あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part167
もしもゼロの使い魔のルイズが召喚したのがサイトではなかったら?そんなifを語るスレ。
(前スレ)
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part166
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1219937302/l50 まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/ 避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9616/ --------------------------------------------------------------------------------
_ ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
〃 ` ヽ . ・ここはあの作品の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!
l lf小从} l / ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,. ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
((/} )犬({つ' ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
/ '"/_jl〉` j, ・ 投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
ヽ_/ィヘ_)〜′ ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!
--------------------------------------------------------------------------------
_ ・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
〃 ^ヽ ・クロス元が18禁作品であっても、SSの内容が非18禁である場合は
J{ ハ从{_, 本スレへの投下で問題ないわ。
ノルノー゚ノjし ・SSの内容が18禁な展開をする場合はクロス元に関わらず、
/く{ {丈} }つ 本スレではなく避難所への投下をお願いね?
l く/_jlム! | ・クロス元がTYPE-MOON作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
レ-ヘじフ〜l ・作品を初投下する時は元ネタの記載も忘れずにね。wikiに登録されづらいわ。
・作者も読者も閲覧には専用ブラウザの使用を推奨するわ。負荷軽減に協力してね。
--------------------------------------------------------------------------------
,ィ =个=、 ・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。
〈_/´ ̄ `ヽ ・1レスの限界最大文字数は、全角文字なら2048文字分(4096Bytes)。これ以上は投下出来ません。
{ {_jイ」/j」j〉 ・行数は最大60行で、一行につき全角で128文字までですって。
ヽl| ゚ヮ゚ノj| ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
⊂j{不}lつ ・次スレは
>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
く7 {_}ハ> ・重複防止のため、次スレを立てる時は現行スレにその旨を宣言して下さいね。
‘ーrtァー’ ・クロス先に姉妹スレがある作品については、そちらへ投下して盛り上げてあげると喜ばれますよ。
姉妹スレについては、まとめwikiのリンクを見て下さいね。
・一行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えます。
SS文面の区切りが良いからと、最初に改行いれるとマズイです。
レイアウト上一行目に改行入れる時はスペースを入れて改行しましょう。
ハルケギニアの暦
→1年は12の月と4の週(1週間8日)で構成される384日
新年の始まり(日本の元旦)から10日間は始祖ブリミルの降臨祭という休暇となる(戦争も休戦とする習わし)
0.虚無の曜日 (1巻p.165) 休暇である虚無の曜日の夜に「破壊の杖」盗難
1.ユルの曜日 (1巻p.141) フリッグの舞踏会は「破壊の杖」盗難の翌日
2.
3.
4.ラーグの曜日(8巻p.221)
5.
6.
7.ダエグの曜日(9巻p.169) 翌日は虚無の曜日
順番不明 マンの曜日(6巻p.150)
イングの曜日(7巻p.125)
1.ヤラの月 (7巻p.164)
2.ハガルの月 (8巻p.221)
3.
4.フェオの月 (5巻p.130)
5.
6.
7.
8.
9.
10.
11.
12.ウィンの月 (6巻p.150)
順番不明 5? ウルの月 (5巻p.145, 12巻p.146)
6? ニューイの月 (3巻p.203) アンリエッタの結婚式
11? ケンの月 (6巻p.20) 夏休みが終わって二ヶ月
第一週 フレイヤの週
第二週 ヘイムダルの週 (5巻p.131)
第三週 エオローの週 (8巻p.20)
貨幣
→金貨 エキュー
銀貨 スゥ 100スゥ = 1エキュー
銅貨 ドニエ 10ドニエ = 1スゥ
新金貨 金貨の四分の三の価値 3/4エキュー(1新金貨で75スゥ)
デルフリンガー 新金貨100枚 = 75エキュー
官能小説 55スゥ
トリステインの生活費 1人1年120エキュー
シュヴァリエの年金 年500エキュー
ハルケギニアの衛星(月)
→大(青)小(赤)二つある。大きい方は地球の月の見た目で二倍ほどの大きさ。
小さい月の軌道は大きい月より内側にある。よって、小さい月の公転周期は大きい月よりも短い。
二つの月が重なる夜を「スヴェル」の月夜と呼ぶ(2巻p.119)。
サモン・サーヴァントの呪文
→原作(何度か失敗)
我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
五つの力を司るペンタゴン!
我の運命に従いし、"使い魔"を召喚せよ!
→アニメ版(一発で成功)
宇宙の果てのどこかにいる私の僕よ
神聖で美しく強力な使い魔よ
私は心より求め訴えるわ
我が導きに答えなさい!
コントラクト・サーヴァントの呪文
→我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール
五つの力を司るペンタゴン
この者に祝福を与え、我の使い魔となせ
コントラクト・サーヴァントの洗脳効果
→現状(11巻&タバサの冒険2)では情報は足りず、荒れるばかりで話題にするだけ無駄っぽい。
スレ住人のスルー力に期待。
長さの単位
1サントは約1センチ(1巻p.39 / 2巻口絵人物紹介)
1メイル=約1m
1リーグ=約1km
一日目
昼 :召喚される
夜 :使い魔とハルケギニアに関して話して、洗濯するよう下着を押しつけられる
二日目
早朝 :シエスタに洗濯場を教えてもらう(アニメ版)
朝 :ルイズを起こして着替えをしてるところにキュルケがからかいに来る
朝食 :アルヴィーズの食堂で貧しい朝食
授業 :ルイズがシュヴルーズの授業で錬金失敗、後かたづけ、渾名をからかってメシ抜き
昼食 :シエスタから賄いを貰う代わりに配膳手伝い、ギーシュが恥を掻き口論に(小説版ではここでシエスタ初登場)
決闘 :ワルキューレにボコられる、諦めないでいるとギーシュが剣を寄越してガンダールヴ発動、ワルキューレ七体をなで切りにして勝利
※同時刻、コルベールがオスマンの執務室にルーンのことで報告に来てロングビルが追い出され、王宮に報告するしないの口論の後、ロングビルが戻ってきて決闘事件を報告、決闘を静観してルーンはガンダールヴのものと断定
※ここから三日間負傷が元でルイズの部屋で寝たきり
四日目
朝 :目覚める、シエスタに事情説明を受け、ルイズに礼を言うとベッドから追い出される
使い魔生活一週間
うち三日間はパンツのゴムの件でルイズからメシ抜き(正式な食事は厨房で貰っている)
十一日目(“使い魔としての生活”が四日目からはじまったとして)
朝食 :厨房で食事しているとフレイムが姿を見せる
授業 :夢の件でルイズに折檻される、フレイムの視線を感じる
※同時刻、ロングビルがコルベールから宝物庫についての情報を聞き出している
夜 :キュルケの誘惑があるがルイズに邪魔され断念、キュルケの男から襲われるかもと思って武器を欲しがるついでにルーンの力について相談、ルイズは武器には快諾してルーンについては推測と忠告をする
十二日目 虚無の休日
昼前 :キュルケが目を覚まして出かけるルイズ達を発見、タバサに追跡を頼む
三時間後:トリスティンの武器屋でデルフリンガーを買い求める、ルイズ達がでたあとキュルケがシュペー卿の剣を買い叩く
夜 :フーケが宝物庫の下見、ルイズ達が決闘に来て壁にヒビを入れる、フーケがゴーレムを使って「破壊の杖」を盗む
十三日目
朝 :フーケ対策会議が開かれてその場にいたルイズ達が証言をする、ロングビルがフーケの情報をもって来る、ルイズ達だけが捜索隊に志願
昼 :情報のあった小屋に到着、破壊の杖を取り戻す、ゴーレムに襲われ破壊の杖を使って倒す、ロングビルが正体を現すが捕まる、帰ってオスマンに褒められる
夜 :フリッグの舞踏会
23日目
夜:サイトがルイズに夜這いをかける。ワルドがフーケを脱獄させる
24日目
朝:(授業):ギトーの授業
昼:アンリエッタが学院に来る
夜:アンリエッタがルイズの部屋にお忍び。ルイズがアンリエッタの手紙を取ってくることになる
25日目
朝:ルイズ、サイト、ギーシュ、ワルドがラ・ロシェールに向け出発。キュルケがタバサに頼んでルイズ等を追跡開始
昼:フーケがラ・ロシェール金の酒樽停にて傭兵を雇う
夜:ルイズ一行、ラ・ロシェールに到着、直前に地上のサイトとギーシュは傭兵に襲われるがキュルケ達に助けられ無事に到着、ルイズ一行にキュルケとタバサが参加
26日目 スヴェルの夜
朝:ワルドの発案で女神の杵停中庭にてサイトとワルドが決闘
夜:ルイズ一行、フーケ・傭兵達・仮面の男(ワルド)に襲われる
キュルケ・タバサ・ギーシュを囮に残し、ルイズ達は船を買い取ってアルビオンへ出航
キュルケ達は傭兵を追い散らすが精神力切れ、フーケも同じく、キュルケとフーケが殴り合い
27日目 アルビオン−ラ・ロシェールの最接近日
朝:空賊船に捕まるが、すぐに王党派の船であることが発覚し、ウェールズ皇太子に出会う
夜:手紙を返して貰う。戦前パーティーに参加
※キュルケ達はこの間、シルフィードに乗りアルビオンへ向かっている
28日目
朝:ワルドとルイズの結婚式だが、ルイズが断りワルドは本性を現す。ウェールズが殺されワルドはサイトに敗れる
昼:(正午):貴族派の総攻撃開始。キュルケ達が助けに来て、シルフィードに乗ってアルビオンから離脱、キス(二巻はここまで)
昼:(日中):アンリエッタに報告を済ませて学院に帰還
※攻撃開始からすぐニューカッスル城は落ちた
29日目
昼:(授業):コルベールが内燃機関を披露
夜:フーケがロンディニウムの酒場でワルドと合流
30日目
昼:(日中):ワルドとフーケが戦跡を検分、クロムウェルがウェールズを生き返らせる
31日目
アンリエッタとアブレヒト三世の婚約が公式に発表される。式は一ヶ月後を予定
※
それを受けゲルマニア首都ヴィンドボナにてトリスティン−ゲルマニア軍事同盟締結
その翌日アルビオン新政府樹立公布
すぐにトリスティン・ゲルマニアに不可侵条約の締結を打診し、両国は協議の結果これを受ける
約32日目
朝:オスマン経由でルイズに『始祖の祈祷書』が渡される
夜:サイト、シエスタにお茶を貰い、一緒に風呂につかりながら四方山話
約38日目
昼:(昼食後):ルイズ、ヒトデ型セーターを編む。サイト、シエスタを押し倒して(但し、ものの弾み)ルイズに追い出される。
約41日目
昼:ギーシュがテント生活をしているサイトを発見して、一緒に飲んだくれる
夜:キュルケの発案で、サイト・ギーシュ・タバサ・シエスタとその使い魔一行で宝探しに出発する。
約51日目
昼:(昼食前):宝探しでガラクタを発見する。昼食を取って次の目的地をタルブの村に決定
昼:(昼食後):タルブの村で零戦を発見
夜:(夕方):学院から伝書フクロウが来る
約52日目
サイト達、学院に帰還。持って帰った零戦の運賃をコルベールに肩代わりして貰う。
約55日目
コルベールがガソリンの精製に成功し、エンジンが少しだけ動く
約57日目
昼:(日中):ラ・ロシェール上空にて、アルビオン艦隊がトリスティン艦隊を奇襲。アルビオンはトリスティン艦隊に対し宣戦を布告
迎撃に向かったと思われるタルブ領主アストン伯戦死
アンリエッタを筆頭に、トリスティンは開戦を決意
同盟に基づきゲルマニアに援軍を要請。回答は、「先陣の到着は三週間後」
約58日目
朝:学院に宣戦布告の報。サイトと、勝手について来たルイズはゼロ戦でタルブへ。
昼:(日中):サイトが零戦で竜騎士とワルドを蹴散らし、ルイズは虚無の魔法『爆発』を発動させ、アルビオン艦隊を焼き墜落させる
約60日目 ニューイの月一日
アンリエッタの結婚式予定日
タバサの冒険1・2
全てタバサの春の使い魔召喚の儀式より後(ルイズと同時かは不明)
全てタバサ二年次のスレイプニィルの舞踏会まで
第●日目、はその話の中だけの時間、●日目、となっているのは本編と同期しています
朝でも夜でもない時間は全て昼です
『翼竜人』
第一日目
昼:指令を受ける、翼竜人と交戦、
夜:ヨシュアの懇願
第二日目
昼:暴走ガーゴイル作戦
第五日目
昼:結婚式
『吸血鬼』
サイトとギーシュの決闘以後
第一日目
昼:命令を受ける、村について調査開始
夜:エルザ襲撃される、屍鬼人を倒す
第二日目
昼:村人が占い師の老婆を殺す
夜:吸血鬼を殺す
第三日目
早朝:村長に置き手紙を残し帰還
『暗殺者』
サイトとギーシュの決闘以後
第一日目
昼:影武者開始
夜:宿場で一泊、地下水襲撃一回目
第二日目
昼:グルノープル・アトワール伯邸到着
夜:地下水二回目
第三日目
昼:イザベラ裸踊り
『魔法人形』
八日目
昼:スニキニル入手、学校に放り出したオリヴァンいじめられる
九日目
昼:オリヴァン実力詐称の片棒を担ぐ
十日目
昼:引き続き詐称
十一日目
昼:オリヴァンの決闘、元北花壇騎士団団員と交戦
十二日目
昼:虚無の休日だがキュルケに請われルイズ達を追いかける
『ギャンブラー』
十三日目
夜:フリッグの舞踏会中に伝令、プチ・トロワでイザベラから指令
十四日目
昼:賭場でいかさまを暴く
『ミノタウロス』
不明(他の任務の帰り道で、この事件は北花壇騎士団としてのものではない)
第一日目
昼:依頼を受ける
第二日目
昼:人さらい一味を退治しラスカルと会話
第三日目
昼:ラスカルを退治
『シルフィードの一日』
サイトのテントがある、サイトが洗濯をしている
『極楽鳥』
火竜の繁殖時期
第一日目
昼:イザベラから依頼を受ける
第二日目
昼:火竜山脈に到着、リュリュと出会う
第三日目
昼:囮作戦失敗
第四日目
昼:ニセ焼肉作戦失敗
夜:リュリュにハッパをかける
〜シルフィードは火竜に化ける特訓、リュリュは代用肉錬金のために絶食中
第七日目
昼:ニセ焼肉作戦成功
『軍港』
アルビオン侵攻開始(夏休みから二月)から一週間後、ウィンの月の半ば
髪の毛を追跡するアルヴィーを持っている
第一日目
昼:到着、リュシーと接触
第二日目
昼:調査、リュシーを疑いカマをかける、『グロワール』号爆破
第三日目
昼:『シャルル・オルレアン』囮作戦決行
夜:爆破阻止、リュシー自殺
1月:ヤラ(降臨祭)
2月:ハガル
3月:ティール
4月:フェオ(入学式/使い魔召喚の義)
5月:ウル(フリッグの舞踏会)
6月:ニューイ(夏休み)
7月:アンスール(夏休み)
8月:ニイド(夏休み)
9月:ラド
10月:ケン
11月:ギューフ
12月:ウィン
第一週:フレイヤ
第二週:ヘイムダル
第三週:エオロー
第四週:ティワズ
曜日
1:虚無(休日)
2:ユル
3:エオー
4:マン
5:ラーグ
6:イング
7:オセル
8:ダエグ
2巻P172にてアルビオンとトリスタニアは同じくらいの面積とある。
4巻P134にてオランダとベルギーを合わせたくらいとある。
4巻P134にて、北東のゲルマニア、南東のガリアはトリスタニアの10倍ほどの面積とある。
南の海に面した半島「郡」に「かつてのゲルマニアのような」都市国家「郡」があり、
ロマリアはその一つと記述されている。
ハルケギニアは「大洋に突き出た緩やかに弧を描く巨大な半島」とある。
未開の地、エルフの治めるサハラとは別物のように記述されている。
よって、現行の地図はあまり正確では無いものと考えられる。
(今後設定が変更されるかもしれませんが)
国土面積が約72054平方キロである場合、
正方形の国土だと1辺が268キロ程度、
三角形など、いびつな形である事が当然推測される(地図上からも)ので
45度-90度-45度の三角形の場合、
底辺が532キロ、高さが268キロ程度になる。
中心に首都があると仮定した場合、国境までは最短直線で134キロ。
これは1日32キロ歩けると仮定すると直線街道で3.5日程度。
道のくねりなどを考慮した場合、1.5倍なら5日強、倍なら7日程度。
タバサの冒険 P26 よりリュティスからアルデラ地方まで、馬で二日、徒歩で五日、シルフィードなら二時間。
よって、馬は徒歩の2.5倍。1日の移動時間を8時間とした場合、
シルフィードは徒歩の20倍。1日10時間移動なら徒歩の25倍。
時速4キロ×8時間なら1日の歩行距離は32キロ。
シルフィードは時速80キロ。
時速6キロ×10時間なら1日の歩行距離は60キロ。
シルフィードは時速150キロ。
3巻P203にて、3日後、ニューイの月の1日にゲルマニア首府、
ヴィンドボナにて結婚式がおこなわれる予定なのに、
3巻P211にて、アンリエッタは本縫いが終わったばかりウェディング衣装で、
結婚式のための出発におおわらわの王宮に居る。
王族の移動は馬車で行うのが慣例のようなので、トリスタニア−ヴィンドボナ間は
馬車で3日以内の距離と考えられる。
トリスティン魔法学院はヴィンドボナからアンリエッタが帰る時に寄った点から、
トリスタニア−ヴィンドボナ間にあると思われる。
ラ・ロシェール
学院から港町ラ・ロシェールまでは早馬で2日、代え馬を使い走り続けて
早朝−深夜なので、1日8時間程度の移動を基本として馬で十数時間程度、
馬で2日程度との記述と矛盾しない。
よって歩いて5日程度と考えられる。
4巻P228にて、トリスティンから街道を南下→ラ・ロシェール方面
夜明けまでに追いつかないと間に合わないらしい。
2巻P168 夜中に出発した船にて
「アルビオンにはいつ着く?」
「明日の昼過ぎには、スカボローの港に到着しまさあ」
ルイズ 16歳 / 身長153 / B76( -8.0%)-62(C) / W53(-8.8%) / H75( -9.2%) / BW比1.43 / HW比1.42
シエスタ 17歳 / 身長162 / B83( -5.1%)-69(C) / W60(-2.5%) / H85( -2.8%) / BW比1.38 / HW比1.42
タバサ 15歳 / 身長142 / B68(-11.3%)-57(A) / W49(-9.2%) / H67(-12.6%) / BW比1.39 / HW比1.37
キュルケ 18歳 / 身長171 / B94( 1.8%)-72(F) / W63(-3.0%) / H95( 2.9%) / BW比1.49 / HW比1.51
モンモランシー 16歳 / 身長166 / B80(-10.8%)-68(B) / W58(-8.1%) / H79(-11.9%) / BW比1.38 / HW比1.36
アンリエッタ 17歳 / 身長158 / B84( -1.5%)-67(D) / W59(-1.7%) / H85( -0.4%) / BW比1.42 / HW比1.44
ルイズ 16歳 / 身長153 / B76-65(A) / 体重42.4 / BMI 18.0
シエスタ 17歳 / 身長162 / B83-68(C) / 体重51.8 / BMI 19.5
タバサ 15歳 / 身長142 / B68-62(AA) / 体重36.2 / BMI 17.9
キュルケ 18歳 / 身長171 / B94-69(G) / 体重62.1 / BMI 20.5
モンモランシー 16歳 / 身長166 / B80-72(A) / 体重48.8 / BMI 17.6
アンリエッタ 17歳 / 身長158 / B84-65(E) / 体重51.6 / BMI 20.2
計算するとルイズはB〜Cカップ。なのに何故胸が小さいと言われるのか?
それは要するに純粋な胸の体積が小さいから。つまり、UBが細いからです。
そこで、胸の体積とカップ数の比較をしてみました。
平均身長時の平均UBからカップ数ごとの体積を算出し、実測体積が近いものを割り出せば、実際にはどの程度のカップ数に相当するかがわかるはずです。
大雑把に胸を半球状としてふたつ合わせて楕円体になると考え、半径の組み合わせを3通り用意して計算していきます。
これらの計算結果は以下の通りです。()内は市販ブラのサイズを示しています。
ルイズ 16歳 / 身長153 / B76-62.5(B65) / 実測体積893 / 体積比A〜B相当
シエスタ 17歳 / 身長162 / B83-65.5(D65) / 実測体積1274 / 体積比C〜D相当
タバサ 15歳 / 身長142 / B68-58.9(A60) / 実測体積501 / 体積比AA〜A相当
キュルケ 18歳 / 身長171 / B94-70.3(G70) / 実測体積1959 / 体積比F〜G相当
モンモランシー 16歳 / 身長166 / B80-68.2(B70) / 実測体積903 / 体積比A〜B相当
アンリエッタ 17歳 / 身長158 / B84-65.3(E65) / 実測体積1348 / 体積比C〜D相当
ハルケギニアにはブラがないし、見た目的にも揉みごたえ的にも体積比で比べた方が正確です。現実でもUBが細いとカップが大きくても小さいですし。
体積の小さい順に並べると、タバサ、ルイズ、モンモン、シエスタ、アンアン、キュルケになります。これは作中描写通り。
体積比だけであえて「○○は×カップ」と呼ぶとすれば、タバサAA、ルイズB、モンモンB、シエスタC、アンアンD、キュルケG。
実測値とくびれ具合(UB―W―Hのライン)も鑑みれば、タバサAA、ルイズA、モンモンB、シエスタD、アンアンE、キュルケHと呼ぶのが妥当なとこだと思います。
ちなみにくびれ具合は寸胴な順に、タバサ、モンモン、ルイズ、シエスタ、アンアン、キュルケでした。
これ設定スレのやつだよな
助かるしたまに覗いてるけど本スレに貼るには長いんじゃねーか?
【書き手の方々ヘ】
・作品投下時はコテトリ推奨。トリップは「名前#任意の文字列」で付きます。
・レスは60行、1行につき全角128文字まで。
・一度に書き込めるのは4096Byts、全角だと2048文字分。
・先頭行が改行だけで22行を超えると、投下した文章がエラー無しに削除されます。空白だけでも入れて下さい。
・専用ブラウザなら文字数、行数表示機能付きです。推奨。
・専用ブラウザはこちらのリンクからどうぞ
・ギコナビ(フリーソフト)
http://gikonavi.sourceforge.jp/top.html ・Jane Style(フリーソフト)
http://janestyle.s11.xrea.com/ ・投下時以外のコテトリでの発言は自己責任で、当局は一切の関与を致しません 。
・投下の際には予約を確認してダブルブッキングなどの問題が無いかどうかを前もって確認する事。
・作品の投下は前の投下作品の感想レスが一通り終わった後にしてください。
前の作品投下終了から30分以上が目安です。
【読み手の方々ヘ】
・リアルタイム投下に遭遇したら、支援レスで援護しよう。
・投下直後以外の感想は応援スレ、もしくはまとめwikiのweb拍手へどうぞ。
・気に入らない作品・職人はスルーしよう。そのためのNG機能です。
・度を過ぎた展開予測・要望レスは控えましょう。
・過度の本編叩きはご法度なの。口で言って分からない人は悪魔らしいやり方で分かってもらうの。
【注意】
・運営に関する案が出た場合皆積極的に議論に参加しましょう。雑談で流すのはもってのほか。
議論が起こった際には必ず誘導があり、意見がまとまったらその旨の告知があるので、
皆さま是非ご参加ください。
・書き込みの際、とくにコテハンを付けての発言の際には、この場が衆目の前に在ることを自覚しましょう。
・youtubeやニコ動に代表される動画投稿サイトに嫌悪感を持つ方は多数いらっしゃいます。
著作権を侵害する動画もあり、スレが荒れる元になるのでリンクは止めましょう。
・盗作は卑劣な犯罪行為であり。物書きとして当然超えてはならぬ一線です。一切を固く禁じます。
いかなるソースからであっても、文章を無断でそのままコピーすることは盗作に当たります。
・盗作者は言わずもがな、盗作を助長・許容する類の発言もまた、断固としてこれを禁じます。
・盗作ではないかと証拠もなく無責任に疑う発言は、盗作と同じく罪深い行為です。
追及する際は必ず該当部分を併記して、誰もが納得する発言を心掛けてください。
このぐらいまで単純化できそうな気がする。
爆発召喚
キス契約
「ゼロ」の由来判明(教室で爆発)
使い魔の能力が明らかに(ギーシュ戦)
デルフ購入
フーケ戦
舞踏会
最近はその流れでいかに飽きない話を作るかに凝りがち
爆発
平民プゲラ
コルベール問答無用さっさと汁
キス契約
フライに唖然とする
説明はぁどこの田舎者?
何者であろうと今日からあんたは奴隷
二つの月にびっくり
洗濯シエスタと接触
キュロケフレイム顔見見せ
みすぼらしい食事厨房でマルトー
教室で爆発片付け
昼食シエスタの手伝い香水イベント
オスマンコルベール覗き見
ギーシュフルボッコ場合によって使い魔に弟子入り
キュルケセクロスの誘いしかし使い魔はインポテンツか童貞w
ルイズ寝取られの歴史を切々と語る
休日街でデルフ入手 キュルケタバサがついてくる
ルイズが爆破訓練宝物庫破壊フーケ侵入お宝げっと
この段階でフーケは絶対つかまらない
翌朝捜索隊保身に走る教師一同
教育者オスマン犯罪捜索を未熟な子供にマル投げ
小屋で破壊の杖ゲットフーケフルボッコしかし絶対死なない
オスマンから褒章 舞踏会 終わり
途中飛ばすけど、
対7万戦と再召喚(一度使い魔契約が切れ、まっさらな状態からルイズとの関係を再構築)
こいつらって何がしたいんだかわからん
悩みがあるなら大生でスレ立てて聞いてやる
前スレ部門別作品投票集票結果
みんなで良作を発掘しよう
長編部門
小ネタ部門
ホラー部門
SF部門
ギャグ部門
長編部門 ゼロな提督 薔薇乙女も使い魔
小ネタ部門 使い魔は不良高校生
ホラー部門 虚無の唄-song of zero- ゼロの探究
SF部門 るるる
ギャグ部門 ご立派な使い魔 UM☆アルティメットメイジ
今気付いたが
>>15ってなのはスレのテンプレじゃん
>>2-12 初めて見るテンプレだけど原作見る俺にはためになるわ
設定議論スレに行け
>>1さん
スレ立てお疲れ様でした。
虚無と若獅子の第二話が完成しました。
進路クリアでしたら、20:30から投下します。
強打全開支援
せめて、設定議論スレのレスアドレスを貼るだけなら。誘導だ誘導。
「で、その時、私が放ったスフィアー・オブ・アルティメット・ディストラクションがの」
「はぁ……」
部屋の隅から、魔法の灯と思しき光が、柔らかく室内を照らす。
学院長室の窓から見える風景に、夜の帳が下りて久しい。
気が付けば、オールド・オスマンの事情説明と言う名前の自慢話は、本題に入らないまま、
三時間近くに及んでいた。
“こんな事してる暇、ないんだけど……”
元来、押しの強い性格ではないとはいえ、さすがに焦れるリューマに、オスマンはにやり
と笑って見せた。
「とまあ、年寄りの自慢話など、若人には退屈なだけじゃな」
「えっ……? え、いえ、そんな……」
焦りが表情に出たのかと、リューマは慌てて言い繕う。
実際のところ、オスマンの語りは、年若いながら様々な経験を積んできたリューマの目か
ら見ても、波乱万丈、ともすれば荒唐無稽なもので、相当に胡乱であったものの、だが、
そうであるからこその面白さが確かにあり、こうして聞いている分には、退屈などという
単語とは無縁なものではあった。
とはいえ、のんびりと茶飲み話に興じているわけには行かない理由が、リューマにもある。
彼女には、一刻も早く果たさねばならぬ義務があるのだから。
特異なる性質を持つ擬似次元界ファーガンドの謎を解き明かし、かの世界を、己の故郷を
蛮神“グルームシュ”の侵略から救い出すこと。
大魔導師モルデンカイデンと約したその期限は一年。
外方次元界を巡り歩く旅も、すでに二ヶ月が過ぎ、確かな手応えを感じてはいるものの、
それでもなお、足を止めている暇などあろう筈がなかった。
そんなリューマの内心を見透かしたように、オスマンは口を開いた。
「じゃが、年寄りの長話にも、聞くべき部分、学ぶべき事柄は含まれているものじゃ。
若者は、往々にしてカビの生えた昔話だと馬鹿にするがの。
安心しなさい、ミス・バステソーン。
わたしは、きみが急いでいる理由も知っておるし、そして、それにもかかわらず、私がこ
こで長話しておるのにも、理由があるのじゃよ」
その一言が、激発のきっかけになった。
「理由って、一体なんなんですか! なんでぼくの名前を知ってるんです!?」
抑えつけていた物が噴き出すように、リューマの口から言葉が溢れ出る。
思わず立ち上がるリューマを、オスマンは手で制した。
「まあ、落ち着きなさい。
君たちの事情は、ほかでもない、エルミンスター殿と、モンデンカイネン殿に聞いておる。
そう……あれはもう20近く年前の話じゃ」
「に、20年? ちょっと待ってください。ぼくたちが出発したのは……」
「分かっておる、分かっておる。恐らく、君の主観時間では、二ヶ月ほど前だと言いたい
のじゃろ?」
一旦言葉を切ると、オスマンは、にんまりと人の悪い笑みを浮かべた。
とっておきの秘密を披露する者が時として浮かべる、どこか優越感を漂わせた表情。
「話は変わるが、君は次元界特性を現す8つの要素はご存知かな?
……ああ、答えんでもええ。聞いた私が悪かった。
まあ、簡単に言えば、8つの要素のうちの1つである時間流の速度が、ハルケギニアは早
いんじゃよ。
私の計測によれば、次元界の標準的な時間流との速度差は100倍以上」
「100倍!?」
「大体、こちらで1年過ごすと、向こうで3日経つ計算じゃな」
「じゃあ、シギルの街では、えっと」
指を折りながら計算するリューマに先んじて、オスマンが答えを口にした。
「君がこちらに来てから、およそ100秒経過といったところじゃ。
君がいない事に、まだお仲間も気づいておるまい」
その言葉を聴いて安心したのか、リューマの全身から力を抜ける。
「シギルのお仲間との連絡は、わたしが取っておくから安心しなさい。
ただ、向こうへの帰還となると、時間流の壁を越えねばならぬゆえ、しばし準備に時を要
する。
問題は、その間の君の処遇じゃが……」
そう言ったきり、オスマンは、見事な白髭を扱きながら瞑目した。
その姿だけみれば、黙考する老賢者と言うに相応しい姿だと言えるだろう。
だが、秘書のミス・ロングビル辺りが見たなら、また悪巧みをしているのだと決め付けた
に違いない。
実際、自分に都合の悪いときや、相手を煙に巻こうとする時、オスマンはえてしてこうい
う態度を取る。
しかし、この時ばかりは、真実、悩んでいるようだった。
「のう、ミス・バステソーン。
君の招請が、事故に等しい偶発事である可能性は、極めて高い……いや、ほぼ間違いない
と言っていいじゃろう」
瞑目したまま、オスマンは静かに語り始めた。
「じゃが……のう。私には、この事に何か大きな意味があるような気がしてならないん
じゃ。
このハルケギニアは、極めて閉鎖性の高い擬似次元界での。
基本的には、時折開くポータルでハルケギニアに渡る以外には、来訪することは出来ん。
しかも、脱出は通常の次元間移動呪文では不可能ときておる」
ゆっくりと開いた瞳は、どこか遠くを見つめているようだった。
「偶然発見したポータルから、ハルケギニアを訪れた私が、再び他の次元界の土を踏むた
めには、50年に渡る研究を必要じゃった。
その研究の最中、幾度、全てを諦めてこの地に骨を埋めようと思ったことか。
じゃが、それゆえに、この擬似次元界の特異さと稀少性は、私が一番よく知っておる。
だからこそ、思うんじゃよ。
君が、このような形でハルケギニアに招請されたのは……いや、呼ばれたのは、何か世界
の意志とでも言うべきものが関わっているのではないか、とな」
その言葉と、オスマンの眼差しには、引き込まれるような深みと、言い知れぬ重みがあっ
た。その言葉に飲まれるように、おずおずとリューマが切り出す。
「あの、それで、オスマンさんは、一体、何が言いたいんですか?」
「うむ、有体に言えばじゃな。
私が君をアウトランズに送り返す準備をする三ヶ月の間、ある少女の傍に居てやってほし
いんじゃよ」
「ごめんなさいっ!」
勢いよく下げられた頭の旋毛を眺めながら、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・
ラ・ヴァリエールは不機嫌に沈黙していた。
しばしの間、医務室の白い壁沿いに気まずい沈黙が流れる。
オスマンとの会見を終え、ルイズの休む医務室を訪れたリューマが、開口一番口にしたの
は、神妙な謝罪の言葉だった。
殆ど事故のようなものとはいえ、腕を折る怪我をさせたのだから、まあ、人として当然と
言えば、当然と言える。
だが、それで納まらないのがルイズの機嫌だった。
いや、怪我のことは正直どうでもいい。
腕の骨なら、乗馬に興じている最中に、落馬して折った事もあるし、相手に悪意がなくて、
その上、罪悪感を抱いているなら、ねちねち嫌味を言うのも趣味ではない。
そもそも、今回の怪我に関しては、意識を失っている間に処置された所為か、あまり実感
が湧かないのだ。
それで腹を立てろと言う方が難しいだろう。
問題は、自分が召喚した使い魔というのが、平民の少年……もとい、少女だという事だ。
何をどう間違えたのかは知らないが、使い魔として人間を呼び出してしまうなど、聞いた
ことも無い。
しかも、先ほど少女を連れ立って医務室を訪れたオールド・オスマンの言が確かならば、
目の前の少女――リューマというらしい――は、何らかの事故で誤って召喚されたのであ
り、厳密に言えば、彼女の使い魔とは言えないらしい。
それゆえ、コントラクト・サーバントによる契約は、人道上の見地から言っても、また、
“春の使い魔召喚の儀式”の意味合いから言っても、行うべきではないという事だった。
まあ、使い魔ではないとはいえ、確かに生き物を呼び出したのだから、召喚も同然という
扱いでよかろう、というのが、医務室を立ち去る寸前に、オスマンが残した言葉だった。
今にして思い返してみれば、ミスタ・コルベールの妙に遠まわしな言葉は、暗にこの事を
示していたに違いない。
結局、自分はサモン・サーバントもまともに使えないのかと思うと、それまでの喜びが大
きかっただけに、落胆もまた大きかった。
はっきり言って、落ち込んだ。
サモン・サーバントに成功すれば、少しは学校の皆から馬鹿にされなくなるだろうし、も
しかしたら、これをきっかけに、魔法が使えるようになるのではないかという淡い期待も
抱いていた。
だが、全部それも水の泡だ。
分かっている。分かってはいるのだ。
今、自分の中に渦巻いている激情が、所詮は八つ当たりに過ぎないのだと。
はっきり言って、自分がサモン・サーバントに失敗したのは、こいつの所為ではない。
明日からまた“ゼロ”のルイズと馬鹿にされる日々が続くのも、相変わらず魔法が使えな
いのも、やっぱりこいつの所為ではない。
理屈では、分かっているのだ。
全部、自分の所為なのだと。
でも、だからと言って、それで全部納得できるほど、ルイズの人間は出来ていなかった。
「あのね」
唇の隙間から、絞り出すような声。
「お願いだから、わたしの目の前から、消えて」
常日頃から、癇の強さだけは大火球の魔法並みと言われたルイズとしては、怒鳴り散らさ
なかっただけでも、相当な自制心を発揮したと言えるだろう。
だが、それでも一言一言から滴り落ちる悪意まで拭い去れるわけではない。
きっと後でまた自己嫌悪で凹むんだろうな、というどこか他人事のような思考。
リューマの肩がびくりと震え、恐る恐ると言った感じで、ゆっくりと顔を上げる。
意志の強さを示すような、少し太めの眉の下の、幼さを残した瞳が、微かに揺れた。
おかっぱ髪とあつらえた様にまっすぐな前髪が、余計にリューマを幼く見せている。
今更気づいた。
背こそルイズよりも少し高いにせよ、間違いなくリューマは年下だろう。
そんな少女に、自分は八つ当りをしているのだ。
“後で”を待つまでも無く、早くもルイズの中で自己嫌悪が膨らみ始めていた。
「……あの……ご」
めん、言い過ぎた、と、ルイズは続けようとした。
謝ろうとしたのだ、そこだけは、認めてあげて欲しい。
だが、それよりも早く、リューマが一気にまくし立てた。
「本当にごめんなさいっ! でも、オスマンさんが、しばらく、ルイズさんの使い魔の代
わりをぼくがするようにって」
「……え?」
「だから、その……その間、ルイズさんと一緒に暮らす事になりましたっ!」
支援
再び、物凄い勢いで、リューマの頭が下げられる。
沈黙が、病室の中に満ち満ちた。
明らかに、先ほどの沈黙とは質の異なる何かを孕んだそれを、ルイズウォッチングに定評
のあるゲルマニア出身の某女史ならば、こう表現しただろう。
“ルイズ爆発五秒前”と。
「ふ……ふ、ふ、ふ……」
「ふ?」
はてな? とリューマが顔を上げたちょうどその時、辺りに充満した何かに一斉に火がつい
た。鬱屈した感情に、ストレスという火花が飛び、爆発的に反応して怒りが生成される。
「ふっざけるんじゃないわよっ!!! あ、あ、あああんた、い、言うに事欠いて一緒に
暮らすって。な、何様のつもり!? だ、だだ大体、あんたの、あんたの所為で……!」
かくして、医務室の静穏と平和は爆破された。
ルイズの怒りが鎮まるまでの間、ただただ自分は首を竦めて嵐が過ぎ去るのを待つほか無
かった、と後にリューマは述懐している。
仮にも歴戦の勇士であるリューマをして、そう言わしめるルイズの怒りは、まさにバーバ
リアンの激怒に比肩する、と言えばさすがに言いすぎだろうが、相当に凄まじかったのは
間違いない。
なお、黙ってやり過ごす策が功を奏したのか、この時は割合短い時間でルイズの癇癪は納
まったものの、自室に戻った際、運び込まれたリューマの装備一式を見て、再び爆発。
リューマはこの先の3ヶ月がどうなるのか、内心頭を抱える事になる。
こうして、ルイズとリューマの共同生活が始まった。
遠くかけ離れながらも、心のどこかに同じ何かを抱えた二人が、やがて伝説となることな
ど、想像もしないままに。
あまりに儚い人の生の中で、互いの軌跡が交差したこの僅かな日々が、如何にかけがえの
ないものであったか、二人はまだ知らない。
〜今日の夜、ルイズの部屋に大荷物が運び込まれた。
ちらっと見えた中身は、確か、召喚の儀式の時に飛び出してきた板金鎧だったように思う。
肝心の部屋の主が帰ってこないので、何が起こっているのかは、分からないまま。
正直、ちょっと気味が悪い〜
――モンモランシー・マルガリタ・ラ・フェール・ド・モンモランシの日記より
ご支援、ありがとうございました。
第二話はこれで終了です。
第三話は、なるたけ早く投下出来れば、と思っています。
それでは、またお会いしましょう。
GJ
「リューマって余分に時間使ってる暇ないよなー」という疑問を解決してくれる設定thx!
しかし、この様々な設定群を遥かにぶっちぎる強烈な印象だったのは、
「ミス・バステーソン」という台詞だった……
乙ー!オールド・オスマンのヤバさが半端ねーと思いつつも、
リューマとルイズが仲良くなってほしいと願う今日この頃。
現在予約が無いようでしたら、10分から投下しますね。
SC発売支援
つーか2連続で卓ゲネタかひゃっほう!
夜明けの人まで来た!これで勝つる! 支援
潮を含んだ風が吹き抜けていく。
自らのローブを揺らす風を受けて、グリシーナはその端正な顔を歪めていた。
視線の先には何か巨大なものが通ったかのように抉れた大地と、そして海がある。
アポルオンが海中へと消えた場所だ。
グリシーナの頭上の、獣の因子を色濃く残す耳が揺れる。
グリシーナの、常軌を逸したコラプサーとしての超感覚だとて、海中に没したアポルオンの居場所を探ることはできないのだ。
計算外――と言えば良いのか。よもやあれだけの死者の不浄なフレアを取り込んだアポルオンが、まだグリシーナの支配から脱しようとは。
流石はかつて英雄と呼ばれた者の成れの果て、とグリシーナはどこか皮肉な笑みを片頬に浮かべた。
アポルオンは凄まじい力だ。荒れ狂う暴威そのものなのだ。かつてそれが英雄や神と呼ばれた存在であっても、今はそれだけに過ぎない。
その力さえ、それさえ自在に操ることが出来れば無数の黄泉還りを生み出すことができる。
太陽に通じるそのフレアを操ればさらに莫大な力を得ることができる。
グリシーナとしては、見過ごすことの出来ないものだった。
何よりこれはアムルタートをこの世界まで――オリジンのコンキスタドールの知らないハルケギニアの地にまで呼び寄せて行った作戦なのだ。
アムルタートはグリシーナの計略通りこの地の軍勢とぶつかり、多数の死者を出した。
その死者は、アポルオンを操るに足りるはずの不浄なフレアを帯びていたはずなのだ。
番狂わせがどこで起きたかは分からない。
再びアポルオンを誘き寄せ、最早清浄な意識の一片も残らないほどに死者のフレアを浴びせなければ。
そのためには殺戮を起こさねばならない。ガリア王と言う駒はとうにグリシーナの甘言を打ち破り、最早駒とならないだろう。
グリシーナがこちらの世界で得た戦争を操ることすら出来る駒はあと一人――だが、その駒は今空高くにある。
アポルオンを誘き寄せるには少々難しい位置だろう。
逆に、あの駒をこちらに呼び寄せるというのもそれはそれで厄介な話だ。何しろ上での地盤固めには時間が掛かる。
ということは。
グリシーナはその表情をゆっくりと、どこか嘲笑うもののように変えていく。
駒を動かす余裕が無いと言うのなら、使徒たるグリシーナ自身が手を下すのみ。
ローブが蠢く。
一陣の風が吹き抜ける。ばさりとローブがその内――レオタードとその上を幾重にも這う生物状の汚穢な帯を這わせたグリシーナの肢体を晒す。
そして。
顔。
顔。顔。
顔。顔。顔。
顔。顔。顔。顔。
顔。顔。顔。顔。顔。
顔。顔。顔。顔。顔。顔。
顔。顔。顔。顔。顔。顔。顔。
無数の顔がその内にあった。ローブの、普段ならば決して外気に晒され得ぬそこに。
男の顔がある。女の顔がある。
人の顔がある。人外の顔がある。
三つ目の顔がある。牙を剥く顔がある。
絶叫をあげる顔がある。怨嗟の籠もった視線を投げかける顔がある。
いずれもおぞましくこの世ならざる思念を抱き、この地上に有り得べからざる混沌の様相を呈した狂気に囚われていた。
一目見れば人は心を砕かれるだろう、その無数の顔。
無音、ただ風音あるばかりだと言うのに、そこに無数の呪詛が耳鳴りのように響き渡る。
"破滅の瞳"――グリシーナの、その右目の虚ろな眼窩が世界を恨むように見つめていた。
ジェミニの剣 支援
陣中に設えられた指令部では、アムルタートの龍とガリアの人とが組んで侃々諤々議論を交わしていた。
アポルオンが次に現れるのはどこか、いつか。予測を立て、同時に対処を話し合う。
自ら打って出るべきだとするアムルタート側と防衛を固めるべきだというガリア側の意見は食い違い、話は一向に進もうとしない。
そんな軍議の最中、不意に不味いとガリア王ジョゼフは臍を噛んだ。
彼はグリシーナの手駒として操られていた立場である。つまりは、長期にあの女怪のフレアに触れていた存在というわけだ。
故か。今、背筋を這い上がる悪寒のようなものが背中を貫いた。何かある。紛れもなく今、グリシーナは何かを企んでいる。
悪寒が汗腺を刺激する。じっとりと粘つく脂汗が額から流れ出し、ともすれば悲鳴を上げたくなる。
ここが陣の指令部でなく、周囲に家臣が居なければそうしていただろう。
あるいはそうしたとしても、己を無能王と嗤う家臣どもならまた何かしている程度で流すのかもしれないが――と、ジョゼフは自らを奮い立たせるために心中に呟く。
怒りを胸に満たして、深く呼吸を繰り返す。
額の汗に気付いたか、従者の一人が濡れたハンカチを持ち出した。
拭わせるままにし、ジョゼフは卓上に並べられた様々な情報とこれまでに決められた方針を見下ろした。
これでは足りない、と誰に言うともなくジョゼフは囁き声で呟いた。
先ほど走った悪寒が、これではどうしようもない事態が進行していると告げているのだ。
如何ともしがたい焦燥感がジョゼフを焼き、そして――
脳髄に、雑音が走った。
それはいかなるものか、言語化するのは難しい。けれど、ジョゼフにとって馴染みのある感覚もつきまとう。
つまりは、声だ。彼のミューズ、すなわちミョズニトニルンの。
何が阻んでいるのか、声は遠く小さく幽かなものでしかない。
だが、今を置いていったいいつまたこの声を聞くことが叶うものか。
「余は飽いた。軍議はまたあとだ」
椅子を蹴り、ジョゼフは立ち上がる。わざわざ運び込まれていた毛足の長い絨毯が、それが倒れる音を半ばまで吸ってくれた。
アムルタートも、人間も、その場にいたすべての者の視線がジョゼフに向けられていた。
唐突な行動に呆然とする者、何をするのかと問い詰めようとする者、反応はそれぞれではあるが、そのすべてを無視してジョゼフは背を向けた。
怒声が飛び議論は失せ、にわかに騒がしくなるそこを出て、他の者に気取られぬ程度の早足で自らの天幕に向かう。
「どうした、なにがあった」
安否を気遣う言葉を掛ける余裕も無く、ジョゼフは遠くにあるミョズニトニルンへと問いかけた。
『不覚にもクロムウェルの手に……指輪以上の不可解な力を……今は誰かと話を……』
ミョズニトニルンを捕らえ、意志による会話まで阻害するのはおそらくはダスクフレアと化したクロムウェルの能力に違いないだろう。
そのクロムウェルが別のことにその力を用いているからこそ、今こうして会話ができるのだ――と見て良さそうだ。
「分かった。何か告げることはあるか?」
居場所を問うても仕方ないだろう、クロムウェルが健在な内は。
そのクロムウェルを討とうとも、アポルオンがいる限り軍勢を他に動かすのは難しい。
だからと言って少数精鋭を送ったところで、クロムウェルがダスクフレアであると言うならば傷をつけられるかすらも怪しいものだ。
『グリシーナとやらが、虐殺を行うと……おそらくは海岸沿いで……』
怖いよアポルオン怖いよ支援
大星団テオスも出るんだろうか 支援
途切れ途切れの声が告げる。
虐殺。それは――ふむ、と顎を撫でる。
アムルタートとガリアの衝突による死者がアポルオンを呼び寄せた、それと同じことを行うつもりか。
ならばその虐殺の規模もまた、大きいものになるだろう。
「具体的な場所は分かるか?」
防がねばなるまい、なにがあろうと。
それがグリシーナの謀であると言うならば、なおさらだ。
『それが……アポルオンを呼び出せる場所としか……』
ミョズニトニルンに届かぬように舌打ちし、ジョゼフは眉間に皺を寄せた。
無論己の使い魔を責めるものではない。
流石にそこまで都合良くは分かりはしないか、とどこか落胆に似た思いが去来したのみだ。
『……あ、ああ、そのうえ……』
ミョズニトニルンの声に、不意に焦りが混じる。聞いた言葉のうちに、何か恐るべきことでもあったのか。
『そちらに襲撃を掛けると……言葉の通りではすぐにも向かうようでした……足止めのためにと。急ぎ防備を堅めてください、たどり着くまでにまだ幾許か時間があるはずです』
声がクリアになる。彼女の強い意志が何か介在したのか――そんなことを思う余裕も無く、ジョゼフは針で刺されるような感覚を背中に受けた。
来た。
ミョズニトニルンの言葉通り――些か、早くはあるが。
「私のミューズ、残念だがその言葉は少々遅かったようだな」
『え……』
呆けたような返事に、思わずジョゼフは吹き出した。
普段陰謀を巡らせるジョゼフとミョズニトニルンだが、今は常識の外にある存在に押されてばかりだ。
「来たのだ、そのグリシーナがな」
そんな、とミョズニトニルンの声がした。
同時にノイズが数倍になり行く。つい今し方、明確に聞こえたのは蝋燭の最後の輝きだったと言うかのように。
消えゆく声の向こうに、ジョゼフは朗らかに声を向けた。
「お前のくれたこの報、有意義に使おうではないか。――今しばし、待て。必ず迎えに行く」
『……。はい』
慈悲を込めたつもりはない、ただ己の使い魔を迎えに行くのは自らの責務と感じただけだ。
けれどどこか嬉しそうなミョズニトニルンの声がして、そして再び遠のき切断された感覚。
虚無感、一心同体である使い魔との繋がりが切れた。
ともすれば虚脱感に苛まれ痴愚のように呆けかねない感覚を強引に打ち消して、ジョゼフは顔を上げた。
そして感じる。紛れもなく、今、グリシーナが陣を訪れている。
「誰か、誰か! 伝令を勤めよ! 武器を持て! 敵が来ると触れて回れ!」
声を張る。己も宝剣を帯び、つい先ほど抜け出した詰め所に戻る。
無能王が居なかったと言うのに結局話の進んでいなかった軍議をやめさせ、高らかにジョゼフは宣言した。
「さあ諸君、一働きしてもらおうか。我らの敵の登場だ」
アポルオン先生のHPが2700越え 支援
その瞬間、タバサが陣にたどり着いたことは恐らく僥倖だったのだろう。
シルフィードの翼が風を巻いてガリアの陣に舞い降りる、その瞬間のことだった。
タバサの視界の隅に存在する、黒い影。
空の風にローブをはためかせる、その姿は。
「シルフィード」
「きゅい!」
合図と共にシルフィードが強く羽撃く。急上昇、風が渦巻きタバサの髪が乱れる。
その黒い影は紛れもなく、アポルオンの襲撃時に姿を現した――グリシーナ。
グリシーナは虚空にさも足場があるかのように立ち、平然と歩いている。
声すら掛けず、タバサは氷の槍を放った。
ひとつ、ふたつ。
冷たい氷の槍は高速で飛来し――けれど、グリシーナの身体をかすめるに終わる。
「あら、御機嫌ようお姫様」
グリシーナがふわりとローブを翻す。
戯けたように一礼するその姿は、ともすれば上級の貴族の娘に見える。
それも、頭頂に存在する獣の耳と、虚空を杖も無く平然と歩いている事実を見なければ、だが。
返事もせずに更に槍を放つ。いずれも高速、そして必殺。そのはずだ。
かすめる、かすめる、かすめる。いずれもが、その穂先をグリシーナに突き立てることができない。
取り立てて早いとも見えないグリシーナの身ごなしが、槍に致命的な一撃を避けさせる。
「悪いけど、少し邪魔ね」
からかうような笑みを浮かべて、グリシーナが言う。
そして、その細く白い手が、ローブを払った。
タバサは見た。その、内側を。
怨嗟を告げる顔。顔。顔――。
一瞬の恐慌は、タバサに隙を生み出した。
同時に伸びる、グリシーナの身体にまとわりついていた生物状のナニか。
それは主の身より離れ、瞬く間にタバサとシルフィードを縛ろうとする。
シルフィードの翼が宙を撃つ。生きたロープを振り切ろうとして、けれどそれは既にシルフィードの後ろまで伸びていた。
強固に拘束される、シルフィードとタバサ。杖を振るうことさえ出来ない状況にタバサは歯がみした。
生物のぬくもりを持った触手がぎちぎちと二人を締め上げる。
宙を舞う力を失い、二人と、そして主から切り離された触手が大地へと堕ちていく。
地に叩きつけられれば、どちらの命も無いだろう。
急速に迫る緑の大地を目に、シルフィードは悲鳴を上げ、タバサは無言のまま息を詰めた。
「レビテーションをかけよ!」
聞き覚えのある声が、号令を飛ばす。
激突まであと僅か、大地は最早目の前となった瞬間に、二人の身体は浮力を得た。
慌て駆け寄る騎士が剣をもってタバサとシルフィードを拘束するモノを斬り飛ばす。主と離れていた故か、それは難なく二つになった。
「無事か?」
頭上から掛けられる声に、タバサは顔を上げた。
言葉こそは安否を気遣っているように聞こえるが、見下ろすその顔は愉快そうに歪んでいる。
自身の無様な格好を見られて喜んでいるのか――と、タバサはジョゼフの顔から目をそらした。
「ふふん、それくらいの余裕はあるようだな」
ジョゼフはからからと笑い、次いでタバサから興味を無くしたようにグリシーナへと視線を向けた。
鷹の目のように鋭い視線。普段の愚かな無能王とは、違う。
「我がガリアとアムルタートの連合軍に何か御用かね?」
高らかに、グリシーナへ問う。
そういえばこのssはアップグレードしたんだろうか支援
支援
遙か頭上でその声を聞いたグリシーナは、ゆるゆると大地に近づきながらころころと嗤った。
「御用、ね。つい先頃まで殺し合いをしていた連合軍に用なんてものは無いわ」
そう言いながら、舞うようにローブを揺らし眼下に収めた軍勢を眺め、小さく首を傾げた。
「ところでアムルタートの、一番上のお方がいらっしゃらないようだけど、怖くって逃げ出したのかしら?」
その嘲りの言葉にアムルタートの兵が怒りの言葉を投げつける。
地を這う者は雄叫びを上げ、そして空を飛ぶ者は羽撃きを持ってグリシーナを討たんと襲いかかる。
そして。
「わらわは」
不意に響く声。凛と、その幼いうちにも威厳を秘めた声が。
「ここじゃーッ!」
ぐにゃりと、グリシーナの背後、空が歪む。
そこには青い鱗の龍と、その背に冥龍皇イルルヤンカシュの姿があった。
青い鱗の龍、リムシュの喉がぐうと膨れ、次の瞬間深紅の業火が溢れ出た。
伸びた火炎がグリシーナを包み込み、空を赤く染める。
「アムルタートを舐めたがおぬしの敗因よ!」
イルルヤンカシュの声が朗々と響き渡る。アムルタートにもガリアにも、どよめきが走った。
同時に、永遠に続くかとも思われた業火が不意に止んだ。
「どうしたリムシュ、何故止め……」
リムシュの巨体がぐらりと傾いだ。空中を舞う威容はどこへか、風を巻いて堕ちてゆく。
ばさりと音がして、炎が振り払われた。
ローブを払い、平然とグリシーナが現れる。その姿の何処にも損ねられた様子はない。
「光学迷彩だなんて随分と姑息な手を使うわね、冥龍皇? そこまで追い詰められたのかしら」
嘲るように唇を歪めて、変わらぬ美貌を誇るかのようにグリシーナは告げた。
「けれど、私を甘く見ていたようね。私を誰かとお思いかしら。破滅の瞳の二つ名は、伊達ではないのよ?」
イルルヤンカシュは牙を剥き、空にあるグリシーナを睨んだ。
大地に伏せたリムシュの姿は端々から石へと変じている。まるで伝説にあるゴルゴンの瞳を覗き込んだかのように。
「ならその二つ名通りに破滅させてやるわ! わらわの子を傷つけた罪は重いぞ!」
開いた口から今にも炎を吹きそうな勢いでイルルヤンカシュが声を上げる。
「あら、怖い怖い。それじゃあ、破滅させられる前にそちらを破滅させてしまわないと」
グリシーナの言葉に続いて、ばさりとローブが広げられた。
無数の顔と、グリシーナの肢体が晒される。下に居たすべてのものが、その行動に身構えた。
同時に、無数の怨嗟が聞こえ始めた。グリシーナのローブの下に存在する無数の顔が、その口を開いて苦鳴を漏らすように声を響かせる。
それは聞く者すべてに終焉を思わせる声――そう、黙示録の声と言えよう。
同時に、大地が揺れた。その哀しげな恨めしげな声に共鳴するかのように、ぐらぐらと揺れていく。
そして、起き上がった。大地が、大地そのものが人の形を模して起き上がる。
ガリアもアムルタートも、そしてタバサ自身も混乱に陥らなかったのは恐らくここ数日の異常な出来事の続きすぎたせいだろう。
同時にいくつもの篝火が燃え上がる。一度は自身の手で滅ぼした命を持った呪わしき篝火が。
「今更この程度の手勢を出してどうするつもりじゃ、グリシーナ!」
「いや、奴の目的は時間稼ぎだ。……そうだろう、グリシーナ?」
イルルヤンカシュの叫びに、傍らのジョゼフが答える。
グリシーナは、再びころころと嗤った。
「よくご存知ね。あなたが無能なら他の人間はもっと酷い役立たずだわ」
ひとしきり嗤って、グリシーナはその笑みを残したまま何も無い虚空に手をさしのべる。
「それでは、さようなら。皆様」
ありもしない虚空の門を押し開き、グリシーナの身体はその中へと消えていく。
シルフィードが翼を振るい、タバサを乗せて追うように飛ぶ。
けれど、タバサには、そしてシルフィードにも分かっている。そんなことをしても届くはずは無い。
グリシーナが通った門のあったところをすり抜けて、タバサは小さく不満げな声を漏らし、地上を赤く染める炎と地面そのものから生まれた怪物達を見つめた。
立ち上がった大地の精と炎の精が、行く手を阻むように軍勢に挑み掛かった。
支援……?
これにて今回の投下は終了です。
つい先日カオスフレアSCが発売されまして、ホントにありがたいことです。
しばらくはそちらのデータの採用はありませんけどね。
ええと、グリシーナ様の頭上のアレ、アレがリボンではなく猫耳であると明言されてしまったので、慌てて描写させていただきました。悪しからず。
それでは、また。
「ダスクフレアはもっと孤独で、自由で……」
とSCの新しい敵のテオスのキャラにアームロックをかけたのもいい思い出。
乙でしたー!
GJ
アルビオンの方が描写されないのでシェフィがどんなエロ……もといヤバイことになってるのか不安だぜ
つーか陰謀を仕掛けられるジョゼフってなんか新鮮でいいね!
……アムルタートの勇者が光学迷彩の使い手だってすっかり忘れてたのは秘密だ
若獅子の人、夜明けの人、乙でした。
スレへのリンクはいつか切れるから、本編設定のまとめは
ありがたいんだが、量が多すぎる。
Wikiに載っける方が無難。
え? アルビオンってあの予告編どおり
ダスクフレア超獣アルビオン 対 遺跡巨獣リオフレイドン 〜時空を超えた超決戦〜
になってるんじゃないの?
>>若獅子の人
D&D用語を説明なしに使いすぎてない? 原作読んでないとわからない話になってるような。
あと、てにをはの間違いと変なところで行を変えてるのが気になります。
Wikiに収録されてから直した方がいいのでは。
ブラックエンジェルズ呼ぼうぜ
61 :
使い魔の炎:2008/09/02(火) 21:59:20 ID:ceutXIEt
予約なければ、10時10分から投下します
>>59 そしたらサイトとルイズがあっちにいっちゃうじゃないか!
……タバサとジョゼフが覚醒すればいいだけという噂もあるが
それはともかく炎術士支援
ある日、ルイズは烈火を廊下にほっぽりだした。どうやら、烈火がルイズお気に入りの下着を破ってしまったことがお気に召さなかったようである。
「アンタ、今日は罰として外で寝なさい!! いいわね!?」
「ひ、姫! ちょっと待…はべっ!!」
バタン!と閉じられたドアに烈火は顔面からぶつかった。
「寒い…炎だして暖まるか…いやさすがにここで炎だすのはマズいか…」
烈火はドアの前に座り込んだ。
「やっぱ黙ってたの悪かったかな…」
初めて烈火の前で魔法を失敗したとき、ルイズは泣いてしまった。
それほどに、ルイズにとっては魔法が使えないことは大きなコンプレックスなのだろう。
自分は努力しても、魔法が全然うまくならない。
しかし自分が召喚した貴族でもすらない人間は、炎を操れる。 そんなのイヤに決まっている。
だから、ルイズは烈火に冷たい態度をとるのだろう…それが烈火の考えだった。
いったいどうすりゃいいんだろうな…
烈火はドアの前で凍えそうになりながら考えていた。
その時、キュルケの部屋の扉が開き、サラマンダーのフレイムが姿を現した。
フレイムはちょこちょこと烈火に近づいてくる。
「よおフレイム。 どうしたんだ?」
すでにフレイムに慣れていた烈火は、気さくに声をかけた。
すると、きゅるきゅると人なつこい声をあげながらフレイムは烈火の服の裾を引っ張った。
「おいこら。 何処に連れていくんだよ?」
烈火は言った。
しかしサラマンダーは烈火の言葉を無視しぐいぐいと強い力で烈火を強引に引っ張った。
キュルケの部屋のドアは開けっ放しだ。 あそこに俺を引っ張り込む気か?
