第一部+第二部
ジョナサン 卿 ブラフォード シュトロハイム シーザー スケコマシーザー
究極生命体カーズ様 ワムウ様 スト様 石仮面+ブルりん+吸血馬
第三部
承太郎 法皇花京院 一巡花京院+平賀才人 メロン花京院
ジョセフ アブドゥル ポルナレフ イギー
DIO様 ンドゥール ペットショップ ヴァニラ・アイス ホル・ホース
ダービー兄 ミドラー デーボ エンヤ婆 アヌビス神 ボインゴ
第四部
東方仗助 仗助+トニオさん 広瀬康一 アンリエッタの康一 虹村億泰 ミキタカ+etc 間田
シンデレラ カトレアのトニオさん 岸辺露伴 静(アクトン・ベイビー)+露伴
デッドマン吉良 猫草 キラー・クイーン 猫→猫草
第五部
ブチャラティ ポルナレフ+ココ・ジャンボ(亀ナレフ) アバ茶 ナラ・アバ・ブチャ組
ルイズトリッシュ マルコトリッシュ ナンテコッタ・フーゴ アバ+才人 ジョルノ ミスタ
ディアボロとドッピオ プロシュートの兄貴 リゾット ローリングストーン 偉大兄貴
ギアッチョ メローネ 俺TUEEEディアボロ ペッシ ホルマジオ スクアーロ
暗殺チーム全員 紫煙+緑日 ブラック・サバス セッコ 亀ナレフ+ジョルノ イルーゾォ
サーレー
第六部
引力徐倫 星を見た徐倫 F・F アナスイ ウェザー エルメェス エンポリオ ヘビー・ウェザー
プッチ神父 帽子 ホワイトスネイク 白蛇ホワイトスネイク リキエル
SBR
ジャイロ+才人 ジョニィ マイク・O
リンゴォ マウンテン・ティム Dio
バオー+その他
橋沢育郎 バオー犬 味見コンビ(露伴+ブチャ) 決闘ギーシュ タバサの奇妙なダンジョン ジョナサン+才
人 銃は杖よりも強し(ホル・ホース) 蓮見琢馬(小説・『The Book』より)
・行数は最大で60行。 一行につき全角で128文字まで。
・一度に書き込めるのは4096Byts、全角だと2048文字分。
・専用ブラウザなら文字数、行数を管理してくれるので目安がつけやすいかも。
・先頭行が改行だけで22行を超えると、投下した文章がエラー無しにザ・ハンドされます。 空白だけでも
入れて下さい。
、--‐冖'⌒ ̄ ̄`ー-、
/⌒`、-、|;;;;_,,-t'''" ̄∞ ̄"''ァ-;;_;
__,{ ;;,, / \ / \
ゝ ''〃;;/ `ー--‐'" \
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>';;,, / l'
_く彡川f゙ノ/ ノ ノ__,-‐-、 ,-‐--八ミ
ヽ.:.:.:.:.:.;=、/ /‐-ニ''_ ヽ /-二ヾ`~;.;
く .:.:.:.:.:!ハ.| | \ \゙、 // /|ィ"
):.:.:.:.:|.Y }:| | `ー'' | | `ー'" ノノ
) :.: ト、リ| |ヾ:、 | | ゙ イ:}
>>1乙
{ .:.: l {: :| | ` / ゙、 /ノ
ヽ ! `'゙! ヽ-,,,_,,ノ `、 /´
,/´{ ミ l |
,r{ \ ミ \ `' '≡≡' " ノ
__ノ ヽ \ ヽ\ 彡 ,イ_
\ \ ヽ 丶. ノ!|ヽ`ヽ、
\ \ヽ `¨¨¨¨´/ |l ト、 `'ー-、__
\\ First kiss か ら 始 ま る ふ た り の 恋 の //
\\ H I S T R Y Y Y Y Y Y Y Y Y Y Y Y Y Y Y ! //
\\ こ の 運 命 に 魔 法 か け た //
\\ 君 が 突 然 あ ら わ れ た ァ ァ ―――z___ ッ! //
,ィ =个=、 _ _ _ ,。='゚=。、
〃  ̄ ヘ 〈_/´ ̄ `ヽ 〃 ` ヽ. 〃 ^ヽ 〃 `´`ヽ. 〃了⌒ヽ
くリ 7"バlキ〉>∩ { {_jイ」/j」!〉∩ l lf小从} l∩. J{ ハ从{_,∩ {lヽ从从ノl∩. ノ {_八ノノリ、∩
トlミ| ゚ー゚ノlミ| 彡. ヽl| ゚ ヮ゚ノj| 彡 ノハ{*゚ヮ゚ノハ彡 ノルノー゚ノjし彡 ヾヘ(゚)-゚イリ彡 (( リ ゚ヮ゚ノノ))彡
>>1乙!
>>1乙ゥ!
. /ミ/ノ水i⊂彡 ⊂j{不}l⊂彡 ((/} )犬⊂彡. /く{ {丈}⊂彡 /_ノ水⊂彡 /ノOV⊂彡
/ く/_jl ハ. く7 {_}ハ> ./"く/_jl〉`'l l く/_jlム! | }J/__jl〉」. (7}ヽ/∧
.ん'、じ'フ .ノ ,,,,‘ーrtァー’ ,,,,,,んーし'ノ-,ノ レ-ヘじフ〜l ノんi_j_jハ_〉 /__ ノ_j
,,-''´  ̄ヽ ミ 乂 彡 |!i!ii| ∩. ,、 、 (⌒⌒⌒⌒) ,−−、 ___
ミハ^^ヽヽ(∩ =0o◎o0∩ (;゚Д゚)彡 ,ヘハ@ヘ∩. ( △ △∩ _|_Jo_ミ∩ (ミミミ三 ミ∩
ル ゚∀゚)ζ彡 さ `Д´)彡 . ( ⊂彡. ゞ ゚∀゚)彡 (/ ・∀・彡 ( ´∀`)彡 (`∀´ )彡
( ⊂彡゛ ( ⊂彡 | | ( ノ::⊂彡 ( ⊂彡. ( ⊂彡. ( ⊂彡.
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し ⌒J. し ⌒J し ⌒J. し ⌒J. し ⌒J. し ⌒J
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,'i.:i.:/,.へ i ハ>--イ´ /ヽ V
. i.:i.://,.-、.:\/ lヽ 〃 //`ヾ 何で 『
>>1乙』に
i.:i.i ' ,.=-ミ、ヽ ,ノ,.、 r:,'ィ ,. ‐-ミ 姿 現さねーんだよ
';i.:フ, ヽ、_..(ソヽ ノi ll i l /,,..(タ/ オメーらッ!
_ Yi ,.-‐─ // ', `‐- - ..,,_
/ ヽ! 、 _,
//゙ヽ. ! ヽ f/
. i ハ .ll. 、`‐' _ 、
', リノ i ! / /`ニ´入゙、 /
V ヽゝl i. ,/:;.‐、;.-、:::'、 ,'
ヽ l i. 〈::/ ヽノ!. /
`¨゙li ! \ // . ,'
l.l l 、 ` =ニ ィ / ,' /
l !、 ! ヽ-==‐-く /
l \ ,ノ ‐-、 //
/i l \ / /
/ .l l ヽ、..__,,..イ ./
1乙
乙
、 ‐;、
_,..rー' ```ヾヽ`、ノ i,, 、
i、|` ⌒ヾ 、`、/ ノi ‐'ソ
ト、/ =`ヽ ///__ ヽ  ̄ヽ
'ァl! / 、、 i 〃, ‐、 ヽ |‐、ヾ `)
{i/,ノ | r=---‐ァ |__{. { 、、 il>′
{/ ,ノノ !|..:::. .:')ノ li; } l/ lヽ
r''v‐'- .,,`_::__,. -‐''iノ 丶`ヽ
|{i ト 、rr=-,:;>‐<r=;ァィ′`''i ヽ, l
l>,i l"  ̄ | ヽ' ̄l |、 ヽ |! |
>>1乙
O'ri!l | 'ー=‐' .'/ `O ,!ノ /
|\ヽ 'ー=三=-'/ノ! く 」'′
l``ヽ、\ 'T'' //! _ノノ
|;;|``'〒,ヽ _,/'i'´ |、
,. ィ|;;`;;,、_|;;;;;;;;;|||;;;;;| _,.|└;_
,.. ィ"i l ヽ'、 ;;;;;;;:;;;;|||;;;;;;'/;//;;;ヽ、
─-、‐''"´;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ,` ``'''-、;○/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;`''ー-=='''ヽ、
15 :
偉大なる使い魔:2008/05/10(土) 20:46:14 ID:JXN5zfC8
深夜から早朝にかけて静まり返っている塔の中。
その為、小さな足音も階段から聞こえてくる。
カツーン カツーン カツーン
足音が近づくにつれ杖を構えたキュルケの呼吸が激しくなる。
「深呼吸したら。動悸が激しくなると体温が上がるわよ、その分老化も
早まるから気をつけて」
「何なのよ、その地獄のコンビネーションは!もっと明るい話題は無いの?」
「・・・プロシュートの偏在は厄介だけど、プロシュート自身は普通の人間よ。
だからプロシュート本人に魔法を当てることができれば勝機があるわ。
そして、魔法と違ってプロシュートを倒せば全て元に戻るわ!」
「まだ、何とかなるって訳ね」
「ええ、諦めないで。来るわよ!」
全員身構えながら出入り口に注目する。
プロシュートが姿を現した。当然その側にグレイトフル・デッドの姿があった。
「君たち下がりたまえ」
ギーシュが前に出て杖を振るとワルキューレが一体姿を現した。
「行けッ、ワルキューレ」
ワルキューレがプロシュートの足元を槍で突く。
特訓をしたと言ってた通り、その動きは今までと全く違っていた。
無駄が無くなったというか、洗練されたというか、執拗に足元を突きまくる。
プロシュートは眉一つ動かさずに槍を躱していく。
グレイトフル・デッドがワルキューレの槍を掴まえ手前に引き寄せる。
「グレイトフル・デッド」
そのまま反対の手でワルキューレの胴体に穴を開けた。
「今よ!偏在の両手が塞がったわ!」
見えないギーシュに代わって、わたしが声をあげる。
「じゃあ『レビテーション』を解除するわね」
キュルケが構えを解くと天井に張り付かせたワルキューレがプロシュートを
襲う。ギーシュはプロシュートの目前でワルキューレを出す前に、あらかじめ
一体出しておきキュルケがレビテーションで天井に張り付かせていた。
プロシュートの足元を狙ったのも注意を逸らす為の行動。
考えてるじゃないギーシュ。
「グレイトフル・デッド」
グレイトフル・デッドは目の前のワルキューレから拳を引き抜き、そのまま拳を
突き上げた。
バガァッ
二体目のワルキューレも胴体から真っ二つにされる。
「すごい・・・」
滅多に感情を表さないタバサが感嘆の声を出す。
「まだだ、まだ終わらない」
ギーシュが杖を振るう。これから、どうしようってのよギーシュ?
「ワルキューレを油に錬金する!」
真っ二つになったワルキューレが油に変っていきプロシュートに降り注ぐ。
「キュルケ、今だッ!」
ギーシュが声を張りあげるがキュルケは動かない。
「ちょ、ちょっと待って。油がドーム状に浮いている?」
キュルケにはそう見えるのか。わたしにはプロシュートから覆い被さる様に
立っているグレイトフル・デッドが油まみれになっている光景が見れた。
「なんだか解らないけどやるわッ。ファイアーボー・・・」
「グレイトフル・デッド!」
グレイトフル・デッドが腕を勢い良く振ると油がもの凄いスピードでこちらに
飛散りキュルケのファイアーボールに引火した。
わたしたちとプロシュートの間に火の海が出来上がり、火の勢いから
生まれた熱風がわたしたちを襲う。
体がダルイ。体が重い。・・・『氷』が効かなくなってる!
16 :
偉大なる使い魔:2008/05/10(土) 20:47:17 ID:JXN5zfC8
なんて事なの作戦通り進んでいると思ったら・・・
気がつけば絶体絶命の状況に追い込まれていた!
・・・つ、強い!
このままだと老化で死んでしまう、何とかしないと!
それに、プロシュートを倒さないと!
その前に、この火を消さないと!
どうしよう・・・どうすればいいの?・・・ううう・・・
ギーシュ、キュルケ、タバサ、モンモランシーの顔を見る・・・
思いついた!たった一つの魔法で全て解決できる逆転の一手を!
その前にギーシュが邪魔ね。
「ギーシュ。何してるの後ろに下がって、氷が効かなくなってきてるわ!」
ギーシュは足をガクガク震わしながら一歩も動かなかった。
「ビビッてる場合じゃないわ、早く!」
「違うんだよルイズ、膝が痛くて動けないのだよ」
上半身だけ振り向いたギーシュが顔を歪ませ訴える。
ヤバイ。見た目からかなり老化が進行している・・・
ドドドドドドドドドドドドドドドド
「ひいいいいい!」「ギーシュッ!」
キュルケとモンモランシーが悲鳴をあげる。あーもーウルサイ。
「なら、レビテーションよ。それで退くのよ!」
ギーシュは杖を振り上げたまま動きを止めてしまった。
「何をしてるのよ!」
「すまない・・・どうやら呪文を忘れてしまったようだ」
「ギーシュッ!?」
き・・・記憶までも・・・しわくちゃになるとか、お婆ちゃんになるとか・・・
そんな甘いものじゃなかった・・・
老化の能力がこれ程まで恐ろしいものだったなんて。
「レビテーション」
キュルケの呪文によりギーシュが後ろに下げられる。
「キュルケ、ナイス!」
これで逆転の一手、ウィンディ・アイシクルが使える。
老化の回復、プロシュートへの攻撃、火の鎮火。
その全てをたった一つの魔法で!
「タバサッ!ウィンディ・アイシクルをお願い」
後ろにいるタバサに声を掛ける。しかし、タバサは首を横に振る。
「何でよ、呪文を忘れたの?」
「違う。この火の海で、ここにある水蒸気が枯渇してしまっている。水が無いと
氷が作れない・・・私のウィンディ・アイシクルは湿度が必要・・・」
「何ですって!?」
せっかく良い手を思いついたというのに水が無いと使えないなんて。
水・・・水・・・モンモランシー!
「モンモランシー、水を出せる?」
初級の呪文も確か水蒸気が必要だったと思うけどモンモランシーなら・・・
「ごめんなさいルイズ・・・さっき治癒を使いすぎて精神力がもう無いのよ・・・」
「おう、しっと」
二つ名を『香水』じゃなく『無駄使い』にしたら・・・香水!
「モンモランシー!今、香水持ってる?」
「?ええ、持ってるわよ」
「貸して!早く!」
「何をするの?」
わたしは質問に答えず黙って香水を受け取った。
香水にしては大きめのビン・・・これだけあれば・・・
「どうタバサ、これだけあればいける?」
香水の量を確認したタバサが頷く。
「ベネ!(良し)じゃあ、お願い」
17 :
偉大なる使い魔:2008/05/10(土) 20:49:45 ID:JXN5zfC8
タバサに渡そうとした香水をモンモランシーが遮った。
「ちょっとルイズ。今ここで全部使うの?これ作るのに幾らしたと思ってんのよ」
「んな事言ってる場合じゃないでしょ、命が掛かっているのよ!」
「でも・・・」
モンモランシーの葛藤を余所に、わたしの手からキュルケが香水を取り上げた。
「トリステインの貴族は本当にお金と縁が無いのね。
これ言い値でいただくわ。文句ある?」
「文句無いわ」
ムスッとした顔でモンモランシーが答える。
キュルケがタバサに香水を手渡すと、タバサは香水を辺りにぶちまけた。
あまりの臭いに鼻を押える。
「何コレ、失敗作?」
「失礼な事言わないで。全部ぶちまけたら臭いに決まってるじゃないの!」
わたし達が文句を言い合ってる間にタバサの詠唱が終わる。
「ウィンディ・アイシクル」
いくつもの氷がプロシュートを襲う。
「グレイトフル・デッド」
ドカ ドカ ドカ ドカ
狙いの外れた氷も火を消したり、温度を下げたりと役に立っていた。
一本の矢がプロシュートの腹部を突き抜けるとグレイトフル・デッドの動きが
一瞬止まった。
その隙に氷の矢が次々とプロシュートに突き刺さり後ろにぶっ飛ばした。
「やったわね、タバサ!」
キュルケが喜びの声をあげるが、タバサは構えを解かない。
「傷が塞がっていく」
タバサの言うとおり氷の矢が貫いたはずのプロシュートの傷が治っていく。
「どうなってるのよルイズ!彼自身は普通の人と変らないんじゃ無かったの?」
キュルケが、わたしに向かって非難の声を浴びせる。
「わたしにも分からない。ワルドと戦った時は、こんな事なかったもの・・・」
「偽りの命よッ!それしか考えられない!」
両手で顔を押えながらモンモランシーが叫んだ。
「つ、強すぎる!・・・どうしようもない」
ある程度回復したギーシュが呻いた。
どうしようもない・・・その言葉が全員の心を蝕んでいく。
「諦めないで!」
「じゃあ、一体これから如何するのよ!」
わたしの激励にモンモランシーがヒステリックに叫ぶ。
わたしには答えることが出来なかった・・・
「ああ、やっと思い出した」
手に持ったデルフリンガーが呑気な声をあげた。
「何よ、こんな時に」
「相棒の姿を見てたら思い出した。ブリミルもあれにぁ苦労してたんだぜ」
「何が言いたいの?」
「いやはやブリミルは大した奴だぜ。しっかりと『対策』を立ててある」
「『対策』ってなによ?」
「俺が知ってる訳じゃねえ。始祖の祈祷書に記されてる」
「真っ白で何も書かれて無かったわよ」
「話は最後まで聞け、読むためには幾つかの条件があるんだよ。
祈祷書と姫さんから貰った指輪をもってるか?」
「わたしの部屋にあるわ」
「じゃあ取りに行け。話しはそれからだ」
「デルフリンガー、信じていいのね?」
「ああ、俺はこれでも伝説なんだぜ」
デルフリンガーは、そう言残すと一言も喋らなくなった。
ここで闇雲に魔法で攻撃しても勝ち目が無い・・・
始祖ブリミルが記した『対策』・・・
わたしの部屋に戻るのなら階段を上るしかルートが無い。
だから行くしかない・・・目の前のプロシュートを何とかして・・・
起き上がったプロシュートが、ゆっくりとこちらに向かって来る・・・
支援したっ!
19 :
偉大なる使い魔:2008/05/10(土) 20:53:30 ID:JXN5zfC8
投下終了
いつもいつも、投下が終わってからの支援
本当に申し訳ない
あと、1乙
偉大さん、まずは投下宣言をしてから投下していただけると嬉しいんだぜ…
そうすりゃあ支援だって出来るもんだ…
そしてGJ!
恐怖のザ・グレイトフル・デッドッ!呪文をド忘れさせるまで老化させるたぁ恐ろしいッ!!
21 :
偉大なる使い魔:2008/05/10(土) 21:40:34 ID:NSakaidd
>>20 最近、人が減ってきたんで
投下が被らないから、いきなり投下してました
そういや、だいぶ静かになってきてるからな
そうそう、偉大なる使い魔GJ!!
偉大のルイズは兄貴の精神を受け継いでるところがイイよなあ!
>>20 きっとあれだ、偉大さんは兄貴だから「投下する」なんて言わないんだ。
「投下した!」ならきっと言うんだよ。
そういう風に言われたら
今度は投下予告されると納得いかなくなってしまいそうだwww
ゼロと使い魔の書
第四話
朝焼けが琢馬の頬をぬらした。
静かな洗い場に着くと、洗濯を始めた。洗剤などの道具は何一つとしてないが、水洗いである程度汚れは落ちる。
しばらくの間、水の流れる音だけが響く。春といってもまだ水が冷たい。
下着が洗い終わったところで、不思議な鳴き声が聞こえてきた。
顔を上げると、校舎のほうで青緑色の竜が部屋を覗き込むような姿勢で上空を羽ばたいていた。
革表紙の本で調べるまでもない。あれも誰かの使い魔なのだろう。
そんなつもりではなかったが、つい習慣で唇の動きを読んでしまう。
「お・ね・え・さ・ま・だ・い・じょ・う・ぶ・な・の・ね……?」
もし、人語を話しているのだとすれば、そう言っているはずだった。言ってる内容には興味がなかったが、人の言葉を解するのだとすればもしかすると
The Bookの記述が読めるかもしれない。機会を狙って試してみよう。
「あら、あなたは……」
振り返ると、昨日のメイド姿の少女が少し驚いたような顔で立っていた。干してある洗濯物を取りに来たのだろう。
「ああ、すまない。使わせてもらってる」
「いえいえ、構いませんよ。どうぞご自由にお使いください」
どことなく東洋人を思わせる顔立ちの少女は、軽く会釈すると干してある洗濯物を取り込み始めた。
「あなた、もしかしてミス・ヴァリエールの使い魔になったっていう……」
少女は慣れた手つきで仕事をこなしながら、話しかけてきた。
「よく知ってるな」
「ええ、なんでも、召還の魔法で平民を呼んでしまったって。噂になってますわ。それにしても……洗濯、お上手ですね」
お、支援
予想していなかった言葉に、少し手を止める。
「別に大した事じゃない。こんなものは一人暮らしすれば嫌でも慣れる。この環境にも早く慣れたいものさ」
洗濯の手際をほめられるとは思っていなかった。これが当たり前だったからだ。
やはり、自分は孤独が板につく。友人のプレゼントを自分の復讐のために投げつけるような人間なのだ。
「あの、差し出がましいかもしれませんが、もし分からないことがあれば私に聞いてください。私、シエスタと申します」
提案の意図を測りかねた。社交辞令で申し出ているのではないのは顔を見れば分かった。
「ありがたいが、なぜ俺にそこまでしてくれる?俺は使用人どころかただの使い魔なんだぜ?」
「どちらも同じ平民ですから、困ったときはお互い様ですよ」
シエスタは微笑んだ。野に咲く花のような屈託のない笑顔である。
「普段は厨房にいますので。それではお先に失礼しますね」
「ああ」
面倒だったので残り半分以下になった洗濯物に視線を固定しながら答えた。それでも向こうは気を害することなく
足早に遠ざかっていった。
少女の気配が完全に消え、仕事を片付けた後、先ほどの会話を思い出す。
「こっちは名乗っていなかった、か」
なぜそんなことが気になるのか分からなかったが、奇妙な罪悪感が沸いてきた。革表紙の本を取り出し、たった今抱いた感情を読み返してみる。
自分のことのはずなのに、なぜか説明のつかない、不思議で不可解な気分であった。
後で厨房に訪れる事にして、とりあえず部屋に戻り自分の主人を起こすことにした。
「ご主人、朝だ」
薄いネグリジェに包まれたピンクの髪の少女は、まるで赤ん坊のように無垢で安心しきった寝顔を浮かべていた。自分の睡眠を邪魔するものは何もないという感じの無防備すぎる姿態である。
「ご主人、朝だ」
耳元に口を近づけ声量も上げて再び言ったが、返事はなく呼吸音だけが返された。
部屋を見回すと立派な花瓶に一輪さしてあるのが目に入った。見た事のない派手な花だった。
それを手に取ると、ルイズの鼻の下に持っていった。
「んぅ……?」
花の芳香に気づいたルイズは覚醒した。視線が交差し、次いで手元の花に移る。
そしてどう反応していいのか分からないといった困惑した表情を浮かべると、無理に怒ったような顔をつくった。
「ふ……ふん!平民のあんたにしては気の利いた起こし方じゃない!」
「そうか、それはよかった」
少し顔を赤らめるルイズは、昨日の高慢な姿よりもずっと幼く見えた。
花瓶に戻しにいくと、ルイズはのたりのたりとネグリジェを脱いでいた。
「服、着させなさい。下着はそこのクローゼットの一番下、制服はそっちだから」
The Bookを呼び出す。
自分がまだ施設にいた頃、よく年下の子供の着替えを手伝っていた。
その時の経験を読み返し、もっとも効率のいい着せ方を考える。
「……あんた、随分手際がいいけど、弟とか妹とかいるの?」
一瞬手が止まった。脳裏に虹彩の薄い少女の顔が浮かぶ。
「……いないな。ただ昔は孤児院で生活していたから、こういうことは慣れている」
「そうなの」
それ以上ルイズは特に何もいわず、眠そうに目をこすってされるがままになっていた。
着替えが終わり、ルイズと部屋を出たところで丁度隣室の扉も開いた。
出てきたのはきつい緋色の髪をした女性であった。背も高くモデル体系で健康そうな褐色の肌だった。
その女性はルイズを見るとニヤリと笑って話しかけてきた。
「おはようルイズ」
ルイズは顔をしかめ、露骨に嫌な感情を示した。おそらくわざとだろう。
「おはようキュルケ」
「それがあなたの使い魔?ふーん本当に平民なんだ」
その表情には嘲りが含まれていた。
わざわざ名乗る必要もない。そう感じて軽く頭を下げるだけにしておいた。
「そ、そういうあんたの使い魔はなんなのよ!」
その発言は墓穴だと、ひそかに思った。案の定キュルケと呼ばれた女性はそれを狙っていたらしい。
「使い魔っていうのはこういうのを言うんじゃない?来なさい、フレイム。あたしも昨日、召喚したのよ。誰かさんと違って、一発で呪文成功よ」
部屋の中から出てきたのは虎ほどもある巨大なトカゲだった。この距離でも体が熱気に包まれる。
「ほら見て!この鮮やかで大きい炎の尻尾! きっと火竜山脈のサラマンダーよ!好事家に見せたら値段つかないわよ?」
ルイズは悔しそうな表情を浮かべた。もう少し弱みを突けば泣き出してしまいそうな顔である。
主人のいさかいには興味ないのか、あらぬ方を眺めるサラマンダーを見ながら、余りよく考えずに心に思った事を口に出した。
「使い魔の実力は、値段ではかるのか?」
気温が上昇しているのにも関わらず、空気が凍ったような雰囲気に包まれた。どうやら地雷を踏んだらしい。
純粋な疑問を呟いただけだったのだが、二人とも鋭い指摘と受け取ってしまったみたいだ。
「そうよ!どうかしてるわ。いくら使い魔が立派でも主人たるメイジがそれじゃあねー。
何よりも大切なのは信頼じゃなくて?」
反撃するルイズ。はからずも役に立ったらしい。
「……さ、先に失礼するわ!」
下らない墓穴の掘りあいは、キュルケと呼ばれた女性が赤い髪をなびかせ立ち去ることによって幕を閉じた。
「少しは役に立つじゃない」
ルイズは自分を見上げながら言った。
「純粋に疑問に思っただけだ。もし本当なんだったら、平民の俺は最低ランクだろうからな」
ルイズは何か言いたそうにしていたが、結局中途半端に口を開け閉めしただけだった。
「と、とにかくついてきなさい」
歩き出すルイズの後につき従う。距離間は先ほどのキュルケとサラマンダーを参考にさせてもらった。
以上、第四話でした。
投下乙であります!
GJ!
これからシエスタとどう関わっていくんだろうか?
BOOK乙
乙ゥ!
必殺ゥ乙ランチャー!
BOOKGJ!!
この静かなキャラクターが実にイイな
ところで今、ジョジョキャラで10万の軍勢に勝てる奴とかいる?
柱の男達
ジャスティス
クリーム
DIO様
シアーハートアタック
バイツアダスト
ノトーリアス
オアシス
グリーンディ
チャリオッツレクイエム
GER
ウェザーリポート&ヘビーウェザー
ボヘミアンラブソディー
アンダーワールド
C-MOON
MIH
自分的にこの連中なら勝てる奴は結構いると思う
大抵は先にスタンドパワーが尽きるんじゃないかな
DIOなら吸血で補給できるのかもしれないけど
十万の兵を皆殺しにするのか、
十万の兵を突破して大将を討ち取るのか、
で変わってくると思う。
>>40 どうでも良いが、洗脳された味方ごと10万人を殺すようなのは
創作とは言え主人公としてどうかなーと思うゾ
挙がってるのは味方とかそんな事を気にしなさそうなヤツがほとんどだがなwwww
誰か山岸由花子で書こうとする奴はおらんのか
なあ?
>>39
吉良って地面触ったら地球爆破できるんじゃね?
>>41 なんのかんので精神力ですから
彼奴等が数に屈する姿想像できるか?
>>40 目的を達成するにはここを通らないわけにはいかない!という場所で
スーパーフライ発動とか思いついたが、メイジはフライやレビテーション使えるから意味ないかw
グリーンデイは原作でも、街の住人全て無差別に、だったからなぁ。
しかも広範囲に被害が広まれば、効果範囲がどんどん広がっていくタイプだろ。
精神力尽きるのか、あれ?
>>47 でもダイバーダウンという強力なスタンドを持っていながらアナスイは刑務所に投獄されたわけだし
たった一人で数万を殲滅出来る能力はジョジョの世界にはあまりいないのでは?
>>50 幾らなんでも社会に反逆するのは無理だろ
ギャングになる伝手でもあったならそれを実行したかもしれないが
一般人には見えもしないスタンドを使って
そこらの警官如きには負けるはずないだろ
密集してたらうばしゃぁぁのカプセル一つでも充分可能だし
アヌビスなんて人の体乗っ取り続ければ無限に戦えるし(スタンド使いがいないなら)
>>50 力を持ってたらいつでもその力を使わなきゃいけないなんてことがあるわけないだろ
アナスイは刑務所の中でも外でも別に気にしていなかっただけだと思う。
出来て当然と思えば出来るって言ってたしやろうと思えば仗助が隠れた家ごと爆破とかできたのかな
平穏を望む吉良がそこまで目立つことをしてまで殺す気だったかどうか
吉良が戦ったのは正体ばれる→始末しなくては
思い返せばこのパターンのみだな
それに爆破する能力も承太郎達にばれてるから
迂闊に爆破すると承太郎達に追跡する手がかりを与えかねないからな
やれたとしてもそこまではしないというのが結論じゃあないかな?
ラバーソールが黄色天秤で傭兵共をブチュブチュ取り込んで辺り一面黄色くなるとかはむりでつか?
あとケニーGなら勝てないまでも幻覚で大損害与えられるんじゃね
強制トラウマ発動のシビルウォーなら殺さなくてもいけるかも
>>57 ありゃどうにも射程距離があの小屋の中位な気がしないでもない
人間が現在最強なのは固体ではなく郡体だから。
どんなに強くても所詮個人じゃ限界があるでしょ。
10万に勝つだけならできそうだけど。
>>42が言うように、10万人皆殺しにするって物凄く大変よ?
勝てないと思ったら皆逃げるもしくは撤退する指示が出る。
散開する奴らまで追っかけて殺すのははっきり言って不可能だ。
MIHだってエンポリオには逃げられたし。
あれって何人まで有効なんだろうな?
範囲攻撃か対象を指定するかで大分戦術に違いが出てくる
処で洗脳された味方ごとって表現があったけど
そんな場面原作であったっけ?
>>57 アナスイもウェザーも地獄の門番であるミューミューがいたから脱獄できなかったんだと思う。
現にエンポリオが時を止めれる承太郎で無い限りゲートを通ることは出来ないって言ってたし。
いくらアナスイ達でもミューミューの能力を知らずに真正面から戦ったら痴呆にされて
敗北する可能性もある。
殴り合いが強くてもどうにもならないことがある世界だ
>>59 正確に言うならタイマンでどれだけ強くても限界はある、だな。
広域殲滅型なら追いかけるまでもない。
>>60 水の指輪で洗脳くらって混乱状態になったから撤退したんじゃん。
>>59 徐倫がいなくてもエンポリオは逃げられたらしいね(神父談)
てゆーか、徐倫がいなかった場合のエンポリオ単体でどうやってMIHの
スピードから逃げられたんだろう
徐倫もどきがなんとかしてくれるんじゃね
>>64 バイツァダスト後みたいに、偶然やらなにやらであれよあれよという間に逃げられるんじゃないかな
67 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/14(水) 13:52:33 ID:ulDIr5wX
究極生命体カーズ様なら十万でも百万でも大丈夫だろうて
触れただけで吸収する外道性能だからな
適当に走り回ってれば全滅するんじゃね?
まあなんたって相手は神だからなあw
魔法がどう影響するか次第だけど、ただの熱や衝撃くらいなら問題無いだろうし
あえて対処法としたら、泥のゴーレムを抱きつかせて
完全に密封してから鋼鉄に錬金くらいか?
……ダメだ、鋼鉄でもなんか酸とかで溶かして出てきそうだw
風石いっぱいつけて空へ飛ばして宇宙空間へ
節子を忘れてないか?
デス13とクラッシュも意外といけるんでないかい?
あと短編でイルーゾォが最強すぎる奴があったな
フーケもレコンキスタも鏡の世界に飲み込んだのが
まぁ、ヘイズが強かったのもあるが
マンインザミラーは普通に鬼だな。
イルーゾォの長編好きだったんだけど
止まってるんだよなあ…
ジャンピンジャックならつば吐きまくって時間たてば全滅させれるかな?
10万人に向けて唾吐きまくるとこ想像して吹いた
口が渇いて再起不能
一人に唾吐けば周囲数十人は殺せるわけだからかなり強いんじゃない?
ハングドマンで敵見方往復してたら勝てそうな
逆に7万に絶対勝てないスタンドっているか?
ゼロ魔の世界内でなら、レッドホットチリペッパーは7万相手じゃなくてもヤバイ。
なんてったって電力が無い。相手が電撃系の魔法を使わない限りは、落雷とかの自然現象かコッパゲが開発するのを待つしかない。
ハーヴェストとか? 敵のほうが多いとどうにもなんない気が
ラバーズはぜってー無理w
あとリトルフィートも厳しい
ノートリアスが一晩で食い散らかしてくれました
最後はアルビオンから流れ出る水→雲の中で永遠に暴れ続けて
『アルビオンの胃袋』として恐れられるんですね、わかります
そこでチープ・トリックですよ
つ『サバイバー』
万を超える人数でのファイトクラブ……最弱がもっとも(ry
手に余りすぎる。
>>83 ルイズがサイトにはめた電撃を発生させるマジックアイテムがあるから活躍できるぞ。
チリペッパーは猛獣調教用の電撃出す首輪だかベルトだかで問題解決と結論は出てたはず
ただルイズかひっきりなしにキーワード唱えてなきゃいけないんでルイズの体力次第だな
てか音石自身がキーワードを唱えればいいんじゃあない?
その間音石に電気が供給される訳だから自家発電状態になるぜ
ただし電力消費量はハンパないがな!
マジックアイテムをメイジ以外が使えるかがグレーかと
個人的には、使えるようならもっと頻繁に出てるだろうし無しとは思うけど。
使えるんでない? クロムウェルが指輪使ってるし、
妖精亭のビスチェは着るだけで効果が出るらしいし、
食堂のアルヴィーは勝手に踊るし。
えーと…ここはSSスレですよね?
>>96 まぁ別のクロスSSスレなんて500レス以上考察・雑談ばっかりしてるんだし、この程度笑って済ませるだろ
単純に高いから平民はマジックアイテム使ってないと予想
>>85 確かに普通に使ってたな、使い減りする指輪はともかく
ビスチェや人形達は何で動いてるんだろ?
……魔法の動力源を推測するだけ野暮かw
合言葉自体は平民でも言えて、もし風石みたいに何かを消費するとしても
再充電可能なら色々と遊べそうだなー
ミョズの能力がマジックアイテムの使用だし平民は本来マジックアイテム使えないんじゃないかな。
そもそもスタンドはスタンド使いにしか見えないんだしアルビオン軍がスタンド使いを敵だと認識できるかも怪しいぞ。
自動操縦型や遠隔操作型でも戦場に放り込んであとは街でお茶でものんでりゃ片がつくかとw
そういやポルポもライター再点火で自動抹殺できるなw
問題は10万の内の何%かはスタンドに目覚めるってことだが
ビスチェに関しては飾っている間に魔力をチャージしているとするのが無難なとこじゃね?
媚薬みたいな効果は、ぽんぽん使えるようだと国が滅びかねん
10万のうち1%だとしても、1000人がスタンドに目覚める計算か
使えるアイテムとそうでないのがあるでFAってとこですかね。
スキルニルとか嘘つきの鏡なんかは前者、ガーゴイルとか秘薬みたいのは後者か?
>>103 その1000人がまたスタンド使いと引かれあって…。
1000人いれば中には緑日や能登アリスBIGみたいな奴がいるから
総数はもっと減るはず
でもどうせ寄せ集めのごろつき10万人だろ?
スタンド使いになれるほど苛烈な精神持ってる奴が何人いるやら
つ「五部のスタンド使いは半分近くがチンピラ」
アンドバリの指輪で寄せ集められてはいるだろうけど、全員がゴロツキってことはないだろ
あのレベルの社会でそんなにいたらレコンキスタが何もしなくても国が崩壊する
まあ実際チンピラクラスのスタンド使いも結構いるしなぁ
そのうえ矢の傷が魔法で治癒可能だったり、アンドバリの指輪が有効だったりしたらスタンド使いの数が跳ね上がる事に…
久しぶりに45分から投下させていただこうと思うんですが、構いませんねッ!?
というわけで45分から短いが投下いたします。
>>103 千人の中にグリーン・デイ等の不味い奴がいたらそのまま全滅してしまいそうだ…w
ポルジョル外伝11 コロネ、その堕落の始まりに
ゆっくりと亀が歩いていく。
いつも誰かに抱えられ移動する亀だったが、今夜は森の中におかれ誰も彼を持とうとはしなかった。
緩慢な動きで数歩進んだ亀に、重なった枝葉の隙間から二つの月灯りが降り注ぐ。
甲羅に埋め込まれた鍵が、一時光を反射して輝いた。
偶然それを見た梟の心臓に氷が突き刺さる。
使い魔の断末魔を感じて、会場のテーブルに並んだ料理に舌鼓を打っていたマリコルヌがワインの入ったグラスを取り落とした。
とまっていた枝から落下していく梟の首の付け根にペットショップの爪が食い込む。
雑草が伸び放題の湿った地面を鮮血で染め上げながら、ペットショップは遅い晩餐を始めた。
その傍ら、月明かりから出て行こうとする亀の中は沈黙に包まれていた。
降り注ぐ月光が照明が点けられた部屋を更に明るくし、ジョルノを睨みつけるマチルダを照らしていた。
「ま、待ってくれマチルダお姉さ「カメナレフッ! アンタに姉さん呼ばわりされる筋合いはないよ!!」…お、おう」
口を挟もうとしたポルナレフは一回り近く年下のマチルダにちょっぴりビビったが、顔色を窺いながらもう一度口を開く。
マチルダが怒るのもわかるが、こちらの事情も説明しておくべきだと思うからだ。
テファ自身が言うべきなのだろうが、もうポルナレフも無関係ではなかった。
「マチルダさん、ジョルノの奴はテファと距離を置くつもりなんだ。それに反抗してテファがこうしてアンタを助けに…」
何も言わないマチルダに、ポルナレフの言葉は尻すぼみになる。
だが一応耳には入れたらしいマチルダは、鼻を鳴らした。
「ジョルノ、私が怒ってるのがなんでかわかるかい?」
「穏やかに暮らしていたテファを連れ出して取り返しの付かない事をさせた。テファを大事にしてきたアンタはそれが許せないと思っている」
亀の中に置かれたソファに腰掛ながらジョルノは答えた。
マチルダ達にも座るよう手振りで促すが、マチルダは落ち着き払った態度が気に入らずジョルノの胸倉を掴みあげた。
「姉さん、乱暴は止めもがっ…!」
「テファ…っ。だから、アンタはちょっと黙ってな」
止めようとするテファの口を杖を一振り、土で塞いだマチルダはジョルノと額をぶつけた。
「ハズレだよ。そりゃテファを連れ出したんだ。当然怒ってるさ。でもね、私が怒ってるのはそんなことじゃない!今更テファを遠くに置こうとしたことさ!」
「言葉を返すようですが」
「黙りな」
有無を言わせぬ口調でマチルダは言う。
荒々しい口調が、テファのことになるなりなりを顰め、ひどく悲しい色を見せる。
「テファがこんなことを言うようになったのはアンタのせいさ。この子はね、親の仇を討つのだって拒否してたんだ。
そのテファが、銃を持って私を助けに来た。アンタなんかの組織に入るのにね…!」
胸倉を掴むマチルダの手を解きながら、ジョルノはテファを一瞥する。
内乱に巻き込まれる危険があったとはいえ、ジョルノが連れ出してしまった混血の少女は自分を援護してくれる姉とジョルノを見ていた。
思わぬ援護を受けて希望に満ちた目、頬を薄く赤らめる彼女を見据えるジョルノの体をマチルダは掴みなおして言い聞かせるように言う。
「アンタがこの子に村にいちゃできないような経験をさせたんだ。さっさと別れりゃまだ良かったってのに…貧乏人が花壇の下に金が埋まってるって知って、そこに花を植えるかい?」
髪をかき上げて妙な例えを言うマチルダは、自分が貴族でなくなってからのことを思い出していた。
テファがここに来るまでに出合ったものとは全く違うだろうが、良くも悪くもマチルダも変わった。
痛んだ指先、手入れを出来ずに割れたこともある爪や新たな暮らしにあわせて変化した服装の趣味…挙げていけばきりが無い。
それ程ではないだろうが、テファだって変わってしまったことをマチルダは腹を立てながらも少しずつ受け入れようとしていた。
「責任を持ちな、それが筋ってもんじゃないかい? それとも、ギャングにはそんな甲斐性は無いかい?」
安い挑発に、ため息をつくジョルノが返事をするのを緊張した表情でテファは待った。
どうにかマジシャンズ・レッドで拘束から抜け出したポルナレフも心配そうにジョルノを見ていた。
視線を集めながらジョルノが考えていたのはジョルノ自身の過去だった。
自分もギャングの背中を追い、関わらせないようにした彼の態度を、矜持を踏みにじってギャングになった…
ブチャラティもナランチャを止める事に失敗したという。
暫し時間を置いて、黙考していたジョルノはぐったりと体から力を抜いて頷いた。
結局は、やり方を間違えたということだ。
テファの情に甘えすぎた。
頷いた事が信じられない様子のテファを眺めながら、ジョルノは力の抜けた顔を引き締めた。
「いいでしょう。僕の仕事を幾つか手伝ってもらいましょう」
「幾つか? 言っておくけど、私は危険な仕事をさせるのまでは許可して無いよ!」
「特別扱いはしません。ですが、今のテファには表の仕事しかできないでしょう」
今度こそマチルダの手を振り解き、服を直すジョルノの言い草にテファはちょっぴり不満だった。
だが、その仕事の内容は想像がつかなかったし、何より共にいることを認めたかどうかが、気になっていた。
「じゃあ、これからも一緒に旅をしていいの?」
「旅をするかどうかはわかりませんが…貴方に覚悟があるのなら構いません、貴方にも行動を決める自由がある」
「あ、ありがとう…私、頑張るわ。まだ無理だっていう仕事だってきっとできるようになるわ…!」
表情を輝かせて物騒な事を言うテファにジョルノ達は揃って首を横に振った。
やれやれと苦笑しながらジョルノは弱点を抱える事になったのか、それともより強くなるきっかけを得たのか。
夢を自分の手で貶めたのか、夢により広がりや重みが加わったのかわからないままテファ達に背を向ける。
「これ以上はまた後で話しましょう。先に会場に戻っておいてください。僕は用事を済ませてから戻ります」
「用事? こんな時間にか?」
「はい。ポルナレフさん、テファとマチルダさんを頼みましたよ」
詳しく尋ねられる前にテファ達の事を頼んで、ジョルノは亀の外へ出て行く。
首を動かし周囲を見渡せば、幸い人影などは見えなかったがペットショップが微かに見覚えのあるフクロウの肉を啄ばんでいるのが見えた。
肉を飲み込みながら、得意げにジョルノに戦果を見せつけてくるペットショップから血生臭い風が吹いた。
亀の中から聞こえる、「所でポルナレフ…アンタ、亀じゃなかったんだね?」とドスの効いたマチルダの声を無視する。
もしかしたら学院の生徒の使い魔かもしれない。
そういう考えも浮かんだが…ジョルノはペットショップにもうすぐ来る者を襲わないようにと、無駄な殺しはするなと強い口調で言いつける。
ペットショップは、それに違和感を感じたが一先ず様子見と頷いてみせる。
エジプトにいた頃の主人も昼は屋敷の奥に閉じこもっていたからだ。
最後に、だが一撃で仕留めた腕などを褒めてから、ジョルノは用意しておいたポルナレフの亀とは別の亀に入っていく。
その短い間、ペ通りに動いているわけではない。
だがしかし、そットショップの目がジョルノを通して誰かを見ているのを感じる…狂信的な、黒い輝き。
肉を貪るペットショップから漂う際限の無い暴力の臭い。
全てがジョルノの思い通りに言っているわけではないということだった。
この、出会ってからのほんの少しの時間のうちにさえ、ひしひしと感じる邪悪さ、それを従わせ使っている己を。
ポルナレフやテファに見せていない姿を考え、自らの邪悪さをジョルノは実感する。
怯みはない。
ただその実感をどう処理するか今はまだ決めかねたまま、音を立てずに亀の中へと入ったジョルノを一人の女が待っていた。
ポルナレフの亀と全く同じ照明に照らされた女は純真そうなテファとは逆に、妖艶さを漂わせる美貌の持ち主だった。
ラルカスがこの場にいたなら気付いただろうが、彼女は先日ジョルノが共に食事をした組織の人間だった。
「ボス…! なんだいこんな」
髪をかきあげながらジョルノに近寄った女が黙り込む。
ジョルノは笑みを浮かべていなかった。
養豚場の豚を見る酷薄な目で、女を見ていた。
知らず下がる女に向けて冷たい声を出した。
「貴方、僕に言うことがありますよね?」
「…何の話だい? 夜の相手でもしろっての?」
冗談半分に女が軽くしなを作ってジョルノに擦り寄る。
ジョルノの返事は、スタンドによる攻撃だった。
女が反応する暇は全く無く、瞬きする間に砕けた自分の手を見て、一瞬遅れてやってきた痛みに叫び声が上がる。
砕けた手を押さえて膝を突く女に歩みよりながら、ジョルノは表情一つ変えずにポケットから包みを取り出す。
パッショーネが売り出している麻薬の包み。
それが女の手から流れ大きくなる血溜まりに落とされ、スタンドの攻撃を受けなすすべも無く絨毯の上に蹲っていた女の表情に驚きが走る。
「僕の麻薬は、この世界で僕が最初に作った規格統一品です。ブランドの一つと言ってもいい」
言いながら、ジョルノはほぼ同じ包みを取り出し、中身の粉を見る。
女の前に落とした包みの中身との合致は9割といった所だ。
最初ジョルノが気付いた時は9割五分だった…それは許しがたいことだ。
誤魔化す自信があるのか、開き直ったのか涙を浮かべた顔に強気な笑みを浮かべ、女が顔を上げた。
「だ、だから…何」
女の無事な手がゴールド・エクスペリエンスの力で砕かれ、ミンチになる。
血が新たに噴出し、叫びだす女の頭が殴られたように横に弾かれ黙らせられる。
「貴方、僕に言う事がありますよね?」
歩み寄っていたジョルノは、叫ぶだけで女は答えない女の隣を通り過ぎソファに腰掛けながら、また逆の手を砕く。
既に、ゴールドエクスペリエンスの能力で生み出された手をつけられ、再生しようとしていた手はまた潰れる。
「何度も同じ事を言わせないでくれ。無駄なことは嫌いなんだ。貴方のお友達とかのことも含めて、色々話してください」
言う間にも、ゴールド・エクスペリエンスの能力が生み出した手が潰れた手に接着されようとしている。
血液さえ補充したが痛みは残る。それを高度な水魔法と勘違いした女は、ジョルノが見たことも無いほど強力な水のメイジだと勘違いすると共に、女が言うまでやる気だと察した。
ポルナレフがこの場にいれば、残虐な行為に耐え切れず止めていただろう。
だがジョルノのストッパーになるような者はこの場にはいなかった。
本当はテファにこの光景を見せ、退かせようとも考えていたが…心の中で嘆息し、マチルダ達のせいにしてジョルノは女を見下ろす。
離反を決めた者から既に殆どの情報は聞いてある。
子供にも麻薬を売ろうとしていた女を見て、その者は離反を決めたらしい…それから数分で女を自白させ、学院に戻った。
先に戻ったポルナレフ達が通った道を通り学院の敷地内へと戻るその足は、敷地の端にある小屋へと向かう。
本塔と火の塔に挟まれた掘っ立て小屋からは妙な鼻に付く異臭が漂っていた。
ジョルノはそこへと足を踏み入れ、壁一面の本棚をはじめ雑然と秘薬をかき混ぜるつぼや薬品の瓶、試験管。
書物や天体儀などにザッと目をやり、これまた散らかった作業机に置かれたものへと目を止めた。
窓の外で、太った影がジョルノが来た森の方へとレビテーションで飛んでいくのが見えたが、無視して置かれた物を理解することに努める。
車輪に繋がったクランクを頂上につけた長い円筒状の金属の筒。
そこには金属パイプが繋がっている。
それを見て、ジョルノは目を見開きながら迷っていた事を一つ決めた。
パイプはふいごのようなものも繋がっており…その物体に注目するその隙に、ジョルノの背後に誰かが立った。
「そこにいるのは誰だね?」
「勝手にお邪魔して申し訳ありません。ミスタ・コルベール」
「いやいや、むしろよく入ってきたね。大抵の人はこの匂いを嗅ぐと逃げていってしまうんだが。ネアポリス伯爵…だったかな。」
コルベールは勝手に部屋に入っていたジョルノを怒るどころか、少し嬉しげに笑顔を浮かべた。
おどけた調子で会場からくすねてきたというワインの瓶を見せながら、さりげなく構えていた杖を隠すのをジョルノは見逃さなかった。
「貴方が興味深い研究を行っていると聞きました。よろしければお時間を頂きたい」
「おお! それは勿論構わないが…今夜はせっかくの舞踏会だ。また後日、明日でも明後日でも」
頭同様に輝くような笑顔を浮かべ、コルベールは窓から見える会場の方を眺めて言った。
「いや明後日は授業があるから…明後日なら夕方からならいつでもかまわんが」
「わかりました。明日また伺わせていただきます」
「そ、そうかね!」
余り研究を理解してくれる相手がいないのか、待っているからねと何度も言うコルベールに送り出され、今度こそジョルノは会場へと戻っていく。
ほろ酔い気分で授業用の発明品を作るコルベールが辞表を出すのは、それから暫くしての事になる…
だが今夜はそんな先の事を気にする者はおらず、牛がうっかりフェイスチェンジがばれそうになったり、
ポルナレフが亀の中で妹を取られた自棄酒に酔ったマチルダに過去を問い詰められたり…
ジョルノは何事も無かったかのようにテファやイザベラ達と一曲踊り、一夜を楽しんだ。
以上です。
泥沼になってry
GJ!!
ジョルノこえぇ
GJ!!
ジョルノがダークでブランドーになって来てる…
さすがDIO様、スタンドのDISCだけでも影響力が強いな
投下乙そしてGJでした
ジョルノ怖いよジョルノ
クヴァーシルよ、安らかに眠れ……
ああ……、ジョルノのDIO分が段々濃くなっていく……
GJ!
…アレ?酷いシーンのハズなのにジョルノが凄く爽やかに見えるぞ?
これがカリスマって奴か?
GJ!
ジョルノKOEEEEEEE!!!!!
世界DISCからドンドン暗黒面を突き進んでる……
しかし女幹部は人望無いなw
ジョルノから支給された資金を部下に回さず独り占めしてたんだろうなぁ
GJ!!
マルコメ涙目www
いや、これは新たな使い魔召喚フラグなのか?
DIOの面影を感じさせるジョルノ
それでも節々に信念を感じさせる辺り流石は黄金の血統
123 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/16(金) 06:25:17 ID:VMhspHvP
ジョルノかっけぇwww
GJ!
ジョルノの冷静さとDIOの面影とジョースターの真っ直ぐさが合わさるとこういう結果になるのか…
お、恐ろしい!ケツの穴に氷柱を突っ込まれた気分じゃッ!
そしてこ…コッパgゲフンゲフンコルベールが辞表だって!?
一体何が起こるんだッ!!
このジョルノなら、コルベールのメイジ社会に与える危険性を察知するだろ
ただ、コッパゲールの取り込みに失敗した時……
脱毛(GEで毟る) → 発毛(GEで再生) → 脱毛 → 発毛 → 脱毛 → (中略) →脱糞
の無限コンボですね? わかります。
「ミスタ・コルベール、仲間になるかどうか答えて下さい。
質問はすでに……『拷問』に変わっているんですよ』
待て、最後いろいろとおかしい到達点にたどり着いてるぞww
というか、最初の発毛の時点で、コルベールは一生付いて行きそうだと思うのは俺だけか?w
「髪を愛するように君(の能力)を愛している」
ところで今更だがゼロ魔本編の挿絵の人のブログ見て吹いた
DIO様かっけえwww
挿絵描いてる人おもしれーなー
あの絵柄でジョリーンとかトリッシュとか描いて欲しいもんだ
徐倫やトリッシュのコスプレになりそうな予感
50分から久しぶりに投下です。
支援
136 :
ゼロいぬっ!:2008/05/18(日) 11:49:42 ID:qzQC7LFv
“我々は何も失っていない”
アルビオン王国の竜騎士の一人がそう言った。
もはや帰るべき故郷もなく、王家の血筋が途絶えた今、
希望は閉ざされ未来に広がるのは果てるとも知れぬ闇ばかり。
タルブの森に集った彼等の顔には絶望の色が浮かんでいた。
ならば最期に一矢報いてやろうとニューカッスルを生き延びた者達は立ち上がった。
だが、騎士から出た言葉は否定だった。
故郷は遠く、二つの月の傍らに見上げるだけの存在。
しかし手が届かぬ訳ではない。
いつの日かアルビオンの大地を踏み締められる。
ウェールズは倒れ、アルビオンが誇る竜騎士達も戦場に散った。
だが、彼等の魂は滅びず今もこの胸にある。
アルビオン王国は今もここにある。
生き延びた者達の中に有り続けている。
“我々は何も失っていない”
まるで噛み締めるように騎士は言った。
その言葉の意味を理解し、彼等は頭に上っていた血を静めた。
ここで犬死するのは彼等の犠牲を無駄にする事だ。
そして、彼等はアストン伯の元に身を寄せる事を決めた。
トリステインに伸びる魔の手を予測し、迎え撃つ準備をした。
アルビオン各地に散る王党派の人間をここタルブへと集結させた。
その命懸けの任務を『マリー・ガラント号の』船長は快く了承した。
まるで、それが自分の償いだと言わんばかりに。
“『マリー・ガラント』号と王国旗の元に集え”
それが落ち延びた彼等、アルビオン王国の生き残りの合言葉だった。
息を吹き返した大砲がアルビオン軍の足を止める。
『マリー・ガラント』から運び出された火の秘薬が砲口に次々と詰められていく。
アニエスもその光景に目を疑った。
手に手に武器を取り強大なアルビオン軍に挑む民間人達。
彼女の制止する声も届かない。
無謀と知りつつも彼女に止める術はない。
その目は、現実に嘆き命を捨てる者のそれではない。
目の前の敵に立ち向かっていく強い眼差し。
メイジでも軍人でもなく、脆弱な力で彼等は戦う。
……きっと私はこれが見たかったのだと思う。
貴族に抗する事さえ忘れた彼等が立ち上がる姿を。
きっとダングルテールの人々もそうだったのだろう。
あの事件が起きる事を知っていれば村の仲間を守る為に戦った筈だ。
「全軍、私に続け! 彼等を守るんだ!」
ならばこの一時、私の力は彼等の為に。
弱き者達の、強き想いを守る為の牙となろう。
137 :
ゼロいぬっ!:2008/05/18(日) 11:50:43 ID:qzQC7LFv
書状に目を落としていたアンリエッタの手が震える。
その書状に施された印は間違いなくアルビオン王国の物。
傅いていた竜騎士は彼女の書状を渡すと、すぐさま戦場へと舞い戻った。
書かれていた言葉はトリステインへの感謝で満ちていた。
ニューカッスルから逃れる者達を命懸けで守ってくれた事。
凶刃に倒れたウェールズ王を丁重に葬ってくれた事。
そして行く先さえない自分達を受け入れてくれた事。
文字では書き記せないほどの恩を受けた。
だから今度は我々がトリステインを守ろう。
それが亡きウェールズ王の願いであり、アルビオン王国の民の願い。
我等が潰えたとしても、その想いは貴方達と共に。
「……あ」
アンリエッタの口から知らずに声が漏れた。
違う。私はそんな事思いもしなかった。
貴方達を守ったのはルイズ達で私じゃない。
そんな命令なんて一言も告げていない。
亡命を受け入れたのだって、
神聖アルビオン共和国を名乗る連中に従いたくなかったに過ぎない。
それどころか私は……貴方達を怨んでいた。
ウェールズ様を守れなかった無能者の貴族達に、
強い者にへつらう事しか知らない民衆だと蔑んだ。
だけど彼等は私達を守ると言った。
……やっと気付いた。これがルイズと私の違い。
危険に身を晒しながらもルイズが守った者が今度は彼女を守る。
彼女の力は積み上げてきた人の絆。
そして、絆の深さはウェールズ様も同様。
彼が死しても尚、その志や想いは消えていない。
それは生き延びたアルビオンの民へと受け継がれた遺産。
……なのに、私はなんと愚かだったのでしょう。
ウェールズ様から託されたのに私はそれを踏み躙ろうとした。
守らなければならない大切な物を自分の手で壊そうとしていたんだ。
零れ落ちたアンリエッタの涙が文字を滲ませる。
霧のように彼女の心を覆っていた憎悪が晴れていく。
きっと彼女は気付いていた、これは憎しみなんかじゃないと。
寂しくて、悲しくて、ぶつける先を求めて彷徨っていた弱い心なのだと。
138 :
ゼロいぬっ!:2008/05/18(日) 11:51:23 ID:qzQC7LFv
書状を握り潰して俯く彼女にマザリーニは歩み寄る。
アンリエッタの杖を持ち、その手前で頭を下げて彼女に杖を差し出す。
「姫様、御命令を。今、何を為すべきかは分かっている筈です」
「……ですが私は」
復讐に身を委ねていた彼女はそこにはなく、
今のアンリエッタは歳相応の少女でしかない。
自分の行動に迷いを持ったまま決断など出来るはずも無い。
背負った物の大きさに、彼女は恐怖さえ感じていた。
「姫様。この世に一度も間違いを起こさぬ者などおりません。
それは王族であろうとも同じ事。過ちを繰り返さなければそれでよいのです。
真に恐れるべきは決断すべき時に出来ない事です」
その声は優しく諭すようでもあり、厳しく叱るようにも聞こえた。
マザリーニの胸中にあった感情は喜びだった。
今、彼女は本当の意味で王族としての自覚に目覚めたのだ。
失敗など幾らでもすれば良い。
尻拭いや汚名など全て我々が被ればいい。
それが新たな指導者の糧となるならば安い物だ。
……長かった。これでようやく亡き先王への誓いが果たせるのだ。
マザリーニの想いが届いたのか、アンリエッタは杖を受け取った。
そして、涙を振り払い杖を掲げて高らかに告げた。
「皆の者! 勇気ある彼等を死なせてはなりません!
全軍に突撃命令を! アルビオンの大地をあるべき者達の下に!」
姫の一言にマザリーニは大きく頷いて兵達に指示を飛ばした。
それを受けて大地を踏み鳴らしながらトリステイン本陣が敵へと向かっていく。
その光景に驚愕したのは敵ばかりではない。
敵の攻撃が散漫な右翼にあって傍観していた貴族達が唖然とした表情を浮かべる。
もはや姫殿下の護衛がどうのだのと言い逃れは出来ない。
アンリエッタ自身が前線へと飛び込んだ以上、この場にいるのは保身と見なされる。
止むを得ず、次々と右翼部隊も雄叫びを上げて敵陣へと突き進んだ。
「王国の亡霊がッ! 成仏できずに化けて出たか!?」
共和国の竜騎士の一人が吼える。
目前に迫ってくるのは滅びた国の旗の下に集う竜騎士達。
引きつけて放った火竜の息吹が虚しく空を切る。
直前で身を翻した王国の竜騎士は既に背後に回っていた。
振り返る間さえも与えずに翼に打ち込まれるエア・カッター。
制動を失って地に落ちていく竜騎士に彼は叫んだ。
「我々は生きている! 今も、そして……これからもだ!」
見上げれば山の如き巨艦に従えられた大艦隊。
それに加え、艦隊を護衛する無数の竜騎士達。
これを前にして生き延びるなどと、
我ながら大した大風呂敷を広げたと笑いながら、
彼は次なる敵を求めて空を翔る。
否。たとえ自分達が朽ちてもアルビオン王国は不滅だ。
想いを継ぐ者がいれば、決して消えたりはしない。
139 :
ゼロいぬっ!:2008/05/18(日) 11:52:30 ID:qzQC7LFv
「交易船1隻にいつまで手間取っておる!? さっさと砲撃せぬか!」
『マリー・ガラント』号を沈めんと迫る竜騎士達が次々と落とされていく。
そんなニューカッスルの悪夢の再来を目の当たりにしてジョンストンは怒鳴った。
無理もない。地上軍はトリステイン本陣を含む三方から包囲され、
容易く決着が付くと思われた戦闘は今もアルビオンの不利で続いているのだ。
圧倒的な戦力差がありながら、この体たらく。
あるいは艦隊総司令官の地位さえ追われるかもしれない。
その恐怖からがなりたてる彼の横で冷静にボーウッドは告げる。
「ですが、あの船は地上軍の真上に着けています。
砲撃をすれば我が軍にも少なからず被害が出るでしょうな」
「構うものか! 皇帝陛下が見ておられるのだぞ!?
そんなに私を無能者に仕立てたいのか!
地上軍など無くても我がアルビオン艦隊がある限り負けはせん!」
冷静を保つ彼が気に食わないのか、
ジョンストンは銃口を模した指先をボーウッドの胸に突き立てた。
それは逆らえば死を意味する脅迫行為。
しかしボーウッドの表情は揺るがず真っ直ぐに彼を見据える。
彼の気迫に圧し負けジョンストンは言葉に詰まった。
だが船員達の目がある以上、ここで退けば自分が下だと証明したに等しい。
二人の膠着状態が続く中、艦橋に誰かの靴音が響く。
彼等の視線が向かった先で、地上軍を指揮する老士官が敬礼していた。
「艦長殿と艦隊総司令殿がケンカされて喜ぶのは敵ばかりですな」
「何の用だ!? お前の任務は地上軍の指揮だろう!
さっさと地上に降りて、平民も倒せぬ無能な部下どもの尻でも叩いてこい!」
「ええ。その前に御挨拶をと」
冗談めかした苦言を呈す彼にジョンストンが怒りを露にする。
もはや聞き流す余裕さえ残されていないのだろう。
まるで軍の現状をそのままにしたようなジョンストンの態度に、
苛立つ事もなく彼は苦笑いを浮かべた。
総司令を前に変わらぬ男の態度にボーウッドも苦味の混じった笑みを見せる。
二人の諍いが収まったと安堵した船員達の耳に、老士官の驚くべき言葉が響く。
「この戦、負け戦ですな」
刹那。艦橋を満たす空気が凍った。
軍規を重んじるアルビオン軍にあって敗北を口にするなど、
その場で処刑されても仕方ない重罪。
それを知らない訳がないだろうに老士官は平然と言い放った。
血管が引き千切れていく音と共にジョンストンは自分の杖に手を掛けた。
元よりやり場のない怒りに打ち震えていた彼にとって、
それは業火に投げ込まれた火の秘薬に等しい。
殺意を帯びた杖先は老士官へと向けられ、魔法が放たれる時を待っている。
140 :
ゼロいぬっ!:2008/05/18(日) 11:53:28 ID:qzQC7LFv
「貴様ァ! 自分の無能を棚に上げ、言うべき事はそれだけかッ!?
