アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ13
人数はひとまず七人前を想定。
しかも普段の食卓と違って、成人した男性が大半を占めることになる。
少しだけ、多めに考えた方がいいかもしれない。
――鶏モモ肉(骨付)900g。
――生椎茸二パック。
――ホウレン草三束。
――木綿豆腐二丁。
――人参二本。
――春菊三束。
――白菜八枚。
――白ネギ四本。
――出汁昆布一枚。
――大根1/2本。
そして、ポン酢の大瓶を一つ。これでとりあえずの準備は整った。
あとは環境か。映画館に食事用の設備があるとは考え難い。最低限の調理器具は必要だろう。
他にはガスコンロも調達しておくべきか。そして鍋料理に土鍋は絶対に欠かせないファクターだ。
それは後でいいか。少しだけ、行ってみたい場所がある。
しかし、商店街の奥に大型のスーパーがあったのは本当に幸いだった。
(とはいえ……)
カート一杯になった材料を見つめながら、少年は溜息を付く。
「やっぱり、財布と全く相談しなくていい買い物っての慣れないもんだな」
これだけ買い込んでも総額はゼロ円。
『タダより高いものは無い』という格言をその身で体感する。
タイムサービスも家計簿との兼ね合いもセールも、この場では一切考慮する必要はないのだ。
もはや買い物ではなく、収穫とでも表現した方が適当であるかのようにさえ思えた。
□
「……戻って来た、ってことか」
いくつもの倒壊したビルの跡。
黒塗りのベルベットのようにコーティングされた空の下、瓦礫の山に佇む一人の少年の姿があった。
彼の名前は衛宮士郎。第五次聖杯戦争における実質的な勝者であり《投影》の魔術を得意とする魔術師だ。
彼の指先にキラリ、と光るのはデバイス・クラールヴィント。
湖の騎士シャマルが愛用する補助型のアームドデバイスであり、鴇羽舞衣から入手した士郎が今は装備している。
このデバイス、という道具の最大の特徴がバリアジャケットだろう。
展開した持ち主に呼応した魔術礼装にも似た衣服型の防御壁を張り巡らせることが出来る。
さすがに非戦闘時は魔力の消耗を抑えるため、動作はさせていない。
濃厚な死の臭いに誘われた、とでも言えばいいのだろうか。
気がつけばこの場所に足を踏み入れていた。
ソレは鴇羽舞衣が操るソルテッカマン一号機と士郎達が激戦を繰り広げた場所。
エリアで言えばC-6だろうか。
光は収束し、鋭利な刃物へと変わり全てを切り裂き焼き尽くした。
白塗りのビルは煤けた煙によって灰色に染まり、今も鼻腔をくすぐる焦げ臭さは抜けない。
爆発は更なる破壊を生み、一瞬で世界を新しい段階へと押し上げる。
造られた箱庭は引っ繰り返され、現れたのは『崩落のステージ』だった、ということだ。
この場所は既に瓦礫山としての役割しか果たさない。
否、果たせないのである。
「酷い……もんだな」
士郎の口から自然と漏れる言葉が、その惨状を雄弁に語っていた。
『街』は失われていた。
もはや元在るべき姿を保っている建造物の方が少なく、誰が見てもソレは「廃墟」と断定出来るに違いない。
名うての建築家や歴戦の戦災復興部隊であっても、この空間を元通りの正常な街並みへと引き戻すには多大な年月と労力が必要なことは想像に難くない。
(……おっと、いけない。早めに帰って料理の準備に取り掛からないとな……)
彼は食材調達の途中で、光に誘われる蟲のようにこの戦場跡へと舞い戻って来てしまったのだ。
衛宮士郎は主夫である。
彼にとって台所に立ち、食材を吟味し、その日の献立を考え料理を作ることはある種完成した生活サイクルの一つとも言える。
つまり彼にとって自らの思考を整理し、己の立場を明示化させるため最適の手段なのだ。
(今の俺に出来ることはこれくらいか……)
そして食事は団欒をもたらす。
どのように危機的で、困難な状況であっても人の身体は糧食を求めるのである。
特に士郎達のグループは大所帯だ。
本拠地となっている映画館に明智、ねねね、イリヤと三人の仲間がいる。
そして他の仲間を迎えに行っているラッドのことを考えれば、一つのテーブルで食事を取るのも難しい人数が集まるかもしれなかった。
その証拠に、瓦礫山を眺める士郎の両手には大きく膨らんだ白いスーパー袋が握られていた。
中に入っているのは各種調味料に肉や野菜――右の袋からは葱が、左の袋からは大根が飛び出している。
彼の頭に描かれている本日の献立、それは『鍋』であった。
士郎が料理を振舞わなければならないメンバーの国籍は様々だ。
彼自身を含めて日本人が多いとはいえ、イリヤはドイツ生まれであるし、ラッドはアメリカ人だ。
和食には絶対の自信を持っていたが、洋食は後輩の間桐桜に、中華は同級生の遠坂凛に敵わない。
コテコテの和食を出してしかめっ面をされるくらいならば、ある程度他国の人間にも受け入れられる料理を作るべきであるとは思った。
だが、状況が状況だ。
