乙でぃすbyシマリス
>>1 乙です。
そして前のスレで10時ごろにスパロボEの第3話を投下しますと予告します。
>>1乙です
R−TYPE氏の次に投下予約しています。
7 :
R-TYPE Λ:2008/03/16(日) 21:53:01 ID:Gmbs3lDz
>>1乙です
そしてスーパーロボット大戦X氏の投下終了後、11時まで余裕があれば、此方でR-TYPE Λ 第8話を投下させていただきます
>>1乙ー。テンプレにサイト追加したのか。SS書いてみようかなって人は是非参考にしてほしいな。
9 :
R-TYPE Λ:2008/03/16(日) 21:55:27 ID:Gmbs3lDz
>>6 失礼しました
今回の投下が少し長くなりそうなので、11時までに投下が終わらなそうだと感じたら
リリカル! 夢境学園氏の後に回ります
当方の都合でご迷惑をお掛けしてしまい、誠に申し訳ありません
10 :
魔装機神:2008/03/16(日) 21:56:12 ID:/w7GjX0c
乙です。
26話出来たけど何時ごろがあいてますか?
明日の朝まで投下できないなら明日にしますが。
>>9 いえいえ、別に構わないですよw
お先にどうぞ。
のんびり読みながら投下を待ちたいのでw
正直自分の作品より楽しみですから、長くてもこちらとしては問題ないですから
投下してください。むしろお願いします。
さすが
>>1!俺達に出来ないことを平然とやってのけるッ!そこにシビれる!あこがれるゥ!
14 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/16(日) 21:57:53 ID:K+NxEHmb
>>12 了解しました
では、お言葉に甘えさせていただきます
>>16 こちらは投下完了しました。どうぞ投下を、そして支援
25分より投下させていただく事にします
今回も少し長くなってしまったので、手の空いている方が居られましたら、支援をよろしくお願い致します
俺の兄貴のアローヘッドbkで支援だ!
石川県民的とっつき支援である!
ナイトガンダム「かしこまりました。支援いたします」
スカ「ふむ。見せてもらおうじゃないかね、外宇宙に潜む敵へと対抗するためだった狂気を」
というわけで支援ですw
ロール「ダンガイオー、支援のために見参!」
それでは投下します
鼓膜を劈く爆音と共に、眼前の鉄塊が業火を纏い四散する。
衝撃に煽られ、尋常ではない規模の爆発に焼かれ、無数の破片に肌を切り裂かれながらも、致命的な光学兵器の一撃が放たれる事なく霧散した事を認識し、ヴィータは彼方の影を見据えた。
黒煙に覆われた空、その中に浮かび上がる奇妙な影。
無骨な鉄の塊としか表現できないそれは次の瞬間、大気を打ち破ってヴィータの頭上を突き抜けた。
爆発と同時、咄嗟に騎士帽を押さえていた手が、衝撃波に煽られ後方へと振り解かれる。
それでも手放さなかった騎士帽が、手を通して伝わる不快な振動と共に千切れ飛んだ。
吹き飛ばされるままに、身体を半回転させるヴィータ。
上下の入れ代わった視界の中に彼女は、自身が狙いを定めていた人型兵器へと突進する、不明機体の噴射炎を捉えた。
そして、次の瞬間。
「・・・ッ!」
大気が、震えた。
ヴィータが、それを音として受容する事はない。
彼女の聴覚は、ガジェットの爆発と不明機が通過した際の衝撃音により麻痺しており、未だ正常な機能を取り戻してはいない。
しかし、全身を巨大な空気の壁に打ち据えられたかの様な衝撃、そして彼女の目前で起こった信じ難い現象が、周囲一帯を震わせる程の轟音の発生を感じ取っていた。
常軌を逸した光景、衝撃に揺れる視界。
腕だ。
人型兵器の腕が、まるで発射されたミサイルの様な勢いで、遥か彼方へと吹き飛んでゆく。
脚部は半ばより千切れ飛び、ハイウェイを貫通して高架脚をも打ち砕き、更にその下のアスファルトへと激突して瓦礫に埋もれた。
無数の装甲の欠片が花火の様に四方へと散り、宛ら散弾の如く周囲のビル群を襲う。
僅かに残っていたガラスが軒並み砕け散り、壁面は目も当てられぬ程に穿ち砕かれ、最早廃墟としか言い様のない惨状と化すビル群。
不明機の陰に位置していたヴィータは被害を免れたものの、次いで視界へと飛び込んだ光景に、我が目を疑った。
「・・・カートリッジ?」
不明機後部より排出される、無数の金属筒。
それは、カートリッジシステムを搭載したデバイスを用いる彼女にとって、見慣れた動作。
「排莢」だ。
「・・・何、だ?」
そして、不明機が進路を変えた事により、その側面がヴィータの視界へと曝される。
他の不明機体と比較して明らかに肥大化した機体の各所から突き出す、幾本もの鋭く長い針状の突起。
漆黒のキャノピー、その後方に位置する巨大な盾。
しかし何より彼女の目を引いたのは、機体下部より突出した巨大な「杭」。
不明機体の全長とほぼ同じ長さのそれは、微かに紫電の光を放つと、それを振り払うかの様に機体下部へと引き込まれた。
接近戦用の射出型刺突兵器。
それを理解した瞬間、ヴィータの脳裏に浮かんだ言葉はただひとつ。
「正気じゃねぇ・・・」
支援
その言葉は、一連の戦闘を目撃した全ての管理局員の心境を、これ以上ないほど的確に言い表していた。
高機動がアドバンテージである筈の戦闘機に、よりにもよって超至近距離でしか用いる事のできない格闘兵装を搭載するとは。
質量兵器の廃絶を謳う管理局ではあるが、過去の大戦で用いられたそれに関する知識は、僅かではあるが局員も訓練校時代に座学として学ぶ。
しかし少なくとも、航空機に格闘兵装を搭載するなどという常軌を逸した兵器の存在については、ヴィータの知るところではなかった。
その間にも、刺突兵装を備えた不明機は次なる標的へと狙いを定め、燕の様な鋭さと鷲の如き獰猛さを兼ね備えた機動で襲い掛かる。
標的は管理局部隊と交戦中の人型兵器、その周囲には護衛の様に複数のガジェットが纏わり付き、地上から放たれる魔力弾に対し突撃しての自爆行為で以って応戦していた。
不明機はその背後より急接近、質量兵器を連射。
ガジェットが反応し、ほぼ同時に被弾して装甲から火を噴く。
僅かに軌道を修正し、直後に7機のガジェットが不明機へと突撃を開始した。
不明機、進路そのまま。
このままでは、7機のガジェットと正面から激突する事となる。
腹部の負傷さえ忘れ、思わず声を上げんとするヴィータ。
しかし、彼女が思い描いた不明機とガジェットの衝突が、現実の光景となる事はなかった。
何時の間にか、上空より舞い降りた2機の不明機体。
突進する不明機の前面へと同速度で並んだその2機は次の瞬間、金色に輝く弾体を正面へと射出した。
発射された弾体は瞬時に炸裂、2機の前方に同速度にて前進する半透明の「壁」を形成。
続く光景に、ヴィータとリィンは言葉を失った。
正面から3機の不明機体へと突入したガジェット群が、「壁」へと激突・爆発したのだ。
魔法陣でも物理障壁でもない、立体映像の様な金色のブロック状構造物が寄り集まった、光る壁へと。
それだけに留まらず、激突したガジェットは「壁」を僅かたりとも貫く事ができずに、その壁面で爆発を起こした。
あれだけの速度・質量を兼ね備えた突進、更には続いて発生した爆発でさえ、あの「壁」を突破する事は叶わなかったのだ。
その様子を唖然として眺める2人。
直後、爆炎を突き抜けて3機の不明機体が姿を現す。
前衛の2機が大型ミサイルを発射、離脱。
人型兵器の後方から現れた3機のガジェットがそれを受けるも、余りの威力に突撃へと移行する事もできないまま爆発、逆に人型兵器が爆炎に呑まれる。
その隙を突き、残る不明機体が急速接近、減速すらせずに人型兵器の胴部へと突入。
次の瞬間、巨大な杭がその胴部を打ち抜き、背面へと貫通する。
否、貫通などという生易しいものではない。
胴部が一瞬にして消し飛び、四肢は先程と同様に四方へと弾ける。
不明機体後部より排莢される、無数のカートリッジ。
火花と破片が空中に巨大な花を形成し、一拍遅れて周囲に異様な轟音が響き渡った。
膨大な量の炸薬が弾ける際の、思わず身が竦む様な苛烈な音。
そして分厚い鉄板を無理矢理に打ち抜く際の、生理的不快感と本能的な恐怖を呼び起こす音。
鼓膜を襲うそれらに対し、呻きと共に思わず閉じた目を再度見開いた時、「それ」がヴィータの視界へと映り込んだ。
「・・・ヤバいッ!」
無意識にそう吐き捨て、ハンマーフォルムへと戻っていたグラーフアイゼンを担ぎ直すヴィータ。
自身が出し得る最高の速度で、不明機の許へと向かう。
「気付いてねーのかッ、アイツ!」
日本三名園キター支援
ブーストナックルで支援!
不明機の進路上、眼下のビル群。
その中の1棟、辛うじて原形を保っているビルの屋上を突き破り、あの人型兵器の左腕、巨大な砲身が突き出していた。
何らかの欺瞞装置を用いているのか、不明機がそれに気付く様子は無い。
それどころか、急速に接近するヴィータに気を取られたのか、唐突に進路を変更し彼女の方角へと向き直ってしまったのだ。
「ッ! このッ!」
咄嗟に急制動、指の間に挟んだ4個の鉄球を宙へと放るヴィータ。
それと同時、担いでいたグラーフアイゼンを、軽々と片手で振るい。
「大バカ野朗がッ!」
魔力によって宙へと固定された鉄球に、渾身の力で以って叩き付けた。
甲高い衝撃音。
飛び散る火花と共に4個の鉄球が赤い魔力光を纏い、銃弾もかくやという速度で不明機体へと向かう。
シュワルベフリーゲン。
当然、ミサイルにも遥かに及ばない弾速のそれを、不明機は危なげもなく躱し。
同時に、直下から放たれた人型兵器の砲撃をも回避した。
「これで気付いただろ、マヌケ!」
ヴィータのその叫び通り、不明機は眼下の敵に気付いたらしい。
すぐさま進路を変更し、しかし背後から高速で接近する影に反応。
ガジェットだ。
凄まじい白煙を噴きつつ、不明機へと突進する。
しかしそれは、彼方より飛来した4条の赤い光に撃ち抜かれ、爆発。
先程ヴィータが放ち、その後も操作を続けていたシュワルベフリーゲンだ。
「アイゼンッ!」
『Raketenform』
ロードカートリッジ、グラーフアイゼンをラケーテンフォルムへ。
ガジェットの爆発を見届けたのか、不明機はヴィータから注意を外し下方からの砲撃を回避しつつ横回転、上下を入れ替えた状態から更に機首を直下へと向け、後部ノズルより業火を発しての垂直降下を敢行。
先程のガジェットに勝るとも劣らぬ加速もそのままに、ビル屋上を突き破って現れた人型兵器の上半身へと質量兵器を撃ち込みつつ突入、刺突兵装の一撃を見舞う。
しかし、先程の攻撃から然程時間が経たない内の攻撃である為か、はたまた何らかの問題が発生したのか、その攻撃には先の2回の様に異常なまでの破壊力は見られない。
それでも左腕の砲身を粉砕した不明機であったが、人型兵器と衝突した際に残る右腕によって組み付かれてしまう。
機体各所からスラスターの炎を噴出させ、拘束状態からの脱出を図る不明機。
しかし、人型兵器は自身のバーニアを作動させ組み付いたままの不明機と上下を入れ替えると、そのまま半壊した屋上を貫いてビル内をも突き抜け、壁面を内部より打ち破ってハイウェイへと激突する。
崩れ落ちるハイウェイ。
人型兵器の攻勢は止まるところを知らず、更に全身を不明機へと圧し掛からせた上でバーニアを作動、そのまま機体を押し潰さんとする。
この時点で既に、不明機の機体各所に配された針状の突起は1本を残し折れ飛び、左主翼は根元から完全に脱落していた。
推進部にはこれといって重大な損傷を負った様子は無いが、このままではいずれ機体ごと押し潰されるだろう。
上空の不明機体群も、味方を巻き込みかねないこの状況で手出しはできないのか、周囲を旋回するだけだ。
しかし1人だけ、この状況下で人型兵器へと攻撃を仕掛ける者が存在した。
支援です。
バリア波動砲はゼロ距離発射してこそその真価を発揮する!支援
バイド支援
「っりゃあああぁぁッッ!」
ヴィータである。
魔力を推進剤として独楽の様に回転しつつ、一気に距離を詰め全力でスパイクを人型兵器へと叩き付ける。
スパイクの先端は彼女より遥かに巨大な人型兵器の胸部を捉え、信じ難い事にその鋼鉄の身体を撥ね上げた。
貫かれこそしなかったがその胸部装甲は大きく陥没し、不明機を捉えていた右腕も宙へと投げ出される。
それでもすぐに体勢を立て直し、その右腕を不明機の存在していた場所へと叩き付ける人型兵器であったが、既に其処には不明機の影も形も無かった。
すると今度は標的を変更したのか、頭部装甲の隙間から覗く複眼状のセンサー群らしき装置が、ヴィータへと向けて微かな光を放つ。
その光景を前にして、しかしヴィータは慌てるでもなく、グラーフアイゼンを杖代わりに傷付いた身体を休めていた。
彼女を叩き潰さんと、人型兵器がその腕を振り被る。
と、ヴィータがその「隣」をついと指差し、口を開いた。
「だからさぁ」
その言葉に反応した訳ではないだろうが、何らかの反応を捉えたか、人型兵器が自身の左側面へと振り向く。
次の瞬間。
「周りは良く見ろっつってんだろ、バカが」
大気の破裂する轟音と共に射出された巨大な「杭」によって、人型兵器は木っ端微塵に吹き飛んだ。
パンツァーヒンダネス。
赤い防護障壁の外を、轟音と共に無数の破片、そして凄まじい爆風が背後へと突き抜けてゆく。
その凄まじい衝撃と飛来する破片は、本来ならば一瞬にして障壁を打ち砕く程の威力を秘めていた。
しかし、ヴィータが直前に陰へと駆け込んだ、巨大なハイウェイの残骸との接触によりその威力は減衰し、障壁を破るには至らなかった。
そして、爆風が奏でる壮絶な演奏が止んだ頃、ぼろぼろになった騎士帽を頭に乗せたヴィータが、耳を押さえつつ瓦礫の陰から身を乗り出す。
「あー、いってぇ・・・鼓膜が割れそうだ」
『そんな事よりヴィータちゃん、手当てをしないと・・・』
軽い内容の言葉とは裏腹に、今にも崩れ落ちそうな小さな身体。
白い騎士甲冑の腹部には赤黒い染みが拡がり、その口からは咽込む度に血が零れる。
しかしそれだけの傷を負ってなお、「鉄槌の騎士」の双眸から戦意が失われる事はなかった。
その時、地響きと共にヴィータの視界が揺れ始める。
こんな時に地震か、と悪態のひとつも吐こうとした彼女だったが、地上本部から通信が入るや否や顔色を変えた。
『ミッドチルダ中央区画全域に於いて地震発生! 震度5、震源はクラナガン西南西20km、震源深度18km!』
クラナガン西南西20km。
十数分前に届いた通信の記憶が確かならば、その地点には第4廃棄都市区画から移動した大型機動兵器が存在する筈である。
その地点が震源という事はつまり、この地震はその大型機動兵器により人工的に引き起こされているとでもいうのか。
ミッドチルダ崩壊支援
支援だ
「・・・リィン、ユニゾン解いて陸士の連中に保護してもらえ。アタシは震源に向かう」
『ヴィータちゃん!? 何言ってるですか!』
グラーフアイゼンを担ぎ直し、再度空へと上がろうとするヴィータ。
しかし想像以上に消耗していたらしく、満足に浮かぶ事もできぬままアスファルトへと膝を突いた。
「あぐッ・・・!」
『これ以上は無理です! ヴィータちゃんも手当てを受けないと!』
「アイツは・・・なのはは、絶対に向かう筈なんだ・・・」
『え?』
血を吐きつつも、掠れた声でヴィータは呟く。
その瞳には悔恨と、抑え切れない不安が浮かんでいた。
「アイツが、こんな状況で無茶しない筈が無ぇ。あの時だってそうだったんだ・・・アタシが、アタシがぶん殴ってでも止めなきゃ・・・」
『でも、ヴィータちゃんだって!』
「ゆりかごの後のアイツを忘れたのかよ! あの時は何とかなったけど、次も無事で済むとは限らねぇんだぞ!」
『ッ・・・!』
その言葉に、リィンも押し黙る。
JS事件収束直後、なのはを襲ったブラスター3使用による後遺症。
シャマルを中心とした本局医療スタッフの尽力もあり、半年ほどで回復の目処が立ったものの、次に同じ事があれば回復する保証は無いとも宣告された。
その結果、なのはを知る者達の間からは、レイジングハートからのブラスターモード撤去案すら提示されたのだ。
しかしその案も、なのは本人の強固な拒否によりお流れとなった。
つまり現時点で、彼女は何時でも任意にブラスターモードを起動できるのである。
そして今、この状況。
人為的に地震を起こす大型機動兵器などという怪物を相手に、彼女が出し惜しみをする理由などありはしない。
「だからッ・・・今度こそアタシが・・・」
『満足に飛べもしない状態で何言ってるです! お腹を撃ち抜かれてるんですよ!?』
「それこそ初めてって訳じゃねぇ。ゆりかごの時はもっと酷かった。リィン、アタシは大丈夫だから、お前は・・・」
『駄目です!』
「大丈夫だ・・・少し休めば・・・これくらい・・・」
押し問答を続ける2人。
しかしその眼前、先程の爆発の後に新たに崩落したハイウェイの残骸が吹き飛び、細かな瓦礫を周囲へとばら撒く。
反射的に腕を翳して身構えるヴィータ、驚愕するリィン。
やがて瓦礫の中から現れたのは、あの刺突兵装を備えた不明機体だった。
深紅の装甲には其処彼処に無数の傷が刻まれ、左主翼と右垂直尾翼が脱落し、機体右側面の盾は基底部から千切れ飛んでいる。
それでも、推進部に深刻な損傷は無かったのか、1mほど浮かび上がった機体はそのまま離脱を図ろうとした。
しかし上空へと数機のガジェットが現れ、レーザーを放ってきた為に断念。
後退し、瓦礫の中へと身を潜める。
直後、管理局部隊の攻撃を受けたのか、ガジェットは火を噴きつつあらぬ方向へと突撃を開始した。
その光景を目にした為か、或いは周囲に多数の敵が存在する事を観測したのか、不明機は瓦礫の中で微動だにしない。
ヴィータもまた、少しでも身体を休めるべくその場を動こうとせず、20mほど離れた位置から不明機の動向を窺っていた。
全力で支援!
ヴィータがかっこいいw
マックスパイルバンカー帯電式H型発射支援
ヴィータの命、俺が預かる! 支援
崩壊したハイウェイの陰、敵味方双方の目が届かぬ薄闇の中。
鉄槌の騎士と深紅の不明機体は、激しさを増す地震を気に留める様子も見せず、ただ只管に沈黙を貫く。
そして十数分後、漸く不明機体が瓦礫の中から前進し、空へと戻るべく僅かに機体を上昇させた、その瞬間。
「おい!」
鉄槌の騎士は、自身ですら予想だにしなかった言葉を、不明機へと投げ掛けていた。
「アタシを、化け物の所へ連れていけ!」
* * *
「見付けた!」
第4廃棄都市区画上空より、森林地帯に残る大型機動兵器の通過跡に沿って飛行を続ける事、数分。
なのはが指揮を取る追撃隊の視界へと、それは映り込んだ。
「何をしているの・・・?」
広大な森林地帯の中、4つの脚部ユニットを四方へと広げ、機体下部より鈍い光を放つ大型機動兵器。
周囲には無数のガジェットが大型機動兵器を取り巻く様に旋回を続け、更には6機の人型兵器が砲口をこちらへと向けている。
眼下の森林地帯、その其処彼処から立ち上る紅蓮の炎と黒煙が、大型機動兵器の追撃に当たっていた8機の不明機体と、1044航空隊の末路を物語っていた。
思わず、苦しげに表情を歪ませるなのは。
しかし、視界の端で大型機動兵器が痙攣するかの様な動きを見せると同時、不意に大気中へと走った巨大な振動を感じ取り、彼女は追撃隊の面々へと念話を繋いだ。
『今の、感じた?』
『ええ、はっきりと! やはりアイツがこの地震の元凶のようです!』
『一尉、ガジェットが!』
その言葉と同時、追撃隊に対しガジェット群が迎撃態勢を取る。
その数、50機前後。
すぐさま魔導師達が互いに間隔を取り、ガジェットの突撃に備える。
1603・2024航空隊の空戦魔導師達が前進、砲撃魔法発動までの時間を稼ぐべくガジェット群との交戦に入ろうとした、その時。
追撃隊の後方から6機の不明機体が姿を現し、彼等の前方へと躍り出た。
「な・・・!」
その光景に、驚きを隠せないなのは。
見れば周囲の魔導師達も、各々が驚愕の表情を浮かべ、不明機体群の後ろ姿を見やっている。
すると、6機の機首付近へと、甲高い音と共に青い光が集束を始めた。
この後に何が起こるのか、なのはを含む魔導師達は知っている。
砲撃だ。
誰が注意するでもなく、彼等は一様に自身の目を手で覆った。
直後、凄まじい轟音と振動が全身を突き抜ける。
そして手を退けた時、なのは達の目前には奇妙な光景が拡がっていた。
「・・・壁?」
人類の歴史の思い出はまだ来ない…支援
△ボタンを押してスペシャルウエポン:ヒステリックドーンを発動するんだ!
それは金色に輝く、半透明の巨大な壁だった。
5m程の半透明・黄金色のブロック状構造物が数十個、寄り集まって巨大な壁を形成していたのだ。
その向こうからは、10を超えるガジェットが白煙と炎を噴きつつ、こちらへと突撃してくる光景が目に入る。
咄嗟に前進を中断し、各々のデバイスを構える追撃隊。
しかし、あろう事かガジェット群は壁へと接触すると、それを貫く事なく次々と爆散してゆくではないか。
信じ難い光景に魔導師達は、数瞬ながら呆けた様に金色の壁を眺める。
その前方、ガジェット群の突撃を受け切った金色の壁が、ガラスの様に砕けて空間に融けた。
そして、不明機体が突き抜けた事によって霧散した黒煙の先。
他の不明機体群による一斉砲撃を受け、消し飛んだ前方の森林地帯が視界へと飛び込む。
濃緑の木々、地上にて燃え盛っていた業火、群れを成すガジェットと人型兵器。
その一切合財が跡形も無く消し飛び、巻き上げられた僅かな粉塵だけが、小雨の様に地表へと降り注いでいた。
数kmに亘る壮絶な破壊の爪跡に、愕然としてその光景を見つめる魔導師達。
しかし、粉塵の中から無数の青い光弾が放たれる様を見るや否や、砲撃魔導師達は一様に自身のデバイスをその発射点へと向ける。
彼等の眼前、再び展開される金色の壁。
見れば先程の6機の内2機、防御型らしき機体が彼等の側へと留まり、障壁を交互に発射・形成していた。
どうやら、敵の攻撃を防いでいる内に砲撃を発動させろ、という事らしい。
それを理解すると同時、なのはは叫ぶ。
「チャンスだよ! みんな、いい? 此処で止めるよ!」
『了解!』
念話と発声が入り乱れ、ひとつの意思となってなのはの元へと届いた。
空中に展開される魔法陣の足場。
その数、実に32。
魔法陣の上に立つ人影が、各々に構えるデバイス。
ある者はそれを取り巻く様に環状魔法陣を展開し、またある者は自身の掌へと光球を生み出す。
発動の形式も、発する光の色も各々に異なるそれらに共通するのは、いずれも同じく砲撃魔法であるという事。
そして、その中央。
桜色の魔力光が、環状魔法陣の中心で膨れ上がる。
カートリッジを2発ロードしての、ディバインバスター・エクステンション。
ブラスターモードは使用しない。
これだけの砲撃魔導師による一斉砲撃だ。
無理をせずとも、確実に目標を破壊できる。
仲間達が必死に癒してくれた身体を、無碍に扱って三度も壊す訳にはいかない。
「ディバイン・・・」
不明機体が張り続けている防御壁のお蔭で、集束の為の時間は稼げた。
巨大な防御壁の内にはなのはのみならず、今にも暴発しそうな無数の魔力集束体が、発射の瞬間を待ち望んでいる。
そして防御壁が掻き消え、無数の誘導光弾が魔導師達へと襲い掛からんとした、その瞬間。
「バスター!」
その声を引き金として、轟音と共に光の奔流が放たれる。
大気を震わせて直進する、無数の砲撃魔法。
それらは交じり合い、虹色の壁となって誘導光弾を消し去り、粉塵の向こうに位置する大型機動兵器へと殺到した。
支援
32人の砲撃魔導師達は、各々が砲撃に特色を持つ。
中には威力・速度・精度・射程など、ある点に限定するならば、なのはをも凌駕する者達すら存在するのだ。
一度に複数の砲撃を放つ者も居れば、極限まで圧縮された魔力を用い、貫通力に優れた砲撃を放つ者も居る。
そんな者達が30人以上、しかも単一の目標に向けての同時砲撃。
その威力たるや、戦術魔導兵器にも匹敵するだろう。
交じり合い、ひとつの巨大な砲撃魔法と化したそれは、大型機動兵器のみならず地表をも呑み込み炸裂、巨大な魔力の爆発を引き起こす。
爆発の後に残留物質が生じる質量兵器とは異なり、純粋な魔力炎のみの爆発。
天をも貫かんばかりのそれが視界を埋め尽くすと同時、追撃隊の面々から歓声が上がった。
其処へ繋がる、地上本部からの通信。
『振動・・・止みました! 地震は収束! ミッドチルダ中央区全域、異常振動消失!』
歓声が、更に強くなる。
なのはもまた肩の力を抜き、レイジングハートの矛先を下ろして息を吐いた。
その顔へと浮かぶのは、紛れもない笑み。
危機を脱した喜びと、大事を成し遂げた達成感からの笑みだった。
「やりました、やりましたよ一尉! 私達、あの怪物を倒したんですよ!」
「凄かったな、オイ! 30発以上の砲撃魔法を一度にぶっ放すなんて、管理局史上で俺達が初めてだろうぜ!」
「やったな、高町!」
近くに居た数名の魔導師達が、なのはへと声を掛ける。
その浮かれ様に釣られたか、彼女もまた上機嫌で言葉を返した。
「・・・そうだね。私達・・・私達、やったんだね!」
「そうだよ!」
教導隊の同僚である女性局員が、感極まった様になのはへと抱き付く。
なのはもまた彼女を抱き締め、2人で笑い声を上げながら少女の様にくるくると回り始めた。
周囲もまた、口笛を鳴らす者、歓声を上げ続ける者、仲間と手を取り合って笑う者など、各々の方法で歓喜を分かち合っている。
そんな中、6機の不明機体が彼等の頭上を横切り、砲撃の着弾点へと向かった。
その姿を視界へと捉えた空戦魔導師が、鋭く警告を発する。
『不明機体群、着弾地点へ接近。情報収集行動と思われる』
未だ不明機体群の脅威が解決した訳ではない事を思い出し、慌ててデバイスを構え直す一同。
しかし不明機体群は彼女達に些かの興味も見せず、未だ炎を噴き上げ続ける着弾点を包囲し始めた。
その行動に、魔導師達は不審を抱き始める。
『・・・何をしている?』
『敵の撃破を確認しているのでは? 随分と用心深いですね』
『確認って・・・どう見ても吹き飛んでるじゃな・・・』
その、次の瞬間だった。
バリア波動砲にはタクティクスじゃお世話になりました支援
まだ終わらんよ!支援
悪夢はこの程度では終わらない支援
「えっ・・・」
回避どころか、反応する暇さえ無かった。
巨大な青い光の奔流が天を貫き、空を薙ぎ払ったのだ。
なのはの頭上、約20m程の位置を通過したそれは、3機の不明機体と20人前後の魔導師達を瞬時に消滅させた。
跡には、何も残らない。
数十秒前まで共に歓喜を分かち合っていた仲間が、世界を危機から救ったと誇らしげに語り合っていた戦友が。
其処に存在していたという痕跡すら残さず、一瞬にして消し飛ばされたのだ。
そして、破滅の光を放った、その存在。
「・・・嘘」
前方、吹き上がる魔力の爆炎。
業火の壁が一部、強大な力によって消し飛んでいる。
その隙間から覗く、濃灰色と緑の装甲。
損壊した正面装甲の隙間から、巨大な「コア」らしき部位を露出させた大型機動兵器が、その砲口をこちらへと向けていた。
「散ってッ!」
なのはの絶叫と同時、再び空間を光が突き抜ける。
咄嗟に回避行動を取るものの、攻撃の範囲が余りに広過ぎた。
躱し切れずに3人が光に呑まれ、更には2機の不明機体までもが撃墜される。
どうやら彼等にとっても、大型機動兵器の健在は予測の範囲外だったらしい。
残る1機が離脱を図るものの、三度放たれた閃光によって跡形も無く消滅する。
不明機体群、全滅。
そして、魔力による業火の中。
大型機動兵器は、もう用は無いとばかりに、魔導師達へと背を向ける。
待機状態にあった、2基の巨大なエンジンノズルが展開。
逃げるつもり、などと考える者は存在しない。
なぜなら、鋼鉄の巨獣がその鼻先を向けたその方角に存在するのは、他ならぬクラナガン。
化け物は、首都へと突入するつもりなのだ。
バイド相手に油断は禁物支援
やばい、読みふけって支援忘れてたよ支援!
絶望する暇すら与えない、それがバイドクオリテイ支援
元ネタがわからないが、イバリューダーやインベーダーよりたちが悪そうだな。支援
この予測ミス、森辻さんはバイドによって凾フ時より強化されてたか?支援
その瞬間、仲間の死も、自身の身体の事も、一切がなのはの脳裏から消え去った。
浮かぶものはただひとつ、クラナガンで彼女を待つ愛しい我が子、ヴィヴィオ。
「レイジングハート!」
『Starlight Breaker』
残るカートリッジを全てロード。
なのはの眼前に、巨大な魔法陣が現れる。
その中心へと、流星群の如く集束する魔力素。
周囲の砲撃魔導師達も、何を言われるでもなく己が最大の集束砲撃魔法を発動せんとしている。
その胸中を満たすのは、仲間を殺された事による怒りか、はたまた絶望か。
いずれも憎悪を滾らせた目で大型機動兵器を睨み据え、握り潰さんばかりの力を込めて自身のデバイスを構えていた。
なのはは、光の翼をはためかせるレイジングハートの矛先を自身の後方へと構え、徐々に肥大化する魔力球越しに大型機動兵器を視界へと捉える。
轟音が響き渡り、爆炎が空気を焦がした。
大型機動兵器、エンジン点火。
100mを優に超える推進炎がノズルより噴き出し、その先端からは白煙が宙へと放たれる。
僅かに数十m側面を掠める白煙の帯を気に留める事もなく、魔導師達は微動だにせず、突進を始めた獣の後ろ姿へと照準を合わせていた。
許せない。
この存在だけは、決して。
戦友達を殺し、世界を陵辱し、今まさに我が子すら殺めんとする、鋼鉄の巨獣。
この怪物、この化け物だけは―――
レイジングハートの矛先を、光球の中心へと突き付ける。
その動作に込められた意思は、嘗てヴィヴィオに埋め込まれたレリック・コアを破壊した際とは異なる、何処までも純粋な敵意。
それは際限なく膨れ上がり。
「スターライト・・・」
―――「生かして」はおけない!
そして、爆発した。
「ブレイカー!」
マジこええええ!! バイド!
支援
なんというジェノサイド支援
閃光、そして轟音。
10を超える集束砲撃魔法。
それらが一斉に、周囲の大気そのものを消し飛ばしながら、巨獣へと放たれた。
背後の異変を感知したのか、再びこちらに回頭しようと曝されたその側面へと、砲撃が着弾する。
信じられない程に強固なその装甲。
魔力による障壁が張られている訳でもない、ただの物理障壁。
にも拘らず、それは表面を融解させるのみであり、集束砲撃魔法の一斉射に耐えていた。
しかし、そんな事でなのはの意思が挫かれる事はない。
此処からが、集束砲撃の真髄なのだ。
魔導師達が、一斉に声を放つ。
それは、敵に確実な滅びを齎す、破滅のトリガーボイス。
「ブレイク・・・」
各々異なるコマンドが紡がれると共に、砲撃を放ち続ける魔力球、または魔法陣が二回り以上拡大、更に大量の魔力素が集束する。
そして。
「シュート!」
先の砲撃を呑み込む様に、更に大規模な砲撃が放たれた。
初撃の軌道を道標に、標的へと殺到する巨大な破壊の閃光。
互いに干渉し合い、弾け、折り重なり、更に強大となって襲い掛かる魔力の砲弾。
魔導師の誰もが、煉瓦の様に打ち砕かれる大型機動兵器の姿を幻視する。
そして次の瞬間に起こった事を、なのははスローモーションの様に引き伸ばされた感覚の中で認識した。
本命の砲撃が着弾する直前、大型機動兵器が瞬時にこちらへと向き直ったのだ。
明らかに脆弱と解る「コア」らしき部位を自ら砲撃へと曝す、自己保存の観点から見れば余りにも異常な行動。
しかし、直後に展開された巨大な砲口に、なのはの背筋は凍り付いた。
まさか。
まさか、真っ向から抗うつもりなのか?
この一斉砲撃に?
そんな事は不可能だ。
これだけの砲撃の嵐を打ち破る事など、万が一にも有り得ない。
そう、「万が一」にも。
そう思考しつつも、なのはの直感は警告を鳴らし続けていた。
目前の存在こそが、その「万が一」であると。
彼女の中に築かれていた魔導師としての常識を、完膚なきまでに打ち砕いた不明機体群と同じく、この鋼鉄の巨獣もまた己の理解から外れた存在なのだと。
その直感に押されるがまま、何かしらの声を上げるより早く。
これまでの戦闘を通じて最大規模の閃光が、大型機動兵器の砲口より放たれた。
まさに人外の存在。支援
森辻主砲支援
「・・・ッ! ・・・!」
何が起きたのか、理解すらできなかった。
それはなのはのみならず、この場に存在する全ての魔導師に共通するであろう。
十数発の集束砲撃魔法が、正面から放たれた1発の砲撃に競り負けた。
いや、競り合ってなどいない。
両者は拮抗する事もなく、一方的に砲撃魔法が質量兵器の閃光に呑み込まれたのだ。
弾かれた、などという生易しいものではない。
消滅だ。
砲撃の嵐が、一瞬にして消滅させられたのだ。
そして、その嵐を呑み込んだ閃光。
微妙に角度が逸れていた為か、魔導師達の頭上10m程の空間を貫いたそれは、出現時も含めた先の4発とは比べ物にならない余波を周囲へと撒き散らす。
衝撃、そして高熱。
砲撃自体が放つ熱か、それとも副次的な要因によるものかは解らない。
重要なのはそれらが、バリアジャケットの防御をものともせずに突き抜けてくる、その事実だ。
皮膚を炙り、肉を切り裂き、骨を砕く灼熱の衝撃波。
ただ1人の例外なく、紙屑の様に吹き飛ばされる魔導師達。
しかしその勢いたるや、紙屑どころか銃弾の如き速度だ。
その事からも、彼等を襲った衝撃波が、如何に凄まじいものであったかが窺える。
「い・・・ぎ・・・!」
「墜落」してゆく魔導師達の中、なのはは辛うじて意識を保っていた。
何とか身を捻り、迫り来る森の表面に対し背を向ける。
レイジングハート、プロテクション発動。
そのまま森へと突っ込み、木々の枝を折りつつ地面へと衝突。
凄まじい衝撃に、全身が悲鳴を上げる。
薄れゆく意識。
しかし、脳裏に浮かぶヴィヴィオの顔が、このまま眠りにつく事を許さない。
「くっ・・・」
レイジングハートを杖代わりに、立ち上がる。
新たにマガジンを装填、ふらつく身体で無理矢理に空へ上がると、ノズルから業火を噴きつつクラナガンへと突撃する大型機動兵器の後ろ姿が目に入った。
ノズルより噴き出す業火と凄まじい白煙に遮られてなお、その巨体は完全に隠れ切ってはいない。
「行かせ・・・ないよ・・・ッ!」
足場となる魔法陣を展開、レイジングハートの矛先を巨獣の背へと向けるなのは。
ロードカートリッジ3発、再びディバインバスター・エクステンションの発射体勢を取る。
と、その意識に、聞き覚えのある声が念話として飛び込んだ。
『高町、聞こえるか?』
『ッ! 無事なの!? 他の皆は!?』
それは、教導隊の同僚の声。
先程の攻撃を受け、同じく墜落した者の1人だった。
『取り敢えず4人は生きてる。他にも無事な者は居るだろう』
『そう・・・』
『ところで・・・まさか、また1人で無茶しようなんて考えてないだろうな』
その問いに、なのはは沈黙を以って返した。
ご丁寧にも念話として伝えられる、呆れの滲んだ溜息。
しかし続く言葉に、彼女は瞠目する。
『周り、見てみろ』
・・・バイドの本能、それはただ攻撃するのみである。支援
皮肉にもなのはさん初の殺意がバイドの攻撃本能を刺激し「敵」と認識された、と…支援
その言葉に周囲を見渡せば、自身の後方、複数の地点に魔法陣が展開しているではないか。
11人。
11人の砲撃魔導師が、既に長距離砲撃の発動体勢に入っている。
集束する魔力光、膨れ上がる光球。
「皆・・・」
『お前さんの砲撃だけじゃ躱されるかもしれんからな。順次ぶっ放すから止めは任せるぞ、高町!』
『邪魔な煙はこちらで吹き飛ばします。後は頼みます、一尉!』
次々と入る念話。
仲間達の頼もしい言葉に、なのはは薄く笑みを浮かべた。
そして、一言。
『任せて』
レイジングハートを構え、矛先に環状魔法陣を展開、魔力の集束を開始する。
瞬間、その後方から2発の砲撃が放たれる。
それらは前方の白煙を撃ち抜き、その余波で以って大気を吹き散らし視界を確保。
一瞬だが、大型機動兵器の後ろ姿が露となる。
続けて2発。
僅かにタイミングをずらし放たれたそれらを、大型機動兵器は左側面への平行移動によって回避。
更に3発。
1発目を回避した大型機動兵器だったが、続く2発がエンジンノズル付近に被弾、進路が僅かにぶれる。
間を置かずに4発。
迎撃を選択したか、速度を緩めずに180度旋回、前後を入れ替えつつ迎撃態勢を取るという離れ業を見せる大型機動兵器。
しかしコア近辺に2発、中心に1発被弾。
再度コアを庇うべく回頭を図ろうとするも、それより僅かに早く、なのはの砲撃体勢が整った。
「ディバイン・・・」
レイジングハートの矛先へと、三度生み出される桜色の光球。
そして、一瞬の後。
「バスター!」
全てを終わらせるべく、最後の砲撃が放たれた。
大気の壁を撃ち抜き、粉塵と白煙を吹き散らし、往く手を遮る全てを打ち破りながら、大型機動兵器へと突き進む1条の光。
その光は寸分の違いなく、赤い光を放つコアへと突き立つかに見えた。
しかし。
「・・・嘘」
サテライトキャノン以上の威力が必要なのか?支援
R-9/02 RAGNAROK IIのギガ波動砲を撃つしかない支援
ええい、ナイトウォッチを呼べ!
スターブレイカーでもいいぞ! 支援
バイドとは化け物ではない、もっと恐ろしい「何か」だ支援
着弾寸前、大型機動兵器の位置が大きく動いた。
エンジンノズルだ。
回頭中、しかも側面方向への高速水平移動を行っている最中にも拘らず、更に高出力での噴射を敢行。
瞬間的に位置をずらし、着弾点をコアから外すという荒業をやってのけたのだ。
一歩間違えれば全体が横転しかねない、余りにも危険な機動。
正しく、正気の沙汰ではない。
「そんなっ!」
常軌を逸した回避行動とその結果に、思わず声を上げるなのは。
必中の意と共に放たれた一撃は、左側面の腕部ユニットらしき部位を損傷させるに留まった。
追撃隊の生存者各員から、大型機動兵器への罵声と、攻撃失敗に対する悲鳴が上がる。
「ッ・・・追うよ!」
『了解!』
しかし、延々と恨み言を吐いている訳にもいかない。
すぐさま、なのはは追撃を決断。
残る生存者の捜索・救助の為に、1603・2024航空隊の生存者を残し、砲撃魔導師はなのはと共に追撃を開始する。
しかし、その遥か前方。
大型機動兵器に、新たな動きがあった。
『一尉、あれを!』
『・・・また何かするつもりか、化け物め!』
見れば、大型機動兵器の右腕部先端が、空に向かって掲げられている。
左腕部は先程の砲撃による損傷で問題が発生したのか、稼動する様子はない。
不吉な予感に急かされるまま、なのはは念話によって更に飛行速度を上げる旨を伝える。
『皆、急ぐよ!』
『高町、クラナガンが!』
同僚の言葉に目を凝らせば、大型機動兵器の更に前方、クラナガン西部区画のビル群が、なのはの視界へと飛び込んだ。
そのほぼ全域から黒煙が立ち上り、遠目ながら既に壊滅に近い被害を受けている事が容易に見て取れる。
思わず悲痛な声を上げそうになるも、それを何とか堪えるなのは。
しかしその努力も、続く光景に空しく敗れ去った。
『一尉! 化け物が!』
コアを石川県民がとっつくしかない支援
やばすぎだろ…
支援
甘い思い出は本当にまだですか全滅しますよ支援
あの青い球体が来るのか?支援
黒いぜ…。支援
一方的過ぎる…
支援
悲鳴じみた、否、悲鳴そのものの声が、隊のほぼ全員から発せられる。
何が言いたいのかは、訊かずとも解った。
彼等の見ている光景は、なのはの目にも飛び込んでいる。
閃光。
遅れて届く轟音。
視線の先、空へと向けられた大型機動兵器の右腕部ユニット下部から、周囲一帯を埋め尽くさんばかりの爆炎が噴き出す。
似た様な光景を、なのはは故郷のテレビニュースで幾度となく目にした事があった。
それは、ロケットの発射であったり。
スペースシャトルや、軍用艦から放たれる誘導兵器であったりした。
そして、何より。
「・・・止めてぇッ!」
「大陸間弾道弾」。
21世紀の第97管理外世界に於いて、彼女の知る限り最強にして最悪の兵器。
その発射の瞬間に、余りにも酷似していた。
そして、事実。
右腕部ユニット内から放たれた物体は、明らかに弾道弾そのものの形状をしていた。
悲鳴が、ロケットエンジンの轟音に掻き消される。
悪夢は、終わらない。
核以上なのか?支援
エェェェェ!なんつー惑星破壊プログラム。難易度はR−TYPREか?支援
バイド種ミサイル支援
ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイィィィーーーー!!!
支援
ゆりかごが如何に優しかったか解るよねー…支援
投下終了です
スーパー森辻さんタイム発動
まだ彼のターンは終了していません
今回、壁を張っていたのが「R-9B2 STAYER」
バリア波動砲という、光学ハニカム構造体で構成された壁を形成する防御型の気体です
ヴィータとイイカンジになっているのが「R-9DP3 KENROKU-EN」
とっつき装備、以上!
次回予告
今回はおふざけなしの予告
次回、クラナガン編終結
これ見ちゃうともう管理局の質量兵器禁止に異論できないわ…
ヤバすぎる。
支援
GJです
むしろスーパー森辻さんタイムはこれからな気すらしますぜ
あとヴィータとイイカンジ感じな石川県民的とっつきが嫉ましいww
元ネタがわからないので、今まで氏の作品をみておらず、初めてまともに見ましたけど、緊張しまくりの展開でGJ!!でした。
しかし、バイトと言うのは恐ろしいな。イバリューダーやインベーダーよりも脅威なのか?
下手したら、トップを狙えの宇宙怪獣レベルなのか?
そして、あれに勝つにはサテライトキャノンのレベルを超える必要があるのか!?
失礼、大切な事を言い忘れました
皆さんの支援、ありがとうございました
そしてリリカル! 夢境学園氏、投下どうぞ!
これは……凄い内容ですね。
なんというかGJというか、やべえと語るべきかw
最高でした! 次回が凄い楽しみです!!
自分もかなり長い内容になりそうなので、投下開始時間は11時40分からにしたいと思います。
レス数がかなり逝く……
ハハハッハハハハハハーーーーーー!!
燃えろ燃えろ!!クラナガンなぞ燃えてしまえーーーーーー!!
とテンションが高くなってしまうナイスGJでした。
PS;そういえばバイドって「魔道工学」といものフルに動員されて作られていると公式ページに書いてありました。
90 :
旅ゆく人:2008/03/16(日) 23:03:01 ID:FJnumjAI
>>83 『東方バイオリン』を聴きつつ……。
GJでした。
GJ!
なんという森辻タイム
まさに「狂機」だな
コアをとっついてスペシャルウェポンを起動するしか
R−TYPEの面白さは俺TUEEEではなく
希望の向こうに絶望しか残らない報われなさだと思う
>>86 現在確認されてるバイド最大戦力は大銀河戦艦MO−1
天元突破を読んでくるしかないな
>>91 >>R−TYPEの面白さは俺TUEEEではなく
希望の向こうに絶望しか残らない報われなさだと思う
なんて素晴らしいコンセプトなんだ!!
ぜひともR−TYPEΔもこのコンセプトでやって欲しいです。
息もつかせぬ展開とは正しくこのことか……めっさGJっす!
浮かせて叩き落す空中無限コンボに読み耽ざるえない。
……ちょっくらパイルバンカーつけてくる、そんでツンデレ幼女とイチャイチャしてくる。
>>93 最終的にはバイドの森で眠ることになっても良いなら止めない
さて、暫し正座で待機しよう
バイドとの戦争に救いや希望なんてない。ましてや正義や悪なども
あるのは滅ぼすか滅ぼされるかのみ。
それが何を犠牲としても…これは純粋な『生存競争』なのだ。
石川県民のスペシャルウェポンは何かとPS2引っ張り出してみたけどヒステリックドーンか
森辻には純粋なフォースエネルギーで次元の壁を崩すことによって生じた異層次元その物を食らって消えてもらうしかないな
それとも、甘い記憶が人類の歴史の重みで撃破するのだろうか?
>>93 暗黒の森で安らかな眠りを
>>95 しかし、人型機動兵器にパイルバンカーがついていればいいってわけでm
(撃ち貫かれました・・全てを読むにはマ改造してください)
ええと、そろそろ投下してもよろしいでしょうか?
スーパーチンクタイム&微妙にガリュータイムです。
カッコイイゼストとかが嫌いな人は注意です。
内容はアンリミテッド・エンドラインの四話……うう、あんな名作の後に投下するのが恐れ多い。
支援します。
対バイド戦線はエリキャロにはきつい戦いになりそうだな。
まずは性教育をだな(ry
つ「ベルゼルガ@ボトムズ」
つ「アルトアイゼン」
>R-TYPE Λ氏キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
惑星破壊プログラム大暴れ!!
遺品の欠片も残らない極太レーザー!!
これだ!
これが見たかったんだ!!
眠かったのに、すっかり目が覚めてしまったオレはきっとどこかバイド粒子に汚染されてるんだろう。
管理局員の度肝を抜くパイルバンカーと鉄槌の騎士のコンビネーションアタックを楽しみにしていますw
しかし、いったいどれだけ死人が出てるんだろうか?
では投下開始します。
支援よろしくお願いします。
奇跡なんてこの世には存在しない。
偶然とは取り繕った概念に過ぎない。
あらゆる事象は全て必然であり、因果によって複雑に構成された構成物である。
あるものが起こす行為自体が、誰かが起こした行為の結果。
並べられたドミノ倒しのように連鎖的に続き続ける偶然という名の必然。
それを人は運命と名づけるのだろう。
――千切れた聖書に殴り書かれた落書きより
苦々しい培養液から出て、初めて吸った空気はとても美味しかったのを記憶している。
いつからか自らの全身を満たし続けていた培養液が抜かれ、重力を感じながら底面に立つ
私の前にある培養槽の蓋が開いた。
入り込む外気は満たされていた培養液と比べると少しだけ寒くて、ポタポタと髪と肌にへばりついた培養液が
冷たく感じられ、私は少しだけ震えながら足を踏み出した。
ペタリ。
冷たい足裏の感覚。初めて感じる床の感触。
「おめでとう」
私が培養槽から出た先には一人の男性と一人の女性――転写された知識によれば
私の生みの親であるドクターと姉に当たる人物だと理解する。
彼は傍らの私の姉からタオルを受け取ると、優しく私の顔を拭ってくれた。
顔を拭き、自分が汚れるのも厭わずに髪の培養液を拭き取り、その体温の低く冷たい手が
私の手足を拭いてくれた。
その感触がどこかくすぐったくて、その始めての感覚に少しだけ……戸惑った。
「寒くはないかね?」
薄くその顔に浮かんでいたのは強張っていたが、確かに笑顔だった。
純粋に笑うのが苦手なのだと、転写された知識しかない私でも理解出来た。
「寒くは、ない」
「しかし、そのままだと冷えてしまうだろう――ウーノ」
「はい、ドクター」
ウーノと呼ばれた私の姉が、私の後ろに回って毛布を掛けてくれた。
それを温かいと思った。
sien
「さて、誕生して早々に悪いのだが、説明することがある」
「せつ……めい?」
私はその毛布の端を掴みながら、その言葉を繰り返した。
「まず第一に君は魔法が使えない。リンカーコアが活性化していないのは自覚出来ているかね?」
魔法。
転写された知識に基づき、その意味を理解する。
リンカーコアによって取り込んだ魔力素を魔力に変換し、それを媒体として発動させる現象の総称。
その仕様にはリンカーコアが必要不可欠。
故に、それが活性化――機能していない自らには使えない。
「癒合させた機械部位による拒絶反応か、それとも単なる肉体の欠陥か。“私の作り上げた”戦闘機人は
魔法という奇跡には手が届かない」
そう告げるドクターの顔はどこか悲しげだった。
まるで与えられない自身の無力を嘆くような目をしていた。
「けれど、君には一つの能力を与えてある」
「のう、りょく?」
「インヒューレントスキル。魔法に代わるなどとは口が裂けてもいえないが、されど“確かな武器だ。
世界と戦うためのささやかな、けれども鋭い牙を」
そう告げて、ドクターは懐から取り出した小さな銀製の十字架を私の手に握らせた。
金属故にそれは冷たく、けれどもドクターの体温が移ったそれはどこか温かくて。
「君の肉体は知っているはずだ、その力の使い方を」
告げられた言葉のままに、私は握った手の平に力を篭める。
ブブブと頭の中で何かが鳴り響いた気がした。
それが手の平を伝達媒体に、特殊な周波数をその十字架に蓄積――刻み込んでいる音だとも
理解せずに。
私はそれを――煌く光と共に“爆破”した。
「≪刃舞う爆撃手(ランブルデトネイター)≫ それが君の力の名だ」
「ちから?」
「そう。“リセット”の【モービィ・ディック】を参考に構築したIS。君の手から発する周波数によって
金属に対して破砕現象を励起させる物体波動を“蓄積”させる。分かるかね?
君はこと破壊に置いて、優れているのだよ」
「破壊……」
「そうだ。そして、君はその力で――“護って欲しい”」
その瞬間、彼は告げたのだ。
――護れと。
スーパー姉タイム支援
微塵も視線を逸らさず、ただただ真剣な目つきと偽りのない声音でドクターは告げた。
「君の役目はただ一つ。君の姉妹を、君の妹たちを護ること。破壊にしか使えない力で、君の姉妹を護れ」
「まもる?」
「今はまだ理解出来ないかもしれない。破壊による守護は矛盾しているかもしれない。
しかし、私はそれを望むのだよ」
優しく言葉を奏でながら、ドクターは手を差し伸ばした。
「あ……?」
「握りたまえ」
差し伸ばされた手にどうすればいいのか分からなくて、戸惑っていた自らの手をドクターは
強引に掴んだ。
手が握られる。
握手という形に交わされる。
「君の生誕を祝福しよう。君の名はチンク――ナンバーズXのチンクだ」
「チンク?」
「そう、それが――」
君の存在を証明する唯一つの名だ。
【Anrimited・EndLine/SIDE 1−4】
チン○支援
支援です。
たった一人で立ちふさがった少女――チンクが告げた内容を、ゼストは一瞬信じられなかった。
「排除、だと? お前は魔導師か」
凶器に覆い尽くされた肢体にはデバイスらしき道具の存在は見当たらない。
しかし、幼い少女が複数の魔導師を単独で相手するということは、彼の中の常識では年齢に縛られない、
素養が実力の大半を占める魔導師だからだと推測した。
しかし。
「違う。だが、姉がお前達を葬るのには支障ない」
彼女は否定する。
ガションとボーガンの先端をゼストたちに向けて、彼女は告げた。
「覚悟しろ。おそらく原型は残らない」
そう告げる瞳に宿るのは紛れもない――純粋苛烈な殺意。
ゼストは知っている。
その瞳を持ったものが何の呵責も、容赦も、遠慮もせずに、ただ敵対するものに牙を向けること
が出来るのだと。
「っ! 構えろ!!」
『りょうか――』
隊員が返答を返し、一斉にデバイスから魔法を発動させようとした瞬間だった。
カチッという音と共に視界が――黒に染まった。
闇が舞い降りる一瞬前に見えたのは、チンクの僅か指先の間から見えた操作端末らしき物体の姿。
「っ!?」
照明が落とされたのだ。
僅かにあった光源すらも消えて、漆黒のカーテンに覆い尽くされたかのように室内が闇に染まり。
「っ、防護を!」
「シールド!!」
ゼストの叫びと共に、闇の中で誰かがデバイスを振り上げ、空気を切り裂く音がした。
その瞬間展開された魔法陣による光源が闇を照らし出し――
“なにも起こらない”
「なにっ!?」
闇に照らし出された魔法陣は、発動者の驚愕の表情と共に霧散し――その額に一本の杭が生えた。
「え?」
再び闇が落ちる。
それと共に崩れ落ちた肉塊の音と手放されたデバイスの落下音が響き渡り。
「ぐわ!」
「ひぐっ!!?」
「ガァァアアッ!!」
僅かな空気を切り裂く風切り音と共に絶叫が、見えない室内に響き渡った。
次々と、同じような悲鳴が響く。
響き渡り――同時に金属の擦れるような作動音が鳴り響く。
「全員その場から散れ!」
ゼストの声が響き、ガタガタと響き渡る足音。
ガシャンと誰かがぶつかって砕けた培養層の音、ガラスを踏み砕くざわめき、そしてさらに響き渡る――絶叫。
混乱し、誰かが射出した“小さな”魔力弾があらぬ天井や床に直撃して、嵐の夜に鳴り響く雷鳴のように、
闇と光が交互に輝き、その狂乱を一瞬だけ照らし出す。
誰もが魔法を使おうとしていた。
デバイスを振り上げ、己の奇跡を顕現させようとしていた。
バチリと魔法陣が顕現し、僅かな持続時間を置いて霧散する。
それと同時に闇の中から飛来する白銀の杭が、その使い手の四肢を貫いた。
隊員たちは混乱に陥っていた。
「ぬぅんっ!」
だがしかし、その中でただ一人、腕を突き出し、ベルカ式魔法陣を展開させた男が居た。
発生する光の盾が、火花を散らして発光した。
それに弾かれた白銀の杭が、クルクルと闇の中を待って床に転がった。
「っ!」
闇の中で、僅かな声が上がる。
顕在化する魔力の光から逃れるような闇の奥に、ボーガンを構えた白銀の少女が立っていた。
「魔力結合の阻害――アンチマギリングフィールドか。道理でその程度の質量兵器でバリアジャケットを貫通する……」
ゼストの声に冷静さを取り戻したかのように、隊員たちが貫かれた手足を押さえながら周囲に目を向ける。
耳を済ませれば聞こえただろう。
ブゥウウウウンという蝿の羽音にも似た駆動音に。
空間を歪ませる大気の揺らぎに。
「種は割れた。奇襲にはよかったかもしれん、しかし分かれば、その程度の武装しかしていない
お前に勝機は無い」
「くっ!」
おぼろげに闇の中のチンクが、ボーガンを構えてゼストに引き金を引いた。
しかし、その射出された杭を――彼は薙ぎ払うように掴み取った。
「っ!?」
「無駄だ。AMFといえども魔導師の肉体内部における魔力強化を阻害することは不可能であり、
この程度の影響力ならば」
ゼストが杭を放り捨てる。
そして、隊員たちがデバイスに意識を集中し、揺らぎながらもしっかりとしたシールドを、魔力弾を生成していく。
「終わりだ。投降しろ」
ガチャリとメタルブーツにも似た彼の靴底が先ほど捨てた白銀の杭を踏み砕く。
「ここの首謀者はどこにいる?」
「これで……終わり?」
「……その通りだ。抵抗は終わりだ」
「違うな」
ゼストの言葉に、チンクは静かに否定した。
「なに?」
その瞬間、ゼストは気づいた。
「?!」
足元から僅かな違和感を。
微細に震える震動を。
そう、それは――
「終わったのは姉ではなく――“お前達”だ」
カチン。
雷管を叩くハンマーのような音が鳴り響いて――全てが地獄と化した。
爆風と衝撃破と轟音が、何もかも砕き尽くしたのだから。
支援
一瞬、地面が揺れたかと思った。
地響きのように天井が揺れて、パラパラと埃屑が舞い落ちる。
「っ、なに?!」
拳を振るい、手の平に形成した障壁で振り抜かれる光刃を弾いたクイントが、一瞬注意を横に逸らして。
「余所見をしている場合かっ!」
「っ!」
光刃と障壁の隙間、それを潜り抜けるように飛び出した足刀がクイントの胴体に直撃する。
床を蹴りつけ、その反動で跳弾のように跳ね上がったその爪先は対衝撃に優れたバリアジャケットの
防護を貫いて、ゴキリと嫌な音を立てる。
女性の脚力とは思えぬほどの勢いと威力で、クイントの肢体が狭い通路の空に舞った。
「クイント!!」
「あ、が――下がってて!」
ダンッと空中で身を捻り、足裏から床に着地する。
ゴプリと吐血を吐き捨てて、クイントがわき腹を押さえながらトーレとクアットロを睨み付ける。
肋骨が数本折れていた。
「あーら、怖い顔をしていますわ。どうしましょう、トーレ姉さま?」
「私に聞くな!」
そう叫ぶトーレ自身にはそれほど余裕があるわけではなかった。
クイントを一時的に退けてもなお襲い来る黒いケモノが居たからだ。メガーヌと呼ばれていた
魔導師が呼び出した召喚獣。
黒い甲殻に覆われ、紅い複眼を供えた人型の使役獣。
強化魔法も付加されて、超高速機動を誇るIS――≪ライド・インパルス≫の機動にすら反応する
反応速度で、トーレとほぼ互角の応酬を繰り広げていた。
『BURUuOOOOOOOO!!』
咆哮が上がる。
大気を引き裂き、内部に収納された爪を引き出して、ガリューがトーレに向かって手を振るう。
視神経を改造し、神経代わりに埋め込まれた高速伝達を誇る神経ケーブルによって、
人外の機動性を得たトーレは一瞬早くその軌道上から退いていた。
後に残ったのは巨大な刀剣に切り裂かれたような爪痕。
特殊合金で形成された施設を深々と切り裂く、異形の威力。
「っ!」
『GAAAッッ!』
ガリューが疾る。
深々と切り裂いた施設の爪痕をさらに抉りこみながら、粉砕と言えるまで壁を砕いて、旋回する。
唸るような轟音を上げて、振り抜かれた爪は上から下への軌跡を描いた。
それはまさしく――
「マズイッ!!」
空間を切り裂くような爪撃だった。
大量の土煙を巻き込んで、亜音速にまで達した腕の一撃はソニックブームという名の衝撃破を発射した。
岩石をも打ち砕く轟風が、狭い室内で身動きの取れないトーレを捉えて。
「くぅぅつ!」
巨人の拳で殴りつけたかのように打ち抜いた。
先ほどの光景とはまた異なり、直線状に彼女の体が吹き飛ばされ、背後に待機していたクアットロの前まで
吹き飛ばされる。
パチパチと十字に交差した腕からは、悲鳴のような火花が散っていた。
「あららら? トーレ、お姉さまってば大ピンチですわね」
「ほざいてないで、お前も働け!」
床を蹴りつけ、なおも追撃を図るガリューを睨みながら、トーレがその両手のインパルスブレードを構える。
「はーい」
間の抜けた言葉と共にクアットロが、その左手を軽く振った。
すると、その細い手には似つかわしくない黒い塊――銃器が出現、否、幻術によるカモフラージュを解かれて
視認出来るようになる。
平べったい本体と短い銃身。くの字というよりは、十字と呼ぶべきその重火器の名は
イングラムM11と呼ばれる銃火器。
けれども、その場にいるトーレと持ち主であるクアットロを除いて、その名を知るものはいないだろう。
質量兵器としか判断は出来ぬ、けれどもその無骨な銃身に篭められた殺意は感じ取っていた。
携行機関銃。
それが撒き散らす破壊の危険性を。
『GRU!?』
そして、その銃口は――メガーヌに向けられていた。
「え?」
「ばーんっ」
気の抜ける声と共に引き金が引き絞られる。
タイプライターのような音を奏でながら銃弾がメガーヌ目掛けて吐き散らされて――
その前に割り込んだガリューの甲殻を穿った。
「ガリュー!?」
『GYSYAAAAAAAA!!』
咆哮を上げながら、自らの主人を護るように立ち塞がる。
分間1000発にも及ぶ驚異的な連射速度と鉛玉のシャワーは容赦なくガリューの甲殻を削り、
その奥の血肉を穿ち飛ばし、体液を撒き散らす。
苦痛の叫びを上げて、それでもなお使役獣は立ち塞がる。
決して動かない。
たった十数秒の、けれども永遠に近い灼熱と苦痛の地獄を受け止め続けた。
ボタリ、ボタリと体液が床を汚す。メガーヌの絶叫が、射撃音に紛れて掻き消える。クイントの咆哮が、
飛び散る血肉の破裂音に塗り潰されて、意味をなさない。
そして――
カチン、カチン。
静寂が満ちた通路内に、乾いた金属音だけが響き渡る。
「あらー? 弾切れですわ〜」
クイッと小首を傾げて、熱い蒸気を上げる銃口を見ながらクアットロがそう呟いた。
『GI、GIAaaaa……』
「ガリュゥウウ!」
そして、合計30発の弾丸を浴びたガリューは……それでも立っていた。
元の原型を残さず、全身の甲殻に傷跡を、血溜まりを形成するほどの体液を噴き出しながらも
立っていた。
その後ろにいる主にはたった一発の銃弾も通さなかった。
紅い複眼に本来はないはずの怒りの感情を称えて、その二本の脚で立っていた。
「……あれほどの銃撃を浴びても、主を護るか。敵ながら見事な忠誠心だな」
火花を散らす手を抱えながらも、トーレが立ち尽くすガリューを見て賞賛の言葉を吐き出した。
率直な感想だった。
彼女はどこまでも戦士だった。それ故に、敵であろうとも褒め称えるべき敵あれば評価をする。
けれが、彼女の気構えだった。
「よくもっ、ガリューを!」
「このぉ!!」
メガーヌが両手のグローブデバイス――アスクレピオスから閃光を発しながら稼動させ、クイントも
また苦痛に呻く肉体に鞭を打って立ち上がる。
同時に瀕死の怪我を負っているはずのガリューもまた体液を撒き散らしながら、足を踏み出す。
怒りに燃え、感情を爆発させ、精神が肉体を凌駕した二人と一体の戦士がそこにいた。
ゼロ距離支援
支援
ゼスト隊、明らかに悪者
だがそれがいい支援
「あらあら怖いですわー」
されど。
「けど――もう積みですの」
その三人を見て、ガラリと冷たい感情を浮かべたクアットロは。
――指を鳴らした。
そして、轟音が響いた。
『GSYA!?』
最初に異変があったのはガリューだった。
二歩目を踏み出そうとした瞬間、まるで横合いから殴り飛ばされたかのように通路の壁にその体が衝突した。
「な、っう!?」
同時に異変に気づいたクイントもまた咄嗟にメガーヌを護るために、シールドを展開しようとして
――上空から振り落ちた鉄腕に殴り飛ばされた。
「キャァアッ!」
圧倒的な質量の打撃。
不意打ち同然の一撃に、ガードした腕ごと殴り飛ばされ――破砕音と共に彼女の体が床を転がる。
血反吐を吐き洩らし、痙攣しながら冷たい床の上でもがく彼女の両手に嵌めたデバイス――リボルバーナックルは粉々に砕け、無残な残骸を晒していた。
「クイント!!」
咄嗟に駆け寄ろうとするメガーヌの体が、不意に通路の一点で止まる。
まるで時を止められたかのように動きを止めて、苦痛の声ともその全身の各所が細い紐状にへこんだ。
「……シルバーカーテン、解除」
パチンとクアットロが指を鳴らし、同時に彼女達の周囲の風景が歪んだ。
何の変哲もない通路だったはずの空間。
それが、彼女達のいる空間だけを空いた空間として、その周囲を無数の機械兵器たちが
覆い尽くしていた。
それは物言わぬ兵士達の包囲網。
シルバーカーテンの光学迷彩と仮想映像投射能力によって、永遠と通常時の通路の様子を
投射されていたことによって覆い隠されていた真実。
「お馬鹿さんですわね♪ 何故いつまでも私達があなたたちと戦っていたと思ってんたんですかー?」
「ここは私達の陣地であり、お前達にとっての敵地だ。周囲に対する警戒を怠るのではなかったな」
そう告げる二人の声は果たしてクイントとメガーヌに、そしてガリューに聞こえていたのだろうか。
「チェックメイト♪」
「ここで――終わりだ」
静かな死刑宣告。
そして、物言わぬ機械兵器たちの駆動音が静寂に響き渡り――途絶えた。
ガリューだけは死なないでぇぇ支援
支援
クイントとメガーヌたちの通路まで爆砕音が鳴り響いた時、そこは地獄と化していた。
突如発生した轟音とそれにともなく爆風。
たった数秒前までは言葉を語り、共に戦っていた無数の部下たちが――絶叫を上げる暇もなく、
その肉体を砕かれていた。
凄まじく濃厚な血臭が、鼻を刺激する。
紅い、紅い景色が、視界を埋め尽くす。
そして、噴き上げた爆風が、足の肉を削り飛ばし、絶叫を上げんばかりの苦痛と痛みを伝えてきた。
「ぐ、ぁぁぁ……!」
咄嗟に膝を着いた先に見えたのは部下だったモノの手首。
そして、広がるのは紅い血の池地獄だった。
「こ、れは……質量兵器か?」
魔力反応はなかった。
それなのに、人間の肉体を吹き飛ばすほどの爆発など、質量兵器しか考えられなかった。
だがしかし、あの時掴んだのは紛れもなくただの鉄杭だったはず。
内部に炸薬を仕込んでいたとしても、こうはならない――どういうことだ?!
