リリカルなのはクロスSSその40

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1名無しさん@お腹いっぱい。
ここはリリカルなのはのクロスオーバーSSスレです。
ガンダム関係のクロスオーバーは新シャア板に専用スレあるので投下はそちらにお願いします。
オリネタ、エロパロはエロパロ板の専用スレの方でお願いします。
このスレはsage進行です。
【メル欄にsageと入れてください】
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ttp://anime3.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1200664998/

まとめサイト
ttp://www38.atwiki.jp/nanohass/

2反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/01/26(土) 10:56:36 ID:vyB6bkeg
グッドモーニングだクソッタレ共!
そして>>1乙!

さぁ、まだ誰もいないようだけど、片翼16話を投下してもいいかな?
3名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 10:57:11 ID:rzYGSsUl
>>1
4名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 10:58:20 ID:7i7A/iW5
支援
5反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/01/26(土) 10:59:50 ID:vyB6bkeg
魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使

第16話「片翼の天使」

みんなビックリしとったなぁ。
まぁ…それも当然やな。私かてビックリしとるもん。
まさか、セフィロスさんがいきなり羽生やして、物凄いスピードでゆりかごに飛んでくなんて、誰も思わへんからなぁ。

セフィロスさんの羽、黒かったな…私の騎士甲冑とお揃いや。
でも…何で黒いんやろ?
もしもあれが白やったら…セフィロスさんカッコええから、それこそ、天使みたいでぴったりやのに。

…カリムが言っとったなぁ…「片方の翼が折れる」って…
何で…セフィロスさんの羽、片方しかないんやろ…
できるなら、私の羽、どれか1つでも分けてあげたいなぁ…
…でも、無理か。私の羽、あんな大きいのあらへんもん。

ああ…せやったんか。
セフィロスさんも…この羽の話と、同じやったんや。

完璧な人間なんて、この世にはおらへん。
セフィロスさんやってそうや。
あの人もただ精神力が強いだけで、人間できとるわけやない。無愛想でぶきっちょで、人付き合いはとっても苦手。
誰もがみんな、足りない部分を抱えとる。
あの片方しかない羽みたいに、いびつなんが人間や。
そして結局のところ、誰かがその欠落を完璧に補うことなんて、きっとでけへん。
私の羽はセフィロスさんのとは別もん…ぴったり合うはずもないんや。
…それでも、せやから人間は頑張れる。
足りない羽で、足りないなりに必死に力になろうとする。
それが人間なんや。そして、そんな風やから、誰かと一緒にいるんは楽しいんや。
誰かの力になれへんのは悲しい…でも、簡単に力になれるのも、何や味気ないやろ?

…せやから…セフィロスさんも、もう少しみんなに心開いてほしいんやけどな。

もっとセフィロスさんのことを話してよ。
辛いことや悩みがあったら頼ってよ。
私らみんなが、傍におるんやから。
せやから…

………

…あ…私、何で泣いとるんやろ…
まだ泣いたらあかん…今はまだ戦いの真っ最中や。しゃんと胸を張っとらなあか
んって、セフィロスさんも言うてたやないの。

…消えたりせえへん。
大丈夫や。セフィロスさんはいなくなったりせえへん。
何だかんだ言うても、いつもそこにいる…ずっとせやったんやから。

…あ、シグナムや。
ちょっと格好が変わっとるけど、ユニゾンでもしたんかな?

…うん。まずこのガジェット達を片付けよう。
シグナムも来てくれたからな。きっと大丈夫や。

それで、ここが片付いたら、なのはちゃん達を助けに行こう。
セフィロスさんを…迎えに行こう。
6反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/01/26(土) 11:01:02 ID:vyB6bkeg
猛烈な剣圧が振りかかり、アンジールの剣を殴りつけた。
「ッ!」
筋骨隆々とし、そのバスターソードもまたかなりの重量を持つアンジール。
その身体が勢いに押され、足が後方へと滑る。
それだけではない。強烈な剣戟は強烈な剣速を以て、絶え間なく彼の身体を狙ってくる。
視線の先で正宗を振るうのはセフィロス。
冷たく青い瞳を光らせて、銀の長髪を振りまいて、漆黒の片翼をその身に背負って。
一撃必殺の剛剣を、疾風怒濤の速さで叩き込む。
さながらアンジールは、剣風吹き荒れる嵐の中に放り込まれたような心地だった。
前に戦った時とは、剣の重みがまるで違う。
シグナムとヴィータの同時攻撃を易々と受け止めた模擬戦。
ディエチのSランククラスの砲撃を次々と撃ち落とした市街戦。
それらで見せた、自身の魔力を上乗せした、本気の太刀筋。
今、全ての斬撃がその凶刃と化して、アンジールに容赦なく襲いかかっていた。
まごうことなき、セフィロスの真の全力全開。
(モンスターの力を…使いこなしているっ!)
アンジールの頬を冷や汗が伝った。
いくら何でもこの力は異常だ。
英雄セフィロスと言えど、この剣圧はあまりに重すぎる。自分の知る彼は、いくら何でもここまで強くはない。
考えられるのは、彼が自分の知らぬ間に、そのジェノバの力を完全に支配したということ。
人外の化け物さえも思わせるこの力の根源は、それしか考えられなかった。
「セフィロス!」
故に、アンジールは呼びかけた。
「以前、俺との友情など最早どうでもいい、と言ったな…」
それは六課襲撃の際、セフィロスを誘き寄せた時に言われたこと。
「お前も俺達と同じように、絶望したというのか!?」
自分のように、自らの誇りを打ち砕かれて自暴自棄になったのか。
ジェネシスのように、救いのための犠牲をいとわなくなったのか。
アンジールはそう問いかけた。
「…絶望?」
片翼の天使は、しかしその人間を冷ややかに嘲笑う。
彼の返答は横薙ぎに一閃された、鉄色に輝く正宗だった。
魔人セフィロスの一太刀は、高層ビルさえも容易く両断する。
「!」
咄嗟にかがんでかわしたアンジールの背後には、先ほどまで機能していた動力――その台座があった。
刹那、巨大な台座がぶれた。
正宗が通り過ぎた部分から台座が真っ二つに断ち切られ、落下する。
「クックックッ…」
衝撃が髪を煽る中、セフィロスの静かな笑いが響く。
彼が声を立てて笑うのは、少なくともミッドチルダに来てからは初めてのことだった。
今のセフィロスは剥き出しの状態だ。
「お前達の思考では、受ける感情は所詮そこまで…ただの人間と変わらない」
妖しげな笑みと共に、セフィロスは再び斬りかかる。
アンジールがそれを受け止め、そこへまた連続攻撃が入り、結局防戦一方となる。
(…こいつは…!)
アンジールの眉間に皺が寄った。
そして、それは何も戦況が不利だからではない。
(こいつは、ジェノバの意識に目覚めてしまったとでもいうのか…!?)
スカリエッティの調べによって、ジェノバが古代種ではなく、それと争ったエイリアンだということは分かっている。
そして、セフィロスは至極冷静に、自分を人間とは違うと認識するようなことを言った。
つまり、自分がジェノバであることを受け止めたということか。
元の星に戻り、ジェノバの本能に従い、人間達を皆殺しにするつもりだとでもいうのか。
(セフィロスは…ジェネシス以上の狂気に取り憑かれてしまったとでもいうのか…!)
アンジールの唇が、固く噛みしめられた。
7反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/01/26(土) 11:02:13 ID:vyB6bkeg
しかし、考えてもセフィロスの猛攻が止まるわけでもない。
こうしている間にも、濁流のごとき勢いを持った連撃が、容赦なくバスターソードを叩いている。
アンジールは改めて、誇りの剣を強く握りしめた。
倒さねばならない。
セフィロスはこの手で。刺し違えてでも。
愛すべき人々を、この魔人に蹂躙されるわけにはいかない。
「だぁっ!」
思いっきりバスターソードを振り上げ、遂にアンジールは正宗を受け止めた。
「セフィロス…お前はディエチだけに留まらず、ディードをも傷付け、狂わせた…!」
おまけに、個人的にも返さねばならぬ借りがある。
「言ったはずだ、容赦はしないと。…刺し違えてでもお前を斬るっ!」
大剣の強烈な一撃が、セフィロスへ振りかかった。
この戦いで初の、アンジールの反撃だった。
「フッ…随分とご執心なことだ」
セフィロスもまた、その一撃を正宗で防ぎ、不敵な笑みを浮かべる。
一方的な攻撃は、ここに来てようやくまともな斬り合いとなった。
今や力で圧倒するセフィロスは、積極的にアンジールに襲いかかる。
しかしアンジールもまた、攻撃の合間を縫うように反撃を繰り出していた。
ある時、セフィロスがアンジールを弾き、その間合いを大きく開く。
「…いいのか、アンジール? こんな所にいるうちに、可愛い戦闘機人達は皆捕らえられているかもしれんぞ」
アンジールを揺さぶるように、セフィロスの言葉が響く。
その端整な顔に、残忍なまでの笑みを含ませて。
「俺はあの子らを信じている」
あの子らは管理局ごときに負けはしない、と。
既に全ての戦闘機人が逮捕され、ドゥーエに至っては死亡していることを、
クアットロは把握していたが、アンジールはそれを伝えられていなかった。
恐らくそれが彼の戦意を落とすと判断したのだろう。
「仮に全員が捕まったとしても…」
しかし、アンジールには別の念があった。
「俺がお前達を全員倒し、救い出すまでだ」
たった1人でも管理局に挑み、牢をぶち破り、ナンバーズを救ってみせる。
事実上の宣戦布告だった。
「…あの小娘…小手を武器にしていた赤毛だったな」
それをしばし黙って聞いていたセフィロスだったが、不意にそんなことを呟く。
その特徴に合致するのは――9番・ノーヴェ。
「…ノーヴェがどうした」
何かただならぬ予感。
それを察知したアンジールは、厳しい声で問う。
一瞬の静寂。
わざとらしく開けられた間。アンジールを嘲笑し、焦らすかのように。
やがて、セフィロスはその唇で囁いた。
「殺したよ」
残酷な言葉を。
「――ッ!」
アンジールの目が見開かれる。
半分は虚偽だ。ノーヴェは死の寸前のところで、クロノの制止救われた。
しかし一方、半分は真実だ。あの傷では、搬送中に死んでもおかしくない。
そして、事情を知らぬアンジールにとって、それは完全な真実になる。
頭が沸騰した。
絶望を覆い隠すほどの憤怒が込み上げた。
かつて死の間際、愛弟子ザックスとの最期の戦いの際にコピーを取り込んだことで得た、捨て身の力。
半ば戦闘機人と化したアンジールの怒りは、潜在するその力のスイッチを容易にオンにする。
冷静さをかなぐり捨てて、アンジールは叫ぶ。
ギンガを奪われたことに怒り、さながら魔獣のごとき剣幕で彼自身に殺意を向け
た、あの時のスバルのように。
「きっ…さまああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
8反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/01/26(土) 11:03:38 ID:vyB6bkeg
「…何だよ、これ…」
壁にもたれかかるヴィータが、誰へともなく問いかける。
以前、セフィロスがジェノバのことを話した際、ヴィータが尋ねたことがあった。
彼の名字もジェノバと言うが、何か関係はあるのか、と。
セフィロスはこの時、ただの偶然だとだけ短く答えた。
これにはヴィータのみならず、なのはやはやて達も納得していた。
侵略者ジェノバが猛威を振るったのは、今から遥か千年前。
公式な文献も残っておらず、彼がその正体を知ったのはほぼ奇跡のようなもので、周りの人間は皆土着の古代種と見なしていたという。
おまけにジェノバという名自体、よくある名前である。
だから、にわかには信じられなかった。
あのセフィロスが、化け物の血を引いているなどと。
しかし、信じざるを得なかった。
目の前で展開される戦いは、既に人外の領域に達していたのだから。
黒と白。
2陣の疾風が吹き荒れ、正宗とバスターソードが激突する。
剣がぶつかる度、溢れるエネルギーで、周囲の風景が陽炎のように歪む。
衝突と離脱。
ヒット・アンド・アウェイ。
セフィロスとアンジールは、凄まじい速度で動力室を飛び回り、すれ違いを繰り返す。
着地したセフィロス目掛け、アンジールが雄叫びと共に真正面から殺到した。
しかし、セフィロスの周囲に現れた無数の火柱が、その行く手を阻む。
立ち上る極太の業火。それら全ての威力がエクセリオンバスター級。
そんなことはないとヴィータは分かっている。しかし、その思考を拭い去ることはできなかった。
こいつらはこのまま、ゆりかごそのものすら破壊してしまうのではないか、と。
一瞬踏み留まるアンジールだったが、すぐにその穴を見出すと、再びセフィロスへと襲いかかった。
瞬間的に最高速に達し、火柱と火柱の間を掻い潜り、獣の咆哮を上げて斬りかかる。
業火の中で、二振りの剣が火花を上げた。
「そうだ。そうでなければ、本気の俺と戦う資格などない」
炎に照らされたセフィロスの顔に、微笑でありながら、凄絶なまでの笑みが浮かぶ。
かつて、なのはを「悪魔」と呼んだ者がいた。
その驚異の力と戦いぶりは、それだけの威力はあるだろう。
しかし、力だけでは悪魔足り得ない。
策略を張り巡らし、他者を陥れる卑劣さ。
言葉だけで相手を手玉に取る残忍さ。
何よりも、悪魔が悪魔たる、絶対的な悪の気品。
それがあってこその悪魔なのだ。
それが片翼の天使なのだ。
そこへ地面から蒼炎が沸き上がった。
青黒い炎球は少しずつ、しかし確かにその数を増していく。
やがてそれらが完全に両者を取り囲むと、セフィロスが一瞬で上空へと離脱した。
同時に、炎球が一斉にアンジール目掛けて殺到する。
無数の蒼炎が収束し、大爆発を起こす。
爆煙の中から、しかし寸手のところで逃れたアンジールが飛び上がり、再びセフィロスを狙う。
セフィロスの背後からは次々と焼けつく隕石が生み出され、雲霞のごとき弾幕が展開された。
続々と襲い来る灼熱の岩塊を避け、斬り、吹き飛ばし、アンジールは猛然とセフィロスへと向かう。
遂に彼がたどり着き、バスターソードを振り上げた瞬間、正宗の反撃が叩き込まれ、その身は床へと落ちる。
そこへ駄目押しの真空波。セフィロスの剣が放つ不可視の刃がアンジールを襲い、落下スピードを上げた。
地に落ちた白い片翼。
アンジールがその目に憎悪の炎を灯し、今となっては憎むべき仇敵となった男の名を叫んだ。
9反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/01/26(土) 11:04:53 ID:vyB6bkeg
「セェェェフィロォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォースッ!!!」
刹那、アンジールの身体が膨れ上がった。
その身は毒々しさを孕んだ白へと染まり、下半身は四足獣の胴体のような形へと変異する。
鋭い爪を光らせた丸木のごとく太い脚は、まさしく猛獣のそれだ。
右手にはバスターソードは既になく、黄金に輝く三ツ又の矛。左手には眩しいまでの青い盾。
一種の美しさを持っていた片翼は、今はモンスターの禍々しさを放つ象徴だ。
かくしてアンジール・ヒューレーは、人間の何倍もの巨体を持った、醜悪な化け物へと姿を変えた。
それを見届けたセフィロスもまた、その力の全てを解放する。
「かあああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」
鋭い絶叫と共に、セフィロスの身体が眩い白光に包まれる。
目を覆いたくなるような閃光の後、「それ」は姿を現した。
銀の長髪は前髪ごと背後に流れ、引き締まった上半身が剥き出しになっていた。
その背には、神々しく輝く日輪の後光。
全身を彩るのは、6枚の優美なる白翼と、1枚の妖艶なる黒翼。

――セーファ・セフィロス。

真に天使のごとき威容と尊厳を持って、遂にそれは降臨した。
『ウゥゥゥオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォーッ!!!』
本能のままに。純粋なる殺意のままに。
アンジールはその4本の脚で鉄の床を蹴り、翼を羽ばたかせ、天上の神へと挑む。
侵略者ジェノバの名を持つ異界の破壊神に。
漆黒の片翼をはためかせる、心無い天使に。
瞬間、セフィロスの身体が凄まじい光を放った。
光は熱を帯びる。
そして、アンジールはそれを真っ向から受ける。
白熱の閃光は、巨大な魔獣の全身をことごとく包み、その身を猛烈な勢いで焦がし、溶かしていく。
『グワアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァーッ!!!』
悲痛な断末魔を上げながら、アンジールは鬼気迫る様相でその身を突き動かし、
必死に右腕を伸ばす。
金色の矛先が天使に届くか否か、という瞬間。
全てはたちどころに蒸発した。
アンジール・ヒューレーは、ここに2度目の死を迎えた。
10反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/01/26(土) 11:05:59 ID:vyB6bkeg
黒と白。
2枚の片翼の死闘が終わり、セフィロスもまた元の姿に戻った。
と同時に、その身体がふらりと傾いたかと思うと、そのまま力無く落下する。
「ッ…セフィロス!」
圧倒的なまでの破壊を目の当たりにし、呆然としていたヴィータが、それで我に返りその名を呼ぶ。
セフィロスはそのまま床へと落ちた。思いの外衝撃が弱いのは、片翼がクッションとなったからか。
「セフィロスッ!」
痛む身体を必死に突き動かし、ヴィータはセフィロスの元へと駆け寄る。
目の当たりにしたのは、またも衝撃的な光景だった。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
あのセフィロスが、苦しんでいる。
息も荒く、全身からはびっしりと汗をかき、身を起こす気力さえ感じられない。
あの妖しく光る青い瞳も、閉じられたまま力を見せることはない。
これほどまでに衰弱した姿を見るのは初めてだ。
セフィロスはまさに、死力を尽くして戦っていたのだった。
「大丈夫か、セフィロス!?」
「…ああ…まだ、身体は動く…」
言いながら、セフィロスはふらふらとした様子で立ち上がる。
「玉座の間へ行くぞ…まだあそこには、なのはがいるのだろう…?」
「あ…ああ」
片手で汗を拭うと、その背の片翼をしまい、セフィロスは動力室の外へと視線を向ける。
ヴィータは彼を止めようとしたのだが、結局できなかった。
無茶だというのは目に見えている。しかし、いつもの有無を言わさぬ物言いに、出鼻を挫かれてしまったのだ。
「あ…ちょっと待っててくれ」
そこでヴィータはあることを思い出し、自分がいた位置へと戻る。そして、何かを集め始めた。
粉々に砕けた、グラーフアイゼンの残骸だ。
「…持っていて何になるんだ」
セフィロスがそう問いかける。
「まだアイゼンは直る。材料さえあればな」
破片をかき集めながら、ヴィータが答える。
「生き返れる相棒を…見捨てるわけにゃいかねーだろ」
「それもそうだ」
セフィロスはそれきりアイゼンに関する追及を止め、じっと押し黙って待っていた。
そしてほぼ全ての回収を終え、2人はなのはの向かった玉座の間――ヴィヴィオの元へと急ぐ。
「…ホントに戦闘機人…殺っちまったのか?」
ヴィータが尋ねた。
「あれはハッタリだ。死ぬような思いはさせたがな」
セフィロスはそうとだけ短く答える。それ以降はお互いに無言のまま、無機的な廊下を歩いていった。
「…恐ろしかっただろう」
そして、その沈黙を破ったのはセフィロスだった。
「あれが俺の力だ。前に言った、俺のようになるとは…ああいうことだ」
セフィロスは淡々と語る。
自らの持つ、絶対的な強さと恐怖を孕んだ力。あれこそが、孤独な戦士の行き着く力の形だ、と。
しばらくの間、ヴィータは何かを考えるかのように沈黙する。
「…怖かねーよ」
そして、口をついた最初の言葉がそれだった。
「あれがあたしや、あたしの周りのみんなに向くわけでもねーからな」
確かに、敵として相対したならば、あれほどに恐ろしいものはないだろう。
人知の遥か及ばぬ高みに位置する、暴力的なまでの力。
しかし、セフィロスは敵ではない。
「お前は仲間だから」
強気な笑みを浮かべて、ヴィータが言った。
ジェノバの血を引いていようが、それがどうした。
こいつは自分達の仲間だ。その事実に、遺伝子などは関係ない。決して揺るがぬ事実。
「…そうか」
セフィロスが返した言葉は、それだけだった。
11名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 11:08:00 ID:HAW0ktmQ
支援
12反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/01/26(土) 11:08:00 ID:vyB6bkeg
「――あらあらぁ、そんな身体でご苦労なことですこと」
と、そこへ突然少女の声が響く。
咄嗟にセフィロスは正宗へと手をかけ、武器を持たぬヴィータも身構えた。
虚空に姿を現したのは、正真正銘最後の生き残り・クアットロ。
髪止めと眼鏡を外したその姿は、普段にない冷徹さを漂わせていた。
「またお前か」
「ウフフ…まさかアンジール様まで倒しちゃうとは、思いもよりませんでした」
と、今度は横から声が聞こえた。
そちらを向くと、そこにもまたクアットロがいる。シルバーカーテンによって生み出された幻影だろう。
「でも大丈夫。私さえ生き残れば、何度でもやり直せる」
更に天井に貼り付くようにしたクアットロ。
「だって既に私のオナカには、ドクターの記憶を受け継いだコピーが宿ってるんですもの」
背後に現れたクアットロが下腹部をさする。
「玉座の間には、古代ベルカ指導者の魔力を受け継ぐ聖王様」
最初のクアットロの背後から、新たなクアットロが顔を出す。
「動力だって、自己修復が修理してくれる」
左側にもクアットロが。
「最後に残ったのが私で残念でしたねぇ」
気付いた頃には、30人近いクアットロが2人を取り囲んでいた。
「さぁ、そんなボロボロなお身体で…」
「「「本物の私を捕まえられますか?」」」
そしてそれら全てが、一斉に問いかけた。
常識的に考えれば、その可能性は絶望的だ。消耗した状態で、これら全員相手に鬼ごっこをするのはかなり厳しい。
「…そうか」
だからこそ、セフィロスの対処法は至って非常識に見えた。
「「「っ!?」」」
冷ややかな言葉が発せられた次の瞬間、全てのクアットロの身体を灰色のリングが捕らえる。
セフィロスのバインドが、30人全員に対して行使されたのだ。
当然分身は残らず消滅し、正面側にいた本物1人だけが残る。
「そこか」
淡々と呟くと、セフィロスはクアットロの元へと歩み寄った。
「ま…まさか、まだこんな余力が…っ!」
「…子宮、というのはこの辺だったか?」
うろたえるクアットロの言葉には耳も貸さず、セフィロスが正宗を向ける。
そしてその切っ先で、そっとクアットロの下腹部をなぞった。
「…!」
「お、おい! お前何を…!」
ヴィータの声が制止したが、それでもセフィロスは剣を引かない。
「つまり、今その腹の子供を殺してしまえばいいわけだ」
クアットロの戦闘服がゆっくりと切られ、肌色の腹が露わとなった。
「ひ…ひいいぃぃぃっ!」
貫かれる。子宮ごと腹を刺され、死ぬほど痛い思いをする。
最悪の未来を察知したクアットロはみっともなく怯えた。
「黙っていろ」
セフィロスの冷たい言葉がぴしゃりと浴びせられる。
否、もはや冷たさすらなかった。
「…お前の呼び出した召喚獣に手間を取らされ、アンジール相手に無駄に力を使う羽目になり…それで今度はコピーだと…?」
それは苛立ち――すなわち、怒りだった。
「寝言を言うのも対外にしろ…これ以上俺を振り回すな…!」
刃にも勝る鋭さを持った視線で、セフィロスがクアットロを睨み付けた。
並の娘では即座にその気に当てられ失禁してしまうような、凄まじい憤怒の目線。
「た…助けて…お願い許してぇっ!」
「黙れ。命があるだけありがたく思うがいい…!」
容赦のない言葉と共に、正宗が僅かに引かれる。
クアットロへと思いっきり突き込むために。
「いやあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「おいセフィロス! やめろっ!」
正宗を握る手に、力が込められた。
13反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/01/26(土) 11:09:11 ID:vyB6bkeg
「ストーップ!」
と、そこへ不意に、よく聞き知った声が発せられた。
セフィロスとヴィータ、その2人が同時にそちらを向くと、そこに立つのはあの部隊長――はやての姿。
10年前に初代リインフォースと共に戦った時と同じ、薄いベージュの髪だ。であれば、現リインとユニゾンしているということ。
「まったく、やっぱりセフィロスさんは私がいないとやんちゃしちゃうんやねぇ…」
『めーですよっ! 赤ちゃんのいるお腹を傷付けたら、おかーさんもショック死しちゃうんです!』
はやてはため息をつきながら呆れ気味に呟き、リインはぷんすかと怒っている。
しばし2人はこの状況に唖然としたかのように硬直していたが、やがてセフィロスが口を開いた。
「…外の連中はどうした」
空戦部隊がまだ戦闘中だろうに、部隊長がこんな所で何をしているのか、と。
自分の言い付けを守らなかったであろうはやてを、セフィロスはそれこそ呆れたように見ていた。
「ああ、それなら大丈夫や。シグナムも来てくれて、大体片付いた」
後はシグナムに指揮を任せても皆頑張れる、とはやてが言った。
「…ならいい」
そう言って、セフィロスは正宗を引いた。
相変わらず、何故かこの女の言葉には弱い。
そこで彼は、思い出したように再びクアットロの方へ視線を戻す。が、当の彼女は極度のパニックから、既に気絶していた。
『何にせよ、これで戦闘機人はみんな確保ですねー』
「後は、玉座の間のなのはちゃんだけやね」
そう言って、はやては踵を返し、先頭切ってなのはの元へ向かおうとする。
「あ…はやて!」
と、それをヴィータが呼び止めた。
はやては彼女の方へと振り返り、そのまま歩み寄る。
「アイゼンが壊れちまった…これ、何とかならねぇかな?」
粉々になったグラーフアイゼンを取り出して尋ねるヴィータは、いつになく弱気
な顔だ。
ここでこれが直らなければ、自分はなのはを助けることができない。
自分1人が何もできないのは、真っ平ごめんだった。
「んー…ちょっと待ってな」
はやてはそれを受け取ると、そこへ自らの魔力を込める。
ヴォルケンリッターへの緊急魔力供給だ。これでグラーフアイゼンのナノマシンを活性化させ、復旧を早める。
闇の書の消失によって供給能力は薄れてきてはいるが、これぐらいならまだ可能だった。
「こんなになるまで、アイゼンもヴィータもよう頑張ったな…ヴィータは偉い子や」
魔力を込めながら、慈愛に満ちた穏やかな笑顔ではやてが言った。
やがて、粉々の破片は、待機状態のグラーフアイゼンへと戻る。
「よし、完成! …と、言いたいとこやけど…まだ応急措置やからな。ツェアシュテーレンは使えへんよ」
言いながら、はやてがグラーフアイゼンをヴィータへと手渡す。
まだ修復が不十分な箇所もあり、変形はギガントフォルムまでが限度なのだ。
「十分だ! ありがとな、はやて!」
無事に生還した相棒に、それを直してくれたはやてに、ヴィータは満面の笑みを浮かべた。
「…さ、それじゃあ行こか!」
はやての顔に不敵な笑みが浮かぶ。
セフィロスとヴィータの2人も、瞬時にその表情を真顔へと変える。
3人はそれぞれの得物を携え、玉座の間へと歩を進めた。
ゆりかご攻防戦、最後の戦いの場へ。

気を付けてよ、なのはちゃん。
なのはちゃんも…セフィロスさんと同じくらい、危なっかしいんやから。
14反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/01/26(土) 11:10:19 ID:vyB6bkeg
「う…うぅ…」
玉座の間には、壁に叩きつけられたなのはの姿があった。
エースの誇りを体現する純白のバリアジャケットは、ちぎれ、焼け焦げ、無惨な様相となっている。
視線の先に浮いているのは、漆黒のバリアジャケットに身を包む、オッドアイの女性。
ヴィヴィオである。外見年齢こそ違えど、彼女に間違いはない。
古代ベルカを統べた支配者・聖王の遺伝子を持つヴィヴィオは、
その身に埋め込まれたレリックによって、その潜在能力を強引に解放され、この姿となっていた。
クアットロの言葉に踊らされ、純粋なキリング・ウェポンとなって。
更に彼女の周囲には、無数の球体が環状を成し、絶え間なく回り続けている。
ファイガ、ブリザガ、サンダガ、ケアルガ、ぜんたいか、HPアップ、スピード。
色とりどりのそれらは、その全てがマテリア。召喚魔法系を除く全てのマテリアは、彼女の元にあったのだ。
圧倒的な手数でなのはを翻弄し、ぎりぎりまで強化された能力で圧倒する。
それだけなら普通に強い敵で済んだだろう。だが、そこには厄介な2つのマテリアがあった。
第1に、「リフレク」。魔法を反射する無敵の壁だ。
なのはの砲撃は、この絶対防壁によって、その全てがことごとく跳ね返されてしまう。
第2に、「カウンター」。相手の攻撃に対する反撃能力を高める。
たとえどれだけ不意を突こうとしても、このマテリアが反応し、オートでヴィヴィオを守り、反撃する。
つまり、全てのなのはの攻撃が封じられたも同然だったのだ。
「ヴィヴィオ…」
「簡単に…呼ばないでッ!」
マテリアの1つが光る。
拒絶の言葉と共に発せられたグラビガが、なのはの身体を硬い床へと叩き落とす。
凄まじい土煙が上がるも、しかし彼女は、無傷で背後に回っていた。グラビガは外れていたのだから。
「こんなの…効かない!」
バインドを引きちぎると、ヴィヴィオはそのまま反撃に入る。
ぜんたいかの恩恵を受け、広域攻撃と化したファイガとブリザガ、そして自身の魔力が、豪雨となって降り注いだ。
辛うじてなのはは防御魔法を展開するも、そんなもので防ぎきれる量ではない。
遂に押し切られ、今度こそ鉄の床を味わう。
追撃を必死にラウンドシールドで防御するなのは。
「ブラスター2!」
一瞬で背後に回ったヴィヴィオを迎え撃つべく、なのはが叫ぶ。
リミットブレイク・ブラスターモード。一定の段階ごとに、爆発的に自身の魔力を増幅させる能力。
なのはの息は荒い。
強制的に限界以上の力を引き出すブラスターは、自身のリンカーコアに甚大な負担をかける、諸刃の剣でもあった。
衝撃波で煽られたヴィヴィオの元へ、生成されたブラスタービットが迫る。
チェーンバインドを遥かに上回る拘束力を発揮し、魔力のロープが彼女を縛り付ける。
「ブラスタービット…クリスタルケージ! ロック!」
そこへ駄目押しの追加バインド。ピラミッド状の障壁が、拘束されたヴィヴィオを包囲した。
しかし、通常のバインドは難なく突破される。攻撃に対する学習能力を持ったその身体は、容易に対抗策を構築する。
そして、鉄壁のクリスタルケージを破壊すべく、その拳を繰り出していった。
遂にはそれさえもブチ破ると、猛然となのはに殴りかかる。
レイジングハートと鉄拳の衝突。
白と黒のバリアジャケットは、今まさに、真っ向から向き合っていた。
洗脳システムを制御していたクアットロが気絶したのと、ブラスタービットのバインドがヴィヴィオを拘束するのは、ほとんど同時だった。
「な…なのは、ママ…?」
殺気を宿した瞳がその色を失い、純粋な光を放つ。
さながら、元の幼いヴィヴィオに戻ったかのように。
突然の様子の変化に戸惑うなのはだったが、相手の洗脳が解けたのだと、瞬時に理解した。
恐らくヴィータ辺りがクアットロを捕捉、確保してくれたのだろう、と。
「ヴィヴィオ!」
理解してからの行動は素早かった。彼女を迎え入れるべく、必死に駆け寄る。
「駄目、逃げてっ!」
しかし、他ならぬヴィヴィオの声がそれを遮った。
各種マテリアは未だに作動中だ。リフレクも、そしてカウンターさえも。
近寄るなのはは、マテリアにとっては敵と認識されている。即座にサンダガの雷雨がなのはの元へ降り注ぐ。
「くぅっ!」
間一髪で、それを防御。
15反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/01/26(土) 11:11:27 ID:vyB6bkeg
「駄目なの…ヴィヴィオ、もう、帰れないの…」
その弱気な言葉を裏付けるかのように、漆黒の魔力がその場を満たしていく。
否、その光はヴィヴィオの魔力ではない。彼女の聖王としての意識が失われたことで起動した、ゆりかごの自動防衛モードだ。
艦載機は全て発進される。早く逃げなければ、なのはは帰れなくなる。
同時に、拘束を更に破壊したヴィヴィオの鉄拳が迫る。
「ヴィヴィオ…今、助けるからっ!」
それでもなのはは引き下がらない。
空中でエクセリオンバスターがそれに叩き込まれ、激しいスパークを起こす。
「駄目なの…止められないのっ!」
「駄目じゃない!」
両者の攻撃は相殺。
カウンターのマテリアに操られたヴィヴィオは、しかし間合いを一気に詰め、容赦のない猛攻を仕掛ける。
遂にその一撃がなのはを捕らえ、黒い光を放つ床へと落下させた。
「もう…来ないで…」
このままでは、ヴィヴィオはなのはを殺すだろう。
本人の拒絶も叶わず、一方的に虐殺するところを、まざまざと見せ付けられるだろう。
「分かったの、私…」
レイジングハートを杖代わりにし、立ち上がるなのはへと、ヴィヴィオが言葉を紡ぐ。
自分は遥か昔に生きた古代ベルカの時代の人間のコピーで、なのはやフェイトとは到底交わり得ない人間であるということ。
ゆりかごを飛ばすために生まれた鍵であり、玉座を守るための兵器であること。
自分は母性など求めていない。そんな感情はただの作り物。魔法のデータ収集をするために利用していたのだ、と。
「私は…この世界にいちゃいけない子なんだよッ!」
必死に否定するなのはの言葉を更に否定し、ヴィヴィオは叫んだ。
おおよそ生体兵器らしからぬ、そしてまごうことなき人間のみが流す、大粒の涙を振りまいて。
「違うよ…」
故に、なのはは言葉を続けた。
「生まれ方は違っても…今のヴィヴィオは…そうやって泣いてるヴィヴィオは、偽物でも作り物でもない」
甘えん坊ですぐ泣くのも、転んでも一人では起きられないのも、ピーマンが嫌いで残してしまうのも。
自分が寂しい時に、いい子ってしてくれるのも、私の大事なヴィヴィオだ、と。
それら全ては、ヴィヴィオが人間たる証。それのどこが作り物だと言うのか。
「私は、ヴィヴィオの本当のお母さんじゃないけど…これから、本当のままになっていけるように努力する。…だから…」
自身も涙を流しながら、なのはははっきりと宣言し、訴える。
「だから…いちゃいけない子だなんて、言わないで!」
そして、あの笑顔を――なのはママの柔らかな笑顔を浮かべ、問いかけた。
「ホントの気持ち…ママに教えて?」
ヴィヴィオにはもう抗う理由はなかった。
信じたかった。こんな自分を受け入れてくれると言う、なのはママの存在を。
「私は…」
故に、叫んだ。
「私は…なのはママのことが、大好き…!」
ホントの気持ちを。
「ママとずっと、一緒にいたい! ママ…助けて…!」
「…助けるよ…」
その言葉を待っていた。
ブラスターモードのファイナルリミット・ブラスター3を起動。桃色の魔法陣が、凄まじい魔力と共に展開される。
その力は、あの片翼の天使に――魔人セフィロスにすら匹敵するものに膨れ上がった。
「いつだって…どんな時だって!」
物言わぬマテリアに支配されたヴィヴィオの身体が、バインドによってロックされる。
全ての準備は整った。
その聖王の鎧を打ち砕き、ヴィヴィオを助け出す。
「ヴィヴィオ…ちょっとだけ、痛いの我慢できる?」
天空に上がった白き女神は、眩いほどの聖なる輝きをかき集め、救済の矢をつがえる。
レイジングハート、そして4つのブラスタービット…計5つの砲門へ、極大の魔力が集中する。
ヴィヴィオの答えは決まっていた。故に、なのはも迷わない。
防御を抜いて、魔力ダメージでノックダウン。どんな壁にも、2人の絆は阻ませない。返せるものなら返してみるがいい。
「――スターライトォォォォッ! ブレイカアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァーッ!!!」
星の光が輝いた。
16反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/01/26(土) 11:12:36 ID:vyB6bkeg
投下終了。
これで先に宣言した3つの要点のうち、2つは終了しました。
「新必殺技」→リボルバーブレード及び超究武神覇斬
「大怪獣バトル」→セーファ・セフィロス様降臨
さて、残る1つは? …そうです、「なのは! 歯ァ食いしばれッ!(天元突破的な意味で)」です。
さぁ、いよいよ次回が最終決戦だ。

特報:次回、ユーノ&クロノに続き、アルフ(大人)参戦決定!
17名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 11:22:29 ID:7i7A/iW5
GJ!
それにしてもクア姉は断末魔が良く光る。
そしてなんという反則なヴィヴィオw
ここの場面はいつも心が揺さぶられるなあ。
残る天元突破も楽しみにしています。
18名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 11:30:33 ID:EKtZgJda
カウンターは反則wwwww
フェニックスなんかあったら大変すぎるなー
19Strikers May Cry:2008/01/26(土) 11:39:43 ID:arfS5DvT
クアットロ嬲りGJ!

俺も早くナンバーズを弄びたいぜ、しかしリリカル・グレイヴの筆が進まないぜ。
ともかくGJです、でももうすぐ最終回なのはちょっと寂しいっすね。
20名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 11:45:44 ID:UBa3D3Cj
gjしかしクアットロ余裕ぶっこいて
姿見せたのが運の尽きでしたね。隠れていれば 
セフィロス以外なら消耗した連中を洗脳ヴィヴイオで片付けられたのに
アスピルとウォールあれば完璧でしたね
21名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 12:26:54 ID:xKquszAF
GJ!
このヴィヴィオはファイナルアタック(だったか?)の戦闘不能と同時に魔法、召喚発動でフェニックスつけたらセフィロス相手でも殺れるんじゃね?
22スーパーロボット大戦X(携帯):2008/01/26(土) 12:32:32 ID:cv8gh9K8
携帯からの初書き込みです。
GJです!
後何回で最終回ですか?気になりますね。
23名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 13:07:11 ID:fux93PLK
反目氏GJです!しかしクアットロ相変わらず哀れですな・・・次で最終話でしょうか
楽しみに待ってます

真祖の人です、深夜はすいませんでした。今からプロローグ2投下してもよろしいでしょうか?
24名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 13:12:12 ID:FynhTrtf
支援
25名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 13:31:11 ID:fux93PLK
では投下させていただきます

プロローグ2
罪人の一日それは償い日々(?)