烈火は考えた。
キュルケ、俺に用でもあるのかな? でも、あんま喋ったことないんだけどな…
烈火は何故自分が引っ張られるのか良くわからないまま、キュルケの部屋のドアをくぐった。
部屋の中は真っ暗で、キュルケがいる場所どころか、足下すら良く見えなかった。
「扉を閉めて?」
キュルケの声が聞こえたので、烈火は言うとおりにした。
「ようこそ。こっちにいらっしゃい」
「真っ暗で何も見えねえよ」
キュルケが指を弾く音がする。
すると、部屋の中に立てられたロウソクが一つずつ灯っていき、悩ましい姿のキュルケ腰掛けたベッドまでの道のりを作り上げた。
彼女は、烈火が見たことのないような形の下着を身につけていた。 明らかに異性を誘惑するための下着である。
キュルケのメロンのような胸に、烈火は思わず目が釘付けになってしまう。
「そんなところに突っ立ってないで、いらっしゃいな」
キュルケは色っぽい声で言った。
「いや、ち、ちょっとそれは…」
困惑する烈火に痺れをきらしたキュルケは、立ち上がって自ら烈火に近寄ってきた。
「ななな、何のようだ?」
この状況に烈火は、ギーシュとの決闘のときよりも遙かに緊張していた。
キュルケは優雅に髪をかきあげ、野性的な魅力を放ちながら烈火に歩み寄ってくる。
「あなたは、あたしをはしたない女だと思うでしょうね」
「はい?」
「思われても、しかたがないわ。 わかる? あたしの二つ名は『微熱』」「はい」
「あたしはね、松明みたいに燃え上がりやすいの。 いけないことよ」
「ああ、あの、とにかく、先にその格好を、そのはしたない格好、お父さんは許しません!!」
烈火はまったく話を聞いていない。 というか冷静に聞けるほど落ち着いていない。
「でもね、あなたはきっとお許しくださると思うわ」
キュルケも烈火の話を聞いていない。潤んだ瞳で烈火を見つめた。
理性が飛びそうなり、烈火の目はぐるぐる回っていた。
「おい、おま、何の話だよ!?」
キュルケはすっと烈火の手を握り、胸に手をあててきた。
「恋してるのよ。あたし。 あなたに。 恋はまったく、突然ね」
「は、はあ…はあああ!? 恋って俺に!?」
烈火は混乱した。
「あなたが、炎でギーシュを倒した時の姿…かっこよかったわ。
私、自分以外の炎であんなに痺れたの初めてよ。信じられる! 痺れたのよ! 情熱! あああ、情熱だわ!」
キュルケは肉感的な体を烈火に押しつけてくる。
しかし烈火は必死に目を背けながら、キュルケの肩を押し戻した。
「ええっと、一回落ち着け。 お前は、ちょっと惚れっぽいんだ」
キュルケは顔を赤らめた。
「そうね…人よりちょっと恋ッ気は多いのかもしれないわ。
でもしかたないじゃない。恋は突然だし、あなたの炎が私に火をつけてしまったんだもの」
キュルケがそう言ったとき、窓の外に恨めしげな顔をした一人のハンサムな男があらわれた。
「キュルケ…。待ち合わせの時間に君が来ないから来てみれば…」
「ペリッソン! ええと、二時間後に」
「話が違う!」
キュルケはうるさそうに、杖をふるった。
炎が大蛇のように伸び、窓ごと男を吹き飛ばした。
「おいおい…」
さすがに烈火は唖然とした。
「今のはただのお友達。私が今一番恋してるのはあなたよ、レッカ」
キュルケが烈火にせまる。
すると、今度は精悍な顔立ちの男たちが窓枠を叩いた。
「キュルケ! そいつは誰なんだ! 恋人はいないっていったじゃないか!」
「スティックス! マニカン! エイジャックス! ギムリ! …ええと、六時間後に」
「朝だよ!」
男たちは仲良く唱和した。
「フレイムー」
キュルケがうんざりした声で呼ぶと、フレイムの火炎が四人を吹き飛ばした。
「いやいや…」
烈火は驚きを通り越して、あきれかえっていた。
「今のいったい、誰だったかしら? とにかく!愛してる!」
キュルケは烈火の顔を両手で挟もうとした。が、烈火はその手を避けた。
「あら、どうして?」
キュルケが悲しそうな声で言った。
「いや、やっぱそういうのはダメだろ…」
烈火はキュルケの肩に手を置き、言い聞かせるように言った。
その時、物凄い勢いでドアが開いた。
「またかよ…」
思わず烈火はそう呟いたが違った。 ドアの前には、物凄い形相のルイズが立っていた。
「ツェルプストー!誰の使い魔に手を出してんのよ!!」
ルイズが怒鳴る。
誤解だ!そう思いながら烈火は慌てて手を引っ込めた。
「しかたないじゃない。好きになっちゃったんだもん」
「来なさい。レッカ」
ルイズは有無を言わさぬ目で烈火を睨んだ。
烈火は素直にルイズに従う。
「あら、お戻りになるの?」
悲しそうな目でキュルケは烈火を見つめた。
「姫の言いつけは忍にとって絶対だからな」
そう烈火は返す。
キュルケは残念そうな顔をした後、ルイズに向き直った。
「ルイズ。レッカはすごくあなたに忠実みたいだけど、彼にだって意思はあるのよ。そこを尊重してあげなさい。
じゃあね、レッカ。おやすみ」
烈火はキュルケに返事をしようと思ったが、ルイズがすごい力で引っ張るため、言葉を発せないままキュルケの部屋をあとにした。
部屋に戻ったルイズは、部屋の鍵をかけるやいなや怒鳴り始めた。
「まるでサカリのついた野良犬じゃないの〜ッ!」
「い、いや俺なんもしてねえだろ!? あと俺は野良犬じゃなくて、忍…」
「問答無用!! ツェルプストーの女に尻尾をふるなんてぇーッ!」
「だから何もしてねえっつうんだよ!! 落ち着け!
何でキュルケをそこまで目の仇にするんだ?」
少し落ち着きを取り戻したルイズは、ヴァリエールとツェルプストーの、戦いの歴史を語り始めた。
炎をつかうのはこういうとき印象マイナスだなw 支援
「武器? 俺のか?」
「なんで私のを買うのよ」
キュルケとのゴタゴタがあった次の日、烈火はルイズに連れられて、城下町を歩いていた。
なんでも、ルイズは烈火に身を守るための武器を買ってくれるらしい。
「でも、俺剣なんてあんま使ったことないし。
最悪、戦うときは炎使えばいいじゃん」
一度みんなの前で使ってしまったんだし、姫を守るためなら人前で炎を使うのもいとわない、そう烈火は考えていた。
しかし、ルイズは違った。
「アンタね…どれだけの人がその力を怖がってると思ってるの?」
「昨日の授業で、何人も炎だしてたじゃん。 杖使って」
「杖があるのとないのじゃ大違いなの!! 下手したらアンタ、異端審問を受けることになるわよ!!」
「異端…? なんだそれ?」
ルイズは、異端審問の内容を烈火に説明した。
烈火の顔が青くなる。
「マジかよ…釜茹でなんて、絶対イヤだぞ」
「まあ、異端審問をしようとするヤツがいても、アンタの力は『ディテクト・マジック』には反応しないみたいだし、見た目もどう見たってただの平民だから教会から許可が下りないだろうけど…
それでも、アンタのことを良く思っていないヤツもたくさんいるんだから」
「ケンカふっかけてくるヤツがいたら、ぶっ飛ばせばいいじゃん」
「ケンカをふっかけてくる人と毎回炎でドンパチやってたらみんな余計怖がっちゃうでしょ!?
だから、炎を使わないで身を守るために剣を買うのよ!!」
「いてて…わかったから、引っばらないでくで」
「それから! 非常時意外、炎を使うのは禁止! わかった!?」
「へいへー」
結局烈火はルイズに引きずられ、武器屋に向かった。
「で、どの剣にするの?」
ルイズにひきつられてやってきた烈火は、悩んでいた。 正直、武器のことなんてあんまり良くわからないのである。
日本刀や忍者の武器、せめて銃火器についてなら少しは知識があるのだが、生憎ここは異世界。そんなものが都合よくあるはずがなかった。
ルイズと烈火が最初に見せてもらった剣は、非常に見栄えもよくいい剣だった(らしい)のだが、値段が高すぎて買えなかった。
それどころか、ルイズの所持金で買える剣はボロボロの鉄くずのようなものしかないのである。
烈火はルイズの所持金の少なさは自分の治療に使われた秘薬のせいだとすぐにわかったので、ルイズを責めることはなかった。
しかし…
「いくらなんでも、ボロすぎるだろ…この剣、戦いにつかえるのか?」
一本の剣の刀身を目にした烈火は、思わずそう声に出してしまう。
そのとき、
「おめえの目は節穴か!? この生意気坊主!」
低く響く声が、烈火の握る剣から聞こえた。
「うおっ! なんだこの剣!? おもしれえ!」
「その剣…インテリジェンスソード?」
ルイズの問いに、武器屋の主人が揉み手をしながら答える。
「へえ、奥様。そいつは意思を持つ魔剣、インテリジェンスソードでさ。
こいつ、やたら口は悪いわ、客にケンカは売るはで閉口してまして…」
「俺、これにする」
店主の言葉を遮り、烈火が宣言した。 ワクワクした顔をしている。
「え〜、これ? もっといいのにしなさいよ」
剣のボロさとうるささに、不満を感じるルイズ。
「いいじゃん。剣が喋るなんて、いかにも魔法っぽくてさ」
烈火が返す。
「俺は花菱烈火だ。よろしくな」
「俺様はデルフリンガーさまだ! …おでれえた、お前、『使い手』か」
「『使い手』?」
「自分の力もわかんねえのか? …ま、いいや。俺を買いな」
「もち」
烈火は満面の笑みで頷き、持っていた財布をルイズに渡す。 渋々ルイズは財布を開けた。
こうして、烈火はデルフリンガーを購入したのだった。
「ちょっと、どういうことよ!」
デルフリンガー購入から数時間後、寮に戻ったルイズと烈火のもとに、キュルケがやってきた。
彼女の親友である小柄で青い髪の少女、タバサも一緒である。
「だから、あの店で一番いい剣を手に入れたから、烈火にはそっち使いなさいって言ってるのよ」
「おあいにくさま。使い魔の使う道具なら間に合ってるの。 ねえ烈火」
烈火はしばらくキュルケが手にいれた剣に夢中になっていたが、やがてそれをキュルケに返した。
「ごめん、キュルケ。悪いけど、俺には姫が買ってくれた剣があるから。…これは受け取れねえよ」
「え〜、どうして? これ、とっつも高価なのよ」
実際には、キュルケが色仕掛けで店主を誘惑し、定価の四分の一ほどで購入したものだったが。
「いや、まあ知ってるけど…やっぱり、君主が買ってくれた剣を使わないと悪いしさ」
ルイズはすごい勢いでニヤニヤした。
キュルケに勝ったうえ、烈火の忠誠の厚さを感じたからである。
「ニヤニヤしないでよ」
「嫉妬はみっともないわよ? ツェルプストー」
ルイズはいつものキュルケの口調を真似ていった。
71 :
使い魔の炎:2008/09/02(火) 22:21:58 ID:ceutXIEt
投下終了です。
あと若獅子の人、夜明けの人、乙です。
新作投下乙です
ここでハンコック召喚
投下乙!
しかし烈火はデルフを武器として使う気になるんだろうか?w
予約は無いですか 無いんですか? 無いと23時25分から始まります
支援 援護 めざめよー
「好きや嫌いじゃない。大王を支援するんだ」byぶるぅぁぁぁぁ
激流に身を任せて支援する
色々とありつつ始まります
とりすていん大王 9回目
「特急、ラ・ロシーェル発、アルビオン行き〜、ラ・ロシーェル発、アルビオン行き〜ご乗船ありがとうございます」
お父さん一行はラ・ロシーェルの桟橋でアルビオン行きの船に乗りました
「やはり飛空船は駅弁だね」
「そうね、ワルド様、あとお茶ですわ」
「駅弁サイコー」
「まぁ タバサったら(ぽっ)」
「ツェルプストー自重しなさい お父様お茶どうぞ」
「ははは(ずずず)」
なんだかんだと一行が呑気にご飯を食べている間に船はアルビオンに到着しました
そして・・・
色々すっとばして舞台はアルビオン城の礼拝堂、お父さん一行はいきなりピンチに見舞われたのです
「ふふふ、そうだ僕はレコン・キスタだ!!」
「ワルド様!!」
「ルイズ、僕と共に行こう」
「ワルド様、頬にご飯粒がついてますわ」
「え?ああ、急に場面が変わるからさ」
ウェールズ王子の胸に杖をつき立てルイズを無理やり小脇に抱えたワルドが勝利の高笑いを響かせます
「はははは、ウェールズ王子の命!!僕の花嫁ルイズ!!そしてアンリエッタの手紙、目的は全て達した!!」
今までの存在感の無さが嘘の様にその存在感をアピールするワルド
お父さんもルイズが人質となっているので動けません
「ははは!!お前らもレコン・キスタに参加すれば命は助かるぞ!!」
その言葉に反応したのは意外にもモンモランシーでした
「ふ、ふざけないでよ!!誰がレコン・キスタなんかに参加するものですか!!」
その言葉を聞いた瞬間にワルドの顔が能面のように感情を無くしました
そして厳かに告げます
「そうか、だったら選べ、今 僕に殺されるかレコン・キスタの兵士に陵辱の限りを尽くされ死ぬか」
ぎりりと歯を強くかみ締める音が二つ、ルイズとモンモランシーの二人です そして・・・
その声はぴたりと重なりました
「「誰があんたの思い通りになるんもんですか!!」」
「なら纏めて死ね!!ライトニング・クラウド!!」
強力な雷撃がモンモランシーを襲います モンモランシーが恐ろしさの余り、目を瞑ったその時、目の前に立つ影がありました
「お、お父様!!」
そうです、お父さんがみんなの前に出て魔法をその身で受けたのです お父さんの所々が黒く焦げ、煙が上がってます
「ふふふ、さすがモンモランシー伯 だが次はどうかな!!」
勝利の美酒に酔いながらワルドがさらにお父さんに向けて一撃を放ちました
「いやぁ!!」
「やめてぇ!!」
モンモランシーやルイズの絶叫が礼拝堂に響きました ですが当のお父さんは何かを確信したように呟いたのです
「・・・きたか」
瞬間、お父さんの眼前の地面が爆発しました そして出てきたのは
「おでれーたー!!俺様 相棒と大とうじょぉーーう!!」
デルフリンガーを持った黒髪の少年でした
「師匠、おくれてすんません!!」
いきなり現れた黒髪の少年なんとデルフリンガーで魔法を吸収してしまいます
「な、なんだと!?うぉおお!?」
いきなりの闖入者にワルドが驚いていると急にワルドの足場が崩れ落ちましたその拍子にルイズを離してしまいました
「し、しまった」
慌ててルイズを捕まえようとしたワルドの前に地面から7体の戦乙女を模した青銅のゴーレムが現れてワルドの邪魔をします
「乙女の心を踏みにじるヤツ・・・」
土煙の中からあの男の声がします
「乙女の夢を壊すヤツ・・・」
段々と薄れていく土煙にあの見覚えのあるシルエットが写ります
「そんな女性の敵は、このギーシュ・ド・グラモン・・・いや」
モンモランシーは高鳴る胸を押さえ、ワルドは薄れゆく土煙を鋭い目つきで睨み、ルイズは不安そうな瞳で見つめ、
キュルケは戸惑い、タバサは無表情ですが素早く次の行動を頭の中で計算し、お父さんは深く頷きました
「新しく生まれ変わったこの僕!!ギーシュ・ザ・グレートが許さない!!」
土煙が晴れたそこには、以前お父さんに(無理やり)修行の旅に連れて行かれて久しい級友、あのギーシュ・ド・グラモンが立っていました
そして彼を見て一同は叫んだのです
「「「「「へ、へ、変態だぁーーー!!」」」」」
ギーシュの姿は筋肉ムキムキの体に青いブーメランパンツ一丁にマントを羽織り、杖と同時に何故かバカみたいにデカい斧をぶら下げてるのですから
「・・・・・・いい」
「へ?タバサ何か言った?」
「ううん」
心なしかワルキューレもアマゾネス化してるような気がします
「な、なんなんだ一体?ぶべらぁ!?」
突然の闖入者たちに放心状態になっていたワルドがいきなり吹っ飛ばされました ふたりに殴られたのです
「いくぞ、サイト!!」
「おう、ギーシュ!!」
さらに二人の闖入者は互いに顔を見ると頷き拳をおもいっきり振り上げました
「「往生せいやぁ!!」」
ガゥワコーンと言う音をたててワルドが吹っ飛んでいきます
「たわらばぁ!!」
奇妙な声を上げてワルドが空の彼方へと飛んで行きました まぁ吹っ飛びながらも
「僕はあきらめないぞー」
とか言ってるので大丈夫でしょう
礼拝堂ではお父さんとモンモランシーの魔法の治療で一命を取り留めたウェールズ王子と城で別れルイズにキュルケとモンモランシー、タバサが
ギーシュが掘った穴を潜り抜けアルビオン城を脱出したのでしたが、何故かこの礼拝堂に残った影が三つ
「さて、ギーシュ、君は逃げなくてよかったのか?」
堂々と仁王立ちで押し寄せてくるレコン・キスタの大群を見つめサイトはにギーシュに問いかけます
「モンモランシーを虐めた奴らを許せはしないな、そういうサイト、君こそウエストウッド村に待ってる人がいるんだろ?」
「あいつらをほおっておくとテファになにするかわからないからな」
お互いの顔を見てにやりと笑うギーシュとサイト、そして
「やぁ、二人とも では殿を務めようか」
お父さんが二人の前に歩み出ると二人は恭しくお父さんに礼をしました
それを見てお父さんは頷くとあらん限りの声でこれからレコン・キスタの大群相手に始まる大活劇の為に気を入れたのです
「ぶるうううああああああああああああああああああ!!」
続く
投下終了!! 何?ギーシュの格好はコナン・ザ・グレートじゃなくてゴールデンアックスじゃないかと?
そんな事はたぶん無い と思わない
船 名 目的地 出発時刻 備 考 搭乗口
|マリー・ガラント| アルビオン | 1 2 : 0 0 |搭乗手続中| 5|
<ピンポンパンポーン>
<12時ちょうど発、マリー・ガラント号、アルビオン行きは まもなく 搭乗手続を締め切らせていただきます>
<マリー・ガラント号で、アルビオンへご出発のお客様は お急ぎ 5番搭乗口まで お越しください>
特急なのに、フネなのに空港風の光景が浮かんでしまったどうしてくれる乙
烈火乙
そらキュルケも盛り上がるわなw
とりすていん乙
ギーシュよ…お前は俺を笑い殺す気かwww麦茶返せwwww
変態GJ
85 :
虚無に響く山彦:2008/09/03(水) 00:08:55 ID:zY9iNJuy
昨日に続いて後編を投下させて貰います
あと前スレで支援レス、感想レスを書いて下さった方々に感謝
ゼロ魔と忍法帖を傍らに、七転八倒して書いた甲斐があるというものです
空には双月と無数の綺羅星が瞬いていた。
天草扇千代の忍者眼は、闇と星影が紗のように重なる草原を進むアルビオン軍をはたと見据えている。
彼は予定より早く着いたのだがアルビオン軍の足並みは異常に早く、丘の直前まで来ていたのだ。
追撃の勢いもそのままにロサイスになだれ込むつもりなのだろう。
これほどの軍勢を見るのは幼き日、島原の乱のおりに天草党の者に連れられて遠目に見た征討軍以来である。
ただし、かつて見た征討軍は天草党が力を貸すいわば味方であったのに対して、眼前のアルビオン軍は全て敵である。
「風は蕭々として易水さむし。壮士ひとたび去ってまたかえらず・・・か」
「どうした相棒、いきなり詩なんて吟じて。詩情が首をもたげるような状況じゃないと思うんだがな」
「なに、おれのいた世界の詩だ。意味は・・・責任を果たすまで帰らないだったかな」
「責任って荷が勝ち過ぎやしねえか?これは確実に死ぬぜ。一度拾った命なら嬢ちゃんの言うように逃げた方がいいと思うがねえ。
そもそも相棒はなんで嬢ちゃんに従うんだよ」
デルフリンガーの言葉に扇千代は忽然と黙した。
慶安三年の長崎、扇千代は断末魔の一念を乗せた忍法山彦によって最後の敵マリア天姫を討ち果たした。
五感が消滅し、視界が暗転する。己の配下達もこのような道を辿ったのかと考えつつ、彼の意識は深淵に落ちていった。
扇千代は悔いていた。本来、彼は天草家再興に際して頭首となるべき立場にあった。
しかし、彼が徹底してそれを意識していたかというと微妙なところがある。
伊賀山中から彼が出たのは天草党遺臣の計らいによるもの。
秘宝奪還の命にしても自重すべき彼が突出して忍法の要であった目を塞がれ、みすみす一党の者を死なすことになったのではないか。
そもそも扇千代と長崎の秘命に赴いた天草党の十四人の関係は、主家再興の悲願による繋がりだけではない。
任務の間は上下関係こそあるが、彼らは扇千代と肩を並べ笑いあう兄弟であり、また扇千代の成長を楽しみにする保護者でもあった。
彼らは皆、主家再興の任を越えたところで扇千代が頭首となることを願っていたのだ。
しかし彼らは皆死に、彼らの想いを受けた扇千代も志半ばで死んだ。
そして彼らの想いを察することができず、また答えられなかった不甲斐ない自分自身に、扇千代は絶望していた。
──めんない様──
ああそうだ、おれは全くの盲だった。ミカエル助蔵に両眼を縫い付けられる前から既に分際わきまえぬ盲人だったのだ。
扇千代は願った。彼が再び道を進むのではない、己の道を進む"誰か"の手助けをしたい、それだけだった。
その瞬間彼の意識は白熱する渦に巻き込まれた。
目覚めた時、扇千代は春風が渡る大地に横たわっていた。目の前には異様な姿の少女が立っている。
「何であんたなのよ・・・」
陰にこもった呟きを一つ漏らした後、少女はいきなり扇千代の唇を奪った。
ここに『契約』は結ばれ、天草扇千代は新たな道の始発点に立った。
扇千代は困惑した。
別に日常の雑用やハルケギニア──文化の違いや魔法の概念には驚いたが、彼はすぐに順応した──のことではない、
メイジにしても杖か詠唱の時間が弱点であると知るに及んで対処は考え済みであった。
困惑の種はルイズのことだ。
己の主人となったこの少女は、扇千代にまるで心を開かなかった。
まあ、堅牢な主従関係に阻まれてお互いに腹を割って話すことが無かったのだから仕様がないことではあったが。
決闘後の詰問に対する沈黙にしても、己の秘事を会って間もない正体のわからぬ相手に打ち明けるというのが、
忍者である扇千代にとって二の足を踏ませる大難事だったのだ。
この難事に比べたら、ギーシュ等学院の木っ端メイジとの戦いなど路傍の小石を蹴るより容易いことであった。
だが、懊悩も長くは続かなかった。それはフーケの土ゴーレムからルイズを救い出した時のことである。
「敵に背を向けるのも立派な戦術の一つですぞ、ルイズ殿」
「わたしは貴族よ。魔法を使える者を、貴族と呼ぶんじゃないわ。敵に後ろを見せない者を、貴族と呼ぶのよ!」
涙に濡れた瞳を扇千代に向けてルイズは言った。
その言葉に扇千代は彼女の心の一端を垣間見、己の迂闊さを実感した。彼はルイズが目指すものを探ろうとして、彼女に接していた。
しかしこの世に時や感情の変化を受けずに、確たる姿を保ち続ける目標を見出すことができるものが何人いるだろうか。
そもそも人の願いは変わるものではないか、重要なのは今の場所から先を見据える心ではないか?
眼前の少女は、覚束ないところがあるが確かに前を見ている。
菩薩か天魔か、はたまた切支丹の天帝かは知らぬが何者かが闇中の願いを聞き届けていたのだろうか・・・
扇千代は心を決めた。おれはこの少女の前に立って、彼女の見据える先への露払いとなってみせると。
「ルイズ殿、今より我が忍法の一端をあなたにお見せ仕る」
彼は新たなる人生に真の意味で足を踏み出した。
とりすていん大王・・・
この読了感は今週のコードギアス視聴後と同じだ(褒めてます)
紆余曲折を経てルイズが虚無の担い手であることが判明した時、扇千代は半ば喜び半ば恐怖した。
自分とルイズの関係に、秘命に従う配下と自分の姿が重なったのだ。そしてこれは杞憂として終わらなかった。
アルビオン侵攻の途上、参謀部の指示で"虚無"の魔法を使い疲弊するルイズの姿は松平伊豆守の任を受ける扇千代に似ていた。
彼女は道具として扱われながら、かつての自分のようにその立場に疑問を持たなかった。
決定的な違いは配下に当たる扇千代自身が手助けできないこと。それは一つの破滅的な影を彼の思考の角に投げかけた。
ルイズに決死の任務が降りた際どうなるか。答えは、任務に対処できる彼女だけが死地に赴くことになる。
しかも彼女の性格上、扇千代を置いて行こうとするだろう。
扇千代は苦悩した。彼女の身に降りかかる悲劇を看過するしかない状況を思い浮かべてである。
ここに来て彼は前世に一脈相通ずる状況に立たされたのだ、主を守らんとする配下として。
そして突然の反乱でロサイスに退却した連合軍の陣中で悪夢は実現する。
ルイズに敵軍を一人で食い止める旨の命令が申し渡されたのだ。
逃げるよう促すルイズの言葉を聞きながら、扇千代は覚悟を決めた。掌中にシエスタから貰った眠り薬の小壜が妖しく光る。
数分後、柔らかな寝息を立ててまどろむルイズをジュリオに預け、彼はロサイスを発った。
昼の緩やかな斜陽の中、背に長剣を担ぎ腰に細身の刀を差して馬を駆る彼の姿は、人ならぬ魔人のごとき凄惨の気に満ちていた。
「おいおい、ぼんやりするなよ相棒。これから万単位の軍に喧嘩売るってのによ」
「わかっている。それともう喋るな、これから闇に潜む」
デルフリンガーを鞘に収めると、馬上の扇千代の輪郭が闇にぼやけ始め、零れるような星月夜の空に消失した。
前衛の捜索騎兵隊は一頭の馬が駆けて来るのを見つけた。
いぶかしんでそれを止めようとした一人の騎兵の首が飛んだ。中天にかかる星だけが馬下から噴き出した一刀の軌跡を見ていた。
身構える間もなく他の騎兵達も首を飛ばされ、夜闇を裂いて飛来した物に顔と喉を潰されていく。
後続の銃兵達が異常に気付いた頃には、銃兵を率いる士官の首が無くなっていた。
慄然たることに上空の使い魔群も、竜騎士達も接近する者の姿を見とめられなかったのだ。
そこからはまさに魔界の風景であった。それぞれの隊の隊長や指揮官は前線から順番に首を飛ばされていく。
更に死の風は兵卒達の頭上にも吹きすさんだ。一颯の微風を知覚した瞬間、兵士の首が落花の如く地に転がる
犠牲者の血飛沫を受けた兵士が叫びを上げる。叫びは叫びを引き連れ、指揮官の首が飛び兵卒が倒れるごとに狂乱は勢いを増していった。
それは潜む者にとって活動し易い状況を造りだす。兵の垣根の間を雲煙の如くすり抜ける扇千代は着々と後軍に歩を進め、目ぼしい相手を斬り倒す。
途中彼に気付いた兵もいたが、尽く剣刃の露に消えた。
希に打ち掛かる者がいて彼にかすり傷を与えたが、その痛みは忍法山彦によって四方八方に散り同士討ちの火種となった
度重なる叫喚と血飛沫の火に炙られて戦陣は疑心と恐怖の熱泡に滾る。
忍法山彦の一石が投じられるところ同士討ちの波濤がうねり、空にかかる銀河図に新たな血煙をしぶかせた。
扇千代自身が手を下した犠牲者は全体から見れば微々たるものだが、それらが前軍の兵士達に投げかけた動揺は凄まじかった。
陣容は散乱し、流言が往来して命令系統は寸断され錯乱した兵士が後軍にかけこむ。
退却の合図が無いものだから、後軍の方は逃走兵を迎え撃ち再び血が飛ぶ。
ここに来てやっと竜騎兵が、方々に駆け回る兵の中でよどみなく後軍に向かう異形の男を見つけた。
苦心して生み出した混乱が彼自身を炙りだしてしまったのだ。
中空より飛来する風刃や火球をデルフで受けつつ、扇千代は懐に手を入れた。
編隊の合図を出そうとした騎士隊長の顔に唸りを立てて黒い閃光が叩き込まれ、刹那に血と脳漿を巻き上げる。
マキビシである。ガンダールヴの力を以って投じられたこの鉄金具は、いまやハルケギニアの銃以上の威力を誇る。
疾駆しつつ彼は両手にマキビシを握った。後軍の整然とした隊列に向けて灼金の尾を引いて無数のマキビシが飛ぶ。
仰け反った兵達を飛び越え様に、扇千代はデルフリンガーと刀を抜いた。
兵士の骨肉を断ちながら空を滑る双刀は、月光の中に黒血の虹を幾重にも描いていく。
しかし整然と動く兵士が繰り出す刀槍に扇千代は次第に傷つき、飛来する魔法の余波が四肢を苛む。
命を落とさずにすんだのは、山彦によって生まれた激痛の感応が対手に追撃の暇を与えなかったからだ。
満身を朱に染めた扇千代は敵に斬られ、また斬り倒して進行する。そして彼はメイジの一団を見止めた。
「相棒、きっとあれが本営だ!あれを潰せば勝てるぞ!」
「心得たり!」
デルフリンガーを持ち直し血脂にまみれてささらになった長刀を捨て、扇千代は懐中から残りのマキビシを取り裂帛の気合と共に投じる。
兵士が喉や顔面を潰されて次々に倒れた。陣形に生じた間隙をすり抜け、一気に歩を詰める。
体に魔法の矢が次々と突き立つが、返った山彦に射手や周辺の兵士が体を強張らせる。
歯を食いしばって駆ける彼の耳に鉄板を叩く様な音が響き、扇千代は地に伏した。弾丸に腿を撃ち抜かれたのだ。
自分を中心とした兵士の輪がじりじりと狭まる。二十歩ほど先には将軍らしき人物の顔が見えた。
マキビシが一つでも残っていれば討てたであろうが、無いものはしかたがない。
おれが最後に使うは剣術でも忍術でもない、永き如法闇夜の果てより生じた忍法だ。
扇千代はきゅっと笑みを浮かべた。
「天草家の祖霊よ、マリア天姫よ。魔天より照覧あれ、伊賀忍法。──」
不穏な気配を感じたメイジ達が杖を向けるが、遅すぎた。
「山彦!」
ひっ裂けるような叫びが夜気にこだました。扇千代の背に死の影が魔炎の如く燃え上がる。
彼は忍法山彦と言ったが真に行使したのは"自縛心の術"。敵に捕えられた時、忍者が自らの拍動を止めて命を絶つ術である。
殺気の暴風が渦巻く原野、必殺の静止を孕んだ山彦は虚空を天翔て百メイル圏内の一切の生命の下に打ちなびき、その尽くを喪神せしめた。
アルビオン軍がロサイスに至ったのは連合軍が退却してから丸一日以上経ってからである。
前軍の壊乱に重ねて、多数の指揮官が死にホーキンス将軍が半日に及ぶ昏睡状態に陥った為だ。
何より兵士の心頭には、混乱を巻き起こした後日なたの淡雪のように陣中から消え去ってしまった異形の剣士の影が
夢魔のように根付き、その士気を削ぎ落としたが故の結果である。
時おかずしてアルビオン軍もガリアの艦隊によって微塵に粉砕されたが、剣士の噂は市井に残った。
戦争の終結から一月ほど経ったある日、温かな風に満ちた街道を一人と一振りが談笑しつつ歩いていく。
「相棒ってさ、考えてるようで考えてないところがあるよな。あのまま気絶してたら、他の兵士にやられてたぜ」
「お前を信用していただけだ」
「ハハッ、照れるねえ。しかしよ、いつか相棒は死ぬのが仕事と言わなかったか?」
「ルイズ殿はおれに逃げろと言った。主の言葉通りに動くのが使い魔の役目だろう」
扇千代は死ななかった。自縛心の術は一分程拍動を停止するに止まり、彼を死には至らせなかったのだ。
忍者としての矜持があれば、およそ考えつかぬ法である。
ただし、失神した彼をデルフリンガーが動かして逃走しなかったら山彦の圏外にいた兵士に止めを刺されていただろうから、
もしかしたら本当に死ぬつもりだったのかもしれないが。
「それにしてもハーフエルフの嬢ちゃんのところで笑ってた相棒の姿は凄かったな。
傍から見てて、この間まで仏頂面が基本だったやつとはとても思えなかったね」
「剣が笑う世界で人間様が笑わぬ道理があるか?」
「違いねえや」
二者の笑いは空を渡る。扇千代が向かう先はトリステインの魔法学院、彼の主が待つ場所である。
──天姫よ、いま少し魔天に待っておれ。おれにはまだ帰る場所があるのだ──
「・・・チヨ!」
刹那の思案を破って、懐かしい声が聞こえた。
「センチヨ!」
街道の向こうから、髪をなびかせて二人の少女が走って来るのを扇千代は見た。
扇千代は破顔するとともに、伊賀鍔隠れの師の言葉を思い出した。
山彦はその響きを待つ者がいるからこそ存在するのだ、と。
これにて終了です
前回の解説で書き漏らしましたが、盲目になった扇千代は忍法山彦は作中で進化させて
念力だけで不可視の相手や複数の相手に感覚の感応効果を与えられるようになります
前スレの残り具合が少し気になりますね。
それはさておき、プロットがある程度できたので続きを書きましたよ。
とりあえず1時から、投下の予定。
しえん
トリステイン王軍は、空軍を除き、常設2個旅団で形成される。
第一旅団は貴族子弟の憧れたる魔法衛士大隊を擁する幻獣騎兵科であり、近衛任務もここに含まれる。
第二旅団は各種歩兵を纏めた緒歩兵大隊で作られている。
さて、所謂弱小貴族が出世する為には文官より武官を選んだ方が早い、というのは異界の黄金獅子な銀河帝国皇帝も選んだとおりであり、その目指す先の多くが
先述の魔法衛士大隊を始めとする幻獣騎兵科を選ぶ。
斯く有名たる魔法衛士大隊であるが、その起源は実のところ、国内で賄える竜騎兵に供する風竜火竜が足らなかったところから来ており、ゆえに
隣国ゲルマニアを始め、諸外国では同じような兵科はあまり見られない。
例えば魔法衛士大隊の場合、三種の幻獣による三つの中隊から成る。一つは9頭のグリフィンからなるグリフィン中隊。15頭のマンティコアからなるマンティコア中隊。
21頭のピポグリフからなるピポグリフ中隊、と言った具合。
グリフィンは高度と速度で風竜と伍するものの航続距離に欠け、マンティコアは運動性と高度で劣るものの、高い戦闘能力がある。
ピポグリフはマンティコアよりも高い高度を飛び、グリフィンよりも長い距離を駆けるが、純粋な戦闘能力でいえば低い。代わりに、扱いやすく数が比較的揃えやすい。
以上のように、華やかたる古国トリステインの、華やかたる兵士たちにも、国柄からくるさまざまな事情があった。
その日、王都トリスタニア郊外に作られし王宮を警備していたのはマンティコア中隊だった。
騎兵による見回りといっても、今は一応平時である。幻獣付きの騎兵が一人、付き添いの兵士が一人か二人。それを一班として、王宮の各位置に配していた。
そんな中、上空より風を切る青い物体が遠くより迫るのを、ある騎兵が駆るマンティコアは捉えた。
騎兵がそれを認識した時、既にその青い物体は目の前を過ぎ去り、王宮の中央部を吹き抜ける中庭に落ち、着陸していた。
マンティコア騎兵は降り立った青い影――それは風竜の幼生体だった――を確認するや、持ち場から跳ねるように離れ、中庭を埋めるように包囲した。
謎の侵入者たる風竜は、数人の人影を背に乗せている。
「杖を捨てろ!」
騎兵達は軍杖を抜き、その先を人影に向けていた。
人影たちは総勢4人。年端も行かない婦女子が三人、血で汚れた服を着た男が一人だ。
男と婦女子のうち二人は、手に持っていた剣と杖を手元から話したが、一人、目立つチェリーブロンドの少女は、騎兵達の前に一歩進み出る。
「アンリエッタ王女殿下より密命を受けて参上した、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールでございます。急ぎ殿下へお取次ぎを願います」
『無垢なる過失は罪か、それとも罰か』
支援
「なに、ラ・ヴァリエールとな」
毅然と言い放ったルイズの前に、一人の男性が現れた。彼もまた、周りの騎兵と同じくマンティコアにまたがっているが、周囲のそれよりも
マンティコアは一回りほど大きく、また男自身の格好も派手なものになっていた。
この男、マンティコア中隊を預かるド・ゼッサールという。彼は上から下までルイズの姿をよく見てから、こう言った。
「卿がラ・ヴァリエールの者であることを証明できる品はあるかね」
言われたルイズは思ってもみなかったのだろう。ほんのわずかだが、たじろいだ。
「そ、それは…」
そのわずかな挙動をド・ゼッサールは見逃さなかった。
「この者らを捕縛せよ」
隊長の号令があった以上部下は即座に反応し、一度は下げた杖を再び構えて飛びかかろうとした、その時。
「待ちたまえ。マンティコア中隊長殿」
ド・ゼッサールの背後より声が掛かった。
「マザリーニ枢機卿か…」
振り向けば法衣に丸帽子を被ったこの国の宰相を務めるマザリーニが立っている。
「彼女は間違いなく、ラ・ヴァリエール公の息女であるよ。私が証明する」
「……左様でございますか」
ド・ゼッサールは手を振って部下を下がらせると、マザリーニに一礼してその場を後にした。
何が何やらわからないルイズたちに、マザリーニは近寄る。その姿は遠景から見た以上に……小さかった。
「殿下からの密命、であったな。道すがら教えてくれるかね?ミス・ヴァリエール」
アンリエッタはその日も、王女の執務室兼謁見室で、回されてきた書類の代理決裁をしていた。
次から次へと持ち込まれる書面を眺めて、アンリエッタはいい加減うんざりしていた。
やれ、鉄砲水で流れた橋の掛けなおし費用に関して、だの。王室所有の田園の整備費用について、だの。
各種の役人が既に是非を半ば決めてしまっている事柄に只判をつけて行くだけのような時間に感じられていた。
それよりもアルビオンへと使わしたルイズやウェールズ王太子の方が気がかりで仕方がなかった。
暫くして、マザリーニ枢機卿が部屋に来た。恭しく丸帽子を傾ける。
「殿下。ラ・ヴァリエール三女ルイズ・フランソワーズが謁見を希望しております」
それを聞くや、アンリエッタの心は躍った。
ああ、ついに待ち望んでいたものが来たわ!
しかしアンリエッタは、そんな思いを彼女なりに懸命に隠し、枢機卿に向かった。
「そうですか。ではここへ。…ただし枢機卿。貴方にも席を外していただきたいのです」
「なりませぬ」
その一言にアンリエッタの顔が固まった。対する枢機卿のは目を伏せ気味に、しかしよく聞こえる声で朗々と話し始めた。
「聞けば殿下より密命を受けたとのこと。しかし私めの知る限り、左様なものは存じませぬ」
「当然です。わたくしの判断でルイズに、ミス・ヴァリエールに託したのですから」
アンリエッタはマザリーニがはっきり言って嫌いだった。もって回った言い方、歯に衣着せぬ讒言、どれもがちくちくと茨を巻いた様であったから。
「アルビオン内乱の杞憂、ゲルマニアとの婚儀を前に、王族とはいえ無用の動きは慎んでもらわねばなりません」
「無用ではございませんわ。密命はゲルマニアとの婚儀を滞りなく薦めるためのものですから」
「ほぅ…それは、それは」
その言葉にマザリーニは確かに、うっすらと笑う。
「であるなら、もったいなくもトリステインの宰相に任じられたる、この私めにもその密命、拝聴する権利があるかと、思われますが…違いますかな」
しまった、とアンリエッタは奥歯を噛む。
「違いますかな」
押すようなマザリーニの声は、堂の入った政治家らしい迫力でアンリエッタに迫る。
「…道理と、思いますわ」
その迫力にアンリエッタは負けた。単純な力の差であった。
「では、失礼ながらお傍にて、密命のご報告を聞かせていただきますぞ」
そういうとマザリーニは粛々と執務室の一角に身を寄せ、まるで置物のように静かになった。
支援する!
衛兵に呼ばれ、ルイズは謁見室へ入った。傍に立つギュスターヴも同じく、入室を許可された。
「ただいま帰参してございます。姫殿下」
「無事帰参の報を聞けて何よりよ。ルイズ・フランソワーズ」
席上君主と臣下の礼節を守る二人である。
「では、手紙をこちらに」
角盆に乗せられた手紙がアンリエッタの元へ渡された。
「手紙を回収できたということは、ウェールズ王太子とも会うことが出来たとみてよろしいですね」
「はい」
「出来れば聞かせて頂戴。かのお方がどうしているのか」
ルイズは語る。アルビオンに渡った時点で王党軍は消滅寸前だった事。王党軍の作戦中に巻き込まれる形で偶然接触できた事。
「それほどまでに、アルビオンの王軍は衰退していたのですね」
まるで他人事のように言うアンリエッタが、わずかにギュスターヴの神経を撫でた。
「それで、その後はどうなったのです」
「それについては…このギュスターヴめが詳しく話します」
ルイズは少し顔を曇らせる。対してギュスターヴは一歩前にでて毅然として礼をした。
(ほぅ…)
傍で聞いていたマザリーニの目が光る。
「アルビオン軍と接触の後の事を話す前に、一つ確認したい事があります」
数日前にルイズの部屋で会った時も殆ど話さなかったこの男は、何等アンリエッタに気負う素振りも見せずに話しかける。
「なんでしょうか」
「殿下は今回の密命に際し、ワルドと名乗る者を遣わし、いくつかの品を我々に届けさせたのは殿下自身の御命によってでしょうか」
「はい。確かに私はグリフィン中隊長ワルド子爵に密命を滞りなく進める為、手紙と指輪を預け、それを届けた後は貴方達の護衛を勤めるように命じました」
秘かに緊張が走る。マザリーニは一瞬、身体を竦ませ、ルイズもピクリと動く。ギュスターヴは、ほんのわずかに頷くだけだった。
「…お答えしていただき、感謝します」
「よしなに」
そしてギュスターヴは語った。アルビオンを脱出する為に、王太子が避難船に席を取ってくれた事。玉砕する王軍を言祝ぐために
ワルドとルイズが結婚式を挙げようとした事。
「そういえば、かの方とは婚約者でしたね」
「…はい」
ルイズの返事は沈んでいたのに、アンリエッタの言葉はどこか浮ついていたように聞こえた。
「…私は万一のためにウェールズ殿下の協力の下、結婚式の会場である礼拝堂に身を隠しておりました。しかし私の主人は心思うところにおいて婚儀を中断し、
その場での結婚を拒絶しました」
「…そう」
「その時、ワルド子爵は豹変し、媒酌のウェールズ殿下ともども主人に杖を向け襲いかかろうとしました。私は隠し身を暴き二方を守る為に剣を取りましたが、
子爵を遺憾ながら取り逃がし、ウェールズ殿下も深手を負われていました」
「!!」
再び走る緊張。今度はアンリエッタが衝撃を受け、マザリーニは静かに首肯した。
「子爵は主人と、手紙と、ウェールズ殿下の御首を持ってレコン・キスタへ参画する予定であった旨をその場で告白したのです」
「そんな…子爵が…裏切り者だったなんて……」
学院への道中の折、恭しげに頭垂れていた姿がアンリエッタの脳裏に挿す。
「私は気を失っていた主人を運び、隠し港に残されたボートでその場を脱出し、アルビオンの浮力圏から降りる中で主人のご学友に助け出されました。そして今に至ります」
「そうですか…」
顔を伏せるアンリエッタ
「ウェールズ殿下は最後に傷ついた身体を推して戦場に向かわれました。殿下より言葉を預かっております」
「…あの人は何と」
「『強く生きろ』と。それと…」
懐を探って『風のルビー』を取り出す。
「この指輪を授けてくれました。私より殿下が持つべきものと思います」
『風のルビー』は手紙と同じように盆に乗せられて、アンリエッタに運ばれた。
「ルイズ…」
「はい」
「あの方は、私のしたためた手紙を読んでくれましたか」
「私の前で封を開け目を通しました」
「そう…」
アンリエッタの心が、暗く濃く沈んでいく。
あの人は私の手紙を見ても、亡命して、生きながらえて欲しいと言っても、首を振らなかった。
その事実が胸を重くするようだった。
「……姫様」
「…なんでしょう」
「お預かりした指輪を返却したいと思います。ウェールズ殿下のお言葉ではこれはトリステインの秘法『水のルビー』であるとの事。いやしくも私のようなものが
持ち続けるのは不敬と思いますゆえ」
言ってルイズが取り出すのは正真正銘『水のルビー』である。
これにはマザリーニ只一人が衝撃を受けた。目を見開き、唖然としている。
アンリエッタは伏せ気味に手を振って答えた。
「いいえルイズ。それは貴方が持っていなさい」
「しかし」
「…ラ・ヴァリエール家は王家庶子を開祖とする名門中の名門です。始祖より続く秘宝を預からせるに足る家だと私は考えます」
「……謹んで、拝領させていただきます」
ルイズがルビーをしまい、場を一礼して退室の許可をもらおうとした時。
「あいや。失礼ながら、私めに発言の機会を下さりませぬかな、殿下」
脇で静かに聴いていたはずのマザリーニが歩み出た。
「……なんでしょうか。枢機卿」
「殿下がこのたび、ラ・ヴァリエール嬢を使わした経緯、このマザリーニも納得のいたすところにございます」
「それは結構です」
「ですが、いくつか得心しかねる点がございます」
「……それはなんでしょうか」
「まず一つ。衛士大隊の中隊長格の将兵を独断で動かされた件。もう一つは王宮で管理している秘宝を無断で動かし、あまつさえ
臣下に下賜されようとした件についてでございます」
瞬間に、ルイズの肩身が居竦む。
「ワルド子爵めが貴族派のシンパであり、ウェールズ殿下を暗殺せしめんとした事はこの際捨て置いて考えていただかれますかな」
「捨て置け…と……」
捨て置け。
私が愛したあの人を殺した、その事実を捨て置けと。
マザリーニの淡々とした言葉にアンリエッタは言葉が出ない。
「大隊小隊長格以上の指揮官将兵は、一時的に隊を離脱する場合、戦時でないかぎりその日時、理由、そして事後報告をした書面を提出する事になっております。
密命など特殊な任務を帯びた場合もそれらを証明する署名がいるのです。それらを用意できますかな、殿下」
ぎり、と歯を噛む音がギュスターヴの耳に聞こえた。
「もう一つ、秘宝を動かすに際しても、それらを監督するものがおります。下賜されるのであれば、その旨を各種庁に際し通達する文書をお書きして頂かねばなりません」
ぎりり、と今度はルイズにも音が聞こえた。
「以上の点につきまして、後に殿下に深くお話させていただきたく思います」
臆面もなく、マザリーニは滔々と話したかと思うと、アンリエッタの言葉を待つように静かになった。
「………いいでしょう。何一つするにも書面がいるというのであれば、いくらでも用意しましょう」
声の端が上がっているアンリエッタの精神は炎が吹き出そうなほど憤りを上げていた。
アンリエッタとマザリーニのやり取りをぴりぴりとした中で聞いていたギュスターヴとルイズである。
ギュスターヴはともかく、ルイズはその空気で身体に穴が開きそうだった。
「…ですが、水のルビーの件についてはこの場で下賜させます。書類の記載事項については追って官庁に知らせます。それでよいでしょう?」
「殿下がそうなさるのであれば、私は何も」
しれっと言い放つマザリーニに苛立たしげな顔を見せてやりたかったが、アンリエッタはルイズの手前、それを繕った。
「……ごめんなさいなルイズ。今日はこれで」
「あ……はい。謁見を許していただき、有難うございました」
ギュスターヴとルイズの謁見は、こうして終了した。
支援
支援
支援
待合室で待っていた二人と合流し、王宮の外で待たせていたシルフィードに乗って学院へ帰る運びとなった。
ルイズは指にはめた『水のルビー』を、指先で撫でていた。
「ねぇ、ルイズ」
「…何よ」
キュルケの問いかけにもルイズはどこかぼんやりと答える。この様子では話をまともに聞きそうにない、とキュルケは思った。
「……なんでもないわ」
「何よ、もったいぶって」
「なんでもないわよ」
「言いなさいよ」
ふぅ、とため息を吐き、キュルケはゆっくりと話し始めた。
「…もし、ゲルマニアの皇帝がアンリエッタ王女を愛するつもりが無いとしたらどうする?」
「へ?」
何を言い出すのか、とルイズは思った。
「ゲルマニアにとってね。今回の婚約と結婚っていうのは単に軍事協約と始祖の権威を分けてもらうだけの話じゃないのよ」
「何よ、それ……」
「例えばね。ゲルマニアの商工ギルドや金融ギルドに、トリステインの貴族はたくさん、借金をしているの。知ってる?」
「まぁ、少しは……」
「そういうところはね、今回の婚約と協約で二国間の親密度が上がると仕事がしやすくなるの。トリステインは国土は狭いけど、まだ手付かずの資産がいっぱいある。
なんて考えている連中も少なくないわ」
「…」
ルイズのまるで与り知らぬ話ばかりであった。
「他にもあるわよ。今のゲルマニアの皇帝一族って精々5代、6代くらいまではゲルマニアの中の一領主でしかなかった。そこで今回の協約が成功すれば、
始祖の時代から続く国一つを味方に出来るわね」
キュルケの語る話は、何処までも生臭い。どこか迂遠な言い回しが鼻についた。
「さっきから何が言いたいわけ?」
「…ゲルマニア皇帝とアンリエッタ王女の婚儀は『確実に』成功するわ。だってその方が利益になるもの。国と国との間のやり取りで
人一人の思いを汲み取りあっていたらきりがないわ」
ざわり、とルイズの肌を何かが駆け抜けた。
「キュルケ…何で手紙のこと……」
「ちょうど聞いちゃってたのよねぇ。ごめんなさいな」
しかし口とは裏腹に、キュルケは悪びれもしない。
「でもあの時姫殿下は」
「手紙を取り返して、と言った?」
「!!」
ルイズの顔が凍りつく。
あの時アンリエッタ殿下は『どうしよう』とは言ったが、『どうかしてくれ』とは言わなかった。アルビオンまで行ったのは、あくまでルイズの申し出があったからに過ぎない。
さらにキュルケが続けようとしたが、ギュスターヴはそれを止めた。
「やめておけ、キュルケ」
「ギュス」
ギュスターヴのその、ルイズを慮るような仕草が神経を逆撫でた。
「…なによ、何よ。なによ!二人して!私は友達の手紙を返してもらいに行っただけよ!」
「そんな詭弁は無理」
差し込むようにタバサがぽつりと言った。
「貴女は、王女の政治的瑕疵を繕う為に動いた」
「タバサ、あんた…」
たじろぐルイズ。タバサも手紙の一軒を知っているのだと気付いた。
「それに、王女が思っているより瑕はずっと浅い。これは事実」
「うぅっ」
「そういうことを教えてあげるのが本当の友人だと、私は思う」
「……」
ルイズはもう、言葉が出なかった。『お前の行動は無駄骨だった』と言われた方がどれだけ楽だろうか。
支援
「…ギュス、ターヴ」
「…なんだ」
搾り出した声を向けたのは、傍らの使い魔だった。
「キュルケや、タバサのいうこと…全部知ってたの……始めから、アルビオンに入る前から、姫殿下の手紙を回収するのが目的だって知ってたの」
「…ああ」
ルイズの震える声は風竜の上を流れていく。
「手紙一つじゃ、婚約が崩れたりしないって、判ってて、それでも着いて来たの」
「……ああ」
くわっと目を見開いたルイズの拳が、ギュスターヴの胸を撃った。
「バカァ!」
バシバシとルイズの小さな両拳が叩きつけられる。ギュスターヴはそれを身じろぎもせず受け止めた。
「バカバカバカバカ、あんた大バカよ!情けでもかけたつもり?!」
「そんなつもりはない」
はっきりと、ギュスターヴが答える。
「なら、どんなつもりよ」
「……アルビオンという国を見てみたかった。この目で」
「…それだけ?」
「それだけさ。一応、お前の使い魔ということにもなっているし」
「……バカね。本当に…本当に…」
ギュスターヴの胸を撃ちながら、ルイズは俯き、嗚咽する。
「本当の馬鹿は……私よ…」
ルイズの思いを無視して、シルフィードは一路、魔法学院へ向かうのだった。
支援
支援
投下終了。
ぇー、バックナンバーを読んでもらうと判るかと思いますが、SSを書くにあたりかなり意図的に設定を作っています(魔法衛士のくだりとか、ね)
もうね、そのあたりが顰蹙買わないかとびくびくものですよ。
現在プロットがタルブ村イベント(原作でゼロ戦をもらうあたり)まで出来ているので、暫くはコンスタントに投下できるかと思います。
では。
鋼乙
設定については気にならないのでおkです。
次回にwktk。
鋼の人乙。
さて、忘れた頃にやってくるさあう"ぁんといろいろです。
今回は本当に忘れられてるような気もするけど・・・
夏休みには投下したかったんだけど、まぁ夏休みなんてなかったからしょうがないよね!