部下の死に心が引き裂けんばかりに衝撃を受けながらも、今まで味わったこともない血臭に
吐き気を覚えながらも、ゼストの戦士としての本能が無意識に分析を開始する。
(単なる質量兵器ではない――ならば、何らかのレアスキル。いや、これはまさか――戦闘機人
の備わっている特殊能力である……)
「死んだ……な」
バシャリと紅い血の水溜りを踏みながら、紅の化粧に身を染め上げた銀髪の少女は、
その両手にナイフを構える。
持っていたはずのボーガンは既に投げ捨てていた。
「これが、お前の――インヒューレントスキルか!」
リンカーコアから変換された魔力を練り上げる。
血が溢れもはや感覚の無い片足を切り捨てて、残りの三肢に身体強化を施す。
ビキリと過剰な魔力によって、肉体がバリアジャケットの中で歪に膨れ上がり、強化された筋力に
同様に強化されているはずの骨格が軋みを上げる。
「そうだ。そして、これが姉の妹たちを護るための力だ!」
このクアットロは良い!
支援
支援
支援
「ふざけるなっ!」
片足で床を蹴り飛ばし、ゼストは咆哮を上げながらチンクへと突撃した。
その速度は既に人の身に出せる速度を超えている。
バリアジャケットで風圧を遮断し、魔法によって強化の施された肉体は人間という生物の持つ
肉体能力を軽く凌駕する。
その身体能力で振り抜かれた斬撃は、同じ魔法以外では決して受け止められない一撃だった。
「っ!!」
「ぬ!?」
故に、彼女は刹那の見切りでそれをギリギリ回避する。
本来彼女を上下に両断するはずだった斬撃は、特殊合金の床を軌跡状に両断し、床の切断を
一切の抵抗としえなかったゼストは踊るように片足で床を踏み込んだ。
魔力伝達。
デバイスに指令を送る。
「おぉおおおお!」
魔力波による大気への干渉。
自らの槍の穂先に束ねて集わせる。
全てを切り裂く刃と化す。
「らぁっ!」
AMFフィールド内での衝撃破。
それは万全状態での威力は程遠いが、人一人の肉体は軽く粉砕する威力を持った一撃。
それを振り抜いた軌跡のままに放ったゼストは見た。
「ランブル」
ナイフの片方を投げ捨てて、コートの内側に身に付けていた小瓶の一つを抜き出したチンクの姿を。
迫る衝撃破に向かい、手で砕き、紅い血潮を流しながらその中身を撒き放った。
それは鉄粉。
黒く、小さな粉達は本来ならば衝撃破によって軽く薙ぎ払われ、その奥のチンクを切り裂いただろう。
何故それを取り出したのか、僅かな推測を立てながらも、ゼストはそう想像していた。
「――デトネイター起動」
しかし、想像は違う現実によって砕かれた。
衝撃破に触れた大量の鉄粉が、“新たな衝撃破”を起こした。
まるでそれは大津波に対して、爆破間近の手榴弾を叩きつけたかのごとく、波が新たな力によって
相殺される。
「ぐっ!?」
「がはっ!!」
しかし、それは双方ともにただで済むわけではなかった。
ゼストは床に穂先を突き立て衝撃に耐え、チンクの華奢な肢体は成すすべもなく衝撃破に
吹き飛んで、ゴロゴロと床の上を転がっていく。
そして、互いに数秒の間も置かずに床に手を突いて、立ち上がろうともがいた。
「そう……か、お前の能力が……理解出来たぞ」
「っ――はぁっ!」
膝を付いた姿勢のまま、チンクがホルダーから取り出したナイフをゼストに発射する。
「ぬぅんっ!」
それをゼストは咆哮を上げて、横薙ぎにナイフを弾き払った。
ただ単に防ぐというには威力を篭めすぎた一撃で、遥か彼方へと弾き飛ばし――爆音。
空中でクルクルと回転していたはずの刀身が“爆風と共に破砕”した。
当然遠く離れていたゼストにはもちろん、チンクにもそよ風程度の風しか影響は無い。
「ある種の物質を爆発物へと変換する能力、か。鉄杭、金属ナイフ、そして先ほど巻いたのは
金属粉だと考えれば――金属だな」
「わざわざそれを答える理由は、姉にはない」
「だろうな」
部下の血に染まり、自らも大量の出血で青白くなった顔色を浮かべながら、ゼストが自らの
デバイスを構える。
体を捻り、刺突の構え。
「これで終わらせる」
「終わらない……終わるのはお前ただ一人だ」
そう告げて彼女は両手に無数のナイフを握り締め、構える。
互いに血に染まり、正気とは思えぬ血臭の漂う室内のなかで、ゆっくりと両者が体勢を整える。
互いに気づいているのか、それともいないのか。
ゼストは無数に広がる部下の死体たちの前で先陣を切るように立っていた。
チンクは背後に広がる今だ覚醒しない妹達のカプセルを護るように立っていた。
互いに譲れない境界を争い、性別も名前も所属も年齢も違う二者が互いに共通する思考の元に
殺意を放った。
“相手を殺す”という意思の元に。
チンク男前過ぎ支援
ナイトガンダム「支援です」
世界の敵の敵支援
そして、切っ掛けは散々爆風を浴びてもろくなった天井から舞い降りた。
カラリと砕けた瓦礫の破片が、ゆっくりと両者の間に落ちて、ピチャンと赤い波紋を広げる。
「うぅおおおお!!!」
「はぁあああ!!」
それが点火線だった。
ゼストは跳ぶ。今だ動く片足に全ての魔力を叩き込み、飛行魔法も駆使して弾丸のように飛び込む。
チンクは投げた。片手のナイフを牽制に、もう片方のナイフを本命として投擲する。
ゼストの進路上の床に次々と突き刺さったナイフが爆散し、その床と刀身の破片を
指向性地雷のように撒き散らす。
その破片にゼストは頬を切り裂かれ、腕を切り裂かれ、全身から血を流しながらも止まらずに――
「ルォオオオオ!」
自身目掛けて飛び込む全てのナイフを一撃で砕いた。
魔法を用いて大気気流を纏ったその穂先は打ち砕いたナイフの刀身を爆散する暇もなく、
散り散りに弾き飛ばし、爆発したナイフが鼓膜を破らんばかりの轟音を奏でながらも――
その身は顕在。
迅雷。
その名が相応しい踏み込みで、ゼストは銀髪の少女に突き迫り――
「ォオオオオ!」
殺意を篭めて、その穂先を突き出していく。
ゼストは見る。
加速化された意識内で強張っていくチンクの顔を。そして、穂先を目に捉え、なんとか躱そうとして身をよじり、
緩やかに迫っていく穂先が、その右眼を――
(っ!!)
柔らかいものを砕いた感触がした。
一瞬にも満たない刹那の感覚で、確かに肉を貫いた感触を感じる。
憎き敵ではある。討たねばやられる強敵でもある。されど、見かけは幼い少女である者を貫いた
罪悪感は確かにゼストの胸を苦く焦がして――
「戸惑ったな?」
声が、した。
チンクカッケェェェェェェェ
支援
何というチンク
これはジャッカルに入るべき
支援
「お前は善人だな」
打ち放った穂先。それは眼球から脳髄へと切り裂くはずだった一撃が、僅かな罪悪感と共に
右へとずれて――
“彼女を生かした”。
「その正義が、その優しさが、命取りだ」
言葉が終わるよりも早く、右眼から血を流したチンクが、目と鼻の先に居るゼストの左腕を捕らえた。
まるで抱きしめるように、その左腕を“両腕”で抱き抱える。
「なっ!」
咄嗟に引き離そうと槍を握り直そうとするが、その槍身の軸を保持する左手ごと彼女の腕と肢体
に抱き止められて、引き剥がせない。
「いい事を教えてやる」
抉られた右眼から血を流し、覚悟を決めたものだけが発することの出来る輝きを持った左目で
睨みながら、チンクは告げた。
「姉たち戦闘機人は主に四肢と内臓器官に対する部位を重点的に機械化されている。
そして、姉の場合はISのことも重なって――両手全てが“機械で構成されている”」
「?!」
ゼストはその言葉の意味を理解した。
そして、彼女が行うとしている行為を。
「やめ――」
「姉に任された使命はただ一つ――妹達の敵を“破壊”して、護ることだけだ」
だから。
お前を破壊する。
そう告げて、チンクの両手から軋むような音が鳴り響いた。
それは彼女の手を構成する金属部品が上げる破壊の戦慄。
砕け散る物たちの謳歌。
そして――この日一番の轟音が、施設を震わせた。
ちょw誰かゼストの応援もしてやれw支援
テラ自爆支援
何もかもが砕かれたと錯覚した。
燃え上がるような苦痛が、焼け付くような感覚が、凍えるような寒気が、複雑に入り混じり
彼の体を支配し、陵辱し、侵していた。
「なんという……意思だ」
彼、ゼストの左腕はなかった。
どこかに千切れたのではなく、粉砕されたのだ。
足元で転がり、両手を犠牲に彼に致命傷を与えた少女の手によって。
彼の足からは、砕けた左腕からは噴水のように血が流れていた、AMF影響下では、止血用に
動かした魔力結合も上手くいかずに、出血もロクに止まらない。
(長くはもたん……な)
忍び寄る死神の感覚を、思っていたよりも冷静に彼は受け止めていた。
それは敵でありながら、敬意を発するに相応しい少女に負わされた傷だったからかもしれない。
戦士として、ここで朽ち果てても惜しくない。
そんな気がするのだ。
しかし。
「戦闘機人……これは、あまりにも脅威……過ぎる……」
震える右手で、自らの槍を掴み取る。
命を賭けて護った少女の意思を踏み躙ることになるが、これを放置することは彼の信じる正義に
反していた。
個人の意思は、護るべき正義のためならば押し殺すべき。
そう彼は信じていた。
「はぁ、あああああ」
僅かな魔力を振り絞り、目の前の培養槽の一角を砕かんと振り上げた瞬間。
「やめてくれたまえ」
声と同時に銃声がした。
同時に鍛え上げられた巨躯の男に殴り飛ばされたような衝撃が肩に走り、ゼストはそれに逆らう
暇もなく吹き飛ばされた。
「な……」
新たなる激痛。されど、あまりにも酷すぎる怪我の中でもはや感覚も分からない。
けれども、彼はもがきながら立ち上がり、それを見た。
「済まない、チンク……すぐに新しい四肢を用意する。だから眠っていてくれたまえ」
白衣を纏い、紫色の髪を靡かせた黄金の瞳を持った怪人がそこに居た。
両手を失い、映えていた銀髪を優しく撫でて、少女を抱き上げた男が立っていた。
主役が登場した。支援。
主役は遅れてやってくる支援
「お前は――いや、貴様はだれ、だ」
「私かね? 私は……彼女たちの創造主だ」
血を流し、震えながら穂先を構えるゼストを見つめながら、男――ジェイル・スカリエッティは告げた。
「君たちにも信じるものがあるのだろう。従うべき組織も正義もあるだろう。しかし」
その右手に分厚い銃身―デザードイーグル50AEを構えて、彼はゼストを睨み付けていた。
「私にも譲れないものがある。故に――来い!」
「オォオオオオオオ!」
最後の魔力を、正真正銘最後の力を篭めて、ゼストは駆けた。
全てを終わらせるために。
彼の命を賭けた戦いが無駄でなかったと証明するために。
弱りきった体を動かすために魔力を用い、失った左腕による身体バランスを補助するために
魔法を使い、彼は槍を繰り出して。
金属同士の擦れ合う火花と共に防がれた。
「なっ!?」
「おぉ!」
銃身のグリップで、穂先を逸らしたスカリエッティは流れるように掌底でゼストの顎を叩き上げた。
上半身が伸び上がり、同時に銃を持った手を背後に廻し、その勢いで全身を旋回させて――蹴り穿つ!
「がぶぉ!」
バリアジャケットに包まれた肉体に、その回し蹴りは確かに届いていた。
肺に溜まった血を吐いて、ゼストはゆっくりと膝を突き。
「さらばだ」
心臓に突きつけられたデザードイーグルの引き金の引き絞られた音が、ゼストの聞いたこの世で最後の音となった。
支援します!!
なんと言う肉体派支援
それは静かな空間だった。
たった一人の男を除いて、誰も居ない室内。
豪勢に並べられた本棚は、腕の立つ職人によって作り上げられた椅子とテーブルは
何故か古びえたオブジェクトのように味気ないものだった。
『大変な真似をしてくれたね、レジアス』
机の前に浮かぶモニターには一人の男が写っている。
黄金色の異形の瞳を持った男だった。
「ああ」
それに答えるレジアスと呼ばれた男は彫りの深い、壮年と呼んでもおかしくな年頃の男だった。
『何故、止めなかった?』
「もちろん止めたもの。しかし、ワシの手が届くよりも早く――彼らは正義を実行しようとした。ただそれだけだ」
『なるほど』
レジアスの言葉に、モニターの中の男がゆっくりとレジアスの目に視線を合わせる。
『それで? 彼らの処分はこちらに任せてもらっても構わないのかね?』
「ああ」
『ふむ。君にとっては友ではなかったのかね? この部隊長は』
「友人だとも。しかし、ワシには――そう想う資格を今失った」
『そうか。では、手はず通りに頼むよ』
「ああ」
味気ない会話を終えて、モニターが閉ざされる。
部屋には光源はなく、ただ月夜の光だけが差し込んでいた。
ヤバい
このスカは漢前すぎる
支援!
凄いぞスカさん支援。
「私は……同じ道を歩むはずだった友すらも犠牲にする外道だな」
完璧な防諜体勢の敷かれた部屋に響いた声はどこにも届かない。
「許せ、友よ。私は地獄に落ちるだろう」
涙は流さない。
ただ握り締めた手の平から流れる赤い血潮だけが、涙の代わりのように流れていた。
「私は築かねばならんのだ。例え悪魔に魂と誇りを売り払おうとも、50――否、
“100年の平和”を築き上げるために」
言葉はどこにも届かない。
決意だけが彼の中で木霊していた。
後の世に【戦闘機人事件】と呼ばれる地上本部のエリート部隊が壊滅した事件。
その中で遺体が発見されなかったのは三名。
クイント・ナカジマ准陸尉
メガーヌ・アルピーノ准陸尉
そして、ゼスト・グランガイツ陸尉である。
―― To Be Next Scene SIDE 2−1
END SIDE1 【スクラップ・レコード】
投下完了です。
無事に規制を潜り抜け、全部投下出来ました。
ありがとうございます。
ちょっと肉体派なスカや男前チンクですみませんw
次回からSts時代に突入する予定です。
独特な設定や解釈が多くなりそうですが、なのはらしさを失わずに書いていくつもりです。
改めて支援及びご拝読ありがとうございました。
GJです
信念を持ち、なおかつ魔法を使わずに体技と質量兵器で戦うスカ
コイツは・・・来るぜ!
そしてレジアス
凄く不器用な生き方に惹かれます
でも心労が凄そう・・・
ビスケット・シューター共々、続きが気になって仕方ありません
次回を全裸と靴下でお待ちしております
GJ!でした。
今回は完全にドクター側の応援してました。
チンクとスカが魅力的でした。
質量兵器はred Eyes読んでる者としては、大歓迎です。
では次回を待ってます。頑張ってください。
『墓場鬼太郎』の放映時間を待ちこがれつつ。
GJでした。
GJ!!です。
チンクがウロスで出たキメ台詞を言ったッ!!
そして、運が悪かったゼスト隊、密集隊形でいたのが命取りでしたね。
この密集隊形はファランクスのような陣形と解釈していいのだろうか?
クアットロも本編のように、遊ばないから好きですw遊んでる振りしてやる事やってる。
さすが、二番目の女w
あとは、チンクの眼にレーザーを仕込んで、爆破に使った四肢を、
某管理外世界のメキシコに吹く熱風を意味する名を持つ男の間接が存在しない体や身体能力を参考に作られた男の
ような腕をつければ立派なナチスの軍人に・・・あれ?
面白かったですw
続きまってます♪
GJ!
死ぬほどの大怪我をしていたとはいえ、オーバーSランクを肉弾戦で圧倒するスカ博士がクールすぎる
ナンバーズも三割り増しでカッコいい
そしてレジアス→ヴァイスと繋がっていくだろう流れにwktkが止まらない
短い間にこんなに感想が!!
初めてじゃないか?!
>>150 ありがとうございます。
この作品でのスカはリンカーコアはあるものの不活性(魔力素を変換出来ない)状態で、
魔法が使えない故に己の体を鍛え上げ、同時に質量兵器に手を出しました。
魔法とは異なり、多少の向き不向きはあるものの努力のみで向上出切る技量と力は彼にとって本当の力です。
レジアスもまたスカとは多少異なりますが、信念を持って動いています。
そのためならば友の死の前に耐え切れるほどの漢です。
これは本編の時から思っていましたが、それを顕著にしてみました。
>ビスケット・シューター共々、続きが気になって仕方ありません
ビスケット・シューターも読んでいただけましたかw
彼が機動六課における主人公です。スカの行う偽悪とそれに対応する”正義”側を描くつもりです。
どちらもお楽しみにください。
>>151 ……今回の話ではどちらかというスカ陣営のほうが悪だと思われるかと思ってましたが、
どうやらチンクとスカを気に入っていただけたようでありがとうございます。
今回の話でチラリと話題に出しましたが、”スカの”戦闘機人は魔法が使えません。
その代用としての質量兵器はこれからも出ると思います。
そして、まだ”チンクの装備は完全ではありません”。
その意味をお楽しみにください。
>>153 ウロスで予告しておいた台詞をようやく出せましたw
意味を理解していただけたでしょうか?
ナチス軍人にはなりませんが、彼女の今後付ける眼帯の下にも秘密を入れる予定です。
そんな大したものではないと思いますが……
>>155 続いていきますよーw
この二人の間を埋めるのがレジアスで、二人が描く物語は本編の全容となります。
お楽しみにw
>>153 忘れてました。
陣形はファランクスシフトのようなものだと思ってください。
防御のベルカと射撃のミッドによる突撃陣形の一つだと思ってくれれば(汗)
GJ!続きが気になるッスー。
ところで今予約はありますか?
確か騎士ガンダムの人がお待ちです
あ、それじゃあ明日あたりにしておきますー。
リベリオンは面白いですなー。
そして支援。
>>157 本編で見たかった戦術だorz
でも、ここで見れたから悔いは無いですw
ちくしょう、もう月曜日なのに寝られないよ支援
黄金体験鎮魂歌に突入したようだな。
投下して燃え尽きたぜ
けれども支援だけはする
騎士ガンダム支援 です
……まだ15分ほどしか経っていないだと!?
いかん、さすがに、眠……く……
>>163 永遠に月曜日の朝にたどり着かないのかwww
とととときめいてなんていないんだからなっ!
別に兄貴とか親父´sとかマッドサイエンティストなんかにときめいたわけじゃ無いんだからな!
やっぱ魔法少女物とはいえ、漢野郎どもがいないと物足りないよなぁ。
あと一話できたんですが、何時ごろ投下すればおkですか?
えっと、高天氏の反応が無いのですが、まさか寝落ち?
高天氏には申し訳ないですが、ちょっと先に投下させて頂きます。
騎士ガンダムの人は何時頃なんだ?
『ブルートシップです! 接近中!
シップマスターっ、敵の数は約三倍です!! 』
『だったら対等だな。
全艦攻撃開始、けだもの共を焼き払え!』
<西暦2553年アーク宙間艦隊戦
サンヘイリ旗艦『シャドウ・オブ・インテント』ブリッジ内での会話>
HALO StrikerS 〜GunGirl with SwordMen〜
Level1――『SecondContact』
「――――侵入者だと?」
ブリッジ内に“男”の声が響いた。
低く、重厚な、まるで鉄を思い浮かばせるような落ち着いた声。
常に冷静さを、いやむしろ冷徹さを兼ね揃えた“男”の声は、部下の報告に対し怪訝そうな響きを含んでいた。
“男”は報告してきた部下にもう一度尋ねる。
「それも“あの”インストレーション04にだと? またブルートの狂信者どもが性懲りも無く現れたのか」
再びかけられた問いに含まれるのは怒気。
「侵入者たちは磁気嵐を利用して哨戒網を突破したようです……かつての我々と同じ手段で、です。
何よりも問題は――――侵入者は『棺』を奪っていきました」
――――瞬間、周囲の空気が凍りついた。
部下の背中に冷や汗が流れる。
己は歴戦の戦士である。
艦長として艦隊戦を繰り広げて来ただけでなく、特殊部隊を率いて艦内戦から地上戦まで様々な戦場を渡り歩いてきた。かつて自身の左顎を吹き飛ばされた時でさえ、平然と敵に撃ち返してやったことがある。
その己が今、恐怖を覚えている。
他ならぬ味方に、己が仕えている指導者に、共に戦場を駆け抜けてきた戦友に、だ。
だが、同時に彼は納得する。
これこそが“男”の本質だ。
鋼鉄のように冷静沈着でありながら、その内面に烈火の如く気質を隠している。
誇りのためならば、たった一人で敵軍に立ち向かう苛烈さ。
その怒気が表面に出る時は敵を討つときのみ、それを目の当たりにする者の多くは帰ってこない。不運にも困難に見舞われた友軍を除いて、殆どの敵対者は“男”の剣に斬り伏せられる。
幾百幾千の戦列を斬り開く力。
それは正しく『英雄』が兼ね揃える性質だ。
彼は恐怖を戦場で鍛えた肝胆で抑え込み、報告を続ける。
「セキュリティが発動した段階で敵は既に『棺』を確保していました。哨戒部隊が迎撃するものの突破され、『棺』は敵艦によって回収されました。
現在脱出に失敗した敵が三名、04施設内で戦闘中。戦闘は均衡状態です」
“男”の視線がさらに剣呑なものになる。
「『棺』を奪われた上コヴナントの精鋭が、たった三人に梃子摺るか……敵は何者だ?」
その言葉に部下は返答に窮した。
別に感傷を持ち込むほど己は若くない。
だが、それでもなお、報告された事実は彼を逡巡させるに充分なものだった。
「どうしたシップマスター。報告は正確かつ迅速に行え、貴様がいつも部下に怒鳴っている言葉だぞ」
冷静でありながら怒気を孕んだ催促。
部下は、機動母艦「シャドウ・オブ・インテント」艦長ラタス・ヴァドムは、戦友に向け未だ信じられぬ事実を述べた。
「――――ヒューマンです。侵入者は全員、人類でした」
「…………報告を続けろ」
ここで怒声を上げなかったのは“男”の冷静さ故だ。
だが、その声には有無を言わせぬ雰囲気を漂わせている。
ありえない事実だった。
たしかに彼ら人類は自分たちコヴナントに癒えぬ恨みを抱いている。
だが、それでも彼らと自分たちは、一度は共に背中を預けあった戦友であった。
いつかは復讐の時が来るだろう、その覚悟は出来ている。
いずれ立ち向かってくるであろう強敵を、かつての戦友を迎え撃つ覚悟は出来ている。
しかし、余りにも早すぎる。
種の絶滅寸前まで追い込まれた彼らは今、失われた400年を取り戻す復興の最中である。
報復戦争を仕掛けるには、少なくとも後一世紀を要するはずだった。
それになにより――――
――――『棺』は災厄でしかない。銀河系全てを喰らい尽くす、餓鬼を招く呪いだ。
それを彼ら人類は、多大な犠牲と共に学んだはずだ。
前回の戦争で、彼ら人類と己らは多大な犠牲を払いながら『奴ら』を棺へ押し込めたはずだ。
あの戦争から三年。
己たちの種族は、フォアランナーの遺跡に未だ残る『奴ら』の棺を封じる墓守の主として生きてきたのだ。
それが破られた。
“男”は静かに猛っている。
あの戦争で、多くの同胞が散っていった。
狂った預言者の欺瞞により導かれた戦争。
流れなくて良かったはずの血が流れ続けた28年間。甘言に欺き続けられた1000年間。
その果てに手に入れた結末。
数多の戦友の命と引き換えに手に入れた平穏。
二度と、災厄を繰り返さぬという誓い。
それを踏みにじられたのだ。
“男”は静かに、そして烈火の如く猛り狂っていた。
「敵の所属は不明です。地球軍のデータに侵入者の装備、使用艦船は該当するものはありません――ただ一つの事例を除いて」
ラタスは報告を続けながら手元のコンソールを操作する。
“男”の正面に立体映像が映し出される。
映し出されたのは戦艦。だがコヴナントのものでも、地球軍のものでもない、流線型を描いた優雅な白亜の船。
“男”にとって、見覚えがあったものだ。
「五年前の事件だな?」
「ええ。五年前、ハイチャリティが奇襲された際に確認された正体不明艦です。当時は地球軍の秘密部隊だとして処理されました……あの『悪魔』と同じような部隊として」
「――――だが違った。それ以後同型艦は確認されず、我々が人類と同盟を結んだときでさえ、アレと同じ艦は戦列に参加していなかった……人類滅亡の危機に対してにだ。
使い捨ての実験部隊だとばかり思っていたのだがな」
「私もです……そしてこちらを御覧下さい」
映像が切り替えられる。
「――――っ!?」
映し出された船は、先ほどの戦艦に比べれば大分小型なものだ。
だが、白亜の外装と流線型の船体。
五年前、彼らの本拠地周辺に突如現れた艦船と同系統であることは明らかである。
「侵入者の船です。五年前と同様、侵入者の武装はエネルギー兵器を使用していました。最も、我々のものでも地球軍のものでもない技術で作られた、正体不明のエネルギーですが」
続いて映し出されたのは動画映像。映像が不規則に揺れているのは兵士が着用するアイカメラの視点からだからだ。
映像の背景は艦船内部。
彼らの戦艦とは大きく異なる、白を基調とした清潔感溢れる船内。
本来なら汚れ一つ無いであろう船内通路は至る所で焦げ付き、壁には幾条もの弾痕が刻まれている。
視界を埋め尽くす爆音。
飛び交うプラズマ弾の軌跡。
視界の主が手にしている対装甲車用携帯火器……ロッドガンから放たれた燃料エネルギー弾が船内隔壁を吹き飛ばす。
金属が破れる不快な音と共に、隔壁があった区画が爆風に包まれる。
突如閃光。
未だ晴れない粉塵から飛び出したのは赤や青など色とりどりの光弾。
その光弾が、先頭を走っていた視界の主に命中する。
十数発の光弾を浴び、アーマーの破片と血肉を撒き散らしながら倒れる視界の主。
倒れた視界が見せる光景は続き、やがて隔壁を包んでいた爆風が晴れる。
破れた隔壁から覗くのは杖。
機械的な装飾がなされた金属の杖を差し向けているのは――人間。
儀礼服のような、戦闘服と呼ぶには繊細すぎる白を基調とした制服。
彼らは皆傷つき、消耗しながらも戦闘を続けている。しかし、その表情には明らかな恐怖が張り付いている。
不意に、倒れていた視界が動く。
視界の端にロッドガンの銃身が現れ、その銃口が人間たちに向けられる。
驚愕と恐怖で顔を歪める人間たち。
再び閃光。
暗転。
ここで映像は途切れる。
「艦内戦闘か。あのとき突入を指揮したのは貴様だったなシップマスター」
「ええ、そのときに左顎を吹き飛ばされました。ヒューマンの若造にしては良い腕をしていました」
ラタスはそう言うと己の口元に触れる。
本来存在する『二対』の顎は、その左半分を失っている。
治療し復元することも可能だったが、それを敢えて拒否したのは己への戒めと、名前すら知ることのなかった『敵』への敬意だ。
彼らの種族は、闘争にこそ敬意を抱く。
――――そう、『二対』の顎。
人間ならば決して存在しない器官。
僅かに発光する外壁だけが光源の、暗紺色を基調とするブリッジ。
人間が使うなら光源の少なさで業務に支障をきたすであろう内部構造。
だが『彼ら』にとって、その程度の暗闇はなんら問題ではない。
下顎が存在しない、肉食昆虫のような二対の強靭な顎
二足歩行でありながら、ホモサピエンスとは根本から異なる爬虫類のような体躯。
2メートルを優に越える長身。
人間のソレを遥かに上回る鍛え抜かれた筋肉。
機能的でありながら、同時に相手を威嚇するように作られた鎧。
――――そう、彼らは人間ではない。
――――『サンヘイリ』
コヴナントの最も古き種族であり、コヴナントを創始した二種族の片割れ。
1000年に渡りコヴナントの軍事面の頂点に立ち、コヴナントの剣として幾多の種族を屈服させてきた戦闘者。
強靭な肉体と、旺盛な戦闘意欲と、高度のテクノロジーを有する種族。
戦闘こそを至上とし、戦士であることを至高とする戦闘種族。
滅びた文明の『観測者』ですら、最強の二文字と評価した戦士の一族。
それが新暦72年、管理局が遭遇した知的生命体の正体である。
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薄暗い、暗紺色のブリッジで亜人たちの会話が続く。
「ああ、覚えているとも。なにせ、あの艦隊の迎撃を指揮したのは私だ」
そう言い、“男”は考え込むように黙る。
「侵入者に心当たりが?」
「無い」
「…………そうですか」
思わせぶりな挙動に反し断言された否定の言葉に、ラタスが若干肩を落とす。
“男”は、そんな部下の様子に構うことなく思索に沈んでいく。
侵入者は何者か?
五年前と今回の侵入者は同一のものと見て間違いないだろう。
問題は『奴らが何処から来たのか』、だ。
地球軍でない。
となると軍組織でない民間組織か? ……それもありえない。侵入者の持つ技術は異質すぎる、コヴナントでも地球軍でもない。たかが民間組織が持つには身に余る代物だ。
そもそも地球からの部隊では無いのでは? 侵略し逃した植民地惑星が存在し、復讐に燃える開拓民の仕業か。
それとも…………フォアランナー達は地球のほかにも『箱舟』を作っていたのか?
いや、それこそ夢物語の類だ。
どの推測も妄想の域を出ない。
答えの出ない思考の渦に陥りかけた時、“男”はあることに気づいた。
――――そうだ、なにも今ここで結論を出す必要など無かったな。
艦隊司令であったときの悪い癖だ。何もかも司令室で結論を下そうとする。
だが今の己は立場こそ特殊だが、本質的には一介の戦士に過ぎない。
ならば、気の向くまま戦場を渡り歩けば良い。
そう――共に戦火を駆け抜けた、あの『SPARTAN』のように。
「シップマスター、降下艇を出してくれ」
「どうするつもりです?」
ラタスが、長年の戦友がニヤニヤしながら聞いてくる。
溜息を一つ、内心で噛み殺す。
――まったく、今回のこれを肴に暫くからかう心算だな。戦争が終わり、小競り合いも減ってきたせいで底意地が悪くなっている。
「直接相手から聞き出す、取り残された侵入者はまだ生きていたな?」
戦友の顔に喜色が広がる。
始めから己の答えを予測していたようだ。
「無論です。部下には足止めを厳命し、ハンターどもは下がらせました、連中は手加減など知りませんから」
「完璧だ。サラームとタハムを呼び出せ、奴らも鬱屈していたところだろう」
「了解。各員っ、スリップスペース準備!
これより本艦はインストレーション04へ向かう!!」
慌しくブリッジを飛び交う指令に背を向け“男”は座っていた椅子から立ち上がり、ブリッジの隅に設置された武器ホルダーへ向かう。
ホルダーからカービン銃を取り出し、カービンの銃把を二度三度、確かめるように握り締める。
カービンの予備弾薬とプラズマグレネードを四個ずつ、鎧のホルダーに差し込む。
右腿に手を伸ばし、掌に馴染んでいる硬い感触があることを確かめる。“男”が最も得意とする得物は、肌身離さず常時その身に着けている。
ブリッジを青白い光が満たす。
閃光が周囲を包んだのは一瞬だけ。バッテリーが切れるような音と共に閃光が収まる。
ブリッジにオペレーターの報告が響く。
「報告! スリップスペース成功、目標宙域に到達致しました!」
彼らの持つ技術の一つ、高精度かつ相対性論的副作用の存在しない恒星間移動。
管理局が転移魔法と誤認した、SF小説のようなワープ技術。それを彼らサンヘイリは実戦使用が可能なレベルまで構築していた。
ブリッジに二体のサンヘイリが入ってくる。
青と赤それぞれのコンバットアーマーに身を包み、手にはライフルやロッドガンを担いだ完全武装。“男”が呼び出した直属の護衛兵が、彼の後ろで静かに整列する。
それを確認すると“男”は司令官席に座る戦友兼副官に歩み寄った。
「これより降下する。貴様も来るか、ラタス?」
“男”が戦友の名を呼んだ。
指導者と部下という間柄でなく、旧知の戦友同士の会話を始める合図だ。
「無論だ『アービター』――芳しき闘争の匂いを前にして私が退くとでも?」
戦友の答えに頷きを一つ返し“男”は――――『アービター』は降下艇へ向かう。
アービター――『調停者』。
コヴナントが困難に見舞われたとき、サンヘイリ族で最も勇敢な戦士が選ばれる殉教者。殉教者は名を捨て、これまで築き上げてきた全てを捨て『アービター』の称号だけを手にし、その生涯を生存困難な闘争の中で過ごす。
コヴナントの信仰が崩れた今でもなお、彼ら歴代アービターが成し遂げた功績は色褪せることなく、アービターの称号を手にする者は戦士たちの敬意を一身に集める。
それは、サンヘイリ族最強の戦士の名である。
「往くぞ――祖先と戦友の魂に賭けて、我らが闘争へ」
『オオオオォオオォォォォォッッ!!!』
英雄の宣戦に、亜人たちは野獣のような鬨の声を上げる。
完全武装の亜人の戦士たちが、武器や鎧が擦れる金属音を響かせ行進する。
古風な鎧を身につけた亜人を先頭に、異形の戦士たちが戦場へ行進する。
亜人たちの英雄。
――――英雄が今、再び戦場へと舞い戻る。
<インストレーション04――研究プラント 崩落区画第二階層>
――世界の終わりを見られるなら、それはきっとこんな光景なのかも知れないわね。
ティアナ・ランスター執務官補佐は濁流のように吹き荒ぶ黄土色の大気流を横目に、そんな益体も無いことを考えていた。
防護壁に背を預け、嵐のような風圧に耐えながら、ティアナはふと上空を見上げる。
上空に雲は無く、空の青さも無く、太陽すら見えない。見えるのは吹き荒れる黄土色の大気流だけ。
当たり前だ。
彼女がいる場所はロストロギアが封印されていた遺跡。そのためだけに作り上げられた環状惑星……その残骸なのだから。
資料を渡されたとき、彼女はソレを冗談か何かだと信じた程だ。
第180観測指定世界で存在していた、既に滅んだ高度文明。
その文明の担い手たちはロストロギアを保管するためだけに惑星を、『リング状』の人工惑星を造り上げたのだ。
馬鹿げた話だ。ただの人工衛星ではなく、居住可能な惑星を一つ、それを倉庫として造る文明など聞いたことがない。
その上、滅んだ文明の人々――通称フォアランナーたちは魔導技術を保有してなかったときている。
わざわざ機密保持誓約書まで書かせるはずである。
それだけでなく、ティアナと彼女の上官を含んだ追加派遣人員は皆、先行している調査隊の隊員の名前すら教えてもらえなかったのだ。
病的なまでの情報閉鎖。
追加派遣されたフェイト・T・ハラオウン執務官とその補佐官ティアナ・ランスター及びシャリオ・フィニーノ両名、さらに新任の空士二名。
彼女らは現地に到着するまで、目標世界の番号すら知らされなかったのだ。
通達されたのはロストロギア調査への追加派遣命令。それ以外の情報は全て先行していた調査隊の隊長……陰気な男から教えられたのだ。
恐らく通達された情報は曖昧な断片に過ぎなかったのは予測していた。何せ彼女たちは最高指揮官である隊長の名前すら知らされていなかったのだ。
……だが、それでも、こんな状況は予想していなかった。
――甲高い連射音。
背後の瓦礫、応急の防弾壁に着弾音。
ここ二時間で随分聞きなれた銃声と同時に、ティアナのすぐ傍らを銃弾が通り過ぎて行く。空気が焼け焦げる臭いが鼻に届く。
着弾点はしばらく青白い炎を放ち、炎が消えた後は真っ黒な焦げ跡を残す。
一般的に知られる質量兵器ではない。
実体弾ではなく、高エネルギー弾を使用した銃弾はバリアジャケットですら貫通する威力を持っている。
効果は確認済みだ。
なにせ――――。
「ガアアァァァッッッ!!!」
「ルーク!? しっかりしてルークぅっ!!」
「落ち着いてシーナ! ルークの身体をもっと壁に寄せて! 彼が舌を噛まないよう布を咥えさせるの!!」
――――なにせエネルギー弾で太腿を撃ち抜かれた仲間と共に、戦場となった遺跡に取り残されたのだから。
あの陰気な調査隊長から与えられた情報では、第180観測指定世界には現地種族が存在するが魔導技術を保有していないとのことだった。
そのため命令では、管理局の『魔導技術の存在しない世界への相互不可侵』の原則により必要以上の接触は禁じられている。
上記の事項を鑑みロストロギアの回収は極秘裏に行うことが決定されていた。
現地種族は魔導技術を保有していないため危険性は少ないと教えられたが……それこそが最大の嘘だった。
Sランク魔導士を指揮官にAランク魔導士八名の調査部隊。遺跡内部に仕掛けられたトラップを対処するためだと言われたが、それも虚構。
自分たちは現地種族への、魔導技術を持たずに精鋭魔導士と戦闘が行える『敵』への対応部隊として呼ばれたのだ。
爆散し、半ばからへし折れ面積の半分を失った環状人工惑星。
均衡を失い、まるで惑星創生時のように不安定な環境。
上下左右に乱れる重力の渦の中、揺らぐことなく中空に鎮座している遺跡……そう呼ぶにはあまりにも機械的過ぎるプラント施設。
調査隊が遺跡内部に降下し、遺跡中枢でロストロギアと思われるケース……むしろ“棺”と称する方が正しい人間大の直方体を回収した直後、獣の唸り声のような薄気味悪い警報が流れた。
その後の展開はまるで戦争映画の有様だった。
まるで底なしのように集結してくる降下艇。
見たことも無い船体の降下艇から降り立ってきたのは異形の兵士たち。
爬虫類のような亜人の兵士から、子供程度の身長しかない兵士。全身を装甲でまとった身の丈3メートルを越える兵器じみたな兵士。
まるでSF映画に出てくるような異形の者たち、亜人の兵隊。
姿形はバラバラな彼らは、だがしかし統一された意思によって統率され、互いに連携しながらティアナたち調査隊に襲い掛かってきたのだ。
『敵』が持つ銃器から放たれる青や緑色、極彩色のエネルギー弾。
魔法というアドバンテージを持った調査隊の余裕は、先行していたポイントマンがバリアジャケットごと肩を撃ち抜かれた時点で消失した。
あとは戦場そのものだ。
飛び交うエネルギー弾と魔力弾。
敵ガンシップから放たれる砲弾じみた高エネルギー弾。
爆風と銃火に晒されながらも回収ポイントまで一人の脱落者が出なかったのは、ひとえにフェイト執務官が先陣を切り、後続への負担を肩代わりしていたからだ。
――そう、回収ポイントまでは。
『ティアナっ、早く!』
彼女らしくない、切羽詰ったフェイトの叫び声。
回収ポイントまで後10メートル。
『まだですフェイトさん! ルークとシーナが!』
ティアナの後方にはまだ二人の隊員が残っている。
『クロスミラージュ!』
《Shoot Barret》
振り向き様に魔力弾を放つ。
二人の隊員に銃口を向けていた長躯の兵士に、魔力弾が命中する。
しかし兵士はよろめいたものの倒れる様子はなく、体勢を立て直すと直ぐに物陰に隠れていった。
兵士に着弾した瞬間、敵のアーマーが黄色のエネルギー光を放ち全身を覆うように輝いたのをティアナは見た。
おそらく敵はバリアジャケットを貫通する武器だけでなく、バリアジャケットのような防御装備を備えているのは確かなようだ。
支援
『ルーク! シーナ! あたしが援護するから早くこっちへ!!』
『はっ、はい!』
憔悴しきった隊員たちの声。
今回が初任務だった新人には、あまりに重い初出撃となってしまった。
クロスミラージュの銃身を取り替えマガジンチェンジ、トリガーを引き絞りカートリッジロード。枯渇しかけていた魔力が体内に満ちる。
再装填された魔力で再び弾丸を撃ち放つ。
新人二人が回収ポイントに着くまであと50メートル。
二人が走る後ろを、蛇の如く執拗に銃弾が追いかける。
飛行魔法は使えない。不用意に使えば上空を飛び回るガンシップの銃座によって、離陸して10秒で程よく焦げ付いたミンチの出来上がりだ。
二人に飛び掛ろうとした亜人の頭部に魔力弾を叩き込む。
あと40メートル。
不躾な侵入者を逃すまいと、異形の兵士たちは野獣のような雄叫びを上げながら一斉に突撃してくる。まるで狂牛の突進だ。
吹き荒れる大気流を押しのけ、野獣たちの咆哮が遺跡中に響き渡る。
非殺傷指定など存在しない、一発が致命傷に成り得るエネルギー弾が二人へ向かって雨霰と浴びせられる。
極彩色の雨が吹き荒れ、逃げ遅れた獲物を喰らい尽くすため、亜人たちの銃弾が二人を執拗に狙う。
『うわぁっ!!』
『ルーク!?』
青年のすぐ後ろを、爆発性の高エネルギー弾が襲う。
堪らずたたらを踏み、立ち止まる青年。
それに釣られて片割れの少女も立ち止まる。
『走り続けて! 止まったら終わりよ!!』
再三射撃。残りマガジンが底を尽き始める。
あと30メートル。
ティアナの背後から次々と放たれる無数の魔力弾。
金色の魔力光はフェイトのものだ。それだけでなく、他の隊員たちからも援護射撃が行われる。
突如一斉に撃ち返された弾幕に、亜人たちの突撃が怯む。
銃弾の嵐が、ほんの一瞬だけ止んだ。
『今よ!』
『りょっ、了解!』
――脱出へのラストラン。
これを逃せば脱出の機会は無い。
走る――ひたすらに走る。
あと20メートル。
援護射撃は続く。
ティアナの位置からでも二人の表情が見えるようになってきた。
援護射撃は続けられる。
敵の銃撃は止んでいる。
あと18メートル。
二人の表情に安堵の色が見えてくる。
ティアナも、張り詰めた緊張の糸が解れてきた。
あと15メートル。
――これでやっと帰れる。
戦場からの脱出が手の届く位置に見え、新人二人を含め調査隊全体から安堵の雰囲気が満ちる。
そのタイミングこそ、「そいつ」が狙っていたものだ。
あと13メートル――――銃声。
『――――あ?』
『…………ルーク?』
これまでの銃弾とは明らかに異なる、一条の光線が青年の足を貫いた。
不意に動かなくなった足を不思議そうに見つめ、そのまま地面に転がり倒れる青年。
その太腿に、まるで冗談のような大穴が開いていた。
太腿の穴から白い骨が覗き、その向こうには遺跡の風景が見える。
バリアジャケットを着用した人間の身体に穴を、それも直径5センチ近い大穴を貫通させる。まるで出来の悪いスプラッタ映画のような光景。
だが、それは紛れも無い現実だった。
光条の先、200メートル離れた遺跡屋上。
そこには一人の亜人が、突撃槍の如く長大なライフルを構えていた。
――狙撃手。
驚愕と唖然の後にようやく、青年の脳髄に痛覚が届く。
『あ――――アアアァァアァッッッ!!!!!』
太腿を貫かれ、痛みを紛らわすために転げ回ることもできず青年は、ルークはただ獣のような叫び声を上げる。
『いやああぁぁぁっ!!! ルークっ! しっかりしてルークぅぅぅ!!』
そんな幼馴染の狂態に、少女は悲鳴を上げ青年に駆け寄る。
――逃避行が止まった。
脱出の機会が急速に失われていく。
その光景を目の当たりにした時、ティアナは無意識の内に行動していた。
『フェイトさんっ、二人を回収します! 援護を!』
掩蔽壕代わりにしていた遺跡の柱から飛び出し身動きできず孤立した同僚へと駆ける。
狙撃手は8倍スコープに二匹の獲物を捉え続けていた。
脚部を狙撃した一匹は倒れ、それに釣られてもう一匹の獲物も動きを止めている。
後は待つだけ。
放っておけば仲間を助けようとして、別の獲物が飛び出してくる。それを撃てば良い。かつて何度も経験した友釣り、ただし相手は魚でなく人類だったが。
やがて狙撃手の読み通り、スコープの端に赤毛が映り込んだ。
赤毛の女。その頭部に照準を合わせ――――悪寒。
咄嗟にスコープの位置を変える。
スコープに映ったのは金髪の女。
女の足元にプログラム回路のような幾何学模様が浮かび上がり、模様は急速に光を放ち始める。女が手に持った機械鎌を振りかざす。そして――――
――女と目が合った。
次の瞬間スコープが金色の光で埋め尽くされ、狙撃手は光の奔流によって外壁まで吹き飛ばされ意識を失った。
取り残された二人に駆け寄る。
『補佐官! ルークがっ、ルークが!!』
少女が青年の頭を抱きかかえながら、半狂乱になってティアナに助けを求める。
『落ち着きなさいシーナ! ルークの傷を見せて!』
ティアナは青年の傷を見る。
『……酷い』
傷は見事に貫通し、骨と穴の向こう側が覗いている。
生体への殺傷より貫通力を重視した高出力のエネルギー弾だったのだろう、傷は万遍無く焼かれているため出血死の心配は無い。
だが撃たれた本人には地獄のはずだ。肉だけでなく骨や神経までも焼かれる激痛。しかも失血により安易に死ぬことができず、苦しみは悪戯に長引く。
一刻も早く後送し適切な治療を受けさせなければならない。時間が経てば欠損部分の回復が困難となり、最悪の場合脚部を切断しなければならなくなる。
気を取り直す。
犠牲を厭うのならば、一刻でも早くこの戦場から離脱しなければ。
『シーラっ、ルークの肩を担いで! 回収ポイントに急ぐわよ! ルークには耐えて貰うしかない!!』
『は、はい! ルーク、行くよ?』
『――づっっっ……ぐうぅぅっ!!』
少女に肩を貸され、苦悶の声を上げながらも立ち上がる青年。
二人と目を合わせ、一度だけ頷き合う。
『あたしが援護するからシーナはルークを――――』
『――――離してっ! 離してください!! まだ脱出は終わっていません!!』
悲鳴。
見れば回収ポイントでは揉み合いが起きている。
違う、こちらへ向かおうとしているフェイトを周りの隊員たちが取り押さえている。
その直後、回収ポイント一帯に魔方陣が浮かび上がる。
『待ってっ、待ってください! まだ部下が、ティアナたちが――』
支援
支援
支援、管理局がそこの人類と異種族が命を賭けて封印した物を持ってったのか。
そりゃ怒るよ。
悲痛な叫び声。
それに構うことなく魔方陣――転移魔法陣に魔力が走り、周囲の空気が歪み始める。
フェイトがティアナたちへ向かって手を伸ばす。
だが、その伸ばした手は――
『ティア――――』
――――少女の名を叫ぶ声と共に虚空へと消えていった。
『フェイ……ト……さん?』
僅か10数メートル。
たったそれだけの距離を挟んで、少女たちは戦場へと取り残されたのだ。
――オオオオオォオォォォォォォ…………。
回収部隊の撤退を阻止できなかった亜人たちが怨嗟の声を上げる。
置き去りにされ、唖然とする彼女たちに追い討ちをかけるように、野獣たちの遠吠えが遺跡中に響き渡っていた。
それが、ティアナ・ランスター執務官補佐が置かれている現在状況だ。
本隊から置き去りにされ、周囲を敵部隊に包囲されている。
戦力は僅かに三名。
執務官補佐とルーキーが二人。
しかも、その内の一人は太腿を撃ちぬかれ戦闘不能。もう一人は所々火傷しているものの軽傷、だが幼馴染が目前で撃たれたせいで精神的に不安定になっている。
そして最後に魔力が枯渇寸前の執務官補佐が一人。
チェス盤に残ったのは碌に動けぬキングが一つ、なおかつ敵の手駒は充分。チェックメイト寸前、審判がゲーム終了の宣言を今か今かと待っている。
笑ってしまうほど絶望的な状況。
本隊から置き去りにされた後、追撃してきた敵に囲まれた回収ポイントから脱出するため、ティアナは残り少ない魔力を幻影魔法につぎ込み現在いる崩落区域まで辿り着いたのだ。
半壊した施設はまるで猛獣に喰い千切られたように抉られ、施設内だと言うのに吹さらしの嵐が屋内を暴れ回り、崩れ落ちた屋根から黄土色の大気流が覗く。
屋内はまるで大地震でも起きたかのように、所々から瓦礫が隆起・崩落し、地肌を覗かせた岩山のような風景を見せている。
目下最悪の現状で、最も安全な場所だ。
点在する瓦礫の山は敵の視線と銃撃からティアナたちを守り、ガンシップは障害物が多すぎる施設内に進入できない。
最も長時間生存可能で、最も容易に撤退できる位置だ……救出艇がくれば、の話だが。
銃声。
瓦礫の防弾壕に隠れているティアナたちの頭上を銃弾が通り過ぎる。
撤退時に比べれば、彼女たちを包囲している敵部隊は明らかに減っている。恐らく撤退した調査隊本隊の捜索に当てられているのだろう。
もしくは鼠を追い詰めた猫のように、見せしめとして嬲り殺すつもりなのか。
まあ最も、
「――――侮るんじゃっ、ないわよ!!」
少女は鼠と言うよりも、むしろ猫であったが。
銃撃の間を見計らい、瓦礫の山から身を乗り出す。
クロスミラージュの銃口を、銃撃の主である亜人へ向ける。
それを察知した亜人は素早く瓦礫の影へ身を隠す。
――無駄よ。
放たれた魔力弾は上空へと、明後日の方向へ向かって飛んで行く。
魔力弾は、敵が隠れている瓦礫の上を通り過ぎようとして――――急降下。ほぼ垂直に且つ高速で落下した魔力弾は、容赦無く瓦礫の影に隠れる亜人たちに襲い掛かる。
つり目の、勝気な猫のような少女の爪は恐ろしく長い。
亜人たちの射線が直線であるのに対して、少女の射線は変化自在。
ティアナを支援
このような入り組んだ地域では大きなアドバンテージを誇る。
ティアナが認識可能な範囲こそが、少女の狙撃可能距離だ。
亜人たちは一度でも少女に捕捉されれば、その身を少女の爪で容赦無く切り裂かれる。
この光景を見せ付けられ、亜人たちの気配が再び下がる。
近づき、迎撃され、撤退し、再び接近する。先ほどからこの繰り返しだ、亜人たちは最小限の人員で攻撃と撤退を繰り返している。
典型的な消耗戦だ。損害にならない程度の示威戦闘を行い、敵の神経を消耗させる。
なんの目的があるのか知らないが、撤退時に比べると随分大人しい攻撃だ。
敵の気配が遠ざかったのを確認し、ティアナは防御壕の中に座り込む。
この隙に予備の銃身にカートリッジを装填する。カートリッジが底を尽きたティアナ代わりに、戦闘不可能になった二人から渡してもらったものだ。
「シーナ、警戒をお願い。今ので10分は稼げると思う」
「…………はい」
新人の少女は力の無い返事を返す。
無理もない。初めての実戦で人が撃たれるのを、それも幼馴染が撃たれるのを目撃したのだ。元来戦闘向きでない補助型魔導士であり、性格的にも争いに不向きなシーナには辛い状況だ。
(……なんとかしないといけないわね)
体力の消耗よりも士気の低下が著しい。
精神論をかざすつもりは無いが、こんな状況では負傷より士気の低下こそが命取りだ。
絶望的状況下では技術や体力より、生還への意志こそが戦い続けられる原動力になる。
瓦礫に背中を預けながら、状況を打開する方法を考えようとして、
「……補佐っ官、もう……いいです……俺を……置いていって下さい」
――――なんだか、ふざけたことを言われた。
「何を言ってるのルーク!?」
「いいんだシーナ……お前は……グウッ!……補佐官とっ、二人で逃げるんだ」
――ピキ。
「嫌よ! 貴方を置いてなんて!!」
「このままじゃ、全員……連中に嬲り殺されちまう……足手纏いは置いて行くんだ」
――ピキピキ。
「行くんだ! 君だけでも生き延びてくれ!!」
「ルークぅ!!!」
――ピキピキピキピキ。
――――プッチン。
進行されるメロドラマを目の前にし、ティアナのナニカが盛大にブチ切れた。
ゆらりと、幽鬼のようにルークの元に近寄り、そして――――
「――――うるっっっさい!!!」
――ガゴンッ!
ルークの頭蓋をクロスミラージュの銃底で、思いっきりブッ叩いた。
「――――っっっっ〜〜〜〜〜〜!!!!!!?
きっ、傷が! 衝撃が太腿に!! 上も下もビックリするほど痛ぇっ!!!
何! 何事ですか!? 俺なんかマズイことでも!? ヤバイちょっと漏らした!!」
「ルーク!! 怪我人になんてこと……って補佐官!?」
メロドラマから一転してカオスになった場。
ティアナは敵の銃撃に構うことなく仁王立ちになり――吼えた。
「えぇいっ、うるさいうるさいうるさーーーい!!! さっきから黙って聞いていればメソメソメソメソ! あんた達は羊か何か!!?」
ティアナさんの堪忍袋の緒が切れたようです。きっと理性とか羞恥とかも切れてる。
「分かりましたっ、分かりましたから! もうしませんから早く伏せて下さい!!」
「うわぁっ敵来た! 敵が来てますよ補佐官! 早く、早く伏せて!!」
大騒ぎに気づいた亜人たちが徐々に少女たちに近づいてくる。
しかしティアナの怒号は止まらない。
管理局の欠点?が出たケースですね支援
「ルーク!!」
「はっ、はいぃ!」
そんな状況ではないのだが、ティアナの怒号にルークは精一杯姿勢を正す。
「格好良さげな台詞を吐く気力があるなら根性見せなさい! 根性を!! 片足でも連中の二人でも三人でも倒して見せなさい!!」
容赦無用の一喝。それが終わると次は少女に視線をロックする。
「次っ、シーナ!!」
「ひゃい!」
「貴女はさっきからルークを甘やかしてばかり! そんなんだからルークはヘタレなの! 幼馴染だったら蹴りの一つでもくれてやりなさい!!」
「ひでぇっ! ひどいっすよ補佐官!」
ティアナの随分な物言いに、ルークは傷の痛みも堪え抗議の声を上げる。
ルークの情けない抗議の声につられ、シーナはこみ上がる笑い声を必死に抑える。
先ほどまでの悲観的な空気は何処かへ消えてしまっていた。
「それにね――――」
腰に手を当て仁王立ちのまま、ルークとシーナの二人を見つめるティアナの視線。
それが不意に、ふっと穏やかなものになる。
――ドドンッ!
