第一部+第二部
ジョナサン 卿 ブラフォード シュトロハイム シーザー スケコマシーザー
究極生命体カーズ様 ワムウ様 スト様 石仮面+ブルりん+吸血馬
第三部
承太郎 法皇花京院 一巡花京院+平賀才人 メロン花京院
ジョセフ アブドゥル ポルナレフ イギー
DIO様 ンドゥール ペットショップ ヴァニラ・アイス ホル・ホース
ダービー兄 ミドラー デーボ エンヤ婆 アヌビス神 ボインゴ
第四部
東方仗助 仗助+トニオさん 広瀬康一 アンリエッタの康一 虹村億泰 ミキタカ+etc 間田
シンデレラ カトレアのトニオさん 岸辺露伴 静(アクトン・ベイビー)+露伴
デッドマン吉良 猫草 キラー・クイーン 猫→猫草
第五部
ブチャラティ ポルナレフ+ココ・ジャンボ(亀ナレフ) アバ茶 ナラ・アバ・ブチャ組
ルイズトリッシュ マルコトリッシュ ナンテコッタ・フーゴ アバ+才人 ジョルノ ミスタ
ディアボロとドッピオ プロシュートの兄貴 リゾット ローリングストーン 偉大兄貴
ギアッチョ メローネ 俺TUEEEディアボロ ペッシ ホルマジオ スクアーロ
暗殺チーム全員 紫煙+緑日 ブラック・サバス セッコ 亀ナレフ+ジョルノ イルーゾォ
サーレー
第六部
引力徐倫 星を見た徐倫 F・F アナスイ ウェザー エルメェス エンポリオ ヘビー・ウェザー
プッチ神父 帽子 ホワイトスネイク 白蛇ホワイトスネイク リキエル
SBR
ジャイロ+才人 ジョニィ マイク・O
リンゴォ マウンテン・ティム Dio
バオー+その他
橋沢育郎 バオー犬 味見コンビ(露伴+ブチャ) 決闘ギーシュ タバサの奇妙なダンジョン ジョナサン+才人 銃は杖よりも強し(ホル・ホース)
・行数は最大で60行。 一行につき全角で128文字まで。
・一度に書き込めるのは4096Byts、全角だと2048文字分。
・専用ブラウザなら文字数、行数を管理してくれるので目安がつけやすいかも。
・先頭行が改行だけで22行を超えると、投下した文章がエラー無しにザ・ハンドされます。 空白だけでも入れて下さい。
>1シルバーチャリ乙!!
一思いに右でやってくれ…
NO!NO!NO!
ひ・・・、左?
NO!NO!NO!
もしかして両方ですかー!!
YES!YES!YES!
もしかして
>>1乙ですかぁー!!
, -― ――-、
/に (ニ==\
//') に二) (ヽ 新スレを立てやがったなッ!
〃____,r^)__,r、(ニユ| よく立ててくれたよなぁぁぁぁぁぁ
i! ● / /● ヾヽヽ,!
>>1斡!……
ヽニ⊃,// ⊂⊃}:}ソi …じゃなくて
>>1逸!
/⌒ヽ__ ヘ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~/⌒ヽ
\ /::::: >,、 __, イァ/ /
. \ |三/ []「/__ /
`ヽ「ミヾr‐ 、[]「ヾ三/
,. ― 、 / ̄\ __
/ ヽ 〈 〉 / \
l / / l |
ヽ | ,. -―― ┴ 、 /
ヽ / ヽ / ̄
O// / ,.イ ヽ ヽ ヽ'; /
イ/ l lィ ト、ム ム斗} }|
∨l从! ○ l ノ ○ リ || ○
/⌒〉 /{. /u u l || …は違う…
ヽ \ / .|人u △ u/ ∧ ぐぐぐ………
/ ∧ ≧,ェ‐ェ '/ ∧. \
>>1鬱…じゃない……
〈 ムィ! V /Tl / ム ヽ l!\
>>1曰でもなくて……
ヽ l/ Y ☆V /:.:.:.∨ ; }
ノ ./ /:,ヽ/! ヽ:.−;! /
/ /l /:.:.:.7:∧:.\ \| ヽ
/ l ヽ \:./:/l ll:.:.:.:.ヽ .〉 \
ヽ | _ ∧ ∨ l l l:.:./ /:| ヽ ヽ
ヽ | >―} } l/ /:. | } 丿
イノ l >− / 〈 ヽ,| .//
ー/ 7:ー−:.'/ ヽィ 厂:| .乂_ノ
|/∨:.:.:.:/:.:./ l:.:\「::l:.:| ハ
/:.:.:.:./:.:./ l:.:.:.:.:.::.l:.:|ハ从
/:.:.:.:./:.:./ l:.:.:.:.:.:.l:.:|
/./ |:.|:.:.:./:.:/:.∧:.:!:.:.:.:.:.:.ハ:.:.:ハ::.:.ヽ.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ:.::.:.ヽ.:..:ヽ、
|:.| |:.|:.:.:|:.,.ィTfヽ.:!:.:.:.:.:.:|_」⊥⊥._.:|.:.:.:.:.:ヽ.:.:|:.::.:.:.:N.:.:.:.\
レ |ハ.:.∧| |,≠ミ|ハ,:.:.:.:.:| ヽ:| ヽ.:.`ト、:.:.:.:.:!:.:|.:.:.:.:.:|.:.\:.:.:.|
. |:.:N|:.ハ.ヽ {::::::トヽ.:.:.:.| ≠テト、|:.i:.:/.:.|:.:|.:.:.:.:.:|.:.:| \|
. |/ V:.| |Vr| \:| トハ:::r } 〉V:.:.:.|_.|:.:.:.:.:.:|.:.:|
V .ゝ‐' ∨こソ !.:.:.:| ヽ:.:.:.:.:|.:.:|
| ``` ’ ' ' '` |:.:/ 八:.:.:.:|ヽ|
. ', 、._ _ |//.:.:.:/|.:.|
>>6 \ Y } __ //¨.:.:.:.:.:/ V ・・・・・・
>>1小津か?
\ ー ', -< ´: : :  ̄>くリ_ 俺は高校まで行ってたから一般常識並みの語学力はあるぜ
_><´ : : : : : : : : : : : : : : : : \
r<´: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : \
∨: : : : _,. - ――- 、--: 、: : : : : : : : : : |
\/―‐ 、 ` <: :ヽ: : : : __/
/.: : : : : : : : \  ̄ ̄/´
,r_.ェ-_、_
/::と Z つ:::`ヽ、
/::::::::::::(._フ" ):::::::::ヽ
':::::::/:::::::::`'''´::::::::::::tタ',
>>7 l:::::::f:::(((ぅ:::l::::i:::l::::::l:::l:::', 間違った事言ってんじゃあねーぞッ!
l:::::::i:::::::l:_:_:|_:_凵⊥l-|:l::| このマンモーニがッ!
',:::::::!::::::|で6ラ')ノィ5ラ川
ヽ::::i::::::l ''"'( ::{;i::::j::リ`二ヽ-、 __ もう一ペン同じ事ような間違いを犯しやがったら
{ヽ::l::::::l 、.ノ::://ニ二:.eヽ ヽ‐=' O) てめーをブン殴るッ!!
ハ \:::::l ∈=':〃ニニニ::.’i }e、ヽ ̄
ム e,\ヽドェ.、二ノ=-‐'`iニFl | e、\
/ヾ〉 e、`r― - = 二⌒i lニF|e|、_e、
/e、 ヾ〉 e、 \ _/ (r \| |-F|’| \ e、
/ e、 ヾ〉 e、 //" \rぅ|eF|el \
{e、\ e、ヾ>、/ l |l \_.ノ´l’E|’!
\._ `ミ>、/ ,イ[|l ll 、ヽ、.ノ, ,' 〃| l
ヽ ,e´//e' rタ´e' `7''`r'' // (()j l
\ /´{ rタ'´e' e'/ e、∨/ e、 ¨ l
9 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/31(月) 11:59:40 ID:O7N5BY/u
新キャラも出そうぜ。
ラバーソールあたりなんかどうだ?
一桁なわけないのに一桁とか書いちまったww
ルイズの爆発くらってくる・・・
\\ First kiss か ら 始 ま る ふ た り の 恋 の //
\\ H I S T R Y Y Y Y Y Y Y Y Y Y Y Y Y Y Y ! //
\\ こ の 運 命 に 魔 法 か け た //
\\ 君 が 突 然 あ ら わ れ た ァ ァ ―――z___ ッ! //
,ィ =个=、 _ _ _ ,。='゚=。、
〃  ̄ ヘ 〈_/´ ̄ `ヽ 〃 ` ヽ. 〃 ^ヽ 〃 `´`ヽ. 〃了⌒ヽ
くリ 7"バlキ〉>∩ { {_jイ」/j」!〉∩ l lf小从} l∩. J{ ハ从{_,∩ {lヽ从从ノl∩. ノ {_八ノノリ、∩
トlミ| ゚ー゚ノlミ| 彡. ヽl| ゚ ヮ゚ノj| 彡 ノハ{*゚ヮ゚ノハ彡 ノルノー゚ノjし彡 ヾヘ(゚)-゚イリ彡 (( リ ゚ヮ゚ノノ))彡
>>1乙!
>>1乙ゥ!
. /ミ/ノ水i⊂彡 ⊂j{不}l⊂彡 ((/} )犬⊂彡. /く{ {丈}⊂彡 /_ノ水⊂彡 /ノOV⊂彡
/ く/_jl ハ. く7 {_}ハ> ./"く/_jl〉`'l l く/_jlム! | }J/__jl〉」. (7}ヽ/∧
.ん'、じ'フ .ノ ,,,,‘ーrtァー’ ,,,,,,んーし'ノ-,ノ レ-ヘじフ〜l ノんi_j_jハ_〉 /__ ノ_j
,,-''´  ̄ヽ ミ 乂 彡 |!i!ii| ∩. ,、 、 (⌒⌒⌒⌒) ,−−、 ___
ミハ^^ヽヽ(∩ =0o◎o0∩ (;゚Д゚)彡 ,ヘハ@ヘ∩. ( △ △∩ _|_Jo_ミ∩ (ミミミ三 ミ∩
ル ゚∀゚)ζ彡 さ `Д´)彡 . ( ⊂彡. ゞ ゚∀゚)彡 (/ ・∀・彡 ( ´∀`)彡 (`∀´ )彡
( ⊂彡゛ ( ⊂彡 | | ( ノ::⊂彡 ( ⊂彡. ( ⊂彡. ( ⊂彡.
| | | | . し ⌒J. │ │ . | | | | | |
し ⌒J. し ⌒J し ⌒J. し ⌒J. し ⌒J. し ⌒J
>>1乙!!
そして前スレ仮面氏GJ!!
ついに波紋の戦士と石仮面が邂逅するのかッ!?
場所違いかもしれませんけど短編を投下します。
私が儀式の上で召喚した使い魔はちょっと変わっていた。
人よりも記憶力が良くて
「これ、君が落とした物だよね………うん間違いない。確かに君が落とした物だ」
「ちっ違う僕のじゃない!」
そう言ってギージュが慌てたように私の使い魔に叫ぶ。
「いや確かに君のポッケから落ちたものだ」
そう言って私の使い魔はギージュに香水のビンを渡した。
人とは違った力を持っていた。
「決闘…………」
そう言いかけたギージュの顔が真っ青に染まり始める。
「おいおい、まるでたちの悪い風邪にかかったようじゃないか。気をつけたほうがいいぞ。
昔似たような病気にかかった事がある……。ゆっくり養生した方が良い。」
「………ねえ、あんた文字読めるの?」
「こっちの世界の文字は読めないよ。でも憶えておけば後でゆっくり読み直せるだろう?」
そう言って私の使い魔はゆっくりと本をめくっていた。
彼は幽霊の書物を持っていた。それには色々な事が書かれていた。
「…別段大したことは書いてない。僕の体験した事を書いているだけだ。」
そう言って彼はその幽霊の書物に顔を下ろした。
「それにページが色々と抜け落ちている。人生の書としては不十分だろうね。」
彼はつまらなさそうにそう言った。
ガリア王ジョセフとの最後の戦い。
彼はゆっくりと幽霊の書物を体の中から取り出した。
「行くぞ【The Book】、デルフ」
そう言って彼は2つの相棒を持って私の前に立つ。
「ひでえな。俺が後かよ」
「愚痴らないでくれ。【The Book】は生まれてからずっと僕の傍にいるんだ」
そう言って【The Book】を開いて今までの記憶を振り返る私の使い魔。
「楽しかった?」
「楽しい事もあった。辛い事もあった。悲しい事もあった。
それも全て【The Book】が記憶してくれている。」
そう言って私の使い魔は幽霊の書物に顔を下ろした。
「使い魔としての記憶
もし世界一素晴しい本があるのなら…………
きっとその本で世界が救えると私は信じている。
『“The Book”jojo's bizarre adventure 4th another day』
より 蓮見 琢馬
すみません。途中見落としてました。
「使い魔としての記憶
↓
「使い魔としての記憶はまあ悪くないって所かな?」
凡ミスを………。
うわあああああああああああktkrGJ!
The Book来たぁぁぁ!!
もう俺にとっちゃ最高の短編!
やっぱ蓮見琢馬が好きだああ!
GJ!
The bookからの召喚は初だっけな
琢馬は自分の意思で「絶対に精神的な敗北をしない」と誓ってるのが好きだ
だからそのシーンもちょろっとでいいから見たかった
露伴先生に頼んで
>>15に書かせようか
避難所に新連載確認!!
嘘です
願望を込めた嘘です
イエス!エイプリルフール!
つまりイギーの作品が来るという事か
ここでルイズが族長を召喚しましたが連載開始
うそだが
本日の午後23時59分までに小ネタを書いて投下する!
無理ならブチャラティ戦のジョルノになるけどな!エイプリルフールだし!
許可しないぃぃぃぃぃぃぃ!!
これ以上、このスレでの嘘は許可しないぃぃぃぃぃ!!!
>24
なので投下してくだちい
>>15-16 まとめに入れようとしたら、タイトル無かったので、とりあえず小ネタに「The Book」で登録しましたッ!
>25
ごめん、ありゃ嘘だった
>27
( ゚д゚ )
おおっと!本来エイプリルフールは当日の午前中が有効期限だぜ
花粉症が辛い……
銃杖の続きがなかなか進まないので、勢いで書いたネタを投下する。
連載は……しないと思う。もししたら、エイプリルフールってことで誤魔化されておいてくれ。
ある男が居た。
ジョースター家と百年に渡る戦いを繰り広げ、死してなお怨恨を残して敵を苦しめ続け
た強大な力を持つ吸血鬼。
かつて、その男は世界を握りかけた。
スタンドと呼ばれる力の中でも、停止した時間を自由に行動することが出来るその男の
力は特に強力だった。
同じ能力を持つスタンド使いが現れなければ、男は唯一の弱点である日光を時間停止と
いう能力を持って克服し、世界を支配しただろう。
だが、歴史は彼を否定した。
彼の意思を継ぐ者が宇宙そのものを巡って夢を追い求めても、彼が目指したものに辿り
着くことはなかったのだ。
其の過程で、世界中の人間達に降りかかった苦難は、多くのものを不幸に貶め、多くの
ものを成長させた。
結果として、其の男は世界に希望の種を蒔いたのだ。
男が、それを望んでいなかったとしても。
世界の名を持つスタンド使いにして吸血鬼ディオ・ブランドーと、黄金の精神を血に宿
したジョースターの一族の戦いは、長いものだった。
始まりは文献の中に止まり、見聞きした人物は既に土へと還った。
ある機関が物語の一部始終を記した文献には、数え切れないほどの名前が連なっている。
だが、一人だけ、物語の発端とも言える位置にありながら、名前を記されなかった人物
がいた。
物語に幾度となく登場するディオ・ブランドーが未だ純真であった頃を知る、其の人物
の名前は……
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは、生まれてこのかた一
度として感じたことがない程の嫌な予感に襲われていた。
ハルケギニアに存在する四大王国の一つ、トリステイン王国は公爵家の三女として生を
受けたルイズは、支配階級とも言えるメイジの血筋でありながら、魔法成功率ゼロと罵ら
れてゼロのルイズ、なんて不名誉な二つ名を付けられている。
だが、それはいい。
才能が無いことなんて、幼い頃から分かっている。割り切れているわけではないし、そ
れがコンプレックスになっていることも自覚している。ただ、そういうのとはまったく無
関係なところで、自分は窮地に立たされているのではないかと思うのだ。
貴族の子女が魔法と知識を培う場所、トリステイン魔法学院の進級試験を前に、ルイズ
は冷や汗たっぷりで小枝のような小さな杖を握り締めていた。
「早くしろよ、ルイズ!」
「後はお前だけだぞ!」
「いい加減、帰りたいんだよ!」
「意地張ってないで、無理なら無理って言えよ!」
学院の敷地から少し離れた草原に集まったもうすぐ二年生の級友達の野次が飛ぶ。
使い魔召喚の儀と呼ばれる試験では、ハルケギニアに住む生き物を呼び出し、自身の手
足として共に生きる使い魔として契約する必要がある。
召喚の魔法そのものは単純で、およそ失敗するようなものではない。
事実、この試験に落ちた人間は過去に存在していないのだ。合格率100%である。
だが、ルイズはゼロだ。どんな魔法だって成功させられないなら、この試験に合格する
ことは不可能。歴史上初の黒星を上げて、永久に合格率を約100%にすることになるだ
ろう。
支援
それはとても不名誉なことだ。
由緒正しい公爵家の名に傷をつけることになる。厳しくも優しい父や、規律を重んじる
反面で愛情深い母、キツイ性格だが誰よりも家族を思いやる上の姉、そして、魔法が成功
しないために叱られてばかりだった自分を暖かく抱き締めてくれた下の姉。その全てを裏
切ってしまうのだ。
それは、なんとしても避けなければならない。
だが、それ以上に、ルイズは召喚の魔法を使ってはいけない気がして仕方がなかった。
良くないものが出てくる。そんな確信があるのだ。
「どうしました、ミス・ヴァリエール。使い魔召喚の儀は、既に始まっておるのですぞ」
杖を握り締めたまま動かないルイズに頭の禿げた中年親父が声を掛けた。
トリステイン魔法学院で教員を務めるコルベールだ。教育熱心だが、研究オタクで自分
の世界に没頭することが多くある。だが、威張ったところも無いために、生徒達からの人
気はそれなりにあった。
「み、ミスタ・コルベール。今日はちょっと体調が悪いので、儀式を延期してはダメでし
ょうか?」
そんな弱気なルイズの言葉に、野次を飛ばしていた生徒達は顔色を変えてざわつき始め
た。
このルイズという少女は、人一倍気が強く、負けず嫌いだ。魔法が使えないために座学
では誰よりも優秀な点を取る。それは、彼女が負けを認めることを悉く嫌うために、日夜
努力を惜しまないからだ。
この少女は、ヤルなと言ってもヤル!そう感じさせるスゴ味がある。いや、実際に何度
もやってきた。周りの迷惑も考えずに。
だというのに、晴れ舞台の日に野次を飛ばされておきながら引き下がるなんて、考えら
れないことだった。
「ど、どうしたんだよルイズ!」
「途中で投げ出すなんて、ルイズらしくないぞ!」
「頑張れルイズ!負けるなルイズ!」
「天変地異の前触れなのか?誰か、僕の頬を抓ってくれ!夢を見ているかもしれない!」
先程まで好き勝手に喚いていた連中が、今度は励ましの声を掛け始める。
ルイズが何もせずに引き下がるというのは、それほどまでに異常な事態だったのだ。
「ミ、ミス・ヴァリエール。すまないが、儀式は神聖なもの。延期というのは相応の事情
がなければ認められるものではない。体調不良というのは気の毒だが、そこを耐えて儀式
に挑んではもらえないだろうか」
これまでに何度もルイズを教えてきたコルベールも異常事態に冷や汗を流しつつ、ルイ
ズに儀式を継続するように促した。
「待ってください、ミスタ・コルベール!彼女がああまで言うんです、なにか事情がある
のではないでしょうか」
赤い髪のグンバツボディーの少女が、手を上げて近付いて来る。傍らには赤い体の巨大
なトカゲが並んでいた。
「ミス・ツェルプストーですか。しかし、これは進級試験です。ここで中断した場合、彼
女は留年、もしくは退学となってしまいますぞ」
コルベールの言葉に、ツェルプストーと呼ばれた少女は力なく肩を落として首を振ると、
悲しげにルイズを見つめて言った。
「仕方ありませんわ。ミス・ヴァリエール自身がそれを良しとしているんですもの。無理
強いをして女に恥をかかせるのは、殿方のやることではないと思いますわ」
言いたいことはつまり、失敗が恐くて動けないでいるのだろう、ということだ。
言葉の意味を受け取って、ううむ、と唸るコルベールにしな垂れかかった少女は、杖を
握り締めるルイズに流し目をくれて、ほほ、と笑った。
馬鹿にしているのだ。
「こ、ここ、この色ボケ女ああああ!いい度胸してるじゃないの!!」
ツェルプストー言葉と態度から全てを察したルイズは、全身を支配していた不安感を押
し退けて怒りに身を任せた。
「いいわ!見ていなさい!あんたの使い魔なんかよりも、遥かに強くて高潔で、格好良い
使い魔を召喚してやるんだから!!」
生来の気の強さを発揮したルイズは、ピンクブロンドの長い髪を翻して、杖を高く掲げ
る。そうしている間にやっぱり不安感がどんどん強くなっていくが、チラリと視線を横に
向けた先にニヤニヤと笑みを浮かべたツェルプストーが見えた為、途中で止めることもで
きなかった。
「えーっと、ハルケギニアにいる、いえ、トリステイン国内、いや、やっぱりわたしの実
家の庭に居る小鳥あたり!うん、その辺の無難な使い魔よ!もうツェルプストーとかどう
でもいいわ!凄く普通の使い魔をわたしは求める!絶対可愛がるから、お願いだから我が
導きに答えて!!」
凄くいい加減な呪文を唱え、ルイズは杖を振った。
召喚の魔法はコモン・マジックと呼ばれる、口語で行われる魔法だ。そのため、必要な
意味が篭められていれば、どんな呪文でも構わない。
だが、さすがにルイズの呪文は酷すぎるだろう、と誰もが思った。
「こんな呪文じゃ、また失敗ね」
そうツェルプストーが呟いたのに合わせて、ルイズが杖を振った先で爆発が起こった。
魔法を失敗するたびに起きる、恒例の現象だ。
爆風で土煙が巻き上げられ、その場に居た全員の衣服を汚す。殺傷力こそ大したもので
はないが、発生する煤や爆風は歓迎できるものではない。
煙で悪くなった視界が晴れてくると、爆発の余波を受けた生徒達が目を鋭くさせて爆沈
地を見つめる。
服や髪をボロボロにしたルイズが、何かを見ていた。
「……墓石?」
てっきり失敗したかと思っていた一同は、ルイズの声に爆発に対する抗議も忘れて召喚
の魔法で呼び出された、墓石と思われる石に注目した。
あまり大きくない台座に、小さな十字架が乗せられている。
ハルケギニアの平民は、あまり立派な墓を作ったりはしない。大抵は土に埋めて、其の
上に簡単な墓標を立てるくらいだ。
そう考えると、一応墓石としての形を持っているということは、この石はあまり位の高
くない貴族の墓である可能性があった。
「えっと……読めないわね」
台座に刻まれている文字のようなものに視線を這わせたルイズが、ハルケギニアの公用
語であるガリア語でも魔法で使用するルーン文字でもないために眉を潜めた。
未知の言語となると、古代の文献や専門職の人間の助けがいる。
無駄に強い不安に駆られていたルイズは、召喚で出てきたものが少々罰当たりではある
ものの、大したものではないことに胸を撫で下ろし、コルベールにどうすればいいか尋ね
ようと振り向いた。
そして、突然足を掴まれたことで悲鳴を上げた。
「き、きゃあああああああああああ!!?」
「ミス・ヴァリエール!?」
足を掴まれたために転び、杖を遠く手放してしまったルイズにコルベールが駆け寄り、
其の体を起こそうと手を差し伸べる。
だが、ルイズの足を掴んだ手の力は思いのほか強く、引っ張るくらいでは外れそうに無
かった。
もしかしてあのおっさんか!?支援
「ゾンビだ!ゼロのルイズがゾンビを召喚したぞ!」
「クソ、ある意味レアだ!だが、俺は頼まれてもゾンビなんて使い魔にしたくない!」
「というか、どこのゾンビだ!?こういうものを作るのは、法律で禁じられてるんじゃな
いのか!?」
「バカヤロウ!誰がゾンビなんて作る方法を知ってるって言うんだ!ありえないことに法
律が対応してるわけ無いだろ!やっぱりこれは夢なんだよ!」
ギャラリーは混乱しているようで、助けには来てくれそうに無い。
「こ、この!!」
ルイズの手を掴んだまま、もう片方の手で杖を構えたコルベールは、魔法の詠唱を始め
て杖の先端から炎を生み出した。
炎がヘビのようにうねり、宙を這って地面から突き出る腕に襲い掛かる。
ルイズの足を避けて、炎が手首を軽く焦がすと、すぐに地面から悲鳴が上がった。
「うっぎゃあああああああああ!!」
実に品の無い悲鳴だった。
「な!誰か中に、地面に埋まっているのか!?」
足を開放されたルイズを墓石から引き離したコルベールは、火傷跡をつけてぶるぶると
震える腕の下を見た。
「誰か!穴を掘るのを手伝ってくれ!」
様子を見守っていた生徒達にコル・ベールが呼びかけると、派手な格好をした巻き毛の
金髪少年が、薔薇を手に前に出た。
「任せてください、ミスタ・コルベール。この青銅のギーシュが、瞬く間にその穴から婦
女子を襲う不届き者を引き摺り出してご覧に入れましょう」
「は?あ、いや、掘るだけでいいのだが……」
コルベールの声が聞こえているのか居ないのか、ギーシュと名乗った少年は薔薇を掲げ
て指を鳴らすと、傍らに控えていた土色の物体に指示を出した。
「行け!ヴェルダンデ!土の中に居る不審な輩を、ここに引き摺り出しておくれ!」
土色の物体が突き出した鼻をピクピク動かして返事をすると、大きな両手で猛烈に土を
掘り始めた。あまりの勢いに、掘り出された土が宙を舞い、見ていた生徒たちの頭に降り
かかる。
「僕の使い魔、ヴェルダンデはジャイアントモールだ。土の中を自由自在に動き回り、匂
いだけで周囲の状況を正確に把握する。小悪党の一人や二人、軽く捕まえてくれるよ」
ジャイアントモールとは、つまるところ、でかいモグラだ。
しかし、ギーシュが自信満々に言う通り、ついさっき土を掘り始めてばかりだというの
に、ヴェルダンデはもう大人がすっぽり入れるほどの大きな穴を開けると、更に奥へと進
み始めていた。
それから十秒も経たないうちに、もう一度品の無い悲鳴が草原に響いた。
ヴェルダンデが最初に開けた穴から顔を覗かせ、何かを口に銜えて引き摺っている。
「足だね」
足だった。
自分の体を最初に土の上に出したヴェルダンデは、続いて銜えていた足を引っ張って目
的の人物を引きずり出した。
「……貴族じゃないわね!」
ヴェルダンデに引きずり出された男を見て、ルイズは断言した。
貧相な身なりの男だ。体こそ大きいが、頭頂部が禿げてコルベールと似たような髪形に
なっている。白髪であることから、それなりの年齢であることは窺えるが、掛けたり抜け
たりしている歯を見ると、正しく医者にかかれるとも思えない。となると、長生きをして
いるわけでもないのだろう。見た目よりも実年齢は若いのかもしれない。
右眉の上に傷跡がある男は、ヴェルダンデに引き摺られた足を必死に剥がそうとして躍
起になっているようだが、うまく行かないらしい。全身を土で汚してぐちゃぐちゃになっ
ていた。
なんとなく誰だかわかった気が支援
「放せ化け物!おれなんか食っても美味かねえぞー!!」
一心不乱に暴れ続ける男を見て、ルイズは少しあっけに取られた様子のコルベールに視
線を移した。
「ははは!どうだい、僕のヴェルダンデは!ジャイアントモールという種族は、土の中を
馬に匹敵する速度で走ることが出来る。そのパワーは人間の比ではないよ!」
自慢話が続けるギーシュを横目に、墓石からゆっくりと近付いてくるコルベールに駆け
寄ったルイズは、今、一番気にかかっている点を尋ねた。
聞きたくないが、聞いておかないと後悔をするかもしれない。
「ミスタ・コルベール。あ、あの。わたしが召喚したのは、あの男なのでしょうか?」
その言葉に、コルベールはまだ暴れ続けている男と墓石を交互に見て、その様だね、と
答えた。
「おわああああ!?なんだ!誰だテメエら!!うっひいぃぃぃ、化け物がたくさんいるう
ううう!!?ま、まさか、邪教徒の集団か!?こっちみてニヤニヤするんじゃねえええぇ
ぇぇ!ひえええぇえ、助けてくれえええ!だ、誰かー!」
大の男にしては、酷く情けない悲鳴だ。あまりの滑稽さに、生徒達は笑いを堪えるのに
必死のようだった。
だが、あまり笑えない状況に立たされているルイズは、この世の終わりを見ているかの
ような絶望に、顔を真っ青にして視線を男とコルベールの間を何度も往復させていた。
「み、みみみみみ、ミスタ・コルベール。あ、あいつを召喚したということは、わ、わた
しは、あ、ああ、あいつと契約を結ばなければならないという、こ、ここ、こと、で、で
でです、よね?」
どもりながらも尋ねるルイズに、コルベールは気の毒そうな表情になって頷いた。
召喚は、使い魔とする生物を呼び出しただけでは終わらない。
魔法の契約を持って、主従の証となるルーンを刻むことで、初めて召喚の儀式は終わる
のだ。
そして、魔法の契約は口付けを持って成される。
つまり、キスである。
「い、いや!いやよ!!わたしのファーストキスが、あんな下品で臭い、情けないオッサ
ンだなんて!」
生まれてから16年間清い体を保ってきたのは、どこの誰とも分からないオッサンのた
めではない。断じて、ない。
年頃の少女であるルイズは、胸に秘めた純情な乙女心を打ち砕くであろう事実に、首を
振って後退り、まるでナイフを構えるかのように杖を両手で握り締めた。
「うお!?待て!止めろ!その変な生き物をこっちに近づけるな!!やめろ、止めろって
言ってるだろうが!近付くんじゃねえええええ!!」
すっかり生徒たちの遊び道具となった謎の男は、本日召喚されてばかりの使い魔たちに
囲まれて悲鳴を上げている。
握った土を投げつけ、唾を吐き、屁をこく。
プライドも何も無い様子で近付く使い魔を追い払っている様子は、ルイズに芽生える嫌
悪感を更に強める結果となっていた。
「ミスタ・コルベール。同じ女として、あんなのと契約をさせるのは、ちょっとどうかと
思いますわ」
「そうは言うが、ミス・ツェルプストー。使い魔召喚の儀は神聖なものだ。一度召喚した
使い魔がイヤだからといって、再召喚を認めるわけにはいかないのだよ」
ツェルプストーに首を縦に振り、コルベールの意見に首を激しく横に振ったルイズは、
杖を自分の喉元に当てると、目を閉じた。
「あんなのとキスをするくらいなら、わたしはこの場で自害します。さようなら、お父様、
お母様、エレオノール姉さま、ちい姉さま。先立つ不幸をお許しください」
魔法を発動させるルーンを口にし始めたルイズに、コルベールとツェルプストーが慌て
て止めにかかった。
「放して!死なせて!!わたし、あんなのと口付けしてまで生きていたくない!!」
両手両足に絡まるコルベールとツェルプストーの腕から逃れようと暴れるルイズは、そ
れが自分の力では引き剥がせないと分かると、杖の先を口の中に突っ込んでルーンの続き
を唱え始める。
「うわああああ!!待て、待ちたまえ、ミス・ヴァリエール!!わかったから!学院長と
相談して、何とかするから!!落ち着きたまえ!」
「そうよ、ヴァリエール!こんなところで死ぬなんて考えちゃダメ!良い子だから、落ち
着いて今後について話し合いましょう!なんとか署名とか集めて、学院長に納得させるか
ら!早まっちゃダメよ!!」
取り押さえるコルベールとツェルプストーの脳裏にあるのは、ルイズが魔法を使ったと
きに必ず起きる爆発だ。
爆風で衣服を焼き、引き千切るだけのパワーがある爆発が、もしも口の中で発動なんて
したら、一生もののトラウマとなりそうなスプラッタな光景が出来上がるだろう。もう肉
の類は食べられなくなるかもしれない。
「ほ、本当に?本当に、アレと契約しなくてもいいの?」
一応、コルベールとツェルプストーの訴えが届いたのか、ルイズが少しだけ落ち着きを
取り戻して杖を口から放した。
激しく首を縦に振るツェルプストーの横で、コルベールは空気を読まずに言ってはいけ
ない言葉を漏らした。
「あ、いや。それは学院長に聞いてみないことには……むぐっ!?」
気が付いたツェルプストーが口を閉ざしたが、もう遅かった。
「いやあああああ!!死ぬ!死んでやるうううう!!ふぁ、ファイアーボール!!」
紡いだルーンが完成し、ルイズの杖が口の中で青白く発光したかと思うと、いつものよ
うに爆発が起きて悲鳴が上がった。
「うわあああ!?オッサンがいきなり爆発した!!」
「どういうことだ!爆弾でも抱えてたのか!?」
「死んだか!死んだのか!?だったら埋めてやろう!ちょうど墓石もあるしな!!」
「いや、生きてる!辛うじて生きてるぞ!衛生兵、じゃなくて、水の系統のメイジ!治療
してやってくれ!」
杖はルイズの口の中に向けられえているが、どうやら爆発はまったく別の場所で起きた
ようだ。呼び出された謎のオッサンの傍で爆発したらしく、もうもうと煙を上げている様
子が見て取れる。
「……はあ、ヴァリエールのノーコンに助けられたわね」
ルイズは魔法を失敗するだけでなく、狙いも付けられない。流石に杖の先端すら狙えな
かったというのは初めてだが、それが今回は命を繋げる結果になったらしい。
コルベールとキュルケは呆然とするルイズを目にしてホッと胸を撫で下ろし、事態の収
拾をどうすればいいのかと頭を悩ませるのだった。
後日、男がダリオ・ブランドーという名前であることが判明したが、その名前がハルケ
ギニアの歴史に刻まれることは最後まで無かった。
投下終了!イヤッホー!脇役大好きー!!
そして、何回3/6を投下すれば気が済むんだ、オレ。orz
銃杖のほうは、明日か明後日までには投下する予定。
毒殺されたオッサンか。
自分の頭じゃどう頑張っても有能な使い魔にはならんなあ
乙。
でもあのおっさんは息子の幸せは願っていたと思う
あのままなにも教えず死んでもよかったのに
わざわざ息子に成り上がるチャンスを与えて成り上がれと言ったり
なんだかんだいってもあのおっさんは息子の将来が輝くものであることを祈ってたんだろう
>>42 問題はDIOは「生まれ付いての悪」であった事だ。
ダリオ乙。
ほんといろんなキャラが来るなあ。DIOはほどよくカリスマがあってほどよく矮小さがあるのが魅力だけど、ダリオから矮小さを受け継いでいる気がする。
全然関係ないけどゼロの来訪者さん読み直してたら
ウィキ関連単語: タバサ ドロドロ ショック オスマン トライアングル 大丈夫 カッター 雰囲気 マヌケ 絶好調
とかあってお茶吹いた
45 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/02(水) 08:30:57 ID:dKS7c2ms
誰かラバーソールを投下してくれぇーーーーーーッ!!
ラバソの何がそこまで
>>45を動かすのか…
ぶっちゃけ、行動原理が金だから主役にさせづらいんだよなぁ
そのくせ能力強いし
敵キャラとしては良いキャラなんだが……主人公には…ねぇ?
ラバーソールはなぁ・・・やたら強い能力以外は悪役スタンド使いの典型だもんなぁ・・・
強い力に溺れて歪みきった性格に、ちょっとボコにされるととたんに卑屈になるゲスっぷり。
悪役としては魅力はあるけど、ラスボスには絶対なれない、典型的小者キャラ。
こんなん主人公にするのは難しいよなぁ・・・
48 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/02(水) 11:09:05 ID:dKS7c2ms
>>43 前にも書き込んだんだが、ディオは『家族愛に恵まれなかったビーティー』だと思っている俺
いや決して、『ゴージャスアイリン』のコミックスに書かれていた成長したビーティーが
ディオそっくりだからじゃないですよ、いやホントw
52 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/02(水) 12:24:09 ID:dKS7c2ms
>>51 自分で書くともはや小説ではなくなるから頼んでいるんだ。
ラバーソールはホント、敵としては動かしやすいんだけどな……
ブジュルブジュル食われちゃうフーケは見たくないわけで
まあぱっと考えついた所で…
なにかにつけてルイズに金を要求。少ないと働かない。
金の匂いをかぎつけてフーケと手を組む→俺ってラッキー(ry
モット伯から金の匂い→俺ってラッキー(ry
アンリエッタから謝礼を貰う→俺ってラッキー(ry
ワルド→なにが『閃光』だッ!or はひィーはひィー…もう戦え(ry
Jガイルよりは扱いやすいが…
ダメだ……俺じゃまじめなの書けそうに無い…
>52
とりあえず書いてみたら? 避難所で。
あと、ここはsage進行だよ。
ラバーソウルはエアニードルでも切れなさそう
エアハンマーでもノーダメだろうし……
原作じゃ炎も氷も無効だったし唯一効きそうなのはライトニングクラウドだけか?
少しずつルイズに感化されて勇ましくなっていくラバーソール…
Jガイルでダーク路線の方が楽な気がするなw
でもズィー・ズィーとかグレーフライよりは多分やりやすいよ!
>>56 『味見』だとレビテーションでかなり上空まで持ち上げてから落下させてたな
>>56 直接攻撃じゃない方法ならけっこう楽に倒せそうだが
炎ならコッパゲ先生みたく周りの物を燃やして酸欠
水、土ならスタンドの外側から水や土で包んで、承り方式
風は竜巻で上空まで持ち上げてから落とす
イエローテンパランスの最大の弱点は、防御に特化しすぎて
相手に致命的なダメージを与えるのに時間がかかるから
なるだけ相手と間合いを取らんと逆に対処されてしまう事だと思う
(承り戦でも肉片取り付かせたら後は逃げ回ってた方が良かったろーし
射程の都合もあったのかもしれんが……)
やってもたorz
仮面とか奇妙とか茨みたいに、ルイズにラバーソウルを使わせてみたいけど……序盤のルイズじゃ精神的に危なすぎる気がする。
>>60 ホリィさんや雅三(チープの本体)みたく制御できずに暴走して、
本体であるルイズの肉体も溶かして喰らおうとする展開になりそうな
キュルケの胸を喰って自分の胸にするわけだな
ここはルーン効果で肉体は傷つけない…
つまり服だけをゲフンゲフン
「キラは今…空気弾を撃たないんじゃあなく、撃って来れないんだッ!
その証拠に何発も撃てばいいのに、一発づつしか撃って来てないッ!
今…億泰さんが爆弾に変わってるから撃てないんだッ!」
「何が言いてえんだ…」
「逆に言うと億泰さんを救う方法があるってことさ!それは…」
「『キラークイーン』!『スイッチ』を入れろッ!」
「僕が触ればいいんだッ!」
「召還成功したようですね、ミス・ヴァリエール。では『コントラクト・サーヴァント』を」
「分かりました」
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
ドッバァァ――z___ン
その流れだと第4部完ッ!じゃねぇかww
四月一日に投下する予定だったのに大幅に遅れた。
しかたないから、エイプリルフールのつもりで叫ぶぜ。
「少年漫画にお色気なんて必要ねえよなぁ〜!!
だから俺は硬派な作品を投下するぜ!!」
68 :
ゼロの茨:2008/04/03(木) 01:26:19 ID:SqRzNw0S
…朝目覚めて最初に目にするもの、それは枕、布団、ベッドの天蓋部屋の壁だったはずだ。
しかし最近はそれに一つ余計なモノが追加された、それは男子生徒が欲して止まないツェルプストーの寝顔だった。
「はあああああ〜……」
「朝からため息なんてついてたら、幸せが逃げちゃうわよ」
ベッドから下りて服を着替え始めた私に、ネグリジェ姿のキュルケがしなだれかかる。
私はひょいと横に移動してそれを避けると、ハーミット・パープルでぐるぐる巻きにして廊下に放り出した。
「ああんもう、乱暴なんだから」
と言ってこちらを見るキュルケの瞳はどこか楽しそうに、そして愉しそうに潤んでいる。
私は開いたままの扉に手を伸ばし、はぁ〜〜〜と長い長いため息をつきながら扉を閉じた。
*
着替えを終えたルイズが寮塔の階段を下りていく、塔の出口に差し掛かったところで、同級生の一人がこちらを見て驚いた顔をしていた。
ルイズの姿を見て、逃げるように本塔へと向かっていく生徒はそれだけではない、同級生の女子生徒のほとんどが、ルイズを見て逃げ出していく。
「まあ、ヴァリエールよ!孕まされるわ!」
誰かのそんな呟きが聞こえてきたので、ルイズはムキになって言い返した。
「誰が孕ますってのよ誰がぁ!」
顔を怒りに赤く染め、肩で息をするルイズの姿は、ある人は怒りに燃えていると判断し、ある者はキュルケに次ぐ獲物を探す獣の目だと評した。
「フーッ、フーッ!もう!なんで私ばっかりこんな目に遭うのよー!」
そんな叫びが朝の魔法学院に轟いた頃、気だるそうに起きてきたキュルケがタバサと挨拶を交わしていた。
「はぁい、タバサ、おはよ」
「……」
タバサと呼ばれた少女は、頷くだけであったが、それで十分な意思疎通が叶っていた。
キュルケはタバサの肩に軽くタッチすると二人並んで本塔の食堂へと向かっていった。
*
「あらルイズったら今日も特等席じゃない」
「………」
ルイズは不機嫌そうな表情を誤魔化すことなくキュルケを見た。
キュルケはそれに動じず、ルイズの隣の席に座ると、給仕に「料理をここに」と告げた。
朝食時、キュルケに特等席と揶揄されるルイズの席は、特に決まった場所ではない、周囲に誰も座らないから特等席と言われるだけだ。
キュルケにマッサージ(とルイズは言い張っている)をしたあの日から、キュルケはルイズにつきまとい、ついにはボーイフレンドを全員振ってしまった。
そのせいでルイズはキュルケを手籠めにしたとか、お姉様とかヘタレ責めとか言われるようになってしまった。
何度それは誤解だ、事故だと弁解しても、特定の男になびかないキュルケを落としたという事実はことのほか強い印象を植え付けたらしく、最近では放課後に人気のない食堂に呼び出され女子生徒から告白されそうにもなった。
ふとルイズが顔を上げると、向かい側の席に青い髪の少女が座った。
確かキュルケの友達で、名はタバサ。火のトライアングルであるキュルケとは対照的な、水と風のトライアングル、学院生徒の中でもかなり実力がある…らしい。
69 :
ゼロの茨:2008/04/03(木) 01:27:23 ID:SqRzNw0S
「…教えて」
「え?」
タバサは普段無口で、本ばかりを読んでいる。
喋る所など見たことのないルイズは、目の前の少女が珍しく口を開いた事実に驚いて、間抜けな声を上げてしまった。
「キュルケに…何をしたの?」
「えーと…」
純粋な疑問だった。ツェルプストー家とヴァリエール家は国境を挟んで隣同士、おかげで戦争が起こると両家はかならず激突している。
何百年にもわたる因縁を持った二家が仲良くなることなど、とても考えられないかったし、問題になりそうなキュルケの男遊びを、どんな形であれ止めてくれたことに感謝していた。
しかしタバサは普段から口数が少なく、口べたである。
彼女の身体に染みついた口調は、事務的な受け答えか、戦いで鍛えられた威圧的なしゃべり方のどちらかに限られていた。
「……何をしたの?」
「あのー、事故というか、その…」
威圧的なタバサの言葉と、困り顔のルイズを見た周囲は
「痴話喧嘩だ」とか「ルイズとタバサが女を取り合ってる」
などとささやき始めた。
キュルケは嬉しそうに、胸の前で腕を交差させて自分の身体を抱きしめ、うふふと笑みを浮かべる。
そろそろ二つ名が『ゼロ』から『工口』に突入しそうな勢いであった。
*
魔法学院の夜は早い、夜更かしする者はそれなりに周囲に気を配って夜更かしをするので、魔法学院の夜は比較的早く訪れる。
この日は、学院の外に一人の少女が出歩いていた。
「えーい!」
まるで空を飛ぶような跳躍を見せ、魔法学院の外壁を飛び越えたルイズは、ハーミット・パープルを壁面にめり込ませて勢いを殺し、ヴェストリの広場に着地した。
「ふーっ、凄いわ、凄いわ」
ルイズが両拳を握りしめて、自分の身体の変化を喜ぶと、背中に背負われたデルフリンガーから話しかけられた。
『どうだい、それが『使い手』の力よ。でもあんまり使いすぎるなよ、その分早く疲れちまう』
「うん。解ってるわよ」
ルイズは短く答えると、デルフリンガーに伸ばしていたハーミット・パープルを消した。
すると、羽のように軽かったからだが重く感じられ、足にも疲労感が襲いかかってきたが、高揚感がそれを打ち消してくれた。
ルイズは早馬と同じかそれ以上の早さで外周を駆け抜け、外壁を飛び越えたのだ。
ルイズの夢は『自力で空を飛ぶ』ことだった。それはメイジの持つ夢ではなく平民が抱く夢だと言われてきた。
デルフリンガーにハーミット・パープルを巻き付けることで得られる不可思議な力で、塀を跳び越えただけなのだが、形は違えども『自力で空を飛ぶ』メイジに一歩近づけた気がした。
「でも、やっぱり普通の魔法も使いたいな」
『そりゃー贅沢ってもんだぜ、何でもかんでもすぐに使えると思ったら大間違いさ』
「なによ、私だって……私だって頑張ってるんだから」
頬を膨らませてデルフに言い返すと、ルイズは懐から杖を取り出した。
そして左手からハーミット・パープルを出現させてデルフリンガーの柄に巻き付ける。
「もう一回、今日は魔法の練習もするわよ」
『あいよー』
ルイズの左手に浮かんだルーンが輝くと、ルイズは地面を蹴って、塀の上に飛び乗った。
「はあ…」
『どうした?』
「ううん、なんでもない」
塀の上から見る、月明かりの草原は、寮塔の窓から見た景色と違いはない。
マンティコアの背に乗って、もっと高いところから地面を見下ろしたこともある、けれども自分で空を飛び、草原を見下ろすことなど今までに一度も無かった。
満面の笑みを浮かべ、ルイズは右手に持った杖を高く掲げる。
「なんでもないわ!じゃあ行くわよ。”イル・フル・デラ・ソル・ウインデ”!」
70 :
ゼロの茨:2008/04/03(木) 01:28:16 ID:SqRzNw0S
高揚感と共にフライの呪文を詠唱し、杖を持つ手に力を込めたルイズの期待は、真後ろからの爆発音で裏切られた。
どぉぉん、という音が鳴り響いたのは魔法学院本塔の中央部分であった、そのあたりには宝物庫があり、特に強固に作られている。
「……やっちゃった」
『……やっちまったな』
外壁の上で呆然としていたルイズは、月明かりに照らされた本塔の壁を見て仰天した、影ができているのだ、本塔の壁に模様などありはしない。
つまりそれは、亀裂のような形をした影ではなく、亀裂そのものであった。
「どっ、どうしよう?」
『どうしようって…言い逃れできねーだろ、こんな派手にやっちゃ』
「でもっ、でも……(……)……え?」
不意に、ルイズの脳裏に言葉が浮かんだ。それは根本的な解決にはならないが、今のルイズに洗濯できる唯一の行動でもあった。
『嬢ちゃん?』
急に黙ったルイズを心配してか、デルフリンガーが声をかける。
「デルフ、いい案があるわ。ヴァリエール家に伝わる伝統的な方法…それは!」
『それは?』
「逃げるのよーーーーーーーーーっ!」
るいずは にげだした!
*
「って何であたしが逃げるなんて真似しなきゃいけないのよ!貴族は背中を見せちゃいけないのよ!」
数分前まで、学院から離れようと一目散に草原を駆け抜ていたルイズは、自分の行いに後悔しつつ魔法学院へと戻っていった。
早馬よりも速く逃げたルイズは、これまた早馬よりも速く戻ってきたのだ。
「ああもうどうしよう弁償かなお母様に怒られるかな…」
走りながら、絶望的な未来を想像するという、器用な真似をしているルイズは、魔法学院の壁を乗り越えた巨大なゴーレムの姿に気が付かなかった。
『前!嬢ちゃん!前!前!』
「え? うきゃあああああー!?」
ずしん!という振動が足に伝わる。
ルイズの目前に、高さ30メイルはあろうかという巨大ゴーレムの足が踏み降ろされた。
急には止まれないのか、そのまま足に体当たりしそうなルイズは、あられもない叫び声を上げながら、その場でジャンプした。
「きゃあ!きゃああ!」
『ちゃんと前見ろって!』
ゴーレムの腰あたりに足をつけたルイズは、独りでに動き出したハーミット・パープルによってゴーレムの肩にまで持ち上げられてしった。
ルイズは咄嗟に、この場から距離を取るつもりでゴーレムの肩を蹴り、更に高く跳躍した。
右手から伸びるハーミット・パープルがデルフリンガーを抜き、ゴーレムの肩を豪快に切り裂いた、それによってゴーレムの片腕がズドンと音を立てて地面に落ちる。
「ひゃあああああああああああぁぁぁぁ!!?」
しかし当の本人は何が起こったのか解らない、地面に落ちると思いこんで、叫び声を上げたまま何かにぶら下がっていた。
「きゃあああああ…あぁぁぁ…あれ?」
『嬢ちゃん、上、上』
「上?」
ルイズの身体は宙に浮いていた、もしかして『レビテーション』か『フライ』が咄嗟に発動したのかも!と思ったが、魔法を使った覚えはないのでその可能性は低い。
デルフリンガーの言うとおり上を見ると、そこには風竜に乗ったタバサとキュルケがいた。
「ルイズったらやるじゃない!見てたわよ、今の一撃」
「きゅ、きゅるけ?どうして?」
「ルイズがまた爆発を起こしたと思って外を見たら、ゴーレムが宝物庫を殴りつけてたのが見えたの。驚いて外に出たら、丁度タバサも出てくるところだったから、シルフィードに乗せて貰ったの」
「そうなの…」
71 :
ゼロの茨:2008/04/03(木) 01:28:48 ID:SqRzNw0S
ルイズが宙に浮いているのは、キュルケのレビテーションのおかげらしく、ルイズはそのままゆっくりとシルフィードの背に引き上げられていった。
「…土くれのフーケ」
タバサの呟きに、ルイズが驚く。
「あれが?今のが土くれのフーケ?」
「たぶん」
三人が空からゴーレムを見ると、ゴーレムは既に土くれに戻っていた。
宝物庫を見ると、そこにはルイズが開けた穴ではなく、土くれのフーケによって拡張された穴が空いていた。
「魔法学院から堂々と盗むなんて、大胆不敵ね。それともトリステインがだらしないのかしら」
「宝物庫は鋼鉄の壁に、スクウェアの固定化が施されてる。魔法だけで穴を開けたならフーケはスクウェアかもしれない」
「………そ、そうね。フーケはスクウェアかもしれないわね!大胆不敵な希代の大盗賊よ!」
ルイズは穴を開けたのが自分だと気付かれぬためにも、必死でタバサの言葉を肯定した。
しばらくしてから教師陣が様子を見に来ると、ルイズ達は目撃者として事情を聞かれ、翌朝早くオールド・オスマンの元に集められることになった。
*
昨晩、秘宝の『破壊の杖』が、土くれのフーケによって盗まれた、魔法学院は針の巣を突っついたような大騒ぎになり、事態の把握に努めようとした。
だが大なゴーレムが壁を破壊するという、大胆極まりない犯行のため、皆壁に空いた穴を見てあんぐりと口を開けていた。
宝物庫の壁には『破壊の杖、確かに領収いたしました。土くれのフーケ』と刻まれており、事態の把握はいつの間にか責任のなすりつけあいになっていた。
当直の教師であるミセス・シュヴルーズが門の詰め所におらず、自室で眠っていたせいだと糾弾された。
しかし、オールド・オスマンが『まともに当直をした教師が何人いるか』と問いただしたところ、皆恥ずかしそうに黙ってしまった。
結局の所皆、さぼりに身に覚えがあるらしい。
「それで目撃したというのは誰かね」
「この三名です」
オールド・オスマンが呟くと、コルベールがキュルケ、ルイズ、タバサを指さす。
学院長室の壁際に立たされた三人に視線が集中した。
「ふむ、君たちか。詳しく説明したまえ」
ルイズが進み出て、緊張した面持ちで答える。
「えっと…夜に魔法の練習をしていたんです。疲れたのでそろそろ終わりにしようと思って、学院に戻ろうとしたところで大きなゴーレムを目撃しました。ゴーレムは魔法学院の壁をまたいで出ようとするところで……危うく踏みつぶされるところでした」
「あら、30メイルはありそうなゴーレムの肩を切り裂いてたじゃない」
「ぐ、偶然よ」
キュルケがルイズを褒めようとするが、それは困る、正直なとろ偶然に過ぎないからだ。
「それで、盗み出した瞬間は目撃できなかったんですけど、その時は既に魔法学院の本塔に大きな穴が空いていました。キュルケはゴーレムの肩に、黒いローブを着たメイジを見たそうなんですけど」
そこまで言ってルイズはキュルケを見た、キュルケはウインクをすると一歩前に出て、自分の見たことを話した。
タバサからも、キュルケとほぼ同じ説明がなされると、説明を静かに聞いていた教師達はにわかにざわめきだした。
「ふーむ。後を遣おうにも、手がかりは無しか……ところでコルベールくん、ミス・ロングビルはどうしたのかね」
「それがその……、朝から姿が見えませんで」
「この非常時に、どこに行ったのじゃ」
「どこなんでしょう?」
と、噂をしていると、学院長室の扉がノックされ、ミス・ロングビルが入室した。
「ミス・ロングビル! この大変な時にどこに行っていたのですか!」
多少興奮した調子のコルベールに、申し訳ありませんと呟くと、こほんと咳をしてオスマンに向き直った。
「申し訳ありません。今朝方の騒ぎで土くれのフーケが宝物を盗んだと聞きまして、何か手がかりはないかと探しておりましたの」
「調査か、うむ。仕事が早いのぅ。ミス・ロングビル」
「それで私は、近隣の農民に聞き込んでみたのですが、朝早く、近くの森に黒いローブを着た男が入っていくのを目撃したというのです、おそらくそれがフーケではないかと思いまして…」
「な、なんですと!」
コルベールが驚くと、周囲の教師達も顔を見合わせて驚いたように何かを呟いていた。
キュルケも記憶と照らし合わせたが、なにぶん暗闇なので情報量が少ない。
「黒づくめのローブ…確かに特徴は似てるけど、タバサ、どう思う?」
「ゴーレムの肩に乗っていたのは確かにローブを着ていた。けど…」
まだ何か言いたげなタバサの台詞を遮って、キュルケが拳を握りしめた。
「…ルイズの玉の肌に傷をつけようとした罰よ…焼き尽くしてやるわ」
72 :
ゼロの茨:2008/04/03(木) 01:29:32 ID:SqRzNw0S
ギョッとした顔で教師達がルイズを見る、ルイズは恥ずかしさと緊張で萎縮し、肩を縮こまらせた。
まさかこんな所でキュルケを殴り飛ばすわけにもいかないので、無視することにしたが、誤解はますます広がるばかりであった。
だがオスマン氏は一人、目を鋭くしてミス・ロングビルに尋ねた。
「その場所を調査するか。これは魔法学院全体の責任じゃ。我々の手で事件を解決せねばならん。ミス・ロングビル、その森はどこかね?」
「はい。火の塔から西に徒歩で半日。馬で四時間の場所にあるといったところでしょうか。森の奥には使われていない廃屋と、獣道がいくつかあるそうですが…」
「しかし、我々で行くのは危険です。すぐに王室に報告しましょう、王室の衛士隊に頼んで、兵隊を差し向けてもらわなくては!」
「ならん!王室なんぞに知らせている間にフーケは逃げてしまうじゃろう、その上身にかかる火の粉も払えんで何が貴族じゃ、これは魔法学院の問題。我らで解決するのが当然じゃ」
コルベールの言葉を聞いたオスマンが、怒鳴り声でその意見を払いのけると、ミス・ロングビルはその時確かに微笑んだ。
ルイズはその微笑みを見て、何かが変だという気がした、そしてもう一つ…今まで思考の隅に追いやっていた、ある考えが頭に浮かんできた。
オスマンが咳払いをし、有志を募るため皆の顔を見渡す。
「では捜索隊を編成する。我と思う者は、杖を掲げよ」
しかし、誰も杖を掲げないどころか、教師達は困ったように顔を見合わしている。
そしてルイズも違う意味で困っていた。
「フーケを捕まえて、名をあげようと思う貴族はおらんのか!」
オールド・オスマンの声が響く、それまで俯いていたルイズが杖を抜くと、すっと顔の前に掲げた。
「ミス・ヴァリエール!あなたは生徒ではありませんか。ここ教師に任せ…」
シュヴルーズがルイズを見て驚きの声を上げたが、キュルケがそれを制した。
「お言葉ですがミセス・シュヴルーズ。勇敢なる教師の方々は誰も杖を掲げておりませんわ」
そう言って自身も杖を掲げる。
「ルイズが行くなら、私も行くわよ」
そして更にもう一人、タバサ一言呟いて杖を掲げた。
「心配」
三人が杖を掲げたのを見て、コルベールが驚き声を上げる。
「君たちは生徒じゃないか! ……オールド・オスマン、ここは私が…」
「ほっほっほ!そうか、そうか。では三人に頼むとしようか」
生徒だけでは危険だと主張するはずだったコルベールは、オールド・オスマンの発言に心底驚いていた。
「三名ともよく聞いてくれたまえ。魔法学院は、諸君らの努力と貴族の義務に期待する」
三人は、真顔になって姿勢を正し、「杖にかけて!」と唱和した。
キュルケはルイズのために。
タバサはキュルケのために。
そしてルイズは、『フーケに爆発の瞬間を見られているかもしれない』と思い、フーケの口を封じるため杖を掲げた。
*
さて、三人と、案内役のミス・ロングビルは、準備された馬車に乗って森の中を駆けていた。
馬車は幌の取り払われた、荷車のような馬車で、申し訳程度の座席が設置されている。
襲われた時すぐ飛び出せるようにと、わざわざこの馬車を選んで貰ったのだ。
ルイズは念のためにデルフリンガーを背負ってきている。
案内役のミス・ロングビルが御者を買って出ると、キュルケがそれを不思議に思ったらしく、手綱を引くロングビルに話しかけた。
「ミス・ロングビル。手綱なんて、付き人にやらせればいいじゃないですか」
ロングビルは、にっこりと笑って答える。
「いいのです。わたくしは、貴族の名をなくした者ですから」
その答えに驚いたのか、キュルケは御者席に身を傾け、話を続けた。
「でも、貴女はオールド・オスマンの秘書なのでしょ?」
「オスマン氏は、貴族や平民だということに、あまりこだわらないお方ですから」
更にずい、と身を乗り出し、顔をロングビルに近づけたキュルケは、好奇心を隠さない口調で呟いた。
「差しつかえなかったら、事情をお聞かせ願いたいわ」
ミス・ロングビルは優しい微笑みを浮かべた、遠回しな拒絶の表れであったが、ルイズはその様子に別のものを感じていた。
「キュルケ、やめなさいよ。そんなこと聞くものじゃないわ」
「もう。いいじゃないの。でもルイズに言われたらしょうがないわね」
「ええと…昔のことは根掘り葉掘り聞くものじゃないわ。誰だって言いたくないことぐらい、あるわよ」
73 :
ゼロの茨:2008/04/03(木) 01:31:03 ID:SqRzNw0S
ルイズは、以前覗き見したタバサの過去を思い出していた。
それに比べて自分は、宝物庫の壁を破壊したのが自分だとバレたくないがために、フーケの捜索隊に志願している。
自分の矮小さが情けなくなり、ため息をついた。
しかし一つ、気になることがある。
なぜ捜索隊が組まれることになった時、ロングビルが笑ったのか、それがどうしても頭に引っかかる。
ルイズがハーミット・パープルをデルフリンガーに這わすと、デルフリンガーに思考が流れ、デルフリンガーの思考はルイズに流れる、いわゆる『念話』である。
『ねえ…ロングビルって、どう思う?』
『怪しい、怪しいぜ。そもそも朝方偶然フーケを発見したってのが怪しいぜ。あと俺の見立てじゃ、男は女に変身できねえ。女は簡単に男に偽装できる』
『!』
「……まさか」
ルイズは小声で呟くと、頭の中で響いた声に従うように、ハーミット・パープルをロングビルの頭に這わせた。
『まったく土くれのフーケともあろうものが、魔法学院の秘書だなんて、我ながら笑ってしまうねえ』
「おブッ!」
尋常でない咳き込み方をしたルイズ。
それを見て、向かい側に座っていたキュルケが、ルイズの肩を抱きしめた。
「ルイズッ!ちょっと、気持ちが悪くなったの?……まさか、昨日、身体を打ち付けていたんじゃ…だとしたら大変よ!」
「だ、大丈夫、ごほっ、そんなんじゃないから、ちょっと咳き込んだだけ」
「でも…ルイズ、貴方に何かあったら私…私…」
とても以前のキュルケからは考えられない、キュルケはうっすらと目に涙すら浮かべている。
そんなに自分を心配してくれるのかー、あー流されちゃってもいいかなーと考えそうになる頭を振って、キュルケを手を振りほどいた。
「大丈夫よ、大丈夫。緊張してるのよ、わたし」
「本当に?」
「ええ」
ルイズはキュルケを席に着かせると、再度ハーミット・パープルをロングビルの頭に這わせた。
『まったく度胸のない嬢ちゃんだねえ。これじゃ『破壊の杖』の使い方も知らないんじゃ…まあその時は別の生徒を連れ込んで、使い方を聞けばいいさ』
『教師でもいいかねえ、あの頼りなさそうなコルベールとか…でも危険な気もするんだよね。とにかく『破壊の杖』を売る前に使い方ぐらいは知っておかないと……』
ルイズは別の意味で驚いた。
もし、頭に流れ込んでくるロングビルの思考が本物なら、彼女こそが土くれのフーケであり、マジックアイテム『破壊の杖』の使い方を知るためだけに、自分たちを誘い込み、そして殺そうとしているのだ。
『ああ、それにしても……何で壁に穴なんて開いてたんだろうね、私を誘い出す罠?いや、そんなはずは無いさ、魔法学院の教師は無能揃いだし…』
今度は逆に、ほっと胸をなで下ろした。
自分があの穴を開けたのだとバレていない、しかし命の危険が迫っていることに違いはなかった。
ルイズは何とか情報を集めるべく、更にロングビルの思考を読み続けた。
『ティファニア…あんたが私のしていることを知ったら、軽蔑するんだろうね。人間の私が人を殺して金を奪って…ティファニアはハーフエルフなのに誰かが傷つくのを嫌って……』
『孤児院には金が必要なんだ、貴族の粛正で家を失った元貴族や、口減らしで捨てられた子供を育てるには金が必要なんだ』
『だから私は横暴な貴族どもから金を奪ってやるんだ。魔法学院の教師どもはどいつもこいつも屑ばかり、宝物なんて本当に宝の持ち腐れさ!』
「なによ。ルイズ、やっぱり調子悪いんじゃないの」
いつの間にか顔を青くしていたルイズの隣に、キュルケが座る。
「あ…大丈夫。大丈夫よ。平気だから」
かろうじて絞り出した言葉は、いつになく弱々しかった。
ルイズは迷っていた、見たくもない現実を知ってしまった、自分が家族を思うように、タバサが家族を思うように、フーケ…いや、マチルダ・オブ・サウスゴータも家族を思っている。
貴族としてやるべきことは決まっている、フーケを捕らえ、衛兵に引き渡せば良いのだ。
でも、それをしていいのか解らない、なぜ自分が迷っているのかすらわからない。
「どうすればいいの」
ルイズの呟きに、左手の甲に浮かんだルーンが反応した。
74 :
ゼロの茨:2008/04/03(木) 01:32:06 ID:SqRzNw0S
『…なるほど、その手があったか』
ルーンが明滅を繰り返した後、唐突にデルフリンガーの思考が流れ込んできた、まるで誰かと会話しているようだった。『デルフ、どうしたの?』
『ああ、ちょっと一芝居思いついたんだ』
『一芝居って、何よ、インテリジェンスソードのくせに』
『まあそう言うなって、嬢ちゃんには悪くない選択肢だぜ。まあ聞いてくれよ。…で嬢ちゃん、悪役になってくれねぇか?』
『は?』
*
その後、結局の所四人は無事に『破壊の杖』を取り戻し、魔法学院に帰ってくることができた。
その上『破壊の杖』が使い捨てであるという事実をオマケにして戻ってきたが、オールド・オスマンにとって思い出の品であることに違いはないので、オスマンは満足したらしい。
フーケを倒すことはできなかったが、四人はトリステイン国家が認める勲章が授与されるよう、オールド・オスマンの推薦付きで申請が出されることになったが、一同はそれを辞退。
その代わり、報償を貰うことで話が付いた。
四人は英雄のような扱いを受け、今夜開かれるフリッグの舞踏会で主役になるであろうと言われたが、ルイズは披露を理由に出席を辞退。
キュルケもルイズを看病するという名目で、舞踏会を辞退した。
タバサは主役の一人であるが、ハシバミ草と格闘中のためダンスには誘われない。
ロングビルは、舞踏会が始まる前に何処かへ行ってしまった。
結局、主役不在のまま行われた舞踏会であったが、生徒達は思い思いに踊りを楽しみ、一夜の夢を味わったようだ。
*
「ふぅ」
魔法学院の大浴場で、ため息をついたのはミス・ロングビル。
彼女は昼間の出来事を思い返して、何度目か解らぬため息をついていた。
複数存在する隠れ家のうち、魔法学院に最も近い隠れ家に『破壊の杖』を隠し、生徒達を連れて行くところまで成功した。
しかし、馬車を降り、フーケの隠れ家を遠目で確認した後から記憶がない。
三人の生徒が隠れ家の中を確認している間に、自分は別行動を取り、ゴーレムを作り出して襲うつもりだった。
しかし、突然何者かに首を絞められ、あっけなく気を失ってしまったのだ。
……そして目が覚めた時、ロングビルは馬車に寝かされていた。
傍らには、ガラクタになった『破壊の杖』が置かれていた。
魔法学院に到着するまでの間、自分が気絶している間に何が起こったのかを聞いた。
小屋の中に突入した三人は、あっけなく破壊の杖を発見。
そして小屋の外に出たところで、ローブ姿の男を発見し、ルイズが『破壊の杖』を向けたところ…ぽん!という音と共に何かが飛び出た。
後は大爆発、破壊の杖に相応しい破壊力だったようだが、それ以降ウンともスンとも言わない、よく見ると半分は詰まっていた中身が、綺麗になくなっており、『杖』は『筒』になっていた。
それから数時間フーケを捜索していると、倒れているロングビルを発見、捜索を切り上げて魔法学院に帰った…
ということらしい。
「あー…いまいましいねえ」
報償としてかなりの大金を貰ったが、どこか釈然としない。
また宝物庫を漁る機会ができたと思えば、ラッキーかもしれないが、二度も三度も同じ手が通じるとは思えない。
「頃合いを見計らって、辞めようかねえ…」
魔法学院の本塔を偶然破壊できたことで、セクハラオスマンの鼻をあかせた分、ロングビルの気分は晴れていた。
そして、故郷に残してきた血の繋がらない妹…ティファニアへの仕送りも、恩賞でめどが立った。
「ほんと、忌々しいよ…」
ロングビルの顔は、少しだけ笑っていた。
75 :
ゼロの茨:2008/04/03(木) 01:33:30 ID:SqRzNw0S
「ミス・ロングビル?一人ですか?」
浴場の扉が開かれ、中に入ってきたのはルイズだった。
「ミス・ヴァリエール。もうお体の調子はよろしいんですか?」
ロングビルは、先ほどまで殺そうとしていた相手に対し、すぐに猫を被れる自分が恨めしいと思った。
「ええ、もう大丈夫です。それよりもミス・ロングビルに話したいことが…」
「え?」
「その、気絶している間。『ティファニア、ごめんなさい』って…」
「……それは、皆さん、聞いていたんですか」
「いえ、私がミス・ロングビルを見つけた時、そんな寝言を言っていたんです」
「私、他にも何か寝言を言っていませんでしたか?」
そう言いながらロングビルは、浴槽腰掛けたルイズに近寄った、今この浴場は二人きり、他の人は居ない…必要ならこの場でルイズを殺すつもりで近寄った。
「ええと、他には、その……」
昼間、ルイズはデルフリンガーの提示した作戦を実行した。
ロングビルの思考を読んだルイズは、破壊の杖の置き場所から、ロングビルの行動まですべて解っていた。
身を隠そうとしたロングビルを左手のハーミット・パープルで気絶させ、廃屋に侵入し破壊の杖を見つける。
そこにはフーケが使ったローブがあると解っていたので、ハーミット・パープルを使ってさりげなくそれを隠した。
外に出たと同時に、ハーミット・パープルを森の中に這わせて、ローブを揺らす。まるでそこに人がいるかのように…
そこでルイズがいつものように魔法を失敗させ、爆発を起こす手はずだったが、なんとルイズには破壊の杖の使い方が解ってしまった。
デルフリンガーが言うには、それが『使い手』の力らしい、ハーミット・パープルの力なのかルーンの力なのか解らないが、面白そうなので破壊の杖を使ってみることにした。
想像を絶する爆発の後、フーケのローブが落ちてきた。
血はどこにも付着していないので、フーケは咄嗟に逃げたと判断して捜索し、頃合いを見亜計らってロングビルを発見する。
後はロングビルを連れ帰り、ティファニア、孤児院などの情報を元に、脅しをかけるつもりだった。
デルフリンガーの言った『悪役』とはこの事だったのだが……
ルイズは怖がっていた。
「それで。私…何か言ってませんでしたか?」
「そのー、えーと…あうー…」
ルイズに、脅迫などできるはずがなかった。
このままだと怪しまれて、ここで殺されてしまうかも知れない、そんなことを考え不安になっていたルイズの脳裏に、ある言葉が浮かんできた。
(………)
「あ!その、『愛していた、寂しい』…って言ってましたわ」
脳裏に浮かんだ言葉の通りに喋ると、ロングビルの態度は一変した。
「……そうですか、私、そんなことを…」
ロングビルの脳裏に、子供の頃から遊んでいた友達や、初恋の人、そして家族の姿が思い浮かぶ。
『なんてこった、あたしは寂しがってたのかい…ごめんねティファニア。私、ずっとあんたを裏切ってるわ。他人を傷つけちゃいけない、そんなことを言っておきながら、私は、私は…』
「ミス・ロングビル…」
そのばで涙を流し崩れ落ちたロングビルを、ルイズはそっと抱きしめた。
「あの、私にはよく分かりませんけど…あの…」
76 :
ゼロの茨:2008/04/03(木) 01:36:33 ID:SqRzNw0S
ルイズはこの後「元気になって下さい」とか「頑張ってください」と言うつもりだったが、ルイズが口を開くよりも早くルーンが輝き、ルイズの思考に何かが混ざった。
「あの… 涙なんて流したら美人が台無しよ」
「へ?」
口調が強くなったルイズを、ロングビルが呆れたような顔で見上げる。
「ロングビル…貴方の太もも!うなじ! もうグンパツじゃない!」
「あの、ミス・ヴァリエール?」
「ねえ、ロングビル。ヴァリエール家は悲しい時、代々伝わる方法で慰めるのが常なの………それは」
「それは?」
呆れていたロングビルの身体に、何かが絡みつく。
「!」
不可視の触手に驚いたロングビルは、そのまま体中をがんじがらめにされて湯船に放り込まれた。
「身体で解らせてあげるわーッ!」
「ちょ、やああああああーッ!? あっ」
*
翌日、妙にやつれたルイズが、キュルケを右手に、ロングビルを左手にして食事の席に座っていた。
ルイズの二つ名に『ゼロ』だけでなく『女殺し』が加えられた記念すべき日であった。
「もういやああああああ!」
尚、本人は納得してない。
77 :
ゼロの茨:2008/04/03(木) 01:38:45 ID:SqRzNw0S
以上です。
続くくかどうか解らないので、続かない、としておきます。
だが断る。続け!
