頭の中で反芻して、ルイズを見やる。
大使として遣わすにはまだあどけない顔立ちの少女だ。
ラ・ヴァリエールといえば、トリステイン王家の親戚筋に当たる。恐らくはアンリエッタの信を得ての人選なのだろう。
その手に輝く水のルビーを認めて、間違いなくアンリエッタの使いであることを確信すると、ウェールズは頷いた。
「なるほど。して、用向きは?」
ルイズが慌てて胸のポケットからアンリエッタの手紙を取り出す。恭しくウェールズに近付くが、躊躇いがちに口を開いた。
「あ、あの……」
「なにかね?」
「その、失礼ですが、本当に皇太子さま?」
ウェールズは破顔した。
「まあ、さっきまでの顔を見れば、そう思うのも無理は無い。僕はウェールズだよ。正真正銘の皇太子だ。なんなら、証拠をお見せしよう」
自分の薬指に光る指輪を外すと、ルイズの手を取って水のルビーに近づける。二つの宝石が共鳴し、虹色の光を振り撒いた。
「この指輪はアルビオン王家に伝わる風のルビーだ。きみが嵌めているのは、アンリエッタの嵌めていた水のルビー。水と風は虹を作る。これは、王家の間にかかる虹さ」
「大変、失礼をばいたしました」
ルイズは一礼すると、手紙を差し出す。
ウェールズは愛しそうにその手紙を見詰めると、花押に接吻をした。それから慎重に封を開き、便箋を取り出す。
真剣な面持ちで手紙を読んでいたが、読み進めるに従ってウェールズの表情が曇っていく。
頬が紅潮し、小さく肩が震える。最後の一行まで読み終わた頃には、はっきりと怒りの色が浮かんでいた。
「これは……ここに書かれていることは、真実なのかい? 君がそれを確認した、とあるが」
「始祖ブリミルと女王陛下に誓って真実でございます。殿下。また、王家と盟約を結んだ古き精霊が虚言を口にするとも思えません」
ウェールズは唇を噛んで、爪が肉に食い込むほど拳を握り締めた。思い当たることはいくらでもある。
何故彼が、という裏切りを何度も味わってきたのだ。それにはそんな背景があったと? であるなら、誰が真実に裏切り、或いは裏切らなかったのか。
臣下から見捨てられ、絶望しながらも、最早王家の意地を見せ付けるだけだと開き直りさえしていたのだ。
俄かには信じられない。これでは何もかもが嘘だったということではないか。
「……もう一通の手紙は?」
疲れたような声で、ウェールズが問う。
「こちらに」
ルイズは、貴族派の手に渡す為に持って来た方の手紙を手渡す。受け取ると、ウェールズは頷いた。
「あの手紙は姫の望む通りにしよう。しかし、もう一つの望みは……これは僕の一存では決めかねる。個人的見解としては―――」
ウェールズは言い差して、ルイズが真剣な面持ちでじっと見ていることに気付いて、言葉を止めた。
まだ気持ちの整理が付いていない。自分が冷静に判断を下せているとは言い難い。
「いや、今は止めておこう。面倒だがニューカッスルまで足労願いたい。手紙も、手元にはないのだ。姫の手紙を空賊船につれて来るわけにも行かないだろう?」
力無くウェールズは笑った。
「殿下……」
痛々しくさえある、精一杯の笑みを見て、ルイズが俯く。かける言葉も見つからなかった。
ワルドは二人のやり取りに耳をそばだてていた。話の流れが自分の予想していたものとまるで違う。
あの二通目の手紙は何だ? 恋文よりも重要らしい姫の望みとは何だ? ウェールズは何故あれほどの怒りを露わにしたのだ? 幾ら考えても答えは出ない。
一方で、マチルダはウェールズの怒りの理由だけにはおおよその見当がついた。何せ自分もルイズ達と精霊が話をする、その場に居合わせたのだから。
と言って、同情する気にはなれない。冷めた目でマチルダはウェールズを、そしてその後ろにいるであろうジェームズ一世を見やるのだった。
一行を乗せた『イーグル』号は、アルビオンの外周に当たる海の無い“海岸線”に沿って、雲に紛れながら進んだ。そうして三時間ばかり進めば、大陸から突き出た岬が見えてくる。岬の先に、高い城がそびえているのが見えた。
「あれがニューカッスルだ」
『イーグル』号が進路を下方に取る。丁度、大陸の下側へと潜り込む形だ。
「なぜ、下に潜るのですか?」
ルイズが尋ねると、ウェールズはニューカッスル城の上空を指差す。雲の切れ間から巨大な軍艦が姿を現した。
『イーグル』号の二倍ほどの全長を持つ、巨大な艦であった。マチルダには見覚えがある。アルビオン王国王立空軍本隊旗艦『ロイヤル・ソリヴン』号だ。
『ロイヤル・ソリヴン』号が、ずらりと並んだ砲門を開いて、ニューカッスル城の城壁目掛けて撃ち放つ。外壁にいくつも傷をつけ、轟音を大気に響かせた。
「あの艦の突然の反乱から、全ては始まった」
ウェールズが淡々とした口調で言った。
「かつては本国旗艦『ロイヤル・ソリヴン』号。クロムウェルが手中に収めてからは、『レキシントン』と名前を変えさせている。クロムウェルが初めて我らから勝利をもぎ取った戦地の名だよ。奴はよほどあの艦がお気に召したらしいな」
ルイズ達はウェールズの言い回しの意図するところに気付いた。もう、ウェールズは「敵」を反乱軍とも貴族派とも、逆臣とも叛徒とも呼ばなくなっていた。
表面上は平静さを取り戻したウェールズであったが、その心の内には未だ―――いや、先程よりも遥かに激しい怒りと暴風が渦巻いている。
手紙に書かれていることが事実ならば、ただ一人の男の野心が国を乱したということだ。多くの同朋を殺め、今この時も、その亡骸を手足の如く使っているということだ。到底許せるものではない。
「あの艦で、空からニューカッスルを封鎖しているのだ。あのように、たまに嫌がらせのように城に向かって砲をぶっ放していく」
フロウウェンは、艦の上を舞う生き物―――竜をその目に捉えた。その背に跨る小さな影も。
否が応にもタバサとシルフィードのことが脳裏をよぎっていた。彼女らはメイジの欠点を完全に補う、強力な組み合わせだろう。タバサ自身の優秀さも相まって、おおよそ弱点というものがフロウウェンの目から見ても見当たらない。
それを、軍の兵科として運用すれば、どうなるか―――。
答えは、同等以上の機動性を持つ航空戦力が無ければ、勝負にもならない、だ。
「備砲は両舷合わせて百八門。見ての通り竜騎兵まで積んでいる。我々のフネではあの化物の相手はできないので、雲中を通り、大陸の下からニューカッスルへ向かう。そこに我々しか知らない、秘密の港があるというわけだ」
『イーグル』号が雲海に沈んだ。大陸の下に出ると、そこは殆ど視界の効かない暗黒の世界だった。湿気を含んだ空気が肌に纏わりつく。
間を置かず、マストに魔法の灯かりが灯った。頭上にはごつごつとした岩が、眼下には白い靄が広がっている。
空にいるはずなのに、洞窟の中を進んでいるようだ、とフロウウェンは感じた。
「未熟な腕で大陸の下を航行すれば、簡単に座礁することになる。だから、空を知らないクロムウェルは決して近付かないのさ。王立空軍の航海士にとっては、この通り、造作もないことだがね」
しばらく暗黒の世界を航行していると、マチルダがウェールズだけに聞こえるような密やかな声で話しかけてきた。
「殿下。私はあの使い魔の老人に借りがあり同行した次第。成り行きに従い、意に沿わずここに来ましたが、城内には立ち入らず、この艦に待機させていただきたく存じます」
そう告げるマチルダの瞳と声は、どこまでも無感動に冷たかった。拒絶されるのは当然のことだとウェールズは思う。
「あんな船倉に押し込めて置くわけにはいかない。部屋を用意させよう」
「では、城内では顔を隠す無作法をお許し下さい」
ウェールズが頷くと、マチルダはフードを目深に被った。
やがて艦は黒々とした穴の下に出た。直径三百メイルもある穴が、ぽっかりと穿たれている。
「一時停止!」
「一時停止、アイ・サー」
ウェールズの命令が復唱される。裏帆を打つと、甲板の上をきびきびとした動作で水兵が走り回って帆が畳まれ、穴の直下でイーグル号は停船した。
錬度の高い兵だ。この絶望的状況下にあって、士気の高さすら感じる。いや、だからこそ、か。
心の底から王国に忠節を尽くす者達が、残るべくして残ったということだ。フロウウェンは眩しいものを見るように水兵達を見やった。
「微速、上昇!」
「微速上昇、アイ・サー」
ゆるゆると船が上昇していく。王立空軍の航海士が乗り込んだマリー・ガラント号が、イーグル号の後に続いた。
「まるで空賊ですな。殿下」
ワルドの漏らした感想に、ウェールズが頷く。
「まさに空賊なのだよ。子爵」
穴に沿って上昇すると、頭上に明かりが見えた。突然視界が開け、眩いばかりの光に包まれる。艦はニューカッスルの秘密の港に到着していた。
天然の巨大な鍾乳洞をそのまま港として利用したものだ。岸壁を発光する白いコケが覆っている。
何とも幻想的な空間だった。
岸壁の上に大勢の人々が待ち構えていた。もやいの縄が投げられ、イーグル号がしっかりと結わえられる。
艦はそのまま、岸壁へと引き寄せられた。車輪のついたタラップが転がってきて、ぴたりと艦に取り付けられる。
ウェールズに促されて、一行は艦を降りた。
すると、背の高い、老いたメイジが近寄ってきて、ウェールズ達を迎えた。
「これはまた大した戦果ですな。殿下」
暗闇から現れたマリー・ガラント号に、顔をほころばせる。
「喜べパリー。硫黄だ、硫黄!」
その言葉を聞き留めた兵達からどよめきと歓声が上がった。
「おお! 硫黄ですと! 火の秘薬ではございませぬか! これで我らの名誉も護られるというものですな!」
パリーが涙ぐむ。
「その通りだ。だが、泣くのはまだ早いかもしれんぞ、パリー。僕はこれから、トリステインからの大使殿を父上の所にお通しせねばならない」
「大使殿ですと?」
パリーはルイズ達を見やった。なんとも奇妙な組み合わせだった。まだ子供といった風情の少女に、フードを被った女。精悍な顔つきの羽帽子の貴族、使用人の出で立ちをした、眼光の鋭い老人。
滅び行く王政府に何のようなのだろう、とパリーは訝しんだが、すぐに微笑みを浮かべた。
「これはこれは大使殿。殿下の侍従役を仰せ付かっております、パリーでございます。遠路はるばる、ようこそこのアルビオン王国へいらっしゃった」
それから、ウェールズに向き直る。
「報告申し上げまする。叛徒どもは明日の正午に攻城を開始するとの旨、伝えて参りました。それを受け、今夜祝宴が開かれます。大使殿も是非、出席くださいませ」
「そうか! 間一髪だな!」
「全くです。パリーめも肝を冷やしておりましたぞ!」
二人は笑い合う。悲壮さの欠片も感じさせない、明るい笑い声だった。
フロウウェンは静かに目を閉じて、そんな二人のやり取りを聞いていた。
「まずは手紙を返却せねばね」
ウェールズに付き従い、ルイズらは皇太子の部屋へと向かう。城の一番高い天守の一角に彼の部屋はあった。
それは、一国の王子の私室とは思えないほど狭く、質素な部屋だった。調度品も家具も、魔法学院の生徒の部屋の方が、遥かに豪華だ。国が敗れるというのは、こういうことなのだろう。
椅子に腰掛け、机の引き出しから小箱を取り出す。首にかけたネックレスの先に着いていた鍵で、小箱を開く。
蓋の内側に、アンリエッタの肖像が描かれているのを、ルイズは見た。
「宝箱でね」
はにかんだように言うと、小箱にアンリエッタがクロムウェルに宛てた手紙を入れ、代わりに一通の手紙を取り出す。愛しそうに口付けた後、開いてゆっくり読み始めた。
何度もこうやって読み返したのだろう。手紙は手垢と年月ですっかり色あせ、ボロボロになっている。
最後まで読み返すと、それを丁寧に畳み、封筒に入れるとルイズに手渡した。
「これが姫から頂いた手紙だ。このとおり、確かに返却したぞ」
「ありがとうございます」
ルイズは深々と頭を下げて手紙を受け取った。それから、ウェールズに気になっていた事を尋ねる。
「あの、つかぬことを伺いますが、王軍には何か秘策がおありなのでしょうか?」
「どうしてそう思うんだい?」
「先ほどのパリーとおっしゃる方とのお話は、何と言うか、その……」
ルイズの言いたいことが解って、ウェールズは言葉を継ぐ。
「追い詰められた人間のものとは思えなかった?」
「……はい」
奇麗な目をした少女だ、とウェールズは感じた。明日を疑わぬ、活力に満ちた目。
だがウェールズ達の心情を理解しろというには若過ぎて、また、純粋過ぎる。
「敵軍は五万。我が軍は三百。万に一つも勝ち目は無い。我らにできることは、勇敢な死に様を見せ付けることだけだ」
ウェールズは天を仰いで、言葉を続ける。
「そう思っていた」
「では……」
ルイズが顔を上げる。しかし、ウェールズは首を横に振った。
「姫の申し出を受けるかは……解らない。受ければトリステインに火の粉を被せることにもなろう。だから、これから話し合って決めることだ」
勿論、亡命しなくても自分の亡骸は利用されるに決まっている。クロムウェルはアルビオンだけで満足をすまい。
申し出という言葉は、傍らで耳をそばだてていたワルドにとっても聞き捨てなら無いものだった。
何を申し出るというのだろう。亡命しろとでも勧めたのか。
あの姫は若さ故に甘いところが目立つ。
亡命させれば貴族派に口実を与えるだけで、普通に考えれば選ぶべき道ではない。
しかし、無いとは言い切れなかった。手紙を回収する為に奔走するであろうことには予想がついていたが、その折に情に流されて亡命を勧めるか否かは……ワルドの予想では半々というところだったのだ。
とはいえ、傍から話を聞いている限りではそう単純な話でも無いらしい。
ウェールズは勇敢にして高潔で名を馳せた王子だ。もし単純にアンリエッタが情から救いの手を差し伸べたとしても、自分と彼女の名誉にかけて皆の前で認めるようなことはすまい。
それを皆の前で認めるということは、そう言わせるに足るだけの、何かがあるということだ。
自分の知らない、何か。それは何だ?
「正直な所を口にするなら、混乱している。ここにきてそんな……『アンドバリ』の指輪などという種明かしとはね。とっくに討ち死にする覚悟をしていたのだ。
もう、どんなことが起きても平静を保っていられる自信があったのだが、これには心が乱されたよ」
ウェールズは、血を吐くように嘆きの言葉を搾り出した。
「亡命の道が残されているからではないよ。裏切りが、全ては茶番であったと知らされたからだ。父上も、真実を知れば同じ気持ちになるだろう」
長年仕えた……信頼していた重鎮達が相次ぐ翻意を起こし、反乱軍に手もなく追われる中、悟ったのだ。
我が王家は最早、彼らが主君と頂くには足りえぬほどに零落れたか、と。
家臣に必要とされぬ王など王ではありえない。王家の誇りにかけて、彼らの主君足りえる振る舞いを忘れたつもりは無かった。
だが、王の為にこの命を捨てると言って出撃していった忠臣が、明くる日には杖を向けてくる。それが現実だった。
だからこそ、滅びを受け入れた。だからこそ、城を枕に討ち死にする覚悟を決めた。トリステインに住まう愛しき人の為に、王族の誇りを見せ付け、最後の責務を果たし、死ぬつもりだった。
だが、死を前に決めた覚悟すらも『アンドバリ』の指輪の前では無力だ。
貴族の誇りも騎士の尊厳も嘲笑うかのような真実。怒りや憎しみで人が殺せるなら、クロムウェルを今すぐにでも呪い殺している。
一方で、ワルドもウェールズの嘆きに衝撃を覚えていた。ルイズがクロムウェルの虚無呪文の、その具体的なところをアンリエッタに知らせたというのか? 一体どうやって? どこでそれを知った?
いや、それより『アンドバリ』の指輪? 何だそれは?
ワルドの混乱を他所に、ウェールズが立ち上がる。幾分か、青褪めた顔であった。
「……取り乱してすまない。では、父上のところへ参ろう」
以上で15話の投下を終了します。
投下乙でした!
この段階でアンドバリの存在が出てくるのは珍しいかも
乙。惚れ薬の話は単なるギャグではなく伏線の一つだったんだなぁと。相変わらずよくねられてますな。
乙
>>31 という事はワの人が出ないのはきっと壮大な伏線に違いない
GJ
こいつはもしやワの字のレコンキスタ裏切りフラグかな?
34 :
使い魔の炎:2008/10/18(土) 20:10:51 ID:ShhPK3Fz
使い魔の炎、今回はいつもの半分ぐらいしかないので7.5話扱いで
予約がなければ20:30から投下します
「ふむ…。 ミス・ロングビルが土くれのフーケじゃったとはな…美人だったもので、なんの疑いもなく秘書に採用してしまった」
くそ真面目な顔で語るオスマンを、烈火たち4人が冷めた目で見つめている。
フーケをとらえ、『破壊の杖』を取り戻したルイズたちは、校長室で報告を行っていた。
「君たちの『シュヴァリエ』の爵位申請をだしておいた。
すでに『シュヴァリエ』の爵位を持っているミス・タバサは、精霊勲章の授与じゃ」
「ほんとですか!?」
無邪気に喜ぶキュルケ。
「なに、君たちはそれほどのことをしたのじゃ」
しかし、ルイズの表情は浮かないものだった。
「…オールド・オスマン。 レッカには、何もないんですか?」
実際にフーケを捕まえたのは烈火なのに、酬いを受けないのはおかしい。
ルイズはそう思った。
「残念じゃが、彼は貴族ではない」
その言葉を聞いてルイズは肩を落とした。
「かまわねえよ姫。 俺、勲章なんていらねえし」
しかし、烈火は満足そうに微笑んでいる。 ルイズが褒められたのがうれしいのだろう。
「そんなことより、早くパーティーに行け。 主役がいねえと始まんねえだろ」
今夜は、フーケを捕まえたルイズたちを主役とした舞踏会が開かれるのであった。
「あんたは来ないの?」
「俺はちょっとこのオッサンに話があるから、遅れて行くよ」
烈火はオスマンを示しながら言った。ルイズはしばらく首をひねっていたが、やがて頷いた。
「わかったわ…なるべく早く来なさいよ。アンタは私の使い魔なんだから。
それから、オッサンじゃなくてオールド・オスマンよ」
「わーったよ。心配すんな」
ひらひらと手を振る烈火。
その態度にルイズは不満そうな顔をしたが、キュルケとタバサに続いて部屋を後にした。
ルイズたちが部屋をでたのを確認すると、烈火はオスマンに向き直った。
ルイズたちが部屋をでたのを確認すると、烈火はオスマンに向き直った。
「すいません、大事な『破壊の杖』を傷つけちまって」
烈火はまず謝った。
「かまわんよ。戻ってきただけで満足じゃ。
もとより、これを戦闘に使う気はなかったからの…
それで、相談とはなんじゃね?」
オスマンの表情が真剣なものになる。
「…この『破壊の杖』は、この世界のものじゃない。俺の世界の武器です」
「…もう少し、詳しく説明してもらおうかの」
結局烈火は全てを隠さず話した。
自分が突然ルイズに召喚されたこと。生まれつきの炎の能力。
そして。
「こいつに書かれている文字。 これは間違いなく俺らの世界の文字だ」
烈火が示した先には取り戻した『破壊の杖』。
棒に埋め込まれた石の玉には、"石"という漢字が書かれていた。
「ふむ…概ね事情はわかった。 儂も君に話しておくべきことがある」
今度はオスマンが話す番だった。
オスマンは昔、ワイバーンに殺されかけたことがあり、そこを『破壊の杖』の持ち主に助けられたという。
「そいつは…『破壊の杖』の持ち主は、今どこに?」
「…怪我をしていたようでな、儂を助けた直後に倒れ、そのまま息をひきとった」
「そっか…」
烈火は不意に自分の左手のルーンを見つめた。
「それについても話があるのじゃ」
オスマンはハルケギニアに伝わる"伝説"を烈火に語った。
「"ガンダールヴ"?」
「そう、君の左手に刻まれたそのルーンは、伝説の使い魔"ガンダールヴ"の印じゃ。
ガンダールヴは、手にしたあらやる武器を使いこなして主人を守ったと言われる」
その言葉で烈火は、武器を手にすると体が軽くなることの意味がわかった。
しかし、疑問は尽きない。
炎は武器として扱われるのか?
自分の体から生み出したものでも、このルーンは反応するのか?
そもそも、この『破壊の杖』は何なのか? こんな武器の話、日本では聞いたことがない。
…それに、どうすれば日本に帰れるのか?
sien
「結局、何もわかんねえまんまだな…」
思わずため息が漏れる。
「君に勲章をやることはできん。じゃが、儂に出来ることなら君に尽力を惜しまないことを約束しよう」
献身的なオスマンの言葉も、今は虚しく響くばかり。
サンキュと小さく呟いて烈火は部屋を後にし、舞踏会に向かった。
烈火が会場に到着したのは、舞踏会が始まってから1時間半も後だった。
どうやらそろそろお開きのようで、すでに人が減り始めていた。
しゃあねえ、俺も部屋に戻るか…烈火がそう思ったとき。
「遅いわよ、レッカ!!」
君主の声に、烈火は反射的に振り向いた。
「ああ、ごめんひ…」
烈火はそこで固まった。
ドレスアップしたルイズは、普段とはまた違う貴賓溢れる美しさを湛えていた。
「へえ。 馬子にも衣装じゃねえか」
デルフリンガーがからかうように言う。
「うっさいわね…何ぼーっとしてんのよ、レッカ?」
「あ…ああ、わりい。 キュルケとタバサは?」
「待ちくたびれて先に帰っちゃったわよ」
ルイズが怒ったように言う。
「そっか。じゃあ俺らも帰ろうぜ。もう舞踏会もお開きみたいだし」
くるりと向きを変え、歩きだそうとする烈火。
眩しすぎて、これ以上ルイズを見ていられなかったのである。
「…待ちなさい」
ルイズは烈火の服を掴む。
「何だよ?」
「…どりなさい」
「何?」
「一緒に踊りなさい!って言ってるの!!」
一瞬、烈火はルイズの言ってることが理解できなかった。
「え? でも、俺ダンスなんかやったことないし…」
「あんた運動神経いいでしょ! 私に合わせれば大丈夫だから、早くしなさい!!」
ルイズは強引に烈火はフロアに引っ張った。
ドレスアップした高貴な美少女と、真っ黒のシャツの平凡な少年。明らかに不釣り合いな組み合わせ。
最初は無言でぎこちなく踊っていた二人だったが、烈火がステップに慣れ、表情に余裕が出てきた。
「ねえ、烈火」
「ん、どした姫」
「…信じてあげるわ。あんたが別の世界からきたってこと」
ルイズは華麗にステップを踏みながら言った。
「まだ信じてなかったのかよ…」
ほんと信頼ねーよな、と呆れ顔の烈火。
「今まで半信半疑だったけど…あの『破壊の杖』…あんなの見たら、信じるしかないじゃない」
それからルイズは少し俯いて言った。
「ねえ、帰りたい?」
「そりゃあ、友達も親も心配してるだろうしな」
「そうよね…」
ルイズは烈火から顔を隠した。
烈火は、なぜかルイズが悲しそうな顔をしているのがわかった。
「…でも、今は帰れねえよ」
「え?」
「簡単に君主を見捨てる男なんて、忍者じゃねえからな。
言ったじゃん。俺が姫を守るって」
ルイズは俯き、頬を染めた。
「あ、あと…ありがとう」
烈火はルイズがお礼を言ったことに驚いた。
「なにがだ?」
ルイズはごまかすようにモゴモゴと言った。
「ゴ、ゴーレムの下敷きになりかけたとき、助けてくれたじゃない…その、お礼よ」
烈火は当然、といった顔で返事をした。
「当たり前だろ。 俺はお前を守る忍なんだから」
二人は、月の光に照らされた誰もいない幻想的なダンスフロアで、踊り続けた。
そんな様子をひとり(?)眺めていたデルフリンガーがこそっと呟いた。
「おでれーた! 相棒! てーしたもんだ!」
テーブルの脇に立てかけられた大剣は、カチャカチャと音を立てて続ける。
「主人のダンスの相手をつとめて、おまけに手から炎を出す使い魔なんて、初めて見たぜ!」
今回はこれで投下終了です。ご清聴ありがとうございました!
乙です!
つーかこの場合、清聴って言うっけ? 後、清聴は静聴じゃないっけか。よく分からないけど。
>>41 清聴というのは「相手が自分の話を聞いてくれる」ことを敬って言う言葉。「聴いて下さる」。
静聴とは意味が違うからご注意。
>>41 俺らなんも聞いてないのに清聴も何もないでしょ
ピカチュウを召喚
最初は生意気だったが身を挺して自分を助けるルイズに心をゆるす
え〜、前回、ナンバリングを間違えてしまって申し訳ありませんでした。
こっちが本来の第十回ですね。
他に居ないようでしたら、このまま投下します。
しかし前スレ、綺麗になぎ払って埋まったなぁ……
どこかぁらぁ来たぁ〜そぉ〜してぇ〜
はっきり言って久保がデルフを使う様子が思い浮かびません。
それでも何故デルフは買われるのか?
それは因果律として『ルイズの使い魔はデルフリンガーを持つ』ことがかなりの高確率で運命づけられているからです。ええ、そりゃもうアカシック・レコードのレベルで。
ただ、久保自身は因果律の輪からは外れている筈なので、この場合はガンダールヴのルーンに引きつけられたという事になりそうですが。
ディス・アストラナガンを見た日の夜は少々びくびくしていたが、クォヴレーが別段普段と変わらぬ受け答えを続けるうちに、ルイズの方もすぐにそれまでと変わらぬ応対をするようになった。
ただ、何かしら理由がない限り、自分の近くでディス・アストラナガンを呼び出さないことははっきりと要求していたが。
そんな、クォヴレーが呼び出されてから初めての休日。虚無の曜日。
「クォヴレー、今日は街に行くわ。付いてきなさい」
いつものように朝の洗濯を終えて戻ってきたところで、着替えを終えたルイズがそう声をかけてきた。
馬に乗るのは初めてだったが、以前チョコボに乗った事があるのが功を奏したらしい。比較的容易に乗りこなすことが出来た。
街の入り口に馬を預けておき、そこからは徒歩で行く。
「ここが、トリステインの首都、トリスタニアよ。トリステインで一番大きな街ね」
「成る程」
この規模の文明社会としてはまぁまぁの大きさだろうと軽く道を見回す。
「それで、今日は何をしに来たんだ?」
「何言ってるのよ。アンタの買い物に来たのよ」
「俺の?」
心底に意外そうな表情をするクォヴレー。
「そ、アンタの服とか。分かんない?さっきから視線向けられてるのは、その変な服のせいでもあるんだからね」
改めて自分の身体を見下ろすクォヴレー。成る程、パイロットスーツはこの中ではかなり浮いてしまう部類だろう。
「そうか、ありがとう、ルイズ」
「な、何よ!別にアンタのためなんかじゃないんだからね!?こういう視線を私の周りから無くしたいだけなんだから!」
「そうか、苦労をかける。済まない」
ツンデレのテンプレktkrな反応のルイズに、真面目に申し訳なさそうな顔をするクォヴレー。
今更だが、素直クールなクォヴレーに、ツンデレのルイズではすれ違いまくりであった。
「……と、とりあえず、まずは朝食よ」
遅めの朝食を終え、二人は古着屋に入る。
古着屋といっても、一般の平民が使うような所ではない。比較的金のある商人や、逆に役人など、ある程度の公的立場に有りながらあまり金のない者が利用する、それなりに質の高い古着を扱う店だ。
多少ほつれたりくたびれている部分もあるが、あて布で破れた箇所を塞いでいたりする平民の服と比べれば雲泥の差だ。
「私の従僕に合う服を探しているのだけど?」
余計な混乱を避けるため、従僕としてクォヴレーを扱う。まぁ、実際そんな扱いなのでクォヴレーもあれこれ口を挟まない。
そしてどこの世界でも女の子は着せ替え人形が好きなもので。
しばらくの間あれを着ろこれを付けろと着せ替えられてしまった末、クォヴレーはルイズがチョイスした、黒いズボンと白い七分袖のシャツ、黒いベストと茶色のブーツを着ていた。
「ほら。あの変な服より、そっちの服装の方がずっと様になっているわ!」
出来映えに気をよくしたらしいルイズが、嬉しそうにしきりに頷く。
(西部劇にでも出てきそうな格好だな……)
しげしげと身を包む服を見る。
「何よ。文句あるの?」
「いや、無い。ただ、出来ればグローブも欲しいんだが」
「グローブ?全く贅沢な使い魔ね。そうね……これなんてどうかしら」
文句を言いながらも選んでくれた、手甲の部分が開いている革製のグローブを付ける。
ぎゅっぎゅと手を開いたり閉じたりし、手を握り合わせてグリップも確かめる。
「……良い具合だ」
「服はこれで良いわね」
満足げに頷きながらルイズ。代金を支払い、古着屋を後にする。
サービスして貰ったズタ袋にパイロットスーツを押し込みながらクォヴレーも後を追う。
「さぁ、次は武器屋よ」
「武器屋?何を買うんだ」
「アンタの剣よ」
「剣?」
支援薄いぞ! 何やってんの!
怪訝な顔をするクォヴレー。
「だが、ルイズ。俺は剣を扱ったことがないし、必要とも思えない」
戦闘用ナイフぐらいならαナンバーズ時代の訓練で使ったことはあるが。剣とはリーチも違えば使い方も異なる。
「どの口が言うのかしら?そんなことを!」
怒りに口の端をひくひくと振るわせるルイズ。往来で立ち止まり、振り返って後ろにいるクォヴレーに指を突きつける。
「アンタの銃が強力なのは判るけど、それを決闘の時みたいにバカスカ撃って、それで今度は壁の修理費を私に払わせるつもり!?」
「…………」
流石に一度やってしまった手前、言い返せない。
「済まない。確かに必要なようだ」
「判ったなら黙って付いてきなさい!」
結構な剣幕で歩くルイズに、人々の流れが若干割れていた。そりゃあ誰だって不機嫌なメイジに積極的に関わろうとはしないだろう。
「そういえば……あの、アストラナガン?だったかしら?」
先日の恐怖体験を思い出す。
「ああ」
「……あれにも、何か武器があったりするのかしら?」
「ある」
とんでもないのが。
「……お願いだから戦いに使わないでよね。あの巨体じゃ暴れられるだけでも厄介なんだから」
「流石に周辺被害は考慮する」
しなければ建造物どころかこの星一つの危機である。
「ホントに頼むわよ?コルベール先生もいつでも助けてくれるとは限らないんだからね?」
若干懇願の色も含めてルイズは言った。
「……ところでルイズ」
「何?」
「古着屋を出た辺りから付けられているようなんだが」
「何ですって!?」
ばっと振り返る。
瞬間、人混みの中、赤い髪が建物の影に入っていった。
「あの髪……」
髪のある位置から推測する背格好からもほぼ間違いあるまい。
「キュルケとタバサだろうな」
「タバサも?何で判るのよ」
「街に来る時にシルフィードで空を飛んでいた。休日だから彼女たちも買い物に行くんだと思っていたが、どういうつもりだ?」
「くっ……」
ルイズが渋い顔をする。
十中八九、自分たちを追っているに違いない。何せ先日も夜出た時に追ってきたくらいだ。
「クォヴレー、撒くわよ」
「了解した」
駆け出すルイズに従い、クォヴレーも歩調を早める。真意は分からないが、ともかく主の命には従おう。だが
「……ルイズ、これでは撒けない」
「わ、判ってるわよ!」
息一つ乱れずに駆けるクォヴレーに対し、ルイズの足は年相応の少女のものでしかなかった。
後ろから近づいてくる二人の影も未だ消えない。
体格的に勝っているキュルケはともかく、ルイズよりも小柄なタバサまでが付いてきているのは、クォヴレーにとって少々以外だった。
(やはり、彼女は見た目通りの少女という訳では無さそうだな……)
とりあえず走り出したことで二人がこちらを追っているらしいのは確信に至った。ついでに、主人はそれを引き離したいらしい。ならば
「じっとしていろ、ルイズ」
「え?きゃあ!?」
返事を待たずに、ルイズをお姫様抱っこにして通りを駆け抜ける。
バルシェムといえど純粋な身体能力では、某戦闘民族や流派東方不敗の面々に遠く及ばないものの、体のさばき方に関してはやはり普通の人間の比ではない。
理想的なフォームで効率よく体を動かし、人混みをかき分けてゆく。
ある程度走ったところで角を曲がり、ルイズを下ろし、角から頭だけ出す。
「……撒けたようだ」
しばし呆然としていたルイズだが、ようやく口を開く。
「あ、アンタ足速いのね……私持ち上げながらあんなに……」
何とも的はずれな台詞だったが、クォヴレーはそれ以上に的を外していた。
「いや、実際ルイズは軽いからな。大した負担でもない」
「ふ、ふん。別におだてたって何も出ないわよ!」
「おだて?何がだ?」
「…………」
嫌な沈黙が降りる路地裏。
「……ああ、軽い、というのは女性にとって誉め言葉になるんだったな」
ようやくにして納得したらしいクォヴレー。遅すぎである。
「別に良いわよ……おだてじゃないって判ったもの……」
それでも、何だか釈然としないルイズだった。
「しかし、何故二人を撒こうとした?何かしらたくらんでいるのか?あの二人は」
「え?そ、それは……」
言われてみれば、何故わざわざ二人を撒こうとしたのか……。
「わ、分かんないけど……そうよ!理由は分からないけど、見張られているなんていい気はしないでしょ?そういうことよ」
「それは同感だ」
そういう経験がないでもない。
イングラムのことを知覚していなかった時など、常に思考の裏側に誰か別の意思を感じて、嫌悪感を抱いたものだ。
「さぁ、行くわよ。武器屋は調度ここから辻二つ向こうの筈よ」
ルイズの先導でようやくにして二人は武器屋にたどり着く。
「き、貴族様?うちはまっとうな商売でして……」
これ見よがしに低姿勢になる店主に、むしろ機嫌を悪くするルイズ。これでは何もなくても疑いたくなるではないか。
「客よ」
ぶっきらぼうに一瞬驚いたような顔をしていた店主が、ルイズの後ろに立つクォヴレーに目を向ける。
「この平民に合いそうな剣を探しているの」
「あぁ!左様で!」
ようやく納得したように頷いて奥に引っ込む。
一方のクォヴレーは店内をぐるりと見回していた。
剣、弓、兜、盾etcetc.……一角には銃もあったが、やはりマスケットレベルのようだ。
「最近は土くれのフーケなんて盗賊も出る物騒な世の中ですからね。宮廷の貴族様方でも、従者に剣を持たせるのが流行っているそうで」
そう世間話を織り交ぜつつ、2,3本の剣を持って再び店先に戻ってくる店主。
「ふーん、結構立派じゃない」
しげしげとそれらを眺める。
「へぇ、これなんかは、なんでもかの有名なゲルマニアはシュペー卿の作だそうで。魔法がかかっているんでさ」
「そう……どうかしら?クォヴレー」
「どう、と言われてもな……俺に剣を見る目はない」
「ああ、もう、いいわよ!ちょっと、これはいくら!?」
最も華美な、魔法がかかっているという剣を指さす
「エキュー金貨なら2000枚、新金貨なら2500枚といったところですかねぇ」
「……家が一軒買えるじゃない」
憮然とした表情で唸るルイズ。
本来の歴史では平賀才人治療費に充てられた水の秘薬代がまるまる残っているとはいえ、高い。
「ルイズ、別にもっと安いものでも構わないと思うが」
「な、何よ!これぐらいの値段……!」
「というよりも、そんな大仰な魔法の剣をアテにしなければならない状況なら、ある程度の被害は覚悟の上で銃も使わせて欲しい」
こちらは結構切実に本心だった。
支援
>46
>ええ、そりゃもうアカシック・レコードのレベルで。
つまりそれはマサキ連れてきたらアカシックバスターでぶっ飛ばせると言うことだな
なまじ質の高いものを持たされては、より銃の使用を制限されかねない。それでピンチに陥ってはお笑いである。
「……そ、そうね……あくまで、アンタにとって本命はそっちなのよね……」
「銃、ですかい?それなら……」
「ああ、いいのよ。銃に関しては。もう持ってるから」
別なセールスポイントを見つけたと思っていた店主を軽く一蹴する。
「ハハハハハ!久しぶりに鴨が来たって、足下見ようと思ったら、あっさりとかわされやがったな!」
成人男性のような笑い声が店内に響く。
「何?」
慌てて店内を見回すクォヴレー。自分、ルイズ、店主、やはりそれ以外には見あたらない。
「うるっせえぞデル公!」
「けっ!せこい真似しようとすっからだよ!」
二度目の声で、ようやく声の発信源が判った。
「喋る剣か。珍しいな」
剣の飾られている一番端っこ。比較的目立たないように飾られている、錆びた剣が声を発していた。
「へぇ、これって、インテリジェンスソード?」
「そ、そうでさ。若奥様。誰が始めたんでしょうかねぇ?剣を喋らせるなんて」
「中々に便利だぞ。物持ちが良ければ、人より遙かに多くのことを見聞きする物知りだ」
星辰剣しかり、闇の剣しかりである。前者は無駄口も多いが。
「ほぉ、兄ちゃん。判ってるじゃねぇか。気に入ったぜ、俺を買いな!」
「そうだな……錆びているし、いくらか安いんだろう」
くるりと店主の方を向いて尋ねる。流石に困惑顔だ。
「は、はぁ、そいつなら100エキューで結構ですが……」
どうだ?とルイズの方を向く。
「そ、そりゃあそれぐらいは出せるけど……ホントに良いの?そんなので?一応数打ちものでも他にあるのよ?」
「構わない。どうせ俺は剣を扱ったことがないから、まともな切り方は期待出来ない。ならば切れ味の善し悪しはあまり意味がない」
「おいおい!買えっつって何だが、俺は棍棒じゃねぇんだぞ!?」
不満げに声を上げる剣。
「善処はする。ただ、扱いについて指導出来るところがあればして欲しい。何しろずぶの素人だ」
「かぁーっ、まいいったなこりゃあ……」
困惑したようにぼやく。
(……そういえばクォヴレーってやたら技術習得が早かったわよね)
自ら教えてくれる剣というのがあれば、それこそメキメキと上達するかも知れないと思いつく。
支援
56 :
巨人の使い魔:2008/10/18(土) 21:57:38 ID:SfE2sfqa
しえん
「そうね。あれにするわ」
「へ、へぇ、まいどあり!」
目玉が売れなかったのは些か惜しいが、まぁ厄介払い出来たのだからよしとしようとポジティブに考える店主をよそに、かけられている喋る剣を手に取った。
「……こりゃおでれーた。坊主、お前『使い手』か?」
「使い手?何のことだ」
「……何だったっけかな?」
「…………」
一人と一振りの間に微妙な空気が流れる。
「物知りだと思ったんだがな」
「流石に長く生きすぎて忘れちまったよ。勘弁してくれ」
「扱われ方の指導ぐらいは出来るだろう?」
「まぁな、俺っちはデルフリンガー。これからよろしく頼むぜ、相棒」
「俺はクォヴレー・ゴードンだ。こちらこそよろしく」
店主の出した鞘にデルフリンガーを入れ、あれこれ迷った末に背中に背負うように剣を持ち、ルイズに続いて武器屋を後にする。
「……ちょっと、さっきから何後ろの方をちらちら見てるのよ」
街の外へ向かいながら、しょっちゅう首を振り向かせるクォヴレーにルイズが尋ねる。
「いや、先程店を出た直後にキュルケ達を見つけたんだが……追ってこないな?」
「え?居たの!?」
しきりに首をかしげるクォヴレー。
「どういうつもりだったんだ。あいつらは……」
学院に戻ってから、その答えは知れた。
「はい、ダーリン!私からのプレゼント!」
部屋に入る直前の女子寮廊下。満面の笑みを浮かべながら、キュルケが鞘に収まった剣を差し出していた。
……要するに、自身に対抗しようとしているらしいと頭を抱えながらルイズは悟る。
しかもそれ、あの武器屋においていたシュペー卿の作ったとかいう剣じゃなかったか。
「ちょっとキュルケ。何のつもりよ」
「何って、私からダーリンへのプレゼントだって言ったじゃない」
更に得意げに胸を張るキュルケ。
「……錆びたインテリジェンスソードしか買えないルイズと違って、私はあの店一番の業物よ?」
「なっ……!何でそれを……!」
「この剣を買うついでに聞いたら気前よく教えてくれたわよ?厄介払いが出来たって凄く嬉しそうだったわ」
今度あの武器屋に失敗魔法をぶち込んでやる、と物騒な決意を固めるルイズ。
一方クォヴレーは差し出された剣をしばし眺めた後、手に取った。
「くれるというのなら、ありがたくいただいて置くが……あまり使う機会は無いと思う」
ミス。
うっかり自分の作品名で支援してしまったorz
名前欄は関係ありませんので。
「え?な、なんで!?」
予想外の展開に驚くキュルケ。ルイズの剣よりずっと良い剣を送ってハートもゲット!の計画だったのだが。
「生憎と俺は剣の扱いに慣れていない。剣を使う時は――インテリジェンスソード、というのか?この喋る剣のデルフリンガーに教えられながら剣を振るうことになるだろうし、二刀流が出来る力量もまた、俺は持っていない」
「おうおう!そいつぁいい心がけだぜ!まぁ、『使い手』の相棒なら大丈夫とも思うけどな、武器として使ってもらえりゃ言うこと無しだ!」
背中のデルフリンガーも嬉しそうにカチカチと鍔を鳴らす。
「……使う時が来るのなら、だが」
「なっ、いきなり不安になるようなこと言うんじゃねぇ!」
「武器は出来れば使わないに越したことは無いだろう」
フッといたずらっぽい笑みを浮かべながら剣とじゃれるクォヴレー。
一方のルイズは、一瞬不利かと思ったが、クォヴレーの言葉に優越感を露わにした。
「まぁ、インテリジェンスソードを選んだ私がいかに使い魔を理解している主人かという事よね?」
形勢逆転。ふふんと勝利の笑みをキュルケに向ける。
くっと悔しそうな顔をするキュルケ。
「ところで……」
肩口から覗くデルフリンガーから、キュルケに視線を移しながらクォヴレーが尋ねた。
「昼間、タバサと共に俺たちを尾行していたようだが、どういうつもりだ?」
「…………」
(こいつ本気で判ってないのかしら)
既にキュルケの気持ちは口頭で伝えたはずであり、しかもこのシュペー卿の剣を出す時に明らかにルイズに対抗心を露わにしていたのだが。
「え?それは勿論、愛しのダーリンを追っていたのに決まってるじゃない?」
「何を馬鹿なことを言ってるのよ!不必要にクォヴレーに近づかないで頂戴!私の使い魔なのよ!?」
そう言いつつ、庇うようにクォヴレーを自分の部屋に押し込む。
押されるがままにクォヴレーは扉を開けて中へはいる。
「それじゃあダーリン、また明日ね?」
ひらひらと手を振るキュルケ。
クォヴレーを押し込むままに部屋に入り、もたれかかるように背で扉を閉め込む。
「っはぁー……」
ふかーくため息をつくルイズ。
「ほぉ、もてるな、相棒」
「生憎と、色恋沙汰には関心が薄くてな」
「またまたぁ、憎いね!このこの!」
もしデルフリンガーに腕があるのなら小突いているところだろう。
「……まぁ、どうとるかは自由だが」
「ちょっと、クォヴレー」
ルイズが両手を腰に当てて、クォヴレーを呼ぶ。
「何だ?」
「今回は、まぁ良いけど、今後キュルケがアンタに何か贈ろうとしても、受け取っちゃダメよ?」
「何故だ?」
「何故って……その……あ、アイツは!アンタを自分のものにしようとしてるのよ!しゅ、主人の私としては!アンタが居なくなったら困るし……」
「……判った。ルイズが不安になるのなら、今後誰かから物を貰うのは控えるとしよう」
こくりと頷いてみせる。
「ええ!そうしなさい!」
使い魔の横を通り過ぎ、ルイズは部屋の奥へ向かう。
クォヴレーは自分が寝るための毛布の置かれている場所に二振りの剣とズタ袋を下ろし、パイロットスーツを取り出す。
「少し早いが、自由時間にさせて貰っても構わないか?」
「そうね……別に用事もないわ。好きにしなさい」
すこし考えるそぶりを見せてから、放逐する。
「何だ?相棒どっか行くのか?なら連れて行けよ!折角退屈な武器屋の店先から解放されたんだ。少しは刺激が欲しいぜ」
デルフリンガーがカチカチと鍔を鳴らしながら訴える。
「着いてきたいのか?まぁ構わないが」
パイロットスーツとデルフリンガーを背負い、クォヴレーは主の部屋を後にした。
2時間後。
クォヴレーと共にハルケギニアを文字通りに飛び回ってきたデルフリンガーは、相棒にこう尋ねた。
「俺、必要か……?」
「アストラナガンを呼び出すスペースがなかったり、銃撃の弾が跳弾しては困る様な場所ではお前に頼ることになる」
「それって、すげー限定的な状況の気がするぜ……」
冷静なクォヴレーの受け答えに、気落ちしながらデルフリンガーはため息をついた。
今回はここまで……
いやー、フーケ戦が無いと山場が一つ無くなりますなー。
そういえば以前、久保が破壊の杖を無力化してしまっておマチさんを哀れんでる声がちらほら見受けられましたが、
彼女が本当に可哀相なのは、次の次に出る時ぐらいです。
初期のルイズを見てると今までよく生きてこられたなと思う
オヤジがこっそりと手を回してる?
乙です!
>>60 > 「俺、必要か……?」
クォヴレー+ディス・アストラナガンの能力を見せ付けられたらこうも言いたくなるか。
>>61 少なくとも最初期のルイズはホントに
性格は高慢かつ権力欲と名誉欲は人一倍のくせに
プライド高いだけで無能以下の足手まとい
後悔するけど反省はしないを地で行っていたから
多分キュルケはルイズのフォローに必死だったんだろな
力あったらあったで一人だときっと調子に乗りまくって
肝心なところでしくじって誰かに八つ当たりするだろうから困る
久保の人乙なんですが、他作品ネタがちらほら出てくるのは読む人選ぶんでしょうなあ
私的には某時空の管理局の人達に無免許時空移動で指名手配されている久保や
某型月の宝石の爺さんと茶飲み友達の久保とか想像しますが
分かる人はニヤニヤできるがな
クォヴレーの人乙でしたー
>>64 そこまで酷く言わなくても……
>>65 まあ、久保らしいっちゃらしいよな
あんまり増えすぎるのもどうかと思うけど、今のままだったら俺は平気だな
何はともあれ乙です
55分くらいから投下していいでしょうか?
「もののけ草紙」より、手の目を召喚です。
>>64がゼロ魔の原作をよく読んでいない、あるいは悪意を持って解釈していることだけは分かった。
>>67 まああくまでも最初期の話だし
おマチさんゴーレム相手に名誉欲で特攻といい
己の実力を考えずにおマチさん討伐やら手紙回収に首突っ込んだり
他にも錬金の時といいギャンブルの時といい
最初期ルイズは一事が万事こんな調子だったんだろ
キュルケの苦労が忍ばれる……
>>68 またマイナーな作品をw
大人版か子供版かwktkしながら支援
「あっしは【手の目】だ
先見や千里眼で酒の席を取り持つ芸人だ
と言っても 今回 この場に居るのは商売のためじゃねぇ
我ながら ドジな話もあったもんさ
山中で道に迷った挙句 足を踏み外して谷底に真っ逆さま
気がついて辺りを見渡せば 頭上にゃ双つのお月さんと来たもんだ
流石のあっしもぶったまげたよ
見たところ…… どうやら地獄ってワケでもなさそうだが
周りのガキどもの妙ちきりんなカッコと言い なんだかイヤな感じさ
厄介な事にならなきゃいいがね……」
「アンタ…… さっきから 何をブツブツ言ってんのよ」
辺りの沈黙に耐えかね、桃色髪の少女が口を開いた。
【手の目】がこの地、トリステイン魔法学院に降り立ったのは、彼女・ルイズ=フランソワーズの魔法によるものであった。
周囲は一言も発しない。ただその視線を、少女の一挙手一投足に向けて固まっている。
そもそも今回の使い魔召喚の儀式において、初歩的な魔法すら碌に使えない少女
【ゼロ】のルイズが何を呼び出すのかは、ちょっとした話題の種であった。
失敗したり、変なものを呼び出したりした時には、即座に笑い物にしてやろうと、野次馬根性を発揮していた彼らだったが
召喚に応じたソレは、軽く笑い飛ばすには、あまりにも奇抜な存在であった。
ルイズは一歩踏み出すと、改めて自らの使い魔を見定めた。
年の頃は13、4と思われる小柄な少女。
人間を召喚したというだけでも十分異例の事態なのだが、その外見が又ふるっていた。
東方の物と思しき民族衣装は、目のような不気味な模様で無数に彩られ、蝶結びにした太い帯でまとめられている。
クセの強い黒髪は、短剣のように無骨な髪飾りで結いあげられ、見る者に、あまりにサバけた印象を与えた。
加えて、背丈に対し大仰すぎる黒マント、手には風呂敷を結わえたオンボロ傘。
旅人と言うにも異形なナリであったが、同時に、その異形さこそ、今のルイズに残された唯一の希望でもあった。
やがて、意を決してルイズは彼女に尋ねた。
「あなたは…… あなたは メイジ なの?」
「めいじ・・・・・・?」
その言葉の意味を反芻するかのように、手の目が口を開く。
かざした右手の指の間から、猫のような大きな吊り目がルイズを捉える。
一体何の意味があるのか、掌には着物と同じ【目】をあしらった模様の刺青。
まるで、彼女の右手に値踏みされているかのような感覚に、思わずルイズが身震いする。
「ああ……」
やがて、得心がいったという面持ちで、手の目が言葉を紡ぎ始めた。
「いや…… そんな立派なもんじゃあないね
あっしは手の目 先見や千里眼で酒の席を取り持つ芸人さ」
「芸人……」
一縷の望みを断ち切る響きに、ルイズが肩を落とす。
奇抜な衣装も人目を引く手段と考えれば、納得のいく答えであった。
程なく、哄笑が周囲に溢れはじめた。
「ルイズが平民を召喚したぞ!」
「おいおい なにやってんだ ゼロのルイズ」
「いくら魔法が使えないからって 芸人なんて雇うかね 普通」
「ルイズに幾ら貰ったんだい? お嬢ちゃん」
>>70 オマチさんは有力貴族の娘っこをぬっ殺す気満々だしなw
後付設定の弊害か
魔法が使えなくていっぱいいっぱいだったんだよ
貴族=魔法が使えるがあるし
そして支援
支援じゃああ
喧騒は一向に止む気配を見せない。
緊張が続いた分、ルイズへの当て擦りは酷くなる一方だった。
手の目はいかにも不機嫌そうに目を細め、無言で周囲を睨みつける。
ふるふると小刻みに震えていたルイズであったが、やがて、きっと顔を上げ、傍らにいた年配の男に何事が喚きだした。
「…直しを… コルベール… こんなの何かの間違い…!」
(こんな とは何だ)
途切れ気味に聞こえてくる声に、手の目が心中で毒付く。
どうやら必死の抗議も通じなかったらしい。大きく溜息をつくと、ルイズは手の目と向き合った。
「手の目って言ったわね?」
「……」
「感謝しなさいよね 貴族のあたしが平民にこんなことをするだなんて
本来なら 絶対にありえない事なんだから……」
手の目は口を利かない。例の右手をかざす仕草で、只々ルイズを睨みつけている。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール
五つの力を司るペンタゴン
この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
幾分緊張した面持ちで、ルイズは瞳を閉じ、顔を近づける。手の目は身じろき一つしない。
やがて、ルイズの唇が、手の目の口元にゆっくりと重ねられた。
「――ッ!」
すぐにルイズは違和感に気付いた。
即座に顔を上げ、眼前の少女に対し、怒気を露わにする。
「ア アンタ! 一体何のつも――」
「ぐっ!」
ルイズの抗議を遮り、手の目が呻き声をあげる。
痙攣する左手の甲が瞬き、何らかの印が刻まれていく。
「おお 間違いなく 使い魔の契約のルーン
……それにしても これは 見たことの無い紋様ですね」
コルベールと呼ばれていた男は素早くメモを取ると、コンタクト・サーヴァントが無事に終了した事を確認した。
「さあ これで使い魔召喚の儀式は終了です
本日はここまで 各自 速やかに退散するように」
男の一言に、徐々に周囲の喧騒が収まっていく。
口々にルイズの悪態をつきながらも、やがて、全員が上空へと飛び立っていった。
――そして広場には、二人の少女だけが残された。
「……アンタは飛ばないのかい?」
使い魔になったばかりの少女は、主人になったばかりの少女に対し、本日一番の毒舌を浴びせた。
・
・
・
>>75 魔法至上主義のあの国であの程度の性悪に捻じ曲がったことが奇跡に近いか
おかんの教育の賜物だな
――夜
ルイズの部屋の中では、生まれたての主従による問答が繰り広げられていた。
「――すると手の目 アンタはここ
ハルケギニアとは全く別の世界から来たって言うの?」
「その通りさ お嬢 そもそも手前の生国は……」
「どうでもいいわよ そんな事 下らないホラばっかり吹いて」
髪を掻き上げながら、ルイズがひとつ溜息をつく。
手の目の話は、彼女からしてみれば厄態のないホラ話ばかりに思えた。
そもそも、手の目は異世界から来たと言いながら
二つの月や空飛ぶ人間に対し、何の反応も示さないのだ。
魔法の無い世界から来たなどと言うからには、もうちょっと驚いて見せてもいいではないか。
「それで アンタは一体 何が出来るの?」
「何が? と言われても あっしはそもそも 何をすりゃあいいのか判らねえ
お嬢 使い魔ってのは 一体何をするもんなんだい?」
「そうねえ……」
ルイズはしばし考え、使い魔の役目を挙げていく。
「例えば 主人と感覚を共有するとか……」
「ああ そりゃ無理だ
あっしが言うまでも無く 自分で判ってるだろうがね」
「それじゃあ 秘薬を作るための材料を集めてくるとか」
「それも無理だね 材料がどうこう以前に あっしはこの世界自体がよく分からねえ」
「……あとは 主人の護衛とか」
「無理無理 この細腕にそんなモンを期待されても困るね」
「……」
暫く使い魔の少女を睨んでいたルイズだったが、やがて、大きくため息をついて言った。
「あんた 何か一つくらい取り柄はないの?
まるっきり役立たずじゃないの」
その一言は、ルイズにとっては、先の暴言に対する意趣返しのつもりであった。
だが、手の目はまるで、その言葉を待っていたと言わんばかりに、不敵に笑った。
「あっしは芸人だ 宴席での余興ならお手のもんでさ たとえば……」
手の目はおもむろに左手を差し出すと、未だ淡い輝きを放つ甲に、右手の刺青をかざした。
直後、ルーン文字がビクンと痙攣し、その線の一本一本が、まるでミミズのようにのた打ち始めた。
やがて、輝きを失ったよれよれの線が、バラバラと崩れ出し・・・・・・、
「あッ!?」
と言う間に消え失せてしまった。
素敵なお兄様は登場するのだろうか支援
「ハイ拍手! 文字通り 影も形も御座いやせん」
「な! な な なんで? 使い魔の証が……」
「そりゃあ消せるさ あっしが自分で書いた文字だ 手前に消せない訳がない」
「自分で……書いた?」
ルイズの唇に、先の感触が蘇る。
契約の瞬間、手の目は自らの唇を口内に咥え込んで、ルイズの口づけを拒絶したのだ。
成程、コルベールが珍しがる筈である。
手の目のルーンは、彼女自身が適当に刻んだ代物だったのだから・・・・・・。
衝撃の大きさに耐えかね、ルイズは力無くその場にへたり込んだ。
「も もしかして 先住魔法・・・・・・な の? アンタは何者……人間ではないの?」
「先住? 何だいそりゃあ
あっしのはあくまで芸だ 化け物扱いたァ失礼じゃねぇか」
「同じ事よ」
ルイズが憮然として言う。
大いなる始祖・ブリミルが残した遺産――魔法とは異なる力を行使する存在を
この世界に住まう人々が、同胞と認めることは無いだろう。
そのような者があれば、研究対象としてアカデミーに引き渡されるか、エルフの亜種として審問にかけられるのがオチだ――と。
「そいつはおっかねぇ話だねぇ
で? それで お嬢はどうなさるんで?」
「へっ?」
「名門ヴァリエール家の令嬢が 使い魔召喚の儀式に失敗した上
何処の者ともつかねえ あやかしの類に一杯喰わされたと・・・・・・ そう お上にチクるのかい?」
「・・・・・・私を脅すの?」
「脅すとは何でぇ! 人聞きの悪い
大体 手前らの方こそ何だってんだ! 人様の事情も聞かずにかっ攫いやがった挙句
乙女の純潔を奪って 手篭めにしようとしやがったクセによぉ!」
「んなっ! 何ですって!?
好き勝手言ってんじゃあないわよ! 私だってねぇ・・・・・・」
初めてだったんだから! と、思わず言い返しそうになり
その台詞の余りの恥ずかしさに、反論が止まる。
勿論、ルイズの方にも言い分はある、が、どうにも立場が悪い。
ここで騒ぎを大きくすれば、ヤケっぱちになった手の目は何をしでかすか分からない。
守るべき家族のいるルイズには、ハナから勝ち目のない喧嘩であった。
しばし、一触即発といった空気が続いていたが、
不意に手の目が、一目で営業用と分かる、愛嬌たっぷりの笑顔を見せた。
「へへ なんてな」
「何よ 急に・・・・・・」
「考えてみりゃ お嬢は命の恩人さ
あっしもこんな 右も左も分からねぇ国でイキナリおっ死ぬってなぁ まっぴら御免だ
当面のアテがつくまでは お嬢の使い魔の真似事をしたって構わないぜ」
「・・・・・・本当に」
「ちゃんと『真っ当な』扱いをしてくれるんならね」
ああ、とルイズは理解した。
これまで手の目が、騙し、脅し、怒鳴って見せたのは、
つまるところ、ちゃんと人として自分に向き合え、という、当たり前の事を言いたかっただけだったのだ。
ルイズは既に、手の目への疑惑を放棄していた。
その能力の得体の知れなさはともかく、ここまで手の込んだ事をしてまで小事に拘る少女が、人類の敵とは思えなかった。
「分かったわ アンタには当分 あたしの女中として働いて貰うわ
その代わり 仕事に手抜きは許さないわよ」
「へぇ」
手の目は表情を改めると、真面目ぶった動きで三つ指を突き
やたら仰々しい前口上を述べ始めた。
「此度はあっしをお引き立て頂き 真に有難う御座いやす
この手の目 ルイズお嬢様が使い魔の役目 出来る限り誠心誠意務めさせて頂きやす
どうぞ 宜しく御贔屓の事を」
「・・・・・・出来る、限りィ?」
「へぇ」
手の目は右の掌をかざし、何事か考えているようだったが
やがて、心底意地の悪い笑みを浮かべて言った。
「まぁ 朝の着替えくらいは 出来れば一人でやって頂きたいところでは有りますがね・・・・・・」
以上、投下終了です。
元ネタ通り、短編連作の形式でやっていきたいと思っています。
久保乙です
チョコボに吹いたww
しかし、そうなるとバ○ターソード、六対一刀の合体剣、刀身2mの○宗とか見て来たんだろうなぁ
そーりゃDELLの魅力擦れるわww
と言うか、アレだけの銃器を何だかんだで使えるんならDELLの必要性が・・・・
と、思ったが魔法吸収が有ったのを思い出した(身体能力が特筆出来ないのなら、かなり有効)
久保の人乙です。
たまに出てくるネタが全てわかるぜw
久保の人乙。
スパロボネタはわりかし貴重なんで、結構楽しみだったり。
ほかにはキョウスケ+アルト召喚の奴しか思いつかんし。
それはそうと、以前何度か
「ネギ=スプリングフィールドを召喚したら、10歳児との余りの格の違いにルイズが自殺級に落ち込みそう。」
って話が出たけど、ちょっと考えてみたらもっとルイズをへこませるネギまキャラがいたわ。
ルイズ「ち……チヅルが14歳……?