――――10年後 幻想郷 白玉楼庭
外出権・・・一週間を割る2してあまったの自由時間を巡っての喧嘩

「レヴァンティン!」
リインフォース(初代ね)は手に持っているレヴァンティン・レプリカのカートリッジをリロードして
刃を蛇腹のように変形して目標に向かって抜き放った
「飛竜一閃!」
飛竜のようにうねる刃は目標、銀髪のおかっぱで二振りの刀を持つ少女に襲い掛かる、だが少女はそれに動じずカードを抜き出す。
「それは見切っている!餓王剣『餓鬼十王の報い』!」
少女から生み出された餓鬼の群れがレヴァンティン・レプリカの刃を身をもって受け止める。
「今度こそ貰った!はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
少女は刀を携えリインに切りかかる、だがリインは動じない、現在レヴァンティン・レプリカのモードを解除し、さらに薬莢を排出し、
もう一振りのレヴァンティン・レプリカを生み出し、連結させ弓を作り上げる、さらに手からそれの矢となるべき何かを生み出し、引き絞る、
レヴァンティン最強の技「シュトルムフォーゲル」。
「撃ち抜け隼!カラドボル…じゃなくてシュトルムフォーゲル!」
リインから放たれた青い矢(レプリカである為反転色)が少女の体を捕らえる。
「へ?…(チュド−ン)うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
フォーゲルは見事少女を捕らえ、撃墜した、そしてリインはレプリカを解除し自ら持つ書に吸収させ、少女の下に寄る。
「ふふふ、妖夢、今回も私の勝ちですね。では外出権は貰いますよ」
「みょん」
妖夢と呼ばれた少女は悔しそうに言う。
「あらあら、また負けたのね妖夢」
この冥界の主であり、何の因果か蘇った初代リインフォースの主である幽々子は今行われた
外出権を巡る戦いを見て、又負けた妖夢を見てクスリと笑う。
「ううぅ〜〜ようやく飛竜一閃見切れたと思いましたのに、まだあんな大技隠していたなんて」
「でも『シュトルムフォーゲル』はレヴァンティン最強の技、あともう一歩ですよ妖夢」
「みょん」
「我が主、では暫く出かけさせてもらいます」
「フフフ、いいわよリィン、今日は宴会ないから7時ぐらいに帰ってらっしゃい」
「畏まりました」
リインは白玉楼から出て行った。
26名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 13:33:02 ID:fux93PLK
「もう10年か…早いものだな」
リインは回想する、あの雪の日私は消えた…はずだった、気が付くと幻想郷と呼ばれる場所に流れ着いていた、
それも独立した意思で…そして私は閻魔(別名山田)によって罪の償いの為にどこか何かの為に役に立って来なさいと言われた、
そして一度死んだ身であると同時に精神体が肉体を得たが、死んだからと言う理由で冥界の白玉楼という屋敷の主である
西行寺幽々子の元で罪の償い(実際何が償いなのかわからなかった)をする事になった、主である幽々子とその庭師でも
ある魂魄妖夢も新しい家族であるリインフォースを快く迎えてくれた。
「何故こうもあっさりと受け入れてくれたのか」
とリインは問うと主は笑みを浮かべながら言った。
「幻想郷はすべてを受け入れるわ、それはそれは残酷な話」
であった、10年間今も、これからもずっと白玉楼で罪の償いをしていくだろう…だがそれは悪くはなかった、
そう思う。以前の自分のスタイルを強調した衣装は幻想郷の某紅白や黒白など多数のツルペタに「喧嘩売っているのかテメェ!」
と言う理由で、八雲藍の来ている導師風の衣装(当然黒色)である。白玉楼に着てからのリインの日常はこうなっている


5:00〜6:00 起床、妖夢と剣の稽古兼見回り
7:00〜8:00 朝食作りと昼食の下準備
9:00〜12:00 庭の手入れ、掃除、昼食の準備 妖夢と模擬戦

午後 外出権あり
13:00〜19:00 外出(宴会がある場合は17:00まで)

外出権なし
13:00〜19:00 白玉楼での雑事、買い物、主との戯れ、主のオヤツの用意


20:00〜22:00 夕食、後片付け
22:00〜23:00 見回りの後、主が寝たのを確認して就寝

と言った非情に幽霊屋敷なのに人間臭い生活を行っている、妖夢も家族がもう一人増えて家事をやれるようになって、
時間的余裕が出来て喜んでいた。最も、最初やって来た時には厨房を爆破するわ、庭の木を折るわ、掃除で物を壊すわ、
挙句にはぐれ幽霊を退治する時にSLBぶっ放して(加減知らなかったので)屋敷を半壊させたり、手料理で幽々子が
幽霊なのに昇天しかけるわ散々であったが、今では家事も掃除も料理も洗濯をきちんとこなす事が出来る、当初は
「こんな事だったら家事系魔法も習得しとくべきだった」と思う事も合ったし、妖夢からも「家事系魔法ってないのですかぁ」
と懇願されたこともあった…苦労して身につけることは苦痛でもあったが、同時に達成感もあった。そしてこの幻想郷は…


            「飽きがない―――――」
27名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 13:48:45 ID:hBeDWvdy
支援
28名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 13:52:35 ID:fux93PLK
あれ?投下できない
29名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 13:54:09 ID:FynhTrtf
>>28
避難所に投下したら?
30名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 14:15:15 ID:fux93PLK
真祖の人です、残りは避難所に投下しました、誰か投下お願いします。
orz迷惑かけてすいません
31名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 14:16:14 ID:B3taG26Y
とりあえず、誤字多くないか?
32代理:2008/01/26(土) 14:16:48 ID:FynhTrtf
リリカルなのは ストライカーズ
          〜ミッドチルダに祝福の風は吹く〜


次回予告
リイン「紫の手によって、ベルカの聖王教会に向かった私と紫、そして私はかつての主である
    はやて達が機動6課と言う特殊部隊を創設していたことがカリムの手によって明らかにされる、
    そして訓練を覗きに言った紫は…ちょっとした御遊びを思いつき…」
カリム「次回リリカルなのはストライカーズ〜ミッドチルダに祝福の風は吹く〜第1話
    (介入者、凡骨・のろま大覚醒、危うし白い冥…魔法使い!)お楽しみに」

ティアナ「ぼ、凡骨って…orz」
スバル「の、のろまぁ!!!orz」

リイン「所で、何で紫と騎士カリムが知り合いなんだ?」


妖夢・シャッハ「「(何でだろう、他人という感じがしない)」」
カリム「おかっぱの所が似てますね」
幽々子「あと堅物すぎるパシリと言う点が」
妖夢・シャッハ「「みょん」」


33代理:2008/01/26(土) 14:18:40 ID:FynhTrtf
失礼……順番間違えた。
34代理:2008/01/26(土) 14:25:22 ID:FynhTrtf
ごめんこちらも書き込めなくなった……。
35代理2:2008/01/26(土) 14:30:16 ID:B3taG26Y
>>32の前

リインに映るすべてが新鮮であった、自分を受け入れてくれる世界がどれほど嬉しかったか…
幻想郷に生きるリインにとってこの10年間は色々あった、自分を蒐集した魔法を求めて挑んできた魔法使い3人組、
ある日は古来の神と戦い、ある日は宴会で鬼と天狗に絡まれて急性アルコール中毒でぶっ倒れた事、
花咲ババ…基御姉さんや博霊神社の守護神を自称する怨霊との戦い、そして娘にこっそり会いに着たけど
道に迷ってピーピー泣いていた魔界神(何でもティラノサタンやスパーダやムンドゥスやガッシュやネウロとか
言うのも彼女には頭が上がらないそうだ)の手を引きながら魔界につれて帰ったり、
闇つながりとか言うのかルーミアとか言う妖怪に「ママなのか〜」と変な誤解をされて懐かれたり、
色々あった。そしてリインは本日の目的地へと向かう、湖にある洋館、吸血鬼が住まいし
紅き館「紅魔館」そこにある図書館が彼女の目的地だ、そしてリインは門番に入城許可を貰い
(門番の中国だっけ…は「魔利沙もリインさん見習って云々」とブツブツいっている光景を良く見る)
屋敷に入る、そしてそこの図書館に住み込む小悪魔の案内で図書館に向かう、そして図書館の主はリインの姿を確認する。
「又来たの貴方?まぁいいけど」
客に対して失礼な言い方だが、それが図書館の主であるパチュリー・ノーレッジなりの歓迎だ、
そしてリインは目に付いた何冊かの魔道書を手に取ると、小悪魔が持ってきた紅茶を飲みながら魔道書を読む、
双方とも無口のまま時が過ぎていった。
「パチュリー、本は知識を得るものではなく、作った者の魂に触れ感じると言ったな…」
「ええ、そうよ、だから私は貴方のすべてを読んでみたい、幾年をかけて積み重ねてきた魂が詰まった貴方を」
聞けばかなり卑猥であるが、一人の魔法使いとしてリインフォースの積み重ねてきた物は究極の逸品と言えた、
しかしそれには対価があった。「リインと勝負して完全に勝つ」と言う事だ、幻想郷ではスペルカードによる弾幕勝負だが、
リインとの場合は特例としてあらゆる術をもって戦えと言う事つまり…
「読みたければ、戦うか?パチュリー・ノーレッジ?魔法勝負で」
リインは本を読みながら言う、しかしパチュリーがリインとガチンコで戦って勝てる可能性はかなり低い、
理由は?リインの戦闘スタイルはオールランダーながらも近接寄りであり、
以前パチュリーと戦った時は素手で完膚なきまで叩きのめしたからだ。
「むきゅ〜〜」
こういわれるとパチュリーも何も出来なくなる(一方で図書館利用させてもらっているとのお礼で一部は見せたが)。
そしてまた無口な時間が始まった時である、突然屋敷が揺れた、それは地震でもなかった、

・・・では何か?屋敷の住人は顔を蒼白させる。

「また妹様が暴れ出した!」
「屋敷がまた潰れる〜〜〜!!!」
「お嬢様は!」
「駄目だ、咲夜様と共に博霊神社に入り浸ってやがる!!」
屋敷のメイド達の悲鳴が響き渡る。

「リイン、お願い出来ないかしら?」
「では、ロイヤルフレアを蒐集させてもらおうか」
「むきゅ〜、レイジングトリリトンは?」
「地系か…いいだろう」
取引は成立し、リインは妹様フランドール・スカーレットを止めに屋敷の奥に突入した。
ちなみにフランドールは何故かリインになついていたりもする
(レミリアはリインにぶっ飛ばされて、いつかぶっ飛ばしてやるリストの一員『さらにアルクェイドも入っていたりもする』である)、
なついているのはいいが、ある意味純真すぎるのも困り者である、何せ容赦と言うものが一切存在しない…
そして屋敷の奥で爆発と破壊と弾幕が響き渡ること45分…満足したのか奥の部屋に戻っていった、
そして満身創痍になったリインは転送魔法を使って永遠亭にいって治療を行った後、
自分の家である白玉楼へ戻っていくことになった、そして夕食の後片付け、
見回りなどを行って布団の中に潜り込む…こうしてリインの一日は終わる。

―――翌日
「ちょっとリイン貸してくれない?」
白玉楼にずけずけとやって来た主の親友…八雲紫、リインにとって色々と関わりたくない人である。
彼女はこれからベルカに向かいそこの知り合いと会いに行きたいと、そしてその護衛役としてリインを貸して欲しいと言う事だ、
藍は熱を出した橙の看病に付きっ切りと言うわけだそうだ。
「ベルカ…懐かしい名前だ、だがな」
リインは主の世話があるからと言いかけたが、肝心の幽々子が二つ返事
で承諾する事によってリインは紫によってベルカの聖王教会に向かう事になる。
36名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 14:57:48 ID:AAmlHUrt
あんまり改行スペース多いと規制かかるから要注意。
37名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 14:58:23 ID:B3taG26Y
>刃を蛇腹のように変形して
>現在レヴァンティン・レプリカ
>一度死んだ身であると同時に精神体が肉体を得たが
>非情に幽霊屋敷なのに人間臭い生活
>自分を蒐集した魔法
>会いに着た
>門番に入城許可を貰い
>白玉楼にずけずけとやって来た
>これからベルカに向かいそこの知り合いと会いに行きたいと
>そして私はかつての主であるはやて達が機動6課と言う特殊部隊を創設していたことがカリムの手によって明らかにされる

誤字及び日本語的におかしいと思われるもの
軽く読むだけでもこれだけあったんだが
ちゃんと推敲してるか?
38名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 15:02:44 ID:EWfxun66
>37
ここだと時にものすごい速さで流れてしまうから避難所の「誤字を発見者が職人に報告するスレ」で指摘するのが良いと思う。
39名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 15:05:42 ID:B3taG26Y
>>38
了解、そっちにも書いてくる
40名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 15:47:52 ID:RdxXtlJZ
小ネタ投下おk?
41名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 15:50:47 ID:lyx5vj/+
おkおk
42名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 15:54:08 ID:RdxXtlJZ
んじゃ失礼して。
暗いのにアホなネタですが。


ゆりかごが堕ちる。


時空管理局は、機動六課は失敗した。
彼らは、ゆりかごがその機能を最大限生かすための高度に上がるのを止められなかった。
そう、『時空管理局は』失敗した。

操られた聖王が不屈の母を下し。
鉄槌は戦艦の心臓を砕けぬまま散り。
そして何よりも、母親代わりだった女性が狂人の爪にかかる様を見て。

幼い少女の、居場所がなくなることを恐れ続けた小さな心は、ついにひしゃげた。
ただの暴走。
術などとは間違っても呼べぬ、自分も周りも省みない龍召喚。
否、自分が何をしているかなど、既に理解してはいないだろう。
その限界を超えた、悲鳴という魔法の果ての、ささやかな成果として。


ゆりかごが堕ちる。


狂った科学者の野望の体現が、粉々に砕けて落ちてゆく。
時空管理局の地上本部を壊滅に追いやった男の夢が、潰える。

歓声は無かった。

空に浮かぶ巨大戦艦は文字通り粉々に砕け、欠片となって降り注ぐ。
その内にいた者達も、その外で飛び回っていた者達も、勝者も敗者も亡骸に変えて。

慟哭も無かった。

森は焼かれて焦土に。
海は冒されて汚泥に。
山は砕かれて荒地に。
街は崩されて瓦礫に。
人は息絶えて死体に。


生きた者など、どこにもいなかった。


クラナガンと呼ばれていた瓦礫のカタマリの上。
空間自体を振動させ破砕しながら、一つの存在が宙に浮かんでいる。
瘴気を放ち、ただそこにいるだけで周囲の全てを冒しながら、全てを睥睨する。
瓦礫の下で、もう二度と泣かなくなった少女が最後に呼び出したもの。



―――神竜王アレキチャンダー。
全長12cm、ピンク色の毛虫がふんぞりかえっていた。
43名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 15:55:28 ID:RdxXtlJZ
投下終了そしてキャロイヤボーン自重。でもキャリーだとこうだよね。
久々にウロスを覗いてみたら、昨日バハラグが語られていたので衝動的に書いたゴメン。
もっとギャグっぽくすればよかったなぁ。
44名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 15:56:25 ID:lyx5vj/+
ちょっっっ鬱展開キt……鬱?支援
45名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 16:21:16 ID:lyx5vj/+
>>真祖の人
GJ!
妖夢とシャッハさんは可愛すぎだろ常考。

>>42
テラ無駄にハイクオリティ。鬱ギャグとかカオスすぐるだろwww

あと自分も小ネタというか読み切り短編投下しようかと思います。
容量48.8kもあるけど自重しない。
雑談スレで触発されてサモンナイト3クロスです。来るのは素敵ロボ。
その場のノリと俺様設定とご都合主義の中二病テンションで逝くよ!
30分後くらいから投下しまっす。
 
消えゆく意識の中、最後に見たのは『あの人』の、いつも笑顔だった人の、今にも崩れてしまいそうな泣き顔だった。
 
 それが何よりも辛かった。
 作り物の、出来損ないのココロしか持たない唯の兵器に過ぎない自分であるが、『あの人』の泣き顔を見ることだけは辛かった。
 
 ――――あの人の浮かべる、日向のような笑顔が好きだったから。
 ――――その笑顔を守りたいと思ったのだ。

 だが、その願いは叶わない。
 なにより今の自分自身こそが、あの人が涙する原因なのだから。
 あの人と共に歩くには、自分はあまりに致命的過ぎるバグを抱えていた。
 
 だから、その役目は別の者に頼むことにした。
 あの人を守護する役目は、自分ではない本機が果たすだろう。あの人には迷惑を掛けっぱなしだった自分だが、戦闘性能だけは自信がある。
 任務は『VAR-Xe-LD』が果たす。自分の――『ヴァルゼルド』の役目はここで終わる。

 『あの人』を守れ。
 『あの人』の笑顔を守れ。
 『あの人』の大切な人達を守れ。
 故に――排除せよ。『あの人』を傷つけるバグを排除せよ。
 それこそが本機の任務。
 それこそが自分の願い。
 
 意識が消える。
 ココロが消える。
 『ヴァルゼルド』が消えていく。

 消えてゆく意識の中、『彼』は0と1で出来た思考で、祈りのような願いを想った。

 ――――もし次があるのなら。
 ――――機械兵士の自分にも魂があるのなら。
 ――――バグに過ぎない自分にも輪廻が許されるのならば。
 
 その時は、きっと――――――――。

 
 忘れられた者達の楽園で、誰からも忘れられたブリキの兵士がいた。
 誰からも忘れられたブリキの兵士に、手を差し伸べた人間がいた。
 その人間の力になろうとしたブリキの兵士は、自分の余分な部分を切り捨てた。
 ――――自分の魂を切り捨てた。
 差し伸べられた手を掴もうとして、掴むことが叶わなかったブリキの兵士がいた。
 それが『彼』の物語。
 そこで終わる物語。    
 
 ――――その筈だった。

 
 作り物の、出来損ないの魂。
 されども魂は廻る。
 大地を越え、海を越え、空を越え、世界を超え。
 
 幾星霜の時を越えた旅路の果てに、『彼』は『彼女』と出逢った。
47名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 17:15:05 ID:dLUQhUr9
支援
48名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 17:24:43 ID:YrAxD2Iq
君と二人では良い曲だよね支援
49リリカル! 夢境学園:2008/01/26(土) 17:29:12 ID:r2iu/9ta
機械兵士支援!!
ERROR:行が長すぎます死ね

何回やっても!何回やっても!エアーマ(ry

…………ヒィィィィごめんなさいいい!!!!
馬鹿みないな長文のせいでエラー連発!削っても削っても許してくれないよママン!

本当に申し訳ありませんが、一晩手直しさせてもらってから再投稿してよかですか?
…………ほんとうにすいません……orz
51名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 17:38:00 ID:dLUQhUr9
>>50
(´・ω・)ドンマイ
52名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 17:47:18 ID:LivufSTY
一レス60行だ! 僕と君との約束だぞ?
53リリカル! 夢境学園:2008/01/26(土) 17:52:40 ID:r2iu/9ta
>>50

あと最初の一行が空欄だった場合は、全角スペースを入れるのを忘れては駄目だw

あとこのまま投下は諦めてしまうんだったら、次に自分いいですか?
同じサモンナイトなのですが
(カタカタ・・・…)よーし、僅か14行。これで長いと言うなら言ってみやが――
『ERROR:行が長すぎますプヒー』
(´・ω・`)・・・…ぷひー……

改行せずに3行とか4行とか普通にあったから多分それが原因。
行数だけじゃくて文字数も関係あるのかな? でも容量は問題無い筈なんだけどなぁ……
ちょっと避難所で試してきます。
55リリカル! 夢境学園:2008/01/26(土) 17:55:22 ID:r2iu/9ta
文字数は40までだよw
気をつけて!
56名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 17:57:48 ID:LivufSTY
読みやすい作品のためには適度な改行も必要だよ!
僕と君との(ry
57リリカル! 夢境学園:2008/01/26(土) 17:59:28 ID:r2iu/9ta
とりあえず、
リリカルなのはSUMMON NIGHT氏が投下し終えるまで自重するぜ!

もし普通にアクセス制限で出来なかったら、代理もします。
同じサモンナイト仲間だし!!
うん有難う親切なお兄ちゃん!(野太い声で)
指摘に気を付けて添削してきます。
ですので夢境氏どんと投下しちゃってください。
59リリカル! 夢境学園:2008/01/26(土) 18:03:33 ID:r2iu/9ta
>>58

はっはっは、兄貴と呼んでください。
じゃあ、十五分より投下予定。
相変わらずスカが黒いです。
60名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 18:09:55 ID:RdxXtlJZ
>>58
頑張れー!
Jane入れるといいかもしれない
サモナイの機械兵士は燃えるなぁ……
2のレオルドの他の守護獣と違い何の特別な正体も特殊能力も無い、ただ信念と死んだ同輩の持っていた力だけでラスボスに突っ込む姿勢が好きでした。

そして黒スカ期待
61リリカル! 夢境学園:2008/01/26(土) 18:15:28 ID:r2iu/9ta
そろそろいいかな?
支援をお願いします。

とりあえず前スレのマッド博士談義に影響されてます。
綺麗なスカが好きな人は要注意!
62リリカル! 夢境学園:2008/01/26(土) 18:17:21 ID:r2iu/9ta
時間ですので投下開始!


 
 剣を手に、駆け抜けよう。
 石を手に、歌い出そう。
 思いを手に、戦い抜こう。
 心は願いのために、身体は誰かのために、自らの命を削っていく。
 それは始まり。
 それは終わらぬ贖罪の刻。
 止まるはずだった時間が、再び刻まれる。

 召喚戦記 リリカルナイト……始まります。


【第一夜 管理外の魔法使い】



 そこは無人の世界。
 既に滅び去った文明に残った廃墟。
 その建物の中に、一人の男が居た。
 二人の少女が居た。
 そして、その中心で一人の青年が横たわっていた。
 組み立てられた簡易ベットの上で、包帯に覆われた青年が毛布をかけられ眠っている。
 その顔色は青白く、音もしない呼吸音にまるで死んでいるようだった。

「なー、旦那ぁ。こいつ、本当に助かるんか?」

 赤髪の身長三十センチほどの小さな少女がふよふよと浮かびながら、男に訊ねる。

「――手は尽くした。あとは彼自身の生命力と魔力が持つかどうかだ。息を吹き返す体力が無けれ
ば死ぬだろう。辛うじて生命活動を持続させている魔力が切れれば心臓が止まる。確率は……低
いな」

 少女の問いに、茶色いコートと銀色のガンドレットを身に付けた男は眉間に皺を寄せた。
 浮かんでいる少女の名はアギト。
 それに答える男の名はゼスト・グランツという。
63リリカル! 夢境学園:2008/01/26(土) 18:18:19 ID:r2iu/9ta
「……これは?」

 そして、最後の一人。
 部屋の隅で、脱がせた青年の衣服とそれに付随していた所持品を調べていた少女。
 ルーテシア・アルピーノが、青年の服のポーチに入っていた無数の鉱石を見つめて目を開いた。
 紅、蒼、碧、黒、そして灰色の鉱石。
 十数個にも及ぶ鉱石は照らしてみると、鉱石内部に何かが見えた。
 螺旋状に織られた帯状の光、そして――

「?」

「どうした? ルーテシア」

 それを確認しようとルーテシアが目を細めた瞬間、その様子に気が付いたゼストが声をかけた。

「……わかった」

「なんだ?」

「これは、純粋な魔力の……結晶体」

「なんだと?」

 ルーテシアの言葉に、ゼストが床に転がる鉱石の一つを手に取る。
 僅かな魔力を流し込むと、それに活性化するように鉱石が光り輝いた。

「魔力に反応するのか? しかも、何らかの加工がされているようだが……」

「適応がある……みたい」

 そういってルーテシアが、碧と黒の鉱石を両手に持つ。
 左手に持つ碧の鉱石は輝くものの、黒の鉱石は反応しない。

「なんらかの魔導器か。ミッド式でも、ベルカ式でもない――管理外世界の魔導士か」

「やっぱり魔導士だったんか?」

「そのようだ。ルーテシア、能力が分からない内は起動させるな」

「ん」
Jane使ってただなんて言えないよ支援!
あとサモナイ2の緊迫感というか追い詰められ感はガチだよ支援!
65リリカル! 夢境学園:2008/01/26(土) 18:19:38 ID:r2iu/9ta
 ルーテシアがゼストの言葉に頷いた時だった。
 ガタンという音が、三人の背後から響いた。

「っ!?」

 ゼストが一瞬で姿勢を警戒態勢に切り替え、振り返る。
 そして、そこには簡易ベットから転がり落ち、脂汗を吹き出しながら目を開く青年の姿があった。

「ここは……どこだ?」

 それが、ゼストたち三人が初めて聞いた青年の声だった。

「意識を取り戻したか」

 警戒状態を維持したまま、ゼストが青年の元に歩み寄る。

「ここはサプレスじゃないのか? いや、こんな景色はエルバスタ地方じゃ……まさか別の界に落ち
たのか? それとも」

「落ち着け。傷が開くぞ」

 目を動かし、周囲の状況を理解しようとする青年を慎重に抱き上げて、ゼストは簡易ベットの上に
青年の体を横たえる。

「おー、死ぬかと思ったらいきなり元気じゃん」

「……サプレスの……召喚獣か?」

 ふよふよと浮かぶアギトを視認し、青年は驚くわけでも目を細めてそう呟いた。

「サプレス、なんだそれ? あたしは烈火の剣精アギトだ!」

「……サプレスを知らない? 召喚獣じゃないのか」

「違う。あたしはルールーの召喚獣じゃないし」

「???」

 青年の目が疑問の色に染まり、ゼストが口を挟もうとした瞬間だった。
 彼の右手中指に嵌められた指輪が、薄く輝いたのは。

「っ」

 点滅する指輪に一瞬目を向けたあと、ゼストは青年に顔を向けた。

「混乱している状況は理解出来るが、今は休め。アギト、ルーテシア、面倒は任せる」

「りょうかーい!」

「ん」

「まってくれ……俺は一体……」

「こらー、動くなぁ!」

「安静に……して」

 少女二人に押さえ込まれる青年の姿を後ろ目で見ながら、ゼストはその場から離れた。

 点滅する指輪――己のデバイスに干渉する相手との連絡を開くために。
66リリカル! 夢境学園:2008/01/26(土) 18:20:32 ID:r2iu/9ta
 


 広い空間に一人の男が居た。
 スーツを纏い、その上から白衣を羽織った美麗の男。
 彼は様々な機器が立ち並ぶ端末の椅子に腰掛け、ゆったりと足を組んでいた。

「ウーノ」

「なんでしょう、ドクター」

 その男の横に立つのはウーノと呼ばれた見目麗しい女性。

「人の愛とはなんだと思う?」

「愛……ですか?」

 突然の主の質問に、ウーノは眉を潜めた。

「私は時折考えるのだよ。俗世間の人間が語る愛とは、なんで薄汚いものなんだとね」

 ウーノの返答を待たず、男は語り出す。

「現実を知らない綺麗事の愚者は、尊いモノだと答えるだろう。
 現実を知る賢者気取りは、対象者に対する独占欲であり、依存症だと答える。
 そして、どちらが正しいかといわれれば――圧倒的に後者だ」

 両手を広げ、まるで酔いしれるように男はさらに言葉を続ける。

「愛とは所詮愛欲であり、性欲であり、独占欲であり、欲望だ。汚いものを見たがらない愚者たちは
それらを美しいものだと飾りつけ、尊いものだと褒め称え、事実を彼らの信じる真実というものに書
き換えている。
 否、それだけではない。愚者たちはどんな行為も綺麗ごとで片付けようとする。人を護るのも、人
を助けるのも、人に対して手を指し伸ばすのも、全て独占欲であり、自己満足であり、それから得る
満足感だ。そう、人が行う行為全てが欲望なのであり、それらが愛だというのならば――」

 ゆったりと笑みを浮かべ、虚空を嘲笑うように彼は告げる。

「すなわち私は”愛”で動いているのだよ」

67リリカル! 夢境学園:2008/01/26(土) 18:21:33 ID:r2iu/9ta
「ドクター……」

 そう告げる男の姿が、ウーノには恐ろしかった。
 彼が今まで行っている行為を、彼女は知っているのだから。
 そして、それを愛なのだと断定する心が――彼女には理解出来ない。
 “彼に作られた存在だとしても”

「ところで、ウーノ。そろそろ騎士に連絡が取れた頃じゃないのかね?」

「は、はい」

 彼の言葉に少しだけ慌てて、ウーノが端末を操作する。
 数秒の間を置いて、男の前に広がっていた大型モニターに光が灯った。

『何の用だ、スカリッティ』

 茶色のコートを羽織った巨漢の男が画面に映り、白衣の男――ジェイル・スカリッティに問いかけた。

「久しぶりだねぇ、騎士ゼスト。元気だったかい?」

 刺々しいゼストの言葉を気にすることもなく、スカリッティは微笑を浮かべる。

『挨拶は不要だ。用件を言え』

「大した用件じゃないさ。そろそろ“君の”点検時期だろう? うっかり忘れてやしないかと、心配になってね」

『……薬はまだ残っている』

「投薬で維持しつつけるのも限界があるんだ、暇が出来たらで構わないから来たまえ。あ、そうそう、
もしよかったらアギトも調整してあげようかい? 君とのユニゾン率もそれなりに上昇させることがで
きるが――」

『黙れ、“化け物” 貴様に身を預けるのは、俺だけで十分だ』

「っ! ドクターになんて口を」

 嫌悪に満ち満ちたゼストの暴言に激昂しかけたウーノを、スカリッティは止める。
 微笑を変えず、いやむしろ笑みを深めて彼は嗤う。

「……化け物は酷いなぁ。所詮私は貧弱な科学者でね、繊細な心が傷ついてしまうよ」

68リリカル! 夢境学園:2008/01/26(土) 18:22:49 ID:r2iu/9ta
『用件は終わりか? ならば、切るぞ』

 スカリッティの言葉を聞かず、プツンとモニターの光が落ちた。

「やれやれ、どうやらまだ過去を引きずっているらしいね、彼は」

 スカリッティは肩をすくめる。
 されど、しょうがないだろう。
 “かつて彼と彼の仲間たちを殺したのが、誰なのか知っているのだから”

「まあいい。ウーノ、【マルタ】たちの処置はどうしている?」

「指示された通り、必要血液を確保後、拘束しています。献体ナンバー567・569は大丈夫ですが
ナンバー568は衰弱が酷く、このままだと持ちません」

「んー、568番は歳が歳だからね。そんなに持たないか。じゃ、568は処分して、567・569は献体
リストに回しておいてくれ。若いから、投与実験くらいには使えるだろう」

「分かりました」

「それじゃあ、ワタシは【モルグ】に戻るよ。確保血液はいつもの場所においてあるんだろう?」

「ハイ」

「わかった。それじゃ、指示した通りの処置後、ナンバーズに五時間後再調整をすることを連絡して
おいてくれないか」

「分かりました」

 ウーノに言葉を告げて、スカリッティは部屋から出た。
 その後姿を見るウーノの恐怖と畏敬が入り混じった視線に気付いているのか、気付いていないの
かどうかも分からない態度で。

69名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 18:22:52 ID:lyx5vj/+
1→よりどりみどり、2→貧乳、3→巨乳、4→貧乳、5の主人公はきっと巨乳支援!
70リリカル! 夢境学園:2008/01/26(土) 18:25:02 ID:r2iu/9ta
 
 血液は酸素に触れると赤黒く染まる。
 酸化という現象だ。
 故に酸化しないように真空で保存された血液は紅玉のように綺麗な真紅色だ。

「ん」

 ナンバー567というラベルの付いた試験管。
 その中に満ち満ちた赤い液体。
 蓋を開き、逆さまに喉へと注ぎ込まれた粘着質な液体が彼の――スカリッティの喉を通る。
 鉄臭い味にむせることもなく、粘着質な血液に喉が詰まることもなく、彼は血を飲み干した。

「ふー」

 唇から零れる血の後を指先で拭い、彼は空になった試験管を棚に戻した。
 そこには二本の中身の入った試験管が残っている。
 それらをゆっくりと作業的に、彼は飲み干していく。

 錬丹術という言葉がある。
 黄金などを生成することを目的とした錬金術とは異なり、不老不死を目指した技術、錬丹術。
 人体の気血を材料とした丹田の服用や、死体が長時間保存出来ることから肉体を保てると信じ
硫化水銀などを服用するなど、様々な錬丹術がある。
 されど、その中の概念の一つに他者の血肉を取り込むというものがある。
 手を喰らえば、その指先の技術が。
 足を喰らえば、その足の速さが。
 脳を喰らえば、その知識が手に入る。
 そう信じられていた。
 ならば、その全身に流れている血。それを取り込めば、何を得られるのだろうか?
 答えは――”全て”だ。

「なるほどなるほど」

 血を食らう。
 血を啜る。
 そうして、彼は知識を増やす。
 全身に巡り、手が感じた感触を、足が踏んだ感触を、脳が考えた微弱な電気信号を、血は――
血液は全てを記録する媒体。
 その名を【血識】という。
 そして、彼が居る場所――部屋はその証だった。
 部屋を埋め尽くす紙、紙、紙。山のようにうず高く積もったレポート用紙に隙間もなく書き記された
文字、文字、文字。
 あらゆる知識で埋め尽くされ、そしてそのレポート用紙にはそれぞれ一枚ずつ写真とファイルが
付属されている。
 それは人の名前とその本人の写真だった。
 奪われ、陵辱され、蹂躙された人間の知識の残滓。
 それが集う場所――すなわちモルグ(死体置き場)だと、化け物は皮肉る。
71リリカル! 夢境学園:2008/01/26(土) 18:26:22 ID:r2iu/9ta
「いやはや、忙しい忙しい」

 ガリガリガリガリガリ。
 新たなレポート用紙に片手で文章を記しながら、スカリッティはもう片方の手で複数の写真を掲げた。

 そこに映っているのは六人の男女とその下に書かれた名前。

 スバル・ナカジマ。
 ギンガ・ナカジマ。
 エリオ・モンディアル。
 フェイト・T・ハラオウン。
 八神 はやて。
 カリム・グラシア。

「プロトタイプが二機、プロジェクトFの残滓が二匹、さらには闇の書のマスターに、レアスキル持ち。
他にも他にも沢山の献体がある」

 嗤う。
 まるで子供のような、狂人の如き目で写真を見つめる。

「ああ、欲しい欲しい欲しい。最高だ、機動六課。私を愉しませ、私の心地よい刺激になり、わざわ
ざ献体まで用意してくれるとはね」

 愉しげに。
 愉しげに。

「ありがとう、八神 はやて! 私に対する最高のプレゼントだよ!!」

 彼は心の底から感謝をしていた。
 そう本当に感謝をしていた。

 ガリガリと知識を書き記しながら、彼は喜びに悶える。
 そんな彼の横で、一枚の変色したレポート用紙が落ちていた。
 そして、そこに付属されたファイルとネーム。

 そこには【プレシア・テスタロッサ】と書かれていた。


72リリカル! 夢境学園:2008/01/26(土) 18:27:51 ID:r2iu/9ta
投下完了!
支援ありがとうございました!!


……無限の愛って素敵ですよね。
73名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 18:28:44 ID:YrAxD2Iq
何となく主人公カプ好きな俺が支援!
74名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 18:32:15 ID:lyx5vj/+
ほんわかのんびり時折スプラッタ、それが僕らのサモンナイトクオリティ!

投下GJでありました!
綺麗にしてよし黒くしてよしアホにしてよし、やっぱりスカ山は美味しいキャラだと思うんですよ。
あとゼストの旦那には掘られてもいい。
……はっ!?
(`・ω・´)……まさかこれは旦那ENDのフラ(PAM!PAM!
75リリカルスクリーム ◆0qJqyuBpiQ :2008/01/26(土) 18:40:28 ID:rfx+V54z
GJです!
自分も七時十分位に投下したいのですが構わないでしょうか?
76名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 18:41:07 ID:RdxXtlJZ
>>72
うっわいきなり喰いまくってますねぇスカさん!
三悪魔の出番はあるのかな?
77名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 18:43:10 ID:ivyRtBct
>>真祖の人
これだけは、言わせていただきたい。


みょん、かぁいいよ、みょん……(はぁと
78リリカル! 夢境学園:2008/01/26(土) 18:43:33 ID:r2iu/9ta
おお、短い間に感想が二つもw
感謝です!!

