第一部+第二部
ジョナサン 卿 ブラフォード シュトロハイム シーザー スケコマシーザー
究極生命体カーズ様 ワムウ様 スト様 石仮面+ブルりん+吸血馬
第三部
承太郎 法皇花京院 一巡花京院+平賀才人 メロン花京院
ジョセフ アブドゥル ポルナレフ イギー
DIO様 ンドゥール ペットショップ ヴァニラ・アイス ホル・ホース
ダービー兄 ミドラー デーボ エンヤ婆 アヌビス神 ボインゴ
第四部
東方仗助 仗助+トニオさん 広瀬康一 アンリエッタの康一 虹村億泰 ミキタカ+etc 間田
シンデレラ カトレアのトニオさん 岸辺露伴 静(アクトン・ベイビー)+露伴
デッドマン吉良 猫草 キラー・クイーン 猫→猫草
第五部
ブチャラティ ポルナレフ+ココ・ジャンボ(亀ナレフ) アバ茶 ナラ・アバ・ブチャ組
ルイズトリッシュ マルコトリッシュ ナンテコッタ・フーゴ アバ+才人 ジョルノ ミスタ
ディアボロとドッピオ プロシュートの兄貴 リゾット ローリングストーン 偉大兄貴
ギアッチョ メローネ 俺TUEEEディアボロ ペッシ ホルマジオ スクアーロ
暗殺チーム全員 紫煙+緑日 ブラック・サバス セッコ 亀ナレフ+ジョルノ イルーゾォ
サーレー
第六部
引力徐倫 星を見た徐倫 F・F アナスイ ウェザー エルメェス エンポリオ ヘビー・ウェザー
プッチ神父 帽子 ホワイトスネイク 白蛇ホワイトスネイク リキエル
SBR
ジャイロ+才人 ジョニィ マイク・O
リンゴォ マウンテン・ティム Dio
バオー+その他
橋沢育郎 バオー犬 味見コンビ(露伴+ブチャ) 決闘ギーシュ タバサの奇妙なダンジョン
ジョナサン+才人 銃は杖よりも強し(ホル・ホース) 蓮見琢馬(小説・『The Book』より)
・行数は最大で60行。 一行につき全角で128文字まで。
・一度に書き込めるのは4096Byts、全角だと2048文字分。
・専用ブラウザなら文字数、行数を管理してくれるので目安がつけやすいかも。
・先頭行が改行だけで22行を超えると、投下した文章がエラー無しにザ・ハンドされます。 空白だけでも入れて下さい。
>>1 乙!
新スレは久しぶりだな。最近は進行遅いし。
\\ First kiss か ら 始 ま る ふ た り の 恋 の //
\\ H I S T R Y Y Y Y Y Y Y Y Y Y Y Y Y Y Y ! //
\\ こ の 運 命 に 魔 法 か け た //
\\ 君 が 突 然 あ ら わ れ た ァ ァ ―――z___ ッ! //
,ィ =个=、 _ _ _ ,。='゚=。、
〃  ̄ ヘ 〈_/´ ̄ `ヽ 〃 ` ヽ. 〃 ^ヽ 〃 `´`ヽ. 〃了⌒ヽ
くリ 7"バlキ〉>∩ { {_jイ」/j」!〉∩ l lf小从} l∩. J{ ハ从{_,∩ {lヽ从从ノl∩. ノ {_八ノノリ、∩
トlミ| ゚ー゚ノlミ| 彡. ヽl| ゚ ヮ゚ノj| 彡 ノハ{*゚ヮ゚ノハ彡 ノルノー゚ノjし彡 ヾヘ(゚)-゚イリ彡 (( リ ゚ヮ゚ノノ))彡
>>1乙!
>>1乙ゥ!
. /ミ/ノ水i⊂彡 ⊂j{不}l⊂彡 ((/} )犬⊂彡. /く{ {丈}⊂彡 /_ノ水⊂彡 /ノOV⊂彡
/ く/_jl ハ. く7 {_}ハ> ./"く/_jl〉`'l l く/_jlム! | }J/__jl〉」. (7}ヽ/∧
.ん'、じ'フ .ノ ,,,,‘ーrtァー’ ,,,,,,んーし'ノ-,ノ レ-ヘじフ〜l ノんi_j_jハ_〉 /__ ノ_j
,,-''´  ̄ヽ ミ 乂 彡 |!i!ii| ∩. ,、 、 (⌒⌒⌒⌒) ,−−、 ___
ミハ^^ヽヽ(∩ =0o◎o0∩ (;゚Д゚)彡 ,ヘハ@ヘ∩. ( △ △∩ _|_Jo_ミ∩ (ミミミ三 ミ∩
ル ゚∀゚)ζ彡 さ `Д´)彡 . ( ⊂彡. ゞ ゚∀゚)彡 (/ ・∀・彡 ( ´∀`)彡 (`∀´ )彡
( ⊂彡゛ ( ⊂彡 | | ( ノ::⊂彡 ( ⊂彡. ( ⊂彡. ( ⊂彡.
| | | | . し ⌒J. │ │ . | | | | | |
し ⌒J. し ⌒J し ⌒J. し ⌒J. し ⌒J. し ⌒J
ザ・オツ
. /i.:i.:i.:i.:i.:i.:i.:i.:i.:i.:i.:i.:i.:i.:i.:i.:\
/i.:i.:i´゙ヽ、.:i.:i.:i.:i.:i.:i.:i.:i.:i.x-、:i.:i.:
/i.:i.:_l ,l\i.:i.:i.:i.:i.:i/ ヽ:i.:
,'i.:i.:/,.へ i ハ>--イ´ /ヽ V
. i.:i.://,.-、.:\/ lヽ 〃 //`ヾ 何で
>>1のスレ立て乙パーティーに
i.:i.i ' ,.=-ミ、ヽ ,ノ,.、 r:,'ィ ,. ‐-ミ 姿 現さねーんだよ
';i.:フ, ヽ、_..(ソヽ ノi ll i l /,,..(タ/ オメーらッ!
_ Yi ,.-‐ ij// ', `‐- - ..,,_
/ ヽ! ij 、 _,
//゙ヽ. ! ij ヽ f/
. i ハ .ll. ij 、`‐' _ 、
', リノ i ! ij / /`ニ´入゙、 /
V ヽゝl i. ,/:;.‐、;.-、:::'、 ,'
ヽ l i. 〈::/ ヽノ!. /
`¨゙li ! \ // . ,'
l.l l 、 ` =ニ ィ / ,' /
l !、 ! ヽ-==‐-く /
l \ ,ノ ‐-、 //
/i l \ / /
/ .l l ヽ、..__,,..イ ./
l!! ″ ″ ″ ″―――――――
″ ____ ″ ̄ ̄―――――――――____
″ /λ 丿 \ ″――――――_―――_―――____
″_△/ ∨ \__△__ ″____――――___
″ \_||l!)()() (!l|l!) (__/ ″――――――____――――__―――
″ (;-vvvv、 ノ))\ ″―____――――____――――
″ |_|_|_l_! l\丿)\λ ″―――――――――――――――――――
″ mmmn>)) l)) ″ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄―――― ̄ ̄ ̄ ̄―――――― ̄ ̄
″ ノノ丿|λ//ノ 丿 ″―― ̄ ̄ ̄ ̄――――― ̄ ̄ ̄
″ ( ( (( ( 乂ノ′/ ″――__――――――― ̄ ̄――――― ̄ ̄
″ \\ヽヾ、_/ ″ ̄ ̄___――――― ̄ ̄―― ̄ ̄ ̄―――――
″  ̄ ̄ ̄ ″____―――― ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄―――
″ ″__――――___――――――――
″ ″―――――――――
″ ″ ″ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
>>1乙しようとしたヤツは、ガオンされました。
またのお越しをお待ちしております。
AA貼るならまだ埋まってない前スレでやれ
いぬっさんと隠者さん来てたのね。
過去ログ落ちないうちに読めてヨカッタ。
/三 二ニ ヽ、
/ ニ ニ二_ ∧
/ [l _rァ___ir'、ソ|`ー 、_
|[l /_||Y´o八!{ l} キ_キ、`ー-、 新スレを立てやがったなッ!
∨r‐ojl`、´ l}/ } レ' レ\ よく立ててくれたよなぁぁぁぁぁぁ
/「「!ュ`´_||='_-、/ ! ゝ / _ 丶
>>1凸!……
ヽヽ` ̄Y ̄ ̄ / { __ __/´ `ヽ …じゃなくて
>>1松!
`ヽ ノ\ー '´ `ー'´T「 ̄ l [! [l i] ! …は違う…
`T ー、'l ゝ! ,n__nn.U { [! i] } うぐぐ………
|U l | |ヘl:| /ハ∨ー、 ! /
>>1竹…じゃない……
} {〕/ ∨l ソ//_|:|_ //Y` , イ
>>1梅でもなくて……
{7_ヽ }ノ 匕'. U .レ' / / |_
V7_ } l _{ `ヽ { l 〔!| \
V7ノ / /ノ ゝ、_ゝl _ l〔! lヘ /\
`ー' | '´(! 〔! 〔!/´ ヾ/ ヘヽ _l
ド-- l / == / } l
l /ヽ(! (! /== /(! (!/ ー l
\,'_ ̄/==/  ̄ i ̄ ヽ/
_, - 、__ _,/= /ー ─ ─ - ‐´
rニ二{ 三 キ =/
`^ー'、二二ニ/
/ _ / / \
| う |玉| 〈 | ォ だ 矢ロ |
| う  ̄ \ | ォ よ っ l
/ : 言吾 | | ッ オ て |
/ う の ヽ ヽ !! オ ん /
ヽ う 孝攵 | \ _/
〉 : 呂市 /  ̄レ'  ̄  ̄ ̄
\, -、.: か / /- ̄-\
丿 __フ / ニ 三 二_ゝ、_r'  ̄  ̄`ヽ
/ \. { ,イ|f'c};} 〈 l / ヽ\
) お う )⌒\ ∨rq||`´/ヽ| ^ー/ { 〔!.[l:〔! } 丶
| お 〈 >. ヽ_||/ : / / ゝ、 ノl }
\_ _ / お | >ー-,() 〔l 〔l | , ' | /\
ヽ( 〉 / ,ィ'「! {ヽ 〔l 〔!| i〔!〔!| -ヘ ヘ
/ヽ `--─''´ |77 ヽヽヽソ 、____l l 〔! | } }
/  ̄  ̄(_ _/ヽ/| \  ̄/ { !〔i〔l / _\
/ よ オ // ∠  ̄ ̄´ ト 、 i」 ニ ̄ ヽ
_ ノ ∨ お | __,, / =/ ノ }
| ォ メ っ | ___ / ̄_ _/ ==/ ∧ ∧ ∧ メ─、
ヽ ( ̄ヽ__ / /ヽ_ / 〈/ 〈/ ==/-ヘ! V V V ヽ |
| ォ | > l _( /〉/〉 ノー/ =/ ∧ ∧ ∧ ∨ヽ _
| l ヽ´  ̄ ̄´ / =/ ノ( 丶 V V l丿 〈
ノ ォ は ゝ  ̄_,ィ三ニ´キ/  ̄ ´ ヽ -ヘ _/ ( ̄
\ / '-‐^ーー一'´ ヽ_`二ニ´_ , - 一 `
 ̄ ⌒  ̄ ̄ヽ/
おお、しぇっこさんじゃなくてセッコが出てくるとは珍しい(w`
18 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/16(木) 20:17:52 ID:Q4zIHS2c
カモン!!アナスイ!!
19 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/17(金) 13:49:55 ID:yAXnNHTs
だれかペッシものの良質なSSを書いてください
20 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/17(金) 13:50:48 ID:yAXnNHTs
だれかペッシものの良質なSSを書いてください
21 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/17(金) 13:51:58 ID:yAXnNHTs
だれかペッシものの良質なSSを書いてください
22 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/17(金) 13:53:53 ID:yAXnNHTs
だれかペッシものの良質なSSを書いてください
23 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/17(金) 13:57:33 ID:yAXnNHTs
だれかペッシものの良質なSSを書いてください
24 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/17(金) 14:00:38 ID:yAXnNHTs
だれかペッシものの良質なSSを書いてください
自分で書け。だからマンモーニと呼ばれるんだ
書けるような知能があるなら連投荒らしなんてしないだろ
ペッシ召喚
(ry
轟音が鳴り響く。トライアングルでも防げまい。
それほどの爆発を起こしながら召喚されたのは平民と思わしき遺体だった。
2323な教師に促され渋々契約してみたが
少女の問掛けに遺体は当然答えることはなく、
そのまま森に埋葬された。
結局少女は留年し翌年には五体満足な平民を呼び出したが
戦時であったために実家へ戻ることとなり、平民のそのルーンの効果が発揮されることはなかった。
ただ少女の釣りの腕は何故か良かったらしい。
ルイズ 領地でそれなりに平和に過ごす
サイト 執事として仕える。故郷に帰ることはなかった。
ペッシ 召喚の際に死亡
完
10分で書いてみた。
爆発で鏡割れて足だけ召喚とかでも良かったな
29 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/17(金) 15:31:12 ID:yAXnNHTs
あ?マジで調子乗ってっとぶちくらすよ?ここの住民マジで糞だな。
30 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/17(金) 15:33:54 ID:yAXnNHTs
ボケ屑どもが。マジでムカつくし。
ぶちくらすってなんかのクラス?
ボケ屑ID:yAXnNHTsの隔離クラスだろ
あーあお前らも俺のリストに載っちまったな・・・^^;俺キレさせたし^^;
まぁ楽しみに待ってろ^^;地獄以上の^^;
先程から空欄ばかりが書き込まれている…まさか敵のスタンド攻撃かッ!?
億康が削り取ったんだよ
いや、赤ちゃんが透明にしてるんじゃあないか?
お前らもな^^楽しみにしとけよ低能ども^^
クソッ…新手のスタンドか!
唐突に思ったんだけど
このスレでアンダーワールドを出すのは無理があるな、ってか無理かな
来たばっかりのヴェルサスがハルケギニアの歴史なんて知ってるはずないし
>>39 適当なタイミングでデルフが「うむ、聞いたことがある」って言い出せばいいんじゃないかな
アンダーワールドは何でも出来るからきたねえよな
アバッキオみたいにその場所の記憶を掘り起こす程度ならよかったんだが
>>42 あくまで地面の記憶限定だから、船に乗せて空に飛ばせば何も出来ん。
>>39-40 なるほどな
一応出せない訳ではないみたいだが
>>42 いや…『過去にいつここで何が起こったか』とか
そういう地域限定の知識がなければ使いこなすのは難しかろうて
パワーやスピードも人並みみたいだし
よほど頭良くないと使いこなすのは難しいんじゃないか?
>>43 射程は長めみたいだから不意打ち程度はできるかも試練が…
一番上の安価は
>>40-41だ…
あ、新手のスタンド使いなんかじゃなくて純粋に間違えただけだからねッ!
ヴェルサスはなぁ……
再現できるのが『自分が知っている事象』なのか『知らなかった事象も掘り起こす+再現』なのかでかなり変わるからな。
ぶっちゃけ後者だったら6000年前再現して全部解決できる気がする。
パワーバランス的に前者のほうがいい気がするんだが、スタンドが才能の発露って点から考えると後者だし。
かなり難しいキャラだよね。
使い勝手の悪さでいえば一番はたぶんウンガロ。
性格といい能力といいネジ曲がりすぎだろ。
ヴァルサスは幸福になる前に始末されたからな…
なんかかわいそうだ
とりあえず ID:yAXnNHTsを運営と警察に通報しましたwww
>>41 「知ってるのかデルフ!」
これなんて男塾
民明書房の出番だな
民明書房の知識を掘り起こせるんなら無駄に最強のスタンドになるんだがなw>アンダーワールド
>>52 民明書房は、DIOの息子でもボヘミアン・ラプソディーの範疇だろう。
ヴェルサスは掘り出した現象に巻き込むって攻撃だから、それほど使い勝手がいいわけじゃないと思う。
が、追跡調査や、穴を掘って逃げるのは得意そう。
>>47 そういやウンガロも「イーヴァルディの勇者」を現実化させれば、使えるかも。
例えば『かつてトリスティンを騒がせていた手首を持ち去る殺人鬼』や『かつてエルフやブリミルに聖地の柱に封印された男達』とか。
再現できたらやばいだろうな〜
>>56 始祖の秘宝の中に赤い石があるんですね? わかります。
ってことは、始祖は究極生命体だったのか
でも、子供はいらないんじゃ……
60 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/18(土) 22:43:41 ID:AU1QOE1Y
アンダーワールドとかムーディブルースとかならエルフの毒の製法分かりそうだな。
カーズ様なら自力で作り出しそうだが。
>>58 子供を作ってから究極生命体になったんだよ
>>46 ジョーリンの記録から携帯番号調べてたりするから、
「誰が、いつ、どこで」ぐらいがわかれば、知らない部分も再現できるっぽいな。
あとは「エンポリオの記録はまだ掘り出せてない」ってセリフからすると、
知らない現象をすぐに掘り出すのは無理だけど、時間をかければ可能って風にも取れるな。
SSにするとしたら、掘り出し時間の加減でパワーバランスとれるんじゃないか?
ルイズに何か言われたら
「(うるせぇぇぇーー!偉そうによぉぉー!)」か。
だけどどうやってルイズと打ち解けるかな…
ルイズ以外に召喚されるのって避難所行きが無難かな?
よくよく考えてみるとヴェルサスのスタンドはパワーも弱いし
トリスタンの歴史や事件も全く知らないから凶悪な過去も再現できないし
案外呼び出してもパワーバランス丁度いいかもな
イザベラやタバサやアンアンに召喚された場合もあるからここでいいんじゃね?
久しぶりに40分から投下したいんだが、構いませんねっ!?
関係ない
行け
時間になったので投下開始します。
なんだかなぁ。
ニューカッスル城のバルコニーで黄昏ていたサイトは手すりにもたれかかりため息をついた。
ここにきた目的はもう半ばまで達成した。
*
ウェールズは城に着くとすぐに、サイト達を王族にしては質素な、学園のルイズの部屋の方が余程華美な部屋に通した。
首にかけていたネックレスの先についた鍵を差込、ウェールズは机の引き出しから取り出した箱を開けた。
蓋の内側には、アンリエッタの肖像が描かれている。
ウェールズはアンリエッタの肖像を感慨深げに見入る。
だがすぐに「宝箱でね」―ルイズ達がその箱を覗き込んでいることに気付き、彼ははにかんだ様子を見せた。
肖像から視線を下げると、中には一通の手紙が入っていた。
ウェールズはそれを取り出し、愛しそうに口づけたあと、開いてゆっくりと読み始めた。
固定化をかけられて風化することを忘れたその手紙はこれまで幾度もそうして読まれたものなのだろう。
そう想像したルイズ達は彼が読み終わるのをジッと待った。
読み返すと、ウェールズは再びその手紙を丁寧にたたみ、封筒に入れなおす。そしてルイズに手渡した。
「これが姫からいただいた手紙だ。このとおり、確かに返却したぞ」
「ありがとうございます」
ルイズは深々と頭を下げて恭しく手紙を受け取った。優しげに微笑みウェールズは言う。
「明日の朝、非戦闘員を乗せた『イーグル』号が、ここを出港する。それに乗って、トリステインに帰りなさい」
その手紙をじっと見つめていたルイズは、そのうちに決心したように口を開いた。
「あの、殿下……。さきほど、栄光ある敗北とおっしゃっていましたが、王軍に勝ち目はないのですか?」
ルイズは躊躇うように問うた。
至極あっさりと、ウェールズは答える。
「ないよ。我が軍は三百。敵軍は五万。万に一つの可能性もありえない。我々にできることは、はてさて、勇敢な死に様を連中に見せることだけだ」
ルイズは俯いた。
この城に到着した時、ウェールズの侍従を務めるバリーがウェールズ達を出迎えた。
長年皇太子の侍従を勤めてきたのであろう老メイジは、ウェールズがジョルノの船に積まれていた硫黄…『火の秘薬』を手に入れ帰還したことを泣いて喜び、こう言っていた。
「栄光ある敗北ですな! この老骨、武者震いがいたしますぞ。して、ご報告なのですが、叛徒どもは明日の正午に、攻城を開始するとの旨、伝えて参りました。まったく、殿下が間に合って、よかったですわい」
「してみると間一髪とはまさにこのこと! 戦に間に合わぬは、これ武人の恥だからな!」
そう、ウェールズ達は、心底楽しそうに笑いあっていた。
敗北という言葉に、顔色を変えるルイズや何を喜んでいるのか全く理解できていない様子のサイト達の前で。
思い返しながらルイズは尋ねた。
「殿下の、討ち死になさる様も、その中には含まれるのですか?」
「当然だ。私は真っ先に死ぬつもりだよ…」
傍でやりとりを見ていたサイトがため息をついた。
明日にも死ぬというときなのに、皇太子はいささかも取り乱したところがない。
現実感がないのか、サイトは船に乗せてもらったアズーロの元へと戻りたそうな表情で周囲へと目を向けていた。
彼らから少し離れた場所に立っていたジョルノは、鋭く輝く目でウェールズを見ていた。
ウェールズはその視線に気付き、苦しそうに顔を歪ませる…二人の間に、サイトは知らない何かがあるようだった。
それにルイズは気付かなかったようだ。
ルイズは深々と頭を垂れて、ウェールズに一礼していた。言いたいことがあるのだった。
「殿下……、失礼をお許しください。恐れながら、申し上げたいことがございます」
「なんなりと、申してみよ」
「この、ただいまお預かりした手紙の内容、これは……」
「ルイズ」
俯いたルイズの隣に立っていたワルドが咎めるように声を上げた。
ルイズが訪ねていい事柄ではないと帽子を持っていない手で肩に手を置く。
でも、とルイズは、きっと顔を上げてウェールズに尋ねた。
「この任務をわたくしに仰せつけられた際の姫さまのご様子、尋常ではございませんでした。
そう、まるで、恋人を案じるような……。それに、先ほどの小箱の内蓋には、姫さまの肖像が描かれておりました。
手紙に接吻なさった際の殿下の物憂げなお顔といい、もしや、姫さまと、ウェールズ皇太子殿下は……」
言いたいことを察してウェールズは微笑んだ。
「きみは、従妹のアンリエッタと、この私が恋仲であったと言いたいのかね?」
真摯な態度でルイズは頷いた。
「そう想像いたしました。とんだご無礼を、お許しください。してみると、この手紙の内容とやらは……」
ウェールズは額に手を当て、言おうか言うまいか、ちょっと悩んだ仕草をした後言った。
「恋文だよ。きみが想像しているとおりのものさ。確かにアンリエッタが手紙で知らせたように、この恋文がゲルマニアの皇室に渡っては、まずいことになる。
なにせ、彼女は始祖ブリミルの名おいて、永久の愛を私に誓っているのだからね。
知ってのとおり、始祖に誓う愛は、婚姻の際の誓いでなければならぬ。この手紙が白日の下にさらされたならば、彼女は重婚の罪を犯すことになってしまうであろう。
ゲルマニアの皇帝は、重婚を犯した姫との婚約は取り消すに違いない。そうなれば、なるほど同盟相成らず。トリステインは一国にて、あの恐るべき貴族派に立ち向かわねばなるまい」
「とにかく、姫さまは、殿下と恋仲であらせられたのですね?」
ルイズはウェールズとアンリエッタ、トリスティンとアルビオンの置かれた状況を無視して尋ねた。
その声に篭った熱を冷やすようにウェールズの返答は冷たい声音で返された。
「昔の話だ」
だがルイズは熱っぽい口調で、ウェールズに言う。
「殿下、亡命なされませ! トリステインに亡命なされませ!」
ジョルノと同じように離れて成り行きを見守っていたワルドが静かに寄り添いすっとルイズの肩に手を置いた。
しかしルイズの剣幕は納まらなかった。
ワルドの手を跳ね除けて、ルイズはウェールズに詰め寄った。
「お願いでございます! 私たちと共に、トリステインにいらしてくださいませ!」
「それはできんよ」
笑いながらウェールズは言った。
「殿下、これは私の願いではございませぬ! 姫さまの願いでございます! 姫さまの手紙には、そう書かれておりませんでしたか?
わたくしは幼き頃、恐れ多くも姫さまのお遊び相手を務めさせていただきました! 姫さまの気性は大変よく存じております!
あの姫さまがご自分の愛した人を見捨てるわけがございません! おっしゃってくださいな、殿下!
姫さまは、たぶん手紙の末尾であなたに亡命をお勧めになっているはずですわ!」
笑みを引っ込めて、ウェールズは首を振った。
「そのようなことは、一行も書かれていない」
「殿下!」
ルイズはウェールズに詰め寄った。
「私は王族だ。嘘はつかぬ。姫と、私の名誉に誓って言うが、ただの一行たりとも、私に亡命を勧めるような文句は書かれていない」
ウェールズの言葉は苦しげでその口ぶりから、ルイズの指摘が当たっていたことが窺える。
更に言い募ろうとするルイズを見て、ウェールズは自分の迂闊さに気付いたが彼は言葉を続けた。
「アンリエッタは王女だ。自分の都合を、国の大事に優先させるわけがない」
支援
ルイズは、ウェールズの意思が果てしなくかたいのを見て取った。
ウェールズはアンリエッタを庇おうとしている。臣下の者に、アンリエッタが情に流された女と思われるのがイヤなのだろう、と。
ウェールズは、ルイズの肩を叩いた。
「きみは、正直な女の子だな。ラ・ヴァリエール嬢。正直で、真っ直ぐで、いい目をしている」
ルイズは、寂しそうに俯いた。
「忠告しよう。そのように正直では大使は務まらぬよ。しっかりしなさい」
ウェールズは微笑んだ。白い歯がこぼれる。魅力的な笑みだった。
しかしながら、とウェールズは言う。
「亡国への大使としては適任かもしれぬ。明日に滅ぶ政府は、誰より正直だからね。なぜなら、名誉以外に守るものが他にないのだから」
それから机の上に置かれた、水がはられた盆の上に載った、針を見つめた。形からいって、それが時計であるらしかった。
「そろそろ、パーティの時間だ。きみたちは、我らが王国が迎える最後の客だ。是非とも出席してほしい」
ルイズ達は部屋の外に出た。
亀を抱えたジョルノと脱いだ帽子を持つワルドの二人が居残り、二人は目配せの後先にワルドからウェールズに一礼した。
「まだ、なにか御用がおありかな? 子爵殿」
「恐れながら、殿下にお願いしたい議がございます」
「なんなりとうかがおう」
ワルドはウェールズに、自分の願いを語って聞かせた。
自分とルイズが婚約者であること。そして、是非ともウェールズに媒酌をお願いしたいとワルドは言い、ウェールズはにっこりと笑った。
「なんともめでたい話ではないか。喜んでそのお役目を引き受けよう」
「ありがとうございます殿下」
「おいワルド…今の話、本気なのか?」
ジョルノに抱えられていた亀の中からポルナレフが尋ねた。
このロリコンがッと罵ったりはしない。
こういうのもありかもな。と志を同じくする者として応援するのも友情の一端であると、悲しい友情運を背負う男ポルナレフ36才は理解していた。
朗らかな笑みを浮かべたワルドは柄にもなく照れくさそうに答えた。
「勿論だ。兄弟、明日は是非君にも参列してもらいたい」
「勿論だぜ! いやぁ…ジョルノがお前がスパイかもしれないとか言い出した時はどうなるかと思ったが、無駄な心配だったみたいゲホッ…」
勢いあまったポルナレフの叫びは、一瞬で静まり返った部屋に良く響いた。
亀の中から、何かを殴る音が聞こえたが誰もそれについて言及しようとはしなかった。
一瞬笑顔のまま固まったワルドが声を絞り出す。
「何、だと…!?」
「ポルナレフ、アンタ…なんて事いうのよ!?」
「あ、ぁ…怒るなよ…こ、こいつもさ。任務でちょっと神経質になってたのさ」
油汗を流しながらジョルノを見るワルド、今にも亀を爆破しそうな剣幕で言うルイズにポルナレフの掠れた声がかけられる。
汗一つかかず、涼しい顔をしてジョルノはワルドを見返していた。
「そ、そうだな。伯爵閣下の年齢からすれば、それも仕方がない話か…」
そうしてワルドは嬉しそうに、だが慌しく部屋を去り、後には亀を持って佇んでいたジョルノとウェールズが残された。
ウェールズは穏やかな表情を浮かべたジョルノから、言葉にしがたい何かを感じて曖昧に微笑んだ。
ワルドを疑っているかどうかなど読み取れない静かな態度で、ジョルノはここへ来る途中話した亡命の件について切り出そうと口を開いた。
*
回想を止めサイトはもう一度深くため息をついた。
城に残っている人々の気持ちを、現代地球は日本で育ったサイトは理解できなかった。
最初、枢機卿に頼まれたのがきっかけでサイトはこの任務に参加した。
事情を知った今は、そんなのに付き合わされてポルナレフを死なせたくはないという気持ちがサイトの中で強くなっていた。
枢機卿から与えられた『ヴィンダールヴ』の能力を持っていたから…彼らが無事目的地にたどり着くのに一役買うこともできた。
右手を翳す。
雲に混じって空に浮かぶ、この城を包囲する貴族派の船の周り。
サイトの目には豆粒のようにしか見えない竜の一匹に向けて刻まれたルーンが光り輝く。
すると、原理は全く理解できないが、支配下に置き力を引き出すことまでサイトは出来るようになっていた。
だがそんなことをしても気分は晴れはしない。
正直なところ、学生のくせに戦場に手紙の回収に行けという姫もルイズも理解できなかったが…
死を前にして明るく振る舞う貴族達は、更に不可解な人々だった。
勇ましいというより、この上もなく悲しくサイトはただただ憂鬱になっていた。
時々この力をくれた枢機卿と変な牛が会談してるのとか見えるし。
同じ世界から来たはずのポルナレフ達が彼らに一定の理解を示してパーティに参加していることも、サイトの気分を落ち込ませていた。
以前から共に行動していても、サイトだけが薄皮一枚…別の空間にいるような気にさせられる。
以前から薄々そんな感じはしていた。
その理由は、彼らにも秘密があるからだと思っていた。
共に過ごす時間が増えれば自然と解消されるものだとも。
だが、それは違うのではないかと言う気がしていた。
背を向けている場所、城の中では今最後のパーティが開かれている。
城のホールに簡易の玉座が置かれ、アルビオンの王、年老いたジェームズ一世が、腰掛け、集まった貴族や臣下を目を細めて見守っていた。
明日で自分たちは滅びるというのに、随分と華やかなパーティであった。
王党派の貴族たちはまるで園遊会のように着飾り、テーブルの上にはこの日のためにとって置かれた、様々なごちそうが並んでいる。
会場に貴婦人達の歓声が飛んだ。
思わず振り向くとウェールズが現れ、若く、凛々しい王子はどこでも人気者のようだった。
彼は玉座に近づくと、父王になにか耳打ちした。
ジェームズ一世は、すっくと立ち上がろうとした。
が、かなりの年であるらしく、よろけて倒れそうになりホールのあちこちから、屈託の無い失笑が漏れる。
「陛下! お倒れになるのはまだ早いですぞ!」
「そうですとも! せめて明日までは、お立ちになってもらわねば我々が困る!」
ジェームズ一世は、そんな軽口に気分を害した風もなく、にかっと人懐こい笑みを浮かべた。
「あいやおのおのがた。座っていてちと、足が痺れただけじゃ」
ウェールズが、父王に寄り添うようにして立ち、その体を支えた。
陛下がこほんと軽く咳をするとホールの貴族、貴婦人たちが、一斉に直立する。
その様子を薄暗がりのバルコニーからサイトは困ったような顔をして見ていた。
直立する彼らの中に、サイトは貴婦人達と談笑していたらしいジョルノ達を見つけた。
「諸君。忠勇なる臣下の諸君に告げる。いよいよ明日、このニューカッスルの城に立てこもった我ら王軍に反乱軍『レコン・キスタ』の総攻撃が行われる。
この無能な王に、諸君らはよく従い、よく戦ってくれた。しかしながら、明日の戦いはこれはもう、戦いではない。おそらく一方的な虐殺となるであろう。
朕は忠勇な諸君らが、傷つき、斃れるのを見るに忍びない」
老いた王は、ごほごほと咳をすると、再び言葉を続けた。
「したがって、朕は諸君らに暇を与える。長年、よくぞこの王に付き従ってくれた。厚く礼を述べるぞ。
明日の朝、巡洋艦『イーグル』号が、女子供を乗せてここを離れる。
諸君らも、この艦に乗り、この忌まわしき大陸を離れるがよい」
迂闊だなポルw
しかし、誰も返事をしない。一人の貴族が、大声で王に告げた。
「陛下! 我らはただ一つの命令をお待ちしております! 『全軍前へ! 全軍前へ! 全軍前へ!』
今宵、うまい酒の所為で、いささか耳が遠くなっております! はて、それ以外の命令が、耳に届きませぬ!」
その勇ましい言菓に、集まった全員が頷く中、サイトはルイズに奇妙な安心を覚えた。
彼らの中にあって、ジョルノは無関心に、ワルドが彼らに羨望の眼差しを向ける中でルイズも悲しげな様子を見せていた。
「おやおや! 今の陛下のお言葉は、なにやら異国の呟きに聞こえたぞ?」
「耄碌するには早いですぞ! 陛下!」
老王は、目頭をぬぐい、「馬鹿者どもめ……」、と短く眩くと、杖を掲げた。
「よかろう! しからば、この王に続くがよい! さて、諸君! 今宵はよき日である!
重なりし月は、始祖からの祝福の調べである! よく、飲み、食べ、踊り、楽しもうではないか!」
そうして辺りは喧騒に包まれた。
こんな時にやってきたトリステインからの客が珍しいらしく、王党派の貴族たちが、かわるがわるルイズたちの元へとやってきた。
貴族たちは、悲嘆にくれたようなことは一切言わず、三人に明るく料理を勧め、酒を勧め、冗談を言って来ようとする。
そうした空気から逃れるように、ルイズがバルコニーへと歩いてくるのがサイトには見えた。
そして、彼らのやり取りなど全く無駄な、何の影響も及ぼされた様子のない爽やか、と言うには聊か冷淡な雰囲気を纏ったジョルノが玉座に腰を下ろしたジェームズ一世の前に向かっていった。
「ジョナサン…」
サイトはポツリと名前を呟いた。
同じ黒髪で、ファミリーレストランの名前と同じくせに、聞けば自分より年下の学生であるにも関わらず、歩いているだけの姿が何かサイトとは違う生き物であるかのようだった。
「本当は吸血鬼なんです」とか言われても、信じるだろうな。サイトは苦笑していた。
「陛下、幾つか折り入ってお願いしたいことがございます」
喧騒の始まりと共に玉座にしがみつくように腰掛けていた老王の下に来たジョルノは、そう言った。
王は弱った体を愉しげに揺らして、この会場には場違いな空気を纏った客人、ジョルノに頷きを返した。
「明日には消え去ってしまうこの老骨にお願いか…よかろう、伯爵。遠慮なく言うが良い。わしに出来ることであればなんなりと叶えようではないか」
「ありがとうございます。陛下、ウェールズ皇太子以下王党派のメイジ全員を頂きたい「ご冗談を!我らの陛下に対する忠誠心を如何にお考えか」
「我らの覚悟は、この宴を開いた時に既にお見せしたはず」
間髪入れずに宴を楽しんでいた貴族達の中から剣呑な声が放たれた。
ワイングラスを誰かが棄てたのか、ガラスが砕ける音がした。宴の空気は消えて、その場にはさながら決闘の場に変わろうとしてている。
ワルドがルイズがバルコニーから戻り口を挟もうとするのを止めている。
ジョルノを計ろうとでも言うのか、髭を剃り落とされた顎を撫でながらジッと、ジョルノへ視線を注いでいた。
「覚悟とは犠牲の心ではない。殉ずるのも真の忠誠ではない…私の下に一時的に身を「お客人、言葉は選ばれるべきですな」
そう言葉を遮った貴族の手には杖が握られていた。このパーティの為に着飾ったメイジ達の輪の中から一歩進み出て、充血した目を向けてくる。
「我らは古い貴族です。誇りの為には流血を必要とするというのが我らなのですぞ」
やれやれといいたげにジョルノはウェールズへ顔を向けた。
「ウェールズ公、あなた方が死んだ後、アルビオンがどうなるかお考えになったことは?」
既に同じ事を問いかけられ、ワルドにルイズとの婚礼を頼まれていたウェールズは冷静な態度で握っていたグラスに注がれたワインを見つめている。
「わかっているとも。その為に、私は逃げ出せないのだよ」
声には責任感で固められた強い意志があった。
その言葉に感銘を受けたのか、ウェールズを称えるような言葉が場内から聞こえた。
それに水を指す形で、口裏を合わせ図っていたようなタイミングでジョルノは冷たく言う。
「ウェールズ殿下はこう仰っていますが。あなた方の領民やご家族はどうなるでしょう?」
決して大きな声ではなかったが問うたジョルノに、会場にいた貴族達は皆眉をしかめた。
取り分け、半数以上にも登る家族を国外へ逃がした者達は苦虫を噛み潰したような顔に変わる。
「貴方方は我が領地に連日多数の亡命者が流れ込んでいるのはご承知ですか?」
見回すジョルノは答えようとする者を視線で圧して、反論がないことを見てから言う。
「勿論平民ばかりでもなければ私の領地に自らの足で来られた方ばかりでもない。先日(お名前は伏せて置きますが、)腰まで届くプラチナブロンドをした小さなお嬢様をお連れのE男爵夫人を夜盗に襲われていた所をお助けしました。
他にも目元にホクロのあるB伯爵のご令嬢、やんちゃが過ぎるお坊ちゃんに手を焼いておられる…」
肺腑を突かれたように顔を青ざめさせる貴族に、ジョルノは一度言葉を切った。
会場のあちらこちらから、動揺した様子がざわめきとなって耳に届いていた。
そのざわめきの音が小さくなるのを待って、再びジョルノは言う。
「これ以上は申しませんが、あなた方が皆戦死され彼らの身分が元、となったとしましょう。もし皇帝らがレコンキスタと交渉で話を済ませるつもりであれば、ご婦人方と言えど利用されるのは防げますまい」
「は、恥を知れ! 今そのようなことを…」
息を詰まらせたように、発せられた苦い声がジョルノの背中を叩いた。
ゆっくりと振り向く他国の、貴族の誇りを理解せぬ若造へと老いた貴族が唾を飛ばしながら叫んでいた。
「あ、あの子等は、妻は、今私が死ねば王家への忠誠ゆえに死んだ男の妻となる!
だが私が生きていれば、この段になり命惜しさに王家を捨てた男の息子として恥にまみれることになるのだ!」
立て続けに叫ぶ彼らの頭を再び視線だけで打ちのめし、ジョルノは客人に脅される臣下を見つめる王と視線を交わした。
膝を突き、アルビオンの礼に乗っ取って頭を下げる。
「お願いいたします。陛下。彼らが残した者達、彼等が義務を果たすべき相手の為に彼らを私に預けていただきたい」
老いた王は瞼を閉じた。
老王へと注がれる臣下の、先ほどとは違った迷いの含まれた視線を受け、深い皺の刻まれた顔が険しさを増していた。
王はゆっくり、重々しく頷いた。
「よかろう。我が名において、責務を残す者達については貴公にお任せする。
前言を撤回することとなるが、皆もわかってくれるであろうな? これはわしの最後の命じゃ」
王は弱った体の中、爛々と厳しい光を宿らせた目で臣下を、息子までを見渡しジョルノへと視線を戻した。
「伯爵、それに辺り。彼らにはこの城に残る宝を持たせよう。して、次はなんじゃ? 貴公は幾つかともうしておったな」
「ありがとうございます。陛下。今ひとつは、内密にお尋ねしたいことがございます」
感謝を込め、深く礼をするジョルノに王は頷いた。
ウェールズのレビテーションに支えられ、王はついてくるように目配せしながら奥へと姿を消す。
王は去り際に臣下へと告げた。
「諸君! 何を呆けておるか! 今宵は真によき日である! 良く飲み、食べ、踊り、楽しもうではないか!」
*
ルイズに付き添いながらその様子を観察していたワルドは険しい表情で老王の消えた方へと向かうジョルノの背中を見送った。
先ほどまでの最後の晩餐を大いに楽しむ雰囲気ではない。
王命を果たす為別れることとなった者達の複雑な心情が、会場の空気を変えているのが会場の外側からは良く見えていた。
「惜しいな」とワルドは呟いた。
ワルドの呟きに、同じバルコニーの暗がりにいる誰かが、ワルドの方を向いた。
だがワルドはそれが誰か気にも留めなかった。
それどころか、先ほどまで「……早く帰りたい。トリステインに帰りたいわ。この国嫌い。イヤな人たちと、お馬鹿さんでいっぱい。
誰も彼も、自分のことしか考えてない。あの王子さまもそうよ。残される人たちのことなんて、どうでもいいんだわ」そう泣きじゃって自分の傍らにいたルイズのことさえ頭から締め出そうとしていた。
気のない言葉で慰めながら、ワルドの中にあったのはポルナレフの言葉だった。
あの伯爵は、自分がスパイだと気付いているという。
ならば何か手を打っているかもしれない。
ここは結婚し、偉大なメイジとなるであろうと彼が予感している相手を我が物とするだけにするべきか、ワルドは迷っていた。
それだけにすれば、ワルドは祖国も、王族も、婚約者や、趣味を同じくする友も裏切らずに済む…
だが…ワルドは慰める間ルイズの肩に置いていた手に力を込めた。
「痛…っ、どうしたのワルド?」
「すまない。彼らを見て、同じ貴族として何か他人事とは思えないところがあってね」
ルイズが顔をしかめ、慌てて指から力を抜く。
逆の手を、きつく握り締めた。
「……ねぇワルド」
「なんだい?」
「貴方、姫様の…ううん、なんでもないわ。ごめんなさい」
「うん?」
「いいの! 馬鹿なことを聞いて、危うく貴方にがっかりされる所だったわ。本当、ポルナレフにも困ったものよね」
慌ててなんでもないと繰り返すルイズを安心させようと、穏やかな、彼女の思い出の中で美化されているであろう過去の自分と同じ笑顔をワルドは浮かべた。
照れくさそうに俯くルイズから目を放し光に包まれた会場、そして星を隠すほど眩しく輝く二つの月が浮かぶ空を見上げた。
見上げた空は、月が明るすぎるせいで真っ暗闇のようにワルドの目には映った。
心を決めなければならない。
ワルドから見れば少年と言っていい年齢のゲルマニア貴族には理解しようもないだろうが。
たとえ犠牲が大きかろうと、誇りに傷がつこうと…祖国と俺の未来は、覚悟が道を切り開く。
握り締めていた指を開き、ワルドはマントに描かれたグリフォンに触れた。
そんなワルドを見ているサイトの片目が冷たく光っていた。
*
レビテーションで運ばれる王の後に従い、ジョルノは会場の喧騒から遠ざかっていった。
ポルナレフやテファが入っている亀を抱えて月明かりに照らされた廊下を歩き、階段を上っていく。
気遣わしげな様子で王の後に続いていたウェールズと一瞬目があった。
パーティの前に通されたウェールズの部屋に程近い部屋の前で彼らの足は止まった。
中はウェールズの部屋ににて質素だったが、王がレビテーションを解かれ下ろされたベッドだけは精緻な金細工の施された高価な物だった。
王が寝室として使っている部屋らしい。
内密の話と言ったジョルノに配慮して、ウェールズ以外の者は足早に部屋を出て行く。
そして、最後の者が退室してから、ウェールズはサイレントの魔法を唱えた。
魔法の効果により、部屋の外から微かに聞こえていた風の音さえしなくなり…老いた王はジョルノに内密の話とやらをするようにと、目で言ってきた。
「モード大公の事件について知る限り教えていただきたい」
その目配せに頷くなり、ジョルノは何の前置きもなく尋ねた。
床に伏せった王の喉からクック、と笑い声が漏れた。
ここで対面か
「…何かと思えば、伯爵は冗談がお好きなようじゃな。
ほれ、本当の頼みを言ってみよ。今なら我が王家に伝わる始祖の秘宝を見せてやってもよい」
そうジョルノへ返された言葉は先ほどまでのやりとりなどなかったかのように冷めていた。
幾つものクッションを背もたれにした、半分死んだような、枯れ木のような体の奥から淀んだ何かが溢れようとしているかのようだった。
始祖、虚無に関する秘宝に惹かれないわけではなかったがジョルノは首を振った。
「ある方からどうしてもと頼まれました」
「伯爵! 誰にそのようなことを言われた!それはどこの愚か者、ゴホッゴホッ…!」
二度目を口にしたジョルノを今回は怒りに震えながら、老王は怒鳴りつけ噎せ返った。
慌ててウェールズが駆け寄り、背中を摩る。
王の口内のどこか切れてしまったのか、咳をする王の口から赤いものが飛び散っていた。
「ふぅ…もうよいウェールズ。伯爵、早う答えんか!」
ジョルノが言葉を返す前に、「私です」そう亀の中からテファが顔を出した。
ぎょっと、王が痩せて窪んだ目を見開きクッションから身を乗り出す。
非難するような目で、ジョルノは言う。
「テファ、何故出てきました」
「本当なら私が聞かなきゃいけないことだから…これくらいは自分でやらせて」
そう言ってジョルノに申し訳なさそうに亀から出てくる少女を王は驚愕を持って迎えた。
出てきた亀の中から、ポルナレフの声がした。
普段の脳天気にも見える明るさはなりを潜めた、年相応の落ち着いた声だった。
「ジョルノ」名を呼ばれたジョルノは亀の甲羅に差し込まれた鍵の宝石の部分から中を覗き込む。
宝石の中に小さなポルナレフと、複雑な表情で杖を持ったままソファに座るマチルダが見える。
よく見れば、我関せずといった素っ気無いたいどで見繕いをするペットショップの姿も、部屋の端っこの方に確認できる。
ポルナレフは、何も言わずに硬い意思を感じさせる眼差しをジョルノに向けていた。
靴に化けたままのミキタカからも視線を感じたジョルノは軽く息を吐き、テファの隣にたった。
既にテファのことを認めているウェールズは気遣わしげに、王は悪夢でも見ているような目をしていた。
王が節くれだった指でテファを指した。
テファは初めて会う叔父に対する親愛の情が篭った眼差しを向け、微笑すると亀の中にいる間にマチルダに教わったアルビオンの儀礼に乗っ取ったお辞儀をする。
「貴様、その耳…まさか」
テファの耳を指す指の震えが、王の激しい感情の揺れを表すように激しさを増す。
顔を未だ伏せたまま、いつもの聞く者を穏やかな気持ちにさせる、囁くような声ではなく、緊張から響きの良い声でテファは返事を返す。
「はい、陛下。ティファニアと言います。私はモード大公と愛人だった母「杖じゃ! つ、…っごほっごほっ」
「!父上!」
「叔父様!?」
血の混じった咳をしながら、王は布団を叩いた。
簡単にへし折れそうな細く血管の浮いた指が痙攣を起こしながら布団を掴む。
「汚らわしいぞッ! 叔父などッ…う」
その言葉を最後に、王は胸を押えて布団へと倒れた。
「父上ッ父上…!」
体を支えながら、ウェールズが何度も呼びかける。
だが既に、発作を起こした一人の老人は息を引き取っていた。
テファが悲鳴を上げる…サイレントで遮断された室内に、甲高い叫びが良く響いた。
冷静にジョルノがベッドに駆け寄り、スタンドで心臓マッサージなどを試みる。
だが、その甲斐もなく王は、決戦の日を待つことなくテファの父との間にあった出来事を話すことも、再びその瞼さえ動かすことはなかった。
支援
その死は、震える手で瞼を閉じるウェールズの判断で隠されることになり、「二人のせいではない。先の件も、変わりはしない…父の最後の命だ。命にも従う。だが…」と肩を落としたウェールズは二人に言った。
だがやり切れない顔でそう言ったウェールズがその頭で考えたのは父ではなくまだ生きているアンリエッタだったことに、ジョルノは気付きながら素知らぬ顔で礼を言った。
そして、ジョルノは王の死に責任を感じているらしいテファの元へ戻って抱き寄せる。背後で手を空ける為に上下逆に置いた亀からマチルダの声が聞こえたが聞こえないふりをした。
耳が痛くなるほど叫び、今まだ取り乱していたテファは、
「ジョ、ジョルノ。私、私大変なことしちゃった」
「落ち着いてください。テファのせいではないとウェールズ殿下も言ったでしょう?」
テファの髪を撫でながら、ジョルノは刺激しないよう優しげな声で言う。
囁かれた言葉に、狼狽えたままのテファは自分が悪いと決めて聞く耳を持っていなかった。
「嘘よ、私が、お体が悪かったのに私なんかが現れたから…」
「それは違う。ティファニア、父の死は寿命だったのだ。君が気にすることはない」
「そんなことないわッ! 叔父様は…私を憎んでらっしゃったわ…! だから、あんなお体だったのに興奮して…!」
亡くなった父の瞼を閉じ、ベッドに寝かせながら言葉をかけたウェールズに、テファは激しく首を振った。
少し眉を寄せて、ジョルノは先ほどよりも幾分強い口調で言う。
「テファ、僕が違うと言っているんです」
「ううん、私が悪いの。クリスの言うとおりなんだわ。私が、私が生ま」
呆れたジョルノは一転して、テファの頬を叩いた。
亀の中からポルナレフが手をあげたことについて激しい非難を始める。
ジョルノは無視して言う。
「何度も同じことを言わせないでください。僕が違うと言っているんです」
少し加減を間違えられてほっぺたを真っ赤にしたテファは、呆然とした様子でジョルノを見つめた。
亀の中から、喧騒が聞こえたが…亀を気にする余裕はなかった。
静かな声。だが静かに、怒っているのだと考えたテファは俯いてしまう。だがか細い小さな声で言い返しもした。
「で、でも…現に、こ、ここうなって、叔父様が」
「違う! いいか、貴方が彼らにしたことなんて何もありません」
俯いたまま目を動かし、死体をみようとするテファの顔を片手で押さえ、ジョルノは低い、厳しい声で切り捨てた。
テファは真剣な眼差しから逃れようとして下を向いた。
目から零れ落ちたものか、雫か敷かれた毛の長い絨毯に少し沈んだ靴の上に落ちて光った。
テファの頭の中には、叔父の死を引き金に母が殺されたことや、これまでのこと、父母や、イザベラに言われた言葉が繰り返されているようだった。
「でも皆、そう言うわ。出来損ないの私だもの、そうに違いないわ。私も、そう思うもの「違う」
否定的な考えに取り憑かれ口からでた言葉に、今までになく強い口調でも断言するのを聞いたテファはジョルノを見上げた。
声音がほんの少し前とは全く変わっているように感じられたからだった。それは正しく強い口調だったがジョルノは怒りなどは見せていなかった。
涼やかな、意気消沈するウェールズの目にも、このアルビオンに吹く春風のように、鬱屈した気持ちを吹き飛ばすような爽やかさが感じられた。
「そんなことを思っているのは貴方だけだ。(貴方も他の者も)僕が黙らせる」
微笑を浮かべたジョルノの声は、心地よく響いた。聞く者によっては話しかけてくる言葉に危険な甘ささえ感じられた。
が、酷く落ち込み鬱屈した気持ちを抱えようとするアルビオン王家の二人は全く気にもせず、奇妙なほど惹きつけられていた。
「いずれ、帽子も魔法も使わなくても自由にどこへでも行けるように暮らせるようにしてみせる」
驚いたようにテファがジョルノを息をするのも忘れて見つめた。
そうして一瞬、安堵したように息をつきジョルノの笑みに釣られるように、テファが薄く笑うのを見てジョルノは…少し乱暴にテファを亀に押し込んだ。
らしくないと微かに頭を振り、父の亡骸の傍らで無理をして穏やかな顔を見せるウェールズに礼を言って、部屋を後にする。
「よく言ったな、ジョルノ」
部屋を出て、扉を閉めるなりテファを押し込んだ亀からポルナレフが言葉をかけてきた。
靴に姿を変えていたミキタカも、人間の姿になって言う。
「ちょっとは見直しましたよ」
そう言って肩を叩いてミキタカは亀の中へと戻っていく。
ジョルノは眉間に眉を寄せて困ったような顔をして歩き出した。
ミキタカと交代するかのように、ペットショップが亀の中から飛び出す。
狭い階段の中を飛ぶペットショップの姿に、ジョルノは亀を持っていない方の腕を差し出した。ペットショップがそこに泊まる。
珍しく言い返してこないジョルノにポルナレフは亀から頭だけ出して、愛嬌のある笑みを浮かべた。
「照れるなよ、俺はこれに関しちゃ応援するぜ」
「ありがとうございます…」
「なんだなんだ! 歯切れが悪いな。何が気に入らないんだ?」
ため息混じりに尋ねたポルナレフにジョルノは苦笑した。
「そういうことじゃあないんですが…テファは?」
「嬉しそうにはしちゃいるが……ッ、まさか…二人っきりにして欲しいとかそういう話か!?」
何かを想像し意味ありげな笑みを浮かべて顔を寄せてくるポルナレフにジョルノは首を振った。
「いいえ。まだ用事がありますからね」
「用事…? まぁいい。それより吐けよ。何が気に入らないんだ?」
尋ねられたジョルノは、腕を組んで少し考えるような素振りを見せた。
片方違う色の目をさせてジョルノを覗き込むペットショップの羽を眺める。
「おい、黙るなよ…なんならテファなら奥の亀の中に入れておいてやるからさ。ミキタカ!、テファを奥に連れて行け」
「…」
亀の中から聞こえてくるやり取りに、歩き出しながらジョルノはため息をついた。
持ち歩いていた亀を階段に置いて、ジョルノは言う。
「この話は以前から考えていたものです。それを」
「それを?」
ポルナレフは首を傾げる。
薄暗い階段で足を止めたジョルノの苦笑はなりを潜め、険しい表情に変わっていた。
「いえ、また今度にしましょう。僕はこれからこの城を一回りしてきます。後のことはお任せしましたよ」
「はぁ?」
勝手なことを言って階段を上がっていこうとするジョルノの肩を、マジシャンズレッドを使って掴む。
肩越しに振り返ったジョルノは、普段どおりの冷静な顔をしていた。
「なんです?」
「なんで一回りする必要があるんだ?」
「もしもってこともありますからね。念の為に明日までに退路を確保しておきます」
「そ、そうか…」
返事に納得したポルナレフは肩を掴んでいた手を離させる。
ジョルノは一人壁に手を付き、薄暗い階段を一人上がっていった。
支援
古い石段を上りながらジョルノは腕に止まったペットショップに言う。
「イザベラ、何か変わったことは? シャルロットとは予定通りうまくやっていますね?」
『使い魔は、主人の目となり、耳となる能力を与えられるわ』
使い魔とメイジの繋がりを利用した感覚の共有。
イザベラの使い魔であるペットショップは、それにより現在ガリアにいるはずのイザベラを感じ取り、簡単なことであればジョルノに伝えることが出来る。
イザベラが戻ってから何度か行ってきたことだが、ペットショップはその日に限り何もしなかった。
月明かりに、ペットショップにしては珍しく、困っているようにジョルノの目には映った。
何か行動し、イザベラの言葉を伝えようとするはずのペットショップはジョルノを見ると首を横にふった。
「……何か怒らせたかな?」
怪訝そうに言うと、ジョルノはペットショップに辺りを見回ってくるように言って窓から夜空へとペットショップを放す。
夜空を悠々と飛び始めたペットショップの姿を暫し眺め、先ほどの会場で組織の人間でもある王党派の貴族から受け取った手紙を懐から取り出した。
今頃は会場で、家の為であり王の命でもあると説得し、あるいはこちらに引き込もうとしている者達は最悪生み出した亀の中にすし詰めにでもしよう。
今度こそ、城の中を一通り見て回る為に歩き出した。
To Be Continued...
以上、投下したッ!
かなり空いてしまったなと…
ポルの忠告により奇襲は効果なしになりましたよと…
次はもう少し早めに投下できればなと思います。
支援ありがとうございました。
sien
GJした!
おお!ポルジョルきた!!
ジョルノも母親に捨てられたようなもんだから生まれについては敏感になるのかねぇ
乙ー
適度に一言多い辺りが実にポルポルだなw
まあここで裏切らない方が長期的には嫌かもしれんな>ワルド
GJ!シビれましたッ!
GJ!
所で一つ質問なんだがな〜。
テファを抱き寄せて髪を撫でてたって事はよ〜。
テファの胸部についてる二つの球体革命器官はどこにさわってたっつーんだよ〜!!
テファの胸が当たる瞬間、体質の98%を水分で構成する(ry
>>91 クラゲに変えてむしゃぶりつかせたんですね。わかります。
ロッズはいるのか?
原作を8巻まで買って来た…ここまで読めば俺もSSを書けるんだろうか
って言うか、ここにSSを投下している皆が如何にあれこれと苦労しながらアイデアを詰め込んでるのかがわかって
かなり怯み気分になってしまった。皆すげぇや…真似出来るかどうかは不安だ…
8巻まで読めばとりあえずは大丈夫だな。健闘を祈るぜ
全巻読んでおかないと矛盾とか辛いぞ
8巻以降で明らかになった事実というと
・ルイズ母が鬼のように強い
・タバサ母が飲まされたのはエルフの毒
・シャルルは聖人君子ではない
・ジョゼフの虚無はメイドインヘブン的なもの
・神を信仰するヤツにロクなヤツいねえ
・ブリミル「蛮族すいません」
くらいかな
>>97の情報の出し方は絶妙だなw
詳細が気になって気になって、もう読むしか無いじゃないかw
レスを見る限りアニメは見てるようだからSSは何とかなるでしょ
まあ8巻まで買ったのなら勢いで全部買ってしまうだろうけどなw
ヴィンダーならスカイハイなんていらないぜ!
はたしてハルケギニアにロッズはいるのかな
>>97 ブリミルw
9巻以降の見所
・アン様の熱い口づけ(9巻)
・キュイキュイ フル ヌード(10巻)
・タバサの個人授業(11巻)
・キュルケとモンモン百合乱交(12巻)
・サイトの女装(13巻)
・テファ、くすぐり尋問(14巻)
・シエスタと3人で(15巻)
他にも、カトレアの慰め、ルイズママとのお手合わせ、
キュルタバの軍服コスプレ、チューブトップ&ローライズな
エルフなど萌え満載!
ヤマグチノボル著『ゼロの使い魔』をどうぞよろしく!
おいおい!それだったらカトレア姉様の両手に華「ルイズ&アンリエッタ!二刀流ッ!」も見所だろう!
個人的にエレオノール姉様涙目の方が印象に残ってるんだけどな
>>102,103
なんかそれだけ見るとエロ本だな
ゼロの使い魔からラブコメはなくなったらいいと思ってる。
一冊あたりのページ数が7割くらいカットされちゃうよ
いや、エロとラブは別口だと考えればあるいは……!
ここはひとつIFスレでラブコメなしを書いてみるとか
ラブコメというかサイトとルイズのイチャつきが目障りで仕方ないのは俺だけじゃないと思う
マルコメ乙
ルイズとサイトのいちゃつきがなくなると虚無用のMPが足りなくなる恐れがw
今まではイライラで補充してたのが、最近はラブラブで補給してるからなー
しかし、ブリミルはあんなとっぽいニーチャンぽいキャラでどんだけトラウマなりラブちからなり溜め込んでるだろ?
>>111 基本的にはトッポいにーちゃんで虚無の担い手に相応しい変態紳士の嗜みもあるけど
族長としての焦燥感とか毎回ヴァリヤーグに追い詰められてたりで
イデオンのベスさん並みにテンパってるんじゃない?
童貞男性は凄い勢いで魔法の為の力を蓄えることが出来ると聞く
DT力ですね、わかります
ヨシカゲが周期的に人を殺したくなるように、ブリミルも突然何かに萌えてしまうんじゃないかな。
チョコラータは悪意に限度がないがら毒ガス級のスタンドを発現したけど、ブリミルはフェチに見境がないから虚無を作ったとか…
パワーバランス考えたらブラックモアを思い出した
117 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/23(木) 21:54:15 ID:wJ4oG9IW
仮面の人こないかなー
闇の炎に抱かれて馬鹿なっ
サブ・ゼロの使い魔はもう続きは期待できませんかね?
DISCはゼロを駆り立てるの人楽しみにしてたんですがもう書かないのかな?
