アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ12
螺旋王が実験を執り行う為に用意した何処かの世界、何処かの時代、何処かの街。
正方形に切り取られ、等しい升目で句切られた殺戮の遊戯盤――その、中央に近い位置にそれはある。
物語を銀板に跳ね返すことで見る者に伝える装置。切り取られた四角の中に世界を覗かせてくれる魔法。
決して越えることの出来ない境界線を跨いで、それぞれに夢想を垣間見せる鏡。
摩訶不思議の箱――映画館が其処にある。
◆ ◆ ◆
薄い色の絨毯が敷かれた広いロビー。
その端に連なって並んでいる、待ち合いをする為のテーブルとそれを囲む椅子。
丁度十を数えるテーブルと椅子のセットの内、九つまでは全くの空。逆に残りの一つには人が集まり、雑多な物がその上にあった。
ゲームのプレイヤー。ステージに放り込まれたアイテム――それらが記された、虎の巻。さらには裏技を可能とする特殊な携帯電話。
雑多な情報が書き込まれた数枚の地図。各人の推測や憶測が書き留められた無数のメモ紙。働きっぱなしのサインペン。
奔放で理知的な殺人狂であるラッド・ルッソを見送り、真っ白な少女であるイリアに自由を与え再び映画館の中へと戻ってきた3人。
銀髪の中に同じ色のナイフの切れ味を持つ明智健吾。心の出口を捩り、それを隠す菫川ねねね。ためらいの無い少年。衛宮士郎。
――その3人はそれぞれの席に戻り、間もなく始まる定時放送までの時間をさらなる考察をする為に当てていた。
各人が道程で拾い集めてきた個々の情報により、このゲームの盤上にあるほとんどの事が明らかとなった。
後はそれぞれの点の間に線を引き、浮かび上がってくる図形が何かを探る作業に入るだけ……――だが。
「3人寄れば文殊の知恵……だってのに、何であんたは急に黙り込む?」
ねねねの前に座る明智。先刻までは饒舌にその知性から得られた推論を吐き出していた彼が、何故か戻ってきてから無言だった。
その神妙な表情は、とても物事が順調に推移している現状を喜んでいるものではない。むしろ、そう――……、
「うまく事が運びすぎています」
――彼はこの状況に対し、大きな懸念を抱いていた。
◆ ◆ ◆
「……話を聞かせてもらおうじゃない」
そう言うねねね。そして、怪訝な顔でこちらを覗き込む士郎の二人に、明智は一つ決心をしてそれを語り始めた。
「――まず、私の考えている前提条件を言いましょう。螺旋王は常に私たちの話を聞き、姿を見ています」
聞き捨てなら無い発言に身体を揺らす二人。それを片手で制し、明智は言葉を続ける。
「超科学や魔法が存在すると確認できた今。
その方法を論じる必要はありませんし、もうそれに抵抗するのも無意味です。
なので、私はあえて口に出して語りましょう。今の状態――あまりにも螺旋王の想定通りに進んでいると。
不自然なまでに集中する情報。そして、今盤上に配置された駒の位置を確認して私はそれを確信しました。
私達は螺旋王の描いたシナリオ――その線上を滑り降りているだけ。
……残念ながら、私だけではここで匙を投げざるを得ません」
「あんた……、急に投げ出すって――!」
すでに身体を半分乗り出していたねねねを再度明智は手で制す。
発言内容は投げやりであったが、しかし表情は冷徹な知性を湛えたままだった。
「私だけでは……と言ったでしょう。
3人寄らば文殊の知恵――その通りですよ。あなた達には私と同じ立場に立って協力してもらいたい。
だから、今話すのです」
不可解な発言に説明を要求する二人に、明知は自身の中だけで密かに進めていた考察を披露した。
それは彼の脳内に蓄積されている大量の犯罪者データから導き出された、螺旋王に対するプロファイリングの結果。
「……劇場型や、見立て。犯罪者が自らが起こす犯罪の中に、何らかの思想やアピールを持たせることは多々あります。
螺旋王が犯罪者と言えるかは、彼の世界を知らない私に断言できることではないですが、しかし犯罪でなくともそれは同じこと。
彼が最初に実験だと称した様に、この殺し合いには何らかの意味があり、彼は私達に何かを期待している。
それは、彼が放送で繰り返し意味深な発言をしていることからも明らかです」
それが解ればどうなるんだ? ――と、士郎が明智に尋ねる。
螺旋王の目的。それが殺し合いを眺めるだけでないとしたら、自分達にとってどんな意味があるのかと。
「はっきり言いましょう。
彼は殺し合いの結果――ではなく。その過程で発生する何かを発見。データを収集することを目的としています。
もちろん。ある程度はそれが得られるという確証を持ってです。
そのために私達を盤上に配し、自らが作り上げた仮定の上を私達がなぞるのを見守り、放送という手段で微調整している。
……そして恐らくは、それは彼が螺旋力と呼ぶものに関わることなのでしょう」
定時放送により、繰り返し聞かされてきた『螺旋力』の存在。
あそこまで露骨ならば、何らかの意味があるのだろうと明智の前の二人も気に留めていたところではある。
「殺し合いの中で……って言うんなら、やっぱ火事場の馬鹿力みたいなものなのか? その螺旋力ってのは」
「解りません。それに近いのかも知れないし、全く別のものなのかも知れない。
私が私だけでは無理だと感じるのがこの部分です。所詮、私はここに集められた一世界の住人でしかありません。
魔法、魔術、錬金術、超能力、超科学――常識も法則すら違う世界から集められた82人。
それを全て把握しているのは、現在の所は螺旋王のみ……」
「だから、殺し合いに首を突っ込むよりも人集めを優先するってわけか……」
「ええ。螺旋王の目的を読み、それを先取りできればこの殺し合いを途中で終わらせることができるかもしれません。
または、その為の交渉材料にできる可能性もあります」
聞き手側に専念している二人に頷くと、明智はさらに言葉を紡ぐ。
「螺旋王に対し、82人の知恵で立ち向かいたい。しかし、それはもう不可能です。
ですが、この現状が私の考えている通りならば、まだ望みは――いや、ここにしか望みはない。
なぜならば――……」
――それはと、明智が螺旋王に課せられた自分達の役割。そして、その中に潜む逆転の芽。それを語ろうとした時。
その発言は、何時の間にか迫っていた定時放送――螺旋王の声により遮られた。
『人間とは面白いな』
そんな、まるで自身が天上の神であるかの様な言い回しから始まったそれに、3人は慌てて紙とペンを手に取る。
またしてもつぎ足されるであろう死者の名前を前に、言いようの無い緊張が高まりペンを持つ手に力を込めさせた。
『人の身に刻まれた二重螺旋の為せる技、か――』
前置きの中で語られるそれに、3人は反応する。
やはり、キーワードは『螺旋』。しかも、今回は具体的に『人間の中の二重螺旋』と新しい情報が提供された。
先に己の推論を語った明智も、それを聞かされたねねねと士郎も、やはり螺旋王はこの実験で螺旋力を得るのが目的だと再確認する。
それが、螺旋力を持った人間を直接確保したいのか、それとも人間が螺旋力を獲得するプロセスを見出したいのかはまだ不明だが。
しかし、そんな目まぐるしく回転する3人の頭脳も、続けて発表された死者達の名前にぴたりとその動きを止めることとなった。
「(そうですか。彼らはもう……)」
剣持勇。そして、金田一 一。……その二人の仲間の死に、明智の心は僅かに震える。
だが、それも最悪の想定の中からは出ていない結果。その覚悟によって感情よりも理性を優先させることに成功した。
彼の隣りに座っている士郎も、ランサーの脱落と未だ数を減らさない死者に驚きはしたものの取り乱す程ではない。
それよりも、二人が驚いたのは――……、
「う、嘘……。センセー……が?」
――目の前で、まるで子供の様にボロボロと涙を零すねねねの姿であった。
◆ ◆ ◆
西には熟した果実の様に真っ赤な太陽。そして、それに押し出されて長く伸びる影が向うのは夜を目前とした蒼い空。
薄く白い姿を現し始めた月の下。映画館の中の3人と同じく、外に一人残ったイリアも放送を聞いていた。
「(ランサーが消滅……そうか、それで)」
それで、聖杯のシステムが反応したのかと、ランサーの死を知ったイリアは納得した。
そして何故彼が本来の名前でなく、サーヴァントのクラス名で呼ばれているのかも同時に納得する。
「(でも、だとしたら随分中途半端だわ……?)」
螺旋王が自身を聖杯として利用しようと考えているなら、贄……つまりはサーヴァントがランサーの1体だけというのはおかしい。
もう一人、ギルガメッシュという名の英霊が召喚されているが、こちらはクラス名でないので扱いが不明だ。
聖杯に注がれるにはあまりにも大きな存在ではあるが、しかし――……。
「……意味がわかんない」
――とりあえずは、イリアはその問題を無視することにした。それよりも、今は特訓なのであると。……と、
「あらシロウ。私は一人で大丈夫だって言ったでしょう?」
目の前に現れたのはつい先ほど別れたばかりの士郎であった。
特訓中の姿を見るのは、おめかし中の姿を覗き見ること同義。いくらシロウと言えどダメ! と、イリアは追い返そうとする。
「いや、覗きにきたんじゃないんだ。
明智さんが、イリアにお願いがあるって……、菫川先生を励ましてくれってさ」
「ネネネが……?」
そうか。そう言えばヨミコと言う人は、彼女の大事な人なんだとネネネから教えてもらっていたことをイリアは思い出す。
ならば頼まれるまでもない。今まで何度も助け、面倒を見てもらったのだからと映画館の入り口へと向った。
と、内へと向う自分と入れ違いに映画館から離れていってしまう士郎をイリアは呼び止める。
「あれ? シロウはどこに行くの?」
「やっぱ、元気ない時は飯だと思ってさ。
それに、ラッドが仲間を連れ帰ってきたら大所帯になるだろう?
だったら、今の内にこの近くを回って食材を確保しておこうかなって思ったのさ」
それは素敵な提案だと、イリアの白い頬が赤く高潮した。士郎が持つ料理の腕前は自身の舌が覚えている。
螺旋王より与えられたモノによる灰色の食生活が、薔薇色のものに変わる予感。それに期待は高まり、お腹もク〜とその存在をアピールした。
「非常時だしさ。そんなに期待されても、どれだけできるかは解んないけど……うん。努力するよ」
「シロウの料理を食べれば、ネネネもアケチもきっと元気がでるわ♪」
離れてゆく背を手を振って見送り、イリアは改めて映画館の中へと向う。
妖精と謳われる少女の足取りは軽い。その足元では車輪の従者が静かに明滅していた――。
176 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/22(金) 00:03:08 ID:lPD5mFeE
sienn
支援
179 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/22(金) 00:04:02 ID:0rwIbBxP
チャットより支援
180 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/22(金) 00:04:08 ID:lPD5mFeE
sienny
◆ ◆ ◆
「さて……と、スーパーかコンビニ。それともレストランか……?」
夜を迎える寸前の茜色と紫が混じった風景の中に立ち士郎は思案する。
映画館を基点に、南の総合病院-デパート方面。そして、南西の駅の方までは繁華街が続いている。
言葉で上げた以外にも、食材を得られる場所は多くあるだろう。
だがしかし、あくまでちょっと食材を調達しに行く……というだけである。選好みをしている内に、誰かに襲われてしまっては本末転倒だ。
ある程度、幅広い種類の食材が得られるならそれでいい――と、士郎はその足を進め始めた。
「(……言峰綺礼)」
死んだはずの男が此処にいることは、最初に名簿を見た時から知っていた。
そして、合流したイリア達が持っていた詳細名簿を見て、その男が同姓同名などの勘違いでないことも確認したばかりだ。
何故生きているのか? それは考えない。問題とするのは、そう遠くはない場所にいるという事。
放送前に明智が確認した時には、北を流れる川の向う。丁度、自分が向う予定のあった図書館の近くにあの男はいた。
そこからあの男がどちらに向ったかは解らない。彼の目的も、彼がここで何をしているのかも……。
「(………………………………)」
色の濃さを増してきた影の中。その中からあの男がこちらを見ているかも知れない。そんな錯覚に身体が強張る。
あの常に闇色の服を纏っていた男。彼が自分を覗いて、またほくそえんでいるのではないかと……。
「やっぱ、大人数で食べるなら鍋かな? 夜は冷えるし……」
そんな軽口を意図的にこぼし、士郎は錯覚の中ですら自分を蝕むあの男を振り払う。
死に際のロイドに教えられた事。それを自身を支えそして抑える楔とし、現在の自分がしなくてはならないことを再確認する。
「腹が減っては戦はできぬ――だな」
大通りに面した商店街の大きなゲート。それを潜り、士郎は食材を求めて独り暗闇の中へと進んで行った――。
【C-5/北東部-商店街/一日目/夜】
【衛宮士郎@Fate/stay night】
[状態]:疲労(中)、心労(中)、腹部と頭部を強打、左肩に銃創(処置済み)、軽い貧血、
[装備]:クラールヴィント@リリカルなのはStrikerS、バリアジャケット
[道具]:支給品一式(一食分消費)、レガートの金属糸@トライガン
[思考]:
基本方針:螺旋王の実験を食い止める。イリアを守る
1:商店街で食材を調達。早々に、映画館へと帰る
2:言峰が近くに来ている可能性があるので警戒
3:1に成功すれば、映画館内で全員分の晩飯の用意
4:イリアの様子は常に気にかける
5;ラッド達が帰ってきて状況が落ち着けば、鴇羽舞衣の説得に赴く
6:善悪に限らずできるだけの人を救いたい。が、止むを得ぬ場合は――
[備考]:
※投影した剣は放っておいても30分ほどで消えます。真名解放などをした場合は、その瞬間に消えます。
※本編終了後から参戦。
※チェスに軽度の不信感を持っています。
※なつきの仮説を何処まで信用しているかは不明。
※ロイドの言葉を受け、ある程度ですが無駄死にを避けてより多くの人を救う選択を意識できる様になりました。
188 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/22(金) 00:05:11 ID:46jol+YE
レフリー支援
しえーんっ(ノ)・ω・(ヾ)
風来のSIEN
◆ ◆ ◆
広くはあるが、空調によりその温度を暖かく均一に整えられたロビー。だが、その端にあるレストルームの中は冷え込んでいた。
青いタイルの敷かれた内装。空調が届かないというだけでなく、その雰囲気が其処を冷ややかに感じさせるというのもあった。
だが、今この女性用レストルームの中が寒々しいのは、そういう理由のせいではなく――、
「……あぁぁぁぁああぁぁっ! うっ、うわぁあああぁああぁぁぁあん!」
――万遍なく響き渡る大きな泣き声のせいであった。
泣いているのは、菫川ねねね。声を張り上げ、嗚咽を漏らし、誰に憚ることなく、まるで幼児の様に泣いている。
彼女のたった一人の『センセー』――読子・リードマンの死が知らされた時。彼女はあの時の少女時代へと戻ったのだ。
他人にも、そして自分自身に対しても微塵たりとも思わせてなかった寂しい自分。独りぼっちだった少女の時へ。
「えっ、えぅ……! センセーが……センセー……ッ! うわぁああぁああぁ――!」
何で本を『書く』のか? どうして、ねねねは13歳という若さで作家としてデビューしたのか?
