【書き手の方々ヘ】
・作品投下時はコテトリ推奨。トリップは「名前#任意の文字列」で付きます。
・レスは60行、1行につき全角128文字まで。
・一度に書き込めるのは4096Byts、全角だと2048文字分。
・専用ブラウザなら文字数、行数表示機能付きです。推奨。
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・投下時以外のコテトリでの発言は自己責任で、当局は一切の関与を致しません
【読み手の方々ヘ】
・リアルタイム投下に遭遇したら、支援レスで援護しよう。
・投下直後以外の感想は感想・雑談スレ、もしくはまとめwikiのweb拍手へどうぞ。
・気に入らない作品・職人はスルーしよう。そのためのNG機能です。
・度を過ぎた展開予測・要望レスは控えましょう。
・過度の本編叩きはご法度なの。口で言って分からない人は悪魔らしいやり方で分かってもらうの。
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議論が起こった際には必ず誘導があり、意見がまとまったらその旨の告知があるので、
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盗作者は言わずもがな、盗作を助長・許容する類の発言もまた、断固としてこれを禁じます。
【警告】
盗作を筆頭とする種々の問題行動により、「スーパーロボット大戦X ◆ByQOpSwBoI」は
完全追放処分がスレの総意で確定しています。レス返しなど、決して相手をしてはいけません!
まさに乙
さらにモツ
乙
安西先生……覚悟の続きが読みたいです
>>1乙です!
そして、ちょっとスレ数が多いので。
途中リセットもかねて、45分から投下してもよろしいでしょうか?
アンリミテッドエンドライン、スーパーナンバーズ(の一名)タイムです!
ナンバーズ好きとしてはこりゃ支援しない訳にはまかりなりませんな。
それと1乙!
聖域決戦の火蓋は切って落とされた乙
乙津
ええっと、そろそろ投下してもよろしいでしょうか?
20KBもの相変わらずクソ長い話ですが、その分力を入れました。
世にも珍しいスーパーナンバーズタイムですどうぞ支援をよろしくお願いします。
ちょっとPCの調子が悪いので投下速度が遅いですが、最後までよろしくお願いします。
反応がないけれど、時間ですので投下します。
支援よろしくお願いします。
走る。
走る。
走る。
息を切らせて、足を動かして、手を伸ばして。
彼は、彼女は、彼らは走る。
見えない先へ。
真っ白な道を。
深い深い蒼い空の下と深い深い青の海へと目掛けて。
ただただ狂ったように走って、走って、走り抜いて――
跳んで、落ちた。
笑いながら、死ぬために。
――風雨に晒された記念碑に刻まれた文より
「――見事」
甲高い声が響く。
それは笑い声。楽しげな、楽しそうな、軽やかな声。
「とでもいうべきか」
笑い声を上げるのはただ一人の男。
手を組み、足を組み、無造作にモニターに映し出される光景を見て、その男は嗤う。
黄金色の瞳を輝かせ、紫紺の髪を揺らして、ギラギラと光を押し込んだような強い意志を篭めた瞳で彼は映像を見る。
そこに映るのは疾走するリニアレール。
そして、その上で戦う少年少女たち。
奇跡を行使し、男が生み出した鋼鉄の機械たちを薙ぎ倒し、一人の少女が拳を振り上げ、一人の少女が弾丸を吐き散らし、
一人の少女が叫びながら鎖を操り、一人の少年が血潮を撒き散らしながら槍を振るう。
それはまるで演じられた演劇のように、勇猛果敢な少女たちが悪を撃ち滅ぼす映像。
「なるほどなるほど、素晴らしい」
されど。
現実は違う。
物語は、現実とは異なる結末を見せる。
「安心しただろう」
血を振りまきながら、ガジェットを貫く少年の姿に賛美の笑みを浮かべる。
「君たちは勝利したのだろう」
それは真摯な声。
嘲るような文面とは裏腹に、それは相手を認める賞賛の言葉。
一片の嘲りもなく、一片の嘲笑もなく、それは敬意を持った意思。
「けれども――それでは解決しないのだよ」
彼はゆっくりと手を下ろす。
鍵盤状に作り上げられたキーボードに指を当てて、彼は奏で始める。
戦いの。
さらなる戦いの始まりを。
「さあ、始めたまえ。――≪破壊する突撃者(ブレイク・ランナー)≫!」
彼は奏で上げる。
誰にも聞こえぬアンコールの歓声に答えて。
【Anrimited・EndLine/SIDE 2−6】
正しくエリオは一人の騎士だった支援
時間は僅かに遡る。
一人の少年が、時を縮めたかのような刺突の果てに無骨な金属塊を破壊した数秒後から。
「はぁ、はぁ、はぁ――」
槍を、己の刃であるストラーダを突き出して構えていた少年――エリオが、ガクリと膝を突いた。
「エリオくんっ!」
その様子に、呆然と見つめていたキャロが動く。
幼い彼の体が膝を突き、前のめりに倒れ付すよりも早くその体にしがみ付いた。
「エリオくん! エリオくんっ! 大丈夫っ!?」
しがみ付いたキャロの小さな手が赤く染まる。
同じぐらいの体躯の少年を支えようとしがみ付いたバリアジャケットに、エリオの手足が流れる血が絡みついて、
その清楚だった衣装を紅く汚してしまう。
生温い温度、べたついた感触、鼻を突く決してなれたくない生臭い香り。
思わず手を離したくなるような気色悪い感触、だけれどもキャロはエリオを抱きしめる。
戦うことが出来なかった己の罪を抱くように。
そして、同時に魔力術式を展開。微小だけれども、傷口を塞ぐべくヒーリングを行う。
「エリオ、くんっ……」
「……大丈夫、だから」
「え?」
蚊が鳴くような声に返ってくる返事があった。
それに視線を上げれば、そこには想像を絶するであろう苦痛を耐えているはずのエリオの笑顔が合った。
「この程度じゃ、死なないよ。それよりもキャロは大丈夫? せっかくのバリアジャケットを汚しちゃってごめんね」
「そん、な。そんなことどうでもいいのに!」
心配そうな声。
困ったような表情。
それを発して、それを貼り付けて、エリオはいつものように振舞う。
それがキャロには苦しかった。それがキャロには恐ろしかった。
まるで、まるで、目の前にいる確かな少年が、自分とはまったく違う人間のように感じてしまって。
その時だった。
「――エリオッ!」
「キャロ!? 二人とも大丈夫!」
蒼い髪と赤毛の二人の少女が飛び込んできたのは。
「スバルさん、ティアナさん!」
目を潤ませながらキャロが顔を上げると、スバルとティアナはエリオの容態に血の気を引きながらも、ほっと息を吐いた。
「よかった。二人共一応無事ね」
「エリオは早く手当てしないといけないけど、こっちでガジェットは全滅させたからもう敵は居ないはずだよ」
ニッコリと力強い笑みを浮かべた二人の様子に、キャロは僅かに顔を綻ばせて……同時に姿の見えないリインに気がついた。
「あ、あの、リインさんは?」
「大丈夫。今、列車のコントロールを制御しているはずだから」
そう告げるスバルの言葉にキャロが周りを見てみると、心なしか列車の速度が減速しているような気がした。
「列車の損傷が酷いから強いブレーキはかけられないけど、そんな時間は掛からずに止まるはずよ。そしたら、
ヴァイス陸曹のヘリに収容されて任務完了ね」
クルクルとアンカーガンの銃身を回して、ティアナが普段は浮かべない安堵した笑みを浮かべる。
「ちょっと大変だったけど、無事初任務成功ね。エリオには散々みたいだったけど」
「……いえ、大丈夫ですから」
「大丈夫じゃないよ! すぐにシャマル先生に見てもらうからね!!」
頬を膨らませて、キャロの抱きしめられているエリオを叱るスバル。
ティアナはデバイスを弄りながら、ロングアーチへの通信を開こうとし。
エリオは笑みを浮かべながら、血まみれの手でキャロの手を優しく外そうとして。
キャロはそんなエリオに心配そうな顔を浮かべながら、声をかけてくるフリードに目を向けた。
その瞬間だった。
『熱源反応が突如出現!! 進路――リニアレールに向かってます!」
耳に付けたイヤホンからロングアーチの慌てた声が響いたのは。
そして――トスンと音がした。
「え?」
微細な音に気が付く、ティアナとエリオ。
それは列車の屋根の縁に打ち込まれた細い細いワイヤーの楔。
――どこから? 理解が追いつかず、思考のみが先立って言葉が浮かんだ。
そうして、彼女達の前に舞い降りる。
「YAHAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAッッッ!!!」
それは唐突だった。
それは快晴の空に降り注ぐ雨のように唐突だった。
歓声を上げて、それは四人の前に着地する。
轟音。
破砕。
ガリガリと着地の衝撃を回転と鋭いエッジのブレーキによって、生々しい傷跡を描きながら、それは、それは彼女達の前に現れた。
「さあて」
それは歪な鋼鉄で覆われた左手を持っていた。
それは無骨なガントレットで覆われた右手を持っていた。
上半身にはタクティカルベストと呼ばれる防弾ベストも兼ねたベストを付けて、その下には動きを制限しないスパッツを付けた――少女。
「始めようか」
そう、それは少女だった。
目に付けたゴーグルで顔は隠れていても、そのタクティカルベストに押さえ込まれた確かな乳房は、しなやかな肉体は、
紛れもない少女の体躯。
そして、彼女は告げる。
「追加ラウンドの始まりだ!!」
突如舞い降りた、鋼の獣は少女の笑みを持って咆哮を上げた。
支援
その報告は、空を舞うなのはの耳にも届いていた。
「増援?! 一体どこから!!」
『それが、何らかの隠蔽工作をしていたようで発見が遅れました! 反応は二つで、一つが列車に突入してます!』
「っ! 了解!!」
声を上げながら、なのはは空を蹴り飛ばす。
たった今まで居た虚空を貫く閃光を避けて、彼女は周囲に旋回させていた光球を振りぬく。
カートリッジロード。
薬莢が排出され、華麗なる歌声が空に響き立つ。
「アクセルッ!」
それは円を描くかのように。
それは空に絵筆を走らせるかのように。
彼女は奇跡を世界に描き出す。
「シューター!」
『Axel Shooter』
振り抜かれたレイジングハートの赤い宝玉が輝き、電子音声が呪文のように響き渡る。
たった数センチサイズの光球。
けれども、それはティアナの魔力弾数発分以上を凝縮したもの。
それらが霞むような速度で飛来したかと思うと、空を舞うガジェットたちの表面に着弾し――その魔力弾を分解するよりも早く、
その装甲を貫き、その機械部品を食い散らした。
そして、火花を散らし、暴発したエネルギーの流出による爆散を起こすガジェットたちに目もくれずに、なのはは
その視線を共に空を飛ぶ親友に向ける。
「フェイトちゃん! 今の聞いたよね!」
「ええ、なのは!」
凝縮した魔力場。
AMFの分解限界を超えた閃光の刃を持って、ガジェットを切り裂く黒衣の女性――フェイトが返事を返す。
「フォワード陣が危ない」
「だから」
『時間はかけない!』
光の翼を、閃光を、羽ばたかせ、閃かせ、二人の女性は空を舞う。
圧倒的な破壊の光景で、空を覆いつくしながら、彼女達の奇跡を奏でる歌声が響いた。
やべえ初めてノーヴェがかっけえと思ったww
支援。
霧の中の一つの支援
空で奇跡を紡ぐ歌声が響いた時、鋼を纏った獣もまた咆哮を上げていた。
あまりにも突然な出来事。
予測も、予想も、まさしく夢にも思わなかった状況。
それにもっとも早く立ち直ったのは最初の楔に気づいたエリオであり――躊躇う事無くホルスターから
デバイスを抜き放ったティアナだった。
「っ!!」
放たれる魔力弾。
それを少女の形をした獣は屋根を蹴り飛ばし、その真下を魔力弾の閃光が突き抜けた。
「ティアナ!?」
「――敵よ!」
ティアナはそう叫びながら、片手に握ったアンカーガンを構えたまま同時にクロス・ミラージュも抜き放つ。
「はっ!」
宙返りのように回転し、四肢を叩きつけて着地した少女に向けて、交差に構えられたデバイスの銃口が向いた。
「答えなさい! あなたは誰! 所属は!!」
「いきなり撃っといて、いまさら質問かよ。かっ! 手荒いやりかただ」
「ごあいにく様。どう見ても味方とか一般人には見えないから――蜂の巣になりたくないなら、大人しく答えて、投降しなさい」
「断ったら?」
ニヤリと露出した口元が笑みを浮かべる。
それは嘲るというよりも、楽しげな笑み。
その左手に纏う鋼鉄の爪と右手を覆う無骨な手甲が相まって、それはまるで人の形をした獣のようだった。
ギラギラと闘志に満ちて、隙あらば喉笛を食い千切らんとする獰猛な獣。
その意志に、敵意に気づいて、ティアナは気を緩めない。スバルもまた慌てながらも拳を握り締めて、キャロは呆然としたまま
エリオを抱きしめていた。
数秒の硬直。
そして、それを破ったのは獣の発言だった。
「一つだけ、答えてやるよ」
「なに?」
「アタシの名は≪破壊する突撃者(ブレイク・ランナー)≫……」
声が響く。
轟々と吹き荒ぶ強風を引き裂くように声が響いて――
「――お前たちに破壊の傷跡を刻む奴の名前だよっ!!」
刹那、獣が旋回した。
――飛び上がりながら。
「え?」
完全に身を伏せた体勢から、何の前兆現象もなく飛び上がる。
ティアナたちは気付かない。
床に押し付けられた右手が一瞬駆動音を響かせて射出されて床を陥没させ、それとほぼ同タイミングで全身のバネと指の力を用いて、
ブレイクランナーと名乗った少女が飛び上がったのだと。
そして、飛び上がった少女はまるで空を飛んだかのようだった。
「とんっ」
脚部に付けた無骨な金属の具足。
そこに設置されたノズルから噴出された圧力に旋回し、人知を超えたバランス能力で少女はまるで空を駆けるように、舞うように、
旋回し、その圧倒的な情景を見上げる四人に刻みつけながら――
「壊れろ」
破壊を振り下ろした。
優雅に、曲線を描いた軌道で、されど加速された金属の具足を、真っ向から振り下ろされる。
一番近くに立っていたスバルに向かって。
「だっ!?」
最後の言葉を吐き出しながら、振り下ろされる殺人的速度の大剣に等しい蹴りを防ぐべくスバルは左手を打ち出す。
シールドを展開した左手を放つ。
轟音。
軋む音。
ガリガリと振り下ろされた具足とシールドが衝突音を響かせて。
「ハッ!」
少女が笑う。
スバルが目を見開く。
少女の体が回転する。腰が回る、さらなる脚が振り回される。
そうなのだ。
彼女の足は――二本ある!
「オ、ラァアアアアア!!」
交差する脚。
蹴撃の十字。
コンクリートブロックすらも砕くであろう二つの蹴りに、展開されたシールドは刹那の維持を保って――ガラス細工のように砕かれた。
世界の敵支援
支援するついでに誤字ハケーン。
>×ブレイクランナーじゃなくて
>○ブレイクライナーっすよ旦那。
スカ博士支援
スカさん支援
「ラァッ!!」
そして、障壁を突き破った脚が、その奥のスバルの顔面を蹴り飛ばした。
「くぁっ!!」
首から持っていかれるような衝撃。
激痛と共にスバルの体が吹き飛び、列車の屋根の上を転がって――落ちた。
列車からその姿を消した。
「スバルさんっ!!」
悲鳴が上がる。
「このぉ!!」
足を振り抜いた少女に向かって、魔力弾が飛来する。
それは着地の瞬間を狙った必中の弾丸。親友の負傷に怒りを示しながらも、僅かに残っていた理性がティアナに
その銃撃を行わせた。
されど、それもまた甘い。
「おぉ!?」
振り抜いた脚で着地しようとした少女が、迫る魔力弾の存在に気付き、笑う。
数秒にも満たない時間。
その間に彼女は勢いよく片足を振り下ろして、同時にもう片方の脚部ノズルを吹かした。
それは空中で行われたスピンダンス。
迫る魔力弾とは正反対の方角に掲げられていたはずの左手の爪が、回転する脚の速度と腰の回転に引きずられ、
目にも見えない速度で一閃。
冷たい鋼の爪。
それが直撃するかと思われた魔力弾を、真上から叩き潰し――引き裂いた。
「っ!」
牽制弾二発を無視し、直撃するであろう二発の魔力弾を切り裂かれたティアナが驚愕の表情を浮かべ、僅かに煙を上げる左手を
握り締めた少女が嗤う。
「お? 純魔力設定だったかー、優しいじゃねえかっ」
覚悟していた衝撃がなかったことで、物理影響を持たない純魔力設定だと気づいた少女は笑って――
「お返しに死なない程度にぶちのめてしてやるよ」
「なっ」
なめるなっ!
ティアナがそう叫ぼうとした瞬間だった。
眼前に少女の顔が迫っていたのは。
世界の敵 スカの味方 支援
「っ!」
距離にして五メートルはあったはずの間合い。
それが一瞬で詰められていた。
(なんで?!)
ティアナは気付かない。
全く姿勢を変えないまま、少女がノズルを吹かし、その間合いを詰めていたということに、
それは第97管理外世界に伝わる剣術での歩法の一つ、すり足と呼ばれるものに近いものだった。
人は無意識に体を前後に動かし、震動を感じながら、移動をしている。
そのために誰かが動く、距離を詰めるのにも、体が揺れると無意識に決め付けている。
それ故の錯覚であり、其れゆえの歩法。
気付かれず間合いを詰め、己の剣の間合いに踏み入らせる技術。
それと似たことを少女は行い、それを知らないティアナは錯覚によって距離を詰められた。
「まっ」
危機に気付いた瞬間には、少女の拳が閃いていた。
致命的に遅れ過ぎた反応。
僅かに体を沈ませて、バネを載せた拳。躱す暇もなく、それが許されるほどの速度でもない、ティアナには躱せない拳打。
せめて、それを軽減させようと腕を交差に構えて、防御体勢をティアナが取ろうとして、それを見ながら少女が鼻で笑った刹那。
「っ!」
少女が飛び退いた。
眼前を貫いた刃によって。
「え!?」
それは黒い穂先。
「させない」
それは血まみれの少年。
震える手足を動かしながら、壮絶な笑みを浮かべて、彼が吼える。
「ストラーダ!」
血が溢れる。
曲げた肘から血が吹き出し、膝が崩れながらもエリオが飛ぶ。
腕を曲げ、まるで下手な人形遣いが動かしたかのように手足を振るいながら、ストラーダの穂先を振り下ろし。
「ぁあっ!」
「らぁああ!!」
振り下ろされた穂先と振り上げられた脚部が激突する。
魔力結合が行われ鋼鉄すらも切り裂くはずの刃と火花を散らすほどの高速回転を行い、穂先と鍔競り合うホイール。
それは一瞬だけ停滞の時を見せたが――
「いい速度だが――力が弱ぇええ!」
ノズルを吹かし、横ベクトルの力を加えたホイールに弾き飛ばされる。
世界の敵の敵 支援
「エリオ!?」
「エリオくん!!」
「ハ、ハハハ! この程度かよ!! この程度で終わりかぁaAAA!!!」
獣が笑う。
笑っているはずなのに、怒りすらも孕ませた咆哮を上げて――
「後は……」
「くっ!!」
手甲と爪を構えて、少女がティアナを、そしてキャロを見る。
「遠距離タイプと足手まといの子供だけか」
つまらなさそうに呟いて、少女が跳ぶ。
再び空を舞うように、襲い掛かる隼のような跳躍。
「さっさと終わりに――」
「させないよ!」
少女が襲い掛かろうとした瞬間、その顔に影が落ちた。
「なっ!」
少女が滞空した時間。
見上げた先には――蒼い、蒼い【道】。
そして、逆さかに見える蒼い髪の少女の顔。
『Wing Road』
「はぁあああっ!!」
逆上がりのロード。
その上を旋回しながら、繰り出されたスバルのマッハキャリバーが先ほどの焼き直しのように少女の顔面に叩き込まれた。
>>26 ノンノン。
この場合はISではなくて恐らく「ブレイク(壊す)ランナー(走る者)」というISをもじった
二つ名でしょうから問題無いです。
支援
戦地調停士が舌先三寸で支援
不気味な泡支援
「ぁっ、があ!」
パリンとゴーグルが砕ける。
同時に華麗な跳躍から叩き落す墜落と化して、少女が列車の屋根の上を転がった。
ゴロゴロと縁まで転がり、そして片目だけ露出したゴーグルと手で押さえた顔から、戻ってきたスバルを睨む。
「馬鹿な! 落ちた! 落ちたのに!! なんで、お前がぁ――!?」
叫びながら、少女は気付く。
先ほどまで沈黙していたキャロの手で光る魔力の輝きを、そしてその背後で蠢く無数の鎖の存在に。
「スバルさんは私が救出しました」
「そして、私が戻ってきた。ただそれだけだよ」
隙を見せず、構えを取りながら、スバルは告げる。
もう負けないと、そう告げるように、拳を握り締める。
見ればティアナもまたゆっくりと二つの銃口を重ね合わせ、エリオもまた血まみれの体をストラーダで支えながら立ち上がり、
少女を睨んでいた。
「なるほど……な」
睨まれながら、少女は立ち上がる。
ガタガタと揺れる屋根の縁に立って、押さえ込まれていた赤い髪と片目から垣間見える“黄金色”の瞳を見せて、少女は告げた。
「これだから、嫌いなんだよ――魔導師って奴は」
それは風に溶けて、独り言のように消えた。
絶望を、溢れんばかりの羨望を篭めて声は誰にも届かない。
「これが最後の注欲よ、投降しなさい!」
「抵抗すれば、力ずくでも拘束っ、します!」
ティアナとエリオの声が響く。
スバルが体を沈みこませ、キャロは傍に浮かぶフリードと共に少女を睨みつけた。
「投降、ね」
少女が笑う。
「捕まれば楽だろうね」
「っ、なら」
少女が意志を見せた。
そう思った瞬間だった。
「だけど、断る」
そう言って、鋼の手足を付けた少女は跳んだ。
後ろに。
未だに走り続ける列車から、身を投げ出した。
「えっ!?」
それに思わずスバルが駆け出し、ティアナたちが驚愕の表情を浮かべた瞬間だった。
轟音が足元から響いた。
「なっ!?」
それは真下から聞こえた気がした。
「まさかっ!?」
スバルが駆け出し、縁から下を見る。
そこには鋭い爪の傷跡と――大きく破られた壁。
そして、その奥で――笑う少女の姿。
「じゃあなっ」
そう告げて、少女は赤い宝石のようなものを手に、スバルから見て奥へと足を振り上げて。
「ティアナ、後方!!」
「え!?」
ティアナが後ろへと振り返る。
轟音。
「列車の壁が!!」
一番後ろに居たキャロには見えた。
吹き飛ぶ列車の壁の瓦礫が、中から外へと飛び出す光景が。
「いやーほー、ッス!」
声が響いた。
その場にいる誰でもない、六人目の声が。
しえn
自動的に支援
「なっ! あれはっ!!」
エリオが気付く。
上空から長方形の何かが落下してくることに。
「“ウィンディ”!!」
「ほいさっさー! さあ乗れっス、“ノーヴェ”!!」
落下してきた物体。
その上に乗っていた人物は同じ紅い髪に、顔を隠すようなゴーグルを着けて列車に併走。
そして、鋼の具足を付けたノーヴェと呼ばれた鋼の獣が飛び乗る。
「名前で呼んでんじゃねえー!!」
と叫びながら。
そして、その二人は速度を落とし、列車から離れていく。
未だに走り続ける列車に置いていかれるように、遠ざかる。
「ま、まて!」
「バイバーイッス」
暢気に手を振る乗り手の姿を最後に。
機動六課のフォワードたちと二人のイレギュラーの始めての邂逅は幕を下ろした。
ノーヴェがカッコよく見えるなんて・・・支援せずにはいられないッ!!
ロングアーチの面々に悲鳴じみた声が響き渡る。
「――反応ロストしました! 転移した模様です!!」
「転移先を追跡出来るか!?」
「無理です! 魔力痕跡を追尾するためには僻地過ぎます!」
「っ……まんまと取り逃がすしかなかいのか」
グリフィスが苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ、はやてが厳しい表情で手を組みながら告げる。
「レリックはどうやった?」
「――奪取された模様です。貨物内部にあったレリック四本のうち、二本が強奪された模様です」
「……全部奪われるよりはマシやな。列車はともかく、線路の被害状態は?」
「思っていたよりも良好のようです。破砕したガジェット及び列車の破片の除去作業を行えばすぐに復旧は可能でしょう」
「ほうか。よかったわぁ」
最悪の状況は免れたと安堵の息をつき、はやてが両手で目を覆う。
まだまだ作業は残っている。
失点もあったが、ギリギリ及第点を与えられる結果だった。
そして、それよりなにより。
「ついに出たな」
ギラリと覆った目の中ではやての意志を放つ。
興奮が、闘志が体の中から熱を持って湧き立たせる。
「レリック事件の裏幕が、尻尾を見せよった」
目を覆う手を外し、彼女は手を握り締める。
「戦いはこれからや。今回はドローやけど、次は勝利や」
それは傍にいるグリフィスすらも目を丸くする強い瞳。
「必ずなっ」
それは誰へと向けた言葉なのだろうか。
それははやて自身にも分からない衝動であり、確かに誰かへと向けた言葉だった。
ウィンディ可愛いよウィンディw支援
スカ博士支援
それは質素な空間だった。
両脇に本棚を、中央に机を置いただけの空間。
唯一優れているのは後ろに見える都市全貌を見渡せる窓だけだろう。
そして、そこに座るのはその都市を、地上を護る男だった。
「――報告を」
その前に立つのはメガネを掛け、皺一つ無いスーツを身に付けた女性。
「機動六課が例のリニアレールの襲撃事件に出動した模様です」
「……そうか。結果は?」
まるで顔色を変えずに、頑強な岩を思わせる男は尋ねた。
「結果は成功といえるでしょう。リニアレールの線路は無事保護され、“レリック全てを護ることは出来ませんでした”」
「ふむ。スカリエッティはなんとかノルマをこなしたか」
それは歪な会話だった。
本来ならば奪われたことを失敗とするべきなのに、それが予定通りのように会話を交わす。
否、それは予定通りだった。
彼らの中では。
「オーリス。リニアレールでの報告書を機動六課に提出するよう連絡を回しておけ」
「ハッ」
「彼女達には頑張ってもらわなければならん。共に正義を護るための礎なのだから」
そう告げて、男――レジアス・ゲイズはため息を吐いた。
「皮肉なものだな……」
その顔に浮かぶのは嘲笑。
「共に正義を目指す彼女たちが、わしにとって皮肉な結果を齎す」
或いは自虐の笑み。
「レリックを奪うスカリエッティも、それを護る彼女達も、“奴ら”の上に踊らされているというのに」
そして、彼はその場にいるもの以外には決して聞かれてはいけない言葉を告げた。
「……踊らされていることも知らないのは彼女達だけか。なんという皮肉なのだろうな、手を差し伸たいというのに、それを行えないというのは」
「仕方ありませんよ、レジアス中将――いえ、お父さん」
厳しい怜悧な表情から、オーリス・ゲイズは父親を思う子供の顔になる。
「彼女達もまたいずれ真実に気付きます。だから、それまでは――」
「ああ。わしもまた道化になろう」
娘の言葉に、レジアスは顔を上げる。
その顔に、その背に、幾年もの平和へと捧げ続けた誇りを掲げて、彼は告げる。
「わしは止まらんよ。これから築き上げる、50……いや、“100年の平和”のために」
彼は決意する。
「そのためにならば、悪魔にすら魂を売り渡そう」
彼は止まらない。
彼は止まれない。
ただただ、願う理想のために――誓いを掲げた。
それはかつて友と誓った平和のために。
もう一人の主役支援
全てを利用する漢!!レジアス!!全ては100年の平和のために!!
支援
『……報告が入った』
『スカリエッティか?』
『然り。レリックの奪取に成功、されど予定数の半分しか奪えなかったらしい』
『……屑が。所詮出来損ないということか?』
『それもある。しかし、それを妨害したのは例の【機動六課】らしい』
『なるほど、なるほど。それは、それは、素晴らしい』
『選ばれし者達か』
『新しき可能性の先達』
『奇跡の使い手、新たなる種』
『おお、おお、喜ばしい』
『感謝しなくては』
『褒め称えなくては』
『我らが、我らが、望んだ種の誕生を』
『魔法使い』
『戦闘機人――タイプ・ゼロ』
『“MPLS”』
『その誕生の行く末を祝福しよう』
―― To Be Next Scene SIDE 3−1
所詮六課は踊らされる駒なのか支援
投下完了です!
今回も長くてすみません!
ナンバーズを頑張って弱体化でも運用を強化してみました!
彼女達の戦いはこれからも続きます。
そして、それと対峙するスカ博士の動向もまた物語の中心であり。
レジアスの叶えるべき理想【100年の平和】がキーとなります。
誰かが世界の敵なのか、そして彼女たちが、彼らが行く末をこれから頑張って描いて行こうと思います。
支援ありがとうございました!!!
GJ!
このレジアス中将は支援せずにはいられない!
そして6課は真実に辿り着けるのか!?
ヴァイスの動向は!?
期待です。
あ、最後に。
普通にブレイクランナーとブレイクライナーを間違えました orz
もじったわけじゃないです(汗)
指摘してくださった方ありがとうございます。
そして、リリカルスクリーム氏すみませんでした(汗) 普通に誤字でした。
改めて読んでくださった方、ありがとうございます。
>>54 GJ!
ノーヴェ格好いいよノーヴェ…って
マジですかぁァァァァァァァッ!
>>26氏ほんとスンマセンっした!
GJ!!です。
ノーヴェ・・・今まで馬鹿にしててごめんよ。だってISで出来る事が
道作るだけなんだもんwコッチのノーヴェは段違いにカッコよかったです。
本編もこのタイミングでナンバーズは出すべきだったよ。
ウェンディもしっかり美味しいところを持っていきましたね。
そして、レジアス・・・カッコいいなぁ。三脳も本編以上にイカれてそうだし
次回も楽しみにしてます。エリオが能力者かな?
>>55 うん。ついでに言うとね・・・
俺の嫁の名前までまちがえるなああああああああ!!
>ウィンディ
じゃなくて→ウェンディだからああああああああっ!!(涙目)
orz
間違えまくりだ! ごめんよ、
>>57!
そして、ウェンディは俺のアイドル! JK?
>>56 ごめんよ、うちのノーヴェは道を作ることも出来ないんだw
けど、頑張ります。彼女は強い子ですから!
あと、次回更新予定は待ってないだろうけど、ビスケット・シューターの予定です。
次回は普通に機動六課編の予定ですが、なにやら要望があるらしく、過去編も製作中です。
土日にはビスケット・シューターを投下予定ですので、その際にはよろしくお願いします。
ペコリ。
ヴァイスクルーーー!
GJ!でした。
やはりスカサイド・レジアスサイドが格好いい。
スカとかレジアスとかほとんど登場しないのに存在感あるし。
いつか六課は真実にたどり着けるのか・・・
なんかスカ・レジアス・エリオが際立ってるな。
そして世界の敵の敵を期待してます。
>>58 知っておりますとも!伊達にウロスや設定議論スレを覗いてないぜ!
IS無しでも、純粋に強くてカッコよく見えたんだw
なんという熱い展開。こんな迫力あるシーンが書けるようになりたい……。
ところで新参ですが1時半から投下よろしいですか?
20Kb近くになったので支援お願いしたいのですが。
それでは自分は一時十五分あたりからリリグナーを投下させて頂きます。
>>64 ありがとうございます。お言葉に甘えて先に行かせていただきます。
1時半より投下、タイトルは最後で。
第1話「それは不思議な出会い!急げ!百鬼魔界へ」
(誰か……助けて……誰か……。)
ある企業グループの私有地とされる山中、人の通わぬ森の奥で一匹の小動物が血を流し倒れていた。
(お願いです……この声を聞いた人がいたら……)
もはや満足に体を動かすこともできないそのフェレットは、一縷の望みを掛けて
念話によるSOSを発信していた。
念話、すなわち魔法を使える者だけが聞き取れる手段で。
魔法の存在が確認されていないこの管理外世界『地球』で。
それがどれほど期待のできないことかは本人にも分かっていた。
管理外のこの世界の、それも彼のすぐ近くに魔導師が偶然いて、
幸運にもその人物がジュエルシードによって凶暴化した獣を撃退できるほどの実力で、
そして私利私欲のためにジュエルシードを欲しようとしない高潔な人物である、
などという都合のいい現実があるわけがない。
それでもそのフェレット、ユーノ・スクライアという名の年若い魔導師は
あり得ない可能性にすがるしかなかった。
数分もすればあの獣がユーノに追いついて、彼の体を引き裂くのだから。
(お願い……誰か……)
このまま誰にも気付かれず、人知れず朽ち果てていくのだろうか、
ユーノがそう絶望した時だった。救いの主が現れたのは。
「いかん。このフェレット怪我をしてるじゃないか」
優しそうな男性の声が聞こえる。しかし―――――
(良かった、気付いてくれた人………が…………)
自分を見下ろす人影を見た瞬間ユーノの思考は完全に停止した。
(な、な、なななな、なんだコレエエエェェェェェ!?)
支援
支援。
それは人ではなかった。
頭部は戦車の砲塔にしか見えない形状、足にはキャタピラを装備、全身を覆う分厚い装甲板と
右手の銃器は、その体が戦闘の、あるいは戦争のために生み出されたことを容易に想像させる。
傀儡兵の類かと考えたが、流暢に喋る傀儡兵などユーノは知らない。
「早く手当をしてやらないと…」
凶悪な外見と不釣り合いに優しい態度を見せる救世主。
ネロス帝国機甲軍団烈闘士ブルチェックだ。
なお、ユーノの念話が聞こえたわけでは決してない。演習後にたまたま通りがかっただけである。
(あの…もしもし!?僕の声聞こえてますか!)
「待っていろ、ゴーストバンクの設備ならすぐに治るからな」
(うわ!ちょっと、そんなゴツイ指で掴まないで!)
ブルチェックの無骨な指先は牛の乳を搾れるほど繊細に動くのだが、そんなこと露ほども知らない
ユーノにとって殺人兵器とおぼしき物体に掴まれるのは恐怖でしかなかった。
(ど、どうなるんだ僕は…!)
鈍重そうな姿と裏腹に猛烈な勢いで駆けるブルチェックの手の中で、
抵抗する力もないユーノは絶望的な気分になっていた。
が、程なくしてブルチェックはその歩みを止める。
『グルルルル……』
体長2メートルほどの巨獣。四つの目と二本の角を持ち、黒褐色をした四つ足の生物が道を塞いだからだ。
「な、何だこの生物は!」
(えーと、それはジュエルシードという…)
「怪我をしてる動物がいるんだ!邪魔をするなあっ!」
有無を言わさず頭部の大砲が火を噴く。
ネロス帝国には珍しく動物の命を奪うことを良しとしないブルチェックであるが、
『かわいい動物』の範疇に入らない相手には容赦がない。例えばヘドグロスとか。
不意打ち気味の攻撃は狙い違わず怪物の胴体を直撃する。
そしてユーノは、自分の念話が全く通じてないことを喜ぶべきか悲しむべきか分からなかった。
『グギュウウアアァァァ!!』
「こいつ、まだ立つか!だったら!!」
至近距離からの砲撃を食らい吹き飛んだ獣は、おぞましい叫びをあげながらなおも戦闘態勢をとろうとする。
そこに飛来する第二第三の砲撃。さらには右手の銃もうなりをあげる。
『ギョオォォアアアア!!!』
「これでどうだ!」
六発目を食らったところでついに力尽きたのか、怪物はピクリとも動かなくなった。
「おそろしくタフだったな。モンスター軍団の失敗作か?……ん、何だこれは!」
動かなくなった獣はブルチェックの目の前でするすると縮んでいく。
数十秒後、砲撃によってえぐられたクレーターの中心には、一匹の傷ついた犬と
青く輝く結晶体が転がるだけであった。
「お、俺としたことが犬を殺してしまっただと!?
……いや、まだ生きている!可愛い動物たちを、俺の前で死なせたりはせんぞ!絶対に救ってみせる!」
叫ぶが早いがブルチェックは右腕で犬を抱えて駆け出す。妖しげな結晶体を回収することも忘れていない。
一方左手で掴まれているユーノは現実逃避に忙しかった。
(ま、魔法を使ってないのに、力ずくでジュエルシードを回収しちゃった……)
確かに理論上は可能かもしれない。しかし一度発動したジュエルシードを融合した生物から
物理的に引き剥がすには常識を遥かに越えたパワーが必要なはずだ。
(こんなこと……あるわけがない……)
痛みと疲労の上に精神的なショックが重なり、そろそろユーノも限界が近い。
自分を掴む戦車のような怪物がなんなのか、それを考える余力もなかった。
ユーノ・スクライアは後に語る。
この時念話でなく直接話しかけていたらどうなっていたか、その末路は想像もしたくない、と。
ネロス帝国。
世紀末の悪の帝王ゴッドネロスのもとに組織された恐るべき帝国である。
その目的は経済による世界の支配であり、表の姿である桐原コンツェルンの利益を生むためにはどんな
恐ろしいことにも手を染める。競合他社への直接的間接的問わない攻撃や、石油プラントの破壊による
原油価格の高騰での荒稼ぎ、また時に一国の歴史すら変えてしまうこともあるという。
その本拠地であるゴーストバンクは桐原コンツェルン本社地下にあり、桐原コンツェルンの社長である
桐原剛三は真の姿である帝王ゴッドネロスへと姿を変えて謁見の間に降臨するのだ。
ゴーストバンクには帝王が作り上げた恐るべき4つの軍団が控えている。
まずヨロイ軍団。銀の甲冑に身を包んだ剣士クールギンを長とする軍団で、ヨロイや強化服を身につけた
人間もしくはサイボーグで構成される。正々堂々とした戦いを好み、皆が皆武人たらんとする強者揃いの
軍団である。
次に戦闘ロボット軍団。戦闘に特化し、高い戦闘力を持ったロボット達で構成される。軍団長である
バルスキーは男気あふれる性格で、部下からの信望も篤い。
そしてモンスター軍団。バイオテクノロジーで作られたミュータントや合成生物で構成される。
「口八丁手八丁、卑怯未練恥知らず」「食うて寝て果報を待つ」といった4軍団の中では異色の
モットーを持つ集団で、軍団長のゲルドリングをはじめとしてどんな汚い手段を使ってでも勝つことを
美徳としている。透明化、液状化、夢を見せるなど特異な能力を持つ者も多い。
最後に機甲軍団。戦車、ミサイル、ヘリコプターなど実在の兵器をモチーフとしたロボットで構成される
火力と装甲に優れた軍団である。「数と機動性」という特色も持ち、他の軍団とは異なり同型機が
複数生産されている。また4軍団の中で唯一航空戦力を持っており、その価値は帝王ゴッドネロスも
認めている。戦艦を模した姿の軍団長ドランガーはあまりゴーストバンクを離れず、副官のメガドロンが
現場指揮を行うことも多い。
各々の軍団には厳密な階級が存在し、軍団長である凱聖をトップとして豪将、暴魂、雄闘、爆闘士、激闘士、
烈闘士、強闘士、中闘士、最下級である軽闘士へと続く。また修理ロボ、音楽ロボのような非戦闘員は
軽闘士よりも更に下に位置する。
「ネロス!ネロス!ネロス!ネロス!」
ゴーストバンク謁見の間に戦士達の叫びが唱和する。帝王が降臨する際は各軍団勢揃いで迎えるのが慣例と
なっていた。
整列した4軍団の前で、玉座に人影が浮かび上がる。
醜悪な老人の姿。その内に湛えられた知性と野望。たった1人で、1代でこの帝国を作り上げた男、
帝王ゴッドネロスその人である。
「余は神、全宇宙の神ゴッドネロス!」
「ネロス!!ネロス!!ネロス!!ネロス!!」
ヒートアップする一同。それを手で遮り静かにさせた帝王はおごそかに言葉を紡ぎだした。
支援
「各軍団、現在の状況を報告せよ」
「豪将ビックウェイン、中東において我が帝国に仇なす政権を抹消しました」
「雄闘トップガンダー、こそこそと嗅ぎ回っていたFBI捜査官の暗殺を完了」
「ヨロイ軍団一同、鍛錬は怠っておりません」
「激闘士ストローブ、3機によるフォーメーションは完成に近づきつつあります」
「試験中のデスターX0ですが射撃精度にまだ問題が残るようです」
満足げに報告を聞く帝王。自分も報告をしようと声を上げかけたブルチェックであったが―――――
「帝お……」
「帝王!ワシはブルチェックに問い正したいことがあるんですがよろしいでっか?」
モンスター軍団長ゲルドリングに出鼻をくじかれた。
「何事だゲルドリング………まあかまわん、許可する」
「ありがとうございます帝王……おうブルチェック、帝王の前や。さっきのアレ、どういうことなんか
ちゃあんと説明してくれや」
モンスター軍団長凱聖ゲルドリングの、嫌らしさに満ちた声が謁見の間に響く。
頭部を覆う透明なカプセルの中に見えるにやにやとした笑みが、ブルチェックの不安をかき立てていた。。
それは少し時間を遡ってのことだ。2匹の動物をゴーストバンクに連れ込んだブルチェックだが、
当然ながら機械兵器であるところの機甲軍団には生物の怪我を治すような設備はない。
そこで彼が乗り込んだのはモンスター軍団が怪我を癒すバイオ室だった。
何の価値もない薄汚れた動物を、しかも部外者である機甲軍団員が持ち込んだというのだから
モンスター軍団の反発は大きかった。しかし意外なことにバイオ室から軍団員達を退かせたのは
ゲルドリングである。
死にかけた動物を前に気が急いているブルチェックは、それがどれほどおかしなことか気付いていなかった。
「機甲軍団の烈闘士ともあろう男が、その辺の動物捕まえてきて無断でゴーストバンクの設備を使用!
こりゃあ重罪やで」
「なっ!?邪魔をするモンスター軍団員をあの部屋から追い払ったのはあんただろう!」
「ワシは用事があったから軍団員を集めただけや、使っていいなんて一言も言うとらんで。
あれやな、家主の留守にバイオ室を使うとは、機甲軍団ちゅうんはずいぶんと手癖が悪いんやなあ。
おいドランガー、お前んとこは部下の教育もちゃんとやっとらんのかい」
支援
部下の失態を責められた軍団長ドランガーは、苛立ちを隠せぬ様子で詰問する。
「ブルチェックよ、これは一体どういうことだ?」
「も、申し訳ありません軍団長!」
ブルチェックは自分の愚かさに今更ながら気付いた。
あの自他共に認める嫌な性格のモンスター軍団長が、死にかけた動物に情けを
掛けるような真似をするはずがなかったのだ。
あの男の目的は最初から、『帝王の御前で』『規律違反を咎め』『機甲軍団の地位を貶める』
この点にあったのだろう。
(俺は大馬鹿者だ!動物たちの命を救うことに気を取られて、こんな事にも気付かないとは!)
しかしブルチェックにも勝算はある。
ここまで露骨にゲルドリングにはめられるとは思っていなかったが、
要はあの動物たちに命を救うだけの価値があることを示せばいいのだ。
その証拠はブルチェック自身の中にある。
「ブルチェックよ、申し開きはあるか」
帝王の重々しい声が響く。機械の体であっても震えを感じずにはいられない、力と威厳に満ちた声。
その声の主は今、彼を咎めようとしている。
まともな規律がないに等しいモンスター軍団や軍団長の裁量が大きい戦闘ロボット軍団と異なり、
機甲軍団は規律を重視する。軍規違反により軍法会議の上銃殺刑、となる可能性は高い。
(ここでしくじっては命がない。オレも、あの動物たちも)
故にブルチェックは一歩前に進み出て、帝王の放つプレッシャーの中に自ら飛び込んでいった。
「恐れながら帝王に申し上げます。
あの動物は高い戦闘力を持った生物兵器の可能性があるため確保しました。
念のためゴーストバンクのデータベースをチェックしましたが、あの動物に該当する個体は
モンスター軍団に存在しません。
おそらくはネロス帝国以外の技術で作られたものと考えられます」
「はあ〜?生物兵器〜?」
ゲルドリングの不審げな声が背後から聞こえる。先ほどまでの芝居がかったしゃべりと
声色が違うのは、本心から疑問を持っているからだろうか。
沈黙を保ったままの帝王の心中は読めないが、制止されない以上続けてもいいのだろう。
「アホ言うな。あれは完璧にタダの動物やった。ワシが直々に調べたんやからな」
他人の粗探しには熱心なこの男のことだ。ブルチェックがゴーストバンクに帰還してから
帝王が降臨されるまでのさして長くもない時間の間に、何かしらの落ち度がないか目を皿のようにして
探したに違いない。
……などと周囲にいる者達は考えていたのだが、実際にモニタールームで目を皿のように『させられて』
いたのは下位のモンスター軍団員だったことを追記しておくべきだろう。
「ゲルドリング、それは真か?」
「ええ、帝王。そりゃあもう隅から隅まできっちり調べましたからな、間違いないですわ。
犬もイタチも何の変哲もない弱ったケダモノ。あれじゃあ実験材料にもなりませんで」
「そんな馬鹿な!ちゃんと調べたのか!」
「調べたわい!お前こそあれが生物兵器いうんやったらその証拠見せんかい!あるんやったら、やけどな」
「もちろんある!」
「何やて?」
そう、証拠はある。これ以上ない形で。
「帝王、私の交戦記録をご覧下さい」
ブルチェックはモニターと自分をケーブルで接続しながらそう言ったのだった。
戦闘ロボット軍団員と機甲軍団員が見聞きした物は、彼らの『記憶』であると同時にゴーストベースのデータ
バンクに収集される『記録』でもある。自ら改竄することが不可能なそれは、物証としては十分な物と言えよ
う。
(それにしても因果な物だ)
怪我をした哀れな動物たちを救うためには、あの犬を危険な生物兵器として認知させねばならない。
奇怪な生物が砲撃になぎ倒される映像を映しながら、
ブルチェックは自らの行動の矛盾が回路にかける負荷を増大させているのを感じていた。
「おお、これは……」
「あの至近距離でブルチェックの主砲を受けて粉みじんにならない生物だと?」
「あれだけ食らえばオレ達だって危ないな」
「あの質量の変化、有り得んな…一体どうなっている」
「モンスター軍団の新兵器ではないのか?」
「アホ言え、あんなもん知らんわ」
「静まれい!」
にわかにざわついた室内だが、響き渡る帝王の一喝にその場にいた全員が口を閉じた。
「ブルチェック、報告を続けよ」
「はい帝王。今ご覧になられたようにあの生物は戦闘能力を失うと同時に小さくなり、
無害な動物となりました。そして現場に残されていたのが……」
言いながら青い結晶体を恭しく帝王に差し出す。
「この物質です」
「ふむ……」
帝王が手をかざすと、手のひらから放射された不思議な光が結晶体を包み込み、
ふわりと浮き上がったそれが帝王の掌中へと運ばれる。
「ほお……すさまじい魔力を感じるな」
「魔力……?人間の言う魔術とか魔法とかいうやつですか?」
帝王の言葉にバルスキーは疑問の声を投げかける。
純粋に科学で作られた彼らロボットにとって、超自然的な現象は理解の外にある。
今、帝王が見せたような力も何かの装置を使っている物とばかり考えていたのだ。
「帝王は偉大な科学者であらせられるが、妖術においても造詣が深い」
そのバルスキーの疑問に答えたのはクールギンだった。
おそらくはネロス帝国で最も帝王ゴッドネロスとの関わりの深いこのヨロイ軍団長は、
時折他の凱聖すら知り得ぬ情報を持っている。
「妖術を?なんと、さすがは帝王。……もしやヨロイ軍団にもそういった力を持つ者がいるのか?」
「いや、我々には帝王ほどのお力はない。護摩を焚き加持祈祷をするのが精一杯だ」
「そうなのか」
ヨロイ軍団は強化された人間やサイボ−グで構成されている。帝王同様に生身の肉体を持つ彼らの中には
魔力を持つ者がいるかもしれない、バルスキーはそう考えたのだが彼の予想した以上に魔力を持つ者は
稀少らしい。
(やはり帝王は全てにおいて別格ということか)
そう結論づけたバルスキーは、意識を切り替えて帝王の次の発言を待つことにする。
不気味な明滅を続ける結晶体を掌の中でもてあそびながら、帝王は何かを思案している様子だった。
と、唐突に結晶体が強い光を放ち出す。
支援
「帝王!」
「慌てるでない!」
注視する一同の前で結晶体は再びふわりと浮き上がる。帝王の手から放れると閃光は弱まり、
帝王に何かあっては一大事と焦っていた幹部達も落ち着きを取り戻した。
「い、今のは一体……」
「こやつ我が欲望を喰らわんとしおったわ。余でなければこの力に飲み込まれていたであったろうな」
「帝王!お体は大丈夫なのですか!?」
「侮るなクールギン、余は神、ゴッドネロスであるぞ?しかしこの強大な力、未知なる魔法の産物……
ふふふ……久々に探求心がたぎってきたわ。この力、必ずや我が帝国の糧となるであろう。
でかしたぞブルチェック」
「帝王にお褒めいただき光栄至極に存じます!」
乗り切った!ブルチェックは心の中でガッツポーズをする。
一方モンスター軍団員は上から下まで全員が唖然としていた。
「さてブルチェックよ、余はお前の働きに対し褒美をやろうと思う。何が望みだ?」
「……それでは帝王、私の回収してきた動物たち、彼らを山に帰してやってください。
すでにモンスター軍団の調査でただの動物だったと判明しているのですから、
逃がしても構わないはずです」
「ふむ…」
思案しながら、掌の上でふわふわと浮かぶ結晶体とブルチェックを交互に見やる帝王。
「まあよかろう。所詮は動物、ゴーストバンクの情報を外に漏らすようなことはできまい。
あの動物はお前の好きにするがいい」
「ありがとうございます帝王!」
「ちょ、ちょっと待ってください帝王!犬はともかくイタチは関係ないでっせ。いや、そもそも最初っから
その結晶だけ持って帰ればよかったんとちゃいますか!」
「うう!そ、それは…」
ゲルドリングに突っ込まれたのは最も痛い点だ。百歩譲って犬の方はまだ調査する理由があるが、
フェレットにはそれがない。ブルチェックは全身から一気に冷や汗が吹き出すような感覚を味わっていた。
こいつは予想外のクロス支援
「今回は功績に免じて特別に許そう。だがブルチェック、次はないぞ?」
「は、ははー!」
再度訪れた危機をどうにか乗り越えたブルチェックは、これからは生物用の医療キットも携行しよう、
と心に誓うのであった。
「さて次なる任務だが……ストローブ、バーベリィ、これへ」
「ハッ!」
戦闘機とヘリコプターの機能を有する機甲軍団員が一歩前に出て気を付けの姿勢をとる。
「お前達は近隣一帯を空から調査し、この結晶体と同じ物を探すのだ。これ以外にも存在するやもしれん。
そして先ほどの犬のような高い戦闘能力を持った生物がいた場合これを撃破、結晶体を回収せよ。
ドランガー。この任、機甲軍団に命ずる」
「帝王のご命のままに!」
「ではこれにて解散。各軍団は十分に英気を養っておけ」
その言葉を最後に、帝王は玉座から姿を消しその場は散会となるのだった。
「ストローブ、バーベリィ、出られるか」
「いつでも出られるように燃料は満タンです!」
「よし、直ちに発進せよ!残りの者は給油次第出撃だ。弾薬のチェックを怠るな!」
「了解!」
ドランガーの檄が飛ぶ。戦闘態勢に入った機甲軍団は迅速に命令を実行しようとしていた。
一方現場指揮の任を帯びた豪将メガドロンは、出撃メンバーの姿が足りないことに気付く。
「ブルチェックはどうした!?」
「あいつなら元気になった動物たちを山に帰すと言ってどこかに行きました」
「……帝王直々にいただいた褒美か。ならば仕方がない、動物どもを山に帰したらそのまま
周辺地域の探索に移るよう伝えておけ」
動物愛護などという概念はメガドロンには全く理解できなかったが、帝王による裁定に
文句を付ける気など毛頭なかった。機甲軍団は鉄の軍規で縛られているが、その頂点には帝王が君臨する。
上官の命令は絶対、そして帝王の命令はそれ以上に絶対的な物なのだ。
「軍団長、今日の帝王は気合いが入っておいででしたな」
「あのようにお喜びの帝王を見るのは久しぶりだ。それに英気を養っておけという命令。
おそらくは帝王には次の戦い、新たなる一手が見えておられるのだろう」
「次の戦い、ですか……」
戦闘ロボット軍団では豪将ビックウェインと凱聖バルスキーが今後のことを話し合っている。
『伝説の巨人』とまで恐れられる副官は何故かあまり乗り気ではなさそうだったが。
「どういうこっちゃコレ」
帝王が退出し、解散となった謁見の間では未だにモンスター軍団だけが残ってボヤいていた。
「機甲軍団にミソつけてやろうとしたのに、なんで手柄になっとるんじゃあ!」
「軍団長落ち着いて」
「機材使われた分損しとるやないか!納得イカンで!この!この!」
「痛い、痛い!軍団長、八つ当たりはやめてください!」
「うおー!なんでやー!!」
モンスター軍団の行状が醜いのは―――――まあいつもどおりだった。
支援
「さて、この辺りならいいか」
「キュウ〜?」
「はは、かわいいやつだなお前は」
犬とフェレットを抱えたブルチェックは、2匹を発見した場所からかなり遠い山林まで来ていた。
「あのあたりはネロス帝国の演習場に近い。お前達はもっと静かなところで暮らすんだ」
要は自分たちと関わり合わないようにというブルチェックなりの心配りである。
そうして犬を地面に下ろし、フェレットを木の枝に乗せたブルチェックは後も振り返らず一心不乱に
駆けていった。そうしないと名残惜しくていつまでもその場に留まってしまいそうだったからだ。
そのフェレットが首に付けていた深紅の宝石が無くなっていることに、ブルチェックは
最後まで気付くことはなかった。そしてフェレットの瞳が高い知性を持った物で、ネロス帝国の中を
つぶさに観察していたことにも。
「なんて恐ろしい世界なんだここは……。魔法を使わずにあんな物が、それもあれだけの規模で。
レイジングハートも取られちゃったし、もう僕一人じゃ無理だ。
どうにかして連絡を取らなきゃ……時空管理局に―――」
ユーノ・スクライアのつぶやきを聞いたのは風と雲と太陽だけであった。
元ネタは知らないが予想以上に面白い、支援。
明らかになる魔法の存在、そして悪の手に落ちたジュエルシード。
新たなる力を手にしたネロスの野望は留まるところを知らない。
だが、ジュエルシードを求める機甲軍団の前に新たな戦士が姿を現す。
瞬転せよ、フェイト。
魔法帝王リリカルネロス、
次回「翔く魔導師!娘よ、母の願いを!」
こいつはすごいぜ!
提 供
桐原コンツェルン
時空管理局
プロジェクトF.A.T.E.
このSSはご覧のスポンサーの提供でお送りしました。
GJ!
元ネタは全く分からんが普通に面白かった
提供がカオスすぎるw投下乙でした。
そういうわけでネロス帝国……じゃなくて超人機メタルダーとのクロス、
タイトルは魔法帝王リリカルネロスでいこうと思います。全3〜4話の予定。
大神官ガジャ様が機動六課に来る話とどっちにしようか迷った揚げ句こっちにしました。
クロス先のキャラがユーノ、ジュエルシードと出会う、それだけの話がなんでこんなに長くなるんだろう…。
気がついたら95%くらいネロス帝国になってるし。
次回はリリカルなのはのキャラがもうちょっと出る予定なんでご安心を。
メタルダー?誰それ、戦闘ロボット軍団にそんなやつはいないよ?
それと支援して下さった皆さん、ありがとうございます。
佐々木功の説教ソング。
あああ推敲したのにまだ誤字があったorz
>>76の
>戦闘ロボット軍団員と機甲軍団員が見聞きした物は、彼らの『記憶』であると同時にゴーストベースのデータ
>バンクに収集される『記録』でもある。
ゴーストベースのデータバンクじゃなくてゴーストバンクのデータベースでした。
>>84 レイジングハートも取られていることは、なのはの出番は無し!?
まさかメタルダーとはなにはともあれGJ
プロジェクトF.A.T.E.がスポンサーってどういうことだwww
元ネタしらんけど ブルチェックの説明見とったらタンクモン想像したんは俺だけじゃない
普通にプリン帝国思い出したが、面白かった。
私を、夜の闇で包め!
恥ずかしげも無くテンション全開なゴッドネロスに吹いたあと、何故か畏敬を感じたww
GJ!
メタルダーと言えばネロス帝国大運動会が思い浮かぶ。
GJユーノ 更に責任追求されそうだ。
そういやもう60スレなんだな。
ま、まさかジュエルシードがネロス帝国の手に渡ってしまうとは!?
…所でなのはは?
関わらずに平和に暮らしています。
GJ!!です。
一期で三つ巴とは珍しいですね。
フェイト&アルフ、アースラの戦力だけではネロス帝国の相手はキツイ気がするw
頑張れ負けるな僕らのネロス帝国!!
そういえば山城達也はどうしてるんだろう……。
104 :
一尉:2008/04/10(木) 19:19:09 ID:pSTrxwJD
良い支援
>リリカルネロス
まずタイトルで吹いたwww主役は敵サイドっすか?w
まあ確かに大軍団ですけど、メタルダーはそんな大軍団相手にチョップで勝ち抜いてたから。
いや、それだけメタルダーがすごいのか?
何にせよ、魔法の知識があるとは、さすがゴッドネロス様。いろんな特撮見たけど、見た目のインパクトも含めてトップクラスのボスですよ。
リリなののラスボスでも全然違和感なくね?
リリなのサイドには物凄い不利な状況から始まりましたが、だからこそ燃えますね。次回、どうなるのか見ものです。
こいつは凄いぜ!
GJ!!まさかのメタルダー、しかもネロスサイド………是非ともトップガンダーの出番があってほしい。
「怒(いか)る!!」で変身してレーザーなチョップで敵を倒す影も形も現れなかった主役メタルダーに黙祷
予告を纏めてくれた方、ありがとうございます。そして纏められなくてスミマセン。まだ使い方知らないんです。
ふと、作者名インデックスを見てみる。
「り」の欄がやたら多い。アルファベットが淋しい。
というわけで(?)、コテを略しました(因みにトリは、前スレのIDだったりする)……駄目でしょうか?
真面目な前置きなのですがこの位にして、第零章を投下します。
23:00頃投下予定ですが……予約は、確か空いてますよね?
トリ違う? よくわかんないけど、まあいいか
GJ!
ネロス帝国とのクロスとは予想外だったw
ビッグウェインが現役ってことはメタルダー本編より前の時間なのね
次回からは、フェイトVSネロス帝国ですか。
あんな巨大組織に、フェイトや管理局はどう立ち向かうんでしょうね…?
私としては、フェイトVSトップガンダーを見てみたいですね。
ある日の「スカリエッティ世界征服研究所」
食堂にやって来たチンクとディエチはメニューを書き込むホワイトボードの
張り紙に気付いた
それはA4用紙にレーザープリンターで出力された一覧表だった
曰く−
戦闘機人軍団序列
凱聖 トーレ
豪将 チンク
暴魂 クアットロ
雄闘 セッテ
爆闘士 ディード
激闘士 ディエチ
烈闘士 オットー
強闘士 ウエンディ
中闘士 ノーヴェ
軽闘士 セイン
「何コレ?」
能面のような表情で呟くディエチ
「ドクター……」
コメカミを押さえるチンク
「あーっ、なんスかこれ!?」
「何でアタシがウエンディより格下なんだよ!!」
「ちょっ!軽闘士ってナニ!?」
「爆闘士だってねディード」
「烈闘士なのねオットー」
「流石ですトーレ」
「いちいち尻を撫でるなセッテ!」
「やあ賑やかだねえ」
いい具合にカオスになったところでスカ登場
「なんなんですかコレは!?」×10人
「なに、ちょっとキミ達の格付けを考えてみてね」
「そういえばウーノ姉様とドゥーエ姉様が抜けてますけど?」
クアットロの問いにドクターにやりと笑う
「とうぜん二人は美人秘書T号U号として朝から晩までサービスサービ…」
なんだろう?痛いというより熱い
下を向いたジェイルの目に映ったのは真っ赤に染まったシャツと
胸から生えたピアッシングネイル
「アッ――――――――――!!!」
END
>>111 スカ博士ーーー!!!
え?こんなんで予言は防がれるの?
機動六課意味がなくなってしまいますよ?w
GJです!!
>>111 博士ぇー!?
その叫びは(ウホッいい男)のほうだぁー!?
惜しい人を亡くしたなぁ……w
というか今日は、投下全然ないな。
GJ!!です。
セッテがwww
予約も何も無いようですので、これよりLの投下に入りたいと思います。
20kb越えてますので、時間的に今からやらないと規制かかりますんで。
よければ支援よろしくお願いします
「おい、あの高町教導官と一緒にいる奴って誰だ……?
何か……やばくね?」
「次元犯罪者か……?
