アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ13
■
鴇羽舞衣について。
病弱な少年、健気に語る。
小さいころにお母さんが死んじゃったから、ボクはお母さんを知らない。
けど、全然寂しくなかたんだ。
だって、お姉ちゃんはお母さんみたいだったから。
いつもボクを守ってくれて、抱き占めてくれて。
お姉ちゃんがいたから、こんな体のボクでもここまで生きてこれたんだ。
本当に感謝してる。
こんな言葉なんかじゃ言い表せないくらいに。
だからさ、ボクはお姉ちゃんには笑っていて欲しいんだ。
例え、ボクにもしもの事があっても、悲しまないで笑っていてほしい。
だって、ボクは本当に幸せだったんだから。
お姉ちゃんがいつも傍にいてくれて、ボクは全然寂しくなかった。
けど、時々思うんだ。
お姉ちゃんはボクなんかのために自分の幸せを犠牲にしるんじゃないかって。
ボクのために色んな物を我慢してるんじゃないかって。
お姉ちゃんは本当はもっと自由になりたいんじゃないかって。
ボクさえいなければ、お姉ちゃんは自由になれるんじゃないかって、そう思ってしまうんだ。
あっ・今のはお姉ちゃんには内緒ね。
たぶん、ボクがこういうこと言うと、お姉ちゃんすごく怒って、すごく、悲しむから。
それにさ、ほら、本人は、絶対認めないと思うけど。
お姉ちゃんああ見えて結構弱虫なところもあるんだ。
だから、誰かお姉ちゃんを支えてくれる人が見つかるといいな。楯さんとか。
別に、楯さんじゃなくてもいいんだけど。
お姉ちゃんを支えてくれる誰かがいてくれたらボクも安心できるんだけど。
とにかく、お姉ちゃんには幸せになってほしい。
もし僕がいなくなっても強いお姉ちゃんでいられるように、何か大切な物を見つけてほしい。
うん。けど、それもこれもボクが手術を成功させて、お姉ちゃんを守れるくらい強くなれたら一番いいんだけどね。
■
夜の中、Dボゥイと舞衣は連れ添うように歩いていた。
目的地は病院。
他に当てがなかったというのもあるが、輸血用の血液がある可能性など他にない。
多少の危険はあるが、正直な話、ここはどこもかしこも戦場だ。
どこにいても大差ない。というのがDボゥイの見解だ。
舞衣も明確に反対する理由もないし、Dボゥイについて行くと決めた以上異論はなかった。
時折貧血にふらつくDボゥイを支えながら、二人は道を南下していた。
そんな二人の上空から、唐突に風きり音が聞こえてきた。
何事かと思い二人は空を見上げる。
そして、そこから降りてくるモノがなんであるかを理解した舞衣は身を強張らせた。
「よぅ、こんばんは舞衣ちゃん。
久しぶり、って程でもねぇか。まだあれから半日もたってねえ訳だしな」
見上げた空から舞い降りたのは、白服の死神だった。
青い目をした死神は嫌に親しげに夜の挨拶を交わす。
対する少女は口を噤み、その動きを止める。
「なんだ? 舞衣の知り合いか?」
Dボゥイは硬直する舞衣の様子に気付かず、男に向かって声をかけた。
見るからに怪しい男だったが、舞衣に対して妙にフレンドリーな態度である事から敵対者ではないと考えたからだ。
「お? おお!? なんだよ、よく見りゃ連れはアンタだったかい。
いいねいいね、最高についてるぜこりゃ!
こんなに早く兄貴の方にも出会えるだなんて!」
フラップターから降りたラッドは、地団駄を踏みながら歓喜に満ちた叫びをあげる。
同時にDボゥイもラッドの言葉に目を見開いた。
「兄貴? まさかアンタ、シンヤと会ったのか?」
「ああ、会ったぜ、ついさっきな」
Dボゥイにとって予想通りの返答。
この場にDボゥイを兄と呼ぶ相手は一人しかいない。
その呼び名が出たと言う事はつまり、そいうことだ。
まさか、このような形でシンヤの手がかりが手に入るとは。
Dボゥイはこれがまさに天から降ってきた僥倖だと、信じて疑わなかった。
「本当か!? だったら、頼む。教えてくれ!
ゆたかは、一緒にいた女の子は無事だったのか!?」
まず始めにDボゥイが尋ねたのはそれだった。
喰らいつく勢いで迫るDボゥイに対し、ラッドはこいつもあれか? などと若干引きつつもその質問に答える。
「ゆたか? ああ、あのガキね。
無事だぜ。意識はなかった見たいだけど、寝てるだけみたいだったな」
「そうか……よかった」
ゆたかの無事を聞きDボゥイはひとまず胸をなでおろす。
だが、すぐさまその安堵の表情を打ち消し、表情と共に気を引き締めた。
「続けざまで済まないが、もう一つ教えてくれ。
シンヤは、テッカマンエビルは今どこにいるんだ?
知っているんなら教えてくれ。頼む」
放っておけば土下座でもしかねないほど、強い決意と真摯さを込めたDボゥイの問い。
それとはまったく対象的に本当に気楽に、友人を食事にさそうような気軽さでラッドは言った。
「どこ、つーか。死んだぜ、あいつなら」
「―――――――――、何?」
そんな返答は予想すらしていなかったのか。
ラッドの言葉にDボゥイの思考は停止した。
「つか」
衝撃受け停止するDボゥイを気にせず、ラッドは続けて口を開く。
「俺が殺した」
■
相羽兄弟について。
年配の男、懐かしむように語る。
あの兄弟について、か。
そうだな、まあ付き合いは長い。
まあ、言って見りゃ両方俺のガキみたいなもんだな。
だから、例えタカヤ坊。いや、ブレイドがオレ等を裏切った後だとしても、アイツが成長すんのは嬉しいもんだ。
矛盾してるかい? まあ、そうだろうな。
アイツはいずれオレを殺すかもしれねえ。
そして、シンヤ坊を殺すかもしれねえ。
それでも、思っちまうもんは仕方がねえだろ。
あの双子はいわば鷲と鷹。
両方とも抜きん出た才能を持つ天才さ、間違いなくな。
指導者を必要とするタイプと必要としないタイプ。その程度の違いはあったがね。
シンヤ坊に格闘技を仕込んだのは、オレだがよ。
シンヤ坊のタカヤ坊への対抗心は、一言でいや異常だったな。
まあ、それを煽ってたオレが口にする事じゃないだろうが。
ありゃ憎しみつてもいいだろう。
けどその憎しみも、ほんの少しだけ歯車がズレちまっただけさ。
あの火事から、少しずつズレちまった歯車がな。
まあ、それ歯車もラダムのせいで完全に壊れちまったが、
おっといけねぇ、こんなことエビル様に聞かれたら殺されちまうかね。
まあなんだ、あの二人は内心では嫌いあってた理由じゃない。
シンヤ坊は自分でもわかってないみたいだけどな。
なんせ双子の兄弟だ本気で嫌いあうはずもねぇさ。
まあ、ラダムになっちまった今、それもこれももう手遅れってのが、悲しいと言えば悲しいがね。
■
「……何を、言っている?」
意識がふらつく。
気分が悪い。
貧血の所為じゃない。
目の前の男が訳のわからないことを言ったからだ。
目の前の男は今なんと言ったのか?
「なにって、この返り血見てわかんねぇか?
こりゃオマエの弟の血だぜ? 双子なんだろ、それくらいわかれよ。
って、悪ぃ悪ぃ。わかるわけねぇか。ヒャハハハハハ!」
赤い斑点を見せつけるように白服が笑う。
頭が痛い。
男の高笑いが酷く五月蝿い。
目の前の男が何を言っているのか理解できない。
いったい男は何を言っているのか。
「何を、言って、」
理解できない男の言葉が頭の中に纏わりついて酷く気持ち悪い。
いや、言葉の意味はわかる。
だが、理解はできない。
だって、そんな事があるはずがない。
Dボゥイだって、この戦場が一筋縄で行かないのは十分知っている。
自分自身もこの場で幾度も遅れを取り、手痛い傷を負っている。
だが、シンヤは違う。違うんだ。
無謀に突っ込んでいくデンジャラスボーイと違って、シンヤは何事も努力を重ね完璧にこなすパーフェクトボーイだ。
そのシンヤが負けた?
そのシンヤが、死んだ?
ありえない。
テッカマンを殺せるのは、テッカマンだけだ。
いや、テックセットせずとも、その身体能力は常人の非ではない。
そんなシンヤが殺されるはずがない。
そんなシンヤを殺せるのは、
「そんな強い強い弟を、ブッ殺せるのはこの俺様しない、とか思ってんじゃねぇだろうな?」
深く沈んだDボゥイ思考に割り込み、その先を次いだのは白服を着た殺人鬼だった。
図星を突かれてはっとするDボゥイを殺人鬼は鼻で笑う。
「はん。弟と同じだな、だからアイツも殺してやった訳だが。
拾った力で、人間やめて手にいれた力で、オレは最強だ! オレは絶対に負けない! オレは絶対に殺されない!
なんて温い勘違いしてやがったから、俺が世の中の厳しさってモンを、たぁ〜っぷりと教えてやったのさ!
例え宇宙人様に改造されようとも、どれだけ強かろうとも、死ぬときゃ誰でもゴミみたいに死ぬって現実をな!」
「………………黙れ」
目の前の男はとてもうるさい。
聞きたくも無い事をベラベラと。
触れられたくない場所にズカズカと土足で踏み込んでくる。
「しかしスゲェよな宇宙人だぜ。驚きだよな! アンタもそれに改造されたんだろ?
つか、ホントにいたんだな宇宙人、オレも会えるもんならあって見たいぜ。
なあ? 舞衣ちゃんもそう思うだろ?」
「……黙れ」
唐突に話をフラれても、舞衣にはなにも答えられない。
知りたいと思っていた男の過去だが、こんな形で知らされてもどうして良いのかわからない。
「しかもアンタ、テッカマンってのに変身してその宇宙人ブッ殺して回ってたらしいじゃねぇか。
いいなぁ。オレも殺してぇな宇宙人。
で? どんな感じよ? 宇宙人を殺すってのは?
やっぱ楽しい? 人間と違うのかな、どうなのよそこらへん?」
「黙れと言ってるだろ!!」
「あれぇ? 怒った? 怒っちゃった?
ヤッベぇ。どうすっかなこれ。
ブッ殺すの? ブッ殺されんの? ねぇどっち? どっちなのよ? ねぇねえ!?
ってかおかしくねえ? 確かオタクら兄弟って殺しあう仲だったはずだよな?
そいつが死んでなんで怒るわけ? もしかしてあれ? アイツを倒していいのは俺だけってやつ?」
「煩い! 黙れ! 貴様に、貴様なんかに俺達の何がわかる!?
俺とシンヤの、いったい何がわかるっていうんだ!?」
強く握り占めた拳からは血が流れ。
知らず、Dボゥイの瞳からは一筋の涙が零れていた。
いつか殺し合う運命にあったとしても。
相羽シンヤは相羽タカヤの双子の弟だったことに違いはない。
一つの命を分け合った己の半身であったことに、何一つ違いはないのだ。
その半身が失われたことを嘆いて何が悪い?
弟を喪った兄が涙を流して何が悪い?
その仇を、殺したいほど憎んで何が悪い?
思考にドス黒い闇が広がる。
黒く燃え上がる憎悪が内臓を焦がす。
爪先から髪の毛一本にまで憎しみが染み渡る。
憎い。
憎い憎い憎い。
ただひたすらに目の前の男が憎い。
「……殺す。殺してやる」
漏らした呟きは暗く重々しい怨磋の声だった。
聞くもの全てを呪うようなその言葉に、舞衣は背筋に寒いものを感じ、ラッドはひたらすらに歓喜した。
ラッドだってこの兄弟の関係が単純なものじゃないって事くらい、なんとなくは理解してる。
だが、怒ってくれたほうが動きが読みやすくなって、都合が良いので特に訂正も謝罪もしないが。
「俺を殺すだぁ?
なんだ、ひょっとして、オマエもあれか?
弟と同じで自分は絶対に死なない。
宇宙人に改造されたこのオレが。
宇宙人も余裕でブッ殺せるこのオレ様が!
こんなただの人間ごときに殺されるわけがねぇ!
とか思ってんじゃねえだろうな、あぁん!?」
聞くだけでも不愉快な仇敵の声に、Dボゥイはギリ、と歯を噛み締めた
そして、その相手めがけ、最大限の憎悪と怒りを込めて叫んだ。
「ああそうだ! オレはオマエなんかに絶対に殺されない!
死ぬのはオマエだ! 貴様だけは、オレがこの手で殺してやる!」
Dボゥイの叫びを聞いたラッドの頭の中で、パチリという音が鳴り、それと共に嬉しげに口元が吊り上がる。
それは、歪んだ歪んだ、どうしようもなく捻れきった殺人鬼の笑顔だった。
■
ラッド・ルッソについて。
とある青年、狂々ト語ル。
悲しい……悲しい話をしよう。
ラッドの兄貴は最高に輝いた男さ。
あぁ……駄目だ。悲しい。悲しすぎる。
え? なにが悲しいか、だって?
だって、そうだろ!?
ラッドの兄貴は素敵にイカれた最高の男さ!
それに比べて俺はなんだ? なんなんだ!?
あの人に比べたら俺なんてクズだ! ゴミだ! 壊すしか能のないただのカスだ!
ああ、チクショウ、なんてこった!
ラッドの兄貴について語っていたと思ったら、自分が生きる価値のないゴミクズだったと気付かされるだなんて、こりゃ一体どういう事だ!
何かの罠か!? オレのオレによるオレのためのオレを貶めるための陰謀か!?
なんだ、オレは自殺志願者か? 死ぬのか? 死ねばいいのか!?
悲しい……こんなに悲しい話があるか!? あっていいのか!?
オレに悲しい話をさせて、神はいったいどういうつもりだ!?
この世界はどういうつもりだぁ!?
あぁもう駄目だ。全てが気だるい。
殺せ。いっそ殺してくれ。ラッドの兄貴のように超絶的に超越的に超人的に!
ああぁぁぁぁああぁああ…………ん? んー、あー。…………そうさ!
YES。
ラッドの兄貴の話だろ? 考えたら、こんなに楽しい話もねえ!
ラッドの兄貴は超絶的で超越的で超人的な生粋の殺人狂さ!
これほどデンジャラスでスリリングな存在もいねえ。
オレが『壊す』ことしか考えられないように、ラッドの兄貴は『殺す』ことしか考えられねえんだ。
けどな、ラッドの兄貴がスゲエのは、何でもかんでも考えなしに壊したがるバカなオレと違って、きちんと殺す相手を選んで、殺す方法を考えてるところさ。
つまるところ、ラッドの兄貴は理性的に狂ってるんだ。
素敵だろ!? 最高だろ!?
こんなに最っっ高に素敵にクレイジーでデンジャラスでハッピーでバカな存在は他にいねえぜ!
そして何よりラッドの兄貴が最高なのは、あそこまで見事にぶっ壊れてるのに、あんなにも輝いてるところさ!
そんな素敵で最高な兄貴と出会わせてくれた神様に感謝だ!