茨GJ。流石このスレ一エロいお人よ
支援しようとした時にはッ
既に投下が終わっていたんだぜぇーッ!
茨さんお久しぶり!そしてGJ!
フーケ戦が斬新ですばらしい。しかしルイズがすっかりエロ少女にwwwwww
GJ!
ゼロの茨じゃなくてエロの茨ではw
GJ!
なんというエロの使い魔w
GJ!
ルイズがキュルケがフーケが壊れていく…
はっ!もしや次はタバサが(ry
アンアンと茨でギシアンしてアンアン鳴かせる訳か
いや、さすがに「アンアンはビッチだ派」でも無い限りそれは無いでしょ>ルイズ×アンアン
そう思ってもやはり「ギャグ系」に分類されそうな話だし…あるのかなー
「好きな人」がいる子とベッドインしたがるとは思いたくないんだが
いやいや、恋人を失って傷心のアンアンを慰めなくちゃ!親友として
これはエロとかビッチとかじゃないデスヨ
くやしいっ・・・でも笑ってしまう
茨、投下乙&GJです。
なんというエロの触手w
ところで今短編に入ってますけど、話数が増えたし長編に移した方がいいと思います?
タバサとモンモンが危ない!
91 :
89:2008/04/03(木) 08:24:47 ID:f/JCVbXd
と言うわけで、勝手ながら「ゼロの茨」長編に入れさせていただきました。
まぁ、同じ連作短編の「お嬢様の恋人」も長編に入ってますし・・・
キング・クリムゾン!
『SS』の投下、すんならよォォ――――……
今のうちがベストだと思うぜェェェ―――
書き損ねた! 十分ごろ投下します
支援
一章四節 〜使い魔は使い魔を知らない〜
――息が苦しい。
と、リキエルは思った。
またぞろパニックに陥ったのかといえばそうではない。顔色がいいとはいえず、冷や汗
も少し出ているが、今のリキエルはどちらかといえば平静だった。
リキエルは瓦礫を拾う手を止め、今開いている右目を、息苦しさの理由へと向けた。
「……」
教卓のあった場所から離れた、比較的きれいなままの机で、ルイズが悄然と俯いている。
リキエルのいる場所からではその表情までは窺えなかったが、消沈した面持ちであろうこ
とは、まあ予想がつく。
――さっきからずっとあのままだからな。
教卓を爆破し、教室をひっちゃかめっちゃかにしたルイズはその罰として、魔法の使用
を禁止された上での掃除を命じられた。窓拭きや箒がけのほか、窓ガラスを運ぶなどとい
ったことだ。
「主の不始末は使い魔の不始末」
オレがやることになるんだろうな、とリキエルが思っていたとおり、ルイズは不機嫌に
それだけ言うと、足裏を床に叩きつけるようにして教室を出て行ってしまった。
リキエルはひねたような顔になりながらも、掃除用具を用意し、適当に瓦礫拾いから始
めたのだが、意外なことに、それから程なくしてルイズは戻ってきた。身奇麗になってい
るところを見ると、着替えをしてきただけらしい。
しかし、かといって別段リキエルを手伝うでもなく、ルイズは目視できんばかりの濃い
陰鬱をかもし出しながら、手近な椅子を引いて座り込み、もうそれきり動かないのだった。
髪の長きは七難隠す。などといい、実際に美人と呼ばれる女性は七難どころか、例え、
腹の中に一物や二物の猛毒を溜め込んでいても、人前でさらすことはないものである。が、
同じ美人でもルイズのように年端もいかぬ少女では、いささかその長さが足りないようだ
った。とりたてて人の心情に敏くもないリキエルにも、ルイズの気持ちが落ち込んでいる
ことがよくわかった。
時たま不機嫌な空気を織り交ぜながら、陰鬱な雰囲気を撒き散らすルイズから視線を外
し、リキエルはまた、飛び散った瓦礫を拾い集める作業に戻った。
こういった場合、慰めるなりなんなりするべきなのかもしれないが、何を言えばよいか
リキエルにはわからない。半端な慰めは、却って神経を逆さに撫でるだけだろう。なにぶ
んルイズは、そうでなくともデリケェトな年頃である。迂闊に声をかけて逆鱗に触れるこ
とを考えると、リキエルにはそれがためらわれた。
かといって、捨て置くにはやはりこの空気は重い。沈黙が痛い。リキエルの胃袋の内壁
の強さは、そこいらの人となんら変わらないのだ。
リキエルは気を紛らわすためと、状況打開を図るため、ルイズがこうなった理由から考
えてみる。授業での『ちょっと失敗』発言の時ように、馬鹿にされて怒りを露にしても、
終始不遜な態度は崩さなかったルイズが、ここまで沈み込む理由は何か。
――あれか?
片づけを命じられたときの、魔法禁止で――の件である。魔法の使えないルイズへのこ
れは、リキエルにはたいそーな皮肉に聞こえた。ルイズもそう受け取ったのかもしれない。
しかし、それは違うような気もする。教室中から散々に馬鹿にされながらも言い返して
いたルイズの胆力を考えると、それが皮肉程度で動じるものかは、リキエルには甚だ疑問
だった。
ただ、案外そうやって散々馬鹿にされたことが効いていたのかもしれず、皮肉は止めの
一刺しだったのかもしれない。そして、それもまた違うのかもしれなかった。
詰まるところ、リキエルにはサッパリこんと見当がつかないのである。
リキエルは早々にさじを投げた。こんなことをするのは、心理学をお修めになったカウ
ンセラー様に万事任せるに限る、というわけだ。それでなければ教師の仕事だ。友達の少
なそうなルイズだが、相談事のできる気の置けない教師の一人くらいならいるだろう。
とかとか等等etc、適当なことを考えながら、あらかた瓦礫を片付けたリキエルは箒
を手に取り、掃き掃除を始めた。息苦しさは、少し解消されていた。
「それ、貸しなさい。手伝ってあげるから」
「おおあっ!」
考え事をしていたのがまずかったか、背後から唐突に声をかけられたリキエルは驚きで
頓狂な声を出した。ルイズは、ブスっとした顔でリキエルを睨み付ける。
「何よ。この私が、ご主人さまがラドグリアン湖のように広い心でもってわざわざ手伝い
をしようっていうのに、その反応は。文句でもあるの」
「いや、そういうわけじゃあないんだが、なんというか、意外だったんでな。全部オレに
押し付けるかと思ってたんだが」
「押し付けるって何よ! あんたが掃除するのは当然なの。むしろ自ら進んでやるべきだ
わ、あんたはわたしの使い魔なんだから!」
ルイズの言い様にリキエルは眉を顰めたが、気に留めないことにしようと思った。なん
にせよ、手伝うというなら、そうしてもらって損はない。
ただ、気になることはもう一つあった。
「しかし……なら、どうして手伝いなんかする気に?」
「あんたに任せてたらいつ終わるかわからないもの。なんか鈍くさそうだし。牛みたいな
服だから余計にね」
言いながら、ルイズはリキエルから箒を奪い取るなり背を向けて、細かいゴミを掃いて
いく。一貫性の無い掃き方で、掃き残しの塵が目立った。
――く、く……くぉのッ!
リキエルは苦虫エキスを三日分飲まされたかのような、苦りきった表情で固まっていた。
手際が良いとは自分でも思わないが、それほど悪くもないはずだ。朝の洗濯にしても、
場所さえ分かっていれば朝食までには終わっていたのだ。多分恐らくそう思う。
そもそもが、リッチマン所有の別荘の使用人だったわけでもなんでもない人間に、日常
生活に必要な技能以上の働きを求める時点で無理があるというものだ。
――だってのに、顔洗えだの着替えさせろだの、そんなことまでオレの仕事だって? 自
分でやれ自分でェ! ほったらかしで出て行くな? 朝起こせって? なんなら日の出
を拝ませてやってもよかったんだぞッ! ええッ!? 挙句に鈍くさいと言うのか! 小一
時間も重苦しい雰囲気ばら撒くだけ撒いて、口を開けばいきなりこの憎まれ口ッ! こん
なガキを慰めようだとか無駄なことッ! 少しでも考えてたオレは馬鹿もいいところだっ
たなアァァ――ァ!
リキエルは思わず、こういったことをブチまけそうになったが、
「それにちょっとしたミスでも、失敗したのはわたしだわ」
キッパリと、しかし肩を落としながら言うルイズを見て、そんな気も不思議と失せた。
そう、ガキなのだ。異様にプライドが高くとも多少傲岸の気があっても、ルイズはまだ
まだ少女なのだ。むしろ喜怒哀楽が目に見える分、年不相応に子供っぽく思える。そんな
ルイズを怒鳴りつけるのも大人気ないと、リキエルは思ったのである。
勿論、そんなことを言えばどうなるかわかったものではない、という理性も働いている。
怒鳴ろうという気はもう霧散していた。それよりも、本人の口から出た失敗という言葉
で、リキエルには先ほどの生徒達の叫び声が思い出された。
『魔法成功率ゼロ』『魔法を使えば爆発』『魔法が使えないゼロ』『学院辞めちまえ』
あの様子では毎日のように、いや、毎日言われ続けだろうか。だとすればなかなか酷い
話で、もし自分であれば耐え切れるものかどうか自信がない。
――いや……。
自分をその立場に置いて考えると、また思考が悪い方向へとどんどん流れそうになった
ので、リキエルは机を拭く雑巾を絞りながら、別のことを考えようと努めることにした。
――魔法といえば。
昨晩の話し合いによれば、自分を呼び出した『サモン・サーヴァント』と、契約を行っ
たという『コントラクト・サーヴァント』も、やはり魔法であるらしい。先ほどの授業を
聞くところによると、系統によらないものだそうで、コモン・マジックとか言っていただ
ろうか。
なんにせよその二つの魔法、前者はともかくとして、直接自分に作用した『コントラク
ト・サーヴァント』である。こちらがもし失敗していたらと思うと、ゾッとしない話だっ
た。魔法成功率が本当にゼロならば、コモン・マジックとやらを使っても、ルイズは爆発
を起こすのだろう。
自分が先ほどの小石のように吹き飛ぶ光景を思い描いてみて、リキエルは身震いした。
これはこれで後ろ向きな考えである。
「失敗。そう、失敗なのよね」
リキエルが、自分の骨の破片がマリコルヌに突き刺さるところを――これまた卑屈な考
えである――イメージしたあたりで、ルイズが手を止め、独り言のように言った。
その、小さいながらも重々しい声に、リキエルは一瞬強烈な薄ら寒さを感じて顔を上げ
た。先ほどまでの陰鬱とは一線を画す、思わずぞっとするほどに暗然とした面持ちになっ
た少女がいる。
リキエルは目を瞬かせて、詰めた息を吐いた。
――なんだ? 今の、夢遊病罹患者みたいに虚ろな声色に、遺書でもしたため始めそう
なキツイ顔はァ。尋常じゃあなかったぞ。
見間違いとも思えなかった。既にもとの勝気な表情に戻っているが、一瞬だけ垣間見え
た、暗さを突き詰めて、さらに濃縮したものを貼り付けたようなルイズの顔は、何かに憑
かれているようでさえあった。
「……失敗が、どう――」
「失敗だって証明されたのよ。今までのは全部失敗。だけど、それがいいのよ。わたしは
魔法が使えないわけじゃなかったッ。わたしの努力は無駄になってなかった!」
「あ? なんだ?」
「平民のあんたを召喚したのは失敗だけど、魔法の失敗じゃないってことよ!」
「……は〜、なるほど」
なにをか自己解決したらしく、暗い雰囲気から一転、唐突にハイになったルイズを訝し
く思いながら、リキエルは雑巾を絞ってぞんざいに相槌をうった。筋道がいまいち掴めな
いが、秋の空は変わりやすいのだと思い直した。
ただ、一抹の不安は、存外に強くリキエルの胸にこびりついた。
どうにも釈然としないリキエルを文字通り尻目にして、ルイズは箒をばさばさと振り回
しながら、今度は何やら怒りの感情をむき出しにしている。
「今まで散々馬鹿にされたわッ! もうッ! 思い出すだに腹立たしいッ!」
顔が見えないのは先ほどと同じだが、表情が安易に予想できるのも変わらなかった。喜
怒哀楽の間をせわしなく行き来するルイズは、客観的に言えば面白かったが、今はその怒
りの矛先が自分に突きつけられぬよう、リキエルは内心恐々としながら、今度は相槌も省
いて聞き流した。
ルイズは完全な躁状態に入ったようで、今何か言えば、リキエルは確実に何がしかの被
害を被ることになるだろう。雇い主には逆らわないのが堅実な生き方、というのが今のリ
キエルの考えである。君子危うきに、とはよく言ったものだ。
「生まれてこの方、いっつもいっつもいっつもいっつもいっつもいっつもいっつもいっつ
もいっつもいっつもさっきも馬鹿にされてェッ! キィ――ッ!」
「……ッ」
と、緩慢な動きで机を拭いていたリキエルの耳に、またも唐突に、聞き流せない言葉が
入った。怒りのあまり本気で「キィ――ッ!」と叫ぶ人間を、リキエルは初めて目の当た
りにしたが、そのことについての感慨は何もない。
今、リキエルの意識は全く別の場所に、それこそルイズの怒りなどまるで意に介せない
程度には離れている。
――生まれてこの方って言ったのか? 今まで努力はむくわれず、ずっと馬鹿にされ続
けてきたとそう言ったのか!? トリステイン魔法学院だったか、ここに入ってからじゃあな
かったのか! そいつはッ!
リキエルは、自分の顔が強張るのを感じた。いやに、変に、奇妙なほどに熱を持った汗
が一粒、頬を伝って首に流れ落ちていくのがわかる。
ルイズは当然のごとくそんなリキエルの様子には気づいていない。昂ぶった気持ちを抑
えるためなのか、幾度も幾度も同じ床を掃いているだけである。
「……」
リキエルは無意識に手を止めて、埃を落とした机のひとつを意味もなく凝視していた。
瞬きほどの間か、あるいは三分ほどかもしれない。ルイズが落ち着いた様子で掃き掃除
をしているところを見れば、もっとだろうか。リキエルはそうして固まっていたのだが、
気づけばルイズに問いかけていた。
「思ったことはないのか? ……諦めるとかよォ〜」
言って後悔する。この話題こそ流すべきだろうに、自分は全体、今何を言ったのか。そ
れこそ本当に爆破されかねないではないか。
少なくとも、ルイズが気を悪くすることは必至だった。それが何より、大分に気が咎め
る。爆発がどうのこうの以前に、いたずらに他人の泣き所を中傷することは、それが例え
意図的なものでなくとも、一般論としてリキエルの望むところではなかった。
「ないわ」
返答は存外に早く、そしてどこか鋭さを秘めていた。怒りといった類の気配はないが、
耳朶を打つその声は、何故かリキエルを少し不安定にした。眩暈にも似た感触をこめかみ
のあたりに覚えながら、リキエルはノロノロと顔を上げる。
ルイズは手を止めていて、リキエルに視線を向けていた。粗方怒りは発散し終えていた
らしく、仏頂面ながら、理性的な声音で後を紡いだ。
「悔しいことならいっぱい、いくらでもあるわよ。でも、そんなときは家のことを考える
の。私の『誇り』でもある、ヴァリエールの『血統』のことをね。平民のあんたに言って
もわからないでしょうけど」
「血統……」
「ヴァリエールの名に恥じない立派なメイジになる。例え苦しくても、その目標、今の私
の生きる目的がある限り、諦めようなんて考え、起きっこないわ」
当たり前のことを言うようにルイズは言った。事実当たり前なのだろう。その顔に、一
切の躊躇や負い目はない。自分の言葉に陶酔するような、薄っぺらな気色もない。当然を
当然として実践してきた厚みのある、思い切っている人間の瞳をしていた。
リキエルは何度か、その瞳に出会ったことがある。
テレビの向こう側で、街頭のインタビューに答える同年代の若者。あまり話さなかった
が、一週間ほど一緒に働いたバイト仲間。比較的長続きしたバイト先の喫茶店で、毎日来
るのに金欠でコーヒーしか頼まない中年の女性。彼らが、確かにそんな目をしていた。皆
が皆、前を向いて生きていた。
「……あとはオレがやる。多分だが、もうすぐ昼食なんだろう?」
先ほどのように、気づけば口をつついてそんな言葉が出ていた。言いながら、箒を受け
取るために手を差し出す。こちらは意識的な動きだった。
「へ? 何よいきなり。まだそんな時間じゃないわよ」
言われるまま箒を手渡しながら、しかしルイズは訝しげにリキエルをじろじろ見た。脈
絡もなしに、しかも面倒な仕事を一手に引き受けるなどと言われれば、奇妙に思い勘繰っ
てしまうのも、当然といえば当然である。
暫し沈黙したあと、リキエルは微妙に眉をしかめながら言った。
「窓ガラス運んだりするような力仕事がお前にできるか? それか、男のオレでも苦労し
そうな机をその細腕でか? そうは見えないんだがな。それに、せっかく着替えたっての
にまた汚れたいのか? どうせ長くはかからないんだ、オレ一人で事足りる」
「…………じゃあ、やっときなさいよ? さぼったりしたら承知しないからね」
ルイズはまだ浮かない顔をしているが、早口気味にリキエルが言ったことにも頷けたの
で、念を押しながらも教室を出て行く素振りを見せる。
階段を上るルイズに、今度はリキエルが背を向け、無言で手を動かす。バサバサと振り
回すようにルイズが掃いた床は、むしろ塵が飛び散っていて余計に掃き難くなっていたが、
リキエルはそのことにも何も言わない。
「……」
教室の扉に手をかけたあたりで、ルイズはなんの気なしに振り向いた。そこから見える
リキエルの背は心なしか、単なる遠近の問題以上に小さくなったように見えたが、気にす
るほどのことでもないと、ルイズは少し早足で教室を出て行った。
乾いた大きな音を教室に響かせる扉の音にも反応せず、リキエルはひたすらに手を動か
し続けた。
◆ ◆ ◆
「いあ〜、あ〜……あ痛たッ!」
トリステイン魔法学院、本塔最上階にある学院長室。
支援
そこから望める雄大な自然を眺望しながら、オスマン氏は鼻毛を抜いていた。時折うめ
き声を発して、その度に涙目で鼻を揉んだりしている。
「オールド・オスマン。そのように暇がおありなら、この書類にサインをお願いします」
オスマン氏の秘書、ミス・ロングビルが溜息混じりに言いながら羽ペンを振り、数枚の
羊皮紙をオスマン氏に向けて飛ばす。
オスマン氏は鼻を鳴らし、肩越しに飛んできた紙をヒラヒラさせながら言った。
「どうせ、王室からきたものじゃ。中身もない紙切れじゃよ。破り捨てたところで同じよ
うなもの、堅っ苦しいことは言いっこなしじゃよ、ミス。それと私の秘書を務めるからに
は、もう少しユーモアを持ちなさい……む!」
「どうかなさいましたか?」
先ほどまでとは少し違う、くぐもった感のあるうめき声に、こめかみを押さえて瞑目し
ていたロングビルも少し眉根を寄せる。
何事かと思っていると、オスマン氏が少し興奮したように振り向いた。
「ミス! 珍しいことじゃよ、黒い鼻毛じゃ! もうすっかり白一色になったと思うとったんだが!」
「……」
ロングビルは、今度は深く溜息をついて眼鏡を外し、レンズを拭いてかけ直した。そし
て、こめかみを押さえなおす。いっときばかりそうしてから、また小さく溜息をつき、顔
を上げた。
「オールド・オスマン。そのように暇がおありなら、この書類にサインをお願いします。
書類の束で、溺れたくはないでしょう?」
今までの不毛な流れをなかったものとするためか、ロングビルは同じことを繰り返す。
申し訳程度ながら冗談も織り交ぜ、ついでに、上級の部類の笑顔もくれてやった。
オスマン氏は怪訝そうな顔をした。
「ミス、何を言っとるのかね? 人は紙では溺れん。しかもそれは王室からのものではな
いか。茶化さず、もっと真面目に仕事をしていただきたい」
「…………」
「ま、まあまあ落ち着きなさいミス。そんなに青筋を立てず、な? 悪かった悪かった」
能面のような顔になったロングビルにクルリと背を向けて、オスマン氏は椅子に座って
小さくなった。その肩に、いつの間にやらロングビルの机の下に潜んでいたらしい、白い
ハツカネズミが這い上がっていく。
「おおモートソグニル。気を許せる友達はお前だけじゃ。ナッツでも食うか? ん? 誰
かさんは行き遅れとるせいか気が荒くてな。老体の話し相手もしてくれん」
ロングビルの眉が左右同時にピクリと跳ね、能面がボロボロと崩れ始める。
オスマン氏は呑気にハツカネズミとのヒソヒソ話に鼻、もとい華を咲かせ続ける。聞こ
えよがしなのは勿論、ロングビルをからかってやろうという意図あってのことだ。
オスマン氏の辞書は『反省』『自重』の項目が擦れて読めなくなっているらしかった。の
で、何事も度が過ぎれば碌なことにはならないことを、オスマン氏はウッカリ忘れた。
「さて、報告じゃ……なるほど今日は純白か。しかしミス・ロングビルは黒に限る……そ
うは思わんかねモートソグ――ハッ!」
やりすぎた、とオスマン氏が思い、振り返ったときには大分遅かった。音もなく背後に
立ったロングビルからは、あちらの世界の空気が立ち上っている。
オスマン氏を見下ろすロングビルの眼鏡がキラリと輝き、その奥の瞳はギュロォリと濁
る。一睨みで、カブトムシくらいなら殺せそうだった。
「言わなくてもいいことを言った者は! 見なくてもいいものを見た者は!! この世に存
在してはならないのですよッ!」
「いや、それは言いすぎでばふぁっ! 痛い痛い! つむじを的確に狙って拳骨ってき
み! 響く! 頭蓋に響くぞィってちょっと……蹴りはまずいよほんと、ほんとにィ!あ
だだだだ! ちょっ踵が! ピンがめり込む! わしって年寄りよ? じじいなんだけ
ど!? それをぐォぼばばばっ! 連打に乱打は洒落にならんよミス! ごめん! 後生だ
から許して! イイィィイ痛たたたた!」
回し蹴りから続く見事な二枚蹴りをロングビルは繰り出し、椅子からオスマン氏を叩き
落す。間発の後に脳天突きを三発ほど食らわせ、そこから流れるような動きで、鋭い連続
蹴りへと移行した。
「女の敵! あんたは敵よ! 敵だ、敵だっ! この! このっ! セクハラ上司に物申
すッ! 今日という今日はッ!」
ロングビルの剣幕は、収まる鞘をとうの昔に放っぽってしまったようで勢い衰えず、激
しくなっていくきらいさえある。オスマン氏は切実に、自分の後任について考え始めた。
ロングビルの蹴りが、さらに鋭さを増しはじめたそのとき、オスマン氏にとって幸運な
ことに、鞘が向こうからやってきた。
「オールド・オスマン! 大変で――大丈夫ですか? な、何があったのですか? 捨て
られる半歩手前の雑巾のようになって」
ノックもせずに学院長室の扉を開けたのは、最近研究がとみにはかどり、抜け毛の本数
が六日ぶりに減少するなどでいささか上機嫌な、ミスタ・コルベールである。どういうわ
けか血相を変えて飛び込んできたコルベールだが、ボロクソになってうち捨てられたオス
マン氏を目の当たりにし、ポカンとした表情で立ち尽くした。
「身体を若返らせるという画期的な魔法を、秘薬も使用せずに開発せんとした結果ですわ、
ミスタ・コルベール。失敗にもめげず、オールド・オスマンは魔法の新たな境地を拓かん
がため、幾度となく自らに魔法をかけ、奮闘なさったのです。メイジの鑑といえますわね」
そんなコルベールにロングビルが、眼鏡のつるにかかった卸したての絹のように肌理細
やかな薄緑色の頭髪を、小指でちょいと払いながらニコリともせずに答えた。いったいど
んな方法を使ったものか、何事もなかったかのように、大量の書類をやっつける仕事に戻
っている。
コルベールは、そんな馬鹿な、と思ったが、ロングビルの言葉の端々に見え隠れする、
察せ察せ察せ……、という声ならぬ声を肌で聞き取り、おおよその自体を飲み込んだ。
コルベールはやれやれといった風に首を振り、視線をボロクズ――オールド・オスマン
に戻す。
「オールド・オスマン、お話があります。あ〜、耳と口が残っているのなら問題ありませ
んね? 大変なことがわかったのです」
「問題なして……なかなかに外道じゃの、君。えーとなんじゃったか、ミスタ……コンス
タンティン?」
首だけをもぞもぞと動かして、オスマン氏は恨みがましい目でコルベールを見上げる。
「コルベールです! なんだか響きのいい名前で間違えないで下さい! 実質が伴わなく
て微妙に理不尽にミジメですぞ。まったく、そんなよことりもこれを見てください」
「んん? 『始祖ブリミルの使い魔たち』……か」
コルベールの差し出した古びた書物の背表紙を、オスマン氏は読み上げた。鼻の奥を、
かびの臭いがツン、とついた。
ややあってからオスマン氏は目を細め、「ふむ」と頷くと背伸びをするように立ち上がっ
た。マントについた埃を適当に払ってから、ロングビルに顔を向ける。
「ミス・ロングビル、ちょっといいかね?」
「なんでしょう」
「今朝の二年生の授業で、教室がひとつ吹っ飛んだそうじゃ。ちょろっと様子を見てきて
くれんか? 酷いようなら人を呼ばねばならんしの。そうじゃ、できるようであれば、あ
なたの『錬金』で修繕してくれるとありがたいのう。安上がりじゃし? ほっほ」
「わかりましたわ。……その後は、お先に昼食をとっても?」
「昼休みには時間があるが、いいじゃろう。そうしなさい」
鷹揚に言ってオスマン氏は微笑み、髭を撫ぜる。
ロングビルも自然な微笑を返し、軽く頭を下げ、細やかな足配りで学院長室を後にした。
さきの狂態がまるで嘘だった。髪の長き云々の手本も手本である。
オトナの女性ロングビルを、口の上をデレンと伸ばした顔で見送ったオスマン氏は、ふ
うっ、と息をつき、コルベールに向き直った。
「うまく空気を読んでくれるのう、惚れそうじゃ。なんつってな……で、コルベール君、
そのように古さとカビと胡散さで臭くなった書物などひっぱり出して、どうしたというの
かね?」
飄然とした態度を崩さず、しかし今はどこか超然としているようにも見えるオスマン氏
は、ゆるゆるとした口調でコルベールを促した。その声でしばしの間忘れていた興奮をコ
ルベールは思い出し、それを隠しもせずに声を張り上げる。
「はい、そのことです! このページとそれから、これ……をご覧下さい!」
コルベールは『始祖ブリミルの使い魔たち』の中ほどを開き、そこに挟まっていた一枚
の紙片を取り出して、古書と合わせてオスマン氏に手渡した。
「ほほゥ……これはこれは」
手渡された紙片をカサカサと広げたオスマン氏は、どこか面白がるような、感嘆ともと
れる吐息をこぼした。
「昨日の使い魔召喚の儀式で、一人の生徒が平民の青年を召喚しました。その手の甲に刻
まれたルーンをスケッチしたものがこれです。このページの、伝説の使い魔『ガンダール
ヴ』のものと酷似している! いや、寸分と違わないッ!」
「そのようじゃな。……コルベール君」
口角泡を飛ばすコルベールに顔をしかめながらオスマン氏は頷き、若干の厳しさをはら
んだ眼差しを、改めて紙片へと注ぐ。
「昼食は、大変遺憾ながら後回しになりそうじゃな?」
そう言って、オスマン氏はゆるりと自らの椅子に腰掛け、さきほどのように鼻毛を抜き
始めた。どれだけ引き抜いても、もう黒い毛は見つからなかった。
ワハハハハハハハハハ―――ッ
やったぞッ! 投下したぞッ! もう、推敲しなくてもいいぞッ!
ウワハハハハハハハハハハハハ――ッ
まだ緊張で手が震える。
GJ!
リキエル良いキャラだ、意外にルイズとの組み合わせって合うなぁ
乙です
投下乙そしてGJでした
リキエルの胃が心配になりましたw
寧ろ使空高さんの胃の方が心配になってきた
ともあれGJ!
リキエル頑張れ。まず頑張れ
久々に爺臭いオスマンが見られた気がする
GJ!
文章うまいなあ
113 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/04(金) 13:08:28 ID:ZHuyjLge
今度はホット・パンツをぜひ!
114 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/04(金) 14:42:07 ID:ZHuyjLge
俺って情けねーよなァー
死にたくなってきた・・・
>>114 ま……ま待ってェーッ
や…やめろッ!! 早まるな!
ついでにsageで頼むッ!!
音石明って強かったっけ?
>>116 スタンド使いに強い弱いの概念は無い!
どのような能力の持ち主でも使い方次第でなんとでもなる。
>>116 志村ァーッ!! メ欄! メ欄!
チリペッパーはフルパワー状態ならスタプラ以上のパワーとスピードを誇るが
エネルギー切れの場合は多分かなり弱い
オエコモバって奴がいたよね。
そいつで作って欲しい。
日本みたいなところが舞台なら反則的な強さを持っているだろうけど
コンセントも送電線も無いハルケギニアじゃ実力は発揮できないんじゃないかな
だからこそ召喚しがいがあるのかも
>>120 たしか静電気でも取り込むって聞いたけど…。
でもレッチリの強さは送電線やコンセントを使っての遠距離攻撃だと思うし
しかしとりあえずメール欄だ
エレキギターあれば取り敢えずの運用は可能だろ
ガングレODのビリーみたいには無理だけどさw
>ID:ZHuyjLge
メアド欄は基本sageだと何度も言ったよなぁ……
つーか空欄とかならともかく普通のメアドを入れるのはどうかと。
あと、メアドを書き込んでしまったレスに関しては削除依頼を出すだけ
無駄なんで以降気をつけるべし。
125 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/04(金) 18:37:52 ID:ZHuyjLge
ちょっと和んだw
>>125 和んだがアレだ。とりあえず今まで捨てアカ入力してたところに半角でsageと打ち込むんだ。
無入力、あるいはageと入力するとスレがトップに躍り出るんだが、ここでは基本sage進行(荒らしに目をつけられる恐れを減らすため)だから、
留意してくれるとありがたい
ルイズは最高のビッチだな
ほらきたwwww
ペロ…
これはアンリエッタ!
いいえ、ただのギャングです
>>131-134 _
/-‐-\
ノ ,=u=、ヽ、 __人_ _人_ _人__
/~ト=. // \\ ) (
/ヽ_ノノ三 〈 ,/ o二〔咒〕二o `、 〉 ) 場 言 う (
, く _/三.__ \_ト、_______,.イ_/ ) 合 っ ま (
/ ./三./ ノ }三 ハ|テェェv:レェェラレ.、 ) か と い (
/、__ /=/`ー' /三..ヾ〈 「|_|〉 〉ソ ) | る 事 (
/ ,/丶 /三三三. | l'ニミ! |'l ) ッ (
/ /ヽ、 /三三三. - .」\`==-'/i| ) (
/,/ _,∠ -┬―‐┬┬‐=="'' ‐<..,,_|_|"'''‐-、 ⌒Y⌒Y⌒Y⌒
,.-:「 ;:''' ! :! L..ノノ三- 、_ ハ. iヘヽ、
/|:! ,! ::::-=二王 ̄三 ̄ ̄ `'′入oヽ ´‐\
|:|:! | i'''""" !  ̄ !丁 ヽ三. ト、 ̄o ̄]ニヽ ヽ'''""ヽ
|| ! ! ,| ,;:::-┬―――三'三. |  ̄ ̄ lニヽoヽ__,,,...`、
|| !| | :::: l三|= |三. | ノ_,ヽ. ヽ_,,,.|
ヽ|l,l|l___;;;;;__ノ三!= /三三  ̄ ̄_,,.. -ヽ. ヽ
 ̄ ̄::::三三/= /三三三 """ ̄
空気(と書いてソラケと読みやがれ)読まずに、
人生など無かった、有っても哀れまれるだけのものだった、
人生を手にいれてくれ、リキエル…
オレはそれを祈らず、願う。GJ
>>134 こいつはめちゃ許せんよなぁぁぁ〜〜〜〜ッ!!(法律的な意味で)
「ひなんじょのーーー 中に 銃は 杖より 強し に がある
よ みの がし! に! 気を つけろ !」
「
>>139フ・ジョースター!
きさま!見ているなッ!」
お久しぶりです。サーレーを書いてるものです。再開の目処がたったので数日内に頑張って書き上げたいと思います。気長に待って頂けると幸いです。でわ!
ごめん!スレ更新が見れてなくて空気読めなかった!(ρ_;)
いやいや、サーレー待ってるぜ
無理しないで頑張れよ
ありがとう!
サーレーが帰ってくるヽ(*´∀`)ノ嬉しいわ〜
うおおおおおお!!
またサーレーが読めるんですねッ!
楽しみにしてるよ!
族長!(サーレー)族長!(サーレー)族長!(サーレー)族長!(サーレー)
サーレーで盛り上がってるところ
悪いんだけど投下する
「ここは・・・?」
わたしは自室のベットの中にいた。
脱ぎ散らかされた衣類、グシャグシャになったシーツと毛布。
ああ・・・いつの間にか眠っていたのね・・・だるい。
体のあちこちが痛い、変な姿勢で寝ていたからかしら。
わたしは鏡台の前に座り鏡を覗き込む・・・ひどい顔。
目は真っ赤だし、まぶたも腫上がってるし、シワシワだし・・・
「って、皺ァ!?」
寝ぼけた思考がクリアになっていく。
体がだるいのは気持ちが沈んでいたからじゃ無かった。
「グレイトフル・デッド!」
プロシュートが今この学院に対して無差別攻撃を行っている!
壁に立てかけてあったデルフリンガーを持ち辺りを警戒する。
「どうした、貴族の娘っ子?」
「プロシュートが来たわ」
「おいおい、相棒は死んだんじゃ・・・」
「黙ってて」
隣の部屋から、すすり泣く声が聞こえてくる。
わたしは直に着替えるとキュルケの部屋前に移動する。
コンコン。軽くドアをノックする。
「わたし。ルイズよ、入るわね」
鍵は掛かっていなかった。
ベットの中で泣いているキュルケに、タバサが部屋の中にいた。
「見ないで、私を見ないでルイズ」
キュルケが毛布を引き上げ顔を隠した。
「別に隠さなくてもいいわよ。わたしもシワクチャなんだから」
キュルケが毛布を目元まで下ろして視線をこちらに向けてきた。
「あなたも?一体何が起こっているのよ」
「プロシュートよ、彼が学院内で無差別攻撃を行っているわ」
「ちょ、ちょっと待ってよルイズ、彼はもうアルビオンで・・・」
ザッ ザッ ザッ ザッ・・・
この足音は!
「命が惜しかったら黙ってて」
閉じたドア越しから向こう側の様子を伺う。
ザッ ザッ ザッ ガチャリ バタン
わたしの部屋に入った!?
「どうやら来たみたい。行ってくるわ」
わたしがドアに手をかける。
「行くって、どこに?」
「決まってるわ、プロシュートに会いによ」
それだけ言い残し、わたしは自分の部屋に向かった。
部屋の中からガサゴソと音がする。わたしは思い切ってドアを開けた。
ベッドの前にプロシュートが立っていた。傷も無く服も破れていない生きていた
頃とまったく姿の変わらないプロシュートが目の前にいた。
「久しぶりねプロシュート、無差別攻撃なんて一体どういうつもり?」
言いたい事は山ほどあるが、まずはプロシュートの目的を知ることが第一。
「ようルイズ、これは実験だ」
まったく考えもしなかった答え。
「実験?」
「そうだ、オレの能力が小規模のメイジの集団に対して何処までやれるかの
なァ。あと、お前は生獲りにしてくれと子爵から注文が入ってる」
「ワルド・・・」
「だから、オレのこれからの行動は学院のヤツ等を皆殺しにしてお前を
ゲットする事だ!!」
グレイトフル・デッドがプロシュートの側に姿を現した。
支援
「あらあら、皆殺しなんて穏やかじゃありませんこと」
振り返ると制服に着替えたキュルケとタバサが立っていた。
「ちょっとルイズどういう事よ」
「説明を」
キュルケとタバサが迫ってきた。
「後で話すわ。下がっていて頂戴」
「今この状況で下がれる訳無いじゃない」
「・・・それは、わたしと一緒に戦うという事でいいの?」
「ウィ、綴りは合っているかしら」
キュルケがニヤリと笑う、タバサも頷いた。
そうと決まれば・・・わたしはグレイトフル・デッドを指差した。
「タバサ、プロシュートの前に何か『居る』のがわかる?」
たしかワルドは風の動きでグレイトフル・デッドの存在を把握していた。
「・・・微妙」
しかし、タバサの答えは頼り無いものだった。
動きがあればハッキリと判るかもしれない・・・
「キュルケ、ファイアーボールを」
「なに命令してんのよ」
ジト目でこっちを睨んでくる。
「タバサの為よ、これで倒せたら儲けものじゃない」
「・・・しょうがないわね」
キュルケがファイアーボールを唱え杖を振るう。
バシッ
炎は、あの大きな手によって弾かれ窓を破り外に突き抜けていく。
「起動が逸れた?」
火の扱いには自信のあるキュルケが驚きの声をあげる。
「違うわ、逸らされたのよ。タバサ!どう、判った?」
「・・・判った・・・何か『居る』」
タバサの顔色が悪いような・・・
「おいキュルケ、覚悟はあるんだろうな」
プロシュートがキュルケに話しかける。
「覚悟?戦う覚悟かしら」
キュルケの表情が硬い。わたしにも虚勢を張っているのが分かる。
「違うな、老いて死ぬ覚悟だ」
ギロリとキュルケを睨んだ。
「ひっ」
キュルケから虚勢が消えた。
「・・・やだ・・・」
キュルケは踵を反すとダッシュで逃げていった。
「キュルケェェェ走っちゃ駄目よ!!」
逃げるのは別に構わない。責めるつもりも無い・・・
だけど今・・・この状況で走ってはいけない・・・
投下終了
次は来週ぐらいに投下できたらいいなあ
>>149 起動×
軌道○
何で投下前に気づかない・・・
偉大なるの作者様お疲れ様でした、キュルケの美貌が心配です(><)
顔の皺よりも胸が酷いことになってそうだなw
偉大なるGJ!
ルイズブチキレモードに期待
知ってるか?
大きい胸ってのは、老いるとシワシワになって垂れ下がるし、小さくもなるんだぜ。
しかし、シリコン入りの胸は(ry
偉大なるGJ!!でも、兄貴がルイズの傍にいないのは悲しいぜ・・・
そう言えば小ネタのギーシュ座談会やワンポイントギーシュ
「勝ち組ギーシュ」である「ギーシュさん(アヌビス)」や「決闘ギーシュ」がいない
まあギーシュさんは多くの人の運命を「上向き」に変える程「格が違う」からなんだろうか
皆殺しにすると言ったならその時すでに行動は完了していなければならないはずだ
つまりこの兄貴は偽物だ〜!
プロシュート兄貴&エルメェス兄貴VSタバサ&キュルケ
>>156 まあアンドバリによって兄貴の肉体とスタンドは再生したけど
兄貴が兄貴たる所以の「偉大なる心」は死んだままですから
つまり、ニセ兄貴か。
小ネタ
響きわたる爆発音。
「またかよ」
「早く帰らせろよ」
「そうだそうだー」
ルイズ本人もあきらめかけていたが、煙の中になにやら光るものを見つけた。
かけよって拾い上げる。
が、一瞬のうちに手の中で溶けてしまった。
「・・・氷?」
ダイアー(の破片)−再起不能
こ・・・これはまたなんとも気持ちの悪いものを・・・
・・・溶けたら肉片が残らないか?
だ、ダイアーさーん!!?
冷凍肉だから、解答されたら確かに肉片が残るよね。
あ、でも、もしかしたら肉と分からないくらい細胞が壊れてるのかもしれない。
どんな状態かわからないけど。
キング・クリムゾン!!
時間を飛ばした!!
.
>>163 たった今「時間」が……!!飛んだぞッ!いつの間にか小ネタが出来上がっているッ!
ってことで、
もしラバソでやるなら〜〜〜〜と思いついた小ネタ
ラバーソールがルイズに召喚され、
色々あって、厨房でシエスタに賄い食をご馳走されたとき。
食事中の方は注意?
「ちょっと待っててくださいね」
ラバーソールを厨房の片隅に置かれた椅子に座らせると、シエスタは厨房の奥に消えた。
そして、お皿を抱えて戻ってきた。皿の中には、温かいシチューが入っていた。
「貴族の方々にお出しする料理の余りモノで作ったシチューです。よかったら食べてください」
「あんがとよォシエスタ。腹減って死にそうだったんだァ〜〜〜」
ラバーソールはシチューをスプーンで一口すすって口に運ぶ。
「かぁ〜〜〜うまいねェ〜〜〜!」
「よかった。お代わりもありますから。ごゆっくり」
ラバーソールは一口一口を味わうようにシチューを食べた。
シエスタは、ニコニコしながらそんなラバーソールの食べる様子を見つめている。
ふと、シエスタは自分の足元に、黒い何かが通り過ぎたのを感じた。
彼女は、なんだろう…と自分の足元の先を見た。
「きゃあーッ!!」
その正体が分かった瞬間、震える声で叫んだ。
「ん?どうしたんだいシエスタ?」
食事の手を止めるラバーソール。
「あ、あそこ!!」
シエスタの指す指の先に、カサカサとせわしく動くゴキブリがいる。
そんな彼女に、ラバーソールは、大丈夫、大丈夫ゥ!と左手を振る。
「ハハハ、大丈夫だよォ〜〜〜ん、俺が始末しておいておくからさァ〜〜〜
とりあえず水もってきてくれねえかァ〜〜〜?」
「え!?あ…は、はい!」
シエスタは逃げるように厨房の奥へ消えた。
シエスタが、水を入れたコップをのせた銀のトレイを抱えて戻ってくると、
ラバーソールがシチューの入った皿を、自慢のハンサム顔を隠すかのように傾けてがっついていた。
ズズージュルジュルジュルジュルンカチャカチャ
さっきは味わうように食べていたのに…そんなにお腹が空いてたのかしら……フフ、とシエスタは微笑む。
「ラバーソールさん、ずいぶんシチューが大好きみたいですね」
シエスタがそう言うと、ラバーソールはがっつくのをぴたりと止め、
シチューの入った皿を置いた。ラバーソールの口に、何かこげ茶色の羽のようなものがはみ出ている。
「あっ」
シエスタは自分の目を疑った。
プチプチップチップチ
ラバーソールの口の中から、何かをつぶす音が聞こえる。
ゴクン
飲み込む音がした。
「えっ!?」
シエスタはとっさに、自分の足元の周りを見る。
しかし、さっきまで彼女が怖がっていたそれはいなかった。
プッ、何かを吐き出すラバーソール。
(い…今のは…ゴキブ…い…いえ!見まちがいだわ!きっとシチューに入っていた具かなにかよ…………)
「うん、すごく好きなんだ……シチュー」
「そ、そうですか…」
シエスタはアハハハ…と乾いた笑い声を出す。膝はガタガタ震えているが、なんとか平常心を保っていた。
……だが
「――ああ、そうそう、アレはちゃんと『始末』してェ、そしてきちんと『後始末』しておいたぜェ〜〜〜?」
厨房内に、少女の悲鳴と大きな金属音が、同時に響きわたった。
これは……!!間違いなくトラウマ決定!w
一番フラグが立ちやすいシエスタがこれでは、
ラバソに恋愛ストーリーは不可能wwwwww
どう考えても敵役です、本当に(ry
でラバーソール倒して新たに召喚したら、灰の塔の爺さん
その次は偽船長、その次は……んで最後にDIO様と対決
結局ルイズは使い魔は得られなかったが、誇り高き黄金の精神を手に入れ
ハルケギニアに名を残しましたとかw
何と言うオチ・・・
それって召喚元の世界で、承太郎らがサクサク旅が進んで
しまいにゃ、知らないうちにDIOまで片付いてないかw
承り「花京院、イギー、アブドゥル、ポルナレフ、ジジィ、なんだかよく分からんが終わったよ……」
こうですねw
>>169 ジョセフ「奴の気配が無くなった!何事j」とぉうるるるるるるるん
『ジョースターさん!ホリィさんの容態が良くなったそうです!今じゃもうWRYYYとか叫んでおられて…』
ジョセフ「…ワシは何の為にエジプトに来たんじゃ?(´・ω・`)」
>>168 サクサクがヌケサクに見えて
ヌケサクがラスボスになるのかと思ってしまった
>…ワシは何の為にエジプトに来たんじゃ?(´・ω・`)
逆に考えるんだ、孫との親睦を深めるための観光旅行に来たと(ry
174 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 20:19:44 ID:6T07PSl8
サーレー投下します。
投下支援
「うんまーい!!」
サーレーは学園の中の台所の中で料理を食べさせてもらっていた。かわいい女の子に出会えるは、うまい料理が食えるは、今日は超が付くほどラッキーデーだ。
・・・ここが自分の世界と違う別世界だという絶望的事実を知ったこと以外は。
そこまで行くとサーレーの思考が一気に暗くなる。これでは家に帰ることが絶望的になってしまった。
(・・・・母ちゃん。大丈夫かな・・・・。)
何とかは絶対にするが少々悪いニュース過ぎた。と言うか今までそのことに気が付かなかったのがおかしいと思うのだが・・・・。
すると、暗い表情になったサーレーをみて心配になったシエスタがサーレーの顔を覗き込んだ。
「?」
「どうしました?もしかして・・・・おいしくなかったですか?」
その言葉を聴いてサーレーがはっとした顔でシエスタのほうを振り向いた。
そして急いで、その言葉に反論する。
「んなことねえよ!!うん!まじで!!」
サーレーは堅気の人専用の明るい笑顔を見せるとシエスタはそれを聞いて安心したのかニッコリと太陽な笑顔で返してくれた。
「・・・・・・・俺、この場所に永住しようかな・・・・?」
そんな訳行かないのはお前が一番知っているだろう!!サーレー!!
シエスタと二人で色々と会話をし、色々とこの国の状況を聞きだしていると台所のドアがいきなり開いた。そのドアの中には四十絡みの髭面のコックの服装をした男がいた。
おそらくここのコック長だろう。サーレーは恰幅の良さといかにもベテランという雰囲気がそういう結論にたどり着いた。その男がサーレーを見ると口を開いた。
「あんたが貴族を相手に大暴れしたって言う野郎かい?」
どうやら、顔が笑顔だが目は笑っていないところを見るとなんだか俺を快く思っていなさそうだ・・・・。と、サーレーは結論づけた。
一応、相手の出方を見ようと多少、斜に構えながら本当のことを言った。
「そうだけど?何か?」
これで相手の真意が分かるだろう。サーレーはこの男を警戒していた。
もしかして、俺のボコッた貴族のガキの中にこいつの息子か娘でもいたのか!?
そうなったら、ニコニコしながら杖を取り出して俺を仲間と取り囲んでボコボコに!!
サーレーがあらぬ想像(本日すでに二回目。)をして顔を真っ青にしているさなか、目の前のコック長。
マルトーは感動で涙チョチョ切れだった。四十絡みのおっさんがみっともないことこの上ないがこの男はこれを毎回、自分に他人に良いことが起こるたびに泣く男。
とんでもないくらいの感動屋なのだ。年をとると涙もろくなるというがこの場合はチョット異常だ。異常といえばサーレーの勘違いも異常な妄想の域に行っているが・・・・。
しかもサーレー(と書いてヘタレよ呼ぶ)はこの涙をみて・・・・・。
(このおっさん!子供の復讐ができるからって涙流してやがる!!
殺す気だ!!どんな殺し屋でもこんな明確な意志はでねえ!!)
・・・・・もう呆れて感想を言うこともはばかれる・・・・。
支援を固定した
「あの・・・・。サーレーさん?マルトーさん?」
シエスタもこの二人の間の空気がこの数秒間で微妙に変わったことを感じ取っていた。
それと同時に妙な嫌な予感も・・・・・。
ソウコウしているあいだにマルトーの感動ゲージがMAX!!!
やばいぞ!!逃げろ!!サーレー!!
「わ、」
「わ!?(声に出して読むときは普段より一オクターブ高く言おう!)」
「われらが剣よぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
サーレーに向かって一直線にマルトーが向かってきた!!もちろん憎むべき貴族をぶちのめした自分たちの英雄に対して凱旋と感謝の意味で!!
その巨体のダイブと強靭な腕による握激は常人に対しての死刑宣告でも会った!!
「うそだろ・・・・。くるな・・・・。くるなよ・・・。どこから来るんだ?いったい!!」
そしてサーレーは数日後自分のボスの数回目の断末魔に使われえる言葉を先取りして使ってしまうことになった!!
おれの傍に近寄るなー!!
ぼきゃぼきゃぼきゃ!!
ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!
サーレーがマルトーに抱き潰されてから数時間後 トリステイン魔法学院 食堂
「まったく・・・。あの蜘蛛頭どこ行ったのかしら・・・・?」
ルイズはしばらくしても帰ってこないサーレーを心配になって、あちこち探したのだかまったく見つからずにもう登校時間になってしまった為、仕方なく登校してきた。
サーレーが心配すぎて午前の授業もまったく身が入らなかった。
(まさか、逃げてないわよね?大丈夫よ!!たぶん・・・・。)
そこまでルイズは考えるとなんだか悲しくなってきた。たぶん、なんて無いのだ。彼は家族のために故郷に帰りたかったのだ。ここから逃げるのは当たり前だ・・・・。自分の我が侭に付き合う義理は一切無い。
「なによ・・・・。裏切り者・・・・。」
ルイズは寂しい顔をしながら静かにつぶやいた・・・。彼は自分を裏切ることは無いことは分かっている。なにせ、彼とルイズは何一つ約束もしていない。あるのはただ一つ、自分から押し付けられた“契約”・・・・。
そして彼女は自分が改めて何も無い“零”なのだと気が付いた・・・・。“気が付いて”しまった・・・・。
「ああ、せめて素直になって友達くらい作ればよかった・・・・。」
ルイズは自分を肯定してくれる人を無意識に欲っした。そのまま彼女は泣きながらテーブルに突っ伏してしまった。
そんなルイズを影から心配する希少な人間が数名というところか。存在していた。
「彼女・・・。大丈夫かな?」
その一人、ギーシュ グラモンとその彼女、モンモランシーが泣き突っ伏しているのを遠くから心配そうに見ていた。
この二人は通常ならば敵対するか他の生徒と一緒におちょくるかしているのだが、この世界ではちょっと違っていた。
彼らは、確かに一時期彼女を馬鹿にしていたがとある理由からを影から助けている。
彼女に魔法を教えたり、クラスで孤立しないようにしたりといろいろ手を尽くしたのだが・・・。成功したとは言い難かった。むしろ彼女のプライドの高さに触れ、大失敗を喫した事の方が多かった。
でも彼らはあきらめなかった。表には出なかったが何とかしようと陰ながら努力してきたつもりだった。
やはり、学校一の女好きとして女の子の涙を見過ごすわけには行かなかったのだろう。
モンモランシーもそんなギーシュの愚直さとも言うべき優しさに、浮気ばかりする駄目男だが、惚れたと言ってもよかった。
ギーシュは見かねた様子で席を立つと静かに隣の最愛の恋人の耳元でつぶやいた。
「やっぱり、ちょっと探してくるよ・・・。」
「わかった。昼食はメイドの誰かに言って何とか残してもらうから。授業には間に合うようにネ。」
ありがとう、とギーシュは礼を言うと静かに無駄に豪華な装飾がしてある広い食堂を走り出した・・・。
ギーシュが外に出るとそこで二人、見慣れた人物を見かけた。燃えるような赤髪に背の高いグラマラスなからだの持ち主。そしてその横にはまったくといって良いほどの正反対の青い髪と小柄な眼鏡の少女が食堂の門の前に立っていた。
「あれ?キュルケにタバサじゃないか!食事に行かないのかい?」
よく見ると二人とも制服が少し汚い。・・・・・まさかと思うが。
「まさか・・・・。二人とも捜してたのかい?ルイズの使い魔。」
ニヤニヤと笑いながらギーシュが二人をみる。日ごろから馬鹿にしておいてこんなときに助けるなんて新手のツンデレ使いもいいとこだ。
「ニヤニヤ・・・・。」
「な、なによ!!その顔!!なんか悪い!?」
キュルケが明らかに焦った顔をして、さり気に肯定する。
「イヤー。何だかんだいってもルイズのことが可愛いんだなーって。」
なによ!と起こるのかなぁとギーシュは思っていたのだがそんなことなく「はあ・・・・。」と一つ大きなため息をつくと地面を見ながら、一言呟いた。
「あの使い魔。台所でなんか料理長の手伝いしてたわよ。」
「・・・・・へ?」
灯台下暗し 寝耳に水とキョトーンとした顔でキュルケを見るしかないギーシュだった。
そのとき・・・・・。
「なにすんのよ!!この馬「なめてんじゃねーぞ!!このションベンチビリの餓鬼!!」」
そのルイズと誰かの怒鳴り声の次にバンと物が打ち付けられる音が響いた。
二人は顔を見合わせると慌てて食堂の中に走って入っていった。タバサも二人の後に続くように食堂の扉に吸い込まれていった。
一方サーレーの方は・・・。
「いやーまったく悪かったなあ!!ガハハハハハハ!!」
マルトーが笑いながら、サーレーの体をバンバン叩いた。
そのたんびにサーレーの体がガクンガクンと前後上下に激しく動いた。
「うん。わかった・・・・。わかったから・・・。叩くの止めてくれ・・・。」
サーレーと会話したマルトーはサーレーがマルトーを貴族に親族がいて復讐に来たのかと思ったこと。
自分が召喚された経緯を話した。
そして、サーレーはマルトーが筋金入りの貴族嫌いだと分かった。
最初のほうなんか話したときにあからさまに嫌そうな顔をされたからだ。あと、最後のほうはマルトーとシエスタになら話しても大丈夫だと思ったからだ。
少なくとも、馬鹿にされることもないし、狂っていると思われることも無い。
実際、二人は別世界のくだりを不思議そうな顔でサーレーの話を聞いていたがサーレーの能力と持っていた携帯電話で何とか信じ込ませた。そして、家族のことも話した。案外、あっさり信じてもらったのでサーレーはあまりのあっさりさに驚いていた。
それどころか、マルトーは本気で憤慨し地団太を踏んで床を踏み抜きかけた。
「貴族の身勝手で一人の家族を不幸にしていいのか!!」と。
この二人のお人好しさにたまらずサーレーは二人に叫んだ。
いままでギャングという誰も信じてはいけない環境がこの二人のお人好しについて行けなかったのだ。
「お前ら!!俺の話がうそかもしれないのに!!よくそんな風に信じられるな!!」
サーレーの叫び声に二人がキョトーンとしてサーレーを見た。
「嘘・・・・なんですか?」
その顔のままシエスタが静かにサーレーに質問する。
「いや・・・・。二人ともあっさり信じてもらえるもんだから・・・つい・・・。」
その言葉にシエスタが寂しそうに笑いながら、安心したようにサーレーの言葉の中に隠されている質問の答えを話す。
「ここでは貴族の力が強くて私たちが弱いから・・・・力をあわせて生きていくしかないんです・・・。
私たちが、仲間同士で疑ったら終わりなんです・・・。」
「・・・・そうか・・・・。」
ああ、ここも一緒なんだ。と、サーレーは思った。力があるものは弱い人間を従えられるし、弱い人間は利用されるばかりなのかと・・・・。
「あ!私そろそろ行きますね!もうすぐ、朝食の時間ですから。」
「ん!そっか。じゃあな。」
そういうとシエスタは厨房から食堂に走っていった。
「さーて、俺も仕込みに戻るかな!」
マルトーも行ってしまおうとするとサーレーもマルトーについてくる。
「・・・?どうした?」
「朝飯の礼だ。なんか手伝うよ。」
「それじゃあ、皿洗いでも頼むか。」
マルトーがニッコリ洗いながら、サーレーの肩を叩いた。
そして 時間は現在の少し前に戻る
ルイズは突っ伏して泣いていたが泣き顔をみんなの前で見せていることに気が付き、慌てて泣くのを止めた。
なにやらギーシュが急いで外に出たのが見えたが気にすることは何も無かった。
しばらく、だまって食事が運ばれてるのを見ているといきなり丁度、ルイズの座っている所から反対側の三年の列で怒鳴り声が聞こえた。
「おい!平民!!俺の、俺のマントにケーキひっくり返しやがって!!覚悟できてんだろうな!!」
柄の悪い、本当に貴族かと思うほどの濁声とジャラジャラとなにやらよく分からない金属のアクセサリーを付けるファッションセンス。
センスの悪さと服装の空気の読めて無さはギーシュ並み・・・・。と、明らかに不良だ。しかも、ここの学園の中でもあくどい事で知られる血管針団の一人、ペイジではないか。
その濁声の先にはか弱そうなメイドの少女が必死で頭を下げている。
「申し訳ありません!!貴族様!!どうかお許しを・・・。」
「誤ればすむ問題じゃねえんだよ!!覚悟しろよ!! 」
ヒッ、とメイドが小さく叫んだ。誰も近くの人間はメイドを助けに行こうとしない。というか助ける気も無いのだろう。たかが平民ごときに四人全員がトライアングル級の血管針団と喧嘩をするやつはいない。結局、こいつらは自分のことしか考えていないのだ。
そう考えると、ルイズは考えなしに立ち上がっていた。自分でも理由はわかっていなかった。
「ちょっと!止めなさいよ!!」
ルイズは二人の間に割って入る。ペイジは「アアン?」とルイズのほうを見た。
「これはこれは、ヴァリエールの不肖の娘、ゼロのルイズ様では御座いませんか〜。今時人助けですか〜。涙ぐましいことですね〜。」
「いいからそのメイドを放しなさい!!あなた貴族でしょう!!誇りは無いの!?」
すると後ろのちょうどルイズの肩から声が聞こえてきた。
「それが無いんだなー。誇りなんかでご飯は食べれないよ〜。」
ルイズが後ろを見るとそこには血管針団のリーダー:ボーンナム ド デスブロウド
が自身の杖である折りたたみの金属の棍棒をルイズのほほにぐりぐりと突きつけながらニッコリと笑って答える。
彼の後ろには同じく団員のプラントとジョーンズも自身の杖である長いナイフとスティレット形の銀の杖を構えて立っている。
「いやーさ。僕らの家って誇りとか大事にしすぎてつぶれかけた家系だから、誇りとかドーデモいいんだよね。むしろ、だいっ嫌いなんだよ・・・。」
だからさ・・・・と、ボーンナムがルイズの耳元でぞっとするような冷たい声で囁く。
「能力も無いくせに誇りとか喚く君も嫌い。」
そしてボーンナムは自分に部下のプラントに命じた。
「プラント〜。その女の子、僕の部屋に押し込んどいて・・・・。体で分かってもらおう・・。」
端正な顔から邪悪な笑顔を出しながらボーンナムが冷徹に命じた。
「はい。ボーンナムさん。」
プラントが無表情で命令を実行する。
「いや・・・・。止めて・・・・。お願いですから・・・・。」
そのメイド、シエスタが泣きながら連れて行かれていくのをみて、ルイズがボーンナムの腕をすり抜け、そのままプラントにタックルをかました。
ぬ、っといってプラントが少しよろめいた。
「なにするのよ!!ば「なめてんじゃねえぞ!このションベンチビリの餓鬼!!」」
プラントに気を取られて気が付かなかったが近くにはペイジがおり、即座にルイズの胸倉をつかみ地面に引き倒した。
ルイズは自分の懐の杖を掴もうとするがその手をペイジに胸倉と踏まれてしまった。
「げほっ!!」
「あぶねえあぶねえ。お前の爆発はラインか、もしかしたらトライアングルに届く火力だからな。」
ボーンナムが倒れたルイズを見下しながら嘲笑う。
「おやおや・・・・。もしかして、君も俺らの“説教”に混ざりたかったのかな?
