【書き手の方々ヘ】
・作品投下時はコテトリ推奨。トリップは「名前#任意の文字列」で付きます。
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【読み手の方々ヘ】
・リアルタイム投下に遭遇したら、支援レスで援護しよう。
・投下直後以外の感想は感想・雑談スレ、もしくはまとめwikiのweb拍手へどうぞ。
・気に入らない作品・職人はスルーしよう。そのためのNG機能です。
・度を過ぎた展開予測・要望レスは控えましょう。
・過度の本編叩きはご法度なの。口で言って分からない人は悪魔らしいやり方で分かってもらうの。
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議論が起こった際には必ず誘導があり、意見がまとまったらその旨の告知があるので、
皆さま是非ご参加ください。
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・盗作ではないかと証拠もなく無責任に疑う発言は、盗作と同じく罪深い行為です。
追及する際は必ず該当部分を併記して、誰もが納得する発言を心掛けてください。
【警告】
盗作を筆頭とする種々の問題行動により、
「スーパーロボット大戦X ◆ByQOpSwBoI」「StS+ライダー ◆W2/fRICvcs」
「リリカルスクライド ◆etxgK549B2」「はぴねす!」
は完全追放処分がスレの総意で確定しています。レス返しなど、決して相手をしてはいけません!
>>3 テンプレ更新御疲れ様です。
そしてスレ立て乙!
>>1乙!!かれさまです。
さーて、おらあ、暗い話でも書くぞー。
乙!
乙でぃす。
>>1乙です。
質問なんですが。
今、ZOIDOS(無印)とのクロス長編を考えていますが、これは需要あるのでしょうか?
なにぶんクロス元がマイナー(私見)ですので・・・。
また、自分はZOIDSは無印しか見ていないので、フューザーズやジェネシスの世界観を全く理解していません。
それでも宜しければ、今週中にも投下させていただきたいと考えております。
やりたいと思ったのなら需要があるないは関係ない。
礼節を弁え、テンプレに羅列されているような卑怯な行為さえしなければ概ね問題なし。
あと反応があるかどうかは自身の努力次第。
NG推奨コテ 「一尉」
バトルストーリーは(ry
オレなんて…音速ハリネズミとのクロス考えてるんだぞ…
電波だなぁ…orz
そこでスマブラXですよ。やったことないけど
>>14 それなら某所で有りましたが2・3話で更新止まってましたよ
先駆者がいますから電波じゃないですよ。
自信持って
評価はちゃんとするがテンプレと礼節を弁える事
全て自分で書いた文章であるという事が絶対条件。
マジでかッ!?
気になる!読みてぇえええ!
>>10 ゾイドってマイナーか?なんだかんだでアニメは4作もあったし、マイナーってほどじゃないとおもうけど・・・。
スマブラXの世界の住民って、本当に少ししか喋っていないのかゲームの都合的な意味でほぼ台詞無しなのかどっちなんだろ
スレチだけど、たしか…あえて喋らないようにしてるらしいよ
お久し振りです
45分辺りから、R-TYPE Λの第10話を投下しても宜しいでしょうか
勿論!
>>22 その言葉を待っていたッ!
全力で支援させてもらいます
>>22 R-TYPE SUPECIALで支援する!
カモンカモンカモンカモンカモーーン!!
(ホラー映画で何かから逃げる時に限って車のエンジンがなかなか掛からないシチュエーションの人の真似)
>>10 無印はアニメも漫画も大好きだ。是非やってくれい。
それでは投下します
『第14区、地下街の崩落が始まっている! 全体の陥没も時間の問題だ!』
『こちら第8区・・・生存者、発見できず。隣接地区の捜索に移る』
『循環システムが止まっている・・・! こちら855、特救はまだなのか!? このままじゃ中の民間人が窒息するぞ!』
飛び交う無数の念話は、そのいずれもが最悪の状況を告げるものばかりであった。
第4廃棄都市区画及び、クラナガン西部区画に於ける戦闘の終結より6時間。
地震の被害は元より、大型機動兵器と管理局部隊、そして不明機体群の交戦により壊滅的な打撃を受けた西部区画。
漸く展開した救助隊の目に飛び込んだ光景は、数時間前まで高度文明都市として機能していたとは到底思えない、破壊され尽くしたビル群と瓦礫の山だった。
道路は膨大な量のコンクリート片と鉄塊に埋め尽くされ、嘗ては壮麗な姿を誇っていたガラス張りのビルは軒並み崩壊、ハイウェイが延々と横倒しになり数千台の車両を圧壊、ライフラインは完全に破壊され最低限の電力の供給すら行われてはいない。
地下街の全体が崩落し、破裂した水道管から噴き出す水と逆流した汚水が混じり合って瓦礫の隙間を流れ、何処からか降り注ぐ灰が周囲を白く染める。
電源の確保が困難である以上、夜の闇に沈む筈の都市はしかし、赤々と周囲を照らし出す光によって最低限の視界を確保されていた。
都市の4割以上の区画を呑み込んだ、紅蓮の炎。
鎮まるどころか徐々に勢力を増しつつあるそれは、瓦礫の下にて救助を待っているであろう、数多の命を燃料として更に燃え上がる。
そして、何より。
『・・・特別救助隊202より、報告。大型機動兵器通過跡より400mの範囲内に生命反応なし。避難所も含め・・・全滅だ』
都市区画を貫く、一条の線。
地表を抉り、ビルを薙ぎ倒し、全てを粉砕しながら刻まれた、想像を絶する破壊の爪跡。
地上はおろか、地下に存在する全ての施設をも破壊し尽くしたそれは、巨大な鋼鉄の獣が地上を駆け抜けた跡だった。
年の西端より東へと数km、更に北へと数km。
時に歪み、捻れ、のたうつその線は、このミッドチルダという世界そのものに牙を突き立てた、異形の質量兵器によるもの。
生命の尊厳を踏み躙る、忌むべき思想の下に築かれし歪な存在によって刻まれた、蹂躙の傷跡。
その終着点に鎮座する、巨大な鉄塊。
機能停止から6時間が経過した今なお、それは至る箇所から炎と黒煙を噴き上げ、闇夜の空を赤黒く染め上げていた。
『急げ、崩れるぞ!』
『ナカジマ、まだか!? 押し潰されるぞ!』
『くそ、始まった! 退避しろ! 総員退避だ!』
都市の一画、崩れ掛けたショッピングモールの地下階へと続く外部アクセスポイントから、複数の管理局局員が慌しく姿を現す。
彼等は皆、一様に白いバリアジャケットを纏っていた。
湾岸特別救助隊。
ミッドチルダ南部の港湾地区に活動拠点を置く彼等は、被害の甚大さから急遽このクラナガン西部区画へと派遣されたのだ。
救助活動のスペシャリストたる特別救助隊、その中でも精鋭中の精鋭と言われる湾岸特別救助隊。
しかしその彼等を以ってしても、この巨大な墓標の群れと化した廃墟の中で発見されるのは、原形を留めない亡骸の山と「人であったもの」の破片ばかりであった。
否、欠片でも残っていればまだ幸運なもの。
多くは既に瓦礫の山と業火に呑み込まれ、コンクリート礫の合間から滲み出す大量の赤い液体か、上空に蔓延する黒煙の一部となっているのだから。
『こちらナカジマ、脱出します!』
『こっちもだ! ノーヴェ、出るぞ!』
決然とした声の念話と共に、アクセスポイントから2本の光の道が宙へと伸びる。
黄色の光を放つ道と、青い光を放つ道。
其々の上を目にも留まらぬ高速で駆けつつ、弾丸の様に地下から飛び出す2つの影。
直後、轟音と共にアクセスポイントから粉塵が噴き出し、200mほど離れた位置に建つショッピングモール全体が崩壊した。
背後からの衝撃を受け、光の道から放り出される2つの影。
それらは腕の内へと抱え込んだ小さな存在を庇うかの様に肩口から地表へと叩き付けられ、十数mを転がった後に漸く動きを止める。
赤い髪の少女と、青い髪の少女。
ほぼ同時に身を起こした彼女達の腕の中には其々、全身を赤く染め上げた幼い少年と少女の姿があった。
「移送を! 早く!」
青髪の少女、スバル・ナカジマの声が上がるより早く、医療班が2人の腕から子供達を受け取り担架へと乗せる。
移送される2人の姿を見送った後、スバルは駆け寄った同僚へと状況報告を始めた。
「・・・生存者はあの子達、2人だけ。母親だと思われる女性が崩落した天井に下半身を挟まれてたけど、もう息が無かった。避難所は・・・」
「・・・崩落、していたのね?」
「・・・うん」
項垂れ、力無く呟くスバル。
その肩をひとつ叩き、同僚の女性はその場を後にした。
ふと、スバルは自身の隣を見る。
其処には赤髪の少女、ナンバーズが1人、ノーヴェが地へと座り込んでいた。
その目には何時もの勝気な色は無く、ただ呆然とした様子のみが見て取れる。
「・・・大丈夫?」
スバルが、声を掛けた。
返事は無い。
再度、声を掛けようとした時、ノーヴェが掠れた声を漏らす。
「なあ」
「・・・何?」
「・・・あの子供・・・助かるよな?」
感情の削げ落ちた、無機的な声。
その問いに、スバルは答える事ができなかった。
少年を抱えていたノーヴェのスーツは夥しい量の血に染まり、スバルのバリアジャケットもまた、少女の血液によって赤く染め上げられている。
改めて自身の状態を振り返り、スバルの背中を冷たいものが走った。
手が震え、膝が笑い、全身が命を失ったかの様に冷たくなってゆくのを感じる。
初めてだった。
特別救助隊に所属してから、初めて要救助者の死と向き合った。
短い間ながら、湾岸特別救助隊にてスバルが出動した現場では、未だに死者が発生した件はなかったのだ。
沖合いでの客船沈没、ハイウェイでの大規模車両事故、コンビナート火災。
いずれの事故に於いても厳しい状況下に曝されながら、今までに学んだ知識と経験、そして仲間達との信頼と連携でそれらを乗り越えてきた。
1人の、たった1人の死者すら出さずにだ。
覚悟はしていたつもりだった。
いずれはその現実と向き合う事になるだろうと、彼女なりに理解してはいたのだ。
全ての現場に於いて、全ての命を救う。
その理想に反した現実へと立ち向かう事となる、その覚悟は確かに胸の内に存在していたのだ。
光学チェーンを使った攻撃と防御は楽しい支援
だが。
今、彼女の前に立ちはだかる現実は、その覚悟をすら嘲笑うかの様に過酷であり、残酷で、非情だった。
休日を謳歌していたであろう家族連れ、逢瀬を楽しんでいたであろう恋人たち、ただ日常を歩んでいたであろう数万・数十万の人々。
それらが一様に、無慈悲なまでに平等に命を奪われたという、信じ難い事実。
生存者救助の為に赴いたというのに、発見されるのは命無き骸のみ。
漸く救い出す事のできた小さな命の灯も、今まさに潰えようとしている。
否が応にも理解せざるを得なかった、余りにも非情な事実。
出血が激し過ぎた。
あの子供達は、もう。
「・・・ノーヴェ」
「何で・・・なんでぇ・・・」
血に濡れた腕を抱く様にして、掠れた声を漏らし続けるノーヴェ。
更生プログラムを受けていた彼女とその姉妹達、戦闘機人「ナンバーズ」の少女達は、急遽としてこのクラナガン西部区域へと投入された。
プログラムの経過が良好であった事、救助隊への所属に向け幾許かの知識を得ていた事、そして何より被害の甚大さと決定的な人員の不足から、迅速に彼女達の動員に関する特例が下ったのである。
そして、彼女らを良く知るスバルが、自身の能力に似たインヒューレントスキルを保有するノーヴェを伴い、崩壊間近となったショッピングモール地下への侵入を敢行したのだ。
その結果が、避難所の崩落確認と、生存者である子供2人の保護。
しかし、ノーヴェが初めて救ったその小さな命は、今この瞬間にも掻き消えんとしている。
それは、漸く新たな生き方を模索し始めた少女にとって、余りにも残酷な出来事。
スバルにとってもまた、要救助者の死という冷酷な現実を叩き付けられた切っ掛けが、齢10歳にも満たない少女であるという事実は余りに重い。
これが事故、もしくは天災だというのなら。
残酷な現実に苦悩しながらも、彼女らは決意も新たに先へと進む事ができただろう。
しかし今、この惨劇を造り出したのは不幸な事故でも、抗い様の無い天災でもない。
何処とも知れぬ時空の狭間より彷徨い出た、空舞う次元航行機の群れと人型兵器の軍勢、そして鋼鉄の巨獣。
次元世界より廃絶されるべき質量兵器によって武装した、ならず者共による無慈悲な蹂躙。
怨んだ。
無作法な客人共を怨んだ。
敵視し、軽蔑し、憎悪した。
2年前、目前で姉を傷付けられた時に抱いたそれさえ上回る、余りにも強烈で暗い感情。
スカリエッティでさえ避けた、市街地及び民間人に対する無差別攻撃の実行。
如何なる背景があろうと、彼等は決して越えてはならぬ一線を越えたのだ。
報いを、悪鬼の如きこの所業に対する報いを、己の内に燻る黒い炎もそのままに、然るべき「敵」へと叩き付けてやりたい。
それこそがスバルの、そして今この地へと展開する局員達の、その全てに共通する感情であった。
しかし、その相手は既に沈黙し、今は物言わぬ鋼鉄の屍と化している。
迎撃に当たった無数の陸戦魔導師、そして嘗ての上司達を含む空戦魔導師達、更には戦闘初期に於いて管理局部隊と敵対していた不明機体群。
彼等の猛攻により、突撃と砲撃によるクラナガン西部区画及び管理局地上本部への直接攻撃、そして人為的に引き起こされた地震によりミッドチルダ全域に対し多大なる被害を齎しつつも、狂える鋼鉄の巨獣はその身を炎の中へと沈めたのだ。
その実情を鑑みれば、報復は為されたと看做す事もできるだろう。
少なくとも、敵主力兵器を撃破した事は、敵勢力に対し非常に大きな打撃を与えたと判断できた筈である。
クラナガンの空を埋め尽くす程の次元航行艦の群れが。
そして、アルカンシェルの一斉射によって消滅した筈の「ゆりかご」さえ現れなければ。
「何で・・・今更・・・!」
小さく吐き捨てるノーヴェ。
その言葉を耳にしつつ、スバルもまた暴走する思考を抑える事に難儀していた。
次元世界史上最大最悪の質量兵器とさえ呼ばれた戦艦。
2年前、ジェイル・スカリエッティの手により復活し、聖王のコピーである少女を核として起動した、古代ベルカ王族の力を象徴する戦船。
6隻のXV級次元航行艦からのアルカンシェルによる一斉射を受け、空間歪曲に呑み込まれて消し飛んだ筈のロストロギア。
ノーヴェ達、ナンバーズの受けた衝撃は如何ほどのものだったであろう。
今なお償わんとしている罪の象徴が、消え去った筈の狂気の産物が、再びその姿を現し、無数の生命を無差別に奪わんとした。
局員によって撮影された映像に浮かび上がる濃紺青の艦体は、宛ら過去より這い出た亡霊、自ら達を冥府へと誘う亡者の腕にも等しく、彼女達の脳裏へと投影された事だろう。
過去を忘れる事はできない、決して逃れる事は叶わないと、怨嗟の声を撒き散らす冥界よりの船。
妄執と狂気により蘇りし「翼」は、彼女達が闇を振り払い未来へと歩もうとする意思を、絶望的な力とその威容によって打ち砕かんとする。
今にも古代ベルカの民の嘲笑が、スバルの脳裏へと聴こえてくる様だ。
聖王の名を騙り、「ゆりかご」を利用せんとしたスカリエッティと、その背後の時空管理局最高評議会。
「ゆりかご」を墜とし、旧暦より続く憂いを掃ったと歓喜する、新暦を生きる管理世界の住人達。
その全てを嘲笑う古代ベルカとミッドチルダの民、旧暦の戦場を駆けた全ての存在、冥府より上がる彼等の嘲笑が。
お前達如きに、真に「ゆりかご」を支配する事などできるものか。
本当の戦場を、質量兵器の跋扈する地獄を知らぬ者達に、聖王の「翼」たる戦船を墜とす事などできるものか。
幾度の戦場を、地獄を、極限の状況を。
その悉くを潜り抜けてきた戦士の群れを相手に、僅かなりとも抵抗できる余地が存在すると、本当にそう信じていたのか?
『こちらセイン・・・避難所に人型兵器の残骸が突っ込んでる。生存者は・・・居ない』
自身の思考に薄ら寒いものを覚えるスバルの意識に、ナンバーズが1人、セインからの念話が飛び込む。
傍らのノーヴェも同じくそれを受け取ったのか、漸く顔を上げて彼方を見やった。
しかしその目には、何時もの様に苛烈な意思の光は無い。
だが、続くセインからの念話を通じて放たれた声に、2人の表情が瞬時に引き締められる。
『ちょっと待って・・・人型兵器の背中が開いてる。多分、コックピットだと・・・ッ!?』
『セイン?』
『どうしたの? セイン、ねぇ!?』
微かな、しかし確かに発せられた、息を呑む音。
セインの身に、何かが起こったのか。
スバルとノーヴェのみならず、念話を受信した全ての局員達の間に緊張が走る。
『どうした!』
『セイン、何があったの!?』
他の地点で救助活動に当たっていたナンバーズからも、セインへの念話が飛ぶ。
其処にスバルの同僚、そして上司の声までもが加わり始めた頃、漸くセインからの応答があった。
『・・・こちら、セイン。人型兵器のパイロットを確認・・・』
バイドとの戦いに希望はないのか…支援
その言葉が発せられるや否や、スバルとノーヴェの思考が戦闘に際したものへと変貌する。
周囲では複数の局員がデバイスを起動、セインの現位置を確認すべくウィンドウを開いていた。
人型兵器のパイロット。
実際に交戦した部隊からの報告では、不明機体群とは違い彼等は終始敵対状態にあったという。
そして彼等が、都市に対し無差別攻撃を仕掛けた事も、映像を交え明確に伝達されていた。
ならば、そのパイロットが敵対的行為に出る可能性は容易に想像がつく。
誰もが非道な敵へと己が力を向ける事を考え、地を駆けようとした、その時。
『パイロットは・・・もう、死んでる』
続くセインの言葉に、多分の安堵と僅かな落胆がスバルの胸中を満たす。
しかし。
『何で・・・何で・・・』
更に続いて紡がれたセインの言葉に、誰もが凍り付いた。
『この死体・・・「干乾びて」るの・・・?』
スバル達の背後から、特別救助隊員の声が上がる。
不明機の墜落地点を調査していたギンガ・ナカジマとウェンディ。
彼女達から緊急の報告が飛び込んだのは、セインの発言とほぼ同時だった。
* * *
『上層階に4人、機体左右に2人ずつ! 非殺傷設定だ、間違えるな!』
『ギン姉、準備できたッス!』
『こっちも良いわ。こちらナカジマ、位置に付きました!』
『229、展開完了。何時でも良いぞ!』
炎上する大型機動兵器より1kmの地点。
崩壊寸前となったビルの残骸、その抉れた壁面の中腹。
ギンガとウェンディ、そして陸士部隊の計14人は、瓦礫に埋もれる深紅の機体を前に各々の得物を構えていた。
満身創痍、機体の右側面が完全に吹き飛び、未だ僅かに炎を燻らせる不明機体。
陸士部隊の証言が正しければ、あの大型機動兵器に止めを刺した機体。
ヴィータ三等空尉と共に鋼鉄の巨獣へと挑み、ガジェットの突撃から彼女とリィンフォースU空曹長、そして高町一等空尉の3名を庇い、遂には撃墜された近接戦闘特化機体。
話だけならば、間違いなく英雄と呼べる存在であろう。
都市を襲う脅威を打倒し、JS事件収束の立役者である者達をその身を以って救った存在。
誰もがその功績を讃え、口々に賞賛の言葉を述べたであろう。
その英雄が戦闘の火蓋を切った勢力の所属であり、管理世界に於いて禁じられし質量兵器によって武装した存在でなければ。
『ナカジマ陸曹、どうぞ』
『了解』
陸士部隊からの念話を受け、不明機体の正面に位置したギンガが声を上げた。
その両足には彼女のデバイスであるブリッツキャリバー、そして左腕にはリボルバーナックルが装着されている。
管理局部隊に加勢したとはいえ、パイロットが敵対的行動を選択する可能性も残っているのだ。
そして何より、一方的な攻撃を仕掛けてきた存在に対する不審と敵意、質量兵器に対する拒絶が、ギンガを含む局員達の胸中に根付いている。
武装もせずに接近など到底、許容できる筈もなかった。
「こちらは時空管理局です。直ちに機体を降り、投降しなさい。貴方は既に包囲されています」
『こちらディエチ、配置に付きました。何時でも撃てます』
『チンクだ。上層階に到達、奴の上に居る』
『こちら229、注意しろ。パイロットは武装している可能性が高い』
不明機体へと投降を促すギンガ。
キャノピーの損傷の度合いから、パイロットは生存している可能性が高い。
何より先程、確かに機体が再起動を試みたのだ。
パイロットが生存しているのならば、身柄を拘束し情報を引き出さねばならない。
「繰り返します、直ちに投降しなさい。貴方は首都上空に於ける・・・」
『ナカジマ陸曹、キャノピーが!』
再度の呼び掛けは、ディエチからの警告によって遮られた。
咄嗟に拳を構えれば、左右の瓦礫の陰に位置したオットーとディードの姿が目に入る。
いずれ、他のナンバーズ達やスバルも駆け付けるだろう。
何も問題は無い、筈だ。
ゆっくりと、罅割れたキャノピーが開放されてゆく。
緊張に固唾を呑む一同の目前で、傾いた機体のコックピット、2m程の高さから人影が現れた。
全身を濃灰色のスーツに包み、同じく濃灰色のヘルメットと漆黒のバイザー、重厚なマスクを身に着けた人物。
スーツは宇宙服としての機能を併せ持っているのか随分と重厚な作りであり、パイロット自身が激しく動き回る事は想定されていない様に思える。
しかし不明機パイロットは、意外にも機敏な動きでコックピットより飛び降り、細かな瓦礫の散乱する床面へと着地した。
徐に頭を上げ、周囲を見回すその右手には、黒々とした物体が握られている。
質量兵器。
局員、そしてナンバーズの間に、緊張が走る。
拳銃を2回り以上大きくした様なそれは、短機関銃と呼称される携行火器か。
恐ろしかった。
その気になれば、数秒と掛けずに命を奪う事さえ可能な、非力な存在。
魔力は感じられず、その手に握られた質量兵器も、少なくともそう簡単に魔力障壁を撃ち抜けるものとは思えない。
にも拘らず、目前の異質な存在が恐ろしかった。
これまでに対峙したどんな次元犯罪者とも異なる、管理世界の理から外れた認識と思想の下に行動し、強大な力を秘めし質量兵器を搭載した異形の機体を駆るパイロット。
まるで眉間に銃口を押し当てられている様な重圧が、全身へと圧し掛かる。
と、周囲へと視線を廻らせていたらしき不明機パイロットの首が、ある一点で止まる。
その方向には、瓦礫の陰に身を潜め、ツインブレイズを構えるディードの姿。
不明機パイロットの視界からは、完全に死角となっている筈の位置。
しかし、相手は何故かディードの存在に気付いているらしい。
その危惧は不明機パイロットが首を廻らせ、次いでオットーの潜む地点へとバイザーを向けた事で確信的なものとなった。
次に、正面に位置するギンガへと向き直り、しかし僅かに首を上へと向ける。
その方向に位置するは、遥か後方のビル屋上より不明機体を狙うディエチ。
ギンガの背筋を、冷たいものが走る。
依然として、魔力は感じられない。
サーチを行っている様子も、その術式構築すら為された痕跡は無い。
にも拘らず、目前の不明機パイロットはオットーとディードの存在を看破し、更には400m後方のディエチの存在すら察知した。
これは、一体?
ゲーッ!バイド汚染された人間!?/(^o^)\支援
戦慄するギンガ、そして周囲の魔導師とナンバーズを余所に、不明機パイロットは携行火器上部の光学サイトを弄り、次いでマガジンを外して内部の弾薬を確認。
マガジンを戻し、火器を握り締めたままだらりと両腕を下げる。
埒の明かない状況に痺れを切らし、再びギンガが投降を促そうとした、その時。
『了解した』
拡声装置を通してのくぐもった声が、周囲へと響き渡る。
唖然とする魔導師と戦闘機人達を余所に、不明機パイロットは携行火器をスーツの前面へと引っ掛けると、両の掌を宙へと向け言い放った。
『投降する』
* * *
紛う事なき「人類」の存在。
既知の如何なる技術体系とも異なるエネルギー集束・解放制御技術。
終ぞ検出される事の無かったバイド係数。
攻撃隊と都市、そして超大型異層次元航行艦を襲ったバイド汚染兵器群。
多数の未確認艦艇及び、艦隊中枢と思われる大型異層次元航行艦。
最先端技術により構築された、旧式の局地殲滅兵器。
事前情報の悉くを否定する事態の連続。
最早、艦隊とパイロット達の司令部に対する不信は頂点に達しており、状況は完全な独立作戦行動を求められるまでに追い詰められていた。
超大型異層次元航行艦の攻撃に当たった部隊は12機のR戦闘機と同数のパイロットを損失、都市攻撃隊に至っては34機もの損失を被っている。
確認されたバイドについては、無論の事ながら殲滅せねばならない。
しかし、当初の作戦目標である都市と艦艇、双方の制圧については最早遂行は困難と判断し、その旨を伝えるべく司令部への異層次元中継通信を行ったのが3時間前。
本来ならば任務の遂行を強調する司令部と、艦隊司令権限による独自判断を主張する司令との間で腹の探り合いが行われている筈なのだが、しかし艦隊旗艦クロックムッシュUの艦橋、彼の座する司令席には、不気味な沈黙が立ち込めていた。
周囲のコンソールには複数の情報が表示され、更には無数の空間ウィンドウが司令席を取り囲む。
その中の1つ、「S.O.F. Weapons depot」と表示されたウィンドウが拡大表示され、PDWにて武装した兵士達の姿が大写しとなった。
兵士の1人がウィンドウの横へと拡大表示され、同時に音声が発せられる。
『各種装備、完了しました。拘束の許可を』
奇妙な問い。
彼は微塵もうろたえる様子を見せず、冷徹に指令を下した。
「了解した、拘束を許可する」
その言葉が終わるや否や、ウィンドウ内の兵士達が数秒の内に武器庫を後にする。
同時に司令席コンソールの向こう、複数存在するオペレーター席の1つから、随時状況の変化を知らせる音声が発せられ始めた。
「目標14、周囲に直属の警護隊が展開しています。PDW・MP15による武装が4名、AR・M34による武装が同じく4名、計8名。R-9WFの周囲を巡回中。巡回ルートを表示します」
『ルートを受け取った。これより拘束に移る』
「目標からの抵抗に際し、任意での発砲を許可する。繰り返す。発砲を許可する」
『了解』
発砲許可。
自らの艦に乗る人員に対するそれを至極平然と許可し、しかしその決定に動揺する声は艦橋の何処からも発せられる事は無い。
この艦の、否、艦隊の誰もが、「彼等」の拘束に賛同しているのだ。
司令部より派遣された彼等、艦隊にとっての異邦者、パイロット達にとっての敵意と嫌悪の対象。
「TEAM R-TYPE」
切っ掛けは、都市攻撃隊が集音した不明勢力間の会話だった。
ごく近距離に位置する人物同士での、肉声による遣り取り。
無数に収集されたそれらの遣り取りの中から、有用と思われる複数の情報を得る事ができた。
時空管理局・地上本部・本局・聖王教会。
魔力・魔力素・魔法・魔導師・リンカーコア・デバイス。
陸戦魔導師・空戦魔導師・砲撃魔導師・騎士。
砲撃魔法・直射型・集束型。
ミッドチルダ・クラナガン・ベルカ・廃棄都市区画。
陸士・首都航空隊・戦技教導隊。
ゆりかご・ガジェット・ロストロギア・質量兵器。
その全てについて、理解が済んだ訳ではない。
寧ろ解らない事の方が多いのだ。
しかし、この異層次元に展開する広域高度文明が、魔法と呼ばれる空想じみた技術体系の下に成り立っているという事実は判明した。
その理論までは今のところ理解の仕様が無いが、収集したそれらの情報が意外な事実を浮き彫りにする事となったのだ。
それは、整備と新たな簡易改修を受けるR-9WF、その周辺にて交わされた担当技術者達の会話。
新たなウィンドウを開き、録音された会話を再生する。
さすが日本三名園の一つ兼六園!中の人が生きていた!支援
『・・・K-04からの流出は確認されない。ニクソンの集束機構は成功だ』
『では集束率を上げるか? 今の段階では通常の波動砲と大して変わりは無い。精々が炸裂範囲の拡大程度だ。それも他の特化型に比べれば、見るべき箇所は無いぞ』
『それでも良いが・・・データを見ただろう? 射出の瞬間、明らかに周囲の大気圧が変化した。大気だけじゃない、周囲の「魔力素」までもが、だ』
魔力素。
確かに、彼等はそう口にした。
会話は続く。
『空間への直接作用か? R-9Bの波動砲システムを流用すれば、何とかなるかもしれないな』
『サンプル「D7」のデータを見ただろう。天候操作魔法なんてのがあるんだ、できない道理は無い』
サンプルD7。
363部隊機が交戦の末に撃沈した、あの不明艦艇に刻まれていた文字。
やはり、R戦闘機開発陣は。
『G-47のユニットと出力回路を交換するのが精々だ。調整は可能か?』
『やってみせるさ。今までに無い体系の波動兵器になるぞ。安定性の確保は任せても良いんだな?』
『応急的なものだが、まあ暴走の危険性は低いだろう。だが、魔力素の存在しない空間ではどうする? 波動粒子のみの制御は想定されていないぞ』
『問題ない。「RCユニット」のストックは山ほどある。理論値通りならば、誤差を含めても14基の増設で事足りる筈だ』
『波動粒子の変換効率は? 人造とはいえ「リンカーコア」だ。無茶をすればそう長くは保たない』
『だからこその処置だ。「艦長殿」の処理能力は知ってるだろう。あれだけ派手に弄ったんだ、相応の成果は出して貰わなければ困る』
『それもそうか・・・データは採取済みなんだな? バックアップがあるならば、オリジナルに固執する必要は無いか』
『なかなかの「性能」だからな、廃棄するのは惜しいが・・・』
音声ウィンドウを閉じ、格納庫の一角を映し出す別のウィンドウを見やる。
R-9WFの周囲に群がる、14名の技術者達。
更にその周囲を巡回する、8名の警護隊員。
間違いなく彼等は、この異層次元文明を構成する技術体系の根幹に触れている。
にも拘らず、それを伝える事も無く攻撃の指令を下した司令部。
R戦闘機開発陣の下に保管されていた不明艦艇。
図った様に実施された、新型R戦闘機の実戦投入。
全ての線が、漸く繋がり始めた。
『報告。異層次元中継通信途絶状態、回復失敗。浅異層次元での妨害を受けています』
『航法より報告。太陽系・・・失礼しました。「22世紀」の太陽系への空間跳躍ゲート、消失を確認。異層次元航法推進システムを用いた航行シミュレーションについては、98.46%の確立で複合空間歪曲発生の可能性が算出されました』
同時に飛び込んだ、2つの報告。
了解した、との応答を返し、彼は静かに思考を廻らせる。
この異層次元全体が、他の異層次元より隔離された。
この現象がバイドによるものならばまだ良い。
過去に幾度となく用いられた手段であり、異層次元全体を侵食する能力がバイドに備わっている事も既に判明している。
だが、もしも。
もしも、この異層次元を隔離した存在が「地球」であったならば?
「想定外」のバイドの出現により、全てを異層次元の果てへと屠るべく実行された、次元消去作戦であるならば?
喧騒。
格納庫の一角で、押し問答が始まった。
兵士達の無感動な声と警護隊の荒々しい声、両者の遣り取りを耳にしつつ、彼は軽く司令帽を被り直す。
何を考えている。
司令部が本当に次元消去を企んでいるのならば、既に2時間は前に1000を超える次元消去弾頭が撃ち込まれている筈だ。
それ以前に、司令部による戦闘後の偵察活動が一切観測されない事態など、異常に過ぎる。
ならば、考えられる状況はひとつ。
この異層次元は、バイドによって「喰われた」のだ。
この艦隊は、この異層次元の住人達は。
今この瞬間。
ただひとつの例外なく、バイドの腹の中にあるのだ。
艦内に、警報が響き渡る。
艦隊前方、浅異層次元潜行解除による空間歪曲反応検出。
大質量物体転移、複数。
狂獣の咆哮、未だ止まず。
* * *
『B2からB41に掛けての区画は、現在立ち入りが禁止されています。武装局員待機所及び物資集積所は、現在D11区画に臨時設置されています。繰り返します。B2からB41に掛けて・・・』
ミッドチルダ及び時空管理局本局に対する、不明機体群及び不明勢力の襲撃より3日後。
なのはは本局内の病室より抜け出し、医療区の施設内を彷徨っていた。
端末を用いてヴィヴィオの無事を確かめ、心細さに泣く我が子をウィンドウ越しに慰め2時間ほど話すと、ヴィータとリィンの状態を確かめるべく彼女達の元を訪れようとするなのは。
意識を失っていた2日間、そして空が光ったあの瞬間に一体何があったのか、彼女はそれを知りたかった。
端末から情報を得ようと試みたのだが、錯綜する膨大なそれらから得られたのは、クラナガン西部区画が文字通りに崩壊した事、ゆりかごのみならず多数の古代ベルカ及びミッドチルダの次元航行艦が艦隊に存在していた事、襲撃の犠牲者は20万を超える事など。
あの瞬間に何が起こったのかについては、詳細な情報を得る事は叶わなかったのだ。
ゲートが消えたあ!?増援こられないじゃん!支援
支援!
しかし、ヴィータの所在を尋ねるべく漸くの事で中央センターへと通信を繋いだなのはは、一連の事態が信じられない程に大規模なものとなっている事実に直面した。
本局への直接攻撃。
一部区画の重大な損傷。
XV級次元航行艦、14隻喪失。
1300名を超える犠牲者。
管理局第14支局の消滅。
そして、更に。
緊急用圧縮魔力排気ダクト内にて、本局への侵入を果たした不明機体との戦闘に当たった者達。
シグナム、アギト、フェイト・T・ハラオウン、ティアナ・ランスター、ユーノ・スクライア。
内、シグナムとユーノは意識不明の重体であるという、衝撃的な事実。
未だ軋む身体を引き摺りながら、なのはは医療区を彷徨う。
ナビゲーションシステムに浮かぶ本局の簡易立体構造図は、6つのユニットの内1つが大きく抉れ、区画封鎖中の文字が点滅していた。
戦闘による区画消滅。
中央センターからの情報によれば、その地点での迎撃に当たっていた人物はフェイト・ティアナ・ユーノであったとの事。
一体何が起これば、この巨大な本局の一画が文字通り「消滅」するというのだろう。
胸中を満たす不安と焦燥に急かされる様にして辿り着いた、集中治療室の1つ。
乱れた呼吸もそのままに入室すれば、病室との区切りであるガラス壁の前に、椅子に腰掛けた金髪の人影があった。
「フェイト・・・ちゃん・・・」
「・・・なのは?」
ゆっくりと振り返る人影、フェイト。
彼女の面を目にしたなのはは、思わず息を呑んだ。
憔悴し切ったその表情。
目の下には隈が浮かび、泣き腫らしたのか目許は真っ赤になっている。
僅かだが頬は痩け、肌も荒れている様だ。
「あ・・・あ・・・」
その目に、不意に涙が浮かぶ。
微かな嗚咽を洩らしながら、フェイトは歩み寄ったなのはへと縋り付いた。
そして吐き出されるは、意図の解らない謝罪の言葉。
「ごめんなさい・・・っ」
「え・・・?」
「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・っ!」
嗚咽の合間に繰り返されるその言葉に、なのはは困惑を深めてゆく。
しかし続く言葉に、彼女の全身から血の気が引いた。
「私・・・私の所為で、ユーノが・・・っ」
本局での戦いはどうなったんだ?支援
反射的に、ユーノが横たわるベッドへと視線を移す。
生命維持装置より繋がる無数のホースと、ベッドを覆う継続治癒結界。
嘗てなのはも、身を以って体験したそれ。
しかし、決定的に違う何か。
一見しただけでも彼女を襲う違和感。
そして、漸くその原因へと認識が至った瞬間、なのはの脳裏を絶望が過ぎった。
「何、で・・・」
呟く言葉は、目前の光景を理解したくないと云わんばかりに震える。
認識を拒絶する意識は、しかし視界へと映し出されたそれを正確に捉えていた。
「何で、ユーノ君・・・」
戦慄く唇は、掠れた声を紡ぐ。
自失の声、絶望の声を。
「ユーノ君の身体・・・こんなに「小さい」の・・・?」
横たわるユーノの身体を覆う純白のシーツ。
本来ならば胴の左右、そして下方に存在する筈の膨らみ。
それが、右側面のみにしか存在しない。
腰部下方、そして左側面には、胴部より緩やかに下る、シーツの斜面があるだけだ。
即ち、右腕を除く四肢は。
「・・・不明機体の・・・兵装が、暴走した時・・・」
「フェイト、ちゃん?」
途切れ途切れの声。
それが交戦時の状況を語る、フェイトの声となのはが気付いたのは、数秒後の事だった。
「ユーノは私とティアナを連れて、中央区画に転移しようとしたんだ。でも・・・」
涙が、なのはの腕を濡らす。
言葉を紡ぎ続けるフェイトの声は、更にその震えを増した。
「あの球状兵装が、私達に向かってきた瞬間・・・一帯に空間歪曲が発生して・・・転移先の座標が・・・ずれて・・・っ」
幼子の様に、なのはの衣服を握り締めて泣き続けるフェイト。
その背を優しく撫ぜながらも、なのはは自身の震えを抑える事ができなかった。
そして遂にフェイトが、事態の凄惨な結末を口にする。
「ユーノの・・・脚と、左腕・・・っ!・・・壁の、中に・・・っ!」
支援
頬を、熱いものが伝う。
なのはは、自身が何時の間にか涙を流している事に気付いた。
「なのに・・・っ! なのにユーノ・・・私と、ティアナに・・・治癒結界を・・・っ!」
後に続くは、慟哭のみ。
なのはもまた、大切な人を襲った惨劇を前に、感情を抑える事ができなかった。
只々、声を上げて泣きじゃくる目前の幼馴染を抱き締め、自身も小さく嗚咽を洩らし始める。
管理局が誇る2人のオーバーSランク魔導師は、意識の無い幼馴染を前に只々、互いの身を掻き抱きつつ涙を流す他なかった。
時に、新暦77年10月30日、11時20分。
クラナガン西部区画にて拘束された、不明機パイロット。
八神はやて特別捜査官による尋問の開始まで4時間と迫った、本局医療区画での事だった。
(足と左腕が)壁の中に居る!? 支援
20万人死亡かよ!支援
投下終了です
支援、ありがとうございました
今回の話で、襲撃によりクラナガン一部完全崩壊、犠牲者多数、石川県民拘束となりました
地球軍は地球軍でエライ事になってます
それと、ピンときた方も居られると思いますが、R-9WFの改修はアレへの進化フラグです
淫獣が妙に活躍してるのは、作者の脇役スキーが発症した為です
バイドとの初遭遇に対する状況確認、そして本局での戦闘がどの様に終結したのかについては、後1,2話ほど使って描写する予定です
次回予告
狸、石川県民と密室でキャッキャウフフする(非性的な意味で)
GJ。なんだろう狂気が見える。ユーノ、不幸過ぎだ。
え〜、これの後はキツイけど24:00に投下したいんですが良いですか?
以前にウロスで多重クロスで質問させていただいたものです。
やっと一話が形らしきものが出来たのですが、十分後ぐらいに投下してもよろしいでしょうか?
GJっす!
クロス先が化け物なほど男陣の負傷度が高いのは気のせいだと思いたいw
次回は娘さんを僕に下さい的ご対面、と(ぉ
あ、やばい、投下ぶつかった。
電王氏が24時に投下のようなので、今日は諦めた方がよさそうですね……。
あと、テンプレの通り、コテハンはつけておいた方がいいでしょうか?
三十分ルールは守って。
四十分からにしたほうがいいですよ。
>>53 投下は前の人の30分後がマナーだから、早くとも36分からな
傷は男の勲章さ
誰かを守ってついたものならなおさらだ
改造淫獣が現れるのが楽しみだw
ウィザードリィじゃないのに かべの なかに いる 状態て
まさか絶体絶命都市のパイロットじゃ……
ないな…
GJなんという惨劇。
ユーノはクローン技術はあるがここまでだと
無理そうなのでもうサイボーグ化しかないのか
>>56 >>57 ぬ、しまった。このスレでは30分ルールでしたか。
23時40分だと厳しいので、勝手で申し訳ありませんが今回の投下は見送らせていただきます。
申し訳ありません。
あとテンプレと過去スレをもう一度読み直してみるか……
>>51 GJ!
ゲート消失ということはR戦闘機は今の艦隊にある分だけか、増援来ないと現状の艦隊戦力じゃジリ貧だ。
全101機種登場は無理そうだけど、バイド系機体の登場を期待。
さっすが接近戦用R戦闘機、頑丈、これで大分情報を得られるな。バイドの存在を知った管理局はどう動くのか?
そして絶体絶命都市なあいつの登場フラグが、また破壊をまき散らしそうな。他のR-9W系にも期待。
シグナムは衝撃波動砲IIを喰らっちまったのか?ユーノが傷ものに…フェイトそんはもう(ry
かべのなかは結構な攻撃力がある光学チェーンで巻巻されるよりはマシかなあ。
>>65 確かこれ時系列が最終ミッションラストダンスだっけ?の前だから
ラストダンサー、カーテンコール、グランドフィナーレは無いだろう。
つかグランドフィナーレはこれ進化するとバイドになるんじゃね?
的な物を感じる。
石川県民が羨ましい、俺も可愛いおにゃのこに尋問されたい。
フェイトにボンテージ姿&鞭でか・・・あるッ!!
尋問されるまでの道のりは過酷ってレベルじゃねーぞw
70 :
10:2008/04/15(火) 00:01:23 ID:q6tB1NOE
>>51 GJです。ユーノがまさか、かべの なかに いる なんて・・・
>>11>>17 ご意見ありがとうございます。
もちろんテンプレの内容は遵守いたします。
ですが万が一、ネタ被り等が見当たりましたら、ご指摘の程お願い致します。
>>18>>27 応援ありがとうございます。
かなりやる気がでました。
これからも宜しくお願い致します。
>>19 いえ、友人の中でゾイドを知っているのは自分だけだったもので、つい・・・。
>>13 バ、バトルストーリー・・・。
すいません。そちらの方も詳しくありません。
それではいきますよ。投下開始
仮面ライダーリリカル電王sts外伝第四話
「休日の過ごし方(スバル&ティアナの場合)」
「あ、ここ、ここ!ここが噂のお店」
スバルとティアナは一軒のアイスクリームショップの前に立っていた。
そこは何でも、十段アイスなどと言うアイスがあるらしく、スバル達のたっての要望でやって来たのである。
何故、スバル達と表現したか、それはモモタロスも懇願したからである。
この二人一部を覗いてほぼ同じ思考回路をしてるらしい。
つまり、
(バカが二人…)
ティアナは思いっきりため息をついた。
スバルはアイスを買うと笑顔で頬張る。十段アイスの名に恥じぬその大型のアイスを嬉しそうに食べながら歩くスバル。
『このアイスはスゲェなぁ!』
「やっぱり、この量だよねぇ」
『アイス大好きなんだぁ』
「うん!好き好き、大好きぃ〜!」
『最高だぜぇ!』
「良くも悪くも似てるわね…」
「うん?ティア、何か言った?」
「ううん、別に」
『そうかぁ?それよりもこのチョコ、おいしいんだよなぁ。スバル代われ、俺が食べる』
「しょうがないなぁ、いいよ!」
『よっしゃあ行くぜ!』
そう言ってスバルに憑依するモモタロス。
そしてチョコアイスを一口、食べようとしたその時だ。
「頂き、ウオワァッ!」
背後から近づいて来た男がMスバルにぶつかりアイスを落としてしまったのだ。
アイスは男の足元に落ちる。男はMスバルに近寄る。
「あ〜あ、服汚れちまったじゃねぇか!どうしてくれんだアマァッ!!」
「服?テメェこそ、ふざけんなぁ!」
Mスバルはそう叫び男を路地裏に投げた。男はゴミ箱をなぎ倒しながらも立ち上がりMスバルに叫びながら殴りかかる。
「テメェェェ!」
「今日の俺はムシャクシャしてんだよ!!オラァッ!」
「ガハァッ!」
殴りかかる男を素早くかわし全力の拳を腹に叩き込む。
そしてよろめく男を立たせるとそこにはMスバルの笑みが。
「俺は怒ってんだ。解ってんのか。オラオラ行くぜぇ!」
ドギャッ、バキッ、メキッ、ドゴッ、グジャッ
そんな音がMスバルの拳と共に路地裏に響き渡る。
「オラオラ、どうした!チッ!気絶してやがる」
何発もの拳をくらい気絶した男をMスバルは路地裏に乱暴に投げ捨て、ティアナの元に向かう。
しかしそこにはRティアナの姿があった。
支援
「うん、うん。分かった。じゃあね、なのはお姉ちゃん」
「おい、誰と話してたんだ?リュウ」
「なのはお姉ちゃんだよ。あと、伝言。三秒だって」
「ハァッ?」
「さ〜ん!」
「何があるんだよ、一体…」
「にぃぃ!」
『モモタロス、何か嫌な予感が…』
「やっぱ、そう思うか」
「いち、ゼロ♪」
「何が…」
ドシャアアアッ!
「ギャアアアッ!!」
Rティアナのカウントが終わると同時にMスバルの体を桜色の閃光が包んだのであった…。
〜同時刻、機動6課〜
「あの、なのはさん?」
「なぁ〜に、良太郎君?」
「さっき、何処に行ってたんですか?それに何でデバイスを起動させてるんですか?」
「うん、ちょっと急用♪」
「そう、ですか…」
恐るべし高町なのは。
この人だけは怒らせてはならない…。
ちなみにスバル達が居た地点は機動6課本部から数キロは離れていたそうな。
以上、仮面ライダーリリカル電王sts外伝第四話をお送りしました。エリオ&キャロのはまた後ほど…。
やっと、安定して執筆できそうです。
スンマセン。
某所で酉バレしてしまいました。
酉を変えたんで一応ご報告を。
それとちょっとまた盗作に関する問題がおきてしまいまして
議論が始まるかも知れないので
しばらくは避難所の議論スレを頻繁に確認して下さい。
>>77 ちょい待ち。それはコテ付とは別の時に言うべきことだよ。
だってそれじゃ「毒吐き見てるよ」と公言してるようなもんで、
「職人降臨禁止」というルールから来る、「職人としては毒吐きに関わらない」って原則に反するから。
いえ、チャットの方でも話題になっていまして。
自分はそこで把握したのですが。
スイーツ(笑)……
またまた、盗作発覚
コテ住人達で、なあなあでスルーしてたブツ
投稿作品の総チェックが必要だ。
スルーしてたのコテだけじゃないし
もう対応決まったんだからこっちへ持ち込むのやめれ
GJ!
ユーノはがんばりすぎです
次元隔壁が崩れ落ちて異相次元が乱れ飛ぶヒステリックドーンから生還できるとは
黒さとネタと倫理感の投げ捨てぶりに定評のあるチームR−TYPE
次なる作品はついに悲劇の名機ディザスターレポートですか
晴れときどき隕石ところにより竜巻と核融合励起による広範囲殲滅に注意しましょう
>>72 サンクス、やっと見つけた
テイルスと卵の『A.M.F.』…被った…orz
どうしよう、盗作だと勘違いされたら困るな…
とはいっても設定は違ってたけど
とりあえず盗作の件については、避難所で一応の結論が出ているので、よく知りたい人・議論したい人は避難所で。
避難所
ttp://jbbs.livedoor.jp/anime/6053/ >>86 原作がある以上、原作設定に準拠する部分が似るのは仕方ないと思うよ。
重要なのは、他人様の作品を一切コピペしない事、設定・ストーリー等をパクらない事。参考にする程度のことでも止めておいたほうが良いかも。
ただ原作を大事にする事は忘れずにね。独自性を強調しすぎて、原作無視じゃあ、目も当てられなくなるから。
楽しみに待ってるよ。頑張ってな。
盗作発見より執筆を優先してもらいたいのは我侭と解っている
名無しが不甲斐ないので職人が頑張ってるのも解ってる
それでも、先生、続きが読みたいです……O刀乙
>>87 ありがとう…
ああ、あとちょっと言葉足らずだったか。というわけで一部修正
あっちのテイルスと卵の『A.M.F』というアイディア…オレのと被った…orz
どうしよう…
今度はリリカルなのはTRANSFORMERSで盗作疑惑が浮上。
未だに本音スレですらどこまでが引用でどこまでが盗作かで議論してるあたり
一連の騒動を教訓にできない輩がまだ居やがる。
何だかなぁ……とりあえず、皆自分の作品に誇りを持とうぜ……
そうしたら盗作だの何だのはやらないと思うんだけどなぁ……
まあ・・・避難所でちょいと話し合うとするかね?
空気読めなくてすいませんが、R-TYPEΛ殿GJ!
ユーノ再起不能!?石川県民は何をどこまで話す!?襲撃されるRチームの運命は!?
まだまだ永く続きそうなこの作品から、目が離せません!
以上、亀レスばかりの、FINAL買い戻し野郎でした。
投下します。
第0話 軍靴の音
ジェイル・スカリエッティ事件から半年…
スバル・ナカジマは、自身が望んだレスキューチームで任務に当たっていた。
「はぁああ!!」
彼女の豪腕が、崩れかけた建物を粉砕する。
工場の突然の爆発…スバルは残った人がいると聞いてその救出に当たっていた。
自身もまた同じような火災を経験した身としては、こういった人を守ることは、かつての自分自身を助けるような、そんな気持ちもあった。
しかし、今回は火の気の無い場所であることから…放火の可能性があった。
それは、この火災の後、捜査されることだろう。
スバルは壁を壊し、火を避けながら、救出のために移動する。
「確かに…ここらへんから信号があったはず」
それはSOSと鳴らされた電話からであった。確かに人の反応もあったのだが…一体どこに。
スバルはあたりを見回す。
「…スバル・ナカジマ。姉はギンガ・ナカジマ。
元機動六課…新人でありながらスカリエッティのナンバーズに対抗、事件解決の功労者となる」
「誰だ!?」
振り返るスバル。
自分のことを調べて……まさか、自分を待っていた!?スバルはその相手を見定める。
それは黒い、耳までかかる髪の女子…服もまた黒い、どこかの学校の制服のようなものを着ている。
両手両足にはリングのようなものをつけ、高速で回転をしている。
「お前が、私をここに呼んだのか!?」
「…」
その女は何も言わず、宙を飛んで、スバルに蹴りを入れてくる。
スバルは両手でガードし、それを受け止める。
「そっちがその気なら!!」
スバルの手がうなる。
今度はスバルから相手に向かって拳を撃ちつける。
女は両腕を回るリングを前に出して、それを受け止めるが、勢いは殺せず、壁にたたきつけられる。
「…機動六課で鍛えた拳は、こんなもんじゃないよ!さぁ、おとなしく投降しな」
スバルは壁にぶつかった女を見ながら言う。
女はふらつきながら、顔を上げた。
前髪の奥に光る赤い目…に、スバルは一瞬、恐怖を覚える。
「…カグヅチ」
女はそうつぶやく。
轟音とともに、女の足元から巨大な炎の柱が立つ。
スバルは後ろに下がりながら、その巨大な炎の柱を眺めた。
炎の柱はやがて形となり、その姿を現す。
「な、なんだ…これ」
それは竜…炎の竜。
黒き炎の竜は頭に巨大な剣が突き刺さり、大きな羽を広げて、雄叫びを上げた。
スバルはその巨大な竜相手に蛇に睨まれた蛙のように動けなくなってしまっていた。
炎の竜の上に乗る女は、スバルを見下す。
「…ガグヅチ」
女はつぶやく。
炎の竜の背中から風が吹き、竜の腹部から巨大な閃光が喉にへと昇っていく。
やがて、口をあけた竜からは白い光を放つ巨大な火球が打ち出された。
建物全てを巻き込む巨大な閃光があたりを包み込んだ。
事件は、すぐに管理局にと上げられた。
だが、管理局を揺るがした事件…スカリエッティ事件からわずか半年。
この短い期間で再び管理局を揺るがしかねない事件を大々的に捜査するわけにもいかず、
管理局は内密に八神はやてを主軸とする特別部隊をつくることとなった。
これははやてが、管理局に呼びかけたものである。
メンバーは元機動六課のものが招集された。
高町なのはとフェイト・T・ハラオウン、かつて管理局最大の危機を救った二人がまず呼ばれた。
勿論、この前にははやてを守るヴィータ、シャマル、シグナム、ザフィーラの4名も揃っている。
「昨夜起こった事件なんやけど……スバルの話だと、竜と女いうてたみたいなんや」
「……スバル」
スバルは、相当の重傷を負った。
それでも彼女の体のことを考えれば、そこまで彼女を追い詰めたものが、いかほどの力を持っていたかは察しがつく。
「このことから…相手はおそらく召喚士やとおもう。それも…相当の使い手」
「…キャロのものを凌駕する力を持っていると考えたほうがいいのかな…」
キャロのことを知るフェイトが聞く。
「そやな…詳しいことはわからんから…なんともいえへんけど。
あの一体を草木も残らない場所にしてしまったんやからな…」
そう…あの場所はまるでクレーター。
なにかの爆心地のような状態となってしまっていたのだ。
「…でも、一体なんのためにスバルを…まだ、これからだったのに」
「え?いや、スバルは…」
「私は、絶対に許さない」
なのはは、拳を握りつぶやく。
「絶対に、スバルの仇をうつんだから…」
「いやぁ…だから」
「スバル……お前のことは絶対に忘れない」
シグナムが目じりをおさえる。
「だから!まだ死んでない!!」
「「まだ…」」
はやての中途半端な突っ込みにシャマルとザフィーラは大きくため息をついた。
「……スバルもむくわれねーな」
ヴィータはそんな一同を見ながらつぶやく。
黒い…黒い…闇の中、それはいた。
数人のものがそこには立っていた。
そして、その中…学校の制服を着た女が、歩いてくる。
その女は、前にいるものに話かける。
前にいるイスに座った男はニタリと白い歯を見せる。
男が微笑むと、その周りにいるほかの者達も微笑んだ。
「…諸君、研究を再開しよう…」
男は微笑んだままつぶやく。
「この世界にも与えてやろうじゃないか……戦争を。地獄のような戦争を」
以上…続く
もしや宇宙三大美女か!
魔法少女リリカルなのは Daydreamさん
色々と言いたい事はあるのですが予告から投下の時間が短すぎます。
いくら投下予約がなくともここでは予告から大体十分(三十分)空けるのがマナーですし、クロス元も書かれていません。(その上どう見ても多重クロス)
文章作法については学んでいるようですがこのスレのマナーっていうかルールを学ぶべきだと思います。
私も盗作騒ぎのころからこのスレを見出していますが大体のルールは把握している心算です。
具体的に言うと半年、いや一月ROMれ。
以上、上から目線になりますが次回からの教訓になれば。
>>102 いくら投下予約がなくともここでは予告から大体十分(三十分)空けるのがマナー
そうなの?
なんでいけないの?
>>102 初耳だな。
前の人の作品が投下されてから30分後というのならわかるが。
噛み付く訳じゃないけど、予約無くても予告から十分〜ってのは初耳だ。
当然あった方がいいのは確かだが、いつの間にか暗黙の了解になってたならごめん。
>>100 でもクロス先明記は必要なので、その辺はちゃんと書いてほしい。
普通に「5分後から投下します」とか言ってたよなぁ。
30分待つのは前の人が投下してからだな。
>>106 わざわざすみません。
多重クロスなので、話を進めていく中で作品を随時書いていきたいと思います。
今回は【舞HIME】【ヘルシング】
>>106暗黙の了解だと思ってたよ、間違ってたら昔から居た人に対してすみません
そして魔法少女リリカルなのは Daydreamさん、明らかに書き始めの人だよね?
多重クロスは完結させるのが非常に難しいよ?
終わりをどうするか考えていてプロットも練りきってあるならともかく、いまのまま書き始めたら高確率で投げることになりそうな気が
そんなのやってみなきゃわからんだろう。千里の道も一歩からだ
>>109 何故そんなに絡むかなぁ?
>魔法少女リリカルなのは Daydream
確かに、多重クロスは難しいジャンルではありますね。パワーバランスだけとっても調整は厳しいですし。
しかし、決して不可能ではない。これはちょっとしたボウケンだなっ!w
まだプロローグなので何とも言えませんが、とにかく書き続けてみることが重要だと思います。
批判も出るかもしれませんが、それを肥やしに出来れば確実に上達は出来るでしょう。
次話、期待しております。
ところで、次は誰も投下予約してませんかね?
魔法少女リリカルなのはStylishではありませんが、短編を一本投下したいのですが。
多少不安ではあるけども、出しちゃった以上是非頑張ってほしい。
今更、ここで意見を受けて設定から変えるのは無理だし、そんなのは見たくない。
しかし舞HiMEとヘルシングに更に増えるのか……次回に期待。
予約はないようなので、投下予約させていただきます。
元ネタは『世にも奇妙な物語』の『夜汽車の男』
キャストクロスで原作のストーリーとオチが分かってしまうので、原作を未見だけど今後見る予定の人が嫌な人は見ないで下さい。
40分ごろに投下します。
夜のレールウェイは閑散としていた。
くすんだ電灯。締め切った窓のせいで心なしか車内の空気も淀んでいる。
都心の交通機関に比べれば、薄汚れた印象を受ける車内だが地方の列車にはよくあることだ。
むしろ、新機種転換の予算が無く、長い間現役でい続けた古い車両には歴史と趣きすら感じる。
走り始めた車両の中、僕は禁煙車両を探す。整然と並べられた座席は空きが目立つが、今の僕には一筋の煙さえもお断りしたい。
目的の場所は程なく見つかった。
自動ドアを開き、新たな車両へ足を踏み入れると、数人の乗客が確認できる。
人が少ないのをいいことに車の玩具で遊ぶ子供と、その母親と思われる疲れた印象の中年女性。そして、人目も憚らず過度な肉体的接触を繰り返す―――まあ、要するにいちゃつくアベック。
夜行列車らしく、人は少なく、騒音もそれほど無い。僕は此処に決めた。
他の乗客と隣接せず、自分のプライベートスペースを確保出来る席を探し、僕は車両をゆっくりと練り歩いた。
不意に、背中にドンッと何かがぶつかる衝撃を受けた。
誰かに突き飛ばされたとかいう大きな衝撃ではない。もちろん、転倒するような大げさなものでもない。
しかし、不意の出来事に僕は片手に下げていた駅弁の袋を落としてしまった。
あまり良い気分ではない。
一体何事かと、眉を顰めながら振り返ると、僕は視界を下に向けることになった。
子供だ。あの玩具で遊んでいた子供が、僕の背後でその玩具を抱え、呆けたように僕を見上げている。
どうやら、遊びに夢中で僕にぶつかってしまったらしい。
さすがに、こんな子供に対して不機嫌を露わにするわけにはいかない。
僕と子供はしばし見つめ合い、やがて子供の方が母親の元へ駆け足で去っていった。
謝罪は無く、母親も疲れたように子供に対して叱るだけで僕の方を見ようともしない。
不快感は無い。一般の親子など、こんなものだ。
そう思うと同時に、改めて僕は親代わりとなっている少女の純粋善良さを認識した。あの子は良い子だ。
弁当の包みを拾い上げ、僕は程なく奥の座席へ腰を降ろした。
全体的に分析すれば、既存の乗客の配置は車両の前に偏っている。出入り口に遠すぎず、近すぎず。連結部分から入り込む隙間風も無い。窓から見える夜景は綺麗だ。
腰を下ろし、一息つくとようやく落ち着くことが出来た。
これで、もう誰にも邪魔はされない。
僕の名前はユーノ=スクライア。
時空管理局本局<無限書庫>の司書長を勤めている。
結構なエリートと言えばエリートなのだが、実働部隊からの依頼で資料提出など、実質やっている事は雑用に近い。ただ、それが高度な技術と知識を要するだけだ。
普段ならば無限書庫へ缶詰になることの多い仕事だが、僕の所属はそこだけではない。
僕自身の部族が遺跡の発掘と研究を行っている為か、ミッドチルダ考古学士会などにも広く知られ、その道のプロとして鑑定などの仕事も依頼される。
今回は、その類の依頼による出張で地方まで出ていたのだ。
都心こそ発達しているが、広大なミッドチルダの地方にはやはり文明遅滞の波が影響している。いろいろと不便もある仕事だ。
しかし、僕はこういった出張の仕事が意外と好きだった。
どんな形であれ外に出られることは嬉しい。
本は好きだが、その名のとおり無限の規模を誇る書庫での資料探索は一週間以上に及ぶ。そんな長い時間、半ば強制的に監禁されている状態は精神的にもキツイ。
こういった仕事は、僕にとって貴重な息抜きだった。
そして、そんな仕事の中で僕が最も楽しみにしているのが―――食事だ。
前記の通り、僕は忙しい。睡眠時間すら削る仕事だ。
しかし、そんな中にあって、この移動中の食事時間こそ何者にも邪魔されない安らぎを得ることが出来る。
無限書庫内では、他人こそいないものの、時間という邪魔者に攻め立てられ、カロリーブロックなどの固形食物で栄養分だけを補う味気のないものになってしまう。
だから、僕はこの移動中に食べる弁当が一番の楽しみであった。
―世にも奇妙なミッドチルダ―
さあ、話を現実に戻そう。
僕はまず、駅で購入した市販の弁当を袋から取り出した。
量産が容易い紙質の素材で構成された箱。中身の詰まったそれは小柄ながらずっしりと重く、ほんのりと暖かい。
備え付けのお茶は、控え目に飲んでも五口ほどで飲み干してしまう小さなものだが、駅弁を片付けるには適度な量だ。
全体的にレトロなイメージを抱くのは、そういう懐古的なデザインを持ち味にしているからなのだろう。
それは何処と無く、第97管理外世界の地方を連想させる。その世界に交流のある僕にとって感慨深いものだ。
空いた袋は向かいの座席の角にぶら下げ、食後に出るゴミを収納する場所とした。マナーは守らなければならない。
逸る気持ちを押さえ、続いて食事の足場を確保する。
予約制の快速車両などならば折りたたみ式のテーブルなど常備されているものだが、一般車両、ましてや地方の旧式レールウェイにそんな設備は望むべくもない。
しかし、問題などない。
こういった場合の為に、僕は布の鞄ではなく平面で構成されたケースを愛用している。
仕事道具や着替えの入ったスーツケースを膝の上に置き、即席のテーブルとした。安定性は申し分ない。
下準備を済ませた僕は、弁当箱を手元に置き、紐を解いて、ゆっくりと蓋を持ち上げた。
色鮮やかな中身が、僕の目の前に展開される。
思わず笑みがこぼれた。
食事の前にしか味わえない、ささやかな感動だ。
では、中身を分析してみよう。
定番の出し巻き卵と、かまぼこ。煮物はしいたけ、人参、かぼちゃ。キンピラゴボウ。ブロッコリーの天ぷら。漬物はしば漬け。そして、何とも嬉しい存在のうぐいす豆。
ご飯には、黒ごまと梅干が乗っている。
しかし、これらのおかずがどんなに賑やかでも、メインのおかずの盛り上げ役でしかない。
そのメインとは―――レモン、千切りキャベツ、レタスの添えられた二つのフライである。
それらは弁当の目玉であることを自ら主張するように、箱の中央で他のおかずに囲まれながら一際威厳を放っていた。
……だが、このフライの中身はなんだろう?