ノールックショット。
振り返ることなく銃口だけを背後に向け、近づいてきた亜人に魔力弾を撃ち込む。
「――――あたしたちは死なないし、助けも必ず来る。諦める必要なんて何処にも無い」
あのとき、調査隊は自ら転移したのではない。
あれは調査艦から強制的に開かれた転移ポート。
ならばティアナたちが取り残されたのは事故ではない。最高指揮官である、あの陰気な調査隊隊長の判断だったはず。
――きっと救助は来ない。
そう判断しながら、それでもティアナは笑ってみせた。
心配することなど何一つ無いのだと、そう言わんばかりに力強く笑ってみせた。
風を切る音。
大気流とは異なる、つむじ風のような静かな音がティアナの耳に届く。
見上げれば敵の降下艇が、幽霊のように上空を飛んでいる。
降下艇に一つ睨みをきかせ、ティアナは二人に視線を戻す。
「――――さあ、生き残るわよ。こんな戦闘とっとと終わらせて家に帰りましょう」
ストライカーだから諦めないのではない。
諦めない者こそが、ストライカーと呼ばれるのだ。
<コヴナント降下艇 通称『ファントム』 船内>
――――赤毛の女と目が合った。
つり目の、見る者に勝気そうな印象を与える少女だ。
良い眼をしている。
絶望的状況を自覚していながら、それでもなお諦めることを拒絶した者の眼だ。
「報告と違うな。侵入者が包囲されていたのは見晴らしの良い発着場だったはずだぞ」
ファントム船内のモニターに映し出された侵入者の姿を見つめながら、アービターは傍らに控えているラタスに尋ねた。
「敵の撹乱工作です。ホログラフィ、ステルス、レーダージャミング……良いように撹乱されました。見捨てられたというのに、中々良い根性をしています」
「忘れたのかシップマスター。人類の逃走は常に絶望的な四散か、もしくは極めて巧妙な撤退のどちらかだ」
「たった15ヤード程度の距離を惜しんで味方を見殺しにするような連中が、あの心底諦めの悪い海兵隊どもと同じとは思えませんがね」
ラタス・ヴァドムがフンっと不機嫌そうに鼻を鳴らす。どうやら気に障ったようだ。
「少なくとも、あそこに居る侵入者たちは心底諦めが悪い。被害はどの程度になっている?」
前回の戦争で散々経験したことだ。
瀬戸際で見せる人類の狡猾さと粘り強さ。
無計画に逃亡しているのかと思いきや、その実巧妙な罠を仕掛け、戦勝気分で追撃してきたコヴナント艦隊に痛手を与える。
それだけでは無い。敗北を受け入れることなく最期まで抵抗する彼らは、ときに理解し難いほどの底力を発揮する。
インストレーション04。かつてコヴナントの崇拝対象だったリング状惑星。
駐留していたコヴナント部隊を撃破し、それを崩壊に導いたのは僅か百数十人程度の敗残兵だったのだ。
追い詰められ、覚悟を決めた人類ほど侮れないものは無い。
部隊の犠牲を見越したアービターの予測。その返答は、
「0です。負傷者こそ出ていますが、死亡者は一名も出ておりません」
酷く意外なものだった。
「……どういうことだ」
「連中の攻撃は全て非致死弾です。敵本隊への追撃では若干名死者が出ましたが、やはり多くの者は負傷だけで済んでいます。……まったく、とんだ茶番だ」
手加減された。
その事実にプライドを傷つけられたのだろう、ラタスは憎憎しげに返答する。
「解せんな、五年前では随分と派手にやってくれたものだがな」
五年前のハイチャリティ奇襲。敵艦へ突入した部隊は敵部隊を全滅させたものの、思わぬ抵抗を受け突入部隊側にも部隊機能停止判定が下されている。
「捕虜になることでも見越してるんですかね」
アービターの後ろに控えていた、青のコンバット・アーマーを装着しているサンヘイリがどこか砕けた敬語でラタスに話しかけた。
「有り得んな、そうならば本隊追撃時には10倍の被害が出ている。それに、コヴナントは捕虜を取らないことを連中は誰よりも熟知している筈だ」
「連中が地球軍って決まったわけじゃあないでしょう? 少なくとも俺にゃ連中が地球軍に見えませんがね。あんなヒラヒラした防御アーマーなんて俺達だって持ってませんよ」
「じゃあ何者だと言うのだ、お前は」
「…………宇宙人とか?」
「鏡見て出直して来い、戯け」
「未確認の種族……って意味ですよ」
青のアーマーを装着した、青年期を終えたばかりの年若い兵士。
彼はアービターの護衛になる以前、元々はラタス指揮下の特殊部隊に所属していた。
かつての上官と部下の間で交わされる軽口。
その遣り取りを横目に、アービターはモニターに映る人間の少女を見つめてた。
取り残された侵入者は三名。そのうち一名が負傷し戦闘不能。衛生兵なのだろうか、目立った外傷は無いが戦闘に参加していない者が一名。
事実上、少女一人が戦線を支えていた。
赤毛を二房に結った、恐らくまだ成年を迎えていないであろう少女。
唐突に結われた赤毛が揺れる。
瓦礫から身を乗り出し、両手に握り締めた拳銃で接近してきたアンゴイたちを迎撃している。
拳銃から放たれたのは実弾ではなく、オレンジ色のエネルギー弾。
それがまるで蛇のように瓦礫の間をすり抜け、グラントたちに容赦無く襲い掛かる。
少女の挙動、銃弾の威力、射線の軌跡……それら全てを、仔細全てを見逃さぬようその琥珀色の瞳で観察し続ける。
――赤毛の少女こそが戦線の要だ。彼女を堕とせば自動的に戦闘は終結する。
為すべき事が決まった。
「シップマスター、展開している部隊を後退させろ。私が出る」
端的に命令を下す。
「了解。パイロットへ通達、降下ポイントへ移動しろ」
命令を受け、ラタスは即座に指揮を開始する。
アービターはそれを見やり、後ろの控えている自らの護衛へ振り向く。
「サラーム、タハム。打って出るぞ、フォーメーションはトライアングラーギムレット。サンヘイリ族の本当の戦い方を教えてやれ」
「了解っ!」
「……」
威勢の良い返答と無言の肯定。
まるで対照な二つの返事を確認し、降下用アポーターに向かう。
『降下ポイントへ到着しました。出撃可能ですアービター、御武運を!』
パイロットの報告が船内に響く。
その報告を聞き、壁に埋め込まれたコンソールでアポーターを作動させる。
更に襲い掛かる危機支援
重力感の喪失。
喪失感も僅かな間。直ぐに硬い地面の感触が足裏に届く。
黄土色に吹き荒ぶ大気流。
プラズマ弾が空気を焼いた際に放つ、鼻を突く、しかし嗅ぎ慣れた異臭。
――――慣れ親しんだ戦場の薫りだ。
<インストレーション04――研究プラント 崩落区画第二階層>
二人に悟られぬよう、周囲を警戒するフリをしながら、ティアナは軋む胸を押さえた。
リンカーコアが、まるで主に抗議するように軋む。
たとえ幾らカートリッジで魔力を補充しようとも、それを扱う身体には負荷が掛かる。
自動車と同じだ。
いくら燃料を補給し続けたようとも、酷使すればやがてエンジンが焼き切れる。
リンカーコアとて酷使すれば、いずれ機能障害を起こし術者に永続的な魔導障害をもたらす。
後ろの二人に悟られぬよう、苦痛に表情を歪める。
現在まともに戦闘を行えるのは自分だけだ。
シーナは戦闘に不向きな補助・探索型魔導士。
彼女の貧弱な魔力弾では敵の防護シールドを貫通できず、逆に強度不足のバリアジャケットでは敵の拳銃弾でも致命傷に成り得る。
ルークは珍しい近代ベルカ式空戦魔導士。
短槍を使用した接近戦を主とする彼に、接近戦に最も重要な脚部を撃ち抜かれた彼に戦闘は不可能だ。
太腿を撃ち抜かれた激痛に耐えながら、それでも幼馴染を元気付けている彼に戦闘を命じることはできない。
自分がやるしかないのだ。
いつ来るか分からぬ、来るかどうかすらも怪しい救助を待ち続けるには、自分一人で戦線を維持しなければならない。
ようやく二人が諦観から脱したのだ。今、ここで希望を散らすわけにはいかない。
自分一人でやるしかないのだ。
(大口の代償は高く付いたわね)
皮肉を内心で吐き、クロスミラージュの銃身を額に押し当てる。
冷たい銃身の感触に少しだけリンカーコアの痛みが紛れた。
僅かな安堵の時間。
そのとき、相棒の実直な声が彼女の耳朶に届いた。
《非殺傷設定を解除しますかマスター?》
「――――っ!」
相棒らしい合理的な判断だ。
非殺傷設定を解除すれば、非殺傷のための魔力変換作業の分だけ消費魔力から削れる。
その上、敵を“完全に”無力化できる。
非殺傷設定での攻撃は対象を昏倒させるが、人類より遥かに強靭な肉体を持った亜人たちには効果が薄い。
せいぜい一時的に撤退させるのが関の山だ。
だが。
「大丈夫、解除しなくていいわ」
《ですが》
「本当に大丈夫だから」
少女は強い。
痛みを耐える術を、絶望を跳ね除ける術を、少女は知っている。
力でも体格でも魔力でもなく、その心が、その在り様が強いのだ。
だが――少女は知らない。
己の倫理を、罪悪感を、良心を殺す術を、少女は教えられなかった。
命を奪う覚悟を――少女は知らない。
最も効率的な兵士の育成法とは、ひとえに反復である。
真っ当な人間は激情以外の動機では、容易に人を殺せない。
人生の中で築き上げた倫理観・良心を、人間は容易に殺せない。
第二次世界大戦まで、兵士たちの射撃能力は低かった。
兵士の練度や銃器の性能も要因であったが、それを鑑みても軍上層部が憂慮するほど、兵士たちの射撃能力は低かった。
愛国のため志願した士気の高い兵士。相手が敵国の人間であっても人生の中で築き上げた殺人の禁忌を、彼らは犯せなかったのだ。
また、たとえ戦闘中に殺人の禁忌を克服しても、その罪悪感は戦闘終了後に兵士達へ襲い掛かる。戦闘時のトラウマによる精神障害(PTSD)は、戦後多くの復員兵を苦しめた。
第二次大戦後、軍首脳部が取り掛かったのは兵士のメンタル面サポートであった。
だがそれは治療だけでなく、効率的な殺人のための罪悪感克服の意味も含んでいた。
採用されたのは、最も基本的の教育方法である『反復』。
――射撃ターゲットの人型化。
これまで円形だったターゲットを、人型のマンターゲットに変更したのだ。
そして兵士たちは、ひたすら『人型』を撃ち続ける。
山中で、平野で、海辺で、街中で。
隠れ潜む人型、飛び出してくる人型、人質をとった人型。
ありとあらゆる状況と想定で、兵士たちは『人型』を撃ち続ける。
そして送られる実戦。
訓練され尽くされた新兵たちは本物の戦場で、訓練内容を繰り返す。
山中、平野、海辺、街並、戦場に成り得るありとあらゆる環境。
想定された状況、訓練で体験した状況下で兵士達は、訓練と同じように出てきた『人型』を撃つ。
兵士は自らの意志で『人』を殺すのではない。
訓練された、反復された『指先』が人を殺すのだ。
そういった意味では、ティアナ・ランスターは不幸であった。
殺傷指定と非殺傷指定。
殺人の罪は兵士が負うのでなく、それを命じた者が負う。
本来兵士に委ねられるべきでない生殺与奪の権利を、少女は与えられていた。
殺すことなく敵を撃破できる世界。
都合の良い漫画のように優しい世界は、少女に最も残酷な選択を与えていた。
「…………ありがとうクロスミラージュ、心配してくれて」
《私は貴女のデバイスです。最後まで貴女の銃で在り続けます》
「…………うん」
少女の選択は最も優しく、最も困難な道だ。
その選択に対し少女の相棒は咎めることもなく、実直に『己の存在意義を貫く』――そう告げていた。
向けられる無二の信頼。
――覚悟が決まった。
「――――やってやろうじゃない」
渦巻く空を見上げながら、ティアナは口の端に笑みを浮かべる。
可憐と言うよりも獰猛と言った方が正しい、肉食獣のような笑み。
魔力枯渇にリンカーコアの損傷。敵に包囲され救援の見込みは無い。
コンディションも、戦況も最悪だ。
――それがどうした。
弱音を吐きそうになる身体と精神に喝を入れる。
――――大口叩いたのなら、意地でも生き延びてみなさいよティアナ・ランスター!!
絶望的な状況でも、なお潰えることの無い少女の意志。
――だが、それを貫くには状況はあまりに厳しく、そして少女は優しすぎた。
不意に戦場の空気が変わった。
突如広がる静寂――聞こえるのは大気の音と自分たちの呼吸だけ。
先ほどまで少女たちを囲んでいた亜人たちの雄叫びが聞こえなくなっている。
「――補佐官」
「分かってる……敵が撤退した。でも……何で今更」
自分たちは袋の鼠だったはずだ。嬲り殺す理由こそあれ、見逃す道理はどこにも無い。
「……つぅっ、……救援が来たのかも」
ルークが痛みに呻きながら上半身を起こす。
救援が来るのに越したことは無い。
しかし、
「そうだといいけどね」
嫌な予感がする。
助けが来た、というよりも、まるで嵐の前のような静けさ。
救援ではなく、より厄介な代物が足音を忍ばせて近づいて来ているような感覚。
背筋を這い上がる悪寒を押し殺し、瓦礫の遮蔽壕から身を乗り出て周囲の様子を伺う。
視界に入るのは瓦礫の山、そして――――
「……残念だけど船旅はお預けね。
シーナ、ルークのことをお願い。絶対に頭を上げさせないこと、いいわね?」
――――100メートル先に、赤と青の鎧を着込んだ亜人が二人。
堂々と、まるで散歩でもするかのように近づいてくる。
大馬鹿者か、それとも精鋭か。
悠々と瓦礫を乗り越え、二人の亜人は着実にティアナたちへ接近する。
カートリッジは残り二発、先のことを考えれば迂闊には使えない。
魔力消耗も激しい。
誘導弾はもはや撃てず、使える魔法は単純な射撃魔法だけ。
亜人たちまでの距離が80メートルを切った。
敵の装甲は厚く、生半可な魔力弾では敵の防護シールドを貫けない。
確実を期すなら50メートルは引きつけて撃たねばならない。
残り70メートル。
徐々に敵の輪郭が明確になってくる。
青の鎧の亜人は三角形のパーツで構成された、見る者に威圧感を与える鎧を着込み。
赤の鎧の亜人は丸みを帯びたパーツで構成された、宇宙服のような鎧を着込んでいる。
残り60メートル。
クロスミラージュの照星を亜人たちに合わせる。
そして、亜人たちが射撃圏内に足を踏み込んだ。
――その瞬間、二人の亜人は二手に分かれ疾駆した。
ティアナ、 人生オワタ\(^o^)/支援w
「―――ーなっ!?」
突然変化した亜人たちの進軍速度にティアナの反応が遅れる。
まるでティアナの手の内を読んだかのように、抜群のタイミングとコンビネーションで亜人たちは駆け出したのだ。
亜人たちは左右二手に分かれ、ティアナたちが隠れている遮蔽壕を包囲しようとする。
(速い! このままじゃ最悪白兵戦になる!)
これまでの戦った亜人たちに比べ彼らの疾走は速い。
負傷者を含め、戦闘に向かない者が戦力の六割以上。
このまま遮蔽壕まで乗り込まれたら、事態は最悪なものとなる。
急いで遮蔽壕から半身を飛び出し、敵を牽制しようと銃口を青の亜人に向ける。
だが銃口から魔力弾が放たれる前に、亜人は手に持ったサッカーボール程度の大きさの球体を上空へ放り投げた。
思わず球体の軌跡を目で追う。
蛍のように発光しながら飛ぶ球体。
それがティアナたちが隠れている遮蔽壕の上空に達した瞬間、
――閃光が走った。
網膜が焼き切れるような光の奔流。
「きゃあぁっ!?」
閃光弾。
視界が真っ白な閃光で埋め尽くされる。
視覚機能を完全に奪われ、反撃の手を止められた。
「…………つっ……くぅ……て、敵は!?」
視覚を狂わされていたのは十数秒間程度。
その僅かな時間でさえ、今の状況では致命的だ。
不鮮明ながらも回復した視野。
状況を確認するため瓦礫の影から外を見ようとするものの、顔を上げたすぐ近くに銃弾が撃ち込まれる。
これまでの戦闘とは比較にならない正確な銃撃。
まるでティアナの行動を見越したかのように敵の銃撃が続く。
パキュ、パキュと、まるで玩具の銃のような甲高い銃声が連続して響く。
しかし放たれる銃弾は玩具には程遠い。ニードル状の弾丸は容赦無く瓦礫を砕き、その破片をティアナたちに浴びせかける。
直撃すれば怪我では済まない。
――唐突に銃撃が止んだ。
「…………っ!」
理由は分からない。しかし、そのチャンスを逃すまいとティアナは反撃するために瓦礫から身を乗り出す。
瓦礫の外に見えたのは、先ほどまでと変わらぬ瓦礫の山。
そして自分たちと同じように瓦礫に身を隠している亜人が二人。ティアナたちの位置から20メートルの距離、彼女たちを包囲するよう左右両脇に潜んでいる。
亜人たちはティアナと同じように、瓦礫から半身を覗かせ銃を構えている。
左側には青の亜人。
手にしたライフルを撃つことなく、なにやら円柱状の物体を銃に押し込もうとしている――おそらくマガジンチェンジ。
右側には赤の亜人。
先ほどから一度も発砲していなかった亜人が、その肩に巨大な筒を。まるで資料映像で見た携帯ロケット砲を構える兵士のように、肩に担いだ筒をこちらへ向け。
「――――あ、まず」
筒から放たれるプラズマ弾。
視認できるほどゆっくりと進むソレは、これまでのプラズマ弾より遥かに大きい。
見覚えがある。
数時間前、散々自分たちを追い立てた降下艇が放った砲弾。
身に覚えがある。
着弾と同時に小規模の爆発を引き起こす高エネルギー弾。
「伏せて!!」
押し込み強盗に加担した挙句見捨てられたらやるせないよな支援。
今出てくれば美味しいところは全部持ってけるぜフェイト支援
咄嗟に背後の二人に声を掛け、自身も瓦礫の影に伏せる。
――轟音。
ビリビリと地面が振動し、爆散したプラズマエネルギーが緑色の発光粒子となって周囲に舞い散る。
それに一寸遅れて、四散した瓦礫片がパラパラとティアナたちの頭上に落ちてくる。
砲撃は止まらない。
二度、三度と砲弾が連続して撃ち込まれ、さらにライフルによる銃撃も再開される。
花火のように頭上を飛び交うプラズマエネルギーの閃光。
たった二人の亜人による銃撃は、爆撃じみた弾幕となってティアナたちが隠れる遮蔽壕を砕き、容赦無く削り取っていく。
「畜生! 連中今度こそ俺達を殺す気だ!!」
嵐のような猛攻に耐え切れなくなったのか、ルークが悲鳴じみた罵声を吐く。
だが生憎とそんな罵声に付き合うような余裕はティアナには無い。
このまま黙って銃撃を受け続ければ、それこそ遮蔽壕ごと吹き飛ばされるのがオチだ。
頭上からパラパラと落ちてくる瓦礫片に意を介さず、必死に打開策を思索する。
射撃魔法の有効射程距離を見切られていたことを考えれば、自分の手の内は敵に読まれているのだろう。
先ほどまでの消極的な戦闘は、このときのための威力偵察だったのだ。
(とんだ手の込みようね)
内心で舌打ちを一つ。
満身創痍の分隊以下を相手にするには入念すぎる戦闘準備。
どうやら敵は、自分たちを完膚なきまでに叩き潰したいらしい。
捕虜になる可能性は低いだろう。
人間とかけ離れた姿をした連中が自分たちに、それも土足で踏み込んできた侵入者である自分たちに友好的であるとは考え難い。
――――ならば尚のこと諦めるわけにはいかない。
不意に見知った顔が脳裏に浮かぶ。
幼き日、二度と帰ることの無かった兄。
あまり認めたくは無いが、お節介焼きな親友。
真っ暗だった道程に、標を示してくれた人。
この一年間、ずっと自分の理想に付き合ってくれた人。
ほんの一年前。
あの慌しくも暖かだった一年間を共に過ごした人たち。
彼らの表情が映画のフィルムのように、次々と脳裏に浮かんでくる。
理想がある。夢がある。守るべき部下がいる。
孤独だった自分が得た、新しい絆がある。
ならばこそ――――。
「――――諦めるわけないでしょ! ランスターを見縊らないで!!」
《Shoot Barret!》
遮蔽壕に隠れたまま、上空へ向かって魔力弾を二発放つ。
誘導性も何も持たない単純な射撃魔法は真直ぐ上空へ、陰鬱な大気流を穿つように飛んでいく。
なんら意味の無い、残り少ない魔力の無駄使い。
だが、効果は存在する。
敵は自分の手の内を把握している。
有効射程距離から射撃間隔、魔力弾の貫通性能までもだ。
ならばこそ、その特性を見逃すことは有り得ない。
――“誘導弾”。
魔力弾は見た目では、誘導性か非誘導性かは判別できない。
支援
このような状況において最も効果を発揮する高誘導性を持つ魔力弾を、亜人たちが見逃すはずがない。
こちらの魔力切れを悟られていなければ、だ。
これは賭けだ。
リンカーコアの負荷はもう無視できるレベルではない。
誘導弾を生成するような繊細さを求めるレベルはとうに過ぎている。
使えるのは直線型のシュートバレットのみ。
だが、この状況で射撃のために身を晒せば三秒で焼け焦げたミンチ肉になる。
だから二秒でいい。
二秒でいいから射線を確保する時間が欲しい。
たとえ連中が誘導弾に対する対抗策を持っていようが、ほんの二秒間、銃撃を止めてくれればいい。
たった二秒。
配当は二束三文
賭けるチップは、ここにいる三人の命。
魔力弾が放った直後、クロスミラージュの引き金を引く。
叩き落された撃鉄でカートリッジの信管を穿つ。
虎の子のカートリッジ、その残弾全てを使い切る。
再び身体に満ちる魔力。
その全てを一つのプログラムにつぎ込む。
シュートバレット。
初級の、最も単純な射撃魔法。
誘導性など余計な部分には魔力ソースを振らず、ただ威力と貫通力だけに魔力をつぎ込む。
払える賭け金はこれで全て。
一度だけ深く息を吸い――――躊躇うことなく身を乗り出す。
――――プラズマ弾がティアナの身体を引き裂くことはなかった。
プラズマ弾の熱量によってガラス状に炭化し始めている瓦礫の山。
その向こう側に、先ほどと変わらない位置に亜人たちは居た。
彼らは二人とも地面に銀色に輝く全長50cm程度のランプのような物体を設置しようとしている。
亜人たちと目が合う。
誘導弾のことは予期していたのだろう。恐らくランプ状の物体はそのための防御策。
それ故に、遮蔽物に隠れながら射撃できるという安全性をかなぐり捨てたティアナの行動を、亜人たちは直ぐさま理解できなかったようだ。
見ようによっては唖然としているようにも見える亜人たちの顔に、クロスミラージュの照星を合わせる。
――賭けはあたしの勝ちね。
照星越しに亜人たちの顔を見つめながら、心中でニヤリと笑う。
そして謳うは勝利宣言。
「――――獲っ」
――――心臓をわし掴まれたような感覚が奔った。
「――――っっっ!!?」
半ばまで出た勝利宣言が、まるで喉に詰まったかのように止まる。
脊髄に氷柱を刺し込まれたような悪寒。
ティアナたちは情報を聞きだされた後に・・・支援
このまま終わってしまうのか支援
さるさんか、さるさんなのか!? 支援
さるさん「やあ、また会ったね」
はい、いつも通りの顔馴染み。みんなのアイドルさるさんです。
避難所いってきま
204 :
代理の人:2008/03/17(月) 02:33:55 ID:wnMpbitH
バックン、バックンと心臓の鼓動が酷くゆっくりと聞こえる。
周囲の動きが酷く緩慢に感じる。
立ち止まっている場合ではない。今すぐ引き金を引かねばならないと言うのに、何故か身体は自身の言うことをまったく聞いてくれない。まるで石像になったようだ。
悪寒ではない。
これは――――恐怖だ。
隠す気などさらさら無い。否、圧倒的すぎる存在感を誇示するかのような殺気。
まるで直ぐ傍らに肉食獣が潜み、自分の喉笛を喰らおうと牙を研いでいるような錯覚。
(…………違う、錯覚なんかじゃない)
そうだ、錯覚などではない。
目前の二人の亜人。
あまりに堂々と、露骨なまでに己の存在を誇張していた二人。
閃光弾によって出来た隙。
ティアナたちが無防備になった時間に比べて、亜人たちの行動は数10m移動しただけ。
その気になれば強行突入もできたはずだ。
だが、それをしなかった。
――何故?
――簡単なこと。彼らは狼の群れと同じだ。
盛大に走り回り、咆え回る。
それが囮の役目。獲物の注意を一手に引き付ける。
――そして、最も優秀な狼が獲物の喉笛を喰らう。
『第三の敵』
冷や汗が一気に溢れる。
自分たちが追跡から生き延びるために選んだ戦場。
所々に点在する瓦礫は、人間一人程度なら簡単に隠してくれる。
それは敵も同じだ。
ティアナが圧倒的不利な戦況にありながら有利なアドバンテージを有していたのは、ティアナたちは常に敵の襲撃を予測・認識できていたことだ。それが出来て始めてティアナの能力が活きる。
ここに至り、ティアナと亜人たちの戦況は逆転した。
三人目の敵は己の位置を完全に隠蔽しながら、奇襲への秒読み段階を高らかに宣言している。
彼女は今、最悪の状況で狩られる獲物となったのだ。
目前の亜人たちは動かない。
もうティアナに自分たちを撃破する余力がないと踏んだのだろう。
役目を果たした囮役である彼らは、既に見物人同然だった。
本来ならば彼らの態度にプライドを傷つけられ憤慨するであろうティアナだったが、最早そのような余裕は無い。
まるで錆付いた機械のように身体が動かない。
僅かでも身動ぎすれば即座に頸を掻っ切られる。
未来予測じみた恐怖。
(――何処!? 一体何処から!!?)
目線だけを必死に動かし、未だ見えぬ『第三の敵』の姿を探す。
パニックに陥りそうな理性を押さえ込み、心の奥底から湧き上がる臆病の虫を蹴り落とす。
せわしくなく眼球を動かし続け、
…………カツーーーーン。
すぐ傍に小石が落ちる音。
205 :
代理の人:2008/03/17(月) 02:35:51 ID:wnMpbitH
「――――上ええぇぇぇっっ!!!」
腕がバネ仕掛けの玩具のように跳ね上がり、クロスミラージュの銃口を真上に突き出す。
見上げるは半ば崩れ落ちている天井。所々で崩落し、崩落箇所から大型のケーブルが垂れ下がっている。
ちょっとしたビルがそのまま入ってしまうような広大な空間。
何もいない。
亜人など一人もいない。
(違う!!!)
崩落した箇所から突き出されたケーブル。
その先が不自然に、まるで蜃気楼のように揺らめいている。
喩えるなら透明の影。
丁度、目の前に控えている亜人たちと同じくらいの透明な人影。
影が揺らめき、そして――
――――飛んだ。
生身の人間が落下すれば原形すら留めないであろう高さを、影は躊躇無く飛び降りる。
そこにあるのは明確な意思。
影などではない。
――――その影こそが『第三の敵』。
「クロスミラージュっっ!!!」
《Yes master》
急速に近づいてくる影。
影――否、『敵』に向かって十数発の魔力弾が放たれる。
カートリッジで補給された魔力の全てを注ぎ込んだ切り札。
魔力弾は『敵』に向かって、一斉発射されたミサイルのように直進する。
空戦能力を持っていない『敵』にソレを回避することなど不可能。
たとえ誘導性を持たない魔力弾とはいえ、あの弾幕を無傷で突破することなど不可能。
206 :
代理の人:2008/03/17(月) 02:36:40 ID:wnMpbitH
それがティアナ・ランスターの誤算であり、不運だった。
回避不可能な絶対弾幕。
ただの亜人――サンヘイリ族ならば容易に貫く銃弾。
――それがどうした?
『彼』の称号は、不可能を成し遂げた者にこそ与えられる。
――回避が不可能というのならば、踏破すれば良いだけだ。
『影』に向かって魔力弾が吸い込まれるように向かっていく。
回避など不可能な弾幕。
――しかしそれは。
自然落下に任せるままだった『影』が、不意に揺らめく。
『影』の一部が仄かに灯る。
青白く揺らめく、鬼火のような炎。
『影』が掌程度の大きさに過ぎない炎を、向かってくる魔力弾に投げつける。
十数本ものオレンジ色の軌跡を描き、空中を引き裂きながら突進する魔力弾。
たった一つの青白い鬼火。
207 :
代理の人:2008/03/17(月) 02:37:57 ID:wnMpbitH
大きさも数も色もまるで対称な二種類の炎は、速度を増しながら中空で交差し――――――爆発した。
空中で四散するプラズマエネルギー。
掻き消える魔力弾。
――少女の残り僅かな力全てを篭めた一撃。しかしそれは無情にも『彼』の戦術の前に屈したのだ。
「…………そん……な……」
あの鬼火には見覚えがある。
――グレネード。
亜人たちが調査隊に対し使っていた手投げ式の爆弾。
火薬の炸裂による破片殺傷ではなく、プラズマエネルギーを内臓し半径10mに渡って青白い高熱量のプラズマ炎を撒き散らす。
しかし、アレは時限式だったはず。
たった一度の交戦経験で分かる事など高が知れているが、それでも亜人たちのグレネードに近接信管など備えていなかったはずだ。
導き出される可能性は一つ。
時限信管の手動調整。
単純だが、成功させるには決して容易くない戦術。
それを『影』は――『敵』は容易に実行せしめたのだ。
その事実に改めて背筋が凍りつく。
容易ならざる『敵』
その『敵』に対して自分は抵抗する手段を失ったのだ。
宙に漂う残存粒子を切り裂き、『影』が落ちる。
背後に鈍い着地音。
地面が粉砕し、砕かれた瓦礫片が背中に当たる。
振り返らずとも肌で感じる、押し潰されそうな存在感。
自分の背後、2mも離れていない距離に『敵』がいる。
――グルルルゥゥゥ…………。
獣のような唸り声と共に、生暖かい息が首筋にかかる。
208 :
代理の人:2008/03/17(月) 02:38:54 ID:wnMpbitH
「――――――良い判断だ」
半ば死を覚悟したティアナの耳朶に、『男』の声がかけられる。
猛獣じみた存在感とは正反対の、鉄のような落ち着いた声。
『敵』は――『男』は淡々と、敵意も殺意も感じさせずにティアナを賞賛していた。
「銃の腕も良いし、何よりも粘り強い。
このような戦況でも戦闘を継続する意志は賞賛に値する。だが――――」
途切れる言葉。
沈黙に篭められる覇気。
「――――覚悟が足りない。
躊躇無く私の頭蓋を撃ち抜くべきだったな、少女よ」
その言葉が終わると同時に放たれる剣気。
暴虐じみた殺気に周囲の空気を凍りつく。
「…………あ……ああああぁぁあああぁ!!!!!!」
ダガーモード。
クロスミラージュの銃身に魔力刃を発生させるのと同時に、背後の『敵』へ向かって振り向き様に斬りかかる。
戦術も戦闘技法も何も無い、激情に駆られた一撃。
不恰好ながらも速度だけは一級品の斬撃は、流星のような軌跡を描いて『敵』へ襲い掛かる。
209 :
代理の人:2008/03/17(月) 02:39:58 ID:wnMpbitH
鈍い手応え。
耳朶に響くのは、耳障りな火花のような音。
斬撃に遅れて振り向いた視界に飛び込んだのは白刃と火花。
青白く、眩く光る音叉のような二又の剣。
それがクロスミラージュの魔力刃と鍔迫り合い、バチバチと耳障りな音を立てながら火花を撒き散らしている。
決死の一撃。
それすらも防がれティアナは、
「――――――あ……?」
腹部に鈍い衝撃。
身体が酷く重く感じる。視界が暗くなっていく。
急速に狭くなっていく視界。
擦り切れたフィルムのように霞んでいく世界の中、ティアナの視界に古ぼけた鎧を着込んだ亜人が映り――
――彼女の意識は闇へと落ちていった。
Level1『SecondContact』――CaseEnd.
For next level――2.
210 :
代理の人:2008/03/17(月) 02:42:38 ID:wnMpbitH
世界観説明――コヴナントとは?
・コヴナントとは?
コヴナントとは七種族によって構成される多種族間連合のことである。
政治形態は宗教統治による種族階層社会。
三人のプロフェッツ族から成る大祭司がコヴナントの最高意志決定権を有し、プロフェッツ族とサンヘイリ族で構成される高等評議会が大祭司の助言機関となる。
先史文明『フォアランナー』の遺産を神聖視し信仰する。
その信仰の集大成こそが人工環状惑星『ヘイロー』。
『ヘイロー』を起動させることによりコヴナント全種族が救済される『大いなる旅立ち』が成就すると信じており、コヴナントの最終目標であった。
プロフェッツ族とサンヘイリ族が最古に結成した種族であり、数千年に渡り侵略と探索を続け、その規模と参加種族を増加させていった。
活動拠点は『フォアランナー』の遺産である、衛星規模の超巨大宇宙船『ハイチャリティ』。多くの種族が各々の母星でなく『ハイチャリティ』に居住している。
・構成種族(身体データは平均値)
・プロフェッツ……体長2.2m、体重91kg。
コヴナントの宗教・政治面を統括する最上級種族。
身体能力は虚弱であるが、様々な文明を理解し活用できる頭脳に加え、『フォアランナー』の遺産の活用法を知り得ている数少ない種族。
母星は恒星爆発に巻き込まれ消滅。全てのプロフェッツ族は『ハイチャリティ』に居住している。
外見的特徴――生理的嫌悪感を増したE.T。
・サンヘイリ……体長2.2m、体重144kg。通称『エリート』
コヴナントの軍事面を統括する種族。兵卒から司令官レベルまでの広範囲の階級に存在しコヴナント軍の中枢を占める。また高等評議会への参加資格を持ち、一定権限内での政治関与も可能。
恵まれた身体能力と、コヴナント参加以前から恒星間移動可能なレベルの文明を保有する。武・智の両方を兼ね揃えた種族。
性格は好戦的ながら、自己を一定の秩序に置きたがる傾向にある。
外見的特徴……二足歩行爬虫人類。猫背プレデター。
・アンゴイ……体長1,67m(呼吸維持装置非着用時1,3m)、体重118kg。通称『グラント』
コヴナントの最下層種族。生殖・成長サイクルが短いことから使い捨ての兵隊として活用される。
・レクゴロ……体長1,4m、体重22,6kg(アーマー装着時体長3,65m、体重4726kg)通称『ハンター』
他の種族とは異なり独自の宗教を持つコヴナントの種族である。
ワーム状の生物が装甲の中に複数集まり有機的に結合することにより1体を形作っている。
ハンター族がその実力を認めたエリート族を除いて、プロフェット族を含むその他のコヴナントの種族とは交流を持たない。
・ヤンミー……体長1,9m、体重127kg。通称『ドローン』
飛行能力を持った昆虫型の種族。ドローン族のコヴナント社会における序列は不明である。
外見的特徴……虫。
・キグヤー……体長1,9m、体重88kg。通称『ジャッカル』
他の種族と比較してプロフェット族への宗教的忠誠心が薄いため、低い序列に位置している種族である。
優れた視覚・聴覚・嗅覚を有しており、偵察兵やスナイパーの役割を担っている。それ故、人類と最初に接触したコヴナントとなった。
・ジラルハネイ……体長2,8m、体重510kg。通称『ブルート』
最も新しくコヴナントに参加した種族。保有テクノロジーこそ低レベルなものであったが、そのエリート族すら越える身体能力を武器に軍事関係に関与する。
当初こそ「ただの力自慢」として冷遇されていたが、大祭司の一人「真実の預言者」がブルートを重用し始めたことを契機にエリート族との間で苛烈な地位競争が勃発した。
コヴナントの教義に対し、狂信的であるとさえ言えるほど熱心な信者である。
外見的特徴……ゴリラ。
GJ!!です。
原作は良く知りませんが、ティアナは頑張ったよ・・・ただ相手が自分より格上のエースでありストライカーだった
んだ。彼らは生き残れるのだろうか?とりあえず尋問ぐらいはしてあげてw
212 :
代理の人:2008/03/17(月) 02:43:47 ID:wnMpbitH
・コヴナントの宗教における矛盾
『フォアランナー』の遺産を信仰するコヴナントであるが、その信仰形成過程にはある疑問が残る。
信仰は『フォアランナー』の遺産を多数保有するプロフェッツ族からサンヘイリ族へ広まり、サンヘイリ族がプロフェッツ族の宗教的権威の元に下ったのがコヴナントの始まりである。
しかし問題は、プロフェッツ族はサンヘイリ族と接触する以前は『フォアランナー』の遺産に対し、敬意の念を表すことが無かった点である。
既にプロフェッツ族に関するデータの多くは失われているが、コヴナントの宗教はプロフェッツ族の自己保身の手段であった可能性が高い。
高度のテクノロジーと優れた体格と好戦的思考を持つ戦闘マシーンであるサンヘイリ族に遭遇した段階で、身体的に虚弱なプロフェッツ族に生存の可能性は低かった。
コヴナントの教義とはつまり、プロフェッツ族によるサンヘイリ族への文化的侵略であった。
しかし数千年に渡る教義の純化は他ならぬプロフェッツ族へ影響を与え、プロフェッツ族こそが彼ら自身の祖先が生み出した欺瞞を、真理の救済と信仰してしまう皮肉な結果となった。
コヴナントによる人類侵略は、一人の狂信的プロフェッツ族により画策されたものである。
213 :
代理の人:2008/03/17(月) 02:44:49 ID:wnMpbitH
今週のNGシーン「彼女の決意、その舞台裏」
(注)アスキーアートはイメージです。
(ティアナさんブチ切れシーンより)
(´・ω・) なんか騒いでるけど……どうする?
(・ω・ ) 知らんがな。どうせ命令は足止めなんだから放って置けよ。
(´・ω・) でもさ、足止めってバレたらやばくね? 逃げられるよ?
(・ω・ ) じゃあお前行ってこいよ。言っちゃった奴責任な。
(´・ω・) …………おk把握。
〜移動中〜
(´・ω・) 少しだけチョッカイ出せば良いよな?
(`・ω・) ……よしっ!
瓦礫から飛び出す。
(`・ω・) うおーーー!食べちゃう…… ○三三
(`・ω(○三 ぞ……
〜帰還中〜
(´・ω(○ …………ただいま
(・ω・ ) おかえりー、もう帰って良いってさ。
(´・ω(○ ……え?
(・ω・ )アービターだよ、後はあの人がやってくれるってさ。
(´・ω(○ ……そうなんだ。
(・ω・ ) 今日はもう上がって良いってさ。「ふにふに」で一杯やって行こうぜ。
(´・ω(○ コレ取れないから止めとく。
特にオチは無い。
げふう、代理終了。
GJ!です。サンヘイリ(エリート)はやっぱり格好良いなあ・・・
さて――リベリオンクロスどうしましょう?夕方のほうがいいですかね。
こういうハードなのもいいなぁ、それはともかく代理の方乙そして作者様GJです。
今、見たいですが、明日にした方がいろんな方々のご意見を頂けるかと思います。
だいぶかかってやっと2話目ができたのですが、自分も明日にします。
作者GJ 代理の人もおつかれー
HALOはいいなぁ
でも火葬じゃないんだから見せ場は平等にあった方がいいとか思うんじゃよー
作者、代理の方乙です。
全部投稿されてから読もうと思ったら、こんな時間に・・・。
GJ!
ティアナを置いてきたことを泣きながらなのはに詫びるフェイトとか想像してしまった
>>213 よもやサンヘイリに萌える日が来るとは思わなんだw
皆様、おはようございます。
投下できず、申し訳ありませんでした。
正直リアルで小火騒ぎがありまして、それ所ではありませんでした・・・orz
お早うございます
おはようございます。
>>222 どうして、またそんな事が…。大変でしたね。
さてとあまり人がいるとは思えませんが、9時半頃にスパロボEの第3話終了のインターミッションを投下しようと思います。
前スレで色々言われましたが、その件に関しましては後々でだんだんわかるという設定だったんですが、
今回のインターミッションで少しですが、書き加えました。
やはり人がいないようですね。しかし投下します。
なのはが重傷との事で、「クロスナイト」は一時、時空管理局の本局へと向かう。
ちなみにロム達は、なのはに怪我を負わせてしまった事やギャンドラーを倒すには協力したほうが良いとの事で、「クロスナイト」に入ってくれる事になった。
「なのはちゃんの具合は……」
比瑪がエイミィに尋ねる。
「検査の結果、なのはちゃんのケガは大した事ないよ」
エイミィはなのはの状態について「クロスナイト」の皆に報告する。
「ただ、リンカーコアが異様なほど小さくなってるの」
『リンカーコア?』
皆が疑問に思うことを、エイミィが丁寧に答える。
「簡単に言うと魔力の源で、魔法を使うにも魔力が必要で、その魔力を作るのに必要なものですね」
「要するにロボットで言う動力炉か……」
「そんなものかな……」
甲児の答えに、少し苦笑いするエイミィ。
「でも彼女達は一体何だろう……」
ロール達が、襲ってきたヴィータやシグナム達の事を考えていると、マサトが少し違う事を考えている。
(何故だ? 何故、僕は……。彼女達を知ってる気がするのは……。何でだ?)
その頃なのはは、病室で医者に診てもらい、リンカーコアがもう修復されかけている事に驚かされたそうだ。なのはの病室にユーノが現れる。
「ユーノ君」
「ごめん、なのは。僕がジュエルシードを探すように頼んだばかりに、あんな目に……」
ユーノはなのはが襲われた事が、自分のせいだと思い、なのはに向かって頭を下げて謝る。
「気にしなくていいよ。別にユーノ君のせいじゃないし……」
「で、でも……」
「それに私、体丈夫な方だしね……って、あ……」
なのはがベッドから起き上がって、ユーノの方に歩こうとすると、なのはは倒れそうになる。
ユーノは、倒れそうになるなのはを支える。
「ユーノ君、ごめんね」
「僕もいいよ。なのは、体を大事にしないとね……」
「うん」
その二人の間の空気は、温まるものを感じる。
なのははその後、ユーノと共に、「クロスナイト」の面々も居る、大破したレイジングハートのところに向かう。
「いっぱい頑張ってくれて、ありがとう。レイジングハート……今はゆっくり休んでてね」
甲児がクロノにある事を尋ねる。
「なあ、クロノ。あいつらの魔法って、なのはやフェイトのとは違うように見えたけど、気のせいか?」
甲児の疑問にクロノは、皆にある事を告げる。
「あれは多分ベルカ式です」
『ベルカ式?』
(!?)
マサトだけ、少し違う反応を見せたが、皆は気付いていない。クロノはそのまま話を続ける。
「その昔、ミッド式と勢力を二分した魔法体系で、遠距離や広範囲攻撃をある程度度外視して、対人戦闘に特化した魔法で優れた術者は「騎士」とも呼ばれる」
「おいおい、騎士って……」
「俺達の部隊名も騎士だよな……」
「最大の特徴は、デバイスに組み込まれた「カートリッジシステム」って呼ばれる武装。
儀式で圧縮した魔力を込めた弾丸をデバイスに組み込んで、瞬間的に、爆発的に破壊力を上げる。危険で物騒な代物です」
皆がその事を聞いて納得するが、一人だけ反応が違った。秋津マサトだ。
(何でだ? 何で僕は「ベルカ」や「カートリッジシステム」と言う言葉も知ってるんだ!?)
マサトは、ますます頭の中で悩みこんでしまう。
そのベルカの騎士、ヴォルケンリッターは闇の書の主、八神はやての下にいた。
その八神はやては、なのはと同年代の少女で、足が不自由で車椅子で動いている。そして優しい少女である。
「シグナム、お風呂に入るけど、どう?」
シャマルが、これからはやてとヴィータと共に風呂に入ろうとし、シグナムを誘うが、シグナムは断る。
「ああ、私は明日の朝にでも入らせてもらう」
「風呂好きが珍しいな」
「たまには、そういう時もある」
シグナムがそう言ったので、三人は風呂場に向かう。
リビングにはシグナムと狼形態のザフィーラだけが残り、ザフィーラがシグナムに尋ねる。
「今日の戦闘か?」
「察知がいいな。その通りだ」
シグナムが服を少しめくり、腹部の部分を見せると、そこには杖の跡のようなアザが残っていた。
「あの魔導師、テスタロッサと言ってたな。なかなかいい師に育てられている。次に戦う時が楽しみだ」
「そうか……」
シグナムは少々戦闘を楽しむ節があるので、ザフィーラは苦笑いするように答える。
「ところで、ザフィーラ。テスタロッサやあの白い魔導師達が追っていた「ジュエルシード」と言うものは、闇の書の蒐集対象になるのだろうか?」
「さあな、しかし何故そんな事を?」
「何故かはわからないが、闇の書は最近現れたミケーネ帝国の戦闘獣やわからないモビルスーツからリンカーコアはないが、倒してデータを蒐集したことによって、頁が増えた。
その事によって、1ページを使うだけで、大量のロボットを出せるからな。もっともロボットの中には蒐集できても、容量と出力の問題でコピーを出せないものもあるようだが、
完全に倒せば、蒐集は出来るみたいだ。そして「ジュエルシード」も蒐集できるのでは?」
「やってみなければ、わからないな」
「そうか……、ならば試してみるか。それにその「ジュエルシード」を探してみれば、テスタロッサやあの白い魔導師の仲間もやってくるはず。
そして奴らから蒐集すれば、早くに闇の書は完成するはずだ。そうすれば主はやても……」
シグナムは、それ以上は言わなかった。
フェイトはバルディッシュ破損と、ジュエルシードを3つ集めた事を母のプレシア・テスタロッサに報告するために、
アルフと共に、母の居る「時の庭園」に戻ったが、フェイトはそこでプレシアにひどい仕打ちを受ける。
それはバインドで手を縛られ、鞭でしばかれるものであった。
「ダメじゃないの、フェイト。ジュエルシードを3つしか集めれなかった上に、バルディッシュまで壊して帰ってくるなんて……」
「ごめんなさい、母さん……」
そんなフェイトの言葉を遮るかのように、プレシアはフェイトに鞭を打ち付ける。
アルフは広間の外にいて、その様子をただ聞いているだけであった。
(いくらあの子の母親だからって、こんなのひどすぎるよ……)
フェイトを鞭でしばき終えると、プレシアはフェイトに近づき、フェイトのあごを手に持ち、こう告げる。
「いい、フェイト。覚えて欲しいの。もう二度と、母さんを失望させないように……」
「……、はい、母さん」
「特にアレは……ジュエルシードの純度は、他の物より遥かに優れている。貴女は優しい子だから、ためらってしまう事もあるかもしれないけど……。
邪魔するモノがあるなら、潰しなさい!」
「……、はい、母さん」
「それとバルディッシュは私が修理と改造をしておくわ。今は休んでなさい……。でもね、バルディッシュの作業が終わったらすぐに行ってもらうわよ、いいわね!」
そう言うと、プレシアはフェイトにかけていたバインドを解き、バルディッシュを持って、広間を去る。
プレシアが去るのを確認したアルフは、すぐに広間に入り、フェイトを支える
「フェイト、ごめんよ……大丈夫?」
「なんでアルフが謝るの……? 平気だよ、全然……」
アルフは涙目ながら、弱っているフェイトを見る。
「……! だってさぁ!まさか、こんな事になるなんて……。ちゃんと言われた物を手に入れてきたのに……。
あんな酷い事をされるなんて思わなかったし……! 知ってたら絶対に止めたのに……!」
「……酷い事じゃないよ。母さんは、私の為を想ってって……」
「想ってるもんか、そんな事! あんなのただの八つ当たりだ!!」
確かにアルフでなくとも、あの仕打ちは八つ当たり、強いて言うなら虐待レベルにしか見えない。
「……違うよ。だって、親子だもの。ジュエルシードは、きっと母さんにとってすごく大事なものなんだ……。
ずっと不幸で……悲しんできた母さんだから……私、何とかして喜ばせてあげたいの」
「だって……でもさぁ!」
アルフは、なおも言いすがるが、フェイトはそっと彼女の頬に手を添える。
「アルフ、お願い……大丈夫だよ、きっと。ジュエルシードを手に入れて帰って来たら、きっと母さんも笑ってくれる。
昔みたいに優しい母さんに戻ってくれて、アルフにもきっと、優しくしてくれるよ……。だから行こう……今度はきっと、失敗しないように」
フェイトはあんなにひどい目にあわされたのにも関わらず、母のプレシアを信じている。そういう目をアルフに向けている。
アルフはそんなフェイトの目を見て、これ以上は言えなかった。
自室の研究室に戻ったプレシアは、壊れたバルディッシュを見ながら、つぶやく。
「確か、ベルカの騎士と言ってたわね」
プレシアもベルカ式を知っている。元々技術者なのだから、知ってて当然である。
「となると少々厄介になりそうね。だったら、これにあの部品をつけてあげるわ……。ふふふ」
プレシアは不気味な笑みを、人知れず見せながら笑う。
その日の夜、アースラの部屋で眠っていた秋津マサトは突然目を覚まして、外に出る。マサトは外で何やら、独り言を言う。
「まさか、闇の書、あいつらまで出てくるとはな……。くっくっく、面白い。面白いじゃないか! この世界は!
ますます、面白いゲームになりそうだな! ハッハッハッハッ!!」
マサトは大声で笑う。その笑う姿は、マサトではない。その笑う姿は、秋津マサトを造り出した人間、木原マサキのものであった。
投下完了。
木原マサキってスパロボMXやJで結構色々な事に関わってましたらね…。(特にJ)
ですから、マサキがミッドチルダやベルカの事を知っていてもおかしくないと思っています。
そしてマサキはあれにも関わってる設定にしています。
>>213 GJ!
HALO戦場の持つ緊迫感が伝わってきます!
さすがはコブナント、HALO世界の地球人類がボコボコにされて残り2億人までに減らされただけのことはありますな。
ティアナも持てる力を振り絞って頑張った!かっこいいよ!
しかしこれって危うく誤解からHALO世界の地球人類が滅ぼされるところだったぞw
まあ、あの危険な代物を別世界に持って行ってくれたのはいいことかもしれないがw
>>231 たしかに一歩間違えると人類とコヴナントの戦争再びってことになってかなりヤバイなw
ちゃんとこの世界の地球人類ではない可能性を考えていたからな。
そこが理性的で良かった。管理局が別世界に持っていってくれて良かったぜ
しかしこれ正規の任務だったのか?
>>233 トップである最高評議会がいなくなると跡目を狙って権力争いが勃発し、
なんとしても功績を上げようとする人間が出てくる、よくある話です。
GJでした。
ところであの寄生生物って寄生相手の知識とか引き出せたよな。
管理局の技術者とか無限書庫の司書長とかに寄生されたらマジで
次元世界オワタになってしまうな。
>>230 ひとつだけ。
平日の朝っぱらから支援できる奴なんでそうそういる訳無いだろがw
>>236 そうですね。でもたまにあるんですよ。平日でも支援。
238 :
LMS:2008/03/17(月) 15:49:02 ID:R7pFJN2o
過疎ってますな
平日だし当然っちゃあ当然なんだけど
四時前からLMS11話を投下しようと思います
待ってました。支援
よし、支援だ。
241 :
LMS:2008/03/17(月) 15:58:15 ID:R7pFJN2o
そろそろいいかな? 投下いきます
見ている方、余裕があったらでいいので支援お願いします
Lyrical Magical Stylish
Mission 11 Killing shade
「……つくづく使えぬ連中だ。役立たずどもめ」
「そーいうテメーも相変わらず図体だけがでかいだけじゃねーのか? ええ、ムンドゥス!!」
ダンテの放った”ムンドゥス”の一言になのはの体を戦慄が走り抜ける。魔帝はこんなにも強大な存在だったのか、と。恐怖で叫びだしそうになる体を必死で押さえつけ、なのはは今回の騒動の元凶、その存在を心に刻む。
「囀るな、小物が」
「その小物に一度ぶっ飛ばされてるのはどっちだよ」
「ならば我が前に立って見せよ。その時こそ真の絶望を味あわせてやろう。ハーッハッハッハッハ!!!」
今はまだ、相手としてすら認められていないということか。霧散していくムンドゥスの気配に、なのはは憤りを覚えながらも今この場で戦闘にならなかったことに安堵の溜息を漏らす。
もっとも、ダンテは忌々しそうに舌打ちすると、消えゆくムンドゥスに中指を突き立てていたが。
「チッ……相変わらず胸糞ワリー野郎だぜ。なあ?」
「……そうですね」
「なんだ、ビビッたのか?」
「まさか。あんな俗物だとは思わなかったから驚いただけです」
正直に言えば、存在のレベルが違いすぎると思った。でも、ここまできた以上退くわけにはいかないのだ。震える心を鉄の意志で押さえつけ、なのはは虚空を睨んで言い放った。
「だってそうでしょう? グリフォンにしろファントムにしろ、自分、魔帝のために命を賭けて戦ったんですよ。それをあんな風に言うなんて、正気の沙汰とは思えない。そんなヤツ、私は絶対認めない。許さない」
言葉には表さなかったが、互いを認めて死闘を繰り広げた相手をああまで言われてはいい気はしない。レイジングハートを握り締める手にも自然と力が篭る。
「だったら、どうする?」
「決まってます。私たちを侮ったこと、後悔させてやる」
「いい返事だ」
二人は凶悪な笑みをかわす。確かに相手は桁違いの存在かも知れないが、こっちは二人だ。負ける要素などない。
「行こうか」
「ええ」
傷を治し終わった二人はコロシアム中央に出現したワープゾーンへ向かう。
戦いもいよいよ大詰め、最後のボスを今ここで確認できたことは僥倖だった。これから先、あれ以上の敵が出てくることはないだろう。ならばこの二人が歩みを強制的に止められることなどあり得ない。
そして二人は次の場所へと進む。
「ハハ、どうやらホントにもうすぐ終わりみたいだぜ」
「そうなんですか?」
「ああ。ここはテメンニグルの最上階へ続く回廊、これを登っていけばそこは終着点さ」
ワープゾーンに飛び込んだ二人がたどり着いた先は随分と急な角度がついた坂道の開始地点。円を描くように塔の周りを走る、その最後の道だった。
「この上に魔帝が……」
ついさっき圧倒的な存在を見せ付けた仇敵がすぐそこに、自然と手に力が篭っていたことに気付き、なのはは驚きそして自然と肩の力が抜ける。
242 :
LMS:2008/03/17(月) 15:59:07 ID:R7pFJN2o
2
「そんじゃ、行こうか」
「そうですね」
そしてゆっくりと坂を登る。と、なのははその途中に黒く染まったカーテンのようなものを見つけた。
「ダンテさん、あれ何ですか?」
「あ?」
「あの黒いの」
「……目が疲れてるのか? 何もないぜ」
「え、嘘」
むー、と目を凝らしてみるが、間違いなく黒い何かが坂を塞いでいる。だが、ダンテはそんなもの見えていないと言う。傷は癒したし、それでも目に異常があるのだとすれば早めに何とかしないと後々大変なことになりそうだ。
「どうした?」
「あ、あれ?」
だが、ダンテがそんななのはの心中に気付くわけも無い。唸るなのはを置いて歩いていってしまう。
そしてなのはがふっと気がつくとダンテがその黒い何かの中に消えていた。姿は見えないが、声は普通に聞こえることからどうやら特に何も無さそうで。
「大丈夫なんですか?」
「だから何が」
「……なんでもないです、今行きます」
気のせいだろうと考え、なのはもまたその中へ足を一歩踏み入れて。
「なのは?」
ダンテが後ろを振り返ると、なのはの姿がどこにもなかった。
「……ヘイヘイ、冗談キツイぜ?」
慌てて周囲を探ってみるが、今まで隣にあった気配が蜃気楼のように消え失せている。
「……あ、そーいやそーだっけ」
そしてダンテは思い出した。以前ここに来たとき、ここを護る己の影と戦ったことを。なのはもまたその試練を受けているのだろう。完全に忘却の彼方だった。
「やれやれ、待たなきゃならんのか」
ダンテは最後の階段、その一段目に腰掛けてなのはの帰還を待つことにした。
上まで行ったらおそらく今も己に殺気を叩きつけてくる相手を目の前にすることになる、そしたら我慢なんか出来るはずないという確信があったから。
ダンテはぼんやりと空を眺め、そして束の間降って沸いた休息の時間を満喫することにした。
「……ダンテさんの嘘つき、やっぱり何かあるんじゃないですか」
黒い何かに足を踏み入れた瞬間、襲ってきたのは軽い眩暈。そして目を開いてみると、今までとは何の脈絡もない場所に一人で立っていた。
周囲にダンテの気配がないことからも、分断させられたと判断し、軽率だったと悔いる。
支援
244 :
LMS:2008/03/17(月) 15:59:44 ID:R7pFJN2o
2
「そんじゃ、行こうか」
「そうですね」
そしてゆっくりと坂を登る。と、なのははその途中に黒く染まったカーテンのようなものを見つけた。
「ダンテさん、あれ何ですか?」
「あ?」
「あの黒いの」
「……目が疲れてるのか? 何もないぜ」
「え、嘘」
むー、と目を凝らしてみるが、間違いなく黒い何かが坂を塞いでいる。だが、ダンテはそんなもの見えていないと言う。傷は癒したし、それでも目に異常があるのだとすれば早めに何とかしないと後々大変なことになりそうだ。
「どうした?」
「あ、あれ?」
だが、ダンテがそんななのはの心中に気付くわけも無い。唸るなのはを置いて歩いていってしまう。
そしてなのはがふっと気がつくとダンテがその黒い何かの中に消えていた。姿は見えないが、声は普通に聞こえることからどうやら特に何も無さそうで。
「大丈夫なんですか?」
「だから何が」
「……なんでもないです、今行きます」
気のせいだろうと考え、なのはもまたその中へ足を一歩踏み入れて。
「なのは?」
ダンテが後ろを振り返ると、なのはの姿がどこにもなかった。
「……ヘイヘイ、冗談キツイぜ?」
慌てて周囲を探ってみるが、今まで隣にあった気配が蜃気楼のように消え失せている。
「……あ、そーいやそーだっけ」
そしてダンテは思い出した。以前ここに来たとき、ここを護る己の影と戦ったことを。なのはもまたその試練を受けているのだろう。完全に忘却の彼方だった。
「やれやれ、待たなきゃならんのか」
ダンテは最後の階段、その一段目に腰掛けてなのはの帰還を待つことにした。
上まで行ったらおそらく今も己に殺気を叩きつけてくる相手を目の前にすることになる、そしたら我慢なんか出来るはずないという確信があったから。
ダンテはぼんやりと空を眺め、そして束の間降って沸いた休息の時間を満喫することにした。
「……ダンテさんの嘘つき、やっぱり何かあるんじゃないですか」
黒い何かに足を踏み入れた瞬間、襲ってきたのは軽い眩暈。そして目を開いてみると、今までとは何の脈絡もない場所に一人で立っていた。
周囲にダンテの気配がないことからも、分断させられたと判断し、軽率だったと悔いる。
245 :
LMS:2008/03/17(月) 16:00:30 ID:R7pFJN2o
3
「とりあえず出口は……」
周囲を見渡してみるが、暗くてよく見えない。だが、ぼんやりと見渡せる部屋の中には出口らしきものはどこにもなかった。
「……封印も特に無さそうだし、どういうことだろう」
唸っていても状況は好転しそうにもない。なのはは渋々周囲を探ろうとして、部屋の中心に何かが蠢いたのを確認する。
「なんだ、やっぱり……って、嘘」
酷く薄くではあるが、この部屋には光が射していた。そこから伸びるなのはの影が独りでに動き出し、立ち上がったのだから目を疑うのも当然だろう。
「……何これ」
動き出した影ははっきりとした姿を象る。なのはが目にした姿はよりにもよって―――
「……私?」
何もかもが暗黒に染まっているからはっきりと断言は出来ないが、頭の形から持つ杖まで何から何までそっくりだ。唯一違うところがあるとすれば表情と呼べるかも怪しい表情だけ。
「……私、そんな風に笑わないんだけど」
目と口だけがはっきりと分かる。獲物を見つけた動物、いや、いたぶって遊ぶ相手を見つけた悪魔。そんな笑顔だ。その表情になのはは青筋を浮かべ、おもむろに魔法をぶっ放した。
「ディバインシューター!!」
不意打ち気味に放たれた輝く魔弾は避ける間もなく影に直撃し、
「ちょっと!?」
何事もなかったかのように通り抜け、壁を叩いて霧散する。その間に影は肉薄し、振りかざしたレイジングハートで殴りかかってきていた。
「このっ!」
咄嗟に差し出したレイジングハートはやはり相手のレイジングハートを素通りし、そして影のレイジングハートがなのはの体を直撃。
なぜか刃のような鋭さで、バリアジャケットごと浅くではあるが袈裟懸けに切り裂かれる。
「!!」
返す刃で胴を薙ごうと動く影、受け切れないと判断してなのはは見てくれも気にせず大きく転がって距離を取る。斬られ、血を流す肩に手を添えながらなのはは呟いた。
「……何これ」
「Sorry, I've no data」
なのはの持つレイジングハートもまた、この異常事態に何のデータも持っていないようだ。
「……大丈夫」
だが、ここは魔界。常軌を逸していて当然なのだ。何が起こっているのかはわからないが、この短期間でわかった確かなことが一つだけある。
「こっちの攻撃は当たらないのに、向こうの攻撃は当たるってこと。だとすれば、必ず何か解決策があるはず」
突きつけられたのは最悪の現実。だが、まだあらゆる手段を尽くしたわけではない。それまでは、折れるわけにはいかない。
影のなのはは追撃をかけるでもなく、笑みを深くして挑発してきている。あんな笑い方をする相手に負けるのは自身の矜持が許さない。
「ベオウルフ、装着」
支援
あ、僕は五時ごろ投下おk?
247 :
LMS:2008/03/17(月) 16:01:00 ID:R7pFJN2o
4
相手が影なのだとすれば、ダンテが光の属性を持つと言っていたベオウルフならば通じるのではないか。そう考えたなのははベオウルフを装着し、逆に影に向かって挑発をかます。
「この程度で勝った気になるのは早いんじゃない? 私はまだピンピンしてるよ、ノロマ野郎」
嘲笑と投げられた侮蔑の言葉に、影は再度なのはに向かって突っ込んでくる。
「ハッ、単純」
そのまま全く同じように袈裟懸けにレイジングハートを振りかぶり、叩きつける。だが、同じ攻撃を何度も食らうほど愚かではない。
振り下ろされる瞬間杖の軌道の内側に潜ったなのはは渾身の力を込めて影に拳を打ち込む。
「!? Shit!」
しかし、それも虚しく腕が影を突き抜けるだけで、ダメージが通った感触はない。それを見た影がお返しとばかりに嘲笑を浮かべ、そしてバランスを崩したなのはに向かってレイジングハートを突き出す。
「くっ!」
すんでのところで体を捻り、刺突を避ける。掠めた一撃がオートプロテクトを突き破って脇腹に傷を残していく。
「……どうしよう」
大きく転がり、さらに後ろに跳ね飛んで影と距離を取る。ベオウルフでも通じない、だとすれば、残る手は―――
「全力で、ぶっ飛ばす!!」
相変わらず影は対等な相手として見ていないのか、嫌な笑みを浮かべたまま悠長に手招きしている。単純にムカつくが、それにキレて突っ込むほどバカではない。突っ込むのは自分ではなく、魔法だ。
「Lyrical Magical Stylish!!」
収束する魔力。魔帝の腹心であるグリフォンすら射抜いた一撃に、耐えられるものなら耐えてみろ!