何種類もの料理を用意するだけの時間があるとは思えない。
それに出来るだけバランスよく栄養が摂取できるメニューが最適だろう。
故の、鍋だ。
メニューはひとまず、水炊きを予定している。
海外には一つの鍋を複数人で突き合う文化はないかもしれないが、コミュニケーションを取るためにこれほど最適な料理はないだろう。
初めて出会った人間が一同に介して食事をするのだ。
同じ料理を食べる、ということは安心感を共有することにも繋がる。
(駄目だな…早くイリヤ達に旨い飯を作ってやらないと……)
そう心の中で呟き、士郎は崩壊した町並みに背を向けた。
この場所へやって来たのはほんの気紛れだった。
自分達の本拠地の一つ隣のエリア。
先ほどはラッドが操縦するフラップターに乗って脱出した場所を、今彼は自らの足で後にしようとしている。
が、その瞬間、彼の靴が妙な物体に触れた。
「――ッ!? これは……!!」
足元に落ちていたのは奇妙な形をした短剣だった。
明らかにまともな切れ味など持っていないことが一瞬で分かる。
そして伝わってくる魔力。
「宝具……か?」
士郎は思わず辺りを見回した。だが、依然人の気配は感じられない。
とにかく、間違いなくこの短剣は宝具だ。
「ルール……ブレイカー?」
少しだけ、記憶にある。
外套を羽織ったサーヴァント、キャスターが持っていた宝具。
確か、奴は他のサーヴァントが宝具を使用するのを妨害するために使用していた。
だが詳しい用途や効力まではさすがに士郎も知らなかった。
(早めに映画館に帰った方がいいかもしれないな)
映画館に帰れば、イリヤの支給品リストがある。
そうすれば、この宝具がどのような力を持った宝具なのかも分かるという寸法だ。
「にしても……本当に酷い臭いだな。まるでこれ――ッ!? 何だ……? この……臭い?」
そして、その時士郎はようやく気付いた。
焦げ臭い木材の燃焼する臭いに混じって『少しだけ生臭い』臭いが彼の鼻腔を突いたのだ。
グルグルと頭は回転し、最も適当な答えを導き出す。
士郎は走り出した。彼は自らの視界に明らかな『異変』を発見したのだ。
「し……たい? にしても、これは……っ!!」
駆け寄った士郎の眼の前に飛び込んで来たのは、思わず目を背けたくなる様な惨殺された少年の亡骸だった。
酷い、などと言う言葉ではあまりに陳腐過ぎて表現出来ない。
脇腹は微妙に焼け焦げポッカリとした空洞が見える。そこから溢れた血液が少年の衣服をドス黒く変色させている。
そしてそれ以上に酷いのが頭部の損傷具合だろう。
本来あるべき場所にある器官が完全に切り離され、潰され、裂かれ、黒く変色した血が泥の池のように広がっている。
明確な敵意を持って『破壊』されたことが空気を伝って士郎の中に入り込んでくる。
(どうして……どうして、ここまでやる必要があるんだ!? どう見ても普通の子供じゃないか……っ!)
気がついた時、士郎は血が滲むほど両の拳を握り締めていた。
湧き上がる感情は複雑にして怪奇。少なくとも明確な『怒り』だけでは表し切れない。
後悔、自責の念、憤怒、そしてこのような惨劇を作り出している大本である螺旋王に対する強い憎しみ――
(待てよ。……無い、無いじゃないか! 在って然るべき筈の物がこの死体にはない!)
鬱屈した感情を持て余していた士郎は、少年の死体にとある大切なものが欠けていることに気付いた。
つまり――首輪だ。
参加者の喉元を等しく圧迫し、枷となっている筈の首輪がどこにも見当たらないのである。
(様々なケースが考えられる……が、首輪を集めている人間がこの子を殺した犯人……そう考えるのが妥当か)
他の人間に殺害された少年をこの場所を通り掛った第三者が切断し、首輪を持ち去った……とも考えられるが、少し不自然だ。
やはり犯人が首輪を集めている人間である、と仮定するのが一番分かり易いように思えた。
もっと言うならば『今彼の首輪を持っている人間』だろうか。
首輪を集めている人間――そう聞くと最初に思いつくのがラッドが言っていた『高嶺清麿』という参加者だ。
どうも飛び切り頭の良い中学生……らしいのだが、士郎は未だ一度も顔を合わせたことが無かったためイマイチしっくり来なかった。
「明智さんに聞いてみるべきかもしれないな。とにかく早く皆の所へ帰らないと……」
士郎は少年の死体に背を向け、元来た道へと歩みを進める。
首輪がなかったため、反応がなかったのだろうか。
ひとまず明智に報告しておくべきだろう。情報は大いに越したことはないのだ。
「――何処へ帰ると言うのだ、小僧?」
□
背後から響いたのは押し潰したような老人の声だった。
背筋を走り抜ける捉えようのない戦慄。
走り抜ける雷光に撃ち抜かれたかのように、フッと躯から力が抜ける。
震えていた。
カタカタ、カタカタと幽霊に脅える幼い子供のように士郎の手が振動する。
両手に握り締めたスーパー袋を思わず取り落としてしまいそうになる。
(な……ん……だ!? この殺気は……っ!!)