一度手を止めると、再会しづらいんだよねえ……。
多くのSSが完結まで続かない理由が分かった気がするよ。
でも、オレも続きが気になる人間の一人だから、何とか復活を願ってるぜ!
>>120 SS入れてたUSBメモリーを洗濯機でグルングルンやっちゃって
書き直してます(´・ω・`)
>>122 まじかよ…
更新されないから妙だとは思ってたけどそんなことになってたとは
お悔やみ申し上げます
一話だけでもかなりwktkでした
がんばってください
125 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/24(金) 05:26:29 ID:odgvPx6t
ID:swh1qxrxも運営と警察に通報しときまーす^^
遅レスにも程があるだろ…
キンクリでポケットの中身を取り出す過程を飛ばされたのか。
129 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/24(金) 16:03:58 ID:XJy2Wj4v
あたらしいディアボロのSSできてるね。
兄貴の続きこねぇかな
待っている作品を書き出したらゴイスーな量になってしまう
でも、それが作者さんに続きを書くという覚悟を決めさせることになるかもしれないとしたら……
DIOが使い魔の続きを……読みたいよーな読みたくないよーな
自分的にはキュルケやギーシュにワルド達がどんな手を使ってもいいからDIOを倒す展開がいいんだが
それだとモンモンとタバサは億康の親父化してしまう
ルイズがDIOを倒しても結局ルイズがハルケギニアを支配するだけだしなぁ
何? 続きを待ってる作品を書き出したら凄い量になるって?
逆に考えるんだ
『全部復活するのを待ってます』
そう書き込めばいいんだ
トニオさんの恋物語の続きは見込めないだろうか
>>135 タバサママンが横恋慕している話だっけ?
オレルアン家の母娘の新たなる策謀は確かに読みたいw
しかし、あの話はなんかもうアレで完結してるような気もするw
>>133 肉の芽にディスペルマジックって効くのかな?
ところで「DIOが使い魔!?」って60からまとめに載ってないんだが
何スレ目にその部分は載ってるんだい?
モンモンの方は外伝で肉の芽を植えられてるよ
タバサは本編ではまだ植えられていないんじゃなかったっけ?
外伝でそれっぽい描写があるだけで
ルイズが留守居のハルケギニア大王となってDIO様は世界扉で元の世界へ再侵攻するんじゃないかなあ?配下の吸血鬼メイジ&エルフ軍団連れて
時間軸的には…5部直後がええなあ
ジョルノvsDIOの親子対決とか見たい!
プッチは…DIOに着くだろうなあ、やっぱ
ゲートを潜った瞬間、太陽の光で全滅ENDですね。わかります。
今回の任務は賭博場のイカサマを見つけて、客たちに教えること。
タバサは大勝し支配人がその姿を現した。
「お嬢さま・・・、これはこれは大変な大勝でございますな。
当カジノの支配人である、ダービーです。」
タバサとダービー・ザ・ギャンブラー
ガリアの、とある街道にあるトンネル。
そのトンネルを通る者は例外なく死ぬという。
トンネルに魔物が住み着いたに違いないと村人からの訴えにより
北花壇護衛騎士団のタバサが調査に命じられた。
山に穴を掘り固定化した一本道のトンネルの中に部屋があり
五年前の光景が繰り広げられる。
「母さま、それを食べちゃだめ。母さま」
すでに終わったこと・・・
頭でそう思っていたにも拘らずタバサの足は部屋の中に踏み込んでいた。
タバサとハイウェイ・スター
ここは上空、三千メイル。
吸血鬼の討伐を命じられたタバサは
『ハルケギニアの多種多様な吸血鬼について』という本を読んでいた。
だがしかし、吸血鬼に会う前に恐るべき『氷』の使い手が行く手を塞ぐことを
タバサには知る由もなかった・・・
タバサと地獄の門番
・・・っていう話を誰か避難所で書いてくんねーかな。
メイドインヘブン!
世界は一巡し、
>>142が自分で書き始めr……
げふんげふん、世界は一巡し、IDは変更される
15分から投下しますけど構いませんねッ!?
かもん
146 :
ゼロいぬっ!:2008/10/26(日) 00:14:00 ID:ZgfbWloo
焼け落ちていく希望からクロムウェルはそれに視線を移した。
現実感を喪失した虚ろな眼が亡国の竜騎士の姿を映す。
百倍近い戦力を以って蟻のように踏み殺した連中、その生き残り。
それが今、杖を伸ばせば届く距離にいるという事実が彼には許容できなかった。
まるで幽霊でも見上げるかのようにクロムウェルは呆然と立ち尽くす。
風を帯びて振り下ろされる隊長の杖。
その刹那、二人の間に一騎の竜騎士が飛び込む。
「皇帝陛下! 早く船内へ!」
風の刃を受け止めながら神聖アルビオン共和国の竜騎士が叫ぶ。
ようやく正気に立ち返ったクロムウェルが慌てて踵を返す。
その背中に舌打ちしながら竜騎士隊隊長が己が騎竜を突撃させる。
だが、共和国の竜騎士も身体を張り侵攻を阻止する。
ぶつかり合う竜の巨体。互いの息がかかりそうな距離で両者は叫んだ。
「退けえェェェェーー!」
「退かぬ! たとえ主が誰であろうと命を捨てて守るのが騎士の務め!」
杖と杖が火花を散らしながら舞い踊る。
剣戟の間にも共和国の竜騎士たちはクロムウェルの艦に集結していく。
ここまで辿り着いたのも混乱を突く奇襲だからこそだ。
一度竜騎士隊が集えば、その囲いを突破してクロムウェルを討つなど到底叶わなくなる。
時間が惜しい。しかし彼には目の前の竜騎士たちを相手取る事しか出来ない。
目の前で零れ落ちていく砂時計のように失われていく時間。
それは怨敵を討つ最期の機会と同義。彼は歯噛みしながら焦燥に身を焦がす。
その彼を背後から討たんと一騎の竜騎士が迫る。
瞬間、その竜騎士は自分の杖ごと利き腕を失った。
咄嗟に背後へと振り返った彼の眼に飛び込んだのは巨大な猛禽の爪。
兜と共に押し潰された頭蓋から鮮血が飛び散る。
共和国の竜騎士たちが仲間の断末魔に振り返った。
その彼等を鷲の鋭い眼光が捉え、甲高い雄叫びが鼓膜を揺さぶる。
一蹴した相手とはいえ、その幻獣が持つ威容には些かの翳りも感じられない。
グリフォンを駆る彼等の一人が杖を掲げて高らかに声を上げた。
「グリフォン隊、我に続け!」
副長の掛け声に呼応するように、魔法衛士隊が雄叫びを上げながら一斉に突撃する。
数十にも満たない数の声が押し寄せる津波の如く響き渡る。
不意の襲撃に崩れた前線をグリフォン隊の戦列が裂いていく。
彼の横を通り過ぎていく部下達を眺めながら副長は口を開いた。
「これ以上、アルビオンの連中に好きに飛び回られたのでは我々の面目が立たん。
ここは我等が引き受けた。貴殿は船内に逃げ隠れた大ネズミの退治を」
そんな事を真顔で言い放つ副長の顔を見上げる。
竜騎士に手痛い被害を被ったというのに、その眼差しに恐怖はない。
それも当然か。彼等もまた自分達と同じ王直属の部隊なのだ。
ならば倒すべき相手を前にして奮え立たぬ筈がない。
「感謝する。アンリエッタ姫殿下の忠実なる杖よ」
「武運を祈る。ウェールズ陛下の誇り高き杖よ」
互いの拳をぶつけ、二人はそれぞれの敵へと向かった。
147 :
ゼロいぬっ!:2008/10/26(日) 00:16:10 ID:ZgfbWloo
捨て身の猛攻に戸惑った竜騎士隊が平静を取り戻して反撃に転じる。
数においては敵を圧倒し、あまつさえ緒戦で容易く打ち破った相手だ。
すぐにでも壊滅させられるだろうと彼等は考えていた。
しかし、それが大きな誤りだと気付いたのは何時だったのだろうか。
竜が得意とするのはグリフォン隊を負かした高速での一撃離脱戦法。
だがクロムウェルの乗る艦を守る為、彼等はその場に留まらざるを得ない。
速度を落とした火竜ではグリフォンの追撃からは逃れられない。
条件が同じであれば勝敗を決するのはメイジの実力。
であればトリステインの精鋭である魔法衛士隊に敵う者などいるはずもない。
グリフォンの小回りを生かし、縦横無尽に艦の周りを飛び回り魔法を放つ。
本来の実力を十全に発揮する魔法衛士隊の前に、次々と火竜が落とされていく。
その光景を前に竜騎士たちは思い知らされた。
これは戦争だ、一方的に自分達が殺すのではなく殺し殺される戦いなのだ、と。
竜騎士隊を支援すべき艦隊も余裕はなかった。
止めを刺す予定のメンヌヴィルはいつまでも手を下そうとはせず、
また丘に陣取ったトリステインの砲台が艦隊に向けて砲撃を繰り返す。
そのような戦況の中、グリフォン隊に向ける砲門などありはしない。
肉は削げ骨は砕け、“バオー”は見るも無残なものに変わり果てていた。
“何故こんな身体で空を飛んでいられるのか”その姿を目にした者なら誰もが口にしただろう。
バオーは気付いていた、自分に脅威が向けられている間は誰も傷付かない事に。
もしここで倒れれば次はグリフォン隊か、それとも地上の砲台か。
どちらか……いや、間違いなく両方とも一人残らず殲滅させられる。
だからこそ耐えた。この鉄の雨が誰にも届かぬように己の身を傘へと変えた。
その時、バオーの触覚が消えようとしている彼の命の臭いを感知した。
一瞬の迷いだった。この場を離れて彼を助けに行こうとする想いと、
彼が大切にしている者たちを守ろうとする想いがバオーの中でせめぎあう。
それが、その迷いが防げるはずだった砲弾を見逃す隙を生み出してしまったのだ。
砲口から爆風と共に押し出された鉄の塊が空気を押し退けながら迫る。
バオーの頭部に命中した巨大な鉄球は頭蓋を撃ち砕き、空に血飛沫を撒き散らす。
不動だった蒼い巨体がぐらりと崩れ落ちる。
空に融けるように沈む怪物の姿に艦隊中から割れんばかりの大歓声が上がる。
それを耳にしながらバオーは穴だらけの翼を広げた。
ぎしりと音を立てて骨が歪むが、それでも落下速度は一向に落ちない。
轟音と凄まじい砂埃を上げてバオーが地面と衝突する。
立ち込める砂煙で艦上からは、その姿を窺う事は出来ない。
だが、この高さから落ちれば竜とて原型を留めないだろう。
148 :
ゼロいぬっ!:2008/10/26(日) 00:17:20 ID:ZgfbWloo
「怪物はやったぞ! 砲口を次の敵に向けろ!」
上官の指示を受けて艦の砲撃手たちが各々の標的へと狙いを定める。
しかし、その中の一人は明後日の方角に砲口を向けていた。
よく見れば、向けたその先には少女が一人、杖を掲げて立っている。
桃みがかったブロンドの髪と大きめのシャツを靡かせながら、
艦隊へと杖を向けたまま、目を閉じて一心不乱に詠唱を続ける。
それを目にした上官が呆れるように溜息をつくと若い砲撃手を叱り飛ばす。
「メイジの一人や二人、放っておけ! どうせ何も出来はせん!」
ルイズから離れていく砲口を見てフレイムは彼等の心理を悟った。
当然の判断だ。地上にいるメイジが戦艦を相手に何が出来るものか。
スクエアクラスの魔法を用いたとしても艦を撃沈させるなど至難の業。
ましてや幼い少女が艦隊に傷を付けるなど考えられまい。
―――だが、お前らは唯一の勝機を失った。
もしも勝利を得たいと願いのならば、あらゆる手段を尽くして少女を殺すべきだった。
砲弾を雨霰と降らせ、竜騎士も地上の兵も持てる全て駆り出して止めなければならなかった。
侮るなよ、人間。そこにいるのはただのメイジじゃあない。
数万の軍勢と空を埋め尽くす艦隊を有するお前らが恐れた使い魔、その主だ。
悔しいが、爪も牙も吐き出す炎もお前たちには届かない。
だが、彼女なら。我が主が宿敵と認め、我が友が主と仰いだ彼女なら。
さあ見せてみろ、ルイズ・ド・ラ・ヴァリエール!
その力と決意を! 真に彼の主人であると胸を張って言えるならば!
「姫殿下! お下がりを、ここは危険です!」
砲声に掻き消されながらもマザリーニがアンリエッタに告げる。
至近距離からの艦砲射撃。その脅威は先の砲撃の比ではない。
絶え間なく撃ち込まれた砲弾は防ぐ事さえ許さない。
気休めに拵えた盛り土が一瞬にして弾け飛ぶ。
これでは仮に直撃を避けたとしても死は免れない。
マザリーニの言葉に従い、その場を離れようとした瞬間だった。
彼女の視線の先に一人の少女が立っていた。
背を向けていても分かる。
そこにいるのは自分の無二の親友。
耳を劈く轟音の中、彼女の声が凛と響く。
すぐ傍らに命中した砲弾が地面を吹き飛ばす。
そして飛び散った小石が彼女の頬を掠めた。
なのに何事もないかのように彼女は平然と詠唱を続ける。
「姫様!」
ルイズの背を見つめたまま呆然とするアンリエッタ。
彼女の手をマザリーニが引いて無理にでも連れて行こうとする。
しかしアンリエッタは彼の手を振り払った。
それでもマザリーニは諦めず彼女に食い下がる。
恐らくは親友であるミス・ヴァリエールを置いていけないのだろう。
だが、何よりも優先されるのはその御身。
王の血筋が絶えれば国を纏める者はおらず、
貴族達の手によりトリステイン王国が分断されるかもしれない。
王は決して倒れてはならない、これは責務なのだ。
149 :
ゼロいぬっ!:2008/10/26(日) 00:18:36 ID:ZgfbWloo
「……私はここに残ります」
「姫!」
咎めようとしたマザリーニの手が止まった。
アンリエッタの目には不安や同情といったものは感じられない。
ただ真っ直ぐに、ミス・ヴァリエールと同様、前だけを見据えている。
「私には何もありません。ルイズのように強い使い魔も持たず、
貴方のように優れた政治手腕があるわけでもない、
ましてや私より優れたメイジなど掃いて捨てるほどいるでしょう。
皆の言う通り、無力な私はただのお飾りなのかもしれません」
だけどルイズはそれでも立ち向かった。
使い魔を失っても、なお一人で戦おうとしている。
ルイズは私の為に戦うと誓った、その彼女を置いて逃げ去る臆病者に誰が付き従うというのか。
「ですがお飾りであろうと役割は果たさなければなりません。
彼等が命懸けで忠誠を果たすのなら、それを見届ける事こそ我が使命」
下らない主の為に死んだなどという未練は残させない。
己の命を捨ててまで守る価値があったと最期まで信じさせたい。
それが『お飾り』である自分に出来る唯一の役割なのだから。
ふと耳に響くルイズの声で目を覚ました。
言葉ではない、優しくて温かな旋律が風に乗って流れる。
知っている、これは歌だ。どこかでルイズが歌っているのだろうか。
歌声が届く度、そこに込められた彼女の想いが去来する。
一緒に過ごしたかけがえのない時間。
それをどれほど大事に思ってくれているのか、
まるで手に触れているかのように感じ取れる。
気付けば、自分は空を見上げていた。
とっくに光を失ったはずの目が鮮やかな青を捉える。
“ああ、そうか。ルイズの目を通して見ているんだ”
消えかけたルーンが燃え尽きる前の蝋燭のように輝きを放つ。
ルイズと自分を繋ぐ不思議な力、それがこの光景を見せてくれている。
残された時間は思ったよりも少ないのかもしれない。
だけど、もう少しだけ待って欲しいんだ。
彼女が自分の足で歩き始めるのを見守りたいから。
150 :
ゼロいぬっ!:2008/10/26(日) 00:19:34 ID:ZgfbWloo
詠唱が終わる。虚無の中にあったルイズの精神が現実へと引き戻される。
完成した魔法は威力は彼女の想像を絶するほど強力なものだった。
一度放てば全てを飲み込み、虚無へと帰すだろう。
殺すのか、殺さぬのか。彼女の前に突き付けられる2つの選択肢。
噛み締めた唇から血が滴り落ちる。
どうして、どうして憎まずにいられるだろうか。
ただ平穏に暮らしたかった彼等を戦争に駆り立て、
彼も、ウェールズも、多くの人たちを傷つけ殺した。
奴等に対する然るべき報いがあるとするなら唯一つだ。
ルイズの杖が明確な意思の下に振り下ろされる。
そして虚無の力、『エクスプロージョン』は発動した。
あたかも太陽が生まれたかのような眩い光が世界を包む。
空を埋め尽くす大艦隊は次々とその光に飲まれて消えた。
突如として出現した光を誰もが仰ぎ、そして言葉を失った。
「……これで良かったんだよね?」
ぺたりと力を失ったルイズがその場に座り込む。
見上げた先にあるのは沈みゆくアルビオンの大艦隊。
そこから次々と乗員達が脱出していくのが見える。
杖を振り下ろす直前、彼の鳴き声が聞こえた気がした。
だからこそルイズは思い止まる事が出来た。
復讐なんて彼は決して望まないし、そして私にもそんな事をさせたくない。
放たれた虚無の力は誰も傷付けることなく戦いだけを終わらせた。
それを彼はルイズの眼で見ていた。
“ありがとう。おかげで最期まで見届けられた”
消えていくルーンに感謝しながら彼は安堵の吐息を洩らした。
彼女は勝った。敵にじゃない、もっと大きな力に。
自分がバオーの力を得た時のように、立ちはだかった試練に。
大丈夫だ。ルイズはもう自分の運命なんかに負けはしない。
だから、もう一人でも歩いていける。
ああ、でもそれは少し寂しいかな。
できれば彼女の傍には誰かがいて欲しい。
もし、彼女が迷ったり、悩んだり、悲しがっている時に、
一緒に彼女と共に答えを探してくれる誰かが。
うん。ルイズならきっと見つけられる。
いつかは分からないけど、自分の代わりじゃない……もっと大切な誰かを。
支援
152 :
ゼロいぬっ!:2008/10/26(日) 00:20:38 ID:ZgfbWloo
以上、投下したッ!
うおおおおおおおおおおお!!!!!
GJ!GJ!GJ!
バルバルバルバルバルバル
さすがにこれは感動せざるを得ない
うぉー 出遅れた orz
キタ⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y(。A。)!!!
落ち着いて読んだよ
いぬっもルイズもカッコイイね
久しぶりに素晴らしい仕事を見た
いぬ…最後の時か?
だとしても彼のその精神はサイトが継いでくれるだろう!
それは彼の強い意志となり誇りとなり未来になるだろうぜッ!
とか勝手に思いつつGJ!
遅くなったけど、犬の人GJでした!
ゼロいぬっ!感動せずにはいられないッ!!。・゜・(/Д`)・゜・。
そろそろ仮面に登場して欲しいです
寄生虫バオーがどうなるかが一番気になるのは多分俺だけ
……いや、だってもし彼?が生きのこっちゃったらハルケギニア滅亡ENDだし
誰もいない……小ネタを投下するなら今の内……
タバサと使い魔と吸血鬼
五歳ほどの少女が、息を切らして森の中を駆けていた。
「はぁ、はぁ、はぁ」
荒い息が、とっぷりと日の暮れた森の中に響く。
少女は後悔していた。母の忠告が甦る。
「恐ろしいのはメイジだけじゃない。そのメイジに使える使い魔も同じだ」
そう言っていた母が、大丈夫だよ、と笑っていた父が、
彼女の目の前でメイジに殺された時のことを思い出した。
風の刃で切り裂かれた母と、巨大な火球で焼き尽くされた父。
ぶるりと身を震わせながら、少女は森の中を走り続けた。
……二ヶ月前から、この近くで少女は狩りをしていた。
獲物を喰らわねば、いずれは死ぬ。『人』と同じだ。
こんな姿でいれば、相手は油断し、容易く狩ることができる。
そう思っていたのに、今、彼女は獲物だったはずの存在から追われている。
『ガガガッ』
「ひぃっ!」
彼女の真後ろに、氷の矢が突き刺さる。
それを放った存在は、確実に彼女を追い詰めていく。
美しい金髪を振り乱し、愛らしい顔をぐしゃぐしゃに歪ませ、
こけつまろびつしながら少女は森の中を逃げ続けていた。
「死にたくない、死にたくないよぉ……!」
自分は悪くないのに、どうしてこんな目に遭うのか。
後ろから自らを切り裂こうと襲ってくる存在は、答えては、くれない。
「助けて! 助けてぇ!」
彼女がそう叫んだ瞬間。木陰から、ぬっと手が伸び、腕を掴んだ。
「いやあああああああっ!」
絹を裂くような悲鳴を上げると、少女は気を失った。
腕を掴んだ男は、そのままそっと彼女を抱き上げた。
涙や泥で汚れた顔を、布で拭って綺麗にする。
「……さて、お前の主はどこだ」
梢に止まった追跡者を、睨み付けた。
鋭い眼差しの猛禽類。体の大きさ的には、ハヤブサに分類されるだろう。
追跡者――こいつの名はペット・ショップ――は、
目の前に突如として現れた男を前に逡巡していた。
今仕えている主からの命は『標的の殺害。但し他者へ危害を加えてはならない』だ。
この男が、彼女を抱えている限りその命の達成は不可能である。
こんなことなら、久しぶりの闘争と殺戮に心躍らせ、
じわじわと相手を追い詰めるような狩りをするのではなかった。
自らの行いを反省しながら、彼は一際高い声で鳴いた。
主を呼び、その指示を求めるためである。
<br>
「あなたは、一体何?」
年若い少女が青いウロコをした竜から降りると、杖を構えた。
この年にして、すでに数え切れぬ修羅場を潜ってきた少女は察する。
目の前の男は、只者ではない、と。
「……人に名前を尋ねる時は、自分から名乗るのが礼儀ではないかね」
闇夜に溶け込むような黒髪をした男は、少女へ告げる。
「……タバサ。ガリア王国北花壇騎士団七号、タバサ」
この名が、裏ではわりと知られた通り名であるという自覚はある。
だから、あえて北花壇騎士、と名乗った。
「成程。凄腕の騎士がいると以前一緒に仕事をした傭兵仲間に聞いたよ。
そいつも、北花壇騎士でね。セレスタンというのだが知らないか?」
「質問に答えて。あなたは、一体何。何故、その子を助ける」
「森の中で、子どもが助けてと叫んでいたら助けるものだろう」
嘯く彼に、タバサは告げる。
「その子は吸血鬼。この先にある村を襲っていた。
私は村人の依頼で、その子を倒さなければならない。邪魔をしないで」
彼はしばらく押し黙っていたが、やがて笑みを見せながら答えた。
「だが断る、と言ったら?」
その口元には、鋭い牙が覗いていた。
「……ッ! あなたも、吸血鬼!」
タバサは咄嗟にルーンを口ずさむ。空中の水分が凍結し、氷の矢となり、彼を襲う。
それに呼応するように、ペットショップも氷柱を吐き出した。
一瞬の土煙。晴れたそこに、彼は見当たらない。
「そんなに怖がることはないだろう。……少し、話をさせてもらいたい」
タバサは慌てて後ろを振り向いた。気がつけば、そこに彼が居た。
いつの間に、と思う。声も出なかった。
魔法を唱えても、この位置であれば彼に攻撃される方が先だろう。
ペットショップもそう思うらしく、ただ彼を睨むだけだ。
「話とは、何」
どうにか隙を作ろうと、タバサは彼に問いかけた。
「……この子を、私に預からせて欲しい」
「何のために」
男は、ふっと笑うと腕の中の少女の頭を撫でた。
金色の髪を白い指先で優しく撫で梳く。
パパ、と小さく呟いて、少女が頬を彼の胸にすり寄せた。
「実は、先程の君たちの会話を、聞かせてもらっていた。
この子は、エルザは親を亡くしているのだろう?」
タバサがこくりと頷いたのを見ると、彼は話を続けた。
「ずっと以前。私がまだ吸血鬼になる前の話だ。
――驚いたみたいだが、そこは流してくれ――
――私の居た場所では、人間が吸血鬼になることもあったんだ――
私は、知り合いに託されて、一人の女の子を育てていた。
彼女は吸血鬼に両親を殺されてね、吸血鬼をとても恨んでいたよ。
自分の親を殺した、自分と異なる存在を恨む……。
不思議なほどにエルザと彼女が、重なってみえた」
彼は遠い昔に学んだ知識を思い出す。
エルザの綴りは彼の知る限りでは『Elsa』。
そしてそれは、彼がかつて育てた娘の名前の略称の一つであった。
「そう思えてしまったら、どうしても見過ごせなくなった。
彼女に、決して罪の無い人間は襲わせない、と誓おう」
だから、と彼は告げた。
「どうか、私達を見逃してくれ」
男が頭を下げる。タバサはじっと彼を見つめた。
そして、自身の選択を知らせるため口を開いた。
<br>
「お姉さま! ダメじゃないの!」
背に主人を乗せた青い竜――シルフィード――はぷりぷりとして首を振った。
「もう! あの吸血鬼が本当にいい人かもわからないのに!
あいつの言うことを信じてしまうなんて、呆れるのね! きゅいきゅい!」
結局。タバサは彼の言うことを信じて、彼に彼女を託したのだ。
吸血鬼に関しては、犠牲となってしまった占い師の親子が、
その正体だった、と村長を始めとする村人には説明した。
「おじいちゃん、今までありがとう」
エルザは、ぎゅっと村長の首に抱きついた。
彼女は厚手のローブをまとっていた。日に当たらないためだ。
「彼女のことは、私が面倒を見ます」
エルザの親戚の振りをした男は、エルザを抱えると去っていった。
「彼の……『ストレイツォ』の目は嘘をついていなかった。信用できる」
本を読みながら、タバサはこともなげに答える。
彼らは、これからアルビオンを目指すのだという。
あそこでは戦争をやっている。人の血に不自由はしないだろう。
吸血鬼の力があれば、そうそう死ぬこともあるまい。
「きゅいきゅい。本当、お姉さまったらお人よし!」
未だに腹を立てるシルフィードへ向けて、ペットショップが鳴く。
「うう、わ、分かってるのね。お姉さまがお人よしだったから、
あんなことになってたシルフィも助かったのね。
まったく、ペットショップのお兄さまったら手厳しいですわ、きゅいきゅい」
風韻竜であるシルフィードは、伝説旧の奇特さ故に竜と認識されず、
暴走したガーゴイルとして扱われ、倒されそうになったのだ。
それを、タバサがかばい、今ではすっかりお姉さまと慕うようになったのである。
なお、ペットショップよりタバサとの付き合いは長いが、彼の眼光に負け、
以降、彼のことはお兄さま、と呼んでいる。
「……ふーんだ。シルフィ、本当のことを知ってるからいいんですわ」
すねたように、シルフィードが呟いた。
「あの人、人間の目から見ればとっても整った顔立ちをしてらっしゃいましたよね」
ぴくり、とタバサが身を震わせる。
「お姉さまったら、『面食い』でいらしたのねー、きゅいきゅい」
「違う」
タバサは否定する。
「違わないのね〜お姉さまは面食い〜る〜る〜るる〜」
からかうように、シルフィードが歌う。
その頭を、タバサは杖で小突いた。
「あ、痛い、本当のこと言われたから怒ってるのね!」
「違う」
「違わない」
「違う」
言い争いを始めた二人を、ペットショップは眺め、退屈そうに欠伸をした。
まあ、こんな穏やかなのも、悪くは無いな、と思いながら。
一人と一頭と一羽の賑やかな空の旅だった。
以上、投下したッ!
スト様@ハルケギニアを書きたかった今は反省している
いやーネットでゼロ魔キャラの名前あれこれ検索してたらね、
エルザはELSAでエリザベスの略称だってあってね
あ、これはネタに使えるなーと思って入れてみた
本当は今妄想してる長編の外伝になる予定でしたが、
本編がいつまで経っても書き出せそうにないのでこれだけ書いてみました
ペットショップとタバサの組み合わせは大好物です
前に書いた小ネタでもこっそり潜ませました
乙です
あ〜ん、スト様が生き返った
もしスト様じゃなくてDIO様だったら・・・
このストレイツォ、躾にも容赦せん!(せんせんせんせんせんせんせん容赦せん!)
ですね
乙
ストレイツォってのも珍しいな
投下がたくさんで嬉しい乙
GJ
GJ
俺は本編期待してるぜ
そこに不意打ちで投下宣言をしてみるッ!
20分頃から投下するぜーー
∧_∧
続けてキタキタキタ━━( ゚∀゚ )っ━━━━━ !!!!!
(つ /
| (⌒)
し⌒
| | |
__________
/ \ 旦 ___\
.<\※ \____|\____ヽ
ヽ\ ※ ※ ※| |====B=|
\`ー──-.|\|___l__◎..|ヽ
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日蝕まで残り三日の昼下がり。
シエスタやマルトー、そしてクラスメイト達に別れの挨拶を告げて回ったジョセフは、授業を自主休講したギーシュやキュルケ達と共にウェールズの居室でチェスやティータイムを楽しみ、世間話に興じていた。
内容としてはさして意味のあるものではない。ジョセフがルイズに召喚されてからの様々な思い出話や、ジョセフの来た世界、地球の話やハルケギニアの話。
ギーシュやキュルケはそんな他愛ない話を絶え間なく続けることで、不意に訪れるしんみりした沈黙を出来る限り排除しようとしていた。
「いやそれにしてもジョジョ、聞けば聞くほど君の話は荒唐無稽だな。いくら大国とは言え、一つの国に何億人もいたり、しかもそれだけの国を統べる王を入れ札で決めるだなんて考えられない。
そんなにころころ王が代わっていたら、代わる度に大事になるんじゃあないか?」
「うむ、こっちほど王……というか、大統領や首相の権力ってのは大きくないがそれなりにデカいし変わるとなりゃ大事だからな。上の頭がすげ変わる間も国の運営が成り立つようにしとるんじゃ。わしの住んどる国なんか四年ごとにやる入れ札はマジお祭り騒ぎだ」
「へええ! 聞けば聞くほどとんでもない世界だなあ、君の世界は!」
「こっちじゃあまーだやらん方がいいな。やるとしたら、平民の半分以上が読み書きできるくらいになって、選ぶ人間の良し悪しを判断できるよーになったらやっていいかもしらんが……まぁ、無理にやらんでもいいんじゃね?
六千年も同じシステムが続いてるならそれでもいいと思うしな」
好奇心と口の回るギーシュが聞き役になり、ジョセフにインタビューしている今の話題は「それぞれの世界の政治形態について」だった。
ジョセフはこれと言った政治思想がある訳でもない。強いて言えば資本主義支持者で、世界有数の大富豪なスピードワゴン財団くらい稼がなくていいから、食うに困らない生活が維持できればそれでいいと思っているくらいである。
具体的に言えば屋敷の使用人達に払う給料が滞らず、夏や冬のバカンスに専用ジェットで向かう家族旅行や社用旅行で金に糸目をつけず遊び呆けたり……そんなささやかなものでいいと考えていた。
だから魔法を使える貴族が王権の元に政治を司るハルケギニアの治世自体に文句をつける気はない。
「それで上手く回ってるなら別に口出す必要もない。わしゃアカでもなんでもないし」という理由もあるし、この世界に永住する訳でもない通りすがりの異邦人でしかないのも、大きなウェイトを占めている。
ましてや三日後には元の世界に帰るのだから、自分から進んでやりたくもない瑣事に関わる必要などこれっぽっちもないのだった。
そんなことをしている暇があるなら、キュルケにケーキをあーんしてもらったり、タバサにチェスでコテンパンにされている方がよっぽど有意義というものである。
さて、タバサに三戦三惨敗という華々しい戦歴を打ち立て、実力の差を十分に自覚したところでジョセフは椅子から立ち上がりつつ、大きく伸びをした。
「んん……ちっと外の空気吸ってくる」
「行ってらっしゃい」
気ままに読書やお茶の時間を楽しんでいる友人達にひらりと手を振り部屋を出たジョセフは、小さく欠伸などしつつ風の塔から降りた。
これから日蝕までの間、別れの挨拶を告げる友人達のリストを頭に浮かべて芝生を歩き出したジョセフの名を大声で呼ぶ者がいた。
「おぉい、ミスタ・ジョースター! 出来た! 出来たぞ! 調合が出来た!」
茶色の液体が詰まったワインボトルを手に持ち、息せき切って走ってくるのはコルベールだった。
「マジか! もう出来たのか!」
「もうも何も、昼前には錬金出来たんだが学院中を探し回ってもミスタ・ジョースターが見つからなかったのだ。一体どこに行っていたんだね?」
不思議そうに尋ねるコルベールに、ジョセフはニカリと笑みを浮かべた。
「すまんな、ちょっと外に出とった。どれ、ちょっと確認させてくれ」
ワインボトルの栓を開け、飲み口から漂ってくる臭いを手で鼻元に仰ぎ寄せて嗅ぐ。
ちっともささやかじゃねえよw
庶民なめんな富豪 支援
ゼロ戦の燃料タンクに残っていたそれと同じ刺激臭に、おお、と感嘆の声を上げた。
「やるなぁセンセ! まさかこんなに早く出来るとは正直思っとらんかった!」
「なに、原料と完成品の二つが揃っていたのでね。これが『燃える水』を手に入れてなかったらもう少し時間がかかったかもしれないが、これであの『ゼロ戦』は飛ぶという事だ!」
「うむ! で、ワイン樽五本分のガソリンは何日くらいで錬金出来る?」
「そうだな……私の精神力なら、他に魔法を使わなければ二日以内に五本は可能だ」
「グッド! じゃあ、樽一本くらい余分に作れるか? せっかくだから試験飛行しよう。わしが乗って帰ったらもう二度と乗れんからな、コルベールセンセには一度経験してもらいたい。『技術で作り出したモノで空を飛ぶ』という経験をな!」
ジョセフの提案に、コルベールの顔には見る見るうちに『誕生日にお前の欲しがっていた玩具を買ってあげる』と親に言われた子供のような笑みが広がった。
「そうだ忘れていた、ミスタ・ジョースターが地球に帰ってしまえば『ゼロ戦』に乗れる機会はなくなってしまうんだ! ならば明日の朝までに一本用意しておこう!」
今すぐにでも研究室に戻って錬金を再開すべく走り出そうとしたコルベールの手をつかんで留めた。
「待て待てセンセ、せっかくガソリンの試作品があるんだから作動実験もしてみよう。作っては見たが動きませんでしたじゃどーにもならんだろ」
「それもそうだな! では早速実験してみよう!」
二人でアウストリの広場に向かい、燃料コックにガソリンを注ぎ込む。
「よしよし。さてプロペラを動かさにゃならんなー……」
そう呟くと、ちら、と横で目を輝かせているコルベールを見た。
「まァいっか」
構わずに左手からハーミットパープルを発現させる。杖も詠唱もなく突然現れた紫の茨は、メイジであるコルベールの目には明らかな実像となって映っていた。
「ミ、ミスタ・ジョースター!? それは一体……」
当然、未知の現象を突然目撃することになったコルベールは驚きの声を上げた。
「どうせ三日後に帰るからコレもバラすことにしよう。これは『スタンド』、わしの住む世界では稀にこの能力を持つ人間や動物が現れることがある。これがわしのスタンド、ハーミットパープル。
わしのいた世界ではスタンドはスタンド使いにしか見えんかったが、こっちの世界ではメイジには例外なく見えるらしい。多分魔力とかそんなのが関係しとるんじゃろうが、まぁ今はそんなこたァどーだっていい」
眼鏡の奥の目を大きく見開いたままのコルベールからゼロ戦に視線を移すと、静電気が走るような破裂音を放ちながら、ハーミットパープルを機体に入り込ませていく。
「何をしてるんだミスタ・ジョースター! そんなことをしたら、『ゼロ戦』が……!?」
壊れる、と続くはずだった言葉は驚きと共に飲み込まれてしまった。茨が入り込んだように見えた箇所は穴の一つも開いておらず、まるで機体から茨の彫刻が生えているようにも見えた。
「な……なんだねこれは。『スタンド』……とか言ったか? 先住魔法……ではないのか」
持ち前の強い好奇心を発揮し、恐る恐るながらもまじまじとハーミットパープルの観察を開始するコルベール。
「これはわし自身の生命エネルギーが作り出す像でな。基本的に人それぞれの性格やらなんやらで持つ能力や姿形が変わる。つまり同じスタンドは存在しないと言ってもいいだろう。わしのハーミットパープルの能力は念写に念聴、そして機械操作。
プロペラを動かす為には中のクランクを動かさなきゃならんのだが、それを動かす道具がないんでハーミットパープルで代用する」
「あ、ああ」
いきなり理解を越えた単語が連ねられるが、それでもコルベールはおおよその意味は掴んでいた。
「さあセンセ、ちとコクピットは狭いんでな。上からわしが操作してるトコを見てくれ」
コクピットの風防から中に入ったジョセフの頭上に、レビテーションの魔法をかけたコルベールが浮き上がった。
左手が欠損している為にパイロットにはなれなかったものの、セスナを始めとしたプロペラ機の操縦は普通に出来るジョセフである。それに加えてゼロ戦を兵器と認識したガンダールヴの能力が、初めて乗るゼロ戦の起動手順を逐一頭の中に浮かばせる。
一つ一つの手順の意味をコルベールに教え、コルベールはジョセフから聞いた言葉を興味深げに聞く。
ゆるゆると回っていたプロペラは始動したエンジンの力を借りて大きく回り、スクウェアメイジが起こす風にも匹敵するだけの風力を発生させた。
大日本帝国の名機であるゼロ戦は現役である事を確認したのを満足げに見届けたジョセフは、しばらくエンジンを動かした後で点火スイッチを切ると、もう今にも歓喜を爆発させそうなコルベールに向かって満面の笑みとウィンクと、当然親指も立てて見せた。
コルベールも、立てられた親指が何を示すか一瞬考えた後、ちょっとぎこちない手付きで親指を立て返し、嬉しそうな笑顔を返した。
「やったぞセンセ、バッチリじゃッ! お次は飛行実験だ、ちぃとギュウギュウ詰めだがセンセに空の旅をプレゼントしようッ!」
「おおおお! すごい、すごいぞミスタ・ジョースター! この炎蛇のコルベール、今まで生きてきた人生の中でこんなに胸を高鳴らせたことは無いッ! 今のこの感情の昂ぶりなら、一晩で樽五本分のガソリンすら錬金出来てしまいそうだッ!」
「まあまあセンセ、それで精神力を使い切ってはつまらんだろ。今夜は程々にガソリンを錬金して、ベストコンディションで飛行実験に挑もうじゃないか」
「ああ、そうだな! では私は早速錬金に取り掛かる、それではまた明日会おう!」
「おー、じゃあ朝メシ食った後にここ集合なー」
居ても立ってもいられないとばかりに走り出したコルベールの背に手をひらひらと振ってから、やっとジョセフは茜色に変わり行く空に気付いた。
「いかんいかん、もうこんな時間か。あいつらも飛行実験誘ってみようか」
今日の晩メシなんじゃろなァ〜、と即席の節をつけながら友人達を待たせている部屋へと戻っていった。
そして次の日の朝。
ゼロ戦が鎮座するアウストリの広場には、ルイズとウェールズを除く宝探しメンバー、そしてコルベールが集まっていた。
魔法で浮かせた樽からガソリンをタンクに移し変え終わったのを確認してから、ジョセフはもったいぶった動作で友人達に向き直り、帽子を取って恭しく一礼した。
「やあやあ、お集まりの善男善女の皆様方。本日はお日柄も良く、これよりゼロ戦の飛行実験を粛々と執り行いたいと存じます」
雲一つ無い、という訳でもないが特に大きな雲があるわけでもない。十分に晴れた青い空がトリステインの上にあった。
「確かに今日はいい天気だね。で、このぜろせん、とやらは本当に飛ぶのかね? 僕は今でもコレが飛ぶだなんて少しも信じられないんだが。なあヴェルダンデ」
「タルブの村のおじいさんおばあさんは、何人かこのぜろせん、が飛んでいるところを見たって言ってましたけど……」
この期に及んで何回言ったか判らない疑問を口にするギーシュに、シエスタがおずおずと意見を述べた。
「まあまあ、一見は百聞に如かずって言うじゃろ。なんなら賭けてもいいぞ、また金貨二百枚と一年執事の権利を賭けてな」
ニシシ、と笑うジョセフに、ギーシュの顔は渋すぎる茶を無理矢理飲まさされたみたいになった。
「君はもう故郷に帰るんだろ? なんてことだ、賭け金も渡せないうちに帰られるだなんてグラモン家の四男としてこれほど屈辱的なことはないというのに」
「そうそう、忘れてたけど私も二百エキュー貰えるんだったわね。なんならダーリンの分も合わせて私が預かっておこうかしら」
思わず口を滑らせた事に気づいた時にはもう遅い。猫の様なニンマリとした笑みを浮かべるキュルケに、ギーシュはしかめていた顔を更に大きくしかめた。
「……ジョジョ本人に手ずから渡すことにするよ、僕は」
「あらそれは残念」
そもそもゼロ戦が飛ぶということ自体を信じていないギーシュとキュルケは、ゼロ戦にかかりきりのジョセフとコルベールをさておいてそんな軽口で盛り上がっていた。
「さて、んじゃいっちょ行くとするか。センセ、何とか詰めてくれ」
腰に下げていたデルフリンガーを足元の隙間に入れ、コルベールが乗れるスペースを何とか確保する。
そもそもゼロ戦は一人乗りである。座席背部にあった通信機を取り除いたことで二人が乗れないことはない、くらいの広さは辛うじて確保できていたが、そもそも身長195cm、体重97kgもあるジョセフが乗ればそれだけでコクピットのスペースを大きく取ってしまっていた。
コルベールも細いとは言え立派な成人男性の体格を持っている。乗ることが不可能ではないのだが、ぎゅうぎゅう詰めになるのは致し方のないことだった。
「ああ、いや確かに狭いが何とか……というか、ミスタ・ジョースターがこんなに大柄なのが問題ではないのかね?」
「そもそもコレ一人乗りだもんよ。メッサーシュミットなら三人乗れるんじゃが贅沢は言っとれんだろ」
コクピットに乗り込むだけでいい年したジジイとハゲ上がった大人が言い争いしながらも、何とか乗り込むことは出来た。
「よし、んじゃ行くとするか」
クラッチにハーミットパープルを這わせてエンジンを始動させると、プロペラが音を立てて回り始める。計器が示す数値も異常が無いことを教えてくれる。
ブレーキを放すと、ゼロ戦がゆっくりと動き出す。おおよそ目星をつけていた離陸点に辿り着くが、ガンダールヴのルーンとジョセフ本人の経験がゼロ戦が飛び立てる滑空距離に少々足らない、と見えてしまった。
アウストリの広場が狭いわけではないが、それでも飛行機一機が飛び立つ為に必要な距離は並大抵のものではないと言う事だった。
ジョセフは閉じた片目の上に手を翳し、学院の敷地を取り囲む高い塀に舌打ちした。あれがもう少し低ければこの距離でも十分離陸は出来ただろう。
「ううむ。ちと距離が足らんな……あそこの高い壁を吹き飛ばせば何とか行けるかもしらんが」
落ちませんように 支援
しょっぱなから物騒な提案に思考が進んだジョセフをたしなめたのは、足元に転がっているデルフリンガーだった。
「相棒、そんな短絡的な方法取んなくても外にいる貴族の娘っ子達に風を起こしてもらえればいけるぜ」
「ああ、それなら行けるか」
「あのちまいのは風のトライアングルだろ? なら大丈夫だ」
風防から腕を出してハーミットパープルをタバサに伸ばす。骨伝導で「広場のあっこらへんに立って思い切り向かい風を吹かせてくれ」と頼むと、タバサはこくりと頷いて指定された場所まで歩いていった。
さして時間を掛からず轟風が巻き起こったのを見届けると、シエスタから受け取ったゴーグルを身に付ける。
「おっしゃ、行くぞセンセ」
「ああ……よろしく頼む!」
踏み込んでいたブレーキペダルから足を離し、スロットルレバーを開く。
加速するエネルギーを解放されたゼロ戦は勢い良く加速を開始する。
操縦桿を軽く前方に押し、尾輪を地面から離れさせ滑走に入る。
段々と壁が近づいてくる中、十分にスピードが乗ったのを確認すると操縦桿を引き、タバサの起こした風に機体を乗せた。
ゼロ戦が浮き上がり、大きなGがコクピット内の二人に圧し掛かる。
そして脚を収納したゼロ戦は魔法学院の壁を飛び越え、更に上昇を続けていく。
「おおお、飛んでいる! 飛んでいるぞ! こんなに早く!」
風防の外で猛スピードで流れていく景色を見、興奮を隠さず叫んだ。
「おい俺にも見せろよ相棒!」
鞘口をカタカタ鳴らして催促するデルフリンガーをハーミットパープルで引き上げれば、デルフリンガーもまた金具をけたたましく鳴らして騒ぎ出した。
「うわー! すげえ! すげえ! なんだこれ、フネとか竜とか比べ物になんねーぞ!」
「そりゃそうよ、こいつぁ最高速度が500km以上出る。ハルケギニアでそんだけの速度を出せる魔法や生物なんてそうはないじゃろ?」
狭いコクピットの中、自慢げに言うジョセフの言葉も、コルベールとデルフリンガーには届いていなかった。
矢のように過ぎる雲の流れと外の景色に釘付けになっていたからだ。
これから同乗者の気が済むまで遊覧飛行したり、雲を突き抜けた上空まで一気に飛んでやりたくもあったが、如何せん肝心要の燃料がタンクの20%しかない。
安全を考慮し、比較的低空飛行で、且つ学院の周辺を飛び回るだけしか出来なかったが、それでもコルベールやデルフリンガーには十分過ぎる驚きと興奮を与えていた。
それは無論、地上で見守っていたギーシュ達や、突然聞こえてきた爆音に何事かと教室の窓から顔を出した学院の生徒や教師達、地面から見上げる使用人達、そして塔の窓から一部始終を見守っていたウェールズも例外ではない。
「ほらほら見てくださいミス・ツェルプストー、ミスタ・グラモン! 飛んでます、竜の羽衣が飛んでますよ!」
お伽噺だった『竜の羽衣』が本当に空を飛んでいるのを見ることが出来たシエスタのはしゃぎ様にも、キュルケもギーシュも構うことが出来なかった。
「……まるで夢でも見ているようだ。まさか、あんなカヌーみたいなオモチャが、あんなに早く飛ぶだなんて……」
「……本当に。何から何まで私達の常識ってものが通用しない世界なのね、ダーリンの世界って」
学院にいる大勢の人間の中で、事情が飲み込めている者はほとんどいない。それでも、ハルケギニアの空を翔けるゼロ戦に視線を奪われていた。
それから二十分後、再びアウストリの広場にゼロ戦が着陸し、そこからジョセフとコルベールが降りてきたのが確認された後、物見高い生徒達が教師の制止を振り切って教室の窓からフライで広場に殺到してくる。
ルイズに召喚されてからこの方、学院の注目を一手に集めてきたジョセフである。
うおっ こんな時間に
支援
避難所にきてるよ。
代理行こうか?
代理のヒトの支援
193 :
隠者代理:2008/10/27(月) 12:46:04 ID:5UnGCPfz
怒涛のように押しかけてくる野次馬達を丁重にあしらい、無遠慮にゼロ戦を触ろうとする不貞な連中にはトライアングルの三人と使い魔が睨みを効かせていた。
今日も今日とて注目を一手に集めるジョセフを羨ましげに見ていたギーシュは、自分を慰めるように鼻先を摺り寄せてくるヴェルダンデにしかと抱き付いていた。
「ああヴェルダンデ、僕の愛くるしいヴェルダンデ、傷心の僕を癒してくれるのは君だけだ」
もぐもぐ、と喉を鳴らして目を細めるヴェルダンデは、しょうがないなあと言いたげなつぶらな瞳で主人を見つめていたのだった。
ちょうどその頃、トリステイン王城のルイズは客間のベッドで頭から毛布を被っていた。
眠っている訳ではない。目ならとっくに覚めている。
しかし、ベッドから起き上がる気分にはなれなかったのだ。
使い魔とも別れて一人、今の自分が唯一頼れる友人であるアンリエッタの所へ転がり込んだはいいものの、今になってその行動が間違いだったことに気付いてしまった。
スタンド使いで様々な悪知恵が働くジョセフがいなければ、自分はただのゼロのルイズでしかない。何も出来ない、魔法も使えないゼロのルイズ。
しかも使い魔が帰還するのを素直に喜んでやれる訳でもなく、さよならも言わずに帰れと置手紙を残しただけ。使い魔を手放す辛さに耐えかねたとは言え、そんな無責任な別れは許されるはずが無い。
自分の都合で呼び出した使い魔を帰すのに、呼び出した張本人はこうして迎えの来ないベッドの上で毛布を被って時が過ぎるのをただ待っているだけだなんて、果たして貴族の振る舞いとして恥ずかしくないのか。答えは既に出ている。
サイドテーブルに置いている帽子に視線が行き、そしてまたすぐ離された。
(……私、バカだわ。こんなことしてたってしょうがないじゃない……)
頭では判っている。ジョセフが帰るその時まで側にいて、謝るところは謝って、最後にさようならと直接言って、きちんと別れを告げるべきなのだと。
代理のヒトもちょっと分量が多そうだ支援
195 :
隠者代理:2008/10/27(月) 12:47:19 ID:5UnGCPfz
まだ日蝕まで二日ある。今から馬を飛ばして帰れば、十分に間に合う。学院に帰って、何もなかったような顔しててもジョセフはちょっとだけ苦笑して、あの大きな手で頭を撫でてくれるだろう。
正直になって、別れたくない帰したくないって駄々をこねられるだけこねて、思い切り泣いて叫んで――自分の中に溜まっているわだかまりを全部吐き出してぶつければいい。
本当はそうしなければならないのだ。
そんな事をしても、ジョセフの意思が変わらないのは判り切っている。
ただ、伝えなければならない。
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールにとって、ジョセフ・ジョースターがとても大切な存在だって言う事を。
人の言う事を先読みできる有り得ない洞察力と推理力を持つジョセフだって、あんな走り書きの文章一つで自分の中で渦巻いている色んな気持ちを察することなんて出来はしない。
……いや、ハーミットパープルを使えば出来るかもしれないが、多分そんなことはしない。
だからちゃんと自分の口で、自分の気持ちを伝えなければならないのに。
今から部屋を飛び出して、馬に乗って帰るだけでいいのに。
しかし、ルイズはベッドから起き上がる事が出来なかった。
由緒正しいトリステイン名門のヴァリエール公爵家の三女たる者が、よりにもよって使い魔から逃げ出して毛布を被っているだけだなんて。
どんな顔をして帰ればいいのか、果たしてジョセフが本当に自分の思うような行動を取ってくれるのか。もし取ってくれなかったらどうしよう――。
そんな思いばかりが渦巻いて、立ち上がることが出来なかった。
誰にも頼ることが出来ず、誰にも悩みを打ち明けられず、一人きりになった今、16歳の少女に似つかわしい臆病さが前面に押し出されていた。
頭では取るべき行動が判っていても、心が動き出す決意を立てられない。
結局ルイズは、毛布で全身を包みきゅっと目を閉じて、眠気が来るのをひたすら待ってしまった。
196 :
隠者代理:2008/10/27(月) 12:47:57 ID:5UnGCPfz
日蝕の前日。
ゲルマニア皇帝アルブレヒト三世と、トリステイン王女アンリエッタの結婚式を三日後に控えたその日の朝。
トリステイン王宮は、式が行われるアルビオン首府のヴィンドボナへのアンリエッタの出発の準備を控え、上から下まで慌しく駆け巡っていた。
トリスタニアからヴィンドボナまでは、馬車で行けば半日弱しか掛からない。
しかし政略結婚と言えども、一国の皇帝と王女の婚礼の儀は建前上目出度い代物であり、祭儀として華々しく、且つ恭しく執り行われるべき代物である。
トリステイン首都のトリスタニアからヴィンドボナまでの旅路そのものが盛大なセレモニーであり、足早に急ぐような野暮な真似が出来るわけも無い。
半日弱の旅路をたっぷり時間をかけ、式前日の夕方にやっと到着することになっていた。
千の御伴を連れて立ち並ぶ行列の主賓たるアンリエッタ自身は、まるで病に冒されたような白い面持ちのまま、今朝本縫いが終わったばかりのウェディングドレスに身を包んでいた。
上質の絹で織られた美しいドレスを着ているというのに、ドレスの色を黒く染めれば葬儀の場に立っていてもなんら違和感を感じさせない佇まいであった。
出発の時間まで四半刻となった頃、王宮に突然の報がもたらされた。
国賓歓迎の為、ラ・ロシェール上空に停泊していた艦隊全滅の知らせ。
それと時を同じくし、神聖アルビオン共和国からの宣戦布告文が急使に拠り届けられた。
ラ・ロシェールに配備されていたトリステイン艦隊が突如不可侵条約を無視して親善艦隊に理由なく攻撃を開始し、一隻の戦艦が撃沈された為、アルビオン共和国政府は『自衛の為』『やむなく』トリステイン王国政府に対して宣戦を布告する旨が綴られていた。
トリステイン王宮はこの知らせに騒然となり、急遽将軍や大臣達を招集した。
しかし名誉ある貴族が雁首揃えてやることと言えば、豪奢な大会議室でただ言葉を踊らせるばかり。
やれこれは互いの誤解から発生した不幸な行き違いだ、アルビオン政府に対し真摯な対応をすべきだ。いや今すぐゲルマニアに急使を飛ばし、同盟に従い軍を差し向けるべきだ。
誰も椅子から腰を上げようともせず、下の者を動かそうともせず、ただひたすらに終着点が考えられていない互いの意見ばかりが飛び交い、なんら実のある結果に繋がる気配は見えなかった。
197 :
隠者代理:2008/10/27(月) 12:48:26 ID:5UnGCPfz
会議室の上座には、ウェディングドレスを纏ったアンリエッタが座っていた。きらめくような白絹に身を包んだ姿は衆目を引き付ける美しさを醸し出しているが、居並ぶ貴族達は誰一人としてその清楚な美しさに目を留めようとしない。まして意見を求めようともしない。
国を揺るがす一大事の中でも、うら若き王女はただ座っているだけ。
ただ顔を俯かせ、膝の上に置いて握り締めた手をじっと見つめているだけだった。
「――これは偶然の事故――」
「――今なら話し合えば誤解が解けるかも――」
「――この双方の誤解が生んだ遺憾なる交戦が全面戦争へと発展しないうちに――」
会議室での言葉は何一つアンリエッタに届かず、ただ頭の上を通り抜けていくだけ。
誰も王女に言葉を届けようともしないし、届ける意味を見出してもいなかった。
「急報です! アルビオン艦隊は降下して占領行動に移りました!」
伝書フクロウがもたらした書簡を手にした伝令が、息せき切って会議室に飛び込んできた。
「場所は何処だ!」
「ラ・ロシェールの近郊! タルブの草原のようです!」
伝令の言葉に、会議室はより重い空気を漂わせる。
自分達が考えている以上に、事態は重大であることに気付き始めざるを得なくなっていた。
昼を過ぎ、王宮の会議室には次々と報告が飛び込んでくる。
それらはどれも例外なく、頭を抱え耳を塞ぎたくなるような悪い知らせばかりであった。
タルブの領主が討ち死にし、偵察の竜騎士隊は一騎たりとも帰還せず、アルビオンからの返答もない。
敵意を持って杖を向けている敵に対し、未だに自分達がどうするのかも決めあぐねて会議室から出ようともしない貴族達。
それをただ黙って見ているアンリエッタの心の中では、これまで懸命に押し殺してきた感情がゆっくりと、しかし着実に膨れ上がっていたのだった。
(……これが。伝統あるトリステイン王室)
前王は子に恵まれなかった。生まれた子供はマリアンヌとの間に生まれた娘、アンリエッタ一人。側室も設けなかった為、トリステインの王位継承権を持つ者は大后マリアンヌと王女アンリエッタの二人だけ。
198 :
隠者代理:2008/10/27(月) 12:48:59 ID:5UnGCPfz
王が崩御した後、マリアンヌは王位継承権を放棄し、第一王位継承権を持つようになったアンリエッタは当時7歳。まだドットメイジですらない少女を王座に座らせる訳にも行かず、それから十年間トリステインの玉座は主を失ったまま現在に至っている。
しかし17歳となり、水のトライアングルメイジとなった彼女は、ハルケギニア統一の野望を持つアルビオンに対抗する同盟を結ぶ為の貢物として、四十過ぎの男との政略結婚を組まれていた。そこに彼女の意思は介在していない。アンリエッタの恋心を斟酌されるはずもない。
トリステイン王宮に仕えている貴族達は、王家に傅く素振りをしているだけ。国家存亡の危機に瀕している今、王女に意見を求めることも無く、ただ自分達だけで言葉を踊らせている。
自分に求められている役割は国を統治する王女ではなく、王宮を飾る美しい花。
花瓶に生けられた花に、王の言葉を求める者は居ない。
(そうね。私はずっと彼らから取り上げられてきたのだわ。トリステインという国を。王女としての誇りを)
今にも滅亡しようとするアルビオンで孤軍奮闘するウェールズから、昔送った恋文を返して貰う。そんな困難な任務を頼める相手が、幼い頃の遊び相手しかいなかった。
数少ない友人であるルイズにすら、最初は悲劇の主人公ぶった言葉でしか頼むことが出来なかった。王女としての立ち居振る舞いすら忘れていたのだ。
それを思い出させてくれたのは、皮肉にも平民であり、使い魔である老人、ジョセフ・ジョースターの言葉。
『王族の誇りを捨て、自らに仕える貴族にへつらった! そんな腐れた魂の何が王女か、何がルイズの友達かッ!』
あの夜、自分は王族としての誇りを取り戻したはずではなかったのか。
愛するウェールズは最後の時までアルビオン王家に連なる者として、誇り高く死のうとした。それを無理矢理トリステインに連れて帰らせたのは自分だ。
アンリエッタ・ド・トリステインは、こんな無様な姿を見せる為に愛する人の意思を捻じ曲げたのか?
今の自分は胸を張って、自分の愛する人達の前に顔を出せるだろうか?