まさかゼロのルイズがエロのルイズとは!!」
そのまま、ジョーンズがルイズを立たせるとそのままルイズも一緒に連れて行こうとする。
「な、なによ!離しなさいよ!!この鬼畜!!」
「鬼畜で結構。きみ、顔は中々上玉だから楽しめそうだよ・・・・。」
「い、いや・・・・。」
ルイズはここでなぜ彼女を助けようと思ったのかわかった。自分を唯一否定しないひと、自分のすぐ上の姉が自分が平民を見捨てたなんて知ったら・・・・今度こそ私は一人ぼっちだ。そんなの嫌だと思ったからだ。結局、自分本位の考え方の末路だ。
改めてルイズは自分が自分のことしか考えてないのだと痛感してしまった・・・。
「さあ、二人とも行こうか・・・・。」
ボーンナムがニッコリと冷徹な笑みを二人に向けると同時にペイジがいやらしい笑みを二人に向けた。
それと同時に・・・・。
グワッーーーーーーーーーーーーーシャーーーーーーーーン!!
なんといきなりペイジの体が中を浮いてテーブルに突っ込んだのだ。
「なんだーテメーら、ロリコンかよぉ!!よくこんなチンクシャに欲情できんなぁ!!」
こいつらチンピラと変わらない濁声だがどこかで聞いたことのある声。
そして、印象に残る甲殻類か蜘蛛の一種のような髪型。季節外れのノースリーブの服装。
そして何故か下半身の動きやすそうなズボンの上にエプロンをしていた。
「あんたどうして・・・・。」
ルイズはその男、サーレーを見上げる。何故、帰ってきたのかと問おうとする前にサーレーが口を開く。
「他人を助けようとするあんたの甘さが一つだけあんたに帰ってきたのかもな・・・・。」
「なんだ!!てめえ!!」
ジョーンズがサーレーに殴りかかるがそのパンチを右手で簡単に止められ・・・・。
「軽い軽い!魔法に頼りすぎると体鈍るよぉ〜。坊主。」
最初のところまでは小ばかにしたように笑っていたが最後の坊主の部分はギャング特有の殺気を込めた迫力のある濁声を張り上げた。
ジョーンズの顔に左ストレートがめり込む。
「ブッ!!」
ジョーンズがペイジと折り重なるようにテーブルの上に吹っ飛ばされた。
貴族の一人の少女が近くのテーブルを飛ぶように滑ってくる二人をみて、ヒッ!と悲鳴を上げた。
その近くの男がその姿を見てサーレーに講義する。
ちなみに彼らはサーレーが昨日、二年生全員を相手に大暴れしたことなど知らなかったのでただの厨房の従業員かと思っていた。
「おい!平民!!こっちに被害を出す気か!!喧嘩なら外でやれ!!」
「そうだ!!」
「そのままボーンナムたちにやられちまえ!!」
周りからブーイングの嵐が吹き荒れるがそんなこと物ともせずにサーレーはギロリと周囲の野次馬を睨んだ。
一瞬、食堂内が水を打ったように静かになった。
「おまえらの中で、こいつらを助けようと思って行動したやつがいるのか?お笑いだぜ!!
平民だのゼロだの馬鹿にして、自分たちは安全なところで高みの見物しやがって!!自分のルールも誇りも自分で勝ち取ったものも無いくせに!!偉そうにしやがって!!お前らがより、ルイズのほうが数千倍価値のある人間だぜ!!まったく!!」
サーレーは一言、野次馬たちに激を飛ばすとルイズとシエスタを不良たちから引き離した。
「まったく、あいつら。やっぱり甘ちゃんだな。あんなのが将来軍人とか国の高官になるとかもうこの国終わったな・・・・。」
ギャングの自分には関係の無い話ではあるが、とサーレーは一人ごちた。
「・・・・・きみ、何してくれちゃってんの?」
ボーンナムが殺気満々の目でサーレーを睨んでいた。
「・・・自己満足。」
サーレーは軽く言うとニヤッと笑う。
ボーンナムもフッと笑うと杖をサーレーに向けた。
「そうだ君。決闘しよう。」
「はあ?」
サーレーは拍子抜けしたような表情で叫ぶがボーンナムはいたって本気だった。
「君が勝てば、この二人は放す。二度と近づかない。ただ、僕らが勝てばこの二人は僕らの“教育”を受けてもらう。いいね?」
「いや、全員だ。」
へっ?というボーンナムに対し、今度はサーレーが本気だった。
「ここにいる全員が平民とルイズを馬鹿にしねえ。それが条件だ。」
「・・・僕の一存ではどうにもならないけど、まあ良いや。」
「「「「「「「「いいのかよ!!」」」」」」」」
周りからまたブーイングの嵐になりそうだったが、サーレーとボーンナムのにらみで黙らせる。
「じゃあ、僕らは先に広場で待ってるよ。」
プラントとジョーンズが今だ気絶するペイジを抱えてボーンナムについていった。
それを見送ったサーレーにルイズが声を掛ける。
「あの・・・・ありが「何でなんですか!サーレーさん!!」」
いきなり横のメイドに邪魔をされた。
ちょっとルイズがむすっとした様子でサーレーとシエスタを睨んだ。
「殺されちゃいます!!何であんなこと・・・・。」「そうよ!!あの四人は学校でもトップクラスのメイジなのよ!!今すぐ誤って・・・・。」
ルイズもそういったが、その時にサーレーが二年相手に互角以上に渡り合った実力者であると気が付いた。
その二人のあせった様子にサーレーはヘラヘラ笑うと二人の肩をポンポンと叩くと、こう言った。
「ダイジョブだ。俺はあんな雑魚に負けねえ。二人とも俺の力、判ってんだろう?
あ、あと悪かったな。いきなり居なくなって。」
サーレーがルイズに向かって詫びた。
「へっ?・・・・分かっているなら・・・良いわよ・・・。」
ありがとな、とサーレーは礼を言うと食堂を出て、広場の場所に進んでいった。
その後姿は今までのへたれの雰囲気は微塵もなく、とても頼もしく見えた。
さあ、真似しましょう。うまく、うまく真似しましょう。死と恐怖だけ真似しましょう。
いつもの如く真似しましょう。誰か誰もが泣き叫ぶような悪夢に真似しましょう。
ここには希望は一人もいません。遠い東国の少年も、金色の心を持つものも、運命のトリックスターはどこにもいません。
悪に対する取立人はこの国にはやってこられない。この世界にはやってこられない。ワクワクワクワク・・・・・・。
あの男の代用品がどこまで生きていられるか楽しみでしょうがない。まずはゆっくり調理しましょう。
邪魔者を消しましょう。彼女と邪悪な心の鉄球使いを使って今日は一組のイレギュラーを消しましょう。
ついでにキザな土使いとその彼女も消しましょう。邪魔で、邪魔で仕方ない・・・・。
ただのギャングには止められない。ただの少女には止められない。ただの戦士や百戦錬磨の武人なんかまず無理だ。ワクワクワクワク。
楽しくて楽しくて・・・・・。
楽しさだけで絶頂しそうだ!!
さあさあ、皆さんお立会い!グランギニョル座の開演だ!!
同日 トリステインにて変死した政府高官の貴族の持っていた一通の手紙より・・・・・
しえーん
さて皆様。駄文にお付き合いいただきありがとうございます。
話が進むたびにジョジョでもゼロの使い魔でも無くなりますね。
今回、前回でルイズが卑屈な女の子になってしまったので、今回はその代わりに人とのつながりと言うプラス要素を足して見ました。
さて、次回サーレー君はトライアングル四人に勝てるのか。そして、犯行予告とも取れる手紙の差出人の言う鉄球使いと彼女とは!!
次回もお楽しみに。次回の投稿は4月の後半に成ります。それでは!!
サーレーの人乙&GJ
サーレーの人GJ!
・・・やっぱり文才ある人って凄いんだな。
サーレーGJ!
邪悪な心の鉄球使いって誰だ?
>>194 ウェカピポ……じゃないか
ウェカピポの妹の元旦那とか
GJ!4月の後半まで楽しみにしてる!!
サーレーの方投下乙そしてGJでした
き、気になるヒキですなあ……
SBRはまだ読んでないので一体どんなヤツが来るのか
皆目見当もつきませんが次回が楽しみです!
>>156 亀だけど兄貴は
「ローマまでにはヤツらを皆殺しにして娘をゲットする」
って列車内で言ってた
計画としての話だからいいんじゃね?と思う。
サーレの人GJ!
おつかれさン〜。
ところでオエコモバで作ってくれる人希望
出番が少なかったから楽に作れると思す。
出番が少ないからこそ作りにくいんじゃないか
キャラが分かりづらいからな。やりすぎるとただのオリキャラ。
能力も吉良と被ってるし…
自分でやってみたら?君には君なりのオエコモバ像が有るだろうし。短編でも良いから書いてみなよ。その仮定でオリキャラになっても良いと僕は思うよ?
「よぉーし!みてなルイズ!このブルートさまが
あの盗賊をブチのめし学園につき出して、ヒーローになってやるぜ!」
「あ〜〜ん…たのもしいわ!わたしのブルりん!」
ブルりん書こうかなと思ったけど、どう考えてもギャグ短編しか出てこない
小ネタのボス憑き才人の連載をマジで見たい俺ガイル
だれかホット・パンツを書いてくれェ〜
後生だからさァ〜
頼むよォ〜
誰も書かないなら自分で書けばいいじゃない
そうだぞ。俺なんて誰も書かないからヴェルサスをこつこつ書いてるんだ。
三ヶ月かけて書き溜めと平行して推敲
投下前一週間かけて十度を超える推敲
自発的にやれば堪えられる
人に言われりゃ堪えかねる
避難所代理スレに偉大さんの投下を確認
しかし今携帯からなので代理できないこのもどかしさ……ッ
「タバサッ!キュルケを追うわよ!」
しかし、タバサは構えを解かない。
「彼女なら、心配要らない」
信頼してるのね・・・でも、そうじゃ無いのよタバサ・・・
「キュルケ・・・このままだと真っ先に死ぬわよ」
タバサの目が大きく開かれる。
「本当に?」
「わたしはいいのよ、別に腐れツェルプトーが死んでも・・・
ただ見殺しは余りにも寝覚めが悪いしね。」
「・・・わかった、信じる」
「ルイズ、オレがこのまま黙って見逃すと思うのか?」
勿論、思わない。呪文を唱え杖を振るう。
「ファイアーボール」
プロシュートは寸でのところで爆発を飛び退きかわした。
「うおっ!」
「タバサッ!緊急時よ、思いっきりやって頂戴!!」
タバサは呪文を詠唱し杖を振るう。
「ウィンディ・アイシクル」
幾つもの氷の矢が宙に浮かびプロシュートに襲い掛かる。
「行くわよタバサ。だけど走らない様にね」
「了解」
わたし達はキュルケを止める為に廊下に向かった。
「グレイトフル・デッド」
ドカ ドカ ドカ ドカ バキ バキ バキ バキ
部屋の中から嫌な音が聞こえてきた。
ううう、お気に入りの家具だったのに・・・
わたし達はキュルケを探しながら廊下を進む。
「どっちに行ったのよ?」
目の前に階段があり上下に分かれていた。
「こっち」
タバサが迷わず下に進んでいく。
「わかるの?」
わたしの質問にコクリと頷き廊下に進んで行くと、ど真ん中に人がうつ
伏せに倒れていた。あの赤髪はキュルケに違いない。
「キュルケしっかりして」
わたしはキュルケに近寄り生死を確認した・・・生きてる、ただ足を縺れ
させて転んだだけのようだ。
こけた事で命が助かるなんて悪運の強い女ね。
「う、うん・・・ルイズ?」
気が付いた。
「落ち着いてキュルケ。今ならまだ何とかなるわ、タバサがいればね」
「タバサが?」
「そう、タバサの協力があれば老化の回復が出来るわ」
「ほっ、本当なのルイズ?」
「ええ本当よ」
「どうすればいいの?早く教えてよ」
「慌てないでよ、タバサ」
わたしは氷を作ってもらう為にタバサに声をかける。
「何?」
わたしが口を開きかけた、その時
目の前の部屋からモンモランシーの叫び声が聞こえてきた。
「しっかりして、しっかりしてよギーシュゥゥゥゥ」
ここはモンモランシーの部屋だったのね。
わたしは中の事情を察しドアを開けようとした。
ガチャ ガチャ
しかし鍵が掛かっておりドアは開かなかった。
「キュルケ、アンロックを」
「だから、さっきから何命令してんのよ」
・・・このツェルプトーは。
「わたしが吹き飛ばしてもいいのよ。その代りプロシュートに居場所を教える
事になるけど、いいかしら」
「ったく、わーったわよ。あんた変わったわよね」
「成長したと言って」
「嫌な子になったわね」
「ありがとう。最高の褒め言葉よ」
キュルケが、ため息をつきながら杖を振るう。
「開いたわよ」
部屋の中にはベッドの前に立っているモンモランシーと、ベットに寝かされ
ている老人・・・おそらくギーシュがいた。
モンモランシーは入ってきた、わたし達にも気付かずにボロボロと涙を流し
ながら治癒を唱え続けていた。
「無駄よモンモランシー。それは、ただの老化現象で怪我や病気じゃないわ」
モンモランシーは振り返り不思議そうな顔をしていた。
「ルイズ・・・?」
わたしは棚に置いてあるピカピカのビーカーを手に取った。
「借りるわよ、モンモランシー」
返事を待たずにビーカーをタバサの目の前に持っていく。
「タバサ、この中に氷を作って頂戴。一個じゃなく粒でギッシリとね」
タバサは注文通りに氷を作ってくれた。
その内の一つを口の中に入れ舌で転がす。
体が楽になっていく・・・効いているわ。
ギーシュの側に立ち、氷の一つを額に押し付けてやった。
シュパアアアアアァァァ
氷の触れた部分から皮膚が若返っていく。
「すっ、凄い!元に戻っていくわ!」
キュルケが感嘆の声をあげる。
わたしは、振り返ると皆にビーカーを突き出した。
「さあ、早く皆も!」
グワシッ、っと氷を握り締めたのはキュルケだ。
そのまま氷を口の中に放り込みボリボリと噛んでいく。
キュルケの皺が消えた。
「ありがとうルイズ助かったわ!」
キュルケが力一杯抱きついてきた。
「ちょっとキュルケ。体温が上がる!老化しちゃうじゃない!」
「えっ!?」
キュルケがドンと、わたしを突き飛ばした。
ビーカーは割れなかったけど氷が床に散らばってしまった。
「あんたねえ」
「ご、ごめん」
567 名前: 偉大なる使い魔 [sage] 投稿日: 2008/04/09(水) 11:29:31 mNqsjPag
投下終了
規制くらった
>>214まで律儀に投下する代理投下乙
そして積極的に追っかけなかったゾンビな兄貴が何やってんのか、不安になったり。
SBRの少なさに失望した。
でも、正面きって戦えるキャラが少ないから、
書きやすそうとは思わない。
>>216 イケメンに活躍して欲しいな
ハルケギニアならきっと帰る場所が見つかるだろう
>>217 ごくごく初期に呼ばれてたような。
キュルケに横取りされてたけど。
フェルディナンド博士が呼ばれたらどうなるか妄想してたら
わくわく恐竜ランドになって終わった
一通り書かれてるけどな
ほとんどが一話か二話で止まってるけど
ゼロの変態にちょっとだけ出てきたよな>博士
……ゼロの変態はメローネも好きだけど
ボスもたまにカッコいいから困る
222 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/11(金) 13:14:59 ID:i4RTjviD
正面きって戦えるのは
ホット・パンツとマイク・Oとブンブーン一家ぐらいか?
なァァァァァにィィィィィ!!
sageていなかっただとォ〜!
引きこもりの続きが気になるなあ〜
最近鉄分が足りない…
偉大さんのルイズとキュルケは、ルイズの度胸が大幅にUPしたおかげで仲の良い喧嘩友達臭がする。
女通しのツンデレってやつですね…実に、実にベネ!
誰かシュガーマウンテンで小ネタ作って。
>227
さあ書くんだ
日が沈むまでに使い魔を使いきらないといけなくなるわけだ
木ごと召喚するわけだな
久しぶりに4時に投下しますが構いませんね!?
sien
233 :
ゼロいぬっ!:2008/04/12(土) 15:59:04 ID:caahDQ3Y
「……何でここにいるの?」
「貴族の務めだと言っただろう。
国家の存亡が懸かった一戦となれば逃げ場も無いしな」
怪訝そうな顔を浮かべるキュルケにモット伯が応えた。
想像だにしなかった援軍に思わずキュルケも感謝の言葉を忘れた。
しかも、その背後に引き連れた軍勢は彼が率いるには大仰すぎる。
恐らくはモット伯の私兵も混じっているのだろうが、それにしても数が多い。
「その兵は?」
「ああ、私が雇った傭兵だ。
アルビオンの内戦が終わって仕事にあぶれた連中をな」
「よくそんなお金があったわね。破産したんじゃないの?」
「ああ。それなら簡単だ。無ければ用意すれば良いだけの事だ」
「え?」
モット伯の返答に、キュルケは首を傾げる。
無い物をどうやって用立てるというのか。
しかし、その答えが出る前に彼女の思考は大声に遮られた。
息を切らせてモット伯の下に伝令が駆け付ける。
「伝令ーー!」
アストン伯の使いだと名乗るその人物から口頭で情報が伝えられた。
その報告を耳にしたモット伯の眉が跳ね上がる。
確かなのか?と問い返す彼に、伝令は黙って頷いた。
誤報に踊らされるような浮ついた目ではない。
それを確かめてモット伯は腕を組んで深く考え込んだ。
頭を悩ませる彼に、ギーシュが恐る恐る訊ねる。
「……何があったんですか?」
「後退した敵の先鋒が砲台を迂回して側面から叩こうとしているらしい」
「なら早く迎え撃たないと! アニエス達が危ない!」
「だが、あまりにも不自然だ。
グリフォンも竜も全て駆り出して偵察に出す余裕さえ無いというのに、
アストン伯は一体どこからそんな情報を入手したのだ?」
少なくとも地上からではそんな動きを掴む事は出来ない。
巻き上がる戦塵は容易く視界を奪い、その先に潜む敵の存在さえ押し隠す。
ならば上空からしか考えられないのだがアストン伯は船どころか竜騎士も持っていない。
こちらを分断しようとする敵の虚報かもしれないという懸念がモット伯の足を止める。
しかし真実だとすれば……。
「では僕の部隊が! モット伯はこの陣地の防衛に専念してください!」
ギーシュに躊躇いはない。
包囲が完成してしまえばギーシュとモット伯の部隊が合流したとしても砲台を守りきる事は叶わない。
僅かにでも全滅の可能性があるなら危険を避けるのは必然。
それに運が良ければ自分は戦わなくても済むかもしれないという打算もあった。
返答を待たずにギーシュはニコラを連れて塹壕を離れる。
その最中、彼はその場に立ち尽くすルイズの姿を見とめた。
無理もない。間近で竜騎士の襲撃を受けたのだ。
恐れから放心状態になってもおかしくないとギーシュは思っていた。
……しかし、その想像は大きな誤りであった。
彼女を突き抜けた衝撃は生命の危機さえも凌駕する。
言葉どおりに世界を揺るがすと言っても過言ではない。
234 :
ゼロいぬっ!:2008/04/12(土) 15:59:45 ID:caahDQ3Y
取り落とした杖と『始祖の祈祷書』を拾いに行った彼女が見たものは衝撃で開かれたページとそこに記された文字。
恐る恐る本を拾い上げ、先程までは存在しなかった記述に目を配らせる。
そして書かれた言葉を彼女はうわ言のように呟いた。
「序文。これより我が知りし真理をこの書に記す。この世のすべての物質は、小さな粒より為る。
四の系統はその小さな粒に干渉し、影響を与え、かつ変化せしめる呪文なり。その四つの系統は、『火』『水』『風』『土』と為す」
古代のルーン文字で書かれたそれを彼女は一文字一文字確かめるように読み上げる。
魔法を使えるようになろうと勉強し続けた日々は無駄ではなかった。
積み上げた知識は彼女に新たな知識への扉を開く鍵を与える。
「神は我にさらなる力を与えられた。四の系統が影響を与えし小さな粒は、さらに小さな粒より為る。
神が我に与えしその系統は、四の何れにも属せず。我が系統はさらなる小さき粒に干渉し、影響を与え、かつ変化せしめる呪文なり。
四にあらざれば零。零すなわちこれ『虚無』。我は神が我に与えし零を『虚無の系統』と名づけん」
そこに残されていたのは単なる知識ではない。
秘められていたのは『虚無』という大いなる力。
伝説と共に失われた第五の系統。
「これを読みし者は、我の行いと理想と目標を受け継ぐものなり。またそのための力を担いしものなり。
『虚無』を扱うものは心せよ。志半ばで倒れし我とその同胞のため、異教に奪われし『聖地』を取り戻すべく努力せよ。
『虚無』は強力なり。また、その詠唱は永きにわたり、多大な精神力を消耗する。
詠唱者は注意せよ。時として『虚無』はその強力により命を削る。したがって我はこの書の読み手を選ぶ。
たとえ資格なきものが指輪を嵌めても、この書は開かれぬ。選ばれし読み手は『四の系統』の指輪を嵌めよ。
されば、この書は開かれん。ブリミル・ル・ルミル・ユル・ヴィリ・ヴェー・ヴァルトリ」
(読める……読めるわ)
驚愕にルイズは手にした書を震わせる。
心のどこかでルイズはワルドの言葉を信じていなかった。
きっと彼の勘違いだと思い込んでいた。
魔法さえも満足に使えない自分が伝説の『虚無』だなどと確信できるだろうか。
だけど彼女の眼前に『真実』が突きつけられる。
とても一人では背負いきれない事実の重さにルイズは我を失った。
来て欲しくないと思いながら彼が傍らにいてくたらと願わずにいられなかった。
……彼女は初めて魔法を使う事を怖いと思った。
大きすぎる力は人の運命を容易く捻じ曲げる。
誇り高き貴族であったワルドに祖国を裏切らせ、
一司教に過ぎなかったクロムウェルに野望を抱かせ、
あるいは、この戦争の本当の引き金となったのかもしれない力。
それを振るうという責任の重圧に、押し潰される錯覚さえ覚える。
「嬢ちゃん。その力はな、本を読むずっと前からお前さんが持っていた物だ。
今それに気付いただけに過ぎねえ、使うも使わねえもお前さんの自由だ」
彼女の心情を察したデルフが語りかける。
それは『ガンダールヴ』という力を担う者を知るが故の言葉。
朧げな記憶の中にも浮かぶのは力に翻弄された者達の姿。
しかし、それでも自分の担い手となった者達は戦う道を選んだ。
どこに答えを見出したかなどは分からないが、
彼等は力と責任を背負いながら自分達の道を歩んだ。
だから、この少女にも足を踏み出して欲しいのだ。
己の力に運命を狂わされる事なく力強く、
かつて人々が『勇者』と呼んだ者達のように……。
235 :
ゼロいぬっ!:2008/04/12(土) 16:02:17 ID:caahDQ3Y
「きゅいーーー!!?」
地面に映る影が自分と変わらぬサイズにまで近付いた直後、
平地を滑る様にシルフィードがその巨体を切り返す。
風竜、それも成体よりも遥かに軽い彼女だからこそ可能な芸当。
それを追撃する火竜に求めるのは酷だった。
落下の加速も加えた竜の勢いは止まらず、そのまま大地へと叩き付けられる。
続くように後続の竜騎士達も同じ運命を辿った。
「ちっ! 功を焦りおって馬鹿者どもが!」
激突で立ち込める砂煙の中、全身を打ち付けた竜騎士達が捕縛されていく。
その光景を眺めながら熟練の竜騎士は毒づいた。
墜落した竜騎士達とは違い、彼等はシルフィードと一定の距離を保ちながら追撃していた。
慌てる必要などありはしない。こうして背後に喰らいついて隙を見て魔法なり炎を放てば事足りる。
そして、その機会はもう目前にまで迫っていた。
急加速と無理な機動が祟ったのか、既に風竜に力は残されていない。
森の真上を滑空するみたいに、ようやく飛んでいる程度。
背に跨るタバサへと狙いを定め、距離を詰めた火竜が顎を開く。
喉下で燻る炎が解き放たれようとする、その瞬間だった。
「放てッ!」
号令に応じて真下から放たれた無数の風の刃と火球。
それがシルフィードの後ろに付いた竜騎士達を一掃する。
異変に気付いた竜騎士の生き残りも散開の間もなく撃墜される。
振り返ったタバサが背後を確認して反転する。
彼女が見下ろした先にいるのは森の中に隠れたメイジ達の姿。
上空にいる竜騎士を仕留めるのはメイジであろうと困難だ。
しかし、それが地上近くを飛行しているのであれば話は別。
ましてや他の敵に目を奪われているのなら絶好のカモと成り得る。
事前にタバサの作戦を聞かされていたメイジが声をかける。
「後2、3回はこの手が使えるな。
高度は十分だが次はもっと速度を落としてくれ。
出来れば一撃で残らず仕留めたい」
「……分かった」
「きゅい!?」
こくりと頷くタバサにシルフィードが抗議の声を上げる。
(無理ね、無理なのね! 今だってシルフィのかわいい尻尾が噛みつかれそうだったのね!
さっきより遅く飛んだらシルフィ食べられちゃうのね!)
しかし、それに耳も貸さずタバサは再び敵陣へと向けさせる。
これが無謀な作戦だというのは熟知している。
だけど少しでも敵の攻め手を凌げるというのなら他に選択の余地はない。
零れ落ちる脂汗を袖で拭いながら彼女は地上で戦っているであろうキュルケやルイズ達の姿を思い浮かべる。
そうすると何故かもう少しだけ頑張れろうと思えてくる。
守られているのは自分の方なのかもしれない。
情けないという感情はない。むしろ内より沸いてくるものは暖かい気持ち。
236 :
ゼロいぬっ!:2008/04/12(土) 16:03:29 ID:caahDQ3Y
「………………」
去り行くタバサの姿を眺めながら地上のメイジ達は呆然としていた。
恐らくは見間違いだろうと納得しつつも、それでも動揺は収まらない。
たった一人で竜騎士の群れに立ち向かおうとしているのに、
彼女が浮かべたのは華も綻ぶような笑み。
その一瞬、彼等は自分達より年下の少女に心奪われていた。
誰かが“本当に勝利の女神だったのでは?”と冗談じみた言葉を呟く。
しかし、それを笑い飛ばして否定する者はいなかった。
「ふう」
手にしたペンを置き、コルベールは一息ついた。
認めている文書はオールド・オスマンへの置き手紙だ。
彼のいる世界に行けば二度と戻れる保証はない。
だからこそ世話になった学院長に手紙を残そうとしていた。
ハルケギニアを去り行く彼にそれ以外の心残りはなかった。
元々、一度は死んだも同然の身。
あるとすればダングルテールを生き延びた少女の事だ。
彼女に真実を伝えぬままに去るのは心苦しい。
しかし、今はどこにいるかさえもしれないのだ。
再びペンを手に取り、手紙の最後に彼女の事も書き加える。
もしも彼女がここを訪れる事があれば伝えられるように。
戦場の騒然とした空気とは逆に、学院は沈黙の只中にあった。
生徒達で溢れ返った日常に比べれば、まるで墓場のようにさえ感じられる。
時には煩わしいと思った彼等の存在が今は非常に恋しい。
せめて挨拶だけでもしておくべきだったかと悔やむ。
水に浮かべた磁針を眺める。まだまだ日食には時間がある。
下手に飛び出せば無駄に燃料を使い、異世界に行くのが不可能となるかもしれない。
だからギリギリの時間まで彼は待機せざるを得なかった。
彼は逸る気持ちを抑えて、碌に掃除もされていなかった部屋に手を付ける。
異世界に旅立つのが待ち遠しいというのもある。
だが、それ以上にコルベールは自身の決断が鈍るのを恐れていた。
掃除しながらも視線は水槽に入れられた彼の姿を避ける。
同意もなしに連れ帰ろうとする同乗者の姿を。
“最良の選択肢が常に最高の結果を招くとは限らない。
だからこそ自分の意思で、後悔のない選択を”
自分を彼に告げた言葉を思い返す。
偉そうに言っておきながら自分は今も迷っている。
そして彼に考える機会さえも許さなかった。
……なんという欺瞞だ。私はただ他人に責められたくない臆病者だ。
悪人にも善人も成りきれず傍観者に徹しようとする弱い人間。
だからこそ“彼のいた世界”へ逃げ込もうというのか。
237 :
ゼロいぬっ!:2008/04/12(土) 16:04:37 ID:caahDQ3Y
不意に彼の思慮を騒々しいノックの音が妨げる。
人がいなくなった学院で一体誰が?と不審に思いながら彼は扉を開けた。
慌しく部屋に駆け込んで来たのはマルトーだった。
「すまねえコルベール先生! ちょっと手を貸してくれ!」
「どうかされたんですか?」
息を切らせて着衣を乱したその姿は尋常ではなかった。
何か問題が起きたと判断したコルベールが状況を聞きだす。
荒い呼吸の中、声を振り絞りながらマルトーは話す。
「それが、厨房で火事が起きちまって手が付けられねえんだ!」
「……! 分かりました、すぐに行きます!」
最悪、油に引火して燃え広がる事を恐れたコルベールが杖を手に飛び出す。
人がいないのなら自分しか対処できる人間はいない。
それに少しでも学院に恩返しできるのなら悪くないとも思っていた。
マルトーの背を追うようにしてコルベールは廊下を駆け出した。
静寂の中で高らかに二人の足音だけが響き渡る。
走りながらコルベールは窓越しに火元である厨房のある方へ視線を向ける。
直後。彼の足は疑問を感じて止まった。
火事が起きたのにも関わらず黒煙は少しも上がっていない。
開け放たれた窓からは焦げ臭い匂いも伝わってこない。
これはどういう事なのか?と困惑する彼にマルトーがぽつりと零した。
「……すまねえコルベール先生」
見ればコック帽を脱いでマルトーは頭を下げていた。
それはコルベールが初めて見る光景。
マルトーは決して軽々しく貴族に頭を下げる人物ではない。
ましてや、こんな下らない嘘で他人に迷惑を掛けるような真似はしない。
咄嗟にその意図に気付いたコルベールが自分の部屋に駆け戻る。
来た時以上の速度で、身体の悲鳴を聞き流しながら走る。
「止めなさい!」
扉を開け放ちながらコルベールは叫んだ。
そこに誰がいるかなど知らないし、相手の姿も見ていない。
だけど自分をこの部屋から離したのなら、その目的は一つ。
そこに彼を解放しようとする誰かの存在を確信して言い放ったのだ。
コルベールの制止の声にびくりと侵入者は身を震わせた。
彼の視線の先にいたのは石を掲げたシエスタの姿だった。
その下には水槽に浸り眠りについたままの彼の姿。
「シエスタ……どうして君がこんな事を?」
間に合った事に安堵しつつも警戒を解かずに彼は問い質す。
恐らくはルイズとの話を聞かれていたのだろう。
そうでなければ水槽に入った彼の姿を見て生きているとは思わないし、
誰も踏み入れないこの部屋に彼がいる事に気付かない。
自分の無用心さに舌打ちながらも彼女の返答を待つ。
238 :
ゼロいぬっ!:2008/04/12(土) 16:05:41 ID:caahDQ3Y
「……分かっています。きっとこれは正しい事なんです」
視線を落としながらシエスタはコルベールの思惑に同意した。
コルベールがどれほど思い悩んでいたのかシエスタは知っている。
以前、タルブに来た時にも“彼”とコルベールの話を聞いていた。
だから、これはコルベールが描いた最良の結末なのだ。
誰も傷付かず、悲しみが過ぎればまたいつものように日々を過ごせるようになるだろう。
だけど…! だけど……!
「彼に選ばせてください! 選ぶチャンスを与えてください!」
モット伯のメイドとして召し上げられた日、シエスタは自分で進むべき道を選んだ。
その選択が誤りだったとしても彼女は選んだのだ。
彼に助けられて事なきを得た今でも、その決断を忘れない。
それがどんなに非情な現実だったとしても、
自分で答えを捜し求めるのが生きる事だと彼女は知った。
思い起こすのはいつだって懸命に生きていた彼の姿。
穏やかな眠りの中でやり過ごすのを彼はきっと望まない。
たとえ、どんなに辛い事だって立ち向かっていくのが彼だと思うから…。
石を抱え上げた彼女の視線の先には水に満たされた透明な“檻”。
「止めるんだシエスタ! 君は自分が何をやっているのか……」
コルベールが自身の杖を掲げる。
それは実力行使も辞さないと姿勢の顕れ。
だけど、それさえも彼女を止めるのには至らない。
「分かりません! だけど自分で決めたなら『進む』しかないじゃないですかッ!」
振り下ろされた石がシエスタの手を離れて叩き込まれる。
それは外壁に亀裂を走らせ、瞬く間に水槽を決壊させた。
噴き上げる水と共に押し流される彼の小さな身体。
呼吸に合わせて再開される生命活動。
そして彼は再び目覚めた、まるでハルケギニアに来た時をなぞるかのように……。
239 :
ゼロいぬっ!:2008/04/12(土) 16:07:29 ID:caahDQ3Y
投下したッ!
いぬ乙
おきちまったか、いぬよ…
>「ああ。それなら簡単だ。無ければ用意すれば良いだけの事だ」
まさかエロ本売り飛ばして金を用意したんだろーかw
間違いなくこのモット伯は不動産王ジョセフ並みに商売上手
>>239 GJです
美しいが、この先に待ち受けるものを考えると涙を禁じえない……
願わくば、彼にとっての救いがあらんことを
小ネタ
爆発の煙の中にそのシルエットが浮かび上がる。
横に突き出した髪の毛がなんとも異様である。
煙が晴れてくると、その姿がはっきり見えた。
風変わりなめがねに髪についた飾り。
「アンタ誰?」
「あぁん?ここはどこだ?」
「見ろ!ゼロのルイズが平民を召還したぞ!」
一人の生徒がそう叫ぶと、いっせいに笑いが起きる。
すると、その男が最初に声をあげた生徒に歩み寄る。
「なっ、なんd・・・」
唐突に声が切れると、そこにはもう服と『何か』しかなかった。
しばらくの沈黙。ふいに男が振り向く。そして、
「うわぁぁぁぁっ!」
その場にいた全員が、我先にと逃げ出す。
残ったのは、座り込んで呆然としているルイズと、その男。
「な、なななにしたのよ」
「知りたいかァーい?」
男はルイズに歩み寄る。
これは危険だと感じる。そして、
「オラァ!」
失敗魔法で吹っ飛ぶ男。
やるときはやる性格のルイズであった。
アレッシー−再起不能
マリコルヌ−元に戻ったが裸を見てしまったルイズに吹っ飛ばされ再起不能
>>244 GJ
召喚されて早々にマリコルヌを胎児にするアレッシーw
そしてすぐに再起不能にされるアレッシーw
敵として出てきても瞬殺されそう
絶望ォォォだねッ!!
>>244 GJ
それに続いて22:10から投下するが構いませんねッ!?
>>246 グラッツェ。ポルジョル投下します。
フーケを捕らえたルイズたちを主役に、太陽が姿を隠す頃に舞踏会は幕が上がった。
円盤こそ戻らなかったが、着飾った生徒達も職員も皆価値のわからない宝物よりフーケを捕らえたという功績を称えていた。
それは他の生徒達から賞賛を受け、ダンスの誘いを受けているキュルケ達に暖かい目を向けるオスマンのお陰でもあった。
オスマンの命の恩人が残したとはいえ、それで武勲をあげた若者にけちをつけるような真似はオスマンには出来なかった。
探す為の手配も済ませてあるし、見つからなくともオスマン一人が気にかければよいことだと…オスマンは考えていた。
生徒が主役達…の中で唯一まともに相手をするキュルケや意中の相手に群がり、踊り、談笑し、タバサが小柄な体にとても入りきらぬような大量の料理を平らげるのを一通り眺めてから、オスマンは会場から抜け出す。
学院長である自分がその場にいない方が生徒達もより舞踏会を楽しめる。
使い魔のネズミを残し、使い魔が伝えてくる映像を肴にゆっくりと楽しむことに決めていた。
生徒達は会場を後にするオスマンに気付かない。会場を後にするオスマンが微笑ましく感じたタバサも、メイドが次から次へと運んでくる料理を平らげ続けるのに専念していた。
ドレスアップしても普段と変わらぬ無表情で手と口を動かすタバサは可愛らしかったが、その胸のうちは穏やかではなかった。
理由はタバサの使い魔であるシルフィードが、この舞踏会が始まる前になってタバサに伝えてきた出来ことのせいだった。
ジョルノが何故彼女の母を治すどころか詳しく話しさえ聞かない理由が、父の仇であるガリア王ジョゼフだということ。
母の事で熱くなっていた心が冷たく硬くなっていく…考えてみれば当然の事だ。
大国ガリアの王であるジョゼフならたとえ治療できてもまたすぐに母をもっと酷い目に…もしかしたら今度は殺してしまうかもしれない。
いや、タバサが思いもつかない残酷な手を使い母を殺してしまう…!
ジョゼフの人となりなどタバサは知らなかったが、母が狂ってからこれまでずっと困難な任務に携わってきたタバサには、奇妙な確信があった。
どこかへ逃がせばと、考えていないわけではない。
だが他国へ逃がしても、それは同じことだ。
他国に逃げたくらいではジョセフの行動をちょっぴり遅らせるだけで、諦めさせる事などできないだろう。
公式には存在しないガリア北花壇警護騎士団の「北花壇騎士・七号」として過酷な任務を命じられてきたタバサには、楽観的な考えは浮かばなかった。
フォークを握る手に知らず力がこもる。
はしばみ草のサラダに突き刺し、勢い余って食器が微かに音を立てる。
その音で考え込んでいたことに気付いたタバサは、今は言い寄る男子生徒の相手をしているキュルケが戻ってきた時に感づかれないようにと表情を作り直す。
だがすぐにまた手に力が入ってしまうことをタバサは抑えられなかった。
何より、逃げて治療してどうするというのか。
ずっと、母と二人ガリア王国の手が伸びてきて危険な目にあうかもしれないと不安に思い、怯えて暮らすのか?
ジョゼフの手が伸びてきた事に気付いたら、何度も何度も…どこまでも遠くへと逃げるのか?
それこそ外国、直接の往来がない東方『ロバ・アル・カリイエ』などへ旅をして…
母と父を殺した男相手に、そんな惨めさを味わうのも、母に味あわせるのもタバサには、シャルロットには耐えられないことだ。
だがどうすればジョゼフを諦めさせられるのか…ジョゼフを殺す事ができるのだろうか?
物騒な事を考え込むうちに微かにタバサの表情が険しくなる。
タバサは席をたちまだ始まったばかりの会場を後にしようとした。
だが人の波を抜けていく途中、はしばみ草を使った料理が目の前を通り過ぎたので引き返した。
ダンスを踊りながら、タバサの意外な一面を見ることができたジョルノは微笑んだ。
タバサを見つける前に、約束を取り付けた女生徒達と踊っているミノタウロスを見たせいでささくれ立っていた気分がよくなっていた。
彼女が部屋に戻り、父の仇の娘であるイザベラから手紙が届いているのを見たらどんな顔をするか、少し楽しみだった。
「伯爵様、どうかなさいました?」
「…失礼しました。誘いに乗っていただいて少し浮かれてしまったようです」
困ったような顔で答えるジョルノに相手の女生徒は慌てた様子で返事を返す。
「か、勘違いして貴方がお困りにならないよう申し上げておきますわ。
貴方は私を慰めてくれる優しい方だから…今日の所は、私を気遣ってくださった優しい貴方のような方、外国の客人に恥をかかせるような真似はするなときつく言われているからよ!?」
曲に紛れて囁いてくるモンモランシーにジョルノは穏やかな表情で見返すことを返事の変わりにした。モンモランシーは、動揺した様子で更に言葉を重ねた。
「ト、トリスティン貴族は、すぐに心変わりするはしたない女だなんて思われるわけにはいかないのよ…お分りかしら?」
「はい、ありがとうございます。…ですが、余り無理をなさらないでください」
教養を感じさせる声で、できれば好感を得られるような口調で囁く。
近くで見るまでもなく、ジョルノにはまだ腫れている頬を隠すのに少し厚く化粧をしていること、踊れば時折指先や足に力がないことはよくわかっていた。
ジョルノは支えるように普通より身を寄せて気を付けてリードする。
モンモランシーを誘うよう頼んできたミス・ドラッタと彼女の彼氏らしき男が踊りながら場所を変え、モンモランシーの視界に入っていくのを眺めながら、モンモランシーと会話を続ける。
「一曲踊っていただけただけで私は満足しておりますから」
「あ、ありがとう……伯爵、誰にも気付かれずにあんな、ベッド一面を覆う程の花なんて、どうやって用意されましたの?」
恥ずかし気に尋ねたモンモランシーにジョルノは苦笑を返した。
「気付かれなかったのは運がよかっただけです。傷心の貴女に妙な誤解をされたくはありませんからね」
「答えになっていませんわ」
「貴方や今会場にいる紳士達は十六才以上、私はまだ十五ですからね」
「ですから…それがどうかされたの?」
年下ということにちょっぴり驚いたようだが、たった一年だが、この時期だとこの差は大きい。
成長期だから体格は大きく変わってしまう者も多く、知識も差が開く。
そう言う若い伯爵にまだまだ好奇心いっぱいの顔で尋ねてくるモンモランシーから、一見恥ずかしげにジョルノは顔を逸らす。
周囲にテファやラルカスやポルナレフがいないことを確認しながらそっけなく言う。
「可愛い女性の気を引くためなら男は頑張ってしまうものなんですよ。それが綺麗なお姉さん相手でライバルが多いなら尚更です」
「も、もう…お、お世辞がお上手ね…!」
はぐらかすように質問に答えながら、ジョルノはどうにか何度かのこうしたパーティーと今夜覚えたステップでモンモランシーをリードする。
顔を赤くして目を逸らしたモンモランシーの様子を見る限り、大丈夫そうだと判断する。
ゴールド・エクスペリエンスの能力を、スタンドを持っていることは隠したい。
ただの軽薄な成金と思われていた方が疑われるよりは余程いいと、ジョルノは考えていた。
こんな事を言っているとポルナレフ達には絶対に聞かせられないが。
「びっくりしたわ。それにあの詩も…とてもうれしかったわ。あんな詩を貰ったのも初めてなの」
思い出し、夢見るような目で自分を見上げるモンモランシー。
一つの曲が終わり、テンポが変わる。ジョルノは曖昧に笑みを返しながらモンモランシーの腰に手をあて、踊り続けながらテファを捜した。
テファもこの舞踏会に参加しているはずなのだが、始まってから一度もジョルノはその姿を確認できなかった。
嬉し泣きか微妙に涙ぐむケティの彼氏が何度も視界に入って鬱陶しかっただけだった。
一体どんな内容だったのか、ジョルノはモンモランシーが言う手紙を書いた張本人のドレス姿を盗み見ながら思った。
服装、マナー等一分の隙も見せないゲルマニアの成り上がり貴族が由緒正しいトリスティン貴族を誘い、親しげに踊る光景は人目を引いていた。
男達の誘いをやんわりと断ったキュルケが悪戯っぽく笑う。着たばかりの同郷の者が案外上手くやっているのを嬉しく思ったらしく、タバサに話しかけながらちらちらと二人を見ている。
その同郷の貴族は、今この場にいない亀とテファを探す為少々強引にモンモランシーの手を引き、立ち位置を変えながら気持を荒立たせようとしていたが。
奪還予定の土くれのフーケを自分が助けると言っていたテファの姿が、ジョルノの脳裏に浮かんでいた。
いつにも増して凄い勢いで料理を平らげていくタバサに苦笑しながら、キュルケは隣に座った。
給仕からワインを受け取り、踊る間に乾いた喉を潤しながらキュルケはジョナサンとラルカスを、会場全体を見る。
二人の外国人に対抗心を刺激され、舞踏会は去年よりも盛り上がろうとしているように、キュルケの目には映った。
踊る為の軽やかな音楽に交じって入り口の兵士が、声を張り上げるのが聞こえる。
円盤を失った事に関してはお咎めもなく、シュヴァリエの称号ももらえるというのに…
髪を結い上げ、可愛らしいドレスや薄い化粧で普段より何割かましで可愛らしくなったルイズが、硬い表情で会場に現れた。
少し沈んだ表情が逆に気を引いたのか、ゼロと馬鹿にしていたルイズの可憐さに気付いた男達が動く。
ゼロ相手にと足を止めかけ、だがフーケを捕らえたんだし誘っても恥ずかしくない相手だといいわけも立つと、男子生徒が群がっていく。
そんな男子生徒達の相手をする気などなさそうなルイズからキュルケは目を離し、ため息をついてタバサに話しかけた。
「ルイズ、カメナレフと仲直りできるのかしら?」
話しかけられたタバサは手を止めた。
カメの中で見た亡霊、ポルナレフ…タバサは震えそうになる体を叱咤し、平静を装って返事をする。
「新しい遣い魔を召喚するかもしれない」
「…それって、ルイズがカメナレフを殺すってこと?」
驚きながらも、声を潜めて尋ねるキュルケに一瞬頭に亀鍋が浮かんだ。
結構おいしそうなきがする…がタバサは首を横に振る。
「契約は完了していない、と言っていた」
「…ちょ、ちょっと、それって…まさかあのルイズがカメナレフをあの伯爵に返すって言うの!?」
驚くキュルケにタバサは返事を返さなかった。
テラスへと出て行くルイズが、どうするのかタバサにはわかるはずも無かった。
ダンスを断られ、会場の外へと出て行くルイズの背中へチラチラと視線を投げかける。
諦めて他の女性に声をかける者。すぐに戻るだろうと腹を括って壁を背に談笑する者達。
他の女生徒踊って時間を潰す者などのけして少なくは無い男達の目を潜り抜けて、ジョルノはルイズを追った。
今どこにいるか知らないかも知れないが、ポルナレフの今後の事だけでも、ルイズとは話しておく必要があるのだ。
会場の騒がしい灯りに照らされたテラスで深いため息が一つ零れたが、夜の闇にテラスを浮かび上がらせる会場の明かりが、テラスにまで流れてくる奏でられる楽曲と人々のざわめきがそれをかき消す。
「…会場にはいないみたいね」
新しい使い魔を召喚すると決めたものの、ルイズはまだ悩んでいた。
最後にもう一度話して、いいわけでも聞いてみるつもりだったが当ては外れたようだった。
ポルナレフに対して悪気を感じているわけではない。
ルイズの怒りはまったく収まっていない。
使い魔が主人であるはずの自分を裏切っていたという事実は単純に辱めを受けたような気分だったし…
何より、コントラクト・サーヴァントに失敗しただけでなく、使い魔として呼んだ者に騙され続けていたなど…ルイズには到底許容できる話ではなかった。
貴族として、メイジとしての自分を立証するはずの存在が、自分を騙していた!
使い魔として召喚に応じながら拒否し、挙句裏では、使用人達の様に自分を嘲笑うか哀れんでいたというのか!?
「ただの平民が、カメナレフが…私を!」
思い出して再燃した胸を焼き尽さんばかりの怒りや悲しみが、憎悪が、涙になって頬を流れた。
初めて成功した魔法が失敗したことは、ルイズを深く傷つけていた。
使い魔になるのは嫌だけど暫くは我慢してようなんて、そんなことを考えていることにも気付かずに主人面して振舞っていたなんて道化にも程がある。
家族や父祖達と自分の間に広がるどうしようもない差をはっきりと見せ付けられ、否定的な考えがルイズの心を覆っていた。
フーケを捕らえたのだって、自分の手柄ではなくカメナレフに、恵んでもらったようなものにしか感じられない。
そんなもので注目され、認められる自分が情けなく悔しかった。
メイジが即ち貴族というトリスティン貴族の価値観をルイズも持っている。
そう育てられてきたからだ。
フフフ…この「支援」こそ「生」のあかし
だが、貴族として生まれたというのに、ルイズは魔法ができない…いつかできるはずと頑張ってきた結果は、こんな様だ。
(勿論そんな事はないが)ルイズは、学友には馬鹿にされ、家族にさえ『ゼロ』であることを心配される自分は、使い魔に騙された愚かな自分は、ヴァリエール家の人間ではないような気さえしていた。
相手と別れ、ポルナレフのことで話そうとして一人になったルイズのところにきたジョルノは、泣いているルイズを見て足を止めていた。
こんな時に一人ルイズが泣く理由はルイズのぼやきでわかっている。
ちょっぴり寄り道しただけのつもりだったが、その結果こちらもかなり面倒なことになっているらしいことをジョルノは察せざる負えなかった。
わざと足音を大きくしてルイズに近づいていく。
他人が来た事に気付いて我に返るルイズに声をかける。
「ミス・ヴァリエール」
「…その声は伯爵様ですか?」
「はい、少しお話したい事があります」
近寄ってくるジョルノが話したいことが何かを考え、ルイズは身を硬くした。
ジョルノはポルナレフの飼い主だと言っていたし…中身のことを最初に口にしたのもジョルノだった。
姉を治してもらったことには感謝しているが、そう言った意味では嫌な相手だから少しポルナレフのことかと思ったのだ。
だがジョルノは、ルイズの様子を見て今はそんなことを話す気はなくなっていた。
「貴方の魔法の件です」
「私の…?」
広間から零れる光に照らされたルイズが自虐的な表情を見せる。
気付かない振りをしてジョルノは続ける。
「はい、貴方のご家族から話を聞いていたのですが。私が以前見た古い記録に貴方と全く同じメイジのことがあります」
「私と同じ…」
ルイズもこの学院に着てから、魔法が使えるようにと日々努力してきたのだ。
てがかりを探して図書館で色々と調べていた時もあるが、ルイズのような事例は見つからなかったのだ。
微かに驚いたような顔を見せて見上げてくるルイズに頷いてみせる。
記録というのは嘘だ。
探してみてはいるが、優秀なメイジの記録は残っていても魔法が使えないメイジの記録は残っていない。
魔法ができない者など、家の恥として消してしまうのだ。夜風で目にかかる髪が少々鬱陶しい。
やはりヘアスタイルはコロネに限る、とジョルノは思った。
「結論から言います。貴方の系統は虚無かも」
ちょっぴり茶化すように言うジョルノに、ルイズは絶句したようだがすぐに嘲笑った。
始祖の系統を全く魔法が使えない自分の系統だとは信じられなかった。
ジョルノもテファの魔法を見ていなかったら、そうは思わなかっただろう。
だがテファの魔法はラルカスを始めとしたメイジ達や書物を調べても存在しない。
それにテファが魔法を覚えた経緯を聞いたジョルノは、彼女は虚無の系統ではないかと結論付けていた。
「虚無…?虚無ですって!? 伯爵様、私をからかうのは止めてください…!」
「信じられないという気持はわかります。私自身、半信半疑ですしね」
ジョルノの返事に怒りを微かに見せるルイズに、ハンカチを取り出して持たせる。
背を向けてジョルノは眩しいほど明るい会場へと戻っていく。
ラルカスにテファがどうしているか確かめたかった。
馬鹿な事をしていなければいいのだが…
「虚無のメイジが魔法を覚えるには通常の方法では無理です。貴方が確かめたいとおっしゃるなら私は協力しますよ」
返事を待たずにジョルノはラルカスに詰め寄っていった。
フェイスチェンジを使い、両手に花状態で飲み食いしてる牛男が、ジョルノの表情を見て顔を引き締めた。
椅子に腰掛、寛いでいた姿勢のまま空中に浮かび、ジョルノの前に立つと少々古風な礼をして主人を迎える。
ジョルノもラルカスが連れていた女生徒達や漁夫の利を狙って周りにいた男子生徒に軽く礼をして、ラルカスを連れて行こうとする。
しかし名残惜しそうに女生徒達を見たラルカスは、慌ててジョルノの耳に口をよせた。
ボスと呼ぶわけにはいかないので、人気の無い場所に行こうとするジョルノの肩を掴み、ラルカスはジョルノを旦那と呼んだ。
「旦那、テファのことなら問題ありません。例の件も進行中だ」
「そうですか」
例の件、とは土くれのフーケの救出のこと。
一瞬鋭い目を見せたラルカスの言葉にジョルノは足を止めて肩越しにラルカスを見た。
場の雰囲気に合わせて顔には笑顔が浮かんでいたが、その目を見たラルカスの背中には冷たい汗が流れた。
何故ならこの場から今撤退する事などできないからだ…!
久しく参加する事ができなかった紳士淑女の戦場。そこへ再び足を踏み入れた記念すべき今日この日を…!
女生徒数人とダンスを踊り談笑するだけで満足できるのか?
否…断じて否だった。
その為に苦労していつもより偏在を一人多く出し、フェイスチェンジさえ習得したのだ。今日この日の為に…!
いつになく真剣なラルカスの表情を、一応ジョルノは信用してみる事にした。
フーケの救出にはラルカスの偏在をジョルノは向かわせていた。
他の者に任せるつもりだったのだが、一つ問題が生じたのだ。
他の勢力が、思ったよりも早くフーケが捕らえられた情報を手に入れ、こちらに向かっているらしいことが耳に入ったのだ。
レコンキスタのネズミ。それもかなり腕の立つメイジが一人向かっているらしい…万全を期すという意味でジョルノはラルカスに命じたのだが。
「テファと一緒ではないでしょうね?」
「ああ、一緒にいるのはポルナレフだ」
ポルナレフが一緒にいると言われ、ジョルノは微かに眉を動かした。
「ポルナレフさんの亀の中は確認済みですね」
「…ああ、いや…それは忘れてた、かも」
誤魔化すように笑い始めたラルカスを見て、ジョルノは会場から出ることを決めた。
聖地奪還を目的に掲げる貴族達に組するメイジがハーフエルフのテファを見たら厄介なことになる。
以上です。
次の後編でポルナレフパート予定。
早くアルビオンに行きたい…
投下乙!
そういえば、ジョルノって15歳なんだっけ……
見えねえええええええ!!
投下乙そしてGJでした
全く、エロタウロスは自重しないなw
しかし、ポル側が不安なんだがはてさて、どうなることやら
カメナレフなエロナレフさんがおマチさんに何をしでかしているんだろうと、ぼくはとてもふあんです
投下乙っした!
ミノタエロスのスペック(成長性)は底なしだなw
鼻の穴膨らませてフヒヒwとやってるんだろうな。
両側に侍らされた女生徒も気の毒に…。
GJ!!
ジョルノ15だったの素で忘れてた…orz
そしてミノタエロス自重しろwwwww
ついでにジョルノ、お前もだwwwwww
キンクリ
ムゾン
遅れに遅ればせながら、皆々様GJ!
オ…オレも…10分後になったら投下するよ…。
キャラの性格が違うって馬鹿にされるのも、けっこういいかもな。
勝手な設定もつけてえ! 避難所行きか丸一日悩んだ、原作の描写からの空想だ!
この際展開も曲げちまおう!
一章五節 〜使い魔は血に慄く〜
最後の机を運び終えて、リキエルは息をついた。
時間は、昼休みまで一時間あまりといったところだった。リキエルがルイズに言ったよ
うに、そう時間はかからなかったことになる。
無論、リキエルは手抜きなどはしていない。爆発によるクレーターは如何ともし難かっ
たが、その瓦礫はルイズがいる間に片付け終わっている。掃き掃除も、細かい塵は残って
いるかもしれないが、もともと綺麗なわけでもない教室なので、ざっと見ただけではわか
らないだろう。
新しい窓ガラスは、教室に運び入れたそのままで放置してあった。どうやって窓にはめ
込むものか、リキエルにはわからなかったのである。何かしらのノウハウが必要なのかも
知れず、あるいはメイジの仕事なのだろうとリキエルは思った。
ひとまず、これで仕事は終わりだった。御役御免というわけだ。
しかし、リキエルが教室から出て行く気配はなかった。自分で運び入れた椅子の一つに
座り込んで、所在無げに鼻の頭をかいている。その姿は、先ほどのルイズに似ているよう
で、少し違った。
ルイズはずぶずぶと沈み込むようで、何かを堪えるようにジッと座っていた。対してリ
キエルは、根を生やしたように動かないのは同じだが、どこか虚ろで、放心したように座
っている。リキエルは煩悶していた。
――どうしてオレは……。
一人でこの作業をする気になったのか。そんなことをわざわざ言ってしまったのか。ル
イズが訝しげにしていたように、納得のいく理由が、リキエル自身思いつかないのだ。気
まぐれではなかった、とは確信しているが、そうすると余計に説明がつかない。
労働意欲に目覚めたわけでは勿論なかった。仕事を終えた今、リキエルに残っているも
のは充足感でも達成感でもなく、心地よい疲労感でもなかった。熱を持ったような肩の凝
りの他にはただ、胸の奥に奇妙なもやがかかっただけである。
そしてこのもやは、考えてみるとしかし、仕事を終えて今初めて湧き出したものではな
いようだった。
ふと、「ないわ」と言ったルイズの顔が思い出された。葛藤とも困惑とも焦燥ともつかな
いものが、そのとき頭を駆け巡ったのをリキエルは覚えている。もやが生じたのはその少
し後だった。そして、気づけばルイズを追い出すようなことを口にしていたのである。
――追い出すだ……?
自らの思考にリキエルは一瞬疑問を抱いたが、直ぐにそれは消えた。むしろすんなりと、
あるべき場所にあるべきものが落ち着いたようにさえ感じられた。
そこでハタと気づく。気づくというよりも、それは明確な答えとなっていた。自分は、
ルイズを追い出すためにああ言ったのではないか。言葉を重ねれば、ルイズと同じ場所に
居たくないと、そう思ったのではなかったか。
そしてそう思わせたものは、リキエルにとって、やはりある種馴染み深いものだったの
である。
それは恐怖だった。闇夜に息を殺しているような得体の知れない恐怖とは違う、逆に、
幾度も落ち込み底の知れた、よく見知った恐怖である。だからこそ、リキエルはそれに気
づきたくなかった。無意識に、自分でも気づかないふりをしていたのである。
そして、これは恐怖であると同時に兆候でもある。その兆候とは、パニックに陥る際の
兆候だった。リキエルがルイズを遠ざけたのは、それを過敏に捉えたためだ。この兆候が
胸をよぎった理由も、既にリキエルはわかっていた。
――これ以上は。
考えちゃあならない。昨晩ルイズの前でパニックを起こしたときと同様に、リキエルは
そう思った。が、既に遅く、気づけばリキエルは大量の脂汗をダラダラと流し始めていた。
リキエルの顔が苦悶に歪む。
――やばい。やばいやばいまずい! 『このこと』については、『こいつだけは』考えち
ゃあならないんだ! わかってる、そんなことはとうの昔になァ。 ああくそ! なのに、
チクショウ! ああ、わかっているんだ。ここまで来たらもう手遅れってことぐらいオレ
が一番わかってるんだッ! くそ、くそ! 考えるんじゃあない!
まぶたは下がり、息は過呼吸気味に荒れる。歯を食いしばって呻いても、流れ出る汗は
止まらず、むしろ、呻き声によって搾り出されているかのようだった。
胃袋に砂利が入っているような心地がする。
のど仏のあたりに泥を塗りこめられたような感触がある。
耳の後ろにライフル銃を突きつけられたかのように不安になる。
自分ひとりでは何もできないのだと絶望する。
こんな姿を誰かに見られたらと恐怖する。
――チクショウ! ちくしょう! 苦しい、息が、くそ! 何も見えないぞ! いつに
も増して酷いッ! まぶたが、下がって、何だってんだァ! 考えるな、考え……おおお
おお!?