真後ろから放たれる佇まいだけで人を死に至らしめることさえ可能であると錯覚するほど圧倒的な闘気。
身体が、動かせない。
いや、それは正確ではない。今も手は、肩は、膝はガクガクと小刻みに震えているのだ。
固定されてしまったのは身体の軸だ。
まるで頭上から大きな杭で地面に打ち付けれられてしまったかのように『後を振り返ることが出来ない』のだ。
「そんなに震えてどうしたというのだ? 折角話し掛けておるのだ。こちらを向いたらどうだ? ん?」
「…………くっ!?」
引き摺るように、何秒も掛けて、ようやく士郎は背後のしわがれた声の老人を睨み付けた。
紫色の胴着。銀色の髪と長いお下げ。どう見ても何十歳も年上の老人にしか見えない。
だが――
躯は痛いほど理解している。本能が全力で警鐘を鳴らしている。
脅えた小動物のように全身の器官が大脳へと命令を送る。
全身全霊を賭けても、眼の前の相手にだけは敵う筈がない。そう錯覚してしまいそうになる。
闘う前から敗北しているのか? 在り得ない。自分に限ってそんなことは……。
(何なんだ……!! コイツは、こんな……こんな化物が……っ!?)
だが、心の奥でゆらりと芽生えた疑惑を握り潰すには不十分だった。
ランサーに突然、非現実的な戦いの渦の中へと蹴落とされた時も――
言峰の教会から家へと帰る最中にバーサーカーと初めて出くわした時も――
黄金のサーヴァント、ギルガメッシュに襲撃された時も――
「ククク……蛇に睨まれた蛙と言った所か。貴様も螺旋の王に招聘された戦士の一人なのだろう?
既に闘う気概をこれっぽっちも感じんと言うのはどういうことだ?」
――ここまで、心の底から実力の差を痛感したことは一度も無かった。
「だ……れ……だっ!! アンタは……アンタは…………いったい、誰なんだっ!?」
士郎は吼えた。
しかし、腹の底から打ち出した叫びはフラフラと空を舞う蟲のようにか細く脆い。
老人はそんな士郎の態度を見据え、小さく笑いを噛み殺しながら告げた。
「ワシか? ククク、覚えておくがよい。ワシは東方不敗・マスターアジア」
「東方……不敗」
もう一度、士郎は眼を背けたくなる気持ちを抑えつつ東方不敗と名乗った老人を睨めつけた。
(俺は……幻覚を見ているのか?)
我が目を疑う、とはこのことだろう。
明らかに眼の前の老人は異様だった。
確かに彼の全身から湯気のように立ち上る凄まじい闘気を別にしても、だ。
士郎の頭は少なくとも異常を認識することに対してある程度の自信を持っていた。
そして危険を察知する能力もそれなりである筈だ。
だから老人、東方不敗が放つについても理性的な頭で噛み砕くことが出来る筈なのだ。
「小僧、深くその胸に刻み込むがいい。それがワシの名、今からお前の息の根を止める男の名だ」
ぐるぐる、回る。
ゆらゆら、揺れる
ぐらぐら、振れる。
くるくる、落ちる。
螺旋を描くように東方不敗の躯から吹き昇る緑色の風。
勢いに飲まれてはいけない。
相手のペースに嵌ってはいけない。
理性は心へ、身体へ楔を打ち込む。
一歩、一歩と自然に後退りをしている臆病な自分を叱責する。
だけど一つだけ。少なくともこれくらいは妥協してもいいのではないだろうか。
つまり、現状を端的な言葉で分析するということ。
概してその総評は敗北宣言と同意義となるのだが、それだけ力の差は歴然としていた。
――コイツは、絶対に出会ってはならない相手だった。
□
ドン、という音を立てて、士郎の両手からスーパーの袋が零れ落ちた。
そして、それが開幕の合図となった。
ゆらりと濡れた月光が、少しだけ背の低くなったビルの隙間から二人を照らした。
(退却は不可能……戦うしか……ッ、ない!!)