それは勿論、読んでもらう為だった。大切な人に自分の書いた本を読んでもらいたい。作家になった自分の本を読んでもらいたい。
多くの人に読んでもらい本をたくさん出して人気が出れば、本は海を越えその人の下まで届くだろう。
その時は少ししかなかった自覚。それを理解させてくれたのが『センセー』。彼女の、いや本にとっての最高の『読者』――読子・リードマンだった。
「……どうしてっ! なんで、センセーがっ! っあ、ふあぁ、うっく……!」
ただ我武者羅に書いていた少女時代。本の向こう側に、自分の世界をひたすらにぶつけていたその時に彼女は現れた。
まるで本の中から現れた様な、ファンタジーでミステリアスな存在。一回り近くも年下の自分に、まるで子犬の様にじゃれついてきて……。
ともかくとして、様々な事がありねねねは変わった。『読子』を知ったから。そして――『読者』を知ったから。
彼女の作家としての才能も更に花開いた。ただの物珍しい、若さだけが特徴の作家ではなく。物語を創造し、本を読者に齎す作家に。
「ま、まだ……っ、読んで、ない……ほ、……ぅ、うええぇぇぇえええん!」
菫側ねねねが新刊を出せば、読子は世界のどこからでもやってきて、涙を零しながら感想を述べサインをねだった。
程無くして、読子が読む本をねねねは書き。ねねねが書く本を読子が読む。それが当たり前の習慣になる。
貴重な作家としてねねねは幾度も危機に陥ったが、そんな時はやはり読子が助けに来て、時には逆に読子はねねねの本に助けられた。
波乱万丈ではあるが、幸福だったサイクル。グルグルと永遠に書き続ける限り、読み続ける限り続くと信じていたサイクル。
「……っく! あぁっ、私が――私が――っ!」
だが、サイクルは唐突に途切れた。
どうしてか、ある日を境に読子は現れなくなる。そして、片輪を失ったねねねの筆もその時――折れた。
いつしか、読子に読んでもらわなければ本が書けない。ねねねの中で、読子はそんな存在になっていたのだ。
ねねねは読子を探し――そして、見つからない。そんな時がひどく長く続いた。何時の間にかにねねねは大人になっていたが、
もう本は書けなくなってしまっていた……。
「もう……、もぅ……私はっ! あっ、ああぁぁぁああぁぁあ……」
螺旋王の実験が始まった時。読子の名前を見て心を躍らせたのは、ねねねの誰にも話せない秘密である。
どんな時でも、自分の危機に読子は駆けつけた。今回もそうであると、ついに読子が自分を救う危機が訪れたと、密かに歓喜した。
だが、どこかに不安があったのも事実。イリアに言った『覚悟』という言葉。何よりもそれは臆病な自分の心を抑えるためのものだった。
近くに見えてはいるのに、ギリギリで指先が届かないそれが……、今度こそ決定的に離れていってしまうのではないかと。
そんな不吉な予感に苛まれていたのだ。イリアとフォルゴレがいなければ、どこかで独り泣いていたかもしれない。
「――っぅ。…………っ! ………………………………! …………!」
そして、ついに予感は現実となった。
菫川ねねねはもう独りぼっち。
もう、――書くことも。――読んでもらうことも。――何もできない。
G支援
◆ ◆ ◆
独りきりとなったロビーの中、明智はいつかの様にどこかで聞いているはずの螺旋王に語りかけていた。
「これが……、これも含めて全てがあなたの計算通りなのでしょう。
ならば、私はあえてそれに乗ります。あなたの期待通りに……、そしてあなたの期待を僅かにでも上回ってみせる。
それが私の――明智健吾から螺旋王への挑戦です」
フ……と、些か自嘲気味に笑うと明智はその身を再び椅子の上へと収めた。
この螺旋王の実験。結末までは予測できなくとも、すでにルールは全て理解している。と、明智は確信している。
齎された情報――人物像。仕掛け。エピソード。それらの無数の点が浮かび上がらせる螺旋王の狙い。それが何かという事を。
参加者全員での殺し合いによる実験。
それがお題目でしかないことはすでに明らかにしている。ならば、参加者に課せられた真の目的は何か?
それは一人一人によって、違う。各人がそれぞれに、
フラスコの中に注がれた多種多様な化学物質の様に個別の役割を持たされ、そしてそれぞれの化学反応を期待されている。
それは大きく別ければ4つに分類できる。
1つ目は、殺し合いを推進するための物質。殺害による実験の推進を肯定し、積極的に活動する物質。
2つ目は、先にあげた物質の働きを阻害する物質。殺害を良しとせず、他の物質の存在を守ろうとする物質。
3つ目は、それ自体は無力であるが劇的な変化を期待されている物質。螺旋王が最も重視する物質だ。
4つ目は、この仕組みに気付き、3つ目の物質が螺旋力を発現するのを促進させる物質。
螺旋王は1番目と2番目が作り出す状態の中で、3番目の物質が4番目を触媒に変質することを目論んでいる。
それが彼の言う、螺旋力の発現。
そして、明智は自分が4番目に該当すると考えている。
螺旋王にこの仕組みに気付く知性を期待され、意のままだと気付いてもその通りに動くであろう駒。それが自分だと。
「(……そして、高嶺清麿。彼が今ここに加わろうとしていることも、またそうなのでしょう)」
出会ったばかりのラッド・ルッソが迎えに行った高嶺清麿という少年。
名簿の情報とラッドの証言から彼も『4番目』だろうと、明智は当たりをつけていた。
「(私の隣には金田一君が……と思っていたんですがね。これは私個人の願望でしかありませんでしたか)」
今は亡き少年探偵に心の中だけで追悼を繰り返すと、明智は机の上に手を伸ばしコーヒーカップを取った。
そして映画館の事務所内にあった安物のコーヒーメーカーから淹れたコーヒーを喉に流し込む。
物腰はあくまで普段通りにスマート。思考も眼鏡の奥の眼差しもどちらも至極冷静。明智健吾にブレは無い。
SIENするのに理由が居る階?
絶望支援
◆ ◆ ◆
陶器のタイルを叩く小さな足音。
それが入ってくると同時に、まるで目覚まし時計の様だった一つの箱は鳴り止んだ。
「ネネネー? 大丈夫……?」
まるで自分より幼い子供に向ける様に、イリアは声をかける。
もうすでに泣き声はやんでいるが、迷子の子供の様なそれは入ってくる前から聞こえていたからだ。
「………………うん、大丈夫。……ごめんねイリア。偉そうなこと言ってたのに、この様で」
壁越しに聞こえる声は少しだけ精彩を欠いていたが、それでも菫川ねねねの声だった。
しかし、間にある扉を開くことができないのがその虚勢の限界を現している。
それだけで、イリアにもねねねがどれほどに悲しんでいるのか理解することができた。
「えっとね。今ね、シロウが晩御飯の材料を集めにいっているの。
シロウのご飯はとてもおししいから……、きっとネネネも元気でるよ。
……ああ、そうだ。私も手伝うわ! そしたらネネネももっと元気になるよね――」
「――ありがとう。イリア」
静かな部屋の中に、さっきよりは力強い声が響く。
ねねねがこのまま何処かに行ってしまう……そんな不安を、とりあえずは払拭できたことにイリアは安堵した。
最愛の人を失いどん底にいるねねねをそこから引き上げる方法を、幼いイリアは知らない。
ただ寂しさだけは理解できるから、せめて一人きりにはしない様にと手を差し伸べるのだ。
「泣いたらさ……、メイクが落ちちゃって。みんなに見せれる顔じゃあないから――」
「うん。わかるよイリアも女の子だもん。先に言ってるからゆっくりおめかししてきてね」
コツコツと、再び小さな足音を立てるイリア。と、何かに気付き真っ白な髪を広げてターンした。
「そうだ。アケチからの伝言。
ネネネに物語を書いてほしい――って。
ラセンオウが書いた筋書きを、唯一上書きできるのはサッカであるネネネせんせーだけだ……って、言ってたよ」
それじゃあね。と、最後に見えないねねねへと手を振ってイリアはその場から姿を消した。
SIENNjきゃああああああああ
◆ ◆ ◆
明智に、託された仕事を終えたことを告げイリアは再び映画館の外へと出てきた。
真っ赤だった太陽はもうほとんど消えて、わずかに空の端っこに紫色が残るのみ。空気も冷え始めていた。
しかし、其処こそが相応しい舞台だと言わんばかりに、新雪の髪を持った少女は踊る。
「マッハキャリバーも寂しいよね」
本来の主人を失った車輪の従者にイリアは囁きかける。
「ねねねも……。そして、シロウがいなくなったら私も同じになっちゃう。きっと、私がいなくなっても……」
だから、もうだれも一人ぼっちにはしないようがんばろう。
独りになった人がいるなら、走っていって手を差し伸べよう――そうイリアは決意し、皆の幸福を願う。
「これからもよろしくね。マッハキャリバー」
『はい。マスター』
藍色の空の下。街燈が作り出す黄金のスポットライトの中。真っ白な少女は星に願いを告げる。
【C-5/映画館-外/1日目/夜】
【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/stay night】
[状態]:健康
[装備]:マッハキャリバー@魔法少女リリカルなのはStrikerS、バリアジャケット
[道具]:支給品一式(一食分消費)、ヴァルセーレの剣@金色のガッシュベル、魔鏡の欠片@金色のガッシュベル
[思考]:
基本:シロウと一緒にゲームを脱出!
1:マッハキャリバーからベルカ式魔法について教わる
2:シロウが帰ってきたら、料理をお手伝いする
3:その後はみんなで晩御飯
4:シロウ、アケチ、ネネネの言うことを聞いてがんばる
5:聖杯については考えない。シロウにも内緒
[備考]:
※フォルゴレの歌(イリヤばーじょん)を教えてもらいました(イリヤ向けに簡単にしてあります)。
※チチをもげ!(バックコーラスばーじょん)を教えてもらいました(その時にチチをもげ!を完璧に覚えてしまいました)。
※バリアジャケットが展開できるようになりました(体操着とブルマ)。
※聖杯にランサーの魂が取り込まれました。
※マッハキャリバーより、「プロテクション」「シェルバリア」「リカウティブパージ」を習得中です。
【プロテクション】:魔法障壁を張り、攻撃をガードします。
【シェルバリア】:半球状の結界を張り、外部からの干渉を遮断します。一定時間持ちますが、それなりの魔力を消費します。
【リアクティブパージ】:バリアジャケットを自ら爆破し、その威力で攻撃を防ぐテクニックです。
支援、それが俺の名だ
しえーん
◆ ◆ ◆
「(……ひどい顔)」
鏡の向こう側に立つ自分を見た時の、菫川ねねねの率直な感想がそれだった。
瞼を真っ赤に泣きはらし情けない表情をしている自分。こんな顔を見ていたらひっぱ叩きたくなる――……。
「しっかりしろ――!」
静かだったレストルームの中に連続した破裂音が鳴り響く。ねねねが鏡の向こう側にいる情けない女をぶっ叩いた音だ。
女は瞼だけではなく頬も真っ赤に腫らし、ますますもってブサイクな顔に……だが、もうみっともない顔はしてなかった。
「私が物語りを……、螺旋王の筋書きを――上書きする?」
明智は自分にそれを期待している。魔法も超能力も無いただの女に――『作家』――として挑戦しろと!
文を打つことを久しく忘れた両手をねねねは見る。そして自問する――できるのか? と。
あまりにも大それた挑戦。あの男に限らず、何故世界はこんなにもただの女に期待するのかと……。
「書けるのか……? 私に……そんな、そんな『本』が――?」
世界は――運命は――物語は――、そして何よりこれから生まれてくる『本』は知っているのだ!
菫川ねねねが世界に相対するに相応しい『作家』であることを。彼女の中に無限の才能が眠っていることを!
『彼女』も知っていた。――だから、二人は出会ったのだ。運命が、物語が二人を導いたのだ!
「センセー……、私、私書くよ。私は本を――書く」
今更になって気付く。そうだ、書けばよかったんだと。書くのをやめるんじゃなく、書きまくればよかったのだと。
センセーが目の前にいないのなら、読みに来てくれないのなら……逃げ場がなくなるほど本を書けばよかったのだと。
世界を、自分の『本』で――埋めてしまえばよかったのだと!
「書いて、書いて、書いて、書いて、書いて――――書きまくってやる!」
『菫川ねねね』の書く『本』で、螺旋王の書いた傲慢な脚本をぶっ飛ばす――と、ねねねは心を燃え上がらせる!
その『本』の結末は決まっている。生まれてこの方そればかりだった。読子の喜ぶあの終わりに決まっている。
いかな艱難辛苦を登場人物に与えようとも、どれだけ後でご都合主義だと罵られても――――!
「――ハッピーエンドだ!」
鏡の中で不適に微笑む菫川ねねね。
遂に蹴飛ばすべき道理の端に足をかけた彼女の瞳には、緑の螺旋が渦巻いていた……。
【菫川ねねね@R.O.D(シリーズ) 螺旋力覚醒】
くろすおーばー支援
SIENだよー
【C-5/映画館-レストルーム(♀)/1日目/夜】
【菫川ねねね@R.O.D(シリーズ)】
[状態]:螺旋力覚醒、健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式(一食分消費)、ボン太君のぬいぐるみ@らき☆すた、
『フルメタル・パニック!』全巻セット@らき☆すた(『戦うボーイ・ミーツ・ガール』はフォルゴレのサイン付き)
[思考]:
基本:螺旋王のシナリオ(実験)を破壊し、ハッピーエンドを迎えさせる
1:本を書くにはまず資料! 明智と一緒に考察をする
2:ある程度考察が進んだら、ハッピーエンドを迎える『本』(方策)を書く
3:ラッド・ルッソの動向には警戒する
4:柊かがみに出会ったら、「ポン太くんのぬいぐるみ」と「フルメタル・パニック全巻セット」を返却する
5:センセーに会いに行きたい……けど、我慢する
◆ ◆ ◆
――ハッピーエンドだ!
ロビーの端にまで聞こえてきた菫川ねねねの決意表明に、明智は一人頬をゆるませた。
放送の直後。大粒の涙を見せて泣き出した時はどうしようかと困惑したが、
やはり目星をつけた通り彼女こそが、我々に対し螺旋王が与えた逆転の可能性だと確信する。
螺旋力――未だ不明のその力だが、明智はそれに対してもある程度の目星をつけていた。
士郎が口にした火事場の馬鹿力。それに近く、それよりもやや限定的なもの――『抗う力』。それこそが今の明智が考える螺旋力。
「(螺旋王の目的は、決して殺し合いの完遂ではない。むしろその逆、この実験を誰が破壊するのかという事のはずだ)」
明智の目の前には狭いテーブルが一つ。しかし、その上には無限に近い膨大さの情報が載っている。
彼自身に支給された、悪名も合わせて併記されたプロフィール一覧。
菫川ねねねに支給された、各人の経歴や能力などが客観的に詳しく記されたファイル。
イリアに支給された、螺旋王の用意した全支給品の、見た目、能力、本来の持ち主が記載されたリスト。
ロイドという男に支給された、実験参加者の現在位置を知ることのできる携帯電話。
そして、その単純な情報は掛け合わせ、個々の人間が遭遇したエピソードをブレンドすることで更に質と量を増す。
出会った人物。そして彼らから聞く知人の人となりで、名簿は更に情報量を増す。
携帯電話と支給品リストを掛け合わせることで、全参加者の位置と彼らに支給されたアイテムの一つが明らかになった。
更に、生者と死者の位置、放送によって判明している死のタイミング。それにより、散らばった点の間に線が浮かび上がる。
舞台の代わりである地図の上にそれらを写せば……、大雑把ながらにもその全容が明智の脳内に浮かぶのだ。
これを、明智健吾という男は螺旋王からの挑戦と受け取る。
王と同じ視点を授けるから、見事打ち負かせてみよ――という螺旋王の声を聞く。
実験場の8マス×8マスをゲーム盤とし、互いが打ち手となってそれを進めてゆこうという誘い。
明智はその鋭利な瞳で盤を見る。その中に緑色の螺旋は無い……が、螺旋王の心臓に突き立てる銀のナイフの輝きがあった。
これは予想外
超パロロワ支援
実況が支援をお送りいたします
◆ ◆ ◆
「さて……と、しかし私にはやることがありますね」
螺旋王への思いを一旦断ち切り、明智は実験の参加者の一人としての方へと思考を切り替えた。
片手で携帯電話。そして、もう片方の手でメモを取りながら完成させた、放送直後の位置情報が記された地図。
それを見ながら、彼は当面の懸念事項への推測と対処を進めてゆく――……。
この後、合流が予定されている「高嶺清麿」。彼の滞在している病院には、現在他に3人の死者がいることが判明している。
何があったかは不明だが、彼が犯人でないことだけはまず間違いなく確かだ。
情報は位置だけではない。明智の脳内には放送の記憶――つまりは、彼らが殺されたタイミングも入っている。
第1回の放送で脱落が判明したアニタ・キングとエドワード・エルリック。同じく2回目で判明したエリオ・モンディアル。
ラッド・ルッソの証言を信じるならば、彼がその3人を……少なくとも前者2人に関しては確実に殺してないと言い切れる。
それに加えて、この映画館内にはキャロ・ル・ルシエの反応があるが、死体はない。あるのは首輪のみ。
なので、名簿から想像できる彼の人格から推測するに、彼が自分と同じ様に首輪だけを死者から拝借したという可能性が高い。
出会った時点で確認の必要はあるが、とりあえずは彼との合流に問題はない――そう、明智は結論付けた。
考えておかねばいけない問題の内、もう一つ大きなものがある。それは地獄の傀儡師――「高遠遙一」の存在。
現在位置は豪華客船内。しかも、彼以外に5人もの生存者と、1人の死者が乗り合わせている。
死者の名前はアイザック・ディアン。あくまで位置情報は首輪のものであるので、死体が乗り合わせているとは限らない。
恋人であるミリア・ハーヴェントが形見として持ち歩いている可能性も考えれるのだから。
注目すべき人間は――「高遠遙一」「ティアナ・ランスター」「チェスワフ・メイエル」の3人。
高遠遙一に関しては言うまでもない。恐らく、豪華客船の付近に浮かんでいる剣持警部の死体は彼の仕業なのだろう。
そして、その直接の下手人。地獄の傀儡師に人形にされた者の候補として上がるのがティアナ・ランスターだ。
午前の内に出会ったあの少女。
クロス・ミラージュと約束していた錯乱状態からの回復は、駅へと戻った時にいなかったことから失敗したのだろうと解る。
ならば、もしそんな不安定な状態の彼女を地獄の傀儡師が見つければどうするか? ――言うまでのないことである。
豪華客船が現在、彼のステージとなっていることは想像に難くない。
もう一人の注目すべき人物チェスワフ・メイエル。十中八九、玖我なつきに偽名を名乗った少年とは彼のことだ。
少年とは言うが、それが違うということは彼の経歴を見れば明らになる。
彼は錬金術師である。しかし、ただ錬金術師だけと言うならエドワード・エルリックのように若年の者は存在する。
たが、注意深く経歴を観察すれば、彼が見た目どおりの少年でないことは明らかなのである。
一つ一つの出来事に年代は記されていないが、とても天才というだけでは間に合わない評価と経歴の持ち主。
そして決定的なのが、場所を同じくしているアイザックとミリアに親交があると記載されているにも関わらず、
彼だけ生年月日が1700年代であること。これにより、彼が見た目通りの少年。それどころか、人間かも怪しいことがわかるのだ。
傀儡師のステージにより怪しい人間だけが脱落するというのならば、それも看過できるかも知れないが、
そうはできないのは、「ガッシュ・ベル」という少年の存在があるからである。
先に挙げた高嶺清麿のパートナーであるこの少年。合流の後、彼がこのことを知ればそこに向かいたくなるのは必然。
高遠遙一を止めたいという使命感。亡くなった剣持警部への意趣返し。それを合わせて考えれば自分もそこへと向かいたい。
だが、それが非常にリスキーであることは否めない。ティアナが人形となっている可能性があるからだ。
現状の戦力に加え、今後の加入が予定される清麿、ジン、ラッドと、豪華客船内にいる傀儡師と人形の戦力。
天秤にかけた場合。一体それはどちらに傾くのだろうか……?