フライは二つあるが、一方は形状で判別出来るほど特徴を備えていなかった。フライ物にはよくあることだ。
考えられるのは―――カツ、または白身魚である。
僕は迷わず<カツ>だと判断出来る。
何故ならば<白身魚>なら、タルタルソースが付いているはずだからである。
そしてもう一つのフライは、その形状から容易に察することが可能だ。
円形で、同じく内側を丸くくり貫かれた特徴的な外見。輪の形をしたそれは、王冠にも似ている。そう思うのは僕だけだろうか?
イカの、リング揚げ―――。
僕の脳裏に、かけがえのない記憶が蘇った。
事前に弁当の内容を知らない僕にとって、この事実は一つの奇跡との出会いだった。
今日の食事は、素晴らしいものになりそうだ。
そして、その為には食事の手順を僅かにも誤るわけにはいかない。
食事のスタイルには二つの形式がある。僕はそれらを<ベルカ式>と<ミッドチルダ式>と名づけた。
<ベルカ式>とは、メインのおかずに向かって一品ずつ片付けていく形式である。
一つ一つのおかずの味と小細工抜きに向き合える為、食事をダイレクトに楽しむことが出来る。一対一ならば、負けは無い。
しかし、全体的に見れば食事の進行をバランスよく進めて行くには厳しい形式だ。今はもう廃れてしまっている方法だと言えるだろう。
一方<ミッドチルダ式>は、メインのおかずを中心にして進めていきながら、間に他のおかずを挟んでいく形式である。
全てのおかずを均等に味わえる為、好物がある場合それを単独で味わうことは出来ないが、全体的なバランスの良さは抜群だ。
しかし、僕が実践しようとしているのはどちらのスタイルでもない。
僕、独自のスタイルとは―――。
出し巻き卵を一口、しば漬けを一口、かまぼこを一口、と。一見<ミッドチルダ式>に見せかけながらも、メインのフライには一切手を付けずに進めていく。
そして、フライ以外のおかずを食べ終えたら、<ベルカ式>に移り、一対一でメインのフライをじっくりと味わうというものだ。
<ミッドチルダ式>の汎用性と、<ベルカ式>の瞬発力を兼ね備えた、言うなれば―――<近代ベルカ式>
まずは、カツ。
そしてラストは、イカのリング揚げで締め括る。
そう、ラストは―――。
『ユーノ君、はいっ』
イカの、リング揚げ……。
トイレに行っていたらしく、乗客の男がやって来て席に座った。その音に僕は我に返る。
しばし、感慨にふけってしまった。
さあ、おかずの攻め方が決まったら、次はご飯の攻め方だ。
ポイントは、おかずの塩分と脂肪分である。所要量が多いおかずほど、ご飯をたくさん必要とする。
それを考慮し、それぞれのおかずに対するご飯の量を割り出していく。
そうしておけば、ご飯とおかずのバランスが崩れる心配が無いのである。
一見、その計算は実に簡単なものに思えるかもしれないが―――そういう油断をした者が失敗を犯す。
市販の量産された弁当の味付けには、得てして意図せぬ落とし穴が存在する。特に、保存を目的とした弁当に濃い味付けは欠かせない。
それが駅弁の持つ特有の旨味であり、同時に度を過ぎれば劇物となる危険性も秘めている。
それらの危険性を配慮し忘れ、自ら落とし穴に落ちた時、楽しい食事は一転して後味の悪い結末を迎えるのだ。
しかし、僕に限ってそんなミスは在り得ない。
何故なら、僕はプロだからだ。
僕は脳内で弁当の進行を入念にシミュレートし終えると、僕は封入されていた紙のおしぼりで手を拭き、食事の前の清めの儀式を行った。
そしてようやく、僕の食事が開始する。
備え付けの割り箸を手で挟み、合掌。
「いただきます」
あ。
―――瞬間、車内に緊張が走り抜けた。
少ない乗客の視線が僕に集中するのを感じる。突然の僕の発声に訝しげな様子の注目が集まっていた。
つい、いつもの癖が出てしまった。
だって、ご飯を食べる時は『いただきます』じゃないか? 食事に対する感謝を忘れてはいけないのだ。
僅かな羞恥心は視線が離れていくと同時になくなっていた。
気にする必要はない。食事に集中しよう。
しかし、僕は自分でも意識せぬうちに動揺していたらしい。
支援するぜ
「あ」
ボキッと鈍い音がして、僕の手の中で割り箸が中途半端な割れ方をしていた。
普段ならば、このような凡ミスは在り得ない。割り箸から意識を割くなど、実に初歩的な失敗だ。
まさか、出鼻を挫かれるとは……。
しかし、動揺する必要などない。何故なら、完璧なプランを立ててあるからである。
不恰好になってしまった割り箸を持ち、まず第一手として出し巻き卵に箸を伸ばす。
出し巻き卵のセオリーはほんのりと甘味を持った薄味だ。ここに奇抜さは在り得ない。
一口サイズのそれを半分だけ齧り、静かに租借すれば口の中に程よい甘味と風味が広がった。予想通り、無難な味だ。
半分になった卵を元に位置に戻し、次は漬物を選択する。
これもまた多少の塩分過多はあっても、全ての弁当に共通して味は変わらない。特に、市販の弁当に用いられる漬物はやはり同じ市販品だ。
僅かな緊張感を持ち、口の中へ運ぶ。
ポリポリと心地良い歯応えと、塩味が口内を刺激する。出し巻きの甘味に相殺され、塩分は程よく舌に溶ける。
これもまた無難。最初は無難な所から攻めるに限る。それは、食事も発掘も同じことだ。
それでも口に残る後味を飲み流す為に、初めてご飯に手を付けた。
事前に計算したサイズにご飯を切り分け、口腔に放り込めば、冷えたご飯粒が持つ特有のみずみずしさによって僕の喉は僅かに潤った。
噛み締めれば適度な弾力が感じられる。うん、なかなか柔らかい。ご飯が乾燥しているような不運には見舞われなかった。
冷や飯には熱々のご飯にはない魅力がある。
蒸発した水分が蓋に付き、再びご飯へと返っていいようにふやけた冷や飯は粘着性を持ち、新しい食感を与えてくれるのだ。
ごまの量も多すぎず少なすぎず、丁度いい。
ご飯は弁当を食べ進めていく上で必要不可欠な素材である。これで僕は安定した足がかりを得たことを確信した。
次のかまぼこも問題はなかった。見た目の柔らかさに比べて、意外と弾力がある歯応えは良い意味での誤算だ。
これでおかずを三つ。それぞれ半分だけ口にした。
―――そろそろ、ちょっと冒険してみるとしようか。
僕は煮物へ伸ばそうとした箸の進路を変更し、ブロッコリーの天ぷらを摘み上げた。
この種類のおかずは初めて見る。
無限書庫の司書長に就き、次元世界最大の知識の宝庫にいながら、自らの無知を自覚する瞬間だ。この世界は、まだまだ新鮮さに満ちている。
全く予想のつかない代物を、僕は見た目で十分に吟味した後、一思いに丸ごと頬張った。
うん、ほんのり塩味が効いている。
衣に包まれたブロッコリーは珍しい食感を味わわせてくれた。僕としては、もう少し濃い味付けでもいいのだが。
とりあえず、食事の進行予定を根底から覆す奇抜な味ではなかった。
僕は食事を続け、無造作にキンピラゴボウを口にした。
その時。
なん……だと……!?
完全に意表を突かれた僕は、思わず驚愕に目を見開いていた。
しょっぱい。しょっぱすぎるッ。
冒険を終えた僕の心には知らず隙が出来ていた。そこを突かれ、僕は自らが落とし穴に片足を突っ込んでしまったことを自覚した。
予想外だ。このキンピラだけは手作りなのか? 味付けが濃すぎる。
僕は慌ててご飯に手を伸ばした。一口食べて、その色と同じ無垢なご飯の味が口に染み付いた塩分を取り去ってくれる。
しかし、それでもまだ足りない。予想以上のしょっぱさだ。
ここはご飯一口の予定だが、もう一口食べたい。
砂漠で水を求める遭難者のように、僕は無意識に箸を再びご飯へ伸ばしていた。
しかし待て!
そうすると、ご飯の攻め方を大幅に変えなくてはならなくなる。練り上げたプランは根底から瓦解するだろう。
落ち着くのだ。僕が今、砂漠で口にしようとしている水はオアシスの水じゃない。水筒に残った有限の水なのだ。
やはり、ご飯を食べるわけにはいかない。我慢するしかないのか……?
―――いや、手はある。
僕の計算は完璧だ。不測の事態にも備えはしっかりと用意している。
ほくそ笑み、僕は視線を弁当の隅で輝きを放つおかずへ向けた。箸を伸ばし、起死回生の一手となるソレを掴み取った。
<うぐいす豆>だ。
この程よい甘さがしょっぱさを消し、ご飯をもう一口食べたいという欲望を抑えてくれる。
最初に感じたとおり、この豆は僕にとって救いの女神となったのだ。
しかし、運命の悪戯は悪いタイミングでやってくるものらしい。不運(ハードラック)と踊(ダンス)ってしまうのだ。
しっかりと固定していたはずの箸から、貴重なうぐいす豆が零れ落ちた―――!
状況がスローモーションに感じる。遅くなった時間の流れの中で、僕の眼前を豆が落下していった。
常人ならば成す術もない事態。この不測の事態に対応するには、フェイトのような桁外れの反射神経が必要となるだろう。
あいにくと僕にそんな戦闘スキルは存在しない。
この悲劇を、僕はただ眺めることしか出来ないのか?
答えは、否である。
「おっと」
落下先へ素早く割り込ませた弁当の上に、うぐいす豆は無事着地に成功した。
確かに、僕の反射神経では為し得ない。だが、僕にはその才気を上回る武器がある。
それは<洞察力>だ。
おかずを口元に運ぶ際、どんな時にでも発生する危険性―――『おかずの落下』に備え、僕は常に空いた手を弁当の箱に添えている。
その用心深さが、今回僕の命を救ったのだ。
僕は再びうぐいす豆を箸に掴み、今度こそ慎重に眼前まで持ち上げた。
しかし、解せない。まさかうぐいす豆が箸から落ちるとは……。
これが<黒豆>なら分かる。
豆の硬さ、表面の滑り具合、形状効果も手伝って実に箸から落ちやすい。
しかし、これは<うぐいす豆>だ。こんなミスをするなんて―――やはり、割り箸は慎重に割るべきだった。
歪な形となってしまった割り箸が、僕のおかずを摘む絶妙な力の調節に誤差を生じさせたのだ。
同じ過ちを繰り返さないよう、今度は手を添えて、細心の注意を払い口へ運ぶ。
小さなうぐいす豆を噛み締めると、じんわりと甘味が広がり、根強く残るキンピラの塩味を打ち消した。
思わず笑みが浮かぶ。
こうなれば、キンピラのしょっぱさは僕にとって何の脅威にも成り得ない。むしろ、味の一つとして許容できる。
予想外の難関はクリアした。では、次は想定の範囲内にある問題をクリアしよう。
苦手なしいたけとかぼちゃをここで片付ける。
食材の味を消してくれる濃い味付けが好ましいが、そうもいかない。すぐさま梅干を口にして、唾液の分泌を促し、後味の悪さを解消する。
ご飯、おかず、ご飯、おかず―――。
出だしの悪さが嘘のように、僕の食事は順調に進行していった。
あらかたのおかずは片付け、残されたものは漬物だけになる。
ご飯としば漬けの相性は申し分ない。
しば漬けとお茶の相性も申し分ない。
―――そう、ここで初めてお茶に手をつける。
だって、ここから本番なのだから。
温存していたお茶を、惜しまずに三口飲み干す。
冷めた緑茶の持つ特有の渋みが、口の中の後味を洗い流し、これから始まる本番へ向けて僕のコンディションをリセットしてくれた。
食事の最後を締めくくる分のお茶を残し、僕は静かに息を吐いて、意識を再び弁当へ向ける。
残されたおかずはフライ二個とそれを補佐する緑黄色野菜。
いよいよ、メインを攻める時がやって来た―――。
支援
駅弁ひとり旅支援
まずは、重要な下準備からだ。この段階でメインの味は決定すると言っても過言ではない。
備え付けの調味料は<ソース>と<マヨネーズ>
僕は躊躇うことなく、マヨネーズをキャベツの千切りに振り掛ける。多少マヨネーズの量が多い気がしたが、それはこちらで微調整すれば問題ない。
続いて、ソースだ。もちろん、カツに掛ける。
しかし、運命はまたしても僕に悪戯を仕掛けた。
ソースの入った小さなプラスチック容器のキャップを捻り、中身をカツフライへ搾り出した時、僕は異変に気付いて反射的に手を止めた。
これは、<ソース>じゃない。<醤油>だ……っ!
滑らかに流れる液状のそれは、カツに最も適した粘度の高いとんかつソースでは決して在り得ない。
何故ソースじゃないんだ!?
ひょっとしたら、僕はとんでもない考え違いをしていたのかもしれない……。
戦慄しながらも、弁当箱の隅まで観察し、やがて僕は信じられない事実を見つけた。
箸でレタスを恐る恐る除けてみる。
果たして其処に、ソースの容器は隠れていた―――!
ソースが、こんな所に……。
これはとんだ誤算だ。
でも待て。冷静になれ。だったら、醤油は一体何の為に入っていたというのか?
『―――僕としては、もう少し濃い味付けでもいいのだが』
脳裏に蘇る、あの時の感想。
そうか。あの、ブロッコリーだったのか……。
確かに、醤油はブロッコリーの隣にあった。
でも、これじゃあ間違えるに決まって―――ハッ!
僕の頭の中で全てのピースが当て嵌まるのを感じた。ただし、それが描く未来は全て後の祭りとなったものだが。
最初、この席に座る前。子供がぶつかって弁当の箱を落としてしまったことがある。
あの時だ。
あの衝撃で、フライの横にあったソースがレタスの後ろに移動してしまったんだ。
思わぬ誤算だ。
……誤算?
その時、再び脳裏に閃いた可能性は僕にとって救いだったのか、それとも更なる絶望だったのか。
まさか、マヨネーズがタルタルソースの代用品なんてことは―――?
確かにキャベルに掛けるにしては量が多すぎる。
こうなると、最初に否定したフライの中身の選択肢も再び二つに戻ることになる。
つまり、マヨネーズは白身魚用で、ソースはキャベツ用というパターンも在り得るわけだ。
一体、どっちなんだ?
<カツ>ならソースを掛け、<白身魚>ならマヨネーズを掛けなくてはならないというのに。
この選択次第で、僕の食事の成否は決定する。
適当に混ぜればいいなどという愚劣な意見は却下したい。
箸でフライを割り、衣を醜く破り散らかして中身を確認するなどという無粋極まりない意見を述べる人間とは口も利きたくない。
どっちなんだ?
<カツ>か、<白身魚>か。
白か黒か。
プラスかマイナスか。
光か影か。
一体、どっちなんだ―――?
『うるさいんだよ、さっきから!』
『うぇぇ〜ん!』
『ちょっと! 子供相手何すんのよ!?』
『母親だろ、子供の管理くらいしっかりしろよ!』
『お客様、どうかなさいましたか?』
前の席では喧騒が起こっている。大人の怒鳴り声に子供の泣き声。
やめてくれ、思考の邪魔だ。
そんな僕の切実な願いを嘲笑うかのごとく、喧騒はますます激しさを増していく。
男と女は怒鳴り合い、止めに入った車掌と揉み合い、子供は泣き喚いてアベックはいちゃつく……。
―――ノイズよ、消えろ!
「封時結界、展開」
意識を集中し、呪文を口にした瞬間、僕の周囲から音が消え去った。
通常空間から特定の空間を切り取り、時間信号をズラす。
これで、僕の思考を妨げるものは無くなった。邪念は排除するのだ。
無我の境地へと至った僕は、かつてない集中力を発揮して目の前の問題に対する答えを弾き出そうと感覚を研ぎ澄ました。
考えるな。疑えば疑うほど真実から遠ざかっていく。考えれば二分の一の確立もゼロになってしまうのだ。
己の勘に働きかけろ。
未踏の遺跡の発掘においては、第六感もまた重要となる。その鍛え上げた感性から答えを導き出すんだ!
答えは―――。
決断すると同時にカッと目を見開き、僕は躊躇する事無く行動した。
レモンを絞り、続いて<ソース>を振り掛ける。
この決断に間違いは無い。疑うな。答えは口の中にある。
僕は、フライを口にした。
「…………ふっ」
零れたのは、勝利の笑みだった。
この白身には在り得ない弾力感のある歯応え。滲み出る肉汁。ソースのマッチした濃厚な味が僕の口に広がっていく。
カツだ。
そう、僕は勝ったのだ。
メインのカツフライをキャベツの千切りと共に平らげ、僕は既に奇妙な満足感に支配されていた。
残されたおかずは一つだけ。
最後は、<イカのリング揚げ>だ―――。
そんな事に結界使うなよw支援。
『腹減ったなー』
『食堂行こうぜ! メシメシっと!』
局員の人達が和気藹々と食堂へ向かうのを尻目に、僕は一人疲れ果てた足取りで本局施設にある庭へ向かっていた。
今の時間帯、食堂の混み様は尋常ではないし、そんな場所へ一人で行っても疲れるだけだ。
まだ無限書庫の司書へ就任したばかりの僕は、積み重なる仕事と職場の人間関係に疲れ果てていた。
未開の無限書庫は整理だけでも気の遠くなるような作業を必要とするし、どれだけ優秀でも当時子供だった僕がいきなり上司に納まれるほど管理局は単純な組織じゃない。
部族の元を離れ、一人孤独に働いていた僕にも、知らずストレスは溜まっていたのだろう。
せめて、食事の時くらいは他人と離れて静かに食べたい。
そんな思いを抱えて、僕は人気の少ない庭へと向かっていた。
建物の中の賑わいに比べて、酷く静かな庭に着くと、ベンチに腰を降ろして持参した弁当箱を開く。
中身は何とも侘しい白米に塩を振ったおにぎりが二個だけ。
親はいなくとも、部族単位で活動していた僕は家事を他人に任せっきりで、料理などもほとんどしたことがなかった。
子供の僕にはこれが限界だった。少なくとも、その日は市販の食料を買う余裕もなかったのだ。
眺めていると余計に感じる虚しさと情けなさを消す為に、僕はさっさとそのおにぎりに齧り付いた。
塩味だ。だからって、美味しくもなんともない。
そんな時だった―――。
『ユーノ君』
顔を上げた僕に、彼女は微笑みかけてくれていた。
まだ正式な管理局員となる前の彼女は、時折元の世界から出張するような形で本局へ出向いていた。あの日もそうだったのだ。
『はいっ』
彼女は侘しい食事をする僕に何も聞かずに、ただにっこり笑って自分のお弁当からおかずを分けてくれた。
それが、<イカのリング揚げ>
彼女にとっては何気ない、数あるおかずの一個にすぎなかったのかもしれない。
しかしその時、差し出されたイカのリング揚げは僕にとって太陽が描く日輪のように輝いて見えたのだ。
躊躇いがちに受け取り、それを噛み締めた時、僕の口を満たしたのは―――薄い味付けと、彼女の優しさだった。
その日、僕は久しぶりに心から笑った。
箸で摘み上げたイカリングを眺めていると、あの日の思い出が鮮明に蘇ってくる。
かけがえのない僕の思い出だ。
知らず、込み上げていた熱いものが眼から溢れ出していた。
回想にふけって涙を流すなんておかしなことかもしれない。だけど、今の僕は確かに満たされている。
僕は大切な宝物を扱うように、そのイカリングをゆっくりと眺めた。
ついに、僕の食事が終わる。
もう……ゴールしてもいいよね……?
僕は栄光の輪をそっと口に含み、そして味わうようにゆっくりと噛み締め―――。
プジュル。
在り得るはずの無い濡れた音と感触が、僕の口の中で響いた。
オチを前にニヤニヤが止まらないw
「…………玉ねぎ」
イカリングには在り得ない甘味と水気を口に含んだまま、僕は呆けたように呟いた。
いつの間にか、前の座席で起こっていた喧騒は収まっている。
何が起こったんだろう?
喧嘩していた男と女は抱き合い、子供は微笑んで、アベックは喧嘩別れしていた。
いや、別に心底どうでもいいんだけれど。
魂が抜けたように放心した僕の膝元で、中身の露わになった<オニオンリング>が虚しく転がっていた―――。
オニオンリングは全部食べた。
どんな結末であれ、食事を残してはならない。それは最低限のマナーだ。
それでも脱力感と倦怠感を隠せず、僕は意気消沈した足取りで家路を歩いていた。
自分でも何故こんなに落ち込んでいるのかは分からない。
っていうか、弁当一つにここまでのめり込む僕自身が悪いのかもしれない。
そうやって冷静に考え直すと、これまで自分を支えてきた全てが崩壊しそうなのでなるべく考えないようにしているが。
仕事と孤独でいろいろと無意識に参っていたのだろうか?
とにかく、もう何も考えたくない気分だった。
一人暮らしのマンションへ帰り、シャワーを浴びて少しでも寝ておきたい。
誰も待っていない部屋で、する事といったらそれくらいしかないのだから。
通い慣れた道を辿り、さすが司書長だけある優良待遇の高級マンションへ着くと、目的の階まで昇って自分の部屋のドアを開いた。
「おかえり、ユーノ君!」
「おかえり〜、ユーノパパ!」
在り得ない筈の、僕を迎える声が聞こえた。
「え……なのは、ヴィヴィオ?」
僕の部屋には、思い出の女性と親代わりとなっている女の子がいた。
混乱した僕は、彼女達に促されるまま部屋へと上がる。
帰宅すれば当然のように誰もいないはずの暗い部屋は、しかしすでに灯った電灯の光と何か美味しい匂いに満ちていた。これはフライ物の匂いだろうか?
「なのは、一体どうして?」
「ユーノ君、今日は出張から返ってくるって聞いたから。あ、大分前に貰った合い鍵使わせてもらったよ」
「ああ、そうだったんだ……でもヴィヴィオまで? もう夜も遅いのに」
「うん、ヴィヴィオってばユーノ君にすっかり懐いてるから。お出迎えするんだって聞かなくて」
「パパ、まだ『ただいま』って言ってないよ!」
二人の笑顔が、さっきまで空っぽだった僕の心を満たしていく。
「……ただいま」
「「おかえりなさい!」」
二人の笑顔につられるように、僕自身も笑みを隠すことが出来なかった。
いつも、帰れば待ち受ける寒々とした部屋が、今はもうこんなにも暖かい。
幸せを噛み締めながらリビングへ向かうと、そこには僕を更に驚かせる光景が広がっていた。
「もう大分遅いけど、ご飯用意しておいたんだ」
「……」
「ユーノ君? もう、ご飯食べちゃったかな?」
「……いや、まだ食べてないよ」
そうだ、僕はまだ食べていない。
列車の中で僕の食べ損ねた<イカのリング揚げ>―――それが今、食卓に並んでいるのだった。
ああ、なのは。
やっぱり君は、僕にとっての……。
「ユ、ユーノ君!? どうしたの? 何か嫌なことでもあったの?」
「パパ、泣いてる! どこかイタイイタイしたの?」
ああ、二人が心配している。早くこの涙を止めなきゃ。
でも、そう簡単に止めることなんで出来やしない。
苦しみや痛みなら耐えられる。だけど、喜びの涙を耐えることは、とても難しいことなのだから。
僕はせめて涙を拭い、精一杯の微笑みを浮かべて首を振ることしか出来なかった。
さあ、まずは食事にしよう。
この最愛の二人と一緒に暖かい食卓を囲み、あの日と同じイカのリング揚げを食べるのだ。
そして、食べ終えたら言うんだ。
なのはに、『結婚しよう』って―――。
―END―
心温まるはずなのにアホ臭く感じるのは何故だろう
投下は以上です。
ごめんね、微妙な作品でごめんね。コメントしづらいの分かるから、スルーしてくれていいから。
でも、自分は書いてて楽しかったですwなんかすげえ力入ったww
ユーノが不憫なので、さすがにオチは変えました。
大丈夫、彼には原作と違って家族がいるから。
以上、『ユーノ君の孤独のグルメ』でした。
最後もオニオンリングかと思ったぜww
貴様ッ!“見て”いるな…!?
何をとは言わないが、もしも“見て”なくてこの話を書こうと思ったならなんて無意味に素敵な偶然www
あの話はリアルタイムでTVで見た覚えがありますね
しかし大杉漣とは違って最後に救いがあってユーノヨカッタナー( ;∀;)
GJ!
弁当相手に全力で立ち向かうユーノに笑い、ラストに胸があったかくなりました。
世にも奇妙で食べ物って聞いて
ウミガメ思い出す僕って異常?
>>132 GJ。
イカのリング揚げとオニオンリングは色で区別できるはずだぞユーノw。
余談だけど、モスのオニオンリングは結構うまいぜ。
30分後くらいに天元突破投下予約よろしいでしょうか?
>>134 あまり大きな声ではいえないが『見て』いるぜ! そしてもちろん、リアルタイムでも見てたぜ。
当時は世にも奇妙な物語らしくない、緩い話だったから印象強かったですね。もちろん内容も。
あの中で一番好きな話です。まあ、あれもある意味バッドエンドだけどさw
さすがにユーノにあのオチは不憫ですよww
世にも奇妙で一番記憶に残ってるのは「懲役一ヶ月」だな。
あれはひどい、実質懲役720年(笑
キタキタキター!待ってました!>天元突破氏
>>138 俺の信じる投下を信じろ!
お待ちしてますー
>>130 GJ。ミッドまで来て泉昌之ネタやるんじゃねえと反射的にツコミ入れたくなった。
>><ミッドチルダ式>の汎用性と、<ベルカ式>の瞬発力を兼ね備えた、言うなれば―――<近代ベルカ式>
誰が上手いこと言えとwww
天元突破ktkr!
グルグル目玉で待ってます!
世にも奇妙のこれか!!
テレビでみて親と二人で爆笑したやつだwww
いい話だ・・・GJ!!です。黒い話書きとして羨ましいぜ・・・
ではそろそろ天元突破第三話、スピンオンします。
――上を向いて歩け、スバル! お前の拳は天を突く!!
一面に広がる廃墟――否、これは魔法で造り出された立体映像に過ぎない。
時空管理局第七特別演習場――魔導師昇級試験、Bランク試験会場。
虚構の街の中心に寝転がり、スバル・ナカジマは空を見上げていた。
右手に着けたグローブ、左腕に結んだ白い鉢巻き、両足に履いたローラーブーツ、そして懐にしまったペンダント……。
自分の勝負アイテムとも言える装備を一つ一つ指先でなぞり、スバルは再び空に視線を戻す。
……ティアナ・ランスターの顔が、青空を覆い尽くしていた。
「まぁーた空見てんの? アンタは……」
そう言って自分を見下ろす親友の呆れ顔に、スバルは億劫そうに上体を起こした。
「ティア……もう時間?」
スバルの問いにティアナは時計を取り出し、「あと10分」と短く答える。
「それじゃーあと5分はゆっくり出来るね。その後全力で走れば余裕で間に合う」
そう言って再び倒れかかるスバルの身体を、ティアナは慌てて捕まえる。
「まったく……アンタってホントに空が好きよねー」
呆れたような声と共に差し出されたティアナの手を掴み、スバルはゆっくりと立ち上がった。
別に空が特別に好きという訳ではない――ただ上を向いて歩いていたら、自然と空が目に入ってくるだけだ。
四年前、アンチスパイラルの空港爆破テロにスバルは巻き込まれた。
その当時のスバルは弱く、ただ泣くことしか知らない無力な子供だった。
逃げ遅れ、炎と瓦礫の海の中に独り取り残されたあの時も、スバルはただ悲鳴を上げ、家族を呼びながら泣き叫ぶことしか出来なかった。
そんな時だった、スバルがその人と出会ったのは……。
――コアドリルインパクト!!
気合いと共に瓦礫の壁を突き破り、『あの人』はスバルの前に現れた。
顔は覚えていない、声もはっきりとは思い出せない。
ただ青いコートに隠れた大きな背中、そこに描かれた『あの人』のエンブレム――炎とサングラスを組み合わせたあのマークだけは、しっかりと心に刻み込んだ。
スバルの憧れた『あの人』との出会いは唐突で、そして一瞬だった。
気がつけば『あの人』はスバルの前から姿を消し、スバルはその後、もう一人の憧れの人――高町なのはに救助された。
あれは夢だったのではないか……今でも時々、スバルはそう思うことがある。
しかし『あの人』は確かに、あの日、あの場所にいた。
――上を向いて歩け、スバル!
その言葉と共にあの時『あの人』から託されたペンダント――金色に輝く小さなドリルが何よりの証拠だった。
その日以来、スバルは上を向いて歩き続けた、上を向いて生き続けた。
逃げない、泣かない、振り返らない、そして立ち止まらない。
ただ己の道をまっすぐ突き進む。
『あの人』も言っていた――自分の拳は、天を突くのだから!
そして……スバルは今、ここにいる。
「ティア……征こうか」
左腕の鉢巻きを額に巻き直し、スバルはティアナを――無二のパートナーを振り返る。
迷いも曇りも無いスバルの瞳――その奥で輝く相棒への絶対の信頼に、ティアナもまた力強く頷いた。
「当ったり前でしょ、馬鹿スバル」
Bランク昇級試験、実技審査。
絶対に合格する――二人はそう決意を固めるのだった。
実技試験は、簡単に言えば障害物競走のようなものらしい。
中空のウィンドウに映る試験管――リィンフォースU空曹長の説明を、スバルとティアナはそう結論付けた。
コース各所に設置されたポイントターゲットを全て撃破し、ゴールに辿り着く。
制限時間内にゴール出来なかったり、一体でも破壊に失敗、またダミーターゲットを破壊してしまった場合は失格となる。
試験の概要としてはこのようなものだが、やはり障害物競走という印象は拭えないというのが二人の感想である。
『――ではスタートまであと少し、ゴール地点で会いましょう』
ウィンドウが切り替わり、試験開始用のシグナルが表示される。
三つの光点の内一つが消え、二つ目、そして――、
『スタート!!』
リィンフォースUの合図と共に、二人は無人の街へと繰り出した。
ハイウェイを疾走する二人の前に、最初のターゲット――人間大の顔に手足を付けたような不恰好なロボットが現れる。
その数、三つ。
ガンメン――時空管理局が作業用に開発した新型の傀儡兵である。
未だ試験段階ではあるものの、被災地での救助活動や危険地域でのロストロギア回収作業など、その活躍が期待されている――らしい。
ニュースで見た時には二人揃って「これ明らかに戦闘用だろ」と断言したスバルとティアナだったが……どうやらその認識は間違っていなかったらしい。
救助だの探査だのといった「建前」的な目的よりも、こうして銃器で武装している方が遥かに似合っている――ガンメンという兵器は。
「ティア、援護よろしく」
背後の相棒に一言言い置き、スバルはローラーを噴かせた。
右手のグローブ――母の形見の篭手型デバイスが唸りを上げ、手首部分のタービンが紫電を飛ばしながら激しく回転する。
……アンダーウェアの下のペンダントが、脈動するように光を発する。
「リボルバーナックル!!」
気合いと共にスバルは更に加速し、先頭のガンメンに砲弾のように突っ込んだ。
拳が敵の装甲に文字通り突き刺さるが、スバルはまだ止まらない。
腕が、上半身が、全身がガンメンを貫き、突き破る……!
「あたしを誰だと思ってる!!」
雄々しく吼えるスバルの背後で、無残に破壊されたガンメンが爆破四散する。
まず、一体。
……まだ身近にもう二体残っていることを、スバルはすっかり失念していた。
接近戦に切り替えたのか銃器を捨て、残りのガンメンが左右からスバルに襲い掛かる。
「げっ……!」
敵の思わぬ奇襲にスバルは蛙の潰れたような声を上げるが、それでも反射的にガンメンの片割れを殴り飛ばした。
しかし残るもう一体の鉤爪が、隙だらけのスバルの背中に迫る。
その時、
「こ……んの、馬鹿スバル!!」
怒号と共に放たれた光の弾丸が、ガンメンに眉間を貫いた。
「ティア!」
窮地を救われたスバルが満面の笑みで後方の親友――二挺拳銃を構えるティアナを振り返った。
……修羅がいた。
「スバル! アンタ馬鹿ぁ!? 呑気に格好つけてて不意打ち喰らいかけるなんて馬鹿にも程があるわよこの馬鹿!!」
「三連発で馬鹿って言われた!?」
「四連発よ! そして今から五回目を言ってやろわ……この一分一秒にも時間はどんどん減ってるんだから、へらへら笑ってないでとっとと進め馬鹿スバル!!」
ティアナの雷から逃げるように、スバルは慌てて身を翻した。
協調性――実際の連携はともかく――に多少の問題は見られるものの、概ね順調にコースを進む受験生達を、はやてとフェイトは試験場上空の管制ヘリから見守っていた。
はやてが目をつけた二人の新人――この試験の結果次第では新部隊の前衛への引き抜きも考えている、期待の人材である。
「小型ガンメンをどれもほぼ一撃で破壊か……新人にしては中々やるね」
好意的に二人を評価するフェイトに、はやても頷く。
「せやな。正面突破してるスバルちゃんも凄いけど、ティアナちゃんも低い攻撃力でよー頑張っとるわ。装甲の継ぎ目とか、ガンメンの弱点を的確に狙い撃ちしとる」
「逆に言えば、そういう面ではガンメンも改良の必要ありってことだけどね」
和やかに談笑する二人に割り込むように、その時、試験監督中のリィンフォースUからの通信ウィンドウが開いた。
『お二人ともなごんでるところに恐縮なんですが、ちょっと報告したいことがあるんですけど……』
「リィン? どないしたん?」
首を傾げるはやてに、リィンフォースUは困ったような表情で報告する。
『受験生のスバル・ナカジマさん――鉢巻き巻いてる方の娘なんですけど、彼女から断続的に螺旋反応が検出されてるんです』
リィンフォースUの言葉に、二人は驚愕に目を見開いた。
螺旋力――半年前、時空漂流者ロージェノムからもたらされた、魔力とは根本から異なる未知のエネルギー。
この謎の力について現時点で判明している事実は三つ。
螺旋力の発現には特別な才能や資質を必要とせず、しかもAMF下でも問題なく発動可能――理論上は、いつでもどこでも誰でも使用可能であるということ。
全次元世界共通の敵――アンチスパイラルの尖兵ムガンに対して、螺旋力を利用した攻撃が現状最も有効であるということ。
そしてもう一つ、アンチスパイラルは螺旋力を絶対的な敵と見做し、その存在を許していないということ。
それはつまり……、
「はやてちゃん……私、何か嫌な予感がする」
険しい表情でそう口にするフェイトに、はやては同意するように首肯する。
「フェイトちゃん。念のため、いつでも出撃られるようにしといてや。なのはちゃんの方にも連絡入れとくわ」
アンチスパイラルと敵対する次元世界にとって、螺旋力は希望を掴むパンドラの箱である。
しかし同時に破滅を呼び込む禁断の果実にも、螺旋力はなり得るのである。
ティアナがみやむー声になったww支援
「うおおおおおぉっ! リボルバーナックル!!」
人間砲弾と化したスバルが、ガンメンを三体纏めて突き破った。
その傍らではティアナが、宙に浮かぶ巨大な顔――飛行型ガンメンを一体ずつ撃ち落としている。
障害物競走も佳境に入り、コースを進み、標的を破壊する二人の身にも力が入る。
しかし同時に、これまでの戦闘での疲労やダメージも、徐々にではあるが確実に蓄積していた。
「あぁ〜、ちょっと休憩……」
「そんな時間無いわよ。休みたいならさっさとゴールする!」
地面に座り込もうとするスバルを叱咤し、しかしティアナ自身も疲労に息を吐いた。
後方からちまちま援護している自分もこれだけ疲れているのだ、自分自身を弾丸代わりに特攻しているスバルの消耗は並ではないだろう。
しかし、制限時間もあと僅か、ここで立ち止まっている暇は無い。
酷なことかもしれないが、無理をしてでも前に進まなければならないのだ。
先に進みたいのならば、夢に近づきたいのならば。
「ほら、行くわよスバル」
そう言って手を差し伸べるティアナの背中の向こうで、その時、何かが光った。
咄嗟にスバルが地を蹴り、押し倒すようにティアナを組み伏せる。
「ちょっ……スバル!?」
狼狽するティアナの目の前を、一筋の閃光が突き抜ける。
魔力弾――否、今のは何かが違う。
体勢を立て直しながら敵の奇襲を分析したティアナは――隣で立ち上がるスバルも――次の瞬間、上空から自分達を見下ろす『敵』の姿に愕然とした。
円と直線で構成される無機質なシルエット、不気味に発光する結晶状のボディ――今の二人にとっては想定外の、しかしいずれは相対していたであろう、明らかな『敵』。
「「アンチスパイラル……!」」
その尖兵――ムガン。
それも一体や二体ではない――百、二百、それ以上の大群である。
最初に動いたのはスバル達でもムガンでもなく――フェイトだった。
デバイスを起動しながら管制ヘリから飛び降り、鉄砲玉のように敵陣の真ん中に突っ込む。
大剣型に変形したバルディッシュが魔力の刃を形成し、伸びる、伸びる、伸びる――!
「このおおおおおおっ!!」
限界まで魔力を注ぎ込んだ魔力刃――もはや巨大な光の柱としか見えぬそれを、フェイトは気合いと共に振り下ろした。
その一撃でダース単位のムガンが切り裂かれ、周囲の味方を巻き込みながら爆発する。
その光景にまずスバルが我に返った。
グローブに覆われた右拳を握り締め、単身敵軍と睨み合うフェイトに助太刀しようと走り出す――前に、ティアナに後ろ襟を掴まれ阻止された。
「……ちょっとティア、放して欲しいんだけど?」
「アンタ馬鹿ぁ!? Cランクの下っ端でしかもバテバテでついでに馬鹿なアンタがしゃしゃり出ても足手纏いにしかならないわよ!!
余計なこと考えてないで、さっさと逃げるわよこの馬鹿スバル!!」
お前の考えはお見通しだとばかりに怒鳴り散らすティアナの剣幕に、スバルは観念したように走り出した――後ろへと。
まいまい声で馬鹿馬鹿言われるのも乙なものだ、支援。
『受験生のお二人さん! 緊急事態です!!』
コースを逆走するスバル達の前にウィンドウが開き、慌てたような顔のリィンフォースUが映し出される。
『アンチスパイラルの大量出現により、この辺り一帯は第一級戦闘区域に指定されました! 試験は中止、二人は早く逃げて下さい!!』
「「もう逃げてます!!」」
切羽詰ったようなリィンフォースUの警告に、二人も必死な形相でそう返した。
ムガン達の身体に光が集束し、ビームの砲弾が撃ち出される。
スバル達を狙い――フェイトを無視して――放たれた攻撃は、その大部分がフェイトの魔法によって相殺された。
しかし僅かに撃ち漏らした一部の生き残りが、流星のように二人の頭上から降り注ぐ。
「やばっ……!」
スバルはティアナを後ろから抱え上げ、ローラーを全力で噴かせて砲撃の雨の隙間を掻い潜る。
「ちょっとスバル、何すんのよ!? アンタに抱かれて無人の街で大量の無機物と追いかけっこなんて……羞恥プレイにも程があるわよ!?」
腕の中のティアナが赤面しながら抗議しているが、スバルは無視して更に加速する。
両脚のローラーが過負荷に悲鳴を上げ、バチバチと火花を飛ばしている。
「ムガン……まだ追って来てる?」
振り返らず前を見据えたまま、スバルはティアナに尋ねた。
その問いにティアナは顔を上げ、スバルの肩越しに背後を確認する。
「……ばっちり、相変わらず、ストーカーみたいにぞろぞろついて来てるわ。試験官の人が足止め頑張ってくれてるけど、攻撃防ぐのに手一杯みたい」
ティアナの現状報告に、スバルの顔に焦燥の色が浮かぶ。
ローラーはもう限界に近い……そう長くは走れない。
もう、逃げられない……。
自分の最も嫌いな選択肢を進んでいる上、その道すらも壁に阻まれかけているという現実に、スバルは歯噛みした。
その時、ムガンの一体がフェイトの頭上を飛び越え、二人を目掛け降下を始めた。
体当たりによる自爆攻撃――否、あの大きさと重量で押し潰すつもりだ。
フェイトは撃ち落そうとバルディッシュを構えるが、ある一つの懸念が引き金にかかる指先を躊躇させる。
ここであれを破壊すれば、爆発に二人も巻き込んでしまう……!
迷うフェイトを嘲笑うように、ムガンはスバル達の頭上に迫る。
その時、不意にスバルが立ち止まった。
腕に抱いたティアナを解放し、迫り来るムガンを無言で見上げる。
ムガンを睨むスバルの眼に光る、決意の炎にティアナは気づいた。
まさか……!?
嫌な予感に襲われるティアナだったが、その予感は正しかった。
スバルの右手のデバイスが起動し、タービンが紫電を放ちながら高速回転する。
まわる、回る、廻る――!
尚も回転数を上げていくタービンに呼応するように、荒れ狂う紫電の渦がスバルの周囲を暴れ回る。
……懐のペンダントが、鼓動している。
暴走するように唸りを上げる右拳を握り締め、次の瞬間、スバルが跳んだ。
その常人離れした脚力で重力に逆らい、ムガン目指して垂直に跳ぶスバルを、直後、ムガンのビームが呑み込んだ。
「スバル!!」
無慈悲に放たれた死の光に消えた親友に、ティアナは悲痛な叫びを上げる。
しかし涙と絶望に濡れたその顔は、次の瞬間、驚愕に塗り潰された。
スバルは……生きていた。
ムガンのビームを拳で受け止め――寧ろ逆に突き破りながら、尚も上昇を続けている。
その姿は、固い岩盤を掘り進むドリルに似ている……ティアナはそう思った。
「あたしの拳は――」
ビームの壁を貫きながら、スバルが咆哮を轟かせる。
その拳は遂にムガン本体まで辿り着き、表皮を突き破り、奥へ奥へと前進を続ける。
そして遂に、スバルはムガンの身体を貫通し、
「――天を突く!!」
大空の中、太陽へと名乗りを上げるスバルの背中で、ムガンが爆炎と共に消滅した。
「あたしを誰だと思ってる!!」
無事に着地し、決め台詞と共に格好つけるスバル――その足元が、次の瞬間、音を立てて崩れ落ちた。
突然の地面の崩落はスバルだけでなくティアナをも巻き込み、
「そんな、何このオチぃいいいいいいいいぃっ!?」
「ちょっと、何でアタシまだぇえええええぇっ!?」
……間抜けな悲鳴を残して、二人は奈落の底へと消えていった。
天元突破リリカルなのはSpilai
第3話「あたしの拳は天を突く!!」(了)
以上、投下完了です。
前回GJコールくれた方々、今回支援してくださった方々、この場を借りてありがとうございます。
予告ですが、次回はお待ちかね(?)の「アイツ」が復活します。
GJ
ただひたすらのGJ
天を貫き次元も貫くGJ
>天元突破リリカルなのはSpiral
熱すぎるぜ!
スバルのギュンギュン回るリボルバーナックルを見た時から奇妙なシンクロを感じましたが、やっぱり螺旋力がありましたねw
あと、なによりティアナも含めて熱血とノリの良さが割り増しになってる気がするw
二人のコンビにも、なんか原作よりも爽やかな体育会系のテンションを感じますね。
最後をビシッと決められないあたりが可愛いよスバル可愛いよ。
しかし、こうなると本物のドリル持ってるギン姉の螺旋力がどうなるか見ものですなw
GJだ!スバルがコアドリルを持っているつまり、『あの人』は…。それにアイツって赤いアイツか。次回も楽しみだぜ。
憧れのあの人・・・っておいっ!wwww
そして奈落の底へ落下&復活の『アイツ』・・・
これは、これは期待せざるを得ない!!!
つまり大グレン団頭領ロシウが復活するんだな
楽しみだ
GJ!!!!!
>お待ちかね(?)の「アイツ」
メッセンジャーはスカ博士でスペアのスカがリーロンポジだろうか?
>螺旋力
なのはの家族はたっぷり持ってそうだ。
GJ!!です。
螺旋力はレジアスもありそうだw
ユーノ「俺…このイカリングを食べ終わったら、結婚するんだ」
>>166 「ワン、ツー、スリー、フォー、タマネギやん!」と叫ぶユーノが見えた
人いないな〜
平日の真っ昼間に何を期待しておるのだ
ユーノ「焦るな……僕は腹が減っているだけなんだ。
腹が減って死にそうなんだ……」
ユーノ「なのは。食事っていうのは、一人で静かに食べるものなんだよ。
一人で、孤独に…………」
171 :
一尉:2008/04/16(水) 16:52:53 ID:YKDZMPbS
孤独たな支援
うーん、いい孤独のグルメ・・・そうそう、ご飯はこうでなくっちゃ。
投下予約など、ないようですので、投下OKでしょうかー。
支援とかしてみたり。
さあ来な!!!
今回はほのぼのとお色気に挑戦ですー。
魔法少女リリカルなのは 闇の王女 番外編
オモイカネの企み 前編
シップマスター、高町なのはは自分をないがしろにしている―――それが試作戦闘艦アースラ改制御AI<オモイカネ>の不満だった。
勿論、なのはは優しい。疲れを知らない、自分のような管制デバイスにもきちんと労いの声をかけてくれ、毎朝、毎晩おはようとおやすみを言ってくれる。
では、何が気に食わないのか――その答えは、実に単純明快。
彼女のデバイス――レンジングハートのことだ。
あのインテリジェントデバイスときたら、何時も自分を(管理局でも最新鋭のデバイスである自分を!)若輩者扱いし、
あまつさえ自分の分析したデータにすら文句をつけてくる。
シップマスターに聞いたところによれば、彼は出所不明のデバイスであるそうなのに、だ。
まったく―――理解し難い。
何故、シップマスターはあんなロートル(RH)を信頼しているのか――自分のほうが高品質(多分)なのに。
気に食わない、気に食わない、宇宙最高に気に食わない。
人工知能らしからぬ、いやに人間臭い思考だった。
人間でいえば、嫉妬に相当する感情。
戦闘艦管制デバイス<オモイカネ>は、元々単独での運用を目的としている為に、高い情報処理能力を持ったAIである。
のみならず、長期に渡る航海で出てくる問題―――乗員の精神的なストレス――の緩和という意味合いもあり、
<オモイカネ>は高い対人コミュニケーション能力も持っていた。
実際、この手のストレスは馬鹿にならない代物である。
高度な自動化の進んだ管理局の艦船の多くは、この問題を頻繁に取れる家族、友人との連絡――最新の立体映像技術を用いたものだ――によって解決していた。
そうでもしなければ、狭い船内の数少ないクルーは、ストレスで参ってしまうからだ。
こういったストレスの蓄積は、クルーによる反乱を誘発させてしまう危険性もあり、無視できない問題だった。
勿論これは、船の中のクルーの間に家族同然の信頼関係が築かれている場合は別だが、現実的に考えたとき、全ての船にそれを求めるのは酷というものだ。
では、外部との連絡が取れないような任務――極秘の作戦に参加しているような部隊はどうすればいいのか。
こうした部隊は通常、外部からでは理解しがたいほど、結束が固い。
それは、つまるところこういったストレスに耐え、対応する為に他ならないのだ。
―――高町なのはとルーテシア・アルピーノによる独立強襲部隊もまた、この試練に曝されていた。
新生アースラクルーは、その性質上決して外部に存在が洩れてはならない存在だった。
―――このときはまだ。
つまり、僅か二名――しかもうち一人は幼い少女だ――でオペレーションを実行しなければならないというのは、如何程なストレスを乗員に与えるのか。
結果、第三の知的な存在――三人目のクルーとして、<オモイカネ>は製造され、今日までそのように振舞ってきた。
が、しかし。
想定外の存在を、高町なのはは持っていた。
出所不明のインテリジェントデバイス――レイジングハート。その会話能力は高く、主との意思疎通を完璧に行ってみせる程である。
この想定外のライバルの存在に、<オモイカネ>が嫉妬するのも、無理はなかった。
なにせ、なのはときたら。
それこそ、風呂に入るとき以外、ずっとレイジングハートを持ち歩いているのである。
寝る時だっていつも腰に付けて寝るのだ。
―――なんと羨ましい。デバイス冥利につきるではないか。
実際には、どんなときに襲撃されてもいいように、というなのはの用心なのだが、それすら<オモイカネ>にとっては羨ましく思えた。
―――どうにかして、自分の扱いをあの、糞生意気な宇宙一最悪性悪デバイス(略してRH)より上にせねば――――。
かくして、全次元最良デバイス(自称)<オモイカネ>による、おぺれーしょんが始まった。
ざあ、と言う水音。
せまい個室のなかに反響するシャワーの水滴―――その反射音。
ベージュ色のタイルに、水がついてはつう、と流れ落ちる。浴槽のない、シンプルなシャワールーム。
降り注ぐのは、暖かと言うよりも、熱い部類に入るであろう温度の温水だ。
ざああ、と、排水溝に流れ込んでいくシャワーの水が、なんだか自分の身体の汚れを洗い流してくれたようで―――ひどくほっとした。
水滴が形の良い乳房の谷間を通り抜け、美しく流線を描いている腰のくびれ――鍛えている証拠だ――を流れ落ち、尻の丸みをおびた表面を伝って足を濡らした。
自分は、生きている、そう実感できた。
す、と手を後ろに伸ばし、尻の柔らかな肉を、摘む。ほっそりとした指に摘まれ、歪む尻。
痛み。
ああ、確かに痛みを感じる。
生きている証に、胸の内を蝕む虚無が、少しだけ鎮まる。
降り注ぐ水を口に含む―――無味乾燥な感覚。何の味もしない。感じられるのは、そこに液体がある、ということだけ。
水を吐き出し、口元をぬぐう。
(何をやっているんだろう、私は)
味覚があの男によって破壊され、もう無い事など当たり前のことではないか。
わかりきったことなのに―――まだ諦めきれずにいる。
なんて愚かしい。
自嘲しつつ、鏡に映る己の姿を眺める。
整った顔立ちに、背中まで伸びた――腰まで伸ばすのは邪魔なのでやめた――栗色の艶の良い髪。
水に濡れた髪が、白い肌に張り付き、妙に艶だった。
もっとも本人は、そんなこととは露ほども思っていないが。
鍛えられた身体――人体強化技術の被検体となっていた、忌まわしい記憶。
世の男どもが見れば、溜息を洩らし見入りそうな程美しいそれも、女にとっては復讐の道具であり、もはや変わり果てた過去の残滓だった。
髪を洗うこともせずに、女はシャワーを止めた。シャワーを浴びるのは、今日で二回目だったからだ。
一回目―――夕食後にルーテシアの髪を洗ってやったのを思い出す。
女―――高町なのはとルーテシアは、どちらも髪を長くしているため、案外時間がかかった。
髪を洗ってやるときばかりは、無表情なルーテシアの顔も緩んでいたことを思い出し、少し微笑む。
今、なのはは深夜にシャワーを浴びていたところだった。
何故、二度も浴びたかと言えば、悪夢を見たからだ。
クロノに助け出された頃の自分―――制御しきれない力の生んだ惨事。
跳ね起きたときには、既に隣のルーテシアは寝静まっている時刻。彼女を起こさないように、よろよろと床に足をつけ、
ドア――本来は艦長室として使われていた部屋のものだ――を開いた。
シャワールームを目指し、歩いた。
汗でべとべとになった身体を、洗い流そう――そう思い、シャワーを浴びたのだった。
不意に、背後―――曇り硝子ごしに、何かが視界を横切った。
「レイジングハート?」
脱衣室に置いておいた相棒のデバイスに呼びかける。赤い宝玉の返答。
『マスターッ!この若造が妙な真似を……』
『貴方は黙っていてください、ロートル』
『何ですって!この若輩者が―――』
聞こえるデバイス同士の口論。目を細めて、神妙な顔で呼びかける。
「………<オモイカネ>?」
ギク、と何かが立ちすくむのが、手に取るようにわかった。勢いよく硝子戸を開け放ち、全裸で仁王立ちする。
見れば、掃除用ロボット――広い船内を隈なく掃除するための魔法技術の知恵の一つだ――が、アームでなのはの着替えを保持していた。
うぃーん、と音を立てて、気まずそうにセンサーがこちらを向き――なのはの服とレイジングハートを持ったまま、全力で出口へ向けて走り出した。
「あ、<オモイカネ>!待ちなさい!!」
『マ、マスタ―――ッ!』
レイジングハートの悲鳴じみた声。
バスタオルを引っ掴み、体に巻いて固定すると、なのはは着る物も着ずに、走り出した。
掃除ロボット――<オモイカネ>の操作するそいつから、レイジングハートと着替えを取り戻すべく。
「どうしてこうなるの?!」
色々<オモイカネ>なりに思うところがあったのであるが、そんなことはなのはの知ったことじゃない。
ものすごい速力で走り出し―――ずっこけた。肝心なところで、運動音痴が発動したらしい。
バスタオルに包まれた、柔らかい体が床にぶつかり、たわむ。
『マスタァァァ―――ッ!!』
いたたた、という声とレイジングハートの悲鳴が、虚しく船内に木霊した。
かくして、アホらしい追いかけっこが始まった。
おぺれーしょん、「地位向上作戦」開始。
その頃のルーテシア。紫の髪をベッドに垂らし、
「うーん………なのは…」
いい感じで爆睡していた。
ドスコイ!
投下終了です。
尻が書けたのでなんかもう素敵な気分(尻派の人)。
ほのぼのも書ける様になりたいですー。
尻っていいよね?!(と、胸派が多そうなところで言ってみる)
すげえ和んだぜGJ
GJ
でも俺は尻好きではあっても尾?骨辺りが好きな所だぜ。
・・・うん、変態です。
和んだ、そしてシャワーシーンが大好きなんだGJ
182 :
魔装機神 ◆BbNMlcrDFw :2008/04/16(水) 19:49:21 ID:ThQLcLRJ
おそばせながらGJでした。
そしてお久しぶりです。
パソコンがぶっ壊れて、しばらく投下することができませんでした。
そして、書いていた数話分の書き溜めも消え、憂さ晴らしに小ネタを書いたので10時ごろに投下してもよろしいでしょうか?
再セットアップでトリも新しくしています。
すんません、下げ忘れてました
んー、自分もゴジラクロスが書けたので投下したい所存。
魔装機神氏さえよろしければ、8時30分頃にしたいのですが……どうでしょうか?
私は10時からの投下ですので気にせず投下してください。
左様ですか。ではお言葉に甘えて、先に投下させていただきます。
今回はちょっと実験というか、新しい書き方に挑戦してみた感じ。では次レスより始めます。
支援
魔法少女リリカルなのはFINAL WARS ミッドチルダ3〜摩天楼戦〜
機械を剥き出しにする無骨な艦橋の中心で、オリヴィエは怜悧に命令した。
「追尾弾、発射」
「放ちます!」
火器管制が即座の復唱。直後、大型モニターが放たれた大量の弾頭を映す。弾頭群は弧を描きながら夜空へ伸び、爆炎と轟音を解放した。
光明が闇夜を一瞬照らし、眼下の高層ビル群を浮かばせる。それと共に、眼前の巨影も。
「………………………」
この船艦、ランブリングに勝るとも劣らない巨大さ。鳥に似たその影に、オリヴィエは表情を歪めた。
「艦長、やはり駄目です!」
喚く副官。しかしオリヴィエは振り向かない。
「ラドンの超音速は、それだけで攻撃力が発生するんです!」
超速の飛行は空気を切り裂き、速度に比例した空気圧を生み出す。物理的な接触は、特に後方から近付こうとすれば、巻き込まれて砕かれる。
攻撃に転化したその速度は、超音速衝撃粉砕波、と俗称されていた。
「物理兵器では当たる前に砕けて……」
「では、光学兵器を使うか?」
オリヴィエの問いに副官は口ごもる。そんな様子を尻目にオリヴィエは、
「プラズマメーサー砲、放て」
命令。弾頭群と同様に、即座の復唱で稲妻が放たれた。
光学兵器はその名の通り、光速の攻撃だ。しかし、
『キュゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォ―――――――――ンッッ!!』
避けた。
鳥型の巨影は、その身を翻して稲妻を回避する。
「奴等には光学兵器も通じん。耐えられるし――何より避けられるからな」
常軌を逸した空間把握能力と察知能力。
そして、勘。
「――イカレてるッ!」
「全くだ」
あまねく生物の頂点に君臨する生物こそが、怪獣と呼ばれるもの。その本能は計り知れない。
副官程に感情を出さず、だがオリヴィエも同意する。
……こんな奴等を相手にせねばならんとはな……
そもそも次元航行艦が追いつけないという時点であの翼竜、ラドンの脅威は押して知れる。
オリヴィエは決して怠慢ではない。が、だからと言って無謀ではない。これ程までに能力差があっては、どんな策を練ろうともランブリングでは太刀打ちでないだろう。
……どうする……?
