第一部+第二部
ジョナサン 卿 ブラフォード シュトロハイム シーザー スケコマシーザー
究極生命体カーズ様 ワムウ様 スト様 石仮面+ブルりん+吸血馬
第三部
承太郎 法皇花京院 一巡花京院+平賀才人 メロン花京院
ジョセフ アブドゥル ポルナレフ イギー
DIO様 ンドゥール ペットショップ ヴァニラ・アイス ホル・ホース
ダービー兄 ミドラー デーボ エンヤ婆 アヌビス神 ボインゴ
第四部
東方仗助 仗助+トニオさん 広瀬康一 アンリエッタの康一 虹村億泰 ミキタカ+etc 間田
シンデレラ カトレアのトニオさん 岸辺露伴 静(アクトン・ベイビー)+露伴
デッドマン吉良 猫草 キラー・クイーン 猫→猫草
第五部
ブチャラティ ポルナレフ+ココ・ジャンボ(亀ナレフ) アバ茶 ナラ・アバ・ブチャ組
ルイズトリッシュ マルコトリッシュ ナンテコッタ・フーゴ アバ+才人 ジョルノ ミスタ
ディアボロとドッピオ プロシュートの兄貴 リゾット ローリングストーン 偉大兄貴
ギアッチョ メローネ 俺TUEEEディアボロ ペッシ ホルマジオ スクアーロ
暗殺チーム全員 紫煙+緑日 ブラック・サバス セッコ 亀ナレフ+ジョルノ イルーゾォ
サーレー
第六部
引力徐倫 星を見た徐倫 F・F アナスイ ウェザー エルメェス エンポリオ ヘビー・ウェザー
プッチ神父 帽子 ホワイトスネイク 白蛇ホワイトスネイク リキエル
SBR
ジャイロ+才人 ジョニィ マイク・O
リンゴォ マウンテン・ティム Dio
バオー+その他
橋沢育郎 バオー犬 味見コンビ(露伴+ブチャ) 決闘ギーシュ タバサの奇妙なダンジョン
ジョナサン+才人 銃は杖よりも強し(ホル・ホース) 蓮見琢馬(小説・『The Book』より)
・行数は最大で60行。 一行につき全角で128文字まで。
・一度に書き込めるのは4096Byts、全角だと2048文字分。
・専用ブラウザなら文字数、行数を管理してくれるので目安がつけやすいかも。
・先頭行が改行だけで22行を超えると、投下した文章がエラー無しにザ・ハンドされます。 空白だけでも入れて下さい。
5 :
ゼロ兄貴:2008/07/14(月) 23:45:50 ID:/22iIe/E
新スレ…きたか……
兄貴成分を見せる、きゅいきゅいや、おマチさんとも絡ませる…
両方やらなくちゃあならないってのが兄貴書きの辛いところだな…支援はいいか?オレはできない
支援
7 :
ゼロの兄貴:2008/07/14(月) 23:51:38 ID:/22iIe/E
タバサの部屋から場所を変えてシルフィードのねぐら。
さすがにタバサの部屋の窓にシルフィードが張り付きっ放しというのも目立つし
なにより声が結構デカイので移動したわけだが、まだ結論は出ていない。
「で、貸すのか貸さないのかどっちだよ」
一応そう質問したが、ぶっちゃけ貸さないと言っても無理矢理借り受けるつもりでいる。
先にもあったが、ギャングが求める答えにNoは無い。『だが断る』や『絶対にノゥ!』は存在すらしていない。
かと言って、自分が出す答えにはしっかりそれがあるのだから自己中心的極まりないというところだろう。
タバサもいい加減この男がどういうタイプか分かってきているので、どう答えても同じ結果になるんだろうなと思っている。
……思っているのだが、なんだか釈然としない。
百歩譲って韻竜という事がバレた事は置いておくとしても、隠してきた素性とかをシルフィードは勝手に喋った挙句に『おにいさま』とか呼んでるし。
考えてみれば、今までシルフィードと韻竜として言葉を交わした人間は自分しか居なかった。(緊急避難的にガーゴイルにした事は何回かあるが)
面倒だからとはいえこの事はキュルケにさえ秘密にしている。
それなのに、もう開き直りましたと言わんばかりにプロシュートに喋りまくっている。
で、挙句『おにいさま』だ。
……これは一体どういう事だろうか?自分を『おねえさま』と呼んでいるのだから、それより年上のプロシュートもそうなるのは分かる。
だが、『おにい《さま》』というのはどういう事だ。譲れるとこ譲っても『おにいさん』だろう。
どういう理屈で戻ったのか分からないが、他人の元使い魔なのに主人の自分と同格の『さま』付けだ。
気に入らないとまではいかないまでも、どこか納得いかない部分がある。
もしかしたら、シルフィードの中でプロシュートの方が順序的に自分より上になりつつあるのかもしれない。
……これがS.H.I.Tッ!……じゃなくて嫉妬とかいうやつだろうか。
まさかシルフィード相手にそう思うようになるとは露にも思っていなかった。
今なら当時のキュルケの気持ちも少し分かるような気がする。
8 :
ゼロの兄貴:2008/07/14(月) 23:52:33 ID:/22iIe/E
上機嫌でマシンガントークを繰り出すシルフィードと、どうでもよさそうに生返事を返しているプロシュートを見たが
自分以外の、しかも契約も交わしていない人間にああも懐くというのは、なにかこう複雑な気分だ。
もし、契約の力が切れたりしたらシルフィードは変わらずに居てくれるだろうかとか色々考えさせられてしまう。
無論、そのあたりの事は表情には出さないが
とりあえずプロシュートに言ってもどうにもならないのでシルフィードへ矛先を向ける事にした。
「きゅい!?お、おねえさま、なにをー!?」
無言でてけてけとタバサが近づくと両手に持った杖をシルフィードの額に何度かぶつける。
さすがにタバサの腕力で竜に大したダメージがあるはずもないが、唐突に行われた行為にシルフィードも面食らっている。
抗議も無視して杖と額がぺしぺしと小気味良い音を立てているが
叩かれる理由に気付いたのか少しばかり落ち着いたシルフィードが返してきた。
「……もしかしておねえさま、シルフィが楽しそうにおにいさまとお話してるから怒ってるの?」
シルフィードからすれば、プロシュートをそう呼んでいる事に大して意味は無い。
ただ単に、デルフリンガーが『兄貴』と呼んでいた事と、凄い力を持ってタバサの事を手伝ってくれそうな人という事でそうなっているだけである。
「別に怒ってない」
「きゅい?それじゃあなんで叩くのね?」
その疑問への答えは無い。というより、タバサにしては珍しく答えに窮しているようで少し考え込んでいたりする。
「…………」
「……………」
シルフィードとタバサの間に数秒の妙な沈黙が流れる。肝心のプロシュートはオレの方の質問に早く答えろよ。という具合なのだが。
「か、かわいい……」
と、そこに小さいシルフィードの声。心なしか声が震えているのは気のせいではないだろう。
「そんなおねえさまもかわいいのねーーー!」
その声に一拍遅れて思いっきりシルフィードが叫ぶ。
場所を変えていて正解だったというところだろうが、さすがに少し五月蝿い。大体高度3千メイル以上での発声は禁止してたのにもうどうでもいいのか。
幸い周りに人は居ないからいいようなものの、これにはさすがのタバサもシルフィードを睨み付けた。
「大丈夫!シルフィはおねえさまが一番なのね!きゅい!」
最高にハイ!というのはこの事だろうか。柴○亜○先生の絵柄なら間違いなく某ドクターT顔負けの鼻血を出しているはずである。
ぶっちゃけタバサの抗議なぞ全く意に介していない。
今にも『お持ち帰りぃ〜〜』と言わんばかりに悶えていたが唐突にタバサの横にその巨体を座らせると何かの呪文を唱え始めた。
9 :
ゼロの兄貴:2008/07/14(月) 23:53:41 ID:/22iIe/E
『我を纏いし風よ。我の姿を変えよ』
聞きなれない。どちらかというと、メローネズコレクションの一つであった日本の漫画に出てくるようなやつだ。
風がシルフィードに纏わりつき、青い渦がそれを包む。
何らかの魔法だろうと思ったがプロシュートの興味は薄い。亀ですらスタンドを使うご時勢だ。
人語を解するシルフィードが魔法を使おうがそれは想定内の出来事である。
……まぁ裸の女が現れるとまでは思っていなかったが。
そして、そのままタバサを押し倒した。
「このからだならおねえさまを潰さずにすむのね。きゅいきゅい」
そう言いながら頬ずりをしているが、傍から見ればただの変態だ。
とにかく離れさせようとタバサが小さくため息を付き、傍らに落ちていた杖を無言で掴むと横にあった頭を叩いた。
「いたい!?いたいよぅ。シルフィおねえさまに嫌われちゃったの?」
「そうじゃない」
「なら問題ないのね」
そういう事以前に離れろと言いたいのだが、タバサがそれを言うより先に別の所から突っ込みが入った。
「オメーらの漫才なんざどうでもいいんだがよ」
「きゅい?」
頭を掻きながらそう言ったが、なんかマジにどーでも良くなってきた。
もう全部纏めてブッ殺したッ!で綺麗サッパリ済ませてーな、とも思ったが耐える。
とりあえず、このクソ厄介な出来事の領収書は後で全部ルイズと才人に回す事にして一応納得しておく事にした。
そうでも思わないと多分、この先やっていけない。
「シルフィのとっておきなのに、おにいさまあまり驚いてないのね?」
「剣が口利いて、バカデカイ島が空に浮いてんだ。例えポルポの隠し財産が沸いて出ても驚きゃしねぇ」
何でもアリが前提のスタンド使いであるからには多少の事では驚きはしないのだが
それ以上にブッ飛んだ世界に慣らされてしまったため、もうこの程度では驚かないようになってしまった。
なお、もう一度言うが今のシルフィードは裸である。それも召喚者とは違って出るとこは出て締まるとこは締まっている。
町を歩けば10人中9〜8人は振り向くであろう事確実なのだが、どうやらそのあたりもどうでもいいらしい。
パッショーネの特攻隊とも言える暗殺チームに属していただけあって、元が竜であるしその裸ごときで動じるはずがないのだ。
というか、敵であるならこんな状態でも迷い無く攻撃する事ができるし
むしろ、このクソ忙しい時にややこしい事やらかしてんじゃねーよという具合である。
まぁペッシなら話は別だし、メローネならディ・モールト!とでも叫んでそうだが。
10 :
ゼロの兄貴:2008/07/14(月) 23:55:17 ID:/22iIe/E
「ガリア?なんでまた急に」
学園に戻ってオスマンを蹴り倒しているフーケにガリアに向かう事を告げたが、まぁ当然の反応というやつだろう。
「理由が必要か?」
「当たり前じゃないか」
適当な理由をでっち上げてもよかったが、タバサの任務付いてった時点で何かしらバレるし、何よりそこまで考えるのも面倒だ。
「そいつは元王族で知り合い連中に汚れ仕事でコキ使われてる。ついでに言うならこいつの使い魔も韻竜ってやつだ」
プロシュートがそう言った瞬間ゴフォ!と飲んでいた水タバサが盛大にむせた。
そりゃあ、あれだけ人が必死になって守っていた秘密をあっさりとバラされたのだから無理も無い。しかもよりにもよってフーケに。
「こいつも付き合わせるつもりだからな……。どうせバレるもんはバレる。なら先に言っといた方が余計な所でボロ出さなくていいだろうが」
さすがに文句を言おうとしたタバサもこれにはぐうの音も出ない。正論と言えば正論である。
フーケを置いていけばいいのだが、どうやら逃走防止のために連れて行くようでガッシリと肩を掴んでいる。
「いい加減、それ止めて……そんなに信用されてないのかね……?」
「オメーの実力は信用してやるが、まだ逃げないと思ってるわけじゃあねぇしな。
最初にオレら全員殺す気だったくせになに贅沢言ってやがる。なんならムショにでも入って待つか?ある意味一番安全な場所だぜ?」
「遠慮するよ……」
ブフゥ〜〜〜というやたら暑苦しい息が聞こえてきたので全力で拒否したが、本気で疲れてきた。
「……他には誰にも言わないで」
しばらく思案してタバサがそう告げたが、それでも不安だ。先もあったようにフーケと言えば盗賊でそうそう信用できる相手ではない。
その様子に気付いたのか、これ以上無いぐらい簡単に、そして最大級に抑止力を持つ言葉でプロシュートが言い放った。
「気にすんな。万が一洩らしたりすりゃあどうなるかは……こいつが一番よく知ってるからよ」
――畜生……知りたくなかった!聞かなきゃよかった!!
少し強められた手の力とその言葉に本気でそう後悔したが、もう遅い。
知りすぎると大概ロクな事が無いというのは世界を問わず共通の事象である。
これで人が居る場所でおちおち酒も飲めなくなってしまった。酔った拍子でこの事を喋ってこの物騒なヤツに狙われるなど洒落にもならない。
もうすっかりヤムチャと化した盗賊を放っておくと、キュルケがこちらに近付いてきた。
「よぉ。さっきの続きでもしにきたか?フーケならそこで腑抜けてるがさっきみてーな目に合いたくなけりゃあ別の場所でやれよ」
そう言うと、キュルケが笑いながら両手を広げる。
「冗談。それだけはもう二度と御免被るわ。先生から預かった物があるの。それを渡しにきたわ」
放り投げられた革袋を受け取ったが、感触で中身を理解した。
「何だ、この金は?」
一応中身を見たが、それなりの額が入っている。
今まで独身で研究以外の趣味のなさそうなコルベールなら出せてもおかしくは無い額だったが
理由も無しに金だけ渡されても乞食扱いされてるようで何か知らんがムカつく。
11 :
ゼロの兄貴:2008/07/15(火) 00:03:33 ID:dkBb+emJ
「それともう一つ、言付けがあって『アルビオンに渡るならミス・ヴァリエールとサイト君の事をよろしく頼む』だって」
「依頼って事か?こいつは。それより何であのハゲ、オレがアルビオン行くって事知って……オメーか」
現在、目標がアルビオンにある事を知っているのはオスマン、タバサ、フーケ、キュルケの四人。
となると、後は消去法でオスマンかキュルケしかいなくなり、さっきまでコルベールに付き添っていたキュルケが情報を漏らした事になる。
別に機密情報というわけではないのでどうこうする気もないが、さてどうしたもんかと少し考える。
この件に関しては、元々カトレアからも結構金貰って頼まれているからだ。
無論、余裕があれば、との条件付きだが元プロとして依頼の二重受領というのもどうかと思わないでもない。
まぁだが、金はいくらあっても困るもんではないし、くれるというのなら貰っといた方がいい。
「先にくたばってたりしてたら責任取らねーし、金も返さないがな。で、そっちはどうすんだよ。ここで匿うつもりか?」
「さすがにそれは限界があるだろうから、あたしの実家で匿う事にするわ。『自分達を庇ってくれた先生を手厚く葬るため』っていう口実もあるしね」
「で、その先生を殺ったオレは速やかに逃走を実行した方がいいってわけか?」
少量の皮肉と冗談で割った言葉だったが、どうやら本気に捉えられたようで珍しくすまなさそうにしている。
「ったく……たまに言うとこれだ。オレがそんな事気にするようなタマなわけねーだろうが」
普段、一般人が聞いたら冗談に思えるような事でも本気でやろうとしているのだから
急にそういう事を言われてもそう受け取れるはずがないという事を全く理解していないから余計性質が悪い。
ようやく何時もの調子を取り戻したのか目を細めて笑うと、少しタバサと二人にして欲しいと言ってきた。
それに関しては邪魔する気もないので、そうさせてやろうと、場を離れる事にした。
……フーケをスタンドで無理矢理引っ張りながら。
「丁度いい機会だ。オメーにも『ギャングの世界』ってのを教えてやる。ありがたく拝聴しろよ」
「わたしは盗賊だって!なんなのさギャングって!!」
「似たようなもんだろーが。まずはおさらいだ。LESSON1『ブッ殺した』なら使ってもいいッ!」
「LESSON1からそれ!?」
そうしてキュルケとタバサの話が終わる頃にはギャング的教育LESSON4まで進み少しばかりやつれたフーケが地面に倒れ伏せていた。
なら、オレが支援するぜぇぇぇっっっ!
それから一乙だぜぇっ!!!
13 :
ゼロの兄貴:2008/07/15(火) 00:08:08 ID:dkBb+emJ
ガリアの首都リュティス。
トリステインの国境から千リーグ程離れているがシルフィードならそう時間は掛からない。
と言っても、色々あったので到着は夕方ぐらいになってしまったのだが。
ハルケギニア最大の都市で人口三十万と言われてもプロシュートにはあまりピンとこない。
まぁネアポリスやヴェネツィアと比べればこの世界のあらゆる都市はド田舎という扱いなのだから仕方ない事だ。
無論、プロシュートとフーケは城に入るわけにもいかないので、ヴェルサルテイル宮殿近くの郊外の森で待機している。
ただ待っているのも暇なのでLESSONを再開しようとしたが
これ以上やるとイルーゾォみたいに鏡の中にでも引き篭もりそうだったのでガリア関係の情報を引き出す事で手打ちにする事にした。
「ガーゴイル?オメーのゴーレムとどう違うんだよ」
「ゴーレムが命令をしなけりゃ動かなかったりしないのに対して、ガーゴイルは自分の意思で判断して動けるって事だね」
「自動遠隔操作型スタンド。ベイビィ・フェイスの息子みてーなもんか」
魔法で擬似生命を与えられた自立式の魔法人形。スタンド能力で擬似生命与えられた遠隔パワー型のベイビィ・フェイスと共通点はある。
厄介なのが、これも精度が高いと生物の見分けが付かないらしい。
老化が効かないのがこれまた厄介で、やはり息子を思い出させてくれる。
そうこうしていると上の方から翼の音が聞こえてきた。
シルフィードが小声でぶちぶちと文句を垂れているあたりどうやらロクな任務じゃなさそうだ。
「わざわざ呼び出しまで食らって受けた任務ってのは何だよ?暗殺か?」
「……いきなり暗殺ってあんた一体何やってたのさ」
任務=暗殺とかフーケですら考えはしない。相当ヤバい事に足突っ込んでた証拠だ。
「聞きたいのか?ま…別に隠すような事でもないんだがな」
「いーーや、聞きたくない。どうせロクでもない事やってたんだろ?」
「人の事言えねーだろ。専門はあ」
「それ以上言うなァーーーーーッ!」
大声を出してプロシュートの言葉を遮ったが、素面で暗殺が仕事だったとか聞いたらただでさえそうなのに胃に穴が開きそうだ。
「ルセーな…そんなたいした事ァねーだろうがよ……で、任務ってのは?」
色んな意味で限界突破しそうなフーケを放置して任務内容を確認するためにそう聞いたが返ってきたのは実に意外な答えだった。
14 :
ゼロの兄貴:2008/07/15(火) 00:11:17 ID:dkBb+emJ
「タマゴ」
「……あ?」
タマゴってのはアレか。あの卵か。割ると白身と黄身が出てくるどこにでもあるあの卵か。
プロシュートのそんな様子に気付いたシルフィードがさらに付け加えてきた。
「おねえさま、タマゴだけじゃ分からないのね。あの最悪姫は極楽鳥のタマゴを取って来いって言ったのね」
まぁこのブッ飛んだ世界の事だからただの卵ってわけでもないだろ。極楽鳥ってからには万病に効くとかいう効果があるのかもしれねぇ。
と一応の納得はしておいたが、ある事に気付いたフーケが口を挟んできた。
「……確か極楽鳥のタマゴって今の季節は旬の時期から外れてるはずだけど」
フーケの言葉の中にやたらくだらない内容の言葉があったような気がしたが、聞き間違いかと思って一応聞き返す。
「オメー今、旬とか言ったか?言ったよな?言ったな?どういうこった?ええ?」
「え?ああ、極楽鳥ってのは一年に二度タマゴを生むのさ。
幻の極楽鳥のタマゴって言われてて、その味のせいでかねりの値がする代物だよ。一度貴族から盗んだ事があるけど味は知らないね。売ったから」
このアマ今、味とか言いやがったか。つまり今回のタバサの任務の理由ってのは……。
「美食」
「『たかがわたしの美食のため』とか言っておねえさまを火竜の住処に行かそうなんて意地悪姫にも程があるのね!きゅい!」
そうタバサとシルフィードが言った瞬間何か知らないが、やたら小気味良い何かが切れたような音が聞こえたような気がした。
特に気にしないでいると突然フーケが襟元を引っ張られる。
「な、何するのさ!?」
そんな抗議も無視してずーるずると引き摺るように引っ張っていく。
何事かと思い無言で一定の方向を見ながら進んでいくプロシュートの視線の先の物を見たが……見た瞬間冷や汗が思いっきり流れ出た。
進行方向にはヴェルサルテイル宮殿があったからだッ!
「お前何をやろうとしているんだァーーープロシュート!行き先はともかく理由を言えーーーーーーッ!」
「命令出すやつが死ねばこんなくだらねー任務も消えるって事だよな?おい」
そう言い放ち無駄に靴音を鳴らしながら進んでいくプロシュートを見て思考が一層最悪な方向に向かっていく事を感じたが
それでもまだ、まさか……?という思いだけは捨てたくはない。
「ストーーーーーップ!冗談よね?冗談って言って!」
「卵だぁ?そんなに食いてーなら極楽に送って死ぬほど食わせてやる」
引き摺られながらも必死に抵抗するが、地力の違いがある上にスタンドでも掴まれているため地面に後を残しながら引っ張られていく。
なんかもう、プロシュートの全身が黒い影のように見えるのはテンパりすぎての幻覚かなにかだろう。
「はーーーなーーーせーーー!大体あんた一人で十分だろ!わたしを巻・き・込・む・な!」
射程半径が200メイルもあるんだから仕掛けるにしても一人で十分だろ。
という事から出た必死の抗議だったが、無常にも次の一言で見事に撃破された。
「ガーゴイルっつーんだったか?その始末をオメーに期待してんだよ」
(こいつ本気かァーーーーッ!確実にわたしを巻き込んで正面からガリアと戦争おっ始めるつもりだッ!!)
――もう止めて!姉さんの胃のライフはゼロよ!
ゼロどころか、もうスデにマイナスに突入しているだろ、という突っ込みは置いといて
そんなお馴染みの幻聴まで聞こえてきたが、本人は今頃胸を揺らしながら家事に勤しんでいる事だろう。
15 :
ゼロの兄貴:2008/07/15(火) 00:15:17 ID:dkBb+emJ
確かに、こいつの能力ならメイジでも百人単位で相手できるだろうが、氷という致命的な対応策がある。
もしそれがバレでもしたら相当厄介だ。ガーゴイルとかもいるし。
捕まりでもしたら遠島どころじゃ済まない。死刑で済めばまだいい方だろう。
最悪考えられるありとあらゆる拷問を受けて晒し者という事も十二分にありえる事だ。
逃げられたとしても追われる事になる。その事に関しては今でもそうだけどハッキリ言ってレベルが違う。
並みのメイジの2〜3人ならどうにでも始末できるが、国に喧嘩売った相手に並みのメイジが追っ手になるはずがない。
この国自慢の花壇騎士団総出で掛かられてはどうにもならないのだ。
いや、こいつはいいよ。杖なんかなくても能力が使えて自分の年齢をも自由に変えられる上に射程も長いから追っ手なんかどうにでもなる。
つまり貧乏くじを引くのは自分一人であまりにリスクが高い。
かと言って、逃げるという選択肢も無い。恐らく、逃げようとしたりしたら即老化を叩き込まれる。
宮殿が射程内に納まってしまえば確実にアウトだ。間違いなく自分も共犯に見られるハメになる。
唯一の望みはバレないように暗殺してくれる事だが、この男の性格的にも能力的にそんな事するはずがない。
Q.ある集団の中に紛れて暗殺対象が居ます。どうやって対象を始末しますか?
という問題があれば間違いなく
A.全員始末する。
と答えるようなヤツである。きっと……いや、絶対能力全開で正面から堂々と乗り込むに違いない。
一歩、また一歩と宮殿に近付く毎に絶望感がフーケを襲っていくが唐突に歩みが止まった。
「ダメ」
と、タバサが首を横に振りながらそう言ったからだ。
「何だ?この際、オメーの仇ってのも含めて纏めて始末してやるんだがよ」
最初から広域老化を叩き込む。本来のグレイトフル・デッドの大前提だ。
広範囲で巻き込むなら、ついでに始末してやれば丁度いいという具合である。
「わたしが欲しいのは、伯父の首一つ。他はいらない」
そう小さく呟いたタバサを見て、こいつはオレ達とは違うわ。と前に思った事を撤回した。
暗殺チームなら、目的のためなら必要があれば一般人だろうと遠慮なく巻き込む。
無論、進んで攻撃したりはしないが当時はそれだけ必死だった。
「それに、本当なら自分一人の手で仇を討ちたい」
続けてそう言ってきたが声こそ小さいが強い意志を持っている。是非ともペッシに聞かせてやりたい言葉だ。
「つまり、この仕事やってんのは自分を鍛えるためってか?」
その言葉に頷いたタバサを見て、今度は逆に呆れてきた。
過酷な環境の任務をこなしていけば自然と地力も上がり鍛えられる。
一見良い事のようにも思えるが、実際自分達自身がそうだっただけに死ぬ確率の方が遥かに高い事ぐらいは承知している。
それを、このちんちくりんの小娘は昔から当然のようにやっているわけだ。
16 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/15(火) 00:15:28 ID:c0YtfooJ
リアルタイムで兄貴に遭遇とは…俺はツイてるぜ!!
支援!!
17 :
ゼロの兄貴:2008/07/15(火) 00:19:19 ID:dkBb+emJ
「ったく……オレの負けだ。依頼の条件って事にしといてやる」
そう言いながらフーケから手を離しかき上げるようにして額の右半分に手をやる。
足元でフーケが小さく『助かった……』と呟きながら荒い呼吸をしているのは気のせいではないだろう。
だが、見た目十二〜三のガキに言い負かされっぱなしではない。
タバサに近付くと、その頭を勢いよく叩く。
それと同時にパァンと良い音がし、タバサの頭がぐらぐらと揺れている。
「一人で殺れると思うだけなら、オレらだってとっくにボスを殺れてんだよ。
大体、ボスを相手にする以前に……ブチャラティどもに負けちまったからな」
直接敗れたことを知っているのはホルマジオとイルーゾォだけだが
性格や能力、なにより数の少なさから見て他の連中も一人でブチャラティどもを相手にしたはずだ。
甘く見ていたわけではないが、暗殺チームに属するだけあって単独行動向けのスタンドが殆どだったというのが最大の理由か。
過程として他の連中も誰かと組んで仕掛ければ結果は変わっていたかもしれない。
例えば、イルーゾォが鏡の中へ引きずり込み、無防備な相手を対スタンド戦闘能力の低いリトル・フィートで攻撃し尋問なり始末なりをする。
または、ベイビィ・フェイスの息子やギアッチョが攻撃を仕掛け、敵が気を取られている隙にリゾットがメタリカで確実に始末をする。
と、組み合わせ次第で戦闘力は何倍にもなる。
もっとも、過去の事をどう考えようとも仕方の無い事だが、これから先の教訓としては覚えておいて損は無い。
特に、これから同じような事をやろうとしているタバサにとっては。
「おにいさまの言うとおりなのね。この前だって、おねえさまの味方してくれる人が現れたのに無視して追い返したし」
「オメーみたいなガキが肩肘張りすぎなんだよ。ちったぁ力抜いた方が身のためだ。くだらねー事はこういうヤツに押しつけりゃいいんだよ」
「今、少しでも良い事言ったなって思った事を全力で撤回させてもらうよ」
こういうヤツと言って指差したのは、もちろん今現在、地面に蹲っているフーケの事だ。
あくまで自分はくだらない事に関わりたくないというあたり相変わらずベリッシモ自己中である。
「……覚えておく」
その相変わらずの無表情で返してきた答えに、どこまで分かってるんだかな。と半信半疑だったが、まぁ今はこれでいい。
とにかくそういう事なら、このくだらねー任務をさっさと済ませてこっちの仕事を片付けねばならない。
かったるそうにシルフィードに乗り込むと、とりあえず当面は火竜を何秒ぐらいで老死させられるかを考える事に決めた。
臨時北花壇騎士御一行――地獄の(何にとっての地獄かは知らないが)火竜山脈ツアーに出発。
イザベラ――危うい所で老死を回避。ただし本人は何も知らない。
投下したッ!左舷、支援薄いよ!なぁにやってんの!!
タバ冒の一巻にこの上ないマンモーニが居たり賭博場でギャング丸出しのイカサマ祭りやってもよかったが…
時期的に近いしおマチさんをイジりたかったのでこうなった。反省はしていない。
兄貴とおマチさんのやり取りは柴田亜美先生の絵柄で想像してくれるとディ・モールトベネ
支援するぜ兄貴ーっ!!
兄貴乙
おマチさんいいね!
柴田亜美先生じゃなくて椎名高志先生のギャグ顔で想像しちゃったけど
乙彼っす兄貴!GJ!
イ、イザベラ様が「ブッ殺した!」回避したのはいいですが、火竜山脈のナマモノが絶滅の危機ーーーっ!?
てか、脳内兄貴がパプワくん等身になってしまいそうなので、柴田亜美先生は勘弁してください。
>賭博場でギャング丸出しのイカサマ祭りやってもよかったが
こっちもこっちですげー見たいぜ…。似合いすぎて鼻血吹きそうだ。
乙ですw
マジハンパねース、兄貴!!
フーケの不幸っぷりに笑いが止まらねース!!
兄貴はどこまで荒くれ者なんスかwww
さすが兄貴、ハンパねース!!
兄貴、早速wikiの方の更新もしておきましたぜ!!
これで兄貴の活躍が、みんなにも速く伝わることでしょうww
兄貴GJ!!
24 :
ゼロの兄貴:2008/07/15(火) 00:47:28 ID:dkBb+emJ
>>20 兄貴→フーケだとハーレム隊長→リキッド
的な扱いでいきたい、というかやってはいるんだがw
25 :
ゼロの兄貴:2008/07/15(火) 01:53:02 ID:dkBb+emJ
HOLY SHIT!
>>9と
>>10の間が一個抜けてるな…
「人形…七号?……意味が分からん」
ルイズん家である程度文字が読めるようになったが、人形七号と書かれていてもなんのこっちゃと理解できるもんではない。
そうしていると、物凄く嫌そうな声でシルフィードがその疑問に答えてきた。
「あの憎たらしい従妹姫がおねえさまを人形って呼んでて、七号というのは北花壇警騎士団の番号なの」
やけに『憎たらしい』を強調してきたので、基本的に人懐っこい方のこの韻竜にしては珍しくマジに従妹姫というのが嫌いなのだろう。
「花壇?汚れ仕事専門のチームにんな名前付けるたぁ随分と悪い趣味してんな」
「きゅい…チームじゃなくて騎士団なのね」
騎士団だろうとチームだろうと、あまり変わりはないので訂正する気にもなれないが、やはり貴族の感性というのは理解しがたいもんがある。
オレらなんざ護衛チームとか暗殺チームとかそのまんまだぞ?どういうこった北花壇ってのは。
そう思ったが言うと余計ややこしくなりそうなので口には出さない。
「で、結局のところ、こいつはどういう意味だ」
「う〜……つまり、今頃あの小娘が『あの人形娘はまだなの?』とか言いながら召使をイジメてる頃だから……」
「早い話、任務ってわけか」
きゅい、と言いながら頷くシルフィードを見たが思わず溜息が出た。
ったく…次から次へとメンドクセーことばっか起こりやがる。
そう思ったものの、タバサ本人や家族の命にも関わる事なので本人がそれを無視する事はできない事ぐらい分かる。
かと言って、このまま何も行動しないというのも非生産的である。
「他にアテもねーし、ただ待つってのも性に合わねぇ。オレも行くぜ。第一そっちのが早く済むからな……」
「お金が無い」
「おねえさまはいつも新しい本を買い込むからそうなるのね。そんなのだからシルフィのご飯もままならないの」
そんなタバサとシルフィードのシビアな現実問題を聞いて顔を下に向けてプロシュートが少し笑った。
こいつマジにオレ達と同じか。と、思えてきたからだ。
何故なら暗殺チームも金が無かった!
収入源はシマを持たずボスからの仕事内容に見合わないような報酬のみで基本的にリゾットが必死にやり繰りしている状態だった。
組織に反感を抱いた原因の一つであるだけに、余計そう思える。
「ま……試用期間ってやつだ。金は気にしなくていいぜ」
26 :
ゼロの兄貴:2008/07/15(火) 01:56:07 ID:dkBb+emJ
えぇい…
>>25の上にもう二行抜けている…死にたくなった……
そろそろ言葉でなく肉体言語で強制的に分からせてやろうかと思ってきたが、上の方からフクロウが飛んできてタバサの頭の上に留まった。
もうこの世界お馴染みの伝書鳩ならぬ伝書フクロウという事ぐらいは分かるので、押し倒されている状態のタバサより早く書簡を奪う。
兄貴あわてすぎですぜ落ち着いてくだせえ!!
うっかりもしたが兄貴GJ!
しかしぶっ殺したなら(ry がLESSON1ってことは、ペッシは1すらクリアできてなかったのかよw
おマチさんと兄貴の会話の絵柄は想像できるが
リュリュと兄貴かあ
食通同士ならリュリュ×トニオさんなんかが見たいが
兄貴GJ!!
……おマチさんマジ薄幸の女だな〜。
でも出番が多いと俺が泣いて悦ぶッ!
最近、ゼロ魔クロス系は過疎ってきたなぁ
もう帰ってこないかもしれない作者さんたちを俺はいつまで待ち続ければいいんだ?
まとめサイトで最近知ったのに過疎なのか^o^;
俺がおもしろいなと思ったのが全部アルビオン辺りで止まってるのは何なの?イジメなの?
なんか今日まとめwiki人多かった
, -― ――-、
/に (ニ==\
//') に二) (ヽ 新スレを立てと兄貴投下しやがったなッ!
〃____,r^)__,r、(ニユ| よく立てて投下してくれたよなぁぁぁぁぁぁ
i! ● / /● ヾヽヽ,!
>>1ガツ!……
ヽニ⊃,// ⊂⊃}:}ソi …じゃなくて
>>1ハツ!
/⌒ヽ__ ヘ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~/⌒ヽ
\ /::::: >,、 __, イァ/ /
. \ |三/ []「/__ /
`ヽ「ミヾr‐ 、[]「ヾ三/
, -― ――-、
/に u (ニ==\ …は違う…
//') u に二) (ヽ うぐぐ………
〃____,r^)__,r、(ニユ|
>>1センマイ…じゃない……
i! ● / /● uヾヽヽ,!
>>1ハラミでもなくて……
ヽニ⊃,// ⊂⊃}:}ソi
ヘ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~`=ーノ
/⌒l,、 __, イー-<
. /lilili/ |三/^ oOo,ヽ
|三 lキヾr-、[] 「! (ニ }
, -― ――-、
/に (ニ==\
//') に二) (ヽ
〃____,r^)__,r、(ニユ| ………………。
i! ◯ / /◯ ヾヽヽ,!
ヽニ⊃,// ⊂⊃}:}ソi
ヘ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~`=ーノ
/⌒l,、 __, イー-<
. /lilili/ |三/^ oOo,ヽ
|三 lキヾr-、[] 「! (ニ }
, -― ――┛┗
/に (ニニ┓┏
//') u に二) (ヽ ホルモンだよオオオォォォッ!!
〃____,r^)__,r、(ニユ| ステーキ屋の回し者か
i! ●`' ./ /´●uヾヽヽ,! テメーはよオオオォォォッ!
ヽニ⊃,// ⊂⊃}:}ソi
/⌒ヽ__ ヘ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~/⌒ヽ
\ /::::: >,、 __, イァ/ /
. \ |三/ []「/__ /
`ヽ「ミヾr‐ 、[]「ヾ三/
新しいw
なるほど、しぇっこさんは焼肉派……と(メモメモ)。
行き着けはJOJO苑ですね、わかります。
それから兄貴ィGJ!
兄貴GJ
おマチさん頑張っておマチさん
>>29 ヘビー・ゼロでなかったっけ
>リュリュ×トニオ
>>36 (⌒).(⌒)
(⌒) /.:/___! :| (⌒)
}: レ;{.:〈= =j.::ト/.:/_) (⌒)
‐ 、 ,ノ = ≡ィ=ミ ミ :/.:/:、! /.:/
`ヽヽ⌒〈: ミ ミ ミ: >べミ.ミ ミ ミ:Y.:/ /¨ヽ
\`ヽi〜/,イフノ ミ ミ ミ ミ i/,//¨ 厂 ̄ ̄ ̄`ヽ
-‐=ニ、 ヾj} 〈_ノ' ` ヾ-'⌒>'Y´/ 〈 3人前か !?|
-―- 、\jリ,/ / `! y<,.} j'´ _,厶_ _____,ノ
┤イ ト丶∨ ノ / 、},。)j/ ┌'´ ̄ ̄´ ` ̄`'┐
┬ 卜 イ ! } // _ "¨ ン′ | ホルモン3人前 〉
┬ ┤ト 」ハ{/´ fエl ,. '"| < ほしいのか? |
L.卜 ┬ /\.〉 iノ┴'‐--' └、______,r‐'
\_. イ `ー'´
イへ./ , ---、_____ヽ丶 、__,/ ̄ ̄ ̄ ̄`'ー┐
}-‐'´ _ノ_,入_`ブ┐ \ 3人前… ヽ
 ̄`7ー'7´/ ノ jレーく__) )) | イヤしんぼめ !! |
{l __{ ..:\__┌<_>‐'´ \_______,/
_____ヽ __,>-‐'´ `´___ ____ ┐7
---‐'´ /___/| ̄又又>|
二ヽ ̄ヽ〜'ニ三ヾ⌒ ̄ヽ、又>'´|
}} └ =ニ~~}} `ー--く_|_/
==' _ -‐ ___,ノ、二._ーァー'
___,. -一'¨¨ ̄ `'ー‐'´ ̄
>>33 …本当だ。
ここんところ一日六千とかくらいだったのに、13000もきてる。
何処かで紹介されるとかしたのか?
倍ってのはすごいな。
キッスの攻撃だろ?
去年の春先頃は二千ちょいくらいだったけか。で、夏到来で神父がM.I.H発動したり
して、いつのまにやら一万とかザラになってた。最近は密でも疎でもない感じに落ち
着いてるが、たまに昨日みたいな日があるな。やっぱり宣伝とかあったんかね?
夏休みやらテスト期間なんじゃないか
まだ前スレが埋まっていない件について
アニメ効果でまた人が増えた可能性もあるよね
ああ、しかしゴージャスアイリンでSS書きてぇ
でも絶対に途中で停止するだろうから書くに書けん…他の連載物も色々溜まってるし
アイリンもそうだがビーティーも小ネタ以外、誰も書いていないんだよな
いいトリックのアイデアが思いつけばギーシュ戦くらいまでは書けそうな気がするんだが
武装ポーカー
この流れで短編投下してもいいかな?
バッドエンドだけど。
問題ない、行け
では行きます。
55 :
使い魔に:2008/07/18(金) 01:59:57 ID:A1RJcTRv
春。
トリステイン魔法学院では、一年生から二年生へ昇進試験として、召喚の儀式が行われていた。
普段なら、特に問題も無くそれぞれ自分にあった使い魔を召喚して終わるのだが、その年は違っていた。
召喚の儀式を担当していた元教師、ジャン・コルベールはその当時の事を振り返りこう語っている。
「まさか、あんな事になるとは思いませんでした。勿論予期するべきだったんです。何故その事に気付かなかったのか…私がいたらなかったとしか言えません。
本当に未熟でした……。言い訳に聞こえるでしょうが、何から何まで初めてのケースだったんです……それに、彼女にはどうしても卒業してほしかった……なのに…まさか……まさかあんな事になるなんて…!」
何があったのか?
事の発端はその年の一年前。いや、16年前…あるいは6000年前まで遡る事が出来るだろう。
ともかく、トリステイン魔法学院に一年前に入学してきたルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは一切の魔法が使えなかった。
あらゆる系統魔法・コモンマジックが使えず、代わりにスペルとは無関係な爆発を起こしていた。
そして、その年の春、召喚の儀式をしている広場にもその爆発音が響いていた。
56 :
使い魔に:2008/07/18(金) 02:01:09 ID:A1RJcTRv
「いい加減にしろよー!」
「いつまで続けるんだよ!もう待てないぞ!」
「無駄無駄!」
「お前はこのマリコルヌにとってゼロなんだよルイズゥゥゥゥーッ!」
「うるさい!」
と野次を一喝するルイズ。
「これからスッゴイ使い魔を召喚するんだから!!黙ってなさい!!!」
「そうですよ皆さん」
健在だったころのコルベールが生徒たちを嗜める。
「彼女の気持ちを掻き乱してはいけません。もう少し貴族らしく静かに待ちましょう。…ただし、ミス・ヴァリエール」
「はい」
「もうそろそろ時間も迫ってきましたので……」
「分かっています!次で!次こそは召喚を成功させます!」
「分かりました。ではどうぞ」
ルイズは深呼吸して気を静めると、静かに杖を前に伸ばした。
「……宇宙の果てのどこかにいる私の僕よ!神聖で美しく、そして強力な使い魔よ!私は心より求め、訴えるわ!我が導きに、応えなさい!!」
ドグォ――z__ンッ!!
「また爆発か!」
「強力な使い魔はまだかよ!!」
「いいえ!手応えががあったわ!!」
ルイズが叫ぶ。
57 :
使い魔に:2008/07/18(金) 02:01:52 ID:A1RJcTRv
その声に反応し、他の生徒たちも静かに、砂煙が広場から消えるのを待つ。
「あ!何かいるぞ!」
「なんだありゃ?!」
「亀…?」
「いや違うだろ…?」
「何だと思う?」
「…虫かな?」
「あんな虫見たこと無いぞ」
思い思いの感想を口にする回りの生徒たち。
そこに現れたのは、半球の胴体と、胴体の下部に何本もの足のような突起を持つ使い魔だった。
大きさは憎きツェルプストーの胸にぶら下がっている脂肪の塊(乳房とは認めない!)二個と同程度だ。
「ミスタ・コルベール!…これはなんでしょうか?」
「フーム…」
顎をさすりながら考えるコルベール。
「何とも言えませんが…多分、虫の一種でしょう」
なるほど、確かにカチカチと虫の鳴き声の様な音が聞こえる。
「見たことの無い外骨格ですが、形状と足の数から、ダンゴ虫の一種ではないかと……しかし珍しいものを召喚しましたな!」
「そんなに珍しいですか?」
「ええ、私も色々な虫を見てきましたがこの様に透明な殻を持つものを見たのは初めてです!」
コルベールが言ったとおり、半球の外骨格は透明で、不思議な形の内臓が見えていた。
「召喚したのが私なら!」
興奮気味に続けるコルベール。
「これはもう標本にして学会に発表して、コルベールダンゴ虫と名前をつけていましたね!絶対!!」
「ミスタ・コルベール?召喚の儀式は神聖な物なのでは…?」
「……時と場合によります…ゴホン……さ、ミス・ヴァリエール。儀式を続けましょう」
「はい!」
自分が召喚した物が珍しいと知り、威勢良く返事をし、どう?見直した?とばかりに無い胸を張りながら虫の前に立つルイズ。
「それにしても変な形の虫ね…まあいいわ。何しろ博識なコルベール先生がここまで珍しいっていうぐらい凄い使い魔だもん…ネー!」
と、皆に嫌味の一つを言ってから、ルイズは膝をつき、呪文を唱え始めた。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我が使い魔となせ」
そしてルイズはその使い魔に口付けをした。
その時の事をコルベールはこう振り返っている。
58 :
使い魔に:2008/07/18(金) 02:04:04 ID:A1RJcTRv
「…なのに…まさか……まさかあんな事になるなんて…!まさか『コントラクト・サーヴァント』に『失敗』するなんて!!!」
ルイズは爆発した。もとい、大爆発した。
その一瞬、物凄い爆風と熱気が広場を襲い、地面に潜っていたジャイアントモール除くその場に居た全ての使い魔が死亡。
この試験に参加していた生徒64名の内ルイズにもっとも近かった8名が即死。
32名が手当ての甲斐なく死亡。
ルイズから距離があった者及び水系統を得意とし、自らを治癒できた者22名が重傷。
ルイズに近かったものの、見た目より体力のあった教師1名が手足を失うが存命。
爆心地に居たルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは、遺体回収が不可能な状態だった。
尚、早々のその場から離れていたガリアとゲルマニアからの留学生は無傷であった。
59 :
使い魔に:2008/07/18(金) 02:05:08 ID:A1RJcTRv
この事故以来、トリステイン魔法学園で使い魔の召喚の儀式を試験から外す事となった。
「何故、当時みんなが、彼女がコントラクト・サーヴァントを成功出来ると思ったのか…。今考えれば不思議でなりません。彼女は失敗の回数の方が遥かに多かったのに…」
最後にそういい残し、コルベールは自ら設計した義肢を使い、友人であるキュルケ・ツェルプストーに支えられながらその場を後にした。
彼は今もツェルプストー領にある屋敷で静養中である。
『バージニアによろしく』からバージニアを召喚
以上です。
>>49-51の流れを見たら召喚せねばならないという使命を受信しまして。
バッドエンドですみません。
GJ!
ッと言いたいが、俺は「バージニアによろしく」を知らないんだったァァァァァァーーーーーーーー
GJ!
我らがギーシュはどうなったんだろうか…
つ、つまんねぇ
緊迫感とか無視で、いきなり爆発って「バージニアによろしく」である必然性がない
おもしろければバッド・エンドでも構わないんだ
ただ、盛り上がりがないのはどうなのか?ただ爆発するだけって何なの?
「使い魔に」はオチに来るまで何が召喚されたのか分からなかったが、なるほどね
次は人狩り船長も宜しくお願いします
いっそのこと爆弾解除中のあの面々込みで召喚した方が面白かったかもしれん
>>61 『バージニア』は爆弾の名前
>>65 あのオッサンは召喚されたら退屈から解消されて凄く喜ぶだろうw
バージニア普通に面白かったよ
必然性なんて言い出したらそもそもジョジョキャラが召喚される必然性自体ないしね
それよりコントラクトサーヴァントが他魔法と同様に爆発する可能性を示唆したのが大きいと思う
まあ爆発自体はバージニアの時限装置のせいで起きたのかもしれないけど
爆発中の爆弾を召喚したってこと?
つーかどうなんだろ?
既に配線を一部カットした状態で召喚されたんならその時点で大爆発起こしてるはずだが
(手元にコミックスがないから断言できんが、爆弾の構造ゆえに室内を真空状態にしてロボットに作業させてた)
爆弾にルーンが刻まれた結果、起爆したという考えが無難なような
タダ単にルイズの失敗魔法で引火しただけじゃないの
どんな爆弾か知らんけど爆弾というからには火薬がつまってるんだろ?
ドカドカーンみたいな
プラスチック爆薬というものもある
この一種であるC4は燃やしても爆発しない
バージニアがどうなってるのかはわからないが
でもなぜか銃で撃つと爆発する。
私の幼稚な文章が問題になっているようで、すみません。
皆さんが疑問に思ってらっしゃるバージニアの構造ですが、
バージニアには時限爆破装置だけではなく、
半球の表面にセンサーが張られていて、それに触れると爆発します。
つまり、失敗成功以前にコントラクトサーヴァントを実施する前にバージニアのセンサーに触れて、起爆させてしまった訳です。
それをゼロ魔世界の住人の視点で見ると、「ルイズがコントラクトに失敗した」と見えると思いまして。
前から思っていた「今までが成功率ゼロなのに、皆コントラクトサーヴァントが成功すると思ってるのはおかしいのでは?」という疑問と、
上のアイリンと武装ポーカーの流れをみて衝動的に書いて投下してしまいました。
もう少し熟慮し、出来る限り自分の書いた文章を客観的に見て、時間を掛けて修正していくすべきだったと反省しております。
お騒がせいたしました。
まあ、あまり気にしなくてもいいんじゃないか?
センサー云々のところは流石に覚えてない人が大半だろうし
”バージニアによろしく”の内容自体知らない人が多いんだと思われ。
気にすることはない。自分も知らない一人だし。
これを機会に探して読んでみようかと思うけど、売ってるかなあ……。
魔少年ビーティーと同じ短編集に収録されてるらしいけど、これ、めちゃくちゃ古いよね?
ジョジョの連載が始まる前くらいじゃなかったかな?
武装ポーカーや読みきり版ビーティーにアイリーンも収録されているのでぜひ探して購入してくれ
寡聞にして『バージニア』は知らなかったが、説明されると納得。
良い小ネタではないか。
1981年に『武装ポーカー』でデビュー。『バージニアによろしく』は同年発表。
1982年に『アウトロー・マン』と『魔少年ビーティー』(読切)。
1983年に『魔少年ビーティー』を短期集中連載。バオーは84〜85年だな。
デビュー作からして荒木シチュ全開で気に入ってる。
>>79 『アウトローマン』ってどんな内容だっけ?
愛蔵版にしか収録されてない幻の短編というのは知ってるけど
SBRの原点みたいな作品だな
西部劇と白土三平がリミックスされた感じ
まあ、愛蔵版ゴージャス・アイリンを買ってくれい
少し前コンビニで売ってたのを買ったなァ
バージニアはあの続きがメチャ気になんぜ……
83 :
偉大なる使い魔:2008/07/18(金) 22:28:56 ID:WR/W7dio
わたしたちは上に戻るために階段を上る。
「キュルケ、走っちゃだめよ」
「ええ、わかってるわ」
踊り場に一人の老人が倒れていた。
「放っておきなさいよルイズ。プロシュートを倒せば全員助かるんだから」
この服に薔薇の杖・・・
「ギーシュじゃないの?」
「あらホント生きてたのね、プロシュート相手に」
そんな気はしたけどホントに生きていたのね・・・そういえば・・・
「ねえキュルケ。わたしはプロシュートに掴まってたと思うんだけど、
どうやって助かったのかしら?」
「ギーシュが大変だわ!すぐ氷で冷やさないと」
あからさまに話を逸らしたわね。
「ちょっと答えなさいよ!すごく重要な事よコレ」
キュルケは顔を逸らし自分の体を抱きしめる。
「・・・・・・よ」
「何?よく聞こえないわ」
「体当たりよ、体当たり!文句ある?」
・・・は?
「いや、無いけど、よく助かったわね」
「そうね彼も『えっ?』て顔してたわ。もうあんな真似、二度としないわ」
「ありがとうキュルケ。でも体当たりとわね」
「だって、しょうがないじゃないの。私の『火』はプロシュートの『力』と相性が
悪すぎるんですもの」
「確かにそうね。フフッ、いや馬鹿にしてんじゃ無いのよ」
「き・・・君たち・・・僕を忘れないでくれたまえ」
ギーシュが擦れた声で助けを求めてくる。
「えっ?ああ、そうね」
わたしは溶けてちっぽけになった氷の欠片をギーシュに押し当てた。
シュパアアアアァ
「ふう、助かったよルイズ」
若返ったギーシュがポーズを取り髪をかき上げた。
なんだか髪が薄くなってるのは気のせいかしら?
「わたしたちと別れてから何があったの?」
ギーシュが腕を組み天井を見上げる。
「・・・そう、僕は時間稼ぎの為ワルキューレたちに武器ではなく盾を持たせた。
なにしろ兄貴は傷がすぐに治るのだからね、倒そうなんて思わなかったさ」
「適切な判断ね」
「その後は、ワルキューレがブッ飛ばされて僕もそれに巻き込まれ窓から
転落・・・レビテーションで何とか助かったと言う訳なのだよ」
「ふーん」
よく見るとギーシュの顔や手には切り傷がいくつもあった。
「そして君たちと合流しようと走っていたら気を失ってしまったというのだよ。
いや、体温を上げてはいけない事をすっかり忘れていたよ」
はっはっは、と声をあげて笑うギーシュ・・・あんた凄いわ。
「さて、今から兄貴を止めに行くのだろう?『対策』とやらは分かったのかね?」
「ええ任せてよ!プロシュートを倒してみせるわ」
「ほお、オレを倒すと言うのか?」
84 :
偉大なる使い魔:2008/07/18(金) 22:30:03 ID:WR/W7dio
投下した!
次回はラストバトル
み、短けえ!?でも、GJ!
とうとうプロシュートとの戦いに決着か。
どう転んでも、結末は……
栄光はお前にあるぞ・・・ギーシュ・・・
だな
87 :
ゼロいぬっ!:2008/07/19(土) 10:53:03 ID:MK2XQgm5
お待たせ!って言いたいけど待ってる人いるのかな?
11時から投下です。
やっと服が着れるぜ
89 :
ゼロいぬっ!:2008/07/19(土) 11:00:56 ID:MK2XQgm5
「皮肉だね。“光の杖”で始まった因縁が“光の杖”で終わるなんて」
フーケが言う。ゴーレムの肩から見下ろした彼等の姿はまるで虫の群れだ。
あの怪物は空の上にいる。もはや恐れるものなど何もない。
ましてやワルドも一緒に来ているのだ。チェックメイトという言葉さえ生温い。
相手の王だけを残して取り囲む、そんな状況こそが相応しい。
「ああ。君との因縁もここで終わりだ。
僕たちは負けはしない。ここで“彼”の帰りを待つのだからね」
だがギーシュの眼には未だ力が宿っていた。
諦めはしない。何度となく死地を乗り越えてきたからこそ思う。
死に抗い続けてこそ僅かな生の可能性を見出せるのだと。
口に咥えた造花の杖を横薙ぎに払いながらギーシュはゴーレムと向かい合う。
直後。吹き抜けた風がローブをめくり、彼の裸体を露にした。
格好良く決めた姿勢のままギーシュが硬直する。
そして、それを目の当たりにしたフーケも。
一瞬にしてその場の空気が凍りつきニコラも手のひらを顔に当てる。
ようやく我に返ったフーケが呆れたように口を開いた。
「………何やってんだいアンタ」
「ち、違うぞ! 別に人前で裸になると興奮するからとか、
そんなアブノーマルな露出趣味の変態なんかじゃ……」
「隊長、その弁明じゃ逆効果ですぜ」
冷たい視線にしどろもどろになりながら釈明するギーシュ。
その返答に頭を抱えながらニコラは呟いた。
とても危機的な状況に追い込まれたとは思えないほど戦場に白けた空気が流れる。
フーケも思わず「もう帰ってもいいかい?」と口にしそうになったのを飲み込む。
相手の哀れさに気が抜けてしまうのも仕方ない。
だけど“光の杖”が手に入らなければ今度はこちらが危ないのだ。
あの怪物が戻って来る前に決着を付けなければ。
90 :
ゼロいぬっ!:2008/07/19(土) 11:01:48 ID:MK2XQgm5
「まあ誰に身包み剥がされたのか知らないけど。
唯一残されたものまで失いたくないだろう。
さっさと“光の杖”を置いて失せな」
フーケの降伏勧告がギーシュに告げられる。
余計な手間をかけたくないのもあるが、
フーケのゴーレムならば虫けらを踏み潰すように容易く敵を蹴散らせる。
それをしないのは偏に無用な虐殺を避ける為だった。
必要ならば殺人も厭わない彼女だが、殺戮を好む性質ではない。
だからこそ彼女は強盗ではなく盗賊を生業としているのだ。
しかし、そのフーケの思慮も解さずギーシュは尋ねた。
「えと、残されたものって……もしかして僕の貞操?」
「よし殺す! 容赦なく踏み殺す!」
般若にも似た形相でフーケが叫ぶ。
大地を踏み鳴らして巨人が再進攻を開始する。
そこには容赦などない。地響きの音はまるで怪物の咆哮。
たとえ岩であろうと人であろうとも
進路上にあるものは関係なく踏み潰すだろう。
ゴーレムを前に蜘蛛の子を散らすように逃げ惑う兵士たち。
その彼等にギーシュから的確な指示が飛ぶ。
「全軍退却! たいきゃーく!」
「逃げるんじゃないよ! それでも貴族かい!?」
「せめて! せめて服を着替えるまで待って!
このまま死んだら裸で死んだ貴族として一生ものの恥に……」
「知ったことか!」
背を向けて走り去るギーシュをフーケのゴーレムが追撃する。
狙いがギーシュ一人と分かり、次々と部下が彼の傍を離れて行く。
残されたのはニコラとギーシュの二人だけ。
大きく腕を振りながら汗だくになって駆け回る。
追いつかれれば待っているのは死。
背後から聞こえる足音にギーシュは耐え切れなり、そして振り返った。
その彼の眼前に聳え立つ巨大な岩塊。
「……さてと最期に言い残す事はあるかい?」
「あ!」
文字通りギーシュを後一歩で仕留められる。
見下ろすフーケの顔に浮かぶのは余裕。
そして彼女を見上げるギーシュの顔は恐れに引き攣っている筈だった。
だが彼の顔にあるのは恐怖ではなく驚愕だった。
彼が見ているのは自分ではない。
それに気付いたフーケが咄嗟に彼の視線の先を追う。
自分の背後、上空へと目線を移した。
“まさか、あの怪物が戻って……?”
フーケが空を見上げる。
そこにはどこまでも澄み渡った青い空。
何の影もなくただ雄大な風景だけが広がっていた。
その背後で悟られぬようにコソコソ移動するギーシュたち。
91 :
ゼロいぬっ!:2008/07/19(土) 11:03:05 ID:MK2XQgm5
「ふざけた真似を!」
それに気付いたフーケが地団太を踏むようにゴーレムの足を叩きつける。
この時、彼女は怒りのあまり気付けなかったが、
ギーシュたちは近くにあった森の中へと逃げようとはしなかった。
森ならば大木が巨体の行動を阻害し歩みを止められたかもしれない。
完全には無理でも歩みを緩めるぐらいは可能だ。
なのに彼等はあえてそうしなかった。
瞬間、力強く踏み出したゴーレムの足が地面へと沈んだ。
瞬く間に下半身が丸ごと土の中へと飲み込まれていく。
バランスを崩し転倒するのをフーケが堪える。
その視界の端に地面から顔を出すモグラが映った。
彼女はギーシュの使い魔の存在を失念していた。
格下だと見くびったが故の油断。そこにギーシュは付け込んだのだ。
「今だ! 全員ゴーレムに取り付け!
肩に乗ってるフーケを引き摺り下ろすんだよ!」
ニコラの合図で逃げ回っていた兵士たちが一転攻勢に出る。
次々とゴーレムの巨体にへばり付いてよじ登って行く。
岩の隙間に剣を突き刺し、それを足場に駆け上がる。
それはまるで倒れた獲物に群がる蟻の大群。
いかにフーケといえどもゴーレムを扱っている間は無防備。
平民相手だろうと容易く捕らえられてしまうだろう。
「なめんじゃないよ!」
フーケの一喝に反応して巨体が鳴動する。
埋まった地盤を打ち砕き巨人は両足を解放した。
身体を震わせ、両手で払い落とし、次々と兵が剥がれ落ちていく。
その光景を見ながらニコラはギーシュに尋ねる。
「失敗しちまったようですぜ。次の手は?」
「ない。これから考える」
「……こっちが全滅しない内に頼んまさあ」
ニコラが手を上げると森に潜んだ兵たちが一斉にフーケを狙い撃つ。
しかし、それもゴーレムの手に阻まれ、
屋根に落ちる雨粒のような音を立てるのみ。
お返しで放り投げられた岩石が兵もろとも木々を薙ぎ倒しながら転がっていく。
戦いは数だが、こうも戦力に差が開きすぎると戦いにすらならない。
大地を響かせるゴーレムの足取りは力強く、
一歩一歩を踏みしめるように近づいてくる。
ギーシュを追い回していた時とは違う。
じっくりと確実に仕留めようとするフーケの意思が感じ取れる。
足音を耳にしたギーシュの顔色が蒼白に変わる。
確かにフーケのゴーレムは脅威だった。だが恐怖ではなかった。
挑発し油断させ不意を打てば何とかできたかもしれない。
実際にキュルケとタバサは彼女を撃退している。
だけど冷静になったフーケは別格。
森で彼とまみえた時の力量は記憶に焼き付いている。
92 :
ゼロいぬっ!:2008/07/19(土) 11:04:35 ID:MK2XQgm5
「随分とやってくれたじゃないか」
喉を震わせながらフーケは呟く。
どんなメイジ相手でもこんな目に合わされた事はない。
それが2度も、しかも学生を相手に出し抜かれた。
彼女はその屈辱を飲み込んで自戒する。
敵が強大であれば万全を期すのに対し、見下した相手には警戒さえしない。
その自分の甘さを自覚して彼女は反省した。
これからはどんな相手であろうと全力で叩き潰す。
遊びも油断も無しだ。一瞬の勝機さえも与えない。
「あ!」
再びギーシュが素っ頓狂な声を上げる。
視線の先は先程と同じフーケの背後、その上空。
尚も繰り返される使い古されたギーシュの手にフーケは憤慨し大声を上げた。
「同じ手が通用するとでも…!」
だが、その声はすぐさま轟音に掻き消された。
押し退けられる風が上げる悲鳴。
振り返った彼女が目にしたのは巨大な材木の塊。
それが船だと理解した直後、船の舳先がゴーレムの頭部に食い込む。
岩山のような巨体が転倒し凄まじい砂煙が巻き上がる。
砕け散った船の前半分、艦橋のあった場所から這い出すように出てきた船長が叫ぶ。
「総員退艦!『マリー・ガラント』号を放棄する!」
彼の指示に従い、次々と船員たちが船から飛び降りた。
その内の数人は船から下りる時に火薬の入った樽を抱えていた。
樽の蓋は開き、中から黒色火薬がまるで線のように零れ落ちる。
それを見届けると船長も続いて『マリー・ガラント』号から降りた。
そして、突然の事態に困惑するギーシュの下へと駆け寄った。
「貴族様。後はお願いします」
船長の呟きに合わせ、船員は火薬樽に封をした。
『マリー・ガラント』号まで伝う黒い線。
それを見たギーシュは余すところなく彼の言葉を理解した。
「本当に僕がやっていいのかい?」
「……長年連れ添った船です。私にはできません」
「そうか。なら僕がやろう」
沈痛な面持ちで視線を落とす船長に、
ギーシュはかける言葉が見つからなかった。
二人の会話の間もゴーレムは巨体を起こそうと足掻く。
圧し掛かる『マリー・ガラント』号を振り払おうと両手を伸ばす。
93 :
ゼロいぬっ!:2008/07/19(土) 11:05:45 ID:MK2XQgm5
「ふざけんじゃないよ!どいつもこいつをアタシを誰だと……」
「さよなら『マリー・ガラント』号」
フーケの叫びに混じって流れるギーシュの声。
続いて、彼の唇が“ウル・カーノ”と小さく唱えた。
放たれた種火が火薬で引かれた導火線を辿り『マリー・ガラント』号へと向かっていく。
それは船体を駆け上り、船内の貨物室へと入り込む。
そこには満載された火薬が、樽の中でその眠りから目覚めるのを待っていた。
瞬間。『マリー・ガラント』号を中心に爆発が巻き起こった。
爆風が瞬く間にゴーレムを巻き込んで周囲に広がっていく。
岩石に匹敵する強度を持つフーケのゴーレムも、その威力の前では砂の城に等しい。
四肢どころか胴体さえも残さずに風の中へと砕かれ飲み込まれていく。
耳を劈くような轟音と視界を白く塗り潰す光にギーシュも思わず蹲った。
その中で船長は敬礼を取りながら自分の船の最後を見届けた。
原形さえも留めず、燃え続ける残骸にかつての姿を重ねる。
「安らかに眠れ『マリー・ガラント』号。
おまえは最後に誇り高い仕事を成し遂げたのだ」
爆風に飛ばされた帽子が空の彼方へと消えていく。
だけど、それに構わず彼は敬礼を続けた。
もう必要ない。あれを被って共に仕事をする日は二度とないのだ。
『マリー・ガラント』号が眠りについたその時、彼の帽子もまたその役目を終えた。
94 :
ゼロいぬっ!:2008/07/19(土) 11:08:10 ID:MK2XQgm5
以上投下したッ! 次回は空での戦い!