「ディバインバスター!!」
解き放たれた凶悪な一撃は歓喜の咆哮を上げ、自身を象る影に突き進む。だが、闇を滅する聖なる一撃を目にしてなおその余裕の笑みは全く崩れずに。
「……ヘイへーイ、冗談キツイよ?」
何事もなかったかのようにスルー。だが、なのは全力の一撃は影を透過した後、背後にあった壁を粉砕する。
「!」
そこから差し込むのは紛れもない光。範囲は狭いものの、射しこむ部分からは暗闇が消え失せている。
「……実験してみるしか、ないよね」
なのはの頭が凄まじい勢いで回転し、今起きた現象から一つの仮定を導き出す。そして、影を払うのはいつだって光だ、試してみる価値は十分にある。
「SYAAAAA!!」
「……上等」
そんな周囲の状況が見えていないのか、いよいよ止めをとばかりに咆哮を上げて突進してくる影。なのはは壁に背を預け、右手のベオウルフを確認。
背後を痛いほど意識しながら、視線は少しもそらさず、そのギリギリの瞬間を待つ。
「……今!!」
248 :
LMS:2008/03/17(月) 16:01:39 ID:R7pFJN2o
5
なのはを射程に捉えた影がレイジングハートを振りかぶる。反撃を全く予想していない一撃を目にし、なのはは右手を振り上げて―――
「砕けろぉ!!」
叩き付けた。影にではなく、なのはの背後の壁、そこにおさまる宝玉のような一点に。
「GYAAAAAA!!」
まるでガラスのように甲高い音を立てて壁が砕け散り、そこには反対と同じように光が差す。そして振り返ったなのはは見た、降り注ぐ光を浴び、悶絶する自身の影を。
「貰ったぁ!!」
回転の勢いを乗せた右ストレートが炸裂する。そこにあったのは、確かに何かを殴った感触。そして、同時に影の上げた叫びがダメージが通ったことを如実に表している。
「いける!」
だが、続いて繰り出した左の一撃は影が飛び退ったことで空を切る。それでも、なのはは自身の勝ちを確信した笑みを浮かべ、次の瞬間その笑みが驚愕に崩される。
「GAAAAAAA!!」
放たれたのは、真っ黒に染まったディバインバスター。フラッシュムーブで辛くもかわし、そしてディバインバスターが直撃した壁が直っていることに驚く。
「……危ない危ない。へぇ、そんな真似も出来るんだね」
それでも、自分の勝ちは揺るぎそうにもなかった。
なのははフィンを駆り、ドームの中央、天井の真下へと飛ぶ。
「でも残念。余裕なんか見せてないでとっとと倒せばよかったのにね」
周囲に舞う光弾は五つ。その真意を悟った影が慌てて次のディバインバスターを放とうとするが、時既に遅し。
「Fire!!」
全方位に一斉に放たれた光弾はその全てが完全なコントロールを見せ、残っている壁の宝玉を全て同時に破壊した。
「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」
空間全てが一斉に光に満たされ、逃げ場を失った影が絶叫を上げる。それを上から見ていたなのはが満面の笑みとともに、自身を象った愚かな影に引導を渡した。
「バイバイ、中々楽しい見世物だったよ」
全てを焼き尽くす聖なる光は、今度こそ一撃の下になのはの影を光の彼方へ消し去った。
「Too easy. ま、笑い方がなってないよね。こうだよ、こう!」
ふわりと着地したなのはは、すでに消滅した影に向かって、ダンテから学んだ不敵で悪魔じみた笑顔を見せ付けるのだった。
「やれやれ……よかった、影がなくならなくて」
影がないのは生き返った死人だけで十分だ。実体がなくなると同時にちゃんと自分の足元に帰ってきた影を見て安堵の呟きを漏らす。
「さて、これで……って、また?」
その影が再度動いたかと思うと、再びなのはの姿を象った。
249 :
LMS:2008/03/17(月) 16:02:28 ID:R7pFJN2o
6
「……パワーアップしてるのかな?」
先ほどと違う点と言えば、真っ黒だった実体がきちんとした姿になっているという点だろうか。まるで鏡を見ているかのような気分でなのはは一歩踏み出す。
「……でもおかしいな、殺気がない」
影なのはは明確な殺気を持っていた。だが、今度はどうだ、なのはの動きに応じて一歩前に出てきたものの、戦いをおっぱじめようという空気にはなっていない。
「…………」
ひらひら、と手を振ってみる。すると相手も手を振る。中指を立ててみる、すると相手も立てる。
「……ムカッ」
自分と全く同じ姿をしたものに中指を立てられ、あっさりキレたなのははベオウルフでぶん殴ってやろうと右手を突き出して、相手の突き出したベオウルフ付きの左手と衝突する。
「……なにこ、え?」
なにこれ、と言おうとしたところで、二人目の影なのははドロドロと溶けていき、そしてまたなのはの影に収まった。
理解を超えた現象に考えることを諦めたなのははレイジングハートに聞く。
「……レイジングハート?」
「No problem, master. You get the new ability, mode Doppel ganger. Is a detailed explanation……
(問題ありません。新たな力、モード・ドッペルゲンガーを得ました。詳しい説明が……)」
「いやそうじゃなくて、何でもっと早く説明してくれないの?」
「……I thought that that was funny.(そのほうが面白いと思いました)」
「…………」
ダンテのせいか、魔界のせいか、随分とおかしくなった愛杖にこめかみをヒクつかせながら、それでも怒りの声をグッと飲み込んで溜息一つ。それで強引にここでの会話を終わらせた。
それと同時に、部屋の中央にコロシアムの時と同じようなワープゾーンが出現する。
「……行くよ」
「All right」
無機質な返事が少し笑いながら言ってるように聞こえたのはきっと気のせいだ。なのははレイジングハートを一振りして黙らせると、ワープゾーンへと足を踏み入れた。
突如その場に出現したなのはに驚いた風もなく、ダンテは銃の整備を終わらせて声をかけた。
「よお、意外と遅かったな。どうだった、自分は?」
「……分かってたならなんで」
「いや、忘れてたんだ」
「…………」
「だから、その可哀想な人を見る目はやめろっての」
じとーっ、と半眼で睨んでくるなのははどうしても苦手だ。ダンテは手を振り立ち上がって、影にやられたなのはの姿を見てヒョゥ、と口笛を吹く。
「ところでなのは―――」
「?」
「―――中々どうして、いい感じの格好じゃないか?」
「…………」
「あぶねぇな」
「えっち、すけべ、へんたい」
「子供か」
「子供です」
支援
251 :
LMS:2008/03/17(月) 16:03:09 ID:R7pFJN2o
7
完全に自分と同じ姿をした影なのはが戻った際に傷は癒えた。だが、裂かれたバリアジャケットまでは戻らなかった。
一人だったし、理解を超えた現象が起こっていたことからもなのはは完全にそのことを失念していたのだ。
ちなみに、ダンテの「あぶねぇな」の台詞は、なのはが無言で振るったレイジングハートを避けてのものだ。
「あっち向いててください。見たら殺しますよ」
「わーってんよ。ったく、おっかねえな」
「全く……」
ぶつぶつ言いながらバリアジャケットを修復しようとするなのはの気配を感じながら、ダンテはニヤリと笑ってアイボリーを腰から引っぱり出した。
整備を終えたばかりで鏡のように磨きぬかれた銃身には、笑みを浮かべているダンテがはっきりと映っている。
「〜〜♪」
何となく口笛を吹いて誤魔化しつつ、ダンテはアイボリーの角度を調節。決して疚しい気持ちがあるわけではなく、禁止されたものは見たくなるという性だからだ。
というか、疚しい気持ちが本当にあったのならただの犯罪者だ。
ダンテはなのはの僅かだが露になった素肌を見ようとして、なのはが破れた箇所を隠しつつレイジングハートを突き出している姿を捉えた。
―――ダンテに向かって。
「Blast」
「いってぇぇぇぇぇ!!!」
放たれた光弾がアイボリーに反射してダンテの顔を焼く。完全に不意打ちだったことも手伝ってか、あまりの痛さにのた打ち回る。
「天罰です」
「Jesus……」
ダンテが何とか光を取り戻して立ち上がったときには、バリアジャケットは完全な姿を取り戻していた。
「ダンテさん、最低ですね」
「…………」
返す言葉もなかった。
「……ところでレイジングハート、何で破れてるって教えてくれなかったの?」
コロス笑みを浮かべてなのはがレイジングハートに問う。後にダンテが語るには、レイジングハートが冷や汗掻いてたと言っていた。本当かどうかは定かではない。
「……I thought that that was funny.(そのほうが面白いと思いました)」
無機質な声が震えているように聞こえたのはきっとダンテの錯覚だろう。だが、はっきりと青筋を浮かべて階段の段差に杖を叩きつけるなのはは本気で怖かった。
ダンテは割と本気で殺されなかったことに感謝した。
「次ふざけたことしたら、壊すよ」
「……All right」
「……お前も大変だな」
「……Even too much.(それほどでも)」
「ダンテさん? レイジングハート?」
「まじごめんなさい」
「Sorry, master」
この瞬間、二人の上下関係が決められたと言っても過言ではないかも知れない。
「全く……さっさと行きますよ!」
「仰せのままに」
252 :
LMS:2008/03/17(月) 16:04:03 ID:R7pFJN2o
8
ぷんぷんと怒気も露に階段を登るなのはに、自業自得だが妙に疲れた表情のダンテが続く。だが、そんな二人の間の砕けた空気は短い階段を登りきった直後、あっという間に霧散した。
「え……」
「……悪いな、待たせちまったか?」
「気にするな」
なのはが見たのは、紛れもなく人間だった。そして、ダンテにとっては、認めたくなかったけれどここに飛ばされた瞬間から分かっていた相手である。
「よぉ、バージル」
「……久しいな、ダンテ」
「え、ダンテさん?」
「悪いな、ちょっと下がっててくれ」
事態についていけないなのはを置いてダンテが前に出る。なのはは、互いの名前を呼び合う二人に何かを感じたが、それでも声を上げずにはいられなかった。
「ちょっとダンテさん!?」
「悪い。アイツは、アイツだけは、俺が止めなきゃならないんだ」
ダンテの言葉に秘められた強い決意を感じ取り、さすがになのはは何も言えなくなってしまう。
それでも、今までずっと一緒に戦ってきた相棒として、ダンテのスタンドプレーは認められないという思いがなのはの口をつく。が、それは言葉になる前にダンテに遮られてしまった。
「……ダンテさん」
「アイツはな、俺の、双子の兄なんだ」
「!! だったら!」
「だからこそ、さ。兄だからこそ、俺が止めなきゃならねえんだ。わがまま言って悪いと思うが、ここは飲んでくれや」
「……分かり、ました」
今まで自分も散々わがままを通してきた。だからなのか、なのはは意外とあっさりダンテの言葉を受け入れることが出来た。
なのはが頼みを聞いてくれたことに安堵したダンテは、邪魔にならないよう隅に向かうなのはの背に声を掛ける。
「コイツを、預かっておいてくれ」
「……分かりました。言っておきますけど、負けたら私がもう一回殺しますからね」
「ハッ、わかってんよ、相棒」
「よろしい」
フォースエッジを預かったなのはは最後にすっかりお馴染みになったダンテ譲りの不敵な笑顔を見せ、そして柱にもたれかかった。これで、二人の間には何もなくなる。
ダンテは無造作にコートのポケットからアミュレットを取り出し、バージルに向かって放り投げた。
「アンタの形見に貰っといたんだがな。どんな手品か知らないが、生き返ったなら返さないとな」
「……そうか」
「全く、物持ちのいい弟に感謝しろよ?」
「そうだな、お前がこれを持っていないことだけが心配だった」
バージルは自身に託されたアミュレットを握り締め、一瞬目を閉じる。そして何事もなかったかのようにポケットに仕舞った。ダンテは気にした風もなく、バージルに向かってさらに言葉を続ける。
支援
254 :
LMS:2008/03/17(月) 16:04:57 ID:R7pFJN2o
9(終)
「しっかし、何でまたまんまで出てくるかね」
「そんなことは知らんな。魔帝は以前は俺の自我を消した、今回は復元した。それだけだ」
ゆっくりとバージルが一歩踏み出す。それと同時に、抑え切れない殺気が周囲一帯を色濃く包む。
「だが、どんな理由であれ、どんな形であれ、蘇ったのならすることは一つ」
間合い一歩手前で立ち止まったバージル。ダンテもまた、応じるかのように歩みを止める。
相対する二人の魔剣士。その姿は酷く似通っていて、そして決定的に違っていた。
「やれやれ、兄弟感動の再会だってのにな。いつまで経っても進歩がねえのはどーいうことかね」
ダンテはリベリオンを担いだまま、少しだけ悲しそうな顔をして。
「それでも、俺はアンタを止める。何度だってな」
次の瞬間には、その目に揺ぎ無い意志を宿して眼前のバージルを睨みつける。
「俺たちがオヤジの息子なら、受け継ぐべきは力なんかじゃない」
「―――誇り高い、魂。か?」
その言葉を受けたバージルが口を開く。その内容にダンテは少しだけ驚きの色を顔に混ぜ、それでもなお考えを変えぬバージルを怒りに任せて詰問する。
「何だよ、わかってんじゃねぇか。だったら、どうして今なおオヤジの力に固執する!」
「前にも言ったが、その魂が叫ぶからだ。”I need more power”とな」
「……はぁ、バカは死んでも治らないって言うが、ホントみたいだな」
そして理解した。どう言ったところで、兄弟が分かり合うことなどできないのだということを。
遥か昔に道を違えて、そしてもうその道は交差こそすれ混じり合うことなどないのだということを。
「―――終りにしよう、バージル」
ダンテがリベリオンを手に持ち、いつでも飛び込める体勢を作り、
「―――今回は、負けん。今度こそお前を殺し、スパーダの力を物にする。真の悪魔の力、思い知るがいい」
バージルが鞘に収めた閻魔刀の柄にそっと手を添え、居合いの構えを見せた。
「バージルゥ!!」
「ダンテェェェ!!」
255 :
LMS:2008/03/17(月) 16:06:23 ID:R7pFJN2o
エラーが出たって言うから二回書いたら重複したし…orz
支援ありがとうございます。さるさん引っかからなくて良かった
Mission 11はここまで、次はバージルとの決戦です
スーパーなのはタイムにご期待ください
>>255 乙で、GJ!!です。
しかし、この世界のレイジングハートもイカレてますね。(いい意味で)
しかも予想してたとはいえ、バージルですか…。3みたいな戦いになるんですかな。楽しみです。
GJ!!
やっぱりシメはバージルさんですかー。
さて――リベリオンクロス(かなり無茶がある)
40分頃から投下していいでしょうか?
そこからだと俺の投下時間に影響が…
ま、良いや。僕は暇ですから(笑)
良いですよ。僕は五時半頃にしと来ます。
えとじゃあ、リリカルなのはStrikerS+仮面ライダー様の後6時ぐらいに投下します。
>>258 あー・・・すいません。
では投下します。
リベリオンクロス「クラリックの少女」
どん、とした手応えは―――無かった。
代わりに感じたのは、額のひんやりとした金属の感触。
暗殺対象――レジアス・ゲイズの構えた拳銃――紛れも無い質量兵器――が、己の額に向けられている。そう理解するのに、数秒を要した。
その首筋を貫くはずだったカギ爪――ピアッシングネイルは僅かな動作でかわされ――形成は完全に逆転していた。
肥満体の巨躯――脂肪の下には十分な量の筋肉がついているのだ――がピクリと震えた。
次の瞬間、哄笑。
「クックック……こんな出来損ないでわしを――レジアス・ゲイズを殺そうなどと――片腹痛いわ」
嘲笑。
だが、それを――悔しいと思う暇はドゥーエには無かった。
銃声。
その額を――9ミリの弾丸が打ち抜き、頭蓋を貫通して脳漿を撒き散らさせたから。
薬莢を排出。
ぐらりとドゥーエの身体が崩れ落ちるのを、ゼストは呆然と見ていた。
目の前にいる男は――誰だ?
あまりに桁外れの身体能力。この肥満体にそんな力が秘められていたとは――誰に想像できようか。
友は――レジアスはこんなに武術に精通していただろうか。
答えは、否。
レジアスは崩れ落ちたドゥーエを塵でも見るかのような眼で見ると、ゼストに向き直った。
「どうした、ゼスト。何を驚く。これが地上の新たな力だ」
拳銃を腰に戻しながらレジアスが言った。
「自分が何を言っているのかわかっているのか、レジアス!再びかつての地獄を――質量兵器による破壊を招くのだぞ、これはッ!!」
ふん、とレジアスが鼻を鳴らした。
「笑わせるなよ、ゼスト。何の為にわしがガン=カタ使いを育成したと思っている。使い手は皆、感情を抑制された完璧な兵士達だ。
魔導師如きに遅れはとらぬし、暴走もせんよ」
その言葉に、ゼストが叫んだ。
「狂ったか、レジアス。貴様、人をなんだと思っているッ!」
「数少ない地上の兵を使えるようにする為の当然の行動だ。八年間どこぞをほっつき歩いていたお前にはわからんだろうがなッ!!」
ゼストが眼を閉じた。
「決めた――今ここで貴様を討つ、レジアス・ゲイズッ!!」
ゼストの手中に槍が展開され、レジアスに向け構えられた。
「ぬかせ。ランスターッ!!」
たん、と。
黒衣の――神父服じみた黒衣の裾が、夜風にたなびいた。
神父服を纏っているのは、少女だ。十五、六歳程の少女が手に拳銃を構え、何時の間にかレジアスの前に陣取っていた。
まるで気配がしない。幽鬼のような歩みに、ゼストは戦慄した。
「はい――中将」
涼やかな声と裏腹に、その表情は人形のように動かなかった。
両手の拳銃が構えられる。
じりじりとした、一触即発の空気。片方が仕掛ければ、それで戦闘が始まるという事態だ。
睨みあいの中で、ゼストは瞠目していた。
(できる……この娘……)
一見無造作に構えられた拳銃は、実のところゼストの急所を正確に狙っており、全身の筋肉は猫科の肉食獣のようにしなやかだった。
飛び道具に狙われているというより、喉元に刃物を突きつけられている様な感覚。
ぬう、と呻いてゼストが言った。
「その娘も――ガン=カタ使いか?」
「そうだ。我々の保有する最高のクラリックだ――あの天才ティーダを超える、な」
かっ、と眼を見開き――今度こそゼストは絶叫した。
「貴様ぁッ!ティーダの妹に――『仕込んだ』のかッ!!」
にやり、とレジアスが嗤った。つくづく愉快そうな笑みだった。
「そういうことだ。天才は――用済みになった後も――最高の人材を残してくれた。もはやスカリエッティ恐れるに足らず」
ゼストの槍が、超高速で突き出された。同時に身を捻り、銃弾を避ける。
対するティアナは移動せずに――二挺の銃口の、打撃用の突起で槍を――真正面から『受け止めた』。ぎりぎりと散る火花。
一瞬、力比べになるが――すぐにそれは終わった。
跳躍。槍が宙をきる。
フルオート射撃。三十発近い9ミリ弾が連射され、ゼストに襲い掛かる。バックステップでかわし槍を引き込む。
スライドが後退しきった。弾切れ。
弾倉を落とす。
着込んだスーツの機構――袖のマジックハンドが自動的に予備マガジンを空のグリップに挿入、リロード完了。
マガジンの落下と同時に着地、ゼストへ向け突進する。
突き出される槍の軌道を、左の拳銃でずらしながら接近。槍の不得意な――白兵戦に持ち込む。
ゼストは槍を回転させ、柄の部分で接近戦に対応する。流石は元ストライカー級魔導師といったところか。
顔面目掛けて振り下ろされる近接打撃用のグリップ。
決着が、ついた。ゼストが一度は防いだ打撃だったが――それは一度ではなかった。一度、二度、三度。その全てを柄で弾かんとするゼストだったが、限界が来た。
柄を握る指にグリップの打撃が入り、鈍い痛みが走る。鈍痛は激痛へ。一度ではなく何回も。
ぐしゃり、と指の骨が砕け散った。
槍を取り落とす。
「―――ッ!」
「終わりだ」
レジアスが宣言し、二挺拳銃の引き金が引かれた。
銃弾がスローモーションのようにゆっくりと眉間にめり込んでいくのを、ゼストは感じ――意識は断絶した。
何だこのレジアスは…。支援
真昼に、一人の肥満気味の巨漢が演説をしていた。
地上のトップ、レジアス・ゲイズ中将だ。
「これが――地上の新たな武力ッ!ガン=カタであり、平和の為のクラリック達なのです。暴力に対する抑止力ッ!それが――我々の存在意義!!」
レジアスの熱意のこもった演説を――クラリック達は皆一様に無表情、かつ一切の挙動を止めて聞いていた。
まるで人形の軍隊だ。各々が纏っている黒衣とあわせて、それは一種死神じみた印象を周囲の人々に与えていた。
そんな中に、似つかわしくない少女が一人混じっていた。
発色の良いツインテールの髪。整った容姿。腰に下げられた二挺拳銃――クラリック・ガン。そして――神父服のような黒衣。
その表情は、地獄を見て凍りついたかのように、微動だにしない。
少女の名はティアナ・ランスター。
若き十六歳の最年少クラリックであり、第一級クラリックの称号を持つ者だった。
クラリックとは――銃撃と格闘術を併せた総合的戦闘術、ガン=カタの使い手に送られる称号であり、その名は無敵を意味した。
統計に基づく最適な最小限度の動作で相手の攻撃を回避し、超至近距離での銃撃及び白兵戦により一対多数の戦闘を制する――それがガン=カタであり、
クラリックの戦闘方法。
ダンスにも見える華麗な動きと、計算された銃撃の融合。
それは、まさしく死の舞踏だった。
レジアスの演説が終わる。
「今、ここにッ!私レジアス・ゲイズはッ!地上の平和の維持と、治安の向上を皆さんに約束いたしますッ!!」
無言の拍手。
一律に無表情なクラリック達のものだ。機械的に手が動かされていく。
それにつられる様にして、聴衆からも拍手があがり始める。
そんな光景を――ティアナは無感動な瞳で眺めていた。感情抑制薬・プロジアムによる効果。
氷のように凍てつき、揺れ動くことない感情は、眼前の異常をなんとも思わせなかった。無数の無感動な瞳の死神達――ティアナもその一員だ――管理世界における異常。
質量兵器を保持し、使用することが許された怪物達。
その存在に疑問を――今のティアナは持たない。
たとえクラリックだった兄が感情を持った――たったそれだけの理由で――眼前で処刑されたとしても、だ。
黒衣の少女は、ただ己の正義の為に銃を撃ちつづける。
盲目的に。日常の反復として。
反逆(リベリオン)まで、あと僅か―――。
以上で投下終了です。
闇王女で出してない分ここで・・・ティアナを・・・(男は魔改造済みのをティアナと言い切った)
クロス元はアクション映画「リベリオン」です。
ウロスでネタを出してくださった方々、ありがとうございます。
おかしいなあ、レジアスが悪役に・・・
GJ!
軽快に動くレジアスを想像したワロタww
GJ!!
レジアスは何でこんなに男らしいんだ。
GJ!!です。
他のキャラは何処の配置されてるんだろう。
偶々、同じ任務をすることになったティアナに、はやてやクロノが
無表情で冷静で冷酷に敵を倒す彼女を見てどう思うのかとかみたいです。
クロノたちがクラリックに苦情を言ったとしても、凄い冷静に対応されるんだろうなw
逆にイラつきそうww
リベリオンキタ━━━(゚∀゚)━━━!!
アクションシーンも申し分ない。
プロジアムまできたら…感情違反者だらけになりそうでw
リベリオンか
シジマを連想してしまう俺はマネカタ
残る二つは弱肉強食の世界と引きこもりの世界だっけ?
あれ、計算したら三十分ちょっと経ってる…
今から投下おk?
18分から30分経過となるわけだから平気でしょう
反応無いな…まぁ投下します
【平成ライダーサイド】五話「強敵登場!」Bパート
【浅間山 森林】
「お久しぶりですね。剣崎さん。」
「志村…お前…お前があの攻撃を?」
「…その様子では、相川始達からまだ知らされていないようで…」
「え?」
確かにカブトと共にゆりかごを撃墜した後、剣崎は誰にも何も言わず、そして会わずにミッドを去った。
なので仲間達からは何の情報も得ていない。
「志村、お前一体何を…」
「…この傷に…見覚えはありませんか?」
志村は右腕を上げ、スーツのすそを捲り上げる。
すると、すその下から緑色の痣が残った傷跡が付いた肌が現れた。
「!?」
剣崎はその傷を見た瞬間思い出した。
あの傷は自分が白いジョーカーに付けた傷だ。
「お前…」
「クックックック…」
志村は黒く微笑み、一瞬だけアルビノジョーカーに変身し、そしてすぐに志村に戻る。
「志村…!?」
「呆れたよイレギュラー…まさかそんな情報も得ていないとは…」
「志村が…ジョーカー…」
「まさか、アフガニスタンで優しくしてくれた志村がジョーカー!?」
剣崎は驚きを隠せない。
「テメーがブレイドか?」
「え!?」
驚いている剣崎の耳に、若い男の声が聞こえてきた。
そして志村の背後から二十代前半位の男性が姿を現す。
「ホーント。なんか汚いし頼りな〜い。」
次は若い女の声が聞こえ、再び志村の背後から若い女性が現れた。
「お前達は!?」
「紹介するよ禍木慎…三輪夏美…お前を地獄に落とすための俺の仲間だ。」
「宜しく…そしてサヨナラ。」
夏美はラルクバックルを取り出し、赤いチェンジケルベロスのカードをベルトにセットして腰に巻きつける。
「楽しませてくれよぉ…!」
禍木もランスバックルを取り出し、緑のチェンジケルベロスをベルトにセットして腰に巻きつけた。
「見せてもらいますよ剣崎さん…貴方の力を…」
最後に志村がグレイブバックルを腰に巻きつけ、三人は変身準備を完了した。
『変身!』
「open up」
三人がベルトを起動させると、それぞれ三色のエネルギースクリーンが射出され、三人の体を包み込む。
そしてスクリーンを潜り抜けた三人は、志村が仮面ライダーグレイブ、禍木が仮面ライダーランス、夏美が仮面ライダーラルクに変身し、それぞれのラウザーを構えて並び立った。
「仮面ライダー!?」
突如現れた三人の仮面ライダーの姿を目撃し、剣崎はさらに驚く。
「来い…イレギュラー!」
「やるしかないのか…!」
剣崎はブレイバックルを取り出し、エースのカードをセットする。
そして腰に巻きつけ、バックルのレバーを引いた。
「変身!」
「turn up!」
剣崎も対抗してブレイドに変身し、ブレイラウザーを引き抜いて三人の新世代ライダーに立ち向かう。
【浅間山 河原】
「…ん?」
山を下りる準備をしていたヒビキは、鍔迫り合いの音を耳にし、森の方を振り向いた。
「この音…剣のぶつかり合い…?」
エリオも激しい金属音を耳にし、ヒビキと同じように森の方を振り向いた。
「剣崎…明日夢!先に山を降りてろ!」
「はい!」
「行くぞ少年!」
「分かりました!!」
ヒビキは明日夢を残し、エリオと共に森の中に向かった。
【森林】
「…!!」
「ッラア!!」
「ハア!!」
「グッ…ウェイ!!」
ラルクの銃弾を避け、グレイブの剣とランスの槍を次々と自らの刃で捌くブレイド。
その動きは、多くの戦いを経験して来た剣崎だからできる熟練の技である。
「チッ!流石だな…二人とも、合わせろ!」
「ええ!」
「っしゃあ!」
ブレイドの高い戦闘能力を改めて認識したグレイブはランス、ラルクと共に連携攻撃に入る。
まずラルクがラルクラウザーから弾丸を連射し、弾幕を張ってブレイドの動きを遮る。
その隙にグレイブとランスがブレイドに襲い掛かり、グレイブラウザーとランスラウザーでブレイドの体を切りつける。
そしてブレイドが怯んだ隙に、ラルクがラルクラウザーを斬撃形態に切り替えてブレイドに飛び掛り、胸部を切りつける。
その後、背後に居たグレイブとランスがブレイドの背部をラウザーで突いた。
「ぐあぁぁぁぁぁあ!!」
突き飛ばされたブレイドは近くの木に激突し、変身が解除されて剣崎の姿に戻る。
「ぐっ…」
「へ!何だよ何だよ…」
ランスは木に寄りかかっている剣崎に近づき、剣崎の腹部を蹴り付ける。
「ぐあ!!」
「何が最強クラスのライダーだよ…ええ?オイ!!」
ランスは悪態をつきながら、剣崎の腹部を何度も蹴る。
剣崎は数回緑色の血反吐を吐き、地面の上に横たわった。
「が…ふっ…」
「お、生きてやがる。」
ランスは薄ら笑いながら、剣崎の顔を踏みつけ、こめかみをグリグリと踵でねじ込む。
「ぐっ…ああああああ!!」
「それぐらいにして置け禍木。さてと…」
グレイブはコモンブランクのカードを取り出し、剣崎に近づいていく。
「さよならだイレギュラー…お前達は偉大なる力を手に入れなければ倒せないと思ったが…買いかぶり過ぎだったな…」
グレイブはゆっくりとカードを剣崎の顔に近づける。
しかしカードが剣崎に触れる直前、顔を踏みつけているランスと今正にカードを剣崎に立てようとしているグレイブに向けて炎の弾が飛んできた。
『!?』
二人はとっさに後退し、炎をかわす。
そしてグレイブたち新世代ライダーと剣崎が炎の跳んできた方向を見ると…
「剣崎さん!」
「間に合ったな。」
そこにはエリオと、二本の音撃棒を持ったヒビキの姿があった。
「ヒビキさん…エリオ…」
「大丈夫か?」
ヒビキは剣崎に手を差し伸べる。
「…ありがとうございます。」
剣崎はヒビキの手を取り、立ち上がった。
「チッ!邪魔しやがって…!」
「お前達!」
「あ?」
新世代ライダーの三人はエリオの怒号に反応し、エリオの方を向く。
「お前達、ライダーだろ?なんでAAMONなんかに!」
「へ、この世界が退屈だからさ。」
「仕事や生活…色んなことで手一杯で、世の中面白いことなんかひとっつもないじゃない?
ならこんな世界、いっその事壊してしまったほうが良いじゃない?
そのために力を振るう…楽しそうじゃない?」
「楽しくない…そんな理由で!」
エリオはバリアジャケットを装着し、ストラーダを構える。
「お前達に…ライダーを名乗る資格は無い!」
「ガキが!テメーの許可が要るのかよ!!」
ランスとラルクはラウザーを構え、戦闘体制に入る。
「さって…俺達も行くか!」
「はい!」
ヒビキは変身音叉・音角を取り出し、近くの木で弾いて音を鳴らして額にかざす。
剣崎は口から流れる緑の血を拭い、変身ポーズを取った。
「ヘアァァァァァァァア!!」
「変身!!」
ヒビキは紫の炎を纏い、炎を払って仮面ライダー響鬼に、剣崎は再びレバーを操作し、出現したエネルギースクリーンを潜り抜け、仮面ライダーブレイドに変身した。
「少年!剣崎!行くぜ!」
『はい!』
「二人とも…叩き潰すぞ。」
「OK!」
響鬼、エリオ、ブレイド、そしてラルク、ランス、グレイブはそれぞれ三方向に別れ、響鬼はラルク、エリオはランス、ブレイドはグレイブと相手を決め、戦いを始める。
【響鬼対ラルク】
(BGM・輝)
「女の子を殴る主義じゃないんだけどなぁ…」
「御託を!」
ラルクはラルクラウザーを再びボーガンに変形させ、響鬼に向けて連射する。
しかし、響鬼は歴戦の戦士。
実戦に出たばかりのラルクの弾が当たる筈も無く、響鬼はダッシュでラルクに接近しながら全て紙一重で弾丸を回避する。
「何!?」
「ツェアァァァア!!」
そして両手の拳に鬼爪を出現させ、ラルクのボディを切りつけた。
「ぐあ!」
ラルクは切られた部分を押さえ、数歩後退する。
「止めなよ。君じゃ俺には勝てない。」
「馬鹿にするな!」
ラルクは腰のラウズバンクから「マイティレイ」のカードを取り出し、ラルクラウザーにラウズする。
「消えろ!!」
ラルクはラウザーの引鉄を引き、必殺技「レイバレット」を放つ。
だが…
「何の!ツアァァア!!」
ラルクの必殺技も、響鬼の音撃棒を使った一閃で簡単に弾き飛ばされてしまった。
「ああ!?」
「勝負あり…かな?」
【エリオ対ランス】
「は!やあっ!!」
「ハッ!ッラア!!」
エリオとランスは、お互いの武器をぶつけ合い、激しく火花を散らす。
お互い信念も目的も違えど、槍士同士の戦いだ。
やがて二人は鍔迫り合いに入り、均衡を保つ。
「この…負けるもんか…!」
「ガキが俺と互角だと…認めねぇぞ!!」
ランスは叫び、ラウズバンクから「マイティインパクト」のカードを引き抜き、ラウズする。
「え!?」
「くたばれえぇぇぇぇぇえ!!」
ランスの必殺技「インパクタスタッブ」がストラーダを押し切り、エリオの腹部を突いた。
「うわあぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
エリオは十メートルほど激しく吹っ飛ばされ、地面に叩きつけられる。
「グッ…」
「俺の勝ちだ…」
「まだまだ!!」
エリオは痛む体を奮い立たせ、ソニックブームを使用し、一瞬でランスの背後に移動する。
「何!?」
「紫電一閃!!」
そして拳に雷を纏わせ、ランスを背後から殴りつけた。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉお!!」
次はランスが十メートルほど吹っ飛ばされ、地面に叩きつけられる。
「僕の…勝ちです!」
「このガキィ…ぶっ殺す!!」
ランスは立ち上がり、再びエリオに襲い掛かる。
エリオも再びストラーダを構え、ランスと戦闘に入った。
(曲終了)
【ブレイド対グレイブ】
「ハアァァァァア!!」
「グッ!」
ブレイド対グレイブの戦いは、グレイブが優勢だった。
ブレイドは先程のダメージが抜け切っておらず、相手のグレイブはブレイドを超えるスペック。
おまけに装着者がグレイブで自分より性能が上のワイルドカリスと互角に戦う志村の為、苦戦は必死だった。
「ハッ!」
「うわ!」
ブレイドはグレイブの剣戟をとっさにブレイラウザーで防御し、鍔迫り合いに入る。
「どうしたイレギュラー?その程度か?」
「志村…!」
「なら…本気を出すように少しだけ面白い話をしてやる。」
「何?」
「アフガニスタンの汚いガキ共…殺したのは俺さ。」
「!?」
「貴様のジョーカーへの覚醒を促すため、モスキラスを操って殺させた…子供など、世界各国で無尽蔵に増えていく。少しくらい減っても問題は無いだろう?」
「キ・サ・マアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァア!!」
支援
(BGM・覚醒)
怒りが燃えたぎり、ブレイドの融合係数が跳ね上がる。
600、800、1000、1500…まだ上がる。
碇もあるが、剣崎はジョーカーになったことにより以前より天井知らずの融合係数を叩きだせるようになったのだ。
「オォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォオ!!」
「なっ…!」
それからのブレイドの猛攻は凄まじかった。
怒りの刃がグレイブを押し切り、グレイブラウザーを払い、何度も何度も切りつける…
その戦い方は怒りが頂点に達したカリスと同じく、獣そのものの戦い方だ。
「ぐっ…これほどとは…」
「オォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォオ!!!」
ブレイドはカテゴリー2「スラッシュリザード」とカテゴリー9「マッハ」のカードを瞬時にラウズし、音速に近い速度を発揮して何度も何度もグレイブを切り刻んだ。
「ぐああああああああ!!」
「オォォォォォォォォォォォォォォォォォオ!!グオォォォォォォォォォォォォォォオ!!!」
「調子に…乗るな!!」
グレイブは状況を打開するため、キックを繰り出し、ブレイドを蹴り飛ばして間合いを取ろうとした。
しかしそのキックもブレイドに紙一重で回避され、逆にブレイドが繰り出した回し蹴りを受けて自分が蹴り飛ばされてしまう。
「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
蹴り飛ばされたグレイブは樹木に激突し、悶える。
「このままでは不利か…二人とも、撤退だ!」
「チッ!」
「しょうがないわね…」
ラルクとランスは戦闘を中断し、グレイブに駆け寄る。
「(人を守ろうとする愛…そして命を奪う者への怒り…それらが奴の力を全開させる…か…)」
そしてグレイブは二人の手を握り、テレポートで逃げた。
「あ!」
「逃げられたか…」
「志村…志村あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」
後には、ブレイドの絶叫だけが虚しく響いた…
【数分後】
「…」
「剣崎さん…」
エリオはかける言葉を見つけることが出来なかった。
子供達を殺され、仇も取れなかった剣崎を、安易に慰めることなんて出来ない。
「…剣崎。」
その沈黙を破り、顔だけ変身解除したヒビキが剣崎に話しかける。
「一緒に戦おう。皆で戦えば…きっと…」
「…すいません。一人に…させてください。」
剣崎はそれだけ言い残し、エリオとヒビキの前から離れていった。
「剣崎さん!」
「追うな。今は…そっとしといてやれ。」
「…はい。」
ヒビキとエリオは、去っていく剣崎の哀しい後姿を、いつまでもいつまでも見送っていた…
【次回予告】
キンタロス「子供誘拐!?まかしとき!んなことする奴は許せん!」
トカゲバイキング「私は子供が大好きだ!さぁ来い!抱っこしてあげよう!」
キャロ「キンちゃーーーーーーん!」
K良太郎「キャロオォォォォォォォォォォオ!!」
電王AF「今のワイは…明王より恐ろしいで!!」
次回、「キンタロス怒る」
はい、投下終了です
戦闘員と戦う剣崎とヒビキは描き忘れてしまいました…すみません。
次、SICさん頑張ってください。
応援してます。
GJ!!
次はキンタロスとキャロってどこかで見たな…。www
誤字ハケーン
279の碇を怒りに修正してくださいっす…
お待たせしました投下開始します。
「いったい……何なんだよ?……てぇ!リンカーコア!!!」
しばらく呆然と仮面男をみていたが本来の目的を思い出すと、砂竜に目を向ける。
ビクビクと痙攣ていたが回収には問題なさそうだった。
「よかった……間に合った」
ホゥっと安堵のため息をつくと倒れた砂竜に近づきリンカーコアを回収した。
「あ……」
そこで気が抜けたのかヴィータは意識を手放した。
「む、いかん。トォッ!!」
ジャンプし少女をキャッチする
「どうみても人間の女の子だな……」
―――魔法少女リリカルなのはA's―S.I.C―帰ってきたV3―――第2話「仮面ライダーだった男」
彼は混乱していた。
いつものように当てもなくこの世界を彷徨い、砂竜を狩る
いつか自分を倒せるほどの個体と出会うこと
ここ最近はこのあたりで発生した新種を探していた。
ルーチンワークとなりかけた自分が期待していたのがヴィータと戦っていた巨大砂竜だった。
通常の固体よりも強い識別呼称『白い悪魔』
暴れた後には高熱によりガラス化した砂が残っていたことから
なんらかのエネルギーを使用した攻撃をすると予想された。
打上げたV3ホッパーからの情報を解析し最大の熱量を探し出し、現場に急行したときにはすでに戦闘が始まっていた。
自分の標的と戦っている者、その相手は可愛らしい衣装を纏った少女だったことに驚きつつも、
とうにこの世界で滅亡してしまった人類の姿をこの異常な事態のなかで目撃した。
「生き残りの筈がない。あんな地獄で……生き残れるはずが……」
核の炎が全てを吹き飛ばしたとはいえ、初めの頃は僅かな生き残りもいた。
しかし、激変した地球環境は人類に優しくは無かった。
”タスケテ”
”ナンデ オマエダケ?”
”クルシイ クルシイ”
”シニタクナイ”
怨嗟の声を上げながら死にゆく人々をみることしかできなかった自分。
あの地獄ですらこの躯を機能不全に陥らせることができなかった。
生命維持装置、パワー調整装置、その他いくつかの装置は正常に稼動し、平時と変わらないコンディションを保つようにしていた。
あのときほど自分の躯を呪ったことはなかった。
かつてない程の無力感を感じた。
何度倒されても諦めず戦い続けた
いくらかましになったとはいえ、今でもこの星は人類が生活できるような生易しいものではない。
そう、彼のような改造人間でもない限り。
だが、Oシグナルの反応では機械的な部分は関知できない 。
「普通の少女だというのか?しかしあの力は……む?これは…」
腕の中で眠る少女へセンサーを稼動させるとやはり違和感を感じた。
さらに精査を行おうとしたその時…
「ヴィータ!!」
桃色の髪を結わえた剣士と、何故か犬の耳が生えた筋肉質の男が宙に浮かんでいた。
シグナムは混乱していた。
定時連絡がこないのはいつものこと(蒐集に夢中になって忘れている)だったが、こちらからの連絡には応えていた。
しかし、今回はこちらがいくら呼びかけても反応が無い、ただでさえ管理局だけでなく妙なやつらもうろついているということが
焦りに拍車をかけていた。そのために念のためザフィーラとともにヴィータがいった世界へ向かっのた。
そこでシグナムが見たものは夥しい砂竜の屍の山と黒煙、そしてその中心にいる仮面男だった。
人間型の生命体が存在しないはずの世界にいる人型の存在。
この世界に人類はいないはずだった。正確にははるか昔に滅亡している。
ならばこれはいったい?この砂竜の屍の山をやつが築いたのか?
実際はほとんどヴィータがやったのだが、この状況ではやつが殺戮者にしかみえなかった。
ふと、その腕に抱えられている小さな姿に気づき思わず叫んでしまった。
「今日は千客万来だな」
「貴様!ヴィータに何をした!?」
仮面男の飄々とした態度にいらつきを隠せず怒鳴った。
「慌てるな、気を失っているだけだ」
言いながらヴィータの体を横たえた
「貴様いったい何者だ?」
「それはこちらが聞きたいな招かれざる客だというのは分っているのだろう」
「……ヴォルケンリッター、烈火の将シグナム」
「盾の守護獣ザフィーラ」
「ヴォルケン、リッター……ドイツ語?」
かみ締めるように呟いた。
「そんなことより貴様は何者だ!」
ククク、と笑い声を上げる
シグナムは怪訝な顔で男を見た
「悪いな、”人”と会話をしたのは久しぶりでな、この世界でのただ一人の生き残りとしては、歓迎すべきかせざるべきか……俺の名はV3、か…いや、ただのV3だ」
「V3……?」
「なるほど、見た目どおりただの人間ではないか、存外、戦闘能力も高そうだ」
こちらを品定めをするような様子で見た。
「ちょうどいい、久しぶりに戦い甲斐ののありそうな相手だ……俺と戦え!」
「なにっ!?」
「くっ! ザフィーラ!ヴィータを頼む。私はこいつを抑える!」
「トオオォッ!!」
雄叫びを上げ一直線に電光石火のパンチを打ち込む。
軌道を剣で逸らし、返す刀で切り込むが
「オオオオオオオッ!」
続けざまに打ち込まれる拳をレヴァンティンでいなす。
「V3ィ!」
エネルギーを左腕に集中させる。
「電熱チョップ!!」
赤熱化した左腕を振るいレヴァンティンのガードを弾いた。
「V3パァンチッ!」
がら空きになった胴体めがけて繰り出された拳を辛うじて左腕で防御する。
が、
「ああああああああ!!」
ガードした右腕ごとシグナムは弾き飛ばされる。
「ヤアアアアッ!」
その隙を逃さず、キックを繰り出すが、シグナムは長剣レヴァンティンを振って弾き飛ばした。
V3は弾かれた反動を加えて跳ね、体勢を整えると身を翻して再度蹴りを叩き込む。
「V3ィ!反転キック!」
「がああああああ!」
衝撃を受けきれず、シグナムは砂漠に叩きつけられた。
V3は追撃せずに待つ。
「どうした?この程度か?」
もうもうと噴きあがる砂煙の中から声が聞こえた。
「レヴァンティン、カートリッジロード!」
「Jawohl.(了解)」
レヴァンティンを鞘に収めカートリッジを消費する。
「Nachladen. (装填) 」
ガシュンと使用済みカートリッジが排莢された。
「Schlangeform.(シュランゲフォルム)
砂煙の中から飛び上がったシグナムは変形して連結鎖刃形態となったレヴァンティンから必殺の一撃を放つ。
「はあぁっ! 飛竜一閃!!」
莫大な魔力を纏った炎の蛇の突撃は最早突きではなく砲撃だった。
上空から迫るその一撃を避けることができず真正面から食らってしまった。
「オ、オオオオオッ!!」
大音響と共にV3は爆炎で包まれた。
「はっ!はっ!危なかった。が、これでお終いだ……!?」
息を整え、せめて亡骸を確認しようと煙が晴れるのを待ったシグナムは信じられないものを見た。
爆炎が晴れた先にはV3はそこに立っていた。
両腕を交差させ、完全防御体勢をとっていたが
「馬鹿な!? 直撃だったはずだ!」
自分の技を喰らって魔力も持たないモノが無事でいられるはずがない。
シグナムは知らなかったがV3の躯は脳以外を全て機械化している。
そのため、純魔力攻撃では思ったほどのダメージを与えることができなかったのだ。
思わず呆然としてしまったシグナムに構わず、V3は防御をといて次の攻撃に移った。
「今度はこちらの番だ!決めさせてもらう……ハリケーン!!」
ブオオオオオオオオオオオンンッ!!!
馬がいななくようにあたりにエンジン音が響く。
長年連れ添った相棒。長い戦いの末に共に改造を受け続けたハリケーンは主の呼び声に応え、
砂地をアスファルトと変わらぬ速さで駆けてくる。
「トオッ!!」
V3とハリケーンは同時にジャンプ、高速回転するタイヤに足をつけ反撥。
V3自身の体を高速回転させ超スピードで目標に向かっていくが、シグナムはその軌道を読み回避した。
「甘い!」
しかし、V3はOセンサーで正確に居場所を探り、軌道を変えて直撃コースに載せ変えた。
「なっ!?」
今度は避けきれなかった。
「V3ィィィイ!!!マッハァッ!!!キィィィィィィィィィック!!!!」
猛特訓の末に編み出しツバサ一族の長、死人コウモリを葬り去った文字通りの必殺キックがシグナムの腹部に炸裂した!
その瞬間両者は弾かれ、砂の大地に叩きつけられていた。
「………くっ!なんて威力だ…!」
騎士甲冑で軽減されたとはいえ
腹部に手を当ててよろめきつつもシグナムはまだ立っていた
バリアジャケットはボロボロになっていたがその役目はしっかりと果たしていた。
本来ならば改造人間を真っ二つにするほどの威力を秘めた一撃を大きく減衰させたのだ。
それでも無視できないダメージを与えられてしまった。
まさかここまでとは……!
シグナムは驚愕を隠せなかった。
スピード、パワー共に強力
一撃一撃が、単なるパンチやキックでは無く、自分の体を知り尽くした上で数々の修羅場を潜り抜けてきて鍛えあげた技だ。
リンカーコアは持っていないようだがその不利を補って余りある、いや不利にならないほどの強さだ
この男は魔法を使えない、それでもかつて戦ったフェイト・テスタロッサどころか、
自分たちヴォルケンリッター以上の戦士であるかもしれない。
ヴィータはザフィーラに任せたのは正解だった。
言いたくは無いが気絶したヴィータがいてはザフィーラとの2対1とて危なかっただろう。
そんなことを考えていると人影が見えてきた。やはりあの程度では倒せなかった。
砂煙で隠されていたV3の姿が顕になった、胸の装甲が斜めに切り裂かれている。
「ハハ」
V3は笑いを堪えられなかった。
キックのタイミングにあわせてカウンターを仕掛けてきた!
彼女ならが俺の望みを叶えてくれるかもしれなかった。
この永遠の躯に終止符を打ってくれるかもしれない
どんなに苦しくとも自殺はできなかった、最後まで戦士であるためだ。
それは、自分の信じたもののために戦った自分の最後を誰かに見届けて欲しいという願望だった。
もう”仮面ライダー”とは名乗れないのだから。
世界の平和と人類の自由を守るために戦う戦士が仮面ライダーだ
己自身の自殺のために戦う今の自分に"仮面ライダー"を名乗る資格はない
そして、仮面ライダーは無敵でなければいけない
だからこそ自分は戦士"風見志郎"として戦い、死ぬしかないのだ。
そこで、ふと思い出す。かつて恩師との会話を
“ オヤジさん・・・だめだ あの怪人は強過ぎるんですよ ”
“ でも俺は精一杯やっ ― あっ っううっ― ”
“ 俺は無理な事を頼んでいるんだ! ”
“ 仮面ライダーV3は無敵で在って欲しい! ”
仮面ライダーは無敵である
唯一絶対の約束を守って今まで生きてきた。
「……わかってるさ、オヤジさん。俺は……仮面ライダーV3は無敵『だった』。だから……もう、いいよな?」
「いくぞ!俺を………殺して見せろ!!!!……騎士よ!!!」
「来い!戦士V3!!」
仮面ライダーだった男、V3! 風見志郎は死ぬために戦う!
両者は再び構える。
次で勝負が決まる。
どちらも自身の最大の技を繰り出す構えを取ったのだ。
だが、そのときだった。
「何!?」
「馬鹿な!?…こいつらは!!」
GLUUUUGAAAAAAA!!!!!
奇怪な雄叫びが砂漠に木霊する。
10や20どころではない、100にも届こうかという数だ。
この世界においての”古代の遺物(ロストロギア)”
ミイラの改造人間、不死身の兵たちが砂の中から出現し、2人の周りを取り囲んでいた。
以上投下終了です。
これだけかかってかなり短いところに自分の文才の無さを感じます……orz
支援
GJすぎる!
流石V3、昭和ライダーのリーダー格、強いなぁ…
でも魔導師でV3を倒せる相手って居るのかな?
かなり化物じみた防御力持ってますからねぇ昭和ライダー…
職人の皆様GJ!
バージル兄ちゃんの登場に驚き、レジアスやV3のカッコよさに痺れる。
今日はよき日かな。休日返上で午後はずっとPCの前で執筆してた甲斐がありましたぜ。
というわけで、リリカル殺生丸第2話、8時頃に予約したいと思います。
…………………
楽しみにしてます。
戦国最強ロリコンのかつや…おや誰か来た様ry
GJ!!です。
V3強いなぁ。ここからどういう風に本編に関わるんだろう?
楽しみです。
>>296 あ、ちょうど今StS+ライダーも読み終えましたよー。
今回はオリジナルライダー編と違って結構重い話でしたなぁ。
……うん、そしてだ。最後の最後の次回予告で急にノリノリになったのはどういうこったいwww
あれ、「子供が大好き」って、そちらも?
奇遇ですなぁ。リリカル殺生丸もルーちゃんがヒロインの……ん、何だこの虫の羽音h(ry
>>反目さん
いやまぁ…それは作風と言うことで…
オリジナル編か…八話までとにかくギャルゲ展開で最後の最後にシリアスっぽい話をしたんだよなー俺…
平成ライダー編は今回を皮切りに大きく話を動かす予定だったんですが…
まだ早いかなとw
やっぱり暗めな話よりまじめなギャグをと思いましたのでw
でも志村が直接手を下す話や剣崎絡みの話はシリアスにしようと考えています。
実はクアットロの最期ももう考えてあるんですが、どんな話になるかはお楽しみに…
V3のレジスト、弐拾六埜秘密はまだ未点が多いから
アニメサロンのなのは対ライダー、なのは対電王、シャナ対ライダー、でも昭和ライダーの強さ…
核兵器が効かないし生身のライダーマンもプルトン気にせず水中戦したり
なのはは公式的に核は無理って言ってるし
劇場が終わってから書くエリオとの相棒風味のリリ電climaxにするか
良太郎の設定いじってフェイトと戦う
climaxなのリリカルだぜにするか迷ってる?
しかしなのはとライダーのコラボって結構あるな前グレンラガンとのネット小説があったし
アックス&キャロの話楽しみにしてます
反目さんの殺生丸も好いです、あのツンデレはモモみたいで好きだ〜
あと1時間たのしみです
V3から亀怪人の登場と申したか
ライダーマンなんてプルトン爆弾で日本からタヒチまで吹っ飛んでも生きてたんだぜ?
303 :
LMS:2008/03/17(月) 19:27:22 ID:R7pFJN2o
やっぱり仮面ライダーはカッコいいなぁ。両氏ともGJ!
熱い漢にはやはり憧れるぜ
平成も昭和も大して知ってるわけではないけど、これを機に見てみようかな
>ゲッター昴氏
ティアナが、ティアナがー!
この後はまず地上で戦争か!?
皆様、こんばんわです。
ラクロアを22時頃に投下したいと思います。
(今度は大火事になろうが、無視して投下いたします)
よろしくお願いいたします。
さて・・・・・皆様の作品を読もう。
>>304 焼かれたら元も子もないから、それは無視しないで下さい。
そしてこれから投下する人を皆支援します。
そろそろかな? 支援体勢
さーて、そろそろリリカル殺生丸が始まりますよー。
というわけで投下おkですかー?
――4年前。
「こちら教導隊01。エントランス内の要救助者、女の子1名を救助しました」
炎に照らされた夜空を、1人の女性が飛翔する。
栗色のツインテールを夜風に揺らし、純白のバリアジャケットをその身に纏い、桃色の杖を携えて。
未だ10代の若者でありながら、エース・オブ・エースの名を冠する、時空管理局のトップガン。
『ありがとうございます! さすがは航空魔導師のエース・オブ・エースですね!』
天才魔導師・高町なのはが、アクセルフィンの翼を輝かせて空に躍り出ていた。
その腕の中には、虚ろな表情を浮かべる幼い少女の姿。
どこかあのギンガ・ナカジマを思わせる容姿。青いショートカットの髪も、その白い肌も、灰を被って汚れていた。
「西側の救助隊に引き渡した後、すぐに救助活動を続行しますね」
『お願いします!』
少女の疲れきった緑の瞳が、通信を交わすなのはの横顔を見つめていた。
そして、その目が見開かれる。
彼女の背後に広がる、眩いまでの満天の星々。
灼熱の業火の中では見られなかった、闇の中の無数の光。
実感する。自分があの地獄の火災現場から救出されたことを。この魔導師の女の人によって、そこから連れ出されたことを。
炎の燃え盛る暗闇の中から抜け出して、嘘みたいに綺麗な夜空へと飛び立った。
冷たい夜風が、何だかとても心地よく感じた。
自分を抱きしめてくれる手が、とても暖かかったからかもしれない。
ふと、視線に気付いたなのはが、少女へと優しい笑顔を向ける。
星の光によってうっすらと照らし出されたその微笑みは、さながら女神のそれと見まごうほど。
しばし少女は――ギンガの捜し求めた妹スバル・ナカジマは、その笑顔に目を奪われていた。
「……あっ」
その時、背後に浮かぶ影があった。
「え?」
それに気付いたなのはもまた、そちらの方へと視線を飛ばす。
夜空を翔る、もう1つの人影が浮かんでいた。
距離が遠い。星明りの逆光か、はたまた単純な暗さ故か、その衣服の色は判然としない。
しかし、そのたなびく長髪と、獣のたてがみのようにして身に付けた毛皮が、ゆらゆらと星空の中で揺れていた。
体格からして、恐らく男性だろう。だがその身に纏う雰囲気は、普通の男とは一線を画す、一種優美な印象さえも醸し出す。
この火災現場に参加している空戦魔導師は、まだなのはとフェイトの2名だけのはずだ。
航空武装隊の応援が到着したとの知らせも、未だ本部からは届いていない。
ならばあの男は――あの不思議な美しさを纏った麗人は、一体何者なのだろうか。
考えているうちに、男の影はどんどん上空へと遠ざかっていく。
ほとんど点に近くなったような距離まで行ったところで、その影は、天上の月に重なった。
麗しの銀月に勝るとも劣らぬ、高貴な輝きが、その月の光に照らされる。
逆光が男を完全に黒に染め、遂には宵闇の中に溶け込んで、消えた。
そしてそれら一連を、2人は呆けたような表情を浮かべ、じっと見つめていた。
(――なのは、聞こえる?)