一見すれば冷静に、しかし内面は全力でオリヴィエは思考していた。
この怪獣を押さえつけ、眼下の市街、ステーツを護る方法を。
「艦長!」
「どうした」
策敵担当の船員がオリヴィエを呼ぶ。何ごとか、と振り向き、
「レーダーに、ラドンとは異なる反応があります!」
「何? モニター、反応座標を映せ」
ランブリングともラドンとも異なる第三者。その正体を確かめるべく、モニターが現れた座標を映す。
そこにあったものは、一騎の翼竜だった。
「ラドンの同類か!?」
「いや、違うな」
オリヴィエ達が追っているラドンは、闇に紛れる暗褐色の表皮だ。しかし新たに現れた翼竜は、夜空に映える純白。加えてその大きさはラドンより一回り小さい。
「機動六課で飼われていると聞く竜だな」
「……では」
ふむ、と呟いたオリヴィエを副官が見やる。オリヴィエは顎に手を当て、
「艦速減衰。別命あるまで、ラドンとの間合いを取れ」
「艦長!?」
副官が目を剥いた。
「一体なぜ……」
「貴様は知らんのか? 一年後に再臨するというゴジラ……それに対抗する為、管理局は怪獣を使い魔にする計画を立てたらしい」
あの白い翼竜は怪獣捕獲部隊の駒だよ、とオリヴィエを続ける。そして、
「化物を捕らえるには化物で、という事だろう。……それに巻き込まれてたまるか」
船艦ランブリングとラドンが飛行する高度、それよりもやや高い空域をフェイトは飛行していた。その眼前には、魔法で作った小型の空間モニターがある。
映し出すのは、眼下を飛行する怪獣の姿だ。
「……ラドン」
暗褐色の表皮。両翼関節部にある三つ指。豊満な太ももと胸部。そして牙のある嘴と、悪鬼の様な形相。資料において幾度も見た、翼竜型の怪獣がそこにある。
「速い」
音速を超える飛行速度に、ランブリングの弾頭群は命中前に砕かれ。
鋭敏な察知能力と勘に、光速である筈のメーサー砲は避けられた。
フェイトは、自分達がラドンに回された理由を理解する。
……あの速度に対抗出来るのは、私達だけ……
機動力と飛行戦力。それを重視したものこそが、フェイトの率いるライトニング分隊だ。
「………………………」
僅かに息を吐いて空間モニターを消し、フェイトは振り向いた。
自分の隣にはガリューが伴い、後方にはエリオとキャロを乗せた翼竜、フリードリヒが追随している。
予定の編隊が崩れていない事を確認し、念話を発動。
『……じゃあ、作戦内容を確認するよ』
意識に響く声が、この場に居ない部下も含めて全員に届く。
『今回の目的はラドンの捕獲。私とエリオとガリューで攻めるから、キャロとフリードは援護。その間にルーテシアとクモンガは仕掛けをお願い』
『了解』
隊長の指示に部下達は応じ、だがその中にキャロの声は無かった。
「………………………………………………」
フリードの手綱を握るキャロは、俯いて黙したまま。
見やるフェイトは僅かに表情を歪め、しかし立場上それを許す事が出来ない。
『キャロ』
『……了解、しました』
無理に捻り出したその声に、フェイトは歯を噛む。
……本当は…………
こんな事はキャロやエリオに、そしてなのは達にさせたくなかった。特にキャロは自然保護隊の出身、怪獣捕縛とはほぼ対極に位置する人間だ。
何より、ヴォルテールを殺されて尚ゴジラを恨まない彼女に、復讐を強いる様な真似はしたくなかった。
「――でも」
管理局でも数少ない竜召喚師として、キャロの能力は必要だった。
怪獣と戦うこの任務において、少なくとも怪獣が捕獲出来るまでは、強大な竜の戦闘力は不可欠だ。
「………ごめんね」
何度目かも解らない独白を漏らして、フェイトは頭を振る。
無理矢理にでも意識を切り替え、
『総員――準備!』
指示を下した。
「………………………ッ!!」
音のない叫びをあげ、ガリューは戦闘形態を発揮。両肩部から触手が伸び、両腕からは角が露出する。
続く戦闘準備はエリオの肉声。
「ストラーダ、フォルム2!」
『Du¨senform!!』
エリオの命で槍型デバイスは変形、穂先の外装が展開し、無数の噴射口が露出した。それらは推進力を放ち、フリードから飛び降りたエリオを強引に飛行させる。
そうして二人は散開。これで飛行戦力は4つ、この場にいる全員がラドンと戦える様になった。
「……フリード」
そして、キャロが従者の名を呼ぶ。覇気の無い声に、フリードはキャロの姿を横目にする。
「私は大丈夫だから」
依然として力の無い声、
「……お願い」
それでも、主の指示にフリードは従事した。
牙を有する口が多量に空気を吸い、フリードの胸部が膨らむ。戦闘準備の完了にフェイトは目を伏せ、しかし叫ばれた。
「――作戦開始!!」
まずの起こりはキャロの指示。
「ブラストフレア!」
そして攻撃。吸い込んだ酸素を燃料にフリードが炎球が放つ。数にして4つの赤熱がラドンへと降り注ぐ。
「キュゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォ――――――ッッ!!!」
光明と熱量にラドンが炎球を察知、即座に行動を取った。
行動の名は、回避。
「キュゴオオオオオオオオオオオオオオオオ」
一撃目は潜り込んで、
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」
二撃目は回り込んで、
「オオオオオオォォォォォォォォォォォォォ」
三撃目は身を浮かして、
「ォォォォォォォォォォォォォォォォォォ―――――――――――――――――ンっッっ!!!」
そして四撃目は、加速によって回避した。
減速でも迂回でもなく、真っ向からの回避こそ王者の威厳。
「ブースト!」
全回避を見届けてキャロは魔法を行使、能力を加圧するブースト魔法だ。ケリュケイオンから無数の閃光が伸びてフリードの口内、蓄積された炎塊へと飛び込む。
「――ブラストレイ!!」
加圧を受けて炎は柱となった。一筋の紅がラドンへと迫り、
「キュゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォンッッ!!」
爆撃する。夜空を大熱量が裂き、巨大な鳥の影を浮かぶ。
夜空を歪ませる黒煙と陽炎。それらを突き破り、煙の尾を引いてラドンは墜落していった。
「……ごめんなさい」
その結果にキャロは目を伏せ、伝わりもしない謝罪を呟く。かく言う間にもラドンは落下していき、
『キャロ!!』
「!?」
エリオからの念話に瞠目した。
『あれは違う! ……あれは、墜ちてない!!』
まさか、という思いで見た先のラドンは、確かにビル群へと向かっている。
だがそれは、
「――急降下!?」
重力に恭順したものではない。自らの意思を持って地上へと加速する、ラドンの行動だった。
炎の直撃をカモフラージュに、ラドンはフリードと距離を開けて地上へと迫る。
「フリードッ!」
キャロの指示にフリードは炎球を再発、しかし重力を味方にしたラドンの速度に追い付けない。
やがてラドンは地上へと切迫、ビル群を左右へ押しやる大通りにその嘴を突き付け、
「キュゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォ――――――――――ンッッ!!!」
衝突の寸前で方向転換し、幅広の道路に平行して超低空飛行。
一拍遅れて発生するのは風圧による市街の粉砕、そしてフリードの放った炎球群による火柱だ。コンクリートとアスファルトが断片となって舞い上がり、飛来した火炎が焦土を成す。
「キュゴオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォ――――――――――…………ッ!!」
そんな災害を遥か後方に置き去り、ラドンはビル群の間を往く。
周囲の物体は軒並み砕け、瓦礫は飛沫となって翼竜の後を追いかける。
『キャロ、攻撃を止めて! ビル群の中に入り込まれたら、フリードじゃ対応出来ない!』
ビル群を飛沫へと瓦解させて進むラドン、それを遠目にしてキャロは歯を噛む。
『僕達がやる!』
エリオの主張が届いた直後、キャロは二つの光を見た。
遠くの方からラドンへと、それらはビル群の合間を縫って飛来する。
「あれは……」
幾何学模様を描く二つの光は、やがてラドンへと近付いていく。
その正体は、
「おおお……………ッっ!!」
「……………ッ!!」
ストラーダで突貫するエリオと、両腕の角を突き出したガリューだった。
やがて両者はラドンの進む大通りへと到達し、合流して並走する。
「正面から……!」
追い付けないなら向かっていけばいい、その為にエリオ達はラドンを回り込んでいた。
「おぉ……ッ!!」
「…………ッッ!!」
風圧にエリオとガリューの雄叫びが混じり、応じて加速する。
「キュゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォンッッ!!」
ラドンもまた猛り、加速した。
エリオとガリューの飛来は、ラドンにとって両翼の付け根に命中する軌道だ。ただでさえ高速の彼等と衝突すれば、その切先が翼の基部を破壊するだろう。
「――一閃必中!!」
『Messerangriff』
ストラーダがカートリッジを排出し、穂先に長大な魔力刃を伸ばす。
尖鋭の攻撃力を持つそれがガリューと共に翼へ迫り、
「――え」
「………………ッ!?」
ラドンの消失によって為損じた。
「どこへ!?」
失われた敵を求めてエリオは見渡す。そうして見たのは、天上へと昇るラドンの後ろ姿。
「……今度は上昇を!?」
ビル群の合間に潜り込んだのと同様に、今度は抜け出す為に直角で飛翔。
「本当に生き物なのか……ッ!?」
あれだけの速度で直角の方向転換、信じられない程の強靭な肉体だ。全身の血管と臓腑が破裂してもおかしくないGを、あの生命体は耐えていた。否、ものともしていなかった。
「があぁっッ!!」
「………………っッっ!!!」
そして上昇の後に来るのは乱雑な気流、貫かれた大気が大地に叩き付けられた。
天上からの凄まじい圧力に、エリオとガリューは道路を叩き割ってアスファルトに身を埋める。
「キュゴオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォ―――――――――――ンっッ!!!」
敗者達を無視してラドンは天昇、新たな挑戦者との戦いに移った。
否、再戦者か。
「――フリード!!」
遅れて追随していたフリードが急接近、一回りは大きいラドンへ牙と爪を突き立てる。
「キュゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッっッ!!!」
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォ――――――――――――!!!」
二騎の翼竜が吼え、攻め合いながら上昇。
漏れだしたラドンの血が、飛び散るフリードの肉片が、下方へと螺旋状に流れていく。
その様は、絡み合う二匹の蛇にも見えた。
「オオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォ―――――――っッ!!」
やがて雲が浮遊する高度まで達し、そこでフリードが咆哮。
開いた口内にあるのは炎、この至近距離で撃てばラドンにも重傷を与えられる。
「ブラスト……」
キャロもまたブースト魔法を展開、その一撃をより強大にしようとした。
だが当然、ラドンがそれを見過ごす筈も無い。
「キュゴオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ――――――――――ンっッ!!」
「―――――ゴ、オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォっッ!!?」
準備への干渉、ラドンの嘴がフリードの下顎に食い込んだ。
「フリード……ッ!!」
驚愕にキャロが叫ぶ。ラドンの嘴は引き抜かれ、だがそれは終わりを意味しない。
「ゴ……ゴオオオオォォォ………オオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォ…………ッっ!!」
穿たれた穴より陽炎が漏れる。
炎を形成する口の損傷とそれによる攻撃の妨害、激痛に耐えながら攻撃を維持するには、フリードリヒという竜は余りにも幼ない。
妨害と暴走の後に来るのは、暴発。
「オ………………………………………ッ!」
制御を失った炎は口内で炸裂、その威力にフリードの下顎が弾ける。
「フリードぉッ!!」
歯と唾液と舌を飛び散らせ、黒く炭化した上あごと喉を露出させ、フリードは脱力した。口内の爆炎と下顎の破砕を受けて意識を喪失する。
意欲を失った者に速度は冷酷。食い込む爪も引き剥がれ、フリードは風圧のまま落下していった。
「キユゴオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォ――――――――――――ンっッっ!!!」
挑戦者の排斥にラドンは勝利を吼え、至ったのは雲より上の空域。
空での戦いを制した者だけが辿り着ける、勝利者の世界だ。
しかし、
「……撃ち抜け雷神ッ!!!」
「―――――――――――――――!!?」
いた。その超高度より更に上に、最後の挑戦者がいた。
それは月光を背に受け、雷電の大剣を振り下ろすフェイトの姿。
「ジェットザンバァァァァァァァァァァァァァァ―――――――――――――――っッ!!!」
巨大な刃がラドンに叩き付けられる。
右の肩と胸で大剣を受け、ラドンは金髪の挑戦者に押しやられた。
漂う雲を抜けて月を見失い、白雲の筋を引いて地上へと落下させられる。
……大した力だ!!
愉快だ、とラドンは思う。
白い翼竜に乗った娘が、翼を貫こうとした小僧と人型虫が、そしてそれらを打ち据えた自分に挑みかかる、剣を振りかざした挑戦者が。
矮小な身でありながら自分に挑みかかってくるその行いを、愉快だと思う。
……この人間、待ち受けてやがった!!
おそらくラドンがビル群を飛び、小僧や人型虫と戦っている間に昇ったのだろう。
それを不意打ちとは思わない。挑戦者は汗水を垂らしてあらゆる手段を使い、王者の裏をかくのが義務だ。
「ああああああああああああああああ…………っッっ!!!」
否、不意打ちを除いても、自分を押しやるこの攻撃力は賞賛に値する。
さながら隕石のように両者は落下し続け、やがてビル群へと至り、
「「「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」
飛散。
衝撃と轟音と噴煙、隕石が墜ちたかの如き災害。
アスファルトは大地と共に割れ、砕けたビル群の破片と共に瓦礫の流星群となって被害を広げる。
落下地点はめくれ上がった大地により、火山が築かれた。
だが、それでも終わらないのが闘争だ。
「キュゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッッッ!!!!」
噴煙を裂いてラドンは現出、瓦解した都心へと飛び出した。
それを追う者も同様に現出する。
「――ソニックフォーム!!」
噴煙を裂いた金髪の挑戦者、その姿は先ほどと違っていた。
白い羽織は失われ、今は体の輪郭に従順な薄地のもののみがある。
……高速化のつもりか!? 真っ向から挑むというのか!!
ますます面白い、とラドンは思う。
……来い!! 来いよ挑戦者!!!
ラドンは加速。
追って挑戦者も加速。
互いしか見えない高速の世界に突入する。
「――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――」
ビル群が掠れ、
「――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――」
音が感じられず、
「――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――」
視力と勘と意思のみが働く世界。
「――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――」
その中で、
「―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――っ」
血肉を削って絡み合うのみ。
「――ぁ――――――ぁ――――――――――お――――――ぇ――ぁ――――――――ぁぉ――――ぉ」
掠れる。
「―――――ュ―――――――――オ―――――――――ォ――――ォ――――――――ッ――――――」
自分さえも。
純然な。
速度と。
なる感覚。
「――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――ぇぁ」
剣閃。
攻撃。
回避。
「―――――――――ゴ―――――――――――――――――ォ―――――――――――――ォッ―――」
翼振。
反撃。
迎撃。
「ぜ――――――――――――――ぇ―――――――――っ―――――――ぁぁ―――――――――――」
撃。
避。
撃。
防。
撃、避。
撃、防。
撃、撃。
撃、妨、撃。
妨、撃、撃、避。
撃、撃、避、撃、妨。
妨、避、撃、避、撃、撃。
「「―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――ッ」」
鳴。
撃、避、妨、撃、撃、避。
撃、避、妨、撃。
妨、避、撃、撃、離、撃、撃、迫。
撃、避。
妨、妨、避。
撃、妨、避、撃。
雷、避、撃。
避、風、撃、妨、撃、避、避、撃、妨。
撃、妨、妨、妨、撃、避。
撃、撃、妨、撃、避、撃、妨、撃、避、雷、風、離、迫。
撃。
撃、離、雷、避、撃。
撃、撃、撃、撃、避、撃、妨、撃、妨、妨。
避、撃、撃、妨、撃、避、撃。
撃、離、迫、撃、撃、撃、撃、撃、離、迫。
撃、避、避、撃、避、撃、妨、迫、撃、離、風、雷。
撃、撃、撃、撃撃、撃撃撃撃撃、撃撃撃撃撃撃撃撃撃撃撃撃撃撃撃撃撃撃撃撃撃撃撃撃撃撃撃撃撃撃撃撃撃撃撃撃撃撃撃撃撃撃撃撃撃撃撃撃撃撃撃撃撃撃撃、撃―――――――――――っっっ!!!!
「「――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――」」
吼えて。
攻めて。
応じて。
避けて。
防いで。
また攻めて。
なにより、飛ぶ。
速度のままに。
その化身となって。
その権化となって。
誰よりも前に。
全てを抜けて。
全てを蹴落として。
最先端に。
前に出る、その為だけに。
相手を負かす為だけに。
飛ぶ。
「――――――――――――――――――――――――ぁっ」
悠久と思ったその戦いにも、終わりは来た。
挑戦者の苦鳴だ。
「ぁ――――――――ば――はっ―――――――――――?ぁっ―――ぁっぁ――――ぇぁ―――――――」
血と汗と涙と鼻水と唾液に胃液。その他種別不明の液体が、挑戦者のありとあらゆる穴から漏れだす。
そして速度が衰えていく。
……限界か……
挑戦者の体はあくまでも人間のもの。ラドンと正面から速度で戦って、長時間持つ筈が無い。
……惜しかったな!!
「キュゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォ――――――――――――ン!!!」
ラドンは吼える。お前はここまでだ、と。
それが通じたのか、顔を歪めた挑戦者が加速する。
「あああぁ…………っッっ!!!」
最後の、全力をかけた速度。長い金髪が散り、千切れた皮膚が血と水を蔓延させた。
だが確かに、挑戦者はラドンへと到達する。
「ふ……っ!」
ラドンの背に挑戦者は着地、無防備なこちらへと大剣を振り上げ、
……易々とはいかんよッ!!!
「――――――――――――――っッっ!!!?」
ラドンは加速する。
自分が出せる最大速度、それに急回転も加えた。
それは最早、怪獣大まで巨大化した弾丸に等しい。
「……っ! っっッっッ!! ………っッっ!!!」
圧倒的な重圧がラドンに、そして挑戦者へと絡みつく。その威圧に、挑戦者は喋る事も剣を出来ない。
それでも挑戦者はこちらを踏みしめて耐えようとし、
「キュゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォ――――――――ン!!!」
「――あ」
意地も空しく、挑戦者は風圧のままに後方へと吹き飛ばされた。
「キユゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッっッ!!!」
最後の敵も撃破し、ラドンは勝どきを思う。
そして羽撃いて天昇、再び高空へと舞い戻ろうと、
……何……ッ?
翼が開かない。というよりも身動きが取れない。まるで縛られているかの様に。
……拙いッ!
速度を補給しなければ飛行は維持出来ない。やがてラドンの体躯は次第に放物線を描き、
「キュゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ―――――――――――――――――――――――――――――――――――っッ!!!!」
落下した。
超速の接地に停止は有り得ない。地上、アスファルトを割って地に抉り、周囲を破砕しながらラドンは進行。
「ギュゴオオオオォォォォ……ッッ!! ゴッ!! キュゴオオオオオオオオオォォォォォォォォォォ―――――……ッッ!!!」
擦過と粉砕によってラドンの体躯は皮と肉を削ぎ落とし、骨格を剥き出す。
……一体、何が……ッ!!?
擦過する内にラドンの体躯はつっかえ、宙へと浮き上がる。
そこへ一つの巨影が到来した。
「ケキュ」
それは巨大な蜘蛛だ。八脚を伸ばして飛来するその頭上には、紫の髪をした人間の娘。
「クモンガ、最後の捕縛を」
娘が呟いた瞬間、蜘蛛の口が糸を噴射した。滝にも似た威圧にラドンは叩き落とされ、地上で跳ねる事も無い。
絡みつく糸の粘着力の為だ。
……これのせいか……ッ!!
粘質な感触に、ラドンは拘束感の原因を突き止めた。
おそらくビル群に、目視出来ない程に分散した蜘蛛の糸を張り巡らせていたのだろう。一本では拘束力にもならないが、何百何千と浴びれば話は別だ。
……おおおおぉぉぉぉ…………っ!!!
理解した瞬間にラドンを埋めたのは、憤怒の情だった。
「ギュゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォ――――――――ン!!!」
今までの戦いは挑戦ではない、自分をこうして嵌める為の作戦だったのだ。
……戦っていたと、そう思っていたのは俺だけという事か!!?
奴等は戦っているつもりなど無かった。ただ、自分を捕らえられればどうでも良いのだろう。
「ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ――――――――――――――――!!!」
怨嗟に吼える。
あの戦いはなんだったのか、と。
あの戦いに何も見出さなかったのか、と。
……貴様等は……貴様等、はぁ………!!!
戦っていると思っていた。
生死と優劣をかけて、血肉の限りを尽くして喰らい合っているのだと思っていた。
……貴様等は、毛程にも思っていなかったか!!
やがて身動き一つ取れなくなり、そうした自分に影が迫る。
大剣を振り上げて舞い戻る、金髪の挑戦者だ。
「あああああああああああああああああああああああああああ…………っッっ!!!」
掲げられた大剣に雷が落ち、雷電の刃が完成する。
……俺に突き立てるか! そうしてまで勝ちたいか!! 俺に敗けて尚そうするか!!!
それは勝利者の権限だ、と思う。
全戦全敗の貴様等が、積み重ねた敗北によって俺を押し倒した貴様等が、それをするのか。
……滅びるがいい人間め!!
迫る刃と女に、ラドンは怨嗟する。
……“奴等”の到来にも気付けず、我らを卑劣に殺す愚族め!!
「プラズマッ!! ザンバァァァァァ――――――――――――――――――――ッッッ!!!!」
死ねよ、と。死んでしまえよ、と。
その思いを抱いたラドンの胸に、大剣は突き立てられた。
瓦礫へと腰掛けたフェイトは、思わず眉をひそめて鼻を塞いだ。
周囲に立ちこめる悪臭の為だ。
「……………………………………………………」
高熱が肉を焼いたような、生物が炭化する臭い。その源をフェイトは仰ぎ見る。
視線の先にあるのは、全身を黒く焦がしたラドンの体躯だ。ランブリングの船底から伸びた巨大な碇がラドンに突き刺さり、少しずつ引きずり上げていく。
「…………っ」
剥き出す白濁とした目に睨まれた気がして、フェイトは顔を背けた。
『……ラドンの捕獲を確認。作戦を終了します』
念話を繋いでエリオ達に連絡。お疲れ様、と労いをかけるが、それが本意でない事は声色から窺える。
『エリオ、キャロとフリードは?』
『一足先に戻りました。フリードには治療が必要なので』
戦中でフリードの下顎が弾ける様を、フェイトはその目で確認していた。あれだけの重症だ、先んじて撤退したのも理解出来る。
『エリオとルーテシアも、もう戻っていいよ』
キャロの所に行ってあげて、と言えば、了解と共に念話が切れた。
子供達がこの場所を離れた事をフェイトは確認し、別所へと念話を送る。その先は、
『――なのは』
遠地に現れたアンギラスへと向かった、高町なのはだ。
『ラドンの捕獲を完了、こっちは終わったよ』
『……うん。私の方も、さっき終わった所』
どうやら向こうもアンギラスの捕獲出来たようだ。それが良い事なのか悪い事なのか、判断出来なかったが。
それから幾つかの情報交換。フリードの重傷、ジェットジャガーの損傷、都市の破壊。
得てしまった被害は甚大だ。
『でもこれで、怪獣の数は揃ってきたね。』
『うん。あとミッドチルダにいる怪獣は、キングギドラとジラの2匹』
『……多分、はやてちゃんはキングギドラを狙うと思うよ』
変わってしまった友人の名をフェイトは呟く。
『ジラはイドニア周辺に棲んでるみたいだけど、詳細な情報は無いし。わざわざ所在不明の方を探す位だったら、強くても所在のはっきりした砲を狙うよ』
キングギドラ。
ゴジラに比類するとされる、金色の三ツ首竜。
『……そうだね。アンギラスとラドンも、それに合わせて調整しないと……』
その言葉を切っ掛けに、両者は押し黙る。自分達が捕獲した二匹の行く末を連想した為だ。
『じゃあ、切るね。隊舎で会おう』
『うん。……じゃあね』
なのはとの念話を切断してフェイトは息を吐く。
万感の思いを込めた吐息に、言葉が伴った。
「――こんな戦いなんて、やりたくないに」
投下終了。
戦闘描写はちょっと冒険っつーか、やった事の無い書き方に挑戦してみました。ちなみにランブリング艦長さんのオリヴィエって名前は、自分的にイメージの近かった某ハガレンの北方女将軍の名前を借りました。
これでよーやく話が一区切りついた訳だけど……それまでに4ヶ月以上かかるってどういう遅筆さ自分………。
次は、いよいよキンキラキンに輝く三ツ首の憎らしいアンチクショウが登場。
『魔法少女リリカルなのはFINAL WARS・ミッドチルダ4〜千年竜王〜』をお楽しみに。
次回もリリカルマジカル、キルゼムオールで頑張りますっ。……この作品でこれはシャレにならんな……。
……圧倒されました。GJ!
ラドンがカッコいい……そして高速戦闘の表現が凄まじい……
面白かったです。なんか凄い、としか出てこなかった。まとめの前のやつ、もう一回読んでこよう。
ただ、ただ……
>「――こんな戦いなんて、やりたくないに」
最後の誤字、ってのがゲーメストの「確かみてみろ」を思い出した 何でもない
連続ですみません、確か2、3日前深夜に多重クロスを投下しようとして、「此処のルールは30分後です(意訳)」と教えられまして撤退したものです。
確か魔装機神氏が十時投下で、なのは×終わクロS氏の投下終了時刻から推測しまして、
投下は九時二十分ごろからの予約でよろしいのでしょうか?
あと、一応後ろのつけました。
おk。がんばれ。
了解しました、という訳で次から行きます。
月光が等しく地に住む者を優しく照らし出す夜、世間は俗に言うクリスマスイヴ真っ最中である。
恋人と愛を語らい、家族が幸せな団欒を形成する時間に、何故かどちらにも当てはまらずに外で一人佇んでいる少女がいた。
八神はやてという少女は、かすかに吹きすさぶ北風を浴びながら、
(やっぱり、誰もおれへんなあ……)
日のある時分は大勢の子供や家族連れ、それに老人達の幸せな声が響き渡るだろう、公園という名の空間も、月が出てしまえばただ木々の擦れる音のみが支配する静寂の世界へと変わってしまう。
誰もいない事が分かっていて、それでも誰かがいることを心のほんの片隅で期待して、誰かと遊べる事を期待して。
そんな小さな、吹けば消えてしまいそうな願いから、普通の子供は家族と夕食を囲っているだろう時間帯に、年端も行かぬ少女がたった一人で公園にいる理由であった。
ならば昼に来て、子供達と遊べばいいではないか―――彼女の肉体に何もなければ、とっくにそうしていただろう。
彼女は車椅子に座っていた。八神はやては、原因不明の病気によって両足が動かず、小学校にも通えず通院と入院、そして自宅で独り暮らしの繰り返しを繰り返していた。
当然、本来学校で出来るはずの友人は作れず、更に両親もすでにこの世には無く、自然独りぼっちの生活になる。
加えて十にも満たぬ年の少女がそのような状況では酷と言わざるを得ないが、彼女は年齢にあるまじき気丈さで周囲には平気なように振る舞う。
それでも、一人になってしまえば、つい愚痴をこぼしてしまうのは、年齢から考えると仕方の無い事だった。
誰かと一緒にいたい。誰かと友達になりたい。せめて、誰かとおしゃべりをしたい。
八神はやてはその希望を口に出さない。足の病で方々に迷惑をかけているのに、これ以上わがままを言ってどうするのか。そんなことは、できない。してはならない。
そう思っていた。思わざるを、得なかった。
故に、その代償行為か、はたまた何かを求めてか、彼女は一人、公園の闇を行く。
こんな日に、誰もおるはずあれへんのに、と自分の思考で自分を傷つけながら。
「あれ? うんっと……何やろ?」
暗かったから、だろうか。子供一人の体重を支える車輪の音しかしない公園の砂場に、舞台の主役が浴びるスポットライトみたく街頭の光をその身に受けて光る、小さな石のような、もしくは宝石のような丸っこい物体。
それに気付いたのは偶然か、はたまた都合の良い運命の悪戯か。そんな事は毛頭関係無く、はやては近づいてそれを拾い上げる。
おもちゃのようではあるが、それにしては安っぽくはないようにも見える。かといって高級かと言われると、そこまでは行かない気がする。
そんな想像をしながらも、光を受け、真紅の反射を見せるそれをはやては摘まみ、君もおいていかれんたんか? と問いかけた。
せいぜい、子供が遊びに来たときにお気に入りの石を持ち出し、そのまま落としていって忘れていったのだろうと考える。
特に返答は期待していなかったのだが、まるで意識があるかのように石は鈍い輝きをもって答えた。
「なんや、生きてるみたいやなあ、ピカピカ光って」
指に、無機質な物体らしくないほんのりと暖かな感触すら感じ、はやては珍しいものを見たと胸を弾ませる。
「うわ、ほんまにただの石やないみたいや。持ち主においていかれて、こんなとこほったらかしでおったら、寂しないか?」
―――私やったら、寂しいわ。
つい、本音の欠片をこぼしてしまう。
慌てて羞恥に辺りを見回すが、もとより公園にはひとっこ一人おらず、木々のざわめく音や風のなる音、そしてはやてと赤い石のみ。
そういえばそうだったと、ほうと胸を撫で下ろす。
そんなはやてに石は、まるで何かを訴えかけているかのように赤く明滅する。
それが彼女には、何の音も聞こえていないのに慰められているかのように感じられていた。
「もう、心配せんでもええよ。石田先生もおるし、今でも十分幸せやから。……ううっ、ちょっとさむなってきた」
ただでさえ冬で、しかも夜で、そして自分は病人。風邪を引いてはいけないし、そろそろ夜も遅くなってくる事から、帰る事を選択する。
「また石田先生に怒られてまうからな、危ないって」
と、赤い石をポケットに入れ、車椅子を反転させようとして、
「―――っと、ととっ……あれ?」
目の前の茂みから飛び出してきた、少年が一人。青い髪で高校生ぐらいの体躯を包む貧相なコートはよれよれで、所々傷や泥だらけであり、必死の表情を貼り付けていた顔と相俟って、何かからの命からがらの逃亡者を連想させた。
突然の事にはやては驚きに固まることしか出来ず、一方少年は何でこんなところに人が、といった程度の驚きだったが、
「オラァ、何処行きやがったクソガキぃ!」
「くそ、街三つも追いかけさせやがって!」
「落ち着け、所詮子供が一人だ。手分けして探せばどうにかなる!」
更に後ろから聞こえるダミ声などに即座に反応、少年は少女にどうこうする余裕もなくキョロキョロ辺りを見回し、跳躍。
スパイダーマンよろしく近くに生えている木々の枝元―――高さ5メートル程度に一発で着地。そして、枝葉に身を遮らせるようにして隠れた。
「えっと……なに、あれ」
いきなり開催された万国ビックリショー(出演者一名)に、ようやく意識を回復したはやては、まずそう呟く。
次に何を喋るべきか迷ったところで、後のダミ声集団らしき者達三人組が続いて茂みから姿を現した。
あからさまに怪しい大柄の黒スーツに、顔には大小なり傷。おまけに目付きがとても悪く、漫画やドラマでしか見たことの無いはやてであっても、一発でその手の人と直感できた。
即ち、ヤクザor借金取り。
(あんな人、ほんまにおるんやなあ)
思わず現状を肯定できず心中で呟くと、
「おい、そこのガキ!」
「えっ! ……あの、私のこと、ですか?」
「他に誰がおるねん、ええ!」
「ご、ごめんなさい!」
支援
「まあええ、さっきこっちに、青い髪の貧相な顔の貧相なガキが逃げてけえへんかったか!?」
「隠すとためにならんぞ!」
一昔前のドラマのチンピラのようなだったが、年若いはやてには中々刺激が強かった。言葉を途切れ途切れにしながらも、相手を怒らせないようにすばやく返答する。
「あ、あの、私の前の茂み、さっきおじさんらが来た方向から、ピューンって逃げました」
「ちっ、まだ逃げてやがるのか!追うぞ!」
子供の親切に礼も言わず、車椅子の側を駆け抜けていく男達。そのダミ声と足音が聞こえなくなってから、ようやくはやては胸を撫で下ろす。
「はあ、ほんま驚いたわ。けど、さっきの人は何したんやろ?」
見つけたら全身の部品を細切れにして輸出してやるいわれとったけど、と首を傾げる。子供には分からない世界に浸していた思考は、先ほど少年が隠れた辺りの木々からの声で断ち切られた。
「……あの、そこの方、ありがとうございます」
「え? ……ああ、気にせんでええよ。もう降りてきて、大丈夫ちゃうの?」
「そうですね、では失礼します」
と、約五メートルの高さを一発で跳躍した少年は、やはり何の躊躇いもつかえもなく、一気に飛び降りて着地した。
確かにさっきの男の言うように貧相ではあったが、格好はともかく顔はそう貧相ではないのではないか、と第一印象。まあ、幸の薄そうではあるが。
「ありがとうございます、おかげで助かりました。けど、どうして嘘をついてまで?」
「ええとな、あまりにビックリしてもうたから、つい。せやけど、嘘はついてないで」
「え、どうしてですか?」
「私はおじさんが来た方向から逃げた言うたけど、後ろに逃げたとは言うてないし、ピューンって上に逃げたのはほんまやし」
少しの、沈黙。やがて、その意味に気付き、
「ああ、なるほど」
「けど凄いなあ、あんな高いところへひとっとびやなんて。まるでスーパーマンか何かみたいや」
はやてが素直に賞賛の瞳を向けると、少年の顔に何故陰が射し、
「ええ……怖いお兄さんがたに追いかけられる生活を十年以上も続けてたら、自然と身に付きますから」
僕ってそんないいもんじゃありませんから、大体全身拘束抜けとか密室からの脱出方法なんて知ってて何の役に立つんですかと、どすの利いた小声で呟き出すハヤテに、少女は着ぐるみネズミの中の人の、裏の哀愁じみた顔を見た気がした。見たことはないが。
ともかくこの話は危険と判断し、はやては、そうだ、話題を変えよう! とばかりに違う話を持ち出す。
「そ、そういえば、お兄さんの名前は何て言うの? ここで会ったのも何かの縁やし、教えて欲しいな」
少女のハヤテに対する警戒心はとうに無くなっていた。もとから第一印象が「怖い人に追いかけられていたかわいそうな変な人」だったので、殆んど無かったとも言えるが。
「僕ですか? 綾崎ハヤテと言います」
少女に視線を合わせるため、そして疲れた身体を休めるため、ハヤテは近くのベンチに腰を下ろす。ようやく肩の荷が降りたかのように、大きくため息をついた。
「ハヤテ……さん? 奇遇やねえ、私もはやてって名前なんよ。八神はやてって言います」
「そうなんですか、確かに奇遇ですねえ」
まさか名前の由来―――借金取りからはやてのごとく逃げられるように名付けられたってとこまで一緒じゃないでしょう、とはハヤテは尋ねられなかった。そんな両親は自分だけで十分である。
「ところで、なんであんな怖い人に追いかけられてたん? なんか借金がどうのこうの言われてたけど」
「いやあ、クリスマスイヴに両親が一億五千万ほど借金を作りまして、返せなくなったからって僕をあの人達に売ったんですよ。流石に永遠に海の上の生活とか、突発的対自動車衝突後金銭要求職人とか、人体分解輸出は嫌なので、逃げてきました」
本当にどんな神経してるんでしょうねあの親は、はははと笑う少年ではあったが、はやてはどん引きして、いや、そこ多分笑って終わらせたらあかんと思うんやけど! と心中で突っ込むしかなかった。
「けど、もうさっきの人を撒いたから、安心できるんやないですか?」
「ええ。けど、家も仕事もお金も無くなってしまいましたから、まずはどれかを見つけないと」
「えっと……当てはあるんですか?」
「とりあえず、風雨の凌げる場所なら何でも良いですね。
そういえば、逃げてくる途中でいい廃ビルを見つけましたから、そこ……で……」
話はそこまでだった。ハヤテは急速に自分の足元が崩れ落ちる錯覚に襲われた。
膝が地につく。身体が落ちるのが止められない。視界を黒のカーテンが遮り、意識が何か白いものに食い荒らされていく。
無理もない事だった。ハヤテ自身は気が張っていて先程まで気付いていなかったが、両親の浪費癖と傍若無人、そして自分の生活の確保と言う責任を双肩に何年も背負い、
その上今日一日は肉体労働のバイク便のアルバイト→未成年である事がバレてクビ→追い討ちで両親が自分を売った借金取りからの休む間もない逃亡という行動に、肉体も精神も悲鳴もあげていた。
その結果、美少女と会話する暇があるのなら、さっさと休めと身体と心がラインダンスを踊りながらストライキを決行。結果、ハヤテは意識を失い、無防備に地面に倒れ伏す。
「わーっ、どないしたんや! 大丈夫……やなさそうや!
落ち着いて、こう言う時はなんかで聞いた……メディック、メディーック!
ってちゃうわ! 石田先生呼ぼう!」
二人の一連の様子を、遠目で観察している者がいた。
茂みに隠されていて姿は見えないが、その者の目は確実に一点を見つめていた。慌てて携帯を取り出して操作し始める、少女のポケット。否、その中の赤い宝石―――レイジングハートを。
(見つけた……)
その影が起こした感情は、安堵。
自分の国からこの世界に来た際うっかり無くしてしまい、魔力反応を頼りに探していた。それが無いと『目的』の達成が非常に困難になるところであったが、幸いにも『目的』ごと確認に成功できた。
即ち、彼女―――八神はやてこそが、その者の目的の協力者(予定)にして、魔法の杖『レイジングハート』の適合者となるべき者なのだ。
あとは、どうやって説得すればいいものか。それを考えながら、影は静かに姿を消した。
痕跡も何も、残さぬまま。
一方、その出歯亀とは全く別に、もう一人の観察者が別の茂みに隠れていた。尤も、こちらは観察者ではなく、どちらかと言えば目撃者であったのだが。
こちらの感情はといえば、憤慨と義務感であった。前の観察者とは違い、こっちは二人の台詞や行動に注目していた。
一億五千万の借金を背負わされ、親に捨てられた少年が夜、誰もいない公園にて幼女と出逢い、そして今車に乗ってきた妙齢の美人女性―――恐らくは先程幼女が使っていた携帯で呼ばれた女性によって、幼女ともども車に連れ込まれる。
「いかん……いかん、な」
これは非常に憂慮すべき事だ。モラルの崩壊、現代社会の闇がまさに目の前に現れている。
人間は何十年経っても進歩はしないらしい。これがゆとり教育の弊害と言うものか!
支援
例えばあの男のように、一人の家無し少女を手込めにしてからと言うものの、次々と現れる女性を我が物にし、ひとつの家でハーレムを築きあげるロクデナシのロリコンペドフィリア・オポチュニスト(学名)になるかもしれない。
あるいは夜な夜な怪しげな飲食店で店員を勤めながら、そこのバイ店主や筋肉オカマに愛を囁かれるようなアブノーマルな男になるかもしれない。
どちらにせよ、彼は現代社会の被害者なのだ。大人たる自分が、導いてやらねばならない。
他の人間が聞いたら頭に膿が湧いているのかと呆れるか、それとも某新聞のように事実を歪曲するなと怒り出すかという考えを頭に思い浮かべながら、目撃者―――男は首のネクタイをキュッと締め直す。
大体こちらは見知らぬ時代に飛ばされて四苦八苦しているというのに、あの少年は家無き子ながらいきなり寝床を確保しそうな勢いである。
ようするにちょっとした嫉妬も混じっていた。男の嫉妬は最低である。
「……ふむ」
男は何かを思い付いた、むしろ思い出したかのようにニヤリと笑うと。
目にも止まらぬ早さで、後方に腕を振るう。
「くうんっ!?」
こっそりと近づいていた殺気だった野犬をボールペンの投擲で威嚇し、鼻歌を歌いながらその場を去る。
野犬が縄張りを荒らす者がいたから近づいてきたとか、鳴き声が犬の場所とは違っていたとか、その鳴き声がむしろ狐みたいであったという事は、男には一切関係なかった。
その顔は、いいアイデアを思い付いた顔。巻き込まれる者の事を考えない、一方的なアイデア。
元敏腕企業戦士にして、現在はただのホームレス。
広田(高屋敷)寛は、再びいい感じでネジが緩んでいた。
そして、目が覚めた。
「あ、おはようさん。大丈夫なん?」
「えっと……ここは?」
昨晩とは全く違う、まるで病院着のような姿で、ハヤテは自分がどこかのベッドで眠っていたと理解した。
だが、ここは何処だ? と困惑する問いの答は、今さっき声をかけてきた者が返す。
「ここは海鳴の病院や。あの時急に倒れたから、知り合いのお医者さんに頼んで運んで来てもろたんや。さ、石田先生呼ばなね」
「びょう……いん……?」
一瞬ハヤテはぼおっとした頭のまま、某K1ファイターのように「お前は何を言っているんだ」と考えたが、すぐに何やら事態が急転している事を理解し、頭を必死に回転させる。
某一休の思考効果音が三つほど脳裏で流れ、彼はすぐさま行動を起こす。
この行動力の素早さこそが、今まで親無しで生き延び、金を稼ぎ、借金取りから何度も逃げ切り、学校にすら通えた原動力である。
ついさっきまでぶっ倒れて気絶していたのが信じられない行動のスピードに、車椅子に乗っていたはやては必死で身を起こし、しがみつくのがやっとであった。
「ちょっと待って、何処行く気なん!? いきなり立ち上がって!」
「逃げるんです」
「何でっ!?」
「保険証もお金も持ってないのに、病院の世話になんかなれませんよ!」
「そやけど、さっきまで倒れてたのにいきなり動いたら危ないですよ!」
「大丈夫です! 身体の丈夫さはインパルスガンダムぐらい自身がありますから!」
「それは微妙に不安やっ! せめてアカツキにしとき!」
どちらも結局不安な、引く事の無い押し問答―――まさかベッド上に立ち上がる自分の足にしがみつく幼女を容赦なく蹴り飛ばして逃げるわけにはいかない―――を繰り広げていると、おもむろにノックも無しに病室の扉が開かれた。
「話は聞かせてもらったわ―――」
「な、なんだってー!?」
「…………」
言葉を遮られるような突然の返答に、新たなる客はどう答えればいいのか分からずに口をパクパクさせ、
ハヤテはハヤテで思わずお約束の形で突っ込んだものの、まさか沈黙と硬直が返ってくるとは思わなかったので、今では無視して窓から飛び降りたほうがよかったかなと反省している。
はやての方はその客にして自分の主治医である真面目そうな石田医師が、まさかそんなネタじみた事を行うとは思いもよらず、呆然とするしかなかった。
名誉の為に弁護するとすれば、彼女ははやてが呼ぶより早く病室前を通り過ぎようとしたところ、偶然物音と揉める声を聞きつけ、たまらず部屋に突入しただけだった。決して狙ったわけでは無い。
その沈黙の三すくみは、近くを通ったとあるちっちゃな銀髪少女医師の、「皆さん、何をしているんですか?」という声がかかる約十分ぐらいまで継続していたという。
どうして、こうなってしまったのだろう?
彼女の考えることは、ずっと同じ場所で巡り続けていた。一つの事しか、考えられなくなっていた。
どうして、戻れなくなってしまったのだろう? どうして、お兄ちゃんを感じ取れないんだろう?
どうして―――世界を移動できなくなってしまったのだろう?
頭が狂っている、と思うかもしれないが、彼女の言う『世界』とは、本来の言葉の意味の世界とは違う。
小さな子供が自分の住む場所が一つの世界、それ以外は他の世界だと思っている事が時たまあるように、彼女もまた、自分の行ける場所がそれぞれの別々の世界だと思っていた。
本来はひと繋がりの世界である、様々な場所。ネオン輝くビル群、巨大な軍基地、狼の眠る草原。彼女は想えば、一つの世界の中ならどこにだって行ける。
ただ時々、そうほんの時々ではあるが、全世界がコンピュータに統率された世界や、剣と魔法のファンタジー世界など、本当に世界の壁を越えてしまうことも、たまにある。
そんな時でも、彼女は『兄』の存在を感じとり、元の世界へと帰還する事は可能だ―――壁を越えた事にも気付かず。
だと、言うのに。今はそれが出来なくなっている。
彼女は気付いてはいないが、兆候はあった。どこかの世界で不思議な石を―――虹色のような白のような光る石を、この世界に飛んできた直後に拾った。
小さな女の子のようにそれをキレイだと考え、拾った。しかし、手に掴んだ筈の石は、まるで雲か霞を掴んでいたかのように、いつの間にか跡形もなく消え去っていた。
兄を感じ取れなくなったのは、その直後。彼女が気付いたのは、その後しばらく経ってから「ここは兄のいる場所ではない」と考えた時。
困った。彼女はまず困る事を選択した。
闇雲に歩き回ってもどうしたらいいか分からないし、泣いても喚いてもどうにもならない事ぐらいは、彼女にだって分かる。
そもそも、うっかり「泣いたり喚いたり」してしまうと、色々危ないという事もおぼろげながら理解していた。
だから、困っておく。そして、考えることにシフトする。
「あっ……」
すると、気付く事がある。いや、思い出したというべきか。
支援
そもそも自分の姿は、意識すれば誰にも見えなくなってしまうではないか。
以前にお話した『誰か』の言葉によると、自分は姿も見えず、『レーダーもセンサーも反応しない』のだとか。
見られようと思わないのであれば誰にも見つからないのなら、心配事は無かった。
近くにあるベンチに座り込み、青いワンピースに包まれた未成熟な身体を横にして、
「くぅ……すぅ……」
水坂憐は、いつも狼の住む草原でそうしているように、少し疲れた身体と心を昼寝で休ませる事にした。
寝心地は決していいとは言えないが、ついうとうとする心地よさに負け、ついには眠りについた。
目が覚めたら、次の事を考えようと決めて。
以上、一話目終了です。
題名は考えてますが、微妙なので考え直しています。
クロスはA'sとハヤテのごとく、家族計画とXrossScramble、あと一個ぐらいです。
では、失礼しました。
乙
知らない作品もあるけど、家族物になるのかな。
難しいだろうが続きもがんばってな。
>>212 乙です。
11時くらいになりましたら投下します。
Daydream氏
ちょいとまちなされぃ。つぎは魔装機神氏の番だぜよ?
>>215 わかりました。すいません。
たくさんの投下で活気がありますなw
>>216 ちょっと聞いてほしいんだけども、
氏はきちんとテンプレを読んでいるのかね?
最低限のことはきちんとしておかないとさ。
最近いろいろ(盗作とか)あったから
あまり外れた行動してると厳しい目で見られてしまうぞ。
そこのトコ皆も気をつけていかないとね。
>>217 うんにゃ、30分空けるとかはテンプレに入ってない。予約が見れなかっただけでしょう。
……思ったが、30分ルールもテンプレに入れた方がいいかもしれんね。
>>218 そうですね。
出来ればそうしていただける初めてのものには、わかりやすいですね。
次の方の投下は、十時ぐらいといっていたようですけど間違いではないですか?
>>219 来ないね。
結構待ったし、はじめちゃっていいんじゃない?
それでは投下します。
あらすじ
突如、謎の学生の女子に襲われたスバルは重傷を負う。
相手が、何者か分からないが、嫌な予感を感じた八神はやては、
元機動六課メンバーの一部を招集し、これに対して速やかに対処することとなった。
第1話 騎士と人形〜強襲〜
八神はやて率いる元機動六課のメンバーで集められた部隊は、スバルを襲った謎の女子、そして彼女の背後関係を洗う状態にあった。
「…今日もお見舞いか?なのはちゃん」
はやては、窓ガラスの向こうベットに横たわるスバルを眺めているなのはに声をかけた。
なのはは、包帯を巻かれ、点滴をうたれ眠っているスバルを見つめたまま
「スバルは、私が教えたんだもん。簡単になんかやられるはずない」
「……そやな」
はやては、なのはとスバルたちが毎日繰り広げていた練習を見ているから、その言葉の意味が分かる。
なのはは悔しいのだろう。
彼女がこんなにも無残に負けてしまったことが。
「2人ともいらしてたんですが」
なのはとはやてが振り返るとそこには、かつて機動六課であり、スバルのパートナーであったティアナがいた。
三人は、スバルの好きな食べ物を置いて、病院のフロアに移動した。
「ありがとうございます」
なのはから渡された紅茶を受け取るティアナ。
「……まだ管理局でも一部上層部しか知らん話や」
ティアナははやての話を真剣な表情で聞いていた。
はやてはティアナに事情を話した。
同じ部隊にいた仲間、そしてなによりもパートナーであったスバルがあんな目にあったのだから。
「…なのはさん!私も、私も部隊に加えてください!!お願いします」
「そういう思うたわ…なのはちゃん」
はやてはなのはを見る。
「ティアナ……スバルがいない分もがんばれる?」
「はい!!私だって…スカリエッティ事件を解決した1人です」
ティアナはなのはの目から視線を外さずに告げる。
その目にはもう…最初の頃の新人の不安は見えなかった。
「……決まりだね」
「ありがとうございます!」
「それやったら早速手続きをして…」
はやてがティアナにそう説明を始めたとき…、はやてに緊急の通信が届く。
「どうしたん!?」
その向こうからの声にはやては唇をかみしめた。
はやては電話を切ると、なのはとティアナを見る。
「敵襲や、先越された…急いで戻るで!」
管理局本局内…
あたりは炎に包まれている。赤くすべてを燃やし尽くす…。
あたりは逃げ惑う人々、そして敵襲に対して、対抗する人々で混乱している。
消火作業を行うが、巨大な竜の前には、それはなすすべもない。
「召喚士を集め、対抗しろ!!相手は一匹だぞ!」
部隊長が大声を出し、指示をする。しかし次の瞬間召喚士がバタバタと倒れていく。
「な、なんだ!?なにがあった!」
「…おバカさん…1人だけで来るとおもったのかしら?」
声は聞こえるが、その姿は見えない。
「どこだ!どこにいる!!」
「目の前にいるわ」
召喚士の隊長が声の方に目をやると、そこには人形があった。
その人形は宙に浮かぶと、巨大な黒い羽を現し、召喚士を見る。
「なんだお前は!!なんのために、こんなことを!!」
「うるさいわね。そんなカッカしちゃって…乳酸菌とってる?」
「貴様ぁ!!」
しかし、その召喚士も、ゼロ距離の無数に襲い掛かる羽の前に避けきれず打ち倒される。
「相手にならないわ…所詮は無能な人間。魔法を使えようが使えまいが…かわらないわ」
「…やってくれたな?誰かと思ったら、人形とは笑わせてくれるぜ」
バカにしながら笑う、人形の前に、立つもの…それは、ヴィータ。巨大なハンマーをかついで、頭をかく。
「精巧で穢れをしらない私と、あなた達のようなゴミクズを比べてほしくないわ」
「人形がお喋りなことだ」
ヴィータは、人形にむかってかまえる。
「踊りなさい…愚かな人間」
人形は漆黒の羽から次々と羽を飛ばし、繰り出す。
ヴィータはそれらを巨大なハンマーであるグラーフアイゼンで、それらごとなぎ払う。
「そんなちゃちな攻撃が通じるか!!」
彼女の巨大なハンマーはあたりをぶち壊しながら人形を追いかける。
「ちっ!愚かな人間が考えそうな、美しさもなにもあったものじゃない攻撃ね」
人形はそのハンマーを身のこなしと小ささからかわしていく。
一方、巨大な竜を倒すために、シグナムとフェイトは屋上にへと向かっていた。
炎があたりを包み込む。あの竜の攻撃は、今は行われていない。
どういうことだ?本部施設の破壊が目的じゃないのか?
建物の屋上に出るシグナムとフェイト……。
そこにいるのは巨大な竜の上に乗る女子…あれがスバルをやっつけた相手。
「…何が目的かは知らないけど、ここまでやってくれた以上、ただで返すわけにはいかない。覚悟をすることだね」
「あなた達の相手は、別の人が行うわ」
その女子はフェイトたちの後ろを見る。
「!?」
シグナムとフェイトが振り返るとそこには白髪…そして黒いよろいに身を包んだ女子がいる。
肌も白く、髪の毛を後ろで結んでいる。
そして彼女は大きな剣…彼女の身長の半分ほどはあるだろうものを屋上の地面に突き刺していた。
「左様、そなた達の相手は私…騎士王が相手をしよう」
「ほぉ……貴様も騎士を名乗るか!ならば、この私が…騎士として勝負を受けよう」
シグナムもまた、相手と同じように剣を向けた。騎士王と名乗るものは微笑み、剣を地面から引き抜く。
「よかろう…騎士の恥じにならぬよういい働きをして見せることだな」
「なめるな!!!」
シグナムは一気に相手との間合いをつめると、剣を横に振るう。
「甘いな」
シグナムの太刀を軽く持った片手の剣で受け止められる。シグナムは再び距離をとる。
騎士王と名乗るものは、鋭い目でシグナムを見定める。
「それが騎士の太刀裁きか?随分と舐められたものだ」
「…」
シグナムは相手の言葉に表情を変えないが、剣を握る手に力がはいる。
「…感情に支配されては大局的に物も見えぬまま…死ぬことになるぞ?」
「!?」
一瞬だった、シグナムの視界から姿を消すと、騎士王はいつのまにか後ろに立っている。
シグナムは剣を振り、相手を自分から引き離す。
騎士王は屋上の手すりに立つと剣をかまえた。
「剣を振るうというのは、こうするんだ」
目の前の騎士王は、炎を背景に立ち、そして剣を振るう。
「エクスカリバァアアアアアアアアアア!!!」
「くぅぅ!!」
シグナムはその気迫と、強大な邪気に押されながらも、襲い来るそれを受け止めようと、身体を固めた。
相手の剣は早くは無い…だが、受け止めたシグナムはその重みと、勢いに、足が床にめり込み、崩れ始める。
「うわぁああ!!」
「シグナム!!」
火災で脆くなった足場に、シグナムは、耐え切れずそのまま下の階に落ちてしまう。
崩れゆく建物の中…残ったのはフェイトだけ…。
「…はぁあああ!!」
勝ち誇った顔をしている騎士王にたいして背後から強襲するフェイト。
そのフェイトの太刀を、まるで後ろにも目がついているかのごとく受け止める騎士王。
「くっ!?」
「それほどの力で、私に勝てるとでも思ったか?」
騎士王はフェイトをなぎ払う。
黒きマントをなびかせながらフェイトは宙を回転し、着陸すると再び剣を構えると、瞬時に姿を消す。
「なっ!」
騎士王の目でも追いつけないほどの早さ。
フェイトが次に現れたのは、騎士王の下。
「バルディッシュ!!!」
巨大な剣…ライオットザンバーをかまえ、真下から一気に、足に体重をかけ、頭上にめがけ飛び上がる。
対する騎士王も巨大な剣をかまえたまま、振り下ろす。
「エクスカリバァアアアアア!!!」
だが、既にそのときには勝利がついていた。
下から上にあがる力は、勢いも加わり、エクスカリバーの力を凌いでいた。
それは騎士王であるものの、相手に対する完全な油断から生じたものに他ならない。
爆音とともに、屋上は衝撃で崩壊が始まる。
「お、おのれぇ……この私が遅れを取るとは」
騎士王は崩れ行く中、大きく息をつく。かなりのダメージを与えたが、相手は厚い鎧も着込んでいるために、一撃が足りない。
それでも鎧は崩れ、相手の肌が見えている。
「…話を、聞かせてもらうよ」
フェイトは、膝をつく騎士王に迫る。
しかし、そのフェイトは後ろから炎の竜を操る女子の攻撃で頭をうちつけられ、意識を失ってしまう。
「まだ、彼女をやらせるわけにはいかないわ」
意識を失ったフェイトを、女子は竜に乗せたまま、飛び立とうとする。
「待って!フェイトちゃんをどこに連れて行く気なのかな?」
それは間に合った高町なのはたちだ。
既に変身をしたなのは、ティアナ、はやてたちは、あたりの状況の凄惨さに愕きを隠しきれないでいた。
「…それをあなたたちに教える義務は無いわ」
「返してもらうよ…レイジンクハート」
なのはは、そういうとレイジングハートを両手で持ち、かまえる。
魔法陣が彼女の周囲に展開され、レイジングハートから数本の弾頭のようなものがはじき出される。
「フェイト・T・ハラオウンがどうなってもいいの?」
「……あなたを倒さないとフェイトちゃんが帰ってこないなら…私は」
レイジングハートの先端に光が集まりだす。制服を着た女子は、フェイトを持って巨大な炎の竜の後ろに下がる。
「カグヅチ!」
雄叫びをあげた竜は、腹部から巨大な閃光を吐き出そうとする。それはスバルを瀕死に追いやった攻撃…。
なのはもそれに負けじと、巨大な閃光を集め、そして解き放つ。
「スター…ライト、ブレイカァアア!!!」
双方の巨大な閃光がぶつかる会い、それはすべてを飲み込む1つの光となった。
ここまで。
出展【舞HiME】【ローゼンメイデン】【fate stay night】
>>228 型月・・・か。
さんざんに言われないよう祈るぜ。
それと、GJだスネーク。
>>229 げっ…知らなかった。
移動したほうが無難か?
ってここまで書いといてなんだけど。
多重クロスか… しかも型月もクロスさせるなんて
大丈夫か?
止めておいた方が無難だなぁ
型月自体には何の恨みもないが、びっくりするほど火種になり易いんだよね
儲&アンチ諸共に、信じられないほど性質が悪いんだよ・・・
それを覚悟したうえであえて修羅の道を往くというのであれば、何も言うことはありますまい
『男ならやってやれ!』だぜ! 後は野となれ大和撫子!
>>232 最後の二行は余計。
真面目な話、その文面じゃここが荒れる事を歓迎していると取られても不思議じゃないよ。
ここが
>>228の個人サイトだったりしたらそう言う事を言うのもまあ、ありかも知れなかったがね。
>儲&アンチ諸共に、信じられないほど性質が悪いんだよ・・・
んなもん、何処の界隈だって一緒だろうに。
型月の話題出しただけで荒れるってのが確定してる訳でなし。
万が一厨が来ても、一人二人程度ならスルーすればいいだけの話。
>>230 どうでもいいことなんだけど
書き手と住人の距離感てもんがあってな
そこら辺気をつけといて損はないぜ
正直、信者もアンチも性質が悪いのはなのはも同じで(ry
最近新作がこないから、型月界隈は静かな気もする。
過剰反応しすぎ、作品の出来が悪ければ叩かれ、良ければ叩かれない。
それだけの事だよ。
>>212 多重クロスは危険な可能性を秘めていますが、個人的にクロスさせた素材がなかなか面白いと思いました。
特に、ハヤテのごとくとのクロスはありそうでなかった内容ですからね。
同じ名前繋がりのはやてと最初に絡ませたのも、ちょっとした思いつきなのかもしれませんが意外とニヤリと来ますw
As時のはやてとハヤテ絡めたらなんかいいハートフルストーリーできそうじゃね?
ハヤテなら何だかんだのテンションで魔法少女との戦闘もこなせそうですしね。
他のクロスネタはよく知りませんが、バランスと流れさえ上手く操ればどんな作品も面白くなる可能性を秘めていると思います。
まだ序章部分だし、多重クロスへの警戒心みたいなものがあるので、コメントされづらいかもしれませんが、頑張って書き進めてみてください。期待していますw
ハヤテ信者にキャラスレは荒らされてることすら忘れられる不憫長ワロス
作品の出来悪くて多重クロスじゃ火種にしかならんわ。
なぁ、ウロスか本音スレでやろうぜ。俺たちまで火種になりかねない。
もうなってるよ、見ていて不快だもの
243 :
一尉:2008/04/17(木) 12:43:24 ID:fgpjSR2f
おもしろそうクロスたな。支援
こんにちは。
時間の空いたこの隙に、天元突破第4話、投下させてもらいます。
目を開けると、書類と機材とよく分からないガラクタの山の中にいた……。
また、ここで夜を明かしてしまったらしい。
時空管理局技術開発部、第六特別分室――通称、螺旋研究所。
数ヶ月前に配属された新しい職場の、真新しい自分のデスクの上で、シャリオ・フィニーノは大きく背伸びをした。
背中に掛けられていた毛布が、その拍子に床に落ちる。
「……起きたか」
研究室の奥、壁面に設置された巨大モニターの映像を眺める上司が、振り返ることなくシャリオに声をかける。
気付かれる程の音は立てていないのに……上司の感覚の鋭さに、シャリオは内心舌を巻いた。
「しょちょー、何観てるんですか?」
気安そうな声を上げながら、シャリオは上司の隣へと歩み寄った。
答えを期待していた訳ではない……現にこの男はシャリオの問いに、沈黙を返すだけだった。
モニターの中では、シャリオの友人兼元上司――フェイトがムガンの大群と激しい攻防を繰り広げていた。
フェイトの紹介でこの男――第六特別分室室長、ロージェノム・テッペリンの助手になってから数ヶ月が経つが、シャリオは未だにこの新しい上司に馴染めずにいた。
技術者としての力量の高さや異常とも言える知識の深さは、今のシャリオでは足元にも及ばない……その点は素直に尊敬出来る。
しかし能力と性格が等しく信頼に値する人間は意外に少なく――元上司のフェイトとその愉快な仲間達は殆ど全員が該当しているが――それはこの男も例外ではない。
寧ろロージェノムの場合、シャリオが今まで出会ったどの人間よりもその傾向が顕著なのである。
アクが強いと言い換えても良い。
普段は周りで何が起きよう顔色一つ変えないのに、妙なところで突然熱血のスイッチが入る……この男の「ツボ」とでもいうべきものが、シャリオには全く理解出来ない。
今も、モニターに送られてくる戦闘映像――ムガン相手に苦戦するフェイトの姿を見ながら、この男は眉一つ動かさない。
自分は不安と心配から今すぐにでも目を逸らしたい位だというのに……。
この人にとってもフェイトは知らぬ中ではないだろうに……冷徹とも言えるロージェノムの態度に、シャリオは内心嘆息を漏らした。
自分の気に入ったものを地面の下に埋めるという上司の迷惑な性癖も、何とかして欲しいとシャリオは思う。
これは最近になって気付いたことであるが、この男はやたらと何かを地面に埋めたがる。
貴重な文献、研究成果、最新型の機材、思い出の品……この男の暴挙によって意味もなく土の中に葬られたものは、数えるだけで嫌になる。
ロージェノム曰く「万が一の時のための未来への遺産」らしいのだが、未来よりもまず今に目を向けて欲しいと切実に思う。
事態に気付いたシャリオの必死の発掘作業――おかげでせっかくの休暇が潰れた――によって一部のものはサルベージに成功した。
しかし未だ多くの要救助者がミッドチルダ中の地下に眠っていることは間違いなく、そしてシャリオの目の届かぬところで新たな犠牲者が出ている可能性も否定出来ない。
それは例えば螺旋力を利用した新型の次元転移装置。
そして例えば……。
「何、これ……?」
突然の地面崩落に巻き込まれ、地下空洞に落ちたスバルは、目の前に広がる信じ難い光景に思わず呟いた。
隣のティアナも同じような顔をしていることから、どうやら「これ」は夢でも幻でもないらしい。
20mは落ちたようだが、バリアジャケットのおかげで自分もティアナも擦り傷程度の怪我で済んだ。
それだけは――否、もしかしたら「これ」も――不幸中の幸いだったといえるだろう。
……何故、自分達がどれだけの深さまで落下したのかが解るか?