だけどな、そんな素的な素的なラッドの兄貴だが、付き会う時にあたって、一番言っては言葉が二つある。
……なに? 一番なのに二つあるのはおかしいだって?
おお! なんてまっとうなる突っ込みだ!
まっとうすぎてなんだかオレ、ワクワクしてきたぞ!
だけどオレは負けない、そのワクワクをすべて受けきって見せる!
さあ、疑問があるならドンドン突っ込んでみろ! ただし、楽しい質問以外は受け付けないぞ!
なに? さっきから語っているオレが誰か、だって?
そんなことはラッドの兄貴の輝きに比べたらどうでもいい話さ。そうだろ?
■
「俺の前で言っちゃ行けない言葉が二つある」
怨磋と殺意の入り混じる空間の中で、何の緊張もなく指を二つ立てた殺人鬼は口を開いた。
「一つは『おじさん』だ。つまらないとか言ってもブッ殺す。
今年で25を向かえる微妙なお歳頃の俺に取っちゃ切実な問題だ。
まあ、そろそろ歳相応に落ち着かにゃならんとは思うが、俺は礼儀のなってない野郎は大嫌いなんで、とりあえず即殺す」
二つ突き出した指を一つ折り。
残った指を強調するように言った。
「そして、もう一つは『俺は絶対に死なない』だ。
俺ぁ、そんな温い考えをしてる奴を殺すのが大好きでね。
その言葉を聞くとよ、俺の頭ん中でパチリって音を立ててスイッチが入るのさ。
何のスイッチかわかるか?」
ラッドの問いに、Dボゥイも舞衣も何一つ答えない。
舞衣は目の前の男を測りかねるように。
Dボゥイは驚くほど冷たい目をしたまま無言を保っていた。
そんな二人の態度もまったく気にせずラッドは謳うように言葉を続ける。
「人を殺せるかどうか、ただそれだけを決める単純なスイッチさ。
俺だけじゃねぇ、人間なら誰の頭にだってこのスイッチはあるんだ。
信じられるか? こんなスイッチ一つで誰でも誰かを殺せるんだぜ?
このスイッチを入れるか入れないか、ただそれだけで人は人を殺せるんだ」
訳のわからない事をいいながら、ラッドは自分のこめかみに突き出していた指を押し当てる。
そして、押し当てた指を弾いて一言。
「パチリ」
そう言って、そのまま自分のこめかみを弾き続ける。
何度も何度も、狂ったように。
「パチリ、パチリ、パチリ、パチリ、パチリ、パチリ、パチリパチリパチリパチリパチリパチリパチリパチリパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチってな!
その言葉を聞くと、しまいにゃあ拍手みたいにスイッチが鳴り続けるんだ」
沈黙を保つ二人とは対象的にラッドは両腕を広げ、実の楽しげに語り続ける。
「そのスイッチが入れば、女だろうと子供だろうとジジイだろうとババアだろうと宇宙人だろうと殺せる」
誰よりも楽しそうに。
誰よりも禍々しく。
誰よりも凶悪に。
「俺は俺のムカツク事を言いやがる奴は誰であろうと殺せるんだよ」
狂気と純粋さに満ちた笑顔と撒き散らしながら。
「殺せるんだ」
殺人鬼は内に秘めていた、これ以上ないくらい捻じ曲がった殺意を解放した。
「という理由で、この入っちまった何十、何百、何千、何万というスイッチのために死んでくれ。
ああ、心配すんな、死ぬのは別に一回でいいから」
理不尽極まりない言葉と共に、自らの意志で捻じ曲がった殺人鬼は凶悪に口元を歪ませる。
放つ殺意は輝かしく、ギラギラと光を返すギロチンを思わせた。
■
―――深い宿命を背負って相羽タカヤはテッカマンブレードになった。
相羽タカヤは宇宙研究の第一人者を父に持ち、彼自身もタイタン調査船アルゴス号の乗組員の一人だった。
彼だけではない、アルゴス号には幼いころに火事で死んだ母以外の全ての肉親が乗組員として乗り込んでいた。
その調査の途中、土星の衛星軌道上に彼等はそれを見つけた。見つけてしまった。
人類初の宇宙人との遭遇となるはずだったそれが、悲劇の幕開けだった。
見つけたそれは、侵略者ラダムの母艦だった。
あっというまにアルゴス号の乗組員は彼を含め全員ラダムに囚われ素体とされることになる。
彼はそこで全てを失った。
家族も、
未来も、
自分自身も、
全て失ってしまった。
全てを失った人間は生きて行けない。
なにもなければ、例え肉体が生きていても心が死んでしまう。
生きて行くには何かが必要だった。
愛でもいい。
理想でもいい。
野心でもいい。
全てを失っても、なにか強い思いが一つでもあれば人間は生きて行ける。
生きるために、彼が抱いた感情は憎しみだった。
自分から家族を奪ったラダムが憎い。
幸せな日常を奪ったラダムが憎い。
そうやって、ただひたすらに彼はラダムを恨む事で生きてきた。
憎しみこそ彼の原動力だ。
憎しみは彼を縛る鎖であり。
同時に彼を生かす糧だった。
憎しみがあれば彼は生きて行ける。
ラダムを憎むこの心さえ忘れなければ彼は生きて行けるのだ。
彼を逃がすときに父は言った。
侵略者たるラダムを殺せと。
ラダムは肉親を奪った。
彼もラダムが憎い。
だが、肉親はすべてラダムとなった。
それはつまり、父は彼に肉親を殺せと言ったのだ。
あの瞬間、彼は肉親を自らの手で殺すと言う宿命に呪われた。
世界のため。
己が復讐のため。
肉親をその手で殺す宿命を背負った宇宙の騎士。
どうしようもない矛盾を孕んだその宿命を呪わなかったことはない。
時の止まってしまったあの家に戻れたならどんなに素晴らしいかと、そう願わなかったことはない。
ラダムは憎い。
だが、取り込まれ自らを襲ってくる肉親達を恨んだ事はない。
何度襲われようとも、何度殺されかけようとも、彼はシンヤを恨んだ事は一度も無い。
彼に取り付いたラダムを恨んでも、誓ってシンヤを恨んだ事は無い。
だって、相羽シンヤは相羽タカヤにとって、たった一つの命を分け合った己の半身なのだから。
■
「……言いたい事はそれだけか?」
狂人の言い分を聞き終え、これまで沈黙を保っていた青年が口を開いた。
青年が放つのは殺人鬼の殺意に負けぬ黒い憎悪だ。
「……そんなに聞きたきゃ何度でも言ってやる。
俺は絶対に死なない。オマエなんかに絶対に殺されない!
オマエは、オレが殺してやる!」
告げるDボゥイの手足に力が篭る。
貧血など既に何所かに吹き飛んだ。
今、体中には血液よりも熱く煮えたぎる憎悪が巡っている。
肉親を奪ったラダムが憎いのと同じように。
弟を殺した目の前の男が憎い。
スイッチなんて要らない。
そんなもの入れなくても、憎悪があれば、彼は敵を殺せる。
憎悪は彼の原動力だ。
憎悪があれば、彼は生きて行けるんだ。
「フヘヘヘ。たまんねぇな。もう殺意ゲージMAXって感じだ!
最高だぜ、テメエ等兄弟はよぉ!!」
自らに向けられた憎悪を前に、ラッドはティパックからファイティングナイフを取り出し、いとおしげに刃を舐めた。
そして、ナイフよりも鋭く夜闇を切り裂くように白服が駆ける。
一瞬でDボゥイの懐に飛び込んだラッドは、その勢いのまま手にしたナイフを振りぬいた。
だが、Dボゥイは慌てるでもなく、驚くほど冷徹にナイフを避け、そのままラッド目掛けて反撃の蹴りを繰り出した。
ラッドは咄嗟に首を折り曲げるが、避け切れず、Dボゥイの蹴りが頬を裂き、髪の毛を数本掠めとった。
テッカマンにならずともDボゥイの身体能力は常人の非ではない。
直撃していれば、恐らくただでは済まなかっただろう。
それでもまったく怯むでもなく、水場ではしゃぐ子供のようにラッドは楽しげに叫ぶ。
「マジかよおいおいマジかよおい、ありえねぇって!」
ラッドが叫びながらDボゥイの頭部目掛けてナイフを振り下ろした。
Dボゥイはそれを今度は避けるでもなく、ナイフを持つ手首を弾き、弾いたその手でそのまま号と風を切り裏拳を放つ。
防御からの流れるような見事なまでの反撃だったが、ラッドは重心を後方に逸らし、スウェーバックでその裏拳を避けた。
「よく、ミュージカルや小説で、戦闘中だってのにやたらと喋りまくる奴っているよな!
それで隙つくって反撃されたりする大馬鹿野郎とか、俺は実際の殺し合いの場所でも何度も見てきた!
はっきり言って、俺もそのタイプだ! だから喋りまくるけど、あんま気にすんな!」
紙一重の攻防を続けながらも、ラッドの口はまったくと言っていいほど止まらない。
語る内容と裏腹に、戦闘中にこれほど無駄口を叩きながら隙を作る気配はなかった。
それどころか、語れば語るほど彼のテンションは上がってゆく。
そして、上昇するテンションに比例して彼の動きは激しく、狂おしく、その切れを増してゆく。
「しかし、アンタも弟思いだね。
弟のためにここまで怒れる。いやぁ今時珍しい良い兄貴だアンタは!
けどよ、俺のみた資料によれば、あんた等兄弟はもっと険悪な感じだと思ったけどな」
叫ぶラッドの口から弟の、シンヤの話題が出た事にDボゥイの眼に憎悪の光が再燃する。
その光を確認して、殺人鬼はニヤリと笑みをこぼした。
ラッド・ルッソは別に正々堂々戦う正義の味方でも戦闘を楽しむバトルジャンキーでも何でもない。
真正面から相手を殺すことが多いのは、ただそれが一番楽しいから
強い絶対に死なないと思ってる奴が死ぬ様を最も見やすいから。
ただそれだけの理由だ。
ラッド・ルッソの本質は命を奪う殺人鬼だ。
殺すために特に手段は問わないし、相手の付け入れるところには付け入る。
人間の尊厳や命が大事な物だと言う事は理解しているが、それを踏みにじる事を特になんとも思っていない。
だから土足で踏みにじる。
この兄弟を、その絆ってやつを。
執拗に、粉々になるまで。
「アイツもよう、最後には兄さん、兄さんってオマエの事を呼んでたぜ?
互いにいがみ合ってると思いこんでいた兄弟が互いに思いあっていた事を知る。
いいねぇ麗しの兄弟愛。感動の仲直りだ! よかったじゃねぇか。
もっとも、残念ながら片方はもう死んじまったがね!
ああ、そういや、殺したのは俺か。ヒャハハハハ!」
それは、Dボゥイのみならず、シンヤすらも侮辱するような言葉だった。
一秒でも早く目の前の狂人の口を止めてやる。
息の根ごと、その軽口を止めてやる。
Dボゥイの最後の理性が切れ、思考はすべて赤に染まる。
「ウアアアァッァァアアアアア!!」
それは、理性を失った獣の雄たけびだった。
それと共に憎悪と怒りと渾身を込めた一撃が放たれる。
風きり音すら置き去りにする速度で放たれたその右拳は、まともに当たれば頭蓋を砕くどころか、その首を根元から吹き飛ばすだろう。
「はい、残念」
だが、渾身であるが故にその軌道はこれまでになく読み安い。
身を屈めあっさりとその一撃を躱わしたラッドは、すれ違い様にDボゥイの鳩尾に右膝をめり込ませる。
「グハ…………ッ!」
自身の渾身をカウンターで返されたDボゥイは口から反吐を吐いてその場に倒れこんだ。
内臓が幾つか破裂したのか、反吐には血が混じっている。
肺が潰れてしまったように息が出来ない。
全身が酸素を求めてピクピクと痙攣する。
地獄のような痛みと苦しみがDボゥイの体を蹂躙する。
憎しみや意志とは一切関係ないところで、強制的に体が静止する。
だが、もがき苦しむ暇すら与えず、ラッドは倒れこんだDボゥイの上に馬乗りになり、その首元にナイフを宛がった。
「はーい。さよならぁ」
押し付けられてたナイフは正確に頚動脈に触れている。
こうなればテッカマンで在ろうとなんであろうと関係ない。
ナイフを引けばDボゥイは確実に死ぬ。
だが、ラッドはそのナイフを引かず、Dボゥイの上から飛びのいた。
その直後、ラッドのいた場所を炎の渦が通過する。
「おいおい、そりゃないぜ。
いいとこで邪魔するだなんてよぅ」
そう肩をすくめてぼやくラッドの視線の先には、エレメントを装備した鴇羽舞衣の姿があった。
■
―――媛星を巡る運命の輪に巻き込まれ鴇羽舞衣はHiMEになった。
思えば、彼女の人生は守るための人生だった。
幼いころに母を失い、そしても父を失った。
一人取り残された彼女は病弱な弟を守るためその身をすべて投げ打ってきた。
そして、弟の手術代のため、奨学金を出してくれるという風華の地へ足を踏み入れた。
そこで彼女は運命に巻き込まれる。
媛星を巡るHiMEの戦い。
戦いなど望んではいなかったが、彼女は守るために戦いに身を賭した。
それなのに、何よりも守りたかった弟は失われた。
自分を姉のように慕ってくれた少女も、想い人も失われた。
守るために全てを捧げた彼女の人生。
だというのに、何一つ報われない。
守るということは、奪わないことに等しい。
奪わないとことは、奪われることに等しい。
つまり、守ることは、奪われることに等しい。
酷い仕組みだ。
致命的なまでに理論が破綻している。
彼女はただ、奪われたくないから守っていただけなのに。
その仕組みを知ったのはいつだったか?
母が死んだときだったか?
父が死んだときだったか?
HiMEになったときだったか?
楯が詩帆を選んだ時だったか?
弟を失った時だったか?
命を殺した時だったか?
シモンが死んだ時だったか?
それとも、本当は初めから気付いていて、気がつかない振りをしていただけだったか?
彼女はこの負の螺旋から抜け出したかった。
だから、彼女は奪う側にろうと決意した。
だと言うのに、結果は散々。
何一つうまく行かない。
空回りばかりで、より惨めになっただけだ。
だが、彼女自身は気づいてないが、うまく行かないのも当然だった。
だって、彼女の本質は奪うことじゃないんだから。
■
「なぁ。人の楽しみを邪魔しちゃいけねぇよ。舞衣ちゃん」
「うるさい! 何が楽しみよ! そんなことの何が楽しいって言うのよ!?