まだまだ続きそうだ支援
200 :
隠者代理:2008/10/27(月) 12:49:31 ID:5UnGCPfz
(……出せないわ。出せるはずが無い)
今の自分は、王女である資格がない。恋人である資格がない。友人である資格がない。
(――どうせ、このまま生き長らえても意にそぐわぬ婚姻をするだけ)
弾む鼓動を抑えるように、ゆっくりと、けれど大きく、息を吸う。
(これから数十年ずっと悔いて生きるのと、今日、死ぬことと。どれだけの違いがあるのかしら)
肺腑に行き渡らせた息を、静かに吐き出していく。
(せめて、トリステインの王女として誇れるように生きてみよう)
俯いていた顔をゆっくりと上げる。意味のない言葉が舞う貴族達を一瞥し、悠然と立ち上がる王女に、貴族達の目が向けられた。
「――トリステインの貴族は誰も彼も臆病者のようですわね」
アンリエッタの唇が紡いだ言葉は、意図せず氷柱のような冷たさと鋭さを纏っていた。
「姫殿下?」
「今正に国土を侵されていると言うのに、下らぬ言葉遊びに興じる様の見物はもう飽きました。それで? 貴方がたは一体どうするというのですか。そのお腰の杖は飾りなのですか? 貴方がたが今唱えなければならないのはつまらぬ御託ではなく、敵を討つ為の呪文のはずです」
呼吸も乱れず言葉に震えもない。言うべき言葉が勝手に流れているような錯覚さえ、アンリエッタは抱いていた。
「しかし、姫殿下……誤解から発生した小競り合いですぞ」
「誤解? 何をどうもって誤解と言うのですか? トリステイン王国の艦隊は祝砲に実弾を込める愚か者が揃っております、とお認めになるつもり? そんな馬鹿な話があってたまりますか。どれだけ下らない道化芝居とて、こんな無様な筋書きは存在しません」
「いや、我々は不可侵条約を結んでおったのです。事故以外に有り得ません」
「事故以外の可能性を貴方が認めたくないだけでしょう。今我々が直面している現実は、アルビオンがトリステインの国土を侵している。条約は紙より容易く破られたのです。どうせ守るつもりなどなかったのでしょう、あの卑怯者達の集まりは」
201 :
隠者代理:2008/10/27(月) 12:50:03 ID:5UnGCPfz
「しかし……」
なおも言い募ろうとする一人の将軍に一瞥をくれる。
ただのお飾りであるはずの王女は、臣下の勝手な発言を視線一つで遮った。
「貴方がたは御存知? アルビオンを簒奪したレコン・キスタは我がトリステイン王国のグリフォン隊隊長を裏切らせ、名誉ある戦いに赴こうとしたウェールズ皇太子を暗殺しようとしたのです」
突如発せられた言葉に、会議室がどよめく。
王宮近衛である魔法衛士隊隊長の裏切りは、緘口令が引かれていた。この緊急時に会議室に召集された貴族の中でも、その事実を知らない者は少なくなかった。
「アルビオン王家は滅亡寸前であったのに、彼らは最期の名誉ある死すら皇太子から奪おうとしたのです。いみじくもトリステインがレコン・キスタに加担したも等しい忌まわしい出来事を知ってなお、まだ愚にも付かぬ議論を続けるつもりですか」
静かに紡がれる王女の言葉に、貴族達は口を噤む。つい先程まで貴族達の声が溢れていた会議室には、王女の声だけが響いていた。
「この様な繰言を並べている間も、国が踏み荒らされ、民の血が流れているのです。王族や貴族は、この様な時こそ杖を掲げ戦いに出向く存在だったのではありませぬか? そんな最低限の義務すら果たせないのなら、杖など折ってしまいなさい!」
声を張り上げてテーブルを叩くアンリエッタ。
誰も言葉を発さず、杖に手を掛ける者もいない。
「黙って聞いていれば、如何に逃げ口上を美しく整えるかという事ばかり。確かにトリステインは小国、頭上から見下ろすアルビオンに反撃したところで討ち死には必至。敗戦後、責任を取らされるのは真っ平御免と言う所でしょうか。
それならば侵略者に尻尾を振って腹でも見せていれば命が永らえる。そうそう、私の聞き及んだ話ですと王党派は降伏してもギロチンなる処刑道具で首を刎ねられたそうですわ」
「姫殿下、言葉が過ぎますぞ」
マザリーニがたしなめる。しかしアンリエッタは一瞬だけ視線を彼に向けただけだった。
202 :
隠者代理:2008/10/27(月) 12:50:36 ID:5UnGCPfz
「わたくしは誇り高きトリステイン王国が王女、アンリエッタです。わたくしは王族としての義務を果たしに行きます。卑怯者どもの犬として首を刎ねられたいのならば、自由になさい」
アンリエッタは貴族達にそれ以上構うこともなく、ドレスの裾を捲り上げて会議室を飛び出していく。
「お待ち下さい! お輿入れ前の大事なお体ですぞ!」
マザリーニのみならず何人もの貴族がそれを押し留めようとするが、彼女は躊躇いなく彼らを一喝した。
「軽々しく王女に触れようとするとは何事ですか、立場を弁えなさい!」
アンリエッタに伸ばされようとしていた手が、威厳ある言葉によって動きを失った。そして行き場を無くした手達が彷徨う中、捲り上げた裾を強引に引き千切ると、破き取った裾をマザリーニの顔目掛けて投げ付けた。
「もううんざりだわ、私の意思は私のもの! 貴方がたに左右される云われはないわ!」
見るも無残に敗れた裾を翻し、足音も高く廊下を進んでいく。
会議室を守っていた魔法衛士達は、王女殿下の後ろを自然と付き従っていった。
宮廷の中庭に現れたアンリエッタは、涼やかな声で高らかに叫んだ。
「わたしの馬車を! 近衛! 参りなさい!」
中庭にいた衛士達がアンリエッタの元に集まり、ユニコーンの繋がれた馬車が衛士の手によって引かれて来る。
アンリエッタは馬車からユニコーンを一頭外し、傲慢なほど堂々と背に跨った。
「これより全軍の指揮をわたくしが執ります! 各連隊をここへ!」
前王が崩御してから十年余の時間を経、トリステイン王宮に王の声が響き渡る。
魔法衛士隊の面々は一斉に王女に敬礼し、アンリエッタはユニコーンの腹を蹴りつける。
甲高いいななきを上げて前足を高く掲げる中でも、彼女は悠然とした態度を崩さなかった。
アンリエッタの頭に載ったティアラが日の光を受け、黄金色に輝いたのを臣下に見せた後、ユニコーンは誇らしげに走り出す。
それに続き、幻獣に搭乗した衛士達がそれぞれ叫びを上げて続く。
203 :
隠者代理:2008/10/27(月) 12:51:07 ID:5UnGCPfz
「戦だ! 姫殿下に続け!」
「続け! 後れを取っては家名の恥だ!」
雪崩を打つように貴族達は各々の乗機に跨り、アンリエッタの後を追いかけていく。
王女出陣の知らせは城下に構える連隊へ届き、後れを取ってはならぬと次々とタルブへ向かって進んでいく。
投げ付けられた裾を手にしたまま、その様子を見ていたマザリーニは呆然と天を見上げた。
アンリエッタが貴族達に放った言葉は、自分も考えていたことだった。
伝え聞く情報は、レコン・キスタとは誇りや名誉という単語から程遠い場所に存在する連中だという事は知っていた。
だが現実問題として、今のトリステインでは彼らに太刀打ちできないことを一番知っているのは、国の政務を一手に引き受けてきたマザリーニである。
今ここで戦いに出たところで、無駄に被害を広げる結果にしかならないと考えている。今更命が惜しい訳ではない。現実的に考えれば考えるほど、国の為、民の為には事を荒立ててはいけなかった。小を切り捨て、大を生かす為にはそうせざるを得なかった。
だが、今この時、条約は破られ、戦争が始まっているのだ。外交のプロセスは既に終わっている。今は互いの国力をぶつけ合う実力行使の時間になっている。それを認めたくない、という気持ちがなかったとは言えなかった。
一人の高級貴族が、アルビオンに派遣する特使の件で耳打ちをする。
マザリーニは頭に被っていた球帽をそいつの顔面に思い切り投げ付けようとして、気が変わる。球帽を掴んだ拳ごと彼の鼻っ面に叩き込んだ。
そしてアンリエッタが投げ付けた裾を頭に巻き付け、叫んだ。
「各々方! 馬へ! 遅れてはならぬ、栄えある姫殿下の元に集え!」
To Be Contined →
隠者のヒト、代理のヒト 乙でした
ん? 代理のヒトも後書き直前で力尽きたかな?
以上投下したッ!
投下の真ん中辺りでさるさん食らったのでかなり大量に代理投下をお願いするハメになっちまったぜorz
さて今度こそ本当に次回でタルブ戦に突入するぜー。
みんなお待ちかねのあのシーンもきちんと用意しているからなッ! このいやしんぼめッ!
207 :
隠者代理:2008/10/27(月) 13:00:11 ID:5UnGCPfz
以上投下したッ!
投下の真ん中辺りでさるさん食らったのでかなり大量に代理投下をお願いするハメになっちまったぜorz
さて今度こそ本当に次回でタルブ戦に突入するぜー。
みんなお待ちかねのあのシーンもきちんと用意しているからなッ! このいやしんぼめッ!
代理投下完了です。
隠者さん乙です!
自分もさるさん食らってる間に代理の方が。
隠者さんも代理のかたも乙です!!
うっ オレ余計なコトしちゃったかも
代理のヒト ゴメン
>>209 気にするなw代理投下しようとしただけでもすばらしい事だぞ
隠者の人も代理の人も乙ッ!
隠者乙
隠者の人乙!代理の人にも乙!!
アンリエッタのカリスマが出ててイイ!!
次は誰がきてくれるのか
まあ、ゆっくり待とうぜ。
薬品鼻元で嗅ぐとか絶対ギャグフラグだと思ったのに…
黒の書だっけ?
丸1日以上レスが無いのは寂しい…
わーるどノ時間停止現象ナノカ?
時間が加速したせいで、誰も書き込めなかったのさ…
いや、ミューミューだろ
昨日のちょうど今頃、寝る前になんとなく仮面のルイズの15話を読んだ。
特に意味はないが、なんとなく、目を通した。
どんどん続きを読んでいて、気がついてたら、六時で、最新の話まで読んでた…。
…改めて読むと、色々と伏線張ってるねー。
とりあえずすでに既出の話題ではあると思うけど、フーケの足取り追ってたらテファのところにいきつきそうで、そこでカリンさんとテファがひと悶着ありそうだと思った。
続き、こないかなあ…。
本当に、こないかなあ。
宇宙に出て、クラシック聞きながら、ファイエルファイエル言ってるから全く進まねー……
>>224 銀凡伝のことだな
早く更新しねーかな
俺はDIOの続きが読みたい
>>223 俺は↑と同じくDIOと、ゼロの茨の続きが読みたいわ…
とくに茨。ルイズ・F・LBDL・V・ジョースターが色んな意味でエロすぎるwww
DIOは60以降まとめに載ってないんだが、その部分は何スレ目にあるんだ?
DIO以外にも兄貴や銃杖も読みたいんだぜ…
DIO様雰囲気でてていいよね
作者はもうスレも見てないんだろうか
>>226 触手は正義だよな
ご立派様も標準装備してるし。
兄貴、兄貴、兄貴と私♪
兄貴と銃杖の続きが読みたいw
茨はアレで完結してるんだよなぁ…。
勿体無い気もするけど、アレも続きが見たいよなぁ。
今中断してる作品全て復帰してほしいです
ゼロいぬっは来ないな・・・・・
ゼロと奇妙な鉄の使い魔の続きが読みたい
せめて 怒りの日 後半だけでも
ポルポル(若)の続き読みてぇ…
235 :
ゼロいぬっ!:2008/11/03(月) 01:11:14 ID:d5epfu0y
15分から投下しますけど構いませんね!?
我がスタンドC・EEENは既に支援を開始している・・・
237 :
ゼロいぬっ!:2008/11/03(月) 01:15:44 ID:d5epfu0y
「覚えておけ……我々は負けたわけではない」
ごぶりと血を吐き出しながらアルビオン共和国の兵士は言った。
その胸に突き立てた杖を引き抜いて竜騎士隊隊長は男の言葉に耳を傾ける。
既にクロムウェルの姿はなく、彼を足止めしようとした兵の屍だけが足元に転がっている。
密閉された船内を吹き抜ける風が彼の髪を揺らす。
見上げれば風竜に切り裂かれた爪痕から青空が覗いている。
恐らくクロムウェルはここから逃げ出したのだろう。
船体が上げる悲鳴は次第に大きくなっていく。
踵を返す隊長に、男は尚も叫び続ける。
「虚無の力を持つクロムウェル様がおられる限り、我々に死は訪れん!
幾度倒れようとも死の淵より蘇り必ずや貴様等を打ち倒す!
この戦いは貴様等が倒れるまで終わらんのだよ!」
哄笑を上げていた男の声が途絶える。
醜悪な笑みを顔に貼り付けたまま彼は命を終えていた。
それを一瞥すると隊長は自分の騎竜の下へと駆ける。
「終わるさ。終わらせるって約束したからな。
俺がクロムウェルを討てばそれで全て終わる」
自重で崩壊していく船内を走り抜けながら呟く。
口にするのは息絶えた男への答えであり自分の決意。
アルビオンにはまだ数万の軍勢がいる。
艦隊を倒そうとも、ここでの勝利など一時的なものに過ぎない。
もしクロムウェルが逃げ延びれば間違いなくアルビオンが戦場となる。
ウェールズ陛下、それに自分と同胞たちが愛した国も民も焼かれるだろう。
もう一度ニューカッスルの惨劇を繰り返すなど耐えられない。
あの兵士が思っているように、命は失われて戻るような簡単なものじゃない。
失われたものは決して戻らない。掛け替えのないものだからこそ輝いて見えるのだ。
今ある命を守る、彼等に出来る事はただそれだけだった。
238 :
ゼロいぬっ!:2008/11/03(月) 01:16:38 ID:d5epfu0y
「か、艦隊が……」
グリフォン隊と切り結んでいた竜騎士が背後へと振り返る。
そこに広がるのは風石を失い次々と沈んでいくアルビオン艦隊の姿。
その多くは自重を支えきれず、地上に辿り着く前に無残にも崩壊していく。
最強と謳われた大艦隊が瞬く間に壊滅する光景を彼等は目の当たりにしていた。
「こ……これは一体!?」
「分からんのか? 貴殿らは負けたのだ」
狼狽する竜騎士たちに諭すかのようにグリフォン隊副隊長は告げた。
その一言に、まるで小石を投げられた水面のように動揺が広がる。
事実を認めたくない声や自分達の健在を示す声で騒然となる中、副隊長はさらに言葉を重ねる。
「艦隊は全滅、貴殿らの帰る場所はなくなった。
これでは指示を下す司令官とて無事では済むまい。
そして頼みの綱のクロムウェルも行方知れずと来ている。
……これを敗北と言わずに何という?」
感情的になりかけている彼等を理論で問い詰める。
恐らくクロムウェルは彼等を見捨てて逃げ出したのだろうが、それを教える必要はない。
怒りに油を注ぐような真似も絶望の淵に叩き落す真似もしたくはない。
高々と杖を掲げて副長はグリフォン隊に命令を下す。
「鬨の声を上げろ! この戦、我々トリステイン王国の勝利だ!」
それに応じ、次々とグリフォン隊隊員達も杖を掲げて雄叫びを上げる。
割れんばかりに響き渡る彼等の声を竜騎士たちは呆然と聞いていた。
つい、と掲げた杖を竜騎士達に向けて副長は言い放った。
「さあ、選ぶがいいアルビオンの竜騎士達よ!
力の限り戦ったという誇りを胸に杖を収めるか、
それとも残敵として掃討されるのを望むか、返答は如何に?」
高台から老士官は戦場を見渡していた。
彼の見下ろす先には凄惨な光景が続いている。
空を埋め尽くした大艦隊は今や残骸となって大地を覆い尽くす。
時折、貯蔵した火薬に引火して巨大な爆発が巻き起こる。
それを耳にしながら老士官は呟いた。
「ここまでだな。投降しよう」
「そんな! 我が軍は未だ健在!
艦隊の支援がなくともこのまま押し切れます!」
彼の言葉を否定し、年若い少年兵が力強く言い返す。
数でいうのならばアルビオン軍はトリステイン軍を上回っている。
しかし、無敵と自負していた艦隊を目の前で失ったアルビオン軍の戦意は衰える一方。
それに対してトリステイン側の勢いは増していくばかり。
兵の間で“始祖の御加護だ”と口々に叫びが上がる。
支援ッ!
240 :
ゼロいぬっ!:2008/11/03(月) 01:17:23 ID:d5epfu0y
残存兵力を掻き集めても勝ち目は薄い。
いや、たとえ勝てたとしても疲弊し切った戦力で何が出来るのか。
戦場を屍の山で埋め尽くし、次に死ぬ権利を勝ち得て何の意味があるのだろう。
「栄光あるアルビオンの貴族ならば最期まで戦うべきです!
敵に投降するなど恥ずべき行い! 命よりも名誉を惜しめと僕は教わりました!」
老士官が少年の目を真っ向から見据える。
彼の視線はただひたすらに真っ直ぐだった。
自分の信じる道を疑うことなく突き進もうとする意思が感じられた。
かつての自分もこうだったのだろうかと過去に思い馳せる。
「では、君に名誉ある任務を与えよう」
「はっ! 伝令でも護衛でも何なりと!」
「私はこれからトリステイン軍に降る。
そこまでの護衛と私が虐待を受けないか監視するのが君の任務だ。
とても重要な役割だ、心して努めるように」
彼の肩を叩きながら最後の命令を伝える、“死ぬな”と。
唖然としていた少年兵だったが、ようやく言葉の意味を理解して反論する。
「ま、待ってください! そんな命令には従えません!」
「とはいえ命令違反をすれば、それこそ恥知らずの反逆者になるのだが?」
「くっ……」
言葉を返す事も出来ずに俯く少年兵から視線を外す。
そして自分の補佐を務めてくれた副官へと目を向けた。
何を言うべきか迷った末に老士官は口を開く
罵倒される事さえ覚悟して彼は謝罪を口にした。
「すまなかったな。無能な上官の負け戦に付き合せてしまった」
「ええ。これだけの戦力差で負けるなんて考えもしませんでしたよ」
しかし返ってきたのは何の悪意も感じられない軽口。
頭が固いと思っていた副官の思わぬ一面に肩を竦める。
その直後、副官は姿勢を正して彼に敬礼を取った。
「ですが、もしこの戦に勝っていたとしても、あの少年や私の命は無かったかもしれない。
短い間でしたが、貴方と共に戦えたのは私の誇りです」
それに老士官は無言で敬礼を返す。
私も同じだよ、などと言う必要はなかった。
交わす言葉がなかろうとも伝わるものもある。
私にも彼にも戦いを継続する意思は残されていない。
無理もない。あれを目にして戦おうという意志は湧き上がらないだろう。
太陽にも似た眩い光は、誰一人傷付けることなく戦艦から戦う力だけを奪った。
それが始祖の御業によるものか、人の手によるものかは分からない。
ただ、それを成した者の意思は明確に理解できた。
“これ以上、誰にも傷付いて欲しくない”
敵も味方もなく、この戦場で戦う者全てにそう伝えてきたのだ。
「さあ、胸を張って降ろうではないか!
我々は全力を尽くして戦い、そして敗れたのだから」
支援をするだァーッ!
242 :
ゼロいぬっ!:2008/11/03(月) 01:18:54 ID:d5epfu0y
墜落していく艦隊から次々と兵士達が脱出していく。
その中にあってただ一人、甲板の上で避難を拒む者がいた。
何人もの部下が彼を抑えようと熊のような巨体にしがみ付く。
だが、それを意にも介さず引き剥がしながらメンヌヴィルは叫んだ。
「ええい、離せ! 奴が、奴がそこにいるのだ!」
「やめてください隊長! ここは大人しく退きましょうぜ!」
「そうですぜ! 捕まっちまったら復讐も何もあったもんじゃねえ!」
必死に止めようとする部下の声など届きはしない。
足元に広がる広大な森の一点に彼は全てを集中させていた。
赤外線センサーにも似た彼の視界に映る人影。
忘れようとも決して忘れられない宿敵の姿。
戦場を駆け回り、長年追い続けてきた相手が手の届く場所にいる。
あるかどうかも判らない次の機会など待っていられない。
戦の勝敗なぞどうでもいい。アルビオンもトリステインも関係ない。
余人には理解できぬこの感情をどうして止める事が出来るだろうか。
「コルベール! 俺は此処にいるぞ!
俺を見ろ!俺の声を聞け!そして俺と戦え!」
船体の軋む音を掻き消すように獣の咆哮が響く。
両国の戦争が終わろうとメンヌヴィルの戦いは終わらない。
コルベールを殺すか、あるいは彼に殺されるまで。
む、と視界に飛び込んできた陽光を手の平で遮る。
まだ寝ぼけているのか、頭の中がハッキリとしない。
そろそろスイッチを切り替えないといけないだろう。
ロングビルか、フーケか、それともマチルダか、
状況に応じて変えるべき名前と役柄を思い浮かべる。
ゆっくりと目を慣らしながら彼女は周囲を窺う。
だけど、そこは見覚えのない場所だった。
学院でもなく孤児院でも宿屋でもない。
そもそも自分が寝ているのはベッドではなく地面。
辺りには瑞々しい草木がイヤになるほど生い茂っている。
(……野宿するほど生活には困ってなかったはずだけど)
そんな事を考えながら身体を起こす。
直後、寝起きに悪い顔が目前に飛び込んできた。
「目を覚ましたかね」
「うきゃああああーー!」
「しっ! 静かに!」
クロムウェルの手がフーケの口を押さえる。
ふと周囲に意識を配れば、あちこちに人の気配が感じ取れる。
それも穏やかではない空気を纏った者達の。
(ああ、そういえば戦争なんかに首突っ込んだんだっけ)
ようやく脳裏へと戻ってくる様々な記憶。
その最後は火薬を満載した船の自爆で途切れていた。
243 :
ゼロいぬっ!:2008/11/03(月) 01:19:50 ID:d5epfu0y
「……って何で生きてるんだろ、あたし」
「余の虚無の力で治癒したのだ。
かろうじて命は取り留めていたが、あのままでは死んでいただろう」
なるほど、とフーケはクロムウェルの返答に頷く。
爆発の瞬間、ゴーレムを盾にしながら自分の身体を地中に沈めた。
以前、酒場か何処かで爆風は上と横にしか広がらないと聞いていたからだ。
それで即死だけはどうにか免れたのだろう。
ボロボロになった自分のロ−ブを見下ろして、
そこから想像された自分の惨状に思わず身震いする。
「礼を言っておくよ。おかげで丸焼きにならずに済んだからね」
「なに、取るに足りないことだ。
それよりも、ここから脱出するのに君の力を借りたい」
「……そいつはちょっと難しいね」
敗残兵を探しているのか、辺りには物々しい気配で満ちている。
避難する村人に紛れようにも面の割れていないフーケならともかく、
クロムウェルは敵の総大将だ。一目でバレてしまうだろう。
かといってゴーレムを暴れさせるのも得策ではない。
乱戦だったら有効な手だが、戦闘が終わった今では軍隊を相手に出来るとは思えない。
もって数分。その後は駆けつけてきた連中に囲まれて捕縛されるだろう。
しかし、その返答を予期していたかのようにクロムウェルは笑った。
「心配は要らん。あれを見たまえ」
クロムウェルが指し示した方向を見やると一人の少女がいた。
犬の亡骸を前にして、何事か叫びながら泣き続けていた。
桃みがかったブロンドの髪をした、見覚えのある少女だった。
胸が締め付けられた。理由なんてありはしないはずなのに。
しかし悲痛な叫びも届かぬとばかりにクロムウェルは語り続ける。
「今でこそただの犬の姿だが、あれこそトリステインの生物兵器。
余の艦隊をいとも容易く沈めた忌まわしい敵だが、死ねば誰であろうと余の友となる」
手に嵌めた指輪を撫でながらクロムウェルは恍惚とした表情を浮かべた。
恐らくは彼を従えて敵を殲滅する姿を思い描いているのだろう。
嘆く少女と笑う司教。二人を見比べながら彼女は取るべき道を選んだ。
呟いたのは錬金の詠唱、土塊が形ある物として生まれ変わる。
「君がゴーレムで注意を惹きつけ、その隙に余が……」
ざくん、という鈍い音で彼の演説は遮られた。
クロムウェルが視線を落とせば、そこには深々と突き刺さるナイフ。
それを手にしていたのは味方だと信じていたフーケだった。
何かを口にしようとしても言葉にならず、ぱくぱくと口が動くのみ。
やれやれ、といった面持ちでフーケは彼に告げた。
そーいや、この人逃げ出すいいチャンスだったんだな 支援
245 :
ゼロいぬっ!:2008/11/03(月) 01:21:07 ID:d5epfu0y
「もう諦めな。アンタは負けたんだよ……いや、見捨てられたって方が正確か。
ともかく、これ以上は無駄な犠牲者を増やすだけさ。潔く舞台から降りな」
クロムウェルは自分が道化であると気付いてさえいない道化だった。
そんな奴の妄言に踊らされて戦争に関わるなんて冗談じゃない。
もう、こいつの側にいても得する事は何一つない。
さっさとこいつの口を封じて本業に戻ってしまおうというのが半分。
もう半分は頭では理解できない感情に突き動かされての行動だった。
クロムウェルが自分の指に手を這わせた瞬間、彼は驚愕に目を見開いた。
彼が心の拠り所とする“力”が指から失われていたのだ。
「探し物はこれかい? これがアンタの“虚無”のタネだろ」
探していた指輪はフーケの手の中にあった。
何故、と擦れた声でクロムウェルは訊ねた。
複数の意味を含ませたそれにフーケは笑みを浮かべて答える。
「人間ってのは一番大切な物ほど自分の目の届く所に置きたがるものさ。
特にアンタは何かとこの指輪を触って確かめていたからね、丸分かりさ」
指先で摘まんだ指輪を目の前に持っていき凝視する。
特に嵌め込まれた石を重点的に観察し、確信と共に彼女は言い放った。
「それに、あたしはこの指輪の事を知ってたからね」
「…………!?」
「もっとも、死人を操るなんて使い方試した事もなかったから知らなかったけどね」
たとえ知っていたとしてもあの子は使わない。
生命の尊さを誰よりも知っているからこそ弄ぶ真似はしない。
彼女は自分のできる限りで助かる命を助けようとするだろう。
「こいつは退職金代わりに貰っていくよ」
弾いた指輪を空中でキャッチして彼女はその場を後にする。
最後の寄る辺を失うまいと必死にクロムウェルは彼女の後を追った。
だが、刺された傷は深く、枝や葉を道連れに彼はその場に無様に倒れ込んだ。
何とか身体を起こそうとする彼の頭上に影が差した。
フーケが戻ってきたのか、それとも部下が迎えに来たのか。
期待と共に見上げた彼の眼に飛び込んできたのは、ただの平民の姿だった。
手には農具を持ち、憎悪に満ちた視線で自分を見ろしている。
それはこの戦争に援軍として参加したアルビオンの民衆だった。
彼等にとってクロムウェルは自分の大事な者たちを奪った憎い仇であった。
クロムウェルを取り囲むようにして民衆達が歩み寄る。
「や……やめてく……」
最後まで言い終える事さえ出来ず、彼の言葉は悲鳴に変わった。
蟻が死んだ虫に群がるように次々と農具をその身体に突き立てる。
愛しい娘の名前、共に笑いあった友人の名前、かけがえのない恋人の名前、
失った者たちの名を口々に叫びながら彼等はクロムウェルを解体した。
それが皇帝を僭称し、生命を弄んだ男の哀れな末路だった。
フーケさんGJ! 支援
流石フーケ姐さんだ。
248 :
ゼロいぬっ!:2008/11/03(月) 01:23:18 ID:d5epfu0y
投下したッ! 次回は遂に“さよなら”です。
GJ!
次がさよならか・・・
さみしく・・・なるな。
長かったいぬも次回最終回なのか!?
…やっぱさびしくなる。
いぬっさんGJ
絶好調だね
ゼロいぬっ!ついに完結か
モット伯の活躍をまだまだ見たかった
いぬっ!も最終回か…寂しいよう
仮面さんが最近ご無沙汰なのも寂しいよう
GJ! ゼロいぬっ!がもう最終回なんて、読みたいけどやっぱり寂しくなる…
23:00から投下をしますが、構いませんねッ
支援した
最後の宴から一夜明け、アルビオン王党派の滅びの時は刻一刻と近づこうとしていた。
昨夜の内に老王が亡くなったことは誰にも知らされず、最早起き上がることすらままならないと貴族たちには伝えられていた。
貴族達はそれに涙しながら戦の準備を進めている。
亡命した者達を助ける為に落ち延びよと命じられた少数の者達は、ジョルノ達を運んできた船と乗り切らぬものは亀に乗り込み、ここを発とうとしていた。
慌しく王党派の貴族達が行きかう中ジョルノは足を止めていた。
壁に持たれかかって眠る貴族の横で、壁に掛けられた巨大な絵画を見上げている。
壁にもたれかかったまま眠っているのは、昨晩案内を買って出た貴族だった。
城内を粗方散策できたのはいいものの、日は昇りきりもう直ぐに貴族派が攻め込む時間までかかってしまったジョルノの顔色は少し悪い。
波紋呼吸により食事等は必要ない為朝食も辞退していたが、疲労の色は隠せなかった。
勿体無いなと、これから始まる戦の中で略奪や破壊を受けるであろう歴史ある建物や美術品を見て零したジョルノは、礼拝堂へ向けて歩き出した。
礼拝堂では既に、ルイズとワルドの婚儀が始まっているはずだった。
*
始祖ブリミルの像が置かれた礼拝堂で、ウェールズ皇太子は新郎と新婦の登場を待っていた。
参列したのは亀とペットショップ。それにサイトだった。
亀の中では、テファ達が興味津々と言った表情で礼拝堂を飽きることなく眺めていたり、浮かれたポルナレフが既に酒宴を始めている。
周りに、他の人間はいない。
皆、戦の準備と脱出の準備でで忙しいのであった。
ウェールズも、すぐに式を終わらせ、アルビオンを脱出するつもりであった。
国王の死はまだ伏せられている。
もう起き上がることも困難になったと偽りを告げ、今はまだ王党派の旗印としての役目を果たしている。
ウェールズは皇太子の礼装に身を包んでいた。
王族の象徴である明るい紫のマントとアルビオン王家の象徴である七色の羽がついた帽子を被っている。
これから死地に赴く貴族達の傍らで行われる婚儀に、ステンドグラスを通り抜け青や赤に染まった光で浮かんだ表情には憂いが見えた。
扉が開き、ルイズとワルドが現れた。足取りの軽いワルドと異なりルイズは、呆然と突っ立っている。
ワルドに促され、ウェールズの前に歩み寄っても、それは変わらなかった。
ルイズは戸惑っていた。今朝方早く、いきなりワルドに起こされ、ここまで連れてこられたのだった。
死を覚悟した貴族達がこれから婚儀を行うという二人に暖かい眼差しを送り、去っていくのが、ルイズを激しく落ち込ませていた。
フーケとの戦いの折、勝てないとわかっていても、ポルナレフ達の静止も振り切り巨大なゴーレムに立ち向かった事などルイズはまるきり覚えていなかった。
深く考えず、まだ半分眠ったような状態のルイズの様子に気付いたポルナレフは眉を潜めた。
そこに少し疲れた様子のジョルノが音も立てずに入室し、亀を持ったサイトの隣に腰掛ける。
「おい、遅かったじゃねぇか。何やってたんだ?」
「昨日言ったじゃないですか。逃走経路の確保です…しかし、妙ですね」
「何がだ?」
「…あ、それ俺も思った」とサイトが小声で言う。
「また食堂で正座する気なのかあの人?」
小声で囁かれたものだったが、聞こえていたらしく浮かない顔をしたルイズに「今から結婚式をするんだ」と言って、アルビオン王家から借り受けた新婦の冠をルイズの頭に載せていたワルドの動きが一瞬固まった。
新婦の冠は、魔法の力で永久に枯れぬ花があしらわれ、なんとも美しく、清楚なつくりであった。
「ああ、なるほど」
ポルナレフが頷き、まだ少し要領を得ないらしいテファにマチルダが意地悪く口の端を持ち上げて説明する。
「テファ。ある所に長女がいきおくれて、次女は最近まで嫁の貰い手なんて望めない体だったおっさんに溺愛してる適齢期間近の娘がいたとするよ?」
「う、うん」
「家の酒蔵にはその時に振舞う娘が生まれた年のワインがズラリ。その時に着る服も準備済み。ウェディングドレスとかだってどうするかとか、考えてあるとする…」
「ええ…」
なんとなくわかってきたのか、苦笑いを浮かべながらテファが頷いた。
「その娘の結婚式を勝手に挙げられたら……さてそのおっさんは一生恨むだろうねぇ」
ジョルノが薄く笑いながら補足する。
トリスティンの貴族同士の結婚には家同士の結びつきを強める等の役割があった。
ワルドの出世に、実力だけでなくヴァリエール家の三女と婚約しているという事実は大いに貢献している。
戦う能力だけを見ればトリスティンはおろかハルケギニア中のメイジの中でも有数の力を持っているが、六千年と言う歴史ある国家の弊害により正しく評価されないこともままあるのだった。
結婚を大々的に公表し、その結びつきが強固なものであることを宣言できれば、また少なからず配慮があるだろう。
ウェールズ殿下にという名誉は得られるかもしれないが、今というタイミングで行うメリットは少ないのだとワルドに聞こえないようにジョルノは耳打ちした。
サイト達がほーっと何度も頷く。
ルイズの黒いマントを外し、やはりアルビオン王家から借り受けた純白のマントを…新婦しか身につけることを許されぬ、乙女のマントをまとわせていたワルドの指先が震えていた。
しかもそのようにワルドの手によって着飾られても、ルイズは無反応だった………ワルドはそんなルイズの様子を、肯定の意思表示と受け取ることにして式を進めた。
始祖ブリミルの像の前に立ったウェールズの前で、ルイズと並び、ワルドは一礼した。
ワルドの格好は、いつもの魔法衛士隊の制服であった。
ウェールズの視線がいつの間にか本当にしていいのかね?と問いかけるものに変わっているのに気付いたワルドは、大きく喉を鳴らした。
「か、構いません」
「では、式を始める」
王子の声が、ルイズの耳に届く。でも、どこか遠くで鳴り響く鐘のように、心もとない響きであった。
ルイズの心には、深い霧のような雲がかかったままだった。
「新郎、子爵ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド。汝は始祖ブリミルの名において、このものを敬い、愛し、そして妻とすることを誓いますか」
ワルドは重々しく頷いて、杖を握った左手を胸の前に置いた。
その視線は近い未来、自分に降りかかる苦難を見据えているのか悲壮な覚悟が見え隠れしていた。
「誓います…!」
おお、とこの後のワルドの運命を確信しているサイト達から余りの紳士らしさに感嘆の声が上がった。
「無茶しやがって…」とサイトが零す中、にこりと笑って領き、トリスティン貴族の立派な姿に感銘を覚えたウェールズは、今度はルイズに視線を移した。
「新婦、ラ・ヴァリエール公爵三女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール……」
朗々と、ウェールズが誓いのための詔を読みあげる。
今が、結婚式の最中だということに、ルイズは気づいた。
相手は、憧れていた頼もしいワルド。二人の父が交わした、結婚の約束。幼い心の中、ぼんやりと想像していた未来。それが今、現実のものになろうとしている。
ワルドのことは嫌いじゃない。おそらく、好いてもいるのだろう。でも、それならばどうして、こんなに気持ちは沈むのだろう。
滅び行く王国を、目にしたから?
ルイズも望んでいた立派な貴族としての姿であるはずの王党派貴族達を…死地に向かう彼らを目にしたから?
杖を捧げた者に従い、今生の宴を楽しみ勝つ見込みのない戦いへ向かう誇り高いアルビオン貴族達の姿がルイズの心を揺さぶっていた。
「新婦?」
ウェールズがこっちを見ている。ルイズは慌てて顔を上げた。
式は、自分の与り知らぬところで続いている。ルイズは戸惑った。どうすればいいんだろう?
こんな時はどうすればいいんだろう…誰も教えてくれない。
「緊張しているのかい? 仕方がない。初めての時は、ことがなんであれ緊張するものだからね」
にっこりと笑って、ウェールズは続けた。
「まあ、これは儀礼に過ぎぬが、儀礼にはそれをするだけの意味がある。では繰り返そう。汝は始祖ブリミルの名において、このものを敬い、愛し、そして夫と……」
しえん
ルイズは気づいた。誰もこの迷いの答えを、教えてはくれない。
自分で決めねばならぬのだ。
ルイズは深く深呼吸して、決心した。
ウェールズの言葉の途中、ルイズは首を振った。
「新婦?」
「ルイズ?」
二人が怪訝な顔で、ルイズの顔を覗き込む。ルイズは、ワルドに向き直った。
悲しい表情を浮かべ、再び首を振る。
「どうしたね、ルイズ。気分でも悪いのかい?」
「違うの。ごめんなさい……」
ワルドは安堵のため息をついた。
ため息と共に、いつの間にか浮かんでいた汗に気付いたワルドは額をポケットから取り出したハンカチで拭う。
「日が悪いなら、改めて……」
「ごめんなさい、ワルド。私やっぱりできないわ」
苦笑していたウェールズは首を傾げた。
「新婦は、この結婚を望まぬのか?」
「そのとおりでございます。お二方には、大変失礼をいたすことになりますが、わたくしはこの結婚を望みません」
ワルドはそこで、ハッとした。
今ココで何故彼女に結婚を申し込んだのか…これからの方が、もっと、更に結婚なぞ望めない状況にトリスティンが置かれると考えたのではなかったかと自分に問いかけ、居住いを正す。
ウェールズは困ったように、首をかしげ、残念そうにワルドに告げた。
「子爵、誠にお気の毒だが、花嫁が望まぬ式をこれ以上続けるわけにはいかぬ」
しかし、ワルドはウェールズに見向きもせずに、ルイズの手を取った。
「……緊張してるんだ。そうだろルイズ。きみが、僕との結婚を拒むわけがない」
「ごめんなさい。ワルド。憧れだったのよ。もしかしたら、恋だったかもしれない。でも、今はわからないわ。こんな気持ちのまま私は…」
するとワルドは、今度はルイズの肩をつかんだ。その目がつりあがる。
表情が、いつもの優しいものでなく、冷たいトカゲか何かを思わせるものに変わった。
熱っぽい口調で、ワルドは叫んだ。
「世界だルイズ。僕は世界を手に入れる! その為に君が必要なんだ!」
豹変したワルドに怯えながら、ルイズは首を振った。
「な、何を言っているの? ……わたし、世界なんかいらないわ」
ワルドは両手を広げて、ルイズに詰め寄る。
ポルナレフはそんな友の姿を悲しげに見つめた。
何かを焦っているように、ルイズらより人生を積み重ねたポルナレフの目には映っていた。
「僕には君が必要なんだ! 君の能力が! 君の力が!」
その剣幕に、ルイズは恐れをなした。
優しかったワルドがこんな顔をして、叫ぶように話すなんて、夢にも思わなかったルイズは後退る。
「ルイズ、いつか言ったことを忘れたか! 君は始祖ブリミルに劣らぬ、優秀なメイジに成長するだろう! 君は自分で気づいていないだけだ! その才能に!」
「ワルド、あなた……」
しえんっ
ルイズの声が、恐怖で震えた。ルイズの知っているワルドではない。何が彼を、こんな物言いをする人物に変えたのだろう?
まだ憧れていた婚約者を信じる気持ちがルイズの頭に疑問を浮かべさせたが、豹変したワルドの表情からはその理由はうかがい知ることはできなかった。
余りにも必死すぎるとワルドの剣幕を見かねたウェールズが、間に入ってとりなそうとした。
「子爵………、君の覚悟は真に立派だった。だが…残念だが君はフラれたのだ。ここは潔く……」がワルドはその手を撥ね除ける。
「黙っておれ!」
ウェールズは、ワルドの言葉に驚き、立ち尽くした。
再びワルドはルイズの手を握った。ルイズはまるでヘビに絡みつかれたように感じた。
「ルイズ! きみの才能が僕には必要なんだ!」
「わたしは、そんな、才能のあるメイジじゃないわ」
「だから何度も言っている! 自分で気づいていないだけなんだよルイズ!」
混乱したルイズはワルドの手を振りほどこうとした。
しかし、物凄い力で握られているために、振りほどくことができない。苦痛に顔をゆがめて、ルイズは言った。
「そんな結婚、死んでもいやよ。あなた、私をちっとも愛してないじゃない。わかったわ、あなたが愛しているのは、あなたがわたしにあるという、在りもしない魔法の才能だけ。
ひどいわ。そんな理由で結婚しようだなんて。こんな侮辱はないわ!」
ルイズは暴れた。ウェールズが、ワルドの肩に手を置いて、引き離そうとした。しかし、今度はワルドに突き飛ばされた。
突き飛ばされたウェールズの顔に、赤みが走る。立ち上がると、杖を抜いた。
「うぬ、なんたる無礼! なんたる侮辱! 子爵、今すぐにラ・ヴァリエール嬢から手を離したまえ! さもなくば、我が魔法の刃がきみを切り裂くぞ!」
ワルドは、そこでやっとルイズから手を離した。どこまでも優しい笑顔を浮かべる。しかしその笑みは嘘に塗り固められていた。
「こうまで僕が言ってもダメかい? ルイズ。僕のルイズ」
ルイズは怒りで震えながら言った。
「いやよ、誰があなたと結婚なんかするもんですか」
ワルドは天を仰いだ。
戦の直前というには奇妙な程周囲は静まり返っていた。
「この旅で、きみの気持ちをつかむために、随分努力したんだが……」
両手を広げて、ワルドは残念そうに首を振った。
「こうなってはしかたない。ならば目的の一つは諦めよう」
「目的?」
ルイズは首をかしげた。どういうつもりだと思った。
ワルドは唇の端をつりあげ、禍々しい笑みを浮かべた。
「そうだ。最早、隠す必要もないかな…この旅における僕の目的は三つあった。その二つが達成できただけでも、よしとしなければな」
「達成? 二つ? どういうこと?」
ルイズは不安に慄きながら、尋ねた。心の中で、考えたくない想像が急激に膨れ上がる。
ワルドは、皮手袋に包まれた右手を掲げると、人差し指を立ててみせた。
「まず一つはきみだ。ルイズ。君を手に入れることだ。トリスティンは混迷を極めていくだろう。そんな中での結婚など、とても難しいだろうからね。しかし、これは果たせないようだ」
「当たり前じゃないの!」
次にワルドは、中指を立てた。
「二つ目の目的は、ルイズ、君のポケットに入っている、アンリエッタの手紙だ」
ルイズははっとした。
「ワルド、あなた……」
「そして三つ目……」
ワルドの『アンリエッタの手紙』という言葉で、すべてを察したウェールズが、杖を構えて呪文を詠唱していた。
怒りに燃えるポルナレフが亀の中からマジシャンズ・レッドを出していた。
しかし、ワルドは二つ名の閃光のように素早く杖を引き抜き、呪文の詠唱を完成させた。
ワルドは、風のように身を翻らせ、ウェールズの胸を青白く光るその杖で貫いた…………はずだった。
青白く光る杖が突き刺さった大きな虎ほどもある巨大な火トカゲがウェールズを弾き飛ばしていた。
尻尾の炎から火竜山脈のサラマンダー(火トカゲ)だということにルイズは気付いた。
キュルケが使い魔とするサラマンダーと実に良く似ていた。
「な、なんだと…?」
理解し難い出来事にワルドが呟き、「き、貴様……、『レコン・キスタ』……」
突然出現したサラマンダーに弾き飛ばされて死に損なったウェールズの放ったエアニードルが、呆然としたワルドの頭を貫く。
額を貫かれたワルドの姿が消滅した。
「ゴ、ゴールドエクスペリエンス…!」
ジョルノの代わりに亀の中でポルナレフが呟く。
「ワルド子爵。ポルナレフさんに免じて…今ならまだ性質の悪いジョークとしてあげますよ?」
柱に隠れているワルド本体に流し目を向けて、席から立ち上がったジョルノが言う。
その視線はゾッとするほど冷たく、どこか見下しているように見えた。
「あなたの人生の為に言っておきますが、無駄はやめた方がいい」
ジョルノの視線が向かう先にある柱に、皆の視線が集まっていく。
柱の影から杖を構えた三人のワルドが姿を見せる。
どれが遍在か見分けが付かぬポルナレフはマジシャンズ・レッドの目を世話しなく動かしどれか本体かを見極めようとしていた。
「無駄ではない! 僕には果たさねばならないことがある。これはその為に必要なことだ」
「馬鹿言わないで!姫様を、祖国を裏切ってこんな卑劣な真似をすることのどこが…」
「祖国の為だ!」
ワルドはルイズの非難に目を血走らせ、威圧するような鋭い声で反論した。
打たれたように体を震わせてルイズは困惑した表情を作った。
「祖国の為ですって?」
「そうだ!トリスティンは今…征服されようとしている」
苦虫を噛み潰したように言うワルド。
その表情を見かね、ワルドの行動に怒りとショックを受けたポルナレフが尋ねる。
「ど、どういうことだよ?」
「兄弟、君は『パッショーネ』という名を聞いたことはないか?」
尋ねたポルナレフは、返された質問に絶句した。
知っているも何も、そのパッショーネのボスは他ならぬジョルノであった。
「パッショーネ?」
ルイズの呟きに、ワルドは眉間にしわを寄せたまま頷いた。
しえんっっ
「このアルビオン発祥の新興の犯罪組織だ。奴らは、一年にも満たない内に急速に勢力を伸ばしている。
マザリーニ枢機卿はレコンキスタの撃退こそ急務だとお考えだが、僕はそうと思えない。奴らの浸透する速さは、桁が違う」
語りながらもゆっくりと足を動かし、狩をする獣のように機会を狙うワルドの視線がウェールズから逸れる。
「奴らの影響力はもう侮れないものになりつつある…(我々が草の真似事をすること自体異例のことだが)調査を行った僕の部下は運がよければ川で発見された。残りは、今も消息がわからない」
「ふざけてんじゃねぇ!」
そこに、蚊帳の外に置かれようとしていた列席で叫ぶサイトの言葉が響いた。
「ルイズはてめえを信じていたんだぞ! 婚約者のてめえを……、幼い頃の憧れだったてめえを……」
「……何もわからぬ平民如きが口を挟むな! 便所のゴミ虫以下の下郎がトリスティンの置かれた状況を理解しているとでも言うのかッ!?」
憤ったサイトに侮蔑の視線と言葉の刃を突き刺したワルドは息を荒げ、血を吐くような表情でジョルノを睨みつけた。
一方のジョルノは常と涼しげな表情だった。
『そういえばそんなこともありましたね』とでも思ってんじゃねぇだろうなと事情を知るポルナレフ達は疑念の篭った視線を向けていたが、何の動揺もジョルノの態度からは読みとることはできなかった。
「奴らは先日、麻薬を合法的に商う為の法案を通した。伯爵、貴方も他の許可と一緒に申請されたものだ」
「そうなのですか? 服飾や科学等の僕の好奇心を満足させてくれるもの以外は執事達に任せきりですから…ああ、そういえば、薬を商う許可を取ったとか聞きましたが」
しれっと言うジョルノをどう思ったのかは知る由もないが、ワルドの顔は更に険しさを増した。
「既に、! それほどの影響力を持つのだ。奴らは! レコンキスタは…まだ貴族の枠に入る者達だ。その熱狂はわが国の膿を出すのに有効だ」
「その為に忠誠を捨てたの?」
「僕が杖を捧げたのは国家と今は亡き国王陛下だ。決してこの段になってラブレターの回収を命じるような小娘じゃあない!」
「ワルド! その陛下に……申し訳が立たねーと思わないのか!?」
「娘をゲルマニア皇帝の嫁にされトリスティンを盗賊共に蹂躙されるよりはましだ!! これが成れば、姫はあんな下郎に嫁ぐこともなくなるだろう…ルイズ! 君もそれを望んでいるはずではないのか!?」
信じられないと言う顔をするルイズに、苦しげに言うポルナレフに痛いところを突かれたワルドは怒鳴り返す。
痛みを堪えているような、自分を嘲笑うかのような…険しい表情に浮かぶ感情が何か、周囲からは最早伺いしれぬものとなっていた。
「アルビオン貴族共の好きにさせぬ為には、トリスティン貴族たる僕に力と功績が必要なのだ…ウェールズ殿下、我が祖国の為に覚悟を決めてもらおう」
ゲルマニアと同盟を結ぶ為に姫を差し出すことに協力していたルイズの傍らにいるウェールズに、ワルド達は一斉に杖を向ける。
ジョルノに生み出されたサラマンダーがルイズを庇うように前に移動する。
ワルドの言うとおり決裂を望む気持ちと、自分と姫がどれ程の思いでそれを決めたのかと滾る怒りに杖を持った手を震わせて、ルイズは俯いていた。
生き残ったウェールズが凛々しく杖を構えワルドと対決しようとする。
右手を光らせたサイトとポルナレフの意思で、マジシャンズ・レッドがその間へと立ち入ろうとしていた。
本体の杖を大蛇に変えて毒牙で噛み付かせようかようかヤドクカエルを破裂させ毒液塗れにしようか迷いながら、ジョルノも波紋呼吸で徹夜での疲れも癒えつつある体からスタンドを出す。
だがその時、今正に戦いが始まろうとした瞬間に、ポルナレフがルイズの様子が変わったことに気付いた。
「ルイズ?」
俯いていたはずのルイズの体が力なく揺れていた。
視線も定まっておらず…呼びかけたポルナレフの声も届いていないのか、何の反応も示さずに何事か呟いていた。
しえんっっっ
戦いが始まろうとしているのか、外から響く大砲の音に紛れて、ルイズの声が礼拝堂に響いた。
「エオルー…スーヌ・フィル……ヤルンサクサ、オス・スーヌ・ウリュ・ル……………ラド」
ハッとして、今正に対決しようとしていたワルドとウェールズも手を止める。
呟くルイズから感じ取れる何か、メイジだからこそ感じ取れるものなのかルイズの姿に畏怖を感じた二人に一瞬遅れてジョルノ達もそれに気付き、ルイズを見る。
ワルドの裏切りによるショックだとか、そんなチャチなもんじゃない。
彼女以外の意思が、彼女を操り杖を振り上げさせた。
城の壁の向こう…敵へと。
「ベオーズス・ユル・…スヴュエル・…カノ・オシェラ。ジェラ・イサ・ウンジュー・ハガル・ベオークン・イル…………エクスプロージョン」
その日、その場にいた全てのメイジが怖れを感じると同時に、アルビオンに一瞬だけ太陽が生まれた。
今か今かとその一瞬の太陽を待ち望んでいたプッチは、遠くに見えるその輝きを見て賭けに勝ったことを理解して嬉しそうに目を細めた。
「君との約束どおり、既に私の援助はしておいたよ。ジョルノ・ジョバァーナ。ミス・ヴァリエールの限界ギリギリのエクスプロージョン、受け取ってくれたまえ」
一歩間違えれば死ぬほどの消耗、何万人にも及ぶ虐殺…自分で選ぶ事も出来ずにそれを行うルイズの今後などこれっぽっちも気にしない口調だった。
それもそのはず、プッチにすればこれは、魔法が使えるようになりたいという彼女の願いを叶えただけの言わば善行で、ほんのついでにジョルノへの援助をやってもらったに過ぎなかった。
プッチ枢機卿は呟きながら、ガリア王ジョゼフの記憶ディスク、王家の秘宝である香炉とルビーを仕舞ったトランクへと確認するために使用していた望遠鏡を仕舞いこむ。
「アンタの言っていた通りになったな」
若干苦いものを含ませた声に、プッチ枢機卿は笑顔で返した。
「あぁ、賭けではあったがね。予定していた時間通りで何よりだ。ゲルマニアの艦隊はどうかね?」
「トリスティンとの関係もあるから手間取ったが…どうにか来るべきレコンキスタとの戦いに備えた訓練と称して集められた艦隊が既にアルビオン領空内を進んでいる」
スーツに身を包んだミノタウロス…ラルカスが答える。
プッチ枢機卿が他の枢機卿を使って行った裏交渉に応じたゲルマニア皇帝は少数の艦隊をアルビオンへと向かわせていた。
その交渉には留守を預かるラルカス…パッショーネも関わっている。
「ベネ! とでも言ったところかな。この後は『亡命してきた貴婦人達の涙を拭いさることこそ貴族たるものの務め』とでも言ってくれたまえ。彼女らが要請したと言う形が望ましかったが、あいにく未だに王家は生き残っているようだ」
白々しい口調で言うプッチ枢機卿に、ラルカスは頷いた。
この謀をジョルノには伝えることができていない…いや、伝えてはいなかった。
ジョルノが聞けば、激怒するかもしれないとラルカスは報告など考えることを止めていたのだった。
この賭けに勝つことはよりパッショーネの力を強めることになりジョルノの為になると、ラルカスは信じていた。
確認の意味を込めて、もう一度ラルカスは尋ねた。
「プッチ枢機卿、本当に、あそこに聖女様がいるのか?」
「勿論だ。あれこそ正しく始祖の起こした奇跡! 我らは敬虔なブリミル教徒として泥沼の戦場を納めて聖女様をお救いしなければならない!」
芝居がかったしかし……信仰心溢れる、熱狂的なブリミル信者達の鏡にでもされそうな程の熱烈な言葉だった。
同じ調子の言葉を、今頃今回の件で表にでるつもりのないプッチ枢機卿の代わりに計画した者として動き回っている哀れな枢機卿も吐いていることだろう。
だがラルカスはそれだけでは納得しなかった。胡散臭そうな表情で再び尋ねる。
「…一つ疑問なんだが、何故聖女様とわかるんだ?」
「それは勿論私がお会いしたからだ。その時のことを他の枢機卿に言った所、間違いないとおっしゃってね。こんな大事になってしまったのだよ」
実際は困ったような顔をするプッチ枢機卿が他の枢機卿を動かしたと言うことを知るラルカスは不満そうに鼻を鳴らした。
この男以外の誰にガリアとロマリアの重い腰をあっさりと上げさせられるというのか。
いつかは敵となるのだろう枢機卿の手回しの早さにラルカスはジョルノに対するモノとはまた別の恐ろしさを感じていた。
内政干渉の誹りを受ける行為を二強国に足並みをそろえて行わせるなど今表舞台で奔走しているグロスター枢機卿には……ラルカスはそれ以上の考えを打ち切り、今は動く時だと判断した。
プッチこわい
「では私はこのままガリア、ロマリアの艦隊とアルビオンを攻略する為の手回しを済ませてこよう」
「よろしく頼む。ジョナサンは君のような有能な部下を持って幸せだな」
「世辞はいらん。私は組織の利益になると考えただけだ」
普段ジョルノといる時の本能など全く感じさせぬ乾燥しきった声で答え、ラルカスは部屋を後にする。
見送ったプッチ枢機卿は教徒を呼びつけ2,3アルビオン攻略の為の命令をしてから、熱いコーヒーを用意するように命じた。
教徒が教皇の信頼厚き枢機卿の命を受け、目を輝かせて退室した後、プッチ枢機卿はベッドの上に地図を広げた。
プッチ枢機卿の手回しにより他の枢機卿の名で聖女奪還の為アルビオンへと進行しているロマリア艦隊としてジョゼフの記憶ディスクを置く。
更に要請を受けたという形で動き出しているガリア艦隊とゲルマニア艦隊代わりに、たった今トランクに仕舞った土のルビーと教皇の記憶ディスクを並べて状況を確認する。
「先遣隊の到着までは急がせて一日と言ったところか、あの光を見て本気になったロマリアの艦隊と引きずり込まれたガリアとゲルマニアの総攻撃も遠からず始まる。
ゲルマニアに配慮して何も聞かされていなかったトリスティンが何か行う前に終わらせたい所だが…マザリーニなら軍を動かす準備を終えていても不思議はないか?」
少し考えてどうでも良くなったのか、プッチ枢機卿はそれらを適当にトランクに押し込み、鍵を閉めた。
思えば、プッチ枢機卿にとってはこんなことをしている場合ではなかったのだ。
「ジョナサンなら、憤りつつ退くしかあるまい」
(終生のパートナーである)使い魔まで預け私に相談したルイズの信頼を裏切る行為を行うなどと瞬時には思わぬだろう。
気付いた時には数手遅れている…憤りと共に機を失ったジョナサンは恐らく、ワルドを倒し退くのがいいところだろうな。
ジョナサンにとって貴族派は、ルイズの虚無で何割かを失い、混乱に陥って壊走しようとする腹を突くほど程赦せない相手ではない。
加えてジョナサン自身にも軍を攻撃する手など無い。行おうとしても準備をしている間に敵も逃げるだろう。
「DIOなら、笑って静観するだろう」
DIOにとって小娘一人、アルビオン一国がどうなろうが知ったことではない。
まぁ、そもそもあんなアホ共の所にDIOが行くわけが無いか。
支配するなら戦争なんぞ終ってからでいい。
DIOに傅くのが王族か貴族か、その程度の違いに過ぎないのだ。
二人の男に対する持論を一人呟き、プッチ枢機卿はトランクの中から一枚のディスクを取り出した。
「ジョルノ・ジョバァーナはどうする…? この私の贈り物に一手遅れるのか、元々無関係な話だからと敢えて逃すのか?」
プッチ枢機卿の頭にマリコルヌから奪い去ったディスクがずぶずぶとめり込んでいく。
半ばまで沈み込んだディスクの能力が発動し、プッチ枢機卿に遠く離れた場所を見せる。
マリコルヌの使い魔であるサイトの視界に広がる光景。
あり難いことに、そこにはジョルノ・ジョバァーナの姿がきっちりと映っていた。
「これは運がいい。神は私にこれから起る出来事を見守れと仰せだ」
遠く離れた戦場の光景を眺めるプッチ枢機卿の顔に笑顔が広がる。
彼がDIOの血統か、ジョースターの血統か。この件は一つの判断材料になるはずだとプッチ枢機卿は期待していた。
プッチ枢機卿と…いや、サイトとジョルノの目があった。
偶然ではない。ポルナレフの亀がルイズの元へと走る中、ワルドらが今だ呆然とする中、その視線は、サイトではなく明確にプッチ枢機卿へと注がれていた。
列席から少し歩きだしたところで足を止め、消滅した艦隊の向こうで穂先だけ消えてしまったレキシントン号を見つめていた。
その冷めた眼差しに胸をドキドキさせるプッチ枢機卿の目の前で…ほんのちょっぴり前まで教会の天井だった石材の成れの果てが重力に惹かれるままに落下していく。
サイトが悲鳴を上げて下がるのを鬱陶しく思いながら、プッチ枢機卿はそれを奇妙に思った。
素人考えと言われればそれまでだが、ルイズの魔法の余波で崩れたのなら敵軍に近い壁から崩れる方が自然な気がした。
落下したのはルイズの魔法の範囲の外にある無事な天井だった。
サイトはそんなことには注意を払わずにルイズを心配して駆け出していた。
「サイト、アズーロを呼べ」
有無を言わさぬ口調に、走り出そうとしていたサイトは足を止めた。
反射的にサイトは声の主へと視線を向けるのを避けた。
今命令した相手、ジョルノと視線を合わせれば、気圧されると感じたゆえだった。
だが、サイトの頭から血が下がっていた。
「サイト」もう一度名を呼ばれて右手の紋章を光らせて、アズーロを呼ぶのは一瞬後のこと。
ジョルノの動向を観察したいだけのプッチ枢機卿は、視線が逸れたことに若干不満を感じたが…
その代わりに、疑問への答えがサイトの、プッチ枢機卿の前に現れていた。
落下していく石材が、重力に逆らい舞い上がっていく。
空中で細かく分かれて崩れた壁から差す日の光、半分ほど消えてしまったステンドグラスから差す色取り取りの光が一瞬前まで石材であった生き物達を照らしていた。
このアルビオンに生息する毒を秘めた無数の虫達のようにも、地球の虫にも見える。
「プッチがルイズを利用して介入したと言うなら、それはそれで利用すべきだ」
サイトのいる場所が微かに揺れた。
何かが鳴動しはじめ、動揺するサイトが顔を左右に振る。
忌々しく思うプッチ枢機卿の耳に、ジョルノ・ジョバァーナの鋭い言葉が届いた。
「ジョルノ、どうするつもりだ!?」
声が聞こえたのだろう、マジシャンズ・レッドでルイズを抱え上げ、亀の中に仕舞いながらポルナレフが叫んだ。
「この動揺が収まる前に、クロムウェルを始末します」
「なっ…」
その言葉にワルドとウェールズが我に返り、杖を構えた…突如ワルドは悲鳴を上げた。そして、三体の偏在が姿を消す。
何が起きたのかわからぬウェールズは呆然と杖を向けたまま、ワルドが消えた場所を見つめている。
何が起こったのかいち早く理解したポルナレフはジョルノに目を向けた。
「お前、杖を何に変えたんだ?」
「アナコンダです。体長は十メートルってところでしょうか」
自分の杖だった大蛇に襲われている裏切り者の姿を想像し、少し同情心が沸いてきたポルナレフが苦笑いを浮かべる。
杖だけを生き物にしたわけでもない、とは言わずに薄く笑みを浮かべたジョルノは近づいてくるアズーロの羽ばたきを耳にして、歩き出す。
「本当はこんなことに使うつもりじゃあなかったんですが…」
サイトの視界にある様々なものが蠢く。
教会のシンボル。無くなった天井を支えていた柱。並んでいた椅子。
全てが生命を持ち空を舞い、ジョルノの意思により飛び去っていく。
恐らくは、敵軍へと殺到していくのだろうと感じながら、プッチは戦慄いた。
「既に。昨夜一晩かけて…既に、ニューカッスル城へ満遍なく生命エネルギーを叩き込んであります…」
アルビオン王家に最後に残されたニューカッスル城が、百年以上の歳月が生み出した様々な曰くを持つ部屋が。
古き時代に決闘で付けられた傷を残す柱。歴史に名を残す芸術家が生み出した彫刻。絵画。タペストリーが。
今は亡き人々が丁寧に扱ってきた家具が。幾人もの王侯貴族達が婚儀の際に歩いた赤い絨毯が…全て生物へと姿を変えていく。
拘束されたまま目を見開くワルドと、ルイズと同じく亀の中へと収容されながら何事か叫ぶウェールズ。
ウェールズにはこの城に数え切れぬ程の思い出があったかもしれない…だが!