簡単である――今、自分達二人の目の前に佇む鋼の巨人が、大体それ位の大きさなのだから……。
「これって、ガンメン……?」
呆然と呟くティアナの声が、スバルの鼓膜を震わせる。
ガンメン……ああ、確かにこれはガンメンのようにも見える。
しかし今自分達の見上げているこの一本角の巨大ロボは、少し前まで自分達の戦っていたガンメンとは何もかもが違う。
ムガンに比肩する程の機体の巨大さ、人間と同じようなプロポーション、……尻尾。
そして何より……人間では頭部のあるべき場所に、顔がもう一つ付いている。
完全に人型をしているのだ、この黒い機械の巨人は……。
スバルの懐のペンダントが、これまで以上の輝きで脈動する。
その光はアンダーウェアを透過し、地下空洞を淡く照らす。
「スバル……アンタ、何か光ってるよ……?」
ティアナの指摘にスバルは胸元に手を突っ込み、懐のペンダントを引っ張り出した。
鎖の先に繋がった小さな金色のドリル……その鼓動が、輝きが、更に激しさを増していく。
その時、目の前の巨大ガンメンが突如動いた。
二人の前に跪き、腹の辺りにある「口」が、頭頂部付近のハッチが、音を立てて開く……!
まるで、主を受け入れるかのように。
「まさか、アタシ達に乗れって言ってるの……!?」
驚愕の声を上げるティアナに、巨人は何も答えない。
ペンダントを握り締め、無言で巨大ガンメンを見上げていたスバルが、その時、静かに口を開いた。
「ティア……乗ろう」
「スバル!?」
瞠目するティアナの答えを待たず、スバルは巨人へと歩み寄る。
「きっと上では、あの試験官の人がムガンと戦ってる。あたしが行っても、きっと足手まといにしかならない……ティアの言うことは正しいよ。
だけどあたしとティアと、そしてこの子が力を合わせれば、きっとあの人の助けになれる。きっとあたし達は、何かが出来る……!
そう思うんだ……根拠は無いけど」
淡々と語るスバルの背中が、何となく普段よりも大きく、頼もしくティアナには見えた。
そして……ティアナも覚悟を決めた。
「……上等よ、やってやろうじゃない。アタシ達をパイロットに選んだ幸福を噛み締めながら、馬車馬のように働きなさい」
強がるような笑みを浮かべ、ティアナはそう語りかけながら巨人に近づく。
そしてスバルが頭部の、ティアナが腹部のコクピットに乗り込む。
頭部コクピットの正面、シンプルなコンソール下に、小さな円錐状の窪みをスバルは見つけた。
ちょうどスバルの握るペンダントと同じ位の大きさである。
一瞬の躊躇もすることなく、スバルは窪みにペンダント――コアドリルを差し込んだ。
その瞬間、黒いガンメン――ラゼンガンの二対四つの眼に、光が灯った。
「ラゼンとラガン……この子、二つのガンメンが合体して出来てるんだ」
ラゼンガン頭部――ラガンのコクピットで、スバルはウィンドウに表示した機体データを見ながら呟く。
左右の操縦桿に触れた瞬間、この機体のあらゆる情報が直接頭の中に流れ込んできた。
機体と感覚を共有したと言い換えても良い。
ともかく、今の自分ならばラガンを――ラゼンガンを手足のように自在に動かせる。
スバルはそう確信していた。
それはラゼンの操縦席に座るティアナもきっと同じだろう。
「二人合わせてラゼンガン、格好良いじゃん!」
見た目は思いっきり悪役だけどねーと笑うスバルの前に、ティアナからの通信ウィンドウが開く。
『呑気なこと言ってないで、さっさと地上に出るわよ』
ティアナの言葉にスバルは首肯を返し、左右の操縦桿を握り締めた。
スバルの思考をトレースして、ラゼンガンは大きく身を屈める。
「てりゃああああぁっ!!」
スバルの気合いと共にラゼンガンが跳んだ。
天井を突き破り、一気に地上へと躍り出る。
「あれは……ラゼンガン!?」
突如地下から現れたラゼンガンの姿に、フェイトは驚愕の声を上げる。
いったい誰が乗っているのか……それ以前に何故、ラゼンガンがここに存在しているのか?
螺旋エンジンの構造解析のため、ラガンは半年前に分解された筈である。
首から下の部分に至っては、回収すらされずに廃棄処分されたと聞いている。
しかし今、ラゼンガンは完全な形でフェイトの前に確かに存在していた。
困惑するフェイトの胸中を知ってか知らずか、ラゼンガンは妙に人間臭い動きで、フェイト――正確にはその向こうのムガンへと走り寄る。
『どいてどいてどいてぇぇぇーーっ!』
『道開けて下さい危ないですからぁぁぁーーっ!』
ラゼンガンが上下二つの口を開き、若い少女達の声でフェイトに呼びかける。
その勧告につい道を開けたフェイトの傍を、漆黒の巨人は颯爽と駆け抜けていく。
唖然とラゼンガンを見送るフェイトに、その時、一つの通信が入った。
虚構の街を疾走するラゼンガンは、手近なムガンへと拳を振り上げ、
『よくも散々追いかけ回してくれたなパァーンチ!!』
――殴った。
『円盤の分際で調子に乗るなキィーック!!』
――蹴った。
「ティア! 一気に決めるよ!!」
ウィンドウに映る相棒の顔を横目に見遣り、スバルは操縦桿を握る両手に力を込めた。
コンソール中央の渦巻状のゲージが勢い良く回り、まるで咆哮を上げるように機体の全身が駆動音を轟かせる。
ラゼンガンの右掌から突き出したドリルが、手首と融合しながら肥大化し、腕と一体化しながら巨大化し、まだまだ成長を続けていく。
ラゼンガンの全長よりも更に巨大なドリルが、まわる、回る、廻る……!!
「ギガドリル――」
スバルの咆哮と共にラゼンガンは走り出し、殴りつけるようにドリルを突き出した。
唸るドリルがまず一体目のムガンを貫き、続いて二体目と突き破り、そして三体目、四体目……まるで止まることを知らぬように、敵を食い尽くしていく。
「――ブレイク!!」
敵陣を貫通し、名乗りを上げるラゼンガンの背中を、無数の爆炎が赤く染め上げた。
「乙女心が天地を穿ち、魅せてあげるわ底力! 覚悟合体ラゼンガン、あたし達を誰だと思ってる!!」
格好つけるように右腕のドリルを一振りし、即興で作った口上と共に決め台詞を口にするスバル。
……まだまだ敵は沢山残っているということを、スバルはすっかり失念していた。
隙だらけのラゼンガンの背中に、ムガン達が一斉にビームを叩き込む。
敵の集中砲火にラゼンガンはあっさりと吹き飛ばされ、スバルはコンソールに頭をぶつけ、ティアナはシートから転げ落ちた。
「ぁ痛たたた……もう! シートベルトくらい付けときなさいよ、このポンコツ!!」
したたかに打ち付けた頭を擦りながらティアナが憤慨する。
『うぅ〜、鼻打った……』
スピーカー越しに聞こえてくるスバルの情けない声に、ティアナの中で何かが切れた。
「こんっの、馬鹿スバル! 馬鹿だ馬鹿だとは思ってたけど、遂に二度ネタなんて馬鹿な真似にまで手を出して……アンタはどれだけ馬鹿なのよ!?」
『ご、五連発!?』
どうでも良い部分に瞠目するスバルを眼光一つで黙らせ、ティアナはシートに座り直した。
左右の操縦桿――ラガンのものとは形が違う――を握り、機体の制御をスバルから奪い取る。
「あのメカクラゲ……もう許さないんだから!!」
クラゲは違うでしょーとツッコミを入れるスバルを無視して、ティアナは己の十八番――幻術魔法の術式構築を始めた。
ラゼンガンの隣にもう一体の『ラゼンガン』――幻術魔法によって創られた虚像――が出現し、二体のラゼンガンの左右に更に新たな『ラゼンガン』が生まれる。
四体から八体、八体から十六体……延々と分裂を繰り返す無数の『ラゼンガン』が、ムガンの軍勢を取り囲む。
操縦桿を握るティアナの両手が、じっとりと汗に濡れている。
数十体もの分身の生成――そんな荒業、今まで考えたことすらなかった。
無理だ……頭の中で、理性とも言うべきもう一人が冷静にそう断じる。
お前のような凡人にそんなことが出来る筈が無い、馬鹿なことを考えずにさっさと諦めろ……。
いや、出来る……もう一人の自分からの警告を、ティアナは頭を振って否定した。
確かに自分に才能は無い、無理と言われても仕方が無いだろう――いつもの自分、今までの自分ならば。
しかし、今は違う……ティアナは心の中の自分に叫ぶ。
今の自分は独りではない――ラゼンガンが手伝ってくれる。
無理を通して道理を蹴飛ばす、今の自分達ならばそれが出来る。
自分とスバル、そしてこのラゼンガンが揃った、今ならば……!
「必殺、101匹ラゼンガン全員集合包囲網」
スバルとは違う――静かだが凄みのあるティアナの名乗りと共に、101体にまで増殖した『ラゼンガン』が一斉にドリルを構え、ムガンの軍勢に突撃する。
ムガン達は一箇所に密集し、全方位から接近する無数の『敵』に、手当たり次第にビームを放つ。
まるでウニの棘のように四方八方に伸びる光の軌跡は、しかし虚像の身体を空しく透過していく。
本体は……どこにもいない。
「――と、見せかけて」
突如ムガンの目の前の空間が歪み、102体目のラゼンガン――幻術魔法で姿を消していた本体――が姿を現す。
その右腕で回るドリルが、飢えた獣のように唸りを上げている。
ムガン達は咄嗟に散開した……しかし敵の攻撃を回避するには、ラゼンガンは余りにも間近に接近し過ぎていた。
「真実はいつも一つなのよアターック!!」
ティアナの怒号と共に、ラゼンガンのドリルがムガンの一体を貫いた。
周囲に固まった味方を巻き込んだムガンの爆発が、半壊した虚構の街を地面ごと大きく抉り取る……この一撃で、残存していた敵の半分近くが消滅した。
『ティア凄い!』
ウィンドウの向こうでスバルが目を輝かせ、ティアナの手腕に喝采を上げる。
『――技のネーミングはイマイチだけどっ!!』
「アンタにだけは言われたくないわよ!!」
スバルの余計な一言に猛然と切り返し、ティアナは上空に逃げた敵の生き残りに視線を向けた。
敵の残存勢力は数十体――恐らく五十は残っていないだろう。
襲撃された当初と比べると、随分と減ったものである。
あの程度の数、スバルなら一撃で粉砕出来る……何の根拠もなかったが、ティアナは自然と確信していた。
「スバル、やっちゃいなさい」
『うん!』
絶対の信頼と共に締めを委ねるティアナに、スバルは力強く頷き、
『――それで、どうやって?』
……そう言って困ったような顔で小首を傾げた。
……スバルの言葉に、ティアナの思考はフリーズした。
「……いやいやいや! スバル、アンタ馬鹿ぁ? 空飛ぶなりジャンプするなりしてあいつらの真ん中に突っ込んで、ドリルで一発粉砕すれば万事解決でしょ!?」
再起動したティアナが焦ったようにそう畳み掛けるが、スバルは困ったような顔のまま、申し訳なさそうにティアナから目を逸らす。
『うーん……流石のあたしもあの高さまでジャンプするのはちょっと無理かなー?
それに空を飛ぶって言ってもラゼンに飛行機能は無いし、ラガンのブースターもそんなにパワー無いし……』
スバルの返答に、今度こそティアナの思考は凍りついた。
「じゃあ……手詰まりってこと……?」
『認めたくないところではあるけど……』
硬直したラゼンガンの頭上から、ビームの雨が容赦なく降り注いだ。
支援
「うーん、何か予想外に凄いことになってるなぁ……」
空からネチネチと攻撃するムガンのビームから必死に逃げ回るラゼンガン……。
余りにも情けないその姿を、彼女はラガンゼンの頭上――ムガン達よりも更に高い位置から見下ろしていた。
このままでは、いつまで経っても埒が明かない……ジリ貧とも言える眼下の戦況に、彼女は苦笑いを浮かべる。
「助けてあげよっか?」
そう言って地上に降下しようとする主人に、デバイスは不意に、制止の声を上げた。
≪Wait a minute. My master≫
「え……?」
不思議そうな顔をする彼女の遥か下で、ラゼンガンが新たな動きを見せようとしていた。
「あぁーもう、あのクラゲ共! こっちの攻撃が届かないからって、調子に乗ってバンバン撃ってんじゃないわよ!!」
『だからアレ多分クラゲじゃないって……』
再度入れられるスバルのツッコミを黙殺し、ティアナは上空のムガンを忌々しそうに睨み上げた。
自分達の攻撃はあの高さまでは届かない――スバルの挙げた絶望的な指摘は、その後の様々な試行の結果、覆し難い事実として立証されてしまっている。
ビルを足場に跳んでみた――より高い位置に逃げられた。
誘導弾らしき飛び道具を使ってみた――敵に届く前に撃ち落された。
最終手段として右腕のギガドリルを分離し、素手で思い切り投げつけもした――重すぎたのかムガンまでは届かず、逆に落下するドリルに自分達が潰されそうになった。
あの空飛ぶメカクラゲ共に一矢報いるためには、奴らの逃げられぬ程の高速の動きで接敵し、そして反撃を許さぬ圧倒的な攻撃力で叩き潰すしかない。
速さと強さ――その二つを両立させる「切り札」を、しかし今の自分達は持っていない。
万策尽きた……ティアナは己の無力さに歯噛みした。
『ティア〜、何とかしてよぉー』
情けない声で自分を頼るスバルに、追い詰められたティアナの思考が爆発した。
「うるさぁーい! 馬鹿スバル、馬鹿は馬鹿なりにアンタも何か考えなさいよ!!」
癇癪を起こした子供のように喚き散らすティアナの脳裏に、不意にこれまでのスバルの科白が蘇った。
――ラゼンとラガン……この子、二つのガンメンが合体して出来てるんだ……。
――空を飛ぶって言ってもラゼンに飛行機能は無いし、ラガンのブースターもそんなにパワー無いし……。
バラバラに散らばっていたパズルのピースが、頭の中で重なり合い……、
――ティア……征こうか。
ティアナの中に、一つの「答え」が生まれた。
「スバル……」
モニターの向こうの親友に、ティアナは静かな声で語りかける。
「――何とかする方法、思いついたよ」
ティアナの言葉に、スバルは顔を輝かせた。
『本当!? どんなどんな!?』
期待に満ちた目で続きを催促する親友に少しだけ後ろ髪を引かれながら、ティアナ――ラゼンは頭上のラガンを右手で鷲掴みにし、そして一気に引き抜いた。
『え!? ちょ、ちょっと……ティア!?』
突然の合体解除に戸惑うスバル――ラガンを大きく振りかぶり、
「スバル……逝ってこぉおおおおおおおおおいっ!!」
気合い一発、全力投球――右手に握るラガンを、上空のムガンへと思いきり投げつけた。
「ちょっとティア!? それ字が違ぁあああああああああうっ!!」
非道とも言えるティアナの「何とかする方法」に、スバルは思わず悲鳴を上げる。
しかし親友が託した自分の役割を反射的に理解し、スバル――ラガンは両脚のブースターを点火した。
ラガンの両腕がドリルに変形し、額からも小さなドリルが飛び出す。
ラゼンの腕力にブースターの推進力も加わったラガンのスピードは音速の壁をも突き破り、回避不能の魔弾としてムガンの群れに迫る。
「ラガンインパクト!!」
全身に圧し掛かる苛烈なGに苦痛の表情を浮かべながら、それでもスバルは名乗りを忘れない。
ラガンは更に加速しながら敵陣を突っ込み、その真ん中に巨大な風穴を掘り抜いた。
「あ、あたしを……誰だと思ってる!!」
肩で息をしながら決め台詞を叫ぶスバルの背後で、ムガン達が真昼の花火と化した。
これで敵勢力はほぼ壊滅したが、しかし全てのムガンが破壊された訳ではなかった。
誘爆を免れた一部の生き残りが、未だ僅かであるが存在している。
「もう一度……!」
疲労の色濃く浮いた顔を引き締め、スバルは再びブースターを噴かそうとした。
しかしスバルがペダルを踏み込むよりも、ムガンの動きの方が一瞬早かった。
放たれるビーム、ラガンに――そしてラゼンにも迫り来る死の光。
やられる……スバルは反射的に目を閉じた。
一秒が経過した――予想されるような衝撃は来ない。
二秒が過ぎた――平穏そのものである。
三秒目――まだ来ない。
不審に思い、恐る恐る目を開けたスバルの視界一面に、桃色に輝く光の壁が飛び込んできた。
「防御結界……?」
呆然と呟いたスバルは、その時になって漸く、目の前の虚空に立つ一つの背中の存在に気付いた。
ツインテールに纏められた亜麻色の長い髪、純白のバリアジャケット、そして右手に握る魔導師の杖……どれもスバルは見覚えがあった。
「なのは……さん?」
その呟きに答えるように、なのははスバルを振り返り、そして優しく微笑んだ。
「クロスファイヤー、シュート」
なのはの周囲に光の弾丸が形成され、ムガンを撃ち抜く。
その攻撃に他の生き残りのムガンが一斉に動き出すが、直後、地上から放たれた金色の雷撃によって全滅した。
慌てて地上を見下ろしたスバルは、右手に戦斧型のデバイスを握り、ラゼンを庇うように立つ試験官の魔導師を見つけた。
「よく頑張ったね、二人とも」
そう言って笑いかけるなのはに、スバルは安心したように肩の力を抜いた。
「……まだまだだな」
一部始終を見終わり、ロージェノムはそう口にした。
「あの程度の螺旋力ではシモンはおろか、この私にも遠く及ばない」
淡々と語るロージェノムの言葉には、落胆したような響きも混ざっている……シャリオは何となくそう思った。
「……じゃあ、何で彼女達の好きなようにさせたんですか?」
助けに出ようとするフェイト達を、ギリギリまで引き止めてまで……。
落胆したということは、その分あの二人に何かを期待しているのではないか……?
今し方口にした「まだまだ」という言葉――失望はしてもまだ見放してはいない、まだ何かを期待している……そういうことではないだろうか。
そう問いかけるシャリオに答えることなく、ロージェノム踵を返した。
「じきに客が来る、それまでに少しは身の回りを片付けておけ」
そう言って立ち去るロージェノムを見送り、シャリオは重い息を吐いた。
答えを期待していた訳ではないが、しかしたまには何か答えてくれても良いのではないか。
嫌われてるのかなーと弱音を吐きながら、シャリオは点け放しのままのモニターを再び見上げた。
モニターの中では、スバル達二人がフェイト達と何かを話している。
恐らく、ロージェノムの言う「客」とは彼女達のことなのだろう。
螺旋力に関しては、次元世界の中ではこの螺旋研究所が真実に一番近い場所にある、ロージェノムが一番真理に近い位置にいる。
あのラゼンガンにしても、どうやらあの上司の私物らしい。
どうしてあんな場所に埋まっていたのかは考えたくもないが、その辺りは後でフェイト達が追求してくれるだろう……精々こってりと絞られるが良い。
思考が黒い方向に陥りかけたその時、シャリオは不意にあることに思い至った。
スバル達をここに迎え入れるということは、やはりあの二人に期待しているということではないか。
気に入らないのならばフェイト達に早々に敵を殲滅させ、二人を機体から引きずり出せば済む筈である。
しかしあの男は最後まで彼女達のやりたいようにやらせ、そしてその全てを見届けた。
それがロージェノムの真意なのではないか。
それがロージェノムの自分への答えなのではないか。
「何だ……ちゃんと答えてくれてたんじゃない」
相変わらず解り難い上司だが、少しだけ解ってきたことがあるような気がする。
上司との良好な人間関係の構築に一歩進んだ……そんな手応えを感じながら、シャリオは来客の準備に取り掛かった。
天元突破リリカルなのはSpiral
第4話「二人合わせてラゼンガン」(了)
以上、投下完了しました。
前回GJコールをくれた方々、今回支援してくれた方、この場を借りてありがとうございます。
と、いう訳で……前回予告していた「あいつ」とはラゼンガンのことでした。
グレンラガン登場を期待していた方々、申し訳ありません。
グレンラガンのノリが、リリカル魔法世界に受け入れられるかどうか不安でしたが・・・うわぁ・・・すっげぇ馴染んじゃってるwww
ここまでハマると怖いぐらいだぜ・・・!
そしてお父様渋いよお父様! なんでも埋めるってあーたwwww
てこ入れじゃね?
GJ
ところで、兄貴ポジションのせいでティアナに死亡フラグが…
素晴らしい!!こんなに馴染むなんて思わなかったYO!!
GJです
覚醒合体の名乗りがカッコよすぎる
間違えた。覚悟合体か
熱血っていいですねー、ゲッター書かなきゃ私も。
さて、タフの方舟クロス一話前編、投下OKでしょうかー。
GO!
タフの方舟 理想郷の夢
第一話前編
その日、フェイト・テスロッサ・ハラオウンは、多忙な日々の中の、貴重な休日を満喫していたところだった。
彼女は優秀な魔導師であり、雷光に例えられる高速機動を得意とする女性だった。
長い金髪、赤い瞳、陶器のように白い肌、と類まれな美貌を持つ彼女は、雑誌に特集を組まれるほど人気の魔導師。
機動六課――かの<ジェイル・スカリッティ事件>を解決に導いた部隊――解散後は、当時の部下、ティアナ・ランスターを執務官補佐として登用し、
執務官――事件捜査のまとめ役――として活動していたフェイトだったが、いい加減、仕事ばかりだとストレスが溜まって仕方がない。
そこで、上司から与えられたのが今回の休日であり、久しぶりにショッピングや友人達との談笑を楽しんでいたところで――その呼び出しはかかった。
兄、クロノ・ハラオウンからの緊急の呼び出しメール。
名残惜しそうに手を振る友人達を背後に、フェイトは時空管理局本局――次元の海に浮かぶ超巨大建造物――に出勤した。
時空管理局とは、次元世界とよばれる多元宇宙に存在する人が居住可能な惑星群を統括する治安組織の名であり、魔法と呼ばれるエネルギー制御体系を用いた、
高度文明を持つ世界群の共同体。
その役目は多岐に及び、滅び去った世界の文明遺物<ロストロギア>の回収管理、次元世界の治安維持、次元世界間の冷戦状態の管理、監視などがある。
それらの行動を行う各組織を纏め上げるのが、この時空管理局本局だった。
その規模は凄まじく、各世界に睨みを利かせる為の艦隊――数百メートルの大きさを誇る次元航行艦百数十隻を楽々と格納できる格納スペースに、
各種兵器の保管区画、居住区画――まるごと一つの巨大都市が収まっている――など、とても一言では言い表せない数の機能を持った施設の集合体、
それが時空管理局本局である。
受付で本局へ入る手続きをしていると、見知った顔が声をかけてきた。
オレンジ色の発色の良い髪。つりあがった目、どこか性格のきつそうな美貌の少女。
執務官補佐ティアナ・ランスターだ。
ティアナが口を開いた。
「ハラオウン執務官! 貴女も呼び出されたんですか?!」
フェイトは長い金髪を揺らして、微笑んだ。
部下である少女に、労いの言葉をかける。
「うん。ティアナは先に来てたんだ、仕事が早いね。その調子なら、執務官ももうすぐかな?」
ふふ、と悪戯っぽく笑う。
ティアナがちょっとすねたような顔になっていった。
「もう……からかわないでください。でも――ハラオウン提督からの呼び出しってなんでしょう?」
その言葉に、フェイトは顔を曇らせた。
フェイト自身、気になっていることだったからだ。
休暇中の妹を、くだらない用事で呼び出すような男でないことは、フェイト自身よく知っていることだったし、となれば何か重大な事件が起きたと考えるべきなのだろう。
しかし―――。
「私も用件は聞いてないの……極秘のことみたい。これ以上は向こうで話そうか」
「はい」
早足で二人は歩き始め、守衛に挨拶し、転送ポートに入った。
簡易の転移術式を利用したワープゲートを利用し、本局内中継ポイントのセキュリティをパスし、クロノがいる場所に向かって突き進む。
魔法文明の発達した時空管理局ならではの移動方法だ。
擬似的な重力空間―――魔法の応用によるフィールド――を抜け、無重力空間を抜けると、ようやく辿り着いた。
守衛の魔導師が配置についている、厳めしい扉。物理障壁と魔力障壁に守られた、堅牢な城砦にも似た部屋。
作戦本部。
次元航行艦隊――<海>のオペレーションを担う部屋だ。隣にいるティアナが、ごくり、と唾を飲み込んだ。
緊張しているらしい。
そういえば、ティアナはここに入るのは初めてだったか、と思い出す。
安心させようと、声をかける――優しく微笑んで、
「大丈夫、話は通ってるはずだから」
ティアナの手を握った。
かあ、とティアナの顔が恥ずかしさで真っ赤になるのを眺めつつ、手を引いて扉に触れた。
魔力認証、開始。
該当人物と確認、障壁を解除。
扉が、開いた。
OK!
二人の入室を確認したクロノ・ハラオウンは、大きく声を張り上げ、鷹揚に微笑んだ。
「久しぶりだな、二人とも。今日は休日なのにすまなかった」
「いえ、任務ですから!」
ティアナが敬礼しながら答えた。
執務官を目指すティアナにとって、元最年少執務官――エリート中のエリートであり、現在は若くして提督の椅子におさまっているクロノは、一つの目標だった。
「畏まらなくていい、ランスター執務官補佐。今回君達に来てもらったのは……」
クロノの右手がキーボードに伸び軽快な音を叩き出した。
スクリーンが空中に展開され、光学情報を、目に見える形にした。
映ったのは、漆黒。
何処かの星の衛星軌道だとわかる、青い地平線――僅かに煌くのは大気中の魔力素だ――と、星光の瞬く宇宙空間。
その中に、異物があった。
「え……」
「なんですか、これ……?」
大きい。
まずそれが、フェイトとティアナの抱いた第一印象だった。
次元航行艦なのだろうか、細長く黒く、異様にねじれた形状の、大きな船体。船体の各所は淡く煌き、まるで脈動しているように思えた。
提督帽をかぶったクロノはつかつかと歩きながら説明を開始した。
「3時間前、この次元航行艦がミッドチルダ衛星軌道上に出現した。すぐに管理局の防衛網に引っかかり、発見されたのは幸いだった。
現在、この船はこちらの送ったXV級戦闘艦15隻に囲まれて立ち往生している―――何か質問は?」
「お兄ちゃ……いえ、提督。その船にどんな問題が?見たところ、XV級15隻を用いてまで警戒する程には思えませんが」
クロノが、咳払いして言った。
「ハラオウン執務官、いい質問だ。問題はこの船の大きさだ―――比較対象がないので、わからないと思うが、この船は―――」
咳払い。落ち着く為のような、動作。
「全長が30キロメートル、全幅が5キロメートル、全高が3キロメートル。あの、<聖王の揺り篭>以上の大きさだ」
二人が、息を呑んだ。
ティアナが手を上げて質問した。
「それではまさか……質量兵器を?」
「その可能性もある、と本局の分析班はみている。君達には、例の船の臨検をお願いしたい」
と、クロノがここまで言ったとき、緊急通信が入り、モニターのウィンドウが切り替わった。現れたのは、焦ったような顔の少年のオペレーター。
<海>のオペレーターだ――。
「どうした?」
クロノの問い。不機嫌そうに眉を顰めて。
『て、提督。例の不明船舶から通信が入りました。ええと、艦隊の指揮官を出せと……』
「わかった。今出る」
不明艦の通信コード――見たこともない形式。
クロノが伝えられた周波数に通信を合わせ――交信が、始まった。
支援
現れたのは、異様、という言葉が一番ぴったり来るような風貌の男だった。
まず、おそろしく背が高い。2メートル半はあるだろう。お腹もそうとう大きく、細い金属ベルトの上には、太鼓腹の肉がせり出している。
手もぎょっとするほど大きいが、ピアニストのそれのように長い。
長い顔にはまるで表情というものが無く、動きは堅苦しい。
肌は病的に―――漂白した骸骨を連想させるほど――真っ白だ。露出している部位を見る限り、その体には体毛というものがまるでない。
男は、その白皙の顔を動かさずにこちらをじっと見据え、言葉を発した。
『これはこれは。わざわざ時空管理局の提督ともあろう方が、手前などとお話してくださるとは。光栄の極みでございます』
クロノが憮然とした顔で言った。
「時空管理局、クロノ・ハラオウン提督だ。いったいその船はなんだ。何が目的でミッドに現れた?」
『手前は商人でございますから、当然商売の為に次元世界を渡り歩きます。今回は補給の為にミッドチルダを訪れたしだいであり、やましい理由などありません。
つきましては、商人のギルドにハヴィランド・タフで問い合わせればすぐにわかるかと』
小声で部下に照会を命じながら、クロノの更なる追求。
「<聖王の揺り篭>は知っているな。その船との関わりを当局は疑っている―――ジェイル・スカリエッティとの関係を、な」
それくらいしか、今の時期―――JS事件がようやく終息に向かいつつあるこの時期に、現れた理由など説明できなかった。
ハヴィランド・タフは如何にも、馬鹿丁寧、といった調子で答えた。
『いえいえ、手前の持ち船は、決してそのような次元犯罪者と関わりがあるような船ではございません。
これなるは、かつて栄華に輝いた伝説の古代文明アルハザードの環境エンジニアリング兵団の生物戦争用胚珠船<方舟>号と申します」
「環境エンジニアリング兵団?馬鹿を言うな、アルハザードの遺跡物は完璧に滅んでしまった筈だ」
それは、魔導文明について多少学んだ者にとっては、常識中の常識の一つだった。
死者の蘇生すら可能とする、などと言われるアルハザードの超技術のほとんどは、御伽噺じみた伝説となって残っているだけであり、その研究による数少ない成果が、
次元犯罪者ジェイル・スカリエッティの生命操作技術だ。
『はて、もう一度手前は同じ返答を繰り返さねばならぬのでしょうか、クロノ・ハラオウン提督?』
クロノは顔を顰め、椅子に座りなおしながら溜息をついた。
この、厄介極まりない船と男の相手をしなければならなくなった不幸と、同様にこの男の相手をしなければならない妹の運命を嘆いて。
商売人支援
以上になりますー。タフィが出せただけで満足(待て
タフの嫌味な喋り方が再現できているか、かなり自信がない・・・
感想等よろしくお願いします。
GJ!
やはり一筋縄ではいかない人物のようですな。
だからこそ方舟にふさわしい人物なのかも。
>>270 原作は知らないけどこれからどうなるのか期待
闇の王女も楽しみにしています
慇懃無礼な感じだなぁ、タフさん。
好きなタイプのキャラだ。こりゃ原作も読んでみようか……。
>>271 こういう人なので、アクが強いキャラが多い原作でもマイペースですw
>>272 闇の王女はネタを練ってるところですので少々お待ちをー。
>>273 こういう喋りのキャラが好きなら、オススメです、タフの方舟。
275 :
一尉:2008/04/17(木) 21:18:17 ID:fgpjSR2f
ふむ支援、
GJでした。
原作はまったくわからないのですがこれからが楽しみです。
そして、機能はすみませんでした。
いざ投下しようと思えば、ずっと日遠すぎと出て投下できませんでした。
(今日になって気づいたけど、そのことを雑談で報告しとけばよかった……)
ですので、灯火がなければ本日10時15分ほどから投下したいと思います。
もし投下できなければ代理投下スレに投下し、雑談でそのことを報告しておきたいと思います
>>276 その誤字はワザとなんだろうか……orz
>>276 氏は投下する前にきちんと見直ししているのかい??
やっていてこんな状態なら・・・ねえ
そろそろ投下したいと思います
「ふあぁ〜〜〜〜」
ある青天の昼下がり、少女は目の前の空を自室の窓から眺め、大きなあくびをする。
少女の名前はノーヴェ。
彼女はJ・S事件と呼ばれる事件の際、ジェイル・スカリエッティが作り上げた戦闘機人、ナンバーズの9番目となる人物である。
同事件の後、罪を認めた他の戦闘機人らとともに、ここミッドチルダという世界にある更正施設で日々を送っている。
更正施設といっても、この世界のことや過ごしていくための知識を学ぶ。
もちろん、更正施設なので行動には制限などがあるが、犯罪者の更正施設というわりには比較的自由なところである。
今日は講習はなく、1日暇をもてあましているノーヴェは昼過ぎあたりからこうやって窓から空を見上げている。
ほかの姉妹たちもそれぞれ思い思いのときをすごし、この休日を満喫している。
(そういや、セインの部屋がやかましかったけど、なんだったんだ?)
ふと、自分の隣の部屋で、自分の姉の一人、セインの部屋がなにかうるさかったことを思い出す。
また気の合うウェンディと何かあったのかと思っていたたが、それだったら確実に今でもやかましいはず。
それに、何かセインが泣き叫んでいた。
(またあの脳筋シスターにさらわれたのか?)
と、ノーヴェは聖王教会のシスター、シャッハ・ヌエラにどこかに連れて行かされたのか……
おそらく課外講習という名目の元、聖王教会のところへいっているのだろう。
ご愁傷様、と心の中でセインの今後を想像し、哀れみの目を浮かべながら昼寝を開始しようとする。
そのときだった。
ズドォン!!
「どわあぁぁーー!!?!!」
と、いきなり部屋の壁が思いっきり破壊され、いきなりのことだったので、完全に油断していたので避わすことができずにノーヴェも吹き飛ばされた。
ただ、油断していたといっても、普通は誰もいきなり壁が破壊されるなんてい思わない。
「うえっほ、うえっほ……ったく!何なんだよおい!?」
がらがらがら、と自分の上に落ちている壁の破片を落としながらノーヴェは立ち上がる、
幸いにも、吹き飛ばされたダメージは少なく、ノーヴェは煙にむせ返りながらも壊された壁を見る。
いったい何なんだ?また何かの事件の始まりか!?と思いながら前を見る。
そこには、何から全体の色のほとんどがピンク色という派手なことこの上ない車だった。
(趣味悪ぃ……)
などと思っていると、その車から一人の男が降りてきた。
その姿は、どこなの制服なのだろうが見たこともない変わった服。そして車と同じくピンク色のサングラスをした男だった。
男はああ……、自分があけた穴を見てショックを浮かべていた。
「まさかこの俺がハンドル操作を誤って、さらには壁を壊してしまうとは……なんということだ、これでは文化的どころか
俺はただの永久的2枚目半ではないか。こんな俺に文化を語る資格なし、俺はこの先どう生きてきたらいいんだ……」
(この間およそ5秒ほど)
なにやら早口でぶつぶつ言っているが、どうやら壁をぶち壊したこと自体はどうでもいいようだ。
ノーヴェは男に詰め寄ると、がっ!と胸倉をつかむ
「おいこら手前!!」
おもむろに男の胸倉をつかんだあと、ノーヴェは壁のほうを指差す。
もちろん、そこか先ほどの男に突っ込まれ、破壊された壁の跡だった。
「いきなり人の部屋の壁をぶち抜いといて、なに2枚目半とかぶつぶついってんだよおい!?」
ノーヴェに言われて、男は現状を理解したのか、あぁとうなずいてノーヴェを見る。
「ああ、すみませんお嬢さん。ちょっと今追われていて、急いでいたところです」
「追われてる?」
こいつ、犯罪者か何かか?と思いノーヴェは男を見る。
確かに、さっき説明したとおり、いかにも怪しい服装をしている。
ちょっとおかしい日tくらいなら確かにいあっているかもしれない。
「ん、HOLY?」
ふと、ノーヴェはそこで男の服の肩あたりに「HOLY」と書かれたマークを見つける。
何かの組織名だろうか……
「ああ、そうだ。壁を壊したお詫びに、私と楽しいドライブに出かけましょう」
「は?」
男はそういうと、唖然とするノーヴェをお姫様抱っこで抱きかかえ、さっさと車の助手席へ座らせる。
「お、おい!いきなり何してんだよ!?」
いきなり抱きかかえられ、顔を真っ赤にしながらノーヴェはじたばたと暴れて抵抗する。
これではまるで誘拐ではないか……
だが、そんなことを気にせず、男は抵抗するノーヴェを助手席に乗せ、車を走らせる。
「いくぞ!ひゃっほぉーーーーー!!」
「どわあぁぁーーーーー!!
そのまま車を法廷速度を無視して爆進させ、二人はいずこかへときえていった。
このやり取りに、1分もたっていない)
「い、いったい何が起こったのだ、ノーヴェ……って何だこれは!?」
そこへ、先ほどの爆発からやや遅れてやってきた更正組みでは最年長である小柄な少女、チンクはノーヴェの部屋の惨状を見て驚く。
運悪く、ノーヴェの部屋が崩れ去ったときにはほかのナンバーズはノーヴェの部屋から離れていて、突然の奇妙な轟音に驚きながら、
チンクは代表してその音のほうへと赴いたのだが、ノーヴェの部屋の惨状を目撃してあわてて部屋に入ったのだ。
そして、ノーヴェの部屋の惨状に唖然とする。
「そういえばノーヴェは……」
今日は、確かノーヴェは部屋にいたはず。
チンクはきょろきょろと見渡すが、ノーヴェの姿は見当たらない。
「ちょっと、これはいったい何なの!?」
そこへ、自分たちの講師役でもあるギンガもやってきたのだ。
ギンガも目の前に惨状に驚きを隠せないでいた。
いったいこれは……
「あ、ギンガ、チンク」
そこに、先ほどの壁から、空を飛んで意外な人物が登場したのだ。
「な、なのはさん?」
その目の前にいる、バリアジャケットに身を包んだなのはの登場に二人は驚きを隠せないでいた。
いったいなぜ……
「ま、まさかなのはさんがこれを?」
「いや、それはさすがにないよ……」
なのははギンガがもしもの答えに苦笑しつつも、なぜ自分がここにいるのかを話す。
「いやあ、実は私、今日はびっくりするところだらけなんですよ。ちょっとした事情でそろそろ自分もこの世をさるのかなあって
ゆっくり目を閉じ、この世との別れをしんみりと深くあじわっていたとたん、何かこう、文化的な光が自分を包み込んだんです。
そして目を開けるとびっくり!ぜんぜん見知らぬところにきちゃったんですよこれが!
最初はそれはもう驚きましたが、私は最速で考えました。
そして導き出した答え、それは神が与えた慈悲なのだと私が思ったんです!
私ももいろいろありましてね……
ということで私は神が与えたこのファンタスティ〜〜ックな世界で文化的な生き方をしていこうと思った矢先です!
少し町をぶらぶら散歩に出かけたとたん、とある美女がいかにもやられ役な男供に追われてたんですよ!
それをみて私の中の正義感がふつふつと湧き上がってきて、助けたらその女性から精神的、肉体的に御礼をしてくれると期待をしつつ、
最速を心情としている私はすぐさま行動に移し、男共が何か言いかけていたのを無視して 最速でかたづけたんです(この間およそ20秒足らず)
(う、うるせえ……)
ノーヴェはおそらく自分に言っているであろう男の言葉に、あきれながら外を見る。
さっきからこの男の運転はすさまじいものがある。
法廷速度を無視した速度もそうだが、彼のドライバーテクニックもすごいといえばすごいのだが、なんとも荒い。
(き、きぶんわりぃ……)
うぷ、と口を両手で押さえるノーヴェだが、男の話はまだまだ続く。
「ところが実はその人たちは何かの訓練をしていて、その女性に1発でも当てればいいという訓練だったんです。
おいおいそりゃあないだろう、そんなややこしい訓練をするなよと突っ込みかけたのですが、まずは逃げることが先決だと思った私は、
そのまま逃走を開始したんです。
車に乗ればまず問題ないと思ったのですが、なんとその女性、空をとんでるんですよ。
それにはさすがの私も驚きましたが、それから二人は愛のデットヒートが開始されたんです。
そのとき、あなたの壁に衝突し現在に至ってしまうわけです!」
(この間15秒)
「あーもううるせえ!!」
あまりのやかましさに、ノーヴェは我慢の限界でつい声を大きくして叫んでしまう。
人が気分を悪くしているときに、こう口やかましく叫ばれるとたまったものではない。
「ああ、すみません」
運伝に集中しつつ、返しているところを見ると、ちゃんと人を言うことは聞いているらしい。
そして、さらに車を飛ばしていると、ある時点でキィィーーーーっと急ブレーキでとまる。
「この距離をわずか2分12秒。このコースは初めてだが、またも世界を縮めてしまったぁ〜〜」
「も、もう……限界」
車からさっととび降り、ああ……と感動的に手を合わせる男。
それとは対照的に、ノーヴェはうっぷ……と口を押さえてよろよろと車から這いずり出てきた。
「おい、お前……」
「ん、なあんですか?}
まだ酔いからはさめないが、何とか立ち上がったノーヴェはさっきから思っていたことをたずねる。
「なんでアタシをさらうようなまねをしたんだ?アタシは金なんかもってねえぞ?」
自分を誘拐したとばかり思っていたノーヴェはもっともな答えをいう。
そんあノーヴェの問いに噴出したクーガーはすみませんと誤ってサングラスをあげながらノーヴェを見る。
「さっき言ったとおりですよ。あなたの家の壁を破壊してしまったお詫びに、ファンタスティックな世界に連れ出したまでです」
悪びれもなく言う男の言葉に、そうかよ、とため息をつくノーヴェ。
こいつは自分の境遇をしらないから言えることなのだろう。
「それはだめなんだよ」
「なんでですかあ?」
「あたしは、犯罪者だからな」
ノーヴェは男に説明する。
自分とその姉妹たちはある事件に同伴した犯罪者で、今は更正施設で暮らしていることを話した。
だから、今の彼女には外に出ることは許されていない。もしかしたら、二度と出れないかもしれない
今ならなんとなくわかる。自分たちがしてきた罪はとても重い事を。
そんなノーヴェの話に、男はふむとうなずく。
「ならなおさら、私と一緒に旅に出ましょう」
その言葉に、がくっと躓くノーヴェ。
いったい、なにをどうすればそのようなことになってしまうのか……
「確かに罪は償うべきです。それは当たり前のことです。
その言葉から、あなたとその姉妹たちは本当に罪を償いたいという気持ちが伝わります。
ならば更正施設でゆっくりとしているわけにはいきません。
思い立ったらすぐに行動に移すべきなんですよ。時間は待ってはくれません。
だがどうやって罪を償うにはどうすればいいのか……答えは簡単です、人々に貢献すればいいのです。
なあに簡単ですよ、あなたのもつ力で世界中を旅して逆に犯罪者を取り締まればいいんです。
ああ、困って利う人々も助けてあげてもいいでしょう。それも償いです。もちろん私も手伝いましょう。
なにせ私は!(この間10秒ほど)最速の男ですから(ここはノーマルスピードで)」
またもぺちゃくちゃと話す男にノーヴェはあきれるが、確かに一理はあるのかもしれない。
だが、ふと気づく。
「何であたしに力があるってわかったんだ?」
自分は確かにある力を持っているが、そのことは話していないはず。
だが、男はにやりと笑みを浮かべてノーヴェを見る。
「答えは簡単ですよ。ぱっと見たところ、あなたは体を鍛えている。あなたを持ち運ぶ時に気づきましたよ。」
「な……」
あのときを思い出して、ノーヴェは顔を真っ赤にした。
あのときの抱き方は、更正施設で読んでいた本にあった抱き方だったような、と思いだす。
「それに、ある程度のことは図書館で調べてあるんです。もちろん、魔法というものもね」
それで、彼女の話を聞いて、彼女もその魔法というものが使えるのだろうと判断したのだ。
「ですから、一度犯罪に加担して使ったこの力、今度は人々のために使うべきなんですよ。大丈夫です、あなたなら使えるはずです。
それは私が保証しましょう」
男の言葉をただ聞いているだけのノーヴェ。
確かに、自分は罪を償いたいとおもっている。
本来なら牢獄にぶち込まれるはずだった自分。
だが、姉であるチンクのとりなしで更正施設に入れられることとなった。
そこでいろいろなことを学んできた。
そして自分たちがしてきたことを……
そのことを考えると、ノーヴェは決意した。
(もうチンク姉ばっかに頼ってるわけにもいかねえしな)
チンク姉たちを置いていくのは少し心残りだが、もう決めてしまった。
ずっとチンク姉に甘えているわけにもいかない。
自分で決めたことは自分でやってみよう。
そう思えるほど、男の言葉は正しいかも知れないとノーヴェは思えた。
そして、自分の道を歩んでいこうとノーヴェは誓った。
そのとき、そういえばとクーガーは大切なことを忘れていた。
「まだ名前を名乗っていませんでしたね。私の名はストレイト・クーガー。最速を貫く男です」
男、ストレイト・クーガーは自己紹介するとともに、にかっと笑う。
そんなクーガーにノーヴェも苦笑して、自分も名乗る。
「アタシはノーヴェ。ファミリーネームはない、ノーヴェだ」
「ノーべさんですか、いい名前ですね」
「ノーヴェだ!」
「すみません、名前を覚えるのが苦手で」
こうして、一風変わった二人組みは出会った。
これから語られる物語はこの二人の、少しおかしい珍道中なのかもしれない。
最速少女、ラディカルノーヴェ、始まるかどうかわかりません。
これで投下完了です。
かいてて思ったけど、クーガーってこんなやつだったかな?
しばらく見てないからちとうろ覚えだった。
それと、専ブラのことですが、何回もいっている気がしますが、今使ってるパソコンは自由に使っていいのですが、学校のを借りている状態なので、学校が指定しているブラウザしか使えないんです。
誤字のほうは……見ているつもりなんですが……やっぱりまだたりないのかな?
戦闘機人すら酔わせる(三半規管的な意味で)兄貴の文化的なドライビングテクニックに嫉妬
GJです!
昔クーガーのしゃべり方の真似をしようとしたら舌を思いっきり噛んでしまったのは俺だけでいい。
自分は十一時十分頃からリリグナーを投下したのですがよろしいでしょうか?
十一話目にして蒼だけど紫な人登場。
支援する
支援する
GJ!!です。
クーガーが来るとは。最強の陸士かもしれないw
フェイトとのスピード勝負が見たいです。
先ほど書き込んだ際不注意でトリップが以前のまんまになってました。
申し訳ありません。では時間なので失礼して投下させていただきます。
なのは達に管理局不穏分子の魔の手が迫っていたころ…。
月。
地球からもっとも近い天体にして言わずと知れた地球の兄弟星である。
しかし、古より地球を見守ってきたこの月も…人類のなりふり構わぬ科学の発展によって
権力の牙城となっていた。
その権力の牙城…ギガノス帝国総本部の中枢の一角。
豪著な執務室。
「ええい!元帥閣下は何を考えておるのか!」
角刈りのいかにも血の気が多そうな軍人。
「ドルチェノフ」中佐が怒りに声を荒げて拳を机に打ち付けていた。
そして彼のすぐ脇には彼とは対照的にいかにも策を巡らす小悪党といった風情の片眼鏡をかけた小男
「ハイデルネッケン」少佐が佇んでいる。
「中佐がお怒りになるのもごもっともでございます。地球連合軍はD兵器以外にも人型機動兵器を開発し、D兵器の量産化も推進中。そして…」
ハイデルネッケンがモニターに投影されたゲシュペンストMk-Uの画像を睨みながら言った。
「異次元の侵略者までもが我がギガノスを毒牙にかけるべく狙っているのだ!」
ドルチェノフが画面が切り替わり、ゲシュペンストの代わりに映し出された時空管理局の
巡航艦を睨み付けて叫んだ。
ギガノス帝国もまた、連合軍よりも十年進んでいると言われる科学力をもって管理局の存在をつかんでいたのだ。
「この期に及んで我等が取るべき手段はたった一つ。地球への全面的なマスドライバー攻撃以外に無いと言うのに。
ギガノス軍でまともに現在の状況を理解しているのはやはりこのハイデルネッケンめと
中佐殿だけでございますなぁ。」
ドルチェノフの顔色を伺いつつ言うハイデルネッケン。彼らはこう着状態に陥った戦局を打開するために
元帥であるギルトールにマスドライバーでの攻撃を進言したのだ。
マスドライバーは元々物資加速…すなわち平和利用のためのものだが
弾頭と射出速度をマックスにすれば半径百キロメートルを消失させる超強力な兵器と化す文字通り帝国の切り札だ。
しかし、ギガノス軍の最高権力者であるギルトール元帥は地球の環境への
深刻なダメージを嫌って彼らの要求をにべもなく蹴ったのだ。
「そのとおりだ。あの堅物のギルトール元帥は何も判ってはおらん。……。
例のスカリエッティとかいう男の研究とやらを見に行く。案内しろ。」
忌々しげにそう言うとドルチェノフは思い出したように席を立った。
ところ変わって総司令部の一角。
予備のメタルアーマー格納庫を改修したこの部屋には今、巨大な生体ポッド
その他さまざまな機器が運び込まれていた。
そして…その巨大なポッド群の膝元には。
「ドゥーエには感謝しなければならないなあ…ほんの保険としか思っていなかったが彼女に頼んだ
ギガノスへの根回しがまさか役に立つとは。そしてこんなに早く研究所を捨てなければならなくなるとはなあ。」
まごうことなきドクター・スカリエッティとウーノが佇んでいた。少し沈痛な面持ちで言うスカリエッティ。
「申し訳ありません。私たちの力が足りないばっかりに…。」
申し訳なさそうに言うウーノ。
「気に病むことは無いさ。わずかばかりの資金と後ろ盾と研究出来る場所さえあれば何処でだって私の夢は追える。
それにその夢のうちの一つ…戦闘機人の量産については順序が当初の予定と逆になってしまったがもうすぐ完遂されるんだからねえ…。
ゆりかごにしたって管理局の節穴eyeでは見つからない場所に隠してあるしまた取りに行くチャンスも在る。
つまり…何処でだってやる事は変わらないのさ。君が側に居てくれさえすればね。」
「ドクター…。」
そんな彼女を励ますように言ったスカリエッティの言葉にウーノが照れで頬を赤らめて俯いた。
その時。
「貴様がスカリエッティか…。ドルチェノフ中佐である。量産型戦闘
サイボーグ計画とやらがどの程度のものか見に来てやったぞ。」
ドルチェノフがハイデルネッケンを引き連れて現れた。
熱っぽく戦闘機人計画の優位性を説きながら彼らを奥へ案内するスカリエッティ。
そして、即席の研究スペースに堆く積み上げられたポッドには
人工的な成長措置と戦闘機人への改造を待つナンバーズと
同じ遺伝子を持つ胎児達が息づいていた…。
そのころまたギガノス総本部の一角。
「全くこんな所で暮らす事になるなんて。部外者は一杯居るし建物は古臭いし…ブツブツ。」
D兵器強奪作戦から辛くも生還し、ドクターとともにギガノス総本部にまんまと潜り込んだ
クアットロとセッテが二人並んで歩いていた。
クアットロは仏頂面で愚痴を吐いている。
そしてセッテは無表情の裏でえんえんと続く彼女の愚痴にウンザリさせられていた。
これで百回目の同じ内容の愚痴か…
「ハァ…」
そう思うと思わずため息が出た。
「何よ。なんか文句あるの?」
「私は何も…。」
目ざとく彼女を睨み付けるクアットロにしぶしぶ気味に応対するセッテ。
作り笑いを浮かべる彼女にムカっ腹をたてたクアットロがぷい、と横を向いて歩き出したその時。
ドン!
気の毒なクアットロは突然反対側の角からやってきた何者かにぶつかって尻餅を付いた。
「ちょっ…ちょっとあんた!気を付けなさいよ!…ひぃっ!」
この際だから思いっきり溜めに溜めたストレスをぶつけてやろうと思ったクアットロ。
しかし自分にぶつかってきた不届き者を見るなり彼女は声を失った。
人間離れした骨格と毛深さと顔つき。何処からどう見ても類人猿にしか見えない男がそこに居た。
いや、類人猿ではない。軍服を着たゴリラなんか動物園ならともかくこんなところに居る訳は無いのだから。
「あんだべお前は?おい娘っ子。おめえ見ねえ顔だべ。何処の者ンだ?」
その男はズシズシと足音を立てながらクアットロに歩み寄った。
「いやーーーー!来ないでゴリラ男!」
金きり声をあげるクアットロ。
だがゴリラと聞いた瞬間男がビクリと体を震わせた。
「なぁーにい…?オデは…オデは…」
顔を見る間に真っ赤にして背中に抱える大筒の如き機関砲に手をかけ、そして…。
「オデはゴリラじゃねえやあっ!ふぎぎぎぎぎぃーーーっ!
「きゃーーーーーーーーーっ!?」
轟音とともに通路中の壁に男が乱射した機関砲によって無数の穴が穿たれ、クアットロは目を回して気絶した。
「おうおうおうおう!ゴォル!こんなところで何油売ってやがるんだ!」
三十秒ほどたって辺りがまるで戦場の如く硝煙と弾痕に満ちた空間と化したころ、
不意に割れ鐘のような声が背後から響いた。
「ほえ?大佐ぁ…だってこの娘っこがおらの事馬鹿にしやがったんだ…。だから…」
「言い訳は聞かねえ!」
なおも響く獣のような声。
ゴリラのような男こと「ゴル」はそこでやっと落ち着いた。
そしてその後ろから…
「何だこいつらぁ?軍人にゃ見えねえがよお。」
ゴルを上回る巨躯に闘犬のような注連縄。
ギガノスにその人ありと言われた「グン・ジェム」大佐とその屈強の部下達「グンジェム四天王」だ。
「第一技術試験部隊所属・セッテ特務伍長であります。こちらはクアットロ特務曹長です。」
目を回したまんまのクアットロと対照的に臆する事なく彼らと応対するセッテ。
「なかなか美人じゃねえか。反抗的な目といい、タイプだなぁ。クックックッ…。」
グン・ジェムの背後に立っていた長髪の優男「ジン」中尉が得物のサイをペロペロと舐めながら歩み出た。
「フヘへへへへッ…。」
それを見て彼の隣に立っていた彼よりも背が高い大男「ガナン」大尉がナイフを弄くりながら下衆た声で笑った。
この男は争いごとを見物するのが何よりも好きなのだ。
「おいおいお前ら。滅多に会えない可愛い子ちゃんだからって寄ってたかって脅かすのは感心しねえぞ。」
一触即発の空気を見かねて口を挟むグンジェム。
「ちょいとお待ちよ大佐。それじゃあたしは…その、可愛い子ちゃんじゃあ無いってのかい?」
と、今度はそれを聞いて…美人には違いないが、ナンバーズの中でも大柄なセッテよりも頭一つでかい
「リン・スー・ミン」大尉が口を尖らせた。
「可愛い子ちゃん、ねえ…。」
「何さ!何か文句あるって言うのかい!」
それを聞いて肩をすくめるジンにすかさずミンが噛み付いた。
その時。
≪ビルマ基地への移送便の出発まであと30分。搭乗の者はただちに第一ポートへ集合せよ。≫
「おおっといけねえ。こんな所で油売ってる暇なんざねえんだった。じゃあな嬢ちゃん。」
グンジェムは四天王を纏めると去って行った。
「いつまでへたりこんでいるんですか。…あんな奴等が居たとは。
メカの操縦だけだと思ったがギガノスも馬鹿には出来ないか…。」
セッテはクアットロを冷ややかな目で見つめつつ叱咤すると顎に手を当ててひとりごちた。
そのころ…
地球・オーシア大陸南部エリア、「オーレリア連邦共和国」。ケープ・オーブリー周辺。
2020年に勃発したオーレリア・レサス戦争が終結して以来、60年間
平和を保ち続けてきたこの国も…いまや激戦地と化していた。
壊滅した市街地の上空をダブルデルタ翼と翼端が折れ曲がったエンテ翼が特徴的な戦闘機…
「F28」“メッサー”が4機、編隊を組んで飛行している。
「なんて酷でえ事しやがる…ギガ公め。」
先頭を飛行するF28のパイロットが昆虫じみたヘルメット表示システム
内蔵のヘルメット越しに眼下の市街地だった場所を睨んで言った。この惨状はギガノスの無差別爆撃によるものだ。
しかし、こんな市街地を攻撃する事に何の意味があるというのだろうか…。
彼はこの地域の出身ではなかったが、愛する自分の国の一部をこうまで酷い目に会わされた事に
純粋な怒りを感じていた。その時…。
≪ニノックス3よりニノックス1へ。前方にボギー、数3。機種はメタルアーマー。
フライトユニット付きと思われます。≫
部下から上ずった声で通信が入った。
「よし、やるぞ!全機AAM発射用意。タイミングを合わせろ。」
隊長機の命令一下、4機のF28が一斉に空対空ミサイルをまだ見ぬ敵に向けて一斉に発射した。
しかし…。
「2機はやったが…隊長機らしい奴は外したか。全機、ダンスパーティだ!4対1だ…恐れる事は無い。」
「了解!」
格闘戦に入るべく加速しつつ散開するF28。しかし…
「うおっ…?」
次の瞬間一瞬にして彼が率いていた3機のF28編隊は敢え無い最後を遂げた。
「レールガンかっ…?まさか…この距離で…。」
部下が火球とともに残骸を巻き散らかして消えて行く光景を目の当たりにして彼は呟いた。
メタルアーマーが装備しているレールガンならば戦闘機なんか紙飛行機も同然だ。
しかし、高速飛行する戦闘機に当てるなどという
芸当はいかなメタルアーマーの洗練されたFCSの助けがあったとしても神技である。
そして彼は数秒後、その芸当をやってのけた敵の姿をその目に焼きつけた。
F28よりも大きく最高速度で劣るはずが、彼はその機体が
自分よりも遥かに早く飛んでいるように思えた。そして次の瞬間…彼は恐怖と畏れとともに呟いた。
「あ…蒼い奴が…。」
その言葉を最後に、彼の乗機も仲間の後を追った。
このエリアから数十キロ離れた空域をまるで魔物の目を思わせるレーダードームを回転させつつ
遊弋しているオーレリア軍のターボプロップ早期警戒機「FEP-1」。
「消えた!消えちまった!」
立体画像で表示された擬似空域図から友軍機の反応が忽然と消失した事を見た
オーレリア軍の通信管制官が蒼い顔をした。
「何があった?」
「敵機です!友軍機が4機…ニノックス隊がやられました!」
機長に上ずった声で怒鳴る管制官。
「…なんということだ…。付近に友軍は?」
「コルウス隊が居るはずですが…。」
忙しくコンソールを叩きながら答える管制官。
「ただちに迎撃させろ…出来る事なら仇をとってほしいが…。最後の交信内容は?」
顎に手をあてて呻く機長。
「蒼い奴が…とだけですが。」
「なにっ!?」
管制官の報告に機長が椅子から立ち上がった。
「何か心当たりでもあるのですか?」
「月の第一海戦では奴1人のためにバージニア級重巡洋艦とアマゾン型戦闘母艦が2隻ずつにドナウ型支援母艦が3隻。
そしてこれに倍する数の中小艦艇が沈められた。だが奴がこんな所に居るなどということが…。」
機長は誰とも無しに呟くと、その敵と相対するために向かったコルウス隊の身を案じた。
「二ノックス隊を殺った奴らはこの先の空域に居る。地球連合軍の意地を見せてやれ。」
F28戦闘機4機からなる部下を引き連れたコルウス隊の飛行隊長は自信有り気な顔で言った。
彼が駆る戦闘機は旧態依然としたフォルムのF28とは訳が違う。「F32」“シュヴェールト”…
日本のイスルギ重工が開発した最新鋭機で
キャノピーは埋め込み式の「コフィンシステム」となっており、まるで
翼は蝶か鳥の羽を重ねたような独特の構造となっている。
性能は折り紙付き。ADF01「ファルケン」などには劣るだろうがF28やFFR-31とはもう別次元と言っていい。
「敵機視認!フラ付いているぞ…チャンスだっ!」
「待ってください隊長!アレは…?」
ギガノスの蒼き鷹か!!支援
意気込む隊長機に部下がかすかに視界に捉えられた敵メタルアーマーを睨みながら引き攣った声で言った。
…紫色の機体が光の屈折で蒼く照りかえり、関節に塗装された黄色のライン…。
「あ、あいつは…。」
隊長は息を呑んだ。
そして彼らの注目の元になっているメタルアーマー・
形式番号XFMA-09「ファルゲン」のコックピットでは。
濃い紫色のパイロットスーツに身を包んだ男が肩で息をしていた。
先ほどのF28戦闘機隊との戦闘で彼に襲い掛かった巨大なGは
彼の身体に多大な負荷をかけていたのだ。
そしてコックピットの視界には今にも攻撃態勢に入ろうとしている
F32率いる戦闘機隊が大写しになっており
各種警報装置ががなりたてている。
揺れる視界のせいでまるでダンスパーティの如く踊り狂う計器類を睨み付け、男は叫んだ。
「ここで倒れる訳には…。元帥閣下の理想のために!そして…D兵器と決着を付けるために!」
彼は、スロットルレバーを握り締め、ファルゲンを迫りくる編隊に突っ込ませた。
敵戦闘機の機銃と短距離ミサイルを交わし、ヘビのように機体を
操って編隊の真ん中を飛行するF32の真後ろに付ける。
「うおっ…!?」
其の動きにF32のパイロットは対応出来ない。
「これが…“ギガノスの蒼き鷹”か…」
悔しげに呟いたその刹那。SSX9型75ミリハンドレールガンから放たれた弾丸が
F32の機体を火球に変え、パイロットを暗黒の世界へと連れ去る。
その光景を見送りながら、ファルゲンのパイロット…
D兵器を仕留め損なったかどで南洋戦線へと更迭された
不運のエースパイロット・ギガノスの蒼き鷹こと「マイヨ・プラート」は叫んだ。
「私はこんな所で散る訳にはいかんのだ!」
数分後…早期警戒機FEP-1は再び戦闘機隊の消滅を記録した。
ここまでで。
マイヨさんは次の話でドラグナーとも絡んでガチンコでバトりますが
ハイデルネッケンとドルチェノフとグンジェム隊はもう少し後です。
量産型ナンバーズももうすぐ登場する予定。
そして次回はなのは達を襲ったバルシェムの話とマイヨVSドラグナーにする予定。
ハイデルネッケンの中の人はぶらり途中下車の旅のナレーターの人なんですよね。
それはいいけど声を聞くたびにドラグナーじゃなくてぶらり〜を見てるような気分になっちゃうんで困るw
GJ!