そうか、分かったぞ! 貴様等二人して私に失態を演じさせるつもりだな!
艦隊総司令の地位がそうまでして欲しいか、ボーウッド!!」
見当違いな憶測を吐き出しながら濁った瞳がボーウッドを向けられる。
視界から離れた一瞬、老士官はジョンストンの下へと踏み込んだ。
咄嗟に彼の動きに気付くも、ボーウッドの手が杖を押さえ込む。
次の瞬間、枯れ木のような腕がジョンストンの鳩尾に深々と食い込んだ。
かはっ、という苦悶を吐いてジョンストンの体が糸が切れるように崩れ落ちる。
それを支えながらボーウッドは近くで呆然としていた船員に命じた。
「どうやら艦隊総司令は頭に血を上らせすぎたらしい。
誰か医務室に運んでやってくれ。以降の艦隊指揮は私が取る」
淡々と告げるボーウッドの言葉に船員も従う。
正気を失いかけている艦隊総司令よりも艦長に従う方が得策だと、
彼等なりに現状を把握して行動に移した。
騒ぎの元凶が倒れたとはいえ、未だにざわつく艦橋の中でボーウッドは訊ねる。
「それで、どういうつもりだ?」
痛そうに手首を振るう老士官にボーウッドはちらりと視線を向ける。
いつもの悪ふざけにしても度が過ぎている。
下手をすれば殺されていてもおかしくはなかった。
だが悪びれる様子もなく彼は答えた。
「他意はない。今、戦っているのは同じアルビオンの民だ。
それに手を掛ければ少なからず兵達にも動揺が走るだろう。
そんな状況で士気に勝るトリステイン軍を相手にするとなれば死を覚悟して当然だろう」
「だが連中の頭上を抑え、予備部隊とて十分にある。
我々が負けると決まったわけではない」
ボーウッドの反論に彼は静かに首を振った。
恐らくボーウッド自身も気付いている。
それを口に出さないのは彼の優しさからだ。
「確かに、この戦いは勝てる。
だが、その後どうなるか予想は付くだろう。
姫自身が身を張って領民を守ったトリステインと、
艦隊を不意打ちで殲滅し、自国の民さえも殺すアルビオン。
両国の民がどちらを選ぶかは自明の理だろう」
誇りを持った人間は恐怖では操れない。
この一戦を勝ち得たとしてもトリステイン全土を支配するのは不可能だ。
いつ他国の介入を招くか分からぬ状況で
内情の不安を抱えたまま戦争を継続する事は出来ない。
内と外に敵を作れば如何なる強国とて滅びる他ない。
かといってここで兵を退けばアルビオンの民が納得すまい。
他国へ侵攻する意図の下、多大な税を強いて軍事強国となったのだ。
敗戦が伝えられればアルビオン軍の信頼は完全に失墜する。
失う物に比べて得る物が少なければ勝利とはいえない。
ましてや、それが致命的な損失になるのならば尚の事。
この戦の勝ち負けなど些細な物に過ぎない。
トリステインはもっと大きな……大局での勝利を掴んだのだ。
141 :
ゼロいぬっ!:2008/05/18(日) 11:55:10 ID:qzQC7LFv
「進めど破滅、戻れど破滅。
成る程。確かに君の言うとおり、これは負け戦だ。
それでも、君は行くというのか?」
「下士官だった頃、窮地に追い込まれるといつも思ってたよ。
『どうして上官はこういう時に助けてくれないのか』とね。
やはり私は上に立つべき人間ではなかったな」
彼との約束はこの戦までの話だった。
勝とうが負けようが、彼はこれを最後に引退し老後を送る。
一人で生活するには十分すぎる退職金を手に、
仮に神聖アルビオン共和国が滅びようとも他国で暮らしていけた。
それを捨てて彼は危険な前線へと向かう。
自ら汚名を被り、この戦の責任を取る為に。
「さらばだ友よ。いずれ私もそちらへ逝く」
「ではなボーウッド。僅かとはいえ共に轡を並べられて楽しかったぞ」
もはや言葉では止められない。
だからこそボーウッドは彼を敬礼で送り出す。
それが彼を戦場へと向かわせた自分の責任であり、
アルビオン軍人としての務めであると自分に言い聞かせながら。
ボーウッドの敬礼に老士官も敬礼で応える。
互いに敬礼を交わす二人の軍人。
死に向かう老士官は笑みを、見送る艦長は悲哀を浮かべる。
「次に会うのはまだ先でいい。
それまでは部下の愚痴でも聞きながら一杯やっているさ」
カツンと音を立てながら返される踵。
艦橋から去り行く背中を見届けた後、ボーウッドは船員に告げた。
「艦の高度を下げて艦砲射撃の態勢に入れ」
「……しかしワルド子爵が」
「責任は私が取ろう。戦友の門出を祝う礼砲だ……派手にやってくれ」
それに、と小さく船員の耳元でボーウッドは呟いた。
まるで子供が秘密の話でも楽しむかのように、聞き取るのが精一杯の声で。
「私は彼が好きではない。彼の命令に従うのもな」
その口から漏れた、あまりにも艦長らしからぬ発言に、
船員の顔は唖然としたものから笑いへと変わる。
そして、それに同意するかのように船員はボーウッドの命を全艦に伝えた。
「砲撃、来ます!」
長玉で艦隊の動向を窺っていた観測班が大声で叫ぶ。
しかし、この乱戦では伝令の声も届かない。
破裂音と共に舞い上がる砂煙。
降り注ぐ鉛の雨が大地を太鼓の如く響かせる。
立ち昇る土煙に入り混じってトリステイン兵士が吹き飛ばされていく。
だが物怖じする事なく彼等は突き進む。
その眼前に映るのは魔法衛士隊を率いて先陣を切るアンリエッタの背。
それを追い越さんと彼等は必死に駆ける。
支援
143 :
ゼロいぬっ!:2008/05/18(日) 11:56:39 ID:qzQC7LFv
「姫殿下!」
「ダメです! 退いてはなりません!
ここで退けば本陣は狙い撃ちにされます!
このまま前進を! 敵陣へと踏み込むのです!」
マザリーニの諌める声を制し、アンリエッタは叫んだ。
敵味方が入り混じれば砲撃の手は必ず緩まる。
そう確信して脇目も振らずに彼女は突撃を敢行する。
周囲で聞こえる味方の悲鳴も砲声にも耳を塞ぎ、
ただ目に見えぬ道を切り開くかのように前へと突き進む。
それは本隊だけではなく左翼の義勇兵部隊も同様だった。
だが数で勝ろうとも兵の練度に劣り、
更には互いの連携が取れない彼等には限界があった。
敵を押し切れずに続く膠着状態が砲撃の犠牲者を増やしていく。
「どうした!? 砲撃を続けろ!」
「それが砲身が焼き付いて、このままでは誘爆の恐れが…」
「すぐに冷却しろ! 手空きの者は私に続け!」
アニエスの怒声に砲手が答える。
火の秘薬や砲弾があっても常に大砲が撃てるとは限らない。
歯痒さを感じながら彼女は銃を手に前線の支援に向かう。
ギーシュやニコラの奮闘があろうとも戦局を変えるには至らない。
実戦慣れしていないモット伯も自分の部下を率いるのが手一杯。
その彼等の足元に黒い影が落ちた。
頭上を見上げれば、そこには神聖アルビオン共和国の竜騎士部隊。
喉下を燻るのは灼熱の吐息。鋭い眼光が獲物を捉える。
「敵の砲台群を叩け! 運ばれてきた火薬ごと吹き飛ばしてやれ!」
「させるな! 迎撃しろ!」
舞い降りてきた脅威に兵士達は一斉に発砲する。
だが、それは火竜の羽ばたきと風系統の魔法に散らされた。
辛うじて届いた弾丸も装甲じみた鱗に傷一つ与えられない。
竜の顎が大きく開く。その口内で舌先の如くチラチラと揺れる火。
近くの竜騎士やグリフォン隊士が駆けつけるも既に遅い。
今まさに吐き出されんとする炎を遮る手段など彼等にはない。
144 :
ゼロいぬっ!:2008/05/18(日) 11:58:09 ID:qzQC7LFv
刹那。大地から天へと逆しまに雷光が昇った。
頭上で起きた爆発が空を朱に染めていく。
誘爆に次ぐ誘爆。空を埋め尽くしていた火竜が炎に消えていく。
敵味方双方から困惑の声が上がる。
巻き起こった爆発を上空から見下ろしながらワルドは呟いた。
「……来たか」
憎悪の篭った声には僅かな喜色が入り混じっていた。
あるいは彼は待ち望んでいたのかもしれない。
決着を付けぬままこの世界から去る事は許されない。
あの日、自分の前に立ち塞がった大きな障害。
ワルドはそれを試練だと確信した。
これを乗り越えた先にこそ自分が求める物があるのだと、
そう信じて彼は全てを捨てた。
残された物はただ一つ。
『この手で“バオー”を殺す』
その情動だけが今の彼を突き動かしていた。
145 :
ゼロいぬっ!:2008/05/18(日) 11:59:54 ID:qzQC7LFv
以上、投下したッ!
クライマックスなのに、あと最低でも10回以上は続く予定! 不思議!
乙です
ゼロいぬのワルドはしっかりとワイバル役やってくれそうだ
GJ!!
犬ー!死ぬな犬ー!
ふと思ったんだがハイエロファントエメラルドって花京院が主人公並の活躍・または後の話しにも出ますよ的な複線だと思うんだが
ポルポルと被るしやっぱり止めようみたいな事になってグリーンに変わったと思うんだが既出?
落ち着いて言いたいことを要約してくれ
>>149 ジョジョの三部からの主役のスタンドがプラチナ、ダイヤモンド、ゴールド、ストーン(?)と、
色からじゃなくて鉱物から名前が来ているのでエメラルドなら主人公と同じ扱いだと思った。
それを証明するようにシルバーのポルナレフが五部で再登場している。
だけど、それだとポルナレフと同じ役どころになってしまうので、
意図的に作者がエメラルドをグリーンに変更したのではないか?という事を、
MMR的思考回路から導き出して語っているんじゃないかな、多分。
個人的な意見としてはエメラルドスプラッシュとハイエロファントグリーンが混じっただけでFA。
だって花京院死んだじゃないか
それに3部の頃にもう5部でポルポル再登場が決まってたのか?
>>150 そうだよそれ
まあイロイコはそんな事思ってないんだろうがな
でも仮に生きてたら四部に出るんだろうなと思ったんだ
つまり【石】(鉱物)と【意思】(輝く精神)をかけているわけか
半日遅いが、ゼロいぬさんGJ!
初めてストーン・フリーと聞いて、思い浮かんだ言葉が、
『自由・石=自由意志』だった駄洒落好きは俺だけではないはず。
挿絵とかいくつか雑談に出ているがその点について御教授願いたい。できればそのブログとやらの探索キーワードも
挿絵の人の名前でぐぐれば一発ですよー。
DIO様かっけえ…
そしてすぐ下の虎とのギャップすげえwww
吉良の外伝のフーケって生きてるよな?ってことはまた出番がある?
ってかフーケって40メイルのゴーレムなんて作れたっけ?
ドンドン!(スレを叩く音)
おーい、あんちゃんだよー今帰ったよー支援しておくれー
|ω・`)
あんちゃんならワルドの真似が出来るはず…支援するよ
支援
162 :
ゼロの兄貴:2008/05/19(月) 21:22:02 ID:aK+jA7BY
ワルド「ルイズが振り向かないなら、殺してしまえばいいじゃない」
「ところで、どうしてフーケがここにいるのかしら?」
一段落ついたのでとりあえずオスマンの待つ学院長に一同揃ったのだが
今更になってキュルケがフーケが気付いたのかそう聞いてきた。
「来たくて来たんじゃあない」
どこか諦めたような表情でそう言ったが、当のプロシュートはフーケの肩に肘を置き涼しい顔をしている。
「……そういう事。もう年なのに大変ね」
二人の様子からある程度は察したのか、少しばかりの同情を含めて返したが、さりげなく禁句を入れているあたり流石と言えよう。
「だ、誰が年ですって?わたしは『まだ』23よッ!」
「あら、23といえば十分婚期を逃しているんじゃございませんこと?」
「小娘が…どうやらあんたとは決着を付けた方がよさそうだね…」
「よろしくてよ、おばさん。この微熱のキュルケ、謹んでお相手つかまつりますわ」
売り言葉に買い言葉とはこの事か。
あっという間に二人のボルテージが最高潮にまで到達しオスマンの前という事もすっかり忘れ睨み合い。
「おいオメーら、話あんだから大人しくするか別の場所でやれよ」
「「五月蝿い!」」
二人ともやる気満々という具合だが、今ここでんな事されても邪魔なだけだ。
今にも杖を出しそうな二人の間に無理矢理割り込むと、ガッシリと二人の首に腕を首に回す。
俗に言うアームロックである。
そして、続けて一つだけ宣告をする。これで止まらないのならどうなろうと知ったこっちゃあない。
「……なんなら、その程度の年の差なんぞ分からないようにしてやってもいいんだがよ」
テーレッテー
こうかは ばつぐんだ!
二人の頭の中にそんな音楽と言葉が聞こえてくるとほぼ同時に、同じような震えがプロシュートの両腕に伝わってきてきた。
「い、いやねぇ、じょ冗談よ、冗談。ほ、ほらこんなに仲良し。ねぇ?」
「そ、そうさ。わたしももう気にしてなんか……だ、だからその腕をーーー!」
ぎこちなさ6割増しで無理矢理笑顔を作り出し、互いに向き合うキュルケとフーケを見てやっとこさ腕を放したが人選間違ったかもしれんと思えてきた。
「なんで、きみはそういう事をしても怒られんのかのぉ」
そうして聞こえてきたのはご存知オスマンの羨ましそうな声。
「わしなんて…わしなんて尻撫でただけでも蹴られとるというのに……」
そう言いながらフーケに触ろうとして近付き、綺麗なカウンターを繰り出しオスマンが3回転半しながら地面に倒れた。
流石に、教え子に手を出さないだけマシなのだろうが、知ったこっちゃあない。
わーい、ホンモノのアニキだぁー!きちくぅー!支援
164 :
ゼロの兄貴:2008/05/19(月) 21:23:44 ID:aK+jA7BY
「クソ……馬鹿ばっかだ……」
一応、こっちは真剣にやってるんだからもう少し合わせろと言いたいのだが、とりあえず今は説教している暇は無い。
倒れたオスマンを無理矢理立たせると、本命の話を出す。
「でだ、アルビオンに『密航』したいんだが、なんか手段を出せ」
「うん、無理」
瞬間、少し乾いた音が部屋に鳴る。
間髪入れずに返してきた返答に突っ込んだ…もとい軽く殴った。
「一秒も経ってねーのに無理ってのはオレをナメてんな?それともボケたか?この際ついでにもう200歳ぐらい歳とってみるか?ええ?」
「いや、ホント無理。『密航』って事はバレたくないって事だからのぉ。補給艦に潜り込んでもバレるよ?それは」
戦時だけにそういうチェックは厳しい。
リトル・フィート、マン・イン・ザ・ミラー、メタリカなら気にしないでいいが、そうもいかない。
さすがに正規乗員で無い限り老化してもバレるし、バレてもいいのなら相手を始末すればいいだけなのだが、状況が違う。
おまけに、アニエスに知られた以上はなるべく早く行動したい。
「……他は」
「ふーむ。そういえばスカロン店長が女の子達を連れて、慰問に行くとかもしれないとか言ってたような」
「却下だッ!」
ああ見えて口が堅い事はしっているが、何されるか分かったもんじゃあない。
今のところ、唯一にして明確なプロシュートの弱点というやつだろう。
「へぇー、あんたにも苦手な相手が居たのかい。こりゃ今度話を聞いてみないとね」
フーケが笑いをかみ殺しながら仕返しかと言わんばかりにそう追求してきたが、それだけは避けねばならない。
「…そういや、襲ってきた連中は全滅したって報告するんだったよな」
「そうじゃな。学院の生徒を人質に取ろうとしたんじゃから、宮廷の連中が見逃すはすはあるまい」
「……ならオメーが生きてるってのは不自然なわけだ。全滅したんだからな。つーこたぁ分かるか?オレの言ってる事」
フーケの方へ視線を向け、指を鳴らしながら手をフーケの前に出した。
顔が青くなっていったあたり、どういう状況か理解できたらしい。
「ま、まさか……」
「60歳ぐらいに抑えといてやるから安心しろ。なに、一瞬だ」
一気に後ろに後ずさる。その素早さたるや台所の黒いアイドル顔負けというやつだろう。
そうなるのも当然と言えるのだが、しかしながらここは学院長室。
オスマンの私室ともいうべき場所であるからには、そんなに広くはないのですぐに壁に突き当たった。
燃やされました(フレイムに)支援
166 :
ゼロの兄貴:2008/05/19(月) 21:25:52 ID:aK+jA7BY
「わたしのそばに近寄るなぁぁぁあああああ」
四体倒地し顔だけこちらに向け必死で叫ぶ。
が、唯一この場でこの能力がヤバいと理解してくれそうなキュルケは思いっきり顔を逸らしているので助けになりそうもなく
肝心のプロシュートもかなりの無表情で手を伸ばしてきているあたり止まりそうにない。
「そ、そうだ!わたしに危害を加えない事が条件だって言ってそれを飲んだじゃないか!」
「何言ってやがる。きっちり元に戻るんだから危害を加えるって事にはならねーよ
それに、オメーがそのままで向こう行くとバレた時に厄介だからな。今のうちに慣れさせといてやるよ」
思い出したかのように学院に向かう前の条件を切り出したが
本人全く一切の聞く耳を持たず。プロシュート的に危害=負傷、元に戻らないぐらいの老化。なので問題無いのである。
「暴れんじゃねーぞ。加減が狂って手遅れになっても知らねーからよ。大体オメー一回食らってんだろーが」
「い、いや…さ、触わらないで、お願いだから…」
泣きそうかつ逃げようとしている女に無理矢理触ろうとしているとなるとちょっと絵的にアレだが、本人にその気はまったくなく
ただ単に直食らわせてフーケだとバレなくしようとしているため、むしろスタンドパワー使うんだから感謝しろという具合である。
「まぁ、渡る方法もまだ分かってないんだし、今はいいんじゃないかの」
「……そいつもそうだな」
オスマンの言を聞いて2〜3秒考えたが、持続力Aとはいえ老化させっぱなしというのもパワーを使う。
スタンドを戻し手を引いたが、一杯一杯なフーケを見て『死にゃしねーんだから大した事ぁねーだろうが、このマンモーニが』
と内心思っているのはご愛嬌。
もっとも、悲しきかなは価値観の違い。プロシュート的には60歳はまだ大した事は無いが
キュルケやフーケの価値観としては60歳というのは寿命一歩手前に等しいのである。故に
――今、この瞬間だけありがとう……
と、秘書時代を通してこれ程オスマンに感謝したのは初めてかもしれない。
仙人っぽい外見のオスマンが本気で仙人のように後光が指して見えたのも仕方ない事なのである。
そんなフーケをガン無視して別の場所から思いっきり高圧的な声。
「歳食ってんだから、何か知ってんだろ。頭絞って考えろよ」
「人使い荒いね君…わし、一応ここで一番偉いんだけど」
二人を対比すると、ちょっとボロ雑巾気味のオスマンと
椅子に座ってはいるが、机に足を投げ出して思いっきり偉そうにしているプロシュート。
この事から敬意など一欠けらも持っていない事が凄くよく分かるであろう。
167 :
ゼロの兄貴:2008/05/19(月) 21:27:44 ID:aK+jA7BY
「ウルセー、それならそれなりの仕事してみせやがれ」
地位や立場より、実績や報酬を重視するタイプなので、いくらオスマンが偉大なメイジなどと言われていても、見ていないのでこういう扱いである。
おまけに、例の一件からただのエロジジイと認定しているため、恐らく余程の事が無い限りこの態度は覆るまい。
「悲しいのぉ…年寄りはもっと丁寧に扱うべきじゃよ。もっと敬老精神というものを持ちたまえ」
「生憎、オレはそういうモンは持ってねーし
オメーみたいな化物にんなもん必要ねぇ。手ぇ抜いたつっても直食らって外見が変わんねーってのはどういう事だ」
「化物って酷くない?わしはただの可哀想な年寄りじゃよ」
「ほーう。可哀想な年寄りってのは、そいつの足元にネズミを潜ませたりすんのか?なんなら寿命でくたばらせてやってもいいんだぜ?」
やっとこさ立ち上がったフーケの足元に小さいハツカネズミがそこに居た。
「な…!このジジイいつの間に!」
「おお、モートソグニルわしの為に、お前は本当に可愛いのぉ。よぉ〜〜〜しよしよしよしよし」
「オメーがやらせたんだろうが」
どこぞの元医者のようにモートソグニルを撫で回すオスマンに冷静に突っ込んだが、いい加減その髭面をブン殴りたくなってきた。
「知ってようが知っていまいが……二秒やるから、知ってる手段ってやつを吐け」
「案外せっかちじゃな。もっとゆっくり真実というものを考えてみたらどうかね」
「ウーノ(1)」
「ちょ、ちょっと待とう。な?ほら、よく言うじゃろう『ゆっくりしていってね!』って」
「ドゥーエ(2)。じゃあいっその事永遠にゆっくりしてみっか?え?」
『ゆっくりしていってね!』という言葉にやたらムカき2を早め、ついでに大往生させてやろうかとも思ったが
それより先にオスマンが答えを出してきたので何とか止まった。
「仕方ないのぉ…竜にでも乗れればいいんじゃろうが、気難しい生き物じゃからな」
「…ああ、そういやそんな手があったな」
野生のやつなんぞ乗りこなす気なぞ全く無いが、アテは一つある。
少々カオスな状況の学院長室とは所変わって女子寮の部屋の一室。
その中で青い髪、ご存知タバサが多少眠そうにしながら本を開いていた。
「おねえさまに言われたとおりにあの人を連れてきたのね!シルフィ偉い!」
と、部屋の窓一杯に映っているのはこれまたご存知のシルフィードだ。
「おねえさま、ご褒美は美味しいものがいいのね」
「……二個?」
「きゅいいっ、きゅいーーーッ!きゅい!」
「三個……?イヤしんぼ」
と、そこに部屋のドアから軽いノック音がしてきた。
「きゅい?誰かきたみたいだけどいいの?」
「構わない」
襲撃なんぞがあったのだから、今日の授業は無いだろうから慣習に従い本を読む事にすると決めたのでどうやら無視する事を決め込んだようだ。
ぶっちゃけ言えば、シルフィードですら邪魔と言いたいのだが、一応の功績があるので好きにさせているという具合だ。
168 :
ゼロの兄貴:2008/05/19(月) 21:29:40 ID:aK+jA7BY
しばらく反応が無かったが、少しするとさっきより大きい…ドアを叩くような音がしてきたが手早く『サイレント』をかけ
音がしなくなると満足したような表情で本に向き直った。
だが、何時の時代も個人の平穏というやつは破られるものである。
勢いよくドアが開かれ…もといブチ破られたためだ。
キュルケならアンロックで開けるだろうし、他の生徒達にこんな真似をする者はいないので杖を引き寄せ身構えたが
聞こえはしないが、重苦しい音をさせながらこちらに近付いてくる人物を見てサイレントを解いた。
「居るんなら返事ぐらいしやがれ。それとも聞こえなかったとかいうんじゃあねーだろうな」
破壊力Bのスタンドで思いっきりドアをブン殴った、ご存知プロシュート兄貴である。
「……やっぱり似てる」
「あ?何がだ」
過去、ルイズがタバサの部屋のドアを爆破したという黒歴史的な出来事を思い出しての感想だが、プロシュート自身は知った事ではない。
「何か用?」
普通というか、こういう乱入者は魔法でお引取り願うのだがそうはしない。
手短にそう言ったが、ここまでやるからには何かあるのだろうと思う。
もっとも、杖を向けた瞬間スタンドとかいうやつで容赦なく攻撃されるだろうという考えもあったからだが。
「ああ、オメーに用があるってわけじゃあねーんだが」
「じゃあ何」
用が無ければ、人の部屋に乱入したりはしない。タバサの疑問も至極当然といえる。
「オレが用があんのは……外に居るそいつだ」
「ぎゅい!?」
睨み付けるかのような視線を窓の外のシルフィードに向けると、どこか詰まったような鳴声が返ってきた。
「あんな場所から何の準備もなく落とされたからな…本当にオシマイかと思ったよ…いや、マジに恐れ入った」
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ という擬音を背景に部屋の真ん中に進んだが、窓の外のシルフィードは何かこう、テンパっている。
(シルフィード)
(は、はい…!)
(説明して)
質問は拷問に変わっているんだぜ?というような尋問が行われたが、シルフィードの答えは至極簡単である。
「つまり、シルフィードに落とされた?」
「100点満点だ。褒美をやりてーとこだが、そうもいかねぇ」
(メイジじゃないって事を忘れてただけなの!悪気は無かったのね!)
(黙ってて)
(きゅい…)
「オレは今からお前にごく簡単な質問ってやつをする。イエスかノーか二つに一つってやつをだ」
こういった尋問役は、本来ホルマジオかメローネ(変態的な意味で)なのだが、まぁそうも言ってられない。
「オレはそいつに簡単なスカイダイビングをさせられたわけだが……それはオメーの指示か?どうなんだ?答えろよ…」
タバサの後ろからそう質問したが、これがブチャラティなら汗を舐めているところだろう。
よくよく考えれば、あのチームで一番マトモそうなヤツが実のところ一番変態とも言える。
結局のところギャングにマトモな神経のヤツなど一人も居ないという事か。
まぁ、タバサ自身は汗なぞかいてないし動揺もしていないが。
支援されました、バオー犬に
170 :
ゼロの兄貴:2008/05/19(月) 21:32:12 ID:aK+jA7BY
「シルフィードが見つけた時にあの場所に連れてきて欲しいと言ったのは事実」
(おねえさま……)
小さい窓から部屋の中を無理矢理覗き込んでいるシルフィードは気が気ではない。
下手に答えれば『ブッ殺した』という過去形で語られそうな展開になるかもしれないと思っているからだッ!
そして、そんなシルフィードをに構わず、いつものようにタバサが言った。
「だけど……落とせとは言ってない」
(きゅいぃぃぃ!お、おねえさま、それはぁぁぁぁ!)
(五月蝿い)
「まぁ、あんときオメーはブッ倒れてたからな……つまり、あいつが勝手にやったって事でいいんだな?」
「そうなる」
(う、売ったぁぁぁ!おねえさまひどいの!シルフィきっとすっごく怒られちゃうのに!…ハッ!)
シルフィードが気付いた。プロシュートの物とは違う冷たい雪風のような視線がこちらに向けられている事に。
(お、おねえさまのあの目…シルフィの前に並べられたご飯を見るような冷たい目なのね…『残念だけど20秒と持たない運命なのね』って感じの!)
ぎゅい〜、と絹が裂けるような鳴声と共に恨みがましい目をタバサの方に向けていたが
それよりも数段目立つ、スゴ味を感じさせる眼を見てさらにテンパる事になる。
しかも、その眼が無駄に足音をたてながらゆっくりと向かってくるのである。
(うう、怒られるだけで済めばいいけど……だけど、お肉が食べられなくなるのはイーーーヤーーーーー)
どうやら、老化させられると判断したようで年老いて歯がボロボロになった自分を想像したらしい。
空を飛べる翼があるのだから逃げてもいいのだが、そうすると今度はタバサにお鉢が回るかもしれない。
自分の身体(主に食を司る部分)か主人のタバサか。
シルフィードにとってどちらも譲れる問題ではないため、未だ窓の外に止まっている。
そんな事やってるうちに遂にプロシュートの腕がシルフィードを捉えるべく、まるで鎌首を上げ獲物を捕らえる蛇の如くゆっくりと持ち上げられたッ!
(きゅいぃ…最後に沢山お肉食べたかったのね…)
もう諦めたのかシルフィードの頭の中には今まで食べた美味しかった物が次々と現れては消えていっている。
走馬灯に近いものがあるのだろうが、全て食的なものしか現れていないあたり、本人の欲望が最優先されているといっていい。
サルか?
172 :
ゼロの兄貴:2008/05/19(月) 21:34:08 ID:aK+jA7BY
「待った」
しかし、そんなシルフィードに救世主現れた!
意外!それはタバサッ!
「確かに、私が命令したわけじゃない。でも……使い魔の責任は主人の責任」
「すると、オメーが身代わりになるって事か?」
そう問うと、タバサが小さく頷いた。
(……で、でもダメなの!シルフィよぼよぼのおねえさまなんか見たくない!)
(…変わりにお肉は抜き)
(お、おねえさまぁぁ!ならシルフィも一緒!)
何かこう、主人と使い魔との絆が一層強まったようだが、何話してるかさっぱり分からないプロシュートには知ったこっちゃあない。
「悪りーが、オレとしては誰かの責任を他人が身代わりに被るってのを認めるわけにはいかないんでな」
誰かに身代わりになってもらうようでは、そいつは一生成長しない。
まぁ、ギャングの中にそういう連中はものスゲー居るわけだが。
右手を窓の外のシルフィードの額に当てる。
タバサが少しばかり批難めいた目でジーっとこっちを見ているが特に気にしない。
(お肉…でも、おねえさまが無事ならそれでいいの…でも、お肉…)
(シルフィード…)
あくまで食事の比率が大きいのか、最後まで気にしていたようだが目を閉じ、来るべき老化を覚悟していたが
次にシルフィードが感じたのは老化による疲労などではない。
シルフィードが感じたのは、額を数度ノックするような音。
まぁ実際竜の硬い皮膚を人の手がコツコツと叩いているのだからノックとも言えなくも無い。
「…きゅ、きゅい?」
「結果論としちゃあ、あれで先手取れたようなもんだからな。穴も開いてねーし、あの件に関しては貸しって形で終わりにしといてやるよ」
元より、落とされた事で来たわけではなく、目的は別にある。
「で、だ。オレとしてはその貸しを今すぐ返して貰いたいってわけだ」
「返す?」
「こいつ貸せ」
そう言って指差すのは勿論シルフィードだ。
「そいつなら、アルビオンに行けんだろ。前も行ってたしな」
普通の竜なら無理だが、シルフィードならタバサ経由でなんとかなる。
この際、どんな小さな貸しだろうと利用してシルフィードを使うと決めたようだ。というよりそれしか方法が無いのだが。
支援したっ!
174 :
ゼロの兄貴:2008/05/19(月) 21:35:05 ID:aK+jA7BY
「どうしてアルビオンに?」
そりゃあこれからドンパチやろうかという場所に行くというのだから、その疑問も当然だ。
「あー?気に入らねぇやつが居るからな。厄介な事になる前にそいつを始末しにいくだけだよ」
死者に老化が通用しない事もあるが、やはり偽りの精神を与えるなどという誇りを踏み躙るようなやり口が気に入らないというところが大きい。
この際、いい機会だからボスにやる予定だった分も全部纏めてクロムウェルにやっちまおうという事である。
人、それを八つ当たりと言う。
「……クロムウェル?」
「よく分かったな。まぁ、オメーもアレを見たから分かるだろうがな」
プロシュートは簡単に言ったが、一国の皇帝を一人で始末するという事である。
クロムウェルをガリア王に置き換えれば、それがどれだけ遠い道かタバサにもよく分かる。
それを気に入らないというシンプル極まりない理由でやろうというのだから呆れるしかないというやつだろう。
少しばかり怪訝な表情でこっちを見てきたタバサに気付いたのか、さも当然という風にプロシュートが返した。
「ああ、そういや言ってなかったな。オレ達は向こうじゃそれが本業だ。
さっきのは条件付いてたから手間取ったが…次からは遠慮する必要なんてねーから楽なもんだ。
スタンド使いでも無い連中なら、オレにとっては何人居ようが関係ねぇ」
射程距離半径200M。全員がオスマンみたいなのなら問題だが、最初からフルパワーで老化させていけば
軍隊組織そのものを相手できるとまでは思っていないが、純粋な対人に限れば千人だろうと、その気になれば例え一万人だろうと関係ない。
つくづく暗殺というより殲滅向きな能力だと思うが、ホワイト・アルバムよりはマシというところか。
むしろ、少数で風の遍在でも送り込まれるほうが余程厄介というべきだろう。
そう言うとどこからか、何か興奮気味の声が聞こえてきた。
「やっぱり凄いのね!おねえさまも手伝ってもらえばいいの!」
(シルフィード!?)
(きゅい!?…ま、間違えたのね)
どうやら少しハイになって間違えたらしいが後の祭り。しっかり聞かれてしまっていたりする。
「おい……何か言ったか?」
「……気のせい」
「どっかで聞いたことあんだよ…今のは」
部屋を見たが他に人は居ないし、何よりタバサの口調ではない。
となると、残ってるのは窓の外に居るシルフィードなのだが、これは竜だ。
175 :
ゼロの兄貴:2008/05/19(月) 21:37:04 ID:aK+jA7BY
と思ったが、ここはバカデカイ島が丸々一個空に浮いてるようなブッ飛んだ世界であるし
竜というのはファンタジー映画基準からすれば結構口が利けたりする生物だ。
タバサは口を割りそうにないし面倒なので直接本人(本竜)に聞いてみる事にした。
(何言われても答えちゃダメ)
(わ、分かってるの。シルフィ絶対喋らないのね)
「口が利けるってんなら答えろ。答えない場合は『目の中に親指を突っ込んで殴り抜ける』」
親指どころか、拳が丸々入るだろうという突っ込みは横に置き、選択肢YES or yes。拒否権一切無しの質問…もとい尋問に
一秒も経たずに綺麗サッパリ洗いざらい全部まとめて喋ってくれました。
「メンドクセーことしやがる。大して変わんねーだろーが」
「そうでもない。韻竜は数が少ないから」
「オレはそれより、そいつを使い魔ってのにしたオメーの方が気になるがな。さっきも言ったがマジで何モンだよ」
使い魔=メイジの実力がここの方程式だ。となると、その珍しい韻竜を召喚したタバサもかなり珍しい部類に入ると踏んだ。
「きゅい!それはシルフィが説明するのね。おねえさまはガリア王家の王女さまなの」
「ほー、それが何でこんな所に居やがる」
「それはとっても悲しい話なの…おねえさまのお父さまは暗殺されて、お母さまも食事に毒を盛られておかしくなっちゃったのね」
ここまでは下手な本の中にもよくある話だ。というより、型に嵌り過ぎてむしろ拍子抜けしたという方が正しい。
「で、それをやったのが、こいつの親父の兄貴か弟ってとこか?」
「その通り!よく分かったのね」
「よくある話じゃあねーか。ま…こんなに近くにいるとは思わなかったが」
王族と聞いても態度は一切変えない。メローネじゃないがタバサの生まれや育ちが何だろうとどーだっていいのである。
「それだけじゃないのね!おねえさま、ずっと昔から北花壇騎士団っていうのに入れられて
危険な任務を与えられてるの…この前だって吸血鬼を退治しろだなんて言われて、死ぬかと思ったのね!」
「シルフィード、それ以上は言わないでいい」
「でも〜…」
「……ダメ」
「……分かったのね」
176 :
ゼロの兄貴:2008/05/19(月) 21:38:28 ID:aK+jA7BY
「ヒネたガキだとは思ってたが、そりゃあそういう事やってりゃあそうなるな」
パッショーネの構成員の中にも今のタバサぐらいの年齢のやつは腐るほど居る。
ナランチャやフーゴ、ペッシあたりがそうだ。
だが、シルフィードの言い方からすると、それより遥かに前から任務をこなしていた事が理解できる。
ヒネたガキと言ったが、この場合むしろ汚れ仕事を押し付けられているあたり、よくもまぁこの程度で済んだなと感心したぐらいだ。
「で、汚れ仕事をこなしても報酬は殆ど無くて拒否権も無ぇ。おまけに、少しでも反抗しようとしたらお前か母親が始末されるってとこか」
「それでも復讐しようとして生き延びてきたら、こうなったってわけだ。よくやんぜオメーもよ」
「……知った風に言わないで」
珍しく感情を含んだ声でタバサがそう呟いたが、それこそそういう風に言われる筋合いは無い。
「ガキが誰に物言ってやがる。オメーこそ知った風な口利いてんじゃあねぇ…!」
「組織に良い様に使われるってのは、オレ達が一番よく知ってんだよ
仲間二人見せしめに殺され、それでも何もできずに飼い殺しにされて、やっと掴んだボスの手掛かりを追って反逆したが
戻ってみりゃあ、あいつらもボスもくたばってやがった。オメーはまだいいぜ。復讐する相手がいるんだからな…ッ!」
言い終えると同時に重い音が部屋に響いた。
素手で思いっきり部屋の壁を殴ったのだが、壁から少量の血が流れ落ちている。
ボスはブチャラティ達に倒されたが、落し前は自分の手で付けたかったというのが本音というところか。
自分の知らない所で復讐対象が倒されていた場合、後に残るのは振り下ろす相手の居ない拳と同じだ。
「…ちッ!どうもガラじゃあねーな。物に当たんのはギアッチョの担当だ」
勢いに任せて壁をブッ叩いたが、それでもどうにもならん事ぐらい理解している。
まぁ、素手でカーステレオをブッ壊すギアッチョなら今頃壁はボコボコであるのだが。
「って事だ。その冷めた面見てるとますますオメーがリゾットに見えてきたぜ。
こっちの仕事が片付いたらお前の方も考えといてやるよ。ただし、高いがな」
「考えておく」
「迷うことないのね!おにいさまに手伝ってもらえばすぐ終わるのに」
……なんだってェェェェ!?
177 :
ゼロの兄貴:2008/05/19(月) 21:39:37 ID:aK+jA7BY
妙に聞き慣れない言語がシルフィードから飛び出たため、タバサとプロシュートの思考が同時に一瞬止まった。
「……おい、てめー今なんつった」
「手伝ってもらえばすぐ終わるって言ったのね」
「違う、その前だ」
「きゅい?おにいさま?」
「それだ。どういうこった、ええ?第一オメー幾つだ。どう見てもタバサより年上だろお前」
兄貴ならともかく、『おにいさま』と呼ばれたのは人生初めてだ。しかも、自分より明らかに長生きしてそうなナマモノにである。
「だっておねえさまの他にお話してもいい人だし、だからそう呼ぶって決めたの」
「わたしは話してもいいとは許可してない」
「きゅい……でも、失敗は前向きに生かさないとダメだと思うのね」
「オメーまでリゾットみたいな事言うんじゃあねぇよ。で、歳は」
「よく覚えてないけど200歳ぐらいだったと思うのね」
「200!?オスマンのジジイと同じでババァじゃねーか!」
「きゅい!?おにいさま酷い!人間と竜は寿命が違うのに!」
人間としての的確な突っ込みにシルフィードが竜として抗議したが、そこにタバサが付け加えてきた。
「竜の200歳は人間で言うと10歳ぐらい」
「……14〜5秒ってとこか」
「……なにが?」
人間一人寿命寸前に追い込むのに一秒程度だが、竜相手だとそのぐらいかかるという事だ。
火でも吹いてくれれば別だが、やはり竜は敵に回したくない相手というところだろう。
「オメーがタバサ以上にガキってのは分かったが、もう少しどうにかしろ。気が抜ける」
「嫌なの?それじゃあ…美味しそうな食べ物っていう意味の…『生ハムさん』ってのはどう?」
「それはマジで止めろ」
そのままじゃねーかと言う突っ込みは置いといて、『生ハム』とそのままの意味で呼ばれるのは遠慮願いたい。
ペッシを魚料理、リゾットを雑炊、メローネをメロンと呼ぶようなものと思えばご理解頂けるだろうか。
「それじゃあやっぱりおにいさまなのね」
「……あー、もう好きにしやがれ」
生ハムと呼ばれるより幾分かマシだとしたが、少しばかりペッシとデルフリンガーが懐かしくなってきた。
まぁ、シルフィードの声で兄貴と呼ばれるのもどうかと思わないでもないが
とりあえず悪い方向に転んでは無いので少なくとも当面それで妥協する事にした。
プロシュート兄貴――人外の舎弟?二匹目ゲット!
アニキを支援した!
179 :
ゼロの兄貴:2008/05/19(月) 21:41:38 ID:aK+jA7BY
避難所で希望が出てたのできゅいきゅいに言わせてみた。
気が付いたら、初投下から一年だよ…
初期の見直してみると飛びたくなってくるな…
さびしいよぉぉ〜〜〜他の人も…投下…待ってます……
兄貴待ってたよぉ〜〜〜!!!
今回も相変わらずカッコよかった、GJ!!
兄貴GJ!!!
もう一年もたったのか・・・・
GJ!&乙!&一周年オメ!
この持続力、オレも見習わんと。
兄貴GJ!
プロシュートおにいさまと来たか!
きゅいきゅい可愛いよきゅいきゅい
兄貴ィィィィィ!やっぱりゼロの兄貴はすげーや!
兄貴来た!投下乙であります!
兄貴の人、投下乙!
だがしかし「テーレッテー」は自重しるwww
神の左手ガンダールヴ。勇猛果敢な神の盾。左に握った大剣と、右に掴んだ長槍で、導きし我を守りきる。
神の右手がヴィンダールヴ。心優しき神の笛。あらゆる獣を操りて、導きし我を運ぶは地海空。
神の頭脳はミョズニトニルン。知恵のかたまり神の本。あらゆる知識を溜め込みて、導きし我に助言を呈す。
そして最後にもう一人……。四人目か………なかなかのパワーと能力だ
我が生きていた時代には三人しかいなかった……
車www
トキィ
/´〉,、 | ̄|rヘ
l、 ̄ ̄了〈_ノ<_/(^ーヵ L__」L/ ∧ /~7 /)
二コ ,| r三'_」 r--、 (/ /二~|/_/∠/
/__」 _,,,ニコ〈 〈〉 / ̄ 」 /^ヽ、 /〉
'´ (__,,,-ー'' ~~ ̄ ャー-、フ /´く//>
`ー-、__,| ''
, -'''''''''''''''- ,,,
/ ̄ \ \
/ ) 丿 ヽ ) ヽ
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l lゝ( ( ) ヾヽ |
| ノ ヽ ( )ソヽ l
ヽ ( ヽ l
| | /ニ-_、、 _,,,-ニ=ヽ | |
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i l
l / ( ) \ l
ヽ ( ←ニ ニ→ ) /、_
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l l 、` ´ `'''l ( __,,,,.. ll | /
l /,l 、 `'''┬'´ l ̄ )' ,'\ | |
l /, , l,、 `'' ┬ヽ ;;;,,, ├'─''''' 、´' , ',', 丶 l l
/',',',', -''''''''´ ヽ '';'.. `''-,,,,, l ' , ' ,' ,' ,丶-,,,,、 l
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|,' ,', ,' , ' | ヽ ' \ ,' , ', , ', , ' , ' ,l
|, ' ,' , ', / ヽ \ ' , , ', ' , , ',|
ヽ' , ,' , / ヽ ヽ , ' , ', へ
丶,,,,/ \ ヽ ' , '/;;;;;;;\
ヽ ',, `'''''''´;;;;;;;;;;;;;;;;;
_y〜ーヽ,
f ̄/^^^ヽ }
ヽ 〉 _,y 'ーV
ヾ|., ゚,パ.イ
ヽ, ,石、l
ト.ー人_
_,.ノ| r‐ ⌒ヽ
,.へ ,r''´ ⌒ l
{三ヽ { 、 i ,_, 彡i |
V三ト、{ ト ノミ;," }、 ,イ
V三三ト、√ / ヾ i
V三三三\ ミ / ', ミ;
V三三三三\ / } l
V三三三三三トY l l
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l三V三三三三} l ,'
|三 }三三三三’ ,.ノ .,'
|三/三三三ノ 〈y .〉
||レ三三三'´ '〜'
レ三三三'
/三三ニ/
V三三/
ト三三ト、
┏┓┏┳┓ |ニト三;∧ ┏━┓┏┓
┃┗┻╋┛┏━━━━┓┗━┛┃┃
┃┏━┛ ┗━━━━┛┏━━┛┃
┗┛ \ト三三l;; ┗━━━┛
\ト三l
ドーン!ドーン!
暫く見てなかった間に何がwwww
ジョインジョインからドーン!とか混沌とし過ぎだろwwww
エガちゃんがスタンドに目覚めたらとんでもないのを出しそうだから困るw
投下しても構いませんねッ!
スタンド名:オンリーワン・レジェンド
股間の大砲が火を噴くぜ!
支援
第三話(19) 過去からの復讐人形
ここはシルフィードの背中の上。
ラグドリアン湖の付近にあるタバサの実家から、
仇であるガリア王ジョゼフのいるヴェルサルテイル宮殿に向かっているところである。
そこで二人は、宮殿についてからのことを再度確認をしている。
特にその中で行動として重要な、復讐の前に王位を継承すること。
初めのうち、タバサはジョゼフを殺害して、王座を奪うものだと思っていた。
しかし、打ち合わせの内容を聞いて、それはジョゼフから正当な手順を踏んでの継承であることを認識した。
ただその具体的方法をプッチは話さない。
タバサは、あの伯父王が自分に王位を継承させることは、
普通に考えてありえないことではあると思ったが、何らかの方法があるのだろうと口を挟まなかった。
けれどもそのことに、表情にあらわれない程度に少しばかり落胆した。
なぜなら、その様なことをすれば、復讐はその分だけ遅くなる。
母が元の母に戻り、後は父の仇をとるだけであると、そしてそれは協力者によって早く、
加えて確実に成すことができるのであると、
なんともいえない心中で心待ちにしていたタバサにとって、少しばかりそれが遅くなるということは、
せっかくのチャンスが遠ざかって、
そのまま消えてしまうようにも感じられたからである。
だからといって取り乱したりするタバサではない。
どちらにしろ、実際は遠くない未来に確実に復讐は達成されるのだ。
また、タバサは国内のことも考えさせられた。
タバサ自身、復讐に関して頭がいっぱいで、王座につくということを、復讐を成功させるための、
プッチの計画を手伝うという条件の一部であり、過程としてしか考えが及んでいなかった。
千載一遇のチャンスに、いつもの冷静さがほんの少しかけていたとしか、言いようがない。
いくら王座につこうとも、国内が混乱していたのでは計画の協力も100%できるとも限らなくなるからだ。
それにジョゼフ派の人間によりどのような妨害をうけるかはわかったもんじゃあない。
だからこその正当な継承なのである。そのことをタバサはプッチに諭された。
俺にも支援させてください
sien
一方、ジョゼフは悩んでいた。
あのアンリエッタが率先して神聖アルビオン帝国を承認したばかりか、
予期しない状況でのゲルマニア皇帝との婚約の破棄、
それに伴った女王への即位等、全く予想だにしなかった出来事が立て続けに起こったからである。
しかもそれだけでなく、貴族派とともに王党派狩りに乗り出したのだ。
何が何だか全くもって意味不明。
当のジョゼフの予想及び計画ではこうなっていた。
諸外国が神聖アルビオン帝国を仕方なく承認し、不可侵条約を締結する。
その後、アルビオンによる条約破りのトリステイン侵攻に対し、
アンリエッタが先頭をきって指揮をとり、アルビオンと戦争が開始される。
しかしそれは完全に外れたのだ。
また、シェフィールドを通してわかるアルビオンの現状をみても、
ジョゼフの意に反した行動は何一つ行われていない。
知る限りではクロムウェルも相変わらず掌で踊らされ続けている。
よって、予想及び計画が外れることはありえないことであるはずであった。
寧ろその為に、尚更ジョゼフを悩ませる種になるのであったが。
その頃、宮殿に到着していたタバサとプッチは、すれ違う衛兵やメイジ達の視聴覚や記憶等を抜き取り、
誰にも気付かれず着実にジョゼフが現在いるところにまで向かっていた。
そしてメイジ達の記憶から探った、ジョゼフがいるとする場所に入ろうとした瞬間、
そこからちょうど女性が退出しようとしていた。
モリエール夫人だ。
モリエール夫人はその侵入者に気づき、反射的に声を出そうとするが、
扉の奥に引っ張られて、そのままDISCを抜かれてしまう。
それにジョゼフは反応した。
「何奴だ!」
杖を持って立ち上がり、その扉に向きなおる。
そこで扉からタバサが出てくる。
ジョゼフは遂に業を煮やして復讐にきたか、とそう思う。
そして声を出そう、という、その瞬間に出てきたもう一人の人物の姿をみて、
言おうと思っていたのとは別の言葉を紡いでしまう。
「貴様は処刑されたはずの……」
それはプッチである。
次の瞬間、ホワイトスネイクによって投げられたDISCが突き刺さり、
ジョゼフは気が遠退いていった。
しえん
時はFFが召喚されるよりも前。
ジョゼフが自分の部屋に戻ると一人の男が倒れている。
ジョゼフが目に見えない何かに惹かれるようにその男に近づくと、
男は急に目をひらき、ジョゼフに向けて手をつきだす。
「おい!衛兵!!」
咄嗟にジョゼフは衛兵を呼ぶが、
その瞬間に男の腕から出てきた見えない何かによって記憶のDISCを抜かれてしまう。
「ここは……いったい!?」
その男、プッチは、そのままそのDISCを自らの頭に突き刺す。
すると様々な情報が流れてくる。
ここが地球ではない、ハルケギニアという大陸の、ガリア王国の宮殿で、
目の前の男は暗愚を演じているその国の王であるということ。
加えて虚無についての情報及び自身が虚無の担い手であるということ。
様々な情報をプッチは読み取っていき、
最後にこの王が衛兵を呼んだことを理解するとDISCをもとの頭に戻した。
衛兵たちを始末したり、逃げたりすることは不可能ではないと考えたが、少なくとも相手は王で、
ここが宮殿であることを考えると、いろいろと騒ぎを大きくすると後々動きにくくなるであろう、
と考えて、その場に立ち止まった。
「何事ですか!!」
その十分ともいえるタイミングで衛兵たちが入ってくる。
そこに広がる光景は倒れている王と、その傍らで立ち尽くしている見慣れぬ男が一人いる。
「貴様ぁ!そんなところで何をしているッ!」
衛兵たちはすかさず男を拘束し、部屋から引きずりだしていく。
その間、プッチは現在自分に対して行われている事ではなく、
数々の疑問の幾つかに考えをめぐらせていた。
一つは、無意識に使ったスタンドが、
メイド・イン・ヘブンではなくホワイトスネイクに戻っているという点について。
これについては、エンポリオにケープ・カナベラル以前に倒されたことが原因だろう、と仮定した。
もう一つは、この地球ではないハルケギニアなるところに飛ばされたことについて。
こちらは、この地で天国に到達せよという、主の思し召しだと考えた。
最後に、天国への到達方法。
この世界にDIOの骨が飛ばされているかは不明である。
だから捜してみようとも思った。
けれども、そうでない場合も頭に入れておかなくてはならない。
もし飛ばされていなかったら……。
し・えーん
この世界にも、他の代用になりうるものが存在するに違いない。それを利用する。
そうでなければ天国に到達することが不可能だからだ。
それは信仰のなせるものなのだろうか。
確実に代用があるであろうと心のどこかで確信していた。
プッチは頭の中の、先程の"愚王"から仕入れた情報に総ての思考をめぐらせた。
主は、私を天国に到達させるためにこちらにとばしたのだ。ジョースターのいないこの地に。
だから必ず何かを用意してくださっているはず。
そして考えの行き着いた先は、代用となるもの、それはつまり神聖なもの。
神聖なものは自分を押し上げて、天国に到達させてくれる。
この地で神聖なるものはブリミル。
そしてその力である虚無!
つまり虚無の能力であるそのDISCが、天国に導いてくれるだろうと。
しかし、ジョゼフの記憶を読み込んだとき、彼は伝説の使い魔のうち一体しか得ていなかった。
要は虚無は分散して、伝説の使い魔四体がそれぞれの虚無の主人を持っていることを推測した。
虚無は王家の血を引くものの中から現れる。
ただ、何回も王宮やそれに準ずるようなところに進入するのは、非常に骨の折れることである。
しかも、今すぐ抜き取ることのできるであろうジョゼフが現在いるところは、ヴェルサルテイル宮殿。
こんなところで何か罪を犯したら、虚無を手に入れるどころか、
虚無を捜すために各国の王族等に近づくことも困難になってしまう。
だから、この封建的な世界の仕組みと政情をうまく利用して、ことをなそうと決心した。
程なくして、プッチは地下牢に叩き込まれる。
こんなところを抜け出すことはプッチにとっては容易いことだ。
加えて、先程の思考の時間に罪を犯さずして逃げ出す方法も考えてある。
「ホワイトスネイク!私にDISCをッ!!」
ホワイトスネイクが即座にDISCを出し、
去っていこうとする衛兵二人の頭に投げて突き刺す。
すると衛兵の一人は先程閉めたばかりの牢の鍵を開き、もう一人は自害した。
「な、何なんだァァァァァ!!」
「ヒェェェッェェェェ!!!」
突然の意味不明の出来事に他の囚人たちが騒ぎ出す。
だが、その周りの雑音を気にもせず、鍵を開けた衛兵がそのまま、自害した衛兵の首を落とした。
この行為に他の囚人たちは更に混乱を強めていく。
そこでプッチは漸く牢から出ると、
液状化したホワイトスネイクの能力を地下牢全体に発動させる。
そして目的を達し、プッチは地下牢から去っていくのだった。
このあとジョゼフに伝達が来る。
先程侵入した男が、牢屋の手前で暴れたので、已むを得ず衛兵が処刑したと……。
しえんすた
宮殿から去って再び戻るまでに、他にもいろいろなことがあったのだが、それはまた別の項で語られるとして、とにかく現在に至る。
そして今、王都リュティスを中心に、あることが騒がれている。
現王の弟オルレアン公の忘れ形見、シャルロットが、愚王ジョゼフから王位を継承すると言う話だ。
近々式典も行われるらしい。
お偉い方々が他国からも祝いに来るという。
この話が民衆に騒がれている裏で、プッチがどのような動きをしているのかは、誰も知るよしも知られるよしもないのであった。
to be continued…
F・Fの職人さん乙&GJです
プッチプッチプッチィィィ異世界に行っても天国目指す狂信ぶりに痺れる憧れるぅぅぅぅ
投下終了です。
次回あたりで胸革命が登場予定。
なので原作8巻〜を復習してきます。
支援は私に勇気をくれる!
ジョインジョイントキィ
ゼロいぬって1話でサイトが出てるんだが…インフレについて来れないんじゃね。
一話の最初は未来の話だろ
周りがどいつもこいつも黄金に変化してるんで初期サイトじゃ付いていけないってことじゃまいか?
ルイズも成長してるし下らない喧嘩とかは無くなりそう
立場的には、むしろペッシに近くなると予測w
いや第四部初期の億泰じゃないか?
瞬間移動してきた鉢植えに頭ぶつけて気絶したw
九時から投下したいんですが、構いませんねッ
投下した!なら使ってもいいッ!
どうぞどうぞ
舞踏会から数日後、朝早くにルイズは一人広場へ向かっていた。
そろそろ身支度をする生徒や一足速くアルヴィースの食堂へと向かう生徒達とすれ違うルイズの表情は浮かないものだった。
朝食は出ないが、先に向かい紅茶やワインなどを要求できないこともない…
ルイズが今一人で広場に向かっているのは新しい使い魔を召喚するためだった。
使い魔は原則的には一度契約したら死に別れるまでメイジのパートナーになる。
その儀式はとても神聖なものとして扱われているけれどエルフとの戦争を始め、使い魔が死んでしまう事っていうのは前例が無いわけじゃなかった。
ポルナレフとは舞踏会の後も余り話せていなかった。
ルイズの方はそれとなく探してみたのだが、ポルナレフの方がその状態になかった。
まだマチルダが亀の中にいるというのもあるし、再会するまでの間に起きた出来事についてポルナレフはジョルノと話し合わなければならなかった。
イザベラとの一件を見ていただけにギャングの話は、激昂するマチルダを抑えながらでも最優先で話し合わなければならなかったのだ。
そんなポルナレフにジョルノが話したのは、麻薬だけでは金がすっからかんになりそうだったんで表の事業を広げているだとか、人材のスカウトと育成に忙しいとか、そういう話だった。
本当はそれだけではないだろうなとはポルナレフも思っていたが、今はジョルノを信じて確かめない事にしていた。
その場には、仕事を覚えようと張り切っているテファもいたから話にくいだろうと、ポルナレフは年上の余裕でもって察してやったのだった。
実際、この時はそれは外れてはいなかった。
スカウトした人材にこの学院のコルベールや卒業する生徒も入っているとか昨夜は幹部を拷問しましたなんて言えるわけも無い。
だがそんなことはルイズの知る由も無い事で、主人をないがしろにするポルナレフに対して更に怒りが沸いていた。
あの馬鹿、優しいご主人様がどうしても使い魔になりたいっていうなら許してあげようかと思ったのにどこで油を売ってるのかしら?
そんなことを考えながらルイズが広場の傍まで来ると、なぜか目の下に隈を作ったマリコルヌがいて冷めた目で見下していた。
今までにも嘲笑われた事はあった。
ルイズのコレまでの人生はそればかりだったが…でもそれとは違うように、その時ルイズは感じた。
ゼロ(魔法が使えない)だからとかじゃあない、汚らわしいものでも見るような目だった…!
目の下の隈だけじゃない、脂肪たっぷりで気付かなかったけど良く見ればほんのちょっぴりこけた頬。
細い目でルイズを見下ろしながら、そのでぶは言った。
「なんだい? 視界に入ったからただ見下していただけなんだけどな」
「あんたなんかに見下されるいわれはないわッ! 大体、どうしてアンタがここにいるのよッ!!」
そう聞いた瞬間、マリコルヌの目が鋭い輝きを放ったようにルイズは感じた。
「僕のクヴァーシルが殺されたからだ」
簡潔に言ったマリコルヌはルイズを相変わらず見下ろして言う。
一気に十年以上も年を取ったような声だった。
「一つ言わせて貰うなら…(これは僕が使い魔を召喚する時の為にお爺様から聞いた話なんだけど)
優秀なメイジの中には最初はまだ未熟で使い魔を制御できない人もいるんだ」
「そんなこと、アンタに言われなくっても知ってるわ」
そんな事はルイズもこの学院に来て魔法を覚える為に自分で学習する過程で知っていた。
才能のあるメイジの中には、稀にはその時は未熟であるにも関わらず幻獣、例えばタバサのようにドラゴンを呼んでしまった場合もある。
使い魔は主人のいいように記憶を、脳内の情報全てを変えられる。
その効果は時間が経つにつれ強くなり、最後は一心同体となる。
だが高い知能を有する使い魔を呼んでしまった場合、すぐには認められないことがある。
極端な例を出すなら、犬っころを召喚したトライアングルの横でドラゴンの自分がドットの使い魔であることに不満を覚え反抗したりする。
それもルイズ達の見えないところでシルフィードがタバサに不満を言ったりする程度からそれ以上までだったが。
だが…
「その人達は自分を磨いて使い魔に自分を認めさせようとするけど、ゼロのルイズは新しい使い魔を呼ぶ。僕のクヴァーシルを殺した水のメイジが同じレベルのメイジなら楽なんだけどな」
油の浮いた唇を歪ませてマリコルヌはルイズに背中を向け、新しい使い魔を召喚しに行く。
マリコルヌにはクヴァーシルは氷に、ウィンディ・アイシクルのような魔法で殺されたことだけは感覚としてわかっていた。
夜の森に散歩に出ていたクヴァーシルに何があったのかはわからない。
殺されるような理由があったかどうかも、なにもわからないがマリコルヌにはわかる必要も無かった。
ただクヴァーシルのものと思われる食い荒らされた遺体がマリコルヌの瞼に浮かんでいた。
普段どおり手元においておけばあんなことにはならなかった…
あの夜。夜の森には危険な動物もいるのにそんなことは考えずに今夜は舞踏会だしと、マリコルヌは羽目を外してしまった。
歯軋りをするマリコルヌの心は復讐へと傾いていた。
追悼する気持も無く悲しみを一人で整理する事も出来ず、マリコルヌはまだ見ぬ加害者を憎む事だけに専念していた。
そうしなければ、マリコルヌは精神のバランスを保つ事ができなかった。
ルイズへ吐いた言葉は、氷で殺されたから多分水のメイジと言う推理を正しいと信じ、学院にいる水のメイジ全てに懐疑の目を向けるだけに飽き足らず、
はけ口を求めわかったようなふりでその刺々しさをルイズに向けて撒き散らしているだけだった。
暴走が水のメイジとの仲を悪くすることには無頓着になり、ペットショップからは逆に離れていく事にはマリコルヌは気付けなかった。
そんなマリコルヌに見下されたルイズは、反感を覚えると共に酷くショックを受けていた。
一理ある。そう思ってしまったからだ。
魔法を使えることを証明し、皆に認められたい…だが、使い魔に認められず騙されたまま新しい使い魔を召喚して、はたしてルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは真に貴族と呼べるだろうか?
正しく…ルイズが今までに培ってきた正しいと考えるオーソドックスなメイジのイメージが、ルイズにそんな疑念を抱かせていた。
ルイズは疑念に囚われ使い魔召喚の儀式に向かう足を止めた。
新しく使い魔を召喚する羽目になったのはルイズの責任ではない。
元の飼い主が現れたし、亀の中の人に騙されていたし、そもそも契約も結んでいないのだ。
客観的にルイズは全く落ち度は無い。
他人が聞けばそういうだろうが、しかし…とルイズは思ってしまうのだった。
だが母ならこんなことには、と。
自分がゼロだから、こんな情けないことになっている…そうルイズは考えてしまっていた。
「あらルイズ。貴方まだこんな所にいたの?」
自慢のフレイムに乗り、隣室の(実家もお隣の)ツェルプストーに話しかけられ、振り向いたルイズの表情には迷いが浮かんでいた。
ポルナレフともう一度話し合うことを勧めに来たキュルケは、迷っているルイズの意地っ張りな性格を突付きにフレイムをルイズの所に進ませた。
宿敵であるツェルプストーの人間から言われた言葉に、ルイズは反発してしまうかもしれないと思ったが、キュルケはルイズを説得せずにはいられなかった。
*
支援するッ!