そんな、嘘よ。チヅルが私より2歳も年下だなんて……」←うっかり那波千鶴に甘えてしまった直後。
千鶴「しかも一年の長さが地球とハルケギニアでは違いますわね。」
ルイズ「地球の1年って700日くらい?」
千鶴「365日ですけれど?」
ルイズ「さ……ハルケギニアより短い!?」
↓
ルイズ灰化
手の目の人乙
ひょうひょうとしてて面白い
続き待ってます
>>83 乙です。
クロス元知らないけど面白そう。
このぐらいまで単純化できそうな気がする。
(中略)
対7万戦と再召喚(一度使い魔契約が切れ、まっさらな状態からルイズとの関係を再構築)
単なる荒らし文の一部抜粋
こんな物が役に立つと言う人間は常識が欠落しています
ルールじゃないけどマナー上しておく方が良い事・システム上の注意事項
投下時はタイトルをコテハンとする、トリップ推奨
予告でクロス元他必ず説明する(一発ネタ等でばらすと面白くないならその旨明示)
※過去「投下してもいい?・投下します」等の予告から
最低の荒らし投稿を強行した馬鹿者が居たため同類認定されるリスク極大
1時間に一定量超える投下は「さるさん」規制に遭うので注意
連投規制には有効な支援レスもこれには何の役にも立たない
文章量(kB)と分割予定数の事前申告をしておけば、規制に伴う代理投下をしてもらいやすい
投稿量カウントも規制も正時(00分)にリセットと言われている
他スレでの実験により規制ボーダーは8.5kBらしいという未確認情報あり
さるさん規制への無頓着な書き手の多発に注意を呼びかける有意情報+α
荒らしが面白がってコピペに組み入れたためいまだにスルーされて役に立ってないだけで
ここだけは見る意味有り
【書き手の方々ヘ】
(中略)
・盗作は卑劣な犯罪行為であり。物書きとして当然超えてはならぬ一線です。一切を固く禁じます。
いかなるソースからであっても、文章を無断でそのままコピーすることは盗作に当たります。
・盗作者は言わずもがな、盗作を助長・許容する類の発言もまた、断固としてこれを禁じます。
・盗作ではないかと証拠もなく無責任に疑う発言は、盗作と同じく罪深い行為です。
追及する際は必ず該当部分を併記して、誰もが納得する発言を心掛けてください。
他所(リリカルなのはクロスSSスレ)のテンプレ丸コピ
まさに盗作そのもの
盗作者が盗作禁止を訴えるというまさに狂人の所業である
このぐらいまで単純化できそうな気がする。
爆発召喚
キス契約
「ゼロ」の由来判明(教室で爆発)
使い魔の能力が明らかに(ギーシュ戦)
デルフ購入
フーケ戦
舞踏会
最近はその流れでいかに飽きない話を作るかに凝りがち
爆発
平民プゲラ
コルベール問答無用さっさと汁
キス契約
フライに唖然とする
説明はぁどこの田舎者?
何者であろうと今日からあんたは奴隷
二つの月にびっくり
洗濯シエスタと接触
キュロケフレイム顔見見せ
みすぼらしい食事厨房でマルトー
教室で爆発片付け
昼食シエスタの手伝い香水イベント
オスマンコルベール覗き見
ギーシュフルボッコ場合によって使い魔に弟子入り
キュルケセクロスの誘いしかし使い魔はインポテンツか童貞w
ルイズ寝取られの歴史を切々と語る
休日街でデルフ入手 キュルケタバサがついてくる
ルイズが爆破訓練宝物庫破壊フーケ侵入お宝げっと
この段階でフーケは絶対つかまらない
翌朝捜索隊保身に走る教師一同
教育者オスマン犯罪捜索を未熟な子供にマル投げ
小屋で破壊の杖ゲットフーケフルボッコしかし絶対死なない
オスマンから褒章 舞踏会 終わり
途中飛ばすけど、
対7万戦と再召喚(一度使い魔契約が切れ、まっさらな状態からルイズとの関係を再構築)
今回効いたみたいだから次スレ以降以下の文を
カウンター用に
>>2あたりに当面入れるって事でどうだろう?
本スレのテンプレは現在
>>1のみです
それ以後は完全なコピペ荒らし
荒らしコピペに関する説明
このぐらいまで単純化できそうな気がする。
(中略)
対7万戦と再召喚(一度使い魔契約が切れ、まっさらな状態からルイズとの関係を再構築)
単なる荒らし文の一部抜粋
こんな物が役に立つと言う人間は常識が欠落しています
ルールじゃないけどマナー上しておく方が良い事・システム上の注意事項
投下時はタイトルをコテハンとする、トリップ推奨
予告でクロス元他必ず説明する(一発ネタ等でばらすと面白くないならその旨明示)
※過去「投下してもいい?・投下します」等の予告から
最低の荒らし投稿を強行した馬鹿者が居たため同類認定されるリスク極大
1時間に一定量超える投下は「さるさん」規制に遭うので注意
連投規制には有効な支援レスもこれには何の役にも立たない
文章量(kB)と分割予定数の事前申告をしておけば、規制に伴う代理投下をしてもらいやすい
投稿量カウントも規制も正時(00分)にリセットと言われている
他スレでの実験により規制ボーダーは8.5kBらしいという未確認情報あり
さるさん規制への無頓着な書き手の多発に注意を呼びかける有意情報+α
荒らしが面白がってコピペに組み入れたためいまだにスルーされて役に立ってないだけで
ここだけは見る意味有り
4 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2008/08/17(日) 02:13:03 ID:9AxAAVZE
やる夫が小説家になるようです (以下略)
これも荒らしコピペの一部
荒らし本人以外に「役に立つ」人間など居ない
【書き手の方々ヘ】
(中略)
・盗作は卑劣な犯罪行為であり。物書きとして当然超えてはならぬ一線です。一切を固く禁じます。
いかなるソースからであっても、文章を無断でそのままコピーすることは盗作に当たります。
・盗作者は言わずもがな、盗作を助長・許容する類の発言もまた、断固としてこれを禁じます。
・盗作ではないかと証拠もなく無責任に疑う発言は、盗作と同じく罪深い行為です。
追及する際は必ず該当部分を併記して、誰もが納得する発言を心掛けてください。
他所(リリカルなのはクロスSSスレ)のテンプレ丸コピ
まさに盗作そのもの
盗作者が盗作禁止を訴えるというまさに狂人の所業である
ネギまの話題はそこそこ出てるのに同じ雑誌で掲載していた
同じく魔法(ファンタジー)バトル物のアレの話題が出ていないとは……
ルイズの姉の名前と同じ名前の姉がいるから親近感湧くかもしれんし
一応剣使っているからデルフ涙目にならない展開になれるし……
>>86 ネギくんは小ネタで出ていたけど杖貰った直後だから泣いてばかりだったなぁ。
今だったらウェールズ暗殺さえ素で阻止しそうだけど。
千鶴姉ちゃんはノーパン喫茶なんて知っているから年齢詐称疑惑が出てたなぁw
ゲーッ!熊の爪の使い魔面白かったです
ネギま!キャラなら魔法世界の空港での強制転移呪文でハルケギニアに飛ばされた神楽坂明日菜を見たい
ネギ達と引き離された怒りでvs刹那戦でのバーサク状態で召喚
周囲からありったけの魔法攻撃されても無傷で平然と立つ、バーサク明日菜を見たいが
コルベの気化爆破攻撃なら効くかなあ?
高橋葉介センセイのアレかえ
夢幻さんがしゃしゃり出てきそうだねぇ
手の目の人、乙です。
ついに高橋葉介作品からも召喚されたか……こりゃ嫌が応にも期待してしまう…
しかしタイトルが『夜姫さま』を連想させるせいか、脳内ではなぜか若旦那が召喚されて
「まぁ…“死の接吻”ね」
「いいえ、“おやすみのキス”です」
のシーンがルイズに変換されて浮かんできてしまった。
あのシーン的に似合うのはカトレアあたりなんだろうけど。
高橋葉介ってずいぶん懐かしいな
まだ活動しているのかしら
大昔に宵闇通りのブンとか持ってたな
ポケモンからロケット団 ムサシ コジローがジョセフに呼ばれました
「では、そうだな、何か珍しい生き物を捕らえてまいれ」
「おまかせください!銀河を掛けるろけっと団 略」
「とはいったものの、珍しい生き物なんて俺は知らんぞ」
「適当にモンスターを捕まえてくればいいのよ」
「そうか、そうだな」
そして魔法学院で毎年行われる使い魔召還のうわさを聞きつけ
「おひょー、珍しい生き物を一気にゲットするチャンス」
「じゃりボーイ、じゃりガール達が呼び出した使い魔を契約の前に横取りするのねっ!」
「この使い魔ホイホイで大量ゲットだー」
勝手にヨルムンガルドを持ち出して学院の外から望遠鏡で様子を伺う二人
ニャースは?
零姫様の使い魔、元ネタ全く知らないせいか、あの独特な台詞回しが、
能とかのナレーター(?)みたいなおっさんの声に変換されてしまうw
でも面白そうだから期待ッ!
…ところで、何がとは言わないが今日の皆さんすばらしいです。
高橋先生といえばこないだは帝都物語の魔人が召喚されてたな。
同じ作者だろうか? 続きに超期待。
>>86 アルトアイゼンとキョウスケ召喚ってそんなんあるのか。
でもどこにあるんだそれ? 少なくともここには無いよな?
アイアンマンことトニー・スターク社長召喚
あの天才的頭脳でハルケの科学技術が一気に上がる
そしてコッパゲ狂乱
>>99 >高橋葉介ってずいぶん懐かしいな
>まだ活動しているのかしら
『零姫さまの使い魔』で召喚された“手の目”が出てくる『もののけ草紙』は今ホラーMで連載してるし
ミステリマガジンでは夢幻紳士の新シリーズが載ってる。
あとそれ以外でも怪談専門誌『幽』で短編をちょこちょこ描いてたはず。
>宵闇通りのブン
オスマンが長生きなのは行動予定表に自分の死亡する予定がないからですね、わかります。
MLRS召喚
>>105 むしろエイチチ償還だろ
召喚された時点でルイズが凹み、その後コッパゲが狂喜するのは間違いないが
零姫っていうからサガフロかと思ったぜ
そっちの方も見てみたいなぁ
>>104 キョウスケ ルイズ アルト
↑でググルと一番上に出て来たぞ
112 :
109:2008/10/19(日) 00:31:03 ID:VN0BdePU
字間違えた 償還→召喚だ
しかし、フルネームがエイチチ・F・カップって…
>>104 106の言うとおり、『小説家になろう』ってサイトにあるよ。
以前は更に別の所にあったけど、そのサイトが消滅してからそこに移ったらしい。
よそ様のサイトだから誘導とかできないんで自分でググってくれ。
んで、そのサイト内の検索で『ゼロの使い魔』を入力して探せばいい。
後、内容だが……まあ、自分で判断してくれ、俺は正直好きにはなれなかったけどな。
ルイズが10の魔法の指輪をはめてバトルスーツを着ればいいじゃん
115 :
狂蛇の使い魔:2008/10/19(日) 00:36:12 ID:xr33kABM
投下予約等なければ0:45くらいから投下したいです
ミラモン祭りと聞いて
10の指輪と言われると、『スプリガン』のヒスイ仮面を思い出すなぁ。
実は太古に飛来したヒスイ仮面の故郷の星はハルケギニアで、
故郷に帰ってきたヒスイ仮面を召喚したルイズが危険なオーパーツである『始祖の秘宝』を
ヒスイ仮面と協力して封印して回る、という電波が。
>>86
やはり人間サイズじゃないとつらいんでしょうね。
ロアアーマー呼んでダークブレインとドッジボール対決ってネタが一瞬頭に浮かびましたが
どうやって文章に起こすんだ、と気づいて止めました。
>>99 今回の元ネタの作品は去年ぐらいに出たばかりですよ。
魔美也さんもあいかわらず。煙草は最近あまり吸ってませんが。
レッドスネークカモン!
>>107 少年チャンピオンでもやってなかったか? 加護女とかなんとか
120 :
狂蛇の使い魔:2008/10/19(日) 00:45:49 ID:xr33kABM
では、投下します
第六話
ルイズは一人、夜の学院を歩いていた。
窓を見やると、雲一つない澄みきった夜空に、二つの月が皎々と輝いている。
暗い学院の敷地内のあちこちを淡く照らし出す月の光を見て、ルイズはその光源に顔を向けた。
(月が綺麗……)
そう思った瞬間、突然強い耳鳴りがルイズを襲う。
「……っ!」
ルイズは思わず両手で頭を抱え、しゃがみこむ。
辺りを見回したが、特に変わった様子はない。
そう思った時、壁に掛けられた鏡に気づいた。
鏡の方を向き、恐る恐る覗いてみる。
すると、そこには異様な物が映り込んでいた。
全身真っ白で、のそのそと動く人の形をした影のようなものが、丁度ルイズが立っている後ろの辺りを通り過ぎようとしている。
その光景にルイズは総毛立ち、あわてて後ろを振り返る。
が、誰もいない。
もう一度鏡を見ると、そこに映っていたはずの白い影もなかった。
いつの間にか、耳鳴りも消えている。
ルイズは再び、その場にへたりこんだ。
「ま、まさか、今のって……」
ミラモン、ゲットだぜ!支援
122 :
狂蛇の使い魔:2008/10/19(日) 00:49:01 ID:xr33kABM
「……と、いうことがあったのよ」
そう言うと、ルイズは紅茶の入ったカップを口に運んだ。
残っていた紅茶を飲みほすルイズの姿を見ながら、キュルケが言う。
「へぇ……。でもそれ、本当に幽霊だったのかしら。顔つきとか分からなかったの?」
「暗くてよく見えなかったし……」
腕を組み、眉をひそめてあの時のことをよく思いだそうとしながら、ルイズは答えた。
「でも、幽霊以外に考えられないわよ。あんな姿の生き物なんて聞いたことないし……ねえ、タバサ?」
ルイズはタバサの方に顔を向け、尋ねる。
が、彼女からの返事はなかった。
それどころか、タバサは大きく目を見開き、小刻みにその小さい体を震わせている。
開かれている本のページが、先ほどからいっこうに変わっていない。
答えられそうにない彼女に代わって、キュルケが言った。
「ああ。この子、幽霊とか大がつくほど苦手なのよね。女の子っぽいっていうか、なんというか……」
「へぇ……タバサにも苦手なものとかあったんだ。」
何があっても動じない、常に冷静な普段のタバサを思うと、ルイズは少し親近感をおぼえたのであった。
123 :
狂蛇の使い魔:2008/10/19(日) 00:52:27 ID:xr33kABM
ギーシュと浅倉の決闘から三日。
あの日以来、ギーシュは毎日のように浅倉に呼び出されていた。
あの手この手で浅倉がワルキューレたちを次々と打ち倒していく光景に、その物珍しさからか、いつも見物客が集まっていた。
今では、広場のちょっとした名物となっている。
今日もそんな「決闘」を終えた浅倉は、いつものように意気消沈しているギーシュをよそに、厨房の方へと向かっていった。
「あ。浅倉さん、いらっしゃい。」
厨房に着くと、黒髪の給仕シエスタが笑顔で浅倉を出迎えた。
結果的にシエスタを庇ったことになる浅倉は、彼女にすっかり気に入られていた。
料理長のマルトーを始めとする厨房の面々にも、貴族に臆せず立ち向かう浅倉は平民の鑑であるとして『我らが剣』と崇められる始末。
いつの間にか、厨房で好きな時に食事ができるという権利を獲得していたのであった。
浅倉は厨房にあった椅子にどっかりと座り込むと、脇にあるテーブルに肘をつき、足を組む。
「何か食い物は……!!」
言いかけた時、元いた世界で感じ慣れていた「あの」感覚が突然、浅倉を襲った。
124 :
狂蛇の使い魔:2008/10/19(日) 00:54:12 ID:xr33kABM
タバサは廊下で立ちすくんでいた。
あの二人がいつまで経っても別の話題に移ろうとしなかったため、思わず部屋を飛び出してきてしまった。
とりあえず気分転換にでもと図書室へ向かっていたのだが、今になってこの判断をしたことを悔やんだ。
誰かに見られている気がする。
ルイズの話を聞いていなければ、ただ気配に気をつけるだけで先に進めただろう。
しかし、話の内容はすでに記憶済みだ。
その上運の悪いことに、ここの壁には鏡が掛けられているのである。
ルイズの話を思いだし、全身に鳥肌が立つ。
タバサは覚悟を決め、顔をゆっくりと、壁に掛けられた鏡の方へと向けた。
しかし、鏡はいつもと同じ廊下の風景と、緊張してこわばったタバサの姿以外、何も映し出していなかった。
(特に変わった様子はない……)
ふぅ、と思わずため息をつく。
そして、急に馬鹿馬鹿しくなってきた。
そもそもルイズの話だって、どこまでが本当なのか分からない。
それをそのまま真に受けてしまったなんて。
そう思うと、いくらか気持ちが楽になった。
鏡から顔を背け、再び歩き出そうと足を一歩踏み出した、その時。
後ろから、ウヘ、という声がした。
てか白いのって最終日間際になると大発生するあれか!?
支援
126 :
狂蛇の使い魔:2008/10/19(日) 00:57:07 ID:xr33kABM
タバサが反射的に後ろを振り向くと、そこには、見たこともないものが立っていた。
二メイルほどの、所々に線状のくぼみがある白い体。
頭部は透明の膜のようなものに覆われていて、顔と思わしき部分が透けて見える。
口元に生えた金属製の牙や、何かを着けたような丸みを帯びた両腕は、およそ生物とは思えない出で立ちであった。
常に絶やすことのないぐねぐねとした動きに合わせて、ウへ、ウへ、という不気味な声をあげている。
タバサは絶句した。
何もいなかったはずの場所に、いつの間にか奇妙な怪物が存在していたのである。
(これが、噂の幽霊……!?)
見た目からして、明らかに幽霊ではない。
それどころか、生物かどうかも怪しい。
ゴーレムやガーゴイルの類だろうか……?
タバサが観察していると、目の前の怪物がのそのそと動き出した。
杖を構え魔法の詠唱に入ろうとした時、怪物の口から突然何本もの白い糸が吐き出された。
「!!」
いきなりの動きに反応できず、四肢と首を取られ、杖を手放してしまう。
怪物が相変わらずぐねぐねと動きながら、タバサを鏡の方へ引きずっていく。
タバサは必死に糸を掴むが、抵抗らしい抵抗ができない。
支援する!!
128 :
狂蛇の使い魔:2008/10/19(日) 01:00:20 ID:xr33kABM
怪物が鏡まであと一歩と迫った、その時。
何処からか駆けつけた浅倉が、横から怪物に飛び蹴りをくらわせた。
怪物の糸に絡まれたままのタバサも吹き飛ばされる。
突然の乱入者に驚いた怪物は、タバサを捕らえていた糸を回収すると、慌てて鏡の中に消えていった。
浅倉はその光景に笑みを浮かべながら、呟く。
「まさかこの世界にもいるとはな……。ま、戦えればどうでもいい」
言い終わると鏡の方を向き、紫の箱をかざした。
タバサは吹き飛ばされた体勢のまま、呆然とその様子を眺めている。
機械のベルトが装着された後、右腕を胸の前で前後させ、叫んだ。
「変身!」
ガラスの割れるような音と同時に、その姿が紫の蛇の鎧へと変わる。
ため息とともに首を回すと、王蛇は一瞬タバサの方へ顔を向けたが、すぐに鏡の方へと向き直し、鏡に向かって歩き出した。
王蛇が鏡に吸い込まれるようにして消えると、廊下の奥からバタバタという足音が聞こえてきた。
見ると、ルイズがこちらに向かって駆け足で近づいてくる。
タバサは杖を拾って立ち上がり、服についた埃を払った。
129 :
狂蛇の使い魔:2008/10/19(日) 01:02:18 ID:xr33kABM
「タ、タバサ! 大丈夫!?」
ルイズが慌ててタバサに駆け寄る。
「どうしてここが?」
キョロキョロしているルイズに、タバサが尋ねた。
「変な耳鳴りがしたから、それがする方に近づいていったら……それより、一体何が?」
タバサが鏡の方を向き、彼女とルイズを映し出している鏡面を指さして、言った。
「怪物」
「えっ!? よ、よく分からな……」
ルイズが鏡に顔を向けると、口を開けたまま、その目を大きく見開いた。
「あ、あのときの……バ、バケモノ!? 白いバケモノが後ろで……あれ?」
後ろを振り向くが、誰もいない。
「ど、どういうこと……!? あっ、アサクラ!! アサクラが中に!!」
ギーシュとの決闘の時と同じ格好をした浅倉が、鏡の中で怪物に剣を振るっている。
「見える? 何が?」
タバサが再び尋ねた。
タバサには、普段通りの鏡の様子しか見えていない。
アサクラと呼ばれたルイズの使い魔が鏡に消えていくのは目撃したが、その後の消息は分からない。
「えっ……? 見えないの?」
王蛇と怪物が鏡の中に存在し、タバサはそれが分からないという。
ルイズの頭は混乱しきっていた。
「い、一体何が、どうなって……」
130 :
狂蛇の使い魔:2008/10/19(日) 01:04:48 ID:xr33kABM
「ハァッ!!」
かけ声とともに剣が突き出され、白い怪物、シアゴーストが火花を散らしながら弾き飛ばされる。
後から湧いて出た二体を巻き込み、呻き声をあげながら廊下の床に倒れ込んだ。
「ふん……餌には丁度いい」
王蛇はそう言うと、箱から素早くカードを抜き取り、杖に装填する。
『FINAL VENT』
杖から音声が鳴り響くと、王蛇のいるすぐ後ろの壁をぶち破り、鋼鉄のサイ、メタルゲラスが姿を現した。
銀色の表皮に包まれたその体は王蛇より一回り大きく、二・五メイルはあるだろうか。
頭部には黄色い角が反り立ち、顔の両脇では赤く鋭い目が光っている。
唸り声をあげ、肩を上下に揺らしながら、王蛇の真後ろで待機していた。
右腕にメタルホーンが装着されると、王蛇は飛び上がり、後ろから走り出したメタルゲラスの肩に足を乗せる。
まるで一本の巨大な角と化した王蛇は、猛スピードで廊下を駆け抜けていく。
起き上がった三体のシアゴーストたちは、必殺の一撃をその身に受けると、ウヘァという断末魔の叫びとともに爆発し、消滅した。
131 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/19(日) 01:06:33 ID:8mBG9zVa
いったいなにが どうな て
かゆい かゆい ライダーきた
かゆい
うま
支援
うぐぁ、ageてしまった
スマン
133 :
狂蛇の使い魔:2008/10/19(日) 01:07:37 ID:xr33kABM
「あっ! アサクラ!!」
浅倉が廊下の鏡から元の世界に戻ると、その場にいたルイズとタバサが、驚きの表情とともに出迎えた。
ガラスの割れるような音とともに王蛇の姿が砕け散り、浅倉の姿に戻る。
「一体何がどうなってるのよ!! あのバケモノは何なの!? それになんであんなところにいたのよ!?」
困惑した表情で、ルイズが浅倉に向かって矢継ぎ早に質問を浴びせる。
だが、浅倉はニヤリと笑うと、踵を返して無言で廊下を去っていった。
「あ、待ちなさい! 質問に答えなさいよー!!」
ルイズが慌てて浅倉を追いかける。
「お礼……」
追いついたルイズが捲し立て、浅倉がそれを無視して歩き続ける。
礼を言うタイミングを完全に失ったタバサは、そんな二人の姿を見ながら、ぼんやりと立ち尽くすのであった。
日は既に傾き始め、大地を朱色に染め上げていた。
134 :
狂蛇の使い魔:2008/10/19(日) 01:10:00 ID:xr33kABM
以上です。
龍騎のサントラを聞きながら書いたら、なぜか筆がかなりはかどりました
では、支援ありがとうございました!
GJ
餌の問題もイライラも解消できて食う物にも困らない
弁護士が居ない以外は天国のような環境じゃないかなw
乙〜。
北岡も召還されたらとか、妄想してしまうw
お礼を言いに行ったらベノスネーカーに食べられる
それが浅倉クオリティ
乙
奴らいるならもうお兄ちゃんにばれてるどころか
あと数日で世界滅亡してタイムベントだな……
レイドラグーン出現でリーチ
ハイドラグーン出現で世界オワタか
乙です。
ルイズの質問にも相変わらずのスルーで吹いたw
よくフレイムが出てこなくなるという話が出るけど浅倉の場合、トカゲは丸焼きにして食べちゃう可能性があるので食事に困らなくなったのはいいことだ。
乙です。
浅倉の場合、食が欠乏すると他者の使い魔だろうが、俺のメシとなりかねない。
ミラモン共々、食に不自由しなくて済みそうだし、いたぶる相手はいるし、
もしや、これで弁護士がいれば、ちょ〜ハッピーな環境なのかw
もうすぐ食べ放題(七万戦・タルブ戦)もあるしなwww
誰もいない……
投下するなら今の内……
04:00ぐらいから……
もう直ぐ寝るけどここにいるぜ
寝る前に支援
投下支援
眠いが支援だ・・・
ゼロの氷竜 七話
アルヴィーズの食堂。
トリステイン魔法学院に通う全てのメイジが食事をとるその施設は、学院の生徒全てが入
れるその大きさだけではなく、絢爛たる豪華さも持ち合わせていた。
興味深げに食堂を見渡すブラムドに、ルイズは誇らしげに説明をする。
「貴族は魔法をもってしてその精神となす。という言葉が掲げられている通り、魔法学院
では魔法の教育が一番重要視されているわ。でも同時に、貴族が貴族らしくあるための礼
儀作法を身に付ける場でもあるの。だから食堂も、貴族の食卓にふさわしいものでなけれ
ばならないのよ」
おはようございます、と言いながら椅子を引くシエスタに、おはようと返しながら席に着
くルイズ。
同じくおはようございます、と言うシエスタに、ブラムドもまた返事をしながら席に着く。
昨日のうちにオスマンが手配したのだろう、ブラムドの前にはルイズと同じ料理が用意さ
れていた。
さらにテーブルの間をメイドや給仕が忙しなく動き、学院長から話があるため食事に手を
つけないように、と伝えて回っている。
食堂の端にある階段の上、張り出した中二階の席にはオールド・オスマンやミスタ・コル
ベールなどの教師が座っていた。
ブラムドは料理へはさしたる興味もない様子で、食堂の壁におかれた人形たちの説明をル
イズに求めている。
頼られること自体が嬉しいのだろう。
ルイズは口で文句を言いながら、笑顔を見せてブラムドへ説明する。
「アルヴィーたちは夜になると踊るの」
「……ゴーレムやガーゴイルのようなものか」
思いのほか的確な返事に、ルイズは素直に首を縦に振る。
「面白いことを考えるものだ」
「ブラムドの住んでいた……東方ではこういう使い方はしないの?」
わずかに言いよどんだルイズに、苦笑を浮かべながらブラムドが答えを返す。
「我の住んでいたところでは、ガーゴイルは番人としての役割を与えられていた。どれだ
けの時間を経ても、変わりなく宝を守る。ゴーレムに関していえば、それ以外に戦に連れ
出すことも多い」
「ゴーレムはやっぱりすごく大きいの?」
「いや、大きさは人間よりも多少大きいといった程度だな。大きなものは作るのに手間が
かかりすぎる」
作るのに手間がかかる、という言葉に、ルイズは過去の記憶を掘り起こす。
土くれなどから形を作り出し、魔力の供給が切れれば元の姿に戻ってしまうゴーレム。
だがブラムドの言葉からすれば、ガーゴイルのように変わらぬ姿を保ち続けるようだ。
「やっぱり東方のゴーレムはちょっと違うみたいね」
「近いうちに見せることになろう」
ルイズは朝の会話を思い出す。
魔法を試す必要がある、とのブラムドの言葉を。
しかし、結果としてその機会は陽が沈む前に訪れることとなる。
支援
やがて学院へ通う全ての生徒、そして全ての教師が食堂へそろう。
手摺りに当てられる杖の音が食堂に響くと共に、音の波が次第に凪いでいく。
「諸君」
老いた学院長の言葉は魔法によるものか、食堂の隅から隅へと響き渡る。
居住まいを正す生徒たちを見下ろしながら、学院長は自らの言葉を継ぐ。
「昨日進級のため、春の使い魔召喚の儀式が行われた。例年通り、一人の脱落者も出すこ
となく」
その言葉に、かすかなざわめきが起こる。
無論それはゼロの名を冠される、一人の少女が原因だ。
「だがその儀式の際、ちょっとした事故が発生した。ミス・ヴァリエールが東方よりのメ
イジを召喚したのだ」
使い魔召喚の儀式に参加した人間のうち、空色の髪を持つ少女以外の人間が、せわしなく
視線を交わし合う。
「ミス・ヴァリエール、ブラムド殿。ご起立いただけるかな?」
学院長に呼ばれ、二人が立ち上がる。
「座学において、非常に優秀な成績を残しているミス・ヴァリエールを知らぬものはおる
まい。その隣の方がブラムド殿。東方よりのメイジじゃ」
立ち上がる二人に、四方から容赦なく視線が降り注ぐ。
それに対抗するように胸を張るルイズ、そして泰然自若と周囲を見渡すブラムド。
対照的な二人の態度に、学院長は笑みを浮かべながら声を張る。
「協議の結果、ブラムド殿はミス・ヴァリエールの使い魔となることを了承してくだすっ
た。そのため、本日よりブラムド殿は学院にて生活することとなるが、わしはブラムド殿
を客人として扱う」
いいながら、学院長は立ち上がった二人へ座るように促す。
「故に、ブラムド殿への無礼は相成らぬ。それを、諸君らの杖に誓ってもらう」
学院長の言葉は、ことさらに大きくなったわけではない。
声が高くなったわけでも、低くなったわけでもない。
しかしその瞬間、食堂を包んだ重圧は、生徒と教師を押しつぶすような強さを持っていた。
生徒と教師を問わず、全てのメイジがそれぞれの杖を掲げ、誓いの言葉が唱和する。
「杖にかけて!!」
学院長は満足げにうなずきながら続ける。
「また、昨日使い魔召喚の儀式へ参加した生徒諸君には、儀式の際に起こった事故につい
て、決して語らぬように伝えておく」
重圧は、いまだに解き放たれていない。
「杖に誓う必要はないが、もしこれを破った場合、相応の処分をすることになる。理解し
ていただくよう、切に願う次第である」
あえて誓わせないことに、儀式の参加者たちはむしろ強い制約を感じていた。
処分の内容への言及もないということは、全て学院長の裁量次第となる。
さらには儀式の参加者以外へ、東方のメイジを重要視させる結果をもたらす。
「以上」
学院長の最後の言葉に、食堂に満たされていた重圧はわずかに晴れる。
生徒や教師たちは深くため息をついた後、感謝の言葉を捧げ始めた。
グリルした鶏肉をフォークで押さえ、ナイフを入れていく。
ナイフで一口大に切った肉を、フォークで口へと運ぶ。
はたまたフォークでサラダをつつくもの、スープをスプーンですくうもの、日常的な食事
の風景が広がっていた。
だが竜であるブラムドに魔法を教えるものはあっても、テーブルマナーを仕込むものはい
なかった。
無論、その必要がなかったからだ。
故にブラムドはひとまず周囲の人間の所作を観察し、とりあえずナイフとフォークを手に
とって見る。
だがどこかしっくりと扱うことが出来ない。
隣ではルイズが、他と比べても際立って優雅な手つきで食事をしている。
面倒に思ったブラムドは、皿に乗せられた鶏の脚を手で掴もうかとも考えた。
しかし他と比べて明らかに異常な行動をとることは、ルイズの名誉にも関わると考えざる
をえない。
そもそも竜にとって、料理は不要なものだ。
年の若い下位の竜であれば、獲物となりうる魔物や動物、人間などをそのまま食らう。
ある程度の年月を経た竜には、それらも不要となる。
食らったあらゆるものを、力に変えられることを知るようになるからだ。
樹木であろうと、土であろうと、石であろうと、水であろうと関係なく、口に出来るもの
は全て力の源となる。
その竜があえて手間をかけてまで、調理に労力を払う必然性はない。
……さてどうしたものか。
どこか途方にくれたようなブラムドに気付き、ルイズが声をかける。
「どうしたの?」
「東方にはこのような器具はない」
いいながら、ブラムドは両手に握ったナイフとフォークを見せる。
それは子供がするように握り締められ、自分がするような優雅な手つきとは縁遠いものだ。
ルイズは困った表情を浮かべたが、ブラムドは不意に笑顔を浮かべながらいった。
「ルイズ、食べさせてくれ」
「……え? …………えぇえ!?」
ルイズの上げた絶叫に、食堂内にいた一部の人間が視線を向ける。
「使い魔を飢えさせぬのも主の義務であろう?」
その言葉に、ルイズは覚悟を決めた。
……べ、別に大したことじゃないわ!! 前にやったことだってあるんだし!!
強がるルイズではあるが、以前にそれをやったとき、ルイズは物心がつくかつかないか、
言葉を覚えたてといった程度の年齢でしかない。
自らの心を誤魔化しているためか、ルイズは頬が熱くなるのを自覚していた。
ルイズに向けて席を動かしたブラムドに、注視をしていた一部の人間が隣席や近場の人間
へ小さく声をかける。
やがて食堂内にいた全ての視線が、首元まで赤く染める一人の少女とその使い魔に集中し
た。
「……あ、あ〜ん」
恐ろしい勢いで目の前の料理を片付けていた、空色の髪を持つ少女の手が止まる。
燃えるような赤毛の少女は、楽しむようでいてどこか名状しがたい、面白がるような笑み
を浮かべる。
老いた学院長はこっそりと遠見の魔法を使い、食堂にいた半数は羨望の眼差しを浮かべ、
半数はただ頬を朱に染める。
オスマンの言葉で荘厳ささえあった食堂内の空気が、ほんの少しの時間で一変していた。
尚余談ではあるが、シエスタの機転によって以後ブラムドへの料理は全て一口大に切られ
るようになる。
それを残念がった人間もいたというが、その名前は伝わっていない。
ある種拷問のようでいて、ある種幸福な時間のようでもあった朝食が終わり、学生たちは
学生の本分に立ち返り、教師たちは教師たちの本分に立ち返る。
授業が行われる教室に到着したのが一番遅かったのは、無論二人分の料理を片付けたルイ
ズとブラムドであった。
すり鉢を二つに割ったようなつくりの一室、すり鉢の壁に当たる部分には段がつけられた
座席。
すり鉢の底に当たる部分には教壇、そしてその上には教卓がおかれ、座席を挟んだ反対側
には黒板が据え付けられている。
ルイズが教室へ入った瞬間、奇妙な緊張感が場を包む。
オスマンの言葉をまともに受け止めれば、ルイズとブラムドに触れるものはいなくなる。
普段暴言を投げつけられることに慣らされてしまっていたルイズは、それがなくなったこ
とに満足感を覚えてはいたが、一方でそれが自らの力によるものでない肩身の狭さも感じ
ていた。
メイジの実力を見るには、その使い魔を見よ。
貴族の常識とされているその言葉も、大人と子供どころではない力の差を自覚させられれ
ば単純に誇る気にもなれない。
ましてや貴族としての強い誇りを持つルイズが、虎の威を借る狐のような態度を取るなど
ありえないことだ。
「ルイズ」
燃えるような赤毛の少女、キュルケがルイズを呼び、自らの隣の席をすすめる。
キュルケの隣に座っていた空色の髪の少女、タバサはブラムドへ視線を投げ、ブラムドも
また視線を返す。
ただ昨夜の約束もあり、ブラムドはそれ以上の行動を起こそうとはせず、ルイズもキュル
ケも、タバサとブラムドのやり取りには気付かなかった。
ルイズはといえば、友とはいえないキュルケの呼びかけに応えるつもりはない。
しかし教室内を見渡してみれば、視線に対してあからさまな拒絶をする人間ばかりだ。
今までのことを考えれば仕返しの一つも、と思うのが人間だが、ルイズは使い魔の力でそ
れをしようとはしない。
自らが力をつけて見返すことは考えたとしても、仕返しを考えることはないだろう。
ルイズは、誇り高い人間だった。
結局、キュルケの隣ぐらいしか席がないことを知り、ルイズはため息をつきながらブラム
ドに視線を投げ、ブラムドの盾になるように席に着く。
ただし、盾としての効果はあまりなかった。
「ブラムド様」
「ブラムド、別に返事しなくていいわよ」
キュルケの言葉、そしてそれに続くルイズの言葉に、ブラムドは笑みを浮かべて言葉を返
す。
「ルイズ。先刻も言ったが、それは礼儀にもとるであろう?」
「それは、そうかもしれないけど……」
言いよどむルイズの態度や朝のやり取りで、ブラムドはルイズがキュルケを苦手としてい
るか、もしくは敵視していることを看過する。
ブラムドはキュルケに視線を投げ、キュルケは笑顔を浮かべながら視線を返す。
……特に悪感情を抱くような人間には見えぬがな。
疑問に思うブラムドは、ルイズへと問いかけようとする。
それをとどめたのは教室へと入る、一人の女性教師だった。
にわかに静まり返る教室を眺め、教壇に立った女性教師は教鞭をとるものらしい口調で話
を始める。
「初めまして、という方もいらっしゃいますね。私の名前はシュヴルーズ、ミス、ではな
くミセス。そして土のトライアングルで、二つ名は赤土です」
いまだに笑みを絶やさぬキュルケに、ルイズは一言いってやりたかったが、さすがに授業
が始まってしまっては私語を慎むしかない。
シュヴルーズは入り口近くに集められた使い魔たちを眺め、ブラムドに一瞬目を留めて口
を開く。
「オールドオスマンのおっしゃられたように、春の使い魔召喚の儀式は大成功だったよう
ですね。私は新学期にこうやって、様々な使い魔を見るのがとても楽しみなのです」
シュヴルーズは笑顔を浮かべながら授業を始め、系統魔法に関する基本的な事柄をなぞっ
ていく。
支援
虚無を除いた基本的な四つの系統、土、風、水、火、中でも土は特に生活に密着したもの
であるという。
建物を初めとし、金属製の器具などはほぼ全てが土のメイジによるものという言葉を聞き、
ブラムドはかつて自らが身をおいていた世界との違いを教えられる。
フォーセリア世界では建物の建築や冶金、製錬などに魔法を使うことはほぼない。
そういった技術を魔術師が持つこともあるが、大体は蛮族と呼ばれていた魔術師以外の人
間、そして土の妖精族であるドワーフが行うことが常であった。
人間の半分ほどの身長しかないドワーフだが、その膂力や器用さは人間を上回る。
不意にブラムドは室内を見渡し、使い魔たちを除いて人間以外の種族がいないことを確認
した。
……この世界に妖精族はおらぬのだろうか。
そんなことを考えるブラムドを尻目に、シュヴルーズの授業は進んでいく。
ルイズを含めた数人の生徒に質問を投げかけ、その回答によって理解度を測る。
理論については問題ないと判断したシュヴルーズは、実技に関しての確認を行おうとする。
教卓の上に置いた石に錬金をかけ、石を金属に変化させる。
興味深げな視線を送るブラムドに気を良くしたのか、シュヴルーズの声がわずかに弾む。
「さて、土の基本的な魔法である錬金を、どなたかにやっていただきましょう。……ミ
ス・ヴァリエール」
名を呼ばれたルイズは、少し反応が遅れる。
昨年、実技が行われ始めてから一度も成功したことがないルイズは、実技において名を呼
ばれることがなくなっていたからだ。
それに乗じるように、別の声が上がった。
「あの、ミセス・シュヴルーズ」
「なんでしょう、ミスタ・マリコルヌ」
「やめたほうがよろしいかと」
控えめな制止に応えた声は、教壇ではなくルイズの横で起こった。
「大丈夫よ。だってルイズは昨日、こんなに立派な使い魔を召喚したんだから」
弾むようなキュルケの声、素直に受け取れば励ましになるその言葉を、ルイズは素直に受
け取ることは出来なかった。
数ヶ月に渡って挑発を受けてきたルイズは、これも失敗を期待してのことと邪推する。
少なくとも今現在の二人では、そう受け取るのも仕方のないことではあったが。
キュルケの言葉に、シュヴルーズも笑顔で深くうなずく。
「やります」
ルイズの言葉で、教室内に恐れを含んだ緊張が駆け抜けた。
教壇に上がったルイズは、少しこわばった笑顔をブラムドに投げ、杖を構えて詠唱を始め
る。
それを合図に、生徒たちは机の下へと避難を始めた。
いつものこととルイズは考え、雑念を振り払う為に目をつぶって集中する。
そのため、ルイズは机の下に隠れていない人間が、ブラムドとシュヴルーズの他にいるこ
とに気付かない。
机の下に避難するクラスメイトや隣に座っていた友人とは違い、キュルケはルイズの成功
を確信していた。
そう、使い魔召喚の儀式でブラムドを呼び出した瞬間、ルイズの努力が実を結んだのだと。
そうまで信じ切れていないタバサは、そんな友人の姿を机の影から心配そうに眺める。
ブラムドは周囲の反応に違和感を覚えながら、そっと『魔力感知』を使う。
ルイズが集中することによって集められたマナが、杖の先から溢れ出ている。
そしてルーンと共に振り下ろされた杖の先から、溢れ出るほどの大量のマナが注ぎ込まれ
る。
ルイズの一挙手一投足をつぶさに観察していたブラムドは、杖の先から大量のマナが石へ
と注ぎ込まれることを確認した。
だが次の瞬間、拳大の石が爆音と共に砕け散る。
爆風によって至近にいたルイズとシュヴルーズが吹き飛ばされ、半瞬遅れて砕けた石の欠
片が飛び散っていく。
細かな破片は辺りにまき散らされ、つまめる程度の小石が二つ、一つは入り口の扉に突き
刺さり、一つは窓を突き破る。
そして最も大きな欠片、元の半分ほどとなったそれが、キュルケへ向かって吹き飛ばされ
ていた。
以上。
登録は自分でするが、これからひどいことを言うぜ!
次回までは時間がかかる予定ですw
投下乙でした。
乙です
くっ・・・ 俺もあ〜んしたいぜ
キュルケに向かう破片、どうなるかなー?
支援感謝!!
寝ようとしたら来ていたなんて酷いぜ乙
むしろブラムドにあ〜んをして貰いたいのは少数派なのだろうか
そしてキュルケのぴんちで引きとかどんだけ焦らし上手なんだ(><
次回もまったりお待ちしております
>>152 ΩΩ Ω<な、なんだってー!
キュルケ逃げてー
氷竜GJ!
今更だけど、読み方は『ひりゅう』?『ひょうりゅう』?もしくは『こおりりゅう』?どれなんだー!
まあそれはそれとして、しばらく続きは読めないのか……。残念だけど気長に待つさ。
所で、このタイプの使い魔ってさ、ガンダの本来の役割を越えてるよな。
主の詠唱時間を稼ぐどころか、詠唱終わるまえに敵を殲滅できるから、力押しのときは虚無いらないよね。
てかブラムドの場合徹底的に虚無無くてもよさそうだよね。
氷竜さん、乙です。支援!
食事の件で思い出したけど、モスのハイランドでは竜の餌として飼育される専用の牧場なんてものがあったような
竜騎士が飼う竜は確か一日に一頭の牛が生きたまま与えられ、戦を前にすると餌を減らし凶暴性を上げるとか。
次回までは時間がかかるとは(涙
一刻も早い更新を期待して、キュルケ姐さんの無事を祈ります
ふと思ったんですが、展開で遠見の鏡=真実の鏡なんてオチじゃないですよね?
>>158 逆に氷竜と書いて『ひりゅう』や『こおりりゅう』と読む作品があるのか知りたいな。
>>158 人間に化けられるところまではブラムドもシルフィも一緒だけど
戦闘力が違いすぎますな
…シルフィって変化以外の先住魔法使ったことあったっけ?
どうせなら吸血鬼や翼人やエルフ相手で先住魔法VS先住魔法とかやってほしかった
>>162 記憶の限りでは無い。
幼いから天敵に出会った時に、
擬態できるようにと親から教わった変化の呪文以外は弱くて、
暴れた方が強いからと予想。あれ魔法つかって何かするタイプには見えない。
エルフの方が先住使いこなせるとか記述があった気もするから、
それも考えて肉弾戦でどうにかしようと思ったんだろう。
>>163 対ビダーシャルの時に、ビダーシャルのほうが「行使手として数倍上」とあるものなあ。
もし裸の大将山下清がルイズに召喚されたら。
ルイズ「お腹減ったな〜」
山下「ルイズちゃん。だったらおにぎりを食べるんだな〜」
ルイズ「いらないわよっ!そんな白いだけのおにぎりなんて。それに使い魔から食べ物をもらうなんて聞いたことないわよっ!」
山下「我慢するのはよくないんだな〜。いいから早くおにぎりを食べるんだな〜」
ルイズ「まぁ、もらってやってもいいわよ。べ、別にお腹が減ってる訳じゃないんだからね。」
>>165 実は既に小ネタにあったり。
野に咲く花のように
竜だのグリフォンだのマンティコアだのの飛行は魔法じゃないかね。
あまりにも当然過ぎて魔法と認識されないとは思うけど。
やつらの体重で羽ばたいて飛翔するのは無理。
本来なら、大きな翼竜みたいに滑空するのが精一杯だし、それにしたって翼の面積が足りん。
はっはっは、アニメだからね!
>>167 精霊の力を借りて飛んでいるんだ。
何、飛ぶ意味はあるのか?上からの攻撃は回避し辛いだろう、モンハン的に考えて。
上から来るぞ、気をつけろ!って昔の偉い人が言ってたな。
>>171 (飛べるから)足なんて飾りですよ! 偉い人にはry
とか言われるんですね? 分かります。
おまいらにはあの上から吊しているピアノ線が見えないんか?
>>171 「あぶなァーい! 上から襲ってくるッ!!」とも言うな。
志村ー!上ー!上ー!
私が極めしカラデは前後左右は勿論、上下にも対応しているので、
宇宙人や地底人が攻めてきても安心だぜ。
>>168 メカだと整備性が問題だけど
ウォーカーマシンなら自力で整備出来そうだね
燃料はガソリンだし、ゼロ戦が維持できるなら問題なさそう
>>176 ルイズの適応係数は46ですね、わかります。
>>177 だが武器は全て実弾系だからなあ……
整備とかは『固定化』をかければいいけど、砲弾や銃弾は消耗品だしね。
確か原作でも零戦の機銃弾は再現不可能だってことで別の武器くっつけてたよね?
アレを撃ちまくるウォーカーマシン……
シュールすぎる光景だなw
銃とか一切持ってなくて整備が必要ないメカ…。
ダンですね、分かります。
ブラムドもあれだけどアレクラスト大陸在住の
モンスターレベル15のあのお方呼んだらどうなるんだか
みんな、ガルディーンを忘れていないか?
元祖自己メンテナンス自己進化ロボットだぜ?
獣神ライガー…。
ウォーカーマシンか…いいかも
いざとなったら素手でも強いし固定化かければかなりいけるかもw
てゆーか飛んで来た砲弾を投げ返すザブングルを見たいw
ウォーカーマシンがウォーカーマンに見えた
∀
>>180 ダンって専用の整備衛星みたいなの必要じゃなかったっけ?
メンテ不要ロボ・・・・・冥皇とか?
騎士ガンダムや武者ガンダムはメンテ不要ロボに入りますか?
あとは・・・・・・・・自己進化・自己再生・自己増殖の三大理論を持つアレ?
オリジナルセブンはみんなそうじゃなかったっけ?
>>189 逆、定期的にメンテナンス用の衛星に戻さないと機体どころか
機体の操縦者の身体すらいかれていく。
メンテナンスフリーだとうまく扱わないと
ただの道具になってしまいかねないからね
強力故の制限とか結構ドラマになると思うけど
まあ、題材が何であれ書き手次第なんだろうけど
自力でなんでもまかなえるって言うと、母艦くらい持ってこないとどうにもならんよな
メンテフリー・・・
ゼノギアスのゼノギアスとかクレスケンスとか
ゼノギアスは精神力如何でどうにでもなるらしいし飛び道具は全部エーテルだし
クレスケンスはナノマシンの集合体だし
ゾイドもある程度は自己修復するからまだ扱いやすいかも。
銃弾やミサイルとかは作れなくても爪や牙で戦えばいいし。
ある程度、というのがミソですよ?いざというときに不具合が出てピンチに陥るとかそういう演出も出来るし。
機体が動かなくなったところで
流れ着いたパーツをいろいろ集めてフランケン状態になって戦うのがいい
オービタルフレーム…ADAだけなら既に召還済みだったな。
ならばアニメのほうのドロレスあたりを…
ドロレス懐けぇww
まぁ、きゅいきゅいが二匹になるみたいなもんだよな
ヴァンは確か喚ばれてたな。すぐ更新停止してたと思うけど。
完全メンテフリーな機械ならナイトライダー召喚があるけど
甲武とかスコープドッグとかダグラムみたいなローテクなロボットで
ハルケギニアが油臭くなるような展開も読んでみたい
ウォーカーマシンでもジロンなら装弾器とか薬莢形成機くらい
コッパゲの協力で自作できそうだけど、雷管のニトロ火薬で躓く
「魔法で解決」ってことにしちゃえば、もしかして…
>>199 玄田さんが主人公ってだけで衝撃と歓喜で打ち震えたあの名作か。
最近、ああいうのないなー。
獣神サンダー・ライガー
>>201 キングスカッシャ―のようにすれば問題解決
>>204 日常整備にタマQが必要だぞ。
定期的に点検整備も必要っぽいし。
>>205 上級魔法くらっても、平気そうだし…タマQぐらいラムネスなら連れて行くだろ
>>198 オービタルフレームはメタトロンないと自己修復できないよ
藤子不二雄系のロボットならメンテなしでもいけそうな気もする
ゴンスケとかジュドとかリルルとかバギーちゃんとかって半分以上ドラえもんだな
あとなぜかフニャコフニャオ作品からライオン仮面とか浮かんだけど、助けに来たオシシ仮面とオカメ仮面が
火あぶりになる光景しか思い浮かばなかった
>>165 ごめん、一瞬"山下陸軍大将"にみえちゃった。
類まれな洞察力でワルドの裏切りを見抜くが、そこに思いもよらない2重3重のどんでん返しが!?
「せんようはよくない(棒読み)」
>>201 ザブングルって黒色火薬使ってるんじゃなかった?
>>210 あの世界の設定は細かいこと考えちゃいけない。
ガスエンジン、黒色火薬だとしたら現代科学以上にあらゆる面で良いモノだろう
って言われているし。
そこでスカルキラー邪鬼王召喚ですよ
デルフだの破壊の杖だの指輪だのゼロ戦だのタイガーだのアルビオンだのを
片っ端から喰らってパワーアップですよ
ザブングルってガソリンじゃないの?
なんだかんだで未来世界の超技術の産物だからな、ウォーカーマシンは
タルブに眠ってるのが∀ガンダムのコアファイターとかどうだろう?
あれなら土の中に埋めておけば勝手に本体まで修復してくれるはず……何年かかるかわからんが
始祖の祈祷書「――永劫(アイオーン)! 時の歯車 断罪(さばき)の刃 久遠の果てより来たる虚無!」
というネタがここまでないことに絶望した。
旧シャアだから、種系or00はこっちか?
222 :
217:2008/10/19(日) 14:00:07 ID:GseNzvyf
初代トランスフォーマーは?
一応自己修復機能を持っているけど、重篤なダメージは回復する前に死ぬし、
充電しようにも充電に向けの電源は存在しなさそうだし、
ガルバトロン様みたいに溶岩風呂という手も無くもないけど。
>>207 ドロレスはメタトロンそのものでなくても
コロニーの電気吸うとかで修復してたよ?
エネルギー源が何かあれば大丈夫なんじゃないかな。
つまり損傷したらダイナモを必死に回すんだな
つ【ライトニング・クラウド】
つまりワの人に頑張ってもらえとw
>>213 > そこでスカルキラー邪鬼王召喚ですよ
邪気眼王召喚にみえた。
糸で操ってるから燃料の問題はクリアだが、
代わりにルイズの体力と弾薬がもつかどうかの問題が。
>>227 貧乳へそ姫ルイズに吹いたw
でも、デルフ振り回すティファニアは新鮮かもしれん
>>228 むしろ彼女はおっぱいに振り回されるだろ、激しく運動すると
ラストは虚無る以外に考えられんな。
ルイズが魔界ヨメを召喚しました
キャラが被る以外全然面白くねえ
>>220 それしたらルイズがアズラッドみたいな悲劇に・・・ってエドガー辺り召喚したらいいのか
ゲゲゲの鬼太郎からヒダル神が来たら貴族終了のお知らせだな。
下手なというか中堅どころの西洋妖怪より強いわチート染みた能力持ってるわ
>>225-226を読んでルイズがバイオボディ“エスカレイヤー”を召喚して
契約する際、ルイズがエスカレイヤーになる連想をした私は破廉恥な男だ……
サイトがレモンちゃん言いながらルイズのドキドキダイナモを回すのか?
>>232 始祖の祈祷書が実は……というネタを誰かがやってくれると思ってたけど
デモベ作品がことごとく更新停止してるので、嘯いてみた。
ネタつぶしになったらごめん……
ところで過去スレの170以降はどうやったらみれるんだ?
ラムネス召喚したらあっさりキュルケになびきそうだ
>>237 とりあえず選んだのはド貧乳(Wは小さくHは大きいらしい)の三女だから
そこらへんはなんとも。
良くも悪くもそこら辺に強いこだわりはないみたいだし。
>>235 カラダは沙由香、心はルイズでワの人が裏切らずに
ダイナモを頑張ってチャージする感じ
>>235 今俺が絶賛プロット考案中だから100ループぐらい待ってろ
ルイズが春日野さくら召喚
「ねえサクラ」
「なに、ルイズちゃん」
「アンタが杖も無しに見様見真似で系統魔法使えるのは100歩譲ってよしとするわ」
「うん」
「遍在や先住魔法まで見様見真似するのも百万歩譲って我慢したげる」
「うんうん」
「なんで『虚無』の魔法まで使えんのよ!」
「いやぁ、それは・・・・・・・・見様見真似?」
こうですか? ホントに見様見真似で使えてしまいそうでコワいわ、あの娘
>>195 クレスケンスってかエメラダと契約しようにも使い魔契約はナノマシン一個にしか効果ないんじゃね
アレ一応一個一個別に動けるらしいし
>>241 ジョゼフの所にはエフッエフッと笑う人ですね。
どこぞの天道さん並みの速度で進化し続ける人ですか?
>>243 ラーニング能力ならユリ・サカザキも捨てがたい。
皆さんどうもこんにちは、第18話、投下開始よろしいでしょうか。
投下予定時刻は16:30から、お願いします。
支援の準備は出来ている!
……ところでメフィラス星人やメトロン星人の出番マダー(AA略
第18話
遠い星から来たお父さん 前編
エフェクト宇宙人ミラクル星人
緑色宇宙人テロリスト星人 登場!
トリステイン王国の首都、トリスタニア
今日も、トリスタニア一の大通り、ブルドンネ街は人々でごったがえしていた。
あのツルク星人と銃士隊との戦いからも、すでに5日が過ぎ、人々はたくましい生命力と商魂を発揮して、
あちこちの店から威勢のいい声が飛んで、騒々しいが平和な賑わいを見せていた。
そして、そんななかを歩くひときわ目立つ6人組の一団があった。
端的にいえば、桃色と青色と赤色の髪をした少女が3人と、緑色の髪の眼鏡をかけた妙齢の女性が
ひとりに、黒髪のメイドがひとり、あとたくさんの荷物を抱えてひいこら言っている黒髪の少年がひとりだった。
「こらサイト、早く来なさい。いつまで待たせるのよ」
「こ、この……こんな量、ひとりでどうにかできるわけないだろう。もう20キロは軽くあるぞ……もうだめだ」
両手いっぱいに野菜やらワインやらを持たされていた才人は、とうとう根を上げて地面にへたり込んでしまった。
それを見たルイズは不機嫌そうなまなざしを彼に向けたが、かばうようにその半分くらいの荷物を持っていた
メイド、シエスタがこぼれ落ちた才人の荷物を拾い上げながら言った。
「まあまあ、いきなり不慣れな仕事をさせられてもうまくいくはずありませんって。本来わたしの仕事ですから
サイトさんは楽にしてください」
シエスタはそのまま才人の持っていた荷物の半分を取り上げると、自分の荷物に加えて、あっという間に
ふたりの荷物の量が逆転した。そしてそれをよいしょっととさほど問題なく持ち上げる。彼女の華奢な
体つきからは信じがたいが、この世界は地球と違って電化製品など無く、家事仕事はすべて手作業でこなさざるを
得ないために、メイドなんて仕事をしていれば、自然体力も現代の高校生の平均など軽く突破する。
才人のほうもハルケギニアに来て以来、いろいろと鍛えてはいるがまだ1ヶ月とちょっと、筋肉がつくには
まだまだ早い。目の前で、今まで自分が必死になって運んでいた荷物を軽々持つ女の子に、情けなさを
感じるものの、やせ我慢にも限度がある。
「サ、サンキュー、助かったよシエスタ」
「いえいえ、どういたしまして」
本来ならこの反対であるべきだが、現実はいかんともしがたい。
それを見ていたルイズは当然呆れた顔をした。
「まったく、荷物運びもろくにできないなんて、ほんとどうしようもない駄目犬ね」
「この、人の苦労も知らないで……だいたい必要の無いお前の荷物が5つもあるじゃねえか」
才人の反論に、ルイズは「知るか!」というふうにそっぽを向いた。
と、そんなふたりが愉快に見えたのか、キュルケが笑いながら話しかけてきた。
「こーらルイズ、そんなこと殿方に言ったら嫌われる一方よ。かわいそうなダーリン、ねえこんな薄情な子
置いておいて、あたしともっと楽しいところ行かない?」
「ツ、ツェルプストー!! あんたまた勝手に人の使い魔に何言ってくれてるのよ!!」
支援
ルイズはむきになって怒鳴るが、当然それはキュルケの予想のうち。
「あーら、使い魔と馬車馬の区別もつかない誰かさんとは違って、わたしは正当な評価と待遇を与えて
あげようとしてるだけよ。さっ、重いでしょ、わたしが手伝ってあげるわ」
キュルケが杖を振って『レビテーション』を使うと、才人の荷物のいくつかが宙に浮き上がった。
ルイズは、それで才人がキュルケに「ありがとう」と笑顔を向けるものだからさらに気に喰わない。歯噛み
しながら才人に持たせていた荷物をひとつふんだくるように取り上げた。
「か、かんちがいするんじゃないわよ。使い魔の面倒を見るのが主人の当然の務めなんだから、別に
当たり前のことしてるだけなんだからね!」
「それ、元々お前が衝動買いしたアクセサリーだろ、しかも一番軽いやつ」
ルイズの右上段回し蹴りが才人のこめかみにクリーンヒットした。才人は荷物を放り出して悶絶したが、
数秒後には荷物を拾って起き上がってきたからさすがである。
そんな様子を、タバサが後ろからいつものようにじーっと眺めていた。
とはいえ、それでも荷物の量は最初の1/3程に減って、だいぶ軽くなっていた。
「ふう、とりあえず助かった。死ぬかと思った」
やっと一息つけて、才人はうきうきしながら立ち上がった。
が、喜んだのもつかの間、やっと減った荷物の上に、またどかどかと新しい荷物が積まれていった。
「げ!? ロ、ロングビルさん?」
見ると、ロングビルが眼鏡の下から涼しい瞳でこちらを見ていた。
「またまだですよサイトくん。年に一度のフリッグの舞踏会、必要な物はまだたくさんあるんですからね」
「ひえーっ!」
思わず泣きそうな声を才人はあげた。
彼らは今、翌日に迫った魔法学院の年一度のイベントである『フリッグの舞踏会』のための食料品や
飾りつけのための品をいろいろと買い込むために、このブルドンネ街までやってきていた。
ただ本来なら、学院お抱えの商人が必要な物資を学院まで運んできてくれるのだが、今年は3度にわたった
怪獣災害のせいで、直前になってキャンセルになり、秘書に復帰したロングビルが直接買出しに来たというわけだ。
が、なぜシエスタはともかく才人以下の顔ぶれがいるかというと。まずロングビルがたまたま空いていた
シエスタに買出しの同行を頼み、シエスタがそれをまた、たまたま食堂に来ていた才人に。
「ちょっとした買出しなんですが、よろしければ、いっしょに来てくれれば、うれしいな、なんて……」
それで1も2もなく承諾した才人だったが、それをルイズにかぎつけられて。
「あんた、またあのメイドとふたりでどこ行くつもりよ!?」
それでルイズも無理矢理同行することになり。
学院を出発したと思ったら、これまたたまたまキュルケに見つかって。
「タバサ、ルイズが街に出かけたの。あなたの使い魔じゃないと追いつけないから、またお願いするわ」
と、キュルケがタバサを巻き込んでシルフィードで追っかけてきて、最終的にこうなったという三段コンボであった。
だが、いざ来てみれば、とても1人や2人では運びきれない量になったから、結果的に人手が増えたことは
幸いであった。
やがて昼も過ぎ、才人が死にそうになり、ルイズとキュルケの手もいっぱいになり、タバサまで買い物袋を
持たされたところでやっと買い物は終わり、駅に停めてあった馬車に荷物を運び込んだところでようやく皆は
一息をついた。
支援
「はーあ、疲れた。まさか舞踏会ひとつにここまで物がいるとは思わなかった」
「はい、わたしもここまでとは思いませんでした。でも、わたしだけじゃ3、4往復はすることになったでしょうから、
助かりました。皆さんありがとうございます」
馬車のふちに腰掛けながらシエスタが皆にお礼を言うと、才人は照れくさそうに、ルイズたちはなんでもなさそうに
「どういたしまして」
と、答えた。
「じゃあ、ロングビルさんが戻ってきたら出発だな……お、うわさをすれば」
見ると、駅の係員に料金を払いに行ったロングビルが戻ってくるところだった。
だが、うかない顔で戻ってきたロングビルの口から出たのは予想しない言葉だった。
「え、出発できない?」
「ええ、どうもこの先の街道で事故が起きたらしくて、しかもどうやら王立魔法アカデミーの馬車だったらしくて、
当分のあいだ通行止めですって」
それを聞いたタバサ以外の全員の顔が「ええーっ!」というようなものになった。
「それで、通れるのはいつごろになるんですか?」
「早くて日暮れ、遅くて明日の朝ですって、悪くしたら今夜はここに一泊することになるかもね」
やれやれと、ロングビルは肩を落とした。
だが、合法的に外泊できるとわかったキュルケやルイズは頭の切り替えが早かった。
「早くて日暮れなら、こんなところにいる理由はないわね。ダーリン、あたしといっしょに遊びにいきましょう。
すっごく楽しい大人の遊び場に招待してあげるわ」
「キュルケ!! 勝手に手を出すなって何度言えばわかるのよ! 来なさいサイト、舞踏会用のドレスを買いに行くわ!」
「ぷ、お子様用のドレスなら、あたしのお下がりをあげましょうか?」
「き、きーっ!! この成長過剰色ボケ女ぁ!!」
というふうに、アボラスとバニラさながらのバトルに突入してしまった。
才人としてはバニラに原子弾を撃ち込む気にはなれなかったから、経過を見守っていたが、漁夫の利を
狙うようにシエスタが才人の手をとってきた。
「いまのうちいまのうち……サイトさん、わたしといっしょに来ませんか? こないだ来た時にすっごくおいしい
ブルーベリーパイのあるお店見つけたんです」
「え……でも」
「いいですから、早く!」
そう言って強引に連れて行こうとしたが、才人がしぶったために結局はふたりに見つかり、誰についていっても
ほかの恨みを買うことになるため、仕方なくタバサとロングビルも連れて食べ歩きに行くことに落ち着いた。
そうなるとさすが女性5人のパワーはすごいもので、あっちの店からこっちの店へと、たったひとりの男性である
才人はただただ連れまわされることになった。
「ほらサイトさん、あっちがさっきわたしが言ってたお店です。ささ、早く早く」
「ちょ、シエスタ、そんなに引っ張るなよ。ルイズ、お前も杖を取り出すな!」
「なに言ってるの? 使い魔が不埒なことをしないように見張るのは主人のつとめじゃない。さあ、こっちよ、
ブルーベリーパイなんかよりクックベリーパイのほうがおいしいんだから」
こういうふうにふたりが才人を取り合えば、キュルケが余裕の態度で笑って見て。
「まったく、そんな子供っぽいのばかり食べてるから胸が成長しないのよ。あら、タバサあなた何食べてるの?