何も見えない。見えないのに眩暈がする。
息を吸いたい。息の吐き方がわからない。
頭痛がする。吐き気もだ。体がうまく動かない。
――血統、家、笑われ、今まで、ゼロ、パニックを、諦めが、まぶた、汗が、動かねえ、
苦しい、息、呼吸、カワイソーだとか、やばい、血筋、ふきたい、ゼロ、血統、何も、タ
オル、死ぬ、期末試験、呼吸が、意識、死ぬかも、意識、ディ、意識が、D、意識……。
リキエルは椅子から転げ落ちた。落ち方が悪く、体のあちこちを床に強かに打ちつけた
が、リキエルはその痛みを感じてはいなかった。意識が朦朧とし過ぎたためなのか、感覚
が鈍っているようだった。
「――……? ――!」
足音が聞こえた。呼びかけられているような気がする。なんだか耳に心地よい。
顔を上げようとする。上がらない。少し上がった。何も見えない。
体が冷えていくような感覚に襲われた。上唇にかかる自分の鼻息が、変に熱っぽく気持
ちが悪い。
意識が暗がりへ転がる寸前、肩に乗った手の感触を、リキエルは感じた。
リキエルには母親がいなかった。
勿論、今こうしてのた打ち回っていたからには産んだ親がいる。だが、リキエルが物心
ついたときには、既に母親の姿はなかったのである。何故いなくなったのかはリキエルも
知らない。ただ、それが酷く悲しかったことだけは覚えている。
盥回し先の、親戚達の話を聞きかじったところでは、他所でできた男と逃げた挙句に野
垂れ死んだだの、麻薬に手を出して厄介ごとに巻き込まれただの、挙句の果てには、奇病
にかかって世にもおぞましい姿で死んだなどと言う者もおり、何れにせよ、わずかばかり
も心ある話は聞かされなかった。
リキエルはそれらの話を信じていない。それは母親を信じたいという気持ちからではな
く、親戚達が、控えめに言っても母親を好いていなかったらしいことが――子供が盥回し
に合う理由など、金銭の話を抜けばこんなところである――わかっていたからだ。
リキエルは父親を知らなかった。
どころか、その親類縁者にすら、リキエルはお目にかかったことがなかった。母方の親
戚達がその辺りの話題を嫌っているのは明々白々なので、あまり尋ねる気にもなれず、例
え聞いても「知らない」「わからない」という答えが返ってくればよい方だった。
誰もが、答えたくないというよりも本当に知らないらしいということが――そのくせ、
嫌な憶測だけはエラク自信あり気に語っていたこともあって――印象的だった。リキエル
は幼心に奇妙に感じたものだ。
リキエルは暫く、ギクシャクとした関係の親戚の家を渡り歩き、歩かされた。彼ら、あ
るいは彼女達は、リキエルに暴力を振るいこそしなかったが、愛情を以って接してきた者
もまたいなかった。
空気中に含まれる窒素のような扱いを受ける日々だったが、小学校に上がる頃には、一
つの場所に落ち着くことができた。他人とほぼ同義な程に遠い親戚の家だったが、そのこ
とが幸いしたものか、彼らはある程度の好意を以ってリキエルの面倒を見てくれた。
リキエルは、元気で明るいとはいえないが、それなりに普通の子供として育っていった。
だが、リキエルの生い立ちはやはり、少なからず彼の頭上に暗い影を落としていたとみ
え、リキエル自身も気づかぬうちに、リキエルを少し歪ませていたのである。
その暗い影は、例えば友人の、両親に買ってもらった誕生日プレゼントが気に入らない
とか、タバコなんか吸うんじゃあないと親父がうるさいのだ、とかいった手合いの話を聞
いたときに色濃くなる。
その歪みは、例えば小学校の先生が、将来の夢はなんですか? と聞いてきた時や、熱
心が過ぎて終始空回りしていた中学の教師が、やりたいことをやれ! と脈絡もなく語り
だした時などに浮き彫りとなった。
リキエルは、およそ生きる希望や目的というものを、どこかに置き忘れてしまっていた。
それでも、リキエルはそのせいで絶望するということはなかった。むしろ中学に上がっ
た頃には、年相応といえばそうだが、自分のやりたいことについて考えるようになってい
た。そしてその答えが出ないとなると、何をするにせよ良い成績を出しておいて損はない
だろう、という考えに至り、勉学に励むようになる。
しかしあるとき、その努力も水の泡と消えた。端的ながらルイズにも話した、16才の学
年末試験での出来事である。
当時リキエルには何が起こったのか理解できず、原因は依然わからないままだ。起きた
ことをありのまま話すのであれば、集中し始めたら何も見えなくなった、とこれだけであ
る。初めは周囲の人間も同情的だったが、すぐに『カワイソー』とか『知らんぷりして近
づかないでおこう』といった、『我関せず』の態度を露にした。その態度はリキエルを追い
詰め、息苦しくさせ、汗だくにした。結局、彼は試験科目のうち、半分を白紙で提出こと
になった。
以来、リキエルは何がしかに強く集中するたび、まぶたが下りてくるようになった。
当然、ろくな結果は残らない。
自然、何事にも自信が持てなくなった。
はじめはまぶたが下りるだけだった症状が、晴れてパニック障害という、亀の餌にもな
らない名前を無駄に賜うことになるまで、そう時間はかからなかったが、リキエルがその
名前を耳にしたのは、学校へ行かなくなってから暫く経ったある日のことだった。
20歳を迎える頃には、誰かにパニックの発作を見られるのが嫌で、一人暮らしをはじめ
ていた。生きる希望は完全に失っており、人生そのものにまいってしまっていた。
時折、このままではいけないとアルバイトなどもしてみたが、一月と勤め上げたことは
なかった。
移動に欠かせないものだからと、車両の運転もできるように頑張ってみたが、暫く乗れ
ば事故を起こした。
失敗ばかりするうち、リキエルはどんなものに対しても、行動を起こす前から自信が持
てなくなっていき、大小数多くのトラウマを抱えるようになる。ひどいトラウマに至って
は、そのことに関する事柄を故意に忘れようと努めた。
中でも『自分の肉親』や『血筋』について考えをめぐらすことは、何よりもしてはなら
ないことの一つになっていた。自分の親を知らないというその事実は、十余年を経て肥大
し、リキエルの心に重く深く、捕鯨用の銛のように食い込んでいたのである。二、三度、
そのことについて考えたことはあるが、重度のパニック発作に苛まれることになった。丁
度、今先ほどのようにである。
リキエルはもう何もする気になれないでいたが、今年に入ってから、ふと、生活環境を
変えてみようと思い立った。そして何かに引き付けられるようにフロリダを目指した。そ
れから暫く経ち、三月も半ばになろうという時期になって、リキエルはようやく新天地フ
ロリダでの、最初のアルバイトを手に入れたのである。
◆ ◆ ◆
学院長室を後にしたロングビルの足運びは、心持ち軽やかだった。
何枚捌いても変わり映えしない羊皮紙の群れから、いつもより少しだけ早めに逃げられ
たことが、彼女の足取りをそうさせているようだった。勿論ことあるごとにセクハラをし
かけて来たり、冗談交じりに色目を使ってくるジジイから離れられたことも、ロングビル
の足を軽くしている。
ただ、ロングビルの表情は晴れ晴れとしたものとはいえなかった。かといって暗い顔を
しているわけでもなく、思案気な表情である。
ロングビルは、慌しく駆け込んで来たコルベールの様子と、珍しく――というよりも恐
らく初めて目の当たりにした、オスマン氏の真剣さをたたえた表情を思い返している。そ
れまでの醜態を取り繕うのに相当な精神力を割いていたとはいえ、それは印象深くロング
ビルの記憶に残っていたのである。
ロングビルはこの学院に来てから日が浅いが、その短い期間でわかったことの一つが、
オスマン氏は食えない部類の人間だということだ。
どこからどこまでが本気で、もしくは冗談なのかわからないあの老学院長は、滅多なこ
とではあんな顔はしないだろう。コルベールの持ち込んできた話は、それなりの重要性を
持っていたとみて、まず間違いはないはずだった。
その上で、暗に席を外せと言われたときは、とぐろを巻き始めていた自分の好奇心が、
ムクリとその鎌首をもたげるのをロングビルは感じたが、コルベールとオスマン氏が、漏
れ聞かれることさえも憚るような話をするのだということもわかっていた。それだけに、
興味を引かれたというだけで首を突っ込むことは避けるべきだと、ロングビルは思った。
好奇心が殺すのは、何も猫に限らないのである。
――それは。
さすがに言いすぎか。ロングビルは、自分で思ったことが可笑しくなった。
学院長室での二人の様子は確かに珍しくはあったが、それが陰謀めいた何かに結びつく
とは思えなかった。自分の発想が飛躍気味になっているのにロングビルは気づいていたが、
いささか飛びすぎた感は否めない。それで、悪い気もしないのが始末に悪かった。
漫然と流れるだけの日常に兆したちょっとした変化は、ロングビルの足取りだけでなく、
少しだけ気持ちも浮つかせているのかもしれない。
「……」
ロングビルはツイと眼鏡を上げ、少しだけ足を速めた。
冗談めかしてものごとを考えられるほど、心に余裕が戻ってきたことは喜ばしいが、緩
めすぎるのも考えもの、と思ったようだった。軽快な足取りは変わらなかった。
ほどなくして、ロングビルは教室に到着した。
オスマン氏の使った方便であれ、仕事は仕事である。むしろ方便や建前とは、表向きそ
の通りに行動するからこそ、その役割を果たし得るのだ。秘書としても、仕事と言われれ
ばそのあたりはきっちりとしておかなければならない。
というのは建前で、ちゃっちゃと片付けてさっさと昼食をとりたい、というのがロング
ビルの本音である。ロングビルは、大きい割りに軽い扉を開いた。
そこで、違和に気づく。それは曖昧な違和感というよりも、明確な異変だった。
――誰かいる……?
人の気配がどうのこうのどころの話ではなく、はっきりと、何かしらのうめき声が聞こ
えてくるのだ。荒い息遣いだった。苦しんでいるようでもある。
ロングビルは足音を殺し、机の影に隠れながらうめき声の主に近づいていった。
ただの人間のようだが、用心は必要だった。使用中止の教室でうめいている誰か。恐ら
く生徒ではない。教師ということはさらに考え難い。教室の修繕をしようなどと、殊勝な
心がけをする者がいるとも思えなかった。となれば、これも考えづらいが、外部からの侵
入者かもしれなかった。
万一そうなら、詰めている城の衛兵にも学院の誰にも気づかれずに、ここまで来たとい
うことである。目的やうめいている理由はまるでわからないが、その万一を念頭に置いて、
怪我をすることはないはずだった。取り越し苦労ならそれでもよい。
「……」
意を決して、ロングビルは机の横から、うめき声の主を覗き込んだ。
しかし初めに目が行ったのは、教室の惨状だった。それなりに片付いてはいるようだが、
教卓のあった場所はえぐれ、窓はそのほとんどが割れていた。吹っ飛んだとは聞かされて
いたが、ここまで酷い状況とは、ロングビルも思っていなかったのである。
それらをざっと見回してから、ようやく本題へと、ロングビルの目が向く。
――……いた。でもこれは。
男が倒れ、もがいていた。やはり苦しんでいる。だが、その様子はロングビルの予想以
上に、尋常なものではなかったのである。
もとの造形を著しく損なわせるほど顔は歪み、双眸がまぶたで固く閉じられている。パ
ニックを起こしているようで、息は乱れに乱れている。立ち上がろうとひざ立ちになって
いるが、足に力が入っていないのは明らかだった。生まれたての馬のほうが、まだ力強さ
を感じさせる。
男の姿は、ほとんど滑稽と紙一重だった。
――まずいわね。
直感的に、ロングビルは思った。男に対する所見である。目立った外傷が見当たらない
ことから、男の苦しみは、体の内側から来るものだろう。重病に侵されていることも考え
られた。
何にせよ男の状態は、遠目には一刻を争うことかもわからないのである。迷っている時
間は、あまりないようだった。
正味を言えば、ロングビルは面倒ごとは御免だったが、だからといって、男の様子をた
だ見ているというわけにもいかない。日頃からドライな空気を纏うロングビルだが、目の
前で苦しむ人間を捨て置けるほど、情の無い人間というわけでもない。
人助けをして、悪いことがあるものか。ロングビルは自分に言い聞かせた。言い聞かせ
なければ動けないことが、自分の融通の利かないところかもしれないと、どこか冷めたま
まの頭で思ったりもした。
「どうしました……? 大丈夫ですか!」
警戒心はもう解れている。思うに任せて、ロングビルは見ず知らずの男に駆け寄った。
その声に反応したものか、錆付いた歯車のように緩慢な動きで、男が顔を上げた。それ
だけの動作が、男に大きな負担をかけているようだった。
肩に手を置いた途端、男の体から力が抜けたのがロングビルにはわかった。どうやら意
識を失ったらしい。これで逆に、呼吸は落ち着くはずだが、男の顔色は一向によくならな
い。地肌が土気色の人間はそうそういるものではない。
男の喉に手を当ててみる。ひくひくと痙攣するだけで、うまく息が吸えていない。危険
な状態だった。
「しっかりして下さい、気を確かに」
「グ……う、げぇ、かはっ、あが、まぶたが、クァ」
しゃがみこんで呼びかけると、ほどなくして男は息を吹き返したが、呼吸が早くも乱れ
始め、うわごとを繰り返す。気を抜けば、またすぐに意識を失うだろう。まずは落ち着か
せることが先決だった。
ロングビルは男の背をさすりながら、優しく語り掛ける。
「気を確かに持ってください。大丈夫、単なるパニックよ。すぐに収まるから、安心して」
「ぐ、うう、ハァ――、あが、がが、ハァ――」
「無理に息を吸わず、力を抜いて。そうです。ゆっくりと、浅くてもいいのだから、ゆっ
くりと吸って、肩の力を抜いて、大丈夫です。大丈夫だから」
「か……はァッが、クウぉ、ハ、クハァ、は、ハァ、ハァー」
次第に、男の呼吸が一定のリズムを保つようになった。顔も比較的穏やかなものになっ
ていく。こうして見れば、男はまだ若く、自分とそう歳は変わらないだろう、とロングビ
ルは思った。
「タオ、ルを……く、ハァー」
男は喘ぎながら、辛そうに唇を動かして、聞き取り難い声を発した。
「タオル?」
「貸して、くれないか」
男は酷く汗をかいていた。ロングビルは白いハンカチを取り出し、それでぬぐってやる。
「ハァー、ハァー、ハァ――……」
男は片方のまぶただけを上げ、顔色悪く「すいません」と言った。
「私は、この学院で秘書をしているロングビルという者です。……あなた、ここで何をし
ていたんですか?」
ロングビルは青年の呼吸が整うのを待ってから、鋭くそう聞いた。
見たところ青年は平民で、見覚えはなかった。つまりは侵入者で不審者だ。倒れている
のを見てつい手を差し伸べてしまったが、それとこれとはまた別である。
――まあ、でも。
これといって警戒が必要な相手でもない。のた打ち回ったときにできたのだろう、体の
いたる所にある擦り傷に顔をしかめている様は、害があるようには見えなかった。まして
や丸腰の平民である。
青年は頭を抑えながら立ち上がった。ロングビルも腰を上げる。青年は少し猫背気味だ
ったが、それでも頭半分ほど、ロングビルよりも背が高かった。ロングビルは、自然見上
げ形になる。
「オレは、リキエルっていいます。え〜、主人――がここをこんな風にしちまったんで、
その片づけをしてたんスよ。だいたいは片付け終わったんだが、その後でなァ……」
リキエルはそれきり押し黙ってしまった。苦い顔になっているところを見れば、さきほ
どのような状況に陥った経緯を思い出しているのだろうと、ロングビルは思った。リキエ
ルと名乗った目の前の青年は、そのことについてはあまり触れたくないらしい。
ロングビルはその話題は避けることにした。今重要なのはそこではなかったし、気にな
ったこともある。
「主人?」
とはどういうことか。
「いや、まあ、なんて言うんだろうなァ、これは……」
またも歯切れ悪くなるリキエルに、ロングビルは少し眉をひそめたが、リキエルはそれ
には気づかない様子で、諦観めいた顔になって、溜息混じりに言った。
「使い魔をやってるんスよ」
「使い魔? ああ、あなたが噂の」
それで、ロングビルには合点がいった。
しえん
平民を呼び出した生徒の噂は聞いている。その話を聞いたとき、運のない話だとロング
ビル思ったが、当の本人を目の前にしてみると、なるほどこの男、顔の造形は決して悪く
ないが、薄幸そうなといえばまさしくそうだ。いま一つ締まらない印象を与えるのは、そ
の幸の薄そうな面構えのためかもしれない。
「それは……大変でしょう」
「本当に、朝っぱらから洗い方も分からない、ややこしい服とか洗濯させられたりよォー。
といっても、シエスタってメイドが手伝ってくれたんですが」
「シエスタですか。彼女は気立てのよい、優しい娘ですからね」
そのおかげで助かったってわけです、と言って、リキエルはもう一度溜息をついた。所
作のひとつひとつが、どうにも覇気に欠ける男である。
とそのとき、溜息に触発されたものか、リキエルの腹が複雑怪奇な音をたてた。ぐう、
ともぎゅる、ともつかない、本当に腹の音かも疑わしいような音に、ロングビルは目を丸
くした。
「半日以上何も口にしてないもんで」
リキエルは忌々しげに腹をさすりながら、ぼそりと言った。
なんとも情けない顔をするリキエルを見ているうち、ロングビルは気が抜けた。さきほ
どのパニックのこともあいまって、ロングビルの目にはリキエルが妙に頼りなく映る。
手助けした手前もある。このままさようならというのは気が咎めた。
「一緒に行きませんか?」
「……? 行く?」
リキエルは疑念をこめて、開いている左目をロングビルに向ける。ロングビルはニコリともせず、しかし柔らかい口調で繰り返した。
「昼食ですわ。よければ一緒にどうかしら? 私もこれからなので」
「はぁ、なるほど。しかし良いんですか? 申し出は嬉しいんだが、なんか用事があった
んじゃあないですか? わざわざここに来たってことはよぉ」
「いえ、様子を見て来いと言われただけですから」
できればということで、錬金での修繕も頼まれていたはずだが、このロングビル、そこ
らへんのことはきれーさっぱり忘れているらしい。あるいは、端から錬金で直す気などな
かったのかもしれない。答えは彼女の眼鏡の奥深くである。
「遠慮は無用ですわ」
「助かるな、それならよォ」
そう言って首の後ろに手を置くリキエルはやはり頼りなげで、それが無性に可笑しくな
り、ロングビルはリキエルに見えないようにして少しだけ笑った。
気持ちが浮ついている、とは思わなかった。
と・う・か・しゅ・う・りょ・う。
誤字・脱字・矛盾点ッ! 『誤字』『脱字』『矛盾点』ッ!
ぎゃはははは――ッ! 推敲してたら見つかりまくったぜェ――ッ
しかし、なんだかんだで推敲は楽しい。
乙!
フラグか!?
最速でおマチさんフラグたったのか!?
GJ!
血統に怯えるリキエルの描写がいい!なんかパニックの描写うまいすね。
にしても、うわごとに混じるあの吸血鬼の名前が、忍び寄る恐怖って感じで恐ろしい。
血統の業、血統の妙。リキエルにどんな試練を与えるのか、楽しみです
キター! 乙です
パニック描写の迫力がすごい
しかし、大丈夫なのかリキエル。ちょっとしたことで死にそうだぞ?
自分の血統なんてハルケギニアじゃ知りようも無いだろうし……
スタンドに目覚めるきっかけを作るのが難しそうだなあ
まあ、とにかくGJ!
リキエルGJです。ところで
男はまだ若く、自分とそう歳は変わらないだろう、とロングビルは思った。
ってあるが、これって自分が若(rya
>>278 ばか!ばか!ま(ry
じゃなかった!20代前半はまだまだ若造、小娘の領域だよ!
投下乙そしてGJでした
ブランドーの血を継ぐ人は本当に家族運がないな……
おマチさんとのフラグやらスタンド発現やら
気になることばかりです
みさくら自重w
リキエルは死様が悲しかっただけに幸せになって欲しくな
小ネタ
ラ・ロシェールにて。
ルイズたちが乗り込んだ船が形を変えてゆく!力が上がりスピードが増す。
予定より一時間も早くアルビオンに到着。
その後その船はレキシントンに衝突し、今度はレキシントンの姿が変わる。中では兵士たちが襲い来る船の部品と戦っている。
しかし、時間の問題だろう。この世界の征服も夢ではない。
そんなことをストレングスは『異世界の書物』を読みながら考えていた。
フーケ戦とかのことは気にしないでくれ
確かに二巻以降、移動に船が使われるようになるとストレングスは最強だな。
ルーン補正とスタンド抜き、純粋に腕力だけでワルキューレ圧倒しそうだな、オランウータンなら
案外空気を読んで、香水を回収してギーシュのピンチを救い
その後に意気投合してくれそうではある、エロ猿的に
ルイズを速攻で手篭めにしそうだな、ロリエロ猿的に考えて
アヌ○ス神みたいに制約つけんと(主人は襲えないとか)敵役にしかならないな
正直アヌ○スは最初の頃はあんな話になるとは想像つかなかったw
惚れたロリっ娘のために戦うエロ格好いいオラウータン路線でいけば或いは…
うん大丈夫だ、ラバソとかラヴァーズの人よりは行ける!
あらためて思うとアヌビスの作者はすごいな
エロ心を出したために承りに見つかってボッコにされた猿は
学習してエロ心を抑えるようになったって設定にしておけば…
でもシエスタのことを狙ってるとか
ギーシュ戦は回避できるけどフーケ戦がな
俺はフーケが仲間になる展開好きだからどうにかして持っていきたいな
エロ猿でフーケ戦…
ボロ小屋が要塞になるとか?
いや、きっとシルフィードが空中要塞にだなw
そういやDIO様はどうやってフォーエバーを仲間にしたんだ?
エロ本で雇ったのか?
肉の芽じゃないのかな?
>>293 フォーエバー程度なら、DIO様と対面しただけで腹みせて服従するんじゃね?
召喚した大火傷を負った犬を看病するルイズ
最初はただの犬でがっかりするものの
彼に溺れかけたのを救われるとか、
虫食い&虫食いでない(両方メス)と
モートソグニルのドロドロ(スタンド能力的な意味で)な恋愛ものとか
変な電波ばかり受信する
溝鼠の方がはるかにデカイぞwww
見たいけど
>>293 私の戦闘力は(ry状態にして、後は定期的にエロ本とか女とかのいわゆる飴で手なずけてたんじゃない?
>>288 あの内容とペースで書きながら同時に姉妹スレでまで爆熱だったとか頭おかしい
最近ご無沙汰だけど
キン☆クリ
キンクリ無残。
む〜ざん む〜ざん
むーざんむーざん
ジョジョの ボスたち
きゅうけつき むだむだ
ジョジョをおこらせたら
ときとめを かえされた
さつじんき きちきち
ジョジョをおこらせたら
きゅうきゅうしゃに ひかれた
ディアボロ ギャング
むすめをころそうとしたら
おわりのないおわりに
でんぱしんぷ わたおに(私はお前の兄だからだ)
こぞうを みのがしたら
じゅんすいさんそ くらった
わたおに吹いたw
むーこからくるは"じょじょ"
おーうごんの けっとー
床に散らばった氷を見てモンモランシーはブチブチと文句を言った。
「ちょっと、どうするのよこの氷。タバサ、もう一度氷を作ってよ」
しかし、タバサは首を横に振る。
「今から戦いになる、無駄な精神力は使えない」
そう言いながら氷を拾い自分の顔に押し当てる。
モンモランシーもブツブツ言いながら氷を拾い顔に押し当てる。
「それでルイズ。今何か起こっているのかしら。
これから戦いになるってなんなの?」
モンモランシーの問い掛けにより、その場にいる全員の目がわたしに向いた。
皆に現状を理解してもらう必要があるわね。
「プロシュートが無差別攻撃をしているのよ」
わたしの答えを聞いたモンモランシーの首がナナメに傾く。
「プロシュートって、ルイズの使い魔じゃない。確か死んだんじゃなかったの?」
「そう、それよ!私も、それが不思議だったのよ」
キュルケがモンモランシーを押しのけ前に出てきた。
「アルビオンの貴族派に偽りの生命を与えられ操られているのよ」
あの夢の通りならプロシュートは『虚無』によって生き返ったはず・・・
「偽りの生命・・・それってアンドバリの指輪のこと?」
モンモランシーの口から耳にしたことが無い名前が出てきたので思わず
聞きなおした。
「アン・・・なんですって?」
「アンドバリの指輪。水の精霊の秘宝。伝説のマジックアイテム。
知ってる人は殆どいないんじゃ無いかしら」
「なんでそんな事知ってんのよ・・・って確かモンモランシーの家は代々交渉役
を勤めてたんだっけ」
「ええ、そうよ。昔の話だけどね」
モンモランシーは肩をすくめた。
なんだかおかしな話になってきたわね・・・どういう事かしら。
仮説その一。
クロムウェルは生命の『虚無』を使えるしアンドバリの指輪も別に存在する。
仮説その二。
クロムウェルは誰も知らない(限りなく知る人が少ない)アンドバリの指輪を
使い『虚無』の担い手と称して皇帝に納まった。
・・・ヤバイ。証拠なんて全然ないけどハマリすぎてるわ。
もしこれが当たってるとしたなら・・・
オリバークロムウェル・・・あのペテン師め・・・
「ルイズ!」
モンモランシーが目の前で大きな声をあげる。
「なっ、何よ。ビックリするじゃないモンモランシー」
「さっきからボーっとして、ボケた?」
「ちょっと、それシャレになんないわよ。
気になる事があって考え事をしてたのよ」
モンモランシーがタメ息をついた。
「まあいいわ、続きをお願い」
「えっと続きね、プロシュートが操られた所まで説明したのよね」
わたしの言葉にモンモランシーが頷く。
「それで無差別攻撃って何なの?」
まだモンモランシーは状況を把握して無いようね。
「いま体験した老化現象の事よ」
「これを、あの使い魔がやったって言うの?」
「やったと言うか、今も継続中なんだけどね」
全員の顔に緊張が走る・・・回復したとはいえ、まだ終わって無いのだから。
「じゃあ、ここでプロシュートの能力について説明するわね」
わたしの発言にキュルケが異を唱える。
「ちょっとルイズ今更説明なんて意味あるの?それよりも早く彼を倒さないと」
このアマ・・・
「キュルケ」
タバサがキュルケの名前を呼ぶ、キュルケはその呼びかけに応じ
タバサの方を見る・・・
「わかったわよ、おとなしく聞くわよ」
・・・あの短いアイコンタクトで一体なにが・・・
そういえばマリコルヌの持ってた絵・・・いや・・・まさかね・・・
「あのね、あんた達はプロシュートの能力を中途半端にしか知らないから
全部説明しようって言うのよ。ギーシュ!」
「なっ、なんだね?」
いきなり呼ばれたギーシュは目を丸くしている。
「あんた、あの広場の決闘を憶えてる?」
「ああ、兄貴が僕のワルキューレを追い詰めてたね」
「あんた、おもいっきり負けてたじゃないの!」
わたしが言う前にモンモランシーのツッコミが入る。
「ああ!あれ全然老化と関係無いわね」
キュルケが逸早く気付いたようね。
「そう、あれこそがプロシュートの『スタンド』よ」
「「「スタンド?」」」
キュルケ、ギーシュ、モンモランシーの声が重なる。
タバサは黙ったままだった。
「ルイズ『スタンド』とは何だね?」
ギーシュが挙手して質問してきた。
「プロシュートが、そう呼んでいたのよ幽霊みたいなモノと思っていいわ」
理解してくれたかしら。全員の顔を見渡すとタバサが顔面蒼白になっていた。
死んだ魚の色みたい・・・
「・・・タバサ、もしかして幽霊が苦手なの?」
タバサがコクリと小さく頷いた。・・・表現の仕方を間違えたみたいね。
「言い方が悪かったわ。見えない『偏在』だと思ってちょうだい」
ワルドとのやり取りでそんな事を言っていたと思う。
「どう、タバサ別に恐くないでしょ『偏在』なんだから」
少しだけ顔色がマシになったタバサが挙手をして質問してきた。
「その『偏在』は全部で何体出せるの?」
「一体よ」
「その『偏在』の活動範囲は?」
「わからないけどプロシュートはあまり離して行動させないみたい」
何だか授業やってるみたい。
「私達には見えないというのが厄介ね」
キュルケが誰に聞かせるとも無く呟いた・・・見えない幽霊の様な存在。
以前何かで読んだことがある。犬や猫が何も無い宙を見つめている時
そこには幽霊が居るということを・・・
もしかしたら使い魔にはグレイトフル・デッドが見えるのかもしれない・・・
それを視覚共有で視れば・・・ダメね、あの姿を見たら戦闘どころじゃ無いわ。
わたしは普段なら逃げる事を良しとしないが、フーケ時は逃げてしまった。
見ればパニックは必至。この方法は提示できない!
「・・・あー、次にフーケを捕まえに行った時の事憶えてる?」
「あの光景を忘れる方が難しいわ」
キュルケが答えタバサも頷き同意する。
「私、知らないんだけど・・・」
「僕も知らないな・・・」
モンモランシーとギーシュが挙手をする。
「今から説明するわ。フーケが気を失いゴーレムが崩れたわよね」
「ええ」
と、キュルケが頷く。
「あの時『偏在』がゴーレムの腕をよじ登って行ったのよ」
「ああ!確かフーケ『何か』が腕を伝ってくるって言ってたわね」
「そう、そして『偏在』は『直』にフーケを掴まえた。その『偏在』に『直』に
掴まえられると、もの凄いスピードで老化するわ、まさに一瞬でね。
そして『氷』で冷やして回復してるけど『直』には関係無いから。
「なんですって!!」
「キュルケ声が大きい!」
慌てて口を塞ぐキュルケ。
「そして最後に無差別老化攻撃。これは今体験してもらっているわ『偏在』を
中心として最低でも約二百メイル内の生きている者全てを老化させる能力!」
「ブボッ」
ギーシュが氷を吐き出した。汚いわね・・・
「な、何だね!そのデタラメな射程距離は!」
「プロシュート曰く『老化』の方に力を使っているからだそうよ」
わたしが説明を終えるとタバサが再び挙手をする。
「これだけの現象を起こす力、精神力はいつまで持つの?」
・・・・・・・・・・。
「残念だけど、それは期待しないで」
「そう」
それっきりタバサは黙り込んでしまった。
「他に聞きたい事はあるかしら?」
手に持ったデルフリンガーがカタカタと震えだした。
「どうしたのよデルフリンガー?」
「いや、聞きたい事じゃねーんだけど頭の片隅に引っ掛るっつーか
喉の奥まで出掛かってるってヤツ?」
「役に立たない剣ね。思い出してから発言してちょうだい」
「悪いね、俺ァ忘れっぽいんだよ」
「さて、もう聞きたい事は無いかしら?」
あと、未確認の情報も伝えたほうがいいのかしら?
「質問いいかな、僕のルイズ」
部屋の隅から居るはずの無い六人目の声が聞こえてきた。
投下終了
乙でしたー。
つかここも人減ったなあ。
アヌビス神の人とかギーシュの奇妙な決闘の人とか、どうしてるんだろう…。
>>312 きっとリアルが忙しいんだよ。
それで少しずつ暇な時間にこつこつと書いてくれてるはずさ。
偉大さん乙!!
そろそろマロンに戻ってもいいんじゃね
GJ
俺も次からは戻っていいと思う
あっという間に埋まっていったあの時が懐かしい
偉大さん乙です。
操られた兄貴をペッシが見たら…
ペ ッ シ 覚 醒
キング
土曜日の夜が吹っ飛ばされた・・・
これがボスのスタンド能力・・・・・・
あ、ありのままに起こった事を話すぜ!
兄貴進めようかと思ったけど、久しぶりにボスの大冒険で試練潜ってたら
いつのまにか試練を制覇し、今に至っている……
防御DISCがホワイトアルバム+21でニュー神父4回攻撃Yabeeee!とか究極様三匹は無理ぽとかいうヤバイ状況だ。
心底恐ろしい90階台の片鱗を味わったぜ…
>>320 兄貴の人それは結局乗り切ったのか
何時もの様にホテルに逆戻りか分かり難いですよ
まぁディアボロもいいけど兄貴の方も忘れないで下さい…待ってます…兄貴…
そんだけホワイトあるなら発動で凍らせて逃げればいいだろ、ディアボロ的に考えて。
執筆頑張ってください
ホワイトアルバム言うからサブゼロ読みたくなってきたじゃないか
読みてぇ…。
しかし鉄分が足りねぇ…
つ蛙
にゃんこ分が足りない!
剃刀食べてる人がイタリアにいたから剃刀は食べ物
>>321 乗り切ったさ…兄貴のようにズタボロになりながら…
ウンガロがニュー神父呼んで死に掛けたのももう思い出だぁ
>>322 そうは言うが、壁から究極様が黒い三連星の如く三匹突っ込んでくるんだぜ…
惚れタバサの続きとかスッゲェ…待ってます…返事ください……
ギアッチョの続きとかもスッゲェ…待ってます…返事(ry
フーゴの(ry
季節の変わり目に更新されなかったらその後結構絶望になるんだが・・・仮面の人は続けてくれるのだろうか?
季節の変わり目だからこそ、忙しくて投下は遅れがち。
あまりせかすようなことはしないでおこうよ。
仮面の人は自分も待ってるけど。
定期的に更新しているのもあるんだろうけど、
この手の“待ってます”で名前を呼ばれる事がないのは悲しい。
>>331 待ってますと言われるまで書き溜めて、呼ばれたときに自分だけでスレを埋める勢いで書き込んでみたらどうでしょうか。
銃杖と鉄とジョルノ&ポルとアヌビス神と吉良待ってます
ぶっちゃけると、全ての作品の投下を心からお待ちしております(土下座
サブゼロと鉄と隠者とFFと鏡警備員 待ってますマジで!!
待っていたなら使っていい。
俺は帽子の人を待ち続ける
338 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/20(日) 21:28:31 ID:6eCZCxqE
新作も待ち続けてる
わたしま〜つ〜わ♪
いつまでもま〜つ〜わ♪
>>327 何故かツボにはまってひとしきりワロタ
いつか自分も投下してみたいが思いつかないので
それまで支援絵をひたすら描くぜッ!
仮面、隠者、いぬ、アヌビス神、来訪者、Dio、白蛇 待ってます
エロの茨のヒトも「続かない」じゃなくて「続いて」お願い
お前ら催促しすぎだろう…もうちょっと静かに待たないと職人さん達が逃げ出しちゃうぜ?
そりゃあ投下が早く来れば満足感もより多く手に入れられるけど、職人さん達にも穏やかな時間が必要だと俺は思うぜ。
催促の言葉ももらえない作者だって居るんだぜ?
催促をするつもりはないが、生存報告だけはしてほしいな
それだけでもだいぶ違う
続きが気になるのが多すぎるんだよな〜
今日こそ投下されると思っていつも夜更かししちゃう
たまに思う
あの作品がこれからどんな展開になるのか予想したい
リアルで語る相手がいないからスレ住人と盛り上がりたい
でも作者さん方のやる気を削ぎそうだからそんなことは出来ない
リアルでこのスレの話が出来る友人が欲しい……orz
投下しようかな
348 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/21(月) 23:13:04 ID:SLxDNzDt
>>347 / ̄`'〜ヽ
)/ノ^^ハミ
かかって来い!> ζ ( ゚∀゚ ル
, -|~ll〈i_`l,.
,〃::::。::::: ヽ:::ヽ.
, -. '::i : ::。:::::::!::::ヽノ
まだかね
釣りか?
ペッシの奴め……
リキエルまだー?
キングクリムゾン
しかしバイツァ・ダスト
ルイズが召喚したのが空条承太郎だったら・・・
1 :マロン名無しさん:2007/03/15(木) 15:14:14 ID:???
シャナスレみたいなノリで
|:| r─'^`┐r─'^`┐rー'^゙┐__ r┐|:|/:::
|:| {ニニ コ 7 /Tコ .7./コT '-' l.」 :|:|::::::::
,r"´¨`゙} |:| { o ノ二) /./ (`.コ .~{ o.ノニ). :O :|:|::::::::
{ { `) } ☆ |:| |:|´. |:| |:| |:| |:|.` |:|/|:|::::::|:|:::::::::
ヾ_`ーy" |:| |:| . ,r"´`゙、 . |:| |:|/|:| ::::|:|::::::|:|::::::::
}ノ |:| |:| .{ (´ } }..|:|/|:|:::::|:|::::::|:|::::::|:|::::::::
☆ {.( ヾ_,r",,ノ./::::::::ぉ::::::::::::::::::::::::::::::::::
_ {.(~/::::::::::::::終わった:::::::::::::::::::
. / L_ /)}:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
/\_ / z`__7 /:::::::::::::::::::::::::::::なにもかも::::::::::::::
⌒⌒^/`ー-.{@ /::::<'"'"'ーz::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
!\/, -、.F|' /:::::::,;''⌒ヾzニ^_, - 、;_;;__;;;:::::,__,:::::::::::::::::::
`ゞ{_且且、 ./:::::::y‐'‐""}}ヾ 〉::||ァ::::::::::::::《ェfュヒ_>:::::::::::::::::
/::::::::::::::` ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄´:::::::::::::::::::::::::::::::
承太郎、ツンデレに好かれすぎだろwww
そういえば三部の家出少女もツンデレだったな
再登場の時にはデレデレになってたけどw
続きを待ってるといわれるとやる気が出る人がいるかもしれないし、続きを急かすのは失礼かもしれない。
とりあえず気が向いたらでいいから続き待ってます。と、玉虫色の発言をしてみる。
359 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/23(水) 20:08:10 ID:KCuGvcYK
小ネタだけじゃなくて長編かいてみようかな
キングクリムゾン!
スレの時間を吹っ飛ばした!
久しぶりの投下をします。
覚悟はいいか、俺はできてる。
ならば支援を致す
この話における主な登場人物簡略紹介
ルイズ 一般的なルイズ。
使い魔 ここではフー・ファイターズ。フーケの体を使っている。
タバサ アルビオン編まではルイズに同行。その後神父と行動を共にする。
キュルケ フーケに殺害される。死体が見つからない。
アンリエッタ ワルドに殺害される。アンドバリの指輪の力で動いている。
マリコルヌ メインキャラクターの一人。とある事情でルイズに惚れている。DISCを抜かれたため魔法が使えない。
ギーシュ モンモン一筋のバカップル片割れになった。
クロムウェル スタンド・クヌム神を使う。
ワルド ホワイトスネイクに記憶を抜かれる。その後は不明。
神父 虚無のDISCを狙っている。
簡単なあらすじ
ワルド戦を終えてトリステインに帰還(撤退)したルイズたち。
その後タバサは母の治療と父の仇への復讐のため、神父とともに行動することに。
また、ルイズたちは神父から虚無の使い手を守るため、FFの記憶を頼りにウェストウッドに向かうのであった。
ウェストウッドへの道中…
「そういえば貴方、今魔法使えないのよね?」
ルイズの問いかけに、マリコルヌははっと思い出した。
「だから、私思ったの。途中トリスタニアで武器屋に寄って何か買っていったほうがいいかなぁって。」
「さすが僕のルイズ!僕なんかのことを心配してくれるなんて!!」
「ちちち違うわよ!戦えないと足手まといで邪魔になるって思っただけよ!自分の身は自分で守ってもらわないとね!」
マリコルヌの返答に、ルイズは声をあらげて顔を真っ赤に染める。ルイズとしては精一杯の誤魔化しのアクションであったが、相変わらず誰がどう見てもそれは効果がないとしかいえない。そしてたわいのないやり取りののち、首都トリスタニアのブルドンネ街に到着する。
「じゃあ、すぐに済ませて戻ってくるよ。」
マリコルヌはルイズとFFを馬車に残し、一人足早に武器屋を目指していく。因みに仕方がないことではあるが、マリコルヌはルイズから武器代を援助してもらっているという、情けない状態での買い物である。
「聞いておくれよ、僕のルイズ…」
「どうしたのよ、いったい?」
数分後、馬車に戻ってきたマリコルヌは、馬車が発車すると先程の武器屋での出来事を語りだした。
第三話(18) 眠れる剣(つるぎ)
時間は少し遡って店の中。
「いらっしゃいませ〜」
店主が営業スマイルでお出迎えである。ところが入ってきたのが貴族であることがわかると、その笑顔は一瞬にしてひきつっていく。
「き、貴族の旦那ぁ〜。わたくしはいやしいことなんかまったくしとりませんぜぇ。まっとうな商売やってまさぁ。」
「僕は武器を買いにきたんだけど…」
店主のどうもこなれた言い訳は、ただ武器を買いにきただけのマリコルヌを、少し戸惑わせてしまっていた。しかし、店主はみなぎる商魂でそれを払拭させるよう瞬時に動く。
「ハハハ、そうですか。それではこちらは如何でしょう?」
店主が買い物客に使ういつもの営業スタイルだ。どうして貴族が武器を買いにきたのかという疑問に自分なりに答えを出し、無駄に触れなかった。そうしたほうがいいような気がしたからである。そしてそのまま飾りが多量についているたいそうな剣をすぐに取り出して宣伝をする。
「これはかの有名なゲルマニアの錬金魔術師シュペー卿が鍛えたとされるもの!
今ならエキュー金貨で二千、新金貨で三千に致しますぜ。」
マリコルヌはそれを見て感嘆としたが、懐に相談してみて断念した。
「もうちょっと手頃な値段のはないのかい?」
「手頃なのねぇ…。まぁ、あそこに纏めて置いてあるのは一律にエキュー金貨で二十、新金貨で三十になりやすが、その金額にみあった程度のものにまりますぜ。」
貴族だからいいカモになると思ったのも束の間、たいしたカモにもなりそうにもないのを見て、店主は少しばかりテンションが落ちていくのを自分でも感じられたのがわかった気がした。
「まぁ、あんたは運がないからな。始めっから期待するもんじゃねぇぜ。」
そんな店主を慰める声が一つ。驚いたのは安物をあさっていたマリコルヌ。まわりを見渡すが、そこには店主の姿しか見当たらない。てっきり聞き間違えたのだろうと思い再び物色しなおすが、あろうことかその声の主と店主が喋っているではないか。
「普段はデル公が邪魔しやがるしな。」
「おまえさんがナマクラを売ろうとしてたからだろ。自業自得じゃねえか。」
「それは商売だからだろうが!商人嘗めるなよ!」
これは聞き間違えではない、とマリコルヌは確信した。そして怖くなって足早に武器屋から逃げ出してきたのであった。
「…ということがあってね。」
話を聞いたルイズは呆れた。
「じゃあ、あんたは何も買ってこなかったっていうの!?」
「だって不気味じゃないか。」
「あんたねぇ、インテリジェンス・ソードの可能性があるでしょ。武器屋なんだから…。あってもおかしくはないわ。」
「なるほど、さすが僕のルイズ!」
ルイズは溜め息を漏らし、がっくしと肩を落とした。
「ウェストウッドに着いたら現地調達よ。いつ襲われるかわかんないんだから。」
そしてそれを取り払うかのように気合いをいれる。
その横でFFは一人、少しでもスタンドだと考えた自分を、違う世界からきたんだなぁ、と感慨していた。
to be continued…
支援
投下終了。
み、短い!?なんだこの短さは!超スピードとか(ry
自分でも思いました。短いって
投下乙!
もしやデルフの出番これだけとか
世にも珍しいマリコルヌとのカップリングキタ―――――!
デルフ涙目な展開か。原作でもあんまり出番ないのに……
投下すると予告しよう
魔法学院の朝は静寂に包まれている。
食事の準備のため、厨房で働く平民が水を汲む音。
夜の警備を担当していた衛兵が、詰め所に戻って交替するなど、朝の物音などせいぜいその程度だった。
シエスタの朝は早い、魔法学院としてメイドで働いていた彼女は、朝食の準備が始まる前に一度目を覚ます。
早起きして体をほぐすと、日課となっている波紋の鍛錬をしたり、系統魔法の勉強などをする。
時々、二度寝をして布団の中でまどろみに包まれ、幸せを堪能している事もあるが、おおむね彼女は勤勉で働き者の「生徒」だった。
この日も、シエスタの朝は早い。
彼女は、ベッドの上に座り、朝日にに照らされながら、ボロボロの日記帳を読んでいる。
その日記は彼女の曾祖父、ササキタケオの残した日記だった。
シエスタは、曾祖母の血を最も濃く受け継いでいる。
曾祖母であるリサリサはハルケギニアの系統魔法とは違う、独自の技術、すなわち「波紋」の継承者だった。
オールド・オスマンは、吸血鬼に襲われた時、リサリサの波紋に助けられた、その時見た波紋の輝きはオスマンの脳裏に鮮明に焼き付いている。
命を助けられたオスマンは、東方から歩いてやって来たというリサリサと情報を交換し、互いの立場を明らかにした。
驚くべき事に、リサリサはハルケギニアでも東方でもない、まったく別の世界からやって来たのだと言う。
オスマンは、自身の立場を使ってリサリサの立場を保証する代わりに、「波紋」の技術を教授された。
そして一年後……タルブ村に、大きな鉄の塊で降り立った男性が居ると、風の噂を耳にした。
その男性はササキタケオといい、ニッポンという国の出身だと言う。
リサリサと同じ世界の出身だということは分かったが……リサリサと、ササキタケオの間には、十年以上の時間のずれがあったらしい。
元の世界に変える手がかりを掴むため、二人は情報を交換し合い、行動を共にするようになり……そしていつしか、二人は共に暮らすようになっていた。
同じ世界の出身だから二人は惹かれたのだろうか?
シエスタは日記を読みながら、曾祖父と曾祖母の二人が、どんな生活をしていたのか想像した。
曾祖母は人前では厳しい態度を崩さず、ハルケギニアの貴族に引けを取らないどころか、それを凌駕するような凛とした迫力を持っていた。
しかし曾祖父は、リサリサの時折見せる笑顔がとても可憐であったと日記に書き残している。
一方、リサリサもまんざらではなかったようで、時折曾祖父の仕事を手伝ったり、互いの故郷の話をしあい、笑いあい……
とにかく、二人は両思いだったらしい。
日記を読み進めていくと、何度もめくられ、縁はボロボロになり、水に濡れた跡が残るページがあった。
それは、リサリサが妊娠したと分かったときのページ。
リサリサは、波紋の影響か、五十代半ばを過ぎても二十代前半の若さを保っていた。
そのことを告白した時、曾祖父は『それでも貴方が欲しい』と言ったらしい。
そして二人は結ばれ、リサリサは妊娠し、10ヶ月後待望の赤子を授かった。
それからは幸せな生活だったのだろう、日記には赤ちゃんのこと、タルブ村で育てた葡萄畑のこと、他の村民との交流などが書かれている。
……だが、子供が生まれて一年も経たないうちに、リサリサの姿は消えてしまった。
それは突然だった、曾祖父とリサリサが、子供をタルブ草原で遊ばせていた時、大人がすっぽりと収まるほどの、大きな楕円形の鏡が現れた。
子供の間近に現れたそれを見て、リサリサは血相を変え、呟いた。
『ヴェネツィア…!』
狼狽えるリサリサの目の前で、子供がその鏡に手を出そうとした、いや、既に手を差し込んでいたかもしれない。
リサリサは慌てて子供に駈け寄り、鏡から引き離したが……まるで子供の身代わりになるように、リサリサの体は鏡へと吸い込まれ始めた。
曾祖父がリサリサの手を掴み、鏡から引っ張り出そうとするが、リサリサの体は鏡へと吸い込まれるばかりだった。
一分も経たぬうちにリサリサの体は首まで吸い込まれ、鏡もその大きさを半分以下にまで縮めていた。
最後の最後で、リサリサは、絞り出すような声で、必死の思いを乗せて叫んだ。
『私は、私の本当の名前は………』
372 :
仮面のルイズ:2008/04/24(木) 13:54:48 ID:R6JjAHlF
「エリザベス・ジョースターか…」
ぱたん、と本を閉じる。
シエスタはそのまま本を枕元に置くと、窓から外を見た。
早朝の日差しは、澄んだ空気と相まって鋭さを感じさせていたが、朝食が近くなる頃には鋭さは影を潜めている、柔らかい印象を与えているとも言えよう。
シエスタは両腕を上に上げて背伸びをすると、制服へと着替えて部屋を出た。
ドアノブをひねると、ガチャリと音が立つ。
内向きに開く扉を引くと、扉の前に立っていた誰かがハッと息を呑むのが分かった。
「…キュルケさん?」
そこに居たのは、ラグドリアン湖で分かれた、キュルケだった。
「はぁい、シエスタ、元気だった?」
そう言ってキュルケは、ほんの少しだけ気まずそうに笑う。
自分の頬に右手を添えて、何かを誤魔化すように微笑んでいる。
シエスタはキュルケの仕草から、気まずそうな雰囲気を感じ取ると、どうぞと言って部屋へとキュルケを促した。
「キュルケさんは、いつ魔法学院に戻られたんですか?」
「昨日の夜よ。シエスタは?」
「私は一昨日でした」
屈託のない笑顔で答えるシエスタ、それとは対照的に、キュルケの表情は沈んでいた。
「ごめんなさいね、まさかラグドリアン湖にいるとは思わなかったし」
「いえ、いいんですよ。それよりキュルケさんに怪我が無くてほっとしました」
椅子に座ったキュルケと、ベッドに座ったシエスタが向き合う。
キュルケはラグドリアン湖でシエスタ達…実際にはカリーヌ・デジレとだが…と敵対し、水の精霊を襲撃しようとしていたのだ。
「ホントはね。貴族同士なら…まあ、特にツェルプストー家とヴァリエール家は昔から敵対してたから、戦うのは当たり前なんだけど……その後のことよ」
「その後、ですか?」
シエスタが首を傾げて、ラグドリアン湖での出来事を思い出そうとする、脳裏に浮かぶのはカリーヌによって拘束されたキュルケ・タバサ・シルフィードの姿。
むしろ自分がキュルケ達に謝るべきなのか、と思ったところで、キュルケが口を開いた。
「貴方、水の精霊に、タバサの母のこと聞いたでしょ? タバサも私もね、あれがショックだったわ」
「え…ッ」
思いがけない言葉にシエスタが口ごもった。
「ああ、誤解しないで。感謝してるのよ、でも、タバサがそれで自分を責めちゃって…」
「タバサさんが?」
「そうよ、敵対していたはずの水の精霊、それと交渉してまで、母を直す手だてを探そうとする貴方を見て……タバサが落ち込んじゃって」
「どうしてタバサさんが落ち込むんですか、だって、タバサさんは命令されて仕方なく水の精霊を退治しようとしたんでしょう?」
「私もそう思ったんだけど。 でも、自分を心配してくれる人と敵対した事実が、どうしても許せないみたい」
シエスタの顔が自然と上を向いた。
何を言って良いのか、一瞬では思いつかない、十秒、二十秒、三十秒と時間が流れていく。
一分を過ぎたところで、ふと、キュルケがこの部屋に来た理由を思いついた。
「……私が怒ってないか、確かめに来たんですか?」
「それだけじゃないわ、タバサに会ってあげて欲しいの。それで、よかったら、怒ってないって直接言ってあげてくれる?」
キュルケの台詞が終わるやいなや、シエスタはベッドから立ち上がった。
「タバサさんの部屋ってどこでしたっけ」
「行ってくれるの?」
「はい!」
大切な友達だから当然だ、と言わんばかりのシエスタを見て、キュルケの顔にも自然と微笑みが浮かんだ。
373 :
仮面のルイズ:2008/04/24(木) 13:55:12 ID:R6JjAHlF
*
タバサは、ベッドの中で小さく丸まっていた。
普段のタバサならば、任務を終えた次の日でも疲れを見せることなく起床し、朝食を取り、授業に参加するのだが、今日ばかりは気分がすぐれず、ベッドから起き出すのが後れてしまった。
シルフィードに乗ってキュルケと共に帰ってきたタバサは、キュルケの心配する声にも答えず、じっと黙っていた。
原因は自分でも理解している、ラグドリアン湖でシエスタは、母を蝕んでいる毒を取り除く方法を探そうと、水の精霊に問いかけていた。
ガリアの北花壇騎士として困難な任務を与えられていたタバサは、かつて父を祭り上げていた一派を暗殺するという、悪趣味な任務をこなしたこともあった。
その時は相手がどんな気持ちで自分と相対したのか、よく理解していなかった。
何年も任務をこなすにつれて、タバサはいつしか『シャルロット』を取り巻く環境がどのようなものか、目の当たりにすることになる。
タバサにとって、無能と呼ばれた叔父は、父を忙殺し、母の意識を奪った許し難き人。
それだけのこと、それだけのことだ。
復讐したいという気持ちはある、けれども今更、復讐をしたところで父は帰ってこない、だから権力闘争などに首を突っ込むつもりはない。
タバサの願いはただ母のため、せめて母の意識だけでも治したい、子供の頃のように、『タバサ』でなく『シャルロット』に笑顔を向けて欲しい、その一心で今まで戦い続けてきた。
王権など眼中に無い、ただ母のため。
母の笑顔のためにタバサは戦い続けてきた。
それなのに周囲は、『シャルロット』がジョゼフを打倒することを期待している。
シエスタは、タバサを『シャルロット』としては見ない。
ただ一人の友人として接してくれる。
母を治すために、自らの体に多大な負担をかける深仙脈疾走(ディーパス・オーバードライブ)を使い、一瞬だけでも母の意識を取り戻してくれた。
何年もの間人形を娘だと思いこんでいる母、実の娘であるタバサを見ても政敵の刺客にしか見えぬ母、そんな母が一瞬でも笑いかけてくれたのは、シエスタのおかげだと理解している。
そんなシエスタと『敵対』してしまった後味の悪さが、タバサをベッドに縛り付けていた。
374 :
仮面のルイズ:2008/04/24(木) 13:59:02 ID:R6JjAHlF
*
コンコン、と扉を叩く音が聞こえる。
タバサはその音に気づき、びくりと体を震わせた。
返事をせずにベッドの中で丸まっていると、再度ノックの音が響く。
「タバサさーん」
ノックの次に聞こえてきたのは、シエスタの声。
タバサはゆっくりとベッドから体を起こすと、深呼吸して、寝ぼけ眼のまま扉へと近づいていった。
ガチャリと音を立てて扉が開くと、目の前には自分を見下ろすシエスタの姿があった。
「あっ、おはようございますタバサさん」
「……」
屈託のない笑顔で挨拶されると、かえって言葉に困ってしまう。
先ほどまでタバサは、シエスタに嫌われたのではないかと思いこみ、悩んでいた。
それなのに、シエスタはいつもと変わらない様子を見せている。
「あの……お怪我とか、ありませんでしたか?」
「…………」
その上自分の怪我の心配までしている。
タバサは、思いもがけないシエスタの言葉に戸惑っていたが、何とか一言絞り出すことができた。
「ごめん、なさい」
シエスタは、きょとんとした目でタバサを見つめた。
「ごめんなさい」
タバサの瞳から涙が溢れたのを見て、シエスタはタバサの部屋へと足を踏み入れた。
後ろ手で扉を閉めると、シエスタはほんの少し腰を落として、タバサの両肩にそっと触れた。
「あの……謝るのは、私の方です。タバサさんに与えられた任務を、私達が邪魔しちゃったんですから」
シエスタの言葉に、タバサは困惑した。
謝るべきなのは自分だ、シエスタが謝る事なんて無い、そう言おうとしたが言葉にならない。
ただ、嗚咽だけが漏れてくる。
シエスタはそんなタバサの肩をぐいと引っ張り、抱きしめた。
年の離れた妹を世話するときとそう変わらない、少し強引で、誰よりも優しい抱擁でタバサを包み込んだ。
両腕に軽口空を込めてタバサを抱きしめつつ、シエスタは思った。
タバサはどれだけ我慢してきたのだろう、感情を押し殺して、どれだけの任務を果たしてきたのだろうか。
今まで思い切り泣くことも出来ず、我慢し続けてきたに違いない。
リサリサも、どんな事情があって『リサリサ』と名乗っていたのか分からない。
本名を隠す必要がどこかにあったのだろうか、もしかしたら東方にはジョースターという家があり、そこから出奔してきたのかもしれない。
しかし最後にはちゃんと名前を曾祖父に告げてくれていた。
タバサも、シャルロットという名前を隠して、魔法学院で過ごしている。
そこにはどんな苦難があったのだろう、肉体的な辛さもだが、精神的な辛さは、シエスタの想像を超えている。
シエスタは生まれついての貴族ではない、波紋が使えても魔法は使えない、けれども抱きしめることはできる。
シエスタはタバサが泣きやむまで、優しく、その小さな体を抱きしめていた。
375 :
仮面のルイズ:2008/04/24(木) 13:59:44 ID:R6JjAHlF
*
オールド・オスマンの机の上には、何十枚の紙をつなぎ合わせて作られた地図らしきものが散らばっている。
椅子ごと体を浮かせて窓際に移すと、太陽の光が徹夜明けの瞳に差し込み、思わず目を細める。
「朝日が眩しいとは…」
朝日が特に眩しく感じられるのは、体が疲労している証拠である。ふとそんな言葉が頭をよぎった。
「ミス・ロングビルがいれば多少は楽なんじゃがのう」
ミス・ロングビルは今、吸血鬼に関する情報と、アルビオンに関する情報を集めるため学院を離れている。
その原因になった一枚のメモが、地図上に描かれたアルビオンの脇に貼り付けられており、そこには殴り書きで『鉄仮面』『巨馬を操る騎士』とだけ書かれていた。
アルビオンのニューカッスル落城の際、ウェールズ皇太子を連れて脱出した騎士がいると、巷で囁かれていた。
五万の大軍を単騎で駆け抜けたという、剛の騎士。
オスマンがその話を出入りの商人から耳にしたとき、そんなものが存在するはずはない、果敢に戦ったニューカッスル城のメイジ達を称えるために、故意に歪められた噂話だろうと思っていた。
しかし、その騎士は、俗にタルブ戦と呼ばれる戦争において、トリステインに味方し戦ったという。
三枚、いや七枚の翼を持った異形の竜を従えて、最強と呼ばれたアルビオンの竜騎士隊を屠り、戦艦に突入し敵の戦列を混乱させ、アンリエッタ王女とウェールズ皇太子の同時詠唱までの時間を稼いだが……
その騎士は落下する戦艦の爆発に巻き込まれ、死んだと言われている。
どう考えても、メイジの戦い方とは思えない。
泥臭い、あまりにも力任せなその戦い方は、魔法を主体とする貴族ではとても考えられぬ戦い方だと思えた、むしろミノタウロスやサイクロプスなどの亜人種の戦い方に近いだろう。
リサリサの言う『石仮面によって吸血鬼になった存在』ならば、そのような活躍も可能なのではないか……
確かめてみる価値はある、そう思ってオスマンは、ロングビルに『騎士』の調査を命じた。
ロングビルにとっても、アルビオンに住む親族の安否は気がかりだったので、この提案は渡りに船であった。
「うーむ…すこし休むかの」
オスマンはそう呟くと、大きく欠伸をした。
よいしょと声を上げて立ち上がると、杖を片手にぼそぼそと何かを呟く、すると机の上に置かれた地図やメモがひとりでに折りたたまれ、机の中に収納されていった。
机の引き出しに『ロック』をかけると、オスマンは椅子の背もたれを大きく後ろに倒し、そのまま目を閉じ、頭を休めようとしした。
折りたたまれた地図の上には、いくつものメモが貼り付けられている。
それらは吸血鬼、ミノタウロス、オーク鬼の群れなど、人間に害をなす存在の目撃情報や噂が書かれていたが、どれもオスマンが探している『石仮面による吸血鬼』とは異なっているように思えた。
しかし、ヴァリエール家からの依頼を終えて、魔法学院に戻ってきたシエスタは、一つの大きな手がかりを持ち帰ってきた。
トリスタニアの『魅惑の妖精亭』で回収されたブラシ。
そこには、染料で茶色く染められた髪の毛が数十本絡みついていたのだ。
シエスタがそのうち一本に波紋を流すと、髪の毛はジュウジュウと音を立てて溶け、霧散した。
オスマンはそれを見て血相を変えた、波紋を受けて溶解する髪の毛など、吸血鬼のものに他ならない。
『魅惑の妖精亭』の人間は、既に食屍鬼にされているのではないかと危惧するのは当然のこと、しかしシエスタは店員全員に声をかけ、波紋を流し、食屍鬼ではないと確かめたという。
376 :
仮面のルイズ:2008/04/24(木) 14:00:05 ID:R6JjAHlF
オスマンは、学院長室から下へと降りる階段を踏みしめつつ、シエスタの言葉を思い出した。
『誰の血も吸わなかったんですね……よかった』
それは『魅惑の妖精亭』の人間が、食屍鬼にされなかったことへの安堵だろうか。
おそらく、違うだろう。
今回、ブラシに絡みついた髪の毛が発見されたことで、オスマンはルイズが吸血鬼であると確信を持つに至った。
その確信はオスマンに『危機感』を与えたが、シエスタには『安堵感』を与えていた。
シエスタはルイズに憧れを持っている、シエスタはルイズを尊敬している。
もし、シエスタがルイズを『無差別に人を襲わない誇り高い吸血鬼』だと認識したら、吸血鬼退治に支障をきたすことになるだろう。
その結果、吸血鬼の動きに遅れを取り、シエスタは殺され、食屍鬼の増殖を防ぐことができなくなる。
シエスタが、ルイズを殺すのを躊躇ったとしたら、それは人類にとって途方もない損失に繋がるだろう。
「吸血鬼が人を襲わなかったとしてもじゃ…吸血鬼の”血”をこの世界に存在させておくわけにはいかんのじゃよ……」
オスマンの呟きは、広い学院長室の中で、響くことなく消えていく。
使い魔のモートソグニルだけが、その言葉を聞いて、ちゅぅと鳴き声を上げた。
377 :
仮面のルイズ:2008/04/24(木) 14:00:54 ID:R6JjAHlF
*
ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドは、不機嫌そうに顔を歪めていた。
ウェストウッド村の孤児院、その裏手で一人、ふぅとため息をついては空を見上げ、ハァとため息をついては目の前に置かれた薪を割っていた。
「随分不機嫌だねえ」
「別に僕は機嫌を悪くしているわけじゃない」
「そうやって反論するのが子供っぽいのさ」
「……フン」
切り株の椅子に座り、薪を割っていたワルドに声をかけたのは、マチルダだった。
魔法学院の秘書として働く時と異なり、ポニーテールにしていた髪の毛を降ろし、土くれのフーケとして好んで着用していた藍鼠色の服を着ている。
マチルダは、ふて腐れているワルドの顔を覗き込むように腰をかがめた。
「そんなに置いて行かれたのが不満かい?」
「不満? 悔しいが、確かにそれもあるさ。だけど僕が心配しているのはそんなことじゃない」
「へぇ」
「僕は顔を知られている、僕を連れて首都に潜入するのには、些(いささ)かの不安がある。それは仕方ない。だからといってルイズ単独で潜入するのは……」
ワルドの愚痴は、とどのつまりルイズの身を案じているだけであった。
気を取り直して傍らに積み上げられた薪を手に取り、直径30サント、厚さ15サントほどの切り株の上に立てる。
義手になった左手のリハビリを兼ねて、ルイズが帰ってくるまでの間、ワルドは手作業で薪割りを続けていた。
「アタシはレコン・キスタとやらが心配だけどねえ。あの娘ならアルビオンだって転覆できるんじゃないの。仲間(食屍鬼)を作ればね」
マチルダがそう呟いた途端、ワルドは閃光の二つ名に恥じぬ神速の呼吸で手斧を振り下ろした。
スコン、と軽い音がして薪が真っ二つに割れる。
手斧を握りしめたまま、ワルドはマチルダを睨む。
「二度とそんなことを言うな。この薪のようになりたいのか?」
「……冗談よ。悪かったわ。軽率だったよ」
ワルドはフンと鼻で息をし、視線を薪に戻した。
「ずいぶんと素直に謝るんだな。拍子抜けだ」
「あら、アンタはアタシのことどんな女だと思ってたのさ」
「トリステインで君がしていたことを聞く限りでは、てっきり毒婦かと思ったが、毒婦と呼ぶには色気が足りないな」
「ハッ、マザコンにそんなこと言われるなんて、そりゃ光栄だね」
「優しいお姉さんじゃないか」
「……………」
マチルダは呆気にとられたのか、ワルドに視線を向けたままきょとんとしてしまった。
ワルドはそれに構わず、薪を取ってはそれを割っていく。
「なっ、何を言い出すのさ、何を」
「君は僕を”マザコン”だと言っただろう?光栄だね。だから分かるのさ。ミス・ティファニアはこの孤児院の母親だ。君はそのお姉さんと言った感じだな」
マチルダはハァーと長いため息をついた、ワルドの言葉に呆れたのか、張っていた肩をがくんと落としている。
「マザコンって言われて、光栄だとか言う奴は初めて見たよ、あんたの年でさ」
「何、僕はマザコンだけじゃないぞ、ファザコンでもある。なにせ父に理想を教わり、母に固執した僕は、結果として一度トリステインを裏切ったのだからな」
喋りながらも、ワルドは左手に持ち替えた手斧を振り下ろす。
シュッ、と空気を斬る音がしたと同時に、薪は真っ二つに割れた。
378 :
仮面のルイズ:2008/04/24(木) 14:02:50 ID:R6JjAHlF
マチルダはしばらく無言でそれを見続けた、時間にしてほんの五分だろうか、マチルダはワルドに向かって小声で、こう呟いた。
「なんで、トリステインでもなく、アルビオンでもなく、ルイズなんだい?」
「クロムウェルは、人の死を弄ぶ。ルイズは人の死を背負う。それだけだ」
「僕は父と母を尊敬している。もちろんルイズもだ。その人に仕えると決めたら、いちいち他人の評価など気にしていられん。
僕が子供の頃、魔法衛士隊に憧れたのは、栄誉のためじゃない。それが最強だと呼ばれるからこそ、主君を守る立場だからこそ憧れたんだ。」
また一つ、薪に向かって手斧を振り下ろす。
「主君に仕えるとはそういうことだ」
必要最低限の力で振り下ろされた手斧は、吸い込まれるように薪に食い込む。
パコッと小気味の良い音を立て、薪は真っ二つに割れた。
*
アルビオンの首都、ロンディニウムに繋がる街道を、数台の馬車が連なって走っていた。
馬車は幌もなければ座席もない、荷物を積むだけの荷馬車であったが、今は人間を運ぶために使われている。
頬や頭に傷を負った、いかにも荒事の得意そうな男達を乗せて、馬車は首都へと走っていく。
荷物を載せる馬車なので定員など決まっていないが、詰めれば八人まで乗れる馬車の上で、一人の女が下卑た視線を浴びていた。
その女性は身長は172サントほど、鎖帷子を着こみ、黒く短い髪の毛を風になびかせている。
童顔ではあるが、ほんの少し張った顎とエラ、そして厳しい視線が幼さを覆し、強い意志を感じさせていた。
隣に座るスキンヘッドの男は、女の姿を見てにやにやと笑みを浮かべた。
この馬車は、盗賊や犯罪者を、腕に覚えのある者を傭兵として集めるために、アルビオン中に手配されたものだった。
そのため、乗っている男達は9割以上がすねに傷を持った者達であり、中には女を襲うことばかり考えている者もいる。
女の隣に座っている男も、そのような考えを持っていたのか、女の体をじろじろと舐めまわすように見つめ、舌なめずりをした。
「なあ、おめえ、男か?女にしちゃ胸が薄いなぁ」
スキンヘッドの男は、隣に座る女に話しかけつつ、手首を握った。
その手首は、細さとは裏腹に、極限まで鍛えられた筋肉の力強さに満ちていた。
どんな仕事をしてきたのだろうか、細い指はカサカサに荒れ、ほんの少し茶色っぽく染まっている。
もしかしてこいつは、本当に男かも知れない、と思った。
「へへ、可愛い顔してるじゃないか。おめえの顔なら男でも慰み者になれるぜ」
スキンヘッドの男は、上玉なら男でも悪くないと思ったのか、手首から手を離して細い顎に手を添えようとした。
「……!?」
瞬間、全身に悪寒が走る。
今まで掴んでいた女の手が、自分の股間に伸びていたのだ。
ゆっくりと、じわりじわりと、粘度の高い液体が服に染みこむ如く、女の手が股間のモノを締め付け始めた。
「ま、待って、まって!」
女の腕力は思ったよりも遙かに強く、手を払おうとしてもビクともしない。
様子を見ていた他の傭兵達が、男のあわてふためく様子を見てニヤニヤと笑みを浮かべているが、当の本人はそれどころではなかった。
「た、助け」
スキンヘッドの男が助けを求めようとしたその時、股間を握る女は、恐ろしく冷たい声でたった一言だけ呟いた。
「黙れ」
379 :
仮面のルイズ:2008/04/24(木) 14:08:58 ID:R6JjAHlF
男は、人さらいでもあった。
今まで何人もの女を浚い、時には男を使って欲望を吐き捨てることもあった。
さんざん好き勝手をやって来たのだ、その分危険な目にも逢い続けた。
商隊を襲って、返り討ちにあい、命からがら逃げ出したこともあるし、同業者に殺されそうになったこともある。
命の危機に陥ると、体は危険から離れようと足掻く。
悪あがきだと分かっていても、逃げるために必死で手足を動かす。
今回はそれが無かった。
ああ、俺はココで殺されるのかと納得し、意識はどこかへと飛んでいった。
男が自我を取り戻すのは、それから二時間は後のことだった。
ロンディニウムの前にたどり着いた時き、馬車から降りろと衛兵に言われ、呆けていた意識がやっと元に戻ったのだ。
スキンヘッドの男は、隣に座っていたはずの女がどうしたのか、とても気になったが……妙な詮索をして殺されるのは嫌なので、傭兵として登録される前に前に逃げ出した。
*
夜、ロンディニウムの、とある安宿で、件の女傭兵はベッドの上に座っていた。
あぐらをかき、不機嫌そうに両手を握りしめると、万力のような拳で膝の上に置かれた剣をゴンゴンと叩いた。
「言うに事欠いて男ですって!? あたしが!? しかも人の胸じろじろ見て……ああもう、握りつぶしてやれば良かったわ」
『いっそ男だって事にすればいいじゃねえか』
ハハハ、と剣が楽しそうに笑う。
「……(ニコッ)」
『ヒィ!』
黒髪の女傭兵は、剣の柄と先端を握ると、ぐいぐいと力をかけていった。
「どこまで曲がるかしらね」
『ちょっ、待て、待てって』
その日以降、謎の悲鳴が聞こえる宿として、この宿はちょっとした人気が出たらしい。
to be continued→
380 :
仮面のルイズ:2008/04/24(木) 14:14:21 ID:R6JjAHlF
以上、投下したッ!