主役キター!
>はぶらり途中下車の旅のナレーターの人なんですよね。
オシオキだべぇ〜
以前の魔法少女リリカルなのは Daydreamは荒れの原因となりそうだったので、続きはやめました。
新しいのを書いたので、そっちを投下します。
世界は数多のifによって構成されている。
人が様々な世界を望み、分岐していくことで無限に増え続ける。
そこで行われる出来事は全てが現実であり、そして事実として残っていくことになるのだ。
世界を作り上げるのは自分たち自身であることを人は知る必要がある。
第1話魔王誕生
ジェイル・スカリエッティ事件…管理局全体を揺るがした事件は、機動六課を中心として無事解決を図ることとなった。
多くの犠牲を残し。
機動六課での中心的な攻撃人物であった高町なのはの娘として可愛がられたヴィヴィオは、その小さな命を散らした。
高町なのはは、責任を感じ、管理局から身を引くこととなった。
一方、他のもの、機動六課の責任者であった八神はやては六課の功績から管理局本局の上層部にへと出世していくことになる。
フェイト・T・ハラオウンもまた、なのはがいなくなった部分を埋めるため、軍事部門で力を出すこととなっていた。
『ついては…このような事件が二度と起きないため、管理局は今まで以上に強力な力を持つことが必要なのです』
新聞に大々的にな見出しにのっているはやての姿を見つめる高町なのは。
…今ではほとんど会うことが出来ない人物を見つめながら、なのはは息をつく。
「どうしたの?なのはちゃん?」
それは月村すずかとアリサ・バニングス。
高町なのはが魔法世界から身を引くこととなった今では、彼女達との関係が深くなっていた。
「ううん。なんでもない」
なのははそういって新聞を荷物にしまう。
「なのはも新聞を読むなんてすっかり社会人だね」
「そういうアリサちゃんだって、すっかり大人の女性って感じだよね」
「そうかな?」
なのはたちは、休日を利用して町に遊びに出ていた。
折角の休みを満喫し、嫌なことを忘れたいという思いがなのはにはあった。
「カラオケでもいこっか?」
「いいね〜いこういこう!」
なのはは、彼女達と一緒にいるときは、あの辛い日々を忘れることが出来た。
フェイトや、はやてたちと会うとイヤでもヴィヴィオのことを思い出してしまうから。
このまま忘れてしまっていいものなのか…そういった思いがなのはの心のそこにはあった。
なのはに引っかかっている部分。
それはヴィヴィオが直接死んだところ見ていないということ。
ヴィヴィオは管理局上層部に回収され、監禁されているという噂を事件当初に耳にしていたのだ。
はやてに聞いたが、それはないという。でも……。
「どうしたの?なのは?置いてくぞ」
「ごめん…」
やっぱりそんなことはないのかな…私は、ヴィヴィオのことを受け入れられないだけなのかな。
なのははそんな二つの思いの狭間に苛まれていた。
なのはは、カラオケにいっても気が晴れず、部屋を出て非常階段で息をついていた。
青空を見つめるなのは…。
「なのはー!!」
そのどこか聞きなれた声に、なのはは振り返る。
そこにいたのはフェレット型のユーノの姿だった。
「ユーノ君!?」
「探したよ!匿ってほしいんだ」
「なにかあったの?」
「ひとまず、話は後で…」
ユーノはなのはをつれて、カラオケの空いている部屋の一室に隠れる。
「誰に追われているの?管理局の連中だよ。僕はまずいものを見つけてしまったらしい」
ユーノはそういうと、人型に変身する。
「なのはにこの場所にいってもらいたいんだ」
それは地図だった。
それは、神社がある場所…まだ私が小さいきに、ジュエルシードを含んだ怪物と戦った場所でもあった。
「頼んだよなのは…」
そういうとユーノは部屋を飛び出していく。
「ユーノ君……」
なのはは彼を追うことが出来なかった。
なのはは、アリサとすずかに事情を説明して、神社に1人でむかうこととなった。
どこか不安を感じながら、神社に向かうとそこには1人の緑の髪の女子がいた。
自分と同じくらいの女子は、なのはをみつめる。
「あ、あなたがユーノ君がいっていた…」
「なるほどな。お前が適正者というわけか…あの男、なかなか見る目があるようだな」
「あなたは?」
なのはの事を見ていろいろと言い出す女子に問いかけるなのは。
緑色の髪の女子は見据えたまま
「私は、C.C.という…」
「え?シー…ツー?」
その人間とは思えない名前に違和感を感じるなのは。
「いたぞ!!」
その声の主はすぐに現れた。
管理局の職員…というよりも実戦兵たちである。
なのはには何がなんだか分からない。
「既に覚醒済みか…目標物および、それを見たものは誰であろうと殺せというはやて総督の命令だ」
管理局の職員たちは、魔法を唱え始める。
「ちょっと待って!一体なんのことをいて、それにはやてちゃんってどういうこと!?」
なのははそういうが、彼らは無視をする。そして…1人が放った攻撃がなのはを狙った。
「やめろ!!」
飛び出したC.C.がなのはをかばう。
命中したC.C.はそのまま、力なく倒れる。
おびただしい血がながれ、彼女は簡単にやられてしまった。
「酷い…どうして、こんな」
「ちっ。かまわん!!あのフェレットのように、こいつも…」
「ユーノ君!?」
まさかユーノ君まで…どうして、なんで?
わけがわからないなのはだが、そんなことは、向こうには関係がないのか、すぐに次の攻撃の準備がされる。
こんなところで死んじゃうの?まだ私は…何も知らないまま?
そんな…フェイトちゃん…はやてちゃん……ヴィヴィオ。
「力を望むか?」
それは、さっきの緑色の髪の女子の声だった。
「果てしない、世界を変える力を」
彼女は問いかける。
「運命を変え、真実をしる王の力を…」
なのはは彼女を見つめる。
「知りたい…真実を、そして、運命を変えたい」
「王の力はお前を孤独にする…それでも私との契約を果たしすか?」
「結ぶよ…その契約」
「…ねぇ。真実を変えるには、世界を変えるには、まずは破壊しないといけないんだよね。今までのことを…、私自身も…」
その言葉の意味がわからない職員達は首をかしげる。
「すぐにお前は壊れる。これで最後だ!」
魔法を唱える職員達を見つめるなのは。
「……高町なのはが命じる。お前達は……壊れろ」
すると職員達の身体が突如、膨張して破裂する。
それは神社に、真っ赤な血で染めることとなった。
「私は立ち向かう。そして偽りのすべてを……壊す」
なのはは口元を微笑ませた。
第1話終了。クロス【コードギアス】
GJ
なのはとC.C.、この組み合わせはなんか好みだ。
それと重箱なんだが、はやて総督よりも八神総督のほうがらしくないか。
本編だってなのは達ですら職務中は「八神二佐」とか「八神部隊長」なんだからな
まあでもギアス本編では、総督の事を名前でよんでたからちと迷う。
一期の総督は同じ苗字だしなぁ(オレンジ除く)
314 :
一尉:2008/04/18(金) 18:52:21 ID:W6HWvPJv
そうたなあの人は潰れて死亡たよ支援
キャラ改変が余りにも酷いね
原形が無い
第一話からいきなりこれじゃねぇ
キャラ違う言われても仕方ないと思う
なんかなのはってMADで魔王だ冥王だいわれてるからこういうキャラだと思ったんじゃないか
まあいまだに俺はなのはVSMADとかでのなのはの暴れっぷりに
「こいつマジでうぜえ」と思うわけだが。
本音スレいこうぜ、な。
前に雑談の方からグラヴィオンとのクロスを書くと言った者ですが、10時頃に第1話を投下してもよろしいでしょうか?
まだまだ新人のペーペーですけど、よろしかったらご覧下さい。それと15KBくらいで長めのものなので支援もお願いします。
ばっちこーい
感想はウロスか本音スレで支援
ギャー!
ロストカラーズが意外と面白くてコードギアスに填まり、大風呂敷な嘘予告?を書いてみたところ、長編で真面目なお話が投下されていてビックリだ〜!!(なが
とりあえず次の人が十時ごろならば繋ぎとして投下して良いかい?
すぐにでも!
それでは先方が終わったらで。楽しみに待ってるぜ。
支援
む〜反応があんまり無いので不安だな(汗
やっぱり先に予約した方が終わってからにします〜
しかし初の世界間融合系だからね〜不安だ
支援しとこう、ロストカラーズは碌にTV版見てなかった俺もハマり中
なにこのギアス祭りwww
>>326 キャバクラktkrwwww
支援しますよ〜!!
返事が来たのでさっさと投下しちゃおう。
後から続く人がこの妄想文を消し飛ばしてくれるだろうw
あとキャバクラは出んぞ
ベルカ騎士と言う言葉は魔法を使う管理世界内では有名だ。
広く解釈すればベルカ式魔法を使う魔道師を指す言葉だが、更に言えばそれらの中でも志と腕に優れた者達を指す。
汎用性に優れたミッドチルダ式に押されているが、カートリッジにより生み出される爆発力。
そして『一対一で負けは無い』と評される近接戦闘能力で、管理世界の始まりの時より名を轟かせてきた。
古代ベルカ式を扱える者こそ少ないが、現在ではミッドチルダ式との複合型、近代ベルカ式の登場により、未だに衰えを見せない。
だが……そこに近年、ほんの十年位からある言葉が加わり出した。
魔法世界を二分するミッドチルダとベルカという二つの魔法式。それに正々堂々と挑戦してきた魔法様式。
それを扱う者達はベルカ騎士に準えてこう呼ばれる。
『ブリタニア騎士』と
とある特殊な事情を持つ管理世界において、その言葉は生まれた。
某管理外世界と同じく地球と言う惑星状にその世界は展開されている。地理的にも酷似しているが、有する技術や歴史に違いがあった。
原子力が発達していない代わりに、魔法技術と科学技術の融合が著しく発達している。
だがこの世界は決して魔法だけに傾聴していた訳ではない。兵器の類は管理局で忌み嫌われている質量兵器を用いていた。
先の大混乱には加わっておらず、住民の魔道師としての才能が高くはなかったのだ。世界も安定には程遠く、国が乱立している状況。
しかしこの世界は突然管理世界の仲間入りすることになる。原因はここでのみ採掘される希少金属サクラダイト。
魔力炉に使用すれば生み出される魔力量が倍増し、伝達回路に組み込めばロスを極限まで無くす。
魔法文明にとって見れば何を差し置いても欲してしまう……例え多少の無理を通し、道理を捻じ曲げても。
管理世界に登録され、多次元との国交を持つ条件をこの世界は満たしていない。世界の安定に欠け、質量兵器も現役。
だがどうしても他の管理世界、その意向が意図せずとも反映される管理局は、この世界との国交を欲した。
正確に言えばこの世界で採掘されるサクラダイトを……だから無茶もする。
各国首脳が集まるサクラダイト分割会議に飛び入りし、多次元世界の全貌を説明した上で、全世界分のサクラダイト採掘権を要求したのだ。
この無茶な要求に各国は猛反発。特に新大陸に覇を唱える大国は武力行使も辞さずという態度。
しかしこの世界では実戦レベルには届かない魔法を使いこなし、未知の戦いをする管理局の魔道師たちに強国の軍すら敗北。
他の国々はその様子に戦慄し、管理局がサクラダイトの大産出国 日本に駐留し、採掘を監督する事を認めざるえなかった。
どの国々も呆然と佇むしかない中で、唯一違ったのは他ならぬ管理局に打ち負かされた強国であった。
以下は多次元世界間サクラダイト公平分配条約(通称エディンバラの屈辱)後に発表されたその国の皇帝による演説。
『今日は帝国臣民諸君に、屈辱的な内容を告げねばならない事、深く詫びる。
管理と平等を語る偽善者共がこの世界に干渉してきたのだ。我らには余る魔道の力を持って。
その力を前にして、数多の敵を打ち倒してきた我らも打ち倒す事ならず、連中の平等などと言う悪に身を落とす事になった』
皇帝は眼前に居並ぶ貴族、軍人を前にして静かに言った。その言葉に誰もが下を向いて歯軋りをさせ、屈辱に身を震わせている。
『だが! 忘れてはならない! 我らの国是を!!』
巨体から振り下ろされた握り拳は台に皹をいれ、テレビの前にして不動を示す群集たちも一斉に皇帝に視線を向ける。
『我らは競い、争い……常に進化を続けてきた。それは誰が相手だろうが変わらない!
相手が例え多次元世界全てであろうと、一騎当千の魔道師であろうとも!
競い争い獲得し支配しろ! その果てに……未来がある! オールハイル・ブリタニア!!』
全国民がソレに答える。数百年培養してきた闘争の血に最大級の火種が放り込まれた瞬間だった。
「「「「「「「オールハイル・ブリタニア!オールハイル・ブリタニア!オールハイル・ブリタニア!」」」」」」」
『不平等においてこそ競争と進化が生まれる』
そんな無茶苦茶な国是を持ち、未だに絶対君主制の元に階級制度を維持し、武力による植民地化に積極的な大国、神聖ブリタニア帝国。
管理局に直接弓を引き、直接打ちのめされた唯一の国である。だが……この国は心底闘争に特化した国だった。
敗北して押し付けられた平等、これはある種の不平等。故に……ブリタニアは進化する。
僅か十年に満たない期間で完成を見た全く新しい兵器。人型魔道自在戦闘装甲騎 『ナイトメア・フレーム』
容易く表現すれば四メートル程度の人型ロボット、人が乗り込んで動かす傀儡兵。正しい魔法と科学の融合。
そしてこれを操る者を先に述べたブリタニア騎士と呼ぶ。
エナジーフューラーと呼ばれる大型の魔力充電池が主動力としており、交換が容易い。
その魔力をサクラダイトにより全身に行き渡らせ、搭乗者の魔力保有量をカバーする。
空戦魔道師のような飛行は不可能だが高速移動の他、建物にすらよじ登れるホイール「ランドスピナー」。
それを補助するワイヤー式アンカー「スラッシュハーケン」により、戦場によっては空戦魔道師を凌ぐ機動性を誇る。
使用魔力と形態を変化させる事で幻術魔法を見破り、索敵を容易にする情報収集用カメラ「ファクトスフィア」も見逃せない強み。
武装はカートリッジシステムを応用した魔力弾丸を発射する大口径アサルトライフル、対ベルカ式を念頭に置いた大型ランスなど多種多様。
だがこの兵器の真の強みは……『扱いが容易である』と言う事だ。
訓練を受けた才能ある操縦者が操れば正しく一騎当千、高ランクのベルカ騎士とも一対一を繰り広げられる。
しかし素人、それこそ一時間ほどのレクチャーを受けただけの者でも、僅かな魔力さえあれば、動かすことや武器を撃つ事だけは容易い。
つまり本当の意味で兵器なのだ。使い手を選び、魔道師としての質に影響されるデバイスとは違う。
そしてソレを扱う者は兵士であり、訓練で容易く量産する事ができる。つまり……物量を揃えることが可能なのだ。
ナイトメア・フレームの理論を築き、開発し、量産し、配備する。これにブリタニアが費やした時間は僅か五年。
そして管理局がこの世界へと介入して五年、その事件は起きた。
管理局の当世界への不法駐留、並びに悪意あるサクラダイト配分量の操作に対する報復。それを目的とした神聖ブリタニア帝国による日本及び管理局戦力への宣戦布告。後に呼んで『極東事変』。
管理局は決してこの屈辱を忘れないだろう。五年、たった五年前にコテンパンに負かした相手に打ち破られる屈辱を。
この戦争において初めてナイトメア・フレームが実戦に投入された。
その既存の陸戦兵器に無い機動性、熟練者ならば高ランク魔道師と単機で渡り合い、並みの魔道師を複数蹂躙する戦闘力。
そして何より誰もが扱える汎用性とその数を容易く揃えられる量産性。
優秀な兵器の条件を揃えた騎士の騎馬たちは、日本と管理局戦力を蹂躙し一ヶ月と持たずに日本は降伏、管理局は戦力を撤退。
管理局は多次元世界を守るというプライドを失い、日本は自由と伝統、権利と誇り、そして名前を失った。
エリア11、イレブン。それが新しい日本と日本人の名前だった。
カレンは魔道師であり、イレブンであり、貴族のご令嬢であり、テロリストである。
手には古ぼけた杖型インテリジェント・デバイスを握り、戦争によって廃墟になったビル郡 ゲットーの中を駆けていた。
その顔は命の危険に対して歪み、青ざめていた。周りで彼女と同じ様に走る仲間も同様な状態だろう。
「くそっ! ナイトメアが相手じゃ……扇さん!」
『分かってる。なんとかB1地区まで逃げて相手の足を……』
耳につけた一昔前の通信インカムから雑音と共に響く仲間の声にカレンは頷く。だがやはり遅い。
このように入り組んだ市街地戦では、空戦魔道師をも越える機動性を持つ鋼の軍馬には遠く及ばない。
背後よりランドスピナーで地面を捉えて疾走するのは、現在のブリタニア軍主力の第五世代ナイトメアフレーム サザーランド。
センサーであるファクトスフィアが点滅し、闇夜に混じる獲物を正確に捉え、手に持った大型のアサルトライフルを構える。
発射音だけで耳を打つ轟音と共に、下手な砲撃級の射撃魔法にも劣らぬ魔力弾が連射。
「クゥッ!!」
『障壁』
避けきれるような攻撃ではない事をカレンは良く知っている。サイズが大きいと言う事はそれだけで射線が広く確保されるのだ。
足を止め、デバイスに魔力を集中。唱えるのはバリアー系の障壁魔法。インテリジェント・デバイスの援護も加わり、精製された障壁。
カレンの魔道師としての才能はこの世界ではトップクラスだろう。しかし管理局を退けたブリタニア騎士には及ばない。
ナイトメアが放つ魔力弾はソレを容易く揺さ振る。ビキリと嫌な音を立てたのは障壁ではなく、彼女のデバイスだった。
「紅蓮!?」
『おさらばです、主』
主を守る障壁の維持に無理な魔力を出力したせいでボディに皹が入り……
「ダメェ!!」
『ご武運を』
「バリンッ」
自分の手の内で砕け散る相棒にカレンは悲痛な叫ぶ。管理局の統治世代に普及した本格的な魔道技術の遺産がまた一つ命を散らした。
全裸…いや全力で支援だ!
デバイスを砕かれ、足を止めてしまった人間がナイトメアから逃げる術などありはしない。
「てこずらせたな、テロリストが!」
侮蔑の言葉と共に突きつけられた銃口、彼女らしくもなく死を覚悟した瞬間……それは来た。
空から降り注ぐ桜色の大砲撃。降り注いだ魔力の柱は獲物に気を取られて足を止めていたナイトメアを粉砕する。
「なっ……」
「怪我は無いかな? 大丈夫?」
カレンはその光景を一生忘れないだろう。後に巡り合う黒き仮面の策略家と同様に、彼女の心をその声の主は離さない。
ゆっくりと降りてくるのは茶色い髪をツインテールにし、白いバリアジャケットに身を包んだ女性。
手には空の薬莢を吐き出すインテリジェント・デバイス。燃え上がる残骸を背にして、その女性は微笑んでいた。
呆然としたまま差し出された手を取り立ち上がった瞬間、カレンは再び現れたナイトメアに備えて構えようとした。
「管理局の魔道師だな!?」
サザーランドからスピーカーに乗せて届いた声に女性の正体に一歩近づき、更に確信に至る。
突然銃を構えていたはずの敵機が崩れ落ちたのだ。見ればその腹に穴が開いている。
「抜き打ちでこの威力……」
まるでガンマンの決闘よろしく、振り向き様に一撃を加えたのだ。
サクラダイトが伝える魔力で、かなりの防御を誇るはずのナイトメアの装甲を容易く打ち抜く砲撃魔法。
「管理局の白い悪魔」
「ニャッハッハ、『なのはさん』で良いよ。みんなそう呼ぶから」
「あっ! すみません!!」
管理局の白い悪魔、高町なのは教導官。管理外世界の出身ながら、数多の事件を解決した空のエースオブエース。
そんな人物がどうしてこんな場所に?
「今日からイレブン抵抗勢力の皆さんに魔法を教える事になりました。よろしくね」
「えぇ!?」
支援
なんというギアス祭り!!
支援だ!!!
「ダールトン、どうした! 合流地点はそこではないぞ!?」
「申し訳ありません、姫様。少々懐かしい相手に会ってしまいましてな」
アンドレアス・ダールトン将軍は、愛機たるナイトメア・フレーム グロースターのコクピットから砂煙の向こうを睨みつけ、主の叱責に似た問いに答えた。
同時に申し訳なく思う。使えるべき主 コーネリア第二皇女の作戦遂行に参加できない事を。そして同時に嬉しく思う。
数年来の強敵との再会を。
「その懐かしい相手、厄介なのか? ならば迎えをやろう」
「それには及びません。並みの騎士では足手まといです」
例え不出来な部下でも足手まといとは行かないのだが、ダールトンは増援を拒否。一対一でやりあいたかったのだ。
「そうか……遅くはなるなよ。ユフィが心配する」
「イエス ユア・ハイネス」
通信は途切れ、ダールトンは精神をコクピットのディスプレイに集中する。
砂嵐の向こう、現れたのは白いコートを着て黒い杖を持った金髪の女性。それを確認してダールトンはスピーカーと外部集音装置を起動。
この二つを合わせて使う事により無線を持っていない人間とも会話が可能になる。勿論、距離的制限はあるが今の二人の位置ならば充分だ。
「懐かしい顔だ……七年ぶりになるか? 大きくなったな〜フェイト君」
ダールトンは映像を調整し、対象人物の細部を観察。自分が見知った七年前の情報と比較して同一人物である事を再確認。
しかし年月と言うのは恐ろしいモノで、当時は小さな少女だったこの人物も今では立派な女性だ。
フェイト・T・ハラオウン執務官。金色の閃光と呼ばれる凄腕執務官にして、かのハラオウン家の秘蔵っ子。
彼女は七年前の戦争に特別援護として参加していた。
「えぇ、最後に会ったのはシンジュク攻防戦。それはそうと……資料で確認しました。
老けましたね? ダールトン卿」
「ハッハッハ! もうスッカリ老兵だよ。そろそろ引退したいのだが……」
「それは良かったです。今日で貴方は引退ですから」
片や鋼の騎士に乗る巨体の中年男性、片やその身を外に晒す二十代前後の女性。
対峙するにはいろいろと問題がありそうな構図だが、本人達はいたって真面目だ。そしてこの構図は七年ぶり。
最後の戦い、陥落寸前の日本をバックにしてぶつかり合った。
「大きくなったの身長だけではなく……態度も大きくなったな。
どれ、見せてもらおうか? この傷のお礼も含めてな……」
「七年前の私だと思ったら痛い目じゃすみませんよ。貴方に付けられた傷のお返し……ここで!」
「ふんっ! それは此方としても同じだ。あの時のボロボロなグラスゴーと比べるべきではないぞ。
この姫様直属親衛隊にのみ配備されているグロースターを!!」
ダールトンは顔を真横に走る傷を、フェイトはバリアジャケットの上から鎖骨の下辺りを、それぞれ指でなぞる。
同時にお互いに武器を構え直した。フェイトの持つデバイス バルディッシュ・アサルトから鎌状の光の刃が飛び出す。
ダールトンが操るグロースターは金色の突撃槍を刺突の構え。
「はぁ!!」
「おぉ!!」
どちらとも無く二つの大きさが異なる影が駆け出す。
フェイトは魔力の力でコートをたなびかせ、グロースターはランドスピナーの加速でマントが舞う。
そして……激突。
支援!支援!支援!
支援!
「こんな無茶な支援できるか〜!!」
「ですよ〜!!」
サクラダイトを採掘する為のプラントとしてその姿を歪に変えた富士山の一角。
そこで独特な訛りの少女と人形サイズの少女が提出された書類をひっくり返した。
正面で書類の雨を受けるのは禿げ上がった頭に皺が無数に走る老人。
「しかしだな、コノくらいせんことには……」
「やかましい、古狸! おおかたワガママ姫の『ゼロ様〜』コールにやれたんやろが!」
「黙れ、この子狸めが! 大体もっと管理局がしっかりしていれば……」
「ソレを持ち出すんか!? 表に出ろや〜」
「ボッコボッコにしてやんよ〜です!」
タヌキ大決戦+1である。
以上……ネタと精神力が切れた。
以上でした。正直な話、ナイトメア・フレームの捏造設定が書きたかっただけなんだ。
後方の三人組の活躍はどうでも良いw そしてギアスキャラ全然出てない!!
まあ、気にしないで。本当は(なのはの)ナンバーズと(ギアスの)ナンバーズで書こうか?なんて思っていたw
まあ、なんちゃって予告デスw
GJ!!です。
ブリタニアはあまり好きではないけど、なんか応援したくなってしまったw
三期の管理局の黒さを見ると、魔法の効果を上げる希少金属があったらそれぐらいやりそうだ。
GJ!
続きを読んでみたい
GJ!
ブリタニア応援したくなったのは初めてだw
さてと時間になりましたので投下をいきます。
先ほども言いましたが長いので支援をお願いします。
支援ハイル・ブリタニア!
350 :
超魔法重神:2008/04/18(金) 22:02:06 ID:HljymwVk
第1話 巨神の棲む教会
新暦0075年、ミッドチルダにあるとある教会では時空管理局の上官達を集めてパーティが開かれ、そこには地上本部のトップ「レジアス・ゲイズ」も姿もあった。
「…しかしまだですかな。我々をここに呼んだ者は……」
「もう少しお待ち下さい。もうまもなく準備が整いますので…」
レジアスは痺れを切らしたかのように自分達を待たせている人物に対して怒り、黒い仮面を付けた男性クロノ・ハラオウンが怒るレジアスをなだめる。
その怒るレジアスの傍らには、同じく地上本部所属でレジアスの部下であるヴァイス・グランセニックは女性をナンパしていた。
「そこのお嬢さん。俺と踊らないかい?」
ヴァイスにナンパされた女性はロングヘアーで大人の雰囲気をかもし出しており、男ならナンパしたくなるのも無理はないくらいである。
ナンパされた女性はヴァイスをうっとおしく思ったのか笑顔のまま右手の拳を握り締めながらヴァイスに答える。
「……結構です!」
その女性は握っていた拳をヴァイスの顔面目掛けて拳を当て、ヴァイスは鼻血をたらして倒れて女性は怒った状態でその場を去る。
「まったく、貴様は何をやってるんだ! 貴様は帰ってグラナガンの警備に戻れ!」
「わかりましたよ…」
ヴァイスはしぶしぶレジアスに言われるがままに教会を出て行く。
ヴァイスが出て行って数十分後、ヴァイスにナンパされた女性は人知れず壁に隠れるように姿を隠し着ていたドレスを脱ぐと、脱いだ姿は先ほどまでのロングヘアーの大人な女性ではなくショートヘアーでまだ15、16歳くらいの少女であった。
その少女は変装をしていたのだ。ドレスの下にはバリアジャケットを羽織った姿でいつ戦闘に入ってもいいような体勢であった。
「よーし、いくぞ!」
少女は小さい声で意気込み、教会の奥へと入っていく。その様子をモニターされている事に気付かずに……。
モニター越しには三人のシスターの格好をした女性三人がそのモニターに映る少女を監視する。
「えーと、あの子は確か……」
メガネをかけたシスターの一人シャリオ・フィニーノ(通称シャーリー)がモニターに映る少女の身元を割り出す。
その少女の身元データがもう一つのモニターに現れ、オペレーターシスターの一人のアルト・クラエッタが読み上げる。
「スバル・ナカジマ。15歳。所属は陸上警備隊第386部隊の災害担当。魔導師ランクB。階級は二等陸士…」
「どうしますか?」
もう一人のオペレータールキノ・リリエがそのオペレーターシスターの他にこの部屋にいる緑色で長い髪をした男性に尋ねる。
「彼女をとりあえずあそこまで誘導したいのですが…、うまく行ってくれますかな?」
その男性は薄ら笑いをしながら教会の奥へと向かうスバルを見る。
「とりあえず君達はこのまま彼女をモニターしてくれ。僕はそろそろ…。客人達を待たせているのでね…」
「わかりました」
男性はオペレーターシスター達に後を任せて部屋から出た。
そしてその男性は教会の大広間に姿を現した。
「管理局の皆様。大変長らくお待たせしました。私がこの聖王教会の現責任者のヴェロッサ・アコースです」
351 :
超魔法重神:2008/04/18(金) 22:04:10 ID:HljymwVk
ヴェロッサが大広間に姿を現す少し前、スバルは教会の奥へとこっそりと進んでいく。
(どこにいるの? ギン姉……)
スバルが心の中でそう考えているとスバルは廊下で一人のシスターと鉢合わせてしまう。
(綺麗……)
そのシスターの顔や長い金髪は美しいものであり、一瞬スバルは見惚れてしまう。
そのシスターはスバルを見てすぐに不審者だと判断して助けを呼ぼうとして、スバルは慌ててその場を去る。
シスターの声を来てオレンジ色の髪でツインテールをした16,17歳くらいの少女が駆けつける。
「どうしたのドゥーエさん?」
「今そこに青のショートヘアーで右手に変わったデバイスをしていた女の子がいたのよ…」
(それってまさか…、スバル?)
ティアナ・ランスターはドゥーエの話を聞いて、侵入者が自分の親しい友人のスバルではないかと考え始める。
スバルとティアナは魔導師の訓練校にいた時のパートナーであり、ティアナのある事情により今は二人ともコンビを解消し離れていたのだ。
(でも何でスバルが……?)
ドゥーエの行動で慌ててその場を離れたスバルは急いで走ったので少しへばってしまう。
「はあ、はあ。ビックリした…」
スバルが壁にもたれかかろうとした時、壁が突然開き、スバルは壁の中にと消えてしまう。
「へ? へ? あああああああああ!!」
スバルは壁の中にあったパイプ型の通路をさかさまに滑り落ちながら出口から出る直前にスバルは何とか体勢を立て直して、自身の先天魔法「ウイングロード」を展開する。
「ウイングロード!」
スバルの右手をパイプの淵に当てて「ウイングロード」を発動させ、ウイングロードの上に立つ。
「危なかった…。うん?」
スバルの入った部屋は少し薄暗かったが目が暗さに慣れてきて、その部屋を見てみると自分の前には何やら大きなロボットがあることに気付く。
「何あれ!?」
スバルはそのロボットの姿を見て驚く。スバルはウイングロードを延ばして着地できる場所を探して着地する。
「すっご〜〜い!」
「これを褒めてくれるの?」
突然声がして明かりがつく。突然の明かりにスバルの目は思わず眩んでしまい、次にスバルが目を開けると目の前にはその声の主がスバルの目の前にいた。
その声の主はちょうど19、20歳くらいの女性であるがシスターの格好をしていない。スバルは先ほどばったり出会ったシスターにも見とれたが目の前にいる女性はそのシスター以上だとスバルは考えた。
髪は茶色のサイドポニーテールで、顔もスタイルも抜群の女性。
「初めまして。私、高町なのは」
スバルがなのはと出会った同時刻。次元航行空間を通して宇宙から何かが多数、ミッドチルダの首都のグラナガンに落ちてきた。
三人娘との絡みが面白いです。
フェイトそんもなにか良い感じでダールトンと熱血してますし
なのはさんも教官になるとは。
妄想が膨れあがりますw
失礼、支援
支援というかこれではクロノの中身が女になってしまうw
355 :
超魔法重神:2008/04/18(金) 22:08:27 ID:HljymwVk
グラナガンに何かが落ちたのと同時刻。聖王教会ではヴェロッサ主催のパーティに本当の幕が開かれようとする。
「一体何故我々をここに呼んだのだ?」
皆を代表して、レジアスが怒鳴りつけるようにヴェロッサに尋ねる。
「まあまあ、落ち着いてください。とにかくこれをご覧下さい」
ヴェロッサがモニターを出して教会に来ている管理局の上官達にある映像を見せる。
それに映し出されたのは次元航行空間、その空間には何かが存在する。それは機械の大群であった。
「何だこれは?」
「これは今このミッドチルダにとっての脅威。『ゼラバイア』です」
「『ゼラバイア』?」
ヴェロッサの言った「ゼラバイア」と言う言葉に皆が戸惑い、上官の一人が怒鳴り散らす。
「ふざけるな! こんな作り物!」
「そうだそうだ」
「我々をおちょくっているのか!?」
「これだから聖王教会は………」
一人の上官の言葉から端を発し、他の上官達もヴェロッサに向かって怒りの声を上げる。
「ですがこれは事実です。これをご覧下さい」
クロノがヴェロッサの横に近づき、モニターを切り替える。するとそこには先ほどのゼラバイアの大群がグラナガンを襲っている映像であった。
「これはリアルタイム、つまり今現在のグラナガンの状況です」
「そんな馬鹿な…」
グラナガンの様子を見てレジアスは絶句するが、すぐに首都防衛隊に連絡を入れる。
「おい、お前達! これはどういうことだ!?」
レジアスの通信を聞いた防衛隊の一人が答える。
「レジアス中将。突然空から敵が現れたのです」
「だったら何故防衛戦を張らない!?」
「…それがほとんどの地上部隊があれらにやられたのです」
隊員の言うとおりである。地上部隊のほとんどの武装局員がゼラバイアと戦ったがゼラバイアの装甲は厚く、魔法では歯が立たない。
「先ほどまでヴァイス陸曹も戦っておられたのですが、命は無事でしたがヴァイス陸曹もやられてしまいました」
その報告にレジアスは驚く。ヴァイスの魔力量や魔導師ランクは低いが、総合能力においてはAAランク以上と言っても過言ではない。
そのヴァイスまでやられたとなると地上部隊には打つ手がない。
「くそ! どうすればいいのだ!?」
「我々はこうやって黙って指を咥えていることしかできないのか!?」
「それなら大丈夫です」
レジアスを初めとする上官達は慌て始めるが、ヴェロッサが皆に言う。
「我々聖王教会には切り札があります」
356 :
超魔法重神:2008/04/18(金) 22:09:46 ID:HljymwVk
「じゃあスバルはギンガって言うお姉さんを探してるんだ」
ヴェロッサがゼラバイアの事を説明するほんの少し前、なのはは落ちてきたスバルと自己紹介の後にスバルの事情を聞いた。
スバルが聖王教会に潜入したのはスバルの姉のギンガ・ナカジマがこの聖王教会から姿を消したのを聞いて真相を確かめるのと同時にギンガの捜索に来たのだ。
「そうなんです。えーと…」
「なのはさんでいいよ」
なのはが笑顔でスバルに答える。
「あ、はい。なのはさんはギン姉の事何か知ってますか?」
スバルの質問になのはは首を横に振って答える。
「ごめんね。私ここには10年くらい前からいるけどギンガって人の事知らないんだ」
「…そうですか……」
スバルが落胆するがなのははすぐにフォローの言葉を入れる。
「スバル。だったら私もギンガって人を探すの手伝ってあげる」
「え、本当ですか!?」
なのはの申し入れにスバルは驚く。
「うん! 約束だよ」
なのはが明るい顔でスバルと約束を交わす。
するとそこに先ほどのシスターとは違う長い金髪の女性がやってくる。彼女もシスターの服を着ていない。
「なのは、ここにいたのって……その子誰?」
「フェイトちゃん…。この子はスバル・ナカジマ。ギンガって言うお姉さんを捜しに来たんだよ。ああ、スバル。こっちはフェイト・テスタロッサちゃんだよ」
なのははスバルとやって来たフェイトに互いの事を紹介する。
「どうも、初めまして」
「こちらこそ………ってそういう場合じゃないよなのは!」
フェイトが乗りツッコミを入れる。
「どうしたの? フェイトちゃん」
「ゼラバイアが来たって今報告があったの」
「ゼラバイア!」
「ゼラバイア」と聞いた途端になのはの顔は険しくなる。スバルはそんななのは顔にの少しばかり恐怖を抱くが、「ゼラバイア」の事を知らないので何の事だがわからずに困惑する。
「あのゼラバイアって……」
「君は帰った方が……」
「フェイトちゃん、どうせだからこの子も乗せよう。グランディーヴァに…」
357 :
超魔法重神:2008/04/18(金) 22:10:32 ID:HljymwVk
なのはの提案にフェイトは驚愕した。
「本気なの!? なのは」
「この子のリンカーコアにはG因子があるのを感じる。この子なら今開いてるGアタッカーに乗れると思うよ」
「でも……」
フェイトはおどおどする。スバルはさっきから何の事だがわからず話についていけない。そんなスバルはなのはに聞く。
「なのはさん、どういうことですか?」
なのはがスバルの質問に答える
「簡単に言うと今ミッドチルダに悪の敵がやって来たの。それでその敵は人類抹殺を企んでる。私達は今からそれを阻止しに行くけど、スバルも行く?」
スバルは信じられないと言う顔をするがなのはの目を見て思う。なのはは嘘をついていないと言うことを悟る。
「正直信じられませんけど、あたしでよければ協力します」
「ありがとう」
「それじゃあ、私はティアナとGドリラーで行くから…」
「ティアナ!? もしかしてティアの事ですか!?」
スバルは「ティアナ」と言う名前に反応してフェイトの肩を掴む。
「教えてください! ティアはここにいるんですか!?」
ティアナとは連絡はたまにとっているくらいできちんとした事は聞いていない。自分が3年近くもコンビを組んでいたティアナがここにいることにスバルは驚きフェイトに問い詰める。
「教えてください! ティアは………」
スバルは突然意識を失う。それはなのはが後ろから手刀をスバルの後ろの首筋に向けて当てて、スバルを気絶させたのだ。
「ごめんね、スバル。スバルの話は後できちんと聞くから……。フェイトちゃん、スバルをお願い」
「わかった、それじゃあ、なのは」
「うん」
なのははフェイトにスバルを預けて、その場にある巨大ロボット「グランカイザー」に乗り込む。フェイトはスバルを抱えてその場を去る。
「このままじゃ……、何だ!?」
ゼラバイアにより壊滅的なダメージを与えられ、もはやここまでと思っていた地上部隊の局員達だったが突然5機もの謎の機体が現れ、次々にゼラバイアを倒していく。
「すごい…」
「なんだあれは?」
一つは人型のロボットで、後の4機は戦闘機のようなものであるがそのうちの一つは戦車のようなものに先端部分にドリルが二つついてる。
それらはバルカンやドリルやミサイル、そして人型ロボット「グランカイザー」は素手で敵を倒していく。
彼らはそのロボットが「グランカイザー」とグランディーヴァである事を知らない。
「今の俺にはセンチメンタリズムの運命を感じずにはいられないな」
グランカイザーの姿を見たヴァイスは人知れずそう呟いた。
358 :
超魔法重神:2008/04/18(金) 22:13:15 ID:HljymwVk
グランディーヴァの一つの「Gアタッカー」のコックピットには意識がないスバルが乗っており、スバルはようやく目を覚ます。
「う〜ん、ここは……って、どこですか!?」
「落ち着いて……って、スバル!?」
目を覚ましたスバルが慌てていると突然通信が入り、その通信モニターにはティアナが映る。
「え、ティア。本当にティアなの!?」
「あんた本当にスバルなの!?」
スバルとティアナは突然の再会に互いに驚きを隠せない。
「スバル、あんたそんなとこで何してんの!?」
「ティアだって、何してたの!? あたしティアの事心配してたんだから……」
スバルとティアナはお互いの意見をぶつけ合う。そこにフェイトが割り込み通信を入れる。
「とりあえず、そういう話は後でね。今は目の前の事に集中して…」
「わかりました」
ティアナは先輩であるフェイトの言葉を素直に聞きいれ、戦いに集中する。しかしスバルは自分の乗っている機体がよくわからないので困り果ててしまう。
「とりあえず、あたしはどうすればいいんですか!?」
「それはひとまずはこちらで操作してますのでそのままレバーを握るだけで構いませんよ」
困り果てるスバルにシャーリーが優しくオペレートする。
「そんな事言ったって〜〜〜〜〜〜」
スバルは思わず握っているレバーのボタンを押してしまう。するとGアタッカーからバルカンが発射され、ゼラバイアの数体を倒していく。
「うわ〜すご〜〜〜〜い」
「あんまり下手な事しないで下さい。味方に当たったたら困りますから……」
「あ、はい。すみません。うん?」
すると突然空から何かがやって来る。それはゼラバイアだが先ほどまでのとは姿も大きさも違うものであった。
大きさはグランカイザー以上であり、姿は剣を3つほど合わせたものだった。
「あれもゼラバイアなのか?」
モニターでその様子を見るレジアスがヴェロッサに尋ねる。
「はい、さっきまでのはウォリアークラスのゼラバイア。そして今現れたのがデストロイヤークラスのゼラバイアです」
そのヴェロッサの言葉に管理局の上官達は皆おどおどする。
「そんなものに勝てるのか?」
「勝てます。そのための機動六課です」
クロノが皆にそう言うと、ヴェロッサは持っていた杖をマイク代わりにするように、グラナガンで戦っているなのは達に伝える。
「なのは、超重合神だ」
「わかりました。エルゴフォーム!!」
359 :
超魔法重神:2008/04/18(金) 22:13:53 ID:HljymwVk
ヴェロッサの指示に従い、なのはは自分の前にあるスイッチを根気よく拳で押し付ける。
するとグランカイザーの体の回りから何かがグランカイザーを覆っていく。
「グランナイツの諸君。合身せよ!」
「超重合身!!」
ヴェロッサの承認となのはの掛け声によりフェイトとティアナの乗るGドリラーが真ん中から二つに分かれ、
グランカイザーの左手にはティアナ、右手にはフェイトの乗るGドリラーが合体しグランカイザーの新しい手となる。
「え? え? 何?」
スバルは状況についていけないまま、スバルの乗るGアタッカーはグランカイザーの左脚となる。
ドゥーエのGストライカーもGアタッカー同様、グランカイザーの右脚となり、誰が乗っているのかわからないGシャドウはグランカイザーの胸に合体する。
ここに新たな巨大ロボットが誕生し、ヴェロッサはその巨大ロボットの名を言う。
「我らが機動六課の切り札、ミッドチルダを守る楯と矛、『グラヴィオン』です!」
超魔法重神グラヴィオンStrikerS 始まります
360 :
超魔法重神:2008/04/18(金) 22:15:46 ID:HljymwVk
投下完了です。
思ったより短かったですね。
キャラの性格は一応なのは原作を基準にしていて、キャラ設定はグラヴィオンのキャラと合いそうな人を選びました。
新米ですが、これからよろしくお願いします。
スパロボ参戦も決まったし、グラヴィオンは大好きだ。続きに期待。
でも、これはキャストクロスという奴なのかな?サンドマン様が見たかったかも。
GJでした。
ただ……ヴァイスさん、それは中の人違いです
もしリリカルなのはに寅さんがいたらをやってみたい。
人情あふれるSSを書きたくなってきた。
1500頃に一つ投下します。大した物ではありません。
内容は……
番外編5「激闘!!ナンバーズ更生組VSバーテックス」
です。
よし、ばっちこーい。
ゴメンナサイ、ちょっとした事情で投下を延期します。
失礼いたしました。
367 :
一尉:2008/04/19(土) 16:12:17 ID:z8I2KCzC
これはおもしろい支援たな。
↑これって荒らし?
メール欄に105って……
>>368 メール欄の105ってどうやってわかったの?
>>370 専ブラ使わなくても名前欄クリックすればわかる
とりあえず名前欄にカーソル置いてステータスバーを見てみるんだ。
なんで105だと荒らし? SAGEの親戚か?
とりあえず本音へGO
俺は……無限のフロンティアとのクロスを書くことを宣言するぜ! まだ発売されてねえけどw
それにしても今日は投下なしか
ニコニコの29時の時報に備えて寝たんじゃね?
えと、新しいクロスを書いたので24時前に投下宜しいでしょうか?
前よりは誤字なども減っていると思います。
なお、クロスネタは影技です。
381 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/19(土) 23:28:05 ID:4fZAhsD5
影技! あの作品とクロスする猛者が現れるとは。
全力で支援します。
やべぇ、無理漢字四文字の多さに注目するわwww
かもーん
誰とは言わんが、さっさと続きカケヨw
小ネタ飽きた。
それでは、投下させていただきます。
一部のキャラが、魔改造や立場の変更がありますので
そういうのが嫌な方は、NG設定にしてください。
あと、今回は影技分は少ないというか、ほぼないですOTZ
それは大切な出会い、故郷を追われ、当てもなく彷徨っていた私を救ってくれた
暖かくてとても大きな人。
私に人の生き方と、人間の強さを教えてくれた偉大な剣士、我が師サイ・オー。
ゆえに私は竜召喚師としてではなく、剣士として生きる事に命をかける事にしました。
殺の一文字心に抱いて、キシュラナ流剛剣術士キャロ・ル・ルシエが推して参ります。
なのはSTS×影技クロス 「剛剣無頼」
ザッザッザッ、薄汚れた外套を纏った幼い少女が無人の道を一人歩く。
その背には不釣合いな一本の太刀、そして肩には小さな竜。
「ねぇフリード、今日中には次の戦場に辿り着くかな?」
おっとりと優しげな声で、不穏当な発言をその小さな竜フリードに問い掛ける。
「キュクル〜♪」
その声に分かっているのかいないのか、楽しげに声をあげ頬に擦り寄るフリード。
元々答えを期待していなかったのであろう少女は溜息をつくと、またゆっくりと歩き出した。
暫らく無言で歩いていたが、ふと振り向くと何もいないはずの木の根元を斬りつける。
「傭兵の私に何か用ですか、ラッド・カルタスニ尉?」
少女は何の感慨も無く、つまらなそうにそこに誰か居るかのように声を発した。
「いや、申し訳ないですね狂乱(マッドネス)キャロ・ル・ルシエ殿」
斬りつけた木の上に、何時の間に居たのであろうか、管理局の制服を身に纏った二十代半ばの青年が腰をかけていた。
「しかし、いきなり斬りつけてくることはないでしょうに」
心底嫌そうに、頭を掻きながら苦笑いをするラッド。
そんな彼の様子を、冷めた目で見ていた少女、キャロは当然と言った口調で答える。
「この程度で、ラッドさんが斬られる訳無いですから、ただの挨拶代わりですよ」
ラッドは肩を竦めると、枝から飛び降りキャロの前に立つ。
「申し訳ありませんですが、依頼の変更です」
ラッドの言葉に、意外そうな顔を見せたキャロは訝しげに質問をする。
「依頼の変更ですか? 私に何を期待するのでしょう? 只の剣士の私に」
この質問に、ラッドは頭をガシガシと掻くと、本当に申し訳なさ全開で土下座した。
「申し訳ない、うちのバカ大将がどうしても彼方に護衛を依頼したいと!」
護衛という言葉に驚くキャロ、誰が好き好んで自分みたいな少女に護衛を依頼するというのだ。
「何を考えているんですかナカジマ三佐は、私に護衛を頼むなんて正気じゃないですよ」
狂乱(マッドネス)この名が示す通り、自分に護衛が向いていないのは分かりきっているだろうに。
何を考えているのか分からないでもないが、この予想が当たるなら今すぐ引き返したくなる。
「まさかと思いますが、ひょっとして……」
一縷の望みをかけ、ラッドに声をかけるキャロ、だがその希望はバッサリと断ち切られた。
「そのまさかです、娘のスバル嬢の護衛を頼みたいと……」
沈痛とすらいってよい、沈んだ声でラッドは答えた。
「あの親バカは、何をトチ狂っているんですか! ついに痴呆でも始まったとでもいうんですか!」
もはや敬称すら付けず声を荒げ、地面を何度も何度も蹴りつける。そのたびに僅かに地面が揺れる。
「前金はいつもの倍、報酬及び依頼中の生活は一切保障すると隊長は言っています」
その条件に、キャロの思考は冷静かつ足早に計算を始める。
(いつもの倍の前金と、生活が保障されるなら問題ないよね。最近はフリードの餌代もバカにならないし)
「分かりました、依頼は受けさしてもらいます。正し、何か事態が起こったら私に自由にやらせてください」
そう言うと、ラッドに手を差し出す。
「これが、私の条件です」
その差し出された手を握り、ラッドは片膝立ちになると頷き答えた。
「ありがとうございます。護衛対象のスバル嬢がいる先は、遺失物管理部対策部隊機動6課になります」
その長い部隊の名前に、何故か嫌な予感を抑える事が出来ないキャロであった。
それから数日が経った。
機動6課部隊長室
そこでは、部隊長であるはやてが書類の束の前で頭を抱えていた。
「幾らなんでも強引すぎや、でも通さないと不味いし、アカンどっちに転んでも良くないわ」
そんなはやての様子に心配の余りオロオロするリインと、失礼しますと言いながら、書類を手にとるシグナムの姿。
読んでいくうちにシグナムの眉間が皺を寄せ、頬が微妙に引きつっていく。
「主はやて、この文に書いてある事は一体なんの冗談ですか?」
シグナムが書類を改めて眺める、そこには地上本部からの監察官として、6課に人員を一人加える事と、その人物
のプロフィールが書かれていた。
「地上本部からの横槍は、予測されていた事態ですし、年齢は実力主義の管理局なら問題ありません」
バシッと書類を叩きつけながら、シグナムは激昂する。
「その監察官が管理局にキチンと所属しているならです!」
そこに書かれていた監察官のプロフィールは、色々な意味で問題が記されていた。
尉官待遇の傭兵、しかも経歴にはその管理局相手に、戦闘を行っているとすら記入されているのだ。
「主はやて、私はこの少女を実際に見たことがあります」
あの時出会った姿を思い出す。内乱に介入した戦場で見た数多の局員と、反乱軍の屍の上で返り血に全身を染めな
がらも、まるで花畑にいるような優しげな笑みを浮かべていた、あのイカれた傭兵の少女。
「私に言えるのは、彼女を迎え入れた場合新人たちの精神の保証はできないと言うことです」
それはシグナムの直感であった、数多の戦場を駆け巡った将としての判断が彼女を危険と判断する。
「でもなシグナム、この監察官を支持したのナカジマ三佐なんよ」
疲れた顔ではやては、シグナムに伝える。その推薦人にシグナムは一瞬驚いた顔を見せたが、直ぐに表情を引き締め直す。
「本当に、ナカジマ三佐なのですか? 三佐ぐらいならば彼女の経歴を事前に知る事ができるはずですが」
言外に、何か裏が在るのではとのニュアンスを込め、シグナムは自らの主たるはやてに問い掛けた。
「私も何か裏が在ると思うんやけど、ナカジマ三佐ならマイナスの影響を与えるような事をしないと思うし」
本当になんでなんだろうなぁと、不思議そうに答えるのであった。
「もしや主はやて、ナカジマ三佐はテスタロッサに、何かを期待してるのでしょうか?」
その言葉に、頭を抱かえていたはやては、一縷の光明を見出したかのように面を上げる。
「そうか、フェイトちゃんは色々な所で子供を保護しとるから、その子の心を救ってもらおうと考えてるんか!」
元気を取り戻したはやては、凄い勢いで書類を整理しはじめる。
その様子に、表情を和らげるシグナム。迎え入れる為の書類を作成しているはやてに対し、一礼をし隊長室から出て行った。
ちなみに、すっかり忘れ去られていたリインは、机のスミでゲームを始めていたのであった。
一方その頃、陸士108部隊隊長室では会話の中心であったナカジマ三佐が、写真を両手に抱かえ踊っていた。
「ハッハッハ! これで俺の作戦は成功したも同然。 何だかんだで純真なスバルには、キャロの嬢ちゃんの狂いっぷりは
トラウマ物。これで危険な前線からは外れるって寸法よ」
逝ってるとしか思えない、自分たちの隊長の行動を、醒めた目で見ているラッド二尉とギンガ。
「俺ァ、今でもスバルが局員でいる事に反対なんだよ! 怨むぜ高町一尉」
華麗にイナバウアーを決めると踊りを止めて、血涙を流し懐から取り出した藁人形に、ひたすらズガズガと五寸釘を打ち込んでいく。
「隊長、ギンガ陸曹はよろしいのですか?」
ラッドが呆れながら、隣にいるもう一人の隊長の愛娘の事を言う。
「いやギンガはなぁ、アリャもう手遅れだし、嫁の貰い手無さそうだし」
素で答えるナカジマ三佐、ギンガが後ろに居る事が、すっかり頭から抜け落ちているようである。
「父さ……ナカジマ三佐、良くもまぁそこまで言ってくれました」
BJを身に纏ったギンガが、左腕のリボルバーナックルをガシャコン、ガシャコンとカートリッジをフルリロード。
それだけでは飽きたらず、空になった薬莢を、新しい物に取り替え、さらにリロードする。
「いや、事実だしなぁ……って、ギンガさんその放電現象まで起こってる左腕は何でしょうか……」
ギンガの問いに、冷や汗混じりに答えたナカジマ三佐であったが、ギンガはそれに対し逝った笑顔で答える。
「それは三佐を、徹底的に殴る為ですよ♪」
慌てて逃げようとする、三佐の襟首を捕まえ動きを封じる。
ギュンギュン回転を始める左手、そうこれはギンガ必殺の……
「じゃあ、お母さんによろしくお願いしますね。リボルバァアアアア!ギムレットォオオオオ!!」
高速回転でドリル状になった左手で、ひたすら殴り始めた。
「ちょ、それって殺害予告! ブバッ、ゲブッ、ブヒャー!」
そんなギンガによる、ナカジマ三佐のフルボッコ劇を眺めていたラッドニ尉は、内線で救護室に連絡を取り始めた。
隊長室から流れる豚のような悲鳴は、108隊のオフィスルームにまで聞こえていたが、隊員達はああ、またかと変わらず
業務に励むのである。
そんな、平和な陸士108部隊の日常であった。
同時刻、クラナガン廃棄区域
日が落ちかけている夕暮れ時、キャロは瓦礫に腰掛けながら、一心不乱に肉に食いつくフリードを嗜めていた。
「フリード、お腹壊すから食べ過ぎたらダメだよ」
口を血まみれにしながら、骨を噛み砕き、肉を引きちぎる。いかに体が小さくなろうが、獰猛な竜種の本能は決して薄れず
ひたすらフリードは肉を喰らい続けていた。
「クー、キュクルルー!」
キャロの言葉に、残念そうに獲物から離れるフリード、離れた際に飛び散った内臓を、まだ食い足りないとばかりに見つめるが
主を怒らせまいとすぐに側に近づき肩に止まる。
「本当に、こっちのルートを選んで正解だったねフリード♪」
無造作に地面に置かれている、血にまみれた大量の財布を手に取ると、札と硬貨を取り出し自分の財布へと入れ替える。
「悪党を切ればお金は入るし、フリードは餌に困らない。それに犯罪も減るから、一石三鳥だね♪」
キャロは、先ほどまでフリードが喰らいついていた餌に目を向ける。
それは、数人の風体の怪しい人の姿をしていた。しかしそれは辛うじて判るに過ぎない。
四肢が切断され、胴体からは内臓を飛び散らしている。そしてその表情は、全て絶望に染まっていた。
「明日には仕事場に着くし、今度はどんな事が起こるかな? 命の取り合いが出来ると良いよね、フリード」
そう言うと、キャロは立ち上がり、今宵の寝床を確保する為に辺りを散策するのであった。
彼女が機動6課に到着するまで後1日
以上で、投下は終了です。
それでは失礼いたします。
乙
GJです!
キャロが荒んでるなぁ。
でも大剣と幼女の組み合わせは純粋に燃えます!
GJ!!です。
キャロがぶっ飛んでるw
そして同じくらいゲンヤもwww
GJ!です。クロス先は知らないけどキャロが素敵だ。
なんか強そうだし。
連続レスすいません。
今気づいたんですけど、フリード人食ってます?w
まとめサイト見たら削除の嵐だったんだけど何?
テンプレ読め
クロス先知りませんが、おっかないキャロに期待。
398 :
一尉:2008/04/20(日) 15:00:14 ID:QNsgbLb1
これたな。支援
このキャロなら戦闘機人の一人や二人、笑って殺しそう。
どんな教育したんだ、サイ・オー!
こんばんわ、オメガ11です。
えーっと、投下しても大丈夫ですかね?