ところでそのルイズの使い魔だった男。
パッショーネ所有の亀ココ・ジャンボの中で眠っていたジャン=ピエール・ポルナレフ(享年36歳)は、金的に加えられた男性にしか理解できない強烈な衝撃で目を覚ましていた。
とてもいい夢を見ていたような気がする。
それは最愛の妹と暮らした日々だったかもしれない。
カイロへ向かうつらい旅の夢だったかもしれない。
だが、それが突然…言葉にできない痛みと共に現実へと連れ戻された。
「お…gッ」
痛みだの激痛だのというチャチなもんじゃない。
身もだえする事も出来ず、ポルナレフは床をのた打ち回る。
声にならない悲鳴を上げながらどうにか周囲を見回したポルナレフの視界に、グンパツな足が入った。
「何でアンタがあたしの横で寝てるんだいッ!!」
「………あ、姉さんが昨日俺に愚痴とか苦労話とかテファとの話とかをしてそのまま酔いつぶれたからだ」
「…え?」
丸くなりながら、ポルナレフはそれだけ言った。
妹を不本意な形で取られたマチルダは、学院にいる間は亀の中から出られないという事情もありストレスが溜まっていた。
ポルナレフは年上の男性として、それなりの人生経験からそれを察しストレス発散にと酒を飲みながら話を聞き、そのままマチルダは酔いつぶれたのだったが…
青い顔で蹲るポルナレフをマチルダはばつが悪そうに見下ろす。
なんでココにいるかとか、昨夜どうしていたかとか、冷静になり思い出したマチルダはポルナレフの背中を摩りはじめた。
「わ、悪かったね」
何か返事をしたいが、先程の返事だけでポルナレフの体力は限界を迎えていた。
痛みなどという段階を超越した苦しみに悶えながら、ただ痛みが引くのを待つしかない。
なんで魂だけなのにこんなに痛いんだよッ!!とか色々と疑問も浮かんだが考える事なんてできるわけがないッ!!
それでも返事を返そうとしたポルナレフの口からうめき声があがる。
びっくりして思わず手を退いたマチルダは、更にもっとばつが悪くなりポルナレフの背中を笑顔で摩り続ける。
テファ達と朝食に向かう前に亀の中へと入ってきたジョルノは、そんな光景に出くわして…
絨毯に蹲ったまま空気の動きに気付き顔を上げたポルナレフと目を合わせた。
ポルナレフの体勢、マチルダの態度。
何より脂汗をたっぷり流し、笑顔を浮かべようとして失敗するポルナレフの切ない目が、何があったのかを雄弁にジョルノに伝えていた。
ジョルノは何も言わずに首を振ると、後で食事を亀の中に入れることを簡潔に次げて背を向けた。
ポルナレフはまた限界に達し、顔を伏せた。
「ああ、そうだ。ポルナレフさん」
「…?」
男の尊厳が砕けたかもしれないと本気で心配をし始めながらポルナレフは、背中を摩られながらジョルノを見る。
さっさといけよと八つ当たり気味に目を細めるポルナレフにジョルノは嫌味なほど爽やかに笑っていた。
「テファの事は、この際です。礼を言っておきます。ありがとう。お陰でテファの事は知られていないようです」
「き…きにす、すんな。俺が好きでやったことだから、な」
亀から出て行くジョルノを見送り、ポルナレフはまた蹲る。
状態は最悪だったが、先日テファを手伝った事が無駄ではなかったので気分は良かった。
「お待たせしました。じゃあいきましょうか」
「う、うん。姉さん、まだ怒ってた?」
「いいえ、ポルナレフさんと仲良くなったようですよ」
それは少し違うと言いたかったが、ポルナレフは歯を食い縛るので精一杯だった。
支援だッ!
俺も蹴られたい
ジョルノが、いつか約束した通りテファとタバサと共に食事しながら、ヴァリエール家を始めとする懇意にしている貴族達や、商売相手からの手紙を読む頃。
「食事中は、止めた方がいい」などとタバサに窘められ、カトレアからの甘ったるい…しかし少なからずヴァリエール家の内部情報を含んだ手紙に目を通している時、二人が新しい使い魔を召喚することを聞きつけたのだろう。
ルイズとマリコルヌの新しい使い魔を見ようとしてか、暇そうなな学生達が何人か広場にはいた。
マリコルヌだけでなく、一旦は思い直しかけたルイズもいる。
キュルケの説得は、逆の効果をルイズに齎してしまい、ルイズは「別に新しい使い魔がいてもポルナレフに認めさせることはできるんじゃねーの?」と思い至ってしまった。
ルイズとマリコルヌは彼らと頭部からの照り返しがまるで太陽を雲で遮られたかのように和らいだコルベールに見守られながら、魔法を唱えはじ…
「あの、ミスタコルベール」
思わずルイズは尋ねようとした。
その頭部を見つめながら…コルベールは凄くイイ笑顔をしていた。
「なんですかな」
「頭「なんですかな?」い、いえ…」
笑顔のコルベールの凄味に負けた二人は同時に召喚を開始する。
魔法が失敗した時と同じようにルイズが唱え終わるとほぼ同時に爆発が起こった。
巻き上がる砂埃に紛れ、既にそんなことには慣れきっているこの場に居合わせた者達の目には二つの物体が吹き飛ばされ、広場に転がっているのが見えていた。
一匹は愛らしい子鳥。爆発に巻き込まれ羽は汚れ、気絶してしまっている。
もう一人は華奢な、変わった衣服を身につけ四角い箱を後生大事に抱えた人間の男。
こちらは気絶してはいないようだが、まだ状況がつかめないのが動けないでいた。
…ルイズは目を見開き、そして迷うことなく小鳥の前で膝を突き、口付けて契約を終えた。
そして誰かが口を挟む前に、鋭い声を発してコルベールに報告する。
「ミスタコルベール!確認を「ちょっと待て!?どう考えたってそれ僕の使い魔だよ!」
一歩遅れたマリコルヌの叫びをルイズは鼻で笑った。
手の中に納めた自分の使い魔を撫でながら、ルイズは言う。
「何バカなこと言ってるの?既に…ここにある確かなルーンが見えないのかしら?そうですよね。ミスタコルベール」
「ヴ、まあ…そ、それはそうだけどね?」
「で、でも…」
さっき嫌味なんか言わなきゃよかったと考えないでもないマリコルヌに目もくれず、ルイズは爆風で乱れた桃色がかった髪を手で梳きながら立ち上がる。
誰も、何も言えない。
もう契約は為されてしまいルイズに他の使い魔を与えるには小鳥を殺すしかない。
だがそれは流石にはばかられたし、この後マリコルヌがどうするのか皆着になっていた。
そんな中をルイズは堂々と小鳥を連れて広場を後にし、まだ気絶している人間とマリコルヌが…その場に残された。
マリコルヌは救いを求めコルベールを見る。
コルベールは何も言わず、首を振った。
使い魔が死んだら仕方が無いし、契約が済んでいない使い魔に持ち主が現れたら…まぁある意味仕方ないだろう。
神聖な儀式とはいえ、いや神聖だからこそ他人のペットを強奪して使役するなどという前例は残したくない。
それらのケースと召喚された使い魔が気に入らないからもう一度召喚させてくださいというのを同列に扱うわけにはいかないのだ。
そんなことを許可してしまえば、極端な事を言えば自分の気に入った使い魔が出るまで召喚を行う生徒だって出るかもしれない。
可能性の問題だが、それで毎年二回、三回と召喚をやり直す生徒が出てしまうような前例を残すわけにはいかない。
コルベールは、せめて速く終るようにとまだ状況がつかめていない見慣れぬ服装をした少年を拘束する。
余りの哀れさに、コルベールは溢れてくる涙を止める事が出来なかった。
だがしかし…それでも、心を鬼にして混乱する少年を拘束しなければならなかった。
ズッキューンッ!!
「や、やった! 流石風上のマリコルヌッ、俺達に出来ない事を平然とやってのけるゥッ!! そこに痺れる憧れるゥッ!!」
かなり奇妙な何かが重なり合った音と、おぞましい身も毛もよだつ絶叫。そして全くしゃれになってないが、茶化すような言葉が広場に響いた。
あ、ありのままいまおこったことをせつめいするぜ。
あきばからのーとぱそこんをかかえてかえろうとしたんだ。
そしたらとつぜんめのまえにかがみがあらわれてどこかにいどうしていた。
いつのまにか、からだはこうそくされていてまんとをつけたがいじんのでぶにきすされた。
…な、なにをいってるかわからねぇとおもうがおれにもなにがおこったのかわからなかった。
はじめてのきすはすきなおんなのこととかれもんのあじとかそんなあまずっぱいもんじゃだんじてなかった。
もっとおそろしいもののへんりんをあじわったぜ?
To Be Bontinued...
投下乙です
……これって結局ルイズが墓穴を掘ったってことにならんか?
小鳥がガンダになってどーすんだw
サイトカワイソス
この場合ガンダールヴになるんだろうか?
投下乙でした
以上です。
次からは新しい使い魔と一緒にやっとアルビオンに進むことになります。
支援ありがとうございました。
ガンダールヴの能力を持たないサイトが活躍するには…。
現在ジョルノ所有の『アレ』を使うしかないんじゃあ…。乙。
乙ゥ乙ゥ!
ノーパソ抱えてるんでベイビィフェイs(メメタァ
どうなるんだろ?
まだ契約してなかったらジョルノについていって、ポルから剣技の指導を受ける展開もありだが
デルフの出番が近づいてきたかな
>>235 残念ながらキスしているようです
お気の毒です…
まあこのままマリコルヌと、スク水にセーラー服談義に花を咲かせつつ
シエスタと共に下働きするのもいいかもしれん
問題は小鳥連れてアルビオンに逝かなきゃならんルイズの方のような
才人に合掌。ルイズにも合掌? 何よりクヴァーシルに合掌。
それはともかくジョルノの兄貴ィ(血統的な意味で)はスゲーや!
オレも十分後に投下します。
一章八節 〜ゼロは頭を下げない〜
リキエルには考えがあった。その考えとは、『逃げる』ことだった。
奇妙なことだが、この逃げるという発想は、自分の肉体に脈々と流れる何かによって
引き出されたものであるように、リキエルには感じられた。それほど自然に、この考え
は浮かんできたのである。
ただ、それも仕方のないことだとリキエルは思った。魔法の万能性は授業で目にした
通りで、その気になれば大の大人一人いたぶる程度、朝飯前どころか断食していても軽い
ものに見えた。そして平民相手となれば、貴族は力を振るうのに躊躇しないだろう。
まともにやり合おうなどという考えは、初めからリキエルにはない。言いがかり同然の
理由で、怪我などさせられてはたまらなかった。ともすれば、逃げる以外に選択の余地も
無いのだ。呼び出しを無視されたギーシュは輪をかけて激怒するだろうが、逃げ切れれば
問題はない。損するばかりのものごとに自分からぶつかって行くのは、伊達か酔狂か、は
たまた馬鹿かである。
そういうことで、食堂を出たリキエルは、シエスタに言われたのとは逆の方角へと向か
っている。食後の胃袋が驚かないよう、心がけて走った。
暫くすると、開けた場所に出た。そこは広場で、中庭になっているらしかった。芝生が
よく刈り込まれており、片隅にはベンチも置かれている。森閑として、それこそ人がいな
いことを差し引いても静かな場所だったが、それはそれで、いい意味で寂れた趣がある。
ただ、惜しむらくは少々日の当たりが悪いことだ。場所が悪いというのもあるだろうが、
広場を挟んで屹立する二つの塔が、多少なりとも差し込むはずの光も遮っているらしかっ
た。その影になっているのである。
それでも、基本的に落ち着いた雰囲気の漂う場所なので、来る時間帯を選ぶか、季節が
移り日が差すようになれば、散策にはうってつけの場所になるだろうなと、リキエルは呼
吸を落ち着かせながら思った。
リキエルは広場を横切って、ベンチに座り込んだ。その周辺と広場の中央付近だけが、
陽光の温もりを思うさま享受していた。影と光の境界は曖昧に飽和して、それは一種神秘
的な現象にも見えてくる。日当たりが悪いのは、実はこれを計算に入れたものかも知れな
かった。
リキエルはここで、ほとぼりが冷めるまで待つことに決めた。
◆ ◆ ◆
――ふ〜ん。仕事は、さぼらず、やった、みたいね。
枠の一部ごと吹き飛んだ窓から、強めの風が吹き込んでくる。寒々しくはなく、むしろ
春を感じさせるようで、肌に心地よいものだった。
―洗濯も、やってた、みたいだし。仕事は、してる、のよね。
時折、そんな風の流れに乗って、端唄でもさえずっているような鳥の声が運ばれてくる。
学院に巣でも設けた輩か、それとも、冬が去る代わりに飛び出してきたものだろうか。
――でも、だけど、なんで、いつも、食事時に。
ただ、冬の名残ともいうべきものも随所に見られるようだった。霜柱が溶けて、溶けて
はまたできるを繰り返すうちに、ぬかるんでしまった地面などもそれだ。
「あいつは! いなくなるの! あの牛柄は! 食事用意させたのに! 使い魔としては
考えられないくらい良い食事! 用意させたのに! 椅子まで!」
小鳥はなんなんだ?
ペットショップ以外に鳥キャラ思いつかんのだが?
移ろう季節の変わり目を、意図して気に留めようとする人間は多くない。それは人の心
が荒んでいるから、というわけでもなく、忙しいからである。忙しなく心揺らす人間は、
その揺れに振り回されて周りが見えなくなるのだろう。そういった意味でルイズは今、何
も目に入っていないようだった。
ルイズは桃色のブロンド髪を振り乱し、今朝の授業で自身が作った小クレーターに、ば
すんばすんと足を振り下ろした。
「ああ〜! もうなんなのよ! これじゃあ……!」
――わたしが、馬鹿みたいじゃない!
ルイズとて、何も喚き散らすために教室に来たわけではなかった。リキエルを探しに来
たのである。
昼食前になっても戻って来ず、食事が始まってからも顔を出さなかったリキエルを、初
めルイズは捨て置くことにした。平民が一人、昼食をとり損なうからどうだというのだ、
まして主人を放っておく使い魔には、食事抜きの罰くらい軽いものだ、と思った。
しかし、デザートが配られる頃になってルイズはふと、昨晩のリキエルの様子を思い出
したのである。もしも教室で、昨日のようなパニックを起こしたのだとすれば、流石に放
置はできなかった。
ルイズは頭に血が上るのを感じた。どうしてわたしが使い魔に振り回されなきゃいけな
いのよ! というのは、言葉にも出していた気がする。
傍目にもわかる不機嫌な空気を纏って、ルイズは誰よりも早く食堂を出た。椅子から立
ち上がるときに、隣の席のマリコルヌが驚いた顔をしていたが、ルイズは気にも留めてい
なかった。
そして、一応自分の部屋も捜索した後、教室に着いてみれば見事にもぬけの殻である。
ルイズの怒りは、心頭どこまでも巡った。
「デザート我慢してまで探しに来たのに! もしクックベリーパイが出てたら……あ、あ
ああいつ! 容赦しないわ!」
いつしか、ルイズの怒りはリキエルが失踪したことよりも、デザートを食べ損ねたこと
に対して向けられるようになっている。ただ、ルイズの脳内でボロクソにされるのは、あ
くまで元凶のリキエルだった。ばきんばこんと足を振り下ろしては、ルイズはリキエルに
そうしているつもりになって、溜飲を下げるのである。
ひとっつ蹴っては我がため〜。ふたっつ蹴っては私のために〜。みっつ蹴っては云々と、
三度三度怨嗟を込めて、ルイズは足踏みをし続けた。
「……ふうぅぅ――」
ルイズはとりあえずの怒りを発散し終え、顔にもいくらかの穏やかさを取り戻していた。
彼女の思考世界のリキエルは、釜茹でに処された後に香辛料をふられ、大蛇バジリスクの
腹におそまつさまでしたの状態である。
名を呼ばれたのは、そうしてクレーターの周りを――リキエルが片づけをしたクレータ
ーの周りを――埃だたせてから、とりあえず部屋に戻ろうと思ったときだった。
「ミス・ヴァリエール!」
その大きな声に驚いて、ルイズが首を回すと、メイドが必死の形相で立っていた。言葉
を交わしたことはないが、顔に残ったそばかすと黒髪は記憶に残っていて、食堂で給仕を
していることも覚えている。
「えぇと、確か給仕の……」
メイドが焦ったように頭を下げた。
「シエスタといいます。そんなことよりもミス・ヴァリエール! リキエルさんが!」
「……あいつが、なに? どこにいるか、知ってるの?」
ルイズの目が剣呑なものに変わった。怒りが再燃したようである。
「それが――」
しかし話を聞くと、その怒りは驚愕へと形を変え、次には焦燥へと転じた。
「ギーシュと、あいつが?」
「はい! ミスタ・グラモンがヴェストリの広場にリキエルさんを呼び出して……あんま
り時間もないし、ミス・ヴァリエールに知らせなくちゃって、私」
「ヴェストリの広場ね。わかったわ。でも、時間って?」
シエスタは複雑そうな顔をして答えた。
「リキエルさんに広場の場所を聞かれて、全然違う場所を言いました。反対の方向を言っ
たんです。少しは時間稼ぎになると思って」
「その間にわたしを呼ぼうと?」
「はい。早めに見つけられてよかった。多分まだ、リキエルさんは広場に着いてません…
…でも」
「どうしたの?」
「いえ、ただ、リキエルさんはどうして広場の場所を知ろうとしたのか、って思ったんで
す。怪我じゃすまないことはわかってるのに、どうしてリキエルさんは広場に行こうとし
たんでしょう?」
「……さあ、見当もつかないわ」
ルイズは一瞬考え込む素振りを見せたが、すぐに首を振った。そうしてから、ふいに俯
く。胸のうちにまた、忌々しい気持ちが浮かんできていた。顔も、また険しいものになっ
ている。
――そうよ。次から次へと、どうしてわたしが、どうしてわけもわからないのに、どう
してあいつのために走り回らなくちゃならないのよ。
「ミス・ヴァリエール?」
「……なんでもないわ。行くわよ、自分の使い魔がボロボロにされるのは見たくないはな
いし。そんなことになったら、あの平民またパニックに――」
言いながら、ルイズは総毛立った。昨晩のリキエルの狂態を、またまた頭の中に思い描
いたのである。話をしていただけで、呼吸もままならなくなるほど取り乱すあいつが、魔
法で折檻なんか受けでもしたらどうなるだろうか。
「ミ、ミス!?」
思ったときには、ルイズは駆け出している。仮定の話だと思おうとすればするほどに、
いやな想像はより確固としたものになっていく。振り回されていると思うには、その想像
は少し鮮明に過ぎた。焦らずにはいられなかった。
◆ ◆ ◆
「諸君! 決闘だ!」
薔薇の造花を掲げた『青銅』のギーシュが、高らかにそう告げると、広場に怒号にも似
た歓声が巻き起こった。
口々に囃し立てる貴族たちの声や、方々から聞こえてくる口笛は、ぶつかり合い、互い
の勢いを増しているようだった。それがより一層の喧騒を、常には静かなヴェストリの広
場に与えている。
右と後ろを向けば、隙間なく貴族が立ち並び、左と前を見れば、間隙の縫い目もないメ
イジの壁がある。そしてその壁の前に、満面に得意気な色を浮かべたギーシュがいた。
一通り見回しながら、リキエルは呆然と立ち尽くしている。
リキエルが最初に異変を感じたのは、広場に少しずつ人が集まり始めたときである。と
はいっても、意外と人は来るんだな、と思っただけで、ベンチに座り直しただけだった。
安心しきっていて、しばらくそこを動く気にはならなかった。メイジたちが自分を指差し
て、何事かを言い合っているのには気づいていたが、興味は向かなかったし、むしろ意識
してそれらを無視した。気にしてしまうと、パニックを起こしたときの、周囲のあからさ
まな囁き合いと、洗わずに放置した金魚の水槽のような、酷く嫌な気分になる視線を、咄
嗟に思い出してしまいそうだったのである。
リキエルがようやくそこを動く気になったのは、人がどんどん増えていくのを見て、持
ち前の人混み嫌いを発揮したからだった。そして広場の真ん中を通って、広場を出ようと
したとき、ギーシュの姿を認めたのである。
リキエルはいつも片方の目が開かないが、視力は比較的良い方だった。ブロンドの髪の
毛を揺らし、薔薇の造花を口に咥えたギーシュを、見間違えはしない。
リキエルは走り出そうとした。何故ギーシュがこの場にいるのかは知れなかったが、ど
うでもよかった。ただ、逃げるべき相手から逃げ果せることだけを考えたのである。
――しまったァアアア!?
とそのときになって気がついた。ギーシュが平民を、つまりはリキエルを叩き伏せるの
を一目見物しようと集まった学院のメイジに、周りを囲まれてしまっていた。逃げ出そう
という気は、一瞬で萎え失せた。
中には、妙にギラギラした目つきの者も居て、あわよくば自分がこの場で、この平民を
叩きのめしてやろうと息巻いているのが、分かりたくもないのによく分かった。逃げよう
とすればそういった連中が、ギーシュに代わって真っ先に自分を攻撃するだろうと、リキ
エルは思った。
そしてリキエルは今や、完全に追い詰められている。パニックを起こさないのが、リキ
エルには自分で不思議なくらいだった。
「とりあえず、逃げずに来たことは、誉めてやろうじゃないか」
「……」
ギーシュが、嫌味を含んだ笑みをリキエルに向けた。リキエルは言葉もない。ギーシュ
は不満そうに鼻を鳴らしてから、思い直したようにまた微笑んだ。貴族という身分やその
言葉の響きにはおよそ似つかわしくない、いやらしい笑い方だった。
「まあいい。では始めるか」
ギーシュは薔薇の造花を、騎士が槍を構えるようにして胸の上辺りに据えた。優雅さを
尊重したらしい、ゆっくりとした動きが、ギーシュの余裕を表している。どうやらその造
花が、ギーシュの杖になっているようだった。
リキエルは放心したようにその動きを見つめていたが、ギーシュが、これもゆったりと
した動きで造花を振り上げるのを認めて、とっさに身構えた。ギーシュが何をするかは知
れないが、むざむざやられる気はなかった。
ギーシュがスッと造花を振るうと、花弁が一枚、ヒラヒラと舞い落ちた。その花弁は、
地面に落ちるか落ちないかといったところで、女性を象ったと思しき甲冑の騎士に姿を変
えた。
「僕はメイジだ。だから魔法で戦う。よもや文句はあるまいね?」
ギーシュが言うのと同時に、周りのメイジが示し合わせたように、ギーシュとリキエル
を取り囲む輪を広げた。存分にやってしまえ、ということらしい。
「……!」
リキエルは、冷や汗をかきながらギーシュをにらみ付けた。心には、不気味に佇む青銅
の騎士への恐怖と、この状況を見世物にしているメイジたちへの怒りがあって、それは両
方とも、目の前で薄ら笑いを浮かべているギーシュに向けているものでもあった。
ギーシュはリキエルの視線を、面白いものでも見るようにして受け止める。
「言い忘れたな。僕の二つ名は『青銅』。青銅のギーシュだ。従って、青銅のゴーレム『ワルキューレ』がお相手するよ」
ギーシュの言葉が終わるとともに、ゴーレムが拳を振り上げてリキエルに向かってきた。
見た目に反して滑らかな動きをしたので、リキエルは面食らったが、驚いてばかりもいら
れなかった。
ゴーレムはよたよたとした走りで、それほど俊敏はとはいえなかったが、楽観できるほ
ど遅くもない。足を踏み出すたびにするガシャガシャという金属的な音は、はりぼてでは
あり得ない重みを感じさせた。その速さと重みを青銅の硬さで生身に受けては、ただでは
済まないだろう。
――落ち着け……。形がああなんだ。どんな風に動くかはわかるんだ。それにそんなに
速いわけじゃあない。すぐに動けばなんとかなる!
リキエルはゴーレムが叩きつけてきた拳を、飛びすさってよけた。地面を蹴る勢いが強
すぎて、うまく着地できず、蹴つまずいて背中から転ぶ。ゴロゴロと無様に転がったが、
そのまま後方回転の要領で立ち上がることができた。結果的に、ゴーレムから距離を取っ
た形になる。
「へえ……やるじゃあないか」
リキエルの一連の動きは、ほとんど偶然によって生まれたものだったが、ギーシュはそ
うは思わなかったようで、少し目を細めてそう言った。
「ではこれでどうかな?」
ギーシュは杖を振るい、二枚目の花弁を落とした。これも先ほどと同様、瞬時に青銅の
騎士へと変じる。
「一体だけじゃあないのかッ」
「初めは十分と思ったんだがね、それでも。君に敬意を表す意味で二体目だ」
リキエルは一気に青ざめた。こめかみの上あたりから、冷や汗が止め処もなくあふれて
くる。二の腕を使い、リキエルはそれをぬぐった。
前を向けば、一体目のゴーレムが右から、二体目が左側から走って来ていた。
――ど…どっちから!? え…えとまず最初にすることは…右側のやつの方が少し近いか
らッ! えと…左側によけて…いや、左側からも来てるんだから右に、いや駄目だ…どっ
ち道二体目の攻撃はよけられない!
「は!?」
考えている間に、一体目は目前へと迫って来ている。その腕が強く引き絞られるのを見
て、リキエルは言い知れない寒気を感じた。気道が一瞬で詰まり、口からは「ヒュッ」と
空気が漏れる。
「ウォオオオオ!?」
リキエルはゴーレムの拳を、体を思い切りひねる事でかわした。それはまさしく無条件
反応の産物だったといえる。ゴーレムの腕が風を切るブンッという音で、リキエルはまた
寒気立ったが、同時によけられたことを実感し、安堵した。
が、そう思ったのも束の間だった。ぞわりと別の悪寒がして、リキエルがそちらを向け
ば、既に二体目のゴーレムが、腕を突き出すところだった。
「あ」
とリキエルが零した瞬間、防ぐ間もなく、ゴーレムの拳が鳩尾の下に入る。リキエルは
そのまま吹き飛ばされ、受身も取れず芝生に叩きつけられた。
「グ、ウああああああああ……っ」
リキエルは、体をくの字に曲げてうめいた。うめきながら、舌の根のあたりまでこみ上
げてきた胃液を、どうにか飲み下す。喉仏のあたりに、焼けただれるような感触とちりち
りとした痛みが残って、しばらく尾を引いた。
二体目のゴーレムの存在を、失念していたわけではなかった。むしろ、思いがけず一体
目の攻撃をうまく避けられたため、二体目の攻撃もよけられるかもしれないという算段さ
え持っていた。だが、二体目のゴーレムはリキエルの予想以上に、迫ってくるのが速かっ
たのである。
――ちくしょう! いてェ! いてえええ……っ。ちくしょう、チクショウッ! こん
な目に! どうしてオレが遭わなくちゃあならない! オレが何をしたっていうんだ!
くそ! 土が目に入るっ。あ、汗がッ、出て! ちくしょう、何もしてないのに。それと
も何か? 何もしないのが悪いっていうのか? じゃあオレなんかに何ができるっていう
んだッ!? クソッ、目が、まぶたがッ!
パニックに陥りかけながらも、リキエルは立ち上がった。倒れ伏したまま、ゴーレムに
袋叩きにされることを恐れた。
「おやおや、立ち上がるとは思わなかったな……。手加減が過ぎたかな?」
「あ!? なにィイイ!」
ギーシュの言葉に顔を上げて、リキエルは目を疑った。ギーシュが三度、気障な動きで
杖を振り、花弁を落としているところだった。
「さて、三体目だ。どうする? 平民」
二体のゴーレムが、ギーシュの前に戻っていく。そして、新たに生まれたゴーレムを挟
んで止まった。三体の青銅の騎士が、ギーシュの前に立ち並ぶ。ゴーレムの壁に護られて、
ギーシュはリキエルに嘲るような視線を投げた。
しかし余裕の裏で、傍目にもリキエルにもわからないが、実をいえばギーシュは焦って
いる。ギーシュはただ一撃、自分のゴーレムの攻撃を与えればそれで終わると思っていた。
ワルキューレの拳を腹にでも叩きつければ、リキエルは血反吐を吐き出すか、それでなく
とも、胃の中のものを吐瀉させる程度はできると踏んでいたのである。
実際、今のパンチでリキエルは、今日一日は食事をうけつけないほどのダメージを内蔵
に受けており、立ち上がるだけで辛いほどの有様だった。
しかし、ゴーレムを使い、本気で人を殴ったことのないギーシュにはそれがわからない。
魔法への絶対の自信と貴族のプライドとで凝り固まったギーシュの目には、魔法を受けて
立ち上がる平民の姿が、何か不気味なものに映ったのである。一度ゴーレムの拳をさけら
れていることも、ギーシュの焦りを強くしていた。
ギーシュは二体目のゴーレムを出した時から、手加減などしてはいなかった。リキエル
が予想以上にゴーレムの動きを機敏なものに感じたのは、そのためだった。
「三体の青銅の乙女! その突撃を受けて、はたして無事でいられるかなァ〜?」
ギーシュが杖を振り、それに呼応してゴーレムが動き出す。左右の二体はリキエルを挟
みこんで楕円を描き、真ん中の三体目はそれに少し遅れる形で、一直線に走ってくる。や
はり初めの攻撃とは比べ物にならないほど、その動きは速かった。
リキエルはパニックへの恐怖とゴーレムのへの恐怖、そして焦りに責められた。そうな
りながらも、ゴーレムの攻撃をさけようと、必死で頭を回転させようとする。
――右と左のやつをまずどうにかしなきゃあ…どうする!? まずは、前に…いや後ろか…
に逃げてやりすごして………汗が止まらない……じゃなくて、前からもゴーレムが来る。
いや違う…左右からの攻撃が……早くしなくては!
「ど…どうする!? ……はくッ!? く…苦しいィィッ。い、息が……」
そのときだった。最悪とも当然ともいえるタイミングで、パニックの発作が出始める。
リキエルはのどを押さえて片膝をついた。息を吐くことも吸うこともままならず、舌を
突き出しながらもがいた。恐怖と焦りがさらにつのり、それがまた、より症状の悪化に拍
車をかける。
「クァッ! 息ができねえッ! ヒック、ひっく、クァ!! まぶたがケイレンして来た……ッ!!」
リキエルの様子を見て取って、ギーシュの口の端がニィイッと吊り上った。端正な顔立
ちが、醜悪な獣のようになる。
もう、焦りや不安の欠片さえ、ギーシュにはなかった。むしろそんなものを貴族である
自分に抱かせた平民を、完膚なきまでに叩きのめしてやろうとしか思わなかった。
「どうやらパニックになったようだね。無理もない。平民の力などそんなもの! まあ分
かりきっていたことだが、君はこの場に、僕に叩きのめされるために姿をあらわしたとい
うわけだなぁああああぁ!」
「くそッ! は、はやく、は、やくどうにか……ッ!?」
動くことにさえまともに思考が裂けなくなったリキエルに追い討ちをかけるように、開
いている方のまぶたがストーン……と落ちた。
リキエルの視界が、わずかばかりの明かりが透けてくるだけの、木の洞の中のような闇
に閉ざされた。その一拍の後にきた衝撃とともに、今度は世界が真っ白になる。そしてま
た、意識が闇へと吸い込まれてゆくのをリキエルは感じた。殴られたのが、どうやら左の
頬であるらしいことが、ようやくわかるだけだった。
◆ ◆ ◆
教師の方々にもこのことを伝えてきます、と言ったシエスタと途中で別れ、ルイズはヴ
ェストリの広場へと一人走った。ギーシュの説得のためである。シエスタの言うところに
よれば、まだ騒ぎは起こっていないはずだったが、ルイズは妙な胸騒ぎがして、常に無く
足を急がせた。
息せき切らして広場にたどり着くと、すでに黒山の人だかりができていた。
――遅かった!
とルイズは思い、乱れていた呼吸も一瞬止まりかけた。だが、もしかしたらと思い直す。
まだ本格的な折檻は始まっていないかもしれないと希望をかけ、ルイズはにじり寄ってく
る嫌な想像を、脳の片隅に押し込めた。
人だかりの輪の中心には自分の使い魔と、いけ好かないキザなクラスメート――ギーシュ
がいるはずだった。ルイズはとりあえず、使い魔を叱責するつもりでいる。あとのことは考
えなかった。ギーシュとは適当に、折り合いをつけさせようと思うだけだった。
ルイズは小柄な体を活かして、人垣を押しのけて前に出ようとした。皆が場所をとられ
るのを嫌い抵抗するものと思って、少し強引に分け入ったのだが、意外なほどすんなりと
進めた。何故かはわからないが、生徒達は呆然と立ち尽くしているようだった。
そんな生徒達を、ルイズは不思議に感じたが、前に出ようとするのはやめなかった。皆
が静かなのは、まだ『コト』が始まっていないことを、暗に示しているのかもしれないと
も思った。
そして、人垣の前に出て、使い魔を怒鳴りつけようと口を開き、絶句した。吐こうとし
た息は、どれもまともな音にすらならない。
「……ぁ、……ッ!」
ぼろ雑巾の方がマシだ。ルイズはその惨状を見て、咄嗟にそう思った。目を背けたくな
ったが、良かれ悪しかれ夢を見ているときそうなるように、体が動かなくなり、まぶたを
閉じることさえできなくなった。
なんとか、意識はあるようだった。それが逆に辛いだろうと思われた。
全身についたシミや、服の裂け目から見える黒ずんだ汚れは、倒れるときに付いた土だ
けではないはずだ。
左腕は肘から折れているらしく、信じられない曲がり方をしている。足も、蹴られるか
殴られるかして、異常なほど腫れ上がっていた。右の腕と足が比較的無事に済んでいるの
は、そういう姿勢でやられたということだろう。
特に酷く見えたのは、首から上だった。顔の左側はよほど殴られたのか、変形して、原
型をなんとか保っているという具合だった。右目は開いているが、ちゃんと見えているか
は疑わしい。
思い切り怒鳴りつけたかった。こんな場所であんた! 何してんのよ! と叱りつけて
やりたかった。そう言える状況であればそうするつもりで、そう言える状況であって欲し
かった。だが、現実はことほど左様に非情である。
ルイズは、自分が叫ぶ寸前だったのに気づいて口を押さえた。そうすると、手から震え
が伝わってくるのがわかって、自分の体全体が震えていることに気づいた。そうさせるの
は不安であり、恐怖であるかもしれなかった。あるいは、怒りとも悲しみともつかない感
情の起伏のようでもある。
平民など、どうにでもなれと思っていた。少しくらいやられる程度ならば、いい薬にな
るかもしれないとどこかで思ってもいた。それで、勝手にふらふらとどこかに行くことを
やめれば丁度いいと、ルイズは自分でも気づかないほど、微かにそう思っていたのである。
それに今思い当たったが、もう微塵も、ルイズはそんなことを思う気にはなれなかった。
ただ、酷く痛々しい気持ちになって、ルイズは泣きたくなった。かすれた声で呟いたのは、
涙腺をどうにかして閉じたかったのかもわからない。
「リキエル……」
使い魔の、それは変わり果てた姿だった。
「ギーシュ! 平民相手に、ちょっとやりすぎじゃあないか?」
「丸腰生身の平民にゴーレム三体は、確かにな、どう考えてもやりすぎだ!」
「というか卑怯だよなぁ、ここまでやるとさぁー」
人だかりのあちらこちらから、ギーシュに向かっての野次が飛ぶ。彼らは、リキエルが
ギーシュに嬲り物にされるのを見物に来たが、その結果が予想以上に凄惨なものになって
しまったことに、大なり小なり貴族なり、哀れみに近い罪悪感を持ったらしかった。
ルイズは、こんな状況になるまで傍観しておいてと思わないではなかったが、『平民を人
と思わず』という意識が心の深い場所に、砕き難い巨石のように鎮座しているのも確かだ
った。そして、それが貴族として当然の意識であることも、公然とした事実である。リキ
エルの惨たらしい様を見ている今だからこそ、自分はそれを疑えるのだとルイズは理解し
ていた。
それは、周りで喚いている者達となんら変わらないとルイズは思った。自分も昨晩のリ
キエルを目にしていなければ、他人事として、まだ教室で愚痴っていたかもわからないの
である。周囲の人間を、責めることはできなかった。
だからその代わりに、ルイズは周りの野次に感謝した。体面を殊更に気にするギーシュ
である。野次を飛ばされて、このまま続けるとも思えなかった。無責任な野次がそういっ
た形で、この決闘を終わらせる切欠になるかもしれなかった。
その証拠に、ギーシュは渋い顔をして腕を組み、何事か思案している。
「そうだな。やりすぎたかも知れない……丸腰だものな」
そう言って腕を解き、ギーシュが杖を構えるのを見て、ルイズはそのままゴーレムを引
っ込める気になったかと思ったが、
「よし、ではこうしよう」
ギーシュが杖を振るい、花弁を落とした。出てきたのはゴーレムではなく、装飾や工夫
の一切を省いた、鍔と柄と刃だけの、至ってシンプルな一本の剣である。
――へ? ぇ……え?
「剣、武器、平民どもが健気にも磨いた牙。これを使わせてあげようじゃないか」
ギーシュはそれで万事解決とばかりに得意気な顔になり、創り出した剣を、わざわざレ
ビテーションの魔法で浮かせて、リキエルの下へと寄越した。
――ちょっと、それは……!
「違うでしょ!? そんな問題じゃないわよッ!」
「ル、ルイズ!?」
唐突に人垣の中からリキエルへと駆け寄り、声を張りあげたルイズに驚いて、ギーシュ
の集中は途切れた。同時にレビテーションも途切れ、剣はリキエルから五歩ほど離れた地
面に突き立つ。そのとき、ルイズには一瞬リキエルの目が動いた気がしたが、すぐにギー
シュを眼目に据えた。
リキエルを背にして、ルイズはギーシュの前に立ちふさがった。
「ギーシュ、いい加減にして! 大体ねえ、決闘は禁止じゃない!」
ルイズの言葉に、ギーシュは面食らったような顔になったが、すぐに、いつもの軽薄な
笑みに戻り、人を小ばかにする口ぶりで言った。
「禁止されているのは、貴族同士の決闘のみだよ。それにその平民は――おっと、君の使
い魔君は、二人の女性と僕を侮辱した。平民が貴族に無礼を働いたんだ」
「でも! これはやりすぎでしょう!?」
「そうは思わないな。彼は、謝れば許すという僕の寛大な処置に対して、侮辱を以って応
えたんだ。その落とし前、つけてくれるというなら別だがね。君がだ、ゼロのルイズ」
ギーシュは確かに、どこまでも体面を気にするような男だった。しかしそれが、今は逆
に、ギーシュがこの件について手を打つことの妨げになっていた。ほとんど意固地になっ
ているのだ。
ルイズは俯いて、唇を噛んだ。
手を下にしたくなどない。ギーシュの言う侮辱だの無礼だのは、どうせ薄っぺらな藁で
造られた家にも劣る、本当に瑣末な、下らないプライドから出た言葉だろう。謝る筋合い
などはない。ましてこの騒ぎは、自分に直接の関係があるわけでもないのだ。
さらにいえば、会って一日とないような人間のために謝るなど、それが例え貴族の子弟
であったとしても、ルイズの屈辱感を煽り、かきたてることだった。
それでもこれ以上、目の前で自分の使い魔が傷つくのは、ルイズには見ていられなかっ
たのである。また昨晩のように、ここでリキエルを見捨てることの方が、よほど自分のプ
ライドに傷をつけるとも思った。何より、野次の効果も無く、リキエルが動けない今、自
分が謝るより他にどうしようもないではないか。
拳を握り締め顔を上げ、ルイズは一歩前へ踏み出した。
「……わかった、わよ。こいつが、こいつが何かしたっていうなら……わ、わたしが、あ
あああ、あ、謝るわよ!」
思いがけないルイズの宣言に、観衆は言葉を捜しあぐねたように口を閉じ、顔を見合わ
せ、最終的にルイズを注視した。ギーシュはまた面食らったようになって、呆然とルイズ
を目視した。
そのとき、ヴェストリの広場に存在する全ての人間の目がルイズを見ていた。音はなか
った。誰かが声を上げるのは勿論のこと、衣擦れの音ひとつない。風や地を這う蟻さえも
が、次の動きに耳をそばだてているようだった。ルイズやギーシュ、他の生徒たちには、
そう思えた。
「クゥ……ッ」
叫んでから、ルイズはまた顔を地に向けて、唇の端を噛んでいた。
まだ踏ん切りはつかなかった。悔しいものは、やはり悔しい。顔中の血管を血が巡って
いるのが、ルイズには自分でよくわかる。ただ、いつまでもそのままでいられないことも、
それ以上によくわかっていた。
濃霧のように広場を包む静寂のせいか、あっという間に一分間ほども経った。俯いてい
たルイズは、謝罪の言葉を口にしようと、震える唇を開けた。
「……!」
と、突然ルイズの左肩を掴むものがいた。今この場で、それができる人間は限られてく
る。ルイズは信じられないような気持ちで、肩に置かれた手の甲、のびる腕、その先の人
間を振り仰いだ。相手はぎょろりと目を動かして、ルイズと視線を繋いできた。
間近で見ると、本当に酷い有様だった。
いくらか軽症だと思っていた右半身も、地面に押し付けられたか、ところどころに切り
傷が目立っている。顔も、唇が切れ、目じりの下がパックリと裂け、次から次と小川のよ
うに血が流れ出ていた。ルイズの位置からでは、顔の左側面は相手が首を傾けているのも
あって影になっており、見ることができないが、遠目に見てもその酷さが目につくものを
間近で見ようとは、ルイズは思わなかった。
思わなかったが、先ほどとは違った意味で目が離せなかった。その、炯炯とした灯を燈
す右の瞳が、ルイズの視線を捕らえて離さないのである。
「オレが……言うことじゃあないかもしれないがな、謝るんじゃあない。謝ってはいけな
いんだルイズ、お前は。こんな程度のヤツにはなァ……!」
使い魔の、それは壮絶な姿だった。
249 :
空使高:2008/05/21(水) 23:17:41 ID:el3sgLYh
なんかおかしいと思えば、名無しのまま投下終了ですorz
にしても書き溜めのストックが減ってきた……。
モヴェーレクルース(筆を動かせ)! モヴェーレクルース(筆を動かせ)!
おお!あんまりだー!こんなところで切るなんて!w
GJ、しかしギーシュはゲス野郎だったり、黄金だったり忙しい子だな
お二人とも投下乙&GJ!
そういえばマリコルヌの運命は数奇ですな。
かたやルイズとかたやサイトといい仲になるなんて。
リキエルGJ!
コメント書いてるうちに投下がひとつ終わっていた。
何を言っているか(ry
GJ!なんと言うルイズ、これは間違いなく黄金の精神を持っている。
ギーシュは基本『八つ当たりするゲス野郎→決闘で負けて反省→もうあんなことしないよ→それにしてもこのギーシュ黄金の精神である』
のパターンで成長していくから、このギーシュも成長するんだろうな…
でも今はムカツクからツンデレの所や兄貴の所みたいにボコられちまえ
255 :
空使高:2008/05/22(木) 00:19:55 ID:9jnipJyk
6レス時を(ry なんかおかしいと思えば、誤字ったまま投下終了orz
ルイズ謝罪宣言の後、「ギーシュは──目視した」のところ、『黙視』です、はい。まとめは自分でやらせて下さい、すんません。
ジョルポルさん空高さん投下乙そしてGJでした
ジョルポルはマリコルヌも才人可哀想過ぎるw
空高では『逃げる』ことを選んだリキエルに
ああ、ジョースターの血統なんだなあ……としんみりしました
ジョルポルのジョルノがDIO分濃い目なだけに
この兄弟を対比したら何だかちょっと泣けてきた
リキエル熱いなあ。GJです。
彼に流れるどちらの血も、方向の違いさえあれ誇り高いものですもんね。謝ることなんてできやしない。
次を楽しみにしてますぜー
リキエル乙
しかしこんないい所で終わるとは…
続きが気になりすぎるw
次回ついにアポロがくるのかッ!?
とうかします
久しぶりすぎで肩身狭いです
肩甲骨折れまくり
24.5 邪竜は月輪に飛ぶ
一斉射撃。音のするほうに向かっての未熟な銃撃。もし男が少しでも違うところにいれば、相手の位置を把握できる天使のラッパにも聞こえただろう。
だが、男と仲間の部隊はそこにいた。仲間が戦死した。背中にしょった通信機も敵弾を浴びて戦死した。おかげで男は生き残った。
だが、恐慌状態に陥った精神は自殺行為に突き進んだ。腕の中のロケットランチャーを抱きかかえる。それを手放さない限りは、死が少しは遠のくように思えた。
幻想だった。そのロケットランチャー自体が、ついさっき死んだ仲間の遺品だった。だが、男はその幻想を補強しようとした。拳銃を――これも仲間のものだった――生き残った最後の仲間に向ける。
男は同僚の死体からもう一つのM72ロケットランチャーを拾い上げ、それを抱えて足音高く走り出す。銃声と泥しぶきの音が四方に広がり、それに群がるように敵が襲ってきた。
唐突に、だが待ち伏せていたかのように、眼前に銀色の何か立ちはだる。それが何なのかを考える間もなく、男は頭から突っ込んでいった。
覚醒したときには、世界の一部は恐ろしく変転し、それは男を全く否定するものであった。
だが、男――ひとりのアメリカ陸軍兵士であり、敵から逃げ出し、そして追い詰められていた。――の半眼が表層をなぞる限り、そこはただの森。気を失う前に駆け抜けていた森にしか見えなかった。
彼が先だって走りぬけたジャングルですらなかったが、目に見える色はあくまでも緑一色。そして彼は迫り来るはずの危険を思い出した。ソ連の軍事顧問に指揮された、ベトコンの追撃を。
違和感が追いついたのはすぐのことだった。植生がまるで違う。互いに圧し掛かりあうように乱立する樹木も、そこから垂れ下がる蔓草も見えない。
あのバナナの、顔よりでかい葉っぱはどこだ? 下ばえはそれこそ若草色。柔らかく地面を覆っている。
地面もそうだ。泥ついた所もない。どこの木からともわからない根がとび出てることもない。気温すら違う。ここはどこだ。男はうろたえ、放心した。
バックパックを確認しようとして思いとどまる。そんな暇があるのかどうか。
耳を澄ませる。牧歌的にすら聞こえる鳥のさえずり。風のそよぎが草花を揺らす。そして、川のせせらぎ。草を踏みつける足音は聞こえない。近くに人がいるのか、それすら不明だ。
水辺に向かって、男は慎重に移動した。ロケットランチャーを脇に抱えて。護符代わりにではなく、身を守る武器として。生きるために必要な程度の冷静さは取り戻せていた。
通信機が生き返る様子はなかった。雑音すら発しない。腕の時計を見る。午後一時。空を見上げる。健康的に繁る枝葉に遮られ、太陽は見えなかった。
透明な川の水面が、空の赤を反射してきらめく。日が落ちきる前に所持品を確認する。
通信機が大きく嵩を取る男の荷物は、他の隊員に比べて少なかった。予備弾薬も使い果たし、マシェットも別の人間に持ってもらっていた。
今回の偵察任務において、男は主に通信を担っていた。ベトコンの弾薬庫を砲撃するにあたっての弾着観測が主だった任務だった。
砲撃は手際よく成功した。山を掘って作られた弾薬庫は、山ごと爆発してその役目を終えた。あとは帰還するだけだった。
手際がよいのは向こうも同様だった。観測地点を割り出し、人海戦術で取り囲んだ。
包囲の輪を突破し、ピックアップポイントまで撤退する。小銃は弾が切れる前に沼に浸かって不発になった。撤退中に一人死に、二人死に、最終的に男だけが生き残った。
7:28 2008/05/22いや、残ってはいない。ここはベトナムではないだろう。ここはどこだ?
腕時計を見る。午後一時。見れば秒針が止まっていた。
川の流れに沿って少しもしないうちに、夜がやってきた。
敵はあいかわらずどこにも見えない、聞こえない。だが小銃も地雷も持たず、単身、拳銃だけを懐に夜の森を進むのはやはり危険すぎた。
腰の水筒を取る。とっくに空だった。川の水を汲み、念のため浄水剤を入れる。
比較的大きな木の根元に腰を落ち着ける。携帯食料を取り出し、半パックだけ食べた。一息つく。これからのことを考えた。帰り着けば軍法会議。捕らえられれば拷問か。
何がどうなろうと、良いほうには転ばないように思えた。生き延びるための行動が苦痛を呼び込んでいる。何故あの時、自分はあんなことをしたのか。後悔にさいなまれた。
男の後悔する精神を、異音が現実に引き戻す。何かを扇ぐような音。上から聞こえてくる。敵か味方がヘリを飛ばしているのだろうか。
木陰に隠れ、空を再び見上げる。胸ポケットをまさぐり、注射針と一緒にビニールに包まれたモルヒネの容器を見つけた。全く減っていない。では、あれは、なんなのだ。
月が、二つの月が、天頂を過ぎて、西の空を進んでいく。
月光に照らされる夜空を、巨大な何かが悠然と羽ばたいていた。逆光でシルエットしか見えなかったが、あれは。
現実の光景ではなかった。少なくとも男の現実ではない。またもや異音。自分の呻き声だと気付くのに、少し時間がかかった。
一睡も出来ずに朝を迎えた。眠ってしまっても良かったかもしれない。ベトコンの脅威は去ったのだろうから。それを認めることは男には難しかった。
弛緩した意識でひたすら川に沿って歩いていった。二本のロケットランチャーは重かった。
森を抜けた先にあるものはなんだ。二つの月が何を意味するのか。考えたくもなかった。ある漠然とした予想を、男は自分自身に突きつけられていた。
一日歩いた先にあった結論は拍子抜けするものだった。川は小さなため池を作り、そこで尽きている。おそらく地下水となって、またどこかで湧き上がるのだろう。
男は脱力した。その場にへたり込む。森の奥から水辺に動物がやってきた。男を警戒もせず水を飲み終わり、再び森の奥へ消えていった。
鮮やかな紫色の兎のようだったが、額に黄色い尖った角を生やしていた。それを見て、男はますます虚脱した。しまりのない顔をして、その一部始終をぼんやりと眺めていた。
川を遡り、源泉と思しき場所に辿り着いた。日のある内は朦朧と歩き続け、夜は月光と、夜行性らしい羽ばたくものに怯えていた。
源泉はどうといったこともない岩の隙間から流れ出していた。そこは小さな丘の低い頂上で、周りを見渡せるほどの高さはなかった。
もしかしたら、さらに上流があるのかもしれない。だが、男にそこまでの気力はなかった。
諦めきれずに、近くの樹に登る。森林は遠く広がっていた。それでも最も近いところでは、地平との境界線あたりで途切れていた。
川の下流を目指して進んでいけば、そのまま森を抜けられていたかもしれない方角だった。
男は再度そこを目指す。汗と垢にまみれた迷彩服は森と一体化していたが、男はそれを拒絶した。なけなしの理性が、あるかなきかの文明を目指す。
男は怯え続け、歩き続けた。食料も浄水剤も尽きていた。通信機は捨て、腕時計も捨てた。
歩くうちに、再び水音が聞こえてきた。川の流れが地表に再出している。流れは大きくなっている。
浄水剤はない。乾きに耐え切れず、川の生水をそのまま飲んだ。
森の中で再び出合った兎を、拳銃で見事に撃ち殺した。銃撃音と硝煙の臭いが数百メートル四方に広がった。
皮を剥いで肉を食べるつもりだったが、男にはその経験がなかった。角を叩き折って、めったやたらに兎の死骸を引き裂いた。
枯れ木の季節ではなかった。とりあえず落ちている枝を拾い、マッチで火をつける。
労力に見合わない、控えめな食事。焼けば平気だろうと、内臓も食べた。おぼつかない足取りで、再び歩きだす。辺りに、飛び散った血と焼けた肉の臭いが広がった。
翌日、男は腹を壊した。水か肉か、原因はわからなかった。いずれにしろ、飲まず喰わずでは死ぬ。せめて内臓だけでもやめよう。もしまた獲物が手に入る僥倖が巡ってきたら。男は苦しみつつそう思った。
ひどい下痢が男を襲い体力を大いに奪った。それでも男は歩き出した。糞の臭いが広がる。
それらは肉食動物を刺激するには十分なものだった。
夜、一頭のワイバーンが目を覚ました。その鼻に、生命を伺わせる数種類の臭いが入り込む。
ねぐらの岩場までも漂ってきたそれは、ワイバーンの食欲を刺激するには十分なものだった。
夜、男は森の端に近づいていた。体はやせ衰え、顔には何とも判らない湿疹ができている。目は黄色く濁り、赤く充血していた。
体力はもはや限界を迎えていた。それでもロケットランチャーは手放さなかった。思考力の低下が著しかった。今持っているから持ち続けている。それだけだった。
昼夜の区別なく歩いていた。自分の体力に気を配るよりも、この森から抜け出したい思いが強かった。
夜行性のワイバーンは夜目が利く。空から地上を見下ろす。臭いのするエリアを旋回する。
そこは森の中心から、すこし外れた場所だった。そこを中心に、遠心状に飛び回る。ほどなく獲物が見つかった。動きは鈍く、こちらには気付いていない。
躊躇うことなく、ワイバーンは降下する。
男は上空に、聞き慣れた音が近づいてくるのを恐怖と共に感じた。何故、今になってなのか。栄養も睡眠も足りていない男には、理由がわからなかった。
わかるのは、このままでは死ぬということだけだった。男は走った。あっという間に追いつかれた。
あっという間に追いついたワイバーンは、その速度を生かして体当たりを仕掛けた。獲物は虫のように跳ね、地面に激突し転がった。
着地し、齧ろうと接近するワイバーン。その腹に衝撃。後から来る鋭い痛み。かすれた声で小さく吠えると、首を曲げに曲げて痛みの出所を確認した。
腹からは出血していた。激怒し、獲物に止めを刺そうと向き直る。獲物は消えていた。臭いもそこで、忽然と消えていた。
ワイバーンは出血しつつも辺りを飛び回った。が、しばらくすると諦め、傷を癒すためにねぐらに戻っていった。
男は川の流れの只中にいた。拳銃が流れに巻き込まれて離れていった。バックパックとロケットランチャーの重みで沈んでいく。
水を飲み込みつつも、なんとか荷物を捨てる。もがきながらロケットランチャーを捕まえる。
どうやって助かったのか、記憶にない。気がつけば二本の筒を手に、川岸で荒い息をついていた。足首はまだ水に浸かっていた。
首をねじって、M72ロケットランチャーを見る。今はまだ防水状態のはずだ。まだ使える。
そうだ。今度はこれをくらわせてやる。近づく前に一発だ。畜生め。あいつさえ殺せば何の問題もなかったんだ。
栄養、睡眠、そして酸素をも失った頭で考えた錯乱を心に、男は立ち上がる。再び歩き出す。夜を楽しみに。
男はついに人と出合った。それは老人だった。
投下しまし
えー、書いてるうちにジョジョでもゼロ魔でもなくなっていました
避難所とも違うような気がするようなしないような
寝ます
って
>>261文中に
なんか日付はいってるーぅ
なんでだーぁ
あくまさん乙でした
あの米兵をこんな詳しく書いたのはあくまさんが始めてでは?
しかし何という極限状態……
>>264 待ってたよおおおおおおお
投下乙であります!
あくまさん乙です。米兵リアルっすねー
こちらもとうかします。
ゼロと使い魔の書
第五話
今向かっているのは「アルヴィーズの食堂」というところらしい。平民かつ使用人でもないところの自分は今までの経験から入れない、
と考えたが、昨日申し渡された職務内容には主人の身を守るという項目も含まれていた。だから何か言われるまで傍に付き添っている事にした。
食堂には長いテーブルが3つ置かれ、それぞれ異なる色のマントの生徒が食事をしている。果物かごも花瓶も刺激の強い配色で、正直趣味を疑う。
それらは大体想像通りの光景だった。
だが肝心の内容は自分の思っていたようなものではなかった。
「腹壊さないのか」
「ん?なんで?」
「いや、なんでもない」
どうやらディナーで通るような食卓が、貴族にとっては普通の朝食らしい。
主人が空いている席の前に立つ。イスを引いたら満足そうな顔で座った。これも想像がついていた。
ルイズが目の前の食事に気を取られている一瞬、テーブル上の果物ナイフを一本袖の下に入れておいた。
「あんたは床ね。そこにある貧相な……ってあれ、タクマ?」
後ろで何か主人がのたまっていたのが聞こえたが、あれを食べる気にはならなかった。味は記憶でどうにでもなるが栄養素が絶対的に足りない。
食べる時間を食料調達に費やすべきだろう。そして周りの生徒が自分の使い魔を待機させてない以上、自分がルイズの傍にいる必要もない。
食堂から出る間際、振り返った。ルイズはまだ自分のことを探しているようだった。あの貧相な食事をどうするのか気になったが、戻る気にもなれず自分が召還された草原への道を歩いた。
目的地に到着すると、まず野兎がのんびりと歩いているのが目に入った。
保存食に加工すればあれで数食分のたんぱく質が確保できる。
左手でナイフを持ち、投げようとした、が途中で動作を中断した。
この世界に来たと同時に刻印された左手甲の文字が光りだしたのだ。それと同時に体が羽のように軽くなり、筋力が増強されたのを感じた。
素直には喜べない。ナイフスローイングというのは力が強ければナイフのミートポイントがずれてしまうのだ。柄が当たったって何の意味もない。
完成された投擲術を持つ自分に、この特典はありがためいわくだった。
予定を変更した。数回投げる練習をした後食料を確保することにする。
辺りを見回し、森へと通じる道の途中で刺さりやすそうな大木を見つける。初めは5メートルでいいだろう。
呼吸を整え、投げた。
空気を切り裂く鋭く高い音が鳴り、重量のある刃を中心に一回転した後、やや前傾に大木に刺さった。金属製の刃が振動する音がここまで聞こえてきた。
しかし、ここで予想外の出来事が起こった。勢いが死ななかったらしく、本来投げる用途で作られていない果物ナイフの柄が刃からすっぽ抜けてしまったのだ。どうやら自分は恐ろしい力で投擲していたらしい。
内心舌打ちした。流石に刃だけではどうしようもない。
見ると、もう野兎はどこかへ消えてしまっていた。
これからどうするか。
貴族のものに囲まれ明らかに浮いている食事とも呼べないような食事はとっくに片付けられてしまっているだろう。となると、朝食は抜きでほぼ確定。
食堂から出て行ったことの言い訳を考えながら、刺さったナイフの刃と飛んでいった柄を回収し、城への道を歩き出した。
食堂の入り口に着くと、中に入ろうとして、思いとどまった。
「頼ってみるか」
他人に頼るなんて数えるほどしかなかった自分であるが、あのメイドの少女に名前を伝えなければならないこともあり、どちらにせよ厨房には顔を出さなければならない。
ならついでにまかない食を恵んでもらうのがこの際一番だろう。
The Bookを呼び出し、どのように頼めばいいか検索しようとしたが、止めた。そんな簡単な文句一つ思いつかない自分にため息が出た。
「もう……あの馬鹿!」
床の上の固いパンと薄いスープを見つめながら、ルイズは一人愚痴っていた。
正直なところ、自分の使い魔、タクマは口調さえ変えればどこの屋敷の執事でもやれそうなくらい有能だった。よくやってくれている。
だからルイズも床の上の茶色いものだけで済ませるつもりではなかった。
自分の分の横の小皿に取り分けられた鶏肉のソテーとサラダを見る。貴族と平民の格差を見せ付けた後、労をねぎらって渡すつもりだった。
しかしあいつは自分が言う前に床の上の色のない食事に気づいてしまったらしい。イスを引くや否や、どっかに消えてしまった。
「……そりゃ、私もちょこっとは悪いかもしれないけど!でも!勝手に蒸発する使い魔も使い魔よね!」
自分に言い聞かせるように呟くと、粗末な食事を下げるように給仕に言いつけた。
以上、第五話でした〜
乙
確かThe bookの最後で色々攻撃受けたし近距離戦ならかなり強いな
おちゅちゅ
GJ!
ガンダールブ補正嫌がったキャラは琢磨がはじめてかもw
続きに期待
最近エルザ分が足りない…
カモォ〜ン、ホルホルくぅ〜ん
ジョジョ3部が…
この悲しみはここの作品で癒すしか…
>>278 そんな悲観するこたないだろ
ジョジョも向こうに負けず劣らず狂信者揃ってるし
これだから宗教は…
悪人がコーラン読んだらいかんのか? 聖書は? 神を信じたり祈りを捧げたりするのも?
宗教しか信じられない環境って酷いね
とりあえず3部は全部そろってるから俺は問題ないぜ
そろえてよかった第三部!
ぶっちゃけ今回荒木さんは何も悪くないんだよねw
原作コーランじゃないしな。三部原作を止める理由が分からん…
大体、今現在SBRでコーランどころじゃないヤバい人出してんじゃんかよw
ヴァチカンが動いたらマジどうすんだアラーキはw
正直、狂信っぷりで神父に勝る者は無し。
荒木先生なら仕方がないから
実年齢的に考えてあのお方を見たことがありそうだしなw
というか生粋のイギリス人なDIOはコーラン読めるのかよ?というツッコミは(ry
ひまひま吸血鬼たるDIO様がイスラム語?位読めない訳がなかろう!
でもコーランとか宗教を心の底から信じている人にとってみたら、色々不愉快な面があるのかもしれんよね
戦争とかも信じるものが違うせいで起きたりもするし、それはゼロ魔も現実もかわらないな
流れを斬って質問してすまない。
召喚の次の日の朝、ルイズが着替えを手伝わせるシーンで、「ルイズは相手を使い魔としてしか見てないが
自分はルイズを女性として見ている。そんな相手に着替えさせていいのか?」と言ってやり込めたのって誰だっけ?
まとめサイトでそれっぽいこと言いそうなキャラ一通り見てみたんだけど該当する作品が見つからなくて…。
もしかしたら姉妹スレの作品なのかもしれないが。…記憶が曖昧で遺憾。
>>288 理想郷のアーチャー召喚ネタじゃなかろうか。
>>289 確認した、それだ。ありがとう。
何となくそういう事いいそうなのブチャとか兄貴辺りだと思って必死に探してたよ。見つからない筈だ…。
一発ネタ『ルイズが召喚されました』
ル「え!? ………………………………………………。
ゲ…………ゲートから出てきたのは……………、
私だったァ――今、呪文を唱えていたのにィ〜〜〜」
キ「超スピードとか! 先住魔法じゃあだんじてないわ!」
タ「『世界扉ッ』!?」
禿「野郎……おもしろくなってきましたね……」
ところで某スレに誤爆したのは誰だね?
>>291 つまりガンダールヴの脚力で逃げつつ時間を稼ぎ虚無の攻撃をブチかますルイズの誕生か
その召喚されたルイズがまたもう一人のルイズを(ry
終わりがないのが終わり
それが黄金体験鎮魂歌
杖を武器と認識すれば
魔法が使えるようになると思ったのは俺だけか?
>>295 杖術的な意味で使えるようになるんじゃないかと自分は思った
突く・叩く・投げるw
杖のようなトンファー
思ったんだが召喚の時の鏡って最強なんじゃね?
窓の外的な意味で
>>298 ギーシュやフーケやワルドをドゴォォォとやっつけるんですね、わかります。
よし、二時半から『投下する』ッ!
今回こそ本当に風のアルビオン編完ッ!!