それすらも飲み込んで、ジョルノが一晩かけて丹念に叩き込んだ生命エネルギーが、ジョルノのスタンド能力が生命を生み出していく。
ポルナレフもサイトも数え切れぬほどの虫達が蠢く様に恐怖し、足を止める中…ジョルノは言った。
「ほんのちょっぴりだ。この城一つ程度の世界を…僕のゴールド・エクスペリエンスが作り変え、全てが貴族派に襲い掛かる。その隙を突くぞ」
慈悲などの暖かな感情など一切感じられぬ凄みに息を呑みながらサイトはただ頷いて混乱に陥ろうとするアズーロを操り、ジョルノと亀を乗せ羽ばたかせる。
澄み切っていた空では虫の群れでできた帯状の黒雲が、貴族派の船にかかろうとしていた。
To Be Continued...
投下乙
城まるごととかジョルノに発想のスケールで負けたぜ
以上。投下したっ!
ジョルノがどれくらいまで生き物作れるのかよくわからなかったのでもういっそと思ったらこうなっていた。
何を言ってるのかわからないと思うが私にも何が起こったのか(略
ワルドとポルナレフの決闘もしてみたかったのですが、うまく場面を区切れなくて断念…
こいつはスゲーー!
2つある月までぶっとぶ衝撃のスペクタクルだぜ!
G…J…!
もはやこれしか言葉が浮かばない…
SSで鳥肌が立ったのは久しぶりだぜ…
プッチもジョルノもパネェ…w
なんという…なんというジョルノ!
ブラボー、オオブラボー!!
格好良すぎるだろジョルノ、グッショブの一言で済ませるのが勿体無いくらいだ
GJ。フレイムカワイソスww
> 次女は最近まで嫁の貰い手なんて望めない体だったおっさんに溺愛してる適齢期間近の娘がいたとするよ?」
この部分が少しおかしいね
緑の赤ちゃんはまだか
>275
次女は治したんじゃなかったっけ?
>>277 文章として成り立ってないんだろ
>ある所に長女はいきおくれ、次女は最近まで嫁の貰い手なんて望めない体であり、おっさんに溺愛してる適齢期間近の娘がいる家があったとするよ?
って感じかね?後は
>「家の酒蔵にはその時に振舞う娘が生まれた年のワインがズラリ。その時に着る服も準備済み。ウェディングドレスとかだってどうするかとか、考えてあるとする…」
家の酒蔵には、先の話の家の父親により〜〜って感じに、父親のことに触れないと
>「その娘の結婚式を勝手に挙げられたら……さてそのおっさんは一生恨むだろうねぇ」
ここで何で"おっさん"が出てくるのか全く分からなくなる。
>>278 >ある所に長女はいきおくれ、次女は最近まで嫁の貰い手なんて望めない体であり、(その)おっさんに(、)溺愛してる適齢期間近の娘がいる家があったとするよ?
って事で、“おっさん”=父親 だと思うんだが?
久々の投下だけど他に作者さんがいないなら今すぐ投下する
覚悟はいいか? オレはできてる
そもそもいわゆる「てにをは」が致命的におかしいわけだが
14話
(ヤハリ、食ラッテシマッタカ)
ラングラーの弾丸を受けた瞬間、ホワイトスネイクが思ったのはそれだけだった。
仕方のないことだった。
跳弾での攻撃を阻止することは不可欠だった。
跳弾は軌道を読みにくいので、防御しにくい。
なので、それを使われないようにすることは必須だった。
しかしそのためには、ラングラーの射界に身を晒すのを覚悟の上で反射のための障害物を破壊しなければならず、
そしてそのことは「死角を狙う必要がない跳弾」、つまり壁を使った跳弾で攻撃されることを意味していた。
跳弾で狙われれば、流石のホワイトスネイクでも迎撃しきれない跳弾が出る。
そうなれば自分の背後で炎の呪文を放っているキュルケがヤバい。
(ツマリ、ラングラーガ跳弾ヲ使ウト決メタ時カラ、コーナルコトハ確実ダッタノダ)
しかし、ホワイトスネイクはまだあきらめていたわけではない。
むしろこの状況は、ホワイトスネイクが敷いたレールの上から一歩たりとも外れていなかった。
(問題ハココカラナノダ)
自分の策がなるまでに、絶対に稼がなければならない時間。
その間に自分がやられてしまうことは勿論、壁の陰に隠れるルイズとキュルケの二人を殺させてしまってもならない。
(セイゼイ、凌ガセテモラオウカ)
心の中でそう呟いて、ホワイトスネイクはゆっくり立ち上がった。
「あ、あんた……」
立ち上がるホワイトスネイクに、思わずルイズが声をかける。
「問題無イ。コウ見エテモ私ハ丈夫ニ出来テイルンダ。首ヲ飛バサレナイ限リハ十分動ケルシ、戦エル」
「で、でも、あれだけの弾丸を受けたんでしょ!?」
「問題無イト言ッタ筈ダ。ソレト私ニ近寄ルナ」
「ち、近寄るなですって? せっかくわたしが心配してあげてるのに……」
「近寄ラレルトヤツノ跳弾ノ射界ニ入ル。ソレデ弾丸ヲ食ラッテシマッタノデハ元モ子モナイ。
邪魔トカ迷惑トカ厄介トカ……トニカクソーイウコトダ。
ダカラオマエハソコデジットシテイロ」
ホワイトスネイクの言うとおりだった。
アイツの弾丸が危険だってことはさっきから何度も言われていた。
そして自分がほぼ確実に、何の役にも立たないことも。
「でも、だからって……」
ルイズは何か言おうとするが、ホワイトスネイクは聞く耳も持たない。
そして再びファイティングポーズを取る。
弾丸の雨に真正面から挑むつもりだ。
支援いたす
「逃げないってことは……何か考えでもあるのか? ホワイトスネイクよ……」
ラングラーはそれを見て不敵な笑みを浮かべる。
「まあ……何を用意していようと、」
JJF(ジャンピン・ジャック・フラッシュ)がラングラーの意思に呼応して腕を構える。
「オレは無敵だがなッ!」
ドンドンドンドンドンッ!
鉄クズの弾丸が放たれるッ!
JJFの腕輪の中で遠心加速した鉄クズは、空気を切り裂いてホワイトスネイクに襲い掛かる。
ホワイトスネイクはその弾道を見極め、拳を繰り出す。
「シャアアアアアアアアッ!」
バシバシバシッ!
重く、素早い拳撃が弾丸を叩き、その弾道の行先をホワイトスネイクから逸らす。
「よく頑張ったな、と言いたいところだが……残念だ」
そこにラングラーの妙に明るい声がかかる。
「スデに跳弾が3つほど、テメーの所に向かってるぜ」
バスバスバスバスッ!
直後、ホワイトスネイクを弾丸が貫いた。
「おっと、4つだったか」
命中個所は肩に一つ、胴体に二つ、そして膝に一つ。
ダメージで膝をつきかけるが、ホワイトスネイクはどうにかその場に踏みとどまった。
(ヤハリ、跳弾ハドーニモナランナ……通常弾ト合ワセテ撃タレルト対応スルノハ困難ダ)
流石のホワイトスネイクも、今の状況で余裕は持てなかった。
その後もラングラーの一方的な射撃を、ホワイトスネイクはただ凌ぎ、ただ耐え続けた。
回数を重ねるごとに跳弾もある程度は弾けるようにはなっていったが、全てを弾くには至らなかった。
ダメージは着実に増え、ただ時間だけが経って行った。
その身体は傷つき、ひび割れ、被弾で開いた穴の数は20に迫ろうとしていた。
「どうしよう、このままじゃ、このままじゃ……」
そんなホワイトスネイクを前に、ルイズは何もできずにいた。
自分にも何か出来るはずだと、心のどこかで思っていた。
事実、さっきは形勢逆転の布石を打てたようにさえ思えた。
でもそうじゃあなかった。
やっぱり自分には何もできないのだ。
そう思い始めた途端に自分の方に矢印が向く。
自分で自分につきつけた無数の矢印は口々に囁いた。
「お前が弱いだから」「お前がダメだから」「お前がゼロだから」と。
それらの何一つ否定できない。
何一つ反論できない。
そうよね、どうせわたしなんて、どうせ……。
そう思いかけたとき、
支援
支援ッ!!
「シャキっとしなさいよ、ルイズ」
そう言ってキュルケがぽんとルイズの肩を叩く。
「で、でも、わたしには何も……」
「そうね、今は何もできないわね」
ルイズの言葉を引き継いでキュルケが言う。
「だったら探すのよ! 自分が出来る事を何が何でも見つけるの!」
「さ、探す!? 探すってどこ探すのよ?
私が何にもできないのはホワイトスネイクに言われた通りじゃない!
わたしの爆発は他の生徒を起こすかもしれない、そうなったらもっと犠牲者が増えるかもって!
じゃあどうすればいいのよ!」
「そ、れは、そうだけど……とにかく急ぐのよ!
いくらダーリンだってあんなに撃たれたらヤバそうだわ!
時間がないんだから、早く急いで!
あたしは先生を呼んでくるわ!」
「無理よ、ゼッタイ無理! それに何であんたがやらないのよ!
あんたトライアングルメイジじゃないの!?」
「そんなこと言わないで……ッ!」
言いかけたキュルケが突然顔をしかめた。
「どうしたのよ?」
「な、何でもないわ、ルイズ。とにかくあなたは逆転の手を考えて……」
そう言って身を引くキュルケ。
だがその動作は、明らかに何かを隠す動作だった。
「何でもないじゃないわよ! まさか、あんた!」
ルイズは強引にキュルケのローブを捲る。
そこにあったのは――
F5が止まらない支援
「ウソ、でしょ……」
キュルケの脇腹を染める赤。
深くはないようだが、それでも確かに傷を負っていた。
『一発デモ受ケレバ、アルイハ体ヲ掠メレバ10分以内ニ
半径20メイルノ人間ヲ巻キ込ンデ死ヌ、トビキリ厄介ナ呪イダ』
ホワイトスネイクの言葉が脳裏によみがえり、そして頭が真っ白になる。
「い・・・いつよ! いつそのケガをしたの!?」
「さ、さっきよ……ダーリンの後ろから炎を撃ってた時だったかしら」
「そ、それって何分前!?」
「だいたい……5分、6分前、ってとこかしら。
あたしが死ぬまで、あと3分と少しかしらね」
そう言ってキュルケは笑みを作る。
無理に作ったような、ひきつった笑顔だった。
「『ゼロ』のあんたと違って、あたしの火は少しは役に立つわ。
って言っても、威嚇にしかならないんだけどね。
おまけにさっきの魔法と言い、今の魔法と言い、力を使いすぎちゃったのよ。
肝心の魔法も、もうそんなに多くは放てないわ。……笑っちゃうでしょ?
でも、もしかしたら役に立つ時が来るかも、って待ってたけど……やっぱり、ダメね。
だからってここであんたを巻き添えにするのはごめんだわ。
ツェルプストーの女がヴァリエールの女を巻き添えにして死ぬなんて、聞こえが悪いったらありゃしないし、
それでどこか離れた場所まで行こうとしてたってわけ。
……ふふ、自分のことながら、なんて情けないのかしらね」
まるで何も無かったかのように語るキュルケを前に、ルイズは何も言えないでいた。
キュルケが、死ぬの?
ウソでしょ?
いつもわたしをバカにして、憎らしかった赤毛でツェルプストーのキュルケが、こんな簡単に?
も一つ支援
「……ちょっと待ちなさいよ」
さっきまで何も言えなかったのに、するりと言葉が喉を通った。
「る、ルイズ?」
確かに憎らしかったわよ。
いなくなっちゃえばいいのにとか思ったし、許せないと思ったことも何度もある。
あんまり腹が立ったから、キュルケをやっつけようとして失敗魔法の爆発で大暴れしたことだってある。
それでも、
「死んじゃうのはダメ。絶対ダメだから」
それがルイズの本心だった。
そいつがどんなに憎らしくっても、どんなに許せなくても、今目の前で死のうとしている相手に向かって、
そのまま死ねとは言えなかった。
偽善だとか、自分の今までをウソにするとか、そういうのはどうだっていい。
ただ死なないでほしい。ただ生きてほしい。
それがたった一つ、今死のうとしているキュルケに向かって言えた本心だった。
そしてそう言うのと同時に、急に思考がクリアになる。
さっきまでの混乱や自虐はもうそこにはない。
ただ、絶対にキュルケに死んでほしくない。それだけだった。
自分が役に立たないとかどうとか、そういうことは頭の中から吹っ飛んでいた。
余計な事が頭の中から消えたおかげで、周りがスゴくよく見えるようになった。
自分の爆発が使えない理由、キュルケの炎が役に立たない理由、
ホワイトスネイクが押されっぱなしの理由。
全部が一つの線で結ばれて、答えが導きだされた。
支援に次ぐ支援
「だ、だからあなた、何言って……」
「ホワイトスネイク」
困惑するキュルケを尻目に、ルイズはホワイトスネイクに問いかける。
「何ダ?」
「ラングラー……だったっけ? アイツの能力、どうやったら消えるの?」
「ヤツガ意識ヲ失エバ消エル」
「分かったわ」
それだけ言って、ルイズはキュルケに向き直る。
「はっきり言って、わたしはあんたが嫌い。
だっていつもわたしをバカにするし、からかうから。
でもね、キュルケ」
「わたしはあんたに、死んでほしくないわ。
だから絶対死なないで。絶対にここにいて」
「で、でも! あと3分であたしは!」
「その3分が経つ前にアイツをやっつける。
絶対にやっつけるわ。だからお願い、ここにいて」
「ルイズ……」
ルイズの言葉と真っ直ぐな眼に、キュルケは思わず口をつぐんだ。
「勝算ハ?」
そこにホワイトスネイクが口を挟む。
ルイズの向けられた眼は、明らかにルイズへの疑いを示していた。
「あるわ」
それにルイズは真正面から答える。
ホワイトスネイクは無言でうなずくと、襲い来る弾丸を叩き落とす。
それがルイズの声と眼差しに対する、ホワイトスネイクの答えだった。
「ちょ、ちょっと正気なの、ルイズ!?
相手はダーリンでもどうにもならない相手なのよ?
それを『ゼロ』のあんたがどうにかするなんて……」
「そうね、確かにわたしだけじゃ無理だわ。
だからあんたも協力して、キュルケ」
「……本当に勝算があるのね、ルイズ?」
ごくりと唾を飲み込んで尋ねるキュルケに、
「……ええ!」
ルイズは力強く頷いて答えた。
支援
なにこの間隔
まさか書きながら?
これが世界だ
「しかし……まさかここまでタフだとはな……」
一方、全身に銃創を作りながらもなお立ち続けるホワイトスネイクに、ラングラーは思わずそう呟いていた。
「ひょっとして……アイツ自身がスタンド使いだ……なんてオチじゃあねーだろーな……。
あんだけボロボロになって……それでスタンド本体が無事だとは考えられねーからな……」
ラングラーがそう思うのも無理はなかった。
もう残弾が少ないのだ。
そんなにキツい仕事になるなんて思ってなかったから、あまり鉄クズをもってこなかったのが災いした。
補給はさっきので終わってしまったので、今腕輪に入ってる分が無くなれば打ち止めだ。
だからさっさとヤツを始末して仕事を終えたいのだが……
「ん?」
そのとき、ラングラーの目に何かが映った。
ドア枠の右、2〜3メイルのところがじわりと黒ずみ始めたのだ。
黒ずみはどんどん大きくなり、やがてぶすぶすと煙を上げ始めた。
「コゲてる……のか? さっきの火のメイジのアマが何か考えてやがるってか……なら!」
そこにJJFの腕を向け、一発鉄クズを撃ち込む。
放たれた鉄クズはコゲた壁を簡単に貫いて、ビシッと音を立てた。
どうやら向こう側の壁に着弾したらしい。
人には当たらなかったようだ。
やがて壁はメラメラと炎をあげて燃えはじめ、それからしばらくして壁は崩れ落ちた。
それによって開いた穴は縦1メイル、幅1メイルほど。
崩れた壁の先にはやはり誰もおらず、向こう側の壁が見えるだけだ。
「……何が目的だ? ただ穴を開けて、それで何をしたい?」
ラングラーが半ば呆れかけた直後、
ゴォッ!
壁の目の前に、赤く燃えさかる炎の壁が出来た。
炎の壁は高さ2メイル、幅2メイルほど。
焼け落ちてできた壁の穴をすっぽりと覆って余りあるほどだ。
「穴を開けて、壁を作って……ワケがわからんな……目的が見えない」
炎の壁をつくったのはいい。
確かにそれでこっちからは手出しができなくなる。
だがあんなに激しく燃えていては、向こう側からも何もできないだろう。
「絶対に壊れない」ホワイトスネイクのDISCなら炎の壁を突破できるかもしれないが、
バカ正直に飛んでくるDISCを食らってやるほどこっちもバカではない。
第一ホワイトスネイクはドアのところにいるのだから、その可能性は間違いなくゼロだ。
そう思った時だった。
ボン!
炎の壁の数10サント先の床が小さく爆発した。
本当に小さな爆発だ。
火薬の量で言えば、手持ち花火に詰まってる程度の量が爆発したぐらいのものだ。
しかし。
「な、何だと!?」
慌ててラングラーはそちらに腕を向けた。
さっきと同じだった。
向かいの部屋のドアをぶっ飛ばした、ワケの分からん爆発と同じだった。
前触れもなく、突然起きる謎の爆発。
さっきの爆発はホワイトスネイクが何か仕込んだものだとばかり思っていたが、
今回は何もない場所で爆発が起きた。
「爆発、だと……一体どういうことだ?
種も仕掛けもないハズだぞ…………」
粘っこい汗がラングラーの額を伝う。
タイムリミットまであと2分。
とうとう、逆転の狼煙が上がった。
To Be Continued...
支援
爆発がそう来たか。
ええい頭脳戦の最中だと続きが読みたくてうまく感想が言えん!
乙です!
661 名前: ゼロのスネイク 改訂版 [sage] 投稿日: 2008/11/05(水) 21:56:55 F0IDHUXM
投下完了
次でとうとうラングラー戦は決着です
いやー長かった長かった
前は投下一回で終わったのに、とんでもない量に膨れ上がってしまった(前のも相当多かったけどね)
なんか最近、「ゼロ魔の最新刊が出たら本気出す」みたいな心境になってる気がする
こういうとこ変えていかないとなー
スネイクさんも代理の方も乙でした!
次が楽しみで仕方ない!
乙!!
これは面白い戦いだ!!!
次回に期待チョー期待!!
>>299 「書きながら投下」するなんて能力があるわけないでしょう
ファンタジーやメルヘンじゃああるまいし
他に作者さんがいなかったら今すぐ投下します
覚悟はいいか? オレはできてる
おおスネイク支援
15話
燃えさかる炎の壁の前で、ルイズは杖を構える。
この壁はただアイツの弾丸を防ぐだけではない。
炎が作る強烈な光は、私の姿さえも隠してくれる。
だからアイツにはわたしの姿は見えない。
わたしの爆発が一体どういう仕組みで起きるのかは、アイツには分からない。
ここから頼りになるのは自分の記憶力と集中力だ。
壁が焼け落ちて穴があいて、それをキュルケが炎の壁で覆うまでのわずか数秒に、
キュルケの手鏡で確かめた、床中に広がるガレキや燃えカス、消し炭の位置。
大きさとか材質は何でもいい。
問題はそれがどこにあるかだ。
それが生命線になる。
まず狙うのは、炎の壁から一番近くて、狙いやすい場所。
そこに転がっているガレキだ。
炎の壁はアイツの視界を遮るが、同時に自分の視界も遮っている。
記憶を頼りにあたりを付けて、おぼろげに見えるものをそれと決めつけてやるしかない。
大丈夫、杖の先に自分がそれと思うものさえあれば、理論上は魔法はかけられるはず。
支援色の波紋疾走!
白蛇支援
支援
マンハッタン・支援スファーッ
よょしゃー 今日はオン・タイム!
「錬金」
蚊の鳴くようなか細い声で、しかし確かにルイズは呪文を唱えた。
込めた魔力はほんのちょっぴり。
成功すれば、小さな爆発が起きるハズ。
いけるか――
ボン!
やった!
成功したんだ。
失敗魔法だけれど、それでも確かに爆発してくれた。
今のルイズにとっては、それで充分だった。
そう喜ぶのもつかの間、ルイズは次に錬金をかける対象を探す。
狙いは今錬金をかけて爆発させたガレキの、さらに向こうに転がる燃えカスだ。
炎の壁のせいで、視界はすごく悪い。
本当におぼろげで、かすかにしか見えない。
記憶にある、手鏡が写した位置を頼るしかないくらいだ。
どうか、成功して。
そう祈って、ルイズは再び杖を構えた。
支援ランチャー
クレイジー・支援モンド
ほんの一分前まで、ラングラーはただ一つのことしか考えていなかった。
すなわち、「どうやってホワイトスネイクを殺すか」である。
火のメイジの女のことはあまり大きくは考えていなかった。
真空でガードしながら接近し、一発くれてやればそれでケリのつく相手だと見ていた。
だが、今は違う。
何故か壁を焼いて開けられた穴。
何故か穴を覆う炎の壁。
そして、何故か起きた爆発。
いずれも、戦局にどう関わってくるのかが全く読めない。
穴に関しては、開いて得するのは主にこっちだ。
穴さえあればそこからいくらでも跳弾を送り込んでやれるのだから。
炎の壁はそれを防ぐためのものなんだろうが、ハッキリ言って無駄だ。
確かに炎の壁はこちらの攻撃を阻止するが、火力が強すぎて穴の向こう側からの攻撃も通さないだろう。
つまりただ開けた穴を塞いだのと同じなのだ。
なので、この二つは全く無視してしまっても問題なかった。
だが、爆発は無視できない。
何故、一体どういう仕組みで爆発が起きたのかがそもそも分からない。
先ほどのドアを吹き飛ばした爆発と同様に、
メカニズムの全く分からない現象は多くの危険が付きまとう。
できればあの爆発には近づきたくないものだ、と思っていたその時、
ボォン!
再び爆発が起きた。
爆発したのは、炎の壁から約一メイルの床。
さっきより、ラングラーに近い場所だ。
しかも今の爆発は、さっきのそれより大きい。
「こっちに……近寄ってきたのか……?」
じり、とラングラーが下がる。
この正体不明の爆発に対して、ラングラーは明確に恐怖を感じていた。
支援カッター
「うまく、いった……」
自分を励ますようにぽつりと呟いて、また杖を構え直す。
次から次へと、より遠くにあるガレキや燃えカスに錬金をかけなければならない。
そうでなければ、アイツに対するプレッシャーにならないから。
ルイズが考えた策。
それは、自分の爆発を利用してラングラーに過度のプレッシャーを与えること。
先ほどキュルケの部屋のドアを吹き飛ばすのに成功したように、
ラングラーは自分の爆発のメカニズムを知らない。
当然だ。
どんな魔法を使っても失敗して、それが爆発になるようなヤツなんて、自分以外にいるハズがない。
だからこそプレッシャーをかけられる。
そうルイズは考えた。
もちろん、ただ爆発を起こすだけではアイツもちょっと警戒するだけで終わってしまう。
プレッシャーをかけるには、それがラングラーに対して確実に危険なものだと思わせなければならない。
そのための、だんだん近づいていく爆発地点と、どんどん大きくなる爆発の規模だ。
付け焼刃の策だなんて事は自分が一番よく理解してる。
それでもやるしかない。
そう言い聞かせて、記憶にあるガレキの位置とおぼろげに見える影とを符合させ、呪文を唱える。
「錬金」
だが――
「ば……爆発、しない?」
失敗したのだ。
記憶が間違っていたのか、それとも見えている影が違ったのか。
いずれにしても、錬金はかからなかった。
人間賛歌は支援の賛歌!
(ど、どうしよう、どうしよう!
失敗なんてそんな、ウソでしょ?
せっかく覚えたのに、どこが間違ってたの? それとも見えた影が違ってたの?)
思わずパニックになるルイズ。
それほどまでに彼女は失敗を恐れていたのだ。
失敗によって生まれる間は、キュルケへの大きな負担となる。
炎の壁を維持し続けるのはキュルケの役目だし、
おまけにキュルケはラングラーの弾丸の「呪い」のために、あと1分と少しで死んでしまう。
ラングラーに対するプレッシャーまでもが弱まってしまうかもしれないのだ。
この作戦はラングラーがどれだけ爆発に対して恐怖を感じるかに全てがかかっている。
ラングラーが爆発を「自分にとって危険ではない」と思うのならば、
さらに言えば、「爆発は多少無視してしまっても構わないものだ」とでも思ったのなら、
その時点で作戦は破綻する。
そうなったなら、それで終わりだ。
キュルケは死に、ホワイトスネイクは敗れ、そして自分も……。
(お、落ち着くのよ……落ち着かなきゃ。
もう失敗はできないんだから、次こそは、次こそは絶対に成功させないと!)
ルイズは震える手で杖を構える。
もう失敗できない。
絶対成功させないといけない。
絶対に、絶対に、絶対に、絶対に……。
僅かなタイムロスさえも危険を生むこの状況である。
ルイズが自分を責めるのは仕方ないこと。
そして彼女が自分自身を追い詰めることも、また仕方のないことだ。
だが、これでは。
そのときだった。
ホワイトスネイクが、すっと足を半歩だけ前に出した。
あまりに露骨で、目立つ一歩だった。
そして、まるでルイズの心中を察したかのようなタイミングでの一歩だった。
支援って今さ!
目ざといラングラーはそれを見逃さず、
ドンドンドンッ!
鉄クズをホワイトスネイクに撃ち込んだ。
放たれた鉄クズは一直線にホワイトスネイクへと向かい、そして叩き落とされる。
単純に真正面から飛んでくるだけなら、ホワイトスネイクであればどうにでもできるのだ。
「……ドウシタ、ラングラー? 跳弾ガ飛ンデ来ナイヨーダガ……撃チ忘レカ?」
「とぼけたツラして抜かすな……この爆発……お前が仕組んだのか?」
背中がじわりと湿るのを感じながら、ラングラーは問う。
「……クククク……サテ、ドーダカ……」
「ホワイトスネイク、テメー……」
ラングラーが焦りに顔をゆがめる。
爆発が襲って来ない分で失われるはずだったプレッシャーは、ホワイトスネイクが着実に取り戻した。
そして、ちらとホワイトスネイクの目がルイズに向けられる。
一週間前に自分を見た、失望の目ではない。
覚悟に満ちた、座った目だ。
それでいて、どこか温かい目だ。
その目を見て、ルイズはホワイトスネイクの言いたいことを理解した。
「オ前ニ、任セル」
少しだけ安心した気がした。
ルイズは、杖を構える。
炎の壁の向こうの影。
記憶に刻んだ、ガレキの場所。
その二つをもう一度符合させる。
どれがより完全に一致するか、どれが本物のガレキか?
そして見極め、呪文を唱える。
「錬金」
支援薄いよ、なにやってんの!
(どうした……? 爆発が、止んだぞ。
ただのハッタリだったってのか? それとも……一体何だ?)
ラングラーが、爆発に対して疑いを持ち始める。
あれは自分にとって大したものではないのではないか。
恐怖し、危険視する必要なのないのではないか、と。
そのラングラーに、ホワイトスネイクの声がかかる。
「オット、私バカリ見テテイイノカ? ラングラー」
ドォン!
「爆発が、近ヅイテクルゾ」
さらに爆発。
絶妙なタイミングだった。
距離は炎の壁から――いや、ラングラーから6メイル。
基準をラングラーに変えたのは、炎の壁よりもラングラー側に爆発の位置がズレできたからだ。
爆発の規模は先ほどのそれよりさらに大きくなった。
(う、ウソだろう……爆発が、また始まりやがった!
しかも、さっきより近い! さっきより大きい爆発だ!
一体どんなルールでこいつは起こっている? 一体どんなメカニズムだ?
考えろ、考えろ!
爆発するたびに距離が近くなって、爆発の規模まで大きくなっていやがる!
このまま俺のとこに来たら、一体どれだけの爆発になるんだ?
俺はそれを避けられるのか? 防げるのか? 逃げられるのか?)
視認不可能な爆発攻撃……確かに凶悪な攻撃だ支援
「規模モサッキヨリ大キイナ……オ前ノ所ニ辿リ着ク頃ニハ、ドレダケノサイズニナッテイルノカナ……。
クククク……スゴク……楽シミダトハ思ワナイカ?」
ドォオン!
「ナア、ラング・ラングラー」
さらに、爆発。
ラングラーからの距離5メイル。
さきほどの爆発から10秒と経っていない。
かなり近い感覚での爆発だ。
(決着ヲツケルツモリダナ、ルイズ……急ゲヨ、時間ハ残リ30秒ヲ切ッタ)
「ハァー、ハァー、ハァー……そ、そんな……バカな……そんなバカな!」
ドゴン!
また爆発。
ラングラーからの距離4メイル。
さっきの爆発から、僅か5秒の間隔。
「う、ウソだ……こんなものが、こんなワケの分からんものがあるわけが……」
ドッゴォン!
さらにまた爆発。
ラングラーからの距離3メイル。
さっきの爆発からの感覚は、また5秒。
見えない蛇(スネイク)が這いずりながら近づくように、爆発地点はラングラーへと着実に近づいていた。
4つの支援虫
「ほ、ホワイトスネイクッ! お前が仕組んでるんだろう! 俺には分かってるんだ!
こ、こんなもので、このオレを攻撃しようとするなど、弱っちいテメーにお似合いだぜッ!
く、クソッ、来るなッ! オレに近寄ってくるんじゃあねえッ!!」
ドンドンドンドンドンッ!
後ずさりしながら、ラングラーが爆発の起きた地点に弾丸を撃ち込みまくる。
しかし、
ドッゴォオンッ!
さらにまた爆発。
ラングラーからの距離2メイル。
間隔はまた5秒。
見えない蛇ではない。
見えない、そして「無敵の」蛇が、舌なめずりしながらラングラーに迫る。
「クソがァーーーーーーーーーッ!!」
ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンッ!!
ヤケクソになって弾丸を撃ちまくるラングラー。
しかし、
ドッグォンッ!!
爆発。
ラングラーからの距離、1メイル。
ついに、1メイルまで来ていた。
蛇は鎌首をもたげてラングラーを睥睨し、今まさに飛びかからんとしている。
ラングラーはさらに後ろに下がり、とうとう壁に背がついた。
もう逃げられない。
こいつは追ってくる。
俺を吹き飛ばしに、追ってくる。
もう、ホワイトスネイクどころじゃあない。
「ハァー、ハァー、ハァー、ハァー、な、何が……一体、何が、オレに近づいて……」
ザ・ニュー支援
その瞬間、
「『一手』遅レタナ、ラングラー」
突然頭上からかかる声。
はっとして見上げた瞬間、
ズギュン!
ホワイトスネイクの指が、ラングラーの額にめり込んだ。
模様の浮かんだ白い魔指は、ズブズブとおぞましくラングラーの脳を弄り、
魔指の主たるホワイトスネイクの下半身はドロドロになって壁に溶け込んでいた。
まるでナメクジのような、ヒルのようにな、溶かしたその身でガレキの陰や壁を這いずって、
いつの間にかラングラーの頭上まで来ていたのだ。
これがホワイトスネイクの液化能力。
その身をドロドロに溶かし。自由自在に壁を移動することを可能とする。
また溶かす対象はホワイトスネイクだけに留まらず、それゆえにこの能力はさらなる応用を持つのだ。
脳髄に氷を流しこまれたかのように、ラングラーの全身に鳥肌が立つ。
身体はぴくりとも動かない。
声も上手く出せない。
だが耳は聞けた。
目も動いた。
その眼を必死に動かして、驚愕した。
(バカな……そんな、まさか……)
あり得ないことが起きていた。
信じられないことが起きていた。
(ヤツは……ここで、オレを攻撃しているのに……何故……)
(何故ヤツが入口のところにいるんだ!?)
ラングラーの眼は、薄笑いを浮かべて入口に立つホワイトスネイクの姿を、確実に捕えていた。
ホワイトスネイクは、確実にラングラーに攻撃しているというのに……。
「て、てて、て、めえ……おれ、に、な、にを……」
「ナアニ、大シタコトジャナイサ」
そう言ってホワイトスネイクはゾッとするような笑みを浮かべ、
「全部貰ッテイクダケダ」
ラングラーの脳から、2枚のDISCとともに指を引き抜いた。
奪い取ったのは「記憶」と「スタンド」のDISC。
ラングラーにとっての全てはラングラーの手を離れ、ホワイトスネイクの手に収まった。
ラングラーの首ががくんと折れて、棒きれのように倒れていく。
ホワイトスネイクはその首根っこを引っ掴んで捕まえると、
窓から出て行って、
「久シ振リダガ、上手クイクカナ?」
楽しそうにそう言うと、ラングラーの体を思いっきり投げ飛ばした。
空中に投げ出されたラングラーの体はしばらく女子寮の壁と平行に飛んで、
ぐしゃっと鈍い音を立てて壁に接触した。
ラングラーの体はそのまま落下するかにみえたが、
ズボンの裾が壁の装飾に引っ掛かって逆さづりにぶら下がった。
吊られた男(ハングドマン)の一丁上がりだ。
これは10年ほど前に、記憶とスタンドを奪ってやった後に出来上がる廃人をどう処理するか、
プッチと話し合ったときに思いついた方法だ。
ホワイトスネイクは適当なところにぶら下げてイカれた文句の二つ三つでも加えてやれば、
気違いの猟奇犯の仕業にでも見えるんじゃないかと適当に言ってやった。
そうしたら意外にもプッチが同意したのでやってみたところ、これが中々上手くいったのだ。
しかし、自分たちが疑われずに済んだだけで世間の方はバカみたいに騒いでまわったため、
同じことを2回、3回とやったらそこらじゅうで防犯意識が高くなり、かえってやりづらくなってしまった。
吊られた男作戦はそれっきりだったので、これが実に10年ぶりの復帰となるわけだが、
思いの外上手くいった。
やはり自分自身の「記憶」に刻まれている方法ならば、
そしてスタンドとしての精密動作性をもってすれば、何年経ってからやってもうまくできるものだ、
とホワイトスネイクは感慨深く思った。
後始末も終わったところで、ホワイトスネイクは室内に戻る。
「モウイイゾ」
ホワイトスネイクの声とともに、炎の壁は溶けるようにして消えうせた。
そして、最初に開けた壁の穴からもぞもぞと二人が這い出てくる。
「お……終わった、のね……」
そう真っ蒼な顔で言うのはキュルケだ。
「か……勝ったの? わ、わたしたち、本当に?」
そしてルイズが心配そうに言う。
「アア、終ワッタシ、勝ッタ。戦イハコレデ終ワリダ」
ホワイトスネイクはボロボロの体でそう言いながら、別のことを考えていた。
支援ッ!
(オカゲデ私ノ策ヲ使ウ必要ハナクナッタ)
そう、ホワイトスネイクは元々ラングラーに勝つための策を用意していた。
にも関わらずそれをやらなかったのは理由がある。
(一ツハ、ハッタリデ相手ノ注意ヲ逸ラス、トイウノガホンノチョッピリ盲点ダッタッテコトダ。
ヨクヨク考エレバコノ世界デ魔法ヲ使ッテ爆発起コスヤツナンテルイズシカイナイノダカラ、
『ルイズの魔法が爆発を起こす』ッテコトサエバレナケレバ最高ノハッタリニナルノニナ。
マタ音デ他ノ生徒ガ起キル、トイウリスクハ『爆発の音を小さくする』コトデ解消デキタ。
ソシテコレハラングラーニプレッシャーヲカケル一手段サエナッテイルノダカラ……マッタク、ヨク考エタモノダ)
ルイズが考えた策は、ホワイトスネイクから見てもできすぎたくらいに上出来だった。
だから、それを理解した瞬間に彼が最初に用意した策はどこかに消えてしまっていたのだ。
(ソレニ、私ノ策ヲヤルニハキュルケガ『時間切れ』ニナル必要ガアッタカラナ……。
確実ダッタコトニハ変ワリナイガ、リスキーデアッタコトモマタ確カダ。
ヤラズニ済ンダノハヨカッタ事ト考エルベキカナ)
ホワイトスネイクの考える策は、
「キュルケが無重力化して、その影響が出る領域に自分とラングラーが入ること」が前提条件だった。
つまり……
(私ハ『キュルケが死なず、しかし確実にダメージを受けて無重力化する』ヨーニ仕組ンデイタワケダ)
ホワイトスネイクはそうなるようにキュルケを射線から逃がしていたのだ。
何故とか、どうしてとかいう言葉はここでは意味をなさない。
「勝つために必要だったからやる」のがホワイトスネイクなのだ。
支援支援支援支援支援
(シカシ、詰メヲ私ニ頼ッテイルノデハマダ甘イ。
オマケニソノ頼リ方モ乱暴ダ。
『多分気付カナイカラ、ソノウチニ襲ッテクレ』トイウノデハ、希望的観測ニスギル。
オカゲデ私ハ液化能力ドコロカ『残像』マデ使ウハメニナッタンダカラナ……)
とはいえ、
(私ノ策ハ事態ガ良イ方向ニ転ガルキッカケニナッタシ、全クノ無駄デハナカッタ。
ソシテ戦イニハ勝利シタ。ヒトマズハコレデ良シトスルベキカ)
そうホワイトスネイクは、心の中で締めくくった。
一方、
「あー、そう……とりあえず、医務室に行きたいわね。
それで、ぐっすり眠りたいわ……。
あんなに魔法つかったの久々だし……」
そう言ってふらふらと歩くキュルケの後に、のそのそとフレイムが続く。
フレイムも、この策に一役買っていた。
キュルケが担当した炎の壁。
キュルケはそのために、ギリギリまで精神力を切り詰めなければならなかった。
無論、壁を焼いて穴を開けるための魔力さえも。
そのために、フレイムにその部分を担当させたのだ。
もちろん、フレイムにはキュルケの部屋の壁を焼き落として穴をあけて出てきてもらっていた。
入口から堂々と出たらラングラーの目に留まるので、それは避けなければならなかったからだ。
支援した!
支援するだぁーっ!
ぼくの名前は支援ポリオです
「……ルイズ」
唐突にキュルケがルイズの名を呼んだ。
ルイズに背を向けたまま名を呼ぶ態度に、眉をひそめてルイズは答える。
ホワイトスネイクもそちらを見た。
「……何?」
「『ゼロ』にしてはなかなかやるじゃない。
ちょっと、見なおしたわ」
一瞬間があって、それからルイズは誇らしげに笑みを浮かべ、
「当然よ! わたしを誰だと思ってるの?
わたしはルイズ・ド・ラ・ヴァリエールなんだから!」
そう言って、ふふんと薄い胸を張る。
キュルケはそれに振り向かずに、
「……ふふ、それ自慢になってないんじゃない?」
「な、なんですってえ!?」
「はいはい、分かったわよ。
今日は疲れてるから、また明日にしてくれる?」
そう言ってルイズをいなして、キュルケはまたふらふらと歩いて行った。
その後ろ姿を見て、
(人間トハ、相モ変ワラズ回リクドイモノダ)
ホワイトスネイクは前の世界と変わらない人間の在り方にため息をつき、
「何よキュルケったら。せっかく勝ったのに『認めてあげるわ』ですって?
ふんだ、もう大変なことになっても助けてあげないんだから……」
ルイズはキュルケの態度に若干の憤りを示し、それと同時にみるみるうちにその感情をしぼませた。
オレは『支援』なんだああああ!
支援ハートアタック
支援ビズキット
「ルイズ、ドウシタ?」
「……これ」
「コレ?」
「お父様に買ってもらったベッドも、お母さまに買ってもらった箪笥も、お姉さまに貰った化粧台も……」
「アア、全部消シ炭ニナッタナ」
「ああ、じゃないでしょうがああああああああッ!!
どうするのよこれ! 全部で一体いくらすると思ってるの!?
「知ラン」
「知らん、じゃないわよ! もとはと言えばあんたが指示したことじゃないの!
ああどうしよう、このことが知られたらどれだけお父様やお母さまに、いや、お姉さまもすごく怒るわ!
ああどうしよう、どうしよう、どうしよう……」
「命ハプライスレスダ」
「何上手いこと言った気になってるのよ!!」
「気ニスルナ。ジョークダ」
「笑えないわよ!」
「慰メニナラナカッタカ?」
身体はボロボロのくせに、もういつもの調子でホワイトスネイクはルイズをからかい始めていた。
ルイズも本当なら傷だらけのホワイトスネイクを気遣ってあげるつもりだったが、
色も未来もお先真っ暗な室内とホワイトスネイクの態度で堪忍袋の緒が切れた。
支援スター卿
「……ちょっとあんた、そこに直りなさい。修正してやるから」
「オ断リダ。私ハ少シ休ム」
「ダメ。あんたには誰がご主人様で、誰が使い魔なのかを教育してやる必要があるもの。
そこに直りなさい。……そうだ、いいものがあるわ」
妙に座った声でルイズはそう言うと、炭化した抽斗から何かを取り出した。
ルイズはそれを手に取り、軽く空中で振るう。
ピシャッ、と心地よい音がした。
鞭である。
しかも乗馬用の鞭だ。
その品質と耐久性は推して知るべきものがある。
「……何スル気ダ」
ため息混じりに尋ねるホワイトスネイク。
「何って、決まってるでしょ?」
ピシャッ、ピシャッと鞭を鳴らしながら一歩ずつルイズは近づき、
「しつけの悪いバカ蛇を、たぁ〜〜〜っぷりと教育してやるのよ!!」
突然鬼のような形相に変わって、鞭を振り上げるッ!
だが――
「付キ合ッテラレルカ」
鞭が当たる直前にホワイトスネイクはフッと消えた。
自分で自分を解除して、逃げたのだ。
うまくやるものである。
人間ではこうはいかない。
「こらっ! バカ蛇! 逃げるな! 出て来なさーーーいッ!!」
ルイズはやみくもに鞭を振るうが、ホワイトスネイクが出てきそうな気配は全くない。
結局ルイズは、日が昇るまで鞭を片手にあちこちを歩き回るハメになるのであった。
To Be Continued...
久々にさるに引っかからないで投下完了
支援ありがとうございました
これにてラングラー戦は終了です
まあ、ラングラーだしね
まだフーケとかワルドとかいるし、ジョジョキャラからも出したい奴はいるし、
ここで苦戦しすぎるのもちょっとどうかな、と思ったのでアッサリめにしてみました
次の投下も早いうちにやりたい
乙でした!!
いやー面白かった!バトルにルイズの特性が生かされてるし、最後がまさかの幻影と溶解能力とは!!
そしてキュルケにワザとたまを当てていたスネイクの冷血さ・・・
スネイクをタップリと堪能できたって感じがする!!
我がザ・ワールドは今日も絶好調だが、今まで通りに他に作者さんがいなかったら今すぐ投下する
覚悟はいいか? オレはできてる
16話
明くる日の朝。
教師から今日何度目かになる報告を受けて、オールド・オスマンは深いため息をついた。
一つ目の報告は、昨晩、何者かが女子寮の一室に侵入したこと。
オスマンはそれに飛びあがって仰天し、すぐに誰が被害を受けたのかを調べさせた。
そして、主な被害者がルイズ・ド・ラ・ヴァリエールであることが分かったのが二つ目の報告。
幸い彼女自身に大きなケガはないが部屋が丸焦げのボロボロになっていて、
また襲われた彼女に助太刀したキュルケ・フォン・ツェルプストーが軽傷を負ったことも報告された。
それを聞いたオスマンは、すぐに侵入者をひっ捕らえてここまで連れて来い、とその教師に指示した。
3つ目の報告――妙な男が女子寮の外壁に吊るされている――が入ったのは、その直後だった。
その吊られた男をモートソグニルに見に行かせ、
彼(モートソグニル)の眼越しにその男がどういう状態かを確認したのがついさっきだ。
男は全く口が聞けない状態になっていた。
とはいっても死んだわけではなく、かといって生きているとは到底言い難い状態だった。
つまり廃人になっていたのである。
「はてさて……こいつは果たして本当に侵入者なのか、というところが問題じゃな」
「何故ですか? 侵入者は一人、吊られた男は一人で、この男が犯人なのは間違いないでしょう?」
そう聞くのは秘書のミス・ロングビルだ。
「モートソグニルもそう言うとったよ。
じゃがの、口が聞けん以上あれが侵入者だと確認する術がないんじゃよ」
「全く関係ない人間を廃人にして、オトリとして置いて行ったと?」
「それも考えられる、ということじゃ。
ま、選択肢の中の一つでしかないから重きを置く必要はないんじゃが……確認だけはしておきたくての」
しえんだッ
そう言ってオスマンはまたため息をつき、
「……ところで、まだミス・ヴァリエールは見つからんのかの?」
「その報告は受けておりません。
ですが、何者かに連れ去られたセンは薄いでしょう」
「と言うと?」
オスマンが眉根をあげて尋ねる。
「仮に侵入者が二人以上いたとするならば、一人だけに戦闘を任せておくような真似はしないでしょう。
おまけに侵入者は予想外の援軍――ミス・ツェルプストーからも攻撃を受けていた。
二人いたなら、ここでもう一人でてきてもおかしくありません。
ですが、結局侵入者は倒されるまで一人で戦い続けた、とのことです」
「なるほど、筋は通っとるのう」
「教師の皆さんがその辺りを探していらっしゃいますから、そのうち見つかるのではと」
ロングビルがそう言った途端、
「み、ミス・ヴァリエールが見つかりました!」
教師が駆けこんできて報告を伝えた。
実に本日五度目である。
オスマンは教師の顔をちらと見て、
「御苦労さん。ついでにもひとつ頼むが、ミス・ヴァリエールをここまで連れてきてもらえるかね?」
そう指示して、またため息をついた。
支援
「今日はため息が多いですね」
「まったくじゃよ。
今日はフリッグの舞踏会じゃというのに、まったく朝からこんな大事が起きるとはのう……。
おお、そうじゃミス・ロングビル」
「何ですか?」
「君は舞踏会には出んのかね?」
「いえ、事務が残っておりますので」
「そうか……どうりで下着が白い」
ボゴァッ!
「ぶげぇッ!」
オスマンの右頬にロングビルの全体重を乗せた、ジェロム・レ・バンナばりの左ストレートが突き刺さるッ!
椅子から飛ばされたオスマンは頭から壁に激突し、そのままズルズルと崩れ落ちる。
そこにッ!
ボゴッボゴッドガッガッガキッバギッ!
鉄鎚、パウンド、ヒザ蹴りの猛追撃!
五味隆典のそれを彷彿とさせる鬼の追撃は、
カメになって耐えるオスマンのガードもなんのその、一心不乱に打ち続け――
「ミス・ヴァリエールを連れてきました!」
ノック一つせず教師は入ってきたが、その時すでに二人は1分前の状態に戻っていた。
オスマンは学院長の机に肘をついて頭をかき、ロングビルは何か物書きをしている。
まさに職人芸である。
shien
「よろしい、君は戻ってもいいよ」
そう言って教師を帰すと、入れ替わりにルイズが学院長室に入った。
だが何か様子がおかしい。
「……あ〜、ミス・ヴァリエール……君が手に持っとるのは……」
「鞭です」
しかも乗馬用の鞭である。
それを片手に、ルイズは鋭い目つきで周囲を見回していた。
まるでモグラ叩きを始める直前のように、その眼はせわしなく動き回る。
「なるほど……鞭かね。
まあとりあえず鞭はおいといて、昨日の晩に何があったかを話してくれるかね?」
「不届き者が侵入して、家財道具が全部黒コゲになりました」
そう言いながらもルイズは周りへの警戒を怠らない。
いつ「何か」が出てきてもいいように、鞭も両手でしっかり握っている。
「あ〜……それは災難じゃったの。
じゃが……ミス・ロングビル」
「はい」
ロングビルが杖を取り出して、それを軽く振った。
すると、ルイズの手から独りでに鞭が離れ、空中を飛んでロングビルの手に収まった。
「あっ! ちょ、ちょっと、何するんですか!」
「鞭はお預けじゃ。それよりも重要なことがあるからの。
あ、ミス・ロングビルは席をはずしてくれたまえ」
「かしこまりました」
そう言ってロングビルは部屋を出る。
鞭は手に持ったままである。
その後ろ姿に、何だか妙に鞭が似合っていたな、と若干背筋に寒いものを感じたオスマンだった。
「じゅ、重要なこと、ですか?」
「ああ、そうじゃ……ホワイトスネイク君、出てきてもらえるかね?」
オスマンがそう言うと、
「オ呼ビカナ?」
不敵な笑みを湛えて、ホワイトスネイクが現れ――
ドグシャアッ!
た瞬間だったッ!
丈夫な高級皮靴を纏ったルイズの踵が、ホワイトスネイクの足の小指に叩きこまれるッ!
「グオォッ……」
「ふふん、鞭さえなければ大丈夫だと思ったの?
油断したわね、ホワイトスネイク!
鞭が無いなら無いで、ちゃんとどうするかは決めてあったのよ!」
びしっと指を突きつけて勝ち誇るルイズ。
ホワイトスネイクはそれを、若干殺気のこもった眼で睨み返す。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……と、空気が威圧的に振動し始める。
支援!
支援YYYYYYYYY!!!
「オ前……私ト知恵比ベヲシタイラシイナ……」
「へ?」
「私ヲ嵌メルッテ事ハ、ツマリソーイウコトダ。楽シクナッテキタナ……スゴク楽シクナッテキタ」
「いや、えっと、その……」
何だかヤバい感じになってきたことを理解するルイズ。
自分が小指だけでなく地雷まで踏んづけてしまったことを悟ったのだ。
「そこまでじゃ」
不意にオスマンの声がかかる。
「主人と使い魔同士で仲良くするのは構わんが、そいつは後にしてくれ。
わしは君らの話が聞きたかったんでのう、ミス・ヴァリエール。そしてホワイトスネイク君よ」
「……ソレデ、話トハ?」
ホワイトスネイクが訝しげに尋ねる。
「君なら分かっとるハズじゃろう?」
「……確カニ、人間ヲアンナザマニ出来ルノハ、ソンナニ多クハイナイナ」
「ちょ、ちょっと待ってください、オールド・オスマン!
わたし、二人が何を言ってるのかが……」
話を読めないルイズが、間に割って入る。
「まあ、ミス・ヴァリエールはそうじゃろうな。
順を追って説明しようかの」
オスマンはそう言って、ゆっくりと立ち上がった。
支援!支援ぅ!
「一週間前じゃ。
君のホワイトスネイク君とギーシュ・ド・グラモンが決闘した。
勝ったのはホワイトスネイク君、負けたミスタ・グラモンは意識不明の重体になった。覚えておるかの?」
「……はい」
覚えているに決まっている。
あの日が今の自分のきっかけなんだから。
あれだけ誰かを許せないと思ったのも、あれだけ誰かに勝ちたいと思ったのも、あの日が初めてだったのだから。
「結局ミスタ・グラモンは君がくれた光る円盤……『でぃすく』じゃったか?
それを額に差し込むことで、完全に回復した。
今は元気に二股、三股かけとるらしいぞ」
そう言ってオスマンはにやっと笑った。
つられてルイズもくすっと笑う。
ホワイトスネイクだけは笑わずに無表情で立っていた。
「まあかくしてミスタ・グラモンは回復したわけだが……もう一人、回復しとらん男がいる。
そいつは今朝、女子寮の壁につるされ取るのを見つけられての……誰だか分かるかね?」
「もう一人って……まさか、あんた!」
察しの悪いルイズも流石に気付いた。
昨日部屋の中からいなくなっていた不届き者――ラング・ラングラーの姿が見えないと思ったら、
意識不明――つまりホワイトスネイクに記憶を取られ、おまけに女子寮に吊るされていたとは!
「……今更気付イタノカ」
「当たり前じゃないの!
わたしはてっきりあんたがあいつをぶん殴ってやっつけたのかと思ってたのに……、
ああもう、いくら相手が悪党だからってやっていいことと悪いことがあるわよ!
あれ返してあげないと死んじゃうんでしょ? すぐ返してきなさいよ!」
事情をようやく理解したルイズがぎゃあぎゃあと喚き立てる。
(これで、確認は取れたの。
あれは間違いなく、ラング・ラングラーじゃというわけか。
……『魔法殺しのラングラー』をあんなザマにするほど、こやつは強いのかね……)
騒がしい空気の中、オスマンは一人冷徹な思考で考える。
「ソウハ言ウガナ、ルイズ。人間喋リタクナイ事ハ中々喋ラナイモノダ」
「答えになってないわよ!」
「オ前ノタメニ分カリヤスク言ッテヤルト、尋問ナンテDISCサエ調ベレバ事足リルンダ」
「だからどういう……」
「一つ確認したいのじゃが、いいかね?」
オスマンがルイズの言葉を遮って言う。
我はついに書き込んだぞ!!支援の二文字を!
「何ダ?」
「君が今言った『でぃすく』とやら……その中に入っているのは何じゃ?」
「記憶ダ。ソイツガ今マデニドウ生キテ、何ヲ思ッタノカ、ソノ全テノ記憶ガ記録トシテ詰マッテイル」
「なるほどな……だから尋問せずともそれを覗けば、そいつの知っとること、思っとることが全部分かるわけか。
それを奪われたら、廃人同然になってしまうのも、それがそいつにとっての全てじゃから……か」
そこで言葉を切ってオスマンは考え込む。
そしてしばらくした後、
「もう帰ってええよ」
「え? い、いいんですか?」
「もうワシの聞きたいことは聞けたからの」
「で、でも、記憶は返さないと……」
「そこんところはホワイトスネイク君と相談して決めるんじゃな。
ワシとしては、あのまま廃人になってたんじゃ後から来る王宮の使いがうるさいから、
どちらかといえば返してやってほしいと考え取るがね」
「は、はあ……」
「まあ君らの好きになさい。ワシはそれでいいと思っておるよ」
そう言って笑うオスマンに、ルイズは困惑しながら学院長室を後にした。
それと入れ替わりに、廊下で待っていたロングビルが中に入る。
「ホワイトスネイク、聞いたでしょ?
すぐにアイツに記憶を返してきなさい」
「マア待テ。セッカク奪ッタンダカラ、中身グライハ拝見サセテモラウサ」
「……見たら返しに行くわよ」
「是非トモソウシヨウ」
ホワイトスネイクはそう言うと姿を消した。
ルイズはそれを見届けると、ため息一つついて歩き出した。
支援
実にッ!実に支援だった!
「どうかなさいましたか?」
渋い顔をして椅子にもたれかかるオスマンを見て、ロングビルが声をかけた。
彼女は容赦がないときは容赦がないが、そうじゃない時は細かいところにも気の回る人なのだ。
「ワシは王宮に仕る身じゃが、それ以前に教師じゃ。
だから、たとえそれが間違っとっても、役所仕事はできんわい」
「……オールド、オスマン?」
「ん? ああ、ミス・ロングビルかね」
「オールド・オスマン、どうかなさいましたか?」
「いや、何ともないよ。だたの独り言じゃ」
そう言って椅子を回し、オスマンは窓の外に目をやった。
(果たしてホワイトスネイクを生かしておくのは正しかったのか、正しくなかったのか。
いずれにしても、今始末しておけばよかったと思う時がいつか来る……。
それでも……)
また椅子を回して、抽斗からパイプを取り出す。
(それでもわしは、今あの子からホワイトスネイクを奪うことの損失の方が、大きいように思うのじゃよ)
パイプに火をつけ、いざ吸おうとしたその時、ひょいとパイプが宙に浮いた。
浮いたパイプは空中を飛んで、ロングビルの手に収まる。
さっきの鞭と同じ要領だ。
ちなみにその鞭はまだ彼女の手にある。
「……年寄りの数少ない楽しみを奪わんでくれるかね」
じろりと横目でロングビルを見るオスマン。
「オールド・オスマンの健康管理をすることも、私の仕事の一つです」
その目線を一切気にすることなく、ロングビルはぴしゃりと言った。
sien
支援ェエエン!
鞭で叩かれて悶えるオスマン支援
「まったく……そういうことをされると、ワシの楽しみはこれしか」
ピシャァン!
「っつぅッ!!」
オスマンが伸ばした手に、間髪入れずに鞭が叩き込まれた。
手を伸ばしたのは言うまでもなくスケベな目的のためである。
ロングビルもそれを重々承知しているから鞭で叩いたのだが、
「い……今のは、今のは痛かった……」
痛みで思わず椅子から転げ落ちるオスマン。
何せ乗馬用の鞭である。
SM用ではない。乗馬用だ。
皮が裂け、肉が破れるその痛みは想像を絶する。
ロングビルはしばらくそれを眺めた後、
ピシャッ! パシィン! パァン、スパァァンッ!
オスマンの体をしこたま鞭で引っ叩いた。
「ちょ、ミスロングビル! 痛っ、やめ、痛いから! ぎゃあッ!!」
いつもとは明らかに異なる悲鳴を上げるオスマンを見て、さすがにロングビルも手を止めた。
「……かぁ〜……き、効いた…………」
「……乗馬用の鞭ですからね。
これでは加減も効きませんし、あとでミス・ヴァリエールに返してきましょう」
「是非とも……そうしてくれたまえ。あ〜、しかし痛い……」
「自業自得です」
「そうは言うがのう……」
ロングビルの冷たい視線を避けるように、オスマンは床に突っ伏して手をさすっていた。
今誰かが入ってきたら、流石のオスマンも椅子までは戻れないだろう。
ヴァイオレンスな日常を維持するためには、それなりに節制を加えることも必要なのだ。
To Be Continued...
GJ!
これは…
ルイズは制裁にラングラーの記憶とか見せられるんだろうなぁw
そしてSM自重ww
投下完了
さるに引っかからない投下は実にスガスガしい!
支援感謝します
久しぶりに戦ってないシーンを書いた気がする。
やっぱりこういう何でもない感じが一番書きやすいですね
あとロングビルはいつのまにかK−1ファイターでPRIDE戦士な具合になってしまいましたが仕様です
え? フーケ戦はどうしたって?
あ〜、その、なんだ…………次回にご期待ください
GJ!!!
ルイズマジに地雷踏んじまったぞwwww
スネイクさんの今後の動向に期待www
そしてオスマン…勝算はあるのだろうか?学院内に居る限り、どこに居ても幻覚の射程内な気がする。
投下乙&GJ!
ラングラー戦が終わり、日常が一旦戻ってきた?
馴れ合い掛け合いにほのぼのとしたものを感じる。
フーケ戦があるのかどうか、それも楽しみにして次回を待ってるぜ!
とんでもない規格外な存在だよな、白蛇さん。
オスマン先生はルイズとホワイトスネイクの行く末をどう想像してるんだろう。
乙す!
他に作者さんがいないのなら、今日も今すぐ投下する
覚悟はいいか? オレはできてる
17話
「悪いわね、タバサ。部屋貸してもらっちゃってさ」
「気にしてない」
「でもキュルケは来る必要ないじゃない。
あんたの部屋はまだ大丈夫だし」
「でもドアがないし、壁に穴だって開いてるわ。
とてもレディーの住める場所じゃないわよ」
「わたしのとこはドアもなければ壁に穴も開いてるし、
おまけに部屋の中は全部真っ黒焦げよ。
あ〜あ……誰のせいかしらね」
「それをいうなら、あたしの部屋のドアはどこの誰にぶっ飛ばされたのかしら?」
途端に両者の間に流れる空気が剣呑なものになる。
すかさずタバサは杖を振って、「サイレント」の呪文を唱えた。
タバサの部屋に二人が来たのは、昼ごろだ。
ルイズとキュルケが賊と戦ったという話はタバサも聞いていたので、
「いる部屋がないから、中に入れてほしい」と言われて断る理由は無かった。
だが部屋の主人はあくまで自分である。
激しい罵り合いをそのままにしておいては自分も本を読んでいられなくなるので、
魔法で強引に静かにさせた。
タバサがサイレントを唱えた後も、二人は罵り合いを続け、
両者が杖を抜いたところでとうとうホワイトスネイクが止めに入った。
部屋の椅子に腰かけてラングラーの記憶のDISCの中身を見ていた彼も、
当初は好きなようにさせるつもりでいた。
だが魔法を使っての戦いになったのではさすがに好きにさせるわけにもいかない。
ルイズでは100%確実に負けるし、それにTPOから言ってもタバサに多大な迷惑がかかる。
前に出会い頭にツララを何発か撃ち込まれて以来、ホワイトスネイクはタバサを警戒していし、
もっと言うならばあまり関わりたくないと思っていた相手だったが、
一応の、そしてとりあえずの、さらに成り行き上やむを得ずに従ってやっている主人が世話になっている以上、
やりたいようにさせるわけにもいかないからだ。
ふと、タバサは横目でキュルケが自分に何か言っているのを見た。
もう言いあいも終わっているようだったので、タバサはサイレントを解除する。
「タバサ、今日の舞踏会はどうするの?」
やっぱり解除しない方が良かった、とタバサは少し後悔した。
支援祭り
支援せずにはいられないっ!