ってことで予約がなければ三分後に投下。
男が一人、物思いにふけっている。
手の中のものを見つめ、ただ無言でたたずんでいる。
「それは誰だ。恋人か?」
突然声をかけられ、男はやや驚いたようであった。
「貴様か。脅かすな」
「お前が気付かないのが悪い。で、誰なのだ? 随分綺麗な御婦人ではないか」
空気の動きにも気付かぬほど没入していたらしい。舌打ちを一つして男は答えた。
「母だ」
「母親? 意外だな。乳離れできないネンネだったか?」
「兄離れの出来ぬ貴様に言われたくはない」
くく、と声の主は笑ったようであった。
「かもしれぬな。まぁ、何かに入れ込み過ぎると大方ろくな事が無い。お前も程々にしておくのだな」
それには答えず、男はロケットの蓋を閉じた。
再び笑みを漏らし、闖入者はきびすを返した。目深にかぶったフードがかすかに揺れる。
この場にアニエスがいれば、先日武器屋の裏手で出会った人物だと分かったろう。
「どこへ行く?」
「どうも例の傭兵が失敗したらしいのでな。その尻拭いだ」
そのまま足音を立てずにフードの影は去ってゆく。
今度こそ気配が消えた事を確認し、男は一人ごちた。
「どちらにせよもう遅い、遅いのだ・・・」
その手元には何枚かの羊皮紙を束にしたものがあった。
そこに書かれているのはショウたちの戦闘の記録。
「勝てん・・・今の俺では勝てん!」
呻き声がその喉から洩れた。
風は最強。それが彼、ワルドの揺らがぬ信念であった。
机上の空論ではない。技を磨き、実戦を積み重ねた上での信念である。
風は攻撃と防御を兼ね備え、なおかつその速さは他の系統に一歩抜きん出る。どれか一つに優れているから最強なのではない。不得手が無いからこそ風は最強なのだ。
火は攻撃一辺倒であり、土は速度と機動力に大きく劣る。水は元より戦闘向きではない。攻撃力で火に劣り、質量と防御力で土に劣るとしても、それらの弱点を突ける戦闘巧者が用いるなら、風に勝る系統などない。加えて遍在の呪文の存在がそれを不動の物としている。
だが、その最強である風を奴はことごとく凌駕する。剣から放つ気とやらの斬撃は風をすり抜け、石や鉄であろうとも容易く両断する。それどころかモット伯の屋敷では巨人四体を纏めて肉片にする威力を発揮している。
しかも恐るべきことに、それらの攻撃は一切の詠唱を必要としないのだ。
さらにラグドリアン湖では剣をかざしただけで魔獣の炎の吐息を防ぎきって見せた。炎以外の攻撃に対してどの程度有効かは分からないが、恐らくワルドの得意とするライトニング・クラウドでも一撃必殺は望めまい。
かてて加えて奴は火と風のスクウェアクラスに相当する攻撃呪文を使用できる可能性すらあるという。
攻撃防御速度全てで上手を行かれ、フライの機動力でかく乱しようにもそれを問答無用で圧殺し得る広範囲への呪文攻撃すら備える。これでは風の長所である万能性などただの器用貧乏でしかない。
恐らく全力の遍在を用いたとしても間合いを離しての勝利は望めない。そもそも間合いを離すのは相手の遠距離攻撃がこちらより弱いのが前提。ショウが相手ではむしろ立場が逆転しかねない。
まだしも遍在を用い、数の利を生かして接近戦に持ち込んだほうが良いのではないかとすら思える。
だが、とワルドは首を振る。皮肉にも実戦で鍛えた判断力が、その最後の望みをすら否定した。
ワルドとてそこらの剣士では足元にも及ばぬほどの体術を身につけている。
しかしあの使い魔の剣捌きは明らかにワルドより一枚上である。不意を討たぬ限り、例え五人で取り囲んでも倒せる可能性は低いと判断せざるを得ない。
あの長大な剣のリーチは体格差を考慮してもこちらより半歩長く、何よりその刃は鉄をも容易く断つ。五人がかりで攻めながら急所だけを外して凌がれる内に、攻撃を受け流そうとするも杖ごと両断されて一人また一人と遍在を失っていく自分の姿が容易に想像できた。
「駄目だ! それでは駄目なのだ!」
両拳を机に叩きつける。
固い樫の板に思い切り叩き付けた拳の痛みすら、今の彼は知覚できていない。
「ルイズ! ああ、僕のルイズ! 君が・・君が必要なんだ! 僕には君が必要なんだ!」
初めてワルドがルイズを見たのは、ルイズが2つくらいの時であった。
それまでにも父親同士が友人で、また領地が隣り合わせだったこともあってそれなりの行き来はあった。同年代の長女にはかなり泣かされたものの、二つ年下の次女は儚げながらも優しく、話し相手を務めるのはそれなりに楽しかったことを記憶している。
それに比べて、十歳年下のルイズは彼にとってさしたる興味の対象ではなかったと言っていい。父親同士が酒の席で冗談のように決めてしまった婚約にしても、当時12歳の彼にとってはそれを口実にして公爵夫人から魔法の手ほどきを受ける事の方がよほど重要だったのである。
無論あどけない赤ん坊、少し大きくなってからは子猫のように懐いてきたルイズに妹のような愛情を覚えたり庇護欲を掻き立てられた事が無いわけではない。それなりに好もしく思い、結婚相手としては当然のように受け入れていた。
が、特にルイズを熱烈に愛していた訳でもない。ただ貴族である彼にとって、恐らくは彼の父や公爵夫妻にとっても、結婚とは概ねそういうものであった。彼らの階級では恋愛結婚のほうが珍しいのである。
それでも何事もなければ二人はやがて結ばれ、ゆっくりと愛を育んで大多数の貴族と同様それなりに幸福な家庭を築けたかもしれない。
それが少し変わったのはワルド14歳、母が死んだ直後のことだった。
多感な年頃に母を失った息子を少しでも元気付けようと、父親はヴァリエール家に息子を伴って訪れた。
一つにはこれまでの彼が軍務にかまけて息子の面倒を妻に任せきっており、妻の死によって親としての義務感を目覚めさせたこともある。
また過保護で愛情過多なところがあった母に対し些か甘えが過ぎていた息子が、涙の一粒も流さずその死に耐えている事を不憫に感じたからでもあった。
ヴァリエール家では公爵夫妻をはじめ、常には厳しい態度をとるエレオノールも、勿論カトレアも彼を気遣い、労わってくれた。
だがルイズは違った。ワルドを見て泣き、両親や姉に叱られても泣くのを止めなかった。ワルドがいる間は決して泣きやまなかったので、ついにはワルドの前に顔を見せないよう部屋に閉じ込められてしまった。
公爵は娘の無作法を詫び、ワルドは礼儀正しくそれを受け入れた。一見すると少し心を沈ませているようにしか見えない憂鬱そうな無表情で。
その変わらぬ無表情は父親の気分をも沈みこませるのに充分であった。彼の息子は妻の死以来その無表情を崩した事がなかったからである。母の死はこの14歳の少年に無表情の仮面を被りつづけなければ耐えられないような悲しみを与え続けているのだと思った。
だが実のところ父親はワルドの内面を見誤っていた。彼は母親を失った悲しみに耐えていた訳ではない。それは単に悲しいという感情すら湧いてこないほど巨大な虚ろな穴が、彼の胸の内にぽっかりと空いていたからに他ならなかった。
だがルイズの涙が、母親の死によって生じた心の空隙を、流した涙の粒ほどは埋めてくれたらしい。
その夜、ワルドはベッドの中で一人泣いた。母が死んで以来初めてその死に涙することが出来た。
その時の彼にはルイズの涙が自分にどう言う影響を与えたかまではわからなかったが、ただ母親のためにようやく涙を流せたと言う事がこの上なく重要であった。そして理由は分からないながらも、そのきっかけになったルイズを以前とは少しだけ違う目で見るようになった。
二度目の変化が起きたのはワルドの父親が戦死する少し前、ルイズに魔法の才能がないとはっきりした頃だった。誰も来ない忘れ去られた中庭、その池に浮かぶボートの中でひっそり泣いていた彼女の姿を、ワルドは今でも鮮明に思い出すことができる。
あの頃、ヴァリエールの家中にルイズの味方は次姉のカトレアだけだったと言っていい。内心はどうあれ父も、母も、長姉も彼女に対して厳しい態度を崩すことは無かった。
だからせめて自分は。
常に側にいることは出来なくても、その場にいるときだけは必ず彼女に味方し、守ってやろうと思った。
それがワルドにとってのルイズが、“ただの結婚相手”からそれ以上の何かに変化した瞬間だった。
あるいは彼はルイズに母親を欲していたのかもしれない。
それは彼にとって自分をけして裏切らず、無条件で受け入れてくれる存在であり、どのような事があっても、自分を許容し、抱擁してくれる誰かである。
母の愛を年下の少女から得ようというのは矛盾していると思えるかもしれない。
しかし母親の愛を求める人間が、誰かを絶対的に支配し彼女から無条件に捧げられる愛情を得る事によって、母から得ていた無償の愛を代替しようと考えるのは実はさほど不思議なことではない。
彼らが求めているのは無条件かつ無償の愛であり、確たる個を持たない存在を支配してその愛情を自分一人に向けさせようとするのは、倫理的にはともかく無条件の愛を得る手段としては理に適っていると言える。
更に穿った見方をするならば、ルイズに対する庇護欲や守ってやろうという決意も、ルイズを保護が必要な弱者として自身の下に置く事で、彼女からの献身を受ける正当性を補強しようした側面があったのかもしれない。
いずれにせよ、それら自体はいずれも決して奇異な心の働きではない。
親しい者を失った人間は再び親しい誰かを失う事に敏感になるし、好意を持った人間に対する支配欲、独占欲も程度の差はあれ全ての人間が持っている。
愛情過多に育てられた人間は成長しても過多な愛情を求めるし、親以外の人間にそうした無償の愛を求めるならば、おおむね絶対的な服従か依存か、それに近い形でしか得ることは出来ない(それが双方向の物であればおしどり夫婦などと呼ばれるかもしれない)。
ただ、それが社会通念上許される範囲からわずかにはみ出してしまった。それだけのことであった。
無論この時まだ未熟な少年であったワルドが悪いわけではない。母親が息子に対して愛情過多だったからと言って、また若くして死んでしまったからといって、彼に(後者については母親にも)責められるべき謂れは何も無い。
だがそう育てられてしまったのは彼自身と周囲の人間にとって不幸だったろうし、長ずるに至ってもそれを自覚し理性で抑える術を見出せなかったのは彼の不運であると同時に半ばは彼自身の責任でもあったろう。
しえんー
あるいは彼はルイズに母親を欲していたのかもしれない。
それは彼にとって自分をけして裏切らず、無条件で受け入れてくれる存在であり、どのような事があっても、自分を許容し、抱擁してくれる誰かである。
母の愛を年下の少女から得ようというのは矛盾していると思えるかもしれない。
しかし母親の愛を求める人間が、誰かを絶対的に支配し彼女から無条件に捧げられる愛情を得る事によって、母から得ていた無償の愛を代替しようと考えるのは実はさほど不思議なことではない。
彼らが求めているのは無条件かつ無償の愛であり、確たる個を持たない存在を支配してその愛情を自分一人に向けさせようとするのは、倫理的にはともかく無条件の愛を得る手段としては理に適っていると言える。
更に穿った見方をするならば、ルイズに対する庇護欲や守ってやろうという決意も、ルイズを保護が必要な弱者として自身の下に置く事で、彼女からの献身を受ける正当性を補強しようした側面があったのかもしれない。
いずれにせよ、それら自体はいずれも決して奇異な心の働きではない。
親しい者を失った人間は再び親しい誰かを失う事に敏感になるし、好意を持った人間に対する支配欲、独占欲も程度の差はあれ全ての人間が持っている。
愛情過多に育てられた人間は成長しても過多な愛情を求めるし、親以外の人間にそうした無償の愛を求めるならば、おおむね絶対的な服従か依存か、それに近い形でしか得ることは出来ない(それが双方向の物であればおしどり夫婦などと呼ばれるかもしれない)。
ただ、それが社会通念上許される範囲からわずかにはみ出してしまった。それだけのことであった。
無論この時まだ未熟な少年であったワルドが悪いわけではない。母親が息子に対して愛情過多だったからと言って、また若くして死んでしまったからといって、彼に(後者については母親にも)責められるべき謂れは何も無い。
だがそう育てられてしまったのは彼自身と周囲の人間にとって不幸だったろうし、長ずるに至ってもそれを自覚し理性で抑える術を見出せなかったのは彼の不運であると同時に半ばは彼自身の責任でもあったろう。
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支援
そして父が死んで爵位を継ぎ、ワルドは領地を出て軍に入った。
入隊したばかりの頃のワルドには青雲の志があった。その頃の彼にとって世界はごく単純に出来ており、貴族は名誉を保ち、領地を治め、王に忠誠を尽くしさえすればそれで良かった。
戦死した父の後を継いで軍人として立身出世し、爵位持ちの貴族ではあるがさして裕福でも名門でも無いワルド子爵家の名を上げ、そして堂々とルイズを妻に迎え末永く幸せな家庭を築く。そんな牧歌的とも言える夢を抱いていたのだ。
彼のもう一つの不幸はなまじ父親が高潔な軍人貴族であり、仕事の話を家庭に持ち込まない昔かたぎの人物だった事だろう。理想と現実との乖離を実際に目の当たりにするまで、彼がそれに気づくことは無かったし、気付いた時には既に後戻りできない所まで来てしまっていた。
実力ではなく家門で出世する軍人達。コネと賄賂、不正と癒着がまかり通る閉鎖社会。精鋭である魔法衛士隊はさすがにそうでもなかったものの、それでもそうした腐敗と無縁とは言えなかった。
宮廷や官僚組織はさらに酷かった。かつて無邪気に抱いていた敬愛や尊崇は憎悪と軽蔑となり、怒りが絶望にとって変わった。抱いていた理想と夢は、ゆっくりとではあるが変質していく事を余儀なくされた。
だがそれでも彼は持ち前の真面目さともう一つの理由から任務を放り出す事は無く、その努力と才能とで戦功を上げ、昇進していった。
しかし職務への精励をマザリーニ枢機卿に認められその引き立てを受けたことですら、当時の彼にはもはや何らの感慨ももたらさなかったのである。
彼は力が欲しかった。この腐った宮廷と官僚と軍。否、トリステインそのものを変える力が。彼にとって、既に立身出世はその力を得るための手段に変わっていた。
力を得るためにもがき戦う日々の中、かつて護ることを誓った少女は、いつの間にか遠き日の幻となり。
そしてグリフォン隊の隊長を任されるまでになった頃、彼に『レコン・キスタ』が接触してきた。
世を憂える志高き貴族たちの力を結集して現在の腐敗した国家を一掃し、ハルケギニアを統一して聖地をエルフどもから奪い返す。レコン・キスタの使者が語った理想に、ワルドは魅せられた。
現実を目の当たりにし、そのありさまに絶望してなお彼は純粋であり、また若かった。あの理想や大義や偉業と言った、よく理解できない大きなものに身を任せる誘惑――或いは人はそれを野心とも言う――に、ついに彼は抗し得なかったのである。
レコン・キスタが『牙の教徒』によって生み出された組織だということすら問題にはならなかった。どの道ロマリアとて腐っているのだ、より純粋な始祖の教えに回帰するのならばそれも悪くは無い。
レコン・キスタの一員となったワルドは今まで以上に職務に打ち込んだ。領地にも帰らず、ただひたすらに来る日を待ち、忠実にして有能なトリステイン貴族の鑑と言う仮面を被りつづけた。
そして二年後。
『トリステイン魔法学院に在学中の公爵家三女ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールを監視し、可能ならば取り込むべし』
レコン・キスタから下った命令を見たとき、10年間殆ど思い出すことも無かった遠き日の情景が、ワルドの記憶の片隅から鮮やかに甦った。
力を追い求める日々の中、忘れ去っていた少女の面影は、それでも消えずに心のどこかで息づいていたらしい。
渡された指令書には魔法が使えず『ゼロ』と呼ばれている彼女が、使い魔召喚の儀式で人間を呼び出したこと、そしてその使い魔が伝説の虚無の使い魔ガンダールヴであり、彼女は『虚無』の系統の使い手であるらしいこと。
同じく人間を使い魔として呼び出したその級友二人についても『虚無』の可能性ありとして監視を行うこと、但しこちらの二人、特にタバサを名乗る少女に対しては気づかれないことを最優先として直接的な活動は最小限に止めること、等などが記されていた。
即日、奇妙な胸の高鳴りとともにワルドはルイズの監視を始めた。
「ユビキタス」で生み出した遍在を「フェイス・チェンジ」で変装させ、学院に潜りこませる。
遍在の目で十年ぶりのその姿を捉えたとき、ぞくり、とワルドの体は震えた。
かつてボートの上で泣いていた小さな女の子は気品に溢れた少女に成長していた。魔法が使えず『ゼロ』と蔑まれながらも昂然と頭をもたげて前を見据えるその姿。それでいて不安定なそのありよう。
ワルドが貴族たる者かくあれかしと思っていた気高さと誇り、そしてそれらと裏腹の劣等感と脆さ。
その危ういまでのバランスを見出したとき、こらえようの無いほどの快感が体の芯をとろかす衝撃となって彼の背筋を駆け上った。
強く、そして脆い心を持つ少女。それがひとたび誰かに依存すれば、それは強さと気高さと絶対的な献身、そして力を合わせ持った、理想的な伴侶となるはずだ。
私にあっては無償の愛情を注ぐ母として彼の心を満たし、公にあっては伝説の虚無の担い手として彼の野心を成就する手助けとなってくれる事だろう・・・・
その為には彼女を護らねばならぬ。あらゆる外敵から彼女を護り、彼女が自分に頼り切るようにせねばならぬ。
そうして心を掴んでおけば、やがて彼女がその力に目覚めた後も自分への愛がかげりを見せる事はあるまい。
ワルドの中にある力への欲求と、遠き日の誓いが一つになった瞬間であった。
だが、それを実現させるには一つだけ障害があった。
他でもない、ルイズの召喚した使い魔の少年、ショウである。
当初、ワルドは十三歳の少年一人など歯牙にもかけていなかった。気にするとすればタバサという少女が召喚したエルフであり、その先住魔法である。
ショウはラインクラスの火の魔法が使えるとは言え所詮は剣士、風のスクウェアにして魔法衛士隊隊長を務めるワルドの敵ではない。
実力差を見せつけて屈服させた後、許婚と言うアドバンテージを最大限に活用してゆっくりとルイズの心を掴んでいけばいいと、そう思っていた。
その思惑にひびが入ったのは監視をはじめて一週間ほど、ルイズ達がラグドリアン湖へ精霊の涙を調達しに行った時のことだった。
エルフの使い魔が用いた魔法の強大さは予想する所だったが、斬撃が10メイル近い間合で「飛ぶ」――全くもって妙な表現だが他に言いようがない――と言うのはワルドの常識をひっくり返すのに充分だった。
それまでに収集した情報の中にきゃつらの故郷では剣士とメイジの地位が対等だと言う信じがたい話があったが、これを見せられては納得せざるを得なかった。
もっともこの時点でもワルドはショウを一個の敵として認めてはいたにしろ、戦えば勝つと言う自信は微塵も揺らいでいなかった。
しかしモット伯邸での戦いで彼の自信は脆くも崩壊することになる。
本来あの儀式にはワルド自身も参加しているはずだった。ツェルプストーの娘の持つ『召喚の書』を奪った時点で一悶着あるのは予想していたので非難を浴びつつも傍観に徹したが、結果的には正解だったと言える。
グラモン元帥の四男坊が殴りこんできた時はその健闘を称え、レコン・キスタの同志であるはずのモット伯の不甲斐なさを嘲笑う余裕もあったが、ショウの見せた剣技――あれを『剣技』などと称していいものなら――を見た時にそんな余裕は消し飛んだ。
身長5メイルの巨人の肉と骨をすり潰し、一陣の血風に変えたあの竜巻。“烈風”カリンのカッター・トルネードですらあれだけの威力を出せるだろうか。まして今なお自分は彼女に及ばないのだ。
勝てない。
繰り返しになるが、それが冷静な戦士としてのワルドが出した結論だった。
だがそれを認めることは自分がルイズにとって不要な存在だと認めるに等しい。
彼女の唯一無二の庇護者は他の誰でもなく、この自分でなくてはいけない。彼女の世界に自分以外の誰かは必要無い。ルイズは守られなくてはいけないのだ、このジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドの手によって!
だがあの憎むべき虚無の使い魔ガンダールヴはそんなワルドの思惑を木っ端微塵に打ち砕いた。
ルイズの心を全面的に手に入れるには彼女の守護者としての地位を確立し、自分に、自分だけに依存させなくてはならない。
その意味では友人も邪魔だったがそちらはまだしも看過しうる。
だがショウは、あの使い魔の小僧は存在する限りルイズの心をワルドに依存させきることは出来ないであろうし、それどころかこの三週間ほどの間にルイズはむしろショウに依存し始めているようにワルドには見えた。
例えば最初にワルドが憤慨したのは使い魔がルイズと同じ部屋で寝ていると言う事だった。当然同衾などするわけでもないが、それでも腹が立つのは変わらない。
教師を装って詰問してみた所、「使い魔であって男ではない」という答えが返って来たのでその時は見過ごしてしまったのをワルドは後に悔んだ。
数日後、馬鹿な貴族の小娘が恋人に惚れ薬を飲ませて、肝心の恋人が自分ではなくルイズの使い魔に恋してしまったとき、ルイズが使い魔を助けたことがあった。
ショウが素直に礼を述べたのに対し、ルイズが頬を赤くして視線を逸らせたのは二階席から様子を伺っていたワルドにとって衝撃であった。
只の使い魔にそんな態度をとる必要がどこにあるか、と憤慨する。歯軋りしている自分にワルドは気付いていなかった。
モット伯の屋敷。
とち狂ったモット伯がルイズ達を殺そうとしたのを使い魔が防いだのはいい。だが使い魔の剣技以上にルイズが使い魔のために涙を流した事に、ワルドは強烈な嫉妬を覚えた。
本来ならばあそこでルイズにすがり付かれているのは彼自身であったはずなのに、と。
その後で土くれのフーケに妹の事をちらつかせて協力を迫ったのも、ある意味では八つ当たりのような物であった。
その翌日。
朝食の席でルイズが使ったナプキンをとって、ショウが口元と手に付いた油をぬぐった。
その日、変装したワルドの遍在がメインディッシュの肉料理を何度も何度もフォークで突き刺していたが、それが目撃されて密かに噂になったのを彼は知らない。
さらにその翌日。
ルイズが部屋に鍵をかけ、ショウのベッドでこっそりゴロゴロ転がっているのを目撃してしまった。
ひどく、負けた気がした。
そして数日前、トリスタニアの武器屋に入ったルイズ達の会話に風の魔法で聞き耳を立てていると、
『つくづくあんたはご主人様への敬愛って物が足りないわね』
『だから敬愛されるような主になってみろといっている』
『顔は可愛いくせに本当唐変木ね!』
『顔は関係ないだろう! 大体貴様みたいな可愛げのカケラも無い女が言う事か!』
『このむっつり顔面神経痛!』
『頭の中まで桃色女!』
『スットコドッコイ!』
『チビ女!』
『童顔!』
余人ならば子供じみた口げんかに呆れるところだろうが、ワルドは違った。
ルイズとこれだけ屈託なく会話できることがひたすら羨ましかった。
他にもさまざまな事があった。
二人で遠乗りに出かけ、あまつさえ帰りは相乗りしていた。馬が潰れたわけでもないのに許せない。
課題を解いていてルイズが昼食に遅れ、付き合ったショウと二人きりの食事になった。会話しながら笑っていた。自分はこうしてルイズの声を聞くだけで精一杯なのに許せない。
ルイズが寝言でショウの名前を呼んだ事があった。自分の名前は呼ばないのに。許せない。
ショウが寝乱れたルイズに布団を掛けてやった事があった。あの使い魔がルイズの世話をするなんて許せない。
宿屋では熱を計るためにルイズの額に手を当てた。その行為もそうだがルイズが真っ赤になった。許せない。
その後酔ったルイズを抱き上げてベッドまで運んだ。絶対許せない。
おとこのしっとはみぐるしいぜ!
支援!
何もかも悔しく、歯がゆかった。あの使い魔は彼が占めるべき位置を無自覚の内に奪いつつあると言うのに、ワルドはそれに対して何の手も打てないのだ。
遍在を使った工作ならまだしも、魔法衛士隊の隊長であるワルドが本人としてルイズに接触するには休暇を取るそれ相応の理由なり機会なりが必要になる。手紙という手もあったが、それでどれほどルイズに己を印象付けられるか、ワルドには自信がない。
つまりルイズを篭絡するための情の面においても、依存させるための力の面においても、明らかにワルドはショウの後塵を拝しており、しかもそれを挽回する手段を持たなかった。
この時点で、ワルドの脳裏からレコン・キスタの指令の事は綺麗に消えている。ワルドにとってレコンキスタはあくまで利用している存在に過ぎず、彼にとって最優先されるべきは自分がルイズを手に入れることなのだ。
もし、ワルドに質量共に豊富な人生経験、特に男女のそれがあればまだしも違っていたのだろうが、残念ながらワルドは腕は立ってもごく狭い世界で育ち、一つの目的だけのために生きてきた人間だった。
無力感が身を苛む。ガラスの窓越しに状況を眺めさせられているような物だ。様子は手に取るようにわかっても、決して触れることはできない。
何かが必要だった。劇的に状況をひっくり返す何かが。
ゆっくりと、俯いていたワルドの視線が上がる。
その静かな熱を孕んだ視線の先にあるのは、厳重な錠が下ろされた黒檀の箱。その中には黒い革でそっけなく装丁された書物・・・『召喚の書』が存在するはずであった。
――この時、ショウの謀殺と言う考えが脳裏に浮かばなかったのはルイズという聖域に対する甘さゆえか、それとも単なる思考の硬直か。
いずれにせよ、汚泥と濁流を泳ぎ渡った10年間を経ても、かつて純真だった青年は未だ非情の謀略家に徹し切れてはいないようであった。
だが最初は純粋な庇護欲であり、広い意味では間違いなく愛情と呼べたそれがやがて捻じ曲がり、ついには全くの別物になってしまっていることには、彼はまだ気付いていない。
彼にとってはむしろそれは幸いだったろう。それに気付いた瞬間、彼の全ては崩壊するのだから。
なんというストーカーw
このワルドは新しいな
「いや、本当に危ない所だったみたいだね。助かったよ、ありがとう」
深々とシエスタの父が頭を下げた。
幸いアニエスも手加減していたらしく、念のためにリリスがかけた最弱の回復呪文、封傷(ディオス)だけで今はもうアザ一つ残っていない。
シエスタの曽祖父と曽祖母が残した武具と呪文書を奪おうとしたアニエスを阻止し、ショウが自力で「蘇生」してすぐ。
シエスタの父は曽祖父と曽祖母が作ったという寺院――それは明らかにショウの故郷であるホウライの寺院の面影を止めていた――で気絶している所を発見された。
旅人を装って訪ねてきたアニエスを寺院に案内し、二人の武具や呪文書の説明をしていたところ、いきなり後ろから首筋を強打されたらしい。
「いや、大切なじいさんばあさんの形見を盗られないで本当に良かった。遺言のこともあるしな」
「遺言?」
「ひいおばあちゃんが言い残したんですよ。必要になったら売ってお金に換えてもいいけど、できたら呪文書や墓碑を読めて、これを使いこなせる人達に譲ってあげて欲しいって。ひょっとしたらショウさんがその人なのかもしれないと思うんです」
首をかしげたキュルケに答えたのはシエスタであった。
その言葉にシエスタの父とショウ達がそれぞれ別の意味で目を見張る。
「シエスタ、それは本当かい!?」
「本当に私たちが貰っちゃっていいの!?」
二つの声が同時に上がった。
シエスタの父は純粋な驚きの、そしてリリスは好奇心に満ちた喜びの叫び。
「リリスさんとヤンさんはショウさんと同郷なんですよね。だったらお二人にも権利がありますね」
「ねえ、その墓碑ってどこなの?」
「すぐそこ、寺院の脇ですよ」
ぞろぞろと、全員で連れ立って二人の墓の前に移動する。
一抱えほどありそうな自然石に名を刻んだだけの、質素な墓である。
「ええと・・ホウライの名前かしら? 私には読めないわ」
「俺も」
「ああ、間違いなくホウライの字だ。俺の時代か、そうでなくても割合近くの時代だろうな」
墓碑に目を走らせたショウの、次の言葉を待って一同が静まり返る。
「ホウライの戦士テツ 司教リィナ ここに眠る」
淡々と墓碑を読み上げるショウの声だけが、その場に響いた。
第六話 『天使』
そこでNTRの快感に目覚めるんだワルド! 支援
そして今一行はシエスタの家に戻ってきている。
アニエスは縛って取りあえず納屋に。武具は寺院に戻しておいた。
遅めの昼食をショウ達と共にしたシエスタの父親は上機嫌だった。
「いやぁ、ようやくじいさんばあさんの遺言を果せるってもんですわ!」
昼間にもかかわらず妻に酒を頼み(当然ながらこれは却下された)、ショウやヤンの肩を嬉しそうに何度も叩き、シエスタ達家族も目を丸くしている。
「いやぁ、私がまだ小さい頃にじいさんばあさんにあの武具を使いたいと駄々をこねたことがありましてね。やっぱり男の子ですから英雄とかそういう話には憧れるんですよ」
「へぇ」
彼女にとっても初耳だったらしく、シエスタは意外そうな表情で父親を見ていた。
一方ショウは苦笑していたが、これにはヤンとシエスタの弟たち、加えてこっそりタバサもコクコクと頷いている。それに気付いた親友が妙なものを見る目で彼女を見ていたが、それはさておき。
「じいさんに剣の初歩を習ったりもしたんですが、結局使うどころか剣を振り回すことすら出来なくてねえ。悔しくて泣いていたらばあさんが教えてくれたんですよ。あの武具は選ばれた人間にしか扱うことが出来ないんだってね。
えーと、何と言ったかな? 守る者とか番人とか、そんな感じの言葉でしたが」
「守るべき者(ガーディアンズ)」
ぽつり、とリリスが呟いた。
「そうそう、それそれ!」
得心してぽんと手を叩く父親とは対照的に、リリスの顔はむしろ物憂げだった。
「・・・・リリス?」
タバサが視線を向けたその横顔には、複雑な表情が浮かんでいる。
「どうしたのよ、リリス?」
そこでキュルケと、他の面々も気付いた。
諦めたような苦笑いを浮かべ、リリスが首を振る。
「ううん、なんでもないわ。ただひょっとしたら、運命じゃないかなって思っただけ」
「何よ運命って。私とダーリンの出会いのこと?」
ぎゅ、と己の乳房を強調するようにキュルケがヤンの腕を抱え込む。慣れ親しんだ感触ではあるが、それでも鼻の下が伸びてしまうのは男の性か。
テーブルの端ではシエスタの母が息子たちを捕まえて、おまえ達はああなるんじゃないよと真剣な顔で諭していた。
それを横目で眺めつつ、リリスが呟く。
「違うわよ・・・いや、ひょっとしたらそれもそうなのかもね」
その声には常の快活な彼女には無い、重い響きが混じっていた。
「で、どういうことなのよ?」
一同を代表してキュルケが尋ねた。先のリリスの発言からやや時を置き、一行は客間に移っている。シエスタは弟や妹たちの相手、父親は野良仕事、母親は晩の仕度で台所におり、今この場には一行しかいない。
「そうね、何から話したものか・・・タバサ、キュルケ、ルイズ。『古きもの』って言葉は覚えてる?」
「えーと、なんだっけ?」
「馬鹿ねツェルプストー。あの変態伯爵の屋敷で殺されかけたじゃないの。あの紫色の巨人の事よ、始祖ブリミルが操っていたって言う」
「あれはポイゾンジャイアント。正史にはその存在は記されていないけど、昔書物で読んだ事がある。
付け加えるならば、湖で戦ったゴーゴンやキメラはその時封印を免れた極僅かな『古き者ども』の生き残り。吸血鬼やトロル鬼、オーク鬼、オグル鬼、ミノタウロスなども古き者どもの生き残りではないかとする説もある。
でも、一つ気になることがある。その書物ではかつて跳梁跋扈していた『古き者ども』を封印して人が安心して暮らせるようにしたのがブリミルだとあった」
昨日より明日に生きる女キュルケを呆れた目で眺めつつ、ルイズが思い出させ、タバサがそれを補足する。
「ふぅん、こっちの世界にもヴァンパイアっているのねー」
リリスが何かを懐かしむような表情になった。古い知人を思い出しているようだ、と何とはなしにタバサは思う。
「始祖ブリミルについてはさておき、古き者どもというのは簡単に言えば人外の存在ね。でもその中でも実は二種類に別れるのよ。
一つは竜とかキメラとか巨人とか、通常の生き物ではあるけれども普通のそれをはるかに上回る、或いは毒や石化などの危険な能力を有しているタイプ。
実はヴァンパイアみたいな不死の怪物もこれに含まれるわ。不死族(アンデッド)を生かしているのは生命力ではなくて闇の魔力だという違いはあるけれども、それでもある種の生き物には違いないのよ」
ここでリリスは一端言葉を切り、一同を見渡した。
全員が理解度の差はあれ真剣に話を聞いているのを確認し、再び口を開く。
「正直こいつらは危険だけれども、それでも元々この世界に棲息していた存在よ。人里離れた場所に棲むとか、互いのテリトリーを侵さないようにすれば共存もできるわ。
でも、そうじゃない奴らもいる。それがもう一つの古き者――そうね、生物ではない『異形の者』とでも呼ぶべきかしら。端的に言えば悪魔族(デーモン)ね。他にも天使族(エンジェル)と言うのもいるわ」
え? と複数声が上がった。
「天使って・・・あの天使よね。背中に羽根が生えてる」
「そうよ。かつては本物の神の使いだったのか、それとも私たちの考える神の使いの姿を装っているのかは分からないけど、見かけは本当に天使そのものよ。羽根が生えている人間の姿で光っていて。
その本質は悪魔族とは確かに対極に位置するけど、ある一点では全く同じなの」
「・・・その、一点って?」
静まり返った一行を代表するかのようにルイズが問うた。
僅かに間を置き、リリスが口を開く。
「人を食料にすることよ」
その言葉の内容とリリスの鋭い瞳は他の五人に息を呑ませるのに充分な物であった。
沈黙してしまった彼等をよそに、リリスが淡々と言葉を続ける。
「人間を食料にするといっても頭から丸かじりするわけじゃなくて、人間の持つ『活力』――生きる力と言ったらいいかな――を喰らうの。
人間は異形の者どもに比べるととても弱くて不完全な存在よ。天使や悪魔といった異形の者は寿命を持たないし、例え滅ぼされても充分な力を蓄えれば復活できる。対して人間は歳をとって死ぬし、蘇生魔法があっても消失(ロスト)すればもう甦らない。
だけど、それだけに個体の強さではない別の武器を持っているわ。例えば人間は死んでも魂が転生する。転生した魂はかつての記憶や能力を失うけれども、別の生を生き、経験する事で魂そのものの成長を促すの。
それは単一の生を永劫に繰り返しつづける異形の者たちには無い「変化」という強力な武器だわ。
そして種としての人間、もっと言えばあらゆる生き物が持っている、環境に適応し生き抜くための力。変化の源。それが『活力』なの。
悪魔も天使も元はといえば異界の存在。この世界で存在を維持し、力を振るう為には私たちの持っている『活力』が必要不可欠なの。
奴等にしてみればこの世界は、沢山のエサが溢れている漁場みたいな物なんでしょうね。実際天使族はかつては神の眷属として人の信仰を集め、その活力を貪っていたのよ」
「なるほど・・・言ってみれば寄生虫ですか、やつらは」
「その通り」
怒りを滲ませたショウの呟きに、リリスが頷く。
外からは小鳥の声、台所から調理の音が洩れ聞こえてくるこのうららかな昼下がり、この居間は全く別の空気が満ちていた。
その緊張感の中、さらにリリスが言葉を続ける。
「幸いな事に、神から『魔除け』を授かった一人の勇者によって古き者は封印されたわ。そして異形の者――悪魔や天使と言った者たちは異界に追放されたの。
でも魔除けの封印も絶対ではないのよ。奴らは時折、世界の壁を越えてこの世界に現れるの。再びこの世界を自分たちの物にするために。
でもそれを阻む力もちゃんと存在する。それが『魔除け』であり、様々な伝説の武具であり、それを扱う人間――すなわち『守るべき者』、あるいは『守護者(ガーディアンズ)』なのよ。
でも古き者どもと違って『守護者』はあくまでも人間。殺されれば死ぬし、歳を取っても死ぬ。その代り、何度でも転生し、異形の者がこの世界に現れるたびに戦うの」
ふう、と息を突き、水差しから木のコップに注いだ水を一息で飲み干す。
「で、なんで私がそんな事を知っているかと言うと、ワードナを倒して“真の”『魔除け』を取り戻したからよ」
「え? でも魔除けって沢山あって、ワードナを倒した人も沢山いて」
「だから“真の”『魔除け』なのよ。そこは今から説明するわ」
そこからリリスが語り始めた物語はさらに信じがたい物だった。
そもそも上古『魔除け』を勇者に与えた神とは『人』、つまり人間、エルフ、ドワーフ、ノーム、ホビット等彼らの世界に存在する人型諸種族全ての無意識の集合体、総和であり、『魔除け』はその力の収束する特異点であったと言う。
この集合無意識は『人』の進化を望んでおり、その為に様々な影響をこの世界に及ぼしてきた。
ある時この集合無意識が急速な進化を望むそれと、緩やかな進化を望むそれの二つに分かれる。そして前者が人の進化を促すべく解き放ったのが『古き者』であり、それを封印すべく後者が生み出したのが『魔除け』である。
トレボーは優秀な『人』、即ち『守護者』の血筋を数千年にわたって掛け合わせた末に生まれた一つの究極であった(余談だがこの世界では人の五種族はそれぞれ混血が可能である)。
そしてワードナとは、暴走して窮地に立たされたトレボーを救うと同時にその『魔除け』を奪い、迷宮の『古き者』と冒険者を戦わせる事で人の進化を促すための傀儡だったのだ。
だがトレボーはワードナの正体を見抜き、さらにはそれを操る集合無意識さえ吸収して、以降数十年に渡り迷宮で冒険者たちを弄び続けた。
そしてヤンのいた時代の数年後、リリス達の(正確に言えばリリスが死んで融合した双子の姉の)パーティがトレボーと戦ってこれを倒し、集合無意識が再び一つとなって分裂して以来乱れていた時の流れは正された。
リリスと姉は『巫女』と呼ばれる存在であり、『魔除け』に宿る集合無意識とリンクし、その知識を一部受け継ぐ事によってこれらの事情を知り、仲間とともにトレボーを倒したのである。
支援
「に、にわかにはちょっと信じがたいわね・・・」
「まぁね。喋ってる当人もそう思うわよ」
相槌を打つルイズの言葉にも力が無い。スケールの大きすぎる話をどう飲み込んでいいのか分からないようであった。
「話は戻るけど、つまりそういう世界の危機に立ち向かうべき人材が『守護者』なのよ。つまり私も『守護者』の一員。そしてシエスタのひいおじいさんとひいおばあさんも恐らくそう。
二人の使っていた武器や甲冑はいわゆる「伝説の武具」なんでしょうね。例えば伝説のダイヤモンドの騎士の武具みたいな。そう言った武具は『守護者』の血と魂を受け継ぐ者にしか扱えないのよ。
だから、私は逆接的にショウやヤン、ううん、ひょっとしたら私たちをこの世界に呼び込んだタバサやキュルケ、ルイズも『守護者』なのかもしれないと思うの」
「ちょ、ちょっとまって下さいよ!?」
とんでもない事を言われて、目を白黒させたのはヤンであった。
「ショウ君とかリリスさんならそんな凄い人かもしれないってのもわかりますけど、俺ただの戦士(ファイター)ですよ? しかも10レベルにすら達してないし!」
「分からないわよ? 単に今はまだ未熟なだけかもしれないし。私だって、最初は田舎から出てきた小娘に過ぎなかったわ」
「うーん」
「それにね」
と、リリスはいたずらっぽい顔をして微笑んだ。
「『守護者』も、最初から『守護者』であった訳ではないと思うのよ。彼等も最初は他の人間より少し強いだけだったんじゃないかしら。何度も転生を繰り返し、戦っては自分と魂を鍛え続ける事で『守護者』たる資格を手に入れたんじゃないかと思うの。
だから、あなたがそうでなかったとしてもこれからその資格を得られないという話にはならないと思うわ」
「う〜〜〜ん」
難しい顔で唸るヤンを無言で励ますキュルケに視線を和ませつつ、いたずらっぽい顔はそのままにリリスが言葉を続けた。
「それにあなたは戦士でしょ。なら成長が早いのが取り得じゃない? こっちに来たばかりの頃より腕を上げているわけだし、このままの調子なら私やショウを追い越す事だって有り得るんじゃないの?」
「まぁ、理屈の上では」
照れながら、また苦笑しながらヤンが首肯する。
「大丈夫、あなたが『ただの戦士』なんかじゃない事はこの私が保証するわ!」
「そ、そうですか? でもマスターレベルの人に保証して貰えるならちょっと自信もつくかな」
今度は照れつつも、案外満更でもなさそうにヤンが笑みを浮かべたところで、リリスの笑みが人の悪いものに変化する。
「こっちに来る前のも合わせれば59回連続蘇生成功記録を保持してるあなただもの、あらゆる意味で普通であるわけがないわ!」
「・・・いやそういう保証されても全然嬉しくないんですが」
「まあ、そりゃそれだけ死んでるって事でもあるわけだしね」
「悪かったですね」
規制された?
一転してぶすっとした表情に変わってヤンがふて腐れた。
「それはしょうがない。ヤンだし」
「ヤンさんですからねぇ」
「ヤンじゃしょうがないわよね」
「否定はできないけど酷いわねみんな」
「やっぱりみんなそういう認識なんだね・・・」
異口同音に賛同され、さすがにちょっと泣きが入るヤンである。
キュルケからの慰めるような視線がむしろ痛かった。
「まぁ、何にせよ個性があるのはいいことじゃない?」
死んでもすぐ生き返るのが俺の個性ですか、と思わず反論しようとしてヤンはギリギリでこらえる。一斉に頷かれそうだったからだ。
ヤンは、空気の読める男であった。
「さて、気を取り直しまして!」
沈んだ空気を変えようとして、リリスが努めて明るく声を張り上げた。
テーブルに突っ伏して涙で首刎ねウサギの絵を描いている誰かさんをズンドコに突き落したのがそもそも誰か、と言う点はこの際さておく。
「じゃーん」
「あれ、シエスタのひいおばあさんの呪文書?」
「ふふふ、これだけちょっと一足先に借りてきたのよー」
呪文書自体はホウライの物らしく、羊皮紙やハルケギニア風の紙ではなく、ホウライ独特の紙を背中で糊付けして糸で綴り合せた、別の世界なら和綴じと呼ばれる類の書物、あるいは雑記帳である。
おもむろにリリスが表紙をめくり、記述に目を走らせる。
「ふむ、ふむふむふむ」
頷きながらリリスはさらにページをめくる。
ようやく立ち直ったヤンはそれをちらりと覗き見て、理解する努力を一秒で放棄した。
「さすが司教。そんな訳の判らない文字よく読めますね」
「読めないわよ? ただ目で追ってるだけ」
ちっちっち、と指を振って何故か得意げにリリスが言う。
「・・・何の意味があるんですか、それ?」
「いや、ねぇ。ちょっと場が重くなってたから和ませようかなぁ、なんて・・・あー、ごめん、ショウ君お願い」
冷たい視線の集中砲火を受け、リリスが珍しく素直に謝った。
どう反応していいかわからない、と言った表情でショウが呪文書を受取り、気を取り直してページをめくる。
記述に用いられていたのはやはりホウライの言葉であった。ショウの慣れ親しんだものとはやや異なるが、それでも読み下すのに苦労はない。やはりシエスタの曽祖父母は彼とさほど遠くない時代のホウライから来たのであろう。
「この呪文書を与えてくれた我が師シェーラに感謝を。この書を開くものよ、願わくば良きことにその力を使いたまえ・・・。
魔術師系1レベル、小炎(ハリト)。この呪文の要諦は大気の分子に魔力を持って運動の力を与え、もって火の玉となし打ち出す事にあり・・・やっぱり俺達の世界の呪文書みたいですね」
「やっぱりかぁ」
と、ややがっくりした表情でリリスが頭を垂れた。
「でもまぁ、そういうテキストがあればタバサ達に私たちの世界の呪文を教えることも可能になるかもね」
「あ、そうですね」
「え? 私たちにショウやリリスの呪文が使えるなら、ショウやリリスから直接学べばいいんじゃないの?」
「多分、リリス達の独特の呪文修得法が関係している」
「タバサご名答」
以前リリスがタバサに教えた事があったが、リリス達の世界の魔法は学ばずとも使える。
本来ならば系統魔法と同じくちゃんと勉強しなければ使う事はできないのだが、彼女たちの世界では古代の偉大な魔法使いによって学習と言う過程を飛ばして呪文を修得する方法が確立されているのだ。
まず、呪文を扱うクラスの者はクラスの修行をする過程でその潜在意識に呪文、正確に言えばその発動のプログラムを直接刷り込まれる。
そしてそれを使いこなせる力量と技術を得た時点で自動的に使用可能になるのである(これは「意識の底から呪文が浮かび上がる」と表現されている)。
この方式には呪文個々の学習や熟練に要する時間を省略でき、また自分の力量では手に負えない呪文を使って暴走させる等のリスクを回避できる利点があるが、同時にかつてリリスが語ったように修得したい呪文を自由に修得できないという欠点もある。
そしてもう一つの欠点がこうして身につけた呪文を他者に伝授することが出来ない事だった。
呪文を使う際、詠唱の速度上昇や細かなコントロールを個人的なスキルとして身につけ磨く事は可能であるし、基本的な呪文に含まれない様々な魔術・呪法を学習し修得する事も可能である。
しかしどれほどレベルを上げようとも潜在意識に刷り込まれた呪文にアレンジを加えたり、それを他者に伝授したりすることは出来ない。彼等は精神の中にある呪文の構成を流用しているだけであって、その構造を理解して使用しているわけではないからだ。
ならばその魔術師や僧侶を訓練する師匠はどうなるのかという話になるが、彼等は魔法を理論的に学習し、呪文知識を完全に理解しているその道のエキスパートであり、魔術理論の研究と理解に一生を捧げた一流の学者達でもある。
刷り込まれた呪文をわざわざ昔ながらの方法で学習しなおしている故に、それを他者に伝授できるのだ。
逆に言えば手段として魔法を実践する人間にはそのような学習に費やす時間はそうそうない。よって、例え元マスター僧侶であるリリスであっても、自らの用いる僧侶呪文を他者に伝授することは出来ない。
しかしこうした教科書があれば学習と言う手間をかけてそれを伝授することも不可能では無いだろう。それを聞いてタバサやルイズのみならず、付きあいで来ただけのキュルケすら目を輝かせ始めていた。
なんと言っても異世界の呪文の攻撃力はラグドリアン湖畔の戦いで見せてもらっている(あれで中の下レベルというのだから素晴らしい)。久々に恋以外の事柄に情熱が燃え始めたようだった。
「あれ?」
「どうしたの? ショウ」
呪文書をパラパラとめくりつづけていたショウがぽつり、と声を漏らした。
それを何とはなしにじっと見ていたルイズが首をかしげる。
「いや、この呪文書だけどな・・・俺の知らない呪文が載っているんだ」
「よしっ!」
ぐっと拳を握ったのはリリス。彼女としてはむしろこれを期待していたのである。
彼ら二人がショウのように千年も前から来たのであれば、かつて存在していた超魔法文明の遺産とは言わずとも、リリスたちの時代にはすでに失われた魔法などが記述されているかもしれない。
そのかすかな可能性に期待してここまで遠出してきた苦労は、リリスにとっては正しく報われたと言えよう。
「細かい記述は良いから、呪文のレベルと名前っぽいのだけ読み上げてって」
「分かりました。魔術師2レベル、俊敏(ポンティ)・・5レベル、召喚(ソコルディ)・・解除(パリオス)・・6レベル、凍嵐(ラダルト)・・。僧侶系4レベル、刃風(バリコ)・・5レベル、召霊(バモルディ)・・」
しばらくの間、ショウの読み上げる声とページをめくる音だけが響いた。
読み上げられる呪文の名前を聞くだけで、魔法使い達は興奮を隠し切れないようである。
タバサですら、日頃の無感情ぶりを返上してうっすらと頬を紅潮させていた。
が、その興奮を共有できない者も約一名存在する。
「なぁ、デルフリンガー。周りがみんな魔法使いだったり上級職だったりする中で、一人だけ剣を振るしか能が無いって寂しいよな」
「相棒二号もようやく俺様の気持ちがわかったようじゃねぇか。互いの気持ちを分かりあうことは友情の第一歩なんだね」
「誰が二号だよ。俺はお妾さんか?」
「しょうがねーだろ、本来一人しかいないはずの使い手が二人いる。これってデルフ的にちょっと不可解な現象なわけだよ」
「だからその使い手ってのはなんなんだよ」
「んー、思い出せね」
「この錆び刀め」
「何言ってんだよ。こう見えても俺様はすげーんだぜ?」
「どこが?」
「んー、忘れた」
「・・・・いっぺんキュルケさんに頼んで溶かして貰おうかな」
「はっはっは、まぁそのうち思い出すだろうから取りあえず今は話し相手になってやんよ」
剣にまで気遣われ、さらに凹むヤンであった。
テーブルの下でそんな会話があった事など露知らず、四人は手分けして写本を作ることに決めた。四人というのは、ヤンは勿論のことキュルケも余り役に立たなかったからである。地味な作業をやるのを面倒臭がったと言うほうが正確だが。
実の所、コルベールの口利きで遠出の許可を取ってはいるが、本来彼らはこの村に余り長居出来る身分ではない。
常には冷静なタバサや真面目なルイズでさえそれを言い出さなかったのは、やはり未知なる魔法への興味と興奮が理性と常識を吹き飛ばしていたのだろう。
ちなみにヤンだけは気付いていたし、コルベールへの「おみやげ」の約束も覚えていたのだが、彼は二つの理由でこれを口にしなかった。
一つはこの村に長逗留することになればその分ワインを楽しめる事。そしてもう一つは余りにも女性陣が興奮しているので怖くて言い出せなかったのである。
ともあれまずショウの読み上げる文章をそのままルイズとタバサとリリスが交代で書き写し、しかる後に校正をかけることにする。
もちろんショウの読み上げた文章をそのまま使ってもいいのだが、専門用語だと細かいニュアンスの違いが重大な過失を引き起こす事もあるのでそのまま用いるのは危険なのである。
いまやシエスタの実家の客間は時ならぬ勉強会の様相を呈しており、参加者はこのまま夜を徹しての作業も辞さんばかりだった。シエスタの実家が村長の家並に広くなければ、常識家のヤン辺りが止めに入っていたかも知れない。
「ここは『発動させるための要件を構成する存在』だから『発動因子』でいいんじゃないの?」
「系統魔法だと同じ言葉をもっと広い意味で使っているからちょっと不適切ね。そうね、『発動要素』とかどうかしら」
「それについては支持する。ただ、先ほどのセンテンスとの整合性を取る事も必要」
「んじゃこの"compornent"の訳語は『発動要素』ってことで。それで、その件のセンテンスの方だけど・・」
リリス、ルイズ、タバサが熱心に討論を交わしているその横で、ショウはやや手持ちぶさたにしていた。
実の所こういう学術的な話になると彼は余り役に立てない。侍はあくまで「魔法が使える戦士」であって、魔術師や司教のような専門家ではないからだ。が、テキストの原文を参照する時に彼がいないとどうしようもないので付き合わざるを得ない。
生暖かい笑顔を浮かべたヤンが向こうの部屋から手招きしているような気がしたが、首を振ってその幻を追い払う。だからといって手持ちぶさたな状況が変わるわけでもないが。
やる事がないのに待機していなければならないと言うのは結構疲れるのであった。
一方意外なことに、この作業に一番熱心かつ貢献しているのはルイズであった。
実のところルイズは座学ならタバサと互角である。
タバサのように四六時中読書をしているわけではないため、吸血鬼の生態だの韻獣だのと言った雑多で広範な知識はもっていないようだが、今日の作業を見ている限り、こと魔法理論に関してはタバサを大きく凌いでいたらしい。
リリスをさえしばしば驚かせる鋭いひらめき、今日初めて見たはずの魔法理論を的確に理解する洞察力。それを要約して系統立て、整合させる構成力。
誰もが認める天才であるタバサが、この呪文書の翻訳作業においては完全にルイズに遅れをとっている。
努力家の彼女が魔法の使えない自分を乗り越えるためにどれだけの精進を重ねてきたか、タバサもリリスもその一端を見たような気がしていた。
結局作業は夕食を挟み、夜になっても終らず、三人はリリスの唱えた恒光(ロミルワ)の呪文の光の下で翻訳作業に没頭していた。
その間シエスタの父は「娘の恩人」に秘蔵のワインを振る舞い、いい感じに出来上がったヤンとキュルケを、やや憔悴した顔で手洗いに出てきたショウが彼にしては珍しく恨みがましい目で見ていたりもしたがそれは余談だ。
これにてAパート終了。
支援と掲載、代理投下に感謝。特に120の人、ナイスでした。w
Bパートは明日にでも適当に投下します。
余談ですが、3分刻みだと40kbを平気で投下できたんですが、2分30秒刻みだとさるさん喰らってしまいました。
ペースを計る一助になるかもしれません。
では。
---------------------------
以上、代理投下したぜ!
141 :
蒼い使い魔:2008/09/03(水) 02:44:15 ID:8rYA/HQl
皆様投下お疲れ様であります、
今日は投下すごいなぁ、そんななか自分も…
3:00に投下しようと思いますけど問題ないかな?
ウィザードリィってクトゥルフ系も混ざってんだな、知らなかった。
モンティパィソンネタw
そのうち、聖アッティラのホーリーハンドグレネードが出てきそうだw
SQの首刈りウサギによく殺されたのもいい思い出です
支援だ
やがてシルフィードがトリステインの王宮へとたどり着く、
場合が場合なだけに直接降下し、王宮の中へと進もうとすると、
多数の兵士たちがレイピアのような杖を構えルイズ達を取り囲んだ。
「杖と剣を捨てろ!!」
隊長らしい顔付きの男が警告を放つ、
国運を左右する重要な密命を完遂したにもかかわらず、少々残念な凱旋の出迎えである、 全員むっとした表情に変わる。
「宮廷」
タバサが呟き、杖を投げる。他のみなはしぶしぶ頷き、手にしていた杖を地面にへと放り投げた。―ただ一人を除いては
「今現在王宮の上空は飛行禁止だ!ふれを知らんのか?」
すると、ルイズがシルフィードから飛び降りて、毅然とした態度でそれに応える。
「わたしはラ・ヴァリエール公爵が三女、ルイズ・フランソワーズです!姫殿下に取り次ぎ願いたいわ!」
向こうの隊長が、自慢であろう口髭をひねってルイズを見つめる。本当かどうか判断しているようだった。
隊長がとりあえず掲げた杖を下ろす。
「ラ・ヴァリエール公爵さまの三女とな」
「いかにも」
隊長の男はルイズの目をじっと見据える。
「ふむ、なるほど、見れば目元が母君にそっくりだ。して、要件を伺おうか?」
「それは言えません。密命なのです」とルイズは首を振った。
「では殿下に取り次ぐわけにはいかぬ。要件も尋ねずに取り次いだ日にはこちらの首が飛ぶからな」
困った口調で隊長は応える。
「では、今すぐに首を飛ばしてやる、それが嫌なら道を開けろ」
中庭に冷たい声が響く、兵士たちがその方向をみると
いつの間にかバージルがシルフィードから降り、閻魔刀の刃を数サントほど押し上げて隊長を睨みつけていた。
「なんだとッ!?」
周囲を取り囲む兵士たちが一斉に杖を構える。
「ちょっと!何挑発してんのよ!お願いだからやめて!」
全員が必死にバージルを止める、なぜこの男はここまできて話をややこしくするのだろうか、ルイズが頭を抱えたその時
「ルイズ!」
驚きと嬉しさが込められた叫び声が中庭に響き渡った。
皆がその叫び主の方を向くと、鮮やかな紫色のマントとローブを羽織った人物――アンリエッタ王女がこちらに駆け寄って来た。
「姫さま!」
ルイズの顔が嬉しさ一杯に溢れ変えり、こちらもまた駆け寄る。
二人は、中庭にいる全員が見守る中、ひしと抱き合った。
「ああ、無事に帰ってきてくれたのね。うれしいわ。ルイズ……」
「姫さま」
あまりの嬉しさに、ぽろりとルイズの目から涙が零れた。
「件の手紙は、無事、このとおりでございます」
アンリエッタの表情が明るくなり、ルイズの手をかたく握り締める。
「やはり、あなたはわたくしの一番のおともだちですわ」
「もったいないお言葉です。姫さま」
アンリエッタはシルフィードに乗っている人達を見渡す。そこにウェールズの姿がいない事を知ると、顔を曇らせる。
「やはり……ウェールズさまは父王に殉じたのですね」
はい……、とルイズは顔を俯かせて小さく答えた。
「……して、ワルド子爵は?姿が見えませんが。別行動をとっているのかしら?」
「それは…ここでは…」
ルイズの表情が曇る、あまり言いたくないのと、下手に口にしてこの場に混乱をもたらすのも避けるべきと考え周囲を見る。
アンリエッタは、魔法衛士隊の面々がこちらを見つめている事に気付いた。
「彼らはわたくしの客人ですわ。隊長どの」
「さようですか、失礼いたしました」
アンリエッタに説明された隊長は、今までの態度とは一変、杖を収めて、隊員達を促し、この場から去っていった。
アンリエッタは、再びルイズの方を向くと、
「とにかくわたくしの部屋でお話しましょう。他のかたがたは別室でお休みになってください」
アンリエッタの居間にルイズとバージルが入る、
そこで、ルイズはアンリエッタにことの次第を報告し始めた。
もちろんワルドが裏切ってウェールズを殺害した事もはっきりと言った。
裏切り者であるワルドはバージルにより処刑され、手紙は奪われずにこの手に取り戻した。
反乱軍である『レコン・キスタ』の野望はつまずき、こちらの任務は成功し、平和な時間がもどったのだ、
だが、アンリエッタは悲しみの表情で一杯だった。
「奴は…勇敢に戦って死んだ、確かに伝えた」
バージルが初めて口を開く、そこまで言うとさっさと退室していった。
「わたくしの婚姻を妨げようとする暗躍は未然に防がれたのです。わが国はゲルマニアと無事同盟を結ぶことができるでしょう。
あなたのおかげで、危機は去り、平和な時間に戻りました。ありがとう、ルイズ」
バージルが退室してしばらくの後、
アンリエッタは無理矢理にでも明るい声を出した。いつまでも落ち込んではいけないと考えたのだろう。
その後、ワンテンポ置いて、ルイズはポケットから水のルビーと風のルビーを取り出した。
「姫さま、これをお返しします」
「これは、風のルビーではありませんか。ウェールズ皇太子から預かってきたのですか?」
「はい、姫様にお渡しするようにと」
アンリエッタは早速風のルビーを手に取り指に通す。ウェールズがはめていたものなので、アンリエッタの指にはゆるゆるだった。
しかし、小さく呪文を紡ぐと、あっという間に指輪のリングの部分がぴたりとおさまった。
アンリエッタは、風のルビーを愛おしそうになで、はにかんだように笑むと水のルビーをルイズに手渡す、
「それはあなたが持っていなさいな。せめてものお礼です」
「こんな高価な品をいただくわけにはいきませんわ」
「忠誠には、報いるところがなければなりません。いいから、とっておきなさいな」
アンリエッタの言葉に折れたのか、ルイズは頷くとそれを指にはめた。
場所は変わりアルビオン、ニューカッスル、
死体と瓦礫が散乱する戦場の跡を、聖職者然とした服装の三十代の男が歩いている。
その冴えない聖職者にしか見えないその男こそ、『レコン・キスタ』の指導者にして神聖アルビオン帝国皇帝、オリヴァー・クロムウェルであった。
クロムウェルは礼拝堂へたどり着くと言葉を失う、
そこは一面赤黒く変色した血の海と化し腐臭が漂っている、礼拝堂というより、地獄を連想させる。
「これは…」
思わずそう呟きながら礼拝堂内へと足を踏み入れる、
ここにあったウェールズの遺体はすでに回収し『アンドバリの指輪』の力で蘇生させた、ワルド子爵がしくじり
虚無の娘と手紙を入手することができなかったのが残念だが、すべては順調だ。
「しかし…ワルド子爵を失ったのは少々痛手だな…」
クロムウェルはそう呟きながら始祖像を見上げる、すると崩れ落ちた天井の穴から威厳あふれる声が響く。
天には三つの赤い目が輝きクロムウェルを見下ろしていた。
「クロムウェルよ…」
その言葉を聞き慌てたようにクロムウェルが片膝をつく
「これはこれは…ムンドゥス様…」
「聖地の奪還、どうなっている」
「はっ、我が『レコン・キスタ』はアルビオン王国を陥落させ、拠点を得ることができました。
ウェールズ皇太子も我らが手中にございます」
「そうか、ではこのまま貴様に一任する」
「全身全霊をもってお受けいたします、して、スパーダの血族はいかがいたしましょうか、
情報によれば虚無の担い手の使い魔として召喚されたとか…」
「今は捨て置け、貴様らがいくら束になろうと死体の山が築かれるだけだ。
我が力は完全には復活してはおらぬでな、こうして貴様と話すにも時空が安定しない。
故に未だ少数の悪魔しかそちらへ送ることはできぬ。」
「はっ…」
「何、いずれ奴は我が元へ、魔界へ来る…自らの意思でな…」
「…」
「クロムウェル」
「はっ…」
「一人だが、兵をくれてやる、どう使うかは貴様の自由だ」
「ははっ!ありがたき幸せ!」
ムンドゥスはそう言うと、礼拝堂内部が揺れ始める。
すると周囲の血が一か所に集まり人の形を作る、
やがてそれは一人の長身の男を生み出した、
クロムウェルはその姿を見て驚愕の表情を浮かべる。
男はそんなクロムウェルに気さくな笑顔で話しかける。
「ごきげんよう陛下」
「ワルド子爵…君なのか…?」
クロムウェルは恐る恐る目の前の男―ワルドに話しかける。
「えぇ、私です陛下、ムンドゥス様のおかげでこれほどまでに素晴らしい力を手に入れることができました」
そうにこやかに言うと、詠唱もせず自身の一部を雷に変える。
呆気にとられるクロムウェルにムンドゥスは続ける。
「この場の血に残る全ての魔力を再結晶しその男を作り直した。貴様等のいうメイジ十数人分の魔力をその男は持っている、
一人だが、人間よりは役に立つだろう」
そう言うと、天に浮かぶ三つの眼が消え始める。
「クロムウェル、必ずや聖地を奪還するのだ、さすれば我が魔界はこの世界に本格介入することができる…失敗は許さん」
「ははっ!必ずや聖地を奪還してご覧にいれます!」
その言葉に我に返ったクロムウェルは急ぎムンドゥスに膝をつく。
空は元の青空へともどっていた。
場面はまたも変わりトリステイン
魔法学院へと戻った次の朝からルイズの行動が変わった。
召喚されて数週間バージルもここの生活に慣れたのか使い魔、というより使用人の仕事を放棄していた、
今まではそれに対しルイズはわめき散らしていたのだが、この日に限って何も言わない。
自分のことは全て自分でするようになったのだ。
着替えも、普段はバージルが目の前にいようがお構いなく着替えていたのだが、
なぜか顔を真っ赤にしバージルに外へ出て行くように言いだした。
断る理由もないのでバージルは外へ出る。そんなバージルにデルフが話しかけた。
「おいおい、相棒、もしかしてもしかしちゃったりするんじゃないの〜?」
「…?何のことだ?」
「気づいてるくせに〜このぉ憎いねぇ」
「…??何を言ってるんだお前は?」
本当になんのことだかわからないといった表情でバージルはデルフに尋ねる、
「…相棒…もうちょっと女を勉強しろ」
デルフが心底呆れたように溜息を吐いた
授業が始まる前、ルイズの周りにはクラスメイトで一杯であった。
この数日間、何かとんでもない冒険をして凄い手柄を立てたらしい、との噂が今一番の話題であった。
裏付け証拠に、魔法衛士隊の隊長と出発するところを何人かの生徒たちが見ていたのである。
何かがあるに違いない。そう思ったクラスメイトたちは聞きたくてしょうがなかった。
バージルに聞こうにも纏う雰囲気が怖すぎて近づけない。ゆえに矛先がルイズに向いたのだった。
「ねえルイズ、あなたたち、授業を休んでどこに行っていたの?」
クラスの代表者として話しかけてきたのは、香水のモンモランシーであった。
ルイズは澄ました顔で答える。
「なんでもないわ。ちょっとオスマン氏に頼まれたの、王宮までお使いに行ってただけよ。ギーシュ、キュルケ、タバサ、そうよね」
タバサは黙々と本を読み、キュルケは「ま、そんなとこよ」と適当に流した。
ギーシュは「そうそう、そんなとこだよ」となんだか話したくて仕方ないといった顔でうなずく、
事前にルイズにより「バラしたら姫様に報告するわよ」と釘を刺され、言うに言えない状況なのだ。
テンションがすっかり落ちたクラスメイト達は、やめだやめだといった感じに自分の席へと戻っていく。
ルイズの言動に腹を立てた人もいたらしく、負け惜しみを吐き捨てた。
「どうせ、たいしたことじゃねーよな」
「そうよね、ゼロのルイズだもん。魔法のできないあの子に何か大きな手柄が立てられるなんて思えないわ!
フーケを捕まえたのだって、きっと偶然よ、あの使い魔が一人で倒しちゃったんじゃないの?」
モンモランシーが嫌味ったらしく言った。
流石のルイズにもこれにはカチンときた。しかし、実際活躍していないのも事実である。
ぎゅっと唇を悔しそうに噛み締めるが、何も言い返せなかった。
一方バージルはその日の授業は出ずに、図書館へと足を運んだ
誰もいない一角にたどり着くと、静かにデルフを引き抜く、
「さて、親父の…スパーダの事を話してもらおう」
「あぁ、そういやそうだったな、その前にちと訪ねたいんだが、
お前さんはこの世界の宗教…始祖ブリミルについてどのくらい知ってる?」
「宗教に縁はない、が少々聞いたことがある」
「どんなことだい?」
「強大な虚無の魔法を操っていたこと、それと、俺のこのルーンを含め4人の使い魔がいたことぐらいだ」
「何を目指したか、ってのは知らないんだな?んじゃ、そこの本棚からブリミルの伝説をちと探してみろ」
「…これか」
そう言いながら一冊の本を手に取りページをめくる、
「もうちょい先だ、あぁ、そこそこ、聖地の所だ」
デルフが止めたところを静かに読む、
そこには4人の使い魔を従え聖地を目指し旅をしたものの先住魔法を操るエルフ達により阻まれてしまい、
ついには聖地にたどり着くことができなかった、と書かれていた。
「これがどうした?まさかスパーダがブリミルとやらの使い魔だった、と言いたいんじゃないだろうな?」
「まさか、その逆さ、スパーダはブリミルに敵対していたんだ」
「何だと?」
「そのままの意味さ、その本…というよりほぼ全ての歴史書にはエルフによって阻まれた、とあるが事実はそうじゃない。
エルフは特に問題にはならなかったのさ、ちゃんと聖地にはたどり着けたんだ。なんで知ってるかって?
実はな、初代のガンダールヴが握っていた剣は何を隠そう俺っちなんだぜ!」
自慢そうにデルフは語り始める。
「………」
「でだ、その聖地で待っていたのが、一人の魔剣士、スパーダだった、そいつが言うにはこの先には進んではならないと警告してきたんだ。
もちろんここまで来て引き下がるわけにはいかないさ、ブリミルと4人の使い魔は戦った、スパーダとな」
「(親父が…この世界に…?)それで…?どうなった」
「完敗だったよ、ぐうの音も出ないほどな、笑っちまうほど強かったぜ?
ブリミル含め全員が剣の一薙ぎで20メイルほど吹っ飛ばされた時は茫然としちまったよ、
つーか戦ってる途中マジで折れるかと思ったぐらいさ」
「…それが何故ここまで改変されている」
「認めたくないんだろうよ、信仰するブリミル御一行がたった一人に手も足も出なかったってのがね、
宗教ってものはそんなものさ、相棒の世界で何が信仰されてるかは知らないが、どれも似たようなもんなんじゃねぇの?」
そういうと愉快そうにカチカチとデルフが笑う、
「確かにな…だが何故聖地にたどり着いたことまでも改変されている」
「それはだな…、スパーダの話だと、聖地の向こう側は魔界につながっているらしいんだ」
「何だと?」
「スパーダは聖地の奥にある『地獄門』を守っていたらしい。開けちまったら大変だ、魔界と繋がっちまうってな」
「『地獄門』…」
「んで、ブリミルはそれを信じ、聖地を封印し後にした、ってのが本来の歴史だ」
「『レコン・キスタ』と呼ばれる連中が聖地奪還を目指すのはなぜだ?