でも、バインドとか全然してねぇし……」
時空管理局本局。
なのはは周囲の局員達から寄せられる視線と、僅かながら聞こえてくる彼等の困惑の声に溜息をついた。
その原因は、彼女の後ろにいる人物……Lにあった。
両目の周りには、重度の不眠症を思わせるかのような真っ黒な隈。
これ以上はないと言えるレベルにまで曲がっている、極度の猫背。
両足にはスニーカーを素足で、踵を踏んで履いている。
そしてその手には、現在進行形で食べられている大判焼き。
はっきり言って、その風貌はこれ以上なく異様なのだ。
正直な話、なのはも最初にLを見た時はそう思った。
そんな彼が周囲の注目を集めるのは、至極当然である。
しかし、彼自身はと言うと全くそんなものは気にしていない。
極めてマイペースに、本局内の様子をじっくりと監察している。
L change the world after story
第3話「二人の天才」
「成る程、流石は本局です。
余程大きな建物ではあるだろうと予想はしていましたが、これは予想以上でした。
セキュリティも整っている様ですし、まるで要塞ですね」
「にゃはは……私も初めて本局に来た時には、凄い驚きましたよ」
「これならば、無限書庫の規模にも期待できそうです」
Lはなのはと何気ない会話をしながら、しかし注意深く周囲に視線を配らせる。
彼は今、本局内の内部構造を、目に見える範囲全て頭の中に叩き込もうとしているのだ。
これから先、この本局に出入りする機会は確実に増える。
単なる来訪・捜査協力・本局のジャック……考えられるケースは幾らでもある。
そしてそれらの際に、一々地図などを確認する手間をかけたくない。
そこでLは、丁度良い機会だから今のうちに覚えておこうと考えたのである。
(広さは首相官邸以上。
周囲は次元の海で、転送魔法等の特定の手段を使わない限りここからは逃れられない。
同様の理由で、外からの侵入も容易ではない……そして何より、魔道士の方々が常に数十人はいる。
防犯面に関してはかなりの物だ……)
「Lさん、着きましたよ」
数分後。
二人は、目的地である無限書庫に到着した。
Lは持っていた大判焼きを一口で飲み込み、服の裾で手を軽く拭く。
流石に書庫内は飲食禁止の様なので、さっさと食べ終えたのである。
なのはがドアを開き、中へと入っていく。
Lも彼女に続き、無限書庫へと足を踏み入れ……そして、感嘆の溜息をついた。
すみません、予告があったのを完全に見落としていました。
俺のは無視してください……焦りすぎていました。
申し訳ありません
支援
支援なしでてっきりスルーされたかと思い、投下を中断してました
全く問題ありませんメビウス氏、お先にどうぞ
そして皆様へのご質問
……トリ、変えた方がいいですか?
>>122 ご迷惑をおかけして、申し訳ありませんでした。
以後、投下の際は気をつけたいと思います。
それではご好意に甘えまして、続きを投下させていただきます。
改めまして、よければ支援お願いします
「これが無限書庫……凄いですね」
無限書庫の実態は、Lの想像を遥かに超えた代物だった。
彼は無限書庫を、とてつもなく大きい図書館の様なものであると考えていた。
しかし、実際は図書館なんてレベルではなく……図書館とは、遥かにかけ離れていた姿であった。
まず書庫内の壁は、出入り口を除いてその全てが本棚。
それらが円柱状に積み重なって、軽く100メートルは越えているであろう高さを為しているのだ。
言うなればこれは、本棚で出来た巨大な柱の内部。
Lはその凄まじさを実感しつつ、更に一歩前へと足を踏み入れる。
すると、その次の瞬間だった
「!!」
体がふわりと宙に浮いた。
続けて、隣にいたなのはも同様に浮き上がる。
一体何事かとLは感じたが、すぐに冷静さを取り戻して状況を理解する。
実際に体験するのはこれが初めてだが、こういう状態をどういうのかは勿論分かっている。
「成る程、魔力による擬似的な無重力空間ですか」
無限書庫の内部は、俗に言う無重力状態であった。
しかし完全な無重力と言うわけではないらしく、その証拠に、本棚に置かれている本はちゃんと立っている。
また、司書達が狙った本棚付近で停止できている様子から察するに……恐らく、中央に向かうに連れて重力が軽くなっているのだろう。
書庫としてちゃんと機能できるように、上手い具合に調整が出来ている。
Lはこの仕組みに感服しつつ、体をぐるりと回転させて体制を整える。
司書の全員が空を飛べるとは思えないこの書庫内において、高い位置にある書物をどうやって取るのかと思ったが、これで納得がいった。
Lはそのまましばらく、書庫内全体の様子を見渡してみる。
すると……一人の青年が、上方からこちらに向かってきているのが見えた。
「いらっしゃい、なのは」
その青年は、なのはへと挨拶をする。
Lはそれを聞き、ちらりと横目でなのはの表情を確認した後、再び青年へと目を向ける。
眼鏡をかけた、いかにもといった感じの好青年。
なのはの嬉しそうな表情から察するに、どうやら間違いなさそうである。
「ユーノ君、久しぶり♪」
やはり、無限書庫の司書長―――ユーノ=スクライアであった。
ユーノはゆっくりと降下し、二人と同じ位置まで下がる。
久しぶりになのはと会えたからか、彼も彼女同様に嬉しそうな表情をしていた。
その後、ユーノは一度なのはに微笑んだ後、Lへと片手を差し出す。
彼は他の局員達と違い、前もってなのは達から来訪の連絡は受けていたので、Lに関してはある程度分かっていた。
また、無限書庫司書長という立場上、彼以上に得体の知れない人物とは何度も出会っている。
その為、彼に対しての抵抗は殆どなかった。
ストーンヘンジ支援
>122
割られたのでもない限りはそのままでいいんじゃないか?
と言いつつ支援
「はじめまして、Lさん。
司書長のユーノ=スクライアです」
「こちらこそはじめまして、ユーノさん。
私がLです」
Lもユーノに答え、片手を差し出す。
世界一の探偵と称され、世界中の全警察組織を動かす事が出来る唯一の存在であるL。
無限書庫の司書長という、管理局内でも極めて高い位に立ち、考古学者としても有名であるユーノ。
共に優れた知力を持つ二人の天才が、しっかりと握手を交わし合う。
「それでLさんは、どういった資料が必要なんですか?」
「とりあえず、ミッドチルダの歴史に関しまして、少し。
この世界に来て間もないですから、詳しく学んでおきたいと思うんです。
後、辞書も貸してもらえると助かります、意味の分からない専門用語等が出てきた時の為に」
Lはユーノへと、簡潔に己の用件を告げる。
なのは達へも言ったように、その目的はミッドチルダの歴史に関して詳しく学ぶ事である。
この世界で生活するに当たり、こう考えるのは極めて自然な事。
だから、なのはもLを素直にユーノの元へと案内した……しかし。
ユーノは、そんな彼の言葉に少しばかりの違和感を覚えた。
(とりあえず……?)
Lが最初に呟いた『とりあえず』という一言。
これが、ユーノにはどうも引っかかったのだ。
普通に考えれば、他にも何か調べたい事があるという意味なのだろうが……
これは、無限書庫に他に用事があるという意味にも取る事が出来る。
調べ事以外にも、やる事があるという様に取れるのだが……考えすぎだろうか。
「それじゃあ、私はちょっと書類を出してくるから。
ユーノ君、Lさん、また後でね」
「はい、分かりました」
「うん、また後で」
なのはは他に用事がある為、ここで無限書庫の外に出る。
それを見届けた後、ユーノは早速Lの要求に応えることにした。
比較的分かりやすい類の歴史書を一冊と、辞書を二冊程取り出して手渡す。
片方は言うまでもない国語辞典、そしてもう片方は、地球で言う広辞苑のミッドチルダ版である。
大抵の用語に関しては、この二冊があれば十分に事足りる。
それでも分からない部分が出た時は、直接教えればいい問題である。
「分からない部分があったら言ってください。
僕の分かる範囲でですが、説明しますから」
「ご配慮ありがとうございます、ユーノさん。
それじゃあ、早速失礼いたします」
Lは両手の親指と人差し指とで、歴史書の両端をそれぞれつまみ、ページ目を開く。
独特な、少なくとも普通とは言いがたい読書の仕方だった。
見た目が奇妙ならば、その動作もまた同様ということなのだろうか。
ユーノや、見ていた他の司書達はついついそう考えてしまうが……
彼等が本当に驚かされたのは、この直後だった。
支援
甘いもの支援
「え……そんな早く読み進めて、大丈夫なんですか?」
「はい、問題ありません」
Lが、かなりのスピードでページを次々にめくり始めた。
並外れたスピードでの速読を開始したのだ。
恐らくは、自分達が今まで見てきた中で最速のレベル。
他に並べる者がいるとすれば、恐らくユーノ一人だけだろう。
彼ならば、魔法を使えばLと同じスピードで書物を読むことは出来る。
だが……Lには、魔法も何もない。
彼は素で、スクライア一族の探査魔法に並んでいるのだ。
尤も、一度に複数の書物を見る事ができるという点では勝っているが……それでも、これは十分凄い。
ちゃんと内容も頭の中に叩き込めているようであるし、たいした物である。
「凄いですね……それじゃあ、僕は仕事に戻ります。
何かあったら、気軽に声をかけてくださいね」
「そうさせていただきます」
Lは一瞬だけユーノに視線を向けてお辞儀をし、再び読書に戻る。
ユーノは彼からの返答を聞いた後、仕事を再開すべく魔法を発動させた。
本棚から複数の書物を引き寄せ、それを自分の周囲に配置。
魔法を使い、それら全てを一度に読み始めるが……それから十数分後、ユーノがある事に気づく。
いつからだろうか、Lがずっとこちらに視線を向けているのだ。
「……ユーノさん」
「Lさん、どうかしましたか?」
「羨ましいです」
「え?」
Lの口から出た予想外の言葉に、ユーノは呆気に取られた。
羨ましいといきなり言われても、何の事なのかが分からない。
一体彼は、自分の何が羨ましいと言っているのか。
ユーノは少しばかり考え、とりあえず一番可能性の高そうなものを口にしてみる。
「……僕の魔法の事ですか?」
「はい。
一度に複数の資料を読み進められるというのは、凄く便利です。
捜査の際には、容疑者リストやら過去の事例やらに目を通さなければならないのですが……」
Lが羨ましいと感じたのは、ユーノの予想通り魔法のことであった。
探偵という役職にあるLからすれば、彼の魔法はかなり魅力的だった。
推理材料として大量の資料を読むというのは、彼にとっては日常茶飯事である。
そして、それに時間を費やしてしまうという事もザラである。
それ故に、ユーノの魔法をこの上なく羨ましく感じたのだ。
もしも自分にも彼同様の力があれば、大幅な時間の短縮ができ、他の作業を円滑に進めることができるだろう。
だが……それは叶わない願いである。
支援
「残念なことに、私に魔法は使えません。
尤も、リンカーコアがあるかないかをまだ調べてはいないですから、もしかすると使えるかもしれませんが。
しかし私に魔法が使えたとしても、ユーノさんの使っているその魔法は恐らく使えないでしょう」
「どうしてそう思うんですか?」
「ユーノさんが司書長だからです」
「……成る程」
Lの簡単な、しかし的確すぎる答えに、ユーノは思わず感心してしまった。
彼の言うとおり、この探査魔法はスクライア一族固有のもの。
誰にでも、簡単に使えるものではない……Lはその事実を、即座に見抜いたのだ。
「ユーノさんはかなり若い、普通に考えれば司書長という役職としてはあなたは異例すぎます。
順当に考えれば、もっと経験豊富な年配の方が就くのが妥当です。
しかし、しっかりした実力があるならば話は別になります。
あなたが異例であられたのは、特別な魔法が使えたからであり、その御蔭で無限書庫内ではこれ以上ない戦力になるから。
他にその魔法を使えるものはいない、いや、いたとしてもあなたのレベルには及ばない。
だからあなたは司書長という立場にいられ、だから私にはあなたの様に魔法を使う事は不可能です」
「はは……確かに、この魔法があるからこそ、僕はここで働けてますからね」
「ええ、ですがそれだけではなく、あなた自身に人望があるというのも大きいでしょう。
そうでなければ、これだけ司書の皆さんが一緒に仕事はしてくれませんから」
Lの見事なまでの分析力に、ユーノは感嘆の息をつき、他の司書達はただただ呆然としていた。
流石は、世界一の探偵と呼ばれているというだけの事はある。
もしもこれで、彼が本当に魔法を使えれば相当の事になるだろう……それこそ、ユーノの様な力があれば鬼に金棒である。
そんな期待を抱きながら、ユーノは思い切ってLに尋ねてみる。
「じゃあLさん、後でリンカーコアの検査を受けてみませんか?
僕の様な魔法は使えないにしても、何か発見があるかもしれませんし」
「お心遣いありがとうございます、ですが。
私は別に、魔法が使えなくても構いませんから」
「え?」
Lからの意外な返答に、ユーノは言葉を失ってしまう。
普通、魔法の存在を初めて知った者というのは、自分にも使えるかどうかというのを気にするのが殆どである。
だから、Lも魔法が使えたらという期待を同様に持っているものだと思ったのだが……答えは真逆だった。
別に魔法が使えなくても何も問題は無いと、言い切られてしまった。
一体どういう事なのか、ユーノはその理由を尋ねてみようとするが、それよりも早くLが口を開く。
「私には、ここがありますから」
己の頭を人差し指で指しながら、簡単に答える。
知力さえあれば、別に魔法が使えなくともどうにでもなる。
この上なく単純な、しかし説得力のある答えであった。
確かに管理局内にも、魔法が使えずとも高い地位についている局員はいる。
そしてその多くは、Lが言うように頭が切れる者達である。
>126
割られたのって……??
ぐ、具体的な説明をお願いします
そして支援
「使えるにしても……そうですね。
ユーノさんのその魔法以外じゃ精々、念話ぐらいでしょうか、使いたいと思うのは」
Lが他に使いたいと思えたのは、念話の力だった。
携帯電話や無線等を使わずとも簡単に連絡が取り合えるというのは、中々便利である。
これさえあれば、周囲に怪しまれる事無く情報のやり取りが出来る。
誰にもばれるリスクが無い連絡手段というのは、張り込みや潜入捜査等において相当強力である。
これは使えると、確かにそう思ったが……実はこの念話の力は、使おうと思えば使える。
いや、既にLは昨日の時点で使っているのだ。
そしてこの事実には、ユーノも気付いている。
「でも念話だったら、専用の機材があったら使えますよね?」
「はい、実際に昨日ゲンヤさんと一緒にやりました。
現場に直にいる時には流石に無理ですが、それ以外なら大丈夫です」
昨日の空港火災。
現場の指揮を取っていたLとゲンヤの二人は、通信機越しに魔道士へと指示を出していた。
そしてそれは、魔道士達へと念話の形で受け取られた。
これが意味する事は一つ……魔法が使えなくとも、機材を介するという条件付ならば念話は誰にでも使えるのだ。
厳密に言えば、魔法の使えない側は普通に機材へと喋る必要があるので、念話とは呼べないかもしれないが……
「使えるのならば、それはそれで良し。
使えなくても、別に代用は可能……はっきり言ってどちらでもいいです。
まあそもそも、リンカーコアがあるか無いかが分かってない以上、こういう事を言ってても仕方ありませんが」
Lは軽く溜息をついた後、歴史書を閉じてユーノへと手渡す。
元々相当の速読なのに加え、前もってネットで簡単な知識は調べていたのも手伝って、読み終えるのに然程時間はいらなかった。
辞書も結局の所、2〜3回程使ったぐらいである。
(さて、と……)
Lはこれからどう動くかを考える。
知りたかった事の大体は知る事が出来たが、細かい専門的な知識に関してはまだである。
ユーノに新たな書物をもらい、それに関しても学んでおくか。
それとも、調べ事を一回ここで切り上げ……もう一つの目的を果すべきか。
(あまり時間が経ってからでは、なのはさんがここに戻ってきてしまう。
そうなると、タイミングを計るのが少し難しくなる……やはり今か)
やるのは今。
今のこのタイミングが最適と見て、Lは決行を決めた。
他の者達に怪しまれぬ様、さりげなくユーノへと言葉をかける。
推理支援
>>133 何使ってるかばれたらって意味だろ
支援
「ユーノさん、すみませんがお手洗いに案内してもらってもいいですか?
私には、ここがどうなっているかが分からないので」
「あ、いいですよ。
それじゃあ、ちょっと待っててくださいね」
ユーノは資料にしおりを挟み、作業を中断。
出入り口へと、ゆっくりと降下していった。
Lもその後に続き、二人は書庫を出る。
そして、扉から数歩ほど離れた後……ユーノはLへと、口を開いた。
「……Lさん。
本当に、お手洗いなんですか?」
「……流石です、気付いていましたか」
ユーノはLの目的に気付いていた。
やはり最初に違和感を感じたとおり、彼は他に用件があって無限書庫に来た様だった。
そう確信に近づけたのは、先程のLの言葉。
お手洗いに『案内してほしい』という一言であった。
一見、何てことのない単なるお願いであるが……実はこの一言には、不自然な点があった。
何故ここで、案内してほしいと言ったのか。
こういう場合、『場所を教えてほしい』と聞くのが普通である。
案内をしてほしいと言うにしても、やはり最初に場所は尋ねる。
しかし、それをすっ飛ばしていきなり案内して欲しいとは普通はあまり言わない。
場所がトイレというならば尚更である。
トイレに案内してほしいなんて、下手をすればとんでもない誤解を招きかねない。
L程の知力がある者が、そういった問題に気付かないとも思えない。
ならば、彼がこう言った目的は一つ……自分と一対一で話をする為である。
だが……万が一、単なる言い間違えや、天然という可能性もある。
単に、自分が気にしすぎているだけかもしれないし、もしかするとそれ以上……なるべく考えたくない展開もありえる。
そこで、Lにカマをかけたのだ。
「やっぱりでしたか……今のでやっと確信できましたよ」
「……私としたことが、迂闊でしたね」
他に何か目的があるんじゃないか。
思い切ってそう尋ねる事で、ユーノはLの真意を確かめにかかったのだ。
結果は見事成功……Lには他に目的があることが判明した。
他の誰かに聞かれてはまずい、自分にだけ話したい事があるのだと。
「まあいいでしょう、説明の手間は省けましたしね。
とりあえずユーノさん、廊下で立ち話では流石に話を聞かれる可能性があります。
どこか、近くにいい場所はありませんか?」
「それでしたら、すぐそこにあります」
ユーノは少し離れた位置にある部屋の扉を開け、Lを中に招き入れる。
この時間ではあまり使われる事の無い、小さな給湯室。
ユーノはLが中へと入ったのを確認して、鍵をかけた。
これで条件は整った……一対一で会話する事が出来る。
支援
「余り話が長引きますと、司書の皆さんに怪しまれます。
なので、手っ取り早く話をさせていただきます。
私はこのミッドチルダにおいて、これまで同様に探偵として動きたいと思っています、しかし。
この世界に来て間もない私には、人脈は皆無です……これでは依頼も殆ど入らないでしょう。
そこで、ユーノさんにお願いがあります。
ユーノさんは無限書庫の司書長として、管理局の様々な部署に顔が知られています。
顔の広さは相当のものでしょう、ですから。
私の方で、当面の衣食住の方が整いましたら、連絡をしますので、局内全体に私の事を話してもらえませんか?
解決できない事件等があったら、いい探偵が一人いるから回して欲しいと」
「……それはつまり、僕に仲介役をして欲しいという事ですか?」
「それが私にとっては一番理想的な形です。
ですが、ユーノさんの忙しさも分かってはいますので、全部が全部とは言いません。
やってもらうのは、最初の内だけでいいんです。
私の名前がそれなりに知られるまでの間だけで」
Lの主な頼みと言うのは、自分の事を紹介・仲介してほしいという事であった。
今はまだ、昨日の空港火災を解決に導いたという実績しか自分にはない。
ゲンヤやはやて達、昨日の現場に居合わせた者達の間では確かに噂にはなっているだろう。
しかし、局内全体に名前が知られているかいないかと聞かれれば、答えは後者。
しっかりとした土台を作り、管理局との太いパイプを持つ為には、それでは駄目なのだ。
だからLは、ユーノに頼んだ。
管理局内に広い人脈を持つ彼は、宣伝をしてもらうには一番の適役なのだ。
「まあ、他にも捜査協力をお願いする可能性があるにはあります。
事件解決のため、無限書庫の資料をお借りしたいと思うときは必ず来るでしょうから」
「成る程……だから一対一にしたんですね」
「正解です、鋭いですね」
ここでユーノは、Lの真意を察する。
捜査協力を頼むかもしれないという言葉が、この状況を作った理由に直結したからだ。
まず、何故Lは一対一で話をしたかったのか。
紹介役や捜査協力の依頼というのは、別に書庫内でも十分出来る話である。
しかし、それをしなかったのは……他の司書達に話を聞かれたくなかったからだ。
Lの言うとおり、無限書庫の資料と言うのは、事件次第では解決の強力な武器と化す。
だが、それと同時に……強力な犯罪の武器ともなりえる可能性がある。
まだ見ぬ未知のロストロギアに関する情報や、その取り扱い方に関してなど、危険なものも多いのだ。
「万が一、司書の中に犯罪者に加担している者がいれば、その人は私を脅威と思うかもしれません。
確実に、何かしらの対策を打つでしょう……そうなれば厄介です。
それを防ぐ為に、ユーノさんだけにこうして話をしたんです。
あなたは信頼できそうですから」
ユーノマジ優秀支援
無限書庫内に悪人がいた場合、自分の存在を知られれば対策を立てられる。
それを防ぐ為に、Lはユーノだけにこうして話したのだ。
しかし……信頼しているからというのは、はっきり言えば嘘である。
ユーノも、その事は分かっていた。
出会って間もない人間をすぐに信頼する探偵など、普通いる筈が無い。
疑う事が彼等の仕事と言っても、過言ではないのだから。
つまりこれは、別に真意があるという宣言。
それに気づけと言う事であり……ユーノは、すぐに気づく事が出来た。
Lの目的の一つは、釘を刺すことだと。
(もしも司書長の僕自身が悪事に加担しているとなれば、あえて暴露する事で牽制になる。
自分は疑いをかけているんだと、下手な動きが出来ないよう抑止力を働かせられる。
それにこれは、他の司書達をよく見張れっていう意味にもなる。
万が一、Lさんの言うとおりな人がいた場合は、司書長の僕にそれを止める責任がある。
それが出来なかった場合、僕も当然上司としての責任があり……上手く考えられてるな)
敢えて情報を相手に晒し、逆にそれで動きを封じる。
かつてLが夜神月に対しても実行し、彼を精神的に追い詰める事に成功した、効果的な攻めである。
ユーノもまた、その攻めの良さに感心せざるを得なかった。
これでは、対策を立てるのは難しくなる。
何せ、自分達は疑われているのだと堂々と宣言されているのだから、下手な動きを見せる事が出来ない。
見せれば即座に手を下すという、強烈な意思表示をされているも同然なのだから。
尤も、自分達には何の落ち度もないのだから、そう心配する必要は無いのだが。
それに……これは釘を刺す事よりも寧ろ、もっと重要な目的がある問いだという事に、ユーノは既に気付いている。
「……僕の事を試してみた結果はどうでしたか?」
「その言葉が聞けた以上、合格ですね」
Lのもう一つの目的。
それは、ユーノの知力を試す事であった。
期間限定といえど、仲介役として選ぶ以上はそれなりの実力が無ければ困る。
何でもかんでも依頼を持ってくるのではなく、依頼をそれなりに選んで欲しいからだ。
「正直に言うと、私はまだ管理局に不信感を抱いています。
これだけ大規模すぎる組織となると、どうしても穴はあるでしょうからね。
私のいた世界でだって、警察や政治家の汚職等はザラでしたし……知らぬ内にそんな悪事に加担する事になれば、最悪です。
ですので、そういう事を防げるように、ユーノさんにそれなりに依頼を選べるだけの実力があればと。
無論、悪事に加担するような依頼であると判明した場合は、その依頼人を罰するつもりでいます。
気分を悪くされたならばすみませんが、これが今の正直な気持ちです」
「……いえ、Lさんの言うとおりです。
確かに管理局内には、黒い噂のある人はいますし……それに……」
トップが真っ黒管理局支援
ユーノは、かつての闇の書事件の事を思い出す。
彼自身の知り合いにも一人、犯罪行為に手を伸ばしてしまった局員がいた。
闇の書を止める為にとはいえ……その局員は、少々行き過ぎた手段をとってしまった。
今はその罪を償い終え、二人の使い魔と共に故郷で平和に暮らしているが……
ここでユーノは、軽く頭を振って考えを消す。
昔の事を懐かしむよりも、今はLへの対応を考える方が先である。
「……いえ、何でもありません。
Lさん、話はこれで全部ですか?」
「はい、お手数おかけして申し訳ありませんでした……それで、どうでしょうか?
無論、無償でしてほしいなどと言う馬鹿な事は言いません。
報酬は山分け……いえ、ユーノさんの方が多めに取ってもらってもこの際構いませんが」
「……」
果たして、Lに協力するか否か。
ユーノは決断を迫られ、しばし考える。
いきなり自分の実力を試され、管理局への不安をぶちまけられと、物事を頼むには失礼な態度。
普通ならば、当然断るのだが……どういう訳か、不思議とそんな気が起こらなかった。
それどころか……ここまでLと会話を交わし続けている内に、彼の中にはある思いが芽生えつつあった。
(参ったなぁ……見てみたくなっちゃったよ。
Lさんが実際に、事件を解決する所を)
ユーノの心は高ぶっていた。
Lのその高い知力を以てすれば、きっと相当なことが出来るに違いない。
彼と組めば、面白い仕事が出来るのではないかと思えてしまったのだ。
それは、かつてLと行動を共にしていた、南空ナオミや駿河秀明達が抱いた気持ちと全く同じであった。
ユーノは、己の好奇心が高まりつつあるのを感じながら……ゆっくりと、Lへと答える。
「よろしくお願いします、Lさん」
ユーノはLへと協力することを決めた。
彼の助けとなる為、彼と共に戦うために。
互いに手を差し出し、しっかりと握手を交わす。
「ありがとうございます……ユーノさん」
最強タッグの完成支援
以上、投下終了です。
まずはLBさん、改めまして謝罪とお礼をさせていただきます。
割り込むような形になってしまい申し訳ありませんでした。
そして、投下を譲っていただき本当にありがとうございました。
今回は見ての通り、ユーノがLの仲介役になるという話でした。
Lは個人でも確かに凄いは凄いけど、やっぱりワタリやナオミ達の様なパートナーがいてこそだと思いまして。
適役だったので、ユーノとのタッグを結成させていただきました。
支援してくださった方々、本当にありがとうございました。
GJ!
これで無限書庫という超重要施設とのコネできたな、ユーノと組めたし。
さすがL、考えてるぜ。
事件が待ち遠しい!
GJ!!です。
管理局の知能とタッグか・・・Lはやっぱり考えてるなぁ。
後は、管理局から信頼を得るだけか。レジアスあたりは仕事を頼みそう。
陸の戦力と海の戦力の差を見てLはどう感じるんだろう?
>145
いえいえ、どう致しまして。投下前に書いておきたい事もあったので。
そしてユーノに出番がまわってきたのが嬉しくてGJ
……さて。
“投下の再予約をする”前に、下記を行う宣言をします
1.投下時にトリを再変更
2.章の最後に〔かいせつこーなー〕を設置。内容は……名前通りです(汗
二番が嫌な方は、お知らせ下さい。抜きますから。
OKなら、ご支援を。
そして最後に注意書きを。
※これは予告の前半からの続きです。
支援
支援いたします
支援
ご支援ありがとうございます。
それでは、
0:40という微妙な時間に、投下します。
第零章 繰り返さないために
〜Warp to the Magical-Dome〜
――これは、とある未来のとあるところに住む、アリスのお話です。
‡ ‡ ‡ ‡ ‡ ‡ ‡ ‡ ‡
『――おかあさん! おかあさんっ! 死んじゃやだぁっ! おかあさんっ――!』
――腕の中に抱き留められているのは、自分の母。
わたしの為に沢山の人を傷つけ、殺してきたおかあさん。
わたしが普通の人間でないことを知り、自分の命がもう長くないことを知り、それでもわたしに何かを残そうと、たった一人で必死に戦い続けていたおかあさん。
わたしからそれを隠す為に、自分のことを嫌いにさせて悲しまずに済ませる為に、必死で冷たい態度をとっていたおかあさん。
わたしが自分の娘であることを忘れてから、昨日開いた自分の誕生日まで、ずっと笑いかけてくれたおかあさん。
その日の夜に、喋らず、歩かず、何の表情も映さず、考えることさえできず、ただ起きているだけの状態になったおかあさん。
そして今日、軍に包囲され、逃げ場をなくし、
何もできないはずなのに、わたしをかばって体中を銃弾で貫かれ、最期にわたしの名前を呼んで死んでいった、大好きなおかあさん。
『……もうわがまま言わないから! わたしのこと思い出してくれなくていいから! わたしのことなんか好きになってくれなくていいから! 生きててくれれば、それだけでいいから! ……こんなの、こんなのやだぁっ!』
周りの状況も、何もかも忘れて、ただ泣き叫ぶばかりの自分。
誰がどんなに頑張っても、決して変えることのできなかったであろう結末。
『……いいこと……教えてあげよっか』
――眼帯の少女が、こちらの耳元に口を寄せる。
みんながみんな、ただ頑張っただけで。
どんな手を使っても、守りたい、助けたいと、ただそう思って動いていただけで。
『――あんたのお母さんを殺したのは、』
残ったのは、後悔だけ。
こんな筈じゃなかったという、後悔だけ。
『■■■よ』
† † † † † † † † †
「っ――!」
まず目の前に映るのは、暗い天井。
上体を起き上がらせて目元を拭うと、やはり涙がこぼれていた。
それにしても、とセラは荒れた息を整えながらも不思議に思う。
……どうして、あんな夢を……
ずっと思い出さないようにしていたことを夢に見てしまい、さっきから体の震えが止まらない。
当分眠れそうにないので、自分の体を掻き抱きながら、ベッドから抜け出る。
ベッドの下に隠してあるカバンを拾って外に出ると、鉛色の雲が視界に入った。
かつて存在していたアフリカという大陸の一部であった、無数の島々のうちの一つ。直径一キロにも満たない小さな島の隠れ家。
いつも自分が訓練している、その島の端にたどり着き、カバンを開けて足元に置く。
中に入っているのは、十個の透明な正八面結晶体。
『Dimension Destorting Device』――通称D3。『光使い』である自分専用の武器にして、母が残した唯一の形見。
それらを見つめ、思わず小さく息を吐く。
「おかあさん……」
冷たくあしらわれ続けた、自分の娘が誰だかわからなくなるまでの日常。本当の親子として過ごした、最期の時間。
思い出したくないことのはずなのに、夢を見てからずっと、頭から離れない。
……どうして……
自分の見た夢に戸惑いつつ、セラは砂浜の上で訓練を開始した。
† † † † † † † † †
空中で上下逆さまだった体を反転させて、砂浜の上に着地。
同時に、訓練開始から今まで空中に置き去りにしていた右手用の騎士剣『陰』を掴み、すぐさま不安定だった体勢を立て直す。
上に放り投げてから落下を続けていた左手用の騎士剣『陽』を、視線も向けずに左手を上に掲げて掴み、ディーは息を吐いた。
両の騎士剣を鞘に納めようとして、ふと思い返す。
……どうして、あんな夢を……
血の夢は幾度となく見てきたが、過去を夢に見ることはあまりなかった。
結局それで目が覚めて、やむなく訓練を始めたものの、未だに夢のことが頭から離れない。
『光使い』の事件、その始まりから終わりまで……それが夢の内容だ。
あれは本当にどうしようもないことだったし、所詮過去は変えられない。心の底では確かに「こんな筈じゃなかった」と思ってはいる。
しかし、後悔したって何も始まらない。“罪を背負って生きていく”と、メルボルンの戦いで決意したその思いには一点の曇りもない。
それなのに、何故今更あんな夢を見たのだろうか。
酷く、胸騒ぎがする。
……何か、大事なことでも忘れたのかな……?
得体の知れない不安を抱えつつ、ディーは今度こそ両の騎士剣を鞘に納めた。
† † † † † † † † †
とあるシティ跡地の、とある地下。
底面積の広いかわりに高さの低い、円筒状の空間。その中心に浮かぶ青き宝石は、世界中に光の根を伸ばしていた。
数多生やした内、最も長い根の先端から、二人の人間の情報が本体に届けられ、
――宝石の鳴動が一際大きくなり、宝石の内からほとばしった青白い光が、空間を埋めていった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
二本の剣が鞘に収まる瞬間の、澄んだその音がまるで何かの合図だったかのように、物語は動き出す。
‡ ‡ ‡ ‡ ‡ ‡ ‡ ‡ ‡
西暦二一九八年、十一月二十六日の夜一時過ぎ。
かたや最強騎士、かたや賢人会議の参謀から教わった訓練法をもとに、二人の魔法士が別々の場所で自主訓練を……一方は始め、また一方は終えたとき、それは起こった。
((高密度情報制御感知))
自分自身が淡く発光する現象が。
「「え?」」
それも、二人同時に。
恐らく発光と同時に出来たのだろう、足元には見た事も無い円形の論理回路が浮かび上がっている。
二人は直ぐさま身構えるも、論理回路がゆっくり回り続ける以外は何も起こらない。
暫くして発光現象が収まり、論理回路も消え失せる。
更に時間が経ってから僅かに安堵の息を吐いた二人は、自分達の拠点へと足を向ける。賢人会議の参謀、それが駄目ならリーダーに連絡するために。
半ば焦りながらも同じ考えで、互いに正反対の場所から、拠点となっている賢人会議の隠れ家まで一直線。
その途中で、再び発光した。今度は先程より強く。
論理回路も現れ、先程より少し速く時計回りにまわりだす。
そして二人は、気付く。
目の前の隠れ家では何も起こっておらず、それを挟んだ向こう側に同じ情報制御が発生している事に。
まず銀髪の少年が動き、それに反応して金髪の少女も動く。
二人の足元には、まるで影のように論理回路がついてくる。
行き先は向こう側の情報制御、こちらへ向かって来るその発信源。
正体不明の現象に対する恐怖感と戦いつつ、たどり着いた先にいたのは……
「……セラ――?」
「ディ、ディーくん――?」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
――アリスは突然、二人に別れてしまいました。
† † † † † † † † †
「そんな、セラまで……!」
「ディーくんもなんですか――?」
驚愕している間にも互いの発光は更に強まり、二人の姿が朧げになっていく。
そして互いのI-ブレインは、互いの存在がこの場からゆっくりと掻き消えつつある事を無情に宣告する。
……こんな……!
もはや、真昼達の所へ行く間もない。
どうすれば、とディーは一瞬隠れ家に視線を向け、
「ディーくん――!」
向き直った先には、こちらへ必死に駆けてくる、今にも消えそうな少女の姿。
「セラ――!」
せめてもの思いで、互いに駆け寄りつつ、手をのばす。
……あと少し……!
手が触れるのを確認するより速く、光は目の前を白に染めていき……
† † † † † † † † †
「あれ……?」
眼前に映る光景に、首を傾げる。
鉛色の空と、砂浜と、海。ただそれだけ。
「おっかしいなあ……気のせいかなあ」
さっきまで、カーテンごしに強い光がさしていた筈なのに。
「ま、いっか」
きっと、夢だったんだ。起きた後も寝ぼけてるせいで、見えた気がしただけだろう。
そう判断した魔法士の男の子は、カーテンを閉めた後、再び眠りについた。
‡ ‡ ‡ ‡ ‡ ‡ ‡ ‡ ‡
そうして。
世界を騒がせるテロリスト「賢人会議(Seer's Guild)」の主戦力たる、
『双剣』デュアルNo.33と、
『光使い』セレスティ・E・クラインが、
誰にも知られず、この世界から消え去った。
最後に、想い人の手に触れることも叶わずに。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
――二人のアリスは引き離され、気がつけばお互い別々の知らない場所。
しばらくすると、それぞれの前に一匹ずつ白兎が走っているのが見えました。
‡ ‡ ‡ ‡ ‡ ‡ ‡ ‡ ‡
「「………あれ?」」
手をのばしたままの体勢で、二人の魔法士は一瞬硬直するも、即座に立ち直って状況整理を開始した。
ただし、目の前にいたはずの想い人は既にいない。
半円球状に展開された広大な結界。その中心を挟み、それぞれが両端に位置している。
† † † † † † † † †
何度も深呼吸してある程度落ち着きを取り戻し、これまでにあった事を頭の中で反芻する。
……えっと、確か……
魔法の練習中にいきなり身体が光りだして、足元に変な論理回路が出て来て、暫くしたら収まったから急いで真昼さんの所に走っていって……
途中でまた、と思ったら、隠れ家の向こう側でも同じ事が起こってるみたいで、それが急に動き出したからわたしもそれに向かっていって……そしたら……
「……そうです! ディーくん――!」
周囲を見渡すも、そこは無人の街。街だというのに人の気配が全くしないというのは、なんとも不気味だ。
周りをビルで囲まれたそこに突然一人ぼっちにされるのだから、尚更である。
再び深呼吸。恐怖と混乱を打ち払うように、自分の状況を確認。
I-ブレインは……問題無し。カバンもしっかり肩にさげている。
訓練の時に持って来ていたD3も、幸い全て閉じた空間の中。これならいざ戦闘になった時もある程度は対処出来る。
少しパニックから遠ざかり、
……え?
I-ブレインが、空間の奇妙な歪みを感知していた。
もう一度周りを見ると、周囲の風景が色褪せて見える。D3を操作して上空を調べれば、その歪みがドーム状に広がっていることがわかる。
……いつの間に……!
広範囲の隔離空間。いくら空間を操る光使いでも、ここまで大規模なものは作れない筈だ。
だが、それ以外は全くといっていいほどに何もない。試しにD3で広範囲を探索してみると、
(質量物体を感知)
ここから少し離れたところで、生物らしき質量物体の反応が、四つ。だがいずれも銀髪の少年のそれではない。
さらにその内の二つは、自分のいる場所とは反対側の方へと高速で飛んで行く。この距離だと追いつくのは難しいだろう。
残る二つは、まだ動かない。
間違いなく、誰かがいる。恐らく、魔法士の類が。
右も左もわからない状況。出会えば戦闘になるかもしれないし、自分よりもずっと強いかもしれない。
――だが、それでも。
……このまま立ち止まってちゃ、だめです!
一つ頷き、セラは反応のあった場所へ向かった。
† † † † † † † † †
「……ここは……」
全く見覚えのない場所。すぐ側にいた少女も忽然と姿を消している。
更に、いつの間にか周囲の風景が色褪せて見える。
空間制御の類だろうか。それにしては大規模過ぎる。
それに、既に魔法が発動しているのなら、もう自分の身体にも影響が出ている筈だ。
I-ブレインをチェック……異常無し。なら次はコンディションチェック。両腰に差した騎士剣の柄に手を触れ、
(コンディションチェック終了。異常無し)
肉体の方も問題無し。本当に訳がわからない。
シティからの襲撃か、もしくは別の何かか。一体何がどうなっているのかわからないが、まずはこの空間から脱出しなくては。
上空を見上げ、両の騎士剣を抜き放とうとして、
「――え?」
正面の空から何かが飛んでくるのが、視界に入った。
咄嗟に林立する建造物間の細い路地に滑り込み、壁から顔だけを半分出して様子を伺う。
ウィッテン・ザイン式支援
……あれは……
I-ブレインの助けを借り、建造物の屋上を跳躍して移動するそれを視認する。
何故か犬の耳らしきものを付けている、自分よりも一つか二つほど年上と思しき少女。
その腕の中に、これまた何故か死んだように眠っている、小さな金髪の少女が……
……セラ?
自分のよく知る少女かと目を凝らすが、すぐに違うと判った。
黒いマントの下はこれまた黒を基調としたレオタードに近い服装。なにより髪型はポニーテールでなく、戦闘の時に悪魔使いの少女が結ぶようなツインテールだからだ。
女性の方は抱えている少女に心配そうな瞳を向けつつ、こちらには全く気付いていないのか、そのまま上を通り過ぎて行く。
少女の様子から、少なくとも余り良い事態ではないことが容易にわかる。
……あの人には悪いけど、接触すれば何か聞き出せるかも……
周囲を見渡すも、やはり近辺に人はいない。ディーは即座に判断を下し、今度こそ騎士剣を抜き放ち、
(「身体能力制御」発動。運動速度、知覚速度を五十三倍に定義)
追跡を、開始した。
† † † † † † † † †
やっと見つけた。そう思った途端、風景ががらりと変わった。
「……え?」
それまで色褪せて見えていた周囲のあらゆる物が、一瞬で元の色を取り戻した。
更に、そこには存在しなかったはずの人や、セラにとっては本や画像でしか見たことのない、前時代の産物たる「自動車」が次々と現れる。
「わ、わっ!」
慌てて車道から一般道に走ってたどり着くと、背後でクラクションが鳴った。
一体何が起こったのか。空間を認識するセラのI-ブレインは、既に解答を導き出していた。
場所が同じだけで全く違う、『隔離された』空間から、元の空間に『戻って来た』だけ。勿論、周りの人達は全く気付いてない。
突然の空間転移、正体不明の情報制御、周囲の人達が皆東洋人、出てきた乗り物は全て昔のもの。
ここまでくると、パニックしない方がどうかしている。
……ホントに、何がどうなって……
さっきの空間には他にも何らかの効果があったようだが、とにかくそんなことを考えるのは後回し。
……さっきの人は……
周りが大人ばかりなので、見つけるのは容易だった。
栗色の髪を小さく二つに分けた、自分よりもほんの少しだけ小さいぐらいの女の子。
その肩には……少し遠いのではっきりとは見えないものの、細身の小動物がちょこんと乗っかっているのが見てとれる。
見た目からして、危険はなさそうだ。
といっても、油断は出来ない。さっきの結界にしても、あの少女が魔法士である確率は高いのだ。
だからといって、この状況を引き起こしたと思しき人物を目の前に、そのまま何も聞かずにいるという訳にはいかない。
電飾煌めく街の中、力無く歩きだした少女へ向けて、セラは再び走り出した。
† † † † † † † † †
活気を取り戻した街を見下ろし、ディーは安堵の息をもらした。
いくら少女よりこちらの方が速くても、道路から走っていては、建造物間を跳躍する対象は追跡しにくい。
先程の様子からして、つけられているとは思ってもないだろうことを推察。
そうしてこちらも建造物の屋上へと壁を走ってのぼった瞬間、巨大な結界が解かれたのだ。
あんな人込みの中で騎士剣を手に走っていたら、いくら一般人の視覚でとらえられない速度で動こうと絶対に目立つ。場合によっては尾行がばれていたかもしれない。
勿論、幸いではある。だが疑問は一層深まるばかりだ。
先程の情報制御は何だったのか、ここは何処なのか、あの二人は何者なのか――なにより、セラはどうなったのか。
最後が一番気掛かりなのはもはや言うまでもないが、閑話休題。これ以上立ち止まっていたら、今度こそあの少女を見失ってしまう。
あの身体能力からして魔法士なのだろう。結界内で動いていた時点で、この奇妙な事態と無関係であるとも思えない。
戦闘になる可能性こそ高いが、そう簡単には負けないだろうし、いざという場合も逃げてしまえば、深追いはして来ないだろう。
……追跡、続行。
電飾煌めく街を眼下に、双剣の騎士は曇り無き夜空に跳躍する。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
――二人のアリスは、それぞれ白兎達を追いかけて行きました。
〔かいせつこーなー〕
フィア「リリカル・ブレインの」
李 芳美(リ・ファンメイ。以下ファンメイ)「かいせつこーなー!」
天樹 錬(あまぎ れん。以下錬)「ここは、名前通りのリリカル・ブレイン解説コーナーだよ」
ヴァーミリオン・CD・ヘイズ(以下ヘイズ)「会話形態になってるが、まあよろしくな」
エドワード・ザイン(以下エド)「……おねがい、します?」
フィア「はい、そうですよエドさん」
錬「……フィアがエドを撫でるのが、なんだか様になってるね」
ファンメイ「わたしも撫でるー!」
ヘイズ「こらこら、そこまでにしとけ。……ったく、ファンメイだけでも大変だってのに」
錬「あははは……とりあえず、話を進めようか」
フィア「そうですね」
エド「はじめ」
ファンメイ「それで、どうしてこんなコーナーが置かれたの?」
錬「ウィザーズ・ブレインを認知してもらってない人達の為、小難しい僕達の世界に関して色々解説しようかな、って考えたのが始まりだってさ」
ヘイズ「今は作者の筆力不足を補うのがメインだ。テンポよく進めたいんだとよ」
ファンメイ「あとはギャグとリクエスト……かな?」
フィア「……じゃあ、私達W巻の主要人物が選ばれたのは、なんでですか?」
ヘイズ「俺達でなきゃこのコーナーを元気に、尚且つ面白おかしくできないからってのが半分、
……そんな面白い面々に出番がないのが可哀相だからってのが半分だとよ」
錬「……まあ、出てこない人達よりはましかな?」
フィア「錬さん、それは言っちゃだめです……」
ファンメイ「はーいはいはい、気を取り直して!」
エド「つぎ」
錬「あ、じゃあ早速だけど、こっちの世界の話……いいかな?」
ファンメイ「いいとも!」
フィア「セラさん達がタイムスリップしたのは西暦二一九八年十一月二十六日……こちらの時系列ではX巻とY巻の間ですね」
錬「じゃあ、あっちの時系列は?」
ヘイズ「四月二十六日……7話からだとよ。これまた中途半端なところからスタートだな」
ファンメイ「ちょうど半日の時差があるけどね」
錬「ふーん……エド、次お願い」
エド「つぎ」
錬「えっと、これは話の解説だね。まずは論理回路の事なんだけど……まあ、魔法陣みたいなものかな」
ヘイズ「そのかわり、原子一個単位の微調整が必要だ。期待通りの効果をあげるには手間がかかる」
ファンメイ「そーゆーヘイズは指を弾くだけで作れるよね」
フィア「ヘイズさんは特殊ですから……」
ヘイズ「で、オレたち魔法士にはあれが論理回路としか認識できなかったわけだ」
エド「つぎ」
錬「あの二人、性格の割にあっさり動いてるんだけど……」
フィア「そういえば……」
ヘイズ「状況を把握するためだ……ってか、普通ならそれがベストな選択だぜ? まあ、今回の場合はベターだけどよ」
ファンメイ「知らない人にはついてっちゃいけないんだけど……いきなり攻撃されたらどうするんだろう?」
ヘイズ「騎士の方はリスクをちゃんと考えて行動してるだろうよ。それに、多少のピンチは力ずくで突破するんじゃねーか?」
錬「まあ、『規格外』だしね……」
フィア「じゃあ、あっちは心配なさそうですけど……セラさんは?」
ファンメイ「……あー……あれは、ちょっと……」
ヘイズ「半分くらいはパニクってんだろーな。気付くのは相手に出会ってから、ってとこか」
フィア「大丈夫でしょうか……」
錬「フィア……作者の遅筆を心配した方がいいと思うよ?」
ファンメイ「確かに」
エド「つぎ」
フィア「こちらの魔法とあちらの魔法は成り立ちとかが色々と違いますけど……どうするんですか?」
ヘイズ「いずれ魔法士側の視点で描くんだとよ」
ファンメイ「魔導士側では?」
錬「今のところないってさ」
ファンメイ「なんでー?」
エド「……おわり」
ファンメイ「ちょ、ちょっとエド! まだわたしの質問終わって……」
フィア「ファンメイさん、その質問はNGだそうです」
ファンメイ「えー!」
ヘイズ「まあこの通り、答えられない質問したら裏方役のエドワードから強制終了がかかる。気をつけろよ」
錬「だいたいこのコーナー、初回から長すぎだって。話の二割以上占めてどうすんの」
ファンメイ「むー……」
錬「というわけで、今回はここまで」
フィア「次回のコーナーでお会いしましょうね」
エド「ばいばい」
投下終了。
皆さん今晩は。リリカル・ブレインを略しました、LBです。
略した理由は
>>107に書いた通りです。決して“元がWBって略してるから”とかじゃありません。
まず、肝心のなのは達が台詞一切無しであることにお詫び申し上げます。
……大丈夫です、次回からちゃんと絡みます。
そして〔かいせつこーなー〕、如何でしたか? あの辺りは絶賛暴走中ですので、制止させたいのでしたらお早めにご連絡下さい。
最後に。
予告の後書きにも明記しましたが、自分は将軍並の遅筆職人を自覚しております。
今回の投下が早かったからといって、油断しないでください。
溜めてたやつを推敲して投下しただけですから。
長くなりましたね。それでは、また次回。
話自体は面白くなりそうで期待大なんですが……正直〔かいせつこーなー〕 が……
全てをぶち壊しよなw
ご指摘ありがとうございます。
了解です。以後、封印します。まとめのときも“あれ”は抜いといて下さい。
正直作品投下以外で発言しない方がいいと思う
>>165の語りとか作家気取りとしか思えないし
LBのひとGJ
続きが楽しみです。
ただ、セラとディーは「曇りなき空」には反応しないのですか?
>>145 GJ!です。
六課との絡みも楽しみです。
>>147 ユーノが仲介役を引き受けるとなると、ヴェロッサあたりが依頼人として
絡んできそう。聖王教会やカリムの予言など、Lの推理力と活躍に
期待しますね。
17:10くらいからスバゲッチュ投下したいんですが予約とか空いてますねッ!
む・・・じゃあ自分はそのあとにNWクロスを。
スネークはアナウサギの盲腸糞の食糞を真似しようとしたり
オロシャヒカリダケをバッテリーが回復する事ができる強者だぜ(でも吸血鬼は苦手?)
では投下を開始します。
とっても軽めの約3000文字、五分割であります。
機動六課オフィス内、職員用食堂のキッチンにティアナはいた。
通路内をとてつもない速度で疾走していく「小さな影」の向かう方向を、行く先々の職員たちか
ら聞き付け、シャリオが全てを分析した結果であった。いくつか見えたそれらのうち、少数が固ま
ってその方に走って行ったらしい。
影の正体がピポスバルどもである、シャリオとティアナが確信するのは早かった。。
幸いなのはそれら「影」の走りがあまりにも速すぎたためか、通りすぎるその姿がスバルである
と知れていないということであった。確認するようだが機動六課はロストロギア関係の事件を迅速
に処理する少数精鋭。そんな部隊の中で、ロストロギアとまではいかないものの、異世界の物品が
暴走したなどと知れたら大不祥事である。
たとえそれが不運な事故だったとしても、世間様はそんなこと知ったこっちゃないのである。と
にかく早くピポスバルどもを捕まえないとマズい。
『キッチン内に四体いるの……ティアナ、気を付けてなのっ!』
「……了解っ」
そこに響くのは、通信で入ってくるシャリオの声だ。正直言って脱力感が満載だが、そんなわけ
で一応は任務である。返事も一応はちゃんと返した。
ちなみになのはとフェイトには、この一件はまだ伝えていない。
ティアナは通信をしようとしたのだが、鬼気迫る表情のシャリオに止められたのである。「はず
かしいしゃしん」とやらを捨てずに保持していた彼女にとって、事情を説明することは例えるなら、
死刑の判決文を自分で読み上げる事に他ならない。
ティアナも一応、それを呑んだ。スバルどもが提示した「ティアひとりで」の指定を無視した場
合、宣言通りそれらが世界中にばらまかれることを懸念してのことであった。上官の名誉を失墜さ
せるわけにはいかない。
「……ところで、料理長はどうしたんですか? あの人が厨房に人を入れるなんて、想像がつかな
いんですけど」
ふと思いが至ってティアナは尋ねた。今ティアナが立つキッチンには、誰の姿もなかったから。
食事の質というものは組織全体のモチベーションにモロに影響する。そのことを考慮してはやて
が整備した機動六課の職員用食堂は、他のそれよりもかなり上質の料理を提供するものに仕上がっ
ている。
それを率いているのがとある若きイタリア料理人なのだが、彼は厨房に人が入り込むのを極端に
嫌う人間であった。ハイレベルな料理人となると、その厨房は彼らの命とも言うべき機密の宝庫な
のだから当然である。それがこうも無防備に、厨房を開放してしまっているのが疑問だったのだ。
ちょw
ト○オさんwww
ジ、エンド老衰死支援
『そっ、それが……』
言葉から勢いが失せていく、シャリオの通信。
しかしそれを遮って、大きな声がティアナの耳に飛び込んできた。
『冗談じゃありませンッ!』
途端に、どったんばったんと向こう側が慌ただしくなる。
『あっ……おっ、落ち着いて下さいなのっ、今ティアナが駆除しに向かってるなのっ!』
『キッチンにネズミが入るなど言語道断ッ!! 離しなサイ、手を離しなサイッ!!』
『は、早く、お願いティアナ……ハッ! そ、そのセッケンで何を……』
『キッチンではッ! セッケンを使いなサイッ!』
『そ、それは私じゃな……うむっ、もぷぅうぅっ! ――』
――それを最後に、通信は途切れてしまった。
状況はよく分からないが、その料理長を何とかおびき出してだまくらかして、引き留めているら
しい。とりあえずシャリオが、なんだかとても大変な目にあっているのだけはわかった。
「……さて、じっくり探しましょっか」
だが早く探し出して、助けてやろうという考えは微塵もないティアナだった。
魔法少女リリカルなのはStrikerS外伝
スバゲッチュ 第二話「風雲! スバル城」 Aパート
自分に忠を尽くした 支援
消毒だぁ支援
こいつ、スタンド使いだッ!
支援
「あーっ、ティアだーっ」
「えっ……あ、ティア、ティアーっ」
そうして暫くキッチン内を歩いていると、ティアナの背後にひょっこりと小さな影が現れた。言
うまでもなく小さなピポスバルたちである。振り向いて確認すると、数は四。
「出たわね妖怪」
「ようかいじゃないよっ、ピポスバルだ……わっ! わわっ!」
口応えされてイラっときたティアナが、クロスミラージュで小さな弾丸を足元にふたつ、みっつ
と叩き込んだ。
「ひっ、ひどいよティア、いきなりっ」
「うるせぇ黙れ」
「はっ、はい……」
うつむいたティアナの周囲にあふれ出す、余りにも重厚なプレッシャーに、ちびスバルどもは一
瞬で口を閉じた。
それを前にして、少女が静かに口を開く。
「……言ったわよね、私? シャーリーの言う事聞いて、大人しくしてなさいって……どうしちゃ
ったのかな……?」
空気が緊張し、底冷えのする恐怖感がピポスバルたちを襲った。
それはあの時、ティアナが上官にお仕置きをくらった時に感じたそれと、全く同じ種の――。
「ひ……ひぃんっ……」
「はわわっ……」
その時の記憶がよみがえったのか、恐怖に震える唇から小さく言葉が漏れてくる。
その小さなシルエットに、ティアナはクロスミラージュの銃口をゆっくりと向けた。
「言うこと聞くフリだけじゃ……意味ないでしょ? だから……」
一拍置いて、宣告した。
「……その頭、冷やしてあげる」
既に涙目になって震えていたピポスバルたちが、蜘蛛の子を散らしたように逃げ出した。
「あっ、コラ! 出てきなさいこのバカ! 他の仲間の居場所、教えなさい!」
呼びかけるも、小さなスバルたちは既に逃走した後であった。もはや聞こえてはいるまい。聞い
ていても恐らく止まることはないが。
「クソっ、拙いわね……キッチン内に隠れる場所はいくらでもあるし、簡単には……」
『おっ、お困りのようね、ティアナ、なのっ!』
呟いたのにタイミングを合わせたように、シャリオから通信が入る。なんだかとても疲れている
様子。
「……料理長はどうしたんですか?」
『グリフィス君にお願いしてきたのっ!』
ティアナはじっとりとした視線を注いだ。押し付けてきたんじゃねぇか鬼め。
『…………そっ、それはともかく、スバルたちを見つけるいい呪文があるのっ!』
「…………」
『う、ううっ、本当なのっ、信じてなのっ』
信頼を失墜させたシャリオが、なんとか説得して呪文を伝えた。
戦場では名前なんて意味がない 支援
呪文は@アンキモAザムデインB僕三つなの さあどれだ?支援
「シャーリーさん……ホントに、これでいいんですか? 簡単すぎません?」
『大丈夫だよっ、きっと引っかかるはずっ……なのっ』
聞き届けたティアナが、そのあまりの単純さに、半信半疑といった様子で尋ね返す。しかしシャ
リオはなんだかとても自信満々。
すると、そこに再び割り込む声が。
『な、なにやってもむだだもーん』
『もーん』
『もーん』
『もーん』
非常にムカついたので、ティアナは策を実行に移すことにした。
要するに居場所が分かれば、弾丸を撃ち込んで周囲ごと動きを止めるだけなのである。バリアジ
ャケットは展開されていたはずだから、物理衝撃で致命的な怪我を負う事はあるまい。
サーチしてクロスミラージュの魔力弾を適当に打ち込めば、気は失わずとも行動の自由は奪える。
要するに一瞬だけでもいい、場所が知れればよいのだ。そしてシャリオのくれた呪文は、それを可
能にするらしい。
ティアナはゆっくり息を吸い込み、シャリオが言った魔法の言葉を、厨房に響かせた。
「こなぁ――――――……」
「ゆきいいいいいいいいー」
「ゆきいいいいいいいいー」
「ゆきいいいいいいいいー」
「ねぇ」
クロスミラージュの銃口を向けて、ティアナは思った。こいつらアホだ。
笑いの神様がなかなか降りて来なくて四苦八苦。遊ぶのも一苦労です(´・ω・)
では次回もスバゲッチュ。
GJ!
>「ゆきいいいいいいいいー」
>「ゆきいいいいいいいいー」
>「ゆきいいいいいいいいー」
>「ねぇ」
分かるwww それはつられるwww
GJ! 最後の台詞に吹きましたw
GJ!相変わらずニヤニヤさせてくれる内容ですね!
ピポスバルは欲しい(図々しい人)
いかん、この名作のあとの投下/怖いかも・・・
この後の昴氏の投下の後、星矢クロス投下して宜しいでしょうか?
GッJッ!!
もうね、ピポスバルどもがいちいちアホカワイイのなw
GJ!!
毎回毎回ピポスバルの可愛さに悶えてます、もう最高っすよ。
>>194 支援、冗談じゃなく音速の拳がなのはたちに襲い掛かるw
投下しますが、いいでしょうかー。
NWになのはが出ていたら、という感じのコネタです。
ええい、もう我慢できない、ヒャッハー!!
砲撃少女ウィザードなのは(ナイトウィザードクロス)
ある日の朝。
空は雲ひとつない青空であり、日差しが登校する児童達を祝福するように照っていた。
そんな中を―――駆け抜ける少女が一人。
濃い栗毛をツインテールにした可愛らしい小学生だ。
「どいてぇぇぇ――――ッ!!」
少女が叫びながら談笑する児童達をかき分け、突き進んでいく。小学生達は一瞬驚きながらも、すぐに安心したようにほっと胸を撫で下ろした。
「なんだ高町ちゃんか」
「今日は学校行けるといいね〜」
何時ものことだ、という感じの世間話。
少女――高町なのはは走る。運動音痴というのが嘘くさい程高速で。世界記録保持者も真っ青の猛スピードで走る、走る。
オリンピックにでも出たほうがよさそうだ――。
不意になのはの目に親友二人の姿が飛び込んできた。
アリサ・バニングスと月村すずか――金持ちの娘二名。だからなんだ、であるが。
「あ、なのは、おはよー」
アリサの元気一杯の挨拶。相変わらずテンションが高い
「なのはちゃん、今日は学校行けるの?」
すずかの心配そうな問い。相変わらず優しい。
「うん!じゃ、先に学校に―――」
なのはが言いかけたそのとき、脇の道から飛び出してきた漆黒のリムジン――窓が外から覗けない様になっている代物だ――が、なのはを、
見事に吹っ飛ばした。
柊力 支援
「ってにゃああああッ!!」
お星様になりかけたなのはは、頭から道端の茂みに突っ込んだ。
吃驚して立ち止まるアリサとすずかの前で、リムジンの窓が開いた。中から覗くのは、銀髪の人形のように容姿の整った少女だ。
漆黒のドレスを身に纏っているからか、神秘的な感じすらする少女だった。
少女が、口を開いた。
「こら、コイズミ、やりすぎですよ。私はもう少し、フレンドリーにぶつけるだけで良いと……」
「車ぶつけるのにフレンドリーも何もなぁぁ――いッ、なの!!」
なのはが、ガバァ、と起き上がり叫んだ。
不死身かと思えるほど無傷だった。流石御神流の親父と兄と姉を持つだけある。
「ところで高町さん」
銀髪の少女がにこり、とささやいた。
「な……なんですか、アンゼロット……さん」
アンゼロットがうふふ、と笑った。楽しそうな笑みだ。
「やっと御自分の立場がわかっていただけたようで嬉しいですわ。柊さんとは一味違いますね」
小声でなのはが呟いた。
心底嫌そうな顔で。
「言わないと後できつい仕事押し付けるくせに……」
「今何かおっしゃいました?」
なのはは顔を上げ、
「いえ、何も!」
天使もイチコロの、宇宙最高の笑顔だった。高町なのは9歳、かなり頑張った。
よく見ると顔が引きつっているが。
「では、私のお願いに、はい、かYES、で答えてくださいね?勿論、拒否権はありませんよ」
アンゼロットの、慈母の如き微笑み。
う、となのはが呻き、下を向いた。
嫌だと言っても、どうせこの<世界の守護者>は自分をこき使うのだろう―――。神々しいくらい、いい笑みを浮かべて。
ああ、何でウィザードなんかになったのだろうか……。
思考は限りなくネガティブな方向へ転がり落ちていく。
「神様……どうして私は普通に学校に行くことができないんですか……?そりゃあ、ウィザードなんかしてますけれど……」
なのはの呟きが、虚しく宙に木霊した………。
なのはを乗せ走り出すリムジンを見ながら、アリサが呟いた。
「あのー、あたしたちは放置?」
「そういうこともあるよ、アリサちゃん……」
慰めになっていない。ただ、アリサは友達の身を案じた。
(なのは……無茶、しないでね)
多分無理だが。
ウィザードにとって世界の危機など日常 支援
アンゼロット宮殿内部、客室。
そこに――男が一人、所在無げに椅子に座っていた。体格のいい、長身の男だ。
男の名は、柊蓮司。世界を幾度と無く救ってきた歴戦のウィザードであり、高レベルの魔剣使いだった。
「……アンゼロットの奴、朝っぱらから他人を拉致しといて放置だと……?くそう、ふざけやがって」
もう少しで学校に行けたのに――と柊は一人ごちる。
そう、この男――柊は現役の学生なのだ。学校に行けそうだったというのに、アンゼロットによって拉致されたことによって、
今日は欠席扱いになってしまったのである。
自分の単位がまた一歩、危うくなったことを自覚しつつ、柊は溜息をついた。
そのとき、ノックの音が客間に響き――ドアが、開いた。
入ってきたのは――赤毛の長髪の少女。
その少女に、柊は見覚えがあった。
「柊蓮司……出番」
戦の始まりを、告げる一言だった。
赤い月が、昇っていた。
血で染めたような真紅のそれに、なのはは顔を顰めた。
「嫌だなあ……月が赤いなんて」
高町なのはは、皆を守りたい、その一念のみで戦うウィザードだ。それ以外に、世界の敵エミュレイター(侵魔)と戦う理由などなのはにはない。
だから――今、目の前にいる敵を許すことは、なのはには出来なかった。
月匣(げっこう)――赤い月を伴う結界を発生させているのは、地平線を埋め尽くすほどの数の子鬼の群れだ。
見慣れた海鳴郊外――緑溢れる森林だ――の風景を埋め尽くす子鬼の群れを前に、なのははビルの屋上で息をはいた。
このままでは、海鳴市に鬼が入るのも時間の問題だ。
そうなれば――無関係の人々が犠牲になる。
自らの結界――ウィザードなら誰もが持つ結界、月衣(かぐや)に腕を突っ込む。
何もないかに見えた空間から、巨大な銃器が引き抜かれ、顕現した――なのはの身長をはるかに上回る長砲身/ごつい機関部。
魔法と科学の融合した魔女の箒(ウィッチブルーム)の一種、その名はガンナーズブルーム。
白亜の塗装が施された、大型ライフルだ。
それを軽々と――月衣の中では<常識>は通用しない――保持したなのはは、呟いた。
「ガンナーズブルーム、セットアップ」
意味は無い。気分の問題である。そういうところは、誰に似たのだろうか。
半ば腰だめに構え、敵の一群へ狙いをつける。精密射撃の必要はない――何故なら、敵は腐るほどいるから――。
炸裂弾を装填/カチャリという装填音/照準をつけ、発射。
瞬間、銃口から青い魔方陣が展開され、轟音/発射時の衝撃波で、白い衣服がはためいた。
砲撃に等しい銃撃/着弾。
炸裂した弾頭によって数匹の子鬼がミンチになり、掻き消え、馬鹿でかいクレーターを残した。
次弾装填。
発射。
更なる爆音=破壊の砲火。魔方陣の残影。
子鬼の鳴き声――こちらを睨みつけながらのそのそと接近してくる/狙い、撃つ。
下がる男 支援
撃つ/撃つ/撃つ。
着弾/着弾/着弾。
炎の花が咲き、鬼の数がみるみるうちに減っていく―――。
断末魔の絶叫と、流血一つせずに消える鬼の死骸。
なのはがふう、と汗を垂らしながら、砲撃をしていたときだった。
突然、黒い影が目の前に現れたのは。
咄嗟に砲身を盾にする/砲身が裂け、鬼の顔が隙間から覗いた。その背には、黒い翼。
(――飛行型のエミュレイター?!)