大体、なんなのよアンタ。私を殺しにきたんじゃないの!?」
空中から降りてきたラッドを見た時、舞衣はこの男が自分を殺しに来たのだと思った。
なにせ、殺してしまった男の仲間だ、その仇を討ちにでもきたのかと。
自分はこれから奪ってしまったその報いを受けるのかと、そう思った。
だと言うのに、この男は舞衣をまるっきり無視して、誰も聞いていないDボゥイの過去をベラベラと語りだし。
仕舞いにはDボゥイと殺し合いを始める始末だ。
まったく以って、意味がわからない。
「いやまあ、最初はそのつもりだったんだけど、まあもっと面白い玩具を見つけちまったんでね。悪いね舞衣ちゃん。
いや、でもなぁ。よく考えたら一応アンタと引き合わすっていうエミヤとの約束もあるし、舞衣ちゃんここで殺すわけにもなぁ。
いっそ、エミヤがどっかで死んででくれれば約束もなかったことになるんだがなぁ。うーん」
律儀なんだがそうじゃないんだがよくわからない呟きをブツブツと漏らしながら、ラッドは頭を捻らせる。
そして、何か思いついたように、ラッドは顔を輝かせた。
「よし、決めた。この事はエミヤ達には黙っておこう。そうしよう。名案だこりゃ。
そういう訳だ。舞衣ちゃん、今死んでくれ」
ハッキリ言って、名案でもなんでもない、割ったガラスを隠す悪戯小僧の発想だが。
ただそれだけのことで、ラッドの中で鴇羽舞衣の生死は決定した。
ラッドが押し込めた舞衣への殺意が露になる。
そしてその殺意を真正面から受けた舞衣は気付いた。
男は殺意を放っているのではない。
この男には殺意しかないのだ。
まるで、男が殺意そのもののような。
怖い。
深い理由も無く舞衣は単純にそう感じた。
まだ、なにをされた訳でも無い。
力ならば自分が操っていたカグツチの方が遥かに上だろう。
だと言うのに、目の前の男はただひたすらに恐ろしかった。
なにせそうだろう。
彼女は化け物と対峙したことはあっても真正面から殺人鬼と対峙した事はなかったんだら。
「どうしたよ、舞衣ちゃん?
あのへんなの着てた時の威勢はどうしたんだよ?
ほら、言ってみろよ。私は絶対に死なないってよ」
怯える女を見て、凶悪に口元を歪ませる殺人鬼。
悲しみでも、怒りでも、狂気でもなく。
その殺人鬼は、自分の意志でどうしようもないほど歪みきっていた。
「まあ、言っても言わなくても、殺してやるがねぇ」
下種な笑みを張り付かせたまま、ラッドが駆ける。
それに反応して、舞衣は両腕を突き出し炎の玉を打ち出した。
目の前に迫る幾つもの赤い炎。
それを前にしてもラッド・ルッソは止まらない。
駆ける速度を緩めるどころかますます早めながら舞衣に迫る。
「くっ……!」
少しでもその疾走の足を止めようと、舞衣も必死に炎を放つが、まるで当たらない。
舞衣のエレメントは飛行と防御が主体だ。
攻撃はカグヅチ任せだったので、正直得意ではなかった。
炎が放てるがそれだけだ。
素人や知性のない化け物ならともかく、理性を持った殺人鬼には通用しない。
何の苦もなく舞衣の懐にもぐりこんだラッドは体重を乗せた右ストレートを放った。
正直、舞衣には目視すら出来ない一撃だったが、咄嗟に腕を突き出したのが幸いした。
エレメントにより生み出された盾が、殺人鬼の一撃から彼女を守ってくれた。
そしてそのまま、殺し切ることのできなかった衝撃のベクトルを逃がすように彼女は上空へと舞い上がる。
「痛ってー。やっぱ折れてんなこれ」
そう言いながらラッドは裂けた拳から流れる血をぺロリとなめ取る。
そして、空中で息を整える舞衣を見上げた。
「おいおい、空に逃げるなんてずるいぜ舞衣ちゃん。
これじゃ俺が攻撃できねぇじゃんかよぉ。
まあ、別に、そうなったらなったで、こっちを先に殺すだけだがね」
そう言って、ラッドは上空の舞衣から視線を外し、今だ悶絶しているDボゥイにその視線を向けた。
「くっ。させない!」
ラッドを止めるべく、舞衣は上空から炎を放つ。
「おっと、おっ、はっ、とう!」
だが、近距離でも当てられなかった攻撃だ、これだけ離れていて当たるはずがない。
ラッドは器用に炎の雨を躱わしながら、ナイフを片手に鼻歌混じりにDボゥイに近づいてゆく。
この距離からの炎では埒があかない。
そう判断した舞衣は、直接その凶行を止めるべくラッドに向けて空中を疾走した。
「なんちて」
「え?」
そこに向けられたのは巨大なライフルの銃口だった。
銃声と共に、何の躊躇もなく放たれる弾丸。
ラッドに向かって全力で近づいていたため、回避は不可能だった。
咄嗟にエレメントを生み出したがライフルの威力は凄まじく、衝撃に撃墜され地面へと落下する。
そして、背中から叩き付けられ、地面を滑った舞衣の体は偶然にもDボゥイの近くで停止した。
強力な防御手段を持ち、飛行する的を撃ち落とすのは困難だ。
おまけに弾数も少ないとなればなおさらだ。
そこで、ラッドは遠距離攻撃の方法がないと見せかけ、人質を使って近づいてきた所を撃ち落とすと言う作戦に出た。
その結果は見て通り、見事に的中。
空中にいた舞衣は地に伏せ、立っているのはラッドだけ。
何一つ特別な力を持たない殺人鬼がテッカマンを、HiMEを圧倒している。
それは絶望するには十分な恐るべき光景だった。
そんな絶望と死の満ち溢れる世界の中で殺人鬼は一人、声を上げて笑っていた。
■
―――ラッド・ルッソが殺人鬼になったのに、特に理由はない。
叔父こそ裏世界に生きるマフィアだが、両親自体は一般的と呼べる部類の人間だったし、家庭環境も特にこれと言って荒れていた理由ではない。
ついでに言えば、彼には弟分はいるが弟はいない。どうでもいいが。
相羽タカヤの様に、重すぎる宿命を背負ったわけじゃない。
鴇羽舞衣の様に、逃れられぬ運命に巻き込まれたわけじゃない。
ビシャスの様に、燃え上がるような野心があったわけじゃない。
衛宮士郎の様に、歪んでしまうような古傷(トラウマ)があったわけでもない。
そう言うものとは一切関係なく、ただ、気付いたらこうなってた。
別に何をしたわけじゃない。
ただ少し、ほんの少しだけ考えただけだ。
人の生と死について。
生きる人間と、死ぬ人間の違いについて。
本当に何気なく考えただけだ。
それだけ。
その結果を知るよりも早く、彼はその過程に蝕まれた。
そして、ラッド・ルッソは殺人鬼に成り果てた。
そこに一切の躊躇も、微塵の後悔もない。
あるのは快楽と、人殺しとしての才能だけだった。
ただただ、どうしようもないほど自分の意志で殺人鬼は生まれ出た。
人間は。
何の理由もなく。
何の運命もなく。
何の宿命もなく。
見事なまでに粉々に、跡形も無いほど壊れることができる。
人間は。
何の怒りもなく。
何の絶望もなく。
何の憎しみもなく。
どうしようもないほど歪に、これ以上ないほど捻じ曲がることができる。
そんなものがなくても人間はどこまでも狂うことができる。
どこまでも、どこまでも、自分の意志で。
■
笑う、笑う、殺人鬼が笑う。
狂々と、狂ったように、狂った声を響かせながら。
そんな絶望的に狂った世界で、それを打ち消す声で、舞衣は叫んだ。
「カグツチ!」
「あん?」
突然の舞衣の叫びに、ラッドが笑いを止め疑問符を浮かべた。
まず、単語の意味がわからない。
人名ではない。
そんな人間はここにはいない。
ラッドの知る限りでは参加者にもいない。
必殺技か何かかと思って少しワクワクしたが、残念ながら特になにもおこらない。
「お願いだから出てきてよ、カグツチ!」
それでも舞衣は涙ながらにその名を呼びかけ続けた。
それは、全てを焼き尽くす炎の化身の名。
彼女に唯一与えられた奪う力。
鴇羽舞衣が操る、最強のチャイルド、カグツチの名を。
だが、破壊の竜は、彼女の呼びかけには答えない。
なにもおこらない。
ただ少女の声が虚しく響くだけだ。
「どうして、どうして出てきてくれないのよ! カグツチ!
お願いよ! もう嫌なの。これ以上失すのは嫌なのよ!
だから出てきてよ、カグツチ!!」
ここにいない何かに涙ながらに懇願する少女。
その奥から、唐突に輝く緑色の光が僅かに放たれた。
それを見てラッドはなんだかよく分からないが、嫌な予感がした。
とてもとても嫌な予感だ。
このまま続ければきっと何かが起きる。
だから、ラッドは何か起きる前に、サックリ、とっとと、即効で舞衣を殺そうと決意した。
だが、ラッドが動くよりも早く。
舞衣がその輝きを自覚するよりも早く。
舞衣の肩に静止の手がかかった。
「もういい。十分だ。下がってろ、舞衣」
「D、ボゥイ」
舞衣が振り向いた先に立っていたのはラッドの一撃を喰らい、倒れこんでいたはずのDボゥイだった。
「お、タフだね。もう立てんのか?
やっぱ凄いなぁ宇宙人」
そう言って、割と本気で感心するラッドだが、そんな事はない。
最後に残った月の石のかけらを使って無理矢理に立ち上がっただけだ。
呼吸は整ったが、貧血は変わらないし、破裂した内臓は治らない。
正直、立ってるのがやっとだといっていい。
「舞衣。こいつはオレが絶対になんとかする。
だからその間にオマエは逃げろ。その飛行能力があれば逃げ切れるはずだ」
「はぁ!? 何言ってんのアンタ!?」
「いいから行け! オレはアイツを許すわけには行かない。
ここで必ず決着をつける。だから行け舞衣!」
もはや舞衣のいい分にも聞く耳持たないといったDボゥイ。
それを見て舞衣は溜息を漏らし決意した。
「……わかったわよ。行くわ」
「それでいい」
舞衣の言葉に安堵して、Dボゥイは舞衣に背を向けラッドへと対峙する。
だが。
「なっ!? 何をする、離せ舞衣!」
「何ってアンタも一緒に逃げるのよ!」
後から抱きつくようにして、舞衣はDボゥイと共に宙に浮いていた。
Dボゥイは舞衣を振りほどこうともがくが、その拘束をとくことは出来ない。
「ほら、私も振り切れないくらいボロボロの体で何ができるっていうのよ!」
「それは……! それも、とにかくオレは!」
そのまま、空中で言い争いを続ける二人。
その様子をしばらく眺めていた殺人鬼は言い争いをする二人を嗜める様に口を開いた。
「はいはいはいはい。痴話喧嘩も結構だけど俺の事も忘れんなよ。寂しいじゃないの。
でさぁ。俺からも提案なんだけど、両方ここで俺にブッ殺されるってのはどうよ?
つか、それしかなくねぇ? ま、他に選択肢が在ってもそうするんだがよ」
凶悪に笑いながら、ラッドは空中に浮かぶ舞衣とDボゥイに銃口を向ける。
そのラッドの態度に舞衣は口論を止め、Dボゥイを抱えたままラッドに背を向けて全力で空を奔りだした。
そこに、当然のように鳴り響く銃撃音。
もちろん舞衣もそれがくるのは予想してた。
ギリギリのタイミングで飛行する軌道を変え、その弾丸を避ける。
それが、成功した事を確認し、舞衣が安心したのも束の間。
まったく容赦なく、無理矢理に軌道を変え避けた直後を狙い、続けざまに二発目の銃声が鳴り響いた。
更に軌道を変えようとするが、どう考えても避けきれない。
Dボゥイを抱え両腕が塞がっているため、盾も張れない。
当然の結果として弾丸は二人に被弾する。
その衝撃に舞衣達は水しぶきを上げて近くの河に墜落した。
「うーん。死んだかな?」
その結末を見届けラッドは首を捻る。
落下したと言っても下は河だし、見る限りライフルも当たりはしたが直撃ではない。
正直生存率は五分といったところか。
「ま、いいや。生きてたらまたブッ殺すってことで」
そう言ってラッドはフラップターに乗り込み夜空へと舞いあった。
このままフラップターで二人を追いかけてもよかったが、少しばかり寄り道が過ぎた。
そろそろ映画館に戻らなければならない頃合だ。
あまりより道が過ぎて、その間に映画館の連中は全滅してました、となれば目も当てられない。
「いやぁ、まぁそれはそれで……」
面白いかもしれない。
などと不吉な予感に口を歪ませながら、殺人鬼は空を行った。
【C-6・上空/一日目/夜中〜真夜中】
【ラッド・ルッソ@BACCANO バッカーノ!】
[状態]:疲労(小)、左肋骨2本骨折、両拳に裂傷、右手にヒビ(戦闘には問題なし)
[装備]:超電導ライフル@天元突破グレンラガン(超電導ライフル専用弾0/5)
[道具]:支給品一式×2(一食分消費)、ファイティングナイフ、フラップター@天空の城ラピュタ
テッカマンエビルのクリスタル@宇宙の騎士テッカマンブレード
ニードルガン(残弾10/10)@コードギアス 反逆のルルーシュ 、首輪(シンヤ)、首輪(パズー)
[思考]
基本方針:自分は死なないと思っている人間を殺して殺して殺しまくる(螺旋王含む)
1:とりあえず映画館に帰る。舞衣達に出会った事は黙っておく。
2:清麿の邪魔者=ゲームに乗った参加者を重点的に殺す。
3:足手まといがあまり増えるようなら適度に殺す。
4:基本方針に当てはまらない人間も状況によって殺す。
5:覚悟のある人間ばかりなので面白くないから螺旋王もぶっ殺す。
6:舞衣とDボゥイが生きてたらまたぶっ殺す。
※フラップターの操縦ができるようになりました。
※明智たちと友好関係を築きました。その際、ゲーム内で出会った人間の詳細をチェックしています。
※詳細名簿の情報をもとに、危険な能力を持つ人間の顔と名前をおおむね記憶しています。
※テンションが上がり続けると何かに目覚めそうな予感がしています。
■
バシャリという水音と共に、一組の男女が水中から飛び出した。
河から這い上がった女、舞衣は手にした男、Dボゥイをなんとか地面に下ろし荒い息を整えた。
だが、見下ろした先にある自身の手を見て彼女は驚愕した。
その手は河の水ではなく、ベットリと赤い血で濡れていた。
彼女の血ではない。
見れば、その血は意識を失い倒れこむ男の背から流れでていた。
あの時。
避けきれない弾丸を前にDボゥイは身を挺して舞衣の体を庇ったのだ。
結果、衝撃で河に落下したものの舞衣はほぼ無傷となり。
その代わり、傷を一手に引き受けた男の背中の肉は抉れ、そこから湯水のように赤い血が溢れて止まらない。
その傷を見て舞衣は絶望する。
死ぬ。
ただですら血の足りなかった男だ。
このままでは確実に死んでしまう。
なんとかしてこの血を止めなくてはならなかった。
だが、手元には鋏しかない。
どうすればいい。
悩む舞衣だったが、なにかを思い立ち、両腕をDボゥイの傷口に宛がった。
そしてエレメントより炎を生み出し、その傷口を焼き払った。
付け焼刃の良いところな治療だったがなんとかうまく血は止まったようだ。
これ以上血が流れることはない。
だが、駄目だ。
これ以上血液が失われることは防いだが、失われた血液が戻るわけじゃない。
放っておけば間違いなく死んでしまう。
また奪われるのか。
また失われるのだろうか。
彼女はただ、奪われたくなかっただけなのに。
奪われたくないから守って。
守るから奪えなくて。
奪えないから奪われる。
そんな連鎖には飽きたんだ。
そんな螺旋には疲れたんだ。
奪う側に回ろうとしても、うまく行かず。
足掻いた結果に残ったのは無残なモノだ。
結局この螺旋からは抜け出せず、回りに不幸と死を撒き散らしただけ。
当然だ。
初めからうまく行くはずがなかった。
だって、彼女の本質は奪うことじゃない。
彼女の本質は守ることなんだから。
奪うのは容易い。
失うのはもっと容易い。
けれど守ることは難しい。
その道は遥かに辛くて厳しい。
その道を行けば、色んな物を犠牲にしてしまうかもしれない。
見っともいほど惨めに足掻くことになるかも知れない。
どれだけ頑張っても報われないかもしれない。
けど、それでも、その道を歩んできたのは、守りたいモノがあったからだ。
どんなに辛くて苦しくても、守りたいモノがあったんだ。
彼女は奪いたかった理由じゃない。
彼女はただ、守りたかっただけなんだ。
大切なものを、ただ守りたかっただけなんだ。
そんな単純なことを、何故忘れてしまったんだろう?