ちょっと味見させて……苦っ!?」
「はしばみ草のパイ……」
「あ、請求は王立魔法学院のオスマン学院長宛にお願いします。はい、はい、全部です。ふっふっふ、
待ってなさいよあのセクハラジジイ」
それで、最後にロングビルが領収書を取りながらついていくといったところである。
だがやがて、長い夏の日差しもしだいに赤くなり、薄暗い空にうっすらとふたつの月が見え始めた。
「そろそろ日が落ちるな。そろそろ帰らないか?」
いいかげん何かを食べさせられるのにもくたびれた才人は、疲れた声でそう言った。
「む、そうね。そろそろ店も閉まってくるころだし、街で聞いた話じゃ街道の事故はまだしばらくかかるって
いうし、宿をとりましょうか?」
シエスタと才人の腕の取り合いを続けていたルイズも、ようやく力を抜いてくれた。
ただ、宿、といっても半分が貴族のこの面子を泊められるだけのレベルのホテルとなると、今彼女達の
いるほうと反対側にしかなく、それなりに歩く必要があった。だがそこでシエスタが大きく手を上げて言った。
「じゃあわたしに任せてください。以前来たときに近道を見つけたんです。ショートカットです」
そう宣言すると、さっさと才人の手を引いて裏道に入っていく。もちろん慌ててルイズ達も後を追う。
だが、裏道をいくらか進んだところで、道はとぎれて、目の前に瓦礫と、焼け焦げて荒れた家々が
立ち並ぶだけの廃墟に行き当たってしまった。
「あ、あら? おかしいですね……以前来たときには、ここを道が続いていたのに」
あてが外れて呆然とするシエスタの背中に、ルイズの冷たい視線が突き刺さる。だが、後から来た
ロングビルがこの廃墟を見て言った。
「このあたり一帯は1ヶ月前のベロクロンの襲撃で燃え落ちたところですね。けれど、再建には表からやって
いくものだから、裏通りのこのへんにまでは、まだ再建の手が及んでないんでしょうね」
「ど、どうもすいません。わたしが差し出がましいことをしたばっかりに」
シエスタは何度もぺこぺこと頭を下げて平謝りしたが、今更引き返したところで、本道へ出て宿まで
行くのは時間がかかりすぎる。そして、キュルケやルイズは元々気の長いほうではない。
「いいわ、ここを突っ切っちゃいましょう」
キュルケがかけらも迷わずに言った。
「えっ!? そんな、危ないですよ」
その言葉にシエスタは驚いて止めようとした。こういう廃墟には、喰いっぱぐれたごろつきやチンピラの
溜まり場になっていることがよくある。女子供ばかりの一団など、いいカモと思うに違いなかったが、
才人の背中にかけられていたデルフリンガーがカタカタ笑いながら言った。
「心配ねーよ、メイドの娘っ子。お前さんが盗賊の立場になって考えてみろ、この面子にそこらのチンピラが敵うと思うか?」
ゼロ魔らしい展開だw支援
「あ」
言われてみればそのとおり、キュルケとタバサは学院で1、2を争うトライアングルクラスの使い手、
ルイズの爆発の威力は学院の者なら知らぬ者はなく、ロングビルも学院長の秘書を任されるほどの
使い手と聞く。実はこのときまだロングビルは魔法を使えないままだったが、盗賊フーケとして裏の世界で
長年生きてきたキャリアは伊達ではない。そして最後に才人はメイジに勝つほどの剣の使い手、
このなかで非戦闘員なのはシエスタ本人くらいだ。
「じゃあさっさと行きましょう。こんな廃墟で日が暮れたら面倒だわ」
そういうわけで、一行は廃墟のなかを歩き始めた。町並みが崩壊しているとはいえ、通り道としては
使われているらしく、人が通れるように道は整理されていた。
そのなかを、一行は才人を先頭に、周りに注意しながら進んだ。
「誰もいないようだな……」
幸いにも、懸念していた盗賊の襲撃などはなかった。もしかしたら、先日のツルク星人の一件で、
ここに居た人々は逃げ出したのかもしれない。
だが、ある廃屋の角を曲がったとき、急に廃墟の先が開けて、半径70メイルくらいの、学校の運動場くらいの広場に出た。
「ここは……?」
一行は、歩を止めてその広場を見渡した。さっきまでの狭苦しい雰囲気とは裏腹に、夕日が広場全体を
紅く染めて、一種の美しさすら感じる。
「ここは、この地区の集会場かなにかだったのかしら?」
キュルケがぽつりとつぶやいた。
広場は、土がほどよく踏み固められていて、かつては多くの人がここを歩いたのだということがわかる。
周囲が廃墟でなければ、子供の遊び場としてちょうどいいだろう。
しばらく彼女達は、ぼんやりとその光景を見回していたが、才人の視界に、なにか光るものが入ってきたかと
思った瞬間、彼の頭にこつんと小石のようなものが当たったような痛みが走った。
「いてっ!」
思わず頭を押さえたが、たいしたものではなく、すぐに痛みは治まってこぶもできていないようだった。
「なんだ?」
身をかがめて才人は自分に当たった何かを探した。すると、彼のすぐ足元に小さく透明なものが
転がっているのをが見つけた。
「ビー玉?」
それは、彼の言ったとおり、地球ではラムネのビンに普通についてくるようなありふれた形と色のビー玉だった。
なんでこんなものがと、才人は不思議にそのビー玉を見つめていたが、そのとき彼の右手の廃墟から
唐突に声がした。
「返して!」
「!?」
とっさに彼らはそれぞれの武器をとって身構えた。才人がデルフリンガーを握って前に立ち、両脇に
ルイズ達が立って、背後にシエスタをかばう体勢だ。
だが、廃墟の影から出てきたのは、盗賊などとは似ても似つかない、才人の腰くらいの背丈しかない、
年のころ7、8才くらいの茶色い髪の毛をした小さな女の子だった。
ようじょ支援
ウルトラ五つの誓いの一つ!
「ウルトラ五番目の使い魔」は全力で支援する!
「アイのビー玉、返して!」
その子は、才人のそばまで駆け寄ると、恐れる様子もなく才人に手のひらを差し出して要求してきた。
才人は一瞬驚いたが、返さない理由など何も無い。にっこりと笑うと、その子の手のひらの上にビー玉
を乗せてやった。
「これはきみのだったのか、ごめんね」
ビー玉を受け取ると、そのアイという子は宝物を取り返したように、満面の笑みを浮かべた。
「ありがとうお兄ちゃん」
「君の宝物かい、まるで魔法がかかってるみたいにきれいなビー玉だね」
「そうよ、おじさんからもらった、アイの宝物なの」
アイは、うれしそうにそのビー玉を才人達の前にかざした。才人やシエスタにとっては、夕日を浴びて
輝くビー玉は大変きれいに見えたが、宝石を見慣れたルイズやキュルケにはただのガラス玉でしか
ないようだった。
「ふーん。でも、特に魔法がかかってるようには見えないわね。たんなるガラス玉みたい」
「そんなことないの! これはおじさんが、いつでもお父さんとお母さんに会えるようにってくれた、
魔法のビー玉なの!」
それを聞いて、彼女達はすでにアイの両親がもう二度と彼女と会えないところに行ってしまったんだ
ということを悟った。
「ご、ごめんね。けど、お姉ちゃん達も魔法使いなんだけど、魔法がかかってるようには見えなかったから」
「じゃあ見せてあげる! これをかざして見ると、見たいものがなんでも見れるんだから!」
そう言うとアイはビー玉をキュルケに差し出した。
「うーん……やっぱり、なにも見えないわ」
キュルケは、それをかざして見てみたが、やはり何も見えなかった。順に、タバサ、ロングビル、シエスタにも
回して見てもらったが、やはり何も見えなかった。
「……」
「……悪いけど、マジックアイテムの類じゃないわね」
「そんなこと言っちゃかわいそうですよ。皆さんだって、小さいころに自分だけの宝物とか大切にしたことあるでしょう」
アイは、すっかり泣きそうな顔になっている。
そして最後にルイズと才人の番になった。どちらが先に見るかは少しもめたが、才人が持ってふたりで
同時に覗き込むということで落ち着き、いざ、とばかりにふたりは夕日にかざしたビー玉の中を覗き込んだ。
すると。
(わっ、なんだこりゃ!?)
ビー玉の中が一瞬泡だったかのように見えた後、ビー玉の中に映像が映った。いや、直接ふたりの
頭の中に映像が投影されたといったほうがいいだろう。その風景にふたりは見覚えがあった。
炎に包まれたトリスタニアの街、その街並みを踏み潰しながら暴れまわる一匹の超獣。
(ベロクロン……)
それは、1月前に初めてベロクロンがトリスタニアに現れたときの映像であった。
やがて空からグリフォンや飛竜の軍団が立ち向かっていったが、ミサイル攻撃によって、あっというまに
全滅していった。
勝ち誇るベロクロン、足元には逃げ遅れた人々が炎にまかれながら必死に逃れようとしている。
そんな中に、ふたりは手を取り合って走るふたつの人影を見つけた。
「アイ、頑張って走るのよ!」
「お母さん、こわいよお」
ひとつはアイ、もうひとつは彼女の母親であった。
親子は、暴れまわるベロクロンと、街を覆う炎から必死に逃げ延びようとしていた。だが、ふたりの
すぐ隣の石造りの建物に、流れ弾のミサイルが当たり、ふたりの頭上に大量の岩が降り注いできた。
「アイ! 危ない!!」
「あっ! お母さん? お母さーん!!」
背中を突き飛ばされて、前の地面に転がり込んだアイが振り返って見えたものは、目の前を埋め尽くす
瓦礫の山だけだった。
「お母さん? ……わあぁぁっ!!」
たかが8才程度の子供に、その光景を受け入れるのはあまりにもきつすぎた。
街を覆う炎はさらに勢いを増して、泣き叫ぶアイの周りを包んでいく。だがそのとき、路地からひとりの
男性が飛び出してきた。
「きみ、はやく逃げるんだ!」
「でもお母さんが、お母さーん!」
男はアイを抱きかかえると、すぐさま安全なほうへ駆け出した。
映像は、ふたりが炎から逃げ切ったところで再び泡に包まれて終わった。
「そうか……最初のベロクロンの襲撃のときに」
ビー玉を下ろし、悲しそうに才人は言った。
「お兄ちゃんにも見えたのね!?」
「うん、それでそのとき助けられたおじさんから、このビー玉をもらったんだね」
アイにビー玉を返して、才人はそう聞いた。
「そうよ、アイ、ひとりぼっちになっちゃったんだけど、おじさんがずっと守ってくれたの」
誇らしそうに言うアイに、ルイズも優しくたずねた。
「いい人ね。こんな時勢じゃ、子供を狙う人攫いもあとを絶たないってのに。でも、こんなすごいアイテムを
持ってるってことは、高名なメイジなのかしら?」
「わかんない、おじさんはおねえちゃんたちみたいに杖を持ってないし、でも、いろんなところを旅してきた
から、すごく物知りなのよ」
どうやらアイには難しい質問だったらしい、ルイズが苦笑すると、後ろにいたキュルケ達が驚いたように言った。
「ルイズ、あんたたち、そのビー玉に、その子の言うものが見えたの?」
ルイズと才人がうなづくと、キュルケは今度こそ本気で驚いた。
「ええっ!? なんでわたし達に見えないのに、ゼロのあなたと平民のダーリンが!? どんなマジックアイテムよ、それ」
「平民はシエスタもでしょ。ゼロは関係ないわよ、マジックアイテムにもいろいろあるってことでしょ、知らないわよ」
突っ返すように答えたが、ルイズには自分と才人にだけ見えた理由に心当たりというより確信があった。
ふたりに共通することは、ウルトラマンAと同化しているという一点しかない。もちろんそれを口に出すことはしないが。
と、そのときアイの出てきた廃屋から、ひとりの男性が現れた。
「アイちゃん」
それは、たった今アイのビー玉で、ルイズと才人が見たあの人だった。
年齢は見たところ40前後、やや丸顔で、年相応に薄くなり始めた頭頂部と、短く伸びたひげ、服装は
ハルケギニアで標準的な平民のもので、特徴らしい特徴のない、普通の男性に見えた。
「あっ、おじさん」
アイは、彼の姿を見つけるとうれしそうに駆け寄っていった。
「あまりひとりで遠くに行ってはいけないよ。危ないからね」
「うん、アイね。このおねえちゃんたちとね!」
まだ会ったばかりだというのに、アイは彼にルイズたちのことを紹介していった。元々かなり奔放な子なのだろう。
とはいえ、まだ名前も言ってないのだから、途中からルイズ達が自己紹介していったのだが。
「そうですか、あなた方がこの子と遊んでくれてたんですか、どうもありがとうございます」
「えっ、いやわたしたちは……ううん……」
そう言われて、6人は顔を見合わせたが、まだ日が落ちるまでには少し時間があることから、ちょっとだけ
アイと遊んであげることになった。
「わーすごーい、お姉ちゃん氷でなんでも作れるんだ。次はお馬さん作って」
「……なんでも、じゃないけどそれなりには、お馬さんね、了解」
「んじゃ、いくわよタバサ、あたしたちの芸術センスを見せてあげましょ」
「危ないからあまり近づかないでね。飴は好き?」
アイは、タバサが作った氷の塊をキュルケが炎で溶かして動物の像を作るのを、ロングビルからもらった
お菓子を食べながら楽しそうに見ていた。
「すみません、見ず知らずの人にこんなに親切にしていただいて、あの子もしばらく遊び相手がいなかったものですから」
男が頭をぽりぽりとかきながら、すまなそうに言うと、シエスタが笑いながら答えた。
「お気になさらずに、みなさんああ見えて優しい人ばかりですから。それに、子供ははだしで外を走り回って遊ぶ
ものでしょう。ふふ、わたしも行ってきます」
シエスタも、そう言って輪に入っていった。
残ったのは、彼と才人とルイズ。
「ルイズ、お前は行かないのか?」
「ふん、ヴァリエール家の人間がツェルプストーといっしょに遊べるもんですか!」
「わたしも遊びたいって顔してるように見えるのは気のせいだろうね」
2月近くもつき合って、才人もそこそこルイズの顔色が分かるようになってきていた。
だが、冗談はさておき、キュルケたち5人の意識が向こうに向いていることを確認すると、才人は小声で
男に話しかけた。
「ところで、あなたはこの星の人じゃありませんね」
すると、男とルイズの目が一瞬見開かれた。
特に、ルイズはバム星人のときのようなことになるのではと、懐の杖に手をかけたが、才人は軽く手で
制して話を続けた。
「あのビー玉は魔法なんかじゃない、ハルケギニア以外の星の高度な科学力で作られたものだ」
「……驚きましたね。確かに、私はこの星の人間じゃありません……そういえば、あなたもこの星の
人には見えない服装ですね。その服の合成繊維なんかは、この星の技術力では到底作れないでしょう」
彼は、一目見て才人のパーカーがポリエステル製であることを見破ったようだ。才人とルイズは、
正体を知られたことでその宇宙人が、何か反応を起こすかもと警戒したが、彼には殺気のようなものは
一切感じられなかった。
彼も、才人とルイズに敵意がないことを感じ取ったらしく、穏やかな口調のまま話を続けた。
「あなた方も、悪い人ではないようですね。はい、この星の人の姿を借りてはいますが、私はこの星の
住人ではありません。ミラクル星、それが私の故郷の名前です」
「ミラクル星人、やっぱりそうだったんですか」
その名前を聞いて、才人は万一のためにいつでも取り出せるよう用意していたガッツブラスターの
安全装置をかけなおした。
ミラクル星人、怪獣頻出期には数多くの侵略宇宙人が地球に襲来したが、その中でもごくわずか
ではあるが地球人と友好を結んだ平和的な星人もいて、ミラクル星人もそんななかのひとりだった。
支援
支援。
規制喰らった?
さるさん入ったみたいで代理行ってくる!
「心配ない、ルイズ、この人に敵意はないよ」
「ほ、本当に?」
ルイズは才人の言葉に怪訝な顔をしたが、少なくとも宇宙人に関しては自分より詳しい才人が
そう言うのだからと、ゆっくり杖から手を離した。
「わかったわ、あんたを信じる。けど、なんでわざわざハルケギニアに来たの?」
「あなたは、この星の人ですね。私の星は、ここよりも文明が進んでいるのですが、文化が遅れ気味
でしてね。それで、豊かな文化形態を持っている、このハルケギニアにそれを学びに来たのです」
「留学生ってわけ……ヤプールの手下じゃないのね?」
彼はこくりとうなづいた。
「私がここに来たのは、ハルケギニアの暦で5年前です。そのあいだ私はガリアやロマリア、アルビオン
から東方まで、様々な文化風習を学んできました。そして最後にこのトリステインに来たのですが……」
「そこで、ベロクロンの襲撃に会い、アイちゃんと出会ったんですね」
「ええ、あの子は家族ともどもロマリアからこちらに逃れてきたそうです。あそこは、寺院による重税と
異端狩りが激化しているそうですから、恐らく彼女の両親も新教徒だったのでしょう。ですが、ようやく
ガリアまで逃れてきたところで、領主同士の対立の紛争に巻き込まれて、父親はそのときに。そして
母親といっしょに必死で逃げ延びてきたこのトリステインでも……」
才人とルイズはやりきれない思いでいっぱいになった。年端もいかない子供が国から国へと逃げ延びる
のには、いったいどれほどの苦労があっただろう。しかも、逃げ延びてきた場所でも安住の地は無く、
両親までも失って、あんな小さな子に何の罪もないのに、なぜそんな残酷な目にあい続けなければならないのか。
「悲しいものです。なぜあんな純粋な子供が苦しまねばならないのでしょう。しかも、この世界の
大人達は、皆、神のため、正義のため、国を救うためといって彼女のような子供を作り続けています。
ヤプールは明確な侵略者ですが、そんな人々はいったい正義をかかげて何がしたいんでしょう。私は、
それだけはわかりませんでした」
ふたりとも、返すべき言葉が見つからなかった。
「でも、あなたとめぐり合えたから、今あの子はああして笑っていられるんでしょう」
耐え切れなくなった才人がそう言うと、彼は悲しそうな顔をした。
「いえ、実を言うと、私はもう自分の星に帰らなければなりません。ミラクル星では、大勢の仲間が
私の帰りを待っています。どうにか、あの子の引き取り先も見つかりました。裕福な商家ですから
大丈夫だと思います。ですが、あの子が寂しがるといけませんので」
「あのビー玉を渡したんですか」
「はい」
どこまでも優しく、ミラクル星人の男は言った。
やがて、太陽も山陰に姿を消しかけ、ルイズ達はアイといっしょに、旅立たねばならないミラクル星人を
町外れにまで送っていった。
別れ際に、アイは涙を浮かべて言った。
「おじさん、どうしても行っちゃうの?」
「ごめんよ。おじさんもいつまでも君といっしょにいたい、けれどもおじさんの国ではおじさんの友達が
ずっとおじさんの帰りを待ってるんだ。心配はいらない、そのビー玉を見れば、いつでもおじさんに
会えるから……じゃあ、行くね」
彼は、アイの頭を優しくなでると、夕闇の中を一歩、一歩と歩いていった。
そして、20歩ほど歩んだところで、彼は振り返りながら、ゆっくりとフクロウを擬人化したような
ミラクル星人本来の姿に戻った。当然それを見てキュルケやシエスタ達は仰天したが、彼は
穏やかな声で最後に別れの言葉を告げた。
「さようなら、アイちゃん」
そう言うと、ミラクル星人の姿は、すうっと夕暮れの暗闇のなかに消えていった。
「おじさーん!!」
輝きだした星空に、アイの声だけがどこまでも響き渡っていた。
「宇宙人にも、あんな善良な人がいるのね」
「人間なんかよりずっとな」
ルイズと才人は、それぞれひとり言のようにつぶやいた。
やがて完全に日も落ち、双月が太陽に代わってあたりを照らし始めた。
だが、そのとき天の一角が割れて現れた真赤な裂け目から、巨大な円月刀を持つ怪人が降り立った
ことに、気がついた人間はいなかった。
「ゆけ、テロリスト星人よ。ミラクル星人から、この世界の調査資料を奪い取るのだ!」
「ふはは、たやすいこと。奴を抹殺し、資料を奪ってやる。そして、この星のガスはすべて我々
テロリスト星人のものだ!」
続く
以上です、たくさんの支援どうもありがとうございました。
ギリギリ大丈夫かなと思ったんですが、けっきょくさるさんに引っかかってしまってすいませんでした。
さて、今回はフリッグの舞踏会の前日の話ということで、しばらく出番のなかったシエスタとロングビルさん(こっちの名前の
ほうが好きなもので)に登場していただいていただきました。
当分は前後編形式で、前後編を合わせた2話完結方式でいこうと思います。
長さによっては中編が入ったり、ストーリー上重要なところは長編になるかもしれませんが、きりがいいので
このやり方でお付き合いください。
では、次回は久々に才人とルイズが合体変身します。
ふたりのウルトラタッチに、ご期待ください。
====
投下終了
投下乙です
しかしテロリスト星人って凄いネーミングだ
投下乙
今日まとめサイトでダブルクロス ゼロを読んだんだが
‘イオノクラフトは使えないだろ’というツッコミはもう入ってる?
「ウルトラのクリスマスツリー」を見た人はミラクル星人の運命をもうご存知でしょう。
ああやり切れんなあ。
>>270 バロールのリアクティブダッシュで[戦闘移動]中は[飛行状態]になれるぞ?
>>270 私の記憶が確かならば、うっかりと使った直後にすぐ入った。
ウルトラの人乙でした。
そして、第14話前半部分の確認が終わりました。
他に特に予定などがなければ投下したいのですが、よろしいですか?
支援
おk支援
それでは投下行きます。
――『土くれのフーケ』による秘宝の盗難事件から数日…
「くわあああぁぁぁぁぁ〜〜」
本塔の屋根の上に寝転んだジャンガは口を開き、大きな欠伸をした。
眠気に霞む目を擦る。
「どうしたい相棒、そんな大きな欠伸をしやがって…退屈なのか?」
隣に置いてある鞘に納まった剣が僅かに鞘から出て、金具を鳴らして話しかける。
インテリジェンスソード……知性を持たされたその剣の名はデルフリンガー。
昨日、ジャンガが暇潰しに町へ出た際、度々客に喧嘩をふっかける為、
店主によって処分されかけていた所を彼が気まぐれで貰ったのだ(無論、脅す形でタダにして)。
この剣…よく喋る為にうるさい事この上ない。鞘に収めていても勝手に鞘から出て、喋りまくるしまつだ。
だが、ジャンガは特に気にする事は無かった。…この程度のお喋りな相手にはジョーカーで慣れているからだ。
(あんまりうるさいなら、地面にでも埋めればいいしよ…)
デルフリンガーの言葉を適当に聞き流しながら、ジャンガは先程の事を思い返していた…。
――今から三十分程前…
フーケ襲撃の際にその場にいたという事で、ルイズ、キュルケ、タバサの三人にジャンガを加えた四人は、
コルベールにより本塔最上階の学院長室へと呼び出された。
学院長室にはコルベールやオスマン氏、ミス・ロングビルの他にも学院の教師達が顔を揃えている。
全員が揃い、まずは独自に調査をしていたと言うミス・ロングビルの報告から話は始まった。
「街で色々と聞き込みをした所、森の奥の廃屋に出入りしている不審な人物を目撃したと言う情報を入手しました」
「流石はミス・ロングビル、仕事が早いの」
自分の秘書の手際の良さに、オスマン氏は微笑む。
それにミス・ロングビルも笑顔で返すと、手に持った丸められた紙を差し出す。
「それで、聞き込みで得た証言を素に、私が描いてみたのがこれです」
ミス・ロングビルの差し出した紙を受け取り、広げてそこに描かれた人物を確認する。
オスマン氏は頷き、確認を取るべくその人物画をルイズ達に見せた。
そこに描かれていたのは紛れも無く、ゴーレムに乗っていた黒ローブの人物=フーケ。
支援
「どうかね?」
「間違いありません、これはフーケです!」
尋ねるオスマン氏に、ルイズは確信を持って答えた。
ルイズの言葉に教師達の間にざわめきが広っていく。コルベールはオスマン氏に言った。
「直ぐに王室に報告しましょう。王室衛士隊に頼んで兵を差し向けてもらわなくては」
「そんなグズグズしておってはフーケに気取られる。ここは我々の力で『破壊の箱』と『紅の巨銃』を奪還し、
盗賊によって汚された学院の名誉を取り戻すのじゃ」
オスマン氏はそう言うと、教師達を見回しながら声を張り上げる。
「では、捜索隊を編成する。我と思う者は、杖を掲げよ!」
杖を掲げようとする者はいない。困ったように顔を見合わせるばかりだ。
「どうした?フーケを捕らえて、名を上げようとする者はおらんのか!?」
教師達を見回しながら、オスマン氏が再度声を張り上げる。しかし、それでも教師達は皆、顔を見合わせるばかりだ。
すると、それまで俯き黙っていたルイズが杖を掲げた。
「私が行きます!」
突然の事に教師達一同はルイズを見て、驚きの表情を浮かべる。
そんなルイズに続くように、キュルケも杖を掲げる。
「ツェルプストー?」
「ヴァリエールには負けられませんもの」
「あんたねぇ…」
半ば呆れたような視線を向けるルイズ。
と、キュルケはルイズの向こうに立つタバサを見て驚く。
見ればタバサもまた杖を掲げている。
「タバサ、貴方はいいのよ。これは私達の問題なんだから」
キュルケの言葉にタバサは表情を変えずに一言。
「二人が心配」
その言葉にキュルケとルイズの二人は嬉しさに思わず微笑む。
オスマン氏はそんな三人のやりとりを見ると、軽く咳払いをする。
「では、三人に頼むとしよう」
そしてオスマン氏は三人を改めて見回す。
「この三人はフーケの目撃者だ。それにミス・タバサは、若くしてシュヴァリエの称号を持つ騎士だと聞いておるが?」
「騎士?」
「本当なのタバサ?」
驚く二人の言葉にタバサは小さく頷いてみせる。
そんな二人とは別に、ジャンガはオスマン氏の説明に納得していた。
(なるほどなァ…。この前、吸血鬼の件であの竜に騎士だとか名乗らせていたのはそれでか)
続いてオスマン氏はキュルケを見つめた。
「そしてミス・ツェルプストーはゲルマニアの優秀な軍人の家系で、彼女自身も可也強力な炎の使い手と聞くが?」
キュルケは得意げに鼻を鳴らし、胸を張る。
「そして…、こほん」
最後にオスマン氏はルイズを見たが、軽く咳払いをすると、直ぐに目を逸らしてしまった。
無理も無い……何しろ、誉める所が殆ど無いのだ。オスマン氏は悩みながら口を開く。
「その……、ミス・ヴァリエールは数々の優秀なメイジを輩出したヴァリエール家の息女で、
その…うむ…なんだ…、将来有望な――」
「ハッキリ言っちまえよ?『テメェには誉める所なんか何一つ無い!』ってな」
酷いw支援
その場に居た一同全員が声の方に顔を向ける。
ジャンガが呆れを通り越したような表情で一同を見ていた。
「見ていて滑稽な事、この上無いな。ダメな奴はダメなんだよ…、無理して誉める必要なんざ無ェんだゼ?」
「な、何ですって!?」
ルイズの怒鳴り声などなんとも感じないジャンガは鼻で笑う。
「何逆ギレしてやがるんだ?事実だろうが…。爆発しか起こせない、他人に迷惑を掛ける事しか出来ないくせによ」
「そ、そんな事無いわよ!」
「ほゥ?…本当にそう言い切れるのかよ?」
「ど、どう言う意味よ?」
ジャンガの言葉に嫌な予感がした。こういう時、こいつは大抵碌な事を言わないのだから。
ルイズにゆっくりと近寄り、不安に曇る表情を浮かべた顔を覗き込むジャンガ。
「聞いたゼ〜?お前の大切な”お友達”のお姫様…今回の事の責任を負わされそうになってるんだってな?」
「…な、何であんたが、私と姫殿下の関係を……そんな事を知ってるのよ?」
「あの夜のお話、聞かせてもらっただけさ」
「ぬ、盗み聞き……あ、ああ、あんた〜…」
「それは置いといてだ…。お姫様は大切なお友達のお前の活躍を見たいから、品評会を見に来たんだよな〜?
…周囲の反対を押し切ってよォ〜。その為、学院の警備兵は全員お姫様の警護…、お陰で警備は薄くなったと。
…まァ、お前に似て我侭で、ガキな事この上ない”ダメ”お姫様だな」
ジャンガの大暴言にルイズはわなわなと身体を震わせる。
「あ、あんた…な、ななな、なんて事言うのよ!?」
「ハンッ、事実じゃねェのか?まァ、別にどうでもいい事だけどよ…。
で…話を戻すがよ、お前は俺があのゴーレムとやりあってる時に何をした?」
「な、何って…本塔の壁を壊そうとしているゴーレムに”ファイヤーボール”を唱えただけよ。…失敗したけど」
「その失敗で、テメェは…”これ”を傷付けたんだよなァ〜?」
言いながらジャンガは爪でマフラーの端を持ち上げ、その先端をルイズに突きつける。
マフラーの先端部分の色が微妙に変わっている…いや、別の毛糸で編まれているのだ。
あの後、欠けたマフラーをどうにか出来ないかと悩んでいたジャンガは、
偶然シエスタが編み物が得意だと言う事を思い出し、彼女に良く似た色の毛糸で欠けた部分を直してもらったのだ。
微妙に色は違い、また長さ等も微妙に変わっていたが、欠けているのを見ているよりは幾分かマシだった。
「まァ…それも置いとく。それでだ、お前はその失敗の爆発で壁に穴を開けたんだよな?」
「あ…」
そうなのだ。彼女の起こした爆発が壁の一部に罅を入れてしまった為、フーケのゴーレムに侵入されてしまったのだ。
「お前が短絡的な行動に出たりしなけりゃ壁は壊れなかったし、あのまま俺がフーケの野郎を仕留めてたのによ…。
言い換えれば、テメェは盗みの手助けをしたのと変わりないんだぜ?しかも、お姫様も迷惑を被った。
キキキ、傑作じゃねぇか?貴族なのに盗人の手助けをして、
挙句にテメェでテメェの大切なお姫様に”悪夢”を届けたんだからよ?…キキキキキ」
ルイズは呆然とジャンガを見つめるしか出来なかった。ジャンガはニヤリと笑う。
「解るかよ?テメェが爆発一つ起こしただけで、学院と俺と姫様と…これだけの規模で”悪夢”を届けたんだ?
やっぱりテメェは『悪夢のルイズ』だよ……他人に不幸を届ける事しか出来ない”疫病神”なんだよ!!!」
ジャンガの叫び声に学院長室は沈黙に包まれた。ルイズは顔面蒼白、目には涙を浮かべ始めている。
それでもルイズは何とか反論しようとする。
「ち、違う…私は、誰かを苦しめたりなんか…するつもりは――」
「無かった…って言うつもりかよ?言い訳にもなんねェゼ」
「私はただ……ただ…」
言いながらルイズは床に膝を突き、遂に泣き出してしまった。
そんなルイズをジャンガはこれ以上無い位の冷酷な目で見下ろす。
(ケッ…この程度で言い負かされるなんてよ…、やっぱこのガキはダメだな…。…似ているのは目と髪だけか…)
ジャンガはそのまま踵を返すと、そのまま部屋を出て行った。
「盗人捕まえに行くならテメェ等だけで行きな。俺は御免だからな…」
部屋を出る間際にそう言い残して…。
――そして話は冒頭に戻る…
白い雲が流れる、澄み渡った青空を見上げた。
些細な悩み事などこの青空を見ているとどうでも良くなってきそうだ。
だが、ジャンガが抱えている事はどうでも良くなるような些細な事ではない。
ジャンガは今度は欠伸ではなく、ため息を吐いた。そこにデルフリンガーが声を掛ける。
「なぁ、相棒?さっきの事だがよ…言いすぎだと思うぜ?」
「…あン?」
「…一々睨むなよ」
「だったら話しかけるな…俺は虫の居所が悪い」
「だろうね……と言うか、相棒の虫の居所が良い時ってあんのか?」
「知るか…」
「そうかい」
それっきり、一人と一振りは口を閉ざした。
…そのまま十分程経っただろうか?
「おい、相棒」
「…話しかけるなっつっただろうが?」
「そんな事言ってないで、”あれ”見てみろよ…”あれ”」
頻りにデルフリンガーは何かを見るのを促す。が、彼には手が無いので何処の何を指しているのか解らない。
「”あれ”ってなんだ……って、ン?」
身体を起こすと、正門から出て行く馬車が目に入った。
それに乗っているのはルイズ、キュルケ、タバサに手綱を握るミス・ロングビルの四人だった。
「ありゃ、間違い無く盗人の討伐…そして盗まれた秘宝の奪還に行くのに間違いないね?」
「だろうな…」
何の関心も示さない口調でジャンガは呟く。
「相棒…いいのかい?」
「何がだ?」
「あのまま娘っ子達を行かせる事さ…。俺はそん時居なかったから見てねぇけどよ…、
盗人の使ったゴーレム…結構デカかったらしいな?」
「”こっち”の単位で言えば三十メイルは軽くあったゼ」
「そんだけデカイ図体のゴーレムなら、あの娘っ子達の魔法じゃ歯が立たないね…。確実に」
「だろうな…」
ジャンガはまた素っ気無い返事を返すだけだ。デルフリンガーは流石にため息を吐いた。
「なぁ…相棒、本当にいいのか?」
「しつけェな…どうでもいいって言っただろうが」
「…はぁ〜…こんなにも主人を慕わない使い魔ってのも聞いた事が無いぜ…。
相棒、使い魔の歴史に名が残るんじゃねぇか?」
「…俺は使い魔になんざなった覚えは無ェ…。次、口を開いてみろ…圧し折ってから地中深く埋めるぞ?」
「おお、怖え…。解ったよ、もう黙るよ」
それだけ言うとデルフリンガーは鞘の中へと引っ込んだ。
ジャンガは忌々しげに鼻を鳴らすと、正門から続く道の先へ目を向けた。
馬車は既に小さくなり、視界から消えようとしていた。
サドだなぁ、てか誰かフォローしてやれよ
以上で前半部分の投下終了です。後半部分はまた少ししたら投下します。
デルフ、最初は出さないで行こうかと思ってたんですが…どうにも解説役が必要になってきそうなので(汗)
まぁ、なんとかうまくやります、はい。では一旦失礼します。
乙!
相変わらずジャンガドSすぎる
「地中深く埋めるぞ」ってジャンガが穴掘りしてるとこ想像して和んだw
投下乙です
何故だろう、このままジャンガがほっぽらかしてルイズ死亡
第一部完!!になりそうで怖いんですがw
ジャンガの人乙
デル公に活躍の機会はあるのか・・・?
>>243 ラーニングも無しで虚無の魔法ぽいのを使える奴ならいるね
具体的には2mのカマキリが出現したり
書ききる自信があるなら、それはそれで良し。
>>273 16話で‘光の翼はイオノクラフト’と書いてあったんだ
>>274 ありがとう。ゲームのファンとして少し気になったんだ
ガンパレの方々!降臨を望む。
>>290 べつにエフェクトにこだわらんでもDロイスや異世界の因子取得でどうにでもなる
ルールと違うのは書き手の伏線かもしれない、
わざわざ突っ込むのは野暮ってもんだ
>>292 すまん、その通りだな
野暮なツッコミは控えるようにするよ
銃器に爪と分身に毒泡とカッターと高速移動と…
いやわざわざなれない剣、使う必要性が…
予約はありませんか?
ありませんね。ならば、20:45くらいから投下します。
ルイズはジュディに起こされて目を覚ました。
ここ数日、部屋を共有するようになってから、ルイズはジュディに起こされていた。
こうも毎日、起こされていては、ルイズにも思う所がないわけではない。
『もしかして、私ってだらしがないのかしら?
こうも毎日ジュディに起こされるのが、その証拠よね。
これではいけないわ。ここはどうにかして、年上の威厳を示さないと、ヴァリエール家の沽券にかかわるわ』
朝食のパンを食べやすい大きさにちぎりながら、ルイズはここ数日の自分の行動を振り返っていた。
思い返してみれば、ジュディには情けない所ばかりを見られている。キュルケとのみっともない喧嘩に始まり、昨日の筋肉痛だ。細々とした出来事ならもっと多いだろう。
自分の行いを振り返ってみたルイズは、ハンマーに殴られたようなショックを感じて頭を抱え込んだ。
『こ、これは本当に如何にかしないと駄目だわ……
ここはひとつ、年上のレディの余裕と威厳を示さないとジュディに愛想を尽かされちゃうわ。
嫌っ! それだけは、何だか知らないけど嫌ッ!』
ルイズは両肩を抱いて身悶える。
ジュディは、ルイズの対面の椅子に腰掛けていて、その様子を不思議そうに眺めていた。
2人が朝食を摂っている場所は、食堂ではなくルイズの部屋であった。2人が向かい合って座る机には、バスケットに入ったパンとチーズ、そして今朝汲んできた井戸水が入った水差しが置かれている。
虚無の曜日は、大半の使用人にとっても休日であり、食堂の運営はなされていない。
そういうわけだから、生徒は自分達で食事の世話をしなければならない。生徒の自立心を養う。とは、オスマンの言である。
『何か良い案はないものかしら?』
しかめっ面を浮かべながら、パンを冷たい井戸水で喉の奥に流し込む。味わうことはせず、ただ黙々と、流れ作業的にパンを食んでいく。
会話らしい会話もなく、慎ましい朝食は終わりを告げた。
朝食の後、ルイズはテラスに出て空を眺めていた。
『妙案、何か良い解決法は…… 汚名を挽回する冴えたやり方は?』
薫風が吹く。陽の光をふんだんに浴びた緑の香りが鼻腔をくすぐり、穏やかな風が髪を撫でる。
テラスから見える景色は、森か草原ぐらいしかない。遠くには、小さな村の影がぽつぽつと見えるのだが、雄大な緑にまぎれてしまっている。
朝の気配がまださめやらぬこの時間、空気は僅かに朝露の湿りを帯び、降り注ぐ陽光は徐々に体を目覚めさせる。
「いいお天気ね。ルイズさんは、お出かけしないの?」
何時の間にかジュディはテラスから部屋に戻っており、出かける準備をしていた。その傍らのチェストの上には、ポセイドンが乗っている。
ルイズは、胸の前で組んでいた腕を解いて、小首を傾げる。
「何処かに出かけるの?」
「もう! さっき言ったでしょ?
いいお天気だからお散歩してくるって」
ジュディは頬をふくらませる。
ルイズが考え込んでいる間、ジュディは何かと話しかけていたのだが、ルイズは考え事に手一杯で、割と適当な受け答えをしていたのだ。
碌に話を聞いていなかったルイズは、流石にバツが悪く、平謝りをするしかない。
「ごめんなさい。ちょっと考え事してたから……」
「なにか悩み事があるの?」
悩んでいると聞くと、たちまちジュディの顔から怒りが消え、心配顔に変化する。ちょっとした百面相のようだ。
ルイズは小さく頭を振る。
「いえ、大したことはないのだけど……」
語尾が尻すぼみに小さくなり、ルイズは軽く俯いて黙り込んだ。そして、空中のあらぬ方向を見てブツブツと呟く。
「うん、お出かけか…… いいかも。そうよね?」
「ルイズさん?」
突然の奇行を見て、ジュディは益々心配げな顔でルイズに近づく。
「そうよ! そうだわ!」
「キャッ!?」
バネ仕掛けのおもちゃの様に機敏な動きで、ルイズは正面を向き直る。
急激な動きにジュディは吃驚した声を上げるが、ルイズは気にも留めずに捲し立てる。
「ジュディ! お出かけするわよ!」
「えっ? どこに?」
いきなりの提案に、ジュディは大きな瞳をさらに大きくして聞き返す。
「街によ! トリステインの城下街を見せてあげるわ!」
小鳥の囀りが風に乗り、開け放たれた窓から聞こえてくる。青く晴れ渡る空には、雲が早く流れていく。
この数日間続く陽気は心地よく、出かけるのには良い日和であった。
未来の大魔女候補2人 〜Judy & Louise〜
第8話 前編『2人の魔女、その休日』
王都トリスタニア。そこは、ハルケギニアでも指折りの歴史と伝統を誇る、トリステインの城下街である。
街は幾つかの通りで区分されており、貴族街と下町の間には大きな川が流れている。
そして、街の奥には、輝くばかりに白い王宮がそびえ、城下には白い石造りの街並みが広がっている。白い街並みは、城の秀麗さを引き立てる一因を担っている。
その城下街の大通り、ブルドンネ街には多くの露店が立ち並び、大勢の人々で賑わっていた。
幅5メイル程のその通りに、ルイズとジュディは居た。
ルイズは何時もの制服姿だが、ジュディは召喚された当初に着ていた紫のローブを着こみ、つば広のトンガリ帽子を被っている。
「すごいね、ルイズさん。こんなに人がいっぱいいるよ」
「そうでしょ。なんたって、このトリステインで一番大きな街なんだから当然よね」
ルイズは得意気な様子でそう話す。
それを聞いてか聞かずか、ジュディは瞳を輝かせ、物珍しそうに余所見をしながら歩いている。
「へ〜 そうなんだ。
あっ、アレなんだろう? ねえねえ、あれなあに?」
「あれは、籠売りね。
ほら、キョロキョロしてたら迷子になるわよ」
そう言って、ジュディの手を軽く引く。
通りには、人が溢れんばかりに行きかっているため、気を抜いていると容易にはぐれてしまうだろう。
そして、それ以上に気をつける事がある。
「ほら、寄り道してると危ないわよ。ここには、スリが多いんだから。
気をつけて歩かなきゃダメよ」
「そんな事する人がいるの?」
ジュディは信じられないという顔で聞き返す。
ルイズは、それにひとつ頷いてから話し始めた。
「まあ、平民のスリが貴族を狙うって事は、そうそうないわね。
でも、魔法を使われたら一発で終わりよ」
「えー!? 術を悪い事に使う人がいるの?
オジイチャンが聞いたら怒りそう」
ジュディが祖父から教わった常識からいえば、術士が犯罪のために術を濫用するなど考えられない事である。
魔道士とは、真理の探究者である。五行の理を解き明かし、遥かな高みを目指すというのが一般的な魔道士の在り方だ。
その探究者たる魔道士が術を悪用するなど、ジュディには到底理解できないことであった。
真理を追い求める余りに外道に堕ちた者でさえも、その行動は術の探究に帰結する。そして、力を持った術士は、理由はどうであれ、俗世との関係を断ち切る傾向が強い。
つまり、術を究めようとする者は、術を至高のモノと崇める信奉者でもあり、それを下賤な犯罪に用いるわけがないのだ。
もっとも、魔道を探究する行動が犯罪に繋がることや、その落伍者が犯罪者に身を窶すことはままあるのだが、それはジュディのあずかり知らぬことである。
「貴族は全員がメイジだけど、メイジが貴族とは限らないのよ。
いろんな事情で、勘当されたり、家を捨てたりした貴族の次男坊とかが、身をやつして傭兵や犯罪者になった奴らも居るのよ。
そういう奴らは、魔法を悪用して犯罪を働くから気をつけなきゃいけないのよ。わかった?」
「うん。それで、これからどこに行くの?」
ジュディは今朝、ルイズに『街に行こう』としか聞いていないので、何処に行くのか知らないのだ。
「そうね……」
勿体ぶるように逡巡する。衝動に任せるような行動であったので、ルイズにも明確な計画というものはない。
しかし、街に来るまでの時間で、大まかな考えは出来ていた。
「先ずは、観光ね」
「観光?」
キョトンとした顔で、オウム返しに聞き返す。
「そうよ。先ずは、この街を見て回りましょう。
他じゃ見られない、珍しいモノも沢山あるわよ」
「どんな所に行くの」
「うーん、そうね。
時計塔なんかどう? ほらあそこに見えるあれよ」
そう言ってルイズは、市中に聳えるひときわ高い塔を指差した。
その塔の上部には、時計盤が4つ付いており、どの方角から見ても時間が確認できる造りになっている。
乳白色の時計塔は、至る所に精緻な彫刻がなされており、見る者に感嘆の感情を喚起させる。
その時計塔は登る事もでき、そこから望む景色は一見の価値ありだ。
「すごくおっきいね」
「そうでしょうとも。なんたってこの街のシンボルの1つだからね。
あと他には、美術館や博物館もあるわよ。
このトリステインの素晴らしい歴史や、芸術を勉強するのも面白いわね。
トリステインはね、始祖の3人いた子供の内の1人が作った国なのよ。
ガリア、アルビオン、ロマリアと並んで古い歴史を持っていて、文化では断然トリステインが一番ね。それで……」
ルイズは訥々と語る。
その内容は、歴史講釈なのか、お国自慢なのか、良く分からないモノであった。
一つ言える事があるならば、博物館は行かなくても十分だろう。
「さて、何処から見てまわろうかしら? ジュディは何処からが良い?」
言いたい事を言い終えたルイズは、何処からまわろうかと相談を持ち掛ける。だが、ジュディからの反応はない。
「ジュディ?」
返事が返ってこない事を訝しみ振り向くが、ジュディの姿はそこにはなかった。繋いでいた手も、いつの間にか離れており、ルイズは呆然と立ち尽くすのであった。
◆◇◆
「う〜ん」
サイトは、地図を穴が開かんばかりに見つめ、唸っていた。
場所は、大通りから別の通りへと抜ける道の入口角。
華やかで、活気に溢れたブルドンネ街とは打って変わって、そこにはゴミが散乱し、汚水が水溜りをつくっているのが窺える。
背の高い建物に挟まれたそこは、あまり陽があたらず、行き交う人もまた少ない。
「ここの筈なんだけどな〜」
そう言って、サイトは地図から顔をあげて路地裏を覗きこむ。
今までの道のりを思い出し、手書きの地図に照らし合わせると、いま立っている場所が目的地の筈である。
しかし、いくら周りを見渡しても目的の店は見つからない。
サイトは首を捻ってうんうんと唸る。
「あの、サイトさん? やっぱり迷ったんじゃないですか?」
「え? そ、そんな事ないよ。ちょっと道を間違えただけだから、全然大丈夫。すぐに見つかるよ」
「でも……」
サイトを見つめるシエスタの瞳は、疑惑と信頼の間で揺れ動いていた。
傍から見ていても、サイトの言動は信用に足るものではない。そこで迷うのは、シエスタが特別な感情を抱いているからか。
「ああっと!」
サイトは大声を上げて、如何にか誤魔化そうとする。
「そ、そういえば! 今日の予定を何の相談もなしに決めてごめんね」
「い、いえ! そんな事ないです。
お陰で街にも来られましたし、何より交通費も抑えられて文句なんかないです」
シエスタは、とんでもないと大袈裟に両手を振って否定する。
「そう? そう言ってくれると助かるなぁ。あの先生の頼みだと、断れないんだよね。
まあ、交通費も出してくれたし、お釣りも懐に入れていいっていうし、文句は言えないよな」
2人が城下街に居る理由は、昨日の夕方まで遡る。
夕日が西の山脈の向こう側に沈もうという時間、見渡す限りが炎に包まれたかの如く朱に染まる草原に、サイトとコルベールは居た。
既に一通りの実験は終わり、草原に残っているのは、後片付けをしているサイトと機器を弄っているコルベールだけだ。
サイトが機器を一ヶ所に集め終えると、コルベールはおもむろに切り出した。
「サイト君、私はこれから実験結果の解析に掛かりきりになる。しかし、必要な物が足りない。
そこで、お使いに行って来てくれないかね?」
「どこにですか?」
「明日、城下街の秘薬屋へだ。交通費は出そう」
「お釣りは?」
「取っておきなさい」
「マッハ・ラジャー!!(音速で了解)」
こんなやり取りがあったとか、なかったとか。
閑話休題。
>>229 元ネタの楠舞神夜は1m級だぞ?
揺れる揺れる。
サイトは、手に持った地図を縦にしたり横にしたりと忙しなく動かす。
「えー、あー、うーん?
ココがこうだから、あー行ってこー行って…… うーん」
「…………」
シエスタは既に諦念の境地に至っていた。
彼女が今考えているのは、どうやればサイトに恥をかかせず正すことが出来るかという事だ。
地図を読んで目的地までサイトを連れていくのは、シエスタならば容易いだろう。幾度か使いに出された経験や、裏通りに知り合いの店があることも相まって、裏道にも詳しく、サイトよりも断然、城下街の地理には明るい。
お調子者で能天気なサイトであるが、変に意固地なところや、妙にプライドが高いところがあることをシエスタは知っていた。
女の自分が男のサイトを押しのけて先導するような真似をしては、彼を傷つける事になるのではないかと考えるのである。
「うーん…… 文字が読めないっていうのは、ホント不便だよな〜
あ〜…っと、もしかして逆さまかな?」
「ええと……」
相変わらずサイトは地図を睨んでウンウン唸り、シエスタはシエスタで助けていいものか手をこまねいている。
二進も三進も行かずに、間誤付いている2人に小さな影が近づく。
それに気が付いたのは、シエスタであった。サイトはますます泥沼にはまっている。
「サイト君、シエスタさん、こんにちは。2人でお出かけ?」
「あっ…と、確か、ジュディちゃん、でしたよね?」
シエスタは、記憶を辿って、どうにかジュディの事を思い出す。
2人が言葉を交わしたのは2日前の事であるが、あの時は、切羽詰まった出来事の後だったという事もあり、サイト以外の事は、碌に憶えていないシエスタであった。
「そうだよ。こんな道の端っこで、ドウしたの?」
「いや、ええと、店を探しててね……」
「お店?」
「コルベール先生からお使いを頼まれてね。
それで、探してるんだけど、全然見つからないんだよ。ち、地図が悪いのかなぁ あはは……」
サイトは、手書きの地図をヒラヒラと振って、言い訳がましい説明する。
ジュディに対して後ろめたい事など何もないはずなのだが、その様な言い方をしてしまう程に、サイトは焦っているという事だった。
「そうなの? でもごめんね。はじめてきた場所だから、わたしも分からないの」
「い、いや、ジュディちゃんが謝ることじゃないって」
「でも、ルイズさんなら何か知ってるかも。ちょっと待っててね……」
ジュディはそう言うと、目を瞑って精神を集中させた。
「出てきて、イアぺトス!
上から、ルイズさんを探して連れて来てちょうだい」
ジュディの呼びかけに応え、熱風と共に小さな赤い竜が出現した。それは、ジュディが抱きかかえられる程の大きさである。
イアぺトスと呼ばれた赤い竜は、ジュディの命令を聞くと、直ぐに天空へと舞い上がり、何度か旋回をしてから、視界の外へと消えていった。
サイトもシエスタも、魔法には疎いので、起きた事の異常性については理解できなかった。イアぺトスが何処からともなく現れた事にしても、そういうものなのだろういう認識である。
イアぺトスが飛んでいった方向を見ながら、サイトが口を開く。
「あれが使い魔ってやつ?」
「うん、わたしのファミリアで『イアぺトス』だよ」
「ふーん。あんなの、餌やりの時に居たっけな?」
「でも凄いですね。なにもない所から、ドラゴンが出てきましたよ!