何百、何千と言う修練を積んだ躯は自然と反応する。
創造理念と基本骨子を脳内で処理し、只一つの回答を導き出す。
脳裏に浮かぶのは剣。士郎にとっての『魔術属性』である王権と力の象徴を。
「――――投影(トレース)、開始(オン)」
瞬く間もなく、士郎の両手に雌雄の双剣、干将・莫耶が投影される。
陽剣干将と陰剣莫耶。
士郎にとって最も手に馴染む武器であり、死んだ筈の英霊――アーチャーが愛用する武器でもある。
まさに彼にとっての最善の一手。相手の出方を伺うにしろ、牽制するにしろ一つ目の動作としてこれ以上の選択肢はない。
「かぁぁぁああっ!!!」
東方不敗が一瞬で数メートル近くあった筈の間合いを詰め接近してくる。
まずは小手調べと言った所だろうか。ギリギリながら、士郎の眼でもその動きを追うことが出来る。
だが、闘うに値しない相手であるならば一瞬で息の根を止めることが可能な、悪魔の如き意志が込められた突進である。
「くっ!!」
その突撃を双剣で受け止める。
伝わってくる衝撃はまるでブルドーザーを受け止めたかのような圧倒的な力に満ちていた。
目にも止まらぬ速度で繰り出される連撃。
付いていくのがやっと…………違う、
――明らかに捌き切れない。
マグナム弾のような右の正拳が士郎の脇腹へと炸裂した。
まるでそのまま躯を貫通して、背中へと突き抜けてしまうのではないかというような錯覚。
ポキリ、と明らかに何本かの肋骨が砕かれた感触が脳髄を駆け上がる。
いや、おそらくそれが『貫手』であったならば士郎の躯は串刺しにされていただろう。
東方不敗は己の拳を《刃物》として扱うのではなく、《鈍器》として士郎へと打ち込むことを選択したのである。
「ぐっ……あっ……!!」
「……ふむ、足りんなぁ小僧」
「なん……だと……ぐッ……!!」
胃袋から込み上げて来る不快感を必死で飲み込む。
取り落とした干将・莫耶が砕け散る音が脳を震わせた。
たったの、一発。
それだけで今、士郎は全身を駆け回る苦痛に苛まれていた。
だが、それでも頭は、心は大分落ち着いて来たと言えるだろう。
東方不敗と遭遇した直後の震えは完全に止まっていた。
「安心するがいい。"まだ"殺すつもりはない。今の一撃は貴様への問い掛けだ」
「どう、いう……意味だ……」
「何、単純なことよ。貴様の仲間達は何処にいるのだ?」
ドクン、と一度心臓が大きく鼓動を打った。
背中の神経を抜け、熱が一気に思考を侵蝕する。
何故、知っている。
何故、そんなことを聞く。
そんな情報を手に入れて、いったいどうするつもりだというのだろう。
(まさか……皆をッ!? 駄目だ、コイツをイリヤ達のいる場所に行かせる訳にはいかない!)
士郎の脳裏に浮かぶのはまず、老人のこの状況におけるスタンスを見極めるべき、という意志だった。
そうだ、自分は目の前の老人について何も知らない。
明智が示唆した明確な危険人物……というのもいまいち思い出せない。
所持している情報は彼の名前が「東方不敗マスター・マジア」であるということぐらいだ。それと、
「仲間なんて、俺には……いない。
大体、そんな奴らがいたら、こんな場所をぶらぶらほっつき歩いている訳ないだろう。爺さんの……勘違いじゃないか?」
「ふむ、その言い分には一理ある。
このような闘いの匂いが色濃く残る場所に進んで足を踏み入れるのは、余程の死にたがりか狂人だけかもしれんな」
「……ああ。それには俺も同意だな。そうだ……アンタ、ドモン・カッシュの知り合いか……何かか?」
彼の拳の『型』が、依然遭遇した格闘家ドモン・カッシュとそっくりであるということ。
(分析しろ、衛宮士郎。奴は一体何を考えている? ただ殺すことだけが目的じゃない。
奴はそのもっと先、最奥にある何かを見据えて行動している筈だ)
士郎はジッと目を凝らして眼の前の老人を観察する。
やはり気になるのは、彼の身体から渦巻いている緑色の光だ。
この輝きは一体……?
「……ククク。奴を……いや、奴の"拳"を知っておったか。道理で剣の動きに淀みがないと思ったわ。だが――」
不敵な笑いを浮かべた東方不敗が、その言葉と共に、小さく溜息をついた。
「まだまだ、若いな。我が弟子ながら情けない。人を見る目はそうそう鍛えられないものか……」
「弟子、だと!? じゃあ、まさかアンタは……」
該当する答えはすなわち、師弟関係。
自分をまるで幼い子供のように扱ったあの男の師匠がこの男、東方不敗だと言うのだろうか。
確かに、それならばこの圧倒的な強さも頷ける。
「そう、ドモンとワシは共に流派東方不敗を修めし武道家よ。
しかし、小僧。貴様もう少しマシな嘘は付けんのか? 余程仲間が大切と見える」
「お、俺は嘘なんて……っ!!」
「……貴様が持っていた食材、何人前だ?」
「――ッ!!」
思わず、後方にぶちまけた鍋の食材を一瞥する。
そうだ、冷静な頭で考えれば子供にだって分かる問題だ。
いくら何でも一人であれだけの量を食べる人間、というのは考え難い。それならば仲間がいる――と想定するのは、当然ともいえよう。
東方不敗の雰囲気に呑まれ、対して考えもせずに口から出任せを言ってしまったことは後悔し切れない。
「しかも一人でやって来ているということは、本拠地はすぐ近く――そう映画館、と言った所か」
「ぐっ!!」
「図星、か?」
「……皆を、どうするつもりだ」
ここまで来れば下手な嘘は何の効果もない。
士郎は早鐘を打ち鳴らす心臓に必死で「静まれ」と言い聞かせながら、問い掛ける。
「ふむ、一人や二人ならばやり方も様々だが……五、六人かそれ以上はいるのだろう? それならば――」
一瞬、言葉を止め、士郎の心の奥底を東方不敗は睨みつけ、
「皆殺し、というのはどうだ?」
絶望的な一言を吐き出した。
□
「……何故だ」
「ワシは優勝を目指しておる。他の参加者を殺すことに何の躊躇いがあろうかっ!