ハッスルじじい支援
ルイズの爆発魔法でワルドの首が霧散したのを確認することもせず、シルフィードは急速降下に入った。
まだ終わりではない。ワルドは確かに倒したが、ジョセフを救わなければならない。このまま放って置けばニューカッスルの岬ごとジョセフは大地に叩き付けられる。いくらジョセフと言えども、そんな事になれば生きていられるとは到底思えない。
しかもワルドを撃破したと同時に、大木のように茂っていたハーミットパープルはまるで枯れて朽ちていくように消え失せた。
メイジは精神力を使い果たしてもせいぜい気絶する程度で済む。スタンド使いが精神力を使い果たしたらどうなるのかは知らない。
かつて武器屋探しのついでにハーミットパープルを初めて見た時、ジョセフはスタンドを『魂の具現化したもの』と言った。魂を具現化させたものが枯れていくということがどういうことか――考えなくても判る。
タバサが先程張った風のドームがシルフィードの背に乗ったメイジ達をしっかりと捕らえ、空に振り落としてしまうようなことは無い。
だが、空を風竜の出せる限りの速度で『落ちる』恐怖。
「うわああああああああっっっっっ!!?」
二十世紀の地球でも、時速三百kmを超えるジェットコースターは存在しない。
噛み締めようとしても抑え切れない、腹の底から沸き起こる恐怖に耐え切れず叫んでしまうことで、ギーシュを臆病者呼ばわりすることは出来ない。
キュルケはこの高速落下の恐怖を味わう前に、精神力を使い果たしていた所にワルドを倒したのを見届けた安堵で気が緩んだことで、幸運にも気絶していた。
故に悲鳴を上げたのは、ギーシュ一人だけだった。そのギーシュも数秒も持たない内に恐怖が思考を塗り潰し、意識を手放したのだが。
ウェールズは波紋で気を失ったままで、タバサはこの程度の速度は慣れたものとばかりに力強く手綱を握り締めている。
ルイズは、叫ばなかった。それどころか、瞬き一つもしまいと見開かれた両眼で落ちていく先を見据えていた。
(――ジョセフ!)
雲の隙間を縫うように空を降り、岬から切り離された瓦礫を恐ろしいスピードで追い抜いていくのにも構わずほんの僅か前まで茨が伸びてきた元を見つめていた。
これだけの猛スピードで追いかけても、岬が落ちてからスタートを切るまでに絶望的な時間が経過しているのは理解できている。
アルビオンが何故空に浮くかは誰も知らない。ニューカッスルの岬も大陸から切り離されれば遥か下の大地目掛けて落ちていった。
しかし、城が先端に建つほどの質量と面積を持った岬は、空気抵抗を大きく受ける。それに加えて元より空に浮いていた大陸の一部だった岬は、気休め程度ながらも重力に逆らうかのように落下速度に幾らかのブレーキがかかっている。
だからこそタバサは逡巡すら惜しんでシルフィードを降下させた。
ルイズとタバサ、二人の目には光度は違えど同じ輝きが灯っていた。
その輝きは、『何としてもジョセフを救う』という意思の輝き。
今もなお左目を占めるジョセフの視界を睨みながら、ルイズは唇を噛んだ。
待っていなさいよ、ジョセフ――アンタは私の使い魔なんだからっ。
私の手の届かない場所になんか、行かせないんだから!
*
ワルドを撃破したジョセフの左目は、ジョセフ本人の視界に戻った。
ルイズから差し当たっての危機が去った事を把握したジョセフには、既に波紋を練れる呼吸もスタンドパワーも、何も残っていない。
ハーミットパープルを維持する事すら出来なくなったジョセフは、落下し続ける地面に力なく倒れた。
「……もうタネも仕掛けも何も無い……今度こそ本当にな……」
落ちていく岬の上に伏せるというのも奇妙な話だが、下から吹き上がる大気の奔流は巨大な岬が受け止めていた。奔流は岬の下を潜り、側面から上へと抜けている。
その為、地面に倒れたジョセフは大気の渦に捕われる事は無かったのだった。
「相棒」
まだ左手に握られたままのデルフリンガーの声に、ジョセフは掠れた声で答えた。
「……おうデルフよ……。せっかく六千年ぶりに会ったのにここでおさらばっぽいなァ……お前はもしかしたら地面に落ちても耐えられるかもしらんが、わしはちょっち自信ねェもんでな……」
こんな時でも軽口を忘れないジョセフに、デルフはからからと笑った。
「なーに、気にすんな相棒。六千年は確かに長かったが、また会えたのは確かだからよ。もうしばらくつまんねえ時間を過ごせばそのうちまた会えるってモンだろ」
「そう言って貰えりゃ気も楽ってモンじゃ……」
ごろり、と大の字に寝そべったジョセフは、無言で空を見上げた。
「あー……心残りがけっこーあるんじゃよ……わしを見取るのが喋る剣一振りっつーんがなァ……」
「なんだい俺っちだけじゃ不服なのかよ」
「そりゃーあよォ……せっかく頑張って五十年連れ添った妻とか可愛い娘とか口が悪い孫とか生意気な孫に恵まれたのに、誰にもわしが死んだって伝えられんのはなァ……」
ハルケギニアに来る前。承太郎に、帰らなければスージーには死んだと伝えろと言ってこちらに来た。あの時こそは死を覚悟していたが、魔法が実在する奇妙な世界に居着いた今では心残りも多々ある。
可愛い主人や友人達を守り切れた、その事実には満足できる。
だが、それでも。
「せめてな……わしの好きな連中にゃ、笑っててほしいんじゃ……。わしの好きな連中を悲しませる理由が、わしがいなくなったからと言うんはなァ……それは、とても――寂しいことじゃろう……」
ジョセフは、寂しげに笑う。
そんなジョセフに、デルフリンガーは聞いてみた。
「――なぁ、相棒よ。相棒は自分が死ぬのは怖くないのかい?」
力尽きたジョセフの口から漏れるのは、恐怖の叫びでも後悔の言葉でもなく。ただ、自分が遺す事になる人々を心配する言葉ばかり。
剣として、無数の戦場で無数の命の終焉を見届けてきたデルフリンガーは、ジョセフのような潔い最期を迎えようとする人間を見たことは何度かはある。
だが、その何度かの例外の他、何千倍もの末期の言葉は、死への恐怖や後悔の言葉。
圧倒的に数少ない例外の中でも、ジョセフはあまりに落ち着いていた。
これからどれだけの長い間、つまらない時間を過ごすのかは判らないが、せめて何百年かの慰みに。この誇り高くしみったれた老人の言葉を聞いてみたくなったのだった。
「そりゃ怖ェに決まっとるじゃろ」
即座に返ってきた答えに、デルフリンガーは質問したことをちょっと後悔した。
「でも今更何が出来るよ。わしゃやるだけのことはやったし……ルイズ達を救うことも出来た。やるべきことも出来なくて、ルイズ達を助けられなかったんじゃあない……そんだけ出来たらまァ、上出来ってモンじゃろうよ……」
「そうか」
しかし続けられたジョセフの言葉に、デルフリンガーは鞘口を鳴らして頷いた。
ジョセフは、一瞬だけ沈黙し。か細い声で言った。
「……わりィ、もうそろそろわし眠いんじゃ……ちょっと、ちょっと寝かせてくれ……」
「ああ、悪かったな。じゃあゆっくり、寝てくれよ」
デルフリンガーの軽口に、返事は、無い。
――竜が、そこに辿り着いたのはそれから僅か数秒後の事だった。
*
ハーミットパープルが伸びてきた先を辿るのは、難しいことではなかった。
ほんの数秒前まで雄雄しく伸びていた茨は消え去っていたものの、どこから伸びてきたかは頭に入っている。
ハルケギニアの大地さえも視界に入る中、シルフィードは岬に追い付いた。
岬の上に見えたのは、力無く地面に横たわるジョセフの姿。
シルフィードは落ち行く岬に追い付き、翼を目一杯広げてスピードを急激に殺し、地面に着陸する。
例え既に事切れているにせよ、ジョセフをこのまま岬に叩き付けさせる訳には行かない。
置いていこうとしても、ルイズが自ら駆け寄って引き摺ってでもジョセフを連れてこようとするだろう。
だからタバサは、迅速にジョセフを回収する為に魔法を唱えた。
ジョセフは随分と大柄ではあるが、トライアングルメイジのタバサが操る風を用いればさしたる苦労も無く体を持ち上げられる。
「く……」
だがたったそれだけの魔法を完成させただけで、タバサの意識は揺らぎ、僅かながらも彼女の表情を歪ませる。
しかしジョセフを無事に引き寄せることは出来た。
「ジョセフっっ!!」
自分の前にジョセフを運ばれたルイズが名を呼んでも、ジョセフは身動ぎの一つもしない。シルフィードの背に横たわったまま――
「ジョセフ!! ジョセフ、ジョセフ!?」
何の反応も無いジョセフへ抱き付くように縋り付いたルイズが必死に名を呼んで身体を揺さぶるが、ジョセフは主人の呼び掛けに何の答えも返すことは無い。
風のロープで掴んだジョセフをルイズの元へ届けるが早いか、魔法を解いて額の汗を拭った。
「……飛んで。全速力で」
すぐさま言い放つタバサの命令に、シルフィードはきゅいきゅいきゅいとけたたましく鳴いて不満を表明する。
いくら風竜と言えども、徹夜でこき使われた挙句空中戦を繰り広げたり落ちる岬に追い付く為に無理矢理な加速をさせられたりしていれば、身体にガタも来る。
竜使いの荒い主人に使い魔が懸命に抗議するが、当の主人はにべも無く答えた。
「貴方が飛ばないと私達が死ぬ」
端的に現状を突き付ける涼やかな声に、諦める寸前の慰みにきゅいー!と声も限りに叫んで、大きく広げた翼に風を受けた。
そして、シルフィードが力の限り岬から離脱した十数秒後。
ニューカッスル岬は、ハルケギニアに激突し、大陸を大きく揺らした。
高く聳える山脈を打ち砕く爆音と、空まで巻き上がる土煙が背後に発生する一大スペクタクルにも、竜に乗った若いメイジ達が頓着することはほぼ無かった。
ウェールズとキュルケとギーシュは今だ気を失ったままだし、ルイズはそんな些事に気を取られている余裕などない。
唯一の例外が、意外にもタバサだった。
ガリアの山脈が大きく形を変えた瞬間を目撃したタバサは、雪風の二つ名を受ける平静な表情を保つ事さえ忘れて、首ばかりか身体も後ろへ捩って大きく目を見開いていた。
タバサは若いながらもこれまでに様々な経験を積んできたが、これほどまでの劇的な情景を目の当たりにしたのは初めての事だった。
(……もし、彼の力があれば……)
自分が渇望する結果に辿り着くのも、ジョセフの知謀が加われば今すぐにも成就できるかもしれない。
だが、その肝心のジョセフは主人の声に応えることもない。
普段の高慢さをかなぐり捨てて懸命にジョセフの名を呼ぶルイズの姿もまた、彼女を良く知る者達が見ればその目を疑うことだろう。
ピンクの髪を振り乱し、鳶色の両眼を見開いて、小さな手で大きな身体を揺さ振り、喉も枯れよとばかりに声を張り上げる。
「ねえっ、起きなさいよ! アンタ、私の使い魔なんでしょ!? アンタご主人様の言う事が聞けないの!?」
だがジョセフは何の反応も見せない。
ただ力なく竜の背に倒れているだけだった。
「アンタっ……バカじゃない!? 元の世界に帰らなくちゃいけないんでしょ!? 自分の家族に会わなくちゃいけないんでしょ!? こんな……こんなこと、で……!」
大きな目に、涙が溜まっていく。
「私……! ただアンタに迷惑掛けただけじゃない! たくさん助けてもらったのにっ……私は何も出来ないままで……こんな、こんなのって、ないわ!」
自分が使い魔の召喚に成功しなければこんなことにならなかった。
自分がやったことは、戦いを終えて故郷に帰るはずだった老人を無理矢理異世界に連れてきて、こき使って、殺したというだけのこと。
ルイズの頬を伝う涙は、ぽたぽたとジョセフの頬に落ちていく。
「ジョセフ……! ジョセフ、ジョセフぅっ!!」
悲しみ、怒り、憤り、不甲斐なさ。
ネガティブな感情を大量に混ぜ合わせた衝動に突き動かされ、ルイズは物言わぬジョセフの身体に縋り付いて声も限りに泣き叫んだ。
「えーと」
しばらくルイズが泣いていた所、今まで黙ったままのデルフリンガーが、かちりと鞘口を鳴らした。
「盛り上がってるトコ悪いんだけどよぉー」
普段軽口ばかり叩いてるデルフリンガーにしては珍しく、多少決まり悪げな物言い。
「相棒、生きてるぜ」
ぴたり、とルイズの泣き声が止んだ。
「マジマジ。ピンピンしてる」
ルイズはとりあえずジョセフの鼻を摘んでみた。
ふが、と眉を顰めたジョセフは顔を振って鼻から手を放させた。
「そりゃーアレだろ、立ち回りはするわ徹夜で働くわ波紋は練れないわスタンドパワーは使い果たすわで疲れて眠らない方がおかしいって話だろーよ」
首を横向けたジョセフは、気道の位置が変わったせいか小さくいびきをかき始めた。
「それにしてもアレだな。死んだように眠るってのは正にこのことだーな。確かに勘違いしちまうのはしょーがないかもしれねーが、それでもあれはないわ」
ルイズは何も言わず、ジョセフの腰に下がったままの鞘を手に取るとデルフリンガーを収めて黙らせた。
袖で涙を拭いてから、じっと自分達の様子を伺っていたタバサを見やった。
「……ユニーク」
まるで何事も無かったように呟くタバサに、ルイズの耳は真っ赤になった。
「み、みみみみみみみみみ見たの?」
「見てしまった。けれど他言する必要性はない」
普段通りに感情の見えない淡々とした口調の中に、ルイズは微かな笑みが見えたような気がした。
だがそれは自分の気のせいだ、と無理矢理自分の中で結論付けて、大きく息を吸った。
「ま、まあこれくらいで死んじゃうような使い魔じゃないとは思ってたわよ! だって私の使い魔なんですもの!」
「そう」
懸命に言い繕うルイズへ興味なさげな返事をしたタバサは、続いてウェールズに視線をやった。
「ジョセフ・ジョースターと打ち合わせていた事がある。このまま皇太子を王宮に連れて行くわけには行かない」
タバサの言葉に、ルイズは声を張り上げた。
「なんでよ! 姫様に皇太子殿下をお会いさせなきゃならないじゃない!」
「魔法衛士隊の隊長が裏切り者だった今、下手に王宮に連れて行くのは利敵行為。他に内通者がいるのは火を見るより明らか。それこそ戦争の口実を向こうに与えることになる」
至極もっともな言葉に、ぐ、と言葉に詰まるルイズをよそに、タバサは淡々と言葉を続ける。
「だから今から学院に向かう。ミスタ・オスマンに頼んで皇太子を匿ってもらう、というのが彼の考え。学院なら人目に付くこともないし警備も整っている」
そこまで言ってから、タバサは手綱を握り直して前を向く。
必要最低限の事柄を伝達すれば後は何も言わない素っ気無さに、何よ、と小さく口を尖らせるが、それ以上は何も言わない。
強い風が頬を撫でる中、ふぅ、と小さく息を吐く。
竜に乗っている六人のうち四人が意識を失っており、意識がある一人のタバサはシルフィードの手綱を握って前を見ている。
残る一人のルイズは、気持ちよさそうに熟睡しているジョセフの頬を撫でた。
「……ばっかみたい。よくよく見たら普通に寝てただけじゃない」
心配かけて、と使い魔の額を指で弾くと、ジョセフはまた少し眉を顰めて小さく首を動かした。また気道の位置が変わったせいか、いびきは止んで静かな寝息に変わる。
こんな無防備な寝顔を見ていると、とても王様を騙してメイジ達をこき使って岬を落とし、挙句の果てに皇太子殿下まで騙して無理矢理連れてきている張本人とは思えない。
思えば姫様の命を受けてからたった数日の間に色んな事があった。
アルビオンを滅ぼした裏切り者達、初恋の人の変貌と裏切りと……かつてワルドだった人間を、自分の手で倒した事。
色々姫様に伝えなければならないこともある。
それでも、今は清々しい気持ちが胸を満たしていた。
空は抜けるように青く、髪を後ろへ流す髪は心地よく涼しい。
ふと、ジョセフを見下ろす。
召喚した時からずっと被っていた帽子はなくなって、白髪が露になっている。あの薄汚れた帽子は空を落ちる中で飛ばされてしまったらしい。
「……御褒美に、新しい帽子を買ってあげなくちゃ……」
たおやかな手でジョセフの頭を撫で。とくん、と胸の中が強い鼓動を打つ。
吐息が、熱い。
唇がそう感じたと思った。
われ等はスレの代理人、支援の地上代行者
われ等が使命は、職人に逆らうサルを、その肉の一片までも絶滅する事
S・I・E・Nッ!
その時、ルイズは自分が何を思っているのか、自分でも理解できていなかった。
だからかもしれない。
静かに目を閉じて身を屈めたルイズの唇が、ジョセフの唇を掠めるように触れた。
時間にすれば、一秒少しのこと。
ルイズがうっすらと目を開けたその時、ジョセフの顔が占める視界に、バネでも仕込まれていたかのような勢いで身を起こし、慌てて周囲を見た。
だが今もまだ友人達は気を失ったままで、タバサは前だけを見ていた。
今の衝動的なキスを見た人間は誰もいない。
ジョセフも、やはり変わりなく規則的な寝息を立てている。
(……何)
ルイズは、火が燃えているかのように思える自分の顔を両手で覆う。
(私、今、何をしたの)
その中でも、唇が一番熱いように思える。
ジョセフと微かに触れたそこだけが、とても、熱く。
(何を、考えてるの)
ふるふるふる、と首を振る。
(ジョセフは使い魔で……平民で……孫がいて……お父様より、年上なのよ)
最初は、契約の為のキスだった。
二回目は、錯乱した自分を落ち着かせる為の強引なキスだった。
三回目は。謎の衝動に突き動かされた、キスだった。
(そんな。そんなの、ダメよ)
否定したい。否定しなければならない。でも、否定、出来ない。
(何、何よ……どうして、こんなにドキドキするの……)
今まで生きてきた中で、これほど心臓が激しく動いたことなどない。
息苦しくて、胸が痛くなるほどの鼓動の中、ルイズは懸命に自分の中に芽生えた感情を拒否しようとする。けれど、ルイズは既に理解していた。
(――私は……ジョセフのことが―― )
信じられないし、信じたくもない。
この気持ちが果たして本物なのか、そもそも貴族の娘である自分が抱いていいものなのかすら。今のルイズには判断し辛いものだった。
だが、それでも。
彼女を中から打ち破りそうな胸の鼓動は、確かにあって。
ジョセフ・ジョースターの体温を感じて安心している自分がいて。
ジョセフが死んだと思った時、人目も憚らず泣いた自分が、いたのだ。
小さい頃にワルドに抱き抱えられた時も、ワルドが変わってしまったのを思い知らされた時も、人ではなくなったワルドに引導を渡した時も、こんな風にはならなかった。
理性も感情も、とっくに答えを出している。
けれども、それを認めてしまうのは……使い魔だとか平民だとか老人だとか、そんなのを抜きにしても。
(――私は……ジョセフのことが――好き)
ああ、と声を漏らし、両手で自分を抱いて俯いたルイズの表情は誰にも窺い知る事が出来なかった。
第二部 −風のアルビオン− 完
GJ!
ルイズかわいいwそれになんだか禁断の愛っぽくて燃えるね!w
投下GJ!
とうとう二巻終了ですか。
そしてルイズ、自分の父より年上のお人に恋をしたか。ガンガレ。
あとジョセフ、種はまくなよ?絶対だぞ
以上、『投下した』ッ!
やっと…やっと第二部が終わった…なんかえらく時間が掛かった……
まだネタがたくさんあるというのにー!
いよいよ次回から第3部スタート!
ジョセフ+新主人公の冒険です。応援ヨロシク!!
(注・新主人公は出ません)
隠者の人GJ!!ルイズが可愛いすぎる!!
GJにも程があるがこのジョセフはスージーQに殺されるぞw
しかし、うちのは全然出てこないな…
予定では、胸革命以降だから仕方ないっちゃあ仕方ないんだが…
マチルダさんをイジり倒すかどうするか…
GJ!!
というか、このルイズはかわいすぎるwwwwww
心臓がwwww
隠者のヒト、乙!
待ってました!
丈助の義母が年下になるってのはまだわからんでもない。
ただ義祖母が年下ってなるのは問題有りすぎだな、承りは。
承りに問題があるんじゃなくてジョセフに問題があるんだよw
遅まきながら投下乙!お美事でござる・・・・。
つーか種蒔いても「ばれなきゃイインジャネ?」と思う自分はwww
投下乙、いやすばらしい
このままジョセフはルイズに近づく悪い虫を払い続け
ルイズはジジ専への道をひた走ってしまうのかッ?!!
しかしワルドに完全に決着ゥ!つけてしまったとなると
今後の展開やフーケの身の振り方がますます気になるところだっすな
>>327 つかワルドいなくて今後の展開になんか影響あんのか?w
329 :
ゼロいぬっ!:2008/05/24(土) 13:33:33 ID:i4Q9T9u6
勝った!第二部完!乙です!
それでは40分から投下して構いませんねッ!?
一応前回までのあらすじ。
ジャーンジャーン、げぇバオー! 以上です。
まて!これはアンリエッタのわなだ!支援
331 :
ゼロいぬっ!:2008/05/24(土) 13:40:54 ID:i4Q9T9u6
“何の為に戦うの?”誰かがそう訊ねた。
人が憎いから?
―――違う。人を憎みきれる筈などない。
判ってしまった、自分は人に寄り添わねば生きていけない。
たとえ一匹で生き抜く力があろうとも誰かに傍にいて欲しい。
人に嫌われようとも傷付けられようとも、それは変わらない。
生き残る為?
―――そう。ずっと在ったのにその価値に気付かなかった。
命は掛け替えの無いものだと、世界には命が満ちていると、
初めて出会ったあの日に彼女が教えてくれた。
彼女を守りたいから?
―――そう。だけど守りたいのはルイズだけじゃない。
彼女が守りたいと思うもの、自分が守りたいと思うものの全てを。
後悔はしない?
―――きっとすると思う。何もしなくても後悔する。
ルイズを連れてどこか遠くへ逃げても後悔する。
だけど決めたんだ。彼女の温もりに包まれた時から、ずっと。
彼女の使い魔になるって、他の誰にでもなく自分に誓ったんだ。
“ああ、僕達は似たもの同士だ”誰がそう答えた。
僕も一人では生きていけない。
共に生き残る為に戦い続ける。
そして、君と君の誓いを守りたい。
さあ一緒に行こう。僕達は決して負けない。
何故なら僕等は最強の生命力を持っているのだから……。
蒼い獣が咆哮を上げる。
それは先程の紛い物とは比較にさえならない。
天敵の存在しない火竜でさえ未知の恐怖に竦み上がる。
ニューカッスルでの戦いを生き延びた兵達は瞬時にして恐慌状態に陥った。
怪物の出現に戦場の空気が変貌する。
心臓の鼓動が乱れるように戦場が震撼した。
人は目前に無視できない恐怖が迫った時に取れる行動は二つしかない。
そしてアルビオン兵達は逃避以外の手段を選択した。
押し寄せる津波の如く軍靴の音が響く。
手には銃を、口々に獣の咆哮に似た雄叫びが上がる。
脅威を排除する。敵わぬと理解しながらも彼等は止まらない。
332 :
ゼロいぬっ!:2008/05/24(土) 13:42:36 ID:i4Q9T9u6
一方、突然の“バオー”の出現にトリステイン軍は戸惑っていた。
アルビオンと違い、その存在を知っているのは一握りの人間だけ。
それに戦場に現れた異形の獣を味方だと誰が思えるだろうか。
しかし敵は磁石に引き付けられる砂鉄のように彼へと向かう。
どうするべきか分からないまま、蒼い獣の情報だけが戦場を駆け巡る。
そして、それは彼を知る者達の下へと届けられた。
「なんですって! ルイズの使い魔が!?」
「理由は判りませんが……好機と見るべきか、あるいは」
声を上げるアンリエッタの横でマザリーニは顔を顰めた。
確かに、この戦況では少しでも戦力が欲しい。
ましてや、それこそ戦局を一変する力ならば尚の事。
だが、もし仮にその力がアルビオン軍を一蹴するほどの物だとしたら。
軍事強国である、かの国でさえ太刀打ちできないような怪物だったなら。
……我等が杖を向けるべきはアルビオン軍ではないのかもしれない。
我々がハルケギニアの大地に在り続ける為に。
「来たか!」
彼が来る事は分かっていた。
それは限りなく確信に近い感覚だ。
ミス・ヴァリエールがいるなら彼が必ず駆けつける。
たとえ地上と空に切り離されようとも、
水の檻の中に囚われようとも、二人を引き離す事は出来ない。
だから驚く必要も無い。これは当然な事。
なのにアニエスの口から漏れたその声は自分でも分かるほどに興奮していた。
ああもう。笑いたければ笑え。
彼が来てくれて私は嬉しい。心からそう感じている。
感情的になるのは軍人として未熟だと分かってる。
なのに、その感情は今は抑える事が出来ない。
トリステイン軍の戦力としてではない。
共に旅した仲間との再会を私は喜んでいる。
「……聞こえる」
敵味方が入り混じった最前線に立つギーシュが呟く。
目の前で飛び交う銃弾には目もくれず、背後へと振り返って遠くを見つめる。
その上がりかかった彼の頭を抑えながらニコラは叫ぶ。
「何がです!? 自分には砲声と銃声の大合唱しか聞こえませんぜ!」
「間違いない、今度は本物だ。どうして彼がここに…?」
「誰です? 援軍ですか?」
ルイズの言葉が正しければ彼はここには来れない。
だけど戦場に響く咆哮は間違いなく彼のもの。
困惑の様相を強めていく上官にニコラは訊ねた。
「ルイズの……いや、僕たちの大切な“仲間”だ」
彼へと振り向きながらギーシュは笑みを浮かべて訂正した。
333 :
ゼロいぬっ!:2008/05/24(土) 13:43:29 ID:i4Q9T9u6
「きゅいきゅい! やっと来たのね! 遅いのね!」
まるで寝坊で遅刻した友達を怒るようにシルフィードは言った。
事情を知らない彼女達には何があったのかなど知る由も無い。
これでやっと肩の荷が下りると安堵の息が漏れる。
「……………」
しかしタバサの疑問は晴れない。
何故、彼が今まで出てこなかったのか。
何故、今になってようやく姿を見せたのか。
思考のパズルが完成しないのは必要なピースが足りないから。
自分の知らない所で何かが起きている、タバサはそれだけを感じ取った。
そして、もう一つ。
彼が運んできた大砲じみた巨大な包み。
見覚えの無い筈のそれにタバサは反応を示した。
あるいは彼女は気付いていたのかもしれない。
それが自分達の、彼の運命を決定付けた物だという事に。
「ああ! また美味しいところ持って行かれちゃったじゃない!」
跨ったフレイムの頭をぺしぺしと悔しげに叩きながらも、
キュルケの顔に浮かんでいたのは紛れもなく笑みだった。
その主の気持ちをフレイムは痛いほど理解していた。
まあ、実際に痛いのは頭を叩かれているからなのだが。
戦友が戦場に舞い戻ってくれたのは嬉しい。
だが、そこが戦場であろうと社交場であろうと人の視線を集めずにいられぬ。
それこそがフレイムの主の誇るべき気性だ。
しかし悔しいぐらいにあの蒼い影は戦場に映える。
幾百もの兵士も彼の障害たり得ず、あの火竜でさえ頭上を飛び交う事しか出来ない。
同じ使い魔として彼の事を誇りに思える。
ふんぞり返った火竜山脈の暴君達よ。
よくその目に焼き付けろ。
恐怖を知らぬお前達を慄かせる彼こそ我が友にして―――。
「さあ行くわよフレイム! こっちも派手に暴れるわよ!」
「きゅるきゅる!」
主に力強く答えてフレイムは戦場へと飛び込む。
そう、ここで彼の活躍を見守る訳にはいかない。
主とミス・ヴァリエールがそうであるように。
彼とは終生の友であり―――決して負けられぬライバルなのだから。
支援フェノメノン!
335 :
ゼロいぬっ!:2008/05/24(土) 13:44:36 ID:i4Q9T9u6
響く遠吠えと兵士達の口々に上る噂に耳を傾けながら、
ルイズは呆然と立ち尽くして呟いた。
「……なんで」
十分すぎるほど彼は戦い、そして傷付いた。
使い魔の責任と義務を彼は果たした。
だから、私の事は忘れて自由に暮らしていい。
帰れる場所があるのだから帰らなきゃいけないんだ。
もう私には彼にしてあげれる事はない。
返しきれないぐらい何度も助けられ、それなのに彼を裏切った。
「……なんでよ」
それでも私はあいつに生きていて欲しかった。
たとえ嫌われようとも蔑まれようとも構わなかった。
それ以外に、彼には何もしてあげられないから。
痛みも悲しみを堪えて戦う姿を見たくなかったから。
我が儘でいい。掛け替えのない大切なものを守りたかった。
「相棒も同じだったのさ」
彼女の耳に届くようにデルフは告げた。
ルイズが彼の事を想うように彼もルイズを愛していた。
誰からも愛されず、愛する事さえ知らず、
物として扱われてきた彼にとってルイズは唯一の存在だった。
だから応えるのだ、己の全てを以って。
ルイズの瞳から大粒の涙が零れ落ちる。
互いに通じ合いながらも交差する事のない想い。
嬉しさと悲しみが入り混じり彼女の内で溢れていた。
バオーの咆哮が再び戦場を揺るがせる。
蒼い体毛が風に靡くと同時にアルビオン兵に放たれた。
それは次々と銃に突き刺さり瞬時に燃え上がらせる。
尚も剣を抜き向かってくる者達を見据えて牽引索を咥える。
次の瞬間、大きく弧を描いてソリが兵達を襲う。
兜の上で鈍い音が響き、彼等はその場に悶絶した。
頭上から押し寄せる火竜の炎を避け、彼は倒れた兵から剣を奪う。
猛獣さえも振り回す首の力で投擲を放つ。
それは火竜の翼を捉え、平衡を失った竜騎士は地上へと落ちていく。
「っ…………!」
ワルドの奥歯がギシリと歪な音を立てて噛み締められる。
目の前の光景に彼は失望さえ感じていた。
それはアルビオン兵達を指しての言葉ではない。
彼等が束になろうともバオーに勝てないのは分かりきっていた。
だがバオーの、あの無様な姿はなんだ?
離れた敵を焼き殺し、近づく物を切り伏せ溶解する。
竜さえも己が体より発する雷で屠る怪物。
それこそ稲を刈り取るように相手の命を絶つ事が出来るというのに、
何故あの程度の敵に手間取る?
それはまるで敵の命を気遣うかのような甘い戦い様。
ニューカッスル城での戦いで体験した恐怖を微塵も感じない。
336 :
ゼロいぬっ!:2008/05/24(土) 13:46:32 ID:i4Q9T9u6
ワルドの胸に怒りが込み上げてくる。
この程度の敵ではない、自分が倒そうとしているのはもっと巨大な敵なのだ。
世界を滅ぼす魔獣、殺戮を行なう為に作られた純粋な兵器。
そうでなければ自分は一体何の為に…!!
「……殺す前に貴様の化けの皮を剥いでやる。
目の前で仲間の四肢を引き裂かれれば考えも変わるだろう!」
憎々しげに吐き捨ててワルドは風竜と共に宙へと舞う。
しかし、その行く手を複数の艦艇が遮った。
舌打ちしながらワルドは彼等が過ぎ去るのを見送る。
「砲門開け! あの獣を討つぞ!」
「しかし当該空域にはまだ戦闘中の火竜が…」
「構うな! アレを討てるなら安いものだ!」
艦長と副長の口論が艦橋に響き渡る。
まるで親の仇にでも出くわしたかの如く、艦長は船を急かす。
だがニューカッスル城での一方的な殺戮に憤慨を感じたのではない。
彼を打ち倒す事で得られる名誉と地位に目が眩んだ結果だった。
左右両舷には同様の考えで動いた艦の姿が見える。
先を争うようにして進む複数の艦艇。
彼等とて無策で挑むわけではない。
あの雷は脅威に成り得ないと判断したからだ。
雷は空気中で分散される。
それは距離が伸びるほど明確になってくる。
ましてや巨大な船体を焼き払うとなれば、どれほどの力が必要だろうか。
現にアルビオン行き来する船にも何度か雷は落ちた事があるが、
それも全体へと拡散し、船体の表面を焦がすか燃やす程度。
強力な魔法として知られるライトニング・クラウドでさえ、
近距離で、しかも火薬庫を正確に撃ち抜かねば軍艦は沈められない。
砲口が一斉にバオーへと向けられる。
絶え間なく降り注ぐ砲弾は再生の時間さえ与えず、
彼を細切れへと変える筈だった。
337 :
ゼロいぬっ!:2008/05/24(土) 13:47:32 ID:i4Q9T9u6
それを視界の端に収めながら、バオーは包みに前脚を掛けた。
引き裂かれた布の下から出てきたのは無骨な金属。
そこから見える千切れたコードに噛み付いて中身を引き起こす。
そして前足で完全に固定して彼は狙いを定める。
体内に電流が駆け巡るのを感じながら、
地上から放たれた光が天を貫くのを、彼は見届けた。
かつて自分の仲間を撃ち、そして自分に向けられる筈だった光を。
「へ?」
間の抜けた船長の声。
袈裟切りに振り下ろされた光が船体を横断する。
その直後、まるで巨大な剣で切られたかのように軍艦が両断されていた。
彼等を乗せた艦橋が地面へと吸い込まれていく。
慌ててレビテーションを唱えながら、彼等はその光景を目の当たりにした。
最強と謳われたアルビオン艦隊が次々と光に貫かれて落ちていく悪夢を。
「……“光の杖”」
空を見上げたまま誰もが言葉を失う中、ただ一人グリフォン隊の衛士が呟く。
光を目にした時から、無くなった筈の指先が酷く痛む。
忘れようもない、天を突く一条の光。
あまりにも神々しく、まるでそれは誰かの魂が天に召されていく姿に思えた…。
338 :
ゼロいぬっ!:2008/05/24(土) 13:49:40 ID:i4Q9T9u6
以上、投下したッ!
支援!
投下乙!
支援間に合わなかった
ゼロいぬさん投下乙そしてGJでした
いぬかっこいいよいぬ
フレイムかっこいいよフレイム
GJ! ゼロいぬさんの勢いは世界一ィィィィィィィ!
今でも更新し続けている長編の一つなんで、是非頑張ってほしい。
DIOが使い魔の人とか、何処いったんだろうなぁ……
バオー・ブレイクダーク・サンダーレーザー砲キター
つーか犬はよく使い方が分かったな
>>343 あれ?
わんこってガンダじゃなかったっけ?
忘れっぽいからそこらへん覚えてないんだが。
ああそうかコロッと忘れてたw
犬さんGJ!!
レーザーで船を両断するシーンで不覚にも
イデオンソードを連想してしまった………
アフロ「グレンk(ry」
わんこGJ!
わんこかーいーよわんこ
溶けても構わないから抱きしめてやりてぇ……
14巻はこういうことでいいのか?
はるか昔――人間が歴史を持つずっと以前の昔
その生き物たちは進化の過程でこの世界に出現した
その生き物たちはマギ族と呼ばれ 強力な魔法の力を操ることができた
原始人は彼らを神や悪魔として恐れた
彼らは魔法技術により「死」の確率が低いので 増殖の必要も少なく
その生き物の個体数も少なかった だから争いもなく平和に暮らしていた
だが突然 そこに天才がひとり生まれた その天才は より強い力がほしいと願った
そして自分たちの脳にはまだ 未知なる力が隠されていることを知り その能力をひき出すと
天才は「虚無の魔法」を編み出した
虚無の魔法は凄まじい力をもたらした けれどもより多くの生命エネルギーを必要とした
ほうっておけばきっと大地の全ての生き物を殺してしまうだろう
その生き物の一族は 虚無を恐れた その天才を恐れた
「やつが存在するのは危険だ」「あいつをこの世界から消してしまわなくてはならない…!」「やつを殺してしまわなくては!」
「バカ者どもがッ! 精霊を克服したいとは思わないのかッ! 何者をも支配したいとは思わないのかッ!
あらゆる恐怖をなくしたいと思わないのかッ!」
その天才は逆に一族をみな殺しにし 自分を生んだ親も殺すと
四人のしもべをつれ 長い旅に出たのだった 約六千年前のことだった
なんという究極生物ブリミル
GJだねぇ…まったくおたくGJだぜ…
しかし、前投下したやつを見直してみたが、地の文が少ない事に気づいて死にたくなったな…
>>346 ノイエ・ジールのメガ・カノンで中央部から爆発するサラミスを想像した
ゼロのルイズにノイエ・ジールinガトーが召還されたようです
>>352 そんなの本当にあったのかwww
ノイエ・ジール聞いてふと思っただけなんだがww
姉妹スレの頂き物のとこにあるんだけどねー…空中戦前の話が進まんというか…
>>348 ねことダメなまほうつかいの裏設定はこうなわけですね!
エルフはその一族の生き残りとかか
357 :
ゼロいぬっ!:2008/05/24(土) 23:46:43 ID:i4Q9T9u6
あんまり話は進んでいませんが50分から二度目の投下をして構いませんねッ!?
358 :
ゼロいぬっ!:2008/05/24(土) 23:50:47 ID:i4Q9T9u6
大きな窓から取り込まれた陽光が、端が見えないぐらい長い廊下を照らし出す。
優雅な佇まいと荘厳さを併せ持った空間を一人の女性が闊歩する。
吊り上がった目は常よりも鋭さを増し、響く靴音は召使達を威嚇するようにも聞こえる。
通りがかった使用人達も端に退いて、震え上がりながら恭しく頭を下げるのみ。
この屋敷において実質的に二番目の地位にいる女性、エレオノールを見送りながら係わり合いを避ける。
触らぬ神に祟りなしと彼等は骨身に染みて理解しているのだ。
「どういうつもりよ! あの子にちびルイズの手紙を見せるなんて!」
そして彼女は目的の使用人を見つけると襟首を掴んで壁に叩きつけた。
その使用人は主に彼女の妹カトレアの世話を任されている男だった。
先日、屋敷に届いたルイズの手紙にはこれから戦場に向かうと書かれていたのだ。
アルビオンとトリステインの命運を賭ける一戦に、生きて帰れる保証は何処にも無い。
呼び戻そうとも時既に遅し。戦端は開かれてしまったのだ。
父親であるヴァリエール伯爵はショックで寝込んでしまい、
母カリーヌは『好きにやらせなさい』と彼女の放置を決め込んだ。
溺愛していた妹がそのような状況に置かれていると知れば、
ただでさえ体調の良くないカトレアにどれほど悪影響を与えるだろうか。
妹に知られぬように手紙を処分しようとした時、彼女は手紙が持ち出されていた事を知った。
そして、それを行なったのがカトレア付きの従者だという事も。
「わ、私はカトレア様に頼まれただけで…」
「手紙が届いたなんて口を滑らせなければ済んだ話でしょう!?」
「久方ぶりに届いたルイズ様からのお手紙ならば喜んでいただけると思い…」
彼とて悪意があってした訳ではない。
屋敷から離れる事も出来ず、まるで昔話に出てくる古城に囚われた姫の如く、
退屈な日々を過ごす彼女に、少しでも明るい話題や珍しい話を用意しようとしただけ。
ただ後先の事を考えられずに事態を悪化させてしまったのだ。
歯噛みをしながらエレオノールは彼をキッと睨みつけた。
憎悪さえも感じさせる冷たい視線で彼女は言い放った。
「覚悟しておきなさい。もし、あの子に何かあったら解雇だけじゃ済まされない。
いえ、殺すだけでも飽き足らない。生まれてきた事さえも後悔させるわ」
顔面蒼白となった召使を突き飛ばし、彼女はドアをノックする。
向こう側から聞こえてくるのは「どうぞ」という普段と変わらぬ明るい声。
無理をして取り繕っているのだろうかと思案しながら彼女は扉を開けた。
359 :
ゼロいぬっ!:2008/05/24(土) 23:52:23 ID:i4Q9T9u6
「いらっしゃい、姉様」
いつもと変わらぬ笑顔でカトレアはベッドの上にいた。
その手元には広げられたルイズの手紙。
彼女の周囲を取り囲むペット達がエレオノールの気配に怯え、
カトレアの背後に隠れるように逃げ込む。
「……………」
何を言うべきか分からずにエレオノールは立ち尽くした。
ベッドに座る妹は普段と同じ……いや、それ以上に明るく見えた。
何故そんなに平然としていられるのか訊ねようとした矢先。
「ルイズに新しい友達が出来たんですって」
、
その先手を打つようにカトレアは話しかけた。
突然振られた話題に戸惑いながら眉根を顰めるエレオノールに構わず、
カトレアはまるで自分の事のように楽しげに続けた。
「学院でも友達が出来たって書いてあったわ」
「……カトレア」
「あの子なら大丈夫よ姉様。いつまでも子供のままじゃないわ。
きっと友達がルイズを守ってくれる。私はそう信じている」
深刻そうな表情を浮かべるエレオノールを抱き留めながらカトレアは囁いた。
温かな感覚に包まれて安心したのか、堰を切ったようにエレオノールは泣き崩れた。
気丈に振舞っていた彼女だがルイズの事をどれほど心配していたのだろうか。
もしかしたら二度と会えないかもしれないという恐怖に苛まれていた。
そして支えるべき相手である妹に慰められ、彼女はようやく素顔を見せて泣いたのだ。
綺麗なブロンドの髪を撫でながらカトレアは手紙に目を落とす。
学院から手紙が届くのは初めてではない。
だけど、その内容は自分が大丈夫である事を告げるのみ。
学院での生活や交友関係に一行たりとも触れていなかった。
だが、それだけで彼女が孤立している事を証明していた。
魔法も使えずに親元から離れての学院生活。
その彼女の心境を思う度にカトレアの心は締め付けられた。
360 :
ゼロいぬっ!:2008/05/24(土) 23:53:57 ID:i4Q9T9u6
だけど、この手紙は違う。
そこには楽しい学園での生活や友人の事に冒険譚、
今のルイズの姿が生き生きと書かれていた。
手紙に込められた想いから彼女の成長が手に取るように分かる。
自分が知っているルイズは甘えん坊だった。
だけど照れくさくて恥ずかしくて、それを誤魔化してしまう子。
一人で何でも出来るって無理をして周囲の人を困らせてしまった。
だけど彼女は守られる事を、そして守る事を知った。
それはとても大きな成長。他人に迷惑を掛けないというのは優しさと同義じゃない。
ルイズにとっては自分と他者を隔離する心の壁だった。
その壁を打ち砕いてくれた小さな友達への感謝の想いを胸に彼女は呟く。
「ルイズ。きっと私に紹介してね、貴方の大切なお友達を」
その頃、カトレアの温もりに満ちた胸の中で、
“何故この豊かさの一割でも分け与えられなかったのだろう”と、
ヴァリエール家の屋敷を見上げる平民の大半がそう思うように、
エレオノールは妹の胸を鷲掴みにしながら始祖を呪っていた。
「艦長ッ! 光が! 艦隊を!」
「落ち着け! 何が起きている!?」
慌てて艦橋に飛び込んだ伝令に艦長が冷静に問い質す。
息を切らせながら途切れ途切れとなった言葉を伝令は紡ぐ。
地上より放たれた光が軍艦をまるでケーキのように切断していく、
目にした光景をありのままに伝えられた艦長が顔を顰める。
「そんな馬鹿な事が……」
その次の句は継げなかった。
艦橋に立つ二人の間を光の柱が突き抜ける。
それは徐々に横へと移動し船体に致命的な断裂を生み出す。
目の前で何が起きたのかも理解出来ぬまま艦は二つに裂ける。
「一体どうなっている!?」
「アタシにだって分かるもんか! もう“光の杖”は使えなくなっている筈さ!」
「ならばアレをどう説明するつもりだ!?」
ワルドが指差した先には天地を貫く光の柱。
グリフォン隊にいたワルドは“光の杖”の存在を知っていた。
そしてフーケから“光の杖”が使えなくなった事も聞かされていた。
だが現に“光の杖”はあの夜と変わらぬ輝きを放ち続けている。
その真相を聞きだす為に彼はフーケのいる後方の艦を訪れたのだ。
361 :
ゼロいぬっ!:2008/05/24(土) 23:55:36 ID:i4Q9T9u6
「確かにあのオンボロが言ってたんだよ。
“あれは風石を失った船と同じで、何の意味もない代物だ”って」
だがフーケにだって分かる訳がない。
あの状況でデルフが嘘をついたと思えない。
困惑するばかりのフーケを余所にワルドは思案に耽っていた。
何気ない彼女の一言がワルドの脳裏に焼きつく。
(いや……あるいは有り得るか)
「本当に大丈夫なのかワルド子爵!」
クロムウェルが狼狽した様子で彼に話し掛ける。
そこには、かつての威厳溢れる態度など残されてはいない。
皇帝の地位とそれを守るアルビオン艦隊が無ければ彼は無力な鼠に等しい。
それを分かっていながらワルドは彼を落ち着かせようと笑みを浮かべる。
「心配要りません。ですが少し彼女の力が必要なようです」
いずれ、その全てを奪う為に。
その時まで、この矮小な男を利用せんが為に。
成す術もなく撃沈されていく艦隊を見据えながらボーウッドは毒づいた。
戦略も戦術もあったものではない。全てが一匹の獣に覆される。
敗北さえも覚悟した身だが、こんな敗北などあってはならない。
もし、あの武器が存在し続ければ戦局を大きく変貌する。
艦隊も城壁も大軍さえも無意味と化すだろう。
そうなれば各国の軍事バランスは崩壊し、
世界を巻き込んだ大戦争へと発展するかもしれない。
だが今の状況では手も足も出せない。
撤退するべきか悩む彼の眼前を光の刃が通り抜ける。
真横に併走していた艦へと向けられた光。
だが、それは船体を貫く事さえ出来ずに止まっていた。
よく見れば、その光は雲を通過して届いていた。
瞬間。ボーウッドに閃きが走った。
如何なる原理かは知らないが、あれは光なのだと。
ならば陽光を遮る雲の中を抜ければ弱まるのも必然。
咄嗟に伝令へと指示を飛ばす。
「全艦に告げる! 直ちに雲の上へと移動せよ!
その間、火系統と水系統のメイジで水蒸気の壁を作れ!」
内容の意図も理解できずに首を傾げる伝令に、
ボーウッドは怒鳴りつけながら連絡を急がせる。
すぐさま彼の命令通りに動いた艦隊の姿が濃厚な霧の中に消える。
そしてボーウッドの思惑通り、地上からの光は船体に届かなくなった。
362 :
ゼロいぬっ!:2008/05/24(土) 23:56:37 ID:i4Q9T9u6
だが、これは一時的な措置に過ぎない。
いつまでも雲が形を保っていられるとは限らないし、
メイジの作り出した水蒸気も同様だ。
ならば成すべき事は唯一つ。
彼は再び伝令を呼んで地上軍への命令を伝える。
一方的に蹴散らされていくアルビオン艦隊の姿。
歓喜の声を上げる兵達の中にあってマザリーニは重苦しく呟いた。
「……艦が沈まなくなりましたな」
「ええ。ですが向こうも容易には手を出せないでしょう」
彼に同意するようにアンリエッタは答えた。
まさか学院で保管されている筈の“光の杖”。
それがこの戦場で使われるなどと誰が予想できただろう。
しかし、その優位性も今や失われつつある様子。
それでも艦砲射撃が止んだのは僥倖と見るべきか。
「となれば敵の狙いは唯一つ」
「分かっています」
自身の杖を手にアンリエッタは立ち上がった。
周囲の視線が集まるのを感じながら彼女は下知を告げる。
「何としてでもあの怪物を――打ち倒すのだ!」
「何としてでも彼を―――守り抜くのです!」
告げられた命令は同時でありながら対称的に、
両軍の兵士達が“バオー”を中心に動き始めた。
363 :
ゼロいぬっ!:2008/05/24(土) 23:59:49 ID:i4Q9T9u6
以上、投下したッ!
久しぶりにGJが多かったので嬉しくなって筆が進みました。
更新チェックをしたときには既にッ!
投下が終わっていたんだぜぇーッ! 乙!
そしてパパン降爵かわいそうです
>父親であるヴァリエール伯爵はショックで寝込んでしまい、
^^^^
GJッ!GJッ!GJッ!GJッ!
ゼロいぬっ!GJッ!
366 :
ゼロいぬっ!:2008/05/25(日) 00:12:08 ID:HanK0Adu
いぬさんGJ!!
こう、全力でクライマックスだとスッゲー読みごたえがあるけど、いよいよ終わっちまうと思うと寂しいぜ…
では私はコピペではなく、ちゃんと入力変換して
GJッ!GJッ!GJッ!GJッ!GJッ!
ゼロいぬっ、GJッ!
>エレオノールは妹の胸を鷲掴みにしながら始祖を呪っていた。
つーか、何やっているんですかエレオノールorz
わんこGJ!
ルーンが光りすぎてわんこが弱らないかが心配だが
どうも悪奴は変な所で運があるな
死ねばよかったのに、レーザーで
ねっこからの悪に変じたワルドはボスになるからあっけなく死ぬのはダメなんだろうがどうしてもそう思ってしまうw
よく読むと、ムネを触っていたのね
何というエロオノール!
>>348 「当たりまえだぜッ! このジョゼフはなにからなにまで計算づくだぜーッ!」
(ほんとはちがうけど ブリミルがくやしがるならこういってやるぜ ケッ!)
みたいな感じでジョゼフの勝ちに
仮面希望
催促をするんじゃあないッ!
シャルル「あんなに…」
幼シャルロット「おとうさまー」
小シャルロット「父様」
シャルル「あんなに素直で明るい子だったのに…」
シャルロット「…うるさい、読書の邪魔」
シャルル「でも父様分かってるもんね、シャルロットが実は心優しい子だって」
先日スターダストファミリアってのを教えて貰って初めてSS読んだ。
元ネタはジョジョの方しか読んだ事ないせいか違和感無く読めて凄く面白かったわー。
元々承太郎が好きだったのもあるけど、二人がお互いにツンデレしながら上手く信頼関係を築いて
ルイズの方が少しずつ承太郎に好意を持っちゃう展開に悶えまくった。
てか承太郎さん格好良過ぎだ。
そんな訳で非常に今更ながら星屑さんに労いの言葉を贈りたい。
GJ!
もう続編は書かないのかなぁ……お金払ってでも読みたいくらいだ。
まとめのを何回も読み返した後にわざわざ過去ログでまた全部読み返しちゃったよ。
「スターダストは砕けない」の方も読んだのか?ファミリアーの続きだぜIFルートだけど
それと星屑氏はあの作品のキャラが〜の方で別キャラ召喚してる
>>378 勿論両方読んだよ。
結婚式をしてくれとお願いするルイズにキュンときた。
別のキャラの方は知らないな…。
>>376 ジョセフ→ジョゼフ
アヴ→キュルケ
ポル→才人
花京院はギーシュ?
イギーが思いつかんw
イギーはキュイキュイ
「クッチャ、クッチャ」
「包み紙ぐらい取ってから食え」
人の顔の前で屁をするのが好きな下品なやつです。
>>381 人間の姿になったきゅいきゅいが素っ裸で才人の顔にのしかかって屁をこく場面を妄想した俺は多分変態
>>382 ヤバクなったら馬鹿女の不利をして自分のケツを追い回すんですね。わかります。
>>378 巻が溜まってきてるから
さらにIFルートを
書いてくれると信じてるぜ
>>384 一応原作にも目を通してみようと思って本屋で探したら見付からなかった。
後で調べてMFJ文庫から出てるのは分かったから今度少し読んでみるつもりだ。
スターダストは砕けないだとあれ何巻辺りまで消費してるの?
最近の話ならルイズもかなりデレてるだろうし、それが承太郎相手だとどんな風になるのか妄想が止まらん。
>>385 何巻なんだろう?今度確認してくる
>>最近の話ならルイズもかなりデレてるだろうし、それが承太郎相手だとどんな風になるのか妄想が止まらん。
承太郎にデレるルイズも見てみたいけど、
しかしそのデレるルイズは使い魔がサイトの場合だかんね
承太郎は決してサイトにはなれないし、サイトも承太郎にはなれない
承太郎の物語とサイトの物語は別物だから
星屑が今の巻まで物語を進めてもルイズがデレるかどうか分からない
まぁ、ここら辺は書き手さんが考える事だけど……
クロス物SSによくあるキャラを当てはめただけの物語ではなく、
星屑だけの物語を書いて欲しいなぁと僕は思った
星屑は原作7巻まで消化してる、第○章のサブタイはそのまんま原作のサブタイ使ってるから
丁度終わりどころというかアニメ2期もそこで終わってるんだぜ
もっとも星屑は7巻で敗戦するところをジョジョ無双してレコン・キスタをぶっ潰しちゃったからだいぶ展開違うけどな
DIO様が召喚された奴、途中まで読んだけど・・・
ルイズが悪すぎる・・・
DIO様の傍若無人ぶりをルイズが自分なりに
止めようとするの最初想像したが
ベイダー郷召喚の時みたいに
ベイダー卿だったから弱点あったけどオビ・ワンなら正直負けるところ予想出来ん
DIO様のは、
シエスタ「KUAAA!!」
ルイズ「WRYYYYYYYYYY!!」
だからなw
正直、手がつけられんw
>>390 そだ |-''ヽー---、 ヾヾヾ
れが |{{{ }}}))))ヽ、}|| l||i
が |{{{||リリ彡ンリノノハ l|||
い |ミ、ヾ彡彡彡ノノノ} ||||
い /ヾヾヾヾヽ三彡ソ} |||
!! /ヾヾ}} }}ハヾヾ三彡;} || に
\___/ハ{{ }}|l||}}}ト、ヽ}} 彡シil l| や
{ミミリ {{{::{{ {{{ {||||| }}ハヾ}リ 彡シ}i{ っ
l|{ミミリ ノニミミョェ、,, |rェィ彡三ヽ1ミ}ll、ヽ
l|,{ ミl イエユミ、i:: iミィエフシ' lミi.} l|
l|ト、ミl ,,.-‐';: i !`゙゙ー- i",イ l|
|lトiiヽl ; i !、 /t'/ l||
rイ{ l ヾく_ソ / |ト、 l||
(|:.:ヽ ゙、 ゙ー_‐--‐ァ' / /:} }ヽ、
ノ"l;:;:ヾヽ:ヽ. 、二二 /::://:::l;;;;;;;
:::::;;;;;;:.:\\\ /::://:.:.:l;;;;;;;;;
:::::;;;;;;;:.:.:.::.ヽ\ヽ、__,,ノ ノ/:.:.:.:l;;;;;;;;;;
むしろDIOとともに悪の道を突き進むルイズが見たい
時間停止に入門したっぽい描写もあったし…
Dio様は悪じゃないとな
改心したらDio様じゃない
改心といえば、ボス見てないなぁ…
ボスの魂だけどっか行ってドッピオのみになったっぽいけど
改心したDio様って、つまりジョルノだろ
DioはSBRのディエゴじゃないか?
しかしあいつどこ行ったんだろう・・・本編で
サモンサーヴァントで呼び出されたんじゃね?
ディエゴ?ああ、そんなのもいたね(笑)
でもSBRは最終的にDioがボスなのか大統領がボスなのかまだ分からないんだよな
個人的にはディエゴが大統領から遺体総取りしちゃえとかおもうんだけど
ジャイロがラスボスになるのでは?
少年を救うためには恩赦が必要だが、その為には優勝しなくてはならない。
だから、どうしてもジョニーが邪魔に・・・・・
ジョニィが譲るだろ普通。事情知ってるし。アイツの目的はあくまでも自分の足をうごかした回転の力と遺体の力だし。別に1位狙ってない。
・・・多分。
ジョニィが一位取る必要は限りなくないからな。それより途中でジャイロが死ぬんじゃないか心配で仕方ない。
なにせツェペリの一族だからなあ。
ツェペリ家はなぁ……
ジョースター家以上に悲運の家系だからなぁ……
ツェペリパパ:吸血鬼化して太陽で溶ける
ツェペリさん:タルカスに胴体ぶった切られる
シーザーパパ:シーザーを庇ってカーズ達(休眠中)に喰われる
シーザー:神砂嵐→天井落盤潰し
シーザーの兄弟達:パパの財産を掠め取られて一家離散
ジャイロパパがラスボス
ジョニィぃぃぃーーーーッ
俺の最期の『回転』だぜーーーッ
受け取ってくれーーーーーッ(エコー)
必要ない
この『牙(タスク)』のみで大統領を倒し、遺体を手にしてみせる
うわー超ゴーマーン!
やっばり漆黒ジョニーだーッ!
ジャイロ涙目wwwww
411 :
来訪者:2008/05/28(水) 15:30:55 ID:FtmVMz3o
ほ、ほんのちょっとだけ…
412 :
ゼロの来訪者:2008/05/28(水) 15:31:46 ID:FtmVMz3o
燃え盛る廊下を走りながら、今自分が夢を見ている事を認める。
そもそもこの館、自分が生まれ育った館は4年前に燃え尽きているのだ。
さらに言うなら、ところどころに転がっている見知った人間達…物言わぬ
骸となって転がっている者達も、その時一緒に灰となっている。
だがそれでも、父と母の部屋に向かう足は止まることはない。
たとえ夢の中であろうとも、あの瞬間を回避できるなら、彼女にそれ以外の
行動をとることなどできようもない。
「父さん!母さん!!」
力任せにドアを開けた彼女の目に飛び込んできたのは、血まみれの…
413 :
ゼロの来訪者:2008/05/28(水) 15:33:42 ID:FtmVMz3o
「………ッ!!!」
飛び起き、ここが自分の学院内であてがわれた部屋である事に気づき
ミスロングビルは安堵した。
「馬鹿だね…夢だってわかってたじゃないか…」
そう言って苦笑すると幾分か気持ちが落ち着いてきた。
乱れた寝間着を調え、机の下に仕掛けておいた罠を見る。
「ちゅう」
そのままモートソグニルごと罠を窓の外に放り投げ、ベッドに腰掛ける。
「なんだってまたあんな夢を…」
いや、理由はわかっている。
昼間育郎から聞かされた…というより、エルフの魔法についての話を
聞きたがる育郎を妙に思い、いろいろと(半ば強引に)聞き出したのが、
あの学生の少女、タバサの話だった。
幸せな暮らしが、巨大な権力によって踏み潰される…
それはまさしく、自分の身に降りかかった、あの忌まわしい出来事と同じだ。
育郎の話を聞いた後、たまたま廊下でタバサとすれった時、思わず呼び止めて
しまったが、結局何も言えなかった。
実際何を言おうと思ったのか…
慰め?
そんなものは無意味だ。
誰も憎むなとでも?
それこそ無駄だろう。
自分も幾度か復讐を考え、そして何度も諦めてきた。だが憎しみは消えない。
可能ならば、今からでもあの男を八つ裂きにしたいぐらいだ。
414 :
ゼロの来訪者:2008/05/28(水) 15:37:22 ID:FtmVMz3o
「…あの子に感謝しなくちゃね」
父達が命を懸けて唯一守ることのできた少女を思い出す。
それは自分にとっても妹のような存在だった。
自分の命を含む全てを投げ出せば、復讐の可能性はゼロではなかっただろう。
だがそれでは残されたあの娘は、誰にも頼ることが出来ず、いずれ狩り出され、
殺される。そう考えたからこそ、自分は復讐を諦めたのだ。
或いはタバサもいつか選択するときがくるのかもしれない。
病に冒された母か、それとも復讐か…
「…やめやめ。辛気臭くていけないよ」
立ち上がり、窓から自分の故郷がある方角を見る。
「ひと段落したら。休みをもらって帰るのも良いかもね」
言ってから苦笑する。
「やれやれ…今の仕事が板についちまったのかね?」
とっととおさらばするつもりが、すっかり長居してしまった。
或いはこのままここに腰を落ち着けるのもいいかもしれない。
「ま、とりあえずあの坊やの事が一段落したら、考えてみても良いかもね」
415 :
来訪者:2008/05/28(水) 15:40:56 ID:FtmVMz3o
とりあえずこれだけで…
まだアルビオン編じゃないよ
というかフリッグの舞踏会すら終わってない
支援だ!
支援
支援間に合わなかったぜ。投下乙です。アルビオン編もwktkしてます
モートソグニルに対する対処が自然過ぎて吹いたwww
>>378 別のキャラって何なんだろ?
あの人が書く文章が何か好きだから読んでみたいです。
バビル二世じゃなかったか?
>>420 避難所のnice boatがそれっぽい
確かアニキの人がガトー召喚書いてた記憶もある。
避難所にホルホル出現注意
ホルホル君二部完結おめ
他の書き手さんがいなければ12:15から投下を開始する。
支援するッ!
限界だ!寝るね!
おネンネするにはまだ早いんじゃないッスかぁ〜?
あ、ありのまま今起こったことを説明するぜ。
お、俺はピザデブにキ…おぞましいことをされただけじゃなくご主人様宣言された。
な、なにを言ってるかわからねぇと思うが、俺にも何が起こったのかわからなかった。
かわいそうなやつとかガチホモとかじゃねぇもっとおそろしいものの片鱗を味わったぜ…!
俺は当然逃げ出した。
マントと着て杖持ったデブに迫られたら誰だってそうするだろ?
だけど、悔しいがそのデブは頭がかわいそうな奴じゃあなかったんだ。
逃げ出した俺はあっさり捕らえられた。
魔法で。魔法、ゲームとかに出てくるのとおんなじようなアレだ。
月だって二つあった…信じたくないけど、どうやらここは所謂ファンタジーの世界だったらしい。
月を見て実感した俺は、仕方ないから少しは話を聞く気になった。
僕だって儀式じゃなきゃっ血の涙をデブ…マリコルヌが流したからとか、ご主人様と呼ばれた瞬間げんなりした顔で、やっぱりいいよ…といったというのもある。
マリコルヌは俺が異世界からきたことは信じなかった。
まあ、そりゃそうだよなマリコルヌは俺の話を聞く気はないようだし、話をする気もなかった。
グヴァーシルがどうとかぶつくさ言ってたけどよくわかんねー。
俺が剣を握ったこともないというと、マリコルヌは何も言わなくなった。
俺には何も期待してないって態度だった。
そしてどこで用意してきたかは知らないが、体裁が悪いからと剣と文字を覚える為の本を俺の目の前に積みながら、
マリコルヌは使い魔だから面倒は見てやるけど後は知らないと言った。
俺だってこんなデブの使い魔なんて続けるつもりは無かった。
返す方法なんてないとか言いやがるマリコルヌなんかにいつまでも付き合ってられるか!
「サイトさん、おはようございます。今日も剣の訓練ですか?」
「おはようシエスタ! そうなんだ。ったく師匠は修行に関してだけはストイックで困るよ」
「そんなこと言っちゃダメですよ。せっかく教えてくれてるんですから」
だけど…メイドさんはいいな。
か、かわいいし、胸も大きいし。
鼻の下を伸ばし始めた俺の背中が叩かれた。
「うわっ」
衝撃で学院の庭に吹っ飛ぶ俺の腹に、亀の甲羅がめり込む。
のた打ち回る俺に、亀から重っ苦しい声が発せられる。
「サイト、貴様には素振りを命じておいたはずだぜ」
「ゲホッゲホッ…! …い、いやそれは今からやろうと思ってたんだよ」
「シエスタの胸ばかり見ていたお前が覚えていたとは思えねーな」
「な、なんでそれをッ!?」
「アホがッ、ブラフだよブラフ」
そう言って頭が叩かれたような衝撃が加わる。
赤くなって胸を押さえたシエスタが去っていく。
とってつけたような別れの言葉と足音だけが目の前がくらくらしたままの俺の頭に届いてきた…師匠、恨むぜ。
俺は亀を睨みつけ、マリコルヌから貰った剣を抜く。
練習用にはいいかもしれんが、大していい剣じゃないって師匠は言ってたが俺にはよくわかんねぇ。
重くて使いづらいのは十分身に染みたんだけどな。
ずっしりとした重みを全身の筋肉を使ってどうにか支えながら俺は亀を見た。
ありえない話だが、この亀が俺の師匠だった。
サイトカワイソス支援
しえんだーッ
ファーストキスからハジマラナイ支援!