ドラゴンを使い魔にしているなんて、もしかしてジュディちゃんって、かなり凄いんじゃありませんか!?」
使い魔の餌やりも担当しているサイトは、見覚えのない事に首を捻るが、全部が全部、把握しているわけでもないので、その疑問は直ぐに消え去った。
シエスタは、初めて間近でドラゴンを見た事に興奮して、ジュディを褒め千切る。
「そんな事ないよ。普通だよ。
もし凄いとしたら、教えてくれたオジイチャンやおかあさんが凄いんだと思うよ」
>汚名を挽回する
おいw
手放しに褒められ、ジュディは照れながら答える。
そうこうしていると、やがて、イアぺトスは戻ってきた。行儀よくジュディの肩にとまる。
「ごくろうさま、イアぺトス」
ジュディが顎の下を撫でてやると、イアぺトスは嬉しそうに目を細める。
「もう直ぐルイズさんが来るって言ってるよ」
「本当ですか? 有り難う御座います。良かったですね、これで早く着きますよ」
「う、うん。まあ、もう少しでたどり着けただろうけど、案内してもらった方が早く着くかな?」
「もう、サイトさんってば!」
「いや、本当だって! もう少しで地図を読み解けたんだってば!」
そんな風にサイトが言い訳をしていると、突如、イアぺトスが一声鳴いた。
イアぺトスと意識を共有しているジュディは、それだけで何が言いたいのかを正確に把握できる。
そして、おもむろに人込みの一角を指し示した。
「ほら、もう来るよ」
「ジュディ! ファミリアは気軽に見せちゃ駄目って言われてるでしょ!」
人込みをかき分けて現れたルイズは、開口一番に説教を始めた。
◆◇◆
暗闇に、一条の光が射し込んだ。
そこは、滅多に人が入り込まぬ場所であった。
分厚い石の壁で固められ、外界とを結ぶ唯一の扉は鋼鉄製の頑丈な造りだ。
閂が外される音が響き、2人の男女が足を踏み入れてくる。
男が先頭に立ち、片手にはランプを携えている。男の後ろに立つ女は、ハンカチを口に当てて埃を吸いこまないようにしている。
ランプに灯る淡い光によって、闇が追い払われた。
「さて、ここから目当てのものを探し出すのは少し骨ですな。
大体の場所が分かっているとはいえ、ロクに整理されていない場所ですから」
「ここが、宝物庫、ですか……」
足を踏み出す度に、床に積もった綿埃が舞い上げられる。
宝物庫には、多種多様な美術品やマジックアイテムが所狭しと置かれており、その全てが薄っすらと埃を被っている。例外はない。
男が後ろを振り向かずに、女に話しかける。
「そういえば、ミス・ロングビルはここに入るのは初めてでしたな」
「ええ。学院長の秘書とはいえ、新参者にはおいそれとは入れない場所ですから……」
「ガラクタも多いですが、貴重品も多いですからなぁ」
宝物庫に入ってきたのは、コルベールとロングビルであった。時間は午前、平日ならば、授業が行われている時間である。
「それにしても、この宝物庫は立派な造りですわね。
これほど頑丈な造りなら、賊は入り込めないでしょうね?」
「そうでしょうな。
なんでも、スクウェアメイジが数人がかりであらゆる魔法に対抗できるように設計したそうで、突破するのは事実上不可能でしょうな」
「なるほど……
よくご存じでいらっしゃいますわ。本当に感心しますわ、ミスタ・コルベールは物知りでいらっしゃいますこと」
ロングビルは熱っぽい瞳を向ける。
その艶やかな表情を直視できずに、コルベールは顔を赤らめた。
手放しに褒められ、ジュディは照れながら答える。
そうこうしていると、やがて、イアぺトスは戻ってきた。行儀よくジュディの肩にとまる。
「ごくろうさま、イアぺトス」
ジュディが顎の下を撫でてやると、イアぺトスは嬉しそうに目を細める。
「もう直ぐルイズさんが来るって言ってるよ」
「本当ですか? 有り難う御座います。良かったですね、これで早く着きますよ」
「う、うん。まあ、もう少しでたどり着けただろうけど、案内してもらった方が早く着くかな?」
「もう、サイトさんってば!」
「いや、本当だって! もう少しで地図を読み解けたんだってば!」
そんな風にサイトが言い訳をしていると、突如、イアぺトスが一声鳴いた。
イアぺトスと意識を共有しているジュディは、それだけで何が言いたいのかを正確に把握できる。
そして、おもむろに人込みの一角を指し示した。
「ほら、もう来るよ」
「ジュディ! ファミリアは気軽に見せちゃ駄目って言われてるでしょ!」
人込みをかき分けて現れたルイズは、開口一番に説教を始めた。
◆◇◆
暗闇に、一条の光が射し込んだ。
そこは、滅多に人が入り込まぬ場所であった。
分厚い石の壁で固められ、外界とを結ぶ唯一の扉は鋼鉄製の頑丈な造りだ。
閂が外される音が響き、2人の男女が足を踏み入れてくる。
男が先頭に立ち、片手にはランプを携えている。男の後ろに立つ女は、ハンカチを口に当てて埃を吸いこまないようにしている。
ランプに灯る淡い光によって、闇が追い払われた。
「さて、ここから目当てのものを探し出すのは少し骨ですな。
大体の場所が分かっているとはいえ、ロクに整理されていない場所ですから」
「ここが、宝物庫、ですか……」
足を踏み出す度に、床に積もった綿埃が舞い上げられる。
宝物庫には、多種多様な美術品やマジックアイテムが所狭しと置かれており、その全てが薄っすらと埃を被っている。例外はない。
男が後ろを振り向かずに、女に話しかける。
「そういえば、ミス・ロングビルはここに入るのは初めてでしたな」
「ええ。学院長の秘書とはいえ、新参者にはおいそれとは入れない場所ですから……」
「ガラクタも多いですが、貴重品も多いですからなぁ」
宝物庫に入ってきたのは、コルベールとロングビルであった。時間は午前、平日ならば、授業が行われている時間である。
「それにしても、この宝物庫は立派な造りですわね。
これほど頑丈な造りなら、賊は入り込めないでしょうね?」
「そうでしょうな。
なんでも、スクウェアメイジが数人がかりであらゆる魔法に対抗できるように設計したそうで、突破するのは事実上不可能でしょうな」
「なるほど……
よくご存じでいらっしゃいますわ。本当に感心しますわ、ミスタ・コルベールは物知りでいらっしゃいますこと」
ロングビルは熱っぽい瞳を向ける。
その艶やかな表情を直視できずに、コルベールは顔を赤らめた。
手放しに褒められ、ジュディは照れながら答える。
そうこうしていると、やがて、イアぺトスは戻ってきた。行儀よくジュディの肩にとまる。
「ごくろうさま、イアぺトス」
ジュディが顎の下を撫でてやると、イアぺトスは嬉しそうに目を細める。
「もう直ぐルイズさんが来るって言ってるよ」
「本当ですか? 有り難う御座います。良かったですね、これで早く着きますよ」
「う、うん。まあ、もう少しでたどり着けただろうけど、案内してもらった方が早く着くかな?」
「もう、サイトさんってば!」
「いや、本当だって! もう少しで地図を読み解けたんだってば!」
そんな風にサイトが言い訳をしていると、突如、イアぺトスが一声鳴いた。
イアぺトスと意識を共有しているジュディは、それだけで何が言いたいのかを正確に把握できる。
そして、おもむろに人込みの一角を指し示した。
「ほら、もう来るよ」
「ジュディ! ファミリアは気軽に見せちゃ駄目って言われてるでしょ!」
人込みをかき分けて現れたルイズは、開口一番に説教を始めた。
◆◇◆
暗闇に、一条の光が射し込んだ。
そこは、滅多に人が入り込まぬ場所であった。
分厚い石の壁で固められ、外界とを結ぶ唯一の扉は鋼鉄製の頑丈な造りだ。
閂が外される音が響き、2人の男女が足を踏み入れてくる。
男が先頭に立ち、片手にはランプを携えている。男の後ろに立つ女は、ハンカチを口に当てて埃を吸いこまないようにしている。
ランプに灯る淡い光によって、闇が追い払われた。
「さて、ここから目当てのものを探し出すのは少し骨ですな。
大体の場所が分かっているとはいえ、ロクに整理されていない場所ですから」
「ここが、宝物庫、ですか……」
足を踏み出す度に、床に積もった綿埃が舞い上げられる。
宝物庫には、多種多様な美術品やマジックアイテムが所狭しと置かれており、その全てが薄っすらと埃を被っている。例外はない。
男が後ろを振り向かずに、女に話しかける。
「そういえば、ミス・ロングビルはここに入るのは初めてでしたな」
「ええ。学院長の秘書とはいえ、新参者にはおいそれとは入れない場所ですから……」
「ガラクタも多いですが、貴重品も多いですからなぁ」
宝物庫に入ってきたのは、コルベールとロングビルであった。時間は午前、平日ならば、授業が行われている時間である。
「それにしても、この宝物庫は立派な造りですわね。
これほど頑丈な造りなら、賊は入り込めないでしょうね?」
「そうでしょうな。
なんでも、スクウェアメイジが数人がかりであらゆる魔法に対抗できるように設計したそうで、突破するのは事実上不可能でしょうな」
「なるほど……
よくご存じでいらっしゃいますわ。本当に感心しますわ、ミスタ・コルベールは物知りでいらっしゃいますこと」
ロングビルは熱っぽい瞳を向ける。
その艶やかな表情を直視できずに、コルベールは顔を赤らめた。
手放しに褒められ、ジュディは照れながら答える。
そうこうしていると、やがて、イアぺトスは戻ってきた。行儀よくジュディの肩にとまる。
「ごくろうさま、イアぺトス」
ジュディが顎の下を撫でてやると、イアぺトスは嬉しそうに目を細める。
「もう直ぐルイズさんが来るって言ってるよ」
「本当ですか? 有り難う御座います。良かったですね、これで早く着きますよ」
「う、うん。まあ、もう少しでたどり着けただろうけど、案内してもらった方が早く着くかな?」
「もう、サイトさんってば!」
「いや、本当だって! もう少しで地図を読み解けたんだってば!」
そんな風にサイトが言い訳をしていると、突如、イアぺトスが一声鳴いた。
イアぺトスと意識を共有しているジュディは、それだけで何が言いたいのかを正確に把握できる。
そして、おもむろに人込みの一角を指し示した。
「ほら、もう来るよ」
「ジュディ! ファミリアは気軽に見せちゃ駄目って言われてるでしょ!」
人込みをかき分けて現れたルイズは、開口一番に説教を始めた。
◆◇◆
暗闇に、一条の光が射し込んだ。
そこは、滅多に人が入り込まぬ場所であった。
分厚い石の壁で固められ、外界とを結ぶ唯一の扉は鋼鉄製の頑丈な造りだ。
閂が外される音が響き、2人の男女が足を踏み入れてくる。
男が先頭に立ち、片手にはランプを携えている。男の後ろに立つ女は、ハンカチを口に当てて埃を吸いこまないようにしている。
ランプに灯る淡い光によって、闇が追い払われた。
「さて、ここから目当てのものを探し出すのは少し骨ですな。
大体の場所が分かっているとはいえ、ロクに整理されていない場所ですから」
「ここが、宝物庫、ですか……」
足を踏み出す度に、床に積もった綿埃が舞い上げられる。
宝物庫には、多種多様な美術品やマジックアイテムが所狭しと置かれており、その全てが薄っすらと埃を被っている。例外はない。
男が後ろを振り向かずに、女に話しかける。
「そういえば、ミス・ロングビルはここに入るのは初めてでしたな」
「ええ。学院長の秘書とはいえ、新参者にはおいそれとは入れない場所ですから……」
「ガラクタも多いですが、貴重品も多いですからなぁ」
宝物庫に入ってきたのは、コルベールとロングビルであった。時間は午前、平日ならば、授業が行われている時間である。
「それにしても、この宝物庫は立派な造りですわね。
これほど頑丈な造りなら、賊は入り込めないでしょうね?」
「そうでしょうな。
なんでも、スクウェアメイジが数人がかりであらゆる魔法に対抗できるように設計したそうで、突破するのは事実上不可能でしょうな」
「なるほど……
よくご存じでいらっしゃいますわ。本当に感心しますわ、ミスタ・コルベールは物知りでいらっしゃいますこと」
ロングビルは熱っぽい瞳を向ける。
その艶やかな表情を直視できずに、コルベールは顔を赤らめた。
しえんするお
とおもったらもう終わってた!
乙でした。いつも楽しみにしてます。
とおもったら終わってなかった!
代理投下します。6/9が4つある…だと…!
「い、いやぁ…… 照れますな。
しかし、この宝物庫といえど弱点がないわけではないのですよ?」
「……と、言うと?」
一瞬、ロングビルの目が鋭くなる。それはまるで、獲物を狙う猛禽の目の様だ。
だが、声は穏やかなままに先を促す。
コルベールは顔をそむけたままである。もしも彼が、その瞬間を目撃していたなら、何かに気が付いただろう。
しかし現実は、美人秘書にドギマギする冴えない中年が居るだけである。
「それは…… 物理的な衝撃です。
例えば、巨大なゴーレムが力任せに殴りつけたりすれば、破壊される可能性があります」
「巨大なゴーレムが?」
「ええ、例えばの話です。
要するに、強力な物理的破壊を実現するものならば何でもいいのです。巨大な杭打ち機とか」
「なるほど、興味深い話ですわ。知的な男性というのは、素敵ですわね」
ロングビルが興味深く頷く。
その言葉を受けて、コルベールは気を良くして話を続けていく。
「つまり、壁の基本材質が石なのが問題なのです。
一から作り変えるのは不可能ですから、新たに周りを鉄などの頑丈な金属で覆い、それに硬化や固定化を掛ければ問題は解決するのです。
ですが、学院長はそこまでする必要はないとおっしゃいますし、第一、予算も組めないとかで、今のところ解決は、先送りされているのです。
嗚呼、私に任せていただければ、素晴らしいモノに仕上げられるのに……」
さも残念そうにコルベールは言う。
適当に相槌を打つロングビルは、コルベールの眼が自分を映していない事に気が付いた。
確かに視線はロングビルに向いているのだが、眼は爛々と輝き、何処か遠くを見ているようだ。
「よいですかな? 金属で周りを囲むといっても、分厚い鉄の壁にするわけではないのです。
幾つもの特性の異なる金属板を幾重にも重ねて……」
「あ、あの、ミスタ? お喋りはそこまでにして、早く目的を果たして終わらせませんか?」
ブツブツと続けるコルベールをロングビルが制止する。
その声で我に返ったコルベールは、宝物庫に来た理由を思い出した。
「む? それもそうですな。昨日の実験の分析をしなければなりませんし、ミス・ロングビルもプライベートがありますからな」
「ええ。こんな事は、早くに終わらせましょう」
ロングビルは心底同意する。この学院には、変態しか居ないという事を改めて見せつけられ、辟易している様子だ。
「全くです。それにしてもあのジジイ、休日にこき使うとは何を考えているのでしょう。
用事があるなら昨日の内に言うか、明日にして貰いたいですな」
「学院長にも困ったものですわね……」
そう言いながら2人は、部屋の奥へと足を踏み出す。
2人が宝物庫に来た理由は、会話からも分かる通り、オスマンの要請を受けてのことであった。
オスマンは、あるモノを宝物庫から探してきてほしいと頼んだのである。なのだが、宝物庫はロクに整理されておらず、此処から探し出すのは、骨が折れそうな作業である。
目録は一応あるのだが、それは随分と前に作られたものであるようで、実際に見比べてみると、棚の配置や収められている物の場所が変わっている。
これでは、参考程度にしか役に立たない。事によっては、全く見当違いの場所を探す羽目にもなりかねないだろう。
宝物庫の無秩序な有様に、ロングビルが不安げに呟く。
「それにしても、いったい何年整理されていないのでしょうか? ここは」
「さて? 年に一度、大掃除をするのですが、この有様だと当番の者が手抜きをしているようですな」
後ろを振り向くと、2人分の足跡が点々と残っている。それはまるで、暗闇と埃臭いのを考慮しなければ、新雪を踏み分けた跡の様だ。
一歩足を踏み出す毎に、埃が舞い散る。
コルベールは、浮遊する埃を手で払いながら先に進む。
「まあ、物がある場所は、学院長の私用スペースなので、場所は変わっていないはずです。
ですから、すぐに見つかるでしょう。はい」
「そうだとよいのですが……」
結論から言うと、ロングビルの不安は現実のものとなった。
目的の場所にたどり着き、足を止めると、そこには小山があった。一見、ガラクタにしか見えないような物がうず高く積まれている。
2人は絶句し、呆然となる。
「……ここから探し出すのですか?」
「いやはや…… これは予想外ですな。前見た時よりも3割増しといったところですかな?」
「まったく……
ガラクタばかりを良く集めたものです。これなんて、いったい何に使うのでしょう?」
そう言ってロングビルは、無造作に棚に置かれていた金属製の楕円体を持ち上げた。
それは見かけによらず、ずっしりと重く、南国の果実のような形をしている。
ロングビルは、しばらくそれを眺めていたが、結局、物の正体がつかめずに元の場所に戻す。
オスマンの私用スペースだというそこは、他にも沢山、正体不明のモノが安置されている。
小さな木箱に入っている乾燥した木の実。そろばんと合わさった様な奇妙な杖。オレンジ色の液体で満たされ、開口部には布が詰められているガラス瓶。
等々……
一様として、その価値が図れない物品だらけである。
「まあ、探すモノは分かっているのですから、そう時間はかからないでしょう」
「探すモノは何でしたでしょうか?」
「えーと、このメモによると『禁断の石板』に『聖なる指輪』だそうです」
ロングビルは眉根を寄せる。
「……石板はまだしも、この中から指輪を見つけ出すのは無理なのでは?」
「いえいえ。タグも付いていますし、そういう細々としたものは纏めて置かれているはずです。
……おそらく」
当てにならないその言葉に、ロングビルは嘆息を漏らす。
とりあえずロングビルは、目の前の積み上げられた、ガラクタの山にしか見えないそれに手を掛けた。
すると、その瞬間まで保たれていたバランスが崩れる。
大量の箱が、書物が、ロングビルに降り注ぐ。
「っ! 危ない!」
コルベールがそう叫び終わるのを待たずに、ロングビルはガラクタの波にのみ込まれ、姿がそれに埋もれてしまった。
雪崩がおさまると、コルベールは慌てて駆け寄って、安否を呼び掛けながら、ガラクタの撤去を始める。
しえん
「大丈夫ですか!? ミス・ロングビル!
あれほど崩れやすいと注意したでしょう!」
ガラクタの山をかき分けると、ほどなくしてロングビルは救出された。コルベールに手を引かれて、なんとか起き上がる。
幸い崩れた物はさほど重たくはなかったようで、外傷はない。
外傷はないのだが、ロングビルの格好は酷いものであった。体は埃に塗れ、整えられていた髪は乱れに乱れている。
倒れた拍子に落とした眼鏡をかけ直しながら、怒りを露にする。
「まったく! 何なのですか、これは!」
憤慨するロングビルの姿は、正に怒り心頭といった具合であり、ここには居ない学院長の顔を思い浮かべて、近くにある箱を踏みつける。
『柳眉を逆立てるその姿も素敵ですぞ』
などと考えながら、じっくりとその様子を観察するコルベールであったが、ある事に気が付く。先程までなかったものが、ロングビルの右腕に付いているのだ。
コルベールが気が付いて、ロングビルが気が付かないという事はあり得ない。
程なくして、少し怒りの収まった彼女も違和感に気が付き、いつの間にか重たくなった右腕を見やる。
その右腕には、いつの間にかガントレットがはまっていた。そのガントレットは、石とも金属ともとれぬ材質で出来ており、中央には蒼の宝玉が埋まっている。
「何時の間に……?」
「はて? 先ほどの雪崩で、偶然にはまったのでしょうか?」
2人は不思議な事もあるものだと、首を傾げる。
こんな偶然があるものなのかと訝しみながら、ロングビルはガントレットを外そうとして、手を止めた。
なぜならば、ソレには継ぎ目というモノが存在していなかったからである。いくら目を凝らしても、ソレには留め金も何も付いてはいない。
無理矢理に引っ張ってみても全く動かず、まるで肌に吸い付いているかのようだ。
「は、外れない……?」
ロングビルは愕然とした表情で呟いた。
後半へ続く
----
第8話前編をお送り致しました。
城下街に時計塔とかがあるかどうかは知らないけど、この作中では在るという事にしました。
あと、おマチさんにはこれ以上不幸はないので、ご安心を。
さて、次のお話を書かなきゃな……
代理投下有難う御座いました。
やっぱり、専ブラじゃ6/9が見えない……
はて? NGに引っかかってんのかな?
代理終了。投下乙でした。
いつも投下が終わってから読むから中見ないように数だけ数えたら勘違いしちゃったお…
これは珍しい展開ですな…盗む前にゲットできるとは…
乙ー
しかし俺のつたないアンサガ知識だと、ガントレットという単語はあまりいい意味ではなかったような……
ルイズの汚名挽回の姿を期待して待つぜ
そういやイアペストは道案内能力あったな
フーケは秘書・盗賊家業終了か?ドムリアットにゃ勝てないだろうし
じゃあ名誉は返上しなきゃなw スレからしたら大惨事だなー。
>>195 亀レスだがゼノギアスのキャラのエーテル技、ギアの動力はゾハルから得ていたわけだから
ゾハルのないハルヶギニアではエーテル不可、おそらく何かと派手な超必殺技も不可、ギアも動かない。
あとクレスケンスは全てがナノマシンの群体ではなく、制御系と頭の羽だけ。
エメラダはやりたがらないけどナノマシンでクレスケンス直せるから本来は整備いらないんじゃね?と
ゲーム中でメカニックが言ってたから誤解されがち。
エーテル能力発揮できるのはおそらくフェイとエリィぐらいじゃね?
動くギアはフェイのゼノギアスぐらいじゃね?でも整備が出来ません。燃料いらねぇけど。
エーテルと超必殺が制限されれば割と俺つえーができなそうだからおもしろいかもな。書き手しだいだけど。
ていうかこういう細かいことまで知らないとクロス書き始められないよなw
書き手の皆さんは大変だお。
御立派様のルイズ辺りが汚名挽回したいと言い出したら同情できる気がする
>>316 良い意味でないのは確か
一度着けると外せないし、いつの間にかモンスターと戦うはめになる
>>320 そこでドテスカチュチュポリンですよ。
人語がしゃべれて呪術が使えて巨大化も出来るという。
>ドテスカチュチュポリン
ドーピングしまくったら巨大化時のステータスがエライコトになったっけなぁ。
ところで空気も読まずに発言するが、クロスキャラが召喚以外の原因でハルケギニアに来る作品は避難所に投下したほうが良いのだろうか。
あからさまなエロ・グロじゃなければおkなのではないだろうか?いや、わからないけど・・・。
>>325 避難所の練習用スレに投下して様子を見るというのはどうだろう。
>>327 む、なるほど。
そうしてみよう。 ありがとう。
>>326 ちなみに原作はアダルトゲームだが、SSはエロくないです。
つうか、エロ書けないです。
エロ小説をエロく書ける人、尊敬。
>>328 元ネタが18禁なら避難所のほうが良いかもしれない
>>329 内容が大丈夫ならこっちで問題ないよ
ちなみにボーダーは原作の描写なので、実はかなりきわどいところまでいけるという……
331 :
蒼い使い魔:2008/10/19(日) 22:36:58 ID:ZkVpUPc8
悪魔は忘れたころにやってくる
やっと書けました
忙しくて更新せず申し訳ありません…
分かってる…穴だらけってことくらい…
超駆け足無理矢理ターボモード展開ルーツ飲んでゴー!
22:45に投下します
生家の庭で、シエスタは幼い兄弟たちを抱きしめ、不安げな表情で空を見つめていた。先ほど、ラ・ロシェールの方から爆発音が聞こえてきた。
驚いて庭から空を見上げると、恐るべき光景が広がっていた。空から何隻もの燃え上がる船が落ちてきて、山肌にぶつかり、森の中へと落ちていった。
村が騒然とする中、雲と見紛う巨大な船が下りてきて、草原に鎖のついた錨を下ろし、上空に停泊した。
その上から何匹もの火竜が飛び上がる。
シエスタは不安がる兄弟たちに促して家の中に入る。
中では両親が不安げな表情で窓から様子を伺っていた。
「あれは、アルビオンの艦隊じゃないか? アルビオンとは不可侵条約を結んだってお触れがあったばかりなのに……」
「じゃあ、さっきたくさん落ちてきた船はなんなんだい?」
そう話している間にも、艦から飛び上がった火竜が、村めがけて飛んできた。父は母を抱えて窓ガラスから遠ざかる。
その直後、騎士を乗せた火竜は村の中まで飛んできて、辺りの家々に火を吐きかけた。
ガラスが割れ、室内に飛び散った。村が炎と怒号と悲鳴に彩られていく。平和な村は一瞬にして灼熱の地獄に変わった。
シエスタの父は気を失った母を抱えたまま、震えるシエスタに告げた。
「シエスタ! 先に弟たちを連れて逃げろ!」
父の言葉に従い、シエスタは弟たちを連れ急ぎ森の中へと逃げる、後ろを振り返ると
平和だった村は炎上し、あちこちから悲鳴が聞こえてくる
「なんで…私たちがなにをしたっていうの…?」
シエスタは悲しそうにそう呟くと、両親の無事を祈りながら森の中を駆け抜けた。
広大な草原に、アルビオンの軍隊が集結している。対して、トリステイン軍隊は港町ラ・ロシェールに立てこもっていた。
両者睨み合ったまま時間だけが過ぎていく。いつ決戦の火ぶたが切られるのかおかしくない状態。
また、タルブの村の上空では、空からの攻撃を部隊から守るため、『レキシントン』号から発艦した竜騎士隊が見張りを兼ねて飛び交っている。
実際何回かトリステイン軍の竜騎士隊が攻撃をしかけてきたが、いずれもこちらにそう被害なく返り討ちに合わせた。
決戦を行う前に、トリステイン軍に対し艦砲射撃が実地する事をアルビオンは決めていた。
これで一気に敵の士気を下げようとする。そのため、『レキシントン』号を中心としたアルビオン艦隊はタルブの草原の上空で、砲撃の準備を進めていた。
「………」
シルフィードの背の上で険しい表情でバージルがタルブの村の方角を睨みつける、
学院を飛び立ってあまり時間はたっていなかったが、ここからでも、アルビオン艦隊
『レキシントン号』ならびに多数の戦艦、そこから出撃した竜騎士隊が視認できる。
「なによあれ…あんなにたくさん…タルブは…シエスタは無事なの…?」
その光景を見たルイズが呟く、今までいた場所がほんのわずかな時間で戦場と化し、
蹂躙されているなど想像しにくいことであり、受け入れがたいことである。
そしてタルブの村へと近づくにつれ、アルビオン艦隊によって蹂躙しつくされた村の光景が目に飛び込んできた。
つい一日前に見た、素朴で美しい村はそこにはなかった。ほとんどの家は燃やされ、所々黒い煙りが立ち昇っている。
「嘘よ…そんな…」
その光景はバージルの視界にも飛び込んでくる、シエスタと眺めた草原は
アルビオンの軍隊で埋まっていた。綺麗だったその光景は、いまや醜いものにしか見えない。
一騎の竜騎兵が村のはずれの草原に向かって、炎を吐きかけた。瞬く間に草原は燃え広がる。
その方向にはゼロ戦が奉納されている祠があった、
「あっ! 祠が!」
ルイズが思わず声を上げる、その声に反応したのかバージルが素早く顔をあげ、タバサに指示を出す
「向こうへ飛ばせ」
その言葉にタバサは無言で頷き、シルフィードを急旋回、急ぎ祠のある方向へと飛ばした。
火を放った竜騎兵が上空へ飛びあがり、こちらへ向かってくる一匹の風竜を確認する。
「一騎だと? トリステインの生き残りか?」
竜騎兵はそう言いながら迎撃態勢を整える、
お互いの距離が近くなり、竜騎兵の駆る火竜が炎のブレスを吹きかけようとしたその刹那
風竜は突如身を翻し、背中から一人の男がこちらに向け飛び出してきた。
「バカめ! 気でも違ったか!」
そう叫ぶと、竜騎兵は火竜にブレスを吐かせ、男を焼きつくそうとした。
だが、その巨大な火球は―ゴォッ!っという音とともに男の抜き放った剣により両断、霧散する。
「なっ―」
―ゴシャッ!
竜騎兵が驚愕の声を上げるよりも先に飛び込んできた男が空いた左手で背中の剣を抜き、竜騎兵の頭蓋を叩き割る、
その一撃は頭だけに留まらず鳩尾にまで食いこみ、哀れな竜騎兵は派手に血肉をぶちまけながら地上へと落下していった。
「………」
墜ちて行く竜騎兵の死骸を火竜の上に乗りながら無言で見ていたバージルは
すぐに祠へと視線を送る、だが祠はすでに炎に包まれており、どう見てもゼロ戦は無事ではないだろう。
普段よりも遥かに険しい表情で上空を旋回する竜騎兵達、草原に陣取る兵士、そしてアルビオンの艦隊を睨みつける。
「おい、相棒、まさかアルビオン軍に喧嘩売る気か?」
「奴らは帰還の糸口を灰にした、生かして帰すつもりはない」
デルフの問いに短く、だが怒りに満ちた声で返すと、バージルは天高く跳躍する。
足場になっていた火竜は真っ二つになり竜騎兵と同じく地上へと落下していった。
「敵だ! 討ち取れ!」
小隊長の号令とともに上空を旋回していた竜騎兵達がバージルへと襲いかかる、
火竜がバージルに炎のブレスを吹きかけようとした時、バージルの姿がフッと掻き消える
竜騎兵が慌てて周囲を見渡すといつの間に移動したのか
突然火竜の目の前へ再び姿を現し、火竜の頭へ強烈な踵落としを叩きこむ、
ベオウルフ無しとはいえ強烈な一撃、火竜は脳を激しく揺さぶられぐらりと体勢を崩す
「う…うぉっ!」
それに驚き竜騎兵が火竜にしがみつき振り落とされまいとした、
バージルは踵落としを叩きこんだ衝撃を利用し、その火竜の後へと飛びあがり
―ガシッ! と火竜の尻尾を掴む、そして勢いよく振り回し始めた、
「くっ…! 何をっ!」
竜騎兵が声をあげるが、気にすることもなく火竜をフレイルのように振りまわし、
迎撃に飛んできた竜騎兵に叩きつける
しがみ付いていた竜騎兵の体は叩きつけられた衝撃で千切れ飛んで行く。
バージルは尻尾を掴んだまま放そうとはせず、次々と同じように迫る竜騎兵に火竜を叩きつけ、
衝撃を利用し空中を移動、叩き落としていく。
やがて一通り竜騎兵を殲滅し終えたバージルは身を翻し、数百メイル下の歩兵が犇めく地上へ向け勢いよく地面に火竜を投げつけた。
おお…お待ちしておりましたm(__)m支援
支援
久しぶりw
―ビッダァン! というまるで水の入った革袋を勢いよく地面に叩きつけたような音が響く。
ぐちゃり…と叩きつけられた火竜の体から血だまりが出来上がった
重力に従い地面に向かい落下し始めたとき、飛んできたシルフィードがバージルを受け止める。
「相変わらずデタラメよね…アンタ…」
今まで呆然と見ていたルイズが呆れたように声を出す。
タバサもそれには同意したのか無言でうなずく。
バージルはそれには応じず、レキシントン号を静かに睨みつけた。
「それで、どうしようっていうの?」
「あの艦を落とす」
ルイズのその問いにバージルは当然のように即答する
「ちょ…ちょっと待ってよ! いくらあんたでもアレを落とすのは無理よ! そもそもシルフィードでは近づけないわ!」
「無理」
「きゅいきゅい!」
ルイズとタバサはブンブンと首を横に振りシルフィードまで抗議の声を上げる、
確かにシルフィードで近づけば、たちまち砲撃の雨に晒され撃墜されてしまうだろう。
だがそんなことは知らんとばかりにバージルは続ける。
「無理に近づけとは言わん、ただ、アレの真上へ飛べばいい、真上なら砲撃をするわけにはいかんだろう。
そこから俺が直接降下して中の人間を殲滅する、それで問題あるまい」
「あ…あんたはそれでいいんだろうけど私達はどうするのよ!?」
「知らん、着いてきたのはお前だ、自分の身くらい自分で守れ」
「うっ…それは…そうだけど…って! あんたは私の使い魔でしょうが!
主人をほったらかすってどういうつもりよ! ちゃんと守りなさいよ!」
喚き散らすルイズを見て小さく鼻を鳴らすとバージルはタバサに指示を出す。
「タバサ、俺が降下した後はお前の判断に任せる。行け」
タバサは無言で頷くとシルフィードの高度を上げつつ『レキシントン』号の上空へ向けシルフィードを飛ばした。
途中こちらへ向かってくる竜騎兵達に向かい、バージルは大量の幻影剣を飛ばし容赦なく叩き落としていく
タバサもそれに倣いウィンディ・アイシクルを放ち援護を行っている
幻影剣に貫かれた竜騎兵が火竜もろとも息絶え、地上へと落下していく。
バージルやタバサはそんな彼らに一切目をかけることなく、次の敵の標的を捕捉して距離を縮める。
もはやここまでくるとルイズの必要性が全く感じられなってきた。
(なっ…なによ! なによ! わ、私にだって出来る事はあるんだから!)
そう考え模索するが、浮かばない。これではバージルとタバサが戦っているようなものだ。
何か、何かないかと、ルイズは手を服にあてる。
すると、マントの裏には始祖の祈祷書が入ってあった。そしてアンリエッタ王女から貰った大切な水のルビー。
(こ…この二つでどうするのよ!?)
何も書かれていない本とただの指輪に、ルイズは項垂れる。
しかし、だからといって現実が変わるわけではない。残る手段としては、神に祈る事ぐらいである。
雰囲気を出す為、水のルビーを指に嵌めて、両手を胸の前で強く握る。
「姫様…、バージルと私達を…お守りください」
呟くと、もう一つこの場にもってきた本を手に持ちそっとなでた。
思えば、詔を考えるために渡されたが、結局思いつかなかったな…。
こんな状況でも、いつもと変わらない事を思ってしまう自分が不思議だ。
それでも一応、本物かはわからないが一応始祖にまつわる大切なものなのだから、せめて始祖にも祈っておこう、
そう考え、何となく開いた。特に理由もなく、本当になんとなく。
だから、その瞬間、水のルビーと始祖の祈祷書が光を放った時、心底驚いた。
し・・・しえんするんだな・・・・・・
ルイズは恐る恐る光の中の文字を読み始める、
それは古代のルーン文字で書かれていた、真面目に授業を受けていたこともあり
ルイズはその古代語を読むことができた。
ブリミル・ル・ルミル・ユル・ヴィリ・ヴェー・ヴァルトリ
以下に、我が扱いし『虚無』の呪文を記す。
初歩の初歩の初歩。『エクスプロージョン(爆発)』
「ね…ねぇ、バージル?」
「何だ」
始祖の祈祷書を読んでいたルイズが顔を上げバージルにおずおずと声をかける
「わ…私…選ばれちゃったみたい…」
「………?」
その一言に怪訝な表情でバージルとタバサが振り向く
「そ…その…『始祖の祈祷書』が…えっと…光ってて…読めるんだけど…」
「…何のことだ?」
「いいから! とにかくあの戦艦に近づけて、あんたが直接突入したほうが早いかもしれないけど
あんたがいないと私達が危ないわ、だから私がやる、やるしかないわよね、やってみましょう」
ルイズのその独り言のような言葉にバージルが『何を言ってるんだ? コイツは』いった表情でタバサを見やる
タバサも理解できないのだろう、わからない、と言いたげに肩をすくめた。
「だから! さっさと近づけなさい! あんたは使い魔! 詠唱中のご主人さまを守るのがあんたの役目でしょうが!」
「………」
「こうなったら聞かない、やるだけやらせてみる」
沈黙するバージルに変わりタバサがあきらめたように呟き、シルフィードを駆った。
その時、雲間から一騎の風竜が飛び出して来た事に気がついたものはいなかった。
ワルドは風竜の上で、にやりと笑う。
彼はこの時を、『レキシントン』号の上空の雲に隠れ、ずっと待っていたのであった。
味方の竜騎士隊を生身で次々墜落させていった謎の騎士
その報告はワルドの耳にも届いていた
そんな化け物じみた事が出来る者はただ一人、ガンダールヴ、いやスパーダの血族しかいない。
奴の目的は、おそらく旗艦『レキシントン』への直接攻撃、
ゆえにここで待っていれば奴は必ずくる、そう睨んで待ち伏せしていたのだった。
バージルが振り返り険しい表情で後方を睨みつける、
見ると背後から猛スピードで風竜が飛んでくるのが見える、
そしてそれに乗っている人物、ワルドを視認すると、バージルが口を開く
「邪魔が入ったか」
「どうしたの?」
「詠唱を続けろ、蠅を叩き落としてくる、俺が戻るまで戦艦には近づくな」
不安そうにバージルを見るルイズとタバサをよそにそれだけ言い残すと
バージルが突如シルフィードから身を投げる、そして後ろから迫り来る風竜に向けダイブ、そのままデルフを引き抜き
風竜を駆るワルドを一刀のもとに両断するべく頭蓋めがけ振り下ろす、
だがワルドの体はバチリッ!という音とともに稲妻と化し掻き消えた。
「―ッ!?」
風竜の上に着地したバージルが驚いたように目を見開く、
立ち上がり周囲を見渡すと、風竜の周囲を稲妻が弾け飛ぶ
すると突然稲妻がワルドの姿を形作る。
ワルドは魔力で雷の剣を生成し背後からバージルに斬りかかる、
それをバージルは振り返ることもなくデルフでそれを受け止め切り返す
バージルは風竜から飛び降りると、稲妻となったワルドもそれを追う、
二人の壮絶な空中戦、地上へと落下していくバージルに次々と稲妻が襲いかかる
それらを紙一重でバージルが切り返し受け流す
やがて地上へと着地したバージルの前に稲妻が人の形を作りワルドが姿を現した。
「また会ったなガンダールヴ! いや…スパーダの血族!」
地上で二人が対峙する、
「…また貴様か…大体予想はつくが一応聞いてやる、なぜ生きている?」
「ムンドゥス様に新しく命をもらったのさ! 俺は悪魔として生まれ変わった!」
その言葉を聞き、バージルは不快そうに眉間にしわを寄せる
「やはりか…、貴様の様な者を蘇生させるなど…よほど奴は暇なようだな」
「魔帝の御為! ここで貴様を討たせてもらう!」
その言葉とともにワルドは雷の剣を作り出す。
「貴様の『二つ名』…たしか『閃光』だったな」
それをみたバージルがふと思い出したようにワルドに話しかける
「そうだ、悪魔の力を得てついに俺は文字通り『閃光』の力を得た!」
雷の剣を構えながら高らかに笑うワルドを見てバージルがフッと軽く鼻で笑う、
「そうか、ならば」
バージルがそう言うと閻魔刀から手を放しゆっくりとファイティングポーズをとる、
するとバージルの両手両足が光り出し、『閃光装具ベオウルフ』を装着した。
「本物の『閃光』がどういうものか、貴様にたっぷりと味わわせてやる」
「面白い…やってみるがいい!」
ワルドが叫び、自身の体を稲妻に変え再びバージルの周囲を飛びまわる
ガァン!という音とともに雷の剣とベオウルフが激突する。
お互いの激しい攻撃の応酬が続く。
速度はほぼ互角、最初は均衡を保っていたが次第に力で勝るバージルが押していく。
「くっ…」
不利になったワルドは一度距離をとり遍在一体をバージルの背後に作り出す。
生み出された遍在はバージルへ襲いかかった。
「死ねッ!」
バージルの後頭部目がけ鋭い突きが繰り出される。
だがバージルはそれをひょいと避けると、その腕を掴み
突っ込んできた勢いを利用し遍在を一度地面に叩きつけると、そのまま本体のワルドに投げつけた。
「なっ!」
それに驚いたワルドはとっさに回避する。
そして慌ててバージルに視線を戻すと、蒼い影が目の前に躍り出る
エアトリックで一瞬で間合いを詰められていたことに気がついた時には既に遅く
バージルの上段蹴りがワルドの下顎に吸い込まれるように叩き込まれる
悪魔の身体とはいえ、構造は人体とほぼ同じ、下顎に攻撃を受けたことにより激しく脳を揺さぶられ
意識を刈り取られたワルドがカクンと膝をつく、だがバージルがそれを許すはずもなく…
まるでゼロ戦を失った鬱憤を晴らすかのように陰鬱に口元をゆがませると…
跪いたワルドの胸倉を掴むと鼻っ柱を数回殴りつけ無理やり意識を覚醒させる。
「う…ぐッ…」
ワルドがうめき声をあげた瞬間、バージルは空中高くワルドの体を放り投げ、
それを追うように空中に飛び上がったバージルがガシリとワルドの頭部を掴む。
そしてそのまま空中でぐるんと豪快に振り回すと、そのまま地上へワルドを顔面から叩きつけた。
「ぐぇっ!」
凄まじい勢いで地面に叩きつけられたワルドは衝撃のあまり再び宙へと跳ね上がる、
その浮いたワルドの胴に地面への落下を許さないとばかりにバージルの連撃が叩き込まれた。
前回、ラ・ロシェールで食らったボディブローとは比べ物にならない威力の拳がワルドの胴体へ次々突き刺さって行く
人間の身体なら一撃で身体が千切れ飛んでいるだろう、
だがワルドの体は悪魔として強化を受けており、その程度では死に至ることはなかった。
今回は、その身体強化が不幸にも苦痛を長引かせる結果となる…
一撃叩き込まれるごとに、骨が砕け内臓が破裂する、大量の血を吐き出し、
息も絶え絶えになりながら跪く様にバージルへしがみつく、
「ぐ…ぐぉっ…」
苦悶の表情を浮かべ、再び頭を掴まれ引きはがされる。
「Show down...(―終わりだ…)」
バージルはニヤリとしながらそう呟くと頭を掴んでいた左手をパッと放すと、
崩れ落ちるワルドの腹部目がけ渾身のアッパーを叩きこむ。
凄まじい衝撃とともにワルドの体は宙へと跳ね上げられ…
やがて重力に従い地面に叩きつけられた。
「Rest in peace.(―眠れ)」
呻くワルドを尻目にバージルは背を向けるとすっと腕を横に出しパチンと指を弾く
すると倒れ伏すワルドの上空から大量の幻影剣が降り注いだ
「がぁぁぁぁぁああああ!!!!!」
ワルドが苦痛に悲鳴を上げる、地面に縫い付けていた幻影剣が砕け散る。
「コ…殺ス…殺ス…スパーダ…血族…」
幻影剣の雨に体中を貫かれ地面に這いつくばりながらもジリジリとバージルへと近づいて行く。
もはやワルドの体は原形を留めておらず崩壊を始めていた。
「俺ハ…! 俺ハ!! 悪魔ノ…チカラヲ…!!」
ワルドから紅い電流が迸り、体を包み込む、
苦悶の悲鳴を上げながらのたうちまわり、ワルドの体は爆発し砕け散った。
「品のないセリフだ」
自爆したワルドを後ろ目でちらりと見て呆れるように吐き捨てたバージルは周囲を見回す、
あたりには既に動くものはなく、黒焦げになりブスブスと音を立て煙を上げるアルビオン軍の兵士達の死体が転がっている。
上空を見上げると、シルフィードが急降下し、バージルへ近づいてきた、
ワルドとの戦いに決着がついたのを見て迎えに来たのだろう。
ワルドの襲撃により地上まで降りてきてしまったため、もう一度『レキシントン』号の上空まで飛ばなくてはならない、
バージルは地面を強く蹴ると地面スレスレに飛んできたシルフィードに飛び乗った。
「まだ終わらんのか?」
シルフィードに飛び乗ったバージルが『始祖の祈祷書』を開き熱心に見入っているルイズに呆れたように声をかける。
ルイズはその声が届いていないのか険しい表情で『始祖の祈祷書』を睨みつけ詠唱していた
そんなバージルに短くタバサが話しかける。
「詠唱中、邪魔しちゃダメ」
「……」
言われてみれば確かにルイズから強い魔力を感じる
ルイズが詠唱を進めれば進めるほどその力が増していく。
「…わかった、このまま進め」
それを感じ取ったバージルは短く指示を出し、砲撃を続ける『レキシントン』号を睨みつけた
長い詠唱の後、呪文が完成した、その瞬間、ルイズは己の呪文の威力を理解した。
巻き込む、すべての人を、一瞬だけ悩む。殺すべきか否か。
しかし、答えは決まっていた。自分の視界一面に広がっている戦艦『レキシントン』号。
ルイズはシルフィードの背から立ち上がり、虚無の魔法『エクスプロージョン』を放とうとする。
だが、放とうとした途端、軽い眩暈を感じ、思わず座り込んでしまいそうになった。
その時、杖を持ったルイズの右手を包み込むようにバージルが左手で掴み、
ルイズの身体を引き立たせ背中合わせになり再び『レキシントン号』に狙いを定める。
「世話が焼けるな」
バージルがため息を付きながら短く呟く、するとルイズがいたずらっぽい笑みを浮かべる
「あんた達の"決めゼリフ"知ってるわよ」
その言葉に少々驚いたような表情を浮かべるも、バージルはニヤリと口元を緩める。
ルイズとバージルが『レキシントン』号目がけ杖を振り下ろす。
「「JACK POT!」」
同時、光の球があらわれた。太陽のような眩しさをもつ球は、膨れ上がる。
そして……、包んだ。
上空にある、全ての艦隊を包み込む。
それだけでは終わらない。さらに膨れ上がって、見るもの全ての視界を覆い尽くした。
誰もが目を焼いてしまうと思い、つむってしまう程光り輝くそれ。
そして……、光が晴れた後、上空の艦隊全てが炎によって包まれていた。
「…………………」
タバサが唖然とした表情でそれを見ている。
目の前に布陣していたアルビオンの艦隊が綺麗さっぱりなくなっていたのだ。
「次はもっとマシな相手に使うんだな」
それに対しバージルは特に驚くような様子は見せずにそれだけ言うと、ルイズの右手をパっと手放す
するとルイズは力尽きたのか、崩れるようにバージルに背中を預ける。
それをバージルは今しがた離したばかりの左手で襟首を掴み倒れないように再び引き起こした。
ルイズは全ての精神力を出しきり、疲れ切った表情を浮かべている。
「安全な所へ降りろ」
それをみたバージルは茫然としているタバサに安全な場所へ降下するように指示を出す。
その一言に我に返ったのかタバサは頷くとシルフィードの高度を下げて行った。
これにて今回分の投下は終わりです、遅くなって申し訳ない
ご支援ありがとうございました
一応ワルドには1のプラズマの能力をプラスした感じになっていただきました。
ぶっちゃけると生き返らせるんじゃなかった、だってめんどく(ダァ-イ
だから原作同様早々にご退場、ブリッツは兎も角プラズマ倒すのに時間はあまりかかりません
ちなみに戦闘描写は4のネロのバスターのオマージュです、今回はかるーくワイルド兄貴に。
重力無視っぷり&空中戦はDMCの基本なのでお察しください、ネロも空中でブン回してたし
いやね、ここまで書くの本当苦労した…時間が開くとキツイです…
筆が遅くなるけど、がんばります
これはいいフルボッコw GJ
次回にwktk
乙
ワルドw
折角生き返ったのにたいした活躍もなくまた退場かよww
哀れすぎるぜ…
所詮再生怪人か……乙でした。
そういや今日ゲームやってたら「ラロシェル(アルファベット表記だとラ・ロシェールとも読める)」
って地名があって思わずふいた。フランス西海岸なのな、あれ。
乙でございます。
ところで、「Show down」は「Showdown」の間違いではないでしょうか。
いや、英語不得手だから、これでいいのかもですが。
ポーカーのショウダウンは「Show down」でなく「Showdown」ですし。
兄貴が帰ってきてる。
GJでした。
>>346 再生怪人や怪獣をバカにするなよ。
再生改造ベムスターはタロウをガチンコで倒してるぞ。
次なる予約をさせていただきたいです。これで最終回になります。
ヒビの入った窓ガラスあり、外れかけた窓枠あり、煤けた絨毯あり。周辺に漂うは新鮮な
生ゴミの悪臭。美の体現と謳われたプチ・トロワが見事な廃墟に変身していた。元が美しか
っただけに、今のプチ・トロワは化け物小屋もかくやの無惨な雰囲気を醸し出している。三
度の飯より度胸試しが好きな向こう見ずの若者でもなければ、ここに踏み込もうとは思うまい。
「この辺で壷が割れてるってのもいいね」
廊下の調度品を叩き落して砕き割る。
「あとはそこに蜘蛛の巣を張っときな」
「蜘蛛の大きさはどうする?」
「親指くらいの胴体があればいい。シャルロットがきたらにっこり笑ってやれ」
「オッケー」
今日のプチ・トロワは慌しくも小うるさい。ただしイザベラ以外の人間は締め出され、小
さな生き物達でごった返している。衣装や小道具を運ぶもの、舞台作りのために金槌を振る
うもの、発声練習をするものから台本を読み直すものまで皆がバラバラに動いていた。
そんな中を通り抜けながらイザベラは指示を与えていく。
「不測の事態が起きなきゃいいけど。大丈夫かなあ」
「全部が全部台本通りにやる必要はないからね。空気読んでアドリブ入れたっていいんだ。
意味ありげな恐ろしさを含ませていて、やたらと考えさせるようなセリフならそれでいい」
「俺、騎士の真似なんてできるかな……」
「騎士じゃないやつが騎士の真似してるなんて、それだけで相手が不信がる。そうなりゃし
めたもんさ」
「このシャンデリア、落ちたりしないだろうな」
「ここの建設にいくらかけたと思ってるんだい。お前の一匹や二匹で落ちるほどやわなシャ
ンデリアじゃない。せいぜい上で暴れてやりな」
「あのさ……」
絨毯の表面におうとつが浮かび、よじれ、変形し、ぼんやりと使い魔の顔を形成した。
「これ言うと怒られそうだけど、でも今言わなきゃもっと怒られそうだから言うけど」
「なんだい回りくどい言い方して」
「俺の上をシャルロットが通るんだよな?」
「そう、お前は他の連中のフォローをするんだ。言葉に詰まったりとちったりするやつがい
たらシャルロットの足でも引っかけてやれ」
「それが問題なんだよ……」
その表情は不安でゆがみ、ため息は海溝の底よりも深く、心なしか絨毯全体が縮んでいる。
ゆがんだ表情に引きずられたか、総責任者であるイザベラも眉をひそめた。
「何が問題だ。修正がきくことなんだろうね?」
「それはとてもデリケートな問題というか……シャルロットって女の子なんだよな?」
「一応は」
「かわいいって聞いたけど」
「わたしほどじゃない」
「スカートをはいてるんだって?」
「あんまり意識したことはなかったけど大抵そうかな」
深く深く、まだ深く、海溝の底を抜けて三十リーグは掘り進めたほどのため息をつき、
「イザベラほどじゃないにしてもかわいい女の子がスカートはいて俺の上を通ると」
「それの何が問題だ」
「大問題だ! そんなことされてフォローすべき事態が起きるまで動くなとか……どんな生
殺しだよ!? ああ、いざ本番になったら絶対目玉作って上を見るね! だって見たいもん!」
今度はイザベラがため息をつく番だった。他の使い魔は絨毯の言い分に深く首肯し、
「もっともだ。全力でもっともだ」
「すんげー説得力だな。俺だってそう思うよ」
「スカートはいてる女の子が上通ったら見るのが礼儀ってもんだよな」
「いや、踏まれるだけでもけっこうなご褒美だと思うんだが」
「ていうか俺が絨毯役やるべきじゃないか?」
「いやいや、ここは俺が」
などと好きなことを言っている。
「お前らいつまでくっちゃべってる! さっさと持ち場に戻れ!」
プチ・トロワの青い稲光と恐れられた、ぐずった赤ん坊も息をのむ恐怖の大喝、使い魔達
は蜘蛛の子云々で例えられる態で散っていく。あとには一枚の絨毯のみが残された。
イザベラは絨毯の胸倉(?)を掴み、ドスのきいた声色を一言一言搾り出す。
「小汚いスカートの中身を見たいがために任務を放棄する?」
「い、いや、スカートの中身ってのは神秘のヴェールに彩られたファンタジー的な……」
「黙れ」
「う……はい」
衝動を押さえ切れなかった絨毯が計画外の行動を起こし、本部で監視していたイザベラが
ぶち切れ、それをなだめるため本部詰めの使い魔達が右往左往し大混乱になる。
こんな未来図を思い描き、即座に振り払った。予定外、予想外、計画外、想定外、外がつ
くものはなるだけ排除する。いっそ絨毯の配役を変えるか。しかし誰を絨毯役にしても人格
というか個性は変わらない。ならば絨毯を廃してしまうか。だがいざという時フォローでき
るものを用意しておきたい。
「お前には期待してる……間違ってもわたしの信頼を裏切ったりしないように。仕事中はず
っと監視しているから気ぃ抜いたりするんじゃないよ」
「ははは……もちろん頑張るよ……」
脅しをかけるだけでは不十分かもしれない。いざという時のため、さらなるフォロー役と
して、案内の騎士あたりに含ませておくべきだろう。絨毯の問題についてはそれで充分だと
考え、イザベラは先を急いだ。足を止めている時間はない。
各所に指示を出し、廊下を進み、おかしい箇所はないか最終確認をしながら本部の前を通
り、居室に出向く。今回の作戦本部は物置であり、居室は舞台の一部となる。不自由でもそ
んなことで文句を言う軟弱者はイザベラ含め誰もいなかった。
「お前ら、セリフはちゃんと覚えただろうね?」
「もちろん。そう数は多くないからこのババでも大丈夫さぁ」
「がんばるよ!」
「ふひひ……オレっちに不可能はねえってな」
「あたしらにかかっちゃさすがのシャルロットも形無しさ」
「ほっほっほっほ。楽しみじゃのう」
老婆、少女、詐欺師に踊り子、老魔法使い。皆すでに役割に入っていた。付け焼刃の演技は
たかが知れている。かろうじて棒読みではないというレベルで、玄人と比べなくとも立派な大
根だ。だがイザベラはあえてそこを活かそうと考えた。「人間ではない何者かが人間を演じて
いる」という状況は考えるだに恐ろしい。
「我ら皆殿下に剣を捧げた身。この魂尽き果てるまで忠誠を誓いましょうぞ」
知らない人間しかいないよりも、一人だけ知人が混ざっている方が不気味に思える。しか
もその知人がまるで別人のような言動をとったらなおのことだ。そんな理由から、騎士団長
本人のあずかり知らぬところでカステルモールを混ぜてみた。
「俺の出番まだこないの?」
白布の下にはイザベラの首が待機している。自分の首を作るという体験は気色のいいもの
ではなかったが、気色悪い思いをするのはシャルロットも同じことだと我慢し、本番のため
毎日少しずつ溜め、保存してきた自分の血液を振りまいた。
相手は荒事の専門家、牛馬や豚の血でお茶を濁し、ドッキリを見抜かれては全てが水の泡
だ。多少の痛みや面倒や貧血はぐっとこらえ、あらゆる面をあらゆる意味でを徹底させる。
「なに、もうちょっと待ってな。すぐに出番がくる」
冠を脱ぎ、部屋の中央に突き立てられている藁人形の頭に被せた。これで誰がどう見ても
イザベラを模した案山子の出来上がり。
開き直りにも似た……むしろ開き直りそのものの決意とともに作戦を練り直した。今回の
コンセプトは「かつてのイザベラならやりそうにないこと」だ。イザベラが何をしたいかは
極力考えず、シャルロットを引っかけることのみに全てを傾注した。荒れ果てたプチ・トロ
ワ、漂う生ゴミの匂い、みっともない騎士もどき、そして仕上げはこの案山子。暗君、道化
であることを自ら認めるような真似を、プライドに凝り固まったイザベラがやるだろうか。
絶対にしない。
シャルロットにそう思わせればイザベラの勝ちだ。まず勝つこと。形は問わず、とにかく
勝つこと。勝たなければ何も始まらない。卑屈でなく、傲慢でなく、純粋に勝利を求める。
「よし、こっちも準備できたぜ。この二つがなきゃ始まらないからな」
「ああ……それか。それは別にどうでもいいような……」
「違う! これが! これこそが大事なんだよ! ドッキリといえばヘルメットにプラカー
ド! これが無いドッキリはぜぇーったいに認めん!」
「これが大事ねぇ……」
鉄製のつるりとした巨大な兜。使い魔曰くヘルメットという作業用の防具だそうだ。
そして同じく巨大な棒杭にくくりつけられた板切れ。こちらはプラカードと呼ばれ、宣伝
や入場行進で使われるらしい。
どちらもドッキリとは関係ないように思えるが、伝統的な意味合いがあるという。
「ヘルメットをかぶり、プラカードを見せつけて、これでようやくドッキリが完成するんだよ」
「そんなもんかね……ところでそのプラカード……だっけか。この模様、呪いか何かか? ど
ういう意味があるんだい? 妙におどろおどろしいが……呪詛の文句とか?」
「どう見ても『イザベラちゃんのマル秘ドッキリ計画大成功! 笑って許してシャルロット
ちゃん』だろ。なんだよイザベラ、ニホン語読めないなんて言わないだろうな」
「……」
みっともいい内容とは言いがたいが、使い魔の言語をシャルロットが解読できるとは思え
ない。本人も妙なこだわりがあるようだし、放っておいた方がよさそうだ。
「……それはともかく。ドッキリで怯えきったシャルロットが逃げ出すってこともあるだろ
う。そんなことになれば……当然なるだろうけど、そうなればプラカード見せることなんて
できないじゃないか」
「ふん、そんなアクシデントにめげる俺じゃないね。追いかけてってドッキリだと伝えるよ」
「あいつの使い魔風竜だぞ。追いつけないだろ」
「竜だった俺と一緒にすんなよ。今の大きさならマッハでビュンと跳んでいくさ。流星だって
食っちまうトップスピードを教えてやるぜ」
「ふうん。ま、追いかけるんならせいぜい笑顔でいくことだね。トドメ刺しに跳んできたな
んて思われたら一層逃げられるから」
「ヘルメットかぶってプラカード持ったやつが何をトドメ刺すってんだよ。ありえねーだろ」
「ありえないことがありえるから困るんじゃないか。よしお前ら、最後のリハーサルだ!
本番同様気合入れてやるんだよ!」
「おおおおおおおおおおっ!」
使い魔達があげたときの声はプチ・トロワだけでなく、グラン・トロワ、リュティス全体
を大きく鳴動させた。プチ・トロワから追い出され、グラン・トロワの洗濯場で山と積まれ
た洗濯物の相手をしていた召使いの少女は、プチ・トロワの方に目をやり、納得した様子で
何度も頷いた。
「やっぱり仲良しよね、殿下と使い魔さん」
というわけでここから第一話に戻ります。
舞台裏を読んでから第一話に戻るとRPGの二周目にも似た味わいがあったりなかったりします。
もしお時間に余裕がおありでしたらお試しください。
おつき合いいただきました皆様、どうもありがとうございました。
破壊の杖がバイブだったら
「いったいどうやって使うのかしら?」
「この突起の横に文字が書いてある」
「うわ、動いてる」
ぶぶぶぶぶぶっぶ
「しかしこれは一体?」
その頃オスマン
「うーん・・・他にも用途不明のアイテムがあるんじゃが・・・いったい何に使うんじゃろうな」
「この先端が振動する仕組からするに、肩に当ててこりをほぐすのでは?」
「覚悟しろ!フーケ!」
「うわぁ、ルイズ、なんでバイブ持ってるんだよ!」
サイトがあわあわ
「やはりこれはマジックアイテムなのね!よーし!”バイブ”」
しかし爆発が起こるだけで何も変化は見られない
その頃オスマン
「しかしこガーゴイルもどきどう見ても人間にしか見えないですな」
「うむ、胸といい尻といいまるで生きているようじゃわい」
「これはやはり戦闘用ゴーレムなのでしょうか?」
オリエンタルおわり
>>355 乙!
一話読み返してワロタw
しっかりスカートの中覗いてやがるw
>>355 乙かれー
最初タイトルと内容でタバサ虐めかよと思ったけど、裏腹にほのぼのな内容で安心したwww
でも、できればエピローグが欲しい
頭の弱い俺にはドッキリがどんな結末になったか妄想できない('A`)
投下乙
無惨の宴GJ!
あれだ、気さくな王女級のイザベラ超大作を久しぶりに見た。
過去スレのpart170以降が保管庫にないんだがどこにいったんだ?
アクセス規制がorz
これは投稿するなということか!
平賀才人を別キャラが呼び出すのはダメ?
別作品のキャラが出てこないのは、やっぱスレ違いかな。
それはifスレの管轄だな
ルイズが誰かを、べつのキャラがサイトを召喚なら問題ないと思うが、
べつのキャラがサイトを召喚ってだけだとifスレ向きだと思う
12話が完成しました〜。
11話の代理投下、ありがとうございます。
予約が無ければ、3:20ごろに投下したいと思います。
ギーシュとの決闘から2日。
学院は今までと変わらず、生徒達で賑わっていた。
もちろん、変わった所もあった。
ヴェストリの広場には、あの決闘でのデュエルの後に土を埋めただけの状態なので、
円形に草の生えていない場所ができている。
生徒達も、見たことも無いドラゴンを呼び出す海馬のことを認識し、軽軽しくルイズを馬鹿にはできなくなった。
もっとも、その態度は海馬の力を恐れてのものであり、ルイズ本人にしてみれば、あまり好意的なものではなかった。
決闘をした当の本人であるギーシュはと言えば、表面は相変わらずであるが、
『なんとなくだけど…少し男らしくなった気がする。』
とは、隣の席であり、学院内でギーシュの彼氏と認識されているモンモランシーの談である。
そしてキュルケはと言えば、あの決闘より海馬に好意を抱いている。
見たことも無いドラゴンを操る見知らぬ土地から来た平民の使い魔。
過去の彼女の中に無かったカテゴリーである海馬瀬人という人間に、彼女がこいの炎を燃え上がらせると言うのもまた、
当然と言えば当然の流れだったのであろう。
さて、物語は次なるフェイズへと進む。
決闘より2日後の早朝。
ルイズと海馬はあの決闘の日より2度目の朝をコルベールの私室で迎える事となった。
あの決闘の日よりコルベールの手元に預けられた『召喚銃』こと、『デュエルディスク』と『デッキ』
しかし、デュエルディスクの使い方はもちろん、カードに書かれているテキストはコルベールに読めるものではなく、
また、デュエルモンスターズのルールそのものがわからない。
そのために海馬はコルベールにそのテキストの意味を口頭で教える代わりに、ハルキゲニアの文字をコルベールに教わる事にした。
しかし、それならば海馬とコルベールの二人でことが足りる。
なぜここにルイズがいるのか。
ルイズ曰く
『使い魔の力を正確に知っておく必要がある。』
とのことらしい。
が、しかし。
コルベールと海馬の永遠とも思えるデュエル講義には軽軽しく口をはさめるものではなかった。
「このカードはヴォルカニック・デビル。このデッキの切り札となるカードだな。」
海馬がデッキから引き抜いたカードは、黒い体に赤い炎の煙をまとわせているデザインのカードだった。
「ヴォルカニック・デビル…レベル8 炎属性炎族・効果
…この単語はさっきあったブレイズ・キャノン・トライデントか。
墓地に送る…そうか!このカードはブレイズキャノントライデントを、墓地に送って特殊召喚するんだね。
…攻撃力は3000、守備力が1800。なるほど、確かにこれは強力なカードのようだ。」
「ふむ、なかなか飲み込みが早いな。半日でそこまで読めるとは、言語学者になった方がいいんじゃないか?」
「仮にも教師だからね。それに、このテキストは結構言葉のパターンがあるから、別のカードで覚えた訳なら、応用は楽だね。
…通常召喚ができない、ということは召喚自体が難しいね。
しかし、敵モンスターはヴォルカニック・デビルを強制的に攻撃しなければいけない上に、
モンスターを破壊したら相手の場を一掃した上に相手プレイヤーに直接ダメージとは…」
コルベールはカードとしての強さを認識すると、そのカードを現実に召喚したときの恐ろしさを感じ、顔を曇らせた。
だが、それを知らずにルイズが口をはさんだ。
「攻撃力3000ってことは、ブルーアイズと同じ攻撃力なのね。
それで、能力を持っているなんて、ブルーアイズより強いじゃない。」
ピシッ…と、世界が凍る音がした。
「ルイズ…今なんと言った?」
凍った世界で、ルイズは気づいた。
しまった。まずい事を言ってしまった、と。
「えー…えっと。コ、コルベール先生はどう思います?」
どうにかコルベールに助けを求めようとする。
「ミス・ヴァリエール。それは違うよ。確かに、ヴォルカニックデビルとブルーアイズは同じ攻撃力だけど、
ヴォルカニックデビルには、召喚のためのルールがある。
そのため、ブルーアイズのように色々なパターンを駆使して召喚する事ができないんだ。」
「ルイズ。カードにはそれぞれ役割がある。そして、40枚のカードは他のカードを補い合い、勝利と言う未来へと進む。
1枚だけを見てカードの優劣など決まらん。考え無しに軽軽しく口をはさむな。」
その物言いにむっとしたルイズは、つい語気を強めて反論してしまう。
「なによ!強い能力を持つカードが勝つに決まってるじゃない。」
ふぅ…と、ため息をつく海馬。
「では、聞こう。どんなときでも場に攻撃力3000のモンスターがいるのと、
特定のカードが揃ったときのみ場に攻撃力3000のモンスターが出てくるもの。
どちらが相手をしづらい?」
「そっ…それは…」
言葉に詰まるルイズに、コルベールが言う。
「でも、ブレイズキャノンを使っていけば、相手に強力なモンスターが多数出てきても、破壊していけるね。
でもそれは、カードの運び方に影響される。
デュエルと言うのは1枚のカードを出し合うだけじゃない。
カード同士を助け合わせるのが重要なんだ。
いや、これはデュエルだけでなく、どんな事でもそうさ。」
そうこうしている内に、また海馬とコルベールは机に向き直ってしまった。
そして結局この話が終わったのは早朝日が登った頃であり、ルイズは睡眠不足により、授業中に爆睡していた。
そして同じような内容がもう1日続き、今朝にいたるのであった。
ルイズは、風呂に入りに行くと言って早めにコルベールの部屋を出た。
それはタブーでーす。支援
結局この2日間で、海馬はコルベールにデッキの内容の訳、デュエルモンスターズの対戦ルール、
現在わかっているデュエルディスクでの実体化のルールを伝え終えていた。
「しかし、実体化のほうはいまだ不確定なルールが多すぎる。
これに関しては、実践を積み重ねていくしかないな。」
「海馬君、それは…」
コルベールは顔を曇らせる。
実践、いや、この場合は実戦と言い換えられるだろう。
つまり、モンスターで何かと闘うと言う事だ。
「私は、なるべくなら、これをつかわずにすむ毎日が続いて欲しいと思っている。
これは使いこなせば、あまりに強力な力だ。…だから―――」
「俺は、俺がなぜここに召喚されたかを考えた。
たぶん俺は、ここでなさねばならない事があるのだろう。
そのためにここに呼ばれたと思っている。
ならば、おれがなすべき事が起こったときに、万全の状態であるように準備しているだけだ。」
「…………」
そんな話を終え、海馬は先に食堂に向かうとコルベールに伝え、部屋を出た。
ルイズも風呂から上がった後合流すると言っていた。
そしてまっすぐ食堂へ向かう道の途中で、キュイキュイとやかましい喋り声が聞こえてきた。
ふと、目を向けると、先日決闘の場にいた青い髪の少女…タバサと言ったか。
それと、その使い魔の大きな竜の姿が見えた。
そして、喋り声を多く上げているのは、竜の方であった。
「お姉さま。やっぱり吸血鬼退治は危険なのね。あの従姉姫ったら、こんな危険な命令をさせるなんて、意地悪を通り越してるのね!