モット伯VSワルドはその次ぐらい!
乙!
>モット伯VSワルド
+ +
∧_∧ +
(0゚・∀・) ワクワクテカテカ
(0゚∪ ∪ +
と__)__) +
投下乙であります
ギーシュw 確かに裸では死にたくないだろうなw
そして、モット伯VSワルドってちょ!w
フーケどうなったんだろ?
流石に生きていたとしても重傷だろうけど、死んだとしたらそれはそれであっけなさすぎるよーな
しかし三ヵ月後、そこには孤児院の子供たちと元気に駆け回るマチルダお姉さんの姿が!
「あの時は本当に死ぬかと思ったよ。もうゴーレムの肩に乗ったりなんかしないよ」
次の今週は「ザ・ベスト」こちら!
『バオー、驚異の生態』
GJ!
wktkがとまらないぜ!
そういや花火用の火薬でも樽一つ分位あれば隣の家まで軽々と吹っ飛ばせるらしいね
個人的には生きている展開を希望
まあデッドマンやサブゼロみたく手や足がもげて顔の肉も削がれてといった悲惨な目にあってそうだが
デッドマン吉良ってどうなったんだっけ
サブゼロは切断されるけど固定化かけて腐らないようにしたとかなかったっけ
>>103 吉良に弾丸三発打ち込まれて、手がもげ顔の頬肉が削がれたことで暴走
ギーシュとタバサの合体技『ワルキューレによる暗黒流れ星』
(ようするにワルキューレに飛び降り無理心中させたw)
でゴーレムの上から落とされ、その後ゴーレムを構成してた大量の土に生き埋めになる
もっともその土の中で何かが動くような描写があったので、恐らく生きてはいるようだが……
デッドマンのフーケはプロシュートの兄貴並にタフだなぁ
フーケ「まだだよ!まだ終わってなぁぁい!!」
他に作者さんがいないならいますぐ投下します
覚悟はいいか? オレはできてる
八話
前衛に二振りの剣を構えるワルキューレ、そして後衛に剣と盾を装備したニ体のワルキューレを置くルイズ。
対するホワイトスネイクはゆるりと構える。
時刻はすでに午前二時を回った。
部屋を照らすのは薄明るい魔法灯だけ。
部屋の壁には5つの影がゆらゆらと踊り、しかし空気は張り詰めている。
さながら嵐の前の静けさのように、ルイズとホワイトスネイクは静かに対峙していた。
直後、ルイズの操るニ刀のワルキューレがホワイトスネイクに斬りかかる。
ホワイトスネイクは素早く一歩引くことで回避する。
ワルキューレはその後を追わない。
後衛のワルキューレニ体が即座に切り込める位置ならば、
昼間ホワイトスネイクが見せたあの「体術」も使えないだろうが、
そうでなければ一瞬で無力化される。
いくらホワイトスネイクが丸腰で、いくらワルキューレが剣二振りで武装していようと、
ホワイトスネイクの体術は侮れない。
「……踏みこんでこないの?」
ルイズが緊張した声で言う。
「踏ミ込メバニノ太刀デ串刺シ、ダロウ? 見エ透イテルゾ、ルイズ」
これから外出だが支援してから出かけよう
支援
あっさりと策を看破され、思わずルイズは唇をかんだ。
前述したように、後衛に二体のポーンを配置したのはホワイトスネイクの隊術を封じるためだが、
ルイズが考えた投げ技封じの策は、実際には二段構えだった。
そのために前衛のワルキューレにふた振りの剣を持たせているのだ。
目の前にいるワルキューレの得物が一振りだけだったなら投げ技も十分可能だったろうが、
この二刀のワルキューレの初太刀をいなして踏みこんでも、ニの太刀で串刺しにされるのがオチだろう。
そういう策だった。
だがそんなことぐらいホワイトスネイクだって分かっていた。
だから踏み込まなかったのだ。
「ツイデニ言ウナラ……後ロノ『ポーン』ニ体ハ私ニプレッシャーヲカケルタメニ置イテルダケダナ?
ソノ人形ドモヲ全部同時ニ操レル自信ガナイカラッテ、セコイ真似ナンカシテ。
ミミッチイナ、ルイズ……ソンナノデ私ヲ殺セルノカ? イヤ……『勝つ』、ダッタカ?」
後方に控えるニ体のワルキューレの意義まで看破された。
思わずルイズは動揺する。
こいつ、なんてヤツなの?
こんなヤツに……わたしが勝てるの?
「一瞬考エタナ」
「え?」
思わずルイズがそう聞き返したとき、すでにホワイトスネイクは二刀のワルキューレとの間合いを詰めていた。
慌ててルイズがワルキューレを動かしたとき、すでにホワイトスネイクはルイズの目の前にいた。
そしてルイズがそれを理解したとき、すでにホワイトスネイクは貫手を引き絞っていた。
その狙いは、ルイズの額。
「ソノ差ガ命取リダ」
ドシュゥッ!
空気を切り裂き、ホワイトスネイクの貫手が迫る。
思わず目をぎゅっとつむるルイズ。
悲鳴は上げなかった。
いや、上げるヒマさえなかった。
ただ、貫手が自分の頭を砕き、貫くのを待つだけだった。
支援するぜッ
だが、その瞬間はいつまでたっても訪れなかった。
ルイズが恐る恐る目を開けると、ホワイトスネイクの貫手は、ルイズの額の紙一重手前で止まっていた。
ホワイトスネイクは、最初からルイズを殺す気などなかったのだ。
「……どういう、つもりよ」
震える声でルイズが言う。
「私ハルイズニ『立チ向カウ感覚』ヲ手ニ入レテ欲シカッタノダヨ」
「ど、どういう意味よ!」
「ドートイウコトハ無イ。
私ニ対シテ使イ魔ダ何ダト威張リクサッテイル小娘ガ、
肝心ノソノ使イ魔相手ニビビッテルンジャア話ニナランカラナ」
「な、何ですって!?」
「ソウ、ソレダ」
「へ?」
「ルイズハ一見気ガ強ク勇敢ナヨーニ見エルガ、ソノ実タダ強ガッテイルニ過ギナイ。
犬ガ吠エテルノト同ジナンダ。
本気デ立チ向カウ気ナンカ無イクセニ、チッポケナ自分ヲ満足サセルタメニナ」
ホワイトスネイクの言葉はあまりにも残酷だった。
遠慮のカケラさえもない言い草だった。
だが……ルイズは言い返せなかった。
事実として、自分は昼間の決闘でのホワイトスネイクを「怖い」と思った。
そればかりではない。
ホワイトスネイクがやられそうだと思った時には目も背けた。
いつもは「貴族らしく」とか考えてるくせに、実際の自分はちっとも貴族らしくないのだ。
ついさっきだってそうだ。
ホワイトスネイクが自分に貫手を打ちこむ瞬間、目をつむった。
勝つとか倒すとか大言壮語ばっかり吐いたくせに、結局自分は自分が大事だった。
貴族らしさなんて、どこにもなかった。
それが分かってしまった。
だから、言い返せなかった。
「トハ言エ……サッキハ『勝ツツモリ』ハアッタヨーダカラナ。昼間ニ比ベレバ立派ナ進歩ダ。
ソレニ免ジテ……ソーダナ……」
ホワイトスネイクはそう言うと、ルイズの額から一枚のDISCを抜き取った。
それと同時に、ワルキューレが大きな音を立てて地面に倒れこむ。
抜き取ったDISCはギーシュの魔法の才能だった。
そして、さらに腕から一枚のDISCを抜き取った。
「ギーシュ・ド・グラモンノ魔法ノ才能、ソシテ記憶ノDISCダ。コレヲオ前ニクレテヤル」
「え? そ、それって!」
「サッキ言ッテタヤツダ。
コイツヲギーシュノ額ニ差シ込ンデヤレバ、スグニ目ヲ覚マスダロウ。
サッサト奴ノトコロニイッテ、元ニ戻シテヤルンダナ」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」
「何ダ?」
「あ、あんた一体、どういうつもりよ!
自分のことを悪党みたいに言ったくせにこんなことして、あんた一体何が目的なの!?」
「目的……カ。ソーダナ……」
ホワイトスネイクは考え込むように顎に手を当てる。
「トリアエズハオ前ニ成長シテモラウコトダナ」
「何よそれ! っていうか何であんたが私のことを気にしてんのよ!」
「スルニ決マッテイル。私ハルイズカラスタンドパワーヲ貰ワナケレバ生キテイケナイノダカラナ。
私ハ『精一杯努力したけど結局立派なメイジになれなかったルイズ』カラ記憶ヲ奪ッテヤルノヲ
当分ノ生キ甲斐ニスルカラ、ソレマデハ生キ続ケナキャアナラナイ」
「結局……自分のため、ってこと?」
「当タリ前ダ。何故ナラ私ハ、」
そこで言葉を切ってルイズの顔に覗き込むようにして自分の顔を近づけると、
「悪党、ダカラナ」
支援
そう言って、ホワイトスネイクは音もなく消えた。
ホワイトスネイクが持っていたギーシュの二枚のDISCが軽い音をたてて床に落ちたのと、
「ミス・ヴァリエール、起きていますか?」
軽いノックとともにミス・ロングビルの声がルイズの部屋の中に投げかけられたのはほぼ同時だった。
「起きていますか、ミス・ヴァリエール? オールド・オスマンがお呼びです」
再びロングビルの声が響く。
だがルイズはそれに答えない。
「……入りますよ」
そう一言言ってロングビルがドアを開ける。
「どうしました、ミス・ヴァリエール?
オールド・オスマンがあなたをお呼びです。聞こえていたでしょう?」
「……今から、行きます」
ロングビルの問いにルイズはただ短く答えた。
それをロングビルは少し不審に思ったが、何も詮索せずに「ついてきてください」とだけ言って部屋を出た。
ルイズはその後に続いた。
爪が手のひらに食い込むほど、拳を握り締めて。
こぼれおちそうになる涙を、必死で目の中に留めて。
何もできなかった。
何も言い返せなかった。
「勝つ」だなんて大きいことを言っておいて、結局何もできずに負けただけ。
勝ち取って得るはずだったギーシュの記憶も才能も、
金持ちが乞食に残飯を恵んでやるかのような形で「与えられた」だけ。
結局自分は口ばっかりで、臆病で、無力で、「ゼロ」だった。
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
勝負の上でも、そして精神の上でも、生まれて初めて完全に敗北した夜であった。
To Be Continued...
投下完了
今回の戦いはホワイトスネイクvsフー・ファイターズの前哨戦を元にしてます
良いなこの悪党は見てて気持ちいい
乙でした。
ゲロ以下の(ry な悪党ってのはやっぱりいいですな。
ここからの展開に期待して、夏なので全裸で続きを待ってます!
しかしこのホワイトスネイクは悪だな
絶対改心しないでほしい
改心しなかったらバッドエンドじゃねえかwwwwww
だがそれもいい
GJ!
スネイクマジでいい感じww見ていてディモールト楽しいwww
>>121 ルイズも悪党になれば解決じゃね?
GJ!
ついでに誤字報告、
>>111でホワイトスネイクの隊術→体術とおもわれ
>>124 誤字報告は立派で素晴らしい事だ、ただ残念なことに専用スレが避難所に存在している為
スレ違いなんだ。誤字報告する事自体はすばらしい、ぜひ専用スレで報告してください。
キング・クリムゾン!
女キャラ少ないよな
その上続いてないし。
作者自信が女描くの苦手って言うぐらいだからな…
>>128 ゼロ魔自体がラブコメだから、ルイズが召喚したキャラに惚れていく展開の方が作りやすいんだよ
でも女性キャラだとそれができないわけで……
実際、召喚したジョジョキャラと一切恋愛関係にならずに話が進んでるのはこのスレでもかなり少ないしな
というかあったっけ?
ルイズがエロ妖刀と恋愛関係になってたら困るぞ
FFとか恋愛関係になってないんじゃね
避難所っておもしろいね〜
湿地帯と違ってさあ〜
デッドマン吉良は恋愛あったっけ?
吉良→デルフ以外で
>>135 ルイズ→吉良?
シエスタ→吉良
シエスタ→猫
女性キャラ召喚ねぇ・・・既出なら
3部:エンヤ婆、ミドラー
4部:辻彩
5部:トリッシュ
6部:徐倫、FF、兄貴
7部:ルーシー
まだいたっけ
兄貴が女とか冗談きついwww
足がグンバツ女とか
荒木の描くキャラに女なんていませんよ
ファンタジーメルヘン(略
1部:エリナ、ポコの姉、私の赤ちゃ(ry
2部:エリナおばあちゃん、リサリサ、スージーQ、シュトロハイムの髭剃った(ry、捕虜、シーザーにキスされ(ry
3部:ホリィ、スージーQ、エンヤ婆、ミドラー、女の子、ポル妹、足がグンバツ、ちゅみみ〜〜〜ん
4部:辻、ヤンデレ、幽霊、康一の姉&母、東方(ry、噴上の(ry、透明赤ちゃん、川尻(ry
5部:トリッシュ
ボス憑き才人続編を見て見たい
あれって小ネタ?なんか続編有る的なこと書いてあったけど
6部とか女の子だらけなのにな
主人公の徐倫はもちろん、エルメェス(兄貴)、FF(スタンド)、アナスイ(男?)
……アレ?
人類の夜明けとかグェスとかミラションとか
グロリアとかミューミューとかペルラとか
加速中にアイス舐めかけてたガングロデブとか
ちょっと待て、FFは性別不明だぞ。
分裂してる所から見てメス
この世には雌雄同体というのがおってな
あ、ありのまま今起こったことを話すぜ!
仮面のルイズを読み始めたと思ったら読み終わっていた。
な、何を(ry
つまりは、だ
続き書いてー
不 狭い部屋 懐かしいハルケギニア
法 守秘義務 一人だけ桃色髪 住民票 年金
滞 読めない文字 風呂もトイレも狭い… 排気ガス
在 昼間は学校に行ってるサイト 乗り物酔い 魔法禁止
外にでると目立つ 意思疎通の壁 夜も眠れない
病院にすらいけない ガイジン 騒音
休日も一人 友達と遊びにいくサイト 将来の不安 日本社会
近所からの嫌な噂 慣れないブラジャー 欝 馬がいない
日本の法律 /ルイズ\
不味い食事 はなし相手がサイトだけ ./ ─ ─ \ 部屋に篭りきり
無言 / <○> <○> \
上手く持てない箸 文明の違い | (__人__) | 皆、平民
楽しめない娯楽 言葉が通じない \ ` ⌒´ /五月蝿い姑
見知らぬ土地 / \ 保健のテスト100点
保険のテスト100点てw
サイト「母さん、この子が異世界からきたルイズ。この家に一緒に住まわせてやって欲しいんだ。
部屋は俺のとこに一緒でいいし、あっちの世界から金貨も多少持ってきたから
これを売れば数百万はいくだろうから生活費にも困らないしさ」
母「才人」
母さんの声が冷たく響いた
母「この程度じゃ、彼女を住まわすのは無理よ。父さんも許してくれないわ」
サイト「……そっか、父さんも」
クソ……どこまでがめつい親なんだ!
母「それに……一緒に暮らすと言うけど、サイトは彼女をこの家につれてきて
誰が彼女の生活を保障してくれるの?」
サイト「え……保障?」
母「そうよ。一時のお金の問題じゃないのよ。
彼女の面倒を一生見られる人にしか彼女は任せられない」
サイト「そんな。俺は別にルイズと暮らしたいだけで…」
母「それなら彼女の今後は?彼女の十年後を教えてもらえるかしら?
戸籍は?病気になったらどうする気?警察にはどう説明するのかしら」
>>152 しかしそう考えると、星屑さんがやってた「SPW財団にニセ戸籍用意してもらう」ってのはかなり偉大だったんだな
>>156 何でもありだよなあの財団本当に非武装か怪しいもんだが
ところで
;:::::ソ ン\ 〈!.l f「lT!
<::::ノ ゝ:::/ /\ l i 「_l!
ン:::ゝi:_:::i/-‐ニニ`ニニニL._ ……………
`i::::/,ヘ♀<^--‐、=====‐_->, 話の内容が
l://`ヽ::::> ィfァ‐メ:> ftッ´リ  ̄ わからない
l:::'、レ``' ´ ̄´ ,,.!.` i/ …………
. ,ハ:::ト -1 l __ 〉 /
/::::ヽ\ !、 ! _ _,,. / / ┼┐ .l -‐ァ ¨フ ./丁ヽ -ノ┐ (⌒)
.. ,'!::::::::::丶\.丶、 ー‐ '/) ' l ノ j レ' (_ ´r_) レ' ノ / 、! !
r‐!.';::::::トィ_::丶ヽ、` --‐ ハヽ …………
/:::::\::/,.、r':::、-ヘ_ `¨i ノ/! 更新が来なくて…
/ l:::::::::::>::;;_::/,,.、r':::::l !//:::/i_
ン i::::::::::::::::::l i \:::::::::ll /::::{┐l
i \:::::::::::::i i \::ll/_;.ィ:i┘l
l _ .. -`:::::::::::i ', ';:`¨´l l:::!ー'! /i
! l::::::::::::::::>'"´::lヽ`¨ヽ::::::i l:::l しヶl
. l !::::::::::/_::::::::l ∧::::::_\:i i::lヽ ´,ノ
l. l:::::::/::\  ̄  ̄ ∧i i:l `¨
Ifスレに来たのかと思ったじゃないか
SPW財団は普通に武装してそう
ジョセフの義手の完成度からみてナチスの技術も取り込んでるんじゃあないか?
武器の開発ぐらいは普通にやっていそうだよな、SPW財団。
実はドイツ系移民が多いからな、アメリカ
ナチスの人間をスカウトしまくってたし
162 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/23(水) 23:31:44 ID:OzFZpg5F
コメリカってナチスドイツの優良人種主義と差別政策の後継者だろ?
しかしあの人達は普段どうやって生活してるんだろうか
いろんな部門があるんでしょ
普段は医療部門やら福祉で働いてるんだろ
あの世界二次大戦の時にサイボーグやら高性能義手作ったりしてるんだから
六部の時点でじゃガンやエイズ、エボラの特効薬があったりするんだろうな
難易度MAXの
スポーツ・マックスで書いたとき、
その人は神になれる…!
鉄塔並の短さになるかもしれんが投下します
スポーツマックスは無理だがこれなら・・・
支援!
何度目だろうか。
響きわたる爆発音は、これまでよりいっそう大きかった。
また失敗か。全員がそう思っていた。
しかし、煙がはれてみると、そこにイライラするルイズの姿はなく、
代わりに大傷を負い、ぼろぼろのルイズが倒れていた。
イライラしていた事と焦っていたせいで目の前で爆発が起きてしまったのだ。
周りがパニック状態になる。
あわててコルベールが駆け寄り、水のメイジを呼ぶが、そのかいなく、ルイズは、
死んでしまった。
どんなに爆発の起ころうと怪我を負うようなことはなかったルイズが。
だが。
最後の魔法は、成功していたのだ。
爆発の瞬間、それはルイズの頭に入った。そして、能力が発動したのだ。
ルイズが気がついたとき、周りは大騒ぎだった。
地面は大きくえぐれていて、とんでもない爆発で気を失っていたのだろうと思った。
しかし、こちらを心配する者は一人もいなかった。
ルイズは少しむっとした。
しかし、何か様子が変だという事に気付く。
コルベールの方をむくと、そばに布のかけられた物体、いや、どうみても遺体があった。
誰かを殺してしまった?ルイズはとてつもない絶望におそわれた。
「誰か、殺してしまったのですか?」
なんとか、聞いてみた。だが、返事はない。
「ねぇ、どうなったのか、教えてください!」
それでも、返事は無い。誰が死んだのか。
ルイズは遺体に近寄ってたしかめようとした。
そして、見た。
桃色がかったブロンドの髪を。紛れもない自身の髪を。
しばらくなにも考えられなかった。
遺体がレビテーションで浮いてはっと我に帰る。すでに生徒にはいったん戻るよう言われており、残っている者は少なかった。
「なんで・・・?」
遺体が運ばれていく。
ルイズの問いが聞こえる者はいなかった。
以上です
短編の予定がうまくまとまらなかったので短めになると思います
つ、続くんだよね?この先が気になるじゃないかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
で、ジョニーはまだかね?
そういえば最近『吸血鬼ドラキュラ』を読んでみたんだが、この作品にもジョナサンって出てくるのね
(登場人物をドラキュラとヘルシング教授しか知らんかった)
やっぱジョナサンの元ネタってここからかね
ファミレス「ジョナサン」で編集と打ち合わせしてたからだよ
>>175 いや、荒木先生と担当の打ち合わせ場所がジョナサンだったかららしいよ。
打ち合わせの場所が「とんでん」だったらどうなっていた事か。
考えるだけで恐ろしい
トントンの奇妙な物語
とりすたん・で…で…
駄目だ。思い付かん。
>>177 荒木先生の幼名がジョナサンだったんだよ
そーいや静かの吉良って素振りとかして体鍛えてるよな。
他にもそういうキャラいるっけ?ってかなんで吉良は鍛えてんだ?他のキャラは鍛えてないのに
デルフたんハァハァだから
@理由なんてねー。
Aスポーツジムがないから、そのかわりに。
Bデルフと話がしたいとか、そんな気はこれっぽっちもない。
>>184 法治国家じゃあない階級社会になんだぞ?
地位の無い奴は強くないと生きていけない事ぐらいド低脳でも分かる。
>>188 政治的に見ると暗殺されそうなフラグがいっぱいw
まとめの更新が丸10日止まってる様だけど。
大丈夫かね?
wkiなんだから自分で更新したまえ
WIKIはファイル名とかがバラバラで正直まとめ作業し辛い
読んでる作品は気づけば更新してるけど大抵先を越される
ならばと言いだしっぺの法則で整理しようと思ったことあるけど
ファイル名変更は管理人権限いるしなOTZ
メイド・イン・ヘヴン!
世界は一巡し、人化術を会得して幼女化したデルフとデッドマン吉良の純愛ラヴが展開されr
げふんげふん、世界は一巡しIDが変更される
やってみれば結構簡単だよ
見よう見まねでおk 俺もそうだったから
出来てるページの書式を目で盗んで、ヘルプと合わせて理解深めればおk
誤爆
ニヤニヤ
ヤニヤニ
ニャーニャー
ワンワン
俺の側に近寄るなアアアアァァァァッッッ!
ゲコゲコ
なんだ この混乱は…
もしや新手のスタンド攻撃なのか!?
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
ふふふ・・・落ち着きなよ・・・さあ、『お茶』でもどうだい?
メメタァだった………そこはメメタァだったのに……
流れに「ツッコミ」を入れたのか…………ボス(
>>206)
>>184 鉄の使い魔のリゾットは毎日欠かさずトレーニングを行っているような描写があったな
>>197の誤爆が、熱帯スレへのものだということに花京院の魂を賭けよう!
ならば今日SSが投下されることに、俺はアヴドゥルの魂をかけよう!
じゃあ俺は避難所に投下が来ることに4444円とミスタの魂を賭ける!
>>210-213 「吐き気をもよおす『邪悪』とはッ
なにも知らぬ無知なる者を利用する事だ……!!
自分の利益だけのために利用する事だ…!!」
他に作者さんがいないならいますぐ投下します
覚悟はいいか? オレはできてる
できてる
9話
ルイズが朝食の席につくと、他の生徒はおもむろに一席分ルイズから間を開けた。
ルイズに対する嫌がらせというわけではない。
教師たちはそれを重々承知しているので、あえて何も言わなかった。
そしてルイズ自身もそれを教師たちから口を酸っぱくして言われていたので、何も言わなかった。
言わない代わりにため息一つついて、他の生徒たちと一緒に食事の前のお祈りを口にした。
ホワイトスネイクとギーシュが決闘した日から、もう一週間がたった。
ギーシュはすっかり元通りになって、モンモランシーとよりを戻そうと必死になっている。
ただ、ギーシュはルイズには近づこうとはしない。
常に一定の距離を保っており、そこから決してルイズに近づこうとしないのだ。
そうするのはギーシュだけではない。
他の生徒もルイズには近づこうとしなかったし、
加えてこれまでのようにルイズを「ゼロ」と呼んでバカにすることもなくなった。
無論、ホワイトスネイクのせいである。
ワルキューレを簡単にやっつけてしまったあの投げ技や身のこなしは多くの生徒が目にしていた。
その恐ろしい体術の餌食になるのが、みんな怖かったのだ。
ただ二つの例外として――
「あら、ルイズ。今日は自分で起きられたのね」
ルイズがむっとして振り向くと、いつもの笑みを浮かべたキュルケと相変わらず無表情なタバサが立っていた。
決闘以後、ルイズの近くにいるのはキュルケとタバサだけだった。
「ふん、当然よ。わたしだってもう16歳なんだから、自分で起きるぐらいできるわよ」
そう言ってぷいと顔をそむけると、また食事を始める。
「ホワイトスネイク……だっけ? あなたの使い魔。彼、今日もいないのね」
そう言ってキュルケはわざとらしくため息をつく。
初めてホワイトスネイクを見て、そして決闘でワルキューレを次々と撃破していく
ホワイトスネイクを見たときは「なんかちょっといいかも」とか思っていたキュルケだったが、
一週間も見ないうちにその熱はさっさと冷めて、今は絶好調五股掛けである。
「時代は筋肉質でタフな男よ!」とか思っていたのも、キュルケからすれば遥か昔の話。
女の子は熱しやすく冷めやすいと言われるが、キュルケはその中でもとびきりなのだ。
なのにホワイトスネイクに会えないことでため息をついたのは、
「ちょっとキュルケ! まだあんたあいつのことを狙ってたの!?」
ルイズがいちいち本気にするのが面白いからだ。
「ウソウソ、冗談よ。あなたってすぐに人の話を本気にするから飽きないわ」
「うぅ〜〜、そうやってあんたは人の事をバカにして!」
くすくす笑うキュルケと声をあげて怒るルイズ。
「好対照」
と、二人を見ていたタバサが評価した。
「ま、それはいいとして……ちょっとおかしくない?
召喚されて2日と立たないうちに使い魔が姿を見せなくなるなんて話、聞いたこともないわよ?」
Cーえん
キュルケの言うとおりだった。
ホワイトスネイクは決闘の日以来、一度もその姿を見せていないのだ。
「ルイズは使い魔に見限られたんじゃないか」と噂する生徒もちらほら出てきているくらいだ。
しかし、その噂は未だに噂の域を出たことはない。
ホワイトスネイクが「その場にいなくてもそこにいる」ことは、すでに多くの生徒たちに知られていたからだ。
ホワイトスネイクを「亡霊」だとか「悪霊」だとか呼ぶ生徒だって少なくはない。
だからホワイトスネイクがそばにいなくとも、ルイズはホワイトスネイクの主人であると暗黙のうちに認められていたのだ。
ホワイトスネイクが姿を見せなくなった本当の理由については、生徒たちは何も知らない。
「ルイズを呪い殺すための道具とか材料を集めている」とか、
「墓場を掘り返しては屍肉を食い漁っている」とかとんでもないデタラメを言っているばかりだ。
だがルイズは知っていた。
ホワイトスネイクはルイズ自身が本気でホワイトスネイクに立ち向かおうとしたときに現れる。
きっとそうだ、とルイズは「なんとなく」分かっていた。
根拠はない。
ただ、ホワイトスネイクは立ち向かってくる自分を無視したりはしないだろう。
ルイズはそれだけは、ただ「なんとなく」理解していた。
だから、立ち向かう。
決行は今夜。
今度はギーシュの魔法の才能は手元にない。
あるのは失敗魔法しか生み出せない「ゼロ」の才能だけ。
だとしても、立ち向かわないわけにはいかない。
あれだけの屈辱を受けて、言われたい放題言われて、それで黙っていられるほどルイズのプライドは安くない。
絶対に後悔させてやるんだから。
絶対に、やっつけてやるんだから!
あの敗北から一週間、ずっとルイズはそう思い続けてきたのだ。
「ルイズ? 聞いてるの?」
「……え? なに?」
きょとんとして聞き返すルイズに、キュルケはため息をついた。
「だから、明日はフリッグの舞踏会でしょ? あんた踊る相手は決まってるの?」
「決まってないわよ」
即答するルイズ。
そんなこと考えてる余裕があったらホワイトスネイクに勝つ方法を考えた方がずっとマシだからだ。
「はぁ〜……思ったとおりね。あんた、男っ気が全然無いものね」
「男の子を取っ換え引っ換えしてるあんたに言われたくないわ」
キュルケの言葉にむすっとしてルイズが返す。
「ま、あなたはそんなに美人じゃないからいいけど……タバサまで相手がいないのはどうなのよ?」
そう言ってタバサに声をかけるが、
「興味がない」
タバサの答えもルイズと似たようなものだった。
支援
「……あなたたち、もうちょっと男との付き合いを考えた方がいいわよ。
タバサはかわいいからそのうち男の方から寄ってくるでしょうけど、
ルイズなんて、あんた将来貰ってくれる人がいなさそうじゃないの」
「な、なんですってえ!?」
「本当のことじゃない。怒りっぽくて、すぐ八つ当たりする。
あんたと一緒になったら神経すり減らしちゃうわよ」
「そ、そんな、こと……」
反論しかけたが、ルイズには思い当たるフシがありすぎた。
自分の父親は自分の母親と口論になったら絶対勝てないし、
二つ上の姉の婚約者はいつも姉にあれこれ指図されていて、
しかも会うたびにやつれているようだった。
父親はまだしも、姉の婚約者の方が離婚せずにいられるか、いや、結婚まで持つかどうかさえ怪しい。
自分は、どうだろうか……。
「なーんて、ね」
不意にキュルケが声を上げる。
「へ?」
「別にいいんじゃない? 踊る相手がいなくたって。
それに踊る相手がいないぐらいで将来どうこう、ってわけじゃないし」
「あ、あんた、またわたしをからかったのね!?」
キュルケの真意に気づいたルイズが顔を真っ赤にして怒る。
だがキュルケはお腹を抱えて大笑いすると、
「だから言ってるじゃない。あんたがすぐ本気にするから、それが面白くって!」
「もう、いい加減にしなさい! タバサも見てるばっかりじゃなくて何か言ってやりなさいよ」
話を振られたタバサは少し考えた後、
「いつも通り」
それだけ言ったのを聞いてキュルケはまた大笑いし、ルイズはまた声をあげて怒った。
まるでルイズが彼女二人以外に避けられ続けているのがウソのような、そんな光景だった。
支援させてください
時は三日前の夜にさかのぼる。
場所はトリスタニアの裏通り。
物騒な連中が物騒な仕事を求めて歩き回る、一般人が決して近づいてはならない場所。
そこでの、とある事件だ。
「な、なな、なんだ、お前は! いい、一体何しやがった!!」
ガタガタと震える傭兵の前には、すでに物言わぬ死体と化した彼の仲間が転がり、
そのさらに先に一人の男が立っている。
彼の仲間は、みんな穴ボコのチーズみたいに、全身に風穴をあけられて死んでいた。
彼の目の前に立つ一人の男がした「何か」によって、声を上げる間もなく死んだのだ。
そしてその男は、実に奇妙ないでたちをしていた。
頭には緑色の目出し帽とゴーグル、
そして羽織ったマントの下にはウロコのような模様が浮き出た全身ジャージを着ている。
もちろんハルケギニアにはジャージなんてものはないから、この男以外にはそれがジャージだとは分からない。
これだけでもホワイトスネイクとどっこいの奇妙すぎる格好だが、
取り分けて奇妙なのは、この男が靴を履かないで、その靴を靴紐で足首に結び付けていることだった。
「『何しやがった』と聞かれても……説明する意味がないな。
どうせお前らには……『見えない』だろうしな」
「な、何だと!」
「まあいい……それより、聞きたいことがある。
お前、誰に雇われた?
『同業者』に襲われるのはこれが初めてなんだ。
なるべく他の奴らがやりたがらない……ハードな『仕事』を選んでたのにな…」
「く、くそッ!」
傭兵が毒づいて逃げる。
「逃げるのか……行ってもいいぜ。ただし……」
ドンドンドンドンッ!
空気を切り裂いて飛来した無数の「何か」が傭兵の両足を蜂の巣にした。
「洗いざらい喋った後でならな」
傭兵が悲鳴をあげて倒れる。
男はそれにゆっくりと近づいた。
「なあ……教えてくれよ。一体誰に指図されたんだ?」
「し、知らねえよ!」
「そうか」
男はそれだけ言うと、
ドンドンドンッ!
今度は男の右腕を蜂の巣にした。
悲痛な呻き声が再び裏通りに響く。
「こっちは鉄クズが少ないからな……あんまり弾の無駄使いはしたくねーんだ。
だから……さっさと教えてくれるか?」
「し、知らねえ! 本当に知らねえんだ!
見たこともねえ女だった……この街の女じゃねえ! それだけは確かだ!
そいつに500エキューで雇われたんだ! お前を殺して来いってな!」
「そうか」
ドグシャアッ!
「喋った後は、さっさと『あの世』に行ってきなよ」
男の意志で振り下ろされた見えない「何か」が、傭兵の頭蓋を粉々に粉砕した。
「しかし……面倒だな。
何で顔も知らねー上にこの街のヤツでもない女に狙われるんだ?
殺しすぎたのが……いけねーのか?
『仕事』中の俺を見た奴は全員殺ってるハズなんだがな……」
「別にお前は何も悪くはないよ」
一人呟く男に突然かけられた、艶のある声。
男は声のした方向に素早く目を向ける。
「何故ならそいつらを雇ったのはこの私だからね」
そこには、一人の女が立っていた。
「お前が……こいつらを差し向けたのか」
「その通り。『魔法殺し』と名高き傭兵の手腕、是非ともこの目で見ておきたくてね。
それで運のないそいつらに実験台になってもらったのさ」
女はフードを目深くかぶっており、その表情や顔立ちはうかがえない。
だが女の何かを楽しむような口調からは、恐怖や戸惑いは感じられない。
言葉通り、最初から死んでもらうつもりで傭兵たちを雇っていたようだ。
「そうか。……だがそれで、オレが納得すると……思うのか?
命を狙われて黙っているほど……オレは安くはないからな。
オレをナメてるんだったら……お前にもここで死んでもらう……!」
男の言葉と同時に、男の背後の「何か」がゆっくりと動いた。
「ふふふ……そう殺気立つんじゃないよ。
わたしはお前を雇うつもりでいるんだからね」
「……いくらでだ?」
男の発する殺気はまだ緩まない。
「2000エキュー、と言ったら?」
「2000エキューだと!?」
男の声色が変わる。
2000エキューと言ったら立派な家と森付きの庭が買えるぐらいの金額だ。
破格なんてもんじゃない。
あまりにも、馬鹿げている金額だ。
「どうやら態度が変わってきたようだね」
くすくす笑いながら女が言う。
「2000エキューか……2000エキュー……。
……それで、一体なにをさせる気だ?」
「そんなに難しいことじゃないわ。子供を一人さらってくるだけよ」
「それで2000エキュー……だと?」
「ええ、何だったら前金で1000エキューあげてもいいわ」
「前金で、1000エキュー!?」
「どうする? この『仕事』……やるのか、やらないのか?」
「……まず、詳しい話を聞かせてもらおうか」
それが男なりの、1000エキュー、2000エキューを前にしての、精一杯の慎重さだった。
彼が感情だけで動く男だったなら、「仕事」の内容も確認せずにこの場で「仕事」を受けていただろう。
「なかなか利口で助かるわ。では明日のこの時刻に、またこの場所で落ち合いましょう。
詳しい話はそこで教えるわ」
「それでいい。だが……」
「だが、何?」
「あんたの名前を……まだ聞いていないな」
「おや、そう言えば名乗っていなかったね。すっかり忘れていたよ。
私はシェフィールド。
ではまた明日、いい返事を期待しているよ、『ラング・ラングラー』」
To Be Continued...
投下完了
別に意図的に悪党ばっかりだしてるわけじゃないですよ、
と言いたいところだけどラングラーは改訂前より残虐っぽくなりました
次回でラングラーがハルケギニアに来てから何してたかってとこに軽く触れる予定
スネイクさんお疲れ様っす&GJっす
GJです
スネイクさん、お待ちしておりました
次回が投稿されるのが待ち遠しいです
GJですスネイクさん!
でも肝心のスネイクさんが出てこなかったのがちょっと残念。
お…俺…
>>250とったら新作書くよ…
皆に誤字を指摘されんのも…悪くないと思ってさ。
では250取り合戦はじめる?
スネイクGJ
どうでもいいが、ラングラーって話題に上りにくい希ガス。そもそも六部の敵皆そうだけど。
>>234 あと10レスちょい……投下は今度にしたほうがいいか。
ならばあえて250を取ると予告しよう!
……わかったよ、本心を言ってやる!僕だって書いて欲しいさ!
もう、ここで何の関係もない通りすがりが250を取ったら爆笑の嵐だよな
いや、やらんから安心してくれ
そして250直前に他の投稿がはじまり250が埋まっていた
させん!新作を作る邪魔はさせんぞ!!
いいや限界だ押すね!!
メイドインヘブン!
加速するッ!
245 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/28(月) 21:01:07 ID:W8qOolsp
ksk
時は加速する・・
「250を取った」なら使ってもいいッ!!
うちの方でも残虐超人ファイトをやらそうとは思うんだが…
どうもこうやっぱ、おマチさんを精神的にイジりたいというドS的欲望でそっちが疎かになる…
しかし、おマチさんに対してはドS極まりなく進んでいるが
タバやきゅいきゅいに対してちと甘くなってるかと思わんでもないがどうしたもんか…
柴田先生で例えるならリキッドを姑の如く精神的に追い詰めるシンタローさんみたいな状況だな
オ…オレ……
>>234さんの新作見たら、続き書くよ……書くの遅いってイジられるのも結構いいかもな……
248 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/28(月) 21:12:26 ID:W8qOolsp
ksk
249 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/28(月) 21:16:56 ID:W8qOolsp
↓
250だったら今の連載終了後に魔少年ビーティーで新作書く!
あ…ありのまま今起こった事を話すぜ!
『ちゃんと投下前にレスを確認して万全を期して249を狙ったのに250だった』
な…何を言ってるのかわからねーと思うが
俺も何をしたのかわからなかった…
頭がどうにかなりそうだった…
4秒差だとかタイミング悪いだとか
そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ
もっと恐ろしいうっかりの片鱗を味わったぜ…
公約は果たすとして
>>234には是非、新作を書いて欲しい!
誤字なんて日常茶飯事だからな!
>>250 頑張ってくれ、ビーティーらしさを出すのは凄い難しいだろうけど応援してるぜ!
本気で読んでみたいんだよ
>>250取り合戦が終わったところで50分辺りから投下するッ!
真の覚悟はここからだ! ピストルズ! てめーらも腹をくくれっ!
支援させてもらおうか
支援だ!
「うん。こりゃ無理じゃな」
昼下がりの厨房の片隅でシチューを飲み干して、ジョセフは二秒で言い切った。
ウェールズに言った通り、奇跡が二つか三つは用意できない限りトリステインはアルビオンの脅威を払拭できない。
孟子曰く、天の時は地の利に如かず、地の利は人の和に如かず。
つまり天のもたらす幸運は地勢の有利さには敵わず、地勢の有利さは人心の団結に敵わないという事である。
今のトリステインには天の幸運も地勢の有利さも人心の団結もない。天地人三つで惨敗している以上、結構な数の都合のいい奇跡を用意しなければならないが、いくらジョセフでもそんな都合よく奇跡を用意できるわけではない。
それでも一応、大言壮語を吐いてしまった以上は何かしら奇跡が用意できないか、と情報を集めてみることにした。
アルビオンの地理的条件やレコン・キスタ戦の顛末をウェールズに聞き、オスマンにトリステインや近隣諸国の情報を聞いてみた結果の答えが、冒頭の言葉に繋がる。
「そもそも敵の国が空の上に浮かんでるって時点で反則じゃよなあ。制空権取られて勝てる戦争なんてあるワケないじゃろーよ」
空に浮かぶアルビオンはハルケギニア一の隻数を誇る飛行艦隊に加え、ハルケギニア最強とうたわれる竜騎士団を擁し、空軍戦力で言えば他の国の追随を許さない。しかもこっちからはただ渡航するだけでも日時を選ばなければならない。
「攻守共にパーペキ、じゃな。戦艦と戦闘機は性能も数も申し分なし。これで不意打ちなんか食らった日にゃ手も足も出ずにお手上げじゃ」
第二次世界大戦もベトナム戦争も、左手が義手のおかげで高見の見物を決め込んだジョセフである。太平洋戦争で日本を叩きのめした圧倒的な戦力差が、今になって自分の身に押しかかってくるとなると、流石のジョセフと言えども暗澹たる思いは否めない。
正直な所、異邦人丸出しのジョセフとしては黙って逃げても構わないとは思っている。しかしトリステインを襲うレコン・キスタに紳士的態度を期待できるほど盲目でもない。
「ふうむ。かくなる上は多少無茶な手を取るしかないかもな……じゃがそれってわしのキャラじゃないよーな気がするわい」
空になったシチューの皿をスプーンでこつこつやっていると、後ろから声を掛けられる。
「ジョセフさん、お替りいかがですか?」
「ああ、じゃあもう一杯」
シエスタに皿を差し出すと、花の咲くような笑顔が返って来た。
「はい、少々お待ち下さいね」
ぱたぱたと鍋に向かって走るシエスタの後姿を眺め、ヤレヤレと頭をかいた。
「……キャラじゃなくてもやらなきゃならんかもなァ」
独り言はジョセフだけにしか聞こえることはなく、それから少しばかり時間を置いて戻ってきたシエスタの手には、並々とシチューの注がれた皿と、ポットと二つのカップの乗ったお盆があった。
「お待たせしましたジョセフさん。とても珍しい品が手に入ったので……その、お御馳走しようと」
「珍しい品?」
シチューを見るが、さっき食べたシチューと変わりがないように思える。
「いえ、そっちではなくて。ロバ・アル・カリイエから運ばれた珍しいお茶なんです」
「茶?」
テーブルの上にお盆を置くと、ポットから二つのカップに緑色のお茶が注がれる。
日本でホリィが煎れた緑茶によく似た香りに、ジョセフの目が細まった。
「はい、どうぞ」
「うむ、ではいただくとするかな」
一口飲むと、少し渋い味が口の中に広がる。
「……ふむ。まさかこっちで緑茶を飲めるとは思わんかったな」
ふう、と吐息と一緒に漏れた言葉に、シエスタがきょとんと目を大きくした。
「ジョセフさん、このお茶を飲んだことがあるんですか?」
支援!やらずにはいられないッ!続きが全く進んでいない自分に荒れている!クソッ!!
「ああ、わしの娘が嫁いだ国の茶じゃ。娘がよく煎れてくれた」
「ジョセフさんの娘さんは、東方におられるんですか……」
驚くシエスタを眺めつつ、ジョセフはカップに注がれた茶をぐっと飲み干した。
「うむ、美味い。ほら、シエスタも冷めんうちに飲んじまわんとな」
「え、あ、そうですね。それじゃ、頂きます」
シエスタも一口緑茶を飲んで、ちょっとだけ眉を顰めた。
「うーん……ちょっと、苦いような気がします。香りはいいんですけれど……」
「これはあれじゃよ、何か甘ぁ〜い菓子と一緒に食べるとバランスがよくなるんじゃ。クッキーみたいな焼き菓子なんかいいんじゃないか」
「あ、今ジョセフさんいいこと言いました! 三時のおやつにはちょっと早いですけど、固焼きのクッキーがあったはずですから持ってきますね」
そう言ってまたぱたぱたと立ち上がったシエスタが持ってきた皿一杯のクッキーがテーブルに置かれ、しばらく二人で緑茶とクッキーの相性の良さに舌鼓を打つ。
「美味しい! クッキーの甘さがお茶の渋みを和らげて、お茶の渋みがクッキーの甘さを引き立ててるような!」
「ふむ、もうちょっと砂糖を多めに焼いてもいいかもしれんな」
二人の口の中にクッキーが早いペースで飛び込み、シチューの皿も再び空になったところでジョセフは満ち足りたお腹を撫でた。
「ふー、食った食った。いやいやシエスタ、ご馳走さん」
ジョセフの満面の笑顔に、シエスタはぼっと顔を赤くした。
「いえ、そんな……」
「今日は珍しいモンもご馳走になったから、なんかお礼をせにゃならんのォ。シエスタ、何か欲しい物があるならわしに用意できる範囲で用意するぞ」
ジョセフが若くて可愛らしい娘にいい顔するのは今に始まったことではない。シエスタはルイズやキュルケ、アンリエッタの洗練された薔薇のような美しさとはまた趣の異なる、野に咲く花の様な素朴な魅力がある。
黒髪黒目でちょっと鼻が低い面立ちは、日本の少女を思い起こさせる。
「えっと、じゃあ……ジョセフさんが住んでた国の事を聞かせてほしいです」
「わしの国か? そんくらいなら暇な時にいくらでも聞かせてもいいんじゃぞ」
「うふふ、お茶のお礼にジョセフさんのお話を独り占めさせて下さい」
にっこりと無邪気な笑みを見せられては、悪い気がするはずもない。
「よしよし、んじゃたっぷり話すとするか。そうじゃなあ、わしの国でバーベキューに誘われたら要注意という話を……」
その他に激辛の菓子を取引先の店主に渡した時の話や東方の牛肉がスゲエ話をし、厨房の片隅でメイドを思う存分爆笑させて満足した。
笑い過ぎてまなじりに浮かんだ涙を拭うと、シエスタはぺこりと頭を下げた。
「ありがとうございました、とても楽しかったです。ジョセフさんのお話、また聞かせてもらえますか?」
「そりゃあもう。わしの笑い話のストックは108くらいじゃすまんぞ?」
「もし宜しければ、今度は私がお料理作りますから、あの、その……」
もじもじと両手の指を絡ませて顔を赤らめながら、上目遣いでジョセフを見た。
「私と二人で食べてもらえたら、なんて……」
「わしでいいなら喜んで」
今日も今日とてシエスタの好感度を順調に積み上げて、ジョセフは厨房を後にした。
*
「うーんうーん……火……火……」
早々とネグリジェに着替え終わったルイズは、今夜もベッドの上で悩んでいた。
しかし今夜の悩みは使い魔のことではなく、アンリエッタの結婚式で詠み上げる詔を考える為の悩みだった。
トリステイン王室の伝統として、王族の結婚式では貴族から選ばれた巫女がトリステインの国宝である『始祖の祈祷書』を手に式の詔を詠み上げる慣わしとなっている。
アンリエッタは式の巫女にルイズを指名し、オスマンを通じて始祖の祈祷書をルイズに授けた。だが指名された巫女は、詠み上げる詔を考えなければならないと聞いたルイズは、内心役目を辞退したい気持ちで一杯になった。
ルイズは頭の出来は良好ではあったが、如何せん芸術的センスや文才に関しては残念なことに不自由と言わざるを得なかった。
四大系統の火、水、風、土に対する感謝の辞を詩的な言葉で韻を踏まなければならないという高いハードルの前に、ルイズは早速膝を屈しかけていた。
ノートには線を上書きされた文章のなり損ないが何ページも連なっており、ルイズの悪戦苦闘っぷりを雄弁に物語る。
「……うう、そんな事言われても……」
詩を読んであそこがダメだここがダメだとしたり顔で評論するのは簡単だが、こうやって作る立場になってみて初めて、詩人と言うのは偉大だと痛感していた。
しかし敬愛するアンリエッタが直々に自分を指名してくれた光栄を考えると逃げ出す訳にも行かず、頭から煙を出しかねない様子でウンウン唸る以外ないのだった。
「それにしても……国宝なのよね、コレ」
ルイズはもう一度『祈祷書』を最初から最後までめくってみる。古ぼけた革の装丁の表紙からして今にも破れそうで、羊皮紙のページも色あせて茶色く変色している。一枚めくる度に破いてしまわないように細心の注意を払わなければならない。
しかしそれにしても、三百ページあるその本は最初から最後まで全部白紙。六千年前に始祖ブリミルが神に祈りを捧げた時に唱えた呪文を記したものが『始祖の祈祷書』だという伝承が残っているが、それにしたって全部白紙と言うのはいかがなものか。
始祖ブリミルの伝説所縁の品物は、『伝説』の常として各地に何冊も存在している。伝説が本当だとすれば本物は一冊だけのはずだが、所持者は全員自分の祈祷書こそが本物だと声高らかに主張している。
しえん
アルビオン王室にも当然『始祖の祈祷書』が存在していた。ウェールズに中身はどんなものか聞いた所、ルーン文字でびっしりと埋め尽くされていたらしい。
それを考えたら、全部白紙だと言うのに祈祷書でございと言い切るトリステイン王室は大した度胸だと感心してしまった。
「……まあそれはさておいて。早いトコ考えなきゃならないのが巫女の辛いところだわ……」
再びノートに向けてペンを構えたその時。
「帰ったぞー」
風呂上りの能天気な使い魔の声に、慌てて祈祷書でノートを隠した。
「ん? なんじゃそれ」
「な、なんでもないわよ」
こそこそと祈祷書の下に隠したノートを枕の下に移そうとするのは意に介さず、ジョセフはルイズの頭を指差した。
「いや、なんでわしの帽子かぶっとるんじゃ」
帽子がトレードマークのジョセフでも、風呂に行く時は帽子を脱いで行く。部屋に置いたままの帽子がいつの間にかルイズの頭の上にあった。
しかし身長195cmのジョセフと153サントのルイズでは頭のサイズも二回りほど違う為、ジョセフなら眉毛の上辺りまでしか収まらない帽子が、ルイズがかぶると両目を覆い隠すくらいになっていた。
「……そこにあったから、なんとなく」
それだけ言って、両手で帽子のつばをつかんでぎゅっと下に引き下げた。
「じゃが部屋の中でかぶっても意味ないじゃろ?」
「……いいの」
そう言うと、帽子を取ろうともせずベッドに寝転んだ。
ジョセフもそのままベッドに歩み寄ると、遠慮なくベッドに寝転ぶ。
「……何勝手にご主人様のベッドに寝てるのよ」
「昨日ベッドで寝ていいって言われたからな」
支援!
やっとここで帽子を脱ぐと、大の字になるジョセフの顔へ帽子を乗せた。
乗せられた帽子を枕元に置くジョセフの腕に頭を乗せて、ルイズは赤く染まる顔で憎まれ口を叩く。
「……いいわ、忠誠には報いるところがなければならないもの」
そう言いながらランプに杖を振り、明かりを消した。
それからちょっとの間、ルイズはまだ落ち着かなさげに寝返りを打ったりするが、やがて呼吸が静かになっていき、すとん、と意識を手放した。
規則正しい寝息を立て始めたルイズの寝顔を見ながら、ジョセフは小さく溜息をついた。
「――キャラじゃなくてもやらなくちゃならんか、な」
口の端に薄い苦笑を浮かべ、桃色がかったブロンドの髪を優しく撫でてから、ジョセフも主人の後を追う様に眠った。
*
ルイズ達がアルビオンから帰還して十日ほど過ぎた昼下がり。昼食を終えたジョセフは部屋に戻り、ベッドの上で昼寝を楽しんでいた。
ルイズの部屋にはさして物はなく、年頃の少女が住む部屋にしては少々殺風景だった。
この部屋の中で目を引く家具と言えば、天蓋付きの豪奢なベッド、一人分の衣装を収めるにはやや巨大なクローゼット、分厚い本で埋め尽くされた本棚。
他にあるものと言えば、クローゼットの横に引き出しの付いた小机があり、部屋の中央に丸い小さな木のテーブルと二脚の椅子、そして部屋の片隅に無造作に置かれたボロ毛布。
寮の一室にしてはかなり広い空間にそれくらいしか家具がないルイズの部屋は、まあ言ってみれば合理的で機能的と言うことも出来た。
掃除もハーミットパープルがあるし、洗濯も波紋式全自動洗濯ですぐに終わる。しかし主人が授業に行っている間の暇潰しに不自由することはない。
学院の探索は大体終わっているが、厨房に行けばマルトーやシエスタなどの使用人達と無駄話が出来るし、中庭に行けば日向ぼっこしている使い魔達と交流を深められる。ウェールズの部屋に行けば、かつてのアルビオンの情勢を事細かに聞くことが出来る。
しかし暇潰しの手段に事欠かないとは言え、腹も満足した上に初夏間近の陽気にやられて睡魔に襲われるのは致し方ない。
暢気にいびきをかいているジョセフを起こしたのは、扉をノックする音だった。
「……んぁ?」
気持ちよいまどろみから抜け出さないまま、寝ぼけ声で返事する。
「主人なら授業中じゃよ……」
そのまま再び眠りに戻ろうとしたジョセフに、少女の声が届いた。
「あ、あのジョセフさん! 私ですシエスタです!」
「ん? えー、あー……開いとるぞ」
寝ぼけたままのジョセフの声を聞いて、料理が大量に並んだ銀のお盆を持ったシエスタが部屋に入ってくる。
「んむ……どうしたんじゃ、何か用かな」
身を起こしながら目を擦りつつ帽子を被るジョセフに、シエスタはそばかすの浮いた頬を僅かに赤らめながら言葉を掛けた。
「あ、あの……実はですね、最近、マルトーさんにお料理の手ほどきをしてもらってるんですけど、その……もし良かったら、ジョセフさんに食べてもらいたいなって……」
所々言葉をつっかえたり視線をそこかしこに彷徨わせたりしながらも、お盆を持つシエスタの手は揺らがなかった。
「ふーむ。なかなか旨そうじゃがちょっとわし一人で食うには量が多すぎるかなァ」
最近は三食不自由しないジョセフである。厨房に行くのもちょっと小腹が空いた時に行くくらいで、本格的に食事を分けてもらう事も最近では少なくなっていた。
「あ……そうですね、ミス・ヴァリエールやお友達の皆さんと塔でお食事なされてますし……やだ、言われてみたらちょっと作りすぎちゃったかも……」
ウェールズが隠れ住む塔まで五人分の食事を運ぶのは使用人達の仕事の一つであり、シエスタもちょくちょく塔の入り口まで食事を運ぶこともある。しかし黒い琥珀に選ばれていないシエスタは入り口より上に入ることはないのだった。
張り切って作った料理に視線を落とし、肩も落としたシエスタにジョセフはニカリと笑って言葉を続けた。
「こーゆー時は逆に考える。わし一人で食うには量が多いなら、シエスタも一緒に食べりゃいいんじゃよ。な?」
落ち込んでいた顔へ、花開くように笑みが広がった。
「あ、それはいい考えです! それじゃ今からフォークとナイフ取ってきますね!」
「シエスタ、行く前に料理はテーブルに並べて行った方がええと思うぞ」
それから数分後、ジョセフとシエスタはフォークとナイフを手にし、小さなテーブルの上に所狭しと並べられた料理を向かい合わせになる形で挟んでいた。もうそろそろおやつの時間ではあるが、おやつというには本格的なボリュームのある食事である。
ジョセフがまず最初に目を向けたのは血の滴るようなTボーンステーキ。それもサーロインの方からナイフを入れていく。
大きく切り取った肉をこれまた大きく開いた口に入れ、数度噛み締めてから飲み込んだ。
「うむ、旨い! 焼き具合も肉の下ごしらえもバッチリじゃ!」
「わぁ、よかった! ジョセフさんの好物がTボーンステーキだって聞いてましたから、ちょっと頑張ってみたんです!」
「いやいや、これはマルトーの親父が焼いたって言われても疑ったり出来んぞ? どれ、他のも頂くとするか。シエスタもわしに遠慮せず食べてくれ」
そう言っている間にも、ジョセフは他の料理に取り掛かり、かなりのスピードで皿の上を片付けていく。
「うふふ……私が作った料理をそんなに美味しそうに食べてくれるのを見るだけで、満足しちゃいそうです。でも普段だとこんな立派な食事なんて食べれないですから、お言葉に甘えて食べちゃいます」
フライドチキンはフォークやナイフなんか使わずに直接手で持ってかぶりつく。油の付いた指まで舐めるジョセフの様子を、シエスタはスパゲティを取り分けながら嬉しそうに見つめていた。
「はいジョセフさん、このパスタは自信作なんですよ」
「お、こいつも旨そうじゃな。……ふむ、旨い!」
二人で食べようと言いながらも、結局テーブルの上の料理は八割ほどがジョセフが平らげてしまい、最後にデザートのクックベリーパイを残すのみとなった。
「ふー、いやホント旨かった。満足満足」
ワインを飲みながら、パイを切り分けるシエスタへ笑みを向けた。シエスタもジョセフの笑みにはにかみながら、パイをジョセフと自分の皿の上に乗せた。
「あんなに美味しそうに食べて貰えるなら作って良かったなあって思いました。で、その……もし、よかったら、でいいんですけど……」
「ん? またなんか愉快な話を聞きたいんならいくらでも話すぞ」
「あ、いえ……お話もいいんですけど、その……」
膝の上でもじもじと指を絡ませながら、落ち着かなさげに視線を彷徨わせるシエスタ。切り分けられた最初のピースをジョセフが飲み込んだ辺りで、シエスタは意を決して自分の分のパイが乗った皿をジョセフに指し示した。
「も……もし、よかったら……その、あーんってしてもらえたらなーって……。あ! お、お嫌だったらいいんです! ごめんなさい、変な事頼んじゃって私ったら……」
「おお、構わんぞ」
たっぷりと逡巡を繰り返したシエスタの葛藤が馬鹿らしくなるほど、あっさりとジョセフはシエスタの頼みを快諾した。
「そんなんでいいんならお安い御用じゃ。どれ」
あまりにスムーズに進んでいく話に一瞬呆気に取られてしまったシエスタの前から、ジョセフの手が皿を引き寄せる。
そしてフォークで小さく切り分けたパイを刺し、ニカリと笑ってシエスタへ差し出した。
「ほら、あーん」
ジョセフにとっては何気ないお遊び……というか、軽いおふざけレベルの所作だが、シエスタにとっては一世一代の決心とも言える出来事だった。
決闘騒ぎから後のジョセフは、学院で働く平民達にとっては貴族達に一泡吹かせて見せた英雄であり、特に貴族の暴虐から救われた張本人であるシエスタが特別な感情を抱くのは当然とも言える。
そんな相手が、にっこり笑って、あーん。
「え、えええええええあ、あの、心の準備が……!」
予想を上回った展開に慌てはするものの、シエスタとしても願ったり叶ったりのシチュエーションであることは間違いない。
真っ赤になった頬を両手で包み、すー、はー、と深呼吸をしてから、意を決する。
「……優しく、優しくお願いしますね、ジョセフさん」
まるで唇でも捧げるような面持ちで固く目をつぶると、あーん、と大きく口を開けた。
「そんなに身構えんでも大丈夫じゃぞ?」
ちょっと苦笑を浮かべながらも、フォークをシエスタの口へと運ぶ。
「はい口閉じてー」
「ん、む」
口を閉じて、フォークが抜かれて、口の中に残ったパイを、噛んで、噛んで、噛んで、よく噛んで、ゆっくり噛んで、飲み込む。
「…………」
「お味はいかがかな?」
「…………え、ええと」
顔を真っ赤にしたまま、上目遣いでジョセフを見た。
「……もう、一回、お願いします……」
「よしよし」
再びパイが刺さったフォークを、シエスタが口にくわえた瞬間――授業を終えて帰ってきた部屋の主がドアを開けた。
「おうルイズ、お帰り」
暢気に声を出せたのはジョセフだけだった。
ルイズは部屋に戻ってくるなり見えてしまった光景に、無意識に目を見開いていた。
シエスタは、扉の開いた音にふと向けた視線が捕らえたルイズの姿に、少女の直感が閃いていた。これは、まずい、と。
何をどうしなければならないか考えるよりも早く、シエスタは首を静かに後ろに動かして口にくわえられたままのフォークを抜き、必要最低限の咀嚼でパイを飲み込んだ。
パイが喉を通過するのを感じながら、シエスタは自分にクイズを出した。
(問題です! 今にも大爆発しそうなミス・ヴァリエールに御納得していただく方法は? 3択――ひとつだけ選びなさい。
答え1 キュートなシエスタは突如見事な弁明のアイデアがひらめく。
答え2 ジョセフさんが言いくるめてくれる。
答え3 ごまかせない。現実は非常である。
……私が○をつけたいのは答え2ですが期待はできません……。
ここに来てのほほんとしているジョセフさんがあと数秒の間に都合よく今の危機的状況を把握して『バタフライ伯爵夫人の優雅な一日』の騎士様のように不貞の現場を目撃されたのに間一髪見事な弁舌で言いくるめてくれるってわけにはいきません……。
逆にジョセフさんが何を言っても火に油を注ぐ結果になるかもしれません)
おなかにパイが落ちるまでの僅かな時間でそこまで判断を下したシエスタは、今にも滝のように流れ落ちそうな汗を必死のパッチで押し留めつつ、たおやかな微笑みを浮かべて口を開いた。
「――ジョセフさん、今日は本当に有難うございました。ちょっと余っちゃったからっていきなりこんなに料理を持ってきましたのに、全部食べて下さって……」
「ああいやいや、わざわざわしのために作ってくれたんじゃからな。ありがたく食べないとバチが当たるわい」
空気を読んでくれないジョセフの返事に、シエスタの全身からだくだくと汗が流れた。
せっかく『自分がジョセフのために頑張った手作り料理』という点をはぐらかし、『作り過ぎて余ったから食べてくれそうな人に持ってきましたよ』という流れに持っていったのに、当のジョセフがこれ以上ないくらいにぶっちゃけてしまった。
しかも、それだけでは飽き足らず。
『シエスタの口に入ったフォークで』『自分の分のパイを切り分けて』『食べた』。
俗に言う間接キス。
ラブコメの必勝形である。
これがほんの一分前に起こっていたら、シエスタの胸は甘いときめきで満ち溢れていたのは間違いない。
だがこの状況に置いてジョセフのこの行動は、破滅への道を突き進むスイッチでしかなかった。
あと数秒で大爆発するであろうルイズには目もくれず、普段から培われたメイドの技術を完全解放してテーブルの上の皿を目にも留まらぬ早業で盆の上に乗せてしまうと、わなわなと肩を震わせ始めたルイズに一礼して駆け足に限りなく近い早足で部屋を脱出した。
「おーいシエスタ、そんなに慌ててどうしたんじゃ?」
事ここに至ってもまだ、ジョセフは事態の重大さにこれっぽっちも気付いていない。
テーブルの上は綺麗に片付けられ、ジョセフが持っているフォークだけが残っていた。
入り口で立ち尽くしたままのルイズの肩が少しずつ震え始め、段々と大きくなっていく。
やっとここに至って何かおかしいということに気付いたジョセフが、フォークをテーブルに置いてルイズへと歩み寄っていく。
「どーしたんじゃルイズや」
ジョセフが声を掛けても、ルイズは答えない。
俯いたまま、肩を震わせているだけだった。
「おい、ルイズ――」
訝しげな声と共にルイズの肩に伸ばした手を、ルイズは勢い良く振り払った。
「触らないでッ!!」
「なっ……お前、いきなり何を――」
唐突な反応に声を荒立てようとしたジョセフの言葉が不意に途切れた。
俯いたルイズの頬を伝った涙の粒が、床に落ちたのを見たからだ。
「……出てってよ! あ、あんたなんかっ、あんたなんかっ……もうクビよッ!! どこにでもっ……どこにでも、勝手に、行っちゃえばいいんだわ!!」
そう言う間にも、涙の粒は次々と床に落ちて弾けていく。
しゃくり上げながらもただ拒絶の言葉だけを告げるルイズに、ジョセフは小さく溜息をついた。
「……ご主人様がそう言うんなら、しゃーないな」
部屋の隅に立てかけていたデルフリンガーを腰にぶら下げると、泣いているルイズの横を通り過ぎて部屋を出て行き、後ろ手にドアを閉めた。
閉じられたドアを涙で滲む目で睨みつけていたルイズは、遠ざかって行く足音が聞こえなくなってから、テーブルへとキッと視線を走らせた。
そこにあるのは、今しがたまでジョセフが持っていたフォーク。
荒々しい足音を立てながらテーブルに近付いたルイズはフォークをつかむと、叩きつけるように床へフォークを投げ捨てる。
それだけでは飽き足らず、澄んだ音を立てて床をはねるフォークへ力任せに杖を振り上げ、爆破した。
フォークが跡形もなく爆破されたのを確認しようともせずに早足でベッドに向かうと、枕に顔を埋めて、更に泣いた。
ただ悲しかった。ただ泣きたかった。
自分でもどうしてこんなに感情が昂ぶっているのか、少しも理解できない。
ただ、ジョセフがメイドと仲良さそうにしていて、メイドにあーんとしたフォークでパイを食べたのを目撃しただけだ。たったそれだけのことなのに、ルイズの中からは止め処なく悲しさばかりが溢れ続けていた。
何故こんなに悲しいのか理解できない。けれど、どうしようもなく悲しかった。
泣けば泣くほど泣くのは止まらなくなり、涙が出なくなっても嗚咽が止まろうともしない。
涙で湿った枕に顔を突っ伏したまま、泣き疲れたルイズはいつしか気を失うように眠ってしまっていた。
二つの月が鮮やかに輝く頃になった頃、ルイズはやっと目を覚ました。
眠気でぼやけた目で、広いベッドを見渡し――この部屋に一人きりであることをもう一度確認して……再び泣いた。
To Be Contined →
以上投下したッ!