これもやはり、高嶺清麿との合流を待ち、彼より事情を聞いてからだろうと明智は保留する。
その時までに被害者が出る可能性を見逃すのは口惜しいが、力に関しては全く及ばないというのがすでに出た結論だ。
観客からのおひねり支援!
さらに別種の大きな問題が一つ。映画館より南にあるデパート周辺で起きた『何か』である。
今回の放送で呼ばれた脱落者の内、6人までがそこに反応を残している。
そこにはあの『ロイ・マスタング』も存在した。何か、凄惨な事態が発生したという事だけは間違いない。
また、そこから橋を渡ったところにも真新しい死者の反応が二つ。
君子危うきに近寄らずではないが、そこへと向かうことは遠慮しておいた方がよいだろう。
他にも気に留めておくべきことは、多々あるが当面の問題としてはこんなところだろうか……と、明智は思考を中断した。
気付けば、カップの中のコーヒーは冷め切ってしまっている。菫川先生も、もう戻ってきておかしくない頃だ。
ギシと音を立てるプラスティックの椅子から立ち上がり、今度は二人分のコーヒーを入れるため明智はロビーを進む。
入れ替わり立ち代りに人が行き交ったロビーから人の姿が消え、次の話までの静かな時間が訪れる――……。
【C-5/映画館内/1日目/夜】
【チーム:戦術交渉部隊】(明智、ねねね、イリア、士郎)
[共通思考]
1:各種リスト、便利アイテムを利用した豊富な情報量による仲間の選別及び勧誘
2:基本的には交渉で慎重に。しかし、実力行使も場合によっては行う
3:首輪の解析・解除が可能な者を探す
4:最終目的は主催者の打倒、ゲームからの脱出
【明智健吾@金田一少年の事件簿】
[状態]:右肩に裂傷(応急手当済み)、上着喪失
[装備]:レミントンM700(弾数3)、フィーロのナイフ@BACCANO バッカーノ!
[道具]:支給品一式×2(一食分消費)、ジャン・ハボックの煙草(残り16本)@鋼の錬金術師、閃光弾×1
予備カートリッジ8、ガジェットドローン@魔法少女リリカルなのはStrikerS
[思考]:
基本1:螺旋王より早く『螺旋力』を手に入れ、それを材料に実験を終わらせる
基本2:高遠遙一の確保
1:ラッド達が帰還するまでの間を、考察と休憩にあてる
2:菫川ねねねに情報を提供し、螺旋王を出し抜く『本』(方策)を書いてもらう
3:螺旋力が具体的に何を指すのか? それを考察する
5:首輪に関しては、無理をしない程度に考察
6:高嶺清麿と合流できれば、事情を説明して豪華客船に向かうか検討する
7:ラッド・ルッソの動向には注意する
8:2日目の正午以降。博物館の閉じられた扉の先を検証する
[備考]
※リリカルなのはの世界の魔法の原理について把握しました。
※ガジェットドローンは映写室に繋いだ時点でいったん命令がキャンセルされています。
231 :
こいつウザ杉:2008/02/22(金) 00:12:48 ID:wIzj8Euf
188 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 00:05:11 ID:46jol+YE
レフリー支援
197 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 00:06:50 ID:46jol+YE
G支援
202 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 00:07:55 ID:46jol+YE
絶望支援
209 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 00:09:09 ID:46jol+YE
支援、それが俺の名だ
212 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 00:09:44 ID:46jol+YE
しえーん
216 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 00:10:25 ID:46jol+YE
くろすおーばー支援
221 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 00:11:02 ID:46jol+YE
超パロロワ支援
誰がために支援する
※以下の支給品が映画館-ロビーの、テーブルの上に並べられています。
【参加者詳細名簿】
全参加者の簡単なプロフィールと、その人物に関するあだ名や悪評、悪口などが書かれた名簿です。
【参加者詳細名簿+】
全参加者の個人情報と、その人物に関する客観的な経歴が記されています。情状など主観になる事は書かれていません。
※読子・リードマンとアニタ・キングのページはねねねが破いて捨ててしまいました。
【警戒者リスト】
ねねねがメモに書いた、要注意人物のリスト。自分、または仲間が遭遇した危険人物の名前が書き連ねてあります。
「高遠遙一」「ロイ・マスタング」「ビシャス」「相羽シンヤ」「東方不敗」「鴇羽舞衣」「ニコラス・D・ウルフウッド」
【全支給品リスト】
螺旋王が支給した全アイテムが記されたカタログ。正式名称と写真。使い方、本来の持ち主の名が記載されています。
【携帯電話】
通常の携帯電話としての機能の他に、参加者の画像閲覧と、参加者の位置検索ができる機能があります。
また、いくつかの電話番号がメモリに入っています。(※詳細は不明)
[位置検索]
参加者を選び、パスを入力することで現在位置を特定できる。(※パスは支給された支給品名。全て解除済み)
現在位置は首輪からの信号を元に検出される。
【ダイヤグラムのコピー】
明智健吾がD-4にある駅でコピーしてきた、モノレールのダイヤグラム。
【首輪】
明智健吾が死体から回収した、キャロ・ル・ルシエの首輪。
【考察メモ】
雑多に書き留められた大量のメモ。明智、ねねねの考察や、特定時間の参加者の位置などが書き残されている。
らせんりょくってなんですか?
オリジナル設定?
でしょ
グレンラガン
ここまでくると拡大解釈すぎてわけわかんね
一気に糞SSを垂れ流ししてるようだから
一時期が終ればすぐに収束すると思われ
ひたすら削除依頼ヨロ
>>244 他力本願情けねーww
人として恥ずかしくないでちゅか〜wwww
245みたいな人間がいるから企画というのはどんどん変な方向に向かうのだよ
>>247 “同類”のくせに偉そうなことを言うなよw
仲良くしようぜ?
そもそも、前提からして何もかもが間違っていたのだ。
ルルーシュ・ランペルージは決して歴戦の戦士でも、屈強な肉体を持つ軍人ではない。
確かに彼は一つの"部隊"のリーダーである。
しかも"騎士団"を名乗る圧倒的な武力を備えたレジスタンス組織を掌握している。
だが、それはあくまで"駒"としての存在であり、彼自身は戦う力はほとんど持っていない。
純粋に殴り合い殺し合い撃ち合いに興じたとして、彼が圧倒出来る参加者などほとんど存在しないのが現実だ。
己の力のみで一対一のキャットファイトを行った場合、彼のオッズはおそらく残りの全参加者のうちでもTO5に入る程高い。
もちろん女や子供、全ての人間を含めた中で、だ。
彼には他人を圧倒出来る腕力などない。
彼には天変地異を巻き起こすような魔力などない。
彼には高層ビルを破壊するような馬鹿げた戦闘能力などない。
彼には数百メートル先の対象を正確に撃ち殺す射撃技術などない。
ルルーシュはまさに社会が産み出したもやしっ子の代表、結晶とも言えるような類の人間だ。
肉体労働は彼にはあまりにも不向きであり、頭脳を用いた策謀こそがその真髄、いやそれしか出来ないのである。
だが彼は肉体こそ貧弱ながら、経験豊富な軍人や戦士達の長――そして多方面から注目を浴びる部隊のカリスマ的指導者という側面も持ち合わせている。
では、彼の武器とは何なのだろう。
彼を他の参加者と乖離させ、分水嶺となり、ある種の高みへと引き上げる神の見えざる手とも言うべき能力とは一体何なのだろう。
ブリタニアの少年、ルルーシュは二つの力を持っている。
一つはギアス。一つは黒の騎士団。
だがその組織力はこの《バトルロワイアル》という舞台において、決して生かされることはない。
黒の騎士団のメンバーで、ルルーシュ以外にこの殺し合いへと参加している人物は紅月カレン――いや【カレン・シュタットフェルト】ただ一人。
主戦力である《ナイトメア》を入手する手立ても未だおぼつかず、彼らの武力は非常に心許ない状況であると言える。
そしてギアス。その「絶対遵守の力」に掛けられた制限は各参加者の中でも最大級のものだろう。
ルルーシュ本人に掛かる強烈な負担。強制力の減少。
通常ならば何人もの人間を一度に自害させることさえ可能な王の力も、本来の姿とは程遠い。
特に一度に複数の人間に対して強力な命令を行った場合、彼はその身を裂かれるほどの激痛に襲われることになる……これが厄介だ。
ギアスを使用するたびに苦痛の末昏倒しているようでは、命がいくつあっても足りない。
それでは。
ギアスに制限を掛けられ、その組織力を失った彼はただ少しだけ不思議な力を持った非力な少年である――そう断定できるのだろうか。
答えは否。どのような角度から彼を分析してもそのような解答は不適格と言える。
彼には才気があった。他の人間を圧倒する類稀なる頭脳、そして目的達成のためには部下さえ切り捨てる非情さ。
狡猾な蛇のように人の心を見透かし、自らの野心を叶えよう満身する人としての心の強さも持っている。
ルルーシュは王の力を与えられた人間と言えよう。
同時にこの空間において、誰よりも「帰りたい」と切望する人間でもある。
ナナリー・ランペルージ――彼の最愛の妹の名前だ。
ルルーシュは彼女のために、何よりも大切に思う彼女の元へ何をしても帰らなければならない。
そして彼にとって最良の友である――枢木スザクは死んだ。
呆気なく、枯れ花をへし折るように容易く。
何処で、どのような経緯で命を落としたのかルルーシュは知る由もなかった。
スザクが何を思い、何を感じ、最期に何をしたのか……それは永久の闇の中へと沈んでしまった。
事実は時間の流れのように淡々とそして残酷なまでに少年の心を変えて行った。
いや、これは本来の結末と何ら変わりのない結果なのかもしれない。
そう、もしもルルーシュがこの《バトルロワイアル》に巻き込まれなかったとして。
結局彼は近い将来、同等の決意を固めることになったからだ。
季節が移り変わるように、当たり前のように、彼は堕ちていった。
加えて、糸色望の死亡によりルルーシュはようやく《ゼロ》としての自分を取り戻したと言える。
だが彼が「教員」として未来ある若者に託した願いはルルーシュに対して何の感慨ももたらさなかった。
たった一つ、
ただ一つだけ、
今確かな事があるとすれば。
ルルーシュ・ランペルージ……いや、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアは彼の死によって、ようやく「王」としてのスタートラインに立った。
今彼の中に潜んでいるのは人間ではない。
修羅道に堕ちた鬼、人の心を失った魔物の方がまだ可愛げがある。
彼は螺旋王ロージェノムを撃滅することに対して、どのような手段を取ることも辞さないだろう。
それがたとえ――幾つもの屍を重ねることになっても、だ。
□
「はぁはぁ……はぁ…ッ…くそっ!!」
疲労で筋肉が引き攣る。荒々しい息が口唇から漏れる。
疾走したりした訳でもなく、ただ歩いているだけなのにこの様だ。
せいぜい一時間と幾許と言った所だ。
足元のコンディションは最悪とはいえ、子供の山登りと変わらない距離と言えよう。
「ゼ――ル、ルルーシュ。本当に、大丈夫なの? 一度休んだ方が……」
「…………問題ないよカレン。まだ……大した距離は進んでいないからね。それより早く移動することの方が大切だ」
「……そう」
隣のカレンが心配そうな目で満身創痍の彼を見やる。
ソレに応えるため、ルルーシュは小さく笑みを浮かべた。
だが学園で自らを偽るために生み出した作り笑いも、この状況では妙に引き攣った笑いになってしまう。
説明するまでもないが、これは強がりである。
慣れない山道の移動によって、ルルーシュは疲労困憊に近かった。
膝はガクガク奮え、足の裏には鈍痛が走る。
日頃身体を全く鍛えていなかったツケが回って来た形だろう。
「ランペルージ。いくらお前がまだ青臭いガキだとはいえ、さすがにこの程度でへばっているようじゃ話にならん。
大体、シュタットフェルトの方がよっぽど元気ってのは男としてどうなんだ」
「……スパイク・スピーゲル。ルルーシュを侮辱することは私が許さない。
それに、名前の方で呼んで――さっき、そう……言ったはずだ」
剣呑な雰囲気が場を包んだ。
二人の数メートル先、先頭を歩くスパイクをカレンが冷ややかな目で睨めつける。
いや、スパイク本人には決してルルーシュに対して悪気がある訳ではないのだ。
いわゆる本来の気質から成る軽口の一種。
カレンへの発言を抽出してみても、それは見て取れる。
しかし、それでも見事に核心を付いたその発言にルルーシュの苛立ちは益々高まっていった。
(こいつら、どんな身体の造りをしているんだ? くそっ……まさかこんな事になるとは……)
カレンとスパイクだけならば、軽くジョギングをしてるかのような速度でこの山道を走破することが可能だ。
が、ルルーシュの平均的な移動速度から考えると、勿論ソレは異常である。
二人の姿を見失わないようにするので精一杯。
今はカレンが隣についていてくれているが、彼はこの瞬間も煮え滾るような憤怒をその胸中に押し隠しているのだ。
(突然の強行軍……とはいえ、地図だけではこの足場の悪さは予想出来まい。病み上がりにこの負担は……ッ)
心の中で悪態を付いても後の祭りだった。
いや、例えルルーシュ本人がこの苦痛を予測していたとしても、彼らの方針が変わることはなかっただろう。
自らの身体能力の劣悪具合から最良と思われる判断を見過ごすほど、彼の指揮官としての精神は甘くはない。
状況に応じて最も適切な行動を取る――当然、自らに多少の苦痛をもたらす決定であっても同様だ。
三人が行くのはE-7の右方。マップの右端に位置するエリア、山岳地帯である。
鬱蒼と茂る森。ゴツゴツした岩場。普通に移動する場合、絶対に通過するはずのないルートである。
彼らは禁止エリアに設定されてしまったキャンプ場を捨て北上する最中だった。
当初は出来るだけ長い間、その場所に留まっている予定だったのだ。
しかし放送の前後で状況は大きく一変する。
特に大きかったのは、三回目の放送の直前に北西の方向、おそらくデパートがある地点から強大な光が会場を包んだこと。
そして放送。ルルーシュ達を逃がすために、盾役を買って出た読子・リードマンが死亡したとの報せ。
この二つだった。
禁止エリア、極光、南方の温泉で別れた仲間の死亡――それらの事実は彼らに北進を余儀なくさせた。
しかも性急に、加えて迅速な進行が求められる事態であった。
三人は光を目指して集まって来るであろう他の参加者との鉢合わせを避けるため、わざわざ森林、そして山岳地帯を抜けての北上を決定したのだった。
「そうだったか? すまんな、物覚えが悪くてよ。『シュタットフェルト』」
「――ッ!」
「おいおい、そんなに睨むんじゃねぇって。ジョークだよジョーク。少し落ち着けってカレン」
疲労困憊の身体を引き摺りながら歩くルルーシュを尻目に、未だ疲れが見えないカレンとスパイクの口論は続く。
これで一体何回目なのだろうか。
キャンプ場を出てから、今までに二人が衝突した回数はそろそろ片手では数え切れなくなって来た。
「お前という奴は……っ! よくこの状況でそんな台詞が吐けるものだな!