加えてもうすぐで一日目が終わる。疲労が躯に蓄積し、動きも鈍る時間帯――絶好の"狩り"の時間だと思わんか?」
何かがカチリ、と音を立てて切り替わった。
残酷な笑みを浮かべ、声高らかにぶち上げる東方不敗。
彼が全身から放つ闘気は更に勢いを増し、黒色と灰色に染まった街並みを打ち鳴らす。
"普通の人間"ならば、一瞬でこの雰囲気に呑まれてしまったことだろう。
士郎でさえ、そうだ。出会った直後の士郎であれば、もはや東方不敗を見つめることさえ拒否感を覚えていた筈だ。
だが衛宮士郎はお世辞にも、曲がり間違っても"普通の人間"などとして括ることは不可能な人間だった。
「……俺さ、爺さん。アンタを見た瞬間、正直な話……"絶対に勝てない"って思ったんだ」
「ほう。闘わずして負けを認めるか。それとも命乞いか? 仲間を差し出してでも己の命が欲しいか?」
淡々と。
懺悔する信徒のような口調で。
士郎の思考を支配していたのは原始染みた"本能"などでは決してなかった。
「ああ、この男はドモン・カッシュとは違うんだ」という漠然とした意識。
同門の武道家なのにここまで違うものなのか、という驚きがその中には多分に含まれる。
そして、それだけだった。
恐怖は、ない。
老人の言葉で全て吹き飛んだ。
殺す? 誰をだ?
イリヤか?
明智か?
ねねねか?
ラッドか?
清麿か?
それとも、まだ顔も見たことのない仲間か?
死ぬのか? 皆が? 本当に?
「……ふざけるな」
呟くような呻きとして、漏れた怒りの感情。
溜息にもにたその囁きは東方不敗の鼓膜を震わすこともなく、空気に溶けた。
それは、絶対にあってはならないことだ。
そうだ――俺は、誰かが死ぬのが怖いんだ。
俺の命が尽きて、塵になって、抹消されることの何倍も何十倍も、何百倍も。
眼の前で誰かの命が消えていくことが、守れないことが何よりも辛いんだ。
だから、人の命を救うためには何だってやってやる。
だって、それが、正義の味方が在るべき姿なのだから。
「だがその選択は認めん!! この空間に呼び出されたからには闘って闘って死力を尽くしてから死ねぇぃい!!!」
東方不敗の声は鼓膜を突き抜け、そして体内へと侵入し、消化された。
ああ、戦ってやるよ。それがお望みならな。
精神を、身体を、そして魂を、奥底から支配する自らの尊厳――つまり、"セイギノミカタ"であること。
その理想郷を守れるんだったら……!!
「爺さん。アンタ……何なんだ?」
「……? 面白いことを聞く小僧だ。ワシが人に見えぬというか!?
確かに参加者の中に宇宙人はいる。だが、ワシは正真正銘の地球人よ!! それ以外の何に見えるというのだっ!?」
「――――悪人さ」
「……ほう」
正義の味方は仲間を守るもの。
正義の味方は悪の怪人と戦うもの。
それは色鮮やかな衣装に身を包んだ戦隊ヒーローでなくても出来ることだ。
……いや、やっぱり訂正だ。
雰囲気付けが出来るのならばソレに越したことはない。色はやっぱり"赤"がいいかもしれない。
今から自分が戦うのは英霊でも魔術師でもない一人の武道家。そして悪の親玉だ。つまり、
「おい、爺さん。命乞い、って言ったっけ? 残念だけど俺は絶対にそんなことはしない。
性分なんだ。自分の命よりも他の人間の方がずっと……大切さ」
「小僧――中々、良い目も出来るではないか」
「アンタに褒められても嬉しくない。それにさ、まるでアンタは俺を殺して皆の所に行く前提で話しているけどさ――」
決して、背を向けることの出来ない相手だ。
ヒーローは皆を守らなければならない。
折れない。譲らない。
不器用なまでの頑固さで眼前の悪を撃滅する生き物なのだ。
そう夢を見ていれば、いつか――憧れた正義の味方になれる気がした。
士郎の頭に浮かんだのは一人の男の背中だった。
浅黒い肌、白い髪、そして鍛え抜かれた技術に裏付けされた戦闘力に自らの信念を持った男。
何の因果か、自分があの魔術礼装を用いるとアイツの服が現れるのだ。
それが何故かは分からない。性格も気に食わないし、いけ好かない。正直な話、大嫌いだった。
だけど、今、この瞬間だけは、アイツのようになりたいと思った。
高潔でいつまでもその信念を貫き通したアイツのように。
だから、その最期の言葉を――東方不敗に叩き付けた。
「別に、俺がアンタを倒しちまっても構わないんだろう?」
それが、士郎にとってこの戦いで生まれた初めての余裕だった。
指先のクラールヴィントに魔力を込め、そしてバリアジャケットを展開させる。
綺羅星のような輝きの後、士郎の身体は見慣れた"ある男"の衣装へと変貌していた。
弓騎士のサーヴァント、アーチャー――いや、《英霊エミヤ》が身に纏う赤い聖骸布へと。
「――――投影(トレース)」
「――――完了(オフ)」
そして続けざまに投影。生み出したのは当然、あの雌雄の双剣――干将、そして莫耶。
「さぁやろうぜ、爺さん! それとも俺じゃあ不服かい?」
「ククク……ハッハッハッハッハ!! よくぞ吼えた、小僧!! それでこそ螺旋王の選びし螺旋の戦士よ!!」
干将の切っ先を東方不敗へと向けながら、士郎が威勢よく啖呵を切った。
大気を震わせるような怒声でもって一喝。
ビリビリとまるで衝撃波のように、音の波が廃墟と化した街を駆け抜ける。
夜の闇が空を濡らし、静謐な空気が熱く燃え滾るマグマのように加熱する。
凛とした世界は一瞬で男と男の戦場へと変わった。
この場で拳と剣を重ねるのは一人の螺旋に目覚めた武道家と、そして――
正義の味方に憧れる少年だけだった。
□
――約束された勝利など、掌の中にある訳がなくて。
「くッ!!」
「どうした小僧ぉ!!! 息が乱れておるぞっ!?」
気概や理想などで埋められるほど、両者の間に刻まれた年月の皺は深くはなかった。
東方不敗の実力は血の滲むような修練と天賦の才によって気付かれた年輪のようなもの。
彼――東方不敗は天才だった。
それに対抗するためには、衛宮士郎が生きた時間は明らかに短い。
東方不敗は彼の二倍以上の年月を生き、そして四十九歳という齢を持ってして習熟した肉体を持っている。
「まだだ!!」
「甘いわっ!! その程度の攻撃、見切れずして何がマスターアジアか!?」
交差する剣と拳。
その実力の差は、天と地ほどに離れている。
真正面からの馬鹿のような――ぶつかり合いで士郎に分がある訳がなかった。
(勝負の機会は一度だけ――ッ!!)