>>73
密かに自分はマグトリ派。
誰も受け入れてくれないのよねorz

>>74
綺麗なスカも好きだけど、やはりマッドならどこまでも黒いのも大好きです。
まあこのスカはある理由で原作よりやばめです。
2をやっていればすぐに分かるはず!
あとゼストや渋い親父は好きだぁ! ゼストはこれから活躍させまくる予定。

>>75
まったくもって大丈夫だと思います。
投下予約は今空いてますよー。
79リリカル! 夢境学園:2008/01/26(土) 18:46:15 ID:r2iu/9ta
>>76
三悪魔は出すべきかどうか悩み中です。
多分”ボディ”は違くなりますが、というかこれ以上出したら機動六課涙目決定になりかねない。
ほんわかサモナイ絵じゃないと、バイオレンス決定なんですよね、奴ら。
80リリカルなのはStrikerS+仮面ライダー:2008/01/26(土) 18:47:43 ID:OkCCP5Gy
昭和ライダー復活編の予告が完成しました。
今夜あたりには映画宣伝みたいな感じで投下しようと思うんですけどどうしましょう…
物語的にはまだ先だし…
やっぱり本編開始直前に投下したほうが良いでしょうか?
81リリカル! 夢境学園:2008/01/26(土) 18:50:29 ID:r2iu/9ta
>>80
時期的に、本編開始前に投下したほうがいいじゃないでしょうか?
タイミングって重要ですし。

あと、リリカルスクリーム氏の予約が入ってますので、気をつけてください。
82リリカルスクリーム ◆0qJqyuBpiQ :2008/01/26(土) 18:57:23 ID:rfx+V54z
>>80
今すぐ投下可能で投下の直後に俺が投下しても構わないのなら俺は構いませんよ。
でも夢境氏が言うように本編の直前に投下したほうがいいのでは?
83StS+ライダー:2008/01/26(土) 19:06:44 ID:OkCCP5Gy
やっぱりまだ先の方が良いか…アドバイスありがとうございます。
みなさん申し訳ありませんがもうちょっとだけ今の展開を我慢してください。
あとスクリームさん支援
84リリカル! 夢境学園:2008/01/26(土) 19:09:41 ID:r2iu/9ta
そろそろ投下かな?
先走ってリリカルスクリーム氏 支援!
85なのはStrikerS-NEXT14話 ◆0qJqyuBpiQ :2008/01/26(土) 19:14:27 ID:rfx+V54z
なのはStrikerS-NEXT14話「妄想機械」

その頃スマートブレイン本社では。

「お前そのレモンティー好きだな。」
「あ…うん、まあね。」

ディエチと椿秀一が机で缶に入った紅茶を飲んでいる
その脇では北條が例によってサイガに凹されたノーヴェと彼女の背中にひっつくように
おぶわれているチンクをおぼつかなげに担いで歩いていた。

「もっとしっかり歩けよ!」
「おぶってもらっているのにそんな口の利き方があるかっ!申し訳ない北條さん。」
「いえ…。」

肩越しに怒鳴るノーヴェを更に肩越しにチンクが怒鳴った。
さらにその後ろでは北條にコーヒーの空き缶を投げつけようとしたクアットロがオットーに耳を引っ張られている。
拗ねたようにしぶしぶ部屋へ戻っていくクアットロ。ペットボトルやらゲーム機やゲーム機が散乱する中
部屋の真ん中に意味ありげに大き目のトロ箱が置かれている。仏頂面だったクアットロが笑顔になった。

「ミレディー、コンスタンス、シュヴルーズ、グリモー、ムスクトン、バザン。お腹空いたでしょ?今ご飯あげますからね〜。」

トロ箱の蓋の中には…ゴキブリチックな色をしたサソリとザリガニとタランチュラをごっちゃにしたような外見で
しかも本来そういった甲殻類には有り得ない爬虫類のような赤く爛々と輝く目とギラ付いた歯を持つネズミくらいの
大きさの生き物が五匹ほど蠢いていた。
愛嬌というものはまるで感じられないしなにより不気味だ。この生き物はミッドチルダ原産の節足動物で現地でも
屋外に入り込んで台所を漁ったり人を刺す害虫として嫌われている。

「よしよし、ちょっと待っててね〜。」

彼女が飼っているのはスカリエッティの研究所に住み着いて居たものでもともと
殺処分にされる筈だったのをクアットロがセインやウェンディにイヤガラセをするために飼っていたものでその当時は
彼女自身も気持ち悪がっていた。だが飼っているうちに愛着が湧いて行き今となっては彼女のほぼ唯一の心の拠り所と
言っていいほどの愛情を注ぐようになっていたのだ。
躊躇する事なく彼らが這い回るトロ箱に躊躇無く手を差し伸べるクアットロ。
そんな彼女の手に纏わり付きこそすれ鋏や顎で食らい付きはしないというあたり虫の方もクアットロを憎からず思っているようだ。

「あ、あれ?バザン?何処?」

不意にクアットロが慌てた顔でトロ箱を探り始めた。
86なのはStrikerS-NEXT14話 ◆0qJqyuBpiQ :2008/01/26(土) 19:17:00 ID:rfx+V54z
彼女がさきほど呼んだ名前は六。そしてこの箱の中に居る虫は五匹。
そう、一匹いないのである。
さらにクアットロはトロ箱の一角に穴が開いて居る事に気がつくと血相を変えて部屋を飛び出した。
その頃

「セッテの奴が何処にも居ないとはな。」
「あの人の相手を一日中させられたら嫌にもなるんじゃない。」

忌々しげに言ったトーレに頭の後ろで手を組みながら尾室が言った。
スカリエッティは事ある事に付近に居るナンバーズに当り散らしてまわっており、今日もまた
ドクターの部屋の番をさせられているセッテに当り散らしているのは想像にかたくない。

「何だと貴様!ドクターをバカにすると許さんぞ!」

トーレが尾室に掴みかかった。

「昔どんな立派な事やってたか知らないけど今はただ酒飲んで怒鳴ってるだけじゃないか。
ていうか胸、当たってるけど?」

トーレが舌打ちをして腕を引っ込める。

「オットーの服は胸に余裕が無さ過ぎる。いくら私の服が洗浄中とはいえ…。」

バリアジャケットとは違うナンバーズのスーツは無論普通の服と同じように
洗浄が必要だ。トーレはそのためオットーのステルスジャケットを着ていたのだ。彼女達のスーツは
オートフィット機構搭載なのでサイズの差は調節できるが体型まではサポートしていなかったらしい。

「だから、社員の制服を着ればいいって言ったじゃないか。」
「敵方の服を着るくらいなら死んだ方がマシだ!」

トーレが尾室に怒鳴った。

「胸に余裕が、無い…。」

ふにふに…すかっ…。
歩き去ったトーレと尾室を尻目に自分の胸を揉んでみるオットー。だがその手は空しく空を切るのだった。
87なのはStrikerS-NEXT14話 ◆0qJqyuBpiQ :2008/01/26(土) 19:21:17 ID:rfx+V54z
「………。」
「病まない病まない需要はあるある。」

俯くオットーの肩を叩に手をやって言うディード。

「それ、慰めになってないよぉ…。」
「そうなのか?ごめんオットー…この本にはこういう場合こうやって慰めろって…」

ディードがオットーに見せた本には
「伝説の少女A語録。その時彼女はこう言った!只沢命斗著」
とドデカく印刷されていた。
そのとき。

「や、やめろよ!私こんな服着るの嫌だ!チンク姉も何とか言ってくれよ。」
「もう遅いって。似合ってるじゃん結構。」

更衣室の方からセインとノーヴェの声が聞こえる。

「堪忍するッスよノーヴェ。ジャジャーン!どうっスか?」
「な、なんだよその格好?」
「なんだか頭が痛くなってきた…。」

椿が素っ頓狂な声を挙げた。ディエチは彼の横で頭を抱えている。
黒い露出の多い水着のような服に身を包んだセインとウェンディが、そして二人に
引っ張られてノーヴェが現われた。チンクを送り届けた矢先に彼女達に運悪く捕まってしまったのである。

「エンジェルなんとかいうレストランの制服らしいッス。イイでしょ?ひよりさんが貸してくれたんスよ〜。」

ウェンディがスケッチブックに凄まじい勢いでペンを走らせている長髪の眼鏡をかけた少女を指差した。

「あ、私田村ひよりっす。ウェンディさんとセインさんとはこないだ知り合って以来
じっこんの仲なんですよ。いやあもう創作意欲が湧くのなんのって…。
この制服いいでしょ?ちょいとコネがある店に貸してもらったんすけど30年も前に
デザインされたにも関わらずこの大胆さと全く色褪せない秀逸さ。もう一種の芸術っすね。」

田村ひよりと呼ばれた少女は楽しそうに言った。

「ここ一応関係者以外立ち入り禁止なんだけどなあ…。」
「おおっ…。これは…凄い!間違いなく半世紀に一人のカップル!」

ディードに寄り添われながら呟いたオットーに気付くやいなやひよりは猛然と手を動かし始めた。
88なのはStrikerS-NEXT14話 ◆0qJqyuBpiQ :2008/01/26(土) 19:24:23 ID:rfx+V54z
「…何書いてるの?」

三枚ほど書き上げたところでオットーがひよりの手にしたノートを覗き込む。

「…へ?あああああ!いや…これはその…。」

そこには頬を赤らめて熱い接吻を交わすオットーとディードが描かれていたのだ。
こんな絵を描いていたと知られれば間違いなくなじられると考えたひよりが渋い顔をする。
しかし帰って来た答えは彼女の予想をいい意味で裏切った。

「ねえ、これ一枚でいいから貰っていいですか?」
「え?い…いいすけど…」

仲むつまじいとしか表現出来ないしぐさで二人して自分達が接吻するイラストを眺めるオットーとディード。
ひよりの顔が驚きから興奮へと変わっていく。

「も、もしかしてお二人さん…ガチなんすか?うっひゃーーーー!半世紀どころか十世紀に二人の逸材だーーー!」

その後ひよりは一時間に渡って都合二十枚のオットーとディードの絵を描きまくったという。
その頃

「いない…いない!バザン、何処〜?」
「さっきから何を探しているんだクアットロ。」

トーレと尾室のはいなくなってしまったペットのサソリガニ(正式名称不明)を
必死になって探しているクアットロに遭遇していた。

「トーレ姉様、私のバザンが…バザンが…。」
「ティターンズの野獣がどうかしました?」
「バザン…ハッ!?まさか…あの虫か?」

ベタベタなボケをかます尾室、だがトーレは顔をこわばらせた。
トーレは空戦シムから自室に戻る途中に天井を這っていたサソリガニが顔面に落っこちてくるという
おぞましい出来事に遭遇した経験があったのだ。
あの気持ち悪さときたら一生忘れられないだろう。他の姉妹には気取られないようにしていたものの
クアットロがこれを飼い始めたと知ってからはトーレは彼女の部屋に近づこうともしなかったほどなのである。
89リリカル! 夢境学園:2008/01/26(土) 19:24:56 ID:r2iu/9ta
支援
90なのはStrikerS-NEXT14話 ◆0qJqyuBpiQ :2008/01/26(土) 19:26:57 ID:rfx+V54z
その時、
カサッ!

「うわあっ!」
「なっ!?あの…。また胸当たってますけど」

不意に背後でした音にビビって思わず尾室の腕に抱きつくトーレ。

「ただの紙切れですよ。一体どうしたんです?バザンとかいうのって虫なんですよね。
てことはひょっとして虫が怖いとか?」
「五月蝿い!そんな訳あるかこの変態が!」

ニヤニヤする尾室を鼻息荒くこづき回すトーレ。
その頃

「もし…ウーノさんとお見受けしましたが?」

スマートブレイン社の正面玄関の日当たりでまどろんでいたウーノは不意の問いかけに怪訝そうに顔を上げた。

「私は高村光介というものです。あなたとジェイル・スカリエッティ氏のお噂はかねがね…。」
「ドクターに何の用ですか…?」

初老の男性は名刺を差し出すと静かに言った。
この高村光介こそ、かつてアンノウン事件に際しG3の後継機として強化装甲服「V-1システム」を開発した城北大学の教授にして
小沢澄子のかつての師である。

「いや、ちょっと彼と会って話をしてみたくなりましてね…。」


91リリカルスクリーム ◆0qJqyuBpiQ :2008/01/26(土) 19:36:45 ID:rfx+V54z
ここまでで。
>ミレディー、コンスタンス、シュヴルーズ、グリモー、ムスクトン、バザン
この名前は「三銃士」に出てくるヒロインと主人公の三銃士の従者の名前が元ネタです。
主人公の名前を敢えて外して従者の名前をチョイスしてみました。
ちなみにサソリガニwですが「なのはTRANSFORMERS」のフレンジーが管理局に潜入するダクトに出てきた
害虫駆除センサーに引っかかって死んだあの蟲の近縁種(ドブネズミとクマネズミみたいな関係)って設定です。
ひよりんはらき☆すたの登場人物でウェンディの言う「エンジェルなんとか」
はひぐらしに出てきたあの店の制服ですw
高村光介氏は仮面ライダーアギトに出てきた人物で城北大学の教授ですね。
彼がスカリエッティ復活のキーになる予定。
92魔法少女リリカルなのはStylish:2008/01/26(土) 21:02:04 ID:ColQ0ytk
>片翼
セフィロスのダークヒーローぶりにはもう尻を捧げるしかない(挨拶
あのセフィロススマイルで「殺したよ」とか、もうお前全然正義サイドじゃねえよwかつてラスボス張っただけに、違和感ないっていうかむしろ板につきまくってますね。
まあ、そこに痺れる憧れるんですが。
あと、自分がクアットロに萌えたのは北条さんとグレイヴとの絡みぐらいだったんですが、今回の物凄い勢いで敗北フラグ立てて失墜していったクアットロに別の方向の魅力を感じてしまいましたね。
余裕綽々の状態から一瞬でガチビビりで恐慌状態に陥るクアットロ、へたれかわいい。
っていうか、あれですよね。あのピチピチのナンバーズスーツの腹の部分を刀で切り裂くとか……アレだよ、エロくね?(ぉ
アンジールとのモンスター合戦とかヴィヴィオの鬼装備とか、いろいろ見所はありましたが、やはり一番はそこかな、とw
最終回も近いようで、今後に期待大。今回の外道ぶりを見る限り、セフィロスがいきなりラスボス認定されても別に驚きはしないのですが、どうでしょう?w
次回も頑張ってください。

>なのはStrikerS-NEXT
ひよりとウェンディが並ぶと「〜ッス」「〜っす」とうるさかわいいなぁ。そして、悪趣味クアットロが素敵ですね。
多重クロスはキャラの多さにメリットとデメリットがありますが、なんか最近らきすたをクロスさせたのもアリかな? と思い始めてます。
前回のそうじろうと草加のやりとりなど、思わぬ組み合わせが面白いですね。
そして今回、久しぶりに北条さん登場で自分歓喜。まったく、相変わらず性格悪いのに変なところで優しいなぁ北条さんはw
そして、もうダメ人間となったスカ山の復活に期待です。
っていうか高村教授の名前は忘れてたのにV‐1開発者という点で顔は思い出せちゃう俺はアギト好きw
93名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 21:20:36 ID:Nqu+lja+
>91
サソリガニがビーストランページや実写メガザラックのイメージでした。
94戦国の鉄の城:2008/01/26(土) 21:22:58 ID:oZpVOU99
職人の皆様GJです!
セフィロス…その行動まさにダークヒーロー?ものすごく痺れました。
かっこよすぎるよセフィロス。

そしてオットーとディードに和んで萌えた俺がいる。
こういう和みもまたいいものですなぁ…。

と、差し支えなければモンハンクロスを30分あたりに投下したいと思います。
時間は…大丈夫だよね。うん。
95リリカル! 夢境学園:2008/01/26(土) 21:30:26 ID:r2iu/9ta
さあ狩りの時間だ!
支援ですよー
96名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 21:31:35 ID:It636bV/
>片翼の天使
相変わらずのGJ
セフィロスの発言が絶対正義サイドのそれじゃないwww
さすがもとラスボス。怖すぐる。
セーヴァセフィロスは、普通に戦うと普通に強いけど超究武神破斬やナイツオブラウンドとか使うと一瞬で終わったことが印象に強いなあww

しかし一点気になることが。
マテリアの名前は、ほのお、いかずち、れいき、かいふくとかだったですよね?
リフレクもバリアのマテリアの技だったかと。
あとただのカウンターは物理攻撃による反撃で、
魔法攻撃の反撃はまほうカウンターというマテリアがあったと思います
97戦国の鉄の城:2008/01/26(土) 21:32:08 ID:oZpVOU99
では、時間ですので投下したいと思います。
この回入れて二話ぐらいドク中心。
98仮面ライダーリリカル電王sts:2008/01/26(土) 21:32:09 ID:2rFnMM5N
支援いたします。
99戦国の鉄の城:2008/01/26(土) 21:32:56 ID:oZpVOU99
魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER

第九話「対面」

「じゃ、よろしく頼むぜ。できるよな?」
「ちょいと時間はかかるけど早めに仕上がるように努力してみるニャ。」
会話するジェイと武器屋のアイルー。彼等の隣にあるテーブルには大きな袋と二本の刀。ジェイは頷くと立ち上がる。
バン、と紙幣をテーブルに叩きつけるように置いていく。札束が三つと小銭が数枚、ジェイはそれを見てちょっと名残惜しそうな顔をしていた。
「まったく、ここに来ても金を払わなきゃならないのかい?」
「商売だからニャ。それにシャーリーさんに設備の使用費も払わなきゃいけないからニャ。」
「ご苦労なことで。」
ドアに向かって歩き、傍らに置いてあった太刀「鬼神斬破刀」を背負うとさっさと部屋から出て行く。このあとは確かミーティングだかなんだかがあるはずだ。
おそらく上からクエストでも受けたのだろうか。どんな相手と戦うのだろう、不安によく似た期待がこの胸を満たす。
歩きながらアイテムポーチの中身を確認して、会議室の前に立つと勢い良く扉を開けた。
100戦国の鉄の城:2008/01/26(土) 21:34:39 ID:oZpVOU99
会議室に入るとしかめっ面をしているはやてが目に入った。横には同じようなしかめっ面をしたフェイトとなのは。次にドクとゼクウ。
「はやて、これでハンター組揃ったぞ。用件を聞かせてもらおうか?」
「とりあえず、これを見て欲しいんよ。」
ゼクウが口を開くとはやては三枚の紙を取り出し、デスクに置いた。三枚の紙には別々の依頼内容が書かれており、場所もさまざま。
依頼の紙にクリップで留められてあったのはその場所に出現したモンスターの写真。どれもこれも見覚えがあってむしろ懐かしい。さて、どうやって写真撮って生き残れたんだ?
一つは地上本部地下施設に巣食ってしまったモンスターを討伐せよ。のことだ。続いてモンスターの写真に目を通す。
白い身体に伸びる首、目、鼻がないヒルのような不気味な顔を持つ飛竜、「フルフル」。
担当する小隊はライトニング。つまりフェイト達の小隊とともに狩りにいくというわけだ。後ろを向き紙をヒラヒラするとゼクウが頷いてから取る。
「では、このクエストは俺が受けよう。」
「よろしくお願いします。」
「うむ。」
二つ目は保護施設と監獄の防衛と言い終わる前に紙をドクに取られてしまった。代わりにドクが声を出して内容を読み上げる。
そしてそのクエストの紙に留めてあった写真を見ると白い鎧のような甲殻を持った竜が口から熱線を吐いて施設を破壊している場面が写っていた。
こいつは鎧竜、「グラビモス」だ。何故かドクの拳に力が入っているが特に心当たりはないためなにも言わないことにした。
担当小隊はいないらしく、かわりにそこの保護施設で更正プログラムを受けている者達が協力してくれる、と書いてある。
「このクエストは私が受ける。」
「はい、わかりました。」
「……あぁ。」
ドク、何か因縁でもあるのだろうか?
さて、三つ目だ。こいつは…地上本部の周囲に巣食ったモンスターの討伐だ。
写真にはジェイが良く知っている相手が写っていた。橙色と青色のまだら模様をしていたその姿は四年前、雪山で見た飛竜。
ジェイは眉を顰めて写真をじっと睨みつける。どちらにしろ残ったのはこのクエストだから受けなくてはならない。
その相手、轟竜「ティガレックス」。
担当小隊はスターズ。なのは達の部隊、これは何かの因縁というやつだろうか?なのはを見るとやはり表情が暗い。確かヴィータもこの小隊だっけか。
「ということは俺がこのクエストを受けることになるな。」
「よろしく……お願いします。」
「こちらこそ頼む。」
全員の様子を伺ってからはやては立ち上がって口を開く。
「早速で悪いけど、一刻の有余もないんや。出撃するで。」
「「「「「了解……!」」」」」
五人の声が重なり、皆は会議室を出て行った。
101戦国の鉄の城:2008/01/26(土) 21:36:21 ID:oZpVOU99
会議が終わり数時間後にハンター組の一人、ドクは保護施設に降り立った。
「じゃあがんばってくださいね。ちゃんと、生きててくださいよ?」
「努力はするさ。」
アルトが操縦するヘリがドクを降ろすとプロペラを回し、空中に飛立つ。ヘリを見送り、あたりを見回してみる。
そこは写真で見る景色とはかなり違っていた。半壊した施設に何かで溶かされて穴があいている壁。これもグラビモスの仕業と考える。
おそらく溶けた跡が残る壁はグラビモス自慢の熱線でやられたのだろう。とにかく酷い有様だ。
気付けばドクの前に薄い紫の髪の少女が立っていた。
「あなたがドクさんですか?」
「本名ではないがね。まぁ、そうだ。」
「私は……」
「ふむ、ギンガ・ナカジマでよかったかな?」
「え?どうして私の名を……。」
「ミーティングで名前を聞いた。それだけさ。」
「はぁ……。では、こちらへどうぞ。」
自己紹介というよりかはただの名前の確認をするとドクはさっさと案内された道を歩く。もちろんギンガとは会話せずにただ歩く。
ギンガは時々不信感が溢れた視線でドクを見るがはやてが紹介してくれた人物なのだから何も無いと思った。というか、そう信じたかった。
一方のドクは表情に焦りが混じっている。歩調もギンガよりも速くなっているし辺りを何回も見回している。とある箇所に出ると歩を止めた。
視線の先には七人の少女。その姿を見た瞬間ドクの雰囲気は少しだけ和らいだ。だが少女達の表情は暗い。ドクは少し間をおいてから話しかける。
「やぁ、君等が現地の協力者かい?」
「あなたは……?」
まず最初に声を出したのは隻眼の少女、チンク。チンクもそうだが皆がドクに向ける視線は殺気にもよく似た警戒があらわになっている。
「ここら辺に出現したモンスターを狩りに来たハンターさ。」
「ということは貴方が八神はやての言っていた助っ人?」
「そういうことになるな。しかし、君等は武装していないようだが。」
チンクの隣にいた茶色で長髪の少女、ディエチが次に口を開ける。
「私達は、あくまでここに保護されてる身だから。」
後ろを向き、ギンガを見る。ギンガは「こればかりは……」とどこか辛そうな顔で視線を逸らした。ドクは彼女の言葉を理解した。ここにいる彼女達は保護下に置かれていて武装が
許されていない。たとえグラビモスが攻めてきてこんな状況でもだ。ふと想像してみる。ここにいる魔導士は全滅?見る限り修理しているものしか見当たらない。
「ここの戦力はどうなってるんだ?」
「ほぼ全滅です。」
「では聞こう、ギンガ。モンスターと戦ったときどんな状況だったかね?」
「はい、それは……」
ギンガの口から戦ったときの状況が話される。白い龍がいきなり現れて施設を破壊。口から発せられた熱線により人や壁が溶けて、まさに地獄絵図のようだった。
応戦し、なんとか倒すことに成功したが次に現れたのは白い龍と同じ姿で黒い甲殻をもった龍。恐るべき甲殻の硬さで魔導弾が中々効かずに苦戦。
右目を潰したが怒りが爆発。突然身体から発したガスで付近のものが火だるまになってしまったという。
撤退して今に至る……というわけだ。
一つ気付いた。狩りにいく相手はグラビモス。しかしただのグラビモスではない。黒い甲殻を持ち、かなりの防御力を持つ『亜種』だ。
戦力には期待できない。というよりは一人で戦うことになるのと等しい。……だとしたら?また少女達へ視線を移す。
………ここは一人で戦うしか選択肢はないようだ。
102戦国の鉄の城:2008/01/26(土) 21:38:09 ID:oZpVOU99
夜、ドクは自室で刀を研いでいた。刀は自分の顔が見えるくらいに、実に美しく、そして切れ味も抜群になるほど研がれていたのだが彼はその行為を止めない。
自分でもわからないが作業をやめようという気になれない。研いでいるのは狩った相手から武具の素材を剥ぎ取る時だけに使用するナイフだったのだが何故か、
彼は研がないといけないような気がしていた。不安を紛らわす…というのも少しだけあるのだが。ライトの明かりが反射するほど光っても、止めない。
刃と砥石が擦れ合う音が部屋の中に響く。
自分が必要ないと言っているのに結局少女達全員と自己紹介するハメになっていろいろと説明していると次第に頭の中に何かが渦巻いていく。
「まぁ、私には関係ないと思いたいがね。」
ヒュン、と投げると数回転、落下して机に刺さる。次にアイテムボックスから自分がよく使用している防具「暁丸・覇」を取り出して装着しはじめる。
右手に籠手をつける前に鉤爪の付いたグローブをつけるのも忘れない。握り拳を作ると指の部分に通っている赤い線が発光、手の甲にある金色の宝石も光り始めた。
アイテムポーチに入れられるだけのアイテムを詰め込み、兜を被ろうとした瞬間ドクは何かを耳にした。

始めは雷鳴かと思った。しかしテンポが一定だ。
重く響く雷鳴によく似た音は近くなる。
途中で何かが崩れ去る音と、唸り声。

ドクは確信する。
「やれやれ、どうやら徹底的に潰さないと気が済まない性質らしいな…!!」
兜を被り、ガンランス「ディープフィッシャー」を取り出すと自動ドアが動く前に思い切り開け、走り出していった。
103戦国の鉄の城:2008/01/26(土) 21:38:38 ID:oZpVOU99
番外その6「グラビモス」
ふむ、たまにはこのドクが説明するとしよう。
グラビモスは竜盤目 獣脚亜目 重殻竜下目 鎧竜上科 グラビモス科 で別名は鎧竜。
主に火山域に住む大型の飛竜で成長にとともに外見が大きく変化するため、幼体はバサルモスと呼ばれ区別されているのだ。 …変える必要あるのかね?
ほぼ全身が強固で耐熱性に優れた甲殻に守られており、短時間なら溶岩の中を潜行しても大丈夫なほど。便利なものだね。過熱した体を冷ます為に、
新陳代謝の一環として爆炎を体外に吐き出す。実は熱線も、体内に溜まった熱を排出することで形成されるんだ。以上の能力が一段と強い個体は甲殻が黒色化。
バサルモスは毒ガスを噴出するが、こいつは睡眠作用のあるガスを噴出する。どう変わったのかはまだ解明されていないのだが……。ククク、いつか解明してみせるさ。
どうやらバクテリアとの共生のおかげで鉱石までも食料にしてしまうらしいな。そのバクテリアの活性化のため、紅蓮石や爆発性のある火山岩を好んで食す。
原色の甲殻は灰色で亜種は黒…とされているが原種の黒化個体で厳密には亜種とはいわない。ようするにバサルモスからの成長過程で黒くなったというべきかな?
……そういえばどこかの誰かが生身で溶岩の中から出てきたのを見たことがあるぞ。人なのに。
104戦国の鉄の城:2008/01/26(土) 21:39:35 ID:oZpVOU99
投下終了です。
毎度のことながら短め。
次は黒グラビモスとの戦いのお話。
105リリカル! 夢境学園:2008/01/26(土) 21:44:01 ID:r2iu/9ta
>>104
GJ! ドクことスカが、娘たちを護るために奮闘する姿が目に浮かびそうです。
次回辺り、正体判明かな? しかし、ナンバーズが声で正体に気付かなかったのが意外でした。
次回孤軍奮闘するドクの戦いに今からワクワクしています。

蛇足
解説の溶岩から出てきた人って……野菜の名前が付く宇宙人の方ですか?w

106反目のスバル@携帯 ◆9L.gxDzakI :2008/01/26(土) 21:48:53 ID:VcMzM+NG
GJ!

>>96
DVD版ではごっそり修正されるのがなのはクオリティ。
…スンマセン、本当にごっそり修正します。
でもカウンターはこっちの方が分かりやすいんでそのまま採用。まほうカウンターもあん中にあったんだよ…ってことで
107戦国の鉄の城:2008/01/26(土) 21:52:51 ID:oZpVOU99
>>105
あれだ、スパイダーマンやスーパーマンの登場人物が声で気づかないのと同(ry
解説は……ご想像にお任せします(オイ
108仮面ライダーリリカル電王sts:2008/01/26(土) 21:55:14 ID:2rFnMM5N
GJです。ドク孤軍奮闘ですか。スゴッ!
さて、予約がないようたので10:55からカービィ第二話を投下したいのですがよろしいですか。
109名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 22:00:15 ID:ORcs9nwp
GJ!!
次の回はドクター祭りだwワッショイw
110名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 22:01:03 ID:QEwCT0u9
>……そういえばどこかの誰かが生身で溶岩の中から出てきたのを見たことがあるぞ。人なのに。

お館様自重してくださいw
111名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 22:01:59 ID:It636bV/
GJ。
スカさんカッコイイなもう!
愛娘達を守り抜けるのか!? 
次回が楽しみで仕方ないです。
しかしなぜディープフィッシャー……素直にリヴァイアサンでいいやん……
暁丸・覇を持ってるレベルのガンランス使いのハンターがディープフィッシャーというのは逆に違和感が……
112戦国の鉄の城:2008/01/26(土) 22:10:52 ID:oZpVOU99
>>108
孤軍奮闘…、ゲームの中でやるとものすごくダルイ作業に(ry

>>109
この機に生じて原作じゃありえない動きをするドクターでも書いてみようかと…。

>>110
その答え(ツッコミ)を、待っていt

>>111
ちょうど暁丸・覇を作ったらお金がなくてリヴァイアサンが作れないという経験をしたので
ドクにも味わってもらいましt(マテ
113名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 22:14:41 ID:HsCSEUTN
それでは11半くらいに電王氏の後にでも投下したいと思います
114魔装機神:2008/01/26(土) 22:17:13 ID:HsCSEUTN
すいません、名前表記するのを忘れてました
115名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 22:19:22 ID:x+C5vs98
>>112
ボウガンでラージャンと一騎打ちしたのに比べればまだマシな気もしますよwwww
116名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 22:36:57 ID:xKquszAF
GJ!
スカなら肉ハンマーやマグロで古龍を殺っても違和感無いな
117仮面ライダーリリカル電王sts:2008/01/26(土) 22:57:21 ID:2rFnMM5N
さて、時間となったんで投下します。今回はボスが出てきます。
それでは、支援ヨロシクお願いします。
118仮面ライダーリリカル電王sts:2008/01/26(土) 23:01:40 ID:2rFnMM5N
それでは投下します。

その事実は残酷だった。

初めは信用できなかった。

誰もが疑った。

信じたくなかった。

助けたい人達が戦うべき相手なんて。

信じたくない。

真実と思いたくない。
認めたくない不安があった。

けれど、アイツは全て吹き飛ばしてくれた。
例え道を阻まれようが
ボロボロになろうが

アイツを信じて

行こう!どこまでも!
星のカービィリリカル次元を超えた出会い

始まります。


ここはデデデ城。デデデはワドルディに命じ、食料と衣服、テントなどを用意しリボン達を待っていた。

「しかし、リボンちゃん達、遅いの。」

「大丈夫です。リボンちゃんですから。」

「そうやな。」

デデデと気さくに話しているワドルディは以前リボンと共に旅をした仲間の一人だ。二人が談笑していたその時城に轟音が響き渡った。

「な、なんや!?何が起こったんや。」

「敵襲!敵襲〜!」

すると衛兵が叫びながら城内に駆け込んで来た。

「陛下、報告します。青い髪の女と赤い髪の女が襲撃、既に我が方は兵力の半数を失っております。このままでは、全滅です。陛下、ワドルディ副隊長と共にお逃げ下さい!」
119仮面ライダーリリカル電王sts:2008/01/26(土) 23:04:08 ID:2rFnMM5N
「逃げれられたら困るんだよ。」

赤い髪の女〜ノーヴェは自らの武器ガンナックルを向けながら言った。

「ここは、対カービィの前線基地となるからね。」

青い髪の女〜スバルはそう言ってリボルバーナックルを構えた。

「カービィ達をどうするつもりや!答えようによっちゃあ只じゃおかんデ。」

「何言ってんの。消すに決まってるでしょ。」

スバルの後ろから現れたツインテールの女〜ティアナは答えた。

「け、消すやて!いい加減にせぇやぁ!」

そう言うとデデデはハンマーを片手に三人に突撃した。

「バカね。」

その頃ヴィヴィオ達はデデデ城へと急いでいた。すると、デデデ城の方に火の手が見えたのである。

「何かあったんじゃ。とにかく、急ぎましょう!」

「うん!」

「マテッ、誰か居る!」

チンクはそう言うとスティンガーを構え、アギトは両手に炎を灯した。
そして、目の前の草むらを調べるとどうだろう、そこにはボロボロの状態のデデデとワドルディが居たのだ。

「どうしたの!何があったの!」

「リボンちゃんか…。城が襲撃されて、私と陛下は逃げのびたが、もうすぐ、追ってが…」

120仮面ライダーリリカル電王sts:2008/01/26(土) 23:06:27 ID:2rFnMM5N
「しっかりして!デデデも!」

「すまんな。情けないデ。たった三人の女にやられるなんてな。」
「三人の女?」

チンクはデデデが言った言葉について質問した。

「ああ、そうや。アレは強かった。」

(回想)
デデデはハンマーを弾かれノーヴェに一方的に殴られていた。

「どうした!そんなもんか。」

「まだや。まだまだぁ!」

「いい加減にしなさいもう負けは決まってんのよ。」

「陛下お逃げ下さい。ここは私が。」

「隊長!」

「フッ、陛下を頼む!ウオォォ!」

そう言って隊長はスバル達に突っ込んでいった。

「邪魔しないでね。」
スバルはそう言うと、青い魔力を溜め、隊長に向け自身の最大の魔法を放った。

「ディバィーンバスタァー!」

「グアァァッ!」

「隊長オォー!」

「隊長が自らを囮にしてわい達を逃がしたんや。」

「そしてその命もここで尽きるのよ。」

「鬼ごっこは終わり。覚悟して。」

「ぶっ飛ばしてやるからよ!」

デデデがそう言った直後声が響いた。

「チッ!もう追いつかれたんか!」

「バカなそんなハズはない。」

「嘘だろ…。」

チンクとアギトは驚愕した。そこにはノーヴェ達が居たのだから。
121仮面ライダーリリカル電王sts:2008/01/26(土) 23:09:15 ID:2rFnMM5N
「スバル!お前どうして!」

「関係ないでしょ。消えなさい。」

「危ないッ!」

チンクはそう言うと、スバルへと、スティンガーを投げた。スバルが避け、地面に刺さったのを見ると自身のISを発動させた。

「ISランブルディトネイター。」

すると、スティンガーは爆発したのだがスバルの姿はなく、そこにはノーヴェがいた。

「ふざけんな。くらえ。」

アギトも火炎弾を放つが当たるようすはない。

「へっ、この程度かよ。」

「こいつら、カービィって奴の仲間だったのか。丁度いいぜ、纏めて消してやる。手をだすなよ。」

「ま、待てノーヴェ!姉だ。チンクだ。」

「あぁ!そんな奴知らねぇなぁ!」

「そんなッ!」

チンクは愕然とした。自らの妹が自分を殺そうとしているのである。

「お前とは戦いたくない。」

チンクはそう言うとスティンガーを落とした。

「ハッ、潔いな。分かった。お望み通り、一番に消してやるよ。」
そう言ってノーヴェはガンナックルを構えエネルギー弾をチャージし、放った。

(すまない、皆助けられずに先に逝くぞ。)
122名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 23:11:45 ID:L3qo5/5k
支援
123仮面ライダーリリカル電王sts:2008/01/26(土) 23:12:23 ID:2rFnMM5N
チンクが諦め、目を閉じたその時!

「カービィ!吸い込んでぇぇ!」

「ポヨッ!」

「な、嘘だろ。」

ヴィヴィオが叫ぶと同時にカービィがエネルギー弾を吸い込んだのだ。そして、カービィは空中で一回転した。すると、赤い鬣がつき\の文字が刻まれたヘルムが装備されノーヴェの物と同じガンナックルとジェットエッジが装着されたコピー能力《ナンバーカービィ\》が現れた。

「力をコピーした所でこっちの方が上だぁ!」

そう言うとノーヴェはカービィに向かって次々と攻撃を繰り出した。
しかし、ノーヴェの放つ射撃をカービィは鋭いステップでかわしていくと《ISブレイクライナー》を発動させ、一気に距離を詰めて来たのだ。

「クソッ!ISまで。この当たれッ当たれぇ!」

「ポヨォォッ!」

「グハッ。この野郎ォくらえぇ!」

ノーヴェはカービィに殴られた瞬間、ジェットエッジを最大にし、回し蹴りでカービィを吹き飛ばそうとした。
「オラァッ!」

「ポヨッ!」

カービィは蹴りを受け流すとその勢いでノーヴェの頭に回し蹴りを叩きこんだ。そして、次々とコンビネーションパンチを決めていった。

「が、ガハッ、グハッ、ガッ!ま、未だだ、まだ。」

「もう止めろ!これ以上やったら。」

「アレでいいのよ。」
「何故だ!どうして!」
「闇に操られているんだとしたら倒すしか元に戻すには方法がないの。」

「そんな!」

「グアァァッ!」

「ノーヴェッ!」

チンクは叫んだ。今にも張り裂けそうな思いを込めて。
カービィが終わらそうと攻撃しようとした瞬間その場にエネルギー弾が降り注いだ。

「ノーヴェ〜大丈夫ッスかぁ!」

「ウェンディ!」

そこにはISを使い飛行しているウェンディの姿があった。
124仮面ライダーリリカル電王sts:2008/01/26(土) 23:15:22 ID:2rFnMM5N
「一旦引くわよ。」

「分かった。」

ティアナとスバルはそう言うとウェンディのボードに捕まった。

「次に会うときは、全員消してやるからな!」

「デデデ城で待ってるッス。」

「ノーヴェ、ウェンディ!」

「次はないわ。」

そう言うとティアナ達は去っていった。チンクはその姿を見た後、リボン達に向かって話した。ノーヴェは自分と同じナンバーズで妹だと言うことを。

「酷い。闇に操られて姉妹と戦うなんて。」

「分かってくれたんなら、ノーヴェのこと任せてくれるか。」

「えぇ、分かったわ。」

「助かる。」

リボンがそう言うとチンクは静かに言った。
「じゃあまたいつか。」

「ちょっと、待って、一人で行くつもりかよ。」

「これは、姉妹の問題だ。姉の私が止めるしかない!」

「分かったよ。勝手にしやがれ。」

「ああ、そうさせてもらおう。」

そう言うとチンクは立ち去った。


バラバラの心、それぞれの思い。カービィ達はこれから一つになれるのだろうか…。次回を待て!


星のカービィリリカル次元を超えた出会い
第二話
「紅の融合機と青い魔導師」
〜fin〜
next
第三話
「姉と妹」Aパート
125仮面ライダーリリカル電王sts:2008/01/26(土) 23:18:57 ID:2rFnMM5N
以上で投下終了です。ナンバーズと機動6課という最強の敵を出してみました。だってカービィ強いですから。感想待ってます。
126名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 23:20:23 ID:W/EeRZHt
とりあえず乙
127魔装機神:2008/01/26(土) 23:27:04 ID:HsCSEUTN
乙です。
先ほど11時半に投下するといいましたが、12時に延長します。
128なの魂の人:2008/01/26(土) 23:36:48 ID:QEwCT0u9
GJであります、隊長!