読子という日本人はお前の仲間ではなかったのか。それに先程呼ばれたエドという名前も知り合いなのだろう!?
何故そんなにヘラヘラしていられるっ!?」
「……カレン。さすがに少し、言い過ぎだ。それに、あまり大きな声を出すな」
「だけどっ……ルルーシュ!」
ルルーシュは凄まじい剣幕でスパイクを罵倒するカレンを宥める。
いくら何でもこのような状況で大声を出すのは不味い。
とはいえ、このスパイクの対応が彼女を刺激してしまうことは仕方ないことのようにも思える。
だがそれ以上に彼女の憤りはスパイクではなく、むざむざゼロを死なせてしまったカレン自身への叱責が多分に含まれているようにルルーシュには感じられた。
(やはり《ゼロ》を失ったことが相当堪えているようだな。とはいえ……皮肉なものだ)
既にゼロであってゼロでなくなってしまった己を呪えばいいのか。
それとも巡り合わせの悪さを嘆けばいいのか、ルルーシュは口元を歪ませる。
こんなに容易く《ゼロ》の価値が崩壊してしまうとは、思っても見なかったのだ。
彼のデイパックに収められているゼロの衣装にもう一度袖を通すことがあるのか、それさえ疑わしい。
とはいえ、わざわざ『シュタットフェルト』とブリタニア風の言い回しでカレンを呼称する――それは藪蛇というものだ。
彼女にとってソレは明らかな侮辱であり、敵意を生み出す種火と成り得る。
そして、今、カレンはスパイクの人物像をこう捉えざるを得ない。――日本人でもなく、仲間が死んでも悲しむ仕草さえ見せない非情漢、と。
「……そりゃあ、よ。悲しくない訳ねぇだろうが」
「だったら、それなりの態度というものがあるのではないかっ!? さっきから性質の悪い冗談ばかり言って……」
スパイクが深々と溜息をつきながら、一言。
そしてソレに応えるようにカレンが拳をグッ、と握り締めた。
キッ、と釣りあがった形の整った眉が歪む。眉間に皺を寄せ、歯をキツく噛み締める。
(馬鹿か……カレン。仕方ないとは言え……この男がどうしてこんな軽薄な態度を取るのか、何故分からない。
緩いように見えてコイツは相当の食わせ者だぞ!?)
ルルーシュは先頭に立つスパイクの背中を見つめる。先程から彼は一度もこちらを振り返ろうとしない。
背中、二人の言葉を全て背中で受け止める。
おそらく何もかもわざとなのだろう、ルルーシュはそう判断する。
スパイクはカレンの気に障る台詞ばかりを意図的に選んで発言している。
黒の騎士団に起こったゴタゴタを全て把握している彼は当然、カレンそしてルルーシュの心情も十分に理解している筈だ。
……表向きは。
特にカレンの状態は相当に深刻だ。
いかに代替わりを果たしたとしても、自らが心の底から信奉していた男の死は彼女にとって例えようのない衝撃だった筈なのだ。
こんな状況でなければ、時間が解決してくれる問題なのかもしれない。
だが「殺し合い」という切迫した事態においては、自ずと荒治療が必要になる。
悲しみで心を占領される訳にはいかない――一人で絶望を抱き締めることこそが最も不適切な対応と言える。
「カレンいい加減にしろ! ……スパイクさんもすいません」
「でもルルーシュ!」
「スパイクさんの気持ちが分からないのか!? 一度冷静に考えても見ろ。彼がどうして――」
「ランペルージ、それ以上は言わなくていい」
「……ですが」
カレンの意識を自分に向けさせることで、彼女が罪の意識を一人で抱え込むことを防ぐ。
同時に、新たに《ゼロ》という重責を背負うことになった少年に心の整理をさせる時間を与える――そんな所か。
「お前は、分かっているみたいだな」
その時、初めてスパイクがルルーシュ達の方を向いた。
彼の手は自然とポケットを探り煙草を探していた。
が、当然の如く彼の支給品の中にそれに順ずるものは存在しない。ホルダーに収納したデザートイーグルのフレームを指先が撫でる。
「カレン、一つだけ言っておく」
「……何だ」
そもそも、カレンは当たり前のことを失念している。
親しい人間が死んで、悲しくない人間などいる訳がない。
悲しみを外に表し、涙を流し、肩を震わせることだけが――嵐のように荒れ狂う心の混沌を表現する方法ではないのだ。
そして、この男は立場上自分達の前で剥き出した悲哀の感情を見せる訳にはいかないと考えている。
少なくともルルーシュにはそう思えた。
「とりあえず、な。ルルーシュは良い《ゼロ》になると思うぞ」
この場でただ一人の『大人』である彼は、決して弱味を見せる訳にはいかないのだから。
「「「「我ら名前を書風連! ボンボン系の書鬼様の命により支援いたす!」」」」
□
キャンプ場から脱出した際、ルルーシュ達はまず荷物の分配を行う所からスタートした。
カレンに支給されていた道具――しかし、未だ明らかにされていないものが二つあった。
一つがノートパソコン。
当然、フラッシュメモリを読み取る機能や携帯バッテリーなどが付属したモバイルタイプの機種だった。
時間が無かったため、ネットなどに接続出来るのかどうかは依然不明。
コレは情報機器に強いルルーシュが持つことになった。
もう一つが様々な化粧品やSFXの用具などが収められた道具一式だった。
説明には『高遠遙一の奇術道具一式』と書かれていた。
確か、参加者の一人だった筈だ。
手品に使うトランプやシルクットなどが含まれていたことから、おそらく彼の職業はマジシャンなのだろう。
サーカスで使うような衣装から、いかにもと言う雰囲気を放つマスクなど利用価値は十分にありそうだった。
こちらは本来の持ち主であるカレンが持った。
武器はスパイクのデザートイーグルとカレンのワルサーP99のみ。
ルルーシュ本人は手ぶらになってしまうが、戦闘適正などを鑑みるに二人がそのまま持つのが適当だと判断した。
そして、最も大切な決まりごと。それが《ゼロ》の扱いについてだった。
このことに関して、ルルーシュは一つのプランを持っていた。
それ故、
「――ゼロはしばらくの間、封印する」
と、ルルーシュが告げた時カレンが見せた悲痛な表情は少しだけ彼の胸を打った。
そう、今ルルーシュは《ゼロ》の仮面とマントを着用していない。
それらの道具は彼のデイパックの奥にしまわれている。
基本的にゼロについての話題は控えるという取り決めも行った。
まず大前提として、《ゼロ》の姿はこの空間では逆効果にしかならない。
なぜなら参加者に等しく配布されている名簿に【ゼロ】という人物の名前はない。
顔と名前を隠すこと――それは明らかに怪しい人間、という扱いを受けて終わってしまうのである。
元々ゼロとは、正体を隠し偶像として民衆に接するため、ルルーシュが作り出した裏の顔である。
だが、少なくとも螺旋王の台詞を鵜呑みにするならば、この空間は『優れた螺旋遺伝子を持つものを選別する場』なのだ。
つまり参加している人間の大半が、何らかの技能を習得した特殊能力者である可能性が高い。
精神、肉体的にも習熟した者を相手に仮初の姿で接することは逆に自分の身を危険に晒すことになる。
だが、逆にゼロが効果を発揮する場面も必ず来る筈なのだ。
ギアスを有効活用するために、これほど最適な装備はない。
そうギアスを今後も軸として考えていく場合の話だが……。
「ルルーシュ?」
「……ああ、カレンすまない。少し考え事をしていた」
隣を歩くカレンが不安そうな表情で俯いたルルーシュの顔を除き込む。
彼女の白魚ような指先がルルーシュの背中を撫でる。
それは心の底から彼を心配した故の行動だったが、今のルルーシュにとっては何の感慨も生み出さなかった。
「お前ら……イチャつくのは結構だが、そろそろ森を抜けるぜ。用心しな」
「べ、別にイチャついてなんか――!」
カレンがスパイクの台詞に頬を赤らめ、またも怒鳴りつけようとする。
が、その時、
「――おねーさん、喧嘩は良くないんじゃないかなぁ」
三人の頭上から謳うようなボーイソプラノの声が響いた。
「ちッ――!?」
「下がって、ルルーシュ!」
すかさず反応するスパイクとカレン。
それぞれ獲物を取り出し声が聞こえた方向、すなわち上方へと向ける。
この森は背の高い広葉樹が多く生い茂る非常に大きな森だった。
光も刺し込まないような薄暗さながら、数本の枝木が葉を擦り合い立体的な空間を形成している。
(敵襲だと……! いや、ならば声を掛けて来る筈がないか。だが、こんな場所に他の参加者がいるとは……)
「――よっと」
まるで忍者のような身のこなしで一人の少年が姿を現した。
当然、現れる方向は上。軽業師も真っ青な動作で悠々と着地する。
ルルーシュ達は彼のその動きに唖然とならざるを得なかった。
軽く数メートルはある高さから飛び降りて無傷。その表情には余裕さえ見て取れる。
「男二人に女一人のぶらり旅? とはいえ仲はあまり宜しくない、と」
「……名前は?」
「俺? 人に名前を聞く時は先に自分が名乗るもの……そんな野暮なことは言いません。
俺はジン。見ての通りイタイケで純情なただの――ドロボウです」
スパイクが銃を構えながら問い掛けた質問にペコリ、とお辞儀をしながら応える。
ブワッ、と一瞬で場の空気が変わったことをルルーシュは肌で感じた。
現れたのは袖にうずまきマークの付いた黄色いコートを羽織った少年。
ハリネズミのような黒々とした髪の毛を逆立て、不敵な笑みを浮かべている。
「……信用できねぇな」
「あれ、そう? どんなお宝だって盗むけど、人の命だけは盗むつもりはないんだけどな」
「……ガキならガキで年相応の態度ってものがある。お前は……異様だ」
それはスパイクの直感だった。
明らかに眼の前の少年、ジンの仕草は外見から想像出来る年齢(十代中盤から後半と言った所か)とは掛け離れている。
「ドロボウ」という肩書きを抜きにしても、彼が油断ならない人物であることは確かだろう。
「お褒めの言葉を預かって光栄だね。ただ異様とまで言われるのは少しだけ意外かな。
参考までに、どうしてそう思うのか教えてくんない?」
「ペラペラとよく回る口だ。銃を向けられてその立ち振る舞い。普通、一朝一夕じゃ身につかねぇ。
ドロボウなんてチンケな言葉は似合わん」
「そう、母ちゃんがくれた自慢の口だから。それに俺は王ドロボウ。主催者サマに辞任していくためには何だってやる訳さ。
パーティ会場が血生臭くちゃ、ご来賓の皆様もしかめっ面だろ?」
「「「「ええいエロスの鐘の十常時! このSS、支援してくれるわ!」」」」
対峙するジンとスパイク。
その少し後ろでルルーシュを守るように銃を構えるカレン。
この状況において、最も安全な場所に居るルルーシュはジン、と名乗った少年について必死に分析する。
「さて、どうすれば信用して貰えるかな? 今だって同行者の皆さんに無理言って一人で出て来てるんだよね。
こう見えても最高に多忙だったりする訳さ。
消えた身体の帰りを待っている頭(ブレーン)のためにも、あくせく働かなきゃいけないんでね」
ジンの特徴的な言い回しは続く。
しかしこの時、ルルーシュは彼の言動がある一つのシンボルを差していることに気付いた。
つまり、彼に有力な仲間がいる、と。
(信頼出来る仲間を持っている……ということか。そしておそらく頭脳派の人間……。
どの程度まで考察を進めているのか不確実だが、接触してみる価値はあるな)
「――もっとも」
「ん?」
「『オジサン』達の脳味噌が疑惑でサラダボウルになってるってなら……軽くお遊戯に付き合うのもOKだよ。論より証拠、ってね?」
ニヤッ、と笑いながらジンが両腕を上げファイティングポーズを取る。
――戦って自分が殺し合いに乗っていないことを証明する。
一見矛盾しているようにも思えるやり方だが、ある意味筋が通っているとも言える。
なぜなら、戦いとは個人のありとあらゆる能力の複合結晶体であるからだ。
特に一対一、生身の戦いとなると各々の性格が如実に発揮される。
剣を振るうタイミング、身のこなし、間合いの詰め方、銃の照準、全体的な視野……。
久遠の時にも似たその邂逅は同時に理解の場所でもある。
打ち出される一発の正拳、斬撃、射撃。その一つ一つが磨き上げられた精神と意志から放たれるものだ。
優秀な戦士となるためには様々な能力を必要とし、幻想は一切存在しない。
戦いの空気を通じて、心が惹かれ合うことも決してフィクションではない。
武道家などが口にする「拳と拳で分かり合う」という言葉は根拠のない妄言ではない訳だ。
「ガキを甚振るのは趣味じゃない。が……一番性に合ってるやり方だ。泣いても知らんぞ」
「ソイツは奇遇。実は俺もすこーしだけ嫌なことがあった訳で……ね。遊び相手が欲しかったりして」
そして、変わる空気。
スパイクは手にしていたデザートイーグルをしまうと、脇を締め、軽くステップを踏み始める。
――ジークンドー。
彼が尊敬する格闘家であるブルース・リーが生み出した独自の拳法だ。
様々な中国拳法に空手や柔道、サバットなど国境を越えた武術を組み合わせて誕生した複合格闘の総称である。
元々チャイニーズ系であるスパイクにとって、近接格闘は銃撃戦と同様に得意とする分野なのだ。
「へぇ、独特な型だね。カンフーマスターに会うのは初めてだったり」
「減らず口もそこまでだ。言っておくが……俺は強いぞ」
スパイクの背後のルルーシュ達も彼らの放つその独特の雰囲気に圧され、若干呼吸をするのが苦しくなる。
「「「「ふっふっふ……隙あり!支援する!!」」」」
このままでは両者の激突は避けられない。
端的に見てもそう結論付けがなされようとしたその時、
「そこまでだ、二人とも」
「ん?」
動いたのはこの場で唯一、戦闘力を持たない彼だった。
「ル、ルルーシュ!? 前に出たら危ないわ!」
狼狽するカレンを尻目にザッ、と砂利を蹴り飛ばし睨み合うスパイク達の元へと歩を進める。
これは一つの賭けだった。
劣悪な環境に置かれた自身を表舞台へと復帰させるためのギャンブルのようなものだ。
(わざわざ貴重な戦力を目減りさせる訳がないだろう。
どちらも十分に利用価値がある……むざむざ疲労させる必要性など皆無だ)
――俺は他の参加者から遅れを取っている。
これが先程からずっと、ルルーシュの中で拭い切れなかった思考である。
まず、八十二名もの人間がこの殺し合いに参加している以上、螺旋王を打倒しようと考える人間は少なく見積もっても三分の二程度はいた筈だ。