この本を見るに聖地にたどり着くことがブリミル教徒の目的と書かれているようだが」
「あぁ、大方ブリミルの弟子の中に魔に魅入られた奴がいたんだろう、
んで長い時間をかけ聖地奪還を浸透させたってとこだろ、ご苦労なこった、
あ、ちなみにこのことを人前で言うと異端で火刑だ、気をつけろよ?ま、相棒じゃ全滅させちまうだろうがね」
デルフがカチカチと笑う。
「人は皆、潜在的に魔を恐れる…だがしばしば人は魔に魅入られ、恐れることなく闇の中を突き進む。
人間ってのは、おかしな生きものさ」
「話がつながった、礼を言う」
「いいってことよ!」
「(魔帝ムンドゥスの介入…聖地奪還を目指す『レコン・キスタ』…聖地の奥にある魔界に通じる『地獄門』…)」
線が繋がった、ワルドはまだ知らなかったようだが、裏で魔帝が手を引いている。この世界を征するために。
もしくは自分を狙っているのか、ハルケギニアの支配などそのついでなのかもしれない。
「おもしろい…」
バージルはニヤリと笑う、
貴様が俺を追ってきているのならば、俺自ら貴様の首を取りに行ってやる。
バージルは決意を固める、必ずや魔界へ赴き、魔帝の首を取ると。
ガンダールヴのルーンですら永劫破ることはできないであろう強固な決意だった。
「しっかし、ブリミルの敵であったスパーダの息子が、ガンダールヴたぁね、皮肉ってものを感じるぜ…」
踵を返し、図書館の出口へ向かうバージルにデルフが話しかける。
「…そうだな」
「んで、相棒、聖地へ行くのかい?」
「今すぐにでも行きたいところだが…情報がまだ足りんな、
それに…そこまでの道のりがわからん、多少なり路銀も必要になる。お前は何か覚えてないのか?」
「わりぃ、覚えてねぇな」
「チッ…期待してなかったがな」
「ひでぇな、ま、気長に情報を集めりゃいいさ…。お、ありゃタバサじゃねぇか」
バージルが視線を向けると、タバサがこちらに向かって歩いてきた。
「本、読めた?」
タバサはバージルに話しかける
「お前のおかげで読み書きも問題ない、礼を言う」
そう言うと図書館の外へ向かうバージルにタバサが話しかける、
「タバサ」
急に自分の名前を言い出したタバサにバージルは振り向き怪訝な顔をする、
もちろんすでに知っている、いまさら自己紹介が必要な仲ではない。
「知ってるが…急になんだ?」
「名前で呼んで」
何を言い出すかと思えば、なんだそんなことか、とバージルは軽く鼻をならす
「次に呼ぶことがあればな…」
そう言いながらバージルは振り向かず歩き去った。
タバサはどこか嬉しそうな表情を浮かべ(それこそよくみないとわからないが)
どことなく軽い足取りで図書館の奥へと消えていった。
バージルが部屋へと戻ると、ルイズのベットの前に
シーツを天井から吊り下げた簡単なカーテンが出来上がっていた。
その中でルイズが着がえをしているのだろう、ガサゴソと音が聞こえてくる。
それを特に気にするわけでもなく、椅子に腰かけ図書館からこっそり頂戴してきた本を読み始める。
そうしている間に、カーテンが外され、ネグリジェ姿のルイズが顔をだした。
「あら?帰ってきてたのね?一日見なかったけどどこいってたのよ」
それに答えることもなくバージルは読書に耽る。
邪魔しちゃ悪いと思ったのか、ルイズはそのままベッドの上からバージルを見ていた。
やがて消灯時間となり、ルイズが声をかける
「そろそろ寝るわよ、明かりを消すわ」
その言葉とともにバージルがパタンと本を閉じる、
それを確認したルイズが杖を振り机の上の明かりを消し、ベッドに横になった。
バージルはそのまま脚と腕を組み、目を閉じる、バージルの寝床はたいていはこの椅子となっていた。
明かりが消え数秒後、ルイズががばっ!とシーツごと身を起こし、バージルに声をかける。
「ね、ねぇ、バージル?」
「…なんだ」
目を開け短く答える
しばらくの沈黙、ルイズは顔を赤くして言いにくそうにしているのだが、バージルは気がつかない。
「用がないなら呼ぶな」
にべもなくそう言うと再び目をつむってしまった。
「えと、その……いつまでも、椅子ってのはあんまり…よね。だ…だから……その、ベッドで寝てもいいわよ?」
「断る」
一瞬で答えが返ってきた。鞘に収まった閻魔刀が抜刀されるがごとく。
「なっ…なんでよ…?別にかまわないのよ?」
あまりの速度にルイズは思わず肩をずるっと落とした。
「もはや慣れた、今さら変えられると迷惑だ」
「そ、そう?なら別に構わないわ…」
ルイズはおとなしく再びベッドに横たわる。
「(今さら…か…もう少し早くなら…一緒に寝てくれたのかな…)」
そう考えながらルイズが声をかける
「ごめんね、私なんかが召喚しちゃって」
「お前には命を救われた、そのことには一応感謝している」
「一応って何よ…」
「俺は、いずれ魔界へ行く」
バージルの口から飛び出してきた言葉に再びガバっと起き上がる。
「何ですって?」
「魔界へ行き、魔帝を討つ、そのために救われた命だ、お前には感謝している」
「何よそれ…」
思わずルイズが呟く、バージルが魔界へ?手も届かないほど遠くへ行ってしまう?
そう考えると急に胸が苦しくなり、鼓動が速くなる。
「ダメダメダメダメ!!絶対ダメ!!」
突如頭を横に振り叫び出すルイズに静かにバージルは視線を向ける。
「なぜだ?」
「なんでも絶対ダメ!魔界に行くなんて!そんなの絶対認めないんだから!」
「まだかかる時間も方法もわからんのに、気の早い女だ…」
「そんなの関係ない!あんたは私の使い魔だもん!絶対遠くになんか行かせないから!」
半ば涙声になって叫ぶルイズをあきれるようにバージルが見つめる。
「俺の命だ、好きに使わせてもらう」
そうあっさり言うと再び目を閉じる。
その言葉を聞いたルイズが枕を投げつける、それを片手で受け止める。
「あんたもウェールズ殿下と同じよ!残される人の気持ちをなんで考えないの!?」
「知らんな、考える必要があるのか?」
そういいながら枕を投げ返す、
「ばかっ!ばかっ!ばかばかばか!大ありよ!このばか!」
自分のもとにもどってきた枕を叩きながら叫ぶ、
「理解できん、もう寝る、少し黙れ」
「もう!このわからずや!とにかく絶対行かせないんだから!」
そう言いながら頭からシーツをかぶり泣き出してしまった。
「くだらん…」
バージルは静かに呟くと、静かに目を閉じた。
150 :
蒼い使い魔:2008/09/03(水) 03:09:57 ID:8rYA/HQl
とりあえずここまでです、
最初のアンアンの下りは正直メンドかった、ごめん
再登場時のワルドは全裸なのか服を着ていたのかはご想像にお任せします、
それではどうもでした
乙、ツンツン兄貴再び
ワルドはきっと全裸だ!
きっとタルブの時は全裸で出撃のはず!
全裸だが靴下は履いている。
なぜか全裸+黒ニーソを想像してしまったorz
ワルドは貴族だからマントだけを着けています。
見せちゃいけない所は雷に変化しています。
結論:全裸+マント+股間に雷
乙でーす
しかし、2といい4といい親父は色んな所で伝説残してますなぁ
さて、魔帝強化されたとは言え十数人分で果たして足りるか?
まぁ、分身がその分増えて空間攻撃出来れば勝負には持って行けると思いますが
もっこりブーメラン&黄色地に赤の稲妻模様のマフラーのみ装備のワルド
頭髪が帯電してサリーちゃんパパヘアーに・・・ w
羽帽子とマントで全裸だろ常考
背中に変な感触と生温かさを感じ乗られるのを拒む飛竜
大事なところはヒゲで隠しているんですね、わかり(ry
ずっと待ってたさぁう゛ぁんとの人乙!
毎回ボリュームたっぷりで堪能させて貰ってます
ワルドの心境は理解出来るが一言で言うなら「このロリコンめ!」
そしてバージルの人乙
メイジ十数人分の魔力程度でバージルに敵うのか、それが問題だ
全裸ならギャグ補正でどうにk(ry
しびれる こかんに しょうげきは !!
ワルドの人気に嫉妬w
そしてタバサにやられた
なんかわかんないんだけど、気のせいかな
最近の投下者、みんな一回の投下両が妙に少ない気がする
規制回避?
おはようございます。第8話が書き終わりました。
予定が無ければ投下したいのですが、よろしいでしょうか?
なんか、予定とか無さそうなんで、投下行かせてもらいます。
”氷嵐”<アイスストーム>の威力は凄まじく、ジャンガを飲み込むだけに止まらず、その周辺の地面を抉り、宙へと巻き上げた。
巻き上げられた土砂は片っ端から冷気によって凍りつき、土煙の中で太陽の光を反射し輝きを放つ。
それは見ている者を釘付けにするほど美しく、攻撃の魔法だと言う事を忘れてしまいそうになる。
そんな幻想的な光景を作り出している”氷嵐”は、飲み込んだジャンガを容赦無く切り刻む。
その様子を”氷嵐”を詠唱したタバサはただ静かに見つめていた。
やがて、”氷嵐”はその勢いを衰えさせ、消滅した。
後には時折キラキラと輝く氷の欠片が混ざり濛々と立ち込める土煙と、沈黙だけが残った。
決着がついても誰一人として動けなかった。”氷嵐”の美しさと威力に目を奪われた事もあるが、
それ以上にその魔法を詠唱したタバサの実力に驚いた事が大きい。
普段ボーっとしていて、読書ばかりしている彼女がここまで強力な魔法を使うとは誰も夢にも思っていなかった。
親友であるキュルケですら、今の”氷嵐”の威力には面食らっていた。…あの子、こんなに強力な魔法を唱えられたの?
(あの威力…どう見てもスクウェアに匹敵するじゃない…)
タバサのランクは彼女と同じトライアングルだ。だが、今のトライアングルスペルはスクウェアの威力を持っている。
何時の間にあれほどの実力を付けていたのだろう?それとも、敢えて隠していたか?
彼女の性格を考えれば、目立つのを嫌って後者であろう。
やがて、土煙が晴れてくると視界が開けてきた。
そこにはズタボロになり、半死半生のジャンガの姿が――在る筈だった。
「え?」
タバサの顔に始めて驚愕の表情が浮かぶ。そして、それはその場に居た全員がそうだった。
土煙が晴れた後には砕け、凍り付いた地面と氷が融けた跡であろう、水溜りがあるだけだ。
――肝心のジャンガの姿が無い。今の”氷嵐”で跡形も無くなった……とは考え難い。
しかし、あの怪我で今のタイミング、かわす事は出来なかった筈だ。
なら…ジャンガは何処に?――そう思った時である。
「キキキキキ……楽しませてもらったゼ?」
タバサを嘲笑うかのように、あの笑い声が聞こえてきた…。
タバサは反射的に、その笑い声の方に顔を向ける。他の生徒達も全員がその方へ、一様に顔を向ける。
決闘の場から少し離れた場所……そこにジャンガは立っていた。
驚愕の表情を浮かべるタバサを見て、ニヤリと笑う。
「ほゥ?おめェでもそんな顔をするんだな…、こりゃ傑作だゼ!」
そんなジャンガの言葉にタバサは我を取り戻し、鋭い視線を向ける。
「解らない」
「あン?何がだ?」
「今のを避ける事は出来なかった筈。それだけじゃない、貴方は既に怪我を負っていた。
なのに…その傷が何処にも見当たらない」
タバサの言葉にキュルケとルイズも同意だった。
そうなのだ…例え運良く”氷嵐”を回避できたとしても、ジャベリンで付いた傷までは無くならない。
それなのに、ジャンガは血の一滴も垂らしておらず、尚且つ服も特に乱れた様子は無い。
自分は…いや、この場に居た誰もがジャベリンに突き刺されたジャンガの姿を目撃している。
それにあれは分身などではない、紛れも無い本物だった筈だ。
…なのに、どうして?
「ああ…その事か」
タバサを見ながら、悩むほどの事か?とでも言いたそうな顔でジャンガは言った。
「別に簡単な事さ…、あれは俺の”分身”だ」
「!?」
タバサの顔に再び驚愕の表情が浮かぶ。分身…?実体を持っていたあれが分身?
実体を持っているだけではない、あれは自分と話をしていた。本物となんら変わりなかったと言うしかない。
そう…まさに風のスペル『偏在』<ユビキタス>その物だ。
だが、相手は亜人でメイジではない…、とすれば――
「貴方、先住魔法が使えるの?」
「先住魔法?…キキ、そんな物は知らネェなァ〜?」
ジャンガが笑うと、その背中から別の人影が現れる。その人影もジャンガだった。
新たに現れたジャンガはゆっくりと最初に居たジャンガの右横に並んだ。
見た限り、先程の分身と大差は無い様に思える。
「これが今しがた、テメェの魔法を受けた分身だ」
新たに現れたジャンガが口を開いた。その流暢な喋りは分身とは到底思えない。
腹話術でもしているのかと思えば、ジャンガ本人は笑みを浮かべながら黙ったままだ。口を動かしている素振りすらない。
どう言う仕組みなのか解らず、タバサやギャラリーが困惑していると、また一体、別の分身が現れる。
今度はその分身が口を開く。
「キキキキキ、”こっち”で分身がどう取られているかは知らねェがよ……この分身は俺の切り札さ。
数多く作り出し、相手を翻弄するだけのただの分身と違い、こいつは本体と何ら変わりネェ」
本体の背後からまた一体、分身が飛び出す。空中で一回転して着地するや、立ち上がると口を開く。
「俺の意思一つで自在に動かせる上に、最高で三体まで作り出せる」
そこまで話すと、分身は横に移動する。分身の背後のジャンガ本人の姿が見える。
口の端を吊り上げ、ニヤリと笑う。
「キキキ…、こいつを切り札にしてる理由がよ〜く解るだろう?」
タバサは平静を装いつつも、内心は驚きと焦りを抑えられなかった。
過小評価をしていた、としか言いようが無い。まさか、『偏在』とほぼ同等の分身の術を扱えるとは思わなかった。
あのスピードを持つ、分身三体を含んだ四体による同時攻撃を受けたら、捌ききれるか分からない。
一方、ジャンガも小馬鹿にした態度の裏側では、自身の事で疑問を感じていた。――切り札の分身だ。
実は本来、この分身は”数を増やすと操作の制限を受ける”のである。
距離を離しても、自身と全く変わらぬ動きをさせられるのは一体の時だけだ。
二体の場合、距離が開き過ぎてしまうと、その操作が利かなくなってしまう。
三体にすると最早距離に係わらず、全く同じ動きをさせるのは不可能であり、
飛び退いて突撃する、順に跳び上がり相手に跳びかかる、等と言った単純な動きしかさせる事が出来ない。
本来ならば、喋らす事も出来ないはずなのだ。
にも係わらず、あの時分身は自分の言葉を喋っていた。冗談半分でやってみたら、分身がその通りに話したのだ。
今も目の前のガキ共に解説してやった時も、実験のような意味合いで、分身を作り出して喋らせたのだ。
一度に三体全員に喋らす事は出来ず、分身に話させている時は自分は話せない。
また、喋らす事に関しては制限を受けているが、その他の操作に関してはまるで問題が無い。
無論、距離を離してもだ。
――いよいよジャンガは気になってきていた。
分身だけでない、カッターや毒の爪等の武器の破壊力と切断力。足の速さや跳躍力など、純粋な身体能力も強化されている。
正直、”向こう”に居た時とは比べ物にならない力を自分は得ている。何が原因なのだろう…やはり召喚か?
…疑問は尽きないが、とりあえずはその問題は置いておく事にする。
「さてと……お遊びはここまでだゼ…」
そう呟くと、三体のジャンガが瞬時に移動し、タバサを取り囲む。
ニヤリと笑い、人がパチンと指を弾くように器用に毒の爪を弾いた。
同時に動き出す三体のジャンガ。爪を振りかざし、三方向から襲い掛かる。
タバサはかわすべく、フライの呪文で飛び上がるが、そこへ明後日の方向からカッターが飛んできた。
身体を反らし、寸での所でかわす。…カッターに触れた髪の毛が数本、宙を舞う。
カッターの飛んで来た方向へと目を向ける。爪を構えて笑うジャンガが見えた。その場から動いていない、おそらく本人だろう。
再び爪を弾くジャンガ。空中のタバサに二体分身が跳びかかり、爪を振るう。
地面へと急降下し、着地する。それを待っていたとばかりに、もう一体の分身が襲い掛かる。
爪の連激をかわしつつ、タバサはジャベリンを放った。ジャベリンは分身の身体を貫くが、その程度では消えないようだ。
ジャベリンを突き刺したまま、休む事無く攻撃を続ける。
そこへ他の二体も加わり、タバサへの攻撃の手は激しくなる一方だ。
防戦一方なタバサをニヤニヤしながら見つめるジャンガ。
「キキキ、どうしたどうした?さっきから逃げてばかりじゃねェかよ。さっき分身を潰した時の余裕は何処だァ?」
相手に余裕が無いのを知りつつ、タバサを挑発する。
そんなジャンガにルイズとキュルケの抗議の声が飛んだ。
「何威張ってるのよ!?分身に戦わせて、アンタはただ見てるだけじゃないの!」
「どう見ても4対1じゃない、こんなの卑怯よ!決闘なのに、正々堂々と戦えないの!?」
うるさそうにジャンガは二人を睥睨する。
「うるせェよ!卑怯は俺の専売特許、チャームポイントさ。勝てれば何でもいいんだよ、戦いってのはそういうもんだ。
それに数で戦うのが卑怯なら、さっきのキザ野郎も卑怯じゃねぇかよ?まァ、弱かったけどな…キキキ」
笑いながらジャンガは視線をタバサに戻す。
三体の分身の猛攻にタバサは勝機を見出せず、防戦一方だった。
三体の連携は非常に優秀で、それぞれの攻撃の隙を別の分身の攻撃が見事にカバーしている。
おまけに攻撃の速度も同等である為、かわす事に集中しなければすぐにでも一撃をもらってしまいそうだ。
さきほどのジャベリンで貫いた分身を減らせなかったのは本当に痛い。
どうすればいい…、どうすれば…。タバサは攻撃をかわしながら、必死に考えた。
――やはり、あれしかないだろう。考え抜いた末、タバサはその結論へと達した。
目の前の分身の相手をしていても自身が消耗するだけ…、ならばそれを作り出し、操る大本を叩くしかない。
…狙うは本体のジャンガ、ただ一体。
すぐさま、頭の中で作戦をシミュレートし、タバサは呪文を唱えると、その場から飛び退いた。
離れた場所へと降り立ったタバサは、丁度ジャンガと真正面から向かい合う形になった。
対峙する雪風と毒の爪。
すぐさま分身がジャンガの前方に壁を作る。
タバサは杖を握る両手に力を込めた。――チャンスは一回……失敗は許されない。
「キキキキキ、そろそろお別れの時間だぜ?」
楽しそうに笑うジャンガが爪を弾く。
駆け出す分身。
それを迎え撃つように分身へと駆け出すタバサ。
タバサの行動に驚き声を上げるキュルケとルイズ。
三体の分身が一斉に躍り掛かる。
タバサは片手でマントを外し、それを前方に大きく翻した。
翻されたマントにタバサの小柄な身体は隠れ、一瞬姿を消す。
三体の分身は目標を見失い、爪はマントを切り裂く。
切り裂かれたマントの先に、小柄な少女の姿は既に無い。
僅かに生じた隙を見逃さず、タバサは分身の網を掻い潜っていた。
目を見開くジャンガ。
カッターを放とうと爪を振り上げる。
しかし、タバサが杖を構える方が早かった。
僅かな時間で完成させた呪文を解き放つ。
ジャベリンが飛び、ジャンガの腹部を貫いた。
ジャンガが爪を弾いてからジャベリンがジャンガに突き刺さるまで、時間にして約5〜6秒ていどだ。
だが、タバサやその場で見守っていた生徒達には永遠にも思える長い時間に感じられた。
そんな極限状態から開放され、タバサは荒く呼吸を繰り返した。
ジャベリンに腹部を串刺しにされたジャンガが苦痛に顔を歪めるのが見える。今度こそ勝った、誰もがそう思った。
だが、その時タバサは見た。――ジャンガが苦痛に歪めた顔を一転させ、馬鹿にするような笑みを浮かべるのを。
「タバサ!危ない!!!」
――親友の声が聞こえたと思った瞬間…、タバサの背中は大きく切り裂かれた。
以上で投下終了です。分身あれこれの説明は原作のジャンガとバトルを繰り返し、
分身の性能を見た上で、自分なりの解釈で考えた物です。
爪を弾いて音を出すのは少々無理があるかな?とは思ったが、やっぱり指パッチンはこういう場面でお約束でしょう(笑)
あと、パーフェクトブックを見て、キャラクターの成分を示す円グラフが気に入ったので、便乗してジャンガのも作ってみたり。
ジャンガの成分
欲望(89.9%):彼の行動原理、生きる目標。満たしても満たしても次が鎌首を上げる。満たすためには手段を選ばない。
ヒミツ(10%)(0.1%):今は明かせない部分。
こんなところですかね?ヒミツの部分は自分のオリジナルです。
今後の話の展開しだいでは変化あるかも?
では。
オスマンはよ鐘鳴らせ乙w
バージルの兄貴がどんどん軟化していく・・・orz
いちいち相手すんのが疲れたんじゃねーの?
子供集団だしな
バージルはかるく流してるだけってイメージがした
考えてみればハルケギニアに来てからバージル兄貴の全力戦闘って無いなー、と。
ほんとに流してるだけで大概の奴らはずんぱらさ、だしなぁ。
一応全力出さなくていい相手に絶刀は使ったね。
まぁ使っただけで全力かは解らないけど。
まぁ今更ワルドがネヴァン化しても瞬殺な気がするのは私だけじゃないはず。
>ネヴァン化
全裸のワルドがグルグル回ったり
抱きついてくるの想像しちまったぜ
遅レスですが昨晩投下された皆様方お疲れ様でした
しかし考えてみると「魔除け」ってゲッター線と変わらんな
>>174 ワルド<いらっしゃい坊や、こういうところは初めて・・・?
って言いながら襲ってくるのか・・・全裸で
吐いた
ナムカプでしかジャンガ知らんが偏在っぽいの使えたのかよ
前回の話でタバサに半殺し後下僕コースかと思ってただけにこの演出はええのう
前スレのユダ様といい、なんでゼロ魔世界って極悪キャラと相性いいんだろう?
突然ですが前スレの
>>989 スーパーマンは公式設定で極端に魔法に弱いのですよ
魔法を習い始めたばかりの七歳児の魔力を拳に纏わせたパンチで死にかけたくらい
他にも幻覚や精神操作の類には異常なほど弱いんだって
ナデシコやエヴァキャラも双方のSS全盛の頃だと多かったんだろうかね
ガンダ効果で体内のナノマシンがうまく活性化して失われた五感が(これもSS設定かも知らんが)戻るとか
シエスタが原作で消えたイツキの子孫とか
バッパンなる花火とか
一億人入れる中庭とか
>>178 別にユダ様は極悪じゃあないだろう。世紀末だっただけで。
しかし、便利な言葉だ世紀末。これであの理不尽な世界の80%が解決できるw
>原作で消えたイツキ
実は映画の後、セガサターンで公式続編のゲームが出てるんだが、
それで帰ってきてるそうな。
プレイして無いから詳しい内容までは知らんがな!
>>181 純粋な悪人はジャギとかアミバくらいだよな
でも小物なんだよな
>>180 失った五感を取り戻したとして
アキトの能力はどんな感じになんだろ
一般人より強いと思うからサイトよりかは使えると思うが
>>179 公式っていつの時代の公式だよ。
スーパーマン単体以外での設定は公式っつわないぞ
>>181 つまり、ゼロ魔世界も世紀末なわけなんですね、わかります。
ところで、ルイズが獄中よりスカ博士を召喚なんて電波が来たのだが
文才がなくて書けない・・・・
>>186 ちょっと待て
ろくな設備無しに科学者喚んでもほぼゼロから設備作れるようなトンデモサイエンティストじゃないと色々無茶だと思うぞ
しかも獄中から喚んだらカギ爪型のデバイスみたいなのも無いし最大戦力のナンバーズも……
聖地に設備が飛んできててロマリアにはナンバーズの入ったポッドがとかそんな感じならギリギリ行ける?
ここまで言ってから聞くのもアレだがリリカルなのはストライカーズのジェイル・スカリエッティだよな?
獄中つってるから多分本編終了辺りの。
Welcome to this crazy time♪
このイカレた時代へようこそ♪
これがゼロ魔のOPになるんですねわかります
>>185 死にかけたのは2004年発表の作品内での事
勿論クロスオーバーではなく単体作品です
DCコミック出版の公式設定資料でも「魔法及びテレパシーのような精神系の攻撃に極めて弱い」とありますです、はい
>>187 そう、本編終了後のスカリエッティ博士。
コルベールとギーシュとタッグを組めばきっとなんとかしてくれるはず・・・
持病?の無限の欲望も眼前に広がる手つかずの自然と異なる体系の魔法の前には癒されると信じてる。
スーパーマンとかバットマンとかアメコミのキャラとか世界観って描く人によって違うらしいからあまりあてにならないらしい。
192 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/03(水) 15:57:42 ID:PB+qjH0x
誰かルーデルさんで物語進行させてくれんかなぁ
もしくはランス
sage忘れすまん
バージルの人乙です。
それにしてもここのタバサは可愛すぎるな。
「名前で呼んで」
「次に呼ぶことがあればな…」
あれ?これって死亡フラグじゃね?
>>190 6巻あたりでゼロ戦の部品や薬莢を作ろうとしただけでも、
「スクウェアクラスの錬金でも無理だ」とか言ってたから、何かやろうとしてもかなり難しくね?
しかしそうなると、ロボットものの召喚はかなり制限が付くなぁ。
あ、そうか、だからみんなやれないのか。
>>195 だからその辺が自前で補える木原さんちのマサキ君に俺は期待大。
>>196 次元連結システムってそんな事も出来るのか。
俺はてっきり単なるメチャクチャ高出力エンジンみたいなもんかと思ってたよ。
ゼロ魔とは関係ない書き込みをしますが、
>>191 アメコミは同名で設定違いがでたらそれはほぼ公式でパラレルワールドになる。
だからスーパーマンしか存在しない世界もあれば、スーパーマンとバッドマンが同時にいる世界もある。
ウルヴァリンの初出がスパイダーマンだったりするし。
Xメンなんかはそれが顕著にでてる。プロフェッサーXが死んでXメンがなくなった世界もあれば、存命してる世界もある。
アマルガムブラザーズやギャラクタスやオンスロートなんかの宇宙の神々が出てる作品だとそれについて説明されてるはず。
スレチすまん。
そういえばアメコミって何気にクロスものが多いね
しかも、公式で…
>>199 版権が作者でなく出版社にあるから好きな事が出来るのですよー
絵描きもシナリオライターもコロコロ入れ替わるから「作者急病or鬼籍による中断とか打ち切りなんかが無い
その分「深い設定」ってモンが作れないけど
>>197 原作通りのシロモノなら、コアが無事である限り、パイロットごと全体を再生できる
ガイバーのコントロール・メタルと同じ・・・って、作者同じんだから当然だが
>>196 確か本人いわく「これも次元連結システムのちょっとした応用だ」で
ゼオライマーから降りてても自分にバリアだって張れます
ターミネーター対スーパーマンとかもあるのにはびっくりしたよ。
アメコミは作品タイトルではなく、「マーブル」というものがひとつの大きな世界だからな。
あくまでタイトルのある作品はそこから派生した世界のひとつにすぎない。
だからクロスだろうが蹂躙だろうが厨設定で好き勝手やれる。
あと、確かバッドマンは全作品共通で人類の範囲では最高峰の頭脳と肉体と財力をもつ者とされてる。
どのみちゼロ魔にだすには強すぎるわな
>>201 あの「鉄の塊」がシステムのコアなのか、それともただの残骸なのかで話が随分違ってくるな
そういえば「マーヴルゾンビーズ」でゾンビと化したハルクとスパイディ達がセイバートロン星を襲撃したとか聞いた
デストロンとサイバトロンが協力してかろうじて防いでたけどスタースクリームが手下連れて逃げ出したせいで
壊滅したのだとか
投下予告すれば新しく書いてもいいんですよね?
207 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/03(水) 16:42:53 ID:jGWmqa3V
かむかむ。
作者が同じってことで・・・
アプトムで長編希望
投下分は完成した?
間違えやすい用語、誤字脱字のチェック、推敲がすんで
テンプレを読んだならカモン
>>206 もしかして、「投下前の確認」じゃなくて「執筆前の確認」なのか?
>>211 まあ「新たな戦士が刃を研いでいる」と思えばワクワクしてくるじゃないか
まさかとは思うが、リアルタイムで書きながら投下するんじゃなかろうな…
結局投下はない、のかな?
ないようだったら第十六話投下させていただきたいのですが……
>>214 どうぞどうぞ
投下は大分後になりそうな予感ですので
それではお言葉に甘えて始めさせていただきます
使い魔はじめました―第16話―
「ユビキタス・デル・ウィンデ……」
ギトーと名乗った教師が呪文を唱える。
それが完成した瞬間、ギトーが二人に増えた。
生徒達からは、げえっ、と不満そうな声が上がった。
サララはそんな情景を見て驚いて声を上げそうになった。
「「さて、これが風の『遍在』だ。風の魔法が最強たる所以の一つだな」」
二人のギトーが声を重ねながら説明した。
だが次の瞬間には片方のギトーが掻き消えた。
「もっとも、最強とはいえ弱点もある。遍在は精神力の消耗が激しい。
こういった授業の時に、あまり長く出しておくわけにもいかない」
一人に戻ったギトーが淡々と説明を続ける。
「さて、この『遍在』だが意志によって存在する距離を伸ばすことができる。
当然だな。魔法の強さは精神の強さによってその威力が変わる。
遍在の場合は、その発動距離が変わるということだ」
黒板に何事かが書き込まれ、生徒達はそれを書き写す。
あれ何が書いてあるんですか、とサララは小声でルイズに尋ねる。
「『意志の強さは精神力であり、精神力と遍在を出せる距離は比例する』よ」
成程、とサララは納得した。サララの知る魔法も、行使者の賢さに比例し威力が上がる。
それと同じようなものだろう、と理解した。
「ミス・ヴァリエール! 使い魔とのお喋りは慎みたまえ!」
ルイズの私語に気づいたギトーがぎろり、と睨みを聞かせた。
「も、申し訳ありません、ミスタ・ギトー」
慌てて、席から立ち上がった。
「お喋りをしているということは、理解できているということだな。
では教えてもらおうか。風の魔法の最強たる所以の一つは先ほどあげた遍在。
もう一つは見えずとも諸君らを守る盾となりうること」
ギトーはかつかつとチョークで黒板に書き込む。
「ではもう一つが何かは……分かるかね?」
その言葉に立ち上がっていたルイズは、はた、と考え込む。
ずっと以前。その言葉を何処かで聞いた気がするのだ。
本で読んだのだっただろうか……と考える。
それに思い当たって、あ、と小さく声を上げた。
「必要とあらば敵を吹き飛ばす矛となること……ですか?」
ルイズがおそるおそる答えると、ギトーがふん、と鼻を鳴らす。
「正解だ。……それは母君の教育の賜物であろうな。座ってよろしい」
その声にいくらか満足そうなものが含まれる。
黒板にその答えを書き示していくギトー。
ペンが走る音の中で、あの地獄耳、と呟くルイズの小さな声が耳に届く。
そんな彼女の声を聞きながら、ギトーはニヤリと笑った。
風のメイジ、それもスクウェアに近いトライアングルである彼にとって、
教室にいる生徒の声を拾うことなど造作もないことだ。
授業を続けながら、彼は追憶する。
彼が風を最強だと思うようになったのにはある理由がある。
幼い頃、友人たちと遠出をし、橋のたもとで遊んでいた時のことである。
突如として爆音が鳴り響き、あちこちから馬の蹄の音が響いた。
彼は知らなかったが、近くに住む貴族が反乱を起こし、そこは戦場となったのである。
そんな彼を救ったのは、烈風をまとった一人の騎士であった。
マンティコアにまたがった騎士は、彼の見る前で敵を殲滅していった。
自分もあのように強い風のメイジになるのだ、と幼い日の彼は心に誓った。
先ほどあげた言葉は、その騎士が彼に聞かせてくれたものである。
その騎士の正体が、今のルイズのように年若くスレンダーな体つきの美少女だったのが
純朴な少年だったギトーの心を刺激しなかった、といえば嘘になろうが。
支援します。
「あいや、失礼しますぞミスタ・ギトー!」
追憶に走っていたギトーは、突如として開いた教室の扉と、
そこから聞こえてきた声に現実に引き戻される。
「ミスタ・コルベール?」
ギトーが眉をしかめた。彼はあまりにも珍妙な格好をしていた。
頭には馬鹿でかいロールした金髪のカツラをのっけている。
みると、ローブの胸元にはレースの飾りやら刺繍やらが乗っている。
「まるで、マルローニさんみたいだね」
チョコの言葉に、サララはうんうん、と頷いた。
「えーおっほん。急な話ですが、今日の授業は全て中止です」
生徒達から歓声が上がる。その歓声を抑えるように両手を振りながら、
もったいぶった調子でコルベールがのけぞる。
その瞬間、カツラがとれて床に落っこちた。
「滑りやすい」
教室が爆笑の渦に巻き込まれる。サララやチョコも、抑えていた笑いが爆発する。
「あはははは! す、滑りやすいって、あははは!」
「あなた、たまに口を開くと、言うわね!」
キュルケが笑いながらタバサの肩をポンポンと叩く。
タバサも、どこか満足そうな顔をしている。
多分、うまいこと言ってやった、と思ってるに違いない。
コルベールは顔を真赤にすると大声で怒鳴った。
「ええい黙れ小童! 折角アンリエッタ姫殿下が行幸なさるというのに!
こんなことでは王宮に会わせる顔がありません!」
姫殿下、という言葉を聞いた瞬間、ぴたり、と笑いが止まる。
「……今から式典の準備を行います。生徒諸君は正装し、門前に整列するように!
粗相があってはなりませんぞ! 立派な貴族に成長したことを、
姫殿下にお見せする絶好の機会です! しっかりと杖を磨いておきなさい!」
その言葉が終わると同時に、生徒達はざわめきながら教室を出て行き始めた。
姫殿下を出迎えた時、とりたてて変わったことはなかった。
ただ、ルイズが傍に控えた騎士の顔を見て、顔面が蒼白になったくらいである。
「あのお姫様も、綺麗な人だったねえ。まるでオーロラ姫みたいだ」
チョコの言葉に、サララは何度かお目通りしたことがある城の姫を思い出す。
青とも緑ともつかぬ深く美しい波打つ髪に、透き通るような白い肌。
星の光を宿したかのようにきらめく瞳。実に美しく、可愛らしい女性だった。
そういえば、彼女の小鳥は王宮で元気にやっているだろうか。
今頃は綺麗な金色に戻っているのかな……と思いを馳せていた。
騎士を見て以降ぼけーっとしたままのルイズと、
思い出に浸りながらぼけーっとしたままのサララと
眠くなってきてぼけーっとしているチョコ。
そんな穏やかな時間を壊したのは、一つのノックの音だった。
初めに長く二回、それから短く三回……。
「誰だろ?」
眠たげに目を半開きにしてチョコが呟く。
ルイズの顔がはっとした顔になった。急いで立ち上がり、ドアを開く。
そこに立っていたのは、真っ黒な頭巾をすっぽりとかぶった少女だった。
辺りをうかがうように首を回すとそそくさと部屋に入り、後ろでに扉を閉めた。
彼女は、しっ、と言わんばかりに口元に指を立てた。
それから、頭巾と同じ漆黒のマントの隙間から、魔法の杖を取り出し、
短くルーンと唱えながら振った。光の粉が、部屋に舞う。
「……ディテクトマジック?」
ルイズが尋ねた。少女は頷く。
「昔から壁には耳があり窓にはメアリーがいると聞きますから。
聞かれたくない話をするには注意をしないと……」
「こっちの慣用句には詳しくないけどそれ違うと思うよ」
少女の言葉に対するチョコの突っ込みは流された。
部屋のどこにも聞き耳を立てる魔法の耳や覗き穴がないことを確認し、少女は頭巾をとる。
「ひ、姫殿下!」
現れたのはアンリエッタ王女その人であった。ルイズは慌てて膝をつく。
サララもそれにならって膝をついた。
アンリエッタは涼しげな、心地よい声でいった。
「お久しぶりね、ルイズ・フランソワーズ」
sien
アンリエッタとルイズは、再会を祝して抱き合いながら昔話に花を咲かせている。
楽しそうだなあ、とサララはニコニコしながらそれを見ていた。
「……まるで劇を見てるみたいだね」
二人の大げさな動きに、チョコはちょっぴり呆れ気味だ。
「それで、姫さま、何かお話ししたいことがあるのでわ?」
ある程度はしゃいだ後で、ルイズが真剣な眼差しで彼女を見る。
その視線に少し戸惑うものの、やがてアンリエッタは彼女を見つめ返した。
「ええ。……単刀直入に言いますわ、ルイズ・フランソワーズ・ド・ラ・ヴァリエール。
あなたと……あなたの使い魔に、一つ命令を下したいのです」
いきなり自分が話題に出てきて、サララが目を丸くする。見えないが。
「ひ、姫さま、どうしてサララを、私の使い魔のことを?」
ルイズが驚きながら問いかける。
「土くれのフーケを追い詰めた異国の魔道具使い、という報告が
私の耳にも届いていましてよ」
王女はサララをちらりと見やった後で、再び向き直る。
「あなた方の実力を見越して頼みがあります。
非公式ですが、命令ということになりますわ」
ちょっと逡巡しながらも、アンリエッタは言葉を続ける。
「……命にかかわる任務です。断るなら今しかありませんよ。
ああ、けれど、あなたに断られたら身の破滅ですわ!」
よよよ、と目元をぬぐうアンリエッタ。
「わ、分かりましたわ! いかな困難があろうとも、このルイズ!
あと使い魔のサララとチョコ! その任務を果たしてみせます!」
ルイズが薄い胸をどん、と叩いて意気込んだ。
「ああ、ありがとうルイズ……! では説明させてちょうだい」
アンリエッタは涙を拭くと、説明を始めた。
「実は王宮の中で、私とゲルマニアの皇帝の婚姻による、
対レコンキスタへの同盟の話が持ち上がっているのです」
「あの成り上がりの国とですって!」
ルイズが腹を立てて叫んだ。ゲルマニア……とサララ思い出す。
確か、隣室のキュルケの故郷ではなかっただろうか?
そういえば、彼女の国では魔法が使えなくとも貴族になれる、とか聞いた気がする。
まあ成り上がりといえないこともないかな、と思う。
「レコンキスタって何? 怪物?」
チョコの問いかけにルイズが答える。
「細かいことは宗教とか関わるから説明しないでおくと、
王家を滅ぼそうとする集団のことよ」
「そんなのがあるんだ……」
平和ボケしたチョコの言葉にちょっと頭を抱えたくなるルイズ。
一体どれだけ平和な人生だったのよ……と遠い目をしたくなった。
「ゲルマニアでは今、たちの悪い病が流行っているとかで、
まだ本格的な話にはなっていませんわ。けれど……もし本格的に
話が進んだとしたら、一つ懸念があるのです」
アンリエッタは目を伏せた。
「それは……アルビオンの皇太子ウェールズ・テューダー様にしたためた一通の手紙です。
その中で私は、……彼への愛を始祖に誓ったのです。
ああ、この愚かな姫をブリミルよお許しください……」
あまりの後悔に目を閉じているアンリエッタを見て、ルイズは時が止まった。
「ひひひ、姫さま、何を暴露なさってるんですか!」
サララにも、何となく彼女がマズいこと言った、という雰囲気だけが伝わる。
「始祖に誓うって、それ、結婚の約束じゃないですか!」
「ええ、そうなのです。そんなものがレコンキスタの手に渡ったら、
ゲルマニアと婚姻なんて結ぶことができなくなりますわ!
というわけで、ルイズ。ウェールズ様にあって、
手紙を取り戻してきてください。……あなたにもお願いできますか、サララさん」
アンリエッタに向き直られて、サララはしばし考え込んだものの、こくり、と頷いた。
「えー受けちゃうの? まったく、サララったらお人よしだなあ。
わかったよ。ボクもついていくよ。ボクはサララのパートナーだからね」
222 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/03(水) 17:34:29 ID:jGWmqa3V
しえん
「ではその任務、この僕にもお任せください!」
バンッ! と扉を開け、少年が転がるように入り込んできた。
「え、ええっと、あなたは?」
アンリエッタは驚きのあまり目を瞬かせている。
「ギーシュ・ド・グラモン! 元帥の息子です! その任務お任せください!」
ギーシュは美しい姫を目の前にして、目をらんらんと輝かせている。
「わ、分かりましたわ、ミスタ・グラモン」
その勢いに押されながら、アンリエッタは微笑む。
「姫殿下が! 僕に! 微笑んで!」
ギーシュは感激のあまりその場に倒れこんで気絶しそうだった。
「……では殿下。明日の朝出発するといたします。
できるだけ他人に知られない方がよろしいのでしょう?」
「ええ。ウェールズ皇太子は、アルビオンのニューカッスルの辺りに
陣を構えていると聞き及びます。どうか気をつけて……」
アンリエッタは、胸元から一通の手紙を取り出した。
「これは、王子に件の手紙を返していただけるようしたためたものです。
その花押を見れば、私の手紙だ、とお分かりいただけるはずですわ」
それから、右手の薬指から指輪を引き抜くとルイズに手渡した。
「母君からいただいた、王家に伝わる『水のルビー』です。
身分を証明するよう求められたら、これをウェールズ様にお見せください。
……旅費には、少ないですがこれを持って行ってちょうだい。
私が自由に出来るお金を集めていたものですわ」
アンリエッタはさらに貨幣がいくらか詰まった布袋を渡した。
一体どこにしまってたんだろう、とサララは思ったが、
費用があるに越したことはないので、受け取っておくことにしましょう、と
ルイズに進言した。ルイズが、それを受け取る。
「この任務には、この国の未来がかかっていますわ。どうか、あなた方に
始祖のお守りがありますように……」
その言葉を受けて、ルイズとサララは深く頭を下げた。
姫は自室に帰り、ルイズも明日に備えて早く寝ようとベッドにもぐりこむ。
サララは一人、とてもワクワクしていた。
土くれのフーケ退治どころではない遠出、しかも王宮からの依頼だ。
あの可愛らしいお姫様を助けてあげられるし、成功すれば
それ相応の報酬が出るに違いない、と思い胸が高鳴る。
彼女は鍋と袋の中身を整理し始めた。
戦場の真っ只中に行くというのだから、傷を治す道具は必要だろうし、
それ相応の装備を身につけねばなるまい。
いつものワンピースの下に、一枚のシャツを着よう、とそれを取り出す。
傷を治すために、魔法の音色を奏でるオルゴールを取り出す。
それから……、と彼女は一振りの剣を取り出した。
水色の刀身をした剣は、今日授業で見た魔法に対して、
効果が期待できる、とサララが予測したものだ。
しばらく鍋をごそごそと漁った後で、これでよし、と袋の口を締める。
明日からは一体、どんな冒険が待っているんだろうか。
気分を高揚させたまま、ベッドに入り目を閉じる。
ふと、瞼の裏に浮かんだアンリエッタと、金色の小鳥が重なった。
ああ、アンリエッタはあの小鳥なのだ、とぼんやり思った。
退屈なお城の生活から抜け出そうと、飛び立った小鳥。
だが世界は思ったよりも辛いものだった。
それでも、懸命に生きようとしている、小鳥なのだ、と、
まどろみの中で、サララはそんなことを考えるのだった。
以上で投下終了です。途中でうっかり名前欄間違えました。
お姫様からの依頼とか普通に受けます。何故ならサララはRPGの主役なのだから。
ちなみに自分でプレイするとサララはいつも小鳥を返すのをライアットに譲ります。
ちょっとはしょりすぎた気もしますすいません。
乙でした〜
サララ…いい子だなぁ(ほろり
サララ……相変わらずけなげな子っ
ギーシュやウェールズとフラグを立てるようなことがあっても、フラグが立った事を自覚しつつ
涙を隠してフラグをルイズやアンアンに差し直して笑顔で背中を押すんだろうなぁ……
提督が完結したらスレに活気がなくなったな
スレが自然消滅するのが先か提督の作者の新作が先か
あたりを見回しても予約なし 19時55分ほどより投下しますよ
>>227 この3日で10話以上の新作が投稿されている状況を、活気がないというあなたは、よほど提督の作者氏が好きなのですね。
了解。支援準備完了
>>229 釣ってるつもりでスレ自体読めないウルトラ馬鹿を相手にするもんじゃありません
クズは毒吐きスレにでも戻って頂きましょう
支援開始
箸にも棒にもひっかかる気は無い 始まるです
とりすていん大王 10回目
前回、お父さんとモンモランシーの治療で一命を取り留めたウェールズ王子でしたが迫り来るレコン・キスタの軍勢に風前の灯です
「パリー、覚悟を決めるぞ」
「殿下、地獄の果てまでお供させて頂きますぞ」
王子は四方八方から迫る矢を暴風で叩き落し、並み居る敵をつむじ風で切り裂き、無数の魔法を風の壁で跳ね返します
パリーも王子に負けんとその身を翻し、レコン・キスタの兵士に斬りかかります
「パリー・・・生きているか?」
「・・・・・・残念ながら」
闘いが始まってから数刻、すでに王子とパリーの体と精神力は限界に達していました
じわじわと二人を兵士達が包囲します
「これまでか・・・」
王子が呟き、空を見上げると同時に一人の兵士が無言で剣を振り上げました
王子の目に青空が写り・・・
次に空に高く吹っ飛ぶレコン・キスタの兵士たちを見たのです
「な、何?何がおこった!?」
そして、王子は見たのです 逆光にシルエットを写す三人の姿を
「まずは露払いだ!!」
「ひやぁーはぁー いいぜ相棒!!心を奮わせろー」
黒髪の少年 サイトが喋る剣を従えて次々と兵士を切り伏せていきます 彼に放たれた魔法も剣が吸収してしまいました
「ぶぅるわああああ!!」
別方向で人柱が吹き上がりました お父さんが一度腕を降ると兵士達が吹き飛び、蹴り上げると大地が震えます
OKです。支援します。
しえん
「こ、これは一体?」
突然の事にウェールズ王子も困惑していると最後のシルエットが王子に話しかけてきました
「王子、死ぬ事は簡単です 王族の勤めと死ぬのもいいでしょう ですが・・・」
有無を言わせぬ迫力にウェールズ王子もパリーも言葉を失います
「女性一人を泣かせるのは男の恥ではないのですか!!」
ドドンと言う効果音と共に仁王立ちのシルエットは王子に告げます
「あーいや、その」
「ええと・・・王子なんですかコレは?」
もう何がなんだか解らないといった感じで王子とパリーはお互いを見つめ合ってしまいました
そしてついに最後のシルエットの主が姿を現します その姿に王子もパリーもそしてレコン・キスタ兵士達も畏怖し、叫んだのです
「「「へ、へ、変態だぁーーーー!!」」」
四体の(アマゾネスっぽい)ワルキューレに神輿を担がせ、その神輿に威風堂々と佇む、ブーメランパンツ一丁とマントだけを羽織った男
その名もギーシュ・ド・グラモン改め、ギーシュ・ザ・グレート!!
「さぁ、脱出しましょうウェールズ王子!!」
そう言うが早いが嫌がるウェールズ王子を無理やりに神輿に乗せてギーシュは戦場を脱出するため動き始めたのです
お父さん達が戦場に乱入して数分、レコン・キスタの軍勢はめちゃくちゃ理不尽な強さを発揮する三人に手を焼いてました
サイトの相手になった兵士はまだいい方です マトモに闘い、敗れました
お父さんの相手は不幸でした 何も出来ずに殴られたり蹴られたり頭突きされたりで気を失いました
そして、ギーシュの相手をした兵士は・・・
「うわぁああ!!」
「ぎゃあああ!!」
「うひぃいい!!」
次々と暴走神輿に引かれて吹き飛んでしまいます まるで一人だんじりです
「うわはははは!!」
神輿の上ではギーシュが腕を組み仁王立ちで高笑いをしています
「と、言うか逃げるんじゃなかったのか?」
神輿の中で、何かを諦めた様なウェールズ王子が呟きました
>>168 毒の爪の人乙。今回も面白かった!
ジャンガのことだから本当に命乞いしたのかと思ったぜw
>――やはり、あれしかないだろう
ついに、猫じゃらしを使うんだなっと勝手に思った俺
支援
「く、て、撤退!!撤退だぁ!!」
なんとたった三人に押し返されて、戦意を喪失したレコン・キスタ軍は撤退し始めました
「くっ、だが今、無理をしなくてもよい 軍を立て直して万全で仕留めればよい」
「その通りです閣下」
レコン・キスタ本陣では歯がゆそうにワルドとクロムウェルが撤退する軍を見ていました
「お、王子!!敵が、レコン・キスタが引いていきますぞ!!」
「ああ、僕たちは助かったのか?」
王子とパリーが信じられないと言った表情でその光景を見つめていました
その時です、彼らが異常な魔力を空に感じたのを
「逃がさん」
空の上、お父さんがくるくると回転しながら点滅を繰り返しています
そしてお父さんを中心にまるで大気が渦を巻くように蠢き始めました
アルビオンから離れた洋上の空の上、お父さんたちと離れて避難したルイズたちはアルビオンを振り向き声を上げました
「「「「あ」」」」
ウェストウッドの村でサイトの帰りを待つテファや子供達にもそれは見えました
「「「「あ」」」」
タルブやラ・ロシェールでも人々がそれを見て声を上げます
「「「「あ」」」」
ウェールズ王子が空を見上げ言います
「あ」
レコン・キスタの兵士達が呆けた顔で言います
「「「「「あ」」」」」
ワルドとクロムウェルが唖然として言いました
「「あ」」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・・・・・
それはあまりにも、あまりにも巨大な まるでアルビオン大陸と同程度ぐらいはあるのではないかという
「メリーー」
お父さんでした その体がワルドにむかって、クロムウェルにむかってゆっくりと飛来してきます
そしてその時、それを見ていた人全てが言いました
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「あ。」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
続く
敵の本陣へ逃げる 支援
今回分終了、三人大暴れはもう少しだけ続く・・・訳が無い
242 :
237:2008/09/03(水) 20:01:08 ID:wwAIVZtR
割り込んでスイマセン
ちょっとお父さんとジャンガに引っかかれてくる
しまった!予想の斜め上だった!w
乙でしたー
>>183 アミバは親切じゃん爺さんの足を治そおとしてたし
なぜだろう、このギーシュがすごく格好よくみえるんだけどww
爆発したけどな
外道坊呼ぼうぜ
割り込んだ上に謝罪を装ったage荒らしか
大概だな
>>241 遅レスではあるんだけど、以前の話で才人が出てきたときに
『ああ、お父さんが強くなった才人をルイズと契約させるんだな。』と思ってたんだよ俺w
才人じゃないとすると……誰がルイズと契約するんだろ?
大王乙
ギーシュよ…お前は何処へ行くつもりだwwwワロスwwww
GJ
ところで誰かhackのハセヲ召喚をまとめてください。
自分携帯だからできないんですorz
>>227 で、それを毒吐きスレで持ち出して「提督信者Uzee」と叫ぶわけですね。
もうそのパターン飽きた
>>252 肥溜めの共食いを他所様に持ち込むなヴォケ。
何の為の隔離スレだ?
227=229=231=252=253=254という壮大な自演ですね。わかります。
>>251がそう言うなら、蒼天とGS美神のやつもまだですね
お前ら続きは肥溜めスレでやりなさい。
提督の人頼みじゃないけど次回作書いてくれんかな
薔薇乙女の続編でええよ
「鏡をくぐらなかったサイト」の元に「鏡をくぐったサイト」からメールが来る話でええや
組み立て式ルイズとかええなあ
>>236 >「さぁ、脱出しましょうウェールズ王子!!」
が
「さぁ、脱ぎしましょうウェールズ王子!!」
見えたのは俺だけじゃないよね?ね?
>>258 ルイズとサイトがお互いの世界からメールのやり取りをする様を思い浮かべてしまった
そしてハルケギニアに2ch類似サイトが登場
>>258 ……いや、それ薔薇乙女のクロスじゃねえだろ!w
球体関節のルイズに危うく鼻血噴きそうになったのは確かだがな
>>259 >「「「へ、へ、変態だぁーーーー!!」」」
>組み立て式ルイズとかええなあ
何かって言うと鞭を振り回すルイズに我慢の限界を越えたサイトがルイズを解体して梱包。
というのを想像してしまったんだが。
意外なことにドラえもんがまだ召喚されてないな。
やっぱ万能すぎる上にルイズがのび太化する可能性があるからかなぁ。
笑えるような、笑えないような・・・。
質問なんだが
ルイズが、息絶えたゴジュラス・ジ・オーガにキスしたら復活する展開は有りなんだろうか?
(内部のオーガノイドシステムに魔法的に干渉)
作者がありだと思えばあり、無しだと思えば無しでいいんじゃないか?
問題はその後の展開だと思うし
設定周りでつじつまが合うならいいんじゃね?
272 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/03(水) 22:07:05 ID:NoH/unp5
更新停止中の作品とかまた書かないかな・・・
普通に半年とか期間置いた作品が復活したりしてるから、気長に待つんだ
そもそもできて1年ちょっとのスレなんだから
>>267 ジョゼフ「虚無を虚無と見抜ける人でないと(魔法を使うのは)難しい」
>>273 やっぱ待つしかないよなぁ・・・でも見たいw
>>275 だったら応援スレとかで書けば良いじゃない
応援は書き手に必要な燃料だぜ?
虚無と烈風氏は何処に行ったんだ・・・
>>271 ハルキゲニアをハイテク兵器の時代にするのもその気になれば可能だなぁ
顰蹙物になるリスクは大だろうけど
あ、脳裏にレグジオネータの影が
ハルケギニアだ
何間違ってるか俺
よくある問題に、召喚された対象の『メンテナンス』がありますが――召喚されたのがアンパンマンだった場合、アンパンは用意できるんでしょうか。
中身が違うとパワーダウンしますし、あんこがあるとは思えませんから、あのチートっぽいアンパンチも押さえられるかもしれませんね?
……要はマルトーさんの頑張り次第か。
わかる、気持ちはわかる
書き手もたまに間違えてる時もあるぐらい間違えやすいw
パプアニューギニア召喚
>>280 リアル1555年のフランス人の著作に「小豆のジャム」に関する記述があるので、ハルキゲニアにも小豆はあってもおかしくない。
健全な男の子ならばハルキゲニアは三葉虫の次くらいに有名な名前だ。
間違えるのも仕方ない。
錬金があるから製鉄技術が発達しにくい
水の秘薬とかがあるから医療技術が発達しにくい
攻撃魔法があるから剣とか銃とかの武器が発達しにくい
固定化があるから丈夫な物や長持ちする物を作ろうという発想が浮かびにくい
…現代以上の技術力を持つ作品をクロスさせづらいわけだなぁ
SS新作、考えてみる・・・
@月光条例〜ルイズが「月打」召喚。青い月が狂い出す
ルイズ「ツンデレなんて、もうやめじゃああ!!サイトぉ・・・今すぐ子作りするぜええ」
サイト「俺は巨乳が好きなんだーーーーーーーーー!!!!」
デルフ「俺っちをスルーすんじゃねえよ!!!」
ギーシュ「もう僕は噛ませ犬なんかいやなんだよっ!!」
そして現代日本に飛び出したゼロ魔キャラ達が次々とハチカツギ姫の金棒で殴られる
だめだ。確実に避難所行きだ
Aホーリーランド〜神代召喚
対ルイズ:「僕は奴隷になんかならない」・・・さっさとルイズの下を出て行く
ダメだ、話が終わってしまう
B絶対可憐チルドレン〜皆本召喚
バベルとパンドラが総力を結集して次元の壁を越え、皆本奪還しに来ます
ダメだ、提督の二番煎じだ
ううむ、難しい
>>285 だけど平均寿命は短そうだな。
ウィルスとか細菌という概念自体なさそうだし。
ルイズがマラリアを召喚しました
ロボ(というかサイボーグ)、フランキー召喚
鉄くずとコーラさえあればOK
メンテは自分で出来るから現地人の手伝い不要
しかも自分でエネルギーがコーラの兵器を作れる
ガソリン(とコッパゲ)不要!コーラで動くゼロ戦誕生!
基本は変態だが頼れる優しい兄貴分!
というネタを思い付いた
SS新作か、マイナーな作品とのクロスが続いたのでぜひ有名な作品とのクロスが
読みたい。一歩から鷹村とかどうだろう。
>>280 Lv1 中身ナシのパン
Lv2 中身アリのパン(アンコではない)
Lv3 アンパンマン
Lv4 マルトーにパン神様降臨 究極のアンパンマン誕生
…あれ、マルトーが主役になってる
一歩からの召喚は更に難しそうだ
どのキャラであっても素手でギーシュのワルキューレを全滅させてしまう。つかワルキューレ無視してギーシュ本人をフルボッコ
意地でもデルフを使わない。フーケ戦すら素手で勝負
だって、剣を使っちゃったらはじめの一歩じゃなくなっちゃうじゃんか・・・
とある作品とゼロ魔のクロス作品を思いついたので
今、プロットを考えているところです。
そこで質問をしたいのですが
シエスタが金髪になる。貧乳になるといった改変というのはOKでしょうか?
まだSSが形になるか判りませんがどうか返答お願いいたします。
バイオ2のタイラントか、バイオ3のネメシスで書こうと思うんだが、どっちがいいと思う
…アンパンマンには武器を持ってほしくないなぁ、個人的に
しかしそうなると、「武器を持ってもおかしくない」、「元から武器を持っている」キャラが主流になるんだよね
まあ変則としてミョズとかヴィンにするって手もあるが
>>285 ∀だとどこまでノーメンテで行けるのだろう
>>293 男にしたっていいけど、巨乳じゃなきゃ駄目。
∀はメンテ必要ないだろw
メンテ無しだと内装火器しか使えないだろうけど、それでも十分にお釣りがくるぞww
というよりも、メンテしたらアニメ本編よりも強くなるから!!
>>297 本体なら胴体と腕が離れるとかしない限りは大丈夫だとは思うが、
ビームライフルとかハンマーとかの外付け武器はすぐ使えなくなると予想。劇中でも使えなくなってたし。
実際どうするかは作者次第だが。
>>295 俺が今考えてる奴だとガンダの力ほぼ使ってないよ
デルフも3〜4人くらいにたらい回しにされる予定だし
>>293 ぼくの意見としては……
シエスタが黒髪というのは日本人の血を引いているからということなので、
シエスタの祖先が黒髪の人物でないということならOK。
胸についてはハルケギニアにやってきたシエスタの祖先が貧乳の家系
とか言う設定でない限りだめ。
ボクサーはグローブはめたら発動で良いじゃないか
デルフもグローブです
>>298 トニーたけざきの絵柄で脳内再現してしまったぞ
>>293 うーん、それだけ変わっちゃったらシエスタじゃないっつーか、もうシエスタという名前のキャラじゃ無いよね
オリジナルキャラなので、名前も変えちゃった方が分かりやすいんじゃない?
でも、シエスタの改変は難しい所だわな
男達の使い魔〜大豪院シエスタ
ゼロな提督〜シエスタ・サヴァリッシュ医師
この辺りになると、かなりきつい改変だと思う
>>280 アンパンマンならスーツだけ召喚なら小ネタであるが…
本人召喚なら顔面を固定化で補強するとかどうだろう?
ただ人に食べさせることが出来なくなりそうなんでそこらへんの葛藤が
タルブ編でアンパンマン号が御神体になっていることにすれば新しいパンを補給することができるかと
>>299 磨耗するような箇所もナノマシンで修復してるのかな
ハルケギニアに持ち込むなら、ロランと同様にいじる=解析となるか
>298
男で胸囲があるというと……ピザって事か?
ハリーポッターとか考えたけど、
かなり苦しいよな
つーか既出か
居合(ベニー松山的な意味で)使う侍シエスタも居たな、多分村正持ちの。w
実はずっと再開を待ってるんだ、あれ>金剛石とゼロ
逆にシエスタの先祖がなんかの物語の貧乳キャラで
子孫にいたるどこかで巨乳遺伝子混入でシエスタの見かけはその貧乳キャラだが胸だけ巨乳ってのは萌える
>>312 > 逆にシエスタの先祖がなんかの物語の貧乳キャラで
> 子孫にいたるどこかで巨乳遺伝子混入でシエスタの見かけはその貧乳キャラだが胸だけ巨乳ってのは萌える
ルイズとか?>貧乳キャラ
大きく改変するなら別にシエスタである必要はないわな
オリキャラとして割り込ませればいいわけだし
ま、作品の要素としてどうしても必要で、それなりに説得力があれば良いんじゃね
黒髪じゃないシエスタもいたな。鋼の人のだっけ?、
つまり、召喚されたキャラが「えっ、○○さん……あれ、胸のサイズが……あれ?!」と叫ぶのですね。
ルイズがハーマイオニー召還とか
どんだけパク(ry
シエスタが貧乳になると俺が悲しみのズンドコに叩き落とされるのでダメ
つまり説得力や理由があれば改変もいいのではないかな?
>>313 まあ個人的には好きだが
ルイズが巨乳とか絶対嫌な人いるだろw
>>319 ロリ巨乳大好き
だがタバサは許るさーん
321 :
293:2008/09/03(水) 23:20:48 ID:gORsorWA
シエスタの祖先がハーフエルフになる予定なのです。
(無論胸革命ではなく、一般的イメージのエルフは華奢という世界観からのクロスです)
まぁロリ居乳なんて、コミケでブースが寄り集まってるくらいにある意味ジャンルではあるが・・・
はーい、予約がなければBパート投下します。
ちなみにうちのシエスタは金髪翠眼です。ひいおばあさん(リィナ)と同じね。
ひいじいさん(テツ)は黒目黒髪なので原作どおりの容貌になる可能性もありましたが。
なお、髪と目の色以外のスペックはまったく変わりません。
おっぱい大きいしそばかすですし、僧侶呪文使ったりもしません。
そういやそばかすって、栄養の偏りなんだ
しえん行きます
夜も更け、さしもの激論も精彩を欠き始めて、ショウがあくびをしたいという衝動に駆られ始めた頃、それは起こった。
発端はヤンである。
シエスタの家族や明日も早いシエスタの父親が寝室に引っ込み、キュルケも珍しくさっさと寝てしまった後、しこたま聞こし召した彼は酔い醒ましに家の外に出た。
このとき甲冑は勿論脱いでいたが剣を携えていったのは、役に立たない事で定評がある彼の生存本能が珍しく警告を発したのかもしれなかった。もっともその時の彼は酔いで足元がおぼつかなかったので、杖代わりに持ち出しただけかもしれない。
しかしどちらにせよ、その剣が本来の意味で役に立つ事はなかったのである。
ヤンはほろ酔い加減で鼻歌を歌いつつ、村の中をそぞろ歩いていた。もっともほろ酔いと思ってるのは当人だけで、あっちへふらふらこっちへふらふらと、傍から見れば完全無欠の酔っ払いである。
欠ける事のない双月は今宵も明るく地上を照らし、歩く分には殆ど灯りもいらない。
立木にだらしなく背を預け、ヤンはその双月を見上げる。
赤と青の双子の月。なんとまぁ遠くへ来てしまった事かと柄にもなく感慨に耽っていたとき、ヤンの耳は何かが羽ばたく音を捉えた。
酔った頭に違和感が浮かび、そして間髪を入れずそれは危険信号へと変わった。
ヤンは田舎育ちである。夜になればフクロウや蝙蝠が飛んでいるのが当たり前の環境で育った。だから、今聞いた音がフクロウ程度の翼が空気を叩く音にしては明らかに大きすぎるのが分かる。
明らかに人間大かそれ以上、ワードナの迷宮で言えばファイヤー・ドラゴンとは言わないまでも、小飛竜ワイバーンや、この前ラグドリアン湖で遭遇したキメラなどのサイズだ。
即座に思考が戦闘時のそれに切り替わる。
酔っているとは言えそれでも一般人とは比べ物にならない動きで身を翻し、剣を抜き撃とうとした所でヤンの動きは停止した。いや、停止させられた。
輝き。
まず最初に思ったのはそれだった。
赤と青の満月すら圧し、地上を照らすその輝き。
背中から生えるまばゆい純白の六枚の翼がその印象をさらに強めている。
人に似て薄絹を纏ったその姿は男とも女ともつかず、だが非常に美しい。
天使。
そう呼ばれる、御伽噺の中にしかいないはずの存在が、今ヤンの目の前で翼を羽ばたかせていた。
呆然とその姿を見上げていたヤンは、だからその口が動いていることと、かすかに聞こえる旋律めいた音がリリスやショウの用いる魔術師呪文の詠唱である事に気付かない。
"大炎(マハリト)!"