あー、久しぶりの投下になります、ええ。もう忙しいの何の
とりあえず1時頃に投下予約させていただきます
129名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 23:58:54 ID:NE1718JD
わ〜い
サイバスターと銀ちゃんだ〜♪
130魔装機神:2008/01/27(日) 00:01:16 ID:dXouk0mr
それでは投下します。
>>129すみません、ウルと烈火のほうです。

烈火と紅麗、二人の炎術士がミッドチルダで目を覚ました翌日。
「すかーーー」
烈火は気持ちのいいほどの寝息をたてていた。
ここは機動六課の客室で、烈火と紅麗はもとの世界へ帰るまでこの部屋で眠ることになった。
二人一緒ということに二人はこれでもかと言うほど嫌な顔をしたが、二人は今世話なっている身。
どうこう言える立場ではないので仕方なく従い、同じ部屋で寝ることになったのだ。
だが、既に紅麗は起きていて、優雅に朝の散歩をしているのでここにはいない。
ピピピピピピピピ
ちょうど朝7時を示す目覚まし時計が部屋一面に響き渡る。
それが聞こえると、ポチっとスイッチを押す烈火。
「むにゃむにゃ、後5分」
しかし、それを消して更なる眠りに付こうとする。
いつもならここでたたき起こす人物がいるのだが、今回はいない。
烈火は再度眠りにつこうとする……
『いつまで寝てるいる!!』
「うお!?」
だが、突然頭の中に響いてきた声に烈火は飛び起きる。
「な、なんだいまのは……」
きょろきょろとあたりを見るが、だれも人はいない。
『全く、いつまで寝てるつもり?』
そして頭に直接響いてくる女性の声。
「な、崩?」
烈火は声の主は崩の声だとすぐに気付く。
そう思ったとき、何かむしゃくしゃして来た烈火。
「人が気持ちよく寝てるときに起こすんじゃねえよ」
『何を言ってるの?今日ははやてとこれから会談を行うんでしょ?』
「それは昼からだっつうの」
ふあ〜〜〜、と一度ベッドにもぐろうとする烈火。
『そういえば、先ほどから虚空が見かけないな』
そしてさりげなく聞こえた砕破の声。
ふと右腕を見ると、確かに「虚」の文字はなかった。
『早く見つけないとまた大変な目にあうのでないか?』
砕破の意見にちっと舌打ちしながら烈火は立ち上がる。
全く、人の安眠を妨げやがって……と愚痴をいいながら烈火は外へ出て行くのだった。

『あいかわらずのお人よしだな、崩』
そして、その烈火の体の中で、丸々と肥えている男性、竜之炎五式・円はきししと笑いながら崩を見る。
崩はふん、と別のほうを見る。
『あまりにも主が情けないから、ちょっと活を入れただけだ』
『というよりは、世話をかかる弟の面倒をみる姉のようにしか見えないがな』
そう言うのは竜之炎参式・焔。
崩のお人よしは他の火竜から甘いと言われるほどだ。
それは自分でもがあると自覚はしており、焔の言葉にうっと少し黙り込む崩。
そんな崩を他の火竜はくすくすと見る。
『それより、虚空も困ったお方だ。あのクセがなければいい人なのだが……』
砕破がポツリと虚空の事を言って、話は勝手に出て行った虚空についてだった。
『全だ。あの人は女をなんと考えているのか……』
『そうね。あんな人があれを作った、なんて知ったら皆驚くでしょうね』
全く、と少し頬を赤らめる崩とどこか楽しそうにしている塁。
『ソレヨリ、俺ノ出番ハイツダ?』
その隅でクククと異様な雰囲気を出すのは、火竜の中でも最も残忍な生活をしている竜之炎四式、刹那。
上半身が裸で、彼がしているアクセサリー(?)も目玉なので異様な雰囲気をよりいっそう際立たせる。
131魔装機神:2008/01/27(日) 00:03:26 ID:dXouk0mr
『落ち着け刹那、お前の力は八竜の中でも最も特異なものだ。出番も限られるのは当たり前だが、なによりまだ戦いの場所もない』
焔が黙らせるように言ったが、刹那は焔のほうを見る。
しかし、その目は布で覆われている。
刹那は目が見えないが、その代わり嗅覚や聴覚など、他の感覚が飛びぬけて高く、身体能力の面でもでも火竜最速を誇る。
『アイツガ……烈火ガ飛バサレタ時、俺達二ヤドッタ力。早ク試シテエンダヨ』
アハハッハ、とハイテンションに刹那は自分の腕を見る。
新しく手に入れた自分達の力。
刹那はそれを早く試したい。
しかし、他のものも少しはその気持ちはあるが、まだ使う機会ではない。
ふと、そこで刹那は思い出す。
『ソウダ、アノガキドモ。アノガキドモに試セバイイジャネエカ』
そういって、刹那はさらにヒートアップしている。
こうなると彼を止めるものは少ない。
『いい加減にせぬか、刹那』
そこに響く重く、だが体中に響く声。
『お主の言い分もわからんこともない。だが、その時もいずれこよう、我等の宿主にも伝えねばならぬ』
『……チッ』
その声に、刹那は黙り込む。
あの刹那を黙らせる人物
彼こそ、烈火が唯一取り込んでいない、そして八竜を束ねる八竜の長「烈神」
崩、砕破、焔、刹那、円、塁、虚空、烈神。
これが烈火の炎の源である「八竜」
それぞれ違う炎の型を持ち、術者に膨大な力を与える。
そんな彼らが得た力とは……

「全く……」
ここは機動六課の演習場。
烈火は大きくため息を付いて下を見る。
「ううう〜〜〜〜」
そこには、ぷしゅ〜〜〜、と湯気を立てながら倒れている虚空がいた。
ギリギリだった。
虚空があと少しでひゃっほーーーー!!と叫びながら教導中のなのはに突撃していったのだ。
いきなりの事でなのはは反応が送れ、虚空の腕がなのはの胸に触れようとしたときだった。
「このエロジジイがあぁぁーーーーーーーーーー!!」
烈火は近くにあった石を拾い、思いっきり投げる。
それは見事に虚空に直撃し、今に至るのだ。
「朝っぱらから何やってんだよ……」
烈火はもう一度ため息を付きながらなのはを見る。
なのはは一瞬何が起こっているのかわからず、顔を赤くしながらも虚空を睨む。
「だって〜〜、こんなにいっぱい女の子がいるんだから、ちょっとくらいなら大丈夫じゃろ?」
頬を赤く染め、くねくねと体を動かしながら虚空はなのはに近づいて尋ねる。
その言葉にぴく、と反応するなのは。
そして雰囲気が一変する。
「おかしいな、どうしちゃったのかな?」
ポツリとつぶやくなのは言葉に、少しの間半ば強制的に休憩に入っていたスバルとティアナはびくっとからだを震わせる。
来た、キレたなのはさん。
別名、魔王なのはさん(スバル、ティアナ内での本気で怒ったとき(キレたとき)のなのはの呼び名。勿論本人には内緒)
その瞬間、虚空はバインドで拘束される。
「お!?」
でキョロキョロ辺りを見る虚空。
そしてなのはは虚空を指差す。
「こういうの、セクハラっていうんだよ……知ってるよね?」
そして収束されていく魔力。
それは以前ティアナのとき使ったものとは比べ物にならない威力だった。
それほどなのはは怒っていた。
「あなた、女性をなんだと思ってるの?」
「いや、あの……これはな……」
流石の虚空も状況を察知し抜け出そうとする。
だが、なのはのバインドは強固で抜け出せない。
132魔装機神:2008/01/27(日) 00:05:26 ID:dXouk0mr
「頭、冷やそっか」
そして放たれる魔力。
それは真っ直ぐ虚空へと向かい、直撃する。
「あぎゃあーーーー!」
虚空は爆煙へ消え、その叫び声だけがむなしく聞こえる
「エリオ」
は、はい!とエリオは脂汗をはがしながらなのはを見る。
「エリオはあんな人になっちゃだめだよ。なったらフェイト隊長がぐれちゃうから」
「わ、解ってます!!」
自分だってあんな大人にはなりたくない。
エリオの言葉をきいて、ふうと落ち着くなのは。
「それじゃ、いつもどおりの練習を始めようか」
そしていつもの笑顔に戻ったなのは。
烈火は黒コゲで倒れている虚空を見る。
「自業自得だ」

「やっぱ女ってこええな」
「そうだらな」
その頃、こそっと影で先ほどの光景を見ていたウルとヨアヒム。
やはり女は強い、と二人は頷く。
「で、あんたはどう思う?」
そういって、ウルは先ほどから離れた位置でたっている紅麗をみる。
紅麗はウルのほうを見ることもなく、すぐにこの場を立ち去る。
無愛想だな、とウルは思ったが、立ち去ろうとした紅麗は立ち止まり。
「女性とは、元来強いものだ。私はそれを良く知っている」
そういって再び歩みだした。
「変なやつだらな……」
全くだ、とウルも頷く。
「そんで、俺達に話しってなんだろな?」
それは昨日の夕食のときだった。
はやてはウルたちと烈火たちに昼から聖王教会に来てほしいというのだ。
何でも、これからのことで重要な話があるらしい。
「俺達の世界が見つかっただらか?」
「さあな」
そういって、ウルは訓練場のほうをみる。
「なるようにしかならないさ」
そういって、ウルはそのほうへ歩みだす。
その時、ウルは静かに自分の腕を見つめていた……

「教えてやるぞヤマト!俺はザ・不死身と呼ばれているが、実は一回刺されただけで死ぬ!」
今テレビに映っているのは、長い事続いている短編シリーズの最新作、「SEEDマスターヤマト」の最終回。
「そうか、ならうけてみろ!僕の新しい脇、フリーダムを!」
「うわあああああ!」
一撃の名の下に、四天王の一人、イザークを倒すヤマト。
しかし、イザークを倒したとき、影から怪しい影が三つ。
「ふふふ、イザークを倒しましたか」
「けど、所詮あいつは四天王の中でも格下なんだよね」
「俺達が本当の四天王の力を思い知らせて」
「うおおおおおお!!」
その怪しい影ごと一気になぎ払う。
「「「うわあああーーーー!!!」」」
その影は一瞬にして消え、あるのは身の前にある大きな扉だった。
「ついに……」
ついに自分はここまできた。
この先にいるのは魔王クルーゼ。
133魔装機神:2008/01/27(日) 00:08:10 ID:dXouk0mr
最終決戦を前にして、ヤマトはぐっと力を入れる。
「パンツだけは、許さない!」
意を決して扉を開けるヤマト。
そんなテレビを、まじまじと眺めている人が二人。
「お前達、何を見ているんだ?」
妹たちが何かを一生懸命に見ているので、チンクは尋ねた。
「あ、チンク姉」
「チンク姉もみるっすか?SEEDマスターヤマト」
妹の誘いに、チンクはテレビに目を移す。
「くくく、お前がトマトか?」
なにもない部屋から、突然人のようなものが現れた。
彼こそが、仮面の魔王クルーゼ。
「ああ、僕がポテトだ!」
そういって、剣を構えるヤマト。
そんなやり取りをしてチンクは一言。
「いや、誘ってくれてすまないが別にいい。他にする事がある」
そういってその場を後にするチンク。
ちょっと自分の趣味には合わないと判断したのだ。
「トマトよ、一つ言っておこう。私が捕まえた奴隷は厳しいところで無理やり働いていると思っているが、
そんなことはない。君の両親も返さないだけで普通の生活を送っているよ」
「そうか……魔王、俺も一つ言っておく。僕には生き別れの妹か姉がいた気がするけど……実はそんな事はなかった!」
「ふふふ、そうか」
それを聞いた魔王クルーゼも構える。
「さあこい!トマト」
「まそっぷ!」
そしてヤマトは走り出し、クルーゼに向けて一撃をはなとうとした。
「ヤマトのたびはまだ終わらない……SEEDマスターヤマト、完」
「次回は、どっこいアスカ君。お楽しみにね」
そしてテレビは終わり、ふう、と一息つく二人。
「おもしろかったっすねえ」
「そーだね」
こうして、ナンバーズの日常は過ぎてゆく……お目汚しすみません。

「みなさん、よく来てくれました。私が聖王教会の騎士カリムです」
ここは聖王教会の会議室。
そこに並ぶのはカリムとシャッハ、クロノとはやて達、そしてウルや烈火たちの計9人。
ウルたちにこれからのことを説明するために呼んだのだが、さすがに10人は多すぎるという事で、この会議室を使う事になった。
「へえ……」
烈火はさっきから目をキョロキョロさせるばかりであった。
ゲームで見たような建物が今時分の目の前に移っているのだ。
「俺は本局で艦船の艦長を務めているクロノ・ハラオウン……って、聞いているのか君は?」
クロノはジト目でまだ目をキョロキョロさせている烈火を見る。
確かに他の世界の人にとっては珍しいかもしれないが、こういうときはちゃんとしてほしいものだ。
「え?ああ。心配すんなって、ちゃんときいてるよ」
本当なのか?と少し頭を抱えるクロノ。
「それよりも、後ろの連中を下げさせろ」
紅麗は後ろをみる。
扉は硬く閉ざされているが、その向こうからの気配が嫌でも伝わってくる。
これだけの時空漂流者がカリムの前にいるのだ。
特に紅麗の風貌を見て、騎士がカリムの身に何かあれば大変だと思い待機しているのだ。
「これくらいは勘弁してやってくれ。それに、君だってこうされる理由くらいはわかっているだろう?」
クロノも多少の事は聞いている。
彼が目をさめたとき、いきなりはやてを襲ったという連絡を受けている。
それがもれてしまったのかもしれない。
それにその風貌、怪しいのは自分でも解っているだろうに、とクロノは紅麗をみる。
あまり自分も人の事は言えないが、一体どんなファッションセンスをしているのだろうか……
134魔装機神:2008/01/27(日) 00:12:54 ID:dXouk0mr
「ま、まあそれよりよ。俺達を呼んだ理由ってなに?これからのことについてってはやてから聞いたんだけど」
ウルはカリムに自分達を呼んだ理由を尋ねる。
確かに今ずっとこうやっていても話は進まない。
「その前に、紹介しておく事があります」
そういってカリムは、以前なのはとフェイトに見せた、自分の先天能力、ちょっとした予言の事を話した。
そして、これからミッドチルダで起こるであろう出来事についても。
そしてこの世界は何者かによって危機に陥れられる事、
「この世界は大いなる力を持つ悪魔によって破滅の危機を迎える。
立ち上がるは星の光、駆ける雷、夜天の王と騎士。そして神殺しと呼ばれた男と二つの炎の児」
その中で、これから起こるであろう出来事を呼び上げていくカリム。
これが機動六課が設立された理由。
「これまで、この予言の謎のいくつかは解明されましたが、まだいつくかの謎が残っているんです」
カリムの言葉の後、はやては烈火を見る。
「その中の一つ、二つの炎の児っていうんは間違いなく烈火君と紅麗さんのことやとおもうけど……」
どうですか?ともう一度烈火を見るはやて。
烈火ははやての言葉になるほど、と納得する。
確かに、炎術士の子供は炎の児と呼ばれていたらしい。
「それで、炎の児ってどういう意味なの?」
まだ炎術士の事を理解していないカリム達も紅麗を見る。
視線を感じた紅麗は黙ったまま手をかざす。
そこから、ぼぅっと青い炎がうまれた。
なのは達は、それを食い入るように見る。
事前からはやてから聞いているが、彼にはリンカーコアが察知されなかったという。
なぜ彼にはこのような芸当gで切るのだろうか……
「炎術士は、忍集団「火影」のものにのみ許された力、炎を出せるものの事を言う」
紅麗が自分が炎を出せる理由を話すと、紅麗は炎をすぐに消す。
つまり、彼は何か特別な存在なのだろうか……
「それで、烈火さんにも同じよな力が?」
確か、予言には炎の児は二人いるという。
紅麗がそうなれば、烈火もその一人に入るだろう。
「ああ、俺も炎術士だぜ。紅麗とはちょっとちげえけど」
そういって、烈火は「砕」という印を描く。
その瞬間、烈火が右腕につけている手甲から赤い刃が出現した。
紅麗とは違う炎に、またもやカリム達はその炎を見る。
だが、なのははその炎に見覚えがあった。
以前、烈火から出てきた人、「砕破」が使っていたものだった。
「まだ他にも何個かあるんだけどよ、他のはここじゃ無理だからな」
すいって烈火は砕破を解除する。
紅麗と烈火。
魔力も感知できないのにこのような力を持つものが存在する事を知り、あっけに取られるなのはたち。
その時、紅麗はカリムを見る。
「それで、その予言では私達がその悪魔と対峙すると?」
紅麗の言葉にはっとししたカリムは、はいと頷く。
それを聞いて、くくく、と笑みをこぼす紅麗。
「残念だが、私は少女趣味や占いに付き合う気はないのでね。私達もすることがある。協力は辞退させてもらう」
135魔装機神:2008/01/27(日) 00:21:55 ID:dXouk0mr
投下完了。
途中で出てきた妙なものは気も迷いなので、生温かい目で見てくれてかまいません。
それと、題名を付け忘れました。
16話の題名は「女性の力」です。
それと、前の15話が16話になっててすみません。
136名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 00:35:44 ID:ycmEDUWT
GJ!!です。
ナンバーズなに見てんだw
137リリカル! 夢境学園:2008/01/27(日) 00:37:55 ID:YUKmn7sa
GJです。
本当にナンバーズは何を見てるんだw
ほのぼのスカ一味に、本当に悪人かどうか疑ってしまいます。
138名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 01:02:08 ID:4qjaUonS
ソードマスター吹いたwwww

そろそろなの魂の人か?
139なの魂の人:2008/01/27(日) 01:02:29 ID:untE6I4n
では予定時刻になりましたので、投下を開始したいと思います
久しぶりなので文章力ガタ落ちな気がするけどなんともないぜ!
140名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 01:03:09 ID:4qjaUonS
銀ちゃん支援や
141なの魂:2008/01/27(日) 01:05:28 ID:untE6I4n
物騒なテロリストを撃破し、銀時の記憶も戻り、これにて一件落着。
かと思われたが、人の世というのはそう上手くは作られていないらしい。

「……どーしたもんかね」

なのはの向かいの席で、スプーンに乗せたチョコパフェを口に運びながら銀時が言った。
なのはにチョコパフェを三つも奢ってもらいご機嫌かと思いきや、その表情はとても複雑そうだ。
彼の両隣に座る新八と神楽も、同じように眉をひそめている。

「さすがにあのまま放っておくのはちょっとね……。危なくて店も開けないし」

なのはの後ろに佇んでいた士郎が、そう言いつつ天井を仰ぐ。
その上には、隕石の直撃という冗談みたいな理由で崩壊した万事屋があった。
今のところ特に問題は起きていないが、もしかしたら翠屋店舗にも目に見えない部分で被害が及んでいるかもしれない。
もし営業中に天井が落ちてこようものなら大惨事だ。
その為、現在翠屋は営業を一時休業しているのだが、生活がかかっている以上いつまでも店を閉めておくわけにはいかない。
指し当たっては一番の不安要素、二階に山のように積もった瓦礫をどうにかしようというわけである。

「建て直すか取り壊すか……早く決めちゃってもらいたいんだけど?」

「んなもん……建て直すに決まってんじゃないスか。他に行くあてもねーし」

相変わらずチョコパフェを食しながら銀時は答えた。
なのはは内心ホッとする。
もしかしたらこのまま、どこか別の場所へ引っ越してしまうのではないかと薄々思っていたからだ。
騒がしいことこの上ない連中だが、いなくなったらそれはそれで寂しい。
士郎も同じことを考えていたらしく、ふっと小さく微笑みながら、どこからか小さな電卓を取り出した。

「なら建て直し費用は……締めてこれくらいだね」

……いや、微笑みというより、したり顔だった。
電卓を銀時に突きつけると同時に、カラン……と金属質な何かが床に落ちる音がした。
どうやら銀時が手にしたスプーンを落としてしまったらしい。
銀時は顔に脂汗を浮かべながら、ひのふの……と電卓に表示されたゼロの数を数えていく。

「……え? 俺持ちなの?」

顔を青ざめさせながら銀時が目線を上げると、士郎が「当然」と言わんばかりの顔で銀時を見返していた。
銀時はすがるように、両隣に座った新八と神楽に目線を向けていく。
が、二人とも冷や汗を流しながら目を背けてしまった。
そもそもそんな金があるならきちんと家賃は払えているはずである。

「ちなみに、取り壊しの場合だとこれくらいだね」

そう言って士郎は再び銀時達に電卓を向ける。
表示されている金額は減っていたが、それでも今の銀時達が払えるような額ではなかった。
さすが商売人。お金が絡むと容赦が無い。
口端を引きつらせる銀時を見て、なのははため息をついた。
……そういえば、こういった"物を直す"という行為は、魔法で行えるんだろうか?
ふとそんなことを思いつき、ユーノに念話で話しかけようとした矢先、突然ユーノの方から念話が送られてきた。

「……あっ……」

不意に声を上げてしまったことに気付き、慌てて口を塞ぐ。
バツが悪そうに後ろを振り向くと、父が不思議そうな目でこちらを覗きこんでいた。
142なの魂:2008/01/27(日) 01:07:00 ID:untE6I4n
「どうしたんだい? なのは」

「あ……その、ちょっと用事思い出しちゃって。少し出掛けてきまーす!」

ぴょん、と跳ねる様に椅子から降り、なのはは慌てて店を出て行った。



(なのは、こっちこっち!)

声につられて店の脇、銀時が車庫代わりにしている大き目の路地へ入り込む。
ユーノが真剣な面持ちでなのはを待っていた。

「はぁ……最近出番なかったから、本筋の話忘れるところだったよ……」

肩を竦めながらそんなことを呟くなのは。
だが、すぐに彼女も真剣な表情になる。
先の念話で、ジュエルシードの反応を感知したという連絡を受けたからだ。

「……とにかく急ごう!」

ユーノがその場から駆け出す。
本当なら転送魔法を使って即座に駆けつけたいところなのだが、不用意な転送は危険を伴う。
現場に付いた途端、いきなり目の前に致死性の砲撃が迫ってきたという状況も充分に有り得る。
なのはもユーノを追い、その場から駆け出そうとする。

「オウオウ、お嬢さん達。そんなに急いでどこに行く気だい?」

「へ……?」

不意にかけられた声に、なのはとユーノは足を止め振り向いた。
視線の先には、愛車のキーを手で弄ぶ銀時。壁にもたれかかってこちらを見ている新八。
そして定春に乗って急かすような目でこちらに視線を送る神楽の姿があった。

「ぎ、銀さん? あの、お家のお話はもういいんですか?」

さっきまで青い顔をしながらチョコパフェを食っていた男が、何故こんな所に?
なのはは疑問に思うが、銀時はそんな彼女を一瞥した後、ユーノを見下ろした。

「そのことなんだがなァ。ユーノ」

「は、はい?」

突然話を振られ戸惑うユーノだが、銀時はそんなことを気にせずに話を続ける。

「お前、初めて会ったときに『手伝ってくれたら礼は必ずする』って言ってたよなァ?」

「……まぁ確かに言ってましたけど……っていうか、なんで今さら……」

「……あの、銀さん。もしかして……」

なのはの問いかけに応えるように、銀時はニヤリと口の端を上げた。



なの魂 〜第十七幕 なりふり構っていられない時でも一度冷静になってみよう〜


143なの魂:2008/01/27(日) 01:08:59 ID:untE6I4n
結界が張られ、外界から隔離された臨海公園では既に戦闘が始まっていた。
フェイトがマントを翻し、空中から眼下の敵――ジュエルシードにより異形と化した、巨大な蛸のような生物――に無数の魔力弾を撃ち込む。
だがそのことごとくが、巨大蛸に当たる前に見えない障壁のようなものに弾かれ、掻き消えていく。

「おー。生意気にバリアなんか張っちゃって」

「……今までのものより強い……!」

アルフが感心したように言う隣で、フェイトはバルディッシュを構えなおす。
手加減をしたつもりは無かったのだが、まさか全ての攻撃が弾かれるとは。
やはり連射が効いても一撃が軽い技より、多少隙があっても一撃が重い技を放つべきか。
今までの交戦で相手が射撃系の技を使ってきていないところを見ると、その八本の触手を使った
直接的な攻撃以外の攻撃方法は持ち合わせていないと見ていいだろう。
ならば相手に射程外から、一方的に攻撃を加えればよいだけだ。

「……早く終わらせよう」

「よっしゃ! アタシがかく乱するから、その隙にお願い!」

アルフが敵のバリアを少しでも弱体化させるべく突っ込み、その後方ではフェイトが砲撃の準備を行う。
巨大蛸はその八本の触手でアルフを捕らえようとするが、彼女は寸でのところでその全てを避け、蛸の顔面に鉄拳を叩き込もうと拳を振り上げる。
同時に、彼女の後方から轟音が聞こえた。

「……えっ……!?」

最初に驚きの声を上げたのはフェイトだった。
巨大蛸から伸びた八本の触手から、鉄砲水のように魔力弾が発射されたのだ。
アルフではなく、こちらの方へ。
まさかこちらの隙を作るために、あえて今まで射撃を行わなかったというのか?
咄嗟に砲撃を中止して腕を突き出し、目の前に防御障壁を張る。
だがしかし、直接ダメージは受けなかったものの衝撃までは緩和することが出来なかった。
腕から体、そして脳へ衝撃が伝わる。
一瞬目の前が真っ白になったかと思うと、身体を奇妙な浮遊感が包み込んだ。

「っ! フェイト!?」

聞こえてくるアルフの叫び。
そこでようやく自分が地面に向かって落下しているのだということに気付いた。
なんとか体勢を立て直そうとするが、身体が言うことを聞かない。
視線の先では、こちらに気を取られていたアルフが巨大蛸に捕まり、必死に抵抗する姿が映し出されていた。

(……助けなきゃ……)

朦朧とした意識の中そう思うが、やはり身体が言うことを聞いてくれそうに無い。
地面ももうすぐそこまで迫ってきている。
こんな所で、自分達は終わるのか……。

「落ちる落ちる落ちる! 銀時さんちょっとスピード落としてェェェ!」

「うるせェェェ! 死にたくねーならしっかりつかまってやがれェェェ!!」

自身の不甲斐なさに涙しそうになったフェイトの耳に、怒鳴り声とエンジンの爆音が聞こえてきた。
フェイトははっとしたように目を見開いた。
聞き覚えのある声。
迫り来るエンジン音。
まさか、これは……。

「どーもォ、万事屋でーす!」
144名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 01:09:21 ID:4qjaUonS
そいや坂本が原因じゃないんだよなwwww
支援
145なの魂:2008/01/27(日) 01:10:53 ID:untE6I4n
大声と共に地面を何かが削り取るような音が聞こえ、目の前を無人のバイクが走り去っていた。
そして自分の身体が重力に逆らうように突然制止した直後、巨大蛸の方から爆発が起こった。
先程のバイクが巨大蛸にぶつかり、爆発したのだ。

「よォ、怪我ねーか?」

呆けたように爆発を眺めていたフェイトは、その声を聞いてようやく自分を抱き止めた人物の顔を見た。
肩に息も絶え絶えなフェレットを乗せ、こちらへ笑みを投げかけてくるその男は……。
あろうことか、あの記憶喪失だった銀髪の男だった。
お姫様抱っこをされたまま、フェイトは再び呆けた顔をする。

「どォりゃァァァァァ!!」

突如聞こえてきた、気合の入ったかけ声。
視線を向けると、一人の青年が果敢にも巨大蛸に木刀を振り下ろしているところだった。
しかし木刀は眼前に発生した障壁であえなく弾かれ、青年も体勢を崩す。
そしてそこへ四本の触手が襲い掛かってきた。

「……って何で僕だけェェェ!」

眼鏡をかけたその青年はすぐさま踵を返し、蛸の攻撃を避けながらこちらへ向かって走ってきた。

「ちょっとアンタ何しに来たのさ!」

「うっせーわァァァ! いきなり捕まってるアンタに言われたくねーよ!」

途中で蛸に捕まって宙ぶらりんにされたアルフに罵声を浴びせられるが、反論もそこそこに逃走を継続する。
しかし彼のすぐ側には、既に怪物の魔の手が迫っていた。

「うわばばば! マジでヤバいってコレ!」

振り向き、眼前に迫るおどろおどろしい触手に恐怖する青年。
そんな彼の前に、白い何かが乱入した。
……犬だ。
巨大な犬が彼に迫っていた触手を食い千切りながら現れ、アルフを捕らえていた触手をも引き千切り、彼女を救出した。
そしてその犬のすぐ横を、赤い服を着た少女が駆け抜けていく。

「飛べコラァァァァァ!」

少女は叫び、仰向けになって巨大蛸の下に潜り込んだ。
そして器用に身体を捻り、両足を使って蛸を蹴り上げる。
まるでゴムボールのようにその巨体は空高く舞い上がった。
そして上空では、杖を構えた白衣の魔導少女が一人。

「これがホントの……!」

魔導師の持つ杖に魔力が収束されていく。
その真下では、先程アクロバティックな動きを見せた少女が空に向かって番傘を掲げていた。
その傘の先端には、同じように巨大な光球が生成されていく。

「十字砲火じゃァァァ!」

怒鳴り声と共に、二本の光柱が巨大蛸に撃ち込まれた。
二つの光の奔流に巻き込まれた蛸の身体は、見る見るうちに削り取られ……。
カラン、と音を立てて、青い宝石が地面に零れ落ちた。


146なの魂:2008/01/27(日) 01:12:43 ID:untE6I4n
怪物を完全に消滅させたことに安堵しながら、なのははゆっくりと地面に降り立った。
ふわっ、と魔力で生成された羽が辺りに舞い上がる。
ふと神楽の方へ目を向けると、彼女は親指を立てながらこちらへ向かってウインクを投げかけていた。
自分も同じように右手の親指を立て、笑みを投げかける。

(……そういえば、フェイトちゃんはどうなったのかな……?)

疑問に思い辺りを見回すと、少し離れたところで銀時に抱えられたフェイトの姿を見つけた。
その顔は怖さ半分恥ずかしさ半分といった、なんとも複雑そうな表情だった。
思わずあはは、と苦笑を漏らしてしまう。
銀時はフェイトを抱えたまま、呆けた様子で佇むアルフの前へと歩み寄っていった。

「オラ、ガキの面倒くらいテメーで見やがれ」

面倒くさそうにフェイトを降ろす銀時。
フェイトはしばらく銀時を見ていたが、煙たがられるように手を振られ、少し消沈した様子でアルフの側へ寄り添っていった。

「アンタら……なんで……」

フェイトの身体を抱きしめながら問いかけるアルフに対し、銀時は苦笑しながら答える。

「文字通り身ィ砕いてまで助けたガキに、目の前で死なれちゃ後味悪ィだろ」

「別にオメーが死のうが関係ねーけどな。なのはがどうしてもって言うから」

そんな事を言いながら神楽がフェイトに詰め寄っていった。
なのはは大慌てで神楽の元へ行き、どうにか彼女をなだめる。
そして冷や汗を拭い、ため息を一つついたところで改めてフェイトと向き合った。

「……また会ったね」

声をかけた直後から、フェイトの表情が見る見る沈んでいくのが分かった。
彼女は顔を俯け、そのまま押し黙ってしまう。
辺りを沈黙が包み込み、だんだん居た堪れない気持ちになってくる。

「どうして……」

不意にフェイトが声を震わせながら呟いた。

「もう私の前に現れないでって……言ったのに……」

消え入りそうな、悲哀を帯びた声。
俯く彼女の表情は、こちらからでは窺えなかった。

「……まだ、聞いてなかったから」

なのはは静かに言う。

「フェイトちゃんがジュエルシードを集めてる理由。まだ聞いてなかったから」

……そうだ。
ジュエルシードを集めることは大事だ。
でも、今の自分には……同じくらい大事な事がある。
147リリカル! 夢境学園:2008/01/27(日) 01:14:08 ID:YUKmn7sa
アルフがエロいぜ 支援!!
148なの魂:2008/01/27(日) 01:14:41 ID:untE6I4n
「前にも言ったよね。私、フェイトちゃんのこと放っておけない……もっとフェイトちゃんのこと知りたいって」

だから、自分はここにきた。
だから、こうして彼女を助けにきた。
だから、自分は彼女と……。

「……お話し、したいんだ」

ゆっくりと顔を上げたフェイトの顔には、戸惑いの表情が浮かんでいた。
今まで幾度と無く否定されてきた、話し合いという手段。
このような場所に来てまでそんなことを言い出すなのはに呆れているのか。
それとも……。

「もしかしたら私達にも、何か手伝えることがあるかもしれないし……ね?」

微笑み、なのはは周りを見渡す。
興味なさげに頭を掻く銀時。
思いっきり敵意剥き出しの神楽。
息も絶え絶えな新八。
……むしろ前途多難である。
なのはは一度咳払いをし、バツが悪そうに愛想笑いをした。
そんな彼女らを見てフェイトは僅かに目を細め……ほんの少しだけ、笑ったような気がした。
その直後、彼女らの後ろから轟音が聞こえてきた。
その場にいた全員が、一様に音のした方を見やる。
回収を行っていなかったジュエルシードから光が放たれ、辺りの地面に亀裂が走っていた。
暴走? それとも、先程の怪物を再生させるつもりか。
各人はそれぞれ得物を手に身構える。
同時に、ジュエルシードから一際眩い光が放たれ……すぐに消えた。
なのは達は目を疑った。
光の残照から、紺の魔導衣を纏った見たことも無い少年が現れたからだ。



「……現地の公共機関に気付かれなかったのが、不幸中の幸いか……」

聞いたことも無い声であり、ましてや見覚えなどまったく無い姿。
だが銀時はその少年の立ち振る舞いを見て、直感的に悟った。

(あのガキ……ただの三下じゃなさそうだな)

居合いの構えを取る銀時の視線の先で、少年が無造作にジュエルシードを拾い上げた。
ガントレット越しに拾われたそれは暴走することもなく、淡い光を放ちながら少年の持つ杖――おそらくデバイスだ――に溶け込むように消えていった。
ジュエルシードを完全に確保したことを確認した少年は不意にこちらを向き、そして杖を向けてきた。

「時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ。詳しい事情を聞こうか」

神楽と同い年くらいだろうか。
クロノと名乗ったその少年は、高圧的な目でこちらを睨みつけてくる。
だが武器を向けられたくらいで従順になるような銀時ではない。
薄笑いを浮かべながら、銀時はゆっくりと木刀を引き抜き、一歩前へ出る。

「……こりゃまた大物が出たなオイ。局のお偉いさんが、地球くんだりに何の御用で?」

「君達がそれを知る必要は無い。……抵抗するようなら、力ずくで……」

そこまで言ったところで、クロノが突然目の前に防御魔法を展開した。
直後、彼の眼前で小規模な爆発が連続して起こる。
149反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/01/27(日) 01:15:00 ID:TXEZORiP
>十字砲火
ティアナ「………」

支援
150なの魂:2008/01/27(日) 01:17:37 ID:untE6I4n
「フェイト! 逃げるよ!」

そう叫んだのはアルフだった。
彼女は自身の周りに発生させた魔力弾を次々とクロノへ撃ち込んでいった。
しかし、そのどれもが決定打とならず、障壁によって弾かれる。
だがこれでいい。足止めさえ出来ればそれで充分だ。
アルフはフェイトの手を取り、その場から飛び去ろうとする。
その瞬間だった。

「え……」

アルフとフェイトの周りを四つの人影が取り囲み、まるで彼女らを守るかのようにクロノの前に立ち塞がった。

「……行け」

その場で立ち尽くすアルフ達に目配せしながら、銀時は呟いた。

「いまいち事情が飲み込めないけど……時間稼ぎくらいならしてみせるよ」

「クソガキィ! これで貸し一つだかんな! 覚えてろよ!」

新八と神楽も、それぞれの武器を構え口々に言う。
アルフは少しだけ逡巡したが、小さく頷き、フェイトを抱えてその場から飛び立った。
抱えられたフェイトは心配そうな表情で銀時達を見つめる。

「……フェイトちゃん!」

眼下の五人が豆粒くらいの大きさに見える距離まで来た時、地上から声が響いてきた。
純白の魔導衣を身に纏った少女が、ずっとこちらを見続けていた。

「今度会った時は……ちゃんとお話ししようね!」

フェイトは頷くことも答えることもせず、ただ彼女の姿を見続けていた。



「……捜索者の一方は逃走!」

次元空間に停泊していたアースラの発令所では、オペレーター達の報告が飛び交っていた。
中央スクリーンの隅には、様々な情報が表示されたウィンドウが次々に映し出されては消えてゆく。

「追跡は?」

「多重転移で逃走しています。……追いきれませんね」

「そう……」

艦長席に腰掛けたリンディはスクリーンを見つめ、そっと目を細める。

「まぁ、戦闘の被害も最小限。ロストロギアの確保も終了。……良しとしましょう。
 事情も色々聞けそうだしね」

中央スクリーンに映し出される我が息子。
そして彼と対峙する少女らを見……僅かに身を乗り出した。
黒い服の上から、白い着物を右肩をはだけさせて着流す男。
息子と何か口論を繰り広げている、木刀を持ったその男にリンディは見覚えがあった。

(……あの銀髪の人……もしかして……)
151名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 01:17:47 ID:q0Vt9Zrm
支援
152名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 01:19:19 ID:q0Vt9Zrm
反目さんにネタ先越された〜
支援
153なの魂:2008/01/27(日) 01:19:26 ID:untE6I4n
 


しばらく口論を続けていた銀時とクロノであったが、なのはとユーノが仲裁に入ったことで、結局事情聴取を受けてしまうこととなった。
今現在、彼らはクロノの後に付き従う形でアースラの艦内を歩いているところだ。
さすがに商店街の通りほどではないが、どうやら居住性にもかなり配慮がなされているらしく
その通路は人が四人並んでもなお余裕があった。

(……オイオイ、こんなモン単騎で墜としたってのかよ……マジでバケモンだな、あのオカマ)

ふと知り合いのオカマバーの店主を思い出して銀時は冷や汗を流す。
一応、自分の大先輩に当たる人物なのだが……絶対に尊敬だけはしたくないな。
そんなことを考えていると、不意にクロノがこちらを向いた。
……いや、その視線は銀時ではなく、なのはに向けられていた。

「……ああ、いつまでもその格好だと窮屈だろう。バリアジャケットとデバイスは解除していいから」

「え……あ、はい。そうですね」

先程の戦闘からずっと魔導衣を纏っていたなのはは、言葉に従って装備を解いた。
この格好だと極僅かとはいえ魔力を消耗してしまうため、多少なり身体に負担をかけてしまうのだ。
そのことを考慮した、クロノなりの気遣いだったのだろう。
なのはの周りを淡い光が包んだかと思うと、次の瞬間には彼女はいつもの普段着姿になっていた。
続けてクロノは、なのはの側を歩くユーノにも声をかける。