その中にある程度『頭の切れる人間』が含まれていることは明らかだろう。
おそらく、早い段階で有力な参加者同士が合流したケースがあってもおかしくない。
その点、自分は確実に運がなかった。
カレンやあの妙な猫、偽ゼロと言ったおめでたい頭の連中と遊んでいたせいで、時間を大いに浪費したのだ。
最初からスパイクのような、ある程度良識を持った人間と出会えていたならば状況は一変していた可能性が高い。
既にゲームが始まってから十八時間が経過している。
参加者の数もついに半分を割り込み、殺し合いは中盤戦に突入したと言ってしまっていい。
つまりある程度、螺旋王に達するための手掛かりを掴んでいる人間がいても不思議ではない。
加えて、こちらの姿を一方的に捉えながらわざわざ声を掛けて来たこと。
あくまで自身のスタイルを崩さずにコンタクトを取って来たこと。
この両者からも、彼がある程度友好的な感情を自分達に抱いて行動していることが分かる。
(危険は、無いはずだ。最悪……ギアスを使えばいい。大丈夫だ、落ち着けルルーシュ)
更に一歩足を踏み出す。
尖った小石を踏み潰し、両脚に残る鈍痛を振り払う。
相手と一対一で向かい合う――最も大切なのは第一声だ。
揺るぎなく確固とした自我に裏づけされた言葉。それこそが他の人間を衝き動かすのだ。
「――ジン。君を、信用しよう」
「はぁっ!? おい、ランペルージ!」
「ちょ、ちょっと待ってよ、ルルーシュ!」
「いいから。ここは俺に任せてくれ。……スパイクさんもよろしいですね?」
「……チッ。分かった、ここは退いてやる。――油断だけはするなよ」
ルルーシュはカレンとスパイクを退けるようにして、二人の前に立った。
対峙。ジンと一対一で向き合う形となる。
「ルルーシュ・ランペルージだ」
「ご丁寧にどうも。しがないドロボウやらせて貰ってマス。
でも、まさか君が出てくるとは思わなかったよ。てっきり後ろにいるモジャモジャ頭のオジサンがリーダーなのかな、と」
「……俺はまだ二十代だ」
「スパイク・スピーゲル。ルルーシュの邪魔よ、黙っていて」
「……ヘイヘイ」
「「「「ぬわー!!!!」」」」
「オジサン」という言葉に反応したのか、スパイクが苦虫を噛み潰したような表情のまま唸り声を上げる。
そしてすかさずソレを咎めるカレン。スパイクは反論する気も失せたのか、気だるそうに頭を掻いた。
ちなみに彼の年齢は二十八歳。男としても最も油の乗っている時期である。
「ハハハ、女の子は怖いね。――彼女、ルルーシュの恋人?」
「違う。ただの……同じ学校の友人だ」
「へぇ、ソイツは珍しい。一つだけ忠告、同郷の仲間は大切にしておいた方がいいよ」
「……お前も誰か――」
「……さぁね。それにドロボウの過去は少しぐらいミステリアスな方が面白いと思わないかい?」
乾いた笑い。
サーカスのピエロか狂言回しのような言動を見せていた今までのジンからは、到底考えられないような真面目な表情。
一瞬だけ彼の顔が泣いているように見えたのは気のせいだったのだろうか。
「そうだな。ダークヒーローに隠された過去は欠かせない。
それが重厚な鎖に縛られたものであればあるほど、彼らの行動は崇高な存在へと昇華される」
「イエス、ロマンは大事さ。永遠の灰色より一瞬でも輝く七色の方が美しい――ってね」
ルルーシュは己の中の《ゼロ》を見つめながら、小さく笑った。
そう、仮面を被るのは自らを象徴化させるためだけではない。
本来の素顔を隠し、偽りの自分を構築することが最大の目的と言える。
「それにしても、ルルーシュ。そんな英雄に知り合いでも? 良かったら紹介して欲しいね。武勇譚を拝聴しに参上したい所だよ」
「残念ながら、ご期待には沿えそうにも無いな。"何の力も無い"から、俺にはこうやって彼らの偉業を褒め称えることしか出来ない」
「『鳴かない猫は鼠捕る』とも言うね。そもそも、俺には君が爪も牙もなくした老猫にはとても見えないな」
「……どうだろうね」
少なくとも、先程スパイクと会話していた時と比べて大分マシな展開だった。
歳の近い二人の少年のやり取りは予想外なほど上等に進行した。
数分間に渡る対話で、最低限の情報の交換が行われた。
つまり、ジンに複数の仲間がいて彼らがこの先の山荘で"一人の参加者"を治療していること。
ルルーシュ達が褐色の肌をした大男に襲われたこと、などだ。
「あ、そうだ」
「どうしたジン?」
「今、俺の仲間が猫の看病をしてるんだよね。今はそれなりに回復した筈だけど。眼帯を付けた喋る猫……名前はマタタビだったかな」
「なッ――!」
「それって……あの時の猫かしら?」
「……あの妙に渋い猫か」
カレンとスパイクが小さく頷いた。
二人もクレア・スタンフィールド、八神はやて、マタタビの三名には接触している。
が、ただ一人。ルルーシュが覚えた感想は残りの二人とは明らかに違ったものだった。
(一人だけ生き残ったあの猫か……。いや、しかし妙だ。奴には確実にギアスを掛けたはず。ならば……)
「ジン、お前の仲間はここから"北"の山荘にいるんだったな。彼から何か聞いたか?」
「ん? いや、別に? 山荘があるのはD-8の古墳の近くかな。三人と出会ったのは隣のエリアだけど。
でも彼のおかげで俺はルルーシュ達に会えたんだから、実は幸運をもたらす招き猫だったりして」
「そう……か」
ルルーシュは半ば確信した。
鼓動が凄まじい勢いで身体をノックする。
全身の疲れが一辺で吹っ飛び、背筋に冷たいものが走った。
信じたくは、ない。
だがこの空間は明らかに異常だ。そして、自分達は悪魔の住む万魔殿のような空間に放り込まれたモルモットと酷似している。
様々な、そして不可解な制約が掛かる場所――そんなことは十分過ぎる程に理解している。
ルルーシュがマタタビ達に掛けたギアスの内容はこうだ。
『エリア中心部に行き、他の参加者に接触し、使えそうならば我々の仲間に誘う。我々に害を為すようなら排除する』
このギアスの内容が遵守されていれば、ある程度回復した身体を引き摺ってでもエリア中心部へ移動するだろう。
いや、そもそもD-8などというエリアの隅に未だ滞在していることが妙だ。
話によるとジンとそのマタタビを保護していた者達が遭遇したのが隣のD-7である。
明らかに、中心へと向かうコースからは外れている。
ならば既に他の参加者に接触し、仲間に誘った後である……という仮説はどうだろうか。
既にお役御免となったマタタビがフラフラとD-7にやって来たと考えるのは?
いや、これも在り得ない。
ギアスの効果時間は非常に長期に渡る。
少なくとも数ヶ月、この殺し合いが行われている間はほぼ切れることはない。そう思ってしまっても構わない筈だ。
命ある限り延々と命令を実行する筈。
加えて勧誘活動を一切行っていないことも明白だ。
これらの事象から推測出来る現状はただ一つ、つまり――
(ギアスが、切れている?)
□
「ニアです! よろしくお願いします!」
「ブルゥァァァァァァァァァァアア!! ジィィィイイイン、キサマ!! このような小汚い格好をした連中をどこから連れて来た!?」
「ちょっと散歩してたら空から降って来てね。ああ、三人とも、そこの椅子に掛けてくれる?」
「ぬぅぁぁぁにが『空から振って来てね……』だ! スカしてんじゃねぇぇぇぇ!! ボぅぉケがぁぁぁぁぁああ!!
お前が居ない間に私がどれだけ苦労をしたと思っているのだ!?」
「まあまあ、そのおかげで脱出のための優秀なパートナー候補を見つけることが出来た訳だし。俺も『偵察役』を首にならないで済む」
「ジンさん、パートナーってなんですか?」
「パートナーってのはね、ニア。君のアニキさん――カミナと、ビクトリームみたいないつもハッピーでディープでステキな関係のことだね」
「ダ、ダレがあんな奴とパートナーだと!? べ、別にグラサンジャックなど、どうなろうが私の知った事ではないわっ!!」
ジン、ニア、そしてビクトリーム。
少年と少女、そして『V』字型の謎の動く喋る物体。
三者による他の人間を寄せ付けない独特の時空に、部屋へと足を踏み入れたルルーシュ達は唖然とするしかなかった。
(こ、これは……まさか……。また、なのか。頭に何かが沸いてるとしか思えない会話ッ……!! なんて……事だッ!!)
三人がジンに案内されたのはD-8エリア、古墳のすぐ近くにひっそりと佇むように建設された山荘であった。
山荘と言ってもそれほど大きな施設ではなくて、どちらかと言えば山小屋と称した方が適当かもしれない。
そこの玄関口のすぐ、応接間になっている場所の大きな机の上にルルーシュ達はやって来ていた。
「……私、夢でも見てるのかしら」
「心配するな。俺にもしっかりと『V』に見える」
「お前には聞いていない」
「……悪かったな。お節介が過ぎてよ」
ルルーシュは髪の毛を掻き毟り、頭を抱えて塞ぎ込みたくなる衝動を必死で押し殺す。
両隣ではカレンとスパイクが相変わらず言い争っているが、今はどうでもいいことだ。
ジンの言っていた仲間――それがまさか、こんな連中だとは夢にも思わなかった。
特にこの『V』の形をした物体が問題だった。
ジンからある程度、同行者の説明は受けていた。
一人、不思議な色の髪と瞳を持った厨房主任。
一人、喋るトラ猫。
そして最後の一人、あまりの華麗さに目を疑わざるを得ないとにかく凄い奴。
いや、というか「少しだけ驚くことになるだろう仲間がいる。いや、ちょっとしたサプライズさ」などと適当な説明をしただけだったのだ。
まさか、ソレが人でも、動物でもない謎の生物だとは思いもしなかったが。
今思えばこの時ジンは一言も『人』とは言っていなかったのだ。
(だが、それ以上に気に障るのは……『声』だ!)
ビクトリームの声、それはルルーシュの脳髄をガンガンと揺さぶる。
普遍的な視点から考察すれば、それは少しだけナイスミドルな妙に良い声――そのような評価で十分だった筈だ。
しかし、
ルルーシュ、いや神聖ブリタニア帝国第11皇子にして第17皇位継承者であるルルーシュ・ヴィ・ブリタニアにとって彼の声は毒でしかなかった。
(まさか、ここまで『奴』と似ている声の人間がいるとは……忌々しい)
「「「「よくぞ耐えたぞ十常時!! 貴様のSSに今は亡き我らが師、tu4氏の影を見た!」」」」
こんな偶然があっていいのだろうか。
世界には自分とそっくりの容姿をした人物が三人はいる、と言うが声に関しても当て嵌まるのだろうか。
彼の父親であるブリタニア皇帝――その声が眼の前で『ブルゥァァァァァアア!』などと吼える物体Xならぬ、物体Vと同じだろうとは。
(落ち着け、落ち着くんだルルーシュ。今何よりも優先すべきは情報の収集だ。奴との因縁はここから脱出してから考えるべき事象ッ……)
心を穏やかに。そして、冷静な頭を取り戻さなければならない。
ジンの口からは聞けなかった有力な情報を集めること。マタタビの状態について分析を重ねること。
必要なデータはあまりにも多い。
「一つ、いいかな。マタタビという猫はどこに……」
「マタタビさんでしたら、一度だけ意識を取り戻したんですが今は奥でお休みになっています」
ニアが快活な笑顔と共に応える。
キラキラと光る、まるで人工物のように色彩的なショートカットがサラリと揺れた。
「彼は、何か言っていましたか? 俺達の事なんかも……」
「何か……ですか? いえ、少なくともルルーシュさん達のことについて何も言ってなかったと思います。
マタタビさんが喋られたのは……ご自分の名前と、あとは……『テッカマンエビル』ぐらいでした」
「……テッカマン……エビル?」
「はい、確かにそう呟いていました」
ニアがルルーシュの問い掛けに口ごもる。若干伏し目がちになりながら、視線が下がる。
ルルーシュには彼女の応答が少なくとも嘘は付いていないように思えた。
傍目にも分かる重傷を負っているのならば、本来ならば面会謝絶の状態に近いだろう。まともに会話が出来なくても不思議ではない。
(テッカマンエビルか……。テッカマン……あの妙な格好をした戦士達のことだろうか。
テックセッターという変身ヒーローのような掛け声とも名称に関連性が見て取れる。
同時にギアスを掛けたはずのクレア・スタンフィールドと八神はやては死亡した……つまり、コイツが奴らを殺したということか?)
「――あの、皆さん聞いて下さい」
考え込んでしまったルルーシュとの言葉の隙間を埋めるように、ニアが再度口を開いた。
「私には……ルルーシュさん達に話していないことがあるんです」
優しく隣のニアを宥めるジンの声に、ニアも小さく微笑んだ。
そして一瞬の間、実直な眼差しを携えその場の全ての人間に向けて彼女は語り掛ける。
「私がルルーシュさん達に黙っていたこと……それは螺旋王、いえ――私のお父様についてです」
□
「「「「SSとはその出来にあらず!書き続けることこそに意義があるとな!!」」」」
瞬間、ルルーシュ達の表情が一斉に驚きの色に染まった。
この殺し合いの主催者である螺旋王ロージェノム。彼を『お父様』と呼称する人間、それはすなわち――
「君が……奴の娘だってことかい?」
「はい。捨てられはしましたが、私のお父様であることに間違いはありません」
「……実の娘をこんな馬鹿げた殺し合いにぶち込むとはねぇ……王様の考えることは分からんな」
「アンタ、アイツの娘だったら何か知らないの? 何でこんな馬鹿げたことをやらせてるのか……とか」
「まぁ、少なくとも自分から進んで参加したい類のパーティではないかもね」
スパイクの指先がトントン、と忙しなく濃い木目のテーブルを叩く。
彼の苛立ちはそのまま、場の空気が一転して重苦しいものへと変わったことを明示していた。
(螺旋王の娘……だと!?)
彼女、ニアが螺旋王の実子であるという事実。
それは確かに参加者にとっては、脱出の鍵になるかもしれない情報だった。
いかに実の親から縁を切られた廃棄王女とはいえ、彼女が所持する螺旋王についての知識はおそらく参加者の中でも別格だろう。
今までこの空間でルルーシュが出会った者の中でも、明らかに特殊な人間。そして代用不可の超VIPと言える。
螺旋王の人となり、敵の戦力。しかし、
「すいません、私には……何も……分かりません」
「逆にさ。アンタがあの螺旋王の部下だ、ってことはないの? アイツの娘なんでしょ?