次回もラブコメ続行な方向性。
最近暑くてろくすっぽ書けなくて死にそうだちくしょう……!
お疲れ様です!
ジョセフ・・・・
乙!
シエスタかわいいです
シエスタ可愛いなGJ!!
>>次回もラブコメ続行
グレートだ…実にグレートだぜおたく……
そんな要素一切無しで、おマチさんをイジり続ける我に1/10でいいから分けてくれ……
淫者の人GJ。
ラブコメはいいね。いいですよね。
こいつはくせぇー!!!
ラブコメ臭がプンプンするぜぇー!!!
だ が そ れ が い い (AA略
>>281 わざとなのか…っ!それはっ!!
いや、間違っちゃいなよーな気もするが…
それはともかく乙です!
隠者のとこのルイズかわいいよルイズ
他に作者さんがいないならいますぐ投下します
覚悟はいいか? オレはできてる
10話
【名前通称】ラング・ラングラー
【囚人番号】MA−13022
【罪状】殺人。通っている大学の女教授をナイフで69回刺して殺害した。
【性格、特徴】理論的に物事を考えて行動する。身体的特徴としては、手足の指の指紋が吸盤状に変化している。
【報告内容】行方不明。
金品も含めて私物はすべて室内に置きっぱなしだった上に、
脱獄が考えうるルートからは一切の異常警報は出ていないため、
脱獄の可能性は限りなく低い。
ラング・ラングラーが行方不明になった当日の昼に7−B通路で警報が発生しているが、
この7−B通路付近からの脱獄は不可能なため無関係と考えるべきである。
なお、ラング・ラングラーが最後に目撃されたのは洗濯場のカゴの中。
囚人番号FE40536、空条徐倫を襲った際に彼女の正当防衛で重傷を負っていたところを、
G.D.st.刑務所教戒師のエンリコ・プッチ氏に目撃されている。
G.D.st.刑務所――通称「水族館」データベースより。
――以上がラング・ラングラーが「元いた世界」での公式の最終報告である。
その後ラングラーがどこへ行ったのかを知る者はその世界には一人もいない。
彼と実際に戦った空条徐倫にも、彼を空条徐倫に差し向けたエンリコ・プッチにも、当然何も分からない。
ラング・ラングラーが異世界ハルケギニアに行ってしまったことなど、誰にも知る余地はなかったのだ。
ラング・ラングラーがハルケギニアに来た――いや、「召喚された」のは数か月前だ。
空条徐倫との戦いに敗れて洗濯カゴの中で気を失っていて、気がついた時には深い森の中にいた。
何故自分がこんなところにいるのか。
それをまずラングラーは考えたが、それは後で考えることにした。
まずはラングラー自身のダメージを回復しなければならなかったからである。
幸いにも命にかかわるようなダメージはなかったが、それでも重傷には変わりなかった。
そして一ヶ月後、ラングラーはようやく森を出られるまでには回復した。
後遺症は当然残った。
今までみたいに這うように歩けば関節がズキズキ痛んだし、
顔の形も少し変形してしまった。
おまけに偏頭痛だってする。
最悪だ。
ラングラーは何度そう思ったか知れない。
だが森を出てからラングラーは気づいた。
本当に最悪なのはこれからなのだと。
まず、森から街まではあまりにも距離がありすぎた。
馬なら半日の距離だろうが、当然ラングラーはそんなものを持ち合わせてはいなかった。
よって、歩かなければならなかった。
歩けば数日かかる距離を、後遺症を残した体で。
街に着いてからはラングラーはさらに絶望した。
街の文明のレベルがどうしようもなく遅れているのだ。
建物はどれも木造、地面は舗装されていないし、電信柱の一本さえも見当たらない。
西暦2011年の文明に慣れ親しんできたラングラーにとって、これは全くの予想外だった。
自分はいったいどこへ来てしまったのか。
ラングラーはそれを改めて考える羽目になった。
支援祭り
とはいえ、やはりそれを考えていられる時間はそうなかった。
名前も知らない土地、場所も知らない土地。
そんなところに一人で放り出されたラングラーが食っていく方法は、ただ一つしかなかった。
裏稼業である。
幸いにも言葉は通じたから、そうした連中の集まりに関わっていくことは可能だった。
その際に自分にインネンを付けてくる輩には「能力」で軽くヤキを入れてやればよかったし、
それさえすればラングラーはそれなりの実力者として認められた。
それがラングラーには楽しくてたまらなかった。
シャバで自分の「能力」を使い、そしてそれを称賛されるのはラングラーにとっては全く初めてのことだったからだ。
裏稼業においては、ラングラーは全く苦労しなかった。
何せ相手には自分の「能力」が見えていないのだから、まるで鴨を撃ち殺すかのように標的を殺すことができた。
「殺し屋」ラングラーはここに誕生したわけである。
そして仕事で手に入れたカネは主に自分の腹を満たすために、そしてなるべくグレードの高い宿に宿泊するために使った。
こうして何件か仕事をやっているうちに、ラングラーはあることに気付いた。
自分が同業者の恨みを買っているということに、である。
理由は簡単だ。
今まで何人も人を雇わなければ達成できなかった仕事が、
ラングラーという優秀な殺し屋一人で達成できてしまうからだ。
そうして仕事にあぶれた者は、当然ラングラーに恨みを持つ。
ラングラー自身としては、戦えば誰にも負ける気はしなかった。
だがいつ誰に襲われるとも限らない状況はありがたくなかった。
とはいえ仕事をしない、という選択肢は存在しない。
仕事をしなければ自分は食事にありつけないし、クサいベッドで寝なくちゃあならなくなる。
そこで彼は上客を求めた
自分を恨むようなマヌケな殺し屋どもが手も出したくならないような、難しい仕事にありつくために。
そのために彼はその街を出て、もっと人の集まりやすいところへ向かった。
トリステインの首都、トリスタニアに。
そして彼はトリスタニアで成功し、今ここで新たな上客と仕事の打ち合わせをしている。
場所はトリスタニアでも指折りの高級宿の一室。
ランプの明かりが揺らめく薄暗い室内で、
ラングラーとシェフィールドはテーブルの上の二枚の紙を前にして話し合っていた。
一枚は人物画、もう一枚は建物の見取り図のようだ。
「この場所から敷地に、その後ここから建物の中に侵入……そしてこのガキをゲットして学院を脱出……か」
「その通り。そして受け取りはこの場所……ここに受け取り人を寄こしておくわ」
「残りのカネは……その受け取り人が持ってるわけか?」
「そうなるわね」
「1000エキューなんて大金だ……誰かに奪われたら……シャレにならねえが」
「その点は心配いらないわ。受け取り人は相当な使い手だから、野党程度なら軽くあしらうわ」
「なら、心配はいらないか……」
「どうした? まだ何か心配ごとでも?」
「いや……この娘だが……」
ラングラーは人物画の少女に目をやる。
「わざわざ2000エキューも支払って人さらいするからには……相当な大物の娘だろう?」
「それが、何か?」
「分からねえな……だったら何故その名前をオレに話さない」
「知る必要はないよ。お前はただその娘をさらってくればいいだけさ」
「……あくまで、話さねえか。……まあ、いい。
こっちも貰うものは貰ってる……今更、商談に余計なケチつけることもないだろうしな……」
「ふふふ……その通り。まったく利口なことだね。
組み上がりかけたパズルをわざわざ壊して元に戻すことなんかない。
ピースの形の意味など分からなくても、パズルは組み上げられる……それと同じさ」
「ああ……。では、二日後か。残りの1000エキュー、期待しているぜ……」
ラングラーはそう言って部屋から出て行った。
それを見届けると、シェフィールドはおもむろに人物画を手に取った。
「トリステイン王家の『虚無』の使い手……早く当たりをつけておくに越したことはないわ。
あのお方のためにも……」
人物画の少女には、桃色のかかったブロンドの髪と鳶色の目。
少女は、紛れもなくルイズそのものだった。
そして、その二日後。
ルイズがキュルケから明日に迫った舞踏会の話を聞かされた日の、夜。
魔法灯がぼんやり光る室内で、ルイズは静かに呼吸を整えていた。
緊張のせいで、心臓がドキドキする。
握りしめた拳の中に、汗がにじむのを感じる。
粘っこい汗が、こめかみを伝うのが分かる。
一週間前の敗北のことは、何もかもをよく覚えている。
自分が感じた迷いも、ホワイトスネイクの俊敏な動作も、そして敗北の瞬間に自分が目をつむったことも。
何もかも、焼き付けられたみたいにはっきり覚えている。
だからこそもう一度ホワイトスネイクに挑みたい。
このままで、済ませたくない。
ルイズはおもむろに杖を抜いた。
そしてその名を呼ぶ。
「ホワイトスネイク」
そして待つ。
1秒、2秒、3秒……。
ごくりと生唾を飲み込んで、ルイズは振り向く。
はたして、そこにホワイトスネイクはいた。
「ホワイトスネイク」
ルイズが再び名を呼ぶ。
しかしホワイトスネイクは答えない。
じっと、カーテンのかかった窓に目をやっている。
「……どうしたのよ、ホワイトスネイク?」
「窓ハ閉メテイルナ?」
「へ?」
「窓ハ閉メテイルカト、聞イテルンダ」
「え、ええ。閉めてるわよ。じゃないと虫が入ってくるもの。……それがどうかしたの?」
「窓ハ閉メテイル……カ。ナラバ……」
「何故カーテンガ揺レテイルンダ?」
あれ、ラングの罪状ってタンカージャックじゃなかったっけ
>>293たしか罪状が二つあってどっちが正しいのかは不明だった気がする
>>293 6巻参照
言われて、ルイズははっとした。
窓は閉めてる。
だから風は入ってこない。
なのに……なんでカーテンが揺れているの?
「風ガ無イノニカーテンヲ揺ラス……力ヲ加エズニ物ヲ動カス……コレハ魔法デ可能ナコトカ?」
「む、無理よ。第一この部屋にはわたしとあんただけ。
外からカーテンだけ動かそうとすれば、窓ガラスを割っちゃうもの」
「ソウカ。ダガ私ハ知ッテイル」
「な、何をよ?」
「コレガ出来ルヤツヲ、私ハ一人ダケ知ッテイル」
そう呟くホワイトスネイクを見て、思わずルイズはゾッとした。
そこにいたホワイトスネイクは、今までのホワイトスネイクとはまるで違ったからだ。
ここには口先でルイズを馬鹿にするホワイトスネイクはいない。
何かを楽しむような様子のホワイトスネイクもいない。
凶悪な何かで、ドス黒くギラついたホワイトスネイクだった。
その姿を形容するのに、もはや悪党などという言葉は生ぬるかった。
言うなれば、邪悪の権化。
あらゆる手段をもって敵を殲滅し、食らいつくし、勝利する、
ルイズが出会ったこともないような恐るべき何かだった。
呆気にとられるルイズを尻目に、ホワイトスネイクはジリジリと窓に近づく。
「ダガソイツハココニイル筈ノ無イヤツダ。
何故ナラ――」
そう言うや否や、ホワイトスネイクはルイズの机の上に置かれた本を手に取り、
「コンナトコロニ来テシマッタノハ、私ダケノ筈ダカラナ。ソウダロウ? ――」
「――ラング・ラングラーッ!」
窓に投げつけたッ!
グワシャァァァンッ!
窓ガラスが派手な音を立てて砕け散る。
間髪入れずにホワイトスネイクは飛ぶように窓際に接近、そして――
「シャアアアアアアーーーーーーーーッ!!」
ありったけの拳撃のラッシュを、カーテンの向こう側へ叩き込むッ!
ゴシャゴシャゴシャァッ!
手ごたえ、あり。
ホワイトスネイクは胸中にそれだけ刻むと、更なるラッシュを叩き込む。
ここで、こいつを倒してしまうために。
こいつの独壇場に上がらぬために。
「うおぉっ!」
カーテンの向こう側から驚愕に震える声が漏れる。
全く予期していなかった本の投擲、そして接近がバレたと思いこみ、
すかさず仕掛けに入った瞬間を完全にカウンターで合わせられたのだ。
だがホワイトスネイクのカウンターはギリギリで凌がれた。
襲撃者が攻撃のために前に出していた手をカウンターの防御に使ったのだ。
ホワイトスネイクのラッシュが襲撃者を窓のサッシから弾き飛ばす。
相手が間合いを取った。
その意味をホワイトスネイクは瞬時に理解した。
と、同時に全速力でルイズの傍まで戻ると、ひょいとルイズを小脇に抱え、
「え、ちょ、あんた! いきなり何して」
「頭ヲ下ゲテイロッ!」
そしてドアを蹴り破って部屋から脱出を図ろうとした瞬間――
「ジャンピン・ジャック・フラッシュ!」
襲撃者が自分の「能力」の名を叫び、その力を行使した。
ドンドンドンドンドンドンドンッ!!
直後、矢のように放たれた小さな何かがホワイトスネイクとルイズに殺到するッ!
「ヌウゥッ!」
ルイズを抱えたまま、転がるようにして部屋を飛び出すホワイトスネイク。
そして素早くドアの脇へと回りこむ。
支援
支援したいんですが、かまいませんね!!
300 :
携帯スネイク:2008/07/29(火) 00:54:40 ID:7ULZc0CV
どなたか代理投下おねがいします……
バカめッ!これは支援だッ!!
「ルイズ、無事カ?」
「はぁっ、はぁっ……」
「ルイズ!」
「だ、大丈夫よ。平気。へ、平気だから……」
「ソウカ。見タトコロ怪我モ無イシナ……ダッタラソレデイイ」
それだけ言って室内へとそっと目をやるホワイトスネイク。
直後、ホワイトスネイクの鼻先を何かがかすめた。
「ッ!」
「ホワイトスネイク!」
「気ニスルナ。食ラッタワケジャアナイ……」
そういってホワイトスネイクは腕からDISCを一枚抜き取り、開いた手で自分の背中側にルイズを押しやった。
「ちょ、ちょっと、何して……」
「イイカラ黙ッテイロ……ヤツヲ始末スルンダカラナ」
そう言って強引にルイズを自分の背後に回らせる。
「だ、誰が、あんたなんか、に……」
言いかけて、ルイズはホワイトスネイクの背中を見てはっとした。
ホワイトスネイクの大きな背中に、いくつもの小さな金属の塊が深々とめり込んでいる。
めり込んだ場所にはひび割れのような亀裂も走っている。
(こ、これって……さっき、わたしを守るために?)
思わずホワイトスネイクの横顔を見る。
ホワイトスネイクの注意は依然室内に向けられており、ルイズの視線には気付いていないようだ。
(こいつ、一体何なの? 自分のためだなんて言っておいて、自分を盾にしてまでわたしを守って……)
ホワイトスネイクの真意の在り処を、ルイズは理解しかねていた。
支援だァァァ!
304 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/29(火) 01:03:19 ID:JfzHQ2B0
支援
し・・・「支援する」だなんてッ!
「くそっ……何だっつーんだ、一体……」
襲撃者――ラング・ラングラーは短く毒づいた。
この仕事は、本当ならもっと楽なハズだった。
まず窓のサッシに唾液を吐きかけて無重力化。
あとは寝て待っていればガキの部屋を含めた半径20メートルが完全に無重力化する。
あとは無重力の中であっさり無力化したガキをとっ捕まえて帰るだけ。
それだけのハズだった。
なのにあんなヤツが、よりによってホワイトスネイクが、なんでこんなところにいやがる?
あいつのせいで、こっちの計画は御破算になっちまった。
いや、そもそもなんでホワイトスネイクのヤツが自分の標的を守っている?
考えれば考えるほど、ワケが分からない。
ラングラーの理性は混乱の極みにあった。
だが――だが、とラングラーの残忍な部分が囁く。
自分の能力なら、ヤツなんか目じゃあない。
軽くぶっ殺せるハズだ。
空条徐倫のときは雲のスタンドを使う野郎が加勢していたから負けた。
雲の野郎さえいなければ楽勝で勝っていたんだ。
そして今宵の相手はホワイトスネイク一人だ。
楽勝すぎる。
負けるはずがない。
やっちまえよ、ラング・ラングラー。
お前の「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」なら何も問題ないさ。
そう囁くのだ。
「そうだ、それでいいじゃあねーか……」
果たして、ラングラーはその囁きに乗った。
何でホワイトスネイクがこんなとこにいるかは分からない。
自分と同じように来たのかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
でもそんなことはどうだっていい。
オレのスタンド「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」ならあんなヤツ楽勝だ。
肝心なのはそれだけだ。
だから、何も問題ない。
いける。
その確信と同時に、JJF(ジャンピン・ジャック・フラッシュ)が両腕を突き出してラングラーの前に出る。
そして、JJFの両腕の球状リングがグルグルと回転し始める。
ラング・ラングラー。
スタンド名、ジャンピン・ジャック・フラッシュの本体。
この世界で「魔法殺し」と称された、恐るべき「無重力」の操り手がホワイトスネイクに牙を剥く。
To Be Continued...
投下完了
しばらく悪党同士の殺伐とした殺し合いが続きますがご容赦ください。
ちなみに戦闘のプロは奇襲されたらいったん引き返して体勢を立て直すそうです。
奇襲されたのに強引に突っ込んだラングラーは戦闘のプロじゃないですね。
あとさるさんでオワタかと思いきや自力復活できました
お騒がせして申し訳ないです
ラングつながりでこういうのもたまにはいいと思う
「久々のばいばいサルさん
こういうしょうもない規制がなかったのが昔の2ちゃんねるなんだよな
今の2ちゃんねるは支援がなければ大量投下するのが難しいから困る」
ベネ(よし)
ラング対白蛇!なかなか燃える対戦カードじゃあないか
ラングラーの罪状に関してちょっと補足します
ラングラーは作中では「通った大学の女教授を69回刺して殺した罪で刑務所に入れられた」と回想していますが、
ストーンオーシャンの単行本5巻のキャラ説明ではタンカージャックが罪状になっていました
ゼロのスネイクでは作中の方を優先したわけですね
GJ!
スネイクさんはやっぱりツンデレなんでしょうかww
時に
「ルイズ、無事カ?」
が
「ルイズ、無重力?」
に見えたことは内緒だ。
GJだ!
さて、今回は無重力に対してどんな風に対抗するのか、楽しみにさせてもらうぜ!
>>310 違うんだ、ルイズの胸が垂れ下がらないのは無重力だからじゃなくて単に小さ(エクスプロージョン
>>234だが俺が
>>250とったら新作書くって言ったが…。
スマンありゃウソだった
でもどっちみち
>>250とってないんで書かないから
こらえてくれ。
白蛇GJ! 更新ペース早いなぁ。今後の展開に超期待。
>>312 HEEEEEEEEEEEY!!!!
白蛇乙!!
>>312 あんまりだああああああッ!!
ダレモイナイ デマエスルナラマクノウチ。
ねーちゃん! 今度って十分後さッ!。
317 :
使空高:2008/07/29(火) 12:34:01 ID:X2pV2t8b
一章十一節〜微熱は平静を遠ざける〜
丈のある影がひとつ、深い青色をした朝もやの中を歩いている。両腕に洗濯道具一式を携えた、
病み上がりのリキエルである。これからルイズの言いつけを謹直に守り、溜まった洗濯物を洗いに
行こうというところだった。
リキエルが決闘に敗れ、五日ぶりに目を覚ましたのはつい昨日のことである。いかに魔法での治
療とはいえ、普通であればもうしばらくの安静が必要な怪我を負ったというのに、水汲み場を目指
すリキエルの足取りはしゃくしゃくとしたものだった。ルイズの言うように奇跡でも起きたのか、
それとも本人の回復力が異常だったのか、見た目には、とても死の淵から這い上がったばかりの男
とは見られない。
とはいえそんなリキエルも、昨日一日は終始体のだるさを抱えて過ごしている。それも五日分の
寝疲れがあとを引いたらしい強烈なだるさで、起き抜けはそれほどでもなかったものが、午後を過
ぎたころには指を動かすのにさえ気力を奪われる有様になっていた。そのために、洗濯も今日に回
すことで免除してもらっている。
またそのだるさが手伝ってか、食欲もまるで湧かなかった。シエスタの運んできた食事も、リキ
エルは水以外何も口にしていない。せっかく運んできてくれたものをと、心が痛まないではなかっ
たが、入らないものはどうしようもなかった。作ってくれた人間にも悪いと思いつつ、結局手をつ
けられなかったのである。
ルイズが洗濯を免除したのは、あるいはそんなリキエルの様子を目にしていたということもある
のかもしれなかった。少なくとも、リキエルにはそんな気がしている。
辛辣な罵倒や食事抜きといったルイズの無体な行いは、率直に言えばしゃくに障るが、それらは
ルイズの、いわば質料のようなものだろうとリキエルは考えている。形相は誇り高く、そして心優
しい面もある娘だと思っているのだった。そこに多分の贔屓目の入っていることをリキエルは自覚
しているが、その目を抜きにしても、初めほどルイズに悪い印象はなかった。
ただ何はともあれ、食事抜きの宣告は生きているので、リキエルは今日も水だけで過ごすことに
なりそうだった。つまり今日の仕事は全てただ働きになり、どうやら初日よりも悪い状況に立たさ
れる羽目になっているのだが、
――水さえあれば、しばらく人間は生きていけるらしいからな、健康とか無視すりゃあよぉ。な
らなんでもないはずだよな、一日ものを食わないぐらいはなァ〜。
当のリキエルは、そんなふうに思っている。
楽観的すぎるんじゃあないか? というのはリキエルの常識的な部分が訴えていることだったが、
感覚的な部分のほうが今は勝っているようだった。熱に浮かされたような感じは、日をまたいでも
消えていなかった。
リキエルは、ときどき足もとを確かめるように立ち止まった。朝露に濡れた青草で、足がとられ
やすくなっているのだ。単に歩くだけならばいいが、こんもりと衣類を盛ったタライを抱えていた
のではいささか勝手が違ってくるようで、あるいは靴底のゴムが災いしてか、無意識に残した足は
踏ん張りがきかず蹴り上げるようになり、意図せず差し出した足も急に勢い余った。
足もとが見えず、腰の据え方が掴めないとこんなに歩きにくいものかと、リキエルは人体の不可
思議を考えさせられる気分だった。それか、あまり合理的でないとされる直立二足歩行の、その欠
点の一つを垣間見た気分である。
ルイズの部屋を出てから、リキエルは二度ほど転びかけている。自分が転ぶだけならば別段かま
わないのだが、リキエルは洗濯物をぶちまけるのは避けたかった。汚れが増えて、余計に時間がか
かり面倒というのもあるが、それよりも、できるだけ完璧に仕事をこなしたい気持ちがある。
その気持ちの中には無論、ルイズの心証をよくしようとする打算も含まれていたが、大部分は、
ルイズのために働こうとする感情で埋まっていた。使い魔でも召使でも、感謝を行動で示せるのな
ら、いくらでも務めるという思いである。
318 :
使空高:2008/07/29(火) 12:36:00 ID:X2pV2t8b
――それに……。
たいした仕事でもないのだ。掃除も洗濯も、朝ルイズを起こすことも日常生活の範ちゅうにある
もので、あるいはその延長線に沿ったものでしかない。
着替えをさせたり顔を洗ってやったりにしても、ただの雑用より少し手間がかかる程度だろう。
シエスタなどのように、この学院全体で働かなくてはならないわけでもないのだから、これらの仕
事はむしろ楽と言っていい。そんな楽な仕事くらい、間違いの無いように片付けたかった。
リキエルは何かに心を集中させれば、そのせいで何もできなくなる。だから大きなことは何もで
きないと自分で思っていた。
だが今は、小さな作業を一つずつ少しずつ、コツコツとしゅくしゅくと成していけば、何かしら
の結果が出せるのではないかとも思い始めていて、それが成長にも繋がっていく気がしていた。そ
んな平易なものではないのだろうが、遠い目で見れば何かができるようになることは、成長と言っ
ても間違いではないはずだ。
いつかまぶたが、自分の意志で上がるようになるかもしれない。パニックを起こすこともなくな
るかもしれない。今は車の運転さえできない自分でも、いずれはなんの支障も無くそれができるよ
うになれるかもしれない。そうなれればいいとリキエルは思うし、そうなろうと努力するつもりで
もいる。ルイズに課せられた雑用が、その一歩というわけであった。
頼りない足運びで水汲み場に着いたリキエルは、早速に水を汲み始めた。程無くしてタライの半
ばまで水が張り、洗濯物がだいたいまでつかる。
さて洗うかと、衣類の下敷きになっていた洗濯板を引っ張り出したところで、リキエルは動きを
止めた。水の冷たさを意識したのである。夏もまだ遠い春先であることと、朝明前の今の空気の冷
えを考えれば――もやが出て朝露が残っているほどだ――、水に手を入れることへの戸惑いも覚え
ようというものだった。
腰を下ろしてしばしの逡巡の後、リキエルは思い切ってタライに手を突っ込んだ。
「……ッ、……ッ」
案の定、指先を通り越して肘のあたりまで痺れるほどの、思わず罵声を浴びせかけたくなるよう
な冷温である。わずかに残っていた眠気も一息に飛んだ。
指先はかじかんでしまって意図した動きをせず、衣類を引っ掛けることもできない。洗濯板を支
えるのがやっとだった。リキエルは仕方なしに、指が冷水に慣れるまで待つことにする。
ほんの何度か体温を奪われるだけで、こんなに簡単に、人の筋肉は動きを鈍らせる。筋肉に限ら
ず、体温を奪われた部位は血管が収縮し良い血がめぐらなくなり、また悪い血がたまるなどして機
能が低下し、そこから病気になることさえある。
――細かいことは知らないが……たったの一度だ。体温が一度低下するだけで、基礎代謝は一割、
免疫力は四割ほどもその働きが低下するのだ。そしてそれだけじゃあないぜ。成人の平熱を仮に三
十六度とすると、一度下がれば三十五度だ。それは、がん細胞が最も活動しやすい温度ッ! ……
暇なときに読んだ本の受け売りだがなぁ〜。ん、そろそろよくなってきたぜ。
再び、人体の不可思議についてつらつら思いを馳せている間に、指の感覚が戻ってきたようであ
る。初日にシエスタから教わったことを念頭に置きながら、リキエルは洗濯を再開した。
衣類の大部分はやはりこの学院の制服で、白のブラウスとプリーツスカートの上下、そこに紺の
膝上丈のソックスを含めた一組である。ブラウスはみな同じものだったが、スカートはねずみ色と
紺色のものが半々といったところだ。
その組が、ざっと見積もっただけで七組ほどもあったが、時間は十分にあるので、ソックスもス
カートも一枚一枚しっかりと洗う。布越しに伝わってくる洗濯板の感触が、汚れを落としているこ
とを実感させるようで気味がいい。ブラウスは袖と襟を小さなブラシで擦らなければならず、地味
につらい作業だったが、流れがつかめればあとは楽だった。
319 :
使空高:2008/07/29(火) 12:38:01 ID:X2pV2t8b
残りは日数分の下着と数枚の寝巻きで、こちらは生地が華奢なせいで強くは扱えない。とにかく
破らないようにとだけ気を張った。
やがて、それらすべてを洗い終えたリキエルは、立ち上がって腰を伸ばした。
――うおぉすげーぜ。鳴ってるぞ、腰がバキボキと音をたててるぞ、慣れないことしたからだ。
何せドラム式洗濯機に放り込むだけだからな、普段の洗濯といえばよぉ。この前は量が少なかった
し、シエスタにも手伝ってもらったしよぉ〜〜。
ぐちぐちと思ったが、不快な気分はなかった。それどころか一仕事終えた達成感と、わずかばか
りの充足感も胸にあふれてきていて、リキエルは爽快な気分でもって空を仰いだ。明けに染められ
た長い棚雲が、日の方向から連連と続いている。リキエルの立つ場所からは壁にさえぎられてわか
らないが、きっと向こうの森の上まで、その尾を垂らしていることだろう。
あたりの薄闇はとっくに晴れていて、もやもいつの間にか消えている。斜めに差し込んで青草を
照らす暁光の赤みが消えれば、もう朝である。そのうち春の虫や鳥が、せわしなくそのあたりを行
き来するようになる。
リキエルに不満があるとすればそこだった。目標としては、この時間には洗濯物を干し終わって
いたかったのである。ルイズを起こすまでにはまだだいぶ余裕があったが、目標の達成とはそれと
これだ。もっと手際よくならなくてはなと、リキエルは思った。
タライの水を捨て、できる限りで洗濯物の水をはじき、それをまたタライに盛って抱え、リキエ
ルは水汲み場を後にした。
すると、すぐに見知った顔に行き会った。建物の壁に手のひらをあてて、思案気に眉根を寄せる
顔が妙に艶っぽいそのひとは、ミス・ロングビルだった。
ロングビルのほうもリキエルに気づき、そして一瞬驚いた顔になったのは、こんな時間にひとが
いるとは思っていなかったからだろう。ロングビルは眼鏡を掛けなおす仕草のあと、冷静に戻った
顔で声をかけて来た。
「おはようございます。お早いんですね、メイドたちでも、本格的な仕事が始まるまでにはまだ時
間がありますよ」
「使い魔っぽい仕事ができないってんでよォ〜、洗濯とかやらされてんスけど、それで早めに起き
たんスよ。慣れてないんで、時間がかかるだろうってなァ〜。……そうだ、ミス・ロングビル。オ
レを手当てしてくれたとか、ありがとうございます」
そう言ってリキエルは頭を下げた。本当は昨日のうちにでもそうしたかったのだが、やはり立ち
歩くことができず、かなわなかった。なるだけ早くと思っていたので、今ここで会えたのは運がい
い。探す手間も省けたというものだ。
リキエルは、ロングビルにはルイズの次か、あるいは同じくらいに感謝している。ロングビルの
応急処置がなければ、確実に身体のどこかが動かなくなっていたというのは、ルイズの説教のなか
で聞いた話しである。
自分の怪我がいかほどのものか、実をいえばリキエルにはよくわかっていなかった。この傷は軽
い、この傷はまずいといった漠然とした感覚なら持っていたのだが、実質それがどんな傷になって
いたかはわからなかったのである。ルイズやシエスタの話を聞き、あらためてその辺りがつまびら
かになると、ロングビルへの感謝の念も大きくなった。
謝辞のあと、二言三言時候の挨拶のようなことばを交わして、リキエルはロングビルに、先ほど
から気になっていることを聞いた。
「そういや、ミス・ロングビルは何してたんです? こんな時間に」
ロングビルは、ほんのわずか目を細めた。
「……早くに目が覚めたものですから、散歩でもと」
そう答えて、ロングビルはまた城壁に手を置いた。そうしてしばし口をつぐんだと思うと、出し
抜けに言った。
320 :
使空高:2008/07/29(火) 12:40:00 ID:X2pV2t8b
「ご存知ですか? この学院内にある建物の壁や扉には、いたるところに『固定化』がかけられて
いるんです。とても強力な、スクウェアクラスのね」
「固定化?」
「ええ、物の劣化を防いだり、錬金の魔法を防いだりする呪文です。宝物庫などは、盗賊に破られ
たりしないよう、特に強い固定化がかけられていますわ」
「……」
「固定化をかけたメイジよりも強力なメイジの唱えた錬金ならば、あるいは破ることも可能でしょ
うが、少なくともわたくし程度の呪文では無効でしょう」
「……」
「もっとも、固定化の他にもさまざまな魔法がかけてあるそうですから、破れるとすれば、それは
虚無のメイジくらいかしらね」
面白くもなさそうな顔で冗談を言うと、ロングビルは目を閉じて、風になびいた数本の前髪をか
きあげ、鬢のほうへ持っていった。
と、ぎゃりがりごりりと何かを削るような音がロングビルの耳にとまった。目を開けてそちらに
目を向ければ、リキエルが座り込んで、そのあたりで拾ったらしいこぶし大の石を掴み、それを城
壁に突き立てている。石と石壁の削れたカスがゆらゆらと舞い落ち、日の光を反射して、雪のよう
に白く光った。
「なにをしてらっしゃるんです?」
「……ちょっとした、ほんとにちょっとした好奇心なんだがよォ――、そいつがムンムンわいてき
ちまったんスよ」
「好奇心、ですか?」
ちらりとロングビルを一瞥して、リキエルはうなずいた。
「固定化なんていうからよォー、どんな感じなんだと思ったんだ。ダイヤモンドとか鋼玉みたいに、
ひっかいても傷一つつかないのかって思ったんです。それでためしに、こうやって削ってみたわけ
なんスけど。あんまり変わらないんだな、ただの石とよォ。普通に削れていく」
「…………」
「ん? どうかしましたか」
ロングビルが急に何も言わなくなったので、リキエルは石を捨てて立ち上がった。壁を傷つけた
ことで怒らせたかと思った。
しかし、それはどうも違うようだった。黙りこくってしまったロングビルは、先ほどよりも険し
い顔ではあったが、そのにらみつけるような視線は壁に向いていた。怒っているように見えなくも
ないが、どちらかといえば、深く考える風情である。
そんなロングビルを、こういった顔もするんだなと思いながら、リキエルはぼんやりと眺めた。
リキエルの視線に気づいたのかどうかは知れないが、ロングビルははっとしたように目を丸くし、
次いでその目をまた細め、リキエルを見返すとようやく言った。
「あ、すみませんお話中に。考え事をしてしまって」
「いや、それならオレのほうだ。先に話の腰を折ったのはこっちです」
「そうですか? それにしても……」
「え? なんですって?」
後のほうが聞き取れず、リキエルは聞き返した。
「いえ、こちらの話です。お気になさらず」
ロングビルはそれだけきっぱり言うと、挨拶も尻切れトンボにそそくさと歩いていってしまった。
こんなことが前にもあったなと思えば、一緒に昼食をとったときである。
――また厨房に行ってみるか。今日に限らず、空腹が抑えきれなくなったときによォ〜〜。それ
にしたって、たかりに行くようで気が引けるがな。
支援!
322 :
使空高:2008/07/29(火) 12:42:01 ID:X2pV2t8b
リキエルはそう思った。食事抜きの命令には基本従うつもりであるが、さっきまで頭にあった楽
観的な思考は、水に手を入れたときに飛んだ眠気とともにどこかへ行ってしまったようだった。そ
れか、考えていたことの馬鹿さ加減に、いまさらながらに気づいたようでもある。食事を抜いても
問題ないとは、心の余裕というにはどうも行き過ぎた感が否めない。
ただ、それだけでもないのである。厨房に行ってみようかという考えには、ロングビルと食事を
ともにできるかもしれないという期待も含まれていた。
なにしろロングビルは美人である。派手な顔立ちではないが目もとが綺麗で、薄く小さめの唇は
形よい。顎から頬にかけてが、見ようによっては艶っぽくもあどけなくも見えて、それが一種怪し
げな美しさに繋がっていた。一緒に食事をとってみたい程度には、リキエルの下心も頭をもたげる。
――運がよけりゃあってことだがな。
いいわけめいたことをリキエルは考えた。厨房で食事することはあくまで仮の話で、事実それほ
ど期待しているわけでもなかったが、しかしそんなふうに考えてみると、自分がそのことに執着を
抱いていたようで、複雑な思いがする。
なにか鼻白んでしまい、これ以上考えても興がさめていく一方な気がして、リキエルはさっさと
仕事を終わらせようと思い直した。
朝の仕事は洗濯だけではない。いま抱えている洗濯物を干したら、もう一度、ルイズの顔を洗う
ための水を汲みに来なくてはならない。それからルイズを起こし、顔を洗い、着替えをさせるのだ。
そうやって思考をそらせながら、リキエルは女子寮に戻ってきた。
そして静かに寮に入り、階段までたどり着いたときである。ふと視線を感じて顔をあげると、虎
ほどもある大トカゲにじっと見つめられていた。
「……」
腹は白く背と四肢は赤い。ゆらゆらと揺れる尻尾の先には火が燈り、まだ薄暗い寮の廊下に、不
気味な陰影を作り出している。縦に割れた瞳孔は、やはりこの薄暗い中では気味が悪い。この前の
授業のときに見かけた、キュルケの使い魔と思しき火トカゲである。
トカゲはひとしきりリキエルを注視すると、満足したのか、きゅるきゅると妙に愛らしい鳴き声
を残して、のそりと体を返した。キュルケの使い魔というのが当たっているなら、主人の部屋へと
帰ったのだろう。
――でかいと一瞬思ったが、そうでもないかもしれないな。世界一でかいトカゲはどれくらいだ
ったかな。たしか五メートル近いんだったか……平均はもっと小さいんだっけ?
どうでもいいことを考えながら、リキエルはトカゲを見送った。見送ってから、自分もルイズの
部屋へ戻る途中だったのを思い出して、トカゲを追う形で階段を上がった。そう遅れたとも思えな
かったが、トカゲは外見に似合わず俊敏だったようで、影も形もなくなっていた。
足音を極力殺してルイズの部屋まで来ると、リキエルはこれも音がたたないよう、ドアノブを回
してから扉を押し開いた。
◆ ◆ ◆
その朝から、また数日がたっている。その数日は特に問題もなく、リキエルはやれと言われた仕
事は実直にこなしたので、初日以降、丸一日食事抜きといった憂き目にはあっていない。少しずつ、
ここでの生活にも慣れてきていた。
洗濯以外の朝の仕事は、リキエルの考えていた以上に楽な仕事だった。
ルイズは低血圧のようで、朝起き上がってしばらくはぐにゃぐにゃとして生気が感じられないが、
洗顔のためにリキエルが水を手にすくって差し出せば、緩慢ながらにちゃんと顔を突き出すので、
一応目は覚めているらしかった。
323 :
使空高:2008/07/29(火) 12:44:01 ID:X2pV2t8b
唯一の懸案だった着替えも、ショーツはルイズが自分でつけるので、さしたることもない。ただ
リキエルの驚いたことに、どうやらこの世界にはブラというものがないらしく、つまりは上半身裸
体の若い娘にシャツやらを着せ、ボタンまで留めなくてはならないのだった。
しかし終わってみれば、こちらもあっさりと済んだものである。ルイズの起伏に乏しい体は、肌
の細やかさを勘定に入れても、白く可憐だと思えこそすれ、欲情できるような代物ではない。どの
みち、ファウンデーションなどは必要としない体形だったというのが、リキエルの感想である。
自分は召使ではなく本当に使い魔なのだなと、リキエルが感慨じみたことを思わされたのは、こ
ちらに来て一週間にしてようやくありついた、最初の朝食のときだった。
まず、床に座らされたことだ。
ルイズの後ろについて入った食堂は相変わらず人が多く、リキエルはやはりどうしても辟易して
しまうが、それはもう割り切るしかないことだと、憮然として椅子をひいた。そこにルイズを座ら
せ、自分も隣の席に腰掛けようとする。
と、ルイズが咎めるように睨んでくる。なにかと思っていると、ルイズは視線を動かさずに床を
差した。
「あんたは使い魔だから、床」
さきの授業でも同じ扱いを受けたが、さすがに食事まで床というのはどうなのだとリキエルは思
った。だがすぐに、まだ学校に通っていた頃、どんな人間が歩いたかもわからない、見た目にも綺
麗とはいえない階段などに腰を下ろして、手掴みでサンドウィッチを食べることがあったのを思い
出した。不承不承、リキエルは床に座り込んだ。
そこにはルイズが用意させたのか、すでに食事が用意されていた。無論、貴族たちに出されるよ
うな豪勢なものではなく、一汁にパンともう一品といった具合の粗食である。見方を変えれば朝食
としては十分な量だが、床で食べるということもあって、ことさらに粗末な感じがした。なるほど
使い魔の食事だなと思った。
他にもこの数日で、いろいろと勝手のわからないものに悪戦苦闘したり、小さな失敗を繰り返し
たりがあって、それでもなんだかんだこの世界に順応している自分に、リキエルはふとした拍子に
気づくのである。
それは部屋の掃除中、ベッドの下から、ルイズが魔法を失敗したらしい穴だらけの制服を見つけ
たときや、偶然に顔を会わせたシエスタと、歯を磨く時に上と下のどちらから手を出すかで話し込
んでいるときだったりする。大抵が平和を感じるときで、そんな平和がいつまでも続けばいいとリ
キエルは思う。
だがそういった願いがかなえられることは、往々にしてないものである。
「『我らの剣』が来たぞ!」
厨房に入ったとたん響いたどら声に驚いて、リキエルは小心者のように身をこわばらせた。でき
ればここの厄介にはなりたくなかったので、真実肩身の狭い思いもあった。まして今は、星の瞬く
宵の過ぎだ。
それでいて、なぜリキエルが厨房に来ているのかといえば、今朝方ルイズに食事抜きを宣告され
たからである。その理由は単純といえば単純で、ルイズにあてられたらしい手紙を、偶然見てしま
ったからだった。
日課になりつつある朝の洗濯から帰ってきたリキエルは、すでに起きて、ベッドに座って窓のほ
うを向いているルイズと、机の上の羊皮紙に目を留めた。羊皮紙は一見してそう新しいものではな
く、幾度も読み返したあとも見て取れた。
リキエルに気づき、その目が羊皮紙に注がれているのがわかると、ルイズは慌ててベッドから飛
び降り、羊皮紙をしまった。リキエルが内容を気にする間もなかった。
それからルイズは、青い顔でリキエルを見た。寝不足なのか、目は赤くなっていた。
324 :
使空高:2008/07/29(火) 12:46:01 ID:X2pV2t8b
「主人の手紙を勝手に読むような使い魔は、ご飯ヌキ!」
朝食と昼食を我慢し、その後もルイズの部屋の掃除やそこらを歩き回ったりで気を紛らわせるリ
キエルだったが、日が落ちるころになって、急にひどい空腹に見舞われた。初めはそれにも耐えよ
うと、ごまかしごまかし頑張ってみたのだが、逆にそれが悪かったのか、気づけば足がふらついて
いた。こりゃあまずいぜと、リキエルはその段になってようやく、厨房に食事しに行くことを決心
したのである。
「おう! 『我らの剣』! お前が来るのをいまかいまかと待ってたんだ。どうした、腹が減った
か? そうなんだな? ええ、おい? いくらでも食わせてやるぞ、貴族連中に出してるのと同じ
ものをな!」
また聞くからに豪快な音声とともに、調理場の奥からコック長のマルトーが、その声に見合った
太い体を揺すりながら顔を見せた。マルトーは貴族嫌い魔法嫌いで有名な男だが、それさえなけれ
ば普段は気のいいおやじである。その嫌い云々にしても、どうやら選り好みする向きがあった。
リキエルは、マルトーと一度だけ顔を合わせている。この前の食事のときである。時間が昼食時
だったから、当然マルトーも右へ左の忙しさの中にあって、ほんとうに顔を見合わせるだけであっ
た。それでコック長とわかったのは、あとでシエスタにそう言われたからだ。つまり二人の間に、
ちゃんとした面識はないのである。
それというのに、マルトーの態度はどうも馴れ馴れしかった。
マルトーは困惑しきりのリキエルをぐいぐいと引っ張って、この前と同じ席に座らせた。そして
調理場に引っ返すと、またしばらくして戻ってきた。手にはシチューの皿とパンの乗った、銀のト
レイがあった。シチューは野菜と鶏をふんだんに使ったもので、見た目はクリームシチューよりキ
ャセロールに近い。
それをリキエルの前に置くと、マルトーはリキエルの対面にどかりと座った。
「こんなおやじの給仕で悪いが、なに、そこを差っぴいても味は保障する。さあ食え!」
「いやしかし――」
「遠慮なんかいらんぞ、リキエル。お前は我らの剣なんだからな!」
「その……我らの剣ってのはいったいなんです? いや、それよりも名前だ。なんで知ってるんで
すか? お互い、自己紹介はなかったと思うんだが」
「うん? おうおう、まあそれは食いながらでも聞いてくれ」
それもそうかなとリキエルは思い、シチューに手をつけた。我慢の限界だったというのもあった。
遠慮する気持ちは、とっくに空腹に白旗を揚げている。
――うまい……。
のだろう。リキエルにはよくわからなかった。頭では理解できているのだが、体がついていかな
いのだ。舌が肥えすぎるとうまいものしか食えないというが、逆に貧弱だと、格別うまいものがわ
からないようである。とてもうまいのだという感覚だけがあった。
損した気分になりながら、リキエルは手を進め続けた。
黙々と食べるリキエルを見て、マルトーは満足そうに笑った。
「『我らの剣』というのはだ、お前につけられたあだ名のこった。なにせお前は、この学院にいる平
民の間じゃ有名人だ。貴族と渡り合った平民だってな!」
リキエルは手を止めて言った。
「だがオレは負けたぜ。それに渡り合ったといってもあいつは、ギーシュはメイジの中じゃ力は弱
いとも聞いた。ドットだってな。一番低いクラスらしいじゃあねーか」
「それにしたって、普通はやりあおうとも思わないだろうが。しかもお前、ゴーレムを切り裂いた
んだろ? ボロボロの体でよ!」
「……」
「剣の腕前もそうだが、その根性は大したもんだ!」
325 :
使空高:2008/07/29(火) 12:48:01 ID:X2pV2t8b
べたべたと褒められて、リキエルは背中がかゆくなってきた。
確かにあそこまで動けるとは、自分でもいまだ信じられないくらいだったが、そうしようと動い
たわけではなく、なぜか動けてしまっただけである。それに根性というが、あのときは前後無思慮
で突っ込むことしか頭になく、決して褒められるべきものでもなかったとリキエルは思う。
リキエルはその思いを吐き出した。
「体が動いただけだがな、ほとんど勝手にだ。剣にしてもよぉ、握ったのはあのときが初めてだ
し、それで戦おうってわけでもなかった」
それを聞いたマルトーは感動の面持ちになり、厨房で皿を洗っている幾人かの手下に向かって、
自慢の大声で呼びかけた。
「お前たち! 聞いたか!」
「聞いてますよ! 親方!」
「達人は貴族どものように、むやみに己の力を誇らない!」
「達人は誇らない!」
厨房のなかに、変な熱気が生まれている。
どうもこの勢いにはついていけそうにないと、リキエルは巻き込まれる前に適当な話を振って、
話題を変えてしまうことにした。
「その話はこれくらいでいいんじゃあないですか。そんなことよりマルトーさん、どうやらメイジ
が嫌いみたいだな、さっきから聞いてるとよォ――」
マルトーは、見ていて面白いくらいに食いついてきた。わざわざ椅子から立ち上がって、拳まで
握り締めている。
「おうよ! あいつらの魔法は確かにすごい、平民にはまねできない芸当さ。だがな、そんなもん
はえばりくさるだけの理由にはならなねぇ。言ってみりゃあ、こうやって料理することだって誰に
でもできるわけじゃねえ、いわば魔法だ、な? そうだろうが?」
「あ〜、まあそうだな」
本当を言えば、リキエルはそれほどメイジに対する嫌悪は持っていない。
それは、リキエルがこの世界の人間ではないからでもあったが、魔法の力で生きながらえた身と
しては、その有用性は認めるほか無く、少なくとも嫌うことはできそうになかったのである。ルイ
ズの錬金やギーシュのワルキューレのせいで、『土』系統の魔法に限り、できれば見たくないぐらい
の意識だった。
しょうがなしといえばマルトーにも貴族にも悪いが、いまは話題を固定させるためだけに、リキ
エルは話をあわせていた。
「そりゃあ立派な魔法だと思うぜ」
「いいやつだな! お前はまったくいいやつだ!」
「ただ疑問もわいた。ちょっとした疑問はなぁ」
「疑問? なんだ、言ってみろ」
「ミス・ロングビルのことなんスけど」
これは本当に聞きたかったことである。聞いてどうするでもなく、単なる好奇心からの疑問だが、
シエスタの貴族への怯えようを目にして、かねてより疑問に思っていたことでもあった。
「あの別嬪の秘書さんか」
「メイジ嫌いというのならよぉ――、彼女を出入りさせてるのは少し解せないな」
「おお、そうか。お前は知らないのか。あのお嬢さんはな……ん? どうした、お前」
話しこむ体勢になったマルトーが、不意にリキエルから視線を外して、その後ろの窓を見て言っ
た。つられて振り向き、リキエルもそいつに気がついた。この前、観察するように自分を見つめて
きた例の火トカゲが、同じように自分を見ている。
サラマンダーは気づかれたと知ると、挨拶するみたいにぼぼと火を吐いて、夜闇の中いずこかへ
と去っていった。
326 :
使空高:2008/07/29(火) 12:50:01 ID:X2pV2t8b
「そういやあ、もう真っ暗なんだったな。そろそろ暇するか」
残りのシチューをかきこんで、リキエルは立ち上がった。遅くなりすぎて、またぞろルイズの気
にでも障ればまずい。ロングビルの話も、マルトーの態度を見れば長くなりそうだったので、また
今度の機会にしたほうがよさそうだ。
厨房の出入り口で、マルトーは名残惜しそうな顔をした。
「ふうん、もう帰っちまうか。明かりがいるか?」
「いや、女子寮はそう遠くもないし、大丈夫じゃねーかな」
「そうか。ま、来たくなったらまたいつでも来い」
リキエルは礼を言って厨房を出た。空にはいつの間に出たか薄雲がかかっており、来るとき散ら
ばっていた星はみな隠れ、二つの月も朧だったが、それでも歩く分には十分な月明かりを放ってい
たので、やはり手明かりは必要なかった。
一応夜に目を慣らしてから、リキエルは道を急いだ。
女子寮に帰ってきたリキエルだったが、ルイズの部屋には鍵がかかっていて、入ることができな
かった。閉め出されるようなことはしていないはずだと、扉を叩いたりノブをがちゃがちゃとやっ
てみたのだが、なんの反応もなかった。
リキエルはその場にたたずみ、目を閉じて頭をかいた。もう夜は更けて、いまはだいぶ冷え込ん
できている。石造りの寮の廊下は相変わらず冷たく、部屋と違って板が敷かれていない分ひとしお
だった。それが足の裏を通って、全身へと回り始めている。凍えるようなことはないだろうが、こ
のままじっとしていたのでは耐えがたい。
どうしたものかと思っていると、なにやら足もとが温かくなってきた。目を開ければ、あのサラ
マンダーが服を引っ張っている。
「なんだ、なにかオレに用か? それともそれは習性か? お前らには人間の服を引っ張る習性で
もあるのか? なんでもいいが、離してくれるとありがたいんだがな」
火トカゲは知ったことかとでもいうように、いっそう強い力で引っ張ってくる。決闘でところど
ころ傷やらほつれのできた服が、このままではもっと傷むか、悪くすれば破られかねない。着替え
がないのでそれは困るし、なかなか気に入りの服でもあるから、リキエルは引かれるに身を任せる
しかない。
ところが、サラマンダーの目指す先はどうやら隣室、キュルケの部屋である。部屋の扉が、人一
人が入れるくらいに開いていた。そこを目指すということは、やはりこのサラマンダーは、フレイ
ムとかいうキュルケの使い魔だったのだ。
――やべーぜッ、こいつはッ。
この世界に来た日の、その夜にあったことをリキエルは思い出している。キュルケとルイズが隣
同士なのはそのときに知り、ルイズがキュルケを悪しく思っているらしいことも知った。何の用が
あるのか知らないが、キュルケの部屋にはなるだけ入りたくない。百が一にもルイズにその場を見
られれば、小さくない咎めをうけるだろう。
しかし、無情にもフレイムは服を引くのをやめず、リキエルが少しそれに抵抗してみれば、服の
裂け目も少し大きくなった。部屋に連れ込まれるのは、もう避けようがなさそうだった。
引ききられて、リキエルはとうとう部屋に入ってしまった。室内は明かりが落としてあって、開
け放した窓から入るわずかな光のおかげで、なんとか部屋の壁が確認できるくらいである。その光
も、雲が濃くなりはじめたと見えて、だんだんと明るさを失い、それに反比例して、室内の闇はよ
り色濃くなっていく。
支援祭り
支援
支援だッ!
C-EEEN
しえん
332 :
使空高@代理:2008/07/29(火) 13:18:47 ID:ClyTT/Th
好きな人間もあまりいないだろうが、こういう暗闇がリキエルは好きではない。受け付けないと
言い換えてもいい。目を開けているのに何も見えない状態が、パニックの発作を起こして、意志と
無関係に両のまぶたが下り、上げようとしても上がらないときの暗闇と絶望感を、いやがうえにも
思い起こさせるのだ。
窓の脇のカーテンが揺れて、涼しいというより冷たい風がリキエルの顔に当たったが、リキエル
は汗を握り締めていた。連れ込まれる焦りからかいた冷や汗ではない、かくだけで気分の悪くなる
汗である。もっとはやく目が慣れないかと、リキエルは目頭をもんだ。
「扉を閉めて?」
闇の中に人の気配が動いて、その気配から声がかけられた。記憶が確かならば、まさしくキュル
ケの声である。
「…………」
リキエルは動かなかった。これが誰か他の人間に言われたことであれば、特に断る理由もあるま
いと思い、その通りにしたかもわからないが、この場合、場所と人間がどうにも悪い。
それに今リキエルは、キュルケにちょっとした反感を持っている。ここ最近は沈静化していた発
作が、こんなことで出てしまうかもしれない、わざわざこんな場所に連れ込みやがってという、八
つ当たり的な反感である。勝手な話だが、そうでも考えていなければ、雪だるま式にストレスが重
なり、本当にパニックになりかねない状態だった。
――自分で閉めたらどうなんだ。どうせ、自分で開けたのならよォ――ッ。
そんなリキエルの胸のうちにある反感に、夢にも気づけるわけはないが、キュルケはリキエルに
扉を閉める気がないことは悟ったらしかった。
「……いいわ。まずはこっちにいらっしゃって」
声には出さないが、リキエルはイライラとして言った。
「まず? それは違うぜ、『まず』オレにどんな用があるんだ?」
「それもこっちで話すわ。さ、いらっしゃい」
「オレは鳥目ではない。こんなふうに右目が下りてしまってはいるが、特に夜盲症とかってわけじ
ゃあないのだ。だが見えないぜ。こんな暗い中にいたんでは、足もとだって見えやしない。明かり
くらいは点けてもらわないとな、来いと言うのならよォ〜〜」
「まあ、気がつかなかったわ」
変にわざとらしく明るい声音で、キュルケは言った。
次に、手をたたいたか指を弾いたかする音がした。すると、リキエルの足もと付近からキュルケ
の立っている場所に向かって、ロウソクが滑走路の誘導灯のように火をつけた。ぼんやりと部屋が
明るんだことで、リキエルはほんの少し気分が楽になったが、この場にいる以上、ストレスがつの
っていくのは止まりそうになかった。
闇の中に浮かび上がったキュルケは、レースのベビードールそれ一枚という扇情的な姿をさらし
ていた。もとのプロポーションがグンバツにいいキュルケがそういった格好をすると、ともすれば
学生であることを失念させる、年長けた女の色気とでもいうべきものがにおい立つ。
ロウソクの演出といいリキエルを見つめる濡れた双眸といい、男を絡めとる手練手管というもの
を、キュルケはよくわかっていた。
だがリキエルは、それに誘われはしなかった。誘惑されるほど、心に余剰がないのである。そし
て、そうやってある意味冷静な目で見てみれば、なるほどキュルケは肉付きのよい張りのある体で、
通った鼻筋や瑞々しい唇にも魅力があるが、逆にそういった若々しい部分が、大人っぽい色気の妨
げにもなっている。所詮まだまだといえた。
リキエルは半分だけ距離を詰めた。
「それで、オレになんの用だ。それを聞いてから決めさせてもらうぜ、近づくかどうか」
ゆったりとした動きでキュルケは腕を組んだ。胸が少し持ち上がり、あらためてその大きさが強
調される。
333 :
使空高@代理:2008/07/29(火) 13:21:32 ID:ClyTT/Th
悲しげに目を伏せて、キュルケは言った。
「あなたは、あたしをはしたないと思うでしょうね」
――まともな服を着たらどうなんだ、自覚あるならよォ――。
「思われても、しかたがないの。わかる? あたしの二つ名は『微熱』」
――というかどうなんだ、疑問文にこんな返しってよォ――。
「こんな風にお呼びだてしたりして、いけないことだってわかっているの。でもあたし、恋してる
のよ、あなたに。恋はまったく、突然ね」
――恋ってどういうことだ、わざわざオレなんかによォ――。
「あなたがギーシュと決闘してる姿、あの啖呵、凛々しかったわ。あたしね、あれを見て痺れたの
よ。そう、痺れたの! 情熱なの! あああ、情熱だわ!」
――見てたのか、なら助けてくれてもいいだろうがよォ――ッ!