クロムウェルにどこまで近づけるやら。
>>使い魔のことを呼ぶならそう呼べ
なんだろうこのマリコルヌとルイズを見てると落ち着く…
仮面さんキター!!
オスマンにはオスマンの正義があり、ルイズにはルイズの主張がある。これから先の展開が楽しみでなりません。
……しかし、謎の悲鳴が聞こえて人気が出る宿って……
仮面の人、毎回楽しみすぎです。
シエスタの安堵に読んでいるこちらもひとまずほっとしたりして。
でもどうしてもオスマンとはぶつかってしまうのかなあ。
次回も期待!
仮面さんキテター!!
ここのワルドは一皮剥けてるなぁ。精神的に貴族ってやつだ。
ルイズとシエスタの再開はまだ先になりそうだが、今からハラハラするやらwktkするやら。
次回も期待してます!執筆がんばってください!
久々の投下! 仮面の人GJだ!
そして読み返してみたら、妖精亭の人たちはルイズが女王つながりであることを知ってる…つまり、このラインからオスマン側がルイズの足取りを見つけ出す可能性が出てきた。
続きが気になるぜっ。
FFの人と仮面さんGJ!!
デルフの出番もしかしてこれだけ?w
そして仮面ワルド、ワルドのクセにかっこよすぎるw
人という種族として見た場合オスマンの主張は間違ってないのが難しいところだ。
各々の心と思惑が錯綜する展開、仮面の人、今回もGJでした。
GJ
ル イ ズ に ち ん こ つ か ま れ た い
GJ!!
仮面ルイザーと波紋戦士シエスタが徐々に接近してるのが非常にどきどきするな
今一番怖いのはオスマンだが、本当に何考えてるんだか怖いぜ
今一度GJ!
>>385 ロリコンと言われるワルド
決闘をこく如く断られるワルド
たしかにこのワルドはかっこいいな
390 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/24(木) 22:57:27 ID:Ugij5ws2
なぜか衝動に駆られたので、ゼロの奇妙な使い魔におけるギーシュの華麗なる活躍をまとめてみた。
場違いだったらゴメン。
ルイズの平民が倒せない
気がついたら平民と広場で決闘
そしていつも参ったと言っている
諦めずにスタンド能力に挑戦するけど、すぐにオラオラされるよ
普通の平民だったら楽に魔法でビビらせられるけど
何回やっても 何回やっても あの平民達が倒せないよ
あのスタンド何回やっても防げない
ワルキューレけしかけてみてもミニチュア軍隊に砕かれる
石礫も試してみたけどジェントリー・ウィープス相手じゃ意味が無い
だから次は絶対勝つために僕は聖人の遺体は最後までとっておく
気がついたら平民と言い争ってる
そして顔面にフォーク突き刺さる
諦めずに本体までたどり着くけれど、鏡の中に入れられる
魔法の力があれば楽にルイズを馬鹿にできるけど
何回やっても 何回やっても ルイズの平民倒せないよ
スミスの機銃は何回やっても避けれない
珍しく有利と思ったら口になんか入ってきた
参りましたも試してみたけど直触りされてズキュン!
だから次は絶対勝つために僕はフェイスオブディフェンスだけは最後にとっておく
モンモンの香水があれば楽に決闘イベント起きるけど
何回やっても 何回やっても ルイズの使い魔倒せないよ
あの精神何回やっても砕けない
鳥類相手に挑んでみたら肉の芽植えつけられたよ
ワルキューレの大群も試してみたけど世界が相手じゃ意味がない
だから僕は絶対勝つために僕は(生きていたら)黄金の精神は最後までとっておく
仮面の人、リサリサはジョジョ第二部のどの時点から来たのか気になってたが…
第二部開始前だたのか…?
彼女が元の世界に戻った時、夫である佐々木少尉はまだ日本で存命中…?
パラドックスだな
仮面GJ!
やっぱロリコンでファザコンでマザコンの髭子爵はルイズを支える気がねーのな
もう仮面ルイズはデルフと結婚すればいいよ!
いや、そこはブルリンが再降臨!で
ルイズにつかまれたらその瞬間ケフィアだわ
最近このスレ知ったんだけど
本編では死んでるお気に入りキャラが活躍するのがいいね
暗殺チーム大好きです
「一応猶予期間は定めてありますから
それまで諦めずに挑戦してください」
今日の最後の授業が終わりコルベールがルイズに声をかけてきた
「あまり気落ちしないように
貴女が誰よりも努力していることを私は知っています」
進級試験もかねた召喚の儀式。ゼロのルイズは大方の予想通り地面を掘り返すだけ
途中で銀色の円盤を召喚したと言い出したが現物がどこにもなかった上にそんなものが使い魔になるはずもないので生徒達の物笑いの種になった
あとはただそれだけで虚しく一度目の挑戦は終わり。この日に召喚できなかったのはルイズ一人だけだった
何故私だけがこんな惨めな目に遭ってるんだろう
ふらふらと廊下を歩きながら考える。貴族らしくない歩き方だと思ったけど頭がぼうっとして力が入らない
確かあれが頭に当たってからだ。銀色の丸い何か。確かに召喚したはずなのに誰も信じてくれなかった
まああれだけ探してもなかったんだから今更言ってもしょうがない。しかしあれはいったいどこに行ったのか
思い出せるのは自分を笑うクラスメイトの顔だけだ
視界に入るのは誰か自分以外の使い魔たち
猫にカラスに大きなヘビ。窓の外にはドラゴンまでいる
足元にサラマンダーが寄ってきた。横で赤い頭が何か言っていたけど耳に入らなかった。どうせいつものようにからかいに来たんだろう
生徒のいる寮の塔には戻りたくない
足の向かうままに歩き回っていると廊下の向こうにコルベール先生を見つけた
丁度角を曲がっていたところでこちらには気付いていない様だ
すぐに見えなくなったが何となく付いて行ってみる
禿げ上がった頭を眺めながら考える
どうして自分は魔法が使えないのか
貴族にとって一番重要なものが生まれた時から欠けていた
初めて魔法に失敗したのはいつのことだったか。それからずっと同じ事を繰り返してきたのだ。そして多分これからも
いやもしかしたらあの時成功していたかも知れない。なのにこの教師はまったく信じてくれなかった
でもどうせそれも自分が失敗ばかりしてるせいだろう。本当に何でこうなってしまったのか
いつの間にか外に出ていたらしい。コルベールは学院の片隅にある自称研究室に入ってしまった
こんな風にうじうじしているのは自分でも嫌だった。だけど何故か止める事ができない
ドアの前に立ちながらルイズはぼやけた頭でぐるぐる考える
どうせ誰も助けてはくれないのだ
学院を追い出されたらどうすればいいだろう。お父様やお母様はそれは怒るだろう。もしかしたらあきれてしまうかもしれない
魔法が使えない苦しみなんてわかりはしないのに。才能のある家族に囲まれて私がどんな思いでいたかなんて
ここにいるコルベールもそうだ。やさしい素振りをしていても魔法の使えない生徒に何一つしてくれない
自分が魔法を使えるからってこんな小屋で何の意味もないおもちゃをいじり回している
嫌になる
何もかも
魔法が使えない自分も
こんなところで落ち込んでいる自分も
口だけで助けてくれない教師も
私を笑ったクラスメイトも
私より小さいくせにドラゴンを召喚したあの子供も
いつも小馬鹿にしてくるツェルプストーも
どうせ
「どうせ明日も失敗するんだろうな…………………………
……………………………………………………………………………死にたくなってきた」
それは無意識に
射程内の数十名を確実に捉えた
そして長い夜が始まる
終わり
後に伝わる「トリステイン魔法学院集団自殺」の幕開けであった
ハイウェイトゥヘル乙
発言して欲しくないスタンド上位が来た……
魔法学院全滅しかねないんじゃ……
そんなルイズにはわしのSS投下をあげちゃうッ!
一時からひっそり投下するぜぇー支援とかよろしくねェーッ
しえんだ!
巨大な翼で空を我が物と舞う風竜とグリフォン。
風竜シルフィードの背に乗るルイズは、グリフォンを駆るワルドと再度の対峙を果たす。
最初に視認した時は豆粒程度にしか見えなかった幻獣は、見る見るうちにその姿が見えてくる。
すぐさまグリフォンの背に乗る男の顔が見えた時、ルイズは辛そうに男の名を呼んだ。
「……ワルド……」
ルイズは既に理解している。
彼女の憧れの人はもう自分の前には帰ってこないのだと。
あれは優しい子爵と姿形が同じなだけの、薄汚れた裏切り者。勇気溢れる皇太子を暗殺しようとし、大切な使い魔のジョセフを傷付けたおぞましい存在。
それだけではない。ジョセフの視界を通して見たものは、彼が既に健全な人間でないことすらありありと示していた。どこの人間が、腕を吹き飛ばされて数秒も経たないうちに腕を生やすことができるのか。
あの悪名高いエルフだとて、その様に怪奇な生態を持つとは聞いた事が無い。
倒さなければならない。
名誉あるグリフォン隊の隊長でありながら、始祖ブリミルの末裔である三王家の一つ、アルビオン王家を恐れ多くも薄汚い刃で打ち倒したレコン・キスタの走狗に成り下がった彼を。トリステイン王家に仕えるヴァリエール公爵家の三女として、討伐しなければならない。
判っている。判っている。
だが、心が縮こまっている。
今、この空の中でワルドと戦えるのは自分一人。
フーケと戦った時はタバサも、キュルケも……ジョセフも、いた。
だが、今は自分一人だけ。
タバサはシルフィードの操縦に神経を注がなければならないし、キュルケもギーシュもここに来るまでのフライで精神力を使い果たしてシルフィードの背に倒れている。意識があるだけでも大したものだと言うしかない。
じじい支援
ゼロと呼ばれるおちこぼれメイジが、果たしてスクウェアメイジであるワルドと戦って勝てるのか? いや、そもそも戦いと呼べる行いになるのだろうか?
(それに……今のワルドを倒すと言う事は……)
深手を負わせて戦闘不能に持ち込む、などという結末は考えられない。多少のダメージなら瞬時に再生させるワルドを倒すということは、つまり。
ワルドを殺害するということ。
「……やら、なくちゃ……」
知らず、言い聞かせるような呻きがルイズの唇から漏れた。
「……やら、なくっちゃ……!」
ルイズはまだ16歳の少女でしかない。
「やらなくちゃ、いけない、のよ……!」
手に持った杖を、固く、固く、握り締めて。
「私がやらなきゃ……誰が、するのよ……!」
左目を占める視界。ジョセフは、空中で姿勢を立て直し、落ちていく岬に着地したようだ。落ちる地面を走るジョセフの視界は、まだ何かを試みようとしている。
使い魔が諦めてもいないのに、主人がこんな体たらくでどうするというのか。
なおも絡み付こうとする弱気の靄を振り払うように、叫んだ。
「私は、貴族! 名誉あるヴァリエール公爵家三女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール!! 私は……目を背けない!!」
全ての靄を振り払えた訳ではない。
かつての憧れの人を殺さなければならないほどの覚悟を、一介の少女に持てと言うのは困難だ。しかもルイズは泥の中に浸かった人生など送っていない。
温室育ちで世間知らずの少女でしかないのだ。
そんな彼女が戦いを放棄せず立ち向かおうとするだけでも、多量の覚悟は必要だった。
しかし、それでも、どちらかの殺害でしか終わらない戦いに身を投じ、相手を殺して生存するだけの覚悟には、まだ届かない現状。
これが地球ならば、馬に跨る騎士同士が互いに馬上槍を構えているだろう。
ハルケギニアの上空では、グリフォンに跨った魔法衛士と、風竜の背に乗った華奢な少女が、互いに杖を向け合い――
「ライトニング・クラウド!!」
「ファイアーボール!!」
二人の詠唱が同時に完成し、空気を震わせて放たれた稲妻はルイズの失敗魔法が起こした爆発で吹き飛ばされた。その間に二騎の幻獣は猛スピードで擦れ違い、再び接近する為に大きな旋回に入る。
「……おお! 今のはいい防御手段だねミス・ヴァリエール!」
シルフィードの背に倒れたままのギーシュが、破壊力の高いライトニング・クラウドを巧妙に防いだのに賞賛の声を上げた。
「あ、ああああああ当たり前じゃない! ままままま正に計算通りだったわね!」
「……思った通りまぐれ当たりだったわね」
判りやすいルイズの反応に、ギーシュと同じく背の上で倒れたままのキュルケが呟いた。
ルイズ本人はワルド目掛けて魔法を放ったつもりだったが、左目は今もジョセフの視界が占有している為、右目だけで狙いを付けなければならない。
人間は二つの目で見ることによって遠近を測っているので、片目だけとなると途端に距離感が掴めなくなってしまう。特にもう片方の目に全く別の光景が映し出されているとなれば、狙いも何もあったものではない。
ワルドを狙ったはずの爆発は照準より遥かに前で爆発し、そこに運良く稲妻が直撃したのが今起こった出来事だった。
「けれど今のは効果的。敵も初撃で勝負を決められなかった以上、次からはライトニング・クラウドを撃ち辛い。詠唱も長い上に精神力の消費も激しい」
手綱を握るタバサが、風のメイジからの見解を述べる。
「敵に強力な魔法を詠唱させる時間を与えなければいい。ある程度の攻撃なら、私とシルフィードが避けてみせる」
視線をワルドに向けたまま、振り返らずに淡々と言葉を紡ぐ。
自分よりも小柄な少女の背が、ルイズには何故かとても大きなものに見える。何故そう見えるのか、ルイズにはすぐ思い至った。
(……そうよね、召喚した使い魔は風竜だもの。それだけ実力の高いメイジだってことだわ……)
だがルイズはそこで落ち込むようなことは無い。
自分が召喚した使い魔は、ジョセフ・ジョースターなのだから。
「お願いするわ」
一つ、唾を飲み込むと杖を構え直す。再び接近していくワルドに対して爆発魔法を放っていくが、高速で飛行するグリフォンに狙いの定まらない爆発を命中させるのは至難の業だった。
詠唱時間がほとんど必要ないルイズの爆発魔法を武器として、シルフィードの素早い旋回と高速移動を駆使してヒット&アウェイを繰り返す――のがルイズ達の基本戦術だったが、片目しか使えない為に照準が殆ど合わないのが致命的だった。
数打てば当たる、とばかりに魔法を連発しても、ワルドの付近に爆発を集中させるのも一苦労と言う始末。
それだけでなくワルドからの攻撃をかわすためにシルフィードは高速機動を繰り返している為、体中の血と内臓が上下左右へと振り回されるのも命中を阻む要因だった。
時折グリフォンやワルドに爆発が掠りはするものの、ワルド自身は多少身体が爆ぜた所で何事もないように再生する。グリフォンも元とは言え魔法衛士隊グリフォン隊隊長の乗騎だけあり、多少の負傷では怯みもしない。
数十秒も経たぬ内に渇き始めた喉に唾を飲み込ませ、恐れにも似た焦りをルイズは感じた。
(まずい……このままじゃ、そのうち……押し負けるかもしれない……)
決定力不足はどちらもあるにせよ、操縦者の強靭さの利は圧倒的にワルドに分がある。
こちらは下手に魔法の直撃を受ければ命の危険があるが、ワルドは完全な直撃を受けない限りは倒せないのは数度の交差で証明されている。
せめて両目が使えれば狙いも定めやすいが、今も左目はジョセフに占有されていた。
(ああ! もう! ジョセフ、アンタ邪魔よ! ちょっと引っ込んでなさいよ!)
不満を声にしないのは、せめてもの情けだった。
しかし次の瞬間、左目に映った光景に僅かに言葉を失った。
「……どうしたのよ?」
呪文の詠唱が止まったルイズに、訝しげな声を掛けるキュルケ。
だがルイズはキュルケの疑問に答える事無く、タバサに声を投げた。
「――ミス・タバサ。ワルドのスピードを……少しでも殺せるようにして」
「了解。全員、落ちないように気をつけて」
何故、とは聞かずにすぐさま呪文を唱えてシルフィードの背の上に半円状の風のバリアを張り、シルフィードをグリフォン目掛けて接近させる。
「え!? ちょ!?」
タバサに頼んだルイズ本人ですら、突然のスピードアップに驚きの声を上げた。
「少しの怪我を躊躇っては勝てる相手ではない……『突っ切る』しかない。貴方達も腹をくくって」
突如突撃してくるシルフィードに、好機と見たワルドは風の刃を連射する。
当たれば掠り傷では到底済まない刃の嵐の中を凄まじい加速で敵騎に突撃させられ、きゅい!? きゅいーーー!! とシルフィードが懸命に抗議らしい鳴き声を上げるが、タバサは一向に気に介さない。
数秒も要さず互いの表情の変化が見える距離まで近付いたその時、無理矢理にシルフィードを下降させる。
体長6メイルもある巨体が高速で移動することにより、シルフィードの付近に存在した大気は塊となり、シルフィードの周囲に纏わり付く。しかしシルフィード本体が突然進行方向を変えてしまえば、大気の塊は慣性の法則に従わざるを得ない。
ワルドが駆るグリフォンも、風竜が突撃する速度で巻き起こされた大気の塊の直撃を受けては機動を狂わせざるを得なかった。
グリフォンに命中した大気は爆発するような勢いで拡散して不可視の渦と変貌し、巨大な身体を持つグリフォンを揺さ振っていく。
渦に巻き込まれ大きく体勢を崩したにも拘わらず、それでもグリフォンは再び翼を大きく広げで揺らいだ態勢を立て直す。
こんな状況ですら、ワルドはグリフォンから落ちてはいなかった。
片手で手綱をしかと握り締め、両足は鐙から外れてもいない。
それはワルドの騎乗技術の高さを如実に示すものだった。
「この程度で何がどうなるという訳でも――」
ワルドの言葉はそこで途切れた。
何故なら、彼の両目には見えてはいけないものが見えていたからだ。
「馬鹿なっ! そんなっ……そんなことが……っ、あって、たまるか!!」
思わず漏れたのは、シェフィールドより二度目の生を与えられてからは口にしなかった、明らかな焦りの叫び。
「貴様は……貴様は! 一体何者なのだ!? 貴様は一体何なのだ、ガンダールヴ!!」
青い空と白い雲を突き上げて伸びてくる紫の奔流――ハーミットパープル。
まるで滝が天に遡るようなハーミットパープルは誰の目にも違う事無く、ワルドを目標として迸っていた。
シルフィードに乗ったルイズの存在を、一瞬だけとは言え完全に思考から消し去ったワルドは必死にグリフォンを上昇させて茨を回避しようとするが、茨は凄まじい勢いを僅かにも減ずるどころか、むしろ加速度的に勢いを増してワルドへの距離を縮めていく。
「ち……近付くなっ!!」
風の刃が何振りも生み出されては茨を鋭く切り刻んでいくが、幾ら切り刻んでも茨を駆逐することなど出来はしなかった。
それどころか、時間が経つごとに刃は茨を傷つける事が出来なくなっていく。
最初は一振りで何本もの茨を切っていた刃が、一振りが三本、二本、と切る数を減じていき、やがて一本の茨を断つのに数本の刃を要するほどになっていた。
ワルドの精神力が枯渇しているわけではない。
ハーミットパープルが、さしたる時間も要さないうちに進化を遂げていたのだ。
ワルドが高速で逃れようとすれば追う速度を増し、切り払われれば耐久力を上げる。
紫つながりで紫煙(パープルへイズッ)
じじいきてるぅ〜〜〜〜
ワルドは知る由もない。
スタンドとは生命エネルギーが作り出す、パワーを持つヴィジョンということ。精神力次第で能力が高まるということ。ハーミットパープルの能力は遠隔視、念写、探索ということ。
それらをワルドは知らない。知るはずもない。
今、ジョセフが落ち行くニューカッスルの岬に両足でしかと立ち、右手を空に向けて振り上げている事など、判るはずもなかった。
*
ルーンが太陽の如く輝く左手にはデルフリンガーを固く握り締め、空高く掲げた右腕からは大木と見紛う大量の茨がワルドへ向かって奔っている。
無論、何の代償も払わないままでは、例えガンダールヴの能力を駆使したとしてもハーミットパープルがこれだけの劇的な効果は発揮できない。
ジョセフは自らの生命エネルギーと精神力を、絞り出せる限り搾り尽くしていた。
「逃げ足だけは……大したモンじゃあないかッ……この、若造が……ッ!」
先程受けた挑発を不敵な笑みの形に歪めた口から吐き出す。
ジョセフは自分のスタンドがどのような能力を持っているか、何が出来て何が出来ないのかをよく理解している。
だから彼は、ニューカッスルに降り立つとすぐさま一縷の望みを賭けた博打として、その場所へ走った。
『昨夜切り落としたワルドの左腕があるはずのゴミ捨て場』へ。
結果、ジョセフは賭けに勝った。
屋根付きのゴミ捨て場は崩壊した城に巻き込まれず、捨てられていた左腕もゴミに混ざって残っていた。
後はワルドの左腕を媒介とし、ハーミットパープルでワルドを『探索』させるだけ。
左目に映るルイズの視界には、必死にハーミットパープルから逃れようとするワルドの姿がはっきりと見えている。
僅かにでも油断すればハーミットパープルに巻き付かれる状態では、ルイズ達にも満足な攻撃を仕掛けることは出来ない。
必然的に、少しずつ、しかし確実に包囲網は狭まっていく。
ハーミットパープルがワルドの身体を掠める回数は間隔を縮め、ルイズの爆発もまた段々とワルドを捕らえる様になっていき――
デルフリンガーが、いつもの飄々とした語り口ではなく、興奮を隠さない叫びにも似た声を上げ、鍔口をけたましく鳴らしていた。
「いいぜ相棒ッ! そうだ、俺は六千年前にもお前に握られていた! 今、俺が見ているのは間違いなくガンダールヴの姿だッ!
神の左手ガンダールヴ、勇猛果敢な神の盾! 左に握った大剣と、右に掴んだ長槍で、導きし我を守りきる……そのままだ! 俺は、お前と一緒に戦ったッ!」
デルフリンガーの言う通りだった。
左手に剣を握り締め、右手からハーミットパープルを伸ばすその姿。
遥か上空へと伸びる紫の茨は、巨大な槍を掲げる姿を想像させた。
「だがッ! そんな伝説の使う技に名前がないんじゃ締まらないッ! だから俺がお前の技に名前を付けてやるッ!」
熱狂したような叫びに、今まで返事をしなかった……いや、することの出来なかったジョセフがやっと口を開いた。
「奇遇じゃなッ……わしもずっと考えてたッ……じゃが、叫ぶタイミングがなかったッ……」
今、ワルドは巨大な掌にも似た茨の中に囲まれていた。
遂に一本の茨が風の刃を耐え凌ぎ、ワルドの脚を捕らえた。
逃げようとするグリフォンと絡め取ろうとする茨に引っ張られ、ワルドの身体が凄まじい勢いで折れ曲がる。
支援っ!
「んじゃあよ、一緒に叫んでみようぜ! ここがクライマックスなんだからなッ!」
「おうよッ……それじゃいっちょ叫んでみっかァ……!」
それを切っ掛けとして、茨達が一斉にワルドに飛び掛る。
デルフリンガーが叫ぶ。
「行くぜッ! これが伝説の使い魔、ガンダールヴの力ッ!」
続いてジョセフが叫ぶ。
「コオオォォォオオオッッッ!! 響け波紋のビィィィィィトッッッッ!!!」
もはやワルドは茨から逃れることは出来なかった。
無数の茨がワルドの全身を縛り上げ、凄まじい力で締め上げ、動きを封じられ。
茨を伝って昇る波紋が、ワルド目掛けて疾り――
老人と剣の叫びが、重なった。
「ハーミット・ガンダールヴ・オーヴァドライブッッッ!!!」
*
ルイズは見た。
キュルケも、ギーシュも、タバサも、シルフィードも。
遥か地面へ向かって落ちたはずのジョセフにしか出せない紫の茨。
それは少年少女達の目には、茨ではなく、大樹のようにすら見えた。
時間にすれば僅かな間でしかなかった。
シルフィードが特攻じみた接近を仕掛けてから、たった十数秒のこと。
ワルドを捕らえた茨が、太陽の光にも似た光を放つ。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッッッ!!?」
死んだ肉体に満ちているのは水の精霊の力。
波紋は自由自在にワルドの身体を満たす精霊の力を疾走し、増幅させ……暴走させた。
瞬間的に膨張させられた精霊の力は、器であるワルドの肉体では耐え切れず、炸裂した。
「わ……私はッ! 不死身なのだッ! こんなッ……こんな、黴の生えた老いぼれなんぞにッ!」
ワルドの首が、空に吹き飛ばされる。
それでもなお、ワルドは叫ぶ。
「この私が! 死ぬだと!? 有り得ない、有り得ない有り得ない有り得ないッ……」
うわ言の様に叫ぶワルドの声は、ルイズ達に届いていた。
ルイズは、ただ。
一つ、深く呼吸をして。
「……貴方を殺すのではないわ、ワルドさま」
目の端から空に飛ばされる涙の粒を拭うこともなく。
「これは、貴方を救うことなのよ」
杖を、『ワルドだった』者へと向けた。
――それに人間、終わりがあるから生きてけるんじゃ。終わりが無くなれば、狂うしかないんじゃよ。狂うしか、な。
かつてジョセフが自分に向けていった言葉。それが不意に頭の中で再生され、ルイズは深く頷いた。
「ジョセフ……アンタの思いが今、言葉でなく心で理解できたわ……私は、貴族として、人間として……」
たった一言、呪文を唱え。
ワルドの首は大きな爆発に巻き込まれ、アルビオンの空へ霧散した。
彼の意識が消し飛ぶ瞬間、黄金の輝きが確かに彼の視界を満たした。
しかしその輝きを見たことは誰にも伝えられることはない。
誰にも知られることは、なかった。
To Be Contined →
以上、『投下した』ッ!
あれ前の投下から時間が経ち過ぎている……なんということだ。
しかも風のアルビオン編の最終回が次回になっている……新手のスタンド使いの攻撃を受けているッ!?
もう色々やりすぎてる感はあるがもうそこらは気にしないで貰いたい。
こんなノリで最後まで押し通すつもりじゃからなッ!
とりあえず次の投下はもっと早いうちに……支援してくれたみんなありがとう!
爺さんハッスルしすぎだw
GJ!
GJだ! GJだよ!
仮面の人といい、隠者の人といい…
はっ、ゴールデンティークになるとき、同時に黄金の精神の書き手たちがあつまりつつあるのかッ!
隠者GJ!
GJカッコ良すぎだぜジジイ・・・・・
GJ!デルフが熱い!
「ワルドッ!」
ワルドがいつの間にか部屋の隅に立っていた。
「久しぶりだね、僕のルイズ」
この場にワルドがいるということは。
「プロシュートに、この場所がバレてしまっている!」
キュルケとタバサが杖を構え。ギーシュとモンモランシーが身を寄せ合った。
「大丈夫だよ僕のルイズ。彼は今、上にいるからね。テッペンから徹底的に
荒しまくってやると言ってたかな」
ワルド・・・わたしがここにいるのは偶然。待ち伏せはありえない。
「どこから入ったの?」
「勿論そこのドアからだよ、ちゃんとノックもしたさ。返事は聞かなかったけどね」
おどけた仕草でワルドは答えた。
「サイレント」
タバサが杖を構えながら呟いた。
「ご名答」
ワルドが薄く笑う。
「何時からそこにいたの?」
話している間ずっと気が付かなかったなんて。
「残念ながら話の終わりの方らしくてね。
よければもう一度最初から説明してくれないかな」
「ふざけないで。あなた二日前、タルブ村に居なかった?」
「ほう!よく知っているね、僕のルイズ」
なにが始祖ブリミルの怒りよ!
「やはり、あなただったのねワルド。お尋ね者のくせによくバレなかったわね。」
「フェイス・チェンジというスクエアスペルがあったからね」
顔を変えて潜り込んだわけね。
「じゃあ、手はどうしたのよ?」
わたしはワルドの無くなった手を指差した。
「簡単な事さ」
ワルドは呪文を唱え杖を振るう。するとヒラヒラ動いていた左袖から手が生えた。
「何かおかしくない?」
どこか違和感があった・・・はっきりと言えないが、それは間違い無い。
「気が付いたかい僕のルイズ。これは『右腕』の偏在でね・・・
お蔭で両手が右手の男になってしまったよ」
ワルドが両手を見せ付けるようにワキワキとさせた。
「気持ち悪い」
「はは、手厳しいな僕のルイズ。だけどアカデミーの連中は全く気が付かなく
てね、お陰で笑いを堪えるのに苦労したよ」
「ワルド、プロシュートと組んで学院を攻撃しに来たってワケ?」
わたしの質問にワルドは首を横に振る。
「今回はあくまでも彼一人さ、僕は彼を運び結果を見届けるだけさ」
「スクエアのメイジが運び屋にまで落ちたの?」
わたしの挑発にも動じなく、ワルドはニヤニヤと笑いを浮かべた。
「彼は実に凄いよ僕のルイズ。手足のメイジに始まりオークやミノタウルスまで
あっさりと倒してのけた・・・彼なら、いや兄貴ならエルフですら敵では無いと
僕は信じている!」
この野郎!・・・杖を握る手に力が入る。
「そして極めつけはタ・・・」
「ファイアーボール」
音を立ててワルドが消し飛んだ。
「もう喋るな」
ワルドを消し飛ばしたのに声だけは聞こえる。
「ククク、自分の使い魔を奪われて悔しいかい?悲しいかい?クハハハハハ」
「出てきなさいッ!殺してやる!ブッ殺してやるわ!ワルドッ!!」
「『ブッ殺してしてやる』そのセリフは殺してから言うものじゃないのかい?
僕のルイズ」
「お前がプロシュートを語るな!!」
杖を振りかざした手をキュルケが掴んでとめた。
「離してよキュルケ!」
「いい事を教えてあげるわルイズ」
「何よ」
「女の価値はね、相手にする男で決まるものなのよ。だから自分から価値を
落とす必要はないわ」
「はあ?」
何言ってるのこんな時に。
わたしの疑問を余所にワルドが不機嫌な声をあげた。
「貴様、誰に向かって口をきいているのか判っているのか?」
「誰って、話し相手に自分の姿も見せられ無いマザコンの腰抜け子爵ゥ?」
「貴様ッ!よくも!」
ワルドの言葉に殺気が籠る。
キュルケ、ひょっとしてワルドを怒らして引きずり出す気?
「グググ、ククッ・・・クハハハハハハ」
ワルド、気でも違った?
「思い出したぞ。貴様はラ・ロシェーロで合流した女だな・・・
あの時、彼の力を恐れて駄々を捏ねていたのは一体誰だ?・・・
腰抜け?その言葉は鏡に向かって言え!このゲルマニアの売女が」
キュルケがハシバミ草を噛み潰したような顔をする。
「グギギギギギギ・・・」
「ちょ、キュルケ。手、痛いわよ」
「ごめんなさいルイズ・・・あの子爵、性格ねじくれ曲がっているわよ」
「クハハハハハハハ・・・」
ワルドの笑い声がプツリと途切れた。周りを見渡すとタバサが杖を振っていた。
「サイレント」
「ありがとうタバサ。でもこれからどうする?きっとプロシュートに居場所が
バレてしまったわよ作戦も何も無いじゃない」
これから如何するか決める時に邪魔が入ってしまった。ぶっつけ本番・・・
行き当たりばったり、その場逃れでやるしかないの?
「それなら僕に任せてくれないかな?ルイズ」
薔薇の杖を構えながらギーシュが名乗りをあげた。
「あなたが?止めておいた方が良いわよギーシュ・・・」
「心配は無用だよルイズ。特訓をしていたのは君だけじゃ無いということだよ・・・
キュルケ、早速だが成果を見せる時が来たようだ」
知ってたのねギーシュ。
「やるしかなさそうね・・・」
自信たっぷりのギーシュと自信なさげなキュルケ・・・不安だわ。
「モンモランシー。君は僕が守る!」
ギーシュとモンモランシーが手を握り見つめ合った。
「無理ね。あんた弱っちいもの」
「はーっはっはっはっ!この信用の無さ!泣けてくるね!」
冴えないわねギーシュ。
「まあいいさ、僕の活躍を見れば。きっと僕を見直すだろうからね」
ギーシュが外に出ようと動きキュルケもその後に続く。
わたしも後に続こうとすると、タバサがずっとこちらを見ていたことに気付いた。
「何タバサ、まだ質問があるの?」
「一個借り」
借り?・・・思い当たる節といえば。
「氷の事?別に良いわよ原因は、わたしにある様なもんだし」
「一個借り」
人の話を聞かない子ね。
「あー、無駄無駄。タバサって言い出したら聞かないから」
わたしとタバサの、やり取りを聞いたキュルケが口を挟む。
タバサ・・・結構頑固なとこあるんだ。
支援するよん♪
ならばGJだ。
つづき全裸でまってます。
>>427を凍死させない為に、偉大さんに代わり15分から投下します。
429 :
ゼロいぬっ!:2008/04/26(土) 17:17:11 ID:Gem1WcMP
彼は走っていた。
息を切らせて淡い期待に胸を膨らませながら、
その先に絶望がある事さえ知らずに走り続けた。
そして、彼はいつも終焉の地へと辿り着く。
眼前には行く手を遮る巨大な隔壁。背後からは迫り来る炎。
あの日の光景はルイズに助けられた日から今も夢に見続ける。
悪夢から覚める度に、彼はルイズの姿を探し求めていた。
そうする事で、今という時間がただの夢ではないと実感できた。
不意に世界に亀裂が走った。
そのヒビは例外なく隔壁も炎も廊下や天井にも伝わっていく。
まるで卵を落としたような乾いた音と共に、彼の目の前の光景は砕け散った。
そして彼は目覚めた。
ゆっくりと身を起こして、いつものように背筋を伸ばす。
しかし振るった身体から零れ落ちたのは藁ではなく水滴。
見渡せば、いるべきルイズの姿はなく、愕然とした表情のコルベール先生が自分を見つめていた。
状況を理解しようとする前に、彼は自身の感覚を最大限に発揮してルイズの匂いを探した。
しかし、学院の内にも外にも彼女の存在を感じられない。
それどころか学院からは溢れかえるみたいな人の気配を感じられない。
その直後、彼は遥か遠くから伝わってくる匂いに気付いた。
恐怖や苦痛、憎悪と殺意が入り混じった強い感情が放つ独特の匂い。
トリステインで戦争が起きていると彼は咄嗟に理解した。
きっとルイズはそこにいる。
それは彼女がアンリエッタの前で、
戦争になれば自分が戦うと誓ったからだけではない。
彼女は目の前の不幸を見過ごせない。
自分にその力がないと分かっていても気丈に立ち向かう。
そんな彼女だから守りたいと思ってしまう。
ルイズに救われた自分だからこそ彼女の助けになりたい。
「……………」
コルベールは無言で自分の杖を力強く握り締めた。
乱れた呼吸を整えようとも皮膚の上を伝うのは冷たい汗。
自分の行いが正しかったと思うのは偽善に他ならない。
彼にとっては主人と力ずく切り離されたにも等しい。
いや、それどころか彼を想うミス・ヴァリエールの気持ちさえ利用したのだ。
彼が私を憎むのであれば甘んじて罰を受けよう。
……だが断じてここで死ぬ訳にはいかない。
世界の危機を知っているのは私とオールド・オスマン、
そしてアンリエッタ姫殿下とマザリーニ枢機卿のみ。
もし私がここで倒れれば彼が目覚めた事さえ知らされずハルケギニアは終焉を迎える。
戦闘が起きてしまった今、国家の総力を上げて彼を倒すのは不可能となった。
しかし炎を得手とし彼の事を熟知している私なら……あるいは。
彼の一挙動に細心の注意を払いながら口元を隠し詠唱する。
コルベールの背を押したものは自分の身に負うには重過ぎる責任。
ハルケギニアの危機を前に、個人の感情を優先する訳には行かない。
430 :
ゼロいぬっ!:2008/04/26(土) 17:18:45 ID:Gem1WcMP
………何故こうなってしまうのか?
私の魔法はいつだって守りたかった者達へと向けられる。
国の為、そこに生きる人達の為と信じ無辜の民を虐殺し、
そして今、私の杖は彼へと向けられている。
こんな事をするだけの力ならば要らなかった。
力を得ればそれだけ多くの人が救えると思っていた。
結局、増えたのは選択肢だけだった。
力が無ければ選ばなくても済んだのかもしれない。
零れ落ちそうになる涙を堪え、震える声でコルベールはルーンを唱え続ける。
その姿を一瞥して彼は動いた。
緩やかにコルベールへと歩み寄る。
一触即発とも取れる光景にシエスタは固唾を呑んだ。
どちらかが動けば間違いなく殺し合いが始まると、
実戦を知らぬ彼女でさえ理解していた。
一歩また一歩、互いの距離が縮まっていく。
これ以上近付かれればメイジの優位性は失われる。
ましてや相手は“バオー”。
万全を尽くして尚、勝ち目があるかどうか。
コルベールの逡巡も数瞬、かつての冷徹な精神が内を満たす。
未だ彼の姿は蒼い魔獣へと変貌を遂げていない。
そこに僅かな勝利の可能性を見出し、コルベールが彼を見据える。
しかし、そこに彼はいなかった。
気付けば彼はコルベールの横を通り過ぎ、開いたままの扉を目指す。
向けられた殺意を受け流し何事もなかったように歩む。
敵の排除よりもルイズの命を優先したのか、出て行こうとする彼へと視線を向ける。
そして彼も振り返り、ぺこりとコルベールにその頭を下げた。
まるで当たり前みたいに、いつもの日常が戻ってきたかのように。
彼は知っている。コルベールがどれほど自分の事で思い悩んでくれたかを。
元の世界に帰る方法を見つけ出し、考える時間まで与えてくれたのだ。
そこにどんな意図があったのかなんて知らないし必要も無い。
何があろうともコルベール先生はこの世界で出会った掛け替えの無い人の一人だ。
きっとルイズや自分、多くの人達の事を考えて決断したのだろう。
自分と同じ様に苦しみ、悩み、答えを導き出した彼をどうして責められよう。
コルベールの殺意は本物ではないと“バオー”が告げる。
“今までありがとう”とデルフがいたなら伝えられた気持ちを残し、彼はその場を走り去った。
直後。からん、と乾いた音を立ててコルベールの杖が床に落ちた。
杖を向けたにも関わらず、彼は最後まで自分を信じてくれた。
その想いを踏み躙るような真似をした自分が許せなかった。
膝から崩れ落ちて這い蹲り、堰を切ったようにコルベールは泣いた。
溢れ出した感情は抑えきれず、声と涙に変わって零れ落ちる。
その傍らでシエスタはコルベールの背に優しく手を添えていた。
431 :
ゼロいぬっ!:2008/04/26(土) 17:20:41 ID:Gem1WcMP
慟哭が木霊する寮の中を彼は駆ける。
一刻を争う状況にありながら彼は窓から飛び出したりはしない。
思い浮かべるのは主の姿ではなく戦うであろう相手の姿。
空を埋め尽くさんばかりの船団に竜騎士、城を包囲していた無数の兵隊。
……そして最も警戒すべきワルド。
今度は勝てないかもしれない。
いや、たとえ勝てたとしてもルイズや皆を守りきれない。
守り切るには“武器”が必要だ。
あの雷でも届かない上空にいる相手を撃つ為に、
バオーが持つ武装じゃない“武器”が要る。
そして彼は走った。
その条件に適合する物、それが眠る場所へと。
「どうしてこう行く先々で敵と遭遇するんだろうね、僕は」
「案外、戦運があるのかもしれませんね」
「………どこが?」
新たに作った塹壕に隠れながら目の前を横断していく敵兵の列を眺める。
途切れる事なく続く果てない縦列にギーシュは深い溜息をついた。
確かに敵軍と交戦せず迷子になって帰還する指揮官よりはマシだろう。
だけど、これを戦運と呼ぶのは何かが間違っている。
アルビオン軍の鉄砲隊はまだこちらに気付いていない。
今、一斉射を浴びせればそれなりに損害を与える事が出来るだろう。
……だけど、そこでお終い。
残された敵兵はこちらを圧倒する数で塹壕を包囲して殲滅する。
足止めにはなっても此処から生還する事は叶わない。
思い悩むギーシュにニコラは続けた。
「いや、あの連中と戦わずに済むんですから幸運ですぜ」
「……副長?」
「このまま見逃しちまえば生き残れる。
そりゃあ、あそこに残った連中は皆殺しにされるかも知れねえ。
だけど背後で補給線を断っちまえば鉄砲隊も干上がる。
結果、左翼は突破されずに戦線も維持できる」
それは魅力的な提案に聞こえた。
決して抗命行為ではない、運悪く敵と遭遇しなかっただけ。
加えて、敵の補給を断つという戦功を上げるのだ。
むしろ賞賛されて然るべき行動だ。
………だけど。
静かにギーシュは右手を上げた。
それは攻撃の為の準備を告げる無言の指示。
この腕が振り下ろされた瞬間、一斉にアルビオン軍へと仕掛ける合図。
432 :
ゼロいぬっ!:2008/04/26(土) 17:22:03 ID:Gem1WcMP
「呪うなら無能な上官に当たった君の不運にしてくれ」
眉を顰めるニコラにギーシュが口元を緩ませて話しかける。
しかし、その表情は引き攣りおよそ笑顔には遠い。
ここから走って逃げ出したいほどギーシュは脅えていた。
それでも逃げ出せば何かが確実に終わってしまう。
ギーシュ・ド・グラモンではいられなくなる。
今まで築いてきた物や得た物が何も残さずに全て消える。
きっと、それは死ぬ事よりも遥かに恐ろしい。
「悪いが、あんな端金で命を捨てる義理はねえ」
そう言ってニコラは手にした銃の火縄に火を点した。
そして銃口をギーシュの眼前に突き付けると彼の顔を覗き込んだ。
未だに恐怖に震えながらも眼光は曇っていない。
銃で脅そうとも揺るがない決意がそこにはあった。
一層深い溜息をつきながら、銃口を外してニコラは続けた。
「……終わったら一杯奢ってもらいますぜ。
そうじゃなきゃ、いくらなんでも割に合わねえ」
「ああ。僕も何もかも片付いたら一杯やりたい気分だ」
互いに笑みを浮かべながら二人は同意するように頷きあった。
それは先程みたいな顔を歪ませるだけの表情ではない。
本当に心の内より沸き上がる笑い。
高々と掲げたギーシュの腕が振り下ろされる。
銃口から一斉に放たれた鉛玉は目前の縦列へと降り注いだ。
「立て! 倒れたなら焼き払われる故郷と家族の姿を思い浮かべろ!
まだ動けるだろう!? 込み上げる怒りがその身を突き動かす筈だ!」
アニエスが檄を飛ばしながら倒れた兵を引き摺り起こす。
一時は拮抗していた砲撃戦も限界が迫っていた。
いかに気迫で勝ろうとも撃たれれば人は死ぬ。
精神力では覆せぬ物量差がそこにはあった。
辛うじてアニエスが最前線に立つ事で保たれた戦線。
その各所では沈黙した大砲の姿が幾つも窺える。
砲手を失ったからばかりではない。
最大の原因は火の秘薬の不足に他ならない。
いくら砲と弾を回収できたとしても、
艦に積まれた火の秘薬の大半は引火により失われていた。
用意できた砲に比べ火の秘薬の量は絶望的なまでに足りなかった。
だが、それでも撃ち尽くすまで彼女は戦い続ける。
アニエスの視線の先には、アルビオン軍の鉄砲隊を食い止めるキュルケ達の姿がある。
迂回した部隊が奇襲にあった事を知り、残存部隊も正面突破を図ろうとしてきたのだ。
ギーシュや彼女達は自分を信じて敵の侵攻を阻止してくれている。
その中にモット伯が混じっている事を複雑に感じながら、アニエスは懸命に応えようとした。
誰も頼れる者もなく戦い続けてきた彼女にとってギーシュ達は紛れも無い“戦友”だった…。
433 :
ゼロいぬっ!:2008/04/26(土) 17:23:35 ID:Gem1WcMP
「気を付けて! 連中の銃は射程が桁違いよ!」
「心配無用! こちらはトリステインの最新鋭!
先程までの火縄銃と比べてもらっては困るな!」
敵の銃口に身を晒したモット伯が吼える。
その前方では整列した鉄砲隊が向かってくる敵に備える。
届きさえしないであろう距離で銃を構える敵兵に、モット伯は口元を歪めた。
やはり頭数を揃えただけの連中か、この距離で撃って当たる筈など……。
瞬間。自慢の髭を掠めた弾丸が彼の余裕を打ち砕く。
弾けるように塹壕に潜り込むと一瞬前の出来事を思い出して震え上がる。
そんな彼に呆れた顔でキュルケが話しかける。
「だから言ったじゃない。射程が違うって」
「こっちは最新鋭の火器だぞ? それでもか!?」
「まあ最新っていってもトリステインのじゃ高が知れてるけどね」
そのキュルケの無神経な一言がカチンとモット伯の癇に障る。
彼女の言う通り、工業力でトリステインが他国に劣っているのは事実だ。
しかし歯に衣着せぬキュルケの言い方にモット伯は大人気ない怒りを覚えた。
「それにしても、アレは一体どこの技術で作られた物だろうか?
少なくともゲルマニアなんかには絶っ対に作れないと私は思うのだが。
君はどう思うかね、ミス・ツェルプストー?」
「おほほほほ、面白い事をおっしゃいますわ。ミスタ・モット。
それを言ったらトリステインなんかドがつく田舎じゃありません事?」
「はっはっは。それは伝統と風情というものだよ、野蛮人には分からんと思うがね」
丁寧な口調に乗せて行なわれる毒の応酬。
この非常時によくそんな余裕があるものだと主の器に感心しながら、
フレイムが突出してくる兵士達をブレスで牽制する。
だが、それも長くは保たない。
炎の吐息とていつまでも続けられるものではないし、
相手が多少の犠牲を覚悟で踏み込んでくるなら無意味となる。
どうにか足止め出来ている今の内に何らかの策を立てる必要がある。
そして期待の入り混じった目で見つめた主人は、
いつ終わるとも知れない口喧嘩をまだ続けている。
気付けばフレイムの口から漏れていたのはブレスではなく溜息だった。
「大体! お金も無いのにどうやって兵隊なんか集められたのよ!?
借金できるほど社会的な信用も無いでしょ? まさか悪事に手を染めたんじゃ……」
「……本を売ったのだよ」
キュルケの杖の先端がモット伯に向けられる。
しかし、それを平然と受け流してモット伯は言い放った。
突然の返答にきょとんとキュルケは目を丸くした。
本というとデルフが売りつけた『異世界の書物』の事だろうか?
戸惑う彼女に、髭を弄りながらモット伯は続けた。
434 :
ゼロいぬっ!:2008/04/26(土) 17:25:03 ID:Gem1WcMP
「『異世界の書物』と私の半生を注いだ蔵書のコレクションの大半を、
他国の好事家に破格の値で買い取ってもらった。私の時と同じ手練手管でな」
その全てを注ぎ込んで彼は兵と装備を揃えたのだ。
私財を投げ打ってのモット伯とは思えぬ献身的な行動にキュルケは唖然とした。
どこか頭を打ったのではと心配そうに見つめる彼女の視線。
それを“私に気があるのでは?”とモット伯は好意的に解釈した。
しかし残念な話だが、モット伯は彼女の中の男性というカテゴリーに含まれていない。
オホンと一息入れて彼は照れ隠しをするように告げた。
「この戦にはトリステインの命運が懸かっている。
国が無くては権力に縋るばかりの我々は生きていけないのだ。
それに生きてさえいれば、いずれは買い戻せる」
「いずれは……って半生かけた代物でしょ!?」
「その通り。ならばもう半生かけて取り戻すまでだ」
そう言い放つモット伯の姿はどこか清々しいものだった。
彼は多くの物を失った、だけど代わりに“何か”を得たに違いない。
それはモット伯の退屈で、つまらなかった人生を覆す大きな転機。
あるいは気付いていないだけで私も変わったのかもしれない。
ルイズと彼女の使い魔との出会いによって……。
「モット伯」
「ん? 何かね?」
まさか愛の告白ではあるまいな?とモット伯が緩んだ顔を向ける。
しかし、キュルケの口から漏れたのはそれ以上に彼を喜ばせる言葉だった。
「もし、お互い生きて帰れたらツェルプストーに伝わる家宝を差し上げますわ」
「まさか…! それは例の!?」
「はい。お望みの『異世界の書物』ですわ」
「ほ、本当だな! 後で“やっぱり嘘”とか無しだからな!」
「勿論。己が身を省みず国を救った英雄ともなれば、本を譲った所で家名は傷付かないもの」
モット伯が拳を掲げて感動に打ち震える。
今の彼の眼には舞い降りてくる妖精達の祝福さえ見えているのだろう。
しばらく硬直していた彼だったが杖を手に取り気炎を上げた。
そして兵達に指示を飛ばしながら揚々と敵兵に立ち向かう。
その瞳には燃え上がる闘志さえも感じられた。
「この戦! 必ず勝つ!」
その背を眺めながらキュルケは深い溜息をついた。
あんな本の為に決死で戦う羽目になる兵士達の姿を思い浮かべて、
彼女は自分が悟った“世界の真実”を口にする。
「男って……本当にバカばかりよね」
支援
436 :
ゼロいぬっ!:2008/04/26(土) 17:27:52 ID:Gem1WcMP
投下したッ!
次回のテーマは『集結する力』!
乙!
ギーシュやモット伯がかっこいいだと!?
そろそろクライマックスか、次を楽しみにしてます!
偉大氏いぬ氏共にGJ!
どっちもクライマックスに向けて歩みだして、熱い!
GJ!GJゥ!
どいつもこいつも…
なんか、ちょっぴりカッコイイんじゃあねーかよ……
GJ!
次々と作品が投下されていく!まるで何かの予兆のように!
舞踏会が始まった頃にまで、時間は戻る。
ジョルノがイザベラと踊っている頃に、ポルナレフの入った亀を抱えたラルカスの偏在は牢屋への道を走っていた。
ラルカスは急いでいた。
フーケの身柄が、明日にもこの魔法学院から遠く離れたトリスティンの城下町の一角にあるチェルノボーグの監獄に移送されてしまう、というのもある。
学院の牢とチェルノボーグの監獄とでは軽微に大きな差がある。
兵士を買収すれば案外簡単に侵入できるのかもしれないが、兵士へと引き渡すまで身柄を任された魔法学院の牢から脱獄させる方が容易だと、ラルカスは考えることにした。
魔法学院の面子はこれでまた潰れてしまうだろうが、急がなければならなかった。
理由は二つある。一つは、テファがジョルノに反抗し組織入りを望んでいること。
彼女が手っ取り早く手柄を立てジョルノに本気であることを示すには今やるべきだとラルカスは考えていた。
テファまでいなくなると潤いがなくなる…ということではなく、テファの境遇を考えれば普通に暮らすことを考えるより目の届く所において事務仕事でもやらせておけばいい。
ジョルノとラルカス、ポルナレフにフーケまでが加わるのだからなと、個人的な意見だがラルカスはそう考えていた。
もう一つは『土くれのフーケ』を求めるのはジョルノのパッショーネだけではないということだ。
『レコンキスタ』と名乗る組織がフーケをスカウトしようとしているという情報が入っていた。
それ自体は余り驚いてはいない。
ジョルノはテファを自分から切り離す為にフーケを使う予定のようだが、ラルカスだってできればパッショーネに参加させたいと思っているからだ。
だが、本体は(勿論コルベール等のジョルノに指定されたメイジと親交をもとうとはしているが)舞踏会を楽しんでいるし、他にもヴァリエール領内などで暗躍している偏在がいるため余り多くの精神力を分配する事は出来ない。
もしもの時の事を考えてポルナレフも連行してきたが、できれば『レコンキスタ』が来るより先にフーケを引っ張り出したいと言うのも、ラルカスの本音だった。
本体の視界に髪を黒く染め、コロネを解いて髪を下ろしたジョルノが親交のある貴族の子女や調べておいた有望そうなメイジと談笑している姿が入ってきて少しため息が出たが、今回は仕方ない。
ジョルノがこの場にいたら、亀の中に手を突っ込んでテファがいないかどうか入念に調べてしまうだろうからな。
気付かない振りをして亀を荷袋につめたラルカスは、警備の兵士を金と自分が地位の高い貴族であるという振りでクリアして牢屋への道を急いだ。
本体の視界では、その時はまだジョルノは頭の禿げた中年教師の発明の話を熱心に聞いていた。
牢屋に続く通路は、余り清掃がされておらず汚れていて薄暗い。
舗装されているだけで隠れ住んでいた洞窟と大差ないとラルカスは感じた。
煉瓦で組み上げられた壁を照らす、一定の距離を置いて設置された灯りをラルカスは消していく。
ミノタウロスという身体能力では人間を超える怪物の肉体を持つラルカスには、灯りが無いほうが有利だった。
灯りを消しながら黴臭い空気が淀む通路を進むラルカスの荷袋の中、その中でじたばたする亀の中でポルナレフは神妙な顔つきでソファに座っていた。
普段ジョルノが座っている所から人一人分程離れた位置にはテファが緊張した面持ちで座っている。
テファの手には彼女が魔法を使うための杖と、ジョルノがこちらに着て作り出した拳銃が握られている。
ジョルノの夢に付き合う為には、手を汚す覚悟がいると思っているのだ。
ポルナレフはそれを見て少し罪悪感を覚えた。
テファをこんなことに関わらせるべきではないというジョルノの考えに、ポルナレフも基本的には同意しているし、何よりジョルノを裏切る行為だという理解しているからだ。
だが、ポルナレフにはテファの頼みを断る事ができなかった。
テファの真剣な眼差しから感じられる、初めて出会った時の彼女からは考えられないような事を行うと決めた意志に…
既に、それは所詮他人に過ぎないポルナレフが説得できる時期を過ぎていると悟ったのだった。
ここで協力せずジョルノの考えどおりにした所で、テファはジョルノを追いかけてより厄介な事になる。
そう感じたポルナレフは、テファの行動を助ける事を決めたのだった。
だが…ジョルノの荷物から持ってきた拳銃をポルナレフに見せたテファを、ポルナレフは脳裏に描く。
だが、助けると決めてもジョルノの判断の方が正しいような気もしている。
その相反する気持がせめぎ合うお陰で、本当は考えなければならないルイズとのことを余り考えないようになっているのだが。
今は無事にこの件を完了することだけを考えようとしているポルナレフは気付かなかった。
ジョルノを裏切ることになると知っていて協力することを決めたのだ。
最低でもマチルダの救出を完遂し、無事に送り届けるまでは完遂しなければポルナレフのプライドに障る。
その相反する気持がせめぎ合うお陰で、本当は考えなければならないルイズとのことを余り考えないようになっているのだが。
今は無事にこの件を完了することだけを考えようとしているポルナレフは気付かなかった。
ジョルノを裏切ることになると知っていて協力することを決めたのだ。
最低でもマチルダの救出を完遂し、無事に送り届けるまでは完遂しなければポルナレフのプライドに障る。
あ、ありのまま現状を説明するぜ。
私は再会したテファに同情していたら彼女が悪の道に入る手伝いをする羽目になった。
な、何を言っているかわからねぇと思うが、私にも何が起こっているか(事情が全く)わからなかった。
って言うか私は今こんなことをしている場合じゃあないんだがな。
ポルナレフは内心ため息をつきながら、思いつめた表情で胸元を押さえる手にルイズ達が持っているような杖を握るテファを見る。
自分が泣かせてしまったルイズと比べると同じ生き物なのか疑うような物体が目に入り、ポルナレフは唾を飲み込んだ。
「…ゴホンッ、テ、テファ。もう一度だけ聞いておくぜ。もうすぐ牢屋に着くと思うが…本当にいいのか? こういっちゃ何だが、マチルダお姉さんを助けてもジョルノがお前を組織に入れるとは限らないぜ。アイツを怒らせるだけかも知れん」
「うん。でも、やらなくちゃならないの」
ラルカスのフェイスチェンジで普通の人間の娘のように見える顔を俯かせたまま答えるテファにポルナレフは片手で頭を抑えた。
やはり今のテファを見る限り、説得しても無駄だとしか思えなかった。
後でテファも救出するのに協力しただとか言ってもいいと言っても、テファは退こうとはしなかった。
ここまでやるなんて、まさかジョルノの野郎。
ポルナレフは腕を組んで考え込んだ末、
「手は出してないと言っていたが…実際はテファに子供達には聞かせられないような手を出しまくっておいて、履き古した服をタンスの肥やしにするみたいに厄介払いするつもりなのか?」
「ポルナレフさんよ…アンタ、声に出てるぜ」
天井からラルカスの突込みが入り、ポルナレフはテファに平謝りする。
テファは首を振ったが、意味はわかったのか顔を赤くしていた。
ばつが悪そうにするポルナレフをフォローするように、ラルカスの声が再びかけられる。
「見張りが見えてきたぜ…どうする? 金を掴ませるかそれとも眠ってもらうかだが」
「眠ってもらうのが一番だな。私に任せろ」
「よし」
ポルナレフがマジシャンズレッドを出す。
ルイズとの一件で凹んでいるせいかいつもより迸る炎の勢いは緩やかなようだ。
上半身裸の鳥男は荒ぶる鷹のポーズで亀から飛び出し、亀を抱えたまま早足に歩くラルカスに先行する。
牢を見張る兵士があくびをしている姿が目に入る。
舞踏会の夜だから気を抜いているのかそれとも普段からそうなのかはわからないが、ポルナレフは好機と見て一気に距離を詰める。
「ムゥンッ、赤い荒縄(レッド・バインド)!」
亀の中で突如私があげた叫びに呼応し、マジシャンズレッドが炎の縄を放つッ!
亀の中で突如私があげた叫びに呼応し、マジシャンズレッドが炎の縄を放つッ!