立ち尽くし、鬼の攻撃に身を裂かれそうになったとき――その男は<下がって>来た。
空中から落下する<下がる男>。
「どおおおぉぉぉりゃあああ!!」
着地と同時に、斬。
一瞬の早業だった。
鬼が胴を寸断され、崩れ落ちた。しゅう、と実体を無くし消えていく。
「あなたは―――」
「久しぶりだな、なのは。無茶、しすぎだぜ?」
<下がる男>――柊が、笑みを浮かべた。
頼りになる、戦士の顔だった。
キィィィン、と音を立てて、箒に乗った人影が、着地。
箒――ガンナーズブルームに跨った赤毛の少女が、無表情に頷いた。
「……なのはは、無茶をしすぎ」
「にゃははは……灯さん、すいません」
月衣から予備の砲身を取り出し、ガンナーズブルームの裂けた砲身と交換する。じゃこん、という小気味良い音。
なのはが、言った。
「灯さん―――。これの使い方、教えて貰えますか」
「……勿論」
灯が、初めて微笑んだ。
そして、戦いは舞踏へと変わった。
舞うように。
軽やかに。
振り下ろされた柊の魔剣に小鬼がまとめて袈裟切りにされ、実体を消失する/後ろへの蹴り=背後から迫っていた鬼が顔面を粉砕され、崩れ落ちる。
V字の斬撃/鬼の上半身が消し飛ぶ=更なる攻撃へ繋がれる構え。
なのはと灯の砲撃で、子鬼が吹き飛んでいった。
二門の銃口から魔方陣が展開され、同時に炸裂弾を発射/恐ろしいほど正確、精密に炸裂弾が敵の中心で弾け、無数の死をもたらす。
そして。
地面を突き破り―――そいつは現れた。
血の様に赤い皮膚/巨木の様に太い腕/鉈の様な爪/白い髪/巨大な単眼/額の一本角=この地の祟り神といった風情の、化け物。
「あれが連中のボスみたいだな……」
巨躯を誇る、10メーターほどの鬼――ボス格のエミュレイターが、吼えた。
「「やらせないッ!!」」
「……やらせない」
二門の砲火と、必殺の魔剣が、鬼に突き刺さった―――。
続く?
クレバー氏 支援
以上になります。
ちなみになのはは<勇者>のガンブル使いという感じです。
魔剣使いやオトシ子も捨てがたいのですが……
来るべきヴェロシティクロスへ向け、ウブカタ文体練習中でした。
感想等よろしくお願いします。
そろそろ時間なので投下させていただきます。
今回は、暗黒聖闘士クオリティ全開でいかせていただきます!
タカタカタ、タカタカター♪
家族の帰りを心配するはやての為に、コンビニに行くついでに探してくると慣れない優しさで
外出した黒龍。
だが、その途中怪しい気配を放つ結界を見つけた。シグナム達の気配を感じ取りその結界に
突入するがその途中妖しい集団が襲ってくる。一瞬で打ち倒しビルに駆け上がった瞬間彼の目に
武器を突きつけられたシャマルの姿が在った。
そのシャマルの窮地に、自らの心を抑えきれなくなった黒龍は拳を振るいクロノを吹き飛ばす。
そしてクロノに向かい、龍の怒号の如き怒りの宣告をする黒龍であった。
戦いの場に黒き龍が舞い戻った瞬間であった。
情に目覚めし黒き龍第3話「聖衣装着、復活の暗黒聖闘士」
「こ……黒龍?」
呆然と、黒龍に向かって私は呟いた。
ありえない場所で、ありえない事が起きている。
管理局の執務官に後ろを捕らえられた私を救ったのは、ここに居てはいけないはずの黒竜。
彼は一体何をしたの? 魔力を持たない彼が誰にも気づかれる事無くこの場に居るなんて不可能なのに。
その思いが表情に出たのだろうか、黒龍が振り向いた。
「シャマル、今は何も聞かない。その前にやらなければいけない事があるからな」
そう言うと彼は、何も無い空間に視線を合わせた。
何時の間にか拳が横にかざされている。そして、凄まじい音と共に何かが弾き飛ばされて壁に激突した。
「こそこそと隠れてる羽虫が、気配を隠そうとするのなら完全に闇と同化するぐらいしてみせろ」
激突音がする方を見ると、そこには仮面をつけた男が壁にめり込んでいた。
私が……、サポートを得意とする私が全く気がつかなかった相手を見つけ出すなんて、本当に黒龍に魔力は無いのだろうか。
私が心の中で考えてる間に、仮面の男は早々と転移していく。私達が抜け出せない結界内で転移するほどの相手に
有無を言わさない一撃、黒龍は一体どういう存在なの?
「シャマル避けろ!」
更なる思考の淵に沈もうとする私に、黒龍が警告を告げる。
慌てて横に飛ぶと、立っていた場所を通りすぎる砲撃魔法。
危なかった、全くの無防備状態であのクラスの砲撃に当たっていたらそれでアウトだった。
危うく回避した私の前に、守るように立つ黒龍。振り向きもせず、私に言葉をかける。
「シャマル……、確かアイスは抹茶が好みだったな」
そうそう、私はあの抹茶の渋味が良いのよねって、この緊迫した雰囲気の中突然いわれてしまい思わず乗りかけて
しまう。
「アイスを買いに行くという名目で出て来たのでな、一応確認という事だ」
そう言った瞬間私は気づかないうちに黒龍に抱きかかえられ、隣のビルの屋上に移動していた。
「シャマル、この小僧は私が相手をしよう、下がっていてくれ」
「無茶言わないの、空を飛ぶ相手にどう戦うの? さっきみたいに行かないわよ」
そうだ、黒龍は肉体的には凄いのかもしれないが魔法は全く使えない。上空から遠距離攻撃されれば
それだけで終わってしまうのだ。
だが、そんな私の不安を吹き飛ばすように黒龍は優しく微笑んだのだ。
「何、私にはシャマル達のような魔力はないが、それを補う物がある」
そう言うと、先ほどの執務官の方を向き戦意を張り巡らせ告げるのであった。
「小僧、お前は知るだろう。人に知られずに存在した伝説の存在を」
同時刻、八神家
「はぁ〜、黒龍はもうすぐ帰ってくると思うけど……一人はいややなぁ」
はやては一人になってしまったリビングで頬杖をつきながら帰りを待っていた。
「うぅ、アカン少し冷えてしまったわ、トイレ、トイレ」
体が冷えたのか、トイレに向かおうと黒竜の部屋を通りすぎようとしたとき、扉の隙間から漏れる黒い光。
「なんや? ひょっとして泥棒なんか」
心配になったはやてが、意を決して扉を開け覗きこんだ瞬間黒い閃光がはやての目を眩ませた。
「ちょ、ちょう何が起こったんや!」
驚いたはやてが眩しさから立ち直り、目にしたのは触っても開ける所がなかった黒龍の箱が開かれていたのと
粉々になっている窓ガラスであった。
「あ、……ちょい漏れてもうた」
どうやら、刺激が少々強かったらしい。
結界内に満ちる強烈な何か、その何かを感じ取り戦っていたシグナム達も一斉に黒龍が立っているビルに目を向ける
そこには一切の星が無い、闇空を塗り固めたような光沢が無い漆黒の竜のオブジェが浮んでいた。
黒龍はコートを脱ぎ捨てると、驚いているシャマルに投げ渡す。
慌てて受け取るシャマルに苦笑いすると、真面目な表情に戻り告げた。
「直ぐに片がつく、少しの間持っていてくれ」
意を決し、黒龍は天に届けとばかりに叫ぶ。
「聖衣(クロス)よ!」
黒龍が叫ぶと同時に、無数のパーツに分解し変形展開され聖衣は黒龍に降り注ぐ。
レフトニー!
ライトニー!
動きを重視するように、両膝のみをガードする膝当て。
バックル!
模様と彫刻がが施されたバックル。
レフトアーム!
ライトアーム!
台座が縮小し盾となり装着された左腕とシンプルな手甲の左右非対称の両腕。
チェスト!
ブレスト!
ショルダー!
重厚な厚みを感じさせる両肩とそれに飾られる龍の腕。
ヘッドギア!
首が二つに分かれバンドが伸び、分かれた首が耳当てに変化する。
次々と装着されていくのを誰も彼もが、ただ黙ってみている事しか出来なかった。
一つ、一つ装着されていく度に、高まる何かに心が恐れを抱いたのだ。
「此処にドラゴンの暗黒聖衣(ブラッククロス)装着完了」
漆黒の長髪が、体から発せられる小宇宙(コスモ)によってうねり荒れ狂う。
「時間がない、さっさと片付けさせてもらおうか」
構えを取ると、クロノに向かって不敵に微笑み、そして黒龍はクロノに突撃した。
次の瞬間、周りの人間が見たものは間合いを零にした黒龍の拳とクロノが張ったシールドが火花を散らす
光景であった。
「ほう、この程度のスピードには対応できるか、先ほどの集団とは少しは違うようだな」
「お前か、武装隊を倒したというのか!」
余裕の表情で僅かばかりの賛辞を告げる黒龍と違い、クロノは搾り出すような声で答える。
(早い、フェイト以上の速度で動いてくるなんて反則も良い所だ)
次の対応を考えるために、シールドをバーストさせる用意をしていたクロノの考えを読んだかのように黒龍は反動を利用して
屋上に着地する。
この行動に、一つの疑問を感じたクロノは念話を使いアースラと連絡を取る。
(エイミー、あの男から魔力は感じられたか?)
その問いに、エイミーは信じられないという風に声を震わせながら答えた。
(……冗談じゃないから真面目に聞いてね、一切の魔力を感じないのよあの動きにもあの鎧にも)
この返事に、疑問は確信に変わる。
(どうやら向こうは魔力を持たないか著しく低く空を飛べないようだ、どんなに早くてもそれならやり方なんて幾らでもある!)
急上昇し、間合いを広げるクロノ、そして屋上にいる黒龍に向かって己の最大の攻撃を叩きつけた。
「いくぞ! スティンガーブレイド・エクスキューションシフト!!」
無数の光り輝く剣が、黒竜に唸りを上げ豪雨の如く降り注ぐ。
「黒龍!」
シャマルの悲痛な叫びが上がるなか、シグナム達も動こうとするがそれはなのは達によって阻まれていた。
その衝撃による粉塵が舞う中、クロノは構えを解かなかった。
(あの男のスピードならある程度は回避されたはず、だがかなりのダメージは確実に与えたはずだ)
煙の向こうにいるはずの黒龍の姿を捕らえんと、目を凝らし意識を集中する。
(煙が晴れて向こうの姿が見えた瞬間、ブレイズキャノンで王手だ)
しかし、クロノの予想は大いに外れる事になる、なぜならば
「威力は高いが、悲しいかな遅すぎる」
黒龍は既に、クロノの遥か頭上に跳躍していたのだ!
「バカな、あの一瞬に頭上に移動だなんて」
驚愕するクロノに対し、黒龍は空気を蹴り急速落下の勢いのまま踵を振り下ろした。
「おまえ達の常識で、聖闘士(セイント)を測かろうとするのが間違っているのだ!」
重い一撃がクロノを打ち据える、凄まじい衝撃がBJを貫いて脳を勢い良くゆらす。
勢い良く揺らされた為に、意識を失いかけ地面に落下しかけるがあわやという瞬間に辛うじて意識を取り戻し
急制動かける、そして踵落としの勢いのままこちらを追撃する黒龍に反撃のスティンガースナイプを打ち放ち自
らもS2Uを構え急上昇を開始した。
「オォオオオオオ!」
らしくない雄たけびをあげ全速力で突撃するクロノ、それに対し黒龍は、左手の盾でスティンガースナイプを打ち払うと
人を指差すような奇妙な構えを取って迎え撃つ。
(くそ、魔力を感じないからって甘く見すぎた、遠距離がダメなら近づいて直接魔法を叩き込む!)
唸りを上げて黒龍の指とクロノのS2Uが激突する、クロノはこの瞬間に己の全てを篭めたブレイクインパルスを
発動させた。
空中で静止する両者、周りが固唾を飲み決着を見守るそして……
黒龍の指とぶつかり合っていたS2Uが、澄んだ音を発て砕け散り全身から血を噴出しながらクロノは崩れ落ちた。
地面に顔面から落下するクロノ、ビクビクと体が痙攣し、地面には血溜まりを作り上げる。
その状況に、悲鳴を上げ近づこうとするなのは達であったが、それを止めるかのように着地した黒龍がクロノの
頭に足を添える。その行動に動きを止めるなのは達、動きが止ったことを確認すると黒龍はこの場にいる全員に聞こえる
ように残酷な言葉を放つ。
「この結界を解いてもらおうか、解かないというのならばこの小僧の頭を砕く」
それを証明するかのように、冷たい眼差しをクロノに向け黒龍は足に僅かに力を篭めた。
以上になります。
今回はちょっぴし邪悪風味でしたが、どうでしたでしょうか?
感想などをお願いいたします。
GJ!
聖闘士に接近戦を挑むなんて・・・無謀すぎるぜクロノw
粗探しだが。
エイミーじゃなくてエイミィでは?
>>214 やってしまいましたOTZ
まとめで直します。
216 :
一尉:2008/04/11(金) 19:28:23 ID:80CuAmhC
そうたな支援
GJ!!です。
仮面の男悲しいな、シャマル助ける予定が黒竜にワンパンされるとは。
悲しいかな遅すぎるで、ちょっと興奮してしまいましたw
次回に、もし敵の能力の解析とかをアースラでやるなら驚くだろうなぁw
>>212 GJです! ですが気になったのでいくつか。
クロノのようにシャマルの心境も()で括ったほうがいいと思います。あと前半、
「〜であった」という表現がちょっと目立ちました。誤字も
>>「お前か、武装隊を倒したというのか!」
「お前が、武装隊を倒したというのか!」
>>測かろうとするのが→測ろうとするのが
他にも細かい部分で句読点やら字抜けやらがあったため
自分できちんと校正してから投下することをお奨めします。
長々と失礼しました。
>>218 自分だけでなく、数人の方にも推敲してもらいました。
>>「お前か、武装隊を倒したというのか!」
これは誤字でなく、ちゃんとした表現方法です。
後のは、文字道理校正し切れなかったので確認頑張ります。
地面に顔面から落下するのは基本ですなw
GJです
見える!見えるぞぉぉ!
車田飛びと車田落ちをするクロノの姿がwwww
GJっした。
>著しく低く空を飛べないようだ
「しか」がぬけていますよ。
どうもはじめまして。
新人です。はぴねす!とのクロスを書いたのですが投下良いですか?
すいません。直しがあったので22時に投下します。
>スバゲッチュ
笑いの神は分からないが、萌えの神は確実に降りてるだろwww
定番の台詞は避けたいが、いわざる得ない。GJ!
それで、このゲームはいつ発売されるんだい? 俺もスバルをゲッチュしたい!
普段通りの頭身のティアナの周囲を走り回るピポスバルを想像したら、心に爽やかな風が吹いたw
例の台詞を言っちゃうティアナにもニヤニヤ。これってなのは×ティアナフラグじゃね?
落ちの粉雪作戦では、エコーするピポスバルもさる事ながら、最後に「ねぇ」で落とした奴が可愛すぎるww
次回、いよいよティアナ、ピポスバルを初ゲッチュか!?
ちなみにトニオさんに関してはツッコまないよ。ツッコむなよ! 絶対にツッコむなよ!?
>情に目覚めし黒き龍
クロノ「な、なにぃ〜! や、奴はッ!!」
そんな車田台詞が聞こえてきそうなほど小宇宙が見えました。
そうだよね、無理だよね。聖闘士のパワーバランスって軽く宇宙いってるもん。
あと、本当に車田ぶっ飛びしたクロノの命が危ないw
確実に頭からグシャリッと行ってますね。次回、クロノが生きてるか心配になってきましたw
皆様GJ!
今が空いているのならば、リリカル殺生丸の6話を投下したいのですが、よろしいでしょうか?
227 :
はぴねす!:2008/04/11(金) 21:34:23 ID:j0Z/uo97
どうぞ投下してください。
生まれてきた時のことは覚えていないし、人間で言う「親」――マイスターが誰なのかも、“彼女”は知らない。
ただ静かに――多分、随分長い間眠ってただけ。
気が付けば、白い部屋で「実験動物」。
自分が何のために生まれたか分かってただけに、つらかった。
生まれた意味を何一つ残せないまま、死ぬ自由すらなく、苦しいまま、
いつか――「心」と「身体」が「壊れて」終わるんだ、と思っていた。
――それが変わったのは、今から2年前のこと。
突如としてブチ破られた、白い壁。
否、もう白ですらなかった。
明かりは落ち、炎が燃え盛り、白い部屋は赤と黒に染まっていた。
赤色と黒色は、混ざれば血の色。すなわち、死の色――地獄の色だ。
ここはさながらこの世の地獄。燃え広がった炎は、研究施設の人間達を残らず焼き尽くすだろう。
ある者は死体を消し炭に変えられ、ある者は生きたまま身体を焼かれて。
そんな地獄の最中、2人の人間が、彼女の視界に姿を現していた。
茶色い襤褸を纏った大男と、幾分か薄い色の外套を羽織った幼女の姿だ。
何だかひどくごつごつとした手が、“彼女”の拘束を器用に外す。
終わることなき磔刑の責め苦から逃れた小さな裸身は、自らの足で、瓦礫の上に立ち上がった。
地面の感触など、味わったこともなかった。目覚めた瞬間からこの身は大地を離れ、薬漬けの研究材料にされていたのだから。
それからまた大男の手に拾われて、適当な布にその身を包まれ、焼け落ちる研究施設から連れ出される。
星明りすら目立たぬ漆黒の夜空の中、赤い光が燃えている。
轟々、轟々と、巨大な建物が焼けていく。
何週間、何ヶ月――あるいは何年もいたかもしれない、白い部屋が消えていく。
それに魅入られるように座り込んでいた“彼女”の元から、不意に大男が歩きだした。
恐らくこれで用事は終わったのだろう。何のためにここを壊したのかは分からない。何のために彼女を助けたのかも分からない。
何も告げないまま、男は無言で歩いていって――小さな手に、止められた。
「……何だ」
振り向けば、そこには紫の髪の娘がいる。
大男の大きな拳とは正反対の、小さく綺麗な手で、襤褸の裾を掴んで離さない。
「置いていっちゃうの?」
短く、幼女が問いかけた。
「あれは古代ベルカ式――レプリカではない、純正の融合騎だ」
それが、白い部屋で「心」と「身体」をすり減らし続けた、小さな小さな“彼女”の正体。
「火災に気付いてやってくる局員が見つければ、丁重な保護を受けるはずだ」
「そこでもまた――実験動物?」
外見年齢に似合わぬ、歯に衣も着せない、ぐさりと突き刺さるような直接的な問いかけ。
「ここの連中ほどひどいものではない。……そう、思いたいがな」
微かに視線を逸らしながら、大男が答えた。“彼女”の肩がぴくんと震える。
ここよりはまともだと言ったが、それはどれほどの段階までまともなのだろうか。
痛くはないのか。つらくはないのか。退屈ではないのか。ひもじくはないのか。
どれもこれも、あの施設から解放された今となっては、もう二度と御免なことであって――
「ゼスト……つれてってあげよう」
そう考えている間に、幼女の手が、“彼女”を拾い上げていた。
「いいのか?」
ゼストと呼ばれた大男が尋ねる。
「うん。この子もきっと、私達と同じだから」
夕焼け空のようにぼんやりと、その中の太陽のように大きな、赤い瞳が“彼女”を見つめていた。
“彼女”の昔語りは、これでおしまい。
一時の夢は醒め、今から始まるのは――烈火の剣精アギトの紡ぐ、現在の物語。
支援
魔法妖怪リリカル殺生丸
第六話「ルーテシア、ゼスト、アギト」
かっと瞳を開く。
微かに目元を湿らせていた涙が周囲に飛散した。
あの紅蓮の業火はどこにもなく、周囲に漂うのは白い朝霧のみ。
あの土色の山肌はどこにもなく、木々の生い茂る湖畔の風景があるばかり。
あの大男と幼女の姿は目の前にはなく、傍らで共に眠っている。
「う〜……くそぉ、ヤな夢だ……」
未だ僅かに寝ぼけた目をこすりつつ、アギトがルーテシアの懐から這い出した。
そのまま背中の翼を羽ばたかせ、早朝の青空へと飛翔する。
(あんなの思い出したのは、アイツらのせいだな……)
回想する。
数日前、あの廃棄区画での戦闘。あと一歩で危なかったかもしれない、レリック争奪戦。
(氷結魔法を使ってた、変なバッテンマークを付けた白い融合騎……多分、アイツのロードの赤い騎士……)
その原因を作った、鉄槌を携えし古代ベルカの守護騎士と、その傍らの小さな少女。
(アイツは……ロードのいない融合騎の寂しさとか、知らねぇんだろうな……)
普段の強気な様子はどこへやら、この時ばかりは、アギトは大層しおらしげな目つきだった。
あの融合騎は――時空管理局曹長・リインフォースUは、とても幸せそうだった。
ロードと共に力を合わせ、ちゃんと胸を張って戦っていた。
一点の陰りも曇りもない眼差し。何の負い目もない、順風満帆に生きてきた者の目だ。
そうでなくとも、そもそもパートナーのいない融合騎の方がイレギュラーな存在。
故に、誰にも――当然、リインにも分かりはしない。
それが恨めしくもあり、同時に、羨ましくもあった。
そもそもあんな体験、しない方がいいに決まっているのだ。
もちろん、今は1人ではない。ルーテシアもゼストもいるし、殺生丸という新しい仲間も増えた。
しかし、つらく悲しい過去は、それとは無関係に心に「影」を宿す。
そしてつまるところ、そういう影のない生き方は、自分にとってずっと望んでいたことで――リインは、その理想の表れだった。
だからこそ、恨めしく思う。
どうしてそこにいるのが自分じゃなかったのか、と。
沈痛な眼差しが、きっと引き締まった。
「くっそぉぉ〜! 何かムカツク、あンのバッテンチビめッ!」
ようやく山肌から姿を現した太陽に向かい、苛立たしげにわめく。
どうして自分とアイツはこんなにも違う?
同じ融合騎であるにもかかわらず、どうして自分だけがこんなに嫌な経験ばかりを重ねている?
そんな自分と同じ融合騎のくせして、どうしてアイツだけが自分の欲していたものを、残らず持っているんだ!?
気に入らない。
気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らないまったくもって気に入らないッ!
「今度会ったら、絶対燃やしてやるーっ!!」
アギトの怒声が、静かな湖畔に響き渡った。
それは、生まれて初めての対抗心。
こんなに気に入らないくらいなら、そんな他人の幸せなんてぶっ壊してやる。
余裕ぶったそのツラを叩き落して、痛くてつらくて苦い想いを刻み込んでやる。
烈火の剣精の小さな胸に、初めて、ライバル意識というものが目覚めた瞬間だった。
「――騒々しいな」
声が響いた。
平静とした水面に波紋を打つような、静かな早朝にくっきりと響き渡る声。
とても冷たく、とても偉そうで、それでもすっかり耳に馴染んだ声だ。
見下ろすと、そこに1人の男が立っている。
朝靄の中にたたずむ白銀の麗人は、殺生丸だ。
早朝の爽やかな風に銀髪と毛皮を煽られ、純白の上等な着物は靄の中に溶け込み、独特な気配を漂わす。
ありきたりな言葉で表していいものならば、それは「幻想的」というものなのだろう。
否、言葉で表現しようとすることそのものが、安い行為なのかもしれない。
ともかくも、生半可な女性よりも遥かに優れた、人間離れした美麗な容姿を持つ貴公子がそこに立っていた。
「なんだ、起きてたのか」
みっともない所を見せてしまったかもしれない。
それを恥じつつも、アギトは返事をしながら高度を落とし、殺生丸の顔の高さで静止する。
「気に入らなさそうだな、あの小人が」
やはり聞かれていたようだ。
思わず、顔を赤くする。
「……アンタにもあるだろ? 自分が欲しい物を相手が持ってて、それが悔しいって思う時って」
一応聞いてみたのは、まだまだ鬱憤がたまっていたからだろう。
自分の人生の根幹にかかわる重大な悩み事だ。ちょっと叫んだだけで発散されるはずもない。
だからこうして、殺生丸に聞いてみることにした。
ルーテシア並かあるいはそれ以上に無口な彼が、ロクな答えなど返してこないだろうとは思いつつも。
「悔しい、か………」
問いかけられた殺生丸は、意外にもまともに思考をめぐらしていた。
アギトの境遇については、以前何かの折にゼストに聞いたことがある。しかし、問題はそこではなかった。
視線を腰に差した、二振りの刀の片割れに向かって落とす。
思い出したからだ。自らの味わった、苦い想いを。
殺生丸には弟がいた。
腹違いの弟で、性格は兄には似ても似つかない。単純で、カッとなりやすくて、すぐドジを踏む奴だ。
最も殺生丸にとって気に食わなかったのは、彼が半妖であったことだろう。
何を血迷ったのか、御立派な父上が娶った2人目の妻は――弟の母親は、人間だった。
聞けば父はそんな妻と子供を守るためだけに、生涯最大とも言える強敵・龍骨精との戦いの傷を押して、挙句命を落としたと言う。
それだけならば、さっさとその弟を殺しにかかるだけでよかっただろう。
だが、問題は父の遺産となった、二振りの妖刀の存在だ。
殺生丸が欲していたのは、そのうちの片方――鉄砕牙と呼ばれる、絶大な破壊力を込めた妖刀だ。
しかし、それは父の遺言によって、何の力もない弟へと渡ってしまった。
おまけに自分に託された刀さえも、その鉄砕牙のための出汁に使われる羽目となったのだ。
殺生丸は憎んだ。
自分から何もかもを奪った弟を。遂には、そうなるように仕向けた父さえも。
今でこそ、その先の真意に辿り着けたからよかったが、何も知らない当時はどれだけ腹が立ったことか――
「分かるのか?」
アギトの問いかけが、彼の思考を遮った。
殺生丸は一拍の間を空けた後、その長く美しい銀髪を翻す。
「……知らんな」
「ンだよそりゃぁ!」
小さな拳が、ぽかぽかと頭を殴り続けていた。
その日も夕方が近づいてきた頃。
オレンジがかった斜陽の光を受けて、ルーテシア一行は4人一緒に歩いていた。
幼いルーテシアの手の中には、黒光りする無骨なケース。
この日は収穫があった。探し物の]T番ではなかったものの、レリックが1つ見つかったのだ。
とはいえ、母に適合しないレリックは手に余る。
これはスカリエッティに渡すとしよう。
そうすれば、きっと喜んでもらえる。レリック探しにも今まで以上に協力してくれることだろう。
そんな風に、ルーテシアは思っていた。
もっとも、彼を嫌うゼストとアギトはそれを快くは思わないだろうが、そこらに捨てておくよりはよっぽどましだ。
殺生丸はどう思うだろうか。そもそもスカリエッティの目的には何の感想も抱いていない彼は、どうも思わないかもしれない。
問題はこれをどうやって渡しに行くかだ。
スカリエッティと顔を合わせたくないというのは、3人とも共通しているだろう。
自分のわがままで迷惑をかけることはしたくない。ならば1人で行くべきか。それはそれで止められそうだ。
『ハァ〜イ、ルーお嬢様ぁ〜♪』
そんな時に現れた通信のテレビ画面は、ルーテシアにとっては僥倖だったかもしれない。
栗色の髪と丸眼鏡をかけた、ナンバーズのクアットロの声が響いた。
『ご機嫌いかがですかぁ?』
「うん、いいよ。今日はレリックも1つ見つけたから」
『まぁステキッ! さっすがはお嬢様ぁ!』
微妙にハイテンションで褒めちぎってくるクアットロの様子は、相変わらず慇懃無礼といった言葉がしっくりとくる。
ゴマすりをしているのがはっきり見て取れる、わざとらしい態度だ。多分、気付いていてわざとそうしているのだろう。
スカリエッティ本人に負けず劣らずの嫌な奴――それが殺生丸が、彼女に抱いた印象だった。
『それでお嬢様、ちょっと見せたいものがあるんですけど』
やがて二言三言と言葉を重ねた後、クアットロが本題を切り出す。
『お手数ですが……こちらまで、お・ひ・と・り・で♪ 来ていただけませんかぁ?』
鼻に付くような喋り方で要求してきた。
殺生丸の、そしてゼストの目が細められる。アギトに至ってはあからさまに不審がる表情を取った。
1人で、というのは一体どういうことなのだろうか。
スカリエッティの手下のことだ。一体何をしでかすのか、分かったものではない。
かといって本当に手を出すとなると、今更何をするつもりなのか、とも思う。
何かを仕向けるつもりならば、とっくにやっていてもおかしくはないはずなのだ。
そもそも生まれてから9年間、ルーテシアはずっとスカリエッティの手の中にいたも同然なのだから。
「……分かった。これから行く」
そして3人が何らかのリアクションを示すより早く、ルーテシアがそれを了承する。
『ありがとうございますぅ♪ アスクレピオスに座標を送りますので、そこまでいらしてくださいねぇ〜♪』
通信の向こうでクアットロが感謝の言葉を述べて、消えた。
それを確認し、ルーテシアがその手に嵌めたデバイス――漆黒のグローブ・アスクレピオスを眺める。
程なくして、クアットロの位置の座標データが送られてきたことを、紫のスフィアの明滅が示した。
「本当にいいのか?」
ゼストが最終確認をする。
「別にいいよ。このレリックも渡さなきゃいけないし」
当然、ルーテシアの答えは決まっていた。
アギトかわいいよアギト
ヒロインにしちゃおうかなぁ。
支援
紫色の魔法陣が展開され、幼い少女の身体が光の中に消える。
遠隔召喚を応用した転移魔法。それによって移動するルーテシアの姿を、3人が見送った。
そして訪れる、沈黙。
ゼストは基本、誰かに話しかけられない限り自ら口を開くことは少ない。
殺生丸も同様だ。むしろ、話しかけられても無視に近い反応を取ることもある。
そしてこういう沈黙が訪れた時、決まって最初に口を開くのは、意外と図太い神経を持ったルーテシアだ。
「……あー……んー……」
板ばさみになったアギトは、困ったようにぽりぽりと頭をかくことしかできなかった。
無論、1番おしゃべりなのは彼女である。
しかし、それがこういった空気を打開できるかどうかということに関わってくるかと言われると、微妙なところだ。
そんなこんなで、どうすることもできないアギトは、1人居心地の悪さを感じていた。
「……どう見る?」
ややあって、ゼストが口を開く。
突然沈黙を破った言葉に、アギトがびくりと震えた。
「どうなろうと知ったことではないが……」
声をかけられたのは殺生丸だった。
「奴はスカリエッティと同じような臭いがする」
率直な感想を口にする。
クアットロの漂わせる雰囲気は、あのスカリエッティとまるきり同じだ。
慇懃無礼な物言いと独特なペースで相手を丸め込み、自分の都合のいいような選択肢を取らせようとする。
どうやらナンバーズの中でも、彼女は特に主人の影響を受けたらしい。
そして一方、それを聞いたゼストはというと、何故か目を丸くして驚いていた。
何か自分はおかしなことでも言ったのだろうか、と疑問に思う殺生丸だったが、
「……臭いまで人間と同じなのか、戦闘機人というのは」
どうやら杞憂だったらしい。
「……いや……臭いは違う」
それを汲み取り、否定する。自分が人間よりも遥かに嗅覚に優れているということを思い出しながら。
彼女らナンバーズが人間とは違うということを聞いたのは、つい昨日のことだ。
機械――平たく言えば鉄やら油やらのことらしい――を身体に組み込んだ、スカリエッティによって作られた半兵器的存在。
奈落が自分の身体から分身を作ったのと同じようなもの、と言ったところだろうか。
それが戦闘機人だった。
実際のところ、彼らの臭いは他の人間に比べて、ほんの僅かに鉄臭い。
人間には感知できない程度の差に留まっている辺りが大した技術力だが、それを認めるのは正直癪だった。
(そういえば、その臭いは以前に嗅いだことがある)
不意に殺生丸は思い出した。
これまでに目にしてきたナンバーズとはまた別に、これと同じ臭いを放つ人間に、この世界で会ったような気がしたのだ。
特に気にしていなかったのは、その時はまだ戦闘機人の存在を知らず、
普通の人間が何かその機械とかいう物を所持していただけだと思っていたからだろう。
あの、肉と皮と鉄と油がないまぜになったような臭い。
先日の魔導師達との戦闘ではない。金属臭こそあったものの、あれはデバイスの臭いで説明はつく。
そもそもそんな最近の話ではないのだ。もっともっと昔。そう、自分がここに来たか否かといったほどの――
(……だからどうということでもないか)
結局、殺生丸はそこで詮索を打ち切った。
覚えていないということは、きっと自分にとってはどうでもいい人間に違いないだろう。
記憶を探ることは結構な労力を必要とする。そして探すべきだった記憶は、一旦何でもないことと割り切ったことだ。
路傍を歩く靴を履いた一般人の中から、サンダルを履いた一般人を探すようなものである。
そんなことは面倒極まりなかったので、殺生丸はそれに対する詮索をやめた。
そして、視線をゼストに向ける。
先ほどの反応を見て、1つ気になったことがあったのだ。
「親にしては、いやにあっさりと許したな」
それが気がかりとなっていた。
ゼストとルーテシアは、どこからどう見ても親子である。
であれば、ゼストが父親で、ルーテシアが娘だ。
その娘が信用ならない相手の所へ1人で行ったというのに、それにしては父の反応は妙に物分りがよすぎる。
肉親に対しての反応ではない。理屈など抜きにして、もう少し気にかけても不自然ではないはずだ。
極端な例を挙げるならば、彼の父が命を投げうってまで、妻と子供を助けたように。
「……親!?」
しかしその問いかけに対し、当のゼストは大層驚いたものだった。
先ほどの臭いの話の時の驚きようなど、比較にもならない。
くわっと目を見開き、びくりと身体を震わせ、たじろぎながら大声で叫ぶ。
いつもの寡黙な彼からは、想像もつかないような反応だった。
今度こそ、何かおかしなことを言ったのかもしれない。そんな思考が殺生丸の脳裏に浮かんだ。
一方のゼストは、助け舟を求めるような、何とも情けない様子でアギトに視線を送る。
「旦那……残念だけど、ぶっちゃけそうとしか見えねーよ」
目を伏せながら、妙に悟ったような表情で、アギトがぽんぽんとゼストの肩を叩いた。
それでようやく落ち着きを取り戻したゼストは、1つ大きなため息をつくと、その口を開く。
「……言い忘れていたが、俺とルーテシアには血の繋がりはない」
どうやら今度は本当におかしなことを言っていたらしい。
しかし、同時に新たな疑問が浮かんできた。
「ならば何故、お前はああも入れ込んでいる?」
そして、その疑問を率直に口にした。
親子でないのならば、そんな子供1人の探し物にわざわざ付き合うことも、
他人の母親を生き返らせるためだけに、あれほど嫌いなスカリエッティに力を貸すこともないはずだ。
ゼストの必死さには、それでは説明がつかない。
であれば何故彼は、ルーテシアのためにああも奔走しているのだろうか。
「アイツの母は、私の部下だった女だ」
ゼストは語る。
かつて自分が、時空管理局に籍を置いていたことを。
首都防衛隊所属。ランクS+のストライカー級魔導師。それがゼスト・グランガイツの、生前の肩書きだった。
当時の直属の部下は、メガーヌ・アルピーノとクイント・ナカジマ。
そのうちの1人のメガーヌがルーテシアの母で、アスクレピオスの先代のマスターだ。
事の発端は8年前に遡る。
当時彼が追っていた、戦闘機人関連の事件。
とある事情によってその解決を急いだ彼は、部下を引き連れて容疑者のアジトへと踏み込んだ。
結果は散々なものだった。既に稼働していた戦闘機人とガジェットドローンによって隊は全滅。
ゼスト自身を含め、隊のほとんど全員が死亡。生き残ったメガーヌは人造魔導師の素体として囚われ、今も眠り続けさせられている。
そして娘であるルーテシアもまた、容疑者――スカリエッティの手元へと送られたのだ。
当時1歳。母親との思い出もろくに持たぬままに、犯罪者によって母を奪われ、自身も改造を加えられた。強大な魔力はその賜物だ。
(殺された、とはそういうことか……)
要するに、メガーヌは仮死状態のまま保存されているということだ。仮の死とはいえ、永遠に続けば、それは紛れもなく真実の死。
「……いわば、ルーテシアは俺の罪の証だ」
自分の焦りのおかげでメガーヌは「死んだ」。自分のわがままのおかげでルーテシアは独りになった。
「だから俺は、せめてアイツの願いだけは、叶えさせてやりたいのだ」
母を眠りから解き放ち、娘と再びめぐり合わせること。
それが、1つの家族を引き裂いてしまった男の、せめてもの償い。
夕暮れ時のクラナガン。
その一角に位置する高層ビルの屋上に、近代ベルカの魔法陣が輝いた。
赤みを帯びた陽光の中に、ぽう、と、紫色の魔力の光が混じる。
やがてその中から、1人の幼女が姿を現した。
薄幸の少女ルーテシアは、視線の先に自分を招いた相手の姿を認める。
丸眼鏡が印象的なクアットロだ。
身に付けていたのは、いつものナンバーズスーツではない。白いノースリーブのワンピースを身につけ、頭には麦藁帽子を被っている。
夕方の穏やかな潮風を受け、フリルの着いたスカートがゆらゆらと翻る。
白いリボンの巻かれた大きな帽子の鍔の下で、クアットロの顔が笑った。
「ようこそルーお嬢様♪ わざわざありがとうございますぅ」
「別にいいよ。……これ、お土産」
テンションの高いクアットロとは対照的に、落ち着いた様子のルーテシアが、ずいと右腕を差し出す。
小さな手のひらに握られていたのは、黒い大きなレリックケースだ。
「あぁ〜どうもどうもぉ♪ お疲れ様ですわぁ」
両手を合わせて喜んだクアットロがルーテシアに詰め寄ると、その物騒なお土産を受け取った。
「それで、見せたいものって何?」
ルーテシアが短く問いかける。
にやり、と。
それを聞いたクアットロの軽い笑顔が、一瞬にしてどこか冷たさを孕んだものへと変異する。
悪巧みを企てた悪党のような、邪悪な笑みだった。
「ウフフ……見ていただければ分かりますわ。さぁ、こちらへどうぞ♪」
言われるがままにクアットロの誘導に従い、ビルの下を見下ろす。
海岸線に面したそこからの眺めは、普段ならば、いわばオーシャンビューと言うべき絶景だった。
それを「普段」と決定的に隔てるものが、オレンジ色の砂浜を占領している。
スカリエッティのおもちゃ・ガジェットドローン。浜辺に広がるその軍団と戦う者達がいた。
3人の魔導師だ。
1人は黒いバリアジャケットを身に纏い、白いコートをたなびかせ、金色の鎌を振りかざす。
管理局のエース級フェイト・T・ハラオウン。雷光輝くバルディッシュが光速の斬撃となり、ガジェット達を瞬時に鉄くずに変えていた。
そして残る2人の魔導師は、ルーテシアにも見覚えのある人間だ。
エリオ・モンディアルとキャロ・ル・ルシエ。間違いない。あの時廃棄区画で戦った、自分とほぼ同年代の魔導師達。
それら2人が、見知らぬ大人の女性――フェイトと共にガジェットを蹴散らしている。
長槍ストラーダを振りかざした紅髪の少年が、浜辺を疾走する。
楕円形のT型に向かって、煌く穂先が突き出された。疾風にも並ぶ白刃が赤き日光を受け、有象無象のガジェット達を次々となぎ倒す。
桃色の服の竜召喚士の戦いぶりもまた、壮絶なものだった。
跨った巨大な白き飛竜が、大迫力の雄たけびを上げる。耳をつんざく絶叫。
猛烈な業火でガジェット達を焼き尽くす、豹変したフリードリヒの姿は、実にそれらの十倍近い巨体。
戦士としての質があまりに違いすぎる。20機近くの数を有していた鉄のおもちゃ達は、あっという間に壊滅してしまった。
そして3人の獅子奮迅の戦いぶりを、ルーテシアはいつもとおなじ、無感動な瞳で見続けていた。
クアットロまじビッチwww支援
「あ〜ららぁ〜、やっぱりあれくらいだと瞬殺ですかぁ」
実につまらなさそうにクアットロが呟く。
無理もないだろう。ルーテシアを連れてきてから、まだ10分も経っていない。そんな短時間で、あっという間に戦闘は終わってしまった。
「クアットロが見せたかったのって、あんなの?」
それはルーテシアにとっても同じだったらしい。
確かにこんな一方的な勝負展開、わざわざ1人で呼び出されてまで見るべきものではない。
表情こそいつもと変わらなかったが、明らかな興ざめの色が、その声音に宿っていた。
「半分正解半分間違い〜♪」
しかしクアットロは、いつも通りのおどけた態度で、からかうように言い放つ。
「お見せしたかったのは、ガジェットが壊されるところではなく……」
言いながら、身体を屈ませたクアットロの顔が、ルーテシアの顔の高さへと近づいていく。
そして、ゼロ距離へ。
「あの召喚士と少年の方です」
静かに、しかし妖しげな響きを込めて。
耳打ちするような形になって、クアットロが言った。
「召喚士?」
聞き返すルーテシアの声。
同時に、クアットロの高さが、急激に元に戻された。
「お嬢様はずぅ〜っとつらくても1人で頑張っていらっしゃるのに、あの子達はいつも一緒、お母さんも一緒で破壊活動ですよぉ〜?」
先ほどまでの気配はどこへやら、一転したオーバーリアクション。
薄手のワンピースの下からその存在を主張するふくよかな胸元で、両手を握りながらクアットロが身体をくねらせる。
形のいい腰の動きは、一種妖艶ささえもただよわせていた。
「全く無神経な人たちですねぇ〜!」
ああかわいそう、かわいそう、と、大げさにクアットロが続ける。
「……人の幸せを羨んでも仕方がないって、ゼストが言ってた」
一方のルーテシアの反応は、全くもって冷め切ったものだ。
それを見たクアットロは、哀れむような表情をコロッと変え、先ほどまでのおどけた笑顔で指を振る。
ちっちっちっ、と、細かく舌を鳴らしながら。
「それは正論ですがぁ、ただの強がりです」
いつの間にかルーテシアの正面に立っていたクアットロの顔が、再びその高度を急激に下げる。
大きな赤いその瞳を、ぐいっと覗き込むように。
「あの部隊の前線メンバーにおいて、お嬢様の究極召喚・白天王に唯一対抗できそうなのが、あの召喚士」
ひそひそ話のような声音で、クアットロの口が言葉を紡いでいく。
キャロの引き連れている竜は、あの白い飛竜フリードリヒのみではないと。
召喚獣の中でも優れた力を持った数多の竜族の中でも、一際強力な存在・真竜クラスを保有している、と。
「あの子が……?」
「あのちびっ子槍騎士も、ガリューとはそれなりにいい勝負をするでしょうし」
いつの間にか、ルーテシアは彼女の言葉に聞き入っていた。
クアットロはスカリエッティに似ている。
振る舞いや性格だけではなく、行動理念ややり口が、姉妹の中でも最も色濃く「父親」の遺伝子を受け継いでいる。
こうした巧みな話術は彼女の得意技であり、同時にスカリエッティの得意技でもあった。
そんなクアットロが、純粋無垢な少女の心に影を落とすことなど、造作もないこと。
再びルーテシアは、眼下の3人を見下ろす。
親子3人でフリードの背中に乗った様子は、仲睦まじく語らう家族の姿。
フェイトの手が、エリオの頭を撫でている。
よく頑張ったね。ちゃんと強くなっているんだね。
大体そんなことを言っているのだろう。
自分は、どうだろうか。
ルーテシアの母は、未だ目覚めていない。重傷を負ったまま意識を失い、スカリエッティのラボに預けられている。
培養液の詰まった透明なカプセルの中で、ずっと「死んだ」状態を続けたまま。
褒めてくれるわけもない。頭を撫でてくれるわけもない。正直なところ、声も手の感触も記憶にない。
だからこそ、ルーテシアは頑張ってきた。
母の声を聞きたかった。母の手に触れてもらいたかった。
よく頑張ってくれたね。ありがとうね。
そんな言葉をかけて、優しく頭を撫でてもらいたかった。
つまるところ、飛竜の背に乗ったエリオとキャロは、彼女にとっては理想の存在だった。
そんな風に、自分が望むものを持っている彼らが、何故自分に並ぶ力まで与えられたのか。
この手にした力と召喚獣の仲間達は、失った母の代わりに与えられたものだ。
ぽっかりと空いた心の虚(うろ)を埋めるために、たゆまぬ努力を続けるための力と仲間だ。
そんな力と同等のものを、同じ穴など持つはずもない者達が持っている。それはあまりに不公平なものではないのか。
自分は頑張っている。つらい思いをしながらも、止まることなく歩き続けている。
そんな自分は何故報われない。
何故努力もしていない連中が、あんなにたくさんのものを持っている。
「……負けない」
気に食わない。
気に食わない気に食わない気に食わない気に食わない気に食わない気に食わない気に食わない気に食わないまったくもって気に食わない。
「ガリューも白天王も、無敵だから」
がらんどうのルーテシアの心の中。
ぼうっ、と、暗い炎が灯っていた。
それは嫉妬。
対抗意識であり、ライバル心。アギトがリインに対して抱いたものと、全く同じもの。
「ならいいんです」
耳元でクアットロが囁く。
「ルーテシアお嬢様のレリック探し、そのお邪魔をしそうな相手の予習コーナー……このクアットロの余計なお世話で済むなら、それが何よりですから♪」
ルーテシアの静かな激情が炎ならば、彼女の言葉は一体なんだろうか。
その火を灯したライターだろうか。その火のを燃え広がせる油だろうか。
恐らく、そのどちらもが正解なのだろう。
「ありがとう、クアットロ。じゃあ、また」
ルーテシアの足元に、再び紫の光が煌く。
「ごきげんよう」
転移魔法の魔法陣の中に、幼い魔導師の姿が、吸い込まれるように消えていった。
「はぁ〜い、ごきげんよう〜♪」
先ほどまでの邪悪な笑みも、哀れむような言葉も、何もなかったように。
クアットロはまったくもって陽気な様子で、ルーテシアへと別れの言葉を告げる。
誰もいなくなった、コンクリートのビルの屋上。
見れば赤々と輝く太陽も、ほとんど海へと沈みかけている。
「……仕込みはオッケー。これであのお嬢様も、大分扱いやすくなる……ウフフ……」
最後に残ったのは、とびきり冷たい少女の声だけだった。
投下終了。諸々の事情により執筆が遅れに遅れ、完成に3日も要してしまいました。……畜生orz
アギトの話が本編から、ルーテシアの話がサウンドステージからの出典。
ドラマCDの話の文章化は結構骨が折れました……
そんなこんなで、今回は3人組の内面を語るお話。次回はいよいよ地上本部です。
ちなみに今回クアットロが着ていた服装ですが、
「バンブーブレード」単行本5巻の巻頭イラストで東が着ていた服を参考にしています。
うん、クア姉とさとりんは結構顔が似てると思うんだ。内面は全然似てないけど。
>リリカル殺生丸
アギト、可愛いよアギト。これはタイトルどおりリリカルになってきたw
それにしても、幼子をかどわかすとはクアットロまじビッチ。
アニメのボイスが当時の憎しみと共に脳内再生余裕でした。
しかし、アニメではイマイチ分からなかったルーテシアの本音や感情の流れが、おかげで分かりましたね。
いやぁ、いいなぁ。暗い感情に燃える幼女っていいなぁ。
キャロとの戦闘が激化しそうなフラグw
本来ならお腹痛くなる要素ですが、大丈夫さ。殺生丸いるから。わずかなデレを幼女に向ければいいよ!
そして、次回はいよいよギン姉との激突か? 殺生丸がどう動くのか見ものですね。
GJ
アギトかわいいよアギト
でも今回一番萌えたのが親と言われて動揺しまくってるゼストだったのは秘密だw
そしてメガ姉マジビッチ
ああ、当時の怒りが込み上げて来る
殺生丸がギンガフラグ来ましたねー。
次回楽しみにしてます
>>240 GJです!
クアットロによって黒い感情に支配されつつあるルー子。
何気に親発言でうろたえるゼストさんが新鮮。
しかしもうこのパーティーに完全に殺生丸さん溶け込んでるのに驚き。
次回、いよいよ爆砕牙の出番到来ですか?
天生牙の出番はなさそうですが。
殺生丸さん、あんたあんまりその世界にいてもなぜか違和感がないよ。
殺生丸とアギトのユニゾンを見てみたかったりもする。
あの薄情な殺生丸が時折見せるやさしさは誰に向けられるのか。
次回も首を長くして待ってます。
GJです。
みんなクア嫌いなのかwあーいうキャラもいいと思うけどなぁ。
246 :
はぴねす!:2008/04/11(金) 22:32:18 ID:j0Z/uo97
GJです。
殺生丸は本当に違和感ありませんw
次回も楽しみにしてます。
では出来上がったので『魔法使いリリカルはぴねす!』を投下します。
>>245 私メガ姉好きですよ。
放送当時目茶苦茶むかついたのは事実だし、好きになった今でもビッチだと思ってますけど
248 :
はぴねす!:2008/04/11(金) 22:36:10 ID:j0Z/uo97
まどろみの中、気がつくとそこは……。
「どこだ?ここ……。」
見たことのない場所だった。
魔法使いリリカルはぴねす!第1話
(いや、待て……落ち着いて整理してみよう。
俺の名前は小日向雄真。俺は産みの母である鈴莉母さんの家にやって来ていた。
理由は俺の身体にある膨大な魔力を調べるため。ここまでは……まあ覚えてるかな。
あの秘宝事件以後……俺は初心に立ち返るべく魔法使いの道へと復帰した。
普通科から魔法科への転科の決意は簡単じゃなかった……。でもこのまま制御しないまま放って置けば俺の魔力は暴走する……。それが決断するのには充分だった。
伊吹を助けるために魔力を使用した際に約10年ぐらい眠っていた魔力は見事に活性化し、自分で制御しないといつ暴走するか分からなくなってしまったのだ。
暴走した魔力の怖さはこの身体が1番よく知っている。
それで悩みに悩んで転科した。
もっとも回りの反動はすごかった。
それから春休みになり、一度どこまで制御できるか見てみたいという、かあさんズの願い(発案:鈴莉母さん、説得:音羽かあさん)によって、俺は鈴莉母さんの家に来ていた。
まあよく考えれば母さんの家、つまり俺の元々住んでいた家には母さんと別れた後には1度も行った事がなかったのでいい機会かなと思ったわけ。
当日、俺は手にマジックワンド ―秘宝事件の際母さんに渡された指輪を媒介として作った― である’ハピネス’と、
何日分かの着替えを持って、どこか懐かしい感じのする家に来ていた。
「いらっしゃい、じゃなかったわね。お帰り、雄真くん」
その言葉は俺にとって不意打ちだった。が、それ以上にどこか嬉しかった。
だから、
「ただいま」
と自然に返していた。
「早速で悪いんだけど、これを」
そういって母さんは俺に小さなの手鏡を渡した。
「この鏡は?」
「それはね、魔力を別の次元に放出するいわば一種のゲートみたいなものなの」
「別の次元、ってそれって!」
俺は驚いた。異なる次元とつなげることがどれほどの魔力を消費するか想像もつかない、ってなるほど。
249 :
はぴねす!:2008/04/11(金) 22:40:21 ID:j0Z/uo97
「そう、ソレに使っている魔力を計測することで雄真くんの総魔力量を検査するの」
やっぱり。おそらく一定量の魔力をこめないとこの鏡の効果は発動しないんだろうな。
そして俺がどれ程の魔力を操れるかを知るには絶好の物と言うわけか……。
それに別次元に放出すると言うことはおそらく周りに被害は被らない。
「分かりました。それじゃ早速用意します。」
『頑張りましょう、主人』
俺はハピネスの励ましの声にうなずくと、右手にハピネス、左手に鏡を持った。
「いきます」
俺は集中を始めた。
「エル・アムダルト・リ・エルス・・・」
「そう、その調子」
そう、確かここまではよかったんだよな・・・。
しかし集中を続けていると、不意に鏡から何か引力みたいなものを感じた。
集中を切らさずに鏡を見ると、
「げ」
これに気を取られたのが間違いだった。
「雄真くん!?」
『主人!?』
母さん達が何か言った気がするが俺には聞こえてなかった。
そうして俺の意識は消えた……。
そして冒頭に繋がるというわけである。
辺りを見回すがやはり、俺には見たことのない場所だった。
『主人、非常に申し上げにくいのですが……』
苦々しく、冷静さを崩さずにハピネスは俺に自分の身体をよく見るように促す。
何だ?いった……い?
そこで俺は初めて気付く。
「身体が……縮んでる……」
『はい、その通りです。主人』
ハピネスに言われてみて、自分の目線の高さが何時もより低いことへの疑問が晴れた。
しゃがんでいたわけじゃなかったんだ、俺は。
「ど、どうするハピネス?」
『とりあえず、今は夜ですし夜中に子供一人は……』
『聞こ……ますか?僕……声が聞こ……ますか?』
「え?」
『これは……』
突然、途切れ途切れの声がどこからともなく聞こえてくる。
俺は再び辺りを見回したが誰もいない。だが、次第にその声が何を訴えているのかがはっきりと聞こえてくる。
『聞いてください、僕のこの声が聞こえるあなた。お願いです、僕に少しだけでいいから力を貸してください。』
「……なんなんだ、これ念話?」
まるで留守番電話に残された伝言のような一方通行の声。
『お願い……危険が……』
250 :
はぴねす!:2008/04/11(金) 22:42:12 ID:j0Z/uo97
「!?」
何だかやばい状態であることは分かったけど、声の主がどこにいるかが分からない。
「どうすれば……『主人、あっちです!』
ハピネスが俺の腕を持ち上げ、遠くにむかって光を発する。
「ああ、わかった!」
どうなっているかよく解らなかったが、何故か嫌な予感がする……。
俺はハピネスが示す場所へと走っていった。
ドォン!!
たどり着いた先で起きた衝撃。
『ここです、主人。』
「アレ……は?」
俺がそこで見たのは、木々を薙ぎ倒す大きな化け物であった。
あの事件の時に現れた奴らとは似ても似つかない。だが、何か大きな力が働いているのが解る。
『主人、女の子です!主人が大好きなぐはっ!』
何かとても腹が立つことを言ったハピネスを指で弾き、示した方向を見遣るとそこには栗色の髪を両横で束ねる女の子が息を切らして立っていた。
こいつは危険過ぎる。
なんとか逃がさないと、そう思ったが直ぐにその考えは打ち消すをえざることになった。
何故なら、化け物にへし折られた大木が女の子へと倒れはじめていたのが見えたからだ。
「ああ、もう。グダグダ考えんの止めだ!」
『主人、例の声の主も確認しました。』
「ありがとよ!」
そう叫んだ瞬間、先に身体が動いてたらしく。俺は全速力で駆け出して女の子を抱き抱えていた。
「いきなりごめん!」
「へっ?ふえぇぇっ!?」
まあ、突然こんなんされたらな。
驚く女の子を抱え、俺は大木が倒れ込む前にハピネスが確認しておいてくれた場所へと飛ぶ。
そこにいたのは小さな動物であった。
「フェレット……?」
雄真は気付いていないがこの時、フェレットは雄真から溢れそうな強大な魔力に驚いていた。
(あの子の魔力……すごい。)
そこに降り立ち、俺は女の子を下ろす。
「あなたたち。来て……くれたの?」
「しゃ、喋った!?」
フェレットが喋った事に俺も女の子も驚く。
だが、このフェレットから魔力を感じ。俺は直ぐに『何かある』と理解した。
誰かの使い魔か……。
251 :
はぴねす!:2008/04/11(金) 22:44:17 ID:j0Z/uo97
けど、そう考えている時間はなかった。
『主人!来ます!』
ハピネスの声に前を見遣ると。そこにはさっきの化け物が俺達の目の前に降り立った。
「君、その子を連れて逃げろ!!」
「え、で、でも!!」
「早く!!」
俺の言葉に女の子は走りだす。こちらを振り返って走るのは逆に転ばないか心配だが、これで後は時間を稼ぐだけだ。
再び、俺は化け物の方へと向き直る。
やはり、何回見ても邪悪だなぁと思いながら。俺は化け物の力を感じる。何だろう……望みのようなもので支配されてるような。
「!!!!」
化け物は叫び、俺に飛び掛かると腕を振り下ろす。
「エル・アムダルト・リ・エルス・アダファルス!」
咄嗟に障壁魔法を使うのに呪文を唱える。
こっちでも使えるか心配だけど、防ぐだけならあの子達の逃げる時間ぐらい……。
「!!!!」
化け物が腕を振り下ろした瞬間、俺と化け物の間の空間が波紋のように揺れる。
障壁が見事に展開したことに雄真はほっと胸を撫で下ろす。
ふいー……こっちの世界でも魔法は使えるな。
『主人、化け物があの子達の逃げた方角へ飛びました!!』
「うっそ!?」
『マジです。』
ヤバイ、気を抜いてしまった。あの子達が逃げた方角……居た!
飛んで向こうの木々に姿が隠れたのを確認しながら俺は化け物の後を走って追いかける。
前から前からと木の枝などを避けて俺は息を切らすこともなく脚をあげて走りだす。
伊吹との戦いの後、なにかと信哉に稽古をつけてもらっていたから前ほど運動不足にはなっていない。信哉には感謝だな……。
ん? なんだろうこの魔力……。
突然、化け物が居る方から新しい魔力を感じた。
『主人、あの化け物が。』
「どうした!?」
『居なくなりました?』
「へ?」
ハピネスの報告に俺はマヌケな声を出してしまう。
そして、その報告を俺は身をもって知った。
「え……君……」
ようやく辿り着いた。けど、そこには先に赤い球が着いたピンクの杖を持ったさっきの女の子が白い魔導服を着て。驚いた表情で自分の手をまじまじと見ている。
たしかにあの化け物は姿を消していた。
252 :
はぴねす!:2008/04/11(金) 22:46:45 ID:j0Z/uo97
どうしよう……、どう声をかけたら。
そう考えた時。
ピーポーピーポー
お巡りさんのテーマが遠くの方から聞こえた。
「おい、とりあえず此処を離れよう!」
「あ、うん!!」
「は、はい!!」
俺の言葉に頷き、女の子はフェレットを抱き上げて一緒にその場をダッシュして逃げる。
「俺、小日向雄真。二人は?」
「はぁっ、た、高町っ、なのはっ。」
「ユーノ・スクライアです。」
走りながら互いの自己紹介を済ませ、俺はそこであの化け物がなのはに封印されたことを知った。
「そうだったんだ、なのはが封印したんだ。」
心の中で俺は彼女に手を患わせたことを謝っていた。
格好悪くてとても言えない。
「……あ、俺この辺初めてだから。」
「えぇっ!?」
なのはは少し驚く。
まあ、勢いよく走りだして知らないなんて。なぁ?