ようやくそれに気付いたのは、その唇が詠唱を終え『力ある言葉』を紡ぎ出した瞬間だった。
ほぼ同時にワードナの迷宮ではおなじみだった勢い良くドアを蹴り破る音が聞こえ、視界の隅に建物から飛び出してきたショウ達が見えた。適当に歩き回っているつもりだったが、いつの間にか一回りしてシエスタの実家に戻ってきてしまっていたらしい。
さらにショウの背後にリリスらしき金髪を視認して、ああ、そう言えばこれで丁度六十回目だっけかなどと状況にそぐわぬ呑気な事を考えつつ、ヤンは迫り来る炎の渦に飲み込まれた。
時を同じくしてシエスタの家の居間では、ショウが傍らの刀を掴み、立ち上がっている。
説明もなく外に飛び出したショウに一瞬呆気に取られたものの、次の瞬間にはリリス達も椅子を蹴飛ばして部屋から飛び出した。
廊下を駆け抜け、体当たりする勢いで扉を押し開け、外を目指す。その彼らの目の前で炎が弾けたのは、ショウが玄関から飛び出そうとしたまさにその時だった。
直径20メイル近いオレンジの炎の渦。
炎の温度が比較的低い事を示すそれは、紛れもなく魔術師系第三レベルに属する攻撃呪文、大炎(マハリト)であると知れる。
唐突にその炎が消えた。
リリス達の世界の攻撃魔法は高い威力を持つだけにその引き起こす現象もさほど長くは続かず、十秒にも満たない時間で魔法の炎は現れたときと同様速やかに消え去る。
先ほどまでヤンがよりかかっていた立木が殆ど芯まで炭化し、炭の破片と火の粉を撒き散らして根元から折れ曲がる。
焦げた地面の中心にヤンが立っていた。
剣を持った手を顔の前にかざし、炎から顔を庇うようにして。
全身から煙を上げ、服も燃えかす以上のものではなくなってはいるが、なおも立っている。
ヤンはショウや高位の侍(或いは忍者やロード)がやるように"気"で自分の身を守る事などできない。
単純に、今まで戦士として鍛え上げてきた肉体の強さがヤンを死から守ったのだ。
天使はその秀麗なかんばせに僅かに驚きを浮かべたようだった。
口を動かさず、声とも意志ともつかないものがその場に響く。
"耐えたか。人間にしてはしぶといものよ"
「・・・天使!」
それだけ言ったきり、ショウが絶句する。
さすがに、話を聞いたばかりで実物に遭遇しようとは思っていなかった。
タバサやルイズ、リリスですら概ね似たようなものだ。
生まれかけた、動きがたい空気を天使の次の一言が攪拌した。
"ふむ・・始末すべき者が纏めて出てきてくれたか"
聞き捨てならない言葉だった。
だがそれを問いただす前に、新たに空気を攪拌するものがある。
空間を揺らめかせて現れたのは新たな天使だった。放つ光輝と美しい顔立ちは同じだが、最初に現れた六枚の翼を持つ天使――熾天使(セラフ)とは明らかに異なり翼は二枚、修道僧のような質素な衣に身を包んで右手に剣を持っている。
天使の中でも特徴がないことからただ"天使(エンジェル)"と呼ばれる種族であるに違いなかった。
言い伝えによれば天使の九階位の中で最底位に位置するというが、感じるプレッシャーは最高位に位置するはずの熾天使(セラフ)とさほど異なるところはない。
"見つけたか"
新しく現れたエンジェルが、最初に現れたセラフに話し掛けたのをショウの怒鳴り声が遮った。
「貴様等! 何のつもりで俺たちを狙う!?」
二体の天使が同時にショウに視線を向けた。
虹彩の無い蛍光色の眼球に、細く縦に走る瞳らしきもの。
人に似てはいてもやはり人ではないその瞳に浮かんでいたのは殆ど無関心に近い、人が虫に対して浮かべる物に限りなく近い感情であった。
支援
"お前たちなどどうでもよい"
"だが、お前達を放置する事は我等が召喚者の不利益になる"
"『今は』それを看過する訳にはいかぬのだ"
そう歌うように呟くと、エンジェルは短く異質な"音"を発した。
言語のようではない。
呪文でもない。
しかし、その意図したところは次の瞬間、誰の目にも明らかになった。
三たび空間が揺れ、二人目のエンジェルが姿を現したのだ。
己の迂闊さを呪いつつショウとヤンが即座に剣の鞘を払い、リリスとタバサが詠唱を始める。
やはり実戦経験の差か、ルイズは一拍行動が遅れた。
そして天使たちはそれを冷やかに眺めているかと言えば、そうではなかった。
"封印され衰えたりといえども、絶対の父なる主の眷属に歯向かおうとは"
"愚かなり"
"天罰を受けるがよい"
五人が戦闘体勢をとったとき、三体は既にそれぞれ呪文の詠唱を開始していた。明らかに仲間の出現と示し合わせていたのだ。完全に先手を取られた形である。
そしてセラフの唱えているのが先ほどと同じ大炎(マハリト)であり、しかも既に唱え終わる直前であることにリリスとショウは気付く。
タバサは抜かりなく炎の呪文を相殺できる氷の呪文を詠唱していたが、間に合わない。
リリスが詠唱中の、沈黙を強いて呪文詠唱を不可能にする僧侶系2レベル呪文「静寂(モンティノ)」にしても同じであり、ショウやヤンも"気"を剣に溜める一瞬のタイムラグが無ければ空中に攻撃することはできない。
結界外での魔法攻撃である先ほどの一撃は、鍛えぬいた戦士のヤンだから耐えられたのであり、華奢なタバサやルイズに同じ事を要求するのは無理があった。いや、ヤンでも二度は耐えきれるかどうか。
間に合わないと歯噛みしながらもショウが剣尖に気を満たし、サディスティックな笑みを浮かべた熾天使が『力ある言葉(トゥルーワード)』によって呪文の力を解き放とうとした瞬間。
セラフの喉から唐突に剣が生えた。
解放されようとした力ある言葉が、喉の奥に空しく消える。
"気"を放っても間に合わないと悟ったヤンが、剣を抜くなりセラフ目掛けて力いっぱい投擲したのである。
それが熾天使の喉元に吸い込まれるように突き立ったのは技量より幸運の為さしめる技であったに違いないが、ヤンの咄嗟の判断がタバサとルイズの命を救うことになったのは間違い無いようだった。
一瞬遅れて、ショウの剣が鋭く振り抜かれ、薄い面状に走り抜けた"気"の刃は、熾天使の正中線をすり抜けて真っ向唐竹割に斬って落す。
信じられないような表情を浮かべたまま綺麗に等分された天使の骸は左右のずれを大きくしながら落下していき、血煙を上げる事も無く大気に解けて消えた。
""減命(バディアル)!""
だが、そのヤンも、ショウもリリスもルイズもタバサも、同時に発せられていたエンジェル二体の呪文を防ぐ事まではできなかった。
生命力を逆転させる僧侶系4レベル呪文、減命(バディアル)を二重に受け、ひどい火傷を負ったヤンの全身から鮮血が吹きだす。ごぼり、と血を吐きながらもにやりと笑みを浮かべ、そのままヤンは倒れ伏した。
虫けら同然と侮った人間に仲間が倒され、そのままエンジェルたちは憤怒の形相を浮かべて再度呪文の詠唱を始める。
だが、仲間を倒されて憤るのはリリス達も同じ事だ。
リリスの静寂(モンティノ)が、タバサのアイス・ストームが、ルイズの爆発魔法が、雪崩を打って叩きつけられる。
まず片方のエンジェルが呼び出そうとしていた魔法の力が、詠唱を中断されて消えうせた。リリスの静寂(モンティノ)が効果を発揮したのだ。
一方もう一体のエンジェルは何事も無かったかのように詠唱を続けている。異形の者がしばしば発揮する呪文無効化能力がリリスの呪文を打ち消し、その身を守ったのである。
とは言え二体の内の一体には効いたのであるから、殆ど全ての呪文を無効化するポイゾンジャイアントなどに比べればエンジェルの持つ無効化能力はかなり劣るようではあった。
続けて、タバサのトライアングルスペル、アイス・ストームが飛ぶ。
今度は呪文を封じられなかったほうのエンジェルが無効化に失敗し、無数の氷の散弾で身体を切り裂かれる。だが人なら即死しかねないその威力も、異形の者の強靭な生命力を断つまでには至らなかった。
支援
"人間風情が"
さらに憎憎しげに顔を歪め、詠唱を続けるエンジェル。
そこへ、とどめとなるルイズの爆発が・・・襲い掛からない。
思わず振り返ったリリスとタバサの目に、いまだ詠唱を続けるルイズの姿が映った。
問い質そうとして思わず口から出かけた言葉が止まる。一見して尋常な状態ではなかった。
殆どトランス状態といってもいい位の、忘我の境地にあることが一目で見て取れる。
だがその理由を考える暇も無く、短く洩れた苦痛の呻きが二人の意識を戦場に引き戻す。
呪文を封じられなかった方のエンジェルが放った減命(バディアル)がショウを直撃していた。
先ほどのヤンほど派手にではないものの、体のあちこちから出血し、こめかみに赤い筋を一つ、服にも赤い染みを幾つも作る。かすかにその喉元が動いたのは、吐き出しかけた血を飲み込んだのであろうか。
そしてショウが再び大きく振りかぶった時には、呪文を封じられたもう一方のエンジェルが右手の剣を刺突の形に構えて急降下してきている。
「ハァッ!」
"死ぬが良い!"
ショウの鋭い呼気と、エンジェルの殺意が交錯する。
刀を振り下ろすのと、長剣で片手の刺突を放ったのが同時。
エンジェルの剣は鎧を着ていないショウの左上腕をかすめ、浅からぬ傷を負わせる。
だがショウの剣は突進してきたエンジェルの右側の空間を薙いだに留まった。
"何!?"
エンジェルの体に触れたわけでもない。迸る気の刃が翼を断ち切った訳でもない。
ショウの攻撃は目の前のエンジェルに傷一つ負わせてはいない。
だが、それこそショウの狙いどおりであった。
ショウの刀から迸った気の刃は、いまだ空中にあるもう一人のエンジェルを捉えていたのだ。
左肩から右脇腹へ、袈裟懸けに両断されて空中のエンジェルが消滅する。
突進してきたエンジェルではなく、呪文発動能力を残しているもう一体の方を優先して討つ。実戦の場数を踏んだ剣士ならではの、冷静な判断力というべきであった。
が、その代償は意外に高くつくことになった。
エンジェルの剣に切り裂かれた左上腕から無感覚が全身に広がり、全身の筋肉が弛緩してショウは無様に倒れこんだ。
麻痺(パラライズ)・・・神経性の毒やある種の魔法的効果により引き起こされる状態で、全身の神経伝達を妨げられ筋肉が弛緩してしまう。僧侶系3レベルの治療呪文「治痺(ディアルコ)」を唱えてもらうまではいかなる怪力の持ち主であれ指一本動かせない。
そして敵の目の前で身動き一つ出来ないことがどんな結果を引き起こすか、考えてみるまでもあるまい。
歓喜に唇を歪め、エンジェルが逆手に剣を持ち替える。
無防備になったショウに止めを刺そうと言うのだ。
無論、黙って見ているリリス達ではない。ショウに当たらないように範囲を絞ったアイス・ストームがタバサの杖から迸る。リリスの口からは減命(バディアル)を大きく上回る威力を持つ僧侶系5レベルの単体攻撃呪文、大減(バディアルマ)が放たれる。
だがこのとき、エンジェルの身に備わった呪文無効化能力は最高の働きをやってのけた。ともに受ければ即死しかねない二つの呪文の効果を、連続して中和して見せたのだ。
そのまま先ほどのセラフそっくりのサディスティックな笑みを浮かべ、エンジェルの剣の切っ先がショウの背中に突き立てられた。
だが背中から胸を貫かれながら、それでもショウの身体はぴくりとも動かない。
エンジェルの剣に秘められた魔力により神経伝達そのものが阻害されているため、痛みに身をよじる事すらできないのだ。
だがさすがに鍛えぬいたマスターレベルの剣士というべきか、まだショウは生きていた。
それを見て取り、持ち手は逆手のまま、抜いた剣をもう一度エンジェルが振りかぶる。
リリスとタバサの呪文の詠唱は、当然ながらまだ終ってはいない。
タバサはショウからエンジェルを引き離すべく、最低限の詠唱で発動できるエア・ハンマーを、可能な限りの高速で詠唱していたが、それでも一瞬間に合わない。
リリスが絶望に囚われ、タバサの脳の冷静極まりない部分がショウの死を確定事項として捉え、エンジェルが再び勢い良く剣を突きたてようとした瞬間。
殆ど衝撃波に近い、腹に響く轟音とともにその上半身は大爆発を起こした。
支援
炸裂した魔力の直接の効果範囲にいなかったにもかかわらず、爆風はリリスとタバサを吹き飛ばさんばかりの勢いで叩きつけられ、余熱が二人の体をあぶった。体術に関してもそれなり以上の物を持つ二人が、倒れないように必死で踏ん張らざるを得なかったほどだ。
エンジェルの上半身は、文字通り粉微塵に砕けて散った。
例え肉と骨の体を持っていたとしても、その一部なりとも見つけることは不可能に近かったろう。
勿論エンジェルが自ら爆発したわけがない。
たった今振り下ろした杖をだらんと右手から下げ、虚脱したような状態でショウとエンジェル――下半身だけだが――を見つめている、桃色の髪の少女がやったことに相違なかった。
上半身を消失させたまま、冗談のように膝立ちの姿勢を崩さないでいた下半身が先ほどのセラフとエンジェルの後を追うかのようにすっと存在を希薄にし、空気に溶けて消えた。
それが合図だったかのように、我に返ったリリスがショウに駆け寄った。ショウの横にしゃがみこみ、負傷と状態不全の双方を同時に治癒する僧侶系第六レベル呪文、快癒(マディ)を詠唱し始める。
一方タバサは彼女にしては珍しいことにその視線にかすかな畏れを滲ませ、まだ虚脱した表情を貼り付けたままのルイズを見やった。
今のは明らかに自分の知っているどの系統魔法とも違う。いや、そもそも彼女の爆発自体が系統魔法ではありえない事ではあるが、そのこれまでの爆発とも威力が違いすぎた。
射線を必要とせず空間の任意の一点から発生し、従って殆ど回避も防御も不可能という彼女の爆発の特性にあの破壊力が加わったならば。脳裏に走ったその想像はタバサを慄然とさせるのに充分だった。
そしてリリスも、快癒(マディ)の呪文を詠唱しながら、頭の一部で同じ事を考えている。
直接的な比較対象が存在する分、彼女の背を走った戦慄はタバサのそれを上回ったかもしれない。
爆炎(ティルトウェイト)。
魔術師系第7レベルに存在する、リリス達の世界における最強最大の攻撃呪文である。
この世界と次元の壁一枚を隔てた異空間において原子核融合を発生させ、その際に生じる熱と衝撃波だけをこちらの世界に呼び込み、効果範囲内の全てを破砕し、焼き尽くす。
放射線や放射性物質を発生させない代償としてその効果範囲や熱量は本来のそれと比して微々たるものではあるが、それでもその威力は凄まじい。
一千度を越える炎は火炎に耐性のある炎の巨人や火竜でさえ即死させ、衝撃波は人間サイズの生物ならば粉微塵にしてしまいかねないほどに凄まじい。
効果範囲は迷宮や都市を守る魔法結界の中で発動した場合ですらゆうに直径30メートルを超え、魔法結界の外で発動された場合は想像もつかない。
魔法結界外での攻撃呪文発動が認められている戦争時ですら、爆炎(ティルトウェイト)を用いるのは暗黙の禁忌なのである。
かつて家屋や都市を覆う魔法結界がまだ一般的ではなかった時代、狂った魔術師によって唱えられた爆炎の呪文が城塞都市一つを丸ごと地図から消し去ったという。
唱えた魔術師の名も消滅した城塞都市の名も知られていないこの話の真偽の程は明らかではないが、魔法結界の外で呪文を使う事を戒める訓話として、系統を問わず呪文使いに古くから知られているエピソードである。
今ルイズが生み出した爆発は勿論一つの都市どころか家が焼けるかどうかという規模に過ぎない。
だが、威力は明らかに尋常の物ではなかった。
人間を上回る身体強度を持つ異形の者の肉体を、しかも剣も含めて原形をとどめないまでに破砕し、焼き尽くすとなると、リリスの知識では爆炎の呪文以外にありえないのである。
だが唐突にぞくりと悪寒が走り、リリスの思考はそこで中断された。
唱えていた快癒(マディ)の呪文も途切れ、悪寒の源――空に目をやるなり絶句する。
釣られて視線を向けたルイズとタバサも同時に言葉を失い、次の瞬間辺りは真昼のように明るくなった。
支援
天使。
天使。
天使天使天使天使天使。
無数のと言うほどではない。先ほど倒した天使(エンジェル)と熾天使(セラフ)がほぼ同数、それぞれ20体弱というところか。
だがリリス達を全滅させこの村を焼き払うには充分すぎる戦力ではある。
天使のうち半分ほどの目が、自分の足元に向いているのにリリスは気付いた。
(こいつら、ショウを狙っている!?)
狙われているショウに快癒(マディ)を掛けるべきか、それともいちかばちか相手の呪文で全滅する前に敵を全滅させるべく、攻撃呪文を唱えるか。らしくもなく、咄嗟の判断が遅れる。それが命取りだった。
リリスに先んじて、半数の天使が呪文を唱え始める。
一つ二つなら耐えられなくも無いが、何分にもこの数だ。先手を取って攻撃呪文で一掃する以外、選択肢は無かったのだ。
タバサも呪文を唱えてはいるが、広範囲に効果のある呪文はやはり時間がかかる。
ルイズも先ほどの呪文をもう一度撃てたとしても、天使たちの呪文に先んじて放てるとは思えない。
一瞬の迷いで分の悪い賭けになってしまったと、ほぞを噛んだ瞬間。
殺気が走り抜けた。
リリス達の後ろから、空を舞う天使たちまで、恐らくは一直線に貫き通したその殺気に。
リリスとタバサは硬直した。無数の修羅場を潜り抜けてきた二人がだ。
ルイズは呼吸ができなくなった。魔獣? 巨人? 天使? あんなものは子供騙しだ。なるほどあれらは強かった。そして怖かった。だがそれだけだ。こんな、心を打ち砕くような恐怖など、持ってはいない。
リリスとタバサが硬直から抜け出して振り向く横で、ルイズが尻餅を突きかけそうなのを必死でこらえている。
天使たちでさえ息を呑んで詠唱を止めた。眼下の獲物から目を離し、双月と自らの発する光の中、浮かび上がった闖入者に目をやらざるを得なかった。
殺気の源はシエスタの家の納屋の前に、影のようにうっそうと立っていた。
身長はそこそこ、深いフードつきのマントに身を包み、右手に布で包まれた長い棒のような物を持っている。
その口元が、嘲りの形に歪んだのをリリスとタバサは、そして天使たちもはっきりと見た。
激烈に反応したのは、呪文の詠唱を終えたばかりの熾天使(セラフ)たちだった。憤怒の叫びとともに放たれた複数の大炎(マハリト)が重なり合って炎の渦を巻き、シエスタの家の納屋ごとその人影を包み込んだ。
怒りは時として恐怖の裏返しであるという。ならば、このとき天使たちは咎人を裁く審判者であったのか、それとも天使たちこそが裁かれる咎人であったのか。
答えが、彼らの目の前に立っていた。
オレンジ色の魔法の炎が消えたとき、納屋は火に包まれ、地面の草はことごとく灰と化していた。
ただしその人物の周囲、半径1メイルほどを除いて。周囲の草は炭化を通り越して白い灰と化しているというのに、その人物の足元だけは未だに青々とした姿を見せている。
いつの間に抜いたのか、フードの人物は長剣を構えていた。顔の前に刀身を斜めにかざし、上中段の打ち込みから身を守るが如き構え。
それがラグドリアン湖に於いてショウがキマイラの炎のブレスから身を守った、その時の構えに酷似していることにルイズとリリスが気がついたのは後になってからである。
タバサを含めた三人がその時気づいたのは、フードの人物がかざしたのがおおよそ150メルチの長さを持つ、片刃でわずかに反りのある長剣――ショウの持っているのと同じ「カタナ」だという事だった。
支援
「――今、その者を失う事は」
その剣尖がゆっくりと右下に垂れる。
空いた左手がフードを跳ね上げ、その顔が露わになった。
リリス、タバサ、ルイズが揃って息を呑む。
「私にとって大いなる損失となるのでな」
「ショウ!?」
叫んだのはルイズだけだったが、表情からしてリリス、タバサともに同じ思いであった事は疑いない。
だが次の瞬間自分の目を疑ったのも三人同じであった。
フードの人物は女性だったのである。
夜の闇の中、納屋の燃え盛る炎を背に、炎に照り映える剣を抜き放って倣然と立つ姿は、女性である事さえ除けばさながら火焔光を背負う降魔の武神か。
くすんだ金髪を無造作に背中に垂らし、肩の前にも左右一房ずつをそれぞれ垂らしている。手入れしている様子ではないが、不思議と整った物を感じさせる。
顔立ちは整っており、女性にしては鋭い雰囲気を与えるが、だからといってショウと瓜二つと言う訳でもない。強弁すれば似ているか、といった程度だ。
それを何故三人揃って見間違えたか、それを考える暇はなかった。
地に垂れた刀身がゆらり、と陽炎のように揺れたかに見えた次の瞬間、下からすくい上げるような一刀が跳ね上がっている。
ショウが見ていれば、揺らめいたように見えた刀身は"気"を高密度で収束したが故であったと看破したであろう。
リリス達が何か頭上を通り過ぎていったと感じたのも、"気"によって生み出された真空の刃であると理解したに違いない。
そして20体近いセラフの殆どが大根のように無造作に切り刻まれ、無数のパーツに分けられてバラバラと地上に落下していった事にも驚かなかったろう。
それは彼自身も身につけている技であったからだ。
我に返ったリリスとタバサが呪文の詠唱を再開する。遅れて、ルイズも慌てて詠唱に集中する。
今度は天使たちよりも一瞬早く、詠唱が完成した。
"死言(マリクト)!"
リリスの口から漏れ出たのは、禁じられた滅びの言葉。
言葉にせず、音にならないまま発されただけであるのにも拘らず、それは空間に波紋を巻き起こし、衝撃波となって天使たちの肉体に浸透し、ダメージを与える。
よくよく観察すれば、無効化に失敗した天使たちの肉体が小刻みに震えているのが分かっただろう。この呪文を受けたものは見えざる無数の衝撃波に体の内部から乱打され、目立った外傷も無いままに内側から肉体を破壊されて死に至るのだ。
あらゆる攻撃呪文の中でも魔術師の爆炎(ティルトウェイト)に次ぐ破壊力と効果範囲を持つ僧侶系最高位の第7レベル呪文、死言(マリクト)であった。
生き残っていた天使の半数以上、呪文を無効化出来なかった全てが体液ともエネルギーともつかぬものを撒き散らして消滅したのがその威力を如実に証立てている。
残り7体。
間髪入れず生き残りにタバサ渾身のアイスストームが飛び、さらに5体を仕留める。
"減命(バディアル)!"
「ぐっ!」
エンジェルの呪文を受けたリリスの身体が揺れるが、倒れはしない。とどめを刺すべく今度は魔術師系4レベルの攻撃呪文、猛炎(ラハリト)の詠唱を始める。
「リリス!」
「大丈夫、まだ平気!」
一方金髪の女剣士の方も、もう一体のエンジェルが放った減命を受けたようであるが、少なくともさほどのダメージを受けたようには見えなかった。
支援
"人ごときが・・・人ごときが!"
もはや狂乱に近い形相のエンジェルが咆える。それに応えたのは不敵な笑みを浮かべたルイズであった。
「言ってくれるじゃない、たかが『天使ごとき』が」
怒りの余り声も出なくなった天使を見上げ、青髪の少女と金髪のエルフの主従が小声で会話を交わしている。
「ねぇタバサ、ルイズって最近喧嘩を売るのがどんどん上手くなって来てないかしら」
「同意する」
その彼女らの目の前で、ルイズが気合とともに杖を振り下ろす。
「吹っ飛びなさい!」
この日二回目の、凄まじい爆発が起きた。
爆発はエンジェル一体をすっぽり包み込み、無数の羽根を散らせる。そして煙が晴れた後には、何も残っていなかった。
もはや呪文を唱える余裕もなくなったか、おめき声を上げて最後のエンジェルが剣を振りかざし、地上へ急降下する。
それとほぼ同時に女剣士が一筋の気を剣から放つ。怒りに我を忘れながらも身につけた戦闘技術は忘れていなかったのか、エンジェルはスピードを落さぬままに身体を捻り、左に一回転して迫り来る"気"の塊を躱す。
見事な空中機動であったが、女剣士の技はそのさらに上を行った。放たれた気の筋が、エンジェルの後を追尾するかのようにその軌跡を曲げたのだ。
流星は大きくS字型にカーブした軌跡を虚空に残し、向こう側を見通せるような、冗談のように巨大な穴をエンジェルの胸板に穿つ。
そのままバランスを崩したエンジェルは錐揉みを起こして大地に激突し、断末魔を上げることすらかなわず消滅した。
ここに、タルブ村を襲った天使の一団は全滅したのである。
支援
「あ、あの」
礼を言おうとするリリスを、金髪の女性が左手で制した。
「礼など受ける筋ではない。それよりも仲間を治療するほうが先だろう、司教どの。それにそやつに死なれては、私も助けた甲斐がないという物だ」
一も二も無く頷いたリリスが、先ほどから放置された形になっているショウに快癒(マディ)を唱える。
すぐにショウが大きく息をついて身を起こした。
すんでのところで間に合ったようで、派手な出血跡こそ残っている物のその顔色は既に普段のそれと変わらない。
続けてリリスが自分に回復呪文を使用している間、タバサはじっと金髪の女剣士を見つめていた。
「一つ聞かせて」
「何かな」
「今あなたはリリスのことを司教どの、と呼んだ。リリスが司教(ビショップ)である事を何故知っていたの?」
「それはもちろん」
と女剣士は笑った。
「私がお前たちの敵だからだ」
問い掛けたタバサのみならず、リリスも、ショウの無事に安堵して腰が抜けてしまったと思しきルイズも、それに手を差し伸べていたショウも、一瞬言葉が出ない。
タバサにしてみても、単に正体を計るだけのつもりだったのである。例え敵だとしても、まさか今この時点でここまで直截な答えが返って来ようとは思っても見なかった。
ショウがゆっくりと女剣士に向き直る。
リリスとタバサが一歩後ろに後退し、ショウより前に出ないような位置に立つ。
ルイズは気に呑まれたか、尻餅をついたまま立てないようであった。
女剣士がわずかに体の向きを変え、炎を上げつづける納屋を背にショウと正対する形になった。
奇しくも、互いに右手の剣を地面に垂らした自然体の構え、いわゆる無形の位である。
僅かな沈黙を経て口を開いたのはショウのほうだった。
「まず、名前を聞いておきたい。知っているだろうが俺はショウだ」
「ケイヒだ」
女剣士が短く答えた。
素直に答えたことに軽い驚きを感じるとともに、ショウは戸惑いを覚えている。
初対面のはずの相手に、不思議な懐かしさを感じたからだ。見た感じでは自分よりも10歳ほどの年長か。だが、その容貌に全く覚えはなかった。
初対面なのは間違い無い。これだけの使い手であれば忘れるはずも無いし、そうでなくても「女の侍」などという珍しい存在を記憶から消してしまう事はありえないだろう。そもそもショウにとって女性との接点など母親か継母、屋敷の侍女くらいのものである。
にもかかわらず確かに感じる懐かしさ、親近感。全くもって不可解だった。
答えの出なさそうな思索を打ち切り、改まって口を開く。
「ではもう一つ。敵ではあっても助けてくれたことに・・」
「必要無い」
にべもなく、ケイヒがショウの言葉を遮る。
支援
うあ、早すぎる再会
ケイヒ転生版か? 支援
「何故なら、あそこでお前達を・・・いや、お前を助けたのは私がこの手でお前を殺すためだ。それ以上ではないしそれ以下でもない。恩義を感じるとでも言うならば、全力をもって私に挑んでくるがいい。それでこそ鳳龍の剣技の振るい甲斐があるというものよ」
燃え盛る炎を背に影となった顔に、ふわりとした笑みをケイヒは浮かべる。ただ、それはどこまでも邪悪な物にショウには思えた。
「鳳龍って・・。やっぱり、彼女ショウ君と同じ」
リリスの言葉は緊張の為か、最後のほうがかすれて聞き取れない。ケイヒから視線は離さぬまま、ショウが頷く。
「おそらく、最初に使った技が旋風斬。大気中に真空の刃を生み出し、それを気で操って敵を斬り裂く難度の高い技のひとつです。
そして最後のエンジェルを倒したのが曲流波。威力は中程度ですが、放った後に自由に操作でき、百発百中の精度を誇ります」
どうやら麻痺して倒れていながらもショウは気と空気の流れを察知し、周囲の情報を正確に把握していたらしい。
再び女剣士の口元が笑みの形に歪んだ。
「正解だ。気の流れだけでそこまで察するとは、さすがに鳳龍宗家の血を継ぐだけはある」
「何故俺を狙う? 理由は知らないが、この世界で俺達の世界の争いごとを引きずる必要があるのか!」
「道理だな。だが道理だけで世の中が回るわけではない。どの道死に行く身にはかかわりのない事だ」
「何一つ知らずとも構わないというのか」
知らず、ショウの目が険しくなる。表情を消してケイヒがそれを見やった。
「そうだな、それがせめてもの情けとでも言っておくか」
「情け? 何のことだ。俺はお前に会った事すらない。それとも俺が忘れているだけとでも言うのか」
「不可解か。そうだろうな――だが」
ケイヒの瞳に見えない炎が灯る。激情を秘めて、雌獅子が吼えた。
「この私の苦しみ――悲しみ――憎しみ――そして怨みの全てが。『ショウ』、貴様にあると知れ!」
咆哮とともに、その全身から"気"が迸る。それに煽られたか、背にした納屋が一際大きく炎を吹き上げた。
荒れ狂う熱気も彼女には全く影響を与えていないかのようだ。
それどころか、放つ"気"に取り込まれ、熱波となって自身に襲い掛かってくるような錯覚さえショウは覚えた。
叫ぶ。
「三人とも下がっていろ! 鳳龍の剣術の使い手同士の戦いに巻き込まれたらただじゃ済まない!」
リリスとタバサが、弾けるように動いた。
二人掛かりでまだ立ち上がれないでいるルイズを引きずり、シエスタの家の前にまで退避する。
「ちょ、二人とも何するのよ!?」
「黙って」
「あなただって見たでしょう! あれに巻き込まれたら蘇生できるかどうかさえ怪しいわ!」
なおも反論しようとしたルイズだったが、ショウの表情を見てその口をつぐんだ。
ショウとともに過ごして一月弱。その中で何度も一緒に戦いを潜りぬけたが、ここまで追い詰められた表情を見たことはなかった。ポイゾンジャイアントを前にしても、銃口を突きつけられても、決して怯む事はなかったショウなのである。
支援
宣言してから代理しようよ 支援
>>321 マウナぐらいしか思いつかんが、SWなら専用スレあるぞ。
職人いないみたいだから神になれるかもねw
「サシで構わないな?」
「無論だ。貴様以外のものなどどうなろうと構わん」
それが開始の合図だった。
互いに半身になり、剣を構える。
奇しくも鏡映しにしたようにその構えはそっくり同じだった。
半身で左肩を相手に向け、体の右脇、地面と平行に剣を構える。
一見突きの準備動作にも見えるが、只の突きであれば二人の周囲で風が唸りを上げたり、あまつさえ剣の周囲で大気が渦巻く事など有り得まい。
"気"を目視することなどできないルイズ達にも一目で分かるほど、刀身にまとわりつく空気が震え、唸りを上げているのが分かる。
さながら、竜巻で出来た剣を構えているかのようだった。
実際は気を凝縮させ、技を放つまでのわずかな時間だったのだろう。だが傍観せざるをえないルイズとタバサとリリス、そして恐らくはショウにとってもそれは永劫の数瞬に感じられた。
しかし、錯覚はやはり錯覚に過ぎない。亀はアキレスに追い越されるし、飛ぶ矢は止まらないのだ。
""鳳龍――""
同じ構えから繰り出される技はやはり同じであった。刀を右脇に引きつけた構えから繰り出される、渾身の片手刺突。鏡に映したような対称の動き。刀身が帯びる竜巻が、敵を喰らい尽さんとする龍の如く飛翔する。
""渦旋斬!""
互いの剣から、横向きの竜巻が唸りを上げて放たれた。
わずか一瞬、二頭の龍は拮抗するかに見えたが、次の瞬間ケイヒの放った龍がショウの放ったそれを飲み込んだ。
それは呆気ないほどにショウ本人をも飲み込み、数十メイルに渡って大地と何本かの立木を抉りとった。ショウの後ろに人家があれば惨事になっていただろう。
「ショウ!?」
上がりかけた悲鳴が途中で歓声に変わった。大地を削った竜巻は僅かな時間で消え、土煙の中に立つショウの姿が見えたからだ。
だが、その歓声も土煙が晴れるとともに再度悲鳴に変わった。
酷いありさまだった。
服はあちこちでズタズタに裂け、鮮血と煙を等分に噴き出している。額から鼻梁に一筋の血が流れ、顎から地面に滴りつづけていた。井上真改の柄糸も、腕から流れる血によって赤く染まりつつある。
それでも構えは崩さず、目に闘志を宿し続けてはいたが、傍から見れば既に勝敗は明らかだった。
髪一筋乱していないケイヒと、まだ立っているとは言え満身創痍、全身から煙を上げて無残に穿たれた大地に膝を突かんばかりのショウ。その光景そのものが完璧な勝者と敗者の図であった。
リリスは決着後にショウを蘇生させられる可能性と、残り一回しか残っていない死言(マリクト)、あるいは僧侶系5レベルの即死魔法・呪殺(バディ)や体力を死亡寸前にまで奪う6レベル呪文・奪命(マバディ)でケイヒを倒せる可能性を天秤にかけ。
タバサは小声でエア・ハンマーの呪文を呟き。
ルイズはショウの前に飛び出そうとして。
そしてショウは、まだ諦めていなかった。
支援
――鳳龍の剣術、波撃弾斬陣に大別されり。斬に三種の禁じ手あり、また陣なる技も使用を固く禁ず――
既にショウは陣を除く全ての剣技の伝授を受け、また陣もこの世界に来る直前、兄の命と引き換えにした壮絶な伝授を受けている。だが勿論それらの禁じ手を実戦で使ったことはない。
いずれを用いるにせよ、今の消耗した状態で使えばどうなるかは分からない。只でさえ膨大な負担を心身に強いる技なのだ。
だが鳳龍の剣技同士で撃ち負ければ、結局のところ死体も残らず消失(ロスト)するだけであろう。
決意を固め、捨て身の覚悟と闘志を込めて眼前の恐るべき敵手を見やる。それを見て取ったケイヒの目に、獰猛な笑いが浮かんだようであった。
系統魔法に曰く、強い感情は魔法使いに強い魔力を呼び起こすという。
ならば絶体絶命の危機において"気"の使い手は何を呼び起こすのか。
手負いの狼の牙が無敵の雌獅子に届く事もありうるのだろうか?
己の残りの"気"全てをこの一撃に込めるつもりで、萎えかけた気力を呼び戻す。
"気"は気力。生命力と精神力から生まれるのが"気"であるならば、気力を振り絞るとは命と心を燃やすことに他ならない。
ショウはまさしく全身全霊を賭け、乾坤一擲の勝負に出ようとしていた。
ケイヒがショウには邪悪としか思えないあの笑みを浮かべる。再び、その"気"が膨れ上がった。
せめて覚悟では、気迫では負けまいとショウが一層眼差しに力を込める。
だがその僅か五秒後、ショウの決死の気迫は完膚なきまでに打ち砕かれた。
支援
「ぶわぢぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっっっっ!」
ケイヒの背後、今にも炎の中に崩れ落ちようとしていた納屋から何か飛び出してくるものがあった。よく見れば芋虫状態で縛り上げられたままのアニエスである。
日頃の鍛練の賜物か生への恐るべき執念か、この女性は簀巻きに縛られたまま燃え盛る納屋の壁を蹴り破って脱出を果したのであった。
「熱、熱い、あちちちちちちちっっ!」
服のあちこちに火が燃え移っている。アニエスはそのまま早送りで見る尺取虫のような、不気味な素早い動きで炎を吹き上げる納屋から離れ、傍目にも必死さが分かる動きでゴロゴロ地面を転がって、火を消す。
余りといえば余りの展開にその場の概ね全員が唖然とする中、ケイヒが真面目腐った顔で声を掛けた。
「そんな所にいたのかアニエス。全然気付かなかったな。心配したぞ」
「嘘をつけっ! ここにいる事ぐらい貴様の"気"を察知する能力とやらで分かっていたはずだろう!」
涙目でアニエスが絶叫した。
顔は煤だらけ、服は焦げ跡だらけで、短く切りそろえた自慢の金髪も、今は無残に焦げている。
無論アフロだ。
「だが、それにしても空気の読めない女だ。せめてショウとの決着が着くまで待てなかったのか」
「それまで待ってたら焼け死んでるだろうがっ!」
「私はお前を助けに来てやったのだぞ。それを考えれば少し位は感謝して気を利かせても良かろう」
「うがあぁぁぁぁぁっ!?」
もはや声にならない絶叫を上げるアニエスを無視し、ケイヒがショウ達の方に振り向いた。
リリス達はこの展開について来れていない。ショウもこの状況で緊張感と気迫を持続させられるほど精神的にタフではなかった。
「さて、この女のせいで興が失せた。ここは引かせて貰うとしよう。お前の命はいずれまた改めて貰い受けに来る」
一方的に宣言して剣を納めるケイヒに対し、気を抜かれた形になったショウは何も出来ない。
もっとも、気力を奮い起こした所でそれより先にケイヒの一刀が鞘走るだけであろう。機を外されてしまった以上それを取り返すための時間が必要だったが、先方はそれをショウに与える気は無さそうであった。
そのケイヒはアニエスにつかつかと歩み寄り、手荷物のごとく無造作に持ち上げると、上着でも引っかけるような気軽さで肩に担ぎあげる。
「待て、せめて縄をほどかんか!?」
「それでは帰るぞ。今の内に任務を失敗した言い訳でも考えておけ」
アニエスの抗議をあっさりと聞き流し、そのまま呪文を詠唱し始める。
「お、おい、待て! そこのショウにはまだ言い足りない事が・・・」
わずかに時間を置いて呪文が完成した瞬間、ケイヒと肩に担がれたアニエスの姿は忽然と消えた。
喚いていたアニエスの声も、今はその余韻を耳に残すのみである。
「・・・・嘘。侍で転移(マロール)が使えるなんて」
呆然とリリスが呟く。
転移(マロール)は爆炎(ティルトウェイト)と同じく魔術師系の最高位、第7レベルに属する呪文である。
術者と仲間数人を空間転移させるテレポートの呪文だ。短い詠唱であれば約1キロ、相応の時間精神集中を行えば最大で50キロほども転移できる。
だが元魔術師ならともかく、侍や司教でそのレベルの呪文が使える冒険者をリリスはそれぞれ一人しか知らない。
マスターレベルを超えたショウですら、先日ようやく4レベルの呪文を全て覚えたばかりで、5レベルの呪文を覚えるにはもう1,2レベルほどという所である。
7レベルの呪文が使えるとなれば、その実力は想像を絶するだろう。ショウが完敗したのも無理からぬ事と言えた。
だがともかく目前の敵は去った。
誰かがふうっ、と大きく息を突き、緊張感が解けようとした瞬間、だがタバサの鋭い声がそれを引き戻した。
「敵! シエスタの家の屋根にいる!」
自分たちの背後の頭上に揺らめく空気の乱れを、風のメイジであるタバサは明敏に察知したのである。
三人が今度は先ほどとは逆にシエスタの家から走って離れた。
ショウがふらつく足で前に出、リリスがショウのために快癒の呪文を詠唱し始める。
ルイズは消耗しているショウの前に出ようとしたが身振りと苦笑で押しとどめられ、不服そうにフレイム・ボールの呪文を唱え始めた。
タバサは唱え終わっていたエア・ハンマーをすぐに解き放てるように、油断なく屋根の上を伺う。
「わかった、出ていくよ。僕は君たちの敵じゃない。だから魔法は撃たないでくれ」
「え?」
思わず、ルイズの呪文の詠唱が止まった。
はっきりとは思い出せないが、その声には確かに酷く懐かしい物を感じたからだ。
「ゆっくりと立ち上がって、ゆっくりと降りてきて。その気になれば先ほどと同じような攻撃をあなたに打ち込む事もできる」
「分かっているよ」
黒々とした影に覆われた屋根の一部が、むくりと身を起した。
その影はゆっくりと屋根の縁まで歩いてくると、良く通る声でレビテーションの呪文を唱え、地上に降り立つ。
その姿を見たルイズは、少なからぬ驚きとともに自分の感じた懐かしさの正体を知った。
「ワ・・・ワルド様!?」
「やあ、僕の小さいルイズ。いや、もう小さくはないかな? ともかく久しぶりだね」
鍔広の帽子にマント、実用的な旅装束。腰にはレイピアのような拵えを施した、魔法衛士隊の杖を下げている。
その動きには無駄がなく、恐らくは剣士としても一流である事が知れた。
「はじめまして、諸君。魔法衛士隊グリフォン隊隊長、ジャン・ジャック・フランシス・ワルド子爵だ。以後お見知り置きを」
さあう"ぁんといろいろ 第六話 『天使』 了
支援
支援
投下終了。支援と掲載、代理投下に感謝。
今度から三〜四分割くらいで投下するかなー(悩)。
と言う訳で、結局『代々侍なのに頭が悪くて戦士止まり』なテツは一生戦士のままでした。
色々ありましてリィナは僧侶から司教になってますが、あのパーティは他にも僧侶系最高レベル呪文を扱える君主と司教がいるんだから、マスターレベルになれば司教に転職するだろう(低レベル治療呪文の使用回数低下が余り痛くないから)ということで。w
もっとも世の中にはドワーフのマスター僧侶を戦士に転職させて前衛にしたり、僧侶のまま前衛に立たせ続ける人もいますが(誰の事だ)、まぁそこらへんの自由度の高さもウィズですので。
ちなみに無印では『魔除け』=「人の集合無意識」なのですが、外伝では割と気楽に魔除けの外をほっつき歩いているため、『魔除け』=「集合無意識が力を振るう焦点具」という設定にしました。ぶっちゃけイデとイデオンの関係ですねw
なお、この集合無意識やらの話はあくまで『石垣WIZ』の設定であって本家ウィザードリィの設定ではありません。その点混同なき様にご注意下さい。
後多分、集合無意識の元ネタはクトゥルフじゃなくてイデオンです。ゲッター線みたいってのは言われて気付いたけど、発表がゲッター號より前なんで多分偶然。w
それとWIZにはもとよりモンティパイソンの要素が結構入ってまして、首刎ねウサギ(ヴォーパルバニー)は1で、聖なる手榴弾(HHG of Aunty Ock)とまさかの時のスペイン宗教裁判(裁判官が敵として登場)もシナリオ4でしっかり登場しております。w
さて、今回はやたら間が空いたんで次回はできれば9/24までに投下したいなと。
そこを過ぎると一月くらいはスパロボ廃人になってるでしょうから。
ではまた、忘れた頃に。
代理投下 以上
代理投下初めてだったのでいきなりやってしまった。
色々と申し訳ない
つかそのためのカトレアだろ
ルイズちゃ〜ん^^また会いに来ちゃった☆
今日はルイズちゃんが一回くちに入れたお菓子を食べてみたくて来ました^^v
ルイズたんがちゅぱちゅぱ舐めて溶けかけたチョコを口移しでもらいたいな
そしたら今度は僕がそのチョコをルイズちゃんに口移し・・・きゃー^^
一緒にひとつのチョコを交互に口移ししあって溶かしあおうよー><
ルイズちゃんの唾液と僕の唾液が奏でるハーモニーはきっとチョコよりも甘くとろけるよ^^
ついでにルイズちゃんの甘くておいしそうな髪の毛も舐めていい? だめ?
おねがい! ちょっとでいいから! ルイズたんの髪の毛しゅごいおいしそう・・・
じゃあペロペロはしないから! ちょっとペロッとするだけ! 毛先だけで我慢する!
ほんとは頭皮から毛先までベロンベロンジュルリジュルリしたいけど我慢するから!
じゃあ一本だけちょうだい! 髪の毛一本だけ抜いてちょうだい! 家宝にしますから!
おねがぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜い><
髪の毛くれたらお礼におちんちん見せてあげるから!ほら!いいんだよ遠慮なんかしなくてほぉ〜〜ら^^
ほーらほらほらほらほらほらほらおちんちんだよ〜〜ん♪ぷるん♪ぷるん♪きゃ^^v
ルイズたんみたいに強気で純粋な子見てるとね、なんかすっごくおちんちん見せたくなっちゃうの♪
あああああおちんちん見て真っ赤になって慌ててるルイズたんが一番きゅわいいよ☆もっと見て見てー
あ・・・なんかおっきくなってきちゃったねー^^ほら見てごらん!なんかおっきくなってきたよーん^^
不思議だね〜ほら、見たほうがいいよル〜イズたぁーん^^ありゃ?おちんちんがルイズたんに近づきたがってる^^;
ワガママなおちんちんでごめんねー><そんなに怖がらなくて大丈夫だよ〜おちんちんは優しいの
おちんちんルイズちゃんに会えて嬉しいって^^あっという間にこんなおっきくなっちゃたよスゴイねぇ〜
おちんちんをこんなに喜ばせちゃうルイズちゃんも凄いんだよ〜ルイズた〜んすごいすごーい^^
ルイズちゃんにもっとスゴイところ見せてあげるからそんなに顔を隠さないで。うふふ、ルイズたんかわいい!
僕もあとでルイズちゃんのアソコたっぷり見てあげるから大丈夫^^ ただ見せるだけじゃ不公平だからね
ルイズたんのおぱんちゅ脱がしておしっこの穴とかお尻の穴とか・・・ハァハァ・・・いけない穴とか…全部全部見るよ^^
そしたら一緒に色んなところを舐めあいっこしようね^^v もうちゅぱちゅぱだよ!ちゅぱちゅぱ!
僕がルイズたんのお尻の穴ペロペロ♪ ルイズたんが僕のお尻の穴ペロペロ♪ うひー!
二人の抱き合った体が溶けてひとつになっちゃいそうなくらい キモチイことしようねー☆
ほら!ここからが一番スゴイところだよー?ほらこんなにスゴイことにああん見て見てルイズたんほーらシコシコシコシコ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
もうルイズたんらめへえぇぇぇぇえええぇぇぇえぇぇええぇっええええええぇぇぇぇぇぇぇええええええええええええ^^v
>>291 アンパンマンクロスの作品だと思わせといて、実はアンパンマンとマテパの多重クロスなわけか!
どちらかというとウィザードリィ廚な私がここで発言するのは場違いかもしれませんが。
さあう"ぁんとの方、更新感謝です。
サブタイをギルの迷宮に合わせたりとか、第一話の「祈る気持ちを忘れずに」とか、当時のファンのココロをくすぐり過ぎです。
すばらしい、もっとやって!
ところでリトフェイトとかツザリクとか、今回表記されなかった遺失呪文に出番はあるのでしょうか?
(今回の感想)
戦士テツの辺りで、「ああ、侍にならなかったんだな」と妙に納得してしまいました。なれなかったのではなく、あえてならないところに、彼の精神的な成長を見た気がして。(勝手な思い込みですが)
そしてケイヒ登場(今までチョコチョコ出てはいましたが)
積み重ねてきた歳月の差があるとはいえ、圧倒的な実力差を見せ付けるケイヒに、ショウは――というところであれかっ!
まぁ、(話の盛り上がり的に)こんなところで決着つけるわけにも行かないことを思えば、仕方の無いことなのかもしれませんが。
しかし本当に気が抜けました。もしかしたらそれも計算のうちだったのかも……。
今回もありがとうございました。続きを楽しみにしています!
364 :
363ですが:2008/09/04(木) 00:35:01 ID:fRvgRwAB
後書きのところを読んで、テツの理由はそっちかと。
じゃああまり成長しなかったのかと。
ちょっと残念な気持ちになったのはここだけの話しにして置いてください。
……ニューバージョンか。
病気?
>>363 呪文は出しますよー。ただ全部列挙してるとあれですから。
テツに関しては解釈をお任せします。
ただ、リィナがマスター僧侶になって、転職してそれなりの司教になるくらいにはテツも経験つんでたわけでして。
そこらへんを汲み取っていただければもっけの幸い。
グレーターデーモン増殖
だれかいるかな?
第6話が書き上がったので投下したいと思います。
今回はいつもより短めです。
よろしければ、01:20から投下いたします。
待ってたぜ、支援
あらすじ
「これで貴様の攻撃は全て終わった! しかもガンダールヴの力も使い切ったようだな?
アッーハッハッハッハァ! 私の勝ちだぁー!」
「……何を勘違いしているんだ?」
「は……?」
「まだ俺のバトルフェイズは終了していないぜ!
合成術オーヴァドライヴ!! BP16とLP3を消費して効果発動!
こいつは現在のターンを強制終了させ、次のターンに術者を5回行動、それ以外を行動不能にする!」
「なん……だと……?」
「電光自在石火自在!!」
「ウボァー」
「オーヴァドラ……」
「もうやめて! とっくにあいつのLPは0よ」
「HA ☆ NA ☆ SE ! !」
未来の大魔女候補2人 〜Judy & Louise〜
第6話『青銅の薔薇と2人の魔女』
今現在、土の塔にある講義室の1つは、立ち入り禁止となっていた。前の廊下には、誰も立ち入らないように仕切りが作られている。
中を覗くと、講義室は煤だらけになっており、窓ガラスは尽く割れて惨憺たる有様だ。
教室の前方、教壇の中央では大型机が粉微塵となっており、黒板は真っ二つに割れている。教室内を見回すと、そこに近い物ほど破壊の具合が大きい事が分かる。つまり、破壊の中心という事だ。
「まったく。なんで私がこんな事を……」
そう文句を垂れながら、煤の付いた机を雑巾で拭いている少女が居た。
ピンクブロンドの髪に、気の強そうな鳶色の瞳。ルイズである。
彼女は作業の邪魔になるマントは脱いでおり、服は煤で薄汚れていた。
「ちょっと失敗しただけじゃない。それなのにあんなに怒るなんて……」
そう言いながらも雑巾を絞る。愚痴を言ったところで作業が進まないのは分かっているからだ。
「……そりゃあ、爆発しちゃったのは謝るけど、片付けが終わるまで休憩も駄目だなんて横暴すぎるわ!」
そう言いつけた教師の顔を思い出しながら、ルイズは憤慨する。
先ほどの授業で、自信満々に『錬金』の魔法を唱えたルイズは見事に失敗したのである。
その結果は爆発という形で現れ、講義室を滅茶苦茶に破壊した。爆心地に居たシュヴルーズは気絶し、生徒達は軽傷者多数という損害を被ることになった。
ちなみに、爆発の直撃を受けたはずのルイズは、煤だらけになっただけでかすり傷一つなかった。
その爆発を聞きつけた教師によって、ルイズは魔法を使わずに教室の片づけを命じられたのである。しかも、作業を終えるまで休憩無しのオマケ付きである。
ルイズはもともと魔法が満足に使えないので、魔法禁止の制約はあまり関係がないのだが、休憩無しというのが堪えた。
講義室は、普通に掃除するのにも1人では手に余る広さである。それなのに、1人で爆発の後処理をするのは、半日をかけても終わるかどうか分からない大仕事である。
2、3人でやれば話は違うのだが、手伝ってくれる者は1人も居なかった。もっとも、手伝われる事など彼女のプライドが許さないだろうが。
時刻は昼の鐘が鳴って暫くする。既に、食堂では昼食の真っ最中であろう。
ぐぅうぅぅ〜……
昼食の風景を思い浮かべた所為で腹の虫が鳴り響き、思わずルイズは椅子にへたり込む。
その椅子は煤で汚れたままだったが、そんな事を気にする余裕もない程にルイズは心身共に疲れ果てていた。
上体を机に預けて教室を見渡す。割れたガラスの除去と、煤の拭き取りはほぼ終わっているが、まだ爆心地の周りは手付かずのままだ。
「はぁぁ〜」
ルイズは深い溜息を吐いてから、自分のすぐ脇に目を落とす。
するとそこには、巨大なカエルの姿をした使い魔-ポセイドン-が静かに佇んでいた。
「ちょっとは手伝ってくれたっていいんじゃない?
ずっと、後ろに付いてくるんならさ!?」
そう言ってポセイドンをジト目で睨める。すると、3つの眼がルイズを注視する。
「な、な、なによ! やる気! そんな目したって、こ、怖くなんかないわよ!」
ルイズは海老の様に後ずさり、パンチとキックを繰り出して威嚇する。
だが、ポセイドンはルイズを見るだけで、それ以上の動きは見せない。
ルイズは馬鹿らしくなり、再び深い溜息を吐いた。
「はぁ…… 言っても無駄よね」
疲れた顔を引き締めて、ポセイドンを睨みつける。
「目障りだからどっか行ってなさいよ! 邪魔で作業が進まないわ! 私の視界から消えなさい!」
髪をかき乱し、腕を振り回してそう叫ぶ。
すると次の瞬間、ポセイドンの姿が音もなく消え去った。
「……えっ?」
暫しの間、呆気にとられる。
ルイズは自分の目が信じられず、何度も目を擦ってからポセイドンの居た辺りを凝視する。
良く見ると、そこには霞がかかっているのが分かった。手をかざすと、微かな涼気を感じる事が出来る。
「えー…と。消えろとは言ったけど、それはココから出て行けっていう意味であって、本当に消えてどうすんのよ?」
そう言いながら屈み込んで、机や椅子の下を捜す。
「アンタが居なくなったら、ジュディになんて言ったらいいのよ!? 冗談は止めて出てきなさい!」
そう言い終えた瞬間、ルイズの目と鼻の先で霧が発生した。その中から緑色の小さな影が飛び出し、ルイズの顔面に張り付く。
肌に吸い付く吸盤、湿りを帯びて弾力に富んだ皮の感触。その全てを余すことなく感じ取り、ルイズは総毛立つ。
そして顔面にへばり付いた何かを振り払い、限界まで息を吐き出した。
「■*◆@▼%●※★ーーーッ!?」
人語を絶した悲鳴がその細喉から迸り、教室を小さく震わせる。
その悲鳴に、木にとまっていた小鳥達は一斉に飛び立ち、中庭に屯していた使い魔達が一斉に騒ぎ出す。
中庭が阿鼻叫喚の絵図となっているなど露とも知らず、ルイズはおっかなびっくり振り払ったモノに目を向ける。
するとそこには、掌の大きさまでにスケールダウンしたポセイドンが鎮座し、3つの眼をルイズに向けていた。
さすがにこの時間だと人がいないか。
◆◇◆
今日彼は、底抜けに機嫌が良かった。どれ位機嫌が良いかというと、軽やかにスキップを踏みながら、周りに笑顔を振りまく位に機嫌が良かった。
その所為で同僚からは気味悪がられ、仕事以外で彼に話し掛ける者は居なかったが、彼は全く動じない。
彼の眼には何もかもが素晴らしく映り、突き刺さる奇異な視線など意にも介さない。
その原因は、今朝の出来事に端を発する。
その日、彼の目覚めは最悪だった。何時もならば目を覚まして、職場である調理場に居なければ為らない時間に目を覚ましてしまったのだ。
部屋を見渡せば、同室である同僚の姿はなく、窓からは爽やかな朝日が差し込んでいる。
眠気など一気に消し飛んだ。勢い良く毛布を蹴飛ばし、着替えながら部屋を出る。厠に寄る暇もない。
階段を駆け下り、宿舎から転げるようにして飛び出すと、本塔に向かって駆け出した。
尿意を堪えて急ぐ彼の視界の隅に、黒い何かが映り込む。立ち止まってよく見ると、それは見知った人物であった。
『うほっ! いいおと(ry もとい、メイド!』
はやく調理場に行かなければならないのだが、どうにも様子がおかしい事に気が付く。
これ以上の遅刻は避けたいところだが、この仕事に就いて2ヶ月、何かと世話になった彼女を放っておけるほど彼は冷たい男ではない。
料理長のカミナリを受ける覚悟を決めてから声を掛ける。
「おーい、シエスタ。そんな所に蹲って、一体どうしたんだ?」
・
・
・
シエスタは、貴族に粗相をしてしまったかも知れないと話してくれた。
手打ちになるかもしれないと怯える彼女を彼は力付け、そのどさくさにデートの約束を取り付ける事に成功した。
彼は飛び上がって喜んだ。まさにこの世の春である。
『父さん、母さん生んでくれてありがとう。俺はやりました。17年に及ぶ冬は終わって春が来ました! ありがとうブリミル! これからは気が向いたら真面目にお祈りするよ』
腕を胸の前で組んで感激を表わし、父と母、今まで信じてもいなかったブリミルに心の中で感謝する。
「つい、話しこんじゃいましたけど、早く仕事に戻らないとマルトーさんに叱られませんか?」
仕事に戻るも何も遅刻の真っ最中である。その事を思い出し、冷たい汗が噴き出てくる。
心配げな顔を見せるシエスタには、それを悟られぬよう平静を装い調理場に急ぐ。
案の定、料理長であるマルトーからは、怒鳴り声と共に修正を受けるのであった。
そんな訳だから、今日の彼はすこぶる機嫌が良い。
非情にも朝起こしてくれなかった同僚を笑顔で許し、何時もは心の中で唾を吐いている貴族にすら笑顔で接する事が出来る。
彼は生まれて初めて世界が美しい事を実感し、目に映るモノ全てが素晴らしく感じるのであった。
スキップをしながら、何故か宙に浮いている水棲生物に餌をやり、陽気に歌いながら体毛が七色に変わる大きなネズミを撫でてやる。
そんなこんなで、今なら二股がばれたのを自分に責任転嫁してくる貴族が居たとしても許せるくらいに、寛大な心を彼は持っていた。
「聞いているのかね給仕君? 君が香水の壜を拾った時に僕は知らないと言っただろう?
その時に察しないといけないじゃないか。ん?」
彼の目の前には、気障ったらしい仕草で説教をしてくる金髪の少年がいる。
少年は贔屓目に見なくても、美少年と呼ばれる生き物に属している。たとえ、髪からワインを滴らせ、赤紫に染まった白のフリル付きシャツを着ていたとしてもだ。
そんな少年の足元ではワインが水溜りを作り、その中にはガラスの欠片が浮いている。
それほどアルコール度数が高くないワインだが、流石に一本丸々中身がぶちまけられると、辺りにはワインの香気が立ち込めている。
『あぁーあ…… 勿体ねぇ……』
彼はぶちまけられたワインを見てそう思う。
水溜りを作っているワインは、学院の貴族が飲む物の中では中の下と言った代物だ。
しかしそれでも、平民には気軽には手の出せない代物である。
「顔をあげて聞いたらどうだね? 態度には気をつけることだ」
気取った声色で少年は語りかけている。
彼はワインから少年へと視線を変更する。別にそれは言う事を聞いた訳ではなく、零れたワインを何時までも見ているのに飽きただけに過ぎない。
相も変わらず、少年は延々と説教を垂れているの。しかし生憎と、彼の耳には届いてはいなかった。
彼は理不尽な物言いをされているにもかかわらず、全く怒りが沸いてこない。それどころか、何時になく冷静な心持ちであった。
『わざわざ拾ってやったって言うのにこの仕打ち……
昨日までの俺なら「うるせえ気障野郎。一生薔薇でもしゃぶってろ」なんて言って、確実にキレてたな…… ふぅ、俺も大人になったもんだぜ。
それに、ついさっき二股がばれて振られたこいつより、シエスタにOK貰ったも同然な俺の方が断然格上!
次の日曜には○○で××で……
とにかく、負け犬の遠吠えなんて屁のつっぱり。月とスッポン。柳に風のどこ吹く風! いま風は、俺に向かって吹いているぅぅぅ!』
説教を右から左へ受け流し、都合のいい妄想を繰り広げてはニヤニヤしている。
全く反省の色を見せない彼に、少年は苛立たしげに語気を強めて手に持った薔薇の造花を振る。
「何とか言ったらどうなのかね? しかも何だね、その可哀想なモノを見るような目は? 気に食わない目だ。
いいだろう、その無礼な態度を含めて、物の道理という物を叩き込んでやろう!」
そう言い放って、少年は椅子から勢いよく立ちあがろうとして……急に崩れ落ちた。中腰になっていたせいで、少年は椅子から転げ落ちる。
「……あれ?」
彼は目を瞬かせる。
「ギーシュ! 大丈夫か? まだ傷は浅いぞ!」
「死ぬなよ、ギーシュ! お前が居なくなったら誰をからかえばいいんだ!?」
「誰か水メイジを連れて来い!」
先程まで静観していた者達が大声をあげる。
『たしか、あの貴族の名前が「ギーシュ」だったっけ?』
そう漠然と思い出しながら、床に倒れ伏したギーシュに視線を落とす。
ギーシュの傍らには椅子が引っくり返っており、完全に白目を剥いて気絶している。よく目を凝らすと、ワインとは違う赤色の液体が、頭から滴っている事に気が付く。
『あれは……血?
そういえば確か……』
そこまで考えた所で、少女の甲高い声が響き渡った。
彼のすぐ横を、金色の影が横切り気絶しているギーシュへと向かう。
その影は、先ほどギーシュを振った少女であった。
その少女は、ギーシュを胸に抱いて後悔の声を上げる。
「わたしったら何て事を…… ごめんなさい、ギーシュ! ココまでやるつもりはなかったの!