「二つ名の『微熱』はつまり情熱なのよ、ってあれ? どこに行くの!?」
踵を返して、リキエルは扉に向かって歩き始めていた。足取りは重い。
何か別の用件ならば、リキエルは聞かないでもない気になっていたが、自分に懸想しただなんだ
という話なら別だった。部屋に入ることさえ懸念しなくてはならないのだから、キュルケと恋仲に
なればなどと、考えたくもない。しかもそれが、明らかに一時の感情の揺れによるものなら尚更で
ある。純な感情と言えなくはないが、そこが冗談よりたちの悪い部分とも言えた。
扉の前にはフレイムが伏せていたが、関係ない、出て行く。とにかく早々にここを立ち去らない
と、どんどん面倒なことになりそうなのだ。なによりリキエルは息が苦しくなってきており、これ
以上ストレスがかかるのはまずい予感もあった。
しかし恋に身を焦がしたキュルケとて、そう簡単にリキエルを逃がす気はないようで、すぐにそ
の腕にすがりついた。
「待って! 本当に恋してるのよ! あの日から、授業中でも夢の中でも、ふとした時にはもうあ
なたのことを考えてしまっているの! 恋歌を綴ったりもしたわ! こんなふうにみっともないこ
とをしてしまうのだって、リキエル、あなたの所為なのよ!」
リキエルは動きを止めた。キュルケの言葉に心を動かしたわけではなく、腕を掴まれた拍子に息
が詰まり、完全に呼吸ができなくなったのだ。
そこに、である。
「キュルケ!」
その声を聞き、跳ね上がった眉を目に留めて、リキエルは血の色を失った。思考がまとまらず、
一瞬目の前の娘の名前が頭から消えて、それがまた戻ってくると、体中から汗が噴き出した。腕に
組み付かれているという、かなり嫌なタイミングで、ルイズに目撃されてしまっていた。
ルイズはリキエルを見もせずに、キュルケに向かって声を張った。
「ツェルプストー! 誰の使い魔に手を出してんのよ!」
「あらヴァリエール、ここのところ放課後に見ないけど、どうかしたの?」
「あんたには関係ないわよ! それより何してるのか聞いてんの!」
「しかたないじゃない、好きになっちゃったんだもん」
リキエルの腕に絡めた手を外して、キュルケは肩をすくめた。
ルイズはそんなキュルケを一際強く睨むと、その視線をようやくリキエルへと向け、短く切りつ
けるように言った。
「来なさい」
言われずともそうするつもりだったのだ。リキエルは荒い息で力の入らない足を動かし、つんの
めりそうになってよろけ、ロウソクを二、三本けり飛ばした。転がってきたロウソクに驚いて、寝
転がっていたフレイムが飛び退いた。
部屋を出てルイズのそばに立つと、ようやく汗がひいてきた。
334 :
使空高@代理:2008/07/29(火) 13:24:23 ID:ClyTT/Th
「あら。お戻りになるの?」
息をつくリキエルにキュルケが言った。
振り返りもせず、リキエルは手を振ってそれに答え、さっさと歩き出しているルイズの後に続い
た。淡白にすぎるかもしれなかったが、声を出せるような状態ではなく、挨拶するのもおっくうで
仕方がなかった。
部屋にいたのはものの五分くらいだったろうに、リキエルはどっと疲れていた。
ルイズの部屋に戻ったリキエルは、それでも心休まりはしなかった。キュルケの部屋で何をして
いたのか、多分その弁明をしなくてはならない。だがトカゲに引っ張られて仕方なく、などという
言い分がはたして通るものかは、たとえば自分がそう言われたとしても疑問だった。
どんな言い訳をすればいいかリキエルは模索したが、うまい説明のしようはなかったし、いい嘘
も考えつかなかった。
「リキエル」
頭をかかえていると、ベッドに腰を下ろしたルイズが不機嫌な顔で話しかけてきた。罵倒がくる
か叱責がとぶか、はたまた飯を抜かれるか。三つ目が一番こたえるなと思いながら、リキエルは片
目を向けた。
「顔色が悪いわよ、またパニックなんて起こさないでよ」
「……」
思わずリキエルは身構えていたが、ルイズの言ったことは、激しく予想と違うものだった。まず
詰問されるくらいは順当な流れとリキエルは考えていたので、聞きようによっては身を案じるよう
な言葉をかけられたことで、肩透かしをくらった印象もある。別に、ルイズは怒っているわけでも
何でもないのだろうか。
しかしそうすると、ルイズがこうして不機嫌そうにしているわけがわからなかった。朝の手紙の
件をまだ根に持っているのかとも思ったが、それなら罰を増やすとか、もっと直接的なことをして
くるはずだ。
その思考が顔に出たか、ルイズはぶすっと顔をしかめて、わずかに身を乗り出した。
「あによ、ヒバリの声で鳴くカラスを見るような顔して」
「正直に言えば、てっきり怒っているものだと思ってたからな。キュルケとは折り合いが悪いみた
いだからよォ――、そんなキュルケと使い魔が一緒にいて、怒り心頭じゃないかってな」
「勿論よ! あああの色狂い人の使い魔にまで手を出して! あの下品で甘ったるい声ったらない
わね、扉が開いていたから廊下にまで聞こえてきたわよ! だからあんたを引き止める、惨めな懇
願も聞こえてたのよ。ふんッ、あれはいい気味だったわ!」
だいたいリキエルにも飲み込めた。
どうやらルイズは、キュルケに言い寄られてもリキエルがなびかなかったのを知り、そのことで
多少は溜飲が下がったので、リキエルをとがめだてする気はないということらしい。それでも癇に
障るものは障るので、不機嫌になっているようである。
「お風呂に入ってさっぱりしてきたあとに、あんな声なんか聞かされてぇ〜〜! せっかくとれた
疲れもなんかまた戻ってきたわ、やんなるわね!」
言われてようやく気がついたが、ルイズの髪はしっとりと生乾きだった。石鹸と洗髪料の香りも
漂ってくる。柚子やオレンジのような柑橘系の香りで、あまりきつい感じではない。なるほど、リ
キエルが部屋に帰ってきたとき、ルイズは大浴場で湯を浴びていたのである。
締め出されたことにはそういうわけがあったのだ。
――……ん?
「もっと早い時間じゃあなかったか? いつも風呂に入るのは」
335 :
使空高@代理:2008/07/29(火) 13:27:30 ID:ClyTT/Th
ルイズは大抵、他の生徒たちと同じ時刻に風呂に入る。
それが今日に限って妙に遅かった。いつもどおりにルイズが風呂に入っていれば、そもそもリキ
エルが締め出しを食うことはなかった。
「どうかしたのか?」
「別にどうもしやしないわよ、そんな気分だったの」
ルイズは素っ気なく答えた。
「そうか」
「それよりあんたのことよ」
「オレの……? 何がだ」
「この時間なら、多分見たほうが早いわ。こっち来て、カーテンの隙間からキュルケの部屋を見て
みなさい」
言われたとおり、リキエルは窓辺に立ち、外を覗いてみた。すると、なかなかにとんでもないも
のが目に飛び込んできた。
まずハンサムな男が、キュルケの部屋の窓まで飛んできた。そのすぐあとに精悍な男が飛んでき
て、ハンサムな男と言い合いを始めた。どうやらあの二人は、キュルケに想いを寄せたか寄せられ
たかの男たちらしく、手違いがあったのか、逢引の時間が重なったようである。まかり間違えば自
分もあの二人と同じ立場かと、リキエルは眉をひそめた。
だがそれは、まだ序の口だったのである。
二人の男が口論しているところに、なんと今度はいっぺんに三人の色男が飛んできて、全員で揉
めだした。皆に今晩キュルケとの約束があり、皆が時間をかぶらされたということらしい。ここま
でいい加減な話もそう無い。
とうとう一人が杖を抜き、他の四人もそれにならい、いっせいに地面へと下りていった。そのあ
とはかなり悲惨な権利争いが幕を開け、精悍な男が杖も使わずに四番目の男を殴り飛ばしたあたり
で、リキエルは観戦をやめた。
疲労のこもったため息をつくリキエルに、ルイズが言った。
「わかったでしょ? キュルケがあんたに惚れてるって噂が立てばどうなるか」
「あの男どもの恨みを買うか。わかりたくもなかったがなぁ〜〜、こんなことはァ」
「ほんと厄介なことになっちゃったわ。それもこれもあのツェルプストーが……! ああもうだめ、
やっぱり疲れた。わたしもう寝る」
そう言うや、ルイズはぽいぽいと制服を脱ぎ捨てて、愛用のネグリジェに着替え終えたところで
ベッドに倒れこんだ。そして最後の力を振り絞って指を鳴らし、部屋の灯りを消した。机の上のラ
ンプだけが、小さく灯りをつけている。
このランプは、リキエルがルイズに頼み込んで、こういう月のない夜にはつけてもらうようにし
ていた。リキエルの発作を知るルイズは、睡眠の妨げにならない程度ということで了承してくれて
いる。
すでに深い眠りに落ち込んでいるルイズに布団をかけてやりながら、リキエルはその常夜灯を見
つめた。暖かなはずの光が、今日はなぜか、変にくどくどしい。
リキエルは目を背けるように窓の外を見た。うすぼんやりとした光が、かろうじて月明かりとわ
かる。当たり前だが、星は見えなかった。
336 :
使空高@代理:2008/07/29(火) 13:29:40 ID:ClyTT/Th
603 名前:使空高 投稿日: 2008/07/29(火) 13:00:28 ID:o5O3.CNw
投下終了。ほんとたびたびすいません。もっと短くしたほうがいいな……。
精神がハイでもロウでもないリキエルって掴みにくい。
>>316げげっ、気持ち悪いど。
代理投下完了
GJ!
ジョースター以上に成長していく主人公だなぁw
やっぱりフーケイベントはあるのかな
仲良くなっているだけこのあとどうなるか楽しみ
投下乙です
初期キュルケは相変わらずろくでもないなw
リキエルは本当に地道に人間関係も行動も成長していってるようですね
先は長いし困難は多そうだがガンガレと応援したくなる
向上していくリキエルには感動の余り泣けてきます。
めざせ! リキエル! 『空高く』!
「体温の低下」って所で思わずぞくっとしたぜ!GJ!
使空高きたあああ!!
読めば読むほどドキドキする!
もう本当に「読ませてくれて」「書いてくれて」
ありがとうって感じです!
これからもずっと応援してるよ!
24時間書き込みなし?
時止められてるんじゃね?
ボス、DIO、承り、久々に頑張りまくったのか。
にしても、雑談もないのはやっぱりちょいと寂しいな。
…雑談といえば、醤油ティッシュの人とかまだ見てるのかな。
徐倫!徐倫!徐倫!ジョッリィィイイイヒヒィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!!
あぁああああ…ああ…あっあっー!あぁああああああ!!!徐倫徐倫徐倫ぅううぁわぁああああ!!!
あぁクンカクンカ!クンカクンカ!スーハースーハー!スーハースーハー!いい匂いだなぁ…くんくん
んはぁっ!空条徐倫のお団子髪をクンカクンカしたいッ!クンカクンカ!あぁあ!!
間違えた!モフモフしたいッ!モフモフ!モフモフ!髪髪モフモフ!カリカリモフモフ…きゅんきゅんきゅい!!
集中してる徐倫の表情カワイイぜッ!!あぁぁああ…あああ…あっあぁああああ!!ふぁぁあああんんっ!!
俺のこともそんなふうに見つめさせてやる徐倫!あぁあああああ!かわいい!徐倫!かわいい!あっああぁああ!
承太郎さんのDISCも奪還できて嬉し…いやぁああああああ!!!にゃああああああああん!!ぎゃああああああああ!!
ぐあああああああああああ!!!コミックなんて現実じゃないッ!!!!あ…スタンドもピノキオもよく考えたら…
空 条 徐 倫 は 現 実 じ ゃ あ な い ッ?にゃあああああああああああああん!!うぁああああああああああ!!
そんなぁああああああ!!いやぁぁぁあああああああああ!!はぁああああああん!!ミッキーィいいいい!!
この!ちきしょー!やめてやる!!現実なんかやめ…て…え!?見…てる?表紙絵の徐倫が俺を見てる?
表紙絵の徐倫が俺を見てるぞ!徐倫が俺を見てるぞ!徐倫が俺を見てるぞッ!!
空条徐倫が俺に話しかけてるぞッ!!!よかった…世の中まだまだ捨てたモンじゃあねーんだなッ!
いやっほぉおおおおおおお!!!俺には徐倫がいるッ!!やったぜウェザー!!俺はひとりでできるッ!!!
あ、徐倫いいいいいいいいいいいいいいん!!いやぁあああああああああああああああ!!!!
あっあんああっああんFFゥウッ!!エ、エルメェスー!!ウェザぁああああああ!!!エンポリオぉおおお!!
ううっうぅうう!!俺の指輪よ徐倫へ届けッ!!投げられずに徐倫へ届けッ!
これは祝福せざるを得ないw
真似できない表現力w
350 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/31(木) 11:08:50 ID:fNGtexEo
sageよくこんなの考えたな
次回から承太郎さんは心配性がはじまります。
このアナスイなら矢の先にイけるwwww
夏休みに入って過疎るとは…。
さあ誰かネタを投下するんだ!!
ネタじゃないけどさ
音石がワルドと闘うシーンって盛り上がる気が…ゴメン何でもない
テメーオフクロモコロシテヤルゥーーーにワルドがマジギレするわけかw
夏休みなのに人がこうも少ないとはな……こうなったら最終手段だ
更新してほしいSSを5作挙げるんだ!
職人が降臨するまでの間、それで乗り切る!
銃は杖より強し
サブ・ゼロの使い魔
仮面のルイズ
ゼロと奇妙な鉄の使い魔
DIOが使い魔
最近目にしてない感じのを優先して選んだぜ!
使い魔は静かに暮らしたい
ジョルノ+ポルナレフ
フー・ファイターズ
仮面のルイズ
DIOが使い魔
このへんかな
名前でなかったら悲惨じゃないか・・・
銃は杖より強し
DIOが使い魔
ジョルポル
銃は杖より強し
ゼロと使い魔の書
こんな感じだな
またしても名前出ませんでしたけど30分から投下して構いませんねッ!?
支援支援
363 :
ゼロいぬっ!:2008/08/01(金) 00:30:02 ID:ngvx8/SR
刃と杖。衝突する凶器の間に激しく飛び散る火花。
絶える事無き剣戟の音が戦場の空に木霊する。
喰らいつかれた前脚から止め処なく血が溢れ出る。
刃を振る度に牙は深く食い込み、肉を切り裂いていく。
しかし体内を巡る分泌液は半ばまで千切れかけた脚を修復していく。
直す度に傷付き、傷付く度に直る。永劫ともいえる苦痛の連鎖。
常人ならば耐え切れずに精神を崩壊させるだろう。
だが、それにも関わらずバオーはワルドと拮抗していた。
ワルドが苛立たしげに顔を歪ませる。
苦痛を感じない訳ではないだろう。
そこまでして何故ルイズの為に戦うのか、それがガンダールヴのルーンの力なのか、
あるいは苦痛を物ともしない化け物じみた精神を有しているのか?
どちらにせよワルドには焦りだけが募っていた。
相手は片腕、それも刻一刻と血液を失い死に逝く身。
なのに自身の猛攻を凌ぎ、さらには反撃すらも試みる。
本当にこの怪物にも“死”は訪れるのかと疑惑が浮かぶ。
だが怪物とはいえ奴は生物だ。
この世の理を無視して活動しているのではない。
現に“光の杖”の乱発で体力を消耗し、本来の実力を発揮できていない。
生きている以上、どんな生物でも必ず殺せる。それは必定だ。
あと一手、それさえあればこの怪物を討ち取れる。
羽帽子の合間から見下ろす殺意に満ちた眼光。
それに正対しながら杖を切り払う。
刹那。激痛が針のように前脚を貫く。
竜の牙は感覚神経にまで達していた。
バオーの麻酔効果もそこまでは及ばない。
痛覚を無くすだけならばバオーには容易い。
だが、感覚が少しでも鈍ればワルドの杖は容赦なく頭蓋を打ち抜くだろう。
発狂しそうな激痛の中、それでもバオーは刃を振るい続ける。
頭の中を火花が駆け巡り、何もかもが真っ白になりそうな世界で、
彼はひたすらに少女の笑顔だけを思い浮かべ続ける。
戦う理由、守るべき者、それだけを心に刻む。
「僕はルイズを…虚無の力を手に入れる!」
ワルドの宣言と共に突き出された杖の一撃。
それを弾き返しながら彼は声ではなく心で叫んだ。
“ルイズは物じゃない! 誰の物でもない!”
残された力を振り絞って力強く誰にも届かない言葉で叫んだ。
彼女は自由だ。自分で何でも決められる。
今は無理でも望んだ未来へと自分の足で歩んでいける。
傍にいて欲しいと思う。だけど決めるのは彼女だ。
彼女を繋ぎ止めたいとは思わない。
だって好きになったのはそんな彼女だったから。
戦う理由はいつからか“恩返し”じゃなくなっていた。
“彼女が好きだから”それだけで十分な理由になっていた。
いつの日か、彼女が今日までの事を笑って振り返れるように。
「その為にも貴様は邪魔なのだ!」
ああ、同感だ。おまえは邪魔だ。
おまえがいたら、いつまで経ってもルイズは笑えない。
大好きな彼女の笑顔が見られないのだから―――!
支援だッ!
365 :
ゼロいぬっ!:2008/08/01(金) 00:31:18 ID:ngvx8/SR
高高度での死闘が続く中、満身創痍の一団が上空を目指す。
風竜を中心にした竜騎士の小隊。
否。その風竜を駆るのは騎士ではなく一人の少女。
その背には同様に年若い少女が二人。
彼女等を護衛するように傷だらけの竜騎士が左右に付く。
アルビオンの竜騎士隊は即座に迎撃へと移った。
進路から狙いはワルド子爵の風竜だと容易に知れた。
攻城戦では並居る兵士達を虐殺し、艦隊に大損害を与えた怪物が倒されようとしている。
その千載一遇の好機をこのような連中に邪魔されてなるものか。
彼等の意思が言葉ではなく気迫を通じて伝わってくる。
火竜の息吹が一団へと吐きかけられる。
シルフィードの眼前まで迫る炎の壁。
それを直属竜騎士隊は自らの騎竜を盾にして防ぐ。
灼熱を物ともしない火竜の鱗とはいえ限界はある。
肉が焦げる嫌な臭いと共に剥げ落ちる鱗と黒ずんだ皮膚。
だが、それでも火竜の勢いは衰えなかった。
速度をそのままに再び火を吐こうとした同類の喉笛に喰らいつく。
直属竜騎士隊が一騎当千の戦士ならば共に駆け抜けた彼等がそうでないはずはない。
悲鳴をあげる火竜の翼に爪を叩きつけて引き裂く。
とても誇り高き竜騎士同士の戦いではない。
しかし炎も精神力も尽きた彼等に残された戦い方はそれだけだった。
気が付けば他の竜も同様に爪と牙を武器に攻勢を仕掛けていた。
ここまで近付かれては味方を巻き込んでしまう炎を吐く事は出来ない。
彼等が防衛線に開けた穴を青い風竜が突き抜ける。
その後を火竜が追うが速度で勝るシルフィードには届かない。
飛び去っていくその背を見上げてアルビオン王国の騎士達は笑った。
己を十倍する敵に四方を囲まれ、逃げ場を失ってなお笑った。
自分達は勝ったのだと胸を張って誇るように。
きっと彼女等なら何かをしてくれる。
奇跡無くしてはトリステインに辿り着けなかった避難船を、彼女達は導いてくれた。
だから今度も奇跡が起きるのだろう。
ならば命など惜しくはない。勝利の為なら甘んじて捧げよう。
だがタダでは死なん。連中にも相応の代償を支払わせてやろう。
「王国の騎士達よ! 最期まで杖を取れ!
亡き王、隊長、戦友に恥じぬ戦い振りを見せるのだ!」
すでに用を成さなくなった杖を胸元でかざす。
それに応じて他の騎士たちも続く。
死を覚悟して突撃する彼等へと一騎の竜騎士が迫る。
彼等がそちらに眼を向けた瞬間、竜はその大きな顎を開いた。
その瞬間、喉の奥底で燻る赤い炎が彼等の瞳に映った。
「………!?」
その行動に彼等は動揺を隠せなかった。
アルビオンの竜騎士隊を避けて彼等を攻撃する事は出来ない。
炎の吐息は彼等諸共、竜騎士隊も焼き尽くすだろう。
そして彼等はその竜騎士の意図を察した。
仲間を捨て駒にして自分達を倒そうとしているのだと。
口惜しさに噛み締められた奥歯が悲鳴を上げる。
戦いの果てに敗れるのは戦士の運命だ。
だが自分達を倒すのが誇り高き戦士ではなく、
戦友さえも手にかける卑怯者だという事実が許せなかった。
その彼等を意にも介さず火竜は息吹を吐きかけた。
「支え」て「援ける」 と書いて「支援」!
フフ・・・よくぞいったものだ
367 :
ゼロいぬっ!:2008/08/01(金) 00:33:14 ID:ngvx8/SR
炎の奔流が竜騎士たちを飲み込んでいく。
直撃を受けた騎士が瞬く間に炭と化し、
辛うじて避けた者も炎に巻かれて竜の操作を失う。
瞬時に地獄絵図に変わった戦況を王国の騎士たちは唖然と見つめる。
放たれた炎は彼等ではなく神聖アルビオン帝国の竜騎士たちへ向けられた。
突然の奇襲に困惑する帝国の竜騎士を再び炎が襲う。
「何をしている!? 敵は総崩れだ、この機に一掃するぞ!」
呆然とする彼等に、その竜騎士は叱り飛ばすように叫んだ。
聞き覚えのある怒声に彼等は互いの顔を見合わせる。
そこに浮かぶ表情は皆一様に同じだった。
竜騎士が兜を脱ぎ捨てて、その素顔を晒す。
そこにあったのは見紛うことなく彼等の隊長その人だった。
「どうした? 指示なくして動けぬ貴公等ではあるまい」
歓喜と興奮から彼等は杖を天高く掲げて雄叫びを上げた。
ある者は始祖の奇跡だと叫び、ある者は当然だと口にした。
別れた時に誓った再会は遠くトリステインの地で果たされた。
誰もが死んだものと思っただろう。
だがそれも仕方ない事だ。
彼自身もそう思っていたのだから。
自身の終焉を確信して閉じた瞳は再び見開いた。
そこにいたのは妖精のような美しい少女だった。
見ればその周りには何人もの子供達がいた。
使い魔に問えば子供達がその少女を連れてきたという。
死の淵に瀕している者がいると聞いて彼女は駆けつけてきたのだ。
礼を述べる隊長に彼女は謙遜するばかり。
いずれこの礼はするとだけ告げて彼はその場を去ろうとした。
竜に跨る騎士を羨望と尊敬の眼で見上げる少年達。
そこに、かつての自分の姿を重ねて男は笑った。
随分と子沢山な妖精さんだと冗談めかして言う彼に、
少女は必死に手と首を振るいながら否定し、
この子達は孤児院で預かっている戦災孤児だと答えた。
その返事に僅かに顔を曇らせながら騎士は言った。
なら、すぐにでも御礼が出来るかもしれないと。
“ちょっと戦争を終わらせに行ってくる”
そんな言葉を残して一人の英雄がトリステインへと飛び立った。
368 :
ゼロいぬっ!:2008/08/01(金) 00:34:27 ID:ngvx8/SR
「……貴様等は悔しくないのか?」
意気の上がる竜騎士隊を見上げグリフォン隊の副長は手綱を握り締めた。
問いかけの意味が分からず戸惑う彼等へと副長は振り返る。
そして杖を上空の竜騎士隊へと向けて叫んだ。
「トリステインの空で! アルビオンの竜騎士が争う!
それを指を咥えて眺めているだけなど貴様等の誇りは許すのか!」
副長の檄が雷のように隊員達の間を駆け巡る。
心の中で勝てないと悟って膝を屈していたのかもしれない。
戦わずに敗れる事は恥だと知っていたのに、それでも彼等は臆した。
だが、その彼等をアルビオン王国の騎士たちが動かした。
戦う力を失ってもなお戦い続ける彼等の姿が眼に焼きついている。
力の問題ではない、これは意志の問題なのだ。
「我等の汚名は我等で雪ぐ! 逆賊ワルドを討つは我等が使命!」
「応!」
副長の言葉にグリフォン隊全員が揃って応じる。
そこにいたのは竜騎士隊に敗れた敗残兵などではない。
トリステイン王国が誇る魔法衛士隊、その一翼を担う精鋭達。
「グリフォン隊突撃! この空が誰のものか連中に教えてやれ!」
369 :
ゼロいぬっ!:2008/08/01(金) 00:37:08 ID:ngvx8/SR
投下したッ! 遂に次回は『波濤』VS『閃光』!
こうして二つ名だけで比較すると大して差は無いように感じられる。
むしろ『波濤』の方が強そうに思える。
乙ッ!
『波濤』VS『閃光』にwktkさせてもらうぜ
GJ!乙でした!!
相変わらず読ませる文章だなぁ…映像が脳内に浮かんでくるぜ。
っていうか隊長かっけぇぇぇぇぇ隊長よいしょ本&隊長F.Cつくっていいですk(ry
GJ!お疲れ様です!
ただの変態では終わらないでくれよ・・・・
>>371 スト様の二の舞になるだろそれw
>>360 逆に考えるんだ。
「この人は言わなくても更新してくれる」と皆思っていると。
つまり信頼されているのだよ。誇りに思っていい。
乙!
続きが楽しみすぎる
夜勤明けにGJ!
隊長カッコイイな!
>“ちょっと戦争を終わらせに行ってくる”
この台詞見て某47代アメリカ大統領を思い出して噴いた。
>“ちょっと戦争を終わらせに行ってくる”
漢を見た。
た、隊長株が鰻登りなんですけどどうしたらいいですかねぇ?
名前のない英雄達
,'⌒,ー、 _ ,,.. X
〈∨⌒ /\__,,.. -‐ '' " _,,. ‐''´
〈\ _,,r'" 〉 // // . ‐''"
,ゝ `く/ / 〉 / ∧_,. r ''"
- - - -_,,.. ‐''" _,.〉 / / . {'⌒) ∠二二> - - - - - - -
_,.. ‐''" _,,,.. -{(⌒)、 r'`ー''‐‐^‐'ヾ{} +
'-‐ '' " _,,. ‐''"`ー‐ヘj^‐' ;; ‐ -‐ _- ちょっと戦争を終わらせに行ってくる
- ‐_+ ;'" ,;'' ,'' ,;゙ ‐- ー_- ‐
______,''___,;;"_;;__,,___________
///////////////////////
これが脳裏に浮かんで吹いてしまった
、′ 、 ’、 ′ ’ ; 、
. ’ ’、 ′ ’ . ・
、′・. ’ ; ’、 ’、′‘ .・”
’、′・ ’、.・”; ” ’、
’、′ ’、 (;;ノ;; (′‘ ・. ’、′”;
’、′・ ( (´;^`⌒)∴⌒`.・ ” ; ’、′・
、 ’、 ’・ 、´⌒,;y'⌒((´;;;;;ノ、"'人 ヽ
、(⌒ ;;;:;´'从 ;' ; ;) ;⌒ ;; :) )、 ヽ -‐,
( ´;`ヾ,;⌒)´ 从⌒ ;) `⌒ )⌒:`_,,..・ヽ/´
′‘: ;゜+° ′、:::::. ::: ´⌒(,ゞ、⌒) ;;:::)::ノ‐''"..,,_
`:::、 ノ ...;:;_) ...::ノ ソ,. r ''" `''‐,,._ X
,ゝ `く/ / 〉 / ∧_ ...::ノ '' "
- - - -_,,.. ‐''" _,.〉 / / . {'⌒) ∠二二> - - - - - - -
_,.. ‐''" _,,,.. -{(⌒)、 r'`ー''‐‐^‐'ヾ{} +
'-‐ '' " _,,. ‐''"`ー‐ヘj^‐' ;; ‐ -‐ _-
- ‐_+ ;'" ,;'' ,'' ,;゙ ‐- ー_- ‐
______,''___,;;"_;;__,,___________
///////////////////////
無茶しやがって…AA略
駄目じゃないか、ジョセフ・ジョースター乗せたりしたら
承り「てめー(ry」
Wikiでゼロいぬっ!が更新されていないようなので無謀にもチャレンジしてみようと思うが
07/19の投下が84話目、今日の投下が85話目でオケ?
了解
とりあえずやってみようと思う
失敗したらどうなるんだろう?
ミスっても履歴から戻せるはず
なぁーに、男は度胸、なんでもやってみるもんさ
こんな時間だけど投下します。
アルビオン大陸の青空を一匹の竜がルンルン気分で歌いながら、どこかに向かって飛んでいました。
その背中には一組の男女の姿があります。
「きゅい!子爵さま本当にお肉たくさん食べさせてくれるのね?」
「モチロンだとも!貴族は嘘はつかないさ」
竜はうれしそうにきゅいきゅいと鳴くと、また歌を歌いはじめました。
背中に乗っている魔法衛士隊の隊長風の貴族はバスケットからさくらんぼをひとつ取り出すと、
それを口に入れて舌でレロレロと転がします。
その様子を魔法学院の学院長秘書風の女性は呆れたように見ています。
女性の視線に気づいたのか、隊長風の貴族はほほ笑みながら女性に問いかけました。
「マチルダ、きみもどうだい?」
「アタシは遠慮しとくよ。行儀悪いしね」
「子爵さま!シルフィもさくらんぼ食べたいのね!」
竜がお願いすると、隊長風の貴族は手のひらいっぱいのさくらんぼを竜の口に放り込んであげました。
口の中いっぱいにさくらんぼをほおばり、竜はゴキゲンなって空を飛びます。
この竜はタバサの使い魔のシルフィードで、背中に乗っているのはなんと、あの裏切り者のワルド子爵と
魔法学院を襲った土くれのフーケなのです。
なぜシルフィードはふたりを乗せて飛んでいるのか、その理由は朝にまでさかのぼります。
お日さまが顔を出したころ、シルフィードはラ・ロシェールの近くの森で目を覚ましました。
昨日はたくさん飛んだのでおなかがペコペコです。
タバサにごはんを貰おうと宿屋に行きましたが、あれだけいた生徒たちはみんないなくなっていました。
ひょっとしたら桟橋にいるかもしれないと思ったシルフィードがそちらに向うと、ちょうど生徒たちが
船をハイジャックしているところに出くわしました。
シルフィードは厄介事はごめんなので遠くから生徒たちの顔を見ましたが、その中にタバサはいません。
そうしていると船がふわりと浮き上がり、風系統の生徒たちが魔法を使って風を起こします。
風で帆がパンパンに張った船は、ギシギシと悲鳴を上げながらドッギュゥーンと空をカットンで行きました。
シルフィードでもちょっと追いつけそうにありません。
いつまでもここにいても仕方がないので、シルフィードはごはんを探しに出かけました。
そうして森の上をフラフラ飛んでいると森の中に隠れた一羽のグリフォンを見つけます。
それは昨日の夜のグリフォンで、翼にけがをしているのでシルフィードでもやっつけられそうです。
シルフィードは口をペロリとなめるとグリフォンに襲いかかりました。
「おとなしくシルフィの朝ごはんになるのねー!」
「ぼくのグリフォンになにをするだァーーッ!ゆるさんッ!!」
シルフィードがグリフォンにかみつこうとすると、グリフォンを守るように風が吹き荒れます。
これにおどろいたシルフィードは慌てて地面に降りてまわりを見ました。
すると、グリフォンの影からひとりの立派な貴族が現れて、シルフィードに杖を向けて叫びました。
「わたしのグリフォンを傷つけることは、たとえ始祖が許そうとも、この魔法衛士隊グリフォン隊隊長
ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドが断じてゆるさんッ!!」
「……アンタ、魔法衛士隊クビになったじゃないか」
森の奥からバスケットを持ったひとりの女性が現れてワルド子爵のあたまを軽くたたきました。
女性の持ったバスケットからおいしそうな香りがするので、シルフィードのおなかがグウグウと鳴ります。
それにつられてワルド子爵のおなかもグウグウ鳴りました。
シルフィードとワルド子爵は、顔を見合わせてはずかしそうに笑います。
女性はそれを見てほほ笑むと、シルフィードとワルド子爵を呼んで食事の用意をはじめます。
ワルド子爵も森で狩ってきたイノシシを焼きはじめました。
シルフィードは自分もごはんを食べられると思ってなかったので、きゅいきゅいと鳴きながら踊りだしました。
イノシシをグリフォンと分けあったので、シルフィードのおなかの虫はまだ不満そうにしていましたが、
シルフィードはごはんをくれたワルド子爵と女性にお礼を言います。
「ごはん食べさせてくれてありがとうなのね!それから……さっきはゴメンなさいなの。
シルフィ、あのときはとってもおなかが空いてたのね」
「グリフォンは無事だし、そんなに謝ることはないよ。ジャン、アンタだって怒ってないだろ?」
「まぁ……腹が減ってはいくさはできぬと言うからな」
女性が顔を近づけてきたので、ワルド子爵は顔を赤くしてソッポを向いてしまいます。
しばらく照れているワルド子爵をからかった後、女性がシルフィードに話しかけてきました。
「シルフィードだったね?アンタ、ご主人さまといっしょにアルビオンに行かなかったのかい?」
「きゅい?!おねえさまアルビオンに行っちゃったの?どうして!!」
「ひょっとして……きみのことを忘れていたとか?」
閃光の二つ名を持ち風を自在に操る高貴なる魔法使いのワルド子爵の空気を読めない発言に、
シルフィードは貧民街出身の男に生まれついての悪だと言われた男にむりやりキスをされた
女性のようなショックをうけて、グスグスと泣きだしました。
それを見た女性は怒ったようにワルド子爵のあたまをたたくと、泣いているシルフィードを慰めるように
優しく言いました。
「シルフィのご主人さまは忘れてたんじゃなくてワザと置いていったんだよ。
今のアルビオンは危険だからね、アンタに危ないことをさせたくなかったんじゃないかな」
「ほんと?でも……シルフィはやっぱりおねえさまといっしょにいたいのね」
「だったら追いかければいいじゃないか!!ぼくたちもこれからアルビオンに向かうんだ。
きみもいっしょに来ればいい」
こうしてシルフィードはワルド子爵たちを乗せて、途中で空から落ちてきたマストや木の破片を避けながら
アルビオンに辿りつき、ワルド子爵たちの目的地である王都ロンディニウムに向かって空を飛んでいるのです。
シルフィードは飛びながら、ふとあることに気づきました。
よく考えると、どうして今まで気づかなかったのかとてもふしぎでしたが、シルフィードはまだ子どもなので
あまりあたまが良くありません。
ですが、子どもらしい素直さでワルド子爵に聞いてみました。
「きゅい、子爵さまはおねえさまたちの邪魔をしたのにどうしてシルフィに優しくするの?
シルフィはおねえさまの味方だから子爵様の敵なのね。どうしてなの?」
「う〜ん、どこから話したらいいのやら。そうだな……ぼくとマチルダの馴れ初めからかな」
「ジャン……余計なことは言わなくていいから。アタシが話すわ」
マチルダはシルフィードにワルド子爵は本当は裏切り者ではなく、自分に協力するためにレコン・キスタに
参加したことや、どうして自分が盗賊をしていたのかを話しました。
マチルダの本当の目的は、 レコン・キスタの総司令官であるオリヴァー・クロムウェルの暗殺だったのです。
盗賊をしていたのも有名になってからレコン・キスタに参加して、少しでもクロムウェルに近づくためなのです。
恋人であるワルド子爵を最初は巻き込むつもりはありませんでしたが、幸運なのか、それとも不幸なのか、
あるときワルド子爵に捕まってしまい、その思いを知られてしまいました。
そして、大切な恋人であるマチルダを放ってはおけないワルド子爵は、彼女が捕まらないようにニセの情報を
流したり、自分の地位を使ってレコン・キスタに参加した後、クロムウェルに信用されるようにまでなりました。
シルフィードはふたりのお互いを思いやる愛情をうらやましく思ってきゅいきゅいと鳴きました。
「おふたりはとっても愛しあっているのね!!なんだかうらやましいのね、きゅい!」
「なに、きみにもいつかそんな相手が見つかるさ。なぁマチルダ……マチルダ?」
「えっ?!ごめん……聞いてなかった」
よく見るとマチルダの肩は小刻みにふるえ、手をギュッと握り締めていました。
話すうちにあの恐ろしい夜の出来事を思い出してしまったからです。
それはちょうど二年前の、とても静かな夜に起こりました。
その日はなぜかとても眼がさえて眠れなかったマチルダは、少し散歩しようと部屋を出て庭に向かいました。
庭に向かうまでの廊下も、まるで自分以外にだれもいないようにとても静かで、少しだけ心細くなりましたが、
その内にだれかに会うだろうとそのまま庭に向かいます。
庭につくまで、マチルダはだれにも会いませんでした。
いつしかマチルダは、散歩をするよりもだれかに会いたいと思っていました。
庭でいつもいる警護の兵士を探しました。
兵士は見つかりませんでしたが、そのかわりに奇妙な彫像を見つけました。
昼間に庭に来たときはなかったものです。
ちょうど月が隠れていてよく見えないので、マチルダはその彫像に近づこうとして、すぐ立ち止まりました。
なんとその彫像が動いたのです。
その彫像はマチルダに向けて、手に持っていたものを放りました。
それを見たマチルダは悲鳴を上げました。
マチルダの足元にあるものは、見るも無残に姿を変えた人間だったのです。
おどろいて動けないマチルダに向かって、今まで彫像だと思っていた男はこう言いました。
「次は貴様だ」
そう言って男はマチルダに向かってゆっくりと歩いてきました。
マチルダはあまりの恐ろしさに、戦うことも、逃げることも、声を出すことさえできません。
自分はここで終わる。
そう思ったとき、自分のうしろから男に向かってなにかが飛んでいきました。
不意打ちのその攻撃を男はうしろに飛んで避けます。
そして、だれかに手を引かれました。
「逃げろマチルダ!!早く行けッ!」
「と、とうさま!?」
「マチルダ!こっちに来なさいッ!」
母親に手を引かれるままに、マチルダはひたすら走りました。
そして、屋敷で一番丈夫な宝物庫の中にあるクローゼットに押しこまれました。
マチルダはなにが起こったのか、そして、あの男はだれなのかを母親に聞きました。
母親からの答えは、すでに屋敷のものは父と母、そして、自分以外は皆殺しにされてしまったという、
マチルダが一番聞きたくないものでした。
マチルダの家であるサウスゴータの一族は代々王族護衛官を務めています。
その強さはアルビオンでも並ぶものがなく、ハルケギニア有数の武門の家系なのです。
マチルダの父親もとても強く、彼女を嫁にもらおうとやってきたワルド子爵と戦い無傷で勝ってしまうほどです。
マチルダは父の強さを信じていましたが、どうしてもからだのふるえを止めることができません。
ふるえるマチルダを、母親はそっと優しく抱きしめて言いました。
「マチルダ、ここから出てはいけません……生きるのですよ」
「か、かあさまなにを言うのです!きっととうさまがあの男を……!」
マチルダの言葉は、宝物庫の扉が壊される音に消されてしまいました。
そして、扉の奥からあの男が現れました。
母親は男に杖を向けますが、男はそれが目に入らないようなそぶりで、ぐるりと宝物庫を見渡します。
それからフンッと鼻を鳴らすと、男はまるで散歩でもするように母親に向かって歩きだしました。
母親は呪文を唱えて男を攻撃しましたが、男は軽々とそれを避け、アッサリと母親の胸を打ち抜きます。
母親を殺したあと、男はその死体を道に落ちている小石のように蹴飛ばすと、マチルダの隠れている
クローゼットに向かってきました。
そして、クローゼットの前で立ち止まりニヤリと笑うと、いくつかの宝物を奪っていなくなりました。
マチルダはそれを、ただ見ていることしかできませんでした。
それから、屋敷のようすがおかしいことに気づいた街の衛兵たちにマチルダは助けだされます。
この夜の出来事はマチルダのこころに深い傷を残しました。
それから一年後、レコン・キスタが反乱を起こし、マチルダは父の形見と共にアルビオンから消えました。
マチルダは考えます。
自分が仇を討てるのか?
マチルダは思います。
自分はあの夜のようになにもできなんじゃないのか?
マチルダはふるえます。
あの男を前にしたら怯えることしかできなんじゃないか?
マチルダのこころは不安で押しつぶされそうになりました。
ふるえるマチルダの肩を、ワルド子爵は優しく抱きしめました。
「きみにはぼくがいる。違うかい?」
「そうね、ジャン。あなたがいるなら……」
そうしてふたりは見つめあい、ゆっくりと顔を近づけたところでシルフィードがゲフンゲフンと咳き込みました。
ふたりはハッとなって離れます。
そのふたりにシルフィードは少し怒ったように言いました。
「乙女のまえで見せつけちゃってからに……そんなことしてたら背中から落っことしてやるのね!!」
「いや〜、ハハハ……おっロンディニウムが見えてきたぞ!」
「アラ、ホントだね。無事につけてヨカッタヨカッタ」
ワルド子爵とマチルダはわざとらしく言った後、まだなにか言いたそうなシルフィードの口に
サンドイッチを放りこんであげます。
シルフィードはサンドイッチをほおばりながら、モヤモヤしたものを吹き飛ばすようにスピードを上げて
ロンディニウムに飛んでいきました。
かつては栄えていましたが、レコン・キスタが占拠してから死んだように静かなロンディニウムの大通りを
ふたりの男が歩いていました。
ふたりとも背が高く、ひとりは頭巾をかぶり、もうひとりは前にだけツバがある帽子をかぶっています。
頭巾をかぶった男は肌をさらした服装で、帽子をかぶった男はマントに袖をつけたようなものを身に着けています。
ふたりとも無言で、ただ前だけを向いて歩いています。
そのふたりに一匹の子犬が近づいてきました。
おなかが空いているらしく、フラフラとしています。
頭巾をかぶった男は子犬をチラリと見ただけでしたが、帽子をかぶった男はポケットから布に包まれた
干し肉を子犬に投げました。
子犬は干し肉の臭いをかいでから、うれしそうに尻尾をふるとそれをくわえて通りの向こうに走りました。
その先には子犬よりもっと小さい、おそらくは兄弟の犬が待っています。
帽子をかぶった男はそれを見てほんの少しだけほほ笑み、歩きだそうとしたときにそれは起こりました。
「どけどけぇーッ!邪魔だ貴様らァーッ!!」
一台の馬車が通りをすごいスピードで走ってきました。
その先には、干し肉をくわえた子犬がいます。
御者は子犬に気づいていましたが、止まろうとはしません。
馬車が子犬がいたところを走り去りましたが、なぜか子犬は帽子の男の腕に抱えられていました。
そして、その馬車はふたりの男のとなりを走り抜けた後、盛大に事故を起こしていました。
事故を起こした馬車の近くにいた平民たちが、野次馬根性まるだしで馬車に群がります。
そして、集まった平民たちはおどろきました。
御者と馬車、そしてその中に乗っていた貴族が真っ二つになっていたのです。
「な、なんだこりゃ?!」
「見ろよこの切り口……まるでカミソリで切ったみてぇだ」
帽子の男は騒ぎを無視して、やれやれだぜと呟いて子犬を地面に降ろしてから顔を上げました。
目線の先にはハヴィランドの宮殿があります。
そうして見上げていると、青いうろこの竜がハヴィランドの宮殿に降りていきました。
子犬がお礼をいうようにあたまを下げるのを見てから、帽子を少しなおして男は歩きだしました。
投下終了です。
ヤバイ連中が続々と集まってきてレコン・キスタ大ピンチ!
あ、そうか。
テファがふつーに王家の人間だと、フーケになってないものな。失念してた。
しえん
と。遅かった。
ねこのひと乙でしたー
ひゃっほぅ!
カーズ様っぽい人がでてきたぜ!
というかこんなに綺麗なワルドと綺麗なおマチさんは見たことねーー!!!
なんて綺麗なワルド…!まさかこんな再登場とは!
最後に出てきたのが柱の方達なのか、星屑十字軍の方達なのか気になりますが、
どっちに転んでもレコン・キスタフルボッ…いや、これからいよいよレコン・キスタからも
それに匹敵する方たちが登場なさるのか!?
ハルキゲニア崩壊フラグキタコレ
どうでもいいが、婚約者がいるのに他の女性、しかも他所の国のお偉いさんの娘を嫁に貰いにいくとは
ワルドもいい度胸してるじゃないか
ヴァリエール家にばれたら輪切りにされるぞw
GJ!
もしかして承太郎とカーズの夢の競演?!
期待してるぜ!!
GJ!
いいセンスしてるぜッ!
この野郎ッ!
なんで承太郎はロンディニウムに来たんだろ。
そしてテファとの関係はやっぱり年下の叔母と年上の甥なのか?
教皇をぬっころしたエルフのスターダストクルセイダーズかもしれん
スターダストクルセイダーズ=承太郎一行は間違いないと思う
エルフ=スタンド使いもほぼ間違いない所
問題はテファがクレイジーダイアモンドらしきスタンドを使ったから
テファ=丈助なのかなーっと
wikiの更新についての質問なのだが、誰か答えてくれ。
投下時に一文が複数行にぶった切れているのを、一文に復元すべきか否かについての意見がほしい。
使空高の一章十一節を追加してみたのだが、それ以前のものと違和感を感じて調べてみた。
まず、作者さんは投下時に1行が全角44文字に収まるようにしていて、そのために一文が途中でぶった切れていることもある。
こんな感じ
「
丈のある影がひとつ、深い青色をした朝もやの中を歩いている。両腕に洗濯道具一式を携えた、 (改行)
病み上がりのリキエルである。これからルイズの言いつけを謹直に守り、溜まった洗濯物を洗いに (改行)
行こうというところだった。
…
」
オレは単にコピペしただけなのだが、そうするとWikiをオレの環境(1行の幅が全角36文字で表示される)で見るとこんな感じに表示されてしまう。
「
丈のある影がひとつ、深い青色をした朝もやの中を歩いている。両腕に洗濯道具
一式を携えた、 (改行)
病み上がりのリキエルである。これからルイズの言いつけを謹直に守り、溜まった
洗濯物を洗いに (改行)
行こうというところだった。(改行)
…
」
つまり、読み辛くてダサいんだ。
ところが、以前にWikiを更新したヒトは、このような複数行にぶった切れた文をきちんと一文に復元しているようなんだ。
例えば、一章十節の出だしは投下時には
「
なんでこんなことをしてるんだろ、とロングビルは頭を抱えたくなっていた。足取り重く行く階(改行)
段の先には、なるだけ長居したくない学院長室がある。(改行)
二ヶ月ほど前にこの学院に雇われ、仕事にはすっかり慣れていたが、耄碌しかけの『振り』をし(改行)
…
」
となっているところをWikiでは
「
なんでこんなことをしてるんだろ、とロングビルは頭を抱えたくなっていた。足取り重く行く階段の先には、なるだけ長居したくない学院長室がある。
二ヶ月ほど前にこの学院に雇われ、仕事にはすっかり慣れていたが、耄碌しかけの『振り』をし…
」
といった具合になっていて、Wikiでは環境によらずたぶん綺麗に表示されるのだと思う。
まあ、弄りすぎは時に問題になるけど、あからさまな誤字とか投稿環境の違いから
改行位置を修正とかの常識の範囲で手間をかける分にはいいんじゃないか?
余裕があれば改変にならない範囲でやってもいいんじゃない?
個人的には1920x1200の解像度で表示がおかしいならかな
解像度がでかければ正常に表示されてる可能性もあるわけだし
412 :
409:2008/08/03(日) 00:46:14 ID:WLsioESr
ご意見どうも
とりあえず不要であろう改行を削除しおいたよ
413 :
使空高:2008/08/03(日) 00:49:12 ID:tiISJAvx
>>409 編集ありがとうございます。
かなりタイミングが遅くなりましたが、もともとが縦にしてさえごちゃごちゃ
した文になってしまっているので、個人的にはそうしてもらえるとありがたい。
一行44文字も、単にwordで文字数が数えやすいってだけなので。
だいたいからしてまとめに編集してもらっている身ですし、どうしても気になれば、以前
避難所だかで話が出たとおり、自分でちょこちょこいじります。重ねて、編集ありがとうございました。
スレ住人にはGJな人が多いぜ、皆最高だ!
アホの使い魔の続き読みたいな…
本編じゃあんまり活躍しなかった億康が活躍するのはうれしい
皆のSSを読んで、俺も何か書いてみたいと思ったので原作1〜3巻まで買って来た
でも、やっぱり全部原作を読んでから始めた方がいいのかなあ
タバサの冒険とアニメの方は一通り目を通してるんだけど…(ジョジョは全巻読破済み)
買ったなら読めばいいじゃない
>>416 原作とアニメは全然違うってばっちゃが言ってた
>>416 内容が軽いから最新刊まですんなり読めるし一応読んだ方が良いと思う
テンプレ的になぞるだけなら不要だけど、後で明かされた伏線とかキャラの性格とかが結構かわってるし
性格が変わってるor属性があたらしくついた代表格
ルイズ、キュルケ、フーケ、ギーシュ
>>416 敢えてアニメ版基準で書く蛮行…もとい挑戦とかあると新しい…かも?
こっちの住人は良い人が多いなぁ…、兄貴のお陰かな?
、--‐冖'⌒ ̄ ̄`ー-、
/⌒` 三ミヽー-ヘ,_
__,{ ;;,, ミミ i ´Z,
ゝ ''〃//,,, ,,..`ミミ、_ノリ}j; f彡
_) 〃///, ,;彡'rffッ、ィ彡'ノ从iノ彡
>';;,, ノ丿川j !川|; :.`7ラ公 '>了
_く彡川f゙ノ'ノノ ノ_ノノノイシノ| }.: '〈八ミ、、;.)
ヽ.:.:.:.:.:.;=、彡/‐-ニ''_ー<、{_,ノ -一ヾ`~;.;.;)
く .:.:.:.:.:!ハ.Yイ ぇ'无テ,`ヽ}}}ィt于 `|ィ"~
):.:.:.:.:|.Y }: :! `二´/' ; |丶ニ ノノ
) :.: ト、リ: :!ヾ:、 丶 ; | ゙ イ:}
{ .:.: l {: : } ` ,.__(__,} /ノ
ヽ ! `'゙! ,.,,.`三'゙、,_ /´ 間違いなく、私の功績だな
,/´{ ミ l /゙,:-…-〜、 ) |
,r{ \ ミ \ `' '≡≡' " ノ
__ノ ヽ \ ヽ\ 彡 ,イ_
\ \ ヽ 丶. ノ!|ヽ`ヽ、
\ \ヽ `¨¨¨¨´/ |l ト、 `'ー-、__
\ `'ー-、 // /:.:.} `'ー、_
`、\ /⌒ヽ /!:.:.|
`、 \ /ヽLf___ハ/ {
′ / ! ヽ
逆に考えない卿なんて卿じゃないですよ卿
なに?
>>423、卿が逆に考えいない?
逆に考えるんだ。
>>422は逆に考えた末の卿の発言だったと考えるんだ。
作者さんたちは、投下する時には何かツールを使って書いた文章を各レスに分解しているのかな?
むかし、自分でもSSを投下しようとしていた頃のことだけど
サクラエディタってフリーのエディタで書いていて、投下用にテキストを整形するマクロまで作ったことがあったよ
あまり詳しくはなかったけど、ヒトのマクロを参考に見よう見まねで作ってみた
機能は単純で、1行中の最大文字数を決めて、それを超える文字数の1文を複数行に区切って
さらに1レスの最大行数を決めて、その行数毎に区切り行を入れるってヤツ
50行ぐらいのコードだったな
結局、自作のSSを投下することはなく、わざわざ作ったマクロは無駄になったんだけどね
txtで手作業ですが何か?
専用ブラウザのjane を使ってるよ。
投下するとき一行の長さを警告してくれるし、一レスの行数や文字数もチェックできる。
あと連続投下する時はカウントダウン機能もついてるしけっこう便利
>>427に同じく。
一度行と文字数そろえてからtxtに移して、それをさらに貼ってる。
自分は投下時にツールは使ってないなあ。
一定行数で文章の区切りのいいところで切って、手作業で投下してる。
文章も、普通に書いたものを一定文字数で改行してる。
まあ、一応テキストエディタ使って、現状の行数と文字数は把握してるけど。
そのくらいかな。
四十五分頃から投下いたす。
432 :
仮面のルイズ:2008/08/04(月) 03:46:50 ID:HNtZ5qyY
「あはは」
”何が起こったのか分からない”
男三人と女一人はそんな顔でルイズを見ていた。
それがたまらなく可笑しくて、ルイズは背をのけぞらし、声を出して笑った。
「あはははははっ!」
「こ、こいつ!」
笑い続けるルイズに飛びかかったのは、ルイズに殴られた男だった。
男には傭兵と盗賊の経験があった、腹や胸を突き刺したからといって人間が即死しないのも知っている。
刺された人間は時間をおいて動きが鈍くなり、痛みではなく重みと熱を感じて死んでいくはずだ、死にものぐるいで反撃を受ける前に、取り押さえて確実に殺してやると思い、男はルイズに飛びかかった。
どすん!と音を立てて二人がベッドに倒れ込む、男はルイズの上に馬乗りになり、胸からナイフを引きずり出そうとして柄を握った。
ナイフを振り上げようとしたその時、男の体は不自然に、まるで凍ってしまったかのように動きを止めた。
「な、あえ? 体が、うごかねえ。お、おい、どうなってるんだ、体が動かねえよ」
男が首を後ろに向けると、バキンと音がして視点が下がった。
ごとん、という衝撃とともに頭が床に落ちる、ごろりと転がった首は二人の男と、一人の女を視界に納めていた。
「………」
首だけになった男の口が、声もなく何かを呟くと、頭の上に氷のような冷たくて堅いものが降り注ぐ。
そして視界は急激にぼやけ、瞳孔が開き、凍り付いてバラバラに砕かれた肉体に埋め尽くされ、男は絶命した。
「あ」
最初に声を出したのは女だった。
「え」
あまりのことに思考が止まり、気の抜けた声を出したのは長身の男。
「う、うわぁあああああああっ!」
逃げようとしたのは、一番力強そうな筋肉の男だった。
バン!と音を立ててルイズがベッドから飛び起き、部屋の入り口から逃げようとする男に向かって右腕を伸ばしす。
その手首からは、銀色にも見える艶やかな黒髪が伸びたかと思うと、鍛えられた鋼剣の如く収束し、男の首に巻き付いた。
ルイズは有り余る筋力で無造作に腕を引く、すると、ビチリという繊維が引きちぎれる音と、バキバキと首の骨が砕かれる音が盛大に響く。
首と胴の離れた長身の男は、そのまま仰向けの形で床に倒れ込むと、すっくと立ち上がり首の無いまま逃げだそうとして壁にぶつかり、再度床に倒れ込んだ。
首のない体は尚も逃げようと足をばたつかせたが、それもほんの数秒のことであった。
激しく動いていた足が動きを止めるのを、残された二人は呆然と眺めていた。
すかさず、二人の首にルイズの手が伸びた、細くしなやかなルイズの指が二人の首に絡みつき、左手で男を、右手で女を釣り上げた。
「えぐっ、ぐえ……」
男の首に少しずつ食い込む指には、とても力が入っているとは思えなかった、腐りかけの果物でも握りつぶすように男の首が細く絞られていく。
「ひぃっ!い、いや、助け」
女は涙目になりながら、命だけは助けてくれと懇願する、だがルイズは返事の代わりとしてにやりと笑い、声を出せなくなる程度の力で女の首を絞めた。
「黙って? これみたいになりたいの?」
”これ”扱いされた男は目を血走らせ、口を限界まで開き舌を飛び出させていた、首はもう呼吸が不可能なほどに絞められている。
興奮のあまり、元の長さ、元の色に戻った髪の毛が、男の顔を絞首台のマスクのように覆っていく。
それを見ていた女は、涙目になりながらも本能的に歯を食いしばり、必死に首を縮こまらせた。
ぐるん ぐるん ぶちっ
433 :
仮面のルイズ:2008/08/04(月) 03:47:45 ID:HNtZ5qyY
棒に巻き付けた布を解くように髪の毛を引く、首は容易くねじ切られてごとりと女の足下に転がった。
ルイズは髪の毛を女の首と口元にまき付け、声を封じると、首のねじ切られた男を持ち上げて、首からぶしゅ、ぶしゅと噴き出す血を頭から浴びた。
「カハァ……」
血を浴びて艶やかな輝きを放つ髪の毛、水滴が滑るような玉の肌、ランプの明かりのせいあ黄金色に輝く瞳、そして可愛らしい口には不釣り合いな鋭く尖った犬歯。
頭から浴びた大量の血は、体の表面から吸収されていくため、床にはほとんどこぼれ落ちない。
足りない。
もっと、もっと欲しい!