兵士が炎の熱と光に気付き、驚きと共に顔を向けた時には勢い良く伸びた炎が腕を、足を縛り上げ、口を塞ぐ。
中々の速度と精度、そして兵士の顔焼き尽さない程度の奇妙な熱さ。
私は着実にマジシャンズレッドを制御できるようになっている事に少し満足感を覚えた。
崩れ落ちる牢番から牢屋の鍵を奪い取り、ラルカスに投げる。
空中に浮いた鍵や炎の縄をラルカスがどう思ったかは気になるが、ラルカスは何も言わず走り出した。
廊下を通り抜け、牢獄へと続く階段を下りていく。
「ポ、ポルナレフさん突然どうしたの?」
だが、いきなり雄叫びを上げた私の姿はテファには奇怪なものに映ったらしい。
ドン引きしながら声をかけてくるテファに私はスタンドのことを説明しちまった方がいいような気がした。
「ああ、これはスタンドって言ってな。まぁ魔法みたいなもんだ」
「そ、そうなの…」
なんだか誤解が解けていないような気がするが…ま、まぁ余り気にしないで置くとしよう。
今はそれよりも早急にやらなければならないことがある。
ラルカスは既にフーケが入れられている監獄が並ぶ階層に着ている。
「おや! こんな夜更けにお客さんなんて、珍しいわね」
奥の牢から聞こえてきた声にテファは笑顔を見せた。
「この声、マチルダ姉さんだわ!」
「そうなのか?」
ちょっぴりしか聞いた事が無い私には判断が付かないが、テファの様子を見る限りは間違いない。
ポルナレフは再びマジシャンズレッドを亀の外に出してラルカスが見ている牢の中を見る。妙齢の女性が身構えていた。
剣術を嗜んでいたポルナレフには彼女がそれなりに喧馴れしていることと彼女のボディはやっぱり結構グンパツだということはわかった。
訓練しているかどうかはわからなかったが。
「おあいにく。見ての通り、ここには客人をもてなすような気の利いたものはございませんの。でもまあ、茶飲み話をしに来たって顔じゃありませんわね」
「単刀直入に言う。貴方に我々の組織に参加していただきたい」
大柄なラルカスが腰を折り曲げて言うのを見てマチルダは鼻で笑った。
「話が早いね。アンタの組織って言うとパッショーネかい?」
「よくわかったな」
「2メイル越えの巨体のメイジ。その上これだけ手の早い組織ってのはそうはないからねぇ」
ラルカスは2メートル強の巨体。
正確には2.5メートルはある肉体にの今はマントに包まれて隠れているが盛り上がる繋がった丸いボールのような筋肉は威圧感などを加え、見る者にはそれ以上の大きさに見せている。
そして巨大な斧。顔はフェイスチェンジで変えているためミノタウロスではないが、マチルダは逆に納得していた。
ミノタウロスのメイジという話の方が常識的ではないのだ。
自分が納得するような考え…例えば恐怖に駆られた者達が勘違いしたのだとでも考えた方が、納得が行くため…疑問には思わなかった。
「それで返答は?」
マチルダは肩を竦める。
「気が早い男は嫌われるよ。アンタ達が「余り時間が無いのでな。マチルダ・オブ・サウスゴータ。”レコンキスタ”アルビオンの貴族派が動いている」
かつて捨てることを強いられた貴族時代の名前を言われたマチルダの顔は蒼白になった。
マチルダもパッショーネがアルビオンの内乱前後に設立された事は耳にしていたが、まさか知っている者がこの世にいないはずの名前まで調べられているとは思わなかった。
「アンタ、どこでそれを?」
平静を装い、震える声で言うマチルダからラルカスは…正確には有無を言わせずにミノタウロスの体を乗っ取った地下水が視線を自分が降りてきた階段へと向けた。
亀をマチルダに放り投げ、受け取ったかどうかも確認せずに地下水はミノタウロスの体を走らせる。
「ちょっと! どこに行くんだい!?」
あさからしえん
降りてきた階段から黒いマントを纏った人物が飛び降りた。
着地すると同時に既にその人物はラルカスへ長い魔法の杖を向けている。その一連の動きだけで、その人物が軍人だという事は理解できた。
教本通りだが、熟練した動き。地下水はじっくり仮面の人物を観察する。
白い仮面をつけており顔は伺えないが、余裕を見て取った地下水は笑みを浮かべているだろうと考えた。
エア・ニードル。杖が細かく振動し、高速で風が渦を巻きドリルのような形状を作り出す。
風で生み出されたドリルが迫ってきても、地下水は走る速度を緩めずに腕をかざした。
腕に当たる風に動じることなく地下水は斧を向ける。仮面の人物は驚いて一手遅れていた。
地下水の放つエア・ハンマーが、一瞬早く飛び退いた仮面の人物を打ち据え、階段を破壊しながら天井へと叩き付ける勢いで吹き飛ばしていく。
天井でプレスされるのだけは逃れたようだが、地下水は追わずに続けて錬金を行い今破壊した階段を塞ぐ。
エア・ニードルは、ラルカスの肉体にかすり傷一つもつけられずに消滅していた。
「今の威力、スクエアクラスか」
二人が一度敗北した『烈風』程かどうかはまだわからないが、地下水と地下水に体を乗っ取られたラルカスは仮面の人物の魔法の腕を理解した。
魔法の腕だけでもないことも…地下水は斧を握りなおした。
一手、相手に譲る。
ラルカスの体を得てからの地下水の得意の戦法。
ミノタウロスの肉体の強度を持って一撃目を合えて受け、大抵驚いて一瞬動きが止まるメイジを叩き潰す。
クリーンヒットせずともスクエアクラスの魔法は、相手に決して軽くは無い傷を負わせる。
だが、この仮面の男はまだ元気に動きまわっている。侮れぬ相手と地下水は受け取った。
「おい、敵か!?」
地下水の背中にポルナレフの声がかかる。
壊れた階段を閉鎖しながら、地下水は振り向いた。空中に浮かぶ亀に地下水は頷く。
「ああ。トリスティン貴族だと思うが、さっさと逃げるぜ。『土くれ』は?」
「今姉妹喧嘩の真っ最中だ」
地下水は返事を聞きながら、亀を懐に仕舞いその場から飛び退く。
直後に、二人が立っていた横の壁が破壊され、散らばっていく煉瓦の波の中から仮面の人物が現れる。
退きながらポルナレフのマジシャンズレッドが放った炎と炎が届く直前、どうにか間に合った風の魔法が衝突する。
仮面の人物に亀を見られはしなかったはずだが、どうしたものか…地下水は悩み始めたが、油断なく魔法の杖でもある巨大な斧を構え、自分の本体である剣が固定されている事を確かめる。
仮面の人物をトリスティン貴族と考えたのは男の動きがトリスティンの軍人、それも恐らくは近衛隊のものだったからだ。
長く傭兵として生き、ガリアの裏でも暗躍していた地下水の経験からしてそれは間違いない。
元貴族のラルカスとしては、この男と正々堂々とこの場で決着をつけたいという気持が沸いている。
『烈風』を今後乗り越えなければならない身としては、当然超えなければならないだろうという義務感に似た感情もある。
だが、こんな相手と戦うのは今回の任務ではないし、ここで時間をかけ騒音を聞きつけて学院の関係者が集まってしまうと不利だ。
テファをつれてリスクを負う気は無い。
今の手際を見れば、このまま逃げるのが容易ではないことは明白だが、任務は完了させなければならない。
地下水とラルカスは湧き上がった感情を抑え、逃げる手を考え始めた。
仮面の人物が杖を下に向ける。
「待て、私に争う気は無い」
「いきなり杖を向けてきて何言ってやがるッ」
「それについては謝罪しよう。我々には優秀なメイジが一人でも多く欲しい。協力してくれないかね?」
地下水は鼻で哂った。
冗談半分の軽い口調でレコンキスタのスカウトに返事を返す。
「貴様こそうちに来いよ。ボスはどんな素性の者でも受け入れる器量があるぜ」
「麻薬の売人如きで終わるつもりか。貴様も元は貴族、ハルケギニアの将来を憂う気持はないのか?」
再度尋ねてくる相手に地下水はうんざりしたような顔をする。
ラルカスは勿論、地下水にもそんな気持はなかった。
インテリジェンス・ナイフとして生まれた地下水にあるのは、この長い生をどのように生きていくかだけだ。
自分の肉体は無く、自分と同じ時間の流れの中を生きる物と出会うことは早々無い。
百年も立たぬ内に退屈になっていた地下水にとって興味があるのは、退屈をどう潰すかだけだった。
その点、ジョルノ達と行動する今は案外嫌いではなかった。
新しい相棒のラルカスの体を使えば今までに無いレベルで魔法を行使できるし、退屈はしない男だからだ。
ラルカスも同じだった。病に冒されていた頃に、既に国家への忠誠はどうしようもなく落ち込み、今はもうない。
だから仮面の人物に油断無く斧を向けながらこう答えた。
「下らんね。俺が興味があるのはどう生きるかだけさ」
ならばと、仮面の人物が纏う空気が張り詰めていくのを感じて、地下水は笑みを浮かべた。
*
フーケが救出されようとしている頃、舞踏会に参加するはずだったイザベラは、まだ学院が用意した客室にいた。
本来なら舞踏会に参加していたはずだった。
トリスティン貴族の子女達を背景にパートナーとなった犯罪組織のボスとダンスをしたりするはずだったが…
その予定は準備をしている途中で、突然の来客により崩れさっていた。
「ふむ…?可愛らしい娘ではないか。私は本当にどうかしていたらしいな」
「ほ、本当にどうされたのですか?」
イザベラの容姿をザッと上から下まで観察した美丈夫はうん、と大きく頷いていった。
今までそんな言葉をかけられた覚えがなく、戸惑うイザベラにジョゼフは苦笑した。
ガリアの玉座に座っているはずの、時間的には美食を堪能しているはずのイザベラの父親が、屈託のない顔で笑っていた。
「少し前からここ何十年かの記憶を失ってしまってな。ある方の薦めもあって戻ってくるのを待つより、こうして迎えに来た方が案外記憶を取り戻す良い切っ掛けになるのではと考えたのだ」
「記憶喪失、ですか…?」
戸惑いを隠せない娘に、ジョゼフは頭を下げた。
「うむ。これまでは冷たく当たってすまなかったな。許せ」
「え? は? なんで頭を」
呆気にとられたままのイザベラとジョゼフはそのまま、イザベラのことを根掘り葉堀り尋ねているうちに舞踏会は始まり、時間が過ぎた。
ジョゼフは本当に記憶を失っているかのように、色々な事を尋ねてくる父親が本当の事を言っているのかどうか、イザベラにはまだ判断が付かなかった。
だが、舞踏会が始まるその頃になってやっと、そんなイザベラも我に帰った。
「そうか…シャルルは本当に」
シャルルが死んだ時の事を尋ね、悲しげな表情を見せる父親の真に迫った表情。
照明に照らされ、目に涙の膜が張っていることに気付いたイザベラは、父親を疑っていた。
自分でしでかしたことを確認する無神経さには呆れたし、これまでのことを考えると、今のジョゼフは胡散臭すぎた。
誰だコイツ?
どうやってイザベラの下へたどり着いたのかとか、色々な疑問もあったが、我に帰ったイザベラの頭に浮かんだのは違和感だった。
若々しい壮年の肉体はそのままだ。蓄えた髭なども。
だが、身分を隠すためか服装はラフだった。
この学院の生徒と大差ない、と言ってもいい。
公式の場意外では余り父と対面していなかったから、というのもあるが。
白シャツ。皮の手袋やブーツ…どれもイザベラが今までに見たジョゼフと比べると、飾り気の無い物だった。
装飾品と辛うじて言えるのは、(これをつけているからジョゼフだとわかったのだが)始祖から受け継ぐルビー位で他には腕にも首にも、何の宝飾もなかった。
杖さえ、一見して良い物とわかるが宝石の類は見受けられない。
それに明るく、陰りなどない表情は…まるで別人のようではないか。
自分の豹変に戸惑うだけでなく、ガリアにいる臣下。その中でも側近となる者達や愛人と全く同じ態度…
疑いさえ持ち始めた娘にジョゼフは気付き、ため息をつく。
人づてに聞いた自分とのギャップを考えれば仕方がないとはいえ、切なかった。
胸中で始祖ブリミルに祈りを捧げながら、ジョゼフは話を切り替え、初めて表情に陰りを見せた。
「そういえばお前が世話になったネアポリス伯や…シャルルの娘にも会わなければならないな。イザベラ、すまんが後で案内してくれないか」
「え、はい。父上」
「シャルロットが許してくれるとは思えんが、母親やオルレアン家のことだけは言っておかねばな」
肩を落として言うジョゼフにますますイザベラの疑念は増し、シャルロットとネアポリスという名前が異様な父親へ一つ尋ねさせた。
「父上、シャルロットをどうなさるおつもりですか?」
「無論正統な地位と権利を与えるつもりだ」
「馬鹿なッ…父上、それは」
「危険性については理解している。シャルル派を名乗る者どもが勢いを取り戻すことも、私がシャルロットに殺されることもない」
断言するジョゼフにイザベラは心の中で毒づいた。
ジョゼフの口ぶりからすれば、そうなるように既に準備が十分に済んでいるのだろう。
そうした手腕に関してはジョゼフは天才的と言ってもいい手腕を誇っている。
でなければ暗愚と呼ばれながらも王を続ける事など不可能なのは、イザベラが一番良く知っていた。
アンタはいいかもしれないけどそれじゃこっちは困るのさ!
イザベラがシャルロットを味方に引き込むためにはシャルロットは不幸なままがいいのだ。
今の不幸な状態ッ、ジョゼフが完全にシャルロットと敵対している状況が凄くいいのに!
ジョゼフの言う事が本心であれ、何か思惑があるのであれ…謝罪や協力などを求める手紙は、既にシャルロットに出してある。
だが今のジョゼフの言い様からすると、シャルル派の貴族達が揃ってバックにつきシャルロットはシャルロットだけでジョゼフに対抗しようとするかもしれない…
利を考え始めたイザベラにジョゼフは気付いたが、何も言わずに悪戯っぽい表情を作ると部屋に来る時持ってきた大きな箱をイザベラに示す。
「…フン。ところでイザベラが置いて行った使い魔を念のため連れて来たのだが…」
ニヤリとするジョゼフに、イザベラは顔を青くした。
視線を父親が持ち出した金属の箱へと固定して、震える声で尋ねる。
「あ、アイツをですか…!?」
「使い魔とメイジは共にいるものだろう?」
「ですが…アイツは」
当然のことを言うジョゼフにイザベラは口を濁し、ジョゼフが持ち込んだ箱を今度は視界にいれないようにする。
箱の中にいるであろうイザベラの使い魔は…イザベラに劣等感を抱かせる要因の一つでしかなかった。
始めは、喜んだ。
イザベラが数年前に召喚し、未だ衰える気配を全く見せないそいつはハルケギニアでは見ない、新種の鳥だった。
だがソイツはイザベラを使い魔の分際で見下ろしてくる。それが気に入らなかった。
そして、シャルロットが竜を使い魔としてからは、鳥さえ御する事ができない自分を否応なしに比べてしまう…見たくは無い物へと変わっていた。
その時、箱の内側から氷が突き出た。イザベラは悲鳴を上げ、身を竦めながら距離を取っていく。
ジョゼフは逆に好奇心で目を輝かせ、固定化をかけた金属を容易くぶち抜いた氷の鋭い輝きや、その奥から覗く猛禽の目を眺めていた。
金属製の箱をあっさり破壊した氷が砕け、中から一匹の隼が飛び出す。
軽く羽ばたきその体が宙を舞う。
「ペットショップ…」
何か予感めいたものを感じてジョゼフに従い、今勘にしたがって飛び出したペットショップは窓をこじ開けて外へと飛び立った。
一応は主人であるイザベラが後を追ってレビテーションを唱えているのはわかったが、気にも留めなかった。
レビテーションを使えないジョゼフが置いてきぼりを食らった事もどうでもいい。
翼の形状から、頻繁な旋回・方向転換などは不得意であるはずだが、悠々と旋回を繰り返し学院の建物を出たり入ったりして、灯りの近くを移動する。
ニワトリのように夜盲症ではないので、月が二つ輝くハルケギニアの夜はペットショップには十分な明るさだった。
着飾った人間達を見下しながら、ペットショップは自分が召還された時の事を思い出していた。
ペットショップが召喚されたのは、主人の屋敷をかぎ回る糞ったれな犬(イギー)に敗れた直後だった。
最早ペットショップの命の灯は消えかかり、傷ついた体は死体一歩手前だった。
だがガリア王宮の優秀なメイジ達はそんな彼を奇跡的に治療してみせた。
弱っていた自分にキスをした幼いイザベラの顔を使い魔のルーンが刻まれる焼け付く痛みと共にペットショップは今も記憶に止めている。
それから数年の月日が流れた今も。
だが何故か殺す気にならず、それを不思議に思わず主人であるDIOの下へ戻っていない。
命を助けられたから恩義を感じている、というわけではないのは自分のことだからわかる。
そんな殊勝な心がけはペットショップには存在しなかった。
それは使い魔のルーンの効果だったが、ペットショップはそれに気付く事は無かった。
時折頭に浮かぶ違和感を振り払いペットショップは学院の周囲を飛ぶ。
本来なら老衰で死んでいてもおかしくない年齢だったが、そんなことは無視した若鳥のような力強い動きではばたいていく。
目が忙しなく周囲を探り、何かを探していた。
ペットショップにも何を探しているのか明確にはわかっていなかった。檻の中で感じた奇妙な、予感を求めていた。
そしてペットショップは一人の人間に目を付けた。
人間が多く集まる会場から抜け出していく人物にペットショップは羽ばたきも極力押さえて、ゆっくりと近づいていく。
主人とは違う鮮やかな黒髪だったし、体つきも柔だ。
だがその華奢なボディや立ち振舞いに、ペットショップは微かに同じ匂いを見た。
注視する間に何処かへ向かう人間の首筋が見えた…首の付け根にある星形のアザが目に入った。
ジョゼフについてガリアを出る前に出会った男の言葉が頭に浮かんだ。
男はあっという間に、それこそチャームの魔法でも使ったかのようにジョセフと親交を結び、貴族達も恐れるペットショップの視線を受けながら、リラックスした体勢で笑みを浮かべてこう尋ねてきた。
『ペットショップ。君は引力を感じたことはあるかね?』
人間はいつのまにか立ち止まり、首だけ振り向いてペットショップを見ていた。
口元には薄く柔らかな微笑がある。爽やかな笑みだったが、声は不思議と心地よかった。
「よければ、僕と仲良くしないか?」
ペットショップは、当然のように人間が差し出した腕に止まった。人間の背後に力あるヴィジョンが一瞬見えた。
人間を背後から抱きしめるようにする黄金に輝く優美な像と、その頭に腕を置く主人のスタンドの像を。
間違いなく、人間は主人の血統に違いないと、ペットショップは確信した。
「ジョナサン!」
ペットショップを腕に止めたまま、生命エネルギーを頼りにラルカス達のいる場所に向かおうとしていたジョルノは足を止めた。
今出会ったばかりの鳥と共に声の方へと視線を向けた。重力を無視してゆっくりと青い髪の女が降りてくる。
「クリス?」
振り向くとドレスアップしたイザベラが着地していた。
レビテーションかフライの魔法で鳥を急いで追いかけて来たのだろう。
今宵の舞踏会のために時間をかけて結った髪が少し乱れていた。
「…もしかして貴女の使い魔ですか?」
「そうさっなのに…いや、何でもないよ。さ、戻るよペットショッ」
連れて行こうと手を伸ばしたイザベラは、ペットショップが自分に敵意のこもった視線を向けていることに気付いた。
それどころか、その周囲が歪み、冷たい空気が流れ始めているのをイザベラは感じていた。
忌々しい気持が浮かんだが、それをグッと堪えてイザベラはジョルノとペットショップを見る。
今日ジョルノに言われたばかりの言葉が頭に浮かんでいた。
自分に、いや誰にも従わなかったペットショップが、何故だかジョナサンに懐いているように見えた。
…自分で使えないのなら。
当然のように腕に止まりイザベラを冷たく見つめる使い魔の目を眺め、思案顔で考えたイザベラは口の端をもちあげる。
あさのしえん
「案外いいかもしれないね。ペットショップ、アンタ…ジョナサンを助けてやりな。私の、じゅ、重要な仕事を任せてあるから、目を離すんじゃないよ」
「いいんですか?」
ペットショップに詰めより言い聞かせるイザベラにジョルノは不思議そうに聞いた。
メイジと使い魔はどちらかが死ぬまで共にいるパートナーだという風に、何かの本でジョルノは読んでいた。
それはこの学院の学生が以前ジョルノも生み出した事のあるジャイアントモールに頬づりしていたことなどを見てあながち間違っていないと思っていた。
それをあっさり手放すイザベラが変わっているのか、未だジョルノには正しい定規がなかった。
微かに顔を赤くしてイザベラはそっぽを向いた。
灯りの方を向いたので、横顔ではあったがより表情がよく見えるようになったのだが、そこは指摘せずにジョルノは礼を言う。
「ありがとうございます。彼はペットショップというんですね」
「そ、そうさ。コイツの視界を通し私はアンタを監視できるんだから、これからはサボれないね!」
少し冗談半分にイザベラは言った。
視覚や聴覚を借りる事はできるが、どの程度の距離までそれが行えるかどうか、イザベラも正確には把握していなかった。
「(一方的になってしまいますが)僕から伝たいことがあれば、すぐに貴方に伝える事ができるようになりますね。後で時間を決めておきましょう」
ジョルノもそれには気付いていたが、一方で可能という事になれば、うまくやれば情報伝達を素早くできるかもしれないとジョルノは少し期待していた。
浮遊大陸であるため、飛行船などでよく使われる風の力を秘めた風石の利用がうまかったアルビオン出身のギャング達を中心に技術を再現できないかと電信等を研究させているが、国家間で通信を行うような段階ではない。
ポルナレフが毎日頼んでいた携帯電話で出前、なんてことをやるのはまだまだ無理な話だ。
「わ、わかってるじゃないか。私もそういう使い方を期待してたのさ」
だから伝書鳩や人手による通信を強化していたのだが、離れている使い魔を使って通信を行うという使い方はありかもしれない。
何より他人にはわからないという点が素晴らしい。
どの程度の距離まで使えるかはわからないが、それで1kmでも縮められたら積極的に採用しようと考えながら、嘘っぽいイザベラに礼をいう。
そしてジョルノはペットショップと共にラルカス達の元へと向かう。イザベラに再び背を向けた時既にその目はペットショップが惚れ惚れするような冷酷さを宿していた。
イザベラは急ぐジョルノの背中に手を伸ばしたが、何故か気圧されて声をかけることができなかった。
人気の無いところまで来た時点で、ジョルノは亀を生み出しそれをペットショップに輸送させるという手を取った。
先程から忙しなく生命反応が動いていた。レコンキスタか学院関係者との戦闘に入っているらしかった。
急いでいけば、まだ間に合うかもしれない…ペットショップが足に掴んだ亀の中で、ジョルノは車のシートで寛ぐようにソファにもたれかかり足を組んだ。
*
その頃ポルナレフ達は、学院を脱出し周辺にある森の中へと逃げ込み、呼吸を整えていた。
あの場所でアレ以上戦いを続けていてはいつ学院の関係者達がやってくるとも知れない。
そう考えた地下水は逃走し、森へと逃げ込んだ。
人の手が入らない森はうっそうと茂り、二つの月が放つ光を遮る。
植物の枝葉が重なり合い、夜行性の動物達が徘徊する世界は人間の目では暗闇にしか映らないだろう。
だが、仮面の人物はそこに逃げ込んだ地下水を風の動きを頼りに位置を掴み追いかけてきた。
だから地下水はその人物を今、仮面の人物をエア・ハンマーで砕いていた。
ラルカスの肉体を使った地下水のエア・ハンマーは容易に人間を破壊する事ができる…が、杭のように地面に打ち付けられた仮面の人物の死体は無かった。
ラルカスと同じく、敵も遍在を使っていることに気付いていた地下水は特に驚くことも無く鼻を鳴らした。
何故わかったかといわれると返答に困るのだが、何度も使用してきたからか、なんとなく実体かどうかわかるのだった。
思っていたより手強い相手だった。
鍛えられた肉体、スクエアクラスと思われる魔法の腕と、軍人達が使う戦闘に特化した詠唱方法。
詠唱の技術や体捌きはラルカスや地下水より洗練されていた。
だがどれほど鍛え上げようとミノタウロスと人間の差はその程度では埋まらなかった。
生半可なエア・ハンマーやニードル、カッターでは、主要な風の魔法の殆どは、ミノタウロスの皮膚を貫く事は出来ないのだ。
しえんしえん
地下水は斧を振るい、錬金で作り出した避雷針を消す。
エア・ニードルを防いだ自分に何を使ってくるのか。
地下水はライトニング・クラウドを警戒し、敵が放つ瞬間に身代わりを用意したのだった。
それはラルカスの発案だった。
烈風に負ける前のラルカスでは、思いつかなかったかもしれないと地下水は考え…ラルカスに体の主導権を返す。
ラルカスは安堵の息を吐き、亀の中にいるはずのポルナレフに、途中から戦闘を全く手伝わなかったポルナレフに険のある声を出す。
「ポルナレフさんよ。アンタさっきから何やってんだ? アンタも手伝ってくれればこんな冷や冷やしなくてすんだんだぞ」
だが返事は無い。
ラルカスは少し不機嫌になり、ぶっきらぼうに言う。
「ポルナレフ。姉妹喧嘩はどうなった?」
そう尋ね亀を覗き込んだ瞬間、中から伸びてきたゴーレムの手が、ラルカスの首を掴んだ。
「ッ?」
「アンタのボス…いいや、あのクソガキのところに私を案内しな」
中から聞こえてくる声は、地獄から響くような怨念めいたものが感じられた。
少し冷や汗を垂らしながらラルカスは中を見る。
…き、貴婦人に手をあげるのは紳士としてやっちゃいけませんよね?
亀の中の部屋では、同じようにポルナレフがゴーレムに捕まっていた。
そして、説明をしているテファがいて、かなり危険な目をしたフーケと目が合った。
「何してるんです?」
「ボス、アンタいつきたんだ?」
ラルカスはゴーレムの腕を握りつぶし、周囲に目をやる。
見覚えの無い鳥が同じように周囲を警戒している姿が目に入り、ラルカスを見下ろす冷徹な瞳が合った。
「今です。ペットショップに運んでもらいました」
「…アンタに話があるらしいぜ?」
いつのまにか背後に立っていたジョルノへ哀れむような目を向けたラルカスの姿が消える。
遍在を解除し、この場から逃走して舞踏会などに専念する事にしたらしい。
ペットショップが警戒していてくれるので、ジョルノ自身は余り警戒せずに亀の中へと入っていく。
腕を組み、親の敵のように睨みつけてくるマチルダへジョルノは笑みを浮かべたまま礼をする。
「…お久しぶりです。マチルダさん」
「ジョルノ…アンタ、覚悟はできてんだろうね?」
「姉さん、ジョルノは悪くないわ。ジョルノは姉さんとゲルマニアに行けって言うの。でも…」
ドスの効いた声を出すマチルダに、慌ててテファが説明する。
だがマチルダは可愛い妹を一瞥しただけで、面白くなさそうにジョルノへ視線を戻す。
To Be Continued...
以上。投下したッ
と書き込んでみたかった。
展開は少し繰り上げてジョゼフを越させてみたけど、早まった気がする…
では出勤ですので(´・ω・)ノシ
投下乙!
朝からテンション上がってきた
GJ!!
ポルナレフ不幸www
そして神父キターーーー?!!
投下乙そしてGJでした
何という引力、何という重力
ジョルノの中のDIOの血が怖い
…グッド
ゼロのスネイクはまだか・・・?まだなのかッ?
俺が明日まで時間を止める!
ざ・わーるど
時は動き出す
俺が明日まで時間を巻き戻す!
ばいつぁ・だすと
だがレクイエム
貴様!見ているな!(ROM的な意味で)
>>458 彼は孤独な現実と戦っているのでもう少し待ってやってください
暗殺チーム分が足りない
この時間に投稿ってあり?
アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ
アリーヴェデルチ
いや、嘘です、さよならじゃないです、ぜひ投下してください
だが断(ry
いや、嘘です。投稿させてもらいます。
++第十二話 デルフリンガー++
トリステインの城下町を、花京院とルイズは歩いていた。
魔法学院からここまで来るのに乗ってきた馬は町の門の側にある駅に預けてある。
馬に乗るのは初めてだったが、ラクダで砂漠を横断した経験のある花京院には、さほど難しいことではなかった。
「この世界には馬以外の交通手段はないのか?」
「馬以外?」
「ああ。自動車や電車……はあるわけないか」
魔法が発達しているということは、他の分野では遅れを取っている可能性が高い。
「じゃあ、ラクダとか、そういう生き物はいないのか?」
「ラクダ?」
怪訝そうな顔でルイズは花京院を見る。
「背中にこぶのある、四本足の動物だ。砂漠を移動する時によく乗るんだが……」
「聞いたこともないわね」
「そうか」
花京院の世界とはやはり根本的に違うようだった。
生き物もそうだし、建物もかなり違っていた。
コンクリートも鉄も使わず、白い石を削って作られた街は、一見するとテーマパークのようにも見える。
通りには行き交う人々で溢れ返り、道端では商人たちが声を張り上げて、果物や肉や籠などを売っている。
魔法学院に比べると、質素な格好をした人たちが多かったが、活気溢れて、声に満ちているこの場所は、魔法学院よりも、花京院の住んでいた世界に似ている気がした。
ただし、道が酷く狭い。
「狭いな」
擦れ違うたびに誰かと肩をぶつけながら、花京院が呟いた。
慣れているのか、すいすい通り抜けていたルイズは、またも怪訝な顔で花京院の方を向く。
「狭いって、これでも大通りなんだけど」
「……これで?」
「そうよ。ブルドンネ街。トリステインで一番大きな通りよ」
そう言って、通りの先を指差しながら、
「この先にトリステインの宮殿があるわ」
「宮殿に行くのか?」
「女王陛下に拝謁してどうするのよ」
軽く睨むような目を向けられた。
花京院は苦笑しながら答えた。
「スープの量をふやしてもらうかな」
「馬鹿ね」
そう言って、ルイズは笑った。
二人はそのまま大通りをしばらく歩いた。
ふとルイズが立ち止まり、振り向く。
「あんた、財布は持ってるわね?」
「持ってるよ。大体、こんな重い物を誰が掏れるんだ?」
「魔法を使われたら、一発でしょ」
確かに、と納得しかけた花京院だったが、ある疑問が湧いた。
「でも、魔法を使えるのは貴族だけだろう。貴族がスリなんてするのか?」
「……貴族は全員メイジだけど、メイジの全員が貴族って訳じゃないわ」
「どういうことだ?」
「勘当されたり、家を捨てたりした貴族の次男や三男坊なんかが、身をやつして傭兵になったり犯罪者になったりするのよ」
そう答えると、ルイズはさっさと歩き出してしまう。
二人は大通りを歩いていき、狭い路地裏に入った。
そこは大通りとは比べ物にならないほど、汚れていた。
悪臭が鼻をつく。ゴミや汚物が道端に放置されていて、動物の死骸なども転がっていた。
「……きたないな」
「だからあんまり来たくないのよ」
顔をしかめながら足早にルイズは進んでいく。
時折、小さなメモを取り出して確認していることから、間違った道ではないらしい。
その後、何度か道を曲がっていき、十字路に差し掛かった。
メモと周囲を見比べながらルイズが呟く。
「ビエモンの秘薬屋の近くだったから、この辺なんだけど……」
花京院も同じように回りに視線を動かした。
大通りと違って露店は少ないが、店の数自体は多い。瓶の形をした看板やら宝石をかたどった看板もある。中には、蛙を逆さに吊ったような看板もあり、すぐには何の店なのか分からない店も多かった。
「あ、あった」
ルイズの視線の先を見ると、剣の形をした看板が下がっていた。
目的の場所は、そこの武器屋のようだ。
「ルイズ。君はここに来るつもりだったのか」
「そうよ。あんたも丸腰じゃ頼りないから、剣ぐらい買ってあげるわ」
腰に手を当て、胸を張りながらルイズが尊大な態度を取る。
その仕草が子供っぽくて、ルイズから見えないように、花京院は苦笑いを浮かべた。
花京院とルイズは武器屋に入った。
店の中は昼間だというのに薄暗く、ランプの明かりが灯っていた。壁や棚に、所狭しと剣や槍が乱雑に並べられ、立派な甲冑が飾ってあった。
店の奥で、パイプをくわえていた五十がらみの男が、花京院とルイズを胡散臭げに見つめた。
じろじろと無遠慮に見てきた男だったが、ルイズの紐タイ留めに描かれた五芒星に気付くと、すぐに立ち上がった。パイプをはなし、ドスの聞いた声を出す。
「旦那。貴族の旦那。うちはまっとうに商売してまさあ。お上に目を付けられることなんか、これっぽっちもありゃしません」
「客よ」
ルイズは腕を組んで言った。
「こりゃおったまげた。貴族が剣を! おったまげた!」
「どうして?」
「いえ、若奥さま。坊主は聖具を振る、貴族は杖をふる、そして陛下はバルコニーからお手をおふりになる、と相場は決まっておりますんで」
「使うのはわたしじゃないわ。使い魔よ」
きっぱりとルイズは言った。
店主は目を細め、ルイズの後ろに立つ花京院を見た。
「へえ。昨今は貴族の使い魔も剣を降るようで。するってえと……そちらの方で?」
「ああ。僕が使う」
「剣はこっちで勝手に選んじまってもいいですかねえ?」
店主は上目遣いに花京院とルイズを見上げる。
「いや、少し店の物を見せてもらいたい」
武器の良し悪しは門外漢だったが、この店主に選ばせると何が出てくるかわかったものではない。粗悪品を高値で買わされる可能性もある。
断られたことに動揺したかのように、男は捲くし立てる。
「で、でもですねえ。こういうのは慣れてる人間の方が目が利くってもんです。素人さんにゃわからねえ細けえ違いってのもありますし、下手に選ぶと失敗するかもしれやせんよ」
「構わない」
会話を断ち切るように、花京院は答える。
ルイズは以前の戦いから花京院を剣の達人だと思っているらしく、口は挟まなかった。それは誤解なのだが、必要がないのでそう思わせている。
しばらく、花京院と店主はにらみ合いを続けたが、先に店主が視線を逸らした。
「ええ、どうぞご覧になってくだせえ」
「ありがとう」
短く礼を言い、花京院は店の物を物色していった。
武器屋、というだけはあり、武器の種類は豊富だ。長剣、短剣など剣以外にも、槍やら斧やら色々な武器がある。
それらをつぶさに観察してみるが、どの剣が切れるのか、丈夫なのか、花京院にはよくわからなかった。
そうしている間にも、店主は長々と語っている。
「うちはこの界隈でも少々名の知れた店でね。かの有名なゲルマニアの錬金魔術師シュペー卿の剣だって置いてるんですから。魔法が掛かってるんで、鉄だってスパスパ切れまさあ。
この間仕入れた剣なんて、妖刀なんて呼ばれる品物でね、鞘をしてるのに切れただの、握った人が狂っただのって色々な噂があるほどで――」
「うるせえやい!」
突然、後ろから声がした。低い、男の声だ。
すぐに声のした方を見るが、そこには誰もいない。
空耳ではないようで、ルイズも不思議そうな顔で見回している。
「さっきからでけえ声で、でたらめを並べ立てやがって! 聞いてるこっちの身にもなりやがれ!」
間違いない。誰かの声が聞こえる。
だが、やはり姿は無い。そこには乱雑に剣が積んであるだけだ。
「そっちの娘っ子も坊主もさっさと家に帰りな! ここはガキの遊び場じゃねえんだ!」
「……」
花京院は積んである剣の中から一本の剣を見つけ出した。
うっすらと錆の浮いた、古い剣だった。長さはそれなりにあるが、刀身が細い。薄手の長剣である。ただし、全体的に薄汚れていて、お世辞にも見栄えが良いとは言えなかった。
「何ジロジロ見てやがんだ! おめえさんのひょろっこい身体じゃ剣なんて振れっこねえよ! とっとと帰りやがれ!」
花京院が呆然としていると、店主が怒鳴り声をあげた。
「やい! デル公! お客様に失礼なことを言うんじゃねえ!」
「お客様? 剣もまともにふれねえような小僧っ子がお客様? ふざけんじゃねえよ! 耳をちょんぎってやらあ! 顔を出せ!」
かたかたと鍔の部分を動かしながら剣が怒鳴り散らす。
奇妙な現象ではあったが、魔法のあるこの世界に、花京院の常識が通じないのは既に知っている。剣が喋ることもあるのだろう。
ルイズが剣を横目に見ながら当惑した声をあげた。
「それって、インテリジェンスソード?」
「そうでさ、若奥さま。どこの魔術師が考えたんでしょうかねえ……意志を持つ魔剣、なんて言やあ聞こえはいいんですが、実際のもんはこんなもんでさあ。
ただうるさいだけのボロ剣ですよ。客にケンカは売るわ、買い主にもケチつけるわで、いっつも返品されて戻って来やがるんで困っちまいますよ……」
ばつが悪そうに店主が頭を掻く。
「デル公! これ以上失礼があったら、てめえを溶かして鉄くずに戻しちまうからな!」
「はんっ、おもしれ! やってみろ! どうせこの世にゃもう、飽き飽きしてたところさ! 溶かしてくれるんなら、上等さ!」
「言いやがったな! てめえ! やってやらあ!」
額に青筋を浮かべながら店主がカウンターを回ってこようとした。
花京院はそれを止めた。
「喋る剣か。なかなか面白いじゃないか」
柄を掴んで、刃をじっくりと見てみる。
さびてはいるが、元は悪くはないらしく、刃こぼれはほとんどない。刀身を軽く叩いてみると、澄んだ音が聞こえた。刀身に加わる力に偏りが無い。
剣の値段を店主に尋ねようとした、その時だった。
「おめえさん、『使い手』……いや、『スタンド使い』か」
剣がぽつりと、独り言のように言った。
花京院は虚を付かれ、まじまじとその剣を見つめてしまった。
「……お前、今何て言った」
「だってそうだろ? おめえさん、『スタンド使い』だもんな」
「……」
訊きたいことはあるが、花京院はここでは訊くのをやめた。
何も言わずに、花京院は店主の方を見た。
「この剣はいくらだ?」
「へ、へい。五十で結構でさ。はい」
「えー。そんなのにするの? もっと綺麗でしゃべらないのにしなさいよ」
ルイズは不満そうだったが、花京院は首を振った。
この剣に訊きたいことは、山ほどある。
「この剣じゃなきゃ。駄目なんだ」
「……しょうがないわね」
花京院が財布を渡し、ルイズが必要な金貨を店主に払う。
店主は身長に枚数を確かめると、頷いた。
「毎度」
店長は剣を鞘に収めてから花京院に差し出した。
「どうしてもうるさいと思ったら、こうやって鞘に入れれば大人しくなりまさあ」
「わかった。ところで、こいつの名前は?」
「デルフリンガー。俺はデル公って呼んでやしたがね」
「そうか」
花京院は頷いて、『デルフリンガー』という名の剣を受け取った。
To be continued→
メロンの人に乙を送る!
買ったッ! 第12話完!
ってな感じで投下終了です。
規制が掛かるんじゃないかとびくびくしましたが、無事終了しました。
見守ってくれた人たち、ありがとうございます。
ヘヴィ過ぎる投稿速度ですが、ちゃんと完成させるので、
時々気付いてくれるとありがたいです。
それでは。
投下乙です
デルフがスタンドを知っている……?
あ、一つ聞き忘れたんですが、
多少オリジナル要素って入っていても大丈夫なんですか?
投下乙!!
花京院とルイズのやり取りが雰囲気出ててイイ!
>多少オリジナル要素って入っていても大丈夫なんですか?
俺はいいと思いますよ
>>480 ゼロ魔世界の方なのか花京院の方なのか分からんけど
キャラの性格が本編と違ったり、ゼロ魔の世界観から大幅に外れてなければいいんじゃないかな?
>>481 >>482 解答ありがとうございます。
少しオリジナルの設定を追加しようと思っていました。
たぶん、キャラの性格や世界観を大幅に変えるものではなさそうなので、
予定通りに進ませてもらおうと思います。
スティーリーダンを出したらどうなるかな?
全く関係ないがスティーリーダン、すなわち「はがねのダン」は「赤毛のアン」のもじりだということを最近知った
メロンのひとGJ!!
アンジェロで作ったら
ヤバいことになりそうだ。
ヴァルサス「ごちゃごちゃうるせーんだよ。混乱させやがって・・・・・さっきから。(ブツブツ)」(ルイズに向かって)
星屑や静かの3巻の毎日投下って実はすごくないか?
あの量を毎日だぜ?特に星屑は投下はじめからあれでリクエストに迅速に答えるほど露伴だった。
俺じゃ絶対に出来ん。
実は岸辺露伴だったんだよ!!!!
な、なんだってー!
しかし、皆ゴールデンウィークに入って投下多くなったな。まあ、明日には頑張って投下するか。 ・・・確実に次の投下以降は避難所だな、これ。
暖かくなったことだし、全裸で待ってます!
明日の昼間ぐらいになるから服きれ〜www
風邪ひく〜。
某ガンダムクロススレみたいだなwww
亀だけどメロンの人GJです
亀が喋った!(AA略
ボス、時飛ばしてるところ恐縮ですが、そこちょっと4・2・0ィ〜
十分後に投下します。
一章六節 〜使い魔は千鳥足を踏む〜
適度に間隔を開けて連なる窓から投げ込まれる日の光は、気だるさの漂う冷たい石の廊
下に、ゆるゆるとした温もりを与えていた。昨日と同じでよく晴れた青い空は、悠々広が
って澄み渡り、霞一つない。
リキエルはミス・ロングビルの後ろについて歩きながら、窓の外を、茫洋たる空を眺め
ている。フロリダの空も意味なく見上げてしまうほどに大きかったが、この世界の穏やか
に広がる青空にも、不思議と目を引き付けるものがあった。
今二人が歩いているのは、リキエルとルイズが教室に行くために通った廊下とは違う、
あまり生徒達が使わない狭い通路である。こちらの方が、食堂へは近いのだという。空腹
感が異様に高まっているリキエルにとっては、ありがたいことだった。
しばらくして、連なった窓が途切れる。と思えば外に出た。柔い風があった。
と、目の端で動くものにリキエルは気づく。その場所は少し遠く、どうやら広場になっ
ているようで開けていた。
目を細めてみて、リキエルは驚いた。塔の影になって見えづらいが、そこには、およそ
この世のものとも思えない光景が広がっていたのである。考えてみれば、ここはリキエル
のいた場所とは常識が全く異なるのだから、その眺めも当然といえば当然なのだろうが、
まだ耐性のつききっていないリキエルにはそうも言えなかった。
電柱ほどもある太い大蛇が、血の滴り落ちるほどに新鮮な餌を丸呑みにしていた。かな
りショッキングである。
蛸足つきの妙齢女性と、角の生えた人っぽいなにかが険悪に睨み合っていた。三流シネ
マチックである。蛸足の方は授業でも見かけたが。
テレビなどで紹介されていた想像図よりも、よほど難解不可思議な格好のUMA達が寝そ
べっていた。なんとも感無量である。
二昔ほど前のサーカスの出し物のような、リアルな胡散臭さがそこには存在し、否定し
ようもない現実感も、その空間に同居しているのだった。
「う、ぉ……」
「なにか?」
リキエルは思わず声を上げ、それに一拍遅れてロングビルが振り向いた。
「いや、デカルチャーというか、仰天の異文化圏というのか、あまりお目にかかったこと
がないもんで。ああいった生き物には」
「使い魔たちですか。確かにあそこにいるのは皆、人里には訪れないものばかりだから、
驚くのも無理ありませんわね」
リキエルの隣に立ち、それらを見やったロングビルは、軽くうなずいてそう言った。そ
れから、横目でちらりとリキエルに目配せし、ゆったりと歩き出す。リキエルもそれに倣
った。
「授業に見たやつらで、全部ではなかったわけか。まあ仕方がないよなァ、あんなにでか
いんじゃあな」
「ああ見えても、そう力の強いものはいませんわ。勿論、人間が素手で立ち向かうには手
に余るものばかりだけど。中の上といったところかしら」
「くくれば中ほどだって? ……あれが?」
「単純な膂力以外にも、魔力の有無といったものがありますから。竜のように強力な幻獣
を使い魔に、ともなれば、相当な実力を持ったメイジということになりますわ」
「相当……」
ロングビルの言うところによれば、使い魔の力はメイジの実力に比例するということで
ある。となれば、やはり何の力もない人間を呼び出したルイズは、ゼロを言い過ぎとして
も、決して優秀とはいえないのだろう。
――熱心では……。
あるみたいなんだがなァ。授業での態度を間近で見ていれば、それがよくわかった。
ふとリキエルの脳裏に、人知れず努力し杖を振るい、その度に爆発を起こして唇をかみ
締める、桃色髪の少女の幼い後姿が浮かんだ。リキエルにはそれが、自分の単なる想像と
は思えなかった。閉じられた右目のまぶたの裏には、同じ少女が椅子に座り込み、うなだ
れている姿が残っている。そうしながらも、決して諦めないと言った声は、まだ耳の奥で
響いているようでもある。
それらの姿は、自分の中の何かを呼び起こそうとしているように、リキエルには感じら
れた。同じものを、掃除の時やパニックを起こしていたときにも、一瞬だけ感じた気がす
る。それは憐憫の情や侮蔑的なものではなく、奇妙なことだったが、一種の…………。
――なんだったか。
そこから先が詰まる。その感情の記憶は、脳に刻まれた皺の隙間にでも吸い込まれてし
まったのか、思い出そうとすればするほど、掴みどころなく離れていくのだった。犬歯と
前歯の間にニラが挟まったような、手袋の薬指の場所に小指まで突っ込んでしまったよう
な、その気になればすぐにも解消できそうなもどかしさは、その感情が決して無意味なも
のではなかったことを告げてくるのだが。
「どうかなさいましたか?」
ロングビルの声は、静かだがよく通る。リキエルは慌てて前を向いた。思考にのめり込
むあまり、周りを見ていなかったらしい。
「は……ええとなんだったか、すいません。聞いていなかった」
「いえ、難しい顔をしてらっしゃったので」
微笑むわけでもなかったが、穏やかな表情でロングビルは言い、また歩き出した。
「……」
リキエルは、五歩ほど遅れてロングビルに続いた。そこで、今までの思考がどこかへ失
せてしまっていることに気づく。必死になって掴み取ろうとしていた何かを、指の先が引
っかかった途端に取りこぼしてしまったような、強い喪失感をリキエルは感じた。試しに
頭を二、三度ぐらぐらと振ってみたが、それでどうにかなるわけもない。
なんら落ち度の無いロングビルを責めるわけにもいかず、リキエルは憮然とした気持ち
になって、溜息をつく代わりに、自分のこめかみに人差し指を当てた。
もうしばらく歩いて、本塔の入り口が見えてきた頃、強い風が吹いた。腐ち草が舞い上
がり、しばらく渦を巻いてから散り散りになる。気を抜けば、よろけてしまいそうになる
ほどの風だった。ロングビルは咄嗟に、その長い髪を左手でおさえたが、おさえきれるも
のでもなく、乱れ髪となってしまう。
「……」
軽く嘆息し、手櫛で髪を梳くロングビルを、リキエルはぼんやりと見つめた。といって
も、見とれているわけではなかった。ロングビルを美人だとは思うが、それで露骨な視線
を投げるほど、リキエルは不躾な人間ではない。
リキエルはロングビルに、少し前からちょっとした違和感を抱いている。それがなんな
のか、手探りをしているのだった。そしてその違和感の正体が、今わかったのである。
――どうしてこの秘書さんは、オレを助けたんだ?
ミス、あるいはミセス・ロングビルは恐らくメイジだろう。生徒達や吹っ飛ばされたシ
ュヴルーズ同様、マントを羽織っているし、腰に杖らしきものが差してあるのも見た。
こちらの世界で貴族がかなりの幅を利かせていることはわかっており、自分――平民の
扱いが粗雑であることも既に明らかだ。ルイズの態度が殊更にそれを強調するようだった
ので、わかりやすい。
――だっていうのに。
メイジであるロングビルは自分を気に掛けた。こんなことは初めてだった。
パニックを起こせば、周りの人間は嘲笑うか避けるかで、介抱は大袈裟にしても、声を
かけ、真摯な態度で接してくれた者など皆無である。あまつさえ、人を呼んでくれる者さ
えなかった。リキエルが人生にまいってしまった理由の一端は、ここにもある。
あった、といった方がいい。今のリキエルは、そのあたりのことに関して、少しだけ見
方を転換させている。転換の切欠は、ミス・ロングビルだ。
メイジや平民だののへったくれを差っ引いても、手を差し伸べてくれる人間がいること
は証明された。元いた世界でも、ロングビルのような人間は案外いるのかも知れないと、
リキエルは思うようになっている。助けてくれる人間などいない、という風に悲観するこ
ともないのかもしれないと、そう思い始めたのだ。たった一度、軽い親切心に触れただけ
のことだが、リキエルにとってはそれが、重要な事柄だったのである。
ちなみに、昨日の夜、ルイズのときにそう思えなかったのは、ルイズが微妙な例外だか
らだ。その件に関して感謝の念はあるが、何せ当初から目にしているようなあの態度であ
る。赤の他人状態の自分が街中でパニクっていた場合、見向きもしないということはない
だろうが、駆けつけて手を差し伸べようと考えるかはかなり怪しい、というのが、リキエ
ルのルイズに対する評価だ。
閑話休題。
ただ、疑問は残る。その疑問とは、ロングビルの態度のことである。秘書であるからな
のかも知れないが、平民に、しかも使い魔である自分に敬語まで使うものだろうか。その
敬語にしても、時折無理に使っているような違和感が気になる。単に慣れていないだけな
のかもしれないし、たまに頭を覗かせる普通の物言いが、ごく自然なものに見えるので、
それと比べたときの単なる差であるのかもしれないが。
腐ち草のように吹けば飛びそうに見えて、その疑問は以外に頑固だった。いっそ本人に
聞いてみようかとも思う。だが、こんなことを聞くのもおかしい気がする。そもそも聞い
てどうするというのか。それにしても腹が減った。そういやコッチに来てから考えてばか
りだな。しかも堂々巡りばかり、我ながらよくやるもんだ。頭使うと白髪できるっていう
よなァ。いや、自分の場合髪が――。
「あ? ええと……ミス? ロングビル」
思索の合間を縫って奇襲をしかけてきた空腹のため、一気に正常な働きを失ったリキエ
ルの脳は、それでも今度は視覚野を頑張らせていたようで、本塔の入り口を通過したこと
をリキエルに知らせる。
リキエルは“ミス”の部分を少しぼかしてロングビルに呼びかけた。ミセスであれば多
少なりとも失礼であると思ったのだ。セの字の有無は、場合によっては女性にとって重要
な部分である。
「はい、なんでしょう?」
振り向いたロングビルは、レンズの向こうの琥珀にも似た瞳に、掛け値なしに小さく喜
色を浮かべていた。どうやらミスで合っていたらしい。しつこいようだがこの正否は、場
合によっては重要なのである。
「食堂は本塔の一階って聞いてたんだが……」
「食堂の裏に厨房があって、私、たまにそこで食事をとるんです」
「は〜、なるほど。しかしなんでまた?」
「あまり大勢のいる場所はその、少し煩わしくて……。今日も厨房でまかないをもらおう
と決めていたんですよ。それと、これは少し言いにくいのだけど」
ロングビルは、今度はリキエルの顔を窺うような、曖昧な渋みを顔に浮かべた。実に多
彩な表情を持つ有能秘書である。
「言いにくい?」
「はい、言いにくいことですが……平民は食堂には入れないという決まりがあるんです」
「食事処の出入り禁止……ここまで来るとまるで黒人差別だな、考え方とかがよォー」
ぼそりとしたリキエルの一言に、ロングビルはきょとんとした顔になったが、すぐにも
との表情に戻り、いつも通りの静かな口調で言った。
「なので厨房でとった方が、あなたにとって無難でもあるんです」
「確かにそうかもしれないな。すいませんね、気を使わせて」
「いえ……では行きましょうか。と言っても、直ぐそこですが」
クスリ、と珍しくも笑うロングビルの顔は、天頂間近の日の光の下にあって、リキエル
にはなお輝いて見えた。
「……」
その輝きに目を瞑ったわけでもないが、リキエルは、先ほどまでロングビルに抱いてい
た疑問は気にしないことにした。
◆ ◆ ◆
厨房には独特の熱がこもっているようだった。それは熱気というよりも、働きまわる人
間のいる場所特有の、外界との温度差である。
「こんにちはミス・ロングビル……ってあれ? リキエルさん?」
「ン、シエスタか」
厨房でリキエル達を出迎えたのは、今朝洗濯の手伝いをしてくれたシエスタだった。リ
キエルは手を挙げて軽く挨拶する。
「今日は二人分のまかないを頼めるかしら?」
「あ、はい」
ロングビルの後ろにリキエルがいるのを見て、シエスタは不思議そうに首を傾げながら
答えた。それからみるみる顔を青くして、リキエルの前に小走りでやってきたかと思うと、
「すみませんです――――ッ、私のせいで、その、あのっ」
前傾四十度で頭を下げた。
下げられているリキエルとその隣にいるロングビルは、シエスタの唐突な行動で呆気に
とられた。
「すいませんリキエルさん私朝うっかり食堂に向かわせるようなことを言ってしまって平
民が入れないことわかってたのにすいません本当にわざとじゃなかったんですごめんなさ
いでも私分かってたのにああリキエルさん貴族の方に何か言われませんでしたかもしかし
て酷い目にあいませんでしたかそうでしたらほんとうに私申し訳が申し訳で申ぢちちッ!?」
そこまで息継ぎもせずに来て、シエスタは思い切り舌を噛んだ。リキエルとロングビル
が顔をしかめるほどに、である。
しかし、濁流のように流れ出る謝罪の連続だったのだ。それでいて一言一言に誠意がこ
もっているのだからたいしたもので、口内が例え血の池になったとしても、そこは誇るべ
きである。
「大丈夫?」
涙目で肩を震わせ、口を押さえるシエスタの顔を覗き込むようにして、ロングビルが声
をかけた。
「はひ。すふぃましぇん」
「……ごめんなさい。喋らせない方がよかったわね」
リキエルは呻いた。シエスタが顔を上げたので、リキエルにはちらとだが、シエスタの
口の中が見えたのだ。案の定、舌は異様な赤に塗れており、痛みに耐えかねて悶えていた。
――血湧き肉踊る……。
思わず、そんな間違った表現がリキエルの頭に思い浮かんだ。
「よくもまあ、言えたもんだな。そこまで噛まずによォ。良いアナウンサーになれるんじ
ゃあないか? それはいいとして、オレが言うのもなんだが落ち着け、とりあえず」
「ああはひ、さふですね。いへでもしかしやっぱり本当にこれがまただふも――」
「落ち着きなさいって。少し舌を休ませないと」
「……ふゃい」
ロングビルに目で謝ってから、シエスタはようやく見るも痛々しい口を閉じたが、それ
でも気遣わしげな視線を、リキエルの顔のあたりにさまよわせている。リキエルが何か言
わなければ、いつまでもそうしていそうだった。
優しさから来る、行き過ぎた心配性とでも言おうか。シエスタは単なる言いそびれをよ
ほど気に病んでいるらしい。リキエルにしてみれば今朝の洗濯の件があるので、そのこと
についてシエスタを責める気は、勿論毛頭全く皆無である。
「オレはどうにもなってない。やばいぐらい腹が空いてる以外にはな。朝は時間に間に合
わなかったんだ。食堂に入る入らない以前の問題で――ってまた謝ろうとするんじゃあな
い。お前は何も悪くないだろうがよォ〜」
リキエルはそう言ったが、口を押さえながらシエスタはまた、首の骨が心配になるくら
いに頭を上げ下げした。あまり人に頭を下げられることのないリキエルは、辟易して渋面
を作る。
見かねたロングビルが、シエスタの肩を優しく叩いた。
「何があったか知らないけど、リキエルさんもこう言ってるんだし顔を上げて、ね? こ
の話はこれくらいにしましょう」
シエスタはもうしばらくの間ガクガクと頭を振り、ロングビルとリキエルの顔を交互に
見やってから、ぱたぱたと調理場に駆け込んでいった。
残った二人はそれを見送ってから、厨房の片隅にあった席に腰を下ろした。
「それにしても驚きました。まさかミス・ロングビルと一緒とは思いませんでしたから」
「話すとちょっとややこしいんだが、教室で会ったんだ、偶然な。それで腹が減ってると
言ったら、ここまでつれて来てくれたってわけでな」
「その節はまことにもって本当――」
「だから言ったろう、謝らなくていいってよォ」
昼食を終えたリキエルは、シエスタを話し相手に一息ついている。ロングビルは食後の
紅茶を淹れてくれるということで、しばし席を外していた。
厨房は、リキエル達が来たときよりも忙しさを増していた。食事の最中に気づいたが、
食堂へと通じる通路から伝わってくる空気も、いくらかの騒がしさを孕んでいるようだっ
た。生徒達も、昼食の時間が始まったのだ。
「洗濯の手伝いだってしてくれただろう。干すのは全部押し付けちまったしなァ。旨いシ
チューも十分食べさせてもらった。感謝してるくらいだ、オレは」
「感謝だなんてそんな。でもシチュー、お口に合ってよかったです」
花が咲かない程度の軽い雑談をしていると、ロングビルが三つのティーカップの乗った、
銀のトレイを持って戻ってきた。それを卓の上に下ろし、それぞれの席にカップを置いて
いく。簡素な造りながら、淡い着色が趣味の良いカップだった。
「すみませんミス・ロングビル。私までご馳走になってしまって」
「こちらこそ、いつもまかないをありがとう。紅茶はそういう意味にしておいて」
すまなそうにするシエスタに微笑みかけながら、ロングビルは手馴れた動きで紅茶を注
いでいる。板についたその動きには、秘書の仕事が活きているように見えた。
注ぎ終わってから、ロングビルはシエスタの隣――リキエルの対面に座る。してからリ
キエルに微笑みかけた。
「どうぞ、飲んでみてください」
「どうも。じゃあ遠慮なく、いただきます…………うっ!」
カップを口元にまで持ってきて、リキエルの手が止まる。そんなリキエルを見てロング
ビルの目がキラリと光り、シエスタが微笑む。
リキエルはカップを少しだけ口から離し、また近づけた。薄く立ち昇る湯気が、リキエ
ルの鼻先を湿らせる。
「どうかしましたか? 何か『変なもの』でも入っていまして? それともヌルイのは嫌
だったかしら? 直ぐ飲めるよう、温度を調節したのだけれど」
変わらない表情で問いかけてくるロングビルを、リキエルは鋭く見返す。その顔には軽
い驚きが浮かんでいた。
「何か入っていたかだって? それはこっちの台詞だ、ミス・ロングビル。こいつは紅茶
なんですか? 本当に『ただの紅茶だ』とそう言うってわけですか?」
「ええ、それは『ただの紅茶』です。……さ、遠慮せずどうぞ」
顔を上げて、ロングビルはリキエルも顔を真正面から見返して、言った。リキエルの顔
が、いよいよ驚きに染め上げられていく。
不敵な色に彩られたロングビルの視線と、驚きに塗れたリキエルの視線が交わる。
リキエルはロングビルから視線を外し、手に持ったカップに戻す。しばし、そうしてい
たかと思うと、素早い動きで口元まで運び、グイィィ――ッと一気飲みに仰いだ。
緩慢な動きでカップを置いたリキエルの顔に、ふと笑みが浮かんだ。頬の筋肉がほんの
一瞬、引き攣れたような感じになってうまく笑えず、皮肉っぽい笑い顔になった。思えば、
この世界に来る以前から、随分と久しく笑っていなかった。
「オレはあまり紅茶には詳しくないし、匂いがキツイんで好きなわけでもない。手間がか
かるだけの飲み物だと思っていた。だが今、紅茶を愛飲するやつらの気持ちがわかったぜ。
……ミス・ロングビル、あんたの淹れた紅茶の『香り』に、紅茶の『苦味』はなじむ。実
にしっくりと、よくなじんでいたぞ。うまかったぜ、要するになぁ」
それを聞いて、リキエルの顔を注視していたロングビルは、撫で下ろすように胸のあた
りに手を置いた。褒めちぎられたからか、息苦しそうにも見える顔になっている。
ロングビルは蝙蝠の羽音ほどの、静かな息を吐いた。
「自分で淹れるのは、ここに勤めてから始めたばかりの素人芸で、ちょっと不安だったの
ですが、よかったわ。でもそんなに言われてしまうと、ちょっと気恥ずかしいわね」
「謙遜することないですよ。ミス・ロングビルの淹れてくれる紅茶、とても美味しいです。
厨房の皆もそう言ってますし」
「……ありがとう」
屈託なく笑うシエスタに、ロングビルは嬉しそうな、それでいて困ったような微笑を返
す。やはり恥ずかしいのだろうか。
そこで、はたと気づいたといった具合に、ロングビルは時間を確かめた。
「あら、もうこんな時間だったんですね。ゆっくりしすぎましたわ。シエスタ、私はそろ
そろお暇させて貰うわね。リキエルさん、機会があればまたご一緒しましょう」
慌てるほどではないが、リキエルたちがここに来てから、それなりの時間が経っていた。
「こちらこそ。それとすみませんでしたね、色々とよぉ」
「お仕事がんばってくださいね、ミス・ロングビル」
ロングビルは席を立ち、居住まいを正してから、シエスタ以下厨房の面々に礼を言いな
がら出て行った。
――さて、オレはどうしようか。
昼食は馳走になった。食後の紅茶まで飲ませてもらった。これ以上自分が厨房に居座っ
ても、邪魔になるだけだろう。リキエルはそう思った。居座ったところで、シエスタは嫌
な顔一つしないだろうが、だからといって何もせずにだらだらとしていられるほど、無人
な振る舞いができるわけもない。
――なら。
「シエスタ、なにかオレに手伝えることはないか?」
「手伝い、ですか?」
シエスタは朝と同じように、きょとんとした顔でリキエルに問い返した。
「洗濯と昼食の礼がしたいんだ。あんまり出来ることはないがな」
「そうですか? なら、デザート運びを手伝ってくださいな」
「それだけでいいのか? そこまで出来ることがないわけじゃあないぜ」
「じゃあお言葉に甘えて、紅茶のポットもお願いできますか?」
頷くリキエルを見てシエスタは、ありがとうございます、と元気に笑い、厨房の奥へと
歩いていった。リキエルは憮然としたような面持ちで後に続いた。
リキエルは、この手伝いにはあまり気が進まない。というよりも、進まなくなっていた。
手伝いをしたいのは本当だ。雑巾がけだろうが厨房の掃除だろうが、できる限りの労働し
ようとリキエルは思っていた。
しかし、配膳となると話は別である。デザートを運ぶということは、食堂へ行くという
ことだった。先ほどまでは空腹で、そこまで頭が回らなかったが、つまりは人混みの中へ
入っていくも同然なのだ。
リキエルは人の多い場所が苦手だった。それは生理的な嫌悪感ではなく、公衆の面前で
パニックの発作が起きたらどうする、という不安から来るものである。朝の授業にしても、
これも空腹でそれとは思い当たらなかったが、あまりいい気分とはいえなかったのだ。
だが、自分から申し出た手前、やりたくないなどと言えるわけもないし、やめるつもり
もなかった。さっさと終わらせばいいことだ、とリキエルは思い直すことにし、いつのま
にやらこもっていた、肩の力を抜いた。
――そういえば、あいつはどうしているんだろうな。
ルイズのことをさっぱり忘れていたのを、リキエルはぼんやりと思い出した。ぼんやり
としていたので、シエスタの持ってきた紅茶のポットの胴をうっかり掴み、危うく火傷し
そうになった。
またあわあわと騒ぎ出すシエスタをなだめながら、リキエルは苦い笑いを浮かべる。そ
れがまた皮肉げになったのは、もともとがそういう笑い方なのかも知れなかった。
投下終了です。
もともと単なる繋ぎだった場面が、弄ってるうちにあれよあれよと……。
次の話からも切り離さざるを得ない長さにorz
乙!&GJ!