故に士郎が選択した戦法は戦士として、あるまじき一手だった。
つまり、一撃必殺に全てを賭ける、ということだ。
現在の士郎が用いることが可能な最大の攻め――『勝利すべき黄金の剣(カリバーン)』を投影することに他ならない。
力、技、心――どれを取っても士郎は東方不敗に敵わない。
つまり、干将・莫耶を用いた接近戦では勝機はほぼゼロパーセントに近い、という訳だ。
だからと言って、先程手に入れたルールブレイカーはこの状況では何の役にも立たない。
故に、自らと東方不敗を分ける分水嶺とは《魔術》の存在だけ。
《強化》と《投影》しか出来ない魔術師である士郎にとって、選択の余地はなかった。
距離を、取る。
東方不敗の接近を避けつつ、そして不信がられない最適の距離を。
そして『あの場所に誘い込む』のだ。
今士郎がやるべきことは、発動のタイミングを見計らうことだった。
カリバーンを投影し、絶対的に不可避の状況を作り出す必要がある。
真名解放による宝具の行使は今の魔力残量では一度だけが限界。それ以上は命に関わる。
自らの生死に関する懸念ではなく、今ここで自分が倒れればイリヤ達に危険が及ぶのだ。
ならば決して倒れる訳にはいかない、死ぬ訳にもいかない――そういうことになる。
「これならどうだッ!!」
「――むぅっ!」
『惹かれ合う双剣』である、莫耶をブーメランのように投擲する。
東方不敗は当たり前のようにソレを回避。叩き落されなかったのは幸運だ。
新しく投影するためには微量ながら魔力を消費する。
結局、カリバーン以外の全ては囮だ。
干将・莫耶による斬撃に意味はない。
何もかもが時間稼ぎと好機を見計らっているという事実を悟られないためのフェイク。
(俺の剣術じゃ爺さんを止められない。退却するのも今からじゃ遅すぎる……! だから……っ!!)
その一撃に全てを賭けるしかなかった。
勝機は必ず来る。それだけを信じて。
□
何分、打ち合ったのだろうか。
時間の感覚はとっくに麻痺してしまった。
投影した干将・莫耶もこれでそれぞれ三本目。
掌握されただけで魔力で創り出した剣を叩き折る東方不敗の胆力には度肝を抜かれる。
東方不敗はその気になれば、いつでもコチラを仕留めることが出来た筈だった。
だが、ソレを奴はしなかった。
遊んでいる――という訳ではないだろう。
おそらくあの男、ドモン・カッシュと似たような理由なのだろう。
同門の武道家だけあってやはり、どこか雰囲気や佇まいに共通点が見られる。
そしてそれ以上に分かり易いのが格闘スタイルだ。
あの一瞬のドモン・カッシュとの鍛錬は決して無駄ではなかったようだ。
明らかに身体が追いつかない部分であっても、『身体が微妙に覚えている』
つまり、確実に命を奪うつもりで放たれた打撃を防御出来たため、被害を最小限に抑えることが可能だった、という訳だ。
おそらく東方不敗も全力で戦闘することが出来ずにいるのだろう。
五人、六人という大人数が控えていることは奴も理解している。
そのため、出来るだけ少ない労力で士郎を斃そうとしている。
「……時に贋作使いよ。名前を聞いてなかったな」
「衛宮士郎。覚えて貰わなくて結構さ、爺さん。それに――準備は整ったんだ」
「準備……だとっ? まさか!?」
「俺とアンタの最大の違いは機動力。だから"ソレ"を殺させて貰った」
「――室内戦に持ち込むことが望みだったか」
東方不敗が憎々しげに呟いた。
体力を温存しつつ戦っていたのが仇になった形だ。
そう、士郎は東方不敗を『ほとんど無傷な状態に近いビル』へと誘い込んだのである。