大切なことだったはずなのに、人は何故忘れてしまうんだろう?
「死なせない。死なせてたまるか」
失って。
失って。
また失って。
それでもまだ、掌の中に砂粒ほどでも守りモノがあるのならば。
見っとも無く足が縺れても。
惨めに泥に塗れても。
足掻き続けるんだ。
だってそれが、守ると言うことなんだから。
【D-6/河近く/一日目/夜中〜真夜中】
【鴇羽舞衣@舞-HiME】
[状態]:背中にダメージ、全身に擦り傷
[装備]:なし
[道具]:支給品一式 、鋏
[思考]:
1:Dボゥイをなんとしても助ける。
[備考]
※カグツチが呼び出せないことに気づきましたが、それが螺旋王による制限だとまでは気づいていません。
※静留にHIMEの疑いを持っています。
※チェスを殺したものと思っています。
※一時的にエレメントが使えるようになりました。今後、恒常的に使えるようになるかは分かりません。
※螺旋力半覚醒。但し本人は螺旋力に目覚めた事実に気づいていません。
【Dボゥイ@宇宙の騎士テッカマンブレード】
[状態]:気絶、貧血(大)、一部内臓損傷、背中に傷(炎による止血済み) 左肩から背中の中心までに裂傷・右肩に刺し傷・背中一面に深い擦り傷(全て傷跡のみ)
[装備]:なし
[道具]:デイバック、支給品一式
[思考]
基本:小早川ゆたかを保護する。
1:???
2:ゆたかと合流する。
3:テッククリスタルをなんとしても手に入れる。
4:極力戦闘は避けたいが、襲い掛かってくる人間に対しては容赦しない。
5:ラッドをこの手で殺す。
[備考]
※殺し合いに乗っている連中はラダム同然だと考えています。
※情報交換によって、機動六課、クロ達、リザの仲間達の情報を得ました。
※青い男(ランサー)と東洋人(戴宗)を、子供の遺体を集めている極悪な殺人鬼と認識しています。
※恐らくテッククリスタルはどちらを使ってもテックセットが可能です。またその事を認識しています。
※ペガスが支給品として支給されているのではと思っています。
※全身にシーツを包帯代わりに巻いています。
※ラッドに対する深い憎しみが刻まれました。
※螺旋力覚醒。但し本人は螺旋力に目覚めた事実に気づいていません。
削除依頼済
「ああ、クソ……! どうにも噛み合ってねえな……」
D-8に位置する山小屋の傍で、スパイクは一人でスコップを手に穴を掘っていた。
ジンはちょっと確認したいことがある、といって山小屋を離れ、
カレンはスコップの他に何か山小屋の中で役に立つ物がないか探している。
必然的に余ったスパイクが一人でマタタビを埋葬するための穴を掘っているのだ。
「噛み合ってねえな……」
スパイクはまた呟く。
今日一日の経緯を思い出した彼の感想はこれに尽きた。
最初は読子とのんびり物見遊山をして帰るつもりだった。
が、そもそもここから既に状況と噛み合っていない。
(まあ、聞いていなかった自分たちが悪かったのだが)
その後も協力する予定だったはやては合流直後、何故かこちらを残して出立。
放送が真実ならば、それっきり死んだらしい。
次いで襲ってきた傷面の男に同行者だった読子は殺され、新しい同行者の一人はやたらとこちらを敵視している。
主催者に反抗する仲間を募っているジンと出会えたのはよかったが、ここでもケチがついた。
彼らに保護されていた喋る猫、マタタビが死んでしまったのだ。
はやてたちに何が起きたのか知っているだろう猫だったのだが、話一つ聞けなかった。
しかも、どうやらビバップ号の同居人、エドまで殺されてしまったらしい。
人生はままならないものというのは身に染みて分かっているつもりのスパイクだが、どうにも今日は巡り合わせが悪い。
本音をいえばガキなんてほっぽり出してビシャスやジェットを探しに行きたいが、そこまで薄情にはなれない。
特に、マタタビの死についてはきちんと考えておかないと、今後の身の振り方にかかわる問題だ。
そこに誰かの作為が入っているならば、仲間の中に他人に殺意を持った奴が潜んでいる、ということなのだから。
『考えるな。感じろ!』とはスパイクが尊敬するブルース・リーの名言であるが、この場では直観と思考、どちらも必要になる。
それだけでも頭がいっぱいになりそうなのに、同行者のカレンははた目で見ても精神的に不安定だ。
(やれやれ、こんなのはお前の役目だろうがよ、ジェット……。
正直、俺は推理や子守りなんてガラじゃあないぜ……)
子どもと女、そして動物が嫌いだと標榜する彼が、動物のために穴を掘り、女の子どもの子守りをしなければならない。
(せめて、煙草でもありゃな……)
どうにも噛み合わない状況に、スパイクは小屋の中で手に入れたライターを見てため息をついた。
ふと、何か視線を感じて振り向く。
だが、そこには誰もいなかった。
■
スパイクの感じた視線は気のせいではない。
彼の背中を物陰からじっと見つめる人影があった。
ゼロによって『スパイクを殺せ』と命令されたカレン・シュタットフェルトである。
事実、穴を掘るスパイクの背中は無防備に見えた。
今、カレンが持っている銃で狙えばあっという間に始末できそうなほどに。
カレンには先代ゼロを守れなかったという自責の念がある。
それだけに、ゼロに障害を与える可能性のある人物は何としても排除したかった。
それがゼロ本人からの命令となればなおさらである。
ジンがどこかへ行っている今はチャンスのようにも思えたが……。
(ダメだ。ゼロは『悟られないように始末しろ』といったんだ)
今すぐスパイクを銃で撃ち殺したくなる気持ちを何とか自制する。
ここで撃てばスパイクは殺せるかも知れないが、流石にそれをジンに悟らせないのは無理だろう。
(チャンスを待たなきゃ……)
銃を仕舞い、カレンは山小屋の中へと戻っていく。
■
数十分後、三人の乗った消防車はジンの運転で山道を降りていた。
「これから図書館に向かうんだったな。どういうルートでいくつもりだ?」
助手席に座ってざっと地図を眺めたスパイクは、運転席のジンに尋ねた。
見たところ、図書館へはいくつもの行き方がある。
大まかに分けて飛行場や豪華客船の停泊地のある離れ小島を通る
ルートと、病院や映画館などが集まる町の中心を通るルートだ。
「そうだね。まずはデパートへ行って、そこで今後の観光ツアーの道行を考えようと思ってるよ」
「また随分適当ね」
呆れたようにつぶやく後部座席のカレンに、ジンはルームミラー越しに、笑って見せる。
それを聞いたスパイクがつぶやいた。
「ん? デパートっていやあ、ちょっと前……」
「そ。やたら大きなキャンプファイアーをしてたと思ったら、せっかちな誰かさんが消防士の到着前にでっかい爆弾で消したみたいでね。
あのお姫様やビクトリームによると、そこに何人かいたらしいし、調べてみるつもりだよ」
「ニアの? 信用できるのかしら……?」
「さあね。でも、さっき木の上から確認したら、デパートの辺りだけスッパリ光が盗まれてたよ。
何かあったのは間違いないだろうね。どの道、左回りで行くならデパートは通らなきゃいけない。
怪我人がいるようなら、病院へエスコートしてあげなくちゃ」
「なるほど。ついでに光を見て寄ってきた人にも会えるかもしれない、か」
「そういうこと。ま、この消防車ならすぐに着くよ」
ジンがそういうのを聞いて、スパイクはシートにもたれた。
ほんの少しだろうが、暇ができた。
カレンの相手はジンがしてくれるだろうし、ここらでもう一度、考えておく必要がある。
つまり、マタタビの毒殺について、だ。
■
ニアがマタタビを殺した。
この事実はもはや疑う余地はあるまい。
問題はそれが単なる過失なのか、それともニア本人を含む誰かの悪意によるものなのか、この点だ。
単なる過失、つまりうっかりの可能性はもちろんある。
だが、状況に不自然なものを感じるのも事実である。
いくら不注意でも、怪我人に得体の知れない薬を飲ませるだろうか。
ニアは相当常識に欠けるようだが、そこまで致命的な人間がいるとは正直、スパイクとしては考えにくい。
となると、やはり誰かが彼女を彼女自身にも気付かれないように誘導したと考えた可能性が高い。
万一、ただのうっかりならこれ以上何も起きはしないだろうからそれはそれでいい。
なら、悪い可能性についても考えておいて損はないだろう。
では、誰かの故意だと仮定する。
つまりニアが薬を毒と偽って飲ませた、もしくは周囲がニアの持っていた薬を毒とすり替えた場合である。
この場合も一番怪しいのはニアだが、これは却って不自然だ。
自分で螺旋王の娘だと明かし、それによって周囲から疑惑を受けた直後にわざわざ自分が犯人とわかる形で猫を殺し、ご丁寧に悲鳴をあげて全員に犯行を知らせる。
そしてその理由が「毒なんて知らない。薬だと思っていた」。
(アホらしい。子どもでも疑われることくらいわかるだろう)
そもそも殺すつもりならジンがいない間にいくらでもやりようはあっただろう。
同様に、ジン、ビクトリームにもいくらでも機会と方法はあったはずだ。
そもそもジンなら毒殺というまだるっこしい手を使わなくてもニアとビクトリームとマタタビを殺した後、何食わぬ顔でスパイクたちの前に現れればいい。
この得体のしれないところのある少年は、おそらくそれが簡単にできるだけの実力の持ち主だろう。
ビクトリームについても同様だ。
もともと彼(?)とニアがマタタビを拾い、さらにそれをジンが拾ったらしい。
つまり、二人っきりの時間が相当あったのだから、支給されていた銃を使えば一瞬で片がつく。
私怨があるとも思えない彼らがマタタビを殺すとしたら、優勝のためだろうから、他者を生かしておく必要などない。
いや、相手を信用させるためにあえて足手まといを確保するなら、いざという時に見捨てる覚悟でマタタビを生かした方が都合がいいはずだ。
結論としてはあの三人は犯人である蓋然性が低い。
もちろん、人間は論理だけで動くわけではないから言い切れないが、そこまで言い出したら誰も彼も疑わなければならない。
大体、いくら素直で世間知らずのお嬢様とはいえ、わけのわからない薬をいつ起きるともしれない怪我人に飲ませるのはリスクも難度が高いように思える。
(ああ、畜生。何を遠回しに考えてやがる)
心の中でため息をついた。
そう、実はニアのその勘違いを意図的に誘発できる要素を、スパイクは知っている。
完全に忘れていたが、順序立てて考えていくうちに思い出した。
読子が言っていたではないか、『ルルーシュ・ランペルージには催眠術のような特殊能力があるのではないか』と。
その後、あの傷面の男が襲ってきたため、あやふやになっていたが、この推測が仮に当たっていた場合、事情は一変する。
たかが催眠術と馬鹿にすることはできない。
以前、スパイクを含むビバップ号の面子全員で追い詰めた新興宗教の教祖、ロンデス。
彼は機械を通してではあるが、人を自殺へ追い込むほどの強力な催眠・洗脳術を持っていた。
生存本能を捨てさせることに比べれば、薬と信じ切っているものを毒とすり替えた後、怪我人に飲ませるくらい造作ないだろう。
(問題は……信じてもらえねえことだよなあ……)
これは推測にすぎない。
こんなことを言い出して信用してもらえるかは怪しい。
読子にこの推測を伝えられた時、スパイク自身が疑ってかかったくらいだ。
ましてはやて達が突然行動を変更した場面を見てすらいないジンに信じてもらえるわけがない。
カレンなど問題外だ。
ルルーシュが怪しいと言った瞬間に銃を向けられかねない。
そもそも、スパイク自身がこの発想を少し突飛だと思わないでもない。
(やれやれ。マタタビが生きてりゃ話を聞いてもう少しはっきりしていたんだが……ん?)
そこでスパイクはふと気がつく。
あの場にいた面子で生き残っているのは自分とカレンとルルーシュの三人だけであると。
あの時、自分は隠れていたからカレン・ルルーシュの視点で考えればカレンとルルーシュ二人だけである。
■
立場を変えて考えてみよう。
瞬間催眠のような能力を持っている人物がいるとして、その人物はその能力を公言するだろうか?
ちょっと良く考えればそんな愚行は避けるだろう。
他人の意思に介在できるような人間を信用できる者は相当限られている。
特に、こんな殺し合いの舞台ではそんな能力があるというだけで疑心暗鬼の対象となって銃を向けられかねない。
とはいえ、こんな状況下にある以上、止むを得ず使うこともあるだろう。
だが、使った対象の催眠が解けるなり、催眠をかけた目的を全く遂行できない状態になったらどうだろうか?