ここに来たばっかりで、ちょっと調子に乗っちまった俺が貴族共にやられそうな所を、この亀が助けてくれた。
『これこれ子供達…大勢で弱いもの苛めしてんじゃねーぞ!!』
これなんて逆浦島太郎?
助けられた時は唖然としたよ。
だけど話してみると気のいい亀で、実は俺と同じ世界から来たらしいってことやここでの暮らし方、それに生き抜くために剣も教えてくれる事になった。
名前は…長いんでまだ覚え切れてないから、俺は単に師匠と呼んでる。
「ったく、お前帰る気あんのか? メイドなんてナンパしてる場合じゃねえぞ」
師匠のため息に俺は誤魔化すように頭をかいた。
いわれて見れば確かに妙な話だった。
何故か俺は、こんなネットも風呂もないド田舎にいるのに不思議とホームシックとかにはかかってないんだよな。
字を覚えるのも速かったし…どうなってんだ?
疑問を宙ぶらりんにしたまま、俺は返事を返す。
「んー…それはそうなんだけどさ。やっぱ、モテると嬉しいじゃん。仕方ないって!」
「確かにあれは凶器だが…ハッ」
師匠、もしかしてアンタも見てたのか?
黙秘する亀からはわざとらしい口笛だけが聞こえてきた。
それを見て目を細めかけた俺の背中に気障ったらしい、芝居がかった声がかかった。
「使い魔君、めったな事を言うもんじゃない。彼はあのゼロのルイズの使い魔だったんだぞ?」
首だけ振り向くと案の定フリルの付いたシャツを着た案外顔はいい貴族が造花のバラを持って立っていた。
「ギーシュだっけ? どういう意味だよ」
「ッ…まあいい。ここでは無礼講だ」
なんでも決闘以来友達が激減し、相談相手が師匠しかいないとかいうそいつは平民の俺に呼び捨てにされて頭にきたようだが、一瞬俺を嘲笑うような目をして気を取り直した。
その視線の意味を問い詰めてやりたかったが、そいつが口の端を持ち上げて「マリコルヌの、使い魔君」と言った瞬間に理解できた。
コイツ、彼女持ち。
俺、呼び出されてマリコルヌにおぞましい事をされて、部屋一緒。
奴が感じている優越感を、言葉ではなく心で理解したぜ…!
「ゼロのルイズは胸もゼロなんだ。ゼロばかり見せられる毎日を送っていたんだから、ちょっとくらい大きい胸を見てもいいじゃないか」
「む…それは」
ギーシュの意見に、俺はすぐにイエスとは答えられなかった。
時々見る小鳥を連れたゼロと呼ばれている貴族の少女のことはサイトも知っている。
本当はアイツがお前の主人だったんだ、とマリコルヌがサイトに教えたからだ。
その女の子は、ぶっちゃけ可愛い。
魔法が使えないことなんてどうでもいい俺からすると、ちょっときつそうだが小鳥を可愛がる仕草とか、色々、可愛すぎる。
だから胸なんてどうでも、よくはないが、まぁいいのだ。失礼な言い方をするなら、許せる。
俺の微妙な気持に気付いたのか師匠が話しに入ってくる。
一応、気を使ってくれたのか?
「そんなことよりギーシュ。テメェ今度はなんだ? またモンモランシーがどーとか言う話じゃ」
「そーなんだよっ!! カメナレフッ!!」
師匠の質問に、ギーシュは芝生の上に膝をつき、ドンッと両手で手を突いて亀に顔を寄せる。
一々大げさな奴だ…
「モンモランシーが元気になったのはいいんだ! だけど、ゲルマニア貴族なんぞの毒牙にかかりそうなんだよ!」
「ゲルマニア? あぁ、ジョ…ナサンか」
ジョナサン…俺の家の近くにあったファミレスと同じ名前の貴族も、俺と同じ世界から来たらしいって師匠から聞いている。
手っ取り早く情報を集めるのに成り上がったりしてるとか、悩んでるような調子で言ってたから、よく覚えていた。
「そうだ! 奴めッ、既に、モンモランシ家に近づいていたんだ! モンモランシーは奴からの誘いを断れず…」
「いや別にそういう風には見えなかったが「いいやそんなはずは無い! でなければあのガードの硬いモンモランシーが…」てかお前、ケティとはどーなったんだ」
師匠のの言を力いっぱい否定したギーシュは、ケティの名を聞いて動きを止めた。
俺と師匠は何も言わなくなったギーシュに首を傾げた。
よく見ると少し汗をかき始めたように、俺達には見えた。
「舞踏会の夜僕は飲みすぎて酔いつぶれてしまってたんだ。
そして目が覚めると僕はケティの部屋で眠っていた…な、何を言っているかわから」
師匠は何も言わずにギーシュを殴った。
勿論俺はそれを全く止める気は起きず、寧ろ何かに殴られて転がっていくギーシュを踏みつける。
シャツに足型がついたようだが、それは天罰が足型になって現れたと思え。
俺は師匠に親指を立て「グッジョブ」とだけ言った。師匠も満足そうだった。
「痛ッ痛い! な、何をするんだ!?」
「黙れよ。テメェそういう関係になってまでまたなんだ? あん? 二股とかお兄さん許さんぞ?」
「ち、違う! 僕はケティに何もしていない…ちゃんと服は着ていたし、ケティも酔いつぶれたから運んだだけだって…!」
「「フーン」」
白い目をする二人に、ギーシュは慌てて話を続ける。
「本当だ! なんなら後で彼女に確かめてくれ…! ともかく、僕は彼女の部屋で目覚めて焦ったんだがそういうわけだった。
僕はケティが淹れてくれた紅茶を飲んで部屋を後にしたよ…そして」
「そして?」
「ケティに見送られて女子寮から出る所を、モンモランシーに見られた。しかもケティはまだ寝巻き姿でね。
すっかり誤解されてしまったよ…まったく、美しいバラには棘がつき物だがあの早とちりは困ったものだね」
そう言って、ギーシュはその時の事を説明する。
ケティがとてもいい笑顔で強張った表情のモンモランシーに「ミス・モンモランシ。おはようございます。こんな所で"偶然”お会いするなんて、びっくりしましたわ」
「そ、そうね。あ、貴方が早起きしてるなんて知らなかったわ」「最近、朝少し勉強をしているんです」ケティはそう言って、まだショックの抜けきらないモンモランシーからギーシュに一瞥を向ける。
「もう日課の方は済ませられましたの?」
何故か尋ねられたモンモランシーは、ギーシュを一瞬だが憎しみを込めた目で睨みつけ、笑顔になった。
「…ッ! え、ええ。ギーシュ…「う、うん?」ケティと仲がよくて羨ましいわ」
「ありがとうございます。でもミス・モンモランシーこそ……」
ケティは微かに、挑発するように重心を傾けてギーシュとの距離を詰めた。
「昨夜はとても素敵でしたわ。ネアポリス伯爵とぴったり息もあってらして、いつのまにあんなに親しくなられましたの?」
その言葉で昨夜見た光景、外国の成り上がりと踊る姿を思い出したギーシュが口を挟
「…我が家の領内で伯爵が事業をされてるの。それ以上の関係じゃないわ! は、伯爵は紳士的な方だし…、私そんな安くなくてよ」もうとした時既にモンモランシーが顔を赤くして否定していた。
恥らう姿は、余りギーシュが見たことの無い恥らう姿で、ギーシュは少し胃が痛んだ。
ケティは柔らかい笑みを浮かべたまま頭を下げる。
「それは失礼しました「そ、そうだよ。ケティ。由緒正しいモンモランシ家と出自の怪しい上に節度のない伯爵では釣り合うわけがない!
それにあの男、女連れで学院に来そうじゃないか!あんな軽薄な男とだなんて二度と言わないでくれたまえ!」
多少挙動不審になりながらモンモランシーの代わりに言ったつもりのギーシュを、モンモランシーは睨み付けた。
「ギーシュ…っ、失礼なことを言わないで! 私の家は今伯爵と協力してるんだから」
「な、「ギーシュ様、そろそろ行かれないと皆さん起きてきてしまいますわ」
激昂しかけたギーシュをケティが押し留める。
モンモランシーは既に美しい縦ロールをなびかせながら二人に背を向けていた。
「さよなら。またねケティ」
「ええ、ごぎげんよう」
…その時の事を語り芝居がかった様子で首を左右に振るギーシュへ、二人は引きつった生暖かい笑顔を向けた。
「…お前それでよくそのジョナサン?とかいう貴族の事どうこう言えるな」
「あんな奴と一緒にするんじゃあない! 僕は今でも…」
「おっと、それならどうしてケティとまだ付き合ってるんだ?」
反論しようとしたギーシュは、ポルナレフの質問を受けて苦虫を噛み潰したような顔をする。
「うっ…いや、それはだね。偶々言い出す機会がなかったというか、ケティもあの通り可愛いし、ね?」
「……師匠、俺はどう考えてもモンモランシーって娘とは切れたと思うんだぜ?」
「奇遇だな。俺もそう思う「ちょ…ちょっと待ってくれ! まだだ! まだだよ!! 僕はそろそろ本気を…」
「「無理だろ」」
膝から崩れ落ちるギーシュを置いて、二人はシエスタの所に朝ごはんをたかりに行く。
野郎の浮気が原因の涙なぞ、二人の足を止める枷にはなりようもなかった。
「私の分も忘れるんじゃないよ」
マジシャンズ・レッドを操作し、厨房へ亀を抱えて向かわせるポルナレフに気の無い言葉がかけられた。
声の主は、ここにいる間は不用意に外に出るわけにもいかないので現在ポルナレフと同居中のマチルダだった。
ポルナレフがサイトに剣を教えるのを邪魔するほど嫌な女ではないマチルダは、行儀悪くソファに寝そべったままジョルノが組織の人間用に作成させた問題集を解いている。
眉間に皺がよっているのを見て、ポルナレフはマチルダが解いている問題集を覗き込める位置へ歩き出す。
「わかってるさ。テファにもよろしくって頼まれてるからな。俺に任せておいてくれ」
最近、気分が若返ってきたのか昔のように自分の事を俺と言うようになって来たポルナレフの笑顔は爽やかだ。
「ならいいんだけどね」
「…俺が教えてやろうか?」
「アンタの世話になるほど落ちぶれちゃいないよ」
テキストを渡された時、娘同然のテファにもとても嬉しそうに"私が勉強を見てあげる”なんて言われたせいか、マチルダは反発した。
その様子に気付いて世話を焼こうとするポルナレフを拒否して、紙面をジッと睨みつける。
そうしていると何か頭に浮かんでくるような気がした。結局浮かびはしないのだが…
テファや孤児院の子供達までがやっていたと聞いて暇つぶしにやりだしたが、案外梃子摺っていしまい意地になってしまったようだった。
暫くいなかった同居人に冷たくされ、ちょっぴりだが傷ついたポルナレフは肩を竦めた。
『ぺチャパイヤンデレと付き合う』、『何度か死にそうになる』、この二つを同時にこなすのが幹部。
絶対無理だ支援!
ケティこわいよケティ
しえん
ケティ…恐ろしい子…!
*
その頃、日課の朝練を終えたトリスティン魔法学院の教師の一人『疾風』のギトーは食堂に向かおうとした所を彼が教える生徒達と変わらぬ年の伯爵に呼び止められていた。
最初、ギトーは生徒かと思い鬱陶しく思い首だけ振り向いて話を聞こうとした。
客人がいる事は聞いているが、それよりも自分が覚えていないできの悪いメイジの可能性の方が高いと思ったからだ。
だがそうではなく、ゲルマニア貴族のネアポリスだと聞いて、ギトーは体を少年へと向けた。
ヴァリエール家の次女が患っていた病を治療した優秀なメイジの名前は、ギトーの耳に入っていたからだった。
爽やかな笑みを浮かべながら、ネアポリスは信じがたいことをギトーに提案した。
不愉快そうな表情を作り、ギトーは聞き返す。
「私にここを辞めて貴様の軍門に下れというのか?」
ネアポリスは頷き、説明をする。
ギトーは話にならんと、鼻で笑って去ろうとしたが…奇妙な事に足は動こうとしなかった。
気持としてはココから逃げ出したいというのに!
逸る気持を抑え、感情を隠そうとするが、爽やかに微笑むネアポリスの見透かしたような目にギトーは射竦められていた。
疾風のギトー…彼は風のメイジとしてとても優秀だった。
若くして炎のトライアングルであるキュルケの炎を軽くかき消すことだって出来たし。
風のスクエアである『遍在』だって使えるスクエアメイジである。
魔法を使うセンスもいい方だった。
だが…彼はどうしようもなく"臆病"だった。
遍在で五人に増えることはできても、五人分の勇気でも周りのメイジ達の一人分の勇気に到底足りなかった。
授業でキュルケを弄ぶことはできるのだが、戦いに赴くとなると気持が萎んでしまう。
先日現れた格下のトライアングルである"土くれ"の相手などとんでもない。
この臆病さのせいで、フーケ討伐にも参加しなかった。
もしそんなものに参加していたとしても、ギトーは戦わずに逃げ出していただろう…ギトーには覚悟が無かった。
だが、ギトーには不幸な事に魔法の才能はあり、プライドだけは育ち過ぎ…虎の威を借りながら自分の本性は隠してきた。
平静を装い続けるギトーの心を、ネアポリスの危険な甘さを含んだ言葉が掴もうとしていた。
それを察したのか、2、3言葉を交わしネアポリスが去った後もギトーはその場所から動けなかった。
ギトーの説得を終えたジョルノは朝食に向かうギトーと別れ、人気のない広場へと向かった。
そこは奇しくもポルナレフが決闘を起こったのと同じ広場だった…朝という時間、それに皆食堂に向かっている時間であった為に人気は全くなく、誰かが覗き見をしているようなこともなかった。
ジョルノにはわからないが、オスマンの使い魔のネズミがジョルノの前に現れたということは、そういうことなのだろうとジョルノは思っていた。
建物の影に立つジョルノと目を合わせたネズミが二本足で立ち上がり、喋り出した。
その声は間違いなく学院長オールド・オスマンのものだった。
「ネアポリス伯爵、わざわざこんな場所に移動してもらって悪いのぅ…しかしじゃ、わしの立場や何を言いたいのかまで貴公ならわかってくれると思っておるんじゃが?」
「ミスタ・コルベール達のことですね」
ジョルノは頷いた。
ネズミ…モグソートニルからから話が早くて助かると、若干相好を崩したような雰囲気が伝わってくる。
「うむ。教員の引き抜きは止めてもらえんかのぅ…」
学院にとって血肉ともいえる教員を引き抜かれてはかなわない。しかもそれがゲルマニアによるものというのは、オスマンにも看破できぬ問題だった。
流石にコレが王国にばれたら問題にする貴族もいるかもしれないし、新たにスカウトしてくるのも面倒くさい仕事だった。
「わかりました…ですが、既に声をかけた方に関しては、彼らの意志に任せていただくのが条件です。既に彼らと私の間で約束を交わしました。声をかけた私が今更なかったことにすると言うわけにはいきません」
「勝手に引き抜きをしたそちらに問題があると思うがのぅ」
自業自得と切り捨てるようにきっぱりというネズミに、ジョルノは笑みを浮かべたまま言う。
相変わらずの鬼帝様だぜ支援
そーいや、あっちは最近更新ないよね
「それをおっしゃるなら、貴方方が彼らを飼い殺しにしたから応じていただけた。という言い方も出来ますが?
ミスタ・コルベールの行動を、貴方は十年以上の時間があっても理解しなかった。そうですね?」
「むぅ…」
オスマンは苦い声を出した。辞表を出したコルベールを引き止めようとして、似たようなことを言われたからだった。
「わしもできれば穏便に済ませたいと考えておる。万事今まで通り何もなかった、と言う風にのぅ。勿論、辞めてまで何かしようとした彼らの要望には今後は耳を傾けるようにはするがの」
ネズミの目が鋭く細められる。広場の空気が密度を変えようとしていた。
「それを踏まえて、手を引いてもらえんかのぅ。今ならわしに貸し一つじゃよ君?」
「お断りします」
きっぱりと拒否するジョルノにネズミは眼光をより鋭いものへと変え、その小さい体でジョルノを威圧し始めた。
得体の知れぬ何かをネズミから感じ取り、ジョルノはそれを見定めようとネズミを見る。
「身の程を弁えろ成り上がり、貴様如き力尽くで従わせても構わんのだぞ」これこれモグソートニル、それではまるでわしが脅しておるようではないか。わしはタダお願いしておるだけじゃ、のう伯爵?」
「ええ。ですが、お断りすると言ったはずです。もう少し説明しなければいけませんか?」
圧力にもどこ吹く風と淀みなく返事を返すジョルノに、ネズミから発せられる何かが強くなった。
モグソートニルは、主人が止めるのも構わずに何故自分が一介の貴族如きに苛立たせられているのか考えずに、牙を剥いた。
風がネズミにまとわり付くように動き始めた。
「彼らとはよい関係を築きたいと私は思っている…約束は違えられない」
「ふむ…致し方ない「叩き潰せばすむと言ってやったのに、生意気な奴だ…!」
青い渦がネズミを包み、巨大な渦へと変わる。
そして風は不意に止んだ。
ネズミのかわりに巨大な竜が広場に現れていた。
シルフィードより何回りかは大きく、白い鱗が光を反射して輝いているようだった。
少し余った皮などを見て、もしかしたら年老いているのかもしれないと思ったが…見た目以上の何かを秘めているような凄みをジョルノは感じた。
「やめんか…!すまんの、伯爵。わしと離れておるせいかモグソートニルを押さえきれんようじゃ。この場は引いてくれんか?」
「三度も同じことを言わせる気ですか?」
「伯爵、挑発せんでくれ。拠点全ての精霊と反射の契約をしたエルフに向かって行ったメイジ達と同じ末路を辿りたいのなら止めはせんがの」
「反射?」
オスマンの、この場に相応しくない長い、説明的な例えにジョルノは首を傾げた。
系統魔法の本は幾つか読んでいたが、心当たりはなかった。
頭の中に浮かび上がったのは、久しく使っていない自分の能力の一つ。
「詳しくは話せんが、お主の攻撃はモグソートニルには届かぬのじゃよ。騙しておるのではない。また後日話し「なるほど。そういうやり方もありましたね」
ジョルノは合点がいったらしく、笑みを消して自分の胸元のボタンに触れた。
「ほっほ、中々博識じゃな。そういうわけじゃから、わかってくれたかの?」
「だが断る」
ネズミであった時より幾分余裕を持ったオスマンの声をジョルノはきっぱり断った。
竜の筋肉に力が入っていくのが、ジョルノの目に映る…ジョルノの肉体など一撃で粉々に出来るかもしれない。
だがモグソートニルは、攻撃するどころか「我をまといし風よ 我の姿を変えよ」 と唱え、元のネズミの姿に戻る。
不満げな様子でモグソートニルはジョルノから目を逸らす。だが口からは相変わらずオスマンの言葉を吐いていた。
「その凄み。ただのハッタリとも思えんの…いいじゃろう。じゃから、食堂にいるラルカス君に杖から手を離すように言ってもらえんか」
「ありがとうございます。こんな無駄なことは今後は遠慮したいですね」
冷めた表情で言いながら、ジョルノは片手をあげる。
ジョルノの視界の端で、建物の中からこちらを窺っていたラルカスの遍在が頷いた。
生徒に直接危害を加えるつもりはなかったが、ちょっとした騒動くらいは起こすつもりで控えさせておいたのだった。
ジョルノ黒いよジョルノ
「ほっほっほ、そうじゃのぉ。わしも将来有望な若者とはもっと建設的な話をしたいと思っておる」
「勿論です。私も貴方とは良い関係を築きたいと考えています」
「それは喜ばしい事じゃな。ではあるご婦人に一つ伝言を頼めないかのぅ?」
朗らかな笑い声をあげながら碌でもないことを言ってきそうなオスマンに、ジョルノは頷いた。
「構いませんが」
「ミス・サウスゴータというグンパツな太もものお姉さんに、わしからよろしくと伝えておいてくれんかな」
「わかりました。必ずお伝えしましょう」
サウスゴータ…ポルナレフの亀の中にいるマチルダが捨てさせられた家名をあげるオスマンに快く承諾する。
「すまんの。おおそうじゃ! 後一つ質問があるんじゃが」
「なんです?」
「ミス・ウエストウッドの胸って本物?」
「さあ? 本物なんじゃないですか」
イザベラが前に揉んでいたのを思い出しながら、ジョルノは返事を返して背中を向ける。
驚愕しているらしいオスマンとそのネズミを置いて、何事もなかったような顔で食堂に向かう。
知り合った学生達に軽く挨拶をし、以前から探させていたデルフリンガーが見つかったとか、トリスティンの王女アンリエッタが学院に来るなどの報告を受けても、共に食事をしているタバサ達が気にも留めない程度にしか反応を示さず…
オスマンも暢気な、好々爺らしい表情で生徒達を見守りながら朝食を取っていたし、ラルカスはお近づきになった女生徒と今日も仲良さそうにしていた。
以上です。
こまごまと悩んでるけどこっちで投下させてもらいました。
支援ありがとうございました。
GJGJGJ!
こんなに応援したくなるサイトは初めてかもしれない
投下乙!
投下乙そしてGJでした
モートソグニルが……モートソグニルが……!
これは予想外だった
さすが数百年の時を生きるオスマンの使い魔
ただものじゃあなかったのか
才人がポルナレフを慕ってくれてることが嬉しい
ロクな目に在ってない師匠に優しくしてあげてくれ……
サイトかわいそすぎるw
ところでネズミの名前違うと思うんだよ
>>451 本当に申し訳ない。
確認してきました…ネズミの名前は“モートソグニル”でした。
モグソートニルって誰よ…OTL
今度まとめの方で修正します。
指摘ありがとうございました。
しかしルイズの影が薄いな
アルビオン編どうなるんだろ?と思ったがジョルノが横槍入れて
アンアンに「自分達にお任せください。」と任務を奪う(言い方は変だが)可能性もあるか
(一国の王女の弱みを握れて、恩を着せることも出来るし)
ポルジョルさんGJ!!
サイトとギーシュがんばれw
しかし思ったんだがガンダールヴじゃない才人が出てくる作品ってすごく珍しい
ポルが鍛えてるけど、原作でギーシュのワルキューレを叩っ切るレベルまで成長するのにかなり時間がかかるんだろうな
ちゃんと鍛え上げたほうがルーン効果に頼るよりも確実だろうけど
ご主人がルイズじゃないってことは
マリコルヌと視覚の共有とか普通にできちゃうんだろうか…
嫌過ぎる…
>>455 ただ、問題は普通のオタ高校生が鍛え上げるのにどれだけかかるかだな
血反吐吐きながら死に物狂いでも3年以上かかるだろ
なんらかの方法でサイトがパワーアップするんだろうが…
Diskとか弓と矢とか
>>457 3部ポルポル君なんて10年修行してるからなあ
オタ高校生がいきなり強くはなりませんよ
ファンタジーやメルヘンじゃないんですから
ファンタジーなめんな。地球人
ポルポル10年修行してる割には活躍少ないからなあ
花京院、承りが目立ちすぎて・・・
>>458 スタンドだとシルバーチャリオッツが一番イメージ的にしっくりくる
ポルの弟子に継承される騎士道というのも悪くない……かな?
怪帝おぞましく恐ろしいよ怪帝
ジョルノが暗黒化してるのが非情に怖いのぜ
バオーサイト
つ赤石付き石仮面
つ「Disc:ハイウェイトゥヘル」
つ「愛の力」
展開とかキャラが破綻してきてどうにも書けなくなってしまった
1から書き直す、というのはアリだろうか?
まとめるとジョースターとDIOの血を引き、赤石付石仮面で吸血鬼となって波紋使いかつスタンド使いで
バオーを移植されている究極生物サイトだな?
つ「『覚悟』をしたサイト」
>>469 それもアリだと思うけど、書き直しても結局破綻する可能性もありえますぜ。
キャラは気紛れなところがあるとか適当に理由をつけて状況を戻したり、
日常描写を一話書いて、心境の変化を作ってみれば方向性は修正できるかと。
展開は……今起きてるイベントをぱぱっと解決させて、適当に濁すのもありかと愚考する次第。
要するに、続きが気になるのであります。
ジョルポルGJ!
ジョルノ黒いよジョルノ…
だがそこが好きwww
どんなに黒くなってもあの爽やかな笑顔さえあれば許せそうwwwww
GJだ
しかし、おそらく百年単位で生きてる竜が……普段はスカートの中を覗いてるのか……
さすがファンタジー、奥が深い
六部のさわやかなDIO様を思い出してドキドキしてしまいますよ。
DIO様のDISKはジョルノに入りっぱなしだけど、まだ時止めしてない&亀ナレフ知らないんだよな。
いつ覚醒になるのか、楽しみで仕方ない。
知ってるんじゃなかった?
>>469 ノリと勢いと倍プッシュでギーシュを『ぶっ殺した』が6巻の終わりまで続いてるやつもあんだから大丈夫だって
もう遅い!脱出不可能よ!
こちとら、天国で究極カーズ様にビリっときたァーーー!されて
星白金世界+99
ホワイトアルバム+99
シンデレラ+99
が消えたともさ!
ディアボロスレでやろう!な!
482 :
ゼロいぬっ!:2008/05/31(土) 21:38:19 ID:1B/jcdxR
45分に投下しますが構いませんねッ!?
483 :
ゼロいぬっ!:2008/05/31(土) 21:44:35 ID:1B/jcdxR
「さて、準備はいいな」
風竜に跨りワルドは周囲を見渡した。
彼を取り巻くように集う竜騎士隊。
ワルドの姿を捉える彼等の眼には感情らしき物は感じられない。
内にあるのはワルドへの畏怖のみ。それが彼等を突き動かす。
満足したかのようにワルドは笑みを浮かべて腰に差した杖を抜いた。
「我々の目標はただ一つ。他には目もくれるな、それが何であろうともだ」
杖の先端が地上の一点を指し示す。
ここからでは豆粒のようにしか見えない標的。
それはアンリエッタ姫のいるトリステイン本陣ではなかった。
だが、それに何の反応も見せず彼等は指示された地点へと飛び立った。
遅れるように続くワルドの背を眺めながらフーケは呟いた。
「怪物にならなきゃ倒せない……そうまでして勝つ意味はあるのかい?」
トリステイン本陣より離れた丘の上。
そこに陣取ったバオーは群がる敵兵に苦戦を強いられていた。
敵は命を捨てて彼へと攻撃を仕掛けてきている。
それほどまでの覚悟を持った相手を殺さずに倒す。
到底出来る事ではない。だが、やるのだ。
無数に積み重ねた屍の上で泣く自分の姿をルイズには見せたくない。
壊されぬように“光の杖”を庇いつつ、彼は敵と刃を交える。
振り下ろした剣が蒼い刃に重なる。
倍以上の厚みはあろうかという大剣は、
糸を引くような容易さで薄刃に両断された。
武器を失っても尚、兵士は眼前の怪物に掴みかかる。
その腕を躱しながら懐へとバオーは潜り込んで衝突する。
鈍い音を立てて変形する兵士の鎧。
衝撃が内臓にまで届いたのか、その口元から血が零れ落ちる。
だが、それでも兵士はバオーの身体を掴む。
そして血液を吐き出しながら男は力の限り叫んだ。
「貴様は…生きていてはならんのだ!」
男の瞳にはアルビオンを蹂躙するであろう怪物の姿が映っていた。
祖国、家族、友人、様々な想いを背負った男がバオーの首を締め上げる。
しかし、それも一瞬。バオーは首を男ごと振り回して投げ飛ばす。
力ずくで引き剥がされた男が敵の集団の中を転がり巻き込んでいく。
それでも怯む事なく敵兵は我先にとバオーに押し寄せる。
その後方で足が竦む新兵を老士官が叱咤する。
「退がるな! あれは倒さねばならぬ敵、そして我々は……軍人だ!」
484 :
ゼロいぬっ!:2008/05/31(土) 21:45:53 ID:1B/jcdxR
息巻くアルビオン軍とは裏腹にトリステイン軍の足取りは重い。
否。彼等の動きは完全に止まっていた。
……目の前で暴風のように荒れ狂う蒼い獣の姿によって。
牙が鉄柱じみた槍を噛み砕き、前足の一振りで数人の兵士が弾き飛ばされる。
取り囲もうとした鉄砲隊が火矢と化した体毛に蹴散らされる。
檻の如く迫り来る幾多もの剣が横薙ぎに一閃されて断たれる。
トリステイン王国の為に命を惜しむつもりはない。
だが、正体さえ分からない怪物の為に戦う気力は沸きあがらない。
アルビオン兵は敵とはいえ同じ人間なのだ。
それを藁でも払うかのように蹂躙する怪物に彼等は躊躇った。
未だにバオーが誰も死なせていない事実に気付けば変わったかもしれない。
ギーシュやニコラの怒声も彼等を動かすには至らない。
この広い戦場の中、彼が仲間と呼べるのは一握りの人間だけだった。
「どいて! お願い邪魔しないで!」
ルイズが叫び声を上げながら人垣を押し退ける。
立ち止まった兵達の合間を縫うようにルイズは彼の下へと向かっていた。
彼のルーンを伝わって感じる孤独、それが彼女の心を苛む。
今すぐに伝えたい、私はここにいると。
たとえ世界が敵に回ったとしても私達はずっと傍にいる。
だから悲しまなくていい。誰からも理解されずに苦しまなくていい。
一緒にいてあげる。一人では背負い切れない力と責任だって二人なら、きっと。
「嬢ちゃん、上だ!」
デルフの警告がルイズの鼓膜に響く。
声に反応して上を向いた彼女の眼に竜騎士隊の姿が映った。
気付いた周囲の兵達が蜘蛛の子を散らすように逃げ惑う。
それに続くようにルイズも逃げ出そうとした。
だが振り返った先には逃げ場を塞ぐように飛来する火竜。
その瞬間、彼女は気付いた。
この竜騎士達の目的はバオーでも、集結した兵団でもなく―――。
「逃げろ! こいつらの狙いは嬢ちゃんだ!」
デルフの叫びは幾つもに折り重なった羽ばたきに紛れて聞こえなくなった。
竜の翼が生み出す突風に負けじとルイズは足を踏ん張る。
乱れた前髪が視界にかかって邪魔する中で、彼女はハッキリと彼の姿を捉えた。
自身を見つめて歪な笑みを浮かべるワルドの姿を。
近くに駆け寄るルイズと、彼女を包囲する竜騎士達。
その存在を触角とルーンで感じ取ったバオーは即座に行動に移した。
乱戦の中で“光の杖”を上空へと構え直す。
バオーの体を駆け巡る生体電流が咥えたコードから“光の杖”へと伝わる。
その瞬間、“光の杖”は本来の力を取り戻して起動する。
落雷に匹敵する莫大な電気エネルギーは光に変換されて放たれる。
高出力レーザーより放たれた光が火竜の翼だけを切り落とす。
高速で移動する竜が落ちれば無事では済まない。
だが、光が放たれるよりも早く彼等は竜より飛び降りた。
加速がついたまま、それを弱めようともせず地面へと吸い込まれていく。
咄嗟にレーザーで竜騎士達の手足を切り飛ばすも間に合わない。
衝突寸前でレビテーションを唱えた数人の騎士がルイズの近くへと降り立つ。
485 :
ゼロいぬっ!:2008/05/31(土) 21:47:31 ID:1B/jcdxR
「ひっ……!」
トリステイン兵が悲鳴を漏らした。
その騎士の一人は完全に腕を失っているにも関わらず、平然とその場に立っていた。
まるで何かに操られる人形のように感情を失った眼がルイズへと向けられる。
直後、赤い血飛沫が周囲に飛び散った。
悲鳴を漏らしたトリステイン兵の喉が二つに裂かれる。
ルイズの傍に残った二名を除き、他の竜騎士達は手当たり次第にトリステイン兵を殺し始めた。
いかに数が多くともメイジを相手に統制も取れぬ状態では抵抗出来るはずもない。
駆けつけようとしたギーシュ達が逃げ惑う兵士達に阻まれる。
恐らくはそれが狙いなのだろう。
ただ足止めをするためだけに人の命を奪い取る。
ルイズが彼等に感じた感情は恐怖ではなく嫌悪だった。
「久しぶりだねルイズ」
あの時をなぞるようにワルドは彼女に言った。
だが、そこにいたのは実家の庭で会った青年でも、
ラ・ロシェールの森で再会した若き衛士でもなかった。
それは彼女が見た事もない、おぞましい存在だった。
自分を蔑むように見つめるルイズの視線。
しかしワルドは、もはや何も感じない。
憐憫を向けられた時に感じた揺らぎはない。
真っ向から自分を見据える少女。
その手には輝く“水のルビー”と“始祖の祈祷書”があった。
ワルドが一歩近寄る度に、ルイズが一歩下がる。
それが彼女が出来る最大限の抵抗かとワルドは笑った。
確かに彼女にはワルドと戦う力がなかった。
だが、それも少し前の話。
今の彼女にはワルドなど歯牙にもかけぬ力、“虚無”がある。
「……ワルド。それが貴方の本性なの?」
「さあな、僕にも分からんよ。そんな些細な事はどうでもいい」
この時、ワルドは気付けなかった。
彼女の問い掛けの意味に気を取られている間に、
ルイズの指先が抱えた祈祷書のページを捲っていた事を。
そのページには虚無の初歩の初歩の初歩、
『エクスプロージョン』の呪文が記されている事を。
彼は咥えた“光の杖”を近くにいたトリステイン兵士へと放った。
突然受け渡されて呆然とする兵士には構う事なく、
彼は続け様に“メルティッディン・パルム”を地面に放った。
溶解液が浸透した足場が瞬時にして泥と化す。
未知の攻撃にアルビオン兵達の間で混乱が生じた。
その機を逃さず、彼は兵士達の上を駆けた。
彼等の背を、頭を蹴り進みながらルイズへと直走る。
その彼の目の前で、ルイズは祈祷書を大きく広げて杖を掲げた。
486 :
ゼロいぬっ!:2008/05/31(土) 21:48:35 ID:1B/jcdxR
「エオ―――」
「止めろ嬢ちゃん!」
虚無の詠唱を口にするルイズをデルフが制止する。
だが、どちらも手遅れだった。
彼女の鳩尾に深々と靴の爪先が突き刺さる。
一歩踏み出して放たれたワルドの前蹴りは呆気ないほどに容易く決まった。
「がはっ…」
詠唱の代わりに漏れるのは苦悶と唾液。
足を引き抜かれた瞬間、彼女は立ち上がる事さえ出来ずに膝をついた。
その彼女にワルドは警戒する様子も無く近寄って髪を掴んだ。
「今のは聞いた事もない詠唱だったが……まさか“虚無”か?」
「……………」
髪を掴んで引きずり起こしワルドは訊ねる。
だがルイズは答えようとはしない。
痛みを堪えながらワルドの顔を睨みつけた。
落とした祈祷書に眼を向ければ、ただの白紙。
しかし、ただのハッタリではない。
ほんの一瞬だったがワルドは確かな恐怖を感じたのだ。
彼女の沈黙を了承と受け取り、ワルドは続けた。
「だが迂闊だったな。“虚無”といえども詠唱できねば無意味だ」
「っ……!」
デルフが悔しげにワルドの言葉を聞き続ける。
そうだ。その為の使い魔であり“ガンダールヴ”だ。
だが、嬢ちゃんは相棒を想って引き離してしまった。
その事がここに来て裏目に出るなんて…。
過去を悔いても結果が変わる訳ではない。
それでもデルフは、もし自分が止めていればと思わずにはいられなかった。
直後、デルフリンガーの柄に手が伸びた。
掴んだのは細く白い指先。
痛みに震える手は握力を失い、カタカタと鍔を鳴らすだけ。
しかしルイズの眼は翳りを見せずワルドの姿を射抜く。
彼女の姿を無言でワルドは見つめる。
手足を震わせ、口からは荒い吐息で苦悶。
満足に剣を取る事もできずにふらつく足取り。
そこからは貴族らしい潔さも気品も感じ取れない。
それでも尚、彼女は勝てぬ相手に牙を剥こうとする。
かつての婚約者の醜態に思わず目を覆いたくなる。
拳を握り締め、ワルドは手の甲でルイズの左頬を打ちつけた。
ひどく鈍い音がした。ルイズの体が崩れ落ちる。
だが髪を掴んだ手が倒れる事を許さない
力任せに引き上げて彼女の顔を拝見する。
殴られたルイズの顔は赤く腫れ上がり、
口の中を切ったのか、唇から血が滴り落ちていた。
487 :
ゼロいぬっ!:2008/05/31(土) 21:49:29 ID:1B/jcdxR
「……不愉快だ」
「ええ。私もよ」
それでもワルドは溜飲は下がらない。
何故ならルイズは今も恐れる事なくワルドを睨み続けているのだ。
ギチリと先程よりも固くワルドの拳が作られる。
ルイズは目を背けずに真っ向から向かい合う。
その刹那、ワルドは弾けるように背後に振り返った。
そこに立っていた騎士が杖ごと胴体を切断される。
切断面から噴水のように噴き上げる血液。
「ウオォォォームッ!」
蒼い獣が咆哮を上げてワルドへと迫る。
憤怒か憎悪か、激しい感情がその身を包む。
鍛え上げられた竜騎士を一太刀で屠る怪物。
だが、ワルドはその威容に歓喜さえも覚えた。
これだ。これこそが僕が倒すべき敵。
全てを賭けて挑む価値のある存在なのだ。
振り下ろされるセイバー・フェノメノン。
しかし、それはワルドの直前で止まった。
刃の先にあったのは盾にされたルイズの身体。
動きを止めたバオーの前足を風竜の牙が捕らえる。
ミシリという鈍い音と共に刃と装甲に亀裂が走った。
引き裂かれた傷口から溢れ出すバオーの血液。
バオーに喰らいついたまま風竜は宙を舞った。
その背にはワルドと服を掴まれたルイズを乗せて、
瞬く間に地上から遠く離れ去っていく。
片腕を封じられたバオーに容赦なく迫るワルドの杖。
それをもう一方のセイバー・フェノメノンで防ぐ。
だが貫かれた腕からは絶えず出血が続き、
枯れ枝が折れたような、骨が噛み砕かれる音が響いた。
その凄惨な光景を目にしてルイズは覚悟を決めた。
私の所為だ。今、アイツがやられているのは私の所為だ。
アイツ一人ならワルドにだって勝てるのに。
足手まといになんてならない。
―――私だって戦えるんだ。
488 :
ゼロいぬっ!:2008/05/31(土) 21:50:03 ID:1B/jcdxR
「ワルド!」
突然、名を呼ばれ振り返らずも視線だけをルイズに向ける。
彼女の眼は真っ直ぐに自分を捉え、その手は彼女の服に掛かっていた。
掴んでいるブラウスのボタンが既に幾つも外されている。
その意図に気付いた瞬間、彼女は止められる前に行動に移した。
「お別れよ」
掴まれたブラウスからルイズが袖を抜く。
直後、彼女の身体は宙へと投げ出された。
ブラウスだけを残して彼女は地上へと吸い込まれていく。
桃みがかった長い髪が風に靡いた。
彼が気付いた時には、主である少女の姿は視界から消えていた……。
489 :
ゼロいぬっ!:2008/05/31(土) 21:52:44 ID:1B/jcdxR
以上、投下したッ!
次回は、脇役達の決戦です。
GJ!
乙、そしてGJ!
ルイズ、上着を脱いだら下はキャミソールだけなのに……!
仕方がないとはいえ、その姿は衆目に晒されることになるぞ!
あ、でも注目を集めるような体はしてな……、あれ、こんな時間に誰か来たぞ?
ムチャシヤガッテ
>>491の書き込みを見てギーシュがまたアニエスに誤解される情景が思い浮かぶわけだが
仮面さんマダー?
コラッ!急かさないの!
みんなじっと我慢しているんだから
ツンデレクイエム!
恋人という『結果』に辿り着けない!?
デレにたどり着けないって、普通に嫌われてるだけじゃね?w
ツン→デレ→ツン→デレ→ツン→デレ→ツン→デレ→……
明確な関係は築かれることなく、延々と相手をやきもきさせる!
それがツンデレクイエム!
と理解した。
ただ単に「ヤッた」という結果にたどり着けないということなら
シーブックの記録は相当なもんだな。
ただ後日談で最低でも二子に恵まれるという結果が確定してしまったがw
頼む 頼むよ〜
携帯しかない俺は避難所の投下は読めないんだよ〜
wikiを更新して ねっ! ねっ!
あ なるほど
wikiからいくとPC用の避難所になるけど
直接行けばよかったのか
理解可能
保管庫でアヌビス神・妖刀流舞読んでたら頭の中に
「憑依合体!」とか「オーバーソウル!」とか浮かんできた。
>>504 ガンダールヴ=神の左腕=「まっ、幻 の 左!!!」
ですね、わかります。
まだ召喚されてないスタンド使いどれくらい居るの?
3部の悪役はあんまり召喚されてないな
SBR最新刊の『アクセル・RO』とかなら、いろいろトラウマほじくり返せてやばいな
仮面はもう更新しないのかな
久しぶりに投下します。
視界に広がるのどかな田園風景を窓越しに見ていると、あたかも額縁に飾られた名画を見ているような
奇妙な錯覚に陥りそうになる。
心を啓発するものではなく、人の心の奥に刻まれた原風景を思い起こさせる温かみのある絵画だ。
ゆったりとしたソファーに身を沈めて、綿雲が青空を彩り、緑色の絨毯を敷き詰めたような大地が作り出す
コントラストを楽しんでいると、隣に座る雇い主から不機嫌そうな声を掛けられた。
「暇だわ。ヨシカゲ、何か面白い話しをしなさい」
「断る」
イザベラが歯軋りをしながら何か言いたそうにしているが、私はあくまで護衛として雇われたのであって、
従者や話し相手ではなく、ましてやきゅいきゅいとうるさい風竜のような使い魔になった訳ではない。
出世を考えるならご機嫌取りのひとつもするべきであろうが、私自身そのつもりはまったくない。
そもそも私は幽霊なのだから立場など考える必要はない、この場所が嫌になったら出て行けばいいのだから。
「イザベラ様、お目汚しかと存じますが」
「まぁ綺麗!カステルモールはよく気が利くわね。だぁ〜れかさんと違ってね!」
イザベラが普段からは考えられないような猫撫で声を出しながら、騎士から差し出された花束を受け取る。
その花束は即席で作ったにしては配色も考えられているなかなかの物だ。
イザベラはウットリとした表情でその花束を見つめながら、流し目にしてはいささか険の篭った視線を
私に向けて送ってくる。
その眼よりも、猫撫で声と発情期のメス猫のようなイザベラの顔に気分を害した私は風景を楽しむ気にもなれず、
馬車に誂えられた書架に手を伸ばし適当な本を見繕う。
娯楽本の類はひとつもなく、その殆どがトリステインとゲルマニアについての本で埋められている書架から、
近年のトリステインについて書かれた本を手に取ると適当にページを捲った。
にゃんこー!!!!!支援
『前述の通り、国境線における領土争いの度重なる敗北と過剰なまでの貴族主義の横行により、
トリステインは一時期の隆盛も虚しく、小国へと没落していた。
だが、始祖より受け継がれし王権のひとつが消え去ろうとしているのを見かねた
アルビオンのジェームズ一世は自らの弟とトリステインの後継者であり、当時唯ひとりの王族である
マリアンヌとの間で婚姻を結ばせようと、トリステイン王宮にその旨を打診する。
それを受けたトリステイン側は連日連夜、ジェームズ一世の思惑を推し量らんと会議が続けられた。
ジェームズ一世は王位に着くために、自分に従う弟と共に血を分けた兄弟や親までをも殺め、
王位に着いた後も自らに従わぬ貴族たちを次々に粛清した冷酷非常なる王として知られており、
そのジェームズ一世の弟を迎え入れることで、トリステインはアルビオンの傀儡に成り下がり、
アルビオン同様に粛清が始まるのではないかと貴族たちは恐れたのである。
だがその反面、ジェームズ一世の統治者としての手腕はハルケギニアでは並ぶものがなく、
彼が王位に着いてからのアルビオンは繁栄の一途を辿り、そしてその傍らには常に弟の姿があり、
兄であるジェームズ一世に負けず劣らずの辣腕振りを発揮していた。
結局、取るべき選択肢のないトリステインはジェームズ一世の弟を新たな王として迎え入れることとなった。
この選択は国にとっては正しい選択であり、王宮に住まう貴族たちにとって最悪の選択となる。』
『トリステインの王位に着いた彼はその卓越した知能と王の補佐として得た経験に基づいた様々な政策を
実行し、破綻寸前だったトリステインの財政を建て直し、外交と遠征によりその領土を徐々に広げて行った。
民衆は彼の功績を称えたが、やはり彼を快く思わない者たちも存在した。
トリステインをこのような状態まで追い込んだ元凶である、門閥貴族たちである。
王の打ち立てる政策は彼らの利権を削り、領地を縮小させることにより財政を立て直すというものであった。
実際のところ王の取った政策は、田畑を検地し直し、領地間の輸送にかかる不当な関税を撤廃させ、
民を蔑ろにする貴族から領地を召し上げそれを直轄地とすることにより、領民に安心を与え、税を滞りなく
納めさせるという当たり前のことをしたにすぎなかった。
彼が王位に着く以前の状態が異常だったのである。
だが、栄えある一門である彼らにとって国とは自らの生活をより豊かにさせる為の道具でしかなく、
領民は自分たちを富ませる為の家畜でしかなかった。
王の政治は国を豊かにしたが、決して彼らの懐を膨らませた訳ではなかったのである。
彼らは王を廃して政権を取り戻そうと幾度となく密談を行い、互いに出し抜かれないように
水面下で暗闘を繰り広げていた。
だが、貴族たちのそのような思惑も王の計算の内にあり、むしろ、彼らが行動に移るのをじっと待ち構えていた。
そして、彼らの決起を後押しするように、王によりある政策が発表された。』
「へぇ、アンタでもそんなの読むんだ?」
「ああ…誰かさんのおかげで気分が悪くなったんでな」
私がそう言うと、イザベラは意地の悪そうな笑みを浮かべ、見せつけるようにして花束を抱える。
どうやら私の言った意味を理解してないようだが、別に訂正するつもりもないのでそのままにしておく。
何やらチラチラと私を盗み見しているが、特に言うこともないので私は次のページを捲った。
『このハルケギニアには逆らってはいけないものが三つある。
始祖の残せし文言、貴族などの支配階級、そして教会である。
この内の二つ、始祖と貴族についてはあえて説明する必要もないだろう。
そして、この本を手に取った方々は、なぜ始祖と教会を分けたのか疑問に思っていることだと思う。
その理由については筆者が以前に執筆した“光の国”に詳しく書いているので、
もし興味があり、異端者として告発されることを恐れないのであれば、その本を探して読んでもらいたい。
その他の方々には、この場で簡単に説明しようと思う。
ロマリア連合皇国と始祖を崇め奉る組織の頂点に立つ最高権力者は、ご存知の通り教皇である。
しかし、その起こりは過去のロマリア王が自称したものであり、始祖がその命を持って任じたものではないことは
読者の方々もご存知の通りである。
当時のロマリアはガリア南に点在する様々な都市国家群の中でも弱小であり、大王ジュリオ・チェザーレが
この世を去った後、周辺の都市国家との軋轢とその共謀により国力の衰退を余儀なくされていた。
さしたる資源もなく周りを敵に囲まれた状況のロマリアには、教皇を自称し始祖信仰の総本山となることでしか
生き残る選択肢はなかったのだ。
幸いなことにロマリアには始祖の墓があり、始祖についての研究がどの国よりも進んでいたので、
その主張に対して各国が行動を起こすこともなくハルケギニア中に認められることとなった。
そして、ロマリア連合皇国として再出発した彼の国は、何百年もかけてゆっくりと勢力を広げ、
揺るぎなき始祖の御使いの国となったのである。』
「先代のトリステイン王は教会への寄付、ぶっちゃけて言えば教会に支払う税金を禁止したのさ。
あの国にはありがたぁ〜いお経と生臭坊主以外に輸出できるモンがないからね。
寄付が無くなったらあっという間に干上がっちまうから、向こうも相当焦ったと思うよ」
花束をどこかに放り投げて、イザベラは吐き捨てるようにそう言うと頬杖を突きながら窓の外に眼を向ける。
次のページを捲ると、イザベラが言った通りのことが書かれていた。
ロマリアが寄付で国の財政の一端を賄っているとすると、個人ではなく、国がそんな政策を取ったのなら
かなりの額の寄付が無くなり、ロマリアは大打撃を被ることになる。
門閥貴族たちを煽るためだとしても、これはやり過ぎだ。
「そうか…だが、そんなことをすれば異端審問にかけられるだろう。それを恐れなかったのか?」
「ああ、そんときにはロマリアと話しがついてたのさ。あくまで発表であって実行には移しませんよってね。
その貴族連中はロマリアの有力者に賄賂を寄付として渡していてね、そのおかげで坊主たちはブクブク太って
教皇の言うことでさえ聞かなくなっていたのさ。
ロマリアも生臭坊主の対処に頭を悩ませてたから、渡りに船ってヤツだね」
つまり全ては出来レースで、王に反抗する貴族たちはまんまと乗せられたという訳だ。
そして、王は連中の決起を潰してから首謀者のみを許して権力基盤を確固とした物にしただけでなく、
決起して生き残った者たちの恨みを免罪した首謀者らに全て押し付けた。
それから首謀者たちから賄賂を渡していたロマリアの有力者の情報を聞き出して、それをロマリア政府に流し、
ついでに貴族から取りあげた金で多額の寄付を送って両国の関係を修復した。
全てが王の手の上で踊っていただけのことだったのか。
いや、だったらアレはどうなるんだ?
「確か以前にメイジ威信とか言って、魔法派と肉体派の争いだったと聞いた覚えがあるんだが」
「それは…門閥貴族をおちょくるのに肉体サイコー!とか言ってたら知らない間に広まったらしいよ。
今じゃポージングとか言ってトリステインの代名詞で文化の象徴にまでなっちまったけど」
なるほど、つまりトリステイン貴族は元からアホだったということか、スゲェ納得した。
これだけは王にとって予想外の展開だったんだな。
私がひとり納得していると、嫌そうな顔でイザベラが私を見つめていることに気づいた。
「アンタ…トリステインに興味があるみたいだけど、他になにやってもいいから、お願いだから、
トリステインかぶれにだけはならないでおくれよ」
「なるわけねぇだろッ!気持ち悪いことを言わないでくれ!!」
私とイザベラは顔を見合わせてウンザリとした表情になる。
このときばかりは、私はこの女と心が通じ合っている感じがした。
もちろん、それには理由がある。
sien
現国王でありイザベラの父親であるジョゼフに心より忠誠を誓う、数少ない貴族の内のひとりである
アルトーワ伯の誕生を祝う園遊会に招待され、動かぬ国王に代わり名代としてイザベラが向うことになり、
私と手の空いていた北花壇騎士五号が護衛として同行することになった。
東薔薇騎士団の精鋭たちに囲まれて私も楽ができると喜んでいたのだが、道中の宿で地下水という
しゃべるナイフに操られた騎士がイザベラを襲うというアクシデントが起こった。
当初はそのナイフが犯人とは判らずに次々と襲いくる刺客に辟易していたのだが、
イザベラがその正体に気づき、地下水が北花壇騎士のメンバーだと教えられた五号がブチ切れて
どんな手を使ったのか知らないが付近一帯の全ての生物を老化させてしまい、イザベラ以外の人間は
ほぼ全滅という有様だったが私にはなんの被害もなく、それでやっと地下水の捕縛に成功した。
その後、重傷を負っているにも拘らず散々イザベラに説教してから気絶した五号をリュティスに送り返し、
アルトーワ伯の園遊会に出席することとなった。
地下水もそのとき一緒に送られ、今頃は過酷な尋問を受けているだろう。
そんなことがあったが、アルトーワ伯の庭園で催された園遊会は素晴らしいものであり、
強国ガリアを誇示するような煌びやかなものだったのだが、ただひとつだけ例外が存在した。
主催者であり園遊会の主役であるアルトーワ伯は熱心なトリステイン文化の信奉者であり、
園遊会二日目に行われた一番の目玉であるダンスは、彼の趣味がモロに反映されたものだった。
身分の差どころか性別まで関係ないとばかりに、男も女も鍛え上げられた肉体を暑苦しいくらいに
見せつけながら披露されたダンスは、まさに天下の奇祭ともいえる恐ろしいものだった。
私はサッサと逃げ出そうとしたのだが、涙目のイザベラに腕を捉まれソレを見る羽目になってしまった。
ああクソッ!思い出すだけで忌々しい!!
イザベラにネタバレされて読む気がなくなった本を書架に戻し、王都に到着するまでの暇潰しに
次の本を物色していると、書架の奥に隠すようにおかれた二冊の本を発見した。
『犬とご主人様』と『メイドのご奉仕』という名の本だ。
なんだか思春期の学生がベッドの下に隠したエロ本を見つけてしまったような変な気分に私は陥ったが、
とりあえず内容を見てみることにする。
一冊は使い魔として召喚した少年を調教する主人とその周りの人間が、いつの間にか逆にその少年に
調教されてしまうといった内容だ。
主人公である女性の視点で書かれていて、嗜虐性向を持つ彼女は実は被虐願望を持っていて、
そのギャップに悩みつつ背徳の快楽に身を委ねるというエロティックま感じに仕上がっている。
もう一冊はメイドが屋敷の主人におしおきされ、それを楽しみにするメイドといった、やはり、
背徳的な内容になっている。
私はメイドの方を手に取ると適当にページを捲り、声に出して呼んでみることにした。
『申し訳ありません!お皿を割ってしまいました!』
『おお…なんということだ!これは先祖代々伝わる大切なものなのだぞ!
そんな大切な皿を割ってしまうとはいけないメイドだ。
これはお仕置きが必要だな。』
『覚悟はしております。何なりとお申し付け下さい』
『うむ。では私の杖をピカピカに磨いてもらおうか』
『まあ!』
こうして私は黄色い朝日が昇るまで、ご主人様の杖を磨き続けたのです。
「なぁッ?!」
「……大人になったな」
茹でたタコみたいに赤くなってあたふたしながら二冊の本を奪おうとするイザベラの手を避けて、
何度か声に出して読んでやると、やがて諦めたように大人しくなったイザベラがなにやら言い訳を始めた。
「ちちち違うのよさっきアンタが読んでた著者の本を集めさせたんだけどそのなかに混ざってて
わたしはそんな下劣なの読まないんだけど国民の税金で買ったものだから捨てるのももったいなくて
仕方なくそのなかにかくしておいたのよホントよホントだいたい拘束具とか首輪なんて使って
人をいいなりにさせようなんてバカげてるじゃないかわたしは王族だからそんな恥知らずなこと
できるわけがないしやりたいとも思わないわ喉はくるしいしからだは痛いしいいもんじゃないよ
だいたい押し倒されてそのまま流されるなんて貞操観念が欠如しているわそれからええとメイドに
おしおきで鞭をふったりロウソクつかうなんてナンセンスだわこれだから貴族は平民にきらわれるのよ
だいたいそんなことして気持ちいいわけないじゃないとっても熱いし痛かったわ所詮はただのおはなしよ
現実味ってものがぜんぜんないわねそんな変態がいるなんてみてみたいもんだわそれに……」
「お前……試してみたのか…?」
ハッとするイザベラを尻目に、私は狭い馬車の中でなんとか距離をとろうと窓にへばりつく。
言ってはならないことを口走ってしまったのに気がついたイザベラが、口を押さえて真っ青になっていた。
ヤバイ秘密を知ってしまった私をイザベラがこのまま放って置くとは思えない。
現にイザベラは殺気立ち、他の北花壇騎士のヤツらみたいな修羅場を潜り抜けてきた者だけが持つ、
見る者を威圧する恐ろしい眼で私を見ている。
ここに留まっていると始末されそうだ。
私がイザベラの魔手から逃れようとすると、そのタイミングを計ったように窓の外から声が掛けられた。
「殿下、なにやら騒いでおられるようですが如何なさいまし……これはッ!?」
「あ、え、これは違うんだよ!!」
イザベラに花束を作ってやった騎士は、イザベラの膝の上にある本を驚愕の眼差しで見ている。
必死こいてイザベラがエロ小説を隠そうとするが、既に見られているので意味のない行動だ。
だが、その騎士はなぜか感極まったように目頭を押さえている。
イザベラの注意が騎士に向いている隙に馬車の屋根をすり抜けてトンズラしようとしたが、
私はその動きを止めてしまった。
この騎士が言った言葉を聞いてしまったからだ。
「大人に……なられましたなぁ」
「ちょっと待ちなカステルモール!そりゃどういう意味だい?!」
なんだか知らないが有耶無耶にするチャンスだ!これに乗らない手はないッ!
ちょうど馬車は街中に入ろうとしていて、それを出迎えようと民衆が街道に押し寄せている。
私は民衆に対して在らんばかりの声を張り上げた。
「イザベラ様バンザァ〜イッ!!」
私の声に呼応して、民衆が諸手を上げて歓声を飛ばす。
カステルモールとかいう騎士も涙を流しながら諸手で声を上げている。
その様子を不審に思った騎士たちがカステルモールに問いかけると、皆が同じように涙を流して
イザベラを称え始めた。
そっと窓から様子を窺うと、イザベラが顔を抑えてうずくまっている。
私はダメ押しにもう一度声を張り上げた。
「姫殿下大人記念バンザァ〜イッ!!」
私は叫んだ後、背後からの大人記念を称える歓声に耳を塞ぎながら脇目も振らずに逃げ出した。
それから暫くほとぼりが冷めるのを待ってプチ・トロワに戻ると、なぜか園遊会が開かれていた。
王宮の前には金銀宝石に彩られたピンク色の看板が掛けられ、それにはこう書かれていた。
『ガリア国王ジョゼフ一世主催イザベラ・ド・ガリア大人記念を称えるための祝宴会』
私は歴史の考察からエロ小説まで幅広くこなす作家のヒリガル・サイトーンをとりあえず恨み、
遥か彼方から聞こえる悲鳴と歓声に眩暈を覚えてこの場を後にした。
今日はどこで休もうか……
しえん
支援!というか本の著者サイトかよw
これにて終了です。
最近ちょっとやり過ぎかなと思わないでもないです。反省しねぇけどな!!
GJ!
ムキムキ筋肉ダンスとか最悪だなw
_ ∩
( ゚∀゚)彡 アニキ!アニキ!姫様!姫様!大人!大人!
⊂彡
投下乙!
出版社は民○書房ですかw
>>523 もしかしてoblivionやっとります?w
>>526 大好物です。淫乱アルゴニアンメイドは秀逸ですね。
投下乙!ガリア貴族もダメなのか…それとジョゼフふざけすぎだろw
GJ!!
それにしても北花壇騎士五号wwww
GJ!
色々言いたいことはあるけど怪炎王ヘンリーがまともだったのがスゲエ意外。
ワロタw 乙。
GJ!
兄貴こんなとこで何やってるんすかwww
ちょっと見直したら投下しますが構いませんね?
どなたー!?