…って!まずいのね!?」
使い魔の竜 シルフィードは驚いた。
喋っているところを他人に見られてはいけないと、タバサに言われていたのに、
見知らぬ人物が傍に現れていたのだ。
一方の、盗み聞きをするのを嫌った海馬は、その1人と1匹の前に姿を晒した。
「あわわ、まずいのねお姉さま。喋っているところ見られちゃったのね。あいた。」
こつんと、自身の身長よりも高い杖でシルフィードの頭を叩いたタバサ。
支援
結局この2日間で、海馬はコルベールにデッキの内容の訳、デュエルモンスターズの対戦ルール、
現在わかっているデュエルディスクでの実体化のルールを伝え終えていた。
「しかし、実体化のほうはいまだ不確定なルールが多すぎる。
これに関しては、実践を積み重ねていくしかないな。」
「海馬君、それは…」
コルベールは顔を曇らせる。
実践、いや、この場合は実戦と言い換えられるだろう。
つまり、モンスターで何かと闘うと言う事だ。
「私は、なるべくなら、これをつかわずにすむ毎日が続いて欲しいと思っている。
これは使いこなせば、あまりに強力な力だ。…だから―――」
「俺は、俺がなぜここに召喚されたかを考えた。
たぶん俺は、ここでなさねばならない事があるのだろう。
そのためにここに呼ばれたと思っている。
ならば、おれがなすべき事が起こったときに、万全の状態であるように準備しているだけだ。」
「…………」
そんな話を終え、海馬は先に食堂に向かうとコルベールに伝え、部屋を出た。
ルイズも風呂から上がった後合流すると言っていた。
そしてまっすぐ食堂へ向かう道の途中で、キュイキュイとやかましい喋り声が聞こえてきた。
ふと、目を向けると、先日決闘の場にいた青い髪の少女…タバサと言ったか。
それと、その使い魔の大きな竜の姿が見えた。
そして、喋り声を多く上げているのは、竜の方であった。
「お姉さま。やっぱり吸血鬼退治は危険なのね。あの従姉姫ったら、こんな危険な命令をさせるなんて、意地悪を通り越してるのね!
…って!まずいのね!?」
使い魔の竜 シルフィードは驚いた。
喋っているところを他人に見られてはいけないと、タバサに言われていたのに、
見知らぬ人物が傍に現れていたのだ。
一方の、盗み聞きをするのを嫌った海馬は、その1人と1匹の前に姿を晒した。
「あわわ、まずいのねお姉さま。喋っているところ見られちゃったのね。あいた。」
こつんと、自身の身長よりも高い杖でシルフィードの頭を叩いたタバサ。
> 学院内でギーシュの彼氏と認識されているモンモランシーの談である。
アッー!
「お喋り。」
「盗み聞きをする気は無かったのだがな、そこのドラゴンがやかましい声で騒ぐ中に、気になることがあったのでな。」
「シルフィード」
「知っている。そのドラゴンの名前だな。それより、だ。
貴様はこれから、吸血鬼退治とやらに行くのか?」
「そう」
タバサは短く肯定をした。
そして、そのまま海馬に背を向け、シルフィードの背にのろうとする。
「俺も連れて行け。」
「なっ!なに言ってるのね。吸血鬼は危険な相手でお姉さまだけでも危険なのに、あいた。」
「静かに。…命の保証はしない。自分で自分の身が守れるなら。」
「お姉さま!?」
「ふん。もとより守ってもらおうなどと考えてはいない。俺には俺で試したいことがあるのでな。」
「……」
無言のままシルフィードの背にのるタバサ。
そして海馬は、デュエルディスクを展開し、手札のモンスターを召喚する。
「古のルール!出でよ!ブルーアイズホワイトドラゴン!」
海馬の最強モンスターが召喚される。
そして、海馬はブルーアイズの背にのった。
「思い出したのね!この間ギーシュ様に勝ったかっこいいドラゴンの人なのね!
何より、そのかっこいいドラゴンなのね!すごいのね!あいた。」
「出発。……勝手についてきて。」
「ふん、ブルーアイズ。シルフィードに続け!」
2匹のドラゴンは翼を広げ、それぞれの主を背に乗せ大空へと羽ばたいた。
そして、風呂をあがり食堂へと向かっていたルイズは、偶然それを見つけた。
「ちょっと!勝手にどこに行くのよ!?セトー!?」
恋ではなく「こい」なのは複線?支援
12話完です。
支援ありがとうございます。
アクセス規制も抜けられたようで、よかったよかった。
しかしタバサもだけど、シルフィードの口調がカチッと嵌らないです。
なんか…そう…クロノス教頭に脳内再生されてorz
こい、は意図的だったんですが彼氏…
ちゃんと見直したつもりだったのにまたかorz
社長乙です〜
自分は何スレか前の話題に挙がった、無能王様=じまんぐが未だに残ってますorz
さて社長
此処で圧殺出来るか苦戦するかで明暗が分かれます
楽しみです^^
乙です。
おぉー!ブルーアイズに乗って移動ですか、さすが社長ですねw
吸血鬼戦が楽しみですが、タバサや吸血鬼のテキストや村人とのやり取りにも期待!
乙&GJ!!
更新も早くて凄いぜ! 大好きだから頑張ってくれ!
嗚呼、眠くなって寝てしまえばこんな時間。四時四十四分に投下させていただきますねー
15.酒の席での墓穴
盗賊共と別れて後、ラ・ロシェールまで確かにそういった連中はいなかった。
何事も無く、無事にたどり着きマーティンはほっとした。
先に着いた三人と合流して今日の宿をとる。
この町で最も上等な『女神の杵』亭という宿であった。
「僕とルイズは今から船の交渉に行ってきます。マーティンさんと二人はこの店にいて下さい。
部屋の方はロビーに言えば鍵をくれますから」
にこやかに紳士の様相を崩さないまま、
ワルドはルイズと手を繋いで出て行った。
なんともなしに窓を見た。日が傾きつつある。
そろそろ夕方になる頃だろうか。そんな事を考えながら、
一階の酒場でマーティンはくつろいでいた。
常に神経を尖らせていると後に響く。
いくらなんでも、ここには宗教に狂った狂信者達はいなかろう。
自身が住んでいたクヴァッチから東に位置する街に、
神嫌いと呼ばれ、自身の暗殺を白昼堂々行おうとした女性の事を、
彼は思い出していた。
少々気を紛らわせる為に酒でも、いや、あぶないかそれは。
別段嗜む程度と彼は言うが、経歴が経歴なので、
マーティン自身は酒が好きな部類である。
九大神教団に入信してからも、それなりに飲んでいた。
かの教団には禁酒の項目はないのだ。
そんな事を考えていると、青い髪の雪風が近くに来た。
「寝る」
ロビーから鍵を取ってタバサは言った。ほんの少しだが眠たそうである。
「ああ、おやすみ。ミスタには私から言っておくよ。ミス・タバサ」
手を振って二階に行くタバサを見送る。いつの間にか赤髪の彼女が隣に座っていた。
「司祭様だからお酒は駄目かしら?ミスタ・セプティム」
ボトルが一つにグラスが二つ。キュルケは悩ましげな視線でマーティンを見ていた。
彼女は男を落とすのが趣味だったな。ギトー先生に飽きたのだろうか?彼はそんな事を思って、
目の前で艶かしく見える彼女を見ていた。
快楽の主サングインを信仰していた頃、
この手合いにはとてもよく出会った。快楽の申し子とも言える彼女らは情に厚く、
そして惚れっぽい。そんな彼女達は男達を平等に『愛して』しまう困った性癖を持っていた。
実際の所、キュルケにはそこに飽きっぽいが追加されるが、マーティンは知らぬ話である。
「あー。その、今更何だが。もう少々自分の体を労わった方が良い。気づいてからでは遅い事も多々ある。
若い内は遊びたくなるのは良く分かるが――」
聞かずにグラスにワインを注ぐ。説法とかどうでもいいですから。目はそう言っていた。
「では、アルビオンへ無事に着ける事を願って」
杯を取り、キュルケが言った。マーティンも取る。
注がれたものは飲むしかなかろう。飲まずに去るのは失礼だ。
「そして君の火遊びが緩和される事を祈って」
まだまだ収まりそうにありませんわと言って、キュルケは笑うのだった。
完全にこちらのペース。後はどうやって持って行くか。
久方ぶりのゲームは今始まったばかり。
上手い具合に避けられてばかりだったのだ。
今日こそ落とすと狩人は燃える。
「明日の船の予約が取れて良かった。これを逃すとやっかいだからね」
『桟橋』にて交渉を終えたワルドとルイズは、宿に戻らず町を散策していた。
アルビオンの戦のせいか、傭兵等が多く通常に比べガラが悪い印象を受けるが、
金は落としているようで、商売人からの反応はそれほど悪くない。
「ええ、けれどどうやって王党派の陣に行けばいいのかしら…聞こえてくる話だと、
もう貴族派に囲まれてどうしようにも無いって、いっているじゃない?
敵陣突っ切って行くなんて…ねぇワルド。あなたのグリフォンでどうにか出来そう?」
船については色々言いたい事はあったが、今は平時ではない。
そんな事に思考を回すより、任務について考えなければいけなかった。
ルイズのそんな疑問に、ワルドは笑って答えた。
「何、心配はいらないさ。全部僕に任せておいてくれれば、全て上手くいくよルイズ」
ワルドは笑ってルイズの頭を撫でる。上手くごまかされた気がするが、
しかし彼がそう言ったのだ。昔からとてもたよりになる彼なら、
何の問題もない。ルイズはそう思ってされるがままになる。
「ところで、あの司祭のマーティンさんだったかな。彼は何故ここに?」
「姫さまから聞いていなかったの?言いにくいけれど、私の使い魔なの」
ワルドの目が大きく開いた。そうだったのかいと言って彼は優しく微笑む。
そして彼は、色々な意味で落ち込むルイズをなだめ始めた。
皇帝呼び出したとか言えない。人呼び出すって正直どうなの。
が主な落ち込みの内容である。
「姫殿下も随分慌てていたからね。使い魔の事はすっかり忘れていたのだろう。
それにしてもルイズ。君には何か凄い力が隠れている気がするよ」
人を、それもメイジを呼び出したんだ。そんじょそこらの連中より、
よっぽど凄い力を持っていないと、呼ぶ事は出来なかったに違いないさ。
ワルドはそう言ってルイズを元気付ける。
「そ、そうよね。ワルドとマーティンくらいだわ。そんな事言ってくれるの」
「ところで、ルイズ。彼が使い魔というならルーンが刻まれているはず。どこに刻まれているんだい?」
「左手の甲よ。武器を持つと光って、体が軽くなるんですって。後、いつでも魔法の能力が上がっているとか」
『破壊』系統だけとはいえ、
効率的な魔法力で大技が使えるのはとても喜ばしい事だと、
左手の効果について研究したときにマーティンは言っていた。
何でもハルケギニアに比べ、彼のいたタムリエルの魔法は、
魔法を使うための力はすぐ補充できるものの、
その分強力な魔法を使うとすぐに力が無くなってしまうらしい。
だから少しでも消費を減らしたいところであり、
敵から身を守る為に使う攻撃魔法の消費量が減るのは、
彼の国のメイジ達からしてみれば、願ってもない事なのだそうだ。
本来ならこの問題は、魔法力回復用のポーションでも飲めば良い。
今より千年以上前にアスリエル・ディレニ、
というエルフが技術革新を起こした「錬金術」は、
今やタムリエル全土のメイジに薬品作成の手段として親しまれている。
様々な器具を用いるこの学問だが、
ハルケギニアにはポーションを作るための専門的な器具が無いのだ。
一応、そこらの乳鉢で何か食料を二品混ぜ合わせ、水に溶かせば簡単な薬品になるが、
味は悪く効果が薄い。ただ、それ以外の物はギルドが販売している品でないと、
何が起こるか分からず危険な為、マーティンは代用をやめている。
それに、マーティンがメイジギルドに入っていたのは若い頃で、
「錬金術」の様な渋い物を学ぶより、「破壊」の魔法や「召喚」の魔法を優先して学んだ。
これらは派手好きだった彼にピッタリだったのだ。
故に、彼はあまり錬金術が得意とは言えない。勿論素人より良い物は作れるが、
しかし実力として見習いか、それに毛が生えたくらいだろう。
そんな訳で比較的簡単に見つかり、
かつ彼でも魔法力回復の材料として扱える品は少ない。
亜麻の種と、カンムリタケのかさを合わせたポーションなんかが丁度良いが、
あいにくカンムリタケが見つからなかった。だからそれ用の薬は今回持参していない。
「そうか…僕の記憶が正しければ、彼は『ガンダールブ』かもしれないな」
真顔でそう言ったワルドにルイズは何も返す事が出来なかった。
ありえないと思って何を言えばいいか分からなかったのだ。
ガンダールブと言えば、始祖ブリミルの四つの使い魔の一つだ。
経歴から考えて、彼がそういう使い魔として選ばれる事については、
特に問題はない。皇帝として命をかけて国を守ったのだから。
始祖ブリミルを守ったという使い魔に相応しいと言えるかもしれない。
けれど、それがどうして私に?
未だルイズは魔法が使えないままである。
以前に比べさほど気にしている訳でもなく、
「ゼロ」の二つ名を呼ばれて癇癪を起こす事はなくなったが、
魔法が使える様になりたいのは事実である。
マーティンはそれについて問題は無いと言った。
『どんな時代でも、遅咲きのメイジはいる。そして大抵そのメイジ達は、
何か大きな事を成し遂げるものだ。そこいらにいるいっぱしのメイジが、決してできないような事をね』
爆発が起きているから魔法が使えない訳ではないんだ。
「きっかけ」があれば必ず使えるようになる。彼はそう言って励ましてくれた。
問題はその「きっかけ」である。一体何だというのだろう。
マーティンも色々考えているが、何分この世界の魔法についてはルイズの方がまだ詳しい。
こちら側の考えでいかなければいけないが、しかしそう上手くはいかないもので、
マーティンに詳しく教えつつ、共に原因を突き止めるつもりだ。
「ありえないわ、そんな事。まさか私が…」
可能性の問題として提示したマーティンのルイズ虚無説は、
次の日までに彼女自身の頭の中で、否決処分が下されていた。
まさか今まで魔法が一切使えなかった私が現実に虚無とか、
そんな事はありえないという訳である。
「どこかの誰かが言っていたよ。ありえないなんて事はありえない、と。
きっと君は偉大なメイジになるよ。始祖ブリミルの様な、ね」
ワルドが笑う。けれど、何故だろうか。先ほどに比べて笑い方が違う。
探し続けていた宝物を見つけた様な笑顔で、たしかに嬉しそうだけれど、
何か、何か変だと思う。そんなルイズの違和感は拭えないまま、
ワルドと共に宿へ戻った。
日が暮れて夜。二人は『女神の杵亭』に帰ってきた。
タバサの姿は見えず、酒場にはつぶれかけのキュルケと、
ちびちびとワインを飲むマーティンの姿があった。
「ああ、おかえりなさい。ミス・タバサは寝ているよ。道中で疲れたそうだ」
そして彼女もそろそろ上へ連れて行くべきだろうな。そう言ってマーティンは笑った。
「ま、まだらいじょうぶれすわ。あ、ルイズおあえりー」
種族として交渉事に長けた「インペリアル」。
それに属し色々と経験豊富なマーティンは、
のらりくらりとキュルケの質問をかわして、
逆に彼女へ上手い具合に酒を勧めた。
完全に自分の術中だと彼女は思い込んでいたが、
しかしそれは完全に相手の思うツボだった、
そう理解した時にはもはや手遅れで、彼女はまたも獲物を逃したのだった。
呂律が回っていない。お前は何をしに来たんだとルイズは思ったが、
考えてみれば彼女達は私について来ただけだ。
ここで別れてしまうのが彼女らの為というものだろう。
ルイズがそれを言おうとする前に、キュルケが熱っぽい声で言った。
「れぇ、マーチン…」
キュルケが落ちた。テーブルに突っ伏し、寝息を立てるキュルケを見て、
少々飲ませすぎたか、とマーティンは言って店員から毛布をもらい、彼女にかけた。
「それで、船の方はどうだったのですか?ミスタ・ワルド」
マーティンもルイズと同じつもりだったらしい。
学院の話ではキュルケはゲルマニアで、
タバサの方は髪の色からガリアからの留学生だと言われていた。
異国の貴族が秘密の任務に参加して、失敗したらどうするか。
軍事同盟どころか、下手をすればトリステインと二国の関係が悪化してしまう。
ここで置いていくのがもっとも賢明な判断だと思えた。
「無事に、明日の朝一番の船が取れましたよ。もっとも、貨物船ですから部屋の質は悪いものですが」
いかに白の国と呼ばれ、その美麗で圧倒される空に浮かぶ島といえども、
今は戦争の真っ只中である。そんな中旅行に行くなんてバカはいない。
貴族派への物資輸送船しか飛ばないと言うのは仕方ない事である。
「こんな時にそんな事は構いませんよ。さて、後は明日に備えて寝るだけですな」
「ええ、ところでマーティンさん。使い魔のルーンを見せてもらっても?」
ああ、はい。とマーティンはワルドに見せる。ワルドはやはりと思って息をのんだ。
「そのルーンの事はご存知ですか?」
「ああ、ガンダールブのルーンだと学院長から聞いていますよ」
本当にそうなのかは分からないし、それで気負わせたくなかったから、
ルイズには何も言ってなかったけどね。そう言って笑った。
「もう、そういうのはちゃんと言ってくれないと」
「すまない。少々気が引けてね」
自分から伝説のガンダールブなんて言っても、説得力ないだろう?
むー、確かにそれもそう…いや、あんたの経歴的にあるとは思うけど。
そんな二人を見ながら傍から見れば微笑ましい笑みを浮かべるワルド。
しかし、その笑みは黒い野心に覆われていた。
ワルドの目的が一つ追加されました
投下終了。
子孫のヴァリアンさんによるとアスリエルさんは人体に流れる血液を、
人には無害なまま吸血鬼の毒に変える薬も作ったとか。
きっと吸血鬼にとって吸いたくてたまらない味になるんでしょうね。とある魔術みたく。
マーティンが見習いなのは、彼が使っている器具より。では、また次の投下まで。コカカカカカカ。
「」が続く時は、開けた方が良いのか閉めた方が良いのか、どちらの方が読みやすいですか?
1巻のルイズが15巻のルイズを召喚
とかってアリなのかな。
確か小ネタであったな、ルイズがルイズを召還
両方とも1巻のルイズだったが
390 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/20(月) 08:48:39 ID:atGa1upF
1乙
相変わらずの流れの速さ
ポイの小説からガムモットを召喚
>>387 オブリの人お疲れ様です。
これからの展開がとても楽しみです。
>>242 エメラダはナノマシンがヒトの細胞や組織と同じように働いているだけだから、
一個体として認識されると思う。
エメラダの場合、時期も問題だな。
子供のときだったらルイズが保護者になるのは抵抗ないだろうけど、大人になったあとならまず変人扱いされるな
整備うんぬん言い出したら、フィールドに出てくる野良ギアはどうして動けるんだ?
野良ギアのパイロットだってああやってお金を稼いで頑張って整備してんだ!ばかにすんな!
>>394 幼体だとルイズの見た目ならおばさんとは言わないだろうけど、
キムのフェイを探して暴れそう。
成体だと他人と違っても自分を見てくれる家族がいれば平気とルイズを慰めそう。
メンテフリーのマシンを召喚したいのか?
ARMSでいいじゃないか
どっちかっつーと珪素生物だからメカじゃないかもだけどね
ただ、ARMS四人の誰がルイズのワガママに付き合ってくれるのかは、知らん
白兎すらブチ切れルイズをボコるだろう。
彼は自分をイジメに来た連中を正当防衛に持ち込み返り討ちにする趣味があったからな
>>397 まとめにあるよ。
絶賛止まってるけど。
あと、ARMSの四人はそんな器小さくなかろう、原作後なら。
原作後だとARMSいなくなってないか?
ノーメンテで400年近く緑化運動してたロボを忘れちゃいないか
メンテフリーといえばサーディオン
まぁ、誰も知らんとは思うけど…
デビルガンダムだろ。
>>397 武なら、それでも妹がいる武なら優しくしてくれる。
つーか、どいつもこいつも躾けつつ面倒を見てくれるとしか思えないけどな。
>>402 ルイズにはデビルガンダム
ジョゼフにはデビルマスドライバー
教皇にはデビルアクシズ
テファにはデビルガンダムJr
こういうことですね
>402
吸血鬼に先住魔法で捕らえられたタバサの元に、超高速回転でツタを全て切り裂く覆面の青髭を幻視したw
「甘いぞ、シャルロット!」
ARMSから高槻パパが召喚されるの読んでみたいな〜
>>406 なんていうか、ヨルムンもなんも素でどうにかしちゃいそうだよ。
あとスプリガンの御神苗隆とか。
強いパパが多いな(隆は叔父だが)。
メンテフリーか……
冥王様!カムバーック!
クロノトリガーのロボでいいじゃん・・・。
園辺野女子に通う、自称「体の弱いお嬢様」な守銭奴呼んでも面白いかもナー。
俺はこれ以上書くもの増やせねえから書かないがな!
……学校名が違うかも知れん。
「そのへんのじょしこう」で良かったと思うんだが。
完全なメンテフリーじゃないが、ある程度までなら自己修復できる実写版TFたちなんかどうかね
問題は素直にルイズに従うかどうかだが
オートボッツたちは「君たちの問題に自分たちは関わるべきではない」とかいいそうだし、
ディセプティコンたちは問答無用でミサイルとビーム乱射してそこにいた人間皆殺しにしそうだしな
>>394 エメラダは子供のときの方が抵抗激しそうだけどなw
ルイズに「もう、うるさいなぁ。子供は黙っててよ!」ぐらいは言いそう。
>>397 原作最初期で人格者なのは亮ぐらいだろうなぁ。
隼人はあのとおりだし、武士は言う通りだし、恵は……うん。
まぁ、その亮はジャバウォック覚醒で不安定になりまくるが
武士は少なくとも趣味じゃなかったような…
いじめられっこが武器もっててその武器がオーバーキル過ぎてた位の差しかない気はするけど。
ガンハザードよりアルベルトとヴァンツアー召喚
ルイズ「ねえ、このばんつあー?とかいうの動かなくなったりしないの?」
アルベルト「そんな質問をしたらファンタジー世界が汚染されるぞ!」
ホイ解決
クロちゃんはガラクタがあれば自分で自分を整備してたな。
まあ破壊のプリンスにかかればギーシュ戦で学園大破だろうがな。
ARMSなら、キースシリーズの面々もエグリゴリの呪縛から解き放たれて協力的になってくれるかも。
ラムサス「俺の温もりを返せ・・・・」
ルイズ 「?」
ラムサス「俺が愛する、俺のことを愛してくれる者たちの元へ返せ!!!」
ルイズ 「・・・・」
駄目だな・・・。
シタン先生の設計思想の黒さは異常。
ルイズが召喚したのが
マッパダカ マッチョな 蛮族
全裸で少女を肩に乗せた筋骨隆々たる蛮人
だとしたら……
ずれるよ……orz
これ無理だよ……orz
しょおー
りゅー
ルイズ「平民がこんなことされるなんてありがたいと思いなさいよ」
シタン「ミドリにまた嫌われるでしょおー(◎д◎)」
>>420 ランドセル背負った少女を背中に乗せた謎のでっかい獣なら微笑ましいのだが。
六条麦ちゃんとまるるんのことだが。
>>417 そこでキース・ホワイトですよ
「自然に直接作用する特殊なプログラム」とか言ってメイジで人体実験しまくりですね
勿論、神の卵を装備で召喚
>420
語るのもはばかられるのは、王三姉弟ですが?
>420
まっちょにくにく?
必然的にハブられるレッド……
キースシリーズの中じゃ温厚なバイオレットとエロガッパのグリーンが当たりだな。
ブラックは余計なものついてるしシルバーは直情型だし。
つーか、キースシリーズなんて程度の差こそあれ全員プライドがかなり高いから
特に初期のルイズに従うなんてどう考えてもありえない訳だが。
それ以前に最悪、いきなりルイズが抹殺されても不思議じゃないし。
それが可能で、尚且つそこらのメイジなんか歯牙にも掛ける必要が無い程の絶対的な
力があるしね。
そもそも、空間を操れるグリーンなんて自力で帰ってしまいそうだし。
>>430 投下ごとにお楽しみコーナーとして今日のレッドがあるさ!
じゃあキースシリーズじゃなくてKYコアにしようぜ!
皆様お久しぶりです。
忘れ去られたかもしれませんが久々に投下させていただきます。
問題なければ10分後に投下します。
ホワンやカルナギは?
どっちも扱いが難しそうだけど条件とか交渉しだいでとりあえずは従ってくれそう。
キースと聞くとキース・ロイヤルばかり頭に浮かぶ・・・
お久
最初にそれに気が付いたのはタバサだった。
翌朝にアルビオンへの出立を控え、ルイズたちは眠りに就こうとしていた。
ペチャクチャとお喋りをするルイズとキュルケを尻目にタバサは眠りに就く寸前まで当然のごとく本を読んでいたのだ。
だが唐突にタバサのページを捲る手が止まり、視線を手元の本から外した。そして本の代わりに杖を手に取り、辺りの音を窺い始めた。
次いでアンジェリカ。タバサの行動を目にしてからの行動は素早い。銃と剣を包んだ布から学院から持ってきた銃、M16を取り出し、初弾を装填する。
アンジェリカの行動でようやく何か異変が起きていると察した二人はタバサの「明かりを」という声を聞くと部屋の明かりを消した。
明かりが消えた部屋に僅かに月の光が差し込む。薄暗い部屋では誰も言葉を発しない。ただ皆一様に耳を澄ましていた。
階下から聞こえるのは騒乱の音。酒を飲んで喧嘩をしている様には到底聞こえない。怒鳴り声、砕ける木、割れる硝子、逃げ惑う足音……階下から聞こえる音は何者かが猛烈な殺意をこの宿に持ち込んだことを示していた。
明らかに唯の物取りではないことが分かる。だがルイズはその場で動けないでいた。
それもその筈、魔法学院からラ・ロシェールへの道すがら特にトラブルなど起きなかった。そして旅のパートナーは憧れのワルド。宿についてからはアンジェリカやキュルケまでもが一緒になった。
これでは緊張感など湧くはずがない。尚且つこの暴力的音源がモット伯での屋敷での惨劇を思い浮かばせ、目に見えぬ恐怖として彼女に襲い掛かったのだ。
ルイズは月明かりの差し込む薄暗い部屋の中、悲鳴も泣き言も挙げることもできず、呆然と立ち尽くすことしかできなかった。
一方のキュルケは最初こそは戸惑いはしたがすぐに気を取り直し、いつでも動けるとタバサへと片目を閉じて合図をした。
誰かが賊の侵入だと大声で叫びながら階段を駆け上る。途切れた警告の声、次いで聞こえる断末魔。それは宿屋の主人の声に似ていた。
床のきしむ小さな音が扉越しにも聞こえてくる。小さな足音が彼女たちには大きく聞こえた。
「来る」
タバサはそう言葉を紡ぐとドアの近くへと身寄せた。アンジェリカもストックを肩に付け銃口をドアへ向け、招かれざる客の来訪を待ち受ける。
ドアノブがゆっくりと回る。
タバサは侵入者がドアノブを回し切った所を見計らい、扉を開け、開いた隙間に身を滑り込ませ杖の切っ先を侵入者の喉下に突きつけた。
杖を突き付けられた侵入者の男は抵抗することはなかった。タバサはその男の顔を確認すると杖を下げ、部屋の外の様子を窺い始めた。
アンジェリカも男の顔を確認すると銃口を下げ、ルイズに向き直った。
「えっと、ワルドさんです」
アンジェリカの声を聞きルイズとキュルケは安堵からか息を長く吐いた。
「まだダメ」
タバサは警戒を解かずそう言い放った。
「君はずいぶんと手馴れているんだね」
ワルドの、言葉に棘を含ませたような言い様にタバサは少し睨み付けた。ワルドは大げさに肩を竦ませながらも言葉を続ける。
「襲撃だ、狙いは十中八九我々だろう。つまりアルビオンの貴族派が金で嗾けた賊だろうね。連中はどうやら無関係な者も殺しているようだが……盗賊風情にそんな事を言っても無駄か。」
「そんな…っ!」
ルイズの疑問の声は突如聞こえてきた、ルイズの失敗魔法とは違う、もっと洗練された鋭く甲高い破裂音に遮られた。
ルイズはその音に似た音を聞いたことがある。そう、アンジェリカが持つ銃から発せられるあの音だ。
その音を表現しろ、と言われれたならば、例えばこの場にいないシエスタなら、ただ一言"怖い"と言うだろう。あの屋敷で聞いたあの音。少しづつ、少しづつ大きくなって、少しづつ、少しづつこちらに近づいてきていたあの音だと。
重々しく、しかし甲高いと言う両極端の属性を持つそれは、知らないときならばまだしも知ってしまった今となってはルイズにとっては悪魔の囁きにも等しかった。そう、アンジェリカがまた一つ、命の蝋燭を吹き消したのだ。
だがアンジェリカにとっては銃声など何の感慨もない。ましてや自ら引き金を引いているのだ。ルイズ以外にとってはただの銃声でしかない。
いや違う。ワルドだけは何か面白い物を見つけた子供のような顔を一瞬見せたのだ。
音の発生源に皆一様に目を向ける。そこには銃口を窓に向けたアンジェリカの姿があり、向けられた銃口の先では窓ガラスに穴が開き、少量ながら何かの液体が付着していた。それは脳漿であろうか。
>>436 ホワンは兄ちゃんのいない世界ってだけで喜ぶよなw
リーマンのことだから普通に来ちゃいそうだけどさ。
ホワンもカルナギも契約する必要があるのかが疑問、例えばどんな条件?
失礼しました。
支援
支援
機神兵団〜Apocalypse Now〜の雷神皇とか召喚されたりとかないかな? かな?
てか召喚された時点で魔法学院が倒壊しそうな希ガス。
雷神皇は全高999m(アンテナ込1111m)で横幅も同じくらいあるわけだけど
広場・・・と言うか学院の大きさってどんくらいなんだろ?
黙って支援
猿さん?
うちはイタチが召還されたらどうだろう?
超絶平和主義者で目的の為なら親でも殺し、土下座も余裕で出来る柔軟性
これからドンパチ始まりそうなあの世界にはおあつらえ向きかも
火力も戦闘力もバランスブレイクになるほど強くない
タイマンなら無敵だろうけどな
流し読みだから勘違いしてるかも知れないけど、ルイズの使い魔にはならないんじゃないか?
あとトリステインより平民でも貴族になれるゲルマニアの方に行きそう。
>>401 小説版知ってる俺がやってきましたよ。
原作ゲームは知らぬ。
450 :
MtL:2008/10/20(月) 20:39:25 ID:Boc/9hqm
148 名前:Zero ed una bambola ◆EFV8AnGeLs[sage] 投稿日:2008/10/20(月) 20:28:39 ID:VDXPZQgI
どうやら規制されてしまったようです。
どなたか代理投下お願いします。
とのことですので、代理投下いたします
支援
みぎゃぁ!
以後何事も無かったようにどうぞ。
少々お待ち下さい。
改行位置などについて作者様に問い合わせを行っております……
「梯子」
連中は一階からだけでなく、二階にも直に侵入しようと試みているのだ。それを見届けたタバサの声にワルドが素早く反応し、部屋から出るように促す。内からだけでなく外からも進入を試みているようだ。
その言葉にルイズは慌てて杖と布にくるまれた剣、デルフリンガーを片脇に抱え込み、空いた手でアンジェリカの手を取ると逃げるように部屋から飛び出た。
ルイズが部屋の外で目にしたのは眉をしかめて佇んでいたキュルケと傍らに横たわる3人の男。最後にワルドが部屋の中で何かを拾って出てきた。その時は彼女たちはそれに気にも留めなかった。
「ねぇ、この人死んでいるのかしら?」
何故ならば階段に倒れる3人の人間に最大限の関心が払われているからだ。
階段に倒れている太った男なら知っている。宿の主人だ。でっぷりと太ったその体は赤く染まっていた。残りの二人は知らない。
恐らく下手人は貴族派の人間が差し向けたであろう賊だ。
「賊の方は気絶させたが、僕が駆けつけたときには、彼は残念だけど……」
もう息がなかったと首を振り示した。
「連中の狙いは恐らく僕たちだろう。周囲に被害がこれ以上広がる前にここを出よう」
ワルドの提案にルイズたちは頷いて従う。
先頭をワルドにして階段を降りる。最後尾にはルイズとアンジェリカ。不安そうな顔を浮かべるルイズはアンジェリカの手を取って階段を下りようとした。しかしアンジェリカはその手を振り切った。
ルイズがどうしてと声を上げる前にアンジェリカは下げていた銃口を上げ、ストックを肩につけていつでも発砲できる体勢を整えた。つまり最後尾を警戒しているのだ。
失われた命を気にすら留めないアンジェリカ。ワルドでさえ敵に容赦をし、命を奪わなかったというのに。
ルイズはアンジェリカとの間に壊せない壁があるように感じられた。それでも杖と共に布に包まれたままで彼女の手に抱かれていたデルフリンガーはカタカタと一生懸命何かを伝えようとしていた。
無論それはルイズにも感じられた。しかし、今この宿は争いの真っ只中にいるのだ。そしてデルフリンガーは剣である。剣は争いに使われる物、敵を切り伏せる物である。
デルフリンガーにとって不運だったのは、ルイズは死と争いの空気に犯され、いささか冷静さを欠いていたのである。普段の彼女ならばデルフリンガーに何か言いたいことがあるのか尋ねていただろう。
だが今のルイズにそのような余裕は感じられない。デルフリンガーを黙らせようと試みているのか、彼を布の上からギュッと強く抱きしめているのだ。
ルイズにはきっとこう聞こえたのだろう。『オレを使わせろ』、そうデルフリンガーが言っているように。だがそれは違う、デルフリンガーは誰かを傷つける為に創造されたのではない。殺すためでなく護る為の剣なのだ。
彼は己の存在理由を懸けて口を閉ざされても尚必死にルイズに訴えかける。
『その手を離すな』
ルイズはデルフリンガーの意志を感じ取ることは出来なかった。繋いだ手を離し、ワルドの背を追いかけた。アンジェリカはルイズに背を向けたまま、ゆっくりと階下へと降りてゆくのだった。
階下の状況は酷いものだ。押し入った連中によって一階にいた者は皆切り殺されていた。ルイズたちの先陣を切って降りてきたタバサとワルドが目にしたのは死体から金品を漁る賊の姿。
二人は思わず階段を降りきった所で動きが止まってしまう。まさか階下でこのような惨状が広がっているとは思いもしなかったからだ。
「ちょっと、いきなり立ち止まってどうしたのよ」
いきり立つキュルケも眼前の光景に言葉を失うしかなかった。遅れて階下にやってきたルイズも顔を青くしてしまう。
「何だ手前らは……そうかお前たちか」
凄惨な光景に目を取られたが故に先制の機会を逃してしまった。だがそれでもメイジであれば直ぐに挽回できる。
その証拠に、ワルドの唱えたたった一つの魔法、エア・ハンマーによって数人の賊は出入り口付近まで吹き飛ばされたのだ。薄手の皮の鎧を纏った男は立ち上がると外へ向けて何かの合図をだし、屋外へと逃げ込んだ。
これで敵を退けたのかと安堵の溜息をつくルイズとキュルケの二人だったが、タバサ、ワルド、アンジェリカの三人は油断無く敵の第二波に備えていた。
唐突にテーブルを倒し、その影に身を隠すタバサ。ワルドはルイズの手を引き、アンジェリカはキュルケを引き倒し、身を隠した。
何をするのかというルイズが口を開くよりも先に矢が木製のテーブルに突き刺さる音がその口を遮った。
「ただの賊じゃないようだ。これは傭兵だね」
「手馴れている」
ワルドの言葉にタバサが一言付け加える。身を隠したテーブルから顔を少し出して状況を探る。
そこにいたのは、最初に襲いかかろうとした傭兵は動きやすい皮の鎧を身に纏っていたのに対し、正面の出入り口にいる連中は金属製の鎧を纏っている。
それだけではない。隊列を成し、前列が全身を覆う鎧と大きな盾を構え、後列が矢を構えてこちらを射殺さんとしていた。
「ここは二手に分かれよう。いつまでもここに篭ってはいられない。僕とルイズは裏口から出て船まで突破する。君たちは連中を引き付けておいてくれ」
「わかった」
「仕方ないわね。ヴァリエール、貸し一つよ」
ワルドの提案に二人は同意する。それもそのはず、トリステインに留学という形を取っている二人がそう安々と他国へ行けるものであろうか。ましてやアルビオンは内情が不安定なのだ。
トリステイン以外の国に属している者がアルビオンに行き、問題でも起こしたら国家間の問題になりかねない。ワルドの提案は至極当然のものである。
だがルイズは違った。そう、アンジェリカもここにおいて行けと受け止められる発言に異を唱えたのだ。
「ワルド様、アンジェ、アンジェリカは……連れって行ってもいいですよね」
「いや駄目だ。いいかいルイズ。これは秘匿任務なのだよ。人数が少ないほうが目立たずに済む。今襲撃を受けているのも思いのほか大所帯になったのが原因かもしれない」
「それでも……わたしはアンジェを……」
デルフリンガーの思いが通じたのだろうか。ある種の迷いも見せながらもワルドに向かうルイズであった。その様子にワルドは彼女が引かないと悟ったのか大きな溜息をついた。
「はぁ、仕方が無いね。婚約者の我侭を聞くというのも勤めの一つだね」
「それじゃあ……」
「ああ、一緒に連れて行こう」
その言葉を聞き、ルイズの顔が思わず綻んだ。
「君たち、ここは任せたよ」
ワルドはタバサとキュルケに言葉を掛けるとルイズの手を取り裏口へと向かった。そしてその後をアンジェリカが追うのであった。
ルイズたちを襲った傭兵は当然裏口にもいた。だがワルドの攻撃によって彼らは簡単に地を伏せた。
「賊や傭兵とは云えどもむやみに殺したりはしないよ。ルイズ、安心してくれ、僕は君を護ってあげるから」
ワルドは時折ルイズを気に掛けながらも桟橋へ向かった。ルイズは少し頬を紅く染めていた。ワルドの言葉に少し照れていたのだろう。
一方のアンジェリカは黙々と二人の後を追っていた。心なしかどこか不満そうだ。
長い長い階段を駆ける三人。時折後ろを振り返り追っ手がいないか確認をする。そしてそれを確認して次第に速度を緩めた。
階段を上り切るとそこには一艘の船が停泊しているのが見えた。ワルドがまずタラップを駆け上がり船の出港のため船員をたたき起こしていた。
当のルイズは階段を急いで走った為、息を整えるのに精一杯であった。アンジェリカは少し息を荒げるだけであったが、その目は警戒を怠りない。
「ルイズさん敵です!」
ワルドが船長と話を付け、船員たちが慌しく出航の準備を整えている最中だった。アンジェリカは階段を駆けぬけ、こちらへ向かってくる黒い人影を見止めたのだ。
舷側から身を乗り出すようにしながらストックを肩に付け、いつでも発砲できる準備を整えたアンジェリカ。黒い人影に止まれと怒鳴るワルド。ルイズはただその様子を黙って見ているしかなかった。
黒い人影は月明かりでも顔が視認できる距離まで近づいてきた。その顔には白い仮面があった。どう考えても怪しい、ましてや腰から杖のような物を取り出したのだ。
船は出港の直前だった。タラップは引き上げられ、舫は解かれていた。仮面を付けた……恐らく男であろうその人影はフライの魔法を唱えたのか宙を舞い、船に飛び移らんとしている。
だがそれは適わない。ワルドが杖を構え、魔法を放つより先に銃口が火を噴いた。
油が弾けるような音、甲板に船員にはそう聞こえた。彼らとて海、いや空の男、荒事には慣れている。当然喧嘩の延長で鉄砲を持ち出す輩もいたはずだ。ましてや内戦状態に陥っている国へ行こうと、或いは行っているのだ。銃声や砲声など耳にしているはずである。
しかし、彼らに銃声だと理解するのにしばしの時間を要した。知っているけれども知らない音、船員たちは手を少し止めたものの直ぐに作業に戻った。まるで最初から何も無かったかのように。
アンジェリカが放った銃弾は三発、その狙いは正確であった。初弾は仮面の男の胸部、心臓がある場所に突き刺さり、間を置かず次の弾丸が喉を貫いた。
最後の銃弾が止めとばかりに仮面ごと眉間を穿ち、白い仮面の男は為す術も無く地に落ちていった。いや正確にはそう見えた。舷側からでは仮面の男が落ちた先は死角となって見ることが適わない。
それでも素人目から見ても仮面の男が生きているとは思えない。断末魔も今際の言葉も無く、命が堕ちたのをまた一つ、ルイズは目撃してしまった。
「ルイズさん、見ましたか? 上手に殺せました。これからもルイズさんの為にいっぱい殺します」
ワルドへの対抗心だろうか、アンジェリカの浮かべた笑みはとても無邪気で可愛らしかった。それだけにルイズは正視することが出来ず、地面を俯きながらそっとワルドの服の裾を摘むのだった。
もしこの時ルイズが面を上げていたら気付いていただろう。ワルドの顔が、新しい玩具を見つけた子供のような表情を見せていたことに……。
船は一路アルビオンに向けて動き出した。
Episodio 36
La partenza occupata
慌しい旅立ち
Intermissione
宿へ取り残されたタバサとキュルケの二人であったが状況は悪い。ルイズたちを逃がす為、チマチマと戦っていたらいつの間にか包囲されてしまった。
「あれ? もしかしてあたしたちピンチ?」
「かなり」
盾にしたテーブルにはかなりの数の矢が突き刺さっている。敵は一方向だけでない。二階からも裏口からもやってくるのだ。
「タバサ、どうする、これだけの数の相手やっつけられるかしら?」
「無理」
じゃあどうするのかと興奮してきたキュルケが立ち上がり、テーブルの影から身を少し出した。そこを待っていましたと言わんばかりに一筋の矢が襲い掛かる。
だがその矢は幸運にもキュルケの顔を掠めるだけだった。数本の髪が切り裂かれ慌てて実を隠すキュルケにタバサは諭すように口を開いた。
「それは勝利条件じゃない」
言わんとしている事が理解できないでいるキュルケのためにタバサは尚も言葉を紡ぐ。
「わたしたちは囮、時間稼ぎ」
「それで?」
「倒す必要は無い」
「だからどうするのかしら?」
「十分時間は稼いだ。だから……」
「だから?」
「後は逃げるだけ」
タバサはそう言うと風の槌、エア・ハンマーを起こし、壁を破壊する。そしてそこを指差し呟いた。
「脱出口」
余りに強引なやり方にキュルケは元より、襲い掛かった傭兵達も唖然としていた。タバサは未だ唖然としているキュルケの手を引っ張って宿から逃げ出した。
「ま、待ちやがれ!」
傭兵達も正気を取り戻し、彼女たちを追い始める
キュルケとタバサは傭兵たちを振り切れないでいた。どれだけ引き離してもいつの間にか先回りされていたりして逃げ切ることが出来ない。ぐるぐるとラ・ロシェールの町で鬼ごっこを続けていた。
「本当にしつこいわね」
「仕方が無い」
「仕方がないってどういうこと?」
「学院と同じ」
「え?」
「男達は貴女の御尻と胸ばかり追いかける」
「……タバサ、あなたって突然過激なことや、突拍子も無いことをいうのね。学院の男たちがあなたを見たら普段とのギャップで落とせるんじゃないの」
軽口を叩きながらの鬼ごっこは夜明けまで続いた。日が昇ると傭兵たちは蜘蛛の子を散らすように逃げて行き、勝敗はキュルケたちに軍配が上がった。
一方、彼女とは関係ないところで定時通り、夜明けと共に出航した船が乗っ取られ、アルビオンへ針路を変更した事件が発生したのだが、これはまた別の話である。
支援
153 名前:Zero ed una bambola ◆EFV8AnGeLs[sage] 投稿日:2008/10/20(月) 20:37:06 ID:VDXPZQgI
以上で投下終了です。
支援された方、代理投下される方に感謝いたします。
以上で代理投下終了です。
作者さんも代理さんも乙です。
>>440
ホワンもカルナギも化け物扱いされた事がトラウマっぽいからそこらへんを巧くつついて丸め込んで契約にもちこむ
カルナギは強い相手と戦えれば満足しそう、ホワンはやすらぎかな?
ちい姉さま辺りならうまく包み込んでどっちも飼い馴らせそうかな
>ゼロの使い魔チャンプ
ゲルマニアでシュバリエになる為に、警備員のバイトで金を稼ぐサイトの話はどうか?
ダンジョーVは登場人物のキチガイ度や下品なエロ描写も再現が難しいが
それ以上に徹底してロジカルな戦闘描写がな
テクニックとパワーだけで精神力や感情の高まりなんかが入る余地は無い
つうか大事な場面で怒ったりした奴は確実に負けるという世界
>>463 あー見えてダンジョーもバリー・アズノーも
駆け引きが上手いんだよな。
格闘家と政治家といった感じの質の違いはあるが・・・
デルフリンガーとデスブリンガー…
降臨しないかなデスブリンガー
>>465 デスブリンガーと聞いてPSOを思い出したが、おそらく違うだろうなー
>>463 そういうキャラだと逆に対メイジ戦で不覚取るかもしれんな。
ゼロ魔世界のメイジは本当に感情の高ぶりでパワーアップするから。
デスザウラーも降臨しねえかな
ガンスリおかえりー
相変わらず正気で狂気なアンジェリカ……
ルイズが壊れちまった人形を直せるマエストロだと願うしかない
デスブリンガーと聞くとWH40Kを思い出す。
ク・タンを呼び出すくらいなら、ウォーボス呼んだ方がまだマシか。
例の邪剣を想像して書き込んだが、いろいろあるんだね>デスブリンガー
472 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/20(月) 22:25:34 ID:AfUf7rMU
>>468 デスザウラーはバトスト版かアニメ版かで戦力が全然違うな。
バトスト版ならデス無双で済むが、アニメ版の真デスザウラーなら
荷電粒子砲一発で一国滅亡、1時間ほっといたら世界終了だ。
>>468 いや、デスザウラーはヤバ過ぎるだろうw
どうやって制御するつもりだw
それはともかく、メカ召喚ものなら是非ネクストACを出して欲しい俺がいる。
半壊したアレサとAMS負荷とコジマ汚染で瀕死のジョシュアさんとかどうよ!
アーマードコアだったらエヴァンジェかジナイーダだろうjk
それかジャック・O
デスブリンガーといえば、MD版のゴールデンアックスのラスボスくらいしか思いつかないよ?
デスアダー様倒すと、不死身のジャイアントスケルトンつれて出てくるの。
スケルトンがいなけりゃ大して強くないんだけどね。
476 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/20(月) 22:56:01 ID:DV4WeMUg
>>474 最後は聖地から特攻兵器ですね。わかります。
アーマードコアだったら地雷伍長かナインボール一択だろjk
長編第1話を投下したいのですが、よろしいですか?
クロス元・召喚キャラは最後に発表します(作中で名前が出ますが)。
>>475 デススリンガー? つまりベルゼブモンもといインプモン召喚だなw
でもあいつルイズに懐きそうにないな、むしろテファに召喚されて孤児院の子供たちと
遊んでる図が浮かぶ。
携帯から失礼いたします。
規制に巻き込まれて、投下不可能です。
避難所に投下したので、代理投下の方お願いいたします。
失礼しました。支援。
ファイヤーガンズは最強のロックバンドだ
最近召喚キャラが誰なのか勿体つけるのが多い気がする
>>412 え、あれブラックアウトだったんだ?そういや、スタスクぽいのもいたね。
あんまりキャラが違うんでてっきり別作品のキャラが召喚されてるもんかと…
>>480さんのレスが投下予告ではなく、代理投下の要請だった事に気付きました。
それでは投下させていただきます。
>>484 ちゃんと愛すべきスコぽんことスコルポノックも一緒くたに召喚されていますよ。
続きが見たいなぁ、ディセプティコン・ゼロ……
支援
しえん
「ZERO BOY’Sサーヴァントセレクション 第1話」
「宇宙の果てのどこかにいる私の僕よ。神聖で美しくそして強力な使い魔よ。私は心より求め訴えるわ。我が導きに応えなさいっ!!」
その詠唱の後に発生したのは、大柄な男子生徒を10メイル以上吹き飛ばすような強力な爆発だった。
「ゲホゲホ……」
何とか立ち上がって煙を払うルイズのピンクの長髪は少々煤けていた。うっすら涙ぐむ鳶色の瞳が爆発後に立ち上る爆煙を睨みつけている。
しかしそこに2つの人影があった。
「……人影!?」
そこに倒れていた1人は、薄茶色の神で白と薄紫を基調とした水兵服風の衣服(ただし下は膝が露出するほど短いスカートだったが)を纏った、ルイズと同年代の人間。
そしてもう1人は、ルイズよりずっと小柄な体、薄桃色のネグリジェ、薄緑色の髪には大きな鈴のような見た事の無い髪飾り、そして何より可憐な童顔という子供だった。
「ル、ルイズが平民を2人も召喚したぞ!」
「だが凄く可愛いな、ちくしょう……」
「2人とも変わった格好だな……」
マルコルヌが状況を言った後に生徒一同は様々な感想を言い合った。
「ミスタ・コルベール!」
「何だね、ミス・ヴァリエール?」
「やり直しを、サモン・サーヴァントのやり直しをお願いします!」
「ミス・ヴァリエール、それは許可できません。使い魔はメイジにとって最も必要な存在が召喚される。それを気に入らないという理由だけで拒否する事は、始祖ブリミルの意思に反する事になるでしょう」
「う、ううっ……」
その時、薄茶色の髪の方が呻き声を上げつつむっくり起き上がった。
「あの……、ここはどこですか……?」
少々ハスキーな声でそう尋ねつつ周囲をきょろきょろ見回している。
コルベールは近付くと少し屈んで視線を合わせ話しかける。
「こんにちは。私はこの儀式を監督しているコルベールといいます。君達がここに来た事についてちょっと説明をしたいんだけど、いいかな?」
「あ、ど、どうもこんにちは、コルベールさん……。ボク、志木秋巳っていいます……。それで、ここはどこなんですか……?」
「えっと、アキミ君……だね。実はいろいろ説明したい事はあるんだけど、やっぱりそっちの子が起きてから一緒に説明した方がいいと思うんだ。その子は君の友達かな?」
「いえ、ボク家にいたんですけど気がついたらここにいて……」
「そうなんだね。……ミス・ヴァリエール、すみませんがコントラクト・サーヴァントはその子も目を覚ましてからです。私と一緒に保健室に行きましょう。もちろんアキミ君も」
「は、はい……」
>>483 俺も長編だとあまり意味ない気もするけど、あんまり気にすんな、
支援
それから10分後、保健室では……、
「……あ、あれ……?」
薄緑色の髪の方も目を覚ました。
「よかった、目を覚ましたのですね」
「おじさん……、誰ですか……?」
「初めまして、私はコルベールといいます。君の名前は?」
「ゆずです……、橘ゆず……」
「ユズ君ですね。こちらはアキミ君というそうです。そうですね……、まずは何から話したものでしょうか……」
コルベールはハルケギニアの事、魔法の事、ここは貴族が魔法を学ぶ学校である事、2人がルイズの使い魔として召喚された事等を説明した。途中3人にトリステイン・ゲルマニア等の地名を幾つか尋ねてみたが、どれも知らないと答えてきた。
次に2人は自分達の事について話したが、最後に兄・姉・妹・母といった家族が心配するから早く帰してほしいと言った事は共通していた。
「あの、それでアキミ達はどうなるんですか?」
「問題はそこなんだよ。……さっき君達は元の場所に帰りたいと言っていたよね? ……残念だけど、今のところその方法は無いんだよ……。
でもこのままミス・ヴァリエールの使い魔として一生を過ごしてください、と言うわけにもいかないからね。
そこで提案なんだけど、君達が家に帰る方法が見つかるまでの間だけでいいから、ミス・ヴァリエールの使い魔になってくれないかい? もちろん君達の食べる物や住む場所も用意するよ。
……そうしないとミス・ヴァリエールは落第してしまうんだ……」
コルベールからの提案にルイズは思考を巡らせた。
確かに2人と契約すれば自分は落第しなくてすむ。しかし2人の気持ちはどうなるのだろうか? 使い魔としてではなく妹として2人を守りたい。
魔法を使える者が貴族なのではなく、自分より弱い者を守る義務を自覚しそれを果たす者が貴族なのだ。
ルイズは迷わなかった。
「ミスタ・コルベール、私アキミ達とは――」
「はい」
「わかりました……」
ルイズの拒否を遮って秋巳・ゆずは同意の返事をした。
「アキミ! ユズ!」
「ゆず、お家にいた時には家庭教師の先生に来てもらって、お勉強を教えてもらってたんです……。先生は一生懸命教えてくれました……。コルベール先生もきっとルイズお姉さんの事、一生懸命教えてたと思います……。
……だからゆず達のわがままでコルベール先生とルイズお姉ちゃんの頑張ったの、台無しにしちゃいけないんです……」
「ボクもおんなじ気持ちだよ。ルイズちゃんがボク達の事を考えてそう言ってくれてるのはわかるけど、ボク達自分の意志で決めたんだ」
2人の決意を知ったコルベールもルイズを諭すように、
「ミス・ヴァリエール、あなたはアキミ君達の意思を考慮したいのでしょう? それならば契約をしてください。……私からもお願いします」
「……わかりました。我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。5つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え我の使い魔となせ」
ルイズが2人の唇にそっとキスをしてコントラクト・サーヴァントは完了した。しかしその後にルイズが言った、
「お、女の子同士だからノーカウントよね」
との言葉に2人ともどこか悲しげな表情をしたのだった……。
これは・・・避難所で投下した方がいいんじゃにか・・・?
「やだなぁ、こんなに可愛い子が女の子のはずないじゃないですか」支援
以上投下終了です。
「CAGE BOY’Sヒロインセレクション」から「志木秋巳・橘ゆず」召喚です。
掟破り(多重クロス)の気がしないでもありませんが、作品は1つという事でご容赦ください。
それと行の長さを考えてなかったので、「長すぎる行があります」エラーの修正に時間がかかり間隔が開いた事をお詫びします。
んー、もう2レスぶんぐらい中身が欲しかったとです。乙です。
早瀬浩一(鉄のラインバレル)を召喚
↓
ルイスのパシリ
↓
VSギーシュでガンダールブ覚醒
↓
厨2病発症「俺がこの学園の正義だ!」
乙
代理依頼にノエインもきてるね
自分は規制かかってて駄目だ
投下乙です。
45分に未来の大魔女候補2人8話後編を代理投下しようと思うのだがよいかな?
あらら、ノエインまだ投下されてなかったのか。
ひとまず予告してしまったので45分から魔女候補投下開始します。
よく見て無くて申し訳ない。
「小ネタ」とも書かれてない、一話っきりの投下作品はwikiに転載しなくてもよくね?