瞬間的な催眠術はうまくやればかけたことすら相手に気付かれないだろうが、行動を真逆に捻じ曲げられたりすれば流石に気づくだろう。
その人物が正気を取り戻せば、自分が催眠術をかけられたことを周囲に伝えるのは間違いない。
また、よくよく観察されれば言動から催眠状態にあることを知られる可能性がある。
そんなことになれば、いずれその能力を持つ人物は割り出され、周囲から孤立し、自分の生存すらおぼつかなくなる。
自分に強力な戦闘能力がないならなおさらだ。
ならばどうするか。
古人いわく、死人に口なし。
用済みの者が死んでしまえば秘密は漏れない。
スパイク自身も『レッド・ドラゴン』に所属していた時代、さんざん味わってきた非情な教訓である。
もちろん、マタタビ以外にもカレンがいるわけだが、ゼロの椅子を手に入れた今、カレンがルルーシュに不利なことをするとは考えにくい。
それくらい、カレンの中で『ゼロ』という称号が重い位置を占めているのは見れば分かる。
つまり、マタタビを殺せばこの能力の秘密を知られる恐れはない。
(とまあ、こう考えればランペルージがマタタビ殺害の黒幕って説は動機の面からも筋が通るが、証拠はないしなあ……)
証拠などこの状況では必要ないが、少なくとも周囲を納得させることは必要だ。
出会って間もないが、ルルーシュは冷静で、頭が回る人間だということは分かっている。
本当に催眠能力を持っているのだとしたら、マタタビに自殺させればいいところをニアを利用することで周囲の信用を勝ち取っていることにもなり、それなりの狡猾さも持っていることになる。
そんな奴相手に、スパイクが人望やら口論で勝てるだろうか。
スパイク自身が無理だと断言できる。
(それどころか、下手に疑いをかけたら周囲に袋叩きか、催眠術で操られてこっちが返り討ちだろうな)
読子の警告さえなければ、スパイクだって彼を「もやしっ子だが頼れる好い奴」と評価していただろう。
だが、光るものの全てが黄金とは限らない。
日常生活では好人物でも、裏で行っていた犯罪が明るみに出て賞金首になった人物など掃いて捨てるほど見てきた。
好青年のルルーシュが実は人殺しも厭わない非情な男だったとしても驚きはしない。
問題は対策だが……さっぱりわからない。
実力行使に訴えるのも手だが、この状況では無理だろう。
何か尻尾を出すまで警戒するしかない。
といっても、スパイクの側に彼はいないので、合流するまでその部下であるカレンをそれとなく気をつけるしかないが。
「ゼロ」に固執する彼女は、ルルーシュの能力の秘密など気付かなくても自棄を起こして何かするかもしれない。
突然自殺でもされたら気分が悪いことこの上ない。
(あーあ、面倒くせえ。だからガキと女と動物は嫌いなんだよ……)
■
スパイクがふと気がつくと、妙に車内は静かになっていた。
横を見ると、ジンが無言で運転している。
さらに後部座席を見ると、カレンは疲れが出たのか、うとうとと眠っていた。
「おい、カレン……」
起こそうとしたスパイクの目の前に、横から指が突き出された。
その指の持ち主を見ると、ジンはそのまま指を唇に押し当てる。
(まあ、小うるさいのが黙っててくれていいか。)
眠りは精神の疲労も和らげる。
今のカレンには必要なものだろう。
ジンの意図を察し、スパイクもジンにならって黙り込んだ。
ただ、スパイクにはひとつだけ気になることがあり、声を抑えて口を開いた。
「ジン、お前、ランペルージのこと、どう思う?」
「冷静で頼りになると思うよ。女の子にも優しいしね」
「そうか……。ニアのことは?」
「……難しいね。いろいろ考えてみたけど、彼女がマタタビを殺したとしかおもえないし、素性も怪しい。
ルルーシュは信用していたみたいだけど…………」
「まあ、だろうな……」
それきり、スパイクは黙り込んだ。
光るものの全てが黄金とは限らない。
だが、その輝きに騙される者は多い。
王ドロボウがその真贋を見極められるのはいつだろうか?
三人を乗せた消防車は夜の闇をかき分けながら、デパート跡地へ到着しようとしていた。
【E-6/路上/一日目/夜中】
【ジン@王ドロボウJING】
[状態]:消防車の運転席。全身にダメージ(包帯と湿布で処置)、左足と額を負傷(縫合済)
[装備]:夜刀神@王ドロボウJING×2(1個は刃先が少し磨り減っている)
[道具]:支給品一式(食料、水半日分消費)、支給品一式
予告状のメモ、鈴木めぐみの消防車の運転マニュアル@サイボーグクロちゃん、清麿メモ 、毒入りカプセル×1@金田一少年の事件簿
[思考]
基本:螺旋王の居場所を消防車に乗って捜索し、バトル・ロワイアル自体を止めさせ、楽しいパーティに差し替える。
0:いい夢みなよ、カレンおねーさん。
1:デパート跡地を探索する。
2:仲間を集めつつ左回りで図書館を目指す。
3:ラッド、ガッシュ、技術者を探し、清麿の研究に協力する。
4:ニアに疑心暗鬼。
5:ヨーコの死を無駄にしないためにも、殺し合いを止める。
6:マタタビ殺害事件の真相について考える
[備考]
※清麿メモを通じて清麿の考察を知りました。
【スパイク・スピーゲル@カウボーイビバップ】
[状態]:消防車の助手席。疲労(小)、全身打撲、胸部打撲、右手打撲(一応全て治療済みだが、右手は痛みと痺れが残ってる)
[装備]:デザートイーグル(残弾7/8、予備マガジン×2)
[道具]:デイバック、支給品一式(-メモ) ブタモグラの極上チャーシュー(残り500g程)、スコップ、ライター
[思考]
0:小うるさいのが黙っててくれて助かるな……。
1:デパート跡地を探索する。
2:仲間を集めつつ左回りで図書館を目指す。
3:カレンをそれとなく守る。もちろん監視も
4:ルルーシュと合流した場合、警戒する。
5:ジェットは大丈夫なのか?
[備考]
※ルルーシュが催眠能力の持ち主で、それを使ってマタタビを殺したのではないか、と考え始めています。
(周囲を納得させられる根拠がないため、今のところは他人には話すつもりはありません)
【カレン・シュタットフェルト@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:消防車の後部座席。疲労(小)精神疲労(中)若干不安定 睡眠中
[装備]:ワルサーP99(残弾15/16)@カウボーイビバップ
[道具]:デイパック、支給品一式(-メモ)、高遠遙一の奇術道具一式@金田一少年の事件簿
[思考]:
基本:黒の騎士団の一員として行動。ゼロの命令を実行する。
0:…………
1:デパート跡地を探索する。
2:仲間を集めつつ左回りで図書館を目指す。
3:スパイクを出来るだけ密かに始末する。
4:ゼロ(ルルーシュ)に指示を仰ぐ
5:先代ゼロ(糸色望)の仇を取る
[備考]
※マタタビを殺したのはニアだと思っています。
※ジンは日本人ではないかと思っています。
「……動き出しましたか。さて、ここからが勝負どころですね」
「……そうだね。じゃあ、私達の手番という訳か」
――――明智健吾と菫川ねねねは、映画館のロビーで向かい合いながら意見を交換していく。
目の前に広がる数多の道具。
その中でも、明智達が特に注視しているのは携帯電話だった。
8×8の盤上で動き回る無数の駒たちは、各々の動き方に従いそれぞれの役割を果たしていく。
そして、今彼が最も重要視する駒が、とうとう動き出したのだ。
それも、こちらに向かって。
……高峰清麿。
全ては彼と接触してからだ。
螺旋王の掌で踊っているのが分かっていても、まずは動かなければ話にならない。
彼のプロフィールはほぼ把握している。
必ず、こちらの力になってくれるだろう。
「……ラッドが単独行動をし始めた時は交渉が決裂したかと思ったけどね」
どうやらそれはねねねの杞憂だったようだ。
おそらく、その原因は傍らにいる少女だろう。
小早川ゆたか。プロフィールを見ても、紛う事なき一般人だ。
危険人物と目される相羽シンヤと同行していたのが気になる点だが、
人質などには持って来いとでも言わんばかりのパーソナリティの彼女は何らかの利用価値があったと明智達は考える。
あるいは、危険人物だった相羽シンヤを説得でもしたのか。
……それはもう、推し量る事しかできないのだが。
相羽シンヤはおそらく死亡しているのだから。
それまで同行していた小早川ゆたかは現在彼女は高峰清麿と同行中であり、
相羽シンヤはラッドの座標と全く同じ位置にいる。
それも、ラッド・ルッソとの接触の直後から、だ。
これの意味する事は、ラッドがシンヤの首輪を持ち歩いているという事だろう。
携帯電話に表示される座標は、首輪の信号を元にしているのだから。
その逆も考えうるが、しかし、高峰清麿が現在無事に生き残っている事から察するにその可能性は低い。
ラッドとシンヤの首輪の反応を考えても、平気で建物を飛び越す動きをしている。
おそらくフラップターに乗っているのだ。
フラップターの操縦技術を考えても、まずそこにいるのはラッドだろう。
明智は目を閉じ、彼の冥福を祈る。
そもそもの原因はラッドを派遣した自分にあるのだ。
警戒者リストに名を連ねていた、相羽シンヤ。
たとえゲームに乗っていたとしても、人の死というのは彼の心に圧し掛かる。
――――だが、明智は臆さない。揺らがない。
彼に報いる事のできる行為は、自分達が螺旋王を上回る事だけだと理解しているからだ。
今まで死んできた全ての人間に対して、明智は呼びかける。
あなた達の死は無駄にはしない。いや、無駄にさせないのだ、と。
携帯電話を通してチェス盤を俯瞰することで、明智の脳内ではどこで誰が何をなしたのかが明確なビジョンとなって現れる。
――――そう、高遠遙一たちの顛末でさえも。
危険人物ビシャスと高遠遙一達との接触。
その後に残るは動かぬ名前が5つだけ。
高遠遙一。ティアナ・ランスター。アレンビー・ビアズリー。ジェット・ブラック。チェスワフ・メイエル。
彼らはもう、動かない。
たった一つの希望――――ガッシュ・ベルだけを残して。
あの高遠がそこまで簡単に殺されてしまうのは俄かに信じがたい。
日本警察が幾度となく取り逃がし、脱獄さえして見せた男なのだから。
だが、同時に明智は高遠故に、十分死亡もあり得ると判断していた。
彼の犯罪手法は主に殺人教唆。
奇術の腕は図抜けているが、彼とてこの場では充分一般人の範疇に納まってしまうだろう。
故に、高遠も志望していると見るのが妥当だ。
それが悔しいのか、悲しいのかは明智には区別がつかなかった。
……ガッシュ君とも接触を持ちたいですが、と明智は考えるが、しかし。
まだ時期ではない。自分達の安全を確保してからだ。
現在、映画館は既に安全無事な場所ではない。周囲に危険な人物が多々集まりつつあるのだ。
あたかも誰かのシナリオに沿うかのように。
ニコラス・D・ウルフウッドや鴇羽舞衣、東方不敗といった明確にゲームに乗った人物。
また、衛宮士郎が元の世界で敵対したという言峰綺礼やギルガメッシュ。
――――後者なら話し合いの余地があるだろう。が、前者に今の段階で接触する訳にはいかない。
あまりにも戦力が足りなさすぎるからだ。
反面、同時に味方になりそうな人間も、この周囲に向かっている。
Dボゥイ、ヴァッシュ・ザ・スタンピードといったプロフィールを見てゲームに乗りそうもない人間なら交流する価値は高い。
だが。
そうした状況でねねねが提案したのは、映画館の放棄だった。
早々にここを離脱し、刑務所に向かうべきだと。
彼女の“シナリオ”とは、こういうものだった。
「危険人物はともかく、この、衝撃のアルベルトとか柊かがみちゃんとかは確かに話し合えるかもしれないよ。
かがみって子はぬいぐるみとかこのフルメタル・パニックって小説を見る限り、ごく普通の女の子だと思う。
二人で行動してるなら、話し合いの通用しない可能性もゼロじゃないし。
こっちに近づいてきているヴァッシュさんって人も平和主義者らしいし、力にはなってくれそうだよね。
……だけど、そういうエサにつられてこのまま留まり続けるのは、螺旋王の思う壺じゃないかと私は思う。
螺旋王が混乱の中で螺旋力に目覚める事を期待しているのなら――――、」
ねねねは、うん、といったん頷いた上で明智を見つめ、言う。
「……私達に十分な人材をあてがった上で、ゲームに乗った人間をぶつけるはず。
あるいは、螺旋王に対抗する人間同士でも因縁があればぶつかり合うよね。
今、この近くにいるのはそんなクセのある人間ばっかり。
そうやってここを中心に、更なる混沌を引き起こすのがヤツの目的だよ、きっと。
……だから」
一息。
「だから、私は敢えて仲間になってくれそうな人たちからも一旦距離をおいて、螺旋王の読みを外してやるべきだと思う」
確かに最善手はこの場で戦力を確保し、対螺旋王の一大集団を結成する事だ。
人数が多ければ多いほど、向かってこようとする人間は減っていく。
現時点でも映画館付近を目指すゲームに乗っていないであろう人間はそれなりに多いのだ。
彼らを纏めきれさえすれば、ゲームを中断させるのも難しいことではない。
だが、それが戦乱を巻き起こす為の工作だとしたら。
念を入れすぎるなんて事はありえない。ここは文字通り何でもあり、バーリ・トゥードなのだから。
戦場の中心にいる必要など何もないし、螺旋王の思惑に対抗する為にこちらの行動にノイズを紛れ込ませるだけでも価値がある。
故に、高峰清麿の合流時点を以って、刑務所への移動を開始する。
当初は夜中に戦力の足りない状態で動くのは危険だったが、今はその心配はだいぶ下がっている。
何故なら、携帯電話の現在位置特定機能があるからだ。
どの参加者とも接触しないコースを随時確認しながら進行することで、戦闘は高確率で回避できるだろう。
他の参加者への接触は、刑務所についた後ゆっくりと行えばいい。
既に衛宮士郎やラッド・ルッソにはいざという時刑務所に向かう旨を伝えてある。
彼らに関しては問題ないだろう。
では、本来の予定では人員確保のために接触する予定だった、危険人物と目されていない人物が映画館に侵入したときはどうか。
ギルガメッシュや言峰綺礼などはゲームに乗ったとは限らない。
あくまで元の世界で衛宮士郎と敵対していただけなのだ。ゲームの脱出に関しては協力し合える可能性はあるだろう。
他にも、とりあえず協力できそうな人物にコンタクトしない手はないのだ。
今ここを離脱すれば、その機会すらも失ってしまう。
その解も簡単だ。
誰かが映画館まで到達したら、携帯電話で映画館に連絡を入れればいいのである。
参加者の位置を特定できるという機能に気をとられがちであるが、携帯電話本来の役割は遠距離通話だ。
この携帯電話には、あらかじめいくつかの施設の電話番号が登録されているのである。
その中のひとつに映画館があったのは僥倖だ。
逐次参加者の位置を確認して、映画館に誰彼が来たときに連絡を入れればいい。
そもそも怪しまれて電話を取ってもらえない可能性もあるし、うまく会話に持ち込めたとしても敵対する可能性もある。
だが、その点はこちらの現在位置や刑務所に向かう事さえ教えなければ直接の危険までには至らないだろう。
そして、もう一つ明智に移動を決意させた事項がある。
……それは、一つの放送だった。
『エドです。地図の載っている施設を全部、良く調べてみてください。すごいお宝を発見ができるかもしれません。
詳しい情報は追って連絡しますが、ラセンリョクという物を用意してください。それが絶対必要なんだそうです!