「う、あ」
ルイズの髪の毛による拘束が突然緩み、持ち上げられていた女が床に尻餅をついた。
目の前ではルイズが男の首へと噛みつき、スポンジから水を吸うが如く、肉に染みこんだ体液を必死でむさぼっている。
じゅるる、ぶじゅっ、ごくり、ずずずっ、ずぎゅっ。
男の体は瞬く間に体液を失い、やせ細り、乾き、床へと落ちた。
女はそれをただ呆然と見ていた、いつの間にか失禁し、床に広がる血だまりに小便が混ざっている。
女は、死にたくない!と願った。しかし死以外の結末が思い浮かばない。
女は、逃げるべきだ!と思った。しかし逃げられるとは思えない。
女は、早く死にたい!と思った。それを受け入れるしか道がないと納得してしまった。
ルイズは逃げようとした男の死体に手を伸ばすと、獣のように四つんばいになってその首に牙を突き立てた。
両手の指先と牙から血を吸い尽くす、体温の残る死体は数秒でミイラと化した。
「ああ…美味しい…」
床に膝をついたルイズが、まるで天を仰ぐように顔を上げ、呟く。
恍惚とした表情は、快楽の中にいることを示している。
全身に浴びた血が皮膚に肉に染みこむと、麻痺していた体に過剰な血液が行き渡る、神経は過敏になり、細胞の活性化が快楽として脳に伝わった。
飲み込んだ血は内臓へと行き渡り、体の内側を脈動させ、胃や腸、心臓や肺、そして子宮に快楽という電撃を走らせた。
未貫通の女性機能を包む筋肉はリズミカルに収縮と拡張を繰り返し、下腹部に熱を与え、血とは違う透明な液体を排出した。
「ねえ」
ルイズが女の方を向き、声をかける。
突然のことに驚いた女だったが、なんと返事して良いのか分からず、口をぱくぱくと動かすのみだった。
氷となって散乱した男の肉片を手で払いのけると、ルイズはベッドの上に座り、足を開いた。
「続けなさいよ」
「は、はい」
死体の転がる部屋で奉仕を強要されるという異常事態を、異常事態であると感じられるような正気は、女にも残っていなかった。
無表情でもなく、絶望的でもなく、ただ淡々と仕事をこなそうとする女を見て、ルイズはふふんと笑みを浮かべた。
指が肌に触れる度、軽い痺れのような快感が走る。
素肌と素肌が触れる度に、人間の体温を感じ、その温度がとても心地よくて思わずため息を漏らした。
434 :
仮面のルイズ:2008/08/04(月) 03:48:55 ID:HNtZ5qyY
「おう、ずいぶん静かになったな、どうした?」
突然階下から声がした。
ルイズは眉間に皺を寄せて女の頭を掴み、耳元に口を寄せる。
「今の声、なに?」
「み、見張りに立ってた男です」
「ふぅん……いいわね、呼びなさいよ」
「え、で、でも」
「”混ざりなよ”とでも言ってやりなさいよ、ね?」
女は驚いた顔をしたが、すぐに気を取り直すとベッドから折りて、階下に声をかけた。
「あんたも来なよ、みんなお休みしてるさ」
「本当か? へへへ、ずいぶんな好き者みたいじゃねえか」
何を勘違いしたのか深読みしたのか、見張りに立っていた男は嬉しそうな声を出して二階への階段を上り始めた。
「よく言えたわ…いい子ね……」
ルイズはそう呟いて、女を後ろから抱きしめた。
ずぶりと指先が沈み込む、右手は女の首へ、左手は心臓へ。
ギュルッ、ギュギュと音を立てて、勢いよく血を吸っていく、すると女の体温が急激に下がるのが感じられた。
女の背中に密着した、ルイズの胸や腹は、人間から体温を命を奪うその瞬間を感じていた。
それがどうしょうもないほどの愉悦で……ルイズは、二階に上がってくる男を捕まえると、更に「思いついたこと」を実践すべく、ナイフの如く硬質化した腕を振り上げた。
………それから数十分後。
見張りに立っていた男は、生気の感じられないうつろな瞳で建物から出てくると、ロサイスに向けてゆっくりと歩き出した。
………
435 :
仮面のルイズ:2008/08/04(月) 03:49:38 ID:HNtZ5qyY
”それ”を見つけたのは偶然だった。
盲目の男は、神聖アルビオン帝国の皇帝から、トリステイン魔法学院を急襲し生徒を人質に取れと依頼された。
トリステインまでは隠密性に長けた特殊な船で移動するが、船はダータルネスではなくロサイスにあるというので、馬を用いてロサイスへの道を突き進んでいた。
「ん」
馬の背に乗った盲目の男が、かすかに鼻孔をくすぐる何かに気づいた。
傭兵団の先頭を歩いていたその男は、馬を急停止させると、風上を向いて鼻をひくつかせる。
「どうなさいました?」
すぐ後ろにいた部下の一人が、盲目の男に問いかける、だがすぐには返事も帰ってこない。
「におうな」
「は?」
「おまえたちはここで待て、俺は少し暇をつぶしてくる」
「隊長!?」
盲目の男は手綱を操って、街道から見える森に馬を走らせた。
「におう、におうぞ! 何だこの臭いは!まるで熔けるようだ!」
森の手前で馬を止めると、「フライ」の呪文を唱えて森の奥へと突き進んでいく。
その男は盲目のはずなのに、木々の位置が分かるようで、一度も木にぶつかることなく森の奥へと突き進んでいった。
後に残された部下たちは、待てと言われた以上追いかける訳にもいかず、森の側で立ちつくしていた。
ほんの20メイルほど森に入り込めば、振り返っても街道は見えなくなる。
所々に生えている草は人の背丈ほどもあり、木に絡みつくツタは森の雰囲気をより暗くしている。
地面は木の根が隆起してデコボコになり、気を抜くとすぐに転んでしまいそうな程だ。
そんな中を、臭いに向けて飛ぶ、今までに嗅いだことのない、腐臭と殺気の入り交じる臭いに向けて飛んでいく。
しばらく飛んだところに、人間とは思えない程低い体温があった。
人間の形をしておきながら、他よりも低い温度のそれは、こちらの姿を見て驚いているのか、頭に血を上らせるように温度を変化させていた。
それとともにぶつけられる殺気が、あまりにも心地よい。
盲目の男”白炎のメンヌヴィル”は、未知の存在を前にして笑みを零した。
436 :
仮面のルイズ:2008/08/04(月) 03:50:10 ID:HNtZ5qyY
………
ルイズは約半日ぶりに外の空気を吸った。
足下には死体が転がっている、内側から引き裂かれたそれは、左肩から右脇腹にかけて無惨にも引き裂かれている。
ふと思う、サナギが蝶になる瞬間を、自分は体験したのではないか。
人間の体の中に潜り込み、人間を着る。それは母体の中で誕生を待つ赤子と言うより、ふ化を待つ卵のような、殻を捨てて羽ばたかんとする蝶のような気持ちだと思った。
「はあ……まぶしい…」
空を見上げると、澄み切った空から降り注ぐ太陽光が、眼球に突き刺さる。
手で光を遮りつつ、ルイズはだらしなく口を開き、まるで犬のように舌を出した。
陽光を遮る手は、血や腸液で汚れている、それを軽く振り払って自分の体を見ると、所々が人間の体液で汚れていた。
「いやだ、もう、洗わなきゃ」
体についた汚れを手で払うルイズ、その足下では、まっぷたつに引き裂かれた死体がうごめいていた。
「NNNNNNBAAAAAAAA……」
ずるり、ずるりと体を動かそうとする死体は、ルイズの血によって食屍鬼(グール)と化していた、腕を動かし、体を引きずって、どこにあるか分からない獲物を食らおうとしている。
ルイズはそれを見ても何も思わなかった、汚いとか、怖いだとか、愛おしいだとか、そんな感情を一つも抱かなかった。
ただ一つルイズの心に浮かんだのは、誰かとの約束。
「……だめよ、食屍鬼は作らない」
そう呟くとルイズは、右手を食屍鬼に向ける、右手の掌からズブズブと杖がせり出し、その感触を確かめ優しく握り込む。
何を焼くのか、何を破壊するのかを強くイメージする、食屍鬼に杖の先端を向けたままルイズは後ずさり、木の陰に隠れた。
「エクスプロージョン」
呟く。
その瞬間、食屍鬼を強烈な光が包み込んだ。
その光は、バッ!という破裂音を伴う強烈なものであり、反射光がルイズの肌を僅かに焼いている。
火傷を負った時のようにルイズの肌がずるりと剥け、髪の毛は溶けかかって半分以上が皮ごと地面に落ちた、ジュウジュウと音を立てて液状化し、風化していく皮膚を見下ろしながらも、ルイズの体は徐々に再生されていく。
食屍鬼を見ると、その体は八割近くが液状化しており、溶けた先から次第に風化してハイになっている。
燃やされて灰になるのではなく、溶けて灰になる異常な光景が、人間とは違う存在なのを暗に強調していた。
くずれゆく食屍鬼を見つめていると、何かが頭の中に浮かんでくる。
ゴミ同然の人間が塵に還っただけ、それだけのはずなのに、何か別の光景がフラッシュバックする。
大勢の食料(エサ)が自分を見て顔を青くしている。
自分は、机の上に置かれた石ころが食料どもに見えるように、教壇の後ろへと回った。
今のようなエクスプロージョンではなく、練金を唱えて爆発が起こり、そのときの光で火傷を負った、その時あのゴミどもは、私に…キュルケは………
「ツェルプストー……」
学生寮では隣の部屋にいた女、男を連れ込み楽しんでいる、ふしだらで下卑た女。
そして誰よりも我が儘で、そして誰よりも自由で、そして憧れていた女!
あの褐色の肌にわたしを刻み込みたい、そうして永遠に私に微笑みを向けさせたい。
あれをわたしのものにしたい。
どくん!と心臓が跳ねた。
心臓が無くても、吸血鬼の肉体は全身に血を巡らせるが、基本的には人間と同じように感情が体に影響を与える。
風化した食屍鬼の臭いが漂う森の中で、ルイズは一人高鳴る胸の鼓動に、未知の快感と期待と、暗闇に光の差し込むような晴れ晴れとした気分を味わっていた。
437 :
仮面のルイズ:2008/08/04(月) 03:50:46 ID:HNtZ5qyY
「!」
不意に、ルイズの直感に何かが響いた、それは不自然な木ずれの音だったか、それとも遠くから聞こえてきた鳥の鳴き声が止まったことで感じたのか分からない。
しかし、確かに何かの異変を感じ取っていた。
ペキ、という小さな音が聞こえる、おそらく木の枝が折れた音だろう、いつの間にか10メイル近くにまで何者かの接近を許していた。
普段なら考えられない事だが、興奮して周囲の見えなくなっていたルイズには仕方のないことでもあった。
がさがさと草をかき分ける音が聞こえる、ルイズは音のする方向に目を向けた、そこには顔に火傷の痕を負った傭兵らしき男がいた。
マントを身につけているところを見ると、メイジなのだろう、優れた風のメイジか、木々の水を感じられる水のメイジだろうか、それとも地面の感触から周囲を知る土系統だろうか。
「おや、なんだ? 人間じゃあ無いな」
「………」
ルイズは無言だった、人間じゃないという呟きが本気だったとしたら、目の前の男は焦点の合わない濁った目ではなく、別の何かで自分という存在を判断している。
ルイズは呼吸を止めた、男の濁った目を見たからだ、あの目は何も映していない、かわりに花聞こえてきたのは鼻息。
原理は分からないが、この男はルイズと同じように、五感の視覚以外のものに重きを置いているのだろう。
ルイズはゆっくりと、髪の毛をうちいくつかを逆立たせて空気の流れを感じ取る、まるで触覚のようなそれは周囲の音と風の流れを敏感に感じ取り、目の前の男の動きを感じ取る。
「なあ、教えてくれ、この臭いは何だ?燃やしたかと思ったが違う、人間だが人間でもない、まるで人間が泥になって、それが焦げたような死の臭いだ」
ルイズは無言のまま、腕から吸血馬の毛を伸ばし、剣へと形を整えていく。
「それに、おまえ。体温が低いぞ、石の裏に張り付いたトカゲのようだ、なのに、おまえは断頭台と同じ臭いがする!」
走り出すように重心を下げて地面を蹴る、水平に跳躍したルイズは一瞬で男との間合いを詰めて、手首から指先に向けて伸びた剣を振り下ろした。
パァン!という破裂音にも似た音が響く、ルイズの剣と、男が持つ金属の棒が衝突した音だ。
ルイズはその瞬間、悪寒という危険信号を受けて距離を取ろうとした、鉄の鎧でも切り裂ける吸血馬の毛が、鉄の棒で弾かれたのではなく、いなされたのだ。
人間を頭から一刀両断すべくこめられた力は、予想外の方向に逃げ、大きく崩れたルイズの体勢は一瞬の隙を作ってしまった。
「……っ!」
足を踏ん張り追撃しようとするルイズの目に、赤黄色に燃える炎が映る、咄嗟にデルフリンガーを構えようとして…背中に回した手が宙を切った。
「あ」
ボジュッゥと音を立ててルイズの右脇腹に炎が当たる、男の放った炎は、今までに感じたことのない程高密度なものだった。
ニューカッスルから脱出するときも、レキシントンに乗り込んだ時も、これほどの痛みは無かった。
「GAAAAAAAAAAA!!あ゛ はあ゛っ!」
炎は硫酸のようにルイズの体を浸食し、容易く肺にまで達した。
「はぐう゛ うぶっ……」
炭化した細胞は再生されず、もはや役に立たない、それどころか再生のために増殖しようとする細胞すら阻害している。
「いい臭いだ、思った通りだ、いや思った以上だな!断頭台の臭いだ!」
高笑いする男を睨もうとして顔を上げたが、姿はない、すでに木の陰に隠れているのだろう。
「ごろ じ でやる…」
肺を再生すべく漏れた体液が口にまで逆流し、喉に炭混じりの粘液がせり上がった。
ルイズは、油断していた。
相手を「風」か「土」のメイジだとばかり思いこんでいたのだ。
男の瞳は、焦点の合わぬ濁った瞳だった、それでも森の中を通り抜けられるのは、周囲の空間を敏感に察知できる風系統に違いないと思いこんでいたのだ。
一撃で自分を葬るほど強力な、火のメイジだとは思っても見なかった。
438 :
仮面のルイズ:2008/08/04(月) 03:51:22 ID:HNtZ5qyY
ルイズは周囲を見渡しつつ、視聴覚に神経を集中させる、一部焼けてしまった髪の毛を逆立たせて、空気の流れと熱を感じ取ろうとしていた。
「!」
真後ろから飛んできた熱の気配に驚き、ルイズは咄嗟に脇へと飛んだ。
炎はルイズが居た地面に衝突し、ぐわっと高熱を発して地面を抉る。
ルイズは炎の飛んできた方向を見ようとしたが、地面に落ちたはずの炎から一回り小さい炎の玉が現れたのを見て、地面をえぐり取るように腕を振った。
大人の腕ほどもある木の根を何本も巻き添えにして、エア・ハンマー並の土と風が炎の玉を襲う、ルイズは火の玉が動きを止めたのを見て、その隙に手近な木の幹に手を差し込んだ。
まるで『ブレイド』で刃と化した杖のように、ルイズの指先は硬質化して木の幹へと吸い込まれる。
腕に力を入れ木の幹を半分ほど引きちぎり、そのまま腕の水分を気化させて凍り付かせ、火の玉へと投げつけた。
バシュゥ!と音が響く、真っ赤に焼けた鉄棒を水に浸けたような音だ、それを聞いて盲目の男は、口元が醜くゆがむのを止められなかった。
「面白いぞ!先住魔法か、吸血鬼か?なるほど昼間なのにご苦労なことだ!」
ルイズは答えない、自分の位置を悟られないために息を潜め、音を立てぬよう静かに両腕から剣を生やす。
今の声で、相手の位置は掴んだ、問題はそこまでの距離、わずか8メイルなのに木々が障害物となり、思うように相手に接近できない。
直径1メイル程度の木なら蹴り倒して、文字通り蹂躙することはできるが、相手のファイヤー・ボールに対応できなくなる。
エクスプロージョンは使えない、詠唱が長すぎるだけでなく、自分の身まで危うくなる。
接近しなければ、相手を倒す手が無い。
…そう思いこんでいたルイズの素肌に、正面から飛び来る熱の感覚があった。
バックステップで木を背にし、火の玉が衝突する寸前で回避したが、また別の火の玉が地面すれすれを飛んで来た。
「くっ!」
余裕のない戦いに、ルイズは焦りを感じていた。
一方、別の木の影に身を隠した、盲目の男にも焦りがあった。
相手の斬撃を杖でいなすことは出来たが、その時の衝撃はオーク鬼とは比べものにならぬ程強烈だった。
かろうじて骨折は免れたが、右腕全体がしびれ、感触がない。
治癒の得意な部下に治させなければ不味いな、とまで考えていた。
そんな不安があっても尚わき上がる興奮が、男を狩猟者に仕立て上げていく、今まで炎を追い続けてきた自分が、炎とは正反対の、冷たいものに気を惹かれたのだ。
どんな容姿をしているのか分からないが、数メイル先に潜む女は、間違いなく剃刀のような鋭さと氷のような冷たさを兼ね備えている。
そして何より死の臭いがする。
屍体の臭いではない、自分が死ぬ、それを連想させるだけの力が相手には備わっている。
それこそが死の臭い。
「ガキどもを燃やす前に、こんな相手と出会えるとはな…くくくく…」
腹の奥からせり上がる笑みは、まさしく狂人の笑みであった。
「…また、外した」
顔をかばった右手、その指先が炭化して崩れ落ちた。
だが、それが少し不可解だった、正確に体の中心を狙ってくる火の玉が、気化冷凍を行った時だけブレるのだ。
「音じゃない…熱、そう、火のメイジなら熱ぐらい感じ取れる、そういうことね…!?」
ルイズは手近な木に手を当てると、腕の温度をグンと引き下げて、木の幹を凍り付かせた。
「おおおおあああああアァッ!」
全力で打ち込まれた回し蹴りが木の幹を砕き、凍り付いた木片を飛散させる。
一方盲目の男は、ズドォッ!という爆発音と共に、周囲の温度が急激に乱れたことに驚かされた、だがすぐに冷静になると身を低くして襲撃に備え、周囲の熱を感じ取れるよう集中しはじめた。
「…………ナウシド・イサ・エイワーズ」
その耳に聞こえてきたのは聞き慣れぬ詠唱の声。
「先住魔法か?」
盲目の男は、声の聞こえる方にどんな「熱」があるのか感じ取ろうと集中した、だが周囲の温度が下がったままで上手く感じ取れない。
439 :
仮面のルイズ:2008/08/04(月) 03:51:53 ID:HNtZ5qyY
「ちっ、無駄遣いだな」
そう呟くと、ファイヤーボールを詠唱し、火の玉を声のする方に向かって飛ばしていく。
密度の薄いそれは、人間が歩くほどの速度で木々の隙間をすり抜けていく、それによって熱せられた地面や木々の「熱され方」で、地形と状況を判断していった。
先住魔法の中でもやっかいなのは、木々のツタを自由自在に操る魔法と、風の刃だとされている。
大地を操る先住魔法や、姿形を変える魔法はごく希で、噂しか伝わっていない。
しかし吸血鬼や翼人、いわゆる亜人と戦った中では、風の刃や木々のツタが特に厄介だった。
だが、先住魔法はルーンの詠唱ではなく、言葉を用いて語りかけるように唱える。
故にどんな魔法が行使されるのかすぐに分かるのだが、今敵対している相手から聞こえるルーンは、今まで一度も聞いたことがなかった。
「ニード・イス・アルジーズ……」
「そこか!」
ようやく特定できた位置に向けて、高密度のファイヤー・ボールを飛ばす、途中にある木々を焦がしながら風きり音を鳴らして敵へと向かっていく。
「ベルカナ・マン・ラ ぎゃあっ! 」
「捕らえたぞ!」
追撃をすべく、ファイヤーボールを上回るフレイムボールを詠唱しようとしたところで、周囲の空間が歪んだ。
「がァッ!ああぐ、うぐっ…」
ルイズが唱えていたのは、ティファニアの得意とする忘却の魔法だった、一時的に戦意を喪失させれば勝てると思い、これを選んだ。
しかし忘却の魔法は相性が悪いのか、ルイズが唱えるときはエクスプロージョンと比べて高い集中力を要求される上に消費する精神力も大きい。
そのため、詠唱中に意識を失うこともある、ほんの一瞬出来た隙に、ファイヤーボールが打ち込まれ、ルイズの胸に大穴が開いた。
だが、忘却の魔法は不完全ながら発動したのか、相手の動きが途切れたのが分かる。
「あ、足が……動け、うごけっ」
胸に開いたこぶし大ほどの穴から、炭化した脊椎がぼろぼろとこぼれ落ちる。
びくん、びくんと足の筋肉は動くものの、力が入らず立つことができない、仕方なく両手に力を入れて、体を引きずっていこうとしたそのとき、遠くから草をかき分ける音と、足音が聞こえてきた。
「隊長!」「お頭ァ!」
「…んん?ああ、なんだお前ら、こんなところでどうしたんだ」
「お頭がなかなか戻ってこないんで、探しに来たんですよ、どうしたんですかい、杖まで落として」
「杖? ……ああ、手が痺れて落としたんだ、あ?おかしいな、俺はなんで手が痺れてるんだ?そもそも俺は……」
「た、隊長、そろそろロサイスに向かわないと、トリステインに間に合いませんぜ」
「そうですぜお頭、魔法学院とやらを、焼き尽くしてやるんでしょう?」
「……ああ、そうだ、そうだな。トリステインに行くんだった……ああ、くそ!いい香りがあったのに、焼き損なった!ガキどもを燃やしたぐらいじゃ足りなさそうだ」
「お頭、いったい何を」
「まあいい、ロサイスに行くぞ、良いところだったのに水を差された気分だ、焼き尽くしてやる、ガキも大人も、じじいもババァも、全部だ」
ガサガサと音を立てて、ルイズから離れていく男達の会話は、ルイズが見過ごせるものではなかった。
「まほう…がくいん……ああ…伝えなきゃ…伝え…なきゃ…」
未だ動かない下半身を引きずって、ルイズは動き出した、男達とは別の方向へ、ロサイスとはほぼ逆方向の、ウェストウッドへと。
周囲の音を確認しながら、下半身を引きずって移動するのは、予想以上の神経を使う。
その上気化冷凍法を使いすぎ、体液が激減した体では肉体が再生しにくいので、何者かと出会うことは避けなければならなかった。
「ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ」
乾く、喉が渇く、体が乾いている。
どうしようもない程の乾きが襲いかかってくる、それを癒すのは水ではなく、血。
血がほしい、血がほしい、血がほしい!
時折、街道が見える位置まで移動し、自分の位置を確認しながら、ルイズは腕だけで体を引きずっていく。
仮面さん支援受け取ってください
441 :
仮面のルイズ:2008/08/04(月) 04:00:24 ID:HNtZ5qyY
「ハァッ……ハァ……ァ……」
目の周りが乾き、唇はガサガサに固まり、口内は水分を失い萎縮している。
日は傾き、そろそろ夕方になろうとしている。
「あ……グ…」
ネズミ一匹捕らえられない体が、とても恨めしかった。
その気になればハルケギニアを食屍鬼うごめく死の国に出来る、けれども今自分は死にかけている。
どんな巨大な力があっても、飢えと乾きには決して勝つことができない。
ほんの少しの、ほんの少しの血が欲しい。
鶏でも、ネズミでも、野ウサギでも何でも良い、ほんの少しの血があれば体が再生できる。
ルイズは、仰向けになって、木々の隙間から見える空を見上げた。
夕焼けが終わりかけた空の色は、死体に溜まった血のように紫色をしていた。
「うわ!なんだ、行き倒れか」
「お父さん、どうしたの?」
「こっちに来ちゃ駄目だ、…こりゃひどいな、なぶり殺されたのか…」
ルイズの頭上で誰かの声がした。
二十代後半ほどの、たくましい体つきをした男が、ルイズの側に跪き首に手を当てている。
「体温もない…駄目か」
「ねえお父さん、その人…」
「ジュディ、駄目だよ、この人はもう死んでるんだ、あまりじろじろ見ちゃいけない。…それよりも木の実は捕れたかい?」
「うん、こんなに取れたよ」
「そうか、駅で夕食にしよう。もうそろそろ夜になる…明日はこの人を埋めてやらないとな」
そう言って男は、駅のある方向を見た。
町から町へ移動するのに、馬で二日三日が当たり前なので、途中に宿泊が出来る”宿場”や、馬を預けて休むことが出来る”駅”が街道沿いにあるのだ。
「…今、埋めてあげられないの?」
「もうすぐ夜になる、手伝ってくれる人がいれば別だけど、ほら見てごらん、街道にも人はいない、それに声をかけても手伝ってくれないさ。明日にしようね」
「うん…」
男は、ジュディと呼んでいる少女の頭に手をのせた、厚手の布で作られたエプロンドレスのスカートをたなびかせて、少女は元気よくうなずいた。
「ごめんなさい。あした埋めてあげるから…」
そう言ってルイズに近寄った少女の額に、銀色の何かが突き刺さった。
男の視線からは何も見えない、ジュディの額を貫いた刃も、もちろん見えることは無い。
「ジュディ?」
じっとしゃがみ込んだまま動かない少女を訝しみ、男が声をかけた。
ぐらりと少女の体が倒れる。
「ジュディ!?おい、どうし…た…」
抱き起こして顔を近づけると、薄暗い森の中でも分かるほど、少女の顔には大きい亀裂が走っていた。まるでザクロのように。
「……うわああ ぐっ…!……!…!!!」
叫び声を上げようとした男に、ピンク色の髪の毛が絡みつく、髪の毛はズブズブと皮膚を浸食し、男の体から血液を搾り取る。
ルイズは、男が抱き上げていた少女の亡骸を取り上げると、首筋にかみつき、肉を引きちぎり、租借した。
どんな巨大な力があっても、飢えと乾きには決して勝つことができない。
ほんの少しの、ほんの少しの血が欲しい。
鶏でも、ネズミでも、野ウサギでも何でも良い、ほんの少しの血があれば体が再生できる。
ささやかな食事を望んだのに、それなのに、人間という極上のエサが来た。
ああ始祖ブリミルよ、あなたに感謝いたします。
完全に吸血鬼になってしまったか支援
443 :
仮面のルイズ:2008/08/04(月) 04:06:21 ID:HNtZ5qyY
……
「ふわ…」
いつになく清々しい朝を迎えた。
木漏れ日は柔らかく、そして優しい。
まだ日の出から間もないようで、空は少し暗いようにも思えた。
「ああ…よく寝たわ」
呟きつつ背伸びをする、両手を組んでうーんと背を伸ばし、首を左右に振ると、目が覚めてくる。
「ああ、そうだ、こうしちゃいられない。魔法学院が襲撃される…急いでワルドに伝えないと!」
立ち上がり、両手、両足の感触を確かめる、昨日焼かれた部分をなでると、さすがに違和感があった。
吸血鬼の体でもすぐには再生できない、ひどい怪我だったと、ルイズは記憶している。
それなのに多少の火傷痕が残るぐらいで、機能的にはほとんど問題ないレベルにまで回復している、ルイズはそのことに驚いた。
「怪我の治りが早いのは、いいわね」
そう呟いてあたりを見回し、誰かに見られていないかを確認する。
街道からは近すぎず遠すぎず、しかし一目では分からない距離。
今のところ誰にも見られていないだろう、そう考えてウェストウッドへ足を向けたルイズは、地面に転がった何かを蹴飛ばした。
「あれ?」
見るとそれは、男の首。
その傍らには、獣に食い散らかされたような、少女の左半身。
「え…」
鮮明に、喜びと共に浮かんでくる昨夜の記憶。
犬のように四つんばいになり、男の体から血を吸い、少女の肉を味わい……
「あ、ああ、あああああ」
ルイズは駆けだした。
ここに止まるべきではないと、初めて盗みを犯した小心者のように、怖くなって逃げ出した。
しかし何よりも怖かったのは、少女の肉の味を思い出した瞬間のこと、ルイズ自身が感じていたのは嘔吐感ではなく、美食を味わう幸福感だった。
「たすけて」
森の中を一心不乱に走り抜けながら呟く。
「たすけてよ、助けてよ! ブルート!」
To Be Continued →
規制を食らいつつもなんとか投下いたした。
支援に感謝します。
仮面さんGJ&お疲れ様です
ルイズ…(ノД`)
仮面さんGJ!相変わらずルイズは人と吸血鬼の狭間を揺れ動いているようですね。
これからどうなるかも楽しみにしてます。
前に誤字指摘&修正スレで仮面さんにレスを頂いたときうまい事言おうとして何も言えなかったんで、
応援してますとここで言わせてもらいます。
仮面のヒト 乙!
嬉しくてWiki更新しちゃったぜ
ところで「仮面のルイズ-66」の「To Be Continued →」のところを
[[To Be Continued→>仮面のルイズ-67]]とするのは構わないのだよね?
それと「仮面のルイズ-67」の「To Be Continued →」のところを
[[To Be Continued→>仮面のルイズ-68]]としておいても良いのかな?
「ゼロのスネイク 改訂版」を更新した際に気付いたのだが、
「To Be Continued」部分に続きページを埋め込むケースとそうでないケースや
「前ページ 目次 次ページ」のようなヤツがあったり、無かったりが混在しているようだ
そこらへんは更新者任せなのかな?
「仮面のルイズ」シリーズでは、これらの有無が中途から曖昧になっているようだ
個人的には進む目次戻るが一文で付けられるnaviで統一したい
まあ、いまさらタイトル変更を大量に依頼するなんてOTZ
ジョジョスレはサブタイトルがそのままタイトルになっているのが多数あって
新着を見て面白そうだ一から読んでみようと思っても探すのがちと面倒だったりする
そんなわけで目次とか戻るも一緒にあるといいなと思うんだが
To Be Continued →にリンク張るのはジョジョ的には美しいよなw
仮面のヒトGj!!
正直ルイズが可哀想&少女可哀想&ルイズ死ねと同時に思った
短い描写にもかかわらず少女親子に感情移入してしまう
先に美人局でスカッとさせてっ貰ったところに来たから余計に
なんちゅうSSを
書いてくれたんや…
なんちゅうもんを…
仮面さんGJ!!
ルイズが・・・ルイズが暗黒面に・・・
結局、オスマンの判断は正しかったという事か……
たまらん展開に俺歓喜。GJ過ぎるw
ルイズは絶望中だが魔法学院襲撃事件は待っちゃくれないし助けになる相棒もいない。
こういう絶望的な状況はやはり面白いな。ルイズの決断に期待。
あと最後のぶるりんの名前を呼ぶシーンが泣ける。ルイズ…(ノД`)
GJ
ルイズ・・・堕ちたか。
悲しいが「しぬがよい」と言わざるを得ない。
まあこうなると結末としては、シエスタもしくは実の母に殺されるか
ストレィツオのように自ら命を絶つかの二択しかありえんような……
罪を背負ったねルイズ。優しい人達のご不幸には不運と言わざるを得ない。
でも、吸血鬼的倫理上は緊急避難だからokok
問題は、続けざまに凄惨な死体を残して後始末してないって事だ。
>>455 > 問題は、続けざまに凄惨な死体を残して後始末してないって事だ。
これはヤバイ。 各方面に敵を作る。 身内にも不信感を持たせる。
最後が最期になる確率が一気に高まってしまった
二部でジョージ二世を始末したゾンビみたいに、骨まで残さず食べればオッケー
メ _|\ _ ヾ、
メ / u 。 `ー、___ ヽ
/ // ゚ 。 ⌒ 。 ゚ u / つ
/ //u ゚ (●) u ゚`ヽ。i l わ
l | | 。 ゚,r -(、_, )(●) / ! ぁぁ
ヾ ! //「エェェ、 ) ゚ u/ ノ あぁ
// rヽ ir- r 、//。゚/ く ああ
ノ メ/ ヽ`ニ' ィ―' ヽヽヾ ぁあ
_/((┃))_____i |_ ガリガリガリガリッ
/ /ヽ,,⌒) ̄ ̄ ̄ ̄ (,,ノ \
/ /_________ヽ \
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
_|\ _
/ u 。 `ー、___ ヽ
/ ゚ 。 ⌒ 。 ゚ u / つ
/u ゚ (●) u ゚`ヽ。i わ
| 。 ゚,r -(、_, )(●) / ぁぁ
il ! //「エェェ、 ) ゚ u/ あぁ
・ 。 || i rヽ ir- r 、//。゚/ i ああ
\. || l ヽ`ニ' ィ―' il | i ぁあ
゚ヽ | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| | ダンッ
。 ゚ _(,,) GJ!! (,,)_ / ゚
・/ヽ| |て ─ ・。 :
/ .ノ|________.|( \ ゚ 。
 ̄。゚ ⌒)/⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒ヽ\  ̄ 。
ルイズの絶望に全俺が号泣した!
ブルリン!馬!お前らだけがルイズの心を支えてくれていたんだよッ!!
ヒラコーチックなエログロさでルイズの悲劇指数がうなぎのぼりに!?
誰かルイズを支えてやれ!
次回もwktkしながら全裸正座で待機してると理解していただこうッッ!!
ルイズ「ゥ ン ま あ あ 〜 い っ
こっこれはああ〜〜〜っ この味わあぁ〜っ
サッパリとした親父に娘のジューシー部分がからみつくうまさだ!
親父が娘を!娘が親父を引き立てるッ!
『ハーモニー』っつーんですかあ〜 『味の調和』っつーんですかあ〜っ
たとえるならキュルケとタバサのコンビ!
ティファニアに対するオッパイ!
元婚約者のワルドに対する元盗賊の『マチルダ』!
…つうーっ感じっスよお〜っ」
という電波を受信した。
ともかくGJ!
遅くなったが、仮面の人GJ!
そして座って奉仕させるルイズに帝王の風格を見た。
>>447の意見を見て Excel の CONCATENATE 関数を使って 1〜67 の連続数字の各行から
[[To Be Continued →>仮面のルイズ-<N-1>]]
----
#center(){[[戻る>仮面のルイズ-<N-1>]] [[目次>仮面のルイズ]] [[進む>仮面のルイズ-<N+1>]]}
※Nには1〜67の数字、<N-1>はNより一つ小さい数字、<N+1>はNより一つ大きい数字
という文字列(CHAR(10)による改行で複数行になる)を量産してみた(結果のセル範囲をコピーしてエディタにペーストして完成)
ここまでは簡単にできて、この先は手作業になるけど、
これを各 仮面のルイズ-N のページの末尾に貼付けて行けば、
To Be Continued →
――――――――――――――――――――――――――――
戻る 目次 進む
のようになると思うが、さてやって良いもんなのか?
なお、「To Be Continued →」と「進む」がカブるが、「戻る」と「目次」だけだと格好悪いし、「To Be Continued →」は作者さんが入れてると思うから勝手に削るのは気が引ける
俺は食わない奴は殺さない、殺したからには必ず食う!byトリコ(うろ覚え)
命を繋ぐ為に、食べるために殺すのは全ての動物の背負う業だ。
悪くないとは言わない、だが必要以上に攻めるのは哀れだ・・・
誰よりも強く責めるのはルイズ自身の心なんだよ
殺し殺されにも食べるのにもなれても、一般人相手にってのはきっそうだからなー
コルベールあたりと話したらこの絶望が共感できるのではないだろうか?
ルイズ死亡フラグ
くそ、またリアルタイムに間に合わなかった…仮面の人、GJ!!
ルイズ、このまま討伐されるなんてことになったら悲しすぎるだろ…
ブルリン!!吸血馬!!はやくきてくれ!
ルイズさん・・・
>>465 なるほど、そういうやり方があるんだね
そっちの方が簡単だ
ご指摘通り、機会を見て「まとめwiki総合スレ」で提案してみよう
仮面の人、GJ!
ルイズの絶望感がたまらん。
皆さん、ブルリンだけじゃなくきれいなワルドのことも思い出してくださいorz
だってワルドなんてルイズを信奉してるだけで支えれないじゃんよ
デルフのほうがまだルイズを支えてるぜ
……デルフに隠された人化機能とかないかなぁ
>>471 フランジー乙。・・・フリンジーだっけ?
フーケを吸い殺しかけた時と違って、デルフが居ないから歯止めが効かんかったのか…。
仮面デルフの重要性が、他作品の全いらない子デルフ合計重量程の重みでのしかかるよ…。
姉妹スレだと擬人化したデルフがいたなぁ
随分とクールな奴だったわ
このスレにだってアヌビスのデルフがいるじゃないか、相方として重要なデルフが。
無機物デレなデッドマンのヒロインをやってるデルフもいるな
ここで本命サイトの登場って、中の作者の人、そんなこと匂わせていたっけ?
ヤッベ、マジヤッベ
何がヤバイってドシリアス展開まっしぐらなのがヤッベ
うちの、結構ギャグ色混じってきたしなぁ……主にマチルダさんが
うちのおマチさんなんてゲシュキックぶっぱなしたんだぜ・・・・・・。
ジョンガリ書いてほしいな
ところでジョンガリ・AのAってなんだ?
ジョンガリ・A があらわれた!
ジョンガリ・B があらわれた!
って感じの奴じゃね?
『帽子みたいな変な使い魔』良いとこで止まってんだよなぁ
おっと『変な帽子みたいな使い魔』だった……
正直すまんかった
ファイトクラブだッ!!
かきやがれえええええ!!
>>481 マジレス
ブランドメーカーのジョン・ガリアーノ
↓
ジョンガリアーノ
↓
ジョンガリ・アーノ
↓
ジョンガリ・A
>>486 なん…だと…?
こんな…語呂合わせがあると…いうのか…。
エルメスがエルメェスに、エトロがエートロに、
アレクサンダー・マックイーンがサンダー・マックイイーンになる世界
つまりジョジョの世界は俺達の世界が一巡して少しずつ名前が変化した世界のことだったんだよ!!!
神父に至ってはエミリオ・プッチだからな
ぶっちゃけ6部はブランド物だらけだ
コロネのついた看守はソニー・リキール。元はソニア・リキエル。
つまり、リキエルは使いまわされているッ!
Wikipediaとかで見るとそこらへんわかりやすいな。
んな事言い出したら、4部以降のスタンド名なんてほとんど音楽関係だぞ
多少アレンジされてるだけマシさ……
3部のスタンドはタロットなんだぜ
クリームは何なんだぜ?
やっぱりアイスクリーム?
本体がヴァニラ・アイスだからそうなんじゃないかな
ヴァニラ・アイス+クリーム=バニラアイスクリーム
なんだろうか、やっぱ?
ところでクリームはエジプト9栄神でもタロットでもないよね…?
まあ四部以降は名前見ただけで元ネタなんのか解る奴多いからな、レッチリとかピストルズとかボヘミアンとか。
>>494 >クリーム
かつてエリック・クラプトンが所属していたバンドのはず
3年経つか経たないかで解散したらしいけど
>>499 だから 亜空間でバラバラにする って事か。
遅ればせながら、仮面 乙!
ルイズも食べられた親子も不憫だ
アナスイとか
ヴィヴィアーノ・ウエストウッドとかもブランドだな
S・Mも
パソコンが修理から戻ったら続き書くんだ・・・
503 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/06(水) 16:58:31 ID:m9h4iuy1
S・Mって誰だっけ?
マックイイーン?
スーパー・マン
スポーツ・マックスだろ
しかしこんな名前のギャングがいるかよ
>>505 あえて言おう
タコとか魚とかオレンジとかイチゴとかチーズとか生ハムとか(ry
のほうが……
>>506 あれは全員、ふとしたことから家族や過去がばれるのを防ぐため(本名を明かさないため)のコードネームだ。
実名がナンテコッタなパンナコッタよりはいいじゃないか
ジョルノ・ジョバァーナもあだ名みたいなもんだしな
でもブチャラティは本名じゃね?
アバッキオも本名っぽいな
ワキガ?ああ、そんなのもいたね(笑)
どこかで「はじめまして、チーズおかきです」とか日本語の食べ物の名前で自己紹介してるジョジョのコラを見た覚えがある。
>>509 >ブチャラティ
地元イタリアに同名のお菓子があるらしい
干しぶどう入りのクッキーだとか
パスタ野郎共からすると、日本語で例えればジョジョのマンガは
「俺の名は『ひつまぶし』・・・我が無敵のスタンド、『北島三郎』の攻撃をくらえッ!」
なーんて事を言ってるように見えるんだろうな・・・
むしろ御大がそのノリで書いてるとしか
アニキィーー!
避難所に投下してみたけど、、、
なんてことはなかったなぁ〜
ふと思ったんだけどさ、学園襲撃編でキュルケがお禿先生に惚れるじゃん?
あれってサイトが主人公の場合、主人公にはない信念や逞しさにときめいたってんで結構説得力あるけどさ
ジョジョキャラが主人公の場合とたんに厳しくなるよな、大体のキャラが覚悟も誇りも信念も逞しさも数段上だろ?
それにコルベールは罪の意識に耐えきれず逃げて逃げてそれでも逃げ切れぬと悟って、唯一すがれるモノとしての信念だったけど
大抵のジョジョキャラの場合、あえて罪を背負い込みそれでも己の信じる道へ突き進む覚悟とかもうね…
正直あいつらの不屈の精神は異常すぎるわ
逆に考えるんだ
別に無理にコルベールに惚れさせなくてもいいやと考えるのさ
SSによってはウェールズ生き残らせて王女とそのままくっつけさせる物も多いし、コッパゲもたまにおマチさんとかとくっついてるSSもあるし
そもそもそこまで話が進むSSってかなり稀だしな
>>517 そんなJOJOキャラ達にも欠点はある
それは彼らの大半が女とかどうでもいいと考えてることだ!
女に興味があるキャラもエロ目的か利用目的でしか興味持ってないからなぁ。
まともに青少年的な異性への興味を持ってるのは康一くんくらいか?
ある意味ではアナスイもだが。
熟女好きな花京院の事をたまには思い出してやってください
あと億泰も
恋愛関係に関しては、初代ジョジョが一番まともだろ。普通に恋愛して結婚してるんだぜ。しかもかなり正統派恋愛。
ドキュゥゥゥゥゥン! →流石ディオ! 俺達に(ry がインパクト強すぎて普通に見えないけど。
そういえば、荒木先生って子供いるの?
>>523 アルティメットシングはSEX必要無し
わかるな?
荒木先生が老けないのって
シンデレラに行ってるからじゃないの?
いや、ハイウェイスターで養分取りまくってるんだよ
本人が波紋使ってるって言ってなかったかな?
まぁ究極生物だろうけど
マジレスすれば娘がいたはず
何度読んでもアンサイクロの荒木先生の項目は声に出して笑うわww
キリスト教が迫害されてた時代、聖ペドロがローマから逃げ出そうしてたときに
キリストっていうか荒木に会った時の話
荒木(キリスト)に会った聖ペドロがマジビックリしながら
「ドミネ・クォ・ヴァディス(どちらに行かれるんですか)?」って聞いたら荒木が
「てめえ変わりにもっぺん磔(はりつけ)になりにいくだよッ!このマンモーニッ!」
って言ったからペドロは覚悟完了して
「荒木の言葉が
やべ途中送信w
キリスト教が迫害されてた時代、聖ペドロがローマから逃げ出そうしてたときに
キリストっていうか荒木に会った時の話
荒木(キリスト)に会った聖ペドロがマジビックリしながら
「ドミネ・クォ・ヴァディス(どちらに行かれるんですか)?」って聞いたら荒木が
「てめえ変わりにもっぺん磔(はりつけ)になりにいくだよッ!このマンモーニッ!」
って言ったからペドロは覚悟完了して
「荒木の覚悟が言葉じゃく心で理解できたッ!」
って言ってぺドロは磔に……
でも究極生物じゃないから復活出来ずじまいだったペドロを哀れんで漫画にしたらこうなった
↓
「ドミネ・クォ・ヴァディス?お前は磔刑だーーーーッ!」
>>531 おちつけ。誤字脱字のせいで、読み様によってはギャグになってるwww
しかしなぜ
SBRの一発敵キャラが出ないのか。
誰かミセスロビンソンを召喚する猛者は居らんのか
>>534 猛者の不在に不満があるなら
自ら猛ればいいじゃない
股間の益荒男ですねわかります
誰かいる?
おk、誰もいないなら、避難所に23時に投下しない。
ごめんね、脅迫めいたことしちゃって。
された気がまったくしてないので問題ない
543 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/07(木) 23:20:18 ID:B4zPGBpJ
オレノシタハスタンドダ
おい!ギアッチョの過去が分かったぞ!
元教師で4kgの辞書で殴ってきた生徒にブチキレて
40kgの黒板でその生徒をメッタ殴りにしてクビになったそうだ。
…って知ってた?
黒板はともかく、4Kgの辞書ってどんなんだw
ちょっとだれかフーゴ呼んできてー
>>546 それやおい系サイトに乗ってた腐設定じゃないのか?
他にもメローネが母親から虐待を受けていたとか書いてなかったか?
4キロの辞書云々はフーゴのことじゃねぇかwww
暗殺チームの過去の判明なんてリーダーのリゾットくらいじゃなかったか?
さしものフーゴでもギアッチョにはかないそうにない
スタンドの相性的にもツッコミの激しさでも
>>551 ホワルバの冷気で殺人ウィルスが防げるかの可否で難易度が変わるだろうね。
動くものはなくなるんだからウイルスも止まって届かないんじゃあないだろうか
「おめーの仲間のブチャラティだろうと 細菌をあやつるとかのフーゴのスタンドだろうと オレの周りに来れば全て止まるッ!」
とギアッチョ本人が発言してるしなぁ(細菌じゃあなくウイルスだけどさ)
書きあがった!
9日の夜11時頃に投下します
大量に投下するので支援よろしくお願いします
「支援した」ぜぇっ!兄貴!!!
>>556 おちつけ。
9日は今日の事で、9日に投下するって8日に言ったという事は今は9日だから
つまり、明日って今さ!
兄貴!明日って今さ!
そういや、ホワイト・アルバム状態でグレイトフル・デッド効くんだろうかな
あのスーツの中はとても暖かでぬくぬくらしいから、その状態なら利きそうなんだがw
ガスが届かないんじゃね?
老化が始まったらホワイト・アルバムの鎧を解除して足元にできてる凍った地面で転がって回復
ギアッチョは…闘い方がマズいけど近距離じゃある意味最強だよな
支援してくれる仲間がいれば世界クラスとも戦える気がする
連携が一番取りにくいスタンドでもある気がする
仲間も凍りそう
ホワルバで周囲に壁を作ってガード
↓
メタリカの鉄分攻撃で足止め
↓
ビーチボーイで心臓を抉る
連携ってこんなんか?
ビーチボーイで魚を釣る
↓
メタリカで血抜き
↓
ホワイトアルバムで鮮度を保つ
彼等の表の顔ってやつか
シブイねェ、まったくおたくらシブイぜ
その場で捌いて食うだろjk
イカスミ雑炊は美味そうだな
リトルフィートで小さくする
↓
マン・イン・ザ・ミラーで鏡の世界を通る
↓
ベイビィ・フェイスでネット販売
↓
ザ・グレイトフル・デッドで客を老化
完璧だな
そういえば、ルイズんとこって海あったっけ?
湖はあるんだが
オレはスレッドが立てられねえ!
wiki登録もできねえ
ひとりじゃ大量投下もできねえ
そんなオレでも、みんな協力してくれるか?
「・・・ズ。ルイズーッ。起きてよ。もうこれしか氷が無いけど元気になってよ!」
「・・・キュルケ・・・ここは?」
塔の中みたいだけど、みんなは?そして、プロシュートは?
「塔の一階よ。さあ早く戻りましょ、タバサが時間を稼ぐのにも限界があるわ」
キュルケが上に行こうと階段に進む。
「・・・いかない」
「なんですって?」
キュルケが足を止め振り返る。
「もう・・・どうでもいいわ」
キュルケがわたしを鋭く睨みつける。
「プロシュートは・・・わたしの事なんかどうでもよかったのよ」
「このままだと、ここにいる全員が死んじゃうのよ。
それでもいいって言うの?」
うるさいわね・・・。
「もう、どうだっていいのよ。わたしの知ったことじゃないわ」
キュルケは黙って、わたしを見つめ続ける。
「そう・・・。ルイズ、あなたにとってプロシュートは一番じゃ無かったのね」
「・・・なんですって」
これだけは聞き捨てならない。
「あなたにとって本当に彼が一番なら、あんな操られている奴の言う事なんか
気にしないわ。なのにそれを信じて不貞腐れて、それこそ生きていた彼に
対する侮辱だわ」
!
「フハッ、フハハハハハハハハッ。何を腑抜けていたの、わたしはッ!!」
そうよ!プロシュートがあんな事、言うはずが無い!
まったく、それを鵜呑みにして落ち込んでいた自分が恥ずかしいわ。
「立ち直ったようね」
キュルケがニヤニヤと笑みを浮かべていた。
「わたしを励ましてくれたの?」
いつも見ていて腹が立つ笑みも気にならない。
「まさか!思った事を言ったまでよ」
そう、その不敵な態度こそキュルケよ。
「行きましょうか。プロシュートを倒しに」
わたしは杖を顔の前に掲げた。
「ええ、行きましょうか。プロシュートを倒しに」
キュルケも続けて杖を掲げた。
「「杖にかけて!」」
わたしたちは上に戻るために階段を上る。
「キュルケ、走っちゃだめよ」
「ええ、わかってるわ」
踊り場に一人の老人が倒れていた。
「放っておきなさいよルイズ。プロシュートを倒せば全員助かるんだから」
この服に薔薇の杖・・・
「ギーシュじゃないの?」
「あらホント生きてたのね、プロシュート相手に」
そんな気はしたけどホントに生きていたのね・・・そういえば・・・
「ねえキュルケ。わたしはプロシュートに掴まってたと思うんだけど、
どうやって助かったのかしら?」
「ギーシュが大変だわ!すぐ氷で冷やさないと」
あからさまに話を逸らしたわね。
「ちょっと答えなさいよ!すごく重要な事よコレ」
キュルケは顔を逸らし自分の体を抱きしめる。
「・・・・・・よ」
「何?よく聞こえないわ」
「体当たりよ、体当たり!文句ある?」
・・・は?
「いや、無いけど、よく助かったわね」
「そうね彼も『えっ?』て顔してたわ。もうあんな真似、二度としないわ」
「ありがとうキュルケ。でも体当たりとわね」
「だって、しょうがないじゃないの。私の『火』はプロシュートの『力』と相性が
悪すぎるんですもの」
「確かにそうね。フフッ、いや馬鹿にしてんじゃ無いのよ」
「き・・・君たち・・・僕を忘れないでくれたまえ」
ギーシュが擦れた声で助けを求めてくる。
「えっ?ああ、そうね」
わたしは溶けてちっぽけになった氷の欠片をギーシュに押し当てた。
シュパアアアアァ
「ふう、助かったよルイズ」
若返ったギーシュがポーズを取り髪をかき上げた。
なんだか髪が薄くなってるのは気のせいかしら?
「わたしたちと別れてから何があったの?」
ギーシュが腕を組み天井を見上げる。
「・・・そう、僕は時間稼ぎの為ワルキューレたちに武器ではなく盾を持たせた。
なにしろ兄貴は傷がすぐに治るのだからね、倒そうなんて思わなかったさ」
「適切な判断ね」
「その後は、ワルキューレがブッ飛ばされて僕もそれに巻き込まれ窓から
転落・・・レビテーションで何とか助かったと言う訳なのだよ」
「ふーん」
よく見るとギーシュの顔や手には切り傷がいくつもあった。
「そして君たちと合流しようと走っていたら気を失ってしまったというのだよ。
いや、体温を上げてはいけない事をすっかり忘れていたよ」
はっはっは、と声をあげて笑うギーシュ・・・あんた凄いわ。
「さて、今から兄貴を止めに行くのだろう?『対策』とやらは分かったのかね?」
「ええ任せてよ!プロシュートを倒してみせるわ」
「ほお、オレを倒すと言うのか?」
プロシュートが上から勢い良く飛び降り目の前に着地した!
「くっ!」
マズイ!こんなに近くじゃ呪文を唱える時間が無い!
「えいっ」
わたしもプロシュートと同じ様に踊り場から飛び降りる。
わたしに続きキュルケとギーシュも一緒に飛び降りてきた。
「少しでいい、時間を稼いでちょうだい」
「うむ、わかった!」
ギーシュが薔薇の杖を振るうと一体のワルキューレが出現する。
だけど、グレイトフル・デッドの一撃であっけなく胴体に穴が空く。
わたしは、その隙に呪文を唱える。
体の中に波が生まれてきた。
はじめての感覚・・・これがリズムが生まれるってやつなの。
その波がさらに大きくうねりだす。
「ディスペル・マジック」
プロシュートは咄嗟に掴んでいたワルキューレを目の前に差し出した。
ワルキューレが鈍い光に包まれ元の花びらに戻っていく。
「防がれた!」
「もう一度だ、ルイズ!」
ギーシュが叫ぶと同時に杖を振るう。
しかし、今度は何も起こらなかった。
「精神力が足りないってヤツか?追い詰められたムダなあがぎしやがって」
プロシュートは、こちらに向かって飛び降りる。
「いいえ兄貴。魔法は成功しています・・・『油』を連金する事は」
「何ッ!!」
プロシュートが着地した途端ズルリと滑りスッ転んだ。
やるじゃないギーシュ。プロシュートに一杯喰わせるなんて!
「何をしているッ。もう一度だ、ルイズ!」
気を取り直して呪文を唱える。
「忘れたのかッ!オレにはグレイトフル・デッドがあるという事をッ!」
グレイトフル・デッドが、わたしに迫る。
「ディスペル・マジック」
狙いは倒れているプロシュート本人。しかしグレイトフル・デッドが目の前に
立ち塞がり防御の姿勢をとった。グレイトフル・デッドは鈍い光を放つがその
まま、わたしは掴まりプロシュートも立ち上がった。
「掴んだッ!これで学院のヤツ等は皆殺しだ!!」
「やはりガードしたわね・・・いや、あなたは動けなくてガードせざるをえな
かった・・・未確認の情報・・・スタンドのダメージイコール本体のダメージ
だということを。まったく、ギーシュの簾金した『油』に救われたわ」
プロシュートの体から以前ワルドに斬られた傷が浮かび上がる。
「バカな!」
プロシュートの体から力が抜け前のめりに倒れていく。
「ルイズゥゥゥッ! ゴバッ!!」
プロシュートを倒した。
体が軽くなっていくのが分かる。
グレイトフル・デッドが解除され、みんな助かった。
なのに何故わたしは泣いているの?
わたしは偽りの命の炎が消え動かなくなったプロシュートの側に立った。
開いたままの目を閉ざそうと手を翳したとき心底信じられないものを目にした。
「・・・ルイズ?お前か?」
弱弱しく、消え入りそうな声だったが、まぎれもなくプロシュートの声であった。
「プロシュート・・・ごめんなさい、わたしのせいであなたを死なせてしまった」
「違うな・・・オレは、お前のダメージが自分のダメージになる事を知っていた。
それを承知で・・・お前を守りきれなかった・・・オレの責任だ・・・」
なんで・・・なんでそんな事が言えるの?わたしを責める事も出来るのに・・・
「違うわ。わたしがあなたの言うことを聞いていたら・・・魔法を使わなければ!」
「・・・ルイズ・・・『たら』『れば』は・・・無しだぜ・・・」
「?・・・何?何が言いたいのプロシュート!」
「『たら』『れば』・・・そんな言葉は使う必要は無いんだ・・・
なぜなら、オレやオレ達の仲間は常に・・・殺るか、殺られるかだ・・・
そこには・・・『たら』『れば』・・・もしもの話は存在しねえ・・・
だから・・・後悔しないように自分自身の全てを懸けて・・・戦うんだ・・・
ルイズ・・・お前も・・・そうなるよなぁ・・・オレの言ってる事わかるか?・・・
ええ・・・おい」
心で理解できるけど・・・それを納得しろというの?・・・
「・・・わかったわプロシュート。もう後悔しない!全てを受け止めるわ!
それが、わたしの『覚悟』よ!」
「・・・それで良い・・・それで・・・ゴブッ」
口から大量の血を吐き出した。もう、ここまでなの・・・
「ルイズ・・・オレはお前を襲った時・・・実験と言ったが本当は陽動だ・・・」
陽動?
「・・・新生アルビオンの艦隊が・・・タルブ村方面からトリステインを襲う」
「信じられない・・・だって不可侵条約が結ばれているのに」
「・・・忘れるな・・・ヤツ等は革命を起こした・・・連中だぜ・・・」
じゃあ、わたしたちは何の為に手紙を取り戻したって言うの?
プロシュートの死は?
オリヴァー・クロムウェル・・・あのクソ野郎・・・
「・・・どうやら・・・ここまでのようだ・・・意識がヤバクなってきた・・・」
「待ってプロシュート!待ってよーッ」
「・・・アリーヴェデルチ!(さよならだ)」
「プロシュート?・・・プロシュートオォオオオオォ」
ポフッ ポフッ ポフッ
妙な音がしたので振り返るとワルドが拍手をしていた。
「ワルドッ!」
「まさか、ここまで上手く事が運ぶとはな。しかも始祖の祈祷書まであるでは
ないか。そうかルイズ、君が巫女に選ばれたのだね。おいおいおいおい
何なのだこれは、あまりにも出来すぎているではないか!」
上機嫌に饒舌なワルドに違和感を覚える。
「状況が理解できて無いの?陽動は失敗したわよ」
「ハハハ。陽動など無くとも特に支障は無い。僕の本当の目的は君だよ
僕のルイズ」
どうも話が噛み合わない。
「何を言ってるの、生獲りも失敗に終ったわ」
「生獲りでは無い。僕の思惑は君の成長にあったのだよ。
なぜ襲撃に、この場所が選ばれたのか。なぜ君は襲撃と同時に目が覚めた
のか。なぜ最初に逃げた時、彼は上に行ったのか。そう全て僕の手の中に
あったのだよ。命を懸けた戦いが君を成長させると信じて」
「そんな・・・そんな事の為に皆を巻き込んだっていうの?」
「その通りだよ僕のルイズ。さて、すまないがそこを退いてくれないか
彼に用があるのでね」
「一体何の用?プロシュートは死んだわ。もうそっとしてあげて」
「閣下に再び命を与えてもらう。彼には、まだまだ働いて貰わなければ
ならぬのでね」
プツン
「ワルドォォォオォォォォオォッ!!」
「ファイアーボール」
キュルケの呪文がワルドを襲う。しかしワルドは突然の炎を杖を使いキュルケ
に撥ね返す。自分の炎を浴びたキュルケは気を失ってしまった。
「スクエアの僕に不意打ちなんぞ効くか」
何事も無かったかの様にワルドはこちらに向き直した。
「ワルド、お前、お前、お前ーッ!」
「どうやら素直に退く気は無いようだね」
「当たり前よ。お前は絶対に許さない!」
「よかろう。ならば決闘だ、表に出たまえ。」
マントを翻し表に向かうワルドの後を追うわたしをギーシュが止める。
「無茶だルイズ。相手は魔法衛士隊の隊長なのだよ」
「ねえギーシュ。貴族の資格って何なのかしら?」
「こんな時に何を・・・魔法が使える事に決まっているじゃないか」
「違うわギーシュ、魔法を使える者を貴族と呼ぶんじゃない。
敵に後ろを見せない者を貴族と呼ぶのよ!」
「ワルド。生獲りに拘っていたお前が決闘だなんて、どうゆうつもりよ?」
「別に殺してしまっても再び命を与えれば良いのだ。
君が手に入る予定に変りは無い」
「・・・もはや、お前に何も言うことは無いわ」
以前ギーシュとプロシュートが決闘した広場で、わたしとワルドが決闘する事
になるなんて。
「ルイズーッ!」
上からシルフィードに乗ったモンモランシーが声をかけてきた。
「モンモランシー、タバサ、無事だったのね」
シルフィードからモンモランシーとタバサが降りてきた。
「はいこれ、大切な剣なんでしょ。もう老化の心配は要らないのよね?」
「ありがとうモンモランシー。ええ心配ないわ」
モンモランシーが差し出したデルフリンガーを受け取る。
「よう貴族の娘っ子。今からあのメイジとやり合うのかい?」
「ええ、その通よデルフリンガー。皆は手を出さないで、これは決闘なのよ」
わたしは、この場にいる全員に告げ、皆から離れワルドと対峙する。
「さっそく始めましょうか。もたもたすることも無い・・・
一瞬でカタをつけてあげるわ」
「ああ・・・君は、その『剣』を使うのかい?」
わたしはデルフリンガーから手を放す。
「おい、貴族の娘っ子!?」
「当然!『杖』を使うわッ!祖先から受け継ぐ『杖』ッ!それが流儀ィィッ!!」
わたしは杖を構える。
デルフリンガーが地面に倒れた瞬間が合図となりワルドが詠唱を開始する。
なるほど、だから外に出たのね。わたしの使う呪文は決まったわ。
ウル・スリサーズ・アンスール・ケン・・・
「ヤベーぞ貴族の娘っ子『カッター・トルネード』だ!」
知ってる。
ギョーフー・ニィド・ナウシズ・・・
「死ぬぞ、貴族の娘っ子!」
あれじゃ死なないでしょ。
エイワズ・ヤラ・・・
これだけでは勝てないので使える呪文がないか片手で祈祷書を開く。
浮かび上がる呪文『エクスプロージョン』(爆発)。
今の気持ちをそのまま表す呪文・・・気に入ったわ。
ユル・エオー・イース!
「祈祷書を読み上げての決闘とは舐められたものだな僕のルイズ!」
馬鹿の相手は必要ナシ。
「『ディスペル・マジック』」
ワルドのカッター・トルネードが鈍い光を放ち消滅した。
「??なにが起きたと言うのだ?僕のスクエア・スペルが?」
「わたしが何から何まで親切に教えると思うの?」
「君の系統『虚無』は命を操る系統では無いのか?」
ワルド、お前は情報に踊らされる節があるわね。
「お喋りは、ここまでよ」
わたしは呪文を詠唱する。
エオルー・スーヌ・フィル・ヤンサクサ
「もう一度カッター・トルネードを・・・だめだ同じ結果に・・・
それに精神力も・・・ならば、ユビキタス・・・」
ワルドも呪文の詠唱を始める。
オス・スーヌ・ウリュ・ル・ラド
ディスペル・マジックを唱えた時とは比べ物にならない力のうねりを感じる。
この呪文・・・直感だけど何かヤバイ・・・わたしは詠唱を中断した。
しかし五体に分身したワルドの中心に光が生まれ、どんどん広がっていった。
「こ・・・この光はッ・・・うおおおおお・・・」
呪文を止めた・・・はずなのに・・・どうして?
光が収まると、ワルド達の姿は無かった。
「勝ったの?」
「いいや、勝つのは僕だよ」
後ろから声をかけられた。
ボロボロのワルドが一人、目だけはギラギラと輝いていた。
「サイレント?」
いつの間に後ろに回り込まれたというの?
「不正解、単に気配を消しただけだ。これで僕の勝利は確定した!」
「へえ、どうしてかしら?」
「簡単な事だ。この『距離』なら君の詠唱より僕の攻撃の方が早い」
「なるほど完璧な作戦ね。不可能という点に目をつぶればね。情けないわね
だからトリステイン貴族は口だけだって言われるのよ『マンモーニ』のワルド」
ワルドの言葉を鼻で嗤う。
「『閃光』のワルドだッ!」
顔を真っ赤にしながらワルドが一直線に跳躍してきた。
「もらった!ブッ殺してやる。くたばれッ、ルイ・・・」
「ウル・カーノ」
目の前の爆発がワルドを襲う。
「ぐはッ!?」
「『ブッ殺してやる』。そのセリフは終わってから言うものよ、ワルド」
支援
煤だらけのワルドは倒れたままピクリとも動かなかった。
「勝った!」
わたしは杖を掲げ宣言する。
「凄いじゃないかルイズ!スクエアのメイジに勝つなんて」
「すごく立派よ、ルイズ。もう、貴女を馬鹿になんて出来ないわね」
ギーシュとモンモランシーが、わたしの勝利を共に喜ぶ。
「喜ぶのはまだ早いわ。新生アルビオン艦隊を何とかしないと」
早くタルブ村に行かないと。
わたしはキュルケに膝枕をしているタバサに目を向ける。
「ねえタバサ、わたしに借りがあるって言ってたわよね。シルフィードで
タルブ村まで連れて行ってくれない?」
タバサは無言で、わたしの後ろを指差した。
何事かと思い振り返るとワルドの姿が無かった。
「空」
タバサが呟く。
上を向くとグリフォンが飛んでおり、その足にワルドを掴んでいた。
「ファイヤーボール」
爆発はグリフォンの手前で起こる。思ったよりもスピードが速い。
「逃した・・・使い魔の方が、よっぽど優秀じゃない」
人の事いえないか・・・
「今、ワルドの事は良いわ。タバサ、タルブ村まで連れて行ってちょうだい」
「わかった」
ギーシュが前に出てきた。
「僕も行くよルイズ」
「ギーシュはこの事を姫さまに知らせてちょうだい。」
「そ、そうか。わかった、任せたまえ」
「お願いタバサ」
タバサは頷くとシルフィードに命令する。
「タルブ村まで」
オリヴァー・クロムウェル・・・今まで好き勝手にしてくれたけど
今度はこちらがお前を利用する番よ・・・
わたしの・・・いや、わたしたちの栄光の為に
偉大なる使い魔 完
これにて偉大なる使い魔は終わりです
読んでくれた人に感謝を
GJ!