と思うようになった。
昼の城下街の大通りは、多くの人々で賑わっている。休日という事も相まって、通りの両脇には、多くの露店が軒を連ねている。
人の波でごった返す通りには、蒼髪の少女が2人、肩を並べて歩いていた。
片方は小柄で、自身の身長程もある長大な杖を携え、眼鏡をかけたその顔立ちは感情というものが殆ど読み取れない。まるで、凍り付いた湖面の様だ。
トリステイン魔法学院の制服に身を包んだその少女は、タバサであった。
もう片方は長身で、非常に女らしいメリハリのある身体つきをしており、タバサと良く似た蒼髪だ。顔立ちも、どことなく似ている。
その少女は、コロコロと表情を変えて、常にタバサに話しかけている。
「人がいっぱい、いっぱいいるのね。ゴミゴミしてるのね。わざわざ歩くのは、面倒臭いのね」
「…………」
「飛べばひとっ飛びなのね」
「……ダメ」
手にした杖で、騒がしい少女の頭を強めに叩く。
「きゅいっ!? 痛いのね! ぶったのね! 酷いのね、おねえさまは酷いのね! シルフィ泣いちゃうのね!」
「……飛ぶのは、ダメ」
「きゅい。解ってるのね。ちょっとしたジョークなのね。会話を盛り上げるための、ウィットに富んだジョークなのね」
「…………」
会話から察するに、2人は姉妹か何かの関係の様に思えた。
自分の事を『シルフィ』と言った少女は、タバサの事を姉と呼んでいる。これは奇妙なことだ、万人が万人、どう考えても逆であると見るだろう。ともすれば、親と子に間違えられる程、2人の身長差は隔たっていた。
2人の関係は、姉妹とも、当然、親子とも違うのだが、ここでは関係ない事柄なので割愛する。
「きゅい。お腹空いたのね。もうお昼なのね。ここまで飛んで来て疲れたのね。
本屋なんて後回しにして、とっととご飯にするのね」
「…………」
「もう! 何とか言ってほしいのね」
「……本屋が先」
「じゃあ、その後にご飯なのね。さっさと行って終わらせるのね。お肉、お肉〜」
自分の都合の良いように解釈したシルフィは、タバサの手を取って走り出す。
タバサは特に抵抗する事無く、為されるがままに引っ張られていく。
暫くして、本屋の場所を知らなかったシルフィが、杖で殴打されるのはまた別のお話。
未来の大魔女候補2人 〜Judy & Louise〜
第8話 後編『サイトとデルフリンガー、その出会い』
ルイズはズンズンと、路地裏を進んでいく。その後ろからは、3種類の足音がついて来ている。
彼女が歩いているのは、先ほどサイトが地図とにらめっこをしていた場所から、二つ先にある角を曲がった狭い通りであった。
彼女は、肩を怒らせ早足で先導する。それは、汚らしい裏通りから早く抜け出したいという理由からではない。
ルイズの後を追いかけているのは、サイトとシエスタ、そしてジュディであった。4人は、汚らしい汚水がシミを作り、不快な悪臭がこびり付いた路地裏を駆け抜ける。
角を曲がってさらに細い路地に入り込んでいく。しばらく進むと、今度は4つ辻に出くわした。
ルイズはそこで立ち止まり、メモと辺りとを見比べている。
「この近くなのか?」
3人の中でいち早くルイズに追い付いたサイトが、気軽な口調で話し掛けた。
ルイズはそれに顔を顰める。
「ちょっとアンタ、口の利き方が為っていないんじゃなくて? 貴族には敬意を払いなさい」
「へえへえ。それは失礼をつかまつって大変悪う御座んした。
……これで宜し御座んすか?」
「こ、この馬鹿犬! そこに直りなさい! 直々に躾けてあげるわ!」
不真面目におちゃらけるサイトに、ルイズは疾風の如きチョップを繰り出す。顔は怒りによって、焼けた鉄の様に真っ赤になっている。
予備動作なしで繰り出されたチョップは、吸い込まれる様にサイトの眉間につきささった。
「アウチッ!」
「ふん。これに懲りたら次からは口のきき方に気をつけることね」
呻きながら顔面を抑えて痛みを堪えるサイトに、ルイズはそう言い放つ。
もだえ苦しむサイトにシエスタが駆け寄り、肩に手を置いて励ましている。
「ルイズさん、やりすぎだよ」
「うっ…… しょ、しょうがないじゃない。アイツ、生意気なんだもの。
ここで甘い顔したら益々つけあがるわ。だから厳しくいかなきゃ駄目なのよ。
そう、これは愛の鞭よ。優しい私だからこれ位で済んだけど、他の貴族にあんな事言ったら手打ちにされるわよ」
「そんなものかな?」
「そういうものなのよ。大体アレには、立場ってものが分かっていないわ」
ジュディの窘めに、ルイズは少し言葉に詰まるが、これは必要なことなのだと言い聞かす。
多少の贔屓目に見ても、サイトの態度は失礼なモノがあった。気心の知れた者同士ならまだしも、ほぼ初対面の間柄での受け答えではない。
それはジュディも感じていた事なので、それ以上何も言わなかった。
しかし、ここに空気や雰囲気を読まない馬鹿が居た。
「優しいって…… あれで優しいんなら、俺は愛と平和を司る大天使になれるっつーの」
「サ、サイトさん!」
シエスタの顔が引きつる。
場の空気が凍った。しかしそれにもかかわらず、サイトは笑いこけている。
ルイズは、怒りも何も感じさせない顔つきで、サイトに向かって一歩を踏み出す。ジュディは何かを感じ取り、彼女の傍を離れた。
「アンタ……」
「ち、違うんです。ミス・ヴァリエールはお優しくて、天使様みたいだって言ったんです。
そうですよね、サイトさん?」
必死に取り繕うシエスタだが、ルイズの表情に変化はない。その眼は氷のように冷たく、刃物の様に鋭い。
ルイズはさらに一歩を踏み出す、無言で。背筋が凍るような視線で射竦められ、シエスタは涙ぐんでサイトから離れた。
目の前の出来事に、毛筋ほどの関心を払っていないサイトは、指を突き付けながら、腹を抱えて笑う。
「そんなわけねー
天使どころか鬼だね。そう、その顔なんて…… 般、若?」
ようやくサイトは目の前のルイズに気が付いた。突きつけた指先が彷徨うように揺れる。
「えー、もしかして、怒ってらっしゃいます?」
「当たり前よ! こ、こ、こ、この馬鹿犬ー!」
サイトの両頬に、季節外れの紅葉が鮮やかに色づいた。
・
・
・
「さて、馬鹿らしいことで時間を無駄にしてしまったわね」
「ちぇ」
「あによ、文句あんの?」
「いーえ、なんでもございましぇーん。へんっ!」
サイトは、赤く腫れあがった両頬を擦りながら、不貞腐れた顔でそっぽを向く。
そんな険悪な2人の間で、シエスタはオロオロとしながらサイトを庇い、ジュディはルイズを何とか宥めている。
「申し訳ありません。私から良く言いつけておきますので、どうかお許し下さいまし」
「サイト君のこと、もう許してあげて。お願い」
「……ふんっ!
まあいいわ、じっくり躾けていけばいいだけだからね」
全く反省した様子がないサイトを一瞥して、ルイズは言い放つ。
あらためてルイズは、四つ辻の一方向、来た道から見て右方向に体を向ける。
そして、通りの奥、液体の入ったフラスコの看板がかかっている店を指差した。
「ほら、あれが『マリアのアトリエ』よ」
4人は、そのまま店の前に移動する。
秘薬屋『マリアのアトリエ』は、路地裏にある店の例に漏れず、小汚く、こじんまりとした店であった。
そして、その門戸は固く閉ざされていて、人の気配はない。窓には鎧戸などという上等な物は付いておらず、ただ板が打ちつけてあるだけだ。
「……もしかして、潰れてる?」
ポツリとサイトが呟く。
せっかくお使いを頼まれたのに、これでは無駄足だ。
他の店に行こうとも、サイトはこれ以外の店は知らないし、シエスタも秘薬屋に縁があるとは思えない。ジュディは何処か遠くから来たと聞いている。
と、なれば、残るはルイズだ。ルイズなら他の秘薬屋を知っているかもしれないが、怒らせてしまった手前、教えてくれるとは思えない。
目の前が暗くなる。あの先生は、怒らせると怖いのだ。以前、実験器具を壊してしまった時は、死を覚悟したサイトであった。
しかし、そんな絶望の中にも希望の光は灯る。
「うんん。何か貼紙がしてあるよ」
「あー… 読めないや」
生憎、サイトには、ミミズがのたくった跡のようにしか見えなかった。
「わたしにまっかせて。
えっとぉ……
無期休店中。ご用は、向かいの武器屋『マクシミリアン』まで。だって」
「……向かいの武器屋?」
読んでくれたのがジュディだったことを複雑に感じながらも、サイトは振り向く。
なるほど、その店の軒先には剣と盾の描かれた看板が下がっている。
その店は、通りから一段高い場所にあり、薄汚れた石段が入口に続いていた。
「汚そうな店ね」
「別に外で待ってくれてて、いいんだけどね」
そう言い捨てて、サイトは石段を上っていく。その後をシエスタとジュディが続く。
ルイズは入り口で暫くウロウロしていたが、1人でいてもしょうがないので、やがて、意を決して石段を上っていった。
・
・
・
入口に設えられている両開きの扉を押し開く。すると、埃を多量に含んだ空気が肺腑に侵入してくる。
店内は薄暗く、小さなランプに淡い炎が灯り、微妙な陰影を作り出していた。
「なんの ようだ !」
「うわっ! ごめんなさい!」
店に入ると同時、乱暴な声がサイト達を出迎えた。
声のする方へ目を向けると、そこにはカウンターを挟んで立つ2人の男がいた。
1人はカウンターの奥に立ち、パイプを銜えて、眼帯をした店主と思しき男。もう一人は、顎髭を生やし、筋骨逞しい体格をした男である。
「客か……
私はこれで失礼しよう」
「おう。次も頼むぜ、旦那」
顎髭の男はそう言って、サイトのそばを横切り出て行った。男が出て行ったのと入れ違いに、ルイズが入ってくる。
店主は、如何にも魔法使い然とした格好のジュディと、ルイズの胸元を飾る五芒星が刻まれたタイ留めに気が付くと、揉み手をしながら、引き攣った愛想笑いを浮かべる。
「へい いらっしゃい!!
きょうは なんのごようで」
「えーと。前の店の張り紙を見て来たんですけど……」
先程の怒鳴り声と、店主の厳つい顔付とで、腰が引き気味になっているサイトは、おずおずと用件を口にする。
「張り紙? ああ、あれか。
幾つか在庫を預かってはいるが、無いモノがあっても注文は受けられんよ」
店主は怪訝な顔つきをするが、直ぐに合点がいったようで、先に断りを入れる。客ではないと知り、少し残念そうな顔だ。
「あのー?
前のお店の人はいったい何処に?」
「あん? 知らねえよ、何処に行ったかなんて。
ただ、星の欠片が如何とか、手抜きでホウレン草を渡したのが不味かったとか何とか言ってたがね」
店主は首を振って、それ以上は知らないと言外に伝える。
「このメモに書いてあるモノをお願いします」
「ふんっ、ちょっと待ってな」
店主はそう言い捨てると、店の奥へ引っ込んで行った。
店主の鋭い視線から解放されて、人心地ついたサイトは、改めて店内を観察する。
壁際の棚には剣や槍、そして斧が、ある程度の区分わけをされて乱雑に置かれていた。そして、中央には、立派な甲冑や黒光りする皮鎧が置かれている。
大半の武器が無秩序に置かれている中で、整理が行き届いている棚が1つ、部屋の隅にあった。
サイトは、その棚に近寄る。そして、ひと振りの剣を手に取ると、おもむろに鞘から抜き放った。ランプの淡い光を受けて、妖しく煌めく。
呆けたような顔でサイトは、抜き身の長剣を眺める。剣は見事なもので、僅かに反りが入った刀身は鋭く、磨き抜かれた鏡のようだ。
そして、その刃の照りを見ていると、何故か背中がムズムズしてくる。
「サイト君、ドウしたの?」
「ジュディ! 危ないから近づいちゃダメよ!」
魂が抜かれたように呆けていたサイトは、その一言で正気に返り、長剣を鞘に戻す。
剣を棚に戻してから振り向くと、シエスタが心配そうな顔で覗きこんでいた。
「ぼーっとしてましたけど、如何したんですか」
「いや、えっと…… 見惚れてたのかな? 剣に?」
そんなやり取りをしていると、店の奥から店主が姿を現した。
店主は手に持った紙袋をカウンターに置くと、じろりとサイトを睨みつける。
「このメモに書かれてたものは全部この中に入ってる。兄ちゃん、運が良かったな」
店主は凄惨な笑顔を浮かべる。例えるならば、目の前に肉が転がってきた猛獣のソレだ。
サイトは完全に腰が引けてしまっているが、勇気を振り絞って店主に話しかけた。
「あのー、つかぬことをお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「あん?」
「ごめんなさい、ごめんなさい」
「別に謝るこたぁねえよ。言ってみな」
「あそこにある剣、おいくらするんですか?」
「若奥様は、下僕に剣をご所望で?」
剃刀よりもなお鋭い視線のまま、店主はルイズに問いかけた。口元を吊り上げ、逆さになった三日月の様に割れる。
それは、店主にとって最大限の愛想笑いであった。漏らしそうになったのは、ルイズだけの秘密だ。
それを隠すためか、自然と声が大きくなるルイズであった。
「ち、違うわ。
そいつは学院の下働きだから、私がそいつに出してあげるお金なんて、1ドニエたりともないわ!」
「そうでしたか。
最近、貴族様の間で下僕に剣を持たせるのが流行っているので、てっきり……」
自分の勘違いであったと、店主は眼を細め、頭を掻きながら謝罪する。
それは、熊が樽にじゃれつくくらいには愛嬌があった。まあ、最終的には、その樽を破壊してしまうのだが。
「下僕に剣を持たせるのが流行っている? どういうこと?」
ルイズは率直な疑問を口にする。
剣、いや、武器というものは、平民が魔法に対抗しようと作り上げたモノだと言われている。
事実、魔法を持つもの持たざる者というのは、貴族と平民という形で分けられ、魔法の絶対性を示すものであった。
しかし、その絶対の優位性を突き崩さんとするモノが武器だ。例えば、熟練の傭兵には、メイジ殺しと呼ばれる物騒な輩も居る。
だがそれは、武器の扱いに長けた傭兵や武芸者が持っての話である。
ただの使用人や下働きに、武器を持たせる意義など無い。と、ルイズは思う。
「おや? もしかしてご存じないので?」
「何がよ?」
まさか、知らないとは思わなかった。と、言いたげな店主の切り返しに、ルイズは不機嫌に眉を顰める。
「何でも、このトリステインの城下街を盗賊が荒しておりやして……」
「盗賊ぅ? それがどうして、下僕に剣を持たせるのに繋がるのよ?」
「へえ。その盗賊というのがですね、貴族やあくどい商人しか狙わないっていうんですよ。
そして、どんなに警備を固めても、どれだけ強固な錠前を用意しても、そいつ等にかかっちゃ意味がねぇんですよ」
店主は、何処か自慢げに話す。
「そいつ等って…… 何人も盗賊がいるの?」
「ええ、スゲェのが2人いるんですよ。
『土くれのフーケ』と『怪盗ソリス』っていいやして、こいつ等が散々お宝を盗みまくってるもんで、貴族の方々は下僕にまで剣を持たす有様でして……」
それまで黙って聞いていたサイトが、会話に割り込む。
「もしかしてそれ、義賊ってやつ?」
「まあ、フーケの方は知らねえが、ソリスは、恵まれない奴らに宝をばら撒いてるって聞くな」
「本当にそういうのって居るんだ。ファンタジー、マジパネェ。すっげー!」
「さ、サイトさん。声が大きいです。そんなに明け透けに言わなくても……」
シエスタは、ルイズを気にしてサイトを諌めるのだが、大して功は奏していないようだ。
はしゃぐサイトとは対照的に、ジュディは小首を傾げて疑問を零す。
「でも、盗むのは悪い事だよね?」
「そうよ。義賊とか言っても、犯罪者なのは同じよ」
ルイズも、所詮は盗人という意見であるらしい。
また何か難癖付けられてはかなわないと、話を剣の事に戻す。
「それで、あの剣っていくらなの?」
「エキュー金貨で500枚だ。兄ちゃんに払えるのかい?」
「ご、ごひゃく……」
それは、おおよそサイトが耳にしたことのない値段であった。
平民1人が1年間生活するのには、金貨120枚が必要だと言われている。そして、厨房の雑用として働くサイトの月額所得は、推して知るべし。下手をすれば平均を割っているかもしれない。
「さっき出て行った男がいただろ?
それはアイツが作ったヤツだよ。どこぞの騎士だったようだが、今じゃ腕のいい鍛冶屋さ。
この店にあるいいモノは、大体、奴の作だね。特にその四天王の銘は1、2を争う出来だ。そうそう手の出るもんじゃねぇよ」
打ちひしがれるサイトに、店主はそうフォローを入れる。
お陰で少し立ち直ったサイトは、その隣の棚を指差す。
「じゃ、じゃあ、あそこに置いてあるやつは!?」
「モノにもよるが、高いので250、安いのでも70はするな」
「しょ、しょんにゃに……」
サイトは膝から崩れ落ちる。
「サイトさん。元気出して下さい。
剣なんて物騒な物、持っていなくてもいいじゃないですか」
慰めるシエスタであったが、サイトの気持ちは沈み込んだままだ。
それを見ながら、店主は豪快に笑う。
「選んだモノが悪かったな、兄ちゃん。もっと安いヤツは、入口の近くにあるからそこから選ぶといい。
兄ちゃんは面白い奴だし、あの剣に目をつけたってことで、2割引で良いぜ」
「……値段は?」
「一律、金貨20枚だ。2割引だから、16だな。言っとくが、これ以上安いのはウチにはないからな」
「…………」
支援
サイトは言葉も出ない。金貨16枚でも、およそ2ヶ月分の給料に匹敵している。
剣は欲しい。でも、そんな金はない。
そのジレンマで、サイトは身悶え悩む。そして、深く考えるまでもなく、それを解決する方法はひとつしかない。
しかしそれは、サイトには許容しがたい方法である。悩んで悩んで悩みぬいた末で、彼は決心した。
静かにルイズに向き直ると、おもむろに膝を床につけ、頭を深々と下げる。それは、ドゲザと呼ばれる東方伝来のお願いの方法であった。
「お願いします! お金貸して下さい! 一生のお願いです!」
「え? ちょ、ちょっと……」
ルイズはうろたえる。彼女は、ドゲザの意味は知らなかったが、必死に懇願している事は理解できた。
ルイズのサイトへの評価は、貴族を全く敬わない常識知らずの扱いにくい馬鹿であり、こうも簡単に頭を下げるとは思ってもいなかった。
「な、なに言ってんのよ! アンタなんかに貸すお金なんてないわ!」
「そこをどうにか! この通りです! 絶対に返しますから!」
額を床に擦り付けるようにして、サイトは懇願する。
「お願いします。ミス・ヴァリエール、お金は後で必ずお支払いいたしますから、どうかここは立て替えてもらえないでしょうか!?」
「ねえ、お金貸してあげようよ。サイト君が可哀想だよ」
サイトの必死さに同情したのか、シエスタとジュディが援護に加わる。
これはたまったものではない。ここでもし駄目だと言えば、血も涙もない人間だと思われてしまう。
同情とか罪悪感などこれっぽちも感じていないルイズであったが、駄目だと言える雰囲気ではなかった。
唸るように喉の奥から声を絞り出す。
「ぅぅう…… 分かったわよ」
「えっ?」
サイトが勢い良く顔を上げる。
「いいわよ! 立て替えてあげるわよ!」
吠えるように言葉をサイトに叩きつける。
サイトはキョトンとした面持ちで、疑わしそうに聞き返す。
「ホントに?」
「どれがいいのよ! 何でも持ってきなさいよ!」
「ホントにホント?」
「いいつってんでしょ!」
「ひゃっほう♪」
サイトは、先程の態度が嘘の様に飛び上がって、喜びを露わにする。
「何でもっていった? 何でもっていったよね!?
言質取ったよ。ここにいるみんなが証人だから、後で違うって言っても駄目だからな!」
その言い草に、ルイズの神経は逆撫でされる。
有頂天になっているサイトは、それに気が付かず能天気に喋り続ける。シエスタとジュディは、既に退避済みだ。
「ああ、何でも言ってみるものだな。本当に貸してくれるなんて、神様仏様ルイズ様だね。
待てよ。何でもっていう事は、あの名剣でも良いって事に……」
「調子に乗るんじゃないわよ。このっ、馬鹿犬!」
絶妙なローキックがサイトの向こう脛を襲う。余りの激痛に腰を屈めると、顔は丁度ルイズの真正面にくる事になる。
その丁寧に差し出された顎を、流れるようなフックが打ち抜いた。
・
・
・
「あー、痛ぇ。冗談なのに、あんな怒ることないよな?」
「冗談でも言っちゃダメだよ」
「そうですよ、ジュディちゃんの言うとおりです」
痛む顎を擦りながら、サイトは棚に収められた剣を物色していた。隣には、ジュディとシエスタが居る。
何とか怒りを収めたルイズは、椅子に座ってサイトの後ろ姿を睨みつけている。
「うーん、どれがいいかな?」
物色しながらサイトは唸る。
棚に収められた剣は、刃毀れや錆が浮いたりしており、店で一番安いという主の言葉は嘘ではないようだ。
そしてそこの棚にあるモノは、1つとして新品はなく、全て中古であるらしかった。綺麗にふき取られているが、柄に赤黒い染みが出来ているモノまである。
片っ端から剣を抜くのだが、いまいちピンと来るものがない。中には中古と言い難いモノもあったが、サイトの食指は動かなかった。
「これなんてどうですか? サイトさん」
「ん?」
シエスタが選んだ剣を受け取ると、少し離れて鞘から抜き放つ。
剣はシンプルな長剣であった。刃には錆びも浮いておらず、良品と言える。そして、ハンドガードが付きの柄は、サイトの手に良く馴染んだ。
「うーん…… なんか違うんだよなぁ。
やっぱ、凄えのを見た後だからかな?」
「おいおい。それは高望みが過ぎるってもんだぜ、兄ちゃん。
もうソレにしちまえよ。前の持ち主の手入れが良かったお陰で、結構な掘り出し物だぜ?」
それを無視して、サイトは剣を棚に戻すと再び物色を始める。
暫くして、サイトは大剣を手に取った。それは、ジュディの身長よりも長大な、グレートソードと呼ばれる剣であった。
サイトはまじまじと、その剣を見つめる。錆が浮いてボロボロになっているが、元々の造りがしっかりしているのか、かなり頑丈そうに見える。
「本当に、これも20?」
「ああ、そうだよ。本当なら80は欲しいんだがね、買い手が付かないからそこに置いてんだよ」
「結構気に入ったかも知んない。よし、これに決めた!」
「はは。良い選眼してるじゃないか。
でも、兄ちゃんの細腕でそいつを振り回すのは無理だな。そいつと相性がいいなら売ってもいいが、諦めな」
店主は奇妙なことを言う。サイトの腕ではどう足掻いても、碌に振り回すことは出来ないだろう。ならば、相性など一目瞭然だ。
「相性?」
「ああ。そいつを鞘から抜いてみな」
その言葉に促されるままに、サイトは大剣を抜き放つ。
「ぷはー。久しぶりの娑婆だぁね」
「だ、誰だ?」
突然響いた任侠気溢れる低い声に、サイトは辺りを見回す。サイトと同様に、店主以外の3人も辺りを見回すが、誰も見当たらない。
謎の声はからかう様な声をサイトにぶつける。
「はっ! てめえの目は節穴かい? 俺っちは目の前にいるよ!」
「なぁ!? け、剣が喋ってる!」
確かにその声は、サイトが持つ大剣から発せられていた。喋る度に鍔元の金具がガチャガチャと震えている。
サイトは、目を丸くして大剣を穴が空くほどに見る。
支援
支援します。
「やめてくんな。そんなに見つめられちゃ、尻が痒くならぁ」
剣がそう吐き捨てる。声色からして照れているらしく、人間の様に手足があれば、さぞ感情に富んだ仕草をしただろう。
サイトとシエスタは、剣が喋るという常識では考えられない出来事に、ただ驚愕するのみだが、ルイズとジュディはそうではなかった。
2人共、驚いているのには違いないのだが、何か心当たりがあるらしく、2人とはまた違った眼つきで、その剣を見つめている。
「もしかして、インテリジェンスソード?」
「もしかして、魔生命体?」
「「えっ?」」
互いに呟き、顔を見合わせるその一連の動作は、全くの同じタイミングであった。
◆◇◆
大通りに面したとある本屋に、タバサとシルフィの姿があった。
シルフィの両手には、幾つもの紙袋が下げられている。
「おねえさま〜 まだなのね? もうこれで、4件目なのね」
「…………」
タバサは、シルフィの疲れを滲ませる哀願には一切取り合わず、本棚から一冊の本を抜き取り、パラパラと流し読みをしている。
非情な態度を取るタバサに、シルフィは縋りつき、周りの迷惑も顧みずに大声で叫ぶ。
「ずるいのね。ずるいのね! 本屋の後はご飯だって言ったのに、ずるいのね!」
「言っていない」
タバサは本を閉じて棚に戻すと、静かで抑揚のない声で言い放つ。そして、再び本を手に取ると、流し読みを始めた。
シルフィは頭に強い衝撃を受けたように、ヨロヨロと後ずさり腰砕けにへたり込む。
「そ、そんな、酷い、酷過ぎるのね。
裏切ったのね! シルフィの気持ちを裏切ったのね! きゅい、きゅいきゅい!」
「自業自得」
泣き叫ぶシルフィを、タバサはバッサリと切り捨てる。
「大人しく待っていればよかった」
「でも、シルフィは、おねえさまと一緒がいいのね。
一緒にいれば、もっとおねえさまの事が分かるのね。それに、シルフィの事ももっと知って欲しいのね」
「…………」
泣き真似をやめたシルフィは、タバサの事がもっと知りたいから傍にいるのだ、と零す。
しかし、タバサはそれを無視する。
流し読みをやめて本を棚に戻すと、踵を返して別の本棚へと向かう。
「おねえさまは、酷い人なのね。冷血人間! メガネっ娘! 本の虫娘!
日が暮れるまでココにいるといいのね。その間にシルフィは、お腹一杯お肉を貪ってくるのね!」
そう言い捨てて、本屋から飛び出そうとする。
だが、その背中に静かな声が掛けられると、ピタリと静止した。
その声は、下手をすれば街の喧騒に飲み込まれてしまうほど小さく、素っ気ない声であった。
しかし、それをシルフィが聞き逃すことなどあり得ない。
なぜならば、その声の主は彼女が大好きなタバサであったのだから。
「本屋はこれが最後。後の予定はない」
それを聞いて振り向いたシルフィの顔は、喜色満面であった。素早くタバサの元に一足飛びで駆け寄ると、力一杯に抱擁する。
「シルフィは信じてたのね。おねえさまはやっぱり優しいのね。
ドコにでもついて行くのね! きゅいきゅいきゅいきゅい!」
「…………」
為されるがままのタバサと2人の身長差とが相まって、子供がお気に入りのぬいぐるみを抱きしめるかのように見える。
シルフィがタバサを抱きしめると、タバサの顔はシルフィの胸の辺りに来る事になる。
初めは為されるがままになっていたタバサだが、その事実に気が付くと、多少乱暴にシルフィの腕を振り払った。不機嫌になった理由は推して知るべし。
「ああ、待ってほしいのね」
「…………」
甘い顔をしたことを少し後悔しながら、タバサはシルフィを置き去りにして、本棚の間をすり抜けていく。
気が付けば、児童書のコーナーに足を踏み入れていた。タバサが求めているのは、学術書や戦術教本の類であり、こんな場所には用がない。
踵を返し、足早に立ち去ろうとするタバサの視界の端に、ある本の表紙が一瞬映り込む。
彼女は足を止めた。足を入れ替えて少し引き返す。
そして、一瞬だけ視界の片隅に映り込んだ本を探し出すと、タバサは静かに持ち上げた。
「楽園への塔とイーヴァルディの勇者……」
タバサは、幾分の懐かしみを込めた声でそう読み上げる。
改めてその本棚を眺めると、同じような題名の本が、幾つも陳列されていた。
『女神の像とイーヴァルディの勇者』『時を駆けるイーヴァルディの勇者』等々……
題名から分かる通り、これらの本は『イーヴァルディの勇者』と題された作品群である。
『イーヴァルディの勇者』とは、このハルケギニアで最も読まれている作品と言っても過言ではないだろう。おそらく、この物語を知らない子供は稀だ。
貴族は勿論、文字の読めない平民にも口伝として語り継がれている。子供の頃に読んだことのない人間でも、少し大きな街に出れば、人形劇や演劇、詩吟として、耳にする機会も多いだろう。
作品としては荒唐無稽で、歴史的背景など皆無であり、設定も作品毎にまちまちで矛盾も多く、文学とはとても言えない代物である。
それゆえに、まともな研究は為されていない物語であり、今なお、新しいストーリーが粗製乱造されている物語でもある。
だが、その単純明快で勧善懲悪のストーリーは面白い。万人に受け入れられているのが、その証であろう。
かくいうタバサも、このストーリーに心高ぶらせた1人であった。
タバサは多くの事をこの本から学んだ。そして、目を瞑れば、思い出すのは母の姿。夜眠れぬ自分に優しく語り聞かせてくれたのが、この物語を聞いた初めてだったかもしれない。
そう昔を思い出したタバサは、手に取った本を元に戻し。あるタイトルを探し始めた。
それは、今でもタバサに少なからずの影響を残している本であり、母がよく読んでくれた本でもある。
ほどなくして、その本は見つかった。表紙には、おどろおどろしいタッチで地下都市が描かれている。
題名は『イーヴァルディの勇者 対 不死王』とあった。
◆◇◆
『美しきセイレーン』そんな名前の店がブルドンネ街にはある。
そこは、東方伝来という触れ込みの『お茶』を出す『カッフェ』という店である。
オープンテラスが設けられ、酒場とは違う、開かれた雰囲気を持つ店だ。
そこには、一通りの観光を済ませた一行の姿があった。
一行とは、ルイズとジュディ、そしてサイトとシエスタのことである。
4人は2つのテーブルを占拠し、ルイズとジュディ、サイトとシエスタがそれぞれのテーブルで向かい合わせで座っている。
時刻はつい先ほど鐘が4つなったばかりであり、少し遅めのティータイムであった。
この2組がなぜ一緒にいるかというと、以下のとおりである。
ルイズの予定としては、コルベールのお使いを終わらした後は、さっさと別れてジュディと観光をする予定であった。
しかし、シエスタの強い要望で、2人をお供に連れて行くことになったのだった。
色々と省略するが、簡潔に言えば、案内してくれた事へのお礼。裏の事情を言えば、サイトがした不始末のお詫びである。
ルイズは、当然いい顔はしなかったが、結局、シエスタの案内で観光をする事と相成った。
結果から言えば、シエスタに案内させたのは正解と言えた。彼女は裏道や裏通りを熟知しており、ルイズも知らない観光の穴場を知っていた。
道中も、シエスタの気配りは細やかで、ルイズが不快な思いをすることはなく、満足いく観光であったと言える。この店へと案内したのも、彼女であった。
ただ、唯一の落ち度があるとするならば、ルイズとサイトが同じ場所にいる羽目になったことであろう。
こればっかりは、シエスタといえどフォローのしようがない。この2人の相性は、正に水と油、犬と猿の間柄である。
「結構いいティーカップ使ってるじゃない」
「湯呑みで飲みてぇ」
「このパイの焼き上がりも丁度いいわね」
「固焼きのせんべいが欲しい」
「うっ、苦いわ。砂糖を入れなきゃ」
「うげっ」
「……ミルクはどこかしら?」
「うげげっ」
「さっきから何なのよ!? 言いたい事があるなら言いなさいよ!」
何かを言う度に、いちいちつぶやくサイトにルイズが吠える。サイトは、ルイズの飲み方に不満があるようだった。
「豆腐とワインに旅を…… っと、違った」
サイトは慌てて言い直す。
「このお茶はね、そのまま飲むのが一番いんだって。
そりゃ、渋いかもしれないけど、そこが、いいんじゃあないか」
「……なんで平民のアンタが、そんなこと知ってんのよ。
これって、東方からきたお茶よ? 平民が、早々飲む機会があるものじゃないわよ?」
疑問を口にするルイズに、サイトは口を尖らせて反論する。
「今、気軽に飲めてるじゃん」
「揚げ足取るんじゃないわよ!
そりゃあ最近は、安値で飲めるようになってきてるみたいだけど、だからって、平民が気軽に飲めるものでもないわ。
特に、アンタみたいな貧乏人には、ね」
平民が口にするのは、水か安いワインが相場だ。お茶などは嗜好品の類であり、最近は見る機会が増えてきたといえど、平民の中では生活に余裕のある者ぐらいしか、口にしたことはないはずである。
「貧乏人って…… そりゃあ、そんなに持ってないけどさ、もうちょっと言い方ってのがあるんじゃないの?」
「なによ、借金持ちが人並みの意見を言わないでくれる?」
「うっ、金は返すって」
あんまりなルイズの物言いに、サイトは力なく反論するが、痛い所を突かれて口ごもる。
「ふんっ、アンタなんてモグラよ、モグラ。モグラで十分よ!
暗がりで、モグモグ言ってなさいよ! このモグラ!」
「くぅ〜、畜生! 金さえ、金さえあれば……!」
容赦なく追い打ちをかけられ挫けそうになるサイトに、救いの手が差し伸べられる。
「お金なんてなくたって大丈夫ですよ。
2人でブドウを育てて、名前入りのワインを造りましょう!」
「ドサクサに紛れてなに言ってんの!?」
綺麗な笑顔を浮かべるシエスタに、サイトは仰天する。しかし彼女は、いたって真面目な顔だ。もう既に、人生設計の真っ最中なのかもしれない。
「はっはっは、坊主はモテモテだぁね。まったく、羨ましいね!」
サイトの背中、椅子に立てかけられて、ホンの少しだけ鞘から刀身を覗かせたデルフリンガーが、鍔元の金具をガチャガチャいわせながら、からかいの声を上げた。
「ああ、居たんだっけ? ボロ剣」
突如聞こえてきた声に対するルイズの反応は、実に淡白なモノであった。
「平らな娘っ子は酷いねぇ、年長者を敬おうって気はないのかい?」
「あんあまり可哀想なこと言ったら、デルフ君が可哀想だよ」
拗ねた様な声を出すデルフリンガーをジュディが庇う。
「おお、嬉しいねぇ。俺っちの味方してくれるなんて、お嬢ちゃんはいい子だぁね。
そうそう、モノは相談なんだが、俺っちを持ってみてくんない?」
「やめなさいよ、錆び臭くなっちゃうじゃない。それに、刃物なんて危ないわ。指とか切ったらどうするのよ」
「なんだか、過保護だねぇ。俺っちが大人しく買われてやったのは、お嬢ちゃんが気になったからだっていうのに……」
ジュディに対しての過保護な態度を、デルフリンガーは揶揄するのだが、ルイズは聞く耳持たず、バッサリと切り捨てる。
意味深な事を言っていた気もするが、記憶が曖昧な剣の相手などする気も起らず、ルイズは捨て置くことにした。
「なによ? アンタ、ロリコンなの? 剣のくせに、このぺド剣」
「酷っ! いくらなんでも、それは酷ぇんじゃあねえかい? 平らな娘っ子は容赦ないねぇ、まったく」
「うっさい、鉄屑。それより、さっきから『平らな』っていうのはどういう意味よ?」
「そりゃあ、体の一部分を表してるに決まってるだろ」
目など無いデルフリンガーであったが、何となく胸部に目線が集中している様な気がする。重ねて言うが、デルフリンガーに目は無い。
「こ、こ、この、セクハラ剣! 溶かして包丁にしてやるわ!」
言わんとするところを瞬時に理解したルイズは、火メイジがお湯を沸かすのよりも早く、瞬時に顔を真っ赤にしてデルフリンガーに躍りかかる。
「うわぁ! 落ち着いて! 杖を振り回したらダメだよ!」
「大平原はないよなぁ」
「え、えっと、そのぉ…… 頑張ってください! 応援してます!」
「うるさい、うるさい、うるさーーいっ!!」
サイトはデルフリンガーに同意し、シエスタは擁護しているようで傷を抉っている。
何もかもが煩わしくなったルイズは、ジュディの制止も用をなさず、形振り構わず大声で当たり散らす。
何かと騒がしい4人組+αは、周りからの奇異の目に気が付くことなく、そのまま気が済むまで騒ぎ続けていた。
「ヨハンナ、そろそろ休憩に入ってくれ!」
ルイズの大声にかき消されることなく、店主の大声が響いた。
・
・
・
今回の成長。
ルイズは、パンチL2のスキルパネルを習得しました。
ジュディは、????がL2に成長しました。なお、このスキルは同名のスキルでしか上書きできません。
第8話 -了-
第8話投下完了。
うん、長すぎ。しかも、書きたい事の8割ぐらいしか書けてない……
デルフがジュディに感じた事については次回に回します。
あと、秘薬屋の店主の名前は、短くしたらダメですよ?
さて、ライドウは出るし、スパロボZはまだ途中、何をするにしても時間が足りない今日この頃。
やらなきゃいけない事も多いけど、とりあえず、サイトのステータスを公開してきますね。
サイト にんげん おとこ
HP5/80
こうげき 10 デルフリンガー −
ぼうぎょ 2 パーカー −
すばやさ 8
まりょく 0
518 :
代理1:2008/10/21(火) 00:33:30 ID:vlNXib63
よく考えたら日付変わったらさるさん解除されてたんじゃないか…?
今回は片手落ちすぎた…全然気が回らなかった
代理2の人ありがとう。作者さん投下乙です。
お二方、代理投下ありがとう御座いました。
では、また1ヶ月後にお会いしましょう。
遅れたがガンスリンガーの人乙
待ってました。
521 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/21(火) 00:40:10 ID:glMqGqCa
クソみたいなSS乙
魔女候補乙です
一ヶ月は長いが期待して待っております
>>521 自己紹介は良いからさっさと続き書きなさい
マジパねぇファンタジーにワロタww
乙です
投下予告、投下予告。
フルCGアニメ、「DIGITAL MONSTER X-evolution」からアルファモンを召喚。
問題がなければ17分に投下しまーす。
誰か青い雪と赤い雨、代理投下してやってくれ。
環境がよければ俺がやってるんだが…。
支援する
んじゃ
>>525の後に代理するかな
とりあえず支援
「はあはあ……」
俺は走る。
無我夢中で。
気がついたら、俺は何故かこの姿になっていた。
気がついたら、俺はリアルワールドにいた。
気がついたら、俺は見たことも無い機械を手に持ち、何故かそれの名前を知っていた。
人間たちが、俺を恐れている。
恐れていない人間たちは、他のデジモンたちと連携して、俺を捕まえようとする。
彼らは俺に呼びかける、「危害を加えるつもりは無い」と。
それを聞き、止まろうとして、突如として正面に現れた鏡のような物体に俺は突っ込んでしまった。
その日、一人の究極体が錯乱状態で都内を彷徨い、突如としてその姿を消した。
分かっているのは、我々の呼びかけに反応し、止まろうとしたことだけである。
俺がサイバードラモンと出会った方のデジタルワールドから来たのか、賢と出会った方のデジタルワールドから来たのか……。
ひょっとしたら、どちらでもない全く別のデジタルワールドから来たのだろうか?
真相は闇の中だ……。 秋山リョウ
第一節「ナイト・オブ・ザ・ミョズニトニルン」
視界が晴れると、そこは草原だった。
そこには、さっきまでいたリアルワールドのそれとは明らかに違う服を着ている人間たちがいる。
自分が召喚した者を見て、ルイズは戸惑った。
漆黒の鎧をまとい、マントを羽織った、目の前の存在に。
他の生徒たちは、メイジを召喚したのかと、どよめく。
だがルイズは、何となくではあるが、目の前にいるのは人外ではないかと思った。
「ここは何処だ? 教えてくれ」
彼が声を発し、それにルイズは自然と応えた。
「ここは、トリステイン魔法学院よ」
「聞いたことが無いな……。俺は……アルファモン。君の名は?」
「ルイズよ」
「ルイズか……。ルイズ、俺は、何故ここにいるんだ?」
何故か憔悴しているアルファモンを落ち着かせようと、自分が召喚したと告げようとした直後、隣にいるコルベールに遮られた。
「ミス・ヴァリエール、他の生徒たちを待たせてはいけません。先に契約を済ませてください」
コルベールに促され、ルイズは渋々先に契約を済ませることにした。
「ごめんなさい、事情は後で話すから」
アルファモンに謝罪し、コントラクト・サーヴァントを詠唱して、口付けした。
アルファモンは驚くより先に、凄まじい熱さを額に感じ、思わずうめく。
その額には、純白のルーンが刻まれていた。
「い、今のは!?」
「大丈夫、ルーンが刻まれただけよ」
その日の夜、ルイズは自室で、アルファモンにこの世界のこと、サモン・サーヴァントとコントラクト・サーヴァントについて、アルファモンに教えていた。
アルファモンは、自分がルイズによって召喚され、そしてあのときのキスで使い魔になったことを知る。
落ち着きを取り戻したアルファモンは、不思議とその事実を受け入れていた。
究極体である彼に、ルーンの洗脳効果は効かない。
彼は自分の意思だけでそれを受け入れた。
ルイズは、今度は問い質した。
何処から来たのか、何者なのか、そして召喚された時に手に持っていたものは何かを。
アルファモンは、淡々と答える。
「俺は、こことは違う別の世界から来た、「デジモン」という人外の存在だ。そして、これに関しては「デジヴァイス」という名前以外全く分からない」
「別の世界から来た!?」
「そうだ。俺はデジタルワールドと呼ばれるデジモンたちが住む世界から、人間たちが住むリアルワールドに迷い込み、そこで君に召喚された」
「そうなの……」
そして、アルファモンはルイズにデジヴァイスを手渡した。
驚くルイズを尻目に、アルファモンは続ける。
「これを君に」
「いいの?」
「何となくだが、君が持っていた方がいい気がするんだ」
そう言って、アルファモンは更に続けようとするが、思いとどまった。
広場から、女子寮へと行く際、違和感を感じた。
ルイズだけ、歩いていたことに。
何故ルイズだけ歩いていたのかを聞こうとしたのだ。
(俺は今、聞いてはいけないことを聞こうとした……)
気を取り直し、アルファモンはそっと話題を変えた。
「ルイズ、使い魔とは、何をすればいいんだ?」
「使い魔には三つの役目があるの。感覚の共有に秘薬の材料の調達。そして主の身を守ること」
ルイズの説明に、フムフムとうなずくアルファモン。
ルイズは試しに目を閉じる。
そこには、アルファモンを見上げながら両目を閉じた自分の姿が移った。
「感覚の共有は可能みたいね」
「秘薬の材料の調達だが、俺はこの世界に来たばかりだから無理だな。そして最後の一つ……、俺にうってつけ、だな」
「あなた、強いの?」
「あまり嬉しくはないが、強い」
そう言って、アルファモンはうつむく。
悪いことを聞いてしまったと勘違いしたルイズは、思わず謝りそうになったが、アルファモンに先手を打たれた。
「君は悪くない。悪いのは、勝手に感傷に浸った俺の方だ」
アルファモンはそう言って立ち上がり、ドアに手をかける。
「何処へ行くの?」
「散歩も兼ねて、学院内を探検してくる。安心しろ、逃げたりしないさ」
夜の学院を、アルファモンが歩き回る。
アルファモンは、学院の内部をある程度見てまわったところで食堂に入り、小さな人形たちが踊る光景を目の当たりにする。
アルファモンにとって、それは不思議以外の言葉が当てはまらない光景だった。
「魔法で動いているの、か?」
アルファモンを尻目に、アルヴィーたちは踊り続ける。
彼らの踊りをしばらく眺め、やがて飽きてきたアルファモンは食堂を出ようとした。
しかし、背後に気配を感じ、右腕を振り回しながら物凄い勢いで振り向く。
そこには誰もいない。
よく見ると、ネズミが月明りに照らされていた。
「ネズミか」
そう言い残し、アルファモンは食堂を出た。
アルファモンの足音が徐々に遠くなる。
聞こえなくなった直後、ネズミは暗がりへと逃げた。
直後、そこから人のようなものが現れる。
「空白の席の主……、まさかこの目で見れようとはな。我(われ)がオスマンの使い魔となりて百と五十年。これだから人間の側にいるのは止められぬ」
平時はネズミに化け、モードソグニルと呼ばれる、オールド・オスマンの使い魔。
七大魔王が一人、リリスモン。
「弄りがいがなさそうだから、代わりにルイズの方を弄ってやるかの」
リリスモンは月明りに照らされながら微笑んだ。
次回、「アイ・アム・ナッシングネス」まで、サヨウナラ……
投下終了、投下終了。
今回のサブタイトルの元ネタは、ゾンビ映画の金字塔、「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」です。
支援、ありがとうございましたー。
乙
なんでゾンビ映画をサブタイにw
そして使い魔が魔王なことに主人は気づいてるのか?
とりあえず次回を待つ
それはそうと、10分後に青い雪と赤い雨代理投下するね
>>533 当初、「デジモンセイバーズ」のクレニアムモンをミョズにしようとした名残。
見た目が禍々しい&名前の由来が「頭蓋骨」なので、「ホラー映画のタイトルをもじってサブタイにしちゃおう」と考えたのが事の始まり。
サイズ的にでかすぎたのでアルファモンにバトンタッチしますた。
代理投下、支援します。
―――――――ギーシュの勝ちだ。
ヴェストリの広場の誰もがそう確信した。
剣を突き立てんとするギーシュは、アトリに対して完全に死角に入っており、
回避行動も恐らく間に合わないだろう事が予測された。
万が一間に合ったとしても軽傷では済まないだろう。
女生徒の中にはこれから起こりうる凄惨たる光景が脳裏に過ぎり、早々と顔を覆う者さえいた。
しかし、ギーシュのその蒼い瞳に映ったのは、振り向き様に蛇の様に笑う標的の姿だった。
読まれていたのか、という不安がギーシュの脳裏を過ぎるが、
前述の通りもはや回避行動は間に合わないであろう事、
そして自分は相手の頭上、つまり空中に居るため回避行動が取りづらく、
『攻撃は最大の防御』を証明する立場に回る方が結果的に安全である、と踏んだ。
結果から言うならば避ける素振りを全く見せないアトリに対し、ギーシュの攻撃は「予定通り」行われた。
ギーシュの全体重を乗せた剣の切っ先は、アトリが振り返ってしまった為
頸椎には至らなかったが、頭蓋に深々と突き刺さった。
誰もがアトリの死を予感した。
しかし、ギーシュの表情には人を綾めてしまった罪悪感や、強大な相手を倒した優越感は見当たらず、
その蒼い瞳は苛烈な光を湛えたままであった。
「“それ”は突き刺したというより、沈んでいったという方が正しかった」と後にギーシュは友人に語る。
なぜなら、剣が突き刺さった部位は、水面に小石を投じたかのように波紋が広がっていたのだ。
そして、ギーシュの手には手ごたえと言う物が全く感じられず、むしろその水面に引きずり込まれる様な感覚すらあった。
なによりもアトリの表情には、苦悶の色は存在しなかった、むしろ何も無かったかの様に笑い続けている。
ハルケギニアの住人である彼等は、強靭な生命力を持つ生命体にはある程度慣れているはずだった、が
その情景は恐怖心を煽るには充分だった。―――最も、気絶する程強烈な物ではなかったが。
彼等は箍が外れたように口々に叫んだ、「化け物だ」「幽霊だ」と。
いや、失礼。たった今一人気絶した様だ。
恐怖に駆られた観衆の中には、杖を取る者さえ居たが、
ギーシュが現状において、生命の危機に陥ってる訳でも無い為、
決闘に横槍を入れる事を、『死に値する不名誉』とする、トリステイン貴族の子弟達には手出し出来ようも無かった。
一方のアトリはその時、頭蓋に剣を残したまま、その身を震わせながらただ笑っていた。
攻撃その物はアトリにとって拙く、欠伸が出る程鈍い物だったが
その気概はアトリを満足させうるに充分な様だった。
そしてその狂喜を、一分も隠す事も無く表情に映し出しアトリは言った。
「痛ぇな、殺す気かよ」
その言葉と共に赤藤色(ウィステリア・レッド)の瞳を、円形と見まごう程に見開きギーシュを見やる。
そしてその手を、ギーシュに向かってゆっくりと伸ばす。
ギーシュはそれを回避する為に、アトリの頭蓋より剣を引き抜こうとしたが、その必要は認められなかった。
剣は可視部分以外既に存在しなかった為である。
鋭利な刃で切断されたかの様な断面と共に、深々と刺さっていたはずの剣先は消え失せてしまっていたのだ。
引き抜こうと力んだ為にその勢いで体制を崩した物の、体を捻りアトリを蹴る事でその手を寸での所でかわし、距離を取る事に成功した。
脳天に剣を深々と突き刺しても死なない相手、死なない所かダメージを受けた気配すら無い。
脳、もしくは弱点が全く別の所にあるのか、又は物理攻撃が全く効かないのか。
前者であればまだ手のうち様があるが、後者であれば土のドットであるギーシュに勝ちの目は無い。
決闘が始まって以降、初めて彼の蒼い瞳に、焦燥感が募り始めていた。
(とにかく、今は時間を稼がなくては・・・)
造花を振り先程突進させた“ワルキューレ”を反転させ、アトリに向かって突進させる。
それに対してアトリは不敵な笑みを浮かべ、両手を前に出す。
――――次の瞬間、轟音と共に光の塊がアトリから放たれた。
一瞬にしてギーシュの“ワルキューレ”は光に飲み込まれてしまった。
“ワルキューレ”を飲み込んだ光はそこで止まる事は無く、その背にあった城壁の様な壁にその身をぶつけ、轟音を再び学院内に響かせた。
もはや観衆は騒ぎ立てる事すら出来なかった。
その足で歩みを進めるアトリに対し、ギーシュに残された戦力は盾兵一騎のみ。
しかしそれすらも、苦し紛れに繰り出す拳をアトリにその手で軽く止められ、
やがてチョコレートの様に溶けて生まれ故郷に還っていく。
「もう終わりかよ」
掠れた独特の声とアクセントで、対戦者は問う。
それに対しギーシュは鋭く睨み返しはした物の、誰の目にも余力がある様には見えなかった。
犠牲となった“ワルキューレ”達は作戦を練る時間はおろか、
精神力をわずかにすら回復する時間をも与えてはくれなかった。
通常よりも大きく、重厚な“ワルキューレ”を無理に錬成した上に、更に青銅剣の錬成。
多くの観衆の予測は正しく、ギーシュにこれ以上錬成を行う精神力はもう殆ど残っては居なかった。
『敗北』の2文字が、動かし難い現実となってギーシュの背に圧し掛かる。
圧し掛かる精神的重圧を感じながらも、ギーシュの瞳はまだ闘志を失ってはいなかった。
普段のギーシュならば、ここで早々に負けを認めていただろう。
いや、剣を突き立てる事すら無かったかもしれない。
だが、それを甘受する訳にいかない理由がギーシュにはあった。
理由はただ1つ、『モンモランシーを泣かせた』事。
“貴族”という目線から見れば他にも多々あるのだろうが、ギーシュにはそれだけで充分だった。
真っ直ぐにその瞳でアトリを見据える。
杖を強く握りしめ、僅かに残るありったけの精神を研ぎ澄ます。
そしてしなやかに造花を振り、花弁を散らせる。
幾度目かの“錬金”
勝利の女神が貴族的、あるいは騎士的ロマンチシズムそれのみで、勝利の帰結が決まる事を是とする精神的糖尿病患者であれば、
この苦境を打破する事が可能である、と思わせる様な素晴らしい物を彼は“錬金”せしめただろう。
しかし、現実という物はそう甘くは無かった。
勝利の女神とは、人が願うより遥かにしたたかで、現実主義者である。
地面より生まれ出でたのは2体のみ。
それも“ワルキューレ”と呼べる物では無い、青銅の“何か”だった。
地中から生まれ出でた“それ”は、アトリの方へ数歩踏み出すと崩れ去る。
主人であるギーシュと共に。
精神力を使い果したギーシュは、意識をその手から放したのだった。
体全体で倒れこむギーシュに対し、地面はしたたかな逆撃を加えようと待ち構えている。
しかし、それは未然に終わった。
地面に舌打をさせたのは、対戦者であるアトリだった。
アトリは瞬時にギーシュの元へ移動すると、受け止めゆっくりとその場に寝かせた。
「ギーシュ!!!」
それとほぼ同時に悲鳴とも似た声と共に、事の発端となった少女、モンモンランシーがギーシュが気絶したのを見て駆け寄ってくる。
恐怖の対象であったはずのアトリが傍に立っているのだが、そんな事を気にする様子も無く、
何らかの魔法を唱えながら、ギーシュの容体を確認している。
気にする余裕がないというべきなのだろうか、アトリ等見えてはいないかの様であった。
アトリはそんな二人を見てため息とも取れると笑みをふっと浮かべると、彼等に背を向け、
独特の不思議な足音を響かせながら自らの主人の元へ向かうのだった。
その際、
「仲良くしろよ」
と最も近くに居たモンモランシーでさえ、気付くか気付かないかという程度の声量で呟いたのが彼女の耳に届いた。
ハッとして後ろを振り向くと、ルイズが荒れ狂う大波の様な形相で、アトリを大声で呼びつけていた。
今まで大勢の人を圧倒し続けた者が、遥かに小柄なルイズに成す術も無く怒られている。
そんな光景を見てモンモランシーは呆気に取られたのちに、不意にその表情に微笑みを取り戻すのだった。
支援
今回はここまでです。
大好きなアトリと、大好きなギーシュのバトルということで気合が入りすぎてしまい、
かえって読みづらい文章になってしまいました。
後1話位でギーシュ編終わると思います。
-----------------------------------------
以上、代理投下した!
メンテナンスしなくていい機械ねエ・・・こんなのは?
・ゾンダーや原種(GGG)
・スパルタクス(未来の2つの顔)
・ゲッターロボ(但し、ゲッター線を利用しているもの)
・アースクレイドル(スパロボ)
・ワールド・デヴァステーター(スターウォーズ)
543 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/21(火) 02:02:58 ID:pBUmu0nh
>>534 いきなり究極体とはww
ギーシュ戦やった場合即死だな
ごめん
さげ
だれか人はいるのかな?
五分後より投下を開始します
支援
ガッツきたあああああ
支援
支援ーー!
ワルドが杖を構え、ガッツがそれに応えたことで事態は一気に緊迫する。
杖を持つ右手を前に出し、やや半身になって構えたワルドに対し、ガッツは腰を落としドラゴンころしを後ろに引いた明らかな迎撃の構え。
「ねえギーシュ、実際にダーリンとやりあったあなたはこの勝負どうなると思う?」
今は物置となった練兵場の端っこで、二人を遠巻きに見つめていたキュルケは隣で苔むした木箱に腰掛けるギーシュに声をかけた。
「ううむ……」
ギーシュの顎に手を当て、頭を捻った。
常識外れの鉄塊を振り回し、ワルキューレを軽々と屠った、悪夢のようなガッツの姿が思い出される。
確かにガッツは強い。そこらの傭兵とは桁が違う。昨日もあっという間に盗賊たちを蹴散らしていた。
しかし、対するワルドも相当な実力の持ち主であることは明白だ。
圧倒的な力で自分を打ち負かした『鉄屑』のグリズネフを、さらに圧倒的な力で持って叩き伏せたワルド。一晩たったことで消耗した精神力も回復したことだろう。
何より彼は『ドット』に過ぎない自分とは違う。メイジの最高位『スクウェア』だ。ガッツがどれほど『戦士』として優れていようが勝てるとは思えない。
「いくらガッツが常識離れしているとはいっても、彼に勝てるとは思えないね」
「あら、そうかしら?」
「だって常識的に考えてごらんよ? 彼は、ワルドはただのメイジじゃない。その頂点に立つ『スクウェア』なんだ。それが杖も持たない平民に負けるはずがないだろう」
ギーシュの言葉に、くすくす、とキュルケは笑った。
「何がおかしい?」
「だってあなた今自分で言ったじゃない。ダーリンは『常識離れ』してるって」
「む……」
ギーシュは口ごもった。
確かに、ガッツは色々と飛びぬけている。あの大剣などもはや狂気の沙汰だ。
あんなものを軽々と振り回す時点で『平民』なんて枠組みはとっくに超えている。
「じゃあ君はどっちが勝つと思っているんだ?」
「応援しているのはダーリンの方よ、もちろん。でも勝つのはワルドでしょうね」
「な、なんだそりゃ? 結局君も僕と変わらないんじゃないか」
「あなた、素手で強力な『ブレス』を吐くドラゴンに勝てる? 杖を持たない人間が、スクウェアのメイジに挑むっていうのは『そういうこと』なのよ」
普段の恋する乙女のものとは違う、冷静な瞳でキュルケは言った。
「えーい!」
キュルケとギーシュの間にルイズが顔を出した。
「どっちが勝つとかはどーでもいいのよ!!」
二人に割り込んだルイズが、がしがしとギーシュの肩を揺さぶる。
「アンタ止めてきなさいよ! 姫様の任務の途中なのよ!? こんなことしてる場合じゃないのはわかるでしょお!?」
「いいやややややしししししかしだね」
「お、おち、落ち着いてくださいルイズさん!」
脳みそがシェイクされんばかりにギーシュの頭がガクガク揺れる。メリッサは大絶賛沸騰中のルイズのマントを掴み、必死で宥めにかかった。
「と、とと止めろったってそりゃりゃりゃむむむ無理だだだよよよよ」
「なによ意気地なし!! へっぽこギーシュ!!」
「手を! まずは手を離しましょうルイズさん!!」
支援
メリッサに懇願され、ようやくルイズがギーシュの肩から手を離す。ギーシュはため息をつくと乱れた前髪を戻した。
「意気地がどうとかいう問題じゃないんだルイズ。いいかい? これは『決闘』なんだ」
ギーシュは胸元から薔薇の造花を抜き、くりくりと指で遊ぶ。
「確かに、今は『こんなこと』をしている場合ではないだろう。これからのことを考えればこちらの主戦力である二人が潰しあうなんて馬鹿げてる……しかし『そんなこと』は最早関係がないんだ。
周りの人間がとやかく言えることじゃない。周りの状況も関係ない。決闘が始まってしまった以上、これは決闘に望む二人、その『誇り』の問題なんだ。この決闘を止められるとしたら、それは彼ら自身だけだ」
「でも……!」
「君も貴族だ。誇りの在り方については理解しているはずだ。本当はわかってるんだろう? だから君自身、無理やりに割り込んででも止める、そういった強硬な手段は取っていない」
ルイズはぐっ、と言葉を詰まらせた。確かに決闘に横槍を入れるなど、これほど貴族としての矜持を欠いた行為はない。
「こうなったら腹くくって見守りなさいよルイズ」
あくまで軽い調子のキュルケをむっ、と睨みながらもルイズは木箱に腰掛けた。
こうなっては決闘が何とか無事に終わることを願うしかない。
「もう……なんでこうなるのよ……!」
無意識に手を重ねて、祈るようなポーズのままルイズはガッツとワルドを見守った。
キュルケはふと気になって後ろを振り返った。
少し高く積まれた木箱の上にタバサが座っている。珍しいことに本は閉じて膝の上に置いたままだ。
その目はしっかりとガッツとワルド、二人の決闘を見つめている。
(いえ、違うわね――――)
キュルケは思い出す。ギーシュとガッツの決闘を。
その時も、今のようにタバサは決闘を食い入るように見つめていた。
(見ているのは――――ダーリン、か)
思い返せばガッツに対しては、タバサは最初からよく喋った。昨日もガッツに体の調子を尋ねていた。他人にはとことん無関心なこの子がだ。
何かあるのだろうか?
前を向き、視線を戻す。
今度、尋ねてみよう―――――キュルケはそう思った。
もしもそれが『恋』なのだとしたら―――そう想像すると嬉しくなる。
あたしたち、ライバルよ。タバサ。
キュルケは楽しそうにくすりと微笑んだ。
支援
(さて……どうするか)
ワルドはガッツの体勢、その眼光を観察しながら黙考する。
昨晩の、軽々と盗賊を屠るガッツの姿が脳裏を掠める。
自分の持つ杖であの大剣と切り結ぶことは到底出来まい。例え魔法で杖を強化したとしても、だ。あの剣の一撃を受けうるだけの腕力を自分は持っていない。
ではどうするか。
実のところ、対策は簡単に思い浮かぶ。
ガッツは迎え撃つ姿勢を取っている。ならば、彼の射程の外から魔法を放てばいい。例えガッツが迎撃の姿勢を解いても同じこと。一定の距離を保ち、魔法を放ち続ければそれだけで勝てる。
(しかし……それでは逃げ回っているようで、どうにも癪だな)
ワルドはチラリとルイズに目を向けた。ルイズはその小さな胸を押さえて、こちらを心配そうに見つめている。
この決闘は、彼女を自分に振り向かせるための布石だ。無様な勝ち方では意味がない。
ここは、正面から切り崩す。
一歩、ワルドは踏み出した。
(あえて彼の射程まで踏み込む。そして彼が剣を振り出した瞬間、エア・ハンマーで剣を撃ち払う!)
じり、じり、と二人の間が縮まっていく。
シン―――と空気が張り詰める。ワルドの靴と石床が擦れ合う音だけが部屋に響く。
見守るキュルケ、タバサ、ギーシュ、メリッサ、そしてルイズはごくり、と唾を飲んだ。ただ一人、パックだけがお気楽に二人の様子を眺めていた。
一歩、さらに一歩。杖を構えたまま、ワルドが距離を詰めていく。
7メイル―――6メイル―――5メイル。
ガッツはまだ動かない。
そこからさらに半歩だけ歩を進めて、ワルドはピタリと動きを止めた。
(まだ動かぬつもりか……?)
昨晩見たガッツの体さばき、そして大剣の長さを考慮すれば、ワルドの立つその場所は既にガッツの射程の内であるはずだ。
そして、もう半歩進めばガッツがワルドの射程に入る。そうすれば、もはや勝負は決したも同然だ。ガッツの始動を待つまでもなく、一呼吸のうちにワルドの持つ杖がガッツの喉を切り裂くだろう。
にもかかわらず、ガッツはピクリとも動かない。表情すら変えず、じっとワルドを見据えている。
(何を……考えている……?)