もしも見つけてしまったらぁ〜一切、粉砕、喝采ぃ〜八百屋町に火がともる〜!』
無邪気な子供の声。
先刻、それが突然館内に鳴り響いたのだ。
罠かもしれないという意見のねねねに対し、明智の意見は異なった。
エドという名の該当する子供は二人。
エドワード・エルリックとエドワード・ウォン・ハウ・ペペル・チブルスキー4世。
どちらも死亡している為遺言となったその言葉について、明智にはそれが正しい事であるという確信があった。
博物館の存在だ。
螺旋力と螺旋に縁のあるアイテムによって開くというあの扉は、実験を円滑に進行させようという螺旋王の意図の下に設置されたのだろう。
矛盾しているような感覚は拭えないが、しかし螺旋王直々に用意されたあの場所が罠であるとは考えにくい。
仮に螺旋王ではなく他の参加者の罠だとしても、地図に乗っている施設というのはあまりに広範囲すぎる。
やはり罠にしては悪手でしかない。
そして、肝心の放送の内容は、あのような場所が他に複数存在する可能性を示唆している。
ならば、できる限り他の施設も調査しておきたい所だ。
危険な物品もやはりこのゲームでは駒なのだ。
参加者が取り返しのつかないチェスの駒なら、支給品や隠されたアイテムは将棋の駒だ。
自分の手にあれば心強い戦力となるが、敵の手に渡っては目にも当てられない事になる。
それを取りに動くのも全く正しい一手である。
まずは刑務所に向かい、そこを調査。
次いで、そこを基地として人員を派遣、他の施設を調査する事が望ましい。
万一刑務所さえも安全でなくなった場合、明智が着目するのは警察署だ。
そこを選択する理由も、やはり刑務所と同じ様な理由になる。
……尤も、そんな事態は想定したくないが。
第二第三の候補として、図書館や発電所なども考えておいた方がいいだろう。
一見役立ちそうにない施設ほど、襲撃される可能性は低いのだから。
「……それも、やはり他の方々と交流を持たねば話になりませんか」
一人ごちるも、明智の目は携帯電話から揺るがない。
すでにねねねには博物館の事は話してあるが、やはり彼女だけでは心もとない。
そう、刑務所に着いたとしても、やる事はまだたくさんある。
とにかく、螺旋王に対抗する為の人員が欲しい。
その為に、いかにリスクを抑えながら他の参加者と接触するか、だ。
現在位置、及び動向を考えると刑務所付近で接触できそうな参加者は3組。
ルルーシュ・ランペルージ一行。スカー。リュシータ・トエル・ウル・ラピュタ。
まず、彼らの誰かと連携することが第一の目的になるだろう。
ただ、前者二組はともかくリュシータという少女は、ニコラス・D・ウルフウッドと接触して以後動きが一定していない。
彼女と同行していたエドワード・ウォン・ハウ・ペペル・チブルスキー4世が死亡したのがその辺りでもあることから、動揺でもしたのだろう。
保護する必要があると明智は考えるも、しかし彼女の動向次第では刑務所から離れる可能性もある。
確実に接触できる訳ではない以上、不確定要素は二の次だ。
即ち、確実に一番最初に接触し得るのはルルーシュ・ランペルージ一行あるいはスカーという男だろう。
では、どちらに対して先に接触すべきか。
スカーという男は、現状未知の要素が多すぎる。
なにせ、携帯電話で座標を確認して以来ショッピングモールからほとんど動いていないのだ。
リストに記載された、イシュヴァールという民族出身であり、その虐殺の復讐のために生きているという情報くらいしか自分達は持ち得ない。
自分達と敵対する要素はないが、このゲーム内でどういう意図で動いているかがほとんど読めないのである。
対し、ルルーシュ・ランペルージ一行はどうか。
彼らは集団で動いている以上、ある程度の信頼は置けるだろう。
殺し合いに乗っていない可能性は高い。
また、人員確保という現状の指針にも適合している。
更に螺旋王の娘というニアという少女も存在しているのだ。接触する価値は高い。
だが、同時に懸念もある。
彼らはしばらく前に内部分裂を起こしているのだ。
その発端は、おそらくマタタビという参加者の死だろう。
地図の一箇所に置き去りにされた彼の首輪が示すのは、おそらく彼が死亡したことを示している。
……その原因が何であるにせよ、不安要素は確かに存在しているのだ。
「まあ……、結局は刑務所に着いてからの話なんだけどね」
「そうですね。できる限り早く行動しましょう」
誰に接触するにせよ、刑務所到着の時点で誰が一番近くにいるかというのも問題になるだろう。
場合によってはリュシータという少女がすぐ近くにいるかもしれない。
そうならば真っ先に彼女を保護すればいい。
ルルーシュ・ランペルージ一行やスカーに関しても、今後の動向次第なのだ。
そして安全を確保したまま接触する方法も、乱暴にではあるが考えついている。
ガジェットドローンを介せばいいのだ。
考察やこちらの意図を伝えるメモなどを括り付けた上で彼らの元まで飛ばし、伝令の後に帰還させる。
その際に彼らの返答をやはりメモさせておけば、ある程度の交流は可能だ。
何度かやりとりを繰り返した上で、安全だと判断すれば刑務所まで案内しても問題ないだろう。
「さて、と……。イリヤ君にも今後の事を伝えません……と……」
「どうした!? 携帯に何が……」
急に言葉を止めた明智に、ねねねは即座に聞き返す。
……だが、明智の表情を見て何かのっぴきならない事態が発生した事を嗅ぎ分けていた。
「……即座にここを離脱します。菫川先生はイリヤ君を連れて外に出てください。
……衛宮君は、ルッソ氏に拾われて直接刑務所に向かう、と、携帯電話に連絡があったとでも彼女には伝えてください」
「……ッ!! 衛宮が!? 根拠は!?」
「彼の首輪は現在東方不敗と接触中です! ……急いで!!」
顔をくしゃくしゃに歪め、ねねねはしかし即座に外へ飛び出していく。
……殺人に乗った東方不敗と首輪の反応が共にある。
それは即ち、交戦中であるという公算が非常に大きい。
最悪、士郎が殺され、首をもがれた可能性すらあるのだ。
最早一刻の猶予もない。
ラッド・ルッソから話を聞くに、東方不敗の戦闘能力は自分達が立ち向かうには高すぎる壁である。
衛宮士郎が生きているなどという希望的観測はしないほうが懸命だ。
今からではどうやっても間に合わない。
助けたい思いはあるが、しかし明智は命を天秤にかけ、苦渋と共に切り捨てた。
犬死にが目に見えている。
自分達の戦闘力など、常人に毛が生えているかすら怪しいところなのだから。
……もし、衛宮士郎が生き延びてくれたのなら。
その時は刑務所に来てくれるだろう。
それが唯一の希望である。
「……衛宮君。もし生きてくれているのならば、どれだけ恨んでくれても構いませんよ。
私達は、君を見捨てるのですから……」
唇を噛み締めながら、明智は携帯電話に目を通す。
現在東方不敗は衛宮士郎とおそらく交戦中。
そして、高峰清麿と小早川ゆたかも次第にこちらに近づいてきていた。
中間地点で落ち合い、そのまま刑務所に向かうべきだろう。
明智は卓の上に広がったものをそれぞれのデイパックに押し込みながら立ち上がる。
一つに纏めないのは自分が倒れても全ての情報を渡さない為だ。
石橋を叩き、犬を渡らせ、なお油断しない。
それだけの慎重さを持ちながら、明智はしかし闘争心を昂らせる。
ここから撤退するのは確かに守勢だ。
だが、螺旋王が殺人者という駒でチェックをかけるのならば、それすらも耐え忍んで見せよう。
一連の攻防をしのぎさえすれば、こちらの手番はいずれかならず回ってくる。
ずっと螺旋王のターンであるなどありえない。
全ては勝利の為の布石。
いかに相手が手数で攻めて来ようとも、結局は最後に凌ぎ切れない一手を繰り出した方が勝つのだから。
それが、衛宮士郎に対する手向けの花になると信じて。
明智健吾は、振り向かずに部屋を後にする。
一人の少年の死に対し涙はなく、しかし、握った拳から血を滴らせて。
◇ ◇ ◇
夜。
暗闇の中。
静まり返った病院、その中庭で、一組の男女が手と手を取り合い、寄り添っていた。
男は握り合っていない方の手で女の肩を抱き、女の顔を見つめて告げる。
「……さて、行くぞシャマル。まだ先は長い、ニンゲンはだいぶ残っている。
……案ずるな、お前が手を出す必要はない。手を汚すのは俺だけだ」
握った手と手に力を入れ、笑うヴィラル。
彼に言いようのない感情を覚えながらも、シャマルは照れ隠しに呆れ笑いをしてみせる。
「もう……。まずはその前に、治療をしてしまいましょう。
ここは病院ですから、設備が幾つも――――、」
そう言った瞬間、シャマルは浮遊感を感じた。
何故だろうか。
疑問はすぐに氷解する。ヴィラルが自分を抱えて一気に後ろに跳躍したのだ。
だが、そんな事をした理由が分からない。
それを確かめようとした瞬間、聞きなれない男の声が中庭に響き渡った。
「毒ガスをこちらは持っている! ……その場から動かず、話を聞いて欲しい」
第三者の介入。
シャマルはようやくそれに思い当たった。
見れば、さっきまで自分の足下だった場所に何かが転がっている。
……それは、薬品のビンに見えた。
もしそれが手榴弾などだったら、自分達は木端微塵だったろう。
ヴィラルのとっさの判断でその場を退いたという訳だ。
杞憂だったにせよ、慎重を期すに越した事はない。
「ちぃ、……ニンゲンか、ふざけてくれる……!」
ヴィラルは即座に声のほうに向かって走り出そうとする。
声の主の姿は見えない。エントランスの内側、壁のぎりぎりに身を隠しているようだ。
場所が分かるなら話は早い、とばかりに武器を構えるヴィラルに、しかしシャマルは彼を制止する。
「待って、ヴィラルさん!! 毒ガス相手じゃあなたでも……!」
この中庭は四方を壁に囲まれている為、毒ガス散布には好条件である。
たとえ相手を倒せても、ここから男の場所に行くまでにまずガスを発生させられるだろう。
そうなれば逃げ場はない。
どう出るかも分からない現状、自分達はどう考えても不利すぎる。
今は、とにかく相手のいうことを聞くべきだ。
「くッ……、ハッタリではないのか……!?」
彼の今の最優先事項は、シャマルだ。
誰彼構わず無差別に被害を及ぼす毒ガスならば、確かに相手を倒してもシャマルが生き延びられる可能性は低い。
現在の彼のスタンスにとって最悪の相性である。
……そもそも、そんな事をすれば男だってただでは済むまい。
故に、ヴィラルは男の言葉がハッタリだと推測した。
……だが。
「いいえ、……多分、本当よヴィラルさん。さっきのそのビン、間違いなく毒ガスを精製できる薬品の入った代物だわ。
……そうなんですよね、そこにいらっしゃる誰かさん。
あなたが、この病院のお薬を全部回収したのかしら?」
シャマルの視線の先のそのビンは、シアン化ナトリウムの入ったビンだった。
強酸を注げばそれだけで青酸ガスが発生する。
……毒ガスを保有している証拠としては、これ以上のものはないだろう。
なにせ、軽くこちらに転がしてよこせるのだ。
彼の手元には、大量の毒ガスの元、それも青酸ガス並みに危険な代物があるとみて間違いない。
シャマルが先刻この病院を調べた時、あまりにも薬品が少なすぎたことへの解。
誰かが先立って薬品を回収していたに相違ないだろう。
そして、シャマルの懸念は肯定された。
「……ああ、その通りだ。こちらとしても、正直死にたくはないんだ。
ただ、100%あんた達に見つからず抜け出す方法も思いつかなかったし、正面きって戦って勝てるとも思えなかったんだよ。
……だから、」
「……全滅覚悟で私達をこの場に釘づけて、自分が逃げおおせるまで牽制する、ということですね」
成程、とシャマルは思う。
あの壁の向こうにいる人間は、戦闘に自信がない上に殺し合うつもりはないらしい。
自分達を殺すつもりなら、さっさと毒ガスを散布して逃げてしまえば済むのだから。
「……ヴィラルさん、彼を見逃す事にしましょう。誇り高いあなたには苦痛でしょうけど……」
「分かっている。お前を死なせては元も子もない。
……所詮は姑息な手しか使えん輩だ。こちらを殺す意図がなければ捨て置くまでだ」
……シャマルは、その言葉に安堵した。
ヴィラルはたしかに、自分のことを考えてくれているのだ。
心が温まるのを感じる。彼が、プライドと自分を天秤にかけて自分を選んでくれたのだから。
「……感謝するよ。一応、俺は安全と判断するまでいつでもガスを発生させられる態勢でここを退かせてもらう。
それと……」
「なんだ、ニンゲン」
少しの間。だが、躊躇うように、駄目元でという声色で男はヴィラルとシャマルに呼びかける。
「……あんた達、螺旋王の意図に従って動いてるんだよな」
「……それがどうした」
そして、未だ姿を見せない男はこう告げた。
「……螺旋王の目的は、多分殺し合いそのものじゃない。それを分かった上で、あんた達は人間を殺そうとしているのか?」
「「……!!」」
男の声は、彼自身の考察を伝えていく。
螺旋王の、真の目的。
趣旨は殺し合いではなく、その状況で発生する力の事。それに関する実験。
螺旋力とは。
首輪の解体の可能性。その条件と、制裁。
「……螺旋力さえあれば首輪の解除もできる。なけりゃ電気ショックだけどな。
首輪のネームシールの下にあるネジに、螺旋力を込めて回せばいい。
そして、あんた達は見たところさっき螺旋力が覚醒した可能性が高いんだ」
「……何を、根拠に……!」
吠えるヴィラル。
彼は、動揺していたのだ。
ニンゲンの考察、それがあまりにも的確すぎた為に。
彼自身も、うすうすと考えていた『“一部の人間が持つ特殊な力”の研究』。
それを一歩推し進めた男の考えは、あまりに状況に合致しすぎる。
ニンゲン同士の殺し合いそのものに確かに意味があるとは考えにくいのだ。
ガンメンを駆り、叩き潰せば済む話なのだから。
思い返してみれば、確かに一介の獣人である自分に螺旋王が真の目的を教えるとは考えづらい。
だが。
だがしかし、それならばシャマルの仲間が死ぬ必要はなかったのではないか。
彼女を泣かせる事もなく、ただニンゲンを追い詰めさえすればよかったのではないか。
シャマルは、自分の体を抱きしめて、俯いている。
彼女の心中を推し量れるほどヴィラルは器用ではない。
だから、彼は怒鳴り返す。
シャマルを守る為に決して勇み足は踏まず、しかし自身にできる精一杯の攻撃として。
「さっき、あんた達の体に緑色の――――、」
「そこまでにしろニンゲン……ッ!! 戯言はもういい、早々に立ち去れ!!