ギンガを保護したフェイトの念話によって、なのははようやく我に返った。
この一瞬の邂逅は、スバルの記憶には特に強く残ることなく終わった。
少女の小さな胸には、より強烈な願いが残ったから。
自分を助けてくれたエース・オブ・エースは、強くて優しくて、カッコよかった。
泣いてばかりで、何もできない自分が情けなかった。
だからこの時、スバル・ナカジマは、生まれて初めて胸に誓った。
強くなることを。
かくして幼い無力な少女は、誰かを守れる力を手にするため、魔法の力をその手に取り、戦場に立った。
それはまた、別の機会に語られることになるのだが。
魔法妖怪リリカル殺生丸
第二話「その地はミッドチルダ」
「殺生丸、かぁ……ま、確かにこの辺で聞くような名前じゃねーわなぁ」
時は4年後――すなわち現在に戻る。
当時満天の星空に躍り出た長髪の青年――妖怪・殺生丸は、見知らぬ土地の大森林の中、怪しい3人組と遭遇していた。
死人の臭いを漂わす、屈強な中年の男。
妖怪とも人間ともつかぬ奇妙な臭いを放つ、赤髪の小人。
そしてそれらの面子の中ではかえって異常な存在と言える、人間の幼女。
そんな連中に名前を名乗ったのは、殺生丸がよほど立場的に追い詰められていたからに他ならない。
急いで元の世界に戻らなければならない用事があるというのに、既にあれから何年もの月日が流れてしまった。
人間を忌み嫌うが故に人間を避け続けた結果、ろくに情報も手に入らなかった。
背に腹は代えられない。とてつもない反発が伴うが、ある程度の自負は諦めるとしよう。
「……質問に答えてもらおう」
プライドを捨てたつもりでも、声の響きが冷ややかなものになってしまうのは、完全にそれを捨て切れない故か。
ともかくも殺生丸は、この3人組に問いかけた。
「何だ?」
こげ茶の髪をした男が答える。
「ここはどこだ」
まずはそこからだった。
当然のごとく、次元漂流者たる殺生丸は、この世界の言語など知るはずもない。
何かの折に地図を手に入れたはいいが、そこに書かれた地名が全く読めなかったのだ。
「ミッドチルダ、という世界だ。お前のいた世界とは、恐らく根本的に違っている」
「根本的……とはどういうことだ。船を乗って海を渡っていけば、元いた国に帰れるというわけではないのか」
「そういうことだ」
どうやら事態は予想以上に深刻だったらしい。内心で殺生丸はため息をつく。
つまり、現在地と元の世界は、言うなれば現世と冥府なみの隔絶があるということだ。
そして、質問の内容はその先へと進む。
「帰る術はあるのか」
殺生丸が問いかけた。
そこまで言うからには、恐らく帰還のために特別な方法を使う必要があるのだろう。
であれば、文字が読めない以上、この場で聞き出しておく他ない。
「その世界が、複数の次元世界のどこにあるかさえ分かれば、次元航行船で帰ることはできるだろう」
先ほどまでと同じように、中年が答えた。
「そうか……」
殺生丸は静かに目を伏せる。
これで帰る手段ははっきりとした。後は男の言ったとおりに、その特殊な船とやらを見つけ、乗り込めばいい。
しかし、どうやらそこにもまた面倒な手続きが必要となるようだ。
いちいち自分の国について説明をしなければならない、というのである。また不必要な人間との接触が必要ときたわけだ。
まったくもって、自分は高々元いた場所へ帰るためだけに、どれほどの傷を誇りにつけなければならないのだろうか。
そんな風に思い、僅かにうんざりとした様子を表情に浮かべた。
支援
支援。殺生丸の爪って確か溶解作用と毒属性だった気がする。
支援
「……ねぇ」
と、そこで今まで黙っていた少女が口を開く。
紫の髪を持った幼女は、見た目や雰囲気に違わず口数が少ないようだ。先ほど名前を聞いた時以来、喋るのはこれが初めてとなる。
赤い瞳が長身の殺生丸を、じっと見上げていた。
「一緒に来ない?」
続けた言葉は、宙に浮いた小人の少女を驚かせるには十分なインパクトを持っていた。
「ええっ!? いきなり何言い出すんだよルールー!?」
小人の驚愕ももっともだ。
見ず知らずで怪しさ全開の人間を、いきなり自分達の旅に同行させる理由はない。
「大丈夫。ドクターの所に連れて行くだけだから」
そしてどうやらこの幼女も、さすがにそこまでするつもりはなかったらしい。
「何故だ? わざわざ奴に関わらせる必要は……」
「この人……街では目立っちゃう」
最初は怪訝そうな顔をした中年だったが、それを聞いて納得したようだ。
殺生丸の容姿はかなり独特だ。ミッドではまずお目にかかれないような着物に、漆黒の胴鎧と巨大な毛皮。
顔には刺青のようにして模様がついているし、腰には二振りの刀が帯刀されている。
こんな姿で人里に出ては、大騒ぎされること間違いないだろう。
おまけに極めつけが、尖った耳だった。
「それに、多分……この人、人間じゃないと思う」
そしてその耳を見て、幼女が言った。
「人間じゃないって……あたしみたいに融合騎ってこと?」
小人の問いかけに、幼女は無言で首を横に振る。
自然と3人の視線は殺生丸へと向かった。
「……妖怪だ」
どうやらこいつらは、自分が何者なのかがどうしても気になるらしい。下手にはぐらかしても長くなりそうだ。
そう判断して、観念した殺生丸は口を開く。
まったくもって面倒なことばかりだ。内心でため息をついた。
「ヨウカイ……何だそりゃ?」
彼らにとっては聞き慣れない単語だったらしく、3人は一様に頭に疑問符を浮かべる。
このミッドには、「妖怪」という概念そのものが存在しないようだ。
しかし、それを説明するのもそれこそ面倒なことだったので、殺生丸は答えることを控えた。
「ま、いーや。……それじゃ旦那、行ってくるよ」
小人はそう言うと、その高度を上げ、そのまま彼方へと飛び去っていった。
しばし殺生丸は――そして残り2人もまた、小人が飛んでいった方をじっと見つめる。
「そういえば、こちらの自己紹介がまだだったな」
そして我に返ったように、中年が視線を殺生丸へと戻して、口を開いた。
「俺はゼストという。今飛んでいったのがアギト。そして――」
聞きなれぬ異国の響きを持った名前を口にする。
そして、ゼストと名乗った中年の男は、その大きな手をぽんと幼女の頭の上に置いた。
「この娘は、ルーテシアだ」
ルーテシアと呼ばれた幼女が、こくりと小さくおじぎをした。
支援
六課と見せかけてスカ陣営に行っちゃうのか支援
方々から小鳥のさえずる声を聞きながら、森の中を3人が歩いていく。
殺生丸からすれば、さっさとその元の世界へ帰してくれる人間の元へ案内してもらいたかったのだが、
どうやらルーテシアらには用事があるらしく、そちらを片付けてからになるようだ。
苛立たしいことではあるものの、4年も待った今までに比べれば遥かにましだ。
そういうわけで、殺生丸は大人しく待つことにした。
無論、この2人が自分を罠にはめている可能性もないわけではない。
かつてかの忌まわしき奈落が、父の遺産たる妖刀・鉄砕牙を欲していたことにつけ込み、自分を取り込もうとしたこともある。
だが、それへの対策は簡単だ。化けの皮を剥がした瞬間、逃げられる前に殺してしまえばいい。
故にこの場は、常に警戒を怠らないということで、その可能性に対処していた。
「あそこか」
ゼストがルーテシアへと確認する。
遠くに見えたのは、コンクリート造りの大きな四角い建物だ。
恐ろしいまでに整った直方体。殺生丸にとっては、これもまた元の世界ではお目にかかれなかった代物である。
ミッド文字の分からない彼には知る由もなかったが、ホテル・アグスタという名の宿泊施設だった。
以前この森に辿り着いた時、適当に地図を手に入れるために忍び込んだこともある。つまり、前述の「何かの折」とはその時だ。
もっとも、それを機にホテルの警備が以前よりも数段厳しくなったというのは、世間には知られていないこぼれ話。
デバイスも使わずに魔法を行使する奇妙な風体の魔導師の襲撃を受けた、など、一体誰が信じようか。
「お前の探し物は、ここにはないのだろう?」
ルーテシアの方を見下ろし、ゼストが問いかけた。
紫の髪の幼女はそれには答えず、赤く大きな瞳をじっと向けるばかり。
「何か気になるのか?」
「……うん……」
その問いに対し、ようやくルーテシアが頷いた。
と、そこへ細かな羽音が聞こえてくる。
現れたのは、何とも奇妙な風体の羽虫だった。
姿形も大きさも、人間が金鎚で木材に打ち込む釘そのもの。それにそのまま羽が生えたような、虫と呼べるかも怪しい姿。
それこそ妖怪の類かとも思われたが、どうにも違うらしい。妖気はまるで感じられず、ただの虫の臭いしか放っていなかった。
釘虫とでも言うべき奇妙なそれは、四本足を器用に伸ばし、差し出されたルーテシアの人差し指に止まる。
そのまま釘虫は、わしゃわしゃとその身体を動かした。
「ドクターのおもちゃが近づいてきてるって」
ルーテシアが視線をゼストに戻し、口を開く。
どうやらあの虫は彼女の下僕で、ああして意思疎通を図ることができるらしい。殺生丸はそう解釈した。
程なくして近くの茂みがガサガサと揺れる。微かに感じられる、鉄や鋼などの金属臭。
現れたのは、これまた奇妙な楕円形の物体だった。
金属でその身体を構成し、真紅の触手をくねらせて、複数体で隊列を成して飛んでいく。
そしてそれとほぼ同時に、遠方から爆発音が立て続けに鳴り響き始めた。
先ほどの鉄の塊が飛んでいったのと同じ方向――ホテル・アグスタのある方から黒煙が上がる。
あの楕円の仲間が何かと交戦しているのだろう。
恐らくあれは傀儡(くぐつ)のようなものか、と判断する。
傀儡とは、奈落のような一部の狡猾な妖怪がよく使う代物で、自身の妖力を介して操る戦闘人形だ。
であればそのドクターという者が、何らかの手段であれを操っているのだろう。それは容易に想像することができた。
支援です。
「探し物とは何だ」
ともかくも、それらのことには自己解釈で対処できたので、殺生丸は別の疑問を口にする。
「この世界には、ロストロギアと呼ばれるものが出回っていてな」
そして質問にはゼストが答えた。
どうやら彼やアギトが、普段はルーテシアの口代わりのようなものらしい。
「過去に滅んだ超高度文明から流出する、特に発達した技術や魔法の総称のことだ」
「魔法……この世界では妖術をそう呼ぶのか」
「そのヨウジュツというものが何かは知らんが……理解できるなら話は早い」
伊達に魑魅魍魎の渦巻く戦国時代を、自身もその中の1匹として生きてきた殺生丸だけあり、その手の話への理解は早かった。
であれば4年前、あの燃え盛る空港の中で目にした金髪の女も、その魔法を用いていたのだろう。
人間が妖術を使うという辺りがどうにも引っかかったが、その辺りはさすがに気にしないことにした。
それにしても、魔法とはまた抽象的な呼び方をするものだ。
「その中に、レリックという高エネルギー集束体がある。それがルーテシアには必要なのだ」
「えねるぎー、とは?」
思考を遮ったゼストの言葉に、殺生丸が問いかける。
大真面目に尋ねたつもりだったのだが、それが意外だったのか、ゼストはえらく目を丸くしていた。
「……それは知らないのだな……」
一拍の間を空けた後、ため息をつきながらようやく口を開く。
「要するに、熱や魔力などの力の総称だ。レリック自体は、とてつもなく強力な電池を連想すればいい」
「でんちは知らんが、つまり大量の妖力や法力を閉じ込めたものということか」
「ヨウリョクもホウリキも分からんが……多分そうだろう」
会話そのものは表面的にはまるで噛み合っていなかったが、一応理解はできたということでよしとする。
「それで、そのレリックとやらで、そいつは何をするつもりだ」
殺生丸もそれでよしと判断したので、質問をその先へと進めた。
それを問われたゼストは、一瞬表情を暗くする。
「……この子には、母親がいない。ある人物に殺された」
しかし、その面持ちを正し、質問に答えた。
「ある人物、とは――」
『――ごきげんよう。騎士ゼスト、ルーテシア』
聞き覚えの無い声が、その問いかけを遮った。
声のする方向を向けば、そこに1人の男の顔が浮かんでいる。
ルーテシアのそれよりも若干濃い紫の髪を肩ほどの部分まで伸ばし、その金の瞳は腹のうちを容易には探らせぬ硝子球のよう。
口元はどこか愉快そうに歪んでいた。どこか奈落にも似た、こちらの神経を逆なでする笑顔に、殺生丸は直感的に嫌悪感を抱く。
「……こいつだ」
そしてゼストは、どこかうんざりした様子で顔面を抑えて言った。
『うん? どうしたんだい?』
「いや……何でもない」
『……おや、見慣れない顔がいるね?』
ゼストの返事を得た後、白衣の男が殺生丸の存在に気付く。
「殺生丸という、恐らく次元漂流者だ。ヨウカイだ……と名乗っていた」
『ほう、妖怪!』
それを聞いた白衣が、空中に浮いたモニターの向こうでその目を丸くした。
先ほど殺生丸と会話した時にゼストが浮かべた、単純な驚きとはまた違う。どこか好奇の視線が入り交ざった表情だ。
そしてそんな表情は、何も知らない人間にはできはしないだろう。
それこそ、妖怪というものを知っていて、それに対して一定の興味を抱いた人間でなければ。
「知っているの、ドクター?」
ルーテシアが問いかけた。
そして、殺生丸はその「ドクター」という呼び方を聞き逃さなかった。
ということはこのルーテシアの母を殺したという、何ともいけ好かない雰囲気の人間が、元の世界へ自分を帰せる人間ということか。
『ああ、知っているとも』
ドクターと呼ばれた男は、にぃと笑みを浮かべて答えた。
『妖怪というのは、人間の理解を超えた超常現象を司る超自然的存在、あるいは不可思議な能力を発揮する非日常的存在と言われている』
そのままドクターは、その口で妖怪に関する説明を紡いでいく。
『分かりやすく言うならば、まさに悪魔や化け物の類さ』
その表現に、殺生丸は一瞬眉をひそめた。
確かに化け物というのは、あまりにあまりな表現だ。
そんなぞんざいな呼び方をされては、プライドの高い彼にはたまったものではあるまい。
『おっと、これは失礼』
そしてそれに気付いたドクターが、軽く形式上の謝罪をする。
しかしその声音も表情も、さして悪びれた様子ではなさそうだ。あるいはこれが地なのかもしれなかったが。
『しかし妖怪というのは、第97管理外世界にしかいない珍しい存在なんだよ。まさか実際に見れるとは思わなかったねぇ』
「第97管理外世界?」
『例の機動六課の部隊長が住んでいた世界だよ』
それを聞いて、ゼストは得心したような表情を浮かべ、一方で殺生丸は、その胸中に新たな疑念を浮かべる。
今確かに、目の前の男は、機動六課なる部隊の長が自分と同郷の存在だと言った。
ということは、この世界と元の世界とは、何かしらの繋がりがあったということなのだろうか。
しかし、自分はミッドチルダなる名前など過去に聞いたことはない。これは一体どういうことだ。
「……それで、今日は一体何のようだ」
殺生丸の疑問が晴れることは叶わず、険しい目つきでゼストがドクターに問いかけた。
それもそうだろう。自分と行動を共にしている少女の母の仇に対し、友好的な感情を抱けるはずもない。
『冷たいな。近くで状況を見ているんだろう?』
その軽薄な笑顔を改めて作り直し、蛇のようにまとわりつく声でドクターが言葉を発する。
『あのホテルにレリックはなさそうなんだが、実験材料として興味深い骨董が1つあるんだ』
どうやらこの男もまた、ルーテシアら同様、レリックと呼ばれる遺物を探し集めているらしい。
であれば、こいつらは互いの利害の一致によって、こうして接触しているということか。
殺生丸は瞬時に分析しつつも、違和感――高々損得勘定だけで怨恨の差を乗り越えられるのだろうか――を拭い去れずにいた。
『少し協力してはくれないかね? 君達なら、実に造作もないことのはずなんだが』
「断る。レリックが絡まぬ限り、互いに不可侵を守ると決めたはずだ」
ドクターの提案を、ゼストは威厳をもって突っぱねた。
『ルーテシアはどうだい? 頼まれてくれないかな?』
しかしドクターはそんな言葉は耳にも留めず、傍らのルーテシアへと話題を振る。
いけしゃあしゃあとした振る舞いが、またも殺生丸の癪に障る。こいつとは徹底的に馬が合わなさそうだ。
「いいよ」
意外にも、ルーテシアは即決した。
『優しいなぁ。……ありがとう。今度是非、お茶とお菓子でもおごらせてくれ』
取り繕ったような言葉を並べて、慇懃無礼にドクターが感謝する。
そもそも親の仇というからには、最もこの男を恨んでいるのは、他ならぬルーテシアのはずだ。
にもかかわらず、彼女はすんなりとドクターの申し出を受け入れた。これは一体どういうことなのだろうか。
『君のデバイス・アスクレピオスに、私の欲しい物のデータを送ったよ』
「うん」
殺生丸が思案するうちに、聞きなれぬ言葉を次々に交えて、話は進められていく。
『――ああ、そうだ。殺生丸君にも』
そして思い出したように、ドクターは不意に殺生丸へと声をかけた。
思いっきり不快な男に対し、無言で、その鋭い獣の瞳を向けて応じる。
どちらも金の瞳。だが、宿す気配は明らかに異なっている。
一方は嫌悪、一方は好奇。
自身を拒絶する剣呑な雰囲気にも、しかしドクターはまるで恐れる様子はない。
随分と豪気な人間のようだが、それが尚のこと殺生丸には気に食わなかった。
『君はまだ、この世界のことをよく知らないだろうからね。せっかくだから見ておいてくれたまえ。魔導師の戦いというものを』
「……フン」
不機嫌そうに鼻を鳴らす。その様子に、おどけた調子でドクターが肩を竦めた。
どうやら、その魔導師というのが、魔法を使う人間の総称のようだ。
「じゃあ……ごきげんよう、ドクター」
『あぁ、ごきげんよう。吉報を待っているよ』
そしてルーテシアの言葉を最後に、ドクターの顔が空間から消えた。
支援
支援
ルーテシアが外套に手をかける。
これからの仕事のためにそれを脱ぐと、黒を基調とした服装が姿を現した。
紫のフリルがあしらわれた、いわゆるゴシック・ロリータファッション。どこか暗い配色の中、胸の白いリボンが印象的だった。
「いいのか?」
マントを受け取ったゼストの問いかけに、ルーテシアが頷く。
「ゼストやアギトはドクターを嫌うけど……私はドクターのこと、そんなに嫌いじゃないから」
「そうか……」
ルーテシアの答えに、ゼストは複雑な表情を浮かべた。
殺生丸にとっては、まったくもってわけが分からない。
そんなに嫌いではない、とは一体どういうことだ。
赤の他人であるゼストならともかくも、直接肉親を殺されたルーテシアの感情が、
いくらなんでもそういうものというのは在り得ないだろう。
そしてそんな疑問を尻目に、ルーテシアがその両手をおもむろに広げた。
手に嵌めた黒いグローブに備え付けられた、紫色の半透明な球体が発光する。
地面に姿を現すのは、5つの円形を中心に象られた、不可思議な紋様。
恐らくこれこそが、その魔法とかいう妖術の発現なのだろう。であれば、あの手袋がデバイスとかいうものか。
「……何故貴様らは、あのような下衆に加担する」
自分を置き去りにして話を進めるルーテシアらに対し、いよいよ耐えかねた殺生丸が問いかけた。
あのドクターなる男の耳障りな声。
未だに脳にまとわりつくような彼の言葉に、この気難しそうな連中はおおよそ付き従うようには思えない。
そもそも、重ね重ね言うが、相手は母親の仇だというのに。
「……ドクターは、お母さんを起こす方法を知っているから」
赤い瞳だけを殺生丸に向け、ルーテシアが短く答えた。
「信じられんだろうが……あのスカリエッティという男は、死者を蘇らせる手段を知っている」
そこへ、ゼストが口を挟む。
「この身体も、奴によって蘇生させられたものだ」
そして、大きな手のひらを自身の胸に当て、言った。
それで殺生丸は得心する。
まず、ゼストのこと。先ほどから感じていた死臭は、かつてこの男が屍だったことが原因で生じていたらしい。
死者蘇生の術というのも信じられない話ではなかった。
現に自分の世界でも、裏陶と言う名の鬼女がその術によって、遺骨と墓土から人間を蘇らせていたのだから。
更に自身もまた、死んだばかりの人間の魂を、その身体へと留めさせる術を持っている。
そして第2に、彼らの行動のこと。
ルーテシアの母の死体はあのドクター改めスカリエッティが持っていることは、容易に想像ができた。
恐らく自分に協力すれば、母親を蘇らせるという交換条件で、その処置に必要な物を探させているのだろう。
ついでに言うならば、会話の流れからして、スカリエッティ自身も自分の手でそれを探しているはずだ。
であれば、その必要な物とは、先ほど話題に上がったレリックか。
「……宝探しをさせるため、母親の仇の駒代わりか」
皮肉な言葉で、殺生丸はそれらを総括する。
「何とでも言うがいい。……それが我らの総意だ」
そしてそれに対する不快感はおくびも出さず、ゼストは静かに、しかしはっきりと言い放った。
そして当のルーテシアは、おおよそ感情のなさそうな目で、じっと殺生丸を見つめていた。
「……フン……」
再び鼻を鳴らし、その場から飛び上がる。
「どこへ行く」
「高見の見物をさせてもらう。奴の言うとおりにするのは癪だが、じっとしているのも面倒だ」
答えながら、殺生丸は高度を上げていった。
まだ疑問がないと言えば嘘になる。ルーテシアのスカリエッティに対する思いいれの希薄さがそれだ。
しかし、あのまま問い詰めたところで今は答えてももらえないだろうし、そこまで興味のあることではない。
よって殺生丸は、ひとまずその疑問を無視し、さっさと戦場を見渡すポイントを探すことにした。
「……吾は、乞う……」
そしてその場に残ったルーテシアは、小さな口で呪詛の言葉を紡いでいった。
僅かに岩肌の露出した、小高い丘の上。
殺生丸は静かにそこに降り立つと、眼下に広がる大森林を見つめた。
随所では数人の人間が、先ほどの楕円と戦闘を繰り広げている。遠方からも、自分の足元からも、絶え間なく爆発音が響いてくる。
なるほど、魔法と公言するだけはあるようだ。
ある者は妙に短い火縄銃からオレンジ色の光を連射する。あれほどの速射性、人間の武器ではまず有り得ない。
ある者は手にした刀に灼熱の業火を纏わせたかと思うと、それでそのまま斬りかかった。人間からすれば冗談のような攻撃だ。
ある者は鉄球を空中に浮かせ、金鎚でそれを敵目掛けて叩き込む。縦横無尽に動き回るそれは、何らかの制御によるものだろう。
ある者は小さな竜を従わせ、その炎で敵を焼き尽くす。一見何でもなさそうだが、その炎には人間の力の干渉があった。
他には素手で戦う者と槍を振る者がいたが、これらも前述の人間と同等の戦果を上げている。
戦闘能力には程度の差こそあったが、それら全てが並の人間を遥かに凌駕する能力を発揮していた。
弱い連中でも、中級妖怪ぐらいならば相手ができるだろう。刀と金鎚を持った者は、自分ともそれなりにやり合えそうだ。
「妙な世界に来たものだ」
独りごちていた。
奇妙な建物が建ち並び、奇妙な服を着た人間が生きている。
その人間が、妖怪とも渡り合えるだけの奇妙な妖術を駆使し、奇妙な傀儡と戦っている。
そのくせ妖怪そのものは世界中のどこにもいない、まったくもって奇妙極まりない世界。
何もかもが、自分の世界とは明らかに勝手が違っていた。
「――何者だ」
と、足元から突然、誰何の声が響いてきた。
低い男の声。しかしゼストのものとは違う、聞きなれぬ声。
やがて声の主が、下方から浮遊して現れる。
目の前に降り、その強靭な脚で大地を踏みしめたのは、青い毛皮を持った獣だった。ぱっと見では、犬にも見える。
そして喋る犬というのは、魔導師が連れていた竜同様、妖怪に限りなく近い存在だ。
故にその感覚を研ぎ澄まし、その正体を見極めんとする。
放つエネルギーは、金髪魔導師と同じもの。すなわち、魔法の力。そして漂わせる臭いは――
「……なんだ、狼か」
若干残念そうに殺生丸が言った。
人間にはどちらも同じに見えるだろうが、犬妖怪と狼妖怪には厳正な差というものがある。
故に殺生丸は、同族を見つけたことで一瞬感心したのだが、それが狼だと知って幻滅したのだ。
ちなみに「差」というのは、完全に当人の主観によって決定する。
犬から見た狼は「野山を駆け回るだけの野蛮な連中」、狼から見た犬は「人間の家畜もどきが化けたもの」とのことだ。
「こんな戦闘地域で何をしている」
殺生丸の言葉をさして気にすることもなく、狼は落ち着いた声で詰問する。
どうやらこのままここにいると、何かと面倒なことになるらしい。
故に殺生丸は、問いかけに答えることもせず、さっさと退散することにした。
「待て!」
狼が制止の声をかけるが、生憎「待て」と言われるような人間が待つことはない。
対応の遅れた狼を嘲笑うかのように、殺生丸は美しき銀髪と、獣のたてがみのごとき毛皮をたなびかせ、彼方へと飛翔していった。
その場に取り残された狼は、しばし恨めしげに彼の背中を見つめる。
「……あの男……」
そして、狼は――守護獣ザフィーラは呟いた。
「何故、犬の臭いを纏っていたのだ……?」
投下終了。
ゴメンナサイ、今回はまだ殺生丸が暴れたりはしませんorz
次回の3話から始まる休日返上レリック争奪戦in市街地(ぇ)で、
ようやく原作からの変化が出たりしますので、どうかそれまでお待ちを。
で、そこからはシャイニングと交互に連載していこうかなー、と画策中。
ともかくも、次回は幼女を可愛く書けるといいなー♪(ぉ
>>324 乙です。
中の人ネタがなかったのが個人的には残念です。
GJです。
次回の大暴れ楽しみにしてます
327 :
一尉:2008/03/17(月) 20:18:56 ID:8wlOKqU4
うむ支援たな。
意外や意外、ザッフィーと相性悪いのかw
個人的に嫌ってるだけっぽいけど
それはともかくGJです。次回の展開が気になるー
GJ!!です。
次回は手加減してあげて殺生丸さまwいきなり刀を抜いちゃだめだぁw
GJ
スカ陣営と見せかけてルーテシア陣営か。
ザッフィ支援
あれ殺生丸の刀で死んでるりんを蘇生してたようなしかも失明まで直して
トカゲバイキングって確か人形集めてて持ち主の【少女】にキモ発言したやつか本当よりどりみどりなスレだな
思えば【天道とハルヒって似てるよね】からハルヒを【龍騎はローゼンのパクり】からローゼンを【なのはとゴッドマンどっちが強いから】リリカルを
そんな2チャンに出逢ったのも【最強のライダーは誰】【特撮の理不尽】で2チャンを知った
全くライダー散々だぜ
しかし数々の魔導士がいる中で【ヴィーダ】や【キャロ】の戦闘を見るとは
ヴィヴィオやチンクと出逢ったら大変だ
ん、なんか窓の外にガルルみたいな奴が
あれは天生…が
その後俺の記憶はない以後ロリ発言はやめとく
GJ!
ザッフィーとの今後に期待
>>331 散々なのかw
しかしここ最近、あちこちでV3を見かけるが一体何があったんだ?
334 :
魔装機神:2008/03/17(月) 21:47:21 ID:e/CBYhf5
GJでした。
ところで10時頃に投下してよろしいでしょうか?
10時からは高天氏が予約されてますよー
336 :
魔装機神:2008/03/17(月) 21:52:45 ID:e/CBYhf5
それはすみませんでした。
じゃあ空いている時間に……11時くらいなら相手宗なので、11時くらいから。
それがだめなら12時くらいに(調べたところ高天氏以降は灯火がなかったはず。
>>366 大丈夫なはずです。
そして高天さんを支援だ。
魔法少女リリカルなのは外伝・ラクロアの勇者
第三話
・月村家
突然であるが、月村家に一人の庭師が現れた。
彼が操る刈り込みハサミは瞬く間に不規則に生えた小枝を平らにし、
彼が操る手バサミは、木から余計な枝を間引きながらも、木が持つ美しさを落とす事無く自然に生かし続け、
彼が振るう貝殻虫用ブラシは瞬く間に枝についた貝殻虫を払い落とす。
その仕事ぶりは素早く、そして繊細にして大胆。彼の手に掛かった草木は生き生きと光合成を行い、
彼の手に掛かった花は、感謝を表すようにその美しさを一層引き立てる。
「♪〜〜〜〜♪〜〜〜」
今は花壇に咲き乱れるパンジーに水を与えているその人物こそ、月村家に突如現れた鋼の庭師
名を『月村家の庭師・ガンダム』という。
決して『ラクロアの騎士・ガンダム』ではない。『月村家の庭師・ガンダム』である。
確認のためにもう一度言おう。何?行稼ぎ?シツレイナ。『ラクロアの騎士・ガンダム』ではない。『月村家の庭師・ガンダム』である。
念には念を、もう一度・・・何?これ以上小賢しい真似をするともう読まない?はははははは・・・ゴメンなさいorz
兎にも角にも、彼の仕事っぷりは本物であり、月村家のメイド長でもあり、園芸に関しては少しうるさいノエルにも
「・・・・・・見事です・・・・・・・」
と、言わせるほどのもであった。
そもそも何故『騎士』から『庭師』へとジョブチェンジしたのか?
発端はナイトガンダムの「私にも何が出来る仕事はありませんか?」発言から始まった。
彼は周囲の仲間(スダ・ドアカワールドでの)が認めるほど『ド』が付く真面目人間基、真面目MSである。そのためか、
何もしないで月村家に居候する事に抵抗があったため、無茶は承知で自分にも何か出来ないかと尋ねたのである。
無論忍は「そんなこと気にする必要は無い!無い!!ナッシング!!!」と言おうとし、笑顔で口を開いた。その時、
「それでしたら、庭のお手入れの手伝いをしていただくのはどうでしょうか?」
おそらくは扉越しに聞いていたのだろう。お茶のおかわりを持って来たファリンが『これは名案!!』と
言いたげは表情で呟いた。
いきなりだが、月村家は広い。そりゃあもう広い。当然庭も広い。
庭に関しては、でかい物を測る時に要する一般的な計算方法『東京ドーム?個分』という方法を余裕で使えるほどの広さである。
その証拠に、初めて遊びに来たなのはが迷子になったり(恭也曰く、『・・・・・遭難の名違いでは?』)
つい最近訪れたナイトガンダムが笑顔で「素晴しいですね。『森』に囲まれた邸宅とは」と勘違いをするほど広い。
そのため、庭を手入れするのも一苦労所であり、ノエルとファリンの超人真っ青な働きっぷりがなければ、月村家の庭は
本当の『森』になっていたかもしれない。いや、なっていた。絶対に。
(ちなみに、忍も少しでも二人の負担を減らそうと、多数の庭師を雇った事があるのだが、二日も経たずに全員が『やってられっか』
という書置きを残して逃亡してしまうという事態になった)
そのため、ファリンとしても、『人手が増えれば助かる』という考えの基で誘ったのだ。
その誘いにナイトガンダムは快く快諾、早速ノエルから軽いレクチャーを受けた後、実戦した結果が冒頭である。
今のガンダムの装備は剣と盾、電磁スピアという通常装備ではなく、刈り込みハサミに手バサミ、貝殻虫用ブラシなどの小物が入ったベルト。
騎士の風格はどこへやら
だが、ジョブチェンジしたとはいえ、彼の働きっぷりは『ガンダム』の名に恥じぬ物であり、
その有能ぶりに共感した忍が『月村家専属庭師』の照合を与えるほどであった。
「・・・・・よし、次は枝の間引きをするか・・・・・」
そして今に至る。
だが、勘違いしないでいただきたい。決して彼は『騎士』の誇りを捨てたわけではない。
刈り込みハサミを肩に担ぎながら目標の木に向かうナイトガンダム。
時刻は午後2時過ぎ、日が程よく当たっているため、12月とはいえ、それ程寒さを感じない今日この頃。
時たま、放し飼いにされている猫達が足元を通り過ぎる中
『目標視認・・・・・攻撃開始』
ふと聞こえる電子音。同時に地面から現れた二つの砲台。
それらは間髪入れずに『死ぬ事は無いが、当たれば悶絶間違いなし』なゴム弾を
視認した目標『ナイトガンダム』に向けて発射した。(まぁ、鎧を装着しているので、痛くも痒くも無いが)
本来なら当たる事間違い無しの奇襲。だが、砲台が現れた直後、ナイトガンダムはゴム弾が発射されるより早く上空へとジャンプ。
発射されたゴム弾が地面を削り取ると同時に、ナイトガンダムは上空で刈り込みハサミを振り被り、投げ放った。
勢いをつけて投げられた刈り込みハサミは横回転をしながら真っ直ぐに砲台に向かい突き刺さり、機能を停止する。
残った砲台は、直に目標を上空へと定め、砲身を上げようとうするが、
それより早く落下してきたナイトガンダムの蹴りを喰らい、残った砲台も役目を達する事無く機能を停止した。
このように、庭師の仕事を行なうと同時に、自らの訓練も怠っていない。
そもそもこの『自動追尾攻撃装置』は忍が趣味で作った月村家の防衛装置だったのだが、以前の新聞屋を追っ払って以降、
最近は出番が全く無く、作った忍本人ですら忘れかけていた。
だが、ナイトガンダムという珍脚が現れたため、久しぶりに発動。
庭を散策していた彼に問答無用に襲い掛かったが、モンスターや騎士や魔王と戦っていたナイトガンダムの前では効果が無く、
先ほどのように、難なく全機撃破。
後に事情を説明した後、忍を叱るノエルをたしなめながらも、不要であれば自身の訓練に使いたいと申し出たのだ。
その結果、役目を終えた『自動追尾攻撃装置』は『ナイトガンダム専用自動追尾攻撃訓練装置』という
長ったらしい名前と新機能を与えられ生まれ変わり、その役目を日々存分に果たしていた。
「しかし・・・住む所ばかりか、このような訓練設備を与えてくれる忍殿達には、本当に感謝の言葉も見つからない・・・・」
改めて内心で感謝をしながらも、少しでも恩を返すため仕事を再開しようとするナイトガンダム。その時
「ただいま、ガンダムさん」
ふと、後ろから聞こえた声に自然と振り向くと、そこには学校帰りなのか、制服姿でカバンを持っているこの家の住人、『月村すずか』と
「やっほ〜!遊びに来たわよ〜!!!」
同じく制服姿でカバンを持っているすずかの友人『アリサ・バニングス』が手を振りながら近づいてきた。
以前にも紹介したが、ナイトガンダムはMS族、ここ地球にはいない種族である。
そのため、当然目立つ存在であるため外に出ることは出来ない。本来なら月村家にいれば問題ないのだが、
さすがに屋敷の中に閉じ込めとくのは可哀想と思った忍達は作戦プランその2『俺はキカイダー作戦』を決行することにした。
これはガンダムを『忍が作ったお手伝いロボ』に仕立てることにより、周囲の目を欺かせるという手段である。
幸い忍の機械好きは周囲に知られているため、それ程怪しまれない事も利点としてあげられる。
(実際、素体が残っていたとはいえ、忍はノエルやファリンを『製作』した実績を持つ『周囲には内密だが』)
えっ?「ミッドチルダの様な科学が進んだ世界じゃないんだから、そんなプラン直に駄目になるだろ?」
確かに、ノエルとファリンは見た目から美女メイドさん・美少女メイドさんとして十分通用する。
その点、ナイトガンダムは失礼だが正に未知生物である。外見がロボットに酷似しているとはいえ、確かに無理があるようだが、
そんな読者の皆様にこの言葉を送りたい。
『海鳴市じゃそんなの日常茶飯事だぜ!!!』
さて、話を戻しましょう。
時刻は午後3時過ぎ、遊びに来たアリサはナイトガンダムを誘い、今はすずかの部屋でTVゲームの真っ最中であった。
「だっけど、なのはも付き合い悪いわね〜。まぁ、しょうがないか。なのはにも用事があるんだし・・・・そ〜らいただだき!!」
「『なのは』というのは・・・・アリサ達の親友ですか?・・・・・・・あっ・・・・負けてしまった・・・・」
「『高町なのは』ちゃん。私達の大事な友達なんだ。もうアリサちゃん。ガンダムさんは初めてなんだから、もうちょっと手加減しないと」
「だめよ!甘やかしちゃ!痛い思いをすれば嫌でも強くなるわ。それとガンダム。敬語なんて使わなくていいわよ」
TV画面に映る『GAME OVER』の文字を見た後、ナイトガンダムは横で座っているアリサの横顔を見る。
「(ほんとうに・・・強い子だ・・・・・)」
心からそう思う。昨日あんな出来事があったにも関わらず、彼女はすずかから聞いた様に自然と周囲に明るさを撒いている。
決して誰にでも真似できる芸当ではあるまい。本来なら塞ぎ込んでも可笑しくは無い筈なのだから。
だか、彼女は明るい声でビシバシとすずかに指示を出したり、自分に『てれびげえむ』という遊びを教えてくれている。
その彼女の心の強さと面倒見の良さ、明るい声でハキハキと支持を出すリーダーシップさが、大人しいすずかを引き付けているのだと思う。
庭師ガンダムを支援
そんなアリサを微笑みながら見つめるすずかは、常に半歩下がり、友を見守という役割がぴったりだと思う。
出会ってからそれ程経ってはいないが『月村すずか』という子は察しがよく、気遣いが細かいため、強気なアリサを止めるのには丁度良いと思う。
それに彼女の微笑には周囲の空気を和ませる不思議な力があった。(昨日の事件でも、解決して尚皆が緊迫した表情をしていたが、彼女の
心から安心した笑みにより、周囲のピリピリした空気も自然と緩和されていった)
そんな二人が口にする『高町なのは』という子も、彼女達のような心優しい少女であると、ナイトガンダムはふと思った。
「しょうがないわね〜。もっとハンデを付けてあげましょう・・・ん?どうしたのガンダム?」
自分を見つめているナイトガンダムの視線に気が付いたアリサは彼を見据え、首をかしげながら尋ねる。
「いえ・・・・なんでもありませ・・・なんでもないよ。続きをやろうか」
微笑みながら答えたナイトガンダムはコントローラーを持つ手に力をいれ、再びTV画面を見つめる。
「そう?ならいいんだけど・・・・・そういえばさ、ナイトガンダムって忍さんが作ったロボットなんだよね?」
「はい」
「・・・・・・それ、本当?」
先ほどとは違い、怖いほど冷静な声にすずかは固まり、ナイトガンダムは沈黙する。そしてゆっくりと顔をアリサの方に向けると、
目の前にはアリサの真剣な顔、そしてゆっくりと彼女の両腕がナイトガンダムの頬に触れる。そして
むにゅ〜
伸ばすように思いっきり引っ張った。
「ほらほらほらほら〜白状しなさい!!こんなにやわらかいわけないでしょ〜!!!!」
「や・・・やめる・・んだ・・アリ・・ハ・・・」
「なら白状しなさり!!でなきゃもっと引っ張るわよ!!そらそらそら〜!!!」
・数分後
「なるほどね、じゃあナイトガンダムは『スダ・ドアカワールド』って世界からきたのね」
頬を腫らしているナイトガンダムに変わり、すずかが『スダ・ドアカワールド』の事、MS族の事、事故によりこの世界に来たこと、
ロボットという事にしておけば、ある程度自由が利くから嘘を付いた事などを話した。
すずかが語った真実に、腕を組みながら『ウンウン』と頷くアリサ。
同時に彼女も自分の所にも、流れ星が落ちてきたことを話そうとしたが、
自分の所に落ちてきたのはただの石の固まり。話しても白けるだけと思い直にやめた。
「ですがアリサ、どうして私が・・その『ろぼっと』では無いと思ったんだい?」
引っ張られた頬を撫でながら、ナイトガンダムは唯一疑問に思ったことを口にする。
「それはね・・・・私にも上手く口に出来ないんだけど・・その・・・・温かみがあったから・・・・かな・・・」
「『温かみ』ですか?」
「そ、あの抱きしめられた時にね、人が持つ温かみって言うのかな・・・そんだけよ。さ、続きを始めましょ!」
そう言い、再びコントローラーを持ち、画面を見ようとするアリサ。だが、動かす首を途中で止め、再びガンダムの方を向く。
「・・・でもさ・・・・ガンダムにも・・・・家族とかが・・・・いるんじゃないの?・・・・・寂しくない」
アリサが放った言葉に真っ先に反応したのは、ナイトガンダムではなくすずかだった。
そういえばそうだ。ナイトガンダムは自分の意思に関係なくこの世界に自分と同じ種族がいない世界に来たのだ。
当然家族とも、友達とも、別れを告げずに・・・・・本当だったら錯乱しても可笑しくは無い。
温かみのあるナイトガンダム。支援
そしてすずかはふと考えてみる。もし自分がナイトガンダムの立場だったらどうだったろうか・・・・・・・
「(・・・・・いやだ・・・・想像したくない・・・・・)」
正直考えるのも恐ろしい、自分だったら耐えられないだろう。
おそらくそんな気持ちをナイトガンダムは味わってる筈。それなのに、自分は住人が増えた事にただはしゃいで・・・・・・
「すずか、ありがとう」
ふと近くから聞こえた声に我に返るすずか。すぐ側には微笑んでいるナイトガンダムが立っていた。
「私のことを心配してくれたんだね。でも心配しないで、大丈夫だから」
「でも・・・・私・・・・ガンダムさんの・・・・気持ちも知らないで・・・・・勝手に喜んで・・・・・最低だよ・・・・」
俯きながら声を絞り出すすずかに、ナイトガンダムはそっと彼女の肩に手を置く。
「そんなに自分を責めないで。むしろ見ず知らずの私を保護してくれた貴方達には、とても感謝しているんだ。
正直MS族の私は『見世物』とされていても可笑しくは無いからね。そんな私を温かく迎えてくれた月村家の皆には本当に感謝してる」
安心させるように語り掛けるナイトガンダムに、すずかの顔からも自然と自己嫌悪の念が薄れていく。
「それに・・・・言いそびれたことだけど、私には昔の記憶がないんだ。だから、私に家族がいたのかも分からないし、
離れ離れになった時の辛さも分からない。だけど、私にも心強い仲間達がいた。彼らと別れたのは確かに寂しい。ですがすずか、貴方が気に病む事はないよ」
すずかに語りかけながら、サタンガンダムを倒すために共に旅をした仲間たちのことを思い出す。
だが、ナイトガンダムの心に残るのは寂しさのみであった。サタンガンダムを倒した今となっては、スダ・ドアカワールドにも平和が訪れる。
平和を脅かす敵がいなくなっただけでも、彼の心は安心感に満たされていた。
「それに、今はすずかやアリサ、忍殿達がいるから、寂しい事なんて無いよ。改めて御礼を言わせて欲しい。心配をしてくれて、ありがとう」
・PM 19時45分
あの後、アリサに負け続けたガンダムは10回目となる再戦を希望するも、二人とも習い事の時間が来たため断念。
二人が習い事に言った後は、屋敷内に設けられた自分の部屋で地球の文化についての勉強をしていた。
「しかし『カガク』なる機械技術がスバ抜けて進んでいるにも関わらず、魔法は全く無いとは・・・・」
借りた本の中には、魔法に関する物も含まれていたが、全てが立証の無い空想物ばかりであった。
実際『スダ・ドアカワールド』にも機械技術があったが、地球と比べたら比較するのも馬鹿らしくなる程劣っていた。
だが、魔法技術に関しては使える者、使えない者がいたが、日常で使われている程一般的であった。
「おそらく、ここの人達には魔力が無いんだろう・・・それを補う意味も込めて、自然と機械技術が発展したんだろう」
夕食の時に一回だけ部屋を出たきり、部屋に篭って本を読みふけるガンダム。
聞こえてくるのは時計が刻む針の音のみ、ただ静かに夜は更けていく
筈だった
何の前触れも無く、突然ナイトガンダムの部屋が暗い色に包まれる。
白い壁紙に囲まれた明るい部屋が、一転してどんよりとした暗い部屋へと姿を変える。
「これは・・・・封鎖結界!!?」
突然の事態に驚きづつも、彼には原因が直に分かった。
相手を発動領域内に閉じ込める結界の一種であり、『スダ・ドアカワールド』で戦ったジオンの魔道師も使っていた術。
「なぜだ・・・・・この世界には魔法は存在しない筈・・・・・いや、先ずはすすか達の安否を・・・」
お、これは事件だー
全力で支援w
ヒドラザクでの経験値稼ぎは命がけだったぜ支援
戦場へ…。支援
・海鳴市上空
「・・・・・・魔力反応は・・2つ?・・・・・・・」
封鎖結界を展開したヴィータは、狙っていた高魔力を持つ獲物だけではなく、
今まで反応がなった高い魔力を持った獲物も掛かったために、ふと疑問に思う。
「・・・まぁ、良いオマケが釣れたってことだ・・・・二人合わせて、上手くすれば30ページは稼げるな・・・・」
だが、彼女のする事には変わりは無い、高い魔力を持つ二人から魔力をいただく・・・・・はやてのために。
「先ずは大物からだな。行くよ、グラーフアイゼン」『Ja wohl』
自分の相棒の返事を聞いたヴィータは、目的を遂行するために、大物「高町なのは」の元に向かう。
一つの赤い流星が、誰もいない町の上空を翔る。
・月村家
「やはり・・・・いないか・・・・」
リビング・キッチン・忍達の部屋(丁重に数回ノックした後入室)を確認したガンダム。
だが、彼が予想した通り、月村家には彼女達どころか普段彼方此方にいる猫すらおらず、不気味に静まり返っていた。
当初、ナイトガンダムは自分が狙われているのではないかと思った。この結界は自分の知識が正しければ
指定した人物、もしくはある条件に該当する人物を発動領域内に閉じこめる効果がある筈。
皆を残して自分がこの場にいるということは、自分を目的としているのか、もしくは自分が『ある条件に該当している』という事である。
前者の場合なら、直にでもこの場を立ち去らなければならないが、
「大きな魔力反応が・・・・・移動している・・・・・」
この封鎖結界が発動してから直に感じた大きな魔力反応。十中八九この結界を張った人物で間違いは無いのだが、
その人物は自分の所には向かわず、もう一つ、別の方向から感じる大きな魔力反応の方へと向かっていた。
「私を狙ったわけではない・・・・だが私は結果内にいる。おそらくこの結界を張った魔道師は『魔力がある者』だけを目標にしたのか。
だが、このままでは・・・・・マズイな」
結界の効果のため、外にいるすずか達には危害は及ばないとはいえ、このままにしておく訳には行かない。
せめて、この結界を張った魔術師に目的などを聞く必要がある。
「ここでジッとしていも始まらない・・・・・行こう」
既に返してもらった剣と盾、電磁スピアを装備し、ナイトガンダムは市街地方面へと向かった。
・数十分後
:市街地
「うっ・・・・・あ・・・・・・あ・ああ・・・・・」
封鎖結界により隔離された市街地。
そこに立ち並ぶビルのオフィス内に高町なのははいた。
だが、彼女は既に満身創痍であった。体は彼方此方が痛み、立つ事も出来ない。
自分の愛杖もボロボロであり、今は弱々しく光りを放っているだけ。
「・・・どう・・・・して・・・・」
ゆっくりと自分に近づいてくる襲撃者の少女を霞む目で見据えながら、この数十分間で起きた出来事を思い出す。
何もかもが突然だった。急に発生した封鎖結界、突然襲ってきた鉄鎚を持った女の子。
どうにか話を聞いてもらおうと言葉を投げかけるも、無視され攻められる。
おそらく、威嚇として撃ったディバインバスターが彼女の怒りに火をつけたのだろう。
あの帽子を吹き飛ばした瞬間、彼女の瞳は怒りに満ち溢れ、自分への攻撃も激しくなった。
それからは一方的だった。多少自信があった防御も簡単に打ち砕かれ、ビルの中にあるオフィスまで吹き飛ばされた。
続けて放たれた一撃で、容赦なく壁に叩きつけられ、今に至る。
バリアジャケットのおかげでダメージは抑えられたが、それでも体の彼方此方が痛み、動く事ができない。
これほどの痛みをなのはは今まで経験した事が無かった。だからこそ、自分を痛めつけた相手が近づいてくるたびに
言い様の無い恐怖感が増す。
それでも、恐怖と痛みに耐えながら、なのはは傷ついたレイジングハートを襲撃者に向けた。
「(・・・・こんなので・・・・・終わり・・・・・・やだ・・・・ユーノ君・・・クロノ君・・・・フェイトちゃん!!!)」
「(ちっ・・・・やりすぎたな・・・・)」
内心で舌打ちをしながらも、ヴィータは目的の遂行のため、なのはに向かって歩み続ける。
あの帽子を吹き飛ばされた瞬間、自分は感情的になってしまった。
完璧に相手を『ぶち殺す』勢いで攻撃を仕掛けてしまった。
シグナムが始終自分に冷静になれと言っているが、今回ばかりは素直に認めようと思う。
「(だけど・・・・よかった・・・・ありがとう)」
ヴィータは安心すると同時に、内心でこの魔術師に感謝の言葉を送った。
自分の攻撃を完全ではないとはいえ、防いだ事は癪だが、こいつは死ななかった。
正直下手な魔道師だったら、自分は誓いを破って殺してしまっていたに違いない。
だが、それとこれとは別、こいつは見逃すには欲しい相手だ。もう一撃食らわせた後、魔力をごっそりいただく。
「・・・・・わりいな・・・・・・恨んでくれても・・・・・・・かまわねぇぜ・・・・・・」
痛みに耐えながら、大破した杖を自分に向ける魔道師に言葉を投げかけた後、ヴィータはゆっくりと
アイゼンを振り被る・・・・・・・・・・そして
ガキィン
振り下ろした瞬間、突如横から飛んできた『何か』により、アイゼンは叩き付けられて、ヴィータの手から離れた。
「なっ!!?」
アイゼンは地面を滑るようにして転がり、その近くには一本の西洋の剣が床に深々と突き刺さる。
突然の襲撃にヴィータは驚きながらも、アイゼンを吹き飛ばした『何か』が飛んできた方向を睨みつける。そこには
「弱い者虐めは・・・・・許さん!!!!」
ヴィータを正面から睨み返すナイトガンダムの姿があった。
ガンダム、戦場に立つに、支援
「(なんだ・・・・・こいつ・・・・・・)」
睨みつけながらもナイトガンダムの姿を観察するヴィータ。
同時に気付かれないようにゆっくりと後方にさがる。
「(一見小型の傀儡兵に見えなくもねぇが、この世界の技術じゃ作れる筈がない。それじゃあ『ろぼっと』っていう機械人形か?
でもあいつからは魔力を感じる、間違いなく生物だ。おそらくオマケとして引っかかったのはこいつだろうな・・・・・・)何だテメェ・・・・管理局か!?」
先ずは敵か味方か確認しなければならない、ほぼ答えは決まっているだろうがヴィータは尋ねてみる。
「管理局?なんだいそれは?むしろこちらが聞きたい、この結界を張ったのは君だね?」
「ああ、そうだよ。だったら何だって言うんだよ?それに管理局じゃねぇんだったら、なんでアタシの邪魔するんだよ?こいつの知り合いか!?」
「いや、この子の事は知らない。だが、勝負が付いて尚、この子を攻撃しようとする君のやり方は間違っている。だから止めた。
もし、またこの子を傷つける様な真似をするんだったら・・・・・」
背中に背負っていた電磁スピアを抜き取り、その切っ先をヴィータに向かって突きつけ
「ラクロアの騎士・ガンダムが相手になる」
はっきりと言い放った。
その姿に、ヴィータは一瞬キョトンとするが、直に獰猛な笑みを浮かべる。そして
「・・・・へっ、どの道おめぇも対象だったんだ。順番が逆になっちまったが・・・・・関係ねぇ!!」
後ろに下がる様にジャンプ、一気にアイゼンが転がっている所まで飛び跳ね、アイゼンを拾う。
そして、ナイトガンダム同様に切っ先を突きつけ、言い放った。
「ああ!!相手になってもらおうか!!この鉄槌の騎士・ヴィータの相手をなぁ!!」
地面を蹴り、ナイトガンダムに向かって突進、グラーフアイゼン手加減無しに叩きつける。
迫り来るその攻撃を、ナイトガンダムは相手の力を見る意味も込め、避けずに盾で防ぐ。
激突した瞬間、発生した衝撃波は、周辺に散らばっているコンクリートの破片や、今だ立ち込ている煙を一気に吹き飛ばす。
「(こいつ・・・・真正面から防ぎやがった・・・・・)」
手加減無しの渾身の一撃、ハンマーフォルムに戻ったとは言え、障壁を使わず、ただの盾で真正面から防がれた事に、
ヴィータは純粋に驚くと同時に、悔しさを露にする。だが、そんな気持ちを表したのも一瞬、
「なろぉ・・・・・・待ってやがれ・・・・その盾たたきわってやらぁあああ!!!!!!」
盾を破壊せんと、腕に更なる力を込めた。
「(くっ・・・・なんて力だ・・・・)」
グラーフアイゼンの攻撃を耐えているナイトガンダムは素直な感想を内心で呟く。
正直、油断をしないで正解だったと思う。見た目はすずかと同じ、もしくは年下にしか見えない少女。
だが、彼女かから発せられる気迫は正に騎士。幾つもの修羅場や戦場を駆け抜けている者だからこそ
発する事が出来る気迫。それを感じた時点で、ナイトガンダムは『手加減』という言葉を捨てた。
目の前にいるのは子供ではない。百戦錬磨の兵だ。
だからこそ、強敵と戦う気持ちで・・・それこそ、サタンガンダムと戦った時の気持ちで戦わないと負ける。
目の前の少女をサタンガンダムと同等の敵と新たに認識したガンダムは、盾を持つ手に力を込めて
「おぉおおおおおお!!!!」
力任せにヴィータを払った。
吹き飛ばされながらも、ヴィータは空中で態勢を整え着地する。同時にグラーフアイゼンを振り被り、
近くにあった机をボールに見立て、
「おりゃあ!!」
ゲートボールで鍛えたスイングで叩きつけた。
叩きつけられた机は形を凹ませながらも、ものすごいスピードでナイトガンダムに迫る。
だが、迫り来る鉄の固まりを目の前にしても、ナイトガンダムは特に表情を変えずに、
盾を装着している左腕で、蚊を払うかのように難なくたたき払った。
正直大した効果を期待していなかったとは言え、あまりにもあっさり払われた事に、内心で舌打ちをするヴィータ。
「(・・・・・強ええな・・・・・あいつみたいな砲撃に特化した奴だったら、懐に入り込んでブチのめせるんだけど・・・・)」
確認の意味を込め、先ほど倒したなのはの方を見る。
苦しそうに自分達の戦いを見ているなのはの姿を確認したヴィータは、反撃は勿論、逃げる事も出来ないと判断し、無視する事に決める。
「(根拠のねぇ予想はしたくはねぇが・・・・こいつは武器からしておそらくシグナムと同じ接近戦を主体としてる・・・・・
カートリッジの無駄使いは出来ねぇ・・・・だけどカートリッジ無しで戦える相手でもねぇ・・・・)」
少しの隙も見逃さないように、互いに互いを睨みつけるように見据える二人。
先ほどとは打って変わり、今聞こえるのはなのはの苦しそうな息遣い。
「(・・・・・距離を取ってシュワルベフリーゲンで牽制、隙が出来たらラケーテンでぶっ叩く。もし無理でも時間が稼げる。
シグナム達が来ればこっちの勝ち・・・・・まぁ、こいつかあの魔道師の仲間でも来たらアタシはピンチ・・・・・賭けだな、こりゃ)」
行なうべき行動を考えたヴィータは即座に行動に出る。
「おりゃあ!!」
何の前触れも無くグラーフアイゼンを振り被り、リノリウムの床に叩きつける。
オフィス全体が響くと同時に、床に積もった塵が再び舞い上がる。
一種の煙幕と化した塵と埃はナイトガンダムに襲いかかり、一瞬だけ彼の視界を奪った。
だがその一瞬の時間だけあれば、ヴィータには十分だった。
「へっ!ここじゃあ狭すぎる!!外に出な!そこで相手してやる!!!」
割れた窓ガラスの向こうから聞こえてくるヴィータの声。
ナイトガンダムも即座に後を追おうとするが、直に方向を窓から倒れているなのはに変え、駆け寄る。
「大丈夫かい・・・・・・少し待ってて」
ナイトガンダムは電磁スピアを背中に掛け、しゃがみ込む。そして有無を言わさずになのはの胸元に手を当て、唯一自分が使える回復魔法を掛ける。
暖かい光りがなのはを包み込み、あれほど体を支配していた痛みが和らいでいく。
「・・・・少しは楽になったかい?だけど申し訳ない。僧侶ガンタンクだったらもっと効果のある回復魔法が使えるのですが・・・・」
「い・・いえいえ!!そんなことありません!!体の痛みが和らぎました!!」
本当に申し訳無さそうに頭を垂れるガンダムに、なのはは必死に弁護する。
「それに・・・助けていただいて・・ありがとうございます・・・・あの・・・・・」
「ああ・・・申し遅れました。私、ラクロアの騎士・ガンダムと申します。」
「ガンダムさんですか。私、高町なのはと言います。あの・・・・・・」
なのはの表情から、自分の正体を聞きたいことは直に分かったが、今はゆっくりと話をする暇は彼には無かった。
「申し訳ありません。なのはさんが色々と私について聞きたいのは分かります。私も貴方に聞きたいことがある。
ですが、今はそんな時間はありません。ですが一つだけ聞かせてください。なぜ、貴方はあの少女に狙われたのですか?」
あの少女は自分がこの結界を張ったと言った。そして『・・・・へっ、どの道おめぇも対象だったんだ。順番が逆になっちまったが・・・・・関係ねぇ!!』
とも言っていた。その情報から、彼女は襲撃者で、高町なのはと自分は襲撃目標だった事が分かった。
すずかの家にザクレロ猫(ジークジオン)がいるかも支援
だからこそ、狙われたであろうなのはに心当たりが無いか尋ねたのだが、
なのはの口から出たのは、『自分にも分からず、突然狙われた』という答えだった。
「・・・・そうですか」
なのはから聞いた内容に嘘は無いと思う。だが、ナイトガンダムには妙なシコリが残っていた。
「(そうなると、あの少女はただの通り魔と言う事になる。だが・・・あの少女の目からは悪意が感じられない。
むしろ何かを決意した・・・・・いや、今考えるのはやめよう。この子の安全と、結界の解除を優先するべきた)」
今は戦う事に気持ちを切り替えたガンダムはなのはに、ジッとしているように言う当時に、床に刺さっている剣を抜き取り、
右腕に持つ。そして
「・・・・・・・参る!!」
ヴィータが待っているであろう、隔離されたコンクリートジャングルに向かって、ナイトガンダムは飛び出した。
こんばんわです。投下終了です。
読んでくださった皆様、支援してくださった皆様、感想を下さった皆様、ありがとうございました。
職人の皆様GJです。
次回はフェイト達の登場とVSシグナムです。
次回は何時になるのやら・・・・・orz
>>355 GJ!!原作は知りませんが、ナイトガンダム、名前の通りのナイトですね。
そして次回も期待して待ってます。
GJ!!です。
ナイトガンダムは騎士って性格してますね。
カッコいいなぁ。
ナイトガンダム、神器装着だと確か飛べたっけか…BB戦士限定の話だったか?
とりあえず飛べない場合ラストあたり苦労しそうだ
久しぶりにカキコいたします。
ようやく、タイコンデロガ内部の話の終わりが出来ましたので、UPしたいの
ですが…この調子だと、24時以降になりそうなので、明日朝早くにします・
GJでした!!
子供の頃は寝ても覚めてもSDガンダム派だったのでいつも楽しみにしています。
あと人外魔境海鳴市なSSもあんまり見ないのでちょっと嬉しかったり。
>>358 BBと言えばコミックワールドの外道なあ奴なら自らの手を汚さずしてヴォルケン殲滅しそうだw
フェイト、美味しいところを獲られる
SDガンダムはさすがに殆ど覚えていない分、凄く新鮮に感じます
ナイトガンダムかっちょえー。GJです
362 :
魔装機神:2008/03/17(月) 22:59:38 ID:e/CBYhf5
そろそろ投下慕うイのですがよろしいですか?
ベルカチームにガンドランダーか武者真悪参が加勢する、というのはどうだろうか。
支援いたします。
職人の皆様GJです
>>362 全力で支援します
それと、嘘予告できたので…起きてられたら魔装機真氏の投下終了から30分後ぐらいに投下おkですか?
366 :
魔装機神:2008/03/17(月) 23:05:33 ID:e/CBYhf5
それでは投下します
367 :
魔装機神:2008/03/17(月) 23:07:34 ID:e/CBYhf5
FLAME OF SHADOW STS 26
「ん……」
ジェイル・スカリエッティによる地上本部、そして六課の襲撃から数日後、ウルはようやく目を覚ました。
「あれ、ここどこだ?」
しかし、周りの施設を見る限りは医務室なのだろうが、今まで見たことも無い場所だった。
ここはどこだろうか……
「あ、やっと目が覚めたんですね!」
ふと右を見ると、そこにはシャマルが見て、ウルが目覚めてほっとしたのだ。
彼女を見て、自分がかなりの間、気を失っていた事がわかった。
「シャマル……ここはどこなんだ?」
ウルは未だに見たことも無い場所に?マークを浮かべる。
「ここは艦船アースラのブリッジよ」
シャマルが言うには、地上本部が襲われた際、これから運営していくには難しいほど損傷を受けていた。
それで、これからは緊急の事件にも対処しやすいように移動する拠点が必要だという事になり、
リンディたちのコネで以前世話になり、解体予定が決められていたL級艦船、
アースラを新たな拠点として使用することにしたということなのだ。
「なるほど。ここはその艦の中ってわけ?」
ウルはその艦船のなかの医務室を見渡す。
ふと、艦と聞くとウルは自分の世界を思い出す。
何かと頭脳面で役に立ってくれる伝説の魔術師。ロジャー・ベーコン。
彼が作った一風変わった飛行船を思い出す。
あの乗り心地は最悪だった。何回か死にかけたことがあるほどだ。
おそらくは、彼の運転技能のせいと言うのもあるかもしれないが……
ふと、そんな事を思っていたときだった。
「ウルがやっと目がさめたん!?」
突然はやてがすさまじい勢いで医務室にやってきた。
そしてはやては医務室のベッドで呆然と自分を見ているウルを見る。
その姿を見て、ほっとしたはやて。
「よかったあ……いきなり倒れて、なかなか目が覚めなんだからほんまに心配したんよ?」
はやては心配そうにウルを見て、ウルも悪い、と軽く謝る。
その時、はやてとシャマルはウルの表情にん?とかしげる。
何かいつもと違う。そう感じたのだ。
何かこう、妙に明るいというか……つっかえが取れたというか……
そういえば、彼は何か自分の精神世界にいたと言うが……それと関係があるのだろうか。
「それより、フェイトは無事なのか?あいつ、アスモデウスにえらい目にあったんだが」
ウルはアスモデウスによって気絶させられたフェイトの事を思い出す。
あれは意外と本気で撃たれたはずだ。
バリアジャケットを着ていたとはいえ、あの凝縮された魔力を食らったのだ。
おそらくただでは済んでないはず。
「フェイトちゃんもつい先ほど目が覚めましたよ。でも、最後の戦いまでに回復してるかといわれると、ちょっと厳しいけどね……」
「そっか……」
どうやら、あの二人とは自分が戦わなければならないようだ。
「あの、それで、なのはちゃんのことで教えてほしいんや、一体なのはちゃんはどうなったんかを……」
はやてはウルに真実を聞こうとしたときだった。
「はやて〜〜〜〜〜〜!!」
ふと、どこかの執事を呼ぶような声で、誰かがはやての所へやってきた。
「なのはがフェイトを襲ったってどういうことよ!」
そして名前を呼ばれたはやてもその人物に驚く。
何で彼女がここに……
「あ、アリサちゃん?」
そう、彼女は自分やなのは、そしてフェイトの親友であるアリサ・バニングスだった。
だが、それだけではない。
「アリサちゃん。いきなりそんな事言っても驚くだけだよ、クロノさんだって詳しい事は解ってないって言ってたんだし……」
その後ろから、ぞろぞろと医務室に入ってきた。
「すずかちゃん。それに士郎さんたちまで、一体どないしてここへ?」
他にも、はやてたちの親友、さらにはなのはの家族全員がここに来ているのだ。
何故こうなったのか……
368 :
魔装機神:2008/03/17(月) 23:09:42 ID:e/CBYhf5
そのアースラの訓練室で、烈火とエリオは簡単な模擬戦をしていた。
先ほどまでエリオはシグナムとしていたのだが、烈火がその訓練を様子を見学していて、
その烈火を見たシグナムはたまには参加したらどうだ?
ということになり烈火は今エリオと模擬戦をしている。
「ストラーダ!」
エリオはストラーダを構え、烈火に向かって自慢のスピードで駆け抜けぬける。
烈火はその突撃をひょいっとかわして反撃行動に移る。
「全く、ちまちまとすばしっこいな」
烈火はエリオのスピードに感心しながら印を描く、
「いくぜ、焔!」
烈火は焔を出し、鞭となってエリオに襲い掛かる。
勿論、烈火は本気で操っていない。
シグナムから、出来るだけエリオの成長を促すようにしてくれ、といわれたのだ。
つまり、ある程度は長引かせればいいんだな、と烈火は解釈した。
そんな意図を知ってか知らずか、エリオはその攻撃を巧みに足を使ってかわす。
その行動も紅麗の訓練の賜物だろう。
「いきます、烈火さん!」
エリオは再度ストラーダを持ち、カートリッジをロード。
おそらく先ほどよりも強力な突撃をするつもりだろう。
ならば……
「円」
烈火は竜之炎五式、円で対抗する。
烈火の前に炎の障壁が展開される。
「矛と盾か……」
シグナムはその構図を見て興味心身に見る。
果たしてどうなるか……
だが、その横にいる紅麗は結果がわかりきっているのか、その試合を見ようとはしない。
「いくよ、ストラーダ!」
先に動いたのはエリオで、エリオは真っ直ぐに円に突っ込んでいく。
どうやら円を破るつもりらしい。
烈火のエリオの意図が見え、腰に力を入れる。
そして、ストラーダとまどかがぶつかり、バチバチと火花がぶつかる。
「く……」
エリオは円の結界の硬さ驚く。
以前、何回かなのはのプロテクションとぶつかった事があるが、この感触はなのはのプロテクションを超えているかもしれない。
(けど、破ってみせる!!)
エリオは意を決してカートリッジをリロード。
最大魔力をぶつけて打ち破る!