オメガ8412イジェークト!支援
では投下開始。
ACE COMBAT04 THE OPERATION LYRICAL
第5話 ホテル・アグスタ防空戦
襲い来る鋼鉄の翼―立ち向かうのは、焦る銃士。
ユージア大陸北方、ノースポイント―。
ISAF空軍基地のパイロットたちの待機室では、二人のパイロットがポーカーをしていた。
「しっかし、メビウス1はどこに行ったんだろうねぇ」
手にしたカードを弄んでいるのは、先週から消息の途絶えたメビウス1の同僚、ヴァイパー6。
「五回目だ」
「あ?」
「今日その台詞を聞くのは」
カードをテーブルの上に置いて見せつけるのは"不死身の男"の異名を持つオメガ11。彼の見せたカードにはハートの四から八が並んでい
た。いわゆるストレートフラッシュだ。
ヴァイパー6は露骨に舌打ちし、カードを放り出す。ハートとダイヤの二が二枚のワンペアでは話にならない。
「おい、ホントにイカサマしてないだろうな?さっきからお前ずっと勝ってるぞ」
「失礼な。悔やむなら自分の運の無さを悔やめ」
「この万年ベイルアウト野郎が」
口では文句を言いつつもヴァイパー6はカードを束ねて、慣れた手つきでシャッフルを始めた。
「…だが、確かに彼はどこに行ったんだろうな」
「気になるだろ?いきなり光に飲み込まれて…」
ヴァイパー6のシャッフルの合間に、オメガ11が口を開く。
それは要塞メガリスを撃破した帰り道、祝勝パーティーで誰が最初に飲み潰れるかを議論していた最中だった。
この時ばかりは私語を許したAWACSのスカイアイがレーダーに異変が起きていることに気づいた時、メビウス1のF-22は空中に発生した光
の中に突っ込んだ。
誰もが我が目を疑った。次の瞬間光は消えうせ、メビウス1の姿はどこにも無かった。
ISAF空軍総司令部はただちに周辺空域の調査、メビウス1の捜索をすると共に厳重な情報統制を行った。
この戦争を勝利に導いた英雄が行方不明になった―こんな話をエルジア残党軍が聞いたら、また活発な行動を繰り返すだろう。
とは言え、大々的な捜索では怪しまれる。行方不明の英雄を探しているのは演習の名目を背負った海軍の小規模な哨戒隊にヘリが数機だけ
と言うのが現状だ。
だが、メビウス1の同僚たちは彼が死んだとは考えていなかった。ストーンヘンジも黄色中隊もメガリスも打ち破ってきた彼のことだ、き
っとまたどこからともなくひょっこり帰ってくる―少なくともそう考えるようにしていた。
英雄の突然の行方不明を、死んだとは結論付けたくない。メビウス中隊全員の共通の願いであり考えだった。
「それに連動するように、各地のエルジア軍の兵器が一斉に消えたって話もあるな」
シャッフルを終えたヴァイパー6はカードを配りながら言う。
メビウス1が行方不明になってすぐ、終戦により解体や戦勝国による押収を待つエルジア空軍の戦闘機が消えると言う事件が起きた。
エルジア残党軍の仕業とも言われたが、メガリスが陥落してから彼らは沈黙を保っている。
「異世界にでも行ったんじゃないのか?」
「はぁ?どういう意味だ?」
カードを受け取ったオメガ11は、最近はまっていると言う漫画を見せた。海軍の最新鋭イージス艦が、六〇年前にタイムスリップすると
言う内容だ。
「…俺はこの本の作者は潜水艦の方が好きなんだ」
「それは残念だな」
オメガ11はつまらなさそうな顔で漫画を元の位置に戻し、自分のカードの組み合わせを確認するとすぐにヴァイパー6に見せつけた。
「フルハウスだ、また俺の勝ちだな」
自信たっぷりに言ってみせる―だが、ヴァイパー6はまるでこの瞬間を待っていたかのように不適に微笑んだ。
「何勘違いしてやがる…ここからは俺のターンだ。覚悟しろこのbailout野郎!」
テーブルにカードを叩きつける。ダイヤの十、ジャック、クイーン、キング、エースが揃っていた。ロイヤルストレートフラッシュ。
いきなりフルボッコにされたオメガ11は信じられないような表情を浮かべ、目をこすってみたり頬を抓ってみたりしてみたが、目の前の
事態が現実であることを認めざるおえないと判断した瞬間―行動に出た。
「Omega11,I'm ejecting!」
必殺、オメガ11イジェクト。イジェクトと言っても座ってる椅子諸共射出された訳ではない。テーブルをひっくり返しただけだ。
「あああああああ、汚ぇ!!テメェ、この、万年ベイルアウト野郎!」
待機室に喧騒が響き渡る。今日もユージア大陸は平和だ。
エンゲージ支援
ミッドチルダの首都クラナガン南東にあるホテル・アグスタ―。
周囲を森林に囲まれたこのホテルにて、骨董美術品のオークションが行われようとしていた。
オークションに出品される物の中にはロストロギアもある―ただし、いずれも管理局に許可を受けた危険性の無いものだ。
今回の機動六課の任務は、その警備だった。
「それで、俺はタキシードなんか着せられてるのね」
いつもの飛行服ではなく、タキシードに身を包んだメビウス1がぼやいた。
「いやぁ、よう似合ってるよメビウスさん。よ、色男!」
そう言ってメビウス1の肩を叩くのははやて。こちらも今日はドレスで着飾っていた。
「ホント、カッコいいですよ」
「映画の主人公みたいです」
はやてに続くのはなのはとフェイト。彼女たちも今回任務のためドレス姿だ。
映画の主人公って言うか俺元作品じゃホントに主人公なんだけどなー、なんてメビウス1はぼやいてみたりして、改めて三人揃った機動六
課の隊長格を眺める。
一応メビウス1もまだ若い男だ。美人が三人、ドレスで着飾っている姿を見るのは悪い気分ではない。任務ではあるが、彼女たちも「なの
はちゃん綺麗やなー」とか「いやいや、はやてちゃんだって」とか「フェイトちゃんも更に美人になっとるでー」とか「ふふ、ありがとう」
とか言って和気藹々としている。
「ま、役得かな」
自然と表情が緩くなる。
高町、俺としては髪型はツインテールの方が好みだ。でも下ろしてるのも大人っぽくてGOODだ。
ハラウオン、お前自分が今振りまいてる色気自覚あるか?胸元見せつけちゃって。でも嫌いじゃないぜ。
八神、他の二人に比べて胸は小さいがドレスが身体にフィットしてるからな、ラインがいい味出してる。
この場に彼の同僚がいたら「メビウス1、てめぇー!」と飛び掛ってくるに違いない光景を眺めながら―いかんいかんと頭を振って気分を
切り替える。任務で来たのだ、美人を眺めに来たのではない。
「メビウス1」
「…っと、こちらメビウス1」
その時通信が入り、彼は懐から小型の通信機を取り出した。念話の出来ない彼にとっては必需品だ。
通信はヘリのパイロットのヴァイスからだった。
「あんたの言うとおり、ホテルから後方二〇キロの地点にF-22を輸送しておいた」
「助かる。それじゃあ機体の点検のため整備員を何名か残してこっちの屋上に来てくれ。何かあったらすぐ俺を運んでもらう」
「OKだ、交信終わり」
通信は途切れた。今回も戦闘機の出現が懸念されるため、彼は出来る限り近くにF-22を待機させておいた。
六課から離陸してホテル上空をCAP(戦闘空中哨戒)してもいいのだが、燃料を消費して給油のため戻っているところを襲撃されてはたまっ
たものではない。戦闘機の爆音は来客者たちを不安にさせるというホテル側の意向もあった。
今、F-22はホテルから後方二〇キロの建設途中の高速道路にて待機している。
メビウス1は最初F-22と共に待機するつもりだったが、はやてが「現場では眼は一つでも多い方がええ」と言ったので今に至る。
―とか言って八神、単に俺にタキシード着させたかっただけなんじゃ?
慣れないタキシードの感触にメビウス1は違和感を覚えながら、ホテルのオークション会場の確認を始めた。
自由エルジア支援
支援
六課の戦力はつくづく異常を通り越して無敵―。
以前から思っていたことだが、あのパイロットが加わってからはティアナはますますそう考えるようになった。
「八神部隊長がどんな裏業を使ったかは知らないけど―」
ホテルの駐車場で、辺りの状況や地理を把握しながらティアナは呟く。
隊長格全員がオーバーS、副隊長でもニアSランク、他の隊員たちだって、前線から管制官まで未来のエリートばかり。
彼女の脳裏で皆の顔が浮かんでは消え、浮かんでは消えていく。その中で、自分だけがひどく浮いている気がした。
あの歳でもうBランクを取ってるエリオ、竜召喚なんてレアスキル持ちのキャロ。危なっかしいけど潜在能力はとてつもないものを秘めて
いて、優しい家族のバックアップもあるスバル。
同じ新人フォワード部隊のメンバー。だが、それでも自分の姿は浮いて見えた。
―やっぱり、うちの部隊で凡人はあたしだけか。
「そして、いきなり現れた質量兵器のパイロット…」
今のところ彼女が最も気に食わない存在が脳裏に浮かび上がってきて、ティアナは表情をわずかに歪めた。
確かに、メビウス1の戦闘能力は凄まじい。愛機F-22の操縦桿を握らせれば、リミッター解除のなのはでも勝てるかどうか。
だがあれは紛れも無い質量兵器ではないか。ミサイルの推進方式を魔力に頼ったからと言っても彼女は納得いかなかった。
「いいわよ…私が証明してみせる。あんな奴いなくたって、私が…」
ぎゅっと拳を握り締めて、彼女は空を睨んだ。
戦闘機が来るならば、むしろ望むところ。自分の存在価値を証明し、質量兵器なんていらないことを明らかにするチャンスだ。
森の中、遠くのホテル・アグスタを眺める一人の男に一人の少女。
「あそこか」
男の名はゼスト・グランガイツと言う。ゼストは傍らに立つ少女―ルーテシア・アルピーノに視線を向けた。
「お前の探し物は、ここには無いのだろう?」
確認するように言ってみたが、ルーテシアのこちらを見上げる視線はそれを否定しているようだった。
「何か気になるのか?」
こくり、と彼女は頷く。ちょうどその時、一匹の小さな虫がルーテシアの元に寄り添うように飛んできた。
虫はルーテシアの指先に乗ると、足を器用に動かして彼女に何かを伝えた。
「ドクターのおもちゃが、近付いてきてるって」
か細い声で、ルーテシアはゼストに向かって言った。ドクターのおもちゃ―すなわち、ジェイル・スカリエッティのガジェットのことだ。
最近になってそのおもちゃには新しく異世界の質量兵器が加わった、とゼストは聞いた。
あいつが欲しがりそうな物だな―。
ゼストの脳裏に浮かぶのはかつての友人。優秀な魔導師を多く抱えた管理局の本局と違い、質量共に劣る装備で地上の平和を託された彼の
ことだ。魔力資質が無くても並みの空戦魔導師を圧倒できるあの存在は喉から手が出るほど欲しいに違いない。
「―始まったか」
しばらくして、森の向こうで爆発と閃光が巻き起こる。管理局の魔導師とガジェットたちが戦闘を開始したのだろう。
だが、魔導師たちの技量がずば抜けて高いのか爆発と閃光は同じ場所でばかり起こっている。つまり、ガジェットたちは目標に向けて前進
できていないのだ。
そう時間はかからないうちにガジェットは全滅に追い込まれる。
ゼストがそう思った時、目前にディスプレイが出現した。映っていたのはドクターことスカリエッティ。
「ごきげんよう、騎士ゼスト。ルーテシア」
「ごきげんよう」
「…何のようだ?」
毅然とした態度を崩さず、ゼストは言ってのける。彼は正直、スカリエッティのことは信用できなかった。協力しているのも単に利害関係
が一致しているからで、レリックが関わっていないのなら互いに不可侵を決めている。
「冷たいね…近くで状況を見ているんだろう?あのホテルにレリックはないが、実験材料として興味深いものがあるんだ」
―要するにそれを確保して欲しい、と言うことか。
スカリエッティの思考を読んだゼストは、
「断る」
と短く言い放った。相手も分かった上で言ってきたのだろう、わざわざ理由を説明してやるまでも無い。
「…ルーテシアはどうだい?頼まれてくれるかな?」
スカリエッティは大して気分を害した様子も無く、今度はルーテシアに訊ねた。
「いいよ」
「優しいなぁ…今度お茶とお菓子をおごらせてくれ」
スカリエッティは笑顔を浮かべ、しかしどこか冷たさの入り混じった声で言った。
直後、ルーテシアのグローブ状のデバイス"アスクレピオス"にこのマッドサイエンティストの欲しがっている物のデータが送り込まれた。
そうしてスカリエッティに「ごきげんよう」と別れを告げたルーテシアは羽織っていたローブを脱ぐ。
「…いいのか?」
ローブを受け取ったゼストが表情は崩さず、しかし彼なりに心配してくれた。
「ゼストやアギトはドクターのこと嫌うけど…私はドクターのこと、そんなに嫌いじゃないから…」
「……そうか」
全ては、母のため。
あの狂気の科学者はそう言って、こんな少女さえ血生臭い戦いに引きずり込んでいる。
だが彼女は彼のことを「嫌いじゃない」と言った。それは彼が自身の母親に何をしたのか知らないだけなのか―それとも、知った上での言
葉なのか。
ルーテシアは両手を広げて、近代ベルカ式の魔法陣を展開。
いくらかの詠唱を終えて、彼女は両手を合わせる。
「―召喚、インゼクト」
魔法陣から現れたのは先ほど伝令役を務めた虫と同じ型のもの。それらが複数、苦戦するガジェットたちに群がって行く―。
ティアナよ入隊数週間でそんなに焦るな支援
「っく―」
突然動きが鋭くなったガジェットのレーザー攻撃、烈火の将ことシグナムはそれを古代ベルカ式の防御魔法"パンツァーシルト"で弾く。
さっきの召喚魔法の反応と、何か関係がある―?
愛剣レヴァンティンを構え直し、シグナムはいや、と思考を振り払った。
「余計な事を考える暇は無い―はぁっ!」
跳ね上がり、大型のガジェットV型に向かってレヴァンティンを振るう。二本のアームで受け止められたが、この程度は予測済みだ。
レヴァンティンを絡めとられて動きを封じられる前に、ガジェットV型の装甲を蹴って後退。ぐっと地面を踏み込んで目にも止まらぬ速さ
で突進、レヴァンティンの刃先をガジェットV型に突き立てる。
正面から串刺しにされたガジェットV型は断末魔のようにカメラを点滅させ、息絶えた。
「シグナム、下がれ!」
上空で援護射撃をしていたヴィータから警告。咄嗟にシグナムはバックステップで後退。直後、ほんの数瞬前まで自分がいた位置にガジェ
ットT型のレーザーが叩き込まれる。
「ぶち抜けぇ!」
ヴィータはシグナムに不意の一撃を浴びせようとしたガジェットT型に鉄球、"シュワルベフリーゲン"を放つ。
だが、ガジェットT型はその外見からは思いもよらない軽快な機動でシュワルベフリーゲンを回避。
「っち―さっきから動きがよくなってる」
「無人機の動きではない…明らかに何者かが操っている」
レーザー攻撃を潜り抜けてきたシグナムが、ヴィータの傍らまで後退してきた。
「…よし、ヴィータ。防衛ラインまで下がって新人たちの援護だ。召喚師がいるなら、回り込まれる可能性がある」
「分かった…え?」
「ちょっと待って、二人とも!」
突然会話に乱入してきたのは現場指揮を担当しているシャマル。緊迫した様子なのを見ると、どうやら何かあったようだ。
「どうした、シャマル?」
「厄介なのが近付いてきたわ」
「―ああ、今聞こえてきた」
ヴィータが苦虫を噛み潰したような表情で空を見上げた。
よく晴れた青空に、突然響きだした雷のような轟音。間違いなく、ジェットエンジンの音だ。
「…来るぞ!」
シグナムの叫び。二人はただちに回避機動に入った。
青空の向こうから、四つの飛行機雲がこちらに伸びてきているのが見える。飛行機雲の群れは二つずつに分散し、それぞれシグナムとヴィー
タに向かって突っ込んできた。
「―戦闘機!」
先のリニアレールの戦闘からその存在を聞かされた質量兵器。シグナムに襲い掛かってきたのは、タイフーンと呼ばれる機動性に秀でた機
体だ。それがヴィータを追う分も含めて合計四機。
タイフーンの主翼下から短距離空対空ミサイル、IRST-Tが発射された。烈火の将に赤外線誘導のミサイルとは、なんとも皮肉だ。
IRST-Tはまっすぐシグナムに迫る―だが、戦闘機のパイロットに勝るとも劣らないシグナムの眼は確実にIRST-Tを捉えていた。
「ふん!」
レヴァンティンを振り抜き、衝撃波を打ち出す。シュトゥルムヴィンデ、かつてフェイトと対峙した時に使った技だ。
衝撃をもろに浴びたIRST-Tは全身を捻じ曲げられ、爆発。しかしタイフーンは続いてBK-27二七ミリ機関砲を撃ち込んで来る。
ぐ、と彼女は表情を曲げてパンツァーシルトを展開させ、二七ミリ弾の雨を耐え抜く。
反撃するべくレヴァンティンを構えるが、もう一機がまた機関砲を撃ち放ってきてそれを妨害。牽制のための適当な射撃だったので当たるこ
とはなかったが、攻撃を仕掛けてきた一機は悠々と上昇して行く。
「こいつら―連携が絶妙だ。火力も機動力も…」
下には動きのよくなったガジェット、上にはタイフーン。とても新人たちの防衛ラインに増援を送る余裕など、無かった。
「ちっくしょー!どうにもならねぇのか!」
シュワルベフリーゲンを乱射しながらタイフーンと対峙するヴィータが叫ぶ。だが、タイフーンはそれを嘲笑うかのように華麗な空戦機動
で回避してみせる。
「ザフィーラ…そっちは!?」
「無理だ!ガジェットたちが集中砲火をかけてきている!」
少し離れたところで同じくガジェットと交戦していた守護獣ことザフィーラは、シグナムとヴィータがタイフーンの攻撃に晒されているた
め、ガジェットたちの猛攻を一手で引き受けていた。これでは防衛ラインまで下がれるはずもない。
まずい―そんな言葉がヴォルケンリッターズの脳裏によぎる。
だが、次の瞬間―はるか上空から突如として一機の鋼鉄の翼が舞い下りて来た。
自由エルジア全滅だ!支援
「こちらメビウス1―遅れてすまん!」
戦闘機出現の報告を受けたメビウス1のF-22はようやく戦闘空域に到着。状況は思わしくなく、タイフーン四機のおかげでシグナム、ヴィー
タが追い回されてその隙にガジェットたちが一斉に前進。それをザフィーラがかろうじて止めている。
「メビウス1、戦闘機を落としてください!そうすればシグナムたちがザフィーラの援護に回れます!」
「了解―メビウス1、交戦!」
シャマルの指示を受けて、メビウス1はウエポン・システムをオンに。エンジン・スロットルレバーを叩き込んでアフターバーナー点火、
まずはヴィータを狙うタイフーンの二機編隊に挑む。
主翼に描かれている国籍マークは―やはり、エルジア空軍のものだ。
「ヴィータ、上昇しろ!」
「メビウス1か!?分かった、上昇だな!」
通信機を通じてヴィータに上昇するよう指示。彼女が勢いよく上昇するとタイフーンはそれを追いかける。
かかった―!
ヴィータを追い掛け回すのに夢中になっていたタイフーンはメビウス1の接近に気付かず、無防備な背中を曝け出している。
パネルを操作して兵装、AIM-120AMRAAMを選択。レーダー、ロックオン。
ようやくタイフーンはロックオンされたことに気付き、回避機動を取るがすでに遅かった。
「フォックス3、フォックス3」
ミサイル発射ボタンを連打。胴体下のウエポン・ベイからAIM-120が二発、発射された。
魔力推進の証である白い光跡を描きながらAIM-120はタイフーンに急接近。タイフーンはレーダー波を撹乱させるアルミ片のチャフをばら撒
くものの、タイミングが遅れて二機とも直撃を浴びた。胴体を真っ二つにされた敵機二機はパイロットを射出しないまま落ちて行く。
「サンキュー、助かったぜメビウス1!んじゃ、あたしはザフィーラの援護に行く!」
「了解、グッドラック」
ヴィータは手を振ってメビウス1に礼を言って、ザフィーラの元に向かう。それを見送ったメビウス1は次なる目標、シグナムを追うタイ
フーンに狙いを定める。
―あれだな。
機体を軽く左に傾けると、眼下でタイフーンがシグナムを囲むようにして飛んでいた。まるで猟犬に追い詰められた狐のようだった。
AIM-120は―駄目だ、近すぎる。爆風と破片でシグナムにまで被害が及ぶ。
兵装を素早くM61A2二〇ミリ機関砲に変更。通信機でシグナムに呼びかけた。
「シグナム、聞こえるな!三秒後に援護射撃する、その隙に離脱しろ!」
「その声は…メビウスか。了解した!」
メビウス1は操縦桿を突いて機体の機首を下げる。急降下、敵機との距離は一気に縮まり、機関砲の射程内に。
照準を合わせる必要は無い。要はタイフーンの注意を逸らすだけでいいのだ。メビウス1は引き金を引き、適当に二〇ミリ弾を一〇〇発ほ
ど一機のタイフーンに向かって浴びせた。寸前で気付いたタイフーンは急上昇、ほとんど垂直に近い角度に機首を向け機関砲弾を回避。
だがその隙にシグナムは離脱に成功する。
「散々やってくれたな―礼をさせてもらう」
レヴァンティンをシュランゲフォルムに。鞭のように伸びる連結剣はトリッキーな動きでタイフーンを混乱させ、ついに一機を捉える。
刀身がタイフーンの特徴的なカナード翼を切り裂き、主翼すらも食いちぎる。翼をもがれたタイフーンはぐるぐると回転しながら地面へと
落ちていった。
やるなぁ、さすがライトニング分隊の副隊長―。
頭の片隅で新鋭機の部類に入るタイフーンを撃墜したシグナムに感嘆しながら、メビウス1は残り一機のタイフーンを追いかける。
敵機は右、左と交互に旋回してなんとかメビウス1のF-22を振り切ろうとするが、機動がパターン化してしまっていた。
タイフーンの後を追って追従旋回していたメビウス1は途中で操縦桿を捻りロール、タイフーンは右旋回から左旋回に切り替えて、F-22の
真正面に躍り出てしまう。メビウス1に未来位置を先読みされたのだ。
レーダーロックオン。躊躇することなく、メビウス1はミサイル発射ボタンを押す。
「メビウス1、フォックス3」
胴体下のウエポン・ベイからAIM-120を発射。一気に加速したAIM-120は最短距離でタイフーンに接近し、命中。特徴的なデルタ翼を吹き飛
ばされたタイフーンは空中分解しながら落ちていった。
「スプラッシュ3…よし、敵戦闘機は全て蹴散らしたぞ」
「感謝する。私はザフィーラの援護に向かうが…シャマル、メビウス1はどうする?」
ひとまず全ての敵機を撃墜したため、シグナムはシャマルに指示を仰いだ。
支援
「シグナムはそのままザフィーラの援護に。メビウスさんはとりあえず待機しておいて、もう来ないとは言い切れないから」
「メビウス1、了解…じゃあ気をつけてな、シグナム」
「言われるまでも無い」
不適に微笑んで見せて、シグナムは森の中へ降下して行く。これでガジェットたちもこれ以上前進は出来なくなるだろう。
メビウス1としてはガジェット攻撃に参加したいところだが、対地攻撃可能な兵装は機関砲のみ。低空へ降りて弾をばら撒くのは効果は絶
大だが同じくらいの危険も―例えば地面への激突、対空射撃による被弾―あり得る。
高みの見物しかないか―。
酸素マスクの中でため息を吐くと、シャマルから通信が入った。
「メビウス1、大変です!」
「どうした?」
「ホテル・アグスタに敵機接近、あと八分で上空に到達します!」
「何?だがレーダーには何も…そうか、ステルスか!」
この世界に来てから非ステルス機ばかり相手にしていたせいか、すっかり失念していた。自分の機体もステルス戦闘機なのだ。相手が使っ
ていても何ら不思議ではない。
「シャマル、この際だから許可は後回しだ!音速巡航を使う!」
「了解…やむを得ませんね」
機首をホテル・アグスタの方向に向けて、アフターバーナー点火。F119エンジンが咆哮を上げ、F-22は音速を突破する。
地上に被害が及ぶ可能性があることから、普段は音速飛行は禁止されていた。それほどにまで音速の衝撃波は凄まじい。だが、規則に縛ら
れてより甚大な被害が出るならやむを得ない。
「間に合えよ、くそ…!」
猛然と加速したF-22のコクピットで、メビウス1は焦燥に駆られていた。
さすが壊滅直前のISAFを勝利へと導いた男支援
その頃、ホテル・アグスタの最終防衛ラインでは新人フォワード部隊が展開し、転送魔法によって出現したガジェットたちと対峙していた。
「迎撃、行くわよ!」
『おう!』
指揮を務めるティアナの声に、スバル、エリオ、キャロが応える。
―今までと同じ。証明すればいいんだ。
クロス・ミラージュを構えて、ティアナは思いを馳せる。
―自分の勇気と能力を証明して、あたしはいつだって、そうやってきた!
魔法陣が彼女の足元に浮かび上がる。ガジェットたちがまるでティアナの戦意に応えるように襲い掛かってきた。
「はぁぁあああ…!」
両手に持ったクロス・ミラージュをガジェットに向けて連射。魔力弾を浴びたガジェットは内部爆発を起こすが、他のガジェットがレーザ
ー攻撃を放ってくる。
「!」
身を屈めて回避。お返しに二発ほど撃ち返すが、ガジェットも急機動で避けてみせた。
「スバル!」
だが、それは彼女にとって予測の範囲内だ。新人たちの中で突っ込ませたら右に出るものはいないスバルに指示を出す。
「了解!うぉおおおお!」
ウイングロードを渡って上空からスバルがガジェットに突撃を敢行。右手のリボルバーナックルに魔力を収縮、ガジェットを直接ぶん殴る
ナックルダスター。側面から思い切り叩きつけられたガジェットは5メートルほど周りのガジェットたちを巻き込みながら飛び、爆発。
残りのガジェットたちが仇討ちとばかりにレーザー攻撃をスバルに放とうとするが、これもティアナの予測の内。クロス・ミラージュを構
え魔力弾を連射。直撃弾を浴びたガジェットは大破し、そうでなくてもスバルを取り逃がしてしまった。
「…スターズF、聞こえる!?」
その時、突然シャマルから念話による通信が入った。
「こちらスターズ4!」
「気をつけて、そっちに戦闘機が近付いているわ!今メビウス1が援護に急行してるから、それまでなんとか持ちこたえて!」
「戦闘機…!?」
ええい、ガジェットだけでも忙しいのに―!
ティアナはクロス・ミラージュの銃身を交換して魔力弾を補給すると、エリオとキャロに指示を下す。
「エリオ、キャロ!ガジェットの相手をお願い!残りは少ないけど、油断しないように!」
「は、はい…」
「ティアナさんと、スバルさんは?」
「戦闘機が来るそうよ。あたしたちはそっちの相手をする…頼んだわよ。スバル、戦闘機の迎撃!」
「おう!」
二組に分かれたフォワード部隊はそれぞれの敵へと向かう。エリオ、キャロはガジェットと交戦。残っているのはT型ばかりで数も少ない。
エリオたちの実力なら大丈夫だとティアナは判断した。
ティアナ、スバルは予想される敵戦闘機の進路に立って迎撃。シャマルの指示は"持ちこたえる"だったので無理に迎撃することも無いかも
しれないが、ティアナは守ってばかりではいけないと判断した。
―守りに入って素通りされて、ホテルを爆撃されたら洒落にならないわ。
間もなく、空の向こうから轟音が聞こえてきた。忌々しい質量兵器のジェットエンジンの咆哮だ。
「スバル、敵機が射程内に入ったらクロスシュートA、行くわよ!」
「了解…って、もうそこまで来てる!?」
「え!?」
見上げれば、二機の黒い歪な形をした戦闘機が正面から来る。確か九七管理外世界の資料にあった、史上初のステルス戦闘機であるF-117だ。
ステルス戦闘機とは言ってもF-117は攻撃機としての性格が強い。敵に気付かれること無く接近し、重要施設に爆弾を放り込むのが主な任務
のはずだ。
急行すると言ってのにF-22の姿はまだ見えない。
「…援護をアテなんか、していられないわ。スバル、突っ込んで!」
「分かった!」
ティアナに言われるがまま、スバルはウイングロードの上を猛然と加速しF-117の二機編隊に突っ込む。
F-117は編隊を解いて回避するが、その動きは鈍い。F-22と違ってまだステルスと言う概念が生まれたばかりの頃に開発されたF-117は機動
性を犠牲にしてステルス性を確保しているのだ。
もちろんティアナがそこまでの事情を知っているはずも無い。ただ動きが予想以上に鈍いのは助かった。
カートリッジ・リロード。同時に四発のリロードは身体にもデバイスにも大きな負担だったが、ここで手を抜く訳には行かない。
「証明してみせる―すごい魔力なんか無くても、一流の隊長たちの部隊でも、質量兵器なんか無くても」
クロス・ミラージュを構える。上空ではF-117がスバルにキリキリ舞いをさせられていたが、撃墜するには至っていないようだ。
「ランスターの弾丸は、ちゃんと敵を撃ち抜けるんだって―!」
彼女の周りに魔力弾が浮かび上がる。目標の敵機は射程内だ。
「クロスファイアー…シュート!」
腕を振り下ろす。周囲に浮かんでいた魔力弾が一斉に飛び出し、F-117の編隊に襲い掛かる。
一機のF-117が避けきれず魔力弾を食らい、ガクンと速度を落とす。そこに他の魔力弾が集中し、その歪な形をした機体を引き裂いて行く。
爆発。魔力弾で全身を傷だらけにされたF-117は空中に散る。
「はぁああああああ!!」
残り一機に向けて、魔力弾を乱射。F-117は乏しい機動力を精一杯使って回避するも、やがて力尽きたように魔力弾を浴び、火災を起こした。
だが、火の鳥と化したF-117はここで思わぬ行動を見せた。最後の力を振り絞って機首をこちらに突っ込んできた。
「特攻!?そんな冗談…」
勘弁して、とさらに魔力弾を撃ち続けるが、F-117は落ちない。まるで怨念の塊になったようだ。
「ティアナ、逃げて!」
スバルの叫びが聞こえて、ようやくティアナはこれ以上は無理と悟り逃げようとするが、間に合わないのは確実だった。
たまらず恐怖で悲鳴を上げそうになる―まさにその瞬間、いつかの時と同じようにF-117の側面に矢のような物体が突っ込んできた。
矢を食らったF-117はその場で爆発。爆風と破片がティアナに襲い掛かってきたが、思い切り正面にダイブしてかろうじて避けた。
見上げると、リボンのマークをつけたF-22が頭上を飛びぬけて行く―あの時と、まったく同じだった。
「こちらメビウス1、聞こえるかスターズ4?生きているなら返事してくれ」
「……おかげさまで、生きてます」
身体にかかった砂を払い落としながら、ティアナは憮然とした声で念話を送った。
―また、助けられた。
投下終了。
あぁー、やっぱ空戦ですよ空戦。空戦が書いてて一番楽しい。
GJ!
やはりメビウス1はいい仕事してます〜援護のしどころが分かってる。
あの劣勢の中で戦って戦況を覆したんだから、個人の戦闘力だけでなく戦場を見極める目があるよな。
ティアナはメビウス1から学ぶものはたくさんあるぞ。
GJでした!!
ただ、戦闘機を落とす=人を殺している ということに対してティアナ達はどう認識しているのか気になりました。
GJ!です。
空はいい、空は…
空戦はロマンです。
GJ
GJ!
これからいろんな機体が出ると思うとwktkです。
GJ
シグナムさんも強いぜ。
GJ!
エーコンやったことないけどやってみたくなってきた…
そしてオメガ11の読んでる漫画はジパングか!?
潜水艦のやつは沈黙の艦隊だなw
海江田艦長ー!
海江田とか来ちゃったらあの恐ろしいカリスマ性でいろいろとバランス悪くなりそうだなwww
深町も呼べばバランスとれるさ。
草加拓海も頼むw
おーいっす、なんかオリ要素強くなってこれでいいのかと煩悶中ですが、投下していいでしょうかー?
予約はないとは思いますが。
空戦GJ。
そして今、テレビでもドッグファイトが行われていたり。
映画【ステルス】やってる
うぃっす、支援いたしやす
凡人登場、ようやく。
魔法少女リリカルなのは 闇の王女 幕間其の七
何時だって、世界は凡人に優しくない。
どんな努力も通じないほどに、聳え立つ壁は高く、才能の差だけは埋められなかった。
だから、今私はここにいる。
報われないなら、報われるように変えてやる。
それが、私の意志。
―――ふう、と息をはき、ティアナ・ランスターは右手のアンカーガン――拳銃型のストレージデバイスを握り締めた。
オレンジ色の発色の良い髪――ツインテールにしてまとめてあるそれを、揺らしながら、部隊長に問う。
「良かったんですか?命令を無視して」
濃い髭面の大男が、豪快に笑った。ミッド式の魔導師で、隊内で唯一空を飛べる人だ。
手の中のストレージデバイス――緑色の杖型だ――を握り締めながら、
「現場が目の前にあるのに、待機?笑わせるなって。俺たちは避難誘導をしてるだけだろ、そういうことだ」
説明になってない、とティアナは溜息をついた。
ティアナが話しかけた部隊長――エルキュールは、身寄りの無いティアナに、親身になって世話を焼いてくれた恩人だった。
噂では、執務官試験にティアナを送り出す為に、<海>の友人に働きかけているらしい。
が、しかし。
この妙な反骨精神のせいで、決して出世は出来ず、挙句空士にも関らず陸士部隊に左遷されてきたと言う奇特な経歴の持ち主だった。
避難しようと転送ゲート――郊外のシェルターに続く道――に殺到する人々を、慣れた手つきで捌きながらエルキュールが笑う。
「まあ、仕事終わったら一杯おごってやるから勘弁しろ」
「あたし未成年なんですけど……」
気にするな、と笑う上司に、ティアナは二回目の溜息をついた。陸士訓練校を首席で卒業したティアナだったが、現実は甘くなかった。
空士に比べ、予算、出世、あらゆる面で冷遇されている陸士では、首席とはいえ道は厳しかったのだ。
ましてや、有力なパートナーもいなかった――若干性格が尖がっているティアナは、特に組みたい相棒がいなかったというのもあるが――為に、
本局からお呼びがかかるようなこともなく、今日まで陸士97部隊で、有力な射撃担当の魔導師として日々を過ごすのが、もっぱら彼女の日課であった。
「隊長、こちらの避難誘導は終わりました!あ、ランスター二等陸士は………」
金髪の青年が、こちらに駆け寄りながら声をかけてきた。
97部隊の要、副長のアランである。
近代ベルカ式の魔導師で、最近ようやくAランクの試験に受かったらしい。
その腰には、待機状態のデバイス――短槍型のそれを揺らしながら、一瞬アランは頬を上気させた。
どうしたのだろうか。ティアナは少し首を傾げた。
エルキュールは、何やら落ち着かない副官――アラン青年21歳彼女無し、を物陰に引きずり込み、言った。
「惚れてんなら今のうちだぞ、先着順だ」
ぼそりと、とんでもないことを抜かした。
「な、なに言ってんすか?! 自分はそんな……」
くくくくく、と悪巧みしているような笑い。
「いいか、アラン君。このエルキュールに見抜けないことなど、ないのだよ」
アランが嫌そうな顔をした。どうも誤魔化しが利かない性格らしい。
「……何処の探偵ですか? 馬鹿言ってないで撤収しましょうよ」
冷たいなあ、アラン君、と言いながらも、念話で各部隊に撤収を命じていく。任務は終えた、後は―――。
空を見上げ、呟いた。
「<海>の連中の仕事だ。俺たちには――なにもできんさ………」
気遣わしげに、副長が言った。
ポアロかよw支援
支援
「隊長………」
この人は、空で起こっている、今の馬鹿げた混乱を鎮圧するのに一役買いたかったんじゃないんだろうか、とアランは思った。
ティアナが、不意に声をあげた。
場違いなものを見つけた、という感じの声。
「隊長……あれ……」
言いながらも、構えられるアンカーガン――両手での狙撃の構え。
「どうしたランスター?」
杖を握り締めながら、エルキュールは振り返った。嫌な予感に顔を引きつらせながら。
そこに立っていたのは、聖王教会の修道服を着た一団だった。
先頭には、胸の前で手を合わせて祈る修道女。その後には、無数の騎士――近代ベルカ式の魔導師たちが続いている。
こつこつと足音が響く―――こちらに、近づいてきているのだ。
「止まってくださいッ!ここは現在立ち入りが禁じられています」
「その必要はありません。これより始まる栄華の時代には、無意味ですから」
ティアナが、意味がわからない、という顔をし、銃を構えなおした。
「虚仮威しじゃ、ないですよ……?」
若干表情を険しくし、相手を睨みつけるが――場違いな感覚は変わらない。
修道女は、穏やかに、にこりと笑った。天使のような微笑だった。
展開される近代ベルカ式アームドデバイス。
トンファーの如き形状の双剣。
背後の、白地に金の刺繍をあしらった意匠の騎士甲冑を着た男達が、一斉に長剣を抜き放った。
「断頭台に登りなさい、咎人達よ。それが、汝ら、罪深き者どもにできる唯一の贖罪。聖王の御世を前に、全てを清算するのです」
「―――ッ! 何をッ!!」
ティアナの銃が修道女の額を狙うのと、術式の発動は同時だった。修道女は笑みを止めるどころか、ますます笑顔を深めた。
辺り一帯が、突然赤く輝き、三角形の魔方陣が空中に展開された。近代ベルカ式の術式―――大きい。
三角形一辺あたりの大きさだけで、四十メートルはあるだろうか。
魔方陣が、ぶうん、と震え、魔力による空間への干渉が始まる。瞬間、アンカーガンの引き金が絞り込まれ、非誘導式の魔力弾が修道女へ向けて解き放たれた。
首を傾げるようにして、額への銃弾を避け、怪物じみた速度で駆け寄る修道女。
ティアナの迎撃―――無数の魔弾の雨。全て双剣のデバイスに叩き落され、肉薄される。
膝蹴り。
弾き飛ばされ、尻餅をつくティアナを、隊長と副長は無理やり立たせ、急いで―――逃げ始めた。勿論、けん制の魔力弾を放ちながら。
「ちょ……隊長、逃げるんですかッ?!」
ティアナが問うた――防護服のお陰か、ダメージ自体は少なかったらしい。
「当たり前だ!! 相手は聖王教会のシスターシャッハだぞッ! 俺たちじゃ対処し切れん」
「陸戦AAAの化け物だ、やってられるかッ!!」
その背後で――修道女、シャッハが笑った。
何処までも冷静に、慈悲を湛えて。
「潰れなさい、異郷の民よ……貴方方の命が、聖王の御世の礎となるのです」
―――そして魔方陣――転移術式から、怪物が解放された。
十本の柱の如き脚が、アスファルトを叩き割り、破砕音と共に顕現。
茶色のひび割れた装甲――土偶の表面のような赤茶けた色。十本脚の蜘蛛といった風情。
頭に当たる部位で光り輝く、魔法の石――ジュエルシード。
灰色の脳細胞支援
轟音に振り仰ぎ、集結した陸士97部隊の面子が、絶句した。
その大きさに、絶望して。
「………なんだあれは? ちっ、砲撃ぃ、撃てッ!!」
すぐさま下されるエルキュール隊長の命令に、茫然自失だった隊員たちが正気に戻る。
生成される無数の魔力スフィア。魔力素がリンカーコアで魔力に変換され、淡い燐光を放ちながら、砲撃魔法に昇華される。高速での魔力集束。
陸士とはいえ、第一線級の魔導師が揃っている部隊だからこそ出来た芸当だった。
部隊内で唯一の変則ミッド式のティアナも砲撃魔法を唱えた。
レーザーサイトすら用いない、短距離照準。
「ファントムゥ……」
魔力を相手に全力で叩き込むイメージ。灼熱の炎を、形にして撃ち込む。
「ブレイザァァ―――ッッ!!」
一斉に放たれた魔力の本流が、巨大な柱――異形の脚ににぶち当たり、その分厚い装甲を、『幾分か』削り取った。
揺れ動きもしなかった巨体が、ゆっくりと柱を―――『脚』を、上げた。
「効いてない……だと?」
エルキュールが呆然と呟き―――は、と息を吸い、急いで指示を出した。
「全員、散開しろッ!」
―――全てが、遅すぎた。
傀儡兵『ヨツン』。
十本の節足を持った、三十メートル級の超大型傀儡兵。馬鹿げた柱のような太さの脚が、人間を、まるで虫けらのように、
踏み潰した。
踏み潰された人間の悲鳴すら上がらずに、血飛沫が煙のようになって立ち込める。
アスファルトが重みに耐え切れずに砕け散り、挽肉にした人間の残骸と混ざり合い、赤に染まった。
轟、と巨大な十本脚の巨獣が、蠢き、前腕を振るった。一瞬、轟音がティアナの鼓膜を揺さぶり、前後不覚に陥る。
風を切って薙ぎ払われた一撃により、高層ビルの窓硝子が割れ、高速であたりにばら撒かれた。
落下―――降り注ぐ凶器とかした硝子片。
防御術式。
魔力の壁に遮られた硝子の破片がきらきらと光り輝く。
ぐい、と腕が引っ張られた。
「ランスターッ!」
エルキュール隊長だ。何をそんなに急いでいるのかと、呆然としていると――脇に抱えられ、脚が宙を浮いた。
刹那、ティアナの立っていた足場を、傀儡兵の柱のような脚が踏み砕く。
シャッハが、狂ったように笑った。どこまでも、純粋な狂信者の顔。
「ヨツンの前に―――消えなさい、管理局の走狗たちよ! 貴方方を排除することこそが――」
教会騎士団が、一斉に叫んだ。長剣が天にかざされ、光り輝く。
『我らが務めッッ!!』
今ここに―――狂信者は、集い、宴を始める。歌い、踊り、殺しあう――狂宴を。
立ち向かうは――落ちこぼれの、凡人達だ。
だが、狂信者は知らない。
本当の強さを、不屈の心を――――。
ステルスSUGEEEE!こら勝てんわ支援
以上で投下完了。
ジュエルシードは、本編でスカがガジェットに組み込んでた奴です。
ヨツンは霧の巨人より。
感想等よろしくお願いします。
GJ!
シャッハがヤバすぐる!
そしてなんというジュエルシードの有効利用…
ティアナはクロスミラージュがナッシングというのもヤバい、スバルと会ってないからなのは達との関連性はゼロだもんなあ。
GJ!です
まあティアナはこの部隊はこの部隊で幸せなんじゃないでしょうかwww
GJ!!です。
聖王教会がイイw凄くいいwww
そして、ジュエルシードの使い方も巨大兵器の動力源だなんて・・・w
GJ!!
続いて天元突破第五話投下よろしいですか?
GJしかし何という寸止め。続きが気になって生殺し状態。
聖王教会にモズグズ様やアンデルセンが出てきても違和感無いぜ。
狂信者もある意味不屈の心は持っているな。目的のためならどんな事でもくじけないという。
海沿いの街道を走る一台の車――その漆黒の車体は、今は夕焼け色に染まっている。
水平線に沈む夕陽を窓ガラス越しに眺めながら、ティアナは重い息を吐いた。
戦闘終了後、事件の重要参考人として任意同行を求められたティアナとスバルは、試験官の一人――フェイトの運転するこの車に乗って、今どこかに向かっている。
ラゼンとラガン――ティアナとスバルが偶然発見し、文字通り二人の手足となってムガン相手に戦った謎の大型ガンメンは、なのはと共に試験会場に残った。
今は時空管理局からの回収部隊の到着をまだ現場で待っているか、或いは既に引渡し手続きを完了して本部に搬送されているかのどちらかだろう。
あの二体のガンメンを本局がどう扱うか――質量兵器として解体されるか、ロストロギア扱いで封印されるか――は、末端の新人に過ぎないティアナ達には解らない。
どちらにしても、本局に没収された二体のガンメンに今後自分達が関わることは、ラゼンとラガンにもう一度会うことは不可能だろう。
結果的に乗り捨てる形で別れてしまった『相棒』達の顔は、少しだけ寂しそうに見えた気がする。
馬鹿馬鹿しい……ティアナは頭を振って己の感傷を否定した。
インテリジェントデバイスならいざ知らず、ただの機械に感情などある筈がない。
自分は些かあのポンコツ共に感情移入し過ぎている、あの悪趣味なロボに情が移ってしまっている。
そんな余裕など無いのだ……ティアナは思考を無理矢理切り替える。
質量兵器――その運用に魔力を用いない兵器の存在を、時空管理局は許容していない。
ミッドチルダでは保有するだけで重罪となる質量兵器で、しかも本来ならばそれを取り締まるべき立場の筈の自分達が、派手に大立ち回りまで演じてしまった。
穴があったら入りたい、寧ろ穴を掘って埋まりたい……暗い思考の無限螺旋に陥るティアナを、隣のスバルがじっと見つめる。
車に乗り込んでから、スバルもまた一言も口を開かず、珍しく真剣そうな顔で物思いに沈んでいた。
普段は馬鹿で能天気なこの相棒も、流石に今回は事態の深刻さに思うところがあるらしい。
言ってみなさいよ……何かを言いたそうに自分を見つめているスバルに、ティアナはそう眼で語りかけた。
「ティア、あのさ……」
ティアナのアイコンタクトに首肯を返し、スバルは神妙な面持ちで口を開く。
「――ラゼンガンの色を、赤に変えてみたらどうかと思うんだ」
その瞬間、ティアナの時は止まった。
「…………は?」
思わず間抜けな声を返すティアナにスバルは続ける。
「あたしずっと考えてたんだけど、ラゼンガンってやっぱりどう見ても見た目悪役じゃん? 顔も怖い上に色まで真っ黒で、小さな子供が見たら絶対泣くよ、アレは。
悪役ロボにも浪漫はあるけど、やっぱり乗るなら正義のヒーローっぽい方でしょ。
顔を変えるとなると装甲全部剥がさなきゃだけど、色変えるだけならペンキ塗り替えるだけでお手軽だし、赤く塗ってもあの子なら絶対似合うよ。男前だもん、ラゼンガン!
それで何で赤かとゆーと、あの子って主人公よりもライバルっぽいし、だったら赤が鉄壁でしょ。理屈じゃないんだよ、これは。
赤く塗って速さ三倍、でも現実には1.3倍! その意気込みで」
真面目な顔で馬鹿なことを語るスバルに、ティアナの理性が焼き切れた。
「……こ、の、馬鹿スバル! アンタはどこまで馬鹿なのよ!! そんな馬鹿なことに頭使う前に、もっと他の大切なことに心砕きなさいよこの馬鹿!!」
「ラゼンガンを馬鹿にするなぁーっ!!」
「変なところで逆ギレするなぁーっ!!」
ぎゃあぎゃあと後部座席で揉め合う二人の新人を、はやては助手席からミラー越しに見遣り、「元気やねー」と微笑した。
小高い丘の上に、巨大な顔が乗っている……。
窓の外に見えるその風変わりな建物――螺旋研究所が、どうやらフェイト達の目的地らしい。
「ふえぇ〜、でっかぁー……」
感嘆の声を上げるスバルに、ティアナも素直に同意した。
「はやてさん、……あれもガンメンなんですか?」
あんなものが動き出したら、周辺住民の混乱は一体どれ程のものになるだろう……。
畏怖と不安を多分に含んだティアナの問いにフェイトは吹き出し、はやては声を上げて笑う。
「まさか! あのデザインはただの趣味やろ」
「幾らあの人でもそこまで無茶なことはしないよ」
「え〜、そんなぁー……」
笑いながらそう否定する二人の言葉に、スバルが残念そうに肩を落とす。
「「……多分」」
ぼそりと続けられた二人の呟きを、ティアナは聞かなかったことにした。
四人がそんなやり取りをしている間に車は坂道を上りきり、目的地に到着する。
フロントガラスの向こうに聳える巨大な顔、その口の部分が音を立てて開き、眼鏡をかけた赤毛の女性――シャリオが四人を出迎える。
「皆さん、螺旋研究所へようこそ。フェイトさんもはやてさんもお久しぶりです」
「シャーリー、久しぶり」
「三ヶ月ぶりやろか? 元気そうで何よりや」
友人達と挨拶を交わし、シャリオはスバル達へと顔を向けた。
「そっちの二人ははじめましてだね。私はシャリオ・フィニーノ、気軽にシャーリーって呼んでね」
そう言って人懐こい笑顔を浮かべるシャリオに、スバルとティアナも肩の力を抜く。
「あ、はじめまして。スバル・ナカジマです」
「ティアナ・ランスターです」
スバル達と交互に握手を交わすシャリオを眺めながら、ふとフェイト達はこの場に肝心な人物が欠けていることに気付いた。
「ねぇ、シャーリー。……ロージェノムさんは?」
「所長なら研究所の奥で待ってます」
研究所の責任者の姿を探すフェイトに苦笑しながらシャリオは答える。
「立場的に言えばあの人がお出迎えしなきゃなんですけど、あの髭面見て皆が回れ右しちゃったら洒落にならないから」
屈託ない笑顔で中々黒いことをのたまうシャリオに、スバルとティアナは顔を引き攣らせ、逆にフェイトとはやては納得したように目を逸らした。
夕焼け色に染まる山肌に仁王立ちするマッシヴな髭親父……嫌だ、嫌過ぎる。
「じゃあ二人も納得してくれたところで、皆中に入りましょうか?」
そう言って先導するシャリオに続いて、スバル達も研究所内部へと足を踏み入れた。
薄暗い廊下を進み、広い部屋へと抜ける……。
その最奥、巨大なモニターの前で待ち構える男の姿に、スバルとティアナは思わず固まった。
3m近い巨身、白衣の上からでも分かる筋骨隆々の肉体、濃い髭に覆われた口元は真一文字に引き結ばれ、禿頭は天井からの光を浴びて照り輝いている。
……プロレスラーが、科学者のコスプレをしていた。
シュールを通り越してホラーの領域まで達しているその光景に本能的に回れ右をするスバル達を、オーバーS級魔導師二人のバインド魔法が拘束する。
「あ、あの……フェイトさん? はやてさん?」
「な、何か任意同行が強制連行にクラスチェンジしたよーな気がするのはあたしだけでしょーか!?」
「こらこら、どこへ行くの?」
「逃げたらアカンで? 二人とも」
狼狽えるティアナとテンパるスバルに、フェイトとはやては笑いながら釘を刺す。
その笑みは、限りなく邪悪に染まっている。
うわぁ、この人達絶対楽しんでるよ……この時になって漸く二人は、自分達がとんでもない虎穴に足を踏み込んでしまったことを知った。
支援
「ほな、話して貰おか?」
来客用のソファに腰掛け、はやてはそう切り出した。
その漠然とした言葉に、反対側のソファに座るスバル達は顔を見合わせる。
話すとは、一体どこから、何を話せば良いのだろう……?
数秒の逡巡の後、スバル達は取り敢えず、ムガンに襲われたところから話し始めることにした。
試験中、突如ムガンの襲撃を受けたこと。
落下してくるムガンにスバルが立ち向かい、そして見事撃破したこと。
その時にスバルが見せた驚異的な「力」――ティアナはそれをスバルの秘密、戦闘機人としての力の発現と推測している――については、矛先をかわすことを忘れない。
そして地面の崩壊に巻き込まれ、落ちた地下空洞でラゼンガンに出会ったこと。
そしてそれに乗って地上に戻り、ムガンの大群をほぼ全滅まで追い込んだこと。
全てを話し終えたスバル達に、フェイト達の後ろで話を聞いていたロージェノムが口を開く。
「……それだけではないだろう」
重々しく紡がれたその一言に、ティアナ達の肩が大きく震える。
まさかスバルの秘密に感づかれたのか……?
絶望的な表情を浮かべてロージェノムを見上げるスバル達だったが、しかし目の前の巨漢の言葉は別の方向へと続いた。
「ラゼンガンは魔力炉を搭載しているが、それはあくまで補助動力だ。主動力炉――螺旋エンジンの稼動、何より中枢システムであるラガンの起動には「鍵」を必要とする。
お前達は持っている筈だ、ラゼンガンを目覚めさせる「鍵」――コアドリルを」
そう言ってロージェノムが白衣のポケットから取り出した何か――金色に輝く小さなドリルに、スバル達は息を呑んだ。
「それ、スバルのペンダントと同じ……」
呆然と呟くティアナに突き動かされるようにスバルは胸元に手を突っ込み、ペンダントを引っ張り出す。
ロージェノムの手の中を転がるコアドリルとスバルの手の中に握られるコアドリル、二つのコアドリルはまるで共鳴するように明滅を始める。
「これ……一体何なんですか?」
ティアナの口にした疑問の言葉に、ロージェノムではなくはやてが口を開いた。
「コアドリル。螺旋力――気合いをエネルギーに変える力を増幅させるロストロギアや」
「気合いをエネルギーに変える力……ですか?」
頭の上に疑問符を浮かべるスバル達に、はやては首肯と共に続ける。
「そや。このロージェノムさんの世界では魔力の代わりにその螺旋力を利用した文明が発達しとってな、この螺旋研究所ではその技術を魔法理論に応用する研究をしとるんや」
ガンメンもその研究の成果なんやでーと話すはやての言葉を、二人は感心したような表情で聞き入る。
しかし不意にあることに気付き、スバルが慌てたような顔で声を上げた。
「って、ちょっと待って下さい! このペンダントがロストロギアだってことは、コレ本部に没収されちゃうってことですか!? 嫌ですよあたし、そんなの!!」
駄々を捏ねる子供のようなスバルの突然の言動にはやて達が唖然とする中、ティアナがフォローを入れるべく口を開いた。
「このペンダントはスバルの宝物なんです。四年前の空港爆破テロの時、命の恩人から貰った大切な物だっていつも話してました」
「そうなんか?」
はやての問いにスバルは首肯し、当時の体験を話し始めた。
崩壊炎上する空港の奥に独り取り残されたこと。
熱さと苦しさと心細さに泣いている自分の前に『あの人』が現れ、そしてこのコアドリルを託してどこかへ消えたこと。
お前の拳は天を突く――『あの人』の口にしたその言葉に励まされ、上を向いて歩けというその教えに突き動かされて今まで生きてきたこと。
全てを語り終えたスバルを、ロージェノムが驚愕の表情――余りに微妙な変化だったので、シャリオ以外は気付かなかったが――で見下ろしていた。
「……シモン」
ぽつりと呟かれたその名前に、はやて達が顔を上げる。
「シモンって……所長が前に話してた穴掘りの人ですか?」
事情を知る面々を代表して問うシャリオに、ロージェノムは重々しく頷く。
「知ってるんですか!? あの人を!!」
驚愕にソファから立ち上がるスバルと、話の展開に置いていかれているティアナを交互に見遣り、はやてはやんわりとした笑みで頷いた。
「判断材料不足で断定は出来へんけどな。シモンさんっちゅーのはロージェノムさんの世界の英雄で、恋と気合いで宇宙を救った男や。
ロージェノムさんと一緒に戦っとったって話やし、その時青いコートも着とったって話やから、可能性としては有り得へん話やない」
はやての言葉に、スバルは放心したような顔で再びソファに身体を沈めた。
「さて、それじゃあ今度は二人の今後のことなんだけど……」
話が一段落したところで、今度はフェイトが口を開いた。
「今回ムガンの襲撃で中止になった二人の昇級試験は、近い内に再試験ってことになると思う。詳細は追って連絡するね。
ラゼンガンの無断運用については、あの状況では仕方の無い行為だったし、それにアレをあんな場所に放置したロージェノムさんが全面的に悪いから、二人に責任は無いよ」
再試験、お咎め無し。
特に後者を耳にして、ティアナは大きく胸を撫で下ろした。
「で、や。ここからが本題なんやけど……」
フェイトから話の主導権を取り戻し、はやてはそう言いながら二人に顔を近づけた。
「実はウチな、今度新しい部隊創るんよ。
なのはちゃんもフェイトちゃんも、シャーリーとロージェノムさんも、皆その部隊に入ることになっとるんやけど……二人も一緒にどうや?」
新部隊への勧誘……はやてからの突然の誘いに、スバル達は思わず顔を見合わせた。
「何で、いきなり訊くんですか? そんなこと……」
控えめに尋ねるティアナに、はやては何かを含んだような笑みでこう答える。
「元々二人のことは目を付けとったんよ。それと昼間のアンタら見てて、これは是非とも欲しいなー思うた」
逃がさへんよーと笑うはやてに、二人はまたもや顔を見合わせる。
「それで、その部隊はどんな部隊なんですか?」
良くぞ訊いてくれました……はやてはソファから勢い良く立ち上がり、拳を握りながら名乗りを上げる。
「遺失物管理部機動六課――根気と根性でロストロギアを回収して、気合いでアンチスパイラルとガチ合う超実動実戦部隊や!!」
「どっちかというと、後者の方が本音っぽいかな?」
簡略的極まりないはやての言葉に、フェイトが横から補足を入れる。
「この数ヶ月間の螺旋研究所の調査で、ムガンの出現パターンが大体分かってきたの。
レリックとコアドリルという二つのロストロギア、そしてスバルちゃんみたいな強い螺旋力を持つ人間、そのどれかのある場所に、ムガンは現れる……。
私達機動六課はムガンの出現予測地点を先読みしてこれを撃破、ロストロギアの確保やターゲットにされた人間の保護を目的としているの」
フェイトの説明を表情で聞き入るスバルが、その時口を開いた。
「……じゃあはやてさんの部隊に入れば、あの人に会えるってことですか?」
螺旋力については未だよく解らないが、コアドリルを持っていた『あの人』もきっとその持ち主なのだろう。
機動六課はそんな人間を保護するのが仕事、ならばあの人に出会える可能性は高い。
「断言は出来ないけど、可能性はあるね」
フェイトの返答に、スバルの決意は固まった。
「……やります! やらせて下さい!!」
「スバル!?」
あっさりと決断した親友にティアナが声を上げるが、スバルの瞳の奥に渦巻く決意の炎に揺らぎは無い。
駄目だ、これはもう梃子でも動かない……諦めたようにティアナは嘆息し、「アタシも」と機動六課入隊に了承の返事を返す。
「ティア?」
驚いたような顔で自分を見つめるスバルに、ティアナは苦笑しながら肩を竦める。
「アンタ一人じゃ危なっかしくて見てられないからね、アタシがフォローしなくて誰がするのよ?
それにアタシにも夢がある、出来ることがあれば何でもやっとかなくちゃね」
執務官を目指すティアナにとって、現役執務官のフェイトの下という環境は大きなプラスとなる。
感謝しなさいよーと指先でスバルの頬を突くティアナに、はやては「決まりやな」と破顔する。
「それじゃー二人は今日から機動六課の前衛兼、対ムガン用魔導兵器ラゼンガンのパイロットや」
「「ラゼンガン!?」」
思いがけない名前が思いがけないタイミングで再登場したことに、二人は思わず声を上げる。
話の流れからあのロボがこの研究所の物であるということは薄々分かっていたが、まさか自分達がそのパイロットになってしまうとは思いも寄らなかった。
「ラゼンガンの起動にコアドリルは必要不可欠らしいから、スバルちゃんのそれは自分で持ってて良いよ」
「本部に行けばぎょーさんあるんや、一個や二個着服しても誰も文句は言わへんて。どーせロージェノムさんが来るまで使い方も分からん代物やったしな」
フェイトとはやての言葉に、コアドリルを握り締めていたスバルの手から力が抜けた。
「それじゃあ正式にラゼンガンを任されるおとになった二人だけど……」
ラゼンガンの所有者であるロージェノムを無視して、シャリオはスバル達に項を向ける。
「何かアレについて二人から希望とか意見とかあるかな?」
シャリオの問いに、二人は同時に口を開いた。
「シートベルトを付けて下さい!」
「ラゼンガンの色を赤にして下さい!!」
二人の答えにシャリオ達三人は爆笑し、ロージェノムは独り何かを言いたそうな顔で沈黙していた。
天元突破リリカルなのはSpiral
第5話「皆さん、螺旋研究所へようこそ」(了)
その後……。
「さて、それじゃー話も終わったことやし……」
ソファから立ち上がり、はやてはその場の全員を見回しながら口を開いた。
「――皆、後片付けに戻ろか?」
そう言ってはやてが指差した先――未だ点け放しの壁面モニターには、更地と化した第七特別演習場の惨状が映し出されていた。
以上、投下完了しました。
前回GJコールくれた方々、今回支援してくれた方、このばを借りてありがとうございます。
GJでした
確かに自分の元愛機を塗られるのは複雑なんだろうな…
GJ!
動き出しましたな!
新参者ですが、ZOIDSのクロスの投下はいけるでしょうか?
0時に投下したいと考えています。
オーライ。景気付けに派手にやってまえっ!!
ALL,RIGHT.
ハイなタンゴを躍らせてみな!
支援します。
バーサークフューラーって名前の見た目が面白いゾイドぐらいしかしらないorz
あとライガーゼロ?だったかな?
新規の職人はちょっとなあ…。
アンタが悪いわけじゃないけど、盗作騒ぎ続きの影響で
「このSSも一部なり全部なり盗作かも」と思って萎えるんだ。
勝手に萎えてろ
>>463 んな事言ってたらSSが投下されなくなるだろ!
新規職人のゾイド氏、気にせず投下してください!!!!
ブラックホールくらっても光速で惑星に激突しても無傷なキングゴジュラス支援
いや、無実なら失礼なこと言ってるなって自覚はあるんだ。
ただ、もし自分が楽しんでたSSが実はあとで問題作だったと判明したらと思うとね…。
一応、丸コピペはないかググってはみるつもり。
だからいちいちここに書くことじゃないだろうが。
職人に脅しでもかけてるつもりか?「盗作したらすぐわかるぞ」って。
469 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/21(月) 00:10:10 ID:v0/V22RV
>>467 そういうことは心の中にしまっておけよ。
思っても口にだすものじゃないと思うがな。
文句が言いたかったら本音スレに行ったほうがいい。
ググるのに許可が要るワケでもないし、わざわざ本スレに書き込む意義がわからんが。
こういう会話してますと投下しようとする方々が引いてしまうかと
ええい!投下はまだか!?読み手はいくらでもいるぞ!