車田正美ENDかよw
これから今までの流れをブッ壊すオマケを投下する
覚悟はいいか?オレはできてる
新生アルビオン艦隊を撃破したその後
アン「わたくしが恩賞を与えたら、ルイズの功績を白日のもとにさらしてしまう
ことになるでしょう。それは危険です。ルイズの持つ力は大きすぎるの
です。一国でさえ、もてあますほどの力なのです。ルイズの秘密を敵が
しったら彼らはなんとしてでも彼女を手に入れようと躍起になるでしょう。
敵の的になるのはわたくしだけで十分。
敵は空の上だけとは限りません。城の中にも・・・、あなたのその力を
知ったら、私欲のために利用しようとするものが必ずあらわれるでしょう。
だからルイズ、誰にもその力のことは話してはなりません。
これはわたしと、あなたの秘密よ」
ルイ(何ですって?)
アン「ルイズ、わたしと一緒にトリステインの中に新しい未来を創りましょう」
ルイ(やられた!まさかこんな手でいとも簡単に・・・
そうやって、あなたは何もかも手に入れるの・・・
わたしの、たった一つの望みさえも纏めて・・・
ならば、あなたは何も見えていない、聞こえていない・・・
わたしは表に出られない虚無の担い手で、そしてあなたは・・・)
アン(ルイズ、また昔みたいに)
ルイ(違うのよ、もう、昔とは!アンリエッタ・・・)
『魅惑の妖精』亭編
「ふぁあああああああ」
とキュルケは大きくあくびをした。
「飲んでしゃべったら、眠くなっちゃったわ」
「そう。なら、帰りなさい」
わたしは冷たく言い放つ。
「面倒だから泊まるわ」
「お金は?」
「ごちそうさま」
「ふざけないで!あんたどれだけ飲み食いしたと思ってるのよ!」
「学院の皆にバラすわよ」
そのままキュルケとタバサは2階へと消えていく。
キュルケ・・・怨敵ツェルプトーめ・・・どうしてくれよう・・・
「まったく、まだ全然手を付けてない料理があるじゃない!
いただきましょう」
わたしは席に着き、ギーシュとモンモランシーに声をかける
「そうだな」
「そうね」
二人も同意し料理とワインを愉しんだ。
料理を全て平らげるとあれから結構時間が過ぎた・・・頃合いね・・・
「ミ・マドモワゼル!」
わたしはスカロン店長を席に呼ぶ。
「なあに。どうしたのルイズちゃん?」
「上のゲルマニアのお客様なのですが。いま持ち合わせが無いので
ここで働いてお金を返したいそうです」
わたしの報告を受けた店長は目を輝かせた。
「まあまあ。あの赤毛の子ね!どんな衣装を着せようかしら
考えるだけでワクワクしちゃう!」
「はい!ミ・マドモワゼル!」
わたしは笑顔で追従する。
「じゃあ行ってくるわね!」
店長は体をくねらせながら上に消えていく。
上からドタンバタンと響いてきた。
「ちょ、なに、なんなの、やめ・・・払うから・・・アーッ!」
キュルケの慌てっぷりを肴にワインを嗜む。
「トレビアン」
「ちょっと酷いんじゃないかいルイズ」
ギーシュが心配そうに声をかけてきた。
「は?なに人事みたいに言ってんの?あんたたちは払えるの?」
ギーシュとモンモランシーは気まずそうに顔を見合わせる。
「ツケじゃ駄目かな?」
「香水を売ればなんとか・・・」
つまり二人とも払えないと・・・
「お客様方。当店は紳士淑女の社交場で何時もニコニコ現金払いが
モットーで御座います。お支払いをお願いします」
わたしは優雅にお辞儀をする。
「こんなにも払えないよ」
「無理よ」
「ミ・マドモワゼル!妖精さん一名、ゲボキュー一名追加です!」
わたしの言葉にモンモランシーとギーシュはワインで赤らめた顔を青くした。
「トホホ」
「ゲゲボ」
支援
兄貴、支援してもいいかい
ルイズ従軍編
わたしは侵略作戦に参加する為、実家にその旨を報告した。
喜んでくれると思ったのに返事は従軍はまかりならぬと手紙が届き
無視したらエレオノール姉様がやってきた。
「まったくあなたは勝手なことをして!戦争?あなたが行ってどうするの!
いいこと?しっかりお母さまとお父さまにも叱ってもらいますからね!」
わたしは、もうあの頃とは違う。スクエアのワルドだって正面から叩き潰した。
その気になればエレオノール姉様だろうと・・・
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
「こら!おちび!ちびルイズ!まったく、この子ったらなんて目で人を
睨むのかしら。これは、たっぷり叱っていただかないと!」
姉様にほっぺをつねられる。
「あびぃ〜〜〜、ずいばぜん〜〜〜、あでざばずいばぜん〜〜〜」
だめでした・・・(´・ω・`)
最後のオマケ
ガタンゴトン ガタンゴトン
「・・・ズ、おいッ!ルイズ!」
「・・・ふぇ?」
何時の間に眠っていたのかしら。目を開けると列車の個室の中だった。
「たるんでんじゃねえぞルイズ!」
「しょうがないじゃない列車に乗ると眠たくなるんだから」
ペッシに上から目線で怒られると異様にムカつくわね。
「以前何かで読んだことがある。列車の規則正しい揺れが
睡眠を促す催眠効果があるらしいと・・・」
ぷろにいさま・・・どこからそんな知識仕入れてくるのかしら?
「プロシュート、今どの辺りなの?」
今わたしとプロシュートとペッシはターゲットを始末するために列車で目的地に
向かい移動していた。
「あと十分で到着する。気合入れろよ、いままでの一般人とはワケが違う」
ここで言う一般人とはスタンド使い以外の人を指すのよね。
「確か暴走したカビ使いを始末すれば良いのよね?」
「そちらはリゾットとギアッチョが向かっている」
「おいルイズ、なんでお前がそんなこと知ってんだ?」
ペッシ・・・余計な口を挟むな。今は、ぷろにいさまと話をしてるのよ。
「ボスからの電子メールをホルマジオが猫と戯れるのに忙しいからって
わたしが代わりに見たのよ」
「・・・何考えてんだアイツ」
「後で説教だな・・・」
でた・・・ぷろにさまの説教!
「そのカビ使いの話は置いといてだな。おれたちは『ポルポ』の依頼で『二人』
始末しなきゃなんねえ」
ポルポ、あのデブの?
「兄貴、そいつら何しでかしたんですか?」
ぷろにいさまに好奇心丸出しでペッシが質問した。
「ポルポの隠し財産の話知ってるか?」
ぷろにいさまは個室だというのに声を潜め語りだした。
「知ってます!たしか四億だとか言われてますぜ兄貴!」
ペッシが声を潜めながら騒ぎ出す・・・非常にウザッタイわね。
「六億だ・・・その隠し財産を嗅ぎ回る二人組みを惨たらしく始末しろとの事だ」
六億・・・それだけあれば全てを捨ててやり直せるかも・・・
もう二度と、ぷろにいさまを死なせはしない・・・
あれ・・・ぷろにいさまは生きているのに?・・・あれ?
偉大なる使い魔 夢魔が紡ぐ夜風の幻想曲 イタリア暗殺チーム編
(注)続きません。
貴様ローディストだな、ローディストに違いあるまい
>>595 どこからローディストと呼ぶのだろう?
用語を理解したら?
毎月購入したら?
投稿したら?
どこまで・・・その境界線は?
ちなみに、自分は1999年の7月号、一冊のみ所持しております。
イタリア暗殺チーム編見てえ!!GJ!
>>596 用語を理解できたら立派なローディストだと思うぞ
ちなみに俺は投稿までやったけど意外と大したことはなかったぜw
採用されたときは本屋で思わず声に出して友人に不審がられたけどなwww
あのカモノハシが出てくる雑誌のことかwww
そういやリゾットって港生まれだったなぁ〜
…ん?
以前ジョルノ+ポルナレフ貼ったんだが、もう一度確認をして40分か50分くらいから続きを投下したい。
名無しさん、一言でいい…『許す』と投下の許可を与えて欲しい。
それだけでいいんだ…それだけで私は救われる。避難所か本スレか迷っている私には必要なんだ。
名無しさん、『許す』を…
構わない
行け
歩道があいているではないか
何を言っているのか分からない…
イカれているのか?この状況で…
許可する!
(今更な話だが、)パッショーネ所有かポルナレフ所有かあやふやな亀ココ=ジャンボはスタンド能力を持っている。
背中の甲羅に嵌っている鍵に触れれば小さくなって甲羅の中にある部屋へと入ることができる。
この亀が何故背中に鍵なんて嵌めてるのかは誰も知らない…
ジョルノがその細胞を使って生み出した亀にもその能力は引き継がれており、亀の中の部屋にその亀がいてその亀の中の部屋にも亀が延々といる。
隠し棚的な場所の中にも亀がいて、取り憑いているというか住み込んでいる幽霊のポルナレフにも一体どのくらいいるのかは把握できていない。
亀を生み出しその亀の世話をする設備を用意しているジョルノは知っているのかもしれないが、何度か映画やアニメの入っている亀の場所を聞いた辺りから必要そうな場所を書いた地図を渡されそれっきりだ。
今亀は、地球から来た学生のサイトの腰につけられていた。
最初持っていたジョルノが亀の中に引きずり込まれてしまい、他に持つ人間がいなかった。
同じ地球出身の枢機卿に与えられた『ヴィンダールヴ』の能力でアズーロという美しいドラゴンの騎手となったサイトは、一見その亀の存在を忘れているように見えた。
その姿形や脈動する筋肉の動きにうっとりしながら風竜をアルビオンへと向かわせている。
ただ目的地へ向かってまっすぐに飛ぶだけだったが、空を飛ぶ楽しさが遮るものがなく直に吹き付ける冷たい空気にも笑みを見せていた。
上空の冷たい空気が容赦なく体温を奪っていても、ファンタジーな世界の楽しみを満喫し、興奮と共に上がっていく体温を冷やすのには丁度いい按配だとでも言うようだった。
腰につけられた亀の中から女性の怒声が聞こえ、何かがぶつかり合う音を聞かないようにしてサイトはアズーロを飛ばす。
亀から氷の塊が飛び出し、巨大な塊となってサイトの横を後ろへと下がっていく。
一瞬ブルっちまったサイトは見なかったことにして…中では何も起こってないんだと自分に言い聞かせる。
初めて飛ぶ空を満喫することに没頭しようとするサイトを見て、デルフリンガーはため息をついた。
次の瞬間、そのデルフリンガーも亀の中へと引きずり込まれる。
「ホラー映画かよ」サイトは歯をガダガタ鳴らして、アズーロにしがみ付いた。
その亀の部屋の中では今、氷と土がぶつかり合っていた。
発端はジョルノのせいだった。
カトレアなどとばかりいちゃついてるジョルノに切れたマチルダがジョルノを亀の中へ連行し、気合を入れてやろうとしたところ今回同行していた。
だがそこにペットショップが立ちはだかって、マチルダに襲い掛かった。
それを眺めるジョルノは、ペットショップがジョルノの扱いにブチ切れたわけじゃあないらしいと気づいていたので止めずに二人を見ていた。
そしてこれから行くアルビオンについて考えていたが、浮かぶ風景はこれから向かう戦場ではなかった。
興味深い動植物達に囲まれた不便で素朴な村に悪ガキ達や今傍にいる彼女がいた。
多少美化されているように感じたジョルノは薄く笑った。
そうする間に二人の戦いも、過激になっていてペットショップが押しているようだった。
マチルダも土くれのフーケとして名を馳せた盗賊だが、ペットショップ相手には相性が悪い。
この亀の中の備品を錬金で砂に変えたりしてして対抗しているが、そもそも土の量が足りない上にポルナレフが泣きそうになるのでマチルダは遠慮していた。
とある理由で土系統のメイジが嫌いなペットショップはそんなマチルダに氷のミサイルを撃ち、かわしたマチルダは少ない土を巧みに操ってペットショップを覆い、包み込もうとする。
だが、マチルダの土は水分を凍らされ、動きが鈍ってしまいペットショップは悠々と逃げていく。
姉か母親同然のマチルダが追い込まれていくのを見るテファの顔は青くなっていった。
「ジョルノ、ペットショップを止めて!」
テファに言われ、喧嘩をするには狭い部屋の隅にソファごと移動していたジョルノは少し困った顔をした。
サイトの操る竜アズーロが飛び立つより早く。
というよりその背中に乗った瞬間首根っこ掴まれて亀の中に連行された理由は、亀の中にいる者達が皆わかっているくらいにはジョルノも理解していた。
「…できれば怒鳴りつける元気がなくなるくらいまで遣り合って欲しいんですが」
「どうして! 早くしないとポルナレフさんが…わっ」
マチルダへと放たれた氷が幾つかテファへと向かいテファは身を引いた。
だがテファへと向かうはずの氷は全てテファには見えないジョルノのスタンドによって砕かれる。
かわそうとしたままの体勢で礼を言うテファの視線を追って、ジョルノが見てみるとそこには秘蔵の漫画を土にされ凹み、うな垂れるポルナレフがいる。
さっき引きずりこまれて隣に置かれたデルフリンガーが慰めの言葉をかけていたが、それも効果がないらしい。
自慢の髪に氷の刃が一本串刺しになっているが、それを取る気力さえもない。
少し考えるそぶりを見せてから、ジョルノは何事もなかったように図鑑を取り出して描かれている絵を見せた。
「見てください。(今向かっている)アルビオンは面白いところで、普通ならもっと寒々しい風景が広がっていてもおかしくないんですが動物も植物も完全に適応していて」
「そ、そうなんだ。でもそれより、早くしないとポルナレフさんが…」
テファに言われてジョルノはもう一度、今度はペットショップの放った氷がその漫画から作られたゴーレムの手を粉砕するのを呆然と見ているポルナレフを少しだけ見る。
ワキガ臭いミスタとミント臭いフーゴの衝突とかを見て馴れているジョルノは何事もなかったように開いているページをもう一度見せる。
咎めるような目でジョルノを見るテファの肩に、ラルカスが召喚したハツカネズミがちょろちょろとソファを駆け上って移っていった。
「ジョル…「ジョナサンさん、わたし宇宙人だから彼らの関係はよくわからないんですが、貴方が早く止めるべきです」
もう一度止めてと頼もうとしたテファを遮り、ジョルノ達が座っていたソファの影から学生服を着た青年が顔を出し、ジョルノに言った。
二人の争いを避け、いち早く安全そうなジョルノ達が寛ぐソファの陰に逃げ込んでいたその学生は、今朝このハルケギニアに来たばかりだった。
ジョルノ達と顔を会わせるもの今日が初めてだったが、ジョルノ達の視線にも動じた様子は無い。
二人より少し年上っぽく見えるその学生は後ろへ流した長い髪を揺らし、ジョルノを見返していた。
鼻ピアスと片方の耳にだけ開けたピアスが繋がっていて、尖っている耳に注意が行く。
テファほどではないが、フツーというにはちょっぴりだけ尖り過ぎている耳に…ジョルノはラルカスから教えられた奇妙な点を確かめようと尋ねた。
「…まだ自己紹介をされていませんが、お名前は?」
「ヌ・ミキタカゾ・ンシって言います。ミキタカと呼んでください「ジョナサンさんって言うのは語呂が悪いから、ジョナサンでいいですよ」
「あの、ジョルノ達の住んでるところってチキュウじゃなかったの?」
テファの素朴な質問に、ミキタカは嬉しそうな顔をした。
ミキタカはラルカスが召喚した使い魔のハツカネズミを鞄の中で飼っていたせいでこの世界に迷い込んでしまった所謂フツーの日本の学生…見た目も整っているが奇妙な人物だった。
「ええそうです。私はマゼラン星雲からそのチキュウに住むためにやってきたんです」
ラルカスからミキタカの名前などについて聞いていたのだが、確かめたのはこういうわけだった。
自称宇宙人。ラルカスの嘘じゃあないことはこれでわかったが、ジョルノもどう扱えばいいのか少し困っているような顔を見せる。
「本当はフツーの日本人ですよね?」
元々可能性は0じゃあない上に、『何言ってんです? SFやファンタジーじゃあるまいし異世界や宇宙人なんてあるわけないじゃないですか』とは言えない状況だったが、ジョルノは尋ねた。
メイジが魔法で戦う横でエルフとソファで寛ぎながら言うことじゃあないが。
「最初カラハッキリ言ッテルジャアナイデスカ。ワタシハ宇宙人デスヨ」
一方ミキタカに教えられても、そうした考えがまだ生まれていないハルケギニアの住民であるテファはよくわからずにいた。
ガリアからトリスティンに移り住むのとは違うんだろうな、というのはミキタカとジョルノの態度からなんとなく察したが、そこまでだった。
今の二人のやり取りも、というよりどうしてジョルノが宇宙人であることを疑うのかよくわからずにテファは曖昧に笑った。
ミキタカはスタンド能力を持っていなかったが、知り合いに結構そういうのがいるのか目の前で魔法やスタンド能力なんてものを使われても動じずない。
むしろいたって落ち着いた態度でテファの肩に乗ったハツカネズミの背中を撫でてやる。
まさかの宇宙人支援
「カワイイデショウ?」
「そうでしょうか?」
間を置かずに返されたミキタカは、一度手を止めてちょっぴり眉を寄せジョルノを見た後、気を取り直し何事も無かったかのように使い魔のルーンが刻まれたハツカネズミの背中を撫ぜる。
よく撫でてやるのかハツカネズミもテファの肩の上で気持ち良さそうに撫でられるのに任せている。
「こうやって背中なぜるととても喜ぶんです…背中なぜたいですか?」
「え? えっと…じゃ、じゃあ少しだけ」
マイペースなミキタカに押し切られ、テファもなぜようとするとハツカネズミはミキタカの手のひらに移っていく。
「「うりうりうりうり」」
二人してハツカネズミをなぜ始めたのでジョルノは読書に戻ろうとする。
だがそうすると、ミキタカはハツカネズミの背中をなぜるのを止めた。
「…あ、! それでさっきの話ですけど、ジョナサンさんがテファさんが自分のこと好きなのを分かってて他の女に手を出してたらマチルダさんが怒るのは当然です」
「ミキタカさん…わ、私は別に」
恥ずかしがったテファが口を挟もうとしてもミキタカは穏やかな口調でジョルノに指摘を続ける。
「口説いておいて面倒ならほったらかすなんて、まるでnice boatじゃあないですか。だからマチルダさんを止めるのはジョナサンさんがやるべきです」
「うん、なるほど…確かにそれはそうですね。心が痛むことです」
何の話か良くわからないが、ニュアンスだけは伝わったような気がしたジョルノは同意したような態度を示した。
ミキタカはジョルノの返事と頷く態度に杜往町で出会った二人を思い出し笑みを見せた。
ギャングというものはよくわからないし牛とかは怪しいが、微かに感じる面影のせいでミキタカはこのギャング達に好感を感じていた。
「はい。だからさっさと止めて謝るべきだとおもいます」
ジョルノがそうですか、と言うと部屋の隅で凹んでいるポルナレフがスタンド『マジシャンズ・レッド』を呼び出し、座ったままの姿勢で飛び跳ねた。
スタンドの見えないテファやミキタカ、マチルダまでもが驚いてビクッと震えた。
膝を曲げ、ジャンプしたままの体勢でジョルノ達が座るソファに突っ込んできたポルナレフは叫んだ。
「そうだぞッ、お前がさっさと謝っちまえばとりあえずこの場は「とりあえず。今とりあえず、って言ったのかい?」
驚いて動きを止めていたマチルダがそれを聞いてポルナレフを睨んだ。
棘のある声を聞いて、ポルナレフの動きが空中で止まる。
尻の穴に氷柱を突っ込まれたような顔でポルナレフは慌てて大げさな身振りで自分がこの問題に関しては問い詰める側であるという態度
「あー、いや……そういう意味じゃあなくてだな。一度落ち着いて、心の底から反省して今後は身を慎むべきだよなっな!?」
さっきまでの様子はどこかに置き去りにし、今は必死なポルナレフに調子を合わせるようにして、そうですねと言ったジョルノはペットショップにいい加減にしておくように軽く手を振る。
主人の合図を見たペットショップは、即座に攻撃の手を止め、肩で息をしながら釈然としない様子のマチルダから離れていく。
それを確認したジョルノが尋ねた。
「それでミキタカ。アンタは何故僕らについて来たんです? ラルカスから説明は受けたはずですが」
「コイツを連れて行くって言われたら僕もついていくしかないじゃあないですか」
「それは結構ですが、安全は保障できません」
「テファさん達もいるんですから、どうにかなるでしょう?」
その皮肉にポルナレフは少しだけミキタカに対する見方を変えた。
まさかそんな危険な所に彼女達を連れて行きませんよね?などと言われるとは思っても見なかったからだ。
ハツカネズミをなぜてやりながら全く不安そうな様子を見せないミキタカの背中をポルナレフはマジシャンズ・レッドで叩いた。
恐らくフツーの高校生であるはずのミキタカの度胸が気に入ったのだろう。
その行為に親愛の情が篭っていたのはポルナレフの表情からわかったが、それがスタンドの腕でやられるとなると別だった。
人間よりは遥かに強い力に吹っ飛ばされそうになったミキタカが、痛みに耐えながら咳き込んだ。
「ポルナレフ…あんたねぇ、ちょっとは加減ってもんを知らないのかい」
そう言ったマチルダが杖を仕舞いながらため息をつく。
ミキタカと息を切らしているのに気づいたのでマチルダへ、ポルナレフはタルブ産のワインを用意する。
ここ何日か一緒に亀の中で暮らしていたお陰でポルナレフにはマチルダの好みがある程度わかるようになっていた。
照明に照らされた、まだ開けられていない瓶の中で揺れる赤い色、ワインのラベルを見たマチルダが眉間に寄せていた皺を少し和らげる。
瓶を見せる陽気なフランス人が、自分の好みを覚えていることがなんだかおかしくなり、軽く笑みが広がった。
安堵したポルナレフが、それを見ると同時に軽口を叩く。
「いいじゃねぇか。なぁ?」
「はい、億康さんで慣れてますし…」
背中をさすり、眉を寄せたミキタカの言葉はちょっぴり皮肉気に聞こえてテファが曖昧な笑みを浮かべた。
幸いポルナレフは冷蔵庫から取り出したワインをお得意のマジシャンズ・レッドで開けていたので気づかなかった。
ミキタカは両肘をソファに乗せてもたれかかり、ふう、とため息をつく。
その間に、少しは機嫌を良くしたマチルダが彼等の所に割り込んでくる。
「で、ジョルノ。私としちゃいい加減アンタがどういうつもりなのかはっきりさせときたいんだけどね」
そう言って、ソファのテファとジョルノの間に割り込んでくるマチルダを見て、ジョルノは本を閉じる。
取り囲む皆にそのゆっくりとした、この場においては些かもったいぶった動きは反省してる様子にはとても見えなかった。
口を開かないジョルノを軽く睨みながら、再び機嫌を悪くしたであろうマチルダを宥めるため、ポルナレフがワイングラスを取り出した。
取り出したワイングラスは縦に細長く、ガラスはとても薄かった。
無色透明なガラスで作られたグラスの口は厚さ2mm程度、『厚さが薄いワイングラスほどいいんですよ』とミント臭い組織の幹部に聞いたポルナレフが、組織の伝手で手に入れた自慢の品だ。
その分とても壊れやすく扱いにも困っていたのだが、マチルダと知り合ったお陰で固定化の魔法がかけられている。
どのくらいかはわからないが、多少手荒く扱っても大丈夫、という安心感が加わったグラスはポルナレフの自慢のアイテムだった。
それをマチルダに渡そうとして、手を伸ばしているとジョルノがテファへと目を向けて口を開いた。
「テファ、僕は「私はジョルノを独り占めしようなんて思ってないわ」
ソファに深く腰掛けたままで、何か言おうとするのを遮ってテファは柔らかな笑顔を浮かべてジョルノを見ていた。
だが部屋をその部屋の雰囲気も圧迫感を少しでも感じさせぬように明るくするはずの照明の光の加減は、どういうわけかマチルダに追いやられてソファの隅に移動したテファを悲しげに見せていた。
ソファの背もたれから続くやわらかクッションに包まれた手すりにもたれかかるテファは、両手を豊かな胸の前でくみ、細い指が薬指に嵌めた指輪に触れた。
「こんな私だし…」
「僕が生まれで誰かを卑下したことはない」
卑下するテファを悔しそうで、それでいて労わるような表情をマチルダがする横で、不機嫌さを隠さない声だった。
あまりポルナレフの前では出さない部下達を恐れさせる声音に、ミキタカは驚いていた。
テファは労わろうとする姉の手を断り、手を強く握った。
「うん。ラルカスさんを見てるから、それはわかるわ。でも皆はそうは言わないと思うの。ジョルノが周りの人に一目を置かれるには、私じゃ駄目なの」
はっきりと自分の考えを言うテファの目は彼女を大事に思うマチルダに考えを否定させない頑なさを溢れさせ、光っていた。
怯んでしまって何も言うことができなかったマチルダは、そんなテファに困惑した表情を見せていた。
村でずっと隠れ住まわせてきた妹であり、娘でもあるようなテファが変わってしまったことがショックだった。
自分の意思よりも他人を尊重しすぎるところが気に掛かっていたが、ジョルノの仕事にまで気を使い身を引くようになったテファのことを考えるととても不憫だった。
そして同じくらい、大公の娘という生まれを考えると…こんな考えもするようになったことを、心のどこかでは喜んでいた。
矛盾した感情に心をかき乱されたマチルダの顔は暗く沈んでいった。
だがそれを目に入れてもテファは言うのを躊躇わなかった。
「ジョルノが連れて行ってくれた貴族の集まりに参加して、それくらいのことはわかったわ。ジョルノは何時かこの耳がばれて、追い立てられるかもしれない私を何時でも切り捨てられるようにしておくべきなんだわ」
「耳…綺麗な耳ですけど、何かあるんですか?」
我に返ったミキタカが口を挟んだが、誰もそれには答えられなかった。
マチルダとポルナレフが悔しそうに唇を噛んだ。
マチルダは元貴族としてよく知っているから。
ポルナレフは、よく知らないからこそ口を挟むことができなかった。
悔しさを誤魔化して、次第に重くなっていく空気をかき乱そうと伸ばした腕が、イタリア産のワイングラスにハルケギニア産のワインを注ぐ。
「あ、ご…誤解しないで? 私、他の女性とだって仲良くできると思うし…って、こんなこと言うなら、アルビオンに連れて行ってなんて頼んじゃいけなかったわね」
自分が言ったことをおかしそうに笑うテファに、ジョルノは何かを思い出していた。
「貴族…? ああ、そうだ。夢を見ることってあります?」
「あ?」
場の空気を軽くする意図などない、空気をまるっきり読んでいない言葉に不機嫌なマチルダのまだまだ張りのある肌に皺が刻まれた。
ポルナレフにはもうジョルノがわざとマチルダを怒らせようとしているようにしか見えなかったが、注意を逸らそうと慌ててワインを注ぐ。
それには今の空気やこんな重たい話題を新参のミキタカ達がいる場所でしたくないっていう気持ちからでもあった。
「と…唐突になんだ? そりゃ見る日もあるが。なぁミキタカ」
「いいえ宇宙人ですから」
マチルダの起源の悪さなんて気にした様子もなく、未成年ですからとワインも拒否したミキタカはそう返した。
そんなミキタカのジョークには付き合えないと、敷き詰められた絨毯の上にポルナレフは安堵と共に胡坐をかく。
話が進まない。テファも話を変えようと首を傾げて、続きを促す。
ジョルノは隅に照明が吊られている壁を見つめて話し出した。
「先日、プッチ枢機卿の所で休んでた時に変わった夢を見たんです」
「…それが何か関係があるんだよ? ていうかお前、そのプッチって俺会ってねぇぞ」
「ポルナレフさんがお仲間と遊んでたからでしょう。で、古い不気味な仮面とかの美術品とかが飾られた貴族の屋敷の中でどうみても中世辺りのイギリス野郎が出てきて、僕の祖父を名乗ったんです」
ポルナレフ以外の、ミキタカも腑に落ちない顔をする。
相変わらず関係なさそうだったしミキタカも見ただけでと言われてもよくわからない。
「イギリススーツでも着てやがったんだろうさ」とポルナレフが言うと、ジョルノは頷いてそれを肯定した。
体型がちょっとでも崩れてしまうと途端に切れなくなりそうなところとか、典型的なシルエットだったらしい。
「お茶を飲みながら2,3話してたら(どうしてそーなっていったのかとかは全く思い出せないんですが)いつのまにか悩み相談になりましてね。夢だったからかなんとなく、女性関係が上手くいかないと答えました」
そう聞いて、テファの表情に影が差したがジョルノだけが気付いていないような態度で、ミキタカの代わりに一杯もらおうとミキタカが返したグラスと手に取った。
ワインを注いでやりながら、ポルナレフは先を促す。
しえん
「その紳士は僕に詳しく状況を説明させた後…『なんだってジョジョ。周囲にいるご婦人方が魅力的過ぎて一人を誠実に愛することができないだって?
それは一人を幸せにしようとするからそうなるのさ。そんな時は逆に考えるんだ…皆幸せにすればいいさって考えるんだ』と」
それを聞いたマチルダは何も言わずにジョルノに飲もうとしていたワイングラスの中身をブチ撒け、ゴールド・エクスペリエンスが流石近距離パワー型スタンド、というスピードを発揮して襲い来るワインを全て拭き取る。
空気が変わる所かかなり最悪な、これから向かうアルビオンも真っ青な重苦しい雰囲気へと亀の中は突入しようとしていた。
その空気はアズーロを駆るサイトにまで伝わったのか、アズーロをもっと急がせようと声をかけるのまでが聞こえてきた。
「ね、姉さん。ワインを粗末にしちゃ…」
「テファ…アンタもう魔法でコイツの記憶を消しちまいなよ」
「ええっ?」
ジョルノの話はまだ少し続くようで、何故か皆の頭の中に立派な口ひげを蓄えた老紳士が、諭すように相席するジョルノに語っている姿が見えたような気がした。
その紳士によれば、『保護した高貴な女性(テファとイザベラ)に優しくするのは紳士として当然のこと。
商売上世話になっている家のご令嬢(モンモランシ)が失礼な輩に傷つけられたと聞かされたなら、紳士として何かして差し上げなければならん。
勿論、それが病に苦しんでこられたご婦人(カトレア)ならば尚の事だ。紳士として誰恥じぬ態度で臨まなければならない』と、その老紳士は語り、『私は妻一筋だがね』と聖人のような台詞を吐いた後まだ若い同じくイギリス紳士らしい男に連れ去られたらしい。
「騒々しい二人でしたが、一理ある考えですよね。祖国で周りの学生達のとっていた行動もやっと理解できましたよ(だからどーだっていうわけじゃあありませんが)」
「私宇宙人ですから詳しいことはわかりませんけど、それって紳士じゃあないと思います」
ミキタカのさめた返しに、ジョルノよりもテファが困ったような顔をする。
誤魔化すような笑い声が唇から洩れて、ポルナレフはワインを煽った。
浮遊大陸アルビオンへの玄関口、ラ・ロシェールが見えたと、サイトが亀の中へ報告してきたのはそんな時だった。
サイトの目には、古代の世界樹の枯れ木をくり抜いた立体型の桟橋に、枯葉のような多数の船が係留している様が見えていた。
スクウェアクラスのメイジが岩から切り出して作った建物群がもうすぐ見え、そこの宿でルイズが待っているはずだった。
「俺、忘れられてね?」
一先ず任務へと戻ろうとする人間達の傍らで、部屋の片隅でデルフリンガーが泣いていた。
To Be Continued...
以上投下した。
投下中に家族が来るなんて予定外だよ…
早くアルビオンに行きたいのとルイズ達のことも書いた方がいいのかなでちょっと考え中ですが
どうにか進めそうなので生存報告代わりにここまで…
ポルの味方になってくれそうな人召還しようと思った結果がこれだよッ
卿、自重してくださいwww
、--‐冖'⌒ ̄ ̄`ー-、
/⌒` 三ミヽー-ヘ,_
__,{ ;;,, ミミ i ´Z,
ゝ ''〃//,,, ,,..`ミミ、_ノリ}j; f彡
_) 〃///, ,;彡'rffッ、ィ彡'ノ从iノ彡
>';;,, ノ丿川j !川|; :.`7ラ公 '>了
_く彡川f゙ノ'ノノ ノ_ノノノイシノ| }.: '〈八ミ、、;.)
ヽ.:.:.:.:.:.;=、彡/‐-ニ''_ー<、{_,ノ -一ヾ`~;.;.;)
く .:.:.:.:.:!ハ.Yイ ぇ'无テ,`ヽ}}}ィt于 `|ィ"~
):.:.:.:.:|.Y }: :! `二´/' ; |丶ニ ノノ
) :.: ト、リ: :!ヾ:、 丶 ; | ゙ イ:} GJ
{ .:.: l {: : } ` ,.__(__,} /ノ
ヽ ! `'゙! ,.,,.`三'゙、,_ /´
,/´{ ミ l /゙,:-…-〜、 ) |
,r{ \ ミ \ `' '≡≡' " ノ
__ノ ヽ \ ヽ\ 彡 ,イ_
\ \ ヽ 丶. ノ!|ヽ`ヽ、
\ \ヽ `¨¨¨¨´/ |l ト、 `'ー-、__
\ `'ー-、 // /:.:.} `'ー、_
`、\ /⌒ヽ /!:.:.|
`、 \ /ヽLf___ハ/ {
′ / ! ヽ
ますますカオスなことにw
投下乙であります!
意外ッ!それは宇宙人!!
GJ!
あまりにも自然なミキタカ登場に一話見逃したかと思ったwwww
GJ!!
もしかして、ラスカルが召喚したのはミキタカだったんだろうか?
>>618 >使い魔のルーンが刻まれたハツカネズミの背中を撫ぜる。
>「コイツを連れて行くって言われたら僕もついていくしかないじゃあないですか」
ハツカネズミはおそらくミキタカのペットで、ミキタカが召喚に巻き込まれたとみた
まあ変な男とハツカネズミ、どちらを選ぶかと言われたらねぇw
>「私宇宙人ですから詳しいことはわかりませんけど、それって紳士じゃあないと思います」
いいぞ、ミキタカ、もっと突っ込め!
頼りになるのはお前だけだ、あとスクイズ見てたのかw
(仗助達と一緒に「誠死ね!」とか言ってたら噴くぞwww)
ネットで地球の情報収集をしていて、なぜかスクイズ関連に行き当たったんじゃないかと予想
ミキタカが出てくるなんて予想してた者がいるだろうか?いや、いない(反語)!
ところでミキタカは初登場時、仗助と億泰に鞄から食べ物を出して渡そうとしたけど、あれってミキタカの体の一部だよな?
2人が普通に受け取って食ってたら一体どうなってたんだ?
その部分が美味しく消化されてたんじゃないかね?
あの質量保存を無視した宇宙人が末端部分食べられたくらいで気にしなさそうだし
事前情報で調べてるだろうから地球人に害があるような物質にもならんだろーし
……サイレンの音で腹痛(文字通り)を起こしそうだけどネ
625 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/11(月) 16:02:17 ID:/W2w4sZw
腹の中で異星人の細胞が暴れだすとかホラーってレベルじゃねーぞ
20分に投下しますが構いませんねッ!?
支援をする世界
構わん、やれ
629 :
ゼロいぬっ!:2008/08/11(月) 22:20:22 ID:9zpHGAg7
戦場に響き渡るワルドの詠唱にその場にいる全員が凍った。
“ライトニング・クラウド”高い殺傷力を持つ風のトライアングル・スペル。
様子見も無しで全力で殺しに来たのかとモット伯は警戒した。
備える間もなく放たれた雷が彼等の間を駆け抜ける。
そして稲光は地面に転がる鉄柱へと吸い込まれた。
一瞬の沈黙の後。耳慣れない音が静かに流れた。
機械音を奏でレンズを晒して変形する“光の杖”
異世界の兵器、その胎動を耳にしたワルドの表情が崩れる。
「やはり……やはりそうか! 僕の予想通りだ!
は、はははははっ! これで奴を殺せる、殺せるぞ!」
呆然とする彼等の前でワルドは堪えきれずに笑いを零した。
それを見てモット伯は確信した、あれは勝利を確信しての高笑いだと。
彼の眼には自分も兵達の姿も映ってなどいない。
別に腹を立てる理由などない。敵が見逃してくれるというなら好都合。
さっさとこの場を離れて安全な場所に隠れるのが利口だろう。
なのに私は理に合わぬ行動を取っていた。
どこで間違えたのか、それとも今までが間違っていたのか。
腕を伸ばして地面に落ちたそれを私は拾い上げた。
「なんだ、まだいたのか」
光の杖を抱えた私をワルド子爵の視線が射抜く。
まるで汚物でも見るかのようなその眼に寒気が走った。
呼吸が乱れる。殺意を突きつけられた訳ではない。
それでも風に揺れる木の葉のように容易く気圧された。
「ふん、どうせ見逃すのも今だけだろう。
トリステイン王国が滅びれば全員死刑台送りだ」
「当然だ。貴様等はトリステインに湧いた寄生虫だ。
一匹残らず駆除し、かつての王宮の栄華を取り戻す」
毒づくモット伯の言葉を冷静に、
だが憎しみを滲ませながらワルドは返答した。
彼を歪ませた一因は間違いなく王宮にあった。
支えである両親を失ったワルドに残されたのは貴族としての誇りだけ。
いや、それだけで十分だったのかもしれない。
王国の為に杖を振るい、いずれはその命を捧げる。
まだ幼い時分からワルドはその覚悟を背負って生きてきた。
魔法衛士隊に入った彼は念願叶い、王宮への立ち入りを許された。
そこで己の命を懸けるべき王国の実態を目にした時、彼の忠誠は終わりを告げた。
そして全てを失ったワルドはレコンキスタへと身を寄せた。
『聖地』を追い求める為に、自分の誇りを裏切った王宮への復讐を果たす為に。
ゆっくりと肉体を侵食して、気づいたらミキタカと同じ体に…
631 :
ゼロいぬっ!:2008/08/11(月) 22:21:45 ID:9zpHGAg7
「それは無駄骨だよワルド子爵」
それをモット伯は鼻で笑い飛ばす。
王宮に足を踏み入れた者は誰しも一度は絶望する。
彼とて若き日にはトリステイン王国に全てを捧げるつもりでいた。
しかし腐敗した王宮を目の当たりにして彼は王国の発展を諦めた。
腐敗を正すなど彼一人で出来る事ではなかった。
モット伯は王宮の中で穢れながら生きる道を選んだ。
利権を貪り合う高級貴族の争いに愛想を尽かし、勅使以上の地位を彼は求めなかった。
自分に与えられた仕事をこなし、日々の退屈を享楽でごまかし続けていた。
胸に滾っていた若き日の情熱を失ったまま、
何一つとして遂げる事なく当たり前に生涯を終えると思っていた。
安定した何の障害もなく平坦で平穏な道。
だが、それは一人と一匹の主従に叩き壊された。
何もかも失った代わりに、私は退屈から解放された。
騒々しく目まぐるしく動き回る、忙しくも充実した時間。
ミス・ヴァリエールが王宮に立てばきっとそんな日々が日常になるだろう。
それはきっと無為に過ごした時間をも塗り潰す楽しい時間。
幾万の軍隊など必要ない、たった一人の少女が王宮を変えるのだ。
王宮に足を踏み入れた頃から止まったままの時間、途中で閉じられたままの本。
長い長い眠りについていた世界がようやく動き始める。
そのせっかくの楽しみを誰かに邪魔されてなるものか。
「貴公はかつてのトリステインを取り戻す為に、
私はこれからのトリステインを見届ける為に。
ここに両者の意見は分かたれた!
ならば決着を! 誇り高き貴族としての方法で!」
口で手袋を外してそれをワルド子爵に叩きつける。
その色は言うまでもなく純白。
伝統の作法に乗っ取った決闘の申し込み。
二人を除くその場にいる誰もが息を呑んだ。
平静に振舞うワルドの顔もどこか引き攣っていた。
怒気混じりの殺意が彼の周囲を漂う。
「まさか逃げはしまいな? ワルド子爵」
「……笑えない冗談だ。だがここまでされては引き下がれんな」
ワルドの視線がモット伯へと向けられる。
彼は初めて目前の人物を敵と認識した。
殺意の篭った眼差しに貫かれたモット伯は、
それでも不敵な笑みを崩そうとはしなかった。
支援ッ!
これが支援だ!!
634 :
ゼロいぬっ!:2008/08/11(月) 22:24:01 ID:9zpHGAg7
「我が名はジュール・ド・モット! 二つ名は“波濤”!
水はあらゆる姿に形を変え、時には岩をも砕く暴力と成らん!」
モット伯の名乗りが高らかに戦場に響き渡る。
その背後で飲み水を蓄えた大樽が続けて破裂する。
打ち上がった巨大な水柱が奔流に変わりワルドの足元を流れた。
川のように流れる水が二人の姿が歪んで映る。
キュルケの双眸が杖を構える両者を見据える。
スクエアとトライアングル。クラスだけでも両者の差は歴然。
ましてや王国屈指の実力者である魔法衛士隊の隊長とただの勅使。
比較すればするほど絶望的なまでに差は開いていく。
なのにモット伯は決闘という無謀な勝負に出た。
私はモット伯の実力を知らない。
もしかして彼にはワルドを倒す自信があるというの…?
“いいぞ。もっと突っかかって来い”
震える膝を隠してモット伯は仁王立ちする。
恐怖に引き攣った顔を笑みでごまかす。
一瞬たりとも眼を逸らさず殺意の篭った視線を見返す。
思わず瞳の端に浮かんだ涙を一滴も零さぬよう堪える。
断言しよう。私では何をやろうともワルド子爵には勝てない。
何かの弾みでスクエアの域にまで私が達しようが、
運悪くアルビオン艦隊の砲弾がワルドに雨霰と降り注ごうが、
天地が引っくり返ろうが勝ち目など億分の一もない。
だが勝つ必要など何処にもない。
最も避けるべき事態はワルドに“光の杖”を奪われる事だ。
わざわざ敵陣の中に飛び込んでまで奪いに来るぐらいだ。
無くては困る代物だろう。無ければ“彼”には勝てないのだ。
ならば、それだけを防げばいい。
私はハッキリ言って戦いなどという野蛮な行為は苦手だ。
だが嫌がらせなら私の右に出る者はいないだろう。
奴は私達を嘗めている。ましてや私一人など瞬殺できると思っている。
“光の杖”を使うのに“ライトニング・クラウド”が必要なら、
強力な魔法を使わずに少しでも精神力を温存しようとするだろう。
だから私はワルドの油断を突いて逃げまくる。
そして一秒でも多く時間を稼ぐのだ。
その間に“彼”がワルドを倒してくれる事を期待して。
“ワルド子爵。嘘というのはこうやって吐くのだ。
最後の最後まで相手を騙し通してこその嘘なのだよ”
吹き荒れる風が水面を波立たせる。
『閃光』と『波濤』。両者の激突が今、静かに幕を開けた。
まさかモット伯を格好良いと思うなんて…支援
636 :
ゼロいぬっ!:2008/08/11(月) 22:26:21 ID:9zpHGAg7
投下したッ! 決着は次回!
投下乙ですっ!
ああ、モット伯格好いいよっ! そして、自分を見事に分かっていらっしゃるw
お疲れ様!
モット伯に惚れた
こんなにカッコいいキャラに会えた。
アニメ化バンザイ
信じられない、モット伯に惚れる日がこようとは!
これがゼロいぬっ!の魅力なのか
モット伯…あんたなんか、ちょっぴりかっこイイんじゃあねーかよ……MOTTO! MOTTO!
ゼロいぬっ!さんGJ!
しかし、また投下直後に24時間以上も時が飛んだな。
雑談を含めれば、極端に過疎なわけでもないはずなんだが。
保守
この状態で保守の意味がわからん
そう言うスタンド攻撃なんだろうよ
IF系スレ見てて思いついたんだが、
もしもトリステイン魔法学院が、トリステイン・スタンド学院だったら。
貴族=スタンド使いの世界
同級生はみんな能力のあるスタンドを持っているルイズだけ能力の無いシルバーチャリオッツ。
しかし後に伝説のレクイエムの系統と判明。
と思ったけどシルチャリだとゼロゼロって馬鹿にされたらその場で相手を切り身に出来そうだw
能力無くても近距離戦闘はトップクラスだし。
後、伝説によると始祖は頭部に三つのコロネを持っていたと。
普通にスタンド無しで始めて、ルビーで怪我したらスタンド出現でいいのでは。
スタンド使いと魔法使いは同じ精神力を使うが故に相反する存在
ルイズが魔法を使えないのは実はスタンド使いだから
でもそうすると始祖ブリミルはどうなるのっていう
記憶のディスクで無理矢理能力を同居させる存在ですね
>>645 チャリ乙にあやまれ!あやまれ!
人型で剣持ってる奴は珍しいだろ!しかも殺傷能力高いし
スタープラチナならどうだろう。時止めできない状態ならゼロと呼ばれても不思議じゃない。
ジョゼフが「世界」、教皇がキンクリ(ドッピオ付き)、テファがキラークイーンとか。
虚無=時間干渉ってことで。
テファが凶悪になりすぎるがw
>>650 その流れで行くとマチルダ姉さんはアトム・ハート・ファーザーだよな、立ち位置的に。
テファは男の綺麗な手を見ると興奮してしまうわけですね、わかります
……避難所でそういう作品あったな、あれはシエスタだったけど
>>653 周りに子供たちしかいなかったから気づかず平穏に暮らしてたのに、サイトが来たせいで衝動に気がつくのかw
ふと思ったんだが、吉良は手が綺麗なら熟女でも幼女でも構わないんだろうか?
男でも構わんのだろう
い・・・一秒差・・・だと・・・
>>656 kwsk
>>658 いや、俺も適当に言っただけだからw
好みにうるさかったとは思うんだが、条件に年齢があった記憶が無きにしも・・・
うん、どんとこーいな男らしい好みだったら謝るw
>>655 吉良の隠し設定的にいえば同年代より年上の方(の手)が好まれてもいいのだが、
劇中では特にそのような描写もないので、総合的にみて年齢は関係ないとみたほうがいいんじゃないかな。
男の手も個人的にはないなー…。
>>645 能力がないって、感覚にまで訴えかける程の残像を作れる事が出来るスタンドに何を失礼な…
>>661 それは服脱がないとだめだろwww
甲冑ですね、わかります
>>655 きっかけがモナリザってんだから何歳だろうが人であろうが無機物であろうが関係ないんじゃね
綺麗でも流石に男と分かったら駄目だと思う
というかそう思いたい
>>660 36巻で、鈴美さんが見たオーソンに置かれている犯罪白書によると、
杜王町の少年少女の行方不明者数が全国平均の八倍だそうだ。
つまり、性別は関係無いし、年齢は低いほうがいいって事だと思う。
あるいは滑らかな肌と間接をしてる人が十代に多いだけかな?
>>665 マテ、吉良だけで殺してる換算なんかw
危険人物がマジ多いあの町だけに他の人がヤっちゃったのも含んでの数では?
アンジェロはどっちでもかまわないようだ
むしろ少年の方がいいらしい
アン岩は最近町にやってきたくらいじゃないか?スピードワゴンの連中に追われてたんだし
犯罪白書、というか公的な発表での少年少女って、18歳くらいまでだよな
つまり仗助や億泰、由花子、形兆の兄貴も少年少女なんだよな。ほら、容姿とか迫力とか関係ないし……
2年前になれば、音石 明や小林 玉美も少年に含まれるという……
必ずしも手首目当てで殺すとは限るまい。
重ちーみたいな目撃者もいるだろうし。
観光旅行に来た他の街の人間を狙うこともあるだろうし、もっと多いかも・・・
吉良が自分の手に惚れて人畜無害になる姿を妄想した
もう、ただのナルだよそれw
ジョルノ+ポルナレフ登録されてない?
675 :
ゼロいぬっ!:2008/08/15(金) 02:08:25 ID:qoLd5yDw
15分から投下しますが構いませんねッ!?
C・EEENは既に支援している・・・
677 :
ゼロいぬっ!:2008/08/15(金) 02:15:06 ID:qoLd5yDw
空を切りながらモット伯に迫る不可視の刃。
風の系統の最大の利点は視覚では捉えられない事。
相手が気付かぬ間に首を落とすなど珍しい話ではない。
そしてワルドの放ったエア・カッターも寸分の狂いもなく彼の首を切断するはずだった。
しかしモット伯はまるで見えているかのようにそれを横へと飛んで避ける。
ほんの一瞬だがワルドに動揺が走った。
確かに相手の魔法を感じ取るのは不可能ではない。
だが、それは鍛錬を積んだメイジに限られる。
ただのまぐれだと判断し今度はエア・ハンマーを撃ち放つ。
胴体を貫く一撃、それもモット伯は寸前で躱して見せた。
モット伯は立て続けにワルドの攻撃を凌いでいた。
いくらなんでも偶然で片付けられる事ではない。
隠してある口元を読まれるはずも無い。
ましてや聞き取るなど人間の聴覚では不可能だ。
困惑するワルドの背後で音も立てず細長い水柱が立ち上る。
それは鞭のようにうねりながら彼を背後から急襲する。
だが、それは振り向きもせぬワルドの杖に呆気なく両断された。
魔法の気配を察知できる彼には奇襲など意味を成さない。
「まだだ!」
モット伯の言葉に応じ、飛び散った水飛沫が集い塊となる。
水の球は瞬時にして凍結して氷の刃と化して再度ワルド子爵を襲う。
だが、それも杖の一振りで跡形もなく打ち砕かれた。
両者の一進一退の攻防にキュルケを初めとする兵士達が固唾を呑んだ。
何よりもモット伯があのワルド子爵と対等に渡り合っているという事実が、
彼女等を何も考えられなくするほど驚愕させていた。
“分かってはいたが、ここまで実力差があると逆に笑えてくるな”
結構自信があった魔法が容易く打ち砕かれたショックを自虐の笑みでごまかす。
どうせ通用しないと分かっているが、それでも警戒させるぐらいはできる。
大きな魔法は使わず、小出しに仕掛けて徹底的に邪魔するとしよう。
そう考えながら彼が水面に映るワルド子爵に視線を落とす。
言うまでもなくモット伯に魔法を感知できる能力はない。
それでも彼が風の系統魔法を避けたのは偶然ではない。
彼はちゃんと見ていたのだ、風が生み出す水面を波立たせる波紋を。
これだけの大量の水を張り巡らせたのもその為だ。
そしてワルド子爵の足を奪い、接近戦を避ける為でもある。
先程の奇襲もそれを気付かせない囮。
あくまで武器として用いる振りを見せただけだ。
もしかしたらワルド子爵が有り得ないぐらい油断していて一発で勝負決まらないかなーと、
そんな妄想と願望が入り混じった淡い期待があったのも確かだったが。
678 :
ゼロいぬっ!:2008/08/15(金) 02:16:11 ID:qoLd5yDw
再び向かい合う両者。ワルドの眼から僅かだが驕りが薄れていた。
しかし、僅かとはいえモット伯にとっては生死を分けるほど大きな差である。
ワルド子爵が詠唱を始めたその瞬間、モット伯は力強く叫んだ。
「今だ! やれい!」
まるで部下に指示を飛ばすような口調。
咄嗟にモット伯の視線の先をワルドは追った。
そこには銃を持ったトリステイン王国の兵達がいた。
しかし彼等は何を言われたのか判らずに呆然と立ち尽くす。
直後、背後から迫ってくる魔法の気配にワルドは杖を横薙ぎに払った。
パラパラと舞い落ちる氷の結晶。その向こう側でモット伯が嘲笑を浮かべる。
「いかんなワルド子爵。決闘の最中に余所見など、とても褒められた作法ではないぞ」
「貴様ァ!!」
激昂するワルド子爵が杖を振りかざす。
放たれたウインド・ブレイクが流水を弾き飛ばしながら迫る。
それをありったけの水で編み上げた壁で受け止めてモット伯は再び叫んだ。
「光の杖を運び出せ! 森の中に埋めて隠すのだ!」
衝撃と消耗で意識が飛びそうになる中、彼は指示を飛ばした。
最初にかけた言葉はただのフェイントではない。
決闘に意識が集中している部下達に指示がある事を意識させるもの。
そして挑発したワルド子爵の意識を全て自分に向けさせる。
モット伯には元より真面目に決闘する気はない。
“光の杖”さえ隠してしまえば後はこっちのもの。
ここに用がなくなった以上“彼”を倒しに向かうしか手はなくなる。
とはいえ、その際に憂さ晴らしで皆殺しにされる可能性もなくはないが、
そこら辺はワルド子爵の冷静な判断に期待するしかない。
鉄柱じみた“光の杖”がモット伯の指示を受けた兵士達の手で運び出されていく。
それを目にしたワルドが彼等へと杖を向け直した瞬間、彼の周囲を幾つもの水柱が覆う。
襲い来る水の鞭を切り払う彼にモット伯は告げる。
「余所見はいかんと言ったぞワルド子爵!」
遠ざかって居兵士達の背中からワルドはモット伯へと視線を移す。
苛立たしげだった眼は今は憤怒に染まり殺意だけで死に至りそうだ。
息を切らせながらモット伯はそれを弱々しく見返す。
たった一度、ワルドの魔法を防いだだけだというのに、
それだけで彼の精神力は底を見せ始めていた。
モット支援
680 :
ゼロいぬっ!:2008/08/15(金) 02:18:23 ID:qoLd5yDw
侮っていたのはワルド子爵だけではない、モット伯も彼の実力を過小評価していた。
並のメイジでは束になって掛かろうとも倒せない怪物、それが今自分が相手している人物なのだ。
魔法も使えて後2回。それを使い切ればもう何も打つ手はなくなる。
兵士達を嗾けて襲わせようともワルド子爵相手では何の意味も成さない。
精神力の消耗は図れるかもしれないが崩れた戦線では容易くアルビオン軍に蹂躙される。
戦い続けていたミス・ツェルプストーも満足に戦えまい。
まだ森に運ぶまで十分な時間は稼げていない。
ここで倒れては“光の杖”はワルドに奪取される。
息を整えながら杖を力強く握り締める。
逃げの手は全て尽きた。ならば一か八かの賭けに出るしかあるまい。
ワルド子爵の裏をかく奇襲、それを以って彼を撃退する。
自分で思い描いた無謀な策に顔を顰めながら彼は杖を握り直す。
両者が杖を構えて互いに詠唱へと入った。
意識が途切れかけているモット伯と“閃光”の二つ名を持つワルド子爵。
どちらが先に魔法を完成させるかなど火を見るより明らかだった。
自分達の真上に落ちる影にも、その後に続く轟音にも揺らがず、
ワルド子爵はエア・カッターをモット伯へと向けようとした。
刹那。彼の視界は白に染まった。
続いて耳を劈く圧力の塊のような爆発音。
その衝撃に大地は震撼し大気は悲鳴を上げた。
彼等は知り得なかったが、それは『マリー・ガラント』号の断末魔、
ギーシュ達がフーケに勝利した瞬間の出来事だった。
視覚と聴覚から入ってきた情報が激しくワルドの脳を揺さぶる。
崩れ落ちそうになる膝を支えて焼きついた視界で前を見やる。
朦朧とするワルドの視線の先には、未だに詠唱を続けるモット伯の姿があった。
それはモット伯の精神力が尽きかけていたが故の奇跡だった。
ギーシュ達に背を向けていた彼は直に閃光を眼にしていなかった。
そして混濁する意識は感覚を鈍らせ、致命的なダメージを回避していた。
咄嗟に杖を振るい詠唱するワルド子爵の足元でモット伯の魔法は発動した。
足元を流れる水が氷結し、彼のブーツを貫く刃へと変貌する。
「ぐっ……!」
見れば、彼の足は完全に凍り付いていた。
ワルド子爵の口から苦悶が漏れる。
苦痛に歪んだ表情を目にしたモット伯が駆ける。
詠唱を口にしながら再び杖を構えて敵へと向かう。
足を止めた彼と決着をつけるべくモット伯は最後の勝負に打って出た。
681 :
ゼロいぬっ!:2008/08/15(金) 02:19:26 ID:qoLd5yDw
ワルドの心臓めがけて突き出される杖。
しかし、それは虚しく空を切るだけで終わった。
彼が杖を向けた瞬間、ワルドの姿はそこにはなかった。
正しく閃光と呼ぶに相応しい動きで彼は杖を避けていた。
逆に深々とモット伯の胴体を貫くワルドの杖。
「貴様程度の魔法が通用すると本気で思っていたのか」
耳元で囁くように杖を押し込みながらワルドは言った。
彼の足を覆っていた氷が剥がれ落ちていく。
そこから現れたブーツには穴一つ付いていない。
モット伯が魔法を完成させる直前、彼も魔法を発動していた。
それは彼の二つ名“閃光”の由縁である高速の詠唱が可能とする業。
生み出した旋風の守りは彼の足を保護し靴だけを凍らせた。
あたかも氷の刃で足をやられたように見せる為に。
そして逃げ回るモット伯を誘い込む為に。
ぱくぱくと苦しげに口を開閉させるモット伯。
そこにワルド子爵は耳を近づけた。
ウェールズの時と同様、彼の悔しがる声を聞く為に。
「まさか。そこまで自分を買いかぶったりはせんよ」
しかし返ってきた答えはワルドの予想を裏切るものだった。
杖を握るワルドの腕をモット伯の両手が押さえ込む。
引き抜こうとした杖は何かに絡め取られるように微動だにしない。
ワルドの脳裏に蘇る一瞬の攻防。
あの時、モット伯の杖には何も帯びていなかった。
ならば彼が詠唱していたのは何の魔法だったのか。
その疑惑が目の前の事態と結びつきワルドは眼前の顔を睨んだ。
「ここまでやるとは思わなかったかワルド子爵。
だが、それをするからこその奇襲だろう」
モット伯が唱えたのは敵を傷つける魔法ではない。
治療に用いる、筋肉を収縮させる水の系統魔法。
それを彼は自分の身体に使い、刺さった杖を締め上げていた。
当然、魔法を唱え始めたのは身体を貫かれるより前。
最初からワルド子爵に斬られるつもりで彼は踏み込んでいたのだ。
挑発に乗ってくる性格と高い自尊心。
そこからモット伯はワルドの器を測っていた。
懐に飛び込めば必ず自分の手で仕留めようとしてくる。
そう確信して彼は杖の前に身体を晒した。
口元を伝って血が一滴流れ落ちる。
杖の刺さった箇所からは赤黒い染みが広がる。
手放したモット伯の杖は水底に沈んでいた。
支援
683 :
ゼロいぬっ!:2008/08/15(金) 02:20:17 ID:qoLd5yDw
「杖を落としてしまったか。私も貴族の端くれ、謹んで負けを認めよう」
もはやワルドの耳にモット伯の言葉は届かない。
ただひたすらに腕を引き剥がそうと足掻く。
だが見て取れるほどに衰弱している表情と裏腹に、
モット伯の腕に込められた力は増していく。
「だが私の仇は彼女が取ってくれるそうだ」
モット伯の言葉に初めてワルドは反応を示した。
恐る恐る振り返った先にはタクトのような杖の先端。
それを向ける褐色の肌の少女が冷酷な眼差しで彼を見ていた。
冷たい瞳に宿るのは友の心身を傷つけられた炎の如き怒り。
「あ…」
悲鳴だったのか、怒号だったのか、それとも懇願か。
ワルドの声は言葉となる前に放たれた炎に包まれて消えた。
炎上するワルドの身体を見つめながらモット伯は彼に告げる。
「そういえば王宮の勅使として伝えねばならん事があったな」
抑揚のない声で事務的に彼はただ一言。
「ワルド子爵、貴公はクビだ。二度とその面を見せるな」
そんな言葉を口にした。
支援
MOTTO!MOTTO!
686 :
ゼロいぬっ!:2008/08/15(金) 02:22:26 ID:qoLd5yDw
以上、投下したッ!
後はバオーVSワルドの決着を残すのみ。
そろそろ終わりが見えてきました。
かつてこれほどかっこいいモット伯が(ry
投下乙です
これは惚れるわ・・・・
モット伯・・・主人公補正なのか・・・?
お疲れ様です!
いいか・・・世の中・・・自分というものをよく知るヤツが勝つんだ・・・
イソップの話でカメはウサギとの競争に勝つがカメは自分の性格と能力をよーく知っていたんだ フッフッフッ
このモット伯もそーさッ!ワルド子爵に致命傷を与えるようなパワーやスピードは
持ってないということは私自身がよーく知っている すべてはッ
「おのれの弱さを認めた時に始まる」
このモット伯ならジョセフとの駆引き合戦が出来るな
モット伯がかっこいいなんて・・・
乙でした
いぬっ!乙!
「覚悟」を決めて漢になったな、モット伯
まさか黄金の精神を持つモット伯まで現れるとは
あの〜 アニSさんが御執心の、モット伯の従者の美少年は無事ですかwwww
695 :
ゼロいぬっ!:2008/08/15(金) 18:46:37 ID:qoLd5yDw
50分から3回連続なんですが構いませんねッ!?