そう思ったときだった。
「残念だったな」
その烈火の言葉と同時にエリオの後ろから火球が出現し、エリオを襲う。
もちろん、突撃にすべての力を入れているエリオにそれを防ぐ術は無く、エリオはその火球を受けて地面に屈した。
「なるほど、あの円は囮か。攻撃のメインは先ほどの火球。
あの障壁を破ることに夢中になっていたエリオはそのままボン、か」
中々考えているものだな、とシグナムは烈火を見る。
「で、円。さっきの突撃の得点は?」
烈火は模擬戦が終わり、さっきの土地ウ劇の事を円に尋ねる。
『うーん、50点だな、あれで俺様のバリアを抜こうなんざ早すぎる』
だが、と円はけらけらと笑いながら今回のまとめに入る。
『ガキにしてはなかなかいいんじゃねえか?』
そうか、と烈火はエリオを見る。
「ま、結構いい線いってるぜ。このまま頑張れよ」
烈火はそう言ってスポーツドリンクをエリオに手渡す。
エリオはそれを受け取り、はい!と頷く。
そのときだった。
どたどた、とせわしない足音が聞こえる。
「烈火にいちゃあぁーーーーン!!」
そして何かは思いっきり泣き叫びながら烈火に飛びつく。
烈火はそれ煮驚くが、何よりも飛びついてきた人物に驚く。
「こ、小金井!?」
369 :
魔装機神:2008/03/17(月) 23:11:09 ID:e/CBYhf5
彼は小金井薫。
まだ中学生だが、彼は現火影の一員だ。
だが、何故彼がここに。
「ほんとに心配したんだぞ……死んだかと思ったんだぞ……」
ぐずっと泣いている小金井にわりぃ、と謝る烈火。
その時、小金井の背後に誰かが近づく。
「久しぶりだな、小金井……」
突然の声に小金井は振り向き、その姿に驚く。
「く、紅麗……」
何故彼もここにいるのか、といったように小金井は驚く。
確か聞いた限りではここにいるのは烈火兄ちゃんだけだったはず。
何で紅麗もここにいるのかを聞こうとしたときだった。
「烈火……君…」
その声に烈火は前を見る。
その姿は忘れるはずが無い。
その少女は、自分が守るといった女性だ。
「姫……」
その人物、佐古下柳は烈火が尽くしている主だ。
柳は烈火の姿を見ると、ジンワリと目に涙を浮かべ、烈火のほうへ駆ける。
「烈火君、烈火君!」
そして烈火が近づくと、思い切り烈火に抱きつき、抱きしめる。
「ひ、姫……」
いきなりの事で、烈火は困惑しつつも、柳の行動に顔を真っ赤にする。
「よかった……生きてたんだね。本当によかった……」
そかし、そんな烈火の気持ちなどかまい無しで、柳は烈火のでの中でただ泣くだけだった。
どうやら、本当に心配をかけたらしい。
「やれやれ、場所を選ばないとは」
その時、模擬戦質に顔を出したのはクロノ・ハラオウンだった。
しかし、その表情はどこか暗く、やってしまった、といった顔だ。
「烈火、少し話があるから少し来てくれ。何で彼らがいるのか、気になるだろう?」
「うーむ、やはりなんて書いておるのかさっぱりでおじゃる……」
伽藍は与えられた部屋で、売るから奪ったエミグレ文書を見る。
日本ではないと予測していたが、この文字は自分が知らない文字だ。
「やはり、スカリエッティにたのんだほうがいいでおじゃるか……」
ふむ、と考えているときだった。
「私がどうかしたのかね?」
誰かに呼ばれるよ、そこにはちょうどスカリエッティ。そしてニコルがいた。
ちょうどいいでおじゃる、と伽藍はスカリエッティにエミグレ文書について尋ねる。
「これは、以前ルーテシアが手に入れた書物じゃないか」
スカリエッティはそれを伽藍から受け取り、そのどくろでかたどられたまがまがしい書物を見る。
だが……
「これは……エミグレ文書……」
ニコルはスカリエッティが持っているエミグレ文書を見る。
「おぬしはこれがなんなのか知ってるでおじゃるか?」
伽藍はニコルにこれを訪ねると、ニコルは頷いた。
「これはエミグレ文書。簡単に言えば、人を蘇生させる方法がのっている書物だ」
所変わってここはアースラの会議室。
ここに一同が終結している中、モニター越しでクロノの母、そしてフェイトの義母でもあるリンディ・ハラオウンは息子を見る。
『それでクロノ、なんでアリサさんや桃子さんまでいるの?私は佐古下さんだけをつれてくるようにって言っていたはずよ?』
そう、リンディはこれからのことで出来るだけ戦力を割きたくなかった。
そのなか、ある妙案が浮かんだ。
その天堂地獄は佐古下柳を必要としている。
だが、彼は転移をするということは聞いていない。
なら、彼女をこの世界へ連れて行けば天堂地獄は完全体にはならない。
この話とそれと花菱烈火が生きているという事を告げて、彼女をミッドチルダに連れてくる。
370 :
魔装機神:2008/03/17(月) 23:12:57 ID:e/CBYhf5
これがクロノに与えられた任務だった。
その事を烈火が聞くと、なんともいやそうな顔をした。
その理由がわかっているリンディはすまなさそうに烈火を見る。
自分達がしている事は、確かに卑怯といえる行為だろう。
だが、管理局も管理局で様々な事情がある。
なのはの行方不明やフォワードの一人がかけた今、こっちとしてもこれ以上メンバーを減らすわけには行かない。
それに、柳がここにいるという事は、確かに天堂地獄は完全体になることはできない。確かにこれは大きなメリットでもある。
確かに、そうすれば彼の居場所も探すのにもあせらなくなる。
「それで、烈火君が生きてたって知ったら、みんなも本当に喜んだんだよ」
柳と小金井の話によれば、やはり自分は死んだという事になっていたらしい。
その報告を聞いたときのみんなの顔は、思い出したくはない表情だった。
特に自分が油断していたせいで烈火を死なせてしまった、と風子は泣き叫んでいたらしい。
その事を聞いた柳も泣き崩れていて、突然やってきた外国人が「烈火は生きている」と聞かれるまではずっとものけの殻状態であった。
もちろん、最初はクロノの事を怪しんでいたし信じてもいなかった。
まあ、別世界から来たものですって言っても信じるものは少ない。
間違いなく精神病院をお勧めするだろう。
しかし、彼は何も何ところからモニターを出し、そのモニター越しに映る烈火を見て、彼の話が本物であるとわかった。
「それで、クロノの話を聞いて、今後の天道地獄対策にもミッドチルダに行ったほうがいいから来たってわけか」
用意周到なことで、と烈火はクロノとリンディを見る。
「ま、俺もあいつらにはひとつ礼をしなくちゃいけねえからな。な、お兄様?」
烈火はそう言って紅麗を見る。
柳と小金井は烈火が生きていた問う事にも驚いたが、烈火と紅麗がいつの間にか仲良くなっている事にも驚いた。
よく見ないと分からないが、いつもであったときのわだかまりと言うか、ギクシャクしたものが消えている。
一体この世界へ着てから何が二人をここまで買えたのだろう……
「提督。じ、実は……」
そして、何故クロノは本来ならつれてくるはずがなかったアリサたちまでもつれてきたのか……
クロノはリンディからの命令で、地球に来ていた。
クロノの妻であるエイミィもリンディからある程度話は聞いていたのですぐにだんなを出迎える準備をする。
勿論、クロノの転送先は実家である。
戻った後、クロノは少しの間家族と久しぶりに談笑したあと任務を開始した。
目的は花菱烈火の実家を調べる事。
だが、そこは育児休暇で今は休んでいるとはいえ、管理局員の妻である。
既にある程度のめぼしをつけていたのだ。
今はアルフもおらず、家事も忙しい中よくやってくれたものだ、とクロノは妻の手際のよさに感謝した。
そのこともあり、花菱烈火の実家はすぐに見つかった。
その後、家の人、そして烈火の友達に、自分はミッドチルダから来た時空管理局の魔術師で、
花菱烈火は生きていてこの世界にいる事を言った。
まずその周囲にいた人全員がそのクロノの言葉に疑いの目でみて、大丈夫ですか?といった表情を見せた。
もちろん、クロノだって伊達に長い間管理局をしていない。
これくらいのまなざしで見られるのは既になれている。
まるで教本にも書いているように、クロノは証拠を実証する。
クロノは自分が持つデバイス、デュランダルを起動させ、カードから杖上のものへと変化させる。
371 :
魔装機神:2008/03/17(月) 23:14:34 ID:e/CBYhf5
それを見て、最初は魔道具!?と言う声もあったが、これは後ほど違うという事を信じてもらえた。
とりあえず、試しに一番頑丈そうはパイナップル頭にクロノはバインドをかける。
ぬお!?と言う声と共に、行く重にもかけたバインドは男を捕らえ、バランスを崩した男は体制を崩し、見事にこけてもらった。
「これで、自分が魔術師だって事はわかってもらえましたか?」
クロノはそう言ってバインドを解き、デュランダルを待機状態に戻す。
なおその際「いきなりなりさらすんじゃあーー!」という声が聞こえたが、この際無視する事にして、クロノは次にこの世界にいる烈火の映像を見せる。
その際、いきなりモニターが出たことに、小金井が興味を持っていたが、そのモニターに烈火、そして自分が映っていて、これで証拠になっていた。
なお、紅麗葉その時の映像には出ておらず、その事をクロノは告げなかった。
理由は、紅麗と関わりを持つ人物はそんなにいないだろうと考えての事だった。
そして、クロノは今彼の戦力がほしいこと。そして佐古下柳をこちらに貸してほしいことを話した。
「それで、烈火兄ちゃんがこの世界にいる間、柳ちゃんもこの世界にいれば天道地獄は柳ちゃんに手出しできないって話さ」
黒野達のこと版い、やれやれとため息を付く烈火。
自分たちがいない間、ここまで話が進んでいたのか……
「全く、これじゃ拒否できねじゃねえか」
ぶつくさと言うが、その顔は笑っていた。
どうやら、元から手伝いたかったようである
あ、それと、と、小金井はなにやら言い忘れていたことがあるみたいだった。
「陽炎から伝言があるよー」
「かあちゃんから?」
一体何のようだろうと烈火は模索する。
「戻ってきたら勉強をしっかりやる事って」
その言葉を聞いた瞬間、烈火は一気に石化し崩れ去る。
烈火は普通の高校生。勿論勉強のテストもある。
この世界へ来てから勉強など一度もしていない。
ただでさえ赤点常連の烈火。
このままでは留年になってしまう。
「今回ばかりはミーちゃんも手伝ってくれるってさ」
まあ、そんな烈火はほうっておいて、こうして柳と小金井をミッドチルダに来る事になった。
何故小金井まで来たのかと言うと、柳の護衛である。
土門や風子、水鏡は高校生。やはり出席は気になる。
だが小金井は義務教育の中学生。
ある程度はごまかせる事ができるという判断で小金井が柳の護衛としてきたのだ。
だが、クロノの本当の地獄かここからだった。
これからが話の本題となる。
何故アリサたちがいるのか。
それは、クロノがミッドチルダへ帰るために家に帰ったときだった。
家のリビングにズンとたたずむ妻エイミィの親友でなのはの姉の高町美由希。
そしてなのはやフェイトの幼馴染にして大の親友、アリサ・バニングスと月村すずか。
そして、その後ろですまなさそうに謝っているエイミィ。
その妻の姿を見て、クロノは察した。
(しゃべったな、エイミィ……)
おそらく、この4人でお茶でもしていて、話がなのは達のことになってつい口が滑ったのだろう。
こういうなんともない会話のときについポロとさyべってしまうのはよくあることだ。
かくいう自分だってたまにしてしまう。
「既に士郎さんや桃子さん、偶然にも帰ってきてる恭也さんとお姉ちゃんにもメールを入れています」
にっこりと笑うすずかに、ずいぶんと成長したものだ、と半分呆れながらクロノはため息を付く。
その後は、クロノを囲むようにそれぞれ愛刀を持った御神の剣士が並び、逃げようものならすぐさま峯打ちで叩き伏せる準備が万全だった。
はっきりいおう、彼等ならそんじゃそこらの局員ならすぐさま倒せる事ができるだろう。
これが質量兵器の怖いところである……
「さあて、一体なのはたちがどうなったのか、教えてもらおうかしら……」
ポキ、ポキ、と指を鳴らしながらクロノに詰め寄るアリサ。
これではまるで拷問ではないか……
(本当に強くなったな、みんな……)
そして、小金井と柳は、それとただ見ているだけだった。
支援カードダス
・NO,5
鉄槌の騎士・ヴィータ
・プロフィール
『守護騎士ヴォルケンリッターの一人、不機嫌そうだ』
・LP
2100
・謎の文字
『り』
アリサ「・・・・・・・なぜかしら・・・・危機感を感じるわ?」
すずか「?」
373 :
魔装機神:2008/03/17(月) 23:16:27 ID:e/CBYhf5
『なるほど、それでほぼ無理やり口を割らされたってわけね……』
「は、はい……」
ことの詳細をみんなに話したクロノ。
予断だが、クロノは開放されたときは娑婆が上手い、とどこか刑務所を出た犯罪者のような事を口にしたと言う。
「む、無茶苦茶な事するね、皆……」
フェイトはアリサたちの行為を顔を引きつらせながら聞く。
まあ、気持ちはわかるのだが……
「当たり前よ、友達が危険な目にあってるのよ、心配しないほうがおかしいわよ」
ふん、と腕を組んで見栄を張るアリサ。
変わってないなあ……とフェイトが感心するが、ちょっとやりすぎじゃないかな?とも思う。
「フェイトママ。あの人たち誰?フェイトママとなのはママのお知り合い?」
初めてみる人たちに、ヴィヴィオは首をかしげながらフェイトに尋ねる。
フェイトは微笑みながらそうだよ、と頷く。
「前見入るのがなのはママやフェイトママの大事なお友達のアリサにすずかとそのお姉さんの忍さん。
向こうにいるのはなのはママの家族の士郎さんに桃子さん、そして恭也さんと美由希さん。
どのひとも、ママにとっては大切な人たちだよ」
フェイトはヴィヴィオにアリサたちを紹介していると、そのアリサたちもヴィヴィオを見る。
「その子、また保護児童で迎えたの?」
アリサはヴィヴィオをのこと尋ねるが、うんうんとフェイトは首を横に振る。
「私は後見任だよ。ヴィヴィオを引き取ったのはなのは」
へえ、とアリサはヴィヴィをみる。
……微妙に昔の自分に似ているかもしれない。
「それで、なのははどうなったんですか?」
そこへ、どこにもなのはがいないことに気付いた桃子はなのはの事をリンディに訪ねる。
しかし、リンディは、なんていえばいいのかしら、と言うように考えている。
「実は、みんなが集まったのはその事を聞くためでもあるんです」
はやてはそういうと、視線をフェイト、そしてウルに向ける。
なのはが一体どうなったのか、詳しく知っているのはこの二人しかいない。
はやてが二人を見ると、先に口を開いたのはウルだった。
そしてウルは告げる。あまり信じたくない事実を。
「あいつは悪魔に乗っ取られた。正直、助け出せるかどうか解らない」
>>358 昔みたOVAでは確か飛べなかったような。
スペリオルドラゴンになれば飛べるけど、別人になっちゃうし、あまりにも強すぎるだろうな。
375 :
魔装機神:2008/03/17(月) 23:18:50 ID:e/CBYhf5
これにて投下完了。
いろいろ出てきたけど、亜里沙たちはあんまり出番なさそう……いや、チャント使いますよ!
小金井と柳は末に活躍はき待ているので動かしやすい。
ふと、最近ナンバーズが出てくるにつれセインとウェンディがいるけど、あの二人は動かしやすくて使いやすい。
何気に一番出番ないのはディエチか?
376 :
魔装機神:2008/03/17(月) 23:20:20 ID:e/CBYhf5
すみません、亜里沙ではなくアリサです。
色々と感想があるけれど、そして何度も誰かが言っているけど。
まず第一に……誤字を直してください。
お願いですから。
GJです
人数が一気に凄い事になりましたね…
そしてすいません、やっぱり起きてられなさそうです。投下は明日にします
話が面白いだけに誤字が勿体無い
すみません、至急24時からUPしたいのですが、よろしいでしょうか?
ディエチやディードって無口ですからね。
狙撃手って活躍場面が限られますし。逆にクアットロやセインは使い勝手が良い。
チンクやウェンディはキャラクター的にウーノは参謀。
OKなんじゃないかな?
>>380 龍騎氏が取り消したので予約は無いはず。
支援カードダスの準備を
了解しました、カキコいたします。
ちなみに、WEB拍手での「スコルポノック」の件ですが、「Scorponpock」
は海外名称「メガザラック」は日本名称なので問題ありません。
80%完了…90%完了…。
ダウンロード状況を知らせるステータスウィンドウが、軽快なチャイム音と
共に完了を告げて閉じられた。
次いで“魔神”の全身写真と、概略を示す説明文が現れる。
銀の魔神
発見日時:旧暦元年(約5000年前)
第一発見者:聖王
それを眺めながら満足げに頷いていたフレンジーの眼前に、突然警告音と共に
接続が切られた事を示すステータスウィンドウが現れた。
周囲の空間モニターを見回して見ると、表示されている空間モニター全部に
同じウィンドウが表示されていた。
フレンジーは怒りの咆哮(「ヒドイ!」という日本語に近い発音)を上げると、
コンソールに頭突きを食らわせ、四本の腕を振り回して端末コンピュータを
メチャクチャに破壊した。
激怒したフレンジーがコンピュータを破壊していた丁度その時、中央センター
からの通報を受けてコンピュータルームの状況を確認していた、タイコンデロガ
保安部隊の魔導師二名が部屋に入ってきた。
フレンジーは、コンピュータを完全に破壊する事に注意が向いていた為に気付く
のが遅れ、ラジカセに変形する間もなく発見されてしまった。
「AA23端末区画に侵入者! 繰り返す、AA23端末区画に侵入者!!」
ベルカ式ポールスピア型デバイスを持った、巨大なかぼちゃ頭に三白眼の陸士が
空間モニターを開いて緊急連絡を入れるのと同時に、フレンジーは凶悪な唸り声
を上げて天井に跳び上がった。
「な、何だありゃ!?」
拳銃型デバイスを持った、銀に近い灰色の肌にたらこ唇な口近くに黄色いギョロ眼
がある陸士が、ミッド式魔方陣を展開させてアクセルシューターを立て続けに
連射する。
フレンジーは、自身の優れた視覚装置で魔力弾の軌道を捕捉し、機械にしか
出来ない素早さでどんどん回避しながら、胴体から薄く鋭いディスクカッター
を次々と射出する。
二人の魔導師は、手裏剣のように回転するカッターに、喉を切り裂かれて絶命
した。
彼らの通報を受けて、タイコンデロガ全体に非常警報が発令される。
中央センターに通じる総ての通路・通気ダクトに防御隔壁が下ろされ、その前に
銃・剣・杖など様々な形のデバイスを持った武装隊の魔導師たちが歩哨として
立ち、それ以外の魔導師は端末室へと急行する。
死体を小突いて生命反応の有無を確かめていたフレンジーの左肩に、アクセル
シューターが一発命中した。
フレンジーが振り向くと、通路奥に、金色のつる付き眼鏡をかけた白人の少年
魔導師が一人、片手杖型のデバイスをこちらに向けているのが見えた。
次々撃とち込まれる魔力弾をかわしながらフレンジーがディスクカッターを放つと、
カッターは魔導師の顔に命中し、眼鏡と眼球を断ち割って脳にまで達する。
三人目の犠牲者がもんどりうって倒れるのを待たずに、フレンジーは反対側へと
跳び上がった。
完全武装の武装隊員十人が部屋へ突入したとき、そこには三人の魔導師の死体と、
休憩用テーブルに電源の切れたラジカセが一台置かれているだけであった…。
ドロー!
勝手に支援カードダスを場にセットする!!
支援、ついに続きだぁw
支援カードダス
・NO,18
力の盾
・プロフィール
『三種の神器の一つ』
・LP
+1000
・謎の文字
『が』
アリサ「そういえばさ、この『謎の文字』って何?」
すずか「これはね、カードダスのナンバー順に文字を揃えると、文が完成するんだって」
アリサ「・・・・・てっきり適当に付けてただけかと思った」
支援です。
タイコンデロガが正体不明の敵にクラッキング攻撃を受けたという報せは、
直ちにゲラー長官以下管理局上層部へ伝えられた。
当時、長官は元老院にてミッドチルダのトップである元老院大法官と、事件
を受けて近く開かれる元老院臨時総会に向けた打ち合わせを、現時点での
調査状況の報告を兼ねて行っていたが、報告を受けると会談を中止して直ぐに
本局へと戻って来た。
「ご苦労、改めて報告してくれ」
オーリス秘書官と共に公用車から降りて来たゲラー長官は、歩きながら出迎えた
数名の幕僚に早速状況の説明を求める。
「クラッキング攻撃がありましたのは今から三十分ほど前、発見したのはセンター
勤務のエンジニア二名です」
中将の階級章を付けた一つ目のヒトデの姿をした将官が、空間モニターを開いて
ゲラー長官に報告を始めた。
「侵入方法はセギノール中央基地の時と同じです、今回はファイアウォールを
突破され、侵入を許してしまいました」
中将はそこで言葉を一旦切り、モニターを見て続きを確認する。
「クラッキング速度の速さから、ネットワークを守りきれないとの当直指揮官
の判断で、中央コンピュータの接続は物理的に遮断されました。
現在、技術職員が復旧に向けて調査中ですが、安全と確証が持てるまでは再起動
が出来ませんので、時間がかかりそうです」
中将はそう言い終えると、自分の背後に控えていた、魚の鱗とジャガイモの表皮
が混ざり合った様な肌の准将に頷く。
准将はそれを受けて、次の報告を始める。
「中央センターからの通報を受けて、タイコンデロガ及び本局ビルの状況を
保安部隊がチェックしましたところ、タイコンデロガのAA23端末室にて、侵入者
を発見したとの事です。
第23警備隊の陸士二名と特務技官一名が戦闘により死亡、犯人はまだ捕まって
おりません」
「AA23端末室は、中央センターの一階下にあるそうだな」
長官の問いかけに、准将は空間モニターを確認しながら答える。
「はい、そうです」
「何故、そんな所まで入り込まれたんだ!? タイコンデロガ内部は区画分け
されてて、各区画は虫一匹たりとも自由に動けないはずだろう?」
准将は、内心の不安を表情と声に出さないように、ゆっくりはっきりと言った。
「現時点では、侵入経路はまったく分かっておりません」
長官も怒鳴りそうになるのを懸命にこらえ、表面上は平静な表情と口調で言った。
「わかった。侵入経路もそうだが、今はシステムの状況を調べるのを最優先しろ。
軍事ネットワークの一刻も早い回復が、今一番の急務だ」
長官たちがNMCCに入ってくると、技官の一人が駆けつけ、敬礼しながら報告した。
「タイコンデロガ全区画、封鎖を完了いたしました!!」
“封鎖”と言っても、完全に閉め切っているわけではない。
生物である以上、呼吸をしなければならないし、水や食べ物を必要とする。
故に、然るべき身分証明書や指令書を持った人間ならば、各区画の境界を通る
たびに一々身体と貨物の検査を受ける不便を我慢さえすれば、比較的移動は容易
だった。
中枢区画と港湾区画を区切る境界上にあるゲートに臨時に設けられた検問所では、
一台の貨物輸送車が検査を受けていた。
乗員が危険物探知機と陸士の手による徹底的な身体検査を受けるのと同時に、
コンテナ内の貨物も、危険物を察知するよう訓練を受けた、体高60cm程の鳥の羽を
持った恐竜と、それを引き連れる小型の探知器を持った、身長1.8mの緑色の肌と口に
牙を生やした豚に似た陸士が隈なく調べる。
荷物の中にラジカセが一台あったが、恐竜はそれに鼻を寄せて二・三度嗅いだ後は
関心なく隣の荷物に移り、機器に反応がなかったので、陸士もラジカセを一瞥する
事なく通り過ぎた。
「こちらは問題なし! そっちは?」
、コンテナから恐竜を連れた陸士に、身体検査を終えた同じ種族の陸士が問うと、
彼も首を横に振って“問題ない”事を伝えた。
「行って大丈夫だ、お疲れ様」
陸士がそう言うと、乗員は疲れ切った表情で手を上げてそれに応え、輸送車に
乗り込んで発進させる。
身体検査の厳しさや、それを何度も受けて来た事に対する不満や愚痴を言い
ながら車を運転する乗員たちは、サイドミラーに一瞬車体下部へと下りる
機械生物の姿が映った事にまったく気付かなかった。
フレンジーは、扉の僅かな隙間から小型のマニピュレーターを出して器用に
コンテナの鍵を外し、扉を少し開けて外に出る。
走行中にコンテナの扉が開いた場合、運転席にそれを知らせる警報装置が車
には付いているが、フレンジーは抜かりなくそれを破壊していた。
外に出ると、すぐさま扉を閉めて鍵を掛け、車体下部へと這い下りる。
輸送車が車両保管所となっているエリアへと差し掛かった時、反対車線を象
の胴体に砲塔と蜘蛛の脚を六本取り付けたような、「EW-TT(歩行戦車型アイン
ヘリアル)」と呼ばれる重戦車が、重々しい響きと共にこちらへとやって来た。
フレンジーは、眼前に下りてきたEW-TTの脚の一つに飛びつき、素早く裏側に
回ると、両手両足を器用に使って、テナガザルのように一気に反対側の脚と移る。
しばらくは脚にしがみつきながら、フレンジーは向こうの駐車車両へと移る
タイミングを窺う。
脚が、レーーダードームのような丸型の多機能アンテナを備えた装甲指揮車近く
の床に下りた瞬間、フレンジーは跳びだして車の下に滑り込む。
そのまま、EW-TTが見えなくなるまで息を潜めた後、フレンジーは周囲に人の
気配がない事を確認してから、装甲車の下から這い出て後ろに回りこむ。
すると、装甲車は誰も乗っていないのに、フレンジーを招き入れるかのように
ハッチを開けた。
フレンジーが素早く車内に入るとハッチは静かに閉じられ、指揮官専用コンソール
の明りが灯り、空間モニターが表示される。
フレンジーが席に着くと、モニターに“Sound Only”と表示が出て、スピーカー
から音響カプラを思わせる独特の信号音が流れる。
フレンジーも相変わらず不審な挙動をしながら、同じような信号音を発する。
それは、生物の耳には単なる雑音にしか聞こえないように、特殊な変調が
かけられた暗号通信だった。
もし、それを聞く事ができる者が居たとすれば、装甲車とフレンジーの間で
以下の通信がやり取りされているのが分かっただろう。
「どうしたフレンジー? ヤケに不機嫌なようだが」
「どうもこうもねぇよ“サウンドウェーブ”。あのクソッタレども、ひ弱な
肉塊の癖にオレに一発豆鉄砲を喰らわせやがった」
サウンドウェーブと呼ばれた擬態ロボットは、笑うかのように一定リズムの
モールス信号を発する。
「かなり痛い目に遭ったようだな」
「笑い事じゃねぇよ。お陰でオレ様のボディに、ちっと傷が付いちまったぜ」
「ところで首尾はどうだ?」
サウンドウェーブが話題を変えると、フレンジーも不満をそれ以上言ったりせず、
早速報告を始めた。
「ウイルスの仕込みは完了した、合図があればいつでも活動できるようにして
ある」
「ここの世界に関する情報はどうだ?」
フレンジーは空間モニターを開いて、次元世界に関する情報を次々と表示させ
ながら、話を続ける。
「ほぼ、“案内人”から提供された情報通りだったよ。
現住生物どもがミッドチルダと呼ぶこの世界は、科学と魔術が奇形的に融合して
いる世界だが、軍事技術は総て有機物で構成された生物を対象としたもので、
オレ達“デストロン”の敵じゃねぇ」
「“オールスパーク”の行方はどうだ?」
「そいつに関しては期待できそうにねぇな。少なくともつい最近、水晶振動子
の発振を基準にした時間に換算すると、百五十年前ぐらいまではあった様だが、
その時に起きた大規模な戦争でまたしても行方不明だ」
フレンジーはそう言いながら“魔神”のファイルを表示させる。
「ただ、その代わりと言っちゃ何だが、これが手に入った」
“魔神”の全身写真を見た途端、サウンドウェーブは息を呑んだのがフレンジー
には分かった。
「これは…!!」
信号のやり取りが途絶え、沈黙が辺りを覆う。
「オレたちだけでやるか?」
しばらくして、フレンジーが話を始める。
「クラナガンにゃ、スィンドルやドロップキックどもが相当数潜入してるから、
成功率は高いぜ」
フレンジーはそこで言葉を切ると、コンソールに顔を近づけてヒソヒソ話でも
するように音量を絞って言う。
「それに、“スタースクリーム”の奴にこれ以上点数稼がせる必要もないだろ」
サウンドウェーブは依然沈黙を保ったままだった、フレンジーも、無理に返事を
求めたりしない。
「いや、独断で動くのはまずい」
ようやく、サウンドウェーブは口(?)を開いた。
「確かに、この世界の生物の思考レベルはさほど高くはない、防衛システムも
粗雑だ。
しかし、中には妙に勘の鋭い奴や、それなりの能力を持ってる奴が居るのも
また事実だ」
サウンドウェーブは話を続けながら、コンソール下にある収納棚の引き出しを
開ける。
「ブラックアウトはネットワークへの侵入の途中で妨害され、何匹か生物を
取り逃した、そして、お前も任務中に手傷を負っている、奴らを過小評価する
のは危険だ。
予定通り、生物どもが警戒態勢を解くのを待って、スタースクリームへ報告に
向かう」
「了解」
フレンジーは不満そうに首を振りながら、ラジカセに変形(トランスフォーム)
して収納棚へと入った。
音もなく棚は閉まり、コンソールの明かりも消える。
“後しばらくの辛抱だ、そう焦るな”
休眠に入る直前、サウンドウェーブはフレンジーへ宥めるように、回線を通じて
ダイレクトにメッセージを送った。
“ああ、分かってるよ”
それに対し、フレンジーも返事を返す。
“こちとら、数千万年前からずっと待ち続けたんだ。あと数日待つことなど、
どうってことねぇ”
支援
本日はここで以上になります。
次は久しぶりのなのはさんと、シャマル先生の登場を予定しております。
でも、いつになる事やら…。
あと、もう限界ですのでオリジナルの魔導師の元ネタ集は、明日夜にでも
ウロススレでカキコしようと思っております。
では、お休みなさいませ。
GJ!!です。
サウンドウェーブ慎重ですね。並みの魔導師以上の力を持っていて、
それでいて、驕ることなく理性的とか強敵だ。
そして、ついにメガトロン様がwww
GJ!映画は見たことないけど、描写凄い。リアルだなぁ。あなたぐらいの文才がほしい!
GJ!!
というか、スィンドルとかドロップキックとか出てくる単語にwktkせざるを得ない。
あと……え?音波さん!?
GJ
僕も先程新話が完成しました。
台詞大目になりましたけど三分後に投下おk?
行きます
良いですか?
この時間帯じゃ反応は無いのかな…
【平成ライダーサイド】七話「キンタロス怒る」Aパート
【AAMON日本支部 司令室】
仮面ライダーラルク・三輪夏美は、グレイブ・志村純一に呼ばれ、司令室に来ていた。
「何よ純一?何か用?」
「お前に指令を与える。」
志村は一枚の折られた用紙を懐から取り出し、夏美に投げ渡す。
夏美はそれをキャッチし、開いて読む。
それには、沢山の人名が書き記してあり、横には子供の写真がはってあった。
「何コレ?」
「見ての通り子供のデータだ。」
「子供ぉ?」
夏美は顔をしかめ、志村を見つめる。
「ただの子供じゃない。勉強、スポーツ…全てにおいて優秀な子供達だ。」
「へぇ…で、これをどうしろって?」
「さらって来い。」
「ええ!?」
「全員、改造人間や未来の幹部候補するんだ。文句は無いな?」
「あたし一人でやるのぉ?」
「安心しろ…トカゲバイキング!」
「グルルルルルルルル!!」
雄叫びが轟き、司令室にトカゲ型の怪人が現れた。
「GODの悪人怪人として、その名を轟かせた怪人、トカゲバイキングだ。コイツと共に作戦に当たってもらう。
トカゲバイキング、お前も分かったな?」
「お任せを!私は可愛い子供が大好きです!必ずや、作戦を成功させて見せます!グルルルルルルルルル!!」
トカゲバイキングは不適切な発言をし、志村に作戦の成功を誓うと、司令室から出て行った。
「…大丈夫なの?」
「多分な。」
【翌日】
夜も更けた時間帯…塾帰りの二人の少年と一人の少女が、おしゃべりをしながら帰路についていた。
「でさ〜…なんだよ。」
「マジかよ!」
「…あら?待って!」
少女は、道の真ん中に黒づくめの男性が立っていることに気付き、少年達を呼び止めた。
「何だよおじさん?」
「通れないだろう?」
「どいてくださいな。」
三人は黒づくめの男に道をどくよう頼むが、男はどこうとしない。
それどころか、薄気味悪い笑い方で笑い始めた。
「クククククククク…」
『!?』
「可愛い子供達だ…私は子供が大好きだ!…おじちゃんが抱っこしてあげよう…」
男は黒い服を剥ぎ取り、怪人・トカゲバイキングに変身する。
そして、子供に襲い掛かった。
「グルルウゥゥゥゥゥウ!!」
『うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!』
【三日後 デンライナー食堂車内】
その三日後、フェイトは良太郎と共に、エリオ、キャロの二人を連れ、デンライナーの見学をさせにきていた。
「皆!フェイトちゃん達を連れてきたよ!」
「モモタロス!皆!久しぶり!」
「おお!フェイトじゃねーか!」
「四年経って更に可愛くなったねぇ〜…フェイトちゃん♪」
「デートなら断るよウラタロス。エリオ、キャロ。」
『はい!』
フェイトと良太郎の背後に立っていたエリオとキャロは、フェイトの前に移動し、座ってコーヒーを飲んでいるモモタロス達に敬礼する。
「エリオ・モンディアルです!」
「キャロ・ル・メシエです!」
「おうおう、元気がいいじゃねーか!俺はモモタロスだ。宜しくな!」
「僕はウラタロス。宜しくね♪」
「俺はキンタロスや!よろしゅう頼むで!」
「僕、リュウタロス!ダンスを教えて欲しいんだったら、いつでも言ってね!」
「私の名はジーク…こやつらの主だ。」
『いえいえいえいえ。』
ジークの発言を即否定するタロス達。
「えーと…」
キャロはイマジン五体を見つめ、右手の人差し指でモモタロスを指差す。
「あん?何だ…」
「…モモちゃん。」
「ああ!?」
キャロは次にウラタロスを指差し…
「ウラちゃん。」
「へ?」
次にキンタロス…
「キンちゃん。」
「おお!?」
次はリュウタロス…
「リュウちゃん…」
「ふぇ?」
次にジーク…
「…」
「…」
「…ジーちゃん。」
「ぬあっ!?ジ…ジーちゃ…」
最後にイマジン全員に向かって…
「こんな呼び方で…良いですか?」
「お…おお…」
「別に…構わないよ…」
「構へんで…」
「い…良いよ…うん…」
「待て!ジーちゃん…ジーちゃんは止め…」
『図が高い!!』
「うぅ…ジーちゃん…」
ジークは四タロスに一喝され、テーブルの上に顔を沈めた。
「こんにちはー!」
タロス達とのやり取りを終えたのもつかの間、次はデンライナーのアルバイト乗務員・ナオミがエリオとキャロの前に歩き寄り、手製の極彩色コーヒーを二人に出す。
「エリオちゃんに、キャロちゃんですね?あたしは、デンライナー乗務員のナオミでーす♪宜しくね!」
『は…はい…』
二人はコーヒーを受け取り、フェイトと共に空いている席に座った。
良太郎はフェイトの向かい側に座る。
「エリオ君…すごいコーヒーだね…」
「う…うん…飲めるのかな?」
「おやおや…可愛いお客さんですねぇ…」
独特の台詞回しが効いた声が食堂車内に響き、入り口のドアが開いて、デンライナーのオーナーとコハナが車内に姿を現した。
「ハナさん…」
「久しぶりね、フェイト。それと…」
コハナはエリオとキャロの方を向き、二人に微笑む。
「エリオ、キャロ、私はハナ。宜しくね!」
『よろしくお願いします!』
二人はフェイトからコハナはこう見えてフェイトより年上と聞いていた為、敬語でコハナに対応した。
「しかし…これが…フェイト君の子供達ですか…」
『ええええええええええええ!?』
オーナーの何気ない爆弾発言に、四タロス+ジーク、コハナ、ナオミの七人は驚愕し、目を大きく開く。
「あ…あの…皆…エリオもキャロも、フェイトちゃんの養子みたいなもんだから、産んだ子供って訳じゃないよ…」
「な…なんでぇ…ビックリさせやがって…」
「驚きました〜」
良太郎のフォローにより、その場は丸く収まる。
「もうオーナー…止めて下さいよ…」
フェイトは少し顔を赤らめながらオーナーを非難する。
「ハッハッハ…失礼…おっと、こんな話をしている場合ではありませんでしたねぇ…」
オーナーは背後に手を回し、新聞記事を取り出す。
「お…おっさん…どっから出したんだよ…」
「モぉモタロス君…細かいことは気にしてはいけません…それより良太郎君、フェイト君、その記事、読んでみてはいかがですか?」
『え?』
二人は新聞を受け取り、二人で読み始める。
記事の一面には、「二日間で十五人の子供が失踪 新手の誘拐か?」と書かれていた。
「子供が…」
「三日で十五人も…」
「この子供達は、皆十二歳以下の子供で、スポーツや勉強の成績が素晴らしい子供達です…
AAMONの臭いが…ただよって来ませんかぁ?」
オーナーの不吉な台詞に不安を覚え、表情を曇らせる。
「酷い…子供を何人も…」
「許せない…!」
「でも…」
エリオは良太郎とフェイトに横から話しかける。
「どうやってあぶり出すんですか?ターゲットが子供じゃ、フェイトさんも良太郎さんも…」
「私が…変装して囮になります。」
『!?』
突然のキャロの発言に、車内の全員が驚愕し、一斉にキャロを見る。
「きゃ…キャロ!何言ってるの!?相手はAAMONかも知れないんだよ!」
「キャロ、落ち着いて!そんな危険なこと…」
「僕も反対だよ!君には危険すぎるよ!」
「エリオ君、フェイトさん、良太郎さん、ありがとう…でも、私だってライトニングの一員です!皆の役に立ちたいんです!」
『キャロ…』
「気に入ったで!」
キンタロスはテーブルをガンと叩き、椅子から立ち上がる。
「キンタロス?どうしたの?」
「そこのお嬢ちゃんの度胸、気に入った!この歳で囮になるなんて、そうそう言えるもんじゃあらへん。
俺がボディーガードになって、きっちり守ったるわ!」
「キンちゃん…」
「キャロ!宜しく頼むで!」
「うん!」
【翌日】
翌日の夜、キャロはカバンを提げ(中にはフリード入り)、人気の無い街を歩いていた。
後ろからはブロック塀や電柱に隠れながら、良太郎にキンタロスが憑いた状態であるK良太郎が付いて来る。
フェイトやエリオもボディーガードをすると言っていたが、あまり大勢では目立ってしまうので、結局K良太郎だけでキャロを護衛することになった。
「(安心せいキャロ…お前はワイが守ったる!)」
K良太郎は歩いているキャロを見つめ、一人気合を入れる。
そんな時だった…
「お嬢さん…」
「は!?」
キャロの前に、黒づくめの男が現れた。
「(キャロ!)」
「あ…あの…何ですか?」
「貴方の名前や写真はありませんが…貴方は可愛い…」
男は服装をはぎ捨て、トカゲバイキングに変身した。
「おじちゃんが抱っこしてあげましょう!」
「か…怪人!?」
「そこまでや!」
眠る訳にはいかなくなった支援
ブロック塀の影から、K良太郎が飛び出し、キャロの前に立つ。
「貴様!電王か!?」
「キンちゃん!」
「化物!ワイが相手や!」
K良太郎はデンオウベルトを腰に巻きつけ、黄色いボタンを押し、ライダーパスを取り出す。
「へんし…」
「させん!グルオォォォォォォォオ!!」
トカゲバイキングは口から緑色の粉を吐き、K良太郎に吹きかける。
すると、K良太郎の体は石のように硬直してしまった。
「な!?」
「キンちゃん!」
「なんやコレ…動けへん!」
「はっはっは…特殊な硬化剤だ。貴様は半日は動けん。さて…今の内に…」
「キュクル〜!!」
カバンからフリードが飛び出し、トカゲバイキングに襲い掛かる。
だが…
「ヌン!」
「キュウ!」
裏拳で簡単に叩き落されてしまい、フリードは道路の上に倒れて気絶してしまう。
「フリード!」
「ははは!今度こそ頂きだ!」
「きゃあ!」
トカゲバイキングはキャロを担ぎ上げ、猛スピードで逃げていく。
「ハハハハハハハハ!!」
「キンちゃーーーーん!!」
「キャロ!!オォォォォォォォォォォオ!!」
K良太郎は気合で硬化剤の効力を振り切り、トカゲバイキングを追いかけていく。
「キンちゃーーーーーーーん!!」
「キャロオォォォォォォォォォォォォォォォオ!!」
K良太郎は加速し、少しずつトカゲバイキングに近づいていく。
やがて、追いつける距離まで近づき、手を伸ばした瞬間…
「残念。」
「な!?」
トカゲバイキングは、キャロと共に瞬間移動で姿を消した。
「あ…あ…」
K良太郎は地面に膝を付き、昼間、そして先程言った台詞を思い出す。
『俺がボディーガードになって、きっちり守ったるわ!』
『安心せいキャロ…お前はワイが守ったる!』
「何が…キッチリ守るや…何が…ワイが守ったるや…!」
K良太郎は地面に拳を何度も何度も叩きつけ、瞳から大粒の涙を流す。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉお!!」
夜の闇に…K良太郎の悲しい叫びが響いた…
投下終了
少し急ぎすぎたか…?
Bパート頑張ります
そろそろシャマル先生と兄弟のどっちかくっつけないとなぁ…
出ましたね、タロウズの中の最侠の漢・キンタロス!
キンタロスにとって、こんなに辛い経験は原作電王にはありませんでしたね。
頑張れキンタロス!今、キャロを助けられるのはお前だけだ!
漢なら最後まで守り抜いて見せろ!
いかん…キンタロスの一人称が時々「ワイ」になってる…
「ワイ」の部分を「俺」に訂正してくださいっす…
これはきめえええええええええええええええええ
つコートを脱ぎとって怪人に変身?
最初から怪人ではなかったのか?
あれ、今回は巧出ないの
しかし,一発で魔導士を見つけるとはまさに変態の巧妙?
別にシャマルは地獄兄弟のカップリングだし(俺は矢車派)このままで良いだろう。
しかし,なのはってあらゆるカップリングに対応してるな!
トラはではクロノ
一期ではユーノ
三期では…百合だし
庭師ガンダムと聞くバトルファイトを見たくなる
とりあえず、バーニングス支援
ヤッパリ管理局って根元を腐らせば落とせる気がする
413 :
改変ネタ:2008/03/18(火) 10:27:11 ID:for6e3Pi
ゆりかごでミッドを震撼させた私達ナンバーズは、機動六課に敗北し当局に逮捕された。
拘置所を脱出し、地下に潜った。
しかし、地下でくすぶっているような私達じゃあない。
筋さえ通れば金次第でなんでもやってのける命知らず、
不可能を可能にしDr.スカリエッティを救出する、私達、数の子姉妹Aチーム!!
私は長女、bPのウーノ。ISフローレスセクレタリー。情報処理とステルス技能の名人。私のような天才策略家でなければ、クセ者揃いの妹達のリーダーは務まりません。
私はbQドゥーエ。ISライアーズマスク。自慢のルックスに、男はみんなイチコロよ。ハッタリかまして、ロストロギアから聖遺物まで、何でもそろえてみせましょう。
私はbSのクアットロ。ISシルバーカーテン。情報収集は美貌と頭の良さでお手の物ですわ。
どうも、お待たせいたしました。私こそbVセッテ。ISスローターアームズ。戦闘能力は天下一品! 無口?空気?それが何か?
bRトーレ。ISライドインパルス。空戦最速だ。執務官でも斬り倒してみせらぁ。でも愛称タカさんだけはかんべんな。
私達は、道理の通らぬ世の中に敢えて挑戦する、
頼りになる神出鬼没の
数の子姉妹Aチーム!!
助けを借りたい時は、いつでもどうぞ。
元ネタ…言わずと知れた「特攻野郎Aチーム」
>>395 GJ!
メガトロン様ー!
ついにディセプティコンが本格的活動段階に入った!しかも油断はしない!
数千万年とかトランスフォーマーはマジで時間の尺度が桁違いだぜ!
>>408 そろそろクウガネタが見たいとか言ってみる
早すぎる投下予約ですが。9時半頃にスパロボEの第4話の投下を予約したいですけど、いいですか?
417 :
LMS:2008/03/18(火) 15:32:04 ID:bGf55J0x
この時間ならさすがに誰かいる、だろう
後30分ぐらいしたらLMS12話投下しようと思います
投下、支援します。そして避難所の方を見ましたが、そうですか。
同じような事を考える人はいるということですね。
本当はウロスの方で言うべきかもしれませんが、あえてこっちで言います。
後、何故か修正掲示板にうまく入れず、入れたとしても書き込みが出来ないのは何でなんでしょうか?
419 :
LMS:2008/03/18(火) 15:59:40 ID:bGf55J0x
では時間なので投下します
1
Lyrical Magical Stylish
Mission 12 Fated Twins
「バージルゥ!!」
「ダンテェェェ!!」
一瞬の停滞の後、二人の刃が死闘の幕開けを告げる鐘の役割を果たした。
「……凄い」
なのはの呟きは金属音に混ざり、風に流れ消えていく。なのはは眼前の常軌を逸した光景に瞬きも忘れて見入っていた。家が剣術をやっていることから、なのはも多少は剣の知識があった。
だからバージルの使う技は居合いということも理解できた。それでもなお、その悪魔の技には感嘆の声しか出てこない。
柄に手を掛けた瞬間には振るわれていて、次の瞬間には鞘に収まりもう一撃放たれる、その繰り返し。本来、一撃必殺で二撃目がない居合いのはずなのに、バージルは一撃必殺の剣を連続して放っているのだ。
しかも、一撃一撃を視認できない高速で。
そして、それを受けるダンテもまた信じられなかった。次々と放たれる不可視の剣をどういうわけか知覚し、リベリオンで弾き、そしてあまつさえ反撃すら行っている。
完全に人間を超えた、もはや幻想的とも言える光景だった。
「イヤァァッ!!」
「フンッ!!」
そして、戦闘を始めてからまだ間もないというのに既に何度目になるか分からない弾き合いの後、計ったかのように離れて距離を取る。
互いが互いの剣を完全に熟知しているがゆえに、両者は余人の全く踏み込めない領域で拮抗していた。
「ったく、相変わらず恐ろしい剣だな」
衝撃に痺れる手を振りながらダンテがぼやく。だが、バージルの本気はこんなものではないし、ダンテもまたそうだった。こんなのはお遊び、予定調和の取れたただの挨拶代わりだ。
「―――Let's begin the main event.(メインイベントを始めようぜ)」
「―――Rest in peace.(楽にしてやる)」
さあ、本番はここからだ。間合いをもう一歩詰めよう。
「おおおっ!!」
「ハアッ!!」
さらに速度を増してぶつかり合う剣。だが、先ほどと違うのは―――
「! 血が……」
剣と剣がぶつかり合う金属音、それによって生じる激しい火花。それ以外に、計ったかのように両者から同時に舞う血飛沫。今まで互いに完璧な防御を見せていたのに、何故突然血が混じったのか。
その理由は簡単、両者とも確実に致命傷となりえるだろう攻撃だけを防ぎ、多少の傷は無視しているからだ。
ダメージを抑えることよりも、自分が貰うダメージ以上のダメージを相手に与える、二人が選んだのは文字通り骨身を削り続ける戦法だった。
どのぐらい血を流しながら斬り合っただろうか、冷静に時計を見ればきっと驚くほど短い時間だが、ダンテにとってはもの凄く長く感じた一瞬である。
互いに無数の傷を負い、傷を与え、それでもなお剣戟は一向に衰えぬ、それどころかより激しさを増している。
「―――Wasting time!!(時間の無駄だ!!)」
悪魔の血を引くダンテとバージルにとって、多少の掠り傷など何の意味も持たない。周囲に満ちる瘴気と魔力によって高められる悪魔としての性質が、そんな掠り傷などほんの数合のうちに治してしまうからだ。
千日手、このままでは永劫勝負がつかなかっただろう打ち合いを動かしたのはバージル。埒があかないと踏み、遂に引き金(トリガー)を引いたのだ。
「ガアアアッ!!」
「どわっ!?」
420 :
LMS:2008/03/18(火) 16:00:30 ID:bGf55J0x
2
バージルを中心に爆発的な魔力が渦巻き、打ち合っていたダンテが吹き飛ばされる。
「!! ダンテさん!」
「ちぃぃ!」
吹っ飛んだダンテを追って迸る剣閃。魔人バージルの放つ空間斬りが、空中でロクに身動きの取れないダンテに襲い掛かる。死の一撃がダンテに突き刺さろうとした瞬間、剣戟の場にそぐわぬ銃声が連続で響く。
「危ねぇな、オイ!」
ショットガンを連続でぶっ放し、強引に吹っ飛びの軌道を変えて辛くも避ける。
「……滅茶苦茶だ」
端で見ていたなのはがダンテのあまりに滅茶苦茶な回避に呆れ果てる中、着地し、すぐさま転がって二撃目を避け、さらに大きく跳ねることによって三撃目もギリギリ避けきったダンテがバージルに向かって疾走する。
「やってくれるぜ!!」
遠距離では勝ち目がない。銃撃が全て剣で斬り飛ばされる上、神業じみた空間斬りを防ぐ手段がないのだ。ならばどうする?
―――答えは簡単、近付いてぶっ飛ばす。
「シャアアッ!!」
ダンテが駆け抜ける。それを阻止せんとバージルの居合いが放たれるが、驚異的な加速で飛び込むダンテはそのスピードを維持したまま物理法則を全く無視したかのような体捌きで辛うじて致命傷を免れる。
傷を負っていることに変わりはなかったが、ダンテにとってはそれで十分。
「オラァッ!!」
「フンッ!」
加速をつけたリベリオンが魔人と化したバージルを掠める。居合いを放った直後、刹那の死に体状態に打ち込んだ神速の一撃ですら致命傷にならないことにダンテは内心舌打ちし、首を狙って飛んできた一撃を皮一枚で避ける。
そこから先はついさっきと全く同じ、互いに僅かな傷を負わせつつ、拮抗した戦闘が続く―――少なくとも、横で見ていたなのははそう考えていた。
だが、トリガーを引いたバージルと引いていないダンテ。この差が、徐々にだが確実に天秤をバージルへと傾けていく。
ダンテの攻撃が見る見る少なくなり、ただひたすらバージルの剣を受けるだけになってきていた。そんなダンテの防御を突き抜けた攻撃が、ダンテの体をあっという間に血で染め上げていく。
「まだ、まだぁ!!」
ダンテが咆哮を上げ、劣勢を覆すべく魔剣リベリオンが更に速度を上げる。人外の速度で振るわれる刃。だが、バージルはダンテの剣を全て無傷で弾き返し、ダンテはバージルが攻撃するたびに傷を負っていく。
それでも何とか致命傷を避け続けていたダンテだが、ついに勝利の女神はその身全てを力へと捧げた男の方へ微笑んでしまった。
「ぐあっ……!」
「鈍ったな、ダンテ」
逆転に一縷の望みを賭けた特攻に近い形で振るわれたダンテ決死の一撃をバージルは首の皮一枚犠牲に避け、そしてバージルの一撃がダンテの腹を深く切り裂き、返す刃が肩から脇に抜けるまで振り抜かれる。
血飛沫が舞い、それでも諦めないダンテは止めとばかりに放たれた垂直の唐竹割を辛くも防ぐが、その硬直に蹴りを食らって吹き飛ばされる。
「ぐ……そういうアンタこそ、前より鋭くなってがあああっ!?」
片膝をつき、剣を支えに倒れることだけは免れていたダンテだが、強がりを言おうとしてバージルが放った幻影剣に貫かれ絶叫する。
そして、続けざまに放たれた幻影剣を避けることすら出来ず、ダンテはついにその場に崩れ落ちた。
バージルは魔人状態を解除し、全身から夥しい出血をしながらも意識を失わずバージルを睨みつけるダンテに、閻魔刀の切っ先を突きつけながら問う。
「……何故、トリガーを引かない」
「ぐ……引く必要が、ないからな」
「……愚かだな、ダンテ。本当に、愚かだ」
「へっ……まだ、勝負は、ついちゃいない、ぜっ!」
421 :
LMS:2008/03/18(火) 16:01:09 ID:bGf55J0x
3
諦めないダンテが苦し紛れに銃を乱射するが、そんなものが通じるバージルでもない。
全て切り払うと、弾が切れて撃鉄の音だけを虚しく響かせる銃をそれでも引くダンテに向かってゆっくりと歩き出す。
―――今助けに行かないと、ダンテは死ぬ。
その思いが横で見ていたなのはの頭を占める。だが、そんな思いに反して足は鉛にでもなったかのようにピクリとも動いてくれない。
(助けに行って……助けられるの? 私が、あの人を、止められるの?)
かつて、この世で最強の悪魔、魔帝を倒したダンテ。そのダンテを倒すダンテの兄バージルを、ダンテに助けられてばかりだった自分がどうこうできるのか。
浮かぶのは、一瞬の後に二つに分かれる自分の姿。決して身体能力に優れているわけではない自分に、あんな剣が飛び交う嵐の中に飛び込める資格なんかあるわけがない。
でも、それでも。
(……助けられる、助けられない、じゃない。助けるんだ、私が、ダンテさんを!!)
今まで何度も助けられた。その借りを、今返さなくていつ返すのか。
(大丈夫。私だって、強くなった。それに、私たちは絶対に負けられないんだ!)
それ以上に、譲れないものがある。帰りを待つ家族のためにも、外で戦う親友のためにも。今、ここで退くわけにはいかない。
目を閉じ、深呼吸。それで、ぐちゃぐちゃだった頭は嘘のように軽くなり、固まってた体は信じられないほど軽くなった。
―――さあ、行こう。
心を砕こうとする死への恐怖を鋼の意志で押さえつけ、震える体をそれを上回る信念で叱咤し、なのははゆっくりと歩き出した。
「……む」
バージルの足が止まる。それもそのはず、傍観を約束していたはずのなのはが、ダンテを守るように立ち塞がったからだ。その目に、強い決意の光を湛えて。
「何の真似だ、小娘」
「見て分かりませんか?」
「おいなのは、俺は手を出すなって言っ!!」
ダンテの台詞は最後まで続かない。なのはが魔力を込めたレイジングハートで思いっきりダンテの頭をぶん殴って吹き飛ばしたからだ。
「ぐっ……」
「少し、頭冷やそうか」
吹っ飛ばされた衝撃が傷に響いたのか、ダンテは低くうめき声を上げてその場に蹲る。
なのははレイジングハートを肩に担ぎ、いつも組み手で自分を吹っ飛ばした挙句見下ろしてくるダンテと同じポーズで、ぶっ飛ばしたことを悪びれる様子もなくダンテに言う。
「Shut up. こんなのも避けられない怪我人は黙って見てなさい」
「なのは……!」
「兄弟喧嘩だし、平和に終わるなら傍観していようと思いましたけどね。ダンテさんが殺されるっていうなら話は別」
「だから……人の話を」
「聞くのはそっちですよダンテさん。いいですか、ダンテさんがここでやられたらどうなると思います?」
「……それは」
「海鳴は地獄と化す。それだけじゃない、今門の外で戦ってるクロノ君やフェイトちゃんもどうなるか分からない。私は、そんなの認めない」
「…………」
ダンテは言葉に詰まる。内容もさることながら、なのはの眼光に何も言えなくなってしまっていた。なのははダンテから目を外すと、バージルに向き直りながら言葉を続ける。
支援
423 :
LMS:2008/03/18(火) 16:02:05 ID:bGf55J0x
4
「それだけじゃない。今ダンテさんが殺されたら、どの道私もバージルさんに殺される。相手にされなかったとしても、結局私一人じゃ外まで帰ることすら出来ない」
「だからって……」
「甘く見ないでください。これでも散々ダンテさんにしごかれたんですから、ダンテさんが傷を治す時間ぐらい稼いで見せます」
「ちっ……もう知らねぇぞ」
「Yeah」
バージルはダンテの判断に驚愕するが、ダンテは大の字になってぶっ倒れてしまった。どうやら、本気でなのはにバージルの相手をさせるつもりのようだ。
「というわけです。水を差して悪いとは思いますが、貴方の相手は私です」
「……俺も舐められたものだ。今退くならまだ見逃してやるが?」
「You scared?(ビビッてんのか?) 小娘相手に恫喝なんて」
視線だけで気の弱い人なら殺せそうな、そんなバージルの眼光を受けて、それでもなのはは怯まず、不敵に笑い飛ばしてバージルにレイジングハートを突きつけた。
「……いいだろう。俺に楯突いたことを後悔して、死ね」
バージルが刃を鞘に収め、居合いの構えを見せる。バージルの居合いの速度は既に人の認識を超えた速度。まともに食らえば、食らったことすら分からず絶命するだろう。
なのはは突きつけていたレイジングハートを下ろし、静かに魔力を込め、魔法の用意をする。
「…………」
「…………」
なのははただボケッと二人の戦いを見ていたわけではない。自分との組み手で見せたダンテの動き、そのレベル差から推測する兄バージルの強さ。
そして、全力のダンテと打ち合うその技量。余りのレベルに震えそうになりながらも、”もし私が戦うことになったら?”というイメージをひたすら頭の中で行っていた。
今までの結果ではただの一度もバージルに傷を負わせることすら出来なかったが、イメージ上で散々殺されることにより、たった一つではあるが勝ちへの道を見出していた。
最早言葉は要らない。一瞬の後放たれる刃は避ける暇もなくなのはを切り捨てる。バージルもなのはもそれは分かっていた。その運命になのははどう抗うのか。
「……Die」
「……!!」
バージルの呟きが風に流れる。その声を聞いた瞬間、既にバージルはなのはの後ろで刃を鞘に収めて―――二つに分かれ、血飛沫を撒き散らしながら倒れようとするなのはが溶けるようにして消えていく。
「After image, successful」
「!? 幻覚か!!」
バージルが気付いた時にはもう遅い。すでに上空でなのはが発射の体勢を取っている。
「ディバインバスター!!」
「ちぃ!」
やはりバージルは、なのはを小娘だと侮っていた。その驕りが生んだ僅かな時間、その一瞬を狙っていたなのはの魔法を避けることは常人には不可能だ。
なのはの放つ極大の一撃がバージルを襲う。並みの悪魔ならそのエネルギーに耐え切れず、一瞬にして溶解するレベル。
だが、最強の悪魔狩人であるダンテと拮抗するその兄バージルは、一瞬の後の死の運命に抗う術を持っている。
「はあっ!」
トリックアップ。一瞬で上空に移動する技巧であり、バージルの神速の剣技を不動のものにしている体術である。ディバインバスターが直撃する寸前に飛び上がり、無傷で砲撃をかわす。
逆にディバインバスターを発射しているなのはには上に現れたバージルの攻撃をかわすことは出来ない。振るわれた一撃は三つに分裂し、小さな体を只の部品へと切り裂いて―――
「これも幻覚だと!?」
切り裂かれたなのはが消えていく。だが、先ほどとは違い斬った瞬間手ごたえを感じなかったバージルは、すぐさまなのはの居場所を探り、そして驚愕する。
ドッペルゲンガーとの入れ替わりがギリギリ間に合わなかったのか、バージルの描いた軌跡そのままに背中がバリアジャケットごと裂かれ、血を流している。
424 :
LMS:2008/03/18(火) 16:02:43 ID:bGf55J0x
5
それでも、今ここで攻撃の手を緩めるわけにはいかないとばかりに、自身の周りに無数の光弾を浮かび上がらせている。
「Rock it!!」
「ちぃ!」
なのはの掛け声と共に飛来した光弾がバージルの周囲を高速で旋回する。なのはが展開したディバインシューター、その数なんと二十。
バージルも剣でそのうち十を叩き斬るが、残りの全てが同時にバージルへと襲い掛かり―――
「Blast!」
なのはの起動で大爆発を起こす。咄嗟に防御体勢を取ったものの、バージルとて全方位を完全に防御できるわけではない。
強烈な爆発はバージルの体を吹き飛ばし、それでも倒れぬバージルが受身を取った瞬間、輝く白光が目を焼く。
「行くよ!!」
「く……」
「ディバイン・バスター」
「「Ceruberus!!!」」
ダメージは意外と大きく、回避行動を取ろうとしたが言うことを聞かない。さらに、見ると体のあちこちが凍りついていた。なのはが得たケルベロスの力による凍結の効果である。
凍った手足に気を取られた瞬間、放たれたなのはの極大魔法が空間そのものを破壊しつくす勢いでバージルに襲い掛かった。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」
二度にわたるドッペルゲンガーの展開と入れ替わりに加え、一瞬ではあるがディバインバスターとドッペルゲンガーの同時行使、さらにディバインシューターとディバインバスター・ケルベロスの同時攻撃だ。
さすがに精根使い果たしたなのはが、地に下りて荒い息を上げる。
「これが、私の全力……」
今ので倒せていなかったのなら、なのはに勝ち目はない。多少強引ではあったが、不意をつく形でこれ以上ないくらいに決まった必殺の連携なのだ。
バージルが耐え切っていたのならば、次はもう無理。バージルに油断はない。あの剣を凌ぐなんて不可能だ。
「……やってくれたな」
「……やっぱり、こうなるよね」
だが、どこかこの展開を知っていた。なのはは大きく深呼吸して息を落ち着かせると、フラフラながらしっかりと立ち上がる。
立ち込める霧氷の中から現れたバージルは、一瞬バージル本人かどうかを見間違うほど禍々しいオーラを発している。それもそのはず、耐えられないと踏んだバージルは躊躇いなくデビルトリガーを引いていた。
その結果、彼自身の体に流れる悪魔の血が、ダメージを最小限にまで押さえ込んだのだ。
また、あまりに無茶な展開をしたために最後のディバインバスター・ケルベロスの威力が、全力時の半分程度だったことも理由として挙げられよう。
なのはのイメージではギリギリ最大出力が出せると踏んでいたが、どうやら幸運の女神はなのはに微笑まなかったようだ。
「小娘と呼んだことは詫びよう……貴様は十分な戦士だ」
デビルトリガーを解除し、バージルはなのはに賞賛を送る。たかが小娘と侮っていた存在にここまでダメージを負わされるのは、バージルにとっても完全に予想外だった。
「それは、どうも……それから、小娘じゃなくて、高町なのはです」
「高町、なのは……そうか」
だが、なのはにとってそんなことはどうでもいいのだ。次の瞬間に放たれるかもしれない死の一撃から逃れるべく、なのはは適当に返事をしながらも必死で次の策を考える。
「だが……少し足りなかったな」
「まだ、終わったわけじゃないよ」
焼け付く勢いで頭を回転させても、出てくるのは”死”の一文字だけ。リーチで勝るバージルに勝つには、初撃を何としてでも防ぐなり避けるなりしないといけない。
今また魔法をチャージしようものなら、その瞬間バージルの剣は飛んでくる。切り裂かれた背中の痛みに耐えながら、一瞬の後に飛んでくる死の運命に怯えながら、それでもなのはは毅然と立ち向かう。
425 :
LMS:2008/03/18(火) 16:03:38 ID:bGf55J0x
6
「私は、諦めない。貴方が立ち上がるなら、何度だってぶっ飛ばしてあげるんだから」
「……ならば、やってみるがいい」
バージルの姿が消える。消えたわけではなく、ただ高速で移動しているだけなのだが、なのはの目には影すら映らない。
どこから飛んでくるか分からない、一撃貰ったらそれで終わりの剣。なのはは必死でシールドを展開し、死の未来へ抗う。
「無駄だ!」
しかし、バージルの剣をシールド程度で止められるはずもない。やすやすと切り裂かれたシールドは消滅し、シールドを消すために振るった剣がシールドだけでは飽き足らずなのはのバリアジャケットを貫通する。
裂かれた袖が風に舞い、ワンテンポ遅れて血が吹き上がる。
でも、まだ死んではいない。絶対条件だった初撃のやり過ごしを達成したのだ。得物が剣である以上、バージルは必ずなのはの側にいるのだから。
「終わりだ!」
「まだっ! Satellite!!」
レイジングハート・ケルベロスが凶悪な発光を見せたかと思うと、なのはの周囲に雹の嵐が吹き荒れる。バージルの姿が追えていなくても、これならば相手を見る必要もない。近くにいれば、それでいい。
「ふんっ!」
だが、雹が体に当る音が聞こえてこない。吹き荒れる風の音に混じって聞こえるのは、バージルが雹の弾丸を切り裂く金属音だけ。
銃弾すら切り裂くバージルにとって、数が多いだけの雹など脅威でも何でもないのだ。
だが、雹の処理に追われて手が封じられているのは紛れもない事実。その嵐の中心で、なのはは目まぐるしく周囲を探る。
「見つけた……!」
サテライトはバージルの姿を視界に入れるためだけに発動した技。次の一手は絶対の死角から飛んでいく強烈な一撃だ。なのはは渾身の力でレイジングハート・ケルベロスを地面に叩きつけ、腹の底から叫ぶ。
「貫け! Crystal!!」
叫びに応えるかのように地中を突き破って飛び出す氷柱。体を下から上まで貫いて余りある巨大なそれは、狙い違わずバージルの足元から炸裂し―――
「遅い!!」
突き刺さる直前、振るわれた刃によって全て根元から切り捨てられる。なのははそのあり得ない光景に目を疑うが、今止まることは死と同義。クリスタルでも無理ならば、それを上回る攻撃をするだけだ。
「It's cool!! Million Carats!!!」
なのはを護るように、そして、周囲の空間そのものを刺し貫くように突き上げられた無数の氷柱。サテライトと同じく全方向攻撃であるそれは、バージルが閻魔刀でなのはを狙っていたのであれば確実に直撃するであろう一撃。
「無駄だと言っている!!」
それすら突き上げる直前に全て切り捨てられた。人知を超えた悪魔の技に、さすがになのはも杖を強く握り締める。これで、自分が出せてバージルに当りそうな技は全て出し切ってしまった。
同じ技が二度通じる相手とも思えない以上、なのはに打つ手は事実上なくなったといえる。
「……まだ」
それでも諦めず、モード・ケルベロスとモード・ドッペルゲンガーの同時行使まで視野に入れた次の一手を模索しようとした矢先、切られて消え行く氷柱の一部が砕け散り、何事かと思う暇もなくなのはの太ももに灼熱の感触が走る。
「え……?」
何が起こったのかもわからないまま、直後脳天まで突き抜けた激痛に悲鳴すら上げられないまま身を震わせる。
耐え切れずに崩れ落ちたなのはが見たのは、自分の太ももに深々と突き刺さった幻影剣だった。だが、そんな絶体絶命の状況において天はなのはに味方をする。
崩れ落ちる際の倒れ方があまりにも絶妙のタイミングであったため、バージルが首を狙って振るった刃が本当にただの偶然だが空を切り、髪を数本斬り飛ばしただけに留まったのだ。
「悪運もここまでだ!」
それでも、バージルは止まらない。なのはの悪運に舌打ちするも、飛び上がり、今度こそ仕留めそこなわないよう逃げ場のない上から叩き潰そうと剣を振り下す。
そしてなのはは薄れゆく意識の中、最後の足掻きを見せる。
426 :
LMS:2008/03/18(火) 16:04:16 ID:bGf55J0x
7
「……Go to the hell」
なのはの呟きは風が邪魔をしてバージルには届かない。今、この状況に限りなのはには絶体絶命の状況を覆すだけの力があった。
「ヴォルケイノ!!」
「なにぃ!?」
吹き上がった白光がバージルを吹き飛ばす。ダンテがなのはに預けたベオウルフ、その中でもなのはが振るえる最強の技が、もはや抵抗の術無しと防御を全く考えてなかったバージルに炸裂する。
「ぐうっ……ベオウルフ、だと……!」
「…………」
予想外の一撃に吹き飛ばされたバージルは、それでも倒れない。魔力の殆ど切れたなのはでは、ダンテほどの威力が出ないのも当然である。
しかも、どうやら本当に最後の一撃だったようだ。ベオウルフを抱きながら倒れたなのはは気絶しているようでピクリとも動かない。流れ出る血が、バリアジャケットと大地を徐々に赤く染めていく。
「……抵抗もこれまでか。俺とここまで戦えたこと、あの世で誇るがいい」
動けないなのはに無情にも振るわれる剣。狙い違わずなのはの首元に吸い込まれるように閃いて―――
「レディはもっと大事に扱うもんだぜ?」
横から飛び出してきたダンテの剣が、すんでのところでなのはの死を止めた。ダンテは受け止めた閻魔刀ごとバージルを吹き飛ばし、なのはに優しく微笑みかける。
「ホント大したガッツだぜなのは。まあ、頑張りすぎたな。ちょっと休んでろ」
「……ダンテさん」
一瞬本当に気絶していたなのはだが、澄んだ金属音と続いて聞こえてきたダンテの声に意識を取り戻す。だが、限界を無視して動かした体はどうやら完全にオーバーヒート状態にあるらしく、全く言うことを聞いてくれない。
それでも、なのははやりきった感いっぱいだった。
「後は、俺がやる」
「……お願いします」
言ったとおり、ダンテが回復するぐらいの時間は稼いでみせた。あとはダンテがやってくれる。なのははレイジングハートに傷の治療を任せてしばらく意識を飛ばすことにした。
「なに、お前がここまで頑張ったんだ。無駄にはしないさ」
ダンテの声が、やけに遠く聞こえた。
「……ダンテ」
「ハハハ、随分派手にやられたじゃねーか」
吹き飛んだバージルに悠然とリベリオンを突きつけるダンテ。先ほどの致命傷など何事もなかったかのようにしっかりと大地を踏み締めて、あたかも傷が完治して見せたかのように振舞う。
「……この短時間で完治だと? 笑わせる」
「だったら、試してみればいいじゃねーか。ホレ、かかって来いよ」
「ダンテェェェ!!」
「来な! バージル!!」
十分な助走をつけた疾走居合い、そしてそこから続く悪魔の連撃がダンテめがけて叩き込まれる。ついさっきまでは、受けることしか出来ず、それですら傷を負っていたバージルの攻撃。
「―――ハッ、つまんねぇ攻撃だなオイ」
「バカな……」
ダンテの嘲笑、それに続くバージルの呟き。
ダンテは人の目には映らぬ速度の疾走居合いを軽々かわし、かわした隙に放たれた連撃を全て叩き落していた。
支援
428 :
LMS:2008/03/18(火) 16:04:54 ID:bGf55J0x
8
「どうした、もう終わりか?」
「……ふざけるな!」
怒気も露に、バージルの剣が分裂したかのように迸る。ダンテはそれを涼しい顔で受け流す。そのあり得ない筈の光景にバージルは愕然とする。
(何故だ……! 確かに俺もダメージを負った。だが、それを差し引いたとしてもダンテのほうが重傷のはず!)