「あんた、確か昨日もそんなこと言ってたわね」
「当然よ! ああ、今年は何人の男の子と仲良くなれるのかしら。
今から楽しみでしかたないわ!」
キュルケはキラキラしたオーラを振りまきながら雄弁に語る。
彼女の美貌なら、きっと1ダースほどの男の子を集められるだろう。
「ええ、そうでしょうね」
「同感」
ルイズとタバサは棒読みで同意する。
「あなたたちはどうするの?」
キュルケがキラキラオーラを二人に向ける。
「食べる」
そう答えたのはタバサだ。
「た、食べるって……男の子を!?
ああタバサ、あなた随分積極的になったのね……」
「違う。食べ物の方。
私は人食いじゃない」
タバサは呆れ半分で否定する。
「あっはっはっは! タバサったら、本当は何の事だか分かってるんじゃないの?」
キュルケはげらげら笑いながらタバサの肩を叩く。
キュルケが言った「男の子を食べる」とは、性的な意味で男の子を襲ってしまうことだからだ。
当然タバサがそっちを考える筈はない。
キュルケもそれを知った上で言っているのだ。
タチの悪いことである。
「ところで、ルイズは?」
話の矛先がルイズに向く。
「わたし?」
「そうよ。あなたはどうするつもりなの?」
ルイズは少し考えて、
「……行かないかも」
そう答えた。
「な、何ですっ「何ダト?」」
キュルケが驚きの声を上げ――
「……今の声」
3人が同時に一方向を見る。
その先にいたのは、
「ルイズハ舞踏会ニハ行カナイノカ?」
ホワイトスネイクである。
舞踏会の話題になってから、ずっと椅子に座ってDISCを見ていたようだ。
おまけに足まで組んで、大変リラックスしていたところらしい。
支援せずにはいられないッ!!
「……何であんたがその心配を「あらダーリン! あなたも舞踏会に行きたかったの?」」
訝しげなルイズの声を遮って、キュルケの甲高い声がホワイトスネイクにかかる。
「ソウダ。舞踏会トイウカラニハ、必ズソノ土地ノ文化ガ現レルンダロウ?
音楽トカ、美術トカ、舞踏トカ……私ハソレヲ見タイノダ」
「あたしと踊るのはどう?」
「生憎トダンスハ心得テイナクテナ」
「あら、大丈夫よ。
あたしが手取り足取り教えてあげるから」
そう言ってウインクするキュルケ。
「考エテオコウ」
ホワイトスネイクはそれだけ言った。
「ちょ、ちょっとホワイトスネイク! そこは断る所でしょ!」
面白くないのはルイズである。
自分が行かないと言っているのに使い魔は行きたいというし、
おまけにライバルの女の子と踊る約束までしかけているのだ。
「ソレグライハ私ノ好キニサセテモライタイモノダガ」
「ダメよ、絶対ダメ!
っていうかあんた、私の半径20メイルから離れられないんじゃないの?
わたしが行かないなら、あんたも行けないことになるじゃない!」
「ソコハ私ナリニ解決策ガアッタノダ」
「どっちにしてもダメよ!
ダメって言ったら、ダメなんだから!」
完全に癇癪を起しているルイズ。
ホワイトスネイクは少し考えて、
「何デ行キタガラナインダ?」
「別に、大した理由があるわけじゃないんだけど……」
「大シタ理由ジャナクテイイカラ、言ッテミロ」
「……やっぱり言いたくない」
駄々っ子ルイズに、流石のホワイトスネイクもため息をついた。
「聞き方が気に入らないのよ!
あんた、いっつも上から目線だし、今だって『聞いてやるよ』って感じだったじゃない!」
「…………」
(ツマリ、言イタクナイッテ事ダナ)
もはや言うべきことは何も無かった。
キュルケはやれやれ、といった表情でルイズを見ているし、
タバサに至ってはまたサイレントの魔法を使いそうだ。
もうこの場にいることはないだろう。
「ルイズ、先程『アレ』ヲ見オワッタ。
今カラヤツニ返シニ行クカラ、一緒ニ来テクレ」
「あれって……ああ、あれね」
DISCの中身が記憶であることは、ルイズとホワイトスネイク、それとオスマンの間だけでの秘密である。
他人の記憶を自在に覗けるってことは、あまり人に知られたいことではないからだ。
「じゃあ、わたしは用があるから行くわ」
「そう、じゃあね」
「また今晩」
そう言ってルイズは部屋から出て、二人はその小さな背中を見送った。
ホワイトスネイクは何も言わずにその背中に続く。
「……それで、あんたは記憶を見て、何か見つけたの?」
「アア、大変ナ収穫ダッタ」
「何があったの?」
見上げるルイズの眼を見下ろし、ホワイトスネイクは、
「敵ノ首謀者ノ情報ダ」
自信ありげに、そう答えた。
支援
「首謀者の情報?」
「ソウダ。ラングラーハ自分カラアンナ危険ヲ侵スヨウナ男デハナイ。
確実ナ利益、確実ナ報酬ガ引キ換エニデモナッテイナケレバ、マズ動カナイヤツダ」
「ってことは……雇い主がいる、ってこと?」
「ソノ通リダ。中々頭ガ回ルヨウニナッテキタナ、ルイズ」
「いちいち褒めないでいいわよ。なんか腹立つから」
「ソレハ残念ダ」
「それで……分かったのは、その雇い主の情報なの?」
「ソウダ。ダガソイツモマタ、誰カニ雇ワレテイルラシクテナ……」
「そ、そこまで分かっちゃったの!?」
「推測ノ領域ヲ出テイナイガナ。ルイズモ見ルカ?」
「見るって、記憶を?
い、いいわよ、わたしはそんなの!」
「ダガルイズヲ襲ッタ連中ノ情報ダ。
自分ノ事ナノダカラ、ソレグライハ自分デ知ロウトスルベキダト思ウガナ」
ホワイトスネイクの言うことには一理あった。
確かにそう言われると、知っておきたくなる。
「そうね。じゃあわたしも見てみようかしら」
「イイ心ガケダ。デハ……少シ待テ。再生ヲ開始スル場所ヲ探ス」
そう言ってホワイトスネイクはDISCを額に挿す。
394 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/09(日) 00:21:46 ID:wBjEAA0z
ここは支援させて頂くッ!
「ココカラ再生開始ダ」
少ししてから、ホワイトスネイクがDISCを頭から引き抜いた。
「貸しなさい」
ホワイトスネイクが差し出したDISCを、ルイズはあえて乱暴な態度で取った。
さっきはちょっと怖がらされちゃったけど、
これからは誰が主人で誰が使い魔なのか、きっちり教育してやるのだ。
こいつにはまだ勝ってないし、だからこそ勝ちたい。
でもその前に、最低限のことだけは叩きこんでおかねばならない。
それが上下関係であり、どっちが上でどっちが下かって話だ。
アイツは「半年間は使い魔でいてやる」と自分から言った。
なのにアイツはわたしの言うことをちっとも聞かないし、
おまけにわたしに指図までする始末!
使い魔はご主人さまより下だし、ご主人様は使い魔の上に立つ。
そんな基本の基本の基本さえ、アイツは分かっちゃいないのだ
だから、教育する。
これはその第一歩。
由緒正しきヴァリエール家の三女として、あのナマイキなホワイトスネイクに、キッチリと教えてやるのだ。
首を垂れるのはどっちなのか、ってことを!
そう張り切って、いざDISCを頭に差し込み――
『空気はおまえをあたしの方に吹き戻してくれてるぞォォォォッ!!
オラオラオラオラオラオラオラオラオラ
オラオラオラオラオラオラオラオラオラ
オラオラオラオラオラオラオラオラァーーーーーーッ!!!!』
そのまま、ブッ倒れた。
使い魔教育は第一歩から踏み外し、頭から落っこちるハメになった。
To Be Continued...
投下完了
本当になんでもない話なので申し訳ないです
次の投下で原作一巻までの流れが一応終わる予定
ん? フーケ戦がない?
デルフも買ってない?
……善処します
激乙
やだちょっとこの白蛇ときめくじゃあないか……
よくやったGJをくれてやろう
GJ
白蛇黒くて可愛いよww
GJだ
白蛇の仕返し、ディ・モールトGJだ
素朴な疑問なんだがデルフからディスクってとれるのかな?
記憶だからとれるんじゃね?
>一応の、そしてとりあえずの、さらに成り行き上やむを得ずに従ってやっている主人が世話になっている以上、
>やりたいようにさせるわけにもいかないからだ。
さりげなく書かれてるけど、酷っ!
でもまあホワイトスネイクだし、仕方ないよね。
>「た、食べるって……男の子を!?
キュルケも相変わらずだ…。
>使い魔教育は第一歩から踏み外し、頭から落っこちるハメになった。
そりゃ踏み外すよそんな記憶見たら!
ホワイトスネイクの態度が面白くてGJです。
20分ごろから投下します。
支援
GJ!!!
舞踏会に行きたいスネイクが可愛いと思ったw
最後のオラオラでは吹いたwwwwww
最初に見た記憶がこれじゃトラウマに成るぜwwwww
406 :
仮面のルイズ:2008/11/09(日) 01:21:39 ID:aRczu4Er
空に浮かぶ『白の国』アルビオン。
ルイズとワルドがアルビオンから脱出した時、アルビオンはトリステインから南西、ガリアから南南西を漂っていた。
アルビオンを流れる川の水は滝となって岸壁から流れ落ち、風により極小の粒へと形を変えて巨大な雲を作りあげる。
雲は風に乗って移動し、気流によって形を変え、ハルケギニアへ降り注ぐ恵みの雨となる。
その雨の中に、一組の男女の姿があった。
滝に紛れた二人は、『イリュージョン』で作り出した『誰もいない景色』に隠れてアルビオンを離れていった。
周辺を哨戒する竜騎兵や、小型船、またはメイジの使い魔の目を欺き、トリステインを目指して飛び続ける。
ぶるっ、とワルドの体が震えた。
「寒いの?」
ルイズが小声で問いかける。
「ちょっとな」
と答えたワルドだが、先ほどからワルドは何度か体を震わせており、体もかなり冷えているのが解った。
「ごめんね…私の体、冷たいでしょう」
「いいや、心地良いぐらいだ」
ルイズはワルドの首に当たる風を遮ろうと、両袖で首を覆った。
船を用いずアルビオンから地上へと降りるには、グリフォンや龍に頼るのが普通であった、大きな翼で風を受けて滑空する彼らに乗れば、無駄な体力を使わず容易にトリステインまでたどり着けただろう。
しかし、二人にはそれを手配する暇も無いので、ワルドの『フライ』を使ってトリステインを目指している。
アルビオンがハルケギニア上空に浮遊している時ならまだしも、海上を漂う時期に『フライ』のみで帰還するのは難しい、トライアングルクラスでも自殺行為と言われている。
しかしワルドは『風』のスクエアであった、『風の遍在』を複数、長時間、長距離で維持する自身の力に自負があった。
だがスクエアといえど、風を遮る障壁を作りながら飛ぶのは難しいく、『フライ』のみに集中しなければならなかった。
冷たい風を遮る風の魔法すら、彼は節約せねばならなかったのだ。
ルイズはワルドの背中にしがみつき、吸血鬼の眼であたりを警戒する、竜騎兵はいない…使い魔らしき影もない。
ふと空を見上げると、空に浮かぶ月は寄り添って淡く輝いている。
足下に広がる雲は、二人の影を一つにしている。
「だいぶ、雲が少なくなってきたな」
「ええ、陸地が見えるわ」
「…僕には、ぼんやりとは見えるが、まだ海と陸の境界線が見えない」
「吸血鬼は夜目が利くのよ」
ルイズの言葉に何か感じるものがあったのか、ワルドはククッ、と小さく笑みをこぼした。
「なあに?」
「吸血鬼と聞いて、少し面白くなってね。 吸血鬼を背に乗せて飛び続けるなんて、この世界できっと僕だけだろうな」
「何よそれ」
「風のスクエアと吸血鬼、僕としては、なかなか悪くない組み合わせだと思ってるよ」
ルイズは体を動かし、ワルドの耳元に口を近づけた。
「ふぅん……悪くないかしら、ね」
「本音を言えばな、僕は君の力に憧れているし、君のあり方にも憧れている。でも、僕が吸血鬼になったとしたら、君のように力に振り回されず生きる自信はないよ」
「スクエアというだけで僕は鼻を高くしていた。それが間違いだった。僕は、僕の仕えるべき主に出会えたと思ったんだ。君ならば僕をよく使ってくれるとね、そう思ったのさ」
ルイズは、恐る恐る手に力を込めた。
吸血鬼の力ではなく、人間としての力で、女の子の力で、ワルドの体に強くしがみついた。
「ワルド、私も、力に振り回されてる」
「かもしれない。でも僕には、君が眩しい」
「………」
ルイズはじっと黙って、ワルドの呟きを反芻した。
トリステイン魔法楽員を離れてから、日陰に生きるつもりでいた自分に、眩しいという言葉を投げかけられてしまった。
その言葉は、自分の言葉が、自分の想像を超えた影響力を持ってしまったと気づかせる鋭い一言だった。
ルイズは胸のあたりに、締め付けられるような痛みを感じた。
407 :
仮面のルイズ:2008/11/09(日) 01:22:42 ID:aRczu4Er
朝日が遠くの空に姿を現した頃、二人はガリア北端の海岸に到着した。
「……ッ…」
「ワルド?」
どさり、とワルドが膝をつく。
ルイズが慌てて体を支えたが、ワルドは震える足で砂浜を踏みしめるばかりで、足を進められない。
「とりあえず、背負うわ。砂浜を抜けましょう」
「すまない…」
ひょいとワルドを背負うと、ルイズは適当な木陰に向かって走り出した。
ガリアの海岸は、粒子の荒い白砂がどこまでも続いている、内陸へとしばらく走っても背の低い草が生えるばかりで、あまりにも見通しが良すぎた。
「まずいわね」
ルイズは、ワルドを背中から下ろすと、右腕に力を入れた。
右腕の骨に隠した杖を、筋肉を捜査して掌から露出させると、ズリッ、ズリッという肉を引き裂くような音が聞こえた。
杖を掲げ、自分を中心に半径3メイルほどの『誰もいない草原』を思い描く。
「…………………………」
長い詠唱の後、杖が振り下ろされ、草原からワルドとルイズの姿がかき消えた。
「う……」
ワルドは頭痛のあまりうめき声を上げたが、その声すら痛みとなって頭に響いていた。
ガンガンと叩きつけるような、締め付けられるような痛みが襲いかかる。
しかし、額には不思議な冷たさがあった、頭の奥から感じる痛みを吸い取ってくれるような、優しさが伝わってくる気がした。
「ワルド、大丈夫?」
隣から聞こえてきたルイズの声に驚き、ワルドは、ハッと目を覚ました。
「……ルイズ …ああ、すまん。ここはまだ、ガリアか?」
額に感じられた冷たさは、ルイズの手だった。
ルイズは、ワルドの右隣で横になっていた。左半身を下にして右手をのばし、ワルドの額に当てている。
ワルドは体を起こそうとしたが、ルイズに止められた。
「イリュージョンで姿を隠してるから、立ち上がったら見つかるわ」
「そうか……僕は、どうなった?時間は?」
「一時間も経ってないわ。砂浜に降りてすぐに意識を失ったのよ」
「そうか。時間を取らせてすまない。もう大丈夫だ、トリステインに急ごう」
そう言ってワルドが体を起こそうとする、だが酷い汗と乱れた呼吸は、とても大丈夫だとは思えない。
「ルイズ、急ごう」
ワルドに急かされる、ルイズは腑に落ちない。
「ルイズ。心配してくれるのは嬉しい。だけどボクの体力も回復した、国境の警備を越えるには十分な距離を飛べる」
「…わかったわ」
ルイズの心から理不尽な自己嫌悪がわき起こった。
自分が苦しむのは覚悟している、しかし、ワルドのように自分に協力してくれる人を苦しませるのは、とても辛い。
かつて父であるヴァリエール公爵は、人を仕わせるとは、道具を使いこなすのと同じだと語ってくれた。
道具の価値を生かすも殺すも、その主人次第であると言いたかったのだろう。
父は多少のメイドの失敗にも声を荒げることはなかった、そういった注意や失跡は執事長の仕事であり、権威の象徴たる公爵がいちいち口を挟むことではなかった。
その失敗も成功も当然のものとして、涼しい顔でいられるような度量の広さを見せ、まさしく揺るぎない絶対的なものを演じていた。
ワルドの信頼に答えるには、絶対的なものとして振る舞わなければいけない。
だが、魔法学院にいた頃のルイズと違い、今のルイズはそれが無かった。
家を捨て魔法学院を出奔した頃から、ルイズは人の上に立つものではなく、遠くから人を眺める者になってしまったのだから。
408 :
仮面のルイズ:2008/11/09(日) 01:23:44 ID:aRczu4Er
ルイズは辺りを見回した、生き物の姿、特にメイジの使い魔を警戒して、遠くの空まで目を懲らした。
見た限りでは、何もいない。
ワルドをひょいと背中に乗せると、ルイズが呟く。
「言っておくけど、貴方を使い潰す気は無いわよ」
そして早馬のように駆けだした。
「ルイズ、君は」
「何?」
「君は優しいな。こんな僕にも…」
「止めてよ。風邪で弱気になってるのよ、貴方は」
「そんなことじゃ無い、きみは僕よりも小さいのに。まるで、子供の頃、乳母に背負われた……」
草原に届く潮風が、小さな呟きをかき消した。
一方そのころ、トリスタニアの王宮ではアンリエッタが執務を行っていた。
「はあ…」
「ダメですぞ」
ため息をついただけなのに注意された。
アンリエッタは不満げな表情で、声の主を見る…するとそこにはアンリエッタ以上に渋い顔をしたマザリーニ枢機卿がいた。
「謁見の間ならともかく、女王にはため息一つ許されないと言うのですか?」
「まあ、諸侯の前でため息をつかれては、いらぬ波紋を呼びますからな」
「………」
アンリエッタは唇を少しへの字に曲げて、不満げな視線でマザリーニを見た。
不機嫌の理由は、大きく分けて二つある。
一つは、謁見や勅書などの通常の執務に加えて、戦時下における様々な仕事がのしかかってきたからであった。
新造されるトリステイン空軍の戦艦やら、遠征軍における貴族子弟の所属と待遇やら、捕虜となっていたアルビオン軍の登用やら……実に様々。
本来なら信頼の置ける者にある程度の権限を与え代理人とし、重要度の低い仕事を分散処理できるのだが、リッシュモン高等法院長を逮捕した件でそれができなくなっていた。
マザリーニがあらかじめ重要度別に仕事を分散し、アンリエッタの仕事量を減らそうとしているが、それでも睡眠と食事の時間が大幅に削られていく。
リッシュモンに代わる、信頼の置ける者を登用しなければなあ…と、マザリーニが心の中で呟いた。
ふと、アンリエッタが筆を止めた。
「ねえ、枢機卿。貴方はため息をつきませんの」
「付いたところで何も事態は進みません」
「そうですわね……しかし事態を進めるには、人が水を飲むように、草花が朝露にぬれるように、潤いも必要ではありませんこと?」
「そんな顔をしてもウェールズ殿下にはお会いできませんぞ」
ウェールズとも、殿下とも一言も漏らしていないのに、マザリーニはアンリエッタの心中をぴたりと言い当てた。
これが不機嫌の理由その二『ウェールズに会えない』であった。
「十分に承知していますわ。……ああ、近くに居ても会うことが叶わないなんて、本当に残酷ですわね」
まるで歌劇のように手を広げ、胸の前で組み直すアンリエッタ。
それを見て、マザリーニはため息を……つかなかった。
「アルビオンに孤立され、生死不明でいる時より恵まれております、堂々とお会いするためにもアンリエッタ女王陛下におかれましては執務に励まれるのが最良かと」
「わかっていますわ」
ぷいと不満げに顔をそらし、アンリエッタは軍務尚書の書簡に目を移した。
仮面 キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
支援!支援!支援!
410 :
仮面のルイズ:2008/11/09(日) 01:24:42 ID:aRczu4Er
ふと、顔を上げる。
執務室の天井に下がるシャンデリアが、まるで空に浮かぶアルビオンのようだと思った。
「ねえ、マザリーニ」
「は」
「シャンデリアがまるでアルビオンのようね」
「は?」
「今、あそこには、家族や友達に近づくことができても、再会の叶わぬ、わたくしのお友達がいるのです」
マザリーニは、それがルイズのことだと直ぐに理解できた。
アンリエッタはシャンデリアから書簡に目を移した、体に活を入れるため、はしたないことだが、大きく口を開けて深呼吸をする。
「私のお友達が、必死に頑張っているんですもの、私がしっかりしなくてどうするのですか」
アンリエッタの真剣な顔を見て、マザリーニは数日ぶりに笑みを浮かべた。
同じ頃。
王宮の奥にある、窓のない部屋で、ウェールズと数人のアルビオン貴族が執務をこなしていた。
他国の王族格が宿泊する際に使われる部屋であった、無駄に部屋を広げず、アーチ状の天井と調度品を組み合わせることで、格調の高さと堅牢さを兼ね備えている。
入り口は、鎧を装着した栄士が剣状の杖を掲げて通り抜けられるほどで、幅は大人三人が横に並んでも余裕があるほどであった。
木材の質感と重厚さを兼ね備えた茶褐色の扉は観音開き式で、中に入ると絨毯が途中で右手に向かって伸びている。
部屋の広さは奥行きが20メイル、は16メイルほど、幾つかの部屋と繋がっており、寝室やゲストルーム、遊戯室まで備えていた。
しかし今は、この部屋はアルビオンの領土、トリステインにその立場を保証された小さな領土であった。
最も奥の部屋にウエールズがいた、固定化で強固に魔法抵抗を施された衝立(ついたて)に囲まれ、その手前では秘書役の貴族が棺桶のような大きな机に羊皮紙を広げていた。
書簡のチェックを終えると、おもむろに立ち上がり、ちりん、と小さなベルを鳴らした。
「何だ?」
「サミュエルです。先月中に亡命を希望した者のリストにお目通しを願います」
「わかった、目を通そう」
サミュエルと名乗った秘書は、衝立の脇から中に入り、ウェールズの机に書簡を置いた。
「……確かにこれは気になるな。この×印は現時点までの自殺者だな?」
「はい、亡命した者に自殺者が多すぎるのです。事情を聴取したところ、罪の意識に苛まれたと言っておりますが」
「精神を操られた者達か?」
「確認は取れていませんが、可能性は高いと思われます。亡命を希望する者は地方太守や、貴族派が突然数を増やした時期の者達です。どうやら……自らの手で、妻や子を手にかけたものが多いようです。」
「……むごいな」
「…はい。尚、平民はサウスゴータ地方の者が特に多く、中には夢見心地で奴隷の扱いを受けていた者が証言をしております」
「サウスゴータか」
ウェールズは疲れが蓄積したせいか、思わず机に肘をついてしまった。
寝不足気味の頭で、タルブ戦前にサウスゴータへと潜入したルイズの話を思い出す。
井戸に投げ込まれた毒、水系統の力、それによって自我を希薄にさせられた町の人々……
「トリステイン軍だけでない、これは捕虜達までも混乱させる。亡命者に対し内部から不満が高まるだろう……逐一監視し、情感へと報告せよ」
「はっ」
「ただし、水系統の毒が用いられ、心が操られたと自覚している者もいるはずだ。それを口実にクロムウェルを恐れることがあっても、水の精霊を必要以上に恐れぬよう、案を頼みたい」
「はっ。承りました」
「それと…紅茶を頼む」
「すぐお持ち致します」
秘書は一礼すると、ウェールズの元を離れた。
待っていました
続きが読めるのは嬉しい
・°°・(≧△≦)・°°・
412 :
仮面のルイズ:2008/11/09(日) 01:27:33 ID:aRczu4Er
「ふぅー…」
衝立に囲まれた、手狭な空間で、ウェールズは一人ため息をついた。
テーブルに両肘をつき、頭を抱えて、目を閉じる。
(トリステインは、戦争に向かっている)
トリステインの中枢で、アルビオンへの侵攻作戦が内々に決定したのは、タルブ戦を終えて一月も経たぬ頃であった。
正式に発布されるのは、魔法学院の夏休みが終わる頃だと言われていたが、魔法学院の生徒らは実家でそのことを聞かされ、既にほとんどの貴族がアルビオンへの遠征を現実のものとして受け止めている。
(クロムウェルが持つ力を恐れ、先手を打とうと、急ぎすぎている……)
何十年か振りに編成されるアルビオンへの遠征軍だが、あまりにも急なことで、王軍は士官不足を喫してしまった。
そのため、貴族学生を士官として登用する案が出された。
アンリエッタやウェールズは、有事に備えた軍事教練として貴族の学生らを登用するつもりであったが、将軍達はむしろ彼らを前線に押し出そうと画策していた。
魔法学院の一部の教師や、学院長のオスマン氏などが学生の登用に反対したが、時すでに遅し。
むしろ生徒の親である、立場のある有力な貴族達が、行き場のない貴族の四男、五男以下の者達に手柄を立てさせるため、登用を望む声があげられたのだ。
皮肉にもその後押しをしたのが『烈風カリン』であった、烈風カリンが参戦するという噂は、瞬く間にトリスタニアの貴族達に広まった。
戦争への後押しをするため、本来漏らすべきではない軍議の一部が漏らされた……。
それによって、多くの貴族が遠征に肯定的な意見を出し、その風潮は平民の兵士や傭兵達にも伝わっていった。
この巨大な流れを積極的に変えるのは、女王アンリエッタや枢機卿マザリーニと言えども難しかった。
(僕の亡命を決意してくれた、アルビオンの仲間達には悪いけれど、喜んでくれたアンリエッタにも申し訳ないけれど……僕が権力争いの道具にされるのは、辛いんだ)
その原因は皮肉にも、トリステインに亡命したウェールズにあった。
年若い貴族を無闇に登用し前線に送ることまかりならぬ、と示すことはできるが、それではトリステインの貴族達が納得しない。
ウェールズは、立場こそアルビオン亡命政権の長であるが、実際の生活は軟禁に等しい。
暗殺を防ぐため、面会や外出のほとんどを自粛せねばならず、アルビオン亡命政権を支援すると、甘い言葉をかける貴族達をも遠ざけねばならなかった。
下品な言い方をすれば、名誉と報償に飢えた貴族達、つまりウェールズに恩を売りたがっている貴族をも遠ざけねばならなかった。
タルブ戦にて『ヘクサゴン・スペル』を用い、華々しい戦果を上げたウェールズに、これ以上の功績があってはトリステイン貴族の取り分が無くなってしまう。
面会を制限したのはアンリエッタであり、彼女も『ヘクサゴン・スペル』を詠唱している。
”このままでは手柄が回ってこない”
そんなやっかみにも似た意識が、貴族達の内に蓄積し、しわ寄せがマザリーニやアンリエッタに向かっているのだ。
だからこそ、軍議の細かい部分にまで口を出すことは女王といえども簡単にはできない。
王軍の将軍たちは自らの指揮官としての手柄のため、勉学は戦争が終わってからだ、とまで言いきり、貴族学生らを登用し、軍事教練を施し始めた。
(その焦りこそ、本当の敵ではないか。 貴族のみならず為政者が警戒すべきものではないか……)
ウェールズはそっとテーブルに置かれた紅茶を、口に出さぬ呟きと共に飲み込んだ。
413 :
仮面のルイズ:2008/11/09(日) 01:28:20 ID:aRczu4Er
場面は移り、トリステイン魔法学院。
ここトリステイン魔法学院では、男性教師のほとんどが戦争に参加することになり、残された少数の教師で授業が行われていた。
戦争が終わるまではまともなカリキュラムでの授業は受けられないだろう。
残っている生徒達もまた、ほとんどが女子であった、トリステイン魔法学院は国の名前を冠するだけあって名門であり、男子の殆どが大貴族の子弟か、地方貴族の後継者格となっている。
そのため彼らは、家の方針として、また自ら志願して、功績を得て自らの食い扶持を少しでもましなものにするために、戦争に参加するのであった。
そんな生徒と女性教師ばかりの魔法学院で、いつもなら「女性ばかりだと華やかで眼福じゃのう〜」と鼻の下を伸ばしながら徘徊するオールド・オスマンが、なぜか浮かぬ顔で紅茶を飲んでいた。
大食堂のロフトは教師の席であり、つまり教師の席であったが、食事の時間が過ぎた今はオスマン一人しかいない。
オスマンはそこで、王宮からやってきた使者の言葉を思い返していた。
「軍事教練のため。魔法学院に銃士隊を派遣する…か、戦争にまっしぐらじゃのう」
オスマンの呟きには不満が感じられた。
魔法学院に残った婦女子に訓練を施すという名目で、銃士隊が派遣されてくるのは理解できる、しかしその裏にある意図が気に入らない。
銃士隊はアンリエッタ直属の近衛兵・親衛隊ではあるが、その一方で諜報機関的な役割も与えられている。
彼女らは権力こそ強くはないが、立場は極めて強固なものになっており、文字通りアンリエッタの手足として各方面の査察に動くことが多い。
ふとオスマンは、リッシュモン高等法院長の事件を思い出した。
ある程度の地位を持つ貴族には、高等法院を司るリッシュモンに、汚職の証拠を突きつけたのが銃士隊であるという噂が流れている。
その噂は正しくもあり正しくもない、リッシュモンを取り巻く金の動きを掴んだのは確かに銃士隊の活躍だが、彼女らはリッシュモンを処刑するつもりで動いていた。
彼女らの素晴らしくも恐るべき活躍を、素直に賞賛できる貴族は少ない。
多くの貴族は、銃士隊の存在そのものを気にしていない。
やましいところがある貴族は、あからさまに銃士隊を罵り、また不自然なほど賞賛している。
トリステインの貴族至上主義のまっただ中にいる陸軍の将軍達、または経験の薄い士官にとって、平民だけで構成された銃士隊は、侮蔑の対象でしかなかった。
銃士隊は女王アンリエッタから信頼されながらも、将軍達にやっかまれている。
本来ならばオスマンも、王宮で将軍達と意見を交わす立場にある。
何十年も昔に勃発した、周辺国家との小競り合いや、古い戦争の歴史に直接関わったのはオスマンしかいない。
しかし、オスマンは早々に今回の出兵に反対し、アルビオンを兵糧攻めすべしと意見書を提出したため、勇猛で知られる将軍達から顰蹙(ひんしゅく)を買う羽目になった。
将軍達から『腰抜け』と評されたオスマンの元に『厄介者』と評される銃士隊がやってくる。
邪魔者は子供を相手にしていろ、と、言わんばかりの態度であった。
「……この様子ではウェールズ殿下も、苦しいじゃろうなあ」
オスマンはそう呟いて、ティーカップを手に取ったが、カップの中身は既に空であった。
支援!
415 :
仮面のルイズ:2008/11/09(日) 01:29:20 ID:aRczu4Er
その少し後、魔法学院の門から馬に騎乗した女性兵の一団が入ってきた、その中にはシュヴァリエの証、刺繍の入ったマントを身につけた者もいる。
アニエス以下銃士隊の面々である。
学院に居残った女子たちは、騎乗した近衛隊の姿に驚き、何かあったのかと首をかしげる。
そんな女子達を横目に、衛兵から知らせを受けたオスマンが現れた、アニエスたちを迎えに出たのだ。
アニエスは数名に周囲を警戒するよう指示すると、残った者達は馬から下りて整列するよう指示した。
アニエスも馬から下り、手綱を部下へ渡し、オスマンの前に出て敬礼をした。
「アニエス以下銃士隊、ただいま到着いたしました」
「お勤め、ご苦労さまなことじゃな」
髭をしごきながらオスマンがつぶやき、アニエス達を魔法学院内へと案内した
アニエス達が魔法学院に入った頃、キュルケやシエスタ達の教室では、コルベールによる授業が行われていた。
彼は教壇に立ち、細い鉄の棒を火であぶっている、『火』の系統を戦いではなく、工作に利用する方法を説いているのだ。
その姿を興味津々な態度で見ている者は少ない、特に火の系統を得意とするキュルケは、わざとらしく、ため息をつくほどだった。
コルベールは最も戦いに向いていると言われる『火』の系統を、戦い以外の場所で活用できると証明したいがために、さまざまな応用を説いている。
しかし聞きようによっては『火は土の補助でしかない』とも聞こえてくる、それは火が格下であると言われているようであり、授業を受ける気など失せてしまう。。
キュルケは机に肘をついて、教室を見回す、するとモンモランシーと目があった。
彼女はそわそわと落ち着かない様子で授業を受けており、その隣に座るシエスタとは対照的だった。
火の系統を用いた加工技術は、平民が用いる溶鉱の技術と比較して説明されることがある、シエスタはそれを一言も聞き逃さないつもりで聞いているのだろう。
モンモランシーがすっと手を上げた。
「ミス・モンモランシ。質問かね?」
モンモランシーは立ち上がる、周りの生徒達はに注目した。
「今は国を挙げての戦の支度を調えていますが、こんな……、のん気に授業をしてていいんですか?」
「のん気もなにもここは学び舎で、君たちは生徒で、わたしは教師だ」
コルベールは落ち着いた様子で答えた。
「でも、クラスメイトが何人も……、先生だって何人も、戦に向かうんですよ」
モンモランシーの隣で、シエスタは空席を見渡した。
即席の訓練を終えた貴族子弟が、すぐに戦地に向かってしまうと聞いてから、モンモランシーはずっとギーシュのことばかり考えている。
それに気づいているからこそ、シエスタも、周りの生徒達も、黙って二人の様子を見ていた。
「だからどうだというのだね? 戦争だからこそ、戦の愚かさを学び、火の系統を破壊のみに使う愚を悟らねばならないのだよ。
さあ勉強しよう。そして戦から帰ってきた男子たちにそれを伝えてやろうではないか」
コルベールはそう言って教室を見回した。
すると、いつもの席に着いてたキュルケが、コルベールを小馬鹿にした様子でこう言い放った。
「戦争が怖いんでしょ」
数人の生徒はぎょっとしてキュルケを見るが、コルベールはさして意に介した様子もなく「そうだ」と言って頷いた。
「わたしは戦が恐い。臆病者だ」
その言葉に呆れたのか、女子生徒からため息がいくつも漏れた。
「でも、私はそのことに不満はない」
コルベールがきっぱりと言い切った。
メンとコルの対決近しか?
417 :
仮面のルイズ:2008/11/09(日) 01:30:33 ID:aRczu4Er
と、そこでカラーン、カランと、普段は聞かぬ調子で鐘が鳴り響いた。
授業が終わる合図でもあるのだが、いつもより早い気がする。
コルベールがコホンと咳払いをして「では本日はここまで」と呟いた。
教材を片付け、教室から出て行こうとしたところで、突然扉が開かれた。
教室に入り込んできたのは、鎖帷子を着込み、腰には長剣と拳銃を携えている女性…女王陛下直属の銃士隊である。
それに驚き、女子生徒達は軽くざわめいた。
「なっ! き、きみは、なん、なんだね?」
震えたような口調でコルベールが訪ねるが、アニエスはコルベールを無視して生徒たちに命令した。
「女王陛下の銃士隊だ。これより魔法学院は有事の際に備え、軍事教練の時間を含めることになった。女王陛下の命令である。その説明を行うので、直ちに正装して大食堂に整列して頂きたい」
女子生徒たちは、ぶつぶつ言いながらも立ち上がり始めた。
アニエスは踵を返そうとしたが、驚いた表情のコルベールを見かけ、ふんと鼻をひくつかせた。
「おまえ…火のメイジか?」
「あ、ああ。そうだが」
「フン……何人焼いた、貴様」
アニエスの表情に苛立ちが見えた。
だがそれは一瞬のことであった、アニエスは吐き捨てるように呟いたが、返事を待たずに踵を返し教室を出て行った。
一人きりになったあと、コルベールは顔を両手で押さえた。
「火は…決して、破壊だけではないんだ…」
自分に言い聞かせるように呟いたそれは、誰にも聞かれることはなく、虚空に消えた。
そういやアニエスは…
もしやさるさん?
さるさんかな
まだ避難所には来てないみたい
まさか…
仮面、仮面ではないか!
423 :
仮面のルイズ:2008/11/09(日) 01:41:39 ID:aRczu4Er
翌日。
トリステイン魔法学院では、早朝から訓練が行われていた。
中庭で整列した生徒達が、点呼のやり方や集団行動の基本などを教えている。
その光景を、本塔の学院長室から見ているのは、オールド・オスマンとアニエスの二名であった。
「優秀な秘書がおりませんでな、仕事がたまる一方ですわい」
「秘書というと、ミス・ロングビルのことですか」
部屋の中央に置かれたテーブルを挟むようにして、六人がけのソファに座っている。
すぐ傍らには『遠見の鏡』が立てられており、そこには中庭の様子が映し出されていた。
「便利なものだな…これがあれば作戦も立てやすくなるだろうに…」
そんなアニエスの呟きに、オスマンがフォフォ、と笑った。
「何、この遠見の鏡が通用するのは、せいぜい魔法学院の敷地内だけじゃよ」
「しかし、王宮では、特にアカデミー関係の研究者からは、貴方は今も恐れられている。”トリステイン全土を見渡している”と」
「それはただの噂じゃ。少し長生きしすぎてのう……教え子達が沢山いるだけじゃ。ま、そやつらの若い頃の失敗談を、ちょいと知っているだけじゃよ」
「なるほど、それは確かに驚異だ。裏の裏まで見通されているようで、さぞかし恐れられましょう」
アニエスが唇を僅かにゆがめて、笑った。
しかし、その瞳は笑っているというより、オスマンを見定めようとしているようにも思える。
「ところで、今日は、昨日の話の続きですかな?」
軽く前屈みになって、アニエスを試すような目で見つつオスマンが切り出した。
するとアニエスは懐から一枚の羊皮紙を出し、テーブルの上に差し出す。
「これは…女王陛下の許可証じゃな。アングル地方ダングルテールの虐殺に関する調査ですか」
「そうです。オールド・オスマンならご存じでしょう。高等法院のリッシュモンが、ロマリアへ媚びを売るためダングルテール虐殺を行い、賄賂を受けておりました」
オスマンはひげを撫でて、ふぅむと呟いた。
「これによって得たロマリアとの太いパイプを利用し、マザリーニ枢機卿の裏を掻いて多額の賄賂をため込んだリッシュモンをはじめ、その関係者を逮捕するのが私の役目です」
二人の視線が交差する、アニエスは得体の知れない老人の鋭い目を見据え、オスマンは冷静を装う復讐鬼を見つめた。
「仇討ちじゃな」
「否定は致しません。ご協力願います」
「かまわんよ、理由はどうあれ、ミス・アニエス…君にはその権利があろう。協力を約束する」
「では後ほど、いくつかの資料を貴方の記憶と照合して頂きたい。私はこれより軍事教練の指導にあたらねばなりませんので」
アニエスがソファから立ち上がり、学院長質の扉に向かって歩き出す。
扉の前に立ったところで、オスマンが口を開いた。
「……ところでミス。君は此度の”総力戦”にどう思われるかね」
アニエスはその場で立ち止まると、少し間をおいてから答えた。
「戦争は避けられません。将軍閣下は非道きわまりないクロムウェルを、早急に討ち滅ぼすべしと躍起になっています」
「ワシは、君に聞いてみたいのじゃが。あくまでも君個人にじゃ。この軍事教練にしても、貴族子弟の登用にしても、あまりにも急ぎすぎではないかね?」
「戦争には男も女もありません、そして時間もありません。逃げまどう暇も無ければ立ち向かう時間もないのです。すべてに平等な死が訪れます。戦争など皆、そうでありましょう」
アニエスは振り返りもせず言い放ち、学院長室を出て行った。
「もったいないのぉ、有能ではあるんじゃが、あれでは王宮で恐れられるじゃろうて」
呟きつつ、オスマンは念力で水パイプを手元に引き寄せる。
「剃刀は、むき出しではいかん。かといって鞘に入っていてもいかん。なまくらに見せかけるのが一番じゃて」
おおっ良かった
PCが飛んだとかを恐れてたよ
425 :
仮面のルイズ:2008/11/09(日) 01:43:20 ID:aRczu4Er
…………遠くから声がする。
屋敷の庭園から抜け出して、外の世界を見ようとした僕を、乳母が追いかけてきた。
視界がとても低く、小さな林も迷い込んだら出られない気がした。
木漏れ日がまるでシャンデリアのようで…ああ、乳母に抱きかかえられ、揺れ動く視界の中で、鳥が飛び立ち、風が頬を撫でて……
「うっ…あ?ここは」
子供の頃の夢から目覚めると、天井には木漏れ日ではなくシャンデリアが下がっていた。
辺りを見回すと、自分がベッドに寝かされていたのが解った。
「お目覚めでございますか。ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド様」
声の主はメイドだった、くすんだ金髪を首のあたりで切りそろえた少女で、12歳ほどにしか見えなかった。
額に乗せられた冷たいタオルもどうやら彼女がやってくれたようだが、ワルドはそれを訝しげに思った。
なぜこんな所に寝かされていたのか記憶のハッキリしない。
「石仮面様より言伝を賜っておりますが」
「…聞かせてくれ」
「『概要は自分が伝えるので、体調が回復次第王宮へ出頭し、細部を報告するように……』」
ルイズからの伝言を聞くと、ワルドは体を起こし毛布をどける。
頻繁に汗を拭き取られたのであろう、全裸の上に吸水性の高いガウンを身に纏った姿で、義手も外されていた。
窓からは夕焼けが差し込んでいる。
「私が運ばれたのは、今朝か?」
「はい」
「君の、所属と名は?」
ワルドが質問する。
「私は銃士隊の身の回りをお世話するよう、アニエス・シュヴァリエ・ド・ミラン様より賜りました、ハンナと申します。今はワルド様のお世話を石仮面様より賜っております」
「そうか。ではハンナ、ここは王宮ではないようだが、何処だ?」
「トリスタニアの、元はリッシュモンというお方の屋敷だと伺いました」
「僕がここに来た経緯は解るか」
「こちらのお屋敷は、銃士隊の方々が調査しておられました。石仮面様は明け方にこちらに現れて、ワルド様の体調が整うまで預けると……」
「わかった。すぐに僕の服と装備を持ってきてくれ」
「ですが、まだお熱が引きません…」
ハンナがワルドを留めようとする。
「君は貴族に仕えたことは無いようだな」
「えっ」
「怖がらなくていい。なあに、貴族は見栄っ張りなものなんだ。”僕はもう治った”。いいね?」
「は、はい。ただいまお持ち致します!」
ぱたぱたと小走りで部屋を出て行く、年若いメイドを見送って、ワルドはほほえんだ。
「まだまだ子供か。メイド見習いといったところか。ふふ、ウエストウッドを思い出すとはな……」
体調はだいぶ良くなっている、少し頭痛はするが、海岸にたどり着いたときとは天と地の差がある。
もうろうとした意識の中で見た、懐かしい夢のおかげか、それとも看病してくれたメイドのおかげか、ワルドは清々しさを感じていた。
支援
427 :
仮面のルイズ:2008/11/09(日) 01:46:07 ID:aRczu4Er
更に数時間後。
場所は変わって、トリステインの王宮、大会議室。
神聖アルビオン帝国の宣戦布告の際、大臣や将軍達を一喝したアンリエッタの姿が記憶に新しいこの部屋に、トリステインの重鎮が揃っていた。
一人遅れてやってきたマザリーニが、奥の席に座るアンリエッタを見る。
アンリエッタが二人いた。
「!? ………ああ、石仮面どのですか」
「そんなに驚くことも無いじゃない」
並んで座るアンリエッタ二人のうち、一人が立ち上がり、椅子を移動させる。
クスクスと笑う二人のアンリエッタを見て、マザリーニは目を細めたが、さすがにため息はつかなかった。
会議室の座席に、秘密会議のメンバーが揃ったところで、会議が始まった。
席順は、奥にアンリエッタ。右列奥からウェールズ、ルイズ。左列奥からマザリーニ、ワルドである。
本来ならアニエスにも参加して貰うところだが、今は魔法学院で軍事教練を行っているため、この場には居ない。
マザリーニはテーブルの上に、幅2メイル以上あるアルビオンの地図を広げて、口を開いた。
「概要は石仮面から聞きましたが。ワルド子爵、細部の報告を」
「はっ」
ワルドは立ち上がると、地図を指さしながら、アルビオンに潜入して得た情報を話していった。
今はアニエスが居ないので、ルイズが身を乗り出し、書記官役をした。
報告内容は、ワルドの遍在が各地に飛んで得た情報や、マチルダの協力者から得たもの、そしてルイズが姿を変えて町中で調べたものであった。
中でも、ルイズが直接確認した兵站の情報は、アルビオンの残存戦力をはかる上で重要度が高い。
しかし報告を終えた後、マザリーニとウェールズは、どこか困ったような顔をしていた。
「枢機卿、何か気になる点でも?」
アンリエッタが問いかけると、マザリーニは恐れながら…と呟き、考えを述べた。
「この情報は戦争を早めるには有効です、しかし、現時点では何の準備も整っておりません。戦争になれば年若い貴族が功績を求め、我先にとアルビオンに上陸しようとするでしょう」
「それは、良いことなのではありませんか?」
アンリエッタが不思議そうに首をかしげた、すると今度はウェールズが口を開く。
「僕もその気概には、大いに賛成するところがある。しかし……」
ぐっ、と口を閉じて、ウェールズが何かを耐えるような表情を見せた。
それがなんだか解らず、アンリエッタはますます不思議がった。
「……自国の民を犠牲にするようだが、トリステインとゲルマニアの連合軍が確実に勝利するには、最低でもあと半年は兵糧攻めにせねばならない」
「そんな…!」
ウェールズの言葉にアンリエッタが驚く。
「ウェールズ様、ですが、ルイズ達の報告では、アルビオンの民は略奪による過酷な飢餓状態で苦しんでいるのですよ」
「それを疑ってる訳じゃない。ただ、この情報を将軍らに開示することによって、トリステインは大儀を得てしまう。
『民を苦しめる邪悪なレコン・キスタ』を討伐するという、より大きな大儀だ。それがいけない。
戦争の準備が整っていないのは、トリステインも同じ、今戦いに赴けば途方もない犠牲を生む。
アルビオンのためにトリステインが疲弊し過ぎれば、それはアンリエッタ…君を糾弾する十分な理由となって襲い来るかもしれない」
アンリエッタが息をのんだ。
「その上殿下をトリステインの傀儡にすべく、将軍らが動くでしょうな……。ウェールズ殿下がアンリエッタ女王陛下と結婚されても、ウェールズ皇太子の実権は認められぬかもしれません」
マザリーニがそう語ると、アンリエッタはがたっと椅子をならして立ち上がった。
「そんな!」
「アン、落ち着いて。これは最悪の場合よ……枢機卿、話を続けて」
ルイズがアンリエッタを落ち着かせると、マザリーニは小さく咳払いをしてから、地図を見た。
支援!
429 :
仮面のルイズ:2008/11/09(日) 01:48:04 ID:aRczu4Er
「残酷なようですが、開戦のタイミングを計らなければなりません。アルビオンの貴族から力を削ぎつつ、民がかろうじて余力を残し、反撃に出られる程度に、です」
マザリーニとウェールズ、そしてワルドによる話が続けられた。
将軍達は、トリステインで建造中の戦艦が完成次第、遠征をすべきだとしている。
しかしマザリーニ、ウェールズ、ワルドの意見は、遠征は早くても3ヶ月後にすべき…であった。
トリステインは、隣国ゲルマニアやガリアに比べて半分以下の国土だが、戦力としてのメイジの数が匹敵している。
帰属主体の国家形成が、歴史に残る優秀なメイジを輩出していた。
ところが戦艦を建造する資源と技術には、秀でていると言い難い、『レキシントン』に搭載された大砲の威力など、トリステインでは再現不可能である。
竜騎兵などの貴重な空の戦力にも、秀でているとは言い難い。
一部の突出した存在により、トリステインは他国に劣ることなく存続してきた。
だが、決して秀でているとは言えなかったのが、トリステインという国であった。
その国内で横行した貴族の腐敗は、貴族達の貴族至上主義を増長させ、結果として平民による第一次産業の低迷を招く。
それによる不満は、タルブ戦の勝利により解消されたかに見えたが、根の深さは計り知れないのであった。
アンリエッタはあることに気付き、愕然とした。
「つまり、トリステインという国は、増えすぎた貴族子弟を間引く時期に来ている…というのですか?」
「……陛下、間引く、という発言はいけません。ただ、歴史は同じ事を繰り返しているのです。
戦争は何度も行われております、小競り合い程度などと言われる者から、大戦と呼ばれるものまで様々です。
しかし、大戦と呼ばれる戦の後には、どの国も如何に疲弊から立ち直るかに苦心しておるのです、その中には汚名を被ってまで国を立て直した王もおります。
この戦争は、最小限の被害で早期に終結させ、なおかつウェールズ殿下に功績を残し主権を認めさせ、その上で民や諸侯の不満を反らすためアルビオンの利権を奪わねばならないのです。
そのために最適な機会はまだ先なのです、アルビオンという国を救う救国の女王となるか、王子にうつつを抜かした悪女と罵られるかは、時の運と言うほか無いのです。
陛下、これはもはや逃れられません……数百年前にエルフと戦い、数えきれぬ損害を出した時とは違うのです、人間が相手なのですから」
アンリエッタはしばらく顔を俯かせていたが、目を閉じたまま顔を上げ、ゆっくりと、自分の視界を確かめるように目を開いた。
「わかりました。私は女王です。自国の民を救わんとウェールズ殿下が苦しんでいるように、私も苦しみましょう。マザリーニ、軍議に私が列するのは、来週でしたわね?」
「はい、そのように承っておりますが」
「数日早めなさい、そして此度ルイズ達が持ち帰った資料を小出しにしなさい。遠征の時期を遅らせます。……これでいいのですね」
「すまない…」
しばらくの沈黙の後、ウェールズが呟いた。
それがアルビオンの民に向けての言葉なのか、それともアンリエッタへの言葉なのか…
おそらく両方だろう。
「では、ルイズ、貴方に任務を与えます」
「はい」
アンリエッタがルイズを見る、ルイズはアンリエッタの姿で頭を下げた。
「魔法衛士から傭兵まで、いかなる身分を用いても構いません。影ながら魔法学院を護りなさい」
「…!」
「もし、魔法学院が襲撃されれば、取り返しのつかぬ事になりましょう。
レコン・キスタのみならず、アンドバリの指輪で操られた者達を恨み…いいえ、アルビオンの国民すべてを恨む風潮となるやもしれません。
アンドバリの指輪が今の世に存在するなど、知られてはならないのです。悪用する者が必ず出るでしょう。
私たちはあくまでも、クロムウェルが人身を操る邪法の使い手だとして葬らねばならないのです。
でなければ…この戦争は、アルビオンとトリステインの、永遠に終わらぬ確執を作ることになります」
ルイズはアンリエッタの言葉に驚いた。
「姫様、そこまでお考えに…」
「皆の知恵から借りただけですわ、ルイズ…貴方には辛いでしょうけど、魔法学院を守って。
アニエス達は将軍達から嫌われているから、きっと将軍達はアニエスのミスを望んでいるわ、そうならないために監査して欲しいのも理由の一つなの」
「…では、すぐに魔法学院に向かいますわ。引き続き陛下から賜った身分証を使わせて頂きます」
「ええ、お願いね、ルイズ」
ルイズが学院に行くのか
容貌を変えるにしてもオスマンに見つからんかのう
431 :
仮面のルイズ:2008/11/09(日) 01:50:19 ID:aRczu4Er
アンリエッタが微笑む。
その表情は少し疲れを見せていたが、疲れを見せて微笑むのは、幼なじみであるルイズだからこそである。
ソレを知っているからこそ、ルイズは嬉しかった。
「僕からも、頼む。君には何から何まで、世話になる…本当にありがとう」
ウェールズの言葉は、自分の力が足りず申し訳ないと言っているようで、どこか力がない。
「私に礼を言うなんて、まだ早いわ。すべては…そうね。戦争が終わってからよ」
「そうだな。どうしても弱気が出てしまう、これじゃかえって申し訳ない」
ルイズはにやりと笑みを浮かべた。
ウェールズとアンリエッタを交互に見てから、マザリーニとワルドに視線を向けた。
「それでは…殿下と陛下におかれましては、引き続き二人で軍議を続けてくださいませ」
「「え」」
マザリーニが避難するような目をルイズに向ける。
「石仮面どの…」
「いいじゃないの、たまには。息抜きも必要よねえ、そう思わない?ワルド」
ルイズが話を振ると、ワルドはひげを撫でながら呟く。
「我が家の故事にこうある。”後は年若い二人で”…という奴かな」
二人きりの会議室で、何が行われたのか、それは十月十日後に明らかになるかも…しれない。
早朝、四時過ぎ。いまだ日は昇らず、空は暗い。
ルイズは顔立ちを変えて髪の毛を金に染め、麻のローブに身を包み、トリステイン魔法学院への道を歩いていた。
背に乗せたデルフリンガーとは、ずっと口をきいていない。
もし、メンヌヴィルが現れたら……そう考えると、どうしてもデルフリンガーが必要になる。
今まで何度もデルフリンガーに心を読まれているのに、今回ばかりはタブーを犯してしまったようで、心を読まれるのが恐ろしかった。
あるいは、心を既に読まれているかもしれないと、恐れていた。
「…早く行かなくちゃ」
そう呟いてはみるものの、魔法学院に行って、どうしていいのか解らない。
あそこにはシエスタがいる。
近くの森に隠れて、監視し続けるべきだろうか?
ふと、足が止まった。
「…早く、行かなくちゃ」
そう呟いてまた歩き出す。
ワルドは会議の後、体調が完璧に回復するまで休むように言ってある。
今頃はリッシュモンの屋敷で水系統のメイジに治癒を受けているだろう。
……そんなことを考えていると、また足が止まっていた。
「早く、行かなくちゃ」
魔法学院の上空に、一隻の小さなフリゲート艦が現れた。
甲板に立つ男は、顔に大きな火傷の痕があり、目は白く濁っている。
艦には、体温のある男が十数名、体温のない男が三名乗っている。
男は光の映らぬ眼でまっすぐに宙を見つめ、不気味に唇をゆがめた。
To Be Continued→
432 :
仮面のルイズ:2008/11/09(日) 01:52:12 ID:aRczu4Er
投下したなら言ってもいいんだよね!?
投下すると思ったときには投下は終わってるんだッ!
とかそんな上手くはいかず、さるさんに引っかかってしまいました。
支援ありがとうございました。
乙です!乙です!乙です!
さてwiki行ってくるぞぅ!
GJ!
やっぱり仮面は面白いなあ
分のところどころに作者がいかに細かいところまで目が行き届いているかが表れてるわ
>>「私は銃士隊の身の回りをお世話するよう、アニエス・シュヴァリエ・ド・ミラン様より賜りました、ハンナと申します」
おいちょっと待て……記憶違いならいいが、「ハンナ」って名前、まさか……
よかった、記憶違いだったらしい
そうだよな、いくらなんでもルイズが屍生人作るわけないもんな……
微妙に1ページに収まらなかったorz
69-1と69-2に分けたけど、69と70にすべきだったかな?
避難所の「まとめwiki総合スレ」で聞くべきか?
GJ!!
ワルドはやっぱりロリコンなのかね
仮面キタ⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y(。A。)!!!
嬉しす
おつでーす!!
仮面の人待ってましたぁ!!
嬉しいさ!!
仮面さんってなんか外国語関係の人な気がする
根拠はほぼない
GJGJ!!
仮面GJ!!待ってました
ルイズがどんどん精神的に追い詰められてる感じで胃が痛い
デルフすら頼れない状況だなんて、かなりやばいのでは
仮面GJ
仮面さん待ってたよ
超GJ
あなたに届け、この GJ の気持ち
他に作者さんがいないなら、今日もいますぐ投下する
第一部最終話だが覚悟はいいか? オレはできてる
18話
「間違エタ」
真っ黒焦げの自室で悲鳴を上げて起き上がったルイズへの、
ホワイトスネイクの第一声がそれだった。
「ま、ままま、まま、間違えたですってえええええ!!??
何なのよさっきのは!? どう考えても間違えて出てくるようなものじゃなかったわよ!!」
「前ノ世界デラングラーヲブチノメシタヤツダ。
私モ記憶デ見テビックリシタヨ。アイツ、アンナニブン殴ラレテマダ生キテタンダナ。
後遺症ガ残ッタトカ言ッテタガ、ヨクソノ程度デ済ンダモノダ、ハハハ」
ハハハ、とは言ったが、顔はまるで笑っていない。
棒読みそのものである。
誤魔化す気さえ感じられない。
「ははは、じゃないわよ!
あああ、あんたは、またご主人さまをバカにしてええええ!!」
「待テ待テ、私ダッテ間違イハアルンダ。
一回グライハ大目ニ見ルベキジャアナイノカ?」
顔色一つ変えずに言うホワイトスネイク。
ここまで反省の意思が微塵も感じられないヤツもそうはいまい。
「うぅぅ〜〜〜〜……あんたってやつは、あんたってやつは〜〜〜〜……」
頭から湯気を上げて怒るルイズ。
おお支援
だが、と冷静な部分が考える。
例えばここで――
「もう許さないんだから!! あんたなんか、あんたなんかぁーー!!」
などと言って、杖を抜いたらどうなるか。
アイツはわたしの杖をあっさりと奪うかへし折るかして、
「器量ノ狭イオ嬢サンダ。ソンナノデハ『立派なメイジ』ニハナレナイナ」
――とか言って私をバカにして、またどこかへ消えてしまうに違いない。
怒ったわたしを軽くあしらってバカにする気でいるのだ。
だから、ここで怒ればアイツの目論見取りになる。
それはすごく気に入らないことだ。
怒るのはダメだ。
ここはご主人さまの寛大さを見せるところよ、ルイズ!
そう言い聞かせて、ルイズはかまどの上の鍋みたいにカンカンになった自分の頭を、深呼吸でゆっくりと冷やした。
「そそ、そうね! い、一回失敗したぐらいで使い魔を折檻するのは、す、少し大人げなかったかもしれないわ!
だから、も、もう一回あんたにチャンスをあげる!
い、いい、いいこと? 次は無いわよ! 今度こそ、今度こそ成功させなさいよ!」
怒りに震える声で、なんとか言いきった。
「コレハコレハ、寛大ナ処置ニ涙ガコボレソウダ」
だがそれを心にもない言葉で茶化すホワイトスネイク。
ルイズはまた怒りの沸点が上昇しかけたが、なんとか堪えた。
だが支援る
「デハ、再生開始スル部分ヲモウ一度探ソウ」
ホワイトスネイクはルイズから受け取ったDISCを額に挿す。
そして先ほどと同じように、しばらくしてからDISCを抜き取った。
「今度ハ間違イハ無イハズダ」
「ほほ、本当に? 本当の、本当に?」
「本当ダ。ソレトモ何ダ。ビビッテルノカ、ルイズ?」
まったく、まったくこいつは!
口に出して叫びたいのを喉までで留めて、ルイズは再びホワイトスネイクの手からDISCをもぎ取った。
DISCを見つめて、深呼吸3回。
心を落ち着けて、そっとDISCを額に挿し込んだ。
(どこかしら、ここ……トリスタニアのどこかかしら?)
それが最初に移った暗い路地を見たルイズの感想だった。
トリスタニアはトリステインの首都であり、ルイズもしばしば足を運ぶために街並みに見覚えがあったのだ。
(でもなんか汚いわね……それに街灯もないし。多分裏路地だわ。)
そして路地の様子から、タチの悪い連中が集まる裏路地であることを推測する。
DISCはしばらくの間裏路地を歩くラングラーの記憶を映し続けた。
突然、何人かの男がDISCに映る。
どいつも手に得物を携えており、物騒な目的を持ってラングラーの前に現れたのは確実だった。
『へへへ……テメーに恨みはねえが、死になぁッ!』
そう言うや否や、先頭の男が襲いかかり――赤ペンキがぶちまけられた。
ルイズって実は何だかんだいってドMだよな支援
ラッキーなのはッ!支援だったああーーーッ
(へ?)