トリスティン魔法学院から父王と共にイザベラが帰国してから幾らかの日数が過ぎた。
元々偽の名前で訪れる予定であり、ジョゼフも非公式での訪問だったため気にかける者は殆どいなかった。
それよりも去っていくイザベラと仲睦ましげに別れの挨拶を済ませたネアポリス、ジョルノの方へ注目が集まっていた。
仔細までは学院と言う特殊な場で生活する貴族の子女達にも知らないが、多種多様な事業を展開し利益を上げて噂になった貴族が、自分達とそう変わりない年齢だという事の方が素性を隠している貴族よりも生徒らにとってインパクトが強かったのだ。
ヴァリエールの使い魔だったはずの亀と親しくし、平民にまでわけ隔てなく接する成り上がりをプライドの高いトリスティン貴族の子女が無視できなかったとも言えるのかもしれない。
何故ヴァリエールの亀と親しいのか、疑問に思う声も囁かれる食堂の中を抜けてルイズはテラスでタバサとサラダを食べているジョルノの元へ歩いていった。
同じテーブルに着いているのは先日ルイズと共にフーケ討伐に向かったタバサと、平然とサラダを食べるジョルノから目を背けるラルカス、ジョルノを唖然とした表情で見るテファの三人だった。
ポルナレフがいなくてホッとしたが、逆にどこにいるのか少しひっかかりを覚えたルイズは、彼らの顔つきを見て内心首を傾げた。
天気もよいし、適度に風が吹いていてとても気持良さそうな空間にそぐわない態度は奇妙に感じられる。
だが妙に思ったルイズは、接近に気付いて顔を上げたジョルノが持つフォークに刺さるはしばみ草を見て、心で理解した。
はしばみ草…極々一部の愛好家がいるのは認めるが嫌いな野菜ナンバー1の座を数千年独走し続ける野菜の王様が、朝日に照らされて口の中が苦くなりそうなその姿をルイズにこれでもかと主張していた。
「お、おはようございます。伯爵…朝からはしばみ草なんて、ヘヴィ過ぎません?」
「おはようございます。馴れてくると独特の味が癖になってきます。栄養は満点ですしね」
ジョルノの返事と、何気に隣に腰掛けているタバサがわかったような顔で頷くのを見て、ルイズはげんなりした。
だが用件は済まさなければならない。ルイズは許可を求めてからジョルノの正面に腰掛けた。
朝の清清しい空気を胸いっぱいに吸い込み、真剣な表情で見つめる。
「伯爵「ジョナサンで構いません」…ジョナサン、貴方は私の系統について心当たりがあるとおっしゃいました」
舞踏会の夜の事を思い出しながら、確認するように言うルイズにジョルノは頷いた。
ルイズの系統は恐らく始祖の系統だと舞踏会の夜ジョルノはルイズに告げた。
伝説の系統がゼロと蔑まれてきた自分の系統であるという話は、到底信じられない話だった。
ジョルノ以外が言ったら一笑に付していただろう。
だが、ジョルノは家族以外は…家族さえも諦めていたカトレアを治療してのけた男だった。
だから肩にとまる小鳥という形で自分の使い魔との関係を一方的に清算したルイズは、ジョルノに話を聞きに来た。
ルイズは同じテーブルに着く者達をチラッと見て言う。
「それについて詳しくお聞きしたいんです。お時間をいただけませんか?」
「彼らがいても良いのでしたらこの場でお話ししましょう。お嫌なら今晩か明朝、学院の中庭でなら時間を作れますが」
「…その、この方達に一旦席を外していただくことは」
「ルイズ。先日までの貴方ならそうしてもよかった」
残念そうに言うジョルノは、唇についたサラダのドレッシングの油をハンカチで拭い、ルイズの肩にとまる鳥を見る。
「だが、タバサ達の方が先約だし、その使い魔を選んだ貴方の為に皆に紅茶を持って向こうに言ってくれとは言えません」
「ぅ…わかりました。今夜、中庭ですね」
反論しようとするルイズに首を横に振ったジョルノは既に頼んでいたらしいメイドが持ってきた紅茶を付け取る。
ルイズは唇を噛みながら席を立とうとする。
だがそれより先にタバサが席を立った。
「飲み終わったから、私は向こうに行く」
「わ、私も…向こうに行ってるから」
続いてテファが立ち上がったのを見て、ラルカスも仕方ないなと言いたげな仕草をして立ち上がる。
「じゃあ私も今のメイドをナン「少し遅れますのでかわりに仕事をしておいてください」…いえすさー」
ラルカスにだけ釘を刺して、錆び付いた飾り気の無い剣を手渡すジョルノを見ながらルイズは心の中で彼女らに礼を言った。
肩にとまった小鳥を撫でながらルイズは席に座りなおす。
それを待って、ジョルノは口を開いた。
「呪文を覚える方法は始祖の秘宝を手に入れることです」
「始祖の秘宝?」
「ルビーとそれ以外の宝です。この国にあるのは水のルビーと始祖の祈祷書ですね」
テファの名前は伏せたまま、テファから聞いた話から推測した事をジョルノはルイズに説明していく。
ルビーをつけてオルゴールを開けた時にテファは忘却の呪文を覚えた。
王家に伝わる秘宝とか…テファが言っていたので調べてみた所、それは二つとも始祖の秘宝でありルビーと呼ばれる秘宝は他の王家にも引き継がれていることが確認できている。
三人の子供と一人の弟子が開いた四つの国にある四つのルビー。
テファが歌った歌…
"神の左手ガンダールヴ。勇猛果敢な神の盾。左に握った大剣と、右に掴んだ長槍で、導きし我を守りきる。
神の右手がヴィンダールヴ。心優しき神の笛。あらゆる獣を操りて、導きし我を運ぶは地海空。
神の頭脳はミョズニトニルン。知恵のかたまり神の本。あらゆる知識を溜め込みて、導きし我に助言を呈す。
そして最後にもう一人……。記すことさえはばかれる……。
四人の僕を従えて、我はこの地へやってきた……。”
歌を裏付けるように先日ロマリアの枢機卿からは、始祖は己の強大な力を4つに分け、秘宝と指輪に託しました。また、それを託すべき者も、等しく4つに分けたのです。
その上で、始祖は「四の秘宝、四の指輪、四の使い魔、四の担い手……、四つの四が集いしとき、我の虚無は目覚めん。」と残していると教えてもらってもいた。
話を聞かされたルイズの方は、ジョルノが情報の入手経路などを隠したせいで半信半疑だった。
自分がそうであるかさえ疑っているというのに、虚無の担い手は他にもいる可能性があるなどといわれても信じられるわけが無い。
「半信半疑なようですね」
「失礼ながら、それに始祖の秘宝なんて私が持つ機会は…」
ルイズの家は王家とも血の繋がりがあり、このトリスティンでも有数の貴族だが王家ではない。
その上ただの学生であるルイズに王家の秘宝に触れる機会が生涯を通して存在するかどうかといえば、限りなく低いとルイズは考えていた。
だがジョルノは「既に半分はクリアできる状態です」と告げた。
「今の状況が続けば恐らく貴方が祈祷書に触れる可能性は十分にあります。ルビーに関しては私に心辺りはありますが…」
「今の状況って、どういう意味でしょうか?」
理解が追いつかないまま尋ねるルイズにジョルノはすぐには返事を返さなかった。
少し考える様子を見せ、他人には聞かせられないということをわざわざ周りに人がいない事を確認してルイズに伝えながらジョルノは少し声を潜めた。
「(これは内密な話です)ゲルマニアの皇帝とこの国のアンリエッタ王女が結婚する話が進んでいるからです」
「なんですって!?」
ある意味ルイズが虚無であると言う事以上に突拍子も無い事を聞かされたルイズは、激怒して席を立ち上がった。
アンリエッタ王女は先の王が忘れ形見であり、民衆の人気も高く「トリスティンの可憐な花」など彼女を称える言葉は限りない。
対してゲルマニアの皇帝は、ゲルマニアを野蛮な国と蔑むトリスティン貴族にとってはゲルマニアの皇帝と言う時点で既にありえないが、権力争いの末に親族や政敵をことごとく塔に幽閉し、皇帝の座に就いた40代の男。
「私をからかっているの…!? 姫殿下が」
怒りに染まった表情で顔を寄せてくるルイズの口を押さえ、ジョルノは座るように言う。
「声を抑えて座ってください。この国の伝統で王族の結婚式には貴族より選ばれた巫女が『始祖の祈祷書』を手に式の詔を読み上げる習わしになっています」
「だから…! どう「同じ事を言わせないでください。次に大声を上げたりしたらこの話はここまでです」…ッわかったわ。だから教えて。どういうことなの?」
低い声で言われ、ルイズは周りを見る。
大声を上げたルイズに食堂から視線が集まっていた。
悔しそうな顔でルイズは席に座りなおす。紅茶を飲みながらジョルノはその事についても説明を始めた。
アルビオンで起きている内戦は貴族派の勝利で終りそうな事。
次はトリスティンに攻め込む可能性が限りなく高く、トリスティン一国ではそれを防ぐ手立てはないということ。
自分の魔法のことなどどーでもよくなるような事を淡々と説明するジョルノに、ルイズの血の気は引いていった。
アルビオンで戦争が起きていることは知っていたが、王家への忠誠心が厚いルイズは王党派が勝利すると考えていたし、
所詮は対岸の火事として、既に過ぎ去った話題に過ぎなかった。
どんな状況になっているかなんて気にも留めていなかった自分をルイズは恥ずかしく思った。
ルイズは昔、アンリエッタの遊び相手だったことがある。
その頃の思い出は今もルイズの小さな胸の中で輝いているのに…
「そういうわけですから、今はあの爆発を上手く使うことを考えてはどうでしょう?」
ルイズがアンリエッタの事を考えている間もジョルノは説明を続けていたらしく、我に返った時には最後に締めくくる言葉を告げられていた。
自嘲気味な笑みがルイズの顔に浮かんだ。
「上手に使うですって? 失敗して爆発してるだけじゃない…!」
「仮にそうだったとしても、貴方は爆発について良く知るべきだ。モノは使いようです。全ての魔法で全く同じように爆発するのか。爆発する場所は指定できるのかなど…細かく特性を調べることです」
「そんなこと言ってる場合じゃないわ。姫殿下の為に何かしないと…何か、できることは無いのかしら」
ジョルノは首を振って個人の力でどうこうできる問題ではないと言う。
「ですが彼女は今度この学院に訪れる事になっています。貴方が彼女の友達なら、彼女の心を慰める事はできるかもしれない」
「姫殿下がこの学院に?」
「急な訪問らしく、今日の午後にはオールド・オスマンの所に連絡が届くはずです」
言葉の端々からルイズを気遣っているんじゃないかという気がしたが、ルイズは眉をよせて怪訝そうな表情を作っていた。
自分が知らない情報を幾らか知っているのは、既に一人の貴族として大人達に交じっているジョルノなら当然かもしれない。
だが、王女の今後の予定まで知っているものだろうか?
「…貴方、何者? 姫殿下の予定まで知ってるなんて」
「情報を集めるのは商売の基本です。それよりもルイズ」
得たいの知れなさから疑いを持ち始めたルイズを見つめ、ジョルノは言う。
「ここまで話したのは、貴方だからです。軽々しく他人に話さないと信じて構いませんね?」
「も、勿論よ。私は貴族よ? 軽々しく他人に話したりなんてするわけないじゃない」
静かな口調に何故か気圧されるものを感じながらルイズは返事を返した。
一つ頷き、ジョルノは予定が詰まっているからと席を立つ。
去っていくジョルノを目で追いながら、ルイズは好きでもない相手と結婚させられるアンリエッタと何年も連絡の無い、親が決めた婚約者のことを思い出していた。
*
ルイズと別れたジョルノはテファ達と合流して、その日は勉強をした。
テファ達が組織に参加することが決まってしまった以上、何か仕事を振らなければならない。
だが今もっている技能だけで参加してもらう気はジョルノにはなかった。
まずは地球の学問を学んでもらう。マチルダ程の土のメイジが地球の学問を習得すればどうなるかを考えると楽しみだった。
幸いというか、ジョルノの亀の中には図書館ほどの蔵書がある。
そんなものがあるのは仲間の死を引き摺っていたフーゴが発端だった。
一度仲間から抜けてしまったが、フーゴの頭脳はジョルノ達に必要だった。
暗殺チームを失い、ペリーコロが自殺。親衛隊などにも多数の死傷者が出たパッショーネの為にフーゴは力を尽くしてくれた。
ある時そんなフーゴが、その途中必要になっていくだろうと勉学に勤しみ始めたと聞き、ポルナレフとミスタの音頭で強力に支援してみたことがあった。
だが、結果はこんなにいらないと断られ死蔵することになった…ジョルノもある程度個体差があるとはいえ亀数匹を犠牲にしても余る量を発注した二人を見た時は頭がどうかしたのかと思ったものだ。
幹部になり突然大金を持ったからと言って調子に乗って無駄遣いしちまったらしいが…煽てられて買わされるにも限度があるだろう。
こちらに着てからはそれが案外役に立っている。
別の場所で何人かの手で訳書も作成させているのだが…話が逸れたが、要するにジョルノとしてはマチルダにはコルベールや既にネアポリス領内に集まっているメイジ達と合流し、研究を行って欲しいと考えているのだった。
そしてテファには政治や経済などを学んでもらいたいと考えていた。
「テファ、貴方は政治や経済を学んでれると助かります。余りにもできないのも困りますからね」
「が、頑張るわ」
「僕の所に来る文書にもある程度は目を通してもらう事になります。教師役は、今はラルカスにお願いしましょう」
ラルカスは頷くが、内心はちょっと面倒だったりもする。
何せ現場に出て勢力を拡大したり統治したりもしているし、ネアポリス領内で優秀な水のメイジとして研究にも参加している。
地下水と交代できるとはいえそれなりに忙しいのだ。
だがまぁ、目の保養になるからいいか、とラルカスは安請け合いした。
「だが、いいのかボス。イザベラ様の教育係に既に頭の回るのを一人振ったのだろう?」
「イザベラ王女を味方にすることには、それだけのことをするメリットがあります。二番手三番手だった者達に発破をかけ、ジョゼフ王が潰した元貴族達を更に集めさせて対応します」
「恩を売るだけなら他の奴でもいいと思うがな。アイツきっとイザベラ様の鼻っ柱叩き折る所か砕いて塵も残さんぞ」
「それでいい。そこから這い上がってきてこそ、信頼できる」
「アンタ、ガリア王女にも手を出してんのかい?」
そうかいとラルカスがため息をつく間にマチルダが剣呑な声を出したが、ジョルノはええ、と返事を返し話を続ける。
普段ならというか、これまでこんなことを話したことはなかったのだが、テファ達が加わり近況は知らないポルナレフがいるのだから仕方がなかった。
眉を寄せるマチルダの前にポルナレフは何も言わずに酒を置く。
何も言わずに一気に飲み干すと、マチルダは二杯目を要求した。
「話を続けますよ。先日、打診していたヴァリエール家などから協力を取り付けましたので、ネアポリス銀行を開く目処が立ちました」
「はぁっ?」
聞くことに徹しようかと思っていたポルナレフは、ジョルノの突拍子も無い発現に耳を疑った。
「ジョルノお前、そんなことまでやる気かよ。てっきり俺は…」
「飲む、打つ、買う。では市場規模が小さすぎるんですよ。僕の目的を果たすにはとても足りない」
「目的? ギャングになるってことじゃねぇのか?」
「それは夢の話です。ゲルマニアの工場などは稼動していますし、各国の商会も順調に成長していますが…研究にもお金がかかりますからね。そろそろもう少し手を広げておきたいんですよ」
「だからって…上手くいくのかよ?」
ポルナレフは幾らなんでも無茶だろと考えているようだが、ジョルノは力強く頷いた。
ゲルマニアには多額の金を抱える者が出てきている。金を手元に抱え込むリスクを懸念した金所有者から既に預かり始めてもいた。
「…商会?」
「はい。アルビオンの戦争で儲けるには必要でしたからね。思ったより長続きしてくれたお陰でそれなりの利益はでました」
「えげつない真似したんじゃねーだろうな?」
「ええ。誠実に商売させていただきましたよ。いい取引ができました」
どちらとも取れる返事を返すジョルノに業を煮やしたポルナレフはラルカスに視線を送る。
ラルカスはそれを予想していたのか、既にポルナレフに触れない方がいいという意味を含んだ生暖かな視線をポルナレフに送り返していた。
ちょっぴり買い占めて値段を吊り上げる位当たり前と考えていたっておかしくはないと、ラルカスは思っていた。
「戸籍が怪しい者もいますが、回収は最悪パッショーネを使います。ゴールド・エクスペリエンスで生み出した植物の栽培を始めた貴族も多数いますから需要はあります」
クンデルホルン大公国からは睨まれそうですが、とジョルノは肩を竦めて言う。
二人の会話にテファ達はついていく事ができずにいた。テファがジョルノの手を引く。
「ジョルノ。銀行って?」
首を傾げるテファの反応はもっともだった。
ハルケギニアではまだ銀行という概念が無い。
貴族達が借金を申し込む相手は、クンデルホルン大公のように金を持った貴族だし、ようやくゲルマニアで溜めた金を奪われる懸念ができる者達が出てきた程度だ。
一言で言えば預金の受入、資金の移動(決済)や貸出(融資)、手形・小切手の発行などを行う金融機関と言うだけでは済まないだろう。
だからジョルノはとても簡単に言う事にした。
「とても簡単に言うと他人からお金を預かって、それを必要としている他人に貸してあげる仕事です」
「そう…他人の役に立つ仕事なのね」
「勿論です。ちょっぴりだけ貸したお金に利子をつけて貰ったりしますけどね」
払えなかったら担保も頂くし、逃げたら逃げたでパッショーネの怖いお兄さん達がやってきて逃げる気がなくなる程度に体で払ってもらう事になるでしょう…メイジはいい労働力になりますからね、とはジョルノは言わなかった。
貸す時には勿論、肉体の一部は徴収しておく予定なので、最後には捕まえられるだろう。
まだテファには言わなくてもいいだろうと考えたからだが…言わなくても、マチルダ達には伝わったらしく引きつった顔をしている。
ポルナレフはもう何か、悟ったような顔にも見えたが。
その視線に不服そうな態度でジョルノはその後も日が暮れるまでテファ達の教師役と普段通りの仕事をこなしていった。
*
夜になり、日中悩んでいたルイズは学院内を歩いていた。
授業中ずっとジョルノに言われた事を考えていた。
お陰で既に舞踏会などのイベントも終わり、引き締めを行おうとする教師達の目にはばればれで軽い注意をされてしまった。
アンリエッタの為にすぐになにかがしたいという気持ばかりが逸り、眠れそうになかった。
「こんな時にいれば話相手位にはしてあげるのに。まったく、どこほっつき歩いてるのかしら?」
既にポルナレフはジョルノの所で寝泊りしている。
別にまだルイズのところにいても構わなかったのだが、小鳥が着てから同じ部屋にいるとちょっぴり切ない気分になるからだった。
この場にいないポルナレフをなじりながら、ルイズは歩いていく。
その足が女子寮を抜けても止まらずに、学院の本塔へと向かい始めた時だった。
ルイズは中庭で動き回っている影を見つけた。
不審者かと思い、ルイズは身を隠そうとしたが、それが誰かはすぐに判明した。
それはジョルノとサイトだった。
二人共重そうな荷物を抱えて、走っている。
ジョルノから離されているらしいサイトは今にも死にそうだったが、ジョルノも辛そうにしていた。
そこから少し離れた所に、ポルナレフの亀がいた。
少し躊躇ってからルイズは彼らのところに歩いていく。
足を止めかけたサイトが、ルイズに気付き声を出そうとしてむせ返る。
「ん? …ルイズ」
「ポルナレフ…こんなとこでなにやってるの?」
「あ、ああ…サイトの奴が体力が無いんでな。少し鍛えてやってるんだ」
微妙な態度のポルナレフに、ルイズは不機嫌そうな言い方をする。
「伯爵もおられるけど?」
「アイツはこっちに来る前からやってたみたいだがな。理由は知らん」
ジョルノを見てみると、背中に荷物を手にも何か抱えてまだ走り回っていた。
なぜかその姿は何かを振り払おうとしているように、ルイズには見えた。それが何かはわからなかったが。
サイトがまだむせているのを見てポルナレフが声を出した。
「サイトッ! 今日はもう上がっていいぞ!」
「う、うぃっ…ウッ」
『サイト! 頼むから俺の体にだけは吐くんじゃねぇぞ!?』
急に運動をやめた反動か苦しそうにするサイトにポルナレフはため息をつく。
「あのみすぼらしいの、もしかしてインテリジェンスソード?」
「ああ、デルフって言うらしい。なんか用があったらしいんだが、物忘れが激しくて使い物になりそうになかったんでな。俺が無理言って借りた」
錆びた長剣は柄をカタカタ鳴らしながらサイトに話し掛けているが、サイトの方に返事を返す元気はないようだ。
ポルナレフはそれを見て苦笑を漏らしたような調子で続けた。
「案外気もあうようだし、サイトの教師としちゃ悪くないさ」
「ほっといていいの?」
「サイトの野郎はほっといても大丈夫だ。直にシエスタが来るからな」
「シエスタ?」
「学院のメイドだ。困ってるサイトを助けてくれてからの仲らしいが、結構お似合いなんだぜ?」
ルイズは返事を返さずに自分の使い魔になるかもしれなかった平民を見る。
今朝ジョルノに、その事で咎められたことが思い出される。
確かに、貴族として余り褒められた事じゃないと思ったが、仕方ないじゃないと自分に言い訳をして視線を外した。
ポルナレフの言うとおり、メイドがやってきてサイトを世話しているせいか…余り酷い状態でもなさそうなので罪悪感は幾らか薄れた。
「…使い魔のことだが、俺は気にしちゃいないぜ」
「な、何言ってんのよ。誰もそんなこと言って無いでしょッ」
「そうだな。だが、なんか俺の手が必要な事があったら言ってこい。俺はコレでも腕には覚えがあるからな」
少し寂しそうに言うポルナレフを見ないように、ルイズは走るのをやめ虚空に向かって殴ったり蹴ったりしているジョルノを見る。
ルイズにスタンドが見えれば、そこにジョルノに関節技を仕掛けようとするマジシャンズ・レッドの姿が見えただろうがルイズには見えなかった。
勿論本気でやったら生身のジョルノなんぞ軽く捻れるんである程度加減はしていたが。
「調子に乗りすぎよ。あ、アンタはもう私の使い魔じゃないんだから余計な事は考えなくっていいわ」
「そりゃそうだが、俺がルイズに手を貸してたのは別に使い魔だからじゃあないからな」
「じゃ、じゃあなんだって言うのよ?」
意外な返事を聞いたルイズが動揺している姿を見れば、少しはポルナレフも気分がよくなったかもしれない。
けれど、実際はそれを邪魔するようなタイミングで、隙をみせたマジシャンズ・レッドの腕を取ったジョルノが、普通の人間だったら腕をへし折られかねないやり方でマジシャンズ・レッドを倒そうとする。
「ん? チッ、ルイズ。話は後だ。俺はあのクソガキに年季の差を見せ付けてやらなきゃならねぇ。生身だから手加減してやれば調子に乗りやがって」
「ちょ、ちょっと…! …答えなさいよ」
ルイズが声をかけてもマジシャンズ・レッドのコントロールに集中し始めたポルナレフの耳には届かなかった。
アンリエッタのことを相談しようか考えていた事など忘れて、ルイズはないがしろにされた怒りに任せてその場から離れていく。
ポルナレフが気付いた時には、ルイズの姿はもう女子寮の方へ消えていた。
以上です。
横道に逸れている気がするんですが…ルイズもちょっと書いておきたいなとー
ジョルノがやってる商売に関しては突っ込み所が増えるだけなのであんまり詳しくしない予定なのですが、これ位は許されるのかな…?
しえん
遅すぎた…
GJ
投下乙!
GJ、GJゥ
毎回ジョルノの出方が気になるんだよなぁw
何だかんだでこのスレを1年以上も見つづけているのも
引力なのか………
それともイデの導きk(以下アフロ
ねことジョルポルGJ!
イザベラと吉良のコンビはいつみても良いww
そしてジョルノの誠実な商売ってwww
投下乙です
しかし自分が本当に虚無の使い手で使い魔はガンダールヴ(だよな?)だという確信を持ったら
後で凄く後悔するんだろーな、ルイズ
なんだろう…このイザベラにはトキめかざるを得ない。チョコ先生に見てもらうか…
ポルジョルがまとめWikiに見あたらないのは、俺がスタンドによる攻撃を受けているからか?
第5部にちゃんと入ってるぜ?
“ジョルノ+ポルナレフ”で確認できたが。
まさか、ジェイル・ハウス・ロックを……!?
誰かがまとめないと載らないよ?
「自分で登録すればイイ」 こうですね、判ります。
おれは今Wikiのぽるじょるをほんのちょっぴりだが編集した
い…いや…編集したというよりはまったく理解を超えていたのだが……
,. -‐'''''""¨¨¨ヽ
(.___,,,... -ァァフ| あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
|i i| }! }} //|
|l、{ j} /,,ィ//| 『おれはぽるじょる22を書き足したと
i|:!ヾ、_ノ/ u {:}//ヘ 思ったら改行が全て無視された』
|リ u' } ,ノ _,!V,ハ |
/´fト、_{ル{,ィ'eラ , タ人 な… 何を言ってるのか わからねーと思うが
/' ヾ|宀| {´,)⌒`/ |<ヽトiゝ おれも何をしたのかわからなかった
,゙ / )ヽ iLレ u' | | ヾlトハ〉
|/_/ ハ !ニ⊇ '/:} V:::::ヽ 頭がどうにかなりそうだった…
// 二二二7'T'' /u' __ /:::::::/`ヽ
/'´r -―一ァ‐゙T´ '"´ /::::/-‐ \ ワープロモードだとかガイド読めだとか
/ // 广¨´ /' /:::::/´ ̄`ヽ ⌒ヽ そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
ノ ' / ノ:::::`ー-、___/:::::// ヽ }
_/`丶 /:::::::::::::::::::::::::: ̄`ー-{:::... イ もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…
お久しぶりです。
投下します。
ゼロと使い魔の書
第六話
かちゃり、とスプーンを置く音が、活気ある厨房の中でやけに大きく聞こえた気がした。
「ありがとう、とてもおいしかった」
琢馬はいつもと変わらぬ様子で、隣のシエスタに告げた。
「ふふ、お粗末さまでした。また食事を抜かれてしまうようなことがあったら、いつでもいらして下さい、タクマさん」
「恩に着る。ところで何か俺でも手伝える事はないか?ご馳走になりっぱなしというのも気が引ける」
今まで他人に気を遣うといったことがあっただろうか。この世界にきてから色々と初めての体験が多い。それら全ては、
その時抱いた感情とともに革表紙の本にあますことなく記されていく。できれば、後から読み返したくなるような記述を残したいものである。
「そうですね……でしたら、デザートを運ぶのを手伝ってくださいな」
手伝いの内容は過去の体験を思い返す必要もない、シエスタがケーキを配る間、銀のトレーを持っているというごくごく簡単なものであった。
中央のテーブルに差し掛かったところで、耳障りなはやし声が聞こえてきた。
「なあ、ギーシュ!お前、今は誰と付き合ってるんだよ!」
取り巻きの中央の金髪の少年に、その言葉は向けられていた。
少し、意外に思った。中世の貴族が付き合うといったら結婚前提で、軽々しく誰それに乗り換えるなんてことは絶対にない事だと思っていたが、どうやらここら辺の事情は今までいた世界とあまり変わらないらしい。
「つきあう?僕にそのような特定の女性はいないのさ。薔薇は多くの人を楽しませるために咲くのだからね」
肩をすくめる動作と共に吐き出されたセリフに周りの友人がややあきれたような笑みを返しているところを見ると、一夫多妻というわけでもないらしい。
友人の反応まで総合すれば、普通の高校の教室でも充分ありえそうな光景である。
彼らの盛り上がりが最高潮に達したのと、シエスタが彼らにケーキを配るのとはほぼ同時であった。
大げさな身振り手振りを交える金髪の少年のポケットから見覚えのある小瓶が落ちる。確かモンモンランシーという女学生が昨日廊下の影で彼に渡していたものだ。
「シエスタ、一人で配るのは大変かと思うが、先に行ってくれるか?」
シエスタは小瓶に視線を落とし状況を理解したようで、軽くうなずくと一人でケーキ配りを続けた。
「落とし物です。旦那様」
拾ってよく見ると、きらきらと朝の光を反射した紫色の液体はとても美しかった。
しかし、金髪の少年は自分が思ってもみなかった行動に出た。
「これは僕のじゃない。君は何を言っているんだね?」
声色や表情から、そしてThe Bookの記述から、はっきりと嘘だと分かった。
この金髪の少年が何を考えて今のようなことを言ったのか。大方この小瓶が誰かと付き合っている証拠となるような代物で、それを誰にも知られたくないがために嘘をついたといったところだろうが、
別にそんな経緯には興味がない。が、ここでただ引き下がるのは自分の記憶力を否定されたようで面白くない。
「失礼しました。私はてっきり、昨日モンモランシー様が『あなたのために調合したの……愛しているのなら受け取って、ギーシュ』というお言葉と共にギーシュ様に渡されて、
『もちろんさモンモランシー。薔薇のように美しい君からのプレゼントを受け取らなかったら、きっと始祖ブリミルの怒りに触れてしまうだろうね』とギーシュ様がおっしゃったものだと思っていましたが、
私の勘違いのようで、申し訳ありません」
金髪の少年の顔は始め赤くなり、続いて青くなり、最終的ににごった白色になった。
「意外!それはモンモランシー!」
「気取ったこと言ってると愛想つかされるぜ!」
「違う。いいかい?彼女の名誉のために言っておくが……」
再び喧騒に包まれるかと思われたが、茶色いマントの一年生がギーシュのところまで来て涙目で恨みがましい視線を向けたことで一瞬にして沈下した。
「ギーシュ様……やはり、ミス・モンモランシーと……」
「彼等は誤解しているんだ、ケティ。僕の心の中に住んでるのは君だけ……」
「このきたならしい阿呆がァーーッ!!」
その一年生は外見からは想像できない嫉妬に狂った咆哮をあげると、何も入っていないワイングラスで金髪の少年を殴りつけた。
幸いというべきか、ガラスの破片は少年だけに突き刺さったようだった。
一年生が元の席に戻るのと入れ違いになるように、金色の巻き毛の少女が少年のもとにやってきた。
ガラスで切ったらしい傷を押さえながら、少年は続いてやってくる人物に目を見開いた。
「モンモランシー。誤解だ。彼女とはただ……」
「やっぱりあの一年生に手を出していたのね?」
「いや、だから……」
「この二股かけて遊んでる堕落した男がァーッ!!」
少女は空の皿で少年の頭を殴りつけた。広間の誰もが注目するようなひどく大きい音と共に皿は割れ、少年はテーブルへ突っ伏した。
静寂が食堂の一角を支配する。
取り巻き達が囃し立てるかと思ったが、彼らはお互いの顔を見合わせるばかりで何も言おうとしない。さすがにいたたまれなかったらしい。
「あのレディたちは、薔薇の存在の意味を理解していないようだ」
ポケットからハンカチと薔薇を取り出すと、少年は顔の血を拭い、こちらを睨みつけた。
「おい、君、こちらへ来たまえ」
薔薇を軽く振りながら言った。
一歩踏み出すと同時に、少年はいきなり拳で殴りかかってきた。よけられたが、よける必要性を感じなかった。クレイジーダイアモンドのラッシュを受けた自分にとっては
ものの数には入らない。
拳が左頬に入る。鈍い音がしたが、大したことはなかった。しかし造花のとげで切ったらしく、一筋の血が頬を流れる。
「痛いか、平民。君はその程度の怪我で済んでいるが、君のおかげで二人のレディが傷ついてしまったんだぞ?」
短い、息を呑むような音が聞こえた。見るとシエスタがこちらを見ていたらしく、口を手で覆っていた。心配そうな顔をしていたので、とりあえず落ち着かせることにした。
「おい、なんて顔してる。不安なのか?ケーキ配りなら、悪いがもう少し待ってくれ。俺はちょっとこのマンモーニと話があるんだ」
彼女を仕事に戻そうとしたら、少年が割り込んできた。
「おい、今なんて……」
「まあまてよ。新しくいくつか言葉を覚えたからって、人の話に割り込むのはマナー違反だ。落ち着いて彼女に説明させてほしい。あとでちゃんと君の話は聞いてあげよう。それともなにか?いそいでいるのか?専属のベビーシッターでも待たせているのかい?」
そう言うと、少年の顔に血管が浮き出てきた。どう反応するか少し興味があったが、怒り方は貴族も何も関係ないらしい。
もう一回殴りかかってくる、かと思いきや、少年は無理に落ち着けるように肩を上下させ深呼吸すると、憎しみがこもった視線を自分へ向けただけだった。少し意外だった。
「いいだろう……貴族に対するその口のききかた、勇気だけは認めてやろう。だがお前、『覚悟』はあるんだろうな?」
少年は薔薇を琢馬へ突きつけた。
「これからお前に『決闘』を申し込む。五分後、ヴェストリの広場でだ。よもや逃げたりしないだろうね?」
「五分だな。わかった」
気取ったしぐさで立ち去る少年を眺めていると、後ろから声をかけられた。
「タ、タクマさん、あ、あなた殺されちゃう……」
シエスタだった。もうケーキは配り終えたらしい。
「それほど、強いのか?」
「貴族の方を本気で怒らせたら……」
「なら、シエスタは人に責任を押し付けるような人間に、命乞いするべきだと?」
シエスタは唇を噛んで迷うような素振りを見せた。きっと、この世界では貴族と平民の格差は絶対なのだろう。自分と住んでいた世界が違うこの少女はおそらく、自分の問いに答えることができない。
だがそれでも考えを変えるつもりはなかった。
「命乞いするような人間は、一生負け犬なんだ」
琢馬はシエスタに背を向けた。
ヴェストリの広場がどこにあるかは知っていた。一瞬、ルイズのことが頭に浮かんだが、関係ないと考え直し、食堂の出口へと向かった。
以上、第六話でした。
投下乙!
ケティとモンモランシーが原作より過激になってるww
二股かけられた者同士、気が合うなww
琢磨がハルケギニアの文字読めるようになったら恐ろしいな
GJ!
ケティの咆哮の部分で吹いたwwww
そして琢磨格好いいよ琢磨
GJ!!
ギーシュww酷いことにwww
琢磨はクールだな。もっといい思い出がザ・ブックに増えるといいな
覚悟のススメより葉隠覚悟召喚
長編見てぇ・・・
誤爆した・・・だと・・・
>>564 小ネタでなかったっけか?テファに召喚されてたのが。
小ネタのほうは見たんじゃないかな?
長編が見たいって言ってるから。
しかし覚悟キャラは皆強いからな肉体or精神が
戦闘力皆無でも精神力MAXな堀江罪子なんて呼ぼうものなら絶対に服従しないw
絶対ルイズの額に「罪子」のサインしちまうw
そんなことより第3部から上院議員を呼んだらどうなるだろうか?
ゲルマニア成り上りEND
なにげに一般人としてはハイスペックなんだよなウィルソン・フィリップス閣下
さすが上院議員!未来の大統領!
異世界だとカネやコネは一から築き直さないといけないが
荒木年表2008が上がってたから見てみたんだが
また若返ったな荒木先生……さすがは太陽を克服した究極生命体だけの事はある……
>>565 誤爆ついでに一つ言わせて貰うと
いきなり拉致されて
家畜の如き焼印付けられて
平民とゆう理由で一生奴隷の物扱い
ルイズが意地張って謝らない場合、最悪殺されるぞ
>>572 なんだってェェェェェェェ!?
すっかり騙されたが、ありえそうなのが荒木先生の怖いところだよ…
>>572 それは違うッ! そいつが荒木のスタンド能力なんだッ!
ヤツのスタンドは宇宙を一巡させて
過去のに出版された本の内容すらスリ変えてしまうんだッ!
みんな荒木に騙されているんだ! ヤツは歳なんかとっていないッ!!
早くみんなに知らせないと、読者はみんな荒木の食料に……
なんでパッショーネじゃないのにマンモーニなんだ?
いいかげん混同するのは止めたほうがいいと思う。
>>577 あれ?小説の中にマンモーニって出てこなかったっけ?
The Book自体結構ジョジョネタが出てくるぞ?
今まで食べたパンの枚数を覚えている者がいるのだろうか?とか。
>>575 落ち着くんだ……素数を数えて落ち着くんだ……
2……3…5……7……素数は1と自分でしか割れない孤独な数字…私に勇気を与えてくれる…
波紋を習得し、赤石仮面で究極生物化し、矢でレクイエムを身につけ、回転も会得し、聖人の遺体をも吸収したARAKIか……
世界が一巡しても平然としてそうだぜ……
>>577 イタリア語を使って何が悪いんだ?
ふじこる前に一秒間に10回の呼吸をしてブラウザを閉じろ
>>577はジョジョを読んだことないのに、何故かこのスレにいるかわいそうな子なんだ。
せめて彼が義務教育を終えるまで優しい気持ちで見守ってあげて下さい。
>>583 マフィアからイタリア語を習う義務教育…ステキです
>>577
別に深い意味はないんだと思うよ
>>583 イタリア語で「ママっ子」。
プロシュート兄ィと列車の乗客が「心の弱い」ペッシに対して言った言葉。
・・・・・
うん。読み直してきなよ。
駄目だこいつ…はやくメメタァしないと!
男は黙って透明あぼ〜んでガォン! しろ。
>>584>>588 まともに教えてくれそうなのが兄貴しかいないぞw
他はブチャにリゾットにホルマジオとイルーゾォくらいか
お前らマンモーニ相手に大人気ないな
俺達ぁまだまだマンモーニなのさ
俺もマンモーニさ!
下半身の一部が
つまり近親相か(ry
アウトだッ!
そういや五部キャラやトニオがロマリアに逝く話は無いんだろうか?
生粋のイタリア人から見たらロマリアはどう見えるかいな?
トニオさん=良い食材があれば別になんだっていい
暗チ=ターゲットが居れば別になんだっていい
ポルポ=安全と食べ物さえ確保できれば別になんだっていい
ボス=どの道死ぬので別になんだっていい
うーむ…五部のメンバー程どうでもよさそうな傾向にあるなw
トニオさんは、元病弱娘と元人妻の間で頭を抱えてるのが一番印象強い
あの話は最終的にはヴァリエール家の娘達がトニオさんと才人を寝取られたんだろうかw
浮気がばれるのは曾孫が生まれてから…
最近サイトと誠が被ってきたぜ・・・
やるときはやるのがサイト
やりたいときにやるのが誠
>>603 いやだって原作で姫とベロチューしたんだろ?
しかもアニメでシエスタと風呂入ってるし・・・
ねこダメ乙なんですけど本編の続きも気になる
ティファニアが丈助のポジションということは、やはり芸風はキレ芸?
しかしキレるきっかけは髪型や耳の形状では無さそう、と言う事は…ま、まさか?
ここに40分あたりから第三部第一話を投下してやりたいんですが、構いませんね!!
大歓迎!
眠気がわだかまる瞼をうっすらと開けたジョセフは、ゆるりと周囲を見やった。
段々と傾き始めた日が葉の間から射す森の中、地面に横たわる自分の近くで立ち話する話し声の主は、二人。一人は老人、もう一人は青年。彼らを取り巻く少年少女達はじっと二人のやり取りを聞いている。
アルビオンから帰還した面々の中で最後まで眠っていたジョセフはゆっくりと身を起こして立ち上がると、老人に声を掛けた。
「すみませんな、オールド・オスマン。つまりそーゆーコトになっちまいまして」
ニヒヒ、と笑うジョセフに、オスマンは愛用のパイプをふかしてから、ウェールズからジョセフに視線を移し、ほんの少し学院長らしい様相で眉根を寄せた。
「ジョースター君、トリステイン魔法学院はトリステインのみならず各国の王族や大貴族の子爵令嬢が何人も在籍しておる。つまらない火遊び一つが戦争の火種になりかねん場所だということは知っておるかね?」
ここで亡国の王子を入れたらどうなるか判るな、という言外の問いかけに、ジョセフは悪びれもせず答えた。
「大体は察しております。ですが今までこの学院でのいざこざが切っ掛けで起こった戦争が幾つあったのか、お訪ねしてもよろしいですかな」
質問を受けたオスマンは、ぷか、と煙のリングを宙に浮かせた。
「少なくともわしがおる間は一件もない」
その答えに、ジョセフはニヤリと笑い、オスマンも同じくニヤリと笑った。
「次にオールド・オスマンは『今更皇太子の一人や二人匿ったところで何も変わらんがね』と言う」
「今更皇太子の一人や二人匿ったところで……と。ジョースター君、答えが判っているのにいちいち質問をしなくてもよろしい」
かっかっか、と老人二人が笑い合う。
隠者の中の人がそういうとスレの住人たちは(ry
隠者のワルドがそのうち首だけで「肉体(ボディ)……きたか」って言いそうで怖いな
「どうせ学院は無駄に広いからのぉ、殿下がお隠れになる場所なら幾らでも用意出来る。風の塔にちょうどいい空き部屋があるんじゃが少々掃除をせねばならんのでな。ミス・ツェルプストー、ミス・タバサ、ミスタ・グラモン。君達に手伝って貰うとしよう」
白く長い眉毛の下から、生徒達を見やり。次にジョセフへ視線を移す。
「ミス・ヴァリエールとジョースター君は、わしらが掃除を終えるまでここで殿下の話し相手を頼めるかね」
ウェールズや生徒達からおおよその事情を聞いたオスマンは、今回の件を仕組んだ張本人であるジョセフを残した。ウェールズへのアフターケアを今の内に済ませておきなさい、と言外に述べた言葉を、ジョセフが理解できないはずがない。
主人であるルイズも残したのは、爆発以外の魔法が使えないということもあるが、一応の用心も兼ねている。
「承知しましたぞ、オールド・オスマン」
「わ……判りました」
泰然としたオスマンの言葉に、ジョセフとルイズは恭しく一礼した。
「そんな、昨日から徹夜だというのにこの上掃除なんて……」
ギーシュが疲れた顔で呟くも、キュルケは嫣然と微笑んだ。
「承知致しましたわ、オールド・オスマン」
タバサは本を読んだまま、無言で頷く。
「では少し時間を貰うとしよう。何、それほど時間はかかるまいて」
そう言い残し、オスマン達はシルフィードに乗って空へ飛んでいく。
残された三人に僅かな沈黙が訪れたが、それを最初に破ったのはウェールズだった。
「まんまとしてやられたね、ミスタ・ジョースター。杖を使わずに魔法を使われるとは思ってもいなかった」
昨夜と変わらない笑顔ではあるが、声色には多少なりとも苦味が見え隠れしていた。
「何とも間の抜けた事だ。敵のみならず父や臣下達まで欺いて、再び夜を迎えようとしている。そのことに安堵していない、と言えば嘘になる。だが、それでもだ。国を亡くし、これからの道程になんら希望が見えない男を生き延びさせて、何の意味があるのだろう」
岬ごと城を落とす大仕掛けを繰り出し、アルビオン王家の生き残りはたった一人。
国は滅び、しかも愛する従妹のアンリエッタは近々意にそぐわない政略結婚をさせられる。生き恥を晒す上に艱難辛苦を味わわなければならない状況を笑って受け入れられる人間が滅多にいるものではない。
例え王族として申し分のない人格者であるウェールズにしても、稀な例外とはなれなかった。
ルイズも、こうしてウェールズだけでも救えた事に後悔はない。ただ、今のルイズに亡国の皇太子へ掛けられる言葉はなく、それでも何か言いたげに小さく動く唇を隠すように俯いているしかなかった。
しかしジョセフは、そんなウェールズの深刻な表情とは真逆とも言える、相変わらずの不敵な笑みを浮かべてみせた。
「恐れながらウェールズ様。殿下の命を救う事、これこそがトリステイン王国、引いてはアンリエッタ王女殿下の窮地を救う鍵となりますのでな。正直な所、殿下の意思はハナっから勘定に入れるつもりはなかったんですじゃよ」
おためごかしも何もなく、堂々と言ってのけるジョセフにルイズのみならずウェールズまでもが驚きに目を見開いた。
「ちょ……ちょっとジョセフ! それは言い過ぎよ!?」
ルイズが慌ててフォローに入ろうとするが、ジョセフはあくまで表情を崩さずに主人の頭をぽんぽんと撫で、ウェールズに向かって言葉を続ける。
「アンリエッタ王女殿下はお優しく魅力的なレディであることは殿下も重々御承知でしょうが、残念ながら王家を担えるかと言われれば……それもまた、殿下は重々御承知じゃと思うんですが。殿下の御見解はいかがでしょうかな?」
その問い掛けに、ウェールズは小さな溜息をついた。
「……残念なことにミスタ・ジョースターの見解と私の見解は一致せざるを得ない。アンリエッタは……不幸なことに、次代の女王となるべき教育を受けていない。いや、受けさせられなかったと言うべきか。
何と言っても、トリステインは先王が崩御してから今に至るまで、王位は空位のままだ。その間、政を担う貴族達が王室を欲しいままにした。水は流れなければ澱む。今のトリステイン王家は……かつてのように清く澄んだ湖とはとても言えない。
アンリエッタは、澱んだ水の中から出ることを許されていなかった」
ウェールズの言葉に、ジョセフはゆるりと首を横に振った。
「誉れ高く王女の覚えも高い魔法衛士隊の隊長が裏切り者だったという状況ですからのォ。わしの正直な見立てを言うと……ここから立て直すには奇跡の二つ三つは用意せんとキツい。少なくとも今のままでは、奇跡を用意することも出来ませんのじゃよ」
ジョセフの口から聞こえる言葉は、それだけ聞けば彼には似つかわしくない悲観的な流れでしかない。
だが、当のジョセフの口調と表情は、あくまでも普段と変わらない愉快げな笑みがあからさまに浮かんでいる。それはまるで、これから取って置きのオチを言おうとするかのような、子供じみた笑みだった。
ウェールズはまだ出会ってから一日ちょっとしか経っていない老人の表情が、何を示すものなのかが理解できるようになってきていた。
だから彼は、苦笑を隠そうともせずにおおよそ答えが予想できる問いを投げる。
「つまり、私の身柄はトリステインに奇跡を起こす為の布石だ。だから私の意志は尊重されるべきものではない――そう言う事だね、ミスタ・ジョースター?」
ジョセフはその答えに、非常に満足そうに頷いた。
「そこまで御理解いただけるなら話は早い。まーぶっちゃけ、どこの馬の骨とも知れん老いぼれ使い魔の言葉より、想い人の言葉なら聞き心地もよいというもんですしなァ?」
支援
ニヤリ、と子供じみた笑みを見せる。
「なぁに、城ブッ壊して岬落とすことに比べたらアンリエッタ様が立派な王女殿下になることなんか朝飯前ってモンですじゃよ」
気楽な様子で放たれる大言壮語を、ウェールズもルイズも頭から否定できない。このしみったれた老人が今まで何をしたのか、二人とも良く理解しているからだ。
だが当のジョセフは。
(さぁ〜〜〜てどーしたモンかのォ。ま、何とかなるじゃろ)
トリステインに起きる奇跡のタネなど何一つ用意していないのだが、決してそんなことを億尾に出すようなマヌケではなかった。
そんなジョセフの行き当たりばったりっぷりなど知る由もなく、ウェールズはオスマン達が戻ってくるまでにアンリエッタへ向けた手紙を書き上げる。
手紙に施した封蝋の花押はウェールズ独自のデザインであり、皇太子本人が記した物であるという証明となる。自分が無事でいること、事態が好転するまで学院に匿われること、数文だけ書かれた従妹への私信。
アンリエッタへの新たな手紙を受け取ったルイズは、滅亡した他国の王族へ、一切失礼のない態度でウェールズに跪いた。
やがて戻ってきたオスマンの手引きで部屋に案内されるウェールズを見送った後、キュルケもルイズ達にひらりと手を振って学院へと戻っていく。
「アルビオン旅行も終わったし、任務に関係ないゲルマニア貴族が王宮をうろちょろするのも具合悪いでしょう?」
いい加減で軽薄な様に見えても、首を引っ込める点を心得ているキュルケである。
正式に任務を受けたルイズ主従とギーシュ、そしてシルフィードの主であるタバサが王宮へ向かったのは、そろそろ空の色が青から緋色に変わり始めようとする頃合だった。
*
四円だ
ルイズ達の帰還を待ち詫びていたアンリエッタは、「ヴァリエール家の令嬢が手紙の件でお目通りを申し出ている」という伝達を受けるが早いか、ルイズ達を自分の居室へ呼ぶ様に言い付けた。
ギーシュとタバサを謁見待合室で待たせ、ルイズとジョセフはアンリエッタの私室にて件の手紙とウェールズからの新しい手紙を渡し、アルビオンでの出来事を逐一報告した。
道中で起こった様々な出来事を聞いたアンリエッタも、ジョセフの手引きによりニューカッスル岬が落ちたという話はすぐには信じられないようだった。
アルビオンから岬が崩落したという伝令は聞いてはいたが、その原因が魔法も使えない老人の手によるものだとは、ハルケギニアの常識では到底信じられる話ではない。
だがルイズが自分の使い魔の高い能力と、トリステイン王国にとってジョセフの能力が必要になると懸命に主張する様子に、王女はまだ殆ど信じられないながらも頷いた。
そしてワルドがレコン・キスタの内通者だったことには酷く驚き嘆いたが、無事にゲルマニアとの同盟を堅守した上、ウェールズを救い学院に保護していることに安堵の色を隠すこともなく、感極まって豪奢な椅子から立ち上がった。
アンリエッタが椅子から立ち上がったのを見たルイズも、素早く椅子から立ち上がると、間髪入れず駆け寄ってきたアンリエッタの抱擁を受け、自分もまた王女の背に手を回した。
「ああ、ルイズ・フランソワーズ! やはり貴方に頼んで良かった……わたくしの婚姻を阻もうとする陰謀を未然に防ぎ、かつ裏切り者を誅したのみならず、アルビオン王家の断絶まで防いでくれるだなんて!」
「そんな勿体無いお言葉を頂けるだなんて! 王家に仕える公爵家の娘として当然のことをしたというだけですのに!」
それからしばらく繰り広げられる王女と公爵令嬢の寸劇を、ジョセフは茶を啜りながら温かい目で見守っていた。
Yes!I'shien!
やがて二人が身を離すと、ルイズはポケットの中に入れていた水のルビーを取り出し、恭しく王女へと差し出した。
「姫様、お預かりしていたルビーをお返しいたします」
アンリエッタは微笑みを浮かべて首を振ると、差し出された手を両手で包んでそっとルイズへと押し遣った。
「それは貴方が持っていなさいな。困難な任務をやり遂げた貴方へのお礼です」
「こんな高価な品を頂くわけには参りませんわ」
「忠誠には報いるところがなければなりません。いいから取っておきなさいな」
それ以上固辞する事もなく、ルイズは指輪を指にはめた。
ルイズがルビーを受け取ったのを見届けてから、アンリエッタはジョセフへと視線を向けた。
「ありがとうございます、ジョジョ。わたくしの大切なルイズを守ってくれて。これからもルイズ共々、わたくしの友人となってもらえますね?」
たおやかな微笑みに、ジョセフも悠然と笑みを返して一礼した。
「勿体無いお言葉、痛み入ります。王女殿下の御為ならば、わしも主人も命を賭す所存ですじゃ」
ルイズ達が学院へ帰るべく再びシルフィードの背に乗ったのは、日も沈んで双月が煌々と夜を照らす頃になってからだった。
アンリエッタへの報告を終えたルイズは、余りに濃密なアルビオン行の緊張がやっと解けて、ジョセフに凭れ掛かって安らかな寝息を立てていた。
ギーシュもシルフィードの背の上で横になって束の間の眠りを貪っている。
今、シルフィードの背の上で起きているのは学院に戻るまでに仮眠を取ったジョセフと、眠っている同級生達と同じ激動の一日を乗り越えてなお、普段通りの無表情を崩さず読書に耽っているタバサだけだった。
それから三日後、アンリエッタとゲルマニア皇帝との婚姻が発表され、軍事同盟も恙無く締結された。
トリステインとゲルマニアの同盟が締結されたのを見届けていたかのように、レコン・キスタによってその翌日に樹立されたアルビオン新政府は、アルビオン帝国を名乗った。
アルビオン帝国初代皇帝クロムウェルは、すぐさま特使をトリステインとゲルマニアに派遣し、不可侵条約の締結を打診した。両国の空軍を合わせてもなおアルビオンの艦隊に抵抗しきれない今、両国はこの申し出を受けざるを得ない。
アルビオンに主導権を握られる形ではあるが、両国はこの条約を受けた。
この不可侵条約が締結されたことで、内情はどうあれハルケギニアにはひとまずの平和が訪れた。国の存亡に関わらない貴族や平民には、これまでと同じ普段通りの生活を送るだけのことだった。
それはトリステイン魔法学院の生徒達も例外ではない。
だが、一握りの人々はこれまでとは多少異なる生活を送る事となった。
*
ウェールズが学院の塔の一室に隠れ住むことになり、オスマンは宝物庫から持ち出した一つの黒い琥珀――ジェットをウェールズへと渡していた。
ジェットはかつてアルビオンの女王が夫を亡くして長い喪に服した折、服喪用のジュエリーとして身に付けていたことで知られている。先立っての戦いで勇猛果敢に討ち死にしたアルビオン王家と忠実な貴族に対する、オスマンからの追悼も兼ねていた。
だがオスマンがわざわざ宝物庫から持ってくる代物が、ただの宝石であるはずもない。
指輪にあしらうには多少大きく、首飾りにするには十分な大きさの黒い琥珀。
この黒い琥珀の持ち主が指定した領域には何者も入ることが出来なくなるが、同時に持ち主が指定した人物の立ち入りを許可することも出来る。
部屋の小窓にも、風は通るし外の景色は見えるが、外からは誰もいない小部屋のように見える魔法のガラスをはめ込むことにより、ウェールズが学院にいるということが第三者に知られる可能性はほぼ完全に排除されていた。
そしてルイズ達が学院に帰還した翌日から、アルビオンに向かった面々……ルイズ、ジョセフ、ギーシュ、キュルケ、タバサがアルヴィーズの食堂に行くことが少なくなった。
表向きはオスマンが「勝手に授業をサボった罰として彼らには当面の間補習授業を行う」ということで、普段の授業時間以外の自由時間を塔の一室での補習に当てている、ことになっていた。
しかし実際は違う。
いくらウェールズが学院に居る事が知られないように手を巡らせているとは言え、ずっと一人分多い食事を用意していてはスキャンダルや噂話には無駄に聡い生徒やメイド達の興味を引かないとも限らない。
そこでジョセフが考えた手は、五人分の食事を少しずつ分けることで六人分の食事にしてしまおうという非常に単純な手だった。
そもそも食堂で出る食事は、一人分にしては豪華なボリュームがある。ウェールズに分け与える為に一人辺り一食につき六分の一渡したとしても、特に問題があるわけでもない。
しかもジョセフは気が向いた時に食堂に行けば賄が出る。その為、実際はジョセフの食事を丸々ウェールズに回してもよかったし、ジョセフも最初はそうしようと提案したのだが、満場一致でその申し出は撤回された。
「なんだいジョジョ、水臭いことを言わないでくれたまえ。僕達は心の友だろう?」
五人の言葉を要約すれば、ギーシュが言ったこの言葉となる。
ゴクリッ!
結果、五人は授業以外の時間……食事以外の時間も、塔へ足繁く通うこととなった。
これについては、ウェールズの様子を監視するということではなく、ジョセフの教えを学ぶ為だった。
黒い琥珀に守られた部屋に集まる面々は、つまりジョセフがジェームズ一世を口先三寸で丸め込んだ光景を目の当たりにした面々という事になる。
ジョセフが二十世紀のNYで五十年間磨き上げた交渉術は、ハルケギニアの貴族にとって強力な武器、などという生易しいレベルの話ではない。まだ銃も開発されていない中世の軍隊が走り回る戦場で、現代兵器満載の軍隊が好き勝手したらどうなるかという事だ。
ジョセフにとっては初歩の初歩の初歩とすら言えない、町中の本屋で埃被ってる時代遅れの経営ハウツー本の第一章に書かれてるレベルの事ですら、普通に生きていればルイズ達は辿り着けなかったかもしれない発想である。
効果の程は自分達の目と耳が無二の証人であるため、ルイズ達はジョセフに駄目元でジョセフに教えを請うてみたら、拍子抜けするくらいあっさりと快諾されてしまった。
トリステイン王家の庶子を初代に持つヴァリエール家の三女に、ヴァリエールの宿敵でもありゲルマニアでも屈指の名門のツェルプストー家の令嬢、トリステイン王軍元帥の息子のみならず、滅びたとは言えアルビオン王家の皇太子。
由緒ある王族や貴族の少年少女が椅子を並べて平民の老人を師とし、時間を惜しんで貪欲に彼の言葉を学ぶという、封建制度に基づく身分制度で成り立つ社会であるハルケギニアでは到底見ることの出来ない光景が、狭い一室で連日繰り広げられることとなる。
ジョセフの肩書きが使い魔、学院で働く平民達の英雄の他にも、王女殿下の友人、虚無の担い手(嘘八百)、皇太子や貴族子息の教師、とたった数日で劇的に増えたのに呼応して、ルイズの態度もまた変わっていた。
まず、ジョセフにさせていた身の回りの世話を自分でするようになった。
顔を洗う水を汲ませはするものの、自分で顔を洗うようになったし、着替えだってジョセフの手を借りず自分で服を着る。洗濯も自分でやると言い出した。
ルイズの態度の変貌を目の当たりにしたジョセフは、まず第一に落ち込んだ。
基本的に、ただのボケ老人扱いされていた頃でもルイズの世話については嫌な気がしないどころか、むしろ進んでやっていたジョセフである。
だが、アルビオンでの冒険を終えた今、ルイズの中ではジョセフに対する認識が大きく変わっていた。
有能な使い魔であり、誇り高い老人であり……、もっと言えば、眠っているところへ衝動的にキスしてしまうという未経験の感情を持ってしまっている。
そんな相手に、いつまでもいちいち身の回りの世話をさせるのは、貴族としても一人の少女としても、ルイズのプライドが許さなかった。
そこできちんとルイズが、そこに至るまでにどう考えてその答えに至ったかを説明すれば良かったのだが、残念ながらジョセフの世話を断ったのはアルビオンから帰還して翌日すぐのこと。情報を出さないことが不都合になるという初歩的な事すら、ルイズは学んでいなかった。
「私だって子供じゃないんだから、身の回りのことくらい自分でするわよ!」
と、いつもの調子で言われてしまったジョセフは、それはもう落ち込んだ。
そりゃそうである。目に入れても痛くないほど可愛がっていた、むしろ実の孫よりも愛情を注いでいたルイズから突然こんな事を言われてしまったのだ。
極度の疲労で、落ちていく岬の上だと言うのに熟睡してしまったジョセフは、自分の唇が主人に奪われていたことなど知る由もない。心当たりが何もない状況で、突然可愛い孫からそんな事を言われて落ち込まない祖父などいるはずがない。
ショックの余りふらふらと部屋から出て廊下の壁に凭れてたそがれるジョセフを見かけたキュルケは、事情を聞いてとりあえず、なんというバカ主従かと呆れ返ったのだった。
ちなみに洗濯については、結局今まで通りジョセフがやることになった。
ルイズの目の前で輝虹色の波紋疾走こと波紋式全自動洗濯を披露したところ、数発ほど脇腹にチョップをお見舞いされるオマケはついていたが。
To Be Contined →
乙!!!!!!!!!!
以上投下したッ!
そして今になって気付いたが名前欄をゼロと奇妙な隠者に変えるのをすっかり忘れてたぜェーッ
大人はうそつきなのではありませんまちがいを(ry
首だけワルドは考えはしたけれど「出ても出なくても特に問題はないしいいか」と考えたわけだが、もし出しても問題なそさうなら「大人はうそつきなのでは(ry」で出しちゃおうかなー(ダメです)
さーて次回のゼロと奇妙な隠者はー?
「ルイズ、ジョセフと同じベッドで寝る」の一本でーす。
次回もまた見てくださいねーンガッグッグ
ル、ル、ルイズが攻勢にでるのか!?
ニヨニヨが止まらないぜ乙!
やはりジョセフvsジョゼフの丁々発止の駆け引きが見たいっす!
今日から隠者は第三部なんだね
題名は何になるんだろう?第二部は「風のアルビオン」だったけど
ああそうだ第三部のタイトルを忘れていた。
原作通り「始祖の祈祷書」でお願いするッ!
しかし波紋使いにとって波紋式洗濯は
必修なのか?シーザーもジョセフも波紋をいったい何だと思ってるwww
GJ隠者さん!
まさかの琥珀の記憶(メモリーオブジェット)!
TheBookのネタすら取り入れるなんてやっぱり隠者さんはすげェやーッ!
>>632 波紋は洗濯に役立つとても素晴らしい技術だそうです(T魔法学院・メイドS)
桃色の波紋疾走ッ!
乙
今日は良い日だ
>>626 正直DIO様ほど根性があるように見えないから首だけでも生にしがみつくって姿には違和感が
>>637 そう。ボディが欲しいか、そらやるぞ、二人で仲良く海の底。
遅くなったが隠者の人GJ!
ルイズの態度がジョセフを男として見出したな
15分から投下しますが構いませんねッ!?
641 :
ゼロいぬっ!:2008/06/07(土) 22:15:58 ID:y+g1fQdU
深い海に沈んでいく感覚。
どこまでも広がる青い空を見上げるように眺めている。
「お、おい! 嬢ちゃん!」
「黙ってて!」
デルフの慌しい叫びを聞きながら私は杖を手に取った。
自ら命を捨てた訳じゃない。助かると信じて飛び出したんだ。
今までは何故魔法が使えなかったのか分からなかった。
だけど自分の属性が“虚無”だと知った今なら理解できる。
魔法が使えるという確信があればこそ魔法は成功する。
目も眩む急落下の最中、レビテーションを詠唱する。
どの属性でもコモンマジックなら扱える。
そう信じての捨て身の逃避。
限りなく0に近い成功率であったそれは、
彼女の予想を裏切り、あるいは大方の予想通り失敗した。
「へ?」
「うおぉぉぉぉぉお!?」
血の気が引いていくような速度で流れる景色。
今まで出来なかった事がそう簡単に成功するはずもない。
鳥だって慣れぬ内は飛ぶのに失敗する事もある。
ルイズの身体は変わらず大地へと吸い込まれていく。
「彼女を捕まえろ!」
ワルドの叫びが戦場に木霊する。
アルビオン竜騎士とタバサが同時に動いた。
速度ではシルフィードが上。
だが戦闘での疲労に加え、出足の遅れが大きかった。
彼女の前を竜騎士が翔ける。
急かそうとも間違いなく彼女は敵の手中に落ちる。
そしてルイズを助けつつ竜騎士を撃墜するだけの精神力は、
今のタバサに残されていない。
「きゅい! どうするのお姉さま!?」
「………このまま」
そう言いながらタバサは手にした杖を大きく振りかぶる。
さながらバットでもスイングするかのような態勢。
タバサの視界には兜に覆われた竜騎士の後頭部が映っていた。
竜騎士のレビテーションがルイズの落下速度を減衰させる。
空中で受け止めるには加速が付き過ぎ、このままでは両者の激突は免れない。
敵に助けられる悔しさに歯噛みしながらルイズはその後方から迫る青い影に気付いた。
音を殺し速度を保ちながらシルフィードが竜騎士の背後に迫る。
その上には杖を構えるタバサの姿。
(よし! やっちゃえ!)
(今だ! スイカみたいに叩き割っちまえ!)
意図に気付いたルイズとデルフが声には出さず応援の念を送る。
しかし、彼等の目の前で竜騎士は嘲笑にも似た笑みを浮かべた。
絶好のタイミングで振り抜かれる長尺の杖。
だが直後、竜騎士は振り返りもせず頭を下げた。
シルフィードによって加速が付いた杖が真上を通り抜けていく。
肩甲骨をブチ割って支援
643 :
ゼロいぬっ!:2008/06/07(土) 22:17:59 ID:y+g1fQdU
「バカが! 見え透いた手を!」
渾身の一撃を避けられたタバサに男の杖が向けられる。
隙だらけの脇腹にエア・ニードルが突き立てられようとした瞬間。
ぺしん、という軽い音と共に男は宙へと投げ出されていた。
落ちる直前、彼が目にしたのは視界一杯に迫るシルフィードの青い尻尾だった。
十分に減速したルイズをタバサがシルフィードの背に運ぶ。
レビテーション程度の魔法でさえ気を抜けば意識を失いそうになってしまう。
それを押し隠してタバサはルイズの容態を気遣う。
「……大丈夫?」
「平気よ!」
顔を上げたルイズの頬は赤く腫れ上がっていた。
それでも気丈に振舞う彼女は以前よりも頼もしく見えた。
タバサが頭上を見上げる。
そこには彼女が落ちてきた先、一匹の風竜の姿が変わらずに存在する。
助けにいきたい……だけど打つ手がない。
精神力を使い果たしたタバサと疲労困憊のシルフィード。
かといってルイズにワルドの相手は出来ない。
不意を打つ事さえ叶わず足手まといになるだけ。
それどころか周りの竜騎士に阻まれれば近付けるかどうか。
悔しげに噛んだ唇から一筋の血が流れ落ちる。
力が足りない。守りたい者を守れるだけの力が。
どうして私はこんなにも無力なのか。
世界はどうしてこんなにも非情で残酷なのか。
「嬢ちゃん……無理を承知で頼みがある」
デルフの声にタバサは視線を下ろした。
それはいつもみたいにふざけた口調ではなく重々しく響く言葉。
何を、と訊ねようとした彼女より先に、
「俺を相棒の所まで連れて行ってくれ」
無謀ともいえる願いをデルフは口にした。
「栄光ある王直属竜騎士隊も、残すはたったの4名か」
「他の連中は王の御許に逝けたんでしょうかね」
森に降りた竜騎士が周囲を見渡す。
同じ様な服装に身を包んだ騎士達は、
満身創痍ながらもその眼には未だ闘志の炎が燃えている。
その隣で困惑を浮かべグリフォン隊隊員達が声を張り上げる。
彼等の前にいるのは風竜に乗った少女二人だった。
644 :
ゼロいぬっ!:2008/06/07(土) 22:19:07 ID:y+g1fQdU
「無理だ! あの竜騎士の群れに突撃するなど自殺行為だ!」
「それに剣を渡したぐらいで本当にどうにかなるのか?
どこにそんな保障があるというのだ!?」
タバサの説明を聞いた彼等には当然疑念が沸き上がっていた。
何よりも実現するには戦力が足りない。
死にに行くのも同然。それも無駄死になるかもしれない。
口々に姫殿下の護衛や制空権の確保を語り、彼女達の言葉に耳を貸そうとしない。
「まさか私を置いてくなんて言わないわよね?」
だがキュルケは真っ先に名乗りを上げた。
臆する事なく、むしろワルドとの対決を望んでいるようにさえ感じる。
彼女の言葉にタバサは頷きで返す。
それに満足げな笑みを浮かべるとキュルケはシルフィードの背に乗る。
ついで聞き分けの良い子供を褒めるようにタバサの頭を撫でる。
まるで恐怖を物ともしない彼女達の姿に衛士達の顔が曇る。
このような子供達に遅れを取っていいのか?