俺の自制心が許容量を越えるまでにだ……ッ!!」
「――――」
男の声が止み、わずかな静寂がしばし空間を満たした。
そして、男の声が再度響きだす。
「……悪かった。もう行くよ。
ただ、これだけは言わせてくれるか?」
ヴィラルもシャマルも返事はしない。
ただ、声のする方向をじっと眺めていた。
「……俺は、あんた達と殺し合いたくなんてない。
誰かを大切にできるんなら、きっと分かり合える。争う必要なんてないと思うんだ」
それだけを告げて、男の気配は次第に遠ざかっていく。
中庭からエントランスを見ていると、二つの人影が暗闇の中に浮かびあがった。
片方がもう一方を背負ったその背中は、扉を開けて病院を出て行く。
あまりにも無防備に見えながら、その背中に何故か二人は銃を向けることさえできないでいた。
実際はいつでもガスを発生させられるのだろうが、牽制をするに越したことはないはずなのに。
ただ、そこに立ち尽くしたままで。
どれだけ時間が経ったろうか。
ヴィラルは、未だ抱きかかえたままのシャマルになにがしかを伝えようとする。
「……シャマル。俺は――――、」
「ヴィラルさん」
しかし、それはシャマル自身の言葉で遮られた。
まるで、ヴィラルにその言葉を言わせてはならないかのように。
お姫様抱っこの態勢のままで、シャマルはぎゅっとヴィラルの腕を抱き締める。
「先へ、進みましょう。私たちの道の先へ。
……あなたの信じた道を、あなたがあなたである道を。
私なんかのために、踏み外さないでください。……ね?」
穏やかに微笑みかけるシャマルに、ヴィラルはゆっくり息を吐き、自身も笑い返した。
迷いを振り払う、そんな意思を込めながら。
「……ああ。お前がそれを望むなら、俺も躊躇いはない。
行こう、俺達の道を。誰の為でもない俺達のために」
星の落ちてきそうな夜の中庭で。
二人のニンゲンでないものが寄り添いあう。
それぞれの為に、自分達の道を行くと誓い合いながら。
【D-6/病院中庭/1日目/夜中】
【チーム:Joker&New Joker】
[共通思考]
1:自分達の道を行く。
2:二人で優勝する。
3:お互いを助け、支えあう。
【ヴィラル@天元突破グレンラガン】
[状態]:全身に中ダメージ、脇腹・額に傷跡(ほぼ完治・微かな痛み)、左肩に裂傷
[装備]:大鉈@現実、短剣×2
[道具]:支給品一式、モネヴ・ザ・ゲイルのバルカン砲@トライガン(あと4秒連射可能、ロケット弾は一発)、
S&W M38(弾数1/5)、S&W M38の予備弾数20発、エンフィールドNO.2(弾数0/6)、短剣×9本、水鉄砲、銀玉鉄砲(銀玉×60発)、アンチ・シズマ管@ジャイアントロボ THE ANIMATION、タロットカード@金田一少年の事件簿、USBフラッシュメモリ@現実、鉄の手枷@現実
[思考]
基本:シャマルと共に最後の二人になり、螺旋王を説得して二人で優勝する。
0: シャマルと共に進む。できる限りシャマルの望みを助ける。
1:道がぶつからない限りシャマルを守り抜く。その為にも、クラールヴィントと魔鏡のかけらをどうにかして手に入れたい。
2:蛇女(静留)に味わわされた屈辱を晴らしたい。
3:『クルクル』と『ケンモチ』との決着をつける。
4:機動六課のニンゲンを保護する。
※二アが参加している事に気づきました。
※機動六課メンバーについて正しく認識し直しました。
※なのは世界の魔法について簡単に理解しました。
※螺旋王の目的を『“一部の人間が持つ特殊な力”の研究』ではないかと考え始めました。
※本来は覚醒しないはずの螺旋力が覚醒しました。他参加者の覚醒とは様々な部分で異なる可能性があります。
※清麿に関しては声と後姿しか認識していません。悪感情は抱いてはいないようです。
※清麿の考察を聞きました。螺旋王への感情が変化している可能性があります。
※自身の螺旋力に関しては半信半疑です。
※螺旋力覚醒
【[備考]
螺旋王による改造を受けています。
@睡眠による細胞の蘇生システムは、場所と時間を問わない。
A身体能力はそのままだが、文字が読めるようにしてもらったので、名簿や地図の確認は可能。
人間と同じように活動できるようになったのに、それが『人間に近づくこと』とは気づいていない。 単純に『実験のために、獣人の欠点を克服させてくれた』としか認識してない。
【シャマル@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
[状態]:健康、強い決意
[装備]:ワルサーWA2000(3/6)@現実 、ケリュケイオン@魔法少女リリカルなのはStrikerS
[道具]:支給品一式×3(地図一枚損失)、ワルサーWA2000用箱型弾倉x3、バルサミコ酢の大瓶(残り1/2)@らき☆すた、ゼオンのマント@金色のガッシュベル!!、魔鏡のかけら@金色のガッシュベル!!
暗視スコープ、首輪(クロ)、単眼鏡、マース・ヒューズの肉片サンプル、シアン化ナトリウム
[思考]
基本1:守護騎士でもない、機動六課でもない、ただのシャマルとして生きる道を探す
基本2:1のための道が分かるまで、ヴィラルと共に最後の二人になり、螺旋王を説得して二人で優勝することを目指す。
0:ヴィラルと共に進む。 ヴィラルがヴィラルらしく行動できるよう支える。
1:クラールヴィントと魔鏡のかけらを手に入れたい。
2:優勝した後に螺旋王を殺す?
3:他者を殺害する決意はある。しかし――――。
4:病院内でヴィラルを治療する。
※ゲイボルク@Fate/stay nightをハズレ支給品だと認識しています。また、宝具という名称を知りません。
※魔力に何かしらの制限が掛けられている可能性に気付きました。
※魔鏡のかけらを何らかの魔力増幅アイテムと認識しましたが、
どうやって使用する物なのか、また全部で何枚存在しているのかはまだ理解していません。
※清麿に関しては声と後姿しか認識していません。悪感情は抱いてはいないようです。
※清麿の考察を聞きました。必ずしも他者を殺す必要がない可能性に思うことがあるようですが、優先順位はヴィラルが勝っています。
※自身の螺旋力に関しては半信半疑です。
※螺旋力覚醒
◇ ◇ ◇
「――――務所に向かわせてもらいます。
緊急事態である為、我々も映画館を放棄して――――」
「――――りました。
とりあえず、俺達も同行――――」
……暗闇の中で、彼女が聞いた第一声はそんなやりとりだった。
聞きなれない男達の声だ。
誰だろう、と思うも。目覚めはまだ遠い。
次第に頭の靄が消えていくのが分かるが、やはり覚えのない声だ。
Dボゥイの声ともシンヤの声とも違う。
そこまで思い至った時、彼女――――小早川ゆたかの脳は一気に覚醒した。
「シンヤさん……!!」
跳ね起きる。
だが、体が思う通りに動かない。誰かに背負われているからだ。
果たしてそれが誰の背中なのか。
知っている誰かであることを確認する為に彼女は呼びかけるが、しかし。
「……シンヤ、さん?」
「あ、……起きたのか。すいません、明智さん。ちょっと待ってて下さい」
「……え、」
自分が負ぶさっているのは、全く覚えのない少年だった。
そして、彼から手短に話を聞く。
シンヤと自分が病院にいたこと。
彼がシンヤに首輪に関して尋問されたこと。
その後、彼の仲間の乱入で辛くもそこを逃れたこと。
結果――――、シンヤは、もう既にこの世にいないことを。
それら全ては、自分が気を失っている間に全てなされたのだと。
唐突に、世界の時間が消し飛んだかのように。
「……すまない。本当に、すまない。
あの時俺がもっとうまく立ち回っていれば、彼を殺させずに済んだのかもしれない。
どれだけ謝っても謝り足りないけど、それでも謝らせて欲しい。
本当に、すまなかった」
顔面に苦悩を満たし、幾度となくすまないの4文字を繰り返す清麿と名乗った少年。
話を聞かされたゆたかは当初こそ言い知れぬ恐怖や憤りを感じたが、しかし次第にそれは別の感情へと変化していった。
……自身への無力感と、後悔に。
目の前でシンヤが削り取られる凄惨な光景の後、自分はずっと気絶して何も出来なかったのだ。
あの時、シンヤの前に立ち塞がった二人の男女や猫。
彼らがどうなったのかも分からず、シンヤはその後病院に向かい、そこで命を落とした。
自分が気絶さえしていなければ。
シンヤと清麿の接触を、円滑に進められたかもしれない。
シンヤは今も生きていたかもしれない。
なまじシンヤの死んだ瞬間を見ていないだけに、今の喪失感はとても大きいのだ。
死んだなんて信じられない。
しかし、あのシンヤがDボゥイに繋がる自分を見放して放っておくほうがもっと信じられない。
……つまり、本当にもうシンヤはいないのだ。
自分が気絶していたせいで。
呆然とするゆたかの前で、清麿は今も謝り続けている。
だが、ゆたかには彼を憎む事はできなかった。
責められるべきは自分なのだから。
彼に何と言ったかも覚えていない。
多分どうにか悪口は言わずに済んだと思う。
ただ、清麿は自分をここまで連れてきてくれたのは確かだ。
怖い人ではないんだろうな、とぼんやりと思う。
そして今清麿は、明智と名乗った男の人と話しながら携帯電話をいじりつつ前を歩いている。
もう一人、ねねねと名乗った女性も話を聞き、何かをメモしているようだ。
自分はただそれについて行っているだけ。
まるで、映画のゾンビのように。
そんな時間の感覚すら定かでない夢うつつな世界は、唐突に破られることになった。
「ね、あなたの名前はなんていうの?」
不意に、そんな声がかけられたのだ。
はっとしてそちらを向いてみれば、そこにいたのは銀髪赤目の可愛らしい少女だ。
こちらの顔を覗き込むように、目と目を合わせてじっと見つめてくる。
そこまで観察してようやく名前を問われたことに気付き、やや慌てながらもゆたかはしっかりと返答する。
「え、あ……小早川ゆたか……です」
「ユタカね。うん、わたしはイリヤスフィール・フォン・アインツベルン。
イリヤでいいよ、ユタカ」
にこりと笑うイリヤ。それにつられて、ゆたかは礼儀正しく返事をした。
「あ、はい、よろしくお願いします、イリヤさん」
そして、それがきっかけで互いにこれまでのことを話し始めた。
……といっても、殆どゆたかが一方的に話しているだけだったが。
好奇心旺盛なのか、イリヤはどんどん次を促してくるのだ。
……そして、話すうちにゆたかは次第に心が落ち着いてくるのを実感していた。
順を追って話すことで、心の整理がついてきたのだ。
もちろん、ショックや感情がなくなったのではない。
ただ、誰かに話すことで悩みを自分なりに消化する――――、それと同じ事をしたにすぎないのだろう。
それでも、何も分からないままぼうっとしているよりはずっとマシだ。
そして、彼女は、今の自分がシンヤにせめてしてあげられることを理解する。
イリヤに話すことで、シンヤの死を認識し始めたために。
そして、シンヤの死を受け入れるためにできることを。
曖昧なままのそれも、イリヤに話すことで明確な形にしていく。
「……ひとり、わたしが一緒にいてあげなきゃいけない人がいたんです。
でも、その人はもういなくて、それでわたし、その人に最後の挨拶だけでもしたくて……」
一つ一つ、言葉にしながらゆたかは自分の中のシンヤに向き合っていく。
そして、彼女の今彼に唯一してあげられることを、明確な行動として確認した。
「わがままだって分かってます。だけどそれでも、……お墓とか作ってあげたいんです」
――――そう。シンヤが死んだというなら、もう自分と話すことも助け合うことも出来はしない。
だけど、彼を弔うことはできる。
彼の死を自分は認めて、彼には安らかに眠ってもらいたいのだ。
「……そう、なんだ。……うん。分かるよ、その気持ち」
イリヤは頷き、悲しそうな目でゆたかに同意する。
……彼女も何か失ったのか、それは今のゆたかには分かりはしない。
ただ、彼女の手助けになりたいと、ゆたかはなんとなく思った。
「そっか。じゃあ、いったん安全な所に行ったら、アケチに頼んで病院に行かせてもらおう!
あとであちこちの施設を調査してみるって言ってたし、その時に組み込んでもらえばいいよ。
ユタカは私が守ってあげる。大丈夫、こう見えても私、正義の味方なんだよ」
不安を拭うかのように、イリヤは表情を一変させてゆたかに笑いかける。
言葉の内容は正義の味方なんて子供らしいものだけど、自分を安心させる為のものであるのは明白だ。
そうして、ゆたかもイリヤに対してようやく笑みを見せて告げる。
「あ、はい! ありがとう、イリヤさん……。とにかく、皆さんが落ち着いてからじゃないと話も切り出せませんよね」
……はじめてゆたかの笑う顔を見て、イリヤも自分の笑みをゆたかに返す。
その顔の下に、その言葉の下に、彼女もまた大きな決意を秘めながら。
ゆたかの手を取り、イリヤは明智達の後を追う。
それが自分のなすべき事であると、皆に知らしめるかのように。
◇ ◇ ◇
……唐突に、ここを移動すると言われたの。
シロウやラッドが出かけているよ、って聞いたら、
シロウなら途中でラッドが拾ってくれるから、あっちで合流できるよってネネネは言った。
……でも、多分それはウソ。
だって、ネネネは泣きそうな顔だったんだもん。
それでもムリして笑って、大丈夫だから、って言ってくれた。
ネネネも大切な人を亡くして辛いのに。
……きっと、さっきのお返しのつもりなのかな。
ネネネの優しさが身に染みる。
だから、私は気付かない振りをした。
急いで刑務所に行ってシロウを待つことに文句を言うけど、結局折れて一緒に行く。
そんな事を演じてみせて、今はアケチ達の後ろを歩いている。
顔を見られたくないから。
こんな事になるんじゃないかって心のどこかで思ってた。
だって、シロウはあんな性格だもん。
再会出来た事だって大きな奇跡だったのかもしれない。
『……マスター』
マッハキャリバーが呼んでくれる。
……でも、私はうまく答えられない。
「……ごめんね、マッハキャリバー。
少しだけ、少しだけでいいから……放っておいて」
ぽろぽろ、ぽろぽろ。
涙が止まらない。
皆にシロウのご飯を食べて欲しかった。
一緒に座って、わいわい楽しく食事を囲んで。
私はシロウの手伝いをして、シロウに頭を撫でてもらったり。
そうして私は皆の前で魔法を披露してみせる。
頑張って身につけたんだよ、私も皆を手伝えるんだって。
……そうして、すごいぞイリヤ、ってシロウに誉めて欲しかった。
でも、そんな夢はもう終わり。
アケチもネネネも、すごく優しくて。
……だから、シロウに何が起こったかなんて、簡単に分かっちゃった。
シロウ、見ていてくれてる?