ではいきます。
リリカルZOIDS第1話
注意
・クロス元はアニメ版ZOIDS(無印)です
・新暦67年(なのはが大怪我をする)スタートです
・捏造設定があります
新暦67年。
その日、高町なのはとヴィータは、とある遺跡に捜査任務に来ていた。
その遺跡はすでに調査が済んでおり、危険なトラップや貴重な出土品なども特になかったのだが・・・。
「うぅ〜、寒ぃ寒ぃ。ったく、なんだってこんな遺跡に潜らなくちゃいけねーんだか・・・」
「にゃははは。でも仕方ないよ、ヴィータちゃん。いきなりあんな大きな魔力反応が発生したんだし」
「分かってるよ、そんくらい。あぁ〜、さっさと捜索終わらせて早く帰りてーな」
「そうだね〜」
そう言いながら二人は遺跡の深部へと進んで行く。
「で、何か見つかったのか?」
「ううん。今の所、WASでは何も見つからないね」
「そうか。おっと、10分経ったな」
そう言うと、ヴィータは空間ディスプレイを開き、通信を開始した。
「こちら、ヴィータ。各班、状況を報告せよ」
「A班、異常なし」
「B班、異常なし」
「C班、こちらも異常ありません」
「D班、異常なしです」
どうやら、なんの問題もないらしい。
その報告を聞いて、なのはは胸を撫でおろした。
(このまま、何も起こらなければいいんだけど・・・)
なのはは、自身の不調を自覚していた。
最近、眠っても疲労があまり回復せず、疲れを残したまま任務に就くことが多くなってきているのだ。
もちろん、そのことを友人達には気づかれない様にしているが、それもそろそろ限界だろう。
(今日の任務が終わったら、シャマルさんに診てもらおうかな)
そう考えていた時の事だった。
「こちら、B班!!小型の飛竜と遭遇!!」
切迫した声に、なのはの意識は現実に引き戻された。
「・・・っ、こちら高町です。B班、現在位置は!?」
「ポイントX−150、Y−1000!」
「・・・っ、そんな所に」
「くそ!遠すぎっぞ!」
なのはの隣でヴィータが悪態をつく。
隊員のいる地点までは、どれだけ急いでも10分はかかるからだ。
しかし・・・
「こちらB班。高町隊長、ヴィータ副隊長、飛竜は何もしてきません。こちらを窺っているだけです」
「「え!?」」
その報告になのはとヴィータは顔を見合わせた。
お互いに怪訝な表情が広がっているが、それも無理からぬことだろう。
なぜなら、彼女たちの所属する武装隊のテキストによれば、飛竜とは竜種の中でも1、2位を争う程、凶暴な竜のはずなのだ。
「おかしーな。飛竜ってのは、凶暴性が売りのはずなんだけどな・・・」
「そうだよね。そもそも、こんな遺跡に飛竜がいる時点でおかしいし」
二人はそう言いながらも、その飛竜への対応を考え始める。
「とりあえず、現状維持で待機かな?飛竜さんが何もしてこないなら、無理に戦ったり、捕獲しようとするのも良くないと思う」
「そうだな。下手に怒らせたら、大変なことになっちまいそうだしな。つーわけだ。とりあえず、B班は・・・」
と、決定した内容をヴィータが伝えようとしたその時、WASにある人影が写った。
「・・・っ!待ってヴィータちゃん!WASに反応!誰かがB班の所に向かってる!」
「!!なのは、そいつの特徴は!?」
「待っててね・・・。長い黒髪を後ろで束ねてて、顔に刺青みたいなのをしてる。私と同い年くらいの男の子だよ」
なのはは、冷静になりながらWASから得た情報をヴィータに伝えていく。
ところが、その人物が懐から取り出した物を捉えた瞬間、なのはの顔から血の気が引いた。
「ヴィータちゃん!この子、拳銃――質量兵器を持ってる!」
「っんだと!!」
さらになのはには、WASに向かって拳銃を構え発砲している映像が飛びこんできた。
そしてそれを境にその人物を映していた映像は途切れてしまった。
その事実をヴィータに伝えるべく、なのはは顔をあげた。
「最悪だよヴィータちゃん。この男の子、WASを破壊してB班の所に向かってる」
「・・・つまり、敵ってことか?」
「そこまでは分かんないよ。でも、もしかしたらあの飛竜さんは・・・」
「そいつの使い魔かもしれねぇって事か」
「うん」
「だとしたら、飛竜の実力も分からない分、B班の奴らだけじゃ危ないな。いったん出口まで下がらせるか?」
「そうした方がいいと思う。その人の現在位置は、ポイントX0Y0で私たちはX0Y1000だよ。この速さだと、私たちより3、4分は早く着いちゃう。それに今回の魔力反応の原因もこの人かもしれない!」
「よし、B班聞いていたな!そこは危ない、出口まで引き返せ!」
「了解しました!」
「ヴィータちゃん、私たちも急ごう!」
「ああ!」
そう言いながら、ヴィータが通信を切ろうとした時だった。
「っ!!こちらB班!飛竜が通路を塞ぐように、移動し・・・、いえ襲ってきました!くそ!B班交戦開始(エンゲージ)!」
その叫び声と共に通信画面が途切れてしまった。
「おい!どうした、B班!応答しろ!」
しかし、返事はなく、その事実がなのはとヴィータに嫌な想像を抱かせる。
その想像を振り払うようになのはは、大声をあげた。
「急ごう、ヴィータちゃん!レイジングハート!!」
「分かってるよ!アイゼン!!」
二人は、デバイスを起動させると最大スピードで、B班の元へと向かった。
Another View
とりあえず、今の状態を一言で表すなら最悪の一言につきる。
薬草をとりに相棒のオーガノイドと山に入ったまではよかった。
しかし、薬草を採取しているといきなり光に包まれ、気がつけば、どことも知れぬ遺跡の中。
おまけに体は子供時代――おそらく14歳くらいの時だろう――にまで退化している始末。
(誰だって、こんな状況におかれたら最悪だと思うだろうさ。)
独り呟きながら、通路を進んでいく。
先ほど撃ち落した赤く光る球体の事も気にかかるが、今は相棒が足止めしているであろう人物達と接触する事の方が先決だ。
そう思いながら、手元の拳銃を確認する。
先ほど、自分を尾行していた赤い球体に一発撃ったので残弾は23発だ。
その他に自分の持っている武器と呼べるものは、スローイングダガー4本しかない。
(なんとかするしかない・・・か。)
そう呟きながら、彼は相棒の待つ遺跡の一室に到着し、その光景を見た。
Another View End
なのはとヴィータは、急いでいた。
通信が途切れてから、もう5分が経っている。
二人とも、何が起こっているかなど想像したくもなかった。
「A班は現状維持で待機して下さい。C班はB班の救援へ!D班はA班と合流し、同じく待機!!」
「A班了解!」
「C班了解!B班との合流まで15分!」
「D班了解!A班まで10分です!」
「おい!応答しろB班、聞こえねえのかよ!」
なのはは冷静になるよう努めながら、各班へ指示を出す。
その傍らでヴィータは、なんとかB班と連絡を取ろうとしていた。
しかし、相変わらず返事が返って来ることはなく、その事実が二人を更に焦らせていく。
「くそ!なのは、まだかよ!」
「もうすぐだよ・・・っ。そこを右に!!後は、B班の所まで一本道だから!」
「分かった!」
そう言いながらも、二人は周囲を注意することも忘れない。
もしかしたら、あの黒髪の少年が使い魔の竜と合流し、通路のどこかで自分達を待ち伏せているかもしれないからだ。
自分たちの存在に気づかれている様子はないから、その可能性は低いだろう。
だが、可能性は低くとも、それは決して無視できない事態の一つだ。
飛竜1匹に、訓練された武装隊全員が敗れているかもしれないことを考えれば、当然といえるだろう。
それに相手は、一人ではない。
少年とはいえ、質量兵器を持っているのだ。油断はできない。
だが、そのような事態に陥ることはなく、なのはとヴィータはB班のいた地点まで、あと300mの地点という所まで来ていた。
「急ごうぜ、なのは。後少しだ!!」
ヴィータはそう言いながら、グラーフアイゼンを両手で握り直す。
「うん!皆を助けなくっちゃ!!」
なのはも大声を張り上げる。
その音量の大きさに思わずヴィータは、顔をしかめた。
「なのは、声でかすぎ・・・」
「はにゃ!ご、ごめんヴィータちゃん。私・・・」
「ったく!ほら行くぞ!!」
そう言うと、ヴィータは一気に突進していった。
「ま、待ってよ、ヴィータちゃん!」
遅れて、なのはも飛び出していく。
(・・・・?)
そのことにヴィータはどこか違和感を感じながらも、その正体を考える余裕もなく、B班のいた地点にたどり着いた。
目の前には多くの隊員が倒れていた。
等間隔に、仰向けになって
「「・・・?」」
なのはとヴィータは怪訝そうに顔を見合わせる。
辺りを警戒しつつ近寄って確認してみるが、死んでいるのではなく、ただ気絶しているだけのようだった。
「どーなってんだ?」
「分かんないよ。報告にあった飛竜も、あの男の子もいない」
周りを確認すれば、砕かれた地面、陥没している壁面など戦闘の痕はあちこちに残っているが、戦闘を行った隊員達は誰かに介抱されたかの様に、横たえられている。
この不測の事態に二人は戸惑うしかない。
「どうしよっか?」
「とりあえず、C班の奴らが到着するまで待つしかねーな」
「だよねぇ、とりあえず連絡しないと・・・」
「それは困るな」
「「・・・!?」」
突然会話に割り込んできた声に、二人は驚きながらも声の主の方に向き直る。
そこには、WASに映っていた、拳銃を構えた少年と・・・
「“黒い”・・・飛竜」
自分たちを警戒しているのか、獰猛な唸り声をあげる竜がいた。
支援
以上で今回は終わりです。
最後の文を読んで頂ければお分かりと思いますが、主人公はレイヴンです。
主人公がバンであるかのようにミスリードして頂く為に、前半は曖昧な表現をさせて頂きました。
ヴィータが、シャドー(作中の黒い飛竜)の特徴を隊員に聞かなかったのはその為です。
おかげで多少拙い文章になってしまい、不快に思われた読者の方には申し訳ありません。
また、先週の14日に「今週中に投下する」と豪語しておきながら今日まで投下できず、またこの様な短い文章になってしまい、お恥ずかしい限りです。
また、書き上げた文章は自信を持って自分自身のオリジナルだと言えますが、もしかしたら、他の作者さんと文章がかぶっているかもしれません。
その際、お手数ですがご指摘願います。
新参者でございますが、拙作“リリカルZOIDS”に今後ともお付き合いのほどよろしくお願いいたします。
P.S
後書きや投下の確認では、上記の様にやたら尊敬語や謙譲語使いまくりですが、素の自分はこんな感じです。
読者の中には、慇懃無礼に聞こえるかもしれないので、今後はどういう口調で行こうか迷ってます。
できれば、どんな口調でいけばいいかアドバイス頂けたら、幸いです〜。
次回もなるべく早く投下できる様に頑張りますんでよろしく。
では失礼します。
GJ!!です。
なのは撃墜がどうなるのか気になります。
スカ博士につくのか、六課につくのか、またはレジアスの所に行くのか
楽しみです。
GJ!!まんまと騙されちまったぜ!期待して待ってる
俺も騙されたよ!GJ!
GJ!飛竜って聞いた時違和感(ジークは某所にある漫画版の続きじゃないと羽ない)
あったからもしやと思いましたがレイヴンでしたか。
これは今後が予想つかん。
キャラの年齢いじるのはU1系の常套手段なのです
おれストームソーダーかと思ったよ>オーガノイド
GJ
私も新人ですが、PON!とキマイラとのクロスを書いてみました。
プロローグでポンキマ勢ほとんど出てきませんけど二時頃投下しようと思うんですがいけるでしょうか。
人いないようですので、今日の夕方ごろ投下いたします。
一発ネタ投下OK?
●エリオきゅんハァハァ。
●喝ッ!! 神聖なる紙面をかような発言で消費するとは何事かっ!! 「エリオきゅんハァハァハァハァハァハァ(残響音)」見よ、総統など鼻息を荒くしたあげく呼吸困難に陥ってしまい拙者はションボリ。
●SLBって、素敵にリリカルにぶっとばすの略ですか?
●否、正解は、「正義の味方なんて呂律が怪しくなるほど飲まなきゃやってられねえんだバカヤロー」であり単なる酔っ払いの言い訳。
●なんかムカついたので殴った。
●ああ、すぐに腹を立てるヤングメンよ、我慢のできぬ若者よ、忍耐を覚えるのだ。すなわち石の上にも3年寝太郎であり拙者はまたもや間違っておる。
●妹が言う事を聞かないので斬った。
●だからすぐに斬るでないと言っておろうがこのスーパーイカレポンチめがっ!! 貴様は我慢を知らぬ妹の代わりに大便我慢の刑。
●私の欲望は無限です。
●む、なかなかの見上げたワガママ野朗であるな。だがその程度まだまだ全然大したことはない。偉大なる総統の欲望などは虚数にまで達しており臣民一同大困惑。
●頭冷やそうかと言われました。帝国にはどんな頭を冷やす方法がありますか?
●偉大なる帝国は原子力冷却装置によって即時冷却。しかし加減を間違えると瞬時に氷河期に陥るため即刻倉庫行きにて残念無念。代わりにひんやり八兵衛が大活躍。
●時々壁の中に人が埋まってるのは何ですか?
●貴様の目撃したそれこそが偉大なる先人達でありかべのなかにいるでありすなわちロスト。とりあえず拝んでおけばいい事があるかもしれん。しかし拝まなければ貴様のセーブデータが全てロスト。
●あたし、〜ッスてのが口癖なんスが、語り部さんにこの口癖を使ったペンネームを考えて欲しいッス。
●承知した。ならば貴様はこれから、ガチムチ姉貴オッスオッスと名乗るが良い。もし名乗らぬ場合、屈強なアニキを貴様の家に1024名押しつける。
●一撃ヒットォですか?
●左様。しかし一撃程度で喜んでおると、ケズリ目的の多段技を全段ブロッキングされたあげく奇跡の逆転負けにてカヒッてウガァ──ッ等と言う事もあるゆえ注意せよ。
●この前、ゆりかごという戦艦の中でコンと信を見かけました。ガジェットに囲まれながらも飲んだくれていたので、それなりに大丈夫そうでした。
●はるか昔に帝国を追われたコンと信か。まだまだ奴らの安息は遠いようだのう。引き続き目撃例を報告するがよい。
〜悪魔の安楽椅子〜
■この前、自分一人で先走って相棒の筈のデバイスを傷つけちゃったんですけど、許してくれるかな。
●あ〜、とにかくまず謝るこったな。そんで後は二人で腹割って話し合いな。デバイスだって生きてるって事忘れなきゃ大丈夫さ。
■よく悪魔とか冥王とか呼ばれるんだけど、私、違うよね?
●お、新人さんかい? まあ、昔から土地の神様が別の所じゃ悪魔呼ばわりなんて珍しくもないし、元気だしな。悪魔ライフも良いもんだぜ。
〜女神の4の字固め〜
■最近、肌年齢テストをやったらついに20代後半と出てしまいました。女神さんの肌年齢はいくつですか?
●アタクシは神様だから何時でもお肌は10代のピチピチなのよオーホホホホ。それとアナタ。おハガキに書かれた実年齢を考えたら、その数字は十分誇っていいわよ。これからも精進おしっ。
■リビングにぐちゃぐちゃと肉をこね回す音が響く。その音を聞いた少女は耐え切れずに、荒い息をあげながら切なげに主の方を見やる。
そんな少女を見て主は軽く意地の悪い微笑を浮かべた。しかし未だ準備は終わってはいないのだ。傍らに目を向ければ、屈強な男性がパンパンと肉を打ち付けている最中だった。
以上、とある一家のハンバーグを作る光景でした。
●んまっ。久しぶりのまぎらわシリーズ、中々の力作ね。これからもドンドン送って頂戴。
以上、投下終了。クロス元はゲーム帝国。語り部口調の難しさは異常。
何かと思ったらファミ痛のアレかw
再現度は高いなww
人いるかな?
>>488ですが、投下しても大丈夫でしょうか?
30分ごろ投下したいと思ってます。
ういっす
楽しみです。
第0話 未知との遭遇
はるか昔の、ある世界のお話です。
その世界には「魔法」と「科学」というものがありました。
どちらも人々にたくさんの喜びと、同時に悲しみも与えられるものでした。
最初は、みんなはその二つを喜びのためだけに使おうとしていました。
でも、次第に悲しみを与えることに使おうとする、悪い人も現れて行きました。
その数はどんどんと増えていきます。
ついに、「魔法」と「科学」は、人々が憎しみ合うためのものでしかなくなってしまいます。
そして、その二つの力によって人々はもちろん、世界も疲れ果ててしまいました。
その時、一人の正義の魔法使いが現れます。
魔法使いはたくさんの人々や動物たち、植物、さらには大地までも他の世界に移動させる大きな魔法を作り上げます。
でも、それではみんなを助けることはできません。
たくさんの人々を助けるといっても、助けられない人のほうが多いのです。
魔法使いは考えます。
どうしたらみんなを幸せにできるだろう?
そんなこと、魔法使いであっても一人の人間にはできる筈はありません。
魔法使いはあることを考え出しました。
そんなことをできるのは神様だけです。
それなら、神様を作ればいいじゃないか。
魔法使いは早速神様を作り始めます。
そしてたくさんの時間をかけて、ついに神様のたまごを作り出しました。
でも、それはあまりにも遅かったのです。
世界はもう死んでしまいました。
魔法使いは生き残ったわずかな生き物と、少しの大地をほかの世界に移動させます。
魔法使いはその世界の空に、大地を浮かせ、空の大地に人々を住まわせました。
空に浮かぶ大地は、そこに住む人々に「大陸」と呼ばれるようになります。
魔法使いは前の世界のようなことにならないよう、神様を育てることにしました。
でも、魔法使いはこの大陸を管理するのに精一杯です。
そこで神様を育てる人を選ぶことにしました。
神様の力はとても、とても大きなものです。
だからその力を悪用しないよう、神様が「悪魔」にならないよう、心の清らかな人が選ばれました。
神様はたまごから孵ると、「親」の下で成長し、世界に「平和であり続ける力」を与えます。
そして、その後、神様は再びたまごに戻り、残した力が切れるまでの千年という長い間を眠り続けます。
千年後再び神様は目覚め、「親」の下で成長し、再び眠り、その千年後に目覚めるというサイクルを繰り返すのです。
こうして、空に浮かぶ大陸と世界は、神様――「神獣」の加護の下、いつまでもいつまでも平和にあり続けました。
無限書庫に存在する、ある童話より
(―――スバル!西側の遺跡から回り込んで!
エリオとキャロは上空からフリードで追撃!
一気に追い詰めるわよ!)
(オッケイ、ティア!)
((了解しました!))
一人の男を機動六課フォワード部隊スバル、ティアナ、エリオ、キャロ、それにフリードリヒが追跡する。
男はフリードの放つ火球や、エリオの電撃などの攻撃を掻い潜り、密林におおわれた、かつての古代文明の都市の跡地を低空飛行する。
機動六課フォワード部隊は次元犯罪者五名を追跡していた。
普通、このような仕事は、執務官やその配下の武装隊が担当するものである。
古代遺物管理部の一課である機動六課が犯罪者を追跡しているのは訳があった。
その日、ある世界で正体不明のエネルギー反応が感知された。
このような「正体不明」のエネルギー反応である場合、ほぼ全てといっていい割合でその原因はロストロギアである。
その反応の強大さから、「奇跡の部隊」である機動六課にそのロストロギアの確保が命じられたのだ。
六課のフォワードメンバーがその世界に到着したとき、現場の古代遺跡は五人の男によって荒らされていた。
ロストロギアを不法に入手しようとする盗掘者であった。
彼らはそれぞれ一つずつ、虹色に光る宝石を所持していた。
それが件のロストロギアであろう。
機動六課と盗掘者達。
両者にとって互いの存在はイレギュラーであったが、別段気にすることではなかった。
ただ六課にとってはロストロギアの盗掘者を確保という仕事が増えただけであり、盗掘者達にとっては邪魔ものの排除という手間ができただけ。
真に予想外であったことと言えば、
―――――互いの力が、予想以上に大きかったということだけ。
衝突する。
盗掘者の一人の槍から放たれたこれ以上にないという奇襲は、シグナムの剣によって防がれた。
互いが愕然とする。
今の一撃は盗掘者のうちの最高の実力者が放った、最高の奇襲であり、最高の技でもあった。
対して、六課のメンバーは今の一撃にシグナムしか反応できていなかった。
一言で言うのならば、彼女の近接戦闘能力に加えて騎士としてのカンの成果であろう。
そして、この状況から導き出された事実をその場にいた全員は一瞬で理解する。
盗掘者達は目の前の者たち、少なくとも桃色の長髪の女は自分達より実力が上であるということ。
六課メンバーは盗掘者達の実力が自分たちと伯仲しているということ。
今のやり取りで捉えられた情報の、わずかな相違。
六課は相手を「強敵」として認識し、
盗掘者達は、「逃げた方が良い強敵」として認識した。
閃光が走る。
先手を取ったのは盗掘者の側であった。
盗掘者の一人が放った閃光の意味を、六課は理解できない。
それが攻撃のための目くらましであるのか、攻撃に伴った二次的な作用の光であるのか。
結果、導き出される最良の行動は退避だ。
シールドを張りつつ後方へ跳躍する。
そして放たれるべき攻撃に備える。
光が晴れるとそこには―――
「いない―――!?」
そこで彼らは理解する。
盗掘者の放った閃光は、逃げるためのモノであったのだと。
「一流の騎士ではなく、一流の盗掘者であったというわけか――!」
シグナムは不快気に漏らす。
あれほどの一撃を放った男に、彼女は内心で称賛を与えていた。
槍型のデバイスとそれによる一撃により、彼女はかつて自身が屠った、誇り高い一人の騎士を思い出していた。
盗掘者を誇り高い騎士と重ね合わせたことを恥じ、心のうちで彼に詫びた。
「スターズ01からロングアーチへ。盗掘者およびターゲットを見失いました。
至急補足をお願いします。」
なのはが指令部であるロングアーチに通信を入れる。
無論、盗掘者達を追跡するためである。
「はい、補足は完了しています。
盗掘者はその遺跡の外を各個別れて逃走中です。
それぞれの座標は…」
通信士主任のシャリオから盗掘者からの座標が告げられる。
そしてスターズ、ライトニング両分隊の隊長格は4人が個別に盗掘者を追い、残りの4人が協力して最後の一人を追うことになった。
「急いでください!遅ければ多重転送で補足ができなくなる恐れがあります。」
シャリオからの通信、次いで。
「ここでやつらを逃がしたら大変なことになるかもしれへん。
みんな、頼んだで!」
部隊長のはやてからの檄が飛ぶ。
「了解!」
こうして機動六課フォワード部隊の盗掘者追跡劇が始まった。
ここで話は冒頭に戻る。
4人は男をある遺跡へと追い詰めた。
自分達より高ランクの空戦魔導師である男を確保するには、その機動力を封じ、さらには四人が同時に攻撃できる場所が必要であったからだ。
「時空管理局古代遺物管理部機動六課です。
時空管理局の名においてあなたを逮捕します。」
ティアナが男に向かって告げる。
フードを深くかぶった男の表情はよくわからないが、口元がにやりと歪むのを見た。
「さすがは彼の時空管理局。
君たちのような子供が私を追い詰めるとはね。
特にリーダーの洞察力はすばらしいよ。私の力を瞬時に見抜き、仲間の力を最大限に利用して私をここに誘導した。
追い詰められてしまうとわかりながら、私はここに来ざるを得なかったわけだ。」
ぱちぱちぱち。
その拍手と、男の口から語られるのはまぎれもなく心からの称賛だ。
その態度は、ここでおとなしく捕らないということを語っている。
「確かに君たちの総合力は私の力を上回る。
もし私を追い詰めたのがここではなかったら、あるいは私がこの遺跡についてくわしくなかったら私はおとなしく捕まるしかなかっただろうね。」
男は地に手をつくと、魔法陣が発動した。
次の瞬間、轟音と共に巨大な地震が発生した。
これはまた懐かしい支援。
否、この遺跡そのものが振動しているのである。
遺跡の至る箇所に亀裂ができ始め、ついに崩壊を始めた。
天井の一部が音をたてて落下する。
シールドを張り、なんとかこれに対処する。
「君たちの敗因は、私と君たちのこの遺跡についての知識の差だ。」
男は飛び上り、崩れた天井から脱出する。
足止めには十分だ。
これから転送魔法を多重に発動させ、今現在行われているであろう、補足を掻い潜りつつ他の世界へ移動する。
他の四人もあとで合流するであろう。
例え実力では先ほどの邪魔者達に及ばずとも、逃げることに専念すれば十分可能なはずだ。
いや、あの四人は自分を上回る実力者たちなのだ。
できないはずはない。
男はほくそ笑みながら魔法陣を発動させる。
否、発動しようとした。
男はナニカを感知してその場から飛びのいたのである。
そして、左足の激痛。
魔力のバランスが崩れ、落下する。
何とかバランスを立て直し、着地に成功した。
何があった?
あの強大な魔力は、いったいなんだった?
砲撃?
馬鹿な、周囲に人の気配は感じられなかった。
そのような遠距離からの砲撃ならば、魔力は必ず減退する。
それがあれほど強力なのはあり得ない。
それに、ガキどもの仲間は同志たちを追いかけているはず。
ここにいるはずが――――
「なのはの砲撃を避けやがったか。
大したカンの良さだな。」
声。
男は上空へと目を向ける。
「あれほどの距離ではなかったならば、例え足に当たっただけでも戦闘不能になるだろうな。
もっとも、近距離でならば避けるという芸当出来る筈もないがな。」
「確かにそうだけど、なのはの完璧な不意打ちをよけるってことだけでもすごいことだよ。
他の人たちもそうだったけど、ただの盗掘者にしておくにはおしいくらい。」
男は目を疑った。
他の同志たちを追っていたはずの女が三人、そこに存在している。
いや、自分を砲撃した者を含めれば四人。
それが意味するところは―――
「バカな!これほどの短時間で我が同志たちを捕らえたというのか!!」
「確かに、貴様らの実力は予想をはるかに上回っていた。
あのままでは逃がしてしまう可能性が高かったのでな。
―――司令部から限定解除の許可が下りたのだ。」
愕然とする。
我らが長の最高の一撃を防いでおきながら、相手は全力を出してはいなかっただと――!
地上からは先ほどの子供四人と飛龍が、上空には女魔導師が一人合流する。
「抵抗はやめなさい。
大人しくするならば手荒なことはしません。」
金髪の女、フェイト・テスタロッサ・ハラオウンが告げる。
男はデバイスを地におき、両手を上に掲げると、
ロストロギアを発動させた。
まばゆい光。
そして、溢れる魔力の奔流。
その虹色に輝く光は使用者の呼び声に答えんと脈動を始める。
「正気なの!?いったいそれがどういうものかわからずに、しかも完全な状態でない状態で発動させるなんて!」
なのはが叫ぶ。
そしてシグナムとヴィータの二人がそれを阻止せんとと男に飛びかかる。
しかし遅い。
その光はその場にいる全員を飲み込んだ。
浮遊感。
そして、落下。
光が晴れる。
スバル・ナカジマは自分がはるか天空にいるのを確認する。
ウイングロードを発動させる。
そのさなか、盗掘者を視界にとらえる。
他の者は近くにいないようである。
このままでは、転送魔術で逃げられかねない。
スバルは異動魔術であるウイングロードを発動させる。
光の道を男の元まで瞬時に架ける。
「リボルバー……」
しかし、実際は男は先のロストロギア発動により魔力の大半を消費しており、転送魔法など出来る状態ではなかった。
ただそこに浮遊するだけが精いっぱいであり、移動すらままならぬ状態だったのだ。
もし彼女が男に投降を呼びかけたのであれば男はおとなしく応じたであろう。
つまるところ、彼女の行動余計なものであり、更なる余計な厄介事を招いた現況であった。
「シュ――――ットオォ!!」
すれ違いざま、男の顎をリボルバーナックルが打ち抜く。
スバルは知る由もなかった。
彼女のこの行動によって、この世界の安寧を崩す脅威が招かれ――――
自身が、年下の男とともに、「子育て」をする羽目になってしまうことを――――。
スバルのこぶしは男の顎を完璧に捕らえた。
彼女の高速移動によって威力が倍加した拳で脳が揺さぶられ、男は昏倒し、落下する。
そこではた、と気づく。
いつもどおりに何も考えず行動してみたものの、今は自分をフォローしてくれる人間などいないということを。
無論、男はそのままこの星の引力に引かれたまま、落下する。
「やば―――!」
男の落下を阻止するために急いでウイングロードを操作する。
スバルの眼は完全に男しかとらえていなかった。
それに加え、男を打ち抜くために上げた速度は、簡単には止められない。
それらが、この事故を引き起こした原因だろう。
『警告!前方に人影あり。緊急回避します。』
突然のマッハキャリバーからの警告。
急いで前方を確認する。そこには―――
「ちょっと―――――ッ」
サーフボードのようなもので飛行しているスバルと同年代くらいの少女と、その手には大きな卵のようなもの。
「危ない!!」
マッハキャリバーによる緊急回避と少女のブレーキにより、衝突は免れた。
しかし、その反動で少女の手から卵のようなモノがこぼれ落ちる。
「うそ――――ッ」
少女の悲鳴染みた言葉が木霊する。
スバルはウイングロードを操作して、落下している男を受け止めたのち、その物体も受けとめようとする。
しかし、ソレはウイングロードを通過して、ものすごい勢いで落下していった。
「え――――!?」
その出来事に愕然とする。
少女も、卵を追いかけるように急降下していく。
あとには驚きと戸惑いでどうしていいかわからないスバルと、のびた男だけが残った。
同時刻、第97管理外世界、地上。
上空でスバルとその少女の事故が起きていた時刻、その場所の真下にはある中学校の野球グラウンドが存在し、そこでは野球部が練習を行っていた。
カキーン。
金属バットでボールをたたく音が聞こえる。
ボールはライト方向へ大きく弧を描きながら飛んで行った。
「行ったぞ、ライトーッ。」
捕手から右翼手へ指示が飛んだ。
それに答えるように右翼手がボールを追いかける。
「はいはい、はいはい。まかせてちょーだい。」
右翼手の少年がボールの落下地点で待機する。
そして、見事にキャッチ。
「超楽勝ッ。」
少年はうれしそうにキャッチしたボールを弄ぶ。
「今日は調子いいじゃねぇか、笠置。」
「いつもの顔面キャッチはどうしたー?」
その少年の名は、笠置八満。
この中学校の野球部に所属し、ボールを顔面でキャッチしてしまうという悪癖と、その悪どさによってこの学校では有名人であったりする。
そして、この少年がスバルとともに、「子育て」を行う、「親」にあたる人間であった。
先輩から名物である顔面キャッチが今日は見られないことについて笑いながら答えていた。
「いや――――。
今日朝から縁起よかったんスよ―――。
茶柱は立つし、テストのヤマはあたるし、トイレに紙はついてたし。
今ならどんなものでも捕れる自信あるもんね。」
自信たっぷりに答える。
しかし、ほかの部員達に、
「顔面でならな。」「想像つくよな。」
などと言われる始末であり、実際次の瞬間にはその通りになってしまうことになる。
ちょうど、八満の頭上。
空気を切り裂きながら猛スピードでナニカが落ちてくる。
「おい笠置…ッ、危ない!上!!」
「は?」
先輩の忠告によって顔を上にあげる。
そこに、空から降ってきた、ソレが直撃した。
こうして、管理局と、第97管理外世界の地上と、空の大陸。
交わらないはずの三者が、一つのたまごのもとで、交わることになる。
笠置八満と、スバル・ナカジマによる、「神様」の育成が始まる。
Lyrical!とキマイラ、はじまります。
これでプロローグ終了です。
ポンキマとクロスのくせにポンキマ勢がほとんど出てきてない……orz
プロローグで大半を使った盗掘者云々の話は長くなりすぎましたが、スバルをシアンのポジションに立たせるために必要なのかもしれない……多分。
拙いssですが、感想アドバイス等、よろしくお願いします。
誹謗、中傷はお手柔らかに。
人々「ちょっと魔法使いのみんなこの世界救ってくれよ」
魔法使い「そんなこと言っても俺ら神様じゃないから無理だし」
チャート様「あら、だったら神様作ればいいじゃない」
みんな「その発想はなかったわ」
↑の下りの部分はねつ造設定です。
時空管理局と接点持たせるためにいじってみました。
懐かしいですね……GJ!
続きが楽しみです。
守銭奴八満とかマッド清丸とかリベンジマンゆのかとかマジ濃いからなぁ…
GJ!!
あのメンツに加わるにはスバルでは押しが弱すぎると言わざるをえないw
シアンが消えたのはちと残念だけど先は気になる。次回に期待。
おお・・・・・・・・・!
俺の大好きな作品とのクロスが!
これはGJといわざるを得ない
やっべ!テラナツカシスwwww
GJ!!
最近人がいないな〜
おいおい、平日の昼間だぜ・・・?といってみる。
調子が悪いんで今日はお休みを取りましたが、コネタ投下、OKでしょうかー?
フフフ、仮面ライダーで、キャストクロスさ!
仮面ライダークロス・仮面ライダー昴 予告?
とある次元世界。
そこで、異変が起こっていた。相次いで起こる、優秀な魔導師やレアスキル保持者の失踪事件。
何の前触れもなく、突然蒸発すると言う奇妙な事件に、管理局は捜査を開始。当該世界に執務官、捜査官を複数送り込んだ。
だが。
送り込まれた局員たちもまた、相次いで失踪。
あるものは現地での捜査中に。あるものは就寝中に。あるものはお手洗いにいったまま戻ってこなかった。
第一次捜査隊が、消息を絶ち、数週間が経ったある日………執務官フェイト・テスタロッサ・ハラオウンと、その補佐ティアナ・ランスターに、捜査命令が下った。
内容は、簡潔。
失踪した隊員の捜索と、捜査資料の回収。
元機動六課隊員にだからこそ、依頼された任務だった。
快く引き受けた二人は、知らなかった―――ショッカーと呼ばれる、暗黒の秘密結社の残忍さを。
捜査すべく、現地に降り立った二人を待っていたのは、転送ゲートを取り囲む、黒服の人間達だった。
魔導師の証である、杖型のデバイスを持った、黒服の戦闘員達。
不気味なまでに、一律な動き。
彼らの持つデバイスは皆――攫われた人々のものだ。
ティアナが、顔を顰めた。
「フェイトさん、この人たち―――」
フェイトが、意味ありげに頷き、その整った顔を歪めた。金髪がゆれ、防護服が展開される。
ティアナもまた、防護服を展開し、二挺拳銃――クロスミラージュを構えた。
「うん―――攫われた、捜査官達だね。でも今は――」
魔力素集束。雷の球がフェイトの手前で展開され、戦闘員達に向け飛んだ。プロテクション――弾かれる雷撃。
しかし、弾かれたときには、既にフェイトの体は加速している――紫電の如き加速。三日月斧のデバイス、バルディッシュが光刃を発生させ、3人の戦闘員を吹き飛ばした。
「イ――――ッ!!」
奇妙な悲鳴が上がり、戦闘員が気絶した。
フェイトに向けられる杖、杖、杖。発生する魔力の弾丸。
だが、それらが発射されることはなかった。驚異的な速射が、彼らを撃ち倒していたから。どさどさと倒れる戦闘員達。
ティアナの精密射撃だ。
「今は、倒すしかありませんよね? フェイトさん」
「うん。わかってきたじゃない、ティアナも」
「あはははは………」
ティアナが照れたように笑った。
そのとき―――糸が、ティアナの身体に巻きついた。糸は瞬く間に太さを増し、ティアナをがんじがらめにしてしまった。
「ティアナッ!」
「フェイトさん、前!!」
轟、と。
弾く。粘性の糸が、バルディッシュの先端に絡み付いていた。糸――森の木々へ繋がっている――を伝って声が聞こえた。
「くかかかかか……彼奴らを倒すとは、噂に聞くフェイト・テスタロッサ殿かあ………是非是非連れ帰らねばあ、な」
フェイトが気丈にも、叫んだ。執務官としての彼女の顔だ。
「なんだ、お前は!!」
影が嗤いながら答えた。異形が、木の上から地べたに飛び降りてくる。
ばたり。
そのシルエットは―――ヒトのものでは、なかった。
何本もの腕。全身から生えた剛毛。鋭い牙の生えた口。
まるで―――蜘蛛。
「かかかかかッ! それは、貴様らがショッカーに来ればわかることッ! 行くぞ!!」
「―――ッ! 舐めるなッッ!!」
蜘蛛の怪人と、紫電の如き影が交差した―――。
一方、首都クラナガン。
廃棄都市区画の路地裏で、スバルもまた、異形と対峙していた。
「ギヘヘヘヘ……戦闘機人タイプゼェェロォォォ……お前ぇ、つれかえるぅ、それ、任務ぅ」
異形の怪人――蜥蜴と人間の相の子といった風情のそいつが、そんなことを言った。
(あたしのことを知ってるの?!)
驚愕。
それで、なんとか持ち直したスバルがリボルバーナックルを構えたのと同時に、怪人が口から液体を吐き出した。
プロテクション―――かろうじて弾く。
弾かれた粘液が、アスファルトにかかり、あたりを溶解させた。
ごぽごぽと音を立てて溶ける舗装された道路に、スバルが目を剥いた。
「え……?」
「ギヘヘヘヘ……俺の液ぃ、なんでも溶かすぅぅぅぅ………」
蜥蜴の怪人が、おそるべき速さでスバルに飛び掛った。刹那、ローラーを逆回転させる。
疾風の如き動きで、後ろに下がり魔法を詠唱。術式の名は―――。
「リボルバーシュートォォォ!!」
集束された魔力素が、蜥蜴の怪人にぶち当たることは――なかった。展開された障壁が、魔力弾を弾いたから。
あれは―――。
「プロテクション?!」
怪人が、にやりと嗤った。胸板を見せ付けるようにして喋り始め、いやらしい笑みが、爬虫類の顔に浮かぶ。
「デバイス、体にぃ、埋め込んであるぅぅぅぅ、攻撃ぃ……無駄ぁぁぁ」
見れば、その胸板には、改造されたストレージデバイスの姿があった。
そんな、まさか―――。
スバルの明晰な頭脳は、眼前の怪人の正体を導き出してしまっていた。ストレージデバイスを運用できる、つまり―――。
彼は――人間だったのだ――それも、おそらくは魔導師。人体改造技術――あの男の影。
外道の所業に、吐き気がした。だが―――。
「あなたを、止めてみせる―――力を貸して、マッハキャリバーッ!!」
『勿論です、相棒ッ!!』
大切な相棒のデバイス、マッハキャリバーからの返答。脚のローラーブーツが、猛烈なスピードで回転数を上げる。
前方への突撃。
「むだだぁぁ!! お前、組織の出来損ないぃぃぃぃぃ俺に勝てないぃぃぃぃぃ!!」
蜥蜴怪人が口上とともに、無数の溶解液を吐き出す―――マシンガンの如き連射。
プロテクションだけでは弾ききれないと見て、スバルが飛んだ。ウィングロード―――宙にかかる光の道が、空中に足場を作り出し、スバルに空中を移動する術を提供する。
まさかの移動方に、目を見開く怪人――慌てて溶解液を吐くが、既に遅い。
己の必殺の名を叫ぶ。
「<振動拳>ッッ!!」
IS<振動破砕>の応用技である、必殺の拳が、蜥蜴怪人の腹に突き刺さった。
振動する拳が怪人の体内をシェイクし、内蔵機関を暴走させ、自壊させていく。不意に、怪人が呟いた。
「ギギギギギギギギ……あ……あ…りがと………う」
洗脳が、死の間際に解けたのである。
瞬間、爆散――体液と機械の内臓を撒き散らし、蜥蜴怪人は死を迎え――爆発が辺りを照らし出した――。
爆心地で、うぐ、とスバルが呻いた。
爆発のダメージは、マッハキャリバーが防いでくれた。でも、でも―――。
「どうして……どうしてッ! こんなことが、できるんだぁぁ―――ッッ!!」
心は――深く傷ついていた―――。
だが、全ては始まりに過ぎなかった。
頻発する魔導師失踪事件。そして―――跳梁跋扈する戦闘機人達。動物と魔導師を掛け合わせた、異形の者ども。
そこに必ず現れる謎のヒーロー。それらを、必殺の拳を持って打ち砕く、黒衣の戦士。
漆黒のライダースーツ。髑髏を模したヘルメット。
右手の鋼鉄の篭手。
その通り名―――仮面ライダー。
八神はやては呟く。
「誰なんや、あれは?!」
高町なのはは言う。
「あの子……ひょっとして……」
ティアナ・ランスターは喚く。
「何やってんのよ、馬鹿!!」
ギンガ・ナカジマは呼んだ、妹の名を。
「ス………スバル?」
脱走した次元犯罪者、ジェイル・スカリエッティは思う。
ショッカーという、己を超える技術を持った悪を倒さんと、顔を歪め、笑う。
「私達こそが最も優れていることを、思い知らせてやろう、さあいくぞ、ウーノ、トーレ、クアットロ、セッテ」
『はい、ドクター』
そして、現れる黒幕。長い青い髪を風になびかせる、三人目のシューティングアーツ使い。
誰よりも強く、気高き存在。
その力を前に、倒れ臥す姉妹に、語りかけるは―――。
「私は……貴方達のママよ……」
「か……母さん? そんな―――」
「ショッカーに来なさい、スバル! 今なら罪は許されるわッ!!」
激突する信念。
「うおおおおおぉぉぉぉぉぉッ! ふざけるなああああぁぁぁぁッッッ!!」
「所詮は出来損ない……ここまでねッ!!」
蠢く真の悪。
巨大なショッカーの紋章――鷹を模したそれが、不気味な声を放つ。
《管理局に、未来など無い―――》
「お前は………」
『大首領――――ッッッ!!』
スバル・ナカジマはショッカーに製造されし戦闘機人である。彼女を製造したショッカーは、全次元制覇を狙う、絶対悪。
蠢く無数の死人を振り払い、スバル・ナカジマは、人々の笑顔の為に、今日もまた、地獄で戦い続ける―――。
―――仮面ライダー昴、始まります――――。
投下完了。
スバルって仮面ライダーポジじゃね?というネタを下さったウロス住人の皆様に感謝。
もし続き書いたら、ティー○も改造人間になるかも?
感想などいただけると、小躍りします。
GJ!!です。
○ィーダはなんの改造人間になるのか楽しみですw
三脳が戦闘機人の運用やスカ博士を使っていた理由がショッカーの存在を
知ってしまったからとかだったら三脳が好きになれるw
そして、スカ博士が自身こそ最高の頭脳であるためにショッカーと戦うとはw
悪対悪ってのもいいですwww
GJ!
自分も8時より、リリカル殺生丸7話を予約します。
GJ!
確かにスバルはライダーポジションだと思います。熱血系だしw
じゃあ自分は7時に予約を。
魔術士オーフェンStrikers 第6話投下させてもらいます。
支援
では、時間になりましたので投下しま〜す。
・・・この世界は愛に満ちている。いや、それとも私の世界が愛されていなかっただけなのか。どちらだとしても、こんな不公平が許されていいはずがないだろう。
だから、私は―――
魔術士オーフェンStrikers 第6話
(私は絶望しているのだろうか・・・)
ダミアン・ルーウは考える。
深い洞窟の中、薄気味悪い緑光に照らされながら何度も何度も暇さえあれば問い続ける。だが答えが返って来ようはずもない。その問いに答える何者もここには居ない。
当のダミアンにすらわからないのだから。・・・結局、疑問は疑問のまま彼の胸中に留まり続ける。
だから彼は自問し続ける。そうしていればいつかひょっこり答えに出会えるかもしれない。
(私は、絶望しているのだろうか・・・?)
『絶望』
あの時、自分の大陸では世界を滅ぼす女神の侵入という未曾有の危機により多くの者が絶望していた。聖域と敵対する黒魔術士の群れも、
玄室に引き篭もるドラゴン種族も、ドッペる・イクスを名乗る殺し屋達も、
ひょっとしたら自分のオリジナルであるダミアン・ルーウも・・・大陸でも有数の実力を誇る白魔術士ですらも・・・。
(・・・オリジナル、か)
思考の中に出てきた言葉を反芻し、思わず自嘲する。
(私はダミアン自身が製作したダミアンのコピー・・・もしも彼が滅んでしまった時、彼の情報と力を引継ぎ彼の役目を果たす存在、要するに彼自身が掛けた保険だ)
少なくとも、オリジナルであるダミアン本人は自分にそういう役割を求めていたらしい。
(だが、実際にダミアンが滅び私が目を覚ましてみればそこには私の役割など存在しなかった・・・ダミアン自身の誤算か、それとも彼を滅ぼしたあの小賢しい魔女が自分の存在に気付きこの世界に放逐したのか。
どちらにせよ私は私がするべき事とはなんら関係がない場所に飛ばされていた・・・これは絶望するに値するのではないか?)
白魔術は時の海ですら行き来する力を持つ。少し力の方向性を変えてやれば時空の壁すら破れるだろう。
当然ダミアンのコピーである彼にも同じ事が出来るし、実際彼はその力で元の世界へ帰還を果たそうとした。
・・・だがやはり誤算があった。別次元の世界の数が彼の予想を遥かに超えていたのだ。
その多さは砂漠の中に埋もれた砂金を手探りで探すような印象を彼に与えた。
加えてダミアンが彼に遺した力は膨大とは言えるが、決して無尽蔵ではない。これだけの数を一つ一つ探っていたらあっという間に枯渇するのは目に見えてる。
成すべきことがあるというのにどうすることも出来ない事に苛立ち途方に暮れている所に――――彼が現れたのだ。
年上には振り回されて年下には付きまとわれる女難の相支援
「あっ、居た!チンク姉〜、居たっスよ〜!」
「シッ!口を慎めウェンディ!・・・ここに居られましたか、ダミアン殿」
その声に思考の海から意識を引き上げる。自分の前方、薄暗い(といっても精神体の自分には関係ないのだが)通路から少女が二人こちらに向かってテクテクと歩いてくる。
「何か用かな?お嬢さん方」
「・・・はい、ダミアン殿に折り入って頼みたい事があるからラボの方へ来てほしいと、博士が」
口を動かさず、声帯すら震わせずに話すダミアンにまだ慣れていないのかチンクと呼ばれていた少女は一瞬の躊躇を挟みながらそれでも毅然と用向きを伝える。
「・・・そうか、ご苦労」
そう酷く簡潔に労いの言葉を残し、彼はスカリエッティの研究室へと転移した。
「ふぅ・・」
「・・・いや〜、相変わらず無愛想な人っスね〜」
「・・・無礼は控えろ、ウェンディ」
「ほ〜〜い」
魔方陣も詠唱も使わず文字通り一瞬で消え去った男を見送り、残された二人がため息を吐く。
「でもホント何なんスかね〜、あの人。もう結構長い事一緒にいるけど何も食べないし、寝てる所とかも見たことないし、意味もなく浮いてるし・・・幽霊か何かなんスかね?」
「・・・・無礼は控えろと言っただろう」
腕を頭の上で組んで愚痴るウェンディの言葉に一瞬、心中で同意してしまった自分を恥じながらチンクは再び妹を諌めた。
「おっと、相変わらず心臓に悪いなぁ君は。ちゃんと入り口をノックしてから入って来てくれと言っているだろう?」
研究室への転移を完了するとすぐにそんな声が聞こえた。
「マナーがなってないとは自分でも思うが、何分この方が楽なのでね」
声の方へと顔を向け彼の皮肉に簡潔な言葉で切り返す。振り返った先にはイスの背もたれに体を預け、
何がそんなに可笑しいのか口元をイビツに歪めた白衣の男がこちらを向いて座っていた。
一ヶ月と少し前、自分をここへと招き入れた人物。
―――ジェイル・スカリエッティ
「用件とは・・『ソレ』の事かな?」
そう言いながらスカリエッティの後ろにある培養液で満たされた三つのカプセルに視線を移す。
「んん?いやぁ、違う違う。彼らについて君に手伝ってもらう事はもうないさ。山場は越えたからね。稼動まではもう少し時間がかかりそうだが・・・」
「・・・・そうか。結構な事だ」
やはり簡素に返す。
別に皮肉でも何でもない。この天才がそう言うのなら本当にそうなのだろう。ゴーストと機械の体の統合など―――未だに信じられないとは思うが・・・。
「では一体私に何の用なのだ?」
「ああ実はね、ちょっと君にお使いを頼みたいんだよ」
「?」
意味が分からず首を傾げる。
「ククッ・・・ウーノ?」
その反応を面白がるようにケタケタと笑いながら先ほどから一言も喋らずに彼の傍に控えていた女性に声をかける。
彼女は頷き手元のパネルを操ると、何もない虚空に大きな画面が現れる。
「これは・・・」
画面には山岳地帯を疾走する列車の映像が映し出されていた。
□ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■
「・・・・・・よう」
「・・・・・ああ・・・・・・・おはようございます」
「おはようございま〜〜すですオーフェンさん・・・」
朝の機動六課本部、食堂へと続く廊下にてオーフェンは偶然出くわしたはやてとリィンにどんよりした声で挨拶をする。
と、向こうもこれまた右手をふらふらと上げながら呻くように返してくる。
sien
なぜ二人が二人ともこんな半死人のような状態なのかはお互いに相手の顔を見る事ですぐに察する事ができた。
「・・・寝不足ですか?目の下にエライ隈が・・・」
「そういうお前にも出来てるぞ・・・寝てねぇのか?」
あくびを噛み殺しながら尋ねる。
「う〜ん、ちょっとだけなら寝られたんやけど、さすがに疲れが溜まっててなぁ・・・。私ら、もう三日間くらい二時間睡眠やで・・・」
「眠いです〜・・・」
すぐ傍にあった自販機コーナーの簡易なソファに腰を下ろして目を瞬かせるはやて。昨日は泊り込みだったのか制服自体はピシっとしているが下に着ているYシャツはどこかしわが寄っているし、
さっきまで仮眠でもとっていたのだろう髪の方もやや乱れぎみだ。
「オーフェンさんは?」
ソファの対面の壁に寄りかかっているこちらにはやてが尋ねてくる。
「ん?」
「あんま寝てないんですか?」
「ああ・・・なのはの奴にフォワードの奴らの訓練プログラムを組むから知恵を貸してくれとか頼まれてな・・・。安請け合いってのはするもんじゃねぇ、ってのを痛感さられたよ」
仕事が片付いてから試行錯誤を重ね、何度も何度も組みなおしてやっと彼女が満足いくものが組めた頃には午前の4時を回っていた。ここら辺、変な所で責任感が強い自分が嫌にならないでもない。
「なのはちゃん頑張り屋さんやからなぁ〜、大変やったでしょう?」
「全くな・・。次、頼まれる事があったら俺の全身全霊を賭けて断ろうと心に固く誓ったくらいだ」
「あはは、は、ふわぁ〜〜・・・ぁあ」
会話の途中、緊張が解けたのかはやてが大きな欠伸をする。と、もはや限界とばかりにソファの上にグデ〜、と寝っ転がってしまった。
「おい?」
「ん〜〜・・・やっぱ超眠ぅ・・。アカン、私ちょっとだけここで寝てくわぁ・・・」
「えっ、ちょ、はやてちゃん!?」
慌てるリィンを他所にはやては既に完全安眠モードに入ってしまっていた。
「ダ、ダメですよ、はやてちゃん!まだお仕事全部終わってないんですよ!?今日はお昼に聖堂教会の方にも行く予定だし、こんな所で寝てる場合じゃ・・・」
「じゃあ何でこんな所うろついてたんだお前ら・・・」
「朝ゴハン食べ終わったらまた頑張ろうって事になってたんですぅ!」
「う〜ん、分かっとるってぇ・・・あと・・・20時間くらい立ったら・・・起こしてぇな・・・」
「えええ、どこがちょっとなんですかぁ!?」
さりげなく仕事放棄宣言をしながら急速にまどろみの中に落ちていくはやてを何とか起こそうとリィンが彼女の髪を引っ張ったり、頬を抓ったり、
加速をつけてきりもみキックを見舞ったりもしたが、まるで起きる気配がない。限界を超えた睡魔というのは痛覚すらも凌駕する。
「はぁ、・・・はぁ、・・・こ、こうなったら・・・最後の手段です・・・オーフェンさん!」
「えっ、俺?」
一歩引いた位置で静観(いや、むしろ観戦)していたオーフェンに息を切らしながらリィンが話しを振る。
「はい!オーフェンさん、はやてちゃんにキスしちゃって下さい!」
「・・・・・・・」
場の空気が凍る。
オーフェンはたっぷり30秒間程その言葉を頭の中で反芻し、目眩を覚えて(眠気のせいだと信じたい)指で目頭を抑えたポーズのまま聞いた。
「・・・何で?」
「この間はやてちゃんが言って・・・あっ、違った。・・・はやてちゃんは言っていた・・・
『眠りについた女の子を起こす一番の方法は王子様のキスなんやでぇ』って」
(室内のはずだが)背景に太陽を背負いながら目を瞑り天を指差したポーズで心なしか満ち足りた表情のリィンが言う。
「何だ、それ・・・・」
「最近のマイブームなんですぅ」
「ブームって・・・」
若干引き気味のオーフェンを気にせず表情と口調をサッと戻して続けるリィン。
「さ、というわけでどうぞです!」
「・・・何が?」
「熱い口付けを」
「できるかっ!」
宙を浮いている彼女の頭を平手で叩きながら叫ぶ。
「迷信を鵜呑みにしてどーする!?ただの痴漢だろうが!」
すると彼女は頭を抑えながら目に涙まで浮かべて抗議の眼差しを向けてきた。疲労も手伝ってか、かなり切羽詰っているようだ。
「うぅ〜、だって・・・だって、ほんとに困るんですぅ・・・お願いします、オ〜フェンさぁ〜ん」
「う・・・・・ったく、しょうがねぇなぁ・・・・」
はぁ、と嘆息しながら、仰向けで口を半開きにして寝ているはやての方へ歩いていく。すると泣き出す一歩手前の表情を一変させてリィンが嬉しそうにこちらにやってくる。
「さ、さすがオーフェンさんです!話が分かるですぅ!」
「ああ。・・・まぁ、するのは俺じゃないけどな」
「えっ?」
オーフェンは可愛らしく小首を傾げるリィンをムンズと掴む。
「あれ?ちょ、えっ?」
そして戸惑いの声を上げるリィンに一切構わず彼女をはやての顔の方へと寄せていく。
「ちょ、ちょちょちょちょちょっと待って下さい!ストーーーっプですぅ!!オーフェンさん何考えてるんですかぁ!!」
事ここに至ってようやく彼の行動の意味を悟ったリィンが暴れだす。
「いや、だから俺がしたら問題あるだろう色々と」
「で、ででも、はやてちゃんの話では男の人のキスじゃないとダメだって・・・」
「大丈夫だろ、多分」
「し、しかもリィンに至っては人間ですらないわけですし効果は期待できないと・・・」
「平気だって、きっと」
「何でテキトーな対応するんですかぁー!だ、大体リィンとはやてちゃんじゃサイズ的にどう考えても無理だと思モガァ!」
オーフェンは反論を全く受け付けずリィンをはやての口元に押し付けた。
しかしはやての口が少し開いていたのが悪かったのか、暴れるリィンを押さえつけるために少し力を入れすぎたためか―――恐らく両方の相乗効果だろう。
リィンははやての口腔内に上半身を丸々突っ込まれてしまった。
はやての唇から小さな両足が生えてブンブンとバタ足を繰り返している。
「・・・・何ともグロテスクな光景だな・・・」
「っっっ、何でやねん!」
オーフェンが素直な感想を口にするのと同時、さっきまで何をしても起きなかったはやてが口からリィンを吐き出しながらガバッと身を起こした。
「ゲッホ・・・ゲホ、全く・・乙女の口に何突っ込んでくれてんねん!」
「お前さんの相棒だが」
はやて汁でベタベタになりながら床に這いつくばっているリィンを指差しながらキッパリとした口調でオーフェンが言う。
「しかし迷信も意外とバカにできんな。まさか本当に目を覚ますとは・・・」
「喉奥を拳でどつかれたら誰だって起きるに決まってるやん!」
「あ〜、はいはい悪かったよ。」
地団駄を踏みながら言ってくる彼女に投げやり気味に言いながら足を食堂へと向ける。そろそろ朝食を採らなければ本気で朝の訓練に遅れてしまう。
「まったくもうっ!・・・リィン、ゴメンな?・・・立てる?」
何を言っても無駄だと悟ったのか(半分は自分のせいでもあるため)はやてそれ以上何も言わずに、未だに倒れ付したままのリィンへと声をかける。
「・・・ぅ・・・ぅぅ・・・」
リィンの口から苦悶の声が上がる。
瞬間―――
「うわああああああああああああああん、バッキャローですぅーーーーーーー!!」
大絶叫を上げつつ、涙を流しながら(と言ってもどれが涙かわかったものではなかったが)リィンがあさっての方向に飛び去ってしまった。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
それを呆然と見送りながら、二人はどうしたものかと顔を見合わせ―――
「・・・・・あ〜、まぁ腹が減ったら帰ってくるだろ」
「いや、でも・・・・そやね」
オーフェンはキッパリと、はやては一瞬躊躇したがやはり割と薄情な呟きを残して食堂へと消えていってしまった。
・・・・・ここでちゃんとリィンを追いかけて誠心誠意謝罪し、パフェの一つでも奢っていてやれば後々の面倒事を回避出来ていたであろうという事をここに記しておく。
「は〜い、じゃあ午前のトレーニング終了だね、みんなお疲れ様!」
「「「「ありがとうございましたぁっ」」」」
荒廃した市街地に設定された訓練場、なのはの言葉にフォワードの面々が安堵の表情を見せる。その顔には「今日もキツかった・・・」という思いが在り在りと浮かんで見えた。
それを知ってか知らずか微苦笑を漏らしながらなのはが横で控えていたオーフェンへと向き直る。
「じゃ、オーフェンさん。お願いします」
それだけ言うとなのはは一歩退いて彼の『講義』を待つ姿勢に入った。彼女も昨日はあまり寝ていないはずなのだがそんな素振りはまるで見せない。
(大したもんだよ、本当に・・・。)
そう胸中で思いながらフォーワードの四人に向き直る。
「・・・そんじゃあ、いつも通りまず今日の問題点から上げていくぞ」
「「「「はいっ!」」」」
咳払いをしつつ始める。
オーフェンが機動六課・フォワードの戦術面教育係りに就いてから五日目。この訓練終わりの『戦術講義』は半ば習慣に成りつつあった。オーフェンが担当するのは主にスターズの二人の戦術指導、
スバルとエリオには近接戦闘を想定しての組み手などだった。
キャロだけはオーフェンの専門外のポジションなので教えられる事が今のところ何も無い。
「――――で、だ。スバル?」
講義が一段落した所で、突然オーフェンの言葉の矛先が個人に向けられた。半眼でスバルを睨む。
「うっ・・・」
スバルが汗を一筋垂らして硬直するが、構わず続ける。
「ティアナの援護が届かない地点では相手に真っ直ぐ突っ込んでいく癖出すなってこないだ言っといたよな、俺?」
「うぅ・・・は、はい・・・」
「じゃあさっきのは何だ?」
腕を組んだ姿勢で威圧するように言う。
「さっきの」というのはスターズ二人のコンビネーション強化の訓練で少々スバルが無茶をやらかしたのだ。
支援
「いや〜、その・・・射程内に偶々ガジェットが現れたもので、つい・・・その、反射的に・・・」
「・・・・・・」
額から猛烈に冷や汗の様な物を掻きながらしどろもどろに言い訳するスバルにため息を吐きつつオーフェンが口を開く。
「ここ数日お前の動き見てて分かったんだけどな。お前、いちいち動きが正直すぎるんだよ。相手との最短距離を一直線に駆け抜けるなんて真似はここぞという時以外は・・・」
「で、でも!」
オーフェンの説明を遮るようにスバルが声を上げる。
「あ・・・あの、でも私、今までずっとそうやってきて、他の戦い方なんて思いつかないし、それに、あの・・・あれが私の、えっと・・・持ち味だし・・」
「ああ、そこは否定しねぇよ」
「・・・へっ」
ややいっぱいいっぱいになりながら必死に捲くし立てていた彼女の動きが停止する。
「いや、だからお前の持ち味云々に関しては特に異論はねぇよ。機動力と至近距離での一撃の威力は実際大したもんだと思うしな。
俺が言いたいのはその持ち味を活かす状況を考えろって事だ。もし、ティアナの援護がない状態でお前のあの全力パンチが空ぶった時、お前次に来る敵の攻撃からどうやって身を守るつもりなんだ?」
「あ・・・」
「・・・ま、そういう事だ」
呆然とした呟きを発するスバルの頭をポン、ポン、と叩いてやりながら横のティアナへと視線を向ける。
「で、だ。ティアナはコイツの手綱をもう少し上手く扱えるようになれ。お前の指揮があって初めてこいつが活きるんだからな」
「ハイッ!」
無駄に元気に返事をしてくる。どうもシグナムとの一戦以来ティアナのオーフェンへの評価はかなりのレベルにまで達しているらしい。
それに苦笑しながらもう一度目の前の少女に向き直る。
「スバルもだ。次もっかい同じ事しやがったら俺の熱衝撃波の狙い撃ちから10分間逃げ回り続ける事になるからな」
「は、はい。すいませんでした!」
ゾッとした表情をしながらも素直に頷いてくるスバルに満足すると、なのはに視線でもう言うことは無い、と告げる。と、彼女はそれに頷き占めの言葉を口にしようとし―――
「ちょっと待ったぁーーーーーーーっですぅ!!」
突然の乱入者に阻まれた。
耳に馴染んだその声に皆が振り返る。そこには―――予想通りと言うべきか、リィン・フォースUが仁王立ちの姿勢で立っていた。ただその姿はいつもの妖精サイズではなくエリオ達と同じくらい、つまり標準の子供サイズだった。
服装はいつも通り管理局の制服姿だったが、どこから持ってきたのか何やらサングラスなどかけている。
その傍らにはヴィータがあんまり乗り気じゃなさそうに佇んでいる。
「・・・なぁリィン、いいじゃねぇかよ。はやてのヨダレまみれにされたくらいでさ〜」
やはり気が進まない口調でヴィータが肩を竦ませる。
「よくないです!乙女として耐え難い屈辱です!―――オーフェンさん!」
だがリィンは全く取り合わず、ポカーンとした表情を見せているオーフェンに向けてビシィ、と指を突きつけた。
「決闘です!!」
―――――ヒュウウウウウ―――――
両者の間で寒い風が吹く。
「―――――――――――」
「・・・え、え〜と、なのはさん。実は私のローラーブーツそろそろ限界っぽいんですけど・・・」
「あ、私のアンカーガンも最近ちょっと弾詰まりが酷くて・・・」
「う〜ん、そうだねぇ・・・二人ともそろそろ専用のデバイスに切り替えても―――」
後ろの方でそんな声がする。オーフェンはそのやり取りに「関わりたくないから、放っておこう・・・」という明確な意思を感じたとかなんとか。
一方その頃――――
「べ、ベストを・・・・尽くせ・・・・・」
隊長室、リィンのサポートを欠いた状態で書類を片付けているはやてが死にそうになっていた。
―――――騎士・カリムとの会合まであと二時間と少し。
魔術士オーフェンStrkers 第6話 終
支援
投下終了です!