ガッツの考えが読めない。ワルドの頬をつう、と汗が流れた。
ゆっくりと、油断無く、細心の注意を払って―――さらに、半歩前へ進む。
ガッツは、動かない。
ワルドの中で困惑が嘲りへと変わっていく。
すなわち――――「馬鹿め」と。
(愚かな…! こちらの射程を読み違えたか!)
ガッツに気取られぬよう、静かに息を吸う。ワルドの目が鋭い光を放った。
(ここまで踏み込めばもはや魔法など必要ない!! 終わりだ!!)
ワルドが地を蹴り、一瞬でガッツへと肉薄する。
「あの距離を一瞬で!!」
その速度に、観戦していた皆から驚愕の声が上がる。
ワルドの動きは正しく『閃光』の如き速度。だが同時にガッツも動いた。ぎしりとドラゴンころしを握りこむ。右腕の筋肉が膨張する。
「今更!!」
既にワルドの杖がガッツに届く距離。
ガッツの喉に向け、ワルドはさながら侍が抜刀するが如く杖を放つ。
バリリ―――!!
響いたのはガッツが歯を強く噛み締めた音。
前に出した左足を軸足としてガッツの体がぎゅるりと回る。ごぅんと音を立て、ドラゴンころしが風を裂く
支援って一人が何回もして意味あるの?支援
連投を回避するためだから意味はある 支援
(は、速―――!!)
ワルドの目が大きく見開かれる。
その鉄塊は、弧を描くように振り下ろされ、凄まじい速度で持ってワルドに迫る。今更エア・ハンマーで撃ち払うことはできない。
「く、うおおおお!?」
ごぅ、と空気を切り裂く轟音が響いた。
砂塵が舞い上がり、二人の姿を覆い隠す。
「ど、どうなった!?」
ギーシュが身を乗り出して叫んだ。答えられる者はいない。皆、土煙が晴れるのをじっと見つめている。
ルイズは、ただ二人の無事を祈った。
土煙が晴れる。
ガッツは立っていた。その喉元にはワルドの杖が突きつけられている。
ワルドも立っていた。その肩の上でガッツの大剣は止められている。
「相…打ち……?」
キュルケがそう呟いたとき、ガッツの喉からつぅ、と血が流れ始めた。
「届いたのはワルド子爵の一撃か!」
ギーシュが思わず木箱から立ち上がり、叫んだ。その様子を一瞥して、ワルドはガッツに視線を戻した。
「成程……な………」
口の端を歪めてワルドは笑い、ガッツの喉元に突きつけたままだった杖を腰にしまった。
ガッツもドラゴンころしを引くと背中に仕舞う。
それを見届けるとワルドはくるりと踵を返した。
「君の力はよく分かった。手間をかけさせてすまなかったな。明日に備えてゆっくりと休んでくれ」
そう言い残して、ワルドは足早に練兵場を後にする。残されたガッツはぼりぼりと頭をかいた。
「…ったく、勝手な野郎だ。貴族ってのはどうしてこうどいつもこいつも……」
「ダーーーリーーンッ!!」
駆け寄ってきたキュルケがそのままの勢いで抱きついてくる。抱きつく寸前にジャンプしてガッツの顔に胸を押し付ける徹底ぶりだ。
「―――どいつも、こいつも」
ガッツは呆れてそのままキスしようとしてきたキュルケの顔を引き剥がす。
「ちょっと! 離れなさいよ年中発情猫!! 人の使い魔にベタベタするんじゃないわよ!!」
ルイズがキュルケのマントを引っ掴んでガッツから引きずり落とした。
「誰が猫ですってちびルイズ!!」
「猫のほうがまだマシよ!! 愛嬌があるもの!! あんたなんてただの淫売よ!! 売女!!」
「言ったわねこの洗濯板!! ナイチチ!! ゼロチチ!! 貧乳!! 貧しい乳!!」
「キイィーーーーーーー!!!!」
ぎゃあぎゃあとルイズとキュルケは取っ組み合いを始めた。
ギーシュはそれを呆れた様子で眺めていて、メリッサはただおろおろし、タバサは黙々と本を読んでいた。
ガッツは踵を返すと練兵場の出入り口へ向かう。
「待ちなさいガッツ!」
ルイズはガッツを呼び止める。足を止め、振り返ったガッツにルイズはとたとたと駆け寄った。
「……血が出てるわ」
ルイズはポケットからハンカチを取り出し、差し出した。
>>554 少なくとも俺が勇気付けられる
「いいよ、いらねえ」
「いいから」
ルイズは背伸びして、ガッツの喉をそっと拭った。
「お、おい」
「やりにくいわ。すこし屈んで」
ルイズは強い目でガッツを見つめてくる。有無を言わせぬ剣幕だ。
ガッツは「やれやれ」とため息をついた。
どかり、とその場に座り込む。
ルイズも膝を曲げてしゃがみ込んだ。
切り傷を撫でるように血を拭う。白いハンカチが赤く染まっていく。
「ねえ……」
血を拭いながらルイズが口を開いた。
「何でこんな馬鹿なことしたのよ?」
「知るか。ふっかけてきたのは向こうだ。向こうに聞け」
「それでも、そんな馬鹿正直に受ける必要ないじゃない。馬鹿」
「てめ……」
ルイズはハンカチをポケットに仕舞い、代わりに小さな巾着を取り出した。
「パックがくれたの。妖精の粉。塗っちゃうからじっとしてて」
ガッツはギーシュの肩にいるパックに目を向けた。
パックがぐっ、と親指を突き出してくる。
「くれた」というルイズの言葉に、ギーシュは愕然として親指を突き出すパックを見ていた。
「夕べは……ありがとう」
「あん?」
ぽつりと呟かれたルイズの言葉。聞き取ることが出来なくて、ガッツは問い返す。
「なんでもないわよ!」
ルイズはふん! とガッツから顔を背けた。
「なによルイズのやつダーリンといちゃいちゃして!」
キュルケはルイズへの嫉妬を隠そうともせずぎりぎりと親指の爪を噛んだ。
はっ、としてタバサの方を振り返る。タバサはいつも通り、我関せずと本を読んでいた。
(恋…ってわけじゃないのかしら? わからないわ……)
ふむぅ、とキュルケは首を傾げた。
カツン、カツンと廊下に足音が響く。その音は、歩く者の心情を表す様に荒い。
足音の主はワルドだった。ぎりっ、と歯を噛み締めたその表情には、怒り、苛立ち、悔しさ、様々な感情がない交ぜになっている。
(相打ちなどでは――――ない!!)
もしガッツの剣が振り切られていたとしたら、無様に地に転がっていたのは自分だった。
完全に! 先手を取ったにもかかわらず! 身体に到達したのはガッツの剣の方が先だったのだ!!
―――それも、あの馬鹿げた鉄の塊で!!
『閃光』の名を持つワルドにとって、これほどの屈辱はなかった。
しかし、決してワルドが遅かったわけではない。その証拠に、この決闘の正しい結末を知るのは当事者であるワルドとガッツだけだ。周囲で遠巻きに見守っていた者たちには認識しえぬ、刹那の差だったのだ。
ワルドは己の左肩に手を触れた。先程までほんの間近にあった鉄塊を思い出すとぞっとするが、その肩には傷一つない。
その事実がさらにワルドを戦慄させた。
あれだけ巨大な鉄塊を、自身の剣速を上回る速度で振り回しながら、それでいてなおピタリと寸止めして見せたのだ。
どれ程の『力』があればそんな芸当が可能になるのか。余りにも人間離れしすぎている。
「さすがは伝説の使い魔……といったところか。ガンダールヴ…一筋縄ではいかないな」
少し落ち着いたのか、先程よりは幾分穏やかな足取りで歩きながら、ワルドはぽつりと呟いた。
支援
支援
さて、決闘騒ぎも一段落した夜。ギーシュは『女神の杵』亭一階の酒場で昨夜と同じく頭を抱えていた。
テーブルを挟んだ向かい側にはメリッサが申し訳なさそうに座っていて、その隣にはルイズが座っている。キュルケとタバサは別のテーブルで酒を飲み、大いに盛り上がっていた。
といっても、相変わらずタバサは本を読んでいて、キュルケがお構い無しに喋っているだけなのだが。
「もう! どうしてダーリンは私に振り向いてくれないのかしら!! ねえ、タバサ、私に足りないものって何!?」
「慎み」
「ちょっと! もう少し静かにしなさいよ!!」
ルイズがキュルケ達の方を向いて怒鳴った。
「まったく…」と呟くと、再びテーブルに向き直る。
「それで話の続きだけど……」
メリッサの話を整理するとこうだ。
メリッサ――本名メリッサ・ヴァルカモニカ――はアルビオンの貴族であり、父の昔からの友人であるというジュール・ド・モット伯爵を頼って亡命してきたのだという。
その道中、あの『鉄屑』のグリズネフ達に襲われてしまった。
それをルイズ達が救出したという形なのだが―――これからメリッサをどうするか、それでルイズ達は頭を悩ませている。
「あの盗賊共から私を救っていただいただけで十分です。これ以上御迷惑をおかけするわけにはまいりません。どうぞ私のことはお気になさらずにアルビオンへ渡って下さい」
メリッサはそう言うが、それが出来ないからギーシュは机に突っ伏して頭を抱えているのだ。
何しろ、一切合財を強奪されてしまったので、メリッサは今一文無しだ。仮に路銀を貸し与えたとしても、メリッサ一人では危険すぎる。
トリステイン魔法学院からここラ・ロシェールに来るまでの約一日の間に、二度も盗賊に襲われたのだ。今、トリステイン周辺の治安は非常に悪くなっているのだろう。
そんな中をメリッサ一人で行かせるわけにはいかない。『これ以上』彼女に辛い思いをさせるわけにはいかなかった。
「ぐぬぅ……」
奇妙な呻き声を上げてギーシュは頭を抱えている。ギーシュの頭の中で、アンリエッタの笑顔とメリッサの泣き顔が天秤にかけられ揺れていた。
姫殿下から賜った重大な任務か、目の前で困っている一人の少女か。
ギーシュはだらだらと脂汗をかいた。メリッサはただただ申し訳なさそうに肩をすくめている。
だが、答えを出す必要は無くなった。
「伏せて!」
鋭いタバサの叫びと共に、無数の矢が窓から飛来してきたからだ。
キュルケは咄嗟にテーブルを倒して盾にした。それに倣ってギーシュもテーブルを倒す。飛来した矢がタバサの魔法で巻き上げられた。
「何事だ!!」
二階からワルドが降りてきた。直後にパックを肩に乗せたガッツも姿を見せる。
「見ての通りよ! 襲撃されてるわ!!」
姿勢を低くしてテーブルに隠れながらルイズは叫んだ。ワルドがそんなルイズの元に駆け寄り、テーブルの隙間から外を伺う。玄関から傭兵たちが突入してくるのが見えた。
ちらほらといた他の客は一目散に店の奥へと駆け出し、店の主人は傭兵たちに何か喚いていたがその喉に矢を受け沈黙した。
「参ったな」
ワルドが杖を振り、魔法で傭兵達を攻撃しながら呟いた。
「数が多いわ! 何人いるのか分からない!! このままじゃジリ貧よ!!」
ルイズもまた杖を振りながら叫んだ。唱えている呪文は『ファイヤー・ボール』。もちろん炎球は発生せず、ただ爆発が巻き起こる。だが狭い店内に次々と傭兵たちが押し入ってくる今の状況では十分に効果的だった。
だが一向に傭兵の数が減る気配がない。確かにジリ貧だった。
「諸君……」
ワルドが皆に呼びかける。その声を遮るようにガッツがテーブルの前に躍り出た。
「馬ッ…!!」
思わずルイズは叫んでいた。その目の前で、ガッツに向かって矢が飛来する。
青鯨超重装猛進撃滅支援団
支援
「うわわわ!!」
ガッツの肩にいたパックは「わたたた!」とガッツの腰元の鞄に逃げ込んだ。ガッツは身体を半身にし、ドラゴンころしを盾にすることで矢を防ぎきる。
ドラゴンころしに阻まれた矢がぽろぽろと落ちた。その様子をそこにいる全員が、襲ってきた傭兵たちでさえも唖然と見つめている。
その一瞬の隙をつき、ガッツはドラゴンころしを振るった。ドゴン!! と激しい音を立て、甲冑を着込んだ傭兵三人が同時に身体を分かたれ、吹き飛ぶ。
ギーシュは、その様子を声も無く見つめていた。杖を振ることも忘れ、余りにも荒々しく、美しくすらあるガッツの姿にただ見入る。
「こんな奴らを相手にしていてもしょうがない!! 裏口から出るんだ!!」
ワルドの声でギーシュは我に返る。タバサの指がタバサ自身とキュルケ、それからギーシュを指差した。
「私たちが囮になる」
「感謝する」
ワルドは頷き、礼を言うとルイズとガッツに声をかけ、裏口に向かった。
ギーシュは遠ざかるガッツの背中を、見えなくなるまで見つめていた。
「こら、ギーシュ! ぼけっとしないでよ!!」
そんなギーシュにキュルケが声を荒げる。ギーシュはぐっ、と唇を引き結び、傭兵達に向き直った。
ワルドの先導の元、ルイズとガッツはラ・ロシェールの町を駆ける。
階段を駆け上がり、上へ、上へ。気付けばラ・ロシェールの町を一望できる程の高さまで上がってきていた。
「な……!」
階段を上り切り、丘の上に出たところで、そこに現れた光景にガッツは思わず声を漏らした。
目の前に巨大な樹が聳え立っていた。大きさが山ほどもある巨大な樹が四方八方に枝を伸ばしている。
その枝から吊り下がっているもの――目を凝らしてみれば、信じられぬことにそれは船だった。
「ふわぁ〜、なんだこれ!!」
ガッツの鞄から顔を出して、パックも感嘆の声を上げる。
ワルドはその樹の幹に向かって駆け出した。ルイズも迷うことなくついて行く。どうやらこの巨大な樹が目的地のようだった。
ガッツも駆け出そうとした時、急に前を行くワルドが足を止めた。
何事かと前方に目を向けると、人影がある。
その人物はガッツと似たような黒いマントを纏っていた。マントの隙間から、さらに黒い杖が顔を覗かせている。
「何者だ」
ワルドの問いに、男は答えない。
男の顔を覆う白い仮面が、一つに重なった双月の光を反射した。
支援
以上、投下終了です
支援もらえると本当嬉しいもんですよ
ああ、読んでくれてるんだ〜ってね
支援してくれたみんなありがとう!!
そんじゃあフーケ大暴れの次回でまた会いましょう
>>562 アドン乙
次も楽しみGJ
乙
やっぱガッツは人間の常識で考えたら怪我するなw
さて偏在はどんな策を用意してきたのか
期待して待つ
乙です。
相変わらず面白かったです。
次回の投下も楽しみにしてます。
>>568 原作ですらそうなのに、ガンダールブで強化とかもうね
何だろう、ベルセルクの空気が違和感なくゼロ魔に溶け込んでる感じ。
決闘と直後のドタバタ、ワルドで締めてギーシュで緩んでと緩急のつけ方が
上手いというか、動きが感じられるというか。
ギーシュが単なるギャグ担当じゃなくて、徐々に成長してるところもいい。
自分が文章書くとなぜか論文やレポートの類になっちゃうんだよな。
いっそガリア戦記風味だと押し通してみるか…無理です orz
ともかくGJ!
文才のない俺はGJしかできない
ノエインもベルセルクもGJ
毎回楽しみにしてます
こうも文才を見せられると自信を無くしてしまうわw
>>566 お疲れ様でした―。
ガッツかっけぇ。
フーケとゴーレム戦に白仮面戦と見せ場が続くなー
次回も楽しみです。
>>570 色々な書き方がある。それでいいじゃないですか。
私みたく皆おもしろいと言う村上春樹がダメなのもいますしね。
>>570 一部のSSにもあったように、○○のレポートとか手記とかいう形式もありかも
ベルセルクの人、乙でした
標準以上の文才で、十分読めるレベルだね
ワルドvsガッツの決闘に一定の理由をもたせたのもグッドです
おしむらくは、テンプレに縛られている事。この文才ならオリジナル展開タップリでもOKかと
>>570 そういうの好きな俺がいる
冷静な第3者の目ってのもいいもんだ
書き方ので言うなら
「たまらぬ使い魔であった」
で全編書いてくれる勇者はいないもんか
どうも。
息するようにネタを吐いているのでおなじみ。久保の書き手です。
他に無いようでしたら、例によって例の如く、このまま投下いたします。
どぉ〜こへ往ぅくぅのだぁ〜ろぉお〜かぁとぉお〜きのぉ〜メぇイズぅ〜
今回は舞踏会近辺の話を取り上げつつ、状況整理の回です。
その日、ルイズは上機嫌だった。
理由は昨日の使い魔品評会。
幼なじみでもあるアンリエッタ王女の前で、予定通り行ったクォヴレーの射的。
弾ごめの間絶えない連続射撃に、他の出席者共々目を白黒していた王女だが、品評会を終えた後、こっそり会ってこう言ってくれたのだ。
『人間の使い魔だなんて変わっていますけど、とても強い使い魔を呼んだのですね、ルイズ。あなたの努力が実を結んだ証でしょう』
誉めてもらえた!
幼い頃からの一番の友達に!
王族の少女に!
それだけでもう舞い上がってしまっているルイズだ。開始前に「アンリエッタ様に見せるには、無骨すぎはしないだろうか?」などと悩んでいたのも遠い過去。
誉められる『一助を担った』クォヴレーにも、何か褒美をあげねばなるまい。
何が良いだろうか?
宝石?アクセサリー?
いやいや、相手は少女ではないのだ。
だが、異性が喜ぶ物などとんと見当が付かないルイズ。
ならば、自分にしかできないことをしてあげよう。
何がある?
自分は貴族だ。貴族である自分が、彼にしてあげられること。
(そうだわ。今夜のフリッグの舞踏会で一緒に踊ってあげましょう!)
普通、平民はそこに立つことは出来ないのだ。ならば自分がその場に引き上げてやろう。
想像してみる。
自分がドレスを着て、楽士が手がける曲の流れる中、クォヴレーと共に踊り……。
カッと顔が熱く火照る。
なんだか凄く気恥ずかしいのは何故だろう?
(そ、そうよ!平民相手だから恥ずかしいのね!でも、ご褒美だからこの恥ずかしさも我慢しなくちゃいけないのよ、私は!)
そう自分に言い含めつつルイズはしきりに頷いていた。
その日、オスマンは憂鬱だった。
理由は昨日の使い魔品評会。
ヴァリエール公爵家三女の使い魔が、派手なガンアクションを展開したためだ。
早速今日、王立アカデミーの連中が噂を聞きつけて使い魔と銃の提出を申し入れてきた。
冗談ではない。
アカデミーにクォヴレーを差し出せば、下手をすれば解剖しようとする者も出てくるかも知れない。
そうすれば、いくらあの穏和な性格の少年とはいえ黙ってやられるはずもなく、間違いなく呼び込むだろう。
――あの、悪魔を。
『これが、俺のアストラナガン。言ってみれば俺の使い魔のような物だ』
腰を抜かした自分たちを引き起こそうとしながら、あっけらかんと少年は言った。
説明の上ではゴーレムのような物だと彼は言っていたが、断じてそんな可愛い物ではないだろう。
噂の盗賊、土くれのフーケが作るという巨大なゴーレムより一回り小さい程度であるらしいそれは、オスマン達の目の前で常識を遙かに超える高速で飛び去っていった。
あの巨体。あの速度。
銃を見た時には、彼に脅威を感じた。今は、恐怖を抱いている。
グラモンのぼんぼんとの決闘で使って見せた銃など話にならない。本気で彼が戦えば、止めるのに一体何人のメイジが犠牲になるのだろう?
……その疑問の正解を知らないだけ、まだしもオスマンは幸せだと言えた。
結論を言えば、メイジが何人束になったところで、本気を出した彼には敵わないのだから。
ともかく、銃に関してはコルベールと彼が譲られた銃を説明役として送り、クォヴレーの身柄に関しては、当学院に在籍する生徒の大切な使い魔であるからして、提出しないと盛大に突っぱねてやった。
だが、今後あの使い魔にもルイズにも自重を求めねばなるまいと、オスマンはため息をついた。
その日、クォヴレーはいつも通りだった。
理由はない。当然だ。
何もないからこそいつも通りの日だ。
いつも通り朝起きて洗濯に行き、いつも通り帰ってきてルイズを起こすと、結局一度しか手伝わなかった着替えの間は室外で待機。いつも通りルイズが食事をしている間給仕をし、いつも通り授業を聴講。
その後は、剣を与えられてからルイズに言われて設けた剣の修行時間だった。
「……しかし不思議だ。結局教わることなくそれなりに剣が使えている」
それなりどころではない。剣を与えられてから一週間余り。今のクォヴレーはもはや達人の域に達していた。
リシュウ・トウゴウとて切り結べるだろう。
「そりゃそうだろ!何てったって、相棒はガンダールヴなんだからな!」
手の中の振るっているデルフリンガーが楽しげに答えた。
「ガンダールヴ?何だそれは」
「えーっとだな……そう!『使い手』のことだよ!使い手のことをガンダールヴってんだ!」
「……その『使い手』に関する事を度々聞いてもお前は思い出せていないんだが」
「……面目ねぇ」
「まぁ別に今すぐ思い出さなくても困りはしないが」
そこで左手甲のグローブに開いた穴から、今現在輝いている使い魔のルーンとやらを見る。
……そういえばこれ、確かガンダルフだかガンダールヴだか読むのではなかったか。以前立ち寄った世界の言語を思い返す。
(世界を隔てて同じ言語が使われる。あり得ない話ではない)
無限に存在し続ける平行世界。それらの根っこは全てが同じで、木の根のように、木の枝のように、いくつもに際限なく分岐し続ける。
別の世界との分岐前に共通する言語が使われていたのなら、十分に説明の付く事態だ。
となれば、やはりこのルーンはガンダールヴと読むのが妥当なのだろう。
(使い魔が……ガンダールヴ?いや、このルーンは珍しいと言っていたな、コルベールは)
思考しつつ剣は中空を奔り続ける。
「そういや相棒。一つ聞きてぇんだがな」
「何だ」
「夜、娘ッ子からわざわざ自由時間を与えられてるってのに、ここ最近はずっとただ飛び回ってるだけじゃねぇか。俺っちとしても今まで見たこと無いところに連れて行ってもらえる散歩は楽しいけどよ。どうせなら少しは休んだらどうだ?」
「別に無意味に飛び回っている訳じゃない」
振るう腕を止め、デルフリンガーに話しかける。
「挑発して誘って居るんだ」
「挑発?」
デルフリンガーを鞘に戻して近くの木に立てかけ、訓練後の柔軟を始める。
「……この世界に有るはずのない戦力が紛れ込んでいる話はしたな?」
「ああ。正直、異世界なんてピンとこねぇけどよ」
「そこは別に問題ではないから信じても信じなくても良い。重要なのは、このハルケギニアを軽く征服出来るだけの軍事力を持った個人、あるいは組織が存在しているということだ」
「ふんふん」
相づちを打つ。
「おそらくそいつらにとって、俺とアストラナガンは邪魔な存在の筈だ。こうしてわざと姿を晒すことで、連中の側からアクションを起こさせたいのと」
「なるほど。できれば、こっちからそいつらを見つける意味も込めて飛び回ってるって事か」
「そうだ」
屈伸を終え、今度は全身の筋肉を揉みほぐす。
「ところでよ、娘ッ子にははなさねぇのか?」
「何をだ?」
「だから、相棒が戦ってる相手のことだよ」
「話したところで、彼女が信じるとは思えないし、要らぬ不安を与えるだけだ」
きっぱりと、クォヴレーは言い切った。
「それに俺の推測が正しければ、存在する戦力はこの世界のメイジが束になったところで太刀打ち出来る物ではない。俺一人で動くのが適任だ」
「普通ならここで、『自分一人で戦ってるつもりか!』って怒るんだろうけど、相棒はホントに一人で戦えるからなぁ……」
「別にいつも俺一人という訳ではない。最初は大勢の仲間がいたし、これまで立ち寄った世界でも、時としてその世界の住人に助けを求めたこともある」
ディス・アストラナガン、そしてその母体となったアストラナガンも基本的にスタンドアローンでの運用を前提とした機体だ。
それと共に戦うというのは、それなりに力を必要とされる。
別にクォヴレーとしても真・ゲッターやマジンカイザー程の力を要求している訳ではない。
しかし少なくとも足手まといになるようでは論外であり、この数週間、この世界の魔法についての知識を授業で得てきたクォヴレーから見て、この世界のメイジがその必要条件を満たしているとは思いがたかった。
まず第一にスピードと火力である。この世界の魔法は詠唱が長い。威力が高いほど、詠唱時間も増す。
せめて一小節のみシングルアクションの魔法で、メラゾーマかファイガクラスの火力が欲しい。
弱い魔法では装甲を打ち抜けないし、ちんたら唱えていては、どんなに威力のある魔法だろうと、発動前にハバククのメタリウム・キャノンで一掃されてしまう。
第二に機動力である。フライやレビテーションといったコモン・マジックでメイジ達が飛べるのは知っているが、どうにも、遅い。しかも、唱えている間他の魔法を使えないらしい。
タバサのシルフィードのように、空を飛ぶ幻獣を足場にもするようだが、それでもあの程度のスピードではあっという間にメギロートに追いつかれ、フィールドを纏った体当たりで挽肉にされるのがオチだろう。
第三に防御力だ。どうもこの世界のメイジ達、防御のことを念頭に置いてないんじゃないかと言うぐらい、防御に関しての魔法が見あたらない。
事実、そうであろう。攻撃は最大の防御を地でいくスタイルでもって、平民を従えるのがハルケギニアのメイジ達だ。
土の系統のメイジなら、ゴーレムでもって防御態勢をとれるかも知れないが、材質は所詮土か岩、良くても鋼鉄で、とてもではないがフーレの艦砲射撃に耐えられる物ではないだろう。
何しろ超合金Z製の鉄の城、マジンガーZにすらまともなダメージを与えるほどの威力だ。
今回の敵、おそらくはゼ・バルマリィ帝国自動攻撃衛星ネビーイームのネビーイーム本体を除く全戦力を相手取るのに必要な資質は、メギロートぐらいは楽に一掃出来、人型の主力部隊を攪乱し、倒せないまでもフーレの一隻ぐらいは釘付けにしておける程の力だ。
もちろんディス・アストラナガンの助けを抜いてである。
部隊単位だろうと一個人だろうと、これぐらいはやって貰わないと足手まといになってしまう。
ハルケギニアの全メイジを動員すれば、そういった事の出来る部隊も何隊か編成出来るだろうが、その場合人命の消費量が凄まじいことになるし、そもそもハルケギニアのメイジを動員する方法も思いつかない。事実上不可能である。
以上のことが、クォヴレーの出した結論であり、ルイズを始めとするメイジ達に頼ろうとしない理由だった。
「ったく、相棒が今まで一緒に戦ってきた連中はどんだけ化け物揃いだよ!?」
「フフフ……実に心強い、化け物達さ」
さらりと、クォヴレーは嘯いた。
柔軟体操を終えて、デルフリンガーを背負う。
そこで調度、建物の影から現れたタバサと目があった。
一瞬の間の後、すっと建物の影に隠れるタバサ。
「……?」
何をしているのかと尋ねようとしたところで
「クォヴレー!」
反対側から彼の主が現れた。
「どうした、ルイズ」
くるりと振り向く。
「え、えっと……今日の夜、フリッグの舞踏会があるのよ」
「聞いている」
「それで……その、昨日は、頑張ったでしょう?」
「頑張った?何をだ」
「品評会よ!おかげで、アンリエッタ様にも誉めて頂いたし……」
もじもじしながら言葉を続ける。このままもじもじしていては黒か銀色の全身タイツになりそうである。もじもじだけに。
「だから、ご、ご褒美として、今日一緒に踊ってあげるわ!」
「ルイズ、俺は踊りの経験がないんだが……」
「あ、アンタの覚えの早さは知ってるわ!これから舞踏会が始まるまでみっちり練習するわよ。どこに出しても恥ずかしくない紳士に仕立ててあげる!」
付いてきなさいと言うルイズの後に続く途中、一瞬だけ建物の影を振り返った。もう誰もいないようだ。
(彼女に嫌われて居るんだろうか、俺は)
ハテ、と首をかしげる。
名前を交わしたその日にあんなモン見せられて、しかもタバサの苦手な幽霊がどうとかいう話になったのだから、苦手意識ぐらいは持っているのが、当然であろう。クォヴレーには、そんな彼女の感性など知るよしも無かったが。
本日はこれまで。
そういやこのスレ、エロは言わずもがなとして、内蔵だとか骨露出だとかのグロはどうなんですかね?
投下前に注意書きしてればおkでしょうか?
そういうシーンがあるときだけ避難所に投下すればいいんじゃない?
こっちには投下の報告だけしとけばいいかと
まあ、まとめにあげられることを考えて最初に注意書きを書いとくのは悪いことでは無いと思うけど
四の四が聖地に集まる時、大空に巨大な呪文が現れ勇者が帰還す
「あの文字は…『オカエリナサイ』?」
つう展開が見たいっす。
実はメイジ達は生き残って人型に進化した宇宙怪獣の子孫とか
アルファモンGJ
アルファインフォースって戦闘に参加していない者からしたらキング・クリムゾンだよな。
>人型に進化したSTMC
NEXT GENERATIONにありましたね、そのネタ
作者は・・・・・・矢野健太郎でしたか
ライドウを前にスパロボZが未だ終わる気配の無い俺が久保の人乙
ハルケギニアの魔法使いが弱い訳じゃない、久保が異常すぎるんだw
それでも虚無なら、虚無なら何とかしてくれる
そしてノエインと代理の人乙
アトリの第三形態ツンデレが発揮ですね、分かります
誤解しまくっていたギーシュは果たして
ってか、量子化された竜騎兵に物理攻撃なんて論外だけど、魔法なんかは不思議パワーで喰らってしまうのかな?
久保の人乙
タバサも誘いにきたのだろうか?
だとすれば久保、フラグクラッシャーの名は健在か
>>580どこへ行くのだろうか 時のメイズ
をどこへ行くのだろう カトキのメイズ
と読んでしまい、カトキ氏(カトキハジメとはビミョーに違う、多分)を
ルイズが召喚するというイメージが湧いてダイエットコーラを噴いた
久保様乙です!
タバサとクスハは味覚が同じだったりしないのだろうか・・・
ハシバミはハッキリ苦いとされているが、クスハ汁は特に食味の説明はされてないんじゃなかったか?
一応設定ではスパロボ世界(OG)の人間の味覚は
我々と違うらしい。
理由はいろいろあって食い物が人工食料中心になっているからとか。
そんなわけでクスハのつくる天然素材生薬たっぷり栄養ドリンクは
味も効果も酷いもの、となってしまうとか。
まぁシリーズが続くにしたがって、
そこいら辺を差し引いても酷いものになっちゃってるみたいなんだが。
CLANNADからの召喚って無いのか?ネタとしては旬だと思うが
岡崎なら水魔法で右肩が治ってラッキー!って、渚の所に帰せボケェ!だな
春原喚んだらサイトよりダメダメな展開になりそうだ
女性陣は…可哀想だから喚ばないであげてくれ
>>597 あの世界の人間からしてこっちとは味覚が違うなんて設定があったのか。
それにしてもクスハ汁は酷いよな、完全に悪ノリ。
OG1のリュウセイルートでリュウセイがとてつもなく不味いとか言ってた気がする
>>587 んじゃその話の時は避難所に投下でこっちに誘導する方式にしますね。
ご助言ありがとうございました。
>>592 ありゃただ単に、歩いてて会ってしまった幽霊関係の久保を怖がってるだけですよ〜
>>595-
盛大に先にネタを言われた気がしたが、そんなことはなかったぜ!
CLANNADなら幻想世界の少女とロボットの目の前に召喚ゲート
くぐって見たら渚死亡ルート後の岡崎親子に変化…
娘を生かす為の秘薬代に使い魔になることを了承する岡崎
つうのを考えて見た。
カップル召喚はあるが、親子召喚は無いなあ
「痕」の柏木千鶴、「とらハ2」の槙原愛、フィクションの世界にはまずい料理を作るキャラが多いな。
>>603 一種のキャラクターのタイプ付けに丁度良いもんなー
下手だけど頑張って作った!の方が、
何かもらう側からすれば良いっていうか、人によるだろうけど。
まぁ、最近はそれをギャグで用いる方が多くなったのは間違い無いが。
「らんま1/2」の天道あかねとか「新世紀エヴァンゲリオン」の葛城ミサトとか
>>603 嫁のメシがまずいってスレがあってな……
>>606 あのスレはまったくもって笑えない。あまりにも悲惨すぎる
奥さん……大さじはおたまじゃないですよ……奥さん……
少なくとも自分がおいしいと思うものを出すべきだ。
逆に料理得意の男主人公もいるからねえ。朝倉純一、後藤凪、辻村詠、テンカワ・アキト(これは本職だから当然か)、えーとえーとそれから……
某文学ゲームの主人公も
>>609 味見などという言葉は彼女らの脳内辞書には載ってませんし、料理は愛情「だけ」でいいんだと
思い込んでいる節すらありますし、さらに言えば愛情さえもないなんてことも
>>610 とらハの主人公は恭也以外は料理上手。
まあ、耕介はプロなわけだが。
イザベラ管理人、続き読みたいです。
さざなみ寮生さん、カムバーック!
ドM繋がりでゴッドハンド
>>609 某型月のメイドさんは味音痴で、味見しても良く分からない、結果、梅サンドとか作ってしまう。
という設定があるらしいが。
>>614 ゴッドハンド繋がりでオベリスクの巨神兵
>>615 それは別スレ該当だからこのスレではアウト
似たようなメイドさんにオルゴール技師見習いの水銀人形がいるが
>>613 その分脇にいわゆる殺人級が控えてるけどな
そこで「お料理の守護霊」からハルばあさん召喚。
ルイズを徹底的に鍛えて立派な主婦に!
ただし、タバサは近づかなくなります。
>>610 使途を生身で瞬殺するシンジきゅんも三ツ星以上w
『支援』←これ必要?
し、新参帰れなんて言うなよ!
>>610 最強は姉妹スレのトニオさんかツンデレ烈海王?
ヒロインの固有スキル『料理』……五段階評価だと1か5しかいないイメージがあるな。
1か5ではない
毒か薬か、だ
ギャグマンガなら毒か猛毒か劇毒か、だ
>>603 ちょっと、千鶴の料理はあるモノ達にはすごく美味しいからな!
柏木家の人たちもそう言ったんだからな!
そういや「激烈に不味い料理」にはたまに「料理としては不味いが体にはいい」と言うのがあるな。
前述のクスハ汁とか食前絶後!!の調味魔導とか。
>622
そんなことは言わん。
とりあえず「2ch 連投規制」とか「バイバイさるさん」でググるんだ。
628 :
零姫さまの使い魔:2008/10/21(火) 19:40:53 ID:MJjoR7eG
予約が無いようでしたら、50分より第二話投下します。
「あっしは【手の目】だ
先見や千里眼で酒の席を取り持つ芸人だ
……尤も今じゃ 本業の方は廃業中だ
なにせ此方じゃ あっしの芸は御法度ときた
食い扶持求めて 令嬢の小間使いに収まったまでは良かったが そいつがとんだハネッ返り
じゃじゃ馬娘の使いっぱで糊口を凌ぐ日々たァ 我ながら堕ちたもんさ
それにつけても 此処の連中はどうにもいけ好かねぇ
めいじだか貴族だか知らないが ちょっとばかり手品が使えるくらいで御大尽気取りさ
いい加減 此方も我慢の限界だ この憤懣 何処にぶつけてやろうかと
思っていた矢先にこの騒ぎ まったく 運が良いやら悪いやら……」
「まったく どうしてくれるんだい?
君が軽率に 香水の壜を置いたおかげで レディの名誉に傷がついた」
金髪の若者がメイドの一人を詰問する姿に、ギャラリーの注目が集まる。
食後の退屈しのぎとばかりに、二人を中心として、野次馬たちのざわめきが起こる。
「なに言ってんのよ ギーシュ? 全部アンタの二股が原因じゃないの」
「うっ…… が 外野は口を挟まないでくれたまえ! ゼロのルイズ」
呆れたような非難の声に、ギーシュと呼ばれた若者が反論する。
尤も、この詰問の理不尽さを誰よりも痛感しているのは、他ならぬギーシュ自身であった。
だが、いかに責任転嫁のため口走ってしまった迷い言とはいえ、今さら撤回するワケにもいかない。
心中の動揺を悟られぬためにも、この場面は敢えて、力技で乗り切らねばならなかった。
「ともかくだ! 彼女がうまく話を合わせてくれさえすれば レディ達が傷つくことはなかった
貴族に仕えるものとして 彼女はもっと機転を利かせるべきだったと思うよ!」
sien
支援
滅茶苦茶である。
眼前で俯く少女の姿に、ギーシュの心がズキリと痛む。
だが、全てはこれで丸く収まるはずであった。
後は彼女の謝罪を許し、その上で自分の失言を詫びさえすれば――。
「……謝罪はしません
武道とは 弱者が強者の暴力に立ち向かう為にこそあります
ここで私が権力に屈し 正道を曲げてしまったならば
曾祖父の そして 剣の道に生きた先達の志を穢すことになってしまう」
「そうそう 素直に謝ってくれさえすれば僕だって……
へっ!?
武道? 曾祖父? 君は一体何を……」
「果し合いです! 私 シエスタ・佐々木は
グラモン家三男ギーシュ・ド・グラモンに対し 立ち合いを所望します!」
きっ、と顔を上げた少女の瞳に、凛然たる輝きが宿る。
突然の急展開に、ギャラリーが一気に沸き立つ。
「ギーシュと平民のメイドの決闘だ!」
「正気かッ!? ギーシュ!」
「ちょ ちょっと! 何考えてんのよ 平民の女の子と決闘だなんて!
恥を知りなさいよ ギーシュ!」
「イッ!? いや! 聞いてただろ? モンモランシー この決闘話は彼女が……」
「立ち合いは申の刻 ヴェストリの広場にて」
それだけを簡潔に述べると、シエスタは悠然と食堂を後にした。
その鮮やかな立ち居振る舞いに、女生徒達の間から悩ましげな溜息が洩れた。
・
・
・
――申の刻、ヴェストリの広場
「ねえ タバサ…… これは現実なの?」
「……私にも信じられない
いかにドットクラスとはいえ メイジの創りだしたゴーレムが
場面が切り替わった直後に いきなり斬り伏せられているなんて……」
赤毛の少女、キュルケの呆けたような問いに、友人のタバサが冷や汗を流しながら応じる。
彼女達だけではない。その場に居合わせた全員が、
物干し竿のような長刀を携えた少女の威圧感に呑まれていた。
無論、その有様に誰よりも驚いていたのは、対手のギーシュであったが……
(ううっ 何だ! 何だと言うんだ?
なし崩し的にメイドと闘うハメになったとか 気が付いたら夕刻のヴェストリの広場だったとか
なぜか自分の方が挑戦者の立場だったとか シエスタは羽織袴だったとか そんな事はどうでもいい!
たかだか平民の操る剣術相手に 僕のワルキューレが手も足も出ないなんて……!)
「これで降参ですか?」
「う うるさい! 勝負はまだ始まったばかりだッ!」
もはやヤケクソとばかりにギーシュが吠え、薔薇を投じる。
たちどころに錬金が発動し、その場に7体の戦乙女が出現する。
「お見事…… ならば私も 全身全霊を込めてお相手しましょう」
驚くべき事に、シエスタは5尺を越そうかと云うほどの大業物を右肩に担ぐと
地に伏せたワルキューレのレイピアを左手で引き抜き、二刀に構えた。
剣気に充ちたその姿に、ギーシュが戦慄する。
「うおおおおおッ! い いけッ! ワルキューレ!」
「ギーシュ・ド・グラモン 敗れたり!」
ギーシュが杖を振るう。その先を取り、風を巻いてシエスタが駆ける。
それはまさに、記すのも憚る光景だった。
記すのも憚るような異様な体勢から放たれた二本の刃が、記すのも憚る程の速度でギーシュに迫り
その前に立ちはだかった7体の青銅人形を、記すのも憚る程の無残なスクラップへと変えていく。
「分からない…… 分からないわ タバサ 彼女の剣が達人の域に達しているのは私も認める
けれど 魔法の使えない平民が こうも一方的にメイジを圧倒できるものなの?」
「剣道三倍段」
流石は修羅の世界に身を置くタバサである。
記すのも憚る程の事態に直面しながら、尚も冷静にシエスタの技量を分析していた。
「剣道初段の実力は 徒手空拳の武術ならば三段の実力者に匹敵する
しかも彼女は二刀流 仮に一流派を極めた彼女の実力を十段程度と見積もるならば 10×3×2の60段
その剣の冴えは トライアングル……いえ スクウェアクラスの術者をも凌駕するかもしれない」
「そ…… そういうもの なの?」
しかし、現実はそういうものであったらしい。
タバサの解説が終わる頃には、ギーシュの手駒は既に全滅していた。
「……決着 ですね?」
「あ ああ…… この勝負は 僕の」
その時である。
突如として周囲が巨大な影に覆われ、砲弾が唸りを挙げて飛び込んできた。
爆音が轟き、土煙が宙に舞い上がる。
突然の砲撃に、周囲はたちまちパニックに陥った。
「何だ!? あの巨大な飛行船は!」
「見ろ! あのゴーレムをかたどった旗印は……」
「まさか! 世界征服を企む悪の秘密結社 【M.O.S団】なのか?」
「ハァーッハッハッハッハッハ!」
飛行船のテラスから、首領と思しき覆面女の高笑いが響く。
「学院に潜伏し続けて早三年 探りを入れ続けた甲斐があったってもんさ!
ようやく見つけたよ! 大日本帝国海軍少尉・佐々木武雄が後裔 シエスタ佐々木!
貴様の曾祖父がハルケギニアに持ち込んだ 清王朝伝来の遺産とやらを こちらに渡して貰おうか!」
首領が号令を下す。
降り注ぐ砲弾が学舎の美観を容赦なく破壊し、機関銃を携えた覆面軍団が次から次へと飛来してくる。
鮮やかな奇襲の前に名だたる教師陣も手も足も出ない。
学院の制圧は時間の問題と思われた。
「いけないわ このままではアレが敵の手に渡ってしまう こうなったら……」
「し 清王朝の遺産? 君はいった……うわッ!?」
腰を抜かしたギーシュを抱え、シエスタが厨房へ跳びこむ。
中央に置かれたテーブルを蹴り飛ばすと、その下にあった色の違うタイルを一枚、手慣れた手つきで押し込んだ。
直後、グゴゴゴゴ、という音とともに部屋全体が鳴動し、竈の奥に秘密基地へのシューターが現れた。
「ギーシュさん 力を貸して下さい
【アレ】は今の人類が使いこなすには あまりにも強大な力を持った負の遺産
もしも 悪の組織の手に渡ったならば ハルケギニアが滅亡してしまう!」
「ちょ ちょっと待って まだ心の準備が……」
ギーシュの抗議も空しく、シエスタの渾身の一蹴りが放たれる。
「アレってなんだああああああああああああああああ!!」
悲痛な叫び声を響かせながら、ギーシュは暗闇の底へと転がり落ちていった。
・
・
・
「ハァーハッハッ! 他愛もないねぇ 逃げてばかりじゃ話にも……」
ズンッ――、と
突如、学院を襲った巨大な地震に、首領の高笑いが止まる。
地の底から響く怪物の咆哮に、敵も味方も動きを止め、固唾を飲んで行方を見守る。
やがて……
『ガ オ ォ オ ォ オ オ オ ン!』
という金属音と共に、巨大な鋼鉄の腕が学院の地下から飛び出してきた。
「げぇっ!? まさかアイツは
日本軍が本土決戦のために考案し 27度もの試作の果てに
遂には完成する事の無かったという究極の兵器……!」
「行けぇ! アイツをやっつけろ!」
シエスタの声に合わせ、轟音と共に土塊が空まで舞い上がり、巨大なロボットの上半身が姿を見せた。
「うわああああ!? やめてくれぇ! ここから下ろせぇ!!」
「ギーシュさん よく聞いて下さい
このリモコンの発する電波は 人間の大脳でしか受信出来ないんです
つまり あなたが頭部に乗っていなければ そのロボットは動かない」
「欠陥兵器じゃないかァーッ!」
拘束服の中でもがきながら、ギーシュが必死で抗議する。勿論誰も聞いてくれない。
「おのれぇ小娘! M.O.S団を舐めるでないよ」
首領が拳大の真っ赤なボタンを勢い良く叩きつける。
それに合わせ、飛行船の先端がガギョンガギョンと変形し、巨大なドリルが出現する。
「うおりゃあ デンジャラスドリル! くたばりなァ クズ鉄野郎!」
「飛べッ! カミカゼパンチよ!」
シエスタのリモコン操作に合わせ、ロボの両目が真紅に燃える。
同時に背中の超弩級ロケットエンジンがド派手に火を噴き、鋼鉄の巨体が恐るべきスピードで飛びあがる。
ギーシュの眼前に、デンジャラスサイズのドリルがグングン迫る。
「う ぎ ゃ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ ー ッ ! !」
カッ――
眩い閃光の中、ギーシュの叫び声がトリステインの空にこだました……。
・
・
・
「――もし 落としやしたぜ お坊ちゃん」
「ハッ」
彼方からの自分を呼ぶ声に、ギーシュはようやく我に返った。
思わずキョロキョロと辺りを見回す。
平日の食堂――。
夕刻のヴェストリでも無ければ、巨大ロボのコックピットでもない。
テーブルの上には、全ての災いの元凶となった、香水の瓶が置かれている。
そして眼前には、例の右手をかざす仕草でこちらを覗きこむ、吊目の少女の姿があった。
「君は確か ヴァリエールの……」
「ほれ どうしたい? コイツはアンタが落としたんじゃ無いのかい?」
「え? あ ああ……」
促されるがままに、壜を手に取る。
半ば呆然と中の液体を眺めながら、ギーシュが思索にふける。
あれらの出来事は、全て夢だったと言うのか。
「これは…… 君が拾ってくれたのかい?」
「ん? いや あちらの親切なメイドさんがね……」
「――ッ!? ギニャアアアアアァァァ――ッ!」
手の目が形の良いあごを向けたその先、そこに彼女はいた。
刹那、ギーシュの脳裏を、先の壮絶なる大冒険が走馬灯のように駆け巡る。
痛烈な絶叫がたちまち食堂を突き抜け、平穏な午後の時間を打ち破った。
食堂が騒然となる中、その親切なメイドが、いかにも気弱そうな素振りを見せながら、おどおどとギーシュに声をかけた。
「あの…… わ 私…… 何か 間違った事を……」
ギーシュは高速で首をブンブン振ると、勢い良く少女の肩を抱いた。
「あ あ あ ありがとう! ありがとう! ありがとう!!
これは本当に 本ッ当に 大事な物だったんだ!
勿論二人のレディが傷ついたのは君のせいじゃないし ヴェストリの広場にも行かない!
清王朝の遺産なんかこれっぽちも知らないし デンジャラスドリルはもうコリゴリだよ!」
「キャアッ!? は 放して下さい!」
発狂せんばかりの喜びの声を挙げながら、勢い良くメイドをハグするギーシュ。
直後、当然のように、巻き毛の少女の鉄拳が飛んでくる。
「ギーシュッ また他の娘に手を出してッ!!」
「グワァァァー!!」
きりもみながら5メイル程勢いよくぶっ飛び、テーブルの角に脳天を強かにぶつけ
顔面をケーキまみれにしながら、それでもなお、今のギーシュは止まらない。
「ああ…… そうさ そうなんだ! 僕はヒドイ奴なんだモンモランシー
さあ 納得のいくまで殴り倒してくれッ!」
「な! ……あなた 何か変な物でも食べたの?」
「ハハ い 痛い ものッ凄く痛いよ……
うう 生きてる…… 生きてるよ 痛いから生きてる!
うおおお! 俺 生きてるぞォ――――――――――――ッ!!」
ドン引きする食堂の中心で、ギーシュは高らかと生を叫んだ。
・
・
・
「うわっ 何よ アレ……
手の目 アンタ もしかして何かやったの?」
「……クッ」
突如として始まったギーシュの一人舞台を、遠巻きに仏帳顔で眺めていた手の目であったが……、
「カハァッ! アハハ ハハハハ ハハハハハッ!」
――と、主人の問い掛けを合図に、こちらも堰を切ったかのように笑いだした。
「んなッ! 何よ突然! アンタもおかしくなっちゃったの?」
「ハハハ…… いや そうじゃねぇよ
確かにあっしも悪戯が過ぎた
何ね…… あの坊ちゃんが ふられた腹いせに
あっしに八つ当たりする気なのが分かったんでね
ちょっとばかり先回りして こっちがあべこべに憂さを晴らしてやったのさ」
「……? 何よ それ
結局 何が起こったって言うの?」
「なんにも起こらなかったのさ
見ろよ あの坊ちゃんの幸せそうな顔
よっぽど大切な物だったんだろうぜ
万事解決 めでたし めでたし さ」
尚も釈然としない表情のルイズを尻目に、手の目はいつまでもカラカラと笑い続けた。
夢幻紳士の絵柄が蘇る私は既に若くない支援
以上、投下終了です。
本来は、もっと残酷な未来を見せて後半に繋げるはずでしたが
気が付いたらスチャラカな代物になっていました。
まあ、ギーシュだし。
乙ー。
相変わらずギーシュはおいしいなぁ。
>>617 味覚プログラム実装前の
AIとまのサーティもそんな感じだった
>>627 ラブひなの成瀬川なるみたいに
見た目はアレだけど何故かおいしい
というパターンもあるぞ
ageて投下宣言するヤツは荒らしと同レベル
覚えとけ
これは予想外www
乙
何事かと思ったよw
GJ
投下したいと思うよ。予約無かったよね?20:50から行きたいです
実のところ味音痴というのは脳の味覚に関する部位に障害や未発達がある
もしくは舌の味蕾とか神経に異常がある
そのため味覚を認識出来ないか誤認が生じている可能性がある
病院で精密検査受けた方がいい、という話
でもラブコメのキャラ付けだから深く突っ込んじゃだめなのだな
と、規制されるのも嫌なんで、21:00にします。支援よろしくです
おっと失礼した。投下オーライ
あ、ごめんなさい。居たのね。では投下
以下本文
第十四夜 夜は等しく
百鬼丸に服を着せた後、食事を持ってくると言うシエスタに、ルイズはまた新しい遊びを思いついたと言わんばかりに、自分の食事もここへ持ってきて欲しいと伝えた。
いい機会だ。この田舎者に、貴族のマナーを仕込んでみよう。ナイフとフォークすら知らないんじゃないかしら。きっと辟易するだろうが、面白いに違いない。
そんな彼女の企みに、嫌な予感がしたのだろう、百鬼丸は慌てて断った。
昔、彼が体を得て間もない頃、寿海に行儀作法を一通り習った事がある。寿海からしてみれば、せめて不憫な我が子が、外へ出ても恥をかかぬようにという親心であったのだが、百鬼丸はこれが嫌で嫌で仕方が無かった。
箸の使い方が悪ければぴしゃりと手を打たれ、飯をこぼせば勿体無いと叱られる。こんな事で果たして味の分かる人間達は、気持ちよく食事を出来るのだろうかと、子供ながらに考えたものだ。
恐らく国は違えど、そのやかましさとややこしさは違わないだろうと思い、丁寧に辞退したのだが、果たしてこれは、飽くまで彼にとっては正解であった。
ルイズは厳しく育てられたのだ。教えるという気持ち以上に、きっちりと躾けてやろう、という、百鬼丸にとっては大変有難迷惑なことを考え、息巻いていたのだ。
「すまん、それだけは勘弁してくれ。」
逞しい体つきに見合わぬ程の情けない顔で、百鬼丸にそう言われたのだから、しぶしぶながらも諦めざるを得ない。
「わかったわよ。よっぽど嫌なのね。」
相変わらず面白い男だ。溜息をつきながらも笑った。
ルイズは、自分の申し出を鬼丸に断られた事を、残念に思いながらも、気が付けば結構な時間になっていた事に気付き、ひとまずは自分の部屋へ帰ることにした。部屋を出たときの憂鬱感は大分薄れている。
かといって何事も無かったかのように眠ることは出来ないだろうが、こんな夜中に行く当ても無く学院を出たところで、何も変わらないのだ。
はた、と百鬼丸に問いかける。
「ねぇヒャッキマル、あなたコルベール先生のお客様でいいのよね?いつまでここに居るの?」
「ん、さあ?わからんが少なくとも二、三日はいると思う。多分だけどな。」
百鬼丸は首を捻りながら、これまたずいぶんととぼけた答えだ。まあ、旅の者のようだし、きっと気の向くままに旅しているんだろうと解釈する。
二、三日と聞き、少し残念な気はしたが、二度と会えぬわけではない。別れを惜しむのは次の機会にしたい。そう思い再び聞く。少しばかり恥ずかしそうに。
「ねえ、その…また、遊びに来てもいいかしら?」
「ん、もちろんだ。」
お互い少し微笑みながら、そう聞いて別れることにした。シエスタは百鬼丸の給仕の為に、まだしばらくはいるとの事なので、二人に別れの挨拶をして、部屋を出た。
「じゃあ、二人とも、おやすみなさい。またね。」
「ああ、おやすみ。」
「おやすみなさいませ。」
部屋へ戻り、ルイズは体が少し汗ばんでいる事に気付く。風呂へ行くべきだろうか。
衛生面で言うなら間違いなく行くべきである。そんな事は彼女も分かっている。風呂は毎日入るものだ。
だが、魔法学院の風呂は、集団で入れるよう、非常に大きく作られている大浴場だ。
学友達に会えば、どんな顔をされるかわからない。きっと使い魔を得られなかったことを、いつものように罵られる。『ゼロのルイズ』と、またあの嫌な言葉を聴かされるに違いない。
しばらく悩んだが、淑女を心がけるものとしては不潔な事の方が嫌だった。
どうせ魔法は使えぬのだから、せめて身奇麗でいよう。
大浴場へ、誰にも会わぬように早足で向かう。
湯浴みを終え、また早足で部屋へ戻った。
行き帰りは彼女の目論見どおり、誰とも会わなかったが、浴場では、見知った顔をちらほらと見つけた。
彼女の予想に反して、顔を合わせた者たちの反応は奇妙なものだった。いつもなら強気で人を見下す学友達は、なぜか彼女の方に目を合わせない。嘲笑も無い。ただ、避けるように、こちらの様子を恐る恐るといった感じで伺っているのだ。
お、ぜろろの人だ、楽しみにしてたんだよ支援
今日の召喚の儀の事を、子供達は心の中で整理しかねていた。何が起きたのかも、見ていたのによく分からない。しかし一つだけ確かな事、それは、あの恐ろしい現象を引き起こしたのはルイズである、それだけだ。
部屋へ戻り、ルイズもその結論にたどり着いた。人は自分に理解できないものを恐れる。それが人だから。だが、いつもは人を見下していたくせに、少し恐怖が見えればこの扱い。これが貴族とは笑わせる。
なによ、意気地なし。
そう思ったが、よくよく思い出せば自分も人のことは言えない。彼女もまた、自分の為した事であるのに、恐ろしさの余り気絶したのだ。
考えても埒が明かない。彼女も何も分からないのだから。もう寝ようと、着替えてベッドに倒れこむ。
仰向けに転がり、ベッドに備え付けられた天蓋を見据えた。いや、見ていたのは天蓋でも、その先の天井でもない。目には何も映っていない。
今日は複雑な一日であった。ベッドに横たわり、ルイズはそんなことを考えていた。
一日を振り返る。召喚の儀での失敗は、彼女から大きなものを奪ってしまった。メイジとしての、貴族としての存在意義。それを考えるとどうしても暗い気持ちにならざるを得ない。己の処遇に関しても、まだ何も分からない。
だが、好奇心旺盛な少し優しい田舎者、百鬼丸と出会い慰められ、教えられた。そして、今まで身近に居ながらも顧みる事の無かった平民のメイド、シエスタの名を覚えた。
新しい何かを得た日でもある。今日と言う日は、果たして彼女にとって良かったのだろうか、悪かったのだろうか。
どちらにしても貴族のあり方について考えざるを得ない。魔法を使えぬ貴族の出来損ないは、どうやって存在を続けるのだろう。
そんなことを考えながら、大分疲れていたのだろう、目を瞑ると自然と意識が深く沈んでいく。少しばかり暗い気持ちだ。
ここにはいない誰かに、再び、小さく語りかけた。
「おやすみ……なさい。」
これで、気持ちよく眠れそうだ。
ルイズと別れた後、シエスタは百鬼丸にあれこれと世話を焼いた。服の事、食事の事。目が見えない、と聞いていたせいもあるし、百鬼丸に感じた好意もある。また、彼女は元来世話焼きな性質でもある。
シエスタは八人兄弟の長女である。男五人に女三人。年のせいもあるが、弟達は特に腕白で、シエスタは長女という事もあり、自然兄弟の面倒を見るのは彼女の役割になった。
今はその大勢の家族を養うために、この魔法学院に出稼ぎに来ているという訳だ。
百鬼丸の世話をしていると、見た感じ彼の方が年上なのだが、なぜか弟達と少し重なって見えた。
百鬼丸を、部屋の中央に、テーブルと共に備え付けられた椅子に座らせ給仕をする。皿を差し出すだけで、水を注ぐだけで、何がそんなに嬉しいのか、子供のように破顔する。
単に、給仕に慣れていないせいもあるのだが、人に良くされる、というのがそれだけで百鬼丸には気分が良いらしい。
「お、ありがとう」
こっちを向いてそう言う。シエスタはその度、少し頬を染め、えぇ、と頷く。なんだか気恥ずかしい。
また、ルイズが危惧していた通り、非常に行儀が悪い。これは百鬼丸の国が、食器も作法もトリステインとは全く違うというのが理由なのだが、それにしても、ひどい。
といっても、食べ物をこぼしたり、口をあけたまま咀嚼するというわけではない。
左手は皿に添える、だけなら良いのだが、皿を持ち上げることもしばしば。右手はフォークかスプーン。ナイフは使わない。一度右手に持って首を傾げると、直ぐにもとあった場所に戻したのみ。
シチューを口にすれば、ずず、と音を立て、パンにはそのまま齧り付く。
フォークを逆手に持って、肉に勢いよく、ぐさりと突き刺した時などは、呆れるを通り越して、少し面白かった。どれもトリステインの作法では、よろしくない。
ほんと、まるで子供みたい。ちょっとかわいいかも。
食事する百鬼丸を見ながら、ルイズの気持ちも少し分かると、シエスタは勝手に納得していた。
ただ、一つだけ気になった点がある。意外に食が細い。体格から察するに、常人よりは量を食べそうに見えたので、これにはかなり意外だった。
食事を終えた百鬼丸に、恭しくお辞儀をして部屋を出ようとすると、また昼のように呼び止められ、ありがとう、と改めて礼を言われた。先程の子供のような顔ではない、静かな微笑。
いきなりとは卑怯だ、何が卑怯かは彼女もよく分からないが、そんなことを考えた。また、顔が赤くなる。微笑み、お辞儀をした。巧く笑えたか心配だった。
一日の仕事を終え、疲れた体で寝床に着いたシエスタは、ベッドの中であれこれと思いをめぐらす。
支援
支援
百鬼丸という凛々しくもどこか可愛らしい青年、貴族らしからぬ優しさを与えてくれ、自分を名前で呼んでくれたルイズ。今日は、多分自分が学院で働きだして一番幸せだった日だろう。
ふと、百鬼丸の食事風景を思い出し、ふふ、と独り笑った。
そうだ、今度彼にこの国での作法を教えてあげよう。
持ち前の世話好きな性分で、そう考える。
しばらくして突然、小さく声を出し、頭まですっぽりと布団に包まってしまった。百鬼丸と二人きりで食事の仕方について教えている場面を、想像していたところだった。
隣に寝ていた同僚に、何をやっているのか、と迷惑そうに言われたので、なんでもないと謝る。
いいかもしれない。うん、そうしよう。
血の上った頭を静めるように、再び顔を外気に晒して目を瞑る。
いい夢が、見れますように。
シエスタが出て行った後、百鬼丸も、疲れているであろう、己の体を休めようと、ベッドの横の壁際に背を預け、床に胡坐をかき、剣を抱えた。ベッドが何をする物かは、ルイズに教えてもらったが使わない。
百鬼丸の持つ剣、刀という。彼の国のものだ。片刃で、細く、また薄い。反りが少しあり、よく切れる。鍔は楕円形をしている金属の板。所々複雑な形の穴があり、板を貫いている。飾りであるとともに軽量化の目的も持つ。
百鬼丸が、刀を抱えて眠る時には、この鍔の部分に頭を預けるのだが、これが本来の用途と全く関係ないが、なかなかに便利である。
ルイズに倣い、指を軽く鳴らすと、部屋の明かりが消える。
百鬼丸が目を瞑り、眠ろう、としたその時。
視線を感じた。
すかさず立ち上がり、視線を感じた方と反対側へ跳びさがった。刀はいつの間にか抜いている。
今いる部屋は広い。ベッド、テーブル、箪笥などいろいろ在るものの、それでも彼と寿海が住んでいたあばら屋よりは広いだろう。戦うには不都合は無い。咄嗟に考えた。
視線を感じたのは、ベッドの向こうの、窓の手前辺り。だが今は何も感じない。
両手で剣を掴んだまま、にじり寄った。ゆっくりと剣先を、視線を感じた辺りに持って行くも、違和感は既にない。
魔神か?妖気は感じなかったが、だが、確かに見られていた。
百鬼丸と外界を繋ぐものは、今のところ四つ。己の体を伝う振動、相手の伝えたい意思を感じる力、今日殺した魔神から取り返した、彼の肉声。そしてもっとも大きなものが、彼が「勘」とコルベールに説明した、奇妙な感覚である。
百鬼丸は目が見えず、耳も聞こえない、痛みも、熱も、触覚も、何も感じない。また、外に出ぬ言葉を感じる事は、つまり、相手の心を読むことまでは出来ない。もっとも、自分を含まなくても、近くで会話されている内容であれば分かるのだが。
ともかく戦いの場において、彼が頼りにしている感覚はただの二つ、振動と「勘」のみなのである。このうち、振動は触れていないものからは伝わりづらい。その分「勘」に頼る割合は大きいのだ。そして、それが片輪の彼を今日まで生かしてきた。
故に、百鬼丸は己の「勘」に絶対な自信を持っていた。そこに何かいれば、何かがあれば、彼には分かるのだ。見られた、と感じたのは、決して気のせいなどで有りはしない。
しばらく刀を下に構えたまま、まんじりともせずに待つ、が何も起こらない。
刀を鞘へ納める。
先程と同じ様に刀を抱え、また同じ場所に蹲った。
妖気を感じなかったのは不思議だが、彼とて魔神の全てを知るわけではない。あるいはそういう力を持った魔神もいるかもしれない。
目を瞑る。
しばらく目を瞑っているが、何も起こらない。だが、このまま寝るわけにも行くまい。
どれほど時間が経っただろうか、日が変わる頃だろう、また視線を感じる。かっ、と目を見開き、視線を感じた先を睨みつける。ベッドの近く、先程よりも近い。
だが、目を向けた途端に気配は消えた。
おのれ魔神め、来るなら来い!