「君も、元の姿に戻ってもいいんじゃないか」

「ああ、そういえばそうですね。ずっとこの姿のままでいたから、忘れてました」

『……は?』

素っ頓狂な声を上げる、クロノとユーノを除く四人。
そんな彼らにはお構いなしに、ユーノの周りを光が包み込んでいく。
その光はどんどん膨張していき、やがてなのはと同じくらいの大きさにまでなった。
そして……。
光の中から、一人の少年が現れた。

「……ふぅ。なのはと銀時さんにこの姿を見せるのは、久しぶりかな」

薄い黄土色の髪と、女の子のような顔つきをしたその少年は銀時達を見ながらそう言った。
一方の銀時達はというと、まるで珍獣でも見たかのような目で少年を見つめ、口をあんぐり開けている。
そんな彼らを、少年は不思議そうな目で見つめた。

「「「「ななななんですとォォォォォ!!?」」」」

少年――もとい、ユーノを指差して銀時達は絶叫する。
思わずたじろぐユーノ。

「……あの、四人とも……?」

「ユ、ユーノくんって、ユーノくんって! え、その、ウソォ!?」

慌てふためくなのは。
すがるような目で銀時に視線を向けるが、彼もまた開いた口が塞がらないといった状態に陥っていた。

「……君達の間で、何か見解の相違が……?」

「えーと……僕達が最初に会った時って、この姿じゃ……」
154名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 01:20:57 ID:RJ6tBv7p
オカマすげー、支援
155なの魂:2008/01/27(日) 01:21:16 ID:untE6I4n
今ひとつ状況が把握できないクロノが言い、現状を整理すべくユーノが問いかける。
しかしユーノに返された答えは、彼が予想していたものとはまったく真逆のものだった。

「待てwait。お前最初からフェレットだったぞ」

銀時の言葉に、ユーノは目を閉じ額に握り拳を当てる。
そしてきっかり五秒後。

「ああああああああああ!!」

今度はユーノが大声を上げた。
そういえばそうだったような気がしないでもない。
それならば、自分がいるのにお構いなしに着替えたり、温泉で女湯に強制連行したりといった
なのはの行動も理解できる。
何しろ自分のことを人間だと思っていなかったのだから。
……じゃあ人間だと知った今は?
はっとした表情でユーノは銀時達を見る。
冷めた表情でこちらを見る万事屋の姿がそこにあった。

「そーかァ……つまりお前、あのカッコを利用して、なのはの着替えとか風呂とか平然と覗いてたわけだな」

「人として軸がブレてますね。もう居直るっきゃねーよ」

「マジキモいアル。しばらく私に近寄らないで」

「違いますからねェェェ!! 他意はありませんからね! 不可抗力と言うか何と言うか……!」

口々に呟く万事屋に、必死の弁解を行うユーノ。
しかし万事屋は馬耳東風といった様子でユーノに詰め寄ってきた。

「鯛も海老もねーよ。とりあえずアレだな。旦那に代わってヤキいれとくか」

「女の敵ネ。覚悟するヨロシ、淫獣」

指の関節を鳴らしながらユーノの前に立つ銀時と神楽。
彼らの身体から、威圧感を具現化したかのようなオーラが漂っているように見えるのは、おそらく目の錯覚ではないだろう。
あっという間にユーノは壁際まで追いやられてしまった。

「え、あの、ちょ……アッ――!!」

仮借ない打撃音と共に、通路内に悲痛な断末魔の叫びが響き渡った。

(……緊張感ってものが無いのかな……この人達は)

ため息をつきながら頭を抱えるクロノ。
彼の隣では、なのはが冷や汗をかきながら胸の前で手を合わせ「南無……」と呟いていた。



日本の茶室を模された部屋に通され、銀時達はリンディと対面した。
今までの事の成り行きをユーノが説明し、リンディが要所要所で頷く。

「そうだったの……ジュエルシードを発掘したのは、あなただったんですね」

「はい……それで、僕が回収しようと……」

「そんな大怪我までして……立派だわ」
156なの魂:2008/01/27(日) 01:22:43 ID:untE6I4n
顔面絆創膏だらけのユーノを見て、リンディは呟いた。
しかしユーノは何故かバツが悪そうな表情をする。

「あ、いえ……これはちょっとドーナツ作りに失敗しまして……」

そう言ってなのはに目配せをすると、彼女は恥ずかしそうに俯いてしまった。
同時に、背後から刺さるような視線を感じる。
恐る恐る振り向いてみると、万事屋の三人が恐ろしい表情でユーノを睨みつけていた。
思わず乾いた笑いを漏らすユーノ。

「だけど同時に無謀でもある! おまけに、民間人まで巻き込んでしまって……」

彼の笑いを咎めるように、クロノが怒鳴る。
ユーノは再びバツが悪そうな顔をし、そのまま黙りこくってしまった。
その隣で、なのはがおずおずと手を挙げ質問を投げかける。

「あの……ジュエルシードって、一体……」

「…………」

その質問と同時に、クロノが急になりを潜めた。
まるで、聞かれたくなかったことを聞かれてしまったかのような、そんな表情だ。
その隣ではリンディが困ったような表情を浮かべながら、角砂糖の入った小瓶を手に取り
緑茶の入った茶碗に角砂糖を一個投入した。

「んー……教えてあげたいのは山々なんだけど、色々と複雑な事情がありますから……」

そう言ってリンディは美味しそうに茶をすする。
それを見て「え?」という顔をしたのはユーノだけだった。
緑茶に砂糖を投入するなどという暴挙を見れば、普通はユーノのような反応をするべきだろう。
だがしかし、なのは達はごくごく自然にその光景を眺めていた。
何故か。
理由は簡単。同じくらいぶっ飛んでる人がすぐ側にいるから。

「そう言われると余計に知りたくなるのが人間の性ってモンだ。いいじゃねーか。減るモンでもねーんだしよ」

そんな事を言いつつ、銀時は小瓶を手元に取り寄せる。
そして自分に用意された茶碗を持ち……小瓶の中に茶を注ぎこんだ。
もう一度言う。
砂糖を、茶に入れたのではない。
角砂糖の山に、茶を注ぎ込んだのだ。
小瓶の中では溶けきれなかった砂糖が粒状になって渦を巻いている。

「……あの、銀さん。一体何やってんですか?」

思わず尋ねる新八。
銀時は何食わぬ顔で新八の前に小瓶を突きつけた。

「緑茶銀時スペシャルだ。飲むか?」

「いらねーよ、ンなモン!」

そんなやり取りを見て、何故かリンディはムッとした顔をする。
そしてポツリと一言。
157リリカル! 夢境学園:2008/01/27(日) 01:23:19 ID:YUKmn7sa
淫獣成敗 支援!
158名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 01:23:46 ID:4qjaUonS
とうとう甘党同士が出会っちまったな
159なの魂:2008/01/27(日) 01:24:22 ID:untE6I4n
「……クロノ、お砂糖のおかわりを……」

「対抗しなくていいです、艦長」

即、止められた。
まあ当然といえば当然である。
リンディは一つ咳払いをし、平静を務めながら銀時達を見やる。

「……ともかく、これ以上この件に関わってもロクな目には遭いませんよ。
 ここから先は私達の領分……ジュエルシード捜索は、これより時空管理局が全権を持ちます」

「君達も今回のことは忘れて、それぞれの世界に戻って元通りの生活に戻るといい」

リンディとクロノは揃ってそう言う。
要するに、これ以上関わるな。ということだ。
軍人が秘密にしたがる懸案が、ロクな物であるわけが無い。
普通なら言われる通りに身を引くべきである。

「元通りねぇ……それが出来りゃ苦労はねーよ」

しかし銀時は何故か引こうとはしなかった。
小瓶に入った茶と砂糖を一気に飲み干し、言葉を続ける。

「こっちは訳のわかんねー間に記憶失ってよォ。ようやく戻ったと思ったら今度は家が吹き飛んでんだよ。
 主人公から浮浪者だぞ? 北極から南極だよオイ」

「最高の酒の肴じゃないか」

「デカ過ぎて胃がもたれるわボケ」

先程の臨海公園の時のように、再び睨みあう銀時とクロノ。
どうもこの二人、思想や思考がどうこう以前に生理的に相性が悪いようである。

「まぁ……随分と波乱万丈な人生を送っているんですね。さすがというか、なんというか……」

そんな二人を見て、リンディは苦笑いをする。
新八は、彼女のまるで銀時を知っているかのような物言いに首を傾げた。
それとなく銀時に疑問をぶつける。

「……あの、銀さん。もしかして知り合いなんですか?」

「いや、むしろこんな別嬪さんならお知り合いになりてーよ」

鼻で笑いながら、しれっとそんな事を言ってのける。
隣ではなのはが意外そうな顔をしていた。
――え? この人でも女を見る目はあるんだ。
そんな顔だ。

「あらあら、おだてても何も出ませんよ。白夜叉さん」

口元に手を当てながらリンディは笑った。
ごく自然に口を付いて出てきたその言葉には、なんの悪意も込められていなかった。

「…………」

しかし。
銀時はその言葉を聞くと同時に顔から笑みを消した。
自然と自分の目つきが悪くなっていっているのが分かる。
160リリカル! 夢境学園:2008/01/27(日) 01:24:24 ID:YUKmn7sa
銀さん 糖尿病はどうしたw 支援!
161名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 01:25:15 ID:UhgpPkLA
こんなかわいい子が女の子なわけない!でも淫獣!
支援w
162名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 01:26:24 ID:UhgpPkLA
ちょ、これは
ヤバイヤバイヤーバイ
支援
163なの魂:2008/01/27(日) 01:26:49 ID:untE6I4n
「白……夜叉……?」

すぐ隣では、聞いたことも無い単語になのはが首を傾げていた。
リンディはそっと目を伏せながら、懐かしむように語り出す。

「一年戦争……こちらでは攘夷戦争と言った方が分かりやすいわね。
 その折に、鬼神の如き働きをやってのけ……敵はおろか、味方からも恐れられた武神。
 戦争終結後に幕府によって粛清されたと聞き及んでいましたが……やはり捏造だったようですね」

そう言い、リンディは銀時を見る。
その目には畏怖や敬意の念は込められていなかった。
ただ本当に、珍しい物を見ただけといった目だ。
銀時にとっては、それが逆に不愉快だったのだが。

「……過激派の陸士一個中隊が、たった二人の魔力も持たない人間に壊滅させられたって報告を聞いたときは……さすがに耳を疑いましたよ。
 まぁ、おかげでこちらも余計な被害を出さずに済みましたけれどもね」

一個中隊。
二人の人間。
あの時のことか、と銀時は漠然とその時の状況を思い出す。



吹き荒れる風と降り止まぬ雨。
自分達を取り囲む無数とも思える異人。
仲間を失い、重傷を負い、そして退路も無し。
まさに絶体絶命の危機だった。

(もはやこれまでか……)

くずおれる様に跪いていた自分の後ろから、声が聞こえた。
刀を杖代わりに、何とか片膝で姿勢を整えている桂の声だった。

(敵の手にかかるより、最期は武士らしく潔く腹を切ろう)

――……武士らしく……か。

銀時はくぐもった笑いを上げた。

(……バカ言ってんじゃねーよ。立て)

――お膳立てされた武士道貫いて、後に何が残るってんだよ。

血に染まった刀を手にゆっくりと立ち上がり、夜叉の如き表情で眼前の敵を睨む。
敵も身構えるが、その気迫に押され、一歩を踏み出せない状態にあった。

――俺は俺の武士道を貫く。俺の美しいと思った生き方をし、護りてェモンを護る。……そんだけだ。

(美しく最期を飾りつける暇があるなら、最期まで美しく生きようじゃねーか)


164名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 01:26:57 ID:4qjaUonS
銀ちゃんスイッチ入ったよ
165なの魂:2008/01/27(日) 01:28:32 ID:untE6I4n
飛び交う光弾を避け、斬り裂き、二人の男が荒野を駆ける。
『狂乱の貴公子』、桂小太郎。
そして『白夜叉』、坂田銀時。
銀の煌きと共に血飛沫が舞い、獣のような叫びと共に幾つもの命の灯が消える。
眩い光弾は空を切り、打ち合った杖は白刃の前に斬り捨てられる。
降りしきる雨と断末魔の叫びが、狂った協奏曲を奏で続けていた。



雨が止み、緋の花が咲いた荒野の真ん中に佇むのは、たった二人の侍だけだった。



「……昔話はこの辺で終いにしよーや。それより、艦長さんよォ」

不機嫌そうにする銀時の目の前では、リンディが先程から表情一つ変えずにこちらを見ていた。
離反したとはいえ、元仲間を斬り殺した男が目の前にいるというのにこの態度。
そういう性格なのか、それとも割り切って考えているだけなのか。
どちらにしろ、神経の太い女だ。
そんなことを考えながら銀時は言葉を続けた。

「さっきも言った通り、俺には帰る家がねェ。……それで、なんだ。ちィと相談してーことがあるんだが……」

銀時の言葉を聞いて、ようやくリンディは表情を変えた。



突然けたたましく鳴り響いた電話の呼び出し音に、シグナムは思わず身を竦めた。
次いで、辺りを見回す。
現在、電話が置いてあるリビングに居るのは自分一人。
これは少々厄介なことになった。
というのも、今までシグナムは電話の応対などしたことがなかったのだ。
焦るシグナムに拍車をかけるように、電話は相変わらず鳴り続ける。
落ち着け、為せば為る、だ。
意を決してシグナムは受話器を手に取った。

「もしもし、八神ですが」

若干声が裏返ったような気がしないでもない。
受話器の向こうからは、何処かで聞いたような声の男が何か独り言を呟いていた。

『お、繋がった繋がった。最近の携帯はスゲーなオイ』

シグナムは耳を疑った。
この声、そしてこの口調。
だが、あの男は記憶喪失で行方不明のはず……。
半信半疑で彼女は受話器に向かって叫ぶ。

「銀時殿……? 銀時殿か!?」

『どーもォ、銀さんでーす』

「どーもォ、ではない! 一体どこをふらついているのですか!? 主が心配して……」

『アレだ、今戦艦』

「は!?」
166名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 01:29:37 ID:UhgpPkLA
なんつーかこう、電話の先はテロリスト?
支援w
167なの魂:2008/01/27(日) 01:30:23 ID:untE6I4n
久しぶりに声を聞いたかと思えば、いきなり突拍子も無い返答である。
せんかん? 千巻? 選管?
選挙管理委員会がどうかしたのか?
常人とは少しズレた思考を巡らすシグナム。
そんな彼女に構うことなく銀時は一方的に話を続ける。

『いや、ちょいと早急に金が要りようになってな』

「あの、話が全く見えないのですが……」

直後、電話の向こうから聞き慣れない女性の声が聞こえてきた。
その声はあまりにも小さすぎて、シグナムにはよく聞こえなかった。
女性はどうやら銀時に声をかけていたらしく、銀時が面倒くさそうに「分かった分かった」と言っているのが聞こえた。

『……そーいうわけだ、姐さん。しばらくそっちには行けそうにねェ。
 今度なんか奢ってやるからそれで許せ。ってお姫さんに伝えといてくれ。じゃ、そーいうことで』

プツッ、という音と共に一方的に電話が切られる。

「ちょ、待……おい白髪! 話を聞けェ!」

あまりにも勝手な振る舞いに思わず怒鳴るシグナム。
返ってきたのは空しい沈黙だけであった。
受話器を置き、深くため息をつく。
そんな彼女の後ろから、遠慮がちに声がかけられた。

「シグナム。電話、誰からやったん?」

リビングの入り口からひょっこり顔を出したはやてが、心配そうにこちらを見ていた。

(……まったく、あの男は……)

寂しさに打ち震える少女の姿を見、そしてその少女が慕う男の姿を思い出し、シグナムは再びため息をついた。

「やれやれ……やはりあの人に主の側近は任せておけんな」

呟きながら苦笑するシグナムを見て、はやては不思議そうな顔をしていた。



「……ご家族の方?」

肩越しに銀時の持つ携帯電話を覗き込みながらリンディは聞いた。
銀時は首を横に振り、意味深な笑みを浮かべながら呟く。

「うちのマスコットだ」

理解しがたい返答にリンディは頭上に疑問符を浮かべる。
が、すぐに彼女は表情を変えた。
心配そうな顔で銀時を見つめる。

「それにしても……本当に良かったのですか? 上には最大限の口利きをするつもりですが、もしかしたら色々と厄介事に……」

「既に厄介なことになってるっての。大丈夫だって。こーいうのは慣れっこだから」
168名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 01:30:54 ID:ycmEDUWT
生電話先は闇の書がありまーすw
支援
169名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 01:32:33 ID:4qjaUonS
つーか銀さんまだはやてに連絡してなかったのかよ!
170なの魂:2008/01/27(日) 01:32:57 ID:untE6I4n
そう言って銀時は笑って見せた。
それでも腑に落ちない様子でリンディはため息を漏らす。
というのも、銀時がとんでもない相談を持ちかけてきたからだ。
端的に言うと、「仕事手伝うから金くれない?」である。
もちろん最初は突っ撥ねるつもりだった。
なにしろ、一般人が首を突っ込んでいい事件ではない。
が、しかし。
最初は横暴な態度だった銀時がだんだん下手になっていき、最終的に土下座までして頼み込んでくるのを見て折れてしまったのだ。
我ながらお人好し過ぎるな。とリンディは思う。

「あなたは大丈夫かもしれませんけど……」

呟きながら、銀時の連れに視線を向ける。
まだ若い男女と巨大な犬に、幼い少女。そして少女の肩に乗るフェレット。
彼らの身を案じて散々止めたのだが、結局は彼らも銀時と行動を共にすることになってしまったのだ。

「私達三人揃って万事屋ネ。銀ちゃんが行くって言うなら、例え火の中でも水の中でもついていくヨ」

「あなた達にそのバカを制御できるとは思えませんからね。まあ、保護者同伴ってことで一つ」

「銀さんの手綱を握れるのは、私と新八さんくらいですから。……それに、私もやりたいことがありますし」

「……そう」

口々に言う神楽達を見て、リンディはそっと笑った。
これはもう止めようが無いな。という意味が半分。
もう半分は、彼女らにここまで慕われている銀時を微笑ましく思っての笑みだ。

(……歴戦の戦士が、ようやく見つけた安住の地……ってところね)

そんなことを思いながら、リンディはなのはの側に歩み寄った。

「それじゃあ、行きましょうか」

「あ、はい」

リンディに連れられ、なのはとユーノは彼女と共に部屋を出る。
今回の件、短期間とはいえ自宅を離れなければならない。
何も言わずに姿を消してしまっては両親に心配をかけてしまう。
ということで、これからなのはの両親に対して事情の説明を行わなければならないのだ。
無論事実を全て話すわけにはいかないので、九割嘘のカバーストーリーをでっち上げるつもりだが。



部屋からなのは達が出て行ったのを確認し、銀時はため息をついた。
そしてそのまますぐ近くにいたクロノに声をかける。

「……で、あのジュエルシードってのは一体何なんだ?」

一時的とはいえ共闘する以上、情報の共有は必要だ。
クロノも同じ事を考えていたらしく、最初とはうって変わって簡単に口を開いた。

「……彼女が戻ってきてから話そうと思っていたんだが……まあいいだろう」


171なの魂:2008/01/27(日) 01:36:09 ID:untE6I4n
クロノの話では、ジュエルシードはロストロギアと呼ばれる古代遺失物――過去に滅んだ超高度文明の遺産の一つであるとのことだった。
なのは達が今まで探していたジュエルシードの正体は、次元干渉型のエネルギー結晶体。
特定の方法で起動させることで次元震を引き起こし、世界を滅ぼすどころか次元断層さえ引き起こす危険な代物。
それが複数個存在するというのだ。
危ないなんていうレベルではない。
そしてクロノ達が所属する時空管理局では、それらの危険な遺失物を管理・保管することで
次元世界の安定を守っているとのことだった。

(……なんでそんな立派なことしてるのに、秘密にしてたんだろう……)

話を聞いていた新八は首を傾げた。
少なくとも、他人に知られて困るようなことは何一つしていないはずだ。
むしろ彼らのおかげで世界の平和が保たれているのなら感謝すべきではないか?
だがしかし、そんな彼とは対照的に、銀時は呆れたような声で言い放った。

「……よーするに、ただの墓荒らしじゃねーか」

当然であるが、身も蓋も無いその発言にクロノは声を荒げて反論した。

「失敬な! ロストロギアは然るべき場所で厳重な保管をされなければ、重大な次元災害を引き起こす。
 それを防ぐために、僕達はこうして戦っている! 墓荒らしなどという低俗な行為では断じて……」

「然るべきって何か? そのロストロギアってのは、全部が全部テメーらのご先祖さんが作ったモンだってのか?
 テメーらが自分の身内の墓掘り起こすのは勝手だ。けどよォ、他人の墓まで掘り起こすのは、
 ちょいとお門違いってモンじゃねーのかい?」

「隣の墓に時限爆弾が埋まっていると知っていても……それを掘り起こすのは間違いだと?」

「掘り起こしてぶっ壊すんならともかく、導火線の火だけ消して持ち帰るのが問題だってんだよ」

激しく口論しあう二人を前に新八はうろたえる。
一方神楽はそんなことには興味が無い様子で窓から次元の海を眺めて感嘆の声を漏らしていた。
「私、死んだら次元葬にしてもらうネ」などと、お気楽極楽能天気な発言すら飛び出す始末だ。
そんな彼女らを尻目に、銀時達の口論は続いていく。

「おまけにその爆弾が墓どころか町一つ消し飛ばせる代物で……それを掘り起こした奴が、
 似たような物騒なモンをいくつも家に保管してるなんて周りが知りゃァ……近いうちに警察呼ばれんぞ」

銀時の発言に、一瞬クロノは押し黙った。
確かに、何も知らない人間達から見れば自分達のやっていることは墓荒らしに変わりない。
そもそも、その気になればいくつもの次元空間をたやすく崩壊させることが可能なロストロギアを回収しているという行為自体、
ひねくれた人間から見れば世界平和を名目にした過度な軍備増強に映ってしまうのだ。
そして今回の舞台は第97管理外世界……過去に衝突した、あの第107管理外世界の支配下の世界なのだ。
幸いにも、あちらの世界は管理局の遺失物管理行為には気付いていない。
だがしかし、ただでさえ関係が冷え切って一触即発状態になっているところに、管理局が軍備増強紛いの行為を行っているということが知れてしまっては、
間違いなくろくな事は起こらない。
それこそ、下手を打てば戦争が勃発する恐れすらある。

「……どうやら、君とは反りが合いそうに無いね」

クロノは歯噛みしてそう言い残し、部屋から去っていってしまった。
銀時はため息をつく。
銀時自身、管理局のことはあまり信用していないのだが、だからといって彼らがやっていることに全く理解を示せないわけではなかった。
ただ、そう思う人間達もいるということを忘れないで欲しいと忠告したかっただけなのだが……。
普段の口の悪さに相性の悪さも加わり、結局ただの口論になってしまったわけである。

「……銀さん。もしかして僕ら、想像以上にヤバいことになってるんじゃ……」

新八が冷や汗を垂らしながら問いかけるが、銀時はいつもの調子で言い返す。
172なの魂:2008/01/27(日) 01:37:29 ID:untE6I4n
「ヤベェ仕事なんざいつものことだろ」

そう、ここまではいつも通り。
いつも通りヤバいことに巻き込まれて。
いつも通りバカ騒ぎを起こして。
そしていつも通り万事解決。
それがいつもの万事屋だ。
しかし……。
今回は、一つだけ違うことがあった。

「ま……せいぜい旦那に怒鳴られねーように頑張るかね」

白い魔導衣を身に纏った少女を思い浮かべ、銀時はそう呟いた。



フェイトは自室の窓にかけられたブラインドの隙間から、夜空を見上げていた。
雲一つ無い月夜。瞬く星達。
澄んだ夜空とは対照的に、フェイトの心は曇っていた。

「……あの人達……どうなったのかな……」

後ろに佇む相棒に問いかける。
アルフは少し迷ってから、答えた。

「断言はできないけど……多分、管理局の連中に……」

そこまで言って、アルフは黙る。
彼女の言わんとすることは理解できた。
おそらく、みんな管理局に捕らえられてしまっただろう。
それも、自分達を逃がすために……。

(どうして……)

分からなかった。
何故あの人達は、危険を顧みずに自分を助けたのか。
何故あの少女は、自分の事にここまでこだわるのか。

……何故自分は、あの人達のことをここまで気に掛けているのか。

「……本格的に時空管理局が介入してきたんじゃ、アタシ達も時間の問題だよ……。
 逃げようよ、どっかに二人でさ……!」

声を震わせながらアルフが言った。
管理局の操作網を持ってすれば、自分達の居場所などすぐに知られてしまうだろう。
だが、そう簡単に逃げ出すわけにもいかなかった。

「駄目だよ……母さんが待ってるから……」

「あんな奴の言うことなんか聞く必要ないよ! ワケわかんない事ばっか言うし、フェイトに酷い事ばっかするし……!」

「……母さんの事、悪く言わないで」

優しくアルフを宥めるが、彼女は構わずに言葉を続けた。
173なの魂:2008/01/27(日) 01:38:48 ID:untE6I4n
「……言うよ! だってアタシ、フェイトの事が心配だ……! フェイトが悲しんでると、アタシの胸もちぎれそうに痛いんだ……。
 フェイトが泣いてると、アタシも目と鼻の奥がツンとして、どうしようもなくなるんだ……。
 フェイトが泣くのも悲しむのも、アタシ、イヤなんだよ!!」

ついには涙を流しながらアルフは叫んだ。

「アタシは……!フェイトに笑って、幸せになってほしいだけなんだ……!」

フェイトは戸惑いながらも、アルフの頭をそっと撫ぜる。

「……ありがとう、アルフ……でも……」

ほんの少しの逡巡。
笑って、幸せになってもらいたい。か……。
それなら……。

「……それなら、なおさら逃げられないよ……」

悲哀を帯びた目でアルフがこちらを見た。
何故分かってくれないんだ、と。そう言いたげな目だった。
フェイトは普段のように笑みを作ったりはせず、何かを決意したような表情でアルフを見つめ返した。

「自分でもよく分からないんだ……けど、あの人達を放っておいたら、ずっと笑えない気がする」

今までに起こった、彼女らとの出来事を思い返す。
何も知らない無垢な親友を護るために、自分に立ち向かってきた少女。
頼りない少女を護るために、棒切れ一つで立ち向かってきた二人の男。
自分と真っ向から向き合い、自分のことを知りたいと言ってくれた、あの少女。
174なの魂:2008/01/27(日) 01:39:51 ID:untE6I4n
「……母さんのことは大事だし、願いを叶えてあげたい」

そして……。
あの日、夕焼けに浮かんだ四つの仲睦まじい影。

「……けど、あの人達も助けてあげたいの」

……ああ、そうか。
壊したくないんだ。あの人達の絆を。
見続けていたいんだ。
あの穏やかな光景を。
守りたいんだ。
あのかけがえの無い温もりを。
他の誰にも、自分のような寂しい思いをさせたくないんだ。

「わがままな主人でゴメンね……でも、もう少しだけ一緒に頑張って欲しいんだ」

思えば、初めてかもしれない。
誰に言われるわけでもなく、自らの意思で何かを決意したのは。

「……わがままなんかじゃないよ……大丈夫、フェイトは私が守るから……!」

フェイトを抱きしめるアルフの声には、もう悲壮感は込められていなかった。
ただ、守りたいと。
目の前の大事な人を守りたいという、その思いだけが強く込められていた。
175名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 01:42:13 ID:ycmEDUWT
フェイト健気すぎだぜッ!!
支援
176なの魂:2008/01/27(日) 01:43:50 ID:untE6I4n
以上で投下終了です
フェイトには薄幸の少女を地で行ってもらってます、ええ
というか、アレですね。銀魂OPの「かさなる影」買ってきて聞いてたんですが
これ無印なのはのOPでも通用しそうな勢いなんですけど!?

P.S.
保管庫で修正依頼をしたいのですが、あまりにも分量が多いのでTXTファイルを上げようかと思ってます
で、相談なんですが、どなたかどこか良いアップローダ的な物知りませんか?
177名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 01:45:25 ID:4qjaUonS
GJッス!

つーかフェイトはシリアスでもギャグでも不幸属性決定なのかwwww
178名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 01:46:25 ID:dXouk0mr
名は体をあらわす?
179メタルサーガsts:2008/01/27(日) 01:47:42 ID:6V9aosCm
GJ。
すごい文章量です。
フェイトはやはり不幸属性持ちなのか。

それと、ログを見た限り予約はいっていないみたいなので
なの魂さんの後の02:13よりメタル8話投下行きたいのですが、予約よろしいでしょうか?
180反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/01/27(日) 01:48:41 ID:TXEZORiP
ふはは、油断したな>>152よ! 先手必勝こそ戦いの極意なり!
…ごめんorz

ともあれGJ!
ていうか何でこう毎回毎回人が寝ようとした時に良作を投下して来るかねwww
色々とツッコミ所がありすぎてどこから触れていいやら…w
181名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 01:50:21 ID:oX3U/R1B
GJです
原作も爆笑回のひとつ、バベルの勇者たちがアニメで放映されて益々盛り上がってますから一番楽しみな作品です
182名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 01:54:06 ID:18gGiOrq
GJでした。
なのは達の世界は現在かなり危ういバランスだなぁ。加えて闇の書は管理局
は(表向き)把握してない可能性が高いけど、一部勢力は把握してるし。
183Strikers May Cry:2008/01/27(日) 01:54:16 ID:Ycn47sdW
ああ、まったくGJだ!

しかし管理局でバイトとは、このままアースラ面子との関係が数年続いたらクロノと銀さんでダブル杉田ボイスですか?

簡単に脳内再生できるな、それ。
184名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 01:54:33 ID:byQF7Yrw
GJすぎるだろJK
185名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 01:56:02 ID:IciQD9pN
なの魂氏GJっす! つーかはやてのこと忘れてんなよ銀さんw
186名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 01:57:22 ID:ycmEDUWT
GJ!!
管理局についての銀時の例えがあながち間違えじゃなくわかりやすかったのが
すごいよかったです。
管理局も間違ったことはしていない。でも、敵対しているものからしたら戦力増強
しているようにしか見えない。管理局が存続する以上は絶対に避けられないか。
187名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 01:57:26 ID:q0Vt9Zrm
相変わらずGJです!
リンディ茶を超える抹茶銀時スペシャル…
対抗しようとするリンディさんに萌えたのは俺だけですかね?
未亡人可愛いよ未亡人

銀時とクロノは何となく相性悪そうだな、と思ってたらマジにそうなって吹いた。
そして相変わらず不幸属性バリバリのフェイト
がんばれ、万事屋メンバーの中に入れるその日まで



そしてSHURABAに…(爆
188リリカル! 夢境学園:2008/01/27(日) 02:02:06 ID:YUKmn7sa
まったくもってGJとしか言い様が無い。
無印自体の話も佳境に入ってきたし、これからどうなるのか凄い期待です。
それにしても、原作だと(たしかだけど)まだ知らない白夜叉の名を新八たちが知りましたか。
詳しい内容は知らないんだけども、これが波紋を広げないかどうか心配。

あと銀さんは病院行けw お金なくて、多分診断サボってるだろうから!
甘いものを取るのは一週間にだが、一ヶ月に一回だけだかと決まってるんだからね!
189名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 02:06:58 ID:J0GKLECU
GJGJ!!
おいおいずいぶん面白い展開になってるじゃねえですか!
なの魂氏の作品は毎日楽しみにしてます。

最後に一言。淫獣ざまぁww
190名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 02:09:30 ID:kwt0Gzbz
いやはやGJ!! 
長い間お待ちしておりました!
かなりの長文、読んでて幸せでしたよ!
これからもがんばってくださいまし!
191なの魂の人:2008/01/27(日) 02:09:48 ID:untE6I4n
うお、すげェ量の感想。感謝感激ですぜィ!
だがコレだけは言わせて貰いたい!

>>188
ヅラと万事屋メンバーは面識有り(第三幕参照)=池田屋イベントは消化済み
ということで、新八も神楽も白夜叉の名だけは知ってます
192名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 02:10:05 ID:ou1bmr/R
GJ。リンディ茶がでるなら銀さんもそれを超えるモノ出すと思いましたが
やっぱり出ましたね。銀時スペシャル。次回が楽しみです。
193メタルサーガsts:2008/01/27(日) 02:16:32 ID:6V9aosCm
それじゃ時間が来ましたのでメタル8話の投下いきますね。
今回、気合い入れすぎたのか描写入れる部分が多かったからか24000文字とか。
最後までお付き合いくださればと思います。
194リリカル! 夢境学園:2008/01/27(日) 02:16:34 ID:YUKmn7sa
>>191
迂闊にも気付いてなかったorz
すみません。くっ、今から読み直して来ます!(馬鹿は銀魂コミックスをもって走り出した)
195名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 02:16:42 ID:ycmEDUWT
支援
196リリカル! 夢境学園:2008/01/27(日) 02:17:11 ID:YUKmn7sa
支援です!
197メタルサーガsts:2008/01/27(日) 02:17:24 ID:6V9aosCm
防衛戦の終わり。
つまらない日常への回帰に落胆する。
だが、ほんの少し楽しみなことが起こった。
スバルへのミスショット。
俺からすれば、起こるべくして起こった事故。
優しい優しいなのはは、ほんの少しの小言で済ませる。
あまりにもくだらなくてどうでもいいことに過ぎない小言よりも、
俺の興味はたった1つに向いている。
ティアナ・ランスター。
ひよっこどもの中で一番どうしようもないひよっこ。
粋がった馬鹿の同類かとさえ思い始めた。
視界に映る度、思考に浮かぶ言葉は圧殺、轢殺、殴殺、射殺、爆殺、斬殺、屠殺、嬲殺・・・・・・。
さて、そろそろ貴様のあり方を見極めるとしよう。
魔法少女リリカルなのはStrikerS―砂塵の鎖―始めようか。

第8話 賭け

「えっと・・・・・・報告は以上かな?現場検証は調査班がやってくれるけど、
皆も協力してあげてね。しばらく待機して何も無いようなら撤退だから。」
「「「はい!」」」

なのはさんの言葉にスバル達が返事している。
けれど、そんなことあたしはどうだってよかった。
この後、絶対に・・・・・・。

「・・・・・・で、ティアナ。ちょっとあたしとお散歩しようか。」
「っ・・・・・・はい・・・・・・。」

来た!!
なのはさんから穏やかな口調で誘われる。
あたしはただ返事を返すしかなかった。
緞帳が落ちたような心のまま・・・・・・。

そのまま森をなのはさんと歩いていき、どの程度皆から離れたころだろう。
辺りに誰もいない場所。
木漏れ日以外、本当に何も無い、木々が鬱蒼と茂った静かな場所。
そこでなのはさんが歩みを止めた。
そのまま、あたしのほうに振り向き口を開く。

「失敗しちゃったみたいだね。」
「すいません。1発・・・・・・反れちゃって・・・・・。」

後ろめたさに無意識に視線は下を向いてしまう。
それに・・・・・・なのはさんは全て知っているはず。
隊長なのだから報告を受けていないはずが無い。
その上で質問しているのだろう。
あたしを問い詰めるために・・・・・・。
もしも知らないことがあるとすれば、どうしてあたしがあんなことをやったか。
それだけだろう。

「わたしは現場にいなかったし、ヴィータ副隊長に叱られて、
もうちゃんと反省していると思うから、改めて叱ったりはしないけど・・・・・・。」

なのはさんはそう言う。
優しい口調のままに・・・・・・。
それで優しい口調で油断させた後、次はなにをやるんですか?
頬を叩きますか?
それとも謹慎処分でも通達するんですか?
198名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 02:18:01 ID:q0Vt9Zrm
だから文字数とか言わなくていいって。
今回ちょっと長めです、とかでいいやん。
支援
199メタルサーガsts:2008/01/27(日) 02:18:24 ID:6V9aosCm
「ティアナはときどき、少し一生懸命すぎるんだよね。それでちょっと
やんちゃしちゃうんだ。でもね・・・・・・。ティアナは1人で戦っているわけじゃないんだよ。
集団戦でのわたしやティアナのポジションは前後左右全部が味方なんだから。」

肩に手を置きながら告げられたなのはさんのその言葉にはっとする。
あたしのポジションはセンターガード。
敵陣に単身で切り込むフロントアタッカーでも、
前衛や後衛の支援攻撃をするガードウイングでも、
まして完全支援のフルバックでもない。
チームの中央に立って、誰よりも早く中・長距離を制する者がセンターガード。
そしてあのときあたしがやるべきだったことは、敵を全滅させることでも無くて、
ましてあたしが蹴散らすことじゃなくて、防衛線を維持することだった。
それなのにあたしは焦って、全機撃墜しようとして・・・・・・。

「その意味と今回のミスの理由、ちゃんと考えて同じことを2度と繰り返さないって
約束できる?」
「はい・・・・・・。」
「なら、わたしからはそれだけ。約束したからね?」
「はい・・・・・・。」

なのはさんは最後まで優しいままだった。
1度も声を荒げもせず、頬を打つこともせず・・・・・・。
なのはさんに言われたことは全部理屈の上では分かってる。
でも・・・・・・、だけど・・・・・・、あたしは・・・・・・。
AMFに阻まれてなにもできなかったあたしは・・・・・・。
役立たずだ。


「わかりました。あちらに・・・・・・。」

調査班の人から話を聞いていると、ふっとその視線が外れた。
追うようにあたしもそっちを見ると、そこには・・・・・・。

「ティア!!」
「・・・・・・スバル。」

あたしは足早に駆け寄る。
調査班の人の話を放り出して。
管理局員としての自覚があるのかとか主人を見つけた犬みたいと言われるかもしれない。
でもなんだっていい。
ティアはあたしのかけがえの無い親友なんだから。

「いろいろ・・・・・・ごめん。」

いつものティアが嘘のようだ。
まるで火が消えちゃったみたい。

「んーん、全然・・・・・・。その・・・・・・なのはさんに・・・・・・怒られた?」

あー、なんでこんなことを聞いているんだろう。
ティアが傷つくに決まっているのに。
なんであたしはもう少し気の利いた言葉が言えないんだろう。
200メタルサーガsts:2008/01/27(日) 02:19:04 ID:6V9aosCm
「少しね。」
「そう・・・・・・。」

落ち込んだままのティアが短く答えて、あたしもただ言葉を返すしかできない。
ほら、会話が途切れてしまった。
ああ、もっとなにか言わないといけない言葉があるのに・・・・・・。
ええと、ええと、そうだ!!