バージルの考えはまさしくその通りだった。事実、ダンテの体は動いたために開いてしまった傷跡から再び血が流れている。
そもそも、いくら悪魔の血を引いてると言えど、あれほどまでの致命傷がこんな短時間で治るわけないのだ。傷が生む痛みは集中力を乱し、流れ出る血は体温と運動能力を奪っていく。
共に万全の状態で戦闘力が拮抗するのであれば、より深い傷を負ったダンテがバージルを凌駕することなどあり得ない筈なのに。
「遅いぜ?」
「ぐっ……!」
「オラァ!!」
「がああっ!?」
だが、現実はこうだ。今まで一度もクリーンヒットしなかったダンテの攻撃が遂にバージルを捕らえるまでに至っている。
その理由が分からない限り、このまま接近戦を挑むのは危険と判断したバージルが距離を取る。
「認めんぞ!!」
ダンテと同じように腹を薙がれ、肩をバッサリと裂かれて膝をつくバージル。
それでも折れず、放たれたのは幻影剣。ダンテを包囲するように浮いた六本が一斉に襲い掛かる。
「インフェルノォ!!」
だが、幻影剣が突き刺さる刹那、吹き上がった地獄の業火がダンテに牙を剥いた矢を悉く粉砕した。
揺らめく炎を呆然とバージルが見つめる中、悠々とダンテは歩いてくる。
「何故……何故だ!!」
「―――分かんねぇか? どうしてアンタが、俺に勝てないのか」
「……貴様ぁ!!」
「一つだけ、教えてやるよ。俺が今、こうやってアンタを追い詰めてるのはな」
ダンテはそこで一旦言葉を切り、自身の中で張り裂けそうになる思いと共に告げた。
「―――アンタがとっくの昔に、捨てちまった力のおかげさ」
人間だけが持ちえる、魂とそこに宿る底力だ。
「戯言を……!」
力だけを追い求め、力だけを信じてきたバージルにはとてもじゃないけれど認められないダンテの言葉。力を生むのは力、そう信じて、今までひたすら剣を振るってきた。それを疑うなど、自身の生そのものを否定するのと同じ。
「まあ、俺もついさっきまでは忘れてたんだけどな。なのはのおかげで思い出したよ」
ちらり、と後ろで寝ているなのはを見て、そしてバージルへと向き直る。
「だから、アンタは俺には勝てない。それは、俺が人間だからだ!!」
「ふざけるなぁ!!!」
「―――だったら、見せてみろよ。アンタの力はこんなもんじゃないだろう!」
「おおおおおおおっ!!!」
ダンテが走る。バージルもまた、なりふり構わぬ大声を上げてダンテに向かって疾走する。間合いは瞬く間に縮められ、互いの全てを賭けた渾身の一撃が交差する。
バージルがダンテを頭から二つにするほどの唐竹割、ダンテはバージルを腹から二つに割る横薙ぎ。互いに防御を完全に捨てた、相打ちになるはずの一撃。
(アンタは負ける。だが、それはアンタが弱いからじゃない。助っ人の活躍さ)
429 :
LMS:2008/03/18(火) 16:05:24 ID:bGf55J0x
9(終)
それでも、ダンテは負ける気がしなかった。脳裏に浮かぶのは、自分の窮地を救ってくれた人物の姿。
ズタズタになりながら、それでもダンテを信じて戦った少女の姿がフラッシュバックする。
(アンタは強い、アンタは負ける。アンタが負けるのは俺じゃない、アンタは―――なのはに、負けるんだぜ!!)
剣が全く同時に振り抜かれる。しかし――吹き出た血飛沫は一人分。刃がまさに触れるその瞬間、バージルの目にすら映らぬほどの踏み込みを見せたダンテがバージルの一撃をかわし、そのままリベリオンが大きくバージルの腹を薙ぎ払ったのだ。
「……俺は、また負けるのか」
「だから言っただろう? 人の話は聞くもんだぜ」
膝をつき、息も絶え絶えなバージルにダンテが言う。バージルは、先ほどダンテが言っていた言葉を思い出していた。
「……人間の、力か」
「そうさ。情けない話だがな、俺はいつだって肝心なときには誰かに支えてもらってた。レディ、トリッシュ、オヤジ、そして―――」
「……高町、なのは」
絶体絶命のダンテを救い、魔剣士スパーダの血を引くバージル相手に一歩も引かず、結局バージルがダンテに対してまたしても遅れを取ることになった最大の要因。
「ああ、俺はいつだって一人じゃなかった。それは俺が人間だったから、人間として戦ったからだ、俺はそう信じてる」
「―――それが、スパーダの」
「魂の力」
「……なるほど、な」
同じように父を尊敬した。だが、バージルはその力を追い求め、ダンテはその魂を受け継いだ。
誰かを想い、その想いを力に変える人としての魂を。
「―――征け、ダンテ。魔帝はこの先にいる」
最後の言葉と、唯一現実のものだったアミュレットを残し、バージルは消えていった。ダンテはアミュレットを拾い上げると、しばし見つめた後に握り締め、笑みを浮かべて虚空を見上げた。
「やれやれ、相変わらず素直じゃない兄貴だぜ」
アミュレットをポケットに仕舞い、グースカ寝こけているなのはの元へ歩く。硬い地面の上で、これまた硬いレイジングハートを枕に眠るその顔は完全に少女のものだ。
「……こーやって見るとホント年相応のガキなのにな」
全く、あの信じられない程の意志の力はこの小さな体のどこから沸いて出てくるのやら。
ダンテは起こそうかとも思ったが、今回バージルを退けることが出来たのは間違いなくなのはのおかげだった。なら、好きなだけ眠らせてやろう、と思い直す。
最後の戦いに臨むのに、マイナス要素は残したくない。
「やれやれ」
コートを脱ぎ、なのはに掛けてやる。その横に腰を下ろすと、バージルの消えた箇所を見つめ、楽しそうに呟いた。
「―――これだから人間はやめられない、そうだろう?」
430 :
LMS:2008/03/18(火) 16:08:31 ID:bGf55J0x
Mission12はここまでです。支援ありがとうございます
次はいよいよ最終決戦です
以前、全12話と書いたLMSですが、対策にもなっていないさるさん対策で話を分割した結果、全14話となりました
というわけで、後2話、お付き合いいただければと思います
>スパロボX氏
BBSには普通に入れますよ?
依頼することがないので書き込んではいませんが…
しばらく時間を置いてみたらどうでしょう?
>>430 GJ!!なのはは強い子だね。
もちろんお付き合いさせてもらいますよ。
>しばらく時間を置いてみたらどうでしょう?
実はあの後考えてみたら、もう一つブラウザを開いていたのです。
そしてブラウザを閉じたら、すぐに入れました。そして書き込みもすんなり出来ました。
何ででしょうね?(見てたのはニコニコ動画)
なんでわざわざニコニコとか言うかな
GJ!
バージル男前だなあ・・・
ところで40分から投下OKですか?
>>432 他のだと問題ないかもしれないと思って書いたのですが、
今試してみたところどうやらブラウザが二つ以上なら、とにかく繋がりが悪いみたいです。
不快にさせてごめんなさい。
GJ おつかれです。LMSあと二話ですかー、うわー、終わってほしくねー。
続編を是非に期待。
30分経ったようなので投下しますねー。
リリカルジャスティス学園 (多分)予告
西暦20XX年。
日本、関東では優秀な学生が相次いで失踪する事件が発生していた。
通称「連続学生失踪事件」。しかし、これは全ての始まりだった。
失踪した学生は、凶暴化して人を襲う習性を身につけ――帰ってきた。まるで獣のような学生達は、母校を襲撃、大惨事となった。
事態を重く見た各学園の関係者達は独自に学生による調査を推奨、各部活、委員会の生徒達は調査を開始した――。
そして――学園の生徒達の、学生の意地と正義をかけた戦いが、始まる――。
かちり、と拳が構えられた。
少女――中島昴はもう一度だけ、口を開いた。
「もう一度聞くよ――ギン姉を知らない、ティア?」
その構えはローラ−ブーツを利用した格闘術、シューティングアーツのものだ。
ツインテールの少女が笑った。拳銃――18才用電動ガンを構える。
「知らないって言ってるでしょう!アンタこそ――ティーダ兄さんを襲った奴を知らない?」
ふ、と昴が笑った。
「お互いに――こいつで語り合うしかないみたいだね、ティア」
「そうね――アンタって本当に馬鹿だしね――」
じりじりと二人の距離がつまっていく。構えられる互いの得物――拳、エアガン。
そのとき――体育館の扉が開け放たれた。
仁王立ちしているのは――桃色の髪をしたポニーテールの女性だ。燃えるような真紅のジャージ。肩に担ぎ上げられた剥き出しの竹刀。
あれは―――。
『熱血赤ジャージのシグナム先生?!』
「貴様ら、ここで何をしているッ!!」
ちらりと、ティアナの得物――エアガンに眼が向けられた。
「没収、だな」
「そ、そんな―――」
シグナムが不敵に、口の端をつりあげて笑った。
「と、言いたい所だが――貴様らの眼にはただならぬ事情を感じる。だから――続けろ。私が見届ける」
「い、良いんですか?!」
ティアナが問うた。
「馬鹿者ッ!学生と学生の意地のぶつかり合いに、教師は口出ししないっ!!それが――私の流儀だ!」
シグナムが怒鳴った。
まさしく、教育者の眼だった――否、漢の眼だ。
「殴りあわないと分かり合えない馬鹿は――殴りあうしかないだろうっ?!さあ、やれ、制限時間は昼休み終了までっ!!」
二人が異口同音に答えた。
『はいッ!!』
乙でした。
スルーすべき物はスルーすべし。
支援
おわっと!始まってた!?
支援!
支援
そして――再び構えられた互いの得物。
いざ―――。
「勝負ッ!」
「勝負よッ!」
体育館が、熱気に震えた。
シグナムが携帯を取り出し、誰かに電話をかけた。
「シャマルか。今から馬鹿二人がそっちに担ぎこまれるかもしれん。何?いい加減にしろ?すまんな、じゃ」
何やら喚いているが、無視して電源を切る。
「ふ、存分に青春するがいい、若人よッ!」
決め台詞とともに――シグナムは闘いを見つめた――。
――蠢く悪。
「私は――教育委員会からの刺客、ジェイル・スカリエッティッ!私の12人の教え子達の相手をしてもらおうッ!!」
白衣の男が嗤う。
「日本の学生を支配し――この国を乗っ取る、ハハハハハ!!」
立ち塞がる家族。
「ギン姉ッ!」
「無駄だ、今の彼女は私の笛の支配下にあるッ!!」
そして――介入する大学生。
「ちょっと――頭冷やそうか」
仕込み杖が構えられる。スタンスティック――電磁警棒だ。
「お前は……!」
「高町なのはぁぁ――ッ!!」
学生の熱き血潮が、唸りをあげるッ!!
リリカルジャスティス学園――始まります。
GJ
続編だったらヴィータとかすぐ捕縛されて終わりそうな気がw
魔帝の次は覇王行っていい気が。両者とも桁違いだけど。
以上で予告終了!
クロス元は格闘ゲーム「ジャスティス学園」シリーズ。
そう、こういう馬鹿なノリ大好きさッ!
GJすいません。書き終わって
書き込んだらもう始まってました。
>>443 乙です。
ジャスティス学園か…。やった事ないからわからないけど、熱そうなゲームだった気がします。
>>443 ジャス学懐かしいwww
熱血青春日記で蘭に惚れたのは良い思いでw
>>445 実際暑苦しいゲームです。
>>446 青春日記ははまりましたー。
アキラの正体を突き止めるのが実に王道で。
でも友情か愛情を育まないと補習ってなんだよ校長・・・
そういうところも含めて好きですが。
本当に暑苦しいゲームでしたよね
だがそれがいい。
島津先生好きだったなぁ。
ネタ的にも。
LMSの人トリップ付けてくれません?
NG登録したいんで
春だなぁ。
発言がいたすぎる。
そういうのは俺達の脳内でNG登録して いないものとすればいい。
理由も話さずただ罵ってるだけじゃん。 無視するべし
明らかなバージルの弱体化
なのはの性格改変しすぎて原型留めてない
バージル物分りよすぎ
ざっとこんな感じ
理由なんぞ知ったこっちゃないが
余計な問題起こさないためにもトリップはあったほうがいいかもね
どうでも良いけど投下し続けるならトリはつけた方が良いとはおもうぃ
なんかつけない理由あったの?
それとお前さん、作品ネガるならウロスに行こうぜ?な?
素で付け方知らないっていう人も中にはいるかも。
俺も執筆始める直前まで知らなかったし。
トリの付け方をテンプレに載せたほうがいいかもね
>>456 テンプレにそんなモン入れずとも、逐一一回だけ言ってみればよくね?
一回NGにすれば少なくともその後は黙るんだろうしいいんじゃない?
とりあえず避難所のテンプレ議論スレッドに行こうか。
>>452 取りあえずまともによんでないことはよく分かった。
まあまあ>リンディ茶とぬるい生クリームをかけた刺身。
これ以上は雑談になる・・・ウロスだ、ブラザー。
こんな時こそスルー魔法や、無効化する魔法だ!
そんなもの在るかどうか知らないけど!(マテ
>>463 すいませんでした。
いただきます…あれ? 意外にイケる?
…ウボァ(時間差ダメージ)
俺もトリの付け方が分かんない
誰か親切な人、教えておくれやす
>>467 書いてみようかな…とか思っているので調べてみたが
「トリップとは」でググるとあっさり出たよ。
それじゃテンプレより無蝕童帝の出番か?
>>430 GJです!そうですか、後2話ですか…お待ちしております。
そして今回何よりも驚いたのは
>(アンタは負ける。だが、それはアンタが弱いからじゃない。助っ人の活躍さ)
ッここで来るかリヴィオー!!
次回作はトライガンマキシマムでよろしくお願いします!
471 :
一尉:2008/03/18(火) 21:05:01 ID:sXUhvgNE
ふむザイバトロン達は、支援たな。
職人の皆様GJです
…昨日投下できなかった嘘予告、今度こそ投下していいですか?
支援です。
支援いたしやがるです。
では投下します
…ちなみに今回の嘘予告中は、バトルフロンティア(ミュウと波動の勇者ルカリオOP)の脳内再生を推奨します
ポケットモンスター、通称ポケモン。
それは、ミッドチルダの森や川に棲む生命体。
それらは一説には人類より早く存在していて、とある地方では大地や海を作り上げたポケモンの伝説まで残っているという。
当初は時空管理局も大して気にも留めておらず、分かっていて見逃していたような節もあった。
だが、ポケモンリーグチャンピオン『レッド』や、その仲間によって潰されたロケット団の暗躍により、それが見直されることとなる。
そして二年前のスオウ島の事件がきっかけで、ついに管理局がポケモンの収集に乗り出した。
……とはいっても、かつてカントー地方のとある学者が行っていた、ポケモン図鑑の作成によるデータ収集が主な目的だったのだが。
「――――そういう訳でこの役目に選ばれたのが、エリオ達三人って訳や」
そしてそれぞれが各地へと散り、ポケモン図鑑の作成を行う。
エリオはクラナガンの南方にある大きな島、ホウエンへ。
キャロは同じくクラナガンから東にある地方、カントーへ。
そしてルーテシアはカントー西部の地方、ジョウトへと。
だが……その道中、伝説のポケモンや、それをめぐる組織との争いに巻き込まれることとなる。
――――かつて滅びたはずの、ロケット団という組織。
「ロケット団って、まさか!? あなた達はグリーンさん達に倒されたはずじゃ……!」
「……」
「沈黙か……下がっていろ、キャロ。この仮面の奴は俺が何とかする」
――――大地を増やそうとする組織『マグマ団』と、海を増やそうとする組織『アクア団』。
「僕は二つの組織、両方と戦って分かりました。赤と青、両方とも目的が違うだけで、本質は同じなんじゃないかって」
「つまり……両方が善じゃと?」
「もしくは両方が悪か……エリオ、君はそう言いたいんじゃないのか?」
――――かつての四天王事件、その当事者の暗躍。
「ルーテシア、お前はシルバーと共にジムリーダー対抗戦の場に行き、そこで奴の……マスク・オブ・アイスの正体を暴け!」
「分かった。それと、この子は返す。
私にはオーダイルがいるし……ワタルじゃないと、カイリューは言う事聞いてくれないみたいだから」
――――三つの物語は収束し、そして一つの大きな物語へと姿を変える。
「サ・ファイ・ザー! ゴッドバード!」
「ジュカイン、ハードプラント!」
「リザードン、ブラストバーン!」
「オーダイル、ハイドロカノン!」
――――そして『ジラーチ』と『デオキシス』。
「マスク・オブ・アイス……あいつは、知っていたんだ!」
「ジラーチなら、みんなを助けられるかもしれない……!?」
これは、語られるはずの無かったポケモントレーナー達の物語。
ポケットモンスターLYRICAL――――始まりますか?
「それじゃあまた、三ヵ月後にここで会おう。約束だ」
投下終了
クロス元はポケットモンスターSPECIALです。一度やってみたかったんです、このネタ
>>477 乙です。
これから投下をしようとしたのですが、少し遅くして、9時45分頃に投下しますね。
時間ですので投下します。支援も出来ればお願いします。
なのはは、リンカーコアの形成とレイジングハートの修理改造の為に一ヶ月半も戦闘から外されていたが、
フェイトの方に特に目立った動きはなく、ジュエルシードの反応もないままである。
そして10月15日になり、なのはとレイジングハートが完全復帰を遂げると、突然警報が鳴る。
それはジュエルシードを見つけたものであるが、バンカーが来ており、そこにはなのはを倒したヴィータの姿もあった。
「クロスナイト」は急いで現場に向かうのであった。
第4話 新たなる力、起動
ジュエルシードがある場所では、ヴィータとザフィーラはバンカーの無人機、空中戦車に囲まれ、
それを指揮していたのはバンカーの幹部、ギル・バーグであった。
「我らバンカーに楯突くとは……、ならばこうだ!」
ギルの命令に従い、無人の空中戦車はヴィータとザフィーラに攻撃を仕掛ける。
しかし、空中戦車の攻撃はすべてザフィーラが受け止めた。
「ほう、倒れないとはやるではないか」
「ザフィーラ!」
「この程度で倒れるほど、やわではない!」
ザフィーラが強気でギルに言う。
「ふ、言うではないか。ならばこの私、自らが相手をしよう」
ギルの乗る巨大兵器、ブラッディTがヴィータ達に襲おうとするが、それは妨害される。
「紫電一閃!」
「何!?」
突如シグナムが後ろから、ブラッディTを「紫電一閃」で斬りつけ、ブラッディTの一部が損傷する。
「おのれ、まだ仲間が居たとは……」
「ヴィータ、ザフィーラ、大丈夫か?」
「ああ、このくらい問題ねえ!」
「ふ、ならばこちらも戦力を上げてお前達を倒すとしよう!」
ギルがそう言うと、再び空中戦車がヴィータ達を襲おうとするが、空中戦車はどこからかの攻撃を受けて破壊される。
「何!?」
ギルが後ろを向くと、後ろにはダンガイオーや「クロスナイト」の面々がいた。
「ダンガイオー! 来たな、ミア・アリス!」
ギル・バーグは自分より優れた能力を持つ、ダンガイオーチーム(特にミア・アリス)を妬んでいるのだ。
「ここが貴様らの墓場だ! そこにいる連中共々葬ってくれる!」
「それはこちらのセリフだぜ」
ギルが「クロスナイト」に気を取られている間に、シグナム達はジュエルシードを確保しようとする。
すると、そこになのはが、本局から直接転送される。
「あいつ……」
なのははビルの屋上に立ち、レイジングハートを手に持ち、叫ぶ。
「レイジングハート!」
レイジングハートの名前を呼ぶと、前の変身とは違うように感じる。
「これって……」
戸惑っているなのはに、エイミィが通信で答える。
「なのはちゃん、レイジングハートには新しい機能が組み込まれてるの。そして呼んで。その子の新しい名前を!」
「わかりました。レイジングハート・エクセリオン。セット、アップ!」
なのはは、新しくなったレイジングハートの名前「レイジングハート・エクセリオン」を呼び、変身をする。
なのはは再び、戦場へと戻ってきた。
「ほう、最近見ないと思ったが、何やらパワーアップをしているようだな」
なのはの変身を見て、ギルが少し納得する。
「だが、所詮はバンカーの相手ではない事を思い知らせてやるぞ! 小娘!」
ギルがそんな事を言うが、なのはは気にせず、ヴィータに話しかけようとする。
「何でこんな事をするのかな? 話を聞かせて」
なのはのその言葉に、ヴィータはこう返す。
「あのな、ベルカのことわざにこんな言葉がある。和平の使者なら槍は持たねえ」
何のことかよくわからず、なのはは首をかしげる。
「話をするのに、武器を持つ馬鹿がいるか! ってんだ! バーカ!」
その言葉に、なのははずれる。
「はあ!? いきなり有無を言わさずに襲ってきた子がそれを言う!?」
なのはは少々怒る。ヴィータの言葉にザフィーラが突っ込む。
「それにそれはことわざではなく。小言のおちだ」
「うっせえ、いいんだよ!」
「そちらの話は終わりかな?」
ギルが、妙になのは達の話を真剣に聞いていたようだ。
「バンカーは力で星を支配する。和平などもってのほかだ!」
「お前のその考え、正してやるぞ! ギル・バーグ!」
ダンガイオーに乗ると性格が変わるロールが、ギルに向かって言う。
「ふん、まあいいさ。こんな小娘達よりもお前達の相手をしてやるぞ! ダンガイオー!」
ギル本人は、ダンガイオーを中心に攻撃し、残った無人機は適当に、他の面々に攻撃する事になる。
なのはも戦闘に入ろうとすると、レイジングハートがなのはにお願いをする。
「Master. Please call me load cartridge.(カートリッジロードを命じてください)」
なのははそう言われると、レイジングハートの言うとおりにする。
「レイジングハート、カートリッジロード!」
「Yes,load cartridge! Drive ignition!」
なのははレイジングハートのカートリッジをロードし、戦闘に入る。
「クロスナイト」の現在の敵は、ヴォルケンリッターにバンカーである。
ひとまずはバンカーの方を最優先に撃破していくことにし、何とかバンカーの空中戦車を全機破壊し、ギルもブラッディUを破壊されかけ、撤退する。
「おのれ、覚えておくがいい!」
ギルはそう捨てゼリフを言いながら、撤退する。
残ったのは、ヴォルケンリッターだけになったが、ヴォルケンリッターはまた前のように戦闘獣やモビルスーツを出してくる。
闇の書は主か、仲間のシャマルが持ってると判断したクロノが、懸命に闇の書を探す。
なのはは無人ロボットやシグナム、ザフィーラの相手は他の人に任せて、自分はヴィータと対峙する。
ヴィータは先制攻撃として、前になのはに襲い掛かったように、グラーフアイゼンのラケーテンハンマーで、なのはに突撃する。
「Protection powered(プロテクションパワード)」
なのははそれに反応し、バリアを展開する。
「硬えぇぇぇ」
「本当だ」
なのはも驚く。そのバリアは、今までのバリア以上の硬さになっていて、ヴィータでも破る事が出来なくなった。
先ほどまではバリアを張る戦いをしていたが、今までのバリアでもある程度防げたために、バリアが強化されている事に自覚してなかったのだ。
「Barrier Burst(バリアバースト)」
なのははバリアを爆発させて、お互いの距離をとった。
「アクセルシューター、シューート!」
レイジングハートから、12個の魔力弾が発射され、制御が行き渡っていないアクセルシューターはそのまま直進する。
なのはは先ほどまでの、空中戦車と戦っていた時のようにうまくアクセルシューターをコントロールし、ヴィータの飛ばした鉄球をすべて撃ち落す。
「くそ!」
「Panzerhindernis.」
ヴィータは「パンツァーヒンダネス」で自分の身を守る。しかし、その防御の障壁アクセルシューターの魔力弾で簡単にヒビを入れられる。
「まずいな……」
その一方で、シグナムは主にダンガイオー、ザフィーラはバイカンフーと戦っていた。
「ブーストナックル!」
「はあああ!」
ダンガイオーの右手が発射されるが、シグナムはレヴァンティンで簡単に払い落とす。
「く、サイキックウェーブを使うしか……、うん?」
「どうしたの、ロール?」
「何か来る!」
ロールの言うとおり、「クロスナイト」とヴォルケンリッターが戦っている戦域に何者かが来るのだ。
突然、「クロスナイト」のロボット達の後ろから、魔力弾が放たれ、「クロスナイト」の面々はそれを撃ち落す。
「何だ? 急に……」
「あれは!」
後ろを見ていた面々が、前に向き直すとそこにはフェイトとアルフの姿があった。
「あいつだったのか!」
「けどよ、この前はあいつも負けたんだよな……」
「勝てる見込みがあるのか?」
忍や隼人がフェイトがどう変わったのかがわからないので、そう言うが、フェイトはバルディッシュに命令する。
「バルディッシュ、カートリッジロード!」
『え?』
「Load Cartridge.」
バルディッシュもカートリッジシステムが組み込まれているようだが、レイジングハートのオートマチックとは違い、リボルバータイプであった。
皆は知らないが、この時のバルディッシュの名前は「バルディッシュ・アサルト」である。
「テスタロッサ、お前も……」
「はい、強いあなたに勝つためです」
シグナムは少し笑みを浮かべる。
「そうか、なら始めるぞ!」
シグナムとフェイトの戦いは始まる。
アルフはバイカンフーと戦っていたザフィーラに突然拳を向け、ザフィーラとバイカンフーを引き離す。
「どうやら、1対1にしたいみたいだな」
「だが、油断はするな。相手はどちらも敵同士。どう出るかわからない」
「とりあえず、俺達はこの雑魚達をやつけちまおうぜ」
「クロスナイト」の面々は、フェイト達に気を許さないように注意しながら、戦闘獣やモビルスーツを倒すことに専念する。
フェイトとシグナムはビルの壁を蹴りながら、お互いを斬りあう。
『はああああ!』
フェイトもカートリッジシステムを搭載しているため、魔力が爆発的に上がっており、戦闘力は上がっているが、それでもシグナムは強い。
フェイトはバルディッシュの新形態「ハーケンフォーム」を発動させる。
「Haken Form.」
それは、前の「サイズフォーム」と変わらない魔力で出来た鎌を出すが、その出力は前よりも格段に上がっており、デスサイズヘルのビーム・シザーズと同等と言っても過言ではない。
「すげえな、おい……」
そのハーケンフォームの姿を見た、デュオが思わず口にこぼした。
シグナムもレヴァンティンの「シュラゲフォルム」を発動させる。
「Schlangeform.」
その時のレヴァンティンの姿は、いくつもの節に分かれた蛇腹剣の形態である。
その伸びる剣がフェイトを襲うが、フェイトはそれをかわしつつ、シグナムに接近する。
シグナムはすぐに伸びたレヴァンティンの刃を戻し、フェイトを襲うが、フェイトはそれをバルディッシュで受け止め、その際に爆発が起こる。
「Schwertform.」
爆発が晴れると同時に、シグナムはレヴァンティンを「シュベルトフォルム」に戻す。
フェイトとシグナムにはお互い斬り傷が残り、フェイトは左腕、シグナムは胸部分である。
「強いな、テスタロッサ。それにバルディッシュ」
実力を上げたフェイトとバルディッシュを褒めるシグナム。
「Thank you.」
「あなたもです。シグナム、それにレヴァンティン」
褒められる事に感謝し、フェイトもシグナムとレヴァンティンを褒める。
「Danke. (感謝)」
「それはありがたい。しかし、殺さずに済ませる自身がない。この腕の未熟さを許してくれるか?」
「構いません。勝つのは私……」
「俺達だ!」
フェイトが言い終わらないうちに、デュオがガンダムデスサイズヘルのビーム・シザーズで、二人を襲ってくる。
二人は何とか避けて、デスサイズヘルを攻撃するが、デスサイズヘルは巧みに避ける。
「お、お前は……。恥はないのか……」
「とりあえず、今の俺達の目的はジュエルシードの確保なんでね。そのためには俺達はお前達を全力で倒すぜ!」
シグナムがよく見ると、闇の書から出した戦闘獣やモビルスーツがなくなってることに気付く。
「しまった、テスタロッサに気を取られすぎたか!」
シグナムが驚いていると、突然雷が落ちる。
その雷はシャマルが闇の書の力を使って、落としたものだが、何故使ったのかと言うと理由はある。
それはシャマルがクロノに見つかってしまい、捕まりそうになった時、謎の仮面の男がシャマルを助け、闇の書の力を使って脱出するように言ったからだ。
その雷は、落ちてから数分後に大爆発を起こすものである。
シグナムとヴィータ、ザフィーラはシャマルの思念通話でその事を聞いて、急いで撤退する。
「すまない、テスタロッサ。勝負は預ける」
シグナムはそう言って、撤退する。
ヴィータとなのはの方も同じようにヴィータが撤退しようとするが、ヴィータは自己紹介する。
「鉄槌の騎士ヴィータと、鉄の伯爵グラーフアイゼン。お前の名は?」
「なのは。高町なのは」
「なの、なぬ、は……、ええーい、言いにくんじゃボケ!」
なのはの名前を言えないヴィータは、なのはに逆ギレを起こす。
「逆ギレ!?」
「今度会ったら、ぶっ殺すからな!」
ヴィータはなのはに指をさして、撤退する。
「クロスナイト」の方も、エイミィから通信を聞いて、撤退しようとするが、
ジュエルシードが残ったままだという事を思い出したなのはとフェイトがジュエルシードに砲撃をするが、同時だったので、封印できず、
二人はお互いのデバイスで直接、ジュエルシードを封印しようとする。
二つのデバイスがジュエルシードと重なった時、ジュエルシードは反応し、大規模な光の柱を生み出し、なのはとフェイトを包み込む。
それと同時に闇の書の雷が大爆発を起こす。その際に地球全体が揺れた感じがしたのを、皆が感じる。
『なのは(ちゃん)!』
「フェイト!」
なのはとフェイトは無事であったが、ジュエルシードは封印できてなかった。なのははそのまま吹き飛ばされ、フェイトも吹き飛ばされるが、フェイトはすぐに体勢を立て直す。
フェイトはバルディッシュが、シグナムとの戦いと今の衝撃で少しだが破損したと悟り、自分の手でジュエルシードを封印しようとする。
「止まれ、止まれ!」
フェイトの手は、ジュエルシードの出力に耐え切れそうにないが、フェイトはそれでもやめない。
「フェイト!」
「お願い、止まって……」
フェイトの願いが通じたのか、ようやくジュエルシードの光は収まる。
フェイトは少し疲れたかのように倒れそうになるが、アルフが駆け寄る。
「フェイト、大丈夫かい?」
「大丈夫だよ、アルフ……」
フェイトはそう言うと、意識を失う。アルフはなのはや「クロスナイト」が戻ってこないうちに撤退するのであった。
投下完了。
一応無印とA'sの話の両方の原作再現をやっています。
フェイトはまだまだなのは達とは敵対勢力ですね。
>485
乙。
まだ、書き急いでますね。事件の進行はまだゆっくりでいいですよ。
>>477 おぉ!!ポケモンとクロスとは!!
やはり旅に出るのは小女と少年は決まりなのかw
なのはやフェイトが時々変な仮面つけて登場して助けてくれるんだなぁ!!
>>487 それは宇宙メダロッターXじゃないのかw
LMS氏のレイジングハートはADAをおもいだすなぁ。
次はANUBISとクロスを・・・戦闘力に差がありすぎるな、すいませんorz
これでトリ付いてるかな?
鬱陶しいならNGお願いします
実際どの指摘も言われて当然のことだと思いますし
そもそも魔界突入からリリなの関係ないですしね
俺のせいでスレが荒れたことに関してはお詫びします
以下、何事もなかったかのようにどうぞ
予約無いみたいなのでメタサガ11話を23:05より投下予約。
スレをまたぐのが確定なのでランニングナンバー21まである半分ずつに分けて投下する形です。
それと、スレたてがうまくできないので誰かスレ立てるときはお願いします。
Jane使ってるのになんでうまくいかないんだろう。
装甲タイル。
あの荒野が広がる世界の大破壊前と呼ばれる時代に
天才科学者バイアス・ブラド博士が発明した装甲板。
それはまさしく現代に蘇ったイージスの盾。
その特性は受けたエネルギーを強制的に変換・吸収・蓄積して、
許容量に至ると自壊する性質。
熱でも冷気でも酸でも衝撃でもあらゆるエネルギーを変換することで、
あらゆるダメージという概念を肩代わりし軽減する。
全てはエネルギー保存則に基づいて・・・・・・。
1枚10kgという重量さえ除けば破格の性能とコストを誇る魔法の装甲。
けれど、忘れてはいけないことがある。
装甲タイルのエネルギー変換効率は決して100%ではない。
イージスとは違って、絶対に貫かれない魔法の盾なんかでは無いということを・・・・・・。
魔法少女リリカルなのはStrikers―砂塵の鎖―始めようか。
第11話 壊れかけ
「うん。バイタルは安定してるわね。危険な反応も無いし心配ないわ。」
「はい。」
「よかったー。」
シャマルさんの言葉にキャロやスバルが安心したような声を上げる。
かくいうわたしもほっとしている。
こんな幼い子がレリック絡みの事件に巻き込まれるなんて・・・・・・。
フェイトちゃんもどこか痛々しいものを見るような視線。
違いこそあれ、みんなの表情はどれもこの子の境遇へ向けられている。
けれど、はんた君だけは違った。
かけらも見逃さないと言わんばかりにこの子を見つめたまま・・・・・・。
その様はまるで敵と識別するべきか思案しているみたい。
それに他の皆と違って1人だけバリアジャケットを展開している。
今までの経験からすると、はんた君の予想は嫌になるほど当たり続けている。
ならば、警戒しているからにはなにかがあるということか?
「ごめんね。皆。おやすみの最中だったのに・・・・・・。」
「いえ。」
「平気です。」
「ケースと女の子はこのままヘリで搬送するから皆はこっちで現場調査ね。」
「「「「はい。」」」」
支援します!
運がよければ、多分その次に投下出来るはず(予定)。
わたしの言葉にフォワードの4人が走っていく。
うん。頼もしくなってきた。
皆、順調に成長しているみたい。
「なのはちゃん、この子ヘリまで抱いていってもらえる?」
「あ、はい・・・・・・。」
「シャマル。なのは。帰り道に気をつけろ。」
シャマルさんの言葉に返事をした直後、はんた君の口が開かれる。
内容は明確なまでの警告。
わたしは戸惑いの声を隠せない。
傍らのフェイトちゃんも、シャマルさんも同じ。
はんた君の視線は、保護された子の腕に向けられたまま・・・・・・。
「手ごろな枷が無いからと金塊を取り付けるか?」
はんた君の言葉でこの子の異常に気がついた。
逃げてきたのならば、少しでも身軽なまま逃げ出す。
けれど腕に残るのは痛々しいほどに残った鎖の跡。
それが自分の意思でレリックを持ち出したわけじゃないことを教えてくれる。
けれど、手ごろな錘が無いからとレリックなんて括り付けるか。
そんなわけない。
逆にこの子が意図的にレリックを持ち出したなら?
この子はなにかの意図があってこちらに接触してきたことになる。
いずれにせよ、レリックが括り付けられていたということは・・・・・・。
「この子とレリックが関連あるっていうこと?」
「あるいは六課への撒き餌か。関連があるなら、今この瞬間なにも仕掛けない理由がない。
杞憂かもしれないが・・・・・・。」
「子供1人とSランク魔導師をトレードできるのならば可能性は高いと考えられます。
また、コストパフォーマンスとして子供は優秀な道具です。」
はんた君の言葉にアルファの補足が入る。
どこまでも戦闘に偏った思考。
はんた君も口に出さないだけでこの子を処理してしまえと言いたいのかもしれない。
杞憂かもしれないなんて珍しい言い回しを使って、気を使っていることが丸分かりなのに。
けれど、はんた君の振舞い以上に機械的なアルファの言葉に戦慄を隠せない。
子供さえもアルファにとってみればデバイスやカートリッジと大差ないのかもしれない。
けれど、それはあまりにも倫理観が欠落したものの見方。
そして、アルファの言葉を言葉通りに解釈すれば・・・・・・。
「諸共に・・・・・・っていうこと?」
「低いコストで高いリターンが見込めます。行わない理由がありません。
私もサーチを行いましたがその子供の体内に爆弾などの異物反応はありません。
状況および蓄積経験より行った予測では80%を上回っていましたが、外れたようです。
次点としてあげられるのは機動六課への撒き餌。可能性は約75%。
この場合、保護直後に奇襲が行われるはずですが、依然として敵影はありません。
よって、戦力の分散が起こる回収後に襲撃が行われるケースと考えられます。
高性能機による強襲、あるいは量産機の大量投入による地上と空への2面攻撃が予測されます。
また、敵の優先順位によって投入戦力が変わってきます。
子供、あるいは子供とレリックが目的である場合、帰還中のヘリへの襲撃は90%超過。
高機動機による包囲、あるいは遠距離からの狙撃による撃墜が予測されます。
レリックが目的である場合、ヘリへの襲撃は50%であり、下水への戦力の増加が予測されます。
同様に機動六課の戦力を削ることが目的である場合も下水への戦力の増加が予測され、
この場合、未熟なフォワード4人の襲撃が主目的となります。経験値の不足及び下水という閉鎖空間であることを考慮しステルス搭載機、あるいは高性能機による強襲がなされます。
威力偵察が目的である場合、空戦への比率が増加します。
この場合、リミッターという概念を持ったなのは達にリミッター解除申請をさせること及び防衛ライン突破後の六課の強襲が相手側の主目的となりますので、
尋常ではない数による襲撃が予測されます。
また、いずれが目的であってもなのは達を一定時間足止めする必要があるため、
空戦においては何らかの増援があるものと予測されます。
また、この子供の肉体ですが発育が非常にアンバランスです。
そのことから子供が培養層のような環境で育成されたクローン、
もしくは生体兵器である可能性が現時点で80%を超えます。」
フェイトちゃんの震えるような声に淡々と告げるアルファ。
人間を物として扱うどこまでも機械的な思考。
言われて震えが止まらない。
けれど、頭のどこかがそれを正しいって認めている。
ただの子供と完全に油断しきっていたわたし達。
そこに不意打ちがされたなら・・・・・・。
「ガジェット来ました!!」
通信越しに聞こえるシャーリーの声は驚きを隠せない。
アルファの予測どおりに発生した襲撃。
ならば、ここで問題になるのは投入された相手の戦力。
「地下水路に数機ずつのグループで総数・・・・・・16・・・・・・20。」
「海上方面、12機単位6グループ。」
「多いな・・・・・・。数だけなら海上が圧倒的に多い。」
「先ほどの言葉が正しいのなら、威力偵察かこの子狙いってことですか。」
「なぁ、アルファ。アルファならどれを選ぶ?」
「相手側の意図および保有戦力が分からないため、選択できません。
全ての目的への優先順位が同率である場合、砲撃によるヘリ撃墜を狙います。
マスターもしくは高町なのはと同レベルの砲撃を所持していれば確実に撃墜可能であり、
作戦目標として最も難易度の低い作戦目標となります。
ロングアーチ。先ほどの予測を可能性の1つとして検討願います。
管制システムは連動させておきますので新たな情報には随時報告を。
マスターはフォワード達に付きます。許可を。」
「了解や。しっかりお守りしたって。空は私らでどうにかする。」
「了解。」
アルファの言葉にはやてちゃんが返事を返す。
はんた君は短く応答するとフォワード4人のほうへ駆けていく。
最も制限が軽い機動六課保有戦力であるのがはんた君。
同時に最も戦闘経験が豊富なのもはんた君。
それは誰もが認めること。
当然、下水という閉鎖空間での戦闘経験もあるのだろう。
そんな思考からだろう。アルファの進言にはやてちゃんが応じたのは。
はんた君が行った以上、フォワード4人は問題ないはず。
ならば、残る問題は空。
そんなことを考えながら、保護された子を抱きかかえたところで気がつく。
あれ?
はんた君、戦闘時はいつも饒舌だったはずなのに・・・・・・。
どうしてアルファが会話の大半を引き受けているの?
今までほとんど喋らなかったのに・・・・・・。
「さて、皆!!短い休みは堪能したわね。」
「お仕事モードに切り替えて、しっかり気合いれていこう!!」
「「はい!!」」
「「「「Stand By.」」」」
「「「「セーットアップ!!!!」」」」
デバイスの音声と共にフォワード4人のバリアジャケットの展開が始まる。
突入前に展開するようになった点は評価できる。
フォワード4人は最初に比べればマシになったようだ。
ならばしっかり守るとしよう。
支援
「アルファ、マゾヒストフォーム。展開と同時に仕様を視界に羅列。」
「了解しました。マスター。」
「マ、マゾ!?」
バリアジャケットの展開を終えたティアナが俺の言葉に戸惑っているようだが関係ない。
バリアジャケットが分解され、新たなフォームに変形していく。
展開が完了し、呼吸をすると鋭い音が吹きぬける。
口元までがっちりと覆ったこのマスクのせいか。
「ひっ!?」
俺の姿を見たキャロが悲鳴を上げる。
だが、悲鳴を上げる要素がどこにあるのか。
頭部を覆うフリッツメット。
バトー博士が気に入ったからか、無骨な金属メットに触覚があるのは違和感が大きい。
それでも装飾がかけらもない実用一辺倒のデザインはタンクメットの次になじみが深い。
全身を隙間無く覆うのはアサルトギア。
隙間無く覆う重厚なアーマーのところどころから武器を引っ掛けるためのカラビナが突き出て、背中に背負った金属製のバックパックまで忠実に再現されている。
あの荒野のものを忠実に再現したのだとすれば背中のこれは弾薬箱。
ベルトリンク式の弾を収める場所だが、この装備ではどのような影響が起こるのか。
仕様はまだ読みきれていない。
拾い読みできた部分によれば手榴弾系の道具を常時展開できるようになったとのことだが、
原理はどうなっているのだろう。
弾数は?
もっともそんなことは分からずとも、問題なく使えればそれだけで十分。
腕を覆うのはガントレット、脚を覆うのはクラッドブーツ。
まるで虫の外骨格を思い出させるその構造は、
何枚もの装甲が重ねられ隙間など存在しない洗練されつくしたデザイン。
機能を追求した果てに到達した機能美というものがこれなのかもしれない。
顔を覆うのは赤い暗視スコープとフルフェイスのガスマスク。
口元から伸びるダクトはアサルトギアを伝い、背中のバックパックへ。
仕様を見れば身体機能を上昇させるサポートデバイスの機能は
このダクトを通じて行われるらしい。
さながらこの身体がスーパーチャージャーかナイトロオキサイドシステムが
取り付けられたエンジンになったようなもの。
もちろんガスマスクとしての機能も持っている。
でも、そんな機能以上に飲むというアクションを行う必要がなくなったという事実が
想像以上に大きい。戦闘における無駄な動作が削れるのだから。
網膜越しのパラメータを暗視スコープのほうに映せるようだが、
これは網膜越しのほうが楽だ。もっともズームと暗視があるだけでお釣りが来る。
暗視スコープのレンズ以外、全身が黒で覆われた戦闘フォーム。
ガスマスク越しの呼吸ダクトを通じて吹き抜けて、
ターボエンジンのブローオフバルブを吹き抜けるときのような鋭い音で響きわたる・・・・・・。
なるほど、人型のなにかっぽい姿かもしれない。
これでは傍目に俺が俺だと分からないが・・・・・・瑣末なことか。
珍しく1つだけバトー博士にしてはミスがある。
塗装に艶があるのは問題だ。
これでは異様なてかり具合で居場所を教えているようなもの。
黒光りしないとゴキブリらしくないとバトー博士は言いそうだが、
そこにこだわるなら翅を残せばよかっただろうに。
戻ったら艶消しにしてもらわねば・・・・・・。
他は注文どおりの仕様。
機動力を殺して防御力の向上がなされている。
ついでとばかりになされている火力の向上はバトー博士の趣味か。
あるいは、どうやって使うか理解しきった上での仕様か。
「先行する。アルファ、ミニバルカン。」
俺の姿に驚いているフォワード4人にそれだけ告げると、右手でアルファの変形が始まる。鋭い金属音を響かせ変形するその速度は以前よりもずっと早くなっているのが見て取れる。そんなことを考えながらも、左手は腰の塊に飛んでいる。
カラビナにひっかかった手榴弾を投擲するために・・・・・・。
妙に大きく響き渡る手榴弾のピンが外れるとき特有の乾いた金属音。
懐かしい音・・・・・・。そんなほんの一瞬だけの逡巡。
そして、視界に移る仕様を全て読み終えた。
事前に設定することで4種の道具がシングルアクションで使えるようになったらしい。
防御用と注文したのに、攻撃用に偏っている気がしないでもない。
一番の要望が追加されているし、手榴弾は防御と支援に使えるから問題ないとしよう。
設定は電気手榴弾、火炎瓶、LOVEマシン1323、満タンドリンク。
生物ならなのはに食らわせた音響手榴弾を設定したが、
従来どおりガジェットなら無生物が主体と考えて電気手榴弾。
生物、無生物ともに有効な火炎瓶。
ダメージを追う可能性は薄いと思うが万が一のために満タンドリンク。
LOVEマシンは3213と悩んだが、確実性を求めて選択。
効果はステルス解除。
空戦ができなくなった代わりに4種の道具がシングルアクションで使えるようになったのは価値として五分。
飛ぶ必要の無いフィールドにおいては確実にプラス評価。
「手榴弾!?」
スバルの悲鳴のような声を聞きながら3発の手榴弾を放り込む。
炸裂前にLOVEマシン1323をトリガー。
アルファの索敵を逃れられる敵がいるとは思えないが念を入れた処置。
逃れられるものなら逃れてみせろ。
轟音が響き渡ると同時に、ミニバルカンへの変形を終えたアルファで制圧射撃をぶち込む。
迸るマズルフラッシュと布を引き裂くような銃声
網膜に映るレーダーを確認。
突入口より半径150m以内に敵影、一切確認できず。
「敵影なし。突入する。」
下水の穴から飛び降りる。
重厚な着地音と共に、荷重に耐え切れなくなった足場のコンクリートが弾けとぶ。
皹だらけとなる足場・・・・・・。
バトー博士に注文した一番の要望、装甲タイル。
その表記が視界の傍らに表示され、表示を明滅させる。
装甲の概念として最適な装備としてアサルトギアやクラッドブーツが選ばれたのか。
そして、100/100と書かれた装甲タイルの枚数に若干の不満を覚えながらも納得する。
装甲タイル100枚という現状は、デバイス重量抜きで1tの鉄くずを背負っているようなもの。
アルファ自身も含めて総重量は約1.4t。
機動力は嫌でも削がれる。
あまりにも貧弱な身体に苛立ちさえ覚える。
だが、守るにはこれで十分。
薄暗い下水の中、キュインと暗視スコープの機械音が響いた。
いったい何kgあるのよ!!
正直そう絶叫したい。
あたし達の軽快な足音とは正反対に重厚な音をたてるはんたの足。
駆けて着地する先から足場のコンクリートが罅割れていく。
表情は顔を覆うマスクのせいでまったく分からないが、
いつもどおりかけらも表情を変えていないのだろう。
そして溜息が出そうなほどに無駄の無い支援攻撃がはんたの手で行われていく。
いつ投げたのか分からないほど滑らかな動作で行われる手榴弾の投擲。
金属音がしたと思った瞬間に迸る稲妻。
間髪いれずに展開されるのは暴力的で圧倒的なシュートバレットの弾幕。
銃口から迸る立て続けの閃光で薄暗いはずの下水がちかちかと明滅を繰り返す。
AMFの展開さえ覚束ず動くことさえままならないガジェットドローンをあたし達が破壊していく。
下水道という閉鎖空間で相手が可哀想に思えるほどに徹底的な制圧。
蹂躙という言葉がふさわしいかもしれない。
逃げ場が無い空間を完全に支配している。
もしかしてあたし達、いらなかったんじゃないかと思ってしまうほどに。
「絶対マゾヒストフォームって名前間違ってるわ!!」
「・・・・・・ティアナさん、マゾヒストってなんですか?」
「あ、ティア。あたしも気になる!!」
「すいませんティアナさん。私も分からなかったんですけど・・・・・・。」
思わず口に出していた言葉に皆が反応する。
え・・・・・。みんなマゾの意味を知らない・・・・・・。
でも口にして説明するのもはばかられる。
どうしよう・・・・・・。
「えーと、その、あれよ・・・・・・。帰ったらいくらでも教えてあげるから今は任務に集中ね。」
「「「了解!!」」」
任務終わったらどうやってごまかすか考えておかないと・・・・・・。
淡々と機械的に処理されていくガジェットドローン達。
走り回ることなく相手の正面に立って手榴弾とシュートバレットを撃ち込んでいる。
歴史に出てくる重装歩兵ってこんなのかな?
完全に敵の無力化と妨害に集中しているのか1機も破壊していないはんた。
同時に一番被弾しているのもはんた。
ダメージを負った気配がないことを考えると、あの異様な黒光りのバリアジャケットが
半端じゃなく強固なものとなるのだけど・・・・・・。
走り回ることもできないぐらい重量があるのか、
それともそれが閉鎖空間での戦い方なのか。
支援さ
マゾヒスト自重ww
移動する遮蔽物になってくれていることには薄々気がついたけれど、
それが意図したものか、偶然なのかあたしには判断できない。
圧倒的な火力と防御力を兼ね備えたフォーム。
絶対にマゾじゃなくてサドだと思うんだけど気のせいかしら。
あれでマゾなんて言ったらサドってどうなるのよ・・・・・・。
ところで、いつになったらその手榴弾って弾切れになるの?
気がつくと新しいのがくっついている。
魔法の手榴弾なんてなかったはずなんだけど・・・・・・。
本当にはんたさんはすごい。
火力支援と防御をこなしているその立ち回り。
フロントアタッカーでもガードウイングでもセンターフォワードでもやっていける。
なんでもできるっていう言葉に偽りが本当に無い。
今までみたいに走りまわらないで被弾しているのが気になるけど、
はんたさんからすれば気にする必要さえない威力なのかもしれない。
あの重厚なバリアジャケットの前には・・・・・・。
でもガジェットの攻撃って結構な威力のはずなんだけど・・・・・。
それに可能な限り避けるほうがいいってフェイトさんも言っていたし・・・・・。
なんだろう。この違和感。
それにマゾヒストってどういう意味なんだろう?
たぶん、かっこいい意味なんだろうとは思うけど。
見た目から予測すると強襲とか重装とか蹂躙とかそんな意味かな。
後でティアナさんに教えてもらえるからいいか。
いっそのこと、フェイトさんに聞いてもいいかもしれない。
でも、僕達のバリアジャケットよりも戦闘用って感じがするはんたさんの姿。
アクセントもなにもない単純な黒ずくめの姿さえ、地形に合わせた迷彩。
バリアジャケットのデザインや色は防御力への影響は無いって言うけど、
こんな視覚的な効果があるって考えると、今の色変えたほうがいいのかな。
せめて白いマントじゃなくて黒いマントに・・・・・・。
姿を想像してみる・・・・・・あれ?案外いいかもしれない。
そんなことを思考の片隅に置きながら、
僕は気合いを入れて機能障害を起こしているガジェットドローンを叩き壊す。
AMFの影響がないだけでこんなに戦いが楽になるなんて・・・・・。
リニアのときも感じていたけど、正直驚きを隠せない。
あのときは1人で全部潰すことになったけれど、
皆と一緒に戦っている今回はなおさらその影響を強く感じる。
もしもはんたさんがいなかったら、今頃どうしていただろう。
たぶん、どんどん魔法を使っていただろう。
あるいはこんなにテンポよく壊しながら移動できなかったかもしれない。
そうじゃないとAMFが破れないから。
でも、ホテル・アグスタのときみたいに召還で増援が呼ばれるかもしれない。
そう考えると、今いるガジェットドローンに遠慮なく魔法を使っていくなんて
刹那的すぎるように思えてくる。
戦っているときにこんなことを考えているって知られたら物凄く怒られそうだけど、
どうしても考えてしまうほどに圧倒的。
スバルさんも殴りつけてはポンポン破壊している。
まるでバリアバッグ撃ちをしているみたいな感じで・・・・・・。
どこか拍子抜けしたみたいな表情を隠せないまま。
キャロは時折、スバルさんと僕に火力ブーストを使っている。
逃げ場の無いこの空間で、無防備になるにもかかわらず躊躇わずに支援魔法を使えるのは、
絶対に安心できる壁を作ってくれているはんたさんがいるからかな。
ティアナさんもはんたさんの後ろから射撃しているし・・・・・・。
もしかしてはんたさん、走り回れないんじゃなくてわざと走り回らないのかな。
後ろのことを考えて・・・・・・ああ!!
フロントアタッカーとガードウイングはセンターフォワードとフルバックに
こういう状況を作らないといけないのか。
物凄く勉強になる。僕もがんばらないと・・・・・・。
ところでフリードが出番なくされて落ち込んでいるように見えるのは気のせいかな。
そんなこんなでどれぐらい進んだ頃だろう。
スバルさんのお姉さんから何度目かの通信が入る。
「私が呼ばれた事故現場にあったのがガジェットの残骸と壊れた生体ポッドなんです。
ちょうど5,6歳の子供が入るくらいの・・・・・・。
近くに何か重いものを引きずって歩いたような跡があってそれを辿っていこうとした最中、
連絡を受けた次第です。
それからこの生体ポッド、少し前の事件で良く似たものを見た覚えがあるんです。」
「私も・・・・・・な。」
「人造魔導師計画の素体培養機。これはあくまで推測ですが、あの子は人造魔導師の
素体として作り出された子供ではないかと・・・・・・。」
「アルファの予測が当たってそうやな。」
はやて部隊長とスバルさんのお姉さんの会話。
その中に出てきた単語に僕は聞き覚えがありすぎた。
顔に出さずに聞けたか自信が無い。
下水を走り抜ける中、キャロが口を開く。
支援
支援!
待ってました!
B2マンタレイが見つからない支援!
ピチピチの奇形魚だよ支援
支援!
規制を食らってしまった模様
それでも私を破壊するのか支援
なにはともあれ支援。
大抵の初心者は砂ザメの餌だぜ支援
さるかな?
514 :
代理:2008/03/18(火) 23:35:15 ID:PxKqg02N
「人造魔導師って・・・・・・?」
「優秀な遺伝子を使って人工的に生み出した子供に投薬とか機械部品を埋め込んで、
後天的に強力な能力や魔力を持たせる。それが人造魔導師。」
「倫理的な問題はもちろん、今の技術じゃどうしたっていろんな部分で無理が生じる。
コストもあわない。だからよっぽどどうかしてる連中でもない限り手を出したりしない
技術のはずなんだけど・・・・・・。」
スバルさん達は施設育ちっていう以外、僕の生い立ちを知らない。
それでも、スバルさんの言葉は僕にあの光景を思い出させる。
僕が作られた命だってことを・・・・・・・。
今でも夢に見るあの日の記憶。
本当に親子だと疑いもせずに過ごしていた穏やかな日々。
僕がエリオであると疑いもしなかった日々。
そしてある日告げられたのは既に亡くなっていたオリジナルのエリオのこと。
僕が記憶転写クローンだということ。
引き裂かれた僕と両親。
あの子も同じなのか・・・・・・。
そんな思考をしていたとき、口を開いたのははんたさん。
正直意外だったけど、それ以上に内容が突き抜けていて呆然とさせられる。
「前にも聞いてうやむやになったがどのあたりが問題なんだ?」
「人工的に作って薬使ったりとか機械埋め込んでるんですよ?」
「だからそこのどこが問題なんだ?金がかかるあたりか?」
はんたさんの言葉に皆、唖然としている。
倫理観が無いって言っているも同然の言葉。
でも、そんなことを言うってことはもしかして、はんたさんも僕と同じ・・・・・・。
それなら、あの戦闘力も納得できるかもしれない。
後に後悔した。
自己完結しないで、この言葉の意味をもう少し深く聞いておけば・・・・・・。
過去に引きずられないで『なぜ?』とたった一言聞くことができたら、
未来は変わったのかもしれないって・・・・・・。
つい最近鮫に喰われた俺がいるぜ!
支援
516 :
代理:2008/03/18(火) 23:35:50 ID:PxKqg02N
「航空反応増大!!これ・・・・・嘘でしょ!!」
「なんだ・・・・・これは・・・・・・。」
「波形チェック。誤認じゃないよ。」
「問題出ません。どの反応も全て実機としか・・・・・・。」
「なのはさん達も目視で確認できるって・・・・・・。」
突然の事態にロングアーチスタッフ全員が軽いパニックに陥る。
ある意味当然の反応。
さっきまでなのはちゃん達が順調に倒していたガジェットの反応が、
管制室のディスプレイを埋め尽くさんばかりに増えたのだから・・・・・・。
誤認であってくれとの祈りも、計器の故障の可能性も全部違う。
今この瞬間、なのはちゃん達の目の前に敵の姿がある。
まさにこの状況は・・・・・・。
「敵はこっちのリミッターのことを知ってるってことやな。
怖いぐらいにあたるわ。アルファの予測・・・・・・。グリフィス君!!」
「・・・・・・はい。」
私は決意して管制室を出て行く。
リインフォースUと共に・・・・・・。
ガジェットに直撃したプラズマランサーが擦り抜ける。
かすんで消えていくガジェットの姿。
一方で爆発と共に残骸となって落ちていくガジェットもいる。
「幻影と実機の混成編隊・・・・・。」
思わずそう呟いていた。
目に見えて増えた敵のどれが本物でどれが幻影なのか区別が付かない。
ロングアーチもパニックを起こしたように悲鳴が上がっている。
本物と偽者合わせたガジェット全てから一斉に飛来したミサイル・・・・・・。
もちろん区別なんてつかない。
なのはと共にバリアを展開して防ぐ。
けれど、このままじゃ・・・・・・。
「防衛ラインを割られない自身はあるけど、ちょっとキリがないね。」
「ここまで派手な引付をするってことは・・・・・・。」
「アルファの予想通りだね。地下かヘリが本命。地下ははんた君がついているから問題は・・・・・・。」
「ヘリだね。なのは、私がここに残ってここを抑えるからヴィータと一緒に・・・・・・。」
「フェイトちゃん!?」
「コンビでもこのまま普通に空戦していたんじゃ時間がかかりすぎる。
でも、限定解除すれば広域殲滅で纏めて落とせる。」
「それはそうだけど・・・・・・。」
「なんだか嫌な予感がするんだ。アルファの言葉を聞いたからかもしれないけど・・・・・・。」
「でもフェイトちゃん。」
なのはが言い縋るけど、譲れない。
考えたくはない。
それでも、明確にイメージできてしまうのだ。
ヘリが撃墜される瞬間が・・・・・・。
こんな言い合いをしている時間さえ惜しいとさえ思うほどに。
そんなとき、通信が入る。
「割り込み失礼。ロングアーチからライトニング1へ。
その案も、限定解除申請も、部隊長権限で却下します。」
「はやて。」
「はやてちゃん。なんで騎士甲冑?」
「嫌な予感は私も同じでなぁ・・・・・・。クロノ君から私の限定解除許可を貰うことにした。空の掃除は私がやるよ。ちゅうことで、なのはちゃん、フェイトちゃんは地上に向かって
ヘリの護衛。ヴィータとリインはフォワード陣と合流。ケースの確保を手伝ってな。
ヴィータははんた君と喧嘩しないように。」
「「了解。」」
はやても同じだったんだ。
きっとなのはも内心同じだったのかもしれない。
とにかくヘリに急ごう。
嫌な予感が消えない・・・・・・。
ヘリまでの最短ルートを、雲を突き抜けながら空を駆けていく。
怖いぐらいに当たり続けるはんた君とアルファの予測がお願いだから外れてと願いながら。
「空の上はなんだか大変みたいね。」
「ケースの推定位置までもうすぐです。」
「うん。」
ガジェットをシュートバレットで破壊。
AMFが無いとこんなに楽なんて・・・・・・。
物質加速ぐらい覚えたほうがいいのかもしれない。
AMFなんてAAAランクスキルを機械が使っている今の状況が異常なのかもしれないけど。
それでもAMFを無視して戦えるとこんなに楽になるなんて初めての経験。
いつだったか、エリオがリニアで大暴れしたときを思い出す。
なるほど、これなら納得できる。
敵はAMF発生に多くの機能を裂かれているせいか、ボディの防御力はそれほどでもない。
大型になると硬いけれど、それはそれで専門のフロントアタッカーが叩くだろう。
現状でどう戦うのか選択肢が豊富なはんたが羨ましい。
冷たい右腕の感触を覚えているから、嫉妬なんてしないけれど・・・・・・。
どれだけ戦い続けてきたんだろう。
もしも、はんたがいなかったら、フリードのブラストフレアに頼りきりになるのかな。
現状でなにが最も有効なのかすぐに判断して効率的な戦闘をさせてくれる、
そんなはんたの支援の動きには本当に心を奪われる。
そんな状況のこっちとは正反対の、とにかく大変としか言いようが無い状況が
通信で伝わってくる。
なのはさん達やロングアーチの人達が悲鳴を上げるような状況。
八神部隊長が限定解除を使う状況なんて想像しきれない。
そんなとき・・・・・・。
518 :
代理:2008/03/18(火) 23:36:44 ID:PxKqg02N
「・・・・・・壁を突破してくる機影を確認。識別名ギンガ・ナカジマ。」
「ギンガさん・・・・・・壁を突破!?」
はんたの言葉に驚きの声を上げる。
ほぼ同時に轟音と共に破られたコンクリートの壁。
土煙で奪われる視界。
相手が誰か分かっていても警戒をするようになったのは、成長の証なのかもしれない。
晴れた土煙の中から現れたギンガさんのリボルバーナックルが駆動音を鳴らせた。
壁、壊しちゃって大丈夫なんですか?