私ね、決めたんだ。
絶対に螺旋王を倒してやるって。シロウの命を弄んだヤツを許さないって。
アイツの思うとおりになんか、動いてやるもんか。
そして皆と一緒に絶対に帰るんだ。
もちろん誰一人殺させなんてしない。
……シロウのユメは正義の味方だもん。
だから――――、
弟のユメは、お姉ちゃんが叶えてあげる。
そもそも、キリツグからユメを受け継ぐのは私でも良かったんだから。
だから、シロウ。
まかせておいて、シロウの夢は――――
――――ああ、安心した。
……そんな声が、聞こえた気がした。
◇ ◇ ◇
明智は、自分の予測が最悪の形で的中した事を思い知らされた。
東方不敗は衛宮士郎の首輪と同行している。それも、映画館へ向かって。
明智健吾の名の側に、キャロ・ル・ルシエの名前があるように。
……衛宮士郎は、倒した相手の首輪を奪う様な真似はしない。
ありえる事象はその逆の場合だけだ。
傍らにいるねねねも血が出るほどに唇を噛み締めている。
まず、衛宮士郎の首をもいで首輪だけ取り出したと見ていいだろう。
しかも衛宮士郎は自分の命を蔑ろにする傾向があるのだ。
生き延びている可能性など、間抜けにも生け捕りにされた場合くらいのものである。
そんな希望的観測にすがって全滅するなどは、絶対に犯してはいけない過ちだ。
だが、明智もねねねもその思いを必死に押し殺す。
後ろを振り向いたときに、そんな顔は見せられないからだ。
絶対に後ろにいるイリヤに気付かれてはならない。
衛宮士郎の死を教えれば、彼女はパニックに陥るだろう。
それは避けねばならない。
自分達の行動に支障が出るし、何より残酷すぎる。
……せめて、放送の時までは。
どれだけ彼女が暴れても、多少は落ち着いて対応できる刑務所までは知らせる訳にはいかないのだ。
携帯電話を見る。
……ラッドは、実はすぐに近くにいる。だが合流する訳には行かない。
『士郎はラッドと行動している』という嘘を移動の間だけでも貫き通す為に、急いで刑務所に行かねばならないだろう。
Dボゥイと舞衣という二人と接触していたようだが、そこで何があったのかも今ひとつ判然としない。
どちらも動いていることから、死者は出ていないようではあるが。
可能な限り早足で病院を目指す。
正確には、病院から映画館へ向かう“彼ら”の元を。
……そして、邂逅が訪れる。
壊滅した町のその端で。
二つの希望が、巡り会う。
「――――高峰清麿君と、小早川ゆたか君ですね?
お待ちしていました。
……そして、早速ですが――――」
【C-6南西端/路上/1日目/夜中〜真夜中】
【高嶺清麿@金色のガッシュベル!!】
[状態]:右耳欠損(ガーゼで処置済)、疲労(中)、精神疲労(中)、苦悩
[装備]:イングラムM10(9mmパラベラム弾22/32)
[道具]:支給品一式(水ボトルの1/2消費、おにぎり4つ消費)、殺し合いについての考察をまとめたメモ、
イングラムの予備マガジン(9mmパラベラム弾32/32)×5、魔鏡の欠片@金色のガッシュベル!!、
無限エネルギー装置@サイボーグクロちゃん、清麿の右耳
首輪(エド)、首輪(エリオ/解体済み)、首輪(アニタ)、清麿のネームシール、
各種治療薬、各種治療器具、各種毒物、各種毒ガス原料、各種爆発物原料、使い捨て手術用メス×14
[思考]
基本方針:螺旋王を打倒して、ゲームから脱出する
0:これからが勝負どころだな……。
1:ゆたかを保護しながら明智たちに同行、刑務所を目指す。
2:脱出方法の研究をする(螺旋力、首輪、螺旋王、空間そのものについてなど包括的に)
3:周辺で起こっている殺し合いには、極力、関わらない(有用な情報が得られそうな場合は例外)
4:研究に必要な情報収集。とくに螺旋力について知りたい。
5:螺旋王に挑むための仲間(ガッシュ等)を集める。その過程で出る犠牲者は極力減らしたい。
[備考]
※首輪のネジを隠していたネームシールが剥がされ、またほんの少しだけネジが回っています。
※ラッドの言った『人間』というキーワードに何か引っかかるものがあるようです。
[清麿の考察]
※監視について
監視されていることは確実。方法は監視カメラのような原始的なものではなく、螺旋王の能力かオーバーテクノロジーによるもの。
参加者が監視に気づくかどうかは螺旋王にとって大事ではない。むしろそれを含め試されている可能性アリ。
※螺旋王の真の目的について
螺旋王の目的は、道楽ではない。趣旨は殺し合いではなく実験、もしくは別のなにか(各種仮説を参考)。
ゆえに、参加者の無為な死を望みはしない。首輪による爆破や、反抗分子への粛清も、よほどのことがない限りありえない。
【仮説@】【仮説A】【仮説B】をメモにまとめています。
※首輪について
螺旋状に編まれたケーブルは導火線。三つの謎の黒球は、どれか一つが爆弾。また、清麿の理解が追いつく機械ではなくオーバーテクノロジーによるもの。
ネジを回すと、螺旋王のメッセージ付きで電流が流れる。しかし、死に至るレベルではない。
上記のことから、螺旋王にとって首輪は単なる拘束器具ではなく、参加者を試す道具の一つであると推測。
螺旋王からの遠隔爆破の危険性は(たとえこちらが大々的に反逆を企てたとしても)限りなく低い。
※螺旋力について
………………………アルェー?
【小早川ゆたか@らき☆すた】
[状態]:疲労(中)、心労(大)、やや茫然、後悔
[装備]:COLT M16A1/M203@現実(20/20)(0/1)、コアドリル@天元突破グレンラガン
[道具]:デイバック、支給品一式、糸色望の旅立ちセット@さよなら絶望先生[遺書用の封筒が欠損]
鴇羽舞衣のマフラー@舞-HiME、M16アサルトライフル用予備弾x20(5.56mm NATO弾)
M203グレネードランチャー用予備弾(榴弾x6、WP発煙弾x2、照明弾x2、催涙弾x2)
[思考]
基本:元の日常へと戻れるようがんばってみる。
0:……シンヤさん、ありがとうございました……。
1:Dボゥイと合流する。
2:シンヤを弔う為に、どうにかして病院に戻りたい。
3:ちゃんと弔ったら清麿たちに同行する。
4:シンヤを殺したラッドにどう対応すればいいのか分からない。
5:Dボゥイの為にクリスタルを回収する。
[備考]
※コアドリルがただのアクセサリーではないということに気がつきました。
※清麿に対して負の感情は持っていません。
※イリヤに親近感を抱いています。
※螺旋力覚醒
【チーム:戦術交渉部隊】(明智、ねねね、イリヤ)
[共通思考]
1:各種リスト、便利アイテムを利用した豊富な情報量による仲間の選別及び勧誘。
2:基本的には交渉で慎重に。しかし、実力行使も場合によっては行う。
3:首輪の解析・解除が可能な者を探す。
4:最終目的は主催者の打倒、ゲームからの脱出。
5:携帯電話の現在位置探査を利用して他の参加者との接触を避けつつ刑務所へ向かう。
6:映画館内部にジンやラッド、その他協力できそうな人物が到達したら携帯電話で映画館に連絡を入れる。
7:刑務所に到着次第、ガジェットドローンを経由してルルーシュ一行、スカー、シータと接触する。順番は未定。
8:人員が揃い次第、各所施設に調査班を派遣する。
9:高峰清麿と情報交換、考察を行う。
10:万一刑務所が安全でないと判断できた場合、警察署へ向かう。
[備考]
※明智とねねねの考察メモの内容は同じです。
【明智健吾@金田一少年の事件簿】
[状態]:右肩に裂傷(応急手当済み)、上着喪失、怒り、決意
[装備]:レミントンM700(弾数3)、フィーロのナイフ@BACCANO バッカーノ!
[道具]:支給品一式×2(一食分消費)、携帯電話、ジャン・ハボックの煙草(残り16本)@鋼の錬金術師、閃光弾×1
予備カートリッジ8、ガジェットドローン@魔法少女リリカルなのはStrikerS、参加者詳細名簿、
ダイヤグラムのコピー、首輪(キャロ)、考察メモ
[思考]:
基本:螺旋王より早く『螺旋力』を手に入れ、それを材料に実験を終わらせる
0:……仇は討ちます、衛宮君。
1:清麿たちと共に刑務所に向かう。
2:菫川ねねねに情報を提供し、螺旋王を出し抜く『本』(方策)を書いてもらう。
3:螺旋力が具体的に何を指すのか? それを考察する。
5:首輪に関しては、無理をしない程度に考察。
6:ラッド・ルッソの動向には注意する。
7:2日目の正午以降。博物館の閉じられた扉の先を検証する。
8:東方不敗を最優先で警戒。
9:衛宮士郎の冥福を祈る。
[備考]
※リリカルなのはの世界の魔法の原理について把握しました。
※ガジェットドローンは映写室に繋いだ時点でいったん命令がキャンセルされています。
※ラッドがシンヤを殺害したと推測しています。
※豪華客船にいた人々はガッシュ以外全滅したと推測しています。
※ルルーシュ一行、またはジン一行の誰かがマタタビを殺害したと推測しています。
※衛宮士郎が生存している可能性は絶望的と見積もっています。
【菫川ねねね@R.O.D(シリーズ)】
[状態]:健康、悲しみ、決意
[装備]:なし
[道具]:支給品一式(一食分消費)、ボン太君のぬいぐるみ@らき☆すた、 詳細名簿+@アニロワオリジナル、手書きの警戒者リスト
『フルメタル・パニック!』全巻セット@らき☆すた(『戦うボーイ・ミーツ・ガール』はフォルゴレのサイン付き)、考察メモ
[思考]:
基本:螺旋王のシナリオ(実験)を破壊し、ハッピーエンドを迎えさせる。
0:衛宮……。
1:本を書くにはまず資料! 明智と一緒に考察をする。
2:ある程度考察が進んだら、ハッピーエンドを迎える『本』(方策)を書く。
3:ラッド・ルッソの動向には警戒する。
4:柊かがみに出会ったら、「ポン太くんのぬいぐるみ」と「フルメタル・パニック全巻セット」を返却する。
5:センセーに会いに行きたい……けど、我慢する。
6:東方不敗を最優先で警戒。
7:衛宮士郎の冥福を祈る。
[備考]
※詳細名簿+はアニタと読子のページだけ破り取られています。
※詳細名簿+の情報から、参加者それぞれに先入観を抱いている可能性があります。
※殺人鬼であるラッドに軽度の不信感を抱いています。
※思考7、パラレルワールド説について。
富士見書房という自分が知り得ない日本の出版社の存在から、単純な異世界だけではなく、パラレルワールドの概念を考慮しています。
例えば、柊かがみは同じ日本人だとしても、ねねねの世界には存在しない富士見書房の存在する日本に住んでいるようなので、
ねねねの住む日本とは別の日本、即ちパラレルワールドの住人である可能性が高い、と考えています。
この理論の延長で、会場内にいる読子やアニタも、ひょっとしたらねねねとは面識のないパラレルワールドの住人ではないかと考えています。
※イリヤと士郎の再会により、自分の知る人物がやはり同じ世界の住人ではないかと疑い始めました。
※衛宮士郎が生存している可能性は絶望的と見積もっています。
※螺旋力覚醒
【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/stay night】
[状態]:健康、深い悲しみ、螺旋王とゲームに乗った人間への激しい怒り、強い決意
[装備]:マッハキャリバー@魔法少女リリカルなのはStrikerS、バリアジャケット
[道具]:支給品一式(一食分消費)、ヴァルセーレの剣@金色のガッシュベル、魔鏡の欠片@金色のガッシュベル、支給品リスト@アニロワオリジナル
[思考]:
基本:シロウのユメを代わりに叶え、正義の味方として行動する。ゲームから脱出する。
0:シロウ……ッ!
1:明智たちと一緒に刑務所に向かう。
2:マッハキャリバーからベルカ式魔法について教わる。
3:アケチ、ネネネの言うことを聞いてがんばる。
4:聖杯については考えない。
5:ゆたかとは仲良くなれそう。彼女を守り、一心地ついたら病院まで連れて行く。
[備考]:
※フォルゴレの歌(イリヤばーじょん)を教えてもらいました(イリヤ向けに簡単にしてあります)。
※チチをもげ!(バックコーラスばーじょん)を教えてもらいました(その時にチチをもげ!を完璧に覚えてしまいました)。
※バリアジャケットが展開できるようになりました(体操着とブルマ)。
※聖杯にランサーの魂が取り込まれました。
※マッハキャリバーより、「プロテクション」「シェルバリア」「リアクティブパージ」を習得しました。
現在は攻撃魔法を習得中です。詳細は不明です。
【プロテクション】:魔法障壁を張り、攻撃をガードします。
【シェルバリア】:半球状の結界を張り、外部からの干渉を遮断します。一定時間持ちますが、それなりの魔力を消費します。
【リアクティブパージ】:バリアジャケットを自ら爆破し、その威力で攻撃を防ぐテクニックです。
※明智たちの様子から、士郎が誰かに殺害されたと推測しました。
※保有するアイテムの詳細は、以下の通り。
【参加者詳細名簿】
全参加者の簡単なプロフィールと、その人物に関するあだ名や悪評、悪口などが書かれた名簿です。
【参加者詳細名簿+】
全参加者の個人情報と、その人物に関する客観的な経歴が記されています。情状など主観になる事は書かれていません。
※読子・リードマンとアニタ・キングのページはねねねが破いて捨ててしまいました。
【警戒者リスト】
ねねねがメモに書いた、要注意人物のリスト。自分、または仲間が遭遇した危険人物の名前が書き連ねてあります。
「高遠遙一」「ロイ・マスタング」「ビシャス」「相羽シンヤ」「東方不敗」「鴇羽舞衣」「ニコラス・D・ウルフウッド」
また、仲間がゲーム参加以前で敵対していた人物や、詳細名簿のプロフィールから要警戒と判断した人物を要注意人物として記載しています。
「ギルガメッシュ」「言峰綺礼」 「ラッド・ルッソ」他。
【全支給品リスト】
螺旋王が支給した全アイテムが記されたカタログ。正式名称と写真。使い方、本来の持ち主の名が記載されています。
【携帯電話】
通常の携帯電話としての機能の他に、参加者の画像閲覧と、参加者の位置検索ができる機能があります。
また、いくつかの電話番号がメモリに入っています。(※判明しているのは映画館の電話番号、他は不明)
[位置検索]
参加者を選び、パスを入力することで現在位置を特定できる。(※パスは支給された支給品名。全て解除済み)
現在位置は首輪からの信号を元に検出される。
【ダイヤグラムのコピー】
明智健吾がD-4にある駅でコピーしてきた、モノレールのダイヤグラム。
【首輪】
明智健吾が死体から回収した、キャロ・ル・ルシエの首輪。
【考察メモ】
雑多に書き留められた大量のメモ。明智、ねねねの考察や、特定時間の参加者の位置などが書き残されている。
◇ ◇ ◇
“彼”はそのやりとりを暗がりから観察していた。
雄雌の一組と、一匹の雄のやりとりだ。
病院の中庭とエントランス。
壁を挟み、言葉の応酬が交わされる最中。
――――“彼”の視界の一部には、一つの無防備な肢体が映し出されていた。
自分の元の宿主や、ラダムの裏切り者が執着していた個体だ。
エントランスにいる雄は、雌雄との駆け引きに気を取られてこちらに意識が向いている様子はない。
寄生するには好機と言えるだろう。
……だが、あの個体に寄生すべきか、否か。
元の宿主と共に行動していた時に、あの個体は人間の中でも特に脆弱な個体であることが判明している。
殺し合いという状況下で役に立つかどうかは疑問符をつけねばならないだろう。
“彼”は思考する。
手っ取り早くあの個体に寄生するか、更なる優秀な個体が現れるのを期待すべきかを。
あの個体よりも優秀な個体という点なら、中庭にいる二匹でも構わないのだ。
――――そして、“彼”は決断した。
自分が、これからどうすべきかを。
“彼”は動き出す。
それが身を隠すためか、誰彼に寄生するためかは――――依然、誰も知ることはない。
※ラダムが小早川ゆたかに寄生したか否かは不明です。
ただし、寄生された場合でも今のところ本人に自覚や症状はありません。