「ティア、向こうで一休みしてていいよ。検証の手伝いはあたしがやるから・・・・・・。」

精一杯明るく気にしていないように振舞えたはず。
でもティアにはバレバレかな。

「凡ミスしておいてサボりまでしたくないわよ。いっしょにやろ?」
「うん!!」

軽く笑ってティアがそう言ったけど、あたしは嬉しかった。
ティアにちょっとだけ元気が戻ったみたいだったから。


「初めまして、ユーノ・スクライア司書長。空曹兼陸曹のはんたと申します。
いつもバトー博士がお世話になっています。」

そう言いながら俺はなのは達のところへ近づいた。
管理局のデータベース無限書庫の司書長、ユーノ・スクライア。
バトー博士から簡単な容姿は聞いている。
トモダチがまた増えたという言葉と共に・・・・・・。
しかし、インジュウなんてアダナ、バトー博士もよく思いつくものだ。
もっとも俺にはどのあたりがインジュウか分からないが・・・・・・。

「い、いえ。こちらこそ。その・・・・・・物凄い呼び方される以外は・・・・・・本当に・・・・・・。
バトー博士にこちらのほうが感謝してますから。既に無限書庫の3割以上に目を通されていますよ。たった1人で何十人分もの司書と同じ仕事量を来る度に手伝ってくれて、
自分の仕事もあるのに・・・・・・。司書長なんて立場にありながらお恥ずかしい限りです。」
「バトー博士があなたとトモダチになったのなら、それは当然のことです。
バトー博士以上に誠実な人間を俺は見たことが無い。」

奇妙な顔をするユーノ・スクライア司書長。
案外知らないのかもしれないな。
ここにいる面子がそろってバトー博士のトモダチになっているなんて。
インジュウ、ゴキブリ、バカチン、ロシュツキョーか。
どれが一番まともな名前か。
さて、そんなことは置いておいて、せっかくフェイトもいることだし尋ねておくとしよう。

「それで、なの・・・・・・なのは隊長とフェイト隊長をお借りしてもよろしいですか?
ああ、たった1つの疑問にお答え願うだけですからこのままでも構いませんよ。」
「・・・・・・構いませんけど?」
「ええと、なにかな?はんた君。」
「作戦行動についてなにかあったかしら?」
「広域防衛戦が予想されていたのに、砲戦魔導師のなのは隊長と広域攻撃魔法が使える
はやて部隊長がわざわざホテル内の警備についた理由を教えていただきたい。
どちらか片方が外にいれば、かけらほども被害はなかったでしょう。
結果はご存知のように、シグナム副隊長達は動きっぱなしで、
まともな範囲攻撃が使えるのは俺だけで、
召還による奇襲を受けてスバル達が展開したホテル前の防衛線まで敵に詰め寄られ、
どうにか迎撃しきれたものの、召還師には逃げられて、
オークションの品物を盗まれてしまったわけだ。」
「それは・・・・・・。」
201メタルサーガsts:2008/01/27(日) 02:19:44 ID:6V9aosCm
フェイトが困惑したように言いあぐねている様子。
同様になのはのほうも・・・・・・。
本当のことを言えばフェイトまで中にいたことがおかしい。
率いるべき隊長なのだから・・・・・・。
一番の疑問は最大火力を誇る隊長3人が揃いも揃って中にいたことだ。
シャマルのクラールヴィントとも、六課の管制のほうとも常時回線を繋げずに!!
今回の戦いを、広域防衛なんてシャマルが言っていたが、
ほとんど1方向から攻めてくれたからどうにかなったようなものだ。
包囲攻撃されるなんて予想さえ立てなかったのか?
終わったことでどうこう言いたくはないが、
あれだけ後手後手に回ってどうにかできたのは運がよかったとしか言いようがない。
まして包囲攻撃だったならホテルも人間も無傷ですまなかった。
だからこそ、聞きたい。
部隊としてどうしようもないのか、それとも別の何かがあったのかを判断するためにも。
言いあぐねている2人にこちらから予想の1つを振ってやる。

「六課のあり方として隊長は力をふるうわけにはいかなかったとでも?」
「君、失礼だろ。なのは達だって・・・・・・。」
「いいよ。ユーノ君。でも・・・・・・耳が痛いな。上からの命令としか答えられないんだ。」

ウエカラノメイレイ?
言葉の意味がわからなかった。
上からの命令・・・・・・。
つまり、はやて達よりも上の立場のどこかの馬鹿が、なにを考えたか知らないが、
効果的な運用も考えないで最大火力を使えなくしたと・・・・・・。
あらゆる言葉が思考を埋め尽くす。
その大半は罵声の類だ。
あまりにも予想を突き抜けた答え。
呆れも失望も突き抜けるほどに・・・・・・。
俺はなにも言わずに去るしかなかった。

「アルファ、結果より逆算、今回の防衛に成功する確率は?」
「60.8%。」
「5度に2度は抜かれたわけだ。遊びで部隊をやっているのか?」
「情報が足りず回答不能です。」
「仮に俺が攻める側だった場合?」
「100%は揺るぎません。今までどおりのルールならなおさらです。」
「Dead No Aliveか。」

口に出すと泣き出したくなるほどに懐かしい言葉。
それに、彼女を殺してから感じ続ける空虚な感覚は加速するばかり。
この世界に飛ばされて、アルファが蘇ったことでほんの僅かばかり満たされた。
けれど、日を追うごとに他のなにかが壊れた蛇口のように溢れ出ていってしまって・・・・・・。
まともじゃなくなりはじめていたのだろう。
壊れかけを騙し騙し動かした果てに、壊れてはいけないメインパーツが悲鳴を上げたのか。
アルファにこんな問いをしていた。
202メタルサーガsts:2008/01/27(日) 02:20:05 ID:6V9aosCm
「アルファ、狂うことができたら楽になれるかな?」
「なにも変わらないと思われます。」
「・・・・・・なぜ?」
「狂った人間はなにも感じなくなります。なにも失うことも得ることもありません。
マスターは永遠に数字の0を刻むだけになります。マスターの枷となっている現実も、
殺害せずに済んでいるに過ぎないモノが殺害可能となるだけです。
要素として誤差で済むほど極小のプラスに過ぎません。リターンは限りなく0です。」
「だが、感じなければマイナスもないだろう?機械のように・・・・・・。」
「その問いはYesです。しかし、今現在、膨大な量のマイナスがあるにすぎません。
かつて、なにも保証がないまま、なにかが得られると荒野を駆け抜けたのはマスターです。
そして多くの非論理的思考を機械に過ぎない私に教えたのもマスターです。
そのマスターが私に向けてそのようなことを尋ねるのですか?」
「・・・・・・すまない。どうかしていた。」
「問題ありません。ただ、マスターがどのような決断をしようと私がマスターの傍らに
あり続ける事実に変更はありません。」
「ああ、そうだな。」
「はーい。機動六課の前線メンバーの皆さん。撤収準備が整いました。
集合してくださーい。」

唐突に響くシャーリーの軽い声。
シャーリー・・・・・・シャーリィか・・・・・・。
だめだな。
本当にどうかしている。
彼女のこと以外で立ち止まって振り返ることなんて、
それこそジャックさんに殺されたときぐらいだったのに、
今頃になって共に旅をした仲間のことを思い出すようになるなんて・・・・・・。
綺麗な金髪のソルジャーで胸がすくような振舞いをしていた彼女だったら、
こんな状況を作り出したやつをとりあえず殴り飛ばして蹴り飛ばして、
それから笑い飛ばして酒でも飲んでそれで全部おしまいにするだろう。
酒・・・・・・。
そういえばいつからだろう。
酒の味がわからなくなって、いくら飲んでもまったく酔わなくなったのは・・・・・・。
しかし、本当にどうしたんだろう。
思考がなにかおかしい気がする。
気のせいか?
それに俺が殺してしまった彼女の髪の色である血の赤が恋しくて恋しくて仕方が無い。
ちょうどいい。
傍らを通り過ぎていく白衣を着た生き物を殺・・・・・・。
深呼吸をしながら歩き続ける。
そうだ、バトー博士に頼みを追加しよう。
3連装にすると共に、バリアジャケットに血染めの旗でも加えてくれと・・・・・・。
そういえば緑にこだわる必要もなくなったんだ。
他のカラーリングにしてくれというのもいいかもしれない。
なんせ血塗れになっても目立たないからこその緑だったのだから・・・・・・。
でも彼女は緑のアサルトスーツで全身を覆っていた。
緑は彼女とお揃いの色。
ああ、やっぱり緑のままがいい。
血染めの旗なんていらないな。
なぜ思いついたのだろう?
邪魔な情報だ、消してしまおう。
いつからできるようになったのかさえ忘れてしまった行為。
意図的に記憶を消すというもの・・・・・。
砂の城を踏み潰すように、記憶から本当に色鮮やかで綺麗な血染めの旗を消していく。
ほころびが始まってしまったことにはんたは気がついていない。
自分がなにを消してしまったのか。
あの苛酷な荒野において仲間として共に駆け抜けた金髪のソルジャー『シャーリィ』。
旅の中で彼女が語ってくれたのは、かつて所属していて皆殺しにされた傭兵団のこと。
その名前は血染めの旗(ルージュフラッグ)・・・・・。
203メタルサーガsts:2008/01/27(日) 02:21:51 ID:6V9aosCm
「皆おつかれさま。じゃあ、今日の午後の訓練はお休みね。」
「明日に備えてご飯食べてお風呂でも入ってゆっくりしてね。」
「「「「はい!!」」」」

六課に撤収して、なのはさん達にそんな声をかけられた。
あたし達4人は元気よく返事を返す。
だけど、あたしはそんなに悠長なことしていられない・・・・・・。
隊舎への道中、あたしは口を開く。

「スバル、あたしこれからちょっと1人で練習してくるから・・・・・・。」
「自主練?ならあたしも付き合うよ。」
「あ、じゃあ、僕も・・・・・・。」
「私も・・・・・・。」

これはあたしのわがまま。
あたしの無理に付き合わせるわけにはいかない。
あたし達よりも幼いエリオ達ならなおさらに・・・・・・。

「ゆっくりしてねって言われたでしょ。あんた達はゆっくりしてなさい。
それにスバルも、悪いけど1人でやりたいから!!」
「うん・・・・・・。」

そうエリオ達に言ったけど、あたしは笑えていただろうか。
誰かがいたら、きっとあたしは自分で立っていられなくなる。
それではいけないんだ。
証明するためにもあたしは人一倍努力しないといけないんだ。
制圧さえできないセンターガードでいてはいけないんだ。
あたしは誰もこないだろう場所を探すためみんなの前から去った。
どこか悲しげな声のスバルの返事を背中越しに聞きながら・・・・・・。


204メタルサーガsts:2008/01/27(日) 02:22:14 ID:6V9aosCm
「皆おつかれさま。じゃあ、今日の午後の訓練はお休みね。」
「明日に備えてご飯食べてお風呂でも入ってゆっくりしてね。」
「「「「はい!!」」」」

六課に撤収して、なのはさん達にそんな声をかけられた。
あたし達4人は元気よく返事を返す。
だけど、あたしはそんなに悠長なことしていられない・・・・・・。
隊舎への道中、あたしは口を開く。

「スバル、あたしこれからちょっと1人で練習してくるから・・・・・・。」
「自主練?ならあたしも付き合うよ。」
「あ、じゃあ、僕も・・・・・・。」
「私も・・・・・・。」

これはあたしのわがまま。
あたしの無理に付き合わせるわけにはいかない。
あたし達よりも幼いエリオ達ならなおさらに・・・・・・。

「ゆっくりしてねって言われたでしょ。あんた達はゆっくりしてなさい。
それにスバルも、悪いけど1人でやりたいから!!」
「うん・・・・・・。」

そうエリオ達に言ったけど、あたしは笑えていただろうか。
誰かがいたら、きっとあたしは自分で立っていられなくなる。
それではいけないんだ。
証明するためにもあたしは人一倍努力しないといけないんだ。
制圧さえできないセンターガードでいてはいけないんだ。
あたしは誰もこないだろう場所を探すためみんなの前から去った。
どこか悲しげな声のスバルの返事を背中越しに聞きながら・・・・・・。


205メタルサーガsts:2008/01/27(日) 02:22:40 ID:6V9aosCm
「あのさ。2人ともちょっといいか?」
「あ・・・・・・うん。」

あたしの言葉になのは達が頷いた。
シャーリーとシグナムのやつはどこか怪訝そうな表情であたしを見ている。
そんなにあたしがなにか言おうとするのが珍しいのか?
場所を移して皆がソファーに腰を下ろす。

「訓練中から時々気になっていたんだよ。ティアナのこと・・・・・・。」
「うん。」
「強くなりたいなんて若い魔導師ならみんなそうだし、
無茶も多少はするもんだけど・・・・・・。時々ちょっと度を越えてる。
あいつ、ここに来る前なんかあったのか?」
「ティアナのお兄さん、ティーダ・ランスター。当時の階級は一等空尉。
所属は首都航空隊。享年21歳。ご両親は既に事故で亡くなっていて、
ティアナはたった1人のお兄さんに育てられたみたい。」
「結構なエリートだな。」
「そう。エリートだったから・・・・・・なんだよね。ティーダ一等空尉は亡くなったときね、
逃走中の違法魔導師に手傷を負わせたんだけど、取り逃がしちゃってて・・・・・・。」
「まぁ、地上の陸士部隊に協力を仰いだおかげで、犯人はその日のうちに
取り押さえられたそうなんだけど。」
「その件についてね、心無い上司がちょっと酷いコメントをして一時期問題になったの。」
「コメントって?なんて?」
「犯人を追い詰めながら取り逃がすなんて、首都航空隊の魔導師としてあるまじき失態である。例え死んでも取り押さえるべきだった・・・・・・とか、任務を失敗するような
役立たず・・・・・・とか。」
「ティアナはそのときまだ10歳。たった1人の肉親を亡くして、しかもその最後の
仕事が、無意味で役に立たなかったって・・・・・・きっと物凄く傷ついて悲しんで・・・・・・。」
「でも無駄死にだろ?」

全員が一斉に扉のほうを向く。
そこにはあいつがいた。
いや、そんなことよりも重要なことがある。

「はんた!!てめぇ、今なに言いやがった!!」
「ノックは忘れなかったと思うんだが・・・・・・。」
「質問に答えやがれ。」
「無駄死にと言ったんだ。獲物を追いかけて取り逃がして勝手にくたばったんだから。」
「はんた君!!なんてことを・・・・・・。」
「テスタロッサ。落ち着け。はんた、いったいなんのつもりでそう言っている?」
「揃いも揃って・・・・・・。思った通りをそのまま口にしているんだよ、シグナム。
むしろどこが怒る部分なのか教えてくれないか?」
「ふざけるんじゃねぇ!!」
「冗談や挑発なんかのつもりはさらさら無い。どこが怒る部分なんだ?」
「本気で言っているんだな?」
「もちろん。育った世界の価値観の違いかと思い始めたところだが。」
「・・・・・・お前の世界ではどうなんだ?」
「世界なんて広い括りは知らないな。だが、俺のいた場所では毎日たくさんの人間が
死ぬんだ。数えたことはないがそれこそ死ぬ原因は様々でダースどころかグロスで
死んでいるだろ。なんせ周りが全部敵の世界だ。特にハンターなんていう自分の命を
賭け金にして殺し合いをやる人種はなおさら死にやすい。」
「そうか・・・・・・。」
「その一番死体になりやすいハンターにはいくつかの原則があるんだ。
その中で一番の基本で絶対の原則を無視してくたばったんだから無駄死にだろ?」
「どんな・・・・・・原則なの?」
206メタルサーガsts:2008/01/27(日) 02:23:31 ID:6V9aosCm
なのはのやつ、問いかける声が震えてやがる。
フェイトも同じだ。
シャーリーのやつなんか顔が真っ青になっちまってる。
シグナムのやつだけは冷静みてぇだな。
あたしも反射的に飛びかかっちまいそうだ。
でも、それ以上に、表情ひとつ変えないで話すはんたの話が信じられない。
いったいどんなところなんだよ。
人間が毎日そんな数で死んでいく世界って!!
なんなんだよ、この裁断機野郎がいた世界って!!

「『ヤバくなったら逃げろ』。あまりにも当たり前で簡単なことだろ?」
「なにふざけたこと抜かしてやがるんだ!!んなことしたら任務放棄じゃねぇかよ!!」
「だから無駄死にって言っているんだろ?自分がやられてたった1人の家族が
本当に1人ぼっちになる可能性よりも追いかけるほうを選んでくたばったんだから。
その上で獲物も取り逃がしたんだ。無駄死にだろ?」
「っ・・・・・・。でも・・・・・・。」
「俺の言葉にティアナが怒るならまだ分かる。だが、なんでなのは達が怒っているんだ?」

反論しようとしたなのはが、はんたの言葉に詰まった。
なんて答えりゃいいんだ。
死者を冒涜するな?
任務を遵守した結果?
尊い人命?
ティアナの気持ちも考えろ?
どれもはんたは鼻で笑いとばしちまいそうだ。
なにも言えないでいるあたし達の横でシグナムが口を開いた。

「ティアナのことは置いておこう。はんた、なんのようだ?」
「ああ、そうだ。ろくに使い道も無くて額面もたいしたことない報酬を
増やしたいと思って来たんだった。」
「給料の値上げ交渉か?」
「いや。単純な賭けさ。なのはがティアナに面白いことを言っていたからそれを使わせて
もらおうと思った。『その意味と今回のミスの理由、ちゃんと考えて同じことを2度と
繰り返さないって約束できる?』だったか?」
「盗み聞きしてたの!?」
「レーダーレンジの中で喋っているほうがマヌケなんだ。賭けの内容だ。1ヶ月以内に
なのはとの訓練中スバルとティアナが近接戦闘を仕掛けるほうに今月の報酬全額賭ける。」
「・・・・・・?ティアナのモード2のことを言っているの?」
「育成プランなんてあったのか?なにを目的にしているか分からない訓練ばかり
やらせているから無いものだと思ってた。ついでに言えば今回の事故も
痛い目みせるために意図的に起こるよう仕組んでいたとばかり思ったんだが・・・・・・。」
「そういえばてめぇ、なんか妙なこと言ってたな。起こるべくして起こったとか・・・・・・。」
「え?ヴィータ、それってどういう・・・・・・。」

フェイトがあたしの言葉に驚いている。
なのはもはんたの言葉に呆然としているみたいだ。
シャーリーの問いかけるような視線にシグナムが頷いている。
あの場にシグナムもいたからな。
はんたが口を開く。
207メタルサーガsts:2008/01/27(日) 02:23:58 ID:6V9aosCm
「シャーリー。ひよっこどもの初任務の映像は出せるのか?」
「え、ええ。出せるけど。」
「なら出してくれ。人伝に聞いた話で記憶が狂っていなければ、
新人たちがちゃんと動けたようで上出来みたいな内容だったな、隊長達の評価は・・・・・・。」

たしかリインのやつがつけていた日誌がそんな感じだった。
回ってきた報告書も・・・・・・。
あたしはそのときいなかったからなんとも言えねぇんだけどな。
目の前にそのときの映像が表示される。

「わざわざヘリの中でバリアジャケットを展開してから外に出た俺よりも、
なのはが飛び降りながらバリアジャケット展開しているのを真似して、
対空射撃されることさえ考えずに飛び降りたひよっこどもと、
バリアジャケットに感激して敵の真上で立ち止まっているひよっこどものことは、
ここで発狂した笑いをしている俺の立ち回りミスとしよう。」

なのはとフェイトは愕然としたような表情をしていた。
とくになのはは震え始めている。
当然かもしれねぇな。
当たり前のように取った行動をひよっこどもが真似をしていたんだ。
空の迎撃に行くなのはとリニアに取り付くひよっこどもの違いを理解もせずに・・・・・・。
それがどれだけ危ないことかさえひよっこどもは分かっていないだろう。
シャーリーもあっと言わんばかりの顔をしている。
そういえばシャーリーって通信士だったっけな。
それならこの現場をモニター越しとはいえ目の前で見ていたことになる。
映像が流れ、ある場所まで来るとはんたが『止めろ』と言った。

「だが、ティアナのこの行動を当たり前だと見逃して放置していたんだろう?
射線上に仲間がいるときにトリガーを引くなんてしないものだ、普通は・・・・・・。
それとも射線上に味方がいてもトリガーは引くのがこっちの世界の常識なのか?
それならひどい誤解をしたと謝るし、今後遠慮なくトリガーを引かせてもらうが。」

目の前の映像にガツンと頭をぶん殴られたみたいだった。
シールドやバリアがあるからなんて言い訳にならねぇ。
このときは、たまたまガジェットドローンが避けなかったから事故にならなかったんだ。
もしも避けていたら、その先にはエリオが・・・・・・。
しかもリニアから落ちれば下は崖。
何度もリプレイで映されるそのティアナの映像にあたしは鳥肌がたった。
たまたま今回の誤射が起こったんじゃない。
起こるだけの原因が放置されていて起こったんだ。
なんで教えてくれなかったなんて責められない。
隊長が気づいてしかるべきことなんだから・・・・・。

208リリカル! 夢境学園:2008/01/27(日) 02:24:03 ID:YUKmn7sa
荒野の掟は心が凍る 支援!
209名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 02:24:09 ID:4qjaUonS
世界観重っ……

支援
210メタルサーガsts:2008/01/27(日) 02:25:11 ID:6V9aosCm
「そんなくだらないことは置いておこう。それならさらに賭けを具体的にしよう。
1ヶ月以内になのはとの訓練中、スバルとティアナが命知らずな特攻を仕掛ける。
特攻の内容はスバルがなのはにシールドを展開させて足を固めておいてから
ウイングロードをティアナが駆け上ってなのはの上か下あたりから切りかかるが
せいぜいだろう。それに今月の報酬を全額だ。」

重い雰囲気は笑い飛ばすようなそんなはんた君の言葉で消し飛んだ。
特攻って言ったの?
そんなことするはず絶対ない!!

「はんた。だが、ティアナ達がそんなことをしてもなのはの勝ちは揺るがんぞ?
ティアナ達が危険なだけの無意味な行動だ。」
「なにをいまさら・・・・・・。案外5割6割は勝率があると思ってやるんだろうよ。
なんのための訓練か分からないけど、これだけのことを考える頭があって、
あたしはこんなに力があって、こんなに努力しているんだから
とにかく力だけはあるんだーみたいな考えでやると思ってる。」
「やらないよ!!だって、ティアナはわたしと約束したんだから・・・・・・。」
「だから賭けを持ちかけたんだ。俺はやるほうに今月の報酬全額だ。」
「わたしは・・・・・・ティアナを信じる!!」

だって、ティアナはわたしと約束したんだから。
お兄さんのこともあって一生懸命になりすぎて、焦りばっかりが増えて、
その結果失敗しちゃって、ヴィータちゃんに叱られて、本当に落ち込んでいた。
それに、あたしが言い聞かせたとき、物凄く後悔した顔した。
だから、絶対にティアナはそんな馬鹿な真似しない!!
するはずがない!!

「顔を見る限り、他の面子は賭けに乗りそうに無いな。しかし、ティアナの
モード2がよりによって近接戦闘ね。本当に分からなくなってきたよ。」
「え?」

なにを言われたかわからなかった。
だって、ちゃんと目的があってわたし、訓練させているのに・・・・・・。
どうしてそんなこと・・・・・・。

「いったいなにが目的の訓練なんだ?絶望的なまでに戦闘力の差がある魔導師を
倒すための訓練か?ガジェットドローンを倒すための訓練か?
無抵抗の人間を倒すための訓練か?
遠距離しかやれない人間が接近戦専門の人間を倒すための訓練か?
それとも、高町なのはというエース・オブ・エースを倒すための訓練か?
まさか自分で考えて戦えるようにするための訓練なんて言うなよ。
お仕着せのような訓練内容をさせておいて、どこでなにを考える?
それに1発撃つのにどれだけかかってる・・・・・・って砲戦魔導師に言うのは
愚かだったな。銃口を向けた時点で照準は揃っていてトリガーは引くばかりなのが
当たり前の世界なんだから。」

え?
なにそれ・・・・・・。
訓練内容への指摘よりも別の場所に驚きを隠せない。
狙う動作はどこにあるの?
アクセルシューターやクロスファイアシュートにしたって追尾性能がある。
だから、いかに早く撃つかとか狙うかは考えたことがあった。
でも、わたし、そんな厳密に動作を考えたこと・・・・・・無い。
わたしは砲戦魔導師として完成していると言われる。
けれど、その先がもしかして・・・・・・あるの?
211メタルサーガsts:2008/01/27(日) 02:25:43 ID:6V9aosCm
「ついでに言えば、シグナム。素人が一番殺し合いに使いやすい武器はなんだ?」
「鈍器だ。長柄ならヴィータみたいなハンマーもありだ。」
「逆に一番訓練がいるのは?」
「ふむ・・・・・・ナイフか。刃物ならとにかく長柄の武器ほど練度はいらない。
もっとも手元に入られたときの問題や重さの影響もあるだろうが・・・・・・。」
「という近接戦闘に慣れた方の講釈があったが、まさかナイフやダガーや
スティレットなんて言い出さないよな。ティアナのモード2。」

ダガーモード。
それがティアナに準備していたモード2。
どうしてこんなにぴったり言い当てられてしまうのか。
わたしが単純すぎる?
ううん、違う。
はんた君のその思考は、あまりにもシビアであまりにも現実的。
本当に命を奪い合う殺し合いが大前提で全ての会話が始まっているはんた君。
1度はハンデがあったから負けたとはいえ、
もう1度やれば勝てるとわたしは心のどこかで思っていた。
けれど、それは致命的なまでの間違いなのかもしれない。
前にバトー博士に言われた通り・・・・・・。
毎日殺し合いの日々だったはんた君からすれば、砲戦魔導師として完成していて
管理局のエース・オブ・エースなんて呼ばれるわたしさえもひよっこなんだ。
今日のホテル・アグスタでの問い。
ホテル・アグスタ周辺のなにかに抉り取られたような地形。
あれは砲戦魔導師のそれに近かった。
そして今日のメンバーでそれができるのは1人しかいない。
つまり、それから考えられる結論は・・・・・・はんた君の強さはオーバーSに相当?
もしかしたら単独で全部を制圧することさえ簡単だったのかもしれない。
どれだけ彼は歯痒い思いをしてわたし達を見ているのだろう。
そんな思考をしていたわたしにはんた君が言葉を告げる。

「なのはも快く賭けに乗ったから俺は席を外すよ。あと、もう1つだけ言わせて貰おう。
俺の世界には普遍のルールがある。」
「毎日殺しあってる世界で普遍のルール?あんのかよ?そんなもの。」

そんなものがあるのだろうか?
優しい世界で皆に囲まれてきたわたしには想像さえできない。
わたしに比べればはるかに辛い思いをしてきたフェイトちゃんやシグナムさんも
首を傾げるばかりで、真っ青な顔をしたシャーリーさんは震えるばかりだ。
ヴィータちゃんも不思議そうに尋ねている。

「『強いから正しい』。言葉通りに俺を打ちのめして『無駄死に』を訂正させるか?」

淡々とそう言い放ったはんた君の姿に初めてあったとき以上の危うさを感じた。
殺気はかけらほどもない。
けれどどこから漂ってくるのだろう。
咽返りそうなほどに濃密に感じられるこの匂いは・・・・・・。
表情はなにも変わらないのに、なにかが殺させろと叫んでいるみたい。
どうしてだろう。
人の形をした別のなにかにはんた君が見えてくる。
そんな雰囲気に飲まれて、わたし達ははんた君を見送るしかできなかった。
212メタルサーガsts:2008/01/27(日) 02:26:08 ID:6V9aosCm
証明するんだ。
お兄ちゃんが教えてくれた魔法は役立たずなんかじゃない。
どんな場所でも、どんな任務でもこなせるって・・・・・・。
力さえあればそれが証明できる・・・・・・。
死んじゃったお兄ちゃんの叶えられなかった夢を叶えるんだ。
そんな思いを抱えながら、六課の片隅の林で、あたしの周りを魔力スフィアで囲んだ。
この魔力スフィアはマーカー。
クロスミラージュに制御をまかせてランダムに点灯させていく。
それに向かってあたしはその場から動かずに、照準を合わせる。
ランダムに点灯する魔力スフィアを狙い続ける訓練。
ろくに才能も力も無いあたしに残された最後の武器である精密射撃を
完璧にするために・・・・・・。
そんな思いで歯を食いしばって、同じような動作を延々繰返しつづけて、
どれだけの時間続けただろう。
集中が途切れたせいか、それとも疲れのせいなのか。
ふっと膝から崩れ落ちそうになる。
そこで初めて息をついた。
気がつくと辺りは夕暮れだったはずなのに、
星と月と人工の明かりが灯る夜が広がっている。
肩で息をしながら、深く息を吸って再び訓練を続ける。
あたしは証明するんだから。
こんなところで立ち止まれないんだ!!
必死に照準をあわせているあたしの傍らから、手を打つ音が聞こえた。

「もう4時間も続けているぜ。いい加減倒れるぞ。」
「ヴァイス陸曹。・・・・・・見てたんですか?」
「ヘリの整備中にスコープでちらちらとな。ミスショットが悔しいのはわかるけどよ。
精密射撃なんざ、そうほいほい上手くなるもんじゃねぇし。無理な詰め込みで
へんな癖つけるのも悪いぞ。」

あなたになにがわかる!!
思考はその感情だけで埋め尽くされていたから・・・・・・。
反射的ににらんでいたのかもしれない。

「って、昔なのはさんが言ってんだよ。俺は、なのはさんやシグナム姐さん達とは
割と長い付き合いでな。」

あたしの雰囲気に戸惑ったのか、ヴァイス陸曹が慌てて付け足すようにそう言った。
なのはさん・・・・・・シグナム副隊長・・・・・・。
どっちも才能に恵まれた人間じゃないか!!
オーバーSとAAランクのなんでも持っている魔導師と
凡人で落ちこぼれで何も持っていないどうしようもないあたしを一緒にしないで!!

「それでも、詰め込んで練習しないと上手くなんないんです。凡人なもので・・・・・・。」

感情のままに酷い言葉を叫びそうになった。
でも、心配してくれた相手に当り散らすなんてできない。
ただ、反論するだけにしておいた。
なのはさん達とあたしを同じところにおいて話をするなという含みも込めて・・・・・・。
話は終わりとばかりにあたしは訓練を再開する。
213メタルサーガsts:2008/01/27(日) 02:27:30 ID:6V9aosCm
「凡人・・・・・・か?俺からすりゃあ、お前は十分に優秀なんだがな。羨ましいくれぇだ。
ま、邪魔する気は無ぇけどよ、お前らは身体が資本なんだ。体調には気ぃつかえよ。」
「ありがとうございます。大丈夫ですから。」

口先だけのお礼。
心は既に別の方向へ向いている。
全然足りないんだ、証明するための力が・・・・・・。
無理や詰め込みをしないで、どうやって才能の差を埋めるんだ!!
だから、やれる限り無理と詰め込みを続けるんだ。
証明するための力を少しでも手に入れるために!!

「ティア・・・・・・」
「なんだ。まだ起きてたんだ。」

へとへとになるまで訓練をして部屋に戻るとスバルがまだ起きていた。
隊舎に戻ったとき深夜を回っていたことにほんのさっき気がついたのだけど。
会話するのも辛い。
全身に纏わり付く疲労感に身を任せてベッドに潜り込む。

「あのさ・・・・・・あたし、明日朝4時起きだから。目覚まし五月蝿かったらごめんね。」
「いいけど・・・・・・大丈夫?」
「うん・・・・・・。」

心配してくれているスバルの言葉に答えるのさえ億劫だ。
まるで睡魔に誘われるようにあたしの意識は眠りに落ちていった。

「ティア。ティア。起きて、4時だよ。起−きて。」

耳障りな電子音が響いている。
これは目覚ましの音?
スバルに身体を揺さぶられ、ぼんやりした意識がようやく覚醒を始める。
だるい身体を動かして目覚まし時計を止めながら、
ぼやけた視界が時計のアナログな針を映した。

「あー、ごめん。起きた。」
「練習行けそう?」
「行く。」
「そう。じゃ、はい。トレーニング服。」
「ありがとう。」

スバルは本当に優しい。
気がつくと甘えて寄りかかってしまいそうなほどに。
でも甘えちゃ駄目なんだ。
差し出されたトレーニング服を受け取りながら気だるい身体を動かす。

「さて、それじゃあたしも・・・・・・。」
「ええっ!?なんであんたまで・・・・・・。」

さらっと言いながら着替えを始めたスバルにあたしは反射的に尋ねていた。
これはあたしのわがままなのに・・・・・・。
あんたが付き合う必要ないのに・・・・・・。

「1人より2人のほうがいろんな練習できるしね。あたしも付き合う。」
「いいわよ。平気だから。あたしに付き合ってたらまともに休めないわよ。」
「知ってるでしょ。あたし日常行動だけなら4,5日寝ないでも平気だって。」
「日常じゃないでしょ。あんたの訓練は特にきついんだから、ちゃんと寝なさい」
「やーだよ。あたしとティアはコンビなんだから。一緒にがんばるの。」
「か・・・・・・勝手にすれば!!」
214メタルサーガsts:2008/01/27(日) 02:28:45 ID:6V9aosCm
あっけらかんと笑顔で言ってきたスバルにあたしはそう返事を返すのが精一杯だった。
・・・・・・スバル、ありがとう。

「で、ティアの考えていることって?」
「短期間でとりあえず現状戦力をアップさせる方法。上手くできればあんたとの
コンビネーションの幅もぐっと広がるし、エリオやキャロのフォローももっとできる。」
「うん。それはわくわくだね。」
「いい?まずはね・・・・・・。」

スバルにあたしの考えを伝える。
早朝の六課の片隅の林の中、あたしとスバル2人だけの訓練が始まった。

「じゃあ、引き続き個人スキルね。基礎の繰返しになるけど、ここはしっかりがんばろう!」
「「「「はい!!」」」」
「ティアナとスバルはなにかご機嫌だけど・・・・・・なにかいいことあった?」
「あ、いえ、えへへへ・・・・・・。」
「なんにも・・・・・・。」

顔に出ていたのだろうか。
自分で考えた方法が証明できる日が待ち遠しい。
スバルとの自主練の結果を見せて、驚かせてあげるんだ。
なのはさんを・・・・・・。
そしてそれが力の証明になるんだ。

いつもやっているなのはさんの朝と夜の訓練をいつもどおり消化していく。
それに加えて毎日、なのはさんの訓練の前後に時間を作ってスバルと自主練をしていく。
エリオとキャロもあたし達がなにかやっているって気がついたみたいで
差し入れを持ってきてくれたりした。
がんばらないと・・・・・・。

あたしがやらないといけないこと。
それはまず、急いで技数を増やさないといけないんだ。
幻術は切り札にならないし、中距離から撃っているだけじゃ
それが通用しなくなったときに必ず行き詰る。
あの狂人の圧倒的な火力と連射性能を誇る砲撃魔法が頭をよぎり、ぎりっと奥歯が鳴った。
頭を振って思考を入れ替える。
あたしのメインはあくまでシャープシュート。
兄さんが教えてくれた精密射撃だけど『それしか』できないから駄目なんだ。
行動の選択肢をもっともっと増やすんだ!!
そんなことを考え続けて、自主練を繰り返していった。
スバルに体捌きを習った。
コンビネーションを考えた。
ウイングロードを使った戦い方も考えた。
疲労の余り、吐き戻したこともある。
でも、結果を出すんだ。
それだけがあたしを突き動かし続ける最後に残ったモノだった。

215メタルサーガsts:2008/01/27(日) 02:29:12 ID:6V9aosCm
「それで、はんたはいつもどおりドラム缶押しか。」
「横でドラム缶押しにずっと付き合っておきながらなにをいまさら。
しかし、成長すると人間は自分から泥沼にはまっていくものなのか?
幼いライトニング2人のほうが素直な分、伸びやすいし伸ばしやすい。」
「元々の性格もあるだろう。」
「しかし、ティアナは俺からすればなんで死体になっていないかが不思議だ。
それに目的がなおさら分からなくなったよ。なのはを倒したいのか、
センターガードとして動けるという証明をしたいのか、それとも単に力が欲しくて
これだけの力が手に入ったっていう証明をしたいのか。それとも他のなにかなのか。」
「どういう意味だ?」
「なのはを攻略したいのなら、俺でもシグナムでもヴィータ・・・・・・は
『なにを馬鹿なこと言ってやがる』で終わらせそうだな、他の誰でもいい。
本当に手段を選ばないで力が欲しいのなら戦い上手なやつに尋ねればいい。
アドバイスらしいアドバイスは無かったとしても、『今の』なのはの戦闘スタイルの弱点を
教えてもらうぐらいはできるだろう。元手を使うわけでもないんだから突っぱねられたり、
馬鹿にされても損は無いだろう?それなのに、なのはについて情報を集めた痕跡は0。
それともなのははシールドとアクセルシューターしか使わないと決まっているのか?」
「たしかに一理あるな。ティアナ達にそれを教えてやらないのか?」
「賭けの真っ最中にそんな干渉したらフェアじゃない。」
「賭けっすか?」

ドラム缶押しをする俺とシグナムの横でぼんやり立っていたヘリパイロットがそう言った。
仕事は終わったのだろうか。
ヘリの整備をしていたのはアルファの収集した情報で知っているが・・・・・。
なんにせよ、簡単な説明ぐらいはするとしよう。