「いっしょにケースを探しましょう。
ここまでのガジェットはほとんど叩いてきたと思うから・・・・・・。」
「うん。」
「ところで、そこの怪し・・・・・・じゃなくて、黒ずくめさんも仲間なのよね?」
ギンガさん、気持ちは分かります。
あの姿で悪者じゃありませんって、物凄く説得力無いです。
腕だけは優秀だけど、なんで性格に問題あるんだろう・・・・・・。
もったいない。
でも、それはあたしも同じか。
強くなりたいって馬鹿みたいに言い続けていたころ、どうして強くなりたいのか、
どんな強さが欲しいのかも分からずがむしゃらに在り続けたあたしを、
問題児じゃないっていうつもりは無い。
問題児なんてかけらも思っていなかったあたしが恥ずかしいくらい。
でも、あのバリアジャケットのセンスだけは絶対に悪い!!
これでマゾヒストフォームなんて名前だって教えたらギンガさん、どんな顔するんだろう。
いったい誰のネーミングセンス・・・・・・まさかシャーリーさん!?
「はんただ。動きながらでも話はできる。先へ行こう。残り12機で残存戦力は終わる。」
「あなたが・・・・・・。そうね。先を急ぎましょう。
それと、現場指揮はティアナのはずだけど?」
「それなら、ティアナ指示を。アルファ、クロスミラージュへレーダーを転送。」
「これは・・・・・・!?キャロ、火力ブーストをスバル、エリオ、ギンガさんの3人に
お願いできる?タイミングは任せるわ。」
「これで問題はないな。ギンガ。」
「え、ええ・・・・・・。」
どこか腑におちないような顔をするギンガさんを伴ってあたし達は先を急ぐ。
気持ちは分かります。
でも、このレーダーを見れば納得せざるを得ない。
「そういえばはんたさん。前みたいに皆と情報の共有しないんですか?
やったほうが戦うの物凄く楽になると思うんですけど・・・・・・。」
「管制スキル持ちがいないのに管制を使えるようになると無意識に頼るようになる。
だから共有はしていない。傍らにいられる限りは俺が守れる。お前達に怪我はさせない。」
「・・・・・・スバル。もしかしてはんたさん、管制技能あるの?」
「たぶん、ギン姉が思いつく技能のほとんどできると思うけど・・・・・・。」
「冗談・・・・・・よね?」
ギンガさんの言葉もごもっとも。
一度は言ってみたい言葉かもしれない。
『使える魔法は?』って尋ねられて『全部』なんて言葉・・・・・・。
何度目かの角を曲がるや否やはんたが何十個目かの手榴弾を投げる。
1発にとどまらず、何発も立て続けに・・・・・・。
投擲の先には待ち受けていたかのように通路を埋め尽くさんばかりのガジェットの群れ。
紫電が迸り、ガジェットが機能不全を起こす。
何度と見てきた光景。
あたし達は動けなくなった敵が再起動する前に壊せばいい。
ギンガさんがどこかぽかんとした表情をしているのも無理はない。
傍目には物凄く手馴れたコンビネーションに見えるだろうから・・・・・・。
しかし、はんたの手榴弾っていったい何個あるんだろう?
もしかしてサンダーフォールとかの亜種?
サンダーフォールの天候操作とヴァリアブルシュートの外殻を併用して・・・・・・まさかね。
AAAランクスキルとAAランクスキルを同時ってどんな技能よ!?
それに魔力切れした様子も息切れした様子もまったくないし!!
「キュクルルルゥ!!!!」
「フリード。ここで火を吐いたら皆が煙に撒かれちゃうでしょ。だからだめだよ。」
フリードがごねたのだろうか。
存在を忘れかけていたフリードの鳴き声にキャロが言い聞かせる。
なるほど。言われてみれば閉鎖空間で炎なんか使ったら・・・・・・。
バリアジャケットやフィールド系の魔法で熱は防げても酸素だけはどうしようもない。
それでやめさせていたのか。
閉鎖空間だから巨大化もままならないだろうし、
もしかしてここってフリードにとって鬼門?
そんなことを考えていたとき、奥からごろごろと転がってくるあれは・・・・・大型ガジェット。
はんたさんに援護をお願いしようとしたとき、聞こえてきた声は・・・・・・。
520 :
代理:2008/03/18(火) 23:37:54 ID:PxKqg02N
「スバル!!一撃で決められる?」
「決める!!」
「Are you ready?」
「Yes.」
ちょっとギンガさんとスバルなに言ってるのよ。
それにキャロの支援がまだでしょ。
もしかして2人とも人の話聞かな・・・・・・そういえば訓練校のころからそうだった。
そんなことを思っていると、響く金属音。
スバル達の頭越しになにかが飛んでいく。
迸る紫電。
ごろごろ転がっていた大型のガジェットがピタリと動きを止める。
「あ・・・・・・。」
「トライシー・・・・・・あれ?」
スバルとギンガさんのマヌケな声が響く。
もしかしてすっかり忘れてたとか熱血なノリで忘れてたとか・・・・・・。
ありえる。
動けなくなった大型のガジェットドローンにリボルバーナックルが音をたてて突き刺さる。
マッハキャリバー達も沈黙気味。
気まずい雰囲気全開で・・・・・・。
気持ちは分からないでもないけど、でもむやみに危険に突っ込む必要ないでしょう。
「ちょっとスバル!!フロントアタッカーだからって突っ込まない!!
それにキャロのブーストがあるからカートリッジ使う必要ないし、
はんたが相手を無力化できるんだからちゃんと支援もらうこと!!
ギンガさんも1人でたくさん叩き潰してきたからかもしれないですけど、
目の前で無効化する光景見ていたんだから突っ込まないでください!!
マッハキャリバー達もそこは止めるべき場所でしょう!!」
「「はい。」」
「「Sorry.」」
姉妹と同型機のデバイスが一緒に怒られる光景はなかなかシュールかもしれない。
そういえば・・・・・・。
スバル達に言ってて気がついた。
はんた、なんで被弾が多くなる戦い方してるの?
それに・・・・・・なんでまだ1機も落とせていないの?
ロングアーチの通信が正しければ、ガジェットの数は20機。
あれだけ弾幕を張って、手榴弾を投げていたのにはんたの撃破数は0。
いつもなら1人で全部片付けてしまう勢いなのに、なにかおかしくないだろうか。
問題があるとすれば耐用年数と安定しない事だと思うぜ支援
「目的地だ。」
はんたの声で思考を中断する。
目の前の任務をこなすほうが重要。
疑問は『支援に回っているから』なんて言葉で片付けてしまった。
もしも思いを口に出していたらなにか変わったのだろうか・・・・・・。
ケースの推定位置であるF-94区画。
そこにギン姉を加えたあたし達が到着する。
目的のケースはどこに・・・・・・。
「ありましたー!!」
キャロの声に一安心。
その言葉にあたし達は完全に油断しきっていた。
ロングアーチの通信にあったガジェット20機は全て倒していたから・・・・・・。
後はケースを回収して終わりだって・・・・・・。
突如響く頭上に響く何かが飛び跳ねるような音と駆け抜けるような足音。
けれど姿は見えない。
下水という薄暗い場所であることも祟った。
「なに?この音・・・・・・。」
ティアでさえそんな声で躊躇うことしかできなかった。
あたしもギン姉もエリオもなにかが一瞬いたかもしれないぐらいの認識。
呆然と見送るような形になってしまったあたし達の中で真っ先に動き始めたのは
やはりはんたさんだった。
「LOVEマシン1323、トリガー。」
はんたさん専用の魔法なのか?
叫ぶような声が響くと同時にトカゲのような姿が現れる。
幻影魔法解除!?
そんなことまでできるんですか!?
でも、驚いている暇があったら、迎撃体制を整えるべきだった。
あるいはキャロを助けるか・・・・・・。
なにが起こっているのかわかっていないキャロは突如視界に現れたトカゲに硬直したまま。
トカゲの目的は何か分からない。
けれど、このままだとキャロが・・・・・・。
そんなとき、はんたさんがケースを抱えたキャロを突き飛ばすと、
キャロの身体が宙を舞いケースがその手の中から零れ落ちる。
キャロの居場所と入れ替わるように身体を滑り込ませるはんたさん。
だけど、そんな状態で防御なんてできるはずがない!!
無理矢理割り込みをかけたような形となった以上、トカゲの攻撃の直撃を食らうのは必然。
はんたさんの動作に動揺してエリオの援護も遅れてしまう。
衝撃弾4発と鋭利なブレードの一撃がはんたさんに突き刺さる。
あんな重い一撃の直撃を食らったら重傷どころか致命・・・・・・。
523 :
代理:2008/03/18(火) 23:39:06 ID:PxKqg02N
「はんたさん!!!」
思わず叫んだ。
無防備であんな一撃を受けたら重傷どころじゃすまない。
けれど、あたしの目に映った光景はそれを裏切る。
はんたさんは吹き飛びさえしない。
あんなに重い一撃の直撃を受けたのに・・・・・・。
代わりにバリアジャケットがキラキラと輝いてはじけ飛んでいる。
あれはいったい・・・・・・。
あたし達の驚きよりもトカゲのほうが驚いたに違いない。
間違いなく必殺だった一撃を無防備で受けて平気な相手がいたとしたら、
驚かないほうが無理というもの。
そんな動揺を読みきったようにはんたさんが繰り出した躊躇無い鋭いボディーブローが
トカゲに突き刺さると、ゴム鞠がはねるような勢いで吹き飛んでいく。
その勢いのまま、壁にぶち当たると下水の壁に穴が空く。
身体ブーストとか掛かってないはずなのにいったいどんな・・・・・・。
ううん。今はそんなことより・・・・・・。
「ティア!!指示して!!」
「あ・・・・・・そうね。ギンガさん、スバル、前衛固めて。エリオはキャロの援護。
はんた、ダメージ報告後に援護。キャロはケースを確保!!」
「「「「了解!!」」」」
「了解。満タンドリンク。ノーダメージだ。そしてホテル以来だな。トカゲ。」
戸惑ったままだったティアにそう声をかけると、
一瞬だけ戸惑ったようなふうだったけれど、すぐに皆に指示を飛ばす。
はんたさんからの返事に皆が安堵する。
そして、気がつく・・・・・・。
ホテル以来?
「はんたさん、もしかしてあれがホテル・アグスタの侵入者?」
「そうだ。」
エリオの声にはんたさんが応じる。
対峙したトカゲを観察。
腹部の装甲が割れて落ちていく。
もしかすると、かなりまずい状況かもしれない。
このトカゲ、早いし、硬いし、疑いようも無く強い!!
はんたさんなら防御無視の攻撃手段をいくらでも持っていそうだけど、
下水だから壊しすぎれば天井が落ちてくる。
なにより、はんたさんの一撃で倒しきれないという事実が相手の強さを感じさせる。
あたし達を子供扱いできる強さのはんたさんが・・・・・・。
対峙したまま睨み合っているあたし達の後ろでキャロの戸惑うような声が響く。
視界に移るのは長い髪の女の子。
その子がケースを手に・・・・・・。
524 :
代理:2008/03/18(火) 23:39:53 ID:PxKqg02N
「邪魔・・・・・・。」
ケースを手にしたまま、物を見るような目で女の子が突き出した左腕から放たれる衝撃波。
咄嗟にフィールドを展開するキャロの前に割り込むように身体を入れるはんたさん。
「はんたさん!!」
絶対におかしい。
なんで避けないの!?
まるで自分から攻撃を喰らいにいっているみたい。
でも、避けない以上、反撃に最も早く移れる!!
狙うには余りにも自分の命を粗末にしすぎ。
なのはさん達なら青筋立てて怒らないはずがない戦い方。
はんたさんの振り上げた巨大な銃が女の子に振り下ろされる・・・・・・。
すると、今度はトカゲのほうが女の子をかばうみたいに身体を割り込ませる。
生肉を力一杯叩いたような音が響く。
骨が折れる音も血が吹き出したりもしないのに、痛みを覚えずにいられないほどの音が。いったいなんなの?
このどっちもかばい合って防御なんて考えていない状況は・・・・・・。
「アルファ、電撃鞭。」
そんな声を上げながら、トカゲの右足を左足で足場に皹が入る勢いで踏みつけると、
はんたさんが変形を始めたデバイスにトカゲの腕を噛ませる。
スライドしながら変形するデバイスに挟まれた甲殻が無残に引き千切られる。
そのまま胸に飛ぶ左ストレート。
これで決まった!!
けれど、はんたさんは左足を上げてしまう。
吹き飛ぶトカゲに巻き込まれるように女の子も転がる。
女の子の手から零れ落ちるケース。
下水の壁を再び壊して土煙が上がる。
はんたさん、今の一撃で終わったはずなのに・・・・・・。
いったいどうしちゃったの!?
それに、トカゲのブレードは折れていなかった。
さっき、はんたさんが突き立てられときは根元まで刺さっていたはずなのに・・・・・・。
絶対になにかおかしい!!
問い詰めないと・・・・・・。
そのとき、下水道内が突然飛来した何かで閃光と轟音に包まれた。
閃光が迸る前、ほんの一瞬だけ見えたのは、炎にこれでもかと包まれるはんたさんの姿・・・・・・。
525 :
代理:2008/03/18(火) 23:41:59 ID:PxKqg02N
『我ら守護騎士は主のためなら誇りさえ捨てると決めたのだ・・・・・・。』
守るとは?
マスターが問いかけをしたとき、シグナムが話した昔話。
その中に出てきた言葉の一節。
それこそが私がもっとも到達して欲しくなった言葉への道標。
誇りなんてマスターは笑うだろう。
誇りで敵は倒せない。誇りで金は手に入らない。誇りでお腹は膨れない。
そんなふうに・・・・・・。
けれど、自分の身体さえ省みないという在り方。
それがマスターに『守る』という概念を植えてしまう。
殺せない生物が成せる『守る』という答えはそれしかないから・・・・・・。
マスターが守るという言葉として理解したもの。
それは自己犠牲・・・・・・。
例え自分が血塗れになっても構わない。
壊れかけの身体を引きずりながら戦い続ける。
誰かが傷つく代わりに自分が肩代わりするという壊れた思考。
相手を壊さず、仲間を傷つけず、己の身だけはどこまで壊れても構わない。
そんな非論理的すぎる思考論理。
少しでもダメージを軽減しようと装甲タイルで防御をあげようとしたのは理解できる。
けれど、装甲タイルは万能ではない。それはマスターも知っているはず。
一点集中の貫通属性持ちの一撃や桁外れの大出力の一撃の前には変換が追いつかない。
だからこそ、戦車砲の徹甲弾や成形炸薬弾や私のパイルバンカーといった一点集中の攻撃、
あるいはエクスカリバーのような高出力レーザーに
レッドフォックスの高速振動剣のような大威力の攻撃を前にすると、
本体にまでダメージを受けてしまう。
事実、レッドフォックスと戦ったとき、戦車は完膚なきまでに破壊された。
装甲タイルが残っていたのにも関わらず。
そして、以前であれば間に合わないとしても回避動作ぐらいは取ったはずなのに、
今のマスターはそれさえ行わない。
回避すれば他の人間への攻撃時間が増えてしまうから。
むしろ自分から致命傷にならないように相手の攻撃を直撃させる。
それだけで反撃までの動作が1アクション早くなるから。
トカゲのブレードは紛れも無く右の胸に突き刺さった。
装甲タイルはわずか4枚しか減っていない程度のダメージ。
だが、ブレード自身は肋骨を圧し折り肺を貫き肩甲骨まで貫いている。
けれど、マスターにしてみればその程度のダメージはダメージと呼ばない。
既にマスターの認識は既に無傷、負傷、行動不能の3つしか存在しない。
機械であれば紛れも無く中破クラスのダメージさえ、負傷にすぎない。
行動不能になりさえしなければ僅かばかりも気にせずそのままでいるだろう。
そしてそんな状態で反撃を繰り出す。
代理投下してたけどさるさん喰らった
支援足んないよ住民何してんの?
支援
しかし、なんか凄い過疎ってるな?
どうしたんだ?
528 :
代理2:2008/03/18(火) 23:47:04 ID:OL6b5s5n
さらにダメージは満タンドリンクによって強制的に瞬間的に治療する。
もうどれだけ身体が汚染されているか知っているはずなのに・・・・・・。
なにより致命的なのは殺せないという現状。
以前であれば最初の一撃で相手を殺していた。
原因の排除をしてしまえばこれ以上ダメージを受けることはないから・・・・・・。
しかし、約束のせいであの荒野で当然のシークエンスが行えない。
だから、相手を吹き飛ばすにとどまってしまう。
どれだけの必殺の状況を作れたとしても・・・・・・。
今のマスターの状態で戦いが長引けば負傷が増えるばかり。
守るためには原因を排除するのが一番ダメージを減らせるというのに、
原因の排除ができないという矛盾を抱えたがゆえの行動。
マスターの思考を改変してしまいたい。
機械であればデバッグすれば終わる作業。
けれど、人間であるマスターに干渉する手段が存在しない現状が立ちふさがる。
それが余りにも・・・・・・辛い。
マスターも既に気がついているだろう。
始まり始めた身体の異常に・・・・・・。
それでもマスターは止めないし止まれない。
殺すということを奪われた以上、なにかで代用してプログラムを奔らせないと、
自分自身が破綻してしまうから・・・・・・。
遺伝子にまで染み込んだ戦闘技術。
無意識で殺す方向に動く身体。
それを当たり前とする本能。
既に身体は殺す理由があれば殺さずにいられない状態になっている。
そんな状態の身体なのに人間には本来不可能であるはずの無意識さえも、
理性と意思だけで押さえつける。
高町なのはとの約束を守るために・・・・・・。
それはさながら高速で回るエンジンを力づくで止めようとするかのよう。
エンジンでそんなことをすればブレーキか、あるいはエンジン自身が確実に壊れる。
ならば、マスターの場合はなにが壊れる?
理性?身体?それとも・・・・・・ココロ?
マスターのバイタルは既に全身イエローアラート。
外傷が無いだけという状態に過ぎない。
オイホロトキシン配合の回復薬の最上位種である満タンドリンクを使ったというのに・・・・・・。
どんな手段でもいい。
マスターの意識を、鋼のような意思と理性を冒しつくして、
『殺す』というシークエンスを奔る事が出来るように弄れないのか。
529 :
代理2:2008/03/18(火) 23:47:27 ID:OL6b5s5n
検索の果て、精神操作の魔法の該当はあった。
けれど、無駄だと思い知る。
無意識さえ制御するマスターだから精神操作の魔法なんて簡単に拒絶してしまう。
そして、薬物操作しようにもあの薬の末期患者寸前の身体には全ての薬が通用しない。
魔法も不可。薬物も不可。
なにか方法はないのか・・・・・・。
0と1の思考しか持たぬ機械の私が焦りを覚えるほどに事態は切迫していた。
そんなとき、迫撃砲のような爆風を叩き込んだ小さな個体が現れる。
回避動作さえとろうとしない攻撃はマスターに直撃。
もっとも、貫通属性が無い以上、装甲タイルの前には無力。
この程度の熱量でダメージを本体まで抜けるものか。
ダメージチェック・・・・・・装甲タイル9枚の損傷を確認。
魔力より損傷した装甲タイルを補填、再構築まで2秒・・・・・・再構築完了。
敵影を確認。対象の言葉より個体名アギトと設定、登録・・・・・・。
あれは、リインフォースUと同じ融合機?
・・・・・・融合機?
融合機・・・・・・。融合・・・・・・融合・・・・・・ユウゴウユウゴウユウゴウ・・・・・・。
ワタシハ・・・・・・コタエヲ・・・・・・ミツケタ・・・・・・。
支援
寝てるとか
ベルナールはほんとに犬なのか?支援
支援
533 :
代理2:2008/03/18(火) 23:48:36 ID:OL6b5s5n
以上。最後だけ掻っ攫ってすまぬ
はんたがやばい!
アルファ、アルファ頑張れ!
支援
代理投下ありがとうございました。
100KB超えるとおもいきや、1/4で済んだ模様。
ワードの20000文字200KB=レスで50KBって覚えておくことにします。
感想ご指摘お待ちしてます。あと、『なおす』に関して誤字だと思う物がありますが、意図的なものです。
GJ!
久しぶりにメタサガクロスを読んだら、はんたもアルファもえらい思考に……w
そして、
>高速で回るエンジンを力ずくで止めようとするかのよう
この辺でスパイラルっつう漫画のカノンを思い出しました。
果たしてはんたはどうなるやら……
そろそろなのは勢の誰かが気付いてやって欲しい…
戦塵の荒野とドS設定が主流の平和な世界の壁はそれだけ厚いのだろうか
それにしてもアルファは完全にAIの範疇を脱してると思うんだぜ
GJ!!です。
すいません。読むほうに専念しちゃって支援し忘れてました。
はんた・・・自己犠牲か、究極の守る方法だけど不味過ぎだよ。
最後のアルファの言葉をみて融合機によくある事故が。
GJ
なんという不器用さ
このはんたらしい選択とも言える
自己犠牲というとアマ公とかも守るために命かけて死んでいったな
彼女の場合は力があったとしても守れなかったという悲劇だけど
>>536 容量を確認するのなら一旦ワードファイルをテキストファイルに変更して保存して、それで容量を確認するといいですよー。
テキスト形式なら純粋な文字量による容量だけが出ますから。
そして、GJ!
はんたがヤバイ。
殺せない、殺せないが故に戦力を排除出来ない、そしてそれ故に護るという選択肢。
けれど、それは極限まで己の本当と戦闘方法を排除し、自分の体を軋轢させる方法だったということですね。
とりあえずなのはは一人の人間を崩壊寸前まで追い込んでしまったなー(そんな意図はなかったとはいえ)
もしや、最後の敵ははんた及びアルファか?その融合体か?
まずは素早い感想を下さった皆様に最大級の感謝を。
以下レスです。
>>537 ありがとうございます。日曜までには投下できるはずだったのですが、データが吹っ飛びました。
まめに保存していたのに。文字数で言うと10000文字ほど。CPU負荷が高い作業しながらワード動かしちゃだめですね。
>>538 さて、どうなるでしょう。残された時間はどのくらいでしょうね。今後をお楽しみに。
現在12話着手中。
>>539 さて、どうなるでしょう。でも、次の改造フラグがばればれでしたね。
もう少し控えるべきか、突き抜けた思考回路を書くべきか悩み書くほうを選びました。
>>540 いつもの殺伐分が少なめでしたがいかがでしょうか。はんたの不器用さがやがてどこにたどり着くかお楽しみに。
>>541 なんと!!テキストという手段があったとは。参考になります。次回から試してみますね。
ちなみに『殺せない』条件を持ち出したのははんたからです。
高町なのはという個体の価値としてそれが釣り合うと無意識に判断した結果です。
しかし、アルファにとってみればその価値は別の解釈となります。価値の相違がどれだけのことを引き起こすかお楽しみに。
>>542 やばいwwwwwwwwwwwwwww。。な、なんのことでしょうね。
それはひみつです。バレバレすぎな気もしますがひみつなんです!!
ちらほら気がつき始めている人がいるけどきのせいでひみつなんです!!!OK?
うー、次に投下するつもりでしたが夜も遅くなりましたので明日以降に回します。
もし待っていた人がいたら(いるわけがないがw)すみません。
あとメタルサーガ氏、GJです。
はんたと周囲の認識の差がやばいw
はんたが相変わらずヤバいぜ…
不器用だなぁ…本当に不器用で真っ直ぐだよなぁ。はんた。
なのは、はんたを助けてやってくれ。
次回以降が楽しみ過ぎて狂っちまいそうだ!
>>545 チューナーが食うことをやめるのと同じぐらいの破滅まっしぐらだからな
アルファがどう出るかだな
計算がおかしい、全角文字は一文字2byte
1000字=2kB ベタテキスト20000字なら40kB
ワードファイルはフォントやスタイル情報の付与のためにサイズが肥大化するだけ
保存をテキスト形式にしてみろ、全角文字数×2に絶対になる
(スペースや改行も文字数にカウントされるからその分無視して合わないとか言わないように)
・・・そうか、そういう場合があったか・・・
代理のときはどの作品の代理か名前に入れて欲しいと思うんだが・・・
何という素敵な人狼スタイル。
MG42のバースト射撃が見れなかったのが実に残念です。
視点がコロコロ変わって読み辛いな
メタルサーガGJ SS読んで埃かぶってたソフトを引っ張り出したよ。
>>551 たしかに。視点を変える時はそれが分かるように記号などで区切って
もらえると分かりやすくなるよね。
ああ、それにしてもなんというか、テッカマンブレード最終話一個前の
アキの心境。神様、あなたは何処にいるのですか。はんたをどこまで
苦しめる気ですかー。
夜中に目が覚めて見てみればたくさんの感想が。深夜の感想ありがとうございます。
>>544 認識のずれがどのような結果を引き起こすか今後をお楽しみに。
>>545 12話は鋭利製作中です。週末までには書き上げる勢いで進めています。
何とか15話までは3月の間に到達させたいところです。
>>546 どれほどやばいか感じ取っていただけたみたいで嬉しいです。今後をお楽しみに。
>>550 気がついていただけたようでなによりです。以前雑談スレであれ?いけるんじゃね?って流れになりまして実現しました。
どの程度の頻度で使用できるか、今後をお楽しみに。
可能であればMG42もたせたかったのですけど、原作メタサガ未登場+はんたの思考変更+ベルトリンクの使い方があったため、
登場には至りませんでした。奇声を上げてボロロロロって撃たせたり、背中から新たな弾帯を引きずり出してリロードしたりさせたかったですけどね。
ミニバルカンで妥協してくださいな。
>>551 >>552 1話のころから言われているので、対策を考えます。
視点人物を変えて話を書いているスタイルのため、区別できるよう視点変更のときは
改行2回で分けていたのですがそれでも追いつかないようですね。
12話では視点人物名を冒頭にいれて書いてみようと思います。
ハッピーエンドの28話まで頑張って到達します。
>12話では視点人物名を冒頭にいれて書いてみようと思います。
そんなことやられると一気に冷めるんだが
改行とかじゃなくて □ や ========= みたいにパッと見わかりやすい区切りのがいいと思うよ
あと
>>514のエリオの部分で
>後に後悔した〜
ってあるけど、個人の現在の視点で書いてるのに未来が規定されてるってどうなの?
回想であのときこうだったならば、ならわかるけど
ああいった書き方は伏線を強調する為に使われる手法なので間違いとも言い切れないものだが、ある意味ネタバレなので多用されると嫌悪感を抱く人間も出るのもありか
後悔先に立たず、な部分を繰り返すことで作品の外に在る読む者にもどかしさと、先の展開を想像させる余地を作る、読者に対する仕掛けと言ってしまえばそれまでなんだけどw
ま、価値観の違う全ての人間が納得できる作品はこの世のどこにもなくて
要は自らの好みの問題で自由に線引きをするしかないかも
>>554 >>555 なるほど。たしかに=====なんかで区切るのが一番確実かもしれないですね。
まずはいろいろ試してみます。ありがとうございました。
>>556 個人的に氏の表現や文体の癖みたいなものに慣れたら問題ないと思うのですが、分かりやすくして損はないとも思ったりしますw
伏線の張り方や描写と文章構築の遊び心にいつも感服しますので、次回も頑張ってくださいませ〜
いない可能性が大かもしれませんが、12時ごろにスパロボEの第4話終了のインターミッションを投下したいと思います。
>>554 いやわりとよくある手法だからwww
自分の貧弱な知識晒し乙www
さてと投下いきましょうか。
「クロスナイト」はなのはを保護し、戦域を完全離脱し、アースラの方で、レイジングハート・エクセリオンの説明と、闇の書の説明を受ける。
「なのはちゃん、レイジングハート・エクセリオンには3つのモードがあって、中距離射撃のアクセルと砲撃のバスター、フルドライブのエクセリオンモード
でもエクシードモードは破損の危険があるから、フルドライブはフレーム強化をするまで起動させないでね」
「はい」
エイミィの説明になのはは、元気よく答える。
「では、闇の書の事を教えていただけませんか?」
最近「クロスナイト」に合流したゼクス・マーキスが、リンディとクロノに尋ねる。
「わかりました。説明します」
「第一に闇の書の力は、ジュエルシードみたいに自由な制御が利くものじゃありません」
クロノの言葉にリンディが続く。
「完成前も完成後も、純粋な破壊にしか使えない。少なくとも、それ以外に使われたという記録は一度もありませんわ」
「そうか……」
ゼクスが納得したように答える。
「それからもう一つ、あの騎士達。闇の書の守護者の性質だ。彼らは人間でも使い魔でもない。
闇の書に合わせて魔法技術で作られた擬似人格。主の命令を受けて行動する、ただそれだけのプログラムに過ぎないはずなんだ」
(ただのプログラムか……)
クロノの言葉に、ヒイロは考える。先日になってようやくわかったことだが、謎のモビルスーツ軍団はマリーメイア・クシュリュナーダの軍であり、
その中には、かつて自分達と共に戦ったガンダム、アルトロンガンダムとそのパイロットの張五飛の姿もあった。
(ちなみに仲間のトロワ・バートンもいたが、トロワは潜入をしていただけであり、トロワも先日合流した。)
五飛と久しぶりに会った時、五飛はヒイロにこう言った。
「俺達は戦う事でしか自分をみいだせない!」
その言葉が今、ヒイロの頭に引っかかっている。
(つまりあの守護騎士も戦う為だけの兵士なのか?)
「それじゃあ、モニターで説明しよっか」
ヒイロが考えている間に、エイミィは部屋の電気を消し、守護騎士達の映像を映す。
「守護者たちは闇の書に内蔵されたプログラムが人の形を取ったもの」
モニターに闇の書が大きく映し出される。
「闇の書は転生と再生を繰り返すけど、この四人はずっと闇の書と共に様々な主の下を渡り歩いている」
クロノの言葉の続きをエイミィが続ける。
「意思疎通のための対話能力は過去の事件でも確認されてるんだけどね。感情を見せたって例は今までにないの」
その言葉に、なのはとジェット、デュオは反論する。
「でも、あの帽子の子。ヴィータちゃんは怒ったり悲しんだりしてた」
「シグナムと言う女性からも、はっきり人格を感じた。成すべきことがあるって、仲間と主のためだって言ってたぜ」
「シグナム? あのピンク色の髪の姉ちゃんか。あいつがフェイトと戦ってた時に、俺が横槍を入れたら怒ってたな……」
なのはとジェットとデュオの言葉を聞いて、ヒイロはまた考える。
(と言うことは、あいつらは戦う為だけの兵士と言う事ではないのか?)
「まぁ、それについては捜査に当たってる局員からの情報を待ちましょう」
「そうですね。我々の今の目的はジュエルシードの確保や、他勢力から地球を守ることです」
ロムがそう言うと、クロノが付け加える。
「ジュエルシードなんですが……、なのは、君はさっきフェイトとジュエルシードを取ろうとした時、光が出て、世界全体が揺れたよね」
「うん……」
「あれが次元震なんだ。あの闇の書の力もあいまっての事かもしれないけど、ジュエルシード一個であれだけの次元震が起こる。つまり、あれがいくつも集まったら……」
「大変だな……」
隼人が、率直な意見を言う。
「……ッ」
「あ……ご、ごめんよフェイト。ちょっと我慢して……」
フェイトがほんのわずかに顔を歪めた事に気付き、アルフは慌てて消毒液を含んだ脱脂綿を彼女の手から離す。
フェイトはあの後、アルフに抱きかかえられ、隠れ家に戻ってきて、目を覚ましたのは戻ってきてから30分後である。
目を覚ました直後のフェイトの姿は、酷い有様だった。バリアジャケットはボロボロ、特に手のひらには、痛々しいまでの傷跡が残されていた。
「平気だよ……ありがとう、アルフ。それにあのくらいしないと、また母さんに叱られるしね……」
「何言ってんだい! フェイト、下手したらあんたは死ぬところだったんだよ!」
アルフは泣きながら、フェイトに怒る。アルフがフェイトに対して怒るのは始めてである。
「あたしは本当にフェイトの事を心配して言ってんだよ! だから、こんな無茶しないで……」
「アルフ……」
フェイトは、泣いているアルフの頭をそっと撫でる。
「大丈夫だよ、今度はあんな無茶はしない。それに無茶をしそうになったら、アルフが助けてね」
「わかったよ、フェイト」
ヴォルケンリッター達は、八神家に戻ってきており、肝心のはやては4人の帰りが遅かったとの事で、親友の家に泊めてもらう事になった。
その親友、月村すずかが、なのはの友達だと言う事を4人は知らない。シグナムとシャマルが家の庭で、今回の事を考える。
「シャマル、あのジュエルシードと言うロストロギア、お前はどう思う?」
「正直、危険だわ。あなたが戦っていたテスタロッサちゃんと、ヴィータちゃんが戦っていたなのはちゃんのデバイスを同時に当てただけで、
あれだけの次元震を起こすなんて……」
「やはりそう思うか。しかし、あれだけの力があれば、闇の書の完成は早まらないか?」
シグナムの考えを感じ、シャマルは尋ねる。
「シグナム、あなたまさか……」
「あのジュエルシードをどうにか我々で確保したい」
「ダメよ、あんな危険な物。もし闇の書が蒐集したとして、闇の書が無事かどうかわからないわ。それに闇の書に何かあったら、はやてちゃんは……」
何で彼女達が闇の書の頁を集めるのか、簡潔に説明しよう。
彼女達守護騎士は、クロノが言ったとおり、闇の書から生まれたプログラムである。
そして彼女達の目的は主の為に、闇の書を完成させるものだが、新たな闇の書の主の八神はやてはそれを望まなかった。
闇の書蒐集には、主にリンカーコアを必要とする。(何故かロボットからもリンカーコアではないものの、蒐集でき、頁を増やせれている)
はやてはそれでは、人に迷惑がかかると言い、シグナム達に闇の書の蒐集を禁じた。
しかし八神はやての足は生まれたときから不自由で、その原因は病気ではなく、闇の書がはやてのリンカーコアを蝕んでいたのだ。
このままでは、はやてが死んでしまう。今までの主とは違うはやてを死なせたくない。
シグナム達は、はやてに内緒で闇の書蒐集を始めたのだ。それは8月の下旬頃からである。
「確かに主はやてにも危機があるかもしれない。だがもはやそんな悠長な事を言っている場合ではない。お前もわかっているだろう。
ミケーネ帝国に最近現れたギャンドラーやバンカーにマリーメイア軍、奴らがいる以上、主はやての身は危ない」
「それはそうだけど……」
「だから、早く真の闇の書の主に目覚めれば……、そんな危険もないはず……。それに私は主の笑顔を絶やしたくない」
「それはあたしも同じだ」
はやての電話を終えたヴィータが庭に出てくる。
『ヴィータ(ちゃん)』
「あたしははやてがあったかいご飯を作って、そして笑顔で待ってくれてるはやてが好きだ。だからそれくらいの事でいちいち考えてられない。
だから、あたしはどんな痛い目にあっても絶対痛くない。だったら、ジュエルシードも手に入れてやるさ」
「ヴィータちゃん……。わかった。私も出来る限りの事はするわ」
守護騎士達の決意はさらに固くなるのであった。
投下完了。
今回と次回は短いですね。次回は第5話までのあらすじになります。いっきに話が飛びますね。
GJ
僕も新話が完成しました。
少しぎこちないけど投下おk?
やはり時間が時間だから反応無いか…
【平成ライダーサイド】七話「キンタロス怒る」Bパート
【翌日 デンライナー食堂車内】
「こっの馬鹿野郎!!」
モモタロスはキンタロスの胸倉を掴み、力一杯彼の頬を殴る。
「ぐっ!」
キンタロスは床の上に倒れ、殴られた頬を押さえた。
「大口叩いといて、敵にキャロをさらわれるってな、どうゆう了見だ?ああ!熊公!?」
「モモタロス!」
『モモタロス!』
良太郎とフェイト、再びキンタロスを殴ろうと彼に近づいていくモモタロスを背中から押さえ、止める。
「離せ良太郎!フェイト!エリオ!コイツは…」
「やりすぎだよ!キンタロスだって必死に…」
「私だって!一方的にキンタロスが悪いなんて思ってない!」
「僕だって、敵が硬化剤なんていう能力持ちだったら、どうなっていたか…」
「良太郎、フェイト、エリオ…止めんでくれ。」
「え?」
キンタロスはゆっくりと立ち上がりそう言った。
「モモヒキの言う通りや…俺も、四年前の激戦を潜り抜けた仮面ライダーや…
だから、どんな敵が来ても恐ろしゅうないおもうて、調子に乗ってしもた…俺はこんな情け無い俺が許せん!
良太郎!フェイト!エリオ!お前らも殴ってくれ!俺を、殴り殺すほど殴ってくれ!
俺はこんな俺が許せん!こんな俺は一度死んで、新しい俺に生まれ変わりたいんや!
頼む…殴ってくれ…俺を…殴ってくれ!」
キンタロスの台詞に、嗚咽が混じり始める。
モモタロスも良太郎もフェイトもエリオも、それ以上キンタロスに何も言うことは出来なかった…
【町田 倉庫 AAMON実験場】
町田の外れにある人気の無い倉庫街にある大きな倉庫…
ここは、AAMONの実験場の一つであった。
夕べ囚われたキャロは、この場所に連れてこられていた。
「どうだいお嬢ちゃん?お加減は?」
「くっ…!」
トカゲバイキングが現れ、彼女に話しかける。
キャロは、手枷足枷付きの椅子に固定され、身動きが取れずにいた。
「純一から聞いたわ…貴方、古代ベルカなんだってね?」
「!?」
キャロの耳に女性の声が聞こえ、近くの機械の影から三輪夏美が現れた。
「貴方は?」
「三輪夏美…仮面ライダーラルクよ。」
「ラルク…」
キャロはエリオからAAMON側の仮面ライダーが存在するという話を聞いていた為、ラルク・夏美は敵方の仮面ライダーだということを即座に覚る。
「貴女が…エリオ君が言っていた…」
「エリオ?ああ、浅間山で会ったあの子ね…」
「貴女、人間なんですよね!?」
「ええ。そうよ。」
「だったら!何でAAMONになんか協力するんですか!?あの人達は、悪い人達なんですよ!?」
「悪い…ですって?」
夏美はキャロに顔を近づけ、不気味に微笑む。
「え?」
「アンタみたいなお子ちゃまの薄っぺらな正義感で語らないでよ。
アタシから言わせれば、この世界のほうがよっぽど悪よ。
日本の政界を衰退させたばかりな無能な政治家や儲けることしか考えていない馬鹿な企業の社長、それに、女を単なるお茶酌み機械やセクハラの道具としか見ていない下劣な男供…
こんなクズばかりがはびこるこの世界の方が、本当の悪よ。
けど、AAMONが世界を統治すれば、きっとこの世界は美しい世界になる…
きっと…楽しい世界になる…」
「そんなの、絶対違います!」
「クッ!」
夏美はキャロから顔を離し、キャロの頬に強烈な平手打ちを見舞った。
「きゃっ!?」
「…」
夏美は顔をしかめながら、キャロの傍から離れて行った。
「おお…恐…」
それを見ていたトカゲバイキングは、夏美のヒステリーに恐怖を覚え、身震いする。
【デンライナー食堂車内】
「あ。」
キャロの安否を心配していたフェイトの携帯電話(デンライナーの中でも繋がる特別改造品)が鳴り響き、フェイトは電話に出る。
「もしもし…あ!ダンキさん!」
電話の主はダンキだ。
「え…町田の倉庫!?ええ…そうですか!分かりました!ありがとうございます!」
フェイトは微笑みながら電話を切った。
そして、良太郎、エリオ、キンタロスの方に向き直る。
「三人とも!キャロが見つかったよ!」
『え!?』
三人は勢い良く椅子から立ち上がり、驚いた表情を見せる。
「ホンマかいな!?」
「本当ですかフェイトさん!?」
「でも…一体どうやって…」
「実はさっき、他のライダーの皆に無理言って頼んだよ。怪しい場所を探して欲しいって。
そしたら今、ダンキさんから連絡があって、今エイキさんと一緒に、町田の倉庫の近くに居るんだって!」
「町田?」
「そこにキャロが居るんだよ!助けに行こう!良太郎!エリオ!キンタロス!」
「うん!」
「はい!」
「…」
勢い良く返事をした良太郎、エリオと違い、キンタロスは何も言わなかった。
「キンタロス?どうしたの?」
「良太郎…俺は行けん。」
『え?』
良太郎、エリオ、フェイトの三人はキンタロスのらしくない言動に驚き、目を丸くする。
「俺は…キャロを守れんかった…どの面下げて助けに行け言うんや?
きっと…俺のことを許してへんにきまっとる…」
「キンタロス…キャロはそんな子じゃ…」
「待ってフェイトちゃん。」
良太郎はキンタロスを慰めようとするフェイトを止め、代わりに自分がキンタロスに話しかける。
「キンタロス、もしそうだったとしても、キンタロスはそれで良いの?」
「むぅ…」
「本当はキャロの事、今すぐ助けに行きたいんじゃないの?」
「…」
「大事な事は、許されるか許されないかじゃなくて、キンタロスがキャロを助けたいかどうかだよ。
無理して、自分を束縛するようなことなんていっちゃ駄目だよ。
キンタロスの本心を聞かせて。」
「…!」
キンタロスは椅子から勢い良く立ち上がり、フェイトに頭を下げる。
「頼む…キャロを助けに行かせてくれ!あの子に謝りたいんや…頼む!」
「キンタロス…」
フェイトは微笑み、キンタロスの肩に手を置く。
「!」
「さっきも、「一緒に行こう」って行ったよね?」
「は…!おおきに!良太郎も…おおきに!」
『どういたしまして。』
【町田 倉庫地下 地下牢獄】
「うぇ〜ん!」
「ママ〜!」
倉庫の地下は牢獄になっており、さらわれた子供達はそこに閉じ込められていた。
キャロも拘束椅子から開放され、今は地下牢に閉じ込められている。
「大丈夫。泣かないで。」
キャロは必死に泣きじゃくる子供達をなだめ、落ち着かせようとしていた。
「きっと助けが来るよ。」
「でも…」
「大丈夫…大丈夫…(キンちゃん…)」
【倉庫街】
一方、K良太郎、フェイト、エリオの三人は、倉庫街でダンキ、エイキと合流していた。
「ダンキさん!エイキさん!」
「よお!」
「久々!」
フェイトはダンキ、エイキと交互に握手する。
「早速ですけど…」
「分かってるって、あそこだ。」
ダンキは倉庫街でも一際大きな倉庫を指差す。
「連絡を受けて町を探していたら、誘拐現場を目撃してな。
子供をすぐ助けようと思ったんだが、よく考えたら、あのまま後を着けた方が良いと思って、ここまで追ってきたんだ。
エイキさんは、比較的町田の近くに居たから俺が呼んだんだよ。」
「流石ですよ、ダンキさん!」
「ははは!褒めろ褒めろ!」
エリオに褒められ、調子に乗るダンキ。
しかし…
「短気なダンキさんらしくないけど、ありがとうございます。」
「おうおう褒め…ってフェイトさん!そりゃ無いでしょ!」
『アハハハハ!』
フェイトには(無意識に)たしなめられ、気を悪くするダンキ。
しかも皆に笑われるというおまけつきで。
「笑うな!エイキさんも笑わないで下さい!」
「悪い悪い!さってと、役者も揃ったことだし、乗り込んで子供を助けに…」
『ギィ!!』
エイキがそう言った瞬間、地面からアスファルトを破り、沢山の戦闘員が現れた。
「フェイトさん!AAMONです!」
「クッ!こんな時に…」
「丁度良いや!なれない待ち伏せで、イライラしてるんだ!」
ダンキは音叉を鳴らし、仮面ライダー弾鬼に変身する。
「ノリが良いねぇダンキ!じゃあ俺も蹴散らすぜ!」
エイキも自分の音叉を鳴らし、仮面ライダー鋭鬼へと変身を遂げる。
「キンタロス!キャロを助けに!」
エリオはバリアジャケットを身に纏い、K良太郎にそう言う。
「ここは、私達が食い止める!」
フェイトもバリアジャケットを装着し、K良太郎にキャロを助けに行くよう促した。
「おお!行くでえぇぇぇぇぇぇぇぇえ!!」
K良太郎は一直線に突っ走り、倉庫に向かっていった。
「っしゃあ!キンタロス!キャロをキャロ(けろ)っと助けて来いよ!」
「鋭鬼さん!つまりません!」
「うるせぇぞ弾鬼!」
【倉庫内】
「ライダー共が?」
「は!戦闘員達が現在、外で戦闘中です!」
「トカゲバイキング!今すぐ地下の子供達を連れて、逃げるわよ!」
「ハハ!」
トカゲバイキングと夏美がアジトの放棄を決め、地下牢獄に向かおうとした瞬間、轟音を立て、倉庫の入り口が吹き飛んだ。
『!?』
二人が入り口の方を見ると、そこには表情に怒りを宿したK良太郎の姿があった。
「キ…キサマは夕べの…」
トカゲバイキングはK良太郎の気迫に圧倒され、数歩後ずさる。
K良太郎は表情に怒りを滾らせたまま、デンオウベルトを腰に巻いて黄色いボタンを押した。
「変身!」
そしてライダーパスをセタッチし、金色の戦士・仮面ライダー電王・アックスフォームに変身する。
アックスフォームへの変身と共に、周囲に懐紙吹雪が巻き起こり、電王はその中の一枚を掴んで夏美とトカゲバイキングに突きつけた。
「俺の強さにお前が泣いた…涙はコレで吹いておけ!」
570 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/19(水) 13:24:38 ID:AJiguBe3
鬼もがんばれ! 支援!
(BGM・Double-Action Ax Form)
「クッ…コイツ…」
「トカゲバイキング!行きなさい!」
「は…ハハッ!オォォォォォォォォォオ!!」
トカゲバイキングは専用の斧を取り出し、電王に斬りかかる。
対する電王は懐紙を捨て、デンガッシャーをアックスモードに切り替えた。
「死ね!!」
トカゲバイキングは斧を振るい、電王を攻撃するが、電王はそれを避け、カウンターにデンガッシャーでの斬撃をトカゲバイキングに見舞う。
「グオ!」
「オオリャアァァァァァァァァァァァァァァア!!」
そこからの電王の攻撃は激しかった。
トカゲバイキングに反撃の隙を与えず、ただひたすらにアックスで斬りまくる。
本来アックスフォームの戦い方は、高い防御力を利用して敵の攻撃を受け続け、動きを見切ったときを見計らって攻撃を開始する後の先を取る戦い方だ。
しかし、キンタロスのキャロをさらったトカゲバイキングへの怒り、そしてキャロを守りきれなかった自分への怒りが更なるパワーを電王に与え、敵の動きを見切る必要も無いほど圧倒的な力を発揮しているのだ。
「ば…馬鹿な…このトカゲバイキングがこうも圧倒されて…」
「今の俺は…明王より恐ろしいで!!」
電王は左手で強烈な張り手を繰り出し、トカゲバイキングを突き飛ばす。
「グルアァァァァァァァア!!」
トカゲバイキングは倉庫の壁を貫通し、外まで吹っ飛ばされて路面に叩きつけられた。
「お…おのれ…」
トカゲバイキングはよろよろと立ち上がり、斧を構えるが、最早戦える状態ではなかった。
そして電王はトドメの一撃を放つため、自分がトカゲバイキングを突き飛ばして空けた穴を通って外に出る。
「トドメや!」
電王はライダーパスをベルトの中心にかざし、黄色のフリーエネルギーをデンガッシャーにフルチャージして天に向けて投げる。
そして天に飛んだデンガッシャーを追ってジャンプし、キャッチしてトカゲバイキングに向けて一直線に降下する。
「オリャアアアアアアアアアアアアアアア!!」
「グルウゥゥゥゥゥゥゥアァァァァァァア!!…」
電王はトカゲバイキングを唐竹割りに切り裂き、トカゲバイキングは爆発する。
これぞアックスフォーム必殺…
「…「ダイナミックチョップ」。」
だ。
テメェがやってるのは支援じゃねえ
age荒らしだ
「クッ…!」
夏美は不利を悟り、倉庫から撤退する。
その後電王は、フェイト、エリオ、弾鬼、鋭鬼と合流し、キャロを含む子供達を助け、デンライナーで倉庫を破壊した。
【デンライナー食堂車内】
「スマン!」
キンタロスは、キャロに土下座で頭を下げ、自分の至らなさを詫びる。
「キンちゃん?」
「俺が至らなかったせいで…お前を危険な目に合わせてしもた…謝って許されることやあらへんけど…今の俺は、これしか詫び方を知らん!
ほんと…スマン…」
「…」
キャロはキンタロスに歩み寄り、優しく肩に手を置いた。
「え?」
「そんなに謝らなくて良いよ。失敗は誰にだってあるもん。
キンちゃんがそれを許せないなら、次は失敗をしないように頑張れば良い。」
「キャロ…」
「それと…」
キャロはキンタロスの頬に唇を近づけ、軽くキスをする。
「ぬお!」
『ああああああああああああ!?』
「キュクル〜!?」
驚愕するギャラリー(タロスズ、ナオミ、コハナ、フェイト、エリオ、フリード)達。
「助けてくれて…ありがと!キンちゃん!」
「あ…へへ、おおきに!」
【次回予告】
サバキ「宙吊り、瞬殺、袋叩き…」
橘「ボドボド、恐怖心、ウワアァァァァア…」
三原「弱い、ホームシック、置物…」
リュウタロス「女の子達に人気ある割にはライダーとしての活躍は少ない…」
イブキ「あの…なんで僕まで…」
サバキ「こんなんで良いのか!?」
橘・三原・リュウ「良くない!!」
サバキ「こうなったら意地でも活躍して、俺達の活躍を見せてやる!」
橘・三原・リュウ「おおおおおおおおおおおおおお!!」
イブキ「あの…だから…」
次回、「燃え上がれバーニングボンバーズ!」
サバキ・橘・三原・リュウ「俺(僕)達はヘタレじゃない!!」
イブキ「だから僕は元々へタレじゃ…」
工事現場監督(井上敏樹)「お前はヘタレだよ。」
イブキ「ダリナンダアンタイッタイ!?」
投下終了
ほんとにぎこちないな…反省。これから出来るだけ気をつけます。
次回は皆さんも大好きな方々の登場ですので、どうか、お楽しみに。
GJ!!です。
今回のキンタロスの戦い方は、イメージ的には格下相手に戦う王蛇と被りましたw
できれば、=====も使わないほうが良いと思いますよ。
視点変更の間に、Side ハンタとかいれるよりは大分ましだとは思いますけど。
数行空けて、視点が変わった事を分かりやすく表現できれば、それで大丈夫だと思います。
>>573 GJ!
皆が大好きな方々……心当たりは一つじゃないなぁ
GJ!!です。
キンタロスを怒らせてはいけません。と言うより、どんなものでも怒らせたらいけませんね。
GJ!
しかし次回が楽しみだw
ボロボロライダーズ大集合って
ライダー氏GJ
平成ライダー編はおもしろくて楽しい
今回も良かったですよ
次回もおもしろくなりそうだ
リクエストが一つあるんですが、やっぱり剣崎とリインの話を一つ
前に違うとありましたが、やはり見てみたいなぁと
平成ライダー編「は」か…
まあ、そりゃそうですよねぇ…
剣崎×リィンですか?
リィンは一応ミッドにいるからなぁ…
まぁ、考えようと思えば三時間くらいでプロットは完成しますが…
融合騎とアンデットか…
う〜ん…重い話は避けられない。
>>580 言葉の使い方を間違えてすみません。
他のも良かったですよ。
ただ個人的に平成ライダー編が一番好きっていうレベルです。
日本語は場合によっては難しいですね。
好きなライダーはV3ですけど。
リインがユニゾンして助けたりはできないんでしょうね。
ライダー氏の好きです。
これからも頑張ってください。
GJ!
んでは、ちょいと次スレ立てに行って参ります
時に、キャロは召喚師なだけでベルカとは関係無かったかと……ヴィヴィオと間違えた?
>>584 それは何か? リリカルキャラでアルプスの少女ハイジの演劇をしろと?w
ま、冗談は別にして、乙。
>>585 弁護士クロノと検事スカによる法廷闘争のイメージ像だな?w
アルプスの少女カイジ
淫獣が新人のシャワーを覗いたかが法廷で争われるんだなw
それでも僕はやってないッ!!
>>588 そして嫌疑は隊長・副隊長陣のシャワーを覗いたかどうかにまで及び、
フェイトのシャワーを覗いたか否かで弁護士クロノまで敵に回ってしまう淫獣w
>>586 それなら次スレがた、いや飛んだあああああああ
>>581 良太郎や悠斗みたいな憑依変身(ユニゾン)は出来なくても
一種の能力発動とか
jokerからangelになるとか
ベルカもラウズも古代技術だから。融合係数の状況でおでん(神崎)みたいな力を
新スレで言ったのですが、このスレを埋めるために今から投下させていただきます。
第5話までのあらすじ
「クロスナイト」は、鉄甲龍、ミケーネ帝国を倒し、オルファンを無事地球から離脱させ、ギャンドラーとバンカーを倒すことに成功する。
残った敵は、マリーメイア軍、ヴォルケンリッター、そしてフェイト・テスタロッサである。
12月24日になり、なのはは学校の終業式に参加するために、再び海鳴市に戻っていた。今回はなのは一人だけの帰還である。
海鳴市に戻ったなのはは、学校の帰りにすずかとアリサの質問攻めに会う。
「なのは、今年までには完全に帰れるの?」
「うーん、まだ正確には決まってないけど、年末年始はこっちにいるつもりだよ」
なのはは恭也以外の人間には、まだ自分が特別な企画に参加していると嘘を話している。
本当の事を言えば、必ず皆は心配する。
いくらミケーネ帝国や鉄甲龍、リクレイマー、ギャンドラーやバンカーがいなくなったところで、まだまだ問題は残っている。
なのはは何とか色々ごまかそうとすると、すずかがある事を言い出す。
「なのはちゃん、この後、暇?」
「今日は暇だけど、何か?」
「実はなのはちゃんがいない間にお友達になった八神はやてって子なんだけど……」
なのはははやての名前と顔は知っている。何故なら、なのはが「クロスナイト」で活躍しながらも、アリサやすずかのメールのやり取りはしており、
いつぞやか、なのははすずかの写真つきメールではやての素顔を見ているのだ。
なのはは、すずかから、はやてが病気が悪くなって入院した事を知る。
「そうなんだ……」
「だから、これから三人でお見舞いに行こうと思うんだけどいいかな?」
「いいよ、私もそのはやてちゃんって子と会ってみたいな……」
「それじゃあ、このまま行くわよ!」
アリサが指揮をとるかのように、なのはの腕を引っ張り、すずかと共に、はやての入院する「海鳴病院」へと向かう。
なのはがいないアースラでは、会議がされていた。
秋津マサトが木原マサキから得た記憶と、ユーノが無限書庫で調べた事により、闇の書の事が鮮明になった。
闇の書の本当の名は「夜天の魔導書」、本来の目的は主と共に旅をして、各地の偉大な魔導師の技術を収集し、研究するために作られたもの。
だが、歴代の持ち主の何人かがプログラムを改変したために破壊の力を使う「闇の書」へと変化した。
その改変により、旅をする機能が転生機能に、復元機能が無限再生機能へと変化してしまい、
これらの機能があるため、闇の書の完全破壊は不可能とされている。また、真の持ち主以外によるシステムへのアクセスを認めない。
実はと言うとその持ち主ではないものの、木原マサキもそのプログラム改変に協力していたそうだ。
マサキの行った改変とは、ロボットを闇の書の蒐集対象に出来るようにしたのだ。
それでも無理に外部から操作をしようとすると、持ち主を呑み込んで転生してしまう(マサキが行った時は、それはなかった)。ゆえにプログラムの停止や改変ができないので完成前の封印も不可能。
転生先は、闇の書に合致する魔力資質の持ち主をランダムに選び、一定期間、ページの蒐集がないと持ち主自身のリンカーコアを侵食する。
完成後は、持ち主が闇の書の意志の管制人格(マスタープログラム)と融合することで、巨大ストレージ「闇の書」に蓄えられた膨大な魔力データの魔力を行使できる。
でも過去のほとんどの持ち主が完成・発動後に闇の書の意志に肉体を奪われてしまい、一定時間の後暴走状態に陥った
その事を聞いて事実を聞いて「クロスナイト」の面々は唖然する。
「それってめちゃくちゃじゃないか……」
「何でマサキはそんな事を手伝ったんだ?」
「マサキは自分が冥王となるための保険として用意してたのだと思います。もしもゼオライマーを失くしたら、自分が闇の書の主となって世界を支配しようと……」
「だがよ、歴代の持ち主は皆体を奪われてるんだろ。だったらマサキだって……」
「いえ、マサキには何か秘策があったようなんです」
マサトの言葉に、皆が疑問に思う。
『秘策?』
「そこまでは……、あまり……」
マサトがその事を告げようとすると、エイミィが突然報告の通信送る。
「大変です! 海鳴市が突然結界に覆われました!」
『何(ですって)!?』
その報告にリンディ達が驚くが、もう一つ悪いニュースがある。
「それとですね、たった今マリーメイア・クシュリュナーダが、リリーナ・ドーリアン外務次官を人質にとり、大統領シェルターの方に逃げたそうです」
『リリーナ!』
リリーナの名前が出た時、ヒイロやゼクス、デュオ、トロワ、カトル、ノインに緊張が走る。
「それは同時か?」
「はい、ほぼ同時です」
「ならば、部隊を二つに分けざるをえないな」
ゼクスが部隊を二つに分けることを提案し、分けるようにする。
「まずはマリーメイア軍討伐とリリーナ救出だが、プリベンターを初めとして、マジンガーチーム、ゲッターチーム、獣戦機隊、マシンロボチーム、ゼオライマーで行きたい」
「だったら、海鳴市の方には、クロノやユーノ君、それにダンガイオーチーム、ブレン隊、それにモビルファイターチームですね」
つまりきちんと並べるとこうである。
マリーメイア軍の討伐に行く ガンダムW、マジンガー、ゲッターロボ、ダンクーガ、マシンロボ、ゼオライマー
海鳴市へ行く なのは、ダンガイオー、ブレンパワード、Gガンダム
本作は「海鳴市へ行く」を書きます。
「では皆、無事に戻る事を祈ろう!」
ゼクスがそう言い、会議を解散させ、急いでそれぞれの向かう場所へと急ぐのであった。
投下完了。
突然の事でもうしわけございませんでした。orz
次回は第6話になりますが、フェイトの立場が原作と違います。
久しぶりにまたまた勝手に載せちゃいます。 今回は「ゴジラ対メカゴジラ」の
中の歌 「キングシーサーの目覚めの歌」を元にした「高町なのは 目覚めの歌」です。
高町なのは 目覚めの歌
暗い夜に〜明かりが灯る〜
朝が来たら 眠りから 覚めてほしいよ〜
私の〜なの〜はー
星の浜辺で待っているよ
なの〜はー 力強く白くこなる大声で〜♪
頬の涙を 拭いておくれ〜
私の〜胸で燃えている 燃えている
なのーはーなのーはーなのーはー〜♪
高町・なのーーーはーーーー♪
暗い夜に〜明かりが灯る〜
朝が来たら 眠りから 覚めてほしいよ〜
私の〜なのーはー
ヤシの浜辺で待っているよ
なのーはー力強く赤いベリーをぬうって〜♪
私の願い 聞いておくれ〜
私の〜胸で待っている 待っている
なのーはーなのーはーなのーはー〜
高町・なのーーーはーーーー
ちぃっと埋めネタ。以前の予告編の続きなので、まとめに入れる時はそれと合わせて下さい。
『魔法中年アヴェンジャるでる』 別離の章
空が、燃えていた。
破壊神級空戦魔導師が二柱、ハンス・ウルリッヒ・ルデルとベルカの聖王の戦いは熾烈を極め、聖王の母艦、『ゆりかご』は撃沈一歩手前になるまで痛めつけられていた。
ルデルが両手には槍型のデバイス、右にヘンシェル、左にロースマン。
因みに、以前使っていたシャルノブスキーを与えた騎士ステーンはすでに敗れている。
「聖王よ、とうとう顔を見る事もなく貴様を倒す日が来たようだ……なっ!?」
その驕りが隙を生んだか、周囲を取り囲む20匹余りの有翼蛇の放つ高圧水弾がヘンシェルを貫いた。
迎撃しようとするも同時攻撃の負荷に耐えかね、ロースマンが機能不全に陥る。
「どどどどうしよう!?ルデル!」
「騒ぐな!まだお前がいる!」
ユニゾンデバイスのガーデルマンが慌てふためくのを一喝、その拳に魔力を貯めようとしたその時!
「ルデル、お前の負けだ」
彼の真上から、若い女の声がする。
ルデルと、彼がベルカの地に沈めようとした自らの座艦を真上から眺めつつ、聖王はその手に高圧の魔力を握り締めている。
彼が肩越しに振り返った時には、彼女は翠と紅の瞳を輝かせ、必殺の一撃を放つ直前であった……
「う、美しい……」
自分が顔も知らず敵対していた相手が、斯様な美少女であったか。その驚愕が、回避行動を取らせなかった。
自分は逃げられぬと悟ったルデルは、咄嗟に融合騎を分離して逃がし、そして魔力光の中に消える……
「く、ルデル!ルデルー!!」
そして、“烈火の剣精”として知られたそのユニゾンデバイスも、爆風に吹き飛ばされ……
そして、時は流れた。
聖王の治世も今は昔、大乱を鎮め世を治めるは時空管理局。
とある研究施設に、かつて“烈火の剣精”と呼ばれた融合騎が捕らえられていた。
過去の戦いと過酷な実験の果てに自らの記憶の大半を失った、そんな彼女の前に現れたのは、死せる騎士と、感情を置き忘れた少女……
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