例えば隙を見てこっちの状況をアイツらに報告している――とか」
当然、このような疑いが発生してしまうのも道理なのだ。
親子の情とは人の本能の中でも相当上位に位置する捨てきれない感情だ。
普通の生活を送って来た人間にとって、親が子供を庇護する関係は極めて常識的な枠組みの中に存在すると言っても過言ではない。
確かに、子供を子供と思わない親がいることを知ってはいても、共感を覚えるのは難しい。
この言葉を発したカレン自身も、長年に渡る母親との衝突の末、どれだけ彼女が自分のことを想ってくれていたのかを理解したばかりなのだ。
「そんなっ!! それだけは絶対にありえません!!」
ニアはカレンのこの言葉に絶句する。彼女の告白はつまり『親愛の証』であった。
これからどんな未来が訪れるのかは分からない。
それでも自分が螺旋王の娘であること。コレは重要なファクターに成り得ると判断したのだ。
『皆に隠しておく訳にはいかない』
そのような義務感から、ニアは自らの忌まわしき過去を口にしたのである。
彼女のおばあさまであるドーラは、ニアが自分は螺旋王の娘であると伝えてそのまま受け止めてくれた。
だが、誰もがドーラのような人間ではない。
それ所か、ニアに疑惑の眼を向けることが自然な反応でさえあるのだ。
「「「「我らが支援の道を作る!! 貴様はその先をゆけぃ!!」」」」
「むぅぅうううう!? そ、そうだったのかぁぁぁああああ!! 実は逐一余すところ無く報告していたのだなぁっ!? 小娘!?」
「……カレンおねーさん、中々厳しい所を付くね」
大げさなリアクション共に、表情を凄まじい勢いで変えるビクトリーム。
ちなみに彼は非常に単純であるため、カレンの言葉を聴いて今初めてニアが敵の手先であるかもしれない、と悟ったのである。
普段は含む笑いを絶やさないジンも、顔面に微妙な笑いを浮かべている。
ニアが螺旋の王女であることを知っていたジンでさえ、その可能性について密かに疑っていたのだろう。
彼の微妙に歪んだ口元がソレを物語っている。
「わ、私はっ……!」
「いきなり『私は螺旋王の娘です』なんて言っても、信用される訳がない。
どんな考えがあったのかは知らないけど、こういう反応が起こることは十分に予測出来た筈よ」
「ベリィィィィィィシィィィィィット!! まさかこの華麗なるビクトリィィィム様がこぅぉおんな小娘に騙されるとはぁぁぁぁあ!!」
早口で捲くし立てるカレンと大きな瞳を不安げに瞬かせながら必死に弁明するニア。
とにかく騒がしいビクトリーム。
山小屋は今や疑惑と不信の坩堝へと成り代わる寸前だった。
(確かに、カレンの言葉にも一理ある。本当に螺旋王側のスパイだとしたら、自分の出自を公開するとは思えんがな。
……いや、逆にその秘密を握っている知り合いが参加している故の行動とも考えられるか。
ただ、どちらにしろ――)
ルルーシュは笑った。
深々と口元に刻まれた皺は彼の愉悦を物語るように、一瞬で皮膚へと侵蝕する。
腹の底から湧きあがるような高揚感を隠すため、ルルーシュは口元へと手を当てる。
(現状、最も適切な一手はこれか、決定だな。後は《奴》を始末さえ出来れば……)
他にもいくつか案自体は浮かぶが、どれも決め手に欠ける。
だが少なくとも今自分が選ぶべき行動は一つだけである。つまりニアを保護すること、である。
「カレン、止めろ。ニアさんが脅えているじゃないか」
「…………止めないで、ルルーシュ。あなたにも分かる筈よ。彼女が信用出来る保証はどこにもない」
「それは俺達も同じことだ。何故彼女が疑われることを覚悟してまで、出会ったばかりの俺達にこのことを告白してくれたのか……。
君だって分からない訳じゃないだろう」
ルルーシュは今にも食いかかりそう勢いでニアを詰問するカレンを制しながら、ニアの擁護を開始した。
ニアからの信頼を勝ち得ることはこれから先、必ず役に立つ筈だ。
面倒な手順など踏まず、直接ギアスを使って操り人形にしてしまう、という手段もあった。
だが、幾つかの不安な要因が浮き彫りになったのだ。
使用時における身体への強烈な負担もそうだが、最大の問題点はギアスの継続時間が極端に短くなっている点だ。
100%の確証はないが、おそらくこの予感に間違いはないだろう。
土壇場になった時、効果が切れてしまったらどうなる?
全て一からやり直しになってしまう。ギアスを掛けられている間の記憶は失われないのだ。
今、ギアスは万能の力ではない。出来るだけ使うポイントを限定しなければならない。
「それとこれとは話が別で――!!」
カレンがそこまで言い掛けた時、ずっと黙り込んでいたスパイクが突然立ち上がった。
ガタッ、と音を立てながら椅子を引き、無言のままツカツカとニアのすぐ側まで歩いて行く。
ルルーシュを含め、誰もが彼の行動に拍子抜けになる。
「……めんどくせぇ」
ぼそり、と呟くように。
この状況とはあまりにも不釣合いな言葉、そして行動だ。
だがルルーシュは、スパイクのこの発言で張り詰めていた緊張感が一瞬で砕け散ったような印象さえ覚えた。
つまり、ニアを糾弾する負のオーラに満ちた空気が、だ。
場の人間全てがスパイクの行動に注目している。
彼の一挙一動を十の瞳が追っているのだ。
何故スパイクがこのような不可思議な行動を取るのか。
いや、少なくとも個々人が言いたい事をベラベラ喋っていた最悪な状況があっという間に解決したことは確かだ。
「お嬢ちゃん、ニアだっけ」
「はい」
「良い返事だ。ジンから聞いたんだが、アンタ料理が得意なんだって?」
「え……は、はい! ダイグレンの厨房で調理主任をやっていました!」
「そうかい。じゃあ一つ頼めるかな」
それだけを伝える、スパイクは小さく腹部の辺りを擦った。
そして笑いながら一言。
「腹、減っちまってよ」
□
「「「「必殺!!母乳噴出拳!!」」」」
「亀の甲より年の功って奴だね。ルルーシュもそう思わないかい?」
「……そうだな」
ジンとルルーシュは応接間でグダグダと喋りながらチェスに講じていた。
趨勢は明らかにルルーシュが有利。だがジンの腕前も中々なモノであり、油断はならない状況だった。
久々に骨のある相手との勝負に、ルルーシュは密かな楽しみを感じていた。
「おねーさんにドヤされちゃいそうだなぁ。俺自身も、ニアちゃんについてはちょっと気になることがあってね。
そのせいで、中々カレンおねーさんにストッパーを咬ませることが出来なくてさ」
「それは俺にも言えることだ。もう少し……早く行動に移るべきだった」
「……ま、そんな俺達の優柔不断が高じて旨い飯にありつけるってこと。スパイクに感謝しないとね」
ジンのナイトがルルーシュのポーンを蹴散らす。
すかさず、ルルーシュはルークを動かして敵の動きを牽制。
無駄話をしていながらも、ジンの的確な判断に舌を巻く。
(だが……まだ甘い)
結局、スパイクの「腹減った」との申し出によって、応接間での討議会は閉幕となった。
ニアは今一人でいそいそと食事の準備中。
カレンは不機嫌なまま、山荘の周囲で警戒に当たっている。スパイクも彼女と一緒に見回りだ。
ビクトリームは当初ルルーシュ達を信用していなかったが、ルルーシュに支給されていた【メロン】を見ると態度を一変させた。
どうも彼が持っていたメロンは全て食べ終えた後で、そのためイライラしていたらしい。
今はラジカセをジャカジャカやりながら、部屋の隅で踊っている。
「チェックだ」
「……うん、無いね。負けたよ、ルルーシュ。チェスには自信があったんだけどなぁ」
「いや、ジンも相当なレベルだった。実は少し"違法"なゲームにも手を出しててね。
普通の人間で俺とここまで張り合える相手と勝負したのは久しぶりだ」
それは素直な感想だった。
ルルーシュは友人のリヴァルと連れ立って、しばしば賭けチェスに精を出していた時期があったのだ。
同じく友人のシャーリーなどには、何度もその行為を咎められたりもしている。
(気楽な時間だ……まるで、殺し合いに参加させられていることなど忘れてしまいそうになる。だが――)
彼には羽根を休め、気を抜く暇などなかった。
彼は絶対に元の世界へと帰らなければならない。
最愛の妹のため、死んでいった親友のため、自分自身の野望のため。
ルルーシュはチェス盤の駒をケースに片付けると、スッと立ち上がる。
今のはウォーミングアップに過ぎない。これからが本当の勝負だ。
「ジ――」
「ルルーシュ。お姫様のアフターケアは任せるよ」
『クイーン』の駒を小さく振りながらジンが楽しそうに笑った。
口元の苦笑を押し潰しながら、ルルーシュも小さく手を振る。
満足げにジンが駒を放り投げる。
綺麗な放物線を描いてゆっくりと白の『クイーン』はルルーシュの掌へと吸い込まれた。
□
「さっきはありがとうございました」
「いえ、お礼を言われる程のことはありませんよ。スパイクさんに結局、最後は持って行かれてしまいましたし。
カレンには後で俺からキツく言っておきます」
ニアが厨房に向かいながら小さく礼をした。
かわいいピンク色のレースが付いた純白のエプロンが眩しい。
真剣な表情で冷蔵庫に入っていた食材と向かい合っている。
「いいえ大丈夫です! カレンさんの言っていた事も、言われてみればその通りですし。
おばさまも言っていました! 『少しは人を疑った方がいい』って!」
ニアが若干表情を鬱屈させながら、それでも元気よく応える。
その笑顔はルルーシュの眼には夏の高原に咲くヒマワリのように輝いて見えた。
そして同時に彼の中の魂が疼く。
なぜなら、今から自分はこの快活な少女を何とかして篭絡させなければならないのだから。
ルルーシュがニアの元を訪れたのは、勿論ジンの言う《アフターケア》の為などではない。
ニアとある程度の親交を結び、今後の展開をより円滑にするための工作活動である。
螺旋王の娘――それは他の参加者とは一線を画す重要なポジションである。
ロージェノムが放送の度に口にする《螺旋力》や、王の情報などニアにしか分からないことは数多くある筈だ。
彼女が知り得ていることは極わずかなのかもしれない。
少なくとも後々対螺旋王が現実味を帯びて来た時、必ず手駒の一人として欲しい人間ではある。
「しかし、まぁそれは、どうなんでしょうね。ニアさんは『今のままでいる』のが一番だと思いますよ」
「そうですか?」
「ええ。おそらく……その、『ドーラさん』も同じことを言ったと思います」
「ッ――! あ……」
ルルーシュの口から『ドーラ』という名前が飛び出した瞬間、ガチャン、と大きな音を立ててニアが手元の皿を落としてしまった。
直径5,6cm程度の小皿が台所の床に散らばる。割れなかったのが幸いである。
(……やはりか。ジンから話を聞いておいて正解だったな)
ルルーシュは予想通りに進んでいく展開を受けて、心の中で確信と共に浮き立つ思いを押さえ込む。
この山荘にやって来る前にルルーシュはジンから、とある情報を得ていた。
つまり、ドーラというニアとゲーム開始時からずっと同行していた女性が死亡したことについて。
放送後彼女の死を知り、泣き崩れそうになったニアを必死で慰めようと努力したが、結局確固たる手応えは得られなかったとジンは言っていた。
あのジンが「出会ってから数十分しか経っていない女の子を励ますには自分は役不足だった」と嘲笑交じりに語っていたくらいだ。
傷は相当に深いのだろう。
その後、怪我人のマタタビを治療するために山荘へ移動し、唯一戦えるジンが見回りへ。
二人の世話を不安ながらビクトリームに任せた、と。
(ニアはまだドーラの死を乗り越えていない。突き崩すならば、ここしか無いな)
「ふははは! これしきの支援、DAT落ちにしてくれるわ!!」
「すまない、妙な事を言って。手伝うよ」
「……いえ。私が悪いんです」
ルルーシュはコレ幸いとニアに近付き、小皿を拾い始める。
ニアも手に持っていた包丁を傍らに置いて、しゃがみ込む。
特に会話もなく、黙々と皿を拾う二人。
ドラマや映画などでは手と手が触れ合って、恋が始まる――そんな陳腐なストーリーが持て囃される。
とはいえ、現実の世界ではそんな馬鹿げたロマンスなど起こる筈もない。
淡々と木目の床から白いピースが消えていく。それだけだ。
「――分かってはいるんです」
「え?」
追撃の言葉を捜していたルルーシュにとって、明らかに予想外の言葉がニアから漏れた。
(これはッ……!?)
それは強固な意志の力。
渦巻くクローバーの緑が光となって溢れてくる幻覚が見えそうなくらいだ。
弱々しい少女の潤んだ瞳ではない。まっすぐと未来を見つめる力強い眼差しだった。
「もうドーラおばさまは帰ってこない。シモンも、ヨーコさんも……だから私が強くならなくちゃいけないって。
慣れたりはしません。大切な人と会えなくなるのは、凄く……悲しいことですから。
でも私を抱き締めて、慰めてくれる方はもういないんです。
ドーラおばさまもこの胸の中で一つになって生き続けるんです。大丈夫です。私は……頑張れます」
「そう…………だね」
それは、上っ面だけの薄っぺらい同意だった。
ルルーシュは完全にニアという少女を見誤っていた。
彼のニアに対する人物像は『元気なだけが取り得の世間知らずな純粋培養されたお姫様』であった。
周りの人間が誰しも聖人であると思い込み、人を疑うことをまるで知らない人形のような。
(違う……彼女は、お飾りの王女などではないッ! 明確な個を持ち、希望を実現させるための覚悟も持ち合わせている。
伊達に螺旋の王女ではないと言った所か……。しかしこれでは……)
ルルーシュは自信の計画に小さな綻びが生じた事実を認識する。
小娘の一人ぐらい、ギアスに頼らなくてもどうにでも出来る――そう思っていたのだ。
だが、それは明らかな過信だった。
彼女は容易く出会ったばかりの男に、心を委ねるほど軽い女ではない。そして無知でもない。
もしもC.Cがこの場面を目撃していたとしたら、確実に鼻で笑われていたことだろう。
「童貞の癖に女を舐めすぎだ」などと言う辛酸な台詞と共に。
「ルルーシュさん? 座ったままどうしたんですか? 大丈夫ですか?」
「え、あ……すまない。少し、調子が悪くてさ……」
座り込んだまま衝撃を受けていたルルーシュを小皿の回収を終えたニアが不思議そうな顔で見つめる。
慌てて適当な言い訳を見繕うが、明らかに自分が気落ちしていることを悟った。
このままでは本当に調子が悪くなってしまうかもしれない。しかし、
「大変じゃないですか! お薬があれば良かったんですけど……すいません。毒しかないんです」
「「「「もうすぐスレが静止する……これまでか!!」」」」
このニアの何気ない一言がルルーシュの転機となる。
「毒……だって!? ニア、君は毒なんて物騒なものを持っているのかい?」
「え? はい、私の支給品ですけど……」
「ゴメン。ちょっとだけそれ、見せて貰ってもいいかな」
「あ、はい。コレ……です」
ニアがポケットから小さな袋を取り出して、ルルーシュに渡した。
すぐさまルルーシュはその中身を確認する。
袋の中には赤と白の典型的なカプセルが三つ。ご丁寧に『毒入り。飲むと死にます』という注意書きまで付いている。
「ニアがコレを持っていること、皆は知っているのかい?」
「……いえ? 多分ルルーシュさんしか知らないと思います」
(ああ、そうか……これが俺が選ぶべきやり方ってことか)
ルルーシュはもう一度、手元のカプセルを見つめる。
あと一歩、自身が踏み出すことで束の間の平穏は崩れ去るのだ。
小さな軋轢は幾つもあるが、今までの状況と比べれば天と地ほどの隔たりがある。
しかし、最善の一手である。
奴の存在は明らかに今後の展開に支障を来たすことになるだろう。
数々の実験を重ね導き出した絶対的な"ルール"はもはや、役立たずと言ってしまっても過言ではない。
今の自分に必要なことは『持っている力』を最大利用するための道を探すこと。
サンプルが必要だ。
そして、過去の事象は切り替えていかなければならない。
そうだ。一歩を、最後の一歩を踏み出そう。もう一度「王の力」を手に入れるために。
「なぁ、ニア――俺の眼を見てくれるか?」
□
「待てィ!!」
「むぅ……よくぞ生きておった!衝撃のネコミミスト!!」
夢、夢を見ていた。
拙者はグルグルと螺旋を描くマーブル色の海の中で躯を横たえていた。
俺は寝ている。そして夢を見ている。
つまり、これは明晰夢という奴なのだろう。
……いい機会だ。
ゆっくりと、自らの記憶のページを捲って行くこととする。
まずは分かり易い結論から行こう。
全ては、光の渦に飲み込まれてしまった。
奇妙な連帯感で結ばれた男と女は極光の奥に消えた。
二人は愛し合っていた。少なくともソレは間違いない。
妙な強迫観念が俺達を衝き動かしていたことは明白な事実だ。
だが、二人の間には確かな絆があり、愛情があり、そして互いを気遣う想いがあった。
猫である自分には人間の恋愛というモノは良く分からない。
かといって完全な獣でもないので、獣の恋愛について語れと言われても言葉を濁してしまう。
とりあえず傍目から見ても男――クレア・スタンフィールドと女――八神はやて、この両名はお似合いだった。
ぼんやりと、ゆっくりと黒く染まって行く黄昏にも似た意識の中。それでも拙者は一つだけ、思っていたことがある。
それはこの二人を祝福してやりたい、という気持ちだ。
拙者だって、別に悲観主義者って訳でもないんだから幸せそうな人間を見るのは好きだった。
そんな時、拙者達の前に現れたのはシンヤという男だった。
名簿の情報から判断するに本名は相羽シンヤ、と言うのだろう。今となってはどうでもいいことだが。
そう、拙者達にとって必要な情報は奴が――テッカマンエビルであるということだ。
奴は強い。もう在り得ないくらい強い。「ふざけんじゃねぇぇぇぇえええええ!!」と絶叫したくなるくらい強い。
拙者は公明正大な猫だから、事実は事実として認めようと思う。
何が強いって、少なくとも拙者より若干上の実力を持っていたかもしれないクレアの数倍は強い。
や、あくまで奴が「テックセッター」とか訳の分からん日本語を叫び、変身を遂げた後の姿に限定した話ではあるが。
前回は遅れを取ったが、もう一度生身で戦えば拙者が圧勝することは目に見えている。
キッドじゃこうは行かない。多分、何度戦っても負けちまうだろうな。
……ああ、キッドか。そういえば死んだんだっけな。……実際の所、本当なのかね。
正直疑わしい話だ。ただ、なんとなく嫌な感じはする。
機械と生身の身体で出来た俺自身の中で何がモヤモヤと疼いているんだ。
胸にぽっかりと空洞が出来ちまった……みたいな感覚さ。
何て言えばいいのかね、コイツは。とりあえず気持ち良くはねぇ。
……チッ。何か、物足りねぇ。暴れ足りねぇ。
って、おい! 本当に死んじまったのかよ、キッド!?