リキエルの人GJです
投下乙そしてGJでした
紅茶を飲む場面で、ああ、そういえば彼はジョルノの兄弟なんだよなぁ
と思ったら何か不覚にも涙が出そうになりました
同じ父を持ちながら、どうしてこうも運命は隔たってしまったんでしょうか
こちらの世界で、リキエルは幸せになって欲しいものです
彼にとって、こっちの世界はいい人の多いところなんだろをなぁ。GJ
>510
ジョルノはジョルノで、
憧れのギャングスターに出会えなければ、ヘトヘトな人生だと思う。
リキエルの人GJでした。平凡な人生でも幸せに生きてほしいと思えますね。
ルイズと一緒じゃ無理っぽいですが。
それでは自分も投下します。
513 :
ねことダメなまほうつかい:2008/04/29(火) 20:34:17 ID:W5x2SWxK
ルイズとギーシュそしてアニエスはアルビオンの貴族に案内されて、ルイズたちが乗ってきた船に
横付けされた彼らの船であるファルコン号のウェールズ皇太子のお部屋の前に来ていました。
キュルケとタバサ、猫草は別の部屋でのんびりと休んでいます。
ルイズはお部屋の扉をノックしようと手を上げましたが、案内していた貴族がそれを止めて
扉に向けて声をかけました。
「すまんがちょいとそこをどいてくれ」
「こりゃ悪かったズラ」
扉が返事をしたのでルイズはびっくりして跳びはねますが、よく見てみると扉だと思っていたのは
なんとアルビオンの貴族だったのです。
おそらく、ウェールズ皇太子を守るために扉になりすましていたのだろうとルイズは考えて、
スンナリとそんな考えが浮かんだ自分がちょっとだけ嫌いになりました。
「やあ!よく来たね大使殿。さ、何もないところだが入りたまえ」
「は、はい失礼します」
ウェールズ皇太子に呼ばれて、ルイズはお部屋の中に入りました。
ギーシュはルイズのうしろからお部屋の中を見ましたが、本当に何もないお部屋でした。
机もイスもベッドすらありません。
そんな何にもないお部屋の中でウェールズ皇太子は腕を組んで堂々と立っています。
その威圧感にゴクリとのどを鳴らして、ギーシュとアニエスも中に入っていきました。
「おお…アンが…結婚するのか……」
「はい…」
アンリエッタ姫が結婚すると聞いたウェールズ皇太子は、うつろな目でなにやらブツブツと
うわ言を呟きました。
先ほどまでの自信に満ちたお姿はどこにもありません。
それを見てルイズたちはとても悲しくなりました。
ですが、ルイズにはアンリエッタ姫から賜った大切な任務があるのです。
いつまでも悲しんでいるわけにはいきません。
ルイズが任務のことを話そうと顔を上げ、悲鳴を上げました。
なんとウェールズ皇太子がご自分の目に指を入れていたのです。
「こ、皇太子様お気を確かに!!」
「違います!皇太子殿下はご乱心したのではない……これは…スイッチング・ウィンバック!」
「ぼ、僕も父上から聞いたことがあるぞ…」
ルイズはウェールズ皇太子がご乱心したと思ったのですが、ギーシュとアニエスの説明を
聞いて立ち止まりました。
スイッチング・ウィンバックとは失敗や恐怖をこころのスミに追いやって闘志を引き出す
アルビオン貴族独特の精神回復法です。
これはこころに負ったダメージが強いほど、気持ちを切りかえるために特別な儀式が必要になります。
そして、ウェールズ皇太子にとっての特別な儀式が目を潰すことだったのです。
「なまじ…目が見えるから……アンに思いを寄せてしまう…目が見えねば何者にも惑わされることはない」
「こ…皇太子さま…」
ルイズは、ここまで思いを寄せているのに添い遂げることができないウェールズ皇太子のお姿を
悲しくて見ることができませんでした。
ギーシュとアニエス、そして扉になりすましているアルビオン貴族も涙をこらえることができません。
ウェールズ皇太子は、そんなルイズたちの様子を感じてうれしそうに笑いました。
ルイズは猫草を抱えながら甲板に立っていました。
ギーシュにアニエス、キュルケとタバサもいっしょです。
あの後、ウェールズ皇太子からアンリエッタ姫からの手紙は手元に無いので、
取りにいくのにいっしょに来てほしいと言われたのです。
「ミス・ヴァリエール、そろそろアルビオン大陸が見えてくるよ」
「え、ええ」
ルイズは先ほどのことが気になって俯いていたのですが、ギーシュに話しかけられて
顔を上げました。
そして、ギーシュから静かに差し出されたハンカチを手に取ると涙を拭います。
いつまでも泣いているわけにはいかないのです。
>>511 涙目のルカ辺りに上納金収めるために盗みに明け暮れて……って感じかな
いや『JOJOキャラinハルヒスレ』の一巡後の世界の汐華初流乃がそんな感じだったもんで
ねこktkr
「ニャニャニャ!ニャウニャウ!!」
「ん?どうしたの…ってなによこれ!?」
「アルビオンが…真っ赤だ」
鼻を押さえて暴れる猫草をなだめながら、ルイズは空を見上げました。
アルビオン大陸は河から流れた水が大陸の下に落ちて、そのしぶきで大陸が白く見えることから
白の国とも呼ばれているのですが、いまは血のように赤いもやに覆われています。
そして、鼻にツンとくる臭いが漂ってきました。
「廃水を浄化せずに河に流しているんだ。自然に敬意を払わぬ愚かな連中よ」
いつの間にかウェールズ皇太子がそばに来て悲しそうに大陸を見上げながら呟きました。
森や川を汚してしまえば最後には自分たちにツケが回ってくるのです。
ルイズにはこの光景がまるでアルビオン大陸が血を流して傷ついているように
思えて仕方がありませんでした。
「殿下、そろそろ到着します」
黒いよろいを着た騎士がウェールズ皇太子にそう告げ、すぐに持ち場に戻っていきます。
ファルコン号の向かう先にはポッカリとトンネルのような穴が開いていました。
ファルコン号は迷わずその中を進んでいきます。
そのトンネルは鍾乳洞になっていて中は真っ暗で何も見えませんが、どこにもぶつからずに無事に
ファルコン号とルイズ達が乗っていた輸送船は鍾乳洞の中にある隠し港に到着しました。
「こんなところに港を造るとは…」
「なるほど、これならばレコン・キスタにも見つからない」
ギーシュとアニエスが船から下りながら鍾乳洞の中を見まわしました。
船員や港にいた兵士が船に荷物を積み込んでいるのが見えます。
港までの道は真っ暗だったのですが、ここには天上や壁に光りゴケが生えているので明かりにも困りません。
そして、ウェールズ皇太子の案内でルイズたちが港の奥の通路からお城の中に入ろうとすると、
通路から誰かが飛びだしてきました。
それはキレイなドレスを着たひとりの美しい女性でしたが、ルイズたちは悲鳴を上げながら杖を向けました。
どうしてかというと、その女性の耳は長く尖っていたからです。
この女性はあの恐ろしいエルフなのでした。
「な、な、な、なんでエルフがこんなところに?!」
「殿下!お下がりを!!」
ルイズたちがウェールズ皇太子を守るように女性の前に立ちふさがり、それを見た女性がびっくりして
立ち止まります。
そのエルフの女性のスキついてタバサは一番得意な魔法のアイシクル・ウインドを唱えました。
ウェールズ皇太子が止めようとしますが、それよりも早く氷の矢が女性に襲いかかります。
そして、氷の矢が当たる寸前にそれはおこりました。
「ドラララァーッ!!!」
男性のような雄叫びが上がったと思うと、氷の矢がすべて砕け散り、破片が床や壁にブチ当たります。
目の前のエルフの仕業なのでしょうが、彼女は魔法におどろいたのか、あたまを抱えて震えながら
床にしゃがみこんでいました。
「待ちたまえ大使殿!彼女は味方だ!!」
「ふぇぇぇ〜ん、ウェールズにいさぁ〜ん」
そのエルフの女性は泣きながらウェールズ皇太子に抱きつき、優しく慰められます。
ルイズたちはワケがわからずにそれを眺めているとエルフの女性は泣き止み、ウェールズ皇太子の
後ろに隠れながらルイズたちを見ました。
「まずは紹介しよう。わが従姉妹であるティファ二アだ」
「は、はじめましてティファニアと申します」
まだ怖がっている様子でオドオドしながらエルフの女性はティファニアと名乗ります。
そして、とりあえずルイズたちも挨拶をした後、ウェールズ皇太子は事情を説明すると言い、
ルイズたちをお城の中に案内しました。
こんなことがあったので、猫草の姿がもっとねこらしく変わったことにだれも気づきませんでした。
投下終了です。いきなり上げちまったよチクショウめ!
アン様とテファの父親が同じだとずっと思ってたので全部書き直したぜ。
投下乙です
割り込んで申し訳ないorz
ところでテファの髪型はひょっとしてサザエさ(ry
この世の何よりも優しい能力のテファかw
乙!
ウェールズ目潰しちまってこれからどうすんだと思ったが
ドラララがあるなら大丈夫だなww
>>522 しょっちゅうセルフ目潰しの後始末させられてグロ耐性の出来たテファと申したか
投下したいのですが構いませんね・・・?
よろしくお願いします。
ゼロと使い魔の書
第一話
地球にひっぱられて、上着から体がぬけた。状助のいる屋根が遠ざかり、茨におおわれている赤煉瓦の壁にそって落下した。
八角形のドームと七つの尖塔をもった[茨の館]の上空につよい風がふいて、……
目を開くと、鋭い日光に目を刺され僅かに眉を顰めた。
自分の身に起きた一番最近の記憶は、自らの存在意義でもあった「やるべきこと」が終わり、幕引きを行おうとした最後の最後で東方状助との死闘に敗北し、
全身の骨を砕かれ茨の館から落下した。それで間違いない。
ならここはどこなのか。上半身を起こし、そして怪我が治っていることに気がつき、自分の目の前に広がる光景に言葉を失った。
緑色の海だった。
微かに吹く風が草を揺らし、草原は一つの生き物のように自身を波打たせていた。
神はいない。自分はそう考えていたが、どうやら単に怠慢で残酷で、そして気まぐれだったためにいないと勘違いしていたらしい。
自分は肉体という魂の枷から放たれてようやく、行きたいところに行かせてもらっているのだ。
ここがどこで、なぜこんなところにいるか、疑問は瑣末なものであった。
ただ、草原を眺めていた。
どれほどの時間が流れたか。
突然、背中に衝撃を感じ、前のめりに地面に突っ伏した。細々とした草が顔をくすぐった。
「平民のくせに!無視するなんていい度胸じゃない!」
振り返るとピンク色の長髪を揺らした少女が仁王立ちしていた。腕や胴回りなどはかつて自分に好意を抱いていた異母妹と同じくらい、ドーナツの輪をくぐれそうなほど細い。
その少女と自分を、黒いマントを羽織った少年少女が憐憫の情を含んだ嘲笑を浮かべ囲んでいた。
「ルイズ、『サモン・サーヴァント』で平民呼び出して、しかも無視されちゃ形無しだな!いや、『さすがゼロ』と言うべきか?」
誰かの一言で、嘲笑は哄笑に変わった。
「ミ、ミスタ・コルベール!もう一度、召還のやり直しを要求します!」
少女は最後の希望、という表情で、周囲の中で唯一笑っていなかった中年男に言った。
「ミス・ヴァリエール……こう言ってはなんですが、自分を知りなさい……もう一回やる時間が……あると思うのですか?今のあなたに」
温厚そうな中年男は、しかし苦りきった顔で少女に言った。
「それがあなたの使い魔です。契約しなさい」
中年男に負けず劣らず嫌悪の表情を浮かべた少女は、首を振りながら自分に近寄ってきた。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
五つの力を司るペンタゴン。 この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
唇の動きからいって、そう言ったのだろう。耳では聞き取れなかったほど早く小さく呟かれていたが、唇の動きを読める自分にとっては口元が視界に入っていればよかった。
少女は体が触れるぎりぎりのところまで近づくと、首をそらし自分を睨み上げた。
「屈みなさい!」
膝を折ると、少女は唇を重ねてきた。
「・・・・・・終わりました」
少女が呟くと同時に、左手の甲に熱を伴う強烈な痛みが走った。
左手を切り離さなければ死んでしまう、と思ったところで熱は引いていった。
見ると、不思議な模様が左手に刻まれていた。
「あんた、名前は?」
「……蓮見琢馬」
ここはどこで、目の前の人間達はなんなのか。
考えなければならないことが山積みであったが、自分には関係なかった。
見渡す限りの草原に、自分は立っている。
その事実の方がはるかに重要だった。
アニキャラ総合ってさるさんあるの?支援
以上です。
蓮見琢馬を草原に立たせたかったので、既出でしたが使わせてもらいました。
今後もよろしくお願いします
これからに期待
なんという豪華GW!
リキエルにねこに琢馬とは!!
どれも秀逸揃いで嬉しい限りww
ウェールズwww
確かに属性は風だがwwwww
なんという豪華な投下!!
テファはスタンド持ちってことでいいのか?
リキエル幸せになってくれリキエル
ゼロと使い魔の書さん、東方「状」助じゃなくて「仗」助ですよ
丈でも杖でもないんですよ・・・
琢馬が好きな自分には嬉しい召喚だwごめん琢馬
投下します!!
マルトーが仕込みをしているときにその事件は起こった。
実の娘のようにかわいがっていたメイドの一人が貴族のぼんくらに絡まれたのだ。
貴族の少女にすぐに助けてもらっていたがそれもすぐにやられてしまった。
皿洗いをしていたサーレーがマルトーのすぐ横に立ってぼそっと呟いた。
「助けに行かないのか?」
マルトーはその言葉に苦い顔をした。
「助けに行きたいにきまってらぁ・・・・。でもよ・・・。」
「力が無いからどうにもできない・・・か?」
サーレーは少し考え込むとこう呟いた。
「力があったらどうにかできんのか?」
サーレーの言葉に厨房の中にいた人々が息を飲む。サーレーはその様子を見ると黙って厨房を出て行った。
「力があるからちょっと行ってくる。」
軽い声が厨房に響くとそこにはもうサーレーはいなかった。
マルトーが周りを見まわすとすでにサーレーはルイズとシエスタのほうに歩いていった。
「頑張ってきてくれ・・・・。我らの剣・・・・。」
マルトーはその背中に最大の賛辞を送った。力の無い代わりに戦う彼は自分たちの救世主に見えていたのだ。
CRAFT OF ZERO −ゼロの技工士―
第五話 サーレー君とボーンナム君よ:中章 固定と風と土と
トリスイテン魔法学院 校長室
「平和ですね・・・・。」
「平和じゃのう。ミス・ロングビル。」
校長室の中で若い女性と立派な髭を生やした老人がのんべんだらりと過ごしていた。
校長のオールド・オズマンとその秘書、ミス・ロングビルだ。
「あの校長・・・・・。暇に漬け込んで私にセクハラするの辞めてもらえます?」
そうロングビルが言うと
「良いではないか。良いではないか。」
毎日のことながら、この爺は性欲を持て余すのかどうか知らないが世界が世界なら訴えられるようなことを秘書にやってのける。
その点では痺れないし憧れないが、まあ仕事面では優秀だし人格者なので“校長”としては生徒や教師から慕われているのはまちがいない。
セクハラ爺を人格者と呼ぶのにいろいろ問題はあるが・・・・。
未だに尻を触り続けるエロジジイはついにこんなことをほざき始めた。
「おお!!この感触!純白!・・・しかし、やっぱりミス・ロングビルは黒のほうが良い気がするノー。」
ブチッ!!ロングビルの眼鏡と額の丁度真ん中から何かが切れる音が響いた。
HEAT ACION!!
コ・ノ・エ・ロ・ジ・ジ・イ・!
まず最初に校長の手を尻から離し、その手のままひねり上げる。
「イデデデ!!ちょ!ミス・ロングビル!?」
そして、そのまま見事な延髄蹴りを食らわすと次にこける様に丁度いいタイミングと場所にローキックをかました。
これは老人には辛いが同時に自業自得でもある。
よって弁解の余地はまったくといって良いほどない。
そしてこけた校長の後頭部に向かって・・・・。
「寝てろイ!!このセクハラ爺!!」
〔ロングビル式追撃の極み〕
校長の首の付け根にヒールのピンが軽く突き刺さった。
「おぶっ!!」
オズマン校長は奇声を上げると一気に静かになった。
ロングビルはその“校長だった者”の脇にさらに思いっきり蹴りをかました。
「このエロジジイ!!給料もろくに上げないくせに毎日毎日セクハラばっかりしやがって!!死ね!!この世から消え去れ!!サッサトアノヨニイキヤガレー!!」
と、老人虐待も甚だしい攻撃の最中にいきなりドアが開いた。
「校長たいへ・・・・・。失礼しました・・・・。」
中に入って来たコルベールは中でロングビルが校長を蹴り続けているのを確認すると早速奥に引っ込んだ。
ロングビルはその様子に焦る。もしも校内で自分に対する変なうわさが立ったら、と思うと背筋が凍る思いだった。
「あの、違うんです。コルベール先生?コルベールセンセー!!」
ロングビルは泣きながらコルベールの後を必死で追った。
支援
「・・・・そうでしたか。・・・・このセクハラ爺。」
「こ、コルベール君まで・・・・。酷いのー。ワシャ悲しいーのー。」
追ってきたロングビルに事の説明を受けたコルベールは校長にキツイ言葉を早速投げかけた。校長は校長室の自分の机の上で突っ伏して嘘泣きし始めた。
「それにしても、見事な体術じゃったのぅ・・・・。にして、何かな?コッパゲく「フレイムボール。」ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
コルベールは鬼神の如き顔で[火 火 火]の特大魔法を校長にこともなげに放った。
威力は加減しているし、もちろん校長もとっさに水のバリアを作っていたので死にはしないだろうがそれでも攻撃の余波で十分ともいえるダメージを負った。
「誰が禿だ!!横にあるから禿げてない!!訂正しろ爺!!」
「いてててて・・・・。まったく今日はついてないのぅ・・・。して、何かのぅ。」
はい、とコルベールは教師の顔に切り替えると大量の資料をテーブルに並べた。
「この前にヴァリエールという生徒が人間を召喚したのはご存知でしょうか?」
「ああ、知っておる。たしか、蟹か蜘蛛のような頭と物の時を止める特殊能力を持っているとの噂じゃったのぅ。」
校長は昨日、生徒の会話を{使い魔と召喚主は感覚を共有する}というルールでネズミの使い魔、モートソグニールを使って幾つかの話を聞いており、二年生がみんな同じような会話をしていた。
なぜ、自分の使い魔を生徒に近づかせていたのかはご想像にお任せする。(ヒント:近づいた大半が女生徒)
「そうです。そして、ここを見てください。」
コルベールが分厚い本の表紙を捲り、机の上に置くとその問題のページを指差した。
そのページの部分を校長とロングビルが覗き込む。
「・・・・・ガンダールブのルーン?これがどうしたんじゃ?」
校長が不思議そうにコルベールに質問した。
するとコルベールは興奮したように早口でけたたましく喋った。
興奮の度合いも子供の、まるで新種の昆虫を見つけた少年のようなレベルで大人の研究者や教師といった雰囲気は空のかなたに吹っ飛んでしまっていた。
「この紋章が、その問題の彼にこのルーンが出たんですよ!!」
「・・・・なんじゃと!?」
すると、またいきなりドアが開いて今度は別の教師が中に飛び込んできた。
「校長大変です!!ヴァリエールという生徒の使い魔とあの血管針の連中が決闘をやらかしています!!」
「「「!!」」」
ありとあらゆる人間にとっての怒涛の一日の始まりだった。
トリスイテン魔法学院 食堂
「何だって!!ルイズの使い魔とあの血管針の連中が決闘!?」
ギーシュはモンモランシーに今までのことを事細やかに聞き、ルイズがメイドを庇って血管針の一人に突っかかったこと、
そして二人が連れて行かれそうなところを使い魔、サーレーが助けに来たということ。血管針のリーダーが、勝てばルイズと平民を馬鹿にしないことを条件にサーレーに決闘を申し込んだことなどを聞いた。
「どう考えても無茶じゃないか!!いくら、あの物を空中で止める力を使ったとしても勝てる相手じゃない!!」
ドットの自分やラインの連中が多い二年の烏合の衆よりも連携も取れて全員がトライアングルの連中で模擬戦闘で一対一でもキュルケやタバサが苦戦した相手は厳しいことこの上ない。
「でも、彼も一応タバサやキュルケって言う二年の実力者を倒してるじゃない。きっと大丈夫よ。」
その言葉にギーシュはさらに不安の表情をあらわにした。
「それはどうかな・・・。彼らは土から水まで全ての属性のスペシャリストが揃っている。スクウェアも夢じゃないって連中が“三人”もね。タバサはともかく、キュルケや僕なんかじゃ相手にならないような連中が四人・・・・。ほとんど絶望的だよ・・・。」
その言葉にモンモランシーが反論をする。
「でも、彼のあの物の時を止める能力を使えば、あの四人なんか楽勝じゃない。どうして、そんなことばっかり言うわけ?」
あれだけ強力な力の持ち主の戦闘慣れした動きを間近で見たらそんな考えは月の果てにでも吹っ飛ぶはずだ。それでも、その力の猛威をすぐそこで見たはずのギーシュがそんなことを言うとは・・・・いったいどうしたのか。
「・・・・そうか、モンモランシーは回復が得意だから奥で見ていただけなんだった・・・・。」
サーレーの能力には一つ欠点があった。万能そうに見えて一つだけとんでもない弱点を回りに知られてしまったのだ。
少なくともギーシュには気がつかれてしまっていた。
「・・・・・この前の戦いで気が付いたんだけど・・・彼・・・固体しか空中で止められないと思うんだ・・・・。」
そう、サーレーの力は固体、もしくは触れることのできるものしか固定できないのだ。
つまり、四つある属性のなかで火と風、二つも弱点が有るということだった。
モンモランシーはさっきギーシュに言われて気が付いた意外な真実に、えも知れぬ不安を感じた。
「・・・・勝算はあるの?」
モンモランシーがギーシュに不安げに聞く。
「分からない・・・。あくまで本人しだいさ・・・・。」
ギーシュもまた不安げな顔をすると宙を仰いだ。
トリスイテン魔法学院 ヴェストリの広場
「「「「・・・・・遅い・・・・。」」」」
血管針団の四人は待ちぼうけていた。サーレーが来ると行ってもうすでに十分も経っている。
ここから食堂まで約一分もかからない。それにこの決闘を見に来るギャラリーが増えていくのを見れば分かるようにこの人の流れをみれば自分たちがどこにいるか簡単に分かるからだ。
ボーンナムはふわぁと欠伸をすると楽しそうにかつ、呑気そうに土を弄っていた。
「・・・・ボーンナムの兄貴。そいつぁ、緊張感無さ過ぎっすよ。」
ペイジが呑気に土いじりに興じるボーンナムに抗議をする。するとボーンナムは自分の使い魔のミーアキャットに掘らせた穴の土の砂一粒一粒を見ながら楽しそうに答えた。
「ペイジ・・・。僕は土のメイジだよ?土を知るのは僕にとって戦闘をする上での最重要事項だよ。僕はゴーレムを作るのが下手だからね。」
それに・・・・。とボーンナムはペイジに続ける。
「この事件の元々の発端は誰だったのかな?ペイジ。」
ボーンナムはついさっきまで使い魔と土に向けていた笑顔が消え、邪悪な何かをペイジに発した。
「す、すみません。兄貴。」
自分より頭二個分も小さい男に気押されているペイジも変だがそれよりもボーンナムの発した殺気にも似た負の感情とでも言うべき何かはその奇妙さをはるかに凌駕していた。
その目は十代の堅気の人間の目ではなかった。まるで、幾多の戦場を駆け抜けた戦士か暗殺者にも似た目をしていた。
「・・・・・やばいな。」
「相当やばいわよ・・・。勝算は有るの?」
「無えに決まっていんだろう?」
サーレーとルイズはとっくの昔にこのヴェストリの広場についており、そこで四人の様子を伺っていた。
いままでこの二人がこの場所にこなかったのはサーレーがメイジに関しての知識やあの四人についての情報がまるで無かったからだ。
サーレーはメイジがどんな魔法を使うのか分からなかったし、属性とかどういう魔法があるのか知らなかった。そんなもの、向こうの世界では関係なかったし、スタンドというまた別の脅威があったからだ。
仕方ないのでルイズはメイジや魔法について必要最低限のことを教え、いまはあの四人について聞こうとしているところだった。
「・・・・スタンドで戦うから結構有利に戦えるんじゃ・・・・。」
サーレーが呟く。固定の能力を無しにしても不可視の精神のビジョンによる威力の高い格闘は向こうにとってもかなりの脅威だろう。
「さっきからよく言うそのスタンドって、何?」
ルイズがさっきからの疑問を口に出した。
「ああ、お前はスタンドを知らなかったな。スタンドって言うのは、なんだ、一人に付き一体の強力な守護霊みたいなもんダ。使える人間は一握りでそいつらはスタンド使いっていう。」
そして、とサーレーは自分の体の中からスタンドを呼び起こした。すると凶悪な顔つきをした鉄人形のようなものがルイズとサーレーの間に立つ。ルイズはいきなり現れたスタンドにおどろいたのか「ひゃぁ」と気の抜けた叫び声を出すと地面に尻餅をついた。
「お前は見えるみたいだから紹介するぜ。俺のスタンド“クラフトワーク”だ。
名前は俺の好きなミュージシャンから取った。」
「こ、これがスタンド・・・。」
そうだとサーレーがいった。
「こいつは一般人には見えない。そしてこいつは触れたものをいくらでも空中に留めておく力がある。俺のスタンドの種類は近くで俺を守る“近接パワー型”に分類されている。
名前の通り、遠くには行けないけどな。」
サーレーがへらへらしながら説明する。
それでもクラフトワークは地面に足を付けるか付けないかというところを浮遊しながら待機している。
「さーて、俺は俺の質問に答えたぜ。あの四人のことをいい加減教えてくれ。」
「あ、ああ、そうね。」
ルイズがそう言うのを確認するとサーレーはスタンドを自分の体に戻した。
「あの四人組は血管針団って言って、この学園で不良たちのトップにいる連中よ。表では普通の学生として生活してるけど、逆らったやつを片っ端からぼこぼこにするから、性質の悪い不良扱いされているのよ。」
ふーんと人に聞いといて興味の薄そうな態度をとるサーレーに不快感を覚えながらもルイズは次の言葉を続けた。
「まず、私とあのメイドに突っかかってきたあいつ。ペイジは水のトライアングルで精神攻撃系。つまり、水を痺れ薬や精神毒に変えて空気中にばら撒くのを得意にしているわ。
その次があのデカブツ。プラント、風のトライアングル。風を使って味方をサポートするのが得意よ。その横の厚着で顔の見えない人がジョーンズ。火のトライアングルで周りを燃やしたりするのが得意ね。まあ、当然か。そして次に土のボーンナム。」
ここまで来るとルイズは少し困ったような顔をした。
「おい、ボーンナムはどうした。あいつは土のトライアングルなんだろ?」
サーレーがルイズに会話の再開を求めたがルイズは黙ったままだった。
少しの間の沈黙の後にルイズは決心したようにサーレーのほうをみた。
「いい、よく聞きなさい。ボーンナムは・・・・土の・・・・・。」
「土の?」
サーレーがルイズのか細い声に続けるように復唱する。
「土の・・・・スクウェアよ。しかも戦闘特化型のね。」
「・・・・マジで?」
サーレーが冷や汗を地面にたらした。スクウェアということは魔法使いの最上級だ。
一つの魔法の種類しか使えないドットや辛うじて二つ使えるラインとは違う。
実際、彼は模擬戦で二年最高の実力者のタバサと引き分けている。しかも手加減して。
その姿は「烈風」と呼ばれ、恐れられたルイズの母親の現役時代を彷彿とさせたらしい。
「・・・・俺はそんな化け物に喧嘩を売ったのか・・・・?」
「「・・・・・・・・・・・」」
二人の沈黙をやぶったのはサーレーの一言だった。
「俺逃げてい「絶対にダメ!!」はい・・・・。」
ルイズの般若顔にサーレーはすぐさま土下座体制に移行しわびをいれた。
自分からこの事件に首を突っ込んだくせに知り合いの少女二人の貞操が危ないということをまるで他人事のように忘れていたサーレーなのだった。
まったく食堂で見せた頼もしさはいったいどこへ行ったのか・・・・。
と、そこにガサガサと生垣と掻き分ける音が聞こえた。
「見つけました!!ボーンナムさん!!」
「「!!」」
サーレーとルイズが同時に後ろを振り向くとそこには二年のマントを着たデップリとふとった少年がいた。
「ゼロのルイズとさっきの蟹頭です!逃げようとしていたようです!こ、これで僕はお役御免ですよね!?」
「うん、良いよぉ。まったく平民君、逃げるならその子は置いていってねぇ。」
生垣の遥か後方からボーンナムの呑気な声が聞こえた。
さっきの会話を聞くと分かるようにこの太っちょは自分の保身のためにあの二人をボーンナムに売ったのだ。
この表現はサーレーとルイズが中々出てこなかったからボーンナムがこの生徒:
マリコヌルに“お願い”をして捜させただけのことで適切ではないが、さすがにさっきの会話だけならどこのだれかに誤解されても可笑しくは無かった。て言うか売ったのだが。
マリコルヌの背筋に妙な寒気が走った。
「おい・・・・豚・・・・。よくもやってくれたな・・・・。」
「へ、「クラフトワーーーーーーク!!!!」「マ〜ル〜コ〜ル〜ヌ〜!!」アバァァァァァァァァアァア!!」
生きた肉がただの肉片になった瞬間だった。
「あ〜あ。可哀想に・・・マルコルヌ君。」
ボーンナムは、けたたましく鳴り響く拳打の音と爆発音を聞いた後にぼそりとつぶやいた。
支援
「まったく、待ちくたびれたよ。逃げたんじゃないかと思ったね。」
ボーンナムがニコニコしながら余計な一言を付け足す。
「うるせえ!!」
サーレーは右手に肉を素手のハンマーのような拳打で叩いた跡に爆発でミディアムレアにこんがり焼けたマリコルヌを持ちながらその言葉に突っかかった。
「んで僕らは四人で行くけど君は何人で行くの?まさか一人ってことは無いでしょ?」
その問いにサーレーは意外な答えを出した。
「この馬鹿を使う。」
サーレーは右手のこんがり肉を刺しながらボーンナムに言った。
「へ!?」
「ああん?」
マリコルヌが素っ頓狂な声を出したがサーレーに睨まれたせいで逆らったら殺されるのが分かったのか抗議はしなかった。
「あと、そこのルイズって子以外だったら誰でも仲間にして良いんだよ?四人以内でならね。」
四人以内というところが少々せこい気がするがまあ名目上は決闘なのでしょうがない気がする。少なくともルールはフェアーなのだから。
サーレーはべネ!!(良い!!)といって、早速戦闘態勢に入った。
「ああ、ちょっと待って。」
ボーンナムがサーレーを静止すると後ろで待機していた三人に声を掛けた。
「おーい。みんなー何時ものやるよー。」
すると四人が・・・・
「今宵弾けるのは俺の杖!!性格の悪さはメンバー1!!水と毒で気になるあの子もイチコロだ!!“毒霧”のペイジ!!」
「燃える火炎はおれの心の火!!燃える闘魂は炎使いの証!!だけど頭の悪さは筋金入り!!平均点数は自主規制だ!!“炎虐”のジョーンズ!!」
「風とは友達!!だが人間の友達は3人しかいない!!無口とノリの悪さで友達は作れるのか!?“風盾”のプラント!!」
「好きなものはカブトムシ!!趣味は土壌観察と昆虫採集!!ただいま彼女募集中!!できたら可愛い子が良いな!“土葬”のボーンナム!!」
そしてボーンナムが真ん中で右手で顔を隠し左手を後ろに回す。ボーンナムを中心に右にジョーンズ。左にペイジが立ち左右対称に腕を水平にして飛び上がる。
そして最後に後ろに立っていたプラントも飛び上がり、体をそこで大きく仰け反らせ・・・
「「「「我ら血管針団!!ただいま参上!!」」」」
バアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!
「・・・・・・・・。」
サーレーやギャラリーたちの時が数秒止まった。正確には空気が。空気そのものが動くことを拒んだ。
「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」
「笑ってよ。もしくは誰か突っ込んでよ・・・・・。」
ボーンナムがぼそりと言うがだれも聞いているものは無かった。
「もう良いや・・・・。立会人君。お願い。」
若干テンションが低くなったボーンナムが自分たちが立てた立会人に合図するように言う。
それを聞いた立会人の三年の生徒が前に出る。
「それではこれより決闘を開始する!!両者、公平に戦うように!!以上!!」
肝が据わっているのか無感情なのか淡々と合図の言葉を交わす。
そして、運命の言葉がついに立会人の言葉から発せられた。
今日という怒涛の、そしてこれからの激動の日々を・・・・。
「騒ぎ出せ!!」
「「「「「どんな合図の言葉!?」」」」」
ギャラリーとサーレーの突っ込みで戦いの火蓋が切って落とされた。
サーレーの右脇を火炎が飛び、左を風が吹き荒れる。
「ちっ・・・・。クラフトワーク!!弾け!!」
火炎を強烈な拳の一撃で回避し、その勢いで火炎を払ったことにより安全地帯になった右に飛ぶ。その一方でマルコルヌが強風を受けて悲鳴を上げつつ転がった。
「へえ・・・俺たちのコンビネーションを避けるとは・・・・。こいつは中々。やはりあの噂は本当らしいな・・・・。」
プラントがスティレット兼杖をサーレーに向け、牽制しつつ適度な距離を見極めるために少しずつ後ろに下がっていく。
「あの噂だとぉ!?」
サーレーも他の三人に警戒しつつプラントの話しに注意を払う。
「二年の召還儀式の最中にお前が大暴れしたということだよ!!さすがに時を止めるとか言っていたのは信用しなかったがお前は面白い力を持っているようだ。エルフか何か・・・ではないな。先住魔法でも無さそうだな。面白い・・・・。」
プラントがスティレットを構えなおすとそれを合図に後ろの三人中二人が飛び掛る。
それにあわせてギャラリーも、「おおお!!」や「ヤッチマエ!!」などの野次を飛ばす。
「ちっ・・・やっぱりばれてやがったか。」
あれだけ派手にやればわかるに決まっている。実際、二年生から他の学年の生徒にあの噂が回っていくまで時間の問題だった。
「おい!!豚ぁ!!早く風のバリアを張れ!!」
「ひっ、わ、分かったよ・・・・。」
マルコルヌが杖を取り出しながらサーレーに向けて風のシールド魔法をかける。
「ふん。そんな魔法で何とかできるほど俺たちは軟じゃない・・・・。」
プラントが後ろに飛び、距離をさらに開けると次の攻撃態勢に入る。その間にジョーンズがサーレーとの間を詰め、長ナイフによる斬撃でサーレーを圧倒する。
その隙に後ろのプラントとペイジが呪文を完成させ攻撃に入る。
「エアハンマー!!」
「ウォーターショット!!」
二つのラインクラスの攻撃がサーレーに吸い込まれるように向かう。
誰が見ても完璧なコンビネーションだった。おかげでクラフトワークで殴る暇さえない。
「クラフトワーク!!防御しろ!!」
彼の後ろの守護神が彼の前に立ちはだかり水の弾丸を弾く。そしてマルコルヌの防御呪文により風の衝撃が空中で霧散する。
「む!あの二年生を侮りすぎていたか・・・・・。」
その勢いでサーレーは一気に走り、三人のど真ん中に立った。そして・・・・。
「クラフトワーーーーーク!!」
ジョーンズのわき腹にクラフトワークで蹴りを入れ、その体制のまま後ろを向きプラントに渾身の右ストレートを腹にかまし、そして後ろを確認しながらペイジの顎に馬蹴りをかます。
岩さえ砕く攻撃力判定Aのスタンドの力は計り知れなかった。
そしてこの一瞬のためにサーレーはマルコルヌを味方に選んだのだ。
そう!この防御しきって相手に隙ができるその瞬間に!!
クラフトワークだけでは防御面で心配だったサーレーはルイズに手ごろなメイジを聞き、都合よく風のラインクラスだった彼を見つけたのだ!!
サーレーの右脇を火炎が飛び、左を風が吹き荒れる。
「ちっ・・・・。クラフトワーク!!弾け!!」
火炎を強烈な拳の一撃で回避し、その勢いで火炎を払ったことにより安全地帯になった右に飛ぶ。その一方でマルコルヌが強風を受けて悲鳴を上げつつ転がった。
「へえ・・・俺たちのコンビネーションを避けるとは・・・・。こいつは中々。やはりあの噂は本当らしいな・・・・。」
プラントがスティレット兼杖をサーレーに向け、牽制しつつ適度な距離を見極めるために少しずつ後ろに下がっていく。
「あの噂だとぉ!?」
サーレーも他の三人に警戒しつつプラントの話しに注意を払う。
「二年の召還儀式の最中にお前が大暴れしたということだよ!!さすがに時を止めるとか言っていたのは信用しなかったがお前は面白い力を持っているようだ。エルフか何か・・・ではないな。先住魔法でも無さそうだな。面白い・・・・。」
プラントがスティレットを構えなおすとそれを合図に後ろの三人中二人が飛び掛る。
それにあわせてギャラリーも、「おおお!!」や「ヤッチマエ!!」などの野次を飛ばす。
「ちっ・・・やっぱりばれてやがったか。」
あれだけ派手にやればわかるに決まっている。実際、二年生から他の学年の生徒にあの噂が回っていくまで時間の問題だった。
「おい!!豚ぁ!!早く風のバリアを張れ!!」
「ひっ、わ、分かったよ・・・・。」
マルコルヌが杖を取り出しながらサーレーに向けて風のシールド魔法をかける。
「ふん。そんな魔法で何とかできるほど俺たちは軟じゃない・・・・。」
プラントが後ろに飛び、距離をさらに開けると次の攻撃態勢に入る。その間にジョーンズがサーレーとの間を詰め、長ナイフによる斬撃でサーレーを圧倒する。
その隙に後ろのプラントとペイジが呪文を完成させ攻撃に入る。
「エアハンマー!!」
「ウォーターショット!!」
二つのラインクラスの攻撃がサーレーに吸い込まれるように向かう。
誰が見ても完璧なコンビネーションだった。おかげでクラフトワークで殴る暇さえない。
「クラフトワーク!!防御しろ!!」
彼の後ろの守護神が彼の前に立ちはだかり水の弾丸を弾く。そしてマルコルヌの防御呪文により風の衝撃が空中で霧散する。
「む!あの二年生を侮りすぎていたか・・・・・。」
その勢いでサーレーは一気に走り、三人のど真ん中に立った。そして・・・・。
「クラフトワーーーーーク!!」
ジョーンズのわき腹にクラフトワークで蹴りを入れ、その体制のまま後ろを向きプラントに渾身の右ストレートを腹にかまし、そして後ろを確認しながらペイジの顎に馬蹴りをかます。
岩さえ砕く攻撃力判定Aのスタンドの力は計り知れなかった。
そしてこの一瞬のためにサーレーはマルコルヌを味方に選んだのだ。
そう!この防御しきって相手に隙ができるその瞬間に!!
クラフトワークだけでは防御面で心配だったサーレーはルイズに手ごろなメイジを聞き、都合よく風のラインクラスだった彼を見つけたのだ!!
三人が後ろに吹っ飛び、そのうちのジョーンズが木に頭をぶつけ気絶しかけた。
「てめえ・・・よくもやってくれたな・・・・・。」
ペイジが地面からすばやく立ち上がり、頭に古臭い怒りマークを付けながらサーレーに迫ってきた。
中々しぶとい・・・・・とサーレーは厄介そうに三人を見る。
三人ともとっさに体を後ろに仰け反らせ、ダメージを軽減していたのだ。
さらに三人は見えない攻撃を勘と経験でタイミングを合わせ自分のダメージを受けるであろう部分を魔法で膜を作りガードをしていた。
ペイジがすごい剣幕で銀の杖を構えてサーレーのほうに走る。そして残り二人に叫んだ。
「今度は本気だ!!行くぞ!!」
「「何お前が仕切ってんだよ!!」」
ペイジの暴走を止めるべく二人がペイジに突っ込みを入れた。
ペイジが、がくっとまるで喜劇の役者のようなこけ方で地面に頭を付けた。そして二人に一言。
「空気呼んで“オウ!!”とか言ってくれよ!!寂しいじゃん!」
「「ドーデも良い」」
「酷い!!」
虐めだー!とペイジは二人に憤慨する。
(・・・・なんだか知れねえがチャ―ンス!!)
サーレーが三人に向かってクラフトワークの跳躍で一気に場を詰めようとするが・・・・。
「な、なんだこりゃあ!!」
支援
サーレーは足を震えさせ、体を支えるために右手を地面に付ける。
「おお!!いい感じに効いてきたな!!」
「そうだな・・・・。」
「はあ、これでペイジの大根役者に付き合わなくてすむ・・・・。」
「地味にヒデーな!おい!」
サーレーの前で悠長にだべり始める三人はもう一度痺れて徐々に体の自由を奪われるサーレーを見るとニヤリとした。
「てめ・え・ら・・・・・お、俺に・・・な、何しやがった・・・・!!」
サーレーが苦しそうに三人に叫んだ。力ない、小さな声で。
「俺の能力を警戒しなかったおめぇが悪いんだぜ?俺は最初に言ったヨナァ・・・・。
俺は“毒霧”のペイジだと・・・・・。」
まさか、とサーレーは思った。ペイジたちは風の魔法に周りの水蒸気を効力は高いが即効性の無い痺れ薬を混ぜてサーレーを攻撃していたのだ。
そう聞くと主にサーレーと格闘していたジョーンズの服装の理由が想像ついた。その異常なほどの厚着はその痺れ薬の効果を自分に受けないため。もしくは体に触れる分を少なくして効力を和らげるにしているとしか思えなかった。
「けっけっけっけっ。バッカジャネーの!?相手が自分の攻撃方法をばらしてんのに警戒しねえのわよぉ!!まったく!!大間抜けだな!お前はよぉ!!さすがあの“ゼロ”のルイズの使い魔だぜ!!」
ペイジはそう言うとサーレーのわき腹に強烈な蹴りを決めた。
ボカッ!
「!!」
骨を直接叩くような奇妙な音がするとサーレーは腹を抱えて力なく倒れた。
サーレーが苦痛にうめき、地面に無様に転がる。
マリコヌルはさっきのプラントの風でどこかに転がっていた。よって、助けは期待できない。
「あがぁぁぁぁ!!」
「さっきので肋骨にひびが入ったのか?いいねぇ!!無様だねぇ!!お前にはそれがお似合いだよ!!平民!!」
ペイジはさらに次々にペースを速めてサーレーを蹴ったり、殴ったりしていた・・・・。
その時・・・・・。
ガシッ!!
「?」
ペイジが静かに下を見た。そこには何のことの無い、ただの地面が広がっているだけ。
ただしそこには・・・・サーレーはいなかった。
「!!」
「おい!!ペイジ!!後ろ!!」
ジョーンズが叫んでペイジの後ろを慌てて指差した。
そこには・・・・。
「よくもやってくれたな・・・・。餓鬼・・・・・!!」
サーレーが立っていた!鬼のような怒り狂った表情を出し、肩膝を突きながら!!
ペイジはその顔に一種の恐怖感を覚えて一歩後退しようとした。
しかし、それは“叶わなかった”。
「何なんだよ!!俺の脚!!動け!!動けよ!!」
ペイジは足が動かなかった。恐怖心からでもなく、ダメージによるものでもなく、疲労によるものでもなく!!単純に動かなかったのだ!!
そう!!紛れも無く、サーレーのスタンド「クラフトワーク」の力で!!
サーレーはゼイゼイと息を荒く吐きながらペイジの肩を掴んだ。それを見たジョーンズとプラントが魔法を放ってペイジからサーレーを引き離そうとするが・・・。
「うるせえ!」
サーレーは無造作に地面の土を掴み空中にばら撒いた!!
「クラフトワーク!!」
火の塊と風の刃がサーレーの前に着く前に空中で土の壁に妨害され、哀れに萎みながら宙に消えた。
「「何だと!?」」
そう。サーレーは土を固定化しそれを盾に魔法を避けたのだ!!
二人と後ろで見ていたボーンナムの目に焦りの色が出てきたのとサーレーのパンチがペイジの右頬を捉えたのはほぼ同時だった。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ジョーンズが目の前の恐怖に怯え、サーレーのほうに連射力の高いドットの火の魔法を放ちまくる。サーレーはフラフラしながらもクラフトワークで弾くなり、攻撃の直線状からすばやく飛び退くなりの方法を使って攻撃を逃れていた。
杖からはライターの火程度の炎が断続的に発射されるだけだがそれでも服に付けば燃えて大火傷の危険性は十分にあった。
そして、もう一つ厄介なことにこの魔法の射程とサーレーと生徒のギャラリーの間がさっきの戦いで急速に縮まってしまったということだ。
「おい!!ジョーンズ!!ほかの生徒に当たるぞ!?」
プラントがジョーンズを諌めるがジョーンズの恐怖は仲間の言葉と理性を上回っていた。
案の定、ギャラリーに火の粉が当たり始めている。
「あ、暑い!!」
「屋内に逃げるんだよぉ!!」
「きゃぁ!!」
「水のメイジは何処だよ!?」
ギャラリーの生徒が雲の子を散らすように悲鳴を上げながら逃げていく。
そのうち、ドットの火力ではサーレーを倒せないということが分かったのか高火力のトライアングルスペルに切り替えた。
「しぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
妙に馬鹿でかい火球がサーレーに迫る。
「デカッ!?」
サーレーはクラフトワークでの防御や回避も考えたが火球の大きさと痺れ薬による体の疲労を再確認し、ギリギリで固定で防御することにした。
「止めるんだ!!ジョーンズ!!」
プラントの声をジョーンズは無視した。恐怖は妄想をよび、その妄想がさらに恐怖を呼ぶ。
そのような精神状態で人の話を聞こうなど無理に決まっている。
「ちい!」
サーレーは攻撃を目の前にして土を火球の前に思いっきり投げつけた。
「よし!!固定化開始!!」
火球が空中に花火のように爆散した。大きな火花の代償に大きな大きな炎の散弾を雨のごとく地上に降らしながら・・・・。
「しまった!!」
サーレーが叫ぶ。ギャラリーたちの退避がまだ5分の1くらいしか終わっていなかったのだ。ギャングの彼が他人を気にするのはおかしいと思うが、やはり年場も行かない少年少女を見殺しにするのは嫌だった。
火炎の散弾が地上に降り注ごうと重力に乗って急降下してくる!
その様はまるでハルマゲドン!!世界の終わりを創造させるような破壊の嵐だ!
この様子を見たギャラリーたちはパニックになり魔法で身を守ることなど頭から吹っ飛んでいた。
もう駄目か・・・。と思ったそのとき!
「錬金」
火球の前に巨大な壁ができた。正確には壁のような不恰好なゴーレム!!
それがギャラリーの前に立ちはだかり火球の盾になったのだ。
しかし、その盾でも守りきれないような場所に一人いたのだ。
金色の巻き毛の少女が・・・・。
「モンモランシー!!」
ギーシュは火炎弾の一部が自分の彼女に迫っていくのをみた。
それは確実に彼女を焼き尽くすだろう。殺すだろう。身近な人を悲しませるだろう。
そんなの駄目だ。
彼女を失えば僕は・・・・。
「ウワァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」
ギーシュは彼女の元に走っていった。
ルイズは考えた。
あの二人が自分に何をしてくれたかを。
そりゃぁ一年の時は仲が悪かったけど・・・・。
何だかんだで最近かばったり練習に付き合ったりしてくれた・・・・。
どっかのキュルケよりもわたしに関わってくる。
あんな軽ッちい恩で。簡単に。
ちょっと鬱陶しかったけどでも、よく考えてみたら大切な友達・・・・。
それを片っ方でも失うのは悲しいな・・・。
そう考えるとルイズは無意識に杖をとって走っていた。
「ルイズ!!」
キュルケがそう叫んだのが聞こえる。その連れのタバサが火球に氷の魔法を撃っているのも分かる。しかし、威力は治まる気配は無い。ジョーンズは放つ前に自分の全魔力をこの火球に込めたのだ。サーレーを消したい一心で。
ギーシュはモンモランシーのまえで両手を広げ、その前でルイズは庇うように二人を押し倒し、そして三人の前に火球が飛ぶ。このままでは三人とも焼け死ぬだろう。
もう駄目だとルイズが思ったそのとき、三人の前に一人の影が割り込み・・・・。
「シャラァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」
拳の弾幕が三人の前の火の散弾を一気にかき消していった。
「あっちいなぁ・・・・おい。」
「あ、あんたなんで!」
ルイズが上を見上げた。そこには見慣れた蜘蛛頭とちょっと焼け焦げた顔があった。
サーレーは三人に炎が来ないようにクラフトワークで無理やり体を動かし、拳の弾幕で火炎を吹っ飛ばしていたのだ。
「餓鬼を見殺しにすると目覚めが悪い。」
シンプルにそれだけ言うとまたボーンナムのほうを向いた。
「・・・なんで、何でそこまでするのよ・・・馬鹿・・・。」
ルイズはじぶんを恨んでいるはずの男に助けられ、すこし泣いた・・・。
一方、ボーンナムとプラントがジョーンズを殴って気絶させ、ペイジとともに並べていた。相変わらず呑気そうな顔をしている。
「・・・・やっぱりさ、屋外は危険だよね。」
「?」
サーレーたちがその言葉に首をかしげる。何が言いたいのかと。
「それでさ。僕は決闘止める気が無いから・・・・こうしてみることにしたよ。」
ボーンナムが“杖”を振る。
「錬金」
先ほどギャラリーと自分たちとの境界の辺りにいきなり巨大なガラスの壁が出現する。
しかも、ルイズたちを取り残して!!
「「「「!!」」」」
「まあ、さぁ。立会人も逃げちゃったし、その子達を立会人にして再開しようか?」
ボーンナムはそういうと杖を構えた。真打ち登場。と小さく言うとニヤリと笑う。
まるでこれからの戦いを楽しんでいるように。
「勝手なことバッカ言いやがって・・・・。」
サーレーは重い、火傷だらけの体を無理やり動かし、応戦体制に移行した。
プラントはリーダーの戦い方を見たことが無かった。
本能で分かっていたからだ。自分たちはこのリーダーに一切、勝てないということを。
プラントは自分が邪魔になると思って仲間二人と自体を見守ることにした。
そして今。
空中を剣が飛ぶ。槍が飛ぶ。矢が飛ぶ。斧が飛ぶ。
そしてその攻撃の嵐の中心にボーンナムが立つ。
「これが・・・・・。兄貴の戦い方・・・・。」
プラントは剣と槍と矢と斧が大量に飛び交う大きな嵐に恐怖を覚えた。
少なくともサーレーの発したギャングの殺気ではなく、単純に圧倒的なその実力に・・・・。
「これが・・・・スクウェアの実力だって言うのか!?」
スクウェアの中でもトップの実力を持つボーンナムは魔法使いの中でも破格の強さを誇っている。
少なくとも実力は土のみに関すればオズマン校長と同等を自負していたほどだ。
実際は校長のほうが強いに決まっているが、そんなこと知ったこっちゃ無い。
今はこの力ですべてを叩き壊してやる。
ボーンナムはそう考えるとわくわくしたように表情を綻ばせた。
「・・・・・・なんちゅうパワーじゃ・・・・。」
噂をすれば何とやら。校長が水晶の中のサーレーとボーンナムの戦いを見ながら呟いた。
ありえないパワーと魔法の使い方で固定の使い手サーレーに打ち勝とうとしている。
学生ではありえない実力だ。いったいどこでそんなに鍛えられたのか。
「・・・・・デスブロオドの家系にこのような天才がいるとは知りませんでした・・・。」
トリステインの弱小貴族のデスブロウト家は確かに土のメイジは多いがあんまりうだつの上がらない能力としても知られている。
そんな落ちこぼれの貧乏貴族の長男がこんな一人で兵が全員メイジ殺し(対魔法使いに秀でた平民の兵)の一個師団ですら壊滅させそうな実力を持っているとは初耳だし、そこまで彼を鍛えた状況とは何なのか。
水晶を覗き込みながら考える校長とコルベールを尻目に何かを感じたのか、秘書のロングビルは静かに校長室を後にした。
「・・・・・・なんだい?こんなところに呼び出して。校長とあの禿にこのことを感ずかれたらどうするつもりだい!?」
ロングビルは学院の裏の見えにくい暗がりで男と話していた。話し方も野暮ったいものに変わっている。
これから考察して彼女は裏の仕事に携わっているのがわかる。
「悪いな・・・・。次の“依頼”の“タイミング”について聞きたくてな。」
この男は同じギルドの顔なじみで今回あの男がここで“仕事”をするという理由でここでの別件の仕事をしていたロングビルに協力を仰いだのだ。
しかし、ロングビルはこの男が嫌いだった。
この男は好色で女を殴りながらヤるのが好きなゲスヤロウだという。実際、こいつの性格もいけ好かない。彼女の中で家族に近づけたくない人間のトップに入っている。
こんな奴、同じギルドじゃなきゃ殺している・・・・・。ロングビルはそう思っていた。
しかし、この男は魔法とは違う得体の知れない能力を持っている。
知り合いの一人があの男と一緒に仕事をしたときにあの男に殺されかけたことがあった。
そいつが言うことにはこいつの武器は手のひらサイズの鉄の球だったようだ。
暗がりの中で“ターゲット”と間違われて“ターゲット”ごと攻撃されたのだ。
その知り合いはこう一言、言っていた。
“右半身が壊れた”と。
知り合いはその後その傷が元で死んだ。
罪人ではあったが悪いやつではなかった・・・。嫌いじゃなかったのになぁ・・・・。
そんな理由でこの男がロングビルは大嫌いだった。
「・・・あのサーレーって奴をしばらく泳がせたらどうだい?しばらくすれば、あの化け物もあの“生徒もどき”も共倒れか片っ方が疲弊したところをサックリやればいいんだからさ・・・・。て、これあたしに聞くようなことか?自分でもこれくらいの事、考えられるだろ?」
「まあな。それよりも何だけどさ・・・・。実はよぉ・・・・。お前に行ってないことがあってよ。」
男がボリボリと頭を掻く。妙に感じが余所余所しい。しかし顔はヘラヘラしている・・・。
どういうことだ?
ロングビルは相手の真意を測りかねていた・・・。
「じつはここに来る前にお得意様の貴族に一つ頼まれてよ・・・・。お前を殺してくれってよ。土くれのフーケ。」
「!!」
仕事上の名前を出されたロングビルは一気に混乱した。しかもじぶんを殺せとはどういう事なのか。
「実はお得意様がお前に襲撃されて大事な家宝を盗まれたんだと。それで俺がお前と仕事をするって言うのをひとずてに効いたらしくてな。結構報酬が良かったのもあるがそいつの仕事が終わればゲルマニアにある領土を少しくれるらしくてな・・・・。」
「貴族になるためにあたしを売ったのかい!?」
ロングビルは背中に仕込んである杖を取ろうとする。その時・・・。
バシィ!!
ロングビルの肩に鉄球が突き刺ったのだ。激痛に襲われ、ロングビルは杖を取り落とす。
「ぐ!!」
「杖が無きゃぁ土くれのフーケもただのか弱い女だな・・・・。まぁ、恨むなよ。」
男はロングビルの肩を力いっぱい押し、地面に押し倒した。
そして、もう一つの鉄球をロングビルの顔の目の前で回転させる。ありえないスピードだ。
このまま当たれば確実に死ぬだろう。
「や、やめ・・・・・。」
「無理だな。俺はこれでこっちの世界で貴族に帰り咲けるんからよぉ!!」
男は狂気の炎を目の中で輝かせながら、ロングビル:土くれのフーケの命を刈り取るために鉄球を空中に放った。
落ちたときにこの女の命が潰えるのを見るために。そしていま少しの間、この女の絶望に打ちひしがれる姿を見るために・・・・・。
支援
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
サーレーの後ろを幾万の剣、槍、矢、斧が風に乗って走ってくる。
こんなのに巻き込まれたら死ぬっ!!・・・当たり前だ。暴風に乗って鋭利な刃物が人体に突っ込んでくるのだから。
「ふざけんな!!こんなところで死にたくない!!」
サーレーが走りながら刃物の嵐を脱出しようと走りに走りまくるが人間の出せるスピードの限界と風の出せるスピードの限界を考えると答えは簡単だった。
すぐにサーレーの背中に刃物による切り傷ができ始めたのだ!!
「いだだだだだだだだだだ!!!!!」
「何やってんのよ!さっさと反撃しなさい!!」
「できるかー!!」
ルイズの理不尽な要求を何とかスルーし、サーレーは走って、走って走りまくった
そして、サーレーは目的地に到達する。この刃物の嵐をよけることのできる唯一の場所を!
「チキショウ!!」
サーレーが目の前に広がる木の間にダイブした。ボーンナムが忌々しげに口を尖らせる。
「・・・・森に入ったか。そこなら何とかなるかもね。」
厄介な・・・・。ボーンナムはそう呟くとサーレーを追って森の中に入っていった。
「くそ・・・・何とかアイツの杖を何とかしねえとな・・・。」
スタンドで木に刺らずにこちらに向かってくる剣を弾きつつサーレーはあたりを見回していた。
銃弾などの攻撃面積の狭いものには固定の体のガードでなんとかなるが、剣や斧といったダメージの範囲が大きいものだと固定のガードは意味が無い。できれば葉っぱや土のような柔な物よりの攻撃が防げる固いものを捜していた。
「・・・・役に立ちそうなものは無いな・・・・。ん?」
近くでガサガサと音がする。人がいるのか?と、サーレーは音のした所を見回した。
未だに刃物の嵐は続いているものの、いまでは何とか攻撃に移れるだけの体制は整えている。別に忠告するだけなら問題は無いだろう。
サーレーはそう考えると音のほうに声を掛けた。
「おい!!お前あぶな「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃゴメンナサイ!!ゴメンナサイ!!」豚・・・なんでここにいんだ?」
サーレーの前にはマリコヌルが地面にはいつくばってガクガクと震えていた。
「・・・・逃げたんじゃなかったのか・・・・。」
「そ、そうなんだよぉ。僕が建物のほうに行こうとしたら、ファイヤーボールの爆発に巻き込まれて・・・。き、気が付いたらここに!」
どうやら、ボーンナムの暴走したフレイムボールをかき消したときの衝撃でここまで飛ばされてきたようだ。
はぁ・・・・とサーレーが深くため息をついた。役に立たない+助けても何の徳も無い論外生命体=男=マリコヌルをみつけて、ほかに何も見つからなかったのでは割に合わない。
「・・・・・・ん?」
マリコヌルのほうをサーレーはすばやく振り向く。
「な、なんだよぉ。」
「何で気が付かなかったんだ・・・・?」
サーレーはマリコヌルの肩をガシッと掴むとニヤリと笑う。ひぃとそのある意味不気味な笑顔に対してマリコヌルが悲鳴を上げた。ガサガサとそれに合わせるように森の葉っぱが音をたてる。
「おまえ!!俺にもう一回協力しろ!!」
サーレーの言葉にマリコヌルは地獄のどん底に落とされたような顔をした。
TO BE CONTINUED
お、終わった!!やっと終わったぞ!!
いや、マダ終わってないけど!!
さーて・・・・。
回を負うごとに何かサーレーでもゼロの使い魔でもジョジョでも無くなるけど、あえてぶっ壊すか・・。
それで改悪になるか、改善になるかは別問題だけど。なるべく改善できるようにします。
何かまた駄文に着き合わせてしまいすみませんでした・・・・。
こんどはジョジョネタとかジョジョネタとかゼロ使ネタとか頑張って何とかします。
こんどの投下は五月の中旬に使用かと思っています。それまで、アリーデヴェルチ(さよならだ)!
技工士の人、乙&GJでした
投下乙っしたー。
・・・が、ちょっと誤字が多いっす・・・。
でも次も期待してるっすー。
頑張って下せー。
投下乙です。乙ですが…
マリコヌルって誰だああっマリコルヌだ!…ぶっちゃけ間違っててもさして問題はないが。
マゾコルヌの間違いだろ
瞳のカトブレパスを思い出した。
投下します〜
ゼロと使い魔の書
第二話
「……ねえちょっと!聞いているの?」
「聞いている。相槌を打ったほうがよかったか?」
自室で使い魔の仕事を説明している間、ルイズはずっと困惑していた。
自分の使い魔が貧弱そうな平民だった。それはまだいい。前例がないだけで使い魔には違いないのだから。
問題はその平民の性格というか態度というか、自分が接してきたどの平民よりも、いや、どんな人間よりも生気というものが希薄だった点だ。
ただ、そこに存在している。空気のように。
呼びかければ反応するし、普通に呼吸しているからゴーレムの類ではないのは確かだが、その姿はまるで長い年月を生き終わった老人のようであった。
ルイズはまだ就寝までに時間があることを確認すると、当初の予定を変更した。
「今度はあなた自身のことを話して」
「俺はお前に仕える。それでは不十分なのか?」
優しさも厳しさもない、冷め切った目をして聞かれるとルイズも一瞬言葉に詰まる。
好奇心で聞いた。とは、なんとなく言えそうにない雰囲気だった。
「と、当然でしょ!?貴族たるもの使い魔のことをよく知ってなければつとまんないもの」
とっさの一言にしては理屈が通っている。内心そう思った。使い魔もそれで納得したらしい。
「なるほど。ところで話は変わるが、これが見えるか?」
……やっぱり聞いてないんじゃないか。そう思わせるほど露骨な話題転換だった。
「……それがどうかしたの?やけに装丁が頑丈そうな本だけど」
使い魔は無言で本を開いた。
「……?これ何語?見た事もないわね……」
ここへきて初めて、僅かに、使い魔は表情を変化させた。
「読めないのか、ならいい。面倒だがな」
「な、なに偉そうな口きいているのよ!」
使い魔は完全にスルーした。どうもいけない。主導権はこちらになくてはいけないのに。
さっき思いついた「餌付けによる格差見せつけ作戦」も、鞭による調教も、はたしてこいつに堪えるかどうか……
ルイズは内心頭を抱えた。
話はルイズの予想の遥か斜め上をいったものであった。
「月が一つですって!?人間の目が一つしかないのと同じくらい違和感あるわよそれ……」
「俺にとっては二つある方が違和感がある。ようは慣れ親しんだ環境の違いだろ」
月が一つしかない、魔法がない、身分制度がないなど夢にも思ったことのない世界から使い魔は来た、ということらしい。
要点をかいつまんだ的確な説明もあって、ルイズにはそれらを全て妄言と片付けることができなかった。
「……まあ、いいわ、信じてあげても」
「そうか、それはよかった」
そんな棒読み口調で言われてもね。
再び訪れる重すぎる沈黙。
使い魔は話が終わるや否やさっさと窓辺に近寄り、草原を飽きもせずに眺めていた。
「……あんた、もしかして帰りたいって思ったりしてる?」
ここまでそっけないのは実は召還されたことに対する当てつけではないのか、と考えたルイズは聞いてみた。
言葉が響き、余韻が残り、再び静寂が訪れた頃。
「元の世界では、ある男に復讐するために生きていた。それが俺の存在理由で、生きる意義だった。だがそれも終わった今、元の世界に帰りたいとは思わないな。理由がない」
淡々と事実を告げるような口調に、背筋が寒くなった。なんと声を掛ければよいのか分からない。
同時に、自分の使い魔がなぜここまで無気力なのか理解した。
要するに、この男には今、生きる目的がないのだ。
簡単な魔法もろくに使えず、周囲からゼロゼロ言われて育ってきた自分でも、自分の生を余すことなく復讐に費やすなんて生き方は想像もつかなかった。
数瞬の間の後、ルイズはなんでもないように、でも内心勇気を奮って、言ってみた。
「なら、丁度よかったじゃない。メイジの使い魔。命を張って頑張ってもらうわよ!」
自分の言葉をどうとるか。使い魔が振り返った。
顔は陰になってよく見えないが、そんなに悪い表情ではなかったように思う。
「そうだな。当分世話になるよ。ご主人様」
口調もやわらかになった……というのは、ただの希望的観測かもしれないが。
「さてと、しゃべったら眠くなっちゃったわ。おやすみタクマ」
ルイズは服を脱ぎつつ、それらを自分の使い魔に放っていく。
「それ、明日になったら洗濯しといて、あ、あとあんた床で寝てね」
言いつつ、ちらりと使い魔の方を見る。案の定、使い魔は下着を手に立ち尽くしていた。
表情は相変わらずだが、きっと内心動揺しているのだろう。優越感。
「洗い場はどこかな」
……全然違った。
「じ、自分で探しなさいよね!それくらい!」
「それもそうだな」
だから何でそうなるの……
仕掛けたのは自分であるが、ここまで肩透かしだと逆に敗北感が沸いてくる。
こいつわざとやってるんじゃないだろうな……
ルイズは馬鹿馬鹿しくなって、ベッドに飛び込むように潜った。
使い魔が隣の床に横たわっている。
かなり迷った後、毛布を上からかぶせた。なんで貴族なのにこんなやつに気を使わなくっちゃいけないのだろう。調子狂う。
ルイズは目を閉じた。隣の使い魔からは古本に似た独特の匂いがしてきた。
以上です。
琢馬、やっぱり難しいですね〜
イイヨイイヨー この調子で進めればイイさー
ここから先、ゼロ魔と琢馬らしさがどう噛みあうのか、楽しみでしかたないっス
従順(?)な使い魔ゲットしてルイズとしてはラッキーかな?
GJ!
琢馬がハルケの文字覚えれば能力も通じるようになるのかな?
きんぐくりむぞ〜ん
このGWの間に2、いや3本は投下したい。
超期待してる
作品の最終更新日って確認できないの?