「賭けの話を知らないのか?ヘリパイロット。」
「ヘリパイロットって・・・・・・気軽にヴァイスって呼んでくださいよ。」
「それならヴァイス。1ヶ月以内にティアナとスバルがなのはに特攻を仕掛けるか否かで
賭けをやっている。やるほうに俺は今月の給料全額。なのははやらないほうに賭けた。
ちょうど明日が刻限の1ヶ月目だが、今からでも乗るか?」
「遠慮しておくっす。しかし、特攻とは穏やかじゃないっすね。」
「私もそれをはんたに言ったのだが・・・・・・。」
「アルファ、現状で賭けはどっちに傾く?」
「90%でマスターの勝利です。残る10%はいずれもイレギュラーによるものです。」
「はー。恐ろしく賢いデバイスっすね。しかし、9割がやるってのは間違いないのか?」
「現在まで収集したティアナの思考ルーチンおよびスバルの思考ルーチン、
その他戦闘スキルおよび経験とこれまでの日常行動から推測した限り、揺るぎません。」
「もしも、俺がそれをティアナ達に忠告に行ったとしたら?」
「誤差として処理される極小の確立だけ、やらない側に振れます。
しかし、逆にやる側へ著しく振れる可能性のほうが高いためお勧めしません。」
「ティアナの性格か?」
「Yesです。シグナム。忠告されたならば、その忠告を言葉通りに受け取らず、
『考えたことと努力があまりにも浅はかなものであった』と認識するでしょう。」
「ずいぶん人間らしい考えまで分かるんだな。で、確率までだせたりしちまうのかな?」
「今までの行動パターンより推測する限り99%。」
「うはー。そいつはひでぇな。忠告なんか聞きもしないって?」
「ときにヴァイス。ガンナーの経験でもあるのか?」
「え?なんで・・・・・・。」
216メタルサーガsts:2008/01/27(日) 02:29:54 ID:6V9aosCm
軽口を叩いていた彼だが、俺の問いかけに酷く動揺したようだった。
なにをそんなに動揺する。
身体に染み付いた習性がそんなに簡単になくなるとでも思っているのか。

「視線が無意識に障害となるものを探している。僅かに右に偏った重心。
あとは、数えるのも忘れたくらいの経験からの判断。」
「はぁー。人伝に聞いたわけじゃないのにそこまで分かるなんて。まじで凄腕なんすね。」
「なんでもいい。遠距離射撃は得意か?」
「以前までは・・・・・・。ミスショットやっちまってからそれっきり・・・・・・。」
「なのはに言ったとき酷く驚いた顔をされたから気になったことがあってな。
遠距離射撃が得意ならそれを是非聞きたいと思ったんだ。」
「なんすか?」
「遠距離射撃でターゲットに向けて銃を撃つ。何アクション必要だ?」

俺の問いかけにヴァイスが真剣な顔をすると動作が丁寧に行われていく。
的を想定しているのだろう。
視線を固定した。
そのまま銃を構えるような動作を取り、スコープを覗くような仕草をしておいて
視線を外しまた覗く。
そして息を吸い込んで止める、トリガーに指が掛かる。
あまりに熟練した動作に拍手でもしたくなった。
本当に遠距離射撃でなおかつ精密射撃をやる方法を熟知している。
あの荒野だったなら弾が受ける影響を考えて風見を探して
気温や湿度なんかも考えるのだが、この世界では関係ない。
だからこそ当たり前のように当たり前がやれるヴァイスに感心する。

「俺なら銃を構えるのに1アクション、狙いをつけるのに1アクション。
呼吸を整えるに1アクション、トリガーを引くのに1アクションの
合計4アクションってところですかね。
ターゲットを見つけていないのなら探すのに1アクション追加で。」
「やはりか。こうなると狙撃のエースに話を聞きたいな。
ミッドのレベルがお粗末なのか、俺のほうが狂っているのか。」
「いったいなんすか?」
「構えた時点で照準は揃っているのにどうして狙いをつける必要がある?」

俺からしてみれば数え切れないほど銃を撃った末にいつの間にかできていたこと。
きっかけはなんだったか。
戦車を生身で叩き壊す手前ぐらいにどうにかしてやり始めたはず・・・・・・。
たしか旅の途中であまりの思いつきの馬鹿さ加減を笑いとばしながら、
それでも『誰か』が真剣に教えてくれていたような気がしたのだけど。

「つまり、もしかすると・・・・・・構えてトリガーを引く2アクションで?」
「必中のそれさえ回避する彼女もいたな・・・・・・。」
「はー。興味ついでに質問いいっすか?ターゲットが10機現れたら何アクションです?」
「3アクションだ。」
「ええと、360度全方位にバラバラにいるんすよ?」
「だから、視界に敵全部を捉えらえられる位置に移動するのに1アクション、
相手を認識した時点で照準は終わっているから、構えてるのに1アクション。
トリガーを引くのに1アクション。もちろん連射はするが・・・・・・。」
「冗談じゃ・・・・・・ないっすよね?」
「もちろん。」
217メタルサーガsts:2008/01/27(日) 02:30:34 ID:6V9aosCm
どこかヴァイスの顔が引き攣っているような気がするが気のせいか。
いったいどこがおかしいのかわからない。
たしかに駆け出しのころはモンスターを見つければ照準をつける前に弾をばら撒いていた。
とにかく撃たないとこっちが殺されるのだから。
ハンターの原則『戦いに勝つためにはまず相手より先に攻撃すること』に従って。
でもいつごろからか弾代が酷く嵩んでいることに気がついて、
ばら撒く前にブルズ・アイ(予測射撃)をするようになって・・・・・・。
そうだ。
たしかジャックさんに蜂の巣にされたのがこの頃だった。
それから旅を続けていって、気がつけば相手を認識すれば何機いても問題なくなった。
構えて撃ちさえすれば照準が揃っている。
たとえそれが何機いようとも・・・・・・。

「全ては明日次第か。私としてははんたが負けるほうを願うべきなのだろうな。」
「俺としてはそんな危なっかしいことやってほしくないっすね。」
「俺はそれ以上に、特攻をされたとして、なのはがどうするかが気になるな。」
「どういうことだ?」
「いつもの練習を無視しているが、それでも努力して考えたことに間違いは無いだろう?
訓練方針も明確にしていないなのはなんだからそれを褒めるか怒るかが想像つかない。
俺の世界のルールに基づけば1つしかないが。」
「無茶をすべき場面の区別がついていないと怒ると思うが。」
「なのはさん、リハビリ大変だったみたいっすからね。それと、なんすか?ルールって。」
「『強ければ正しい』だ。俺がなのはだったら蜂の巣にして負け犬とでも言って終わりか。
それ以前に病院か死体置き場にティアナ達が行くことになるか・・・・・・。」
「まじで気が重いっすね。明日がこなけりゃいいのに・・・・・・。」

218メタルサーガsts:2008/01/27(日) 02:30:55 ID:6V9aosCm
「悪いわね。クロスミラージュ。あんたのことも結構酷使しちゃって。」
「No Problem.」
「明日の模擬戦が終わったらシャーリーさんに頼んでフルメンテしてもらうから。」
「Thank you.」

布で拭きながらクロスミラージュにそう語りかけていた。
やれるだけのことはやった。
あとは明日、結果を出すばかり。
ドアが開く乾いた音が響く。

「ただいまー。ティア、はい。」
「ありがとう。」

スバルが買ってきてくれたスポーツドリンクの缶を開ける。
冷たい。
けれど、スバルが帰ってくると同時に部屋の雰囲気が重くなった。
スバルの不安のせいか、あたしの不安のせいか。

「明日の模擬戦いけるかな?」

そう切り出したのはスバルのほう。
やはり同じ不安を抱えていた。

「成功率はいいとこ6割ぐらいかな。」
「うん、それだけあればきっと大丈夫。」

誰にもお披露目していない戦い方、新たなフォーメーション、戦略、練習量。
そしてリミッターがつけられたなのはさん。
そこに若干の希望も含めて6割。
それがあたしの予想。
分の悪くない賭けだ。
スバルは根拠も無く大丈夫と言っている。
けれど、あたしには成功率以上に気がかりなことがあった。

「でも・・・・・・あんたは本当にいいの?」
「なにが?」
「あんたの憧れのなのはさんに、ある意味・・・・・・逆らうことになるから。」

そう言いながらも、無意識に込められた力のせいで手元の缶が歪む。
力は証明したい。
でも、スバルがどれだけなのはさんに憧れているのか知っている。
だからこそ、あたしのわがままに付き合わせてしまってもいいのだろうか。

「あたしは怒られるのも叱られるのも馴れているし、それに逆らっているって言っても
強くなるための努力だもん。ちゃんと結果だせばきっと分かってくれるよ。
なのはさん、優しいもん。ふふっ・・・・・・。」

缶を握りつぶしながら力説するスバル。
思い出し笑いまでしているし。
そんなスバルの様子を見ていると悩んでいるあたしが馬鹿みたいだ。

「さぁ、明日の早朝特訓が最後のおさらい。早く寝とこ?」
「うん。」

全ては明日。
結果を出してハッピーエンドで終わらせたい。
力を証明したいからだけじゃない。
あたしに付き合ってくれたスバルのためにも・・・・・・。
219メタルサーガsts:2008/01/27(日) 02:31:23 ID:6V9aosCm
「さぁーて、じゃあ、午前中のまとめ。2on1で模擬戦やるよ。
まずはスターズからやろうか。バリアジャケット準備して!!」
「「はい!!」」

なんだかティアナ達はふっきれた感じ。
物凄く気合いも乗っているし、すごくいいかも。
はんた君が賭けを持ちかけたときに告げられた散々な問題も
今では改善しているみたい。
そういえば今日がはんた君が持ちかけた賭けの最終日だ。
ティアナ達を信じたわたしの勝ち。
はんた君のお給料なくなっちゃうけど、自分で言い出したんだもん。
遠慮なく貰ってしまおう。
ちょっと意地悪かな。

「エリオとキャロはあたしと見学だ。」
「「はい!!」」

ヴィータちゃんがエリオ達を連れて離れていく。
そういえば珍しくはんた君が姿を見せている。
いつもは姿も見せずにどこかでドラム缶押ししているのに・・・・・・。
やっぱり気になるのかな。


「あ、もう模擬戦始まっちゃってる?」
「フェイトさん。」
「私も手伝おうと思ってたんだけど・・・・・・。」
「今はスターズの番。」
「本当はスターズの模擬戦も私が引き受けようと思ったんだけどね。」
「ああ。なのはもここんところ訓練密度濃いーからな。少し休ませねぇと。」

そう言って上空を飛んでいるなのはにあたしの視線が向いた。
アクセルシューターを展開しているなのは。
無理していないのだろうか。
本当に大丈夫なのか?
いざとなったらアイゼンでぶっ叩いてでもベッドに送ってやらねぇと・・・・・・。

「なのは、部屋に戻ってからもずっとモニターに向かいっぱなしなんだよ。」
訓練メニュー作ったり、ビデオでみんなの陣形チェックしたり・・・・・・。」
「なのはさん、訓練中もいつも僕達のこと見ててくれるんですよね。」
「本当にずっと・・・・・・。」
「それに気がついていない2人はなにをするかな。」
「はんた君・・・・・・。」
「アルファの分析を信じるのなら俺の勝ちが90%だ。」
「なんの話です?はんたさん。」
「ティアナがなのはと馬鹿をやらないって約束をしたんだが、俺は馬鹿をやるほうに
今月の給料全額かけたのさ。今日が賭けの最終日。」
「てめぇ!!ティアナ達になんか吹き込んだりしてねぇだろうな!!」
「不安ならシグナムに聞け。フェアじゃない賭けをするほど屑でもない。
さて、始まるみたいだな。」
「クロスシフトだな。」

この際、賭けなんかどうだっていい。
なのはの信頼を裏切るような真似だけはしないでくれよ、ティアナ、スバル。
多少の無茶はしてくれたっていい。
ただ、冗談抜きにはんたの予想だけは当たるなよとあたしは思った。

220メタルサーガsts:2008/01/27(日) 02:32:01 ID:6V9aosCm
「やるわよ!!スバル!!」
「うん!!」

2人でいい感じに声を掛け合っている。
今まで以上に複雑にウイングロードを展開させたスバル。
そして足元では魔力スフィアを11個形成したティアナ。
クロスシフトか。
ティアナ達が取れる方法とすればクロスファイアシュートでわたしを追い立てて、
それからスバルが接近戦を挑んでくるけどそれはティアナの幻影魔法。
実際は後ろか上から本体のスバルが来る。
そこでシュートバレットの連射かシュートバレットFを併用して
ティアナがスバルを援護というところかな。
ミスショットを思い出して援護できないなんてならないといいんだけど。
足を止められたところにあたるティアナの攻撃って結構響くんだよね。
でも、なんだろう。
はんた君に言われたせいか、胸のどこかがざわざわする。
大丈夫。
ティアナ達は絶対にやらない!!

「クロスファイアシュート!!」

掛け声と共にわたしの足元から飛んでくるティアナのクロスファイアシュート。
けれど、この違和感はなんだろう。
魔力弾の速度もいつもよりもずいぶん遅い。
もちろんコントロールはいいのだけど、これでは迎撃や回避が簡単に行えてしまう。
いったいどういう意図があって・・・・・・。
上昇して逃げる。
それだけでティアナの魔力弾は置いてけぼりだ。
1人時間差攻撃でもやるのかな?
視界の先に突如展開されるウイングロード。
その上をマッハキャリバーで加速して駆け抜けてくるスバル。
いつでも放てるように迎撃用のアクセルシューターを4基展開する。
けれど、驚かされた。
このスバル、フェイクじゃない。
本物!?

「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」

放たれたアクセルシューターをバリアで受け止めながら、
雄叫びをあげて突っ込んでくるスバル。
なんでそんな危険なことをしているの!?
バリア越しだって痛みはあるし、バリアを抜かれでもしたら・・・・・・。
考えている暇は無い。
迎撃しないと・・・・・・。


「うりゃぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

私のシールドの上でスバルのリボルバーナックルが激しく火花を散らした。
なんなの?
偶然?
胸のざわざわはどんどん酷くなっていく。
今は集中しよう。
シールド本来の役目は攻撃を受け流すこと。
身体を回転させてあげると、突然抵抗を失ったスバルがウイングロードから
悲鳴を上げてまっさかさまに落ちていく。
いけない。
フローターを使う準備をしないといけないか。
大丈夫みたいだ。
落下地点にウイングロードがある。
221メタルサーガsts:2008/01/27(日) 02:32:41 ID:6V9aosCm
「ほらスバル!!だめだよ。そんな危ない軌道。」

後ろからようやく追いついてきたティアナのクロスファイアシュートを
かわしながら注意する。
こんな速度じゃやっぱり簡単に避けられちゃう。
いくら追尾性能があるからとはいえ、さすがにこれは異常だ。
まるで避けてほしいみたい。

「すいません。でも、ちゃんと防ぎますから!!」

ウイングロードに着地できたスバルがわたしにそう叫ぶ。
大丈夫そうだ。
そこで気がつく。
ティアナはどこ?
スバルが幻影魔法じゃなかったこともあって完全に意識を反らしていた。
いた!!
ビルの上で詠唱しているあれは・・・・・・砲撃!?
砲撃魔法はただでさえ身体に大きな負担がかかるのに!!
本当にどうしちゃったの!?

「でぇぇりゃぁぁぁぁ!!!!!!」

リボルバーナックルに魔力カートリッジを装填したスバルが
マッハキャリバーで加速してウイングロードを駆けてくる。
迎撃、アクセルシューター6発。
また、バリアで無理矢理抜いてくるなんてしない・・・・・・よね?
悪い意味で裏切られた。
想像以上だった。
ろくにバリアもシールドもフィールドさえも使わないで、私に殴りかかるスバル。
それがどういうことか分かってるの!?
シールドの上で火花を散らせるスバルのリボルバーナックル。
不意に思い出されるはんた君の予想。
『スバルがなのはにシールドを展開させて足を固めておいてから、ウイングロードを
ティアナが駆け上ってなのはの上か下あたりから切りかかる』ってまさか・・・・・・。
今更に気がついたはんた君の予想の意味。
それは砲撃魔法を使われる以上の危険行為。
なんで・・・・・・?
どうして・・・・・・?
いろんな思いで心がごちゃまぜになる。
砲撃魔法でいいから・・・・・・お願いだから砲撃を使って・・・・・・ティアナ!!
スバルの突進をシールドで防ぎつつ、視線をビルの上のティアナに向けた。
嘘・・・・・・そんな・・・・・・!!幻影!?
わたしの上に走るウイングロードを駆ける足音が響く。
そんな・・・・・・ティアナ・・・・・・約束・・・・・・したのに。

「でぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
「レイジングハート、モードリリース。」
「Allright」

なんだろう、この思い・・・・・・。
悲しすぎて、辛すぎて、怒り出したくて、泣き出したくて・・・・・・。
あまりにもそれが大きすぎて、全部を通り越しちゃったみたいな・・・・・・。
ティアナの雄叫びを聞きながら、わたしは静かにレイジングハートに指示をだしていた。
222メタルサーガsts:2008/01/27(日) 02:34:16 ID:6V9aosCm
「おかしいな・・・・・・。2人とも・・・・・・どうしちゃったのかな。」

わたしの教え方がなにか悪かった?
なにか言いたいことがあって我慢していた?
わたしの指導なんて受ける気さえなかった?
言いたいことはたくさんあるのに、言葉にならない。
限度を通り越しちゃった感情は風がない湖みたいに静かで・・・・・・。

「がんばってるのは分かるけど、模擬戦は喧嘩じゃないんだよ。練習のときだけ
言うこと聞いてる振りで、本番でこんな危険な無茶するなら練習の意味ないじゃない。
ちゃんとさ。練習どおりやろうよ。」

淡々と言葉を紡ぐ。
ティアナの魔力刃を受け止めている右手から血が流れ出している。
でも、痛いなんて感じない。
限度を通り越しちゃった感情のせいだろうか。
動揺したみたいなティアナの顔や怯えるみたいなスバルの顔も気にできない。
ただ、感じるのは血が流れてるなっていうただそれだけ・・・・・・。

「ねぇ?」
「あ、あの・・・・・・。」
「わたしの言ってること、わたしの訓練、そんなに間違ってる?」

わたしの問いに合わせて、クロスミラージュから伸びていた魔力刃が消える。
ティアナはウイングロードまで飛びのくと、クロスミラージュの銃口を
こちらに向けていた。

「あたしは・・・・・・もう、誰も傷つけたくないから!!無くしたくないから!!
だから・・・・・・強くなりたいんです!!」

泣きながらそう叫ぶティアナ。
砲撃魔法の魔方陣が展開されている。
スバルがこんなに近くにいることさえ気にできないなんて・・・・・・。
いつものわたしだったらスバルを連れて避けるなり、
バリアで防ぐなり、シールドで受け流すなりしたのかもしれない。
けれど、今、わたしの前にいるのは感情のままにわめき散らしているだけの子供。
そう思うことにした。
魔力スフィアを右腕の指先に6個展開する。

「少し・・・・・・頭冷やそうか。」
「ぇぇぇぇぇぇぇぃ!!!!ファントムブレイ・・・・・・。」
「クロスファイヤシュート。」

わたしはもっと撃つのを躊躇すると思ったのに・・・・・・。
やってみればあまりにも魔法の宣言は軽かった。
誘導性能なんかよりも速度を優先した魔力弾。
ティアナが今日使ったものと正反対の性質のクロスファイヤシュート。
ティアナに6発の魔力弾が突き刺さる。

「ティア!!バインド!?」

爆風にティアナが包まれて、叫び声をあげるスバルを動けないようバインドで拘束する。
視界に映るのは、力無く立っているのが精一杯のティアナ。
223名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 02:34:52 ID:tJ6CIyvN
《対戦車ライフルだ!家からの持参品だ!》支援。
224メタルサーガsts:2008/01/27(日) 02:35:14 ID:6V9aosCm
「じっとしてよく見てなさい。」
「なのはさん!!」

こんなに冷たい声をわたしは出せたんだ。
なにをするか気がついたのだろう。
悲鳴のようなスバルの声が耳に響く。
けれど、躊躇う事無くわたしは2発目のクロスファイアシュートを撃ち込んだ。

「ティアーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」

2発目のクロスファイアシュートの直撃を受けたティアナの姿にスバルが絶叫している。
力無く落ちていくティアナをフローターで受け止めて、ウイングロードの上に下ろす。

「ティア・・・・・・。」
「模擬戦はここまで。今日は2人とも撃墜されて終了。」

淡々と告げたわたしの言葉にスバルが目に涙を浮かべて睨み付けてくる。
でも、その目を見てもなにも感じない。
ただ、1つの言葉を思い出していた。
はんた君が告げた残酷で苛酷な世界の普遍のルール。
強いものが正しい。
わたしがやった行動がはんた君の言葉にあまりにもぴったりすぎて・・・・・・。
『信じるなんて言ったのに』とどこかではんた君がそう嘲笑っているかのようで・・・・・。
はんた君が正しいって頭のどこかが認めてしまいそうで・・・・・・。
それがあまりにも悔しくて、辛くて、吐き気さえして・・・・・・。
ただ、わたしは・・・・・・泣き出さないようにするのが精一杯だった。
225メタルサーガsts:2008/01/27(日) 02:37:38 ID:6V9aosCm
メタル8話投下完了!!
今回は『心』さえ感じていただければと思います。
私の技量ではんた、なのは、ティアナの心を表現しきれたかそれだけが不安です。
感想やご指摘お待ちしております。

>文字数について
この文字数だとどのぐらいになるかという参考になるかと思い、書かせていただきました。
226リリカル! 夢境学園:2008/01/27(日) 02:40:02 ID:YUKmn7sa
あー、やっちゃった。
GJです。物凄く心が荒びますがw
227リリカルなのはSUMMON NIGHT:2008/01/27(日) 03:08:28 ID:8sPwh/iq
人が少なくなった今こそ好機。訂正版投下おkですか?
今度こそ・・・・・・!今度こそは・・・・・・!

これで駄目だったらHD割るしかないね!
228名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 03:11:18 ID:IciQD9pN
作者さんも気を付けていらっしゃるとは思いますが、正直言って蹂躙・踏み台スレスレの危ういところかと。
はんたTUEEEEE! 紛いの話がずっと続いていますが、そろそろ違った展開が読みたいところです。

バトー博士とのやりとりは面白いので、今後に期待いたします。
229名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 03:17:41 ID:ycmEDUWT
GJ!!です。
今回の訓練についてのティアナの行動が良かった悪かったなどの会話を
クロスキャラがするのは他の作品でも良く見ましたが、
このような過去の戦闘データなどから行動などを割り出し次にする無謀を推測する展開は
なかったので面白かったです。あと接近戦のプロであるシグナムに近距離戦での素人が戦える得物の選択を聞いたのもよかったです。
この作品を読んでるとシグナムが本編以上に達人の域にいるように見えますw
ティアナの心情も劣等感とそれを拭いたいというのがが良くわかりました。
スバルの特攻ってかなりやばいですよね・・・放映当時は問題なくねぇとか思ってましたがシューターの大きさ考えると
殺傷設定にしたときに直撃したら足とか手が普通にもげる大きさだもんなぁ。
230メタルサーガsts:2008/01/27(日) 03:18:00 ID:6V9aosCm
>>226
素早い返答ありがとうです。
心が荒むかもしれませんが、どうぞお付き合いください。

>>228
そこを毎回悩んで書いています。
ただ、はんたにそろそろペナルティが始まる(今後の先読みされそうで怖いです)のと、
ひよっこどもがそろそろまともになり始めるでどうか今しばらくお付き合いください。
バトー博士にもご期待ください。まだまだ博士に出番はありますよ。
231名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 03:23:02 ID:U8OGhmpo
GJ!でした。
はんたの観察眼に驚きました。
232名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 03:25:40 ID:oRq5aXkd
やばい……シグナムが格好良すぎて困るwww
233名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 03:30:12 ID:ycmEDUWT
>>227
支援
234リリカルなのはSUMMON NIGHT:2008/01/27(日) 03:34:15 ID:8sPwh/iq
 
 
 消えゆく意識の中、最後に見たのは『あの人』の、いつも笑顔だった人の、今にも崩れてしまいそうな泣き顔だった。
 
 それが何よりも辛かった。
 作り物の、出来損ないのココロしか持たない唯の兵器に過ぎない自分であるが、『あの人』の泣き顔を見ることだけは辛かった。
 
 ――――あの人の浮かべる、日向のような笑顔が好きだったから。
 ――――その笑顔を守りたいと思ったのだ。

 だが、その願いは叶わない。
 なにより今の自分自身こそが、あの人が涙する原因なのだから。
 あの人と共に歩くには、自分はあまりに致命的過ぎるバグを抱えていた。
 
 だから、その役目は別の者に頼むことにした。
 あの人を守護する役目は、自分ではない本機が果たすだろう。あの人には迷惑を掛けっぱなしだった自分

だが、戦闘性能だけは自信がある。
 任務は『VAR-Xe-LD』が果たす。自分の――『ヴァルゼルド』の役目はここで終わる。

 『あの人』を守れ。
 『あの人』の笑顔を守れ。
 『あの人』の大切な人達を守れ。
 故に――排除せよ。『あの人』を傷つけるバグを排除せよ。
 それこそが本機の任務。
 それこそが自分の願い。
 
 意識が消える。
 ココロが消える。
 『ヴァルゼルド』が消えていく。

 消えてゆく意識の中、『彼』は0と1で出来た思考で、祈りのような願いを想った。

 ――――もし次があるのなら。
 ――――機械兵士の自分にも魂があるのなら。
 ――――バグに過ぎない自分にも輪廻が許されるのならば。
 
 その時は、きっと――――――――。

 
 忘れられた者達の楽園で、誰からも忘れられたブリキの兵士がいた。
 誰からも忘れられたブリキの兵士に、手を差し伸べた人間がいた。
 その人間の力になろうとしたブリキの兵士は、自分の余分な部分を切り捨てた。
 ――――自分の魂を切り捨てた。
 差し伸べられた手を掴もうとして、掴むことが叶わなかったブリキの兵士がいた。
 それが『彼』の物語。
 そこで終わる物語。    
 
 ――――その筈だった。

 
 作り物の、出来損ないの魂。
 されども魂は廻る。
 大地を越え、海を越え、空を越え、世界を超え。
 
 幾星霜の時を越えた旅路の果てに、『彼』は『彼女』と出逢った。
 
235リリカル! 夢境学園:2008/01/27(日) 03:36:12 ID:YUKmn7sa
支援でーす
236名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 03:36:21 ID:U8OGhmpo
支援

237リリカルなのはSUMMON NIGHT:2008/01/27(日) 03:36:22 ID:8sPwh/iq
 
 「リリカルなのはSUMMON NIGHT〜Girl meets Soldier of tinplate〜」
 
 
  
 少女は一人、空を見上げていた。
 雲一つない青空。
 書き割りにありそうな見事な天気模様であったが、
 周囲に立ち並ぶ廃墟と化したビル郡が青空を狭めている。 
 少女は廃墟と化した街で一人、空を見上げていた。
 風の音以外、聞こえる音など一つもない廃墟の街並。
 かつては賑わっていたであろう。
 だが今となっては動くものなど何一つない大通りの真ん中で、少女は――高町ヴィヴィオ――は孤独だった。
 
 十に満たない幼い彼女が、このような人寂しい場所に一人で佇んでいる理由は彼女自身の複雑な境遇に因っていた。
 一年前に起きた、ジェイル・スカリエッティによる、
管理局地上本部襲撃及びロストロギア「聖王のゆりかご」占拠事件――通称「J・S事件」。
 彼女は「聖王のゆりかご」を起動させるためだけに生み出された古代ベルカの王、「聖王」のクローンであった。
 事件の最中、精神操作を受けた彼女は、救助に向かった教導官であり、
同時に彼女の保護者であった高町なのは一等空尉に攻撃を仕掛けるといった一幕もあったものの。
 無事保護された彼女は同空尉の正式な養子となり、
現在サンクト・ヒルデ魔法学院に通学しながら平和な日々を送っている――――筈だった。

 簡単な話である。
 平和と安穏は似ているようで異なり、平和な日常の中にも悪意は容易く入り込む。
 悪意とは人から生まれるものであり、ならばそれは人の営みの中に存在する。
 日常の中、息をするかの如く当然のように生まれる悪意。
 それが、誰かに向けられただけの話。
 よくある話である。

 クローンとはいえ失われた王家の、現在では宗教的象徴にすらなっている聖王の系統を受け継ぐヴィヴィオの立場は非常に危うい位置にある。
 ベルカ系列の学院に所属しながらも、管理局のエリートを義母に持つという境遇。
 即ちそれは、管理局と聖王教会の双方から干渉を受けるということである。
 ヴィヴィオの境遇は、管理局・聖王教会の両者が高い関心を寄せるに充分なものであった。
 管理局からすれば、ヴィヴィオは聖王ゆかりの遺跡――どれもが重大な力を持つロストロギア――を起動

することができる、云わば歩くロストロギアと言っても過言ではない。
 現に、一部の過激派から自立型ロストロギア指定が申請されたことすらあった。
 聖王教会では、ヴィヴィオの宗教的権威の確立――要は聖王戴冠を求める声と、クローンであることに拒否感を覚える声の二派に分裂している状況にある。
 管理局・聖王教会の双方で、一部の過激派がヴィヴィオの身柄の強制的な確保を目論んでいる、そんな噂すら立っている次第であった。
 ヴィヴィオの義母である高町なのは一等空尉は政治的能力を持たない。
 だが、彼女の背後には本局のハラオウン親子。
 さらにレオーネ・フィリス法務顧問相談役、ラルゴ・キール武装隊栄誉元帥、ミゼット・クローベル本局

統幕議長ら通称「伝説の三提督」といった名だたる穏健派が連なる。
 聖王教会でヴィヴィオの身柄を担当しているカリム・グラシア少将もまた聖王教会内部では穏健派で通っている。
 彼らの協力によって、高町ヴィヴィオは非常に微妙な立場でありながらも、現在では平和な日常を送ることができていた。
238名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 03:38:30 ID:U8OGhmpo
支援

239リリカルなのはSUMMON NIGHT:2008/01/27(日) 03:39:09 ID:8sPwh/iq
 
 では何故少女は孤独であるのか?
 とどのつまり、平和とは「高町ヴィヴィオを巡る政治的情勢の安定」であって、彼女の私生活を指した言葉でないからだ。
 人は、自身とは根本的に異なる人間を見た場合に取る行動は、主に二通りある。
 排除か、利益を求めるか。
 特に子供だけの世界となれば、行動は更に露骨なものとなる。
 ベルカ系列のミッションスクール「サンクト・ヒルデ魔法学院」は教会関係者の子弟の多くが通うことで有名である。
 学生の中には近年の情勢を知る者、教会関係者の親から特別な意向を受ける者が少なからずいる。
 つまり、学院においてヴィヴィオは級友から『高町ヴィヴィオ』ではなく『ベルカ聖王のクローン』として扱われていたのである。

 露骨に媚びへつらう者。
 まるでヴィヴィオなど居ないかのように無視する者、
 隠す気の無い陰口を叩く者。
 時に教師からすら畏怖の目を向けられることすらある。
 学院で少女は一人、孤独であった。
 もし彼女が敬愛する義母と共に居られたのならば、物語は少しばかり違う方向へ進んだことだろう。
 だが、彼女の義母は多忙を極め、少女は止むを得ず学院の寮で暮らすこととなっていた。
 一人ぼっちのベッドの中で、少女の考えてしまう。
 ――――もしかしたら、皆『高町ヴィヴィオ』の存在を認めてないのでないか?
 ――――自分は必要とされていないのでないか?
 ――――自分は疎まれているのでないか?
 そんなことはない、絶対にない。
 だってあの時、『母』は助けに来てくれた。
 そうやって悪い考えを必死に打ち消す。
 それでも暗い寝室で一人で寝ていると、どうしても悪い方へと思考は留まることを知らずに落ちていくのだ。
 そうして朝、涙の跡と共に目を覚ますという日々が続いていた。

 誰かが悪いというわけではない。
 ただ少女は、年相応に生きるには余りに難しい環境で生きるしかなかったのだ。
 助けてくれる人も、憎むべき人もいない中、少女は不相応に大人になるしかない。

 
 これが、ヴィヴィオが一人で廃墟の街並に佇む理由である。
 授業が終わり、寮の自室に戻れるまでの数時間。
 周囲の冷たい目線が、あからさまに媚びへつらう目をした同級生から掛けられる寄り道への誘いが、どう

しようもなく嫌で、彼女は二区画隣の廃棄エリアで時間を潰していたのである。
 電力・水道といったライフラインを絶たれたコンクリートジャングルに住み着く者は居るわけがなく、無

人の街並は他人の目線に疲れた少女にとって好都合であった。
 あくまで好都合なだけであって、廃墟の街並を少女は好きではなかったが。

 ――――だけど、ここから見る空は好きだった。
 あの日、暗い地下から出たとき初めて見たのは青空だったから。
 優しい、あの人たちに出会った日に、初めて見た空に似ていたから。

 痛くなり始めた首筋を押さえ、青空から目を離す。
(…………かえろ)
 待っているのは暗い静かなだけの部屋しかない。
 陰鬱な気分になりながら、学院寮に戻ろうとして――――


 ――――ふと、誰かに呼ばれたような気がした
240名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 03:40:29 ID:U8OGhmpo
支援
241リリカルなのはSUMMON NIGHT:2008/01/27(日) 03:40:45 ID:8sPwh/iq
 
 彼女の目の前にある朽ちた工場。
 無断侵入者を拒むはずのシャッターは朽ち、その役目を果たすことは無い。
 時間が止まってしまったかのような静寂。人間がいる筈が無い。
 そもそも、人の声など『聞こえなかった』のだ。
 それでも。
 工場の奥、その暗がりの中。
 たしかにヴィヴィオは、誰かに呼ばれたのだ。

 朽ちた廃工場。崩落の危険があり、既に一部は崩れている。
 人気の無い暗がり。
 幼い少女の恐怖を誘うには充分過ぎるものであったが、ヴィヴィオには不思議と恐怖を感じなかった。
 躊躇無くシャッターの残骸を乗り越え、薄暗い建物の中に入っていく。
 コンッ、と足が何か固い、金属のような物を蹴飛ばした。
 足元に転がる機械の残骸。
 暗がりに慣れた目が写したのは、無数に積み重ねられた残骸の塔。
 スクラップ廃棄場。
 きっとこの場所は、この街が朽ちる以前から朽ちたもの達を集めていたのだろう。
 薄闇の中、積み重ねられたスクラップが幽霊のように佇んでいる廃工場内を、少女はまるで導かれるように真直ぐ歩いていく。
 
 
 それは彼女の、聖王としての力だったのかもしれない。
 それとも、『彼』が無意識の内に信号を発していたのかもしれない。
 こじ付けのような解釈ならいくらでも出来るし、実際世の中の大半はそんなもので説明できてしまうのだろう。
 ただ、都合の良い言い方をさせて貰えるのなら、
 それは、きっと――――奇跡のような運命だったのだ。


 三つ目の部屋を通り抜けた直後、ヴィヴィオの目に光が飛び込んだ。
 今までの部屋より少々広い教室程度のスペースが広がっており、部屋の中心に光が注ぎ込んでいる。
 天井が崩落したのだろう。敷地は広いが高さは無い工場だったため、天井が崩れれば太陽の光が容易に入り込む。
 埃っぽい、スクラップ工場の一室。
 けれど注ぎ込まれる光が金属片に反射し、不思議と幻想的に見えるスクラップの広場で。


 ――廃墟の街を越え。
 ――孤独の夜を越え。
 
 ――――――少女は『彼』と出逢った。


 広場の中央。
 陽の光が最も注がれる場所に『彼』がいた。
 騎士が纏う甲冑のような姿。
 関節から見える金属部品。
 所々錆付きながらも決して色あせることの無い、蒼と黒の装甲。
 
 『彼』は、決して人では無い『彼』は一人、スクラップの広場で膝を折り跪いていた。
 否、跪いているのでない。
 それはまるで、王の拝命を待ちかしずく騎士のようだった。

「―――――あなた……だったの?」
 
 ヴィヴィオは確信した。
 自分を呼んだのは『彼』なのだ、と。
 機械仕掛けの騎士に、一人ぼっちの騎士に、自分は引き寄せられたのだ、と。
242リリカルなのはSUMMON NIGHT:2008/01/27(日) 03:42:28 ID:8sPwh/iq
 
 誘われるように『彼』の傍に寄る。
 堅牢な装甲。されども無数の傷が刻まれている。
 その幾多の銃痕と刃傷が、『彼』が激しい戦いを潜り抜けてきたことを示している。。
 『彼』の顔。
 人が被る兜のようであるが、人が中に入るスペースは無い。目がある場所に本来視界を確保するための隙間はなく、
 代わりに無機質な硝子のような機械の目がある。

 少女は手を伸ばす。
 その小さな手のひらが、『彼』の頬に触れようとした瞬間。
 ブォン、という鈍い起動音。
 それと共に、何も写すことの無かった機械仕掛けの瞳にライトグリーンの光が灯る。

 ――――そして。



「ねっっっ猫は!! 猫は苦手でありますぅぅぅ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!」

 
「はひゃぁっっっ!!?」 

 なんか無駄にコミカルな悲鳴が上がった。
 ステーーン、という擬音が似合いそうなほど、ヴィヴィオは見事に引っくり返る。
 先ほどまでの雰囲気の落差と、『彼』の悲鳴の音量と、ギャグ補正とかが原因である。

「寝てません! 寝てません! ちょっと意識が飛んでただけであります!! 何ページからでありますか教か

…………あれ? どうしたでありますか、お嬢さん?」
 『彼』は寝惚けているが寝起きは良いらしく、すぐに目の前で引っくり返っているヴィヴィオに気付く。
 しかしヴィヴィオは気絶してしまっており『彼』の声に答えることは出来ない。
 ついでに、ヴィヴィオはスカートだったため引っくり返った姿勢だと、女性の最終防衛ラインというか最終兵器というか、簡単に言うと綿100パーセントで白なアレが『彼』から丸見えである。

「はわっ!? おおっお嬢さん駄目であります! そんなはしたない格好は駄目であります!!
  …………はっ! まっまさか自分が無意識の内にいたいけな少女にイタズラを!?
 だだだだだ駄目であります! 倫理的にアウアウであります!ロリコンは犯罪であります! 死刑であります!! スクラップ廃棄場送りは嫌でありますぅぅぅ〜〜〜〜〜〜!!!!」
 
 どうやら身動きが取れないらしい『彼』はアワワワ〜、と無駄に人間臭い呻き声を上げながら小刻みに震えるという、これまた人間臭い動作をする。
 身悶える機械の『彼』と、未だに丸見え状態で気絶しているヴィヴィオ。
 『彼』と少女の出逢いは、開始30秒でカオスに突入していた。
  
 
 十数年後、高町ヴィヴィオは、この時の出逢いをこう語る。
『――――あんな酷い出オチは後にも先にもあれっきりでした』
243名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 03:44:16 ID:ycmEDUWT
支援
244リリカルなのはSUMMON NIGHT:2008/01/27(日) 03:45:42 ID:8sPwh/iq
 