『主人、またまたカッコワルイ。』
「うるせ。だから、なのは。とりあえず安全な場所によろしく!」
「う、うん。はぁっ、分かったよ。こっち、雄真くん!」
なのはが示した方向に曲がり、俺は一緒に走る。
でも、なんでだろ……ユーノがさっきから驚いた表情で俺を見ている。
魔力か?まあ、母さん譲りだしなぁ。
「はぁ、はぁ……こ、ここまでくれば、はぁ……大丈夫」
「サンキュ、なのは。ふぅ……」
高まる鼓動を抑えるように息を吸い込み、俺となのはは公園のベンチに座る。
そして、なのはの魔導服が解除され私服に戻り。しばらくして俺達の呼吸が穏やかになったところでユーノが声をかけた。
253 :
はぴねす!:2008/04/11(金) 22:50:24 ID:j0Z/uo97
「あの……いろいろあって言えなくてごめんなさい。助けてくれてありがとうございました。小日向さん、高町さん」
「雄真で良いよ。」
「私も、なのはでお願い。」
「じゃあ。ありがとう、雄真、なのは。」
改めて頭を下げるユーノ。
「ところで、雄真に聞きたいんだけど。その魔力といいデバイスといい。君は魔法使いなんだよね?」
その質問に俺は不思議に感じた。
デバイス?ハピネスのことか?
「ああ、俺は魔法使い。こいつはハピネス。俺のマジック・ワンド」
『よろしくお願いします。ユーノ、なのは』
二人に手を差し出し、指輪であるハピネスを見せる。
すると、今度はユーノが不思議そうな表情をした。
「マジック・ワンド……」
けど、一応ここで話をやめようと思った。
「と、とりあえず。なのはは怪我無い?」
なのはが話題に置いてけぼりだし。
「へ……あ、うん。」
「でも、初めてであんなに動くなんて驚いたよ。」
ユーノの言葉になのはは少し照れた表情でううんと首をふる。
「雄真くんが助けてくれて、ユーノくんが教えてくれてからだよ。」
「なのは……そうだね。本……当に、よかった……」
「ユーノ?」
突然、言葉が途切れてぱたりと小さな身体が倒れ込む。
「ゆ、ユーノくん!?」
あわてて抱き起こし、声をかけると。小さな口から呼吸が聞こえた。
『気を失ったようです。』
「とりあえず、今日はユーノを寝かせたほうが良いな……」
「そ、そうだね……お父さん達に言わなきゃ……あ」
何かに気付いたのかなのははそこで俺に視線を向ける。
何だ?
「雄真くん、お家どこ?」
「あ……あー。その」
しまった……。気付いたらあそこに居たなんて変な話だし。
純粋な瞳で俺を見ているなのはをかわいいと感じたのは内緒にしておこう。ハピネスに何を言われるか……。
GJ!!です。
スカ博士とクアットロは殺生丸様完全体に殺されちゃえばいいんだw
命乞いとかしなくていいから死んでくれい。エンドラインの活躍で補充するぜw
今回はルー子の心の闇が見えてとても面白かったです。天生牙がはつかうのだろうか?
255 :
はぴねす!:2008/04/11(金) 22:56:51 ID:j0Z/uo97
『それが主人にはお母様しかいなく。少し前にそのお母様と生き別れになってしまい。以来、街々を私とさ迷っていたのです。』
「はっ?ちょ」
突然、何を言い出すんだこの指輪は。
でもよく考えたら間違いじゃないか……。
「そうだったんだ……ごめんなさい。」
悲しげな表情で落ち込むなのは。
「い、いや。今夜も、の、野宿するつもりだったし……」
よく、口から出まかせ言うよな。俺。
「そうだ、お父さんきっと許してくれるから。私の家に泊まっていってよ♪」
パァッと輝いた笑顔で言うなのはに罪悪感がする……。
「え……あ……」
どうしよう……人の家に泊まるのは。でも、この世界じゃどうしようも……。
『主人、仕方ないですよ。』
念話で語りかけてくるハピネスの言葉。
「♪」
笑顔で返事を待つなのはを見て、俺は……。
「ありがとう、良いのか?行って。」
「うん、大丈夫だよ雄真くん♪」
「じゃあ、なのはの家に行くよ。」
俺はなのはの案に従うことにした。
『やったね主人。これからこっちでもハーレムマスターの道が始まりますよ』
こいつが人だったら親指を立てているのか。
うわ、腹立つ……。
「?」
ぽかんとした表情で見ているなのは。
「いや、何でもないヨ?」
「あはは、変な雄真くん」
でも、ハピネスの言うことも正しかった。
ハーレムとかじゃなくて、これから俺は出会いと闘いを経験していくことへの始まりという意味では……正しかった。
その頃、母・鈴莉は。
「うーん、どこ行ったんだろ雄真くん。」
残されたマジック・アイテムを調べていた。
続く。
256 :
はぴねす!:2008/04/11(金) 23:01:05 ID:j0Z/uo97
以上です。
皆さんが良い作品を書いてる皆様の中で駄文ですが楽しんでもらえたらと思います。
一つ言わせろ
駄文は読んでも面白くない。
駄文だって思うなら直してからこい
はっきり言って言い訳にしか見えなくて不愉快だから余計な事言うの止めとけ
>>256 はぴねすのクロス作品は時々見かけますが
なのはとのクロスとは・・・パワーバランス考えないとgdgdになると思ふです。
ともあれ楽しみな展開。やはり雄真はどこの世界でも女性に振り回される運命なのか。
次回が楽しみです。
>>259 伝えとかないと意味ないかな、と思ったんだ。
すまない
>>256 つぅぅぅぅぅぅまんないですぅぅぅぅぅぅぅ
いや、マジで。
嫌なら読むなよとか思うかもしんないけど、
スレの質の低レベル化を招くという点では今後自重してほしい。
>>263 とりあえず「スレの質の低レベル化」はあなた自身が身をもって示してるな。
つまらんならそこのとこを具体的に説明してあげなさい。
>>239 スレの質の低レベル化を招くんで今後自重 とか言われてもなー、
この手のスレは、面白いのもつまらないのも一緒くたに投下されるのが普通だし、
つまんねーって言うのは構わないだろうが、自重しろってのは言い過ぎじゃないか?
自重の部分が、自作を駄文呼ばわりする事に対して言ってるんならスマンカッタが。
つか今時こんなレベルの低い釣り針も珍しいな
小学生でももっとマシだろ
おいおいなんで喧嘩な雰囲気なんだよ。せめてクロスして欲しい作品でもリクエストしようぜ。
ロックマンXかイレギュラーハンターXのクロスが見たい。ロックマンゼロも捨てがたいが…
1.気がついたら知らない場所でした
2.とりあえず主人公の自己紹介と直前までの行動振り返り
3.なんかトラブルがあるので介入します
4.作品キャラと知り合いました
はい、お約束というかお決まりというか、捻りがないです
何かしら工夫しないとこの展開になってるだけで読む気なんぞ無くなります
黙っていても その内淘汰されるだろ。
低品質なら感想などもらえずシカトされるからなここは。
それなら無視して進める方が荒れずに進められるし 新規も敷居を高くせずに入れる。
はいはい、ウロス行きな。
毒なら本音スレへいきなさい。
そして、ここは投下スレ。
雑談は禁止だよ。
>268
べつに自然じゃん。
変な展開考えてGDGDになるよりマシだと思うけど?
ロックマンXシリーズか。
質量兵器が服着て歩いてる連中が管理局と接触・・・・・・
武力衝突は避けられないんではないだろうか。
レプリフォースあたりが黙ってなさそう。
狽ニかその辺利用してスカと組みそうだし。
『イレギュラーハンター』がまさしく『イレギュラー』
……Xシリーズらしい、存外に深いテーマになりそうな予感
>>268 むしろそこは起承転結の『起』としてなくちゃいけない部分だろw
そこだけで読む気なくなるとかwww
つーかKY。自己中。
お前ら落ち着け
これは孔明の罠だ。
>>273 イレギュラーハンターXでは、VAVAモード、ボス達やΣとの会話で
「イレギュラー」についてかなり考えさせられましたからね。
これがなのはと交わればどんなことになるやら正直コワイっす。
ジャーン ジャーン
只今ロックマンでクロス製作中の俺、惨状orz
バスターに始まり敵から奪った武器さえ質量兵器のオンパレードでどーすんだこれ状態ですよ!?
…もう気にしないで歩く火薬庫状態で戦わせるべきかと思案している次第です(つД`゚)゚。
282 :
なの魂:2008/04/12(土) 01:16:18 ID:6KfAC1SI
おまえらウロス行け
ゴメン、今の放送時にカットしといて
……一生の不覚orz
>>282 あえてコテ付きで言うとは、貴方は漢(おとこ)ですね。
ともかく皆さん自重してウロス行こう。
クロスオーバーネタをいくつか考えてみました。
なのはStrikerS×東方Project
JS事件から1年、機動六課の解散の後、それぞれの道を歩き始めたなのはたち。
そんなある日、第97管理外世界から今まで観測されなかった強力な魔力反応が突然と現れた。
その魔力反応は幻想郷という忘れられた地から出ていた。
そして、そこには消滅したはずの魔導書がよみがえる。
なのはStrikerS×ソウルイーター
今年アニメ化された『ソウルイーター』。原作の設定を補完したところがGJ!!
機動六課が『ソウルイーター』の世界へと出長派遣。
なのはStrikerS×新造人間キャシャーン
たっだ一つの命を捨てて、生まれ変わった不死身の体、鉄の悪魔を叩いて砕く、
キャシャーンがやらねぇば、誰がやる。
以上です。
>>285 東方とのクロスは単発で書かれてたような・・・
考えたんなら自分で書け。
もうこれ以上はウロス(雑談)行きだろ。
作品に関することならともかく。全然関係ないじゃないか
かなり空気がピリピリしてる中ですが…。
40分から時の地平線第一場を投下しようと思います。
進路クリアー
どぞどぞ
ならば支援だ
Оk
では投下します。
魔法少女リリカルなのは×諸葛孔明 時の地平線
第一場
――新暦71年4月29日
「八神捜査官。要救助者全員救助完了しました!」
「了解です!」
通信を聞いて八神はやては安堵した。ミッドチルダ北部の臨海第8空港で起きた大規模火災。
空港全体に火の手が回るほどの惨事。観光客や空港職員等負傷者は数え切れないが、奇跡的に死亡者はゼロで済みそうである。
(航空魔道士隊がもっと早く来てくれれば……)
はやては動きの遅い地上本局部隊に思わず心の中で愚痴を零した。
しかし居ない者に文句を言っても何も起こらない。今いる人員で何とかしなければならないのである。
親友のなのはとフェイトも凄腕の魔道士だが、彼女らは火災鎮火という役割には向いていない。
だが彼女らは先程部隊指揮を託したゲンヤ=ナカジマ三佐の娘二人を始め、逃げ遅れた人たちを獅子奮迅ともいえる働きで救出した。
素早く思考を切り替え、はやては最後の抵抗とばかりに燃え盛る建物を睨んだ。
「ぶつくさ言っても始まらん…!」
ここからは自分の出番――と、はやてはデバイスを握る手に力を込めた。
既に数ブロックの凍結…もとい消火は完了している。
後は中央ブロックのターミナルの火災を消してしまえば鎮火の方向に向かうだろう。
「ここさえ消してしまえば後は――」
そう呟き詠唱に入ろうとしたその時――突然はやては上空より飛来する巨大な熱を感じた。
火災とは明らかに違う、肉体の奥底に響く熱さ。
その熱に吸い寄せられるようにはやては上空を見上げた――
同時刻――高町なのはとフェイト=T=ハラオウンは逃げ遅れた人達を全員助け出し、一先ず合流していた。
後は火災を鎮めるだけだが、自分達の魔法は消火活動には不向き……これ以上何も出来ない自分達を歯がゆく感じていた。
自然と火災現場を見る目も厳しくなる。
「なのは……気持ちは分かるけど、後ははやてに任せるしか……」
「うん……」
悔しそうに火を見つめるなのはにフェイトは声を掛けた。自分とてただ見ているだけでいるのは辛い。だが……。
「……そうだね。ごめんねフェイトちゃん」
親友にいらぬ心配を掛けたと、なのははフェイトへ謝罪の気持ちを込める。
消火だけがこの後の作業ではない。このまま突っ立っているわけには行かない。
要救助者は全員助け出したとの報告があったが、これ程の規模の災害である。
万が一という場合も十分に考えられる。ならば自分達が出来ることは――
「ひょっとしたら逃げ遅れてる人がいるかもしれないし、もう一度偵察に行こう、フェイトちゃん」
「うん。なのはは北側から回って。私は……」
南側から――そう言おうとした時……何かを察知したのだろうか。フェイトは唐突に上空を見上げた。
そしてそれはなのはも同じ……二人が感じたのは目の前の火災の熱ではない、もっと異質な、違う熱……。
今まで感じた事の無い熱に――はやてと同じように――引き寄せられるようになのはは顔を天へ上げた。
若き三人の魔道士が見上げた先――遥かな天空から現れたのは一匹の巨大な龍。
それは西洋で良く見られる巨大な翼を持ち、その巨体を二本足で支えるドラゴンでは無く、東洋で見られる大蛇のような長大な体を持つ龍であった。
驚く三人を尻目に龍は猛スピードで舞い降りるとそのまま空港中心部へと姿を消した。
その直後、轟音と共に空港中心部から凄まじい炎が天高く燃え上がり、その余波で消火された周辺ブロックまでも再び火が走り出した……。
「な……なんやあの龍は!?」
突然の状況にはやては思わず詠唱を中断してしまった。無理も無い。突然遥か上空から巨大な龍が飛来した。かと思うと、
恐るべきスピードで龍は空港中心部に突っ込んでいった。そして中心部にぶつかると龍は消え去り、
その直後、ターミナルはおろか、消火が完了したブロックにまで火の手が回りだしたのである。
それはあたかも新たな力を与えられたかのように……特に中央ターミナルは天に届かんばかりに紅蓮の業火を轟かせていた。
「くっ!折角後少しだったのに……!」
振り出しに戻ってしまった――はやては悔しさを押し殺すように歯噛みした。下手をしたらさっきよりも火の手が強いかもしれない。
もしこの状況が30分前に起きていたら……そう考えるだけで背筋に悪寒が走る。
だが幸運にも救助は先程完了している。また陸士部隊や災害担当局員も咄嗟に離脱して辛うじて巻き込まれてはいないようである。
兎も角一旦ラインを下げて再度消火するしかない……はやてはそう思い、指揮官のゲンヤと連絡を取ろうとした。
だが悪い時には悪い事が重なるものである……。
《はやてちゃん!中央ターミナルに生命反応です!!》
「なんやて!?」
ゲンヤのサポートをしていたリインからの緊急通信にはやては狼狽した。
火災が起きた中でも特に酷い状況だったターミナルは救助が最優先され、真っ先に避難が完了していたはずである。
「要救助者は全員助け出したんじゃないんか!?」
《そ…そのはずなんですけど、急に反応が……さっきまでは何も無かったのに……》
現場管制をしていたリインも予想外の事態に些かパニックに陥っている。
しかも中央ターミナルといえば先程『あの龍』が舞い降りた場所だ。
あまりにもタイミングが良すぎる。はやての脳裏を疑問が掠めた。
(場所といいタイミングといい、さっきの龍と何か関係あるんやろか……)
特別捜査官としての冷静な思考がはやてを支配する。
だが今は状況が状況である。はやては頭を振り、思考を目の前の炎に戻した。
支援
(考えるのは後や。今は中の人を助けんと……)
だが事態は厳しい。炎は依然天高く燃え上がっている。
この状況で果たして助けに行けるか……?
次々に変化する状況にはやての心も弱気になりかける。だが――
《はやてちゃん!》
《はやて!》
はっとはやては我に返る。呼びかけてきたのは大切な親友――
その声にはやては弱気になった自分を責めた。
何があっても助け出す……そう決めたはずだ。
そしてここには自分だけじゃない。
「そうや……弱気になってはあかん。絶対に……助け出す!」
親友の姿に活力を貰い、はやてはなのはとフェイトに呼びかける。
「なのはちゃん!フェイトちゃん!中央ターミナルで救助者一名発見や。
ちょう厳しい場所やけど……お願い!」
《任せて!》
頼もしい返事が返ってきた。そうだ、今までも自分達は困難な場面を乗り越えてきた。今回も絶対に――
「リイン。二人に救助者の位置座標を送って!」
《はいです!》
はやての凛とした声にリインも落ち着きを取り戻し、自分の仕事に取り掛かる。
《八神捜査官。後少しで航空隊も到着する。疲れてるだろうがもう一踏ん張り頼むぜ》
「任せて下さい。ちっちゃくても体力には自信あるんですよ?」
リインの傍らで指揮を取り続けるゲンヤの励ましに笑顔で返すはやて。
デバイスを構えなおすと、はやては勢いと取り戻した炎を再び鎮めるべく、全ての熱を奪う氷結の息吹の詠唱を始めた。
ターミナル上空へ来た二人の魔道士は眼下を眺めた。
炎を撒き散らし続ける建物を睨みながら、なのはは自らの意思を愛杖に発する。
「時間が無いね……。レイジングハート、最短距離で行くよ!」
≪All right≫
主の意を受けたレイジングハートが先程受け取った情報と照らし合わせて最短距離を検索する。
向かうは炎渦巻く中央部。
≪下方の安全を確認。ファイアリングロック解除します≫
レイジングハートの声と共に薬莢が排出され杖の先端が最短距離の方角へ向けられる。
先程スバルを助けたのとは逆の方……地上へ。
≪Buster set≫
「ディバイィィンバスターー!」
なのはの声と共に桃色の閃光がターミナルの炎を屋根を貫き、建物内への道を作り出した。
すぐさまなのはとフェイトは建物内部に突入し、救助者の座標へと向かっていった。
「リインから送ってもらった座標だとこの辺りのはず……」
中央ターミナルに突入したなのはとフェイトは、オーバルプロテクションを展開しながら周囲を見回していた。
だが周囲は崩落した壁や煙が激しく、視界は甚だ悪い。
このような状況下のターミナルは損傷が激しく、長時間の行動は危険な状態になっていた。
早く見つけなければ……焦りの色が次第に二人を染めていく。
そんな中で先に救助者を見つけたのは、彼女らの長年のパートナーである――
≪マスター、後方15メートル先の壁の向こうに生命反応を確認≫
レイジングハートが場所を告げる。すぐさま二人は目を合わせ頷き――フェイトが自らのパートナーへ呼びかけた。
「バルディッシュ!」
≪Haken slach≫
フェイトの呼びかけに素早くバルディッシュは答え、金色の斬撃を壁に向かって放った。
轟音と共に壁が崩れると、二人はすぐさま内部に突入した。
二人がそこで目にした人物は……見慣れぬ服装をした長身の青年だった。
(熱い……)
朦朧とする意識の中、孔明は自身の周りに凄まじい熱が渦巻いているのを感じていた。
自分の命がもうすぐ尽きると悟っていた孔明は、これが死ぬ直前の最後の感覚なのか?と感じていた。
華佗ならこの感覚を知っているかもしれない――そう思い孔明は傍に居るはずの親友にこの感覚を聞こうとした。
その時……遥か彼方の地平線から発しているような華佗の声が孔明の脳裏に聞こえてきた。
(孔明……貴方の行く先にはまだまだ険しい道が待ち構えているようです。
それでも……どうかまた貴方に救いの手がありますように)
華佗……?突然聞こえてきた声に孔明は疑問を感じた。その意味を聞こうと孔明はうっすらと目を開けた。
しかしそこに華佗は居なく……変わりにあるのは燃え盛る炎。
「な……!」
想像していた景色とあまりに懸け離れた光景に、思わず孔明は絶句した。
それもその筈、今まで自分が臥していたのは五丈原の陣中であり、自分の幕舎であったのだ。
それが今や辺り一面は火の海――
(まさか魏軍の奇襲か……?)
一瞬孔明はその考えが浮かんだが、直ぐにそれを否定した。
この2週間前、孔明は魏軍総指揮官の司馬仲達と極秘に会談をし、
魏や蜀一国だけでない国全体の将来のことを仲達に託したのである。
その際自分の死後、後方から静かに撤退するよう指示をしてある旨も仲達に語っていた。
あの仲達が約束を破って攻撃してくるとは到底考えられない。
(あるいは魏延か……いや幾らなんでもそれはないか……)
もう一つの可能性も孔明は即座に否定した。
それに――と孔明は辺りを見渡した。炎に焼かれている建物は明らかに五丈原にあるものではなく……
いや彼の今までの知識を持ってしても見た事もない建物だったのである。
この世の終わりのような業火――もしかして自分は既に死に、地獄の世界に落ちたのかと孔明は思った。
「まあ……天国に行けるとは思ってなかったが……ゴホッゴホッ」
どす黒い煙にむせ返りながらも、不思議と心は落ち着いてきた。
そうだ……多くの命を奪ってきた自分が安らぎの休息を得られるわけが無い。
(しかもこの光景――まるで赤壁のようじゃないか……。あの時焼死した彼らと同じ責め苦を味わえということか……)
あの世の者達も中々皮肉な事をしてくれる……孔明は迫り来る炎を見つめた。
(貴方の行く先にはまだまだ険しい道が待ち構えているようです)
こういう事か……と先程脳裏に響いてきた華佗の言葉に対し孔明は自嘲気味に呟いた。
博望坡では3万、赤壁では10万の兵を火計で焼き殺した自分には相応しい道――
(これはオレの歩んできた道だよ華佗……。決して険しくはないさ)
いくら平和に心を砕いていたとしても、自分が犯した罪は消えることは無い。
ならばこの試練にも立ち向かうだけ――
迫り来る煉獄の炎を前に、孔明は決して眼を背けずに立ち上がった。
彼が立ち上がったのと左側の壁が音を立てて崩れたのは、同じタイミングだった。
「えっ……?」
明らかに自然に崩れた音ではなく、人工的に切り崩された音。
その音に不信を抱いた孔明は崩れた壁の方を見やった。
その先から――不思議な形をした杖を手に持ち、見た事も無い服を着た――二人の少女が現れた。
それは決して地獄の使いといった風情ではなく……炎の中から現れた一筋の希望に彼には見えた。
(どうかまた貴方に救いの手がありますように――)
華佗の祈りのような声が再び孔明の頭に響いた。
投下終了です。
孔明となのは、フェイトの邂逅まででした。
孔明がこの世界でどうやって生きていくか、
三人娘が救いの手となれるよう頑張って書いていこうと思います。
支援ありがとうございました。
支援いたします。
ガジェットの正式名称は「ガジェット・ドローン」
つまり「ドローン」。
「ドローン」といったら何か。
「東亜重工から遺産回収作戦の支援に派遣されてきた者だ」
弾体加速! 脳周波!
305 :
天元突破リリカルなのはSpiral:2008/04/12(土) 11:03:11 ID:sEvX2mJz
はじめて書き込ませて頂きます。
グレンラガンクロスssを投下させて貰いたいのですが、宜しいでしょうか?
とりあえずsageましょう支援。
まずはsageような。
失礼しました。
では投下させて頂きます。
……初歩的なことですが、sageってメール欄にsage入力で良いんですよね?
そうですー。
注意)本ssは原作とは異なる設定・背景事情・ストーリー展開で進んでいきます。
そういうものが苦手な方はご注意下さい。
『闇の書』事件終結から十年。
次元世界は――人間は平和な日々を貪っている。
飢えた胃袋に破滅という酒が注がれるとも知らず……。
平穏は、あっさりと崩れ去った。
アンチスパイラルと名乗る謎の勢力による全次元世界への宣戦布告、円と直線で形成された異形の質量兵器――後にムガン≠ニ呼称――による破壊活動。
不安が毒のように世界に浸透し、終末思想やテロの横行。
疲弊した人間達の精神を、際限なく現れる敵の襲撃が更に追い詰めていく。
その悪循環、その無限螺旋。
そんな時だった。
一人の男が、ミッドチルダに現れたのは……。
ひょっとして書きながら投下してますか?
それはやめたほうが・・・。
戦場に突如現れた、一体の見慣れぬ人型の質量兵器。
その右腕――身の丈を遥かに超える巨大なドリルが唸りをあげる。
『ギガドリルブレイク!!』
轟く咆哮、突き抜けるドリル。
その度に、空を覆い尽くすムガンの大群が、まるで消しゴムでもかけられるかのように爆破消滅していく。
その光景を、男達――時空管理局の武装局員達は呆然と見上げていた。
自分達があれだけ煮え湯を呑まされた敵を、あんなにも簡単に倒している……。
それはまるで悪夢か、奇跡のようにしか思えなかった。
しかし如何に圧倒的な攻撃力を誇ろうとも、数千ものムガンの軍勢に単独で立ち向かうというのは流石に無理があったらしい。
貪るような勢いで敵の数を減らしていきながら、アンノウンもまた確実に傷ついていった。
腕は千切れ、脚は吹き飛び、顔面を模した胴体には無数の亀裂が入っている。
初めはその驚異的な自己修復能力で破損を即時再生させていたが、もうその余裕も無くなったのか、ダメージをそのままに戦い続けている。
そして遂に力尽きたのか、糸の切れた人形のように地面に倒れ伏した。
限界を超え、スクラップと化したアンノウンの周囲に、生き残りのムガン達がハゲタカのように群がる。
アンノウン頭部のハッチが開き、搭乗者らしき男がゆっくりと立ち上がった。
ガラクタ同然の愛機を見下ろし、吐息を零す。
――ガンメンなど、所詮はこんなものか。
胸に去来する思いは、かつて『己』が口にしたもの。
しかし男――ロージェノムの口は、自然と別な言葉を紡ぎ出していた。
「……よくぞここまでついて来てくれた。ラガンセン」
言ってから、ロージェノムは虚を衝かれたように黙り込んだ。
自分は、何故こんなことを言ったのだろうか?
たかが機械――それも自分と同じ、仮初の存在に過ぎないというのに……。
自問するロージェノムに、しかし答えを見出す時間は与えられなかった。
アンノウン――ラガンセンの周囲を取り囲み、様子を窺っていたムガン達が、動き出した。
「ふん……」
見慣れた――寧ろ見飽きた敵の無機質な姿を一瞥し、ロージェノムはつまらなそうに鼻を鳴らす。
瞬間、ロージェノムの禿頭から炎のたてがみが噴き上がった。
全身の筋肉が膨張し、血管が浮き上がる。
「わしを……誰だと思っている!!」
怒号と共にロージェノムはコクピットを蹴り、手近なムガンに殴り飛ばした。
殴られたムガンは錐揉み回転しながら吹き飛び、周囲の味方を巻き込みながら爆破四散する。
魔導師達は再び唖然とした。
デバイスもバリアジャケットも無い生身の人間が、素手でムガンを撃破した……!
同じ人間とは思えぬロージェノムの力に男達は畏怖し、しかしそれ以上に、これ以上も無い程心強い味方の出現に興奮していた。
血湧き肉踊るとはこのことだろうか……?
満身創痍、疲労困憊、魔力も尽きかけたこの絶望的状況で、それでも力が湧いてくる。
螺旋の本能――魂の奥底から湧き上がる熱い衝動に突き動かされ、男達の反撃が始まった。
形勢は完全に逆転した。
雄叫びを上げながら次々とムガンを破壊していく男達の螺旋の息吹は、先陣を切って戦うロージェノムにも伝わっていた。
髭に覆われた口元が吊り上がり、獰猛な笑みを形作る。
何故今頃ムガンが暴れているのか、何故消滅したはずの自分がここにいるのか、そもそもここはどこなのか。
疑問は山程あるが、今は取り敢えずどうでも良い。
どうせ二度も死んだ身、今更何が起ころうとも驚きはしない。
今はただ、螺旋の衝動に身を任せ、螺旋の明日の為に戦おう。
一人の戦士として。
――変わられましたな、螺旋王。
かつて部下に言われた言葉が、ロージェノムの脳裏に蘇る。
ああ、確かに自分は変わった。
否、元の自分を取り戻しただけだ。
自分が解放されたのは肉体の頚木からではない。
己を偽り、螺旋の衝動を押し殺しながら千年の倦怠の中で自らを腐らせていく……そんな魂の牢獄からだ。
自嘲するロージェノムの背後から、その時、一体ムガンが襲い掛かった。
咄嗟に回避しようとするロージェノムだが、疲労とダメージから反応が一瞬遅れる。
その時、
「ディバインバスター!!」
凛とした女性の声と共に、桜色の閃光がムガンを貫いた。
書きながらの投下はマナー違反です。
すべてのプログラム>アクセサリ>メモ帳の順でメモ帳というプログラムを起動し、
一旦そこに一話分をすべて書きあげてから、投下を行ってください。
申し訳ありません。
一応書きあがってはいるのですが、投稿する度に改行オーバーしたり投稿してもなぜか表示されなかったりと手間取っております。
……時は少し遡る。
ミッドチルダ東部の地方都市に出現した敵質量兵器、その討伐部隊からの救援要請に、時空管理局は二人の空戦魔導師を派遣した。
高町なのは一等空尉。
フェイト・T・ハウラオン執務官。
共に弱冠19歳にして魔導師ランクS+に認定され、管理局の看板とも言える天才魔導師である。
現場に到着した二人の魔法少女は、二重の意味で絶句した。
一面に広がる瓦礫の山。
立ち上る黒煙、焼け焦げた地面。
上空から見下ろすと、はっきりと解る。
この街は、もう死んでいる。
「酷い……」
惨状を目の前にし、フェイトが表情を曇らせる。
そして驚いたことはもう一つ。
救援要請を受けて現場に急行したなのは達は、部隊の全滅、或いはそれに近い絶望的状況を予想していた。
しかし現実に目の前に広がる光景は……、
「オラオラオラぁっ! 無機物風情が調子に乗ってんじゃねぇっ!!」
雄叫びを上げながら次々とムガンを破壊していく武装局員達。
空で、地上で絶え間なく響く爆砕音。
ボロボロな部隊員達の姿は、確かに増援を要請しても不思議ではない程酷い有様ではある。
しかし戦況は、こちらが圧倒的に優勢だった。
……これ、救援いらないんじゃない?
何やら妙な熱気を帯び、自暴自棄――というよりは調子に乗っているような部隊員達の勢いを前に、二人はそう思わずにはいられなかった。
そんな男達の中で、一際異彩を放つ者がいる。
武装局員達に紛れーー否、寧ろ先陣を切ってムガンを破壊している一人の巨漢。
地上に降下したムガンが攻撃を仕掛ける度に、その驚くべき身体能力で逆に返り討ちにしている長身の男。
筋骨隆々とした身体からは魔力の欠片も感じられない、純粋に身体能力だけで戦っているようである。
そして何より……頭が燃えていた。
「何、あれ……?」
呆然と呟くなのはに、フェイトは全力で同意した。
素手で敵を殴り飛ばして痛くないのか、頭が大変な事になっているが無視して大丈夫なのか、そもそもあの男は何者なのか。
疑問……というよりもツッコミ所が多すぎて困る。
だが驚いてばかりもいられない。
浮遊するムガンの大群――目測だが未だ数百は残存している敵が、なのは達の存在に気づいた。
二人は表情を引き締め、各々の右手に握る宝石――デバイスに語りかける。
「レイジングハート、お願い」
≪All right. My master≫
「いくよ、バルディッシュ」
≪Yes sir≫
主の声に応え、デバイスがその姿を変える。
なのはの右手に握られる紅と白金の魔導師の「杖」――インテリジェントデバイス・レイジングハート。
フェイトの手の中に出現する黒鋼の戦斧――インテリジェントデバイス・バルディッシュ。
十年近い月日を共に戦い続けてきた、二人の大切な「友達」である。
最初に動いたのは、なのはだった。
足元に魔方陣が出現し、構えられたレイジングハートの先端に光が集束する。
流星のようになのはの許に集う、様々な色の魔力光――先に戦っている武装局員達の戦闘の残滓である。
なのは自身の桜色の魔力光と重なり合い、虹色の光球となってその大きさと輝きを増していく。
「スターライトブレイカー!!」
気合一発、なのははデバイスを振り下ろした。
レイジングハート先端から虹色の光の奔流が放たれ、ムガンを呑み込んでいく。
今の一撃で敵勢力の二割弱、その誘爆で更に幾らかのムガンが一瞬で消滅した。
フェイトも負けていなかった。
なのはの砲撃で統制の崩れたムガン達に突っ込み、敵陣を引っ掻き回して同士討ちを誘う。
「ディバインバスター!!」
「フォトンランサー!!」
なのはの援護を受けながら、次々と敵を撃破していくフェイト。
勢い衰えぬまま敵の数を減らしていく武装局員達。
数百――なのは達が到着する前は数千も存在した敵は、今や数える程しか残存していない。
戦闘の終わりは近い……誰もがそう思ったその時、一体のムガンが燃える頭の男――ロージェノムに攻撃を仕掛けた。
咄嗟に避けようとするロージェノムだが、反応が一瞬遅れる。
反射的になのははムガンを撃ち抜いていた。
なのは達の存在に気づいたのか、緩慢とした動きでなのはを見上げるロージェノム。
……目が合った。
・レスは60行、1行につき全角128文字まで。
・一度に書き込めるのは4096Byts、全角だと2048文字分。
・専用ブラウザなら文字数、行数表示機能付きです。推奨。
・先頭行が改行だけで22行を超えると、投下した文章がエラー無しに削除されます。空白だけでも入れて下さい。
ですので。支援
これが、螺旋の王と魔法少女達の出会いだった。
(面妖な……。人が空を飛んでおるわ)
空どころか宇宙でさえも神出鬼没に現れた自身の娘のことは棚に上げ、口には出さずに呟くロージェノム。
(あー……、髪の毛燃え尽きちゃってる)
螺旋の炎の消えたロージェノムの禿頭に目を遣り、申し訳なさそうな顔をするなのは。
……第一印象は、互いにあまり良好とは言い難かった。
天元突破リリカルなのはSpiral
プロローグ「わしを……誰だと思っている!!」(了)
投下完了しました。
アドバイスありがとうございます。
以後気をつけます。
GJ!!
今度からは気をつけてみてくださいー。
ロージェノムとなのはの思考のズレがw
熱血展開に期待。
・先頭行が改行だけで22行を超えると、投下した文章がエラー無しに削除されます。空白だけでも入れて下さい。
これに関してはAA荒らし対策の規制らしい
それとwikiに登録された後の閲覧環境差(見るPCの解像度)の問題鑑みると
1行は上限全角60〜80字に抑えた方が意図したレイアウトから崩れるリスクが減少する
おお、グレンラガン後半クロス! GJです!
文章力自体は上手いので、今後の展開に期待。
あと、揚げ足取るようでアレなのですが……
ロージェノムのガンメンは「ラゼンガン」ですよ?
職人の皆様GJです。
ではFullcolor'Sを投下します。
ここは”じおん”居住戦艦ムサイ。
今、ムサイのブリッジでスカリエッティは艦内のモニターに映る戦闘機人とMS、23人の姿を見てほくそ笑んでいた。
スカリエッティ「ふふふ……いける、いけるぞコレは!」
するとそこにシャアとララァが現れ、スカリエッティに声をかける。
サザビー「どうしたドクター・スカリエッティ?」
ララァ「なんだか。さっきから歌が流れているわね。ウフフフフ」
スカリエッティ「ララァさん……貴方は素晴らしい。シャア聞きたまえ、今の私はドクターではなくプロデューサー『スカリエッティ♂』だ」
サザビー「はっ?ι」
何を言っているんだ?と言わんばかりの表情で聞き返すシャアにスカリエッティは興奮した笑顔で眼鏡をかけて答える。
スカリエッティ♂「見たまえ、私が目指すアイドルユニットを!ユニット名は「マシーン娘。」だ!」
スカリエッティ♂に示され、モニターを見るシャア。
だが、そこに映るものにシャアは吹き出す。
リック・ドム12人兄弟とナンバーズ11人がひらひらの衣装を身につけて歌って踊っていた。
サザビー「オい……まだ、ナンバーズは解るが黒い奴らは娘じゃないだろι」
スカリエッティ♂「何をいうか、リック・ドムくん達とナンバーズの衣装には今まで回収したレリックを使い込んではぐろっ!!」
シャアキックの洗礼を受けるスカリエッティ♂。
魔法少女リリカルなのはFullcolor'S 機動六課編 第二話
シャアザク「お前レリックをそんなんに使ってたのか!(怒) 勢いでシャアザクに着替えてしまったわ!」
スカリエッティ「失敬な!今週の機動六課へのゲリラライブを考えてルーテシアとその手下達つまりルーテシタ、ドゥーエ(ソロ)にはリハーサル用のステージと衣装をレリックでおさまっ!!」
再びシャアキックを喰らわされるスカリエッティ。
シャアザク「なんだかスゴイ武器を作って襲撃するんじゃないのか!」
スカリエッティ♂「マイクとダンスが武器さ♪」
シャアザク「なんだその爽やかな返事ι あと、最低なネーミングに関してルーテシア達に謝れ」
ララァ「でもプロデューサーとしては正解の答えかしら。ウフフフフ♪」
−−−−
場所を移し、ここは機動六課仮隊舎兼ホワイトベース。
そのブリッジ。
はやて「いやぁ、落ち着くなぁ」
ガンダム「まあ、校長の椅子の代わりだけど落ち着くんならオレ達もうれしいよ♪」
シグナムとストライクノワールに入れて貰ったお茶を飲みながらガンダム達とはやて達は和んでいた。
フリーダム「お茶がおいしー♪」
リインII「ですねー♪」
ノワール「ふふふ、あたり前だ。怨念を込めたからな。」
ガンダム「お前……。」
なのは「コラ、怨念なんてー」
子供に言い聞かすようにノワールに注意するなのは。
ガンダム「言ってやってよ。なのは」
なのは「怨念を込めるならカリムさんだよ♪」
一同:あぁー(納得)
デスティニー「Σそっちかい!!」
ノワール「そいつなら良いのか?」
なのは「全然OK」
ガンキャノン(108)「なら逆にウイングを行かせた方が……」
(108)の言葉にはやて、なのははしばらく考えて皆に告げる。
はやて「ウイングくん、デスティニーくん、フリーダムくん、V2くん、リインフォース。GOや。」
リインフォース「わかりました、我が主」
デスティニー「え、オレ達も?」
フリーダム「な、なんで?」
なのは「カリムさんをエンドレスで胴上げしてきてほしいの。」
V2「うん、わかったー♪」
ウイングゼロカスタム「任務、了解。」
はやて、なのはからの任務を受け取り、飛行が得意なMS達とリインフォースは羽ばたいていった。
ヴィータ「なのは、まだ根に持ってんだな」
ヴァイス「校長の椅子に座れなかったからっすかね」
なのは:あーあ、座りたかったな。校長先生の革張りの黒椅子……。机に脚を乗せて組みたかったのに。
ガンキャノン(109)「何気に支配者だよ。なのはさん」
シャマル「あれ、そういえばデュエルくんは?」
ジャスティス「ああ、バクゥの散歩に行ったよ。」
−−−−
ブルデュエル「わんわヤー!」
デュエル「こら、泣くな。」
バスター「やっぱ、そー簡単になおんないか……ι」
ザフィーラ「で、俺を呼んだのか?」
ガイヤ(兄)「見慣れてる奴が変身したらと考えてな。」
ザフィーラ「余計酷くなると思うんだが……」
−−−−
バスター、ガイヤの要請でザフィーラは犬の姿でブルデュエルの前に現れる。
ザフィーラ「…………」
バクゥ「♪♪」
ラゴゥ「…………」
ヴェルデ「わー、兄ちゃんが犬になったー♪」
ブルデュエル「うわぁぁん!!わんわヤー!」
ガイヤ(兄)「駄目だったかι」
ブルデュエル「このわんわチクショー!」
デュエル&バスター「Σちょ、言い過ぎ!」
ザフィーラ:犬チクショーかι
−−−−
その頃、仮機動六課の隊舎となったホワイトベースの外。
ルーテシア「ここが……ライブ会場……」
アギト「あれ、シャアに聞いてたのと建物の形が違うくね?」
ゼスト「どうゆうことだ……」
ホワイトベースを見上げるルーテシアならぬルーテシタ達。
ドゥーエ「分かった!」
ルーテシア「どうしたの……?」
ドゥーエ「さっきの爆発はセレモニーよ!!」
地図を片手にそう告げるドゥーエ。
アギト「いや、にしては範囲広すぎだったろι きのこ雲立ってたし」
ドゥーエ「多分、アトミックバズーカとか使っても大丈夫とか言ってやったのよ。」
ドゥーエの推測にゼストは呆れたように腕を組む。
ゼスト「そんな馬鹿な話があるわけないだろう……」
???「イエ、50%間違ッテハイマセン。」
ドゥーエ「ほら、私の言った通りでしょ?って−−」
突然、答えてくれた声に一同は振り向く。
そこにいたのは背中にリングのようなバックパックを持つ白いMSであった。
ルーテシア「あなたは?」
スターゲイザー「ワタシハ、今日ガンダムサン達ト旅ヲシテイテ。コノ機動六課にヤッテキタ『スターゲイザー』トイウ、AIヲ搭載シタMSデス。」
ドゥーエ「…………」
アギト「どうしたんだ?」
先程から目を見開いてスターゲイザーを見ているドゥーエを心配して声をかける。
ドゥーエ「こ、このぎこちない喋り方……そして喋るたびにカタカタと鳴る機械音とAI搭載。スターゲイザー、貴方ロボットね!」
スターゲイザー「ハイ」
ドゥーエ「は、初めてこんな高性能なロボット見たわ!凄いわスターゲイザー!」
アギト「なんか面白い事言ったな。」
ゼスト「あいつ自身は何なんだろうな。」
ルーテシア「貴方に四次元ポケットはあるはず。」
スターゲイザー「マンガノ読ミスギナ発言デスネ」
−−−−
その頃、聖王教会では。
カリム「きゃあっ!!」高度20。
V2「はいっ、リインフォースの姉ちゃん!!」
リインフォース「任せろ」
カリム「ひぃいゃああっ!!」高度50。
隊舎爆発の元凶であるカリムが飛行が得意なMSとリインフォースに胴上げされていた。
リインフォース「次だフリーダム。」
フリーダム「気が引けるけど……えい!」
カリム「いやぁぁぁぁ!!」高度100
フリーダム「はい、そっち!」
デスティニー「ほいっと!」
カリム「助けてぇぇっ!(泣)」
そして、高度150の世界で待っていた姿をシャッハは地上から紅茶を片手に見上げていた。
シャッハ「騎士カリム。自業自得です。あ、飛行機にぶつかった」
続く
以上です。
カリムはお星様になりまし(グッシャア
さて、はたしてルーテシタ達はライヴを成功するのでしょうか。
ではでは
330 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/12(土) 13:10:59 ID:3Ez2Dpm7
ルーテシタ…
まさか!ルー子はジュドー・アーシタと関連がry
GJ!和み分ありがとうございます
度々ロワの話題を挙げて申し訳ありませんが、告知させて頂きます。
なのはクロスバトロワにおいて、敵キャラの募集をする事になりました。
ご希望の書き手さんは、「クロス作品中にて主人公勢力と敵対しているキャラ」1〜3人を、なのはクロスロワ専用したらば掲示板の議論スレに明記してください。
明記されたキャラは候補となり、明日、投票されます。その投票で上位3人が、バトロワに参加となります。
募集期限は今日1日なので、ご希望の方はお急ぎください。
332 :
エックス:2008/04/12(土) 13:40:30 ID:g7+oTkJA
初めまして、なのはにロックマンXをクロスした物を制作しています。
もしよければ、投稿させて下さい
sageてから話を始めようか
334 :
エックス:2008/04/12(土) 13:41:49 ID:g7+oTkJA
了解です
なんだ口先だけのage荒らしかよ
336 :
エックス:2008/04/12(土) 13:47:24 ID:g7+oTkJA
すいません、ネットはあまりしない者なので、了解と言った癖には、さっきの意味理解
できてません。なにしろ、ネットするようになったのは、最近なので
天元突破リリカルなのはSpiral氏GJ!
これこそ俺が待ち望んだなのは×グレンラガンだぜ!
ネット自体初心者なら悪い事は言わない。
半年romれ。
半年間、何も発言せず掲示板を見ていろという意味な。
そうすればルールとかも聞かなくとも自然とわかってくるだろうから。
339 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/12(土) 13:52:19 ID:1Jpod9vv
メール欄に sage って入れなさい。
342 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/12(土) 13:54:11 ID:1Jpod9vv
すまんすまん。
抜けてたw ごめんよ。
直ってないよw
コントすんなw
345 :
エックス:2008/04/12(土) 13:58:45 ID:g7+oTkJA
今日も何事もなく任務が終わると思っていた、思いたかった。しかし、悪魔
は既に私たちの目の前まで迫って来ていた。
でもそれは、まだ始まりに過ぎなっかた。本当の恐怖は今から始まる。嘗て
無い戦いに俺たちはどう立ち向かって行くのか
魔法少女リリカルなのはWILD FANG 開始する
注意、まだパソコンの操作が危ういので、すいませんが投稿に時間が掛かります
「投下して良いですか?」と聞いたな?
よろしくないです。むしろやめろ。
347 :
エックス:2008/04/12(土) 14:00:51 ID:g7+oTkJA
すいませんでした
わかった、これが最後だ。
これを守れないなら……と言うよりやはり半年間は読みに徹してくれ
339 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/04/12(土) 13:52:19 ID:1Jpod9vv
メール欄に sage って入れなさい。
・レスは60行、1行につき全角128文字まで。
・一度に書き込めるのは4096Byts、全角だと2048文字分。
・専用ブラウザなら文字数、行数表示機能付きです。推奨。
・先頭行が改行だけで22行を超えると、投下した文章がエラー無しに削除されます。空白だけでも入れて下さい。
314 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/04/12(土) 11:36:59 ID:z/FkTBtu
書きながらの投下はマナー違反です。
すべてのプログラム>アクセサリ>メモ帳の順でメモ帳というプログラムを起動し、
一旦そこに一話分をすべて書きあげてから、投下を行ってください。
>>347 スレのちょっと前とテンプレぐらいはちゃんと読もうな。
350 :
エックス:2008/04/12(土) 14:04:44 ID:g7+oTkJA
親切にしていただきありがとうございます。
しばらくは大人しくしております。それでは。
351 :
エックス:2008/04/12(土) 14:05:23 ID:g7+oTkJA
ごめんなさい
だからsageろと。
……コントのつもりじゃないんだが。
一応これで直ったはず。(これで最後)
まさかメール欄が何なのか分からないってオチじゃないだろうな?
自分はみたいなー、X
356 :
エックス:2008/04/12(土) 14:26:45 ID:g7+oTkJA
さっきから、いろいろやっているのですが、
困ったことに、メールが送信できません。
357 :
エックス:2008/04/12(土) 14:31:16 ID:g7+oTkJA
WSAEINVALサーバ名ってなんですか
>>356 ここはあんたのためのパソコン相談室じゃねえよ。
>>356 これのことだからね?
↓
名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2008/04/12(土)
360 :
エックス:2008/04/12(土) 14:36:30 ID:g7+oTkJA
厳しくも優しくしていただきありがとうございます。
後は自分でやってみます。
今度から先生と呼ばせて下さい!!
ぶっちゃけただの荒らしに見えてきた
というか荒らしでは?
ちょWW待ちわびたら只の荒らしかよ
ロックマンゼロスレに行けば幸せになれるよ少年
あー、とりあえず……、1600「頃投下可能?
少しは早く出来るけど……。
365 :
エックス:2008/04/12(土) 14:51:13 ID:g7+oTkJA
ごめんなさい、勉強し直してきます。でも、いつかは絶対に投稿しに来ます
というより、今試行錯誤中です。いつになるかわからないので、忘れて下さい
忘れた頃にまた来ます
>>364 それじゃあ自分は1700前後で。
1600ごろですと今からおよそ一時間後っすよね?
今は投下するタイミングじゃなさそうですし
下手に早く投下する事も無いかと思います。
>エックス氏
初心者なら総合案内と初心者板には目を通しておけ
行動しといて「初心者なので」、「慣れてないんです」、「知りませんでした」は言い訳としては最悪の部類
まず悪感情しかもたれないだろうことを知っとけ。ネットに限った話じゃないけどな。
えっと、自分8時頃にビスケットシューターの投下予約をしてもよろしいでしょうか?
その時間なら予約空いてますよね?(ドキドキ)
さて、んではソロソロ投下いたします。
内容は外伝第二話です。
リリカル・コア外伝第2話「騎士と鴉」
「えーと、今日の分の日誌はこれで良し、後は月例報告に添付する画像はと……」
エリオ・モンディアルは自身に割り当てられた端末と向かい合って格闘していた。
「あのデータ、何処に入れたかな……?」
機動六課在隊時に当時スターズ分隊副隊長だったヴィータに仕込まれたとは言えまだまだぎこちない。
エリオにとってはこのようなデスクワークよりも訓練、そして今ではキャロやルーに及ばないとは言えそれなりに
心を通わせれるようになった自然保護区の動物達と交流しているほうが落ち着くというのが本音である。
「あった。これを添付して……」
「エリオ、ちょっといいかい?」
「タントさん?どうかしましたか?」
「ちょっとね」
書類を作成後、提出し裁可して貰う現在の上司に声を掛けられる
「すいません、書類にはもう少し時間がかかりそうなんです……」
「ああ、それはまだいいよ。でも来たばかりの頃に比べれば大分此処にも業務にも慣れてきたね?」
「はい、おかげさまで」
六課解隊後、エリオはキャロと供に自然保護隊へ異動した。
エリオには他の三人と違い、前任部隊は無く、陸士部隊―特に一線級部隊から―からの引く手数多であったが、
結局自身の希望を通してもらう形で自然保護隊への転属となった。
六課解散後から一年と少し、牧歌的な“後方部隊”と揶揄されることもある辺境自然保護隊とは言えど、密猟者等の
追跡や捜査も一義的には任務として負っており、密猟者と向き合えば立派に“前線部隊”となる。
そんな中対密猟者戦において自然保護隊内の専門部隊以外、数少ない取り締まりも出来る保護官として実績も上げていた。
騎士として鍛練は一日も欠かさず行い、六課時代よりも上達のテンポは少し遅くなったものの、今では誰もが一目置く
自然保護隊最強の一角である。
支援します!
「ちょっとお願いがあるんだ」
「お願いですか?」
「そう、ちょっとした荷物の受け取りに行って欲しいんだ」
「荷物の受け取りですか?それじゃあフリードと一緒に……」
「いや、そんなに大きくないから一人で大丈夫だよ」
タントが言葉を区切る。
「荷物って何なんですか?」
「時々大きな規模で発生してる“蟻”の話は聞いてるね?」
「“蟻”って……、まさか……?」
「うん、そう。“バグ”。幾つかの世界で猛威を振るう“蟻”さ」
“蟻=バグ”。
何者かが作り出した生物兵器とされ、女王を中心とした集団、つまり蟻に似た組織を作り地中深く潜み、
時々現れては人間の生活圏を脅かす生命体。
「やっぱり人の手による物……、何でしょうか?」
「おそらくね、自然の生命体がその世界以外で同種が確認されるのは極めて稀、自然保護隊や過去の記録を見ても殆ど無いよ」
「この世界への流入があったんですか?」
「まだだよ、でも大分前に“蟻”が一つの都市を壊滅させた時、何者かが開発した極めて強力な駆除剤を使用したんだ。
そのおかげでその都市の“巣穴”の“蟻”を全滅させれたんだ」
その都市の住人はは殆ど死亡したんだけど……、タントが付け加える。
「荷物というのはその駆除剤の事ですか?」
「やっと生産が軌道に乗って此処にもそれが回ってくるということさ。備えあれば憂いなし。でも物が物だから受け取りに
行って欲しいんだ」
「でも、あれって人の手が入った生命なんですよね?研究元を叩かないと……」
「ああ、それなら君の保護者さん達がやってるよ」
「フェイトさんですか?」
A☆M☆I☆D☆Aか?!
支援ww
「……くしゅん!!」
「風邪ですか?」
「うーん、違うと思うけど……。何て言うんだっけ?」
「……人が噂してるから、ですか?」
「そうそれ」
(フェイトさんなら四六時中誰かが噂しててもおかしくないと思うんだけど……)
ティアナが当然の疑問を脳裏に思い浮かべ、すぐにそれを打ち消す。
「えーと、報告の続きですが、“バグ”といわれる生物兵器群の開発元とされるケミカル・ダイン社ですが
クローム社の解体後、グループ企業だった同社の企業内の研究内容は細切れにされ散逸、
何処にあるかも分かりません」
「あー、それじゃこの線は望み薄?キサラギの方が望みが在るかな?」
「そうでもありません。ケミカル・ダイン社の実験施設と思われる施設の場所の特定に成功しました。そこには
まだ稼動中の記録媒体があるかもしれません。つまり……」
「どこで“実地試験”をしていたかが分かると……。さすが、ティアナ、よく分析したね」
「これぐらい出来なければ執務官補の名が泣きますから。でもコイロス浄水場で発生した生物ですか?
これも生物兵器って言われてますが……。なんでこんなものばかり作るんですかね、人って……」
ティアナはため息一つ、フェイトも同じ気持ちだった。
鉄道貨物ターミナル。列車の引込み線にクレーンが聳え立ち、周囲には色取り取りのコンテナが並ぶ、そしてコンテナを
積載するためのトラック・ヤード……。
普段こじんまりとした場所を中心に動くのに慣れたエリオにはこの貨物ターミナルの広さは圧巻であった。
「広い……、この施設だけで六課の施設ぐらいの敷地ぐらいはありそう」
タントに示された荷物保管所だけでもエリオの観点からすれば大きい部類に入る。
「すいません、荷物の受け取りはこちらですか?」
受付と思しき場所を見つけそこに明らかに暇をもてあましている係員
「はい、どちら様でしょう?」
「時空管理局自然保護隊、エリオ・モンディアル一等陸士です」
受付の顔に一瞬驚きが走る。だがそれも一瞬、すぐに仕事の為の顔に戻る。
一応は自然保護隊の制服を着用しているとは言え自分がおそらく管理局員として驚かれているのではなく、かつての
機動六課の隊員の一人として驚かれているのにエリオは慣れていた。
「積載されたコンテナはわかりますか?」
「特別仕立てのコンテナって聞いてるんですが……」
係員が端末を向き、
「それでしたら……。えー、管理局使用のコンテナですが次の列車で到着するとの事です」
「次のって、どのくらいですか?」
「まあ、後四十分程度ですね」
「エントランスで待たせて貰って良いですか?」
「どうぞ」
係員の言質を取り、エントランス内で適当な場所を見つけ、そこに座る。
あまり危険は感じられず、リラックスできる空間。冷房が効き過ぎずなおかつ暑くない申し分無しの場所。
だがエリオは自分がこの敷地内に入ってからずっと監視されていたのに気付いていた。
(外の車両に一人、監視カメラ、警備員がエントランスと廊下の向こうに二人ずつ……。ストラーダ、他には?)
《建物の外、小隊規模の“有明”を確認しています》
念話でストラーダに確認。しかし高々一等陸士を監視するにはあまりに物々しい警備。
(僕ってそんな危険人物に見える?)
《もしくは別の何かを警戒してるのでは?》
(うーん、ストラーダ、一応記録しておいて)
《Ya》
生物なのに何故か爆発する生物兵器支援!!
「間も無く着くそうです。一応契約上、コンテナの封印を解くのをお願いします。解除手順は分かりますか?」
「大丈夫です。ストラーダ、コードは分かってるよね?」
《Ya》
この係員がエリオを見て驚くのは二回目。デバイスを使ってることに驚いたようだ。一応民間では警備・巡察等を除く、
通常の任務では攻撃的なデバイスの所持・仕様には一応の規制が掛けられている。
重要な荷物の受け取りとは言え、通常の任務の観点から見れば取るに足らない任務である。デバイス、特に六課謹製の
ストラーダは過剰といえば過剰な装備であるといえる。
「いいデバイスですね?」
「……?ありがとうございます」
係員がそういったのは皮肉かそれとも正直な感想かエリオには分からなかった。
建物の外、強い日差しが降り注ぎ敷かれたコンクリートを熱していた。
各区画を結ぶ連絡路の一つをエリオは職員の誘導に従い、その中を歩く。
自身の歩く先、目的地と思しき場所までには“有明”が二機、着座していた。
(ストラーダ、周囲の状況は?)
《“有明”の小隊に動きはありません。我々を見ているのは監視カメラのみです》
取り越し苦労だったのか、一応彼らが注目しているのは別の何からしい。
「あの、此処って何時も警備は厳重なんですか?」
エリオが自分を先導する職員に聞いた。
「さあ、何処もこんなモノだと思いますよ?」
職員の答えは素っ気無いモノだった。その答えが疑わしい物であるのは明々白々。
(タイミング、悪かったかな……?)
エリオの思考が巡ろうとした時、周囲の平和な空気が一変した。
電柱に着きえられたスピーカから何者かの襲撃を伝える警報と警告。
『管制塔より全職員へ、敵性飛行体が接近、所定のシェルターへ移動せよ。繰り返す……』
「……え?」
まさかの事態に思わず素っ頓狂な声を上げる。管理局の質の悪い冗談でもこんな事はない。
「……状況は?……こちらも避難させた方が良いのか?」
先導の職員が手持ちの端末で確認していた。
(ストラーダ、通信を聞ける?)
《可能です》
ストラーダから直に送られてきたのは管制塔と警備小隊の交信。
<管制塔、接近に気が付かなかったのか!?>
<NOEで接近された。レーダーの探知が遅れたんだ!!>
<前衛より各機、機種を確認した。“ウェルキン”無人攻撃機だ>
<こちら管制塔、全火器の使用を許可、繰り返す……>
<リーダー了解。小隊全機、施設への被害を最小限に抑えろ>
最後の通信と同時に“有明”が動いた。
エリオの正面に着座していた二機はほぼ同時に起動し、右手に持つサブマシンガンを発砲。
発砲音が空気を震わし、さらに排夾されたカートリッジの地面に落ちる音が響く。
思わず耳をふさぎ、頭を下げた。
だが目は周囲を確認し、体は自然とひざを曲げ、半屈の姿勢をとり、次の動きに備える。
エリオ達の後方から別の音が聞こえ振り返る。後方にいた一機が背部のブースターを点火、地面の
コンクリートに脚を擦り、火花を上げながらこちらに向かっていた。
「危ない!!」
通過した一機は寸前で跳躍、二人の上を影を残し通過していった。
エリオと職員、二人とも顔の前で腕を組んで通過の風圧に耐える。
その次に来たのは弾幕を抜けた“ウェルキン”が一機、航過していく。
機体下面に装備された大口径機関砲は一機の“有明”を狙う。が、狙われた機は半身を取って寸前で回避。
“ウェルキン”は狙った機体に回避されたとはいえまだ地上に攻撃する目標はあった。
エリオと職員、“有明”に比べれば容易な標的。
「……不味い!!ストラーダ!!」
『Sonic form』
子供とは思えないような力と爆発的な加速で以って自身と職員を射線上から退避させる。
つい先ほどまで居た空間を機関砲がなぎ払い、破片をばら撒く。
(……あれ?)
職員の体に接触した時、、そして抱えた時、職員の体は妙に堅く、普通の人間とは思えない違和感を持っていた。
(ボディーアーマー?それに……拳銃型のデバイス?)
違和感の正体はすぐにわかった。職員は着ていた作業服の下にボディーアーマーを着込んでいる。
さらに右の腰には外側からは簡単に判らないように拳銃型のデバイス、さらに予備弾倉を携帯していた。
(一般職員までここまで武装をしている?)
そもそも一般職員が武装するのであればそれは着用する必要は殆んど無い。
警備班が警報を鳴らした後にでも装備を付けさせれば良い。“普段の業務”では戦闘装備は不要な物だ。
だが此処に居るのは本当に一般職員なのか?手際よく管制塔への連絡を取った手腕、落ち着いた交信内容。
しかもただのターミナルにしては豪華すぎる警備小隊の“有明”配備……。
(もしかしたら……)
おそらくはこの襲撃を此処の職員達は知っていた、もしくは予期していた可能性に思い至る。
建物の陰に隠れ、職員を下ろし、建物を盾に周囲を見渡す。
しかし襲撃側の狙いはなんなのか?皆目見当が付かなかった。
「此処は危険です!!」
端末を耳からはずした職員が叫ぶ。エリオは現実に引き戻される。
かれのその声は耳には入っている。だが目は空を飛ぶ“ウェルキン”を追い、耳は聞きながら周囲の
闘騒音を拾い、頭は周囲の状況を組み立てる。
「これがテロであれば管理局員として見逃すわけにはいきません!!手を貸します!!」
「しかし、此処は社有地です!!管理局員といえど礼状や所有者の許可無くデバイスを使用するのは……!!」
職員の言葉は正しい。しかしエリオには違う教えがあった。
「……大丈夫ですよ」
努めて表情を殺し、低く落ち着いた声をだそうとする。
「……な、何がですか?」
職員の顔が引きつった。
成功だ。エリオは内心ガッツポーズ。
「例えどんなのが相手だったとしても!!……ストラーダ!!」
騎士甲冑の着用は人前で裸をさらすようなもの。が、いまはそんな贅沢は言ってられない。
(最初の発光で目をつぶっていますように……)
エリオはそう願いつつ、騎士甲冑を着用、待機状態から実体化したストラーダを握り、振るう。
「降り掛かる火の粉を払って!!……まずはお話を聞いてもらうんです!!」
吐き捨てるように叫ぶとストラーダで以って加速、空に舞う。
エリオは航空魔道士ではないがストラーダを使えば限定的な空戦は可能。
「ストラーダ、敵の数は!?」
空に上がったと同時に周囲を確認、自分の目にも見えるがストラーダのセンサー系の方が広く全周をカバーできる。
『“ウェルキン”を十機以上確認。警備の“有明”は敵味方不明とします』
ストラーダが眼前に索敵結果を表示。テロリスト側は“ウェルキン”、こちらは敵性を示す赤。
“有明”は六機、こちらも味方とは言い切れないが一応は味方に近い緑の表示。
<こちらターミナル管制塔!!エリオ・モンディアル一等陸士へ!!状況への介入を依頼していない!!直ちに退去しろ!!