ルイズには最初、そのようにしか見えなかった。
次第に赤ペンキに赤くない、何かドロドロしたものが混じっていて、それは男の頭から流れ――
そこまで理解したところで猛烈な吐き気がこみ上げる。
もはや記憶を見るどころではない。
無理やりにDISCを引き抜くと同時にお腹の中身がひっくり返って、喉の奥から何かがせり上がる。
そして、一気に吐き出した。
朝食べたものも、昼食べたものも、消化しきらなかったものは全部胃液と一緒に出て行った。
「……あ、あれ……?」
ふと、ルイズは自分が洗面器の上に吐いていたことに気づく。
洗面器など事前に用意していなかったから、てっきり床の上に盛大にやったものだとばかり思っていた。
「ヤハリ、ヤッタカ」
そこに声がかかる。
ホワイトスネイクの声だ。
「あ、あんた……こんな『記憶』だって、知ってて、わたしに……」
「申シ訳ナイトハ思ッタガ、物事ニハ順序ガアル。
今ノスプラッターシーンヲ超エタトコロデ雇イ主ガ出テクルノダ」
ウソである。
ラングラーとその雇い主が話し合っているシーンは、それだけのものとして十分成り立つ。
つまりこのスプラッターシーンを無理して見る必要なんて全くないのだ。
「あ……そうなの」
「チナミニ今ノシーンハラングラーガ放ッタ弾丸ガ男ノ頭蓋ヲ撃チ抜キ、
大量ノ血液ト一緒ニ脳ミ」
「ストップストップストップ!」
「ココカラガイイ所ナノダガ」
「やめて……また気分が悪くなりそうだから」
そう言って、震える手で床に転がるDISCを拾う。
「マタヤルノカ?」
意外そうにホワイトスネイクが聞く。
「あ、当り前でしょ……わわ、わたしの、こ、事、なんだから……」
そう言って、ルイズは再びDISCを額に挿した。
まあ!スネイクったらいけない人支援w
そしてその日の晩。
いつもルイズたちが朝食を食べるアルヴィーズの食堂の上階が、華やかに飾られたホールになっていた。
フリッグの舞踏会はすでに始まり、思い思いに着飾った生徒たちが、豪華な食事の前で歓談している。
その中に、キュルケとタバサの二人はいた。
キュルケは何人もの男の子からダンスを申し込まれていて、
一方のタバサはダンスなどには目もくれずに御馳走を食べている。
だがそこにルイズの姿はない。
では、どこにいたかというと……
「……ここは?」
「医務室ダ」
「……何で医務室なの?」
「3回ホドゲロシタ後に卒倒シタノサ。
覚エテイナイノカ?」
医務室のベッドの上にいた。
ベッドの脇の椅子にはホワイトスネイクがいる。
「あんた、よく医務室の場所なんて知ってたわね」
ふと疑問に思ったことが口に出た。
「ギーシュノ記憶カラ知ッタノダ」
「……どういうことよ?」
「簡単ナ話ダ。
DISCヲ見ルッテ事ハ、ソレノ本来ノ持ち主ノ記憶ヲ追体験スルコトナノダ。
ダカラギーシュガ一度デモ医務室ニ行ッタコトガアレバ、
私モソコヘドーヤッテ行ケバイイカ分カルッテワケダ。
原理トシテハ、オ前ガラングラーノ殺シヲ追体験シタコトト何モ変ワラン」
「便利なものね」
それだけ言って、ルイズはため息をついた。
奥義波紋 支援ランチャー!
「タメ息ノ多イ日ダナ」
「今日だけじゃないわ。
あんたが来てから増えたのよ」
「ソイツハ残念ダ」
「反省する気がないのは相変わらずね」
「私ハ他人カラ理解サレニクイタイプデネ」
「何それ。自分で言うことじゃないわよ」
傍から見ると辛辣な言葉とはぐらかしの応酬のようだが、
これがルイズとホワイトスネイクにとっての普通である。
最初は口達者なホワイトスネイクとどう接するべきか分からなかったルイズも、
次第に本来のトゲトゲしさをホワイトスネイク相手にも発揮するようになり、今の形に落ち着いた。
「結局、舞踏会ニハ行カナイノカ?」
「そうよ。昼に言ったじゃない」
「ダガマダ理由ヲ聞イテイナイ」
「ドレスが燃えちゃったからよ。あんたのせいでね」
「ダッタラ何故昼ニソレヲ言ワナカッタ?
言ッテ恥ズカシイ理由ジャアナイト思ウガナ」
見え見えのウソはあっさり看破された。
恐らくドレスが燃えたのは事実だろう。
燃えずに無事で残ったものが何着あるかよりも、
多少焦げるだけで済んだドレスが何着あるか考えた方がいいくらいに、無事なドレスは少ないに違いない。
でもそれはルイズの本来の理由ではない。
「イヤよ。言いたくないわ」
「ソンナニ恥ズカシイ理由ダッタトハナ……コレデハナオサラ聞ク必要ガアル」
「ち、違うわよ! 別に恥ずかしくも何ともないし、ふ、普通よ! 普通の理由!」
「ダッタラ言エヨ。恥ズカシクナイ理由ナラ、言ッテモ何トモ無イダロウ?」
「イヤって言ったらイヤなの! しつこいわよ、ホワイトスネイク!」
頑としてルイズは本音を言おうとしない。
口先で論破して降参させようとするのは失敗だったか、とホワイトスネイクは反省した。
(所詮、小娘ダカラナ)
かと言って昼のように多少誠意を見せた(とホワイトスネイクは思っている)にしても、結局ルイズは言わないのだ。
(記憶ヲ覗ケバ簡単ナンダガ、ルイズニソレヲヤルノハ私ノプライドガ許サン……。
カト言ッテ、今更『やっぱり聞かない』ナドト前言撤回スルツモリモナイ。ト、ナルト……)
白蛇様ドSすぎてステキ
「……交換条件ダ」
ホワイトスネイクは譲歩を申し入れた。
ルイズ相手に譲歩などやるのもシャクだったが、
舞踏会に行かないでいる理由を聞かないことの方がもっとシャクだった。
期待していた舞踏会がワケの分からない理由でお流れになるのは腹立たしかったし、
そもそもホワイトスネイクは他人に秘密を持たれるのが大嫌いなのだ。
「交換条件?」
「ソウダ。私ガ一ツ、ルイズノ言ウコトヲ私ニ可能ナ限リデ何デモ聞イテヤル。
ソノ代ワリニ、オ前ハ舞踏会ニ行カナイ理由ヲ言エ」
「な、何でも!?」
「何ヲソンナニ驚イテイル」
「だ、だってあんた、今までちっともわたしの言うこと聞かなかったのに……」
「ダカラコソ交換条件ニナルノダ。希少価値ガアルカラナ」
ルイズは少し考えてから、
「ほ、本当に、本当に言うことを一つ、『何でも』聞くのね?」
「可能ナ限リデダガナ」
「わ、分かったわ!」
そう言って、またしばらく考え込み、
「いいわよ。その条件、呑んであげるわ」
ホワイトスネイクの要求に応じた。
「ソレハ何ヨリ。デハ行カナイ理由、聞カセテモラオウカ」
「……別に、大したことじゃないのよ? 本当に大したことじゃないんだから。
聞いてがっかりするかもしれないわよ?」
「御託ハイイカラ、サッサト言エ」
そう言われて、ルイズは深呼吸一つすると、
「……踊る相手が、いないからよ」
ぽそっと、そう言った。
オレは支援するぞーッ!
支援
支援ッ!せずにはいられないっ!
「イナイナラ探セ」
ホワイトスネイクの第一声はそれであった。
「いるわけないわ。探したって、いないのよ。
スタイルはキュルケみたいによくないし、殿方とお話しするのは苦手だし。
……それに、どこへ行ってもわたしが『ゼロ』なのは変わらないもの」
「ツマリ、コウイウコトカ?
『舞踏会に行ったことはないが、行ってもどうせ踊る相手はいないだろう』」
「学院に入る前は行ってたし、相手だっていたわよ。
でも学院に入れば家柄がどうとか、お父様がどうとか、お母さまがどうとかは関係ないの。
……どこへ行ったって同じよ。どうせここでは、一緒なんだわ」
そう言って、ふんと不貞腐れるルイズ。
「……心底呆レタナ。食ワズ嫌イト同ジジャアナイカ」
「な、何ですってえ!?」
頭ごなしに否定されたルイズが声を上げる。
「勘違イスルナヨ。無謀ヲヤレトカ、ソウイウ意味ジャアナイ。
本質ヲ知ラナイクセニ知ッタ気ニナッテルカラ、ソウ言ッタンダ」
「本質って何よ!? そうやってあんたはいつもわたしのことを知った風に!」
「事実ダ。舞踏会デソレヲ証明シテヤル」
「どうやって?」
やったァーーーッメルヘンだッ!ファンタジーだッ!こんな支援できるやつは他にいねーっ
支援
食い下がるルイズを見てホワイトスネイクは不敵に笑うと、すっと立ち上がった。
そして、ルイズの頭の上に手を乗せる。
「ちょ、ちょっと!」
「心配スルナ。取ッテ食イヤシナイサ」
「少シ、『魔法』ヲカケルダケダ」
その瞬間、ルイズの体の周囲に異変が起こる。
ズザザ……ズザザ……ザザッ、ザザッザッ……
辺りに霧のようなものがたちこめ、ルイズが着る学生服が変化していく。
白いブラウスは胸元が開いた純白のドレスと、同じく純白の、肘まである手袋に、
黒いスカートはレースで飾り付けられたドレスの裾に生まれ変わる。
首には付けた覚えもない金の首飾りがあった。
「え、え? な、何これ? 何これ!?」
「『幻覚』ダ。実際ニ変化シタノデハ無イガ、コレデモ十分意味ガアル」
ホワイトスネイクの幻覚能力。
周囲の人間の脳に干渉し、その五感をホワイトスネイクの意のままに変化させる。
「基本的には」効果範囲はホワイトスネイクの周辺に限定されるが、それに反比例して極めて強力な効果を持つ。
「サテ、着替エモ済ンダトコロデ出カケルゾ」
「出かけるって……舞踏会に? イヤよ! どうせ行ったって笑い物になるだけだわ!」
「ソウナッタラ私ノ首ヲクレテヤルサ」
「く、首って! あんた正気なの!?」
「全ク正気ダ。ムシロルイズハ現実ヲ堅苦シク考エ過ギテイル。
世ノ中ハオ前ガ思ッテイルヨリズット単純デ、ズット馬鹿ラシクデキテイル」
「そ、そんなこと言ったって!」
「舞踏会ハモウ始マッテイル頃ダナ?
近道ヲ行クゾ」
そう言うや否や、ホワイトスネイクはルイズを抱き上げて、医務室の窓から飛び出した。
空を飛び、壁を蹴り、屋根の上を駆け抜ける。
まるで風みたい、とルイズは思った。
そして、あっという間にアルヴィーズの食堂に辿り着くと、
2階ホールのバルコニーに静かに降り立った。
落ち着くんだ…『支援』を書き込んで落ち着くんだ…
流石ホワイトスネイク!やることが違うぜ!支援
支援しろぉーっ!さるさんになっても知らんぞーっ!
ホールではちょうど一曲終わったところらしく、
生徒たちは次のダンスの相手を探しているようだった。
中には何人もの男の子からダンスを申し込まれる女の子、
逆にたくさんの女の子が行列を作る男の子がいる。
彼らはまさにこのダンスホールの主役であった。
「サテ、ココカラガ面白イトコロダ」
「でももう始まっちゃってるのよ? 今さら入って行ったって……」
ルイズは不安そうに目を伏せる。
「危ないですよ、外から入ってきたりしたら!」
そこに衛兵の声が掛けられる。
衛兵は平民なのか、ホワイトスネイクが見えていないようだった。
「もう舞踏会は始まっています。
こちらへどうぞ」
そう言ってルイズに近づいてくる衛兵に対し、
ズギュン!
ホワイトスネイクは何のためらいもなく、彼の額に指を差し込んだ。
「オ前ガヤルベキコトハソンナノジャアナイ。
主役ノ到着ヲ、コノ広イホールニ大々的ニ発表スルコトダ」
そして引き抜く。
衛兵はとと、と数歩後ずさりすると、ホールに体を向けてびしっと背筋を伸ばし、
「ヴァリエール公爵が息女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール嬢の
おなぁ〜〜〜〜〜りぃ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」
ホール全体に響くような声で、ルイズの到着をアナウンスした。
その場の目が一斉にバルコニーのルイズに向かう。
「え、え? ちょ、ちょっとホワイトスネイク!」
この状況を作り出した張本人を問いただそうとするが、すでにホワイトスネイクの姿は無い。
逃げたのだ。
相変わらずひどいヤツである。
ROMがカキコする原因は…『支援』のためだ。ROMは『支援』のために書き込む。
支援仕る。
一方、ホールの男の子たちの目はルイズに釘付けになった。
彼らの目に映るのは、普段ゼロ、ゼロとバカにしてきた女の子だが、
今この場のルイズは宝石のように美しく、周りの空気ごと輝いているようにさえ見えた。
純白で統一された上品なデザインのドレスはルイズの桃色のブロンドを引き立て、
彼女の高貴な一面をこれでもかと強調する。
その美しさに魅了された男の子たちが、一人、二人とルイズに歩み寄る。
そして気がつけば、ルイズは1ダース以上の男の子にダンスを申し込まれていた。
誘われ方どころか断り方さえ知らないルイズは言われるがままにホールの中心へと手を引かれていく。
楽士たちが音楽を奏で始める。
清流が流れるように、小さく、滑らかに演奏される音楽に合わせて、生徒たちはダンスを踊り始めた。
その中心にルイズがいる。
その外側には、彼女と踊りたがる男の子たちと、彼女のためにダンスの相手を失った女の子がいる。
今、舞踏会の主役はルイズただ一人だった。
「なかなかやるじゃない」
それを横目に、キュルケがそう呟く。
キュルケの圧倒的魅力を前にしてルイズに流れることができた猛者はいなかったようで、
彼女は踊る相手には事欠いていなかった。
ホールの外側には彼女とのダンスを心待ちにする者が何人もいる。
ルイズは今までのルイズではない。
それがキュルケが思ったことだった。
彼女は間違いなく成長している。
ラングラーとの戦いでは自分を助けてくれたし、この舞踏会の場でもなかなかの魅力を発揮している。
大したものだ。
でも、
(あたしも、このままじゃおかないわよ)
心の中でそう言って、キュルケはダンスの相手に笑みを投げかける。
相手の男の子はそれだけで顔を真っ赤にしてしまった。
女王は未だ健在、といったところである。
神の御命においてしえんするッ!
ルイズと一緒にステップを踏む男の子がやさしく微笑む。
彼は先ほど何人もの女の子からダンスを申し込まれていたが、
それらを全部蹴ってルイズにダンスを申し込んでいた。
ルイズはその彼にぎこちなく笑みを返す。
足はちゃんと動いているのに、その下にちゃんと床があるような気がしなくて、
まるで雲の上で踊っているような、そんな気分だった。
心地よいと言えば、すごく心地よい。
なんだかふわふわした気分だ。
でも、なんかヘンだ。
何が変なのかは分からないけど、なんだか落ち着かない。
それが気になって、ダンスに集中できない。
(何か変)
それがルイズを見たタバサの、最初の感想だった。
確かに今のルイズは美しい。
同じ女として、そして客観的に見てもその美しさは相当なものだ。
それはタバサも認める。
(しかしその外見と、彼女の心が一致していない)
ルイズは明らかに戸惑っている。
いつものお転婆を隠すあれだけの衣装やメイクをしているのに、
何故か彼女は乗り気でないようだ。
言うなれば張り切って山を登る支度をしておきながら、
それをやる当の本人が山登りに積極的でないような感じだ。
まるで他の誰かに準備してもらったかのようだ。
そうタバサは思った。
でも、
(……そんなことより、こっちが大事に)
タバサは視線を舞踏会の料理へと戻す。
どれもこれもが、超一流の料理人が腕によりをかけて作った御馳走だ。
そうそう食べられるものではない。
食べ損ねる手など、無い。
タバサは人知れずにぐっと拳を握ると、再び料理と格闘し始めた。
舞踏会の御馳走の寿命はあと30分とないだろう。
この書き込みが支援みてェーだとォ?
『支援』は『運命』!
479 :
仮面のルイズ:2008/11/10(月) 01:17:33 ID:7hoDdJZd
支援!1
その後ルイズは何人かとダンスをしたところで、ホールを離れた。
ダンスを申し込んでくるものはまだ10人以上いたが、彼らに何と言って断ったかは覚えていない。
ふわふわした落ち着かない気分のままに舞踏会の中心から離れ、またバルコニーに戻っていた。
男の子たちはそれを名残惜しそうに見ていたが、
しばらくすると何事もなかったかのように他の女の子たちと踊り始める。
あっという間に、ルイズが来る前に戻っていた。
ルイズはそれを、バルコニーから眺めていた。
「ホワイトスネイク」
ルイズがそう呼ぶと、
「何ダ?」
ホワイトスネイクが、闇から浮かび上がるように現れた。
バルコニーのフェンスに、その外側から肘をついている。
闇に紛れてよく見えない下半身は、ひょっとしたら実体化させていないのかもしれない。
「舞踏会はどうだった?」
「アア、スゴク良カッタサ。
絵画ノ特徴、芸術品ノ特徴、音楽ノ特徴……。
ドウヤラコノ世界ハ私の世界トハマルデナル異ワケデハナイラシイ。
ドコカシラデ共通点ガ見受ケラレルノダ。
ソレガ分カッタダケデモ大収穫ダッタサ」
「そう……それはよかったわね」
しばらく、沈黙が流れる。
ルイズは何か言いたそうに、ホワイトスネイクはそれを待っているようだった。
そして、ルイズがその沈黙を破る。
「わたしと最初に踊った男の子はね、わたしと廊下ですれ違った時、
友達にわたしが『ゼロ』だってことを言って、話のタネにしてたわ」
支援
このスレッドは…おれ自身の命令で支援するッ!!
支援だ!
支援支援
ホワイトスネイクは何も言わずに聞いている。
「次に踊った男の子も、その次の男の子もそう。
みんな、どこかでわたしをバカにしてた。
なのにみんな、変わっちゃうのね。
あんたがどれだけ『幻覚』でいじったのかしらないけど、
それでもわたしがルイズ・ド・ラ・ヴァリエールなのは一緒なのに。
わたしが『ゼロ』なのはぜんぜん一緒なのに、まるで変わってて、違ってたわ。
みんなわたしにほほ笑んでくれたし、イヤなことは一つも言わなかった。
わたしに『美人』だとか『カワイイ』とか言うばっかりで……」
そこでルイズは言葉を切って、ホワイトスネイクに向き直る。
「ねえ、ホワイトスネイク」
「何ダ?」
「人ってなんでこんなにいいかげんなのかしら?」
それがルイズの、この舞踏会で感じたことの全てだった。
普段はルイズをバカにする少年たちでも、いざ舞踏会でルイズがかわいく見えればダンスを申し込む。
ルイズの見た目一つでまったく心変わりしたのである。
いいかげんだとしか言いようがない。
「ソレハ私モ常々思ウ事ダ」
ホワイトスネイクはまずそう言って、
「ダカラト言ッテ人ヲ全ク信用シナイ、トイウノハタダノ馬鹿ノスル事ダ」
支援
ブッ壊すほど…………シェーントッ!
一瞬、二人の間にいやな沈黙が流れる。
「……ドウシタ?」
ホワイトスネイクが怪訝そうな顔で言う。
「……あんたからそれが聞けるとは思わなかったわ」
「随分酷イ事ヲ言ッテクレル」
不機嫌そうな顔を作るホワイトスネイク。
「……っふふ、あっははははは!」
「何ガ可笑シイ」
「だ、だってあんた、そんな顔で……あははは!」
「……理解デキン」
舞踏会のときの落ち着かなさはどこへやら、
ルイズは声をあげて笑いだした。
ホワイトスネイクは呆れ顔でそれを見ている。
「はぁ、はぁ、……でも何で人を信じないのはダメなのよ?
あんなの見せられたら、ちょっと他人を信用できなくなるわ」
「ソレハ全クダ。
ダガサッキモ言ッタダロウ? 人間ハモット単純デ、モット馬鹿ラシク出来テイルンダ」
「どういうこと?」
ルイズが聞く。
ここに書くことは、支援を意味する!
支援
「ソノママノ意味ダ。
問題ナノハ根ノ部分ダッテコトサ。
ドンナ信念ガ土ノ上ニ生エテモ、ドンナ理想ガ花ト咲イテモ、根ダケハ決シテ変ワラナイ。
タダ伸ビ続ケルダケデ、ソコダケハズット変ワラナイノダ。
ソシテ、ヤメラレナイノダ。
変ワラナイデ、ソノママデ伸ビ続ケルコトヲナ」
「大事なのは、本当の部分って事?」
「ソウイウ事ダ。
私ハソノタメニ記憶ヲ集メル存在ニナッタ。
人間ノ本当ノトコロヲ知ルタメニナ」
「人間の、本当のところ……」
ルイズがホワイトスネイクの言葉を反芻する。
「ソウダ。
……ルイズ、オ前ニハソレヲヤル勇気ハアルカ?」
「それ?」
「人間ノ根ノ部分……ヒイテハ人間ノ底ノ部分ダ。
ソレハ開ケテハナラナイ『パンドラの箱』ナノカモシレナイ。
シカシソコニコソ人間ノ真実ガアル。
オ前ハ、ソレヲ見ルダケノ勇気ヲ持ッテイルカ?」
十分にハッパはかけた。
今まで自分をバカにしてきた人間が手のひら返してすり寄ってくれば、
他人を信用したくなくなってくるものだ。
とくにルイズのような真っ直ぐな精神を持つ人間ならば。
ハッキリ言って、ルイズは自分を扱うのに向いていない。
真っ直ぐすぎるからだ。
真っ直ぐすぎて、他人から奪うことを本性とする自分の能力が合わないのだ。
だから多少は歪ませてやる必要がある。
真っ直ぐな精神を完全にへし折るわけではない。
多少自分の望む方向に曲げてやるだけだ。
それだけで、ルイズは容赦ない辣腕を振るう帝王にすらなりうる。
ルイズにはそれだけの可能性が――
これが!これが!シエンだッ!
「絶対イヤ」
その可能性が、たった今失われた。
思わずフェンスからずり落ちそうになるホワイトスネイク。
「ナ、何デダ?」
「だってあんたみたいになりたくないもの」
「ハァ?」
ホワイトスネイクは自分の耳を疑った。
「わたし、あんたみたいになりたくないのよ。
いっつもわたしの出方をうかがって、バカにして、すごく腹が立つわ。
それで、他人の本当のことを知ろうとするとあんたみたいになっちゃうんでしょ?
絶対イヤよそんなの。あんたみたいな高慢ちきでにくたらしいのになっちゃうなんて死んでもごめんだわ」
ああ、そうか。
ホワイトスネイクは少し納得した。
先ほど自分は、「人間とはもっと単純で、もっと馬鹿らしく出来ている」と言った。
そして「ルイズは真っ直ぐすぎる」と思った。
つまり、こういうことなのだ。
ルイズは馬鹿すぎるぐらいに単純で、まっすぐだったのだ。
彼女には記憶を知ることの有用性より、それを知ったらどうなるかが自分を通して見ていた。
真っ直ぐであるがゆえに、そこまで見えたのだ。
「……ジャアサッキ言ッタ他人ガ信用デキナイッテノハドウスルンダ?
記憶ヲ探ラナクテハ、ソンナコトハ面倒デトテモヤッテハイラレナイゾ」
「それくらい一緒にいれば分かりそうなもんじゃない」
「一緒ニイタトキニハ隠シテイルカモシレナイゾ?」
「だったら出てくるまで待つわよ」
ルイズは口をとがらせて言い返す。
真っ直ぐすぎることは、頑固すぎるってことでもある。
これでは何度言ったところで無意味だろう。
白蛇素敵すぎるよ支援
支援を!
やったッ 勝ったッ!支援したッ
「……ソコマデ言ウナラ、私カラ言ウ事ハ何モ無イナ」
ため息混じりにホワイトスネイクはそう言った。
そして、ふと空を見上げる。
薄青と薄赤の二つの月が輝く空は、真っ暗だ。
だけど地球よりもずっと多くの星が輝いている。
地球は地上の光が明るすぎるから、星が見えないのだそうだ。
ふと横を見ると、ルイズも同じように星を見ていた。
何か気に入らないものを感じたホワイトスネイクは、星を見るのをやめて眼下の草原に目をやる。
不意に、ルイズが口を開いた。
「ねえ、踊らない?」
またバルコニーから落ちかけた。
支援 ―B 支援B 支援B
「何ヲ言イ出スカト思エバ……」
ホワイトスネイクは何とかそれだけ呟いた。
「何よその態度!
ご主人様が誘ってあげてるんだから、素直に喜びなさいよね!」
「昼ニモ言ッタハズダガ、私ハダンスヲ心得テイナイ。
踊ルノハ無理ダ」
「いいわよ。わたしが教えてあげるから」
「ソモソモ何デ私ト踊リタガルンダ? 理由ヲ言エ、理由ヲ」
そう言うホワイトスネイクをよそに、ルイズは何か考え込んでいた。
そして、ばっと顔を上げる。
「ねえ、ホワイトスネイク! あんた、さっき言ったわよね?」
「サッキト言ウト……マサカ!」
察しの良いホワイトスネイクはすぐに気付いた。
「『わたしの言うことを何でも聞いてやる』って、言ったわよね?」
「言ウコトニハ言ッタガ……」
「あんたが言ったことでしょ? だったらもう逃げ場はないわよ!
……そうだわ!」
ルイズがまた何かひらめいたようだ。
ホワイトスネイクは嫌な予感がした。
「あんた、私をダンスに誘いなさい!」
ホワイトスネイクはもう返す言葉もなかった。
白蛇可愛いよ支援
うん、すごく好きなんだ……スネイク
元々言い出したのは自分だ。
今更撤回したのでは自分のプライドに障る。
腹立たしいことだが、避ける手はない。
「仕方ナイ、カ……」
ホワイトスネイクはブツブツ呟きながら、フェンスをまたいでバルコニーに上がる。
下半身はちゃんと実体化したようだ。
「いいこと? ちゃんとレディを誘うきちんとしたやり方をするのよ!」
「分カッテイル」
ぶすっとした顔でホワイトスネイクは背筋を正す。
「……私ト、一曲踊ッテクダサルカナ? レディ」
そう言って、ホワイトスネイクは手をそっと差し出した。
妙に決まっていた。
それでいて、どこか品の良さを感じさせた。
思わずルイズは、それに見とれていた。
支援
支援
かきこんだな、シエンが!
支援の手が止まらない
投下の間隔、今の半分ぐらいにして大丈夫じゃない?
「……踊レバイインダロウ? 踊レバ」
「そうよ、踊れば……」
見とれていたのもつかの間、ホワイトスネイクはそう呟いた直後、ルイズをひょいと抱き上げる。
そしてバルコニーから飛びあがり、壁を蹴って、どんどん上へと上がっていく。
「ちょ、ちょっとストップストップ!
どこへ行く気よ、ホワイトスネイク!」
「悪イガ人前デ踊ッテヤルホド私ハ気前ガ良クナクテナ」
そう言いながらホワイトスネイクはどんどん上へと上がって行って――
「踊ルナラ、人目ニツカナイトコロガイイ」
とうとう、尖塔のバルコニーまで来てしまった。
学院の中で最も高い位置にある場所だ。
「ヤルナラサッサトヤルゾ。
私ハアマリ気ガ長イ方デハナイカラナ」
ホワイトスネイクがずいと手を出す。
さっきとは違う、いつものホワイトスネイクだ。
「もう……じゃ、いい? わたしに合わせるのよ」
その手をルイズはそっと握る。
ホールで奏でられる音楽は、小さいながらもここまで聞こえていた。
それに合わせて、ルイズはステップを踏む。
ホワイトスネイクもそれに合わせて踊りだす。
「以外と出来るじゃない」
「見ヨウ見マネダ」
「それでもよく出来てる方よ」
そう言ってルイズは少しうつむくと、思い切ったように口を開いた。
「信じてあげるわ。
別の世界から来たって事」
「何ヲ今更。ズット前カラ分カリキッテタ事ダロウ」
「うるさいわね。ご主人さまが信じてあげるって言ったんだから、素直に喜びなさいよね」
そこで二人の会話はまた止まり、無言でダンスが続けられる。
良いすごく良い支援
シエ〜〜〜〜ン、シエ〜〜〜〜ン、支援!シッエェエエェェ〜〜〜〜〜ン!
ホワイトスネイクは思う。
この主人は、マジに自分と合っていない。
絶望的なまでに合っていない。
相性最悪ってやつだ。
多少褒めるべきところはあるし、ちゃんと成長だってしているのは認める。
でも、合っていないのだ。
そもそも自分の能力は騙すことと奪うことだ。
しかし、ルイズはまずそれを好まない。
最初の授業の時から分かっていたことだが、正々堂々としたのが彼女の好みらしい。
このあたりからもう致命的である。
ルイズに下にいたら、自分は満足に自分の能力を振るえないかもしれない。
それは自分の、ホワイトスネイクとしてのアイデンティティさえ崩壊させうるものだ。
だが、それでも。
(意外ト、悪クハナイ)
それが、ホワイトスネイクのルイズに対する評価のすべてであった。
相性最悪なのは認める。
自分にとってロクなことがないかもしれないのも認める。
だがそれでも、何故か斬って落とすことが出来ない。
お前の下で使い魔なんぞやってられるか、という気分にはならないのだ。
だから、意外と悪くない。
気に入らないことはあるし、相いれない部分もある。
だけど、意外と悪くない。
(『意外と悪くはない』、カ……使イ勝手ノイイ言葉ダ)
そう思いながら、ホワイトスネイクはルイズとのダンスを続けた。
ダンスは、音楽が途切れるまで、静かに続いた。
To Be Continued...
GJ!!
ツンデレなのはホワイトスネイクだってことに今更気づいた
黒くて可愛いよ白蛇様
GッッッッッJッッッッッッッ!!!!!!!!
面白かった!!
スネイクが何か可愛いよ色々とwww
ルイズにイタズラするのもずっこけてるのも、舞踏会みたくて首賭けるのもwwwww
そして三回ゲロの所でかなり吹いたwwwwwwww
なんというか、こんなスネイクなら日がな一日一緒にゴロゴロしながら無駄話してても楽しそうだwwww
とにかく乙でした!!!
投下完了&第一部完了
なんとか一段落の部分まで終わらせることができました
支援してくださった皆さんに感謝
投下間隔についてはだいたい4分〜6分を目安にしてます
自分の感覚では、3分間隔が危険レベルなので
でも6分はないな……これからは4〜5分に収めるようにしようかな
うん、そうなんだ。済まない。
結局フーケとは戦わないわデルフ買ってないわで一巻分が終わってしまった。
だが必ず第二部でどうにかしますので、ここはひとつ……
GJッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!禿げあがるほどGJッ!!!!!!!!!
GJ!
ホワイトスネイク、状況に慣れるとは、ずいぶんと人間的になったな
ホワイトスネイクの不思議な人間味がいいね。
あとルイズの強がりとか素晴らしい。
なんつーかこのスネイクあれなんだな
暇なんだろうなw
元の世界じゃ陰謀策謀忙しなく暗躍してたし
ふと思ったんだが、JOJO世界での悪役をルイズが召喚して
主人公を他の虚無の使い手が召喚するというのはありなんだろうか?
例えて言えば、ディアボロをルイズが召喚
↓
地獄の様な境遇から救ってもらえた恩義を感じて契約
↓
7万戦後にテファに救われるが、そこにはテファに召喚されたブチャチームの誰かがいて……
みたいな感じで
むしろ駄目な理由がわからない
なんでもアリなんじゃね?
アリアリアリアリ
ディアボロ&ドッピオ召喚物を久しぶりに読んでみて、この二人とブチャもしくはトリッシュが再会したら
どうなるだろという思いつきで書き込んだだが、意外に肯定されている事にビックリしている俺www
ディアボロの汗を舐めて、『この味は……改心、嫌、後悔している味だぜ!』とやるブチャラテイと
それを見て思いっきり引くというか『まさかそういう関係?』と勘違いするゼロ魔キャラとか
改心したことは理解するがそれを受け入れられずに、再会したばかりの承りとジョリーン並みに
ギスギスした関係になる父娘とか
ディアボロって改心するのか?
助かったら助かったで外道に戻りそうなんだが。
スピードワゴンが来たら
意外とガリア王と相性がいいかも試練ね
>>524 改心するかどうかはわからんが数え切れないほど死に続けたらさすがに性格とか変わるだろうなw
黄金の精神を持つディアボロとか見てみたいけど想像できないぜ
ボスはアンアンとかジョゼフとかヴィットーリオにの影に隠れている姿の方が想像しやすいな…
「ティファニア・ウエストウッドは静かに暮らしたい」とでも題打ってテファが吉良吉影召喚、なんてネタをふと思いついたが
出会って47分後に手首革命にされるテファしか連想出来なかったぜ…
テファのとこに召喚されたトリッシュがドッピオ拾って村に戻って
それからしばらく一緒に過ごす
椅子でうたたねをしていたトリッシュにドッピオが毛布をかけると
「父さん……」と小さくトリッシュが呟く
それを見て悲しげに眉をしかめるドッピオ
再召喚の鏡 騙していてすまないと告げ
ディアボロの姿になった彼は鏡の中へ
そんな妄想をしてた時期が俺にもありました
ボスはルイズにとり付くのがいいんじゃないか?
同じピンク色の頭だしw
んでボスがルイズの体で表に出ると
半裸のエレオノール似のスレンダー美人に(´Д`;)
>>529 とり付く・・・?
あぁ、レクイエムの時のディアボロが召喚されたことにするのか
と一瞬納得しかけたけど体が変わる描写あったっけ・・・?
>>530 ディアボロとドッピオは体を共有してたろうが。
そんでもって表に出るほうが代わると体格とか替わってたがな。
十代半ばのドッピオから
オッサンのディアボロになるくらいだからなぁ
凄いね、人体
ボスも女だったらあんな目に遭わなかっただろうに・・・
ボスが女だったら……?
気弱な電波系少女が極悪非道のセクシー美女に変身するのか?
ルイズが憧れのボンキュッボーンになるわけか
>>526 勘違いしているな 『無限に』終わりのないのが『終わり』 それがレクイエムの能力
改心などせず
痛みになれることもなく
狂ってしまうこともない
ディアボロはディアボロとして永遠に変わることなく死に続ける
その地獄のような状況からルイズが召喚したらどうなるかって話じゃないのか
>>538 おまえのそのケツ対するこだわりはなんなんだ。
この腐れ脳みそが!
お前ら落ち着いて漫画版タバサの冒険でも読んで来い。イザベラ様の乳が15%ぐらい増量されててオラびっくらこいただーよ!
ならば買うしかないな。
>>543 そこがあの漫画の数少ない不満なんだよな…減量する分にはいい、
だが増量するなーーーーーッ!!
>>546 お前こそ何を言ってるんだ
元々イザベラ様はナイスバディだったろう?
性格が変わってなければナイムネでも胸があっても
悪人顔(外伝1)でもかわいらしくでも(外伝2)どちらでも素晴らしいと思う
それはそうと、最新巻で生き延びたイザベラさまは某エルフの思わせぶりな台詞的に
虚無に目覚めたりするんだろーかね?
そのままフェードアウトな気もちょーっと有って戦々恐々してるガ
>>537 そりゃ無理だろ
まんまポンと来るわけだぜ?
色々なことがあったが…「帝王」はこのディアボロだッ!! 依然変わりなくッ!
そんな人だよボスは
>>529 『スレンダー美人』……ってよォ〜〜〜〜
『美人』ってのは、わかる………スゲーよくわかる
一応ルイズは美少女ってことになってるからな…
だが「スレンダー」って部分はどういう事だああ〜〜〜〜っ!?
ただの貧乳じゃあねーかよーーーーーーッ!ナメやがってこの言葉ァ!超イラつくぜぇ〜〜ッ!
チクショーーッ!どういう事だ!どういう事だよッ!クソッ!スレンダーってどういう事だッ!
ナメやがって!クソッ!クソッ!
絶壁?絶壁?
>>552 馬鹿だなあ
貧乳でも幼児体系とスレンダーでは大違いですぜ
幼児体型→タバサ
境界→ルイズ
スレンダー→ヴァリエール家長女
こうですかっ! 分かりませんっ!
小ネタのボス憑きサイトは面白かったな…
誰か長編書かないかな…
獅子戦争と乳戦争は何か似ている
>>559 ヴァリエール家が表舞台に立つべく公爵やアン様を暗殺するエレオノール姉様、なんて不穏当な図が即座に頭に浮かんじまったじゃないか!
エレオノール「カトレアが巨乳化したッ!カトレアを捕らえよ!」
カトレア「姉上ーッ!」
貧乳バンザイ!
巨乳に神はいないッ!
神は死んだ!何故だ!
男だったからさ
坊やだからさ
11ヶ月だ!イレブンマンス!!
11は素数
今は秋の11月なんだァ――――ッ
そういえば、兄貴が1ヶ月以上も来てないんだな
続きが気になって仕方がねーぜっ!!
もう四日も投下が無い……
寂しいぜ
まったり待とうぜ
こういうSSが読みたいあるいは書きたいというネタでも書き込まないか?
何か職人さんが来るまでにスレが落ちるかもしれんし
自分の場合だと杜王町に引っ越してきた才人が億泰もしくは仗助と一緒に召喚される作品とか書いてみたい
ハルケギニア世界のキャラとJOJOキャラの間で起こる揉め事等の仲裁に苦労する才人という構図で
(個人的には何か才人もいないと物足りないのもある)
「何、その変な髪(ry」→「ドラララ(ry」→「頼むから落ち着いてくれェェェ!!」
「子供の我侭に付き合ってられねぇっすよ」→「……私は16歳だぁ!! このチンカ(ry」→「頼むから余計な事言わないでくれぇぇぇ!!!」
才人「あれお前近所のアパートに住んでたハルノじゃね久しぶり」
っていうのがちょっと見たい
ルイズ 「だからとっとと私と契約しろって言ってるのが分かんないの!? このド低脳(ry」
ジョルノ 「だから何度も言わせないで下さい。 無駄なんだ……無駄(ry」
才人 『全然話が噛み合ってねえよ、誰か何とかして orz』
小ネタであったな
GEレクイエムで永遠に召喚し続けるようにされたルイズが
億康の話は読みたいかな保管庫にあるけどギーシュの所で止まってるし
本編だと康一みたいに億康のピンの話ってないから活躍してるところがみたいぜ
んで死体でハルケニアに流れ着いた形兆がクロムウェルあたりに復活させられて
それを打ち倒して兄を乗り越えてもらいたい
>>577 おいおいステキな燃え展じゃないか。その発想ができる君に敬意を表する!
ぜひ書いて欲しい。ネッ、ネ。
才人 「おい、月が二つあるぜ! ひょっとしたら俺達……」
億泰 「ああ、間違いねえぜ。 こいつは……」
才人 「異世界に召喚されたんだ!!」
億泰 「新手のスタンド使いの攻撃に違いねえ!!」
億秦 「……才人、おめぇ何言ってんだ? 異世界なんてあるわけねえだろ、ファンタジーやメルヘン(ry」
才人 「そっちこそスタンドって何だよ? テレビの見すぎなんじゃねーの。」
ルイズ 「……あんたら、いい加減に私の話を聞いてくんない?」
そういやエシディシってガンダールヴと無茶苦茶相性悪くないか?
デル公「相棒、心を震わせr」
エシディシ「ひぃぃいいいいい、あんまりだぁぁぁあああああ」
デル公「……相棒?」
エシディシ「俺は(ry 泣いて(ry」
まぁガンダールヴなくても普通に強いんだがな
強い感情が必要なだけであって、別に悲しみでもいいんジャマイカ?
二巻辺りでデルフが心の震えが云々言ってたはず
そう考えると感情表現が極端なエシディシは相性よさそうなもんだが
>>580が言いたいのは戦う前に心を落ち着けてしまうということじゃないのか
エシディシ脳が召喚されてルイズに取り付く話とかどうだろう?
ルーンの効果でルイズの意識とエシディシの意識が混在してて、
キュルケに馬鹿にされて切れたと思ったら行き成り泣き喚いて冷静になるルイズとかw
少し間が空きましたけど20分から投下します
支援するね!今だ!!
586 :
ゼロいぬっ!:2008/11/16(日) 12:20:07 ID:u6AicjGO
掌で掬った水が零れ落ちるように。
砂に書いた文字が風に掻き消されていくように。
私の中から“大切な何か”が失われていくのを感じる。
振り返ったら終わってしまう。
まだ私の瞼には別れ際の彼の姿が焼き付いている。
でも振り返れば認めなければならない。
―――もう彼はどこにもいないのだという事実を。
よろめくようにしてルイズは背後へと振り向いた。
彼を抱き締めるタバサの手は震えていた。
声も上げず、俯いたまま彼女の頬を涙が伝う。
おぼつかない足取りで彼女達の元へと歩む。
「なんでよ……!」
彼女達に近付きながらルイズは叫ぶ。
転びそうになった身体を無理やり引き起こして這うように前へ。
それでも彼女は叫ぶのを止めない。
「待っててって言ったのに……!」
慟哭じみた声を響かせながらルイズは彼の元へ辿り着いた。
そして彼女はハッキリと彼の姿を目の当たりにした。
瞼は閉じられ、苦しげに漏れていた呼吸も無い。
恐る恐る触れた指先から伝わる体の冷たさ。
それは命の灯火の尽きた亡骸だった。
「なんでよ……戦争は終わったのよ。
もう私たち、戦わなくてもいいの。
前みたいに学院で……みんなと当たり前の日常を過ごせるのよ!」
それをどれだけ望んだことだろうか。
当たり前で、平凡で、何一つ変わり映えしない、本当に幸せだった時間。
失われてしまったけど、また私たちは取り戻せるんだ。
悲しかった事や辛かった事は忘れられないけれど、
もっと楽しい事や嬉しかった事で上書きしていけばいい。
……だけど、そこには貴方がいなきゃいけない。
誰よりも辛かった分、誰よりも幸せにならなきゃいけないのは貴方だから。
587 :
ゼロいぬっ!:2008/11/16(日) 12:21:16 ID:u6AicjGO
「ううん。学院だけじゃない、どこへだって行けるわ!」
彼に教えてあげたい、ハルケギニアが美しい世界だって。
まだ海も見たこともない彼に、果てしなく続く水平線を見せたい。
もう一度、城下町の喧騒の中を歩きたい。
何より一番初めにわたしの家に連れて行ってあげる。
ちい姉さまにも紹介しなきゃ、怖いけれどエレオノール姉さまや母様にも。
特別に私のお気に入りの場所だって教えてあげるわ。
もう私には必要ないから、一人で泣く必要なんてないから。
だから、だから……。
「わたしを一人にしないで!」
ルイズの手が彼の体を揺すった瞬間、それは姿を覗かせた。
傷だらけでボロボロになった安物の皮で出来た首輪。
ルイズが初めてデルフと共に買い与えた品。
……そして、彼の大事な、大事な宝物。
「またいつか、もっと良いのを買ってあげるって約束したのに」
ポタポタと涙が手の甲に零れ落ちる。
それは悲しみよりも無念だった。
わたしは彼から多くのものを貰った。
アニエスやキュルケたちとの友情、自分の運命と立ち向かう強さ、
誰かを慈しむ優しさ、どれもわたし一人じゃ得られなかった。
なのに、わたしは彼に何もしてあげられなかった。
もっとお腹一杯ごはんを食べさせてあげればよかった。
好きなだけ外を走り回らせてあげればよかった。
「だって、まだ名前だって……!」
閉ざしても尚、ルイズの瞳から零れ落ちる涙。
直後、頬を伝うそれを誰かが拭った。
ルイズが目を見開き、涙を拭った跡に指を当てる。
そこに付いているのは血だった。
ハッと顔を起こせば、彼は僅かに瞼を開いていた。
588 :
ゼロいぬっ!:2008/11/16(日) 12:22:13 ID:u6AicjGO
もう十分だよ、とルイズの涙を舐め取って彼は言った。
でも呼吸さえ漏れず、繋がっていた証も、デルフもいない。
伝わらない言葉を胸に彼は思う。
一人では得られなかった宝は自分にもある。
それはルイズに未来へと持っていってほしい。
いつの日か、こんな事があったと誰かと笑い合えるように。
声も姿も忘れたとしても自分がいた事だけは憶えていてほしい。
意識が断線する。きっとこれがルイズと話せる最期。
だから言わなきゃいけない。
向こうでは誰にも伝えられなかった言葉。
それを彼女に聞いてほしい。
誰よりもルイズが好きで、ルイズに愛された自分だから。
今もこの目に焼きついている。
初めて見たハルケギニアの自然と、自分を見下ろす彼女の姿。
あの出会いが本当に美しいものだったから。
別れも美しいものであってほしいと思う。
だから最期の言葉だけは届くと信じている。
“さよなら……ルイズ”
お別れは悲しいけれど、
彼女には前だけを見ていてほしい。
自分が好きになったのはそんな彼女だったから。
「…………」
泣き崩れる少女を遠巻きに眺めながらフーケは踵を返した。
血迷いかけた自分を押し留めてその場を後にする。
確かに、この指輪なら僅かな可能性だけど助かるかもしれない。
ついでに、ちゃんと指輪が使えるのかテストもしたい。
だけど助けた所で、あの犬は決して救われない。
アルビオンの連中が怪物の正体を口外すればトリステインの立場はない。
世界を滅ぼしかねない事態を招いたとして糾弾されるだろう。
そうなれば、こんな勝利など一瞬で吹き飛ばされ、世界を敵に回す事になる。
そうさせない為には証拠を根こそぎ隠滅するしかない。
当然、そこにはあの犬も含まれているのだ。
「ああ、くそっ! 最悪の気分だよ!」
倒すべき相手だったはずなのに何故か虚しさだけが込み上げる。
やっぱり戦争だの殺し合いだのは私には向いてない。
そんなのは、やりたい連中だけで好き勝手してればいい。
燃え盛る軍艦の残骸や、なおも戦闘を続ける一部の兵達を見ながら溜息を零す。
ふと彼女の視線が足元に転がる何かに留まった。
そこにあったのは貴族の屍……いや、なりかけか。
辛うじて生にしがみついているだけの命。
そっと指輪を嵌めた手をかざす。
あの子が力を使う姿を思い返しながら詠唱を紡ぐ。
指輪を試すだけなら適当な擦り傷で十分だった。
人の命を助けようなどと思ったのは、ただの気まぐれにすぎない。
これだけの数の人間が死んでいるのに、たった一人生き永らえさせたって何の意味もない。
こうする事でイヤな気分が少しでもマシになれば、という安易な打算だ。
支援
590 :
ゼロいぬっ!:2008/11/16(日) 12:23:25 ID:u6AicjGO
「げ! 一人治しただけでこんなに減るのかい!?」
血色が良くなっていく貴族とは裏腹に、フーケの顔が蒼褪めていく。
米粒程度のサイズに縮小された石と顔見知りの貴族の顔を交互に見返す。
果たして、この磨り減った石に見合うだけの価値がこいつにはあるのだろうかと思わず悩む。
しかし今更こいつを叩き殺したって石は返ってこない。
あからさまな溜息をついて彼女は貴族に軽く蹴りを叩き込んだ。
「まあ、これを機会に人生やり直しな」
気付けば森から誰かが近付いてきていた。
こいつを探しに来た兵隊だろうか、それとも残党狩りか。
どちらにせよ、ここに長居しているのはマズイ。
血で染まった本を彼の膝に戻してフーケは立ち去った。
それと入れ替わるように飛び出してきたのは幼い顔立ちの少年少女。
「おっさん! みんなも話聞きたいって言うから連れてきたぞ!」
それは屍というには、あまりにも無惨すぎた。
大空を駆け抜けた翼は今や打ち捨てられた傘を思わせる。
破れた翼膜からは骨が覗き、その骨も砕かれてあらぬ角度に捻じ曲がる。
頭蓋からは止め処なく血が溢れ、その場に赤い水溜りを形成する。
かつての空の王者の威厳など微塵も残されていなかった。
「確実に骨も残さず焼き払うんだ!」
その風竜の周りでトリステイン兵士達は樽に入った油を一面に撒き散らす。
彼等はマザリーニの命令で“バオー”を焼却処分する任務に就いていた。
無論、バオーの詳細など知るべくもない。
彼等には伝染病の感染源であるとだけ伝えられていた。
その正体を知らぬままに彼等は自分達の役目を果たす。
かつてのコルベールの軌跡をなぞるかのように、何の迷いもなく。
十分に油が染み渡ったのを確認して、兵隊長は松明に火を灯す。
「犬の方は捕獲してアカデミーの研究室に移送する!」
続けて兵たちに命令を下す。
それはマザリーニの指示ではなく、アカデミーからの要請だった。
病理解明の為に必要だと言われれば応ずるしかない。
研究の為ならば親や子さえも犠牲にするとまで言われたアカデミーだ。
生きていようと死んでいようと細部まで解剖されて研究し尽くされるだろう。
刹那、兵隊長の真上に一際大きな影が差す。
それを彼は日食が始まったのだと錯覚した。
だが、周りで騒然とする部下達の姿に違和感を覚えて振り返った。
そこにあるのはただの骸のはずだった。
しかし、風竜は立ち上がり雄々しい姿でそびえている。
その威容に翳りなど無い。
「ウオオォォォォォム!!」
巨竜が吼える。
怒りとも悲しみとも判別できない叫びが木霊し、
“バオー”は再び空へと舞い戻っていく……。
支援
592 :
ゼロいぬっ!:2008/11/16(日) 12:25:42 ID:u6AicjGO
以上、投下したッ!
バオー犬とはお別れですけど話は続きます。
次の次ぐらいで冒頭へと戻ります。
乙でした!
ああついに終わりへと近付いていく……!
わんこお疲れ、せめて安らかに眠ってくれ!
名無しの犬よ、ゆっくり眠ってくれ
投下GJ
いぬ乙
次回もwktk
そういやモット伯復活か?
おやすみ、バオー犬
おはよう、モット伯
悪運が強いなモット伯
>>570 大宇宙でファイエルファイエル叫んだり、civ4のmod落として夜の無い生活に舞い戻ったりでなぁ…
アライグマをどう決着ゥさせようかもあまり決まってないZE
兄貴の覚悟と決意があれば…大丈夫(ですよね
今の生活は長くは続かぬ。
お前達はは来るべきSS投下に向けて日々を過ごすがいいぞ。
FfH2かよw
そして時は動き出す。
OK今月号であらためてDIOカッコいいと思ったぜ
DIO・・・?なんだね・・・それは・・・?
>>606 おまwwwDIO知らねーとかwwwww
本田技研工業のスクーターだろ
>>607 心で理解した
今月 と DIO に該当する記憶がなかったら困ったぜ
何言ってんだお前ら、DIOがスクーター?無知にも程があるwww
DIOと言ったらワールドヒーローズのボスキャラに決まってるだろ
ハア?ライブアライブの現代編のラスボスだろ
現代編のボスはオディ・オブライトだよ
ディオは西部編だな
みんな何言ってんだ、DIOといったらジョ・・・・
うわやめろ何をする貴様らーー
ここまでHR/HMのDIOが出てこないのはおかしい
ろにーじぇいむす・でぃおデシタッケ
いやだってSBRならDioだし
DIOは三部だしね
誰かコネタでも投下してくれないかな・・・
寂れてるな
そろそろ1週間が経過しちまうじゃあねーかッ
オレはこのスレをageてやるぜーッ
620 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/22(土) 22:52:20 ID:UUE2FdbY
宣言したのでageるッ
おちつけ
連休だからその間に誰か投下してくれるハズ
本スレはいいよねえ
荒れるくらい話題作が投下されて…
>>622 いやいやいや、シャナ(かベイダーのどっちか)→ジョジョ→あの作品の流れだから、本スレじゃないから
他にもベジータとかもいたしな
贅沢な悩みだよな。
個人的にどうとるかは別にしてあれだけの文章を書ける人を追放(w)しようとする動きすら出来るんだから。
自分勝手な振る舞いしてるのに叩かれない方が怖いわ
幾ら内容が良くても礼儀を弁えないならスレに投下して欲しくないと思うのは当たり前
個人サイトで幾らでも好きにやればいい
殺伐としそうなスレにDIO様が!!
ってなったらいいな
待ってます……復帰
波紋カッターッ!この流れを断ち切る!
パウパウッ!
逆に考えるんだ、投下がないなら自分で書けばいいと考えるんだ。
632 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/23(日) 01:15:05 ID:U1Stca/1
若ジョセフはまだかな〜
オリジナル展開だから難航してそうだけど
すまん。下げ忘れた
唐突だが、
DIOの肉の芽って、頭に植えられた状態だと波紋で倒せないのか?
あと、億康の父親も波紋が効きそうなんだが……ダメなの?
脳に直接刺さってるんだから肉の芽の灰みたいなものが残留したらまずいんじゃね?
いや、その理屈だと抜いたほうが危険な気が……
脳味噌に深く刺さったまんまの肉の芽を消滅させられる波紋を流したら、肉の芽と一緒に波紋の伝わった脳味噌が致命的に損傷すると思うなあ。
スージー内のエシディシにやったように一人が肉の芽に正の波紋を流しながらもう一人が脳味噌に負の波紋を流せば何とかいけそうな気もするが、それでも心臓に比べてずっとデリケートな脳味噌が波紋の負荷に耐えられるかどうか。
そんなこと言ったら脳味噌に刺さったり抜いたりする時点で深刻なダメージが発生するとは思うけどなw
波紋で消すには高レベルの波紋使いが二人も必要なのか……
億泰の父親の脳内にもまだ肉の芽が残っているのなら、取り除いただけじゃどうにもならないんだろうな
肉の芽の除去しつつ、パールジャムで悪い細胞を体内から排出して健康な細胞を作り上げるとかしないと
GEで新たなパーツを作るのも手か?
億泰のおとっつぁんは、細胞が融合した状態になってるんじゃないかなあ。
吸血鬼未満、いやもしかすると、ゾンビ未満の状態なのかも。
もしくは人間として細胞が作られているけれど、細かく絡み合った吸血鬼の細胞が人間の細胞を取り込もうとするので、自分で自分を吸血している状態だとか。
あれ?もしかして億泰の父親って、吸血鬼の力を活かす格好の研究材料になっちゃうんじゃね?
肉の芽の吸血鬼細胞が人間細胞と融合、変化して完全に別種の生物になってるんじゃあないか?
ただの吸血鬼やゾンビだったら虹村兄弟の試行錯誤の段階でとっくに死んでるだろうから。
なんか乙一の天帝妖狐を思い出した
猫草みたいなもんだな。同類だから仲良くなれたのかも知れない
だいたい人間に戻れても金ヅルのDIOは死んだし、あんまり幸福には暮らせそうにないもんな・・・
億安のお父ちゃんは確か日の光を浴びても問題ないはずだから
やっぱり別種の生物になっちゃってるんだろうな
ふと思ったんだが肉の芽って人体と一体になっている状態だと波紋も紫外線も効かないのかもしれん
だって肉の芽の一部は外部に出てるんだから、日の光浴びれば少なくともその部分は溶けるはず
(髪の毛程度で紫外線を完全に遮れるとは思えんし)
エンヤ婆の体内からも肉の芽の触手が外部に出てたけど溶けずに、銀戦車の剣で切断されてから溶けたし
埋め込まれた人間の皮膚を使って紫外線を遮ってるとか?
ひょっとしたら波紋を人体の方に逃がしてるんじゃないかと想像してみる
バオーが自分の溶解液で溶けないのと同じ理屈
精密電子機器(肉の芽)と静電気(波紋)とアース(人体)の関係に似ていると思えば……
ホラ辻褄合った
つまり肉の芽を一旦人体から摘出しないと駄目だが、脳にダメージを与えないように正確かつ素早く摘出できて
しかもその最中に触手で攻撃を受けても動じない冷静さを持つ人物が必要になる……
承りとスタプラがいなきゃどうにもならんw
(凄い強引な荒業だがクレイジーDに無理矢理引っこ抜かせつつそれで出来た脳のダメージを直すとか
……素敵指ならジッパーで開ければ簡単かな?)
ダイバーダウンの内部に潜りこむ能力なら引っこ抜くまでもなく、
一瞬で肉の芽の行動能力を奪えるかもしれない。
もしくは危険性の少ない腕や足などに移すとか。
マン・イン・ザ・ミラー!
肉の芽は許可しないーーーー
下向いてもらってエコーズACT3で肉の芽重くしたら
スポッと落ちて取れるんじゃない?
無理に取ろうとすると脳に傷がつくとか何とかジョセフが言ってなかったっけ
妹スレの方が荒れていますね…こっちは仲いいのに何であっちは仲が悪いんだろう
なんかモンスターペアレンツみたいな反応が多い。
ところで墳上裕也はいつになったら召喚されるんですか?
スネイクは充電中に違いない
きっとそのうち、また怒涛の五日間連続投下とかやってくれるんだ
きっとそのうち
わざわざこっちにまで出張してくるんじゃねえよキチガイ
それでもDIO様ならry
待ってます……復帰
俺はスレを覗く度に仮面の人を探してるぜ
仮面の人は定期的に執筆投下してくれてるから本当に嬉しい
なぜかリアルタイムでは一度も遭遇できてないが
>654
ハイウェイスターを召喚なら考えた
召喚魔法による大爆発によって意識不明の重体となったルイズ
その日から学院では謎の栄養失調で倒れる者が続出する
そんな中、学院内で母の幻影を見たタバサは「ある筈の無い部屋」に踏み込んでしまう
それは謎の怪物の罠だった。高速で襲い掛かる足跡に養分を吸われ倒れるタバサ。
それを目撃してしまったキュルケはタバサを助ける為に部屋へと踏み込むが
最後の力を振り絞ったタバサによってシルフィードに乗せられ逃がされる
「主人を探せ」と言い残して・・・
タバサは見ていた。「怪物」の手に使い魔のルーンが刻まれている事を。
奴が使い魔ならは必ず主人となるメイジがいる。そいつを倒すしかこの怪物を止める方法はない。
キュルケとシルフィードの決死のチェイスが始まった
自分に書けるのはここまでだ
>>659 距離が十分離れているなら、ハイウェイスターの鼻でも探知できまい。
シルフィードの最高速度が何キロかは知らないけど、十分高度をとった上で空中にとどまるか、
高度を上げて十分離れた場所まで逃げ切るかすれば助かるわな。
法皇も太陽戦で空飛んでたから、遠距離型は全て空中移動が可能と考えた方がいいんじゃないかな?
あと本体からの距離が数10km離れていようが追いかけてくるからアルビオンまで行かないと逃げれそうにないなw
ワープもできるしね
でも逃げてちゃルイズから遠ざかっちゃうしなあ。
墳上の様にルイズに自覚があるかどうかが鍵になりそうだ。
シアーハートアタックと違って分裂するからエコーズact3でも止められないし、
閉じ込めても距離を離しすぎてもワープするし、倒すには本体ブチのめすかガオンするしかねえし。
考えれば考えるほど恐ろしいスタンドだな。
665 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/24(月) 16:43:27 ID:Jju6O/uK
そういえばディアボロの大冒険のネタばれってありなの?
オール+99ディスク持ちで天国潜りが日課の俺TUEEEEディアボロ(ただし、かなり前のヴァージョン)も召喚されてたから大丈夫だと思う
レアディスク満載のタイヤを召喚されて涙目のディアボロとかもあったなw
というかネタバレする要素ってなんかあるのか?
「スタプラは三方向に攻撃できるよ!」とか?
MIHの作り方
>>668 露伴に自由人狂想曲を渡した後どうなるか、とかだろ
ネタバレする意味があるかどうかは怪しいがw
たまにはルイズの使い魔じゃなくてタバサとかの
物語も見てみたいな
この板の萌キャラといえばホワスネ異論は認める
>>673 アヌビスが萌えキャラじゃねえとは言わせねえぞ!
サバスを忘れんなよ!
デルフを忘れるとはいい度胸だ
ここまで人間無し
無機物萌えの幽霊吉良とか猫草だって萌えじゃね?
ヴェルダンデかわいいよヴェルダンデ
銃杖のロリコン子爵かわいいよ
↑ロリコン子爵って誰だ?