「申し訳ないであります。事故とはいえ、お嬢さんの……あの……その」
「…………もういーよ。あとおねがいだから、それいじょう言わないで」
 項垂れながら、指を合わせてモジモジしている『彼』の言葉を、ヴィヴィオは涙目で一刀両断する。
 目を覚ませば自分は丸見えの状態であり、もはや熱暴走を起こしかけ「目玉のオバケがぁぁぁ〜」と意味不明な呻き声を上げ身悶える『彼』がいたのだ。
 おっぴろげてしまった上に、もしかしたら先ほどのコミカル展開は夢だったんじゃないかなぁ、という淡い願望も打ち砕かれてしまったヴィヴィオである。
 彼女の心境は推して知るべしである。あと、おっぴろげとか言うな。

 少女の涙と、謝罪をぶった切られたことで『彼』はさらにパニック状態となり「ヒィィ〜」と、これまた情けない声を上げる。
 そんな『彼』の様子を見てヴィヴィオは小さく溜息をつき、ふと考えた。
 
 ――会って間もないけど、きっと目の前のこの人は、いつもこんな感じだったんだろうなぁ。
 なんとなく似たようなことをやらかしている『彼』を想像したら、なんだか笑ってしまいそうになる。
 
 それが顔に出たのだろうか、『彼』はおずおずと
「……許して頂けるでありますか?」
 と聞いてきた。
 背丈や体格など自分と比較にならないほど大きな『彼』の、その子犬のような仕種が妙に可愛らしく感じ、今度はクスクスと声を上げて笑ってしまった。
 『彼』もそんな少女の様子に一安心したらしく「はひぃ〜」と安堵の吐息にしては、これまたさらに情けない呻き声を上げる。
 そんな様子に少女は、さらに笑みを大きくした。


 少女は気づいただろうか?
 先ほどまで心を占めていた陰鬱な気持ちが、孤独感が消えうせていることに。
 母と離れてから、声を上げて笑うことなど一度も無かったことに。
 『彼』は初めて出逢ったときから、名前を教えあう前から、少女を救っていたことに。


「わたしは高町ヴィヴィオ。あなたのおなまえは?」
「形式番号名VR731LD、強攻突撃射撃機体VAR-Xe-LDでありますヴィヴィオ殿」
「ぶいえー……あーる……?」
「親しみを込めてヴァルゼルド、と呼んで欲しいであります」
「うんっ、ヴァルゼルドね!」
 ひとしきり笑ったことで雰囲気が解れたのか、割り合い最悪なファーストコンタクトであったが無事自己紹介を行うことができた。
「ところでヴィヴィオ殿は、何故このような場所へ一人でいらしたのでありますか?」
 ヴァルゼルドの疑問は最もであったし、少女が一人で廃墟にいることに疑問を持つ程度の一般常識も彼は持ち合わせていた。
「えーと、そのー……学校からかえる通り道なの」
 学校に居ることが嫌で逃げ出してました、と正直に言うことができず、また言えば間違いなくヴァルゼルドは泣き出すであろうことが容易に想像できたので、少々苦しい言い訳をしてしまう。
 廃墟区画が通学路である学校などあるはずがなく、一般常識を持つ相手なら通用する言い訳ではなかったが、
「学校でありますか! つまりヴィヴィオ殿は上官殿でありましたか!」
 一般常識はあるが、使い所を間違えているヴァルゼルドには充分通用してしまったのである。
245リリカルなのはSUMMON NIGHT:2008/01/27(日) 03:47:29 ID:8sPwh/iq
「え……? じょーかんどの?」
「はい! 士官候補生の方は本機より高い指揮権を有しているであります。ですのでヴィヴィオ殿は上官殿なのであります」
 ヴァルゼルドの中では、学校=士官学校、学生=士官候補生、ヴィヴィオ=上官という愉快な方程式が成立していた。
 ちなみに、この過程で廃墟云々の話はポロッと思考ルーチンのどこかに落ちてしまっている。ヴァルゼルドがポンコツたる由縁である。
 正直言うとヴィヴィオは『上官殿』ではなく名前で呼んで欲しいと思った。以前級友から幾度も『聖王陛下殿』と陰口を叩かれたことがあり、それ以来、そういった呼び名が嫌いだった。
「あのね? ヴァルゼルド……」
「はい! なんでありますか上官殿!」
 じょーかんどのは止めて、と言おうとして言葉が詰まった。
 そんなキラキラした瞳で上官殿と言われると、禁じる方が悪いことのように思えてくる。
 ――あ、ほんとにキラキラしてる。
 瞳のライトグリーンの光を強弱させ、本来無機質である筈の鋼鉄の顔に喜色を浮かべるという珍技を披露している彼を見ると、『まあ、じょーかんどのでもいいかなぁ』と思ってしまう。
 そもそも彼女が嫌ったのは、『高町ヴィヴィオ』という人格を認めない『聖王陛下殿』という陰口である。
 ヴァルゼルドの場合は『高町ヴィヴィオ』に対する単純な好意と敬意なのであるから、彼女がそう思ったのも当然のことであった。
「えー……と、そう! ヴァルゼルドこそどうしてこんなところにいたの?」
 なんとか話題を変えようとした結果、もっともな質問を思いついた。
 ヴァルゼルドのような自立型機械は今まで見た事が無い。似たようなものなら苦い記憶と共に心当たりがあるが、アレはヴァルゼルドのような人間味を持たせることを想定していない。
 どちらかといえば彼女の母が持つような、インテリジェントデバイスに近いものがあるが、魔導士を補佐することが役目のデバイスに自立型などはあるわけがない。
 そもそもヴァルゼルドのような人間臭さを持つインテリジェントデバイスはそういない。例外に感情豊かな空曹長階級の管制人格がいるが、彼女を機械と呼んだら多分泣かれる。
 
 それに何より――機械とは言え、彼がこのような場所に置き捨てられていることに腹が立ったのだ。

 だが、質問の答えはあまりに頼りないものだった。
「それは…………分からないのであります」
「わからないって……ヴァルゼルドは記憶そーしつなの?」
「いえ、本機のデータは失われておりませんし、人格データの蓄積経験のリセットも行われておりません。

ただ……自分が何故ここにいるのかが分からないのであります」
「なんでって……ヴァルゼルドはミッドチルダで生まれたんじゃないの?」
「ミッドチルダに関する該当データは存在しませんが、どうやら自分が最後に機能停止してから902280時間

経過してるであります」
「……きゅーじゅーまん?」
「100年飛んで3年ぴったりであります」 
 奇遇でありますね。と、何が嬉しいのかエヘンと胸を張るヴァルゼルド。

 ポンコツさんは本当にポンコツでした。
 
246リリカル! 夢境学園:2008/01/27(日) 03:47:57 ID:YUKmn7sa
シリアス展開が三十秒でぶっ壊れたw
支援!!
247リリカルなのはSUMMON NIGHT:2008/01/27(日) 03:50:25 ID:8sPwh/iq
さすがに100年以上前から眠り続けていたポンコツさんの正体など分かる筈もなく、ヴィヴィオは彼の正体を推測することを諦めた。
「……うん、よし。ぽじてぃぶに行こう」
 過去が駄目なら未来である。とりあえず、これから不自由しそうなことについて質問しよう、と彼女は声に出して決めた。そうでもしないと脱力感で挫けそうになる。
「ヴァルゼルドは動けないの?」
 彼は先ほどから一歩も動いていないどころか、姿勢すらほとんど変えていない。腕部と上半身の一部は動かせるようであるが、もし歩けないとなると問題である。
 ――――ヴァルゼルドをこんな場所で一人ぼっちになんか、絶対にさせやしない。
 自分でも何故ここまで拘るのか分からない。ただ、嫌だったのだ。
 今まで一人ぼっちだった彼を、また一人にすることだけは嫌だった。
 そんな彼女を想いを知ってか知らずか、あろうことかポンコツさんは、
「はい、動けないであります」
 単刀直入に言い切りやがった。
 応答としては間違っていないが、いい男ならば少女の内心を汲み取り小粋なジョークの一つでもかましてやるべきである。
 どだいポンコツには無理な話であった。
「…………ふーん、そうなんだ」
 聞きようによっては無関心とも取れる平坦な声。
 だが、その内心は烈火の如く。
 ――――うん、よし! スバルおねーちゃんに引っぱってもらおう!
 ナチュラルに人使いの荒い方法を思いつくヴィヴィオ。
 人の縁は血の縁より強しという言葉通り、対人関係の過程に手段を選ばないあたり、まさしく高町ヴィヴィオは高町なのはの娘であった。
 もっとも、スバル・ナカジマ陸士は何時も通りのユルい笑顔で「うん、いいよ〜ヴィヴィオちゃん」と快諾するだろう。
 だがその場合、16才の少女にお姫様だっこ『され』空中を疾駆する機械兵士が衆人環視に晒されることになり、一般市民の精神に大変有害である。
「ですが問題無いであります。経年経過による関節部位の老朽化が原因でありますので、本機の自己修復プログラムで充分修理可能な範囲であります」
「……っていうと?」
「寝てれば直るであります」
「よかったぁ〜」
 その言葉に安心したのかヴィヴィオの顔に笑みが戻る。
 ヴァルゼルドは終ぞ知ることはないが、彼は危うく幼女に羞恥プレイを強行されかけたのである。
「それで、ヴァルゼルドはしばらくここにいるの?」
「はい、ここなら幸い太陽光エネルギーの補給も行えますので、本機は現在地にて修復完了まで休止モードで待機するであります」
「そうなんだ……さびしくない?」
「問題無いであります。自分、待機任務には自信があるであります」
248リリカルなのはSUMMON NIGHT:2008/01/27(日) 03:51:55 ID:8sPwh/iq
 
「っ! ……そう……なんだ」
 その言葉が、少女の胸に突き刺さった。
 ヴァルゼルドとは、出会ってから数時間も経っていない。
 他人のような自分が傍にいようがいまいが、彼には関係無いことなのだろう。
 当たり前のこと。
 そんな当たり前のことが、どうしようもなく少女の心に突き刺さる。
「それよりも上官殿。時間はよろしいのでありますか?」
 天井から差し込む光はオレンジ色の、夕暮れ色のそれになっている。
「…………うん……そろそろかえらなくちゃ……」
「はい、お気をつけてお帰りください上官殿」
 別れのときでも、変わることのない彼の口調に悲しくなる。
 それでも彼の言葉を受け、トボトボと部屋の出口へ歩く。
 ――だって、しょうがないもん。わたしじゃ、ヴァルゼルドの力になれないから。
 いつか傷の癒えた彼は、何処かへ行ってしまうのだろう。
 引き止める? 自分自身すらままならない、彼にしてやれることなど何一つできない自分が?
 きっと、この出会いは一度限りの偶然のようなものだったんだ。
 
 そう自分に言い聞かせながら少女は、部屋を出る前に彼へ振り向き、別れを告げる。
「うん…………じゃあね、ヴァルゼルド――――」
 ばいばい、と続けようとした別れの言葉は。


「――――――はい、また『明日』であります。上官殿」
 さよならの声は、優しげな機械の声に遮られた。


「――――――…………え?」
 その声に、少女の別れを告げる言葉が止まる。
 予想しなかった言葉に、少女の思考が止まる。

 ヴィヴィオの反応に的外れな勘違いをしたのか、ヴァルゼルドは急にアタフタし始め、
「あやややっ! ちちち違うであります! 今のは別に催促というわけではなくてですね!
 自分の主観というか自分的に寝て次起きた時が明日であるという訳で! 別に24時間後に会いたいとかそういう訳では無いと言うか何と言うか……はわわわわっ〜〜〜」
 本音が駄々漏れで、後半が意味不明になっている弁明を始める。
 
 ここ数時間で見慣れた彼の、そんな姿を見ていると、先ほどまで感じていた陰鬱な気持ちなど何処かに消えてしまっていた。
 その代わりに、ゆっくりと胸中を満たしていく暖かい感情。
 彼は自分とまた明日会えることを信じて疑っておらず。
 結局、自分が複雑に考えすぎていただけなのだ。
 少なくとも彼の周りに限って、世界は単純で、優しい。

 
「――――うん、また明日会おうねヴァルゼルド」

「――――はい、お待ちしております。上官殿」


 スクラップに囲まれた、単純で優しい世界で。
 少女と機械兵士は、単純で優しい約束を交わした。
249リリカルなのはSUMMON NIGHT:2008/01/27(日) 03:53:09 ID:8sPwh/iq
 
 そして少女は家路へ着く。
 橙色に染まった帰り道、少女は明日のことに思いを巡らせる。
 ――明日はなにをしよう。もっとヴァルゼルドとお話したいし、話を聞かせてもらいたい。
 自室のベッドに潜ったあとも、今日交わした約束のことだけを考えた。
 ――うん、絵本をもっていこう。ミッドチルダのことは分からないって言ってたから、きっとヴァルゼルドは読みたがると思う。
 そうやって、早く明日にならないかな、と逸る気持ちを抑えながら少女は眠りに就いた。

 その夜以降、少女の朝に、涙の跡が残ることはなかった。



 ――It continues daily life.
 ――Daily life for the girl and the soldier of tinplate.



 パタパタと軽い足音が工場内に響く。
 小さな身体が揺れるたびに、金色のツインテールがピョコピョコと上下する。
 機械の残骸で溢れた廃工場で走ることは危険な筈だが、少女に害を為すようなスクラップは全て排除されていた。
 少女が工場に通うようになってから、『彼』が危険な障害物を撤去したり崩落箇所を補強したのだ。
 もっとも、修理の完了しない機体で行ったため、少女が訪れた際『彼』はスクラップの山に頭を突っ込んで倒れていたが。
 そして少女は目的の場所へ辿りつく。
 息を弾ませ、目的の人物に、スクラップの山に腰掛けた『彼』に勢い良く声を掛ける。

「ヴァルゼルド、元気だった!? 」
「20時間と14分ぶりであります上官殿。 本機は今日も好評稼働中でありますよ」

 少女が授業を終え、夕暮れまでの数時間。
 それが、ヴィヴィオとヴァルゼルドの日常であった。

 
 二人の日常に特筆することはない。
 廃工場の片隅で、少女と動けない機械兵士の二人では、冒険やサプライズの類は無い。
 ただ、二人で語り合うだけの、平凡な日常。
 話を聞いたところ、どうやら機械兵士は違う次元世界で作られたらしい。
 彼が語る話の多くは、その次元世界で起こった戦争のことであり、彼自身その戦争のために作られた兵器であると語った。
 少女に語れる話題を持っていなかった彼は、申し訳なさそうに身を縮める。
 少女はそれ以来、いつも話題は自分が持ってくることに決めていた。
 天気の話や、少女が授業で教わったこと。少女が出会った優しい、大切な人達の話。
 少女の拙い語りに、機械兵士は大げさなまでに相槌を打ち、その仕種に釣られて少女も笑う。

 それが彼女と彼の、なんら特筆することのない、平凡で、ありふれた、優しい日常だった。


 
 これは、そんな日々の一幕。
250リリカル! 夢境学園:2008/01/27(日) 03:54:20 ID:YUKmn7sa
癒される……
機械兵士はサモンナイトのマスコットだぜ支援!
251リリカルなのはSUMMON NIGHT:2008/01/27(日) 03:54:59 ID:8sPwh/iq
 
「きょうは! ヴァルゼルドを! お掃除しようと! おもいます!」
 両手を振り上げ一言一句、力を込めてヴィヴィオは宣言した。 
「そっ掃除……でありますか?」
「そうです! いつまでもサビついてちゃダメ!!」
 がおーっと言わんばかりに声を上げるヴィヴィオ。
 今回の経緯は先日ヴァルゼルドがスクラップの山に突っ込んだ際、その姿に違和感が無かったことが少女に危機意識を目覚めさせたのである。
「っ!? 感激であります上官殿! 自分のためにそこまでっっ……!!」
 少女からすれば『目指せ!脱スクラップ!!』なのだが、彼は単純に少女が自分のメンテナンスを買って出てくれたのだと勘違いした。
 意思疎通の適度な失敗は、適度な人間関係構築に必要なことの典型である。
「ちゃんとヤスリも持ってきたんだよ」
「ははっっ! ありがたき幸せであり……ま……す?」
 テンション絶好調だったヴァルゼルドの言葉が、不意に疑問系になる。
 原因はヴィヴィオの両手にある物体。
「…………上官殿。失礼ですが、それは一体なんでありますか?」
「ん? ヤスリだよ?」
 
 棒状の金属で出来、片方に取っ手を付け、もう片方に削るための網目状がある。
 と言えば、それは確かにヤスリであった。
 バットほどの大きさでなければ、の話だが。
 もはや鉄柱と言っても良いサイズである。それで一体何を削れと言うのだ?
 それに、削るための部分もおかしい。網目状というレベルじゃない。剣山のような、あからさまに破壊を目的とした形状である。
 錆を削ると言うより、『これで手前の頭を大根おろしにしてやんよ』と言った方がしっくりくる。
 一体こんな狂気もとい凶器を、どこの誰が持っていたのだ。

 A.そろそろ婚期やばいんじゃないか、と教会内でもっぱら評判の通称トンファーお姉さんことシャッハお姉さんです。
 ちなみに、学生時代この化け物ヤスリを購入し部屋に飾って悦に入っていたところを、当時交際していた恋人に目撃され破局に至ったという過去があります。

「…………いや?」
 涙目になるヴィヴィオ。
 彼女に悪意は無い。ヤスリが大きければ、それだけ錆も良く落ちると思ったのだ。
 上目遣いに尋ねるヴィヴィオ。その両手には凶器。
「――――いえ! よろしくお願いするであります上官殿!!」
 もはや撲殺を目的として作られたようなヤスリ。
 ――それがどうした?
 ――機界ロレイラルの技術の粋を集めて生み出された我ら機械兵士。
 ――ヤスリ一つ破れずして、少女の笑み一つ守れずして。
 なにが機械兵士か――――!

 喜色で溢れる少女の顔を見つめ、己の装甲に当てられる敵性物体を見つめ。
 ヴァルゼルドは今、まさしく戦場にいた――――!!

 ―――戦果報告
「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」
「……正直自惚れていたであります。敵は強大でありました。トホホであります」

 形式番号名VR731LD 強攻突撃射撃機体VAR-Xe-LD…………装甲体積0.8%減少
 
252リリカルなのはSUMMON NIGHT:2008/01/27(日) 03:56:14 ID:8sPwh/iq
 
 ――A day when memories shaped.

「それは一体何でありますか、上官殿?」
 ヴァルゼルドは少女の抱える、通学鞄とは別に抱えた鞄を指差した。
「えへへ〜ないしょ〜〜」
 にへへ〜、と笑みを零しながらヴィヴィオは鞄を地面に降ろし、中身を広げる。
「ヴァルゼルド、きをつけ!」
「はいっ! 了解であります」
 ピシッと姿勢を正すヴァルゼルド。
「うごいちゃダメだからね〜」
 少女が広げた荷物。
 それは画用紙とクレヨンだった。
「……自分の絵を描くのでありますか?」
「うん! すっごくかっこよく描いちゃうんだから!」
 美術の授業で出された課題は『自分が好きなものを写生しなさい』だったが、教室には少女の条件に見合うものは無かった、
 そのため仕方なく植木鉢に咲いたチューリップを描いて提出し、その際余った画用紙を無断借用してきたのだ。
「きょ、恐縮でありますっ!」
 緊張のせいか、プルプル小刻みに震える。
 何ヶ月でも何年でも身じろぎ一つすることなく待機していられる癖に、このような時だけヴァルゼルドは酷く人間臭い。
 
 鉄と錆の匂いがする広場。
 少女と機械兵士は日向に囲まれながら、珍しく物静かな時間を過ごした。

「…………あぅ……」
 失敗した。
 ものっすごく失敗した。
 完成した画用紙に目を落としたら、思わず呻き声が上がった。
 想定していた『すっごくかっこいい』筈の機械兵士の絵は、なんと言うべきか…………リミッター解除し

た……案山子?
「完成したでありますか上官殿!?」
 おねがいだから、そんなキラキラした瞳で見ないで下さい。
「……うん……できた……ような……できなかったような」
 キラキラ。
「………………ごめんね」
 恐る恐る出来た絵を見せる。
「…………………………」
 沈黙が痛い。
 普段よく喋る人間ほど黙ると怖い。いや機械だけどさ。
「…………ぁぅぅ……」
 あ、泣きそう。
 あ、無理、泣く。
 沈黙に耐え切れなくなり、ヴィヴィオの涙腺が決壊しかけた瞬間、
「上官殿、自分にこの絵を頂けませんか」
「――――……えっ?」
 いつも通りの優しい声が降ってきた。
 涙を堪えながら、ヴィヴィオは彼に確認する。
「……いいの? すごい下手っぴだよ?」
「自分に絵のことは分かりません。――――ですが上官殿が精一杯、自分のために頑張っていたのを見てい

たであります」

「それが、自分には何よりも嬉しいのです。この思い出の証が欲しいと思ったのであります」
「――――――うんっ!」

 鉄と錆の匂いがする、日向に囲まれた広場。
 きっとここは優しさで出来ているんだ、そう少女は思った。
253リリカルなのはSUMMON NIGHT:2008/01/27(日) 03:57:46 ID:8sPwh/iq
 

 それが彼と彼女の日常。
 平凡で、穏やかで、優しい、そんな日々。
 スクラップで囲まれた日向は、どうしようもなく少女に優しかった。



 これからも、そんな日々が続く。

 ――――――――その筈だった。



 ヴィヴィオは、ここ一ヶ月の間で習慣となった道のりを走っていた。
 その小さな胸の中にフルートの入ったケースを抱えながら、胸の中から湧き上がる高揚感を抑えながら走っていた。
 ここ二週間の練習が功を奏し、拙いながらも何とか吹けるようになったのだ。
 彼に、一番最初に聴いて貰いたかった。
 演奏を聴いたら彼は何て言うのだろう、いつも通りの大げさな仕種で喜んでくれるかな。
 ――今日も、きっと楽しくなる。
 少女は十数分後の楽しい未来に頬を綻ばせながら道のりを急ぐ。

 誰もいない廃墟の街並。
 目の前の十字路、それを抜け、ほんの数分走った先に彼がいる。
 速度を落とすことなく十字路を右に曲がる。
 この先に彼が待って――――。


 不意に、影が自分を覆う。
「―――――――…………え?」


 世界は残酷だ、と人は言う。
 世界は無慈悲だ、と人は言う。
 それらは正解のようでいて、少しだけ違う。

 世界は――――唐突なのだ。
 
 世界は時に、容易にその姿を変える。
 白を黒に。正義を悪に。喜劇を悲劇に。
 だからこそ人々は皆、口を揃えて言うのだ。
 『世界は残酷で無慈悲だ』と、『こんな筈じゃなかったのに』と。


 少女を見下ろす機械の目。
 彼のとはまったく異なる、無感情で無機質なソレは。
 ヴィヴィオをその目に写しながらも、その心は何も見ていない。心が無い。
 空中に浮かぶカプセル状のボディ。

 ――――ガジェットドローンT型。
 
 JS事件で大量に運用され、同事件以前から多数の次元世界で活動していた自立機械兵器。
 その固体数の多さから、大量の機体が鹵獲・研究された兵器。

 管理局か聖王教会のどちらであるかは分からない。
 痺れを切らした過激派が、足のつかない手段で少女の身柄確保に乗り出したのだ。
 そんなことを少女が知る術は無い。
 ただ、少女は理解した。
 自分が過去の亡霊に追いつかれたことを、幼い心で理解した。
254リリカルなのはSUMMON NIGHT:2008/01/27(日) 03:59:01 ID:8sPwh/iq
 
 ――ガシャン。
 抱えたケースが少女の腕から零れ落ち、地面に転がったフルートが耳障りな音を立てた。


 
 同時刻。 
 スクラップの山に囲まれ、眠り続けている『彼』。
 その瞳が一瞬、強く輝いたことを知る者はいない。。
 彼方の昔、彼方の地で、『彼』が最期に誓った願いを知る者はいない。
 『彼』の望みを、『彼』の誓いを、知る者は誰もいない。
 ――少なくとも、その時は。



 走る。ひたすら走る。
 心臓が壊れたポンプのように馬鹿らしい速度で脈打つ。
 飛び出しそうになる嗚咽を堪えながら、溢れ出る涙を必死に堪えながら、ヴィヴィオは走り続ける。
 しかし少女の足で逃げ切れるわけが無い。
 ドローンはその数を増やし、着実に少女を追い詰める。

「……ハアッ!……ハアッ!…………あうっ!!」
 転倒。
 縺れた足が瓦礫に引っ掛かり、ヴィヴィオは地面を転がってしまう。
 所々擦りむいた傷口から血が滲む。
 涙で滲む視界。
 擦りむいた傷口ではなく、心が痛かった。
 無惨な少女の有様に構うことなく、ドローン達は少女へ近寄る。
 無人の、廃墟の街で、少女を助けてくれる人間などいない。
 『彼』は、ここにいない。
 少女の傍に、『彼』はいなかった。

 十字路で少女は『彼』に助けを呼ぶべきだった。
 あの道を真直ぐ駆け抜け、『彼』の元へ逃げるべきだった。
 だが、少女の取った行動は『彼』のいる廃工場と正反対の方向へ逃げだしたことだった。
 なぜなら。
 あの時向けられたドローンの目が、何も感情の無い目が。
 ――――貴様にそんな資格など無いのだ。
 ――――ここに、貴様の居場所など無いのだ。
 ――と、少女を詰るようで。
 ――と、忘れかけていた少女の傷を抉るようで。
 そうして、少女は『彼』から逃げ出してしまったのだ。

「…………ひっく……ごめん……なさい……ごめんなさ……い……ごめんなさい……」
 ひたすら少女は謝罪の言葉を吐く。
 痛い、と泣くことも無く。
 助けて、と助けを呼ぶことも無く。
 少女は謝罪の相手も分からず、只ひたすらに『ごめんなさい』を繰り返す。

 自分に、資格など無かったのだ。
 作り物の自分に、多くの人を傷つけた自分に。
 居場所など無かったのだ。
 誰かと笑いあう資格なんて、無かったのだ。
 幸せになっちゃ、いけなかったのだ。
255名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 03:59:10 ID:YUKmn7sa
世界はいつだってこんなことじゃないことばかりだよ 支援
256リリカルなのはSUMMON NIGHT:2008/01/27(日) 04:00:13 ID:8sPwh/iq
 抵抗しなくなった少女にドローンが詰め寄る。
「…………なのはママ……フェイトママ……」
 冷たくなっていく心が辛くて、大切な人達の名前を呼ぶ。
 ドローンが少女を捕まえようと、少女に向けアームを伸ばす。
 無造作に伸ばされてくるアームを見つめながら、少女の脳裏に、ある人のことが思い浮かんだ。
 一人ぼっちだった少女の目の前に突如現れた『彼』
 真面目で、どこか抜けていて、底抜けに優しかった『彼』。
 『彼』の無機質な、それでいて穏やかな瞳を思い出して少女は、

「――――――…………ヴァル……ゼルドぉ……」
 『彼』の名前を呼んだ。
 少女の体に、不躾な機械肢が届く。
 そして。


 ――――――轟音。

 
 雷鳴のような轟音が、廃墟の街に響き渡った。
 少女を捕らえようとしていたドローンが轟音と共に吹き飛ばされる。
 ――――――轟音。
 4回。
 続けざまに轟いた雷鳴は、少女に近寄っていたドローン達を片っ端から吹き飛ばす。
 予想だにしない状況にドローン達のAIは混乱し、少女から離れていく。

 少女は、ヴィヴィオは見た。
 廃墟の道路。
 ヴィヴィオから50メートル離れた場所に人が立っていた。
 2メートル近い巨体。
 決して色褪せることのない蒼と黒の装甲。
 ――――『彼』がいた。
 
 手にした長大なライフルから硝煙を立ち昇らせながら。
 『彼』が――――。
 
 ――――優しい機械兵士がいた。
 
 
 ヴァルゼルドが少女に向かって駆け出す。
 混乱から立ち直ったドローン達が再び少女に近寄る。
 再び轟音。
 ヴァルゼルドは速度を落とすこと無く、少女の元へ駆けながらライフルを撃つ。
 不安定な体勢から放たれたライフル弾は、しかし吸い込まれるようにドローンへ命中していく。

 ズシン、と重い足音がヴィヴィオの耳に届く。
 少女の眼前に、機械兵士が立っていた。
 少女を狙う不埒な敵に銃口を向け、少女を守るかのように立っていた。
 そう――少女を守るために立っていた。
257リリカルなのはSUMMON NIGHT:2008/01/27(日) 04:01:22 ID:8sPwh/iq
「…………どう……して?」
 少女の問いに答えず、機械兵士はひたすら銃撃を続ける。
 ドローンの数は40を越えている。
 それどころか廃ビルの影、道路の曲がり角などから続々とドローンは現れ続ける。
 それでも機械兵士が退くことはない。
 機械兵士の左肩から、折りたたまれていた銃身が伸びる。
 複数の銃身を一本の巨大な銃身と化したソレ――ガトリング砲――が銃身を回転させる。
 蜂の羽音のような銃声と共に大量の銃弾を吐き出し、ドローン達を文字通り蜂の巣にする。
 押し返せたのは、ほんの僅か時間。
 破壊された数だけ……いや、それ以上の物量でドローン達は攻め続ける。

「……もう……いいから……」
 少女の声に、機械兵士は答えない。
 ドローンの目的はヴィヴィオの捕獲。
 そのため重火器は搭載せず、傷つけぬようアームのみで少女を確保しようとした。
 だが、突如現れた正体不明の機械兵士は別だ。
 重火器は搭載していないが、固有のレーザー兵装で機械兵士に攻撃を仕掛ける。
 ドローンから放たれたレーザーが機械兵士の装甲を焼き、少女の鼻に独特の臭気を届かせる。
「……もう……いいから! わたしのことはいいから!」
 少女の瞳から、止めどなく涙が溢れる。
 機械兵士は止まらない。
 左肩のガトリングだけでなく、同時にライフルでも銃撃を行う。
 それでもドローンからの攻撃は止まず、さらに機械兵士の身体を焼く。
 機械兵士は退かない。
 全身のあちらこちらを焼かれながらも、それに構うことなく機械兵士は銃弾を撃ち続ける。
 
 その姿が、少女には辛かった。
 自分のせいで、他人が、大切な人が、『彼』が傷ついていく。
 それが、なによりも辛い。
「わたしのせいだから! わたしのせいで、みんながきずついちゃうから!」
 だから、これは罰。
 望まれてなんか無かった分際で、図々しく生まれてしまったくせに。
 暖かな場所が欲しいだなんて、あの日向にずっと居たいだなんて思ってしまったから。
 優しい『彼』に甘えてしまったから。

「わたしなんかが、ここにいちゃいけなかったんだからぁ!!」
 慟哭。
 孤独な少女の、世界から見放された少女の、あらん限りの慟哭。
 それは――――。


「――――――それは違うであります上官殿」

 いつもと変わらない『彼』の、ヴァルゼルドの優しい声に否定された。

258リリカルなのはSUMMON NIGHT:2008/01/27(日) 04:02:33 ID:8sPwh/iq
 ――Oath of machine

 誓いがあった。
 彼方の昔。彼方の世界、彼方の地で、彼は誓ったことがある。
 壊れたブリキの兵士が、たった一つの願いを叶えたとき。
 ブリキの兵士は消えてしまう前に、祈りのような願いを誓ったのだ。


 修理自体は、とっくの昔に完了していた。
 機体の修理は終えてしまったため、暇潰しに武装のメンテナンスも行っていた。
 それでも尚あの廃工場から出なかったのは、ひとえに少女が来てくれてたからだ。
 それが功を奏した。
 100年の時を越えても尚、己の機体は充分に戦える。
 
 不埒にも少女を捕らえようとしていた自立機械を粉砕し、少女の前に立つ。
 敵は飛行型自立機械兵器。
 装甲は薄く、武装は貧弱。戦闘AIも単純極まりないものだ。
 量産機とは言え、かつて高度な機械文明を誇った世界で作られた戦闘機械の己と雲泥の性能差である。
 だが戦況は厳しい。
 敵の個体数は現在42。今尚その数を増やしている。
 なにより敵の目標は己の破壊でなくヴィヴィオの、己の背後で泣いている少女なのだ。
 飛行手段を持たない己にとって、一度でも少女を奪われればそれで全てが終わってしまう。
 己と少女の間にある距離、5メートル。
 それが最終防衛ライン。
 それこそが、己が守る絶対不可侵領域。
 
 左肩部に格納されていた6銃身ガトリング砲を展開する。
 FCSロック――――ロック完了、射撃開始。
 銃身を展開して0.2秒後、7.62mm徹甲弾が毎分3400発の発射レートで吐き出される。
 敵性機体に効果有り。敵機撃破敵機撃破敵機撃破――――。
 敵機残存数37……36……35……34……33…………敵増援確認、増援数10……11……12……――。
 撃破撃破撃破撃破撃破撃破――――敵増援さらに確認。
 敵機総数52……48……42……46……43……50――――。
 ――被弾。
 右胸部装甲に敵レーザー命中。
 護衛目標に被害無し
 機体損傷は軽微。
 戦闘を継続せよ。『彼女』を守れ。

「…………どう……して?」
 『彼女』の声。
 君の泣き声が聞こえたから。それだけ。

 戦闘続行――左腕部被弾。
 作戦目的に変更無し。
 7.62mm徹甲弾――残弾数……3600……3550……3500……3450……――敵増援。
 戦術変更の必要有り。
 FCS調整。マルチロックスタンバイ――。 

「……もう……いいから! わたしのことはいいから!」
 『彼女』の泣き声。
 悪いけど、そのお願いだけは承知できない。

 FCSマルチロック完了――ゼルラハティ20mm対装甲ライフル使用可能。
 射撃開始――fire……fire……fire……fire……fire……――被弾。
 戦闘可能。敵機撃破――敵増援――被弾被弾被弾撃破撃破被弾撃破――――。
 総撃破数57機確認、及び敵増援を再び確認。左腕被弾、右大腿部被弾、胸部中央被弾、被弾被弾被弾。
 護衛目標に被害無し。現状下戦闘目的は達成中。仔細合切問題無し、本機は順調に作戦を進行中。
 戦闘続――――『少女』の悲鳴。
259リリカルなのはSUMMON NIGHT:2008/01/27(日) 04:04:09 ID:8sPwh/iq
 
「わたしのせいだから! わたしのせいで、みんながきずついちゃうから!」
 ――違う。
 ――それだけは違う。 
 ――例えそれが真実だとしても、自分はそれを認めない。

「わたしなんかが、ここにいちゃいけなかったんだからぁ!!」
 『少女』の涙ながらの叫び声。
 自分に価値は無いのだ、と。
 誰かと共にいる資格など無いのだ、と。


 ――――それは違う!
 ――――それだけは決して違う!!
 

「――――――それは違うであります上官殿」
 ――――そうだ、それだけは違う。

「自分に上官殿の過去は分かりません。
 もしかしたら、上官殿の生は望まれていなかったのかもしれません――――ですが」
 ――そうだ、これだけは自信を持って言い切れる。

 遥か昔。どこよりも遠い場所。 
 壊すしか、殺すしか能の無い機械兵士。
 誰からも望まれることのないブリキの兵士。

 ――――そんな機械兵士を、救ってくれた人がいた。
 ――――そんな機械兵士を、受け入れてくれた人がいた。
 ――――そんな機械兵士に、笑いかけてくれた人がいた。
 
 作り物で出来損ないの人工人格。
 それですらない、在り得ざる人格――バグにすぎない自分。 
 ――――その死に、涙してくれた人がいた。


 これだけは、自信を持って言い切れる。
 たとえ世界全てが否定しても、これだけは言い切れる――――。


「それでも上官殿を受け入れてくれる方がいる筈です。
 ――――――いえ、いた筈です!!!」


 遥か昔。どこよりも遠い場所。
 消えゆく意識のなか、機械兵士は誓ったのだ。
 ――もし次があるのなら。
 ――機械兵士の自分にも魂があるのなら。
 ――バグに過ぎない自分にも輪廻が許されるのならば。
 
 その時は、きっと――――『あの人』のように生きよう、と。
 
 そっくりそのままとは行かないだろうけど、自分を救ってくれた『あの人』のように生きようと、
 そう誓ったのだ。
 
 誰かを受け入れられる。
 誰かに笑顔を渡せる。
 誰かの泣き顔を晴らせる。
 ――――そうやって生きようと誓ったのだ。
 
260名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 04:05:06 ID:YUKmn7sa
鳥肌が立ってきた。
なんで機械兵士はこんなにもかっこいいんだ 支援!
261リリカルなのはSUMMON NIGHT:2008/01/27(日) 04:05:13 ID:8sPwh/iq
 
 
「――――――――あ」
 『彼』の言葉が、まるで世界すべてに宣言するようなヴァルゼルドの言葉が、
 胸に、頭に、心に響き渡る。
 ――そうだ、自分はなんて簡単なことを忘れていたのだろう。

 頭上には青空。
 初めて外に出たあの日、自分を助けてくれた人達がいた。
 家族として受け入れてくれた人がいた。
 孤独にうち震えていたときも、傍らにいてくれた人がいる。

 高町ヴィヴィオの生まれを疎む者はいただろう。
 高町ヴィヴィオの存在を疎む者はいるだろう。
 その存在を望まない人たちと出会うことになるだろう。

 ――だけど、その存在を望んでくれた人が、受け入れてくれた人がいたのだ。
 その人たちがいるかぎり、その人たちと出会うかぎり、高町ヴィヴィオは孤独でない。
 ――そうだ、現に今こそ『彼』がいてくれてるじゃないか。
 たとえ過去の亡霊に掴まったとしても、決して孤独じゃない。孤独なんかじゃない。



「それになにより――」
 少女を守るために背を向けたまま、ヴァルゼルドの言葉は続く。
 朴訥で、不器用で、それでも懸命にヴィヴィオに伝えようとする。


「自分は上官殿と――会って、話をしたであります」
 轟音。
 すでにライフルの銃身は真っ赤に焼け付いている。

「上官殿の――家族のお話しを聞かせてもらったであります」
 轟音。
 空になった弾倉を捨て、腰の弾倉帯から無骨な、百科事典のような弾倉を取り出し叩きつけるようにライフルへ取り付ける。
 ボルトを引き薬室に残っていた空薬莢――砲弾のような薬莢を排出する。
 空薬莢が地面に落ちるその前に、再び轟音が響く。

「上官殿に――絵本を呼んでもらったであります」
 ブィィィンと、ガトリング砲が砲火と閃光を撒き散らす。
 ヴァルゼルドの足が大量の薬莢で埋もれている。
 今までの激しい戦闘でも、彼は一歩たりとて退いていない。
262リリカルなのはSUMMON NIGHT:2008/01/27(日) 04:06:58 ID:8sPwh/iq
「上官殿の――お歌