繰り返す!!直ちに退去しろ!!……退去しない場合は貴官もテロリストとして対処する!!>
管制塔からの警告。
支援!
しっかりなのはに影響されとる支援w
「時空管理局、エリオ・モンディアル一等陸士です。場所と状況は承知しています。
ですが今は人手が少しでも必要なはずです!!」
<こちらリーダー、管制塔へ。その通りだ。手駒は多いほうがいい。ロハであの“機動六課”が手助けしてくれるんだ。
最高の援軍だろ?>
此方は警備小隊のリーダーらしき機体からの通信が割り込む。ご丁寧に管制塔と自機の場所を送ってきた。
管制塔の位置はエリオからそう離れていない。しかもご丁寧に敵機の動きも付いている。
ストラーダが自身のデータを更新、表示した。
<リーダー、指揮権は此方にある!!余計な事を言うな!!>
管制塔の指揮官らしき男が叫ぶ。
<……所長!!来ます!!>
管制塔を目標に定めた“ウェルキン”が居た。数は二機、機首を管制塔に向け、機関砲の射程距離まで猶予は無い。
「……!!」
ストラーダが噴射ノズルを制御、エリオはそれに併せ方向変換と増速の動作をとる。
両手でストラーダを保持、コートをはためかせ一直線に“ウェルキン”に向う……、のではなく、少し軌道をずらし
管制塔を掠める軌道を取る。
<……待て、一体何を……>
管制塔の内部の人間がこちらを見る。
真横を通過する瞬間、ストラーダの噴射を停止、さらに急制動。
一瞬、体が浮いた。再びストラーダの噴射を再開だがあくまで一瞬だけ強力な姿勢制御用の噴射。
足が堅い物を踏む。地面ではなく、管制塔の強化ガラスを足で強く踏む。
「ストラーダ!!」
『Sonic form』
見せ付けるようにガラスを蹴り、再び加速、狙うのは前方の二機。
おそらく管制塔はストラーダの煙で視界は遮られている。
“ウェルキン”は突然の乱入者に臆する事無く機関砲を向け発砲。
機首下面のが光る寸前にエリオとストラーダはランダムで噴射を繰り返し接近。
相対速度の関係で接触するまではほんの一瞬、手の届くような距離にまで接近すればよし。
飛び道具を殆んど持たないエリオにとっては相手に以下に早く接近するかが一番重要なこと。
速度を保ったままストラーダの穂先に魔力刃を展開、すれ違いざまに一機の翼を切り落とす。
もう一機は標的をエリオに変更、急旋回に入るがエリオのほうが動きが早い。
急旋回のため速度を落とした“ウェルキン”の機体のほぼ中央にストラーダの魔力刃を突き立てる。
二機撃墜。戦果を確認すること無く、エリオは着地。地上で気配を殺し、絶えず周囲に目を配る。
何機かの“ウェルキン”が“有明”の十字砲火を受け墜落していくのが見えた。
<子供にしては良くやるようだ。だが……>
先ほどのリーダー機からの通信。強い敵意は感じられない。だが歓迎をしているとは感じられない声音。
<だが覚えておけ、お前はあくまで無許可で戦闘しているということだ。ああ、一応此方とリンクさせろ
そっちの方が都合がいいだろう?>
『Ya』
ストラーダがエリオの代りに返答を代行、データリンクを表示。
「手出ししないほうが良かったかな?」
『降り掛かる火の粉は自分で払うのでは?』
ストラーダの返答。もしかしたら自分はとんでもない越権行為に手を染めてるのではないか?
疑問が脳裏をよぎる。
だが、今はそれを考える時ではない、疑問を頭から振り払い次の“獲物”に視線を定める。
「ストラーダ!!」
ストラーダが応える。不安定な飛行ではあるが、それを可能にするのはエリオとストラーダの相性の良さと
一人と一機のポテンシャルの高さ。
このコンビにとってガジェット並みかそれ以下の無人兵機など物の数ではない。
しえん
今回は以上で終了です。
元は輸送列車護衛ですな。
次回は真打赤い爽やかなあの人の登場です。
遅くなってすみません。
では次の方、どうぞ……。
GJ!!エリオ、成長してますねー。
自分は9時から予約をしておきたいのですが、よろしいでしょうか?
>>389 GJです。
エリオとストラーダがやっぱこの話じゃメインなだけあって格好いいですね。
特にストラーダは本編じゃレイハさんとかマッキャリに比べれば喋ってなかったけど
凄い活躍ですなあ。
自分は35分頃から投下したいのですがよろしいでしょうか?
>>389 GJです。列車上でのバトルと言うだけでわくわくする
お二方とも道は開けてますよー……が
>>391 あなたは誰か、もしくは作品名教えてくれれば助かるかと。後9時の話ですよね?
では、失礼して投下させて頂きます。
少し遅れてしまってすみません。
「ノーヴェが出てっちゃったって本当なんですか!?」
「あ、ああ…。」
血相を変えてやってきたのはやはり真新しい軍服に身を包んだディエチである。
「何やってるんだあの子は…。あれ使っていいんですよね?」
ビームキャノンやバルカン砲と言った火器を備えたパーソナルトルーパー
「シュッツバルト」を指差すと返答を聞く前にディエチは走り出して言った。
「シュッツバルトを?あれは…。」
面くらいながらも反論しようとする整備員だったが無論ディエチは聞いていない。
「どの道救難信号を出してる人が居るんでしょ?シュッツバルト…だっけ?ディエチ、行きます!」
数分後。
「奴らめ…勝手な事を!こちらダグラス!ゲシュペンストで…」
「出撃しまーす!」
「な、何でお前がコックピットの中に居るんだ。」
いきなりシートの背もたれの後ろから姿を現して間延びした声を出すセインに呻くダグラス。
だがこの期に及んで問答している暇は無かった。
≪ゲシュペンスト3番機と4番機も出します。大尉の二番機が指揮をとってください。≫
≪ゲシュペンスト3番機、リョウ・ルーツ!いつでも行けるぜ!≫
≪同じくゲシュペンスト4番機シン・クリプト。あいつらをブッ殺したくて
ウズウズしてたんだ!思う存分やってやるぜ!≫
管制官の声とともにダグラスの乗る2番機のコックピットに3番機と4番機からの通信が入った。
ダグラスがため息をつく。二人とも歴戦の兵とはいい難く、むしろケーン達以上に悪ガキと言うべき風貌だったのだ。
おまけに彼はなぜかコクピットに侵入していたセインと密着状態ときているのだ。
「ハァ…。」
彼はため息を付くと機体を発進させていった。
支援
その頃甲板では。
「俺に新型に乗れなんて無理ですよ!」
「弱音を吐いている時か!私より君の方が実力は上なんだ!」
うろたえるコーラサワーの肩を掴みながら言うノイン。彼女達にも出撃命令が下っていたのだが、
生憎とリオンはまだコンテナの中。彼らの中で最も技量に優れるコーラサワーがガーリオンで出撃する事となったが
深いトラウマを引きずるコーラサワーは新型のガーリオンを任されるのが不安でたまらなかったのだ。
「大尉の言う通りだよ!残念ながら私と比べても君の方が上だ。男なら戦って汚名を返上したまえ!」
「しっかりしろ!模擬戦2千回連勝でスペシャルでエースなんだろう?
君も男ならこれ以上マネキン大佐に心配をかけさせるな!
……やれるな?コーラサワー中尉。」
ナトゥーノとノインの叱咤の声が響き渡った。
「…判りました。俺は…俺はやれる…俺はエースなんだ!」
叫ぶと走り出すコーラサワー。
ガーリオンのコックピットで彼は自分の頬を叩いた。
その頃成田エリア。
「いけねえなあ救難信号なんか送信しちゃあよ〜。ええ?姉ちゃんよ〜。」
下衆た声がコックピットに響く。
「くっ…。」
紫色のパイロットスーツに身を包んだ女性「ユーリア・ハインケル」が悔しげに呻いた。
ギガノス軍のメタルアーマー・ダインが青く塗装された戦闘機型の機動兵器、リオンの通信機器が
収容されたスペースをレールガンの銃床で叩き潰していく。
「コロニー統合軍のエース部隊だかなんだか知らないけどこんなところで演習やろうなんてバカな奴らだな。
ここはとっくにギガノスの勢力圏なんだよ!」
「実戦装備なら確実に俺達に勝てたろうによ。でもペイント弾如き何発食らってもメタルアーマーは壊せないんだよ。」
辺りにはブースターや腕部などが破損して既に身動き出来なくなっているリオンが彼女のものも入れて4機ほど頓挫していた。
彼女達は地球連邦軍と協力関係を結び、ともにギガノスと交戦状態にある、「コロニー統合軍」の
女性のみで構成された彼女が指揮を執る親衛隊
「トロイエ隊」である。コロニー統合軍本隊は既にメタルアーマーを
擁するギガノス軍との交戦によってほぼ壊滅しており、彼女達もほんの僅かな
残存兵力に過ぎない。そして帰るべきL4コロニー群を失って
地球に派遣された彼女達を待っていたのは新型兵器・リオンだった。
勇んで訓練に勤しむ彼女達だったがそれが間違いだった。いつのまにか制空権外へ出てしまい訓練を終えて帰投しようとした所を
めざといギガノスの哨戒部隊に発見されてしまったのだ。
いかな彼女達とはいってもプロペラントは殆ど空っぽ。武装は全て模擬弾では
勝負にならなかった。
「お前らの噂は聞いてるぜ。エース部隊なんだろう?そのエース部隊をやっつけて
新型機の首を持って帰れば俺達はヒーローになれる。でも何も反撃できない演習中に
お前等を見つけたって事が知れるとその手柄にケチが付くんだよ。
判るか?お前等には死んでもらう。持って帰るのは機体の一部分だけで十分だからな!じゃあな…。」
レールガンを突きつけるダイン。これまでか…ユーリアが目を瞑りかけたその時。
「敵機だ!数は1…いや、後ろからもう5機来るぞ。」
戦闘態勢をとるメタルアーマー隊。
「あれが敵か…。てことはやられてるヘンな形のメカは味方なのか?…やってやるよ!」
スラスターを孵化しながら突撃し、M950マシンガンを乱射しつつノーヴェのゲシュペンストMk-Uは敵部隊に突っ込んだ。
そして…
あっさりと交わされた。前へ突っ込みながらただ前へ撃ってる訳だから
確かに簡単によけられてしまうだろう。
「なんだこいつ。動きが素人だぞ。」
ダインのパイロットの1人が笑みを浮かべた。
「あーっ…どうやりゃ思った通りに動くんだよ!」
コックピットで歯噛みするノーヴェ。
「構うな!こいつもやっちまえ!」
周りを取り囲んだダイン隊が一斉にレールガンを突きつける。
その時!
「こいつ…何て機動性なんだ!シルフィードの何倍だよ。」
戦闘機をゆうに超える機動性をもっていちはやく駆けつけたコーラサワーのガーリオンである!
「あれが敵が…。」
ダイン隊を視認したコーラサワーの手が一瞬震える。気を取り直そうとした瞬間!
「ん?…あ、あいつは!」
コーラサワーの表情が驚き、そして怒りへと変わった。
彼の視線の先には1機のダインが居た。
赤いショルダーシールドにはドクロマークが7個ほど描かれている。
以前自分と戦った時はマークが2つだったがあのダインは…
間違いない!かつて遊軍的な戦闘で彼を墜とし、仲間を殺したあのダインだ!
「あの時のお前かッ!」
ガーリオンが手にしたバーストレールガンが吼えた。
「そうそう当たってたまるか!空中戦が出来るらしいな…。付いてこい!」
ダインがマッフユニットのバーニアを吹かして飛翔、空中戦に入った。
「お前!俺を落とした奴だろう!」
「誰かと思えばあの時のヘボパイロットか。こいつはおもしれぇ!」
50ミリハンドレールガンを乱射しつつガーリオンから逃げるダインのパイロットが
回線から流れてくる声を聞いてケラケラと笑った。
「む?ふん、無駄な事を。追いついてぶっ壊してやる。俺様のカスタムダインの出力をとくと見やがれ!。」
と、機体の脇をすり抜けて前方に躍り出たガーリオンを見て
彼のダインに装着されたマッフユニットは出力が強化されており、通常の機体よりも出力は35%増しになっている。
本来巡航速度で負けている戦闘機にも互角に戦えたのはこのカスタムマッフユニットのお陰なのだ。
彼はその自慢のカスタムダインのスロットルを目一杯開けようとした。しかし…。
「何?」
スロットルレバーは一分も動かない。
それもそのはずだ。さっきは興奮していて気が付かなかったが既にさきほど彼の手でスロットルレバーは
限界まで開けられていたのである。にも関わらずガーリオンはダインを引き離して行くではないか。
考えられる事はひとつだ。
「出力で負けているってのか?バカな!」
パイロットは今までの自信は何処へやら。
実に情けない顔で呟いた。
「こいつ…なんてスペシャルな機動性だ。これならやれるぞ!こっちから仕掛けてやるっ!」
「チッ!!」
高速機動のまま派手に旋回するガーリオン。凄まじいGが
コーラサワーを襲ったが不思議とそれほどの苦痛は無かった。
ダインも追従しようとするがその性能の差は歴然。
「もうお前なんか怖くねえぞ!仲間の仇を討ってやる!」
「舐めるな!」
ダインがガーリオンが肉薄してくるのを見るやチャフやフレアといった光学欺瞞材を大量に放出した。
一瞬視界が塞がれたガーリオンが動きを止める。
「何ッ?」
「へへへっ…こんな張子の虎の新兵器でこの俺様がやられる訳無いだろうが!地上戦なら勝機は有らあな!」
ガーリオンの背部にしがみつくダイン。二機はもつれ合って地上へ落下していく。
「くそっ!このっ!当たれッ!」
M950マシンガンを乱射するノーヴェのゲシュペンストMk-U。だが相変わらず当たらない。
「回り込んで仕留めるんだ…。うぉっ!」
ゲシュペンストMk-Uを包囲していたダインが閃光とともに消滅した。
「なんて威力だ…その分消費も激しいみたいだけど、このシュッツバルトって凄いよ!」
その閃光を放ったのはディエチの乗るシュッツバルトが放ったビーム砲だ。
彼女はシュッツバルトの火力に驚嘆の意を示していた。
その後ろにはおっとり刀でかけつけた
ダグラス率いるゲシュペンストMk-Uが三機。ギガノス軍のメタルアーマー隊は7機だから
彼我戦力差はまだ不利だがだいぶ心強い増援といえよう。
「マシンガンが弾切れか。他に武器無いのかよ?」
マニュアルを引っ掻き回すノーヴェ。
「あった!プラズマステーク!…?」
左腕部に装着された電磁格闘兵器「プラズマステーク」の項目に素早く視線を走らせるノーヴェ。
「よーっしゃ!やってやる!…ん?」
勇んで叫ぶノーヴェだったが
なにやらマニュアルに小さく※とともに数行書き足してあるではないか。
「なになに?“プラズマステークは本格的な量産にあたってオミットされる事が
決定しておりこの度はオプションとして2セット納入するだけと
させて頂きます。ご使用の場合はそちらでノーマルの左腕部パーツとの換装して頂く事となります。なおプラズマステークの
代わりに実装されるはずでしたテスラドライブによる飛行能力は残念ですが開発が間に合いませんでした。あしからず”
………。何があしからずだよこのボケーーーーーッ!」
彼女が搭乗しているゲシュペンストMk-Uはバラされた状態で持ち込まれたものを組みなおしただけだから当然
オプション装備への換装は行われていない。
ノーヴェの叫び声がコックピットに木霊した。
「こうなったらもうヤケクソだ!プラズマカッタァァァァァァア!」
プラズマステークの代わりとして標準装備されたレーザーサーベルに準じる武器、プラズマカッターを構えると
ダインに突っ込むゲシュペンストMk-U。直線的だがその勢いは中々のものだ。
「うおっ!?」
反応速度でゲシュペンストMk-Uにおとる上にセオリーを無視した動きにダインはまるで対抗出来ない!
「ユーリア様。アレは…?」
ユーリアが搭乗するリオンのコックピットに女性の声が響いた。
彼女の部下で頓座したリオンのパイロットの1人「レオナ・ガーシュタイン」である。
「パーソナルトルーパーという兵器のようだが…。だが動きが素人だな。まあ、我々も
こうしてリオンを使いこなせてはいない訳だから
彼らもあれをあてがわれてまだ間が無いのだろうが。それにしても見ているだけしか出来ないとは歯痒い!」
そんなレオナに悔しげに言うユーリア。
「食らえ!よくわかんねえけど今度はこいつだ!」
続いてノーヴェの乗るゲシュペンストMk-Uの背中に装備された筒状の装備がガチリと外れると火を吹いた。
「ミサイルか?そんな大ぶりな攻撃が当たるものか!」
「やはり、素人だな!」
射線に位置する二機のダインのパイロットは射線から愛機を僅かに回避させた。
しかし…。
「なにっ!?」
大型ミサイルに見えた筒状のそれは彼らの頭上で破裂すると小型ミサイルを撒き散らしたではないか。
よける間もなくミサイルの雨に飲まれた二機のダインは光の泡に包まれあえない最後を遂げた。
「あれがスプリットミサイルかぁ…。この機体もあの嬢ちゃんも中々じゃないか。」
クリプトがそれを見て口笛を吹きながら言った。
「こいつ!」
既にガーリオンに倒された僚機から奪い取ったレールガンと元から装備していた
レールガンを西部のガンマンよろしく
二丁構えてガーリオンを猛射するカスタムダイン。
だが…
「当たる気がしねえ…。頭がスカーっとして弾もあいつも止まって見えるぜ。」
コーラサワーは冷静な顔で言った。散っていった戦友達の姿が蘇ってくる。
バーストレールガンが火を吹いた。
弾殻は正確に胸部を撃ち抜くとダインの機体を吹き飛ばした。
「くっ…やられたのか。新型機が4タイプも…。
一端引くぞ!残念だが手柄は諦めなきゃならんらしい。」
生き残ったダインのパイロットは残存した1機に怒鳴ると引き上げて行った。
「奴ら…逃げたのか?」
リョウは呟くと同時に怒りを覚えた。
俺はまだ1機も落としてねえってのに!
「大尉〜援護に来ましたよーーーっ!」
「戦闘はもう終わってるみたいだぜ?」
「やれやれ…だがまあ、一件落着か。」
急ピッチで整備を終えて最低限の装備で駆けつけたドラグナーの三機が上空を旋回する。
現場に居たメンバーに安堵感が漂った。
そしてアクアポリス。
「いいか貴様等!独断専行など絶対に許される事ではないのだぞ!軍隊というのは…」
「…すんません。」
「申し訳ない。」
ダグラスのお説教に頭を垂れるノーヴェとディエチ。
艦長室では。
「ユーリア・ハインケル以下4名であります。」
「ご苦労。しかし…百里に続いてコロニー統合軍か。各地からこうして敗残兵が集まってくるとは。
いよいよいもって戦局も危うい、か…。」
トロイエ隊とマネキン始め整列した百里基地から移動してきたメンバーを見つめながらレイガンが残念そうに言った。
「ウェンディ曹長。始めての任務だ。彼女達をガンルームまで案内してほしい。艦内の見取り図は頭に入っているな?」
「あー、了解ッス!じゃなかった。了解でありまスッ!」
陽気に敬礼するウェンディ。彼女の姿を見た者達にどよめきの声が挙がった。
あまりにも若すぎる。
艦内通路。
「…なあ曹長。君はいくつだ?」
「え?……んー…。いくつに見えるッスか?」
ユーリアが少し躊躇いつつも尋ねた。
「間違っていたら失礼。14、5歳に見えるのだが…。」
「はははー。まあ、じゃあ15歳って事にしといて欲しいッス。いえ、欲しいでありまス。」
振り向くと笑顔のまま言うウェンディ。
「…訳在りのようですね。」
ユーリアの背中ごしレオナが言った。
「…ああ、まあ…この際あれこれと詮索はするまい。しかし君のような子供が…。
ユーリアも少し残念そうに呟く。誇り高き武人である彼女にすれば
このような子供が戦争に参加しているというのは
心が痛むのだろう。
「うーん………。ま、いっか。あのっスね。自分の目ぇよく見て貰いたいっス。」
そんな中、
ウェンディが不意に考え込むと、言った。
「何?目だと?…。」
「何だ何だ?一発芸か?」
トロイエ隊支援
訝しみながらもかがみこんで彼女の瞳を覗き込む一同。
「何だ…?変わったコンタクトレンズをしてるじゃないか。いや…これは!?」
「ヒュ〜………。冗談キツいぜ。」
場の空気が静まり返った。
彼女の瞳の中にあるのは確かにレンズには違いなかったが…これは明らかに眼球内に埋め込まれているものだ。
2087年現在とはいえこれほどまでの技術は確立されてない。
「目だけじゃないっス…いや、ないでスよ。」
手を動かしてみせるウェンディ。彼女が腕を動かすたびに機械が動作する音が小さく響く。
「体の半分っかたくらいは機械で出来てるんっスよあたしら。んじゃそろそろ行きます?ガンルームはこの先っスよ。」
あっけらかんと言った。
「いよいよ海鳴も出港か…。しかし、仙台にはギガノスの補給基地があるらしいしそのさらに北の下北半島には軍事工廠が。
んでトドメは津軽海峡の大要塞だ。全くイヤになるぜ。」
甲板から海鳴港を眺めながら肉付きのいい整備兵が伸びをしてひとりごちた。
「レーザートーチのカートリッジはここに置いておけばいいのか?」
ふと向き直ればチンクが上半身を隠すような大きさの工具箱を抱えて立っていた。
「おい、力仕事なんか他の奴らにやらせればいいじゃねえか。」
慌てて工具箱を受け取る整備兵。
「あ…いや、邪魔をしてしまいましたか?」
「そういう訳じゃねえけどさ…。そういやさっき髪が短い方の赤毛のねーちゃんがあんたの事探してたぜ。」
「ノーヴェか…。有難う。それじゃあ!」
「実際やりきれねえよなあ。あんな子供が…。」
顔を綻ばせて走り出すチンクの背中を見ながら彼はアクアポリスのシンボルが刺繍された
ネイビーキャップのつばを直して言った。
その頃ミッドチルダ。
機動六課本部。
「管理局関連のデータを消すのに失敗したのは痛かったなあ。まあ、シャマル達のせいやあらへん。」
はやてがため息を付きながら言った。
「だけどスカリエッティと連合軍が手を組んでいたなんて…。」
「管理外世界には介入出来ないから…痛いところを突かれたね。」
なのはとフェイトが渋い顔をする。
「でも、犯罪者と組むなんて、それが正規の組織のやる事なんですか?」
怒りを隠さずに言うのはティアナである。
どうやら彼女達はシグナム達に戦闘機人が襲い掛かったという事態を
スカリエッティと地球連合軍が結託していると解釈したらしい。無論彼女達はナンバーズが
スカリエッティの手を離れて独走を始めた事など知る由もなかった。
今後の対応をどうするかが目的の会議は既に2時間続いており、はやてやなのはの声は枯れ始めていた。
「まあ、とりあえず私達には差し迫った問題がある。まずそれを穏便に終わらせるのが先決やろ。」
「公開意見陳述会、か…。」
なのはが呟く。スカリエッティの勢力が後退したとはいえ、カリムの予言が正しければ2週間後に迫る
公開意見陳述会でやはり何かが起きる事になるのだ。この一言をしおに会議は終息へと向かって行った。
しかし、そんな彼らを見ている者が居た。
機動六課の隊舎の横に止められた宅配便の配送車に偽装した大型トラックから、本来施設の
警備用の監視カメラを逆に利用して。六課の施設にこんな物を仕込むような真似が出来ると言う事は、
つまり機動六課の建物の増改築などを行った部署などに入り込んで手引きが出来るということだ。
彼らは評議会のメンバーが口にしていた部隊の回し者である。
モニターを囲んだ車内に男が1人、部隊のメンバーだ。
そして彼の後ろに目付きがキツい青い髪と瞳の男女「イングラム・プリスケン」と「ヴィレッタ・バディム」が
佇んでいる
「よーし、頃合だな。お前等が育てていたバルシェムどもを出せ。丁度いいテストだ。それに六課の実力も見る事が出来るしな。」
モニターを見ていた男がイングラム達に向かってゆっくりと言った。
「いけ。お前達の力があの忌々しいドクタースカリエッティが作った
ポンコツ人形とは違うというところを示して見せろ。十五分間ここで待っているから適当な所で引き上げろてこい。
それが無理と判断した場合の対応は教えておいた通りだ。」
男が高圧的な口調で言った。
「……待ってください!手塩にかけてやっと育てたバルシェムの第一陣をともすれば自決が強要され、
しかもさして重要度が高いわけでもない任務に付かせるおつもりなのですか?」
しかし、それを聞いてヴィレッタが食って掛かる。
「…また作り直せば済む事だろうが。き、貴様。文句があるのか?クローンの癖に」
剣幕に押された男が少し後ずさりつつ怒鳴る。
彼は部隊のリーダーがこのバルシェムの二人と付き合うにあたって言い含められていた事を思い出していた。
時間が遡る事半日前。
ミッドチルダ本局内某所。
「ヴィレッタとイングラムに気を許すなと?奴らがバルシェムだからですか?」
「半分は違う。奴らはバルシェム…クローン人間でもとくに油断のならない奴らだと言いたいんだよ。考えてもみろ。」
少し血の巡りが悪いところがある彼に少し面倒臭そうにこれまでの経緯までも含めて語り始める部隊長。
まず、三脳の傘下に加えられた彼らに“モビルスーツ”はじめ様々な失われた世界の遺産が供与された事。
そして…。
「俺達だけでギガノス帝国やら地球連合軍とかいう奴らを…そして将来戦う事になるだろう
時空管理局や本局の反乱分子を敵にまわすにはきつすぎる訳だ。
管理局の他の部隊から合流する戦力も過剰にはあてに出来ないしな。という訳で三脳の奴らが兵力として
見つけてきたのがどこぞの滅んだ次元世界で使われていたクローン兵士の生産設備。そこから作られたのが奴らバルシェムって訳だ。」
「ヘイヘイ。そのくらいは判っておりやすが。」
もみ手しながら頷く彼…部隊員。
「その中でもあのイングラム・プリスケンとヴィレッタ・バディムは細胞から作りおこした他のバルシェムと違って
胎児まで育てられた状態で製造機とともに保存されていた訳だ。それを評議会の連中が
人工育成で育てて今のあいつらになったって話だ。
自分の身の振り方にしか頭を使わないお前にもこのくらいはわかるな?」
「試供品って事ですかねえ?あるいは見本とか?どうせなら取り扱い説明書でも付けてくれておいた方が助かったのに。」
「薬局の前で配ってる痒み止めとかドリンク剤じゃないんだよこの間抜け!」
いたってマジメな顔で言う部隊員を部隊長が怒鳴りつけた。
画太郎のコラボでリリカル珍遊記。
萌えキャラとキモキャラの・・・・ぶべら!
「要するにだ。奴らは他のクローンとは恐らく、異なるのだ。
あのヴィレッタとかイングラムといった気取った名前だってあいつらが勝手に名乗ったものだ。
他の奴らにはそんな兆候は見られん。我々の命令を聞くだけの他の
バルシェムとは違って奴らのメンタリティは人間に近いんだ。
つまり…ともすれば我々を裏切ったりするかも知れんという訳だ。」
腕組みしながら言う部隊長。
「で…どうすりゃいいんです?」
「好きに使っていいがある一線を越えた信用は置くな。不穏な態度を見せたな
ら構わないから殺せ。いくら有能でもバルシェム…クローンなんだからな。代わりはいくらでも居る。」
部隊長は加えていたタバコを灰皿に押し付けるときっぱりと言った。
視点を現在に戻そう。
ヴィレッタと部隊員のにらみ合いはなおも続いていた。その時。
「ヴィレッタ、出すぎた真似をするな。失礼しました曹長殿。早速そのように。」
ヴィレッタを諌めたイングラムの合図に呼応して不気味なカラーリングの装甲服に身を包んだ5人のまるで
機械のように寸分たがわず同じ背格好の
「バルシェム」と呼ばれた不気味な兵士達がゆっくりと立ち上がり、車両を降りて行く。
萌えの時代を終わらす作品。
その時
「うっ…。」
部隊員がなにとなく手を置いた作業机にたまたま置きっぱなしになっていた
ペーパーナイフが彼の手首を傷つけた。
運の悪いことに血管を切ったらしく、血がどくどくと溢れてくる。
「大丈夫ですか?」
「さわるなこのコピーアンドペースト人間!くそっ…救急箱を…。」
手を払いのける部隊員。コピーアンドペースト人間とは酷いいいようである。
実際言われた二人がもうすこし激昂しやすい性格だったならば彼に掴みかかっていたところだろう。
しかし、床に垂れた部隊員の真っ赤な血が…
見る間に不気味な黄土色をしたゲル状の物体に変わった事にそこに居る誰一人として気が付くものは無かった。
彼らはとある次元世界で消息を絶ち、一ヵ月後に帰還し、その失態を帳消しにするのと
引き換えで評議会の傘下に加えられて今ここに居た。
だがその行方不明になった時、今悪し様にイングラム達を罵った彼に
してみれば実に皮肉な、ある介入が“何者か”なされていた事を評議会や
今ここに居る二人はもとより当事者の部隊員達ですら知るよしは無かった。
ここまでで。
ユーリア姐さんを仲間に出来るスパロボが発売されたら絶対買うのに。
いや、エクセレン姐さんとかゼオラとかレオナも好きですけど。
ちなみにゲシュペンストマークUにプラズマステークが付いてなくて
飛行能力の付加が示唆された内容になってるのは
「A」のオマージュです。
終わりに出てきた時空管理局の不穏分子一派ですが…
黄土色のゲル状の物体が血の代わりに流れてる怪しい奴ら
(もう正体に感づいた人も居るかも知れませんが。)です。
どう見てもイングラムとかヴィレッタさんの方が真っ当な人間ですな。
画太郎とのコラボでリリカル珍遊記
なのはメインだが山田太郎と名乗るエテ公が
お下品なギャグテイストで進めるストーリー。
そろそろ萌えに飽きてきた人向けのクロスオーバー
>>389 GJ!
こういう限定された状況でのバトルはいいですね〜。
>>410 ナンバーズがPTに登場するとは!
Aをオマージュとは憎い演出、自分の特に好きなスパロボです。
黄土色のゲル状の物体ってなんだー!
>>410
乙カレー
>黄土色のゲル状の物体ってなんだー!
雪風が言っている、こいつはジャムだ!
>>410 ナンバーズすげぇ、まさか、パイロットになるなんて。しかし意外とコーラサワーが格好よかった。
417 :
一尉:2008/04/12(土) 19:02:39 ID:Ai6vJiPL
お星たな支援
えーと、そろそろ時間なのですが。
8時10分ごろから投下開始してもよろしいでしょうか?
レス板を振るのと、ちょっと見直したい点がありまして(汗)
内容はビスケットシューターです。
チキンブロスが食べたくなった。
えっと、そろそろ投下よろしいでしょうか?
17KB。13レスの相変わらず長い内容なので、どうか支援をよろしくお願いします。
内容はビスケットシューター。
ナンバーズの一名も登場です。
世界の敵の敵 支援
大好きよ、大好きよ、大好きよ。
愛してる、愛してる、愛してる。
なんて陳腐な言葉。
そんなのじゃときめかない。
そんなんじゃ物足りない。
少なくともベットの上だけしか囁かれない言葉じゃ。
心には届かない。
――残された鏡台に口紅で描かれた捨て言葉より
「……あれ? ヴァイスさん、どこか行くんですか?」
「ん? おお、アルトか」
その日、アルトは私服で出かけようとするヴァイスを見かけた。
同時にその日がヴァイスのオフ日であることを思い出す。
ほぼ毎日のように待機任務と出動を繰り返す、ヴァイスが僅かに取れる休日。
不規則な前線部隊とは異なり、後方支援であるロングアーチの面々はそれぞれのローテーションを持って
休みを取ることが許されていた。
そして、アルトはある事情でヴァイスの休みの日を把握していた。
まあ一言でいえば乙女の事情というものである。
そんなアルトの目線が、不意に強くなった。その視線の先にあるのはヴァイスの服装。
「ヴァイスさん、随分とおめかし……してますね?」
一張羅と思しきジャケット。それなりに整えた髪形。
洗い下ろしたてと思しきジーンズをはいて、何時ものフィンガーレスグローブの手には大きめのカバンが握られているヴァイス。
「どこに行くんですか?」
「あー、ちょっと“デート”にいってくる」
「……え?」
「連絡用通信機は持っているから、非常時には呼び出してくれ。そんじゃなっ」
プラプラと手を振って、ヴァイスは固まっているアルトを放置し、隊舎外のバイクに跨った。
バチンとヘルメットの止め具を止めて、彼が排気音を吹かしながら立ち去るまでアルトは固まっていて……
「女って、女ってなんですかぁああ!」
ようやく動き出したアルトの声が、誰にも聞こえていないところで響き渡った。
【AnrimitedEndLine】
外伝 『Biscuit・Shooter/4』
その日、空を見上げていた
不気味な泡 支援
首都クラナガン。
機動六課の隊舎がある湾岸地区から数十分もバイクを走らせれば、すぐに辿り着ける場所。
何度か買出しに使っている駐輪場で使用料を支払い、ヴァイスは愛車を置いて、迷う事無く歩き出した。
その手には一枚のメモ用紙。
そこに書かれたのは簡素な地図と目的地の名称。
「あそこか」
約束の時間よりも二十分も早く、ヴァイスは辿り着いていた。
それは一つの店。
彼はあまり知らないが、巷では評判とされているオープンカフェ。
男性よりも女性の比率が高いそこにヴァイスは少し怖気づきながらも、目的の相手を探そうと中に入ろうとして。
「はーい」
ヴァイスの耳に声が届いた。
それは心をくすぐるような、しっとりとした声。
ヴァイスは振り返る。
「ここよ、ヴァイス」
そこに彼女はいた。
それは流れるような赤毛をなびかして、恥ずかしげもなく膨らんだ胸の谷間を覗かせる扇情的な格好をした女性。
艶やかという形容がピッタリな肉体で、クスクスと口元を押さえて笑う女性。
その顔にヴァイスは――“見覚えは無い”
されど、その正体は推測出来るし、知っている。
「お前さんか」
動揺もせずに、周囲の僅かな視線を撥ね退けながら、ヴァイスは女性の前に座る。
ゆっくりと、油断をしないように、浅く椅子に腰掛けて。
「“ドゥーエ”」
彼は目の前の女性の名を呟いた。
それは低く、独り言に近い静かな言葉。
「正解よ、ヴァイス・グランセニック」
けれど、彼女はしっかりと聞き遂げた。
隠密諜報用に作り上げられた戦闘機人、ナンバーU【ドゥーエ】は数え切れぬほどに存在する顔の一つで微笑んだ。
「ショートケーキとレモンティーをお願い」
「俺はオレンジジュースとトーストのセットで」
「分かりました」
二つの言葉が飛んで、一つの言葉が返事を返す。
注文表を胸に抱えたウェイトレスがしっかりと教育されていることを示すように礼儀正しいお辞儀を返し、二人の前から立ち去る。
「あら? こういう時は、男ならコーヒーを頼むんじゃないかしら?」
「カフェインは神経が高ぶるからな。どっちかというと、こっちの方がいい」
そう告げて、ヴァイスは机の上にある灰皿を引き寄せると、胸ポケットから出した煙草に火を付けた。
紫煙がゆっくりと立ち上り、彼は深々と煙を吸い込む。
まったく美味そうになく、痛みを堪えるような表情で。
「それで、今回の用件はどっちだ? “大将か? それとも旦那か?”」
彼独特の呼び方に、赤毛のドゥーエはくすりと笑みを浮かべて。
「両方ね。ドクターの用件は前に頼まれていた通りのもの、そして中将から頼まれたのは報告よ」
「報告?」
「ええ。一週間前の新人達の初出動の様子はどうだったかと聞いて来いと言われたの」
「? 報告書はそちらに提出されているはずだろう? 俺の出した奴とあと八神部隊長が出したはずのが」
レジアスが報告書に目を通していないはずが無いし、己の統括する地上で起きた事件の報告書の提出を機動六課に
命じてないはずがない。
「いえね。中将は直に聞いてこいといって……」
そこまで言葉を告げて、ドゥーエは言葉を切った。
お盆を持って近づいてくるウェイトレスの姿を認識したから。
「注文のお品です」
ゆっくりと注文したショートケーキとレモンティーがドゥーエの前に、トーストのセットとオレンジジュースが
ヴァイスの灰皿の横に置かれる。
「ごゆっくりどうぞ」
品物を置いて、ウェイトレスが最後に残したのは爽やかな笑みだった。
自動的に浮かび上がってくる支援
支援
支援
「……続けて」
「機動六課の面々が出動したのはまあいい、そして旦那が列車を襲撃したのもレリック狙いならまあ頷ける。けど、どう考えても“やりかたが悪すぎる”」
ヴァイスは呟く。
一週間ほど前までヘリの中で操縦桿を握りながら思い返していた疑問を反芻する。
「旦那なら列車に積み込まれる前に奪取する方法を考えるはずだ。その方が、あの鉄細工も、お嬢ちゃんも使わなくてもよかったはずだ」
意図的に名称を避けて、ヴァイスが告げる。
「なるほど、それで結論は?」
「――“奴ら”だろ、この指示は」
ヴァイスが低く、低く呟いた言葉。
それには怒りが満ちていた。
それには憎悪が淀んでいた。
「六課の面々に対する実験、そして旦那への任務遂行能力の実験。それが今回の――」
「ストップ」
テーブルを掴み、声を上げようとしたヴァイスの唇に細い指が触れた。
ニコリとドゥーエが笑みを浮かべたまま、まるで恋人のように優しい言葉を紡ぎ立てる。
「それぐらいは中将も博士も理解しているわ。少し落ち着きなさい」
「……悪い」
罰悪そうな顔を浮かべて押し黙るヴァイスに、ドゥーエは微笑みながらゆっくりと目の前のレモンティーを啜る。
チロリと舌をつけて、そしてゆっくりと唇から中へと啜らせていく。
「それで、落ち着いた?」
ヴァイスの頭が冷えたのは、ドゥーエが紅茶を半分ほど減らし、カップに置いた時だった。
支援
「ああ」
「それじゃ続き、ね」
ゆっくりと動かされる小さなフォーク。
その穂先でショートケーキを切り分けながら、ドゥーエが告げる。
「ヴァイス。貴方から見て、組み込まれた子供達はどうだったのかしら?」
「……そうだな」
ヴァイスは少し悩み、それを告げるのを躊躇うように額に手を当てた。
「一言で言うなら、歪だ」
「歪?」
「報告書にも出しただろう? タイプ・ゼロ、人造魔導師、“狂乱”の竜使い、そして……」
「?」
「いや、なんでもない」
脳裏に浮かんだ一人の少女の顔をヴァイスは軽く首を振って打ち消すと、話を続けた。
「どいつもこいつも心に傷を持ちすぎてる。まるでその代償に力を背負わされているみたいにな」
それはまるで嘆くかのようだった。
普段の顔とはまったく違う、同情に満ちた顔。
己などよりも光を歩むべき幼い子供が歩む道に、彼は悲しんで、同時に怒っていた。
「……隊長たちのようにある種完成しているならまだいいが、ああいうタイプは“化ける”ぞ」
それはある種の褒め言葉だったのかもしれない。
されど、それを告げるヴァイスの顔には苦痛の色が浮かんでいた。
それは決して喜ばしいものではない故に。
「今はまだいいけどな、時間をかければお前達でも危なくなる。旦那には出来るだけ相手にするなと、
大将には慎重に扱うように進言しておいてくれ」
「わかったわ」
ドゥーエが頷く。
それが機動六課の中で少女達を見ていた男の言葉だと知っているから。
数百枚の報告書よりも、たった一人の言葉のほうが真実を語ることがある。
支援
「ん、まあこれぐらいだな」
そこまで告げて、ヴァイスは表情を変えた。
トーストを口に運び、オレンジジュースを飲む。
「んで、もう一つは? さっさと渡してくれると助かるんだが」
ヴァイスが足元に置いたカバンを叩きながら、告げる。
ドゥーエのスラリとした脚、それから目を逸らしその傍にある同じデザインのカバンに目を向けていた。
「せっかちね」
ヴァイスの言葉に、ドゥーエはゆっくりと切り取ったショートケーキを口に運ぶ。
白い、白い塊を整った唇が挟み込み、フォークで中に押し込んで、彼女は味わう。
至福に満ちた表情。
「美味しい。やっぱり評判なだけあるわね」
「……ここを選んだのは、お前さんの趣味かよ」
「そうよ?」
またもう一つパクリ。
最後に残ったイチゴをおいて、ケーキ本体を食べ尽くしたドゥーエは少しだけ意地汚くフォークを赤い舌先で舐めると、笑った。
「貴方はイチゴを最後に食べる派かしら?」
「悪いが、先に食べる主義だ」
「そう」
トスンとイチゴにフォークが突き刺さった。
そして、その場での会話はそこで終わった。
支援
トポロシャドウの支援現象
死神支援
取引。
それも違法というものが付けばその場所も自ずと限られる。
例えば使われていない廃工場の中だとか、人気の無い港の倉庫街だとか、陳腐なれどそういうところが定番だ。
簡単に思いつく分、効果的。
ドラマなどの都合でなければ普通は見つかるわけがない。
見つかるとしたら盗聴、密告などの内部からの情報流出であろう。
そして、二人はそれらの定番とはまったく異なる場所に居た。
――水の音がした。
ザーという温い、温い液体がタイルを叩く音。
それは鳴り響く場所に繋がる室内にも聞こえるほど激しく、同時に演出された設計。
殆ど意味のなさない薄い曇りガラスの向こうで、艶やかな体躯を持つ女性がシャワーを浴びていた。
少し目を向ければ見えただろう。
丸い膨らみの肌の上を舐める液体の流れが、艶やかに伸びた赤毛の先端から滴る水が、緩やかに緩やかに、
されども艶やかに、映し出されていた。
そして、その女性とはもう一人の人物が部屋に居た。
ふざけているかと思えるほどクッションの効いていないベットに腰掛けて、片手には一枚のプレートを、もう片方の手に
小型の機器を持った青年――ヴァイス。
「……無いな」
機器を見つめて、ヴァイスが呟く。
「終わったかしら?」
その呟きに答えるように、水音が止まった。
音を立てて、ガラスの扉が開く。肌色がヴァイスの視界の端を横切るが、彼はそれから目を逸らし、天井の隅に目を向けた。
「一応確認した。こういうところだと、オーナーが悪戯半分でカメラとか仕掛けているって聞いてたが……ここは外れだな」
「よかったじゃない」
ヴァイスの呟きに答える女――ドゥーエの声。
彼女は恥じらいもなく、部屋の中でタオルを用いて肌を拭っていたが、ヴァイスは最低限の節度を持ってそこから
目を逸らしていた。
女性に欲情が無いわけじゃない。
ただ興味が無かった。それだけだった。
支援
ぼくらは虚無に支援する
支援
「んじゃ、そろそろ説明してくれ」
ヴァイスはドゥーエに目を向けないまま、その足元にある二つのカバンの片方を手に取った。
それはまったく意匠だが、ヴァイスが手に取ったのは彼自身が持ってきたのではなく、ドゥーエが持っていたカバン。
「俺には必要なデバイスを渡すとしか聞かされてないんでね」
「そうね。まずは開けて御覧なさい」
声に言われるままに、ヴァイスがカバンのジッパーを開く。
その中に納められていたのは数本の筒らしきものと、見覚えのあるグリップと照準器、そして十数個の薬莢型のカートリッジ。
「これはデバイスの部品?」
「ええ。まずは組み立ててみなさい、出来るでしょ?」
言われるままにヴァイスが手を動かす。
日々整備を必要とする精密機器である狙撃銃形であり、変則デバイスの取り扱いに熟知している故に最低限度の知識はあった。
ゆっくりと、けれども正確に組み立てていく。
そして、出来上がったのは一丁の簡素な狙撃銃――型のデバイス。
それには奇妙な点があった。狙撃銃としてのフィルムに、僅かに横へ何かを突き刺すような長方形のブロックが取り付けられている。
「なるほどな、組み立て式か」
しかし、ヴァイスはそれを気にせずに、率直に感想を告げる。
「ええ。どこにでも溢れている自作デバイスの部品から作られたデバイス、ただし無許可のね」
世間一般には自作によるデバイスの作成は許可されている。
事実、機動六課のフォワード陣であるスバル・ナカジマとティアナ・ランスターは訓練校時代から自作デバイスを持ち込み、
機動六課に入った際にも使用している。
けれど、デバイスとは魔導師が魔法を使用するための媒体であり、計算機だ。
大げさにいえば一般人が拳銃を持つようなものであり、その所持は危険ともいえる。
故にそれらの作成及び携帯にはデバイスの所持を管理する管理局の認証と刻印が必要であり、格資格によってデバイスの持つ機能などが制限されている。
比較的簡素な魔力弾を撃つだけの機能でも、申請は難しい。
事実、ティアナ・ランスターは陸士に入る訓練生という身分と仕様用途を用いて許可を取り、アンカーガンを作成している。
そして、ヴァイスの手に持たれたのはそれらの許可を得ていない違法品だということになる。
支援
「なるほど、な。それでこの微妙に不細工なカートリッジは?」
僅かに歪なケースで作られたカートリッジ。
十数個の一つを指で掴んで、ヴァイスが訊ねる。
「闇市場で出回っている不正規のカートリッジ。キチンとした魔力炉からの充填ではなく、低ランクの魔導師が手動で充填した
カートリッジね」
「なるほどな。んで、これらを使えば」
「どんなに使っても足は付かないわ。純粋にカートリッジの魔力だけを使用したデバイス。所持者の魔力は必要の無いから」
「なるほど。単純な弾道操作だけで済むってわけか」
一つ一つカートリッジを見つめながら、ヴァイスは息を吐く。
徐に遊底を引く。開かれた薬莢にカートリッジの一つを装填し、再び遊底を戻して閉鎖した。
そして、構える。
僅かな緊張感。
壁の向こうに誰かがいるかのようにヴァイスの目つきが厳しくなり、空気が止まった。
「……ボルトアクション式か?」
数秒間の沈黙の後に、ヴァイスが呟いた。
「ええ。簡素な分、故障しにくいように。と、ドクターが言ってました」
「零点規正したいんだが……試射場は用意されているか?」
「いえ、あの零点規正なら……」
「?」
「ドクターが自分でやったらしく。伝言ですが『十数回ほど撃って、キチンと調整したから安心したまえ』だ、そうです」
「……わかった」
ため息を付きながらヴァイスが構えを解き、デバイスから使っていないカートリッジを取り出す。
再び分解し、カバンに銃身を、カートリッジをケースに収めて彼はカバンのジッパーを閉めた。
「だけど、近いうちに零点規正は行いたいから――ってなんだ?」
振り向いたヴァイスの視線の先。
そこには体にタオルを巻いたドゥーエの姿があった。
「いえ、少しは興味を引いてくれるかと思ってただけよ」
「馬鹿を言うな。俺は、お前に興味なんかない」
「へぇ〜」
ニヤリをドゥーエが笑う。
その笑みに嫌な予感を覚えた。
ドクター狙撃ができるのかw 支援
世界の敵支援
「こ・れ・で・も?」
タオルを抑える片手とは違う、もう片方の手でドゥーエの顔を隠す。
そして、その次の瞬間そこにあった顔は――シグナムの顔だった。
「ぶっ!!?」
唾を吹き、ガタンとベットからヴァイスが転げ落ちる。
その元へシグナムの顔をしたドゥーエが近づいて。
「どうした? ヴァイス、そんなに慌てて。真っ赤だぞ?」
シグナムの声でそう囁いて、ドゥーエは笑った。
「な、な、なんで、お前が顔と声を?!」
「有名だからな、シグナムは。何度か顔も見たこともあるし、声も聞いたさ」
クックックと本物のシグナムならば決してやらない艶やかな笑みを浮かべて、ドゥーエがギチリと音を立ててその顔を手で覆う。
その次の瞬間に現われたのは、先ほどまでの顔だった。
「やっぱりね。ドクターの言った通り、ヴァイス・グランセニックは私のようなタイプよりも真っ直ぐで直情的な女性が好みと」
「っ……からかうな」
「もしかして、ヴァイスは彼女のことが好きなのかしら?」
クスクスとからかうように笑って呟いたドゥーエ。
けれど、その次の瞬間ヴァイスが浮かべた表情に、顔を曇らせた。
それは悲しみであり。
それは絶望であり。
それは殺意であり。
それは諦めだった。
支援
支援
支援
>>445 少しの魔力とセンスで狙撃出来る意味では、そのぶんグランセが使ったら録音並に凄くなるだろう
「憧れていたさ」
ヴァイスは呟く。
上を見上げながら、安普請な天井の先に空があるかのように。
「多分」
それは歌うように。
「多分」
己の心を振り絞るように。
「俺は、あの人に憧れて、惹かれて、そして――」
彼は嗤った。
「好きなのかもな」
手を広げて、そして閉じる。
ゆっくりと、ゆっくりと引き金を引き絞るように指を曲げる。
矛盾を孕んで、彼は告げる。
「だけど、撃つさ」
手に持ったカード――ストームレイダーに囁く。
「止まらないために、俺の正義を貫くために、誰だって撃ってやる」
それは一種の狂気。
信念という名の毒に犯された哀れな男の言葉。
「好きな女だって打ち砕いてやるよ」
彼は今まで色んなものを撃ってきた。
敵を。
物を。
肉親を。
そして、そして、そして――
彼は撃つことになる。
好きだった女性を。
仲間だった少女を。
打ち抜く弾丸となる。
ただ一つの願いのために。
“いつか見上げた空に届くために”。
そうそれはいつかの光景。
嵐のような業風が吹き荒ぶ中で佇む誰か。
「砕け」
それは銃を構えるだろう
「砕け」
それは殺意を向けるだろう。
「壊せ」
それは絶望を抱えるだろう
「壊せ」
毒を孕み、痛みを孕み、苦痛を吐き捨てて、誰かが牙を向く。
それは遠い未来ではない。
迫る未来でしかない。
悲鳴を、悲鳴を、上げよう。
銃声を、銃声を、鳴り響かせよう。
来たる、来たる、時を祝福するために。
嵐の乗り手は未来を夢想し、今は淡々と牙を磨く。
誰かの正義ではなく、己の正義を貫くために。
彼は大切な誰かを失いながら、引き金を引くであろう。
涙の代わりに、絶叫という名の銃声を鳴り響かせながら。
ヴァイス支援
いい、カップリングではないか ナンバーズの力でベッドへ.... 支援
投下終了です。
途中でレス番号を変更するのを忘れていました(汗)
支援ありがとうございます。
今回のお話もまた本編と直結する裏話。
トランプの表と裏のように密接に関係しながらも、別の顔を描いていくと思います。
ご拝読ありがとうございました。
そして、最後に一言。
今回出てきた自作デバイスは完全に魔力を必要としない狙撃銃です。
薬莢代わりにカートリッジを使っているだけのものだと考えてくれれば幸いです。
もちろん魔導師が使えば、弾道操作も出来ますが、常人というか魔力のないスカでも引き金を引けば弾は出ますw
以上です。ありがとうございました!
GJ!
ドゥーエがこんなにいい女だと思ったのは初めてだw
最高だったぜ
ゴルゴ13みたいなシーンを想像した俺は詰めてくる
とりあえず続き支援
GJ!!です。
違法デバイスが、いつ使われるのか楽しみです。
本編とは違い、いろんなキャラが裏で繋がってるのを見ると面白くて仕方ないw
GJ!
ヴァイスがかっこよすぐる!
後言い忘れてました。
ごめんよ、この後二人でベットシーンなんて存在しないですからね!
あともう少しエロっぽい描写を付け加えようと思ったんだけど、避難所行きになりそうなのでやめました。
期待してた人(皆無だろうけど!)ごめんなさいw
以上です!
その辺もまたストイックでよろしい(←何様だ)
さて皆さん・・闇の王女を投下してこの明るい空気をダークネスに!(元気よく万歳)
格好いいスカのあとは邪悪なスカをどうぞ。
相転移エンジン搭載ブラックサレナで支援
だがいずれにしてもスカであることに変わりはない支援
>>461 GJ!
ヴァイスがすげぇカッコいいです!なんつーか、大人な感じ。
…で、2140頃に投下したいのですがよろしいですか?
それはブラックサレナじゃない、もっとおぞましい何かだ。
悪夢は這い寄る混沌の如く、何時だって脳裏にこびりついて離れない。
赤子のように、何もかも忘れてしまえばいいのに、と思う。
けれど、それは叶わぬ願い。
刷り込まれた憎悪は消えてくれないから。
歪な力を手に入れさせられた身体は、殺意に蠢き、無数の死をばら撒くためだけの<兵器>に成り果てた。
絶望を植えつけられた心はもう元には戻れないから。
だからきっと、それを掴む権利は無いのだと、少女は慟哭する。
―――腐敗した正義に絶望し、繰り返される実験の中で崩壊した心の残滓はこう願った。
叶わぬ願いと知りながら。
全てが夢であればいい、と。
眼前で失われた命を否定してでも、少女は煉獄から逃れたかったのだ。
空虚な心の奥底で、復讐という名の妄執にも似た鬼が育っていた――――。
不屈の心――レイジングハートは願う。
主の再起を。
己が己であり続ける為に。
―――これはまだ、少女が黒騎士になる前の物語。
―――魔法少女リリカルなのは 闇の王女 過去編「記憶」―――始まります。
あうあう、ゲッターロボ昴氏と被っちゃった。
私は投下辞退するのでどうぞお先に〜。
高町なのはが目を覚ました、と聞いたときの息子の顔を、リンディ・ハラオウンは生涯忘れられないだろう。
不安と安堵がない交ぜになった顔で、必死にそれを押し殺そうとする表情。
せわしない。何時もの沈着冷静な姿からはかけ離れた姿に、リンディは苦笑した。
とはいえ、無理もないか、と思う。
何せ、死んだと思われていた女の子――それもクロノが好きだった――が生きていたとなれば、そうなることだろう。
リンディがそう思っていると、息子――黒髪の少年、クロノが口を開いた。
「艦長……医務室に行ってきてもよろしいでしょうか。保護した被害者の容態が気になりますので」
素直になのはが心配だ、と言えば良いのに――と思いつつも、
「ええ、いいわよ。―――クロノ、あまり、疲れさせない様にね」
リンディは微笑みながら言った。
クロノが大慌て、といったふうに頷いた。
「はい、艦長」
早足で、走らずに医務室に行こうとする息子を、リンディは好ましく思い、見守った。
そして、本局に被害者――高町なのはと首輪から名が読み取れた少女――ルーテシア・アルピーノの保護を伝えた――。
後にこれが過ちだったと気づいたときには、全てが遅すぎた。
今日もまた、運命の歯車はくるくると回り続け―――残酷に噛み合うのだ。
DFSで支援する!
目を覚ますと、そこは見慣れた場所―――アースラの医務室だった。
清潔な室内をなのはは見渡し、はあ、と息をはいた。
生きている。
流血していた額には包帯が巻かれており、出血は止まっているらしかった。治療魔法を使用したのかもしれない。
迷惑かけちゃったなあ、と思っていると、医務室の奥から、ひょっこりと見慣れた顔が出てきた。
アースラ専属の医師だ。
昔、なのはもよくお世話になった人だった。
人の良さそうな眼鏡の医師が、こちらに声をかけてきた。
「……なのはちゃん、なんだよね?」
こくり、と頷く。
確かに自分の名は高町なのはだ。
けれど。
今の自分はこの人の言う、<あの頃>の高町なのはと同一なのだろうか。
ぼんやりとそんなことを思っていると、医師が慌てた様子で話しかけてくる。
「いや、深い意味はないんだよ?ただ、本当に無事か確かめたかったから……」
「無事、ですか……」
何もかも――壊されてしまった。理想も、正義も、優しさも。
それが、無事か、など。
医師が、ぽんと手を叩いて言った。
「それじゃ、検査をしようか。ちょっと横になって貰えるかな?すぐに終わるよ」
どくん、と心臓が跳ね上がった。
検査。
おぞましい記憶が脳裏を駆け巡り、毒を吐き散らす。
脳髄を掻きまわされながら生かされる男の絶叫。痙攣する手足をバインドで固定し、優しく微笑む狂人。
『All right,all right。大丈夫だよ。君は素晴らしい成果の礎になっているんだ。何も心配しなくていい』
『…うげぇぇぇッ!ぎぃぃ、ひぃぃッ!』
昆虫の羽音のような掠れた声。
断末魔の悲鳴。
『脳を検査しているだけなんだよ、まったくだらしが無いなあ。ウーノ、データは取れたかい?』
女の返答――短く簡素な報告。
『はい、ドクター。海馬のこの部位は弄るべきではないようです』
『うん、そうかいわかった、ありがとう。さて、次は君の番だよ―――今日は何処を弄ろうか、ナンバー105』
秘剣咆竜斬支援
にゅ、と伸びてくる狂人―――ジェイル・スカリエッティの腕。
それを、虚ろな目で少女は眺めた。
(私は、どうして……)
ただ―――皆と笑い合いたかっただけなのに―――。
思考に混じるノイズ――決して理解してはいけない狂人の理屈。
『君達は優秀で、未来があって、正義の信仰者だった』
こつこつと、靴音が安っぽい床に反響した。楽しげに笑う男の瞳――金色。
猛禽が仕留めた獲物をいたぶる過程のような、虚ろかつ無意味な儀式。男は、無邪気な笑みを浮かべて、犠牲者達に言葉を投げかける。
それは、神に仕える聖職者の祝詞のようで、
『だから君達は選ばれたんだ―――生贄、として。』
ひどく禍々しかった。
ただ、男は語る。
それが世界の全てだ、と言う風に。
『管理局の正義に殉じる覚悟を持った英雄達よ―――』
何時だって、盲目を嘲笑う。
それが、現実。
『―――私の為に、死んでくれ給え』
「いやあああああッ!!」
気づいたときには、医師の手を振り払っていた。
強化された尋常ならざる筋力によって弾き飛ばされた医師が、尻餅をついて倒れこみ、検査機器にぶつかった。
驚愕に見開かれる医師の眼――怪物を見るような厭な視線。
「なのは……ちゃん?」
(どうして、私をそんな目で見るの?)
このまま捻り潰してやろうか――ぎりぎり、ぎりぎりと歯を鳴らして鬼が鳴いた。
刹那の思考。
相転移砲支援
今、自分は何を考えていたのだ。そんな簡単に人を―――。
(殺せちゃうんだ、私は―――)
壊れているから。
心臓に刃を差し込まれたような、胸の痛み。
何もかも殺し、潰し、破滅へ導きたい衝動。壊れた心の空洞には、怪物が住み着いていたのだ。
殺したい。自分さえも。
ベッドのシーツに爪を立てて呻き続ける。びりびりと破けていく。
それは、まるで少女の壊れた心を象徴している様だった。
起動音。光学情報を取得、本局へ送信。
映し出し、秘匿回線へ流すカメラが一機、検査器具に紛れ込み、確かに存在した―――。
腐臭をやめたら俺は死ぬ支援
時空管理局本局、将校居住区画。次元の海に浮かぶ巨大建造物。
狂乱する少女の映像を、眺める老人達の姿が在った。その数、三。それぞれが秘匿回線を通しての会合――立体映像で討論。
『これが人造魔導師の完成体、かね』
老人――優しげな顔の好々爺の口が、ぞっとするほど無機質な声音で言葉を放った。
物体を視認したときの台詞であり、とても人間を、可愛らしい少女の無残な姿を目にした人間の言葉とは思えなかった。
『そうだねえ……利用できる、とは思わない、レオーネ?レジィ坊やの弄くってるプランなんざ消し飛ばせそうな事実じゃないか。
人体実験……最高評議会の爺どもをどかすのにもぴったり、てとこだろう?』
老婆の打算的な物言いに、3人目の老人が眉をしかめた。
『おいおい、ミゼット。その物言いは無いだろう。仮にもレディだ。丁重に扱わねばならんだろうよ。それに、最高評議会のことだ。
今更そんなことの一つや二つ、握りつぶしてしまえるだろうさ』
責めるような口ぶりとは裏腹に、男もまた異常に冷たい目で少女を観察していた。
『サンプルとしては優秀だ。五体満足な人造魔導師など、な。このまま解剖に回すかね……?』
人を人とも思わぬ発言。
その言葉にも、他の二人は顔色を変えない。
『それもいいかもしれんな……』
『冗談はお止し、ラルゴ。あの子は八神はやての友達……だったそうじゃないか。あたしはあの子が気に入ってるんだよ。勝手な真似は許さないよ』
『ほう、ミゼット、君が情にほだされるとは珍しいことも有ったものだ。今日は次元振が起きるかも知れんな、クラナガンで』
ミゼットがふん、と嗤った。
『知らないのかい、この子――高町なのははね、管理外世界の出身でありながら大事件を2度も解決した子なんだよ。
あの<プレシア・テスタロッサ事件>と<闇の書事件>を、ね』
二人の男が目を見開き、瞠目した。
『あの事件を、か。素晴らしい魔導師だったのだろうな』
『ふむ。解剖するよりも<駒>として使ったほうが良い、かもな』
渦巻き、潜む闇は止まることを知らず―――少女を修羅の運命へ導こうとしていた。
漆黒の戦女神支援
投下完了です。
今回のスカの実験は本編の<子供達>の伏線だったり。
3提督は悪乗りしてこんなキャラに。
すいません。
GJ!