時系列的には四話前半って所でしょうか?
結構な文章量なのに展開が全然進んでない不思議。助けて文章の神様!
・・・最近書いてて思うけどものすげぇ長編になりそうです。オーフェンStrikers・・・。
支援
GJ!!
長くなる分には大歓迎だぜ!
びくっりアタックをスバルに伝授するわけじゃないのかw
GJ!
この決闘の行方……全く読めん!
はやても無事に生き残れるのか!?
しかし、なのはさんあんま寝てないのにすごす。
次回も楽しみ
GJ!!です。
リインの扱いに笑いましたw
オーフェンもしっかり、教育してるなぁ。
オーフェンって素でも相当強いよな。
周りが異次元なだけで
GJ!
まさかのツヴァイとのガチバトル!
一体どんな闘いになるのやら…
ただ「・」は三点リーダ「…」に変えた方がいいと思います
GJ!
オーフェンはまるで知らないのですが……リイン、哀れ……www
ではそろそろリリ殺を投下したいのですが、いいかなー?
どうぞー
1レス目から本文が長すぎというまさかの通知orz
とりあえず10分以内にゃ解決しますので「ゆっくりしていってね!!!」
9月12日、2時30分。
季節も秋口に差し掛かった頃。深夜の風が肌に冷たい。すっかり夜が更けたということもあり、クラナガンの街は静まり返っている。
バラエティ番組も粗方放送が終わり、テレビをつければ、
万人向けのゴールデンタイム枠には適さないマニアックなアニメーションが流れているような時間帯だ。
にもかかわらず、中央管理局の地上本部では、多くの局員が慌しく動き回っていた。
というのもこの日の14時から、管理局の公開意見陳述会が開かれることになっている。
ミッドの地上管理局運営に関わる重要な会議で、各管理世界からも数多くの要人が出席するものだ。
主に今回の議論の争点となるのは「アインヘリアル」だろう、というのが一般的な見解である。
アインヘリアル――地上本部が開発を進めている防衛用兵器の名称。
運用に持ち込めば、本局の次元航行艦隊に頼ることのない安全保障体制を確立できる。
予算と戦力の不足に悩まされてきた地上にとっては、まさに救いの一手となるのは間違いないだろう。
とはいえ、巨大な遠距離用魔力砲――それも3つとなれば、一見過ぎた軍備にも見えるのもまた事実。
地上本部長官レジアス・ゲイズ中将を中心とした推進派、六課課長八神はやても加わる穏健派、
その両者の討論が今回のメインになるのは、火を見るよりも明らかだった。
「ふぅ……」
警備に当たる魔導師達の中、ギンガ・ナカジマが夜空を見上げる。
手にした紙コップに注がれたホットコーヒーが、暗闇の中で白い湯気を立ち上らせた。
数日前、正式に六課へと出頭した彼女だったが、この日は元の陸士108部隊と合流していた。
古巣の108部隊は、言うまでもなく地上部隊の戦力である。
所属は本局となっている六課と比べて配備時間も長く、より本腰を入れて警備に当たることができた。
(教会騎士カリムのレアスキル、プロフェーティン・シュリフテンの預言……)
彼女は月の魔力を応用し、年に一度だけ、未来の出来事を断片的な預言として知ることができる。
脳裏をよぎったそれは、六課の設立のきっかけとなったものでもあった。
――古い結晶と、無限の欲望が集い交わる地。死せる王のもと、聖地よりかの翼が蘇る。
死者達が踊り、なかつ大地の法の塔は虚しく焼け落ち、それを先駆けに、数多の海を守る法の船も砕け落ちる。
佐官クラスの父を持っているだけあり、ギンガもその内容は聞いている。
今までの預言に比べて、あまりに不吉で物騒な内容。管理局システムの崩壊すら匂わせるようなものだ。
教会側からすれば、何としても対処しなければならない、重要な問題だった。
そこへ持ちかけられたのが、カリムと親しい仲にあったはやての、新設部隊立ち上げの相談。
機動力の高い少数精鋭部隊という方針は、有事の際に管理局を守る遊撃部隊という、教会が欲していた戦力に合致した。
こうして、はやての六課は「古い結晶」――レリックを中心としたロストロギア管理部隊として、成立することになったのだ。
不意に、ばたばたという羽音が耳に入ってくる。
見上げた夜空の中に、降下してくる1台のヘリコプターが入ってきた。どうやら六課の面々も到着したらしい。
それを確認したギンガは、ヘリポートへ向けて歩を進めた。ここからはスターズ分隊の指揮下に入る。そういう予定なのだ。
ふと、再び夜空が気にかかった。
警備用のライトで照らされた黒天の夜空は、あの日と比べて星の数が少ない。
宵闇の中、視界一面に広がった星明り。漆黒のじゅうたんに散りばめられた、幻想的な宝石達。
炎の中から救い出された自分を祝福するかのような、とても綺麗な空だった。
4年前のあの日のことを思い出す。ナカジマ姉妹を襲った空港火災のこと。
(あの人に――殺生丸さんに、助けてもらったこと)
あの人は来るのだろうか。それがギンガの気がかりだった。
外部からの襲撃を考えれば、戦力的に1番可能性が高いのは、例のスカリエッティ一味。殺生丸もまた、そこにいる。
(今度はちゃんと話をしないと)
強く誓った。
あの時自分を助けた人が、何故犯罪者に加担するのか。
戦うことになってもいい。最悪すれ違ってしまって、知らないうちに確保されてからでもいい。
あの廃棄区画の時のように取り乱すことなく、ちゃんと言葉を重ねよう。
そして仕事を終わらせて、後ぐされなく六課の寮に帰って、まずは熱いシャワーを浴びよう。
きんきんに冷えたソーダ水を飲むのも悪くない。
そうだ、出発前に録画した音楽番組も忘れてはいけない。確かお気に入りのアイドルグループが出演するはずだ。
この時までは、まだそんなことを考えていた。
魔法妖怪リリカル殺生丸
第七話「炎上、地上本部」
時は数時間前に遡る。
地下に広がるスカリエッティのラボ――ここはその食卓。
巨大な長机には上品な純白のテーブルクロスが敷かれ、それぞれの席に置かれた料理と、煌く黄金の台に刺されたキャンドルがそれを彩る。
晩餐会に出席するのは16人。
まず、ここの主ジェイル・スカリエッティ。
彼の作りし機械仕掛けの娘達・ナンバーズのうちの11人。
召喚士ルーテシア・アルピーノとその御一行の4人組。
この食事を演出した変人科学者と、それに与する者達が、ナンバーズのうちの1人を除いて全員集合していた。
どうやらスカリエッティは、ホテル・アグスタ戦でのルーテシアへの約束を律儀に守ったらしい。
その証拠に、お茶ではないが、こうして食事を奢っている。
デミグラスソースのかかった熱々のローストビーフをナイフで切り、フォークで口へと運ぶ彼女の姿が、殺生丸のすぐ隣の席にあった。
こういうどうでもいいことは徹底する辺り、つくづく掴み所のない男だと彼は思う。
箸でポテトサラダを器用に取ると、それを口に入れた。
本日のメインディッシュである肉料理という概念は、殺生丸がこの世界へ来て初めて知ったものだ。
もちろん、肉を食べたことがないわけではない。しかし、戦国時代当時の日本は、未だ仏教信仰の根強い半宗教国である。
肉食の禁じられた国では、それを材料とした料理が確立するはずもない。
しかし彼の興味は、さほど料理に向けられてはいなかった。
金色の瞳が周囲を見回し、その場に集ったナンバーズ達を確認する。
ノーヴェと似た紅髪を逆立たせているのは、ナンバー]T・ウェンディ。さぞ美味そうにスープをすすっている。
茶色の短髪がナンバー[・オットー、長髪がナンバー]U・ディード。細かな外見も物静かな性格も似通っていた。
桃色の髪を長く伸ばし、額当てを身に付けているのが、ナンバーZ・セッテ。口数は最も少なく、感情も希薄に感じられる。
残るナンバーU・ドゥーエは数年がかりの仕事を行っていると聞いた。
つまり、これで殺生丸は、すぐに顔を合わせることのできるナンバーズ全員を見たことになる。
「さて、と……」
スカリエッティが手にしたフォークとナイフを食器へと預けた。
それに合わせるようにして、近くの席に座っていたウーノが端末を操作する。
テーブルの上に現れた画像は、地上本部や機動六課隊舎のものだ。
「ではそろそろ、明日の遠足の打ち合わせといこう」
遠足、とはテロ行為の彼なりの表現だろうか。
スカリエッティの始めた説明を、ある者は料理を味わいながら、ある者はその手を止めて、しかし全員が聞き始めた。
明日の午後、この一味は地上本部と六課を同時に襲撃する。
目的は2つ。今後のある重大な作戦のためのデモンストレーションと、そのためのファクターの奪取。
地上本部を大体的に襲撃することで隊舎から目を逸らさせ、守りが手薄になったところを攻撃し、必要なものを頂いていく。
無論、地上本部もただのブラフではなく、重要な意味を持っていた。あくまでもスカリエッティから見れば、だが。
「明日の地上本部および機動六課の人員配置は、このようになっているわ」
ウーノがキーボードを操り、それぞれの席にウィンドウを展開する。
管理局の警備体制が詳細に記された一覧表だ。つまるところ、情報は筒抜けとなっている。
せきゅりてぃ、だとか、はっきんぐ、だとか、そんな難しいことは殺生丸は知らない。
しかし、あれほどまでの技術力を有した組織が、外部からの情報流入をここまで容易に許すことがないことは分かっていた。
であれば、これがドゥーエとかいう奴の仕事か。
何らかの方法で内通を行ったであろう、まだ見ぬナンバーズを連想する。
戦闘機人は、高速戦闘、殲滅戦、特殊技能など、それぞれに特化した能力を持つという。
ならば、残る1人は隠密能力に秀でた奴なのだろう。確かにそれは、この場の姉妹達にはない能力だった。
支援
「まず、私の可愛い娘達……それぞれの当番はこうだ」
そんな殺生丸の思考を尻目に、スカリエッティは説明を進めた。
総合指揮はウーノ。機動六課にはオットーとディード、それからルーテシアが向かう。残る全員が防御の固い地上本部行きだ。
広域殲滅能力を持ったオットーと、彼女への接近を阻止できるだけの格闘戦能力を有したディード。
シャマル、ザフィーラの2名しか戦力のない六課ならば、これとガジェットだけでも対処が可能だろう。
そして、地上本部の対策がこうだ。
まずはクアットロが幻影能力シルバーカーテンを行使し、警備システムをジャミング。
ディープダイバーで潜航したセインが警備本部を、チンクが動力部を無力化。
建物内部組の中でも外側の人間は、ディエチの煙幕弾で鎮圧。
残りをガジェット軍団とノーヴェ、ウェンディの包囲網で制圧する。
多様な能力を有した戦力の割にはあまりにシンプルすぎるが、故に万人に分かりやすく、その実力を誇示できるという面もあった。
「そして残る面々には、六課のエース達のお相手を願おう」
残った5名の割り当てはこうなる。
高速空戦を得意とするトーレとセッテは上空で待機し、六課へ戻ろうとするフェイト・T・ハラオウンに対処。
フォワード分隊のどちらかが六課防衛に向かうのは明白だ。そして、それには足の速いフェイトの方が適している。
どちらが向かってくるのかは明白だった。
続いて、ゼストとアギト、および殺生丸。彼らはヴォルケンリッターと交戦することになる。
「それさえ倒せば、後はどう動こうと構わんな?」
ゼストが念を押した。
「ああ、それは構わないとも」
スカリエッティもあっさりと了承する。
ゼストはそれに沈黙で答えた。
わざわざ確認したそのことが妙に引っかかったが、今は関係なさそうなので、殺生丸はそのまま触れずにおく。
「そして、大事な回収対象の確認」
科学者の声に従い、ウーノが再びキーボードを叩いた。
テーブル中央に浮かんだ画面の中のデータ配置が入れ替わり、3人の人間の顔写真が大映しとなった。
2人は殺生丸にも見覚えがある。名前こそ知らないが、スバルとギンガのナカジマ姉妹だ。
そしてもう1人映されたのは、金髪をツインテールに纏めた幼女の姿だった。
赤と緑、左右で全く異なる色の瞳をした、いわゆるオッドアイである。もっとも、それ以外は普通の子供と何ら変わらない。
「マテリアルは最優先で。タイプゼロも、可能なら確保してくれたまえ」
マテリアル、という単語は聞いたことがあった。
管理局の人間と、初めて本格的にやり合った廃棄区画での戦闘――そこでナンバーズが探していたものの1つだったはずだ。
ということは、あの時戦闘に加わっていなかった、金髪幼女がそれに当たるのだろう。
しかし、気になるのはもう1つの単語だ。
「たいぷぜろ、とは?」
「戦闘機人の初期型だ」
ルーテシアとは反対側の隣に座ったゼストが、殺生丸の問いに答える。
あの2人も戦闘機人だったというわけか。
デバイスのそれと思っていた鉄と油の臭いを思い返した。
「ああ、それから最後に1つ。……今回は無血制圧が目的だから、くれぐれも死者は出さないようにね」
スカリエッティが釘をさす。
殺すな、というのは酷な要求だ。要するに手を抜けということであり、何とも面倒くさい。
それを向けられた殺生丸が、微かに眉をひそめた。
「そう怖い顔をしないでくれたまえ。私も仕事柄、人の命が奪われるのは忍びないのだよ」
そう言いながらスカリエッティは肩を竦めるが、それが虚言であることは分かりきっていた。
要するに、これもまたデモンストレーションなのだ。
殺戮兵器に人殺しをさせるのはたやすい。例えるならば、人が蟻を踏み潰すのと同じようなことだ。
あえてそれを行わず、相手が潰れてしまわない程度に加減することの方がよほど知能も技術も要る。
その気になれば殺人も容易な戦闘機人達がそれを可能とするということは、すなわちそれだけの精巧さを有していることの証明。
そして、同時にもう1つ重要な要素があった。「その気になれば」、という表現だ。
要するに挑発。死者すら出さず地上本部を制圧した連中の「その気」におびえる管理局が見たい、ということ。
人を恐怖させるのに真剣は要らない。竹刀で叩くだけで十分だ。
「では、明日はみんな頑張ってくれたまえよ」
にぃ、と、あのいやらしい笑みでスカリエッティが嗤う。
「楽しい遠足になりそうだ」
そして、9月12日。広大な空が、夕暮れ時の朱色に染まりつつある頃。
「連中の尻馬に乗るのは、どうも気が進まねぇけど……」
いつも通り空中で胡坐をかきながら、アギトが不機嫌そうにぼやいていた。
ゼストとアギトの眼下に広がるのは、繁栄を極めたクラナガンの大都市。
その中心にそびえ立つのは、なかつ大地の法の塔――時空管理局地上本部。今回の襲撃対象。
陳述会も終盤に差し掛かった今は、彼らにとっては秒読みの段階だった。
もう間もなく、スカリエッティの「楽しい遠足」が始まる。恐怖と混乱と闘争に満ちた一大作戦が。
「それでも、貴重な機会でもある。今日ここで全てが片付くなら、それに越したことはない」
「まぁね」
アギトの返事を聞きながら、ゼストがモニターの表示を切り替えた。
意見陳述会の映像が流されていたウィンドウの中に、1人の男の写真が大写しとなる。
ゼストとほぼ同年代といったところの、中年の男性だ。
厳しい視線だけは共通していたが、豊かに蓄えられた鬚、整えられた角刈りの髪型など、全体の特徴が大きく印象を異にしている。
「つーか、あたしはルールーが心配だ。大丈夫かなぁ、あの子?」
この面子に所属する期間では圧倒的に後輩でありながら、アギトの声はさながら幼子を気遣う保護者のようだ。
元々ルーテシアに拾われた身であるにもかかわらず、今ではすっかり姉貴分という辺りが、何ともシュールな光景ではある。
もっとも、彼女自身が色々と幼い部分もあるのだから、無理はないのだが。
「心配なら、ルーテシアについてやればいい」
「今回に関しちゃ、旦那のことも心配なんだよ!」
多少憤慨した様子を見せながら、アギトがゼストの眼前へと飛び移る。
突き詰めたところ、ルーテシアは1人ではない。ガリューという優秀なパートナーもいるし、屋外なら大型召喚も実行できる。
しかし、ゼストは1人ぼっちだ。万一の場合に守ることができるのは、アギトしかいない。
それを言うならば殺生丸も1人なのだが、彼女にはゼストを特に心配する「ある理由」があった。
「旦那の目的は、このヒゲオヤジだろ?」
その理由には特に触れずに、腕組みしながらアギトがモニターを覗き込む。
先ほど表示された中年男の画像だ。
名を、レジアス・ゲイズ。現在の地上本部責任者にして、生前のゼストとは浅からぬ付き合いにあった男。
そして、彼を死地へと駆り立てる原因となった男。
「そこまではあたしがついて行く。旦那のこと、守ってあげるよ」
はっきりとした口調で発せられた、アギトの決意。
「お前の自由だ。好きにしろ」
ゼストはそれを、瞳を軽く閉じて聞き入れた。
「好きにするともさ! 旦那はあたしの恩人だからな」
それでいいのだ、と言わんばかりに、アギトの表情に勝気な笑顔が戻る。
ルーテシアのレリック回収以外の、個人的なゼストの目的。
それを果たすためならば、自分は喜んでこの男の剣となり盾となろう。
それこそがロードに仕えし烈火の剣精の義務であり、ゼスト・グランガイツに救われたアギトの誓い。
「そういや、殺生丸にも連絡取っといた方がいいよな?」
そこで思い出したようにアギトが言う。
今回殺生丸は、ちょうどゼスト達とは反対側に当たる場所で待機していた。時間差で挟撃して、敵戦力を分断するためである。
一騎当千の実力を持った両者ではあるものの、敵のエース達もそれなりに手強い。
だからこうして、1対1の状況を作り出すために、それぞれ反対側の立ち位置についていたのだ。
「そうだな」
言いながら、ゼストが端末のキーボードを叩く。魔法が使えない殺生丸には念話も使えず、こうして機械越しに通信することになっていた。
通信回線画面に移ったものの、しかしそこに投影されるのは、やかましいノイズを立てる砂嵐。
何か起こったのだろうか、とゼストは首を傾げる。
しかし、一方のアギトはすぐに原因に気付いたらしく、苛立ったような声を上げた。
「ああああああーっ! アイツ壊しやがったなーっ!」
地上本部周辺上空、北側。
ゆらゆらと銀髪と毛皮をたなびかせながら、殺生丸が黄昏の空に浮いていた。
絹糸のごとき長髪が、オレンジ色の夕焼けを浴びて優雅に煌く。
照らし出される端整な顔立ちが、一種艶やかな魅力をかもし出した。
そんな殺生丸だったが、今はモニターの前で難しそうに眉を寄せている。
視線の先では、端末のウィンドウが盛大に砂嵐を立て、周囲のキーボードにもノイズが生じていた。
これだから機械とかいうものは信用ならん、といった様子で端末を閉じる。
(少し力を入れて押せばこうだ)
自分の機械音痴を完全に棚に上げ、内心で殺生丸は愚痴をこぼした。
大体、機械というのは誰にでも使える便利な代物とやらではないのか。
どこをどういじっていいものやらさっぱり分からないし、挙句気がついたらこの惨事。
ゼストの大嘘つきめ。奴の説明と現実はまるで異なっている。
不機嫌そうに腕を組むと、地上本部の巨大な塔へと視線を落とした。
それにしても、つくづく大きなものだ。
以前クラナガンには足を運んでいるが、未だにこの塔の大きさには目を奪われる。
巨大な都市の中心に堂々とそびえ立つそれは、よく見れば空にかかる雲さえも突き抜けて登頂を晒していた。
こんな巨大な建築物、人間だろうと妖怪だろうと造ることはかなうまい。ここまで来れば、もはや山の高さだ。
そして、スカリエッティはあれを陥落させるという。
あれだけの大きさだ。中にいる魔導師の人数も相当なものだろう。
無論、殺生丸ならば、有象無象の人間どもなど相手にもならない。問題はあのナンバーズの連中だ。
果たしてあの機械仕掛けの小娘どもは、スカリエッティが言うように有能な連中なのか。今回の戦闘が見極め時だった。
やがて赤い日光も消えかかり、空が薄暗闇に染まり始めた頃、周囲に紫色の光がぽつぽつと点りだす。
六課隊舎へと向かっているルーテシアの発動する、遠隔召喚の魔法陣だ。
紫電の輝きを放つ円環から湧き出すのは、冷たい鉄の光沢を放つガジェットドローンの大軍勢。
のっぺりとした楕円形のT型、航空機のようなフォルムを有したU型、他の追随を許さぬ巨体を持ったV型。
歯車とモーターで動く異形の傀儡達が、続々と地上本部のバリアを破りにかかる。
徐々に周囲を包み始めたAMF。
特にV型の出力は高く、並の魔導師の攻撃など歯牙にもかけない。一部の警備達が尻尾を巻いて逃げ出すのが見えた。
そこへディエチのイノーメスカノンから発射される、駄目押しの長距離射撃。
たちまち警備に当たっていた部隊は、蜘蛛の子を散らすような大パニックに陥った。
その様子を、殺生丸が冷めた金色の瞳で見下ろす。
(人間共は、どこの世界でも何も変わらんらしい)
たとえ魔法の力を得たとしても、こうして襲い来る異形達にはまるで対処できていない。
ただただ、それ以上の力を持った者達に侵略され、蹂躙され、何もかも奪い尽くされるだけ。
眼下の光景とあの戦国の世に、一体何の違いがあるだろう。ただ単に妖怪が機械に変わっただけではないか。
元の世界に比べれば僅かに骨があると思っていたが、まるで拍子抜けだった。
これでは直接手を下さずとも、陥落するまでにはさほど時間もかからないだろう。
とはいえ、働かないというのはまずい。下手にスカリエッティの機嫌を損ねては、元の世界に帰れなくなるかもしれない。
内心で情けないと思いつつも、ようやく殺生丸は重い腰を上げ、巨大な塔へ向かって飛んでいった。
なるべく早く片付けるとしよう。そんな思考を反映してか、その飛行速度は速い。
みるみるうちに、地上本部の建物が近づいていく。
「――待て」
その足を、ぴしゃりと響き渡る声が止めた。
地上本部の方から、1つの人影が近づいてくる。見覚えのある姿だ。確認するまでもない。もはやそれほど距離はないのだから。
そして、思い出す。
そういえばそうだった。
何も骨のない連中ばかりではない。人間達の中にもある程度腕の立つ奴が、少なくとも1人は存在していた。
桜色のポニーテールが、すっかり日も落ちた宵闇の中で、月光を受けて美麗に漂う。
白と桃色の騎士甲冑を身に纏いし女剣士が、殺生丸の眼前に立ちはだかった。
『Protection.』
白銀のリボルバーナックルから発生した紫色の障壁が、迫り来るレーザーを受け止める。
魔力と熱量が衝突し、照明の落ちた室内にスパークが走った。
鳴り響くエンジン音。吹き上がる排気煙。咆哮するナックルスピナー。
ブリッツキャリバーが疾走し、襲撃者達を間合いに捉える。
「たぁっ!」
気合いと共に打ち込まれる鉄拳。容赦のない一撃がガジェットの装甲に風穴を開けた。
左手を引っ込める勢いでその身をひねり、追撃の回し蹴り。強烈なキックが、更に2機の敵を撃破する。
一瞬にして3機のT型を破壊したギンガは、次なる標的を求めてブリッツキャリバーを走らせた。
スバルらフォワード部隊と共に外周の警護に当たっていた彼女だったが、状況報告のためにこの北側エントランスに来ていたのである。
既に何人かの魔導師達がガジェットに倒されていた。魔力結合を阻害するAMFの前では、生半可な魔導師は手も足もでない。
数人グループで火力を結集して対応していたが、そもそも数も相手の方が多いのだ。
故に、まともに戦えるギンガが奮闘する他なかった。
(さっきの衝撃は、恐らく動力ブロックから……)
触手を伸ばすガジェットを叩き伏せながら、地下に向かって思いを馳せる。
少し前に体感した足元から突き上げるような振動は、地下で大規模な爆発が起こったことで発生したと考えて間違いないだろう。
それだけの大爆発が起こるとすれば、狙われたのは動力ブロックだ。更に言うならば、そこに敵がいるということ。
(早く片付けて地下に降りないと……!)
ギンガの思考を反映するように、攻め込んできた最後の機体の残骸が床を転がった。
ひとまずここは落ち着いた。これで動力ブロックへ向かうことができる。
地下へ続く階段へと、ギンガがブリッツキャリバーを向かわせようとした。
(――ギンガ!)
刹那、脳内に飛び込んでくる声。
やや低めの厳格な声音は、ライトニング分隊副隊長のものだ。
(シグナム副隊長!?)
(今北側上空だ。……そこで殺生丸を捕捉した)
(っ!?)
見開かれる緑の瞳。ブリッツキャリバーの足が止まる。
予想通り、あの人はここにも姿を現してきた。しかも北側ということは、ここからはそう離れていないことになる。
――今すぐにも会いたい。ここを飛び出してでも話をしたい。
そんな欲求が首をもたげた。
しかし、下の動力ブロックもある。今そちらに向かえるのは自分だけだ。 その役目を投げ出すわけにはいかない。
しかし、もしこの場を逃してしまったら、次はいつ姿を現すか分からない。
どうする。
自分はどちらを取ればいい。
(……安心しろ)
開いた間からその迷いを察したのか、シグナムが声をかける。
(必ずお前の前に引きずり出す)
だから安心しろ、と。
確固たる意志を込めた強い口調で、ギンガへと言い放った。
ギンガの瞳が再び大きく開かれる。しかし今は、その驚きの意味は違っていた。
故に、その目にはすぐに鋭さが戻る。
(……お願いします!)
自身も強い語調で念話を返すと、ブリッツキャリバーを階段に向かって加速させた。
――そうだ、自分は何を迷っていた。
夕べ決意したばかりではないか。戦ってでも、他の誰かに確保されても、と。
そして今はシグナムが向かってくれている。ならそれで十分だ。
自分は自分の務めを果たせばいい。それとも、そんなにシグナムが頼りないのか?
(今は……信じていくしかない!)
大丈夫だ。シグナムは強い。安心してこの場を任せることができる。
そして、その彼女が自分にこちらを任せてくれた。ならば自分のなすべきことは、その仕事をまっとうすること。
その決意に呼応し、ブリッツキャリバーが尚も加速する。
雷神の具足と白銀の拳を携え、ギンガは地下の闇へと飛び込んだ。
支援
腰に差した鞘から、音もなくレヴァンティンを抜刀する。
鏡のごとく磨き上げられた刀身が、黒天の夜空の中で白く煌いた。
シグナムは今一度目の前の殺生丸を、射抜くような眼光を以て見据えた。
自分が連れて帰ると言ったのだ。大見得を切った以上、それは果たさねばならない。
そう――この男は自分が倒さねばならない。
ベルカの騎士に一対一での負けはない。この約束を守れないようでは、守護騎士ヴォルケンリッターを束ねし烈火の将の名が廃る。
「殺生丸と言ったな」
毅然とした態度で、シグナムが確認する。殺生丸はそれに沈黙で応じた。
「こちらとしては、どうしてもお前を連れていかなければならなくてな」
言いながら、自らの愛刀を正眼に構える。
多くは語るまい。語る必要もない。全ては決着が着いてから自ずと理解できるだろう。
それに、この男との戦いには、実のところ、雑念を持ち込みたくはない。
フォワード陣をものの見事に蹴散らした力。ヴィータや自分と互角以上に戦い抜いた力。おまけに妖怪という、全く未知の存在ときた。
妖怪というのは、自分の剣にどう応えるのか。自分に向かってどう攻め込んでくるのか。
戦いたい。戦って試してみたい。
「ヴォルケンリッターが烈火の将、シグナム」
その名を名乗る。
誉れ高き守護騎士の名に、誇りと決意と命とを賭して。
「――参る」
瞬間、疾駆する。
先手を取ったのはシグナムだ。豊満な女の肢体がしなやかに躍動し、殺生丸目掛けて殺到。
振りかぶられた炎の魔剣が月光を浴び、眩く輝く白刃と化す。
「はぁぁっ!」
雄たけびと共に一閃。レヴァンティンの刀身が宵闇を切り裂き、白き軌跡を描き出した。
相対するは殺生丸の爪。人外の魔物がその身より繰り出す必殺の猛毒・毒華爪。
銀の剣と緑の爪。2つの閃光が接近し、交錯し、激突する。
火花舞い散る中、両者の刃が拮抗し、ぎりぎりと音を立てて互いを削り合う。
(毒華爪が効いていないだと……?)
未だ健在のレヴァンティンの姿を認め、殺生丸がその刀身を睨んだ。
彼の毒爪は、それこそ一撃必殺の威力を秘めていた。
いかなる生物もその猛威には敵わず、岩石や鋼鉄などの無機物さえも瞬時に溶解させる。
鉄砕牙などの強力な妖気を発するものにはその毒気が弾き飛ばされてしまうが、デバイスに有効なのは先日の戦闘で立証済だった。
それがどうだ。現に目の前の剣は全く無傷のまま、自分の爪とぶつかり合っている。
「その酸のデータは既に取ってある。対抗魔法のコーティングを施させてもらった」
刃の先で、にやりとシグナムが不敵に笑った。
バリアジャケットには、戦況に応じて防御特性を調整できる機能がある。
今回使用したのは、そのデバイス版だ。ヴィータからデータをもらい、技術者のシャーリーにこっそり調整してもらった、彼女だけの特注品。
毒で得物を破壊され続けていては、闘争を楽しむもへったくれもない。
「レヴァンティンを壊されてはかなわんからなっ!」
言いながら、更に力を込めてレヴァンティンを押し込む。
殺生丸の爪を弾くと、返す刀で追撃を仕掛けた。
「――それがどうした」
声と共に、標的の姿が消える。
「ッ!?」
否、高速で避けられたのだ。
背後に視線を飛ばせば、あの揺らめく銀の長髪。
叩き込まれる強烈なストレートを、咄嗟にレヴァンティンを突き出して防御。
直撃こそ免れたものの、急速な攻撃には対処しきれず、反動でその高度を大きく下げることになる。
「その程度、この殺生丸には何の障害にもならん」
夜風に煽られ、神秘的な輝きを放つ髪と毛皮がゆらゆらと揺れる。
悠然と宙に浮かび、背後に月明を受けた殺生丸が、冷たい金の瞳でシグナムを見下ろしていた。
毒華爪で壊せない剣を振るう程度では、彼を不利な状況に追い込むことなどできはしない。
毒が効かないのならば、力で押し切ればいい。純粋な力で、完膚なきまでに叩きのめすだけのこと。
「……面白い」
されどシグナムもまた、その口元を歪ませる。
それが合図であったかのように、両者の身体が加速した。
レヴァンティンと殺生丸の爪が、再度激突。そのまますれ違い、態勢を立て直し、またも標的目掛けて肉迫する。
これら全てが一瞬のうちの出来事。
白と桜色の2つの影が重なり、ぶつかり、交錯する。
殺生丸がシグナムを貫かんとすれば、その手刀が切り払われ。
シグナムが殺生丸を切り裂かんとすれば、その刃がかわされ。
高速の空中衝突は絶えることなく、十重二十重と繰り返されていった。
戦闘に紛れ、鋭く不気味な音が上がり始める。空気の摩擦によってかき鳴らされる風の唸りは、さながら2匹の魔物の雄たけびか。
『Schlangeform.』
レヴァンティンから発せられる、男性風の無機質な機械音声。
カートリッジの空薬莢が勢いよく飛び出し、排気口から盛大にスチームが立ち上る。
シグナムの携えし片刃の剣が、瞬時に両刃へと形状を変異させた。
「飛竜……一閃ッ!」
咆哮。
主の命令に従い、変形したレヴァンティンは尚もその形を変える。鋭利な鱗を纏った大蛇の姿へと。
炎の魔剣の刀身が、急激に伸びたのだ。
否、正確には、細かい節目に分離したのである。細い鎖で繋がったそれらが蛇腹状にしなり、さながら鞭のごとき伸縮を見せていた。
鞭には鞭だ。殺生丸もまた自身の爪に緑の妖気を収束させ、光の鞭を顕現させる。
互いに互いの敵を目掛け、両者の鞭が高速で襲い掛かった。
シュランゲフォルムがしなる。光の鞭がよじられる。
鋭利な糸は複雑に絡み合い、もつれ合い、互いを切り裂き合う。
光り輝く鱗を持った、2頭の大蛇の大乱闘だ。それぞれが宵闇の中で煌き、一種幻想的な雰囲気さえも演出する。
――強い。
両者の脳裏に浮かぶ共通の思考。
この相手は強い。自分の動きに完全についてきている。ほぼ完全に拮抗した、互角の力のぶつかり合いだ。
(あの犬夜叉並にはやるようだ)
(テスタロッサにも勝るとも劣らん技量だな)
それぞれがそれぞれに宿敵の姿を脳裏に浮かべ、対象の危険性を再認識。
しかもまだ、互いに本当の力をを隠している。
片や未だ己の刃を腰に預け、片や内に秘めた力を抑え込んでいる。
桜色のポニーテールを優美に揺らす騎士は、魔力限定解除の選択肢を脳裏に浮かべ。
「抜かせたことを光栄に思うがいい」
銀色のロングヘアーを華麗に翻す妖怪は、遂に封じられた刀へと手をかけた。
(来る!)
シグナムの表情に緊張が走る。
手加減も何もない、殺生丸の全力を見届けること。あの廃棄区画から望み続けた瞬間の到来だ。
「これが私の剣……」
鋭い爪を生やした手が柄を握り、それすらも遥かに凌駕する切れ味が、ゆっくりと鞘から解放される。
そう、これこそが今の殺生丸の刀。
父への妄執を断ち切り、自らの内から抜き放たれた、他ならぬ殺生丸自身の力。
その“牙”の名は――
「――爆砕牙!」
投下終了。
心なしか、最近ギン姉に侵略されてるような気がする……本当はルールーがメインヒロインだったはずなんだぜ?
次回は皆様お待ちかね(?)爆砕牙のお披露目となります。
GJ!!です。
機械オンチでも仕方ないさ、戦国生まれだものw
破壊エネルギーが残り続けて破壊する爆砕牙の攻撃をどう対処するのか楽しみです。
最近…なの魂の人を見かけないと
思わないか…?
GJ!!
シグナム大丈夫か!?ww
ところで以前からちょこちょこ書いていたのがとりあえず形になったんで、
投下してもよろしいでしょうか?
クロス先は電撃文庫のMiissingです。
>>558 .∧__,,∧
(´・ω・`)
(つ i と)
`u―u´
∧__,,∧
_ (ω・´ )
i 三ニ ☆ __,( )つ
 ̄ `ー―‐u'
>>558 支援します。ただ、iが一個多いですよ。
「Missing」
>>558 次の作品の投下は前の作品が投下されてから30分以上後ってローカルルールがあってな
>>560 そうでしたw
っていうかそういえば、500KB以上は書き込めないんでしたっけ?
だったらこっちには無理ですね。
ええと、大丈夫なのかな?
そ、それじゃあ投下します。
魔法少女リリカルなのはMissing
プロローグ
ギンガ・ナカジマはその時、思った以上に時間の掛かった書類仕事に、ようや
く別れを告げたところだった。
二つの月が浮かぶ夜空を窓から眺めながら、ギンガは自室へ向かう廊下を歩く。
静かな暗い廊下に、ギンガの足音だけが響いていた。
(…スバル、元気でやってるかな…?)
疲労を感じさせる、ぼんやりとした頭でそんなことを考えた。
六課にスカウトされたり、その為の手続きがあったりや、最近では訓練が忙しかったりで、最後に会ったのは前回の検査≠フ時だ。それほど時間
経ってないはずだが、もう随分と声を聞いてないような気がする。
(まだまだね、私も)
スバルだってもう子供ではないのだ。ちょっと離れたところにいるからといって心配していては、お互いに心が休まらないだろうに。
(スバルと前に会った時はどんな話をしたっけ?)
思考の延長に、なんとなくそんなことを思った。
あの時は確か、最近怖い噂を聞き、ティアナが微妙に怖がっていて可愛いというものだったか。
(ふふふ、ティアナも大変だったでしょうね)
自分とも知り合いの、妹の親友を思い、ギンガは苦笑する。
なんだかんだ言いながらも、ティアナはスバルとのコンビを続けてくれている。あまり詳しくはないが、最近よく聞くツンデレとはああいう類の人間なのだと思う。
(ちょっと妬けるわね)
こっちは長いこと一人で動く捜査官だ。足を引っ張られるのは御免だが、背中を任せられるパートナーの存在は少し羨ましいと思う。
(そういえば…)
ようやく自室が見えて来た時、不意にギンガは思った。
(スバルが話してた噂って、どんな話だったっけ?)
そう思った瞬間、
pppppppppp!
「っ!?」
ポケットに入れていた携帯電話の呼び出し音が、しんとしていた廊下に響き渡った。
「……あはは」
誰も見ていなかったのは分かっていたが、不覚にも驚いてしまった自分の醜態を誤魔化すように、ギンガは誰にでもなく笑う。
そして携帯を取り出したギンガの眼に、その液晶画面は映された。
『***-****-****』
「…………」
pppppppppp!
それを見て思い出した。
『ギン姉、こんな噂知ってる? こないだ訓練生の時の同期に会った時に聞いたんだけどさ』
『うん? どんな噂?』
『怪談とか都市伝説みたいな感じなんだけど、ティアナが笑い飛ばしながら気にしてるのが面白くて』
『ふーん?』
『あのね』
スバルはあの時、こう言っていたのではなかったか?。
「…見知らぬ番号から携帯にかかってきたら、出てはいけない。それはもしかすると死んだ女の子の携帯番号かもしれないからだ。その子は死んだ後も亡霊となって電話をかけ、その電話に出ると、出る……!」
非通知と表示された携帯を見ながら、スバルの言葉をギンガは呟く。
pppppppppp!
ギンガの心中など知らず、携帯はひたすらに電子音を繰り返していた。
(私は何を考えてるの…?)
あんな話を思い出して怯えているなど、ティアナのことを笑えない。
出ればいい。そうすれば数分後にはさっきのように、自分の醜態を笑うことが出来る。
だがなんとなくギンガは感じていた。
(……この電話は、本物だ…!)
pppppppppp!
それなら出なければいい。例え普通の電話だったとしても、どこの誰が何の用
事か知らないが、こんな時刻にかけてくるのは出るなと言っているようなものだ。
(…そう、それでいいのよ…)
pppppppppp!
そう決めて、ギンガはとりあえずこの音を止めようと思った。
その時だった。
pppp…。
「………あれ…?」
唐突に、さっきまで鳴り響いていた携帯の呼び出し音が止んだ。
画面の表示は、『不在着信』へと変わっていた。
「……何よ、もう…」
散々驚かしておいて、随分とあっさりしている。これでは、私はただのビビりではないか。
結局携帯を持って立ち尽くしていただけの自分に呆れながらも、そんなことを思って虚勢を張る。
溜め息を吐いて、ギンガは携帯を画面を閉じ、
悪寒を…感じた。
支援
けどこれから風呂に入るから誰か任せた
その黄金の支援を受け継ぐぞッ!!支援ッ!!
「………あれ…?」
携帯を持っている左手が、動かなかった。
否、左手だけではない。
夜の暗闇とは全く別の闇が広がるのを感じながら、右手も右足も左足も、その他全ての部位も、ギンガの思い通りに動かなかった。
「………なっ!?」
思わず驚愕の呻きが零れる。
突然自分の身に起きた意味不明の事態と、
(ちょっと待って!)
目の前の現実に、ギンガは意味のある思考さえ出来ずにいた。
左手が、動いている。
勿論ギンガが動かしている訳がない。
何故ならその左手は、閉じたはずの携帯を再度開けようとしているのだから。
「や、止めてよ、何で…!?」
必死にその手を止めようとするが、そもそも身体に力が入らなかった。いかに身体の多くが機械で出来ている彼女も、これではどうすることも出来なかった。
「無駄なことだ」
(っ!?)
突如発生した背後の気配から、そんな声が聞こえた。
「君の願いでは、彼女には敵わない」
男の声が、身体の奥底にまで染み込んでいく。
ギンガは背後に立っているであろうその男が、自分の正面に現れなかったことに感謝した。
声だけで十分に分かる。
(……コレは、化物だ…っ!?)
致死の毒薬を思わせる、
禁断の呪文を思わせる、
死への誘惑を思わせる、
そんな、甘い声。
その声の主を前にして、ギンガは自分が正気でいられる自信はなかった。
左手は、既に不在着信の元に発信を始めていた。
ギンガにそれを止める手段はなく、見ているだけしか出来ない。
発信中。
発信中。
発信中。
発信中。
発信中。
発信中。
そして……繋がった。
支援
その途端、明らかに空気が変わるのをギンガは感じた。
それは背後の男とはまた違う、純粋で無邪気で、それ故に狂った雰囲気を発する、そんな空気だった。
そして、
「…あ……っ!?」
目の前に、ソレは立っていた。
首筋から大量の血を流す少女が、微笑みながら立っていた。
「あなた……その傷…!」
動けない身体のまま、ギンガは目を見開いた。
誰がどう見ても、少女の傷は致命傷だった。そうでなくとも間違いなく重傷で、立っていることなど…ましてや笑っていることなど、出来る訳がなかった。
少女はギンガの言葉に答えず、ゆっくりと近づいて来る。
「っ!?」
反射的に逃げようとして、身動きの取れない自身に内心で舌打ちし、焦る。
理解不能の存在に迫られて、恐怖を感じない訳がない。
そして、
「不安に思うことはない」
背後から聞こえる男の声が、ギンガの頭に響いてきた。
「君の他人とは違う身体をもってすれば、おそらく肉体の全てを持っていかれることはないだろう」
少女が手を伸ばして、ギンガに触れようとする。
ギンガにそれを拒絶する手段は、ない。
「私を恐怖するのは正しい。それは生物であるなら当然のことだ。だがそれでも、私の言葉を信じないというのは間違いだ」
男が言う。しかし半ば強制的に認識させられる声すらも、ギンガには聞く余裕がなかった。
「何故なら私は願望を叶えるもの≠ネのだから。君が知りたいと思ったことに私が答えたということは、それは真実ということなのだよ」
少女の手が、ギンガの頬に、触れた。
「いやああああああぁぁ!?」
ギンガは悲鳴を上げて、更に迫る少女の顔を見た。
自分と同じ年頃だろう少女。
どこまでも無邪気で、そして綺麗な笑みを浮かべて、溶け込むようにギンガの中に入りながら、その風貌に相応しい、可愛らしい声で、少女…十叶詠子は言った。
「これからよろしくね? *****さん」
詠子が自分のことを何と呼んだのか、ギンガには分からなかった。
ただその名前は、今の自分の生き方の本質を突いているような、そんな印象を感じたのは確かだった。
そしてその言葉を最後に、ギンガの意識は沈んでいった。
支援
支援
まあこんな感じで、投下終了です。
Missingはホントに好きな作品なんで、地雷にならないよう頑張ります。
……反応こわw
支援
GJ!!です。
クロス作品を知らないですが、楽しめましたw
ギンガに何が起きたのか楽しみです。
Missing GJ!
魔王陛下の登場を楽しみにしています。
GJ!
原作は未見ですが楽しめました。
ホラー系なのかな?
メルヘンなメンヘルか
>>577 メルヘン。
普通の人が見たら「これホラーorグロだろ」と言いそうだけれどもメルヘン。
あ、コテ忘れてた。
今からでもいいならこれでお願いします。
メル・・・ヘン?
首から血を吹き出した少女が迫ってくるメルヘン・・・。
狂気のニオイがするぜ・・。
まあ、昔のグリム童話なんかそうじゃないか>ホラーかグロ
原作未読だけど。
>>584 次シリーズで正にそれをやらかした件について。
「ああ、この人が異能力バトルを書こうとするとこうなるのか……」って思った。
電撃文庫だとよくあるパターンだがw
原作は『痛み』の描写が異常に上手い。
>原作は『痛み』の描写が異常に上手い
カッターで手首を切る所がすごすぎ、読んでる俺の手首が痛くなったよマジで。
あんな経験は後にも先にもこれだけだよ。
これは原作終了後か
まああの魔女なら平気で異世界渡れそうだからな
イヤでも想像させられる書き方なんだよな。
俺は白線の上の子供の話が一番怖かった。
Missingだと鏡の破片を眼に詰め込むシーン、断章だと泡で歯茎から体が溶けていくシーン、夜魔だとぬいぐるみがトラウマだよ俺。
『着信アリ』かと思ったけど、違うのか…
ともかくGJ!
>リリカル殺生丸
先生ー、正直この引き方は卑怯だと思いまーす。
機械オンチの殺生丸にちゃんと時代背景の伏線が効いててニヤニヤ
しかし、個人的にこの作品のヒロインはアギトだと思う。頑張って、妖精さん!w
今回は締めの殺生丸VSシグナムも派手で素敵な見所でしたけど、襲撃の内容を分かりやすく補足してくれてるところが良かったです。
痒い所に手が届いてますね。文章表現の利点ですな。
そして、ついに抜かれた殺生丸の刀。
バトル大好きなシグナム相手にどんな戦闘を繰り広げるのか、楽しみですw
何だよ、そのトラウマの宝庫みたいな描写はw
ここではやるなよ!?絶対にやるなよ!?
ダチョウスタイルはやってくれという証www
あんまりすごいと避難所行きか?
と、空気を読まずに言ってみる。
Missingとはまたすごいのをクロス先に選んだなぁ…
これから読む時は先に便所行かないとなwwwww
このつかみは…。ギン姉…。
スプーンが刺さらないことを祈ります。
>>リリカル殺生丸さん
GJ,いつも楽しまして読ませてもらってます。次回、楽しみに待ってます。
>>missing さん
また…これは濃いのとクロスっすね^^; 続き楽しみにしてます。
つか、mixxing の鏡の波線を眼に詰め込むシーン→デゥラララ!を思い出す^^
やぁ。お久しぶりです。
ようやく『運命の探求』後編Bパート、完成しました。
というワケで、今夜十時半頃に投下予約してもよろしいでしょうか?
俺は貴方を待っていた!!
600 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/23(水) 20:10:58 ID:7MOJBXH+
まってましたぁぁっぁぁぁぁっぁ
支援しますよw
容量は大丈夫なんでしょうか?
あ、ほんとだ。容量がギリギリ。
うーん……投下大丈夫なのだろうか……。
投下するファイルの容量を確認してみてはいかがですか?
メモ帳だと36.8KBと表示されました。
ギリギリオーバーする……かな?
全スレは501KBで過去ログ行きになってます。
そして今469KBだから次スレだな
訂正。全スレ→前スレ。
これフライングして建てたらマナー違反かね?
ちょっと早いけども新スレ建ててきます
なんとも微妙な……。
うぅむ、まだ475KBには達してないし……フライングしたらマナー違反になるかもしれません。
どうするべきか。
いいんじゃないか?
>>611 どうでしょう?
ただこのままだと10時30分に投下できるか怪しいです。
一度475KBにしなければ。
610さんが新スレ立ててくれるみたいです。
乙!
まて、板違わないか?
なんか違うスレの過去ログに飛びません?
>漫画・小説等 [アニキャラ個別] “【リリカルなのは】ユーノ司書長はエロカワイイ40【無限書庫】”
おまwwww
貴様あそこの住人かッ!!!
IDがRhだ。
スルーされたところを見ると次から個別板に立てることになってたのか……知らんかった;
結局板誤爆してるんじゃねーか!
>>623 間違えてしまったorz
削除依頼だした方がいいですかね
削除依頼出してきました
申し訳ありません
今度こそ乙w
さて埋めるか
-─‐- 、. .. -─;-
-=ニ´ ̄ ヽ'´ ∠´__
,. '"´ `>
/  ̄`ヽ.
/ ヽ、 ヽ
i ∧ \ヽ!
. | , /| /:::::l ト、 . ヽ
| /|イ、l_;;:::::::|ノ_,.ゝ. ト、 ト、l ククク・・・・・・・・・・
| ,イ/`''‐、_,リ:::::::;リ,. -ヘト | ヽ! `
| , ‐、 r'==。===;;;::::::(=。==lヽ! いいのかよ・・・・!
| { f、|.|::::`ー--‐' ::::\-‐' l
,' ! ト||::::::u u r __::::::\'l| オレが行くとなったら・・・・・・
. / `ー'ト、::::. ー----------;ヲ│ 遊びじゃなくなる・・・・・・!
/ /| | :\:::.` ー-----‐'´ / !
,∠-‐/ |. | :::\:::. ー--‐ /!ヽ.ヽ 埋めさせてもらうぜっ・・・・・・!
二 -‐''7 | | ::::\::. , ' | ト、\ 限界(1000)を
. / |. | ::::`‐、/ レ ト、`''‐ 超えてっ・・・・・・!
. ,' ト. | :::| イリ :! `''‐
i | ヽゝ |lW´' :l
. | ,. -‐''^ヽ|`ヽ、..__ノ|/⌒`‐、. l
レ''´ |;';';';';';';';';';';';'| `‐、!
○ |';';';';';';';';';';';'| ==
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_<⌒ヽミヽ ヾ !'⌒≧_
,Z´r;=-‐- 、ヾ 〃′≦
7,"/ __‐ 、`ー-'⌒ヾ.7
! l ー‐- 、ヽ._`ー'´, u ! r'⌒
.l !!L、u __\  ̄ 〆"T ( 制
l.r‐、ヽ 、‐。‐-、V/∠==、| ) 裁
,' |.l´! | u`ミ≡7@ )゚=彡 ! ( っ
/,' l.l_|⊥%ニニソ(@ *; )ー-*| ) :
,/〃',ゝ|/>rーrーrゞr<二二フ ∠、 !
∠ -:/ ト ヒ'土土土十┼┼ヲ;! `ー-‐'´
 ̄:::l:::::::|、 !lヽ~U ~ __ ̄ ̄.ノl
::::::::l:::::::| \. ヽ.ll ヽ、 ___'/l/`iー- 今
::::::::l::::::::ト、. \ \. ll ll ll ll /:::::l::::::: やる気なく「1000まで行かないよね」と
:::::::::l::::::::| \ \ `ヽ、 ll ll/!:::::::!:::::: 言ったおまえ………
::::::::::l::::::::| \ \ /`ヽ' |:::::::l:::::::: 制裁……!
ぜったいっまけーるもんかーげんかいーこーえてー
あいと ゆーきだけが とーもだちさー
まーる さんかく しかーくー♪
あやしくひーかーるー♪
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゙''ー---‐'" ゙''ー---‐'" ゙''ー---‐'" ゙''ー---‐'" ゙''ー---‐'" ゙''ー---‐'
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_ 銅 † |  ̄ |
木 像_ ∧ 〈| ‖ |〉
_ヤ_林 / /  ̄─/ ヽ_ 卜二三二イ
=メ森メ/ / / 个ヽ  ̄∧| ‖ |
ム森∧/ / 卜__彳 / / `ヽ、_ │
_林/ ∨ ∧ 卜= = 彳/ / `ヽ、_
木个 个 仁] ∧│ ̄ |/ / /\ `ヽ、_ ガ
林│ │ 仁]│[ [│/ 介/ /\ /\
森个 ̄─ _ ∧__∧ ∧ 介/ /\ / ∧ ∧
ミ森|个]│∧ ─卜== 彳 仁] ∧ 介/ / / ∨ ヽ
森ミ|卜]│卩│∧│ 二]`ヽ、_ 仁] ∧ ∧ / / ヽ ヽ
从个─ _ │卩│ ‖] 卜 `ヽ、 仁] / ∨// _=彳卜=彳
森ミ|个]│∧─_│ ] 卜│`ヽ、_/ ∨ ||_‖│‖│ ‖/\
ミ木|卜]│卩│∧卜= 彳 卜 │卜 卜=彳 彳″ ]=彳 <__>
森个─ _ │卩│ 二]`ヽ、_< ̄`ヽ、_│‖│ _,-'´]‖│ ∧ |_ ─ 」
林川、 │∧─_│ ‖] 卜│ `ヽ、__卜=彳,- '´ 仆]=彳\ 个 、_,- <_> |≧t≦|
木 林ム│卩│∧│ ]`ヽ、│ ∧ │‖│仆 _,- '´]`ヽ、_ \个 、_,- '´ 个卜=彳 _彳 卜_
森森林木卜人卩卜= 彳 │/│\_卜=彳,- '´ 仆 ] `'<│/ヽ个 /│ │ <_<_ >_>
从=森木林森/从│ 二]`ヽ、│[\_,-'´]`ヽ、_│仆 _,- <`ヽ、_│ / ヽ / │ │ │ `ヽ、_,- '´ │
森人木森森木森∧ ‖] 卜│[ │/__><_'´│\ \介`ヽ、| ‖ ヽ__/ `ヽ、_ \∧ [ ∧/
メ森木林森木メ森木ム<]`ヽ、│[\∧/ / / `ヽ、_ <> 、 介`ヽ、_ │_ `ヽ、_/ >│`ヽ、[,- '´ |
森森个森火木林森林木<丶ル[ 卜[\_/ / ∧_>、\ \`ヽ、_介`ヽ、_`'<_│ │ │‖ │ ‖|
从森=森卜ヤ林森森木森林=从[\ [\幵`ヽ、_ / ├ 彳 <>卜_`ヽ、_介`ヽ、_`ヽ、│ │ │ |
林森林木林从サ森森木森森林[ 卜[∧ ̄`ヽ、_`'[ 瓜│ 卜、 \ \ 卜_`ヽ、_介`ヽ、_`ヽ」 ‖│ ‖|
メ森森个森E木ル森林人森=森[\ [\幵 ‖ `'[,- '´├ 彳 `ヽ、 <>‖∧卜_`ヽ、_介`ヽ」 │ |
森木冫林森森人森サ森林林森仁卜[∧ ̄`ヽ、_ [ 瓜│ │  ̄ `ヽ、‖∧卜_`ヽ、_│ ‖│ ‖|
林森=森从森林木森木森森=森≧=,[\幵 ‖ `'[,- '´├ 彳 <> `ヽ、‖∧卜_│ │ ><
森木火木森森从火木林森林木森彡从茘三=, [ 瓜_,- '´ <> <> `ヽ、‖ 卜、 |//`ヽ、_>、_ _/\_
/卜林木森森林木冫木森从森木森/林ヤ木\[≦< <> <> │_>'´│ // / /≦ヽ`ヽ、 卜=サ彳
木森林木森林彳木林メ森森リ森火木森森木从メ林メ≧三=,_ <>_ _ __,-'´│ ││ // / / 仆 ]_>]`ヽ、│ ̄ |
リ林森森从リメ森个林森从林森林木林森木森木森从森木=三=,_,- '´/<_>'´__,-'´│ │ <`ヽ、_││ 仆 介]_,-'´│! |
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森=森从森人メ火林林森メ木森森林火木林森木森木彡='´ /<_>/彳′ ] │ _/\│\ [ 介_,- '´ │仆 ル│! |
森森森森火木森木林森冫メ从メ森从木森个森木サ‖ _/ /_/ │ ]_/卜=サ彳 \[,-彳 _二、│ ル_,-┤ |
=森森森彳从林森从森彳木森森林人林森卜木/木∧<_>/ム林 │_,- '´ [\│ ̄ │_,- '´ │/彳‖才'´ _,-∧!_彡
木森森森从林森森林冫森个森林木メ森林メ木森森从森ヤ_′从驫ル_,- '´ │ │! │ 仆 │‖│‖才'´
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;;|,-r‐'y';_rllr======V´)、_}ーv'´ヽil~シ'_ノ`i~,k'_~T"v~「^j,´)、_}ーv'ケ^‐スj〜シ'_ノ`iへヽ}v'ケ^〜v、
I;l; _i; ,.t`i、;ll;r======k^〜v__ゝ;く,i|k'_~T"v~「^j,´)、_}~ス、く,ノ_,ク~-{`y´K´ナv^ーヌ_{ソ\ヽく,ノ~i´ナ,、
iIネ, Y,k';:i-;ll;r=====,=i、ノ~i´_{ `y;:.l|jント、~i_イ^j_Y~i´ゝ‐`メ_ヌ~i´K´y'ト-ナv^ーヽ~‐`ー^‐゛゛'゛'';"‐'~
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642 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/23(水) 23:25:16 ID:NbckL88G
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く ヽ{ハ:::マ:个ーtz‐r-r=彳´「|:::厂  ̄`\ す
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〜完〜
__fIIIユ___ ______
r'ミi `iミl / ヽ
|ミ} jニニコ iニニ!ミ} / 牛 き ぼ l
i~^シ fエ:エi fエエ)Fi ! 股 れ く l
ヽr > V ! い は l
l`ヽ―!ー―‐r―;l <. な l
__,.r-‐人 : `ー―' :ノ_ ヽ /
ノ:::::::!::::::\゙ー‐-- ̄--‐'"ハ ~^i \_ _ノ
::::ヽ::::!:::::::::::\::::\ /::::/:::::\  ̄ ̄ ̄ ̄
ヾV::/::::::::::::::::::\:::::У::::/::::::::::::::::入
500なら次スレでシャマルが活躍するであろう
500なら作品を書いてみるかも、とか言ってみる
、、)iリ,._,
ヽミミ川彡;'
ー彡|'光'|ミミ‐ レスが欲しくば作れ!!!
, --/ハロハ\-- 、
/::::::::::::\ーr‐/::::::::::::ヽ 朝も昼も夜もなく作れッッッッ
ハ.二.7::::::::ヽ/::::::::::ぐ二.ハ
ハ / .人:::::::::::::::::::::::::人 } ハ、 食前食後にSSを作れッッ
ノ‐〈_ノ ヽ::::::::::::::::ノ 八. !|
/ ソ| r'::::::::::::ヽ l、i : | 飽くまで作れッッ
,| / ノ /:::::::::::::::::::l、 |.i イ
| /_ /:::::::::::::::::::::::::l、 |_ | 飽き果てるまで作れッッ
〈 '゙,rイ ,|::::::::::::::::::::::::::::::| 厶_, 〉
`‐'" |::::::::::::::::::::::::::::::::|. └''" 作って作って作り尽くせッッ
|::::::::::::::::!::::::::::::::::::|
,|::::::::::::::::||:::::::::::::::::::| 自己を高めろ 職人として
|::::::::::::::::/ ヽ:::::::::::::::::|
|::::::::::::::::| |:::::::::::::::::| 飽き果てるまで作りつつも
|::::::::::::::::ノ |:::::::::::::::::|
,l:::::::::::::::| |::::::::::::::::| 「足りぬ」職人であれ!!!
j:::::::::::::〈 ヽ::::::::::::::\
く::::::::::/ L:::::::::::/
r‐''"⌒〈 〉 ⌒`ー 、