苛々するが、目の前にいないものは殺せない。文句も言えない。
支援
いつでも戦えるように、シャツのボタンをたどたどしく外し、腕まくりをする。腕に巻きつけられた、紺の布切れが露になり、ひどく不恰好だ。
また、先程と同じ形で待つ。
なかなか来ない。
部屋の中は、生物が居ながらも物音一つ無い、異様な空間が出来上がっていた。
来た。
今度は明け方。気配は正面、歩幅にして、およそ十足と言ったところか、対面の壁際だ。確かに見られている。が、百鬼丸は動かない。
近づけ、近くに来い。
念じながら、獲物に飛び掛る獣がそうするように、体中の力を溜め込む。まだ動かない。
少しずつ近づいてきている。
もっとだ、もっと近くに来い。八、七…。
近づいてくる気配の距離を読む。
が、気配が近づくのを止めた。視るには十分、ということだろうか。
今の距離は、およそ五足分。跳べば、刀は届くが、これでは浅い。
十秒、二十秒。
双方動かない。
止むを得ん。
一瞬き。百鬼丸は溜め込んでいた力を放つ。一足のもとに跳び掛り、抜き打ちに、虚空に向かって横薙ぎに斬りつけた。刀が少し震える。
手応えあり!
もう一撃、と振りかぶろうとした時、また気配が消えてしまった。
「くそっ、逃げられたかっ。」
忌々しげに舌を打つ。
それにしても、一体なんだったのだろうか。魔神が自分を監視しているのか、あるいは何か別のものか。もしも魔神ならば、百鬼丸としては願っても無いのだが。どちらにしても人の様子を盗み見るなどと、碌なものではあるまい。
しえん
ふん、今日はもう来るまい。
少し乱暴に、刀を納めると、どかりと同じ場所に座りなおした。
一太刀手応えを感じ多少冷えた頭で、そろそろ本当に眠ろうかと考えた。また先の気配が来れば、どうせ勝手に目は覚める。
目を瞑り、今日の事を振り返る。
突然の異国。コルベール、シエスタ、ルイズとの出会い。どれも素晴らしいものだったと思う。貴族ってのはなかなか、いい奴が多いんじゃないか。少ない出会いを基に、考えた。
コルベール、慇懃で紳士的で、知性に溢れた人の好い教師。ルイズ、陽気で素直で、でも少し生意気な少女。共に貴族である。が、どちらも良い人間だ。
シエスタ、慎ましやかで淑やかな、心優しい女中。
三人が三人とも、彼にとっては心に残る人間達であった。
全て今日一日のことだ。
そして、
魔神を殺した。
くっ、と唇の端を吊り上げた。部屋の空気ががらりと変わる。やっと、たったの一体ではあるが、二年間足を棒にして探し続けた甲斐があったというものだ。亡父、寿海の仇、そして声を、己の本当の声を取り戻せたのだ。これで、嬉しくないはずが無い。
今日は本当に
うっすらと目を開け、先程斬りつけた辺りに、薄暗い光を宿した義眼を向ける。
好い日だった。
僅かに顔を覗かせた太陽が地を照らすが、部屋の中にはまだ光は差し込んでいない。暗い。
夜は等しく……。
以上、投下終了なり。
百鬼丸の紹介分のせいもあるが、十四話にしてやっと一日。長いけど、外せないので
どうかお付き合いください。
これから多くの人物が登場しますが、小説読んでおさらいしときます。次回少し空くかもです。
頑張って続けますので。
待ってたとおっしゃった方、ほんとにありがとう。頑張るよ。
ぜろろ乙ぅ!
待ってたぜ、俺の2大お楽しみSS!
気長に待ってるので頑張ってください!
乙でした!
乙、期待して待ってます
乙でした。
百鬼丸消滅後の日本の情勢も気になりますな
史実の室町末期より悲惨っぽい情勢なのは魔神達の暗躍もあると思いますが
醍醐が天下を取って多宝丸が跡を継ぐのか…
百鬼丸と出会わなかったどろろは…
GJ!
なんか凄いいい感じの作品だった
ちょっとさみしいようなそれでもわくわくするような
ぜろろ乙
>>666 獣の数字おめw
2大ってすくねぇなw
もう一つはなによ?
ジエンドより明超次召喚
乙
続きも楽しみに待ってる
moonlight owataから魔王リリア様召喚、をニコニコ見てたら書きたくなった
自分を拉致して土をつけ、塔の中を歩き回らされた、という理由だけであそこまで敵をボコボコにした姫様に決闘を挑んだら
ギーシュは果たして何個の肉片になるのだろうか……
どろろ乙ー
>>669 契約した魔神が居なくなったら醍醐は天下どころか自分の領土も平定する事が出来なくなる気がするぜ
こんばんは、ネタばらしがどっさりの第十六話持って参りました。
他に誰もいないようなら投下してよろしいでしょうか?
>>640 遅ればせながら、手の目の人、乙です。
さてどんな話になるか、エログロか、シリアスか、などと思ったらスチャラカなほうの高橋葉介だったw
しかし、相手が手の目でよかったな、ギーシュ。
もし若旦那だったら、シエスタとの決闘まではいっしょでも、そのあと死体になったシエスタに襲われる夢くらいは見せられてたぞ、きっと。
>>674 ・三次創作。
・元が同人と言うかフリーゲーム。しかも既に公開終了している。
・無意味にニコ厨を呼び込む原因になる。要するに荒れる。
とまあ、問題が余りにも多過ぎる。
止めてくれ。
いいんかな……投下いかせて頂きます!
ペルソナ0 第十六話
自分はなぜこんなことをしているのだろう?
降りしきる雨にその体にいくつもの火傷と水疱を作りながら、雪風のタバサは夜の魔法学院を駆ける。
ある時は魔法で、ある時はその未発達な己の足で地面を蹴って、タバサは狂える獅子竜に向けて突き進む。
正確にはその足元の意地悪な従妹へと向かって。
その事実が信じられずタバサはウインディ・アイシクルで目の前の炎の相殺しながら心の中で首をかしげた。
自分にとってのイザベラは憎みこそすれどこうやって助けに入るような相手ではなかったはずだ。
「イーヴァルディ!」
いやむしろ死ねばせいせいすると言った類の相手だったはずだ。
なのに何故自分はこうして身を挺してイザベラを助けにいこうとしているのか?
奇妙だ、実に奇妙だ。
だが奇妙だと言うなら先ほどのイザベラの語りからして既に奇妙だった。
第一……何故現実世界をシャドウがうろつき、ペルソナが力を発揮できるのか?
わからない、何もかもおかしくなっている。
そこまで考えて、タバサは余計な思索を頭から締め出した。
今はただ一人でも多くの命を救い、目の前の化け物を打倒すことが先決。
そう自分に言い訳して、疑問点の解消を先延ばしにした。
――その小さな違和感が、やがて自分を絶望させる花を咲かせるとも知らずに。
タバサの言葉にその背後から蒼の乙女が駆け抜ける、氷の鎧が雪の結晶を舞い散らせ、長く長く尾をたなびく様は氷で出来た竜の翼。
左手に構えた“二杖交差”の盾は守ろうと言う誓いに満ち、右手に構えた水晶の剣はあらゆる迷いを断ち切る決意で輝いている。
鎧の下から覗く肘と膝の間接がマリオネットのようにいくつかに切り離され、宙を漂っているのは人より早く大人にならなければならなかったタバサの心の現れだろうか?
身体には大きすぎる氷の鎧を纏った少女の騎士、それが炎に照らしだされた『イーヴァルディ』の全景だった。
その表情は仮面に隠されて伺えない、いやそもそも存在するのかどうかすら分からない。
氷で出来た蒼と白のぶかぶかな丸い兜は、蒼い瞳以外のすべてを完全に覆い隠している。
その可憐な瞳に戦意を滾らせ、イーヴァルディは炎の竜に挑む。
「マハブフーラ!」
最初に炎の雨を広範囲凍結魔法で相殺、道を確保すると同時に本体であるタバサを守る。
「コンセントレイト」
僅かに出来た隙でタバサは精神を集中、炎の海のなかに出来た一瞬の間隙のなかをひた走る。
対するは炎の竜、その足元に倒れた意地悪な従妹姫。
走る、走る、ペルソナの魔法と系統魔法の二乗、さすがにこの一撃ならあの炎の竜とて止められると信じて。
だが呪文を唱えるタバサを前に炎の竜は大きく息を吸い込んだ、そしておそらくこちらが踏み込むよりも炎の竜があたりに溶岩のブレスをまき散らすほうが早い。
そうなれば自分自身への攻撃は相殺出来たとしても、竜の足元で気を失っているイザベラはおそらくひとたまりもないだろう。
タバサの心は理由の分からない焦燥が駆け抜け、〈ウインディ・アイシクル〉の完成を待たずブフダインを解き放とうとしたその刹那。
>>676 ペルソナは知らないが、アトラスファンとして支援。
「エア・ハンマー!」
それは来た。
塹壕から飛び出したギーシュよりも早く。
身を挺してタバサを庇おうとしたキュルケよりも早く。
真っ先に立ちあがったルイズや、炎の竜に特攻を仕掛けたタバサよりもさらに早く。
黒い巨大なシャドウの体から突き出した剣から放たれたエア・ハンマーが炎を湛えたニズヘグの鼻先を強かに打ったのだ。
竜の口の中で炎が滾る、その熱にニズヘグが苦しみ地面にその頭を叩きつけようとした瞬間の隙をタバサは見逃さなかった。
渾身のフライでイザベラを救いあげ、すぐさま上空に向けて離脱する。
地響きすら立てて暴れるニズヘグ、それに向かっていく足音一つ。
「これは、これはおい! どう言うことだ、これはどう言うことか説明しろ! なんでお前が、お前が……」
慌てた声で喚き立てるのは、彼の手に握られたデルフリンガーだ。
「すまねぇ、全部俺が悪いんだ、全部……」
声の主は悲痛な言葉と共に、シャドウのなかから現れた。
その体に纏わりついたシャドウの残滓がまるで少年が闇に抱擁されているかのよう周囲の目に映る。
「だから、俺が終わらせないと」
胸に金色のルーンを輝かせ、夜に濡れた身体を引きずりながら、平賀才人がそこにいた。
「サイ……ト……?」
ルイズの心にいくつもの疑問が過る。
あいつは今わたしの部屋のベットで寝ているのではなかったか?
第一、あの姿は自分の記憶にあるサイト違う。
少しだけ背が高くて、精悍で、そして体中が傷だらけだ。
それにあの胸のルーンは……
そこまで考えて、ルイズの耳に――いや心に直接言葉が響いてくる。
――頃合いでしょうか? さぁ、続きを見せてあげましょうトリステインの虚無の担い手よ。
耳慣れない詠唱、しかしどこか懐かしい呪文。
その詠唱は長く長くルイズの心の中に響き渡りやがて完成した。
――記録<リコード>!
見知った少年の胸のルーンに対して使われた虚無の魔法によって、ルイズの意識はかつてと同じ、見たことのないはずの記憶へと落ちて行く。
体中を弛緩し美しいその瞳が虚空を映す、過去へ過去へと引きずり込まれ続けるルイズの目の前で、少年は戦っていた。
剣のみを手に竜に向かっていくその姿は、まさしく異世界の少女がイーヴァルディを重ねたものと同じものだった。
「ユビキタス・デル・ウィンデ!」
その言葉と共にサイトがぶれるようにして五人に増えた、そのことになにより驚いたのは風のメイジであるタバサだ。
「風の偏在!?」
それは風のスクウェアスペル、術者自身と全く同じ能力を持った分身を作り出す魔法だ。
普通ならば存在そのものが稀有な風の四乗、だがタバサを何より驚かせたのは分身したサイトたちがそれぞれ別のスペルを唱えだしたからだ。
「なにこれ、知らない、私こんなの知らない……」
それはハルケギニアの常識からすればあまりにも異常な光景だ、一人で四つの属性のスクウェアクラスの魔法を使うなんて常識からすればとても考えられないから。
どこか見覚えのあるゴーレムの腕がニズヘグを殴りつける、波濤のごとく溢れた水がその体を蹂躙し、炎が地面を陥没させその巨体を地面へと封じ込める。
そしてサイトの本体、唯一生身である彼が唱えたのは博識を誇るタバサですら聞いたことすらない詠唱で……
「エオルー・スール・フィル・ヤルンサクサ……」
タバサの眼には目の前の少年がまるで奈落からやってきた化け物のように見える。
「エクスプロージョン!」
世界を染める発光が夜を染め、ニズヘグを跡形もなく打ち砕く。
光が収まった後、タバサはクレーターの奥を覗きこんだ。
「ひっ」
はじめから破壊と殺傷を目的と放たれた虚無の魔法の効果はやはり惨々たるありさまで、いくつもの地獄を潜ってきたタバサですら思わず小さな悲鳴を上げてしまうほど。
ニズヘグの完全な沈黙を確認し、サイトデルフリンガーを取り落としその場に膝をついた。
荒い息を繰り返すサイトの胸で、使い魔のルーンが呼応するように明滅する。
その胸から何かが聞こえてくるような気がするのは、はたしてタバサの気のせいだろうか?
「な、なんだいこの声は!?」
否、気のせいなどではなかった。
確かに聞こえてくるのだ、彼の胸から苦痛と怨嗟に満ちた数々の呼び声が。
――痛い、痛いよ、ここから出して。
――テファ、テファどこにいるんだい、テファ。
――俺は力を、ルイズ、苦しい、ルイズ。
どん、とまるで突き破るようにサイトが自分の胸を叩く。
増え続ける呼び声はまるで委縮したように小さく掠れていった。
「あなたは、いったいなに……?」
タバサの問いに、サイトは苦しげに呟いた。
「平賀才人、虚無の使い魔の記すことすら憚れる最後の一人」
自嘲気味に笑いサイトは言った。
「そして世界を滅ぼした男さ」
サイトは空を見上げ、そこへと立ち上る黒い煙のようなナニカを見た。
二つの月、双子に覆い隠されて一つの真月に映る月へと向かっていくそれは“塔”
人の心の影、シャドウたちが身を寄せ集めて作り出した望郷と郷愁と憎悪の柱だ。
ハルケギニアとは違う別の世界で、ある狂気の集団が作り出した“タルタロス”と呼ばれるものと本質的に近似のものだ。
「頼む、時間がないんだ。俺に力を貸してくれ……」
それを見上げ、かつて自分を覆っていたシャドウとニズヘグの亡骸から立ち上るシャドウを見上げ――サイトは祈るようにしてタバサたちに言った。
――ルイズはその光景を見た。
「どうしてこんなことになったのか」
一人の男が灰の大地の上に立っていた。
何もかもが焼け落ちたそこはかつてガリアと呼ばれた国の跡、体中を煤まみれにして呆然と立ち尽くしているのはかつて無能王と呼ばれた男だった。
そこにかつての威厳など見る影もない。
まるでなにもかもが燃え尽きたような顔でジョゼフはなにもかもがなくなってしまったヴェルサルテイル宮殿の玉座の跡で空を見上げている。
彼が嘆くのは世界が灰になったからではなく、灰になった世界を見ても自分は何も感じないことを知ってしまったから。
まるで遊び相手を失い、家への帰り道も分からなくなってしまった子供のように途方に暮れることしかできない。
そのジョゼフの前には世界を滅ぼした化け物が少女の亡骸を手に呆然と立ち尽くしている。
「る……い……ず」
胸に明滅する黄金のルーン、先ほどまでおぞましい輝きを放っていたその使い魔のしるしは今は薄れて消えかかっている。
最愛の主人の死、それによって彼は救われたのだ。
だが救われた先には地獄しかなかったとは実に皮肉な話。
一人の化け物と一人の王は何もない世界で途方に暮れる。
そんな世界に一人の悪魔が舞い降りたのは時間がもはや夕刻に差し掛かろうと言う時のこと。
「やり直したいか?」
千の貌を持つ悪魔は化け物に向かって囁く。
僅かにたじろいだ様に、化け物が体を震わせる。
「もう一度、時間を巻き戻して最初から始めたくはないか?」
その問いに虚無の悪魔〈サイト〉は。
「あ…い………だ……い…………」
頷いてしまったのだ。
苦しげな様子で悪魔は契約完了だ、と呟くと化け物の右手に焼印を押した。
「よかろう戻してやろう、ただし“心”だけな!」
その言葉と共に化け物の体から“何か”が抜け落ちた。
今まで明らかに意思を持っていた化け物が獣じみた仕草をするようになったあたり、それは言うなれば“魂”とでも言うべき存在か。
獣は手の中の少女の亡骸を地面に下ろすと、まるで何かを探すようにその煌々と二つの光る眼をあちらこちらへと向ける。
「さて、次はお前に聞こうジョゼフ・ド・ガリア」
「なんだ、悪魔か死神かは知らぬが魂でも心で好きなように持って行くがいい」
地を這う者どもの問答など知らぬげに、化け物は空に浮かぶ二つの月を見つける。
それが重なろうと言う瞬間、大きく大きく空に向かって吠えた。
「いいのかな? お前はやり直したくはないのか?」
何を、と問いかける必要はなかった。
化け物の体から闇が空へ向かって駆けのぼる、その身に取り込んでいたいくつも怒り悲しみ憎悪、あらゆるものを影〈シャドウ〉として開放し化け物は月への梯子を作り出した。
硝子のような月の表面に浮かぶのは、未だ何もかもがあの頃のままのハルケギニアだ。
呆然とするジョゼフに向かって、悪魔は言った。
「健気だな、どうやら彼は主の魂を見つけたらしい。もっとも並行世界の存在だがね、ああなってしまえばもはや彼には関係ないのだろう」
「なんだこれは、いったい……」
「虚無の魔法上級の上〈時間門〉だろう、あの狂信者を食ったおかげで使えるようになったらしいな」
「あ、ああ、ああ……」
ジョゼフはゆっくりと影の階段を上りだした、月に至る道程、そこ見出したのはハルケギニアを灰にした時と同じ闇色をした希望の塊。
「その道で辿れるのはせいぜいがお前の遊戯の初めまでだろう、求めるのなら、欲するのなら、足掻くことだ」
走り始めたジョゼフの背中を見ながら死にかけの悪魔は笑う。
やがて来る“虚無”を前に、ただ運命を嘲笑い続ける。
以上です。
なんか展開を急ぎすぎな気もしますが完結に向けて全力で突っ走ります。
よろしければこれからもよろしくおねがいします。
乙ー
>>685 お疲れ様ー
コンゴトモヨロシク…はまぁいいとして、
這い寄る混沌様はこうでないとなー
ハルケギニアの明日はどっちだろうか?
続き期待してますから頑張ってくださいな。
Persona0がきてれう!
絶望エンドからこうなったかぁ。ニャル様はさすがでし!
にゃる・しゅたん! にゃる・がしゃんな! にゃる・しゅたん! にゃる・がしゃんな!
今日も大量投下ですな。
零姫様のタバサ、メタ発言自重w
おまけに十段二刀流の三倍段で60段とか、武道なめてんじゃねーよw
めっさワロタ
そしてぜろろもGJ。
アクション シーンも緊張感があって良いんだが、
それ以上に3人の細やかな心情描写が秀逸。
Personaの人、お疲れ様です。
実にありそうなオリジナル スペル 時間門か。
全貌が明らかになるのも近いのかな?
690 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/21(火) 23:03:17 ID:PyeZkyX1
週間ストーリーランドの不思議な物売りのお婆さん召喚
気になるフレーズで商品を出し、ルイズ達がマジックアイテムだと思い気になって買う
泣くか笑うか、生きるか死ぬかはキャラ次第
オリジナルグッズとかも有りで、
例、使えない杖
効果 杖を構えなくても魔法が使える
先住魔法扱いされるがそういう効果があるアイテムをお婆さんから買ったと言ってお婆さんを捕まえようとするが何故かつかまらない
そういえばお婆さんは神出鬼没だったな
とりあえず
. ,ィ =个=、
〈_/´ ̄ `ヽ
{ {_jイ」/j」j〉
ヽl| ゚ヮ゚ノj| ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
⊂j{不}lつ
く7 {_}ハ>
‘ーrtァー’
日本語の通じない輩が増えてるねえ
まこと。大量投下、良き哉良き哉。
ところでこれまでルイズの元に喚ばれたキャラで、
ガンダ、ヴィン、ミョズ、憚れし。
で来た連中の割合ってどれがどれぐらいあるんだろう?
ポイズンピンクからデュファストン召喚とか考えたのだが…
イゼット撃破時点で七万涙目であるのは確定なんだよなぁ。
あの世界観、僅か数体の魔神が数千人の騎士達(恐らく魔術師も含む)を壊滅寸前まで追い込むレベルだし。
…まぁそれ言っちゃうと、割と余裕で魔神屠ってる主人公達の戦力って実際ドンだけよって話になる訳ですが。
よろしければ45分から夜明けの使い魔を投下します。
ぜろろ乙。
異文化接触する百鬼丸に萌える。
>>692 8割はガンダで、1割がミョズ、ヴィンと憚れで5分ずつって感じだろうか。
憚れはヒースのとっつぁんくらいしか見たこと無いな。誰か居たっけ?
そして支援。
>>692 トップは言うまでも無いとして、アイテム師系のミョズが結構多いねー。ガチ戦闘系のヒロもなってたがw
ヴィンダールヴはシャーリーぐらいしか見たことない
支援
>>692 そこでまとめwikiを虱潰しですよ。
その集落は、火に包まれつつあった。
山の如く巨大な何かが近くを通り過ぎた次の日のことである。
轟音立ててうねくる巨大な何かが僅か数リーグしか離れていない海に没した、その事実への不安に村の人々は皆不安がり、村長の家でどうしたものかと話し合っていたのだった。
いつそれが海中から飛び出してこの辺り一帯を押しつぶすとも知れない、村を離れようと言う者と、父祖から代々伝わってきた田畑を残して去るわけにはいかない、ここに残ろうと言う者と、二つの意見が平行線をたどっていた。
早朝に馬を駆っていた変わり者が綺麗に押しつぶされて地形を変えた何かの通り道のことを口にして、なんとしても逃げるべきだと告げた。
それでも村長を含む多くはこの愛着ある地を離れることに――たとえそれが数日でも、だ――反対していた。
そんな最中のことであった。
不意に空から降り注いだ炎が、丁度無人となっていた隣家を焼いた。
村長以下、すべての村人が目を剥いた。
慌てて飛び出した村人達の目の前に、惨状が広がっていた。空から降り注ぎ続ける炎。炎に継ぐ炎。
それが家々を焼いていた。
彼らは口々に始祖たるブリミルの名を呟き、加護を祈り、ただ救いを求めた。
恐慌に陥らなかったことこそ奇跡と言えよう。誰もが呆然とその光景を見つめていた。
魔法、いや、そんなものではないだろう。
魔法は万能であると半ば思っている彼らではあるが、それがこのようなことを成し遂げるとは思えなかった。
否、それ以前の問題である。
たとえ魔法にそれが可能であるとしても、だからと言ってこの村を焼くような理由はどこにも存在しない。
1リーグほど離れた丘の館に棲むメイジに助けを求めに行こうと、ある者が言った。
この炎を、己の手で消し止めることなど無理だと悟っていたからだ。
いくら水があろうと、それを自在に扱えるわけではない彼らではこれだけの炎、或いは黒こげになるのが関の山だろうか。
駆けだした一人の身体を、天から降り注いだ炎が焼いた。誰もが次に彼と同じくなるのだと予感して、ごくりと息を飲み込んだ。
笑い声が響いた。ごうごう、ぱちぱちと燃え上がる家々の爆ぜる音を越えて、それは彼らの耳に届いた。
そうして、彼らは彼女を見た。足場無き空に立つ、破滅の瞳の二つ名を持つ女怪、グリシーナを。
「死になさい、人間達。無念の想いを抱いて。憤怒の想いを抱いて。その命を断ち切る不条理への怒りと無念をその身に抱えて死になさい」
その刹那、村人達は皆恐怖に震えた。顔は青ざめ、手足は震え、ともすれば失禁しかねない状況であった。
グリシーナの頭頂を飾る獣の耳、確かなる眼ならざる右目。
そのいずれもが、彼らに一つの事実を伝えてくる。
即ち――
これは、我らの常識の外にあるものだ。
数名が悲鳴を上げ、声高にブリミルの名を、或いは家族の名を口にする。
けれど、グリシーナはそれを一向に意に介さず、ローブの中からつきだした手を振り上げる。
同時に、赤々と燃える炎が空に無数に浮かび上がった。
「おっと、それをさせる訳にはいきませんねぇ!」
奇妙に甲高い声が、不意に飛んだ。
グリシーナの唇が怒りに歪んだのを、気付いたものが一人でもいたかどうか。
村人は声を頼りに救いとなり得る存在を探し求める――いた。
それは騎士のように甲冑を着込んでいた。けれど、それは人では無かった。
飾りの付いた兜の下に見えるのは、まさに蜥蜴、いや、ドラゴンだろうか。
ぎょろりと大きな目が村人とグリシーナを睥睨し、唇が楽しげに歪んでいる。無論、彼らにドラゴンの表情が読めるわけはなかったが、それでも分かった。
震龍将と呼ばれる龍、ラハブであった。
「丁度良い時間に間に合ったようですねぇ!」
ラハブが甲高い笑い声を上げた。村人達に取っては耳障りなばかりのその声は、空を行く女怪にとっても同様に耳障りらしい。
眉間に皺を寄せて、グリシーナさえもが顔をしかめた。
「あら、臆病な龍の将軍が、いったい何の用かしら?」
ふる、ふると首を振り、その顔に余裕の笑みを浮かべたグリシーナが挑発を投げかける。
クハハ、とラハブは笑った。
しゃらんと鞘を鳴らし、白く輝く剣を手にする。
「私が何をするかなど、決まっているでしょう? よぉおく、ご存知のはずですよぉ!」
言いざま、抜きはなった剣を払う。背後から現れたその配下の龍達が、獣の如く大地を走る。
同時に炎が降り注いだ。いずれも龍を狙ったものではない。狙いは――村人!
ラハブは自信ありげに顔の笑みを更に深めた。
「人間に肩入れする理由はありませんがぁ……冥龍皇様のご下命を果たすにはこれが手っ取り早いようなのでねぇ!」
人々に降り注いだ炎を、駆けた龍がその身に受ける。鱗の焦げる音と、肉の焼ける匂いが漂う。
守られた人々はあまりの状況に、ただ呆然とした表情を浮かべ動揺するばかり。
それは既に考慮のうちか、ラハブはぺろりと唇を舐めた。
「さて、グリシーナ! 今日は特別ですぅ、私のコレクション、お目に掛けましょうかぁ!」
マントを振るう。同時にラハブの足下に突き刺さる名剣名刀名槍併せて十一。
左翼に開いた五、デュランダル、カリバーン、ゲイボルグ、グラム、千手院村正。
右翼に開いた六、クルタナ、グングニル、カレドヴールフ、カラドボルグ、ジョワイユーズ、物干し竿。
いずれも鋭利な刃を有し、その一振り一振りが強大な力を秘めている。
グリシーナは、笑った。
「あら、蜥蜴さんの兵隊ごっこに付き合う必要はどこにも無いのだけれど――」
銀光が走る。ラハブの手に握っていた剣が、空を裂いてグリシーナに挑み掛かる。
その膂力、いかなるものか。まさに流星。グリシーナにその刃が届くまで、瞬きする間も無かっただろう。
けれど。
確かにその一撃はグリシーナを捕らえていた、そのはずだった。
けれど。
グリシーナへと届いたと見えたその瞬間、魔剣はその動きを止めていた。
見えざる壁がグリシーナを守るかのように、魔剣は先へと進めない。ラハブが与えた推進力は、それを戻らせることすらままならない。
鈍い音が響いた。ラハブの剣の一振りが、そのようにして折れて果てた。
「ふふ、残念ね蜥蜴さん?」
グリシーナの笑い声がラハブの身体を打ち据える。
その眼には道化を見るような憐憫と嘲笑が浮かんでいる。
けれど、そのどちらもを受けてラハブはただ一度、舌打ちをしたのみだ。
「流石は暗黒の太陽を身に宿すものですかぁ……。ですが、私の仕事には関係ありませんねぇ」
更に一振り、大地に突き刺していたクルタナを抜き放つ。
剣の持つ輝きは、まさに至上の霊剣のみが帯びるもの。それは名剣でありながら切先を持たぬ仁慈の剣。
「私の役目はイルルヤンカシュ様のため、あなたがアポルオンを呼び出すのを防ぐことのみ。さあ、せいぜい皆さんが遅れてくるまで私の相手をしていただきましょうかぁ?」
剣を突きつけるラハブは楽しげに唇を歪め、グリシーナをねめつける。
グリシーナは平然と、或いは平然を装ってか再度嗤った。
「つまり貴方とその部下を打ち倒してしまえば良いと言うことでしょう?」
「ええ、できれば、ですがねぇ――!」
不意にラハブの声が太く、低くなっていく。
グリシーナの訝しげな視線が、ラハブを射貫く。同時に、動揺。
ラハブの肉体が張り詰め、巨大なものと化しているように見えるのは気のせいだろうか。
――否。
ラハブの身の丈が、みるみるうちに巨大なものとなっていく。
周囲の配下達の放つ龍のフレア、見ようによっては謎の光線にも見えるそれが、ラハブに、そして彼の従える魔剣に並外れた巨体を与えていた。
非人型に多いですね。
>憚れるモノ
グラビモスとか黒ラビとか。
空を舞うグリシーナを眼前にするような巨体を得て、ラハブは最早破壊音波としかとれない笑いを高らかに響かせた。
その身体を見れば百年の老木すら雑草に過ぎず、その声音はまさに雷鳴の如きもの。
彼の周囲に林立した剣の群れは最早小さき人からは鋼としか認識できず、グリシーナは驚愕に眼を見開いた。
真の姿を晒すわけでもなく、ただ竜人と言えるその姿のまま巨体を得る。
炎龍将にも、氷龍将にも為し得ぬラハブの得意技だった。
フレアを放った龍達が、住民を一人ずつ抱え、走り出す。
この周囲は最早炎だけではなく巨大なラハブの巻き起こす破壊が渦巻く危険な場所と化す。それ故の行動だ。
そうして死なせてしまったならば、恐らくグリシーナを留め置くために馳せた事実は無意味なものとなろう。
抱えられた村人達はただただ目の前で起こる常識外の怪事を受け止めきれずに、されるがままだ。
巨大化したラハブが剣を持たない右手を伸ばし、僅かな距離を詰めグリシーナを叩きつける。
轟音と、そして衝撃。
巨大な手の叩きつける一撃を食らったたおやかな乙女は、ただ大地へと赤い華を咲かせることしか出来なかった。
――それが、まともな女を相手にしているのならば、だ。
現実は違う。ラハブの巨大な手は、しかしグリシーナの身体を打ち据えることすら出来ていない。
大木とも見まがう巨大な指の間からラハブに眼を向けて、グリシーナは聞こえよがしにくすりと笑う。
そっと添えているだけの手が、まるで巌のようにラハブの豪腕を押し返していた。
「やはりそう簡単に潰れてはくれませんかぁ……!」
唸る声は無念の状を色濃く表している。それを耳にし、グリシーナは頭頂の耳をぴくりと動かした。
「村人達は逃がされてしまったけれども、貴方を使って贄とすることにしましょう。良い考えだと、思わないかしら?」
ことさらに声を立てて笑うのは、恐らくラハブの怒りを誘ってのことだろう。
轟々と音を立てて唸る怒り――アムルタートの原初たる暴威を孕みながら、ラハブはそれでもまだ、耐えた。
ラハブは小利口な龍将だ。
賢しいと、或いは小賢しい、卑怯に過ぎると詰られる。
けれど、その小賢しく卑怯な、己の力量を知り卑劣に生き抜こうとするラハブだからこそ、できる。
アムルタートの本懐たる破壊と暴威、その衝動を抑えつけることが。
「生憎ですがぁ、その程度の言葉に惑わされる私ではありませんねぇ。さあ、束の間ですが私と余興といこうではありませんかぁ!」
クルタナを叩きつける。一撃、二撃、三撃目で煌めく刀身に翳りが見えた。
離れようとするグリシーナを取り囲むように、尾が後ろを取る。そこに振り下ろす刃。
戦法を切り替えたらしいグリシーナが、ローブから突きだした手に冷気を浮かべる。
急速に凍えていくラハブの身体。霜が降り、堅い鱗から氷柱が垂れる。
があ、と高く低い声が口から漏れた。ぐるんと振り回した上半身から、霜と氷柱が落ちて、大地に痕跡を造った。
「無駄ですよぉ、私の動きを止めようなどと! 今の私は気分が良いですからねぇ!」
くははと笑う、その声が周囲を薙ぎ払う。
それに、とラハブは続けた。
「私の集めた魔剣達――それをすべて全力で使えるとなれば、それもまた楽しいものでしてねぇ!」
轟音立てて剣風が唸る。まさに暴威、まさに破壊。
けれどその暴威は、剣戟は、グリシーナにわずかなりとも通ってはいない。
いや、それどころかグリシーナが返礼とばかりに放つ炎は、巨大な肉体と化したラハブを違えることなく焼いている。怒りを込めて放つ冷気は間違い無くラハブの肉体を傷つけている。
今は、まだ。
まだ、巨大化した肉体の耐久力がラハブを繋ぎ止めている。
それが失われたとき、それが恐らくラハブがすべてを手放す時だろう。
けれど、ラハブは信じている。その時は来ないと。
――私の話を聞いてくれた少女に、少しは良いところを見せたいじゃあないですか、ねぇ。
胸に浮かぶその言葉を知るものは、どこにもいなかった。
炎と岩の神格をなぎ倒し、イルルヤンカシュとジョゼフは共に全軍へと進軍を伝えた。
敵はグリシーナ、だがただ一人ではあるまい。グリシーナを追わせたラハブ達を探し求めながら、全軍は可能な限りの速度で空を行く。
船を竜が引き、あるいは押す。通常の速度の数倍を、空を行く船達は記録していた。
移動手段に欠ける竜の歩兵を乗せた船は通常の数倍の重量ではあるが、空を行く竜達の翼はやはり早い。
戦時であればその翼の一打ちで1リーグを飛び、風を切り裂きあらゆるモノを打ち倒さしめると聞いては納得する他無いだろう。
無論、その言葉に偽りが無ければ、だが。
けれど、ジョゼフはその言葉を疑ってはいない。
アムルタートは確かに実力主義的で戦のことしか考えぬ者が多いが、だからこそ自らの実力を偽ることはないだろう。
風を切って走る船の上で、姪とその使い魔が休息を取っているのを見つけたジョゼフは、そちらへと足を向けた。
周囲の兵達はこの状況に慣れることができないでいるようで、急速に進んでいく光景に酔ってしまっている。
無理からぬことではあるが、困ったものだ。そう考えながら、姪の傍らに立って――そして、ジョゼフはふと迷う。
果たして、なんと声を掛けたものか。
己が姪を労う、だと?
有り得ぬ光景を夢想して怖気が走る。
――怖気? いや、違うだろう。
姪の姿は、弟を思い出させるのだ。
弟はきっと己を恨んでいるだろう。ああ、己が弟を強く羨み妬んでいるのと同じくらいには、少なくとも。
いわば姪は水鏡のようなものだ。その中に見える己の姿が、余計に関わりを作りづらくしている。
ふと、姪が振り向いた。
何を考えているか分からぬ瞳が、ジョゼフの顔を映し出していた。
己を憎んでいるのか、それともシャルルのように哀れんでいるのか。
思わず声に出して問いかけそうになりながら、ジョゼフはそれを耐えた。
どうしようもない悔恨など、考えても仕方のないこと。
今の己は間違い無く過去の己を積み重ねてあるものだ。それを否定することなど出来はしないし、するつもりはない。
「まもなくあの女怪の居場所は見つかるだろう」
いつもより僅かに低い声が、ジョゼフの口から流れ出ていた。
姪の瞳が揺れる。水面のような目が、鋭く探るものへと変わっていた。
己が何故そんなことを問うかとでも思われたか、それとも声音から己の疲労を感じて、今なら殺せると思ったか。
ここで殺されると言うのならそれでも構わないと、ジョゼフの中の捨て鉢な部分が囁いた。
生きるも死ぬも所詮は僅かな違いでしかない。或いは、ここに己が居なければ代わりにシャルルが居たのかもしれない。
その違いは、紙一重のようなものなのだろう。
周囲ではメイジが、騎士が、兵士が、竜が繰り広げる雑音が響いているはずなのに、二人の周りには沈黙が降りていた。
姪は何も言わず、ただジョゼフを見つめるのみ。
ジョゼフもまた、口を開くことが出来ずに姪を見つめ続けた。
二人とも、何も口にすることが出来ずにいた。
お互いに、相手の心の内を読み取ることは出来なかった。
刻一刻と過ぎる時間。ゆるりと影が位置を変えていく。
ジョゼフの口が、小さく動きを見せた。
と、同時に声が響く。
「ラハブじゃ! グリシーナもおるぞ!」
冥龍皇の声だ。その鋭い声に弾かれたように、ジョゼフはマントを翻し、口を覆った。
同時に、冥龍皇の姿を探し求める。声の源を探り、目を向けた。
冥龍皇は、船首に陣取り遙か前方を眺めていた。併せて、同じ方向に視線を動かす。
目を見張った。巨大な人型の龍――恐らくは、ラハブと呼ばれていたあの龍だろう――が、折れ欠けた剣を手に立っている。
その巨大さたるや。アポルオンには及ぶはずも無いが、目の前にいるのか1リーグ先にいるのか、ジョゼフの目を誤魔化しかねないほどの巨体だ。
そして、その目の前に浮かぶ小さなローブ姿、それが恐らくグリシーナだろう。
考えたものだ――と、ジョゼフは唸る。あの巨体であれば後続が見落とすことも無いだろう。
冥龍皇の声に気付いたか、ラハブが弱々しく船団へと目を向け、わずかに唇の端を持ち上げた。
不味い、とジョゼフの脳裏に浮かんだ。最早ラハブの体力は底を突きかけているだろう。
冥龍皇と囁いたジョゼフの声に、冥龍皇イルルヤンカシュはこくりと頷き、配下へと号令を下す。
「みなのもの、全速前進じゃ! 我らが敵グリシーナはもはや目前ぞ!」
一斉の返答は、声ではなく吹き抜ける風のように聞こえた。同時に加速が始まり、船が軋みをあげた。
「諸君、戦の準備をせよ!」
号令を下すジョゼフの声が届いたかどうかは、部下達が動き出したのですぐに分かった。
ようやく訪れた本隊に、ラハブは笑みを浮かべたまま巨体を揺らし、仰向けのまま大地に倒れた。
凄まじい衝撃と地鳴りが届いた。
ジョゼフとタバサが互いに言葉を掛けることは、無かった。
レナスがニョズ、絶望先生がヴィンだったかな?
4/4を投下するところで何故か長すぎると怒られ、中途半端なことになってしまいました。申し訳ありません。
本日はこれで投下終了です。
ん、乙なり。
↑ごめん、なんかえらそうに見えるね。書き直す
乙です
乙です。
黒蟻とかイザベラ管理人の人早く帰ってこないかな。
今日も盛況なようだが、もう一本いいだろうか?
実は前スレでこの先の展開を言い当てられてちょっと涙目なんだが、
そんな事にもへこたれずに第三話を書いてきたので投下させてもらいたい
大丈夫そうなら00:20くらいから投下させてもらう
支援体制は整っている
ドラ!! 支援!
第三話『めいよの決とう』
――きっかけは、些細なことだった。
「おいきみ。おとしものだぞ」
ルイズの相手をするのが面倒で食堂に逃げてきたドラえもんが、
一人の貴族のポケットから落ちた香水の小壜を拾ってやったのだ。
しかしそれがきっかけでその貴族、ギーシュの二股がばれ、
それを逆恨みしたギーシュはドラえもんにいちゃもんをつけようとした。
「おい、どうしてくれるんだ。そこのタヌキく…」
「ぼ、ぼくはタヌキじゃなぁーい!」
だが図らずもNGワードを口にされ、悪口を言われる前にすでに怒り狂うドラえもん。
そうなると、きっかけなんてほんともう些細なことだった。
ていうかぶっちゃけ関係なかった。
「け、決とうだぁ!!」
……ということで、言いがかりをつけようとしたギーシュがではなく、
タヌキと言われて(しかも悪口ではなく素で!)むかついたドラえもんがギーシュに決闘を申し入れ、
「む。なんか予想とはちがった展開だが、……よかろう。ここで降りれば貴族の名がすたる」
二股がばれていい加減ムシャクシャしてたギーシュもそれを受け入れた。
さらにギーシュはドラえもんを見つめ、今気づいた、というように眉を上げると、
「おや、よく見れば君はあのゼロのルイズのところの妙な使い魔じゃないか。
使い魔の分際で貴族にたてつくなんて主人と同じで愚か者だな。
ふむ、いい機会だ。僕がその身に使い魔の分というものを教えてやろう。
タヌキにも分かるように、はっきりとね。あははははは!」
分かりやすい哄笑と共に立ち上がり、
「ヴェストリの広場で待っている。コテンパンにされる覚悟が出来たら来たまえ。
待っているよ、タヌキくん?」
最後までキザな台詞を残し、食堂を去っていった。
――かくして、すっかり頭に血が昇ったドラえもんの暴走によって、
タヌキ型…もといネコ型ロボット対貴族の異色の対決が実現する運びになったのだった。
ドラえもんの台詞のひらがなといい、芸が細かいw
支援!
「バ、バカ! なんてことしてくれちゃってんのよ! 使い魔が貴族に喧嘩を売るなんて…!
なんであんたはよけいなことばっかりするのよ! バカ! この、バカダヌキ!」
「ぼ、ぼくはタヌキじゃなぁーい!」
「なによ! タヌキじゃない! どっからどう見てもタヌキじゃない!」
「け、決とうだぁ!!」
その後、騒ぎを聞きつけてやってきたルイズとドラえもんはさっそく不毛な争いを始め、
「お、おふたりとも、落ち着いてください。今はそんなこと言ってる場合じゃないですよ!」
その場にいたメイドによって、なんとか引き離される。
「そ、そうだったわ。わたしとしたことが、ついわれを忘れちゃって……。ところであんた誰?」
「あ、わたしはこの学院のメイドでシエ…」
と自己紹介をしようとするが、
「ていうかなんでいんの? あんた関係ないじゃない」
「あ、そういえばそうですね。どうしてでしょう。ずっと見てたからでしょうか、
なんだかわたしにも責任があるような気がしちゃって…」
と言ってすごすごと引き下がっていく。
「……へんなやつね」
ルイズは首をかしげるが、今はメイドなんぞに構っている時間はない。
不本意だが一応自分の使い魔ということにしているドラえもんが、貴族と決闘しようというのだ。
自分は主人として、この無謀を止めなければならない。……まあこの怒り具合を見れば、絶望的な気もするが。
とにかくルイズは諭すようにドラえもんに話しかけた。
「いい、ドラえもん。ドットとはいえ、魔法が使える貴族にただの平民や使い魔が勝てるはずないの。
そりゃ、使い魔と言ってもドラゴンとかなら話は別かもしれないけど、タヌ…、じゃなかった、ネコじゃ……」
今度は掛け値なしの親切心からルイズがそう忠告するが、怒り心頭のドラえもんにはやはり届かなかった。
「いいや。ぼくはもうゆるさないぞ。貴族だからってあんなにいばりちらして。
そ、それに、ぼくのことを、なんども、なんども、タヌキ、タヌキって……。
きょうというきょうは、めっためたにしてやる!」
ドラえもんはそう息巻いたかと思うと、
「そうさ。ぼくのひみつ道具でけちょんけちょんのコテンパンにやっつけてやる! くふ、くふふふふ!」
おもむろにポケットから様々な道具――腕くらいの太さの黒い筒や、オモチャの銃――を取り出し、
ぶつぶつと呪詛の言葉を呟きながら磨き始めた。
「そ、そう? じゃ、じゃあまあ、がんばりなさいよね」
尋常じゃなく頭の沸いている様子のドラえもんに、ルイズもさすがに引く。
「頭がかわいそうなタヌキさんなんですね…」
見れば、メイドのシエなんとかまでが、何かせつないものを見るような目つきをしている。
「こんな調子でだいじょうぶなのかしら…」
ルイズは首をかしげるが、こうなってしまったドラえもんを止める術はない。
内心やきもきしながら、道具の手入れをするドラえもんを眺めるだけだ。
そうして、決闘の時がやってきた。
「タヌキくん。もうしわけないが、本来なら君のような使い魔ごときに使う時間は僕にはないんだ。
だから、僕のワルキューレ七体で、すぐに葬らせてもらうよ!」
ギーシュの言葉と共に手に持った薔薇から花弁が飛び、それが次々と形を変え、
「さあこれで全部だ。この『青銅』のギーシュの力、思い知るがいい!」
なるほど、『青銅』の二つ名に恥じない見事なゴーレムを七体錬金してみせた。
一方で、ドラえもんが用意したのは、
「空気ほう〜!」
小さな突起のついた筒一本。
それを手にはめると、こちらもこれで準備万端とばかりにギーシュに向き直った。
「ははははは! さすがゼロのルイズが喚び出しただけのことはある!
魔法の才能はなくても、人を笑わせる才能だけはあるようだね!」
ギーシュは笑い声をあげると、一気に勝負を決めるべく、ワルキューレに命じる。
「さあ行け! 僕のワルキュ「ドカン!」……え?」
自分が目にした光景が信じられず、ギーシュは目をしばたかせる。
それは周りで見物していた学院の生徒たちも、主人のはずのルイズですら同じだった。
みんなタヌキに、いや、キツネにつままれたような顔をしてドラえもんを見ている。
「な、ワルキューレ…?」
ドラえもんが「ドカン!」と口にした瞬間、手にはめた筒から衝撃波が飛び出し、
それがギーシュのワルキューレに直撃して吹き飛ばしたのだ。
しかもどれだけの威力があったのか、壁に激突したワルキューレはバラバラに壊されていた。
「ま、まだだ! まだ僕のワルキューレは六体いる! それに、もう一度錬金し直せば……」
ギーシュは残ったワルキューレに望みを託し、何とか巻き返しを図ろうとするが……。
それから先は、ほんの数秒の出来事だった。
「ドカン! ドカン! ドカン! ドカン! ドカン! ドカン!」
ドラえもんがドカンと口にする度、ドラえもんの手にはめた筒から衝撃波が出て、
ギーシュの作り出したワルキューレたちをただの鉄くずに変えていった。
……結果。
「な、な……。こんなことが、僕の、ワルキューレたちが……」
瞬く間にワルキューレを全滅させられ、ぼうぜんと膝をつくギーシュ。
――その目の前に、一つの丸い影が差した。
マジックフレークマジうめえ支援
ドラえもん容赦せん!
支援
ジャキン、とドラえもんは至近距離からギーシュに空気砲を向ける。
「あ、あ……」
ギーシュの口から言葉にならないうめきが漏れた。
……ギーシュにはもう戦意はなかった。
こんな相手に勝てるワケがない。それよりこれ以上逆らって、
大怪我でもさせられたらつまらない。
そう考えたギーシュが「参った」と言いかけた、その時だ。
「……ふう」
さんざん発砲してようやく正気に戻ったドラえもんがため息をつく。
コテンパンにしてやろうと思っていたのに、どうにも簡単にギーシュが折れてしまって、
やる気がなくなってしまったのだった。
――もう勝敗は決した。このまま少し説教でもして、一度謝らせたら終わりにしよう。
ドラえもんはそう考えて、ギーシュに話し始めた。
「きみはまったくこんじょうがないなあ。心がよわいやつほ『ど、かん』たんに…」
が、事件はその時起こった。
ドラえもんの言葉に反応して、あらぬ方向へ向けて空気砲が発射されたのだ。
「わああっ!」
「きゃあっ!」
見物していた生徒たちが悲鳴をあげる。幸いにも、人に直撃はしなかったようだが、
その代わり、
「あ、あれは…!」
どこにひそんでいたのだろうか、爆風に飛ばされ一匹のネズミが広場に降って来て、
「ね、ネズミー!! ……きゅう」
――ドラえもんは倒れた。
支援
まさにドカン
支援
突然の状況の変化についていけず、ぼうぜんとしていたギーシュだが、
ドラえもんを助けにルイズが駆け寄ってくる段になって、ようやく口を開いた。
「あー。……この場合、決闘の勝者はどっちということになるのかな?」
ルイズはドラえもんのほおをぺちぺちとたたきながら肩をすくめた。
「どっちでもいいわよ、そんなの。……それとも、この状況になってもまだ
あんたは勝ち負けにこだわるっていうの?」
ルイズに言われてギーシュが辺りを見回すと、さっきまで熱心に見物していた生徒たちは
明らかに拍子抜けした様子で帰っていくところだった。
もう、二人の決闘に注意を払っている者などいない。
それを見て、ギーシュは悟った。
この決闘の勝者がどちらなのか、この決闘が後にどういう影響をおよぼすのか、
そもそもこの騒ぎに何の意味があったのか、それは分からない。
――だがなんにせよ、もう決闘は終わったのだった。
「うん、そうか。じつにその通りだな、うん」
納得して、ギーシュはうなずいた。
そもそもこれは、ギーシュにとって特にする意味などなかった決闘だ。
ネズミが出てくるまでは負けそうだったのだし、このままうやむやになってくれる方が
ギーシュにとってはむしろ都合がいい。
ギーシュはしきりにうんうんとうなずいていたが、ふと気になってルイズに聞いた。
「そういえばさっきのネズミ、あれはなんだったんだ?」
「たぶん、学院長のモートソグニルじゃない?
たしかこの前、ミス・ロングビルの足の下を入りこもうとして
思い切り踏んづけられてるのを見たことがあるわ」
「……なるほど」
そういえば学院長のセクハラネズミについてはギーシュも聞いたことがあった。
それが自分のピンチを救ったというのは微妙に思ったが、考えてみれば靴に踏まれたり、
爆風に吹き飛ばされたりとなかなか災難である。
「なかなかふびんな使い魔だな。今度、ナッツでも持っていってやるか」
ギーシュのその言葉は、何の気のなしに言った発言だったのだが、
「なら、今から行ってきなさいよ。善は急げだわ」
予想もしなかったことに、ルイズがそう促した。
「なに? 今かい? しかし、大した用もないのに学院長室を訪れるなんて……」
「そうじゃなくて、今日の報告をしてきたら、って言ってるの。
これだけの騒ぎになったんだし、使い魔が見てたんだもの。
きっと学院長はもうお知りになられてるわ。
だったら呼び出される前に自分で事情を説明した方がいいでしょ。
……ま、勝手に決闘騒ぎ起こしたんだから、怒られるかもしれないけど」
そのルイズの言葉に、ギーシュはさらに戸惑った顔をした。
なんというドラえもん的展開ww
支援
「その、それについては異論はないが……。このまま行ってもいいのかい?
君の使い魔、倒れているようだが」
「こいつはネズミを見て倒れただけよ。別にあんたのせいじゃないわ」
「しかし…」
なおも渋るギーシュに、ルイズははっきりと首を振った。
「こいつは、わたしの使い魔だもの。だから、わたしが連れて行くわ」
ルイズはみっともなくひっくり返っているドラえもんの姿を、どこか優しい目で見つめながら、
「たとえコントラクト・サーヴァントしてなくても、こいつを喚んだのはわたしだから」
と付け加え、ドラえもんのテッカテカの頭をなでる。
その姿を見て何か感じるところがあったのか、ギーシュはぽりぽりとほおをかきながら口を開く。
「その、なんだ、ルイズ」
「……なによ?」
「あー、今まで君のこと、ゼロだゼロだとバカにしていたが、その……」
「だから何よ。言いたいことがあるならはっきり言いなさいよね」
急かされ、ようやく覚悟を決めたのか、ギーシュは心持ち早口に言う。
「いや、その、つまりだね。……今の君の姿は、なんというかこう、とても貴族らしいと思ったよ。
魔法がどうこう、家柄がどうこう、ではなく、その態度というか、心が、ね」
「…え?」
ルイズはぼうぜんとギーシュを見返した。
なにそのキザな台詞、こいつ頭沸いてんじゃないの、と思ったワケではない。
今まで言われたことのないようなことを言われ、すぐには誉められたと気づかなかったのだ。
「さ、さて…」
するとギーシュはどうにも恥ずかしくていたたまれないとばかりに立ち上がり、
「で、では僕は行くよ。……あ、そうそう。そこのネコくんに、君は使い魔は使い魔だが、
勇気ある使い魔だ。侮辱して悪かった、と伝えておいてくれ」
そう言葉を残すと、顔を真っ赤にしたまま立ち去ってしまった。
「……なによ。伝えたいことがあるなら、自分で言えばいいじゃない」
小さくなっていく背中に、ルイズは小さくそう毒づく。
もう少し素直に喜べばいいのだが、慣れない誉め言葉を聞いて、ルイズも恥ずかしかったのだ。
それから、ルイズは倒れたままのドラえもんに向き直り、
「あんたはまあ、今日はがんばったわ。だから、ご主人様のわたしが部屋まで運んであげる。
きょ、今日だけ、今日だけ特別なんだから、感謝しなさいよね!」
誰が聞いている訳でもないのに、まるで言い訳するようにそう語りかける。
そして……
「あああ! やっぱり誰かに頼めばよかったわ! 重い! こいつ重すぎる!」
ルイズはドラえもんの体をずりずりと引きずりながらそうぼやいた。
ギーシュだけでなく、あの後メイドのシエなんとかがやってきて「お手伝いしますわ」
とかなんとか言ってきたのだが、ルイズは意地を張って受け入れなかったのである。
「まったく、わたしより背もちっちゃいのにどうしてこんなに重いのよ。
こいつ一人で129.3キロくらいあるんじゃないかしら」
ぶつくさと言いながら、それでも何とかズルズルと数ミリずつ引きずっていくが、
こんなことをしていては部屋に着く前に日が、いやもうむしろ年が暮れてしまうだろう。
「こんな時、わたしにもレビテーションとか軽量化の魔法が使えたら……」
ゼロのこの身が恨めしい、とないものねだりの言葉を漏らし、
しかしそこでルイズは、名案を思いついた、とばかりに手をたたいた。
「そうだわ。サモン・サーヴァントは成功したんだし、錬金は無理でも、
レビテーションくらいなら使えるようになってるかも」
その言葉にはどんな根拠があったのか、とにかく楽をしたいルイズは
ドラえもんに向けて杖を向け、朗々と呪文を紡ぐ。
そして、
「レビテーション!」
その後、ドラえもんの姿を見た者はいない……
第三話 『めいよの決とう』GAME OVER
最終回!?
えーと・・・乙
投下終了
次回第四話『おそるべき盗ぞく フーケ!』は明日投下予定
GJ!
ルイズ正確すぎるww
そして王道的爆発オチww次回に期待。
ちょwwwwwwルイズテラヒドスwwwwwwwww
乙ですw
シエスタ出たがりw
なんというバッドエンド
GJ
投下ラッシュで嬉しいが誰か次スレ頼む
もう496kbだ
おもしろいwww
ちんちくりんのルイズとスネオみたいなギーシュが頭に浮かんで、なんだかシュールだww
では立ててきます。
新スレ立て、失敗しました。
ムネン アトヲタノム
いかん、変な文字が名前欄に残っていた。
夜明けの人とドラえもんの人乙です。
やべぇ、ラハブ様が格好いいwwwwwww
公式シナリオとは違ったこういうラハブ様も、嫌いじゃないぜ?
立ててきていいのかな?
建設乙
さて、埋めようか
読みたい作品がいっぱい来てて嬉しいような。
好きな作品があっという間に流れて悲しいような。
いややっぱりすごく嬉しいぜ! みなさん乙でした、次スレも頑張ってくだせぇ
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い い .ぼ 思 .楽 き |ニニニニ./ ̄ ̄ ̄ \ニミ
つ つ く い し み /ニニニ / \ミ、
ま ま は 出. か と <───‐| 1 さ l、
で で わ を .っ の ヽ───ヽ. 7 ら ノミ、
も も す た l───/ 9. ば ヽ_
. : れ , -─‐- 、 ! 。 、 l"´
. : な / ヽ\ /
。 い ! l ー-, , -‐'´ -‐'"´
。 , 、 ! l〇 〃´|‐''"´
、 ,.イ_,,」`ー─‐ ヽ / / .|_, -─
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|. | | ._」 ! ◯ヘ c ノ l .|
| _」 -‐''¨´ /⌒ヽ--‐'`^ `¨''ー 、 _
-‐''¨´ ニ三ゝ__ノ三ニ `''
ニ三三三三ニ
500ならワンピースからキュルケが処刑寸前のエース召喚
500ならほったらかしになってるやつの続き書いてやるーっ!
誰とは言わん!
500ならここではないどこかにSS投下!!
その後にここにもSS投下!!
例えばそれまで魔法成功率0だったルイズはともかくとして
どこかの高貴な家のヤツが人間を召喚したらどうするんだろう?
笑い者になるし家の名に傷が付くから密かに事故氏に見せかけ殺して
新たに使い魔召喚するのだろうか?
>>747 多分、人間が召喚されて笑いものになったのは「ゼロのるいず」が召喚したからなんじゃないかな。
そうでない人が呼んだなら「こいつは珍しい」とか驚かれても、バカにはされなかったと思う。
500なら更新が止まっている作品が更新再開
500ならイザベラ管理人復活。
してほしいんだよう。
なぎはらえー(AAry
>>671 超遅くなったが答えよう。
ベルセルクゼロだ!
あれがこの世界に俺を引き込んだ。ゼロ魔原作をかっちまった原因w
他にも好きなのはあるけど、飛び抜けてこの二つに期待大。