壊れていくなのはの描写が巧みです。なんつーか、怖い感じ。
そして恐怖に耐えかねたオメガ11がイジェクト(投下)したいのですが
大丈夫ですか?
GJ!
なんという真っ黒な三提督、間違いなくこの世界に希望はない/(^o^)\
もうこのなのははヘイトのように突き進むしかない。
>友達だった
なんという過去形。
GJ!!です。
三提督は悪いお人だ。今後、どんな風に進んでいくのかまったく分かりません。
管理局が人体実験などに手を出してたと聞いて、本編とは違い最後はどうなるのか
気になります。その事実をもみ消しそうですが。
三脳と三提督は生き残れるかなwww
GJ・・・です。けど一言だけ・・・
もう嫌じゃあああああああ!
ダーク系はもうお腹一杯なんだぜ!
・・・いや・・・まぁ、面白かったけどネ?
ユーノはどう出る?ナカジマ姉妹の行く先は?
気になりますね。
っく…なんてこったい、タイムリミットorz
すみませんが投下はまた後日にします。身勝手で申し訳ありません。
>>483 作品の方向性を全否定するなよ…
チラ裏、せめて毒吐きにしておけ。
>>480 ゲッターロボ昴氏が投下したばっかだからもうちょっと空けたほうがいいかと思う。
GJ なのはの変わり果て逝く変遷がすごい。もはやあの頃の日々は戻らないのか
思惑が複雑に絡み合い正に先が読めない良い意味でのカオス。
ミゼットのはやてが気に入ってる発言もそのままの意味で取れないぜ。
過疎ってるなぁ、おい。
たまにはこんな日もあるさね
暇潰しにブートキャンプでもしながら待機しようじゃないか
全裸で
職人方が頑張ってるんだろう
果報は寝て待て、だ
連日となってしまい申し訳ありませんが、なのはクロスロワの告知をさせて頂きます。
なのはクロスロワにおける、参加キャラと登場施設を投票します。
意欲のある方は、以下4つの投票で並記のルールに従い、投票して頂ければと思います。
1.リリなのキャラ四位決定投票
以下3人の内、1人に投票してください。最も投票の多いキャラが参加となります。
レジアス・ゲイズ、アリサ・バニングス、クロノ・ハラオウン
2.一般人キャラ
以下14人の内、5人に投票してください。上位10人が参加となります。同一のキャラに票を集中させる事は出来ません。
カレン・シュタットフェルト、シャーリー・フェネット、ヨハン・アンデルセン、万丈目準、
天上院明日香、阿良々木暦、彼我木輪廻、葵井巫女子、泉こなた、柊かがみ、柊つかさ、神崎優衣、
インテグラル・ファルブルケ・ヴィンゲーツ・ヘルシング、シェルビー・M・ペンウッド
3.敵キャラ
以下7人の内、4人に投票してください。上位4人が参加となります。
C.C.、アンジール・ヒューレー、ジェネシス・ラプソードス、ファーフナー、金井(ギラファアンデット)、キング(コーカサスビートルアンデット)、野木怜治(カッシスワーム)
4.施設
以下の種類を、並記した数以内で明記してください。
リリカルなのはシリーズに登場する施設……5
内部構造の解り易い、クロス作品に登場する施設……3
現実に存在するごく普通の施設……17
以上の投票を4月14日(月)00:00まで受け付けています。
ロワの告知て本スレでする必要あるの?
避難所でいいと思うけど
正直どうでも良いぜ
ウザいから隔離されてるのになあ
おはようございます(寧ろもう「こんにちは」?)
天元突破第1話、投稿してよろしいでしょうか?
どうぞどうぞ
フェイトの雷撃が最後のムガンを粉砕し、戦闘は時空管理局側の勝利に終わった。
歓声轟き、放っておけば祝宴でも始めてしまいそうな程の異様な熱気の中、その男は独り彫像のように佇んでいた。
先程までの獅子奮迅の活躍とは別人のようなその静かな姿は、他の男達の熱狂の中、まるで別世界の住人のように周囲の景色から乖離している。
「時空管理局の高町なのは一等空尉です。ご協力ありがとうございました」
管理局局員ではない、恐らく地元の民間魔導師であろうその男――ロージェノムの傍に降り立ち、なのははそう言って敬礼する。
間近で改めて見てみると、こう言っては悪いが……異様な風体の男だった。
3m近い長身、鍛え上げられた逞しい肉体。浅黒い肌の胸と背中に残る、まるで巨大な何かに穿たれたような傷痕。
その外見も然ることながら、何よりも男から滲み出る気配――オーラとでも言おうか――が、一般の人間とは明らかに一線を画している。
……この人は、只者ではない。
胸の奥の何か――心臓ではない、リンカーコアでもない何かのざわつく気配を、なのはは感じていた。
「……時空管理局?」
なのはの言葉にロージェノムは無表情のまま、しかし怪訝そうな声で問い返す。
何か後ろ暗いことがある――というよりも、初めてその名前を聞いた、そんな響きだった。
ロージェノムの呟きを聞き取り、なのはは眉を寄せる。
ミッドチルダは時空管理局のお膝元、この世界の人間で管理局の名を知らないということはありえない。
一部の例外を除いて。
まさか……?
一つの可能性に辿り着き、なのははロージェノムを見上げ、口を開いた。
「ご存知……ないんですか?」
「いや……」
なのはの問いにロージェノムは言葉を濁し、
「――ああ、初耳だな」
そう言い直した。
一瞬、ロージェノムの表情が動いた――ように、なのはには見えた。
その表情の変化と歯切れの悪い言動に僅かばかりの違和感を覚えながらも、なのはは己の推測に確信を抱き始めていた。
「……こちらも一つ質問して良いだろうか?」
頭三つ分以上高い位置から見下ろすように問うロージェノムに少し威圧されながら、なのはは「答えられることならば」と言葉を返した。
ロージェノムは首肯し、なのは達にとっては常識的な、しかしなのはの推測する人間にとっては非常識的な疑問を口にする。
「先程お前達は何の機械的な補助も無しに空を飛んでいたが……あれは、何だ?」
その問いに、なのはは自分の推測の正しかったことを知った。
この男は、時空漂流者――何らかの理由でこの世界に飛ばされた、次元の迷子だ。
ロージェノムと名乗る時空漂流者の移送、並びに時空管理局本部での事情聴取はフェイトが行うこととなった。
本当はなのはがやりたがっていたのだが、被害状況の調査や街の復興計画などの細々とした処理の指揮を任されてしまい、仕方なくフェイトにお鉢が回ってきたのである。
臨時の助っ人が何故そこまで……と思わないでもないが、これは一等空尉という肩書きが仇となったとしか言いようがない。
日々仕事に忙殺されているもう一人の親友のことを思い出し、偉くなるのも考え物だなぁーとフェイトは他人事のように思うのだった。
管理局本部への任意同行をロージェノムが二つ返事で了承したことに、フェイトは少なからず驚いていた。
これまでにも時空漂流者を保護した経験はあるが、こんなにもあっさりと了解を得られたことは少ない。
殆どの場合、何らかの形で抵抗されてきたし、それが当然であるともフェイトは思っていた。
右も左も分からないような場所に突如放り出され、その上訳の分からない組織に連行されようとしている……。
寧ろ抵抗しない方がおかしいだろう。
にも関わらず、ロージェノムはこちらの要求を何の迷いもなく受け入れた。
魔法の「ま」の字も知らないこの男にとって、時空管理局の名も馴染みがある筈などない。
警戒心というものがないのか、自分の実力に絶対的な自信でも持っているのか、何か管理局に近づく裏でもあるのか、……それとも、何も考えていないだけなのか。
表情一つ変わらぬロージェノムの顔からは何も読み取れない。
管理局本部への移送に、ロージェノムは一つの条件を出した。
ロージェノムが搭乗していた質量兵器――ラゼンガン≠ニいうらしい――を本部に持ち込みたいというロージェノムの要求に、どうしたものかとフェイトは悩む。
時空管理局は質量兵器の保有、及びその使用を禁じている。
時空漂流者とはいえその規制に例外は無い。
そして第一……目の前のガラクタがまともに動くとはフェイトには到底思えなかった。
四肢は潰れ、尻尾は千切れ、胴体も崩れかけた、元は人型だったであろう質量兵器。
辛うじて無事と言える部分はコクピットのある頭部付近だけである。
……どう見ても、粗大ゴミとしか思えなかった。
「あの……やっぱりこれで本部まで行くのは、幾らなんでも無理があると思うんですけど……」
危ないですよーやめましょうよーと安全性の面から説得を試みるフェイトだったが、ロージェノムは大破したラガンゼンのコクピットに足をかけ、一言。
「首から下など飾りに過ぎん」
……無茶苦茶な科白だったが、何故かこの男が言うと物凄く説得力があるような気がした。
そしてその直後、フェイトはロージェノムの言葉の意味を知ることになる。
「ぬ……おおおおおおおおっ!!」
操縦桿を握り咆哮を上げるロージェノムに応えるように、ラガンゼンの両眼に光が灯る。
瞬間、ラガンゼンの頭部両側面、人間で言えば耳に当たる部分から腕が生えた。
両腕で首筋をがっちりと掴み、左右に捻りながら頭を引き抜くラガンゼン。
……傍から見ていると、物凄くシュールな光景だった。
そうして苦労して首から引き抜かれた頭部には、やはりと言うべきか、小さな脚がしっかりと付いている。
「ほ、本当に飾りだったんだ。首から下……」
予想の斜め上をいくラガンゼンの驚くべき正体に、フェイトはただ唖然とするしかなかった。
「……どうした? 管理局とやらに行くのではなかったのか」
一頭身のラゼンガン――この形態は暫定的にラガン≠ニでも呼ぼう――のコクピットから、ロージェノムが怪訝そうにフェイトを見下ろす。
すっかり可愛くなってしまったその機体を眺め、フェイトは諦めたように息を吐いた。
武装も無いようだし、これならば問題ないかもしれない……と、思いたい。
「あの……貴方は、何者なんですか?」
問いかけるフェイトを一瞥し、ロージェノムは目を眇めた。
「事情聴取は管理局に着いてからではなかったのか?」
「私の純粋な好奇心から訊いているんです」
本部に着いてから色々とドッキリさせられる前に今の内に心の準備を……という本音は隠して、フェイトは答える。
ロージェノムは黙り込んだ。
表情こそ動いていないが、しかしその内心では物凄く困っていた。
自分は一体何者なのか――実のところ、その明確な答えをロージェノムは持たない。
螺旋王――否。
この身はクローン培養によって造られたコピー、記憶や知識は受け継いでいるが決してオリジナルの『ロージェノム』と同一の存在ではない。
大グレン団旗艦超銀河ダイグレン生体コンピュータ――否。
既に超銀河グレンラガンとは切り離され、再び一つの個体として活動している。
誰でもない、俺は俺だ――論外。
そもそもこの娘の疑問への回答になっていない。
消去法で次々と選択肢を消していき、ロージェノムは遂に一つの答えに辿り着いた。
「わしは……」
言いかけて、ロージェノムは自嘲するように唇の端を歪めた。
何様のつもりだ、「わし」などと……。
あの時、あの宇宙で、最後の最期まで共に戦ってくれた忠臣に自分は何と答えた?
――王ではない、今はただの戦士だ。ヴィラル……お前と同じ、な。
そうだ、自分は戦士だ。
たとえこの身が仮初の肉体、造られた人格だとしても、自分が一人の戦士として、螺旋の戦士として戦ったことに変わりはない。
シモン達と共に、大グレン団の一員として戦ったことに偽りはない。
吹っ切れたように小さく笑い、ロージェノムは改めて口を開く。
「――私は戦士。螺旋の戦士、ロージェノム」
威風堂々、胸を張ってそう言い切った。
宇宙とは、認識されて初めて確定する――それがこの宇宙の理である。
ならば自分自身の存在も、自分自身が認識した姿に確定するのではないか。
自分の信じる自分の形に……。
故にロージェノムは全力で信じる。
戦士としての自分自身を、自分の信じる自分自身を。
ロージェノムの示した回答に、フェイトは虚を衝かれたように目を瞬かせていた。
なのはが管理局に戻った時には、既に夜は明けかけていた。
ロージェノムはどうしているだろうか、フェイトの事情聴取は上手く済んだだろうか。
報告書を提出し、自分達の保護した時空漂流者について問い合わせたなのはは、事情聴取は依然継続中という答えに目を見開いた。
フェイト達がいつ頃本部に戻ったのかは知らないが、少なくとも日の入り前には着いていただろう。
そこから事情聴取にどれだけかけているのか、何時間時空漂流者を拘束しているのか。
管理局員としての常識を外れたフェイトの行動が、なのはには信じられなかった。
「フェイトちゃ……ん!?」
取調室の扉を蹴破るような勢いで入室したなのは、室内に揃った予想外の顔の前に思わず踏鞴を踏んだ。
「あ、なのはちゃんお帰りー」
にこやかな笑顔でなのはを迎える、八神はやて二等陸佐。
「君はもう少し落ち着きというものを持った方が良いな、なのは」
渋い顔でなのはを振り返る、クロノ・ハウラオン提督。
「うぉっ!? ……って、何だなのはかよ。ビックリさせんな!」
居眠りでもしていたのか、挙動不審なヴィータ。
他にもシャマルやシグナムなどの守護騎士の面々、ユーノ・スクライア司書長やアルフなど、なのはにとって馴染みの深い面々が狭い取調室に勢揃いしている。
そして極めつけは……、
「あらあら、まるで同窓会みたいね」
「リンディさんまで……」
湯?片手にほけほけと笑う管理局総務統括官の姿に、なのはは呆れを通り越して脱力した。
「もう……皆揃って何やってるんですか!?」
時空漂流者への長時間の不当拘束だけでも許せないというのに、こんな大人数で事情聴取など理解出来ない。
否、理解したくない。
これではまるで尋問である。
なのはの糾弾にはやて達はばつの悪そうに視線を逸らした。
「いや、まぁ……最初はフェイトちゃんだけで普通に事情聴取やってたんやけどなぁ……」
「ちょっと事情が変わって……というかわたしだけじゃどうしようもない展開になっちゃって、それで無理言って皆に来て貰ったの」
言い訳するはやてとフェイトに、なのはの眉が剣呑そうに吊り上がる。
「事情って……皆が一度に集まらなきゃ駄目な位大事なことなの?」
リンディを始めとして今この場に集まっている面子は、皆時空管理局の中でも重要な場所を任されている者達であるとなのはは思っている。
時空漂流者一人の事情聴取などという些事にかまけ、こんな所で油を売っている暇などない。
そういった意味でも、なのはは怒っているのだ。
はやてはフェイトとアイコンタクトを交わし、「驚かんでよ?」と前置きした後、真剣な顔でこう切り出した。
「なのはちゃん。ウチらな……今、アンチスパイラルへの対抗策話し合ってんねん」
「…………へ?」
はやての口にした予想外の言葉に、なのはは面食らったように間の抜けた声を上げた。
アンチスパイラル。
アンチスパイラルとは……あのアンチスパイラルだろうか?
四年前、ミッドチルダ北部の空港爆破テロと共に全次元世界に宣戦布告し、以来次元世界各地で質量兵器による破壊活動を行う謎のテロ組織。
目下、なのは達時空管理局にとって最大最悪の「敵」……!
そのアンチスパイラルとロージェノムの間に、一体何の関係があるというのか。
なのはの疑問に答えるように、はやては部屋の奥に座るロージェノム――腕を組み、なのは達のやり取りを黙然と見守る異邦の戦士を一瞥し、そしてこう言った。
「とんでもないジョーカーやで、あの人は……」
天元突破リリカルなのはSpiral
第1話「貴方は、何者なんですか?」(了)
投下完了しました。
504で総務統括官が持っている「湯?」は「湯飲み」です。
前回支援してくれた方々、レスをくれた方々、この場を借りてありがとうございます。
GJ!
前回気付いてもらえなかったようなのでもう一度……ロージェノムのガンメンの名前は「ラゼンガン」だッ!
あ゛……
前回の指摘を受けて注意していたつもりだったのですが、ところどころ間違えてました。
申し訳ない。
ロージェノムGJ!
ロージェノムGJ!
何かアースラ合体フラグが立った気がする。
メッセンジャーはスカ博士かな。
ラゼンガン→アースラゼンガン→超次元ラゼンガンと妄想した。
ちなみに超次元がゆりかごで。
野生のキャロとバクラの人が飛び出してきた!
キャロとバクラの人は三時くらいを目安にキャバクラの続きを投下しようとしている!
投下させますか?
是非に!
全力で支援
えっと、その後で自分も予約していいでしょうか?
アンリミテッド・エンドラインの本編なのですが。
空いてますよね?
キャバクラの人は3時くらいっていってるし、すぐいけるなら今からでもいいんじゃね?
すぐには無理なんですw
ちょっと、用事がありまして。
四時くらいに予約させていただきます。
テスト
天は我らを見捨てなかったぞ。とうとう来たぜ。
支援だぜ しかも次も楽しみなものが来るとは。
何か待たせると悪いので一時半くらいから投下しますです
支援です。
>>517 喜んで支援します!
そういえば以前投下されたティガをキャロが召還するやつが
まとめwikiで消えてたのでまとめ直してもいいですか?
支援いたす!
キャロとバクラ氏が飛び出してきた。
どうしますか?
>支援ボールを投げつける!
始動を目前とした遺失物管理部機動六課の隊舎、その一室にてある女性が窓ガラス越しに外を見ていた。
彼女の名前は八神はやて。管理外世界出身にして、かの闇の書最後の主。
エリート街道を突っ走るエース。陸海共に太いパイプを持つ策略家。別名チビ狸。
「朝に仕事を始めたのに……もうキレイな夕日がでとる」
大きな窓ガラス越しに部屋を満たすのはオレンジの光。地平線に半分姿を隠した太陽。
そんなものを見ながら過ぎ去る時間に感動を覚えているはやてに、書類の山が築かれた彼女のデスク上から声が掛かる。
「何を言ってるですか、はやてちゃん。それは朝焼けですよ」
声の主は書類を書き分けて姿を現した長い銀髪の少女だ。余りにも小柄な、強いて言うならば人形ほどのサイズである事を覗けば。
彼女の名前はリィンフォースU。夜天の風を告ぐ祝福の風、珍しいユニゾンデバイスである。
「……カンテツやな」
「しかも二回目の朝焼けです」
つまり二回ほど完全徹夜を行い、二日間寝ていないと言う事になる。
年頃の娘だとかそう言ったことは一切無視しても他人様に誇れる事ではない。
「……」
二人の間で気まずい沈黙が流れた。だがそれを中断したのもはやての一言。
「……ど〜りで妖精さんが見えるわけや」
『ふっふっふ♪』
軽々しいそれこそ夢を見ているような口調でリィンフォースの頭を撫で撫で。
よく言えば悟りを開いた仙人、悪く言えば末期の薬物中毒。そんな笑みを浮かべて自分を撫で続ける主を数秒見つめ、彼女は叫んだ。
「ムキ〜!! 何を言っているですか!? マイスターはやて、私はリィンフォースU。
由緒正しいベルカ式ユニゾンデバイスです! 妖精さんじゃありません!!」
「そっか〜妖精さんはリィンフォースUって言うんか〜良い名前やね」
『あっはっは♪』そんな声を上げながら、撫で撫でを続行するはやて。
それを冷たい眼で見るリィンフィースからは、ある種の諦めが滲んでいる。故に違った方法を選択する事にしたようだ。
机の上にあったペン立てをフルフルと震えながら持ち上げ、『ちょいやっ!』と妖精さんと話し続ける夢の世界に突入しかけた主へと投げつける。
「ハグゥアッ!?」
鈍い衝撃音と奇天烈な悲鳴。頭部を仰け反ったまま停止する事数秒、首を元に戻すと八神はやては再起動する。
咳払いして額を摩りながら、自分の席へと戻る。乱雑な書類をキレイにまとめ、もう冷めてしまったコーヒーを一口。
続いてどこぞの司令のように机に肘をついて手を組み、そこに顔を付けて厳かな声で呟く。
「川の向こうでグレアムおじさんとネコが二匹で手招きしてたんよ」
どうやらまだ覚醒していないらしい。
「だいたい! はやてちゃんが管轄外の仕事を持ってくるから、二日間徹夜なんて事態になるですよ!?」
「ん〜でもアッチコッチ駆けずり周って手に入れた折角の自分の部隊や。一つでも納得がいかんことは無視できないんよ」
主従の会話は場所を移した。そこはタイルで覆われ、水音が満たす小さめの部屋。いわゆるシャワールームである。
はやては湯煙の中で僅かに覗くシャワーの下、温水の中へと肌を晒す。そして僅かに離れた場所でお湯の張られた風呂桶で手足を伸ばすリィンフォースU。
「それにしても経理部と大喧嘩して、余分な決裁書の束まで持ち帰ってきた時は、どうしようかと思ったです……」
「堪忍な〜リィンにも無茶させてしもた」
本当に申し訳無いと言う音を湛えた主の言葉に、小さな融合騎はヒラリと彼女の眼前へと舞い降り、臣下の礼を作りつつ叫ぶ。
「はやてちゃん! いえ、マイスター・はやて!!」
「なっなに? そんなに畏まって?」
「私が心配しているのは御身の事です、マイスター・はやて。付き従う者たちのお気持ちも察していただければ……」
真剣な半身の視線を受け止めて数秒、はやてが浮かべるのは誇らしくて、嬉しさを溢れさせた笑顔だ。
だがそれだけで表現するには少々気恥ずかしさが残る。故に彼女は再びリィンフォースの頭を撫でる。
先程夢の狭間で行ったようなフワフワしたものではない。利口な子犬を褒めるようにソレはもう力を込めてグリグリ〜である。
「ちょっ! 痛いです〜はやてちゃん!」
「何をいっちょまえに言ってるん〜? 八神家の末っ子が〜」
「ふぇ〜ん! せっかく頑張って考えたのに〜」
どちらとも無くバスタオルで体を拭きながら、シャワールームを後にする。
備え付けのバスローブに身を包む再び朝焼けに目を向けながら、はやては背中越しで小さな体に合うお手製のバスローブ姿のリィンフォースに言う。
「八神はやてはもっと上に行く」
管理局の地位も魔道師としての力も……人間としても。そうすればもっと数年前の自分のような消えない悲しみを抱える人を助けられる。
少なくともそう信じてここまで遣ってきた。正解だとは言わないし、間違っていると頭を垂れる気も無い。
「機動六課はゴールやない、通過点や」
管理局と言う巨大組織、幸いにも多くの後ろ盾を持ってはいるが、それだけで駆け上れるほど易い山ではない。
『少数精鋭による即時対応部隊』
もし六課という雛形が管理局部隊の一つの形として認められれば、ソレを考案して組織して率いた者の功績は大きい。
頂に対する確かで大きな一歩。だがそれでゴールではない。第一どんなに大きくてもたかが一歩で制覇できる山など存在しない。
「これからも登り続ける坂道。困難な事があっても、祝福の風は……私の背中、押してくれるか?」
どんな礼儀も礼節も恥じも戸惑いも無く、リィンは小さな体は活かしてはやてに抱きついていた。
本当の主従は多くを語り合わない。ただ多く触れ合う。
支援
「ほな……寝よか〜」
「感動をぶち壊しです」
数秒前の感動をどこかに追いやり、ふらふら〜と覚束ない足取りではやてが向かうのは同室内にある大きめのソファー。
本来そういうところで寝るのはよくないのだろうが、二日間徹夜の威力にそんな理想の壁は無力。
もちろんその後ろにシッカリ付いていくリィンフォースUも、即寝れる暖かいソファーの誘惑に完全敗北していた。
「フカフカや〜」
「ですね〜」
ボスンと弾力性に富む素材がはやてたちを受け止めて軽い音を立てる。新品のソファー独特の皮の匂いも二人には心地よい。
すぐさま押し寄せてきた眠気の波に抗う事無く沈もうとしたのだが……
「はやて〜!!」
「……グッバイ安眠」
はやてはインターフォンから超鳴り響く十年近い友の声に睡魔の手を振り払った。
今ならどんな睡魔とも楽しいランデブーが出来そうだったのに残念である。
「なに〜フェイトちゃん〜」
「あれ? 何か元気無いね。寝てた?」
「寝るところやったんよ〜」
『二日ほど徹夜してようやく寝る所を邪魔するとはどういう用件や!? キシャ〜!!』と言わない辺りにはやての懐の深さが感じられる。
だってフェイトの声が余りにも嬉しそうで、無碍に出来る感じではなかったのだ。そんなはやての葛藤を知らずにフェイトは告げる。
「決まったよ! ライトニング4が」
「ほんまに! どんな人なん?」
だが告げられた内容にはやての顔も一瞬で華やかな色に染まる。
六課の中核となるフォード陣が空席なのは予定の内とは言え、部隊長としては余り宜しくない状況だった。
その一角が埋まると言う事は純粋に安堵、そして親友が選んだ人物に純粋な興味が生まれる。
「えっと彼女との馴れ初めはね♪」
壮大なラブ&アクションの物語を嬉しそうに語る幼馴染に相槌を打ちつつ、はやては飛び出してくる言葉に青くなっていく。
『ビルの生き埋め』とか『死霊』とか『即死魔法』とか『三千年前の盗賊』とか『アルザスの竜召喚士』とか『邪神の欠片』とか。
「コイツ……真面目に選んだんかな?」
内心ちょっとだけ十年来の親友を疑っていたりする八神はやて二十代手前。
俺の踏み印したロードそれが未来となるのだ支援
支援しかないぜw
キャバクラ支援
そりゃ、正気を疑うわなw支援
フェイトそん落ち着けw
支援w
「それで……この娘はこの条件じゃないとダメなん?」
「えっと……『それが最低条件。上乗せしてくれるなら良し。それより下じゃお断りだぜ、ヒャッハッハ〜!』って言われたんだけど」
フェイトがルンルンで語り終わり、最後に当人から渡されたと言う雇用条件が書かれた紙を受け取ると、はやては顔を盛大に歪めた。
問題はそこに書かれた給与内容。高いのだ。勿論一般的な人の給与はもちろん、魔道師たる管理局員のソレも上回る。
だがそれは管理局以外が腕利き魔道師を雇うとしたら平均的、もしくは僅かに高い程度だ。
管理局が多くの希少な魔道師を独占するので、他の場所ではその価値が計り知れない。故に一度捕まえたら離さぬように、高い給金が約束される。
「長期手当てとかを付けて何とか〜」
「そう言うのは要らないから『即金で寄越せ!』って……ゴメン、はやて」
今更だが自分が浮かれてテキトウに交渉した結果により、親友が顔を顰めている事にフェイトは申し訳無さそうに身を小さくする。
ライトニング4候補が掲示してきた雇用体形は傭兵だった。面倒な手続きやそれによって得られる特権をとことん省いた自由契約の形。
管理局の魔道師が求める一切の特権を無価値なものだと考えるならば、確かに管理局が彼らに与える給料は高いとは言えないのだ。
「なあ、フェイトちゃん」
再びゲ○ドウポーズをとったはやてにフェイトは思わず自分も背筋を伸ばす。
時々……イヤ、いつもふざけているように見える友だが、真面目な時は三人の仲で誰よりも真面目であり、スゴイ事を平然とやってのける。
「もしこの娘 キャロ・ル・ルシエが六課にプラスとなるんやったら、ウチはどんなにお金を積んでも良いとは思う。
フェイトちゃん……イヤ、ライトニング分隊隊長フェイト・T・ハラオウン」
「はっはい!」
「信じてええな? 貴女と貴女の選んだ者を。賭けてええんやな?『三日目の徹夜』を……」
僕 エリオ・モンディアルは待ち合わせのターミナルを走り回っていた。
今日はいよいよ待ちに待った憧れの人と同じ職場 時空管理局機動六課へ配属となる日。
予定通りに迎えに来てくれた上司となる大先輩のベルカ騎士と合流し、未だに現れない名前だけしる同僚を探して回っている。
「ルシエさ〜ん、キャロ・ル・ルシエさん居ませんか〜?」
けれどターミナルは広くてその中に居る人も多い。この中から一人の人間を見つけるというのはとても大変な事。
だけどその時の僕はとても運が良く、同時にとても悪かったのだ。
「は〜い! 私です、遅れてすみませんでした〜!!」
上の階層から聴こえる声、足を止めて振り向くとエスカレーターを下りてくるのは小柄な女の子。
可愛い子だった。すみませんという割にはゆっくりとした足取りだけど、エスカレーターで走るのは危ないから正解だろう。
でもその姿は僕が想像していたものとは違っていたんだ。駅慣れしていない位だから、地方から出てくるものだと思っていた。
でも違う。桃色のショートカットとコントラストを成す、大人っぽくてお洒落な黒に銀の糸で刺繍が入ったスカートとスーツを着ている。
手には真新しい紙袋とペットを入れるようなカゴ。胸元には見たことが無いデザインの金色に輝くペンダント。
そして歩き方。なんと表現すれば良いのだろう? まるで一歩ずつ見せ付けるような……覇者の余裕が滲んでいる。
なのにソレを誇示するような印象は受けない。自然にそういう歩き方をしてるって事だ。
『彼女に会えばエリオは色々と考える事になると思うよ』
嬉しそうにそんな事を言っていた恩人の言葉の意味、僅かにだけど確かに僕は理解できた。
確かに僕の回りにはいなかったタイプだろう。でもそれだけじゃ……まずは挨拶からかな?
「ルシエさんですか!? 自分は……」
「キャッ!」
「っ!?」
だけど挨拶は途中で中断する事になる。ルシエさんがバランスを崩したのだ。
足が前へ、頭が後ろへと体勢が崩れていく。このままでは頭をエスカレーターに強打してしまう。
僕は思わず数少ない自慢、『速さ』の魔法を解き放った。
「おいおい、相棒。こんな所で躓くんじゃねえよ?」
「っ!?」
解き放つ瞬間聴こえたのはルシエさんの声だった。どうしてもそう認めることは出来なかったけど。
男の人の声だった……気がする。夜の闇のような色ではなかっただろうか? 全てを見下す嘲りの笑みを感じた。
全てが曖昧な感覚だがソコに居るのはルシエさんであって、ルシエさんではない。その他人は本人以上にその小さな体を華麗に動かして見せた。
手すりに軽く手を掛けて姿勢を制御、僅かな力だけで体を浮かせて階段状の足場にも着地し易いように足を広げる。
完璧な動きに思わず見とれてしまい、本来早いだけの魔法『ソニックムーブ』が制御を失った。
『マズイ!』なんて考えている間に既に着地をし終えたルシエさんを巻き込む形で疾走。
すぐに止まってしまうとエスカレーター上になってしまい危険だと判断、とりあえず上まで行って……
やっぱり着地に失敗した。
シリアスな部分でも所々で落とすのがキャバクラ風味支援
エリオいきなりの死亡フラグ支援
「すっすみません! 失敗しました〜」
エスカレーターを挟んだ上のフロアで僕は床に身を投げ出し、自分の上に乗る重量感に挟まれながら呻いた。
上に乗って状況が解らないと首を傾げ、パチクリさせているキャロ・ル・ルシエさんと目が合った。
同時に自分の手が……その……彼女の胸を触っている事に気が付く。男の子としての本能がアレするよりも早く、気恥ずかしさで顔が紅く染まる。
でも幸いと言うかルシエさんは気を悪くしていないみたいだから……
「やってくれるじゃねえか、ガキが!」
……気を悪くされている方が居ました。胸のペンダントの一つ目が輝くと、先程と同じく人格が変わった?
「いえっ! 本当にわざとじゃなくて!」
「当たり前だ! もしワザと触ったってんなら……冥界の扉を開く事に成るぜ」
いつの間にか僕の背後に現れた頭の無い鎧二体がガッシリと僕の左右をホールド。
ズルズルと連行されるのは大部分から死角になるだろう非常口の方。生命の危機を感じて暴れるもまるで相手にならない。
パニックになっているから魔法もカラ発動を繰り返すばかり。
「ケッケッケ、赴任早々同僚を無くすのは悲しいぜ」
「悲しいなら止めて下さい〜!!」
本当に楽しそうに悲しそうな事を言うダレカ。その声はまるで悪魔のようだ。しかし悪魔は気紛れで、急に天使になったりする。
「ダメですよ、バクラさん!」
ピタッと僕を連行していた鎧が足を止めた。ルシエさんの表情が怒った歳相応の少女のものに変わる。
「助けてくれようとしたんですから、感謝しなくちゃ! 役立たずでも」
「……」
むしろその物言いの方が凹みます。鎧達は丁寧に僕を立たせ、埃まで払ってくれた。意思があるのか解らないけどとりあえず感謝。
「あのっ! 先程は申し訳ありませんでした! 自分はエリオ・モンディアル三等陸士であります!!」
「これはご丁寧に、私はキャロ・ル・ルシエと言います。機動六課には嘱託として赴任しました。
それから……」
手近に落ちていたカゴをルシエさんがあけると中から飛び出してきたのは小さな飛竜。
「この子は私の竜、フリードリッヒです。それと……」
再び輝く胸元のペンダント、何だかそれだけで恐いという感覚を刻まれてしまった気がするぞ。
「オレ様の名前はバクラだ。短い付き合いかも知れねえが、よろしく頼むぜ? ガキ」
前髪が一房立ち上がり、口元がニヒルな笑みを浮かべて、目元が鋭さを増す。
と言う事で……『キャロとバクラが新しい同僚と合流したそうです』
さようなら、睡眠w
支援!
キャロひでえw
影響されまくってる! 支援
以上でした〜はやてが楽しいw
キャロとバクラですか? 次はきっと出てくると良い子は信じて待ちなさい(何様
それからティガレックスのお話の件、よろしくお願いします。
自分も色々試してはいるのですが上手くいかなかったりするので……
GJ!!
役www立たずwwww
GJ 役立たずでもってwwwひでえ
俺もこんな履歴書持ってこられたら、採用した人間疑うw
GJ
我々の知る純粋なキャロは死んだ、何故だ!w
フォワード陣の特にティアナそん辺りとの出会いが楽しみ過ぎるww
GJ!!です。
新人の中で一番実戦経験が多いのがキャロだという事実が、次回からの訓練で
楽しみで仕方ありません。
誰かバクラの戦い方とかにいい感情を持たない人とか出てくるのだろうか?
GJ!
エリオ乙www
しかしはやては完全徹夜3日目になるのか。はやて乙
フェイトそん ちゃんと公私分けて交渉したのか?適当とか浮かれてやったってw
GJ!
そのうちリングだけじゃなくロッドやパズル持ったやつも出てこんだろうなw
スカの顔芸ならロッド持っててもおかしくないと思うんだw
GJ!
役立たずって、キャロひでぇよwww
で、オメガ11がイジェクトしたがってるので1500に投下します。
支援するぜ!
それでは投下します。
ACE COMBAT04 THE OPERATION LYRICAL
第4話 テストフライト
手に戻りし我が力―今、それを試す時。
新造されたばかりの滑走路の向こうでは、背景が陽炎で揺れている。
天候はこれ以上ないほど良好で、視線を上げると雲一つ無い青空が広がっていた。
「―メビウス1、聞こえますか?」
通信機に、雑音の無いクリアな声が入ってきた。確か副官のグリフィスとか言う六課では数少ない男だ。
この世界の通信機の性能に感嘆しながら、F-22のコクピットでメビウス1は返答した。
「ああ、よく聞こえる」
「滑走路上に障害物無し、進入を許可します」
「了解」
グリフィスに言われて、メビウス1はエンジン・スロットルレバーをわずかに押す。F-22はゆっくりと歩き出し、滑走路の一番端に到着する。
到着するなりメビウス1は愛機の離陸前の最終点検を実施する。ラダー、エルロンなど機体の各部を実際に動かして動作確認。
いつもより念入りにチェックするのは今回機体の整備を実施したのがもともと六課でヘリの整備を担当していた者たちだからだ。
彼らを信用していない訳ではないが、九七管理外世界から取り寄せたマニュアルがあると言っても不慣れな固定翼機、それもF-22のような
高度な電子制御で飛行する機体の整備では不安なところもあっただろう。
幸い、機体にはどこも異常が無かった。
「こちらメビウス1、離陸準備完了」
「ロングアーチ、了解。離陸を許可します―グッドラック」
「サンクス、ロングアーチ…メビウス1、離陸する」
離陸許可が下りると、メビウス1は一呼吸置いてからエンジン・スロットルレバーを押し込む。
F119エンジンが咆哮を上げ、猛然とF-22は加速。あっという間に離陸速度に達したメビウス1のF-22は、大地を蹴って空に舞い上がった。
離陸した彼は針路を離陸前に行われたブリーフィングにて定められた方向に機首を向け、時速四〇〇ノットで飛行する。
F-22の強みである音速巡航は、地上への配慮から緊急時以外使用が禁止されていた。
まぁ、何も急ぐことは無いか―。
質のいい燃料を入れてもらったためか、機嫌のよさそうなエンジン音を聞きながら、メビウス1は今回の飛行の目的を思い出す。
メビウス1の六課への協力が決まり、はやては一つの問題と対峙していた。
彼の愛機、F-22の燃料及び弾薬の補給である。
燃料の方は容易に確保できた。現役戦闘機の中ではもっとも優れた性能を誇るF-22も、燃料は従来と同じケロシン(灯油)だ。
「苦労したのは弾薬なんよ」
そう言って、はやては今回確保した弾薬の詳細が記された書類をメビウス1に渡す。
「質量兵器は禁忌なんだって?ランスターって子に言われたよ」
書類に目を通しながら、メビウス1は言う。先ほど見学した六課新人メンバーによる訓練で、ティアナに何か言われたらしい。
「あ、ごめん。なんか失礼なこと言いました?」
「いや。生真面目なんだろ、彼女?管理局の人間ってことをよく自覚してるよ」
その時、書類を捲ったメビウス1の手が止まる。書類に記されていた一文が、そうさせた。
「…おい八神、これって?」
「ああ、それな…うん、まだテストはしてないんやけど」
メビウス1が驚くのも無理は無い。今回彼女が確保した弾薬の正体―それは紛れも無い、ミサイルだった。
オリジナルとほぼ同等の性能を持つ空対空ミサイルのAIM-9サイドワインダー短距離AAM、それにAIM-120AMRAAM中距離AAMの複製品。
もちろん完全なコピーでは質量兵器であるため、どちらのミサイルもロケットモーターは魔力推進式に置き換えられている。
さらに二〇ミリ機関砲弾―これも、あらかじめ組み込まれた魔力を炎熱変換させて発火、弾丸を発射させる方式を取った。
いずれもはやてが九七管理外世界からの資料を元に、管理局の技術部に依頼して開発させたものだ。
「質量兵器とは大雑把に言えば魔力によらずに質量物質をぶつけたり爆発させたりするもんや。逆を言えば、魔力に頼れば例え質量物質を
相手に投射するもんでも、質量兵器ではなくなる…って理屈なんやけど」
「かなりグレーな線ではあるな…しかもブラックに寄ってる」
メビウス1の指摘にはやては苦笑いを浮かべた。
「でも、戦闘機に対抗するんやったらこれが一番やろ。メビウスさんもいきなりこっちの世界の武器使えって言われて出来へんやろうし」
「そりゃごもっとも…俺にリンカーコアとやらはないようだし。な、シャマル先生」
そう言ってメビウス1は同席していた六課の医務官、シャマルに視線を向けた。
ここに来る前に実施したシャマルの身体検査で、メビウス1にはリンカーコアがないことが判明している。要するにメビウス1は念話の
ような基本的な魔法すら使えないのだ。
「ええ、体力とかは同年代の男性の平均値を上回ってるけどこれも常識の範囲内だし…毛細血管の破裂の跡が見られたけど、身体に特に
大きな影響は無いわ」
「毛細血管の破裂?」
はやてが怪訝な表情をする。血管の破裂というくらいだから、彼女には何か重い怪我のように思えてしまった。
「戦闘機のパイロットにとって職業病みたいなもんでな。急旋回とか、強いGがかかると指先とかの毛細血管が破裂しちまうんだ」
「ははぁ、なるほど…」
メビウス1の解説にはやては納得した。同時に、「強いGはお肌に悪そうやなー」なんて言ってみたりする。
「しかしリンカーコアがなくて念話が出来へんとなると、通信で問題が起きるなぁ」
「そうねぇ…私たちは当たり前のように使ってるけど」
「失礼、念話って?」
今度はメビウス1が疑問の声を上げた。魔法はこの目で見たが、彼が知っているのは攻撃用と防御用、さらに飛行用のものくらいだった。
「念話って言うのは魔力を持ってれば誰でも使える、実際に口に出さなくても会話できる初歩的な魔法なんだけど、リンカーコアがない
メビウスさんにはそれが出来ないのよね」
「実際に口に出さなくても?潜入任務じゃ重宝しそうだな」
「確かに声を聞かれる心配はいらんからね。蛇の人が欲しがりそうや」
はやての言葉にメビウス1は頭上に"?"を浮かべる。後でシャマルに聞くと、「最近休憩時間にやってるゲームのこと」だそうだ。
「…とりあえず、念話が使えないなら使えないで通信機をメビウスさんに使こうてもらおうか。滑走路は明日完成予定やから、ミサイル
の実射試験も併せてやろか」
彼女の提案にメビウス1は素直に頷いた。
搭載スペースを拡大して八〇〇発に増やした。いずれもミッドチルダの工業力なら製造は難しくない。
ミサイルの推進力である魔力はF-22の機体内部に大容量の魔力コンデンサを設置、発射時はここから魔力を供給することになる。
いっそのこと機体の推進方式も魔力に頼ってはどうかという提案もなされたが、AMFの影響を考えて基本的構造には手をつけないでおいた。
―あとは、おまけのこいつか。
サヴぁイバル・ジャケットの内側に仕込んである九ミリ拳銃。これも発射するのは非殺傷設定、殺傷設定選択可能な魔力弾だ。外見はごく
一般的な拳銃とまったく変わらない。装弾数は一二発、魔力は完全にマガジン内のものに頼っている。
「使うことはないと思うけどなぁ」
対地攻撃用のGPSで―これもこの世界の情報を入力し直した―現在地を確認しながら、メビウス1はぼやいた。
所詮パイロットの持つ拳銃など敵地に不時着した際の自衛用。しかも最後の一発は自分に向かって撃つこともある。
そうこうしているうちに訓練空域に入ると、通信機に突然声が入った。
「―聞こえるか、メビウス1?こちらスターズ2だ」
「こちらメビウス1、聞こえるぞ」
高度一万五千フィート、航空機にとっては決して高くない高度だが、コクピットの外を赤い外套を身に纏った幼い少女が飛んでいたら
普通のパイロットはみんな驚くだろう。もっともメビウス1はなのはとフェイトと言う例を目にしているのだが。
スターズ2―ヴィータは、今回の各種兵装のテストフライトに同行していた。彼女曰く「どれ程のもんなのか見ておきたい」とのことだ。
「訓練標的は前方37キロの地点に同じ高度で浮かんでるってのは聞いたな?」
「ああ、レーダーに映ってる」
「じゃあ後は予定通りにやりな、あたしは見てるから」
「了解」
はやても言ってたけどありゃホント、グレーな線だな―。
メビウス1のF-22を見ながら、ヴィータは自分の主にして家族の言葉を思い出す。
そもそも、ヴィータとしては戦闘機の実力に疑問的だ。同分隊のトップであるなのはが苦戦したとは聞いたが、実際にこの目で確かめて
みないと納得いかない面もあった。
―何にせよこれではっきりする訳だ。
そう彼女が思った瞬間、
「―タリホー、1時方向。やや低い」
「…あん?なんだって?」
「目標を視認したってことだよ。これより、各兵装の実射試験を実施する」
ヴィータはメビウス1の言葉が信じられなかった。訓練標的との距離はまだ37キロほどあるのだ。そんな距離で目で目標を捉えるとは、
いったい彼の視力はどうなっているのだろう。
支援!
やべ、間違えた(汗)
>>550を投下し直します。
二日後、かくしてメビウス1のF-22にはミッドチルダ製の通信機が搭載された。これは念話との交信も可能で、周波数を変えれば相手を指定
できる。
胴体内のウエポン・ベイには魔力推進式のAIM-120が六発、主翼下のウエポン・ベイにAIM-9が二発、機関砲弾は従来は最大四八〇発だったが
搭載スペースを拡大して八〇〇発に増やした。いずれもミッドチルダの工業力なら製造は難しくない。
ミサイルの推進力である魔力はF-22の機体内部に大容量の魔力コンデンサを設置、発射時はここから魔力を供給することになる。
いっそのこと機体の推進方式も魔力に頼ってはどうかという提案もなされたが、AMFの影響を考えて基本的構造には手をつけないでおいた。
―あとは、おまけのこいつか。
サヴぁイバル・ジャケットの内側に仕込んである九ミリ拳銃。これも発射するのは非殺傷設定、殺傷設定選択可能な魔力弾だ。外見はごく
一般的な拳銃とまったく変わらない。装弾数は一二発、魔力は完全にマガジン内のものに頼っている。
「使うことはないと思うけどなぁ」
対地攻撃用のGPSで―これもこの世界の情報を入力し直した―現在地を確認しながら、メビウス1はぼやいた。
所詮パイロットの持つ拳銃など敵地に不時着した際の自衛用。しかも最後の一発は自分に向かって撃つこともある。
そうこうしているうちに訓練空域に入ると、通信機に突然声が入った。
「―聞こえるか、メビウス1?こちらスターズ2だ」
「こちらメビウス1、聞こえるぞ」
高度一万五千フィート、航空機にとっては決して高くない高度だが、コクピットの外を赤い外套を身に纏った幼い少女が飛んでいたら
普通のパイロットはみんな驚くだろう。もっともメビウス1はなのはとフェイトと言う例を目にしているのだが。
スターズ2―ヴィータは、今回の各種兵装のテストフライトに同行していた。彼女曰く「どれ程のもんなのか見ておきたい」とのことだ。
「訓練標的は前方37キロの地点に同じ高度で浮かんでるってのは聞いたな?」
「ああ、レーダーに映ってる」
「じゃあ後は予定通りにやりな、あたしは見てるから」
「了解」
はやても言ってたけどありゃホント、グレーな線だな―。
メビウス1のF-22を見ながら、ヴィータは自分の主にして家族の言葉を思い出す。
そもそも、ヴィータとしては戦闘機の実力に疑問的だ。同分隊のトップであるなのはが苦戦したとは聞いたが、実際にこの目で確かめて
みないと納得いかない面もあった。
―何にせよこれではっきりする訳だ。
そう彼女が思った瞬間、
「―タリホー、1時方向。やや低い」
「…あん?なんだって?」
「目標を視認したってことだよ。これより、各兵装の実射試験を実施する」
ヴィータはメビウス1の言葉が信じられなかった。訓練標的との距離はまだ37キロほどあるのだ。そんな距離で目で目標を捉えるとは、
いったい彼の視力はどうなっているのだろう。
「レーダーロック…メビウス1、フォックス3」
彼女が驚いている間に、メビウス1のF-22は胴体内のウエポン・ベイからAIM-120を発射。魔力推進による白い光を描きながら、AIM-120は
オリジナルのそれとまったく変わらない速度で捉えた目標に突き進む。
用意された訓練標的は航空機型のガジェットU型を模したもので、機動力は高い。にも関わらず、超音速にまで加速したAIM-120は必死で
回避機動を行う訓練標的に易々と食らいつき、直撃。木っ端微塵に吹き飛んだ。
「当たった…!?」
「みたいだな」
はるか向こうでわずかに見えた閃光に、ヴィータは驚きの声を漏らす。対照的にメビウス1の声はえらくのんびりしていた。
「続いて、サイドワインダーの試験を行う」
加速。F-22は高速で訓練標的に接近する。ヴィータは離されまいと追いかけるが、距離が徐々に開いていることに気づいた。
―くそ、遅れてる。なんてスピードだ。
そうしているうちに訓練標的との距離は10キロに縮まる。そこでようやく、ヴィータは瞬きすれば見失いかねないほどの小さな黒点を
見つけた。あれが訓練標的に違いない。
「メビウス1、フォックス2」
彼女が訓練標的を見つけた瞬間、メビウス1は今度はAIM-9を発射。独特の蛇行した白い光跡はこのミサイルの愛称"サイドワインダー"
がガラガラヘビの一種の別名から来ている由縁だ。
AIM-120に比べて幾分小柄なAIM-9は逃げる訓練標的を追い回し、これも直撃。訓練標的は空中に四散した。
「いい感じだ。よし、最後に機関砲のテストを行う」
そう言ってメビウス1のF-22は残り一機となった訓練標的に近づく。訓練標的に顔があれば恐怖で歪んだ表情を浮かべているだろう。
上昇、降下、右旋回、左旋回と狂ったように逃げ惑う訓練標的だったが、メビウス1のF-22はどの機動にも離される事なく、むしろ
距離を縮めていく。
「捉えた―!」
F-22の右主翼の付け根の辺りが光る。あまりに高速なため、赤いビームに見える機関砲弾の雨が訓練標的に降り注ぐ。
全身をズタズタに引き裂かれた訓練標的は失速し、これも空中で爆発した。
「…すげぇな」
プログラムされたことしか出来ない訓練標的とはいえ、ほとんど秒殺と言っていい速さで全滅させたメビウス1に、ヴィータは感嘆の
言葉を漏らした。
同時に―目の前のF-22がなんだかカッコよく思えてきた。
空を舞う鋼鉄の翼。決して物言わぬ、主人であるパイロットに忠誠を尽くし、空を舞うその姿。戦うためだけに造られた、力の証。
「…いいじゃねぇか」
「ん?何か言ったか、ヴィータ?」
「いいじゃねぇか!おい、カッコいいな戦闘機って!さっきもお前なんてった、タリホー?センスあるなぁ、いい響きだ!」
「…なんだかよく分からんが、気に入ってもらえたようだな」
「おうよ!いいないいな、あたしもコールサインを"マーヴェリック"とか"ブービー"とか"ガルーダ1"とか"オメガ11"にしようかな〜」
「最後のはよせ、イジェクト的に」
はしゃぐヴィータに、メビウス1は苦笑いしながら偶然彼女の口から出たしょっちゅうイジェクト(脱出)する元の世界の同僚の名に突っ込んだ。
そうこうして六課に帰還したメビウス1は、まずはやてに実射試験の結果を報告した。
「命中精度、機動性、いずれも申し分なし。むしろ命中精度は直撃の連続で、近接信管のテストが出来ないくらいだ」
「そりゃよかったわ。じゃあ今後の弾薬はこれらを使こうていこうか」
頷くメビウス1に、そうだとはやてはポンと手を打った。
「何かあるのか?」
「んーっとな、実は次回の任務で必要なもんが今届いてな」
そう言ってはやてが取り出したのは、複数の丁寧に包装された紙箱だ。
彼女は中身を一つ開けて、メビウス1に見せた。
「…タキシード?」
紙箱の中にあったのは、紛れも無くタキシードだった。目立った感じは無いものの、いい男が着ればビシッと決まっているだろう。
だが問題はそこではない。彼女は次回の任務で必要なものと言った。タキシードが必要な任務とは、いったい何なのだろう。
「なんだ…俺にスパイでもやれってか?」
「残念ながら外れや。もしそうならボンド・ガールもおるはず」
「じゃあ舞踏会か。天使とダンスでもしろと?」
「それは6や、メビウスさんは04やろ。ハードも違うし」
「…だめだ、分からん。いったい何なんだ?」
お手上げ状態のメビウス1に、はやてはニヤリと笑って言った。
「パーティーや―ホテル・アグスタでの、な」
投下終了。
今回短くてスイマセン。
ミサイルの複製はガジェットが使ってるので可能だろうと判断しました。
メビウス1、ナイスキル!(つまりGJ!)
やはり戦闘機はいいですねー。
しかし、このままだと魔導師との共同戦線とかは難しい気がするw
ヴィータでもおいていかれるってことはなのはでも難しい。
速度的に追いつかれるのはフェイトぐらいでしょうか?
と思いつつ、次回も楽しみにしてます!
それでは、四時ごろからアンリミテッド・エンドラインの投下を行ってもよろしいでしょうか?!
こちらオメガ11、支援する!
それでは投下します。
今回は短めですが、13KB。9レス。
支援をお願いします!
大切なものがある。
受け継いだものがある。
それは思い出であり。
それは技術であり。
それは心だった。
ただ一つの誇りにするには十分すぎるほどの思い出。
私はそれを拳に篭めて、ただ前に進み続ける。
そう決意していたのに。
――空を見上げ、絶叫する少女の叫びより
去っていく乱入者。
その後姿をただ見送ることしか出来ないフォワード陣。
それが目に見えないほど遠くまで消えていった時、誰かの声が洩れた。
「なんで……」
その中でただ一人、スバルは震えていた。
信じられないように、戦闘行為の構えから解き放たれた彼女の拳はまるで恐怖に震えるかのように揺れていた。
「スバル?」
相方の異常に気付いたティアナが声をかける。
けれども、スバルはそれに気付かずに、呻くように声を洩らした。
「あいつの動き……」
「え?」
「“シューティングアーツ”だった……」
その言葉にティアナが目を丸くする。
それはスバルの使う技術の名前であり、その使い手は彼女ともう一人しかいないはずだったから。
「偶然じゃない、の? たまたま動きが似てたとか」
「違う! 違うよ! アイツの動き、拳の出し方、蹴りの出し方、そして何より肝心要の重心の動きが同じだった!
少しアレンジしてるみたいだけど、それぐらいじゃ掻き消せない!」
そして、言葉を紡ぐスバルは嗚咽するように呟いた。
「あれは、あれは、アタシとギン姉しか使ってないはずなのに……母さんが生み出した技術なのに、なんで、なんで、あいつが――」
振り下ろされたリボルバーナックルが列車の床を叩く。
偽者の、かつて彼女の母親が使っていた鋼鉄の拳の模造品が突き刺さる。
「使ってるんだよぉ」
ワケが分からない。
突然の出来事に、夢にも思わなかったことに、彼女は頭が壊れそうだった。
「……っ、きな臭過ぎるわね」
ティアナが空を見上げる。
単純なエリート部隊。
それによる任務。
ただそれだけだとは思っていなかったけれど……
「何が起きるの?」
傷だらけの初任務。
まるで何者かに描かれたシナリオを沿っているような感覚に、ティアナは静かに唾を吐き捨てた。
【Anrimited・EndLine/SIDE 3−1】
世界の敵の敵 支援
訓練。
訓練。
訓練。
魔力弾が空を飛び交い、拳が振り下ろされ、穂先が鉄を貫いて、烈火が大地を焦がす。
初任務から3日が経過した。
その日もまた訓練だった。
「スバル!」
「OK!!」
すっかり慣れ親しんだクロス・ミラージュとアンカーガンの二挺。微妙に違う収束率と伝導率による誤差を感覚で補正しながら、
ティアナが右方向と上空に弾丸を撃ち放つ。
まったく見当違いの方角に撃ち離れた二つの弾丸。それは弾道補正を受けて、上から降り注ぐ牙に、右から迫る爪へと変わって
一機のガジェットに迫った。
それを躱すために左に飛ぶガジェット――そこにスバルが襲い掛かった。
「らっ!」
しっかりと踏み込みながら、マッハキャリバーのローラーを火花が飛び散るほどに高速回転させて、彼女が回りながら、拳を構える。
「ぁあああああ!!」
大気を砕き、破裂音を上げて、旋回するスバルの拳にガジェットが呑み込まれた。
真正面から強固なはずの鋼の装甲を貫かれ、半ばまで拳がめり込み。
「ぁああ!」
回転するスバルの拳に引きずり落とされて、ガジェットの機体が大地に叩き伏せられた。
半ばまでめり込んだ拳がそのボディを貫通し、足元のアスファルトを殺しきれなかった衝撃が破砕する。
放射線状にひび割れる大地。
はぁ、はぁ、と荒げられる声。
「これで、終わり……?」
「みたいね」
ティアナが視線を変えて、ライトニング分隊がいる方角を見た。
そこには離れた場所でガジェットの残骸に穂先を突き立てているエリオと物足りないとばかりに唸り声を上げるフリードを
なだめるキャロの姿。
あっちも無事に終わったようね。
そうティアナが思った時だった。
「――ガジェット30機の撃破を確認したよ。お疲れ様」
上空から声がした。
そこにはアクセルフォンを輝かせた上官であるなのはの姿。
死神 支援
「高町教官!」
その姿に気付いたエリオとキャロも慌てて走り寄り、数秒と掛からずに集合するフォワード陣。
彼女たちに笑みを浮かべながら、なのはがゆっくりと地面に足を下ろす。
「そろそろ皆、新型デバイスの扱いには慣れてきたかな?」
「ハイ!」
一斉に返事を返すフォワード陣。
3日間にも及ぶ習熟をメインとした訓練。新しいデバイスで微妙に食い違ってきたであろう連携を立て直すための訓練を経て、
彼女達は己のデバイスを文字通り手足のように扱えるようになっていた。
「そろそろ皆も連携が取れてきたね。特に分隊同士の連携は息が会ってきたみたいだね。スバルのアタックをフォローするティアナの射撃、
エリオの動きをサポートするキャロのブーストとアルケミックチェーン。何度かは、コンビを入れ替えて動いているのも見せてもらったけど
いい組み合わせになってきたよ」
上空から各フォワードの動きを見つめ、分析していたなのはが率直に感想を告げる。
まだ経験の少ない彼らがどのレベルまで達しているのかを教えるために。
「けれど、そろそろ技能を伸ばさないと限界が近いね」
なのはの言葉に、えっという表情を浮かべるスバルとキャロ。
ティアナは薄々感じていたのか唇を噛み締めて、エリオは依然として変わらない表情のまま視線を動かしていた。
エリオの視線の先。
そこにはゆっくりと上空から降り立つ赤い服装の少女の姿があった。
「だから、今日から新しい段階に入るよ。私に加えて――」
「アタシが加わることになる」
その手は少女の体躯には似つかわしくない巨大な鉄槌。
真っ赤なドレスを思わせる騎士服を纏った少女の名は――
「アタシの名はヴィータ。スターズ02、副隊長をやっている」
ギラついた瞳。
外見とは裏腹な微塵の油断もない気配を纏った少女。
彼女は騎士だった。
愚直なれど真っ直ぐな闘志と技を持つ一人の騎士。
「これからビシバシと文字通り叩き上げてやるから、覚悟しろ」
少女の姿をした騎士はニヤリと嗤う。
それに見つめられた少女達は思った。
――あれはネズミをいたぶる猫のような気持ちを抱いているに違いない、と。
そして、それは正しかった。
不気味な泡 支援
スバルが飛んだ。
エリオが吹き飛んだ。
ティアナがぶっ飛んだ。
キャロは少し手加減されて、その代わりにフリードがお空の星になった。
四人がかりなのを屁とも思わずに、鉄槌を回しながら、体を廻しながら、暴れまわる紅の旋風。
その様子を中継モニタから見ながら、フェイトがため息を吐いた。
「ヴィータ……ほどほどにしてくれるといいんだけど」
「えっと、無理なんじゃないかな〜と思ったりします」
そう答えるのはシャーリーの言葉。
二人が居る場所。そこは整備課の奥にある端末室。
その端末でカタカタとシャーリーが指を動かして、モニタを操作しながら口を開く。
「それにしても、凄いですね」
「え?」
「フォワード陣たちのデバイスですよ」
目の前で叩いていた端末から手を離し、横に添えられていた別の端末にシャーリーが軽く指を走らせた。
そうして映し出されるのは、四つのデバイスの姿。
そこにはその性能を示すパラメータがグラフ上に表示され、同時にその部品一部一部に掛かる負担や磨耗などの情報が表示される。
「彼女たちの身長、魔力、癖など諸々を配慮して作り上げた自信作ですけど、それでも新人が直ぐに使いこなせるようなデバイスじゃないんです。
ランクから言えば、本局の教導隊で採用されているレベルの高性能機ですから」
それは普通に考えれば法外な話だった。
八神はやてが己のコネと後ろ盾を利用し尽くし、さらには“上層部の許可まで得て”、設立された機動六課。
その予算には他の五課の平均を大幅に超える金が掛かっている。
八神 はやて自身もいぶしかげに思えるほどに大量に支給された予算に首を傾げながらも、彼女はその予算を用いて
出来うる限りの準備を行った。
その準備の一つが、彼女たちのデバイスである。
口笛 支援
567 :
一尉:2008/04/13(日) 16:11:16 ID:v+cuX6Dd
ふむあのミサイルは米国製たよそのほか対艦ミサイルと対空ミサイルにあります。支援
568 :
アンリミテッド・エンドライン(9/6) ◆CPytksUTvk :2008/04/13(日) 16:13:36 ID:KYJziw8S
「たった3日でここまであの子たちを使いこなせるなんて、凄いとしか言いようがないです」
そう告げるシャーリーの声音には驚嘆の色が含まれていた。
「そうだね。私となのはも、レイジングハートやバルディッシュの改修の度に習熟訓練は必須だったし」
デバイスは高性能であればあるほどいいというわけではない。
言うなればデバイスは車である。
普通車にしか乗ったことがないドライバーが、いきなりスポーツカーに乗せられて運転出来るかという問いに等しい。
スポーツカーならばまだ速度を落とし、騙し騙し使えばなんとか慣れることも可能かもしれない。
けれど、それがF1カーならば?