だが頭では分かっていても心は動かない。
「……僕にも何か出来ることはあるかい?」
続いてギーシュがタバサに問いかけた。
相手は空の上、ゴーレムしか作れない自分では力になれない。
連れて行くだけ足手まといになるだけだと分かっていながら、
堪えきれずに彼は声に出して問う。
「ある」
その彼の期待に応える言葉がタバサから返ってきた。
歓喜の表情でギーシュはシルフィードに乗ったタバサを見上げる。
しかし次の瞬間、彼の表情は何ともいえない気の抜けたものに変わった。
「脱いで」
「へ?」
了承を得ぬままタバサはシルフィードから降り、ギーシュに掴みかかる。
そして瞬く間にボタンを外して彼から上着を毟り取る。
予想外の展開に固まっていたギーシュもようやく我を取り戻し叫ぶ。
「わ! ちょ、ちょっと待って! なんで!?
やめて! そんな事されたらお婿にいけなくなる!」
ギーシュの反抗を意にも介さず無言で上着を奪い取ると、
タバサはそれをマントで身を隠しているルイズに投げ渡した。
上半身裸になったギーシュが両腕で身体を隠すが、それには何の感心を寄せる気配はない。
僅かにショックを受けるギーシュを放置して彼女はルイズに言った。
いぬっだ!いぬっだ!いぬっだ!
支援だ!支援だ!支援だ!
646 :
ゼロいぬっ!:2008/06/07(土) 22:20:39 ID:y+g1fQdU
「着て」
「ありがとうタバサ…それにギーシュも」
「……ま、まあ女性を肌着姿にしておく訳にはいかないからね」
格好付けようにも裸ではどうしようもない。
隣では呆れ顔のニコラが部下に代えの服を用意するよう伝える。
指揮官がそんな格好では士気も上がらない。
……まあ中には一部息が荒い連中もいるが見なかった事にする。
「う! 突然、腹に痛みが! これでは満足に魔法も…」
「別にアンタには期待してないわよ」
「期待してない」
急な腹痛を訴えるモット伯にキュルケとタバサ、二人が辛辣な言葉を言い放つ。
少し悲しげな顔をしていたが命には代えられないのか、
モット伯は訂正する事なく仮病の演技を続ける。
元よりタバサに連れて行く気はなかったので彼を視界から外す。
シルフィードの背にはタバサとキュルケ、そして自分。
まるでニューカッスル城の焼き直しだとルイズは思った。
そしてあの時と同じ様に、もう一度アイツを迎えに行く。
……だから待っていて。私は必ず行く。
「では行きましょう。エスコートは我々が引き受けます」
彼女等の会話が終わったのを見計らったように竜騎士の一人が口を開いた。
自分達だけで行くつもりでいた彼女達が振り向く。
破けたマントを引き裂いて動きやすくする者、
疲労を浮かべる自分の竜を撫でる者、
誰もが思い思いの行動を取りながらも決意を固めていた。
「貴女方は命懸けでアルビオンの未来を守ってくれた。
ならば今度は我々がトリステインの未来を守る番です。
それに王の仇を前に尻込みしたとあっては先に逝った者達に面目が立ちませぬ」
タバサは何も言えなかった。
彼女一人の戦いなら助力を断った。
傷付いた彼等が生きて帰れる可能性は低い。
他人を巻き込んで死なせるのは、
自分の手で殺す事に等しいとタバサは思っている。
その責任を負う覚悟がなければ受けるべきではない。
だけど今は少しでも戦力が欲しい。
それに、たとえ断ったとしても彼等は付いてくるだろう。
何を言うべきかを迷った後、彼女は呟いた。
「………ありがとう」
ただ一言、それだけが本心から出た言葉だった。
647 :
ゼロいぬっ!:2008/06/07(土) 22:22:21 ID:y+g1fQdU
五匹の竜が大空へと翔ける。
それを地上から見上げるグリフォン隊にモット伯は語りかける。
「君達は間違ってはいない。だが正しいかどうかは誰にも分からん。
決断したのなら後悔しないように行動するしかあるまい」
モット伯へと集まる白い視線。
傭兵も衛士隊も義勇兵も誰もが心の中で思った。
―――“アンタがそれを言うな”と。
「ち、違うぞ! あの時は本当にお腹が痛くて…!
それに誰かが残って兵を指揮しないとダメだろう?」
周囲の気配に気付いたのか、モット伯が慌てふためきながら弁明する。
その態度に一層、兵士達からは疑惑の眼差しが向けられる。
「見苦しいですよモット伯。誰だって命は惜しい。
それを隠そうと言葉を並べ立てる、その考えこそが浅ましい」
「う……!」
ギーシュの反論にモット伯は言葉を詰まらせる。
口元に薔薇を咥えながらギーシュは髪を掻き揚げる。
しかし風に揺れる彼のマントの下は裸だった。
この場に残された二人の指揮官の姿にニコラは溜息をついた。
(……これは俺が頑張んないとダメかな)
「まあ、後はあのお嬢さん方に任せるしかないでしょうな。
こっちには援護する方法もないですし。
もっともコイツが使えりゃ話は別ですがね」
そう言って彼は部下が運んできた“光の杖”を手に取った。
戦艦もろとも空を切り裂いた光、それを放った“武器らしき”もの。
しかし今はウンともスンとも言わず沈黙を保っている。
どうやって動かしていたのかなど電気を使わない彼等には理解できない。
とりあえず彼が戻ってくるまで保管しようと決めた瞬間だった。
雷鳴にも似た地響きが彼等の耳を劈く。
見上げた先で形作られていく土塊の巨人。
銃で応戦するトリステイン兵士達が文字通り一蹴された。
その凶悪な足音が彼等へと一歩ずつ近付いてくる。
「何ですかありゃあ?」
「……フーケのゴーレムだ」
「フーケって……まさか“土くれ”のフーケですかい!?」
ニコラの問い掛けにギーシュは冷や汗を垂らしながら答える。
キュルケやタバサからフーケがレコンキスタに付いた事は知らされていた。
だがタバサ達がいなくなった、このタイミングで襲ってくるなんて。
自分の運の無さにギーシュは思わず舌打ちする。
ひっそり支援
裸ギーシュ支援
光の杖にタバサがライトニング・クラウドを叩き込んで動かすとか?
651 :
ゼロいぬっ!:2008/06/07(土) 22:25:36 ID:y+g1fQdU
その直後、彼の背中に何かがぶつかった。
振り返ると、そこにはモット伯の背中があった。
彼はゴーレムを全く見ていなかった。
轟音を響かせようとも大地が揺るごうとも目を向けようとしなかった。
……何故ならモット伯の視線の先には、
ゴーレムなんかよりも遥かに恐ろしいものが映っていたのだ。
森林浴でもするかのように歩む足取り。
その足音はゴーレムとは比べようもないほど小さい。
だけど彼等の耳には自分達の命を刻む音にさえ聞こえる。
木々の合間を抜ける風が羽帽子を揺らす。
「それを…“光の杖”をこちらに渡してもらおう」
挨拶も脅迫も無く、森の中から現れたワルド子爵は要求のみを伝えた。
彼はずっと“光の杖”について考えていた。
使えなくなったと嘘をついたとは思えない。
そんな事をする必要性は見当たらない。
仮に内通者がいると怪しんでいたならフーケの動きに気付けたはず。
それにフーケとの戦いで使っていただろう。
もしフーケの言葉が真実だとしたら“その時のバオー”には使えなかったのだ。
だが今、奴は自在にあの“光の杖”を行使している。
その時から今までの間に奴が身に付けた能力は唯一つ“雷を放つ力”だけ。
ならば、あの“光の杖”は雷の力を動力としているのか?
もし、そうだとすれば。
「それは奴を殺す為の武器だろう? ならば奴ではなく僕が手にすべき物だ」
―――だとすれば、僕に扱えぬはずはない。
652 :
ゼロいぬっ!:2008/06/07(土) 22:28:15 ID:y+g1fQdU
以上、投下したッ!
次回は“男達の番か”。
バンカーでも可、底なし沼的な意味で。
乙でした
あやや、ワルドが使うつもりか
乙ですが
”番か”は”挽歌”の誤植でせうか?
>>654 出番という意味です。
次回は華々しい少女達の陰に隠れがちな、
脇役扱いの男達がフーケとワルド相手に戦います。
ゼロいぬっ!さん GJ!
657 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/08(日) 00:53:26 ID:3gKRWb9J
GJ!
次回はつまり、『戦っているのは女たちだけじゃない』という、SBRとは逆展開になるというわけですな。
あれ? じゃあギーシュってルーシーの役?
すいませんsage忘れました。
ゼロいぬさんGJ!
しばらくぶりに、十分後に投下しやうと思ひます。
660 :
使空高:2008/06/08(日) 19:44:39 ID:JWGEMNvj
一章九節〜使い魔はとりあえず前を向く〜
頬をなぶる柔らかい風の感触で、リキエルは薄く目を開いた。
左目が開かないことには、違和感も湧かなかった。どちらか片方が常時開かないことにはもう大
分前から慣れている。しこたま殴られて潰れているのかもしれなかったが、だからといってドーダ
コーダとも、リキエルは思わなかった。
――空が目の前にあるな。
一瞬そう思ってから、馬鹿なことを考えたと、リキエルは自分に向かって毒づいた。単に仰向け
に倒れているだけだ。芝生のなめらかな手触りと、その下にある硬い地面の感触が、明確にそう告
げてくる。
――三発目から先は……。
覚えていない。リキエルは朦朧とした頭で、ことここに至るまでの経緯を思い出そうとしている。
脳が記憶の整理をつけている過程を、覗き見るような感覚だった。
視界が閉ざされ、直後に来た強い衝撃に頭蓋を揺らされ、意識を失った。しかしそれも一瞬のこ
とで、直ぐにリキエルは、衝撃の余韻で明瞭な覚醒を得た。そして感じたのは、痛みかもしれなか
った。
かもしれないというのは、それを痛みといってよいのかわからないからだ。強い衝撃と、その衝
撃を受けた部分の皮膚が沸騰したような感触は、どういったわけか、痛みとは明確に結びつかなか
った。口の中でする鉄の味と、ぐらぐらになった奥歯が、かろうじて痛みの証といえるのかもしれ
ない。つまりは、脳がそこから先を考えることを拒絶するほどの、激越な痛みということだろう。
いずれにしても、リキエルがそれを自覚する間はなかった。続けざまにギーシュのゴーレムから、
蹴りやら踏みつけやらをもらったのである。その三撃目をまた頭にうけ、リキエルは再び気を失っ
た。そして目覚めてみれば、こうして仰向けに空を眺めている。
リキエルは、身を起こそうと体に力をこめてみたが、右の肩が僅かにピクリと震えるだけだった。
意識不明なまま、立ち上がれなくなるまでやられたということだろうか。意識を失う前と変らずに、
その場に集まっている観衆の様子をうかがってみる。首も動かないようなので、目だけをぐるりと
めぐらせた。
焦点が合っているかは定かでなく、断言はできないが、誰も彼も呆然とした様子であるようにリ
キエルには見受けられた。そうするとやはり自分は、見る者が言葉を失うほどには悲惨な状態にな
っているようだなと、ぼんやり思った。そうなっていながら、痛みを感じていないことがやはり奇
妙だった。
――奇妙といえば。
バイクを運転して事故を起こし、そうと思えば異世界に飛ばされた。わけもわからず使い魔とや
らになり、仕事をやらされる。その翌日には、挙句と言うには早すぎるほど突然に、メルヘンの代
名詞ともいえる魔法で血なまぐさい暴力沙汰に身をさらされた。奇妙といえば、これほどそういっ
た感覚にふさわしい事柄も、そう無いのではなかろうか。
そんなことをリキエルは、うつらうつらとしながら考えている。信じられないことに、ともすれ
ばこのまま眠りこけてしまいそうになっていた。それは、また意識が途切れるということでもあ
ったが、それでも構わないとリキエルは思った。このまま動かなければ、これ以上傷が増えること
もないのだ。
スッと意識が遠のこうとするのがわかる。リキエルはそれを心地よいものに感じた。人壁の一部
が何やら言っているようだったが、どうでもよいことだ。ギーシュもぶつぶつと言っているが、聞
き取れない。知ったことでもない。
その声が耳に入ってきたのは、浮遊感にも似た、それでいて地面に頭からズブズブと沈み込むよ
うな、曖昧な感覚がリキエルを包み始めたときだった。
661 :
使空高:2008/06/08(日) 19:46:09 ID:JWGEMNvj
「違うでしょ!? そんな問題じゃないわよッ!」
リキエルの目は、まぶたの裏にある暗闇ではなく、再び前面に広がる空を見た。ぼんやりとした
頭に、ガソリンが注がれるようにして血が集まってくる。眠気は掻き消えていた。リキエルは、声
のしたほうへ目を動かした。
まず驚いた顔をしたギーシュが目に入った。と同時に、ふわふわと宙に浮いてこちらに向かって
きていた剣が、力を失ったように地面に突き立つのも見えた。ギーシュが魔法で浮かせていたもの
らしかった。
そして目の端から、桃色の頭髪が踊るようにして現れる。
ルイズがこの場にいることを意外に思ったのは、視界に入れてからのほんの一瞬だけのことだっ
た。気の強そうな、それでいてどこかあどけない感じの残る高い声は、殺伐とした空間には似つか
わしくなかったが、ルイズそのものは、ここにあってなんら不思議な感じがしなかった。なんとは
なしに、来るような気がしていたのかもしれない。
ただ、その反面、なぜそうなるのかはわからないが、自分を庇うルイズの声を、リキエルは歯噛
みするような気持ちで聞いた。
「……ちくしょう」
強くもない風に混じって飛ばされてしまうほどの、弱弱しい呟きである。ひどく喉が渇いていて、
自然と声が擦れて小さなものになっていた。
倒れたまま、ルイズとギーシュの問答を見ていることしかできないのがどうにももどかしくなり、
リキエルはまた動こうとしたが、右の腕と足、それと首が、かろうじて曲がる程度だった。
それでも動くことを諦めず、ミミズが這うようにして、小刻みで器用な動きを繰り返し、リキエ
ルはなんとか腰から上を半ばまで起こす。ギーシュの得意気でいけ好かない薄ら笑いと、俯いたル
イズの姿が、ハッキリと確認できた。
ルイズが顔を上げて、一歩前に出た。
「……わかった、わよ。こいつが、こいつが何かしたっていうなら……わ、わたしが、ああああ、
あ、謝るわよ!」
毅然とした態度に見えるがしかし、小刻みに震える声と握りこんだ拳には悔しさが滲んでいる。
そして、そのまま口をつぐんだルイズからは、やはり隠れようもない悔しさの気配が感じ取れた。
「……!」
自分の中で、何かが激しく動くような気配をリキエルは感じ取った。それと前後して、リキエル
の胸のうちに様々なものが去来する。それらは記憶だった。ある一所に帰結する、記憶の断片であ
る。
まず思い浮かんだのは、教室でルイズが「諦める気はない」と言った時の眩暈と、ロングビルと
の雑談の中で掴み損ねた感覚だった。今にして思えば、それは同一の感情であったことがリキエル
にはわかる。
それは憧れだった。それも、羨望に近い憧憬である。
リキエルは、ずっと馬鹿にされ続けてきたというルイズの話を聞いたとき、パニックを起こすた
びに心無い視線にさらされ続けた自分を、一瞬それに重ねた。重ねて、すぐに否定した。そうやっ
て重ねることが、おこがましいことである気がした。
リキエルは人生にまいり、足元に視線を落としたまま動けなくなった。生きる目的を失い停滞し、
恐怖に煽られただ喚いていただけなのである。過去にも未来にも希望を持たず、穴倉のような絶望
の中で、それを捜すことさえも怠っていたのだ。
だがルイズは違う、とリキエルは思う。ルイズは諦めないと言った。嘲笑と侮蔑の囁きから逃げ
ていなかった。むしろ、果敢に立ち向かう姿勢を貫いているように見えた。そんなルイズの姿勢を、
リキエルは羨ましいと思ったのである。
次に思い浮かぶのは、焦燥を伴う疑問だった。
支援
663 :
使空高:2008/06/08(日) 19:47:42 ID:JWGEMNvj
どこから生まれる。なんなんだ。この差は、この違いは。どうしてこいつは、ルイズは人生を諦
めずにいられる。生きる目的を決められる。生きる希望を持てている。そうさせるものはなんなの
だ。
――『血統』……それか? いや、そうなんだろうな。
考えるまでもないことだった。ルイズが、本人がそう言ったのを、リキエルは鳶色の瞳の中で聞
いていた。ルイズは、『血統』を誇りにしている。
それは、リキエルにはおよびもつかないことだった。肉親、血縁、両親、親族、どの言葉もリキ
エルにはトラウマでしかないもので、教室でのパニックにしても、自分の『血統』を思い、そこか
ら両親へと意識が繋がったことの結果である。
「……」
そういった認識が今は少し、あるいはだいぶ変わっているようだった。
リキエルは左肩を手で押さえた。その場所には、『星型のアザ』が生まれつきある。父親譲りの遺
伝である。すなわち、血統の証だった。親のことを知らないリキエルだが、そのことにだけは奇妙
な確信を持っていた。このアザのことを、普段リキエルは故意に忘れている。父親を思い出すこと
が、直接的にパニックへと繋がるからだ。
それも今は違った。パニックに陥るどころか、血統のことを考えることで自分の精神が、細波す
らたたない平静な湖面になっていくのがリキエルにはわかった。時折、小魚がそうするように嫌な
想い出が跳ねるが、それもすぐ泡沫に消える。あの学年末試験の日以来、初めて自分は真正面から
過去と対峙しているのだということが、リキエルにはわかった。
そうさせるのは、ルイズの精神のあり方だった。どれだけ失敗を重ねても、そこに停滞すること
を嫌い、逃げ出すことを是としない前を向き続ける向上の精神が、リキエルと彼の過去とを向き合
わせていた。リキエルの欠けた心の一片がそこにはあった。ルイズの誇りに、リキエルはあてられ
ていた。
その誇り高いルイズが今、頭を下げようとしている。二人の少女の心を傷つけ、あまつさえ、そ
れを恥じることもなく他人にあたるような、太平楽なガキに謝罪しようと言っている。それも直接
の理由はといえば、自分がこんな場所で『こんなこと』になっているせいなのだ。
平静になった心が、沸き立つように震えるのを、リキエルははっきりと感じ取った。
――オレのために、こいつが頭を! 下げてはならないのだ! ギーシュ、あんな程度のやつ…
…! あんな見下げ果てるようなどうしようもないやつに、ルイズが、その精神が! 誇りが! 貶
められてはならないのだッ!
ルイズに頭を下げさせてはならない。その一念の下リキエルは、持ちうる限りの気力をことごと
く死力に変えて、体の隅々まで行渡らせた。相変わらず動かない手と足を、歯を食いしばって強引
に動かした。抜けかけた奥歯が歯茎に食い込んで、また口内に錆の味が広がっていく。
リキエルはいくつかの小さな傷が開くのも気にせず、晴れ上がった左足が引き攣れる感覚さえ無
視して身を起こし、ルイズに向かって腕を伸ばし、小柄な背に見合った、肉の薄い肩に手を置いた。
その肩は、少しだけ震えているようだった。
はじかれたように振り向いたルイズが、口を半開きにしたその顔のまま、痴呆のようにリキエル
を見つめてくる。唾と生血の混じったものを嚥下して気道を広げてから、リキエルは歯をむき出す
ような、それこそ噛み付くような顔をして、ルイズを目だけで見返した。
「オレが……言うことじゃあないかもしれないがな、謝るんじゃあない。謝ってはいけないんだル
イズ、お前は。こんな程度のヤツにはなァ……!」
そう言ってリキエルは、左足をほとんど引きずるようにして、危うい足取りでノロノロと歩き、
ギーシュの造りだした剣の前まで来て止まった。惰性で、軽く体が揺れる。左半身は本当にガタが
来ているらしく、まっすぐに立つことさえもおぼつかなかった。
「だ、だめよッ」
664 :
使空高:2008/06/08(日) 19:49:10 ID:JWGEMNvj
その背中を呆然と見送るだけのルイズだったが、酩酊したようなリキエルの動きを見て、そして
その動きの意図を察して、夢から覚めるように我に返った。
駆け寄って、ルイズはリキエルの右腕に組み付き、引き止める。傷を気遣って、ルイズは軽い力
でそうしたつもりだったが、リキエルの身体は情けないほど簡単に、ぐらりと右側に傾いた。ルイ
ズは慌てて、今度は支えるようにしてリキエルの腕を掴んだ。
「だめ! 絶対だめなんだから! それを握ったら、ギーシュは容赦しないわ! へたすれば本当
に死んじゃうわよ!? 立てるなら、話せるんだったら謝るのよ! それは恥にはならないわ、メイ
ジに勝てる平民なんていないの! あんたはよく頑張ったわよ!」
「…………」
確かにリキエルが頭を下げれば、つまりこの場でいう、土下座も命乞いも厭わなければ、万事が
それに収まるかもしれなかった。それが、ギーシュの設けた決闘の決着であり、唯一の満足感でも
あるからだ。
リキエルはそういったことに伴う強烈な屈辱や、降りかかってくる侮蔑も、身の危険の前では忘
れるべきだと思っていた。つまらない意地を張って大怪我を負うくらいなら、その、特に強くもな
い安いプライドを切り売りして、保身に繋げる方がいい。諦めと逃避が身を守ることも、確かにあ
ることだと思っていたのだ。
自分には何もないのだと、どうしようもないのだと、リキエルはそうして、本質的な問題からは
ずっと逃げてきた。繋がる先のない、無意味な逃避である。
――笑われるのがいやで、学校から逃げ出した。自動車の運転にしてもなんにしても『まぶたが
落ちる理由』! そこから目をそらすための方便だッ。それで失敗したりして、二言目には「な
んの力もない」って言ってなァ〜〜。
それは、誇りや希望を知らなかったからだとリキエルは思う。誇りを持つことなど、できるはず
もないと思っていたからこそ、希望の無い人生を延々送ってきたからこそ、そうやって逃げること
も諦めることもできたのだ。
これもやはり、今は違う。穴倉の中で、リキエルは希望を見つけていた。それはごく間近にある
ようで実際はとても遠く、手を伸ばしてもまるで届きそうになかったが、当然である。
動かない、動こうとしない人間が何かにたどり着くことが、何かを手にすることがあるわけもな
い。ましてや絶望に顔をうずめ、不安に身を突っ伏して、肝心なものに目を向けずに来た自分が希
望を手にするなど、それこそおこがましいことだ。
動かなくてはならない。リキエルはそう思った。いつになるとも知れないが、今のように地を踏
みしめて立ち上がり、希望を掴み取って、この穴倉から出なくてはならない。成長しなくてはなら
ない。
そのためには、ここで退くわけにはいかなかった。今また逃げをうてば、もう二度とこの場所に
は戻って来られないだろう。前を見なければ、欠けた心のままで一生を生きていくことになるだろ
う。そんな気がした。
「勝てるだとか、恥がどうとか、そういうことじゃあないんだ。自分でもよくはわからないが、瀬
戸際だ。後ろを向くだけで足を踏み外して、崖下に落ち込むような瀬戸際だ」
「わけわからないわよ! 何を言ってるの!?」
「だが、わかったこともある。オレにはなんの力もない。それはオレが一番よく知っていることだ。
そうやっていつも喚いていたんだからな、喚いていただけだったんだからなッ! ……それが今わ
かったのだ。そうやって下ばかり向いていたんじゃあ、結局は自分で目を閉じているだけなんだっ
てことが、いま理解できたッ!」
ルイズの顔から目を外してそう叫ぶと、リキエルは代わりにグググと視線を移し、ギーシュの顔
を睨みつけた。その突然の気勢に圧される形で、リキエルの腕に絡みついていたルイズは、驚いた
ように拘束を緩めた。
665 :
使空高:2008/06/08(日) 19:50:40 ID:JWGEMNvj
真正面からリキエルの視線を受け止めるギーシュも、それは同じだった。ただ、ギーシュの場合
は気圧されるどころではなく、自分でしたこととはいえ、目を背けたくなるほどにボロボロの人間
が、この段に来て唐突に息を増して啖呵を切る異様さも手伝って、背には絶えず怖気が走っている。
気の抜けたように力なく腕にかかるだけになった、ルイズの痩せた細い指をやんわり外して、リ
キエルはギーシュを睨みつけたまま、今となっては体の中で一番しっかり動く右腕で、目の前に突
き立っている剣を引き抜いた。
◆ ◆ ◆
セコイア造りのテーブルの上でナッツをかじる、小さな自分の使い魔を横目に、オスマン氏は水
ギセルをぷかぷかやっていた。ときどき世をはかなんだような顔になりながら、鼻毛を抜きにかか
ったりもしている。
身を投げ出すようにして椅子に腰掛けた姿は、なにごとか思案する風情があるようにも見え、あ
るいは、ぼんやりと暇を持て余しているようでもあった。鼻毛など抜いているあたり、少なくとも
忙しくはないらしかった。
そんな鼻毛抜きにも飽きたのか、オスマン氏は水ギセルを咥えたまま、難しい顔で目を閉じて、
軽く嘆息した。やはり、ただ暇を潰していたというわけでもないようである。
「……ふむ?」
ナッツがかじられる、かりかりという音がなくなったことに気づき、オスマン氏は目を開けて机
の上を見やった。
使い魔のハツカネズミ、モートソグニルは、満腹になったからか、春の陽気にあてられたのか、
無防備に腹などさらして寝転がっていた。その足元には、食べきれなかったらしいナッツが二つだ
け残っている。それを手に取り、口に放り込んで咀嚼しながら、オスマン氏はモートソグニルをそ
っとすくい上げ、自分の服の袖の内に入れた。
丁度そのとき、ドアノブのまわる音がして、不機嫌そうに眉をしかめたコルベールが入ってきた。
「おおミスタ、ええと…………ご苦労じゃったな」
「コルベールです! 日になんども自己紹介をするような趣味は私にはありませんのでッ、いい加
減にしていただけるとよいのですが!」
「まあまあ、落ち着きなさい。いい歳した大人がそうがなりたてることもなかろうに。君はこの部
屋に来るときはいつも威勢がいいんじゃな」
「使用人でもないのに配膳の上げ下げなどさせられては、怒鳴りたくもなります!」
オスマン氏はそっぽを向いて、ボケた振りを始めた。
例の『伝説の使い魔』についての話をするにあたって、昼食は後回しなどと言っていたオスマン
氏だったが、結局は空腹に抗いきれなかった。熱を持った舌で語られるコルベールの講釈を、昼休
みが始まった途端、やれ胃が鳴いているだの背に腹が替わってしまうだのと、聞こえよがしに言っ
てぶつ切りにし、中断せしめたのである。
問題はそのあとだった。学院長室を動くのをおっくうがったのか、オスマン氏はコルベールに食
事を運ぶよう頼んだ。それも「運んでくれなきゃ話は聞かんから」という、子供顔負けの我侭論法
を使ったのだ。
これには温厚なコルベールも腹を据えかねたが、ガンダールヴについての説明は終わっておらず、
しぶしぶ承諾した次第だった。そしてその不満が、今噴出していた。
「ボケた振りなどなさっても無駄ですッ。都合が悪くなるたびにそうすることはわかってるんだ!
というよりオールド・オスマン、こんな方法でワガママを通してあなたは子供ですか!」
「しかしじゃな、腹が減ってはなんとやらとも言うではな――」
「言い訳はけっこうです! 私が言っていることはですな、なぜ話を中断させられた上に食事運び
までさせられねばならないのかという……聞いているのですか! オールド・オスマン!」
666 :
使空高:2008/06/08(日) 19:52:10 ID:JWGEMNvj
半分くらいは聞いておる、と心のうちで弁解しながら、オスマン氏は再度ボケた振りを始めた。
コルベールのお小言が終わるまでは続ける腹積もりである。
そうして、不毛な膠着の気配が濃くなってきたあたりで、ドアがノックされた。いささか激しい
勢いで、用件はそう軽いものでもなさそうだと、オスマン氏とコルベールは顔を見合わせた。
「オールド・オスマン、よろしいでしょうか」
扉の向こうから聞こえてきたのは、普段に比べてもいくらか固いロングビルの声だった。奇しく
も、昼前のやりとりとは正反対の状況が出来あがっている。
オスマン氏が聞き返した。
「なんじゃ?」
「ヴェストリの広場で、生徒による決闘が行われています」
「まったく、子供は力があり余っとる間は碌なことをせんな。で、誰が暴れておるんだね?」
「一人は、ギーシュ・ド・グラモン。その相手ですが、メイジではありません。ミス・ヴァリエー
ルの召喚した……使い魔の男です」
室内の二人は、また顔を見合わせた。件の『ガンダールヴ』が決闘をするとなれば、捨て置ける
類の話ではない。生徒の決闘と聞いて、ほんの一瞬生じた気の緩みが、また瞬時に引き締まるのを、
二人は感じたようだった。
平静を装った声で、オスマン氏は返した。
「グラモンとこのバカ息子か、おおかた女の子がらみのいざこざといったところかの。じゃが、そ
れがどうしたのかね? その程度の問題であれば、教師がちょいと杖を振ればカタがつくとしたも
のじゃろうて」
「それが、大騒ぎになっているようで、生徒による妨害も予測されています。教師たちは『眠りの
鐘』の使用許可をと」
「アホか、たかが子供のケンカで秘宝を使うなどと。放っておきなさい。いざとなれば、それこそ
杖を振れば事足りる」
「……わかりました」
規則的でよどみのない足音が遠ざかっていくのを聞きながら、オスマン氏は浅く椅子に腰掛けた。
そのしぶくなっている顔に、コルベールが緊張した面持ちで視線を流す。オスマン氏は、わかって
いるというふうに手で返事をして、懐から杖を取り出した。杖が部屋の鏡に向けて振るわれると、
鏡面にヴェストリの広場が浮かび上がった。
鏡からうかがえる広場の様子に、コルベールは息を飲んだ。
予想以上に多くの生徒が広場に集まっていたこともそうだが、なによりも使い魔の男のありさま
に閉口していた。男はミス・ヴァリエールに支えられているようだが、それでも立っていられるよ
うな状態には見えなかった。どころか、あれは通常ならば意識を保つことすらできないほどの、下
手を打てば致命傷にもなり得る手傷ではないのか。
「オールド・オスマン、これは!」
「……むぅ」
「このままではあの平民、手遅れになりますぞ。私が行って、止めてきます」
「そうじゃな、頼まれてくれるか……いや、ミスタ・コルベール!」
667 :
使空高:2008/06/08(日) 19:53:41 ID:JWGEMNvj
早くも杖を取り出し、ドアノブをまわしていたコルベールだったが、声を荒げたオスマン氏に驚
き振り向いた。そして、なにごとかと鏡に目をやって、また息を飲んだ。
◆ ◆ ◆
安く荒い布を擦り合わせるような、微かな音がしている。地面を浅くえぐりながら引きずられる、
剣の切っ先から生まれた音である。それは常の姿を取り戻した広場の静寂に、薄く広く染み込んで
いく。静かな中に、剣先が小石を散らす音がときどき混じり、その一瞬だけはほんの少し空気が震
えた。
――体が……。
軽くなった気がする。リキエルはそう思った。痛みこそないものの、強烈なだるさで使い物にな
らなかった四肢に、うまく力が入るようになっていた。ただ、数瞬でも気を抜けばその力も抜けて
いく。折も折で緩みそうになった腕に力を入れなおし、リキエルは剣を握り締めた。
剣を引き抜いたのは、それで闘おうと思ったからではなかった。まともに振り回したことのある
凶器はといえば、野球のバットくらいのもので、刀剣などと使えもしない武器ならば、いっそ心許
ない自分の歩みのために、杖にしようと思ったまでだ。今はギーシュのところまで歩きとおせれば、
それでよかった。
歩きとおして、殴るのか蹴りつけるのか噛みつくのかは、三の次四の次だった。歩きとおせるの
かどうかも、実はどうでもよいのかもしれなかった。逃げずにいられる最も単純な方法が、進むこ
とだというだけなのである。
そういった心積もりでいるので、この体の状態はリキエルには都合がいい。これが噂の、アドレ
ナリンによる交感神経の興奮かと、リキエルは埒もなく感心した。
――言いえて妙ってやつだなァ〜『闘争か、或いは逃走か』のホルモンだったよな?
ただ、そうやって物思いに耽っているのは、頭の片隅のどこかにあるごく小さな場所だけで、リ
キエルの意識の大部分は、やはりギーシュへと向いている。
10メートル程だろうと、リキエルは自分とギーシュとの距離を目算で測っている。この距離を詰
めるのだと改めて思うと、リキエルの気持ちは妙に昂ぶり、足運びもにわかに力強くなった。ゴー
ルを間近にした、競走馬の心境に近かいものがある。
「こんな程度とはご挨拶だったな、君。だがいくら威勢のいい口を利いたところで、君はそんな状
態だ。手負いの獣は危険というけれど、本当に危険なのは手負いにしたと思い込む油断だと思うね。
僕は油断しない」
杖を振って、三体のゴーレムを自身の前に展開させながらギーシュが言った。言葉と裏腹に、余
裕のない声だった。うっ血や出血、打撲に骨折でボロボロの人間が片足をひきずりながら、にも関
らず普通の人間と変わらない勢いで歩いてくる姿が、ギーシュの余裕や気勢を萎えさせていた。や
りすぎたかもしれないという気が、今さらながらしてきたようでもある。
それでもどうにか気を張って、いつでもゴーレムを突撃させられるよう備えながら、ギーシュは
リキエルに呼びかける。
「だから、ここいらでやはり手を打とうじゃないか。僕は殺すまでするつもりはないんだ」
「…………」
「君はルイズの使い魔でもあるしね、最後のチャンスだ。今、ちゃんと謝れば――」
「説得しているつもりか? それなら無駄だな、冷蔵庫の扉開けっ放しにするのより無駄なことだ」
「……なんだって?」
「引くつもりはないと言ってるんだ。お前だって、わざわざ止まらなくていいぞ。無駄なんだから
な、そんな人形を何体出そうと、どんな魔法を使おうとよぉ〜〜っ」
いったい単純な性格をしているギーシュは、自分の魔法を揶揄した言葉を受けて、簡単に怒りを
露にした。意識的に偉ぶらせた顔に、みるみる朱が差していく。
ギーシュは肩を怒らせて杖を振り上げると、乱暴に振り下ろした。薔薇の造花の残った花弁が全
て散り、丁度そのとき吹いた久しぶりの風で、数枚が飛ばされていった。落ちた花弁は、うち四枚
が青銅のゴーレムに変わった。七体のゴーレムが、ギーシュの全力である。
十歩ほど後ろに下がると、一体だけそばに置いて、ギーシュは無言で六体のゴーレムをリキエル
に差し向ける。一度萎え落ちた気勢が、闘争心とともに戻ってくるのを、ギーシュは実感していた。
気勢は怒りが運んできたもので、闘争心は失われかけた余裕が変じたものらしかった。本気で「決
闘」をする気になっている自分に、ギーシュは疑問を抱かなかった。
668 :
使空高:2008/06/08(日) 19:55:11 ID:JWGEMNvj
闘いの空気とでもいえばいいのか、異様な緊張感が、霧のようにヴェストリの広場を包み込んだ。
重く張り詰めた空気は静寂を塗りつぶし、ギーシュとリキエルに纏わりつく。二人を中心に、さら
に重苦しい空気ができあがる。二つの空気が、しだいに近づき合いぶつかり合い、音を立てて震え
るのを、周囲の生徒たちは聞いた気がした。
――時間はないぞ。
冷静にゴーレムの動きを観察しながら、リキエルは思った。
痛みこそないが、体中の傷が消えたわけではなく、軽くなったものの、根本的に動かない部位も
多かった。左足などは重心をかけすぎると、体重を支えきれなくなって予想以上に体が沈んでいく。
遠からず動かなくなるだろう。そうなれば、進めなくなる。
いま突然に勢いを増して突っ込んできたゴーレムよりも、緩やかに迫ってくるその後続などより
も何よりも、リキエルには止まることが怖かった。どんな魔法も無駄とは、そういうことだ。歩み
を止める全てのものが、今のリキエルには無駄だった。
――どけなきゃあいけないよなァ……。路上の上に避けて通れない犬のクソが転がってるのなら、
そんな邪魔で無駄なものは、どけなきゃあならないよなァアアアアアッ!
荒い動きで、リキエルは地を蹴った。先頭のゴーレムとの間がするすると縮まって、青銅ででき
た無機質な顔と、無残に崩れた血まみれの顔が、触れ合うかというほど近づく。
ゴーレムが伸び上がって上体を反らし、そこから拳を打ち下ろした。落ちかかってくる一打を、
リキエルは瞬きもせずに凝視した。ゴーレムの指の一本一本が確認できて、中指の先だけ色がくす
んでいるのも、小指と人差し指の大きさが同じであることもはっきりと見て取れた。
――ギーシュ、お前の所へ行くぞ、もっと近づくからな。
寸前にゴーレムの拳が迫るのを認めてから、リキエルは体をひねって、殴りつけるようにして腕
を振るった。実際に殴り飛ばしてやるという気で、肘から先だけで放った無造作な一剣である。
あえて後手に回ったのは、格別の意味があってのことではなく、かといって心にゆとりがあった
わけでもなく、後に攻めても先に打ち込んでも変わらないという、確信めいたものがあるためだっ
た。存分に力を篭めるためだけに、リキエルは後手に回ったのである。少なくとも、後の先の剣と
いった華麗な動きではなかった。
「無駄ァ!」
そんな出鱈目で足配りも構えもない無法な一撃が、ゴーレムの胴から上をさらっていった。
これを見、ギーシュは肝を冷やしたが、広場の人間の口々からは、おおという喚声が上がった。
形といわず迫力といわず、割れた鏡のように鋭利な緊張の中にありながら、思わず人が見惚れるほ
どに鮮やかな一撃を、リキエルはわれ知らず放っていた。
そこからは見事の一言で、見る間に二体のゴーレムをやはり肘から先だけでなぎ払い、それで開
けた空間を無理に縫って、リキエルは身体を右に傾ける姿勢で半楕円を描いてギーシュに殺到した。
そうしたほうが走るのに楽で、つまりは左足が、いよいよ危ないのだ。
「グッ! ゥウウウ……!」
と、その左足が何かに強く払われた。咄嗟に見れば、ゴーレムの腕だけが地面から生えていて、
それが足を殴りつけたものらしい。ちょうど右足を軸に踏み込むところだったリキエルの身体は、
前のめりに傾いでいく。ほとんど目と鼻の先で、ギーシュが喚いている。
「油断はしないと言ったんだ! 僕は余計に花弁を落としたわけじゃあはないぞ。まさかとは思っ
ていたが、君がここまで来たときの保険だったんだ! 少し観察していればわかるが、その左足の
負傷では、一度倒れればもう立てないだろうしな!」
真実その通りだった。リキエルの目の前にあと一体、ゴーレムが控えている。
669 :
使空高:2008/06/08(日) 19:56:41 ID:JWGEMNvj
リキエルがこれまでのゴーレムを捌けていたのは、進む勢いと踏み込みがあったからで、あとは
単純な力技だった。その力技も、握力が少しづつ抜けてきているのがわかり、そう続くものでもな
いと悟ったからこそ、リキエルは数体のゴーレムを無視してでもギーシュに迫ったのである。倒れ
れば、勢いも乗せられなければまともに剣も振れなくなる。先ほどのように眼前のゴーレムに叩き
伏せられて、終わる。
運よく控えたゴーレムを除けたとしても、残したゴーレムが追いつく。そうなれば、もう勝負は
つく。誰の目にもそれは明らかだった。
しかしリキエルの見ていたものは、違った。顔にはただ静かなだけの色があって、固く微動だに
しない意志があらわれていた。
首を傾けて、リキエルは呟いた。
「動物は走るとき、後ろに残す足で地を蹴って、一瞬だけ跳んでいるよな。特に二足歩行の人間な
んかはな。跳躍力を大きな推進力にして、前に進んでいるのだ」
「なにを言い出すんだね?」
聞きとがめたギーシュは、心底いぶかしく思って聞き返す。
「倒れかけで、進むも何もないだろうに」
「そしてその跳躍力を跳ぶためだけに使って、人間は色々なスポーツ競技を行う。例えば走り高跳
びだ。キューバのソトマヨルは、史上初の8フィート越えで圧倒的な世界記録を作ったッ」
「イカレちまったのか? いや、これは……ッ」
よくよくリキエルを見返して、ギーシュは気づいた。リキエルは、倒れるに任せて倒れているの
ではなかった。足を曲げて、自分から体を沈めていた。ギーシュはそんな場合でもないだろうに、
尻尾だけで跳ね上がる蛇の姿を連想した。
蛇が目を剥いて、ギーシュの顔をまた睨む。
「どんな方法でもとるぞ、進むためならばどんなこともだ! 今のオレにはそれができる!」
狂ったように叫びながら、リキエルはまたぎ跳びに跳躍した。
「何をヲヲヲヲヲ!?」
無茶で、無理な跳び方だった。踏み切りも空中での姿勢も、およそ競技者のそれとは比べ物にな
らない不恰好である。だが、跳躍の軌道は間違いなくゴーレムの頭上を飛び越えていて、そのまま
行けば、ギーシュに直撃するものと思われた。
大怪我人の動きではまるでなかった、常識はずれのその動きに、観衆は何度目とも知れないどよ
めきを発した。どよめきのなかにはギーシュの敗北を予感し、リキエルの勝利を予見し、そのこと
に二重の意味で嘆ずる色もあった。
リキエルの跳躍は最高位に達し、広場の興奮も最高潮に達した。そのためか皆が皆、まるで時が
止まったような感覚に陥り、リキエルやギーシュの姿も、完全に静止したように目に映った。そし
てそれは、あながち皆の錯覚でもないようだった。
リキエルは本当に止まっていた。だらりと腕を下げた格好で、空中に静止している。懸崖から打
ち下ろされるはずだった必殺の剣は、力なく揺れるだけで、光を返すことさえない。
「なん、なんとか……なんとかだが、まにあったぞ」
あとじさって、どもりながら言ったのはギーシュである。突き出した杖は微かに震えていたが、
杖の先は、リキエルに向いたまま動かなかった。ギーシュは大きく息を吐いて、ある程度整えてか
ら続けた。声には、隠しようもない安堵があった。
「そんな怪我で、しかも片足だけで、あまつさえ僕のワルキューレを跳び越えるような動きをする
とはね、焦ったよ。この『レビテーション』にしたって、正直まぐれだった」
「……」
「だが、止まったな。君の負けだ、参ったと言うんだ。ここまでメイジを追い詰めたことへの敬意
もある、やはり殺すまではしたくない。僕は十二分に気が済んだ」
670 :
使空高:2008/06/08(日) 19:58:10 ID:JWGEMNvj
「……右腕がよぉ〜、肩より上がらないんだ。最初にこの剣振った時に気づいたんだがな。だから
腕だけで剣を使ったんだが、筋肉まで駄目になったらしい。指とかの感覚もなくなってきた」
どこを見ているのかよくわからない顔で、誰に言っているでもないような態度で、リキエルはと
りとめもないことを言っていた。その声に諦めや観念の気配がまるでないことを察して、ギーシュ
は眉をひそめた。そして急に顔を引き締めると、下ろしかけていた杖をまた突き出した。勝利を確
信していて、意識することをついやめていたが、場の空気がまだどこか張り詰めた感じを残してい
るのに、ギーシュは気づいたのだった。
一度ため息をつくような顔をしてから、リキエルがギーシュに顔を向けた。見下ろされる形にな
ったギーシュは、そこに異様なものを見た。だいぶわかりにくいが、リキエルは皮肉るような顔で
微笑んでいた。
「肘から上だったら、左腕のほうが動くくらいなんだ。……ところでこの魔法は、さっきも使って
いた魔法だよなギーシュ? だよな? この剣を浮かせていた魔法だろ?」
「そのとおりだ……でもそれがなんだって言うんだい?」
なぜこんなことをリキエルが聞いてくるのか、ギーシュにはわからなかった。
二人の距離は近いが、剣が届くような場所に立つほどギーシュも間抜けではなく、そのためにあ
とじさっておいた。肩が上がらず、剣を握るのがやっとというリキエルの言葉に嘘がなければ、剣
を投げて飛ばすことも難しいはずで、その気配があっても、レビテーションでさらに浮かせて狙い
を外させればよかった。リキエルに、この状況で何ができるのかわからない。『何をしだすか』わ
からないのだ。
肘から先がいやな形に曲がった左腕を掲げ上げ、その手のひらが空を向くように上腕と肩をひね
りながら、リキエルが不適に言った。
「寝転がってる間に、ひとつ見つけていた。その魔法の特徴を、決定的な特徴をなァ〜」
「特徴だって? 弱点ならわかるが……君、何をしてるんだ?」
夢見るような顔になったリキエルに、ギーシュは問いかけた。リキエルは左腕の手首に、剣の腹
を押し当てていた。
「『集中する』ってことは本当に大切だよな。この魔法は、集中して使わないと効果が切れるんだ
ろ? 剣がオレのそばに突き立ったとき、お前は動揺していたな」
「質問に質問で返すなァ――! 何をしているのかと聞いてるんだッ」
「集中を乱しかけたな……。勘の悪いお前はわからないようだな……。この剣を見ても、オレがど
んな行動を起こすか見当もつかないらしいな!」
言い終えるより先にリキエルは行動していた。手首に当てていた剣の刃を立て、真横に素早く引
き切る。なんのことはない、単純な動作だった。
次の瞬間、その所作に目を見開いたギーシュの視界が、赤一色に染まった。
「わ!」という声とともに、ギーシュは目を閉じ、顔を押さえた。ぬらりと気味の悪い感触が指先
にして、慌てて目を開けようとすると、その気味の悪いものが目に入ってくる。驚いて杖を取り落
としそうになるのをどうにかこらえた。
目の痛みと怖気で、ギーシュはパニックになりかける。
――目を開けたい! なんだこれは。手の感触をぬぐいたい! この水みたいな感触は。ハンカ
チを出さないと! この鉄みたいな臭いは。どのポケットに入れたっけ!? まさか血か!? 目を開
けさせてくれ! 血の目潰しだって!? レビテーションが! 正気の沙汰じゃないぞ! 解けてし
まった!
「突然目が見えなくなるのは、怖いよなァ」
聞こえてきた声と草を踏みしめる音は、浴びせかけられる冷水のようで、ギーシュの頭は一瞬で
さえ渡った。パニックになっている場合ではないと思った。目の周りで固まりはじめている血を、
シャツの袖でぐいとぬぐった。
671 :
使空高:2008/06/08(日) 19:59:40 ID:JWGEMNvj
目を向ければ、大きく胸を喘がせたリキエルが佇んでいた。左手首からは止め処もなく血が流れ
落ちている。顔色はいったいに蒼白で、死相というべきものがあらわれていたが、その表情はギー
シュがこれまで見てきた人間の中の、誰よりも生き生きとしたものだった。
のどを鳴らして唾を飲み込み、ギーシュは身を硬くしたが、リキエルに杖を突きつけることはし
なかった。静かな空気が、今度こそ勝負のついたことを告げていた。
「『ここまで』近づいた。……だが、人間ってのは限界があるなぁ。どうやら『ここまで』だ。もう
指の一本も動かせないんだ……」
リキエルは無手だった。剣は足元に転がっていた。
満足そうな顔で、リキエルは言った。
「『敗北』……だ……オレの」
よろめきもせず、リキエルは仰向けに倒れた。襤褸切れのようになって横たわる体を、昼下がり
の春日が照らした。
負けたことへの抵抗や屈辱といったものが、不思議なほどわかないことにリキエルは気づいてい
る。これで終わりかと思うと、少しだけ寂しいような感じがしたが、それも感じる端から、大きな
満足感のようなものに飲まれていった。
――空が目の前にある。
リキエルはふとまた思った。奇妙なことに、今度はそれに納得がいった。
目をしばたくと、その理由がわかった気がした。目が、両目とも開いていた。それはなにも初め
てのことではない。ごくごくまれなことで、ほんの少しの間だけだが、そうなることはあった。た
だ、意識してまぶたが上がることはなかったのである。
――それが……。
今は自分の意志で上がる。今に限られたことなのかもしれないが、リキエルにはそれでもうれし
かった。できることなら、ずっと目を見開いていたいくらいだ。しかしそう都合よくいかないこと
は、リキエル自身わかっていた。
体が熱くなって、意識が朦朧としてくる。五体を襲うその灼熱の感覚は、日の光によるものでは
なく、痛みが戻ってきたものだった。
視界が一瞬だけ明瞭になって、すぐにぼやける。痛みが次第に薄れていって、代わりに、叩きつ
けるような眠気が意識を抑え込んでくる。
桃色のブロンドが視界に入ったときには、既にリキエルの意識は途絶えていた。
……リキエル(ゼロのルイズの使い魔)
全身の打撲といくつかの複雑骨折、および頭蓋骨陥没や失血等々により
――再起不能
TO BE CONTINUED
672 :
使空高:2008/06/08(日) 20:01:30 ID:JWGEMNvj
投下終了です。血の目潰しはお家芸でs(あ、パクゥ!
ギーシュフルボッコor『竿』or十一号を期待された方々、すいません。神父がおらんもんですから。
特に十一号に関しては随分と先になります。にしても…試験期間中に物書くもんじゃねーッ
GJ!!
GJ!!
なんとゆう壮絶な決闘
GJ!
リキエルの心中描写に鳥肌。
DIOがジョナサンに抱いた尊敬もこんなものだったのかと思って見たり。
着実に血を目覚めさせていくリキエルがどちらの血統に転ぶのか、期待っ!
投下乙!
頑張ったけど、最後は負けか。
才人以上にボコボコにされたからなあ……、しかたない。
重傷度に比例して治療にかける費用が上がるだろうから、ルイズの懐は寂しくなりそうだw
いいものを見せてもらった…!
前々から思っていたんだがすげぇ心理描写が上手いぜ
待ってましたァ!!GJ!GJ!
敗北したのにかっこいいっす
途中描写で出てきた「無駄」が特に…!
GJ! 6部が読みたくなって来ますね。
ところで、3兄弟人の中で一番誇り高かったのはリキエルだと思うのですが、どーおもいます?
ウンガロは「可哀想な子」っぽいですし。
ヴェルサスは「野心家」ってイメージが強いし
やっぱリキエルかな…
スカイハイの能力は
何だっけ?
未確認生物「ロッズ」を操る能力。
月に降り立て! リキエル、その精神 ! !
グッジョブゥ――――ッ!
最近6部にはまってるんだが、ホント大好きだリキエル。
何処かの『非公式(たぶん)』ファンブックで、
息子たちは全員『生み出す能力』という共通点があるのでは?
『生命』を『物語などからキャラクター』を『過去の記録』を、そして『架空の生物』を、
といった仮説がされていたな。ダカラドーダコーダ言ウワケデハナインデスガネ
後、『鳥の悪魔風なる料理の存在』や『ドッピオの名前にダブルコーヒーの暗示有』とか。
ヴァルサスだけ人生が狂うまでの回想があるな。
あの判事のババアのせいで・・・
ヴァルサスカワイソス
ヴェルサスが出てくるとこ読んでると
奴のCVが高木渉で脳内再生されてくる…
DIOの息子たちはそれぞれ世界の一部を支配する能力だと思ってた。
空想に空に大地に命。ジョルノだけなんか違うか。
やたらはっきりと再起不能って書いてあるけど大丈夫だよな?な?
自分もそれ心配してた
えっ再起できないの!?みたいな
>TO BE CONTINUED
>随分と先になります
とあるし、続きますよね ね?ね?
ヒント(?):五部のノトーリアス戦でも死屍累累ができあがっている。
リキエルGJ…心理描写の上手さに惚れる。
見直して15分から投下を行いたいんですが構いませんねッ?
歩道が開いているではないか、行け
あ、ありのまま今起こったことを話すわ。
私は夕食を取ろうと思って食堂に向かった。
いつも通り食堂に入ると食堂の奥、お客様用の席にお母様とちい姉さまが伯爵と一緒にいた。
な、何を言っているかわからないと思うけど私にも何が起こっているのかわからなかったわ。
妄想だとか幻覚とかそんなちゃちなもんじゃない…もっと恐ろしい未来が目の前に広がるようだったわ。
「ルイズ。やっと来たのね」
「ちいねえさま!」
でもちいねえさまと久しぶりに会えたからいいわ、とすぐ上の姉と再会して再会した喜びに任せてカトレアの胸に飛び込んだルイズは思った。
「お久しぶりですわ! ちいねえさま!」
席に着いていた生徒達が、ルイズとカトレアを見比べて噂話を始める。
二人の娘を見守るヴァリエール公爵夫人、カリーヌ・デジレも含め、髪の色といい、目の色といい見れば見るほどルイズにそっくりだった為関係者ではないかと噂していたのだが、
それが確定し、間を置かずに今度は彼女ら親子の品評へと生徒達の興味は移っていた。
当人がいるので滅多なことは口に出されないが、何故ルイズの家族がこの学院にいるのか皆興味深深なのだ。
「あえて嬉しいわ。わたしの小さなルイズ。さ、母様にもご挨拶してご飯にしましょう」
「え、はい…母様」
呼びかけられ、夫人がルイズを見る。それだけでルイズは緊張して体を硬くした。
使い魔を再召喚したことをこの場で問い詰められはしないかという不安に駆られながら、ルイズは母と再会の挨拶を交わす。
ルイズの緊張した様は、小さい頃から変わらない何か悪い事をして隠している時の態度だったが、夫人はあえて無視してルイズに挨拶を返す。
「ごきげんようルイズ。挨拶が済んだら早く自分の席に行きなさい。もう余り時間がありませんよ」
規則に従い普段通り同級生達と共に食事を取るように言いつける夫人。
規則を破る事は彼女にとってはタブーだった。
それはわかっていたが、再会を喜んでいたカトレアはルイズを庇うように前に出た。
「母さま。そんなことおっしゃらないで。せっかく久しぶりにルイズと会えたのよ。一緒にご飯くらい」
「おだまり」
カトレアの説得とちい姉さまに懐くルイズを一言で切って捨てて、夫人はもう一度言う。
「ルイズ、もうすぐ朝食の時間です。早く席に着きなさい」
「は、はい。母さま」
しゅん、として席に戻っていくルイズを見送ったカトレアは席に戻り、口を挟まずにやりとりを見守っていていたテファにごめんなさいねと声をかけた。
普段と様子の違うルイズに周りの生徒達は驚きを隠せないようだが、そのざわめきも次第に消えていく。
炯炯とした光を称えた瞳が騒がしくする生徒に向けられる度に教師達が駆け足で黙らせに向かっているせいだった。
次第に食堂は給仕達が料理を運ぶ音だけになっていく。ルイズの生徒振りを見ていた夫人は自分達のテーブルを見て眉を寄せた。
「ジョナサン、一つ尋ねておきたいのですが」
「なんでしょうか」
少し顰められた声で言う夫人にジョルノは視線を返す。名前を呼ばれたことは、カトレアを治療して以来息子同然だなんだという公爵の趣味と思い気にしなかった。
夫人の目はジョルノの前にある皿に向けられていた。
「朝からはしばみ草を?」
「ええ、夫人も如何ですか?」
「いりません」
即答する夫人に少し残念そうにするジョルノを見て、カトレアはテファに囁いた。
「ジョナサンったら、よく食べられるわね。あれとっても苦いのに」
「やっぱりそう思う?」
二人が短く笑いあうのを見て、ラルカスがニヤリとする。
ちいねえさまの方を羨ましそうに見るルイズの視線にカトレアが視線を返す。
マチルダの分も貰う為に厨房へ行ったポルナレフの帰りを待たずに朝食の開始を告げる生徒達の始祖ブリミルへのおいのりが始まった。
*
「ところでジョナサン。先日送ってくれたコート、とても素晴らしい出来だったわ」
授業までの少しの時間をちい姉さまと過ごすルイズを眺めていた夫人が突然ジョルノに声をかけた。
食事も終え、いつになく静に朝食を取った貴族の子女達の話し声の中でも、よく通る威厳のある声だった。
「カトレアのお気に入りになっているわ。あの子ったら少し前まであのコートを着こんで動物達と出かけてしまって大変だったんですから」
ヴァリエール公爵夫人の賛辞にジョルノは爽やかな笑みを返しながら、記憶を手繰っていた。
そういえば病を癒した後のやり取りで、幾つかプレゼントを贈っていた事をどうにか思い出した。
選ぶ時間はともかく、花以外は金と時間がかかるので少し手間取ったのを覚えている。
「ありがとうございます。職人もそれを聞けば喜びます」
「でもレディにズボンを贈るのはどうかしら。カトレアじゃなければ怒っていたわ」
苦笑する夫人に、ジョルノは頷く事で同意を返した。
このハルケギニアでは、まだまだズボンは男性だけのものなのだ。
そこに、脚線美が強調してしまう長ズボンを贈れば、咎められるのは当然のこと。
新たなファッションアイテムだと説明する者をつけたとはいえ、受け取ってくれたことは喜ばしい事だった。
「カトレア様だから贈りました。あれなら、スカートよりも自由に散策を楽しめるはずです」
「…それには賛成ね。でも、人前では履かせませんからね」
「はい」
返すジョルノにヴァリエール公爵夫人、カリンは顔を寄せて声を潜めた。
一つ確かめておきたい事があった。
快復祝いに幾人もの貴族から送られてきた品々の中で、生地と職人を遣わせてきたのは、服飾ブランドをもつネアポリス家ならではと感じたが、最初に贈られてきたコートの生地は桁が違った。
ビキュにゃー100%
アルビオンの原生動物で断熱性保湿性に優れた体毛を持つ家畜ビキュにゃー…美しい毛並みと基本的には完全に人に懐かぬ習性、
愛らしい姿に優雅さまで持つビキュにゃーの毛は細く、糸に紡いで利用される。
そしてその極めて決め細やかなその糸は『繊維の宝石』、時に宝石のように取り扱われる。
そんなビキュにゃーの毛を更に厳選し、それのみで織られたビキュにゃー100%はコート一着数千エキューで取引される着道楽がヨダレずびっな一品なのだ。
「でも、あれほど上質の生地。一体どうやって入手されたの?アルビオンの王族でも早々手には出来ないでしょうに」
「時価というものがあります。あれほどの生地がほんのちょっぴりの火の秘薬と同等の価値しかない土地、というの存在するというわけです」
ハルケギニア中でも高い評価を得ていたビキュにゃーも、その家畜や直接飼っている平民達と共に戦争によりその存在が危ぶまれていた。
特に質のいいものは王族の直轄地や大貴族が治めているし…大事にされ、可愛がられてきたその生き物は食料としても研究されていた。
追い詰められていく状況が、彼らから普段の分別を奪いさり大切な家畜を見る目を失わせているという。
夫人にとっても嘆かわしい事だったのか、ジョルノの説明を聞いて夫人は悲しげな顔を見せた。
「戦争に伴う食料不足で食べ尽くされたと聞いた時は嘆いたものですが、例外もあるというわけね」
「はい。公爵夫人。幸い我が家は服飾も営んでおり、腕の良い職人も怯む生地でしたが、むしろその生地なら扱うのを得意とする職人も多数いるという幸運にも恵まれました」
夫人は納得がいったらしく深く頷いた。
「なるほど、良い腕の職人を抱えてらっしゃいますのね。コートも以前拝見したウェールズ殿下のお召し物と同じ職人が仕立てたかのような、とてもよい出来でしたわ」
アルビオンから平民が逃げていると言う話はカリンの耳に届いていたがもしかすると、それも…
「はい、他の着道楽を自負する方々もとても満足していただいてます」
「道理で、ガリアやロマリアでの成功の裏に彼らの手助けがあるわけね」
「ええ、目の肥えた方々に対する我が家の切り札の一つ、と考えています」
「素晴らしいわね。今度主人が一着注文したいと零していたのですけど、在庫はあるかしら?」
ジョルノは夫人の申し出を快く承った。
だがその直後、夫人は鋭い視線をラルカスに、次いでジョルノに送った。
「でも、よかったわ」
「ラルカスがなにか?」
「あの者によく似た背格好の賊が我がヴァリエール家の領内に出没していたの。でも、あの風ではなかったわね」
ポルナレフに頼まれて涼しい風を作っているラルカスを冷めた目で見ながら、ジョルノは初めて知ったような顔をして夫人と会話を続けた。
運が良かったが、風によってメイジまで判別できるとなれば、より念入りに隠蔽しなければならないだろう。厄介な話だった。
「ジョナサン、ルイズが授業を受けている間に学院内を案内してくださらないかしら? カトレアも私と周るより楽しめるでしょうからね」
「構いませんが、そろそろ今日こちらを訪れた理由を教えてくださいませんか」
「カトレアをこの学院に編入させる手続きを済ませるためよ」
せっかく治ったのだし、一度ルイズと学院に行ってみたいと言い出したのだと語る夫人は困ったような表情をしていたが、娘二人に向ける眼差しはとても穏やかだった。
授業がある為姉と別れ教室に向かうルイズを見送り、夫人の下に戻ってきたカトレアを迎える為ジョルノは席を立つ。
「カトレア、私はオールド・オスマンと少し話があります。学院の案内はジョナサンにお願いしましたから」
「あらあら」
「それと例の件。貴方から説明しておくのよ」
「…ジョナサン、ごめんなさい。貴方にはお仕事があるでしょうに。母が無理にお願いしたんじゃないかしら」
一方的に言い捨てて去っていく母を追いかけず、ジョルノに謝るカトレアに頷き返す。
「今日全て案内しろ、という話ならお断りです」
断ってから、ジョルノは手を差し出す。
授業に向かう学生たちが、それを見ていたが涼しげな顔でカトレアを見つめる。
「ですが今日から数日、この時間なら付き合えます。それで如何でしょう?」
「うふふ、よろしくお願いいたしますわ。騎士様」
少し躊躇して、カトレアはジョルノの手を取った。
テファに声をかけてジョルノは歩き出す。
生徒達の噂する声が聞こえたが、それらを代表するようにポルナレフがラルカスに尋ねた。
「一体いつ知り合ったんだ?」
「ここに来る途中だ。ヴァリエール家の長女の婚約者と知り合った関係さ、まぁ治療をしたから医者と患者かもしれないけどな」
「…お医者さ…ゴホッゴホッ」
カリンに警戒心を持つラルカスは悪ふざけ無しに返事をしたが、ポルナレフはわざとらしい咳払いをする
「ん〜?」
「なんでもねぇッ、それだけか?」
「それだけも何も顔合わせるの二回目だぜ?」
安堵したようにポルナレフが息を吐くのを聞きながら、ジョルノはテファも伴って食堂を痕にする。
と言っても、ジョルノもそこまで詳しいわけではない。
マチルダの奪還の為にある程度調べてはあったが、案内できる場所といえば図書館、コルベールの研究室、自室、体を動かしている中庭。
それにポルナレフ達が溜まり場にしている厨房に程近い中庭の隅…授業をしている教室の周りをうろうろしても邪魔になる。
当たり障りの無い図書館などへ向かいながら、3人は歩を進めた。
するとすぐに、ジョルノのところへ隼がやってきて、ジョルノが差し出した腕に止まった。
鋭い爪が腕に食い込むが、傷は付かない力加減をされているようだった。
「あは、凛々しい鳥さんね。ジョナサン、よかったら紹介してくださらない」
カトレアがその頭や羽に触れようと伸ばした手をペットショップは不愉快気に見下ろす。
それに気付いて、カトレアは手を戻したがそれに気付かないテファは遠慮なくその頭や嘴にさわり、胸などの羽毛の感触に顔を綻ばせる。
「ペットショップと言います。ある方から預かった僕の仲間です」
紹介されたペットショップは、主人の顔に泥を塗るまいと胸を貼り、目の前の女へと一応の礼を取って見せる。
だがジョルノに危害を加える存在ではないことは明白だったので、すぐに目を逸らし空へと目を向けた。
カトレアは気位の高さや余り相手にされていないのを感じたが挨拶を返す。
「前から聞きたかったことがあるんだけど…貴方達みたいな方って他にもいるの?」
「意味がわかりません」
とぼけたように答えるジョナサンに引き換え、ペットショップはカトレアを観察する。
怪しい動きを一つたりと見逃さぬと伝えてくる鋭い視線を受けながら、カトレアはあくまで柔らかい態度を崩さなかった。
「貴方だけかと思ったんだけど、ペットショップもね。貴方達は、ハルケギニアというか、なんだか根っこから違う生まれのような気がするの。違って?」
妙に確信を持って尋ねてくるカトレアの目は好奇心に輝いているように観察していたペットショップには見えた。
どうしてばれたのかと、あたふたするテファのせいかもしれないと思いペットショップはテファを睨む。
小さく悲鳴を上げて、テファが身を硬くした。それを見たカトレアが庇うようにテファとの間に入る。
「テファのせいじゃないの。私、妙に勘が鋭いみたいで」
「ええ、その通りです。知っているのはそれだけでも無いようですね?」
歩くのを止めずにジョルノは返事を返す。
カトレアはそれにはすぐに答えなかった。
間をおくように、ひとしきりペットショップの優美な姿を愛でるカトレアを急かすように、ジョルノはペットショップを腕から飛び立たせる。
ペットショップは周囲を警戒するためにその周りを飛び始める。
その動きに怯えて、先程睨まれたテファがジョルノの影に隠れるように移動する。
「安心してください。オールド・オスマンも今は私を見ていませんから」
「…ジョナサンは」
初めてカトレアは笑顔に陰りを見せて声を潜めた。
テファが息を呑む。
「盗賊達、ううん。ギャング達を率いているの?」
「はい。夫人に言われましたか?」
「母さまはもう余り疑って無いと思うわ。ラルカスさんの魔法が違ったから」
トライアングルクラス位になれば、大抵魔法を見ればそのメイジの腕を大まかに察することができる。
夫人程になれば、それはもう少し精度が高くなっているのであろう。
「貴方は違うと思ったんですね」
「違うけど、ラルカスさんって二人いるような気がするの。変な話だけど、そんな気がするわ」
自分の勘に疑いを持たないカトレアへジョルノは目を向ける。
カトレアの身を案じて、テファはジョルノの腕を掴んだ。
ギャングである事を秘密にしているジョルノだ。
もしかしたら、カトレアを消す事を考えているのではないかと、テファは不安になっていた。
「ジョナサン、どうして貴方はギャングなの?」
「ここは僕の故郷ではないし、仲間もいない。ギャングもなかった。確かに他の夢を見ることもできたかもしれませんが」
悲しげな表情を見せるカトレアにジョルノは変わらぬ態度で答えた。
輝くような爽やかさがあったが、それはカトレアの表情を曇らせていた。
「既に、僕の夢は決まっていた。僕の夢はギャング・スター。これまでもこれからもそれは変わりません」
ジョルノは足を止める。
自然とカトレア達も足を止める事になった。
この場には他には誰もいない事は、ペットショップが確認しているしオスマンの視線も感じなかった。
「気分が優れないのでしたら案内は明日にしましょう」
その申し出にカトレアは緊張からか汗を浮かべながら言う。
「ずるいわ。これでもとても緊張してるのに…ど、どうしてそう平然としているの?」
テファもその思いは同じだったらしく、目を大きく開いてジョルノを見ていた。
ほんの一秒か二秒考えて、言葉を選んでジョルノは言う。
「貴方が僕の味方だからな。烈風カリンの娘だけど…」
「どうしてそう思うの? 貴方は、私みたいに勘が鋭いとかっていうことで行動したりしないでしょう」
「アンタは母親にも打ち明けずに僕にこの事を伝えた。テファが僕の味方だってことは確かめてから」
え?と声を上げてテファがカトレアを見る。
否定も肯定もしないカトレアにジョルノは続けて言う。
「アンタがこのことに気付いたのは何時だろう? 疑いを持ったのは恐らく治療されてから数日後。
確信を持ったのはラルカスと烈風カリンが戦った時だ。ですよね?」
ポケットから幾つかの手紙を取りだし、その中からカトレアが贈った手紙を選んでジョルノはカトレアへと差し出した。
どうしていいかわからず、カトレアは手を伸ばしかけて空中で腕を止めた。
「贈られてきた手紙を読めばわかる。アンタは少しずつ、さりげなく情報を僕にくれていた。
今読み返せば、アンタが迷っていることもわかるだろうな。だから味方だと思ったんです」
差し出した手紙を引っ込めて、食堂から出る時と何ら変わらぬ様子でジョルノは手を差し出した。
カトレアは、困ったように眉をよせ泣き笑いのような表情を見せてその手を掴む。
「どうして貴方を母さまに突き出さなかったか…私にもよくわからないわ。でも(理由はないけど、)今はその方がいいような気がするの」
それを見てホッと安堵した様子を見せるテファにカトレアは笑いかける。
「…ねえテファ、貴方にも話しておきたいことがあるの。前に助けてもらった時、ジョナサンが父に出した条件のことよ」
カトレアを助ける時、ジョルノはヴァリエール公爵にテファの味方となることを求めていた。
その事をいうなり、では…カトレアの手を離し一旦少し離れようとしたジョルノの腕をテファが捕まえた。
「えっと…大事な話なら、ジョナサンにも聞いてもらっていいかしら」
「勿論、ジョナサンにも聞いてもらわないと」
「その話なら、私抜きで決めてもらいたいんですが」
肩を竦めるジョルノにカトレアは首を振った。
「テファ、貴方。私か母さまの娘になる気は無い? つまり、ラ・フォンティーヌ家かヴァリエール家の養女にならないかということなんだけど…」
「ええっ…!?」
ラ・フォンティーヌ家とは、カトレアが言ったとおりカトレアの家のことだ。
カトレアは父親であるラ・ヴァリエール公爵から領地を分け与えられている。
公爵が病弱で家を出られない自分の娘を不憫に思った結果で、そのため厳密に言うならカトレアはラ・ヴァリエール公爵家の人間ではなくラ・フォンティーヌ家の当主なのだ。
そのラ・フォンティーヌ家かヴァリエール家の人間とすることでテファを守る…テファがエルフだと言うことがばれた時ヴァリエール家にも累が及ぶことになるが、それだけの覚悟が公爵達にはあった。
だがそれを受けるなら…暗殺されたテファの父のこと。モード大公の、アルビオン王家の血を引くことを隠したままには出来なくなるかもしれない。
優しげに微笑んだままカトレアが言う提案に、テファが助けを求めるようにジョルノを視線を向ける。
ジョルノは爽やかな笑みを浮かべ、何も言わなかった。
だがテファには、ジョルノの表情を見てその提案を悪くないものと思っているのだと理解した。
ギャングスターはギャングスターで一語なんだぜ支援
しえん
それとももう終わりかな?