拙者との決着を付ける前に逝くたぁ、どういうことだっ!?
傷が疼く。胸が痛い。腕が痛い。頭が痛い。
ああ、クソッ!! 拙者はこんな所でグズグズしている訳にはいかねぇってのに!
――――マタタビさん、起きてますか?
っと……コレはあの時のお嬢ちゃんの声か?
ふわふわした髪の毛の……確かニアって言ったか。
そろそろ、夢も終わりってことかねぇ。
眠ってばかりじゃ拉致が明かねぇ。いい加減、起きるとするか。
あばよ、キッド。
夢から覚めた後、拙者はもう振り返らんぜ。
何しろクレアとはやての敵を討つためにテッカマンエビルをぶっ飛ばさないといけないんだからな。
奴は気に食わねぇ。絶対にボコボコにしてやる!
休んでなんていられねぇ。
拙者の知らない所で勝手に野たれ死んだ貴様に、もう興味はないのさ。
まぁ、亡骸を見つけたら線香の一つも上げてやるけどな。
じゃあな、俺のライバル。
「……眠っている、のでしょうか?」
「起き……てる」
そして、拙者は、覚醒した。
まどろみは、消えない。
ゆらゆらと峰深き瀬にたゆたんでいるような不思議な気分だ。
微妙な鈍痛となって拙者の脳髄に眠気が居座ったまま、大きな顔をしている。
「良かった! 実はいいものを持って来たんですよ!」
「いい……もの?」
そう言ってニアはポケットから小さなカプセルを取り出した。
赤と白。綺麗な色をしている。
ニアの笑顔が眩しい。
彼女の快活な笑顔を見ているとこちらまで力がみなぎって来そうだ。
「そ……れは?」
「私の支給品の『"薬"入りカプセル』です! ……でも、どうして今まで忘れていたんでしょうか?」
薬入りカプセル、か。妙な名前だ、そう思った。
だが意識は朦朧としており、未だ完全に現実の世界へと帰って来ていない。
元々拒む理由など存在しないが、当然拙者の身体はニアの成すがままだ。
「どうする孔明、奴は真実を知らん! あいつは70kb支援するつもりだぞ!!」
「ぐぐぐ……」
「それじゃあ私が飲ませて差し上げますね!」
「た……の、む」
ニアのよく形の整った指先が拙者の口元へと近付いてくる。
ふと、拙者はニアの瞳を見つめた。
特に意味があった訳ではない。しかも寝ぼけていたせいで、視界はまばらだった。
……?
妙、だな。
いや、拙者の思い違いだったのかもしれない。
だがこの少女はこんな……
――血塗れた色の瞳をしていたのだろうか。
「マタタビさん、お口を開けて頂けますか?」
ハッと我に返る。少女が不思議そうな目をしてこちらを見ていた。
赤と白。
硝子のコップ。注がれた透明の液体。
そして――
拙者は、
そのカプセルを、
言われるがままに嚥下した。
□
「よいか十常時、私は母乳を出すつもりもないし、アッー!をするつもりもない。だがこれだけはわかっているぞ!!」
絶対遵守という概念を念頭に置き、人の精神に干渉をする場合、その精神に最も手を加えずに済む条件付けとは何だろうか。
……いや、質問を変えよう。
『最も優しい、イージーな精神干渉とはなんだろうか?』
例えば博愛主義者に殺人を命じるのはどうか。
これはその人物の意志、信念、存在全てを否定して掛かる指令だろう。
考えたくもない話だが、ギアスの効力が弱っている今、感情の爆発によって抗われても不思議ではない。
同時に今すぐに自殺しろ、と命じるのもハードルは高い。
人の生存本能という奴は意外なくらい厄介だ。
生命活動に支障を来たす命令は躯が、心が全力で否定しかかる筈だ。
……もっとも、俺が初めて使用したギアスは『複数の人間に自殺を命じる』ものだった訳だが。
「きゃぁぁあああああああああああっ!!!」
最高のタイミングで、奥の部屋からニアの凄まじい絶叫が響いた。
「……ッ…………ニアっ!?」
「お姫様の悲鳴、ナイトの出番ってことかな!」
「むぅぅぅぅうううっ!? こ、小娘!? どうした、何が起こったのだ!?」
応接間で休息していた俺を含む三人が、その声を聞いて一斉に走り出す。
ビクトリームなぞ、わざわざラジカセのスイッチを切る気の利かせようである。
……普段から、それくらい気を遣ってくれると嬉しいのだが。
当然、俺もわざとらしいくらいに『驚いた振り』をする。
ここまで全てが予想と同じ展開だとしても、だ。
脳内を揺さぶるような凄まじい痛みに耐えながら狭い通路を駆け抜ける。
だが、この程度ならば昏倒するレベルには達していない。
大丈夫だ……少なくともマトモに頭は回る。
「ベルゥィィィィィィシィィッット!! 小娘ぇぇぇぇぇっ!!」
「……ジン! どうなって……いるんだ!?」
「辛そうだね、ルルーシュ」
「……持病の偏頭痛がな」
「ソレはお気の毒に。とりあえず、ランチのお盆を引っ繰り返したって訳じゃないのは確かだね」
一気に奥の部屋へ。
マタタビが眠っていた部屋、いや今ニアが『薬』を持って行った部屋へと向かう。
さて。そろそろ、先ほどの質問の解答編へと進もうか。
確かに精神干渉にも色々なケースがあるだろう。
だが、少なくとも主義、主張、信念、本能などの人間の奥底に眠る問題に対しての接触はタブーだ。
これらは若干ハードルの高い課題である。追々実験していかなければならないことでもあるが。
ならば記憶の操作か?
だがコレも感情に絡む場合が多い。
一人の人間に関する記憶を全て抹消する――などと命じた場合、
消し去った相手への感情如何によっては、ある種の抵抗などが生まれるかもしれない。
ならば最も簡単な命令とは『どうでもいいことを忘れさせる』ではないだろうか。
俺がニアに掛けたギアスは非常に単純なモノだ。
ほんの小さな記憶の転換。小さな綻び。
実際、ギアスを使わなくても「〜ってなんですか?」としばしば尋ねる彼女ならば、言葉だけでも騙せたかもしれない。
ただ俺は彼女の瞳を見つめながら、囁いただけだ。
『毒についての記憶を全て忘れろ』と。
後は全てニアが『自主的』にやってくれる。
俺がやったのはカプセルの説明書きを握り潰し、新たに『薬入りカプセル。凄く良く効く薬』と書いた紙を忍ばせたこと。
そして「薬なんて面白い支給品を持っているね。怪我人が沢山出そうなこの状況じゃきっと役立つだろうね」と助言をしたこと。
たったのこれだけである。
優しい心とそして人を疑うことを知らないニアのことだ。
そのまま、マタタビに毒入りカプセルを飲ませたに違いない。いや『ほぼ確実に飲ませる』と思っていた。
そして奴が死んだ後で悲鳴を上げた、と。
当然、このような間接的なギアスを掛けたのには様々な理由がある。
その相手にニアを選んだことにも、だ。
まず少なくともこの先ギアスを《切り札》として使って行くためには、早い段階で誰かに実験台になって貰う必要があった。
使用者への強烈な負担、有効期間の減少などルールに反故が発生している。
幾つか情報を集めなければ、肝心な時に武器にならない訳だ。
『マタタビを殺せ』と命じることは簡単だ。だが、これには様々な問題が浮上する。
しかも、ギアスのルールの一つ『命令された人間は、ギアスがかけられる前後の記憶に対しての欠損が起こる』さえ消滅しているかもしれなかった。
故に攻撃的な命令は極力控えた方がいいと判断した。
が、どうやらこのルールに関しては元のままであったようだ。これは貴重な収穫だろう。
そして更に俺自身への負担の問題もある。
何故、あの時俺はギアスを掛けた後に気絶してしまったのだろうか。
掛けた内容?
掛けた人数?
それとも条件が複雑過ぎたのか?
奴らの中にギアスの内容と激しく信念を別にする人間がいたのだろうか?
疑問は尽きない。
故に今回は最も単純な条件に限定して実験を行った。
つまり『一人に』『ギアスの副作用の延長である最も単純な記憶の消去を』『イデオロギーの絡まない条項へと』使用した訳だ。
結果として俺は強烈な頭痛と疲労感に襲われこそはしたが、気絶はしなかった。
少なくとも単純な記憶消去ならば、十分に実用に値することが証明出来たのだ。
「あのロワはヌルいキャラ付けで楽に生き残れるほど、甘くはないということをな!!」
そもそも、マタタビはゼロに関する情報を持った数少ない参加者の一人だ。
つまり追々死んで貰わなければならない。しかも重傷を負って動けない。
戦力的価値もなく、生きているに値しない。
最後に何故、ニアにギアスを使ったのかについて。
これは最も肝心な『仕上げ』に必要なことだから、の一言で済む。
絶対に必要な駒であるニアにマインドコントロールを目的としたギアスは使用出来ない。有効期間の問題があるからだ。
つまり《信頼》を勝ち取ることが何よりも大切なのである。
「ブルゥァァァァァァァアアアアッ!!! 小娘、無事かぁぁああああ!! ………………って……アレ?」
「……コイツは。本当に特大の爆弾だった、って訳かな」
先頭のビクトリームがドアを蹴破り、部屋へと突入する。
続いてジン。最後に頭を抑え、足を引き摺りながら俺は躯を滑り込ませる。
広がる光景は何もかもが、想像していたものと同じだった。
純白のベッドを口から吐き出した血液で染め絶命しているマタタビ。
その隣で呆然とした表情のまま、腰が抜けたようにへたり込むニア。
どんな言葉を掛ければいいのか、戸惑いの表情を隠せないジンとビクトリーム。
そして一人、誰にも気付かれずに笑いを噛み殺す俺。
そう、全ては――計画通りだ。
【マタタビ@サイボーグクロちゃん 死亡】
□
「違うか!違うか!違うかぁーーーーーーーーーーーー!!!」
「あの、ごめんなさい。毒って……なんですか?」
と、ニアが言い出した時の他の連中の表情は、怒りを通り越して呆れていたようにさえ思える。
それは、あまりにも罪深い一言だった。
『無知とは罪である』と語ったのは、どこの哲学者だっただろうか。
まさか、ここまでその言葉を体感出来ようとは思いもしなかった。
「ば、馬鹿にしてるのっ!!! アンタ、内容の分からない薬を飲ませたって言うのか!?」
「……ごめんなさい。確かに『凄い良く効く薬』だと書いてあったんです」
「御免で済む訳がないだろ! 死人が……出ているんだから」
凄まじい勢いで悲鳴を聞き付けて帰って来たカレンがニアに噛み付く。
今回は以前行われた『螺旋王と繋がっているのではないか』という種の詰問を越え、明らかな尋問へと変化している。
少なくとも今回、マタタビを殺害したのが毒薬であり、それを飲ませたのがニアであるという事実に変わりはないのだから。
「まぁまぁカレンおねーさん。ここは落ち着いて。あんまり怒ると可愛い顔に皺が寄るよ?」
「ジン! 何を言って……ふざける場面じゃないだろ!?」
「……ジンが言いたいのは、お前は頭に血が昇り過ぎってことだよ。質問する奴が顔真っ赤にしてどうする」
カレンはスパイクに言い返そうとするが、さすがに自らの態度が不味かったと悟ったのか握り締めた拳を降ろした。
キッと口唇を真一文字に結び、ニアを射殺さんばかりの視線で睨む。
カレンはジンがおそらく日本人である、と考えているのだろう。彼に向かって話す時は、若干言葉尻が軽くなっている。
「ここは俺が仕切らせて貰う。まず……簡単に纏めると、ニアお嬢ちゃんは支給品に良く効く薬があることを思い出した。
そして、それをマタタビに飲ませた。が、その後にマタタビは血を吐いて死んじまった――これで合ってるかい?」
「……はい。間違いありません」
「OK。じゃあ、落ち着いて答えてくれ。飲ませたのは確かに薬だったんだな? まだ残ってるかい?」
「いいえ。袋は残っているんですが……薬はもう……」
ニアが項垂れたまま、スパイクの質問に答える。
そう、ニアはもう薬を持っていない。
これは『命令された人間は、ギアスがかけられる前後の記憶に対しての欠損が起こる』ことの実験だった。
ギアスを掛けた際にカプセルを一つだけ彼女に渡し、残りは俺が回収しておいた訳だ。
故にルール通り、記憶を失ったニアから手に入れた毒入りカプセルは厳重に梱包して俺が持っている。
「……そうか。じゃあ次の質問だ。単刀直入に聞こう、マタタビを殺すつもりはあったのかい?」
「そんなまさかっ!! マタタビさんを殺したいなんて私が思う訳がありません!!」
「ニア!! アンタまだそんなことっ!!」
「カレンおねーさん、ここは抑えて抑えて。ね?」
……じっとしていられないのか、コイツは。
とはいえ、カレンの日本人以外の人間に対する露骨な感情はどうしようもないのかもしれない。
特にニアはブリタニア人の見た目とそっくりだ。
チャイニーズ系らしいスパイクにすら、あれだけの態度で応じるカレンがニアに不快感を覚えるのも無理はないのか。
なにしろ、最愛の兄――紅月ナオトを殺されているからな。
カレンがレジスタンス運動をしているのも、全て兄への想いを継ぐためだ。
が、そろそろ俺も動かなければならないだろう。
ここまでは予想の範疇だ。そしてこの先が勝負の分かれ道でもある。
「皆――聞いて欲しいことがある。実は、マタタビが死んだのは……俺の責任でもあるんだ」
「え……ど、どういうことなのっ、ルルーシュ!?」
「落ち着いて、カレン。実はニアが『薬』を持っていることを俺も知っていたんだ」
「ル、ルルーシュさん! 悪いのは私ですっ! ルルーシュさんは何も……」
ニアがガバッと頭を上げ、必死で『俺は無実だ』と弁明してくれる。
思わず浮かび上がって来る愉悦に浸りそうになる。いや……まだ早い。
これこそが俺が望んでいた展開だ。そして、
「皆、すまない。皆の怒りはニアの代わりに俺が全て引き受ける。だから、ニアを……許してやってくれないか」
俺は深々と頭を下げた。
ニアが息を呑む声が聞こえた。カレンが何かを呟いているがボリュームが微量過ぎて聞こえない。
ジンが茶化すように小さく口笛を吹いた。スパイクは肩を大きく溜息を付いた。
ビクトリームはどうもニアがマタタビを殺した事実があまりにもショックだったらしい。
石になったように隅で固まっている。
くだらないプライドなどいくらでも捨てても構わない。
いっそ土下座ぐらいしてやっても良かったが、さすがにそこまでやると演技が過剰だろう。
必要なのは――このゲームを生き残るための力だ。
確信する。
今、この瞬間。
俺はギアスでは決して手に入れることの出来ない力――『信頼』を勝ち取ったということを。
□
(なぁ、ミーくん……)
「ルルーシュ、本当に……あの子と行くの?」
「ああ。俺はともかく、カレン達は普段通りに付き合うのは難しいだろう。……ニアのこともあるしな。
でも、心配することはないさ。短い別れだよ」
「……うん」
そう、俺とニア――そしてビクトリームはカレン達と別れて別ルートで行動することになった。
人が死んだ場所にいつまでも留まっているのは流石に気が引ける。
カレン達はマタタビを埋葬してから、移動を始めるようだった。
目的地はひとまずB-4の図書館に設定した。
俺たちが右回り、そしてジン達が左回り。
ルートはその時の状況を考えながら臨機応変に、とまで決定した。
清麿というジンの有力な仲間の情報も手に入れ、明確な脱出に向けたプランが出来上がりつつあると言えるだろう。
またビクトリームの支給品だったという銃も入手出来たため、ある程度の武力も入手した。
特にジンの能力は有望だ。
行動力があり、知識も豊富で、加えて場慣れしている。
頭が固くなく、柔軟な思考が出来る点も大きい。出来れば奴とは再会したい所だ。
さて――それでは、最後の詰めに入るとするか。
「カレン」
「……え?」
「《ゼロ》として命じる――スパイクを殺せ」
完全に意気消沈していていたカレンの耳元で、俺は最後の目的を告げた。
ルルーシュ・ランペルージではなく、ゼロとして。
「マタタビを殺したのは奴だ」
「え……でも、私達は外に……!! それに毒だって……」
「おそらく隙を見て取り替えたのだろう。ニアは抜けている所があるから、十分に可能な筈だ」
「でも……」
我ながらなんとムチャクチャな理論だろうか。
そもそも、ニアは毒薬を肌身離さず持っていたのでどう考えても摩り替えるのは不可能。
そしてマタタビ殺害の実行犯はニア、黒幕は俺――これは揺るぎない事実だ。
とはいえ、
「カレンッ!! 何故分からない!?」
「ルル――」
「奴は《ゼロ》の正体を知ってしまった。それだけで殺されるには十分だということを!」
「――ッ!!!」
こう言ってやれば、カレンは"絶対"に断ることは出来ない。
奴は黒の騎士団の団員。ゼロの命令は絶対なのだから。
そして同時にカレンはこの瞬間、理解した筈だ。
俺が本当はゼロを捨てたのではなく、三代目ゼロとしての自覚を持っているという事実に。
351 :
ナイトメア・チルドレン ◆tu4bghlMIw :2008/02/22(金) 01:57:41 ID:v907MW6E
「――分かりました、ゼロ」
「ああ。死ぬなよ、カレン」
「ブリタニアから日本を解放するまでは死んでも死に切れません」
「…………ゼロも、いい部下を持ったものだ」
カレンがキッ、と眉を上げこちらを真剣な眼差しで見つめた。
俺もソレに応えるように小さく頷く。そして背中を向けた。
本当に、心の底からそう思うよ……カレン。
しかし、お前の力では奴を仕留めることはおそらく不可能だろう。
そんなことは十分過ぎる程分かっている。
でもさ……せめて深手を負わせる、くらいは期待してもいいだろう?