貴方が頭を冷やすよう、ワインを浴びせる程度にしようって思ってたのに、ワインの栓が開いていなかったばかりに…… 瓶で殴ってしまうなんて……っ!
嗚呼……! わたしったら怒りに任せてこんなにひどい事をしてしまうなんて、許されるはずがないわっ!」
演劇がかった大げさな身振りを交えながらそう叫ぶ。
しかしそれは演技ではなく、本気であることを少女の涙が訴えている。
唐突な展開に、周囲の者達はついて行けずに呆然とする。
そして、多くの者が動きを止めている中、再び少女の声が響き渡った。
「ギーシュさまぁぁぁぁ!」
栗色の髪の少女がそう叫びながら、彼の横を駆け抜けていく。
その少女もまた、気絶しているギーシュを力の限り抱きしめ絶叫する。
「ごめんなさい! 本当にごめんなさい! 一時の怒りに任せて貴方の愛を疑ってしまうなんて……!
あまつさえ、先祖伝来の心臓打ちをしてしまうなんて! 許されることではないけれど、お許し下さいませ!」
2人の少女は、気絶しているギーシュに縋り付いてわんわんと泣いている。
その光景を見て、彼はこの世の理不尽を感じた。
思考にノイズが走り、世界が歪む。
『ついさっき二股がばれたのに、もう向こうから謝ってきた? あれだけ酷い事されたのに?
理不尽だ。納得いかねぇ。
例えるなら、自分でフラグへし折っておきながら、バイナリエディタでフラグ操作しているようなもの。
断じて、許す訳には……』
顔をやや伏せ気味にして呪詛を放つ。
先程の賢者のような心は既になく、ドス黒い憤怒が五体を支配する。
しかしそれは、後ろから奥襟を引っ張られたことで霧散した。
「サイトさん、大丈夫でしたか!?」
「ぐへぇっ!」
襟元が締まり、彼、サイトはつぶれたカエルのような声を上げる。だが拘束は緩まず、そのままズルズルと引きずられていく。
人垣から抜け出て、食堂の隅まで引きずられる。そこまで来た所で漸く、呼吸の自由が返却された。
咳込みながら振り向くと、そこには黒髪を白いカチューシャで纏め、頬にソバカスを浮かべたメイドの少女、シエスタがいた。目尻には涙を溜めている。
シエスタはサイトに詰め寄ると、不安げな顔で縋り付き、安否の是非を問うた。
「大丈夫ですか!? なにもされていませんか!?」
「あ、ああ…… 大丈夫だよ、シエスタ。それになんか、有耶無耶になりそうだし」
「ああ、良かった。
ゴメンナサイ、なにも出来なくて。私、本当に怖くって……」
「シ、シエスタが謝ることじゃないよ。俺ならなんともないからさ、何時もみたいに笑ってよ。なっ?」
「サイトさん…… 優しいんですね」
「い、いやぁ〜 あ、あはは……」
熱っぽい視線で見つめられ、サイトは気恥ずかしくなり頭を掻く。
食堂には、2人の乙女が気絶したギーシュを介抱する声が響く。
周りの注目はギーシュ達に集中しており、サイトとシエスタに構う者はいない。
そして、周りの喧騒の悉くが2人の耳には届いていない。
2人は、はにかみながら澄んだ瞳で見つめ合う。言葉はいらない。
やがて2人の距離は自然と縮まり、シエスタはサイトの胸に飛び込む。
「サイトさん……」
「シエスタ……」
互いが互いの存在を感じる事が出来る、それだけで2人は十分だった。
お互い手を背中にまわして確りと抱き合う。衣服越しに温もりを分かち合い、心臓は早鐘を打つ。やがて、心音が一つに重なり合う。
何時までそうしていただろうか。時間にすればホンの僅かな時間でしかなかったが、2人にはそれが永遠にも感じられた。
しかしそんな『これなんてエロゲ?』的状況は長くは続かない。
サイトの背中に呆れた女性の声が掛けられる。
「……何をやっているのですか、貴方は?」
サイトは目にも止まらぬ機敏な動きで包容を解いて、声を掛けてきた人物に向き直る。
するとそこには、頭痛を堪えるような表情を浮かべた緑髪の女性が居た。背はサイトより少し低く、年上の女性だ。
その後ろからは、燃えるような赤髪を持った少女と、金髪が少し内側にカールした女の子が近づいて来ている。少女は背が高くサイトと殆ど変らない。そして女の子は、サイトの胸元位の身長だ。
赤髪の少女は、興味深々といった具合で舐めるように此方を見ている。女の子も少女ほど露骨ではないにしても、そういった表情を浮かべていた。
サイトは急に気恥ずかしくなり、咄嗟の言い訳を考えるのだが、上手い言い回しが思い浮かばない。
そして迷った挙句、片手を振り上げて元気良く挨拶を返すことにした。
「あっ、ええっとぉ……
…………
ロングビルの姐御! てぃーっす!」
日々オスマンに対してのみ振るわれ、この2ヶ月間で磨き抜かれた左ストレートがサイトの顎に直撃した。
◆◇◆
「それでね、ロングビル先生がサイト君に思いっきりビンタしたんだよ。
その後も何だか内緒話してるし、何だったのかなぁ?」
「そう、ね……」
ジュディはルイズの髪を梳かしながら、今日1日の出来事を話して聞かせている。
今日1日の出来事は、ジュディにとって何もかもが初めてで目新しく、刺激に満ちたモノであった。
そして子供の特権か、疲れるという事は知らないようである。
それに対してルイズは、コックリコックリと舟を漕ぎ、ジュディの声を子守歌代わりにしている。
穏やかな寝顔を見て、ジュディに小さな悪戯心が芽生えた。
櫛を鏡台にそっと置いてから、軽く両手でルイズの背中を押す。
「えいっ!」
「うわぁ! なになに? なにごと!?」
背中を押されたルイズは何事かと飛び起き、慌てた様子で左右を見回す。
「あははっ。駄目だよルイズさん、椅子に座って寝るなんて。
寝る時は、ベッドで寝なきゃ風邪ひいちゃうよ?」
ジュディは悪戯が上手くいったのに満足しながら、ケラケラと笑い声を上げる。
ルイズは先程の下手人の正体に気が付き、憮然とした顔をジュディに向ける。
「ジュディだったの……
脅かさないでよね。吃驚したんだから!」
「ごめんなさい。
でも、ルイズさん如何したの? まだ寝るのには早いよ」
「その、ちょっと昼間に疲れる事があったから…… その、ね?」
ルイズは口ごもり、しどろもどろに説明をする。
「それって、教室の事? 魔法を失敗して爆発させちゃったって聞いたけど、本当なの?」
「うっ…… 誰から聞いたの?」
「キュルケさんからだよ?」
『余計な事を……』
ルイズはキュルケの顔を思い浮かべて、声に出さないように毒づく。
想像の中のキュルケは、手の甲を口に当てて高笑いしており、それがまたルイズを苛立たせる。
「あっ…… もしかして、聞いちゃいけなかった?」
ルイズが顔を上げると、ジュディの不安げな顔が飛び込んできた。
「そ、そんな事無いわよ? 自分で言おうと思ってたし?」
ルイズは手を振りながら慌てて否定する。
これが同級生や平民なら不機嫌なのを隠しもしないのだが、ジュディに対しては強気に出る事が出来ない。
ジュディに負い目を感じているのもあるが、それだけが原因ではない。
ルイズにも、その理由を正確に言い表すことは出来ないのだが、あえて言うとするならば弱者に対する庇護の念だろうか。それとも、幼子に対する母性だろうか。
とにかくルイズにも、自分の中に芽生えた感情を持て余しており、ジュディに対して一歩を踏み込めないでいた。
「その、だからね? 教室の後片付けしてたのよ。
魔法は使っちゃいけなかったから、余計に疲れちゃって……」
「だから、そんなに眠たそうだったんだ?」
「そう、そうなのよ!」
ルイズは何度も頷いて肯定の意を表す。
ジュディは少し残念な顔をして問いかける。
ひょとしたらと思ったらサイトか。つーかモンモンとケティ容赦ねえ…
「じゃあ、もう寝ちゃうの?
もっとお話ししたかったのにな」
「ご、ごめんね。
本当に疲れちゃってるから、今日はもう寝たいの。また明日、お話ししましょう?」
「うんおやすみなさい、ルイズさん」
「おやすみ、ジュディ」
そう就寝の挨拶をしてから、ルイズはフラフラと立ち上がってベッドに向かう。
その背中にジュディが声を掛ける。
「ねえ、ルイズさん。すこし勉強したいんだけど、いいかな?」
「いいわよ〜、あまり遅くならないようにね」
「ありがとう。本当にチョットだけだから」
ルイズは振り向きもせずに手をヒラヒラと振り、倒れ込むようにしてベッドに横たわった。
そして、ジュディが髪を梳かし終える頃には、穏やかな寝息をたてて深い眠りに就いていた。
「ルイズさん? もう寝ちゃったの?」
ジュディはルイズの顔を覗き込む。
ルイズは目の前で振られている手にピクリとも反応せず、安らかな吐息を吐いて眠っている。
「くすっ、お休みルイズさん」
ジュディはそう言うと、机上のランプだけ残して他の明かりを全て落とす。
すると、部屋は闇に沈み勉強机だけが闇の中に浮かび上がる。
ジュディは祖父より与えられた魔道書と魔道板をカバンから取り出し、勉強机に向かう。
椅子はジュディが座るのには少し大きく、足が床に付かずに宙ぶらりんになるが、机の広さは申し分ない。
机に使い古された魔道書を広げ、古き魔道板を手に取る。
薄暗い部屋の中で、弱いランプの光だけを頼りに魔道板に記された術を読み解いていく。
こうして夜はひっそりと深まっていった。
・
・
・
今回の成長。
ルイズは、ポセイドンがL2に成長しました。なお、このスキルは同名のスキルでしか上書きできません。
ジュディは、建造物の知識L2を破棄してナチュラルL2のスキルパネルを手に入れました。
ジュディは魔道板を読み解き『デテクトプラント』を習得しました。
第6話 −了−
投下おつかれさんです。
好きな作品のひとつなので、次回も楽しみにしてます。
大魔女乙
瓶で強打&心臓打ち…イ`ギーシュww
最後の最後に猿さん食らって、ちょっと遅れたけど第6話投下終了。
サイトがキモイとか言わないでね?
そろそろ、執筆速度も加速したいところなんだけど、なかなか筆力と構成力が上がんないなぁ。
書き方も安定しないし……
大まかな流れは最後まで出来てるから、最後まで書く気はあるけどね。
まあ次は、早けりゃ2週間後に投下します。
予言します…… 次回もアンリミテッドな導きを。
サイトのイメージ映像
____
+ ./ \ /\ キリッ
/ (●) (●)\ 「シエスタ……」
/ ⌒ノ(、_, )ヽ⌒ \
| `-=ニ=- |
\ `ー'´ / +
>>382 やる夫自重しろwww 投下乙でしたー。
>>382 投下乙です
前回ナン・ラガンが教師として出てきたけど、それ以外のも出てくるのかな
ダイ・ヤングが傭兵として出てきたり、アラシがテファの孤児院にいたり…
>>384 期待されているようですが、すみません。
出てくる予定の人はいますが、直接出てきたりセリフがあったりはしません。
ましてや、レギュラーで活躍するなんて……
あくまで小ネタ、刺身のツマ程度ですので。
あと、ソリスは俺の嫁。早く寝ろよ。
単発でこんなのが頭に浮かんできた。
意味ねぇ〜CD大作戦
有川君がルイズに召喚されました。
まず、召喚されて一言
「どういうこと? これ一体どういうこと?」
ギーシュと決闘
「ゼブラーマン助けて〜」
VSフーケ戦
「家帰る〜家帰ってゴロゴロするよ〜」
空賊の襲撃
「アー…… 止まった? アーー!」
オマケ
「ワルド子爵のヒゲ占い」
>>386 コサキンでワーオをこのスレで誰が知ってるのかと小一時間
しかし、宇津井健ならご立派様とも対等に闘えるかもしれん。
関根勤、もといラビット関根を召喚
ご主人様がオレにかまってくれない、とすねる関根
関根のネタに椅子から転げ落ちて笑い泣き、「あんたバカよ!」と言うルイズ
当然、服と靴は色違いで全部買い
さあう゛ぁんと氏大魔女氏乙&GJでした!
ブータの人こないかな〜♪
>289
麦わら海賊団全員クマにとばされたしな。ちょうどいいんじゃね
ジェームズ・ハウレット召喚
クールな割に人情厚いからルイズみたいなの放っておけないだろ、アイツ
戦闘力も「非常識」に分類されるほど高くないし
もちろんアダマンチウムを抜かれる前のヴァージョンで
18号に会う前のクリリン召喚したらどうなるんだろうなぁ。
あいつ結婚したがってたし、密かにルイズやキュルケ狙ったりするんだろうか?
巨乳好きっぽいから、ルイズやタバサはないか・・・
18号に近いっていえば、ミスロングビル?
むしろティファが召喚したら、ちゃっかりおマチさんと結婚しそうだな。
>>180 亀レスだが
セガサターンのthe blank of 3 yearsでイツキが再登場したり正体が分かって当時驚いた。
>>395 ルートによってコロコロ正体が変わるけどな
…それは主人公もか
正体がコロコロ変わる……このスレにおけるシエスタみたいなものか。
俺はボンボン派だったな。
おマチさんの扱いが良い作品には優良作品が多いという独自の統計結果を思いついた!
つまり王ドロボウやウル忍、お気楽忍者やサイボーグ猫やSDガンダムを……
マタタビの人とかゼロガンダムの人、帰ってこないかなぁ……
超闘士激伝好きだったなぁ、エンペラ星人が今考えるとハチャメチャな独自デザインで…
…エンペラ星人を召喚―――太陽を封じ込めるような暗黒皇帝をどうやって扱えとorz
つまり狂四郎召喚でハルケギニアにプラモスピリットの嵐が
吹き荒れるのですね、よく判ります
バージルSS おマチさん瞬殺だったけど面白いだろ。
ギーシュがレイスティンガーで蜂の巣にされて
宝物庫の扉がハンマーGクラッシュで破壊されて
ワルドの腕がビークスパイダーで切り落とされる光景がみえた
405 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/04(木) 16:10:14 ID:wL2wHoSP
バージルには蹂躙厨が湧かない不思議
と、sageも知らない馬鹿が囀ってます
>>405 バージルってなんだかんだで甘い奴だからじゃない?
黒蟻もおマチさんあぼーんだったけど面白いぜ
最近更新無いけどな
バージルはルイズ以上にツンデレだからだよ
そういや船や竜、グリフォンってどれぐらい速いんだ?
音速いってないぐらいかな?
以前、設定・考察スレでその手の話をしてたからのぞいてみれば?
割と速いっぽいシルフィードでもゼロ戦に置いてかれるくらいなんだろ?
音速とかそんな次元じゃないべ。
素で次元間移動可能な自宅通勤型使い魔って薔薇乙女チームとおとーさん(カールビンソンの方)以外にいたかな?
女神様たちどうだろ?
ベルダンディーやウルドだと規格外ならスクルドなら?
女神(メイジ)として半人前、貧乳、妹属性(長姉より次姉になついている)という点でルイズとうまくやれるか?
決闘イベントの理由付けは
「こんなモグラごときにお姉さまの名を付けるなんて許せない!」
で
人が間接を増やすイメージで音速のパンチを繰り出せるんだから
羽を増やすイメージか音速のイメージをすれば竜やグリフォンも音速で飛べるよ
>>415 あいつらは頚動脈から血の噴水を上げた後でサンドバッグに詰められて
朝まで放置されても死なないし
ジェットコースターから転落後しばらく放置されても死なないんだぜ?
「強いんだ星人」を人だと思っちゃいけません。
そもそも馬具の類無しに背に乗って飛行(しかも本読みながら)できるんだから
早くても50から60km/Hってとこじゃない?
>>292 青木村なら使ってもおかしくなさそうwもちろんギャグでだけど
>>404 ハンマーGクラッシュの絶望感は異常。
レイスティンガーの針は鉄くらいなら軽く貫通します
ベイブレードは戦闘機を簡単に撃墜し、町一つを壊滅させます
クラッシュギアは世界規模でやばいことになります
ミニ四駆は竜巻をかき消して岩石をたやすく破壊します
ビーダマンは数百メートル級の山一つ簡単に打ち抜きます
本当にありがとうございました。
…………遊びを極めた結果がこれだよ!!
世界征服できるはずだよこんだけすごかったら
>>418 テニスだって極めれば恐竜を滅ぼせるんだぜ?
パンを作って地球温暖化による海面上昇を防げますし
サッカーで大気圏突破できます
テニスに至っては恐竜だって滅ぼせます
遊びに限らず、極めるってすごいことだと思う
今アイオリアVer作成しようと頑張ってるんだけど難しい。
何が難しいってアイオリアをハルキゲニアに留める自然な理由と
使い魔のルーンくらい簡単に解除できそうなのをあえて解除しない理由。
誰か犬夜叉の殺生丸とか書けませんか・・・。
まあチョロQやベーゴマで世界を救いミニ四駆に縮退炉を搭載しファミコンゲームで地球滅亡を止め
挙句の果てにテレビゲーム(しかも8ビット)で宇宙そのものを崩壊から救うご時世だ
何があろうと驚かねぇぜ
だが最強の理不尽はカブトボーグ
つーかビークスパイダーはあれはじめは空気の刃だったのがいつの間にか
物質と物質の間に真空を生じさせて切るっていう理屈上切れねぇもんないはずなのに
トライダガーZは切れない不思議
スレチすまん
>>421 どのような目にあおうと曲がらず歪まず(?)決して諦めないルイズに
アテナの面影を見て手助けをする気になった、とか
アイオリア召喚なら、無印よりエピGの方が向いてると思うな
無印のはよくも悪くも真面目すぎ
ホビーといえば、遊戯王だってカード一枚のためにマフィア動かしたりするような高校生がいるからなあ。
つかカードゲームのために何回世界滅亡しかけてるんだよ。
と、いうわけでGXからユベルを召喚、ルイズになにされようと「それが君の愛なんだね」ですむ超ドM体質だから問題なし。
いや、ルイズにダメージが跳ね返るか
メダロットから天領イッキとメタビーを召喚
他の生徒たちも何故か新しいメダロットを召喚
そしてミスターうるちが何故かナチュラルにロボトルの度に現れる
ああ、うるちならしょうがない
ダーククリムゾンよりシオンを召還。使い魔によって使い魔(従者)にされるルイズ。
「シオンんんん(ハート)」
>>417 レビテーションでも使っていたのかルイズの部屋の窓の外に
ぷかぷかシルフィードが浮いていたりするからね。
不思議竜の不思議能力で浮かんでいる、その応用で本を読めるほど快適
という可能性もある。タバサが魔法をシルフィードにかけて浮かんでたんだろうけど
そうでもない限り、時速60キロでも本を読むのは難しいです。
時速72キロで秒速20メートル、すなわち台風の強風圏だったかと。
つまり、台風表示の赤い部分の外側、黄色い部分です。
が、いくつかの記述を付き合わせると、少なくとも風成竜は時速150キロ出せるようです。
少なくとも、ルイズが時速150キロに何の感想も言わなかったですから、
その程度には普通に出せる速度といえると思われます。
また、ゼロ戦を竜中隊が先導したときは、失速ぎりぎりまで速度を落としていました。
つまり、竜の巡航速度はその程度です。
道案内を置いてかないためにアルビオンの竜騎士隊を
引き離せなかったサイトの気持ちを考えると、後であれだけ落ち込んだ理由の一端がわかる気がします。
とりあえず設定スレへどうぞ
つーことは竜の巡航速度は70〜80ノット程度。多く見積もっても100ノットか。
セスナ172レベルの飛行機なら編隊飛行できるな
>>431 うるし絵のルイズか
今一想像できないな、具体的には胸g(エクスプロージョン
でももうどこかでたわし絵にされている気がする
>うるし
うるし絵の下の毛がもっそり書き込まれてるルイズですね、わかります
つーかアニメ版の原画やったことあるのか
うるし原さんなら
18禁もので総指揮監督の奴がありますよ
あったな
全然タワシじゃなくて残念だった
いや、アニメ版ゼロ魔第1話の原画に参加してるらしい
>>421 あいつも確か冥王ハーデス編でお亡くなりになったはずだから、なぜか召喚で復活ってのはどうだ?
あと、あいつって洗脳とかに弱そうだよな・・・不意打ちでルーンを刻んで、後はバージルの兄貴よろしくルーンに頑張って貰うってことで。
ストーリーランドの謎の商品売りの老婆を召還。
毎回色んな商品を購入するルイズ。
>>442 >あいつって洗脳とかに弱そうだよな
つまり、ルイズはコントラクト・サーバントではなく幻朧魔皇拳を使うわけかw
いっそラダマンコスと自爆した終盤のきれいなカノンをよんでだな
>>442 そのタイミングなら、
アテナ「貴方達は黄金聖闘士としての使命を果たしました。 これからは聖闘士としてではなく、一人の人間として生きなさい。」
異世界へ黄金聖闘士を飛ばす→ルイズの召喚に引っかかる
こんな感じなら割とフリーに動けそうだ。
いっそのこと記憶喪失にしてしまえばいいんジャマイカ>アイオリア
いっそ聖闘士じゃなくてアテナを召喚すれば忠誠云々は考えなくてよくなるな
虚無=アテナの転生にすればよい
そして無能王と教皇で大惨事になればよい
つうか、教皇なんて役職が存在するってことは、
あの世界じゃアテナ教みたいな宗教があるんだよな
教皇を召喚して宗教戦争勃発
>>442 神に逆らった罪で冥界で苦しんでるらしいぞ<天界編
車田ものなら風魔の小次郎から武蔵召喚で見たいな
打ち切り系ラストだったんで行方不明キャラ多すぎで召喚者に不自由ないだろうな
聖闘士は定期的に話題が出る割には喚ばれた試しが一度もない。
小ネタも合わせてこれだけ数があって、マイナーな作品も多いのに一つも無い。
チキなんかどうだろ?
念動力は使えるけど身体能力は普通の子供だ
チキじゃなくてキキだった orz
チキ召喚したらきゅいきゅいと仲良くなりそうだなw
>>456 魔女の宅急便か
魔法が無くなっていく瀬戸際の少女が魔法の世界へ召喚って結構面白そうな題材ではあるなー
ブレスオブのリュウを召喚した場合、きゅいきゅいはどう捉えるんだ?
>>434 ヘリコプターなら…エアウルフなら通常モードで編隊飛行できるな、ターボONでブっちぎり
異世界往復が可能になったエアウルフが
CIAやソ連(笑)によるハルケギニア干渉を食い止めるべく戦ったり
>>459 1リュウ 韻竜扱い
2リュウ 同
3リュウ フュージョンでシルフィードドラゴンになる
4リュウ 竜の神
5リュウ とりあえずドラゴンには見えないから関係なし
基本的に韻竜扱いになるんじゃないか?
ただシルフィードはおしゃべりだけど、リュウはしゃべらないタイプの主人公だからな
>>461 4の場合はもう別格扱いでしょうな
恐れ多すぎ
>>458 魔女の宅急便よりトトロの方が好きだな。
>>459 3のショタリュウでも召喚させて
お姉さんぶらせるのがよろしいかと思います。
>>461 だいたいそんな感じかね
では、カプコンの長寿格闘ゲームのリュウでは
>>453 車田ものなら「男坂」だろ
あの伝説のラストシーンで駆け上る先に召喚ゲートがあったんだよ
>リュウ
カイザードラゴン化して聖地を封印、眠りについたリュウが目覚めるのを何百年も待ち続けるシルフィを妄想した。
そこでダルシム召還
かなりのチートキャラだなw
>>465 乞食と判断される。
コッパゲ先生なら実力を見抜いてくれるかも?
そして空を飛んだりするのを見て驚いているところを
「これも修行だと思ってヴァリエールの使い魔をやってもらえませんか?」
と頼めばしばらくはやってくれそう
問題はゼロ以降のリュウだと空を飛んだぐらいでは驚いてくれない悪寒…
>>467 殺意の波動克服状態の真空竜巻で都庁半壊だからねえ
>>471 ベガやダルシムが普通に浮いてるしなあ
デルフいらない子になるぞww
ところで、見かけだけなら波動拳は風の魔法になるのだろうか?
手塚国光召喚、手塚ゾーンの威力の為テニスは国際条約で禁止されることに。
>>473 ここでクールなデルフはどうする
1 なんだかんだ言って使ってくれる
2 「インテリジェンスグローブ」として登場
3 背中に装備され盾として過ごす
4 ガンダは他の奴が選ばれてそいつに使ってもらえる
5 現実は非常である
>>473 詠唱してるが杖なしだから先住扱いかもしれない
リュウのファイトを見たシエスタがブルマ、セーラー服で
後はわかりますね?
>>473 「おれがマルをつけたいのは答え4だが期待はできない・・・別に召喚された虚無の使い魔が
あと数秒の間にここに都合よくあらわれてイーヴァルディの英雄のようにジャジャーンと登場して「まってました!」と
間一髪で買ってくれるってわけにはいかねーぜ」
「答え5 答え5 答え5」
>>473 だからブレスオブのリュウですよ。全員剣士だし。
けど、ドラゴンブレイド入手後だったら予備扱いになるかな…
手塚作品かあ
どろろ召喚
タルブには固定化をかけられて爆睡中の百鬼丸(腕にデルフ内臓)が…
そういえば百鬼丸は子孫作れるんだろうか?原作では〇んこ取り戻していたかな?
>>473 -─== ‐_‐_─‐ -
、,、,、,、,、,、,、, ~" Z._ `' 、
,. -─rヘ. |__/ /5Tヽ `ヽ ':,
/ ,.ィ'Tヽ.{_`|`ヾァ . | ( ノ
| l ヽ ,ノ `二´ リ `二、 死にたいようだな
|. ` - _,>─‐r‐-- イ 、 \
j`'ー一'゙L.._ └ 、__ノ ! .〉
{ `' / ,:'
', l_ ヽ_ -‐ '" '゙
>、 -== ニ " ~ , - ‐ '' "´
_/ ` _,ノ !`丶/
/´ Y ""´ .r'7 (´
\f三ヽ `丶(二コ
うわ・・・自分に返して何をしたいんだ・・
>>475ね
ちょっと、ヴァニラ・アイスにバラ撒かれてくる
ガンダールヴは要らないて言い出すだろリュウだと勝手に付与された力だし
つまりデルフも必要ない
予定がないようなので21:40頃に投下してみたいんですけど
よろしいでしょうか?
クロス先はらんま1/2
召喚キャラ
天道あかね
早乙女乱馬
おもしろそうだ
支援
>>485 乱馬なら既に来ていますけど、あかねとセットでなんですか?
それとも乱馬とあかねが別の人に?
呪泉郷丸ごと召喚とか見たいな
>>488 そしておマチさんがルガールを召喚するんですな
これでナイトメアギースとベガも召喚されればハルケギニアが凄いことに……
ストリートファイターの話題で思いついたプロット
豪鬼召還
↓
契約時の言動でルイズ危機一髪
↓
コルベールから魔法世界について聞かされ興味を持つ
↓
契約のkiss(みせられないよ!)
↓
右手に刻印
↓
飛べないルイズを抱え縮地移動(瞬獄殺のあれ)
を思いついた
第一話 光の鏡
春の新鮮な陽気が落ち着き始め、世間がG.Wの予定作りに心を馳せる時期が到来する日本の春。
都内某所に無差別格闘流なる作者も良くわからん流派の道場を構える天道家も来るべき連休の計画を立てることに余念がない。
ここまでなら、春によくある風景にしかならない。しかし、居間で予定を話し合う天道家一家及び居候夫婦、そして彼らと親交の深い女性たちの表情は深刻であり、同時に疲れ切っている。
ある男を中心とした騒動の後なら自然なシーンとなるだろう。大抵、その男が全身傷だらけで添え物のように転がっているのが常である。
しかし、どこを見てもその男――早乙女乱馬――の姿を見つけることはできない。彼が幾度も、特異な体質を披露する舞台となった池に沈んでいるわけでもない。
彼の母との約束を守れなくなり、恐怖におののき逃げ出したのだろうか。
現実逃避するパンダ親父の姿もなく、息子の身を心から案ずる母の顔があるので、それは否定されるべきだろう。
早乙女乱馬は今どこにいるのか。問いに答えられる者はこの場には皆無。
彼は失踪したのだ。一ヶ月ほど前に。
「では、次の連休に呪泉郷に赴くということで皆いいかね?」
場を引き締めようと、重厚間のある声で同意を求めている男の名は天道早雲。天道家の主である。
この場にいる面子を考えたら、特にシャンプーや右京あたりは威勢のいいことを言って乱馬捜索に熱意を燃やしていると想像できるだろう。
しかし、彼女らも同意を示すために首を動かすだけでいつもの元気がない。彼女だけではない。居間で腰を下ろしている皆の顔はかなり疲弊している。
乱馬の許嫁である天道あかねにいたっては、目元のくまがここ数日ろくに睡眠をとってないことを示し、顔は、どことなく痩せこけ、相当に衰弱している。
それのそのはずである。乱馬が失踪して一月が経ったにもかかわらず、その原因や理由、そして手がかりがほとんど掴めないからだ。
早乙女乱馬が突然行方を晦ます事は多くはないものの、今まで何度か例がある。珍妙な格闘家やアブノーマルな金持ちに拉致られるのがいつものパターンだ。
修行の旅に遠出することもそれなりの頻度であることだ。
なので、失踪したところで、乱馬がどこにいるかを心配する人間はいなかった。2、3日もすれば勝手に帰ってくるだろうと思っていた。
ある意味での信頼関係。これが甘かったのだろうか。乱馬は一週間経っても帰ってこなかった。連絡も一切なかった。
どうもいつもと様子が違う。乱馬の身に何か良くないことが起きたのか……
乱馬を取り囲む個性が先鋭化した美少女たちが疑問を感じると同時に、早乙女乱馬の動向を探る動きが始まった。
初めは、どこぞに幽閉されていると、器物損壊三人娘が乱馬と関係がある人間たちをしらみつぶしに尋問したものの、瓦礫の山が増えるだけで何の成果も挙げられなかった。
もしや、誰かが独り占めしてるのではないかとお互いが疑い合い、天道家が半壊したことも、別の話として記述しておこう。
ルイズ=ギース
テファ=豪鬼
無能王=ベガ
教皇=ルガール
探し始めて三日経っても、乱馬の行方に繋がる情報がない中、歩けば日本をさ迷う方向オンチ、響良牙の帰省が事態を一変させる。
――乱馬が光に飲み込まれた――
良牙は、乱馬が人間大の光の中に吸い込まれ消えたのを見た、と言ってきたのだ。しかも、調べて判明したその場所は、お好み焼き屋うっちゃんの目と鼻の先であった。
乱馬を吸い込んだ謎の光。それは何なのか、誰がこんなことをしたのかも不明であっても、乱馬の発見にぐっと近づいたと確信した。束の間の夢と、すぐに気づくことになったが。
光の正体がわからない。金を使っても、人脈を駆使しても、人間を超越した寿命を持つ人間の知識からも、どこかにあるはずの糸を掴めない。
手を伸ばせば掴めそうなのに届かない不快感。徐々に、そして確実に、彼女たちに焦りが生まれ始めた。
ほんのわずかな情報で日本中を駆け巡った。不眠不休で探し回ったこともあった。
それでも早乙女乱馬の軽口すら聞こえない。
「新しい情報が入ったらよろしゅうな……」
「抜け駆けは許さないね……」
これほど声に覇気がないシャンプーと右京はそう見れるものではない。事がいかに深刻か良くわかるというものだ。
日本中を駆けずり回ってもまだ余力がありそうな武道派美少女であっても、夫(本気でそう思っている)が失踪した不安には敵わない。
乱馬が消えて万歳三唱しそうなライバルたちも、思い人がこうなってしまっては口の挟みようがない。
乱馬不在にかこつけ、心の隙間に入り込もうとする不届き者?の心配は無用となった。しかし、怒りのはけ口も消えたので、ムードが暗くなる一方だ。
彼女らでもこれだ。乱馬と恋人一歩手前の天道あかねはさらに深刻なことになっている。
天道家を後にした重苦しい背中が見えなくなると、天道あかねは踵を返して、暴力女とまで言われたのが信じられないほど力のない足取りで玄関へ向かう。
「あかね。今日はゆっくり休みなさい」
最近は、話をろくに聞けないほど弱っているあかねでも、父が娘を気遣う気持ちは伝わったようだ。わずかに傾く頭がそれを伝える。
気休めにもならないことは、ここにいる全員がわかっていた。真夜中に金切り声で叩き起こされたことは一度や二度ではない。
「あかね……」
娘がこうでは父親も言葉に詰まる。特に早雲のような親ばかには。
「何故だ〜!何故こんなことにー!あかね〜!?元気を出しておくれーーー!」
未だにこれだけ騒げるのは、天晴れな精神構造を持ってる証拠だろうか。ある意味きつ過ぎた修行のせいとも言える。
沈む父親を慰める天道かすみの姿を含め、唯一、いつもと変わらない日常。
欠けたパズルのピースを加えれば、いつもの生活が戻ってくる。喧嘩して、家が壊れて、戦って、迷惑かけて、そして気持ちが伝えられないもどかしく、幸せな日常が。
今は、遥か遠くに消えてしまった。
付近の住宅から漏れる光もまばらな真夜中、天道あかねは、もう何度目になるか、悪夢によって目を覚まされた。
乱馬が手の届かないどこかに飲み込まれる夢。追いかけても、追いかけても触れることができない自分。
躓いて、見えなくなる乱馬を半狂乱になりながら、必死に求める自分。いつもと同じ夢。
以前のように、叫びながら跳ね起きる気力もない。涙もとうに枯れた。今はその痕を示す筋が残るだけだ。
できることは、押しつぶされそうな心から逃げるように寝返りするだけ。
「乱馬……どこなの……どこにいるの……」
呼びかけに応じる最愛の男性はいない。
「早く帰って来てよ……」
暗闇を吐き出すようなか細い声は部屋の闇に飲み込まれて、誰にも触れることなく見えなくなる。
ただ、会えるだけで、無事を確認するだけでいい。「心配すんな」と一声かけてくれることをずっと望んでも、神はこの願いすら叶えない。
それでも彼女は乱馬のために体を動かす。どんなに辛くても。
人間、ここまで音沙汰なしだと、最悪の結果を想像しがちだ。天道あかねはそれに該当しない。
彼女の中に残った意地か、はたまた、乱馬への信頼か。
あかねは乱馬が必ず自分の前に戻ってくると信じている。今までもそうだったから、と己に言い聞かせる。
心を焚きつける儀式。また明日も一働きしようと体に活を入れたその時、突然目の前に楕円形に鈍く光る鏡が出現した。
なんとも不思議な鏡だ。周囲に光の渦を巻き、闇にこぼれながら消えてゆく。
鏡なのに厚みがないように見える。驚いたことにわずかに宙に浮いていた。大きさは人間がすっぽり入るサイズ。
あかねが、ぼんやりと鏡の面を見ると、鏡なのにその先に道があるように思えた。
初めて見る不可思議な現象なのに、以前どこかで耳にしたような感覚があかねを渦巻く。
天道あかねが久方ぶりにベッドから飛び起きたのは、光の鏡を知っていることに気づいたからだ。
響良牙見たという、乱馬を吸い込む謎の光。大きさは人間大……
鏡だとは思っていなかったものの、他は良牙の話とほぼ一致する
最近は鉛のようになった体に、再び血が巡る。やつれたあかねの顔に生気がみなぎる。
うわごとように何かを呟き、拳を握り締め、シーツの形を変形させてゆく。
探し続け、欲しくてやまなかった乱馬へ繋がる道が今、開けた。
天道あかねはいつもの力を取り戻した四肢に目一杯の力を入れて鏡の中に飛び込んだ。
あかねは全てを忘れていた。家族のことも、居候のことも、恋のライバルのことも、そして、この先に何が待ってるかも。
光の先に乱馬がいる。天道あかねは笑顔で恋人を迎える男の顔を確かに見た
二つの月が世闇を薄く照らす。ここは地球ではないどこか。
中世の城を思わせる、重厚な建物の一角の窓に一人の男が物憂げな表情で外を眺めている。
この世界では奇妙といわれる服装のおさげ髪の青年。何かを懐かしむように外を見る。
男がここに召喚されたのは一月も前。
親友の家に昼飯をご馳走されようと向かった際、光る鏡――今は召喚のゲートと知ったけど――興味本位で触れてみたら、気づいたときには異世界の草原に座っていた。
糞生意気で口の悪い、おまけに手癖足癖も悪い――まるで“あいつ”だ――魔法女の使い魔なんぞにされる屈辱を味わった。
あの野郎、キスまでしやがって。思い出すだけでおぞっけが走る。可愛かったから、あのおぞましい記憶よりましだが。
無差別格闘早乙女流を継ぐ男が女に尻に敷かれる、男の中の男の俺のプライドを傷つけると同義だ。
はじめは頭に来て、毎日喧嘩していた。相手が女なので手が出しにくい分、あいつは調子に乗って攻撃してきやがった。
おかげでいつも酷い目に会うのは俺だ。いつかは復讐してやると心に決めたとき、あいつも特異な体質で苦労していることを知った。
困った人を助けるのも、無差別格闘早乙女流の勤め。むしろ、器量よしの俺だからこそ手を差し伸べるべきなのだ。俺も男だから、男の中の。
そんなこんなで始まった日々は、少なくとも退屈するほど暇はなかった。
香水拾ってやったら、逆切れされて喧嘩を吹っかけられるし。当然勝ったけど。ギーシュって言ったか、少しは骨のある奴だったな。
その後、キュルケって女に誘惑されるし、ルイズは怒るし。鞭はねえだろ……飯抜きって……過ぎたことは忘れよう。
一番大変だったのは、盗賊フーケとの戦いだったな。何だ、あのでかい土人形。正直驚いたぜ。
フーケが盗んだ、神秘の水……もしや、と思ったら、やっぱり呪泉郷の泉だった。フーケが被って、何になるかと思ったら、鷹になってやんの。盗みには便利だろうな。
おかげで捕獲するのに苦労したな〜。もちろん俺からは逃げられねえけど。
フーケをとっ捕まえた日の夜の舞踏会のあいつは結構かわいかったな。そう言ったら真っ赤になって顔背けたっけ。
思い返すと、結構楽しくやってるな、と男は思った。ここでの生活も悪くは……と思いかけて、首を振って否定する。
本来、俺はこの場にいてはいけない。すぐに帰らなくちゃいけない。今は方法はわからない。けど、必ずあの場所に戻らなくちゃいけない。
“あいつ”も待ってる。もしかしたら、俺がいない寂しさで泣いてるかも。そういう可愛げはあるからな。
物思いにふけていた男は、煌々と光る双月がずいぶん高くなったのを見て、もう眠ろうとベッドに入った。
フーケとの戦い以降、床で寝ずにここで寝ろといった魔法少女ルイズ。どういう心境の変化なんだろうな。寝心地がいいんで、お言葉に甘えさせてもらってる。
寝る体制を整えようと、ベッドに足を入れた時、“あいつ”の声が聞こえた気がした。
急いで体を振り向けたら、そこには誰もいない。当たり前だ。“あいつ”が、あかねがこんなところにいるはずがない。
とうとう幻覚が聞こえ出したかと、自分の耳を責めながら、ゼロのルイズの使い魔、早乙女乱馬は心地よい睡魔に意識を任せた。
光の鏡に突っ込んだ天道あかねが舞い降りたのは、豪華な装飾で飾られた寝室だった。
やはり乱馬はどこぞの金持ちに連れて行かれたかと、家人がいないか周囲を見渡す。ここ数日では考えられないほど頭が回転している。
もちろん、いつ敵が襲い掛かっても迎撃できるよう、臨戦態勢は完璧だ。
乱馬を誘拐した奴らをふん縛って、目的を聞き出して、取り返してやると心に決める。
あかねの決意によって、研ぎ澄まされた集中力が寝室にいる人影を捉える。
暗くて顔は伺えない。背丈からして男。
あかねは乱馬の居何処を聞き出そうと、口を開くと、気配を察知したのか、男のほうが喋りだした。
「ほう、これは面白いものがやって来た」
調子の外れた調律のような、何か狂ったような響き。人間の枠から外れた、異様な雰囲気があかねの口を封じる。
滅多な事では動じないあかねを尻込みさせるこの男、名はジョゼフ。ハルケギニアに君臨する大国ガリアの“無能王”。
そして、天道あかねの主人となる男。
異界の風が吹く。異質な魔法使いと狂気の王の使い魔はこの地に何をもたらすのか……
>>494 ミスターカラテが足りないと思わないか?
これで一話は終了
この組み合わせにしたのは共通する点があるからかな
稚拙な書き手なのでさまざまな意見をお待ちしてます
>>499 なるほど。別れて召喚されてしまったという訳ですか。
ふたりを待ち受ける運命はロミオとジュリエットか、それとも……?
>>494 ゴーレムの踏み付けを上段当身投げ!
とりあえず男同士のキスは避けられた乙
乙。つかいま1/2のほうは半年止まったままだなぁ・・・
ジョゼフがあかねの手料理で悶絶するところを見てみたいものだ
らんまの人乙
個人的にはできればギーシュとの決闘とか
イベントをどう乗り切ったかkwskと思った。
1/2の人戻ってキターーーーと思ったら、別の人だったのか・・・
ところで、乱馬って「向かってくる奴は老若男女容赦しねぇ」とか言ってなかったっけ?
まぁむやみやたらと暴力に訴える奴じゃないけどさ。第一話であかねにも攻撃しなかったし。
シャンプーは吹っ飛ばしたけど・・・
しかし、あかねのファーストキスはジョセフに取られるのか・・・乱馬南無
きっとゴーレム×7の攻撃を躱しながらグルグルあるいて・・・
あれ、良牙ってギーシュとおマチさん相手なら強キャラじゃね?
後半ではド外道とか言われてた気がするがなw
爆砕点穴は土のメイジにとっては鬼門か
あかねは強力ソバ食べないと役に立たないと思うが。
個人的には玄馬登場希望。
獅子咆哮弾がスゴイ威力になってそうだ>乱馬
しかしエクスプロージョンって獅子咆哮弾の魔法版だな。
共通点がかなりある。
ジョゼフは獅子咆哮弾に適正があると思う。
その反面――ルイズには猛虎高飛車の方に適正が?
>>510 「魔法が使えない獅子咆哮弾!!」
「弟を殺した事を悔やんでいる獅子咆哮弾!!」
「無能王と呼ばれる獅子咆哮弾!!」
1/2の人乙
ただ一点「1/2」は出来れば「1/2」か「1/2」のようにスラッシュは全角に変えて欲しい
というのもwikiの仕様として半角「/」をタイトルに使うと表示がおかしくなるんですOTZ
むう、虚無の系統はそ〜ゆ〜ものだったわけか。
始祖リョーガ・ル・ルーミック・ヒビ・キー・タカハシ
ルイズはあの五円使う先生の技習得するんだ
八宝五円殺(五十円、バスケのゴールなど丸いもの)――は、体型的にタバサもアリかと。
>>509 ストレスがエネルギー源(ぶっ壊したくなる気持ち?)のエクスプロージョン
重い欝な気持ちが気の重み(破壊力)になる獅子咆哮弾
どっちも威力を高めるには自らを不幸に落す必要が有る因果な技だな…
こんばんはー。投下良いですか?
HHからクロロを召喚します。
四谷さん召喚
使い魔が殺された日を思い出して、泣く事はもうない。
マチルダは一心不乱に筆を執る。
メイジにとって使い魔とは一生のものだ。勿論死ねば新たに召喚することも出来るが、
最初に持つ使い魔はやはり特別であり、それらとの思い出のために再召喚を行えぬ者もい
る。彼女もそうだ。
父と母の処刑に付して殺された。忘れ難い記憶だ。頭の片隅に重石のように構え、べた
べたと赤で塗りたくられている部屋がある。最後の時、あいつは跡形もなかった。どんな
形をしていて、どんなふうに動くのか、死体からは解らないほどに。けれど、脳はそれを
自分勝手に補完する。生前に一緒した、関連する最も鮮明な、胸が弾む記憶の笑い顔を切
り抜いて、その何がなんだかわからないはずの物体にはめ込み、悲痛な死相を作り上げる。
マチルダは使い魔が怖い。あれから何年も経ち、二十歳もとうに過ぎた。それでもやは
り、もう一度召喚する勇気はない。
仕立屋が近頃の服の売れ行きを知るように、武器屋が近頃の剣の売れ行きを知るように、
マチルダは治安の崩れを知っている。盗賊だからだ。
妹が心配で夜も眠れない。
使い魔が居れば、彼女の傍につけてやることが出来る。危機が迫ったら直ぐに飛んでい
ける。だが、マチルダは持っていない。自分の使い魔を遣ることが出来なかったから、違
う方法を選んだ。
受取人以外に開封できないという、魔法の封筒を手に入れたのは幸運だった。
幼少のころに一度唱えたきりだったから、思い返すために暫し時間を要した。幸い職場
の関係で、尋ねられる人は多くいた。
サモン・サーヴァントとコントラクト・サーヴァントの呪文は些か長く、肩が凝る。無
心に書き綴る。それが悲しい別れをもたらさぬことを、寂しい妹の慰みになることを強く
願った。
長々しい呪文に注意書きも加えると、便箋は結構な枚数になった。厳重に封をした。
どこか不恰好で小太りな封筒が、森のエルフを一匹訪ねて飛んでいく。
軟らかい夜の風を切り飛んでいく。
夜の空が硬く凍りついている。そこかしこから敵意が溢れている。月の光を受けて、
木々の枝は道に影を落としていた。時折拓け、薄い葉が影でまだら模様を作り出す。
装飾あふれる赤い土の上を、男が歩いている。名はクロロ=ルシルフル。
擦り切れた外套の背には、十字架が足から吊るされている。
彼が森に入ってから、既に三日が過ぎていた。森の中、闇夜に紛れて眠りこける獲物を
丸呑みする凶鳥が居る。それらの羽ばたく音に震え、訪れた朝に安堵した獲物を裂く猛獣
が居る。クロロにとってそれらとの遭遇は死を意味する。一日中警戒も解けず、眠れぬ日
が続いた。
道なりの道を逸れ、ただただ直進する旅は消耗が激しい。辿り着くためではなく、進む
ための旅だ。半月ほど前に戦闘の要である念能力を封じられた。直前に、必中の能力者に
よって命を占われていたから、それに従っている。紙切れは東へ進めと言う。
こうして東へ進んでいる。
ぎゃあぎゃあと、鳥の鳴く声が聞こえた。クロロは走り出す。
隙を見せてはいけなかった。歩みを止めるなど、息を潜めるなどもっての外だ。習性と
して寝ている生物を狙うため、活発に動いてみせるのが良いと麓で聞いた。しかし、それ
でも襲い来る群れはあるし、相手をするのは骨だ。事実連夜の闘争で体力が危ぶまれた。
それが理由だったのかは解らない。もしかしたら、東へと教唆する占いへの信頼がどこ
かにあったのかもしれない。
「これは……。そうか、これか」
クロロは懸命に走る間も愚直に東を向いていたから、真正面に突如現れた鏡に、不審よ
りも確信を抱いた。ここまでそうして来たように、東に向けて駆ける。真昼の光のような
鏡に爪先が触れたとき、硬質の感触がないことに唇を吊り上げる。やはりこの先だ。一匙
の躊躇いもなく、身を投げ入れる。
彼を飲み込んだ鏡はすぐさま掻き消え、やがてその場に現れた凶鳥たちが未練がましく
直上を旋回していたが、暫しして他の獲物を探しに離れた。
薄く硬い、もっと言えば貧しい毛布の冷たさに身をよじる。クロロは目を覚ます。
狭い部屋のベッドに寝かされていた。窓が一つと、ベッドの他には小さなテーブル、そ
して椅子が二脚ある。寝室のようには思えないが、牢というわけでもない。小さな客間と
言って差し支えないだろう。
耳が足音を拾った。誰かが近づいてきている。警戒はしたが、身構えはしなかった。現
状には厚意を感じられたし、頑なに敵対しようという気も起きない。
「……あ、目が覚めました?」
扉を開けたのは、金の髪が目覚しい少女だった。成人のクロロと比べ幾分か小柄で、胸
には洗濯物と思しきタオルケットを幾つか抱いている。
「ああ、目が覚めたよ。ありがとう」
他所向けの顔で礼をした。
少女はクロロの言葉に一度視線を落とし、再度上げ、それでもクロロの両眼までは行か
ずに口元を見つつ言った。
「私はティファニアです。ここはサウスゴータ地方のウエストウッド村よ。それから、え
えと、私の耳が長いのは、母がエルフだから、です」
言い終わると、再び視線を落としてしまった。眼が左右にきょろきょろと慌しい。
クロロは己の記憶を浚ったが、サウスゴータ地方という地名は聞いた事がなかった。村
の名を知らないからと疑ることはないが、地方と呼ばれる広さに心当たりがないのは拙い。
本当に異常な場所に導かれたのか、とクロロは考えた。エルフという部族にも心当たり
はなかったが、そもそも未開の地であるなら十分在り得る。
「それで……それで、その。
あなたは私に使い魔として召喚されました。貴方が寝ている間にコントラクト・サー
ヴァントは済ませてしまっていて……。コントラクト・サーヴァントっていうのは魔法で、
貴方を使役する権利を私に与えるものです。
強引でごめんなさい。わたしの使い魔になってください。お願いします」
警戒は既に遅いらしい。近頃その手の能力に縁があるな、とも思う。胸に刺された、律
する小指の鎖(ジャッジメントチェーン)を除念するときを待つのが良い。
クロロは顎を引いて、小さく頷いた。
ティファニアはそれを受けて、安堵の息をついたようだった。露骨な敵愾心が湧かない
のは、その契約の力だろうか。
再び視線を落としてから、ティファニアがあからさまに表情を崩して、風呂の用意をし
てくると言った。そして軽くはにかんで部屋を出る。
最後の最後になるまで、ティファニアが腕に抱えた洗濯物の内側に、恐らくはカンニン
グペーパーの類があったことに気づかなかったこと。そして対話の中で、相手の出方を窺
い頷くだけだったことにクロロは頭を抱えた。一言分も口を開かせて貰えない、手際の良
さが相手にはあった。
マチルダ姉さんへ
手紙の通りにやってみて、なんとか成功しました。
契約をしてくれたのはクロロ=ルシルフルという人で、盗賊なのだそうです。
まだあまり話をしていないので、どんな人だか解りません。ですが、きっと良い人だと
思います。
また連絡します。
ウエストウッド村は建築物が十、全て民家で、住民は全員がティファニアよりも年少の
子供たちだ。十分あれば村を一回りできる。小さな切り株に腰かけて、一人の少女が彼女
よりも小さい子らに絵本を読み聞かせているのを聞いていた。サウスゴータ地方で使われ
ている文字は目に新しく、クロロはその絵本を読めない。会話は通じるのだから、然程時
間を待たずに習得できるだろう。拙い手書きの絵本だが、この村の本は大半がそのような
ものだった。
コートは脱いで、初めの日に部屋に吊るしている。木漏れ日が差し込む村は過ごしやす
かった。箪笥の匂いが染み付いた、大人物のシャツを借りて着ている。下はぼけたスラッ
クスのまま。そちらはなかった。ティファニアが、腰まわりの合う物を見つけてきて、半
ズボンとして着てみてはと言ったが、クロロは遠慮した。
禍々しい額の刺青は白布で隠している。
「――。ロッシュは言いました。おれは大変なことをしてしまったぞ。宝がぬすまれたと
知ったら、王さまはなんと思うだろう。
ロッシュはこうかいしました。こうかいしたので、王さまのところへ、ぬすんだ宝をか
えしに行きました」
朗々と少女が読み上げる物語は、佳境に入っていた。控える子供らが唾を飲み込む音が
聞こえる。クロロが身を乗り出しているのは、本を持つ少女の手に力が入りだし、文字が
見えなくなったためで、物語の推移とは関係ない。
「王さまは、宝をかえしに来たロッシュのことを、しょうじきものと言って、ゆるしまし
た。ロッシュは王さまのやさしさにぽろぽろ涙をながして、ぬすみをしなくなりました。
……はいっ、おしまいだよ」
クロロの他に、三人の子供が聞いていた。
「すごい、すごいね! ロッシュ、良かったね!」
一人の少女は話の中の、王か主人公か、あるいはその両方に甚く感銘を受けたようで、
しきりに手を叩いている。
「うそ、ほんとは怒られたんじゃないかな。きっと見えないところで怒ったんだよ。お城
にはいっぱい部屋があるんでしょ? わかんないじゃん」
少年はそう言っていたが、笑顔で言う彼は絵本に不満がなかったと解る。読み手の少女
を困らせたいのだろう。
クロロはもう一人の、何も言わずに座っている少女を見た。彼女もクロロを見る。
「ねえ」
「どうした」
「ロッシュのごはんはどなったの?
お城から宝物を盗んじゃうくらい、ぺこぺこだったのに」
この絵本は、母が子に読み聞かせる物でも、国が民に言い聞かせる物でもなく、物語に
憧れる子供が思い描くままに綴った物だった。良い話になり終わるが、著者も説明できな
いことが多くある。クロロは顎に指をかけた。
「確かに。盗人が正直者になっても、腹は膨れないが。
……そうだな。腹が膨れるよりも、正直者と呼ばれたかったんじゃないか?」
「それって、どうして? お腹がすいてたら、そんなの忘れちゃうはずなのに……」
少女は言い終わり、顔を伏せた。抱いていた人形で顔を覆い、クロロの視線を遮った。
彼女の意を汲み空を仰ぐ。相変わらず快晴だった。
ウエストウッド村は、村自体が大きな孤児院である。そう言って良いと表現すべきだろ
うか。元々は普通の村だった。大人も居た。
昔は居たが、居なくなった。離れる者も居た、死んだ者もあった。いつの間にか、子供
だけになっていた。
アルビオン王国サウスゴータ地方の、サウスウッド村は平和だ。しかし、サウスゴータ
には不穏の影が蔓延り、アルビオン王国では革命が始まった。人は死んだ。大人も子供も、
ある者は死に、ある者は逃れ、幸運な一握りが争いを忘れたウエストウッド村に辿り着く。
そこは平等ではなかった。子供は受け入れられたが、大人は例外なく追い返された。
生産能力のない子供、のみで構成された村だった。生産という行為は常に高々と煙を立
てる。命を爛々と焚いて行われる。対して、消費は粛々と行われる。何かを生み出す事を
捨てたために、ウエストウッド村は高い隠匿性を得た。
それでも人は訪れる。どこの土地も酷いからだ。こんなに長閑な村は他にない。子供た
ちは、皆が健やかで優しさを知っている。
だがやはり、村への道は厳しいのだ。その中には確かに、パンを盗む事が生きる事と直
結する道も存在する。
ふとクロロが視線を地に落とすと、少女は静かに激高していた。
「お腹が減ったら、何も考えられなくなるのに――」
黙って顎を引き、少女の瞳を覗き込む。揺れている、怒りも悲しみもあったが、強い疑
問が黒い球を占めていた。
クロロは言った。
「考えられなくなるほど、腹が減ってなかったんだろう」
何も考えられなくなることを、知らなかったんだと、言った。
マチルダは取る物も取り敢えずウエストウッド村へと向かっていた。内乱による動きが
収拾する前であったのは幸運だった。空の国に乗り上がる傭兵たちの足が途絶える頃には、
定期船も自粛を始めるからだ。しかし、どれだけ急いでも胸のざわめきは治まらない。
ティファニアが召喚した使い魔は人間で、しかも不遇な事に盗賊であるらしい。
治安の悪化による不幸を警戒して勧めたはずだった。こんな形で裏目に出るとは予想だ
にしなかった。マチルダ自身の行いで村に不穏を招くことは出来なかったから、馬は使わ
ずに駆ける。
やがて視界に入りだしたウエストウッド村の家々が、変わらず窓から明かりを漏らして
いることに安堵した。
真っ先にティファニアの家を目指す。中から声が漏れている。
暖かい日差しも夜が来る度に掻き消える。代わりに火を点す時間帯になっていた。質素
だが味わい深い夕食を終え、ティファニアがクロロに小言を漏らす。
「あの……。そのう、子供たちに、おかしな事を教えないでください」
彼女の萎縮した態度にクロロは、もっと毅然と言ってくれて構わないのに、と思った。
サモン・サーヴァントやコントラクト・サーヴァントの事後承諾を迫りにきた時と比べ、
随分と果かない。
「それは、盗みや食事の話か」
「うん、そう。それって良くないことよ」
「極々当然の事じゃないか? 食べなければ生きていけないときもある。
それを否定するのは……なんだろうな。いや、否定するのは構わないか」
椅子に深く座り、体は前に傾ける。両腕を膝に掛けた。
「ティファニア」
「なあに?」
「物の価値は、どうやって測るのが良いだろうか」
長い耳を僅かに揺らして、問いかけられた彼女は首を傾げる。制限時間はないが、静か
に座るクロロを待たせたくはない。
「測れるものは、お金で測れると思う。でも、測れないものがあるわ。思い出とか、気持
ちとか、目に見えないものと一つになってるもの」
持ち主によって価値は変わる。クロロが、ティファニアを継いで言う。
「直接食べる、活動の動機になる、所持することで思いに浸る、そういう様々な物がある
が、目的は一つだ。『持ち主を生かす』こと。
物の価値は、『どれだけ持ち主の生を担っているか』に定義してみるとどうなる」
良く解らない、とティファニアは首を左右に振った。クロロは続けた。
「そうだな……。貧しい木こりが居る。とても宝とは呼べない斧を一本だけ持っている。
一方で沢山の宝を持つ貴族が居る。持ち物はどれも有数の宝だ。こいつは百の宝を持っ
ているとしよう。
ところで、その有数の百の宝ののうちの一つだが……」
その宝の価値は、木こりの斧一本の百分の一しかないのだと、クロロは言った。
「おかしな考え方ね」
ティファニアはころころと笑った。クロロも、まったくその通りだと頷いたが、坦々と
話を進める。
「その百分の一の価値しかない宝を盗み出した盗賊が、その日の食事も満足に取れない浮
浪児三十人に与えたらどうだ?
宝を金に変えると、三十人分の食料になる」
「あ、解ったわ。価値が変わっちゃう。
木こりの家にある斧が一で、その宝物は貴族の家にあったときが百分の一なんでしょ
う? 今は三十人の食事だから、ええと、そうだ。三千倍かなあ。
とにかくすっごく価値のある物になるわ」
「貴族の家では百分の一しか価値のないものを盗んで、三十の価値になる場所へ持ってい
く。そんな盗賊も居る」
「なんだか、良い人みたい。クロロさんもそうなの?」
「……いや、オレはそういうことはしないよ」
やがて、話をはぐらかされたことに気づいたティファニアが小さく声を上げ、唇を尖ら
せた。クロロは笑い、話を切り上げた。ティファニアはそろそろ、子供たちの相手をしな
ければならない。
「そろそろ居間に戻りましょう。今日はお菓子もあるんです」
部屋の火が消され、外に漏れていた明かりが散っていった。
村の隅々まで月明かりが差し込みだす。
明かりが消えた窓の下で、子供のように、土くれのフーケが嗚咽を殺して泣いている。
投下終了です。ありがとうございました〜
文体も内容も好み
続いてくれるといいです
面白かったな。
続いたらホクホクするな。
アーデルハイド・バーンシュタインを召喚
彼も貴族だがハルケギニアの貴族にどういう反応を示すか
登場作品が二つしかないから情報も乏しいからなあ
悪には悪の、正義がある
って誰の台詞だったっけかな?
HH読んでないから詳細はわからんけど
なんかちょっと目から汁出そうになったよ
Dio様かと思った
531 :
293:2008/09/04(木) 23:40:43 ID:HFUpJgJP
いろいろご意見ありがとうございます。
SSの形になるよう頑張ります。
>>347氏の指摘どうりSW関連の作品なのでもしかしたら、専門レスに投下するかもしれませんが
もし投下に立ち会われましたらご支援願います。
>>526 ルイズへの対応は大丈夫そうだね。あの妹の存在からみると。
クロロの人乙
ハンタのSSは当たり外れ多いからちょっと身構えたが思いの他良かった。
まあクロロは何考えてるかわからん人だから
徐念(ちょうど有力候補が虚無の呪文にあるし)終わったら何するかわからんがw
SW(ソードワールド)をスターウォーズと勘違いして
ベイダー卿スレまだあったのか!とwktkした俺は・・・駄目人間かもしれん。
ソードワールドと聞いて、トラベラーのソードワールド宙域が出てくる俺はもっとダメ人間だ
>>535 ここにも仲間がひとり。
…だよな、スターウォーズって思っちゃうよな!
魔法戦士 ボソリ
映画「ミスト」から霧を召喚してしまったルイズ
ルイズ「この霧はいったいどこまで広がってしまったの?」
コルベール「霧の中に『何か』がいる……」
異変
ギーシュ「アニエス撃てぇっ! 撃てえええぇ!!」
錯綜
アンリエッタ「始祖ブリミルがお怒りになったのです。我々は裁きを受けねばなりません」
狂気
モンモランシー「贖罪よ、贖罪なのよぉぉぉ!!」
疑心
キュルケ「助けて……お願い中に入れて… ひぐ!?」
衝撃のラスト15分
今夏公開!
しかし、今はもう秋ではあるまいか
DVD発売予定9/25
監督による解説やルイズ限定フィギュアなど豪華予約特典付き!
原作ってスティーブンキングだったか?