C・EEENは既に(ry
構わん、やれ
697 :
ゼロいぬっ!:2008/08/15(金) 18:51:22 ID:qoLd5yDw
突き刺さった杖が風に融けていく。
杖だけではない、炎に巻かれたワルド子爵の身体も消滅していく。
偏在の最期を見届けてモット伯は傷口に手を当てた。
“頼むから外れていろ”と祈る気持ちで彼は自分の体を診る。
臓器や急所さえ避けていれば水系統のメイジの治療で助かる見込みはある。
もしかしたら助かるかもしれないという可能性に彼は賭けた。
財産を失ったり脅迫されたりと不運続きだった分、そろそろ運が向いてきてもいいだろう。
いや、風向きは間違いなく私の方から吹いてきている。
そうでなければ捨て身とはいえワルド子爵を倒せるはずがない。
当然だ。こんなところで私が死ぬなど考えられない。
まだ倒れん。この先には待ち望んだ世界が広がっている。
ようやくこれから始まろうとする物語を見届けずに終わってたまるものか。
ついと指先が傷口とその周囲へと伝う。
しばらく手を当てて押し黙っていたモット伯が顔を上げる。
手を差し伸べるキュルケを断り、杖を拾って支えとしながら立ち上がる。
ざわめく兵士達に杖を掲げて彼は力の限り叫んだ。
「見よ! スクエアメイジといえど死力と策を尽くせば倒せぬ相手ではない!
臆するな誇り高きトリステインの精鋭達よ! 突き進んだ先にこそ活路はある!」
一瞬の沈黙。だが次の瞬間はそれは大歓声に押し流された。
兵士達の口から次々と王国と彼を讃える声が上がる。
手に持った武器や杖を掲げて戦場に割れんばかりの鬨の声を響かせる。
それに満足げな笑みを浮かべてモット伯はゆっくりとその場を離れた。
その彼の背中にキュルケは心配そうに声をかけた。
「……大丈夫なの?」
「大丈夫なわけがなかろう。私はもう疲れた、戻って一休みする」
「そうじゃなくて傷の方よ!」
「心配いらん。悪党というのはいつも平然とした顔でのさばるものだ」
手をひらひらと揺らしながら振り返りもせずにモット伯は彼女の前から立ち去った。
あれだけ軽口を叩ければ大丈夫だろうとキュルケが溜息を漏らす。
彼が立ち去った後、そこには点々と続く血の痕だけが残されていた。
698 :
ゼロいぬっ!:2008/08/15(金) 18:52:46 ID:qoLd5yDw
雄叫びが上がる丘の向こう、静かに息づく森の中で誰にも聞こえぬ悲鳴が上がった。
喉元を切り裂かれて倒れる兵士が最期に見た光景。
それはモット伯と戦っているはずのワルド子爵の姿だった。
自らの血溜まりに沈んだ兵士達には目もくれず彼は苛立たしげに丘を睨む。
元々、捨て駒として扱う為だったとはいえ偏在の一人が、
寄生虫としか見ていなかった相手に敗北を喫するなど許されない事だった。
そして同行していたフーケもドットメイジと平民如きに敗れ去った。
あまりの不甲斐なさにワルドは唇を噛み締める。
だがいい。あの怪物に勝つ為なら誇りも全て投げ打つ覚悟がある。
最後に勝利するのは僕だけだ。僕だけでいい。
運び手を失くし地面に横たわった“光の杖”を見下ろす。
これは間違いなくハルケギニアの技術で作られたものではない。
人の理解を超えた魔法以上の存在。
このような物が存在するのなら“聖地”には必ず僕が求めるものがある。
その為にも“バオー”を完全にこの世から消し去らねば。
ワルド子爵の手が“光の杖”へと伸びた瞬間、彼の耳は異常な音を捉えた。
例えるなら獣の唸り声……いや、“バオー”の物に近い。
音の発生源は風を掻き乱しながら自分の元へと近付いてくる。
それも風竜に匹敵するほどの速度を維持したまま。
刹那、杖を構えた彼の眼の前にそれは現れた。
回転する刃で枝葉を切り飛ばしながら迫る鋼鉄の塊。
頭上から自分めがけて飛来した物体にワルドは未知の恐怖を覚えた。
彼は知らない。それが地球という世界で活躍した戦闘機という物だと。
フライで避けた直後、彼の居た場所へと零戦は舞い降りた。
それでも回り続けるプロペラは“光の杖”を巻き込んで甲高い音を響かせた。
レンズが砕けて飛び散り、その上を車輪が容赦なく轢いて鈍い音を奏でる。
「おのれェ!」
ワルドの口から怨嗟の声が上がった。
“光の杖”の構造を理解できないワルドでさえ、それが致命的なダメージだと一目で判った。
もはや、あの鉄柱は“バオー”を倒す切り札とはならない。
戦闘機はそのまま地面を滑走し大木に激突して動きを止めた。
込み上げる殺意を隠すことなく向けた先から一人のメイジが姿を見せる。
その服装は戦場とは不釣合いで、杖も戦闘向けとは言い難い。
凡庸としか思えぬ人物が何故こんな物を扱っているのか。
そんな疑問は邪魔された苛立ちに比べれば微々たる物だった。
着地時に打った頭を押さえながらコルベールは操縦席から降りる。
その眼は真っ向から戦うべき相手を捉えている。
過去の過ちからコルベールはずっと逃げ続けていた。
だけど犯した罪は決して消える事はなく彼を苛ませた。
戦いを捨て贖罪に捧げようとも心休まる時はなかった。
―――そしてコルベールは彼と出会った。
ハルケギニアとは違う別の世界の住人。
それを知った時にコルベールの心は躍った。
もしかしたら彼を連れて異世界へと行けるかもしれない。
過去を振り切って新たな世界に旅立てると思った。
人々が平穏に暮らせる世界を一度でも目にしたかった。
支援ッ!
700 :
ゼロいぬっ!:2008/08/15(金) 18:54:53 ID:qoLd5yDw
それが間違いだと気付いたのは何時だったのか。
彼について調べていくうちに私は知ってしまった。
私以上に過酷な、そして悲しい運命を彼は背負っていた。
なのに彼はそれを受け入れて生きていた。
幾度となく運命が彼を屈服させようとも抗い続けた。
その姿が私に教えてくれた。人はその運命から、過去から逃れる事は出来ない。
だからこそ人は戦う。決着を付けてその先へと進むために。
「彼の邪魔はさせませんよ」
宣言するようにコルベールは告げた。
残された僅かな時間を彼の望むままに、そして最期まで見届けよう。
それだけが異世界の友人にできる最後の餞なのだから。
「くっ!」
風竜の上でワルドは苦しげに声を漏らした。
自分の策が悉く覆されていく様を彼は偏在の眼を通して見ていた。
相手が“バオー”ならばそれも仕方ないだろう。
常識さえも凌駕する異世界の怪物ならば納得できる。
だが、彼の目的を阻んだのは一人一人が取るに足りないちっぽけな存在。
今も偏在の一人は何処の馬の骨とも知れぬメイジと交戦している。
“光の杖”が失われた以上、ワルドは独力で“バオー”を倒すしかなくなっていた。
どこで歯車が狂ってしまったのか、その問いに答えられる人間は存在しない。
ワルドの指示を受け、風竜が加速度を増す。
まるでバオーの身体だけを空に置き去りにするかの如く、
噛み付かれた前足から肉を引き裂く音が断末魔のように響き渡る。
その風竜の正面から彼等の元へ一匹の竜が迫っていた。
獰猛な牙を剥き、閉ざした口からは舌のような炎を覗かせる。
バオーは瞬時に敵の意図を読み取った。
竜同士が交錯する一瞬、そこで炎の吐息を自分だけに浴びせようとしている。
仮に炎が風竜に届いたとしてもワルドの魔法がそれを遮る。
如何に“バオー”が進化しようとも弱点だけは決して克服されない。
火竜が炎を吐く前に仕留めようとビースス・スティンガーを放つも、
それらは届く事なく風系統の魔法に散らされていく。
だがブレイク・ダーク・サンダー・フェノメノンは撃てない。
ここで体内電流を流せば間違いなく風竜は飛べなくなる。
ワルドは空を飛べるがバオーには出来ない。
故に、この高高度から地上に叩きつけられる事になる。
そうなれば仮に生き延びたとしても再生するまでに時間が掛かる。
その隙を、この男が見逃してくれるとは到底思えなかった。
見る間に縮まっていく互いの距離。
彼の目の前で火竜が大きく息を吸い込む。
その直後。意を決して彼は咥えられた前足を自ら切り飛ばした。
炎を避けて彼の身体が放物線を描いて落ちていく。
支援ッ!
702 :
ゼロいぬっ!:2008/08/15(金) 18:55:56 ID:qoLd5yDw
「おかえりなさいませ伯爵」
「うむ」
自分の野営地に戻ったモット伯が部下の挨拶に応える。
長期戦に備え、野営地では幾つものテントが張られており、
寝床としてだけではなく備蓄基地として食糧や水、医薬品が貯蔵してある。
その中の一つである自分のテントへと入りモット伯は荷物を運び出す。
ようやくモット伯の傷に気付いた兵士が声を上げた。
「伯爵! そのお怪我は一体!? 今すぐ治療を!」
「騒ぐな。見た目ほど深くない」
「しかし……」
「それより私はとても疲れているのだ。黙って休ませろ」
「はあ…伯爵がそう言われるのでしたら」
「もう一生分は働かされたからな。後は他の連中に任せる」
軍の目付け役がいたら即刻軍事法廷にかけられそうな一言に、
兵士は思わず溜息をつきながら彼に提案した。
「でしたら、そこの森の木陰などどうでしょうか。
日差しを届きませんし、空気の篭るテントよりは過ごしやすいかと」
兵士の指差す先を見てモット伯はふむと顎に手をやった。
確かにテントの中よりは快適そうな空間に思える。
それに誰にも邪魔される心配がないというのが何よりも素晴らしい。
「なるほど、それはいい考えだ。では他の者が来たら」
「はい。適当にあしらっておきますのでごゆっくりお休みください」
なかなか機転の利く兵士に見送られながらモット伯は森へと足を運んだ。
生い茂る木々の合間から心地よい木漏れ日が差す。
大樹に背を預けて彼は一息ついた。
兵士の言うようにそこは戦場とは無縁の穏やかな世界だった。
時折、響く砲声が僅かにそれを思い起こさせるぐらいか。
とはいえ、もはやモット伯には関係のない事だった。
じくりと痛む傷跡に思わず彼は手を添えた。
「やはり……腕だけは一流だったか」
傷跡から離した手は真っ赤に染まっていた。
ワルドの杖は寸分の狂いもなく急所を貫いていた。
思ったよりも時間が残されていない事実に焦ることなく、
モット伯は静かに持ってきた荷物を解き始めた。
荷物の中から最初に彼が取り出したのは一枚の封筒。
そこにはモット伯のサインと印が捺されている。
出立前に書かされた遺書を手に取り、それを再び元の場所に戻した。
書くべき事は既に書いてあるし、事ここに至って書き加える言葉も見つからなかった。
やるべき事を終えたモット伯は今度は本を取り出した。
それは戦場での暇潰しに彼が持ち込んだ物の一部だった。
大半を売り渡すことになったが、それでもお気に入りの数冊だけは手元に残した。
もう何度も目を通しているのに何故それを選んだかは分からない。
ただ残された時間が自由に使えるなら読書でもして過ごそうと彼は決めていた。
支援ッ!
704 :
ゼロいぬっ!:2008/08/15(金) 18:57:19 ID:qoLd5yDw
その彼の耳元で枯れ枝を踏み砕く音が聞こえた。
杖へと伸ばそうとした手が何もない宙を掻く。
ああ、そうか。荷物を持ってくる時に邪魔だから置いてきたのか。
死にぞこないの首を獲りに来た無粋な輩の顔を拝もうと首を横へと傾ける。
しかし、そこにいたのは兵士ではなかった。
薄汚れた格好をした小さな子供が数人。
恐らくは森に避難したタルブの村の子だろう。
どこか事態を把握しきれていないのか、轟く砲声にも怯える様子が感じられない。
近くに親がいるような気配はない。
恐らくは森に隠れるのに飽きて出てきてしまったのだろう。
大きく開いた目が不思議そうにこちらを見つめる。
貴族など見たこともないに違いない。
どれだけ私が偉いのか分かれば、そんな無礼な態度は取れまい。
「退屈か?」
「うん、大人しくじっとしていろって言われたけど、そんなの無理だよ」
「そうだよ。せっかくいい天気なのにさ遊べないんだもん」
「何やってるのか知らないけどさっさと終わらないかな」
訊ねる私に子供達の口々から文句が返ってくる。
だろうな、と思いながらモット伯は空へと視線を移す。
様々な思惑の絡んだこの戦争もこの子らには係わり合いのない事。
子供の目から見れば我々が愚かな行いに勤しんでいるようにしか映るまい。
「心配せずともじきに終わる」
「本当に?」
「ああ。私は嘘吐きだが、たまには本当の事も言う」
子供達が返答に困るような言葉を返しモット伯は持っていた本を戻した。
そして代わりに擦り切れ褪せた一冊の本を抜き出す。
何度も読み直し冒険に心躍らせた少年の頃の思い出。
頁を開いた瞬間、モット伯の脳裏にそれが蘇る。
「それまで本を読んでやろう。『イーヴァルディの勇者』の物語だ。
お前達も題名ぐらいは聞いた事があるだろう」
「知らなーい」
「あんまり村に本とかないもんな。ほとんど劇団も来ないし」
にべもない子供達の答えにモット伯が顔を顰める。
トリステインの文化も進んでいると思ったが辺境ではそうではないのか。
仕方ない。後で遺書に姫殿下への御注進として一筆加えておこう。
705 :
ゼロいぬっ!:2008/08/15(金) 18:58:50 ID:qoLd5yDw
「私がこれぐらいの年には読み書きもできたのだがな」
「え? おっさん字書けるの? 凄えな!
うちの村で完璧に読み書きできるのなんてシエスタ姉ちゃんぐらいなのに」
聞き覚えのある名前にモット伯の目が驚愕に見開く。
しかし、それも一瞬。そういう縁もあるだろうと笑みを浮かべるに留めた。
咳払いして本を読む準備を始めたモット伯の周りに子供達が集まる。
その時、不意に子供の一人がモット伯に質問を投げかけた。
「ところで勇者って何?」
それは難しい質問だ、とモット伯は前置きして空を見上げた。
ここからでは良く見えないが今も無数の艦隊と竜が飛び交っているはずだ。
モット伯はそこにいるであろう誰かの姿を思い浮かべて言った。
「何者も恐れることなく、誰かの笑顔の為に立ち向かえる者。
人はそういう者を勇者と呼ぶのかもしれないな」
空に投げ出されたバオーが残った前足の刃を風竜の身体に突き立てる。
それでも勢いを殺せず刃が肉を裂きながら身体の上を滑っていく。
激痛に風竜の喧しい悲鳴が上がる。
振り返ったワルドが目にしたのは尻尾間際で踏み止まるバオーの姿。
「まだ足掻くか!」
前足の片方を失い、もう一方は風竜に突き刺さっている。
もはや刃を振るう事もできず、この状態では雷も放てない。
挽回の機会などない。次の手で必ず仕留められる。
なのに尚も食い下がるバオーにワルドの額から冷たい汗が伝う。
「何故そこまでして戦う? どうして貴様は倒れぬ!?」
“竜の問いかけにイーヴァルディの勇者は答えました。彼女に命を救われたからだと”
“たった一切れのパンとスープでしたが、どれほど貴重な物か村の実情を見て知っていました”
“それを彼女は与えてくれた。それも見知らぬ旅人の為に惜しげもなく”
“だからこそ僕は剣を取る! 彼女のような人がいるなら戦える!”
“この力は僕の物じゃない! 与えられた力は大切な誰かを守る為にある!”
放たれるウインド・ブレイクがバオーの身体を弾き飛ばす。
突き刺さった刃も風竜の身体を裂きながら離れていく。
今度こそ確実に宙へと投げ出されたのを確認してワルドは笑みを漏らした。
これで仕留めたとは思わない。今までも奴は幾度となくこちらの思惑を覆した。
地面に叩きつけられたのをこの目で見届けて、そして止めを刺す。
痛みで暴れる風竜を黙らせ、ワルドはバオーの落ちた先へと向かった。
急降下のような姿勢で飛ぶ竜の背で彼はバオーの姿を見止めた。
だが、それは彼の予想を大きく裏切る形でだった。
最初に目に飛び込んだのは青い風竜の幼生。
そして、その背にバオーは立っていた。
剣の柄を咥え、そして光り輝く刃を抜き出す。
刹那。残った彼の前足に刻まれたルーンが光を放つ。
支援ッ!
707 :
ゼロいぬっ!:2008/08/15(金) 19:00:16 ID:qoLd5yDw
「相棒の力が“身体を武器に変える”としたら、そのルーンは“感情を力に変える”
いくら力を使い果たしても相棒の心が折れない限り、決して負けはしねえ」
引き抜いたデルフの言葉に大きく頷く。
身体の中を力が溢れんばかりに満たしていく。
この身にはルイズやタバサ、ギーシュ、アニエス、コルベール先生、
学院や町で出会った人達、皆の想いが詰まっている。
そこには倒れていったアルビオンの人達の想いも共にある。
それはこの世界で築き上げてきた思い出。
元の世界では得る事ができなかった本当の宝物。
彼は一度だけルイズに振り返って告げた。
それを最初に与えてくれた自分の主人に、
たった一言“ありがとう”と言葉ではない言葉で。
タバサとルイズが見守る中、彼は空へと飛び出した。
片足だけとは思えぬ脚力は弾丸のように彼の身体を撃ち出す。
風竜と交錯する一瞬。デルフリンガーはワルドの胴体を捉え―――。
「おっさん。その続きは? その後、どうなるんだよ」
ゆさゆさと子供の一人がモット伯の身体を揺する。
彼の瞼は閉じられて本は次の頁を開こうとしない。
勇者が剣を振るう、その間際で物語は止まっているのだ。
続きを急かす為にモット伯を起こそうと彼等は奮闘していた。
その彼等の姿を森の中から出てきた人影が捉える。
「こら! あんた達! 森から出ちゃダメって言ったでしょう!」
「そうだ! もし流れ弾でも飛んできたらどうするんだ!」
それは一組の男女で、男の方はがっしりとした体躯に、
女の方は気の強そうな印象を持たせていた。
夫婦と思しき2人が子供達へと近寄り怒鳴り声を上げる。
それは真に彼らの事を心配しての言葉だったが、
戦争の意味も知らない子供達に理解させるのは不可能だった。
ふと女性の視線が大樹の根元に止まる。
そこには見るからに身形のいい人物が腰を下ろしていた。
そして、その頬をぺしぺしと叩く自分の息子。
「………!」
彼女の頭に昇っていた血が急速に引いて蒼ざめていく。
電光石火の動きで子供を捕まえるとその場に頭を伏せた。
その隣で不思議そうにしている息子の額も地面につけさせる。
支援ッ!
709 :
ゼロいぬっ!:2008/08/15(金) 19:01:41 ID:qoLd5yDw
「申し訳ありません貴族様! 私の教育が至らぬばかりにとんだご無礼を!」
どうかお許しを、と懇願する彼女にモット伯からの返事はない。
恐る恐る顔を上げた先でモット伯は表情を変えぬままそこにあった。
戸惑う彼女の横で子供は平然と母親に告げた。
「おじさん、さっきまで本読んでくれてたんだけど眠っちゃったんだ」
「え……?」
その一言が意味するものを察して彼女は夫に視線を送った。
それに頷いて同意を示すと彼は赤黒く染まったモット伯の服を捲った。
大きく見開かれる両の眼。服を戻しながら彼は瞼を閉じて黙祷を捧げた。
妻へと振り返り、押し黙ったまま彼は首を横に振った。
「まだ話の途中だったんだけど……」
「ダメよ。おじさんは疲れているの、ゆっくり休ませてあげましょう」
未練がましく彼の傍らに立つ息子に諭すように母親は言った。
渋々他の子供達もそれに従い森の中へと戻っていく。
去り行く間際、夫婦はモット伯へと振り返り、深く深くその頭を下げた。
「じゃあなー、おっさん。続きはまた今度聞かせてくれよな」
そんな事をのたまった悪ガキの頭を叩く平手の音。
遠ざかっていく喧騒を耳にしながらモット伯は薄っすらと瞳を開けた。
まったく物を知らない子供だとモット伯は力なく笑った。
見た目には僅かに皺が動いたようにしか見えなかっただろう。
続きなど聞かせるまでもない。
どんな話であろうと『イーヴァルディの勇者』の結末は決まっている。
どんな強敵であろうと苦難であろうと彼は必ず乗り越える。
そして必ず勝利を手にして帰っていく、守るべき者のいる場所へと。
「もう少しだけ……続きを……見ていたかったんだがな」
彼の手元にあった本が血に染まっていく。
血で貼りついた本は二度と次の頁を開くことはない。
たとえ話が続こうとも、その先を見ることは永劫に叶わない。
それがたとえどれほど待ち望んだ物語であろうとも……。
ドドドドドドド という擬音が聞こえるぜ
支援
711 :
ゼロいぬっ!:2008/08/15(金) 19:03:35 ID:qoLd5yDw
以上、投下したッ!
モット伯ゥゥゥゥゥゥ!!
馬鹿な・・・
とりあえず、お疲れ様です!
作者とモット伯に「敬意」を表する…
「礼」だッ!
なんて熱い!GJ!!
目頭が熱くなったぜ!gJ!
いぬさんGJ!!バオー犬もGJ!!
でもモットはやっぱり下衆だな、GJじゃない。
さっきから下衆モットのせいで涙がとまrdない
かっこいいな
>>695で3回連続ってあるけど、まだ続くのかな?
あぁ、8/11からゼロいぬっ!が3連続ってことか
そんじゃWiki更新行ってくる
勇者モット伯
いぬさんGJでした
わああモット伯ゥゥゥウ!
勇者だよ、あんた勇者だよ!
721 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/15(金) 23:10:49 ID:nKEbL30G
これよりかっこいいモット伯はこの先見られないと思う。
駄目だ!今回はモットにマジ泣きした。・゚・(ノД`)・゚・。
今際の際に童話を読み聞かせるだけでも素敵なのに、
イーヴァルティにバオーが重なって、それを語るモットが静かに逝くとか感動的過ぎる。
燃えと感動のブレンドが上手すぎるよ犬の人!!
MOTTO! MOTTO!
今ほどこの言葉を心から叫んだことはなかった。
まだまだ、ゼロいぬっ!のモットの台詞を、勇姿を見ていたかったのに。
勇敢なる真の貴族、モット伯に敬礼!
モット…お前、男の中の男だよ!!
今回の話を見ていて、最強伝説黒沢の最終回を思い出した。
マジで泣けたぜ、GJ!!
いや、ひょっとしたら最終回で、「いやぁー死ぬかと思ったよw」とひょっこり出てくるかもしれないじゃないか
そんでキュルケやシエスタに「死ぬ前に一度でいいから生おっぱい揉ませてくれ!」と頼み込んで殴られるんだよ
これは切り落とした腕がflgだな
腕がちょうど伯の上に落ちてきてその血で超再生を…
えーとさ、ゼロいぬって最終的にいぬが消えて才人が召喚されるんだろ。
LV.1なのにLV.99の替りに終盤ステージに召喚されるようなものだろ。
どうするんだよ……
>>727 そのサイトはバオーに寄生されてたりして
魔少年S(才人)H(平賀)かもしれんw
バオーが全部片付けたあとの平和な世界に呼ばれたって考えればいいんじゃね
使い魔のルーンには前の使い魔の情報が蓄積されており・・・
実際問題カエルとかネズミ召還したら10年も寿命無いだろ
学生の頃はいいとして20代30代で召還したときに1から色々教え込むの辛いし、そういうシステムがあってもおかしくない気がする
>使い魔のルーンには前の使い魔の情報が蓄積されており・・・
それなんて竜の騎士?
>使い魔のルーンには前の使い魔の情報が蓄積されており・・・
それなんて黒い白鳥?
情報(記憶)は実際に蓄積されてるのが最新刊で明らかになったし
がんばれば本当に引き出したり夢で対話したり出来るかも?w
しかし夢の中で犬と対話して、サイトは一体何を得られるのであろうか?w
……先任者を見て和む?
夢の中で模擬戦とかしたら……うん、ダメだ流石に相手にならねーですよ、手加減してくれるかもしれないが
「ウウ・・オレ様オ前丸カジリ・・コンゴトモヨロシク」
「・・・」
「わんわん」
「ははは何言ってんだが全然わかんねえ」
「バルバルバル」
「うわぁー!」
という会話が浮かんだ。なぜかは知らん
「お前は犬の怪物って感じだからイヌゴンだ!」
なんか電波を受信した
バルバルバルー
ハハハハハハッ!何言ってるのかわかんねーや!
気づかないうちに大物になったんだな、サイト……w
夏でねぇ…
六時半に投下しようと思ったらつながんなくてしょうがないから
ギザ細かすぎて伝わらないアニメものまね選手権見てたらこんな時間になってしまったぜ
50分から投下するッ!
C・EEENは既に(ry
支援せずにはいられないッ!
ジョセフを追い出してから、太陽がまた同じ位置にやってきた頃。ルイズはあれから部屋に
閉じこもったまま、泣きじゃくるか泣き疲れて寝るかの繰り返しを続けていた。
睡眠の時間こそは普段より多いくらいだが、眠り自体が浅く断続的に寝たり起きたりを繰り
返す睡眠が良質なものであるはずもなく、ルイズは目覚めていても薄ぼんやりとした靄が頭に
掛かったままになっていた。
そんなろくすっぽ機能しない頭でも、丸一日考える時間があれば、なんとつまらないことで
使い魔を追い出してしまったのだろうという後悔に至るのは容易いことだった。
客観的に見れば、自分がいない間に、部屋でメイドと一緒に食事してただけである。
別にベッドの上でいかがわしいことをしてたわけでもなく、メイドにパイを食べさせたフォ
ークで自分もパイを食べただけでしかない。
だがそれがどうしても許せない。理由は判らないが、どうしても許せないのだ。
怒ったりする事ではないというのはとっくの昔に理解している。ジョセフをクビにして追い
出してしまったのは明らかな失策だなんて、言われなくても判っている。
けれども、言葉に出来ない感情は正論なんか吹き飛ばす荒々しさをまだ失っていない。
悲しいのか悔しいのか、それとも憎いのか。その全部のようで、その全部ではない。
ベッドに倒れ伏したまま、自分の中の渦巻く感情の正体を探ろうとする。何度も試みて、何
度も答えの見つからない問い掛けをしようとしたその時、ドアがノックされた。
ジョセフが帰ってきたのだろうか。
鏡は見ていないが、泣き続けた自分の顔なんか例え使い魔と言えども見せられたものではな
い。もう一度ノックが聞こえる前に、ルイズは頭を隠すように毛布に潜り込んだ。
それから間もなく、部屋の主の許可もないうちにドアが開いた。
ルイズは毛布の隙間から視線だけをちらりと入り口にやる。
ドアを開けて入ってきたのは、キュルケだった。燃え盛る火のような赤毛を揺らし、褐色の
肌を制服へ窮屈に詰め込んでベッドへと歩み寄ってくる。
「……誰が入っていいって言ったのよ」
「入っていいなんて言うつもりなかったくせに、何言ってんだか」
そう言い放つと毛布に包まったままのルイズの横に座った。
「あんた達が昨日の夜から王子様の部屋に来ないから、余った食事はシルフィードのエサになってるのよ。で、どうするの。ディナーは二人分の食事をキャンセルしていいのね?」
ジョセフの姿が昨日から見えず、真面目なルイズが授業を休んでいるとなれば、何かしら二人の間に起こったという答えに辿り着くのは、容易なことだった。
だがこの時点で何故ジョセフが不在なのか、という理由を言い当てることまでは出来ない。
と言う訳で、ルイズの部屋を一番訪問しやすい立場にあるキュルケがやってきたというわけだった。
「まあ、詳しい事は判らないけれど。なんでダーリンがいないのかしら?」
問いかける声の余韻が消えてしばらくしてから、もぞり、と毛布が動いた。
「……ジョセフが……」
「ダーリンが?」
「……メイドと、部屋でごはん食べてた」
「ふんふん、それで? お腹も膨れたところでメイドをベッドに連れ込んでたの?」
「……違うもん」
「じゃあ何よ。まさかメイドと一緒に食事してただけで追い出したの?」
「……違うもん」
「……じゃあ、キスくらいしてたとか?」
「……違うもん」
もどかしい謎当てをさせられることになったキュルケは、豊かな赤毛をかいた。
その場面を目撃したルイズが怒ってジョセフを追い出しそうなシチュエーションを幾つか想像してみる。
一緒に食事するより重くて、キスするよりは軽い場面……
「……ええと。ダーリンがメイドにあーんしてたところを見ちゃった?」
「…………」
返事がないということは、正解だと理解する。そして導き出された正解のあんまりにもあんまりな下らなさに、キュルケは思わず深々と溜息を吐いた。
「……あのねルイズ。そのくらいで使い魔追い出してたら何十回使い魔召喚しても追いつかないわよ」
「……それだけじゃないもん。あーんしたフォークで自分もパイ食べたんだもん」
間接キスも追加された。だからどうしたと言うのだ。
「なるほど。話を総合すると、自分の部屋でメイドなんかと二人きりで食事して、あーんまでして、しかも間接キスまでしたのが許せなくて思わずダーリンを追い出した、と」
再び無言を貫くルイズを見下ろし、キュルケは大きな呆れの気持ちの中に少しばかり安堵の気持ちを混ぜこぜていた。
ヴェストリ広場の決闘があってから、キュルケの照準ド真ん中にジョセフは収まっている。
最初のうちはヴァリエールの恋人を寝取るツェルプストーの伝統に従った、軽いお遊びのようなものだった。
それがフーケ追跡やワルド戦、アルビオン国王と三百人のメイジを騙してのニューカッスル城の爆破解体と岬落としを目撃した今となっては、本気でジョセフをツェルプストーに引き込もうと考えていた。
どんな人生を歩んできたかは知らないが、どうやらジョセフの中に蓄積された知識と知恵は並大抵のものではないということは嫌と言うほど思い知った。もしあの知識を然るべき場所で使えるなら、ツェルプストー家が大きく隆盛するに違いない。
未だに平民の地位も低く、メイジにあらずんば人にあらずという風潮が色濃いトリステインでこれだけの能力を死蔵させるより、平民でも実力と財力があれば貴族となれるゲルマニアに来ればすぐにでもジョセフは貴族になれるだろうと思っている。
ツェルプストーにジョセフを引き込む為に必要ならば、キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーをジョセフの花嫁にしてもいいとすら考えていた。
しかしキュルケ本人の覚悟がそこまで固まっていても、その覚悟を表に出すには幾つかの障害が余りにも大きすぎるということも彼女は理解していた。
一つは、ジョセフが煮ても焼いても食えないジジイだということである。
ゼロのルイズが召喚した平民の老人という状況から、決闘騒ぎという踏み台はあったものの、口八丁手八丁で学院中の人間の心を貴族平民問わず我が物にしてしまえる手腕。
お調子者のように見えるが、よくよく観察していると下手に深みに嵌らない様に周囲との距離を上手に調節しつつも、周囲にはそれを悟らせない人間関係構築の巧みさ。
支援
支援ッ
今ではクラスメートの大半はジョセフの友人になっているし、平民の使用人に至ってはジョセフを嫌う人間なんかいないのではないかという領域に至っている。
下手に手を出すと逆に丸め込まれたりしかねないので、いかに攻めるかをしっかりと考えなければならない。胸元見せたり足を組んだりするだけでホイホイついてくる同級生とは比べ物にならない強敵だという認識はある。
(胸元見せたら鼻の下伸ばすけれど)
オールドオスマンもそうだが、男と言うのはいくつになってもスケベだから困る。
ジョセフ本人は故郷に妻もいるし孫もいると言っていたが、キュルケは直感的に「押したら何とかなりそう。バレなきゃセーフだと考えてるタイプ」と判断している。
次にルイズとジョセフが『バカ主従』だということ。
ジョセフはルイズをそれはもう猫可愛がりしている。アルビオン行では事あるごとに可愛がりっぷりを披露されて胸焼けがしたくらいだ。
しかもルイズもそれを嫌がるどころか悪く思っていないのは誰が見ても明らか。口では「そんなの関係ないんだから!」と言っておきながら、嬉しそうに緩む顔をなんとか隠そうとする努力には頭が下がる。
(そんなのどうせ周りにばれてるんだから諦めればいいのに)
何度もその言葉が口をつきそうになったが、言ったところで顔を真っ赤にして頑張って否定するだけなのは目に見えてるので言わないことにしている。
それなのにいざジョセフが他の女と仲良くするとこうやって怒り出す。
フリッグの舞踏会の夜にフレイムと話していた予想がこれ以上ないくらいに大当たりしていた。これが自分の部屋に連れ込んだりしていたら@どころかAかBの二択になっていたところだった。それもこの様子なら、かなりいい確率でAになりかねない。
事を急いて下手に手を出してなくてよかった、というのが安堵の気持ちであった。
――そして最後の一つ。
キュルケは溜息を吐き出して、毛布から出てこないルイズを一瞥し、足を組み直した。
「このキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーは……」
昔、劇場で見た歌劇の主人公が言っていたセリフを思い出しつつ、独り言を始める。
支援
「いわゆる好色のレッテルを貼られているわ」
ルイズから視線を外し、何もない空間に視線をやりながら言葉を続けていく。
「つまらないやっかみでケンカ売って来た相手を必要以上にブチのめしちゃって病院から未だに出てこないのもいる。伝統と慎みを語るだけで恋人を繋ぎ止める努力もしないんで気合を入れてあげたレディはもう二度と学院に来てないわ。
私の興味を引けなくなった殿方にはすぐにさよならするなんてのはしょっちゅうよ」
そこまで言って、ルイズがくるまっている毛布が身動き一つしていないのを確認し。
息を一つ吸ってから、淡々と語っていた声色に少しずつ熱を篭らせていく。
「けれどこんな私にも、手を出してはいけない相手はわかるわ」
細く長い指を毛布にかけると、有無を言わさず毛布を引き剥いだ。ネグリジェ姿のルイズが窓から差し込む夕日の光に晒される。
「な、何をするのよツェルプストー!」
当然上がる抗議の声にも構わず、キュルケはやっと顔が見えたルイズに向かって一喝する。
「ただ泣いて世話してもらうだけの赤ん坊を可愛がっているお爺さんは寝取れないわ!」
予想もしなかった鋭い舌鋒に、ルイズは思わず次に上げようとしていた抗議を飲み込んでしまった。
これがキュルケの最後の理由だった。
恋人を寝取るのは特に問題ない。
本当に相手を大切に思い、相手に大切に思われているなら、たかが色仕掛け一つで靡くはずもないからだ。
ゲルマニア貴族からしてみれば、トリステイン貴族はでんとふんぞり返って相手からの寵愛を求めるばかりで、自分からは何も与えようとしない高慢ちきな怠け者でしかない。
だからトリステイン貴族の雛形のようなヴァリエールは、ツェルプストーに恋人や婚約者だけではなく配偶者まで寝取られるんだ、とツェルプストー一族は考えている。
しかし、そんなツェルプストーの家風を色濃く受け継いでいるキュルケも、ジョセフへ本格的にアプローチしないのは、ジョセフはルイズの恋人ではなく、保護者でしかないと考えているからだった。
ツェルプストーの家に生まれた者が、いけすかない女から恋人を寝取ることはあっても、赤ん坊を可愛がっているおじいちゃんを寝取る訳には行かない。
保護者を取り上げられた赤ん坊がどうなるかなど、考えなくても判る。
「ましてやメイジにとってパートナーであるはずの使い魔を大切にしないで追い出した……あんたがやったのは、そういうことよ!」
矢継ぎ早に繰り出されるキュルケの言葉に、ルイズは唇を噛み締めることしか出来ない。
それから数拍ほど間を置いてから、キュルケは静かに立ち上がった。
「あんたが赤ちゃんのうちはダーリンには手を出さないであげるわ、ラ・ヴァリエール。でも良かったわね、その様子だとダーリンはずっとアナタのものだもの」
淡々と語られる言葉は、普段の情熱的な振る舞いのキュルケからは程遠いものだった。
だが、キュルケは怒りが高まれば高まるほど、声は落ち着きを強めていく。いかにも熱を持っていそうなオレンジの炎よりも、青く輝く炎の方が遥かに温度が高いのと同じように。
悠然とした足取りで部屋を去っていくキュルケの背をただ黙って見送るしか出来ないルイズは、静かに閉められたドアを悔しげに睨みつけ……そして、赤ん坊のように泣くことしかできなかった。
*
それから二日間、ルイズの部屋の扉を潜ったのは食事を運んでくる使用人だけだった。
とは言え、食事も少しばかり手を付けるくらいで、ほとんど食べ残していた。
一人きりの部屋の中でルイズがやっていたことと言えば、そのほとんどが泣きじゃくるか眠ることだけ。
ジョセフが他の女と仲良くしていた事、つまらない事でジョセフを追い出してしまった事、にっくきツェルプストーから今までにない罵倒を受けてしまった事。
そのどれもがルイズを何度も叩きのめしていた。
支援
ルイズかわいい
涙が枯れるほど泣けば、当然喉が乾く。乾いた喉を潤す為に水を飲めば、喉を潤すのも程々に再び涙が滲み出てきて、またベッドに戻って泣き続けるという繰り返し。
あんまり泣き続けていると泣くのが癖になって泣き止められなくなるが、今のルイズは正にそれだった。
しかし泣き続ける中でも、ルイズの中には反省しようという思いが芽生えていた。
謝りたい。つまらない事で怒って、つまらない事をしてしまってごめんなさい、と。
けれど当の使い魔はもう三日も帰ってきていない。本当に自分に愛想を尽かして、他のどこかにいってしまったのではないかという嫌な想像がどんどん重く圧し掛かる。
感覚の共有も出来ないから、どこに行っているのかなんて少しも判らない。
考えても何も判らないし、考えれば考えるだけ悲しくなるので、考えてしまう時間を出来るだけ減らす為に眠くもないのにベッドに横たわって目を閉じ、ひたすら眠気が来るのを待ち構える。
しかもそのまどろみも、浅い眠りとキュルケからの批難が相まっているためか、ジョセフが他の誰かの使い魔になっているという悪夢じみた夢ばかり見てしまうものだから、どれだけ眠っても逆に疲れる有様だった。
ギーシュの使い魔になっていたこともある。ジョセフの主人になったギーシュは使い魔の平民に決闘を挑まれてボロ負けするというはなはだ不名誉な事態になったが、それからは友好関係を深めていたらしい。
毎日のようにギーシュと額を突き合わせてはよく判らないデザインのワルキューレを多く作り、つまらないことで二人とも盛り上がっていたようだった。
それにしてもモンモランシーがいつも二人を見てよだれを垂らしていたのはどうしてなのだろうか。
タバサの使い魔になっていたこともある。ジョセフを召喚したはずなのに、何をどうしたのかは知らないが当然の様にシルフィードもいた。
タバサは読書を続け、シルフィードはエサを食べ、ジョセフはふらふらとそこらをほっつき歩いていて……特に現実と変わりがないように見えた。
一番腹立たしかったのがキュルケの使い魔になっていた時だった。
ジョセフを召喚してから一週間後、キュルケはそそくさと魔法学院を中退して故郷に帰ってしまった。そんなキュルケを口さがない生徒達は好き勝手に中傷した……が、数年後に再会した時、ゲルマニアは女王の治世を迎えていた。
褐色の肌を持つ女王の横に、宰相の服を着てニヤニヤ笑っているジジイが立っているのを見た途端、ルイズはベッドから跳ね起きた。
他にも色んな知り合いの使い魔になっている夢を見続けたルイズは、たった二日で大分やられてしまっていた。
今日何度目の目覚めなのか数える気もないルイズは、カーテンを閉じたままの窓を見る。日の光が差し込んでこないところを見ると、夜になっているのは判るが今のルイズにはあまり関係ないことだった。
努力の甲斐あって眠りにつこうが、数時間ほどしか時間は進まないのが判っていても。ほんの一時の逃避を求めて、ルイズは今日何度目になるか判らないまどろみに落ちていく。
(……本当に私、赤ん坊だわ。自分じゃ、泣くか寝るしか出来ないんだもの……)
くすん。と鼻をすすり上げながら、頭に浮かんだ思いは、やっと訪れた眠気に掻き消えた。
――そして、次にルイズが目覚めた時。
重い瞼を開いて最初に見えたのは、まだ日の光も差し込まないベッドの上で、途切れないいびきをかいている使い魔の横顔だった。
ひ、と息を飲んで跳ね上がった心臓を抑えるように薄い胸に手を当て、何度か大きく深呼吸をする。
そぅ、と手を伸ばして頬をつついてみる。
「んぁ」
マヌケな声を漏らして首を揺らす仕草を見れば、ふわりと頬が緩み、安堵が広がった。
しかしその柔らかな気持ちも、すぐさま込み上げてきた言い様のない怒りに塗り替えられていく。怒りに任せて右手をぴんと伸ばし、親指を手の平にぎゅっと押し付け――
「おふっ!」
脇腹に渾身のチョップを叩き込まれて無理矢理眠りから覚まされたジョセフが、恨めしそうに主人を見やった。
支援
「……人が気持ちよく寝てるのに何すんじゃ」
「……ご主人様ほったらかしてどこに行ってたかと思ったら、なんでご主人様のベッドで勝手に寝てるのか。納得の行く説明をしてもらおうかしら」
そう言う間もルイズのチョップはひっきりなしにジョセフの脇腹にめり込み続けていた。
「おぅっ。ちょっと待て、説明してやるからチョップを止めてくれんか」
なおも手刀を放とうとしたルイズの手をつかんで攻撃を止めさせると、ジョセフは苦笑しながら身を起こした。
「いやな、ちょっと買い物に行ってきた」
「買い物って……お金はどうしたのよ」
「ちょいとトリスタニアで賞金稼ぎの真似事をな。あの辺りは仕事が結構ある」
枕元にあった帽子を被りつつベッドから降りると、テーブルの上に置いてあった紙袋を持って再びベッドに戻ってくる。
「ほらルイズ、お土産じゃ」
紙袋から取り出した何かが、ルイズの手の上に置かれた。
反射的に受け取ってしまったそれが何か確認しようとするルイズの頭からは、既に眠気は吹き飛んでいた。
「……帽子?」
どこからどう見ても何の変哲もない帽子。
具体的に言えば、ジョセフの頭の上に乗っている帽子と全く同じデザインの帽子だった。
「何を買って来ようか悩んだが、この前、わしの帽子かぶっとったじゃろ。じゃから、この帽子買った店で買ってきた」
ニューカッスルで帽子を無くしているので、今のジョセフが被っている帽子はトリスタニアの帽子屋で買ったものである。
「わしの新しい帽子をルイズに買ってもらったお返しって言ったらヘンな話じゃが、この前なんか知らんがルイズを怒らせたお詫びも込めて、ということでどうじゃ」
自分がいない間、主人がどうしていたかなんて少しも想像が出来ていない、暢気な物言い。
普段ならここでかんしゃくを起こして怒り出す流れだった。
支援ッ!
しかしルイズは、受け取った帽子を黙って被る。
ルイズの頭のサイズより少しだけ大きい帽子は、主人より背の高い使い魔の視線からルイズの顔を隠す。
両手でつばを掴んで更に帽子へ頭を埋もれさせると、ルイズは何も言わずにジョセフの胸へ帽子越しに額を押し付けた。
普段の高慢ちきでけたたましい主人とは違うしおらしい態度に少しだけ目を丸くしたが、今回は減らず口を叩かず胸の前にいる主人の頭を優しく抱いた。
陽だまりの様な匂いがする腕の中に抱かれながら、ルイズはジョセフには判らないよう、ブリミルへ感謝の祈りを捧げるうち、知らずに眠りについていた。
この眠りは夢も見ない、深い安らかな眠りだった。
*
次の日の朝。
キュルケは今日も変わりなく身支度を済ませると、フレイムを従えて自室の扉を開ける。
「ほら何してんのよジョセフ! 早く行かないと朝食に間に合わないわよ!」
「そんなに慌てんでもまだ大丈夫じゃて!」
すると、少女と老人の騒がしいやり取りが聞こえてきた。
薄く化粧を乗せた顔が、優しく緩む。
「……ま、雨降って地固まるって言ったところかしら。大体予想通りの結果だわね、賭けるのもバカバカしいくらいのオッズだけど」
せっかくだから部屋から出てきたところをからかってやるとするか。
そう考えたキュルケは、緩く腕を組んで壁に凭れ掛かり、ルイズとジョセフが出てくるのを待ち構える。
サイレントの魔法も掛かっていない部屋からは何をしているのかは知らないが、どったんばったんと騒音が聞こえてくる。
支援ッ!
「ほら、行くわよ!」
一方的に出発を宣告したと同時に、扉が開く。
そしてキュルケの視界に次に飛び込んできたのは――
ジョセフと同じデザインの帽子を被ったルイズだった。
あんまりにも予想を超えた大穴の出来事に、キュルケは完全に虚を突かれた。
「そんなトコで何してんのよ」
思わず呆然と突っ立ってしまっていたキュルケを、帽子の下から訝しげな目で見やるルイズ。百戦錬磨のキュルケにしても、ここまでとは全く考えが及ばなかった。
「……ええと。……その、帽子は?」
「ジョセフのお土産」
顔を赤くもせず、恥じらいもせず、ごまかしもせず、きっぱりと言い切った。
「ちょっとサイズが大きいけれど、そのうち慣れるわ」
扉の鍵を閉めると、ジョセフを引き連れて凛とした足取りで廊下を歩いていく。
そして階段に差し掛かったところで、まだ一歩も動いていなかったキュルケに視線を向けると、何でもないことのように言った。
「どうしたのキュルケ……朝食を取りに行くんでしょう?」
言葉の余韻が消えないうちに、ルイズは階段を下りていった。
ルイズとジョセフの姿が見えなくなって数秒してから、キュルケは無意識に息を呑んだ。
(まるで10年も修羅場をくぐりぬけて来たような……スゴ味と……冷静さを感じる目だわ……、たったの二日でこんなにも変わるものなの……!)
つい二日前まで赤ん坊と変わりなかったルイズは既にいないことを、キュルケは悟った。
そしてジョセフを寝取ることがどうしようもなく難しくなったことも、悟る。
「ふ、ふふふ……」
しかし、艶やかな形よい唇から漏れたのは。
「ふふふふふ……そうよ……そうじゃなくっちゃあいけないわ、ルイズ。ツェルプストーの因縁の相手が泣いてるだけの赤ん坊じゃあ面白くもなんともないわ……」
これから待ち構える展開を待ち望んで笑う声だった。
「いいわ、ラ・ヴァリエール! アンタは赤ん坊でいる事ではなく自分の足で立つ貴族である事を選んだという訳ねッ!」
その時、キュルケが露にした歓喜の理由は、彼女自身にも理解できない。
しかし、確かに彼女の中に歓喜の炎を灯したのはルイズだった。
一頻り溢れ出した笑いが止まった頃、傍らで静かに佇んでいたフレイムの頭に手を伸ばし、優しく撫でつけた。
「さあフレイム、今日から忙しくなるわよ」
きゅる! と嬉しそうに鳴いたサラマンダーは、主人の後を付いて歩き出した。
To Be Contined →
以上投下したッ!
というワケで次回から隠者ルイズは帽子を被ったデザインで登場します。
参考資料はコチラ。
www.hp.infoseek.co.jp/v/b/l/vblave/cgi-bin/source/up0406.jpg
この支援絵がなければルイズが帽子を被るというアイデアは生まれなかった……
もう一年も経ってしまったけれど改めて絵師ディシ様にお礼を申し上げたい……!
さて奇妙な隠者のオチは既に決めているけれどそこまで辿り着くのは一体いつのことになるのか判らなくなってまいりましたッ!
でも頑張る。
後日談として帽子をバカにしたマリコルヌが「私の帽子にケチつけてムカつかせたヤツぁ、何モンだろうーーーとゆるさねえ!」とキレたルイズに顔半分を内部でふっ飛ばされて、脳ミソが1/3ぐらい顔の肉とシェイクされたということも付け加えておくことにします。
お疲れ様です!
マリコルヌ死ぬだろそれwww
支援絵に応える姿勢とキュルケの心意気にGJ!
マリコルヌwwwww
新しいルイズ&清清しい格好良さを持ったキュルケにGJ!
ちょっと短いんですが、隠者さんに続いて11時に投下しても構いませんねッ!
構いませーん!
773 :
ゼロいぬっ!:2008/08/17(日) 23:00:10 ID:1E8b1VS+
使命ではない、これは私怨だ。
胴を薙ぐ一閃を目にした瞬間、それに気付いた。
何故ここまでバオーに拘るのか、僕は初めて理解した。
虚無の力を手に入れるのに邪魔だからというのは建前に過ぎない。
奴の存在が許せない。
ルイズを、国を、誇りを、仲間を、
あらゆる物をかなぐり捨てて僕は望みを叶える為に強くなった。
なのに奴はどうだ。何も持たず研究材料として死ぬだけの生だったのに、
この世界でルイズや多くの友、仲間を得て強くなったなどと、
そんな強さを、他の誰が認めようと僕が認められると思っているのか!
貴様とは覚悟が違う! 僕は全てを捨てられる!
それができない貴様如きに僕が敗れるはずがない!
研ぎ澄まされた剣閃は光の線となってワルドの胴を両断した。
二つに分かたれた屍が風竜を離れて空へと落ちていく。
しかし、そのワルドの死体が風に融けて消える。
「な…! こいつも偏在…!?」
バオーの心境を代弁するようにデルフが困惑の声を上げた。
刹那。風竜の背に降りた二人の真上に影が落ちた。
見上げた先には自分達めがけて急降下する別の風竜。
そこから一人の男が雄叫びと共に飛び降りた。
フライもレビテーションもかけず、ワルドは己の身体をバオーを貫く一本の矢に変える。
「ウォォオオォォオオォォ!!」
ワルドの咆哮が激しく大気を揺さぶる。
その気迫は正しくバオーをも凌駕するものだった。
一瞬、彼の脳裏を死の予感が過ぎる。
それを振り払い、感電せぬように彼はデルフを放して体内電流を巡らせる。
直後、ガンダールヴの力に支えられた全身に異常な負荷がかかった。
無敵といえど生命は生命に過ぎない。浪費した物はどこかで補わなければ戻らない。
“バオー・ブレイク・ダーク・サンダー・フェノメノン”を放ち続け、
傷を負った前足を再生し続け、無限とも思われた体力は底を見せていた。
先の一撃とてガンダールヴの力が無ければ成し得なかった。
空を穿って放たれる雷光。それは舞い降りるワルドを貫く。
瞬時にして焼き尽くされるワルドの身体。
だが、それも先程の偏在と同様に風に散っていく。
その背後から現れるもう一人のワルド。
猛禽類にも似た鋭い眼差しがバオーを射抜く。
774 :
ゼロいぬっ!:2008/08/17(日) 23:01:20 ID:1E8b1VS+
放電直後で体内電流の充電が間に合わない。
弾幕のように展開されるシューティング・ビースス・スティンガー。
それをワルドは魔法ではなく外套で受け止める。
無論そんなもので完全に防げはしない。
体毛の矢が腕や身体へと突き刺さり炎上していく。
それでもワルドはバオーを捉えたまま視線を外さない。
炎を纏いながら振り下ろされる牙の如きワルドの杖。
それをセイバー・フェノメノンで切り落とそうと迎え撃つ。
真っ向から刃を見据えてワルドは叫んだ。
「くれてやるッ!」
彼の目の前で激しい血飛沫が舞った。
切り落としたのはワルドの杖ではなく腕。
振り上げられた刃にワルドは自分の腕を叩きつけていた。
斬り飛ばされた腕が宙を舞って地上へと落ちていく。
苦悶を浮かべるワルドはそれを一瞥もせずに眼前の敵を睨む。
バオーの刃は杖まで届かなかった。
その短すぎる刀身は盾にした腕を切り裂くに留めていた。
刃と交差するように振り下ろされるワルドの杖。
それはバオーの装甲を突き破って額に突き立てられた。
腕に込められた力が頭蓋を抉っていく。
「勝ったッ!」
さらに杖を奥へと押し込みながらワルドは雄叫びを上げた。
切られた腕の痛みも焼きつく皮膚も忘れて叫んだ。
獣が遠吠えで自分の勝利を知らしめるように。
「相棒ォォォォ!!」
暴れる風竜の背から滑り落ちながらデルフは叫んだ。
剣である自分には相棒を掴む手も何もない。
相棒の窮地を目に焼き付けながら彼は地上へと吸い込まれた。
それには目もくれずワルドはバオーだけを睨み続ける。
「偏在も、艦も、部下も、腕も、何もかも失ったッ!
だが貴様に勝った! 最後に勝利するのは貴様じゃない、この僕だ!」
狂ったようにワルドは叫び続けた。
彼の頭にはもう戦いの行く末も虚無の力もない。
全身を駆け巡るのはバオーを倒した実感と歓喜、ただそれだけ。
何の為に勝利するのかではなく、バオーに勝利した事だけが全てだった。
抵抗する力を失った怪物を見据えてワルドは思った。
ああ、そうだ。そうだとも。
どんなに恐ろしい化け物がいようとも最後には必ず討ち倒される。
決して怪物は勝利を得る事はない。
怪物の運命とは、英雄に討ち滅ぼされる為にあるのだから。
775 :
ゼロいぬっ!:2008/08/17(日) 23:02:40 ID:1E8b1VS+
ルイズの慟哭が惨劇の空に響き渡る。
彼女が目にしたのは杖に貫かれた自分の使い魔の姿。
ワルドを倒したはずだったのに一瞬で絶望に塗り潰された。
目の前で繰り広げられる悪夢のような出来事。
それを事実と認められなくて彼女はその場に蹲った。
耳を塞いで項垂れるルイズの横でタバサは敵を睨んだ。
込み上げる怒りを隠しもせず己の感情を露にする。
しかしタバサは悔しげに自分の杖を握り締めるだけ。
衰弱しきった自分ではワルドには勝てない。
何よりルイズを巻き込んで無謀な事はできない。
悔しげに唇を噛んで彼女は黙って見ているしかなかった。
シルフィードも声に出して叫びたい気持ちを堪えて悲しげにきゅいきゅい鳴いた。
「誰か! 俺をもう一度、相棒の所に!」
大地に突き刺さったデルフが叫ぶ。
しかし、その声も戦場の喧騒に掻き消される。
たとえ届いたとしても彼等は自分達の事だけで手一杯。
とてもデルフの頼みを聞ける状況ではない。
「頼む! 俺を相棒の元に連れて行ってくれ!」
銃を手に戦場を駆ける兵士達の足音が響く。
だがデルフへと近付いてくる様子はない。
通り過ぎていく兵士の背中を悔しげに見送る。
何故、自分には足も翼もないのか。
一番必要とされる時に傍にいられない。
それが悔しく悔しくて彼は呻いた。
「またか…またなのかよ」
埋もれて不鮮明になったデルフの記憶。
それでも覚えている……いや、忘れられない事がある。
一人の使い手の記憶。それが誰だったか、男なのか女なのかも思い出せない。
鮮明に覚えているのはその最期。あの時も同じだった。
あいつは剣を手放し。俺は何も出来ずそいつの最期を見届けた。
その時ほど自分の無力さを思い知らされた事はなかった。
「……また俺だけが生き延びるのか」
悲しみを背負ったまま、また永い時を一人で過ごすのか。
相棒がどんな奴だったかも思い出せなくなるほどの時間を。
共に死ぬ事も叶わず、のうのうと生きろというのか。
「誰でもいい! 頼む、相棒と最後まで戦わせてくれ!」
相棒を守れない剣に何の価値がある。
無限に続く寿命は使い手の死を見続けるためのものか。
何の為に俺はいる。相棒と別れる為に出会ったとでもいうのか。
デルフの声が戦場に虚しく木霊する。
その声を聞き遂げる者は誰もいないはずだった。
しかし遥か彼方でデルフの声に何かが反応していた。
遠くで、小さな小さな“何か”が胎動した。
776 :
ゼロいぬっ!:2008/08/17(日) 23:04:43 ID:1E8b1VS+
以上、投下したッ!
お手てか?お手てなのか?
ここから何が来るんだろう……次回を楽しみにしている乙色の波紋疾走
GJ
GJ!
最近のゼロいぬさんのペースはすごいwww
dioの息子は現在2人
age
遂にバオーが飛び散るのかっ!
ゼロいぬおもしろいw
ほむ
朝まで時を止める。
悪いな・・・
入門するぜ
ヘブンズドアー!
「
>>785は夜明けまで時間が静止していたと思い込んで寝る!」と書き込ませてもらった
俺って情けねーよなァー
死にたくなった。
HAIL 2 U!願いを言えッ!
何?パンティが欲しい?ならばどちらにする!
ルイズのパンティorパンティあげちゃうッ!のパンティ
パンとティーで朝食を。
うまいこと言っとる場合かーッ
おかずは何だ
イギリス式豆スープです
夢の中で、俺はこのスレにSSを投下していた…
だから現実の俺もSSを書き上げたらこのスレに投下するんだ…
>>782 1・SSのネタを思い付く
2・SSを書き上げる
3・SSを投下する
俺はこの3つの願いを叶えたいぜ!パンティなら試練中のディアボロに差し上げて下さい
いてんいてーん
テスト
最近ゼロ魔クロス系全体の勢いが落ちつつあるようですね。
と、ここで一つ、ゼロ魔キャラをスターダストクルセイダースに入れるという逆召喚パターンなどいかがでしょうか?!
といって自分が書くわけでもなく。
ハルケ側が最初の戦闘でDEAD ENDしか思いつかない
ポルナレフ召還みたく一瞬で負けそ
詠唱中にズドンみたいな
>>798 今はみんなどのジャンルに流れてったんだろうなぁ…
過熱してた熱が冷めた、ってところかな?
とはいえ、新刊が来月発売だから、それまでちょっと休憩期間に入っただけかも。
まとめサイトのIN数は今も毎日四桁だから、需要がなくなったわけじゃないだろうね。
ぽつぽつでも投下があると毎度楽しいしな。
しばらく見ないうちにまとめ見て久々の更新が来てたりすると
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!って気分になる
べつにルイズに召還されなくってもいいんじゃね?
つまりコルベールの使い魔ですねわかります
書き込めるかどうかテスト
この流れなら明日まで時を止められる!
>>806 お前には計り知れないだろうが…
「時は加速する」
だが、俺がここでザ・ワールド!
ざんねん!
せかい が いちじゅん して しまった!