ザ・ワルド
ギーシュさん…
ギーシュは萌えキャラで燃えキャラ、異論は聞き流す。
ギーシュがショタであれば、などと思ったりはしないよ本当だよ
最適なスタンドがいるじゃないか…!
えらいねェ〜〜
オレもそう思ったよ
ここのwikiの管理人も立場を明確にしといた方がいいんじゃないか
別に何も起こってないし向こうとはルールその物が根底から違うし
ある意味この板でギーシュほど重要なキャラはいない
ギーシュってなぜかチビのイメージがあるんだよな
身長175サントだから別にチビではない
ジョジョキャラにガタイのいいのが多いだけだ
ジョルノの方が身長低いのか・・・
ジョルノはまだのびる・・・多分
まだ15だしすぐ父親みたいになるだろ
でも俺のなかで仗助より高いのは違和感があるけど…
それよりまずジョルノが15歳っつう方に違和感があるわけだが…
17歳のナランチャがINしてた時はちゃんとチンピラのガキっぽくなってたな
避難所で言うことだろJK……
ここで不意打ちに投下を宣言してみるッ!
23時辺りから盛るぜぇー超盛るぜぇー?
支援
支援
ジジイ待ってた!!
グッド!
お待ちしましょう
隠者さんキタ━━━━ヽ(゚∀゚ )ノ━━━━!!!!
支援準備!!
支援
日蝕の日、朝日が地平線から抜け出ようとしている頃。
昨夜から一睡もしていないオスマンは自室の中、式に出席する準備にまだ追われていた。
日程の関係上、一週間は学院を留守にしなければならないのだが、学院長であるオスマンが一週間不在になるということは、それなりに前もって片付けておかなければならない用事が多いのである。
ロングビルがいたなら多少の用事なら彼女に任せても良かったのだが、未だに彼女の後任に相応しい秘書も雇えていない現状では、仕事の全てを自分でこなさなければならないのであった。
「ふうむ、帰ってきたら本格的に秘書の募集を掛けなければならんな。当然有能で美人でちょっとくらいの悪戯は笑って許してくれて……あと、盗賊じゃないのは優先事項にせんと」
ぶつくさと独り言を漏らしつつ、残りの仕事は帰ってきてから終わらせることに決めて荷造りに取り掛かろうとした時、激しい勢いで扉が叩かれた。
「誰じゃね?」
この忙しい時に何事じゃ、と眉を顰めたその時、一人の男が飛び込んできた。
飛び込んできた男の服装で王宮の使者であることを理解する間もなく、大声で口上が述べられていく。
「王宮からです! 申し上げます! アルビオンがトリステンに宣戦布告! 姫殿下の式は無期延期になりました! アンリエッタ殿下率いる王軍は、現在ラ・ロシェールに展開中! 従って学院に置かれましては、安全の為、生徒及び職員の禁足令を願います!」
使者の口上に、オスマンは一瞬言葉を失った。
「……宣戦布告とな? 戦争かね」
皺と白髭に覆われた顔により深い皺が刻まれたが、使者の告げる言葉はなおもオスマンの表情に心痛な色を加えていく。
アルビオン軍は巨艦レキシントン号を筆頭に、戦列艦が十数隻。上陸した総兵力は三千。
それに対するトリステイン軍は艦隊主力は既に全滅、慌ててかき集められた兵は二千。
完全な不意打ちの形を取られたトリステインが集められる兵力はそれで限界であり、しかも制空権は完全に掌握されて取り返せる見込みは皆無。十数隻の戦艦からの砲撃で、士気も精度も劣る二千の兵は容易く蹴散らされるのは火を見るよりも明らか。
タルブの村は竜騎兵によって炎で焼かれ、領主も既に討ち死に。昨日の午後、姫殿下自ら御出陣。深夜のうちにラ・ロシェールに陣を張り、同盟に基づきゲルマニアに援軍を要請したが、先陣が到着するのは三週間後になるであろう……。
息せき切って懸け付けた使者の言葉を疑う余地は何処にもない。
オスマンは深々と溜息をついて、天井を見上げた。
「……昨今条約や同盟というものはインクの染み以外の何物でもないのう。トリステインは見捨てられたな。三週間もあればトリスタニアにアルビオンの旗が上がるじゃろうて」
アルビオンの末路を聞いているオスマンは、トリステインだけは例外だと考えるような夢想主義者ではなかった。滅亡する国がどのように蹂躙されるかなど、考えるまでもない。
(……どうする)
現状で打てる手などない。
必然とも言える流れを覆せるような魔法など、人より長い年月を生きてきたオスマンにも心当たりはない。
となれば、今考えるべきは如何に学院に居る職員や子弟達を、安全に避難させるか。
思考を巡らせるオスマンの脳裏に、二人の男の姿が走った。
もしやすれば、という可能性が浮かび上がる。この話を教えれば、二人とも一も二もなく戦いに赴くことは疑うべくもない。
だが、だが……ウェールズ皇太子はともかく、ジョセフ・ジョースターを巻き込んでいいものか。異世界から無理矢理召喚されただけの老人をこちら側の世界の戦争に巻き込めるのか否か。
ましてジョセフは今日の日蝕で元の世界に帰るのだ、とコルベールから伝え聞いている。
良心と打算が両極に乗る天秤の揺らぎに、知らず呻き声めいた吐息が漏れた。
「ミスタ・オスマン?」
使者の訝しげな呼び掛けにも、視線を向けようとはしない。
「……仔細了解した。今から学院に居る皆に事情を説明する。貴殿も任務に戻るといい」
「はっ」
敬礼して慌しく部屋を辞する使者を見送り、それからまた僅かに逡巡した後、やっとオスマンは立ち上がった。
支援
その足の向かう先は、風の塔。ウェールズが隠れ住む一室である。
黒い琥珀に記憶されているオスマンが階段を登り、ウェールズのいる部屋の扉をノックする。
「開いているよ」
朝早くから椅子に腰掛けて読書していたウェールズは、開いた扉の向こうに立っていたオスマンの姿に少し目を見開いた。
「どうされたのですか、ミスタ・オスマン」
読みかけの本を机に置いたウェールズに、オスマンは静かに口を開いた。
「――レコン・キスタめがトリステインに宣戦布告しました」
アルビオンではなく、レコン・キスタ、と言い換えたのは、当然のことであった。
思わず立ち上がったウェールズの足に押され、椅子がけたたましい音を立てて転がる。
「何と言う事だ……!」
く、と唇を噛み締めたウェールズは、次の瞬間には毅然と顔を上げてオスマンを見た。
「……戦況をお教え頂けますか、ミスタ・オスマン」
オスマンは眉一つ動かさず、使者から伝え聞いた言葉を紡ぐ。
ウェールズは現状を全て聞くと、コート掛けに掛かっていたマントを手に取り、大きく風を靡かせて背に羽織った。
「では、アルビオン王国の生き残りである私は、これより援軍としてタルブ村へ向かわねばなりません。今まで私を匿ってくださり、感謝の言葉もありません」
至極当然に言い切る王子に、オスマンは僅かな瞬間だけ躊躇ったが、意を決して言葉を紡いだ。
「――生憎、学院には幻獣はおりません。馬の足では、今から向かった所で戦に間に合わぬのは明らか。ジョセフ・ジョースターに協力を願う以外、殿下が戦場に辿り着く術はないと愚考します」
「確かにそうですが、彼は此度の戦に何ら関係ないではないですか」
「しかし、貴方が唯一戦場に辿り着く方法を使うことが出来るのは彼しかおりませぬ」
白く長い眉の下から覗く目を、ウェールズは声もなく見据えた。
支援!
「……貴方は、無関係の異邦人を戦に駆り立てようと。そう仰るのですか」
腹の中から搾り出したような声にも、オスマンは毛の先程も表情を変えはしない。
「戦場に立てとは言いませぬ。あの飛行機械で、皇太子を戦場へ送り届けてくれと頼むだけです」
瞬きもせず、二人の男が睨み合う。
視線を背けたのは、ウェールズが先であった。
「……私は無様だ。これより家族の元へ帰ろうとする老人に、なおも助けを請う。何と言う……何と言う、恥知らずの男だろうか……」
ぎり、と歯が軋む音が響く。
オスマンはそっと彼に背を向け、己のエゴを憎憎しく思う内心を億尾にも出さず、次の言葉を放った。
「さあ、彼を呼びに行きましょう。我々に残された時間は、限りがあるのですからな」
そして二人は、ジョセフが暢気に寝こけているであろうルイズの部屋へ向かった。
早朝の突然な来訪に、ジョセフは寝ぼけ眼で応じ……タルブの村が燃えたと聞いた時点でゴーグルを手に駆け出そうとしていた。
燃えるような怒りを目に灯し、自分の横を駆け抜けようとするジョセフの肩をつかんだウェールズは、彼の動きを留めるのに必死に力を込めなければならなかった。
「待ってくれ、ミスタ・ジョースター! まさか貴方も戦うなどと言わないでくれ!」
「こんな話聞いて黙って帰ったり出来んだろ!」
「ジョースター君、我々に強要出来る筋合いはないがせめてウェールズ殿下を送り届けてくれれば、それ以上は……」
オスマンとて、ジョセフを戦場に送りたくないのが本心である。
ウェールズが死地に赴くのを止める理由はない。それが彼の望みだからだ。
しかしジョセフは違う。何の関わりもない。
だと言うのに、今のジョセフは輝ける意思を抱いている。決してただ王子を戦場に送り届ける為の勇気ではない。
それは紛れもない闘志、だった。
ニューカッスル城まで付き従った三百のメイジ達と同じ輝きを、この老人もまた抱いていた。
「すまんがこのジョセフ・ジョースター、困ってる友人を見捨てられるほど人でなしじゃあないんでなッ! あのゼロ戦は爆弾はないが機関銃はバッチリ動く! あんだけありゃあ、フネの一隻や二隻くらいは落としてみせるッ!」
気迫と力強さばかりで構成される言葉。手や足に震えはない。
亡国の王子と学院長は、おおよそ同じタイミングで同じ答えに辿り着いた。
『これ以上何を言っても時間の無駄』であった。
死にに行くだけなら止め様がある。戦いに恐れを抱いていればそこから崩す事も出来る。
だが、ジョセフ・ジョースターに一切の揺らぎはない。
レコン・キスタに立ち向かい、勝利を得に行こうとしている。
「……一つだけ聞かせてくれ、ミスタ・ジョースター」
ジョセフの肩に食い込むほど力の篭っていた手を離し、ウェールズは問うた。
「何故、貴方は戦いに赴くのだ? この戦いで名誉を得られる訳でもなく、報酬を与えられる訳でもない。それなのに……どうして貴方は、命を賭した戦いに怯まないのだ?」
判り切った事を何故聞かれたのか判らない、と言いたげな顔で、ジョセフは答えた。
「そりゃアンタ、困ってる友達を見て助けないなんて薄情な真似はわしにゃ出来んというだけだ。王女殿下は、この部屋でわしを友人だと言った。わしをジョジョと呼んだ。だからわしは助けに行くだけのことだ」
単純明快にして、唯一無二の答え。
ウェールズは、静かに息を一つ吸い、そして大きく吐き。そして深々と頭を下げた。
「……そうだな、ミスタ・ジョースター。愚問だった、非礼を許して頂きたい」
「気にせんで結構。さあ行こう、調子コイとるバカどもをぶちのめしになッ」
ウェールズの肩を掌で軽く叩いてから、改めてオスマンに向き直った。
「最後まで世話になりました、センセ。わしの可愛い孫と友人達を、どうか宜しくお願いします」
ウィンク混じりの笑みの別れの挨拶に、オスマンは口髭に隠れた口の端をニヤリと吊り上げた。
支援
支援
支援するんだよォォォ――ッ!
「安心しなさい、例えどんな結果になったとしてもわしの生徒達の安全は保証しよう。――存分に、戦ってきなさい」
そして差し出された手を、ジョセフは力強く握った。
「その言葉があれば、安心して戦えるというもの。お世話になりました」
皺だらけの顔を、笑みで更に皺を増やし。二人の老人は笑みを交し合った。
「よし、ジョースター君。ミスタ・コルベールの所にはわしが行こう。あの飛行機械の燃料は彼が錬金したと聞いている。君は、ミス・ヴァリエールに別れの手紙を書いてやりなさい」
「何から何まで、すいませんな」
「ほっほっほ、なぁに。わしらの世界の不始末を異世界からの友人に任せなきゃならん不義理の代わりにゃなりゃせんて」
手を離し、ウェールズとオスマンは階段へ向かい、ジョセフは部屋へ戻る。
数分後、机に置かれた便箋の上には、ペーパーウェイト代わりに帽子が置かれていた。
「……さらばじゃ、ルイズ」
今は居ない主に向かい、ほんの少し寂しさを滲ませた笑顔で別れの挨拶を告げた。
ジョセフ・ジョースターはこの時を限りに、二度とこの部屋へ帰る事はなかった。
*
タルブの村はジョセフ達が訪れた時の面影を完全に失っていた。
レコン・キスタの強襲の際に出撃した竜騎士隊が、村だけでは飽き足らず周囲の森や草原まで面白半分に火のブレスを吐きかけた結果だった。
村人達は辛うじて逃げた者も多いものの、命を失った者も数人いた。
支援幸福論
美しい光景を失った草原にはレコン・キスタの大部隊が集結し、港町ラ・ロシェールを陣地として立てこもるトリステイン軍との決戦に備えていた。
その上空では、空からの攻撃に立ち向かう任務を負っている竜騎士隊が引っ切り無しに飛び回っている。歴史あるトリステインの誇りを担うのが魔法衛士隊ならば、大空に浮くアルビオンの誇りを担うのは竜騎士隊であった。
アルビオンが擁する竜騎士の数は火竜や風竜合わせて百を超える。今回の進軍では二十騎もの竜騎士が率いられていた。対するトリステインの竜騎士は、質でも量でも遠く及ばない。
元より奇襲を掛けられ混乱状態にある上、乏しい地力で散発的な攻撃しか行えなかったトリステインは、アルビオンの竜騎士を一騎たりとも討つ事が出来なかったのである。
翻って圧倒的な勝利を挙げたアルビオン竜騎士隊は、戦闘の趨勢が決まった後もタルブを蹂躙したのだった。
戦艦や竜騎士を失ったトリステインの空は、事ここに至りアルビオンが完全制圧した。
後はラ・ロシェールに立てこもるトリステイン王軍に空中からの艦砲射撃を行い、立てこもる都市を無力化してからゆっくりと勝ちの決まった決戦を仕掛けるのみであった。
敗北の可能性どころか死ぬ危険さえないと、アルビオンの兵士達は高を括っていた。反乱からここに至るまで敗北はなく、被害と言えばニューカッスル戦くらいのもの。砲撃の準備に掛かるアルビオン艦隊には、弛緩した雰囲気さえ漂う始末だった。
タルブの村上空での警戒に当たっていた竜騎士隊も、命の危険のない気楽な任務とばかりに各々好き勝手に空を飛んでいた。
そんな時、一人の竜騎士が上空からこちらに接近してくる竜を発見した。
昨日の交戦でトリステインの竜騎士隊の錬度を把握していた彼は、舌なめずりした。昨日は二機撃墜したが、どうにも物足りないスコアである。
およそ二千五百メイルの高度を飛んでいる敵を見据えながら、火竜を鳴かせて敵の接近を同僚達に知らせようと手綱を引いたその時――竜の頭が突然吹き飛び、彼の胴体は半分以上抉られていた。
(え?)
自分に何が起こったのか理解する機会も与えられない。火竜の喉には、炎の息を吐く為の燃焼性の高い油の詰まった袋が仕込まれていた。音速で飛来する弾丸で吹き飛ばされると同時に着火した油の飛沫は、人一人を燃やし尽くすには十分すぎた。
(なんだ? 何が起こったんだ? あれ、俺……)
彼の生涯最後の幸運は、事態を理解する前に意識が炎に飲み込まれたことであった。
どのような原因によってどのような結果が起こったのか、例え理由がわかったとしても受け入れ難い事実ではあったろう。
超音速で飛来する直径二十ミリほどもある鉛の弾丸が、竜の頭部を風船のように破裂させただけでは飽き足らず、その後ろに座っていた自分もついでに吹き飛ばしたなどとは。
「よし、撃墜一」
今しがた一匹と一人の命を奪った張本人は涼しい顔で嘯いた。
「……なんだ、何が起こったんだ」
今しがた焼け野原へと落ちていく竜騎士が、命の間際に思った言葉と同じ思いを口にしたのはウェールズだった。元々一人乗りのコクピットから無線機を取り外した空間に無理矢理乗り込んでいる故に狭苦しいが、お互いの行動が阻害されるほどでもない。
雲を隔てた下方に竜騎士が見えたその時、鈍い爆発音が機体を震わせたかと思うと、一条の白い光が走り、竜の頭と騎士を一緒くたに吹き飛ばしていた。
「ああ、さっき説明した銃の威力じゃよ。ああ、口径が二十ミリだから砲になるんかな」
「銃!? あれが!? まさか今の音が発射音だったのか!」
ハルケギニアには砲が存在するし、それより口径の小さい銃も存在する。しかしハルケギニアで銃と言えばマスケット銃どまりである。致命傷を与えるどころか、せいぜい手傷を与えるくらいの……治癒手段を持つメイジにとっては玩具程度の認識でしかない。
「わしらの世界じゃ有り触れたモンだ。ま、それにちょいとばかり上乗せしとるがね」
そう言うジョセフの手からはハーミットパープルが伸び、機関銃に絡み付いている。
えてして弾丸は直進しない。特に超高速と長射程が加わる場合、その弾道は直線とは大きくかけ離れた大きな弧を描く。大気や風速を始めとした空気抵抗を始めとし、重力、果ては気温すら弾道に大きな影響を及ぼすのである。
ジョー支援ーさァーん!
ゼロ戦を兵器と認識したガンダールヴの力は、一度も発射していない機関銃の弾道をジョセフに認識させていた。目標地点に存在する標的をどの位置から撃てば数秒後に命中するのか、未来予測の計算すら可能にした。
それに加え、ジョセフと機関銃はハーミットパープルで直結されている。
ガンダールヴが弾き出した命中の方程式を、脳から身体、身体からガントリガー、トリガーから砲身……という一つ一つのプロセス毎にかかる僅かなタイムラグを除去し、寸分違わないタイミングで実現していたのだった。
そして何より、搭載している弾薬を無駄遣いするわけにも行かない。
竜騎士隊はジョセフには肩慣らし程度の認識しかなく、本命はレコン・キスタ艦隊。20mm機銃2挺の携行弾数は各125発、7.7mm機銃2挺の携行弾数は各700発。一切の補給が許されない以上、一発たりとも無駄弾を撃つつもりはなかった。
十何隻も居並ぶ戦艦達に立ち向かうには、可能な限り万全を期さなければならない。
「さて、殿下を送り届ける前にあのトカゲどもをチャチャッと片付けてしまわんとな」
かつての母国の誉れとも言うべき竜騎士隊をトカゲどもの一言で片付けられるのにも、今は苦笑しか浮かべられないウェールズだった。
なるほど、このゼロ戦を相手にしてはアルビオン自慢の竜騎士など地を這うトカゲとなんら変わる所はない。
速度は風竜を上回り、搭載する銃は威力も射程も火竜のブレスを遥かに凌駕する。負ける道理を見つける方が難しいとさえ言えた。
「おう相棒、右下から三騎来るぜ」
デルフリンガーが普段と変わらない口振りで敵機の襲来を告げる。
「あいよ、んじゃあちょっくらエースになりに行くとするかッ!」
*
紫煙(パープルヘイズ)
支援
ルイズは結局学院に帰る事もなく、レコン・キスタを迎え撃つ為出陣したアンリエッタの後を追って自分もまた戦場に向かっていた。
高く昇っていく太陽に二つの月が重なろうとする中、ラ・ロシェールに立てこもったトリステイン軍へ向けて進軍してくる敵の姿が見えた。三色の旗をなびかせ、徐々に近付いてくる。
既に前日の攻撃と焼け野原と化していたタルブの草原を、正に蹂躙し尽くした張本人であるレコン・キスタを目の当たりにし、ユニコーンに跨ったアンリエッタは、着慣れない甲冑の下で恐れに身を震わせた。
王女の側に控えるルイズも、ヴァリエール家三女の誇りを重石にしなければ恐ろしくて逃げ出してしまいかねなかった。
アンリエッタやルイズが生まれてから現在に至るまで、ゲルマニアやガリアとの戦争があるにはあったが、せいぜい国境付近に領土がある貴族同士の小競り合い程度だった。
国と国同士の総力を挙げた戦争は久しく行われておらず、急拵えで集めた二千の軍勢の中でこの規模の戦争経験がある将兵は過半に達していなかった。
知らず起こる震えを誤魔化そうと、アンリエッタは始祖に祈りを捧げた。
だが、それ以上の恐怖はすぐさま訪れる。
敵軍の上空には、傲然とした様さえ伺わせる大艦隊が控えていた。たった一日でトリステイン艦隊と竜騎士隊を壊滅させたアルビオン艦隊である。雲のように空に浮遊する艦の周囲を飛び回る竜騎士の姿すら見えている。
逃げ出したくなる臆病の気を辛うじて唾と一緒に飲み込んだのは、アンリエッタかルイズか、それとも兵士達だったか。これから始まる戦いに絶望しか抱けなかったトリステイン軍に、聞き慣れない物音が聞こえたのはそんな時であった。
まるで口を閉じたまま唸る音が鼻から抜けているような奇妙な音。それが断続的に聞こえてくる。すわ、アルビオンの攻撃かと身構え、空を見上げたトリステイン軍は、更に奇妙なモノを目撃した。
それは空を飛んでいた。フネのように浮いているのではなく、飛んでいた。
竜のようにも見えたが、胴体から生えた二枚の翼をはためかせることもなく、ただまっすぐに広げられている。
支援ッ!
ルイズはこのまま仗助を産んでしまうのだろうか・・・
ダンディすぎるぜじじい支援
支援。
支援ー
さるさん?
支援
支援
その奇妙な竜に向かっていくアルビオンの竜騎士達は、竜の翼や頭から発せられる白い光に貫かれた。ある竜は空中で爆発を起こし散華し、またある竜は減速することもなく地面へ向かって墜落していった。
昨日の戦いを辛くも生き残った兵達は、自分の正気を疑った。
トリステインの竜騎士達に圧勝した竜騎士隊が、たった一騎の竜に立ち向かうことも出来ず、ただ止まっている標的であるかのように撃ち抜かれて行く。
奇妙な竜は天高く空へ向かって上昇したかと思えば、すぐさま急降下して竜騎士の背後を取る。背後を取られた竜騎士は間髪置かず白い光の洗礼を浴び、空から脱落する。
トリステイン軍の中で、あの奇妙な竜が何であるかを知る人間は、一人しかいなかった。
ルイズである。
つい一週間前、タルブの村に置いてあった飛行機。
とても空を飛ぶとは思えなかった代物が、今、現実に空を飛んでいるばかりか、天下無双と謳われるアルビオンの竜騎士隊を歯牙にもかけていない。
「……ジョセフ、ジョセフ、なの?」
あの飛行機を操れるのは、この世界には一人しかいない。
だがルイズの中に、この絶望的な戦況を覆せるかもしれない手段を引っ下げて来た使い魔を誇る気も、主人のピンチに駆け付けて来た忠義を喜ぶ気も、一切なかった。
「……あの、バカ犬ッ!」
思わず漏れた声に、空を呆然と見上げていたアンリエッタが思わずルイズを見た。
「どうかしたの、ルイズ」
アンリエッタが掛けた声で、自分の中で膨らむ感情が思わず口に出ていたのが判ったルイズは、慌てて首を横に振った。
「い、いえ、なんでもありません、王女殿下」
そしてまた、二人の少女は空を見上げた。
アンリエッタは、謎の竜が繰り広げる空中戦に目を見開き。ルイズは、コクピットの中にいるだろう使い魔への心配に満ちた目を眇めた。
(……ジョセフのことだもの。きっと、戦争やってるって聞いて……居ても立ってもいられず飛行機に乗って来たんだわ)
使い魔として召喚してからそれほど長い時間を過ごした訳でもないが、使い魔の気性は十分に理解していた。普段は怠け者でお調子者だが、戦うべき場面に恐れず歩み出すのがジョセフ・ジョースターなのだと。
(……でもジョセフ、アンタ……今、そんな事してる場合じゃないでしょう!? ちょっと我慢してたら元の世界に帰れるんじゃない! どうして来なくてもいい戦争なんかやってるのよ、なんで、どうして……!)
使い魔を元の世界に帰す決意をしたのに、当の使い魔は必要のない戦いに首を突っ込んできている。こんな事なら、いっそ別れの時まで一緒にいればよかったかもしれない。
自分の言葉で使い魔が自分の意志を曲げるとは毛ほども思っていないが、それでも、戦いに行くなと言えたかもしれない。しかし今、使い魔はたった一人レコン・キスタと戦っている。
メイジでも貴族でもない、異世界の奇妙な老人が戦っていると知っているのは、ルイズただ一人。今、あの奇妙な竜を操っているのは自分の使い魔なのです、と言う気にはなれない。言った所でアンリエッタすら信じてくれないだろう。
だが、事実である。
ルイズは飛行機から視線を背けないまま、胸の前で両手を組んだ。
(――始祖ブリミル。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール一生のお願いです。どうか、どうか……ジョセフ・ジョースターをお守り下さい。彼を無事に家族の元へ帰して下さい……)
切なる祈りを捧げるルイズをよそに、ただ空を見上げていたトリステインの軍勢の中から、誰とも知れず声が聞こえてきた。
「……奇跡だ……」
「いや、あれこそ、始祖ブリミルが我々に大いなる力を振るって下さっているのだ……」
都合のいい言葉だが、それを否定する言葉を誰も持っておらず、ましてや絶望に垂らされた一筋の希望を否定する気などあるはずもない。
ルイズと同じくアンリエッタの側に控えていたマザリーニは、兵士達から上がる希望に縋る声にただ追従したりはしない。感情の揺らがない目で竜が空を舞う様を見つめていた。
熱狂に侵食されつつある二千の中で一人、どこまでも静かに戦況を見ていたのはマザリーニ枢機卿だけであった。鳥の骨と貶められいらぬ誤解を受けながらも、前王の崩御以来トリステイン王国を担ったのは紛れもなく彼なのだから。
この戦いに勝算など欠片ほどもなく、ただ名誉を拾いに行くために死にに来たようなものだと考えていた彼は、かの奇妙な竜を目の当たりにしてもトリステインの勝利を描いていない。
(我々が勝てるとすれば、かの艦隊を空から引き摺り落とさなければならない。果たしてあの竜は、ただ一騎で艦隊と立ち向かえるのか?)
この場に居る誰一人として、竜騎士を七面鳥の如くあしらう竜の能力全てを知らない。
絶望的な状況の中、一筋の希望を見せている。だが、縋るにしてはその希望はか細い。
もしこの希望さえ潰えたのなら、その時こそトリステイン軍はラ・ロシェールと共に壊滅するしかない。しかし、もしこの希望が縋るに相応しい代物であったのならば、二千の兵を奮い立たせる何よりの要因となる。
(……内から沸き上る衝動すら口に出せないとは。全く難儀な道を選んだものだ)
手綱が湿るほど汗をかいていた掌を裾で拭う様など、アンリエッタですら見ていない。
――やがて、時間にしておよそ十分強。アルビオン艦隊の周囲を飛行していた竜騎士隊二十騎全てが全滅する。
竜騎士が一騎撃墜される度に大音声の歓声を上げていたトリステイン軍は、今しがた竜騎士隊を全滅させた竜がラ・ロシェールに向かって飛んでくるのを見ていた。
竜が近付いてくればくるほど、唸り声のような音は大きく響いて聞こえてくる。
つい先程までアルビオンの竜騎士隊と戦っていた竜が何故こちらに近付いてくるのか、理由を計りかねるトリステイン軍は一様に竜を見上げる以外に対処の仕様がなかった。
接近するにつれて少しずつ高度を落としていた竜は、自分を見上げている四千の眼の上を誰も見たことのない猛スピードで通り過ぎたかと思うと、街に聳える巨大な樹を回り込む軌道で戻ってきた。
竜は再び艦隊へ向かう進路を取りつつ、トリステイン軍の頭上を悠々と渡っていく。
そして竜がアンリエッタ達の頭上を飛び越えていったその時、竜から何者が飛び出した。
くらえッ!支援だッ
支援
反射的に銃や杖が向けられるが、しかし今の今まで竜騎士隊と交戦していた竜から現れた人影へ問答無用に攻撃を仕掛ける者は居ない。
トリステイン軍の前方、アンリエッタの付近へ向けて落ちてくる最中にフライの魔法を唱えた影は、マントを風にはためかせながら声も限りに叫びを上げた。
「アンリエッタ!」
風に乗せられて届いた声に、アンリエッタの目がこれ以上はないほど開かれた。
「ウェールズ様!? ウェールズ様なのですか!?」
王女の口が紡いだ名は、呼ばれるはずのない名前だった。
トリステインの王女が様を付けて呼ぶ「ウェールズ」はレコン・キスタとの戦いで華々しい戦死を遂げ、既にこの世の者ではないと言う事になっているからだ。
返事をする間も惜しいとばかりに、ウェールズは一直線にアンリエッタの側へと降り立った。
突然の事に周囲のメイジ達が一斉に杖を向けるが、マザリーニは彼をアルビオン王国皇太子であるとすぐさま判別をつけた。
「各々方待たれよ! この方はアルビオン王国が皇太子、ウェールズ・テューダー様なるぞ! 今すぐその杖を下ろされい!」
その声に杖は幾許かの躊躇いの後で下ろされるが、アンリエッタとウェールズは杖の行方など最初から一瞥もくれていなかった。
アンリエッタはこれまで辛うじて続けてきた王女としての振る舞いを今ばかりは完全に忘れ、ただの恋する少女に戻ってしまっていた。
「ああ、ウェールズ様! この様な時に来て下さるだなんて……!」
それでも人目も憚らず抱擁を求めてしまうほど自分を見失ってはいなかったが、右手までは気持ちを抑えることも出来ず、ウェールズを求めるように伸ばされていた。
ウェールズは恋人に向けて差し出された手を、王子としての手で取ると、自然な動作で甲に唇を落とした。
「話は後だ、アンリエッタ・ド・トリステイン。僕はアルビオン王国の生き残りとしてトリステインへの援軍に来ているんだ。もうすぐ艦隊からの砲撃が始まる、すぐに部隊を集めて――」
ウェールズの言葉が終わるのを待つこともなく、竜騎士隊を全滅させられた艦隊は多少の被害に構わず、当初の予定通りラ・ロシェールへの艦砲射撃を開始した。
何百発もの砲弾が空から轟音を伴って降り注ぎ、岩や馬は言うに及ばず、兵士達を吹き飛ばす。これまで目の当たりにした奇跡で高揚した士気を持ってしても、兵達の動揺を留めることはできなかった。
「きゃあ!」
思わず目を固く閉じて身を竦めたアンリエッタを庇うように立ったウェールズは杖を一振りし、風の障壁を周囲に張り巡らせる。
「マザリーニ枢機卿!」
「承知しております!」
王女から少女に戻ったアンリエッタをウェールズに任せ、マザリーニは素早く周囲の将軍達と即席の軍議を終えた。マザリーニの号令に合わせ、メイジ達は一斉に杖を掲げて岩山の隙間を塞ぐ形で風の障壁が張り巡らされる。
砲弾は障壁に阻まれてあらぬ方向へ飛ばされるか空中で砕け散ったが、それでも全てを防げる訳ではない。障壁の隙間を潜り抜けて砲弾が着弾する度に土煙と血飛沫が撒き散らされた。
「この砲撃が終わり次第、敵の突撃が開始されるでしょう。それに立ち向かう準備を整えねばなりませぬ」
「勝ち目は……あるのですか?」
怯えを隠せなくなってきたアンリエッタの声に、マザリーニは心の中で首を振った。
勇気を振り絞って出撃したものの、彼我の戦力差は比するまでもない。砲撃は兵の命だけでなく人の勇気を打ち砕き続けている。
しかし、今でこそただの少女に戻ってはいるが、昨日の会議室で威厳ある王女としての振る舞いを見せてくれたアンリエッタに現実を突きつける気にはなれなかった。
五分五分だ、と精一杯のおためごかしを言おうとしたその時、ウェールズの静かな声がアンリエッタに投げられた。
「――ある。十分だ」
ウェールズはアンリエッタではなく、艦隊を遠巻きに旋回しているゼロ戦を見上げながら呟いていた。
「砲撃が終われば、その時が反撃開始の時間だ。それまで、持ち堪える」
着弾の度に揺るぐ地面の感触を感じつつ、愛する少女を守る為に青年は杖を掲げた。
*
竜騎士隊を全滅させた後、ジョセフは本来の目的であるウェールズの送迎を済ませた。
ラ・ロシェールに進行する艦隊をゼロ戦一機で殲滅できるとは思っていない。竜騎士の七面鳥撃ちは出来るにしても、爆弾の一つも搭載していない戦闘機が戦艦に立ち向かおうとするのは無謀としか言い様がない。
「救いは二十ミリを結構温存出来たっつーことだが……それにしたってハンデデカいぞ」
二千メイルの上空を維持したまま、艦隊の射程外を遠巻きに旋回する。闇雲に攻められるのは竜騎士に対してのように、圧倒的な戦力差があってこそである。
今はジョセフが圧倒的に攻められる番のはずだが、艦隊はこちらにさして構う様子すら見せずトリステイン軍に艦砲射撃を開始していた。何門かの砲門がこちらに向いているが、あくまで無闇な接近を阻む威嚇射撃らしき散発的な砲撃である。
それだけ戦力差が絶望的に開いている、という証左であった。
「相棒、それはいいんだがガソリンは足りるのかね。日蝕までもうすぐだが、今のでかなり吹かしたんじゃねえのか? 俺っち怒んないから正直に言ってみな」
「しょーじき、厳しい」
燃料を満載にしていれば三千kmは優に飛行できるゼロ戦だが、日蝕に飛び込むまでどれだけ上昇するのかはコルベールすら把握していない。無事に元の世界へ帰還できたとしても、どこに出るか判らない以上、ある程度は燃料に余裕を持たせねばならなかった。
「あいつらの弱点は見えとる。空の上から攻め込む戦艦は、砲を真上に向けるようには作っちゃおらん。撃てたとしても自分で撃った砲弾を頭に食らう覚悟はないだろうがなッ」
一番手堅いのは、敵艦の頭上を取って急降下掃射を浴びせ反転急上昇、再び急降下掃射、という手を取る事であるが、そんな機動を繰り返せば燃料も弾薬もすぐ尽きる。
しかしジョセフは躊躇わない。
「ここで引いたら男がすたるッてな!」
口の端をにやりと吊り上げ、機体を急上昇させていく。
雲を突き抜けた先で双月に隠れようとしている太陽を横目で見た後、そのまま間髪入れず宙返りして艦隊へと急降下していく。
「行くぞッ!!」
艦隊の中央に陣取る、周囲の戦艦と比べても一際大きなレキシントン号。
遥か眼下、照準器に刻まれた十字にレキシントン号を捕らえると、ハーミットパープルではなくガントリガーを力の限り引いて両翼の機関砲に火を噴かせる。
「これでも食らえッッ!!」
出し惜しみすることをやめた二十ミリ砲弾と七.七ミリ銃弾が空を引き裂き、レキシントン号へと吸い込まれていく。
元からの火力に急降下の速度と重力、そしてガンダールヴの能力の助けを受けた砲弾は一発一発が必殺の威力を手に入れている。直撃を受けたレキシントン号のメインマストは中程から折れ下がり、甲板を貫いた弾丸は直撃を受けた不幸な水兵を物言わぬミンチに変えた。
だが、そこまでだった。
「……チッ、ビクともしとらんな」
アルビオン艦隊の射程から逃れるべく四千メイルの上空で再び急上昇を掛けながら、なおもふてぶてしく空に聳えるレキシントン号を睨み付けて舌打ちをする。
渾身の斉射は少なからずの被害を与えていたが、レキシントン号ほどの巨艦を大破轟沈させるにはどうしようもないくらいに役者不足だった。
60キロでなくとも30キロ爆弾があれば、木造のフネなどあっと言う間に炎上させられていただろうし、一機だけでなく複数の僚機がいれば多大な被害を与えられていたはずだ。
しかし今、ハルケギニアの空を飛ぶ戦闘機はジョセフのゼロ戦一機だけだった。
二十騎もの竜騎士を容易く屠れはしても、巨大戦艦群を相手取れる性能はない。
意外!それは支援!
「弾切れになるまではブチ込んでやらにゃあなるまい……これ以上好き勝手させてたまるかッ!」
ジョセフ本人もこれ以上は徒労になるとは理解している。
しかしジョセフの気性に加え、「敵の手の届かない所から撃てる」というある意味気楽な立場は、もう一度攻撃を行う踏ん切りをつけるには十分だった。
「撃ち尽くしたら逃げるッ!」
力強い宣言をした後、二度目の宙返りからの急降下斉射にかかる。
再び機首と両翼から撃ち続けられる弾丸がレキシントン号とは別の艦船に叩き込まれる。
しかし結果はレキシントン号と似たり寄ったりの結果でしかなかった。
メインマストを破壊し、ひとまずの被害を与えたもののせいぜいが小破止まり。
「相棒、これ以上は無理だ。逃げな」
戦況を冷静に把握しているデルフリンガーが呟く言葉に、ジョセフはまた舌打ちして操縦桿を握り直す。
「チ、これが限界じゃな。ところでお前はどうするんじゃ」
「ここから放り投げるなり連れてくなり好きにしてくれよ。でも六千年も見てきた世界より、相棒の来た世界とやらを見てみたい気もするな。良かったら連れてってくれるかい」
「了解了解、じゃあ行くとするか……」
そう言いながらペダルを踏み込み、スロットルレバーを動かす。
「……む?」
「どうしたよ相棒」
デルフリンガーに返事する前に、再びハーミットパープルを這わせる。
茨から伝わってきた情報に、ジョセフの全身から汗が噴き出した。
「……まずいな、エンジンが焼け付いてきとる」
「なんだって? 今の今まで普通に飛んでたじゃねーか」
「この前試験飛行しただろ。本当は一回飛ぶ度にエンジンバラして全部の部品を調整せにゃならんのだが、そんな時間もないし大丈夫だろうと思ってたんだが……固定化の魔法ってそんなに信用できんかったんじゃなあ」
ってことは、まさか…支援
「じゃなあ、じゃねえよ! 固定化は物の劣化を防ぐだけで損傷まではカバーしねえんだよ!」
「だったら最初から言ってくれよ! つい調子乗って試験飛行やっちゃったじゃないか!」
「うるせえ! いい年して調子こくから本番で困るんだろが!」
不毛な言い争いをしながら、ひとまず滑空状態のまま空域から離れる。
現状、まだ飛行は維持できるが急上昇急降下急旋回などの機動をすれば、場合によっては更なるエンジントラブルを引き起こし、最悪の場合は空中でエンジンが破壊される可能性も有り得るという見立てだった。
「ふぅーむ。こいつぁ参ったな……掻い摘んで言うと、帰れんくなったっつーこった」
「気楽に言ってんじゃねえよ! しゃあねえ、じゃあどっかに着陸して……」
「いや、このままあいつらをほったらかすとろくなことにゃならん」
「おいおい、もう何も出来ないだろ。これ以上何かするってったら……」
そこまで言って、デルフリンガーはある可能性に行き当たった。
まさかとは思ったが、そんな常識が通用しないのが今の相棒である。
「このゼロ戦のパイロットには伝統的な戦法があってな」
「おい。ちょっと待て。もしかして、この飛行機をあのデカブツにぶつけようとか、そんな無謀なことを考えてるわけじゃないよな?」
「よくわかったな」
「……無茶苦茶だ、幾ら何でもそりゃねえよ」
六千年、使い手含めて様々な人間に握られてきたが、こんな無謀な手を考え付き、あまつさえ実行に移そうとする人間は見たことがなかった。
「なぁに、わしは手近なフネに飛び移ってハイジャックするつもりじゃ。死にはせん」
「おい、考え直そうぜ。それはあんまりにもあんまりだ」
言葉だけ見ればジョセフの翻意を促しているが、その言葉の響きはいかにも楽しげであった。
「まぁ、相棒がどーしてもって言うなら付き合ってやらんでもないがな!」
「よし来た! んじゃちょっくら行くとするかッ!」
艦隊の射程外を飛んでいたゼロ戦を上昇させ始め――
『待ちなさい! そんな勝手なこと、主人の許しもなしにやらせないわ!』
不意に聞こえたルイズの声に、思わず上昇を抑えた。
「ルイズ!? ルイズなのかッ!?」
To Be Contined →
しえん
以上投下したッ!
あれだね、今回の投下の半分くらいで一旦投下すればよかっただろ常考。
半分辺りでさるさん食らって避難所に投下したが自己解決しちまったぜ(´・ω・`) w
次回の投下で分岐ルートその1最終回のつもりだったけど、多分あと二回くらいになるかもしれないんだぜ。
支援してくれたみんな、二回続けてさるさん食らってごめんちゃい。
うおおおおおじいちゃんまた飛行機ぶっ壊す気かぁ!?!
日本人は嫌いだとか言っておきながらバリバリの戦中派みたいな行動力じゃないか、さすが飛行機と墜落を兼ね備えた男だ!
GJ!
GJ(George Joestar)ッ! 質・量ともに素晴らしい
やっぱり特攻かァーッと思ったが…続きが気になるぜ
特攻しちゃらめえええええ
ジョゼフ、果たして帰れるのか、そしてこの戦争の勝敗は
とりあえず正座して続きを待ちます。GJ
うおー
隠者来てる!
GJ!
GJでした!
特攻するの?うわぁぁぁ続きが気になって眠れない!
支援遅すぎたか…
GJGJGJ
Gj!!
次回楽しみ!!!
GJッ!
ああ……ジョセフ……死んでくれるなよ……
隠者さんGJでした、やっぱジョセフの乗った飛行機は・・・w
>>724仗助はエジプト行く前に生まれてるぞ
755 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/28(金) 13:41:53 ID:DarPJEdT
まとめにだけあるディアボロのssをみて自分もディアボロssを書きたくなった…
「ディアボロの大冒険」の「ディアボロの試練終了後(ボヘミアンを露伴に見せた後)」は
書いてもいいのだろうか?
いいんじゃまいか?
ディアボロプレイしたこと無いからよく分からんが、
それってゲームクリア直後のディアボロを召喚するってことだろ?
ゲーム途中のディアボロを召喚するのと大して変わらないし、
問題ないと個人的には思う次第。
757 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/28(金) 16:06:16 ID:DarPJEdT
なるほど、それじゃあもっと深く構想練ってくる。
隠者氏、投下乙でしたァ――z__ッ!
しかし、ジョセフと飛行機の相性の良さは異常w
ジョセフ、期待を裏切らないお前の命がけの行動ッ!
ぼくは敬意を表するッ!
やはり老ジョセフの乗り物は落ちるかw
既出の話題かもしれないけどサイトだから起こった展開ってどんなのがある?
パンツのヒモに切れ目を入れてルイズを転倒させた
落ち込んだらモグラになるのはサイトと某吸血鬼お嬢様くらいのもんだ
ぶら下げられて魔法の的に(デルフとクソ高価な剣、どっちにするかの)
あれ、落ちたら死ぬのにw
>>760 ・ノートパソコンを見せて異世界の住人と主張、ほとんど信じられてない
・ルイズが錬金を失敗して落ち込んでるところに追い討ちでゼロの歌を熱唱、食事抜きにされる
・ギーシュを散々に挑発して決闘
1巻でまだ出てないのだとこんなものかねー?
ジョジョキャラでも一部のキャラだと同じことやらかしそーだがw
まあサイトは空気を読まない天才だよな常考
サイトならサイバイバーを使いこなせる気がしてきたw
なにそのDBに出てきそうなやつ
剣の達人になる
母からの手紙見て泣いたサイトをルイズが帰そうとする
七万の軍隊に突っ込むような無茶はサイトだから出来た気がするけどどうだろう
769 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/29(土) 18:43:12 ID:gniM1viT
アニメだとモット伯の屋敷乗り込んだけど結局キュルケに助けてもらってた
今回の休日は投下がないっていうのか?
>>768 まあジョジョキャラだと大体のやつが七万相手に真正面からつっこむような馬鹿しようとしないからな。
皆なんらかの策を考えて少しでも長く足止めしようとするだろ。
正統派スタンドだと奇策を使いにくいから
ポルポルあたりならシルバーチャリオッツ+デルフリンガー!二刀流ガンダールヴ!とか行って突撃しそうだ
花京院ならハイエロファントの結界で無双できるな
確か法皇って結構遠距離まで動けて、かつ人体に潜りこんで操作できるから
敵側のメイジを操って混乱させる方がいいんじゃね?
スタンド使いの場合、メイジがスタンド見えるかどうかで難易度が相当変わるよな。
見えなきゃTUeeできるけど、見えたら割と普通って感じ。
見えていることと対応できる事は別問題じゃね?
パープルヘイズのウィルスやグレイトフルデッドの老化とかはスタンドが見えても防げないっしょ。
スタープラチナのパンチやビーチボーイの釣り針は見えていても避け切れない。
ゼロ魔のメイジの魔法は汎用性が高いけど、オンリーワンな個性を出すのが難しそうだよな
スタープラチナはまず近づいて殴ろうとしたら本体丸出しな訳で、囲まれてフルボッコ
時を止めながら戦っても数に押し潰されるだろう
ビーチボーイズも糸を追って行く兵士が山ほどいるんだからペッシ囲まれてフルボッコ
敵スタンドあるいは本体がどこにいるのか見当がつかないタイプが戦いやすいな
ザ・サンの使ってたアレ使おうぜアレ
おいおい、ビーチボーイの射程無茶苦茶長いし
探知能力も高く、その上障害物をすり抜けれるから無理だろ、常識的に考えて
ハーヴェスト並みにチートだぞ
ビーチボーイかなり強いよな
でも本体がマンモーニ
ところでペッシの最期の行動は残りの仲間のためにやったはずなのに何でゲス野郎扱いになっちゃうわけ?
長いけど本体無防備だからな
多数を相手に出来るわけでもないし
>>776 ザ・サンって、本人が近くで身を潜めてたやつ?
あれはすぐ見つかって殺されるだろうなあ。
強力なのはいいんだけどね…そういや、アレで吸血鬼や柱の男に利くかね?
やっぱスタープラチナみたいに単純に強いのが本体をガードしながら戦う方が安心だろね。
>>780 さすがに集中力とか精神力とか足りないだろう
一人で軍に勝てるようなタイプのスタンドじゃないと思う
そんなことが可能なスタンドはグリーンディくらいじゃないのかな
吸血鬼は疲労しないとかあるかもしれないが
まぁアレだ、議論は避難所ですればいいんじゃね?
シアーハートアタック放り込んですぐにアルビオンから逃げ出せばOK
一つ間違うと近場のウエストウッド村あたりで悲劇がおこるがw
まあ一番確実なのはノトーリアスだろうが
>>780 ザ・サンの真価は篭城戦で発揮されそうだな。
無差別殺戮が好みならチープトリック。雨の後ならサバイバーも
逆効果な気もするけど…。
アルビオンの川でサバイバー使えば
下の方にサバイバーが雨で降り注いで大惨事じゃね?
>780
紫外線照射装置が効いてたこと考えると案外いけるかもしれん
ビーチボーイは森の中とか障害物が多いところで真価を発揮するな
壁抜けできて探知能力もあってかつ人には見えないってかなり暗殺向けだよな
ペッシの精神力しだいでは、城の中から篭城してる時に上空の大型船まで釣り針飛ばして乗組員を殺ってみたり
同じく城の中から包囲してる連中を殺ってみたりとひじょーに洒落にならん事になりそーだな
メイジが糸が見えてても見えてなくても暗殺に使えばマジ戦略兵器だよナ
ザ・サンは飽くまでスタンドでしかないから吸血鬼には効かないんだよね
791 :
ゼロいぬっ!:2008/11/30(日) 21:24:03 ID:iAEMkd9k
30分から投下しますけど構いませんねッ!?
OK・・・・ 支援の準備はスデにできているッ!!
支援すると思ったならッ!その時既に行動jは終わっているんだッ!
794 :
ゼロいぬっ!:2008/11/30(日) 21:29:59 ID:iAEMkd9k
気だるい感覚に包まれながら目蓋を開く。
見上げた先には木目が数えられそうなぐらい低い天井。
寝返りを打って横に向けた視線を白いカーテンが遮る。
身を起こそうとした瞬間、腹部に鈍痛が走る。
電流が流れたかのような痛みに思わず蹲る。
その痛みに胡乱だった意識が明確になっていく。
服を捲れば、その下には青く染まった痣。
ようやく何が起きたのかを思い出し、
ジョンストン総司令は立てかけてあった杖を手に慌てて医務室を飛び出した。
痛みを忘れるほどの憤怒が彼の内で渦巻く。
早足で艦内を駆け抜けて艦橋へと足を踏み入れる。
直後、艦橋に差し込む陽の光にジョンストンは視界を奪われた。
眩しそうに手で影を作る彼にボーウッドは平然と挨拶した。
「ああ、お目覚めになられたのですね」
「貴様! よくも抜け抜けと……!
いや、それよりも戦況はどうなっている!?」
「戦闘は終わりました」
「……そうか」
簡潔なボーウッドの回答。それにジョンストンは笑みを洩らした。
どれほど気絶していたのかは判らないが一昼夜という事はないだろう。
短時間の間にトリステイン軍を打ち破って勝利を得たのならば大快挙だ。
しかし、その栄誉に与るのはコイツではない!この私だ!
上官に手を上げ、アルビオン艦隊に混乱を招いた罪で奴を処分する。
私は負傷しながらも指揮を執り続けたと言えばいい。
船員達の証言などいくらでも捏造できる。
戦闘が終われば私より優秀な部下など必要ないのだ。
「では貴殿の務めもここで終わりだボーウッド!」
ジョンストンが宣言と共に杖を振り上げる。
しかし、その杖が振り下ろされることはなかった。
杖を構えた直後、彼の首元へと複数の杖が突きつけられた。
ようやく明るさに慣れた眼が彼の周りに立つ人間の姿を映す。
船員かと思われたそれは敵意に満ちた目で彼を見やる。
その身を包む軍服はアルビオン軍ではなくトリステイン軍のもの。
アルビオン軍旗艦『レキシントン』の艦橋に敵がいる、
その事実が意味する所を理解できず、彼はボーウッドに尋ねた。
「こ……これはどういう事だ!?」
「言ったでしょう? 戦いは終わりました、我々の負けです」
両手を上げながらボーウッドは彼に事実を告げた。
ふらりとジョンストンの体がよろめいて船壁に当たる。
信じられないと言わんばかりに蒼白にした顔で、窓の外へと視線を向ける。
そこに広がるのは大地を埋め尽くさんばかりの軍艦の残骸。
どれもが見覚えのある、アルビオン軍の艦艇だった。
795 :
ゼロいぬっ!:2008/11/30(日) 21:31:15 ID:iAEMkd9k
「……悪夢だ」
こんな事が起きるはずがない。
軍艦もないトリステイン軍に艦隊が全滅させられるなど有り得ない。
きっと、これは医務室で寝ている自分が見ている夢なのだ。
無敵のアルビオン艦隊が敗れるなどあってはならない。
彼の知る常識と願望が入り混じり、その結論を口にさせた。
「戦いに絶対はありませんよ。勝敗など時の運です」
現実を認めまいと必死になる総司令の姿にボーウッドは溜息を洩らす。
冷酷に、そして淡々と彼の前にもう一度事実を突きつける。
ぺたりとその場に座り込んで呆然とするジョンストンの姿が哀れに映る。
彼にとってはアルビオン艦隊総司令官の地位こそが全てだった。
権威も自信も誇りも力も全てがそこにあった。
いや、取り憑かれていたと言い換えてもいいだろう。
それを失った今、彼には何も残されていない。
正気を失いかけている彼に、もはや誰の言葉も耳には届かないだろう。
それを分かっていながらジョンストンは続ける。
「もう悪夢は終わりです。我々も目を覚まして生きる道を探しましょう」
もし夢だというのなら、これはきっとその終焉。
聖地奪還という名の幻想に縛られた悪夢の終わり。
これからどのような処罰が下されるのかは判らない。
だが少なくとも前よりはマシになるだろう。
もう二度と、罪無き人々に銃を向けなくて済むのだから。
墜落し、猛り炎上する軍艦。
それを前に勝鬨を上げるトリステイン兵士たち。
その喧騒を横にコルベールは傷だらけの体を引きずって歩いた。
偏在とはいえ十分に精神力を残したワルドを相手にしたのだ。
かろうじて勝利したとはいえ、その精神も肉体も限界を迎えている。
杖を地面に突き刺して崩れ落ちそうな自身を支える。
苦しげに落とした視線の先には無用となった槍や銃が転がっていた。
―――そして、名も知らぬ兵士の屍も。
踏まぬように気を付けながらコルベールは尚も歩く。
ヒビの入った眼鏡の位置を直しながら足を動かす。
彼の眼には通り過ぎる兵士たちとは違う光景が映っていた。
決して取り返しの付かぬ過ちを起こした地。
燃え盛る軍艦は民家に、倒れた兵士は武器も持たぬ村人に。
彼の人生を変えた“あの日”が目の前に蘇る。
その時をなぞるかのように、響き渡る叫びを頼りにコルベールは歩む。
ただ一つ違うのはその声の主は見知らぬ少女のものではなく、
新たな人生で出会った掛け替えのない教え子だった。
桃色の髪を振り乱して彼女は泣いていた。
その腕に抱きかかえられているのは一匹の犬。
流れ落ちた血が乾き、その毛並みを黒く染め上げる。
呼吸や心肺運動もなく、そこに生命の脈動が感じられなかった。
ルイズの慟哭を耳にし、不意にコルベールの足が止まった。
しかし、俯きかけた視線を起こし真っ直ぐに前だけを見据える。
杖を地面から離し、力強い足取りで彼はルイズの元へと向かった。
支援だッ!!
797 :
ゼロいぬっ!:2008/11/30(日) 21:32:48 ID:iAEMkd9k
近付いてくる人の気配に涙を湛えながらルイズは顔を起こした。
見上げた先にいたのは、学院にいるはずのコルベール先生だった。
何故彼がここにいるのかなど今の彼女に考えられる余裕など無かった。
ただ、自分の使い魔を大事に想ってくれた彼に泣きつくように声を洩らした。
「……コルベール先生。アイツは」
「知っています。だから……もう何も言わなくていい」
そっとルイズの両肩に手を置いてコルベールは応えた。
大粒の涙を零し続ける彼女の瞳と真っ向から向かい合う。
互いに見つめ合ったまま両者の間に沈黙が流れる。
その静寂は実際には数秒の事だろうか。
なのに、とても長く感じられるような穏やかな時間だった。
壊れたエンジンにも似たルイズの呼吸がリズムを取り戻す。
激しく上下に揺さぶられていた肩が静かに落ちていく。
彼女が落ち着きを取り戻したのを見計らい、
コルベールは彼女の手から遺体を優しく受け取った。
片足は切り落とされ、その額には深い孔が抉られている。
痛ましいほどに凄惨な最期だというのに、
彼の顔は眠っているかのように穏やかだった。
自分の最期を最愛の主人に看取ってもらえたのが嬉しかったのか、
それとも彼女に心配をかけまいと最後の力を振り絞ったのか、
どちらにしても彼は納得して自分の生を終えたのだろう。
そこに僅かでも救いがあったと信じて、コルベールは彼の冥福を祈った。
「これは貴方が持っていてください」
「…え?」
ボロボロになった首輪を外してルイズに差し出す。
困惑した表情で、彼女はおずおずと伸ばした両手でそれを受け取る。
なんで彼の首輪を外したのか、その意図を理解できずに。
「そして……忘れないでいてください、彼がいたという事を。
貴方の事を大切に想い、命を懸けて守ろうとした彼の事を」
不意にコルベールは立ち上がった。
呆然と見上げるルイズの前で彼は背を向けて歩き始めた。
―――その腕に彼を抱きかかえたまま。
「ま……待って!」
立とうとしたルイズの足が縺れる。
虚無の魔法で精神力を使い果たし、
さらに泣き続けた彼女にはそんな簡単な事さえできない。
それでも地面を這ってでも彼女はコルベールに追い縋ろうとした。
しかし、その姿はどんどん遠くなっていく。
見る間に小さくなっていく背中にルイズは問う。
「どうしてなのコルベール先生! 何でアイツを連れて行くの!」
「彼を……誰の手も届かないようにします」
何の感情も込めずコルベールは答えた。
明言はしなかったがルイズにはその一言で十分だった。
これだけの力を持った彼の存在をアカデミーが見逃すはずがない。
きっと回収された彼の死体は様々な実験を施され、最後には解剖されるだろう。
そんなの耐えられるわけがない。死んでからも弄ばれるなんて冗談じゃない。
だけど、彼の遺体さえも残らないという事実にルイズの心は揺れ動いた。
C-EEEN
799 :
ゼロいぬっ!:2008/11/30(日) 21:34:17 ID:iAEMkd9k
「わたしが! わたしが守るわ! もう誰にも傷付けさせない!
エレオノールお姉さまにもお願いするわ! 今度こそ守ってみせるから!」
胸に手を当てながら彼女は喉が裂けんばかりに叫んだ。
それでもコルベールは振り返りさえしなかった。
彼女の嘆きを背に受けながら奥歯が砕けんばかりに噛み締める。
出来る事ならばコルベールとて彼の遺体を処分などしたくはない。
たとえ、それが短い間の事だったとしても、
この異世界からの来訪者は確かに自分の友人だったのだから。
「わたしから、あいつを奪わないで!」
その言葉にコルベールは立ち止まった。
どれほど彼女が泣き喚こうとも動き続けた足が止まっていた。
僅かな沈黙の後、コルベールは彼女へと振り返る。
向き直った彼の表情にルイズは思わず呑まれた。
とても静かなのに、その迫力に完全に気圧されていた。
「誰も貴方から彼を奪うことはできません」
コルベールの呟いた声が戦場に流れる。
未だに雄叫びや悲鳴が響いている中、それはルイズの耳に鮮明に届いた。
「貴方と彼との間にある絆は永遠に変わらない。
それは使い魔の契約が意味を失っても同じ事です。
貴方達を分かつ事は誰にもできない。たとえ、それが死であろうとも」
「だから貴方は迷わずに前へと進んでください、彼の想いと共に」
それだけ告げるとコルベールは再び歩み始めた。
だけどルイズにはもう呼び止める事も追いかける事もできなかった。
彼女に出来るのは遠ざかっていく背中を見つめることだけ。
そうして姿が見えなくなってルイズは悟った。
―――もう二度と彼に会う事はないのだと。
それから一週間後、ハルケギニア全土を衝撃的なニュースが飛び交った。
神聖アルビオン共和国より齎されたという“バオー”の生態に関する情報。
一歩間違えれば世界が破滅していたかもしれないという事実に各国はトリステインを糾弾した。
それに対するトリステイン王国の正式な回答は以下のようなものだった。
“我がトリステイン王国にそのような生物がいた事実はなく、
また当事者とされているヴァリエール家の三女は使い魔を未だ召喚していない”
それに前後して“彼”がいたという事実は証拠と共に抹消された。
公的文書は勿論の事、手紙から日記に至るまで彼について書かれた物は全て燃やされた。
いつも牽いていたソリも食堂まで咥えてきた皿も訓練に使った棒もみんな灰になった。
そして学院には緘口令が布かれ、ルイズの使い魔について語ることは禁じられた。
トリステイン王国は総力を挙げて彼を“居なかった”事にしたのだ。
こうして“虚無の使い魔”はその存在さえも“虚無”となり表舞台から姿を消した。
―――唯一、才人が手にした首輪と人々の記憶を除いて。
支援
801 :
ゼロいぬっ!:2008/11/30(日) 21:37:06 ID:iAEMkd9k
高架下ッ!
…・・・じゃなかった、投下したッ!
次回は冒頭の才人とデルフの会話に戻ります。
その次にエピローグです。
犬………
泣きそうになったぜ…
乙!
>>858 あんまりといえばあんまりな対応に全俺が泣いた・・・・。
乙!