あのひとのスタンドバイミーが好きなんだこう童心に帰れるとか、そんな感じで
つまり、ちょっとルイズの下着のゴム切ってきますね
ルイズ「ね、ねえさっきから
>>543の姿が見えないけど?」
ギーシュ「彼ならさっき選択に出て行ったよ」
ルイズ「この霧の中をっ!?」
キュルケ「ルイズのおぱんちゅのためなら掛けに出る価値はあるって言って……」
ルイズのパンツと自分の命を秤にかけたわけか
まさに命の選択
>>543は霧の中をひた走っていた。
腕の中には洗濯カゴが抱えられている。
この異変の中、立てこもった生存者たちのたまった洗濯物である。
無論、ルイズのものも含まれている。
>>543は自らの命を危険にさらしてまでその任務を遂行しようとしていた。
視界はほぼゼロに等しい。中庭を走っているだけなのに、森の中で遭難したかのような錯覚を抱く。
「よし!」
>>543はほぼ手探りで選択場を見つけ、素早く洗濯に移った。
じゃぶじゃぶと洗濯物(ほとんど女の子のもの)を洗いながら、彼の心臓ははち切れそうになっていた。
気配がするのだ。
何か≠フ気配だ。
「最後にルイズのを!」
そう、彼はこのためだけに命をかけていた。
ルイズの下着に切れ目を入れるということを。
霧の中、彼は護身用のナイフを手にした。
と、そのとき。
「
>>543くん……」
「え?」
彼は確かに聞いた。
コルベール先生の声だ。
「せ、先生? いったいどこに……」
コルベールは食堂に生存者達が立てこもった時には既に姿を消していた。
「は、はや……く……にげる……んだ」
彼は上を見上げた。
水飲み場の壁面に何か物体がへばりついている。
霧でよくみえない。
「先生…あ、あああ」
>>543はその物体の正体を知った瞬間、全身の毛が逆立っていた。
コルベールは繭≠ノされていたのだ。
「だ、だめだ……近づいては……も、もう奴らが……」
ガクガクとコルベールが身体を痙攣させ始める。
「あ、ぁぁあぁ奴らが身体にぃぃ」
見てはいけないと無意識に目を背ける。
その瞬間、コルベールの身体からおぞましい音が聞こえてきた。
もうだめだ!!
彼は脱兎のごとく走り出した。
ただ一枚、ルイズの下着を手にして。
・END・
意味不明なの書いてしまったけど何故か楽しかったです。
だいたいこんな感じの映画なんですけどねw
パンツに切れ込みを入れる映画だと……?
まさかこんな場所で見ようと思っていた映画のバレをくらうとはな
例えるならこんな場所で見ようと思っていた映画のバレをくらう気分だぜ
だ、大丈夫。パンツに切れ込み入れるシーン以外はネタバレしてないから!
>>552 ガンダールヴ:ひげサウザー
ヴィンダールヴ:Naoriシン
ミョズニトニルン:ぽちマミヤ
口にするのもはばかられる:QMZジャギ
最後の一人以外はどうdうわらば
>>552 聖帝サウザーに7:3つけるジャギ様ですね、分かります。
クソルトキで
闘!!破悪斗!!からマルチかあかり召喚。
三次になるから書けないけどね。
書いたら惨事になるし。
「最遊記」から玄奘三蔵or沙悟浄
「ONE PIECE」からサンジ
「Toloveる」からララ・サタリン・デビルークor金色の闇
「かみちゃまかりん」から花園花鈴
「もえたん」から黒威すみ
マルコメがTOLOVEるのララ召喚
JOJOから石仮面と吸血鬼(ただし即退場)というのをかいてるんだけど、ここでいいかな
専用スレがあるのは知っているのだが、あの作品に勝てる気がしないので戦略的撤退というか
JOJOキャラとか出すつもりも特に無いし、向こうに投下するのがはばかられるんだ
FEからフレイ召喚。身代りイベント後処刑前なら問題ナシ。鬼強いし。
>>559 作品の内容がもろかぶりっぽいのにこっちに投下するのは、それこそ筋が通っていないと思うんだが
JOJO以外のキャラも召喚するとか言うならまだ話は分かるんだが、そういうわけでもないんだろ?
というかこっちに投下しようが何しようが、作品を比較されるのは逃れられないし、むしろ印象悪くなるだけだぞ
>>561 内容はもちろん変えていくつもりだが……。というかコピペを投下するほど度胸無いよ
向こうって大作ぞろいで、投下するの怖いって言うのが一番の理由かな
こっちだと気軽に投下できるイメージがあるし
>>562 そんな理由でこっちに投下するのはだめだろう、と思ってたんだが、
テンプレ見る限り型月以外の作品はこっちに投下してもいいのか?
専用スレがあるのを知っててこっちに投下してきたやつなんて他には知らないから、よくわかんねーやw
まあ向こうに投下した方がいいと思うけどな
最終手段としては、投下せずに自分だけで楽しむ、って手もあるし
>>562 自信のない作品だったらスレ違いでもここに貼ってもいいって考えているのかい?
激しく亀だけど溺れる金貨さん投下乙
いいね、いいね、こういうの
善も悪も表も裏も生も死も飲み込んで、己の道を貫く漢(をとこ)
こういう重厚なキャラ大好き
>>562 断言するが、風当たりはこっちに投下した方が評価はより厳しいぞ
どんなに面白い作品でも、「専用スレがあるものはそっちに投下する」という暗黙の了解があるから、それだけで色眼鏡がかかる
感想の8割方は「向こうのスレに投下しろ」になるはずだ
>>567 真面目な話、
「俺が面白いと思っているのはこれだ! 文句があるなら言ってみろ!!」
って思えないときついと思うぞ、色々と
つーかそう思えないんなら個人で楽しむ段階で止めておいた方が吉じゃないか?
こっちのスレはゼロ魔>クロス先、もしくはゼロ魔≧クロス先だけど
ジョジョスレならジョジョ≧ゼロ魔ぐらいだから気が楽だと思うぞ?
ジョジョなら専用スレの方がいい。
ジョジョスレなら多少ゼロ魔の世界観が崩壊しても「ジョジョキャラだから仕方ない」ですませてもらえる。
あっちの短編には皆殺しエンドもあるくらいだし。
続きまして映画ネタ
「ヴァン・ヘルシング」:ヴァン・ヘルシング、アナ王女、ドラキュラ、フランケンシュタイン
「ブレイド」:ブレイド(デイ・ウォーカー)、ディーコン・フロスト
「ハンテッド」:アーロン・ハラム
「マトリックス」:ネオ、エージェント・スミス
「バッド・ボーイズ」:マーカス・バーネット、マイク・ラーリー
「グラディエーター」:マキシマス
みんなありがとう
ルイズがM72 LAWぶちこまれる展開は見たこと無いなと思って書いてるんだぜ……
これ以上引っ張るのもアレなんでネタふり
パンツのゴムで思い出したんだけど、ゴムってゴムなのだろうか
ルイズのストッキングも天然素材じゃ無理だろうし……
そーいやジョゼフの妻、イザベラの母についてはなにか情報って出てるんでしょか
>>573 まったく情報はない。
ゆえにいけないっ!ルナ先生とか
あぶないっ!ルナ先生のような女性だったとしても問題はないはず。
>>572 絹は天然素材では無いと申すか
まああの世界にゴムの木やカイコの類が居るかはわからんが
アイオリア必死に書いてるけど文章力のなさに絶望した。
青舞召喚したいけど青舞の性格把握の難しさに絶望した
>>572 気にするな、俺の書いてるSSの中じゃゴムを通り越してガムが存在している
…ガムがないと活躍できない奴がいてな…
黄緑あかねですね
わかります
全然関係ないけど、友人とこの前『誰が何として召喚されるのか?』という話題になった。
いろんなクロスで重要だけど、四種あるんだから何か面白いのはないだろうかって。
たとえばC.C.は、コードがあるから四番目かと思ったんだけど、ギアスの関係でヴィンダールヴとかね。
ガムガムのJET巨人の砲弾(ギガントシェル)?
突然、リリなのでクロスを思いついたがカートリッジ型デバイスに、
エクスプロージョンを記録させたら恐ろしいことになりそうだ・・・癇癪起こして、すぐ爆破とかw
具体的には、アンアンが「偽りの依頼、失礼します。あなた方にはここで果てていただきます」とカーパルス占拠みたいに
アンアン、ビーシャダル、タバサ、キュルケ、カリンママンの5人とでルイズ達を止めようとするも還り打ちで、相棒は勿論、ジョゼフw
このあと、ハルケギニアは深刻な出血を強いることとなる。人類種の天敵と呼ばれた彼女は
史上、最も多くの人命を奪った個人でもある。
なんて電波が来たわけだが・・・アウトだな、色んな意味で。
素直にACクロス書けよ、と言いたい。
なのはほとんど関係ないやん。
ここはいっそナナリーとメイド忍者召喚を
「フレイヤ」って結局空間転移兵器らしいからそれをきっかけに呼ばれたって事にすれば
>>571 ハラムならルイズよりもタバサとかティファニアあたりに召喚されるのが幸せかも。
っていうかルイズだと契約の段階で逃げそうだな、ハラム。
使い魔にしても暗殺者だから派手な活躍はしないだろうけど、直接敵の頭を狙いにいけるのは卑怯臭い。
他にもフーケの正体やワルドの変装を足跡見てすぐ判ったりしそうだし、直接戦闘に関する以外の部分で性能が異常だ。
しかし、映画よりもモデルになった人物のほうが厨性能くさいというのはどういうことだ。
瞑想で気配を消したら毒蛇に気づかれないとか、下手すりゃメンヌヴィルでも発見されずに暗殺できるぞ。
使い魔はメイジに相応しい存在が召喚されるとか。
ご立派様の時のように、使い魔について懊悩するルイズというものを見てみたくもある。
>>559 を見たら、吸血鬼キャラ召喚。
しかし屋外で儀式を行ったため、日光直撃即刻消滅にて残念無念。
なんてのを想像した。(例 Mr.Bonesのダ・ゴーリアン)
>>590 一応ダイ・アモンが召喚されてます
もっとも作者の人はすぐ挫けたようですが
592 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/05(金) 16:23:43 ID:SOwSfPNL
ピクミン2から
ガンダールヴ→ダマグモキャノン
ヴィンダールヴ→ヤドリピクミン
ミョズニトニルン→ヘラクレスオオヨロヒグモ
憚らせしもの→アメボウズ
て言うのを考えたんだがどうにも大きさが解決できん
ピクミン……究極の使い捨て使い魔だな。
F‐ZERO最終回直後のバート先生を召喚
ルイズがピンチになったり悪事を働くものがいると「何故か」キャプテンファルコンがどこからともなく登場
原作でファルコンがいなくなったと同時にバート先生もいなくなったりと何かしらの繋がりがありそうだよね
595 :
名無しさん@お腹いっぱい:2008/09/05(金) 17:14:38 ID:6dV5882P
ゼロのレボリューション 第1話
きらりん☆レボリューションよりなーさんが召喚された話
「なーさん!そろそろ出番だよ。」
やぁ、僕はなーさん。ご主人のきらりちゃんは元気いっぱいで今日もアイドルの活動に
励んでいるんだ。僕が別の世界に飛ばされることになるなんて・・・きらりちゃん心配しているだろうな
その頃ハルケギニアの世界ではルイズが魔法の召喚魔法の練習をしていた
「宇宙の果てのどこかにいる、私の僕よ!神聖で美しく!!そして強力な使い魔よ!私は心から求め、訴える
わ!!!・・・・我が導きに、応えよっ!!!!」
ルイズが杖を振り下ろすと。爆発が起こり、そこから・・・・
爆風の煙が消えるとそこには茶色と白の猫みたいな生き物だった
「なー?(ここはどこ?)」
一体何が起こったんだ。僕はきらりちゃんに呼ばれて、そこまでは覚えている。
そこから意識を失って気がついたら見知らぬ世界にいた。そこにピンクの髪の女の子
がいたんだ。
「あんた誰?」
ピンクの髪の女の子が僕を呼んでいる
「な!なーーーー(やぁ!僕はなーさん)」なんて分かるわけないか。
「ふーんあんたなーさんって言うんだ。私はルイズ。何故あんたの言葉が
分かるかって、それ位の動物の言葉なんて分かるわよ。」
ルイズ?それがピンクの髪の女の子の名前か、僕は色々とルイズに聞きたい事がある。
「何故ここに飛ばされたかって、あんたは私の召喚魔法で呼ばれた使い魔。
ここの世界では召喚魔法で呼ばれた者は使い魔って呼ばれるの。ここはハルケギニア。
この建物はトリスティン魔法学校。私達が通う魔法学校よ。」
僕は異世界に飛ばされたことは間違いない。しかしきらりちゃん達が僕の事を心配していると
胸の奥が痛くなる。
「呼ぶ」と「喚ぶ」を区別しようぜ。
投下は宣言してからがお約束
けど支援
投下予告無いわageてるわで酷いな
>>590 数ある吸血鬼の中でもよりにもよってなんでそいつが出て来るんだw
しかしMr.Bonesなら結構当たりじゃないかという気はするな。
ルイズとワルドの結婚式にステンドグラス突き破って飛び込んでくるとか
絵になりそうだ。
600 :
蒼い使い魔:2008/09/05(金) 18:08:10 ID:2j2AA5BF
とりあえず、投下してもいいのかな?
なんだか途絶えてるみたいですが、
とりあえず20分に投下しようと思います
ちょっぴり強引な展開ですがお付き合いください
おk、事前支援
予約は無いようだ。
進路クリア……これより支援体制に入る。
支援するぜ
翌朝、ルイズは眼をこすりながらゆっくりと起床する、
ここ最近、バージルは朝、ルイズを目覚めさせる仕事すら放棄しているため
自分自身で目覚めなければならないのだった。
ルイズははっとしたように部屋の中を見渡す、そこにはバージルの姿は見えなかった
昨日のバージルの言葉が脳裏をよぎる、
―俺は魔界へ行く
脳内でその言葉が再生された瞬間ルイズは跳ねるように飛び起きた。
「どこっ!?バージル!どこに行っちゃったの!?」
ルイズはパニック状態になり部屋の中を引っかき回し己が使い魔の名を呼びながら探す、
眼に涙を溜めながらクローゼットの中からベッドの下まで覗き込む、
心臓が早鐘のように高鳴る、呼吸が荒くなるほど胸が苦しい、
「バージルッ…どこよ…どこにいっちゃったのよ…」
部屋の中を散乱させ、部屋の中で崩れ落ちるように座り込む、目から涙がこぼれおちた。
その時、部屋のドアが無遠慮にガチャと音を立てて開かれた、ルイズが驚きその方向をみると、
水桶をもったバージルが姿を現した。
バージルは散らかった部屋の中と半泣きのルイズを何も言わず一瞥し…、小さく溜息を吐くと洗面器へと向かった。
「バージル!!」
ルイズが声を上げバージルのところまで駆け寄り、背中にしがみつく、
「何だ鬱陶しい…」
「何だじゃないわよ!どこに行ってたのよ!心配させてっ!!」
「水を汲みに行っていただけだ、いつものことだろう」
淡々と返すバージルにルイズも冷静さを取り戻す
水汲みはバージルが自ら行っている数少ない仕事だ、自身の顔を洗うためのついで、ということだが。
そこまで考えがいたった瞬間、ルイズの顔がボンッと音を立てるように真っ赤になり、
跳ねるようにバージルから離れた、
「なっなっなによ!別にあんたがいなくなったことを心配したんじゃないんだから!!」
「朝くらい静かにしろ」
湯気がでるんじゃないかというほど顔を真っ赤にし、喚き散らすルイズに取り合うこともせずさらりと受け流す。
顔を真っ赤にしながらも顔はバージルが戻ってきたという安心感で思わずにやけてしまう。
「…何をニヤけている…気色悪い」
半泣き状態でニヤけるルイズをみて辛辣な感想をバージルが呟く
「何よバカ!あんたのせいでしょ!罰として部屋の片づけをしなさい!いいわね!」
そう言いながら、急いで顔を洗う、冷たい水が涙を洗い流し、火照った顔を冷やす、だが綻ぶ顔は治らなかった。
朝、バージルの姿が見えなかっただけでこんなにも取り乱している自分がいる。
なんでこんなにも取り乱したんだろう、アイツとの関係は主人と使い魔…それだけなのに…。
使い魔だから?そうだ…きっとそう…、使い魔なんだから一緒にいてもらわないと困る、私だけの…
顔を拭き、そう思いながらベッドに戻りシーツのカーテンを引き着替えを始める、
着替え終わり、カーテンを開けバージルに話しかける、
「昨日言ってた魔界へ行くって話だけど…私、絶対認めないからね…」
「なぜだ?俺が消えて困る奴などいまい、お前とは『一応』使い魔契約をしているが、
俺がこの世界から切り離されれば解消になるはずだ、お前は新しい使い魔を呼べばいい、それだけのことだろう」
その言葉にルイズの心がズキリと音を立てて痛み出した。
「俺とお前の関係などそんなものだ」
「違う!そんなんじゃない!」
バージル本人の口から出た先ほど頭の中で思っていた主人と使い魔という関係を必死に否定する
「違ければ…なんだ?」
「それはっ…!!」
バージルが静かにルイズを見据える、
ルイズは言葉に詰まる、自分で主人と使い魔と思っておきながら
それをバージルに言われ必死に否定してしまった。
「とっ!とにかく認めないから!!絶対認めないから!!」
「まだ方法もかかる時間もわからんというのに…」
再び顔を赤くし喚くルイズを見て、呆れたように小さく溜息を吐くと部屋から出て行ってしまった。
「あいつ…私のこと…そのくらいにしか見てくれてないんだ…」
ルイズは思わず自分の口から出た本心にブンブンと首を振り、バージルを追うように部屋を後にした。
ルイズは朝食を取った後、授業へと出席する、バージルは図書館へ行き、今日も教室にはいない。
そしていつもどおり授業を受けていると、オールド・オスマンからの呼び出しを受けた、
なにか問題でもあったのだろうか?そうハラハラしつつ学院長室の前まで来ていた。
「失礼します」
ルイズは意を決し学園長室の扉をこんこんと叩いた。
「鍵はかかっておらぬ。入ってきなさい」
その言葉とともに、軽く深呼吸しドアをあける、
「私をお呼びとお聞きしました」
そんなルイズに緊張を見てとったのかオスマン氏は両手を大の字に広げて、立ち上がる。
歓迎の意を体全体を使って表したのだ。
「おお、ミス・ヴァリエール。旅の疲れはいやせたかな?思い返すだけでつらかろう。
だが、おぬしたちの活躍で同盟が無事締結され、トリステインの危機は去ったのだ」
優しい声でいわれて、ルイズの気持ちは幾分か落ち着いた。
「来月にはゲルマニアで無事王女と、ゲルマニア皇帝との結婚式が執り行われることが決定した。きみたちのおかげじゃ。胸を張りなさい」
しかし、その言葉に対しては、あまり胸を張れなかった。
アンリエッタとウェールズが愛し合っていたのだと知っている今、姫の望まぬ結婚は素直に喜べない。
支援するのでありまするー
支援
「そしてその件なんじゃがの」
オスマンはそう言いながら、一冊の本を手渡す、
「これは……?」
「始祖の祈祷書じゃ」
「始祖の祈祷書?これが……ですか?」
名前ならルイズも聞いた事がある。王室に伝わる伝説の書物である。
といっても、この手の伝説の品によくあるように偽者もいっぱいある。
そして偽者を持つ貴族やら司祭やら王室関係者は誰もが「私の物こそ本物だ!」と主張している。
そんなこんなでトリステイン王国に伝わる始祖の祈祷書も本物かどうか怪しいものだ。
が、それでも国宝である事に代わりはなく、とても大切な物である。
何故そんなものをルイズに渡すのか。オスマンは説明を始めた。
「トリステイン王室の伝統での、王族の結婚式の際には貴族より選ばれし巫女を用意せねばらなんのじゃ。
選ばれた巫女は、この『始祖の祈祷書』を手に、式の詔を詠みあげる習わしになっておる」
「は、はぁ(そうなんだ…)」
「そして姫は、その巫女にミス・ヴァリエール、そなたを指名したのじゃ」
「姫さまが私に?」
オスマン氏が頷く。
「その通りじゃ。巫女は式の前より、この『始祖の祈祷書』を肌身離さず持ち歩き、詠みあげる詔を考えねばならぬ」
「えっ!?それじゃ、その…わ、わたしが詔を考えるのですか?」
「そうじゃ。もちろん、ある程度の草案は宮中の連中が推敲するから安心しなさい。
伝統はちとめんどくさいもんじゃな。だがな、姫はミス・ヴァリエール、そなたを指名したのじゃ。
これは大変に名誉なことじゃぞ。王族の式に立ち会い、詔を詠みあげるなど、一生に一度あるかないかじゃからな」
姫様の頼みを断るなんて絶対無理!ということでルイズは観念するように頷く、
「わかりました。謹んで拝命いたします」
ルイズは、オスマン氏の手から『始祖の祈祷書』を受け取った。オスマン氏は笑みを浮かべて、ルイズを見つめた。
「引き受けてくれるか。よかったよかった。姫も喜ぶじゃろうて」
一方バージルは学院の庭の隅のベンチでこれもまた図書館から拝借してきた本を読んでいた。
禁書エリアにまで堂々と入り込み、ブリミルの目指した聖地の奥の地獄門についての文献を漁り片っ端から読んでいるのだ。
「地獄門についてはどれも記されていない…
手掛かりがあるとするならば聖地の遥か東、ロバ・アル・カリイエという名称だけ…か」
バージルが本を読みながらつまらなそうに呟く
「禁書といってもそんなもんさ、ブリミルは聖地から東のことについてはあまり触れなかったらしいからな」
ベンチに立てかけてあるデルフが声をかける
「お前が覚えてればすべて解決なんだがな…」
「ハハハ、わりぃ、こればっかりはどうやっても思い出せねーんだ、あんま興味なかったんでな」
ジト目で睨むバージルにカチカチとデルフが音をたてて笑った。
チッっと軽く舌打ちをし、次のページをめくろうとした時に不意に声がかけられた、
「あの、バージルさん」
その声の主は学院のメイド、シエスタであった、手にはトレーを持っている
「……」
シエスタに視線を向けることなく本を読み続ける、
「えと、何をお読みになってるんですか?」
そういいながら本の中身を覗き込む、その内容をみたシエスタが思い出したように話を切り出した、
「聖地の本ですか、そういえば東方のロバ・アル・カリイエから運ばれたって言われる『お茶』っていう飲み物が届いたんですよ!
今日はそれを御馳走しようと思って持ってきたんです!」
モット伯邸の悪魔達から自分を助け出してくれたバージルに対し、恩義以上のものを感じているシエスタは
これがチャンスといわんばかりに、バージルに声をかけてきたのだった。
何しろ、これから声をかけようとしていた矢先にルイズやキュルケ、タバサ達と共にどこかへ外出してしまっていたのだ、
ここで巻き返すためにバージルが一人になる瞬間を狙っていたのかもしれない。
ロバ・アル・カリイエ、その言葉を聞いたバージルが反応し、シエスタの持ってきたトレーに目をやる、
「その…よかったら……飲んでくれますか?」
シエスタはトレーをベンチに置いて、手をもじもじしている。
「いただいておく」
特に気にするでもなく、返事をする
すると、シエスタの顔がパーッと明るくなる。カップにお茶を入れてバージルに手渡す。
カップの中を見るとそれは深い緑色をしていた。
元は彼の世界にある日本茶である、がバージルはそれとは知らないままそれを口にする、
変わった香りだが悪くない、素朴だが味わい深い渋み、バージルはいたくこの『お茶』を気に入ったようだった。
「どうですか?おいしいですか?」
シエスタがおずおずと聞いてくる、
「悪くない」
そう言いながらカップを差し出す、二杯目が注がれ、またそれを口にする。
「そのロバ・アル・カリイエについて」
バージルが口を開く、
「何か知っていることはあるか?」
「ロバ・アル・カリイエですか?うーん…そうですねぇ…」
シエスタが手を顎にあてて考えるような仕草をとる、
「ブリミル様が最終的に目指したと言われる場所ですよね、
変わったものがたくさんあるって話ですよ、中には異世界につながっているなんて噂も…
エルフたちとの行商が細々と行われている…くらいしか…」
「そうか…(やはり、手がかりがあるとすればそこか…)」
そう言いながらバージルは本をパタンと閉じ、空になったカップをシエスタに渡し、立ち上がる。
「また頼む」
「はいっ!」
シエスタの顔が輝く、お茶がバージルのお気に召したようで安心したようだ。
そうにこやかに返事をし、立ち去るバージルを見送った。
バージルが部屋に戻ると、ルイズがベッドの上で寝息を立てていた。
最初は気がつかなかったが、何やら古そうな本を抱えているのが見える、
眠っているルイズの腕から引きはがしそれを手に取り開く、
「………」
部屋の中にページをめくる乾いた音が響く、
「うぅーん…ふぁぁ…あれ?もどってきてたんだ…?」
ルイズが目をこすりながら起きる、
「ふぁ〜あ、あ…あれ?始祖の祈祷書は!?」
持っていたはずの本がなくなりルイズは慌てる、国宝の本だ、無くしたらとんでもないことになる。
探しものはバージルが持っていた、静かにページをめくっている、よかった、と安心したその時
バージルが無言で読んでいた本を投げ捨てた、後ろ手で放り投げたにもかかわらず
きれいな放物線を描き、ゴミ箱へ吸い込まれていった。
「ばっバカーーーー!!!なにやってんのよー!!!」
「ついにおかしくなったか?白紙の本に価値はない」
「だからって国宝をゴミ箱に叩き込む奴がいるかーーーーっ!!」
ルイズが絶叫し急ぎゴミ箱から始祖の祈祷書を回収する、よかった、どこも破れてはいない。
「白紙の本が国宝か、作った奴もだが、それを国宝と認定する連中もどうかしているな」
「仕方ないじゃない!これを肌身離さずにっていわれたんだもん!」
そういいながら結婚式の巫女に選ばれ始祖の祈祷書を持ち詔を考えてる事をバージルに説明した。
「でも…あんたの言う通り、国宝としては最悪ね、白紙だなんて…、偽物も多いけど胡散臭さはその中でもダントツよ、きっと」
ルイズが呆れたように言いながらバージルに視線を向ける、バージルは窓の外の二つの月を眺めていた。
「あんたってホント…月を眺めるのが好きね、なにが面白いんだか…」
そう言いながらバージルの横に立ち、月を見上げる、蒼い月と赤い月、二つの月が静かに光を放っていた。
「ねぇ、あの月…」
「………」
「まるであんたとダンテみたいね」
ルイズのその一言にバージルが少し驚いたような表情でルイズを見る、
「…そうだな…」
この世界の二つの月にどこか惹かれていたのはこのせいだったか…そう考え二つの月に視線を戻す。
同じだが違う、違うけど同じ、時に交錯し時に離れる、二つの月をどこか自分たちに重ねていたのかもしれない。
「こうして月を眺めるのも結構いいかもね…二つの月がどんな闇も叩き壊してくれる感じがするわ」
ルイズが静かに言う、バージルがフッと静かに笑った
「お前にしては、気の利いたセリフだな」
「何よ、馬鹿にして…別にいいじゃない」
そう言いながらルイズが頬を膨らませる。
「でも…今日は特別に許してあげるわ」
そう呟きながらルイズはベッドに戻ってゆく、バージルは静かに月を眺め続けていた。
その日、ルイズは夢を見た、
バージルとダンテが共に力を合わせ醜悪な姿をした悪魔と戦うという夢だ
その悪魔は強大な力を抑えきれず暴走し、二人に襲い掛かる。
ルイズはそれを見ても不思議と怖いとは感じなかった、力を合わせた二人の前に敵などいない、そう思えてしまう。
二人が息を合わせて戦う姿に思わず笑みがこぼれる。
悪魔の体に閻魔刀とリベリオンを打ち込み体内で交錯させ、貫通させる、
バージルがリベリオンを、ダンテが閻魔刀を振い悪魔を斬りつける。
ついに限界が訪れたのか、悪魔が苦しみ出した、
ダンテとバージルが銃を構え、悪魔に狙いをつけた。
「今回だけお前に付き合ってやる」
「"決めゼリフ"を覚えてるか?」
二人がニヤリと笑う
「「JACK POT!」」
二人の魔力が込められた弾丸が放たれ、悪魔を貫く、
悪魔は断末魔の悲鳴を残し消滅した。
そこでルイズの夢がさめる、
「なんだ…やっぱり仲良かったんじゃない…。」
少し笑いながらそう呟き、椅子に座り目をつむるバージルを見つめた。
昼休み、ルイズが広場のベンチに腰かけ始祖の祈祷書を開き、詔を考えていたが一向にまとまらず頭を抱えていた。
そこにキュルケが通りかかりルイズに話しかける、
「ハァイ、ルイズ、何やってるの?白紙の本なんか広げちゃって…」
「姫様の結婚式の詔を考えてるのよ、全然考えがまとまらなくって困ってるの」
「へぇ…よくわからないけど、大変そうなのはわかるわ、まぁ、それはそれでおいといて、面白いものを持ってきたわよ」
「面白いもの?」
怪訝な顔をするルイズの前に数枚の地図を広げるキュルケ
「なに?この地図、この本より胡散臭いわよ」
「ずいぶんな言いようねぇ、お宝の地図って話よ、ギーシュが持ってきたの」
「宝の地図?さらに胡散臭くなったわ…」
「まぁまぁ、そんなつれないこと言わないの、面白そうじゃない、ね、探しに行かない?」
「でも詔を…」
「いーのいーの!頭をかかえてたっていい文章は思い浮かばないわよ!気分転換にちょうどいいわ、きっと」
「そうね、じゃあ、ちょっと探してみましょうか」
キュルケの言う通りかもしれない、ここ最近はこれのことで悩みっぱなしだ、きっといいリフレッシュになるだろう。
「決まりね、とタバサも連れて行きましょう、あの子の風竜なら移動も楽だと思うわ、
後、役に立つか分からないけどギーシュも、これ持ってきてくれたのアイツだしね」
「そうね、じゃ、探しに行きましょ、多分図書館かしらね?」
そう言いながら立ち上がり二人は本塔へと向かった。
「おかしいわね、図書館にいると思ったのに、あの子ったらどこにいったのかしら?」
本塔から出てきた二人は首をかしげながら歩いていた、どうやら探し人はいなかったようだ、
さてどこにいるのだろう、と考えながらあたりを見渡す、すると視界に見知った姿が入り込んだ
二人の探し人、タバサだった、
「あ、こんなところにいたのねタバッ…!?」
声を掛けようとするルイズをキュルケが物陰に引っ張り込む
「ちょっと!何するのよ!」
「いいから静かに!ほら!タバサが他の誰かと一緒にいるのよ!こんなの珍しすぎるわ!」
キュルケがいつになく興奮した様子で小声でまくしたてる。
テーブルを挟むようにタバサともう一人が椅子に座り何やら本を読んでいる。
「確かに…タバサがあんた意外と二人きりなんて見たことないわ…」
そう言いながら二人は物陰からそっとその場を覗き込む、
そして思わず言葉を失った、
タバサと仲良く(?)本を読んでいたのはルイズの使い魔のバージルであった。
「ああああああああの馬鹿犬ぅぅぅぅ!!!私をほったらかしてなんでタバサなんかとぉぉぉぉ!!!」
「ちょっと落ち付きなさい!たまたま一緒にいるだけって可能性もあるでしょ!?
特に会話もしてないみたいだし!」
怒りの形相で飛び出さんとするルイズを必死にキュルケが抑え込む、
その言葉に少しだけ冷静さを取り戻したのか荒い息を押さえこむ
「そ、そうよね…偶然かもしれないわ…」
そう言いながら再び見つからないように二人の様子を覗き込み耳を澄ます。
すると二人の会話が聞こえてきた
「タバサ」
バージルがタバサに声をかける、
「何?」
タバサが本から目線をバージルに合わせる
「聖地について何か知っていることはあるか?」
「…ごめんなさい、多分あなたの知っていること以上のことは知らない」
「そうか…礼を言う」
「いい…」
はたから見れば何のこともない普段の会話、だがバージルがどういう人物かよく分かっているルイズにとって、
そしてタバサがどんな人物なのかよく知っているキュルケにとって、驚愕するに値する会話であった。
「(なんで名前で呼んでるの!?私なんてまだ一度しかバージルに名前呼んでもらったことないのに!!!)」
「(あの子が読書中に答えた!?普段ならあまり答えないのに!答えたとしても本から目を離さないわよ!?)」
二人が唖然とその様子を眺めていると、別な声が聞こえてくる。
「バージルさん!」
二人がその方向へ視線をやると、一人のメイド、シエスタが近づいてきていた。
どうやら先日バージルが気に入ったというお茶を持ってきたらしい。
「………お前か」「(やっぱり名前で呼んでない!!)」
「お茶がはいりましたよ」
「そこに置いておけ」
シエスタが二人分のお茶を入れバージルとタバサに差し出す。
それを手に取るとバージルが一口飲む、
「おいしいですか?」
その様子を横に立ち笑顔でシエスタが尋ねる
「あぁ…」
「そうですか、よかった」
そう言いながらシエスタは立ち去る気配を見せない
妙に険悪な雰囲気が場を支配する。
「(邪魔)」
「(はい、邪魔をさせていただきます、ミス・タバサだけズルいです)」
タバサとシエスタから妙なオーラが立ち上る。
悪魔すら裸足で逃げ出しかねない状況に遠目で眺めていたキュルケが思わず後ずさりする。
隣を見ればそれ以上のドス黒いオーラがルイズから立ち上っていた。
当のバージルはそんな雰囲気などどこ吹く風とお茶をすすりながら本を読んでいる。
「そういえば、バージルさん、先日"二人きり"で話した聖地のことですけど、思い出したことがあるんです」
妙に"二人きり"という言葉を強調するシエスタ、タバサがピクと反応しバージルを見る、
ルイズに至っては既に真魔人になりかけているらしい。
「…なんだ?」
「私のひいおじいちゃんが遥か東から、空を飛んできたらしいんです、『竜の羽衣』って呼ばれてます」
その言葉にバージルが反応した。
「何だと?その『竜の羽衣』とやらについて詳しく聞かせろ」
「はい、私の村…タルブっていうんですけど、そこに『竜の羽衣』が残ってますよ、と言ってももう飛べないらしいですけどね」
「………」
バージルが腕を組み目をつむる、東から?空を飛んできた?そう考えているとシエスタがポンと手をたたいた。
「そうだ!今度私の村に来てみませんか!?他にもおいしい郷土料理があります!歓迎しますよ!」
空を飛び、東から『竜の羽衣』に乗りやってきたというシエスタの曽祖父、もしかしたら東へ行くための大きな手がかりになる
そう考え、バージルは頷く、
「そうだな、では案内してもらおう」
その言葉を聞いたシエスタの顔が輝いた、すると横で本を読んでいたタバサが声をかける
「タルブは遠い」
「うっ…」
シエスタが言葉に詰まる、結構痛いところを突かれた、タバサがさらに追い打ちをかける。
「シルフィードならすぐ」
「そうか、タバサ、頼めるか?」
「いい」
「礼を言う」
深く考えずバージルがさらりとタバサも同行させることを決定した、シエスタが膝を抱え
「(二人で遠乗りの予定が…)」
とぶつぶつ呟いていたが、突如聞こえてきた叫び声によってかき消されることとなる
「こぉぉぉぉぉぉぉぉの馬鹿犬ぅぅぅぅぅぅ!!!!!」
そう叫びながら凄まじい速度でルイズが走ってくる。
ルイズはそのままの勢いを利用しバージル目掛けレインボウを放つ
全体重を乗せた見事なとび蹴りがバージルの顔面にヒット…するはずもなく、右手で足を取られ
空中高く放り投げられる。ルイズはそのまま地面に墜落、すると思われたが
どこにそんな運動神経があるのかと問いただしたくなるほどの動きで空中で体勢を立て直し、
きれいに地面に着地する。
「この馬鹿ぁぁぁぁぁ!!!なにタバサに尻尾振ってるのよぉぉぉぉぉ!!!」
そう言いながら拳を振りまわしバージルを殴ろうとするが、片手で頭を押えられ近づけなくされていた。
そんなルイズを後ろからキュルケが必死に抑える
「お、落ち着いてルイズ!お願いだから!」
「離しなさいよ!キュルケッ!こいつに今日こそ自分の立場ってものを叩きこんでやるんだからぁ!!」
「と、とにかく落ち着きなさいってば!」
無表情だが妙に勝ち誇った表情を浮かべるタバサにさらに怒りのボルテージを上昇させる。
なぜルイズが怒り狂っているのか理解できていないバージルは呆れたような眼でルイズを見て尋ねる
「何の用だ?」
「この期に及んで何の用だじゃないでしょあんたはぁぁぁぁぁーーーー!」
「あ、あのね、ギーシュが宝の地図をもってきたから私たちで宝探しをしようっていう話になったのよ
それでタバサを探しに来たの」
怒り狂い話をすることが出来ないルイズに変わりキュルケが説明する
「そんなことやってる場合じゃないわよ!あんた達タルブへ行くんでしょ!?
私も行くわ!使い魔が行くんだもん!当然よ!特にそこのメイド!勝手に人の使い魔に手を出さないで!
あんたもよバージル!!ってアイツは!?」
喚き散らしていたルイズはいつの間にかバージルの姿が見えないことに気がついた
「帰った、付き合いきれんって」
タバサが本を読みながらさらりと言う
「あんの馬鹿ぁぁぁぁぁ!!!!!」
ルイズの悪魔の咆哮はいつまでも学院に響き渡っていた。
一方のシエスタは
「うぅ…なんでこんな…ひどいです…」
と膝を抱え地面にのの字を書いていじけてしまっていた。
かくしてルイズ達はシエスタの故郷、タルブへと向かうことになったのであった。
613 :
蒼い使い魔 :2008/09/05(金) 18:28:40 ID:2j2AA5BF
これで投下は終わりです、
日常パートってこんなもんですよね…たぶん…
とりあえず、聖地についての設定を少しいじらせてもらったことを
前回申告し忘れてたんで、ここで報告させていただきます。
あとタバサがやたら優遇されていますが
白状すると最初のプロットではタバサが召喚する予定だったんです、その名残です
でもそれやると間違いなくルイズ&サイトが空気になるので…。
それに即ガリアに喧嘩売りに行きかねないので…
まぁ、それは置いておいて、ルイズがんばれ、超頑張れ、俺次第だけど。
ご支援、ありがとうございました。
これはよいタバサ
なんという空回りっぷりだ。まさにルイズとしか言いようが無い。
むしろ清々しささえ感じるほどにGJ。
これはいい取り合いww 乙です
バージル氏投下乙です。
タバサもいいけど、ルイズがかわええのう(*´д`*)
そして、ニヤニヤしているルイズの描写読んでニヤニヤする俺きめぇw
タバサかわええ。このルイズそのうちバージルの攻撃も見切りそうだ。
蒼い人乙
あれですいか、兄さんがお熱を上げるとしたら弟しかいませんか
蒼い人乙。
しかし、ガンダールヴ補正をうまく使えたとしてもムンドゥスに勝てるのだろうか?
1のダンテにやられる役にはやらないでくれよ、アニキ(ホロリ
それともひょっとしてダンテが召喚され(ry
タバサ優遇よいぞよいぞ
あいかわず面白いのぅ・・・乙。
>>620 ダンテが魔帝に勝てたのは人間の強さがあったからだし
このまま行けば兄さんも人間の強さを手に入れるかもしれないし勝てるかも
蒼い使い魔GJ
もうタバサはバージルの嫁でいいな、ルイズには気の毒だけど。
個人的にはタバサの冒険ベースのお話も期待したい。
最近のSSってなんでこんなにしょっぱいのしかないの?
現状じゃあ蒼い使い魔しか読めるものがないし
古参としてはガッカリだぜ
ニヤニヤが止まらなかったぜ乙
歴史が変わってしまうかもしれないけどバージルには頑張ってもらいたい。
一瞬古参を人参と呼んでしまった俺の眼は腐っている
よやくはありまっか?よやくはありまへんかぁ?無ければ21時45分から投下しまっせ
631 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/05(金) 21:33:57 ID:UfnU00ZY
こさんwww
いいトマトが入荷しました
支援
小さん!?
時間が来ました 始まりますよ
とりすていん大王 11回目
「「「アルビオンばんざーい ウェールズ王ばんざーい」」」
お父さん、ギーシュ、サイトの三人の大活躍でレコン・キスタは敗れ去りました
巨大お父さんの頭突きでレコン・キスタ首領 クロムウェルは気絶し、ワルドは命からがら逃げ出しました
クロムウェルが気絶した事でアンドバリの指輪で操られていた人々は正気に戻り、王党派が逆転したのです
激しい戦いが終わって数日後、いまだ復旧作業中のアルビオン城ですが王の間ではウェールズ王子の戴冠式が行われていました
「諸君!!私、ウェールズ・テューダーは今日、ここに正式にアルビオンの王となる」
新しくアルビオンの王となったウェールズ王の挨拶が続きます
「あの苦しいレコン・キスタとの戦いで我々は三人の勇者に出会い救われた」
王の間に居並ぶ将校、貴族、女官、皆、真剣な顔で話を聞きます
「今日、私はその三人に感謝の意を込め、シュバリエの称号を送りたいと思う」
広間を埋め尽くす軍人の中には我が事の如く、男泣きまで始める人も出ています
「そして、これをもって、私の、アルビオン新国王としての初仕事としたい!!」
大広間どころかお城すらも壊さんばかりの拍手と歓声が響きます
「サイト・シュバリエ・ド・ヒラガそなたにシュバリエの称号とウェストウッド周辺を所領として治める権利をここに託す」
恭しく、サイトはお辞儀をしてウェールズ王からマントを拝領しました
その時、ウェールズ王はサイトにそっと耳打ちをしました
『テファを宜しくな』
『任せてください』
サイトの拝領が終わると次はお父さんの番です
「諸君、残りのお二方はアルビオンの貴族ではない、彼らは我等が親愛なる兄弟国 トリステインの貴族だ」
その言葉に辺りが騒ぎ出しました
「諸侯も知っての通り、本来シュバリエはその者が住まう国から承る物である」
その言葉に何人かの貴族が頷きます
「しかし、彼らは、本来ならば関わりの無いこの国を救ってくれた その感謝の気持ちは語るに語りつくせぬ」
真剣な顔で自分を見つめる幾千もの顔を見てウェールズ王は満足そうに頷きました
「よって特例として感謝の意を込め、シュバリエの称号を送るものとする!!」
先ほどより一層の響きの拍手と歓声が響きました
そしてお父さんがウェールズ王の前に進み出ます
先ほどのサイトの様に恭しく一礼して、シュバリエの証のマントを受け取りました
そして最後に控えているのは・・・
「ギーシュ・ド・グラモン前へ」
会場の貴賓席で泣く声が聞こえます 息子が遥か遠くアルビオンで武功を上げ、シュバリエまで頂くと言うのでやってきたグラモン元帥の鳴き声です
「ようやった、ようやった」
息子の晴れ姿に感極まり人目も憚らず泣いています それを見て男泣きをしてる将校もいます
他の招待客は、トリステインからはアンリエッタ姫やルイズにモンモランシー、ゲルマニアからはアルブレヒト三世にキュルケ、
ガリアからはイザベラ王女とタバサが来ています
カツン・・・カツン・・・
静かに足音が響きます、そして
ある貴族は言いました それは雄雄しく、立派だったと
ある軍人は言いました 何者にも恐れぬ勇者とはあの男の事だと
ある大臣は言いました 恐れて縮こまるどころか堂々としておる 立派なものだと
ある女官は言いました 目のやり場に困りますと 隠した手の指から覗きながら
ある友人は言いました 少しは場をわきまえろと
ある王女は言いました ・・・・・・いい!!次の花壇騎士団の正装はあれにすると
ある皇帝は言いました まぁ、平和が一番だよねー はやくマイワイフの所に帰りたいなーと
威風堂々とマントをはためかせてその男はウェールズ王の前に進み出ました
その横顔は歴戦の勇士のようでもあり、またまだ幼さの残る少年の様でもありました
ウェールズ王の前で歩みを止めるとやはり恭しくお辞儀をしてマントを拝領します
そしてそのマントを天高く高々といい笑顔で掲げました
そして、その時、その場の人々の心は一つになりました
王も、王女も、姫も、皇帝も、女官も、軍人も、大臣も、父も、友人一同も、
同じ一言を叫びます
「「「「「「へ、へ、変態だーーーーー!!」」」」」」
ブーメランパンツ一丁の姿でギーシュは満足そうにシュバリエの称号を受けたのでした
無事にシュバリエの授与も終り、三人を称えるパーティが開かれました
途中でサイトと一緒に来ていたテファニアのフードが取れて エルフだ!!と大騒ぎになったり、
エルフじゃなくてハーフエルフだとわかってみんなが なーんだハーフエルフか 良かったー と安心したり
ギーシュに寄ってくる若い女官をモンモランシーが追っ払ったり、
アルブレヒト三世がどうせならとウェールズ王とアンリエッタ姫の婚姻を進めて 本当にいいのですかと聞いたら
「世界平和が望みですが何か?」
と返されてなんかむかついたり、
ルイズが私ってなんなのかしらと落ち込むのを見てお父さんが慰めたり、
様々な事がありました そして、時は過ぎて
「じゃあな、俺たちはウエストウッドに帰るよ」
「それでは ごきげんよう みなさん」
馬車に揺られてサイトとテファニアがウエストウッドに帰って行きます
「私は、王女を送ってから学院に戻るから」
「ほら、早くしな!!公務が待ってるんだよ」
タバサとイザベラ王女がシルフィードの背に乗ってガリアに飛んでいきました
そして、今、トリステイン、ラ・ロシェール行きの船に多くの見送りや町の人々が異国から来た英雄達を見ようとつめかけていました
「「「アルビオンばんざーい トリステインばんざーい」」」
盛大なお見送りに見守られて船は出発します そしてその船の舳先では、
「さぁ、モンモランシー帰ろう、僕らのトリステインへ」
「ええ、ギーシュ、帰りましょう」
薔薇の造花をまだ見えないトリステインに向けて指し、モンモランシーの肩を抱くギーシュと抱かれてうっとりとするモンモランシーを見て
ルイズは呟きました
「結局私、いいとこ無しじゃない ふんだ」
その言葉にお父さんはただただ HAHAHA と笑って答えるだけなのでした
その頃、山奥の廃屋では
「捜索隊・・・・・・こないわねぇ」
いまだに土くれのフーケこと、マチルダお姉さんが来もしない捜索隊を待っていたのです
「ひまだわぁ・・・」
続く
投下終了 それほど無茶はしていないはず 次はルイズがメインだからそんなにいじけないよーに
何考えてんのイザベラ様乙ww
≫582
愛されるギアスってことか?
汚物は消毒男を召還。召還した途端に汚物消毒されるルイズ。
テファの使い魔は実は召喚済みってネタがあるけど
実はアルビオン大陸自身がそれってのはどうかな?
始祖の時代から眠りこけている浮かぶ巨大ガメの上に土砂が堆積しアルビオン大陸になりましたとさ…
ぜひタバサが召喚したギャオス軍団と戦って欲しいが
回転飛行したら上の人達大丈夫かなあ
流星の人の再臨を切望。
決闘直前でおあずけは悲しい。
蒼い人乙です。
兄貴がタバサと何気なく呼んだのになんか感動したぜ。
それとシエスタ、もうフェードアウトしたと思っていたというか、すっかり忘れてた。ゴメンよ。
キュルケはダーリンダーリン言う割には目立った行動しないよなぁ・・・流石にキュルケまで加わったらぐだぐだになりそうだけど。
あとちょっと気になったのだけど
「違ければ…なんだ?」
ってなんか語呂に違和感あるんだけど、これでいいのかな?
教えてエロい人!!
アプトム召喚→左手切り落とし逃走→左手からアプトム再生→切り落とし再生→アプトム軍団
特に予告が無ければ、45分より小ネタを投下します。
闇の土鬼より、土鬼を召喚で。
ああ某しもべだと初代ガンダなんだよなあ
何ィ!?
血の風が吹くぞ!?
648 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/05(金) 22:43:36 ID:IzHO/6sM
>>643 抱きついたりなんだりの強硬手段に出ようとするキュルケは貞操の危機を感じた
バージルにとっさの反撃受けて気絶→手が出せない
ぬ・ああああああ……!!?
下げ忘れたあぁぁ!orz
聖堂内に、木材乾いた音が反響する。
矢のように飛び込んできた一撃に、居合わせた三人の動きが止まる。
殺す者、ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドと、殺される者、プリンス・オブ・ウェールズ。
二人の間に割って入ったのは、七つの節の入った、2メイル程の長さの棍だった。
「――と、危ねぇ危ねぇ。ちょっとギリギリだったな」
「サイト!」
ルイズが驚きの声を上げる。
昨夜、ケンカ別れしたはずの使い魔が、こんな土壇場に現れるとは思ってもいなかった。
「……トリステインへ帰ったのでは無かったのかい? 使い魔くん」
「敵を欺くには、まず味方から、ってね。
アンタの三文芝居よりはいい演技だったと思うぜ」
「……」
ワルドは無言で飛び退ると、才人向けて杖を構えなおした。
「王子と姫君を助けにきたナイト気取り、か。 だが、丸腰でどうやって戦うつもりだ!」
叫びと同時に烈風が放たれ、衝撃波が才人目掛けて牙を剥く。
いかに伝説と言えども、丸腰の使い魔では避けようのない一撃――だが、
「ガンダールヴ舐めんな! 色男」
衝撃が全身を包んだかに見えた刹那、驚くべき勢いで才人が横に跳ねる。
空中で、ワルドへ向けて、その右腕を伸ばす。
「なッ!?」
才人の指先から放たれた光弾が、ワルド目掛けて一直線に伸びる。
咄嗟にそれをフィストガードで受け止められたのは、ワルドの並々ならぬの修練の証だった。
鈍い金属音が響き、弾かれた霞石が宙を舞う。
ワルドが記憶を走らせる。指先だけで飛礫を弾き、標的を射抜く武芸が存在すると、噂だけでは聞いたことがあった。
尤もその時は、しょせん魔法の使えぬ平民の児戯と、一笑に付したのだが。
堂内を駆けながら、才人が次々と指弾を放つ。今度はワルドは笑えなかった。
飛礫の小ささに加え、打つ前の予備動作が殆ど無い。
しかも放たれる一撃は、直撃すれば額を穿つほどの威力を秘めている。
ワルドは、自身の中の油断を認めざるを得なかった。
平民の技術も、伝説の使い魔の力も侮っていた。
あらゆる武器を操れる『神の左手』に、あらゆる物を『武器』と見做す武術が合わさった時、その脅威は――。
「この前の決闘では、本気を出していなかったと言うわけか」
「へへっ、能ある鷹は、ってね!」
チッ、ワルドが舌打ちをする。
先の決闘に於いて、ワルドは敢えて真正面から才人を叩きのめした。
彼の読み通り、プライドを大きく傷つけられた少年は、八つ当たりから主人と衝突し、その元を去った。
――その全てが実は、少年の掌の上で踊っていただけだったとは。
「だがな、爪を隠していたのは、貴様だけではないぞ!」
――ユビキタス・デル・ウィンデ……。
ワルドの詠唱が堂内に響き、揺らめく空気がヒト型を為し、瞬く間に4人のワルドが出現する。
「風は偏在する。どう受ける、ガンダールヴ?」
「サイト!」
堂内を回り込んだルイズが、才人へ棍を放る。
飛び退きながら棍を受け取ると、才人は何を思ったか、あらぬ方向へと思い切り振るう。
同時に左手が激しく瞬く。
カカカッ、というテンポの良い音とともに、棍を構成する七つの節が外れ、間から鎖が勢いよく飛び出す。
棍は一瞬の内に10メイル程伸び、手前ではなく、奥で詠唱を始めていた偏在を襲った。
意表を突いた攻撃に、偏在は反応できない。
受け損ねた杖が根元で折れ、伸びきった棍の先端が喉を貫く。
呻き声を一つ上げ、偏在の体が揺らいで消える。
才人が更に左手を振るう。
鎖が大蛇の如く大地をのたうち、手前の偏在の足を払う。
その隙に棍を引き戻す。蛇は急速に才人の手元に引き寄せられ、カッ、という音とともに元の棍へと戻った。
「七節棍……だと! 貴様ッ、誰に習った?」
「そいつを聞いて何になる!」
風を巻いて才人が走る。
一気に偏在の間をすり抜け、ワルドに肉薄する。ただし、杖の間合いには踏み込まない。
棍の両端を振り回しながら、太刀先一寸の距離から交互に投げ放つ。
時折、遠巻きに魔法を試みる偏在に棍を伸ばし、踏み込んで来る本体は、槍の優位性でもって打ち払う。
変幻自在の棍捌きに、ワルドが思わず舌を巻く。
偏在三体を突撃させて動きを封じる、という手段も残っていたが、その手は使えなかった。
隙を見て烈風の一撃を見舞おうと、油断なく杖を構えるウェールズの姿が視界に入ったためだった。
「クッ!」
猛烈な才人の連撃を受けかね、ワルドがフライで上空へと逃れる。
支援
サイト? 支援
「見事だ。この場は素直に負けを認めよう。
――だが、俺に勝利したところで、貴様らの命運が変わるわけではないぞ!」
グッ、とウェールズが唇を噛む。
ニューカッスルの古城は、既にレコン・キスタの大軍に囲まれ、明日をも知れぬ状態である。
ワルドの言うとおり、ここで彼を撃退したところで、寿命が少し延びただけに過ぎなかった。
「さらばだ! 次は、総攻撃の時に遭おう」
そう言うと、ワルドは偏在をけしかけつつ、自らはステンドグラス目掛けて飛んだ。
体当たりでガラスを破り、そのまま脱出を図るつもりだった。
――が、
意外な事に、ガラスは外側から破られ、突如として、何者かが室内へと飛び込んできた。
「総攻めは中止だよ」
「な……? なん…… だッ!」
一瞬の交錯で頸椎を打たれ、ワルドが昏倒する。
乱入者は片手でワルドを抱えると、左手の棍を、聖堂の天井目掛けて跳ばした。
棍は梁へと絡みつき、ふたりは中空を大きく旋回しながら、やがて、部屋の中央へと降り立った。
「あなた…… アンリエッタ様の!」
「土鬼さん!」
男が深編笠を外す。
豊かな黒髪を携えた、隻眼の若者の素顔が、ウェールズの前に現れる。
「それがし、アンリエッタ王女の使い、土鬼と申す者。
ウェールズ皇太子、御身を囮に使い危険に晒した事、まずはお許し下され」
「アンリエッタの使い? それに、おとり…… とは?」
呆然としたウェールズの様子に、頭をかきながら才人が応える。
「ワルドを泳がせたのは、土鬼さんの策だったんですよ。
つまり、土鬼さんが敵陣で自由に行動するために、
キレ者のワルドには、レコン・キスタ本体から離れていて欲しかったんです」
「潜入ですって! レコン・キスタに?」
「ウェールズ殿下」
土鬼が片膝をつき、一歩、ウェールズの前へと歩み出る。
「敵本隊が混乱している今こそ好機。
このまま夜陰に乗じ、搦め手より城外に落ち延びるのが得策と存じまする」
「! レコン・キスタ本体に、何か異変があったのか?」
ウェールズの問いかけに、土鬼の隻眼が瞬く。
「レコン・キスタの指導者、オリヴァー・クロムウェル。
彼は既に、この世の者ではござらん」
・
・
・
アンリエッタの使い魔だったのか! 支援
一刻程前、
レコン・キスタ本陣の天幕の中で、クロムウェルは、城内に潜伏したワルドからの報告を待っていた。
本来、圧倒的な兵力差で以て包囲を完成した時点で、この戦いは詰んでいる。
ワルドの作戦の成否など、余興の一つに過ぎない。
にも関わらず、組んだ両指をせわしなく動かし、知らぬ間に貧乏ゆすりを繰り返してしまうのは、
図らずも巨大な陰謀に巻き込まれ、分不相応な身分を手にしてしまった男の、悲しい性であった。
――と、
不意に、幕を開く音と共に、一瞬、湿った空気が入り込んでくる。
「来たか! 同志ワルドからの報告は……」
振り返ろうとしたその動きがピタリと止まる。
背後に座る男から、尋常ならざる気配を感じ取ったためだった。
「静かに、ゆっくりとこちらを向け」
言われるがままに、クロムウェルが振り向く。
眼前にいたのは、異国の旅装と思しき隻眼の若者。
折り目正しく正座を組んで、まっすぐにクロムウェルを見つめている。
「まるで烏合の衆だな。
なまじ魔法を使えるという驕りが仇となり、刺客の侵入を許すほどの油断を生む」
「し、刺客だと?」
しっ、と、土鬼が人差し指を立てる。
「此度、俺がこの地を訪れたのは、友の友誼に応えんがため。
本当は、研鑽を重ねた裏の武芸を、再び暗殺に使うつもりなど毛頭無かった……が」
土鬼の左目が野獣の如く慧々と光る。額に大粒の汗を浮かべ、クロムウェルが生唾を飲み込む。
「この国の有様はなんだ? 敵の亡骸を容赦なく晒し者にし、
傭兵どもは野盗と化して、喜々として村々を焼き払う。
人手が足りないとなれば、化物どもを雇い入れて平気なツラをしている。
お前等の掲げる崇高な使命とは、こんなにも非道を強いるものなのか?」
「……」
クロムウェルは答えられない。
必要さえあらば、万を超す大軍すら酔わせる英雄になれる彼だったが、
その弁舌は、自らの身に刃の及ばぬ場所に於いてのみ、真価を発揮するものだった。
「答えろ、レコン・キスタの指導者、オリヴァー・クロムウェル」
「う、うるさいッ! 余に指図するとは……ッ!」
クロムウェルはその先を告げる事ができなかった。
指輪をかざそうとした左手の甲を、飛礫が貫いたからだ。
激痛に声を上げる事もできず、クロムウェルがその場にうずくまる。
「閣下、どうかなされましたか?」
「……なんでもない……持ち場に戻れ」
天幕の外からの問いかけに、かろうじてクロムウェルが応じる。
人の気配が去ったのを確認し、土鬼がゆっくりと歩み寄る。
支援
「それが、お前の奥の手か?」
手にした棍でクロムウェルの手首を押さえつけると、土鬼は、その奇妙な指輪をまじまじと見つめた。
「か、勘弁 してくれ」
「……質問を変えよう。 お前の主人は誰だ? クロムウェル」
「……!?」
酸欠の金魚のような表情で、クロムウェルが口をパクパクとさせる。
尤も、土鬼からしてみれば、こんなものは秘密でもなんでもない。
死を前にした眼前の男には、革命家の苛烈さも、殉教者の陶酔も、悪党の強かさも一切見受けられない。
国一つをひっくり返すほどの大胆な計画を実行できる男とは、到底思えなかった。
「……なあ、人生をやり直したくはないか? クロムウェル」
「なっ、何?」
「とっくに気が付いているんだろう? お前には革命指導者の地位は重すぎる。
眼前の敵を下し、権力を増すごとに
お前の心はどんどん平穏から遠のいているはずだ」
「……」
「お前が全てを白状するなら、俺が、この場からお前を逃してやってもいい。
トリステインに脱出するためのツテを用意しよう。
その後の事は、お前の好きにすればいいさ」
「ほ…… 本当、か?」
「ああ、だから答えろ。お前に指示を出していた者の名は?」
「……それは」
クロムウェルが口を開いた瞬間、異常な気配を感じ取り、土鬼が後方へと跳ねる。
同時に黒い旋風がクロムウェルの脇を通り抜け、天幕の外へと飛び去っていく。
「こ、これ…… ばっ!?」
指輪を手首ごと持ち去られたクロムウェルが、信じられない、といった表情で断面を見つめる。
直後、首筋から鮮血が噴水の如く吹き出し、どうっ、とその場に倒れこんだ。
「しまった……! あれが【があごいる】と言う物か」
土鬼が驚嘆の声を洩らす。
魔法仕掛けの人形の話は聞いてはいたが、単なる置物にしか見なえかったそれが、あれ程の精密さで動くとは思わなかった。
天幕の外から喧騒が聞こえて来る。
土鬼は片手で太刀を引き抜くと、卓上のランプを、入口目掛けて叩きつけた。
「賊だ! 賊が侵入した!」
「本陣より火の手が上がったぞッ!」
衛兵が入口の炎に気を取られている隙に、後方の幕が切り裂かれる。
そのまま土鬼は、闇の中へと消えたのだった……。
支援
660 :
血風党異聞 :2008/09/05(金) 22:58:33 ID:1v2Pc9Ay
以上、前編投下終了です。
当初は「闇々の土鬼」というタイトルでしたが
ストイックな横山作品が台無しなのでやめました。
乙ー
けっぷうとういぶん?
血風党の人、乙です
これは後編にもwktkして期待せざるを得ない
ところで、土鬼といわれると連想するのがギランバレー症候群(マチガイ
>>599 ちょっと想像してみる。
7万人の大軍を前にギターをかき鳴らし一言。
「どうだい? 魂の叫びが聞こえるかい? 炎のプレイでシビレさせてあげるよ」
……結構イイかもしれん。
乙
時代劇系はいいなぁ
だが土鬼というと漫画版ナウシカの神聖皇帝&皇弟とかしか思い浮かばない
直系の人?
>>665 それは怒鬼。
ジャイアントロボ版ですね。
GRだと「血風党」じゃなくて「血風連」だし。
>>581 何故わかった?