キング・クリムゾンが発動したようだな
一週間投下無しか……、なんだか、寂しいな
今は本スレよりも避難所の方が、作品投下は活発だな
813 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/24(日) 23:27:40 ID:uAvIDyAa
書く気力が無いわけじゃないがスランプ中だぜ・・・・
書いても書いてもまったく気に入った文章が書けないぜ・・・・
サル板で代理要請があったので、初めてだけど代理に挑戦。
614 :ポルナレフ+ジョルノ_第二章_3-3:2008/08/24(日) 21:48:42 ID:8QeVE4.A
どなたか代理投下をお願いします。
先行していたルイズは、ジョルノ達より幾分早く宿に着いていた。
そのホテルは貴族用の、この港町では一番上等な宿、『女神の杵』亭で、普段なら事前予約が必須の宿だった。
だが、その宿も今は従業員以外に人気は無かった。
アルビオンとトリスティンの玄関口として賑ってきたと言う街の成り立ちから、アルビオンが内戦になってからはそこへ商売をしに行く商人達くらいなもので、主だった客層はこなくなったからだ。
今のアルビオンに向かう者達の中に、『女神の杵』亭を利用するような手合いは殆どいない。
浮遊大陸から戦火を逃れてきた者の中には貴族も多数いたが、近日中に内戦が終わろうと言う段になって逃げてくるような者はいなかった。
今浮遊大陸から出てくるのは、王党派についていた傭兵達だけ。
安宿の酒場から順に賑わっているようだが、平民と一緒に食事をしたがらない者も多い貴族様御用達の『女神の杵』亭には関係の無い話だった。
逆に、同じくなのしれた宿でありながら平民でも構わず受け入れる隣の宿『世界樹の枝』亭は今現在全室満員で、一歩宿を出れば同じく一階に設けられている酒場の騒ぎが聞こえてくる。
そんな宿にあって、最近暇を持て余していたホテルマン達は、一階の酒場をウロウロするルイズに愛想良く、あるいは目障りにならないよう粛々と己の職務を果たしている。
酒場の中にいるのも従業員を除けばルイズ達だけ…この宿で部屋を取っているのも、ルイズ達だけだったので従業員達の態度はとてもよかった。
ホテルマン達に、その傭兵達の中にはアルビオンから逃れてきた貴族を捕まえている者もいると聞かされたルイズは気が急いて、そうした仕事振りには気付かなかったが。
「いやしかし、話には聞いていたが…彼の財産は一体幾ら何だろうね」
「男爵? 彼って…ネアポリス伯爵のことですか?」
「ああ。さっき小耳に挟んだんだが、隣の騒がしい宿。この戦争が始まる前後にある貴族が買い取って『平民でも泊まれるように』としてしまったらしい…その貴族が」
「伯爵だと?」
「ああ、代理人ではあったらしいが。間違いないな」
久しぶりに再会した婚約者とは正反対に酒場の椅子に座って背にもたれかかり、ワインまで開けて寛いだ様子のワルドは、数日前より若返ったように見える笑顔を浮かべた。
ルイズは自分が説得に失敗し、ジョルノ達が今足止めしているはずの母に長髪と髭をばっさり刈られ五歳は若返ったワルドを咎める。
床と同じく一枚岩からの削り出しで、ピカピカに磨き上げられたテーブルに、ワルドの顔が映っている。
ワインのビンが置かれたテーブルにワルドのリラックスした様子が映り、ルイズをより焦らせた。
「ワルド…貴方飲みすぎよ。任務中に不謹慎だわ」
アルビオン行きが決まった晩に、配下の者へ連絡してこのホテルを買い取ったネアポリス伯爵家の財産を計算していたワルドは数年ぶりに再開した婚約者のその表情を可愛らしく思い、笑顔を浮かべた。
「君こそ、もう少し落ち着いた方がいいな…今からそれでは先が続かないからね」
「そんなことはないわ!」
重要過ぎる任務中にワイン片手に言う婚約者の姿は、数年前彼女が憧れて恋した相手と落差があった。
美化されたイメージとの差に対する落胆が間髪入れずにルイズにトゲトゲしく反論させた。
近衛隊と切り離せない幻想との付き合いが長いワルドはそれを承知し、困ったような顔をして話を続ける。
「それにどうせ、アルビオンに渡る船は明後日にならないと、出ない」
「急ぎの任務なのに……」
615 :ポルナレフ+ジョルノ_第二章_3-3:2008/08/24(日) 21:50:10 ID:8QeVE4.A
そう言ってルイズは口を尖らせた。
ルイズ達はこの街についてすぐ、昼の間に桟橋に行って乗船の交渉を行ったのだが、交渉相手は皆口を揃えて同じことを彼女らに説明した。
明日の夜は二つの月が重なる『スヴェル』の月夜。
その翌日の朝が、アルビオンが最もラ・ロシェールに近づく時でそれまで船は出ない。
二人はそう、船乗り達に明日の出向予定がないことを丁寧に説明されてしまっていた。
納得していないルイズにワルドは少し考える素振りを見せた。
「じゃあこういうのはどうだい?」
「何?」
「隣の宿を買ったようにネアポリス伯爵に船を一隻用意してもらう」
全く酔っていないように見える顔でワルドが言うと、ルイズは顔を顰めた。
酔っているならまだしも、今のワルドの表情からは全く冗談には聞こえなかった。
「それは…幾らなんでも」
任務の為とはいえ、ゲルマニア貴族の奢りで移動手段を確保するなどルイズにとっては、貴族としての矜持を大いに傷つけられるように感じた。
平民でもあるまいし、由緒正しきヴァリエール家の三女が姉の恩人でもある相手にだけ出費を強いて主君からの任務を達成するなど到底考えられないことだった。
ワルドはグラスを一枚岩から切り出したテーブルに置いた。
そうしたルイズの感情を察して、幼かったルイズが憧れた凛々しい表情を見せていた。
「ルイズ。後で支払うと約束しても構わないじゃないか。これは君も言ったとおり任務なんだ…急ぎなら止むを得ないだろう」
ルイズがその言葉に視線を彷徨わせて迷いを見せると、ワルドは一転し困ったような表情を見せた。
余り本気ではない、軽い冗談のつもりだったのだがこの任務に賭けるルイズの気持ちを侮っていたらしい、とワルドは背もたれに頭まで持たれかかり天を仰いだ。
スクエアのメイジの手で巨大な岩を切り抜き作り出された宿の天井には、自然が作り出した奇妙な模様が刻まれていた。
趣を感じさせるその文様が普段とは違った方向に気を向かせたのかワルドは気がつくと「よし。じゃあ僕が出そう」とルイズに言い出していた。
「え…!?」
「なんだいルイズ。僕も貴族だ。それくらいのお金はあるさ」
思いのほか大きく驚きを見せた婚約者に、ワルドは愛嬌のある笑みを浮かべた。
アルビオンまで問題なく行け、しかもできるだけ早い船を用意する。
今の時期、急ぎとなれば相当吹っかけられるのも覚悟しなければならないだろうなとワルドは痛むであろう懐を考えて、少しだけ乾いた笑い声を上げた。
ルイズも同じように考えたのか、ワルドが座るソファの背に手を置いて心配そうに尋ねる。
「で、でもワルド…ちょっと買い物するっていう話じゃあないのよ?」
「…僕のルイズ。そんな風に心配されるのはちょっと傷つくな」
自分の財産を心配されて、おどけた調子でワルドは返すとどんより沈んだ顔を作って見せた。
失言をしたと思ったルイズはそれに騙され、慌ててワルドに言う。
「だ、だって…私達は大使なのよ! 間に合わせでも、安い船は使えないわ! それに、船員達も一流所を揃えないと…!」
「…い、いや。アルビオンまで早くいければいいんじゃないかな?」
「ダメよ! 寄せ集めじゃもしもの時に役に立たないわ! それに船員達の身なりだってちゃんとしたものを用意しないと…」
そのまま船の調度品やアルビオンで乗り込む馬車の用意などまで言い出しそうなルイズに、ワルドは慌てて声を張り上げる。
「ちょ、ちょっと待ってくれ…!そんなものを用意していたら一月はかかるよ」
「…それでも私達は大使なのよ? アルビオンの王様達にも失礼だわ」
「こんな状況だ。厳格なアルビオンの御歴々も許してくださるさ」
もしかしてここでケチるとトリスティンがアルビオンを軽く見てると思われてしまう、とか考えてるのか?
余りにも自分とは違う予想図を描いているらしいルイズにワルドは冗談じゃないと若干引きながら、婚約者の肩に手を置いた。
彼女の言うとおりにしていては結婚しても破産しかねない。
この旅で心の距離だけではなく、金銭感覚の距離も詰めなければな、とワルドの目には真剣な光が宿り始めていた。
616 :ポルナレフ+ジョルノ_第二章_3-3:2008/08/24(日) 21:56:21 ID:8QeVE4.A
「ルイズ。君の気持ちはよく…うん、とてつもなく良くわかる。だがこれは、お忍びなんだ。そんな目立つ真似はできないし、時間もないんだ」
「で、でも…」
「時間がないって君も言っていただろう? 君の意見は最もだ。だがそれは公式の、大々的な、それこそ公費を使って行う訪問の時の話だ。
今の僕らの状況とは全く合っていない」
ワルドは懇願するように言ったが、納得は得られなかったらしく彼が見下ろす婚約者の表情は不満げだった。
二人を生暖かい目で見ていた従業員の一人が酒場の扉を開ける。
日が沈み、二つの月の光を背負って草臥れた様子のサイトがふらふらとだらしない足取りで入ってくる。
その後を、亀を手に持ったジョルノが足音を立てずに続き、扉を開けた従業員にチップを渡し、何かを言いつけてからワルドへと目を向けた。
思わず救いを求めるような目でワルドは二人の少年を見つめ、サイトは嫌な予感に回れ右しようとする。
「何やってんだテメーは」亀から声がして、サイトが首根っこから持ち上げられたように浮かび上がる。
月明かりが作る影に表情が隠れたままのジョルノは言う。
「船の手配は既に済んでいます。明朝出立の予定ですから、余り飲みすぎないでくださいね」
安堵して息をついたワルドに、入ってきた二人は首を傾げた。
この内乱を食い物にしていたジョルノは当然、アルビオンへの玄関口であるラ・ロシェールに船を持っている。
ジョルノの抱える研究者達が異世界の技術を取り込んで作成している船には及ばないが、そこいらの船には負けぬ性能を持っているし、
船員もきっちりと、栄光ある元アルビオン空軍の仕官で構成されている。
で、むしろそれを知っていてアンリエッタは自分を巻き込んだのではと、ちょっぴり考えていた…というよりそう思いたかったのだが無駄だったようだ。
ワルドは席を立ち、鍵束を持って二人の下へと来る。
「やあポルナレフ、待っていたよ」
「おう、待たせちまったな」
妙な親しみの篭った挨拶を交わす亀とワルドを気にせず、ジョルノは店内を見回す。
特に目に付くほど悪いところはなかったらしく、ジョルノは首根っこを掴まれて足をぶらぶらさせているサイトを無視してワルドの持つ鍵束に目をやる。
「もう部屋はとってあるようですね」
「隣の宿を買い取っておいてよくおっしゃる」
形式的な笑顔を見せるワルドにジョルノも同じような笑みを返す。
「トリスティン国内にいる間だけのことです。それもお二人のような由緒正しい貴族の家にはお恥ずかしい話ですが」
「ご謙遜を」
ワルドは鍵束の中から二つ鍵を取り、ジョルノとサイトにそれぞれ手渡す。
「サイトが小部屋。伯爵とポルナレフが同室だ」
「…あの、亀で一人分っすか?」
鍵を受け取ったサイトが思わず突っ込みを入れると、ワルドは怒りも露にサイトへと厳しい視線をやった。
「口を慎みたまえ。君は僕の同志に床で寝ろと言うのか?」
「そ、そんなことないっす」
ヴィンダールヴの能力も発動していない上にヒロインもいないサイトには、その視線は聊か強力すぎた。
サイトは目をそらし、それだけを言うとポルナレフにもういいから離してくれと頼む。
ポルナレフのマジシャンズ・レッドが手を離し、サイトを暇に開かせて磨き抜かれた床に落とした。
617 :ポルナレフ+ジョルノ_第二章_3-3:2008/08/24(日) 21:59:34 ID:8QeVE4.A
「僕とルイズは同室だ」
一人心持離れていたルイズがぎょっとして、ワルドの方を向いた。
それに気付いていない様子でワルドは言う。
「婚約者だからな。当然だろう?「そんな、ダメよ! まだ私達結婚してるわけじゃないじゃない!」
ワルドの言葉を遮るようにルイズは声を張り上げた。
ポルナレフもそれには同意しようとしたが、しかしワルドは首を振ってルイズを真剣な目で見つめた。
冗談や余人を挟む余地がない真剣さを感じ取り、ルイズ達は息を呑んだ。
「大事な話があるんだ。二人きりで話したい」
「…ボーイさん、ワインのリストを見せてもらえねぇか?」
口を挟む余地がないと悟り、ポルナレフはワルドが作り出そうとする空気をかき消そうとする。
同じく余り女性に縁のないボーイはその意を汲んで喜んでリストを皆に配りだす。
頬の肉を引きつらせる貴族相手に満面の笑みでリストを渡す様は堂に入ったもので、ルイズも安堵しながら注文をする。
「私にも何かちょうだい」と当の婚約者まで言い、テーブルに置いたままだったワインの瓶が亀の甲羅の中へと吸い込まれていくのを見たワルドは、肩を落とした。
然程落胆してはいないらしく、苦笑したワルドは一旦諦めて自身は料理の献立表を要求する。
「君、私にはメニューを見せてくれ」
だがにこやかに表を見せて回っていたボーイは、うんざりしたような顔で「メニュー? そんなもの、ウチにはないよ…」
と返し、また笑顔でルイズ達から飲み物の注文を窺う。
「おい…! どういうことだね?」
「料理の献立はお客様次第で決定するからです」
「だから、私が何を食べるか決めるのにメニューをよこせと言ってるんだろうが!」
「チガウ!チガウ! ウチのシェフがお客を見て料理を決めるということでス」
ボーイがそう言ったのとほぼ同時に、無礼な態度に眉間にしわを寄せるワルドの元へとおいしそうな匂いが漂い始めた。
亀とサイトのお腹が空腹を訴えるように鳴り、場の空気を和ませる。
「もう完成したようですネ。すぐにお持ちいたします」
*
そうして食事を済ませたジョルノ達はそのまま入浴も済ませ、どうやら本当に何か大事な話があるらしいワルドとルイズは誰よりも早く部屋へと引っ込んでしまった。
釣られるようにして、皆早々に自分に割り振られた部屋へと引っ込んでいった。
ジョルノや亀の中にいる何名かも勿論そうしたが…後は寝るだけとなってから亀に隠れ住む者の一人、マチルダはジョルノから相談を持ちかけられていた。
ココ=ジャンボと同じ内装の亀の部屋で、三人はソファに腰掛けていた。
同席したのはポルナレフだけ、テファとペットショップは席を外している。
彼らが今いる部屋とは別の亀の部屋の中で休息をとっているはずだった。
ミキタカも見張りとして、ココ=ジャンボに残されている。
入浴後の一杯を飲み干したマチルダが杖を抜き、ジョルノが持ったデルフを燃やそうとする。
濡れた髪を纏め、照明の明かりに照らされたうなじにポルナレフは注目してそれ所ではなかった。
そのせいで集中が乱れたなどの理由で勿論ないが、炎は生まれなかった。
支援
618 :ポルナレフ+ジョルノ_第二章_3-3:2008/08/24(日) 22:00:10 ID:8QeVE4.A
「始めて見たね。間違いないよ、魔法を吸収する能力だ」
「…やっと自分の能力だけは思い出したってわけか」
杖を仕舞いながら結論したマチルダに、ポルナレフは真面目な顔で応じた。
火で炙られたり、これをやる前にも風の刃で刻まれたりしたデルフリンガーは、大慌てでその姿を変える。
一瞬でその変形は終わり、ぼろぼろに錆びた剣だったことが嘘のように…柄まで含めると150cm余りもある片刃の大剣がジョルノの手の中に出現していた。
「アンタどうやってこれに気付いたんだい?」
「いつまで経っても記憶喪失のままなんで、ちょっぴり折ろうとしてみたら途端に…「無茶しやがって…頑丈な俺様じゃなけりゃポッキリ逝ってるぜ!」
刃の根元についている金具を口のように動かしながら叫ぶデルフリンガーを見るジョルノの目は彼の愛鳥ペットショップが生み出す氷のように冷ややかだった。
ジョルノから、ゴールド・エクスペリエンスとは明らかに違う太く逞しい腕が出現するのを見て冷や汗を垂らしながら、ポルナレフが言う。
「ま、まあいいじゃねぇか。これで戦闘では切り札になるかもしれねぇぜ」
「そうですね。デルフのことは今は保留しましょう」
あっさりと同意して、ジョルノはデルフリンガーを鞘に仕舞い喋れないようにする。
そうしてジョルノは少しポルナレフ達に顔を寄せて本題に入った。
「ここに集まってもらったのは他でもありません。実は、ワルド子爵が裏切り者の可能性が高いです」
「なんだと…? そりゃどういうことだ」
マチルダが表情を鋭くさせて、背もたれへと体を押し付ける。
バスローブが少し肌蹴たが、残念ながらポルナレフは気づかなかったしジョルノはスルーして話を続けた。
「マチルダさんを助けに行った時に現れた仮面の男。今日の昼頃、ラルカスから彼がワルド子爵であるという情報をレコンキスタから寝返ったトリスティン貴族から得ました」
マチルダは胸元を直し、向かいに座るポルナレフの足を踏んだ。
名前が出たことで、一瞬向けられた目がどこへ向いていたか…マチルダにはお見通しだった。
ばれていないとでも思っているのか痛みを堪えながら、しかし涙を浮かべた目でポルナレフが叫ぶ。
「待ってくれ…奴がそんなはずはない! 俺と語り合った奴のあの目に、嘘偽りはなかった。信じられる紳士の目だったぜ!」
「その語り合った内容とは?」
熱く弁護しようとしたポルナレフは、その問いに色を無くしてそっぽを向いた。
「…さ、さあて。そこん所は忘れちまったな」
「その態度だけで何話してたか検討はつくけどねぇ…どうすんだい?」
「ポルナレフさんは彼が味方である可能性も信じたい、ということですね?」
「ああ。奴は紛れもないトリスティン紳士だ。それは俺の新しい友も賛同してくれるはずだぜ」
確認するジョルノに、ポルナレフは頷いた。
迷いのない、相手への厚い信頼を感じさせる言葉だった。
「男って馬鹿だねぇ」と、マチルダが微かに哀れんだように言い、どちらの言葉にかはわからないがジョルノは頷き還した。
「わかりました。保険をかけ、今は様子を見ることにしましょう」
喝采をあげ、ポルナレフは朗らかに笑った。
「わかってくれたか! だが、保険ってのは?」
「僕のゴールド・エクスペリエンスは既に彼の杖に触っています」
初めて聞く単語に内心首を傾げたマチルダは、説明を促そうとポルナレフに視線を向けた。
ポルナレフは苦い表情をして、「まぁ、仕方ねぇか」と自分に言い聞かせるように呟いていて、視線には気付かない。
無視されたことが面白くないのか、マチルダは鼻を鳴らして、亀から出て行った。
619 :ポルナレフ+ジョルノ_第二章_3-3:2008/08/24(日) 22:02:30 ID:8QeVE4.A
To Be Contined
以上です。
代理投下よろしくお願いします。
――――――――――――――――
以上で代理投下終わり。
投下も代理投下も乙です!
保険か…いや、ポルナレフの役所からして仕方ないと思いつつも、ギャグだけでは済まされない恐ろしさが際だってきたぜ。
代理乙
と、トニオさん!?
と一瞬思ったけど、単に同じ能力(スタンドじゃないほう)を持ってるだけかな?
にしてもワルドとポルの友情いいなw
こっちに寝返らせれるんじゃないか?w
代理も乙です!
ジョルノが相変わらず怖いwww
そしてワルド死亡のお知らせwwwwww
ぽるじょるきてるー
投下乙であります!
>間に合わせでも、安い船は使えないわ! それに、船員達も一流所を揃えないと…!
ルイズがまるで成長していない……(AA略
ルイズだからしょうがない
過疎っているのはなぜ?
受験?
828 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/25(月) 16:46:56 ID:3sC5Dits
過疎の原因は投下が少なくなってるからじゃないかな。
荒木先生の作品限定だし、姉妹スレみたいに受け皿が大きくないからね。
あと、盛り上がるためのネタ不足か。
皆発想力がないんだね…
…ん?
ぽるじょるの方、代理の方、乙でした
このワルドにはぜひ仲間になっていただきたいw
もし仲間になってくれなかったとしたら、
ポルナレフの友情運が悲しすぎる……
姉妹スレまとめだけ見てるが、やはり勢いが落ちてる気がする。
以前は神話の時代だったんだよ、きっと
834 :
ゼロ兄貴:2008/08/25(月) 23:06:41 ID:AKW4oErC
臨時北花壇騎士団編続き、やっとできた……少ししてから投下するが……
>>830ッ!お前ごとき薄っぺらな藁の家がわたしや他職人達の深遠なるネタ不足の領域に踏み込んでくるんじゃあないッ!!
他の暗チまーだー?チンチン(AA略
835 :
ゼロの兄貴:2008/08/25(月) 23:10:20 ID:AKW4oErC
沈みかける太陽をバックに何時ものようにシルフィードが進んでいる。
ただ、何時もと違うのは二人ほど余分に……元ギャングと現役盗賊が乗り込んでいる事である。
タバサは相変わらず本に視線を落とし、他二人はやる事も無いので……適当にしている。
しばらく何事も無かったが唐突にかつ盛大に『ぐぎゅるぅぅぅぅ』という音がした。
「……予想は付くが、一応聞いてやる。こいつは何の音だ」
地の底の亡者の声もとやかくというか、今居る下の方から聞こえてきたのだ。九割九分あの音だろう。
「おねえさま、おにいさま、シルフィはおなかがすいたのね。きゅいきゅい!」
予想的中。シルフィードの腹の虫が盛大に抗議声明文を発表したようだ。
なおも喚きたてるシルフィードにようやくタバサが本から目を少しだけ離すと
あらかじめ用意してあったのか、なにやら妙な形の塊をシルフィード口目掛け放り投げた。
シルイフィードがパクリとそれを飲み込むと全身が揺れる。
「ッ!……っぶねぇな。落とされんのはゴメンだぜ、オレはよ」
ヴェネツィア超特急ですら本来なら致命傷のはずだったのに
ここから落とされれば、怪しい中国人に言われなくともまず間違いなく死亡確認である。
無論、そんな事知らないシルフィードは気にせず騒いでいるのだが。
「お肉かと思ったのに騙されたぁ〜〜〜!偽物なのね!紛い物なのね!おねえさま酷いのね!」
べっ!と口の中からモノを前足で器用に取り出すと本を読んでいるタバサの前に突き出す。
しかしながら、御主人から帰ってきた言葉は淡々かつ簡潔なものだった。
「食べられる」
「でも、まずいのね!おいしいわけがないの!お肉の味はするけど、お肉じゃない!偽物なのね!」
「それって確か、最近出回ってる魔法で肉の味を付けたっていうやつじゃあなかったっけ」
「……マジでなんでもあんな」
モノを見てフーケがそう言ったが、魔法が生活面にそこまで直結してる事に本気で呆れてきた。
「やっぱり偽物だったのね!おねえさまもおにいさまも食べてみれば分かるのね!」
……それはひょっとしてギャグで言ってるのか?
一応、さっきまでシルフィードの口の中に入っていたモノであり
つまりは、結構ッ!そのモノはシルフィードの涎でベトベトだァ!なわけで美味い不味い以前の問題である。
「おい……オメー食ってみろ」
「……わ…わたしが…?……か…い…今まで、こいつの口の中に入ってモノを?絶対にイヤ!おにいさまが食べてやりゃあいいじゃあないか!」
「オレだって嫌に決まってるだろーが」
そうキッパリと言い放つが相変わらずだ。
「さっきもそうだったけど自分が嫌なものを人にやらせるなッ!どおーゆー性格してんのさあんたはッ!」
泣きそうなフーケと平然としたプロシュートを背景に、タバサがモノを少し千切って食べた。
「食べられる」
それでも淡々としたタバサに抗議を続けているが、なしのつぶて、ぬかに釘、のれんに袖押し、という具合に全く手応えが無いようだ。
「食べる、食べられないとかいう問題じゃなくて
シルフィは美食家なのね!主人は使い魔の食べ物に責任を持つべし。使い魔として当然の権利を要求するのね!」
そのやり取りを見て、どーもどっかで知ったような情報だと思ったが、ブチャラティチームの略歴とスタンド情報を見ていた時だと気付いた。
確か、ミスタのピストルズが飯食わさないと働かないとかいう記述があったはずだ。
特に戦闘に直結しない事項だったので、さして気にも留めなかったのだが、今頃思い出した。
「む!おねえさま。風韻竜はあそこに街を発見
尖塔とか寺院とかあってなかなか素敵な街なのね。という事は、素敵な街には素敵な名物があるのが常識なのね〜〜」
「時間とお金が無い」
836 :
ゼロの兄貴:2008/08/25(月) 23:12:05 ID:AKW4oErC
不味くなけりゃあ特に何でもいいプロシュートとてイタリア人である。
イタリアと言えばご存知イタ飯で有名な土地であり美味い物など、それこそ星の数ほどあるのだ。
だからまぁ、シルフィードの言わんとする事も分からんでもないし、相応の仕事をさせるには相応の対価が必要だという事は何より自分が一番知っている。
「ピストルズかオメーは。だがまぁ、連中みてーに途中で働かなくなるってのもオレが困る。食った分はキッチリ働けよ」
「きゅい!?さすがおにいさまなのね!そこの本の虫娘とは大違いなの。シルフィおにいさまの使い魔になりたかったのね!」
「あまり甘やかすと後で色々と困る」
そうタバサが言ってきたが、当のプロシュートは涼しい顔で返した。
「……アメと鞭って言葉知ってるか?」
(こいつ、一体どんな無茶な事させるつもりだろう……)
アメと鞭。言い換えるなら貸しがシルフィードに出来たという事で一体何倍にして返すハメになるだろうかと理解したフーケが少し同情した。
まぁ自分も同じような状況にあるのだが。
もっとも、悲しい事に今のところアメは無く鞭のみで負債を返し続けているような状況だ。
あっれあれー?それってもしかして今のわたしって韻竜といっても畜生以下の扱い?
おっかしいなぁ……なんだか目から水が出てきたや。ハハハハ……
ますますダークサイドへ突っ走っしっているが、今ならばどこかで犬と呼ばれている少年と一発で仲良くなれるだろう。
なにせ、今のところ報酬は『取られるはずの自分の年』であり、他は何も無い。
一度ならず二度までも攻撃を仕掛けたというツケの代償が高く付いた結果なので残念な事に中途解約もできないのである。
魔法学院に盗みに入った結果がこれだよ!!!
まんじゅうのようなナマモノがそう叫んだような気がしたが、たぶんいつもの幻聴だ。
もういっその事『ヘヴン状態!』とでも叫びながら現実から逃げたくなってきたのだが
そんな事をやらかせば間違いなく周りから『少し可哀想な人』という称号を頂いてしまうし、まだそこまで堕ちたくはないのだ。
それに短い間だが、一つだけ確実に分かった事があった。
こいつは全体的に他の人間を、特に年下を自分より下に見る傾向がある。
見下すとかそういうのではなく、ただ単に実力や精神的覚悟が足りてねーと思っている節が見てとれる。
こういう奴と対等な立場になるには一つしかない。
実戦やらで実力を認めさせるか、タイマン張って互角以上の勝負をするとかそういうやつだ。
後、一度敵と判断すれば誰であろうとものスゴク容赦ない。おまけにドSだ。それも自覚が無いという一番性質の悪いやつの。
その割りに、案外甘いというか面倒見が良いところがあるから分からないもんである。
まぁそれが元敵である自分に一片の欠片も向けられていない事に、この先精神的に無事にアルビオンまで戻れるかとメチャ不安ではあるのだが。
「おい、なに縮こまってやがる」
上の方から聞こえてくるやたら高圧的な声がしたが、どうやら無意識のうちに膝を折り曲げ顔を埋めた、いわゆる体育座りのポージングになっていたらしい。
その声にギギギと錆付いた機械のような音が鳴らんばかりにゆっくりと首を上に向け口を開いた。
「……一体誰のおかけでこうなってると思ってるのさ」
「少なくともオレじゃねーな」
やっぱ自覚無しかこいつ……半分死んだ目でプロシュートを見たが、恐らく文句を言ったところで『てめーの自業自得だろボケ』で済まされてしまう。
そう確実!オスマンがセクハラをするぐらい確実!
そんな分かりきった事に労力を使うぐらいならまだ言わない方が遥かにマシだ。少なくとも現状より状況が悪くなる事は無い。 ……きっと。
最高と最悪という言葉があるが、この二つはかなり違う。
フーケ自身、最高にはある程度上限はあるが、最悪という状況に際限は無いという結論に達していた。
というのも、ほんの半年前までは『土くれのフーケ』としてハルケギニア中の貴族から恐れられていた大盗賊だったのである。
それがこいつに捕まった上に二目と見れないような姿にされ、ワルドに半強制的にレコン・キスタへ入れられ
挙句またこいつに捕まった。某連邦の外部組織のエリート中尉も真っ青な転落っぷりだ。
クロムウェルの事があるから一応自主的に協力する事にはなったが、もう少し待遇というか扱いを良くしてもらいたい。元敵とはいえせめて人並みに……。
837 :
ゼロの兄貴:2008/08/25(月) 23:13:37 ID:AKW4oErC
また少し丸まっていると、後ろから首根っこを掴まれブン投げられた。
「へ……?いや、ちょっとここ竜の上……」
やっぱり始末する気か。いやこいつの事だから『オメーら空飛べるんだから問題ねーだろ』ぐらいにしか思ってないのか。
メイジだって急にこんな事されれば対応できないんだぞー。このドグサレがァァァァァァァ!!
と0.5秒の間にそんな走馬灯めいた事を一気に考えたが、予想より遥かに早く、そして柔らかい衝撃を受けて落下が止まった。
「呆けてねーで早く降りろ」
その言葉に辺りを見回したが、どうやらシルフィードはとっくに地面に降りていたらしい。
「……だからって投げることないじゃないか」
「草の上なだけマシだろーが。それとも土くれだけあって堅い地面のが好みか?」
「そりゃどうもありがとよ」
消耗しない…こいつはこういう奴なんだからマチルダお姉さんはこの程度で消耗しない……。
この程度の事で消耗していたら、そのうち何も無いのに定期的に血反吐とか吐く羽目になる。
中の自分にそう言い聞かせながら、少々力なく立ち上がり身体に付いた草を払っていると後ろから呪文が聞こえてきた。
『我を纏いし風よ。我の姿を変えよ』
例によってシルフィードの周りを青いつむじ風がまとわりつくとその姿を人間へと変えた。
「それが先住魔法ってやつか。さすがのわたしも生で見るのは初めてだね」
「この際だから説明するけど、わたし達は先住なんて呼び方はしないのね。精霊の力をちょっと借りてるだけなんだから」
そう説明しながら相変わらずすっぱだか状態でふらふらしているシルフィードを見て一つ気付いた。
「……って事は、あんたのも精霊とかの力を借りてるって事?」
となれば、さし当たって生命を操る水の精霊あたりかと検討を付けたが、もちろん違う。
「どっちかっつーと、オレ自身から力を引っ張り出してるっつった方がいいな。兎に角、別モンだ」
「あんなえげつない能力持った理由が今分かったよ」
理屈は分からないが、こいつの性格なら生物を無差別に老化させるような洒落にならない能力が付いても不思議ないととりあえず納得しておく。
「オメーらも頭にあの矢でもブッ刺せばスタンドが出るかもしれねーな」
まぁ別に頭でなくてもいいが、サバスが掴んで刺してきた印象が強いのだからそう言ったが、聞いた方は何やら誤解を強めたようだ。
「……頭に……矢……?」
ああ、そーか。人間じゃないのかこいつ。そりゃあ、あんな妙な能力持ってるわけだ。
やっぱり正真正銘の悪魔だ。人の皮を被った悪魔っていうし。
「聞こえてんぞ、てめー」
そりゃあ悪魔とかの類じゃなけりゃあ人を老化させるような能力が……聞こえてぇ!?
どーやら、衝撃というか驚きが大きすぎて頭の中だけにおさまらずに声に出ていたらしく、一気に血の気が引いてフーケの顔が思いっきり青くなった。
「……い、一応聞くけど、どの辺りから?」
「人間じゃねぇとかその辺りだ」
ok。完璧に弁解の余地無し。思いっきり最初から聞かれていたようである。
そこで問題だ!
このゴイスーなデンジャーが迫っているマチルダはどうやってこのピンチを切り抜けるか?
答え@−美人怪盗フーケは突如スクウェアクラスに進化する
答えA−そこのタバサかシルフィードが助けてくれる
答えB−老化する、現実は非情である
わたしがマルをつけたいのは答えAだが期待は出来ない…
本にしか興味なさそーなタバサと食べ物の事にしか興味ないようなアホ竜は正直なところ助けになりそうにない……
となれば@を選びたいが何かの弾みでスクウェアになったとしても、こいつの力に敵うとは思えない……
838 :
ゼロの兄貴:2008/08/25(月) 23:15:16 ID:AKW4oErC
で、一方のプロシュートの方は、さすがに人外扱いされるのも何なので『これでも、まだ人間だ』と言おうとしたが
全員そうだったから気にしないでいただけで、普通ならそれだけで死ぬなと思い直し、一応説明はする事にした。
「……あー悪ぃ。矢ってのは、こっちで言うマジックアイテムみたいなもんだ。っておい」
フーケの様子が何やらおかしい。目を明後日の方向に向け同じ事をブツブツと言っている。
「答えB、答えB、答えB……」
答えBと古くなったテープレコーダーのように小さく繰り返す姿を見たが、アルビオンに行ってもいないのに、まだこんな所で壊れてもらっては困る。
めんどくさそーに息を吐くと懐からある物を取り出し、それをフーケの顔の横まで持っていくと街外れの森に大きな音が響いた。
「〜〜〜〜○XX▲▽○ッ!?」
耳を押さえながら理解不能な言葉をわめいているが、鼓膜まで破れていないから大丈夫だろう。 たぶん。
「目ぇ覚めたか」
「……いつつ……雷が横に落ちた気分だ。というかなんでそんなモン持ってるのさ」
手に持ってる『銃』を見てそう言ったが答えは至極簡単だ。
「そりゃあギったからな」
それでフーケも理解した。銃士隊の装備だこれ。銃身にトリステインの紋章入ってるし。
盗られた方は今頃大慌てというやつだろうが、知ったこっちゃあない。例によって盗られた方が間抜けなのである。
「ま……弾も火薬もねーし、第一込め方なんて知らねぇから、今撃ったやつで最後だがよ」
「じゃあ、あんな事で撃つ事ないじゃないか」
一発しか撃てない以上もっともだが、それは撃つ方がただの平民とかである場合だ。この場合根底から使い方が異なる。
「分からねーか?」
「?」
分かっていないようなので、そのまま銃口を額に突きつける。まぁつまりそういう事だ。
「見えねースタンドと、見える銃。脅しに使うならどっちがいいか分かんだろ?」
わたしからすればどっちも変わらない。てか、まだ誰か脅す気かお前。と言いたげだが
スタンドの事を知らないヤツからすれば銃の方に注意がいく。
武器として使う気はあまり無いが、牽制か脅しとして割り切れば十分利用価値はあるとしてアニエスから拝借してきたのだ。もちろん無断で。
後、新式だけあって売れば金になる。
「んで、矢ってのは普通の矢じゃあねーぞ。そいつを刺すとスタンド、オレが持ってるような能力が身に付く」
それを聞いた瞬間久々にフーケの目が光った。
こいつの言う『スタンド』とやらが刺すだけに手に入る、いわば魔法の矢。売るにしろ使うにしろ土くれとしては聞き逃せるものではない。
しばらくアレやらコレやらと考え少々顔がニヤけていたのか、横の方から呆れ半分の声で突っ込みが入ってきた。
「なに考えてるか大体想像付くが……死ぬかスタンド能力が付くかだからな。万が一見つけて使うってんなら遺書ぐらい残しとけよ」
「つまり?」
「矢に選ばれなかったヤツってのは確実に死ぬんだとよ。オレもあん時の事はあまり思い出したくねーな」
パッショーネ恒例の入団試験だが、見えないサバスに掴まれて矢を思いっきり刺されるのである。さすがに回想したいものではないわけだ。
「はぁ……そんなロクでもないモンよく使う気になったって感心するよ」
「知っててやったわけじゃあねー」
ライターの火を消して再点火するとポルポのスタンドが発動するなど、知らなければ今でも再点火しそうなのに
スタンドの事すら知らなかった、まして入団が掛かっていた当時の場合はどうするかなぞ推して知るべしかなというところだ。
大体、あのド畜生が自殺したなどとは今でも信じられない。
名前が示すとおり、自分の手足喰ってでも生き残るようなヤツだと思っていたのだが。
あの面と体でナイーブとかふざけた事ぬかすなら、恐竜の絶滅原因は神経衰弱かPTSDだ。
839 :
ゼロの兄貴:2008/08/25(月) 23:17:45 ID:AKW4oErC
そんな事を考えていると、後ろから急かすようなわめき声がしてくる。
「そんな事どうでもいいから、早くご飯を食べに行くのね!」
いつの間にやら服を着たシルフィードに腕を思いっきり引っ張られた。
一方のタバサはというと、座って本を読んでいる。
正直、見た目の年齢と精神年齢が全く逆である。
だがまぁ確かにあるかどうかすら知れない矢の事なぞどうでもいい事だ。
もちろん、メイジ兼スタンド使いなんぞが量産されては洒落にもならないから無い方がいいのだが。
とにかく、さっさと飯食ってクソくだらねー任務終わらせる方が先だ。よくよく考えたら戦闘の後始末やらで飯食ってない。
片手で回していた銃を懐に仕舞うと、まだ座り込んでいるフーケを片手で引っ張り上げた。
「お前らの方が詳しそうだからな。内容は任せる。………オメーはいつまでも本読んでんじゃあねーよ」
その言葉にきゅいきゅいと頷くシルフィードを見てタバサもやっとこさ本を閉じて立ち上がったが
臨時北花壇チーム、現在四名。
その内訳、常時強気な元ギャング。食べ物に目が無く、この前ご主人に『脳が足りてないとまで言わないけど近い』と言われた伝説の韻竜
苦労人属性と不幸属性が付きはじめてきた現役盗賊、本ばかり読んでいて何考えてるんだかよく分からない正規隊員。
内容だけ見ると暗殺チームにも負けないぐらい個性的な面子揃いだが、プロシュートからすれば冗談じゃねー。という面子である。
暗殺チームの時はリゾットが仕切っていてくれていたからまだ良かったが
こと戦闘以外に関しては他の連中があの具合なので自分で仕切らねばならないのだ。
戦闘になればそれぞれそれなりの実力があるんだから楽でいいんだが、まぁ全部順調に進めば苦労なんぞ起きないだろう。
にしても、あん時のミスタの拳銃捨てんじゃあなかったな。とかマジに思っているときゅいきゅいと声が聞こえてきた。
「ここね!このお店がこの街で一番良い匂いがするのね!」
その声で顔を上げたがシルフィードが一軒の酒場を指差している。
色々考えてるうちに街の中まで入っていたらしい。
シルフィードを先頭にして残りも店の中に入っていったが
「ボロいな」
「ボロいね」
「ボロい」
ものの見事に三人揃えて同じ感想を叩き出した。
実際、木でできた粗末なテーブルと奥にカウンターがあるぐらいでボロいと言われても仕方が無いが言われた方はたまったもんではない。
口を揃えてボロいと酷評してきた三人を見て太った中年の店主が思いっきり眉をひそめた。
「旦那、うちの店が上品な店じゃないって事ぐらいは知ってますがね。冷やかしなら別の店行ってくださいや」
「悪りーな、口が悪いのは生まれつきだからよ。客だ」
口だけじゃなくて性格も悪いだろーが。と後ろの方で一人そう思ったが決して口には出さない。だってそれが世渡りというものだと思うから。
まだ機嫌悪そうな店主だったが、タバサの杖と五芒星を見て一気に態度を変えた。
「貴族のお客様ですかい。これはボロいと言われても仕方ありませんや。お付の方も空いてる席におかけください」
というより、他三人をタバサの付き人か何かと判断したようである。
お付と言われて少々サバイバーな気分になったが、ここで騒ぎを起こしても一文にもなりゃあしないし
確かに貴族でもメイジでもなんでもありゃあしないのだからそう見られても仕方ない。価値観の違いとして処理する事にした。
フーケもメイジだがタバサみたいにデカい杖じゃあないのでお付扱いだが気にしていないらしい。
店主が料理を運んでくると、まずシルフィードがガッつき始めた。
タバサもそれに続いたが、早い。なんでこんなに喰うやつがこんなに小さいのか。
こいつでこの小ささならポルポはもっとデケーぞ。と思わざるを得ない。
「食ってるとこ悪いんだが本題だ。そのタマゴってのはどういう場所にあるんだ?」
料理いう名の要塞から早々に撤退し酒の攻略を開始したプロシュートがそう質問したが期待した答えは返ってこない。
「ほふはくひょうほはまほは、はひゅうはんはふ。ひはふふははんひはふほへ」
「食うか喋るかどっちかにしろよてめー」
「……………」
と、シルフィードが料理を優先させたためである。タバサも似たようなもので次々と料理を始末していっている。
フーケの方も己を失わない程度に酒を飲んでいるため、まぁ折角の休息だという事でもう少し時間を置くことにした。
840 :
ゼロの兄貴:2008/08/25(月) 23:20:22 ID:AKW4oErC
「で、場所は」
「極楽鳥のタマゴは、火竜山脈。いわゆる火山にあるのね」
ワインの瓶を三本空けた頃ようやく料理攻略作戦が一段落付いたので再度質問したが、厄介な場所だという事が理解できた。
「そりゃあ、無理だな」
「おにいさまの言うとおりなのね。おねえさまは竜族の恐ろしさが分かってないの」
「こいつじゃあ、んな場所に行きたくねーわ。ったく……代わり探さねーとな」
「きゅい?代わりって他に誰かいるのね?」
「誰?服の事に決まってんだろーが」
そう言った瞬間、シルフィードが盛大に顔をまだ残っている料理の中へと突っ込んだ。
だが、そのまま何か食っているので大丈夫だろう。
「確か極楽鳥の巣って火竜の巣にも近いんじゃあなかったけか」
そのフーケの問いにタバサが頷くが、その横のシルフィードはいつの間にか空になった皿に顔を埋め泣きそうな声で文句を垂れている。
「あまり行きたくねーがな。火山ならオレの得意戦場だ。射程外から攻撃されない限りどうでもなるだろ」
「きゅい!あの力を使うのね?」
四本目のワインのコルクをスタンドで捻り取り瓶のまま飲みつつそう言うと、シルフィードが少々汚れた顔を上げたが、まだ途中だ。
「ただし、オメーらも巻き添え食って死んでもいいっつーんならな」
火山帯というからには外気温は相当なはずだ。恐らく氷で体を冷やす間もなく即死確定である。
「もう、おにいさまったらシルフィ達も巻き込むなんて冗談が過ぎるのね」
シルフィードは笑って流したが、横のフーケは気が気ではない。
(本気の眼だ………!)
さっきまで体の中に入っていたアルコールはどこへブッ飛んだのやら一気に冷や汗が背中を伝う。
こいつ、場所を火竜山脈に限定すれば弱点が無い。
なにせ歩いているだけで半径200メイルの生物は全て枯れ木のように朽ち果て死に絶える危険物へと成り果てるのである。
放っておけばハルケギニアから火竜が居なくなる可能性の方が高いし、そんな爆弾の横に居るのは御免被りたい。
その対照的な二人を余所に今まで黙っていたタバサが口を開いた。
「その作戦は使えない」
「理由は何だ?」
「目的はあくまでタマゴ。タマゴまで壊したら意味が無い」
どういう事かと少し考えたが、答えを見つけて指を鳴らした。
「オレの能力、ザ・グレイトフル・デッドは無差別に生物を老化させる。動物だろーが、植物だろーが……例え卵だろーが、って事か」
「そう」
タバサは短く答えたが、プロシュートからすれば予想外である。
まぁ、卵なぞ進んで老化させようとした事もないしやろうと思った事もない。巻き込んだとしても気に留めた事すらないからだ。
殻に覆われた卵とて中身は不完全ながら生物である。老化する可能性の方が高い。
「確かにな。ブツを見つけてもそいつが化石になってたんじゃあ洒落にもならねぇ」
少なくとも極楽鳥の巣付近での能力発動は限定されるという事だ。
直で対処するか離れたとこまで敵を引っ張るしかなくなり、予測難易度が一気に跳ね上がった。
たまには能力全開でやらせて欲しいものだが、どうやら始祖ブリミルというのはスタンド使いには優しくないらしい。
もっとも、それを言うならローマの世界三大宗教の内の一つである神様も彼ら暗殺チームには優しくはなかったのだが。
841 :
ゼロの兄貴:2008/08/25(月) 23:23:13 ID:AKW4oErC
「気付いたか?」
「そりゃあね」
突如プロシュートが小声でフーケに話しかける。
何に気付いたかというと、こちらへの視線である。
一瞬、フーケに感付いた賞金稼ぎかなにかと思ったが、視線の質が明らかに違う。
視線の元を辿ると、隅の方で一人座っていた老婆が思いっきりこっちを見ていた。
「……絶対目ぇ合わすんじゃあねーぞ」
「いぇっさー」
軽い返事だがフーケも目を合わせるとロクな事にならない事ぐらい理解できる。
色んな人間を見てきた二人だから分かるが、あれは『自分の力ではどうしようもなくなり他人にすがるしかない』という人間の目である。
目を合わせた瞬間形振り構わず厄介事を持ち込んでくる、ある意味捨て身の人種だ。
正直、こういうヤツが一番怖い。保身を考えずに動く人間は怖い物知らずだから、この場合相手が誰だろーとダメ元で頼み込むに違いない。
早急に撤退するべく勘定を済ませるべく店主を呼ぼうとしたが、何も知らないというか能天気なシルフィードが明るい声で言った。
「そこのお婆さん、さっきからこっち見てどうしたのね?お腹がすいてるのなら一緒に食べるのね。きゅい」
その声に反応したのか、老婆がよろよろとこっちのテーブルに近づいてくると、タバサの足元にひざまづいた。
「違います、違います、わたしは物乞いではありませんのじゃ。騎士様をこれと見込んで、お頼みしたい事がありますのじゃ」
もうスデに直触りを食らったような姿で泣きながら訴える老婆だったが、大人二人からすれば老婆の姿をした厄病神に他ならない。
「クソ……ッ!言わんこっちゃあねー」
「ごめん!……ってわたしのせいじゃあない!」
小声とアイコンタクトでそんな会話をする二人をよそに老婆がなおも泣きながら足元で泣いている。
そうしていると、店の奥から店主が出てきて、老婆の肩を掴んだ。
「商売の邪魔だ!余所でやってくれ!」
ベネ。そのまま摘み出せ。という期待を抱いていたが、そこに割り込むようにしてタバサの長い杖が入ってきた。
「騎士様?」
「かまわない」
タバサがそう言った瞬間、プロシュートもこの事に関しては諦めた。
事実上の移動手段はシルフィードのみであり、移動の決定権はタバサにあるためだ。
物なら最悪『ころしてでも うばいとる』が可能だが、シルフィードは生物であり高度な知能を持っている。
少しだけベイビィ・フェイスの息子の教育に苦労しているメローネの気持ちが分かったかもしれない。
「ったく……厄日だ」
そんな呟きを無視してタバサが老婆を促すと事の顛末を涙声で話し始めた。
「ミノタウロスねぇ」
「牛の化けモンだったけか?大昔だが、オレんとこもいたらしいな」
東地中海にある小さな島。クレタ島のミノタウロスの迷宮と言えば有名どころだ。
とにかく話を纏めると、十年ぐらい前にもミノタウロスが住み着いたが、その時は今と同じように旅の騎士に頼んで退治して貰った。
今回は領主に訴えたが、この界隈で子供の誘拐事件が流行っているらしく
エズレ村の事に構っている暇が無いようで十年前と同じように頼みまわっている……という事だ。
頼むほうはいいだろうが、頼まれた方からすれば厄介事以外の何物でもない。
第一、最良の解決策がある。
「んなもん、逃げりゃあいいだろーが。話聞く限り何もねーとこだろ?化けモン以前に村捨てた方が身のためってもんだ」
超現実的な意見にタバサと老婆を除いた全員が同意するかのように首を縦に振っている。
その様子に絶望したのか、遂に老婆が泣き始めた。
「あの罰当たりな怪物は、最初の生贄にわたしの孫娘のジジを選んだのでございます……」
搾り出すようにそう言うとさらに大きな声で泣き始めた。
切れ切れにミノタウロスがわざわざ指名してきたからには村を捨てても狙われると言っているようで、村を捨てる気は無いようだ。
にしても、よくもまぁ直食らったような体でこれだけ泣けるモンだと感心したが、そう感心してばかりもいられない。
第一、こっちにも用がある以上は構ってられない。
何考えてるか知らないが、そのぐらいタバサも理解しているはずだと思ったが、どうも今日は予想が裏目裏目に出る日らしい。
842 :
ゼロの兄貴:2008/08/25(月) 23:26:08 ID:AKW4oErC
唐突にタバサが立ち上がると「どこ?」と呟くと老婆を促し歩き出したからだ。
もちろん、シルフィードはきゅいきゅいとわめいて止めようとしているが、一度決断したタバサは断念する気配は無い。
「お、おねえさま!ダメなのね!風使いには危険な相手なのね!ああ、もう!二人とも説得して欲しいのね」
「なっちまったモンは仕方ねー」
「きゅい!?」
「わたしに決定権は無いから無理だね」
「きゅいきゅい!?」
完全に諦めたのか、金を机の上に置くとプロシュートとフーケも同時に席を立ち上がっている。
「どうせ修行とでも考えてるんだろうが……その、何だ。ミノ……モンタだったか?」
「タウロス」
一瞬『奥さん!』と声高らかに叫ぶミノタウロスの姿がその場に現れたが気のせいだ。
「ああ、ミノタウロスってのは火竜より強いのか?」
「それは……火竜のブレスはミノタウロスも一瞬で灰にするぐらいの威力があるのね」
「ってぇ事はだ。牛程度に手間取るようじゃあ火竜山脈なんぞの攻略は無理ってこった」
「まぁそうだね。諦めなよ」
まだ不安なのか色々言いたそうだったが、プロシュートが一つ提案を出してきた。
「少なくとも、オメーらが危なくなったらどうにかしてやるよ。この際だ、条件としてそうなったら先にアルビオンに飛んでもらうぜ」
無差別老化という能力の持ち主と、土のエキスパートであり三十メイル級のゴーレムを造りだせるフーケ。
この二人がいれば、少なくとも命はなんとかなる。そう思いシルフィードもタバサを追いエズレ村に向かい始めた。
臨時北花壇ご一行――本人の知らない所でタバサだけで倒せるか倒せないかのミノタウロス討伐賭けゲーム発生。
ok投下したッ!支援が無いからさるさんが怖ぇーッ!
ミノ編に移行した理由…?そんなもん兄貴とリュリュをどう絡ませたもんかと思いつかないからさ……
俺…これ投下したら、単発ネタでガリアに美と知略のユダ様召喚書くんだ……
843 :
ゼロの兄貴:2008/08/25(月) 23:29:38 ID:AKW4oErC
後、兄貴に似合う武器は一位が拳銃で二位がポン刀だと思う。
異論は大いに認める。
兄貴乙でした!
兄貴とリュリュの絡み……難しそうですが楽しみにしてます
あと、ポン刀がポンジュースに見えて愛媛噴きました
GJ!
支援間に合わず、すんませんしたーっ!
投下乙!・・・と言いたいんだがよぉ〜、ちょいとネタに走りすぎてないかい?
GJ!
流石兄貴!しびれて憧れちまう存在だ!
タバサだけで倒せるのか、それとも兄貴特製干物タウロスがみれるのか……
wktkが止まらんね
兄貴GJ
おマチさん…イ`
おはよう兄貴、俺はこのノリが好きだぜ。
書きたい様に書きたいものを書いてしまうのが何よりの幸せだと思うんだぜ。
さてここで俺も次の作品を投下したいが、残り容量が足りない。
というワケでちょっくらスレ立てしてくる。
GJ!!
容赦ないな、兄貴ww
不幸体質な苦労人と化したおマチさんのあしたはどっちだ!?
そして、ケンタウロスの運命も気になる。
程よく干からびて、ビーフジャーキーにでもされてしまうんだろうかw
早起きしたらジョルポルと兄貴が投下されていた!
三文どころではない得が出来て感動した
兄貴乙!
マチルダ姐さんが不幸すぎるwww
いいぞもっとやれ
, ィ _ ィ ィ /l
/ // j ノ / ヽ イ r- '
_/ Lヽ-´‐' ヽ ,ゝ ,.イ〈 ヽ l ア か
/´ィ j-i / /l イ rーi / ノ ヽ/ |
´ ! j / ! 〈/jノ/j >' ィヽ r-'`ニ´´ ホ か
ノ.ノ// ´l/ 、/ /イl!ll}、 / / !
l / l/ -´、` レ ミ、| リレ ` }/ィ j が っ
l′l! 〈 ヽヽjゞ-トー'くノ 'ハ )
ヽ ミ/ 、 ヾ!j/イ_ } ! た
トノ:!_、__ノ!ト、__ノ_トj, j-lヽ
l l! /ハ レlハ、_ノl lヽ_ ヘYl/lヽ! ! な
l |!rト!ハ ヽト、彡ヽj_'、ミ /ハ/-j、l lヽ
ト l!|!トl_!Yヽ /:ハl f三ーノ l l / ヽ!ノリ_ ーi┬ー
!l l!llヽ!jヘrヽ、! lヽ、_r_ ィj // j / l l !
ヽヽ j´ヽ::|i \、ト、彡_/'ノ /:K l __
―― -- .._l ー'-ヽ ,>=7 ' l ノ´ / _ -‐
三=- 、 ヽ、_ ,ゝ-‐ ´`ヽヽ `>ヘ ノー= ミ
 ̄ ̄ ̄ ` ー '´ ヽヽ/r ' ´
/ ! /
ノノ 、 !
, ィ´ `ヽ、
,ノ^ヽ、 _... -――――- ..__
r'゙ニ=-`ヽ>rィ´/_〃_∠__/ ,. ‐''" _´"ニ=- .._
,.、_ ̄⌒ Y´ ,. ‐''"´ ̄´~"'''''‐ニ_ー<´ _ - ‐`丶、
辷-三{}ニ/ _ -‐ ニ..,,_‐- `,>`'<_ニ,,二,,_―_\
` ̄r┴_'゙ _/ / /´ ´"'' -ニ__\
、__ _厂r‐''" ,.ニ、= ...__ _= / `ヽ.ヽ
ー「7''" ̄/ ヽ ̄´´""''''ー、f _,/ ', j}
_ニ|/'-、/ ー-、 ヽーー---/´ {ー-===._-、 ,. V
7堰@ヽ (乙入 ヽ_,..r''′ ヽ._ \ヽ、 / |
__(/、 一ヘ く 、⊥エェ_,_ヽ. `く´ ノ |
ニイ、)ー-、/〉 {/ /´ >,`‐゚‐' Y,`-イ ′ ノ|
{ ミ:ー_人_,/〕ヽ / '゙ _^ニ=、′!、 / j
∨厂 ,/ } | ´"/´´¨ !ヽ,∠ニ=ァ'
ノ,/ /′ l | i{ 「ージヌー
/ :! U ! ヾ ',゙`'/`
{ U | ,. ''" V
,l ! | /´ >
/ ト、 { `ーニ ̄_ ィ´
、 / l \ ー=_:::ニニ,二,⌒ン
\ /! \ 、``ー-ニィ/
\ 〈 ヽ. \ `ー- 、.ノ GJ
\ } `丶、 \ /
\,,ノ `>、ヽ、 _/
,r''__\_ /ヽ ` ̄ ̄
//(9}/::ヽ /::::::ヽ.._... --┐
/,.イ,ニY〃::::::::〉ーく:::::::::/ {
/ ヒ:シ//ヽ_/::::::::::::::Y´ `、
まだ埋まっていないだと!
_ _j匚_`T
,' / _}__,ノヾこレ-、
,' ./ ,r‐レ'´- .-‐1l `l 俺がスレを埋めた…
、wwィ ,' / | |_ | ヘ. ',
〈 `V、 ,' ./ <´ ! __ | ,ハ ',
, -‐ ーく ヘ ,' / . | ,ノミ.---ソ T´ ノ
,ノ´厂丶. \L ,二.´ ノ´ / 、  ̄┌ '^>!'´
_,∠∠ lヽ! } { { | / \ └.r'゙リ
rュ」^レ',´ .// . `ヽノ‐‐{ ` 7'゙ `"´ レ1 / ', い、
{ヨ ,r'´ 八」. { ノ`""ヽ__ / .| / 、 { . 丶
`7゙ ,ノ''! `l L.ィ´_ n┘ , ''"´ ̄ ~"'' 、 \ `l \
┌{_ j. 〉 _`ヽ [H」L!┘ ., '´, ''"´! 「~"'' 、丶,ハ \ 、}
! ) く ヽ〔`´ .`K__ , '´, '´ ー一'll | イ .\\.\. ヘ
`〔 ,ノ、 `ヾ´ `ヽ.__ /´, <. , |l |"´! ~"'' 、>'7´`' {
チ‐1ノ __ ー‐─ 、rべ //´ >`""" 了゙Y´ .!l ! |. / _ ,' ゙ヽ.
/. ''"´,r.' ´ `ァ'´./ ~"'' //_,/´ ! . | レ‐h |. r ''"´__`ヾ '' ,. ':,
, ''"´ ,r'´ / / `V | !__,!___!j `ア´rヘ. .', `' ':,
,ノ´ ,r'´ ,r'── ャ- .._ ',. '' 二"゙丁¨´ | | /´ ,'. ', ', `l
. / , ィ'´ 'ー,z'ニ', ', ~"'' .._ \──┴──.┐ | ,' ,'. ', ', ト、
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\{ ヽ、 、 ミ ミl ミ ヽ
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`(. |l/`>。、V //_,.ィ(・:)`, ヽ ┐ ,.- 、 !
`ー、 | ┴‐',) ` ̄´ u !__/ ハ. | | ┼‐ ヽヽ
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|. rr‐-、 _ン / | ノ ー‐
| {. ` ̄ >、 u :|ー1 ヽ | ―┐
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/. ヽ ヽ `二二´ _..-'' ,, -''''ヽ. |
| :: v ノ ノ├‐- 、\ _,.-'" ,,. -''" ,,, -'''"\ |
r''´ :: |‐"ー!/ ⌒` 〉 `r―――'" ,. -''" ,,. -''" _,,. -'''"|
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ヽ....:::::::::::::.. / y'′ >'" -=ニ ̄ 、、
〉 ::::::::::::::::::..... ノ /`ヽ,/ / /
| 三_二 / ト⊥-((`⌒)、_i | |
〉―_,. -‐='\ '‐<'´\/´、ヲ _/、 |
|,.ノ_, '´,.-ニ三-_\ヽ 川 〉レ'>/ ノ
〈´//´| `'t-t_ゥ=、i |:: :::,.-‐'''ノヘ|
. r´`ヽ / `"""`j/ | |くゞ'フ/i/ 関係ない
. |〈:ヽ, Y ::::: ,. ┴:〉: |/ 埋めろ
. \ヾ( l ヾ::::ノ |、
j .>,、l _,-ニ-ニ、, |))
! >ニ<:| 、;;;;;;;;;;;;;,. /| ___,. -、
| | !、 .| | ( ヽ-ゝ _i,.>-t--、
ヽ| | ヽ\ _,..:::::::. / .| `''''フく _,. -ゝ┴-r-、
..|.| | :::::ヽ<::::::::::::::::>゛ |_ _,.-''"´ / ̄,./´ ゝ_'ヲ
..| | | _;;;;;;;_ ̄ ̄ |  ̄ ̄ / _,. く / ゝ_/ ̄|
:.ヽ‐'''!-‐''"´::::::::::::::::: ̄ ̄`~''‐-、_ / にニ'/,.、-t‐┴―'''''ヽ
\_:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\ / / .(_ヽ-'__,.⊥--t-⊥,,_
\  ̄\―-- 、 _::::::::::::::::::::__::/ / /  ̄ ) ノ__'-ノ
\ \::::::::::::::`''‐--‐''´::::::::::/ / / / ̄ rt‐ラ' ̄ ̄ヽ ヽ
ヽ ヽ\ \:::::::::::::::::::::::::::::::::::::/ / ゝニ--‐、‐ |
l ヽヽ \:::::::::::::::::::::::::::::::/ /‐<_ ヽ |ヽ
! 、 // // i
l ∧ ',\ </ </ .l
l ,': :ヽハ: :\ ,.ヘ ,.ォ ;
. ! ; : : :> \: :丶、 /: : :V >'"/:i / このスレは埋まって
l. レ,.ィ´¨ヽ. 〉 : : `: : : : : : ヽ>''": :/イ: / / 『 立斤 i i 、 ─ァ .l
─-、 ./ ;.、: :丿/: : :/: : : : ; : : : : /: :/イ: : / ./ 木ノ ! !__,ノ レ ヽ /ヽ レ' 』が始まったッ!
/ ー,、: :V |: < V /};;}: /: : : /、ヽ: :/ : :l |: : : / /
: : /: :',: :i r': : :\ Y;;/ : : //: :',ハi: : : : i レ'" /`) ,.へ
l: :l: :./〉ヽヽ/ノヘ;;;;;ト、‐' <: : : l: :', ';>'",,.-∠ / / /
ヽ: \ヽ: :ヽ\l;;;;lハ;;`;lミ`丶〉、_i_ /,.ィチ_リ丁: // K /
\:`ヽi: : :i l;;;l/;;;;;i /: : i: : : :r'^ ー--=': ノ// 〉 //Tヽ
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: l ,.-‐:V;ノ;;ト;;/::>┬= ¨ ̄T::::/:::::/:::::::::::::::::::::::::::::::::
_,,,ィィ、、
从''// `ー-.、 vvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvv、
iv「i―〃 ヽ、 介 ヽ ≫ ≪
|/::::/`  ̄ノノ ヽ ≫ う わ っ は は ≪
/r‐-、|~`;;......::::::::. |つ 〈 ≫ ≪
〈,`三ン|‐;;;:::::: :::::: | c、 `i ≫ は は はー―――――ッ!!≪
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∧r===ヲl厂==='" | /) |
--― フ |  ̄::::| :::....... |/) )
.ハ | ::::Y:::::::::::: 」 |/|l⌒`ト‐-
| ヽ. l rr''''''lフ::::: /;;; |
! l、 ヽ. `;;;;;;:::::::: /;; ノ
` ヽ、 ::: /;;; (⌒ヽ、
_ 三三‐''' (⌒ヽ ll `ー⌒l
/ ̄  ̄ヽ (^'i、 ll:;;;;;;;: |
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| .| ヽ'''' ヽ |/;;;;;;;;;;;;;;;;;
|フノ ヽへ) |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
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_,rー'`ヾノ i,ーヽ
/ ゝ ,-、`、,__〃 ,ii
ri/ ,ノ@((__))@
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.| ' ! G・Eレクイエム、スレが終わらないのが終わり
∞| `ー  ̄ , '
,,rへ、_ ` 〔´__
/l :ヽ、 ゙@ @、゙ー、
: : |: : : ヽ/ ヽ: \
.: :.>': : :\ ∠Θ ヽ
┌ n /7
ヘ 「ト L|ム//)
く ゝ) _ へ人 ヘ∠
て彡 | ハ `┤フ⌒ヘ⊃
.| ヘ .| ノ |-イ_ - 不 ーーイ
|\ ⌒\ .Y / √ /イ \二 彡
ヘ i⌒ <〜 Y// / ヘ / ノ
ーへ //⌒>イ.( ヘ 入 /
\《 / / |ヘ ノ </ーイ
ヽヘノ へ ヘ√ | |
| |ーー| |へ ム┘
//ーー// √
√(⌒)□へ ww ザ・500kb!
i (^"^)\ ゝ <イヘ| スレは止まる!
|/ ヽイ⌒ -イヘ ヽヲiヘ
. / /ヽヒ/ / ヽ / フ⌒( ヘ
./ ん )ヘ ( <⌒ へ ト ノ
./ )/ \ヽ人 ⌒) )イムi )
ん / √ イイヘムイ
| ) ( n /彳ヲ/ミヲ | ヘ
イ(⌒) ヒ > / ( \ (彡ヘ
.| イ Eイ イ | ヘ ) mm7
) ( < イ ヽヘ ヘ ゝ
へイ |ア~ヘ く ヘ人
入ノ \_/ヘ ヽ|_\へ
// | ノ) へ ヘii|
∠_/ んゝ \
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