「そして……ここからが本番さ――――投影(トレース)、開始(オン)」
カラン、という乾いた音と共に干将・莫耶を投げ捨てる。
そして現れたのは煌びやかな装飾の施された聖剣カリバーン。
士郎は小さく息を吐き出しながら、獲物を両手で構えた。
「ほう。二刀流よりも一刀流こそが本願だということか?」
「そんな……所さ」
東方不敗が意外そうな表情のまま、そう呟いた。
それは彼が始めてみせる類の反応だと、何となく士郎は思った。
士郎と東方不敗の距離は約十メートル。
真名解放には十分過ぎるほどの距離。
『約束された勝利の剣』を使用するための条件が整ったことになる。
「爺さん――アンタは本当に、強かったよ」
カリバーンを大きく頭上へと掲げる。
「何だ、その台詞は……? 辞世の句のつもりか?」
「違う。これは――」
東方不敗が肩を竦め、士郎を笑い飛ばした。
どっちがさ。笑いたいのは――こっちの方だ。
「ただの、勝利宣言だ」
「まさかッ!!!!!」
凄まじい勢いでこちらへと突進してくる東方不敗。
その速度は今まで士郎と戦っていたスピードの倍以上だ。
気付いたか。
――だけど、もう遅い。
右足を一歩、踏み出す。ザラザラとした感触が靴の裏側を通して伝わって来る。
――見据えるは拳王・東方不敗マスターアジアの鬼気迫る形相。
――構えるは伝説に名を残す騎士王アルトリアの聖剣。
――打ち砕くは悪に満ちた意志。その背後に潜む螺旋王の真意。
――そして、振るうは名もなき魔術師。
――腹の底から叫べ、その剣の名を。
「――――勝利すべき黄金の剣(カリバーン)!」
輝いた刀身が放つ極光が全てを切り裂く。
ビデオのスローモーションのように全てがゆっくりと動いているように見えた。
光で眼が潰れてしまいそうだった。
ガラガラ、と音を立てながらビルが崩れる。そしてカリバーンの輝きに呑まれて消滅する。
全てが、無に還る。
全てが、消えてなくなる。
□
「はぁっ……はぁっ…………」
瓦礫山は『勝利すべき黄金の剣(カリバーン)』の一撃によって塵と化した。
投影、そして身体中に残った魔力のフルドライブによる真名解放。
確実に、仕留めた。間違いない――
「小僧、手品は終いか?」
「な――!?」
筈だったのに。
東方不敗は無傷だった。全く、いやこれっぽちも傷を負っていない。
背後から幽鬼のようにゆらりと、姿を現した奴は小さく笑っていた。
「馬鹿な……っ! 俺は……確かにっ!!」
士郎は思わず声を荒げた。
全力による投影、後の事を一切考えずに放った狙い済ませた必殺の一撃。
タイミングは完璧だった。間合いも十分だ。
そして光の波によって掻き消えて行く東方不敗の身体……確かにこの眼で見たはずだ。
「この阿呆がっっっっ!!!! 陳腐なまやかしにさえ気付かぬとは貴様それでも戦士か!!!!」
「まや……かし!?」
「十二王方牌大車併――分身、という使い方もある。もっとも、児戯故普通は気付く……正常な頭であればな」
ニタリ、と口元を歪めながら東方不敗の躯が真夏の陽炎のように揺らめいた。
魔力を消耗し、全身の魔力回路が悲鳴を上げている。
そんな今にも倒れてしまいそうな激痛、だが意識だけはハッキリしている。
つまり、フェイク。
贋作使いがまんまと相手の紛い物に騙された、という事なのか。
「小僧、貴様は闘う前から負けていたのだ」
「……ッ!!」
「一撃必殺などと言う安易な戦法がワシに通用すると思ったか? ワシが貴様を仕留めなかったのも、その気配を察知していたからよ!