或いはトラックだったら?
待つのは暴走であり、自滅だ。
それを避けるためにキャロとエリオのデバイスの機能をオミットし、スバルとティアナのデバイスをインテリジェントデバイスという
出力を自動制御するAIを内蔵しているといっても過言ではなかった。
全てのリミッターを外したデバイスたち。
その性能はBランク魔導師の手には余りすぎる性能を発揮する。
「製作者としては早く使いこなして欲しいのだけれど、彼女達のことを思うともう少しゆっくり時間を上げたいと思いますね。矛盾してますけど」
「そうだね、でも――私たちには時間がないから」
たった一年間の試用期間。
それが機動六課の存在している時間。
たった一年、けれども一年もあれば彼女達を立派に鍛え上げることも出来るだろう。
だけど、その一年というのは単なるタイムリミット。
それよりももっと早く、待つ暇もなく事件が起きる可能性が高い。
時間が無いのだ。
いつ来るかも分からないタイムリミットに手遅れになる前に、彼女達を鍛え上げなければならない。
フェイトは知っている。
落ち着いた顔でありながらもなのはは焦っていると。
焦燥する自分の気持ちを抑えて、壊れぬように彼女達を鍛えているのだと。
はやても焦っている。
いつ来るかもわからない“予言”の時に備えて、己の理想にして、夢でもあった部隊で立ち向かうために頑張っている。
フェイト自身も焦っている。
真相の掴めない、どこまでも広がる闇のような事件の奥底を探して焦っている。
黒幕っぽい管理局 支援
「それでシャーリー。例のガジェットの検査は?」
気持ちを取り直し、シャーリーに問いかけるフェイト。
しかし、返ってきた答えは。
「――駄目ですね。“一切の手掛かりは残っていません”」
無数に砕かれた破片。
分解され検査された部品。
列車内部で襲ってきた新型のガジェットドローン。型番として仮にVと名づけられた機体。
それを回収し、調べた結果はやはりなにもなかった。
「やはり、これらの部品を製造している生産工場及び流通ルートを探るしかないです」
「そう」
「或いは――」
シャーリーが言葉を続ける。
タタンと端末を叩き、シャーリーのメガネに映し出されたモニターの一部が照らし出された。
「“彼女達”を確保するしかないでしょう」
そこに映し出されたのは顔を覆うゴーグルを破砕された赤い髪の少女の姿。
僅かに覗く黄金色の瞳と赤い髪。
そして、もう一つモニターの中で分割されて表示されたのは少女が降り立った時の映像。
列車の屋根に両手を叩きつけ、その“手首から蒸気を噴出した映像”。
「やっぱり、これは……」
「――モニターしていた間、一切魔力反応はありませんでした。故にデバイスの駆動ではなく、彼女の手は“機械で構成されてます”」
魔法の制御無しに人知を超えた能力を発揮した少女。
そして、機械の手足。
それが出す答えは一つ。
「彼女は――“戦闘機人”です」
管理局の狂気 支援
フェイトたちがある事実に気付いていた時刻。
ミッドチルダ北部。旧ベルカ自治領、聖王教会。
その大聖堂に一人の女性が招かれようとしていた。
それは顔を隠すようなヴェールで顔を覆い、民族風の衣装を着こなした女性。
彼女は一人のシスターに連れられて、大聖堂にある移住区の一室へと足を踏み入れる。
「騎士カリム、ご客人です」
先導していたシスターシャッハが静かに告げる。
それに応え、長い金髪をなびかせた女性が執務用の机から上へと視線を上げた。
「こんばんは、“騎士はやて”」
優しい笑み。
まるで太陽がニッコリと顔を浮かべたかのような笑みに、ヴェールを付けていた女性がゆっくりとヴェールを剥ぎ取る。
その下から現われた顔は、八神はやてだった。
「久しぶりやな、カリム。元気にしとったか?」
「ええ。今日の朝食も美味しく食べられたほどには元気です」
「そか。ご飯は大切やからな、このまま元気食べてそのでかい胸をもっとでかくするとええわ」
ニコリとジョークとも本気とも取れないのほほんとしたカリムの言葉に、はやてが嬉しそうにセクハラ発言で返す。
「あらあら、セクハラで訴えますよ?」
「いややわー、軽い冗談なんやから」
軽い友人同士のくすぐったい会話をこなした後、不意にはやての目が真剣になる。
「カリム……予言の時が近づいてきたみたいや」
「そう……ですか」
二人の間の空気が固まる。
張り詰めた空気が広がり、室内を覆う。
「――予言に記された一文。“奇跡たる赤き聖血を求め、踊り狂う屍は手を伸ばすだろう”……今までのガジェットだけやない。
人間が本格的に私らの前に現れた」
「となれば、次の一文。“正義を信じ、罪を重ねる破滅は嘆きの刃を世界に振り下ろす”もまた起こりえると?」
「ああ。もう“三節までは実現してしまった”」
暗い、暗い顔。
けれども、諦めを知らない顔をはやては浮かべる。
「来たる“第九節”はなんとしても防がないとあかん」
「なるほど。それでは、私にどうしろと?」
「分かってとるやろ?」
はやてが笑う。
友を信じる目で、彼女は告げる。
「前にも言った通りや。運命を変えるための手助けを頼むわ」
「了解です」
二人の女性が微笑みあう。
その方に尋常ではない責任を、重みを背負って。
彼女達は笑顔を浮かべるのだ。
決して屈しないという意志を示すために。
それを隅で見ていたシャッハもまた静かに胸に手を当てた。
己が信じる騎士の道を貫くための、正義の刃となることを決意しながら。
そして、時は誰にも止めることが出来ずに流れ続ける。
数週間という時間の後に、ある男が一つの建物の前に現れる。
「やれやれ、久しぶりの歩きに疲れてしまったよ」
それは真っ黒に“染め上げた”髪を結い上げ、茶色の瞳を眩しそうに細めたスーツ姿の男。
「休憩をなされますか?」
それに応えるのは女性用のスーツに身を固めた紫色の長髪に、茶色の瞳をした女性。
男の傍に寄り添うその姿は恋人というよりも秘書と呼んだ方が似つかわしい格好。
「いや、中で幾らでも休めるだろうからね」
男は微笑み、余裕を持って足を踏み出す。
それに従う女性。
彼らが向かう先。
その名はホテルアグスタと言った。
―― To Be Next Scene SIDE 3−2
START SIDE2 【カンプキート・ドゥラマ】
とうとう現れた主役 支援
投下完了です。
支援ありがとうございました。
今回はホテルアグスタ事件の序章です。
ここから原作とは大幅に食い違っていくと思います。
ご拝読ありがとうございました。
ちなみに最後の二人はオリジナルキャラではありませんので、あしからずw
ありがとうございました!
GJ!!です。
最後の二人は彼らかなw
ホテルに来ているとはビックリです。
今後のオリジナル展開が楽しみです。
前から思ってたんだけど、なんで分母側の数字が変わってるんだ?
GJです!
新人達の歪さを知りながら、時間と言う強大な壁を前に目をそらすことしか出来ない三人娘。
スカ博士、そこをついて攻撃だw
>>577 単純に作者が誤解した表示法で記しているからでなかろうか?
あれ?口笛の音?これは、ニュルンベルクのマイスタージンガー?
あ?!あれは、ぶ、不気味な―――ー
GJです!
遅いですがメビウス1の人もGJです。
オメガ11カワイソスwwww
蛇さんのパロがありましたが、あれ実は体内ナノマシン通信に関しては喋らなくてもいいし、音が漏れる事も無いんですよ?
>>555 GJ!メビウス1は男前なのかな?両側に美女を侍らす事になると思うとうらやましいw
お疲れ様&GJです!
もうね、登場人物の全員に何かウラがあるようでハラハラしっぱなしで楽しませていただいてます。
この大作の後で投下するのは気が引けるのですが、
九時くらいから投下してもかまいませんか?
コテ忘れてたー
>>555 天使とダンスだぜ乙!
黄色13との超絶的なドッグファイトを夢見ながら続きを期待してまっせ。
職人の皆さんGJ!
>>538 ティガのやつ修正しておきました
単発の目次からも外れていたのでそこも直しました
>>582 支援します
GJしかし一人前の兵士を育てるのにはどうやっても一朝一夕には出来ない
捜査も中々進展しない 力はあっても現実は中々覆せない。もどかしいだろうな
スカさんも名前は書かずw足はつかないようにしたし。
>>575 GJ!
そら優秀な兵士を育てるのは時間も金もかかりますからなあ。
しかしこの金の出所は怪しいっすね。
あのホテル・アグスタのエピソードがどうなるか楽しみです!
少々早いですが、ぼちぼち投下したいと思います。
ご覧の方がおられましたら支援、よろしくお願いいたします。
待ってましたー支援!
「何なのよ、さっきから……一体何がどうなってんのよ……夢なら覚めてよぉっ!!」
沈黙を破ったのは何も知らない友、アリサの心から漏れ出た叫びだった。
傷つき、倒れた斗機丸。
雷を伴い、金色の髪を風になびかせる、暗く、紅い眼をした人形のような少女。
ジュエルシードを求める道中で、ついになのはは再び出会ってしまった。
自分たちと同じくそれを欲する魔導師の少女に。
巻之壱拾八「きっとあなたに届く声なの・後編」
フェイトは周囲を見渡し、今現在の自分を取り巻く状況を再確認する。
突然挙動がおかしくなったと思ったら、そのままコントロールを失って建物に激突、墜落し
自滅した武者頑駄無が瓦礫の中に倒れている。
そして、その彼に真っ先に駆け寄った、たぶん自分より少し年上くらいの少年が
怒りと憎しみに満ちた目をこちらに向けていた。
自分が直接手を下したのではないと言ったところで恐らく信じはしまい。
あの武者頑駄無は言葉は大事なものだと言っていたが、どれだけ言い訳を重ねても
彼は血走った眼で向ける矛を収めることはしないだろう。
結局は口先だけで物事をどうにかしようなど無駄なことだ、結果こそが全てを裏付ける。
なら、自分がするべきことは変わらない。これまでも、そしてこれからも。
「ジュエルシードを渡してほしい」
重い沈黙を破り、黒衣の魔導師の少女はなのは達に向けてその口を開いた。
「じゃないと、あなた達もああなる」
その手に持った閃光の刃が輝く杖を倒れ伏した斗機丸に向けて、そう続けながら。
混乱と動揺が場の空気を支配する中、真っ先に反論したのはシンヤだった。
「ざっけんな! テメーみたいに手段も何も選ばないヤツに渡せるか!
お前も堕悪闇軍団とおんなじだ、どうせジュエルシードをロクでもない事に使うに決まってる!
そもそも通り魔のお願いなんて誰が……」
だが、そこで彼の言葉は遮られてしまう。
シンヤの足元に少女が放った幾筋かの光の弾丸が鋭く突き刺さったためだ。
少女は意思の全く介在しない、仮面を被ったような表情で淡々とこう告げた。
「これはお願いじゃない、忠告。聞いてくれないと身の安全は保障できない。
今あなた達が持っているジュエルシードと今探しているそれをこちらに渡してほしい。
でないと……」
視線はそのままに、少女は振り上げた杖の先に光の球を発生させ、なのは達に返答を迫る。
(なのは!)
(わかってるよ、ユーノ君……けど!)
なのはとユーノは互いに顔を見合せ、念を通じて言葉を交わすが碌に対抗手段が浮かばない。
彼女の眼は焦りと不安から生じる混乱に満ち満ちていた。
自分が魔法というこの世界では異端の力の使い手である事は周囲には伏せておいた方がいい。
それが彼女とユーノが真っ先に取り決めた事の一つだ。
周囲の人間にいらぬ不安をかき立てさせないためという配慮もあるが、
何より堕悪闇軍団や心無い報道機関、超常の力を欲する社会の裏に潜んでいる非合法組織
――例えば、かつてトッキーが摘発した反政府武装テロ組織、ゲバゲバ団のような――などに
目をつけられないようにするという自衛の為の手段であった。
しかし今、なのはは何も知らない親友の前でその力を使う事を要求されている。
それは他でもない彼女達を守るために必要とされている事だ。だが……
(……なのは? なのは! 何やってるんだ、戻って!)
(ユーノ君、ここは私にまかせて……隙を見てトッキー君の治療、お願いね)
(無茶だ、危険すぎる! なのはーっ!!)
なのはは無防備のままユーノの制止を聞かず、前へ、前へと歩き出していた。
「鉄拳! せぇいさぁぁぁぁいっ!!」
「だぁっ!? 危ねぇ危ねぇ、いいかげんその馬鹿力も見あきたぜ」
「誰が無駄飯食らうしか能のないお馬鹿だぁぁぁぁっ!!」
「んな事言ってねーよ! とっととメルマック星に帰れ!」
轟音とともに巻き上がる埃に天井から吊られたオイルやバッテリーの広告パネルが揺れ、
笑顔の女性がスクーターに跨っている等身大ポップも真っ二つに割れて、無残な姿を晒している。
立ち並ぶ棚をなぎ倒しながら、武者丸とアルフの戦いは佳境を迎えていた。
互いに至近距離での強烈な一撃を繰り出しあい、それを回避し続けているため
ダメージ自体に致命的な物は無くとも各々の体力の限界が近づき、すでに精神力の勝負……
例えるなら我慢大会のような、二人の意地の張り合いにも似た泥仕合の様相を呈し始めていたのだ。
「そんなトコ知るか! いいかげん、ジュエルシードはあきらめな!」
アルフは例によってツッコミながらびょうと風を切る音とともに拳を繰り出してくる。
しかし、武者丸も慣れたのか、すんでのところで直撃を避け続けていた。
「お前もいい加減しつこい奴だな、そのつもりはないって言ってんだろーが!」
武者丸は口では軽口を叩きながら、先程喰らった一撃でずきずきと痛む腹を抱え、
足りない頭でアルフの攻撃を自分なりに考える。
確かに鋭く、威力も最初ほどではないとはいえまだまだ自分を倒してお釣りがくるレベルだ。
しかし、見る者が見ればのらりくらりと攻撃をやり過ごす武者丸に対する苛立ちと、
とどめを刺せない焦りから精彩さが欠けてきていると評するであろう。
元来より武者丸はそういったところに目端が利くような武者ではない。
故にこの状態は武者丸自身にも当てはまるのだが、彼には自覚だけはあった。
今、他でもない自分自身がそのような焦げ付いた状態にあるという事と、
膠着しつつある事態を打開するための策は、自らが存在する空間そのものに転がっているという事を。
仕掛けるなら、今を逃せば後はない。
「ほーれほれ、こっちだ!」
「馬鹿にしてぇっ! 」
アルフの放つミドルキックを後ろ飛びに避け、武者丸はある一点目指して走り出す。
頭に血が上っているアルフは棚を一列隔てた向こう側から並走してそれを追うが、
ある一角を通り過ぎたあたりで彼女の眼は驚愕に見開かれることになる。
棚の向こう側から武者丸の姿が消えた。
いや、気配も匂いも濃く残っているのでどこかに転移したというわけではない。
急制動をかけ、奇襲に勝負を賭けようとでも言うのだろうか?
だとすれば、それは……
「勝負どころを見誤ったね……? やっぱ馬鹿だったのはアンタだよ、武者丸」
それは、賢い行動とは言えない。
視覚以外にも人間よりはるかに鋭敏な嗅覚と聴覚を持つ彼女に対して、
ろくな準備もなく姿をくらませたところでそれは全くの無意味であるからだ。
一瞬戸惑いを見せたアルフも、自分の後方に回った武者丸の大体の居場所を捉えると、
自らの勝利を確信した。
互いに消耗している以上、勝負は恐らく一瞬で付く。
姿を見せたところにフォトンランサーでもなんでも叩きこめば、それで終わりだ。
そして、殺気とともに向けられる苦し紛れの一太刀を軽くいなせば、あとはこっちのもの。
そのはずだった。
「おりゃあーっ! これでも食らって、おねんねしてやがれぇっ!」
「斬りかかってこない!? けど、こんなんでさ!」
棚を蹴倒し、姿を見せた武者丸が放ったのは斬撃でも刺突でもなかった。
小脇に抱えた何かの容器のような物を投げつけたのだ。
とはいえ、野球のピッチャーでもなんでもない武者丸の投げた物など大した事はない。
余裕綽々でアルフはその物体を切り裂き、あるいは叩き潰した。
それが間違いの始まりだった。
「ぶわっ! な、何だい、これは!? は、鼻が……!!」
「ずっとこのチャンスを待ってたぜ! わざわざ同じ所からほとんど動かずにな!
どうだ? 香りもメーカーもごちゃまぜな芳香剤のお味は!」
破壊された容器から、慣性に従ってそのままアルフの顔面に直撃したその中身。
それはこのディスカウントストアの、彼らが戦っていたその場所に所狭しと並べられていた
いくつもの車の芳香剤だった。
先にも述べたように、狼を素体とした使い魔であるアルフの鼻は、
人間のそれをはるかに上回る嗅覚を誇る。
そんな所に顔面からきつい香りの芳香剤をまとめて被ってしまっては……
もはや語る事は不用であろう。
「くっそぉーっ、なんてひどい匂いだい! 目まで、シバシバして……」
「それじゃあ、あばよ! 顔でも洗って大人しくしてな!」
「ま、待て! まだあたしはやられたわけじゃ……」
「それじゃ、悪いけどその目と耳も封じてやる!」
嗅覚を麻痺させられ、立つ事すらおぼつかなくなっても戦う意思を捨てないアルフのもとに、
今度はいつの間にか姿を消していたススムが駆け寄りながらそう叫んだ。
「ススム、お前が言ってたのはあったか!?」
「何とかね。ギリギリだったけど、バッチリ揃えてきたよ!」
「よっしゃ、頼むぜ!」
「うん!」
そう答えると、ススムは走りながら手にしたマッチを壁にこすりつけ、
もう片方の手に握りしめた塊から伸びた導火線にその火を灯した。
「! 何を!?」
「武者丸、しっかり目を閉じて!」
「よっしゃあ! しっかりつかまれ、ススム!」
「あ、コラ! 逃がすか!!」
ススムは精いっぱい火を点けた物を先程の武者丸と同じように投げつける。
そしてその勢いのままススムは武者丸のもとへ駆け寄ると、
武者丸は軽い呻き声をあげてススムを受け止めた。
それと同時に武者丸は両肩のブースターを吹かし、近くの窓へ飛び込もうとする。
アルフはそれを止めようとするが、まさにその時、導火線を伝って塊に火が点いた。
瞬間、店の中は眩いばかりのまっ白い輝きと、弾けるようないくつもの爆裂音に包まれた。
「っひゃー……ちょっとやり過ぎたか? アルフの奴、大丈夫かな」
「平気だよ。確かにちょっとは危ないけど」
ブースターの加速でみるみる遠ざかる店の様子を一瞥し、武者丸は腕の中のススムに
おっかなびっくり話しかける。
しかし、当のススムはしてやったりと言わんばかりに満足そうな表情だ。
「それにしてもススム、ありゃ一体何だ? ひょっとして、爆弾か!?」
「違うよ、台所で使う金たわしと爆竹を包んだ簡単な閃光弾。
トッキー監修の作り方だったんだけど、ここまでうまくいくなんて……」
「斗機丸の差し金だったのか! なるほどなぁ、あいつ物知りだし」
「ううん、違うよ。発案はボクさ」
「お前が!?」
心底驚いた表情の武者丸に、ますます得意そうになったススムによる解説が始まった。
「そう。理科の授業でね、金たわし……スチールウールの原材料のマグネシウムは
火を点けるとああやってすっごく眩しい光を出すって習ったんだ。
そこに着火剤や2B弾、爆竹を混ぜて包んで火を点けてやると、あの通りってわけさ!」
「ふぇー……しっかし、よくそんなの思いついたなぁ」
ブースターによる無理矢理なジャンプも限界を迎え、近場のビルの屋上に着地すると、
武者丸は改めてまじまじと親友の顔を眺める。
ススムはそれにもじもじして照れながらその問いに答えた。
「ボクは武者丸みたいにケンカも強くないし」
「ケンカとは心外だな、オイ」
「もう、人が話してるんだから少し黙ってろよ!
それに、なのはちゃんみたいに便利な魔法を使える訳でもない……
だから、ボクは決めたんだ。少しでも自分にできる何かをやろうって。
タコ焼きで武者丸が元気になるんならいくらだって焼いてみせる。
力で手伝えないなら頭を使う。だって、ボクは皆の足手まといにはなりたくないし……」
「ススム……お前、自分が足手まといだなんて思ってたのか?」
「あ」
思わずこぼれた本音に、呆然とこちらを見つめる武者丸の視線に対し、
きまりが悪そうに見つめ返すススム。
しかし、次の武者丸の言葉は思いがけず優しい口調だった。
「やれやれ、ホントにしょーがねーな。俺がこうやってここにいるのはどうしてだと思う?」
「え? それは、ジュエルシードを集めて、堕悪闇軍団を倒すためじゃ……」
「最初はそれで全部だったけど、今はちょっと違うな」
「じゃあ、一体……?」
武者丸はススムに背を向け、さまざまな暗い色に澱む結界の空を見上げ、語りだした。
「『誰かのために強くなれる』って、さっき俺は言ったよな」
ススムは小さな声でそれに同意を示す。
「俺にとっての、その『誰か』……得体の知れないヨソ者の俺に
半年も楽しい時間をくれたお前のじーちゃんや近所のばあちゃんに、市場のおっさん、
問屋のドジなねーちゃん……他にもいっぱいいるぜ、こっちで知り合う事の出来たいい人達。
俺が天馬の国を守りたいって心から思えるのは、そこに住む皆や、
体が辛いはずなのに、いつも明るく笑ってうまい飯食わせてくれたはやて。
何より皆に会わせてくれた俺の一番の友達、ススム。お前達がいるからなんだ。
俺は、この世界で一番最初に出会えたのがススム達二人で、本当に良かったと思ってる」
武者丸は一度も顔をススムに向けず、最後までそう言い切った。
その表情を伺うことはできないが、どんな顔をしているかくらいはススムにも容易に想像がつく。
「武者丸……」
「さっき、あそこまで戦えたのはお前がいたからこそなんだぜ?
そんなに自分を安売りすんな、大阪商人の孫だろ? 自分を売り込む時は高すぎず、安すぎず!
誰もが納得するような適正価格をつけねーとな」
そう言いながら、武者丸は振り向いてススムの方まで近づくと、
ポンと頭に手を置いてわしゃわしゃとその頭を引っかき回す。
大体同じくらいの背な上、腕も脚も短いので傍から見ると少し不格好なその行為には、
武者丸らしい不器用な感情表現がいっぱいに詰まっているようにススムには感じられた。
「あと、コイツは他の連中にはナイショだからな? 何てからかわれるかわかったもんじゃない」
「わかってるよ。あ、けどちょっと見てみたかったかも」
「おいコラ……って、いけね、んなバカやってる場合じゃなかった。
さっさと斗機丸やなのは達を見つけて合流しないとな」
「探すって言ったって、どうやって?」
ススムに言われ、待ってましたとばかりに武者丸は上を指差してこう言った。
「空から探す! さっきみたいにブースター吹かして上昇すれば街の様子も分かるはずだ。
斗機丸がそうそう簡単にやられるとは思えねーけど、何だか猛烈に胸が騒ぎやがるんだ」
「胸騒ぎ……? え、それって」
「ま、多分大丈夫さ。ススムはそこで待ってな、すぐ迎えに来る」
「う、うん。わかったよ」
「じゃ、行ってくるぜ!」
「あ! 武者丸!」
「どうした、ススム!? 何か気付いたのか!?」
武者丸が飛び上がろうと膝をかがめたその時、ススムが素っ頓狂な声をあげて呼びかける。
「いや、そうじゃないけど、その……気をつけてね。さっき無茶して疲れてるだろうし」
「何だ、そんな事かよ? 大丈夫、天下無敵の武者丸様を信じなさいって」
「それは、わかってるけどさ……」
「わかってるならいい。いいか、絶対に動くなよ!」
出鼻を挫かれつつも、勢いよくブースターを吹かして武者丸は高く跳躍する。
そんな武者丸をススムはただ無事を信じて見送っていた。
武者丸の言葉ではないが、妙な胸騒ぎを覚えながら。
「ちょ、ちょっと! なのは、あんた何考えてんのよ!?」
「なのはちゃん、危ないよ! 行っちゃダメ!!」
(なのは! 無茶はよすんだ! なのはーっ!!)
アリサとすずかが必死になって、黒衣の少女の方へと進むなのはに呼びかけている。
ユーノも同じように念を送り続けるが、彼女の歩みは止まらない。
やがて、ある一定の距離をおいたその場所で、彼女は静かに立ち止まった。
「……渡す気に、なった?」
少女がなのはに問いかけてくる。
それに答えるかのように、なのはは意を決してキッと少女を見上げ、その口を開いた。
「私、高町なのは! 私立聖祥大附属小学校の三年生!」
「!?」
傍から見てもわかるほど、相手の少女は面食らっていた。
無理もない。突然今まで敵と認識していた相手が自己紹介を始めたのだ。
場合によっては気でも触れたかと見られても仕方がない。
しかし、当のなのははいたって真剣であった。
「私達がジュエルシードを集めているのは、武者頑駄無さん達の世界からやって来た
堕悪闇軍団って言う怖い人達がそれを手に入れて、ひどい事をするのを防ぎたいから!」
しばらくの間が両者の間を支配し、しばしの時が流れた後、先に口を開けたのは
なのはではなく、黒衣の少女の方であった。
「……それで?」
「え?」
「話し合うだけじゃ、言葉だけじゃ何も変わらない。
あなたもそこの武者頑駄無と同じ。
彼はそれを否定したけれど、結局自分の言葉を証明する事ができなかった」
少女は未だシンヤの腕の中でぴくりとも動かない斗機丸を一瞥する。
「だから……」
<<Thunder Smasher charge up>>
顔をなのはに向き直すと、少女は俯きがちに消え入りそうなか細い声で続きを話し出す。
天に向け、高く掲げた杖にはち切れんばかりの稲妻を集めながら。
「変えたいのなら、どうすればいいか考えて」
そう言って、少女は杖から猛烈な勢いで雷撃を放った。
まるでなのはに本気を出させるためであるかのように、
当然その射線上、なのはの後方にいるアリサやすずか、羽丸たちをも巻き込む形で。
そして地面に到達した天からの一撃は瓦礫の山を吹き飛ばし、何かに引火したのか
爆発まで巻き起こし、彼女達の姿をすっかり見えなくさせてしまった。
「なのはぁーっ!!」
ユーノとシンヤの叫び声が重なり、爆炎の向こうに消えたなのはの名を呼ぶ。
いや、消えてなどいなかった。
すぐに煙の向こうから「桜色の」光を放つ防御呪文に守られたアリサ達とともに、
手には紅い宝玉の輝く杖を、小さな体を純白の法衣で包んだ彼女の姿が現れる。
そう、彼女はすんでのところでセットアップし、襲いくる雷撃から
彼女自身と、彼女の大切な友を守り抜いたのであった。
二人はホッとすると同時に、恐れていた事態に直面したという事を悟った。
いや、それでもこの状況を考えればよくここまでもったと言うべきなのだろうか。
なのはが秘密にしていた魔法の力が、他人に知られてしまったという事実を。
アリサとすずかが呆然となのはの背中を見ている。
羽丸はまだ事態がよくわかっていないらしい。無邪気にかっこいいと言ってはしゃいでいる。
そんな彼女らの無事を確認すると、なのはは再び少女に向けて歩き出す。
寂しい目をして、頑なに心を閉ざす女の子に今度こそ自分の声を届けるために。
「話し合うだけじゃ、言葉だけじゃ何も変わらないって言ってたけど……」
ぽつり、ぽつりと。その分ありったけの思いを込めて言葉を紡ぐ。
話を聞いてもらいたいあの女の子は金色に輝く光の球体を体の周囲に浮かべていた。
多分、話に聞いた誘導する弾を放つ魔法だろう。どこかディバインシューターに似ている。
なら、自分もすさまじいスピードを駆使する彼女に対抗するために
編み出したその魔法で相手をするのが筋というものだろう。
レイジングハートも考えは同じ。頼むまでもなく3つほどのシューターを浮かべてくれていた。
「だけど……話さないと、言葉にしないとわからない事もきっとあるよ!」
そう……そうなのだ。
今では一番の親友の一人、アリサとも最初は大ゲンカから関係が始まった。
「ぶつかりあったり、競い合ったりする事になるのは、仕方ないかもしれないけど……」
二年前の春の日。あの日の事は今でもありありと思い出す事ができる。
アリサがすずかの大事にしていたリボンをふざけて取り上げて、泣かせていたのだ。
二回ほど注意はした。けれど、全然聞いてくれなかったから……ついに頬っぺたを引っ叩いた。
そうやって取っ組み合いの大ゲンカにまで発展してしまった自分たち二人を、
泣きながら制止させたのもまたすずかだった。
「だけど、何もわからないままぶつかり合うのは……」
それから自分達三人はとても仲良くなった。
お説教タイムの後、自分とアリサのお父さん同士が早々と意気投合してしまったという事もあるが、
二人してすずかにいろいろと気を使っているうちに、いつの間にか三人一緒にいるのが
当たり前になってしまっていたから。
お互いを知ることができれば、不必要に傷つけあう事なんて簡単に避けられる。
あの出来事から自分はそれを学んだ。
「私、嫌だ!!」
けれども、あの子は多分それを知らない。
それに、昔の自分……ある事件のために忙しくなってしまった家族の中で
孤独を感じていた自分が、なんとなくあの子の寂しそうな瞳の中にいたような気がした。
だから、放っておく事なんてできない。
言葉だけでは想いは届かないと、あの子は思いこんでしまっている。
だったら、あの子の土俵の上に登ってでもこの想いを伝えなきゃならない。
レイジングハートを握りしめる手に力がこもる。
多分、いや、どう考えても今の自分よりあの子の方が強い。
けれど、引き下がるなんてできない。
相手がいくら強いからと言って逃げていたら、この想いは間違いなく届かずに終わってしまう。
それに自分の後ろには、今の自分を支えてくれている大事な友達がいるのだから。
破壊されつくした瓦礫が崩れ、地面に落ちる。
それが二人の対決のゴング代わりとなった。
黒衣の少女は得意のスピードを生かし、不規則な動きでなのはを翻弄しようと試みる。
だが、彼女は妙な違和感を覚える事になる。
彼女の飛行ルートに必ずと言っていいほど桜色に輝く光弾が先回りし、
動きを阻害してくるためだ。
「ディバインシューター」……なのはとレイジングハートが彼女に対抗するために身につけた
魔力の塊を彼女の意志で自由に操作することができる、誘導制御型の射撃魔法。
機動性、敏捷性……どちらをとってもなのはが彼女に勝てる見込みは薄い。
避ける事に気を取られ、防御がおろそかになっては前回の二の舞だ。
ならば、相手に自由な行動をさせなければ良い。
理想的な展開としてはそれで相手を追い詰め、一撃必殺のディバインバスターを
本命として叩き込む……といった所だが、まだ完全に使いこなせているわけではない。
勝てなくてもいい。ただ、想いを伝えるための戦い。
それが今のなのはの目標だった。
「私がこの力に気付いたのは偶然だった。
最初はお手伝いくらいの気持ちで皆について行ってた。
けど、今は違う! 今、私がジュエルシードを集めてるのは……
私の大好きなあの街に、それに、何より大事な人達に危険が降りかかったら嫌だから!!」
何とか互いの表情が視認できる距離を保ちつつ、なのはは声を張り上げ、言葉を投げ掛け続ける。
「それが、私の理由!!」
「だいじなひと」
その言葉に少女は一瞬驚いたような反応を見せ、動きを鈍らせる。
そんなわずかな隙を逃さず、縦横無尽に飛び回っていた三つの光弾が、
それぞれ上から下から左から、時間差をおいて黒衣の少女へと飛びかかった。
「……ッ!」
<<Blitz Action>>
しかし、その瞬間彼女が持つ杖の方が自らの意志で高速移動魔法を発動し、
流星のように襲いくるその光弾を緊急回避させた。
同時にその場から彼女の姿が消えたようになのはには思われた。
辺りを注意深く見回すなのは。と、そこに聞き慣れた声が彼女に届く。
「なのは! 後ろだ!!」
その言葉に従い、半ば反射的にレイジングハートを両手で構え、
上体をひねって後ろに向ける。
すると、金属と金属がぶつかり合う甲高い音が聞こえ、その向こう側では
レイジングハートと黒塗りの、光の刃を展開させた杖の柄がたがいに火花を散らし、
件の少女が信じられないといった顔つきでこちらを見つめているではないか。
零距離まで詰まった両者の間を、ワンステップで少女は適度な距離に離す。
そしてなのはもまた今の出来事が信じられない様子で、その声の主に呼びかけた。
「え? えぇっ!? 何で今のがわかったの……武ちゃ丸君!?」
両肩の巨大なブースターを吹かし、ゆっくりと着地する武者丸。
ようやくなのは達の居場所を嗅ぎつけ、この場に辿り着いたようであった。
「わかったも何も、超スピードで相手の目をくらませて、自分は後ろに回って斬るってーのは
そこでおねんねしてる斗機丸の得意技だかんな。
二人は武器も戦い方も何となーく似てるからな、大体わかっちまうのさ」
得意げに語る武者丸を、苦虫を噛み潰したような顔を隠せず少女は見つめ、口を開く。
「仲間がそろった? なら、こっちだって……アルフ? アルフ!?」
黒衣の少女は自分のたった一人の味方に念話を送っているようであった。
しかし、いくらやってもまともな応答が帰ってこないのか、
何度も何度も自らの使い魔、アルフの名を呼び続けている。
そんな彼女に、武者丸はとても申し訳なさそうに声をかけた。
「あー、それはちょっと難しいと思う。
お前さんの相棒のアルフはたった今撒いてきたトコだからな。
ありゃ当分目と耳はともかく鼻は使い物にならないんじゃないか?」
突然告げられた新事実に、なのはも当のアルフの主人である少女も驚きに目を丸くする。
「え? ひょっとして、あの人に怪我させちゃったの!?」
「いやいや、あいつ、言うだけあって大したもんだぜ。痛い目に遭ったのはむしろ俺だ。
どっちにしろ、アルフはここには来れない。
一言で言うと……形勢逆転だな、嬢ちゃん? このまま続けるか、おとなしく手を引くか……」
武者丸は刀を少女へと向け、そう最後の選択を迫った。
二対一。
武者丸もなのはも、それぞれ一対一なら彼女に遅れを取る可能性が高いだろう。
しかし、二人ならそうはいかない。
戦うまでもなく、勝負はついたか……に、思われた。
『ひどいわ、フェイト……』
その場にいる全員の耳に、誰のものともつかない、そう、例えるならば
魔女のような得体の知れない、生理的に焦燥感を煽る声が聞こえてきたのは、そんな時だった。
「女の声、だとぉ!?」
武者丸が、声の主を探して視線を迷わせる。
「母……さん……?」
「……えっ?」
なのはは、目の前の、「フェイト」と呼ばれた少女の身に起こった異変を察知する。
彼女は、少しの怖れを表情に出し、虚空を見上げていた。
『たった一個のジュエルシードを取りに行くだけで、こんなに母さんに迷惑をかけるなんて……
悪い子ね』
「母さん、私は……!」
『けれど、それが手に入れば母さんの願いはまた一歩叶うところまで来そうなの。
だからあなたは確実にそれを持ってきてちょうだい。これ以上母さんを困らせないで』
思わず口ごもる少女。
もはやアリサやすずかどころか、当事者のなのはや武者丸、はてはユーノまで
ついていけない次元の話に発展しているようだ。
『その前に、ちょっとお掃除をしないと……ね?』
「!! 母さん、ダメぇーっ!!」
少女が叫ぶ。
いったい何だと言うのだと、皆一様に疑問を抱いたその直後であった。
黒雲が「結界の中に」立ち込め、毒々しい紫色の光を放つ幾筋もの稲妻が
所構わず、広範囲に渡って結界の中にあるもの全てを破壊し始めたのは。
「きゃぁぁぁぁっ!?」
「クッ! 何てことしやがる……さしずめ俺達はゴミ同然だって言いたいのか!?
なのは、泣くんじゃない! 皆を守るんだ!」
「う、うん!」
武者丸の声に背中を押され、なのはは防御魔法が破られそうになり、身を寄せ合って
恐怖におびえるアリサ達の元へと飛び、武者丸自身も目を覚まさない斗機丸を抱え上げようとする
シンヤを手伝い、ユーノの張るフィールドの中へと連れて行った。
「なのは、さっきから一体何がどーなってんのよ!? もう、こんなのイヤーッ!!」
「アリサちゃん……!」
「ごめんね、本当にごめん、アリサちゃん、すずかちゃん、羽丸君……!
後で、全部説明するから。絶対に!」
取り乱すアリサをなだめつつ、なのははただじっと耐えた。
降り注ぐ雷の嵐が止むその瞬間を。
一分だろうか? それとも一時間だったろうか?
目に見える全てが破壊されつくしたその後、うず高く積みあがった瓦礫の山を押しのけて
桜色と緑色に輝くドーム状の防御結界が姿を現した。
桜色の方……なのはの方はまだ頭しか見えていないが、緑色のユーノの方は
すでに大部分が露出しており、術を解いても問題無さそうであった。
(なのは……大丈夫? 皆、怪我とかしてない?)
(うん、大丈夫だよ、ユーノ君。こっちは平気。そっちは?)
(……そっちと同じだよ)
皆、どうにか生き残れたようだ。
しかし、もうこの閉じられた世界の中には黒衣の少女フェイトも、その使い魔アルフも、
ジュエルシードももう存在してはいなかった。
結局、ジュエルシードは彼女達に持ち去られてしまった、と言う事だ。
「なぁ、ユーノ……最後のおばはんの声、何やったんやろな?」
術を解き、なのは達を掘り出すために歩き出すユーノと武装を解いた武ちゃ丸。
いつものふにゃっとした顔と、気の抜けた関西弁で、武ちゃ丸はユーノに問いかけた。
「あの子は母さんって言ってたね……きっと、この稲妻の魔法を使ったのはその人だよ。
その場に居合わせずにして結界の中を破壊しつくすほどのものすごい魔法……
僕達は、堕悪闇軍団の他にも恐ろしい敵を相手にしていたのかもしれない」
話し込んでいると、そこにシンヤが、倒れ伏す斗機丸から一歩も離れず、
すがるようにユーノに声をかけてくる。
「トッキー、まだ目を覚まさないぜ。もう一度ケガが回復する魔法を……」
「……ゴメン。治療魔法の効きが悪いんだ。もう一度爆流さんに診てもらわないと……
けど、武ちゃ丸が来てくれてよかった。おかげでなんとかトッキーさんをここまで連れてこれたから。
とてもじゃないけど、あんな雷の嵐で外に出ていたら……」
ユーノがそこまで言うと、武ちゃ丸の顔がとたんに青ざめる。
決して忘れてはならなかった、とても大事な事を思い出したのだ。
「……シュシュム……」
「えっ?」
「シュシュムが、あっこのビルの、屋上に……」
今にも消え入りそうな声で、武ちゃ丸は親友の名を呟くと、矢のような勢いで
先程彼と別れた場所へ向かって駆け出した。
散らばる建物の破片に傷つく事もいとわずに、ただただ前へ、前へと。
「あっ、武ちゃ丸!」
「行かせてやれよ、ユーノ。俺だって……」
武ちゃ丸を引き止めようとするユーノに駆け寄り、シンヤはそれを制止する。
「そうだ。君達には聞きたい事が山のようにある」
そんな二人の背後から、聞きなれない男……いや、男と言うよりは少年の声が響いた。
いきなり上から口をきく態度に反発を覚えたシンヤは、見るからに不機嫌に
その少年の素性を問う……と、言うより因縁をつけた。
「あぁん!? 誰だ、お前?」
「待って、シンヤ。ここは結界内だから、この人は恐らく……」
ユーノはここがまだ自らの結界の内部であるという事実から、当然とも言える推論を述べる。
短く切りそろえられた黒髪、それに合わせたかのように所々を金属で飾った
黒いコートのようなバリアジャケット。
そしてその手に握られているのはデバイスと見て間違いないだろう。
つまり、この人物は……
「その通り。僕は時空管理局執務官、クロノ=ハラオウン。
見ての通りの魔導師だ」
「じくーかんりきょく? 何だ、そりゃ?」
「詳しい話は後だ。今は君達の仲間と民間人を助ける方が先じゃないのか?」
クロノと名乗った少年はデバイスを一振りさせ、なのはの防御魔法に覆い被さっていた瓦礫を
まるで手品のようにふわりと浮かべ、消して見せた。
「はぁー、出られた……皆、外に出られたよ!
あの、本当にありがとうござ……」
「き、君は……!」
今までの剣呑な雰囲気を生み出していた仏頂面とは打って変わって、
なのはの顔を確認した瞬間、クロノは目をまん丸にして彼女を見つめていた。
「え……? ひょっとして、クロノ……君?」
「高町、なのは……さん?」
何とも言えない微妙な空気が場に流れる。
その時シンヤは確かに見た。そして聞いた。
隣のユーノが、猫が外敵を威嚇する時のように口の端を釣り上げて、
鬼のような形相でクロノを見つめ、早口で何かブツブツと呪詛のような言葉を呟いていた姿を。
「シュシュムー! シュシュムゥーッ!!
おったら返事しぃやーっ! シュシュムーッ!!」
武ちゃ丸は、ススムと別れたあの屋上に辿り着くと、必死に友の名を叫び、探し続ける。
しかし、そんな彼に一陣の風と共に突きつけられた物は……
「ぶわっ!? なんや、このボロ布は!? えぇい、前が見えへん! 邪魔、や……!?」
焼け焦げたウインドブレーカー。
それは間違いなく、さっきまでススムが着ていた物であった。
「シュ、シュシュムゥゥゥゥッ!!」
武ちゃ丸の声にならない叫びが、無人の空間に響き渡る。
そう、ススムはもう、この場所にはいなかったのだ。
果たしてススムは本当に死んでしまったのか、それとも……?
――次回を待て!!
次回予告(ねくすとぷれびゅう)
「行方不明になったススム君、私の魔法の事を知ってしまったアリサちゃん達、
ひどい怪我をしてしまったトッキー君と、ふさぎこむ武ちゃ丸君。
あの子、フェイトちゃんがお母さんと呼んだ謎の女の人、
さらに、あの時出会ったクロノ君は、時空管理局という組織に所属する魔導師だって話。
私達の周りは頭を抱える問題でいっぱいだけど、立ち止まってはいられない。
だって、今立ち向かえるのは私達しかいないから。
次回、SD頑駄無対魔法少女 リリカル武者○伝、巻之壱拾九。
『それは大いなる危機やでっ!』
リリカルマジカル、頑張ります!」
======
投下完了。久々なので緊張した〜。
ご意見ご感想、お待ちしております。
601 :
一尉:2008/04/13(日) 21:22:40 ID:v+cuX6Dd
支援
武者○伝氏久しぶりGJ!すずかアリサも巻き込まれちゃうとは・・・・
PT事件が終ったらフェイトとシンヤはすんなり和解出来るだろうか?
擁護してたやつも荒らしだったのか?
このスレではスルー
避難所に行きましょう
外部のサイトさらすな
スレ潰したいのか阿呆
盗作疑惑 名無し 【2008/04/13 20:49:15】 [返信] [削除] PPPbm1449.saitama-ip.dti.ne.jp Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1; SV1; .NET CLR 1.0.3705; .NET CLR 1.1.4322)
突然なんですが、2ちゃんねるにあるリリカルなのはクロスSSスレに先日投下されたはぴねすとのクロスSSで、このサイトに投稿されているHM−6氏のSSとまったく同じ部分が幾つかあるんですがこれは氏の投下したものなんでしょうか?
もし氏が投下したものでないのなら、クロススレに投下されたものは盗作作品って事になるんですが。
--------------------------------------------------------------------------------
Re:盗作疑惑 HM−6 【2008/04/13 21:07:27】 [削除] p2128-ipbf51sasajima.aichi.ocn.ne.jp Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1; SV1)
ご報告ありがとうございます。
結論から言いますと、私ではありません。
だって2ちゃんねるに書き込みしたことありませんので。
私も調べてみようと思って検索かけたのですが、よく分かりませんでした。
そこでお手数かと思いますが、どのスレに書き込まれていたかなどの詳細を教えていただけませんか?
--------------------------------------------------------------------------------
Re:盗作疑惑 名無し 【2008/04/13 21:15:59】 [削除] PPPbm1449.saitama-ip.dti.ne.jp Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1; SV1; .NET CLR 1.0.3705; .NET CLR 1.1.4322)
リリカルなのはクロスSSその60
http://anime3.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1207750499/ です。
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Re:盗作疑惑 HM−6 【2008/04/13 21:49:29】 [削除] p2128-ipbf51sasajima.aichi.ocn.ne.jp Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1; SV1)
確認しました、絶対私ではありません。
何といいますかここまでそっくりだと、なんだか怒りよりも笑ってしまいます。
まあ私にとっては盗作された事よりその作品を読んだ皆さんの意見のほうが気になりますね。
とりあえずご報告ありがとうございました。
>>606 多分そいつは潰したくてやってるから触るな。
スルーに徹しろ
476 :名無しさん:2008/04/12(土) 22:43:54 ID:Yu5Rk1U2
別にいいけどな。カップリングだろうがなんだろうが。
多分原作自体に漂う百合臭さに我慢できなくなった職人が魔が差してやっちゃうんじゃない?
484 :名無しさん:2008/04/12(土) 22:51:50 ID:Yu5Rk1U2
>>479 百合房からくる人気に製作の方々がシッポ振ったんだろうよ?
493 :名無しさん:2008/04/12(土) 23:00:35 ID:Yu5Rk1U2
正直、百合房は腐女子と同レベルの気持ち悪さを感じるわ・・。
その人気に乗っかって原作改変する製作者へのムカツキはそれ以上だけど。
516 :名無しさん:2008/04/13(日) 03:52:37 ID:FNcWtRTk
>>493 正直お前のようなアンチ百合やアンチ腐女子にこそ一番嫌悪を抱く
ヘテロの押し付け思考が一番問題だってことに気付くべき
534 :名無しさん:2008/04/13(日) 11:47:25 ID:GczrwBoQ
>>516 気持ち悪い?
同性愛者の思考に嫌悪感覚えて何が悪ぃんだよ。
何度でも言ってやるよ。
女同士とか気持ち悪いんだよ、この野郎。
686 :魔術士オーフェンStrikers:2008/04/13(日) 22:39:40 ID:GczrwBoQ
へ、返事はまだか・・・。胃が痛い・・。
我が契約により聖戦よ終われ!
ったくこの流れなんなんだよ
えっと……投下しようと思うのですが、そういう空気じゃない……ですかね?
ちょっと待ってもらったほうがいいかも
話は避難所で続いているから、投下してもいいと思いますよ?
むしろ、打ち消してください!!
支援!
あーやっぱり投下よろしく。
ここはここ、ってことで。
支援、ひとまず感想を……。
リリカル武者○伝氏、GJ!
原作よりススムと武者丸の友情が密に描写されていて、良かったです。
と思いきやススム行方不明……先が気になる展開です、次回も楽しみにしております!
ある日の午後。今日も今日とて、人々はいつも通りの日常を過ごしていた。
それは、何の変哲も無い平和な日常。町の高校に通う学生達は、今日も公園でバスケットボールと洒落込んでいた。
ここに、公園でバスケットボールを楽しむ少年達を、影から見詰める“一匹”の蜘蛛が居た。
「……レンゲル……レンゲルゥ……」
蜘蛛は呟きながら、公園にいる一人の少年に目をつけた。目の前でバスケットボールを楽しむ少年のうち一人に。
蜘蛛はその緑の体から大量の子蜘蛛を吐き出した。吐き出された子蜘蛛達は、風に乗って公園へと降り注ぐ。
大きさは1cmにも満たない程。小さな小さな子蜘蛛達は、少年達に気付かれる事無く、彼らの体に付着した。
◆
「睦月、頑張って!」
少年達のバスケットボールを見守る少女―山中望美―は、大きな声で、応援していた。満面の笑顔で、応援していた。
睦月と呼ばれた少年も、望美に一瞬笑顔を向けた。
ここに、こんな平和なやり取りをじっと見詰める、“一人”の蜘蛛が居た。
『澤田君、頑張って!』
『真理!』
蜘蛛の脳裏を過ぎる、二人の男女の回想。
バスケットボールを楽しむ少年―澤田亜希―に、真理が声をかける。
澤田もにこやかに返事を返しながら、バスケットボールを続けていた。
……と言っても、それもただの妄想に過ぎないが。
蜘蛛―澤田亜希―は、ゆっくりとベンチから立ち上がった。
イヤホンから漏れる大音量のラップ音。手に取った折り紙にマッチで火を付けた澤田は、少年達の方向へと歩き出した。
Extra ACT.06「二人の蜘蛛、二人のキング」
「へぇ、結構頑張ってんじゃん。スパイダーの奴」
そこから少し離れた丘で、少年はベンチに座りながら呟いた。
ストローをさしたジュースを飲みながら、子供を吐き出す“スパイダー”に視線を送っている。
赤いジャケットを着込み、大量のアクセサリーを身につけた少年は、自前の携帯電話をスパイダーへと向ける。
そして聞こえるシャッター音。スパイダーが子蜘蛛を吐き出す瞬間を、携帯のカメラで撮影したのだ。
「レア画像ゲット!」
笑いながら携帯を閉じる少年。同時に、自分が座っていたベンチに、もう一人の男が座った。
「楽しそうだな……? スペードの……キング」
「……何だ? ギラファか。ビックリさせんなよ」
ギラファと呼ばれた男は、眼鏡を押し上げながら、少年に視線を送った。
「今日はお前に話が……」
……と、男が喋りかけた瞬間に、少年は右手を突き出した。ちょっと待てよ とでも言わんばかりに、男―金居―の口を止める。
「何だ……?」
「僕の事、キングって呼んでよ。お前とかじゃなくてさ」
「……俺もカテゴリーキングなんだが……?」
薄く笑いながら、挑発的に眼鏡を押し上げる金居。それに対し“キング”は、大きなため息を尽きながら言った。
「分かってないなぁギラファ。キングって言うのは、僕が1番強いって意味だよ」
「……フン」
「って、何だよその笑いは! ノリ悪いなぁ〜」
金居の、明らかに相手を小馬鹿にした態度に、心外だと言わんばかりに落ち込むキング。
が、金居にとってそんなことはどうでもいいのだ。今最も重要な事は、キングの呼び方等では無い。
「……まぁいい、キング……俺と手を組まないか?」
「……へぇ……何か面白い事でもするつもり? 一応言っとくけど、このバトルファイトに勝ち残りたいっていうなら僕はお断りだからね」
「バトルファイト……か。お前はもう気付いてるんじゃないのか……?」
「何の話?」
「このバトルファイトは……偽物だ」
金居の言葉に、ジュースを飲んでいたキングはゆっくりと顔を上げた。
支援するぜ!!
618 :
マスカレード:2008/04/13(日) 23:33:44 ID:qn/YDiuZ
「おい……なんだあいつ……」
少年達は、バスケットボールを一旦中止し、突然現れた一人の男に視線を集中させた。
靴から頭まで、全身黒竦め。イヤホンからは大音量での音漏れ。正直言って、普通の雰囲気では無い。気味が悪い。
そして、直感で気味が悪いと感じた少年達が正しかったということが、次の瞬間に証明された。
みるみる内に男の体は変質し、灰色の装甲に被われたのだ。スパイダーオルフェノク。
澤田亜希の、もう一つの姿だ。
少年達も、スパイダーオルフェノクの姿に恐れ、一気に逃げ始める。
……が、逃げ遅れた少年が一人。
「あ……あぁあ……」
「睦月……!」
余りの恐怖に、地面に尻餅をついて、スパイダーオルフェノクを凝視する少年―上城睦月―。
そんな睦月を助けようと、さっきまで睦月を応援していた望美が、睦月に駆け寄る。
だがそれは、スパイダーオルフェノク……というよりも、澤田という男に、更なる殺意を抱かせる事となった。
睦月に自分を重ね、望美に真理を重ねる。重ねれば重ねる程、苛立ちが激しくなるのみ。
捨ててしまった物は、二度と帰ってこないのだ。
「うぅ……うぉおおおあああああっ!!」
咆哮し、手に持った巨大な八方手裏剣を、二人に振り下ろそうとした、その時だった。
「な……っ!?」
「ウゥ……レン……ゲル……レンゲルゥッ……!」
背後から聞こえる声に、スパイダーオルフェノクはその手を止めた。
そこにいるのは、緑の体を持つ不死生物。紫の仮面の下に、赤い三つの目を輝かせた不気味な生物。
その名は、「スパイダーアンデッド」。
スパイダーアンデッドは、フラついた足取りで、スパイダーオルフェノクに向かって歩き出した。
「ウォオオッ!」
「チッ……!」
スパイダーアンデッドの長い爪による攻撃を、八方手裏剣で受け止めるスパイダーオルフェノク。
だが、それも完全に受け切ることは出来ない。
仮にもカテゴリーエースの称号を持つアンデッドなのだ。いくら上級オルフェノクとはいえ、そう簡単に有利な状況には持ち込めないのだろう。
スパイダーアンデッドは、相手の八方手裏剣を弾き、その爪でスパイダーオルフェノクの体を切り裂いた。
「クッ……」
うめき声をあげ、のけ反るスパイダーアンデッド。その隙に、スパイダーアンデッドは睦月へと視線を向ける。
「な、何なんだよぉ……」
「レン……ゲルゥ……」
「レ、レンゲル……何だよ、それ!?」
「レン……ゲル……」
三つの目を輝かせ、頭についた小さな脚を伸ばし、睦月を睨むスパイダーアンデッド。
「早く逃げようよ、睦月!」
「わ、わかってるけど……」
分かってはいるが、何故だか足が動かない。スパイダーアンデッドから目が離せないのだ。
……その時であった。スパイダーアンデッドに、一台の赤いバイクが突っ込んだのは。
「ウォッ……!?」
吹っ飛ぶスパイダーアンデッド。バイクから降りた男は、腰にハート型のバックルを持つベルトを出現させた。
「変身」
言うと同時に、男の体が漆黒の光に包まれる。バックルに1枚のカードを通した事で、『Change』の音声と共に、変身が完了したのだ。
漆黒の仮面ライダー……カリスだ。
カリスは、巨大な弓でスパイダーアンデッドを斬り付けると、すぐに睦月と望美に駆け寄った。
「あ、貴方は……」
「仮面……ライダー……?」
呟く二人を無視し、ゆっくりと立ち上がらせるカリス。そのまま退路に目線を向け、言った。
「早く逃げろ」
少し離れた場所で、キングは一部始終を眺めていた。金居の話を適当に聞き流しながら、二人の蜘蛛の戦いを観察していたのだ。
が、赤いバイクが現れたと同時に、キングはすぐに携帯電話を取り出した。
「これはこれは……! ジョーカー!!」
携帯のカメラをムービーに切り替える。「ピロン」という音と共に、録画中を示す赤いランプが点った。
ちなみにこの携帯、スマートブレイン社の製品らしく、録画もかなりの高画質である。
シェーン
支援!!
621 :
マスカレード:2008/04/13(日) 23:38:12 ID:qn/YDiuZ
「調度いい。見ておけ、アンデッドを封印出来るのはジョーカーと仮面ライダーだけだ。」
ベンチから立ち上がり、カリスを見詰める金居。キングは、暫く間を置いて、喋り出した。
「ま、別に僕はどうでもいいんだけどね。この戦いが本物であろうと無かろうと」
「何ぃ……?」
カリスの変身シーンの録画に成功したキングは、携帯電話を下ろしながら、興味なさげに呟いた。
「なんか馬鹿馬鹿しいんだよね。僕達があんなに必死になって戦ってるのに、人間達はそれを知らずに平和に暮らしてる。
その上、グロンギとかワームまでこの戦いに割り込んで来る始末でしょ? 僕だってこんな戦いが偽物だって事くらい分かってたよ」
「……じゃあ、お前はどうするんだ……?」
「目茶苦茶にしたいんだよ。この戦いも、ワームと人間の戦争も、グロンギの奴らのふざけたゲームも……全部! 目茶苦茶にね!」
顔をしかめ、不機嫌そうに叫ぶキング。感情の波が激しいのも、キングという人格の子供らしさからか。
満足のいく答えが聞けたのか、金居の口元もニヤリと釣り上がる。
「ならば尚更だ、キング……俺に力を貸せ。俺の目的もお前と同じだ」
「何だ……なら始めからそう言えよギラファ。ちょっとは面白いんだろうね?」
キングは再び、楽しそうに笑い出した。金居に協力するつもりなのだろうか?
……いや、キングという男にとっては、「面白ければ何でもいい」のだろう。
本心から協力するつもりかは定かでは無いが、少なくとも現状よりは面白そうだと判断したのだろう。
ややあって、キングは何か思い付いたとばかりに携帯を取り出した。金居に画面を見せながら、ニヤニヤと笑う。
「こいつは……」
「何だ、ギラファ知ってるの? プロジェクトFの女の子のこと」
「こいつには見覚えがある……だが、そのプロジェクトなんとか……については初耳だ。」
キングの言葉に、金居は眉をひそめた。キングの携帯に写っている画像は、ワームと戦う魔法使いの少女―フェイトだ―。
金居は、ジョーカー……というよりも、始に会いにハカランダに赴いた際にも、この金髪ツインテールの少女は居合わせた記憶がある。
だが、金居は管理局についての知識はほぼ皆無。フェイトについても、何も知らなくて当然だろう。
「コレ、僕は結構面白い鍵になりそうな気がするんだよねー」
「ほう……?」
楽しげに続けるキングに興味を持ったのか、金居は再びベンチに座り、足を組んだ。
「カテゴリーエース……適合者を見付ける為に子蜘蛛を吐き出していたのか……」
状況を把握したカリスは、ゆっくりとカリスアローの持ち手を左から右へと移し、腰を低く落とした。
まるで獣のような、カリスの戦闘スタイル。そして、いざ走り出そうとした、その時であった。
『Complete(コンプリート)』
「何?」
ゆっくりと振り向くカリス。そこにいるのは、黒い体から眩ゆい黄色の光を放つライダー。
スパイダーアンデッドの奥にいる敵に視線を送りながら、確かめるよう自分の襟首を触っている。
カリスにとって、そのライダーには、確かな見覚えがある。以前、ブレイドと共に自分を痛め付けてくれたライダー……カイザだ。
念には念を入れておくべきだろう。また前回のように襲われてはたまった物じゃない。
カリスは弓を構えたまま、ゆっくりとカイザに向き直った。スパイダーアンデッドと、カイザを交互に睨むように。
……だが、そんなカリスの不安は無駄に終わったらしい。カイザは、カリスにはまるで興味がなさそうに、別の方向を睨んでいる。
「澤田ぁ……」
「草加……」
今のカイザの目的は、澤田亜希……いや、スパイダーオルフェノク唯一人。
スパイダーオルフェノクとカイザが、お互いに睨み合う。
そして次の瞬間には、カイザは逆手持ちの光の剣を引き抜き、スパイダーオルフェノクへと走り出していた。
622 :
マスカレード:2008/04/13(日) 23:42:32 ID:qn/YDiuZ
邪魔をするのなら返り討ちにするまで……とも思っていたが、奴にその気が無いのならば一々相手をする必要も無い。
カリスは、すぐにスパイダーアンデッドに向かって走り出した。
◆
二人の敵相手に、カイザはカイザブレイガンを振るい、カリスはカリスアローを振るって戦っていた。
だが、それをいくら繰り返しても決定打を与えることは出来ない。カイザの攻撃は八方手裏剣で防がれ、
カリスの攻撃もまた、同じようにスパイダーアンデッドの爪に返されてしまうのだ。
「澤田ァ……!」
「君が俺に勝つのは無理だと思うけど……なぁっ!」
「クッ……!?」
言いながら、カイザの装甲を深く斬りつけるスパイダーオルフェノク。
それでもカイザは、スパイダーオルフェノクへと突貫する。負けられないとばかりに、ブレイガンを振り上げて。
「澤田っ! お前だけはッ!!」
「失敗作が……」
だが、やはりスパイダーオルフェノクが相手では、並のオルフェノクのようには行かない。
ブレイガンによる攻撃は八方手裏剣で防がれ、逆にパンチやキックを叩き込まれる。
冷静さを失った草加は、確かに戦闘能力は上がっているのかも知れない。が、攻撃パターンが単調化してしまっては意味が無い。
繰り出す攻撃はほぼ全て受け止められ、逆に打撃を受けていく。そして、ついに八方手裏剣による強力な一撃を受けてしまったカイザは、後方へと吹っ飛んだ。
「カテゴリーエース……まさか、もう適合者を見付けたのか……?」
「ウオォ!」
呟きながらカリスアローを振るう。その度にスパイダーアンデッドの爪と弓が激突し、火花が散る。
決定打こそ与えれてはいないが、そこまで不利という訳では無い。
まだ互角と言った感じに、二人の武器がぶつかり合っている。だが、その状況が何時までも続かないのが、戦いというものである。
やがて、スパイダーアンデッドの頭の足がゆっくりと開いた。
「何……!?」
「ハァッ!」
油断した。一瞬のスキに、スパイダーアンデッドの左手のワイヤーに絡めとられてしまったのだ。
一気に引き寄せられたカリスは、その鍵爪による一撃で後方へと飛ばされてしまった。
「クッ……」
「チッ……」
敵の攻撃にやられたカリスとカイザが、お互いに背中を合わせる。
たまたま飛ばされた位置が近かった為に、お互いの敵と対峙する形で起き上がった際にこうなってしまったのだ。
「お前は……あの時のアンデッドか」
「……それがどうした」
背中を合わせたまま、カイザが嫌味な口調で喋り出す。カリスも、スパイダーアンデッドから目を離さないようにゆっくりと振り向いた。
「あいつもアンデッドなんだろう? お前が何故同族と戦ってるのかは知らないがなぁ?」
「ああ、お前に教えるつもりもない」
「フン……なら話す事も無いな。俺は俺の戦いを続ける。邪魔はするなよ」
「それはこっちの台詞だ」
言いながら、カイザはブレイガンをガンモードにモードチェンジ。スパイダーオルフェノクへと照準を合わせる。
カリスも、カリスアローから弓を引くような動作を取る。同時に、見えない糸に弓が引かれ、カリスアローの中心に光が集まる。
支援をするよ?