うぁーん、うぁーん
奴がいなきゃトリステインが滅んだのにこの仕打ちかよ…
まったくもって一番の怪物は人間だな
犬乙
>>778 亀だがマジレスすると
仲間のためじゃなくってブチャラティを絶望させるための行動だったから、という説が濃厚
行動のみを取り上げてみれば確かに後の仲間のためにやってたと言えなくもないが、違いがわかる男ブチャラティの目は誤魔化せんよぉ〜
そして議論は避難所、というかジョジョスレへGO
_,.>
r "
亀が喋った!! \ _
r-''ニl::::/,ニ二 ーー-- __
.,/: :// o l !/ /o l.}: : : : : : :`:ヽ 、
/:,.-ーl { ゙-"ノノl l. ゙ ‐゙ノノ,,,_: : : : : : : : : :ヽ、
ゝ、,,ヽ /;;;;;;;;;;リ゙‐'ー=" _゛ =、: : : : : : : :ヽ、
/ _________`゙ `'-- ヾ_____--⌒ `-: : : : : : : :
...-''"│ ∧ .ヽ. ________ / ____ ---‐‐‐ーー \: : : : :
! / .ヽ ゙,ゝ、 / ________rー''" ̄''ー、 `、: : :
.l./ V `'''ー-、__/__r-‐''"゛  ̄ ̄ \ ゙l: : :
l .,.. -、、 _ ‐''''''''-、 l !: :
| / .| .! `'、 | l: :
l | .l,,ノ | ! !: :
/ '゙‐'''''ヽ、 .,,,.. -''''''''^^'''-、/ l !: :
r―- ..__l___ `´ l / /: :
\ `゙^''''''―- ..______/_/ /: : :
. l ヽ\ ヽ,
l\ l `ト、 ',
lヽ ヽ l ll \,、 ソ
. ト、ヽ V lレl / ` ー-t=テ'
l \ ', / ,. ! i j /
. _iヽ ヽ ソ i ', ! / /
/ V V ,' Vl. / /
'゙´ ! ハ V l 〉ノ ', /,.イ
/ 入ヽ^ l/: :ヘ. ,./ ヽ_,/ /
/ ∧)人: : ト-:X..__ _ノ
イ ,.ヘ j(: : i、: :゙ヌゥ、: : T=フオ 違う
.l Vシ l.し; :`フ:./:,r‐'ィ'ネヲ´ 決して亀が喋ったわけじゃあない
Vハ .ヘ L_ノ、_.ノ,. -! /!
', \ヘ / __ヽ_ノ/::::::l
\ \'.、 ー-`/::::::::::!
、`丶、゙ー-- `¨ニ´::::::::::::/
` ー----.、ィ´:::::::::::::;.イ
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::/ ! _
::::::::::::::::::::::::::::::::/ ,.x '´/l
::::::::::::::::::::::::::::fフ ./ ./ .!
::::::::::::::::::::::::/ク ヒ'`L,.、 j
::::::::::::::::::/,イ ム/く /
>ニニフ´ム!l 人ス `i´
::::://::::::iリ.X / l
いぬさん乙です
ルイズとの間に、そして口には出せねど皆との間に
いぬとの絆が残った
バオーの力で世界を滅ぼさずにも済んだ
いぬなら、きっと満足してくれるさ……
隠者乙
あまりにも期待通り!
異世界に渡ってもやはり飛行機とは相性が悪いのか
デルフも頑張ってるのになかなかアドバイスが実らないなあ、これはもうジョゼフだからとしか言えないよね
ぜろいぬ…
ルイズかわいそう
かわいそうだけど他に手は無かったんだろうな…
GJ!
なんて泣ける結末だ。
そしてコルベール先生、ルイズとの最後の会話、いい男すぎます。
ハルケじゃやっぱ土葬が普通なのかな
断言はできんがそうなんじゃない?
火葬ってコッパゲの過去話から無いわけではないけど、いい印象は無いくらいかな?
ブリミル教が死後の事をどう考えてるかで好きにいじれそうだけどな
>>813 現実の欧米世界観準拠なら、火葬は教義的に禁忌なので基本は土葬
というか固定化して安置しとるんじゃなね?
ゾンビとかスケルトンとかいーっぱい欲しいの
>>817 ゼロ魔の世界はともかく俺らの世界だったら絶対聖人の遺体とかに固定化かけて安置しそうだ
ミイラとか即身仏とかって固定化みたいなもんじゃねえの?
聖人……
ゼロ魔世界でも聖人のの地位を金で買えるんだろうか……
>>819 1900年後に奪い合いですねわかります。
ブリミルの遺体を取り合う連載SSの構想は既に考えてますよ
問題はそれを実行に移せるだけの根気と実力が俺には無いってことなんですがね…
どうでもいいがリンプ・ビズキットってアンドバリの指輪より効率よくね?
同じゾンビでも姿見えないから不意打ちし放題だし。
単純戦力としては指輪より上かもしれないが
指輪のたちの悪さは対象数の馬鹿みたいな多さに洗脳効果にゾンビメイジが魔法を普通に使う理不尽さだからなー
でも指輪は使い捨てなのがなあ。
ウェールズ蘇生のような使い方は出来ないがスタンドなら回数関係ないし。
あと正義やリンビズのような戦場で死体が死体を生むってのはあまりにも凶悪。
もっとも、それやったら凶悪すぎて誰もクロムウェルについてかないけど。
リンプ・ビズキットは持続力と射程距離が不明だからこのあたりどうするかで変わるだろうな
透明ゾンビの有効性がどの程度あるかと言う問題もあるかもなー
ゼロ魔のメイジはバッテリーの充電前と充電後を感覚的に見分けられるほどバケモンなので
何処かの盲目の人みたいな火のメイジは特例としても風のメイジあたりだったら見えなくてもふつーに倒しそうな気がスル
それノボルのご都合設定じゃん
ご都合だろうと公式設定なんだが
ジョジョだってたいがいバケモンやんか
「凄味」で攻撃を当てるからなw
攻撃してくる位置を限定させた、の方がアレは分かり易かったよなあ。
クロススレの領分だが、九鬼燿鋼という男の強さの一つに
隻眼になったことで相手の手札を封じるっつーのがあってなんか説得力があった。
ポルナレフってスタンド的にガンダールヴの紋章と相性いいんだな。
シルバーチャリオッツ+○○祭りだ
圧迫祭りですね
わかります
仮面のルイズっていつから更新されてないの?
こんな時間に人がいるとは思えないけど
30分から久しぶりに投下させてもらっても構いませんねっ!?
関係ない
行け
おおスレを開いたとたんに投下予告とな!?
支援
時間になりましたので今回は短め…生存報告がてらに投下開始します。
アルビオンの各地でプッチの予想よりも遥かに素早く動いたガリア、ゲルマニア、ロマリアの軍勢が貴族派を蹂躙していく。
ロマリアから齎された情報を元にジョゼフ王が中心となって立案した侵攻作戦の前に、数の上でも劣る各地の貴族派は一方的に敗北していく他術がなかった。
ゲルマニアとロマリアはおろか、ガリアの将軍達でさえ驚嘆し、ジョゼフに畏怖を抱くこととなるこの作戦の結果が当事者であるはずのアルビオン王家や貴族派の幹部達の耳に届くのは全てが終わった後のことだった。
アルビオン王党派と貴族派の最後の決戦となるはずの戦場はそれ程混沌としていた。
王党派へと通告していた時刻通りに貴族派をアルビオンの端に聳え立つニューカッスル城へ完全に追い詰めていた貴族派は進軍を開始した。
王党派が立て篭もるニューカッスル城を包囲していた貴族派は、傭兵を中心とした5万もの軍勢が進軍するにつれてゆっくりと包囲を狭めようとしていた。
岬に立つ古めかしい城へと向かう彼らは自然雑然とした列を組み歩いていった。
彼らの顔には恐怖はなかった。彼我の戦力差を正確に知っているわけではなかったが群れの中に身を置き、包囲を狭めたせいで彼らが見上げる空は多数の戦艦で埋められていた。
そんな彼らを突然何処かから発生した閃光が包んだ。
制空権を完全に掌握し、憂いは残さぬと集められた貴族派の艦隊。
報酬や攻め落とした城からの略奪を目的に集まった傭兵達の列の半分以上が、その閃光と共に消失した。
それでも2万程を超える傭兵達が残されていたが、誰もがすぐに現状を認めることが出来ずに呆然とした。
彼らの前から消えたのは友軍だけであった。
熱もないただの光が一瞬だけ広がり、前にいた友軍を包み込み…彼らは姿を消した。
城まで続く整備された道に残された踏み潰された草花だけが友軍がいたことは事実であると訴えかけていたが、それでも残された貴族派は我が目を疑わざるを得なかった。
きょろきょろと周囲を見渡し、口を開いたまま言葉がでずに開いたり閉めたりして、名前も知らぬ隣にいる傭兵に何事かと尋ねようとして友軍がいた辺りを指さす。
目を必死にこする者、夢かと疑う者…地上でも空の戦艦の中ででも、同じ光景が見られた。
理解が追いつかない彼らの精神状態は、目前となった大勝利に高揚し、その後のご褒美を期待して舌なめずりをしていた彼らの心は一瞬の閃光と同じく、真っ白になり戦場へ向かうに当たって決めた心は消え去っていた。
動揺した貴族派の中からいち早く彼らを率いる盟主クロムウェル大司教の声を仰ごうとする者もいた。
だがレキシントン号で総大将を務めるクロムウェルも目の前で起こった馬鹿げた出来事に思考を停止させていた。
彼らを現実に戻したのは、耳障りな羽音だった。
戦場にいる貴族派は皆、羽音を耳にした。
先ほどまで全く聞こえなかった音は音源に近い場所にいる者達の鼓膜を破りかねない大音量で空にいる者達の耳にまで届いていた。
発生源を彼らは見る。王党派が立て篭もるニューカッスル城へと目を向ける。
貴族派の目の前でその時既に…ニューカッスル城は、黒い雲へと姿を変えようとしていた。
黒雲が何であるか、ふつふつと沸いてくる怖気を無視して彼らは注視していた。
そうして、逃げ出す貴重な時間を失った貴族派へと濁流のようにその雲を構成する毒虫達は襲い掛かった。
巨大な昆虫の群れがまず襲い掛かったのは徒歩で城へと向かう傭兵達だった。
その虫が何か理解したアルビオン出身の傭兵達は武器を投げ捨て、恐怖に染まった叫び声を発しながら我先にと逃げ出した。
アルビオンに住まう危険な生き物はオーク鬼やトロル鬼と言った亜人ばかりではない。
火竜山脈では火竜が我が物顔で歩き回るがその下にはサラマンダー達もその顔色を窺って生きている。
身の丈5メートル程もあるオグル鬼達が住まう山や森の中にも同じように、人の拳ほどの大きさを持つ蜂が住んでいる。
驚くほどの距離を飛び回る彼らは、蜂蜜を求めて現れた亜人を襲いかかり、硬い皮膚を物ともせず針を突き刺し、込められた毒でもって撃退しようとする。
抵抗かなわず巣を破壊される場合が多いが、その毒は針が刺さった位置や刺された回数によっては時にオーク鬼も死に至らしめる…
亜人達の半分にも満たない体格と抵抗力しか持たない人間がその蜂に刺されればどうなるか…アルビオン出身の傭兵達はそれをよく知っていた。
外国から流れてき傭兵が、叫び声に驚いて持っていた銃の引き金を引いた。
パンッと彼らを正気に返らせる一発の銃声が鳴った。
その耳が痛くなるような銃声で我に返った者達の手によって散発的に銃声が響き、羽音にかき消されていく。
一匹二匹が千切れ飛び、弾を込めなおす前、あるいは杖を振るい魔法を唱える前に彼らは波に飲まれていった。
悲鳴を上げながら彼らは一刺し二刺しと針を、牙を突き立てられていく。
放っておいても確実に死に至る猛毒を注入された彼らは次々に倒れていった。
土気色になり、口からは泡を吹く死体で城へと続く道を埋めていく頃、同じく船員を失い落下していく船の間を抜けて突き進む一頭の竜がいた。
船の周囲を飛び回る竜騎士達の中でそれに気付いた者は少数だった。
皆恐慌に陥ろうとしていた中でまだ戦意を保ち、まだ敵の動きを…数え切れぬ虫達の隙間を、城の跡から飛び立つ一匹の竜の動きを見つめる冷静さを持つ者は貴族派の軍にもそうはいなかった。
逆に言えば、気付いた者達は一騎等千のメイジだったろう。
だがそんな彼らも彼らに及ばぬ平凡な騎士達と一緒くたに突然暴走した、己が乗る竜から振り落とされて空の一角を埋めようとする黒い濁流の餌食となっていった。
己の騎士を墜落させた竜は、それらを全く意に返さぬ様子で貴族派の盟主、クロムウェル大司教がいるアルビオン最大最強の船、レキシントン号へと向かっていった。
竜達の中心には、彼らが振り落としたメイジ達が見つけた一匹の竜の姿があった。
竜の背で『ヴィンダールヴ』の紋章を輝かせていたサイトは、自分の操る竜『アズーロ』に乗せて運ぶ男の顔を見ぬように、自分の行っていることの結果を気付かぬ振りをしてレキシントン号へと我武者羅に突き進ませていた。
どうなるかなど冷静に考えればわかっただろうが、突然の事態にサイトはそれを考える余裕と勇気を喪失していた。
風を切り雲を抜けて敵艦へと近づくにつれて、時折応戦しようとする敵艦が放った大砲の弾が向かってくるがそれにも方向を変えるどころか避けようとさえさせない。
危険な砲弾は全て、サイトが慕う亀…の中にいる男が操る炎が瞬時に溶かして無害化していた。
溶けた砲弾が後ろへと流れていくのを冷や汗を流して見送るサイトの耳に、その亀を抱えた若い、まだ少年と言っていい高い声が届く。
亀の中から尋ねられて返事を返しているらしかった。
「最初は道端に生える草や花を生み出すことしかできない能力だった。しかし、僕が成長するにつれ、木を…蛙を生み出せるようになった」
耳を両手で押さえ、塞ぎたくなる程の羽音の中でもその声はよく響き、不穏当な内容であろうと不思議と心地よくサイトの耳には届いた。
「今では数万匹を超える虫も生み出せる。生み出す能力なのに数が増えて成長していると考えるのはおかしいが、とにかくこの程度だ。
…いずれは全ての生物を生み出し、思いのままに制御できるようになるだろう。楽しみだ…だんだんと成長していることが実感できるのはな…」
「そ、そうなの…」
亀の中から、まだ彼もショックを受けているのかいつになく気弱な相槌が返された。
それに気付いてか、今度は軽い調子で少年、ジョルノは言う。
「まぁそれはいいんです。逃げられない内にレキシントン号へ突入しましょう。サイト、君が操れる竜は全てあの船の足止めをさせてください。なんなら体当たりでも構いません」
背中からかけられる声は口調こそ丁寧だ。
だが拒否権など竜の手綱を持つサイトになく、竜にサイトの右手の甲で輝く『ヴィンダールヴ』の紋章を使うのと同じような効力がある。
サイトは気弱な、どこか心ここにあらずといった返事「ああ…」という言葉をジョルノに返した。
言われたとおりに操られた竜が背中の主人など全く気にせずに自軍の船へと突撃していく。
サイトの頭には今のこの戦場を作り出す切欠を作り出した少女…見たこともないような魔法を使い敵軍を消し去り、倒れてしまったルイズのことが浮かんでいた。
『ルイズはなんかおかしかった。アイツ、どうなっちまったんだ?』
それだけではない。
この能力をサイトに与えた枢機卿の視界で、ルイズの爆発魔法をきっかけにして枢機卿は他国の軍隊を率いてこの国へ進行を開始していた。
『ルイズを利用したってことなのか?』
思い悩むサイトの後頭部に何かが当たった。
後ろに乗っていたジョルノが頭をぶつけてきたのだった。
コロネでなかったのが幸いだが、サイトは何故かドキッとして背筋を伸ばした。
「今は悩むな。(どうなるにしろ)枢機卿の動きに対抗するにはウェールズの協力が必要です」
「だ、だけどよ…」
「焦りは禁物だ。先ずはルイズが望んでいた通りウェールズを助けるぞ」
「…! わかったぜ。ジョナサンあの船までは、俺が連れてってやる」
ルイズの望んでいた、その言葉はサイトに抜群の効果を齎した。
ルイズがウェールズを説得した姿を思い出したサイトの表情はキリリと引き締まり、手の甲の輝きは彼の気持ちに呼応するかのように更に強く輝き始めていた。
ジョルノの意思によってか虫達はサイトが駆るアズーロの進路を妨げはしなかった。
黒光して蠢く黒雲のトンネルを抜けて、アズーロは進んでいく。抜けると全長二百メートルにも及ぶ巨大な船が彼らの前に姿を見せる。
アルビオン王国軍の旗艦が反乱を起こしたレコン・キスタによって接収され、レコン・キスタ初の戦勝地の名を付けられた当代一の巨大戦艦。
二百メートルにも及ぶ船体には、両舷あわせて108門の大砲を備えるほか、竜騎士隊の搭載機能すら有するレコン・キスタの力の象徴ともいえる存在は、この戦場全てがそうであるように混乱の極みにあった。
自軍の竜に取り囲まれ、砲台がせり出すはずの窓には本当に竜にカミカゼアタックをされたのか首の見えない竜がじたばたと手足を動かしている。
未だ大砲が散発的に放たれているのか大きな音が耳に届いたが、大した成果はあがっていないようだった。
竜の背中で輝く光に照らされて、レキシントン号の周囲を飛んでいた竜がまた新たにレキシントン号の甲板へと急降下していく。
それを防ごうと、数十人のメイジ達が甲板へと飛び出して杖を振るっている姿も見えた。
迎撃され、墜落していく竜の姿。運悪く甲板に墜落した竜がメイジをひき殺していく様に凄惨な光景にサイトは唾を飲み込んだ。
瞬間大砲の音が鳴り響いた。空中で停止する竜の背で輝く怪しい光を目にした誰かが、砲撃を行ったのだと気付く間もなく砲弾がアズーロを襲う。
しかし、「マジシャンズ・レッド!!」
アズーロへと直撃する寸前に突如吹き上がった炎が砲弾を完全に溶かした。
マジシャンズ・レッドを操るジャン・ピエール・ポルナレフにとってはタイミングさえ分かれば砲弾を溶かすことなど容易いこと。
亀の中で真剣な表情で佇む男の中にも腑に落ちない点は多々あった。
ルイズのこと。この地獄絵図と化した戦場。
だが葛藤はなかった。
今優先すべきはこの機に乗じて王党派の勝利に向けるべきだ。
既にそう決めたポルナレフは漆黒の意思を宿した目を場に飲まれて竜を止めたサイトへと向けた。
「気を抜くんじゃねぇ!! サイト、一気に行くぜ!!」
「お…おう! まかせてくれ!!」
強い意志を秘めた声に背中を押され、サイトは再びアズーロを駆りレキシントン号へと向かう。
混乱の極みにある甲板へと一直線に向かう彼らを止める術は貴族派にはなかった。
勢いを増した竜と虫の群れにメイジ達は忙殺され、命を落としていく。
そんな中で、サイトはアズーロをレキシントン号の甲板に着陸させた。
「ポルナレフ。狙いはクロムウェルとその指に嵌められた指輪だ…!」
「ああ! サイト…迎えは頼んだぜ!」
サイトは頷き、ジョルノと亀を甲板へと下ろす。
ジョルノを下ろす為に一層激しくなった虫の群れに襲われる貴族派には目もくれず、ジョルノは甲板に手を触れた。
「ゴールド・エクスペリエンス」
羽音にかき消された呟きと共に空いた穴から、ジョルノは船内へと浸入した。
それまで甲板であった数匹のサラマンダーと共に。
偶然降り立った通路に居合わせた船員が叫び声や、侵入者がいることを仲間に伝える暇も与えられずに、サラマンダーが吹いた炎によって消し炭にされる。
パッショーネの上客からレキシントン号の図面を手に入れていたジョルノは迷いのない足取りで走り出す。
貴族派の総司令官クロムウェルの現在の居場所ばかりは知りようもないが、ポルナレフと二手に分かれて探すのは危険だった。
離れていては虫に襲われてしまうであろうし、何よりそれ程多くはない探す場所を知るのはジョルノだけだった。
既に大砲を出す穴から虫達が船内に侵入している。
甲板から進入する際に行ったように、ジョルノが触れた物が巨大な蛇や蜂へと姿を変えて船内を飛んでいく。
風石さえ無事ならば船は浮いているはずだが、火薬庫に火が付いてしまう可能性もある。
抵抗の度合いを測りながら、貴族派のメイジ達が追い込まれていくであろう場所へジョルノは走っていく。
また床を生物へと変えて、一階下の目指す場所へと続く通路へと降りたジョルノは銃を構えた。
プッチ枢機卿から貰ったAK小銃の有効射程はレキシントン号の全長の3倍…今のジョルノならば仮にこの船の端から端、どのような強風の中でも標的を仕留め得る。
銃を構えた左手に輝く『ガンダールヴ』の紋章がジョルノを歴史に名を残すエース達と並ぶほどの腕前をジョルノに与えていた。
ジョルノは引き金を引いた。
一発の銃弾が放たれ、クロムウェルを背中から貫こうとする。
だがそれは、傍に立つ衛士隊の服を来た男によって防がれた。
安全な場所へと逃れようとするクロムウェルの護衛の一人が音もなく降り立ったジョルノに気付き、振り返っていた。
外でも船内の一部でも羽音が響き、断末魔の悲鳴が時折聞こえてくる。
にも関わらず、防がれた銃弾が弾き飛ばされ床に深くめり込む鈍い音は彼らの決闘の場所へと変わってしまた廊下に良く響いた。
ボルボル支援
「ワルド!! テメェまだ生きてやがったか…!」
「やぁ兄弟。元気そうで何よりだ。私はこの通り、代償は払ったがね」
帽子を深く被ったワルドは親愛の情を込めた笑顔を亀に向け、杖を持たぬ方の手をグリフォンの意匠が施されたマントから出した。
その腕は、前腕の半分程で途切れ血で赤く染まった包帯で巻かれていた。
「ジョナサン。君の蛇に噛まれてね。毒蛇と思い慌てて切断したよ」
「いい判断です」
細い、ぴったりとした黒いコートを身にまとっている女性に縋り付きながら、クロムウェルがジョルノを見た。
半狂乱に陥っているのかクロムウェルの目は正気とは思えぬ光を放っていた。
ジョルノと視線を絡み合わせたクロムウェルは、悲鳴を上げて女性の後ろに隠れた。
「な、何をしておる! 早く奴を片付けんかっ!!」
「御意に…」
護衛のメイジ達が必死の形相で杖を構え、クロムウェルの盾となって亀と銃を抱えたジョルノの前に立ち塞がる。
ジョルノを片付け、早く安全を確保しなければならない彼らは必死だった。
ジョルノを守るようにポルナレフのマジシャンズ・レッドが傍らに出現する。
頼もしい火を吹く鳥頭人身のヴィジョンに目の前で敵が呪文を唱えていく中でジョルノは薄く笑みを浮かべた。
亀の中を覗き込めば、心配そうに、だが魅入られたように自分を見あげるテファと、加勢しようと言うのか杖を持ったウェールズを押え込みながら力強く頷くポルナレフの姿が見えた。
頷き返したジョルノの目の前でいち早く杖を構え、呪文を唱え終えたワルドが数を増やしていく。
続いて、護衛のメイジ達が生み出した炎や氷や、風の刃が放たれようとしていた。
「アンタ達。(一応聞いておきますが)覚悟してる人、だな? 僕を邪魔しようというのなら、逆に始末されるという危険を覚悟している人ってわけだ」
答えるメイジはいなかった。
だが彼らがジョルノに注意を向け手いる間に…その足元では新たな命が生まれようとしていた。
先ほど防がれ、彼らの足元にめり込んだ銃弾に込められた生命エネルギーが銃弾を一瞬にして巨木へと変えていく。
突如出現しようとする巨木に、杖を構え、今正に魔法を撃とうとした護衛達が更に理性を失っていく。
飲み込まれながら放った魔法はどれも見当はずれな方向へと消えていく。
運悪く巻き込まれたのか、クロムウェルの狂ったような声へと向かい、ジョルノは歩き出した。
ただ一人冷静を保ったワルドが巻き起こす風が、巨木を切り裂き自由になろうとするのを尻目に、ジョルノはAKの弾を惜しんで懐からこの世界で作らせた銃を取り出した。
セックス・ピストルズと名付けられたシリーズの一つである回転式拳銃が弾丸を次々と発射して護衛のメイジ達を殺害していった。
「ジョナサン…ッ貴様ァァァッ!!」
足掻くワルドに向けられるジョルノの瞳は何処までも冷たく、鋭い輝きを見せ彼らの形相にも眉一つ動かさなかった。
薄く浮かべた笑みの爽やかさも変わりはしなかった。
To Be Continued...
以上。投下したッ!
こんな時間にも関わらず支援感謝です
次でなんとかアルビオン編は終了できればいいかなと…
ジョゼフの策で動くガリア、ゲルマニア、ロマリア連合軍にアルビオンが蹂躙されてるけどトップは皆決戦に注意が行っていてほぼ気付いてません
気付くくらい暇が出来る頃の話しまではどうにか今年中にいけたらなと思います。それと、前回の直しは後日まとめの方で…指摘ありがとうございました。
支援ありがとうございました。
恐るべしジョルノ!GJしたッ!
投下乙
黒いジョルノが好きだから次も期待してるぜ
どうみてもあの御方の血統です、本当に有難う御座いました!
最近ミスタvsギアッチョ戦でのジョルノの覚悟論を読み返したんだが
他のジョジョと違って汐華くんの場合、条件付で天国論を一部肯定しそうじゃね?
いや、そのために不特定多数を踏み台にしまくるのは絶対やらんだろうし
運命ごときビルから飛び降りる程度のことでどうにでもできる、ってのが第五部のテーマだから目指そうとはしないだろうが
GJ!!
このジョルノにはDIOのカリスマがある!
GEの能力も索的や追跡や治癒や攻撃にともう魔法並の応用力wwww
というか、サイトってジョルノより年上なんだよな?読んでて気付いて凄い違和感を感じたwww
>>849 覚悟とは暗い荒野に道を切り開く事。
薄暗い道の先に罠があるのが見えてるのに進む事は覚悟とはいえないんじゃあないかな?
それは単なる犠牲の心。
>>850 あー、あの神父が言ってた天国論って「万人がゲームを楽しむためには攻略本が必要である」ってことなのかなーと思ったのさ
RPGをプレイするとき、純粋に自分の力だけでクリアしようと頑張る人もいれば
ついつい不安になって攻略本やネットの攻略wikiを用意してしまう人もいるよね
攻略情報を知ってようが知っていまいが、ダンジョンには罠があって、ボスには攻略法があって、パーティから離脱する仲間がいるのは変わらない
それが運命である以上、「ブチャラティの死」の様に絶対回避できない『結果』なわけで…
それでもミスタがビルから飛び降りたように、目覚めた奴隷が行動を起こして『過程』を変えようとすることができるというなら、
攻略本を買う、という行為自体を完全否定することはないかな〜と思ったんだ
まぁそこに至るまでのあれやこれやは最低のゲスだったし、たどり着いた天国は何一つ変えられない牢獄だったから却下なんだがwww
“第5部は過程を飛び越して『結果』だけを追い求めたキングクリムゾンを、『過程』を繰り返し続けるGERが倒した物語である”
ってことを何処かで聞いたことがあったので、ついカッとなってやった 書きながらすでに反省し始めている
次にキサマは「他スレでやれ」と言う!
他スレでや……ハッ!!!
このジョルノすげーな。さすが成長性-Aなだけあるな
ぶっちゃけ、生命を操る(人体のパーツもOK)、結果に辿り着けなくする(レクイエム)
もうジョルポルのジョルノはザ・ワールド超えてんじゃないか…?
レクイエムがあれば止めた時を無かった事に出来るだろうし
後は単純なパワー勝負じゃさすがに分が悪いかも知れないから真っ向勝負のみが弱点か…?
GJ!!
ジョルノにガンダールブはチートすぎるだろwww
どう見ても悪役です。本当に(ry
戸惑ってるサイトが、なんかかわいいぞ
857 :
小ネタ:2008/12/07(日) 19:27:31 ID:2aw7wkjT
ドバーーーz____ン
壮大な爆発音、それにともなう土煙。その中心には長髪の青年と長髪の少女。
・・・ーーーーー
「ありがとうお嬢ちゃん、ギターでもあれば弾いてやりたいんだが・・・」と、青年は言う。
「ぎたぁ?なんですか?それ」
「ギターってのは、こーんな・・・」青年はメイドに向かってデスチャーをする、すると
「・・・!もしかしてウクレレですかッ!?」
・・・ーーーーー
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
そこには金髪の少年と長髪の青年。
「よく逃げなかったな、その度胸は褒めようじゃあないか」少年が青年を見下しながら話しかける
「ギターについて熱く語りあったメイドの嬢ちゃんに八つ当たりしたてめーじゃあねーんだ、ふっかけた喧嘩を前に逃げるなんて小せぇ奴じゃないんだよ」
・・・ーーーーー
ドガッシャーーーーン!!!
「おいおい!威勢がいい割には随分と苦戦してるじゃあないかッ!!!」少年の創り出した土の戦士に殴られる青年、青年はせめて乾電池でもあったら・・・と苦悩する。
・・・ーーーーー
ゴロ ゴロ ゴロ ゴロ
「危ないッ!明さああぁぁぁあんッ!」雷が青年に落ちる!
ドバーーーーz___ン!!!
858 :
小ネタ:2008/12/07(日) 19:37:01 ID:2aw7wkjT
爆発音の中から何者かが出てくる。
「ば・・・ばか・・な・・・!」少年は驚きを隠せない、雷が直撃して、メイジならともかく平民が・・・!と。
「くっ・・・いけッ!ワルキューレ!!奴を粉みじんにしてしまえッ!!」少年の声で青銅の戦士が動く!しかし!!
バキャーーーーーン!!!
それに光る何かが通る、一瞬の内に青銅の戦士は壊れる。
「・・・反省すると、強いぜ?」
ギターの似合うクールな青年、音石明の奇妙な冒険が始まった。
>>857-858 電源がないと人間並みだから、そのまんまだと展開が殆ど原作と変わらないだろうね。
ワルドでもギトーでもいいから、風メイジを常備しておきたいところだ。
でなければ禿教師に発電機でも作ってもらうか…。
もしもの時のために手回し発電機ぐらいは持ってると思う
861 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 22:36:09 ID:1F3/xxHb
ストーリーは原作とまんま一緒でも、音石はおもしろそうだから書いてほしい
レッチリがどこまで出来るのか・・・音石もそこそこ頭良いしな
デルフの吸い込んだ魔法でレッチリを動かすとかも面白いかもな
スーパーワルドタイム
↓
4つの電撃を吸収してスーパー音石RHチリペッパータイム
問題はそれ以降のレッチリの出番がなさそうなところ
863 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/07(日) 23:02:05 ID:+ZGxaAcx
タルブ名物の竜の電気袋(乾電池)でどうにか
>>862 斜め上のルートとしては、ワルド仲間化、ウエールズ仲間化
ルイズ実家に帰ってストーリー大幅変更カリン仲間化どーです?
いや、んなことせんでもタバサが雷使えるって突っ込みは無しデ
>>863 そーいえば、竜の羽衣にバッテリーと発電機ついてたなw
メイジにバッテリーを研究させれば錬金でバッテリー枯渇→充電出来るし
話が進めば割とどーにかなりそうデスネ
>>864 ルイズとケンカしてオマエノオフクロモry→カッタートルネードって電波を受信した。
音石は機械とかにもある程度詳しそうだしコッパゲと一緒に発電機開発しそうだ。
白熱電球等の電気技術の発明で「輝きのコルベール」は末永く語り継がれる事になったり。
空気中の電気からもエネルギーを供給できるみたいだし無力ってことはないだろう
4部のような縦横無尽の活躍はできないけど、だからこそ主人公向きとも言えるかも
人間の体にも微弱な電力が
バオーブレイクダークサンダーインフェノメノン!
電流の流れる拘束具があるじゃないか
つまりルイズに虐待されることで電力が!
サイト向きかw
>>867 バッテリーとか電池ぐらいは禿げとなら作れそうだよな
ワルドの電気をブジュルブジュル食ってパワーアップな音石が想像できる
とりあえず銅と亜鉛と塩水があれば簡単な電池になるしな
直列レモン
875 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/08(月) 11:49:34 ID:cBy/usap
ゼロ戦のバッテリーも忘れないで上げてください
すまない気が付かなかった
体の中の仮面成分が切れてきたような気がする…
…このままでは禁断症状が出かねない
青空文庫形式にてPDAに入れていつも持ち歩いてるさ
>>872 するとあれだな、船乗る直前に偏在にライトニングぶちかまされるイベントでは
ノーダメージの上に大喜びしてる音石にワルドが「アルェー?」ってなるわけだな。
>>881 そこで見せ場を使っちゃうのはもったいないから
アルビオンでの決戦で、それもJOJOらしく逆転な展開で使いたいな
デルフが「俺で止めろ!」
↓
とっさにデルフで止めてしまう
↓
電気で加熱されたデルフで火傷、残りの電気は吸収
ということも出来んじゃね?
まぁどの道ワルド戦で風除けにしか使われないでデルフ涙目になるんだが
アニエスって奇妙な使い魔だと出番に恵まれないね
ジュリオよりは遥かにマシだと思います
でも、SだかMだかわからないアニエスがヒロイン格を張るようなSSがあっても良いよな
虚無の使い魔は置き換えられる可能性があるからなぁ
シェフィールドもあんま出てないんじゃね?
アン康の人待ってます…
,. -― 、
___,、_,,.. -:::::‐^:::ー:::::::- ../ 三 三 ヽ
_,, -::::''´:::::::::::::::::^::::::::::::::^:::::::::::::::::`ヽ、三三.|
/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: >::::::::::ヽ_三」 /.三ヽ
,ィ====ニニ):::::::::::::::::::::::::: >::::::::: >::::::::::::: >:::::::::::::: >::`''::::::-.< 三 三 |
/ ノ::::::::::::::::::::::::o:::::::::::::::.>::::::: >::::::::::::::::::: >::::::: >::::::: >::::l 三 三 |
/ (ニニヽ、::::::::::::::::::::ヽ:::: >:::::::::::::::::::::::: >::::::::::::: >:::::::::::::::ノ.三 三/ 呼んだ?
/ ̄\ ヾ' ' 'ヽヽ::::::::::::::::::::ヽ、:__:::::::::: >:::::::::::::::: >:::::::::::f.彡「`ヾ 三 /
 ̄ | | ノ, , , , ,! l:::::::::::::::::::::::l:::::::ヽ三ヽ::::::: >:::::::::::: >:::/.三 | `ー''
\_/ (二ニニ、ノ::::::::::::::::::::ノ::::::::::l 三 |::::::::::::::: >:::::::::ノ 三 /
/ \ l::::::::::::::::::::::::::::::::::::/ヽ、::::ノ.三./::::::: >::: >::::::/ー-‐´
| | ゝ.::::::::::::::::::::::::::;::':::::::::::`ヾミ/:::::: >::::::::::,,ゞ
 ̄ ̄`''' ー'‐‐--‐v‐-二v--vーゝ‐''´
シーマン帰れ
寒いからな。鍋の具にちょうどいい
アンキモ食いてぇ
鮟鱇鍋か……
今が旬だなぁ
腹減ってきた
アンキモアンキモアンキモ……
895 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/10(水) 22:14:50 ID:tUvVxKG7
最近ssの新作無いよな
YOU書いちゃいなYO
ラバソでネタ錬ろうかな・・・
ハンサムな使い魔!とか
意表をついてザリガニ召喚
顎外れてる状態でキスしたらどうなるんだ・・・
契約の時に喰われる。
>>897 ウェールズ様がチェリーをレロレロする姿が即座に頭に浮かんだぜ
ラバソにキュルケの顔させて殴りまくるルイズとか
ラバーソウルは台詞が独特すぎて難しそうだ
あんなの下品な言葉使わせときゃいいんだよ。実はビチグソの元祖はこいつ
思考が逆に読みにくい、馬鹿だが頭が良いんだがはっきりしない
てめー おれのサイフを盗めると思ったのかッ このビチグソがァ〜〜〜〜っ
ヘドぶち吐きなッ!
この こえだめで生まれたゴキブリのチンボコ野郎のくせに
お れ の サイフを!
そのシリの穴フイた指で ぎ ろ う なんてよぉ〜〜〜〜!!
こいつはメチャゆるさんよなああああ
ブチ切れた由花子並みだな・・・こいつの言語センスは・・・
由花子呼んだらどうなるかなw
姉妹スレで今やってるの谷より酷いことになりそうだな
主にルイズが
ですから「アンリ+康一」の人にルイズでガンダ由花子を召喚させてもらうべきだと
もしもルイズの使い魔が四人だったら…
「『米を研ぐ』ってどういう事だァー!?『米を洗う』だろうがッ!!クソックソッ」
「ルイズちゃん、錬金の魔法失敗したから今日のおやつはネズミのパイね、成功してたらクックベリーのパイが食べられたのに残念☆」
「てめー甘ったれゼロの癖に俺を扱き使おうなんざメチャ許せんよなぁー!!」
「誰の頭がハンバーグだとコラァ!?」
こりゃルイズ死ぬな。
唯一の頼みの綱が仗助w
そうか?仗助はギアッチョと喧嘩してばかりなイメージあるがw
911 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 21:23:55 ID:5t2Y1WtA
それよりもネズミのパイってwww
精神的にきついのは2番目だなwwwww
まさかモートソグニル…
914 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 23:14:31 ID:5t2Y1WtA
ちょwww
「ネズミの煮こごりゼリー」だったりしてな
虫食いとか呼んだらかなりヤバそう
ついに召喚儀式当日…
そこには元気に煮こごりになるコルベールの姿が!
全盛期の仮面のルイズ伝説
・一撃必殺は当たり前、石飛礫で複数を葬る事も
・加えて虚無の魔法も頻発
・敵地を何食わぬ顔で散歩するのも日常茶飯
・上空にアルビオン艦隊、火薬を満載した輸送艦の特攻する状況から1人で逆転
・とどめを刺そうとしたワルドが泣いて謝った
・あまりの迫力に吸血馬が巨大に見える
・正直な意見でも納得いかなければデルフリンガーを踏みつけることも
・あまりに強すぎるからレキシントン内でもエルフ扱い
・そのレキシントンもヒット(ヒットマン的な意味で)
・一暴れしただけでゴロツキが部屋の外に逃げていく
・デルフを使わずに手で相手を倒したことも、というか大抵そう
・敵の砲弾を拾って戦艦に投げ返す
・その砲弾で竜騎士を撃墜したのはあまりにも有名
・ジョーンズと、彼を盾にしようとしたメイジともども石柱で吹き飛ばした
・商売女の誘いに乗って本番直前まで行くというファンサービス
・ルイズは火傷しても即再生
・フーケに食屍鬼を作らない事を約束
・昔はトリステイン魔法学院で生徒をしていた
・やめた理由は石仮面で吸血鬼化したから
・街をルイズが歩くだけで悪人の死亡フラグが立つ
・ルイズに殺されたことに気づかない敵も多い
・ルイズは、いつも右足を引きずっていたメイドの足を治してあげたことがある
・吸血馬の骨を埋め込みながら戦っていたため戦闘中生えたタテガミをミノタウロスに叩きつけたら腕が真っ二つになった
・フライでガリア北端まで行けた
・商売女がルイズを殺すのを傍で見ていた男達が財布を盗ったらすでにルイズは蘇っていた
・仮面のルイズを400字詰め原稿用紙に換算すると軽く100枚を越える。
しかも、まだゼロの奇妙な使い魔最長記録を更新中。
仮面のルイズ伝説はまだこれからだ……!
400字詰め100枚じゃ、中編だよ。
>・正直な意見でも納得いかなければデルフリンガーを踏みつけることも
胸か
920 :
ポルジョルノ:2008/12/13(土) 22:50:35 ID:bx/h6NSO
23時から投下を行いたいんですが構いませんねっ!?
ちょっと、いやかなりキツクなってくる始まり部分になりますけれど…
スレが空いているではないか
行け
時間になりましたので開始します。
今回は短くー
アルビオンの端、ニューカッスル城の上空に浮かぶ貴族派の船がゆっくりと落下していく。
その中で一際目立つ巨大な戦艦…レキシントン号から巨大な樹が一本生えていた。
生命エネルギーを与えられ成長した巨木がレキシントン号を縦に貫きて葉を生い茂らせていた。
その幹には急激な成長を遂げる途中に巻き込まれたメイジや、竜やレキシントン号のメインマスト。
ジョルノの生み出した虫達までが巻き込まれていた。
AK小銃を一端肩に背負い、クイックローダーを使って拳銃の弾を入れ直しているジョルノの前にも一つの銃弾を元にして生み出された樹に飲み込まれた貴族派のメイジ達がいた。
だがその半分以上は既にジョルノの手によって殺害されている。
全員額に銃弾を一発ずつ撃ちこまれ、息絶えていた。
まだ生き残ってるのは裏切り者のワルド。
幹に取り込まれ、身動きできない状態にありながら戦意の衰えを見せないワルドの杖に向けて、ジョルノはリロードが完了した拳銃の引き金を引いた。
樹の破片に混じってワルドの指が宙を舞う。だがそれでもワルドは痛みに声を上げることもなく、憤怒だけを見せてジョルノに唾を吐いた。
「ジョナサン…ッ! 殺してやるッ貴様だけは、」
ジョルノは表情を変えずに生き残ってる残り二人を見た。
貴族派の総司令官クロムウェルとぴったりとした黒いコートを身にまとっている女性。
プッチ枢機卿の言葉を思い出し、恐らくはこの女性があらゆる魔道具を扱える虚無の使い魔・ミョズニトニルンなのだろう。
恐らくはプッチ枢機卿の手によって変貌した主人の仇を討つ為にクロムウェル達を利用しているのだろう、ということだったが…ジョルノはフードを捲った。
若干けばけばしい化粧をした女性の顔が現れ、その額にはジョルノの左手で光っているのとはまた別の使い魔のルーンが刻まれている。
「き、君! わ、私を助けてくれ! わ、私はシェフィールドに唆されただけなんだ…! 助けてくれれば褒美はなんでも取らせようッ、私の虚無を使えば死者を蘇らせることも…」
「ワルド。裏切ったとはいえ、トリスティンの魔法衛士隊の隊長が殺すなんて言葉は使うんじゃあない」
埋まったクロムウェルの体があるであろう辺りの幹に、ジョルノは銃弾を込めなおした拳銃を押し当てて引き金を引いた。
樹皮を打ち抜いて銃弾はクロムウェルの心臓を打ち抜いた。
シェフィールドが驚いて目を見開く。
「『心の中でそう思った時には既に行動は終わっている』、お互いそうありたいものだと思いませんか?」
紐で縛り、腰に下げた亀の中には、ポルナレフもテファもいる。
だがジョルノは構うことなく冷静な態度で言うと、ワルドにも銃口を向け引き金を引いた。
薬莢が吐き出され、床に落ちる。
「シェフィールド。僕の部下にならないか?」
「断れば…聞くまでもないか」
撃鉄が起こされるのを見て、シェフィールド…ガリア王ジョゼフ一世の使い魔は観念したような顔で息をついた。
*
しえん
そうして、王党派のアルビオン国王ジェームズ一世と貴族派の総司令官クロムウェルの戦死を持ってアルビオンの内乱は終結した。
ニューカッスルに突如出現したという夥しい虫の群れは何処かへ姿を消し、貴族派の死体でニューカッスル城へと続く道が埋まっていることだけが『始祖の奇跡』として記録に残った。
ニューカッスル以外の貴族派達も今まで一人の援軍も送らなかったガリア・ゲルマニア・ロマリア連合軍により悉く壊滅させられたという報が届くのは、ジョルノ達がクロムウェルの首級を挙げてから数日後のことであった。
亡命貴族達の要請に応えたと主張する彼らがアルビオンに居座ることは火を見るより明らかであったが、生き残ったアルビオン王国の皇太子ウェールズ・テューダーにはそれを跳ね除ける力はない。
貴族派の死体を片付け、彼らをニューカッスル城跡を会場にした宴に招待し、内乱の終結と即位を告げるウェールズの表情には時折曇るのはその為だった。
隠そうとしているのだが、報を聞き駆けつけたトリスティン王女アンリエッタを会場に見つけ、喜色満面の笑みを浮かべる最中にさえウェールズの表情には時折暗い陰が差す。
目聡い者は気付いていたが、皆父王の死によるものだと勘違いして皆気付かぬふりを決め込むのだった。
それはアンリエッタと共に招待された『マザリーニ枢機卿』とその護衛につく魔法衛士隊の一つマンティコア隊隊長に復帰した『烈風カリン』も同じであった。
トリスティンでマザリーニが推し進めていたアンリエッタの婚儀は、レコンキスタに対抗する為にこそ、彼らにとっては野蛮なゲルマニアへ王女を嫁がせようと言う話も出たのだ。
ゲルマニアはそれをトリスティン以外の国と電撃的にアルビオンに攻め込むことで解決した。
ないがしろにされた彼らの心中は穏やかなはずがなかったが、それらを軽く眺めて…ウェールズは壇上に奇妙な人物を呼んだ。
彼らの感性で言うと少し年かさの美女を伴い、金糸銀糸で細かな刺繍が施された清楚なドレスに身を包んだ少女がウェールズの隣に立った。
元王家御用達であったネアポリス伯爵家のお抱えの仕立て屋の手によるドレスに淑女達の間からため息が零れる。
少女が完全に壇上に上がった時、彼らはざわめき呟いた。
『胸が、革命を起こしている…ッ!?』
そのざわめきが覚めやらぬ内に、彼らは少女が気品のある美しい顔立ちをしていることと「エルフの耳」を持っていることに気付き更にどよめいた。
杖を抜こうとする者を慌てて同席していた者達が押し留め、国王となったウェールズは少女を…テファを彼らに紹介する。
「ゴホンッ、来賓の皆様にご紹介します。彼女は私の叔父今は亡きモード大公のご息女ティファニアです」
「は、初めまして…」
気後れしそうになりながらも、テファは傍で控えるマチルダに習った通りの作法で各国の要人へと挨拶をする。
胸が揺れてゴクリッと生唾を飲み込む音と女性に足が踏まれた男達の叫び声が響いてから、ようやくアルビオン貴族の誰かから、声が上がった。
「陛下! その娘の耳は…!」
「その通り、彼女の母はエルフだ」
エルフ…ッ!
聖地を占拠する亜人、始祖の宿敵を母とする始祖の血統を受け継ぐ娘…一瞬の空白が会場を支配し、その後糾弾する声が上がった。
非難する者。杖を抜き、魔法を唱える者。
だがそれらを…今にも一人の悪魔を殺そうとする貴族達の頭上に澄んだ少女の声と閃光が降ってきた。
「やめなさい貴方達! 始祖はそんなことは望んではおられないわ!」
貴族達は呆然と、特にその閃光に飲まれて消えたアルビオン貴族派の姿を見たアルビオン貴族達は頭上を見上げた。
片手に亀を持った尼僧姿の少女が空から降ってくる…隙間から覗く桃色がかった髪を見たカリンの、魔法衛士隊の制服が、表情を隠す仮面が微かに動揺で震えた。
「な、なんだ貴様はッ「せめて貴方様とお呼びしろゲルマニアの糞野郎!」
真っ先に正気に帰った誰かを隣に立っていたアルビオン貴族が殴り倒した。
「あの方こそ…「皆様。彼女こそ復活した虚無! 王党派を、アルビオン王家を…始祖の虚無で救った『ニューカッスルの聖女』ルイズ・ド・ラ・ヴァリエール様です!」」
興奮した声で、壇上から誰かが説明した。
卑屈なほど丁寧にお辞儀をする彼は、鳥の骨とあだ名されるマザリーニとは反対に肥え太り、額に光る汗を拭きながら言ったのは、ロマリアの枢機卿の一人グロスター枢機卿だった。
アルビオン王党派を消し飛ばした閃光を見て聖女の誕生を確信したと言う彼はこの3カ国による共同戦線を提案した人物として顔も知られていたが、『虚無』の一語に気を取られ動けずにいる貴族達は誰も彼を見ようとはしなかった。
輝く太陽を背に降りてくる純白の尼僧服に身を包んだ聖女を見上げる彼らの中から、拍手が徐々に上がる。
背後の澄み切った空に、右手を輝かせた竜騎士が何十という竜を引きつれ飛んでいく。アルビオンの貴族達から喝采が上がった。ルイズの名が連呼される。
聖女は奇妙な杖を持っていた。
箱の付いた短い棒…ジョルノが用意した拡声器で増幅した声でルイズは言う。
「皆様、私は始祖の声を聞きました…! 始祖はこのハルケギニアでの繁栄こそ願っておられます。聖地の奪還など…まして武力で持って行うなど始祖ブリミルは望んでおられません…!」
虚無の光に敵意を消し飛ばされたように、彼らはルイズの言葉を大人しく聴き…種族間の壁を超えた恋愛の末に生まれたテファを祝福するという彼女の慈悲の心に感化されようとしている。
「聖女様が言うんなら…」
聖女の言葉を聴きいれ、テファの存在を認めようとする声が貴族達の中から上がり始めた。
彼らの中にいるプッチ枢機卿とパッショーネが手回ししたサクラ達が、機能し始めたのだ。
*
会場の端。
ジョルノが生物にし、能力解除によってただの物質へと戻った建材が詰みあがった瓦礫の中に光り輝くコロネがあった。
亀、ポルナレフはルイズに貸し出した為子の場にはいない。
サイトも竜を操ってルイズに箔を付けにいったし、ミキタカもそれについていってしまった。
人を殺したレンガが詰みあがった壁に隠れるようにして、ジョルノは一人。
テファが認められるまでの一連のパフォーマンスを厳しい目で見つめていた。
いつかはこうするつもりだった。
テファを、彼女を隠してきたマチルダ達の地位を回復させる。
ハーフエルフであることも含めて、世間に認めさせいつかは堂々と母の故郷にも行けるようにする。
内乱から逃れる為にアルビオンを脱出する時に、決めていたことがようやく第一歩を踏み出した。
その為に、彼らの信仰、彼らの受けた教育により彼らの奥底にこびり付いた反応を押さえ込む為にパッショーネを強大にもした。
何年かけても…その過程でどれだけのプロテスタントを生み出すことになろうとも。
だが、それはもっと緩やかに行われるはずのことだった。
こんなに急激な動き、ましてやルイズを聖女に仕立て上げ、テファを王女にしようなどという予定ではなかった。
自由を奪われ、利用し利用される世界へと足を踏み入れてしまった。
これで二人は軽はずみな行動など取れなくなっていってしまう。
今目の前の光景は、ジョルノの隣でワインを傾ける黒衣の枢機卿の手に拠るものに過ぎない。
ロマリアの思惑とトリスティンの思惑とアルビオンの、ウェールズの思惑が重なった結果に過ぎない。
テファを王女として世間に認めさせたのは、ゲルマニアとガリアにそれぞれ領地の三分の一に両国の軍隊を駐留させられた為だ。
トリスティンの大貴族ヴァリエール公爵家の次女カトレアの養女となる話は、マザリーニの手によって処理されていた。
トリスティン王家の血も流れている大貴族の養女が女性の身でモード大公となり、王女として王位継承権を持つことが両国の関係を深くする。
加えて結果的にジョルノがアルビオンの国益に叶うよう動く割合が多少なりとも多くなるであろうと考えられている…
そして『アルビオンの聖女』となってしまったルイズによって二国の関係は更に深まり、ロマリアとの、何よりブリミル教の信者達の支持を得る。
全てはガリアとゲルマニアの干渉に対抗してのことだ。
皆に会わせる顔などない…ジョルノの表情は険しかった。
支援
いつのまにかその隣に黒い肌をした、枢機卿の礼服に身を包んだ男が現れていた。
今回の侵攻とそれに伴うこの不本意な流れを作ったプッチ枢機卿は乾杯、とアルビオン産のワインを注いだグラスを掲げ、一口に飲み干した。
次を注ぎながら彼は言う。
「ジョジョ。君の目的は一先ず達成と言った所かな」
「いいえ、」
「それに…」とジョルノは瓦礫に持たれかかり空を見上げた。
「それに?」
ジョルノは首を振って、爽やかな笑みを浮かべた。
その足元で正座をする牛男を見下ろし、「パッショーネの引き締めも行わないとならない。やることは山済みです」
プッチ枢機卿の前だったが、パッショーネのことはラルカスからばれてしまっていた。
それもジョルノがラルカスに反省を促す理由の一つだったが、だが牛男、ラルカスは反省のポーズをとりながらも目を目を逸らさなかった。
「だがジョナサン。これでパッショーネはより全ての国家に食い込むことが出来た…!?」
ラルカスは弁解しようとして顔を上げたまま動きを止めた。
トリスティンに残っている遍在に、何かあったのかもしれない。
ジョルノとプッチ。二人はラルカスの報告を待った。
「ボス…カトレア嬢が倒れた。病が、再発したかもしれん」
真剣な表情で告げられたジョルノは瓦礫から背中を離す。
会場に背を向けるジョルノに、ワインを堪能していたプッチ枢機卿が声をかける。
「行くのかね。そのカトレアとかいう女が心配か?」
「パッショーネの引き締めも行わなければと言いました。テファともう一度話をしてからと思っていましたが…ここに来る時に彼女には無理をさせました。借りは返さなければ」
「なるほど。それなら、ロマリアの竜騎士に送らせよう。何せ君もクロムウェルを倒した勝利の立役者、危険があるかもしれない」
逡巡するような素振りを見せて、ジョルノは頷く。
「ラルカス。その遍在はこのままアルビオンに残れ。テファについていろ」
「わかったぜ」
そう言って、ジョルノは走り出す。
ジョルノが去ったことに壇上のテファが気付き、目に見えてオロオロし始めるのがプッチ枢機卿にはよく見えた。
見世物でも見ているように笑みを浮かべて見物する。
カトレアが体調を崩すよう仕向けた甲斐があったというものだ。
(今回の動きで、彼らの間には亀裂が入った。次はテファとの距離を置かせてみるとしよう…領地運営の為に若く魅力的なアルビオン紳士も補佐につけてやれば案外面白くなるかもしれない)
「ああそうだ。ラルカス」
プッチ枢機卿は思い出したようにラルカスに尋ねる。
ラルカスはまだ正座をしたまま瓦礫に腰掛ける顔所か心まで真っ黒な枢機卿を嫌そうに見上げた。
「名前を聞いて思い出したんだが、カトレア嬢もあの年だ。結婚相手を探そうっていう話が出ているそうだが…ジョジョが邪魔ということになってしまったりはしないだろうね?」
「それは…あるかもしれんな」
「そうか…残念だな」
全く残念そうではない口調で言うプッチ枢機卿をラルカスは睨みつけた。
今後アルビオンにはパッショーネの息がかかった店が増えることになるだろう。
その為に行ったのだが、この枢機卿がジョルノを追い込んでゆくのではないかと言う予感が頭の片隅に浮かんでいた。
To Be Continued...
以上、投下したッ!
テファを穏便に認めさせるのが当初予定で、その為に勢力をググッと拡大していたジョルノは神父達に最高のタイミングで横殴りに会いましたとさ
これから暫くはテファともう一度ほのぼの出来るようにしようとジョルノは奔走する嵌めになりそうです。
支援ありがとうございました。
GJGJGJ!
そういえばルイズはプッチに操られてからの心情描写が無かったなぁ
そこらへんは後ほどーってことかな
とにかく乙だぜ
そうだよなー、どう考えても最初に目に付くのは耳より胸だよなーGJ
にしても人間関係が把握するのが難易度上がってきたなw
まあ陰謀家が二人も召喚されてるからそれが普通か
>>918 「仮面のルイズ」の本編は空行(改行のみの行)を除いて全部で 517114字だった。(改行文字含まず)
行数は題名含めて15646行。
400字詰めの原稿用紙にびっしり詰めれば1293枚になる。
ポルジョルきてた。これで勝つる
完結したら同人誌として出してほしいぜ
GJ!!!
キツクなったって?いやいたって普通にジョルノだったよ。まったく。
というか、ジョルノというキャラクターならああいう事を平然とやったとしても鼻に付かないからいい。
そして初めてジョルノがジョジョと呼ばれている所をみた・・・ww
関係ないけど、
「陛下! その娘の耳は…!」
を
「陛下! その胸の耳は…!」
と読んでしまった。
ああどうかしてる。。。
>>931 そりゃー凄いな。
ちなみに原稿用紙文字びっしりで一ページってのは普通はないから、さらにその1.4倍か二倍くらいのページ数かね。
仮に1.5倍として、1900枚くらいか。
長編小説は文庫だとだいたい250から350枚くらいなんで、ざっと考えて七冊から八冊、くらいだなあ。
仮面に続くと思われるのが
「ゼロいぬっ!」(96話)
文字数 509159文字
行数 21062行
「ゼロと奇妙な隠者」(本編のみ57話)
文字数 395478字
行数 10365行
など
文字数のカウントでは改行のみの空行を除く(=改行文字含まず)
行数のカウントでは各話の題名含む/改行のみの空行を除く
長編文庫って1000ページ越えるんですよね
ラノベコーナーに異常な厚さの本があったから知ってます
赤き月の巫女のことかー!
手元に「ゼロの使い魔」が(当然ながら)あるが、これが1巻につき270ページぐらい。
プロローグとエピローグとあとがき抜いて260ページ前後。
本文は9章ほどに分割されていて、1章のページ数は30前後。
えーと、文字数・行数が……めんどくせえなぁ。
「ゼロの使い魔3 始祖の祈祷書」をテキストで持っていたので調べてみた。
同じように空行(改行のみの行)を除外した行数は 3338行、さらに改行を取り除いた文字数は 114682字だった。(後書き含む)
ざっとならして、ゼロ魔の文庫本1冊が10万字余りか。
「仮面」と「ゼロいぬっ」が5巻ほど、「隠者」が4巻ほどの分量になるっつーわけね。
けっこう書いてる俺でも、まだ3巻弱ぐらいなのか……小説家すげえな。
本も千冊ぐらい読むと1億文字ぐらい読むんだな
手元の本調べてみたけどだいたい10万〜50万文字くらい
すげーな俺 こんなに読まされてたのか
>>944 他に1000ページ超えるラノベなんて知らないんだがw
京極堂シリーズだって新書版で600〜800ページぐらいだな
他サイト含めて最長のゼロ魔SSは日本まるごと召喚の火葬戦記もんだろう
吉良が召喚されたのみたんだがあれってヘイトじゃね?
吉良が陰険なことしかしてないし、協力的じゃないし、殺そうとしてるし
なんつーか最近ヘイトって言葉を知ったから使ってみたくてしかたがないって感じだな
480KB突破&950、と言うことで新スレ立てますね。
ヘイトだどうだと騒ぐスレでもないのにいきなり持ち出してくる辺り新参乙半年黙ってろって奴か
ヘイト?メルヘンやファンタジーじゃry
逆に考えるんだサイトとヘイトをかけた巧妙なギャグだと考えるんだ
真のヘイトSSがどんなものか知らないんだろ
全盛期のエヴァSSやナデシコSSは酷いってレベルじゃねーぞ!
ってくらい酷いヘイトSSが大量にあったんだが知らんのだろうね
ヘイトって聞いてもミニオンの一人しか思い浮かばない
>>956 ・・このような・・・・やつらが いるとは・・・・ ・・・・サルーインさまに・・・・ほう・・こく・・せね・・・・ば
おおおるううえええええええのおおおおおおおお名はあああああヘエエエエエイイイトオオオオ
さああるううううういんざばのおおおしぼべだあああああああ
>>940 >「ゼロの使い魔3 始祖の祈祷書」をテキストで持っていたので調べてみた。
これに突っ込まないのはマナーなのか。
「テキストに打って(おいた)」とかなら分からんでもないが…入手した時点でテキストみたいな言い方じゃないか。
邪推か
>>956 ∧_∧
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_ ∩ ヘェーラロロォールノォーノナーァオオォー
( ゚∀゚)彡 アノノアイノノォオオオォーヤ
( ⊂彡 ラロラロラロリィラロロー
| | ラロラロラロリィラロ
し ⌒J ヒィーィジヤロラルリーロロロー
セッカッコー
アンダーワールド
テーレッテーホクトウジョーハガンケンハァーン FATAL K.O. ウィーントキィ (パーフェクト)
>>959 同様の疑問を持ったがスルーした。
まぁ多分そういうことだとは思う。
suka=pontan
ume
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てす
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