残念なことは……それが二回目であったことか。貴様が造り出した剣――カリバーンと言ったか。
その技をワシは一度見ておるのだ。それ所か、ほんの数刻前までその剣はワシが持っておったのだよ。
露呈した切り札ほど愚かなものはあるまい。貴様の浅はかな蠢動など、その剣が現れた瞬間瓦解したわ!」
士郎のカリバーンは当然、投影により造り出した贋作である。
なぜなら、今現在、オリジナルのカリバーンはE-6にて埋もれている。
そして、螺旋力に目覚めたDボゥイが数時間前に『勝利すべき黄金の剣』をこの東方不敗に放っているのだ。
そしてその一撃でさえ、東方不敗に傷一つ付けられず回避された。
つまり、二回目であれば勝算が残っている筈もなかったのだ。
「先程見せた眼――死と乖離した思い切りの良さ! ワシはそれなりに貴様を評価していたのだがな……」
衛宮士郎の魔術属性は『剣』である。
一度その目で見た剣であれば、すぐさま投影することが可能である。
残念ながら、イリヤが持っていた『支給品リスト』の画像では基本骨子を解析するには至らず、投影することは難しい。
カリバーンはまたの名をカルブリヌスと言う。
様々な誤解もあるが、アーサー王伝説にある『岩に突き刺さった選定の剣』の本当の正体はこのカリバーンなのである。
そして、戦いの中で破損したカリバーンの破片を「湖の乙女」が修復した剣こそがエクスカリバーなのだ。
衛宮士郎が投影可能な宝具は三つ。
――アーチャーの使用する双剣『干将・莫耶』
――セイバーを召喚した触媒であり、最強の盾『全て遠き理想郷(アヴァロン)』
――そして、"士郎が想像する最強の武器"である『勝利すべき黄金の剣(カリバーン)』
『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』を投影するためには決定的に"何か"が足りない。
つまり、現在の彼にとって東方不敗に対抗するための、切り札は一つしかなかった。
そして――それが、破られた。
それは、矢尽き刀折れた純粋なる終焉を、意味する。
「――さらばだ、若き贋作使いよ」
赤い聖骸布が、空を舞った。
□
「…………え?」
「気付いたか、小僧」
「お……れ、ぐッ……いき……て?」
息が、出来ない。
何故だ? 俺は死んだ筈……なのに。
「――貴様は人質だ」
「ひと……じち?」
「そう。大人数、それはそれは情報なども集まっているだろう。だが、この場において情報は何にも変え難いもの。
ただ襲撃しただけで、おいそれと手掛かりを渡すとは思えん」
首にしっかりと東方不敗の腰布が巻きついている。
一体どういう原理なのだろうか。
窒息する訳でもないが、呼吸が十分と言う訳でもない。活かさず殺さず、という言葉がピンと来る。
「故に貴様の存在よ。お人よしの貴様の仲間の事だ。
『情報を渡さなければコイツを殺す』と言った時、どうなるか……今から楽しみだわい」
「俺が……そんなことは……させ……ない」
「無駄な抵抗は止めることだ。自殺など考えるでないぞ?
最期まで、貴様が大人しくしていたら――気が変わって、一人くらい生かしてやるかもしれん」
その言葉で俺は磔にされてしまった。
俺が、死ぬのは怖くない。
そうだ。皆に迷惑を掛けるくらいなら、今ここで舌を噛み切っても構わない。
だけど――こんな事を言われたら、自害なんて出来る筈がない。
空は寂しげな黄金の月が瞬き、無言で大地を照らす。
朽ち果てた都市と二人の男。
一人は拳士。とある武術を極限まで修めた最強の武道家。
一人は魔術師。一般的には非生産的と言われる《投影》と《強化》に特化した少年。
幽玄の時に終わりなどないように、二人の戦いは終わりを告げた。
観客のいないその激突は、醜くもあり美しくもあった。
闇を照らすは月の光だけ。英雄の姿を真似、少年は戦いへと赴いた。
そして、その全力が紡ぎ出した《黄金の光》はか弱い蛍のように蹴散らされた。これが全ての顛末だ。
赤い弓騎士の本当の最期を少年は知らない。
ソレを知るのは、少年の帰りを待つ雪割りの花のような幼き少女だけ。
ただ一つだけ、確かなことがあったとすれば、
――その男は確かに英雄だったという事。それだけ。
【C-6/瓦礫山/一日目/夜中】
【衛宮士郎@Fate/stay night】
[状態]:疲労(極大)、魔力消費(極大)、腹部と頭部を強打、全身に大ダメージ、肋骨三本骨折、
左腕骨折、左大腿骨にひび、頭部から出血、意識朦朧、左肩に銃創(処置済み)
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]:
基本方針:螺旋王の実験を食い止める。イリヤを守る
1:???
[備考]:
※投影した剣は放っておいても30分ほどで消えます。真名解放などをした場合は、その瞬間に消えます。
※本編終了後から参戦。
※ロイドの言葉を受け、ある程度ですが無駄死にを避けてより多くの人を救う選択を意識できる様になりました。
※士郎のバリアジャケットは英霊エミヤ(アーチャーの赤い聖骸布)
※首にマスタークロスを巻きつけられて東方不敗に引き摺られています。
※C-6に鍋の材料(七人前)が散乱。
【東方不敗@機動武闘伝Gガンダム】
[状態]:全身にダメージ 特に腹部に無視できぬ大ダメージ 疲労(中) 螺旋力覚醒
[装備]:マスタークロス@機動武闘伝Gガンダム、クラールヴィント@リリカルなのはStrikerS
[道具]:支給品一式(一食分消費)、レガートの金属糸@トライガン 、ルールブレイカー@Fate/stay night、卓上コンロ用ガスボンベx2
[思考]:
基本方針:ゲームに乗り、優勝して現世へ帰り地球人類抹殺を果たす。
1:映画館へ行き士郎の仲間を襲撃し、士郎を人質に情報を入手してから皆殺しにする。
2:情報と考察を聞き出したうえで殺す。
3:ロージェノムと接触し、その力を見極める。
4:いずれ衝撃のアルベルトと決着をつける。
5:そしてドモンと正真正銘の真剣勝負がしたい。
※137話「くずれゆく……」中のキャラの行動と会話をどこまで把握しているかは不明です
※173話「REASON(前・後編)」の会話は把握しています。
※螺旋王は宇宙人で、このフィールドに集められているの異なる星々の人間という仮説を立てました。
本人も半信半疑です。
※Dボゥイのパワーアップを螺旋遺伝子によるものだと結論付けました。
※螺旋遺伝子とは、『なんらかの要因』で覚醒する力だと思っています。 ですが、『なんらかの要因』については未だ知りません。
ついでに、自分自身が覚醒していることも知りません。