そういえば、できないっぽいね
姉妹スレのまとめだと最終更新日が表示されてるけどね。
ページの編集履歴を見ればいいらしい。
部分的に後でいじってる場合もあるから確実ではないけど
>>577 編集履歴見れば分るのは知っていたけど何処にあるか分らなかったな
下の方にあるとは思わなかったな
とりあえず絶望した
ヴァニラアイスも書けよ。
後ホット・パ(ry
SBR新刊読んだー
そろそろ終盤かー?
てか大統領が初期に比べてだんだん凄味が出てきた気がする
歴代ボスに比べればまだまだだけど結構いい線きてるんじゃあないだろうか
583 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/04(日) 07:20:37 ID:VmDh31uk
シビルウォーかなり便利だな
SBRが終わったらジョジョの第8部やるんかな
荒木はいまいくつまで構想できてるんだっけ?
9部とか言ってた気が
20分から投下します
587 :
ゼロいぬっ!:2008/05/04(日) 17:21:30 ID:yVmLBEoC
「……妙だな」
「は? 如何なされましたか?」
副官の問いにも答えず、老士官は眼下の戦況に思いを巡らせる。
大砲を迂回し側面から奇襲しようとした鉄砲隊は敵の妨害を受け、これと交戦中。
敵の規模から見るに、用心の為に配した部隊ではないだろう。
そもそも数で劣っているトリステイン軍が戦力を割く筈がない。
なら、こちらの動きが分かっているとしか考えられない。
しかしアルビオン軍が誇る竜騎士を相手にして、
竜やグリフォンを偵察に回す余裕が彼等にあるとは思えない。
それに艦船にしてもトリステイン艦隊は壊滅状態だ。
他の所から船を引っ張ってくる時間も無い。
だが、起こり得ない事も起きるのが戦争の常だと彼は知っていた。
「念の為、竜騎士隊を周辺の空域の捜索に当たらせろ」
「はっ!」
老士官の指示を受け、副官が靴を鳴らして敬礼を取る。
それを眺めながら、やはり堅苦しい挨拶は慣れないものだなと彼は苦笑いを浮かべた。
「怯むな! 進め!」
塹壕に隠れたモット伯が上げる勇ましい声も砲声に掻き消される。
トリステイン側の砲が沈黙すると、今度はアルビオン軍が一斉に反攻に打って出た。
塹壕諸共に兵士を吹き飛ばす砲撃と、その生き残りを狩りたてる鉄砲隊の突撃は、
見る間に拮抗していた戦況を覆し、その天秤をアルビオン側へと傾けていく。
否、そもそもがこれが本来の戦力差なのだ。
いかに魔法が精神力で発動する力だとしても、
人の意思が傷付いた肉体を奮い立たせようとも、
実際の物量差を埋めるには至らない。
アニエスは悔しげに唇を噛み締めながら剣を抜いた。
銃も大砲も使えないのなら、これで戦うより他にない。
果たして傷付いた脚でどれだけ戦えるのか、
それでも指揮官が戦って見せねば兵士は動かないだろう。
「突撃ィィーー!!」
雄叫びを上げて敵陣に斬りかかるアニエスに、兵士達も剣を手にし後に続く。
一直線に突撃してくる敵軍を前に、アルビオン軍に僅かな動揺が生まれる。
しかし、それは容易く嘲笑に取って代わられた。
まるで鴨撃ちも同然。向こうから出てきてくれるなら好都合。
そう言わんばかりにアニエス達へと銃口が向けられる。
588 :
ゼロいぬっ!:2008/05/04(日) 17:22:40 ID:yVmLBEoC
その刹那。砲声が鳴り響く戦場に、犬の遠吠えが響き渡った。
心臓を鷲掴みされたような恐怖がアルビオンの兵士達の間を駆け抜ける。
狙いを定めようとした手は雪山に放り出されたかの如く震え、
眩暈にも似た感覚が彼等の視界を著しく乱す。
平常を失ったまま放たれた弾丸は、アニエス達を避けるかのように彼方に消えた。
慌てて弾を込めなおそうとするも火薬や弾を取りこぼす有様。
戦意は瞬く間に潰え、その悉くがアニエス達の剣の露となって散り逝く。
彼等はアニエス達に負けたのではない、心の奥底に眠る“バオー”の恐怖に負けたのだ。
敵の銃と弾薬を奪い、アニエスは更に攻勢を続ける。
既に彼女は気付いていた。これは彼の声ではない。
ただ命じられるがままに吼えるだけの鳴き声。
そこには胸を締め付けるような悲しみも怒りも感じられない。
恐らく被害が出なければ敵も気付き始めるだろう。
……その前に可能な限り敵を叩く。
あるかどうかも分からない活路だが彼女はそれに賭けたのだ。
アルビオン軍の地上部隊に混乱が広がっていく。
さながら小石を投げ入れた水面に浮かぶ波紋にも似た光景。
“ニューカッスル城の怪物”が現れたのだと、
口々に悲鳴にも似た声を上げて兵士達の統制は崩壊した。
その場から逃げ出す者、蹲る者、僅かな物音にさえ恐怖を感じる者。
反応こそ様々だが、そこにあるのは純粋な“バオー”への恐怖。
もはやこうなってしまえば歴戦の指揮官だろうと収拾は付けられない。
楔の如く左翼に打ち込まれたアルビオン軍の先鋒が、
亀裂が走ったかのように次々と打ち砕かれていく。
「ワルド子爵! ワルド子爵はどこに居られるか!?」
慌てた様子で船員が『レキシントン』艦内を駆けずり回る。
こんな時だけは異常とも言えるこの艦の図体の大きさが癇に障る。
まだアルビオン軍が優勢にあるとはいえ、余裕ぶっていられる状況ではない。
嘘か誠か“ニューカッスル城の怪物”は一匹で一軍に匹敵するとも言われている。
話半分だとしても、それが脅威である事に違いはない。
そこに兵士たちの恐慌が加わればアルビオン軍とて壊滅しかねない。
だからこそ一刻も早くワルド子爵を探し出し、
“ニューカッスル城の怪物”を仕留めてもらわねば……。
ワルド子爵の姿を彼が見つけたのは『レキシントン』の甲板上だった。
自身の風竜に背を預け、未だに飛び立つ気配さえ見せぬ彼に船員は苛立ちを隠せない。
先程のは臆病風に吹かれたのを誤魔化す為の虚言か。
当の怪物が出たというのに平然としている彼の態度に船員は落胆した。
所詮はトリステインの裏切り者。信用に足るような人物ではなかったという事か。
ギシリと歯を噛み鳴らしながら、彼はワルド子爵に手を伸ばそうとした。
「おい、さっさと出撃しろと……」
見れば、突き出した腕はワルド子爵ではなく地面へと向かっていた。
体勢が崩れるのにも似た違和感に気付いた時には、
彼の半身は肩口から滑り落ちて血溜まりを形成していた。
589 :
ゼロいぬっ!:2008/05/04(日) 17:25:06 ID:yVmLBEoC
「黙っていろと言ったはずだがな」
聞き遂げる者もない言葉を口にしながらワルドは再び戦場に意識を傾ける。
この咆哮は決して奴の物ではない。
世界を揺るがせるような奴の恐怖を微塵も感じ取れない。
ならば、これはアルビオン軍を混乱させるだけの偽り。
だが何故そのような手段を取る?
実際に奴を戦線に投入すれば済む話だ。
それとも此処に奴がいないとでも言うのか?
有り得ないとワルドは頭を振った。
あれだけの戦力をトリステインが手放す筈がない。
負けられぬ一戦ならばこそ確実に使ってくる。
……それに、ここにはルイズがいる。
奴は必ずルイズを守る。
たとえ自分の命がどれほどの危機に晒されようとも、
自身の命を捨てる事さえも厭わない。
その光景を嫌というほど、この目に焼き付けた。
だからこそ奴は必ずここにいると確信できる。
ルイズと奴は忌々しいほどに繋がっている。
それは断ち切れぬ運命にも等しい。
だが、それをここで終焉とする為に彼はここにいる。
自らの手で“バオー”を討ち取る事で…。
高らかに吼え続ける数頭の犬。
その隣を伝令達が吉報を手に駆け抜けていく。
「上手くいきましたな」
「ですが二度、三度とはいかないでしょう」
齎された情報に耳を傾けながらマザリーニとアンリエッタは言葉を交わす。
やはり“彼”の残した爪痕は今もアルビオン兵達の胸に深々と刻まれていた。
ただの犬の鳴き声は数百の砲門に匹敵する戦果を上げていた。
浮き足立つアルビオン軍を叩くのなら今をおいて他にない。
それが分かっている筈なのに右翼の主力は動く気配を見せない。
敵の侵攻を左翼が防ぎ、右翼がその側面を突けばアルビオン地上軍を駆逐できるだろう。
だが彼等は王女の護衛を最優先とし、その場を離れようとはしない。
それが自己弁護じみた物だと理解して、アンリエッタは苛立たしげに呟いた。
「これでは何の為に義勇兵は戦っているのですか!
彼等を見殺しにして…それで勝利だと言い張るのですか!?」
「人は誰かの思うように動かせる物ではありません。
それは王家の威光がどれほどの物であろうと、それは変わりません」
まるで彼等を肯定するかのような言い草に、アンリエッタがキッと視線を向ける。
睨みつけるかのような眼差しを受けてもマザリーニは動じない。
彼女とて子供ではない。人は奇麗事だけでは生きていけない。
アンリエッタの意向を汲み取ったとしても、わざわざ危険に飛び込もうとはしない。
590 :
ゼロいぬっ!:2008/05/04(日) 17:27:06 ID:yVmLBEoC
……何故だろう?
私とルイズ、どこにそれほどの違いがあるのだろうか。
一度として私は王女として生まれた事を恵まれていると感じた事はない。
窮屈で形式にばかり拘り、愛する者に想いを告げる事さえ許されず、
信じられる者など宮廷のどこにも存在しなかった。
誰かが私を讃えようとも心が満たされる事もない。
それに比べてルイズはどれほど恵まれている事か。
魔法が使えない? その程度の事がどうしたというのか。
彼女には命を懸けて戦ってくれる使い魔が、親友達がいる。
命令されたのではなく自分の意思で彼女を守ろうとしてくれる。
時には盾に、時には暖かい温もりとなって彼女を包む。
周りを冷たい城壁に覆われた私には眩しく映る光景。
分かってる。私は……ルイズに嫉妬している。
王女の座なんて欲しくなかった。
私はただ一人の少女として幸せになりたかっただけ。
友人に囲まれて、平凡な日々を当たり前のように過ごしたかった。
そんな些細な願いさえも始祖は聞き届けてはくれなかったのだ。
「どうしたんだ? 連中、急に手を休めて……ティータイムって訳じゃなさそうですがね」
「見当は付くけどね。今の内に脱出しないと次はない」
不思議そうに首を傾げるニコラに、ギーシュが深刻そうな面持ちで答える。
今のは犬の鳴き声だったけど彼のじゃない。
そもそも彼はコルベール先生の所で眠り続けている。
恐らくは姫殿下が用意した策なのだろう。
だが、この混乱もしばらくすれば収まってしまう。
彼がいないと気付かれれば同じ手は二度と通用しない。
弾痕だらけの木に凭れ掛かっていた背を起こし、
ギーシュは錬金した鏡で敵の様子を窺う。
見れば相手の数は五人程度。
不意を打てば勝てない数ではないが、
相手は自分達の位置を完全に把握している。
言うなれば完全にギーシュ達は追い込まれていた。
奇襲にこそ成功したものの一発撃てば三倍の弾丸が返ってくる戦力差に、
落とした皿が割れるかのようにギーシュの率いる別働隊は分断された。
気付けばニコラと二人、本隊から引き離され森の木々を盾にしながら戦っていた。
「囮としてワルキューレを二体出す。
それに銃撃が集中したら続けて僕達も飛び出す。
再装填が終わる前に、連中を片付けるんだ」
「……ヤバイ橋を渡る事になりますぜ」
「橋があるだけまだマシさ」
ギーシュが造花の杖を振るう。
舞い落ちた花弁が地面に吸い込まれ、その場に二体の青銅の戦乙女が出現した。
再びギーシュが杖を振るうとワルキューレは敵の前へと躍り出た。
アルビオン兵の口から漏れた小さな悲鳴を銃声が塗り潰していく。
雨粒のように降り注いだ弾丸が青銅の身体を次々と穿つ。
続いてギーシュ達も遮蔽物から飛び出す。
591 :
ゼロいぬっ!:2008/05/04(日) 17:28:47 ID:yVmLBEoC
だが、そこに待っていたのは側面から迫り来る、別のアルビオン兵達だった。
正面にばかり気を配っていたせいか、反応が遅れたギーシュ達に向けられる銃口。
豪雨にも似た弾丸が押し寄せてくる様を想像し、不意にギーシュは瞳を閉じた。
願わくば痛みを感じる間もなく終わってくれる事を願いながら、彼はその瞬間を待った。
しかし、銃声の代わりに響き渡ったのは兵士達の断末魔だった。
咄嗟に目を見開いた彼の前でアルビオン兵達が倒されていく。
彼等に襲い掛かっているのは、手に剣や槍などの雑多な武器を持った平民だった。
その統一性のない服装は、それだけで彼等が軍人ではない事を伝える。
銃を持った兵達も平民達の数の前に容易く押し潰され、次々と槍に貫かれていく。
何が起きたのか分からないまま呆然とする彼等の上を、一隻の船が通り抜けた。
「船影を確認! 現在、船籍の確認中です!」
「バカな! トリステイン艦隊は壊滅した筈だぞ!」
慌てて駆け込む伝令にジョンストンは困惑の声を上げた。
艦隊司令が取り乱すなどあってはならないが、
それも致し方ない事なのかも知れないとボーウッドは思う。
自分達の手で確実に潰した筈の敵が出てきたのだ。
生き残りがいたとは思えないが余所から来たとも思えない。
同時に左翼で敵の増援が出現したという情報が艦橋を揺るがす。
まさかゲルマニア…いや、ガリアやロマリアという可能性も否定できない。
ボーウッドが固唾を呑んで戦況を見守る中、伝令が艦橋に新たな情報を齎した。
「船籍確認できました! トリステイン王国所属……交易船『マリー・ガラント』号です!」
突如、真上に現れた船影にトリステイン軍全体に動揺が走った。
よもや交易船が戦争に参加するなどと判る筈も無い。
あれは一体何処の所属の船だ?と騒ぎ立てる最中、『マリー・ガラント』は旗を掲げた。
だが、それはトリステイン王国の旗ではない。
「伯爵! 敵船が頭上に!」
「落ち着け。あれは確かにアルビオンの旗だが敵ではない」
詰め寄る兵に、モット伯は落ち着いた様子で答えた。
掲げられた紋章は赤地に横たわる三匹の竜。
それが示すのは『神聖アルビオン共和国』ではない。
既に失われた『アルビオン王国』の国旗。
「彼等は……友軍だ」
船に掲げられた旗の意味を余す所なく理解してモット伯は告げた。
592 :
ゼロいぬっ!:2008/05/04(日) 17:29:38 ID:yVmLBEoC
「……どうしても行くんですか?」
「ええ。私には最期まで見届ける義務がありますから」
シエスタの問い変えに振り返りもせずコルベールは答えた。
彼が去ってしばらく後、コルベールは再び立ち上がった。
……成すべき事は判っている。
この世界を愛した彼だからこそ破滅の引き金を引かせる訳にはいかない。
彼の行動を見届け、そして自分の手で幕を引こう。
犯した罪は決して償われる事はない。
人々を焼殺した呪わしい力も失われない。
……その全てを含めて今の自分なのだ。
だからこそ背負っていこう。
彼がその身に宿した“力”と同じ様に。
過去に縛られるのではなく受け入れていこう。
そして踏み出そう、あの時から止まってしまった時間をもう一度。
「でもここからタルブなんて…」
「いえ、問題ありません」
コルベールが小屋の扉に手を掛けて両側に開く。
それを目にした瞬間、シエスタの両目が大きく見開かれた。
そこにあったのは彼女の実家で眠っていた『竜の羽衣』。
長い時を経て、戦場を駆け抜けた“竜”が目覚めようとしていた…。
593 :
ゼロいぬっ!:2008/05/04(日) 17:32:02 ID:yVmLBEoC
以上、投下したッ!
更新チェックした時にはっ!
既に投下が終わっていたんだぜぇーッ!
乙。
投下乙
空飛ぶ禿の活躍に期待
GJ!
そろそろクライマックスかな?
時代背景を述べると
ジャン・コルベールが紹介した地球の事物のひとつである「電話機」は
4年後には トリステインだけで5千世帯の人々が所有していた
西方4ヶ国を縦断した「蒸気機関の鉄道」は 最高速度120q 平均80qに
達していた
また人々はスポーツ大会に熱狂し プロ野球のゲルマニア・リーグが誕生し
初の優勝チームは「ウインドボナ・ホワイトソックス」
ガリア・ダービーでは競争竜「ドミノ」が黒い旋風と呼ばれて不敗を誇った
そして「聖地」で開かれる第一回国際オリンピック大会では 厳格なアマチュア規定
があるにもかかわらず 各競技には賞金が出されていた
みんな生きてる〜?
オレのSS再開を待っている人ってどのくらいいる?
sien
ここにも居るぜ!
荒野の教会前で1万人ほど待ってます
603 :
零兄貴:2008/05/05(月) 23:47:31 ID:Ni5rHqUS
『投下した』なら使ってもいいッ!
次の章なんだが……
ジョジョ成分は申し分ないんだが、ブチャラティと露伴がほとんど出ないんだよね……
それでも、いいかな?
ブチャラティがみたいとか
露伴がみたいとか
シエスタがみたいとか
と言う人には、しばらく我慢してもらう展開になりそうだ……
正直スマソ。
今書いてるが、投下はGW明けになると思われ。
そのための避難所だ
自信を持て…お前のSSはその気になりゃあ何者にも負けねーじゃあねぇか?そうだろ?
おまえが決めるんだ……自分の「歩く道」は……自分が決めるんだ……
構わん行け、ってDIO様が言ってくれるよ
すまないな……投下はGW明けになるといったが……
GW明けといったら明日だよな……
スマン、ありゃ嘘だ。
『姉ちゃん!明日って今さ!』
>>603 避難所に『投下した』!!!
610 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/06(火) 20:48:14 ID:Dlutk5a5
やったっ!さすが味見職人!!!
おれたちにできない兄貴っぷりを平然とやってのけるっ!
そこにシビれる!あこがれるゥ!!!
さげ忘れスマソ
第三話、投下します〜
ゼロと使い魔の書
第三話
夢を見ていた。
いつもの学生服に身を包み、風の吹く草原に立っていた。
誰かの気配がして、振り返ると自分の母親がいた。
目が合う。何を言うべきか思いつかず、とりあえず軽く会釈をした。
さびしくはない。The Bookに記憶が残っている限り、それを読み返すことができる限り、さびしくはなかった。
琢馬は目を覚ました。窓から差し込む光はまだ弱弱しく、日の出からいくばくも経っていない。時間が分からなかったが、
洗濯をしてから自分の主人を起こしても充分だろう。
体を起こすと、見覚えの無い毛布が自分にかかっているのに気づく。自分の主人がかけてくれたのだろうか。
毛布をたたんでいる最中、ふと気になることができて、The Bookを出現させる。
自分の体験した事、そして感情が赤裸々につづられたこの革表紙の本には、読むものの魂に記述の迫真性をもってそれが「実際に起こったできごと」
だと錯覚させる力がある。
ならばもしも自分が死んでいて、幽霊の類になっているのだとしたら、この本は読む者を即死させることができるのではないか。
そして自分の身に、一体何が起こっているのか。
クレイジーダイアモンドに殴られ飛んだはずの記憶まで、何故か落丁することなく揃っている革表紙の本をめくっていく。
目的の描写までたどり着くと、躊躇することなく視線を落とした。
分かりづらい記述は数回読んでやっと理解する、ということも別に少なくはなかったが、今回は何度読み返しても分からなかった。
まるで途中から別の小説のページを差し込んだみたいに、茨の館からこの世界までの記述までは、唐突に終わり、唐突に始まっていた。
復讐を果たして、新しい人生を歩もうと思っていた。ならこの状況は何も困る事ではない。後腐れが無い分、むしろ望ましいとも言える。元の世界ではつらいことがありすぎた。
結局謎は残ったが、あまり興味は無い。誰かを憎み続ける日々は終わったのだ。行きたいところに行く事はできないが、今の自分にはこれで充分だった。後は何か、生きる目的を見つければいい。
琢馬はThe Bookを閉じようとして、思い直す。
「トリスティン魔法学院 洗濯場」で検索。
→視覚情報での検索ヒット数、0件。
→聴覚情報での検索ヒット数、1件。
昨日、あの草原から石造りの校舎まで戻る途中、メイド姿の少女が自分の同僚に洗濯しに行くことを告げているのを耳にしていた。そのときの会話に、洗い場の位置についてが含まれていた。
琢馬は周囲に散らばっている服を集めると、自分の主人を起こさないように静かに部屋を後にした。
その冷たく無気力な顔に、どこか見覚えがあった。
日の出とほぼ同時に目を覚ましたタバサは、ルイズがサモン・サーヴァントで呼びだした平民についてベットの中で考えていた。
もちろん、自分の考えは思い違いのはずである。理性のレベルではあんな青年を見た事はない、と結論付けていたが、どうしてもそれだけで片付けられなかった。
顔を洗えば何か思い出すかもしれない。タバサは制服に着替えると洗面所に向かった。
水を出し、手をつける。春といってもまだまだ冷たい。
濡れた手で顔をこする。眠気の残る頭がゆっくりと冴えてくるのを感じる。
そして顔を上げ、鏡を見た。
「あっ……」
何のことはない。身近すぎて思い出せなかった。見覚えのあると思っていた青年の無表情な顔は、自分の顔だったのだ。
タバサは水が滴る自分の頬をなでる。ひどい。いつの間に自分はこんなひどい顔になってしまったのか。
鏡の前で微笑んでみようとした。無理だった。数年前までは何の造作も無く行っていたことが、何度も死線を潜り抜けた自分には、無理だった。
泣きたくなった。いや、実際泣いていたのかもしれないが、まだ拭っていない水滴のおかげで泣いていないのだと自分を納得させることができた。
洗面台に両手をつく。膝が震え、呼吸が速くなる。
一体いつまで自分はこの状態で生きていかなければならないのだろう。何とかしなければならないと分かっていても、何も解決策が思いつかず焦燥感だけが積み重なっていく人生。
ふと、タバサの中で今まで夢にも思った事の無かった考えが、打ち消せない勢いで膨れ上がる。
「母を殺して自分も死ぬ……?」
タバサは傍らの杖を取り上げると、素早く呪文を唱え大量の水を頭から浴びる。
もう考えてはいけない。時間はあるが、濡れた制服はすぐになんとかしないときっと授業に間に合わないだろう。考えてはいけない。
「きゅいきゅい?お姉さまどうしたのね?」
何の脈絡も無い気がふれたような行動に、シルフィードが気遣わしげな声を上げた。
以上、第三話でした。
GJ!
乙乙ゥ!
GJ!
タバサが怖いことになってるな
神の左手ガンダールヴ
勇猛果敢な神の紳士
あらゆる恐怖を勇気にし
導きし我を黄金の精神を齎す
神の右手がヴィンダールヴ
心優しき神の金剛石(ダイヤモンド)
あらゆる傷を癒し直し
導きし我の町を守る
神の頭脳はミョズニトニルン
知恵のかたまり神の策士
あらゆる苦難を乗り越えて
導きし我に富を齎す
そして最後にもう一人……
記すことさえやれやれだぜ……
四人のJOJOに囲まれて、我は黄金の精神に目覚める……
このシリーズで珍しくブリミルが被害受けてないw
【修正】
ガンダールヴ(ジョナサン)の所は
×:導きし我を黄金の精神を齎す
○:導きし我に生命の賛歌を伝える
だったわ、脳内変換してくれorz
誰もいない今なら言える
アン+庚さんマダー?
ここで被虐してるキャラを比べると
ギーシュ>>>>>>>>>>>>>デルフ>ワルド>>ブリミル>>>>>>>>その他
って感じか?
>>621申し訳ない。最近モンハン2ndGやり過ぎてて止まってます。
一応しんでる訳ではないので多分その内復帰するんじゃないかと。
どうか気長にお待ちください。
>>623 こいつぅ!許せるッ!!
奇遇ですね俺もです。ちょくちょく書いはいるんですが
モンハン じゃ しかたないな
あれは悪魔のゲームだと思う、はまり具合的に
関係ないが3部格ゲーと作ったメーカー同じだしな。
甘いんじゃあねーか!
モンハンを切り捨てても、完結させるため、話を書き続ける!
それが投下じゃあねえのか? 「職人失格」だな。
お前何様だよ
お前ジョジョ読んだことあんのかよ
ブリミルの首から下を乗っとったシャイターンの復活のせいで
カトレアは病弱になっていることが判明
ルイズは自らの使い魔サイトを連れ聖地を目指すことに
タイムリミットは50日……
虚無十字軍の戦いが始まる……
という電波を受信した
兄貴だろ
だがネタだったら何言ってもいいとでも思ってるのか?
まあ、失格は言いすぎだな
商業作家って訳じゃないんだし、要するに趣味書いて貰ってるんだから
まぁ落ち着け
くされ脳みそのマンモーニはスルーしようぜ
>>633 そーゆー書き込みが一番まずいだろ
落ち着け
以下何事もなかったかのように大統領の能力を妄想するスレ
一昨日くるつもりだったのにさあああ、
急にネットが繋がらなくなったんだ……。
今から十分後がよくってさあああ。
637 :
使空高:2008/05/09(金) 21:05:10 ID:7Rqdah5K
一章七節 〜青銅は信念と錆に浮かれる〜
食堂は、一口にいえば大きく、二口目には豪奢で、三度の瞬きでまた違った絢爛さをリ
キエルに感じさせた。
上を全力で走れば気持ちいいだろうな、と思わずそう考えてしまうほど無闇に長く、だ
だっ広いテーブル三つ並ぶ。それぞれに座る貴族たちが、色違いのマントを身に着けてい
るのは、学年ごとに分かれているのだろうか。
長大なテーブルの広大な面積は余されることなく、目の毒になるほど色鮮やかな花々が
飾られている。両手に抱えられるほどに大きな編み籠には、みずみずしく艶めく果物が隙
間なく盛られている。適当に額縁を置けば、それだけで絵画が出来上がりそうだった。
やたらグニャグニャと捩れた燭台や、無駄に強く存在を主張する調度の品々は、個々で
はまるで統一感が見出せないが、この空間にあっては調和を成し、奇妙なほどに異質な感
がなかった。
どちらかといえば異物はリキエルの方で、リキエル自身も、人混み嫌いとはまた別の居
心地の悪さを感じている。ただその場に立ち尽くすだけで、指の先から這い登ってくるよ
うな違和感だった。つまり、どうしようもなく自分が場違いな気がするのである。
――行くか。
早くも折れそうな心を押し込めて、リキエルはデザート運びに取り掛かった。
どの生徒も食事を終えたばかりだからか、親しい友人や、近くに座った人間との適当な
雑談を楽しんでいる。
その合間を縫って、銀のトレイ片手にリキエルは、手早く素早く正確にデザートを配る。
これは存外に大変な仕事だった。
なにしろ、ケーキをトレイから落とさぬよう、卓に移すときに潰さぬよう気を張る。貴
族連中に肩や肘のひとつもぶつければ事だ、と気を使う。好みに合わないケーキを配って
しまったら、と気を揉む。紅茶のポットも、バランスを崩して落とさないように気をつけ
なければならなかった。
――もう少し……。
こういった仕事に慣れていた方がよかったな。金巻き髪の生徒とぶつかりそうになり、
慌てて身をよじりながら、リキエルはそんなことを思った。
「ン……?」
コツン、と踵に何かあたった。拾い上げてみると、手のひらに収まる程度の、紫色の液
体の入ったガラス壜である。誰かの落し物かと思い首をめぐらすと、今さっきぶつかりそ
うになった生徒が、焦燥したようにポケットを探っているのが見えた。
「これじゃあないのか? 探してるものは」
あいつのものか。そう思い当たり、リキエルはその生徒に声をかけた。
638 :
使空高:2008/05/09(金) 21:06:40 ID:7Rqdah5K
が、金髪の生徒はちらりとリキエルの方を一瞥しただけで、整ってはいるがキザったら
しい顔そのままに、キザっぽくマントを翻してスタスタと早足気味に離れていく。シャツ
のポケットに薔薇を挿しているのも、またキザだった。
リキエルは首をひねった。
「……違ったかァ?」
三歩近づけば手の届くこの距離で、聞こえなかったわけではないはずだ。ならば、人違
いだったのだろうか。そう思い始めると、生徒がポケットを探っていたのは、何か別のも
のを探していたのかもしれないとも、リキエルには思えてくる。
リキエルは、小壜のことは後回しにすることにした。気にはなるものの、ケーキ運びも
しなければならない。トレイに乗っていた分は全て配り終えたが、それで仕事が終わった
とは、リキエルは思っていない。今、食堂にいる生徒はざっと見回しても二百を下らない
ほどである。シエスタや、他のメイドたちがいかにうまく切り盛りしても、ケーキを配り
終えるにはまだ少し時間がかかりそうだった。
ケーキ補充のために、リキエルは厨房へと足を返した。小壜はトレイの上に置く。こう
していれば、落とし主が名乗り出るかもしれない。食事を運ぶトレイに、床に落ちていた
ものを載せるのは少々気が引けたが、たいした事じゃあないよなァ〜、よっぽど日ごろの
行いの悪いやつが軽い食中毒になるだけだ、と思い直した。
「あれ? それはモンモランシーの香水じゃないのか?」
リキエルは踏み出しかけた足を、ぶらりと元の場所に戻して振り返った。
声を上げたのは小太りの貴族で、見覚えのある丸顔だなと思えば、今朝の授業でルイズ
を馬鹿にした挙句、怪我を負って運び出されたマリコルヌだった。流石は魔法での治療と
いったところか、もう回復したようである。
「なんだ、見ない顔だと思ったら、ゼロの呼び出した平民じゃないか」
リキエルの顔を見て、マリコルヌは少し驚いたように言った。顔を覚えているのは、リ
キエルの方ばかりでもないらしかった。そのことにリキエルは別段驚かない。人間が召喚
される奇妙さは、今は大体知れている。印象に残るのも当然だと思った。
それよりも小壜のことである。
「持ち主を知ってるのか? この壜のか? さっきそこで拾ったんだが」
「それは『香水』のモンモランシーが自分のために調合してる、特別な香水だ。間違いな
い。そんな鮮やかな紫の香水は他にないからな」
平民であるリキエルの、不躾ともいえる問いかけに、しかしマリコルヌは気を悪くする
でもなく答えた。昼食の直後、満腹で機嫌が良いらしい。それか、胃に血が行っているた
めに、少し頭がボーっとしているのかもしれない。
「そのモンモランシーってのは?」
「ええと……お、いたいた。彼女だ。あの巻き毛の女の子さ」
マリコルヌは、その場からだいぶ離れた場所を指差した。その先には男女入り混じった
大勢のメイジがいる。巻き毛の女子も多く、この位置からでは顔の区別もつかない。この
マリコルヌとかいう太っちょ、実は異様に視力が良いのだろうか、とリキエルは思ったが、
それも一瞬のことだった。
639 :
使空高:2008/05/09(金) 21:08:10 ID:7Rqdah5K
――なるほど、巻き毛だな。
その女子で恐らく間違いはなかった。数ある巻き毛の中でも際立つ巻き毛。一際ロール。
巻き髪の権化。多段巻き髪である。
「一目でわかるだろう?」
「あれか。いや、教えてくれて助かった」
「あ、そういえば君」
礼もそこそこに、モンモランシーとやらの席へと歩き出したリキエルの背中に、マリコ
ルヌが声をかけた。
「ついさっきまで主人が探してたぞ。なんか知らないが怒っているみたいだったぜ」
「……」
リキエルはうめいた。なんとはなしにそんな気はしていたが、二度目のほったらかしは
いかにもまずかったようで、やはりルイズの不興を買ってしまったらしい。次やったら朝
食抜き、とそう言われた記憶があるが、その程度で済めばいいというのが希望的観測であ
ろうことも、なんとなくわかっている。
リキエルの足運びは、意図せず鈍くなった。
近づくにつれ、巻き髪の形がハッキリとするとともに、リキエルはマリコルヌのときと
同じように見覚えがあると思った。どこで見たのかを思い出して、同時に吹き出しそうに
なる。こらえ切れず、喉の奥からククッと笑いが漏れた。
彼女は授業で赤土をぶち込まれたうちの一人だった。よほど大口を開けて笑っていたの
か、大量に詰め込まれており、あごが外れる寸前の状態にまでなっていた。それが記憶に
残っていたのである。授業で見た時は、気の毒にとも思わないではなかったが、今になっ
てみると、他の生徒達の醜態も一度に思い出されるようで、笑えた。
「ちょっといいか」
そんな心中はおくびまでに止め、リキエルはモンモランシーに声をかけた。
「給仕が、私に何の用?」
こちらはマリコルヌと違い、ぞんざいな口利きが気に障ったらしい。不機嫌に眉根を寄
せてリキエルを見返してくる。平民に対する明らかな侮蔑を孕んだ視線だった。貴族意識
はかなり強いようである。
リキエルは特に気にせず、小壜を差し出した。
「これに見覚えはないか? さっき拾ったんだが」
小壜を受け取った途端、モンモランシーの顔色が変わった。
「これ、ギーシュにあげたやつじゃないの……。あいつ落っことしたわね!」
640 :
使空高:2008/05/09(金) 21:09:40 ID:7Rqdah5K
モンモランシーは小声で誰かを罵倒した。小壜はその、ギーシュへのプレゼントだった
ようで、どうやらそいつは落としたらしい。怒りはもっともである。
しかし、モンモランシーは本気で怒っているわけでもないようだった。というよりも、
怒っているのは確かなのだが、しょうがないわね、というような、どこか包容力のある怒
り様だった。微妙に惚気ているようでもある。そばかすの残る頬に僅かに朱が差している
ことからも、モンモランシーがギーシュとやらに、それなりに入れ込んでいるらしいこと
がリキエルには見て取れた。
「これの落とし主がどこにいるかわかる?」
聞かれ、リキエルは困った。それらしきやつはいたが無視されているため、確信は持て
ない。リキエルは、ギーシュとやらの容姿を聞いてみることにした。
「顔の特徴とか、背格好とかは? いや、格好はどいつも同じか」
「ギーシュは私服よ、趣味は悪いけど。特徴はブロンドの金の巻き髪で、顔は良いけど軽
薄そうな男。キザが気障な服を着てへらへら歩いてる感じって言えばわかりやすいわね。
それから、大抵は薔薇を一輪持ち歩いてるわ」
「…………なるほど、結局あいつだったのか」
金髪のキザ男。薔薇差しの気障。やはり先ほどぶつかりそうになった貴族である。
しかし、酷い言われようだ。入れ込んでいるらしいというのは撤回しようかと、リキエ
ルは思い始めた。
「で、どこにいるの?」
「こっちだ。動いてないんならな、そいつが」
リキエルは、案内のために来た道を戻る。どうせ厨房もその先なので、それは大した苦
にならない。そもそも苦というのであれば、この人間密集地帯にいること自体がかなりの
苦痛である。
銀のトレイを持ち直して、再度厨房へと足を向けた。
ギーシュ・ド・グラモンは昼食のあと、特にすることもなく食堂でぶらついていたが、
ふと思い出したように、ポケットから小壜を取り出した。意中の女の子からもらったもの
である。
「ふ、ふふふふ、ぐふふっ」
何度手にとっても笑いがこみ上げる。
その女の子、勿論モンモランシーのことだが、彼女にはプレゼントをあげても、もらうこ
とはなかった。この香水が、自分の気持ちが彼女に通じた証だと思うと、ギーシュの頬は
どこまでも緩んでいくようである。
ひとしきり気味悪く笑ってから、ギーシュは小壜をポケットにしまい、また歩き出そう
とした。そのとき、給仕をしていた平民とぶつかりそうになる。
641 :
使空高:2008/05/09(金) 21:11:10 ID:7Rqdah5K
ギーシュは驚いていた。ぶつかりそうになったことに関してではなく、平民の容姿――
特に身長にである。ギーシュは上背がある方で、それもあいまって容姿に関しては高い評
価を得ているが、男はそれよりもなお幾らか長身だった。
はてこんな給仕がいただろうかと、ギーシュは首をひねりながら制服のポケットに手を
突っ込んだ。
「ん。あれ、あ、あれ?」
と、先ほどまで手の内にあった感触がなくなっていることに気づいた。
向こうが慌てて避けたため、結局平民とぶつかることはなかったのだが、ギーシュも咄
嗟のことでわずかに身をよじっており、その拍子に小壜を落としてしまったらしい。
「これじゃあないのか? 探してるものは」
ポケットを探っていると、さっきの平民が小壜を掲げて声をかけてきた。
――まずい。
この場を、『彼女』に見つかるのはまずかった。席はそう遠くない。
小壜の中身がモンモランシーの香水であることは、色でわかる。ちらっとそちらを見れば、
既に気づいた様子の人間が何人かいた。自分がもらったものとはわからないだろうが、こ
こで名乗ればそれと知れる。
ギーシュはクールにその場を去ることにした。小壜はまた後で回収すればいいのだ。幸
い、平民がそれ以上追求してくることもなかった。
その直後、大抵つるんでいる騒がしいやつらに捉まり、今は雑談に興じている。
「なあ、ギーシュ! お前、誰とつきあっているんだよ!」
「誰が恋人なんだ? ギーシュ!」
「つきあう? 僕にそのような特定の女性はいないのだ。薔薇は多くの人を楽しませるた
めに咲くのだからね」
ギーシュは本気で言っている。自分を薔薇になぞらえる気障ぶりも本物なら、フェミニ
ズムのつもりなのか、多くの人を――というのも本意である。むしろ後者に関しては、ギ
ーシュ自身の信念でもあった。
ギーシュの気障は今に始まったことではないので、周囲は呆れることもなく、口々に囃
すだけである。
「キザだねェ〜。全くおたくキザだねェ〜」「キザだと!? 違うね! こいつは生まれつい
てのスケコマシだッ!」「すけこまし? プレイボーイって言えよ! 差別用語使うと評判
が悪くなる」「何だと……差別用語だって…〜? なんでも差別だって言うのはよくな
い!」「〜の無いのが終わりと言う……」「甲斐性の無いのが……ハッ!」
「……君らね、聞いていたかい? 僕の話をちゃんと」
NO,NO,NO,NO,NO! ア―――ハハハハハハ――ッ!!
笑い事を思い切り笑い飛ばす彼らに、ギーシュは顔をしかめた。そして演劇でするよう
な大袈裟な仕草で首を振り、「嘆かわしい!」とつぶやいた。
642 :
使空高:2008/05/09(金) 21:12:40 ID:7Rqdah5K
「嘆かわしいのはこっちよ!」
そこへ、ギーシュの思いも寄らない人物が顔を見せた。『香水』のモンモランシーと、先
ほどの平民――リキエルである。
ギーシュが、何故君がここに? とでも言いたげにだらしのない顔をさらしていると、
その鼻面にモンモランシーが何かを突き出した。件の小壜である。
「ギーシュ! わたしの香水を落っことすなんてどういうつもり!?」
モンモランシーの目くじらに比例するように、周囲は色めき立つ。
「もしやギーシュお前、いや、もしかしなくてもその香水はプレゼントか!」
「モンモランシーが、自分のためだけに調合してるはずの香水をギーシュに……確定じゃ
あないか!」
「お前は今、モンモランシーとつきあっている! こんなことを見せられて疑うやつはい
ねえッ!」
この話題は瞬く間に周囲に波及した。そしてその波紋は、ギーシュの恐れていた事態を
引き起こす引き潮となって、いずれ荒波を運んでくるのである。波風を止める手立てなど、
矮小な一人の人間には持ち得ない。
「ギーシュ様……やはり、ミス・モンモランシーと……」
そぞろな足取りで、一年生と思しき女子が歩いてきた。可愛らしい顔はしかめられ、上
気した頬は涙に濡れて、哀れをもよおす態である。
「ケティ! これには、ちょ、ちょっとしたわけがね、あるのだがね、ほらあれだ、うん、
そうなんだ、何がと言われればこれでそれがああなんだけどその……」
「もう聞きたくありません! さようなら!」
「待ってくれ! 誤解があヴッ!?」
ケティと呼ばれた女子は、惨めったらしく引きとめようとしたギーシュの手を振りほど
き、その横面を叩いて駆けて行った。顔を手で覆う彼女に、すれ違う貴族たちは一様に驚
きの視線を向けた。
「やっぱり、あの一年生に、手を出していたのね?」
頬をさするギーシュの前に、仁王立ちに踏み出したのは、目の奥に怒涛の憤怒を渦巻か
せる『洪水』、もとい『香水』のモンモランシーである。
その怒りの形相にギーシュは一瞬色を失ったが、持ち前の楽天脳みそをフルに回転させ、
モンモランシーに歌うように軽やかな口調で語りかける。
「誤解だよ。そう、これはちょっとした行き違いさ。本を繰る時にページとページがひっ
ついてて、そこをうっかり飛ばしてしまうことがあるだろう? それみたいなものでね、
彼女とはただ一緒に、ラ・ロシェールの町に遠乗りをしただけで――」
「手を! 出して! いたのね!?」
「お願いだよ『香水』のモンモランシー。咲き誇る薔薇のような顔を、そのような怒りで
ゆがませないでくれよ。僕まで悲しくなるじゃないか!」
643 :
使空高:2008/05/09(金) 21:14:10 ID:7Rqdah5K
「……」
スウッとモンモランシーの顔から怒りが、それからおよそ感情と呼べるものが消えた。
「あ、おい、ちょっと待て! そいつは……ッ!」
あれよあれよという間に、修羅場に身を置くことになり困惑していたリキエルだったが、
手に持ったトレイに置かれたポットをモンモランシーが引っつかんだところで、我に返っ
た。
怒り心頭の女の子。その目の前には浮気者。その右手には保温性抜群のポット。まだま
だ美味しくいただける、熱々の紅茶がある。それをどうするのか、インチキ霊能力者でも
予想がつくはずだ。
「熱つつづづつい! あつッ! ちょ、モンモラン熱い熱い! 待ちたまうぎゃ! 熱い
熱い熱い! ぎ、ギニャ――――ァッ!」
止めようとしたリキエルの声も空しく、熱湯は一滴残らず、気障男に降り注がれた。
「うそつき!」
怒鳴り、去っていくモンモランシーを引き止める者はいない。彼女の投げ捨てたポット
の、ガランガチャンという音が、遮られることなくその場に響き渡る。その音と、ギーシ
ュがのた打ち回る音以外は、ただ静寂だった。
しばらくの間、頭を抱えてばたばたともがいているギーシュだったが、やがて立ち上が
り、ハンカチを取り出し顔を拭いた。そしてのたまう。
「あのレディたちは、薔薇の存在の意味を理解していないようだ」
これにはその場の皆が呆れた。リキエルもそれは同じで、この件の当事者に準ずる身で
あっても、さすがにつきあいきれないと思った。リキエルはさっさと厨房に戻ることにし
て、ポットを拾い上げる。
「待ちたまえ」
そうギーシュに呼び止められ、訝しく思いながらもリキエルは振り向いた。ギーシュは
半眼になっており、口元は不機嫌そうに歪んでいる。
「君だな? モンモランシーに香水の壜を渡したのは」
「ああ、そうだ。親切なやつがいてな、持ち主を教えてくれたんだ」
「つまり、こんなことになってしまったのは君のせいというわけだ」
「……なんのことだ? なにを言っている」
呆れる、というよりも呆然としているリキエルに、ギーシュは芝居がかった仕草で指を
差し、言い放った。
「二人のレディの名誉が傷ついた、君のおかげでな。そういうことだ!」
「どういうことだ! 論理的じゃあないぞ! よくは知らないが二股かけてたんだろう、
お前がッ! そのことが今ばれただけだろうがァ」
644 :
使空高:2008/05/09(金) 21:15:41 ID:7Rqdah5K
糾弾を返答としたリキエルの言葉に、傍観を決め込んでいた周囲の貴族たちもうんうん
と頷き同調し、一様にギーシュを見据えた。
そのとおりだギーシュ、お前が悪い!
だが、生徒一同の声を合わせた叱責にも、ギーシュは、風はどこを吹いている、とでも
いうような態度を崩さない。
「ともかく、給仕君。君は彼女達の名誉を傷つけたんだ。僕に謝罪したまえ」
「それはお前だろう。しかも、傷つけたものは名誉とは違うんじゃあないか? オレが謝
罪する筋合いはないと思うんだがな、どっち道。ちなみにオレは給仕ではない」
そう言って、リキエルは小さく溜息をつく。リキエルはいい加減に面倒な気持ちになっ
ていた。いっそ頭を下げてしまおうかとも思っている。形だけでも頭を下げれば、目の前
の軽薄なお坊ちゃんなら直ぐに満足するだろう。
「ふん? ああ、その目、君はゼロのルイズが呼び出した平民だったか。平民は学が無い
のか知らないが、謝り方も心得ていないらしい。頭を下げて、すみませんと言うだけだよ、
君」
とはいえ、無体や理不尽を超えて、明らかに馬鹿なことを言われ続けて何も思わないほ
ど、リキエルは卑屈では無く、心も広くない。少し、カチンときた。
「小僧……おまえドが付く低脳か?」
しまった、と思ったときには遅かった。言ってしまったのは、一瞬の憤りが溜息ととも
に、口の端から零れたものである。あるいは、案外初めから、堪える気などなかったかも
しれないと、リキエルは我ながら思った。
ただ、リキエルは罵るにしても、自分にようやく聞こえる程度の小声で言うつもりだっ
たのである。だが後半の部分は、溜息で吐き出した息が予想以上に多量だったらしく、存
外に声が大きくなってしまっていた。ギーシュにはそれが、特に「低脳」の部分が、明瞭
に聞き取れたはずだ。
「どうやら、君は貴族に対する礼を知らないようだな」
どう取り繕うべきかをリキエルが考え付く間もなく、ギーシュは顔を赤くしていきり立
ちながら、それでも気障な物腰のまま、胸に差していた造花の薔薇をリキエルに突きつけ
た。
「よかろう。君に礼儀を教えてやる」
「いや待て――」
「問答無用だ! 遅いぞッ! 今さら後悔などしても! ……ヴェストリの広場で待って
いる。貴族の食堂を平民の血で汚すわけにはいかないからな」
「……」
「そうだ、時間をあげよう。ケーキを配る時間くらいならね。その間に覚悟を決めておく
んだなッ!」
645 :
使空高:2008/05/09(金) 21:17:11 ID:7Rqdah5K
ギーシュの目に、既にリキエルの姿はなかった。流れるような足取りで食堂を出て行く
後姿からは、自分の所作に陶酔しきった空気ばかりが、止め処も無くあふれ出ているだけ
だった。
ギーシュが去ったあと、食堂はにわかに騒がしくなった。生徒達は皆、興奮したように
近くの友人と囁き交わしている。
貴族による平民への折檻は、それを口にはしても目にすることは無い魔法学院生に、一
種の非日常を運んできたらしい。それが彼らの燻りをたきつけ、軽い熱狂を呼び起こした
のである。
中には、リキエルに同情的な目を向ける者もいないではなかったが、その目の奥にある
好奇の光は、どうしても隠し切れないようだった。
「……」
普段のリキエルであれば、ここまで来れば冷や汗の一つもかくのだろうが、今のところ
そういった、パニックに繋がるような兆候はない。余裕のある表情とはいえないが、保っ
ているようである。
「リリ、リ、リキ、リキエルさん、あなた……」
その代わりに、卒倒した後の人間のような、顔色さえ失くしそうなシエスタが、ガタガ
タと震えながらリキエルを見つめていた。騒動を聞きつけたらしい。
リキエルは、そんなシエスタの様子には構わず、訊ねた。
「シエスタ、ヴェストリの広場っていうのはどこなんだ」
リキエルの声は至って静かなものだったが、その声にシエスタは、猫だましをくらった
犬のようにビクリと動きを止め、ふるふると首を振った。
「まさか、行くつもりですか!? だめ、駄目ですダメダメダメ! 行ったら殺されちゃいま
す!」
「頼むから教えてくれ。その広場ってのはどこなんだ?」
「貴族を、貴族を本気で怒らせたら……!」
「なんなら方角だけでもいい。教えてくれッ」
噛んで含ませるような、それでいてどこか鬼気迫るリキエルの物言いに押されたか、そ
れとも単純に根負けしたか、ぶるんぶるんと首を振っていたシエスタは、しぶしぶという
ように口を開いた。
「…………東側です」
「東側だな。助かった」
言うが早いか、リキエルは食堂の外へと駆け出ていった。
シエスタはそれを茫然自失の態で見送り、しばらくその場で、呆けたように突っ立って
いたが、やがて何かを思い出したように、髪が乱れるのも気にせず走り出した。
646 :
使空高:2008/05/09(金) 21:18:41 ID:7Rqdah5K
空気読まずに投下しましたッ
も……もしかして次スレを立てるのは…オレか!?
>>646 GJ!リキエル普通の人だなあ……対応が。
そしてギーシュ。普通の対応しただけのリキエルに八つ当たり……
血統どうするのか、期待してます
もう480か……だんだんスレの密度が濃くなってきてないか?前のスレより100くらい早い気が
誤字った……orz
なんで決闘と血統を間違うんだ俺
| 三_二 / ト⊥-((`⌒)、_i | |
〉―_,. -‐='\ '‐<'´\/´、ヲ _/、 |
|,.ノ_, '´,.-ニ三-_\ヽ 川 〉レ'>/ ノ
〈´//´| `'t-t_ゥ=、i |:: :::,.-‐'''ノヘ|
. r´`ヽ / `"""`j/ | |くゞ'フ/i/ 関係ある
. |〈:ヽ, Y ::::: ,. ┴:〉: |/ 行け
. \ヾ( l ヾ::::ノ |、 我が息子よ
j .>,、l _,-ニ-ニ、, |)) GJ
! >ニ<:| 、;;;;;;;;;;;;;,. /| ___,. -、
| | !、 .| | ( ヽ-ゝ _i,.>-t--、
ヽ| | ヽ\ _,..:::::::. / .| `''''フく _,. -ゝ┴-r-、
..|.| | :::::ヽ<::::::::::::::::>゛ |_ _,.-''"´ / ̄,./´ ゝ_'ヲ
..| | | _;;;;;;;_ ̄ ̄ |  ̄ ̄ / _,. く / ゝ_/ ̄|
:.ヽ‐'''!-‐''"´::::::::::::::::: ̄ ̄`~''‐-、_ / にニ'/,.、-t‐┴―'''''ヽ
\_:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\ / / .(_ヽ-'__,.⊥--t-⊥,,_
\  ̄\―-- 、 _::::::::::::::::::::__::/ / /  ̄ ) ノ__'-ノ
\ \::::::::::::::`''‐--‐''´::::::::::/ / / / ̄ rt‐ラ' ̄ ̄ヽヽ
ヽ ヽ\ \:::::::::::::::::::::::::::::::::::::/ / ゝニ--‐、‐ |
l ヽヽ \:::::::::::::::::::::::::::::::/ /‐<_ ヽ |ヽ
モンハンだろうとROだろうとリネージュだろうと!
好きなだけプレイして! 満足したら続きをお願いします(`・ω・´)
アンリエッタ+康一です、略すとアンコウです、続き待ってます。
リキエルGJ!
そういやバイクがあるから轢き逃げが(ry
リキエル頑張れ超頑張れ
/⌒i / / //⌒j ./ヽ /
. l l /__/ // _ ./ .l /
. l ノ/ / .!.._/ r┐/ /.
.._ ¨´ / └' ¨´
つ --‐─…─-、,、ミ ̄/`
/ /7 ./¨ヽ-゙‐'"^! i/
/ノ .l ! //i
、.._ U ヽ! ,. 、 r レ'/
...,,二ニ ‐- ==ィ_jノ/f
'"ィ三ミ、ヽTニ(. tィタ!、 ワシだけか!埋めているのは
ヒ. _,二/ ̄i ト-イ \
>==" ', ,. i. 「.フ
i U ヽ‐-ソ/
//,ム-、∠,.,.二, /`丶、
///‐l.‐r ヽ--〈 / /ヽ,
l i ヽ-'"´ ̄ ̄ r' .// /
l lヾヽ. ´/ ̄ヽ i / //
ド、l i | i l l ノ /、//
ヽ-、、,.,.ノハ / `
っと忘れえていた!
通常時のリキエルが常識人過ぎて吃驚したぜ!GJ!
――――- 、
:::::::::::::::::::::::::::::` 、
:::::::::::::::::::::::::::::::::: :\ _.. -──- .._
:::::::::::::::::::::::::::_,、,ノ、:::\ ,、 '" ` 、
-、|-─ |ニニ‐' ´:::::::ヽ:::::ヽ'/ \
‐ l : ̄: !:::::::::::::::::::::::::.!::::::ヽ . : .ヽ ,. -''" ̄ ̄` "" ''' 、
:::::!ヽ::::::ト、::::::ヽ:::::::::、:.!::::::.! . : : . : . : : : :',/ ヽ...
:::::l ヽ:::::.!ヽ:::::::ヽ:::::::.!: !:::::| / . : : / : . / : : i : :. : : : ', / 、-―――- 、
::::::l ゝ::::!-ヽ::::::.!::::::::!: !::::|l〃:. / :\/: : :/l: : :/l: : : :: .: : : : i/ // 、 ヽ
:、:::.!. -ヽ:ヽ ヽ:: !:::::::|、!::::!i: : : /: :/l: : > 、./|: :/ :l: : : !:!: : : : : :l // ヽ! ヽ \ ___ _
:ヽ::::| ,ィ===、ヽ:|:::::::!::::::.!li. : :/ r‐─- 、/\/: /!: :://:: ::! : :l: !/ / / // /l l l l、 ヽ ヽ / / ト、 l, ´,. - ´ `>
ヽ\:!´| '゙;::: | l/ヽ::::|::::::!i: :/ /廴_ノ ハ l/:./ l :/:/:://: : !.,'l ! l! /77ヽ| | /! ハll l !! ! !! / l ! | ヽ 》、 i `丶、
ヽ !ヽ_ノ:l /:ヽ:!:::::|::/./ ヽ::::`:/ l/ _.!:/:/:// : :/// !l !! //行ミ l l/ | /二lト || | ||__厶川|/ | ト、 ',. ハ /-‐′ \
ー-' /::::::!::::::ll:: イ `'゛ /_/ 〉:/: : ::/:/ニ! !l!ll/ ヽ;;;シ イ::.リ 〉/|| | ||不ト、 `  ̄ ´ ヽ l/l /__ ,ハ \
′ /::::::::|:::::::.|: l.ト、 〈:://レ'l:/::.,.イ/い l ll ! `¨ `=゛ /||//l/:r′ イ仞ト、ハ | | `メ、./ ! / ヽ._
ー--‐ /:|:::::::::!::::::: !l. |l \ _ ゝ / |/:/l/ ヽ !ll _ 〉 ! ||//ゞー'' {i::r' /l | ィォ=ミ、′/ /__ィ !`T´
/ :::::|:::::::::|::::::::.!l リ ` r -- イi l、/、 |l \ ,....., ノ! || 、 ,'ソ| | 弋zり /-‐'"_ /`/ /
ー-‐ ''´ ト--、:::!:::::::::|::::::::.!く l li | li l l lヽ:. ヽ /ヽ、 、  ̄ / ! lト、 __ , / | |\ ヽ fリノイイ/
` /.:.:.:|::::::::::l、:_:_:::: ! \ {`‐=くli ..!l l ヽ:..ヽ /ヽ:::::`=-、 ヽァー''´ ル’| >、 , イ | | ト、! _ ' / イ
__ /:.:.:.:.!::::::::l:|.:.:./`! ヽ }〈Y└リ、 ヽ:. ヽ `=、:::::::ヽ l`!}L..__ト-〈 ` ー-、 「 ̄ 丿 | | !、 _,ノ /!
,.-、\ /:.:.:.:.:l:::::::::|:l/: / 丶、  ̄ V¨ i ヽ \: ヽ ....:::::::::::::ヽlj / \ /| 厂Y´ ‐──┴'| |ヽエT::´:| ∧ヽ
,.-、\/:.:.:.:.:.!:::::::::|:l:::/ / ! 〉''"¨ヽ人 ヽ ヽ::::::::::::::::::::::::::==}/ }\/、>i|、∧ ノ\:::/::::/:\| !:::::f⌒ヽ! | |、` ̄!
クギブラック クギイエロー クギレッド クギグリーン クギピンク
貧 乳 戦 隊
/' 7'7 /' 7'7
/ ̄ ̄ ̄ / _/ ̄/ー'ー/''7 / ̄/ /''7 ./__7 /''7ー'ー'
/ / ̄/ /./__ _/ / / __  ̄ / / /__7 / / _ ____
ー' _/ /./__ __/ / /_ノ ./ ___ノ / ___ノ /r'└┐/____/
/___ノ /_/ ,/___ノ /__,/ /__/ 〈/7/
セックスピストルズと同じ五名ですね!
空高く・グッジョブ!
では。
,..、
,rニ二ゝ、
/ l l、 ,、
| 、 ト. ヽ ,. /
| | ハ. |/ '
ヽ/、_,...{、,イヨ´
>‐--ャド.〈
j__,.ノ´ lイ|
,.ィ ,r',ハ ヽ Y
| レ'/、 〉 | |
ヽヽ:;;;::;} l | ,! ,,;::;
`゙l;::;;:).| ,! ,' __;r:;;:,.,::.:
. ヾ::;:l| / /゙;;::`;:;;::..::;:
. {:;;:l/ /''::;:,:::;;;'':.::,:;
゙~/ {
L三、
〇*|。・+|。.*゚ | ・ | .+o *||。゜+ | o。 | *。 |
。||+*i。゜ +・ o |* 。 +・ _,,. - ..,_゚ 。|*o ゚ .|+ |. *
*o |! 。*:゜〇 ・ | o+。,.イ‐-、 丶、。*゚・ || ・ |o
o○+ | |i 。|〇+ * 。/ i ', ハ ・|*゚ + |。
|o |. ・゚+〇。 + *||. 。,' ヽ. }、 !i *゚・ +゚ || o
゚ |i *o゚*゚+゚ ||o ○・ +゚ i F‐、{ \ ,ィ.!*゚・+゚ || *゚
。*゚. .l ・+゚ | | o ゚ 。i/¨ヽ. l: :l :〉>: `:ー一';ル'O。 |* 。|。
+゚ || o.○+゚ || o* ○,..ィi:f:ゝヽ {<ヽ〉: :i : : : :》:} | ・ | .+。
。+〇*・ o | * 。/_;.::l入__、 :l.i: ィt:ッ、シ、 ;.ィfフ*゚・ +゚ || o ○
+・ +。 o |* 。/:::L.ノ:::i: : :.l: : )): : ̄ : : ,:i `/、○||+ 。 |+
|o | ・゚ /::::::::i::r‐'ハ: : \' i.: : : :._'´: !:/:::::ヽ+|。゚・*゚ o
*゚・ +゚ | o ./:::::::::/ト、ー'::::::;\: :\: : ←-`オ:::::::::::::',゜* |。゜*
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_|\∧∧∧MMMMMMMM∧∧∧/|_
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|\./| ┬ /\ ──┐| | \ ヽ| |ヽ ム ヒ | |
|. | ・ | ・ / \ / / | ̄| ̄ 月 ヒ | |
|. | ┴ \ _ノ _/ / | ノ \ ノ L_い o o
> <
埋め
だがアンダーワールド
シビル・ウォー
埋め
銃杖サブゼロ鏡吉良の投下を次スレでもお待ちしてます
埋め
埋めてしまえばよかろうなのだァー!!
『埋めて次スレに行く』!
それだけよ……それだけが満足感よ!
シビルウォーネタで書く人がいそうな予感
シビルウォーとか水メイジにフルボッコだし
殺したらメイジの負けだけどな
.38口径のボディーガードが5発だからてっきり5名かとオモタ
>>670 じゃあクギメタル(アルフォンス)でもいれてみるか。鎧だが
埋め
梅
どうしてもフーケ対ストレングス戦の構想が思い浮かばない梅
>>675 別にスタンド能力を使わないバトルでもいいんじゃね?
面白みには欠けるけど
確かオランウータンの腕力・握力は常人を凌駕する筈だから
デルフ持っての真っ向勝負でも才人以上に有利なはず
おまけに人間並みに頭もいいから破壊の杖もちゃんと使えるだろ
thx
船で移動するまでスタンドの出番がないと言うのも珍しいな
スレはもう、どこへも向かうことはない。
特にスレが「真実」に到達することは、決して……
「埋め」という真実にさえ、到達することは決して…『無限に』
終わりのないのが『終わり』
それが『ゴールド・E・レクイエム』
はッ!
何を…書き込んでいるんだ……オレは!?
オッ…オレはッ! 初めから何も埋めていないッ!!
、 ヽ i /
,' / ヽ/「t~~Vヽ {
,'/ \_/ ヽi:':'|
/ ,,--' ヽ\ ヽ:':'} ,,-'~
/ / ,__ヽ |l ト' ,,--'~~
./ / /'  ̄ ̄\i|/ ,/´
~~\ / /ノ / ミ `ヽ~
`r{ / ミ / ,、 ,≡≡, ,,ヽ
`ヽ、{ ミl ヽ,,':-…-〜' ).|
ノ i ,,,,i `'``',三,,,'`~ ヽ、
{ ':': l {: : } , `'~~(~~'} ヽヽ
) :':イ`iヽ: :iヾ:´ 丶 ; | ,, ト:} だんるえ考に逆
):':':':':|'人 }: :i ,ニ、ヽ, ; |丶ニ .ヽ)
く ':':':':':i.V'人ト ぇ,-Fテ`,/}}}`f士 ,|´,,_
/':':':':':';='ミ\‐-ニ,, ̄-<´{~`ヽ-一ミ,_,';';)
~くミ川f,ヾヽ ヾ~ヾヽトシヽ| }': ,〈八彡'';')
>,;;`` ヽ丿川j i川|; :',7ラ公 ,>了
~) 〃ヽヽ` `;ミ,rffッ'ィミ,ヽWiヽミ
ゝ ,,〃ヽヽ``` ``'' ,彡'~\リ}j; fミ
~~`{ ;;`` 彡彡 i 、S`
\_, 三彡/-v'`~
'--‐冖,___,--'
>>626 …5部ゲーは無かった事になっているのかなぁ〜。
ちょっとさみしいなぁ〜。
四部の格ゲーを出してくれんかな
ハンドが瞬間移動したりエコーズが飛び道具モード(1&2)と接近戦モード(3)に切り替え可能で
スーパーフライはスパコンで攻撃反射できたりとか
ハイウェイスターがアレッシーみたく嫌らしい性能になってそうだが
ハイウェイスターは三部ゲーでのンドゥール扱いですね
メイド・イン・ヘブンが召喚されたら
シエシエがヘブン状態
,..、
,rニ二ゝ、
/ l l、 ,、
| 、 ト. ヽ ,. /
| | ハ. |/ '
ヽ/、_,...{、,イヨ´
>‐--ャド.〈
j__,.ノ´ lイ|
,.ィ ,r',ハ ヽ Y
| レ'/、 〉 | |
ヽヽ:;;;::;} l | ,! ,,;::;
`゙l;::;;:).| ,! ,' __;r:;;:,.,::.:
. ヾ::;:l| / /゙;;::`;:;;::..::;:
. {:;;:l/ /''::;:,:::;;;'':.::,:;
゙~/ {
L三、
/´ ,:' ::.ヾ=',, -―-_、、.. .:ノ‐v'::.:
, ,、、 /,ィ彡-゙' `ヽ>-、::.:.l:ヾ:
ゝ_,r'^'y/ {ィ`Y´^'モz:(_:..,ノ、r'"~:
.::ヾ'::..:///,ケ ,:' `" ,ィ'::::.Y__::::.:
:::.:.:.:}///fハ, :' ,ィァ'ミr'―'"~ し':
:::::.:.//ハヾ',丶 /' ゙ラ(::. r- w<'^'':
ーイ//ニゞ、ヾ ̄`~`{⌒ゝr―'′:
ノル'ij⌒`'ヾij==そ´..:::..j..:::..:::::
:./フ ヽ::.::(_::.:.,r‐,x~ヽ、'':
,イ!,,. :: ::: ::: :.. ヽ:.:.:.:.:.:ア´,/ ,:' ノ:
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V、ト、 て>ト、 & LUCKY LAND COMMUNICATIONS
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