しかし書いててわかったが直接的な攻撃力はないのに
変装・偽装・拘束・トラップと応用力がチート級で
ルイズに召還させるのはマズい
土鬼の人乙
血風党ということは、土鬼は無明斎の意思を継いだんだろうか
ターガンからピューピュー、ポーポーが召喚されないかな
670 :
血風党異聞 :2008/09/06(土) 00:01:12 ID:1v2Pc9Ay
日付が変わったところで、差し支えなければ5分から投下します。
暗闇の中、二つの影が樹上を飛び交う。
付き従う才人の息が大きく上がる。単純な個人技ならば、少なからぬ自信のあった彼だったが、
森林に入ってからの土鬼の動きの冴えは異常だった。
銀線を巡らし敵の動きを掴み、ムササビの如く枝を乗り換え、頭上より一団を襲う。
慌てふためく敵陣に、さらに十数名の後詰が突っ込み、散々に打ち払う。
時に火を放っては敵をいぶり出し、時には囮を使って同志討ちを狙う。
敵は、いかに士気が低いとは言え、それでも千以上の兵からなるレコン・キスタの追撃部隊である。
それが、わずか十人余りに過ぎない殿を相手に、完全に翻弄され尽くしていた。
七度目の追撃を打ち払い、ようやく才人にも納得できつつあった。
武術の師である土鬼の力を疑っていたわけではないが、
彼が、百倍以上の敵の包囲網を抜け、脱出を図るべき、と進言した時は
正直、タチの悪い冗談としか思えなかった。
尤も、それは才人が、裏武芸の本質を知らなかったためでもある。
土鬼の使う武術の母体は、徳川将軍家の暗部を担ってきた戦闘集団・血風党の技である。
彼ら血風党は、戦国の時勢には、敵将の暗殺、敵陣の撹乱といった工作任務を本分とした。
裏の武術の真髄を極めた土鬼にとって、底深い闇や生い茂る樹木は、己が力を存分に発揮するための舞台であった。
八度目の追撃を凌いだ時、それは起こった。
「追撃は不要! 逃げる相手は……」
遠目にちらりと見えた篝火に、土鬼の声が思わず止まる。
この場に留まることは危険だと、修羅の世界で培った第六感が警鐘を鳴らす。指示を出す暇もない。
本能の促すまま、横にいた才人を抱えると、真後ろへと飛び退る。
直後、轟音と共に火柱が大地を駆け抜け、逃げ惑う敵と追走する味方が、丸ごと焼き払われていく。
肉の焼ける匂い、オレンジに染まる世界、たちまち周囲が、阿鼻叫閑の地獄絵図と化す。
「土鬼さん! これは!?」
「――ほぅ、カンのいい獣もいたものだな!」
炎の中に人影が揺らめき、樹上の二人目掛けて火球が放たれる。
土鬼が驚愕する。対手の位置からでは、こちらの居場所は視認出来ないはずである。
にも拘らず、火球は大きく弧を描き、樹木の間をすり抜けてくる。
「退くぞ! 才人」
飛び退きながら火球をかわし、二人は一気に山道を駆け上がる。
「土鬼さん、あのままじゃみんなが……」
「あの有様では、どの道助からん! お前もそうなりたいか?」
・
・
・
山頂から、赤々と燃えあがる一帯が見える。
ほてった体が急速に冷え、流れる汗が冷たいものへと変わっていく。
仲間の断末魔が耳元で残響する。初めて味わう戦場の恐怖が、才人の体をぎりぎりと締め上げる。
「才人」
抑えの利いた声で、土鬼が切り出す。
「この場は俺が抑える。
お前はこのまま山を下りて、ウェールズ殿下達と合流しろ」
「そんな! ムチャだ、土鬼さん!」
才人が叫ぶ。土鬼相手にこれ程まで激昂したのは、初めての事だった。
「今までぬるま湯みたいな生活をしてきた俺にだってハッキリ分るよ!
アイツは…… アイツは普通じゃない!
魔法を使えないアンタが、一人で立ち向うなんて危険すぎる!」
土鬼は才人の表情をまじまじと見つめていたが、やがて、静かに言った。
「才人、お前…… 人は斬れるか?」
「……!」
思わぬ問いかけに、どくん、と心音が高鳴る。
「お前の言うとおり、奴は普通の手合いではない。
逃げ惑う味方を笑いながら焼き払える奴が、まともであるはずが無い。
立ち合いの際、少しでも斬ることを躊躇えば、たちまち消し炭にされてしまうだろう」
「……」
「どうだ? 才人。
奴を殺すのに、ひとかけらの迷いも持たないと言うのなら、共に連れて行ってやろう」
「土鬼さん…… オレ、俺、は……」
不意に土鬼が笑う。才人が今までに見たことのない、穏やかな笑顔だった。
「いいんだよ、殺せなくても……
武の道を極めた果てにあるものが、俺や奴のような、
血で血を洗う生き方のみだと言うなら、それは、あまりにも空しいと思うよ。
才人、お前には、俺とは違う生き方を、その武で切り開いて貰いたいんだ」
「土鬼さん……」
「さあ行け! 生きて、その左手で主を守れ!」
――才人は、もはや行くしか無かった。今の彼には、土鬼の傍に立つ資格が無かった。
「分かったよ…… アンタも、あんなヤツに負けるなよ!」
そう言い残すと、才人は後ろを振り向く事なく、真っ直ぐに山道を駆け降りた。
・
・
・
「どうしたァ! ウェールズの飼い犬よッ! 逃げてばかりじゃあ話にもならんぞ!」
強敵の嘲笑がこだまし、闇の彼方から火球が迫る。
魔法のあまりの精度の高さに、土鬼が舌を巻く。
二度目の接触から既に五分。
敵は未だに姿を見せないばかりか、思わぬ死角から、正確無比に火球を放ってくる。
かつて、火炎を使う忍びと行動を共にした土鬼だったが、これ程までの技は見た事が無かった。
飛び交う炎を的に、何度か飛礫による反撃も試みたが、その度に樹木に阻まれてしまう。
闇の住人である土鬼にとって、暗闇は本来味方であったはずだが、対手の能力は、土鬼のそれを完全に凌駕していた。
このままでは埒が開かないと踏んだのか、敵が戦法を変える。
正確無比だった炎の軌道が変わり、周囲の木々に炸裂し出す。
この効果は絶大であった。
燃え盛る炎に、土鬼の動きは大きく制限され、
しかも、赤一色の世界がカモフラージュとなるため、火球の回避は極めて困難となった。
樹上に逃れることも出来ない。炎から逃れるべく上に跳んだとしても、煙に燻されて墜落するのがオチである。
もはや、土鬼には一切の余裕が無い。
炎を避けるスペースを求め、前方の闇の中へと跳んだ。
「うっ」
思わず呻き声が洩れる。ずぶりとした感触が両足を包んだ瞬間、土鬼は敵の仕組んだ罠を理解した。
「これは、底なし沼、か……」
土鬼の両足が、ゆっくりと泥の中へ沈み始める。
慌ててもがけば死期が早まる。といって、悠長なことをしていては、周囲を包む炎に焼き尽くされてしまうだろう。
「眼前にある沼すら分らぬか。ハッ! 目が見えるとは不自由な事だな」
ガサガサと藪をかき分けながら、『敵』が姿を見せる。土鬼が思わず息をのむ。
「成程。暗闇を苦にしないわけだ…… 初めから盲目の手合いだったとは」
「オレの名は『白炎』のメンヌヴィル。
煙に巻かれて死ぬのは苦しかろう? せめてこの手で、ひと思いに焼き殺してやろう」
メンヌヴィルが詠唱を始める。既に腰まで泥中に嵌った土鬼には、避ける術がない。
「さあ! お前の焼ける匂いをかがせろォ!!」
「!」
土鬼が右手を引く。直後、振り下ろさんとした男の杖が、空中で弾力のある何かとぶつかり、大きく弾かれる。
「うおっ!」
メンヌヴィルには驚いている暇はなかった。張りつめた糸が足元を襲い、バランスを崩し強かに転倒する。
土鬼が懐から何かを放つ。銀色の糸が炎で煌めき、投網の如く広がって、対手の動きを絡め捕る。
「なんだッ! これは…… 糸!?」
「【銀線】に【銀網】さ。
髪の毛のように細い鉄線、抜けるのは容易じゃないぞ。
お前が俺を、ここに誘い出そうとしているのは明白だったからな。
逃げ惑う振りをして、あらかじめ糸を張っておいたのさ」
「何だと! 貴様ッ、沼があるのを承知の上で飛び込んだというのか?」
「ああ。その甲斐あって、お前さんの素顔を拝むことが出来たしな」
メンヌヴィルが歯噛みする。
光の届かぬ世界で彼が自在に動けるのは、周囲の物体の発する熱量を、正確に把握できる能力によるものだった。
もし、辺りが通常の状態であれば、張り巡らされた糸の存在も、鋭敏に感知する事が出来たであろう。
なまじ周囲を高熱の炎で包んでしまった事で、皮肉にも彼の中のセンサーが鈍り、足元を掬われる結果となったのだ。
土鬼が左手を弾く。霞石が高速で飛びだし、尚も反撃しようとするメンヌヴィルの眉間に、深々とめり込んだ。
「フ、 ブハハッ! ご、ゴ、 ごのうえバ、ギサマも……」
「……ッ!」
血泡を吹き出しながら、痙攣する手で杖を突きだす。
メンヌヴィルの異様な動きを察知し、頭上の木立目掛け、土鬼が七節棍を伸ばす。
直後、閃光と爆音が周囲を包み、天を焦がさんばかりの火柱が、勢いよく燃えあがった……。
・
・
・
「姫殿下……?」
トリステイン王宮、王女アンリッタの自室に、女官の不審げな声が響く。
当の主は、どこかぼんやりとした様子で、部屋の中空を見上げていた。
「どうかなされましたか?」
「いえ…… 今日はもう休みます。 お前ももう下がりなさい」
「はい、……あまり、お気を詰められませぬように」
心ここにあらずといった風の王女を気遣いながら、侍女が部屋を後にする。
レコン・キスタ指導者、オリヴァー・クロムウェル横死の報から一日、
アルビオン皇太子、プリンス・オブ・ウェールズの安否に関する情報は、未だ届いていなかった。
扉が閉まる音を確認すると、アンリエッタはゆっくりと立ち上がり、窓際へと進んだ。
「まさか……」
木戸を開け放つ。と、バサリという羽音がして、一匹の鷹が舞い降りてきた。
「ああ、やはり稲妻!」
アンリエッタが歓喜の声を洩らす。
眼前で悠然と羽を休めているのは、間違いなく土鬼の愛鷹、稲妻。
先ほどの彼女の不審な態度は、窓の外に、鷹の嘶きを聴いた気がしたためであった。
「稲妻、土鬼殿は、あなたの主は無事なの?」
稲妻が首を動かす。見ると、左足に細く折った手紙が結わえてある。
アンリエッタが手紙を紐解く。紙面には、いかにも習い始めたばかりと言った風の、不器用な文字が躍っている。
紛れもない土鬼本人からの手紙であった。
書面には、現実主義者の彼らしい簡潔な文章で、事の仔細が記されていた。
魔法衛士隊隊長、ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドの裏切りとその顛末。
オリヴァー・クロムウェル横死の真相。
ウェールズ皇太子の無事と、これから行う、ニューカッスル脱出の手筈。
アンリエッタが深いため息を漏らす。
手紙の末尾には、それまで同様の簡潔さで、使い魔からの決別の言葉が記されていた。
・
・
・
しえん
一年前、王宮の中庭に於いて、アンリエッタはサモン・サーヴァントの儀式に臨んでいた。
当時、彼女は孤独で、無力であった。
隣国アルビオンでは、レコン・キスタが勢力を拡大し、アルビオン王家の滅亡は、時間の問題と囁かれていた。
革命主義者の脅威に対抗するため、ゲルマニアとの間に軍事同盟を締結する事が、トリステイン王国の当面の課題であった。
王家の正当な後継者であるアンリエッタに求められたのは、指導者としての英邁さではない。
政略結婚の道具たるに相応しい器量であり、健やかなる後継者を授かれる母体であった。
国民を安んじる事こそ王家の人間の務め、と、己の運命に関しては、既に諦めの付いていた彼女であったが、
敬愛するウェールズ皇太子を見殺しにする事だけは、どうしても納得することが出来ずにいた。
力が欲しい。国家にではなく、自分に忠誠を捧げ、
滅びの運命を負ったウェールズの支えになれるだけの使い魔が欲しい。
常ならぬ覚悟と気迫を宿して、彼女が召喚の儀式に臨んだのは当然の次第であった。
少女の願いは、その半ばまでが叶えられた。
召喚に応じたのは、巨大な翼を持った竜でも、特異な能力を秘めた幻獣でもなく。
武芸者と思しき体躯を備えた、見慣れぬ異装の若者であった。
――半ばまで、と、いうのは、男が使うに値しない無能者だったからではない。
彼が、使い魔の契約を拒み、拘束しようとした衛兵三人を、手にした棍で瞬く間に打ち倒して見せたからである。
昏倒した三名は、いずれも腕に覚えのある実力者ばかりであった。
異例続きの儀式に、周囲はたちまち騒然となったが、彼女自身はこの一件で、すっかりその使い魔に惚れ込んでしまった。
彼女に必要なのは、忠実さが取り得の護衛ではない。身一つで困難な任務をこなせる猛者である。
その男……土鬼が契約を拒んだのは、武人としての誇りの高さ故であり、彼はその矜持を、己が実力で証明して見せたのだ。
アンリエッタは土鬼を使い魔にする事を諦め、武芸指南役として城中に留まるよう依頼したが、それもやんわりと拒否された。
土鬼は、隠者のような存在なのだ、とアンリエッタは理解した。
長いハルケギニアの歴史の中には、メイジとしての優れた資質を持ちながら、貴族の生活を疎んじ、山野にこもる変わり者が、少なからず存在した。
彼らにとって魔法の研鑽とは、名声や栄達の手段ではない。研鑽のための研鑽を積むことこそが、彼らにとっての生きがいであり喜びなのだ。
アンリエッタの推測が正しかったかどうかは定かではないが、ともかく彼女は、土鬼を城中に留めおく理由を失ってしまった。
彼女は一計を案じ、トリステイン魔法学院の巡行に同行するよう、土鬼に強く懇願した。
そしてその地で、旧友、ルイズ・フランソワーズの使い魔、平賀才人と引き合わせたのだ。
土鬼と同じ境遇に立たされた少年なら、あるいは、彼をトリステインに繋ぎ止めるための、
鎖となってくれるかも知れないと考えたのだ。
アンリエッタは、親友の身辺を警護するため、才人に護身術を指南して欲しい、と、土鬼に依頼した。
この提案は、想像以上にうまくいった。
最初はしぶしぶながら稽古を付けていた土鬼だったが、日々めきめきと上達していく才人の技を、
まるで自分の事のように喜ぶようになった。
それが、遠く異国の地で絶えると思われた、裏武芸の真髄を継げるだけの麒麟児を得た武人の本懐故とは、
ついにアンリエッタには分からなかったが……。
かくして、トリステイン魔法学院で、異例となる王女の使い魔の生活が始まった。
日中は他の生徒たちと机を並べ、魔法に関する授業を受ける。
もちろん自分が使うためではない、様々なメイジの戦術に対抗する術を模索するためである。
メイジと殺し合いになる機会など、そうそうあろうはずも無いのだが、そこは、生粋の武芸者である土鬼の本能であった。
そして、夜を待って、才人に稽古をつける。
わざわざ闇夜の中で立ち会うのは、あらゆる状況で闘える術を身に付けさせるためであり、第三者に手の内を晒さない為でもあった。
また、月に一度は王宮に赴いて、市井の様子や、とりとめの無い噂話などを、アンリエッタの前で語って見せた。
勿論、使い魔の契約は果たさぬままだったし、土鬼の方も、必要以上に王女に接近しようとはしなかった。
アンリエッタもそれを是とした。いずれ、機が熟すまでは、土鬼の協力を仰ぐべきではない、と考えていた……。
しえん
・
・
・
アンリエッタが今回の策を思い立ったのは、ワルド子爵に不穏の動きあり、という、土鬼の報告を聞いたときである。
一国の存亡を揺るがす手紙の存在をダシに、彼女はルイズを動かし、その護衛として、ワルドをアルビオンに差し向けた。
ワルドの動きを、別働隊の土鬼に監視させた上で、だ。
ワルドが無事に任務を果たすようならそれで良し、
万一、彼が裏切るようなら、土鬼にワルドを排除させ、任務を続行させる――。
それはアンリエッタにとって、危険な賭けを通り越して、ある種の暴挙でさえあった。
最悪の場合、ウェールズはワルドの手にかかり、手紙はレコン・キスタへと渡る。
ゲルマニアとの連携は不可能になるし、愛娘を失ったヴァリエール一門は、王家に対し反旗を翻すかもしれない。
トリステインは、一気に存亡の危機へと晒される事となるだろう。
それでもアンリエッタは、その博打を打たざるを得なかった。
このまま手をこまねいていれば、遅かれ早かれウェールズは死ぬ。
彼の窮地を救える者があるとすれば、裏の武芸の真髄を極めた土鬼だけであろう。
だが、彼は富や名誉のために動く男ではない。
土鬼をアルビオンに赴かせる手段はただ一つ、
彼の弟子であり、数少ない友人である才人に危険な任務を与え、死地へと送り込むことだけであった……。
勿論、土鬼に対し「敵将クロムウェルを暗殺し、ウェールズの窮地を救え」などという指令を下したわけではない。
だが、誇り高い武人である土鬼には、窮地のウェールズを見殺しには出来ないだろう、という計算があったし、
ニューカッスル脱出のため、土鬼が非常な手段を打つことは、十分に考えられる事態だった。
それに……、クロムウェルが死んだ事に対し、心の底で安堵する自分がいた事は、
アンリエッタにとって、動かしがたい事実であった。
既に、事は成った。
卑劣な謀略の全容を知るのは、アンリエッタと土鬼の二人だけであり、
誇り高き彼女の使い魔は、二度と主人の下へは帰って来ないだろう。
アンリエッタには、懺悔をする事すら許されない。
真実を口にすれば、命がけで任務を成し遂げた親友の、その忠誠を貶めることになる。
愛する者の命と引き換えに、アンリエッタは生涯消えぬ十字架を負ったのだ。
「それでも…… ウェールズ様が生きていて下さるなら…… 私 は……」
読み終えた手紙を暖炉にくべると、アンリエッタは左手の指輪を外し、稲妻の足へ括りつけた。
「稲妻、あなたの主人が生きているなら、それを届けて
それが、今の私にできる精一杯……」
稲妻は一声鳴くと、再び闇の中へと舞い上がった。
「ウェールズ殿下の事、よろしくお願いします」
彼方の闇に向かい、アンリエッタが呟いた。
・
・
・
支援
――その後、
かろうじて城外へと落ち延びたウェールズは、転々と拠点を変えながら、
足並みの揃わぬレコン・キスタ相手に、反抗戦を開始した。
圧倒的な兵力差を前に、幾度と無く苦戦を強いられた彼であったが、
その度に不屈の闘志で立ち上がり、各地で敵の悪行を糾弾し、諸勢力を味方へと取り込み、
遂にはアルビオンを奪還する事に成功した。
戦乱の中、ウェールズの影となって策動する戦闘集団の噂が幾度と無く流布し、
その存在が、まことしやかに囁かれたが、それらの噂は
乱世の集結と共に、風のように消え去った。
後年、流浪の王子ウェールズの戦いは、詩人達が好んで取り上げる題材となり、
彼らの口伝によって、王子に付き従った名も無き戦士たちにも、複数の人格が付与された。
それらの伝承は、何人かの戯曲家の手によって集約され、
【英雄ウェールズと血風党の伝説】として、広く世間に知られる事となるのだった。
――土鬼の行方は、誰も知らない。
支援
683 :
血風党異聞:2008/09/06(土) 00:30:21 ID:1SU4GX3t
以上、投下終了です。
当初は「ガンダールヴが霞のつぶて使ったらヤバくね?」という発想から始まったネタでしたが
なんとか無事にまとめられて良かったです。
唯一の心残りは、歌う北花壇騎士団が入らなかった事でしょうか。
サイトとの絡み、殺意の有無が実によかったです。
相手が相手だけに霞のつぶてと銀線のヤバさが半端ねーなぁ。
GJっしたー
投下乙です
血風党の復活に闇に潜み続ける土鬼、共に格好いい
そーいや土鬼から見たら才人は未来から来た人だなあ
徳川幕府の行く末とか聞いたらどう思うか
血風党の人乙です!
こういうアンリエッタもいいなあ
>>667 そりゃあマテリアルパズル読んでますから
ガムに関しては東方からのめったに手に入らない超貴重なものとか適当に存在はするが入手困難とかにすればある程度バランスとれるんじゃね?
個人的には熱の魔法使いで虚無と馬鹿の凸凹冒険譚とか見てみたいが。
ワルドに
「おまえがルイズをいじめたのか!」
みたいな。
土鬼の人乙です。
確かに、柳生十兵衛を倒した武芸者がガンダになったら・・・
霞のつぶてや輪で船を落としかねないな
蒼の人、大王の人、血風党の人、各お歴々の方々乙であります。
しかし、兄貴がムンドゥスと殺り合うなら、DMC1でダンテがラストでなったスパーダモードに兄貴も是非なっていただきたいものですなw
ブラック・エンジェルズ呼ぼうぜ
対7万戦で明らかに頭を打ち抜かれてた筈の松田さんが
「いんだよ、細けえ事は」と何事もなかったかのように復活してくるんですね、わかります
メタルマックスで書こうかと思ってプロットを作った
オリキャラにならないように原作通りのキャラ付けで書いてみた
「はい」と「いいえ」しかセリフが無い
どう考えても「いいえ」は無限ループ
どう見てもテンプレ展開そのままです、本当n(ry
>>689 一応、閻魔刀もスパーダの形見なんで条件は揃ってますけど
しかしそうなると、普通に魔帝に勝ててしまうと言うww
・・・・あ、残存体力で負けたのかな?
ゼロ魔の世界に怪傑ズバットの早川健が召喚されたら
学院の宝物庫にズバッカー設置でw
>>694 アルビオンにて
ワルド「死ね!ガンダールブ」
早川「うわ〜」
アルビオンから落ちていく早川
ルイズ「ハヤカワー!」
チャチャチャーチャチャチャチャーチャーララララッラ
何故かアルビオン側から飛んでくるズバッカー
ズバット「国を裏切りあまつさえウェールズ王子を殺したワルド!許さん!」
ズバットの正体が判明するのはVS7万からの帰還後?
>>693 おそらく魔剣スパーダの有無だと思う
実際アラストルやイフリートでは歯が立たなかったし
正体が秘密の変身ヒーローの召喚てあったかな?
ヤットデタマンとか。
正体を隠してる変身ヒーローとのクロスオーバーってのは面白そうだな
ルイズにも正体を隠す方向で
怪傑ロビンがそうだっただろ
しかも偽者付き
>>698 変身ヒーローの中でも特に作中化け物扱いされてる人達とかな
ギルスとか四号と呼ばれてた頃のクウガとか
ガンバルガーとか?
正体ばれると犬になるペナルティ持ちの珍しいタイプ。
最速の使い魔の続きが気になってしょうがないじゃないか!
Fゼロのキャプテンファルコンの出番ですね?
ここはひとつパーマンで
さすがはワルド卿、見事な偏在だが…ハルキゲニアじゃあ二番目だ!
ですね。わかります。
706 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/06(土) 05:34:05 ID:wyTktPMe
>>正体を隠してる変身ヒーロー
・・・・・“顔をかくして身体かくさず〜”ですかぁww
そこでアルカイザー召喚を熱烈に希望!
>>正体隠す変身ヒーロー、ばれたらえらいことに
おじゃ魔女どれみ?
正体を隠している『変態』ヒーローなら居たじゃないか。
え?ポコイダ−?
>>705 どうやってハルケギニア1の偏在を披露するのか気になるw
メイドガイだろ
変態ヒーロー…変態仮面かけっこう仮面か悩むところだ
715 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/06(土) 09:52:28 ID:fUaQ4iae
ルイズのパンツをかぶると変身するんですね。
……ギーシュどうなるんだろうwww
716 :
虚無と狼の牙:2008/09/06(土) 09:58:47 ID:5amcj+Pe
10:10からウルフウッド投下します。
変態っつったらやっぱ奈良だろ
あれはジャンプ史上最低の男だろ
718 :
虚無と狼の牙:2008/09/06(土) 10:11:14 ID:5amcj+Pe
虚無と狼の牙 第十八話
ワルドはゆっくりと空を旋回しながら、眼下のウルフウッドとコルベールをにらみつけ、右手の杖を大きく掲げた。
「貴様らが二人になったところで、だからそれがどうしたというのだ!」
確実にウルフウッドを殺せたはずの戦況で、彼を助けるためにこの戦いに乱有してきた闖入者。
苛立ちを隠しきれない声でワルドは叫んだ。
再び風の魔法を放つ。竜巻が再び沈没しようとしているレキシントン号の窓ガラスを破った。
「確かに、君はなかなかに優秀な炎のメイジのようだ。それは認めよう。だが――」
ワルドがゆっくりと右腕を下ろした。船内に消えた竜巻が再びその姿を現す。
「矢は燃やせても、果たしてこれは燃やせるかな?」
コルベールはゆっくりと体を沈めるようにして、身構えた。目の前の竜巻の中で舞っているもの――それは剣。
「この戦いにしゃしゃり出てきたことを、後悔するがいい!」
ワルドが杖を振るうと、まっすぐに竜巻はコルベールへと向かう。
コルベールは冷静に戦局を分析した。確かにワルドの言うとおりだった。剣の一本程度なら溶かしてしまえないこともないが、数が多すぎる。
コルベールはゆっくりと身構えていた杖を下ろし、その場に立ち尽くした。
「ふっ、あきらめたか。ならば、大人しく串刺しになるがいい」
得意げなワルドの声。しかし、それに答えるコルベールの声は冷静そのものだった。
「確かに、あなたの言うとおりです。私の力ではそれは防げません。えぇ、私の力ではね」
そして、コルベールはちらりと横を見て、小さく笑った。
「というわけで、お願いしますね。ウルフウッド君」
その言葉にウルフウッドは腰をかがめると、一足飛びにコルベールへと向かったパニッシャーを大きく掲げ竜巻に立ちはだかる。
「先ほど殺されかけていた使い魔ごときがしゃしゃり出てきたところで、何になる! そんなに死にたければ、貴様から先に逝くがいい!」
ワルドが叫んだ。その様子を見て、ウルフウッドは鼻で小さく笑う。
パニッシャーが風を切る轟音を立てながら振り回される。その間隙を縫うように、デルフリンガーが縦横無尽に駆け巡る。
デルフリンガーに魔法力を吸い取られ、パニッシャーに叩きつけられたワルドの剣は乾いた音を立てて、宙を舞うと力ない金属音と共に地面に落ちた。残らず一本とも。
「なっ……」
目の前の状況にワルドは言葉を失くした。ワルドの杖を持つ手が震えている。
「阿呆が。剣なんて重たいもんを振り回そうとするから、さっきよりも数は減っているわ、攻撃のスピードは遅いわ、精度は落ちているわ。こんなんやったら、簡単に全部叩き落とせるで?」
「くっ」
ウルフウッドの冷め切った態度に、ワルドは自分が冷静さを失っていたことを思い知らされた。
確かにその通りだ。剣は矢のように『風』と相性のいい武器ではない。
「矢の次は剣。オンドレの手は、これで尽きたな」
冷たい目でウルフウッドはワルドを見据える。勝ち誇るわけでもない。ただ、冷たく、当然の事実のように言い放つ。
「ミスタ・ワルド。これでわかったでしょう。あなたにもう勝ち目はありません。私としては、これ以上無益な戦いは望みません。ここから、去ってください。そして、二度とトリステインの地を踏まないでください」
コルベールが慇懃にワルドに通告した。言葉遣いは丁寧だが、コルベールの目には不退転の覚悟が燃え上がっている。
「それで、いいですね? ウルフウッド君」
「まぁ、しゃあないな。今回ばっかはセンセのおかげやし」
ウルフウッドは苦笑いをしながら両手を挙げた。
>>698 正義の二人組を召喚したことによってルイズ・ギーシュ・マルコの三人が三悪に
てーのなら途中まで書いた
720 :
虚無と狼の牙:2008/09/06(土) 10:13:06 ID:5amcj+Pe
「ふざけるなよ、貴様ら……」
完全に自分を見下したウルフウッドとコルベールの態度にワルドは怒りを露にする。そのワルドの姿を見て、コルベールは小さくため息を付いた。
「ミスタ・ワルド。あなたは何のために戦うのです? 何を求めて、この国を裏切ったのですか? 地位のためですか? それとも名誉のためですか?」
「……誰が、そんなくだらないものを求めるか」
「ならば、何を?」
「……私が求めたのは、世界だ。はるか当方の地に眠る、聖地。それを今エルフどもから一度人の手に取り戻す。それこそが、レコン・キスタの存在意義であり、そのために私は国を裏切ったのだ」
淡々とワルドは語った。聖地という言葉にコルベールのこめかみが小さく反応する。
「あなたたちは、聖戦を引き起こすつもりなのですか?」
「トリステイン、アルビオン、ゲルマニア、ガリア――どいつもこいつもどうしようもない腑抜けどもだ。存在価値のない国などどうでもいい。私たちが聖地を取り戻すために戦うことを聖戦と呼ぶならば、そうなるだろう」
コルベールはワルドに向かって杖を構える。
「あなたたちの行いで、多くの人々の命が奪われ、生活が壊されるとしても?」
「その犠牲を恐れる臆病さが、エルフ共を付け上がらせるのだ。貴様もブリミル教徒ならば、わからないわけはあるまい?」
「アホぬかせや」
「何?」
ウルフウッドがコルベールとワルドの間に割って入った。憮然とした様子でウルフウッドはワルドをにらむ。
「聖地かなんか知らんけど、そこを取り戻したいんやったら、お前ら取り戻したい奴らだけで勝手に行け。関係のない人間の生活を巻き込むなっちゅうんじゃ、アホンダラ」
「……そもそも、会話するだけ無駄だったか」
ワルドはゆっくりと目を閉じる。
「君たちにはどうしてもここで死んでもらう。君たちが我々に敵対する意思があることがはっきりした以上、今ここで」
「敵対する意思なんざ、最初っからはっきりしとったことやろが、ボケ!」
ウルフウッドがパニッシャーを構え、ワルドに向かって銃弾を放つ。ワルドはウルフウッドに真正面から突っ込んでいき、銃弾を魔法で受け流す。
「ウィンドブレイク!」
ワルドはウルフウッドの足元に魔法を放った。魔法でえぐられた地面の土が舞い上がり、ウルフウッドの視界を塞ぐ。
「ぐっ」
「悪いが、こちらもそれなりに場数は踏んでいる! あの程度でチェックメイトだとは思わないで頂きたいものだね!」
視界を奪われたウルフウッドにワルドが杖を向けた瞬間、コルベールがワルドの懐に飛び込んで蹴りを放つ。
「ちっ。随分と貴族らしからぬ戦い方をする男だな!」
ワルドは風竜の手綱を引き、バランスを崩しながらも蹴りをかわす。この状況下でワルドが優位を保てるのは、ひとえに彼が風竜にまたがっているからであり、地面に叩き落されればその瞬間に勝ち目はなくなる。
コルベールの攻撃はそれを冷静に見越したものだった。
蹴りを避けたワルドは、杖をコルベールに向けた。この戦いに勝つには、コルベールかウルフウッドどちらかをまずは確実に仕留めなくてはならない。そうして、一対一に持ち込めば、確実に勝てるのだ。
「食らえ!」
「甘いわ!」
ウルフウッドはパニッシャーのストラップを掴み、パニッシャーを投げ縄の用に振り回した。
ワルドはとっさに上半身を折り曲げ、パニッシャーをかわす。ゴウンと風を切る音を立てながら、パニッシャーがワルドの頭上を駆け抜ける。
「くそっ」
ワルドは手綱を引くと、再び上空へと避難した。ワルドの予想以上に、ウルフウッドとコルベールのコンビネーションは完成されている。この二人を同時に出し抜くのは至難の業だ。
「センセ、すまんな」
ウルフウッドがぼそりとコルベールに声を掛けた。
「何がですか? ウルフウッド君」
「戦いとうないのに、こんな戦いに巻き込んでもうて」
「……確かに、こうして再び誰かを傷つけるために杖を振るうというのは、あまり気分のいいものではありませんね」
「センセ。アンタは魔法を人に向けんでもええ。攻撃やったら、ワイがやったる」
「ウルフウッド君?」
コルベールがウルフウッドの目を不思議そうに見ると、ウルフウッドは大丈夫とでも言うように無言で頷いた。
そのウルフウッドの仕草を見たコルベールはワルドへ向けて杖を構え、呪文の詠唱を始めた。その動きに気が付いたワルドは、炎の魔法を跳ね返すべく身構える。
しっし!しえん!!
722 :
虚無と狼の牙:2008/09/06(土) 10:14:56 ID:5amcj+Pe
コルベールが杖を振るった。杖から強烈な炎がほとばしる。
「馬鹿め! 自らの魔法で自分が焼かれるが――何?」
ワルドに向かってまっすぐに飛んでくると思われた炎は、大きく弧を描きワルドの目の前に壁のように広がった。
「炎の壁、だと?」
本来は冷気系の魔法や弓矢を防ぐための防御呪文だ。それをなぜ?
予想外のコルベールの行動にワルドが戸惑った一瞬の隙、その隙を突いて、まるで雲を一点で引き裂くように、目の前の炎の壁に穴が空いた。
「デルフリンガー!」
大声で叫んだワルドの目の前に抜き身のデルフリンガーが迫る。
――炎の壁は目隠しか!
魔法を吸収する事の出来るデルフリンガーなら、ワルドの風の防御壁を破って突き刺さることが出来る。コルベールの行動は隙を作るための囮で、本当の狙いはウルフウッドの投げるデルフリンガーだったのだ。
「甘いわ!」
ワルドはデルフリンガーの柄めがけて風の魔法を放つ。刀身に晒されれば魔法は吸収されるが、柄ならば――
ワルドは片方の唇の端を上げて、笑った。予想通りだった。柄ならば魔法は吸収されない。先ほど剣を魔法で操った要領で、デルフリンガーを手元に巻き取る。
「残念だったな。貴様らの捨て身の攻撃も通じなかったわけだ!」
勝った、とワルドは思った。デルフリンガーさえ奪えば、彼の魔法を遮るものは何もない。魔法攻撃の勝負ならば、負けるはずがない。
勝ち誇ったワルドが下を見下ろす。
「――?」
ウルフウッドがいない。先ほどまでウルフウッドがいた場所に、彼がいない。
――まさか。
ワルドは血の気が抜ける感覚を感じながら、自分の真下に視線を移した。そこではウルフウッドがパニッシャーの銃口を自分に向けている。
――あれは、まずい!
ウルフウッドが向けていた銃口は、パニッシャーの短い側。レキシントン号を沈めた、あの弾丸。
「くそっ!」
ワルドは思い切り舌を打ち鳴らした。デルフリンガーを魔法で掴んでいる体勢のため、ウルフウッドのランチャー弾を魔法で弾き返すことが出来ない。
デルフリンガーすらも囮だった。これも隙を作るためのものだったのだ。本当の狙いは――
「がぁああああ!」
ワルドは全力で手綱を引く。もはや物理的に逃れるしか術はない。
脂汗をかきながら、歯を食いしばって手綱を握り締める。
そして、両目をつぶったワルドの隣を何かが通り抜ける感触がした。ワルドが恐る恐る目を開けると、空に向かってまっすぐにあの弾丸が飛んでいく。
「は、ははは……はははは!」
思わずワルドの口から笑い声が漏れた。勝った、ウルフウッドとコルベールが仕掛けてきた捨て身の攻撃をしのぎきった。
賭けに勝利したのだ。ウルフウッドとコルベールの切り札はこの手にある。魔法を防ぐ手段を失った奴らを蹂躙することなど、たやすい。
「ファイヤーボール!」
ワルドの一瞬の気の緩みを逃さず、コルベールが炎の弾を放った。狙いは、デルフリンガーを掴んでいる風――
「ちっ! しまった!」
炎の熱によって膨張した空気は精密なワルドの風の動きを乱す。ワルドの手元から滑り落ちるようにデルフリンガーが落下していく。
「エアニードル!」
とっさにワルドは落ちて行くデルフリンガーに魔法を放った。これを再びウルフウッドの手に渡すわけには、いかない。ウルフウッドとは反対の方向へ、デルフリンガーを飛ばす。
723 :
虚無と狼の牙:2008/09/06(土) 10:16:50 ID:5amcj+Pe
コルベールは体勢を低くして走りこむと、落ちて来たデルフリンガーを両手で抱え込むように受け止めた。
「おう! ありがとよ、頭の禿げた先生!」
「……もっと、ましな呼び方を考えてください」
デルフリンガーを抱いたまま、苦笑いを浮かべるコルベール。
「ちっ!」
ワルドは舌打ちをした。しかし、まだ天は彼を見放していない。
「よくやった、と言いたい所だが、その剣はガンダールヴでもない君が扱っても、魔法を吸収することは出来ない。徒労に終わったな!」
ワルドはコルベールとウルフウッドの間に挟まるようにして、コルベールに向かって杖を向ける。コルベールがウルフウッドにデルフリンガーを渡すのさえ、防げればいい。
コルベールはデルフリンガーを抱えたまま、ウルフウッドとは反対の方向へ走り出した。
「逃げても無駄だ!」
ワルドは余裕の笑みを浮かべて、コルベールを追う。コルベールはじっと空を見上げながら、必死の様相で逃げる。
そうやって走っていたコルベールだが、唐突にぴたりと足を止めた。そして、無言で空を見上げる。
「観念したのか? なら、今楽にしてやる!」
ワルドがまさに魔法を放たんとした、そのとき不意にコルベールが口を開いた。
「この位置、でいいですかね?」
「そやな」
コルベールの言葉にウルフウッドは短く応え、パニッシャーをワルドに向けた。
「何をやっている? 悪いが、風の防御壁は常に張られている。君の銃は効かない」
ワルドはウルフウッドを振り返って、憐れむようなあきれ返るような声を出した。コルベールに魔法を放つ瞬間に防御壁がなくなるなど、そんなことはない。
「そこで、なすすべもなく君の友人が殺される様でも見ていたまえ」
ウルフウッドを見たまま、ワルドはライトニングクラウドの詠唱を始める。
「センセ、ちいとばかし派手になるで? 巻き添え食わんようにな?」
「まがいなりにも私は火のメイジです。大丈夫ですよ」
コルベールが柔らかく笑って返す。
「貴様ら、何の話をして――」
「小さな攻撃を加えて、本チャンの攻撃から相手の気を逸らす。それはオンドレがラ・ロシェールで朝の決闘を仕掛けてきたときに、言うた言葉やで」
「なにを――」
そこで、ワルドは何かが自分の顔の横にあることに気が付いた。横目で見たその物体は、先ほど自分が避けたはずの……
「すまんな。ホンマの狙いは、これや」
「キサマァー!」
ワルドの奇声のような悲鳴が発せられるのとほぼ同時に、ウルフウッドは引き金を引いた。紅蓮の炎が空に舞い上がる。
自らの真横でランチャー弾を炸裂させられたワルドは、なすすべもなく炎に飲み込まれた。
724 :
虚無と狼の牙:2008/09/06(土) 10:18:35 ID:5amcj+Pe
$
ワルドは小さくうめき声を上げた。全身が何かに刺されたかのように痛む。
「……満身創痍やな」
中に浮かぶワルドの姿を見て、ウルフウッドがぼそりと呟いた。
「く、くそ……」
先ほどの爆発の勢いで風竜は飛ばされてしまった。全身に火傷を負ったワルドは、それでもなんとかフライの呪文で空中に浮いている。
風の防御壁を張っていたおかげで直撃は免れたが、それでもダメージはあまりにも大きすぎた。彼の服は黒く焦げ、もとの色の判別すら難しいほどになっている。
「あきらめて投降してください。その傷では、もう戦闘は無理でしょう」
コルベールがワルドを諭す。しかし、ワルドは焼けた唇を思い切り歪ませた。
「くくく。万全を、期したつもりなのに、ここまでひどくやられるとは。甘かったよ。貴様ら一人一人なら葬り去れたものを」
話しながらワルドはゆっくりと空へと上がり始めた。
「逃げるつもりか、オンドレ!」
「逃げるつもり? 馬鹿を言うな。貴様らごときを相手に、この私が逃げるものか。君に切り札があったように、私にも、切り札が、あるのだよ」
ワルドは杖を振りかざした。そして、意識を集中する。すさまじい魔法力がワルドの体からほとばしる。
「あのドアホ、まだあんな力を残しとったんか……。センセ、デルフリンガーをワイに!」
ウルフウッドが右腕をコルベールに向けた。間髪いれずにコルベールもウルフウッドへデルフリンガーを投げてよこす。
「さすがはスクエアクラスのメイジですね……。あんな強力な魔法力を見たのは、初めてです」
コルベールが慎重に呟く。辺りの風がワルドに向かって集中していく。
「最後の悪あがき、いうヤツか。ただ、なんにせよ、それが魔法である限り、こいつで防いだるまでや」
ウルフウッドがデルフリンガーを構えた。左手のルーンが光り始める。
「……勘違いするな。確かに、今から私がやろうとしていることは、大きな魔法力を必要とするが、絶対に君では防ぎきれない」
乾いた声でワルドは言った。
「まさか、オンドレ……」
ウルフウッドの言葉にワルドはにやりと笑う。
「終わりだ。いくら不死身の貴様でも、これだけの質量に押しつぶされれば、元も子もあるまい!」
ワルドが杖を振るった。それと同時に、空に浮かぶレキシントン号がゆっくりとウルフウッドたちへ向かって、降下をし始めた。
「な、なんということを!」
コルベールが冷や汗と共に叫んだ。
「レキシントン号を落とさせたのは、君の手の内を見るためだけじゃない。こうして、君を確実に、殺す切り札にするためだ!」
「くそったれが!」
ワルドを撃ち落すべくウルフウッドはパニッシャーの弾丸をワルドへ向けて放つ。しかし、ワルドはすばやくレキシントン号の影に隠れてしまった。
「ちっ」
ウルフウッドは舌打ちをした。他のものならともかく、墜ちてくる戦艦を撃ち落すことは出来ない。確実なのは魔法を放っている人物を倒すことだが、こうして戦艦の陰に隠れられると、攻撃することすら出来ない。
725 :
虚無と狼の牙:2008/09/06(土) 10:19:38 ID:5amcj+Pe
「センセ! 逃げるんや! あの、ドアホ、ワイらを道連れにするつもりや!」
コルベールは皮肉な笑いを浮かべる。
「無理ですよ、ウルフウッド君。あれだけの質量を持ったものが墜ちたら、どれだけの破壊力になると思っているんですか? 今更、走って逃げたところで逃げ切れしません」
「なんやと……」
「まだ風石が残っている以上、今すぐ墜ちてくることはありませんが、あのワルドが風で操っている。逃げたところで私たちを追撃してくるでしょう。終わりです。……我々は、彼の執念に負けてしまいました」
冷めた表情でコルベールは空を見上げた。大きな影が彼を包んでいる。死を目の前にして、彼は思いのほか冷静だった。
煙を上げながら迫ってくる巨大な影を、ぼんやりと見つめていた。
$
最初から勝ち目などなかった。まさにその通りだった。ワルドがあまりにも簡単にレキシントン号を撃墜させたことに、もっと疑問を感じるべきだった。
「すまんな。センセ。こんなことになってもうて」
「仕方がないですよ。むしろ、我々のような人間が誰かのために何かをしようとした、そのことを誇りましょう」
「お前も、すまんな」
「いいさ、相棒。どうせ今まで退屈してたんだからよー。最後の最後になかなか面白い目に会えたぜ」
ウルフウッドは静かに後悔する。コルベールは笑いながら空を見上げていた。それは満足しているようにも、あきらめているようにも見えた。
「どでかい戦艦の下敷きか。ろくでもない死に方やで、ほんま」
ウルフウッドはパニッシャーを墓標のように地面に突き刺した。あとは静かに神に祈るだけ――
「ウルフウッド!」
聞き慣れた声がウルフウッドの耳に届いた。
それはこの世から消える前に、もう一度聞きたかった声であると同時に、絶対にこの場に巻き込むわけにはいかない人物が近くにいることを示していた。
「な、なにそんなところであきらめてるのよ! この馬鹿!」
「なっ……」
ウルフウッドが振り返ると、その胸にルイズが飛び込んできた。
こんなに強いワルド様はめずらしいな支援
727 :
虚無と狼の牙:2008/09/06(土) 10:21:33 ID:5amcj+Pe
「ルイズ!」
「ミス・ヴァリエール! あなた、なぜわざわざここへ来たのですか! あなたの隠れいていた森から走り去れば、あなただけでも逃げ切れたものを!」
「なぜ、ここへ出てきた!」
「見えたのよ! あんたが、こうなっているのが、わたしの目に!」
「見えた、て、このドアホ! 見るんやったら、この状況を見さらさんかい! お前まで――」
「うるさい!」
ウルフウッドの胸に顔をうずめたまま、ルイズは力強く叫んだ。
「知ってる? 使い魔の契約を切る方法。使い魔の契約、ってね。使い魔が死ぬか、メイジが死ぬかしないと、消えることはないの」
「それとお前がここにいることと何の関係があんねん!」
「使い魔の契約っていうのは、それほど強いものなの! 死が二人を分かつまで、離れることはないの!」
ルイズはウルフウッドのジャケットを強く強く握り締める。
「だから、だから、あんたを置いて、わたしだけ生きていくなんてことは出来ないの」
ウルフウッドは唇を噛み締めた。血が、彼の口を伝う。
「センセ。頼む。後生や。魔法でも何でもええ。なんとかして、じょうちゃんを安全なところへ。ところへやってくれ」
ウルフウッドはルイズの両肩を掴んで、ゆっくりと引き離す。
「ウルフウッド君……」
コルベールはウルフウッドの瞳を見つめる。
「いや!」
「アホ抜かすな!」
「だから、いや!」
「お前が、お前みたいなヤツが、なんでオレみたいな人間と一緒に死ななあかんのや! お前とオレは住んでいる世界が違う。全然違うんや」
「なにも違わなくなんかないわよ! あんたはあたしの使い魔で、それでわたしは――あんたの傍にいたいのよ。自分の意思で、ここで。
あんたにとっちゃ、わたしなんか何も出来ない足手まといのお荷物かもしれないけど、けど、それでも、ただ何も出来ないまま見ているだけなのはいやなの!」
ルイズは両手を握り締めて、涙を目にためながら叫んだ。
「阿呆が……」
ウルフウッドは力なく呟くと、ゆっくりと天を仰いだ。もう、レキシントン号は彼らのすぐ傍にまで迫っている。
「結局、一番守らなあかんもんが、守れへんかったか」
ここまで戦艦が迫れば、もうどうあがいてもルイズが逃げ出す術はない。ウルフウッドはあきらめたように、ふっと笑った。
「じょうちゃん、最期やから、アホなオンドレに、これだけは、はっきりと言うといたるわ」
「な、なによ」
ルイズは不機嫌さで不安を押し殺したような声を出した。
ウルフウッドはそんなルイズから目を逸らしたままで、素っ気無い仕草のまま口を開いた。
「……ありがとな」
ウルフウッドはルイズの頭をゆっくりと優しく撫でた。
ルイズは口を開けて何かを言おうとした。しかし、言葉にならない。心の中に、今まで感じた事のない、どこか暖かいものが湧き上がってくる。
「光っ……てる?」
ルイズの気持ちとまるで呼応するように、彼女が胸に抱いていた始祖の祈祷書と左手にはめた水のルビーが輝き始めた。
手に持った本のページがひとりでに開いた。
「なに、これ……」
何もないはずの白紙のページに、文字が見えた。いや、正確には違った。ルイズの意識に流れ込むようにして、そこに書かれている内容が入り込んできた。不思議な感覚だった。恐怖も何も、もう感じなかった。ただ、自分のやるべきことだけが、はっきりと分かった。
ルイズは杖を上へ向けて、目を閉じた。墜ちてくるレキシントン号はもう目と鼻の先に迫っていた。
「ルイズ……?」
ウルフウッドの声も届かないように、ルイズは一心に何かを唱えている。ウルフウッドはその声に不思議な安らぎと、安心感を感じた。
「呪文の詠唱? しかし、そんな詠唱は聞いたことがない……」
その様子をコルベールも呆然と眺める。
「なつかしーねえ。一体何年ぶりだろうな。これを聞くのは」
デルフリンガーがただ一人、感慨深げな声を上げる。
ルイズはすっと扉を開くように、その目を開いた。そして、ただ一言、呟く。
「エクスプロージョン」
その直後、白い強烈な光が辺りを包んだ。
728 :
虚無と狼の牙:2008/09/06(土) 10:23:10 ID:5amcj+Pe
以上で投下終了です。
729 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/06(土) 10:47:48 ID:XdZLoUNd
狼の牙の人乙です
投下乙です。
支援しようと思ったら、終わってたけど…
狼と禿がカッコ良すぎる!
ワルドの悪役振りと対になっていて、GJです。
狼の人GJ
こんなに悪くて強いワルドやかっこいいコッパゲールははじめてかもGJ
>>705 残念ですが彼は高く見積もって3番目です。
烈風なママさんはワさんより多く遍在を出せるんだっけ?
なんか容量ヤバイので次ぎスレ立ててきます。
>>634 >シュバリエの称号とウェストウッド周辺を所領として治める権利をここに託す
>テファを宜しくな
つまりテファを嫁にしていいとのお墨付きが出たということですね
……ウェストウッドって元はマチルダさんの父親が治めていたんだよな?
何時の間にか妹だけじゃなく土地まで取られたマチルダお姉さん涙目じゃね?
>>734 とっくの昔に領地は没収されていたような気がするが。
サウスゴーダ家がお取り潰しになった時点で領地は王家の天領になっているか
別の貴族に与えられているかだと思うなぁ。
そういう意味ではサイトに与えられたところであまり問題は無いと言えば無い。
あるとしたら領民の感情くらいなもんだが、ウェストウッド周辺と区切られている以上、
住んでいるのはおマチさんとテファの縁者しかおらん気もするし。
うむ。これはテファに婿を取らせて家名を再興させた方が納まりが良かったんじゃなかろうか。
SS打つのは初めて何ですが投下して宜しいでしょうか?
とても短いですが次スレの方でやったほうが良いでしょうか
10KB以下で収められるなら投下してもいいじゃないか?
>>739 とりあえず何処から呼び出したのかだけplz
>>739 おいおい打ちながら投稿か?あんまオススメできんぞ。
>>743 いえ、もう1話分・・・と言っても3レス分ぐらいのが出来上がってますので
>>744 ググってみたがポケモンか?
ともかく3レス程度ならここで投下して良いと思う
それじゃあ投下させていただきます
その者はタマゴから孵った直後、捨てられた
同じ親から生まれた兄弟達のなかで一匹を残し全員捨てられた
大量に生ませ、その中でもっとも優れた者を育て残りは邪魔だと言わんばかりに捨てられたのだ
幸い親から受け継いだ技能のおかげでそれなりに戦えるのだろうがそれでもまだ生まれて間もない幼体だ
兄弟達は訳の解らないまま周り見るもの全てに恐怖し脅え縮こまっていた
同じ血を分けた兄弟同士、これだけの仲間がいればなんとかなるだろうと本能に訴えかけ恐怖を拭い去った
しかし一吹きの風によって兄弟は全員散り散りになった
そんな中一匹が輝く光の中へと溶けるように消えていった・・・・
何度目になるかわからない爆発音に砂埃が舞う。
日は既に沈み二つの月が優しく草原を照らしている
「もうそろそろ休んだらどうかね? ミス・ヴァリエール。使い魔召喚は明日にでもやり直したらいい」
「まだですっ、まだやれます! お願いしますミスタ・コルベール、納得がいくまでやらせてください!」
そう言うと先ほどから爆発を起こしている桃色の髪の少女は杖を振り上げ呪文を唱えながら振り下ろす。
そしてまた爆発。
「また失敗・・・・」
涙目になりながら尚も杖を振りかざす、と今度は爆発しなかった
数えるのが馬鹿らしくなるほど呪文を唱え数えるのが馬鹿らしくなるほど杖を振り上げ数えるのが馬鹿らしくなるほど杖を振り下ろし数え(ry
そしてとうとう爆発しなかった。
土煙が立ち込める中うっすらと影が見える 成功だ!初めて魔法が成功した!!
少女は歓喜に満ち溢れ早く土煙が晴れ自分の呼び出した使い魔の姿を目にしたかった
そんな中風の悪戯とでも言うべきか一迅の風が吹き土煙を晴らす
少女は風に感謝した・・・が直後に風を恨んだ
風が吹き土煙が晴れた後に使い魔の姿は無かった、必死で辺りを見回す・・・・と
土煙と共に風で吹き飛んでいく自分の使い魔の姿があった
数十分後近くの森の木に引っかかっていた所を無事に回収できた
しえん
改行はいらないか・・・
その使い魔は変わっていた、どう変わっていたかと言うと今まで見た図鑑などに載っていない珍種なのだ
紫色の風船みたいな丸い体に目が二つ、黄色いバッテン、風船についているような紐が二本、そして頭の上には雲のような白い塊がくっついている
「おいゼロのルイズが風船なんか召還したみたいだぜ」
「まったく!あんなガキの玩具を持ってくるなんてそこまでするかね普通」
勝手に言っていろ、これはきっと誰も知らないような凄い使い魔なんだ!と桃色の髪の少女・・・ルイズは思った
「(とりあえずドラゴンでは無いわよね・・・バックベアードの突然変異?触手?もあるし・・・でも目は二つあるし・・・?)」
「ミスヴァリエール!とりあえず使い魔の召還には成功したのですからコントラクト・サーヴァントを!」
禿の教師コルベールがそう言うとルイズはハッと我に返り使い魔と向き合う
「(つってもコレ・・・口どこ?やっぱりこの黄色いバッテンかしら・・・?)」
とりあえず顔の中心にある黄色いバッテン部分にコントラクト・サーヴァント・・・いわゆる口付けをする
「プワ?」
使い魔は理解せぬままルイズの方を見ておりその黄色いバッテンに口がついた瞬間・・・
「ブッ!?」
ルイズの口に思い切り空気が送り込まれ頬がブワッと膨らんだ。
「うげほぉっ、げはっ・・・・何するのよコイツ!!」
見ると使い魔は悪戯成功してやったりと言わんばかりにはしゃいでいる、が自身の触手の先に違和感を感じピタッと動きを止める
契約のルーンが浮かび上がり激しい熱と痛みが使い魔を襲う
「プワープワワー!!」
生まれて間もない使い魔、初めての激痛に悶え苦しみ地面を転げまわっている
「あ・・・ごめんね、でもすぐに済むから」
先ほどあのような目に合わされたものの目の前でもがき苦しむ使い魔を見るとやはり同情はするようだ
しかし当の使い魔の方はと言うとあまりの痛みに我を忘れ転げまわっている最中にその体が光を帯びる
「へっ!?何コレ!?」
次の瞬間使い魔が・・・爆発した。
なんだなんだと見物に来た生徒一同、ずっと心配そうに見ていた教師、そしてその使い魔の主たるルイズを巻き込んでの 大 爆 発 である。
爆風が晴れた後生徒達が次々に「ルイズが自分の使い魔を爆破したぞ!!正気か!?」と声が飛び交い
ルイズは「ち・・違うわよ!!今の爆発は私じゃないわよ!?!?」と必死で抗議し
「皆さん落ち着きなさーーい!!」とコルベール先生が叫んだ。
一方使い魔はケホッと煙を吐きルーンも刻まれたようで気分すっきりであった
ゼロのルイズ自分の使い魔爆破事件も収まってきて全員サモン・サーヴァントが済んだので学院に帰りましょうと話は進んだ
「ゼロのルイズは歩いて帰れよな!」
「あいつ『フライ』はおろか『レビテーション』さえ出来ないんだぜ!」
他の生徒がルイズを馬鹿にする、しかしルイズ自身はサモン・サーヴァントに成功したのでまぁまぁ機嫌がいい
周りの生徒が箒に跨ったり召還した使い魔に乗って飛んでいく中ルイズは自分の使い魔と二人きりになった
「・・・アンタに乗って空を飛ぶ・・・なんて無理よね、風が吹くだけで飛ばされちゃうんだし」
とりあえずまた風が吹いて吹き飛ばされるのも面倒だと触手を風船にくくりつけられた紐のように掴む
「プワ?」
「アンタが私を乗せて空を飛べたらねぇ・・・」
そう言いながら歩き始める・・・が2,3歩すると足が地面から離れていく事に気づく
「え?ちょちょちょっと!?」
「ぷわ〜」
見るとグングン地面から離れ今ではすっかり空の上だ、こんな小さい体で人間一人持ち上げて空を飛ぶなんて!ルイズは驚愕し・・・そして感動した
自分が自分の使い魔を使って空を飛んでいる!まぁフライで飛び上がったりドラゴンで飛ぶのに比べれば速度はかなり落ちるが・・・
「すごい!すごいわ貴方!!そんなちっさな体で私と空が飛べるなんて!!」
スピードなんてどうでもいい。むしろこのフワフワと浮かぶ感覚が肌に心地よい。
「ぷわ〜」
「そういえば名前決めて無かったわね・・・」
「プワ?」
「う〜ん・・・よし!フワフワと雲みたいだし貴方の頭にも雲がくっついてるから貴方はクラウド!どう?いい名前でしょ!」
「ぷわ?プワ〜!」
ルイズはこの上なく上機嫌だった、小さい体ながらも人一人空に運べる図鑑にも載っていない使い魔の存在に期待が風船のようにドンドン膨らんでいった。
「さぁ!学園まで一ッ飛びよ!!」
しかし急に向かい風が吹いてくる、そのまま風に流され学園から遠ざかっていく
「ちょ、反対反対!学園はあっちだって!?」
その後、都合の良い向かい風が吹くまでルイズとクラウドは空の迷い人と化していた・・・
とりあえずここまでです、使い魔として呼び出されたのはポケモンNO,425のフワンテです
心無いトレーナーに個体値選別の際に逃がされたって事になってます
ステータスは低くても技は優秀です(大爆発使えますし)
続きもとりあえず書くつもりです
乙
乙です。
見た目頼りなく、まだ能力も貧弱。しかし一つの技がある……ですか。また楽しみが増えたかな?
乙
最近知らないポケモンが増えたな
乙
ふとダンバルあたりが召喚されてもおもしろいかなと思った
いま467種もいるのか。
150からずいぶん増えたなぁ。
500近くいるのかよ、俺251ぐらいが限度だ
つか隠し26って多いな
初代で149匹集めたところでデータ飛んで以来やってないな
ルイズの握力すげー
ハリー・ポッター召喚・・・・
ドコニあるの・
メタモン召喚
対戦相手に変身し、同じレベルの同じ攻撃を同じタイミングで返し続けて…決着が着かないか…
メタモンって結構ヤバイよな、雌雄同体なのか?
というよりも、任天堂ってなにげにブラックユーモアすぎるw
ブラックユーモアつながりで英国風ジョークで小ネタを書きたいけど
文章だけで伝える事できるのだろうか・・・
もう後8kbか、早いな。
某所で「セロは使い魔 三星印の輪舞」なるネタを見て盛大に噴いた。
いっそこのスレで召喚して欲しいものだ。
>>764 こwwwれwwwはwwwエwwwロwwwいwww
じゃあ埋めついでに質問あるんだけど
ハルケギニアは温暖な気候らしいけど、雪とか降るのかな。
いかん、タバサとルイズが雪合戦してる光景がみえたw(もちろん身長的な理由で)
ウィンタースポーツを広めるサイトと出来ないから癇癪を起こすルイズの光景もありだなw
>>767 タバサの二つ名が「雪風」だから降るんじゃないか…とは思うが、劇中ではそんな描写はなかったからなぁ
アルビオンで降ってたな。あとアニメ二期でもあったような無かったような。
>>771 薄くはないが描写を見るに他より寒いようだ
>心無いトレーナーに個体値選別の際に逃がされたって事になってます
シンジですね?わかります。
ジャガイモとか唐辛子とか、地球での新大陸産の植物(に類する物)はあるんかねえ
便乗質問だけど、三美姫の輪舞って漢字はなんて読むんだろう?
とりあえず、さんびきのわおどりって読んでるけど。
>>774 大航海時代がないので、香辛料の類は現代の地球ほど充実はしていないだろうなぁ
なぜ?
そこらへんに自生してるかもしれないよ?
>>775 日本語なら「りんぶ」。
音楽用語としては「ロンド」。
…マジレスしちゃだめだったか?
>>777 まぁ、ハルケギニアの植生が中世のヨーロッパに準じるという前提なもので
アルビオンは寒いから、高原で生えるものが取れるかな?
流通というか食材の鮮度も絡むだろうし
考察は尽きないものだね
>>777 いや、あるにはあるだろうけどそんな沢山の種類はないだろ。
東方とかに旅に出た連中が発見して持ち帰ったやつを栽培してるくらいじゃね?
三美姫が斬る
「殿様」:アンリエッタ
「千石」:ルイズ
となるとテファが「たこ」か・・・
君たちは、忘れている。
あの世界の香辛料は、植物から採れる以外のものがあるかもしれないよ?
たとえば
ドラ○○の○○とか
ゴブ○ンの○○とか・・・・・
・・・なるほど、そう来るかw
それは盲点だったw
785 :
767:2008/09/06(土) 19:28:19 ID:vCC1JrN5
なるほど、色々どうもありがとう。
そんな正確な描写がなかったなら、学院が大雪でルイズたちが雪合戦したり雪だるま作ったりする話も書いていいですね
>>782 火竜の油…火竜の油袋の中にある油 「火を吐くほど」辛い
こうですね?判ります!
ゴブリンのフン・・・
ドラまたのリナ?
>>785 7巻で、「タルブの辺りではあまり雪が降らないんです」とシエシエが言っておる。
逆に言えばタルブ以外では雪が降ってもおかしくないんだろう。
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なぎはらえー |:|\\:::::||.:.||::::://| /イ
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ト、 ,.  ̄ ̄Τ 弋tァ― `ー / l从 |メ|_l l_.l斗l |ヽ V |:| ̄ ̄ ̄ ̄ フ  ̄ ̄ | イ
ヽ \__∠ -――く __ .Z¨¨\ N ヒj ∨ ヒソj .l ヽ\| / / | / !
ヽ ∠____vvV____ヽ < ≧__/ ゝ、t‐┐ ノ .|┐ . \ / / \ / l
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\! | / 入_.V/| >-ヘ \:::∨::∧ ∨ ∠二 -‐ .二二 -‐ ' ´ / / / l. l
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ノ } l ̄ ̄ ̄.|] >' ,. '  ̄ / .// :/ V' \ ヽ `丶\/ /
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入ノ. ヽ く ヽ______7 ー―∠__ 〃 l :/ :l l \V ヽ \ ,. '´
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\ ヽ /`ー「と_し^´ | | } ム-‐' / / \_/ / / ヘ \
ヽ _>-ヶ--∧_} ノ j /` 7 ̄ ̄ ̄{ (  ̄ ̄`ー‐^ーく_〉 .ト、_>
', / 人__/ .ィ {__ノ`ー' ヽ 人 \__ { } |
V 人__/ / | /  ̄{ ̄ >‐ ァ-、 \ 〉ー} j
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<ヽ__ /し / < )__ \ _r‐く___/ / < ) \ {__ノ /
Y__>一' / ___r―、_\ >' `ー' ,. ´ >.、 \__ノ {
∠二)―、 `ー‐┐ ∠ ∠_r‐--― <__ ∠ )__ \_
∠)__ノ ̄`‐⌒ヽ__|> ∠)__r―――-― ..__{> ∠_廴,. ⌒ー'  ̄ \__{>