なにしろ《ゼロ》の正体を知ってしまったのはお前達二人なんだからさ。
「うぉぉぉいいいいいい!! ルルゥゥゥーシュゥウ!!! 早く来んかぁぁああ!」
山道の方角からビクトリームの野太い声が響いた。
ニアの姿も見える。未だ顔色が優れない。
無理もないか。凶器は毒だったとはいえ、人を一人殺したのだから。
彼女の悪夢が過ぎ去る夜はおそらく来ないだろう。そう、永遠にだ。
ビクトリームは何だかんだ言って、ニアのことが心配らしい。
表面的には「お前がメロンを持っているから」などと言っていたが。
とはいえ、彼女が進んで殺人など犯す筈がないと一番強く思っているのも彼だろう。
意外に仲間思いな奴なのかもしれないな。少なくとも俺以上なのは確実だ。
「ルルーシュ? どうしたんですか、とても……嬉しそうですよ?」
「え、あ……気付かなかったな」
俺は、気が付けば笑っていた。
それが手を振るニア達に向けたものだったのか、それとも別の理由だったのかは分からない。
だけど、
とにかく、
どうしようもない位に、
俺は愉快で愉快で堪らなかった。
【D-7/山道/一日目/夜中】
ネコミミストは――風になった――
【ルルーシュ・ランペルージ@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:肉体的疲労(大)、中度の頭痛
[装備]:ベレッタM92(残弾15/15)@カウボーイビバップ
[道具]:デイパック、支給品一式(-メモ)、メロン×11個 、ノートパソコン(バッテリー残り三時間)@現実、ゼロの仮面とマント@コードギアス 反逆のルルーシュ 、予備マガジン(9mmパラベラム弾)x1、毒入りカプセル×1@金田一少年の事件簿
[思考]
基本:何を代償にしても生き残る。
1:清麿との接触を含む、脱出に向けた行動を取る。
2:適当な相手に対してギアスの実験を試みる。
3:以下の実行。
「情報を収集し、掌握」「戦力の拡充」「敵戦力の削減、削除」「参加者自体の間引き」
4:余裕があればモノレールを調べる。
[備考]
※首輪は電波を遮断すれば機能しないと考えています。
※ギアスを使った影響は若干収まってきましたが、いまだ頭痛があります。
※清麿メモの内容を把握しました。
【ニア@天元突破グレンラガン】
[状態]:精神的疲労(大)、ギアス
[装備]:釘バット
[道具]:支給品一式
[思考]:
1:ルルーシュとビクトリームと一緒に脱出に向けて動く。
2:ビクトリームに頼んでグラサン・ジャックさんに会わせてもらう。
3:シータを探す
4:お父様(ロージェノム)を止める
5:マタタビを殺してしまった事に対する強烈な自己嫌悪
※テッペリン攻略前から呼ばれています。髪はショート。ダイグレンの調理主任の時期です。
※カミナに関して、だいぶ曲解した知識を与えられています。
※ギアス『毒についての記憶を全て忘れろ』のせいで、ありとあらゆる毒物に対する知識・概念が欠損しています。有効期間は未定。
※ルルーシュは完全に信頼。スパイク、ジンにもそこそこ。カレンには若干苦手な感情。
【ビクトリーム@金色のガッシュベル!!】
[状態]:静留による大ダメージ、鼻を骨折、歯二本欠損、股間の紳士がボロボロ
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、CDラジカセ(『チチをもげ』のCD入り)、ランダム不明支給品x1、魔本
[思考・状況]
1:……小娘が人殺し?どうなっておるのだ?
2:奴らには付いていくのはメロンが欲しいからで、別に心配なぞしておらんぞ!?
3:パートナーの気持ち? 相手を思いやる?
4:吠え面書いてるであろう藤乃くぅんを笑いにデパートに行くのもまぁアリか…心配な訳じゃ無いぞ!?
5:カミナに対し、無意識の罪悪感。
6:F-1海岸線のメロン6個に未練。
[備考]
※参戦時期は、少なくとも石版から復活し、モヒカン・エースと出会った後。ガッシュ&清麿を知ってるようです。
※会場内での魔本の仕組み(耐火加工も)に気づいておらず、半ば本気でカミナの名前が原因だと思っています。
※モヒカン・エースはあきらめかけており、カミナに希望を見出しはじめています。
※静留と話し合ったせいか、さすがに名簿確認、支給品確認、地図確認は済ませた模様。お互いの世界の情報は少なくとも交換したようです。
※分離中の『頭』は、禁止エリアに入っても大丈夫のようです。 ただし、身体の扱い(禁止エリアでどうなるのか?など)は、次回以降の書き手さんにお任せします。
※変態トリオ(クレア、はやて、マタタビ)を危険人物と認識しました。また、六課の制服を着た人間も同じく危険人物と認識しています。
※ニアとジンにはマタタビの危険性について話していません。
※持っていたベリーなメロンはジンを待っている間に完食しました。
【D-8/山荘/一日目/夜中】
そして十常時は投下を終えると――考えるのをやめた
【カレン・シュタットフェルト@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:疲労(小)精神疲労(中)若干不安定
[装備]:ワルサーP99(残弾15/16)@カウボーイビバップ
[道具]:デイパック、支給品一式(-メモ)、高遠遙一の奇術道具一式@金田一少年の事件簿
[思考]:
基本:黒の騎士団の一員として行動。ゼロの命令を実行する。
0:マタタビを埋葬した後、仲間を集めつつ左回りで図書館を目指す。
1:スパイクを出来るだけ密かに始末する。
2:ゼロ(ルルーシュ)に指示を仰ぐ
3:先代ゼロ(糸色望)の仇を取る
[備考]
※マタタビを殺したのはニアだと思っています。
※ジンは日本人ではないかと思っています。
□
(どうしたもんかね……。清麿、こっちは最高にグチャグチャな状況だよ? そっちはどうなっている?)
山荘に残されたジンは一人応接間で考え込んでいた。
マタタビを殺したのは本当にニアなのか。
それも彼女自身の意思によるものなのか。
支給されていた薬が実は毒だった……などという事実がありえるのだろうか。
(綺麗な色してるよ……これで人が死ぬなんて思えないくらいにさ)
ジンはポケットからカプセルを取り出した。
赤と白――ニアに支給された毒入りカプセルである。
ちなみにこれはルルーシュが厳重に梱包したつもりで、うっかり落としてしまったものである。
三人が去った後に、部屋の隅に落ちているのをジンが発見したのだ。
(ルルーシュは信用出来ると思うけど……お姫様は……難しいな)
あの状況でニアを庇うことが出来るなんて、ルルーシュは中々大した男だと思う。
さすがにあの時、自分さえ彼女を擁護しようという気持ちを持てなかったのに。
(キール……お前なら、あの子にも最高のエスコートをしてやれたのかね。女の子の扱いはお前の専門だった筈なのにな)
命を落とした――らしい、相棒の姿を思い浮かべる。
そして漏れる落胆の声。完全に忘れ去るのは中々に酷という奴だ。
スパイクも顔には出していなかったが、相当に堪えている筈だ。
確か読子とエドという知り合いが二人死んだらしい。
(ま。実際、問題は山積みだけどね)
夜は深く、少年の心は未だ晴れない。
芽生えた疑惑の種はゆらゆらと蔦を伸ばし、空を駆ける大ドロボウへと絡みつく。
悪夢の中で彼が何を思うのか。それはまた別のお話。
【D-8/山荘/一日目/夜中】
ここまでくると悪質な集団荒らしだな
【ジン@王ドロボウJING】
[状態]:全身にダメージ(包帯と湿布で処置)、左足と額を負傷(縫合済)
[装備]:夜刀神@王ドロボウJING×2(1個は刃先が少し磨り減っている)
[道具]:支給品一式(食料、水半日分消費)、支給品一式
予告状のメモ、鈴木めぐみの消防車の運転マニュアル@サイボーグクロちゃん、清麿メモ 、毒入りカプセル×1@金田一少年の事件簿
[思考]
基本:螺旋王の居場所を消防車に乗って捜索し、バトル・ロワイアル自体を止めさせ、楽しいパーティに差し替える。
0:マタタビを埋葬した後、仲間を集めつつ左回りで図書館を目指す。
1:ラッド、ガッシュ、技術者を探し、清麿の研究に協力する。
2:ニアに疑心暗鬼。
3:ヨーコの死を無駄にしないためにも、殺し合いを止める。
4:この事件の真相について考える
※消防車は山荘の隣に止めてあります。
※清麿メモを通じて清麿の考察を知りました。
□
(ったく……どうなってやがるんだ)
完全に後手に回った――そう言わざるを得ないだろう。
まさか自分が見回りに出ている間に、死者が出るなんて思いもしなかった展開だ。
読子とエドの死について、少しじっくり考えたかったのだがそうも行かないらしい。
(八神もリードマンもエドも皆死んだ……ってか。おいおい、マジかよ? これ)
マタタビを殺したのは……まぁおそらくニアだとは思う。
うっかり、という奴なのか。――実際、うっかりで人が死ぬのは困るのだが。
ルルーシュには迷惑を掛けるが、こうするしかなかったようにも思える。
(さてと……螺旋のお姫様の相手は終わって、次はも駄々っ子嬢ちゃんの相手か。……めんどくせぇ)
メンバーの中で唯一の大人である自分が、もう少ししっかりしなければならないのかもしれない。
ただでさえ、ガキやガキに近い精神状態の人間が多いのだから。
「それにしても……」
スパイクは辺りを見回しながら、何となく呟いた。
「お姫様の飯を食いそびれたのだけは、幸福だったのかもな」
凄まじい異臭を放つキッチンの奥の料理を見つめながら、スパイクは苦笑いを浮かべた。
【D-8/山荘/一日目/夜中】
【スパイク・スピーゲル@カウボーイビバップ】
[状態]:満腹、疲労(小)、全身打撲、胸部打撲、右手打撲(一応全て治療済みだが、右手は痛みと痺れが残ってる)
[装備]:デザートイーグル(残弾7/8、予備マガジン×2)
[道具]:デイバック、支給品一式(-メモ) ブタモグラの極上チャーシュー(残り500g程)
[思考]
0:マタタビを埋葬した後、仲間を集めつつ左回りで図書館を目指す。
1:とりあえずもう一度さっきの出来事について考えてみる
2:カレンをそれとなく守る。もちろん監視も
3:ジェットは大丈夫なのか?
いつ終るのかすらもよくわかんねー
どうすんだこれ?
250 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 01:40:38 ID:ePxzxXvx
255 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 01:41:58 ID:ePxzxXvx
259 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 01:42:46 ID:ePxzxXvx
264 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 01:43:44 ID:ePxzxXvx
270 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 01:44:41 ID:ePxzxXvx
280 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 01:45:51 ID:ePxzxXvx
289 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 01:47:02 ID:ePxzxXvx
295 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 01:47:42 ID:ePxzxXvx
298 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 01:48:17 ID:ePxzxXvx
304 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 01:49:03 ID:ePxzxXvx
309 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 01:49:53 ID:ePxzxXvx
312 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 01:50:30 ID:ePxzxXvx
315 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 01:51:01 ID:ePxzxXvx
323 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 01:52:05 ID:ePxzxXvx
327 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 01:53:02 ID:ePxzxXvx
336 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 01:54:35 ID:ePxzxXvx
343 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 01:55:28 ID:ePxzxXvx
348 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 01:56:55 ID:ePxzxXvx
355 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 01:58:17 ID:ePxzxXvx
361 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 02:00:04 ID:ePxzxXvx
362 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 02:00:35 ID:ePxzxXvx
とりあえずコイツは連投処理でいいんじゃないかな
十分すぎるレベルだと思う
それにキロバイト数多すぎだろ
これじゃ荒らしとなんもかわらん
小説書いてるから個人で100連投とか
キチがってるだろこのクズ
文書が下手すぎるのかなんだかよくわからないけど
どこが終りなの?この文
すいません。
>>322の
>そんな時、拙者達の前に現れたのはシンヤという男だった。
>名簿の情報から判断するに本名は相羽シンヤ、と言うのだろう。今となってはどうでもいいことだが。
>そう、拙者達にとって必要な情報は奴が――テッカマンエビルであるということだ。
を、
そんな時、拙者達の前に現れたのはエビルという男だった。
そう、拙者達にとって最悪の厄災を運んで来た――テッカマンエビルだ。
に変更して下さい。マタタビはシンヤの名前を知らないんですよね。