答えは聞いてない!
職業支援屋。
625 :
マスカレード:2008/04/13(日) 23:50:12 ID:qn/YDiuZ
そして、二人は同時にお互いの敵に向かって、光弾を発射した!
二人の蜘蛛は、同時に光弾の衝撃を受け、大きくのけ反る。その隙に、二人は一気に敵に接近。
「澤田ぁ……これで終わりだ!」
カイザは走りながらブレイガンをブレードモードに変型。そのまま、逆手持ちのブレードを全力でスパイダーオルフェノクにたたき付けた。
「……終わりだ」
カイザと同じく、走りながら自分の武器を変型させるカリス。カリスアローにベルトのバックルをセットし、1枚のカードをラウズ。
『トルネード』
刹那、聞こえる電子音。同時に、カリスアローの刃を凄まじい疾風が渦巻く。
「とぅあっ!」
「ウォオッ!?」
そのまま、トルネードアローをスパイダーアンデッドへと振り下ろした!
カリスに切り裂かれたスパイダーアンデッドの体が、小さく爆発する。が、まだバックルは開かない。
封印するにはまだ足りないということだ。ならば、バックルが開くまで攻撃を繰り返すまで。
カリスが再びカリスアローを構え、スパイダーアンデッドに攻撃を重ねようとした、その時だった。
「フンッ……!」
「……何っ!?」
カリスが動こうとした瞬間に、スパイダーアンデッドの目が輝いた。同時に、カリスの足元が小さく爆発。スパイダーアンデッドによる念力攻撃だ。
カリス自体にダメージは無いが、カリスの目前に煙が広がり、視界が悪くなる。
だが、こんなものはただの目暗ましに過ぎない。すぐに煙りを払い、スパイダーアンデッドがいた位置に移動する――
「……逃げたか……」
……が、時既に遅かったらしい。
そこにはもう、カリスが狙っていたカテゴリーエースの姿は無かった。
「死ね! 澤田ぁーーー!」
『Exceed Charge(エクシードチャージ)』
カイザの足に装着されたポインティングマーカーデバイスが、スパイダーオルフェノクへとフォトンによるマーカー弾を飛ばす。
光に拘束されたスパイダーオルフェノクは、そのままカイザによる必殺キック―ゴルドスマッシュ―をただ見詰めるだけしか出来ない。
「クソッ……こんなとこで……!?」
スパイダーオルフェノクが、光から抜け出そうと、全身に力を込める。が、それも無駄の一言。
いくら力を入れようが、光が消える事は無く、目の前のカイザが迫ってくるのみ。
……だがその時、不思議な事が起こった。
「止めろッ!!」
どこかから聞こえる若い少年の声。そして、次の瞬間には、カイザの目の前にいるのはスパイダーオルフェノクでは無くなっていた。
代わりにそこにいたのは。赤いジャケットを着た、茶髪の少年―――
「どけぇえええっ!!!」
「あははは、残念でした」
―――キングだ。
キングは何の武器を持つ事も無く、肩を竦めながら両手を広げている。所謂“挑発”だ。
ゴルドスマッシュにより発生した円錐に、カイザのライダーキックが吸い込まれる……筈だった。
「なんだとぉッ……!?」
驚愕するカイザ。今の一瞬で、何が起こったのか、さっぱりわからない。
気付けば、カイザの体は何かに弾き返され、少し離れた地面に転がっていたのだ。カイザはすぐに立ち上がり、キングを睨んだ。
「だから言ったでしょ? 残念でしたって」
「チッ……なるほどな……? お前も化け物って訳か……」
「化け物? うん、まぁそうかもね
……そんなことよりさ、さっきのやられポーズ撮りそこなっちゃった。惜しいなぁ」
カイザに問われたキングは、ポケットからゆっくりと携帯電話を取り出しながら言った。
どうやら、キングとしてもカイザの質問にまともに答えるつもりは毛頭無いらしい。
……っといっても、彼の場合、特に挑発しているという実感も無いのだろうが。
支援、支援、支援!
キングがむかつくぜw
627 :
マスカレード:2008/04/13(日) 23:57:18 ID:qn/YDiuZ
「お前、ふざけて……」
「カテゴリーキング……」
「何……?」
流石に頭に来たらしく、カイザもキングに対抗し、嫌味な口調で言葉を続ける。
だが、すぐ近くにいたカリスに割り込まれ、カイザはすぐにカリスの方向へと視線を動かした。
当のカリスはカリスアローを持ち直しながら、ゆっくりと腰を落としている。
「カテゴリーキング……俺と戦いに来たのか……」
「ちょっと待ってジョーカー、僕はまだ君と戦うつもりは無いって!」
「黙れ……アンデッドである以上、俺達は戦う運命にある」
再び自分に襲い掛かろうとするカリスに、キングは大きなため息を落としながら言った。
「わかってないなぁ……今のジョーカーじゃ僕に勝てないって言ってるのに……」
忠告。キングは、戦うだけ無駄だとうそぶいた。だが、戦闘態勢に入ったカリスに、そんな言葉は無駄だ。
カリスアローを構えたカリスは、すぐにキングに向かって走り出した。
「あーあ……仕方ないなぁ。止めろ!」
「何?」
キングの言葉、「止めろ」。このキーワードと共に、カリスの手の中からカリスアローは消えていた。
――どこへ行った?
右手から視線を外し、前方を見る。そこにいるのは、カリスアローを持ったキング。
一瞬で、離れた位置からカリスの眼前まで迫ったというのか? そんな筈は無い。
カリスともあろう者が、そんなミスを犯す筈が無い。
「おぅわっ!?」
そして次の瞬間には、キングが振るうカリスアローに、カリスは弾き返されていた。
「……だから言ったでしょ? 君じゃ無理だって」
「……貴様……」
地面に転がりながら、キングを見上げるカリス。キングは、軽く微笑みながらカリスアローを地面に投げ捨てた。
「ジョーカー、君はまだ僕と戦う時じゃないからさ。ばいばい」
「待て……!」
キングは言いながら、カリスに向けた携帯のシャッターを切り、その姿を消した。
どうやらスペードのカテゴリーキングは、姿を消す事も出来るらしい。
何にせよ、キングは既に気配すらカリスに悟られない位置まで離れたらしく、カリスにはこれ以上、何もすることが出来なかった。
「澤田……ッ!」
全てが終わった後で、草加雅人は、握り締めた拳でサイドバッシャーのハンドルをたたき付けた。
やっと見付けた。やっと見付けた倒すべき宿敵。それなのに、訳のわからない第三者の介入により、奴にトドメを刺すことが出来なかったのだ。
あの変な少年のせいで澤田はいずこかへと逃げ去ってしまった。
「(何なんだ……あいつはッ!?)」
それだけでも、草加の腹綿を煮え繰り返すには十分な出来事だ。
そんな晴れない気持ちのまま、草加はヘルメットを被り、サイドバッシャーを走らせた。
義により支援致す!
629 :
マスカレード:2008/04/14(月) 00:01:57 ID:qn/YDiuZ
客は誰も居ない夕方の喫茶店。ここに、金居とキングは二人で座っていた。
「……何故、奴を助けたんだ……?」
「ん……別に? ちょっとした悪戯だよ。仮面ライダーに嫌がらせしたかったんだ」
金居の質問に、キングは悪びれる様子無くうそぶいた。
「それだけか……?」
「うん。あと、ジョーカーにもちょっと挨拶しようと思ってさ」
ジョーカーの話題になった途端、キングは楽しそうに笑い出した。非常に上機嫌そうな笑顔だ。
キングは、再び携帯電話の画面を金居に見せる。
『変身』
「Change(チェンジ)」
携帯電話から聞こえる、男の声。
相川始の……仮面ライダーカリスの変身する瞬間を、そのカメラのシャッターに納めたのだ。
「な? 面白いだろ、ギラファ?」
「フン……少なくとも、お前は面白そうだな?」
「まぁね♪」
ニヤリと、口元を吊り上げる金居。
キングはずっと、楽しそうに携帯電話を眺めていた。
「……草、加……ッ」
澤田亜希は、海鳴市のオフィス街をさ迷っていた。傷付いた体で、ビルの壁にもたれながら。
「俺が……あんな失敗作に……!」
肩で息をしながら、澤田は呟いた。
悔しい。あんな奴に負けたのが、悔し過ぎる。
あんな“失敗作”に。
あんな“出来損ない”に。
この“成功体”の俺が負けた。
それは、澤田という人物にとって、どうしても納得の行かない事だ。
行く宛ての無い怒りを抱えたまま、澤田自信も歩き続ける。
勿論、今の澤田には行く宛てなど何処にも無い。ふらついた足取りで、日が沈みかけた海鳴市をただただ、さ迷い続けるだけしか出来ない。
そんな澤田の首筋を、金色の小さな子蜘蛛が這っていた事に、誰も気付く者は居なかった。
投下終了。
随分と遅れてしまった事をお詫びします
とりあえず、マスカレード18話(後編)の前にこのサイドストーリーの方を更新させて頂きました。
なんか色々展開が苦しいのには目をつむって貰えると幸いです(ぇ
GJ!でした。
澤田にレンゲルフラグが!?
GJです!
やっぱキング強いなあ
スカラベもいるし金居と組んだら実質最強なんじゃ
相変わらずたちが悪いなあキング。
>キャロとバクラ
こいつにGJを送り忘れるなんて、ありえないぜ! 遅レスですがGJです。
ついに機動六課との出会いが始まりましたね。最初からテンション全開のフェイトそんにニヤリ。愛深いですなw
後半のキャロとバクラとエリオの初対面にインパクト持ってかれましたが、何気にはやてが良いキャラですし。
本編では上司らしい余裕と穏やかさが前面に出てて、こういうダメっぽさは全然なかったので新鮮です。
いや、子狸と称されるからこそ、こういう三枚目が似合うんじゃないかと。徹夜、乙w
キャロとバクラの立場に関しては、良い感じにオリジナルな流れになってましたね。
小難しい契約は取っ払って、現金で物事を決めようとするシンプルな部分が、まさに盗賊のバクラらしい。
この価値観が、他の機動六課の面々に対してどう影響していくのか、不安でもありそれ以上に面白そうでもあります。
っつか、早速エリオ相手に二つの個性が爆発してますしね。
あのシーンはバクラが絶対喧嘩売ると思ってたけど、何気に逞しくなったキャロもひでえwwここでもエリオはヘタレ扱いなのか?w
バクラとの二人旅を第一部とするなら、機動六課編はまさに第二部。
徐々に物語が拡大していく感じがあって、これは期待せざる得ない。次回も頑張ってください。
>THE OPERATION LYRICAL
エースコンバットは2と3しかやったことがないので、ここは一つ見守ることにしようと思っていたのですが…書かずにはいられないッ!
リリなのが人間大の物語であるせいか、ロボットや大型兵器をメインにしたクロスネタでは違和感が付き纏うものですが、戦闘機というネタの利点を上手く使ってますね。
そうだよ、きっとヴィータなら憧れると思ってたよ。飛行機は子供心鷲掴みにするよw
メビウス1のミリタリーな用語を気に入るシーンとか、見ててニヤニヤしました。こういう接点が素晴らしい。
あと、ミッドチルダで性能を修正されていくF-22がAC3ばりの近未来性能になっていきそうでwktk
というか、むしろこれは地上部隊への光明ではなかろうか?
魔力を持たないメビウス1の活躍を見てレジアスが衝撃受けそうですね。事態が良い方向へも悪い方向へも転びそうで、展開が読めません。
早くも次回はホテル編で、メビウス1の活躍も気になりますが、原作の例の話にも当たる以上また盛り上がりそうですw
>アンリミテッド・エンドライン
締めが気になりすぎるw
今回ではお遊びで手がかりを残さなかったり、スカ山の方に敵としては悪い方向へ変化がある以上、予言の内容も原作以上に深刻化してそうで怖いですね。
っつか、「第九節」とか勿体ぶった持ち上げ方はやめてww不安でお腹痛くなるからww
冒頭でスバルの言ってた意外な事実とか、なのは達の懸念とか、事態が動く嵐の前の静けさ的な溜めの部分があって面白かったです。
原作通りにいくとは限らないけど、次回からはやはりティアナ絡みで何かが起きるのか?
個人的には眼が離せませんね。
>マスカレード
今回はダークサイド祭りなのか? 敵も味方もヤバイ奴らが揃っての戦いでしたね。
カリスが一番ライダーらしく見えるw
それにしても、原作でもそうだったけどキングのむかつき具合は異常。
しかも本当に強いから厄介。今回も事態をかき回すことを企んでいるようですし、しばらくはお腹痛くなりそうです。
仮面ライダーではお約束の、変身シーンをばらされる危険。しかも、始の正体ですから、また波乱を呼びそうですな。
職人の皆様GJです。
ファーストガンダムとのクロスが書けたので投下します。
ニュータイプ……
人はそれを魔導師の革新だと言う。
全ての魔導師が覚醒するき姿だと……。
これは次元世界、旧暦における『一年戦争』の中に出てくる言葉だ。
『一年戦争』とは、かつてベルカ、ミッドチルダを舞台で古代ベルカ式を使うザビ家という魔導師の名門一族が質量兵器を扱う古き秩序から『聖王のゆりかご』を用いて完全なる独立のために結成した魔導組織『ジオン』が、
次元世界で古くから住んでいた人々が組織していた『時空管理局』へ仕掛けた一年間の独立戦争の時代の総称。
そしてその時代が終結を迎えた旧暦462年、最後の激戦と呼ばれる。
『要塞ア・バオア・クー攻略戦』
その中で二つの組織に所属し、魔導師の革新である『ニュータイプ』であり、互いにデバイスを向けあう二人の男がいた。
「シャア!なぜララァを巻き込んだ!!ララァは戦いをする人ではなかった!」
一人はライフル型のデバイスを操り、時空管理局において『白い悪魔』としてその名を轟かせたエース、アムロ・レイ。
「ララァを楯に私を牽制しようと言うのか!
だが、この戦いがなければララァはニュータイプとしての目覚めはなかった!」
もう一人は赤い杖型のデバイスを操り、ジオン所属において『赤い彗星』と呼ばれたエース、シャア・アズナブル。
要塞内にて二人は導かれるようにデバイスを交わらせる。
「それは理屈だ! ライフル、カートリッジロード!」
『Rifle Cartridge.Set,up』
シャアから放たれた黄色の魔力砲撃を避け、アムロは桜色の魔力弾をライフルから彼に向けて放つ。
「しかし、正しい物の見方だ!」
激昂するかのようにアムロに叫び、シャアはライフルの攻撃を回避する。
「貴様は自分がいかに危険な魔導師か分かっていない!
素直にニュータイプとしての有り様を示しすぎた!」
シャアの言葉にアムロはライフルから魔力刃のサーベルへ換装し、彼へと切り込みながら告げる。
「だから何だと言うんだ!」
『sabel・Mode』
「人は流れに乗ればいい!だから私は君を殺す!ジオング!」
『Yes, master.』
サーベルを障壁で受け、シャアは彼から距離を置き、杖に装備されていた端末を二つ放つ、それはあらゆる方向からアムロへと魔力砲撃を放ちながら襲い掛かり。
シールドを展開すると五本の黄色の奔流がシールドを破壊し、デバイスへと直撃する。
「くっ、デバイスが……だがまだ死んじゃいない!!ハイパー・バズーカ」
『Hyper・Bazooka Set up.』
デバイスへのダメージは深いものであったがアムロはそのままサーベルから幾重に魔力の殻で覆われた砲撃を放って二つの端末を破壊し、ライフルに再び換装し、シャアへ魔力弾を撃つ。
「ちぃ!!」
アムロの標準はなんとも鋭く、ライフルの一撃一撃を回避しようと試みるが一発がシャアの肩を直撃する。
「お前にとっての本当の敵は誰なんだ!ザビ家ではないのか!?」
「私にとっては違うな!大きな力を自分達の欲のために扱い、世界を汚染する者全てが敵だ!!」
「なら何故。聖王のゆりかごを使わせた!!」
「力に群がったノミを一掃するのに必要だからだ!力は正しく人類の為にあるべきものなのだよ!」
アムロの問いにシャアは撃たれた肩を押さえもせずに強く否定する。
「だったらニュータイプは、魔法は……争うための道具ではないだろう!」
「今という時の中では人はニュータイプも魔法も争いの道具にしか使えん!ララァは魔導師として死にゆく運命だったのだ!」
(……まだやれるな、ジオング?)
『Yes, it can still move.The master.』
「アムロ、ガンダム……これ以上はやらせんよ!」
『ZEONG.Preparations are good.』
先程の一撃で深く傷ついた肩から手を放し、シャアは自身の赤いバリアントジャケットを黒い騎士のような甲冑に強化し。
デバイスは形状をより大きなものとなり、アムロに撃ち落とされた端末も復活していた。
「貴様だって……魔導師だろうに!行くぞガンダム!」
『-GUNDAM-standby OK.Hyper・Hammer Get,Lady.』
そして、アムロも自身の白いバリアントジャケットの上にトリコロールカラーを基調にしたアーマーを取り付け、デバイスの形状をライフル銃から鎖に繋がれた刺のついた一つの鉄球に換装し魔力で打ち出すとソレはシャアへと猛威を放ちながら襲い掛かる。
「ちぃっ!!」
『Zyven・Angrf.Get,Set!』
そう叫び、シャアはデバイスの端末を分離させて魔力砲撃を一斉に放つ。
そしてその時、二人の放った強大な力が激突した……だが、それは未来の異世界に導かれる事になるのであった……。
白い光に視線が遮られゆく中、二人はある女性の声を聞く。
『殺し合うのがニュータイプではないでしょ? アムロ、シャア。貴方たちを望む世界が待っているわ……』
「ん……」
まどろみの中。彼は呼吸で出した息が自分の顔にかかる苦しさで目を覚ます。
気付くと陽光が注がれる空の下で彼は地面に俯せで倒れていた。
「……僕は……く、駄目だ!」
記憶を辿ろうとしたがどうしても引きだしの鍵が見つからない……。
自分はなぜこんな場所に?
頭の中が疑問でいっぱいになり頭がパンクしそうになる。
重苦しい身体を起こし、自身が何かの制服を着ていることに気がつき、そこで彼は今いる場所の違和感を感じる。
「……何で……何で僕はこれに驚かない?」
はじめて経験した感覚じゃない……。
辺りを見回すと、そこは木々に囲まれているが……この辺り一帯が何かの力で覆われている事を何故か何時ものように感じた。
そして、手に握られていたある物に彼は目を見開く。
「…………これは」
白を基調に赤い一角獣のエンブレムが入ったカード。何故か、親しさが自分の中にあることを彼はさらに疑問を抱く。
何故、僕はこいつを……。
そして、彼は一角獣の下に刻み込まれた6つのロゴを読む。
「GUN……DAM。ガンダム……。」
『な、なんで急に……こんな。』
『答えても……たぶん意味はない。』
「この感覚は……」
カードを手にしていた時、突然頭に浮かんだ二人の言葉。
彼はこの感覚を理解出来る……。
「あの方角か……。」
存在を感じた方角を見据え、自然と走って行った。
そして、すぐにソレは姿を見つける事が出来た。
それぞれ白と黒のバリアントジャケットを来た二人の少女が、互いのデバイスを交わらせていた……。
「あの声の女の子達……。……あれは、猫なのか?」
白い少女の傍に倒れていた大きな猫が「何が起きたのだろう?」と言うような鳴き声をあげたのが視界に入る。
だが、その瞬間。
『ごめんね』
再び、頭に浮かんだ言葉……。それは黒い服を着た金髪の少女の言葉。
「行けない!!」
何故か彼は、白い魔導師の少女へと叫んでいた。
何も解らないはずなのに。いや、一瞬彼は二人の少女が魔導師だと理解していた。
しかし、彼の叫びは遅く。
黒い服の少女の持つ、黒い斧から放たれた閃光が白い服の少女に直撃した。
「きゃあ!」
悲痛そうな白い服の少女の声。彼はすぐに駆け付けて彼女の安否を確認する。
フェレットのような小さな動物が傍にいるのが視界に入り、彼は何となくこの子には何かあると感じた。
少女の胸が起伏しているのを見て『大丈夫だな』と安堵する。
すると、少女は大きな猫へと歩み寄り。黒いデバイスを向けて天空から降り注いだ閃光で猫を包み込む。
あっという間に猫は小さくなる。
あれが本来の姿なんだ。と彼は理解するがそこで菱形の宝石のような物体が横たわる猫の身体の上に浮いていた。
「ジュエルシード、No.14。回収……」
ジュエル……シード?
その時彼は頭の中で何かの言葉が出かかる。
なんだ……。この嫌な気持ちは。
ジュエルシードを回収し終えた黒い魔導師は彼らのところにやってくる。
「…………」
「…………」
しばらく、彼と視線を合わせ。黒い魔導師はマントを翻して木々の奥へと立ち去る。
「……一体、僕は何なんだ。」
黒い魔導師の後ろ姿を見遣りながら彼は絶え間無い悔しさに拳をにぎりしめていた。
自分は今まで何をやっていたのか、記憶の引きだし一つ開けれず。この子に怪我をさせてしまった。
ただ一つ。彼にわかるのは『アムロ・レイ』という自分の名前だけ。
立ち尽くす彼の姿を見上げているフェレットはアムロから何かを感じていた。
(この人から魔力とは違う力を感じる……。)
「ごめん、彼女に怪我をさせてしまったね。」
アムロはひどく沈んだ表情でフェレットへと謝罪し、白い魔導師の少女を抱き抱える。
しかし、フェレットは首を振り。彼の言葉を否定する。
『彼女は気にしていないと思います。』
そう頭に聞こえ、アムロは少し元気を出して微笑む。
「ありがとう。ところで彼女を手当出来る場所を知っているかな?」
その言葉にフェレットは走りだす。それは『ついてきて下さい』と言っているようにアムロは感じ、少女に負担がかからないように後を追った。
そして……フェレットと同じ印象を転送していた黒い魔導師は感じていた。
「魔力とは違う力。あの人と同じ……」
今の自分の仮家へと転送し。
魔導師の少女はバリアントジャケットを解除し、私服へと姿を変えて出迎えてくれた大きな犬に微笑む。
「ただいまアルフ。」
アルフとよばれた赤い犬は主の無事に嬉しそうに彼女に擦り寄る。
「回収出来たようだな、フェイト。」
部屋の奥から声をかけて現れたブロンドヘアーの男性にフェイトは頷いて答える。
「うん、邪魔が入ったけど、なんとかジュエルシード回収出来たよ。あ、シャア」
「なんだ?」
「……ただいま。」
不意にかけられた言葉にシャアは「ふっ」と笑い。応える。
「おかえり。というべきだったな」
二人のニュータイプは。二人の新しい魔導師に出会い新たな時代に降り立っていた。
続く。
以上です。
『一年戦争』を次元世界の旧暦での出来事にしてます。
ちなみに終結は旧暦462年です。
この小説のタイトルは魔法少女リリカルなのはA.C. 話のタイトルは第1話『降り立ったニュータイプ』です。
ではでは
白い奴(白い悪魔)キター、続きが楽しみっす
(ネタ的に)シャアと幼女の組み合わせはヤバイ
リリカラーさんGJ!
凄い……アムロとシャアの魔法戦が全然違和感ないです。
続けて天元突破第二話投下よろしいでしょうか?
「それじゃなのはちゃんも来たことやし、……ついでにヴィータも起きたことやし、軽くこれまでのおさらいしとこーか」
フェイトちゃんは三回目になるけど……と続けるはやてに、なのはを除く全員が首肯した。
独り話の展開について行けずに困惑するなのはを無視して、はやては早速話を始める。
「まず現状確認やけど、四年前、反螺旋族アンチスパイラルを名乗る謎の勢力が、次元世界に宣戦布告したのが全ての始まりやな。
アンチスパイラルの主力はムガンちゅー質量兵器やけど、物理攻撃もCランク以下の魔法攻撃もバリアで無効化してまう上、倒したら倒したで派手に爆発する曲モンや」
「奴等の目的は螺旋生命体の根絶とスパイラルネメシスの阻止。そのためにあらゆる次元世界の生命を根絶やしにしようとしているらしい」
はやての言葉をシグナムが引き継ぎ、続いてシャマルが口を開いた。
「螺旋生命体とは二重螺旋の遺伝子を持ち、螺旋力により永遠の進化を求める生命体の総称よ。なのはちゃんやはやてちゃん達人間も、螺旋生命体の一種ね」
「……螺旋力?」
聞き慣れない単語に首を傾げるなのはに、それまで黙っていたロージェノムが口を開く。
「螺旋生命体は、螺旋構造を持つ銀河とシンクロする。知的生命体がその認識する力で宇宙そのものが持つ力を得ることが出来る――それが螺旋力だ。
生命も宇宙も全て、上昇する螺旋エネルギーによって無限に増大する。それがこの宇宙の理だ。
そして螺旋力は、アンチスパイラルを打倒する唯一の力でもある――少なくとも、私の世界ではな」
いきなりスケールの大きくなったロージェノムの話に、徹夜明けのなのはの頭は早くもパンク寸前だった。
ヴィータも早速舟を漕ぎ始めている。
……よく見てみると、周りの者達も似たような様子だった。
睡魔という強敵を前に早くも全滅の危機にあるなのは達を見回し、ロージェノムは呆れたように嘆息する。
「……端的に言えば、気合いだ」
それまでの小難しい話を「気合い」の一言で纏めてしまうロージェノムに、あらかじめ説明を受けていた面々は納得したように首肯する。
「何だ気合いかよ。それならそーと早く言えってんだ」
そう言ってケタケタと笑うヴィータを横目に見遣り、なのはは一人、何だかなーと納得しきれずにいた。
実のところ、フェイト達も最初に螺旋力の概要を聞いた時には半信半疑だった。
魔力とは根本から異なる未知のエネルギー、しかもその発動にはリンカーコアを必要としないらしい。
事実、素手でムガンの大群と渡り合ったロージェノムは、リンカーコアを持っていない。
この話を聞かされた当初、クロノやシグナムなどは「ふざけるな!」とロージェノムに掴みかかろうとすらした。
それ程までに螺旋力とはなのは達魔導師にとって衝撃的で、そして自分達のアイデンティティを脅かす恐るべき概念なのである。
しかしそう言われてみれば、思い当たることもない訳ではない。
なのはとフェイトが戦場に到着した時、ムガンを圧倒していた武装局員達……。
あの部隊のメンバーの魔導師ランクは全員B――ムガンに対抗出来る最低限の力しか持たなかった。
しかし蓋を開けてみれば、一方的とも言える管理局側の圧勝。
ムガンの弱点が螺旋力――気合いだというのであれば、あの予想外の結果にも納得出来る。
「しかし、その力を恐れる者達も現れた」
ロージェノムの言葉を引き継ぐように、今度はクロノが口を開いた。
「――それが、アンチスパイラル」
瞬間、室内に緊張が走った。
深刻な表情で黙り込むなのは達を一瞥し、今度はフェイトが口を開く。
「アンチスパイラルも、元は私達と同じ螺旋生命体だったらしいの。ただこの螺旋の力を使い続けると、宇宙そのものが滅んでしまう――そう信じた人達だった」
「スパイラルネメシス――四年前の宣戦布告の時にアンチスパイラルが言った言葉だけど、どうやらそれが宇宙壊滅のことらしいね」
流れるようにフェイトの言葉を引き継ぎ、ユーノがそう言って話を一度締め括った。
「さて、それじゃ次にロージェノムさんのことなんだけど……」
湯飲みを置き、リンディはロージェノムを振り返った。
何で皆リレーみたいに説明してるんだろーと頭の片隅で思いながら、なのはも釣られてロージェノムに顔を向ける。
「……構わん。別に隠すようなことではない」
重々しく告げるロージェノムに首肯し、リンディは言葉を続ける。
「――ロージェノムさんの出身世界も、アンチスパイラルの襲撃を受けたらしいわ」
リンディの言葉に、なのはは驚愕の目でロージェノムを見た。
「彼の世界の螺旋生命体は、汎銀河レベルで超科学文明を築いていた。螺旋力――宇宙と生命を繋ぐ無限の力で、時間も空間も、何もかもを支配下に置いた、まさに神の領域」
アルハザード……誰かの呟く声が、なのはの耳朶を打つ。
「――だが、その繁栄も長くは続かなかった」
「アンチスパイラルの猛攻に抗し切れず、ロージェノム達螺旋族は敗北したんだ」
「え……それじゃあ滅んじゃったの!?」
ザフィーラとアルフが交互に口にした言葉になのはは瞠目した。
しかしロージェノムは首を振り、厳かな面持ちで口を開く――前に、リィンフォースUが横から科白を攫った。
「戦いに勝利したアンチスパイラルは、螺旋族の母星に螺旋生命体殲滅システムを配備したんです。地上の螺旋生命体が一定数を超えると起動し、その惑星を滅ぼす……。
螺旋の戦士として戦い、そして敗れたロージェノムさんは、種としての人類を救うべく、母星の人間達を地下に押し込めました。
そしてこの人は螺旋王を名乗り、獣人――螺旋遺伝子を持たない人造生命体の軍隊を組織して、地上に出ようとする人間を容赦なく弾圧したんです」
支援
「そして千年の時が過ぎ……」
リィンフォースUから漸く科白を取り戻したロージェノムだったが、
「――新世代の螺旋の戦士、シモン達大グレン団の登場って訳だ!!」
今度はヴィータに、またもや出番を奪われるのだった。
「地下の天井ぶち抜いて、突如現れた謎の美少女ヨーコ! 彼女に誘われ。兄貴分カミナと共に地上を目指す穴掘り少年シモン!!
相棒は顔型ロボガンメン≠フラガン! カミナのガンメングレン≠ニ合体して兄弟合体グレンラガン!!
ライバルの獣人ヴィラルとの激闘! 集う仲間達大グレン団! そしてカミナとの涙の別れ!! 螺旋の姫君ニアとの運命の出会い!!
立ち塞がる刺客を次々と倒し、成長するシモン! 進化するグレンラガン!!
そして王都テッペリンでラスボス螺旋王との一騎打ちに見事打ち勝ち、シモンは地上の明日を取り戻した!!」
寝不足でハイになっているのか、妙に興奮した様子でヴィータは語る。
唖然とする一同を尻目に、ヴィータのマシンガントークはまだまだ続く。
「そして舞台は七年後!
止まらぬ繁栄を続ける人類の前に、突如現れるアンチスパイラル!
バラバラになる仲間達! アンチスパイラルに奪われたニア!
そして発動する螺旋族殲滅システム――月落下による惑星滅亡の危機!!
絶望のどん底に叩き落とされながら、それでもシモン達は諦めなかった!!
地下牢で再会したヴィラル、クローン技術で蘇ったロージェノム!!
かつての宿敵を強力な味方として仲間に加え、さぁ反撃だ大グレン団!!
手始めに気合いで月を乗っ取り戦艦に変え、そいつを母艦に目指せ敵本星!
人類を救え、ニアを助け出せ! 銀河を越えるシモン達の旅が始まった!!
戦いの中、次々と散っていく仲間達……。その思いを心に刻み、そして生まれる超弩級ガンメン――超銀河グレンラガン! その最終形態、天元突破グレンラガン!!
真ラスボスのアンチスパイラルとの銀河レベルでの最終決戦の果てに、遂にシモン達は宇宙の明日を取り戻した!!」
一気に言い切り、ヴィータは感極まったように拳を握り締めた。
目尻には涙まで浮かべて力説するヴィータに、はやては溜息混じりにこう漏らした。
「ヴィータ……ロージェノムさんの昔話の部分だけはしっかり聞いてたんやね」
全てを聞き終わり、そのあまりにも現実離れした話の内容に、なのははただ呆然とするしかなかった。
「驚いてる?」
こっそりと話しかけてくるフェイトに、なのはは素直に頷く。
「うん、私も驚いた。事情聴取をしてる筈なのに、いきなりスペースオペラが始まっちゃったから……」
しかもその相手が、あのアンチスパイラルなのだ。
リンディ達に助けを求めたフェイトの気持ちも、今のなのはにはよく解った。
確かに……これは自分独りでは、どうしようもない。
「……って、あれ? ロージェノムさんの話が本当なら、アンチスパイラルは倒されたってことだよね……?」
では今次元世界を襲っているあれは、一体何だというのか。
「この結末はあくまで私の次元、私の宇宙、私の世界での話だ。
私の世界では他次元世界との交流は無いので断言は出来んが、我々が打倒したのはあくまで『我々の世界の敵』であり、この世界の敵には何の影響も与えていないのだろう」
なのはの疑問に答えるロージェノムの表情が、また一瞬、動いたような気がした。
胸の奥に芽生える違和感を意図的に見落とし、なのはは取り敢えず納得しておくことにした。
「それで、こっからが本題なんやけど……」
真剣な顔で切り出す早はやてに、一同の視線が集まった。
はやては一度周囲を見渡し、そして続ける。
「――ウチが前々から上に申請しとった新部隊設立の話なんやけど、あれ、何とか通りそうなんよ」
突然のはやての話に、事情を知るなのは達は皆大なり小なり驚きの表情を見せた。
時空管理局は、その体勢上様々な意味で後手に回ることが多い。
遺失物ロストロギアの暴走事故、違法魔導師による犯罪行為、そしてアンチスパイラルの破壊活動など、例を挙げればきりが無い。
そこで後手に回らず――寧ろ先手を打って行動出来る新しい部隊を創るべく、数年前からはやては仕事の合間を見つけては関係各所を動き回っていた。
「へぇ、良かったじゃねぇか。……でもはやての新部隊とこのアンチスパイラル対策会議に、一体何の関係があるんだよ?」
新部隊の専門はあくまでもロストロギア……はやてからはそう聞かされているし、自分達もその認識である。
一同を代表するようなヴィータの問いに、はやての表情が曇る。
「……上の人達は、どうも新部隊を対アンチスパイラルの精鋭部隊として使いたいみたいなんや。そのための戦力なら惜しみなく提供する言うてるんやけど……」
――それは自分の理想とする部隊の形ではない……言外にそう告げるはやてに、なのは達は咄嗟に返す言葉が見つからなかった。
「アンチスパイラルがただのテロ組織やったら、ウチもその要求呑もう思うとった。
そんな連中さっさと潰して、んで改めてウチの望む部隊に創り直すー―実際、最初はそのつもりやったしな」
でも……とはやては続ける。
「――ロージェノムさんの話を聞いて、ウチは自分の考えの甘かったことを知った。
アンチスパイラルとの戦いはただのテロ組織相手の治安維持活動とは全然違う――戦争や。それも次元世界全部を巻き込む程の、ウチらの想像を遥かに超えた……」
はやてが部隊を設立すれば、この場にいる全員が何らかの形で力を貸してくれるだろう。
何人かは前線で戦ってくれることになるかもしれない。
しかしそれは、アンチスパイラルとの世界を賭けた決戦の、本当の最前線に彼女達を連れて行くという意味である。
ロージェノムの世界では、ロージェノム達旧世代螺旋の戦士はアンチスパイラルに敗れた。
辛うじて勝利したシモン達新世代戦士も、多くの犠牲を出した。
自分達もそうならないとは限らない。
否――螺旋力を知らない自分達は、彼らと同じスタートラインにすら立っていない。
こんな状態でアンチスパイラルに戦いを挑むなど、みすみす死地に転がり込むようなものである。
自分はなのは達をそんな目に遭わせたくない――はやてはそんな絶望的な賭けに仲間を巻き込みたくなかった。
「だから……」
――皆、ウチから手を引いて……。
はやての口にしようとした決別の思いは、ヴィータに口を塞がれ、言葉になることはなかった。
「なーに言ってんだよ、はやて。
アンチスパイラルなんてとっとと倒して、それから本当のはやての部隊を創る……良いアイディアじゃん!
はやてははやてのやりたいよーにやれ。アタシらはそれを全力で助ける!」
そう言って屈託なく笑うヴィータに、シグナムが同意する。
「ヴィータの言う通りだ、主はやて。我等ヴォルケンリッターは貴女の守護騎士――貴女の剣だ。
貴女が望むのならば我等は次元の狭間だろうと宇宙の果てだろうと、どこであろうと戦ってみせる。
そして必ず勝利し、貴女の許に帰ってこよう」
シグナムの言葉に、守護騎士全員が首肯する。
「わたし達も同じだよ、はやてちゃん」
呆然とするはやてに、今度はなのはがそう語りかけた。
クロノも達観――というよりも開き直ったような表情でなのはに同意する。
「……まぁ、どちらにしてもアンチスパイラルとの決戦は避けられそうにないからね。
こうして関わったのも何かの縁、最後の最後まで付き合ってやるよ」
そう言ってわざとらしく息を吐くクロノに、他の面々も苦笑交じりに同意するのだった。
「皆……」
なのは達の優しい言葉に、はやての目に涙が浮かぶ。
しかし……ここで折れる訳にはいかない。
ヴィータ達が自分を想ってくれているように、自分も彼女達を大切に思っているのだ。
故にはやては拒絶する……拒絶しなければならない。
「でも……!」
「……諦めろ、はやてとやら」
横合いからかけられた予想外の声――ロージェノムの一言に、はやては思わず言葉を呑み込んだ。
自分を見つめるなのは達を一度見渡し、ロージェノムは続ける。
「この者達は大グレン団の戦士達と同じだ。己の決めた道を己の決めたやり方で貫き通す、気高く力強い意思――お前が幾ら止めたところで、この者達は止まりはしない」
――それは、お前も同じだろう……?
そう諭すロージェノムの脳裏に、あの日、あの最期の戦いでの、シモン達の口上が蘇った。
――因果の輪廻に囚われようと、遺した想いが扉を開く!
――無限の宇宙が阻もうと、この血の滾りが定めを決める!
――天も次元も突破して……掴んでみせるぜ、己の道を!!
自分も参加した最初で最後の、大グレン団の名乗り……。
そうだ、どんなに絶望が立ち塞がろうとも、この者達は決して立ち止まりはしないだろう。
それが螺旋の生命の宿命――否、そんな陳腐な言葉で括れる程、その熱い衝動は単純なものではない。
「皆……」
はやては涙を拭い、力強い瞳でこう告げる。
「――ウチと一緒に、戦って!」
その言葉に、なのは達も笑顔でこう応える。
「「「「「「「「「「「応!!」」」」」」」」」」」
そこからの会議の流れは、まさに怒涛の勢いだった。
まずロージェノムの管理局への技術的協力を取り付け、続いて彼の持ち込んだ螺旋兵器ラガンの分解解析、そしてその結果を基にした螺旋力の本格的研究計画の草案作成。
その第一の目標として螺旋力を応用した新型デバイスの開発までを決めたところで、この日の会議は解散となった。
日は既に高く昇り、昼食にはちょうど良い頃合いである。
ぞろぞろと仮眠室へと急ぐなのは達を見送り、ロージェノムは一人、取調室の天井を無言で見上げていた。
これで良かったのだろうか……?
熱が冷め、冷静さを取り戻した心に渦巻くこの感情は、『ロージェノム』にとっては千年ぶりの、ロージェノムにとっては初めての、迷い……。
事情聴取でロージェノムの口にした供述に、偽りは何一つ無い。
しかし全てを話したのかと訊かれれば、そうでもないと答えるしかない。
例えばスパイラルネメシス。
螺旋力とは宇宙と生命を繋ぐ力、銀河の成長は生命の成長と比例する。
生命はより螺旋の力を得るための形を求めて発達した――それが進化。
しかしその果てに待つ未来は、螺旋力の暴走による全生命の宇宙との同一化。
過剰銀河は互いに喰い尽くしブラックホールとなり、宇宙は無に還る……。
それがスパイラルネメシスの真実である。
そして例えばロージェノムの出身世界、シモン達の母星――地球。
第97管理外世界として管理局データベースに登録されている、なのはとはやての出身世界。
時空管理局の存在も、実のところ、断片的な知識としてであるがロージェノムは記憶していた。
そしてその行く末も……。
アンチスパイラルの猛攻に追い詰められた時空管理局は、禁忌とされてきた質量兵器を解禁、総力戦を決断する。
しかし戦況を覆すことは出来ず、ミッドチルダ、及び周辺の次元世界は陥落、多くの人間が時空難民として管理外世界を含む異世界へと流出した……そう、地球にも。
時空難民からもたらされた異世界の技術により、地球の文明は急速に発展、他次元世界と肩を並べられるまでに成長する。
そして螺旋力の発見、螺旋の戦士の登場。
その後は……はやて達に話した通りである。
それがロージェノムの知る――『ロージェノム』達の辿った、この世界の未来だった。
天元突破リリカルなのはSpiral
第2話「軽くこれまでのおさらいしとこーか」(了)
ちなみに――、
「ところで皆何で一々交代しながら説明してたの? 学芸会の出し物じゃあるまいし」
なのはのもっともな疑問に、フェイトは眠そうな目で振り返りこう答えた。
「だって……ああでもしないと寝ちゃいそうだったんだもの」
以上、投下完了です。
一応これで序章が終わり、次回からはスバルの視点で話が進んでいく予定です。
前回Gjコールくれた方々、今回支援してくださった方、この場を借りてありがとうございます。
ラゼンガン→アースラゼンガン→超次元ラゼンガンのネタ、使って良いですか?
>>650 あいや待たれよ!ゆりかごとの合体で超次元はサイズ的にもあれじゃないか?
むしろそれはクレイドルラゼンガンとしてその後時空管理局本局と合体して
超次元ラゼンガンとしては!?
>>640 リリカラー氏GJ
古代の激戦からか、これは良いですね。続きが楽しみです。
>>650 熱い展開GJです。ネタは……んん、なんでもやってみては。
>>538 すごく遅いですが、キャロとバクラ氏GJ
六課の皆頑張れよ!こういうのは舐められたらあかんからな。
エリオも何時の日かバクラからキャロを嫁に(ry
653 :
エックス:2008/04/14(月) 17:56:00 ID:6RYnw5n5
突然の来訪申し訳ありません。この間は、荒らしと思わせるような行動をして申し訳ありませんでした。
お詫びだけでもしなくてはと思い、もう一度、書き込まさせていただきました。
私はただ純粋にクロス小説を読みたくて、書きたくてここに来ました。手書きですが、こう見えても私
は三年間小説を書き続けています。ですから、みなさんの作品を見ているうちに、自分の腕試しとして
投稿したくなりました。しかしながら、今回の出来事を起こしてしまい、申し訳ありませんでした。
今の私には、そんな資格がないと思っておりますが、もし皆様が認めていただけるのなら、
もう一度、私に投稿のチャンスを下さい。今日はもうパソコンが使えないので、明日のこの時間に皆様
の返事を見に来ます。どうかよろしくお願いします
まずsageよう。な?
あと面白いならいいよ
何というか髣髴とさせるなぁ
何をとは言わんがね
もしかして貴方スパロボX氏では?
最近来た人間だが
>>653は何をやらかしたんだ?
まだsageすら出来ん以上チャンスなど無い
侘びと言いつつさらなる荒らし行為の上乗せしてるような輩に何を許すか
>653 お断わり申す、お引き取り願おう。
悪いことは言わないから、ルールを理解し、実行できるようになるまで来ないでほしい。
最近いろいろあってね。ルールやマナーを守れない人には厳しく行きたいと思っているんだ。
えーと、投下してOKでしょうか?
7KB程度の短編です。連載予定。
ひゃっはー、もう我慢できねえッ!投下、投下!!
タフの方舟 理想郷の夢 プロローグ
時空管理局<無限書庫>目録。
その中に、一枚の異形の音声データの入ったデータスティックがある。
収集世界=第322観測指定世界フロ・ブラナ
記録時期=約26年前
記録内容=神話と伝説、医学
―――病気、未知
交易基地、既に廃棄済み
録音は……まだ使えるな、良かった。
俺の名はラルク・アクタイオン。ブローカー見習い――次元世界間の取引を請け負う職業をしていた。
このデータを拾った人間に、重大な警告を与えよう。この次元世界――フロ・ブラナを襲う災厄のことだ。
あたりが宵闇に包まれるのも、近いな。
忌々しいことに、これが俺にとっての最後の宵ってことになる。もう一度朝日が拝める頃には、この世界に人間は残っていないだろう。
夕日がいましがた、西の絶壁に沈んで見えなくなった。じきに、薄明かりは容赦なく俺の元に忍び寄ってくることだろうさ。
それに合わせてるみたいに星も、宵の空に姿を現そうとしている。
だが、唯一、あの星だけは、夜も昼も、昼も夜も、常に輝きを失わない。
何時だって天上にある星。
恒星を除いて、全天で最も明るい星だ。
それは、名を―――<禍つ星>という。
うっ、ゲホ、
(咳き込む音。この時点で病状は悪化していたと思われる)
ゲホ、うぇ。
糞ったれ、こんな世界に来るんじゃなかった。
今日は、ジャニールを埋葬した。岩がちの地面を、半日以上かけて素手で掘り進めたんだ。腕が燃えるように痛み出してきたから、ついにそれ以上ほるのを諦めて、
この手で亡骸を埋めた。
つらい試練が終わり、この悲惨極まる星の土の最後のひとすくいを彼女の顔にかぶせて。
墓標の石を載せた俺は、墓前に立ち尽くし―――唾を吐きかけた。
何もかも、あの女――ジャニールが悪い。本人にもそう言ってやった。死の床についた彼女にも、何度となく。
最期が近づいてきたと悟った頃には、彼女も自分の非を認めたよ。
この次元世界――何でも管理したがる管理局の連中も管理したがらない未開の辺境に来ようと言い出したこと、
まだ間に合ううちに脱出しようと言い出さなかったこと。
そして、彼女がここで死んでしまうばっかりに、俺の死は誰にも看取ってもらえず、埋葬もされずに野生動物――忌々しい火竜ども――に食い荒らされることだ。
最初、この世界では、大型の知的昆虫生命がいるって聞いたが、連中は疫病で瀕死で取引どころじゃなかった。
チャーター船を呼び戻すべきだと俺はいったが、彼女は俺の話なんて聞かずに、この世界は俺たちに金貨と宝石の山をもたらすだなんて御伽噺みたいなことを言ってた。
そうとも、なにもかもジャニールが悪い。
<禍つ星>は白く瞬く星だった。
何時も白く瞬いて、この地を明るく照らし出している。
現地の連中――ジャニールによればアルハザードによる統治時代に隷属種として使役されてた昆虫ども――の伝承によれば、
この地を3年に一度襲う疫病を撒き散らしているのが、あの<禍つ星>なんだそうだ。
馬鹿馬鹿しい。
当時、この世界に降り立って数日だった俺たちは笑い、後進的な土着種族の迷信を嗤い、疫病を天から降ってくると思い込んでる奴らを嘲笑したもんさ。
騙りの可能性もある荒らしだから、皆さんスルーした方がいいですよ。
それと皆、耳をすませて!
>>661が何か重要なことを言った!
というわけで支援ですwどうぞ。
けど、今ならわかる。
あれは全部本当のことだったんだ。
ここにはフロ・ブラナなんて名前がついてるが、現実には死の世界でしかない。
地獄そのものだ。
昔の統治時代の遺物らしい地図にフロ・ブタナって載っているのをジャニールが見つけたからそう呼んでいたが、もうその名では二度と呼ぶまい。
連中を支配していたのは、アルハザード――<聖王の揺り篭>なんてもんが実在したんだからあるんだろうな――でも高位の魔導師だったとジャニールは考えていた。
どんな連中だったかは知らないが、ここの昆虫どもはよほどろくでもない奴隷だったらしい。
何故なら、この世界に<禍つ星>なんて糞ろくでもないものを配置して、その残酷な光を降り注がせていたんだから、な。
今なら、半年前にきた補給船に乗って帰ればよかったと思う。
ジャニールの払う給金なんか無視して。
実際、既に悪疫は広がり始めていた。
数少ない現地の野生動物は皮膚を腫れ上がらせて、裂けた皮膚から体液を垂れ流して死んだ。
可愛らしい雛鳥が痙攣して死ぬのを見たときは肝が冷えたさ。
昆虫どもは、薬でも質量兵器――ご法度の品だが、ジャニールが密輸したんだ――でもなく、傘を買い求めにきた。
苛烈な<禍つ星>の光から身を守るために。
笑っちまうよ、一番売れたのが傘だなんて。
―――最初は、ジャニールの用意した薬も効いていた。彼女は博識で、俺の知らないような病気の名前でも知っていて、最初の疫病も、その次の疫病も、
そのまた次の疫病の名を知っていた。
けど、病魔は際限無く襲ってきた。
やがて薬も尽き、
そのうち未知の病気も現れ始め――とうとう今日の明け方、ジャニールを墓場へ引きずっていく羽目になった。
ジャニールを蝕んだ病の名は、わからない。あえてつけるなら、<ジャニール病>かな。
笑うなよ?
わかってるさ、自分にネーミングセンスがないことは。
かつてはすらりとした活発な女だったジャニールは、死の床につくうちに強張り、四肢は本来の倍の太さに膨れ上がった。
肥大化した彼女の遺体を埋めるのに、どれだけ巨大な墓穴を掘らねばならなかったことか。
俺が掛かっている病は彼女とは異なるが、やはり見たこともない奇病だ。
たしかなのは、動くたびに、身体の中を生きた炎が通り抜けるように痛むこと。
肌は鉛色になって、肌はガサガサだ。
朝起きてベッドの上を見ると、無数の破片と真っ赤な液体でベッドがいっぱいになっている。
破片は崩れた肉片で、真っ赤な液体はまだ生きてる生身から流れ出た血だ。
俺も長くはない。
頭上に掛かる<禍つ星>は、その白さをますます増し、今では大きく、眩い。
何故、あんなに大きくて白いのか、今ではわかる気がする。
白は純真さを示す色だ。
<禍つ星>は、災厄を――病魔と死を撒き散らすことでこの世界を浄化しているんじゃないか。
皮肉なことに、な。
今俺は、貿易センターのなかの椅子に腰かけ、ワインを飲みながらこの記録を取っている。
このワインを飲み終えたら、倉庫から持ち出した質量兵器――シンプルな拳銃で命を絶とうと思う。
高級品なのか、安酒とは違って偉く美味いワインだよ。
ガキのころにクラナガンで見た風景を思い出しながら、今はこの酒を飲もうと思う。
(長い沈黙)
この記録がもし見つかることがあれば………
(短い沈黙)
絶対に騙されるな、この星は地獄だ。
<禍つ星>はいずれまた輝き始めるだろう。この記録を見つけた者は、すぐにここを立ち去れ。
ここは生命が生きていける場所じゃない。
地獄だ。
疫病の種類は無限にあるんだ。
ついにワインが尽きた。
(記録終了)
ユーノ・スクライアは、今しがた聞き終えた記録の内容を反芻していた。
<ジェイル・スカリエッティ事件>が終わった今、暇ができてはユーノはこのアルハザードの遺産とされる<禍つ星>について考えていた。
もし実在するとすれば、それは<聖王の揺り篭>以上の脅威だろう。
実在すれば、だが。
調査隊が該当世界に言ったとき、<禍つ星>らしきものはまるで観測されなかったと言う。
全ては男の妄想だった可能性も、現地生物が死に絶えた今となっては否定できないのだ。
だが、もし実在したなら―――。
そこで、ユーノの思考は断ち切られた。
何故なら―――。
「ユーノくぅ〜んッ!!」
最愛の想い人が来訪したから。
「あ、なのはッ!今日はどうしたの?」
データスティックを机の上におき、ユーノは立ち上がった――。
煮えたぎる溶岩。酸素無き大気の満ちた大地。
緑色の魔力素の充満した惑星―――極めて原始的な誕生したばかりの星の遥か上空、衛星軌道上を、一隻の次元航行艦が飛んでいた。
その船の名は、<方舟>号。またの名を――<禍つ星>という。
不意に、空間が歪んだ。
次元転移。
<種>を蒔き終えた<方舟>号は、次なる世界へと旅立った――その身に、ありとあらゆる種族の遺伝子情報を積んだ黒い方舟は、次に何を振りまくのか。
それは、誰にもわからない。
この船の持ち主の名は、ハヴィランド・タフ。魔導師でもなんでもない、普通の商人である。
そして、管理局を揺るがす騒動が始まる―――。
投下完了。
クロス元はSF小説「タフの方舟」シリーズ。
慇懃無礼な商人と管理局の争いが、始まる……!
人生で初めての一人称形式のSSだったりします。
元ネタわからねぇ! けど、文章から絶望的な雰囲気だけはリアルに感じ取れました。
え、何? この禍つ星ってミッドチルダくんの?
なんか冒頭だけ見ると希望ゼロのストーリーに思えちゃいますね。
あと、初の一人称形式ということで。これはなかなか高度な技術が要りますよ。
しかし、すでに冒頭で十分な文章力を見せ付けられましたので、あとは期待して待たせていただきますw
GJっした。
>>666 うはwwww
ジョージ・R・R・マーティン作品キタwwwww
GJ!
今気づいたこと。666・・・大いなる獣・・・?
>>667 大丈夫です。タフィは基本的に平和主義。多分。
<方舟>号にご期待ください。
>>668 うおー、わかる人いたーッ!!前々から(どう考えてもロストロギアです。ありがとうございました)って思っていたので
やっちゃいました。
タフは大好きです。
GJ!!です。
タフって聞くと、灘神影流活殺術の使い手しか分からないよぅ。
ダフって聞くと光クラブしかry
タフさんはおそらく管理局よりも遥かに平和に貢献してますよ。
むしろ管理局方がよっぽどアコギです。
むしろ余計な善意ほど性質の悪いものはないという好例です。
>>670 ポカーン(そっちのほうがわからないよー、と思っている人)
>>671 名前すらあってないーw
>>672 なんだかんだ言って問題は解決してますからねえ、タフ。
あの慇懃無礼を再現したいです。
674 :
一尉:2008/04/14(月) 20:32:38 ID:mp2XQBmr
支援たな。
>>673 GJ!
ググって調べてみましたが危険な船みたいですな。
本の帯に宇宙一あこぎな商人と書かれるハヴィランド・タフはワロタw
タフキターー!!
これは期待せざるおえないw
処で、タフが乗ってるってことは、一緒にぬこたん達も来てるってことか。
あの主人公らしからぬ体型と喋り方は大好きです。
うわぁ、何言ってんだ俺
文章が支離滅裂過ぎるorz
とにかく、期待!
>>675 タフの方舟はオススメです。文庫で二冊ですし。
>>676 勿論、ネコで念話を傍受したりw タフィからネコは外せない。
あの体型がまたいいですよねえ、なのは世界にいなくて。
今気付いた。あと8kbだ
というわけで新スレ建ててきます
しかし、箱舟があれば食料とかの心配は無さそうです。
自給自足できる船舶は人類の夢です。
>>680 自給自足できる船舶と聞くとパッパラ隊を思い出すなww
飛行機の中で畑耕してたしwww
>>681 懐かしいなwww
冷却用の水とか使ってたんだっけw
そういえば、パッパラ隊とのクロスあったなあ。
桜花だっけ?来てたの。
それにしてもタフィが意外と反響あって吃驚w
>>681 確か、ギガントだったっけ?
この回位だよな江口大尉の超能力がまともに役に立ったのは……
>>683 そうそうwww
あと、艦内で宗教創めてたりwww
>>685 あの人の能力って凄いのかどうかわからないよなぁwww
天元突破リリカルなのはSpiral氏GJ
>>508です。もちろん、合体のアイデアはOKです。
と言うか採用して欲しくて書き込みました。
次回も楽しみにしています。
遅れたけど天元突破GJ!
689 :
エックス:2008/04/15(火) 16:53:30 ID:Hxz46X+A
申し訳ありません。約束通り来ました。皆様の意見を見させていただきました。
皆様が怒っていらっしゃるので、読んで下さるかどうかわかりませんし、基本
シリアスなので面白いと思って下さるか分かりません。
ですが、一度だけでも目に通して下されば幸いです。前回出した小説のデータ
が消えたので、もう一つの作品を出させてもらいます。
時間がやっぱり掛かるので待ってて下さい
>>689 「書き込む」の横に名前欄があるでしょう。
さらにその横に注目してください。
E-mail(省略可):とあります。
その枠内にsageと入力してください。
>>689 貴方が文章に込められている意味が理解できない、学習能力も無い人間というのは理解しました。
何度もsageの方法を教えられているにもかかわらず、毎回ageられるのも鬱陶しいので
とっとと投下するなら投下して、もう二度と書き込まないで去ってください。
最良なのは、投下せず、書き込みも二度としないことですが。
692 :
エックス:2008/04/15(火) 17:52:00 ID:Hxz46X+A
今からおよそ100年前、時空管理局が設立。本局は次元空間の中に、地上本部はミッドチルダに設置された。
管理局は治安維持のために、魔法文明を推奨、従来の質量兵器を堅く禁じた。しかしながら、この意見に多くの
レプリロイドが反発、長きに渡るレプリロイドの反乱の幕開けとなった。
およそ75年前、現在の三提督により、反乱が静まる。この時を境に、管理局は対レプリロイド部隊、イレギュ
ラーハンター課を設置する。以後、犯罪及びクーデターを起こすレプリロイドをイレギュラーと呼ぶようになる
15年前、当時のイレギュラーハンター課第17精鋭部隊長シグマによる大規模なイレギュラー事件が起きる。
しかしこの時、まだ新米だったエックスによって、事件は無事に解決する。その後彼は、シグマに変わって第1
7精鋭部隊長となり、多くの事件でめざましい活躍をする見せる。
しかし2年前、彼は突如、前線から降りる。これがきっかけとなり、イレギュラーハンター課は弱体化、変わり
に自警集団がイレギュラーを処分するようになった。中でも、「レッドアラート」は民衆から絶大な指示を得る
ようになる。
現在、ロストロギア「レリック」を求めるメカニロイド、ガジェットドローンの対処のため、俺は機動六課の応援
援として出向中
第0特殊部隊長 ゼロ
AXL全開 リリカルなのはStrikerS
第一話 脱走
まだ昼頃であるが、レッドアラートの基地として機能されているクリムゾンパレスで話しは始まる。アクセルは自
分の愛銃アクセルパレットのトリガーを引き、監視カメラのレーザーの動きを止める。動きが止まったのを確認し
ては走る。こんな単純作業を繰り返していた。
「逃げるのにこんなに苦労するとは、思わなかったな」
ようやく、出口についた。トリガーを何度も引き、扉のロックを解除する。やがて、ロックが外れ、扉が開いた。
これで、やっと逃げられる。
「逃げ出すのか」
不意に後ろから声が聞こえた。振り返ってみると、カラスを擬人化させたようなレプリロイドがいた。ウインド・
カラスティング、アクセルの親友だ。アクセルはパレットを構えるとカラスティングの方へ向けた。
「どうしても、駄目なのか」
アクセルは返事の代わりに、トリガーを引いた。カラスティングは軽くかわすと、自分の短剣を引き抜き、投げた
。アクセルもそれをかわすと、二発、三発と連続で撃ちながら後退する。
しかし、彼は追いかけて来なかった。それでも、アクセルは攻撃の手を止めずに逃げ続けた。
気がつけば、彼ほクリムゾンパレスから離れていった。
l^丶
| '゙''"'''゙ y-―, いまかんれ おらいちしななし によげんえん
ミ ´ ∀ ` ,:'
(丶 (丶 ミ いあ いあ
(( ミ ;': ハ,_,ハ ハ,_,ハ
;: ミ ';´∀`'; ';´∀`';,,
`:; ,:' c c.ミ' c c.ミ
U"゙'''~"^'丶) u''゙"J u''゙"J
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,―-y'"'~"゙´ | まぶんてかっこよ こかっこ ふかかっこ あまるしき
ヽ ´ ∀ ` ゙':
ミ .,/) 、/) いあ いあ
゙, "' ´''ミ ハ,_,ハ ハ,_,ハ
(( ミ ;:' ,:' ´∀`'; ,:' ´∀`';
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♪ ∧,, ∧ かーってうれしい ♪
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( __フ(_/彡 ∧,, ∧ ) ) Οノ ヽ_)
(_/彡 ( ) ) Οノ 'ヽ_)
( ) Οノ 'ヽ_)
(ゝ. Οノ 'ヽ_) ♪
♪ ミ ヽ_
(*´乙`)<所詮は獣だ。人の言葉も解さんだろう。
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ヽ、,;' ・ ω ・ ミ
ミ====[==]=l==ミ
ミ ヽ) (ノ ;;
';, ミ
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∪"゙'''"゙∪
とりあえず
♪ ∧,, ∧ あっなたーが ほしいっ ♪
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∧,, ∧ ・ω・) )
♪∧,, ∧ ・ω・) )っ__フ ♪
∧,, ∧ ・ω・) )っ__フ(_/ 彡
( ・ω・) )っ__フ(_/彡
(っ )っ__フ(_/彡
( __フ(_/彡 ∧,, ∧ 私ですね分かります
(_/彡 ( )
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(ゝ. Οノ ♪
♪ ミ ヽ_