テファにはジョルノの考えはわからなかった。
あっさりとギャングだという事を指摘したカトレアを味方だとジョルノは言ったが、まだ顔を合わせた日数はほんの数日でしかない。
イザベラと過ごした日数よりも更に短いのだ。そんな相手を、手紙でのやり取りとこうして少し話しただけで味方だなんて…本当に納得しているのかテファにはわからなかった。
それにもしヴァリエール家がテファをだしにしてジョルノに何か要求してきたら?
自分のせいでジョルノに迷惑がかかることを考えるとテファの胸は苦しくなった。
「私達は、少なくとも私は貴方を取引の材料に使う気は無いわ。その時は、私が貴方をジョナサンの所に届けるって約束する」
「…少し、考えさせて」
大きな胸の前に手を持っていき、硬い声で返事を返すテファにカトレアは寂しそうな顔を見せた。
「勿論よ…ごめんなさいね」
謝るカトレアを観察していたペットショップは、ジョルノに見咎められてより高く飛び去っていった。
そうして三人は図書館へと向かう。
門外不出の秘伝書とか、魔法薬のレシピが書かれた書物が置いてあるため入り口では眼鏡をかけた司書が座り人の出入りをチェックしていた。
若い女性の司書は、ジョルノをチラッと見て再び視線を読んでいた本に戻す。
それについて、ジョルノはカトレアにここ何日かここに通わせてもらっていると答えた。
三十メートル程の高さがある本棚に並ぶ本が、ジョルノ達の前に広がっていた。
本塔の大部分を占める程の膨大な本がここには所蔵されている。
カトレアが小さく歓声をあげながら、並ぶ本の背表紙を見ながら本棚の奥へと歩いていく。
テファはその本棚を見上げて、その本棚の大きさに歎息した。
ジョルノの亀の中にも本棚だけで埋め尽くされた亀というのはあったが、これとは比べることが無駄だった。
はじめて見る大量の本に圧倒されて、声も出ないようだった。
ジョルノは足を止めて、その本棚の手前の方で脚立に登っている男を見上げた。
初めて見る横顔だった。
だが、何か奇妙な感覚を覚えた…男が本から顔を上げて、ジョルノを見下ろす。
目が合った男は、満面の笑みを浮かべた。洗練された動きで彼は脚立から降りる。
「君はジョナサン。ゲルマニアのジョナサン・ブランドー・フォン・ネアポリス伯爵だね?」
「そういう貴方は?」
失礼した、と黒い肌と白い髪の男は足を止めたカトレアやテファにも礼をする、
そして再びジョルノを見つめ、ゆっくりとジョルノへ向かって歩いてくる。
熱狂的な…ペットショップの視線を更に熱くしたような目は、歓喜で潤んでいるように見えた。
「エンリコ・プッチ枢機卿。君と出会える日を、心から待ち望んでいた」
To Be Bontinued...
以上、投下した。
これで次からは今度こそ2巻かなと…
ビクにゃーは、ビキューナ100%を誤字してしまいそのままこね回してみた生き物ですのであしからず。
ふわふわっとしてにゃーとなくファンタジーな生き物と思っていただけるとありがたく…
プッチキタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━ !!!!!
神父キタアアアアアアアアアアアアア!?
GJ
投下乙そしてGJでした
……ディスクがあることから、存在は予期できたはずでしたが、
まさか本当にプッチが来ているとは思いませんでした
さて、こうなってくるとポルナレフが気にかかりますな
彼はまだ、ジョルノの父親を知らないはずだし……
これはいいホワイトスネイクの予感ですね
GJ!
プゥゥゥッッチ!!枢機卿だとぉぉぉぉ!?
展開が気になるぜ!
つつつつつつつつついにキターーーーーー!!
一体全体どんな展開が来るのか心臓がバクバクですよーーーーー!!!
プッチキターーーーーー!!
ジョジョ好きなら誰もが1度は考えたであろうジョルノとプッチの邂逅!!
続きがwktkすぎるぞ!!
枢機卿……ってーことは……マザリーニのポジションにプッチがいるのか?
いい意味でも悪い意味でも最強だなこのトリステインは……
枢機卿自体は複数人いるだろう
GJ!!
ついに来たか…神父!!
そしてジョルノ、きさまー、いったい何人の女子を自分の組織のために口説いたんだ!?
>>710 「あなたは今まで食べたパンの枚数を覚えていますか?」
だれか康一君連れてこい!
act3で強制土下座させて学院の平和(主に痴情のもつれ的な)を守るんだ!w
携帯からだと短パンに阻まれる…
漸く読めたぜ…GJ!
そしてプッチ何やってんだw
つーかやはり神父の目的は『天国』なのかね?
MIH VS GER は見てみたいw
そーいやハルケギニアの南、サハラ以南には黒色人種がいるんだろうか?
>>716 きっと「○○狩り」の範疇に(´・ω・`)
真っ直ぐに、誇り高く成長しつつあるリキエルと
ダークなDIO分濃い目なジョルノ…
対称的だなあ
使空さんGJ!!
使い魔に影響されて格好良くなったり、可愛くなったり、怖い意味で人間超えちゃったりルイズは多い中で
ルイズに影響されて格好良くなる使い魔ってのは珍しくて熱いシチュエーションにはシビレましたよ!
誇り高い敗者リキエルにGJ!!リキエルに誇りを示したルイズにGJ!!そしてもう一度使空さんにGJ!!!
プッチの目的は何だろう
スタンドはどの形態なんだろう
ジョルノをどうする気だろう
気になる・・・
そういやDIOの息子の中でジョルノだけがプッチにあってないんだよな
これは次回が待ち遠しいぜ
ポルジョルの作者さん
いましたらしたらばのまとめwikiスレ見てくださいなー
てs
ジョルノが例のギャングと出会わなかったら
さぞかし歪んだ能力になったんだろうなぁ
能力自体はギャングを草で隠してる時点で確立されてんだろうけど
方向性がヤバくなってそう
避難所のほうが繁盛してる件について
内容的に相変わらず本スレでいいのか迷いますが…投下するなら今のうち
どうぞどうぞ
おれは支援するぞぉーーー!
730 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/14(土) 01:08:35 ID:+ouA18JZ
カモ〜〜ン!
馬車に揺られながらロマリアの枢機卿でありながらトリスティンの政を一手に担うマザリーニは口ひげを弄りながら悩んでいた。
まだ四十だというのにすっかり白くなってしまった髭や骨ばった指を見て、休息の必要性を感じたがまだまだそんなわけにもいくまい。
小さな悩みは、極端な貴族主義だのその貴族達の腐敗だのそれこそ数数え切れない程あるし、今その頭を悩ませている二つの問題は早急に何らかの形で決着をつけなければならない。
明日にもアルビオンの王家を打倒するのではないかと思われる『レコンキスタ』
国内に蔓延する国境なき『パッショーネ』
『レコンキスタ』への対応はもう済ませた。
亡き王の忘れ形見をゲルマニアに嫁がせるという苦渋の決断によって、既に…同盟の手はずは整っている。
後は、これからの結果によってGO!かSTOP!をかけるだけだ。
残る『パッショーネ』への対応は未だに暗雲の彼方だったが、これが成れば激務に痩せ衰えていくマザリーニの体にも少しは余裕が出てくるだろう。
『パッショーネ』の発見は困難だ。
彼らのような犯罪者達が隠れるのは当然の事だが、彼らは民衆に人気があるのだ。
治安の悪い場所。あるいは、(調べてみてわかった時はなんという皮肉かと嘆いたものだが…)貴族達の腐敗度が高い場所が彼らの支持基盤になっている。
特に、マザリーニには最初意外だったが、新教徒の間では彼らの支持率は高い。
彼らの頭目である『ボス』と呼ばれる男は、新教徒であるかなど拘らず、亜人さえ受け入れるというからだ。
新教徒達はそれを知り、同じ搾取されるなら自分達平民を蔑むだけでなく時には新教徒であるだけで排除したりする貴族よりも、彼らの方がマシ、と考え犯罪者共に協力しているらしいのだ。
といってもそんな証拠は彼らが結束しているから出てこない。
またでっち上げで捜査を強引に進めたとしても、より彼らを強力にするだけでしかないのでマザリーニは許可していない。
新教徒は恐れていると同時に、鬱屈していた。
亜人にでも尋ねた方が容易い程に…同じ人間だからこそなのか?
そう思うのはマザリーニの耳に重要な事件が一つ入っていないからだった。
ある村を軍が虐殺したことが、水面下で広まり、未だに新教徒達の軍への、トリスティン王国への、王家、貴族…メイジへの信頼を完全に破壊している事をマザリーニは知らなかった。
考えごとから思考を切り替え、マザリーニは向かいあって座るトリスティン王女アンリエッタを観察する。
御年十七歳。すらりとした気品のある顔立ち、薄いブルーの瞳、高い鼻の瑞々しい美女だった。
政治の話をする為に同じ王女の馬車に乗り込んだマザリーニの前で、彼女は膝の上に薄っぺらい本を広げ、馬車の車窓から見える風景を眺めながらため息をついていた。
「これで本日十三回目ですぞ。殿下。ため息が増えましたな」
「貴族達には見せるなというのでしょう? わかっていますわ」
「ならばお控えください。王族たるもの、無闇に臣下の前でため息などつくものではありませぬ」
「王族ですって! まぁ!このトリスティンの王様はあなたでしょう?」
驚いたような声を上げたアンリエッタは、今巷で流行っている歌を聞かせて差し上げる、そう言ってマザリーニを揶揄する歌を歌い始めた。
『トリスティンの王家には、美貌はあっても杖は無い。杖を握るは枢機卿。灰色帽子の鳥の骨…』
マザリーニはどこか開き直ったような様子のアンリエッタを目を細めて見つめた。
「殿下がため息をよくつかれるようになったのは、アルビオンの状況を聞いてからと存じ上げております」
「…それは「聞けばウェールズ公の安否をお聞きだったそうですが、ウェールズ公との間に何かご心配ごとでもございますか?」
落ち着いたとはいえ、今朝もまた川に薬を売る商人の遺体があがったことさえマザリーニは目の前の王女に説明できずにいる。
今、更に厄介なことを聞くのは勘弁してほしかったが、マザリーニは聞かずにはおれなかった。
もう一つ手を打とうとしているとはいえ、より確実な方法であるゲルマニア皇帝との縁談の話はいつでも成立できる状態にしておかねばならないのだ。
だと言うのに、ウェールズ王子の名を上げた時のアンリエッタの表情とマザリーニの耳に届いてくる情報は、アンリエッタが…これから一回り以上年の離れた男に嫁ぐ娘が、報われぬ恋をしていると確信を持つには十分だった。
だがアンリエッタはマザリーニに憂い顔のまま微笑んで首を横にふった。
「ありませんわ」
「そのお言葉、信じますぞ」
「私は王女です。嘘はつきません」
マザリーニは胸を詰まらせるような哀れさにため息が漏れるのを必死で堪えた。
二人の乗る馬車は、トリスティン魔法学院へと緩やかに向かっていた。
そこでは、マザリーニが打とうとしているもう一つの手が、一人の男が二人を待っていることになっている。
エンリコ・プッチ枢機卿。マザリーニの元に届いている情報から浮かびあがるのは奇妙さだった。
エンリコ・プッチ。
ロマリアに現れてからたった数ヶ月でプッチは枢機卿になり、教皇を始めとした高位の聖職者達から厚い信頼を得ている男。
肥え太った聖職者達の溜め込んでいた富を、彼ら自身から差し出させる程の人物だと言うのだ。
ロマリアで生まれ育ったマザリーニにはそれが普通なら、あり得ない話だということがよくわかる。
豪奢な教会で宝飾を身につけて清貧を説き、貧者達に仕事や寝床ではなく食べ残しや一切れのパンを与えるゲス野郎共、思い出すだけで頭に血が上っていくのをマザリーニは忘れた振りをすることで抑えた。
勿論教皇が連れて来る以前何をしていたか全く不明となっているプッチの事を、マザリーニは出来る限り調べてはいた。
しかしプッチなどと言う家名はついに見つけることはできなかった。
それに肌が黒い、という点にもマザリーニは引っ掛かりを覚えている…
学院の生徒になっているミス・ツェルプストーも黒い肌をしているらしいが彼女の家系などを辿ってもプッチには辿り着かなかった。
だがそれでも、いや…だからこそ、マザリーニはプッチ枢機卿と会わなければならなかった。
例えエルフや悪魔と契約したかのような得体の知れぬ者だとしても…今のトリスティンにはその力が必要なのだ。
プッチ枢機卿はガリア王ジョゼフとも親交があり、影響力を持つという。
つまりマザリーニとしてはあわよくばガリアと同盟を結び乗り切りたいのだった。
ガリアとの同盟さえ成れば、可愛いいアンリエッタを親族を非道な手で蹴落としてきた40台の男なんぞにくれてやる必要もないのだ。
だがプッチ枢機卿は、今トリスティン魔法学院での会談を希望し、最初はオールドオスマンだとか長い歴史を誇る学院にでも興味があるのかと思われたが、ゲルマニア貴族のネアポリス伯爵と毎晩のように会談しているという。
オスマン相手にも会談は一度だけだったというのにだ。
市場や貴族に影響を与え過ぎるネアポリス伯爵のことをマザリーニが危惧していることに気づいたとは考えたくないが…マザリーニは最悪少しネアポリス伯爵に配慮してやることを考えていた。
「姫さま、先程から何を見ておられるのです?」
「…ファッション誌よ。ドレスを仕立てた後に仕立て屋がくれたの」
せっかく作ってくれたのですからこれくらいいいでしょう、とアンリエッタが見せた薄っぺらな本を見てマザリーニは口をへの字に曲げた。
その製作者は、件のネアポリス伯爵の手の者だったためマザリーニもその内容は知っていた。
軽口だろう、多分…冗談半分に『レビテーションが出来なければフライを唱えればいいじゃない』なんて言っていたとかなんとか書かれていたのを思い出すと眉を寄せざる終えない。
フォローするように幼い頃お友達を抱えてフライで飛んだ時のお話しだそうですとか少なくなったスペースに書き加えられていたことも思い出して…もっと、更にうんざりした。
アンリエッタは少し照れた表情で彼女のドレスや、他のファッションリーダーとされる女性などのことが書かれた雑誌をパラパラとめくりながら言う。
「まだ通の方達の間だけで名前も決まってないんですって、私に因んでアンアンとつけても良いか?なんて聞いてきたわ」
『…ダメだ、コイツ早く何とかしないと』
マザリーニは窓のカーテンをずらして外を見る。
そこに腹心の部下の姿を認め、声をかけた。
だが忠実に任務をこなすトリスティン貴族の鑑のような男に何か気晴らしになるものを探して来いと命令するのも酷く気が引け、マザリーニは何も言わずにカーテンを閉めた。
それが逆に気を引いたらしく、羽帽子に長い口ひげが凛々しい精悍な顔立ちの若い貴族は跨っているグリフォンを馬車へと寄らせた。
胸にグリフォンを模った刺繍が施された黒いマントを羽織る男は、選りすぐりの貴族を集め結成されるトリスティンに三つある魔法衛士隊の一つ、その中でもマザリーニの覚えがよいグリフォン隊隊長だった。
「?…お呼びでございますか、閣下」
「…ワルド君、殿下のご機嫌がうるわしゅうない。何か気晴らしになるものを見つけてきてくれないかね?」
支援支援ぅ〜
仕方なくマザリーニが下した命令に、ワルド子爵は街道を見つめ、杖を一振りした。
つむじ風が舞い上がり、街道に咲いた花を摘んでワルド子爵の元へと届けられる。
その花を枢機卿へと手渡そうとするワルド子爵へ、マザリーニは口ひげを捻りながら呟いた。
「隊長、御手ずから殿下が受け取ってくださるそうだ」
「光栄でございます」
一礼し、馬車の反対側に回ったワルド子爵の前で窓が開き、アンリエッタの手が差し出され花が手渡された。
花が馬車の中へと帰依、今度は左手が差し出されるのを子爵は感動した面持ちで見つめた。
王女の手へと、ワルドは口付ける。
物憂い声でアンリエッタはワルドに問うた。
「お名前は?」
「殿下をお守りする魔法衛士隊、グリフォン隊隊長。ワルド子爵でございます」
恭しく頭を下げる子爵。
「あなたは貴族の鑑のように、立派でございますわね」
「殿下の卑しき僕に過ぎませぬ」
「最近はそのような物言いをする貴族も減りました。祖父が生きていた頃は…ああ、あの偉大なるフィリップ三世の治下には貴族は押しなべてそのような態度を示したものですわ」
「悲しい時代になったものです。殿下」
受け答えを返すワルド子爵も遠い時代に思いを馳せているらしいと、マザリーニはそのやり取りを見て逆の窓から外を眺めた。
「貴方の忠誠には、期待してもよろしいのでしょうか? もし、私が困った時には…」
「そのような際には、戦の最中であろうが、何においても駆けつける所存にございます」
アンリエッタが頷くのを感じ、ワルド子爵は再び馬車から離れていった。
「あの貴族は、使えるのですか?」
「ワルド子爵。二つ名は『閃光』かの者に匹敵する使い手は『白の国』、アルビオンにもそうそうおりますまい」
マザリーニは酷く空虚な思いでそれに答えた。
王女が耳に聞こえの良い言葉ばかり言う宮廷貴族たちにうんざりしているような事も、マザリーニの耳には入っている。
おべっかを使う貴族達と今のアンリエッタの言葉に、近いものを感じたからだった。
*
「おい凄い情報を手に入れたぞ!」
朝食を終え、授業までの短い時間を食堂で過ごすギーシュのもとにマリコルヌが興奮した様子でやってきた。
最近新しく平民の使い魔なんてものを召喚し、ハードボイルドを気取っているらしいマリコルヌの様子に、ギーシュは深い理解を示した。
単に久しぶりに自分に話しかけてきたことがちょっぴり嬉しかっただけかもしれないが。
何故ならギーシュも興奮していたからだ。
ある情報筋から聞いたのだが、今日アンリエッタ王女が学院を訪問なさるらしい…アンリエッタ王女、先王陛下の残した一粒種である方のことを思うだけでギーシュの胸には熱い何かがこみ上げていた。
トリスティンに咲く一輪の華…ッ!
未だモンモランシーの事は諦めがつかないなどいろいろと頭を悩ませる事はあるものの…いやだからこそ、興奮せずに入られなかった。
「わかってるさ。王女殿下がこられるって「違うッ、いいかい?」
マリコルヌは暑苦しい顔をギーシュに寄せる。
げんなりした顔でギーシュはその分顔を退いた。
「ネアポリス伯爵って知ってるか?」
「勿論、平民達がやるような事を手広くやってるっていう変人だろ?」
ついでにいえばモンモランシーともう仲がいいらしい、などとはギーシュは言えなかったが目には憎しみに近い光があった。
「馬鹿野郎ッ!」だがその説明に、マリコルヌは怒りも顕にギーシュを殴り倒した。
「テェッ…なに「あ、ありのまま僕が聞いた話をするぞ。ネアポリス伯爵は、おっぱいを生み出す事が出来る、らしいいよ?
な、何を言ってるかわからないと思うが僕にもわけがわからない。マジックマッシュルームとか妄想とかそんなちゃちなもんじゃ「…いきなり何言い出すかと思えば。それなら僕にもできるさ」
くだらない情報に惑わされたマリコルヌに大きくため息をつき、ギーシュは立ち上がった。
優雅な動作で杖である造花を取り出したギーシュは驚愕に打ち震えるマリコルヌを見る。
「なんだって!?」
「見ていてくれ。ワルキューレ!」
ギーシュは造花の杖から花びらを一枚とり、それをゴーレムにする。
そして、「錬金!」ギーシュの渾身の叫びがッワルキューレの胸を柔らかくするッ!
得意気に鼻を膨らませて仰け反るギーシュとワルキューレに、周りの生徒達が興味を示したらしい。
他の生徒からの視線が絡み付いてくるのを感じながら、マリコルヌがおそるおそるワルキューレの胸に触れてみる。
青銅の胸は確かに少し柔らかくなっていた。
「今はまだその程度だがいつか本物と同じにしてみせる。疑似肉を錬金するメイジがいると聞いて思いついたんだ」
「ギーシュ、君って時々天才だな」
マリコルヌは素直に称賛しながらワルキューレの胸を触り続ける。ギーシュは得意げだ。
だが、そこは食堂…集まりかけた周囲の女性の目は冷ややかだった。そこに、近頃頭が曇りきった一人の男が通りかかった。
「ミスタコルベール!?」
「何…君、これはミスタグラモンが?」
眠そうにしていたミスタコルベールはワルキューレの胸を見て顔色を変えた。
オールド・オスマンに辞表を提出した頃から、(オールド・オスマンの頼みを聞いてもう少しだけ教師は続けるらしいが)ふさふさになり始めた髪に、ギーシュ達も顔色を変える。
生徒達の視線を真っ向から受け止め、オールバックにした長髪を惜しげもなく靡かせるミスタ・コルベールはその洗練されつくした観察眼を…通称『スカウター』と呼ばれる域となった眼力を発揮する。
「はい」
「惜しい…ミスタグラモン。発想は素晴らしい」
その只者ではない眼を見て、表情を無駄に引き締めたギーシュに、コルベールは残念そうに首を振った。
「今まで幾多の土のメイジが錬金は女性へのプレゼントを作るためにあるのではないと言ってたどり着いた答えに、既にたどり着いたのはね。だが甘いな、まず原料がよくない」
「原料?」ショックを受けながらもギーシュは尋ねた。
ミスタ・コルベールの真剣な表情には、真に迫ったものがあった。
自分では上出来と考えるそれを見る漢の意見、聞き捨てならないものがあるとギーシュは考えていた。
いつになく真剣な生徒に、ミスタ・コルベールも快く教えを説く。
一部の人間にのみ見える後光を背負いながら、コルベールは言う。
「私なら、おっぱいプリンを使う」
朝から食堂に衝撃が走った。
天才が現れたwww
「おっぱいプリン…!けして安くはない砂糖をふんだんに使って作られ、かつては陛下も愛されたが、かのカリーヌ・デジレによって弾圧された、あの!」
「苛烈な弾圧はプリンのレシピまでが焼き尽くされ、おかげで今のトリスティンからプリンが失われた原因だという、あの!」
歴史の闇に葬られたはずの存在を知る将来有望な生徒に、コルベールは重々しく頷いた。
「あの料理は、言わば貴族とメイジの併せ業。厨房のある男はまだ作りだせるはず…だが、気を付けたまえ。その道はメイジの半分を敵に回しながらもどんなスクウェアもたどり着いていない修羅の道だ」
困難な道にあえて挑む若者への忠告を、ギーシュは深く受け止め頷いた。
「おっぱいを作り出すには正に神の如き業が必要なのだ」
マリコルヌがそこに口を挟む。
周囲から漢達の熱い視線と女性達の冷たい視線を注がれながら…
「その話なんだけど…、いいか? 僕が手に入れた情報によると、ネアポリス伯は凄い技術を持っていて、豊胸手術を行うことができるらしいんだ」
ギーシュとコルベールはマリコルヌを真剣な表情でみる。
二人の視線は、マリコルヌの言葉を信じきれずにいるようだった。
できれば信じたいッ!という気持はありありと浮かんでいたが。
「それは、マジな話なのか?」
「ああ、マジだ。恐ろしい話だが、彼の連れている女性、見たことがあるだろう?」
マリコルヌの目が一瞬何かを思い出すような遠くを見る色を見せ、鼻のしたが伸びた。
それに続き、ギーシュの鼻の下が伸びる。
既にトリスティン紳士の一人であるコルベールは無論そんな無作法な真似はしなかった。
「あれか…!? まさか、あれが?」
「あぁ。僕は常々思っていたよ。あんなものが自然にありうるのか?とね」
真剣な問いに、ギーシュもくだらないと鼻で笑うことはできなかった。
舞踏会の夜を思い出す。見事な仕立てのドレスに包まれ、ダンスにあわせて揺れたあの物体…ギーシュは、真顔で喉を鳴らした。
「あるなら、僕は始祖の意思を感じるな」
その意見にコルベールも頷いた。
「私もそう思う。少なくとも人類の半分は神の実在を疑わないでしょうな…だが、あれが人の手によるものだとするなら…」
「あり得ないッ」
コルベールの言葉を、マリコルヌが間髪を要れずに否定した。
「だがあったならッそいつは人間を超えていると思う。僕明日から改宗してネアポリス教を作るよ」
「僕も入れてくれ」
「いや私に任せたまえ」
バカなことを真剣に語る三人へ声をかける者がいた。
その者は本当はそのまま横を通り過ぎて日当たりの良いテラスへと向かうつもりだったのだが、余りにも馬鹿馬鹿しくて思わず声を欠けてしまった。
「お前ら…人が黙って聞いてりゃあ言いたい放題言ってるな」
「「カメナレフッ」」
マリコルヌの使い魔を連れた件のネアポリス伯の亀の登場に食堂が沸いた。皆、聞き耳はしっかりたてていたのだ。
カメナレフと呼ばれるのにもいい加減慣れっこになりつつあるポルナレフはため息をつき、宣言する。
「一言だけ言っておく。あれは人工じゃねぇ、100%天然だ…!」
「「ナナナナンダテッ!?」」
食堂が驚愕に震える。始祖の存在を、見えざる始祖の御手を…マリコルヌは信じずにはいられず、思わず目から涙が溢れた。
「僕、今始祖の存在を感じたよ。始祖ブリミルに100万回祈りを捧げてくるよ」
( ゚∀゚)o彡°おっぱい!おっぱい!
「いや待て、それは最もだが、先に確かめなければならないことがあるのではないかね?」
教会に走りだそうとするマリコルヌを、鬼気迫る表情のコルベールが止めた。
同じ漢…心のどこかで通じるものがあったのか、マリコルヌは心に浮かんだ思い付きを確かめるように師に尋ねた。
「それはまさか、ネアポリス伯がおっぱい伯がどうかということですか?」
「そういうことだ。カメナレフ…君は知らないか? ネアポリス伯がおっぱいを生み出せると言う噂について」
「勿論知ってる。それはデマだ「「なんだ…デ「だが奴は生み出せるだろうな。そういう力を持ってる」
「マジかよ師匠」
「マジだ」
ポルナレフの一言に、食堂が、いや学院が一瞬揺れたようだった。
「じゃ、じゃあ…か、彼は自分で生み出せるのにGod's miracleも手に入れた、そういうことなのかい?」
ギーシュは崩れ落ちるように膝をつく。
ポルナレフの亀を挟み、サイトも同じように膝を突いた。
「なんという差だ…」
「おっぱい格差が既に存在するのか…」
「お前ら本当におっぱい好きだな。それは違うぞ」
呆れ半分感心半分といった口調でポルナレフが言う。
その否定はただの擁護にしか聞こえず、ギーシュは怒りを胸に秘めて顔を上げた。
「しかし…」
「ネアポリスが作ることができるおっぱいは天然だが、ある意味ではコピー。そのモチーフは一体どこから来ていると思う? 奴の想像だけで神に迫れるのか?」
ハッとして、ギーシュは立ち上がる。
絶望に身を焦がし、膝を突いていたマンモーニとはもう違う。
トリスティン紳士への一歩を踏み出した覚悟を秘めた目をしていた。
「!…解ってきた。僕にもわかってきたぞカメナレフッ! つまり君はこういいたいわけだね? ネアポリス伯は神が生み出した彼女のおっぱいをオリジナルとして見て生み出している、と」
「そうだ…グッ!?」
亀の中でマチルダに蹴られながらも、ポルナレフは威厳を保ち正解者へ声をかける。
マチルダの冷たい視線、背中を蹴る足は徐々に強くなっていたが、今止めるわけにはいかなかった。
「芸術家達が観察から黄金の比率を自ずと見出したように、ジョナサンも深い観察から黄金の比率や質感などを得ているはずだ。つまりそれは…「黄金のおっぱい、ということか」
「「黄金のおっぱい…誰だっ!?」」
こいつら馬鹿だ支援wwwww
熱を帯びた声で食堂中の男達は呟き、テラスを見る。そこにはつばの広い帽子、仮面に髭面。
長い髪と、トリスティンの最精鋭であることを示す衛士隊の服を身に纏った男が立っていた。黒いマントにはグリフォンの刺繍…魔法衛士隊隊長ワルド子爵の遍在と、見るものが見ればわかったであろう。
だがポルナレフはそれはとは関係なく、どこかで…そうマチルダを助ける時とかに見たような気がした。
だがそんなことは今はどうでもいいので無視して叫んだ。
「何者だ!」
「そんなことより今は重要な話があるだろう」
男は当然のように話の輪に入って行く。
そう、そんなことよりも、紳士達には重要な用件があったのだ。
この食堂の人類の半数は敵に回そうとしているが、彼らは構わなかった。
「そ、そうだ。ということは何故女性を連れて、他の女性とも親しくしようとしているんだ!?」
マリコルヌが血を吐くように叫んだ。
僕にも一人分けろッ!という幻聴がしたような気がするが、男は無視してそれに対して答を返す。
「彼はファッションを生み出す存在となっていることを思い出すんだ。彼は深い観察の末に、本能的に気付いたんだよ。巨乳には愛がある。微乳には夢がある、とね」
「では彼は今後更に他の黄金比も求めて行くと?」
「僕なら当然そうする。皆もそうだろう」
後輩へ暖かい目を向けて男は同意を求めた。
「でしょうな」
コルベールが真っ先に反応し、皆が頷く。
男は偉ぶった態度で頷き、遠い目をして呟いた。
その容姿、態度、何より実力にコルベールは男が誰であるか気付いた。
「私の見たところ。彼のスカウターはかなりのものだ」
「閃光と呼ばれる君が言うなら確かだろうな」
コルベールの賞賛の篭った相槌に『閃光』は照れたような表情を見せた。
子供のような純粋さがその表情にはあった。
「やめてくれ。親しい友達はジャンと呼ぶ。ジャン・ジャックだ」
「奇遇だな。私もジャンだ。ジャン・コルベール」
「本当に奇遇だな。私もだ。ジャン・P・ポルナレフと言う」
閃光…ジャンは驚いたが、すぐに嬉しそうに笑い、握手するために手を差し出した。
「なんと!趣味があい名前も同じくする友がいきなり二人も現れるとは!」
「運命を感じますな」
「漢は引かれあうというわけか」
馬鹿ジャン支援wwwwww
ジャン馬鹿トリオwww
これはw
笑いあう三人のジャンを、ポルナレフが向かう予定だったテラスでテファ達と食後のお茶をいただいていたジョルノは、なんとなく目に入ったので見ていた。
別にちょっと視線を動かしたら目に入ったんで見ていたというだけだった。
ポルナレフを待っていたのだが、いい加減紅茶だって冷めてしまう…今では待つ必要も余り感じないし。
あの中に参加しようとしたラルカスが横で既に昏倒していたが、ジョルノはラルカスなんていません。と言う風な態度でお茶を飲んでいた。
既にブレーキが壊れてしまったらしいコルベールが、サイトの耳を掴み引っ張っていくシエスタに凄く爽やかな笑顔でワインを注文する。
隣で長女のエレオノールとその婚約者バーガンディ伯爵の事でジョルノに相談していたはずが、いつのまにか『閃光』とか言うらしいジャン・ジャックを剣呑な目で見ていたカリンが席を立ったが、全く引き止める気にならなかった。
カリンは、テファの胸を睨みつけていたルイズに声をかけて、食堂の中へと入っていく。
「だが兄弟、私はその話には先があるのではないかと思うのだが、どう思う?」
「先だと? 野郎、案外ヘタ…いや紳士的にガン見もしてないように思えるが…」
今更になって少しフォローするような事を言うポルナレフをジャン・ジャックが鼻で笑った。
「兄弟よ。本当にコルベール兄貴の言いたい事がわからないのか?」
「ど、どういうことだ?」
「つまりこういうことだよ。深い観察から生まれたものには、概ねリアリティもついてくる…つまりだ。次の段階というものがあるんだよ」
まだ彼らの中での正解にたどり着かない同志に向かって、二人は自然声を合わせた。
「「味も見ておこ」」
二人の意識はそこで刈り取られ、体は強大無比な風の一撃を受けて壁にめり込んだ。
一人は遍在のはずだが、壁にはめり込んでも消滅しない絶妙な力加減がされているらしい。
ジョルノは一撃で二人を倒し、騒がしくなっていた食堂を静まり返らせたカリンがこの次何をするかなんとなく予想が付いたが、いい加減飽きて視線を反らした。
「ジョナサン、今のお話ってどこまでが本当なの?」
だが、そちらではカトレアがジョルノを覗き込んでいて、ジョルノは少し身を引いた。
隣で恥ずかしがるテファに一瞥を送りながらカトレアが尋ねる。
「手術はできなくもありませんが、他は知りませんね」
「あらあら、ジョナサンは女性の胸はお嫌いなの?」
朗らかに笑い、悪戯っぽい表情で少し胸を強調してみせるカトレアにジョルノは眉を寄せた。
逃げるように紅茶のカップを置いて、仕事の手紙を書き始める。
「カトレア嬢。ジョナサンが困っているではありませんか。ここは私に免じてこれまでということにしてもらえませんか?」
「失礼しました。閣下」
カトレアを静止したプッチ枢機卿は、人の良さそうな笑顔で礼を言う。
初めて出会った日からこの肌も服も黒い枢機卿は、積極的にジョルノと関わろうとしていた。
とても興味深い話を聞いた、とジョルノは言っていたが…何か考えがあるらしく、二人でよく話し合っている。
カトレアやテファさえ、その場にはまだ同席することは許されない。
今日、ポルナレフに紹介する予定だったのだが、ポルナレフは今カリンのハンマーで食堂を一周しているので今回は見送りになりそうだった。
だがジョルノの態度から、多分敵ではないのだろうなと、テファ達は判断していた。
「嫌いではありませんが。自重できなくなるほど好きでもありません」
そんな中、ジョルノはペンを止めて一言だけカトレアに返すと、今度は上下にシェイクされ始めたポルナレフを見てプッチ枢機卿に尋ねた。
ジョルノwwwwこんな話題でも爽やかwwww
「プッチ枢機卿」
「プッチでいい、なんだね。ジョジョ」
ジョジョと呼ばれ、微かに眉を顰めながらジョルノは確かめるように言う。
プッチにジョジョと呼ばれるのが、何か隠しているらしい胡散臭さの漂う口調が酷く気に障った。
そんな呼ばれ方をしたのは初めてのような気もしたが、多分気のせいだ。
ジョルノの学生時代のあだ名はジョジョのはずだから。
「僕の父親を殺した者達の一人は、ジャン・P・ポルナレフでしたね?」
ジョルノの質問に、テファ達が息を呑んだ。
プッチ枢機卿は浮かべていた笑みを消し、憎しみを込めて吐き捨てる。
「その通りだ。ジャン・P・ポルナレフは君の父であり我が友であるDIOを裏切り、殺害に加担した。誓って嘘は無い」
もう一度、今度は回転しながら他の二人の"ジャン”と共に食堂の外に放り出されるポルナレフを一瞥して、ジョルノはイザベラへの手紙を書き上げる。
それを封して、ペットショップに渡すジョルノの表情には何も浮かんでいなかった。
To Be Continued...
以上…投下したッ!
アルビオン編一話、この話だけはもう結構前に突然思いついていたという…というか本当に避難所じゃなくていいのかなと。
それと
>>722 さんしたらばというのは避難所のまとめwikiスレのことであってるんでしょうか?
少しまとめの方直してみたんですが、削除の仕方がまだわからないので少しかかりそうです…OTL
うおおおおおおお投下乙!
ギャグからシリアスに一気に転換したなぁw
GJ!!
最後の温度差がスゲー…
ジョル「彼のような変態に殺されるとは…僕の父はきっと彼以上の変態だったんでしょうね」
プッチ「それについては否定しない。出来ない。出来るはずがない。」
関係ないけれどDIOがジョジョに負けたのは
ハートの数が足りなかったからだと思い続けている俺。
おっぱい子爵wwww
おっぱい祭りかと思ったら…
これは続きが気になるぜ!
この世界でもおっぱい子爵はいるのかよ
まあ、神父は嘘も言ってないが事実もいってないよな。
ポルは肉の芽植えられるわ妹殺されてるわと理由はバッチリだし。
まージョルノは父親に関してはどうにも思っていないだろうけど、神父の目的が気になるぜ。
あとジャントリオ自重www
そしてジョルノ、一応女性に興味はあったんだな…
>妹殺されてるわ
殺したのはJ・ガイルだぜ
じょるぽるさん投下乙そしてGJでした
前々から、ジャン多いよなあと思ってたので
こういう話が見られて楽しかったです
おっぱい談義自重www
プッチめ、物は言いようだな……
悪いのは変態吸血鬼です
悪いのは変態吸血鬼です
大事のことなので二回言いました
なんというカオスwww展開の予想がつかないwwwGJとしか言いようが無いww
>>756 ジョルノ は そんな短絡的じゃないはずだから大丈夫だよきっと。
758 :
味見 ◆0ndrMkaedE :2008/06/14(土) 10:35:36 ID:ec7gdhI5
じょるぽるさんgj!
プッチ怖っ!
ところで、実は昨日ちょこっとだけ避難所に投下しました。
暇なら見てください。
宣伝うざ?ごめんね、母さんごめんね。
スルーされるのは自分的にこたえるの。
スマン、上げちまった。
何から何まで……
そもそもジョルノにとっての本当の父親(=DIO様)の重要性なんて
子供の頃助けてくれたギャングに比べたら屁みたいなもんだろうしなあ。
ポルナレフに対してだってボスの一件で世話になった以上、相当程度の信頼はあるはず。
ポッと出の得体の知れない神父の戯言なんぞに、そう簡単に心動かされる男じゃないだろ。
>>755 確かに殺した奴は別だが犯人知ってて利用してるからってことで一つ。
厳密にDIOが犯人知ってるかは不明だが、描写的に考えて絶対知ってるはずだし。
…しかしこのワルドはこんなキャラしながらレコンキスタに所属してるのか?
>>747 削除は管理人にしかできない
ここか避難所のwikiスレでどこを削除してほしいか書いておけばいいかと
まあ管理人さんが見てなければ意味ないけど…
>サイトの耳を掴み引っ張っていくシエスタ
やはりいつの間にやらそういう仲になっていたのかw
というかシエスタのおっぱいだってなかなかのものじゃないか! 何が不満なんだ才人!?
あとカレンさんも自分のおっぱいの事を気にしてたのねw
エレオノールが結婚できないのは、世の中におっぱいしか見ない馬鹿者が多いからだと
思っているというのもあるかもしれんがwww
480kb超えてるので次スレを立てますがかまいませんねッ!
カレン?
「カ」 トレア
エ 「レ」 オノール
カリ 「ン」
の悪魔合体ですね。わかります^^
間違えたぁぁ!!
これはカレンデバイスの呪いに違いない orz
768 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/14(土) 13:35:35 ID:3kTYNwJg
カレンデバイス…?
ああ、あの脳味噌か
なんというジャントリオ……
左右のおっぱいが生み出すおっぱいの歯車的小宇宙ッ!
GJ(オサッ)!GJ(オサッ)!GJ(オサッ)!
こっちは埋めるべきじゃないか?
>>771 ,ノ^ヽ、 _... -――――- ..__
r'゙ニ=-`ヽ>rィ´/_〃_∠__/ ,. ‐''" _´"ニ=- .._
,.、_ ̄⌒ Y´ ,. ‐''"´ ̄´~"'''''‐ニ_ー<´ _ - ‐`丶、
辷-三{}ニ/ _ -‐ ニ..,,_‐- `,>`'<_ニ,,二,,_―_\
` ̄r┴_'゙ _/ / /´ ´"'' -ニ__\
、__ _厂r‐''" ,.ニ、= ...__ _= / `ヽ.ヽ
ー「7''" ̄/ ヽ ̄´´""''''ー、f _,/ ', j}
_ニ|/'-、/ ー-、 ヽーー---/´ {ー-===._-、 ,. V
7堰@ヽ (乙入 ヽ_,..r''′ ヽ._ \ヽ、 / |
__(/、 一ヘ く 、⊥エェ_,_ヽ. `く´ ノ |
ニイ、)ー-、/〉 {/ /´ >,`‐゚‐' Y,`-イ ′ ノ|
{ ミ:ー_人_,/〕ヽ / '゙ _^ニ=、′!、 / j
∨厂 ,/ } | ´"/´´¨ !ヽ,∠ニ=ァ'
ノ,/ /′ l | i{ 「ージヌー
/ :! U ! ヾ ',゙`'/`
{ U | ,. ''" V
,l ! | /´ >
/ ト、 { `ーニ ̄_ ィ´
、 / l \ ー=_:::ニニ,二,⌒ン
\ /! \ 、``ー-ニィ/
\ 〈 ヽ. \ `ー- 、.ノ 『
>>765乙した』と『埋めた』
\ } `丶、 \ / なら使ってもいいッ!
\,,ノ `>、ヽ、 _/
,r''__\_ /ヽ ` ̄ ̄
//(9}/::ヽ /::::::ヽ.._... --┐
/,.イ,ニY〃::::::::〉ーく:::::::::/ {
/ ヒ:シ//ヽ_/::::::::::::::Y´ `、
埋め
埋め立て
な…なんだ!? これは……「住人」が…!! 『スレ』を…
……何かわからんが埋まれッ!
,..、
,rニ二ゝ、
/ l l、 ,、
| 、 ト. ヽ ,. /
| | ハ. |/ '
ヽ/、_,...{、,イヨ´
>‐--ャド.〈
j__,.ノ´ lイ|
,.ィ ,r',ハ ヽ Y
| レ'/、 〉 | |
ヽヽ:;;;::;} l | ,! ,,;::;
`゙l;::;;:).| ,! ,' __;r:;;:,.,::.:
. ヾ::;:l| / /゙;;::`;:;;::..::;:
. {:;;:l/ /''::;:,:::;;;'':.::,:;
゙~/ {
L三、
500なら、停滞作品多数再開。
、 /|
.、\ / | ,:-ー'こン ̄ ̄ ̄""''ー-、
.゙、 Υ | _,:-ー''7 ∠''"ニミ"''ミ v''"
..ヽ " ./ /_,,;" └-、ヾ'" : : : :
..` 遅 信 ま ./ r" こヽヽ : : :
れ じ さ く | 丶 __| |__ _,, : : : :
て ら か \ |-ァ `/',-.メ>.1 :/''''=
た れ /</ ,;; ヽ_'彡爪.| | | (,,/
は な ゙、\|;;;;;;;''' _______|.|_〉 ゝ_"''"; :
ず い ゙、ミー、- , _,:ニこー≡ニこ、-─-,〉〉三ノェ
7 .だ ッ V,、ヽミ_ヽソf'彡K"''''.-.,_.','. - .,_;;; : : : :
ッ !! |^/./ハ、_;;/ /レ'ヽ_"'ミェ.、, ::::ミ''ァ、__"'''.,-、
''"1 !! |ミ| | { 以'/ レ~| ヘ~弋iiゥ.,ミ;, :::::_/彡ノ,,ン'";
〃| /\ K.| |レ//'"';, "'ー"',ュ;亥'~χ'_,ナァ/;
,.'"| / X \| ノ_レ'_メ';;;; ;,, ''''ラ''"" __|"::::二/,
、 レ" ./ 、 , ≪>/入ヽ; '" ̄"''┬-,,ニ彡/
..ヽ、/ .;Χ / /;.:::'"ヽヽ :. l, i '::::"了/
../ \;;;;;;;/ |/ ./ヽ;:'' ヽヽ ー- ,, ゙ヽ=-'"ー''フ彡/;;;;
' ,,, ;;;;>;;;、 / \.'|;;;;,, ヽヽ .こ、"'丶_,~-'' /;;;;;/;;;;;;;
、 ,,Λ''.| ,\//;;;;;;,, ヽヽ "''''ー.''/┌l .ハン/
X./ | ト",|\| '''';;;;;;,, ヽ;;,,,,,,, _/;、、|レ/ 〈;;;;;;;
ヽ;;;/ .|-.|;;;;;;|λ\ /┌;;;,,,,,....,,;;;;;;;_,,,-'',,/;;'ヽ 、//:::::::
V |__|,,,:-ー7 \ .| '''>;;;;;;:::::''','ノ;;;;;;;: ::/ヽ;;;;;;;;;;;;
、 彼 人、ヽ、"''ー-< ,,;; ヽ/ ;;;;;;;;;;∠ヽ ___;/、;
..> は < 入ヽ::::;;,,,、 "-イ_,,,-'''"''ー-=ミ_Ξ=-<;
< ッ >"|ヽヽ:::::::::;;;;,,、 \ヽ 二ミ=-、 ミ 、ヽ
/ ! < ..レヽヽ:::::::::::;;;;,,,,,、 \└-、 ミヽ 、
"7 _ヽ ルヽヽ::::::::::;;;;;;;;;;,,,、 ;;\ヽヽ \ ';
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/ / | | ヽ|;;;;;:::;;;;;::::::::| ヽ;::::::::;;;;;;;;;;;;;;, :::::;;;: \, ,;,
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,. -‐ニァ''¨´ ̄ ̄¨゙丶、
_.. --‐==<ヽ /ニ --‐‐ \
, '´,.ィ'´ 二ニ ミ`'´ \
/ / / li V V ',
/ / / A l l V. ', ', \ i
,' / ./ / / ノ l ', V ヽ ヽ ヽ `ヽ l
. i / / / ,.ィ / ヽ V ヽ \ \\ \!
l. ,' / ./ // / J \ ヾ\. ヽ \`ヽ 'i、
. レ ,' ,' ´ . //_,,..ィZク¨゙''ー-xヽ \ \ \ ', i l
. i. i ,' / ヾ-'"ィニ、= ..__,. l\ ヽ `ー-=、ヾ !..l
Vi i / =キゥ ''゙fフカ¨フ' .:V ト、 \ ヽリ i l
\ l ハ.i._ヒノ 宀冖´ ....:::::::', l .ノi\ ヽ l l i
ヽ!i、 i / 、 . : ::::::::::::i リ /ノ i-、._ ハ. l .l l
ll ', i.、ァ-‐ 、! . .:::::::::::::::レ /-‐'" ノ ヽ l l .! !
乂i ハ i )vソ :::::::::::://i-‐''ヘ リ ! l リ
,Xーヽ,ニ、.、 ::::::/イ::::/::::::::::::ヽ / .l ,' /
. f└‐`オ ::::'"´::::::::::::::::::::::::::::::V/ヽ ,.イ/
. , >‐''¨´ ..:::::::::::::_;.:::::::::::::::::::::::::i .l /l
,.イ. ! . .:::_;;.:ィ''´::::::::::::::::::::::::::::;リ .l/ 人
_,,< `┬==¨`丶、::::::::`ト、:::::::::::_.ノ ノ /ヽ`゙ー
_,,<:::丶、 U ', l i l iハ::::::::\` ¨´ / ./ \
r::´ニニ、::::::::::::\ Vi V .! l ::V::::::::::゙.ー--‐":| // \
ムフ¨゙ \::::::::::::ヽ丶、 ', i l l.l iリ.:::::';:::::::::::::::::::::/ /:::::::::::>
/ ヽ:::::::::::::ハ V リ / .::::::::i:::::::::::::::∠.ィ'"::::::/:::::::::
l u \::::::::::', U. l/ //::::゙丶、:::::::::::::::::::::::::/::/:::::::::::::::
、__.. 、....、__、_
,、-=、 / `ミ、_zェヘ‐-.、
ト‐'_/,.へ\‐'< iヽ_ ¨\=ト、
ivニ, /、¨ヽ'_ミニi ` ゙ーヘ.}_ ハ_,.
_L..ノ /_//\i ./ ヾカヮ}
マニ! L¨!.iニ〈 i-‐ =、、 l lll
Y リコ/´ノ/ ̄ _,.ィッォミヽ!リ ツ!
l/ ハ ヽ¨ト、. `゙ ┴'ヲ /ィ-‐ヘ
{ しク !十ヘ. '" it:ヲテ‐´
\ ヽL⊥ ! ,ィ i `i
_/¨/ i`l ll i ´ヽソ /
< ヽ l. t‐r=lト、 -- 、_ 、 /
,ノ-、 V \-┼.j ,.、‐- ュ ./
/ ', ヽ \-' r ァ/¨/v'
,. イ::::', V 、 \___ 丶- コL7rノ
一 '" ヽ- ' V \ ヽ \ / ̄\
 ̄ ¨゙丶、 ', \ ', `¨二//
r ‐ 、 ヽ.V ヽ! __ i´/
v.:‐〈 ( ,. 、V / /:::::ヽi i人
{:::::::} f:::::::',', ノ '、::::::リ ',/ヽ
ロ / /::━-ヽ "| /::━-ヽ;;;;;;;;;; / ┌; ┌; ☆ _ノ 食 あ ジ
サ | L_ i::━━- i┴!::━━- );;;;;;;;/.☆ | |_ .| | ☆ ) .べ こ い ャ
ン ス /;; ヽ::━- ノ'─ヽ:━- ノ '、;;〈 ;-‐! '、__,,.ノ:ノ''ー- ::、_ ☆ヽ て ん つ イ
. ド .ト /─'--:: ./.,,,,_l_,,,... ゞ-──/::L_ `ー‐''" ,,、,--ュ ';;ヽ、 i ん .な 毎 ロ
イ ビ l |;|┌--‐フ ┌----、、 |::ヾ;r''‐ヽ, ,、ィ'r-‐''''''‐ヽ ';;;;;;く の の 日 !!
ッ | i |l ~~__´ 、 ``'__''''┘ |:::;;l rO:、; ´ ィ○ヽ 'i;;;;;厶, か
チ フ l _|. <,,O,> 〉 <,,O,,> .|:::;| `'''"/ `'''''"´ !;;;;;;;;ヽ !!
だ ._ゝ'|. / 、 |:::,' / 、 |;;;;;;;;;;;;;レ、⌒Y⌒ヽ
! 「 | | ( ) lソl ,:' _ ヽ .|;;;;;;;//-'ノ
ヽヽ | `゙ ゙´ ;:/ ', ゞ,' '"'` '" i;;;;;i, `' /
⌒レ'⌒ヽ厂 ̄ `| __ ;'/ ' ', i、-----.、 !:;/ i`'''l
人_,、ノL_,iノ! ', :i゙''''''''''`l' `_人__人ノ_ヽ ヾ゙゙゙゙ニニ'\ " ,:' ト、,
卵 オ ス / .◇ L __」 「 止 よ L_ ヽ〈 i| Vi゙、
入も ニ ゴ{. ◇ U、、、 ' ノ ま だ 了゙, ,ヽ===-'゙ ,' , // ヽ
っ オ イ ヽ. ハ ) ら れ | . ',.' ,  ̄ , ' ノ /./ ヽ,
て ン ぞ > /|ヽ ヽ、___,,,,、 'く ん が > ヽ.  ̄´ / ,、 ' / / \
る と ! / ノ. | ヽ フ / ノ:lゝt-,-‐''" / ,.ィ゙ /
_,. -‐'ヘ
,. イ´.:.:.:.:.:.:.∧
, イ´.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:∧
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〈.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヘ __,,, .-─ニマ
\.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:> _ジ:.:.:./
\.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:_ ,. - <∠ ).:.:.:/.、 ・・・・・・
ヽ.:.:.:.:.:_,. -f__</)〉>ゞmjm)_丿 ・・・・・・
>< m/ィェぇし' トヶッ |jmヾj) なあ・・・ゲホッ
_, ィ´ fjmjmjし 、_) !jmメィ'
∠二ニ(mjmCん ,-ー、 l| ̄`ー-、. 今・・・ギャグ
__((_(mjmト,ベ 、 |!`´i{ i!Y´ _ } 考えた・・・
/´ `ー´ /`ヽ人 i ヾ=ツ, / | /´_ `ヽ
/ / i 丶、 ` ̄ / /, / \ 丿
| /´ ( \ヽ ゝ ̄、二´ l / ,- _l 批評してくれる?
l l \ー、\ _}l (()) |/ | 〈 (_ _〉 この「氷」を使った
ゝ 丶___/  ̄´\_〕ヘ工/ゝヾ-_Y,:ヽ 新作ギャグだ
/`ー‐'.:c,:'.:.、,:'.:.c:.,:'.:.、:.:.:./}:.:,./'}:.:.{ _ _];:;:;:〉
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〃_ツ`;_ノr、 `ヾ、;;;;;;;;;,::-‐''´ ` '´ゞミミヽ !i
ノ、_ィ、´ r、\_>  ̄ 、`ブー-'-、 !i
//ヽ_ゝr r、\_> 、_r、Y ヾ 、_ヽ !i
/´/ :::::/ヾ\__> , ヽ ` 、 \
/,,:'' ;バ \__ __ , '/j `ヽ、::....::; -一\
,ィベ、 / ゞ、´/ ̄,.-‐-、`ー- __,ノ'´~ _ノ _,>'´  ̄`ヾ \
/ レ;;゙ー/ r'Z,,;;-''´;;;;;;;;;__\ ) 、/_,ノ´ ヽ`ヽ _,,ノ 〉
/ "''''/ ,〈;;;;;;;;;;;;;;;;;;/_, `ヾユ≦≡<´ ...::::} |::. _/
ノ {;;;;;;;;;;;;;;;;// _, `ヽ } ....::::::::::'ノ-一'´
/;;;ハ/_ノ }-、\ i /,..‐-ニ二{、_ヽ,}、 ヽ
/;;{ / ,ノ;;;;;;;;゙;;Y'' {_,イ;;;;;;;;:::::::::゙ゝ、_ }丿 〉
i/},ツ''ぐ≡='''ノ 、ミミ≡=::::: ..::{ ヽ };;|
,{ /_,.ィ'´ "´ /'::: ` 、:::::: ..:: `rゞバ;!
ノ/ ,ノ {/ i:: ゝ_ヽ,}
r'´}'-一ノ: `、_,::"´ ,.':: ,ィ{ ヽ}
r'}/_,.ィ'i::::: r〜、::;--、:::.... ....:::: 'リメ、_ハ
,r'/ ノ、、ニ二二;;:.ヾ r彡'"´__ `ヾ、ゞ:: ヽ`ヾ;;;゙i
ノ{/-一イ ヾ`ー゙‐'"≧/ ミミ::.-、tー-'、_, ヽ::..ノ::`r-、ヽノ;;;;;}
,イノ´...:::;イ´ ¨ / 、` ` `ー-'-'> ::::::::{´ ヽヾ;;;!
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| : の. ・ ! |. : よ ヽ
| : 世. ・ | |. : う. |
| : 界」・ | |. : こ |
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` ――-へ| ) /
ヽ、 / // ̄ ̄ ̄ ̄
゙i '! li,/X -t=、 メ、 /'′
,イ /},! l,ノ} / ,!=ェ、ヽ'i, ,}l!
/'i′ __,,ィシノ/"イツ /三ニ,フ l}=ァ',イ_, ィ
ll |zテ三う'´ム彡',ィイュニ=' ≦=-<__l /´
,ィ!l |ィ彡'"zニ'"ニ-‐f:Zニ==ニ"´ ̄フブ
. ,イ/ リl,,ノ{/-三r_,三ニ=、y‐、-ミヾミ三ア
/ '′ノ,!ニィ"チシ/;f'r-一'ニ''゙:: ー゙"''"´!ノ
/ /ノ/彡ノィ'/:::ヒ,zィ哉、: ,; ,ッ | /`ァ=‐t、
ノ / ,:' ,r''/イ;;;/...::'´;ェ゙f^´::. 丶_'"_:-ム / __ `'"⌒ ヽ
彳イ /f,ノ,ノ^フ:.:: 、 ノブ,ィニ^ゞ、 / くニ、 ヽ
,ケ ゝiァ〃;;し'{' :.:.:..... i´,i゙,イム=‐'´,)  ̄`丶ミミ、, ヽ
t,_,ィZ/i;l fイy'゙r'シ" ::::::. l, ヾ'´ィ::r''。"・ヽ 〉:.:lヾ;;t ヽ
ハ;f´ , `':.゙'^ ヽ 丶. ゙ーt_nッ'ヽ ,:イ:.:,j:.:.:.ヽ 丶
{ ヾニに 丶 ゝ ,, :: 、) /:.:,ッ'':.:.:..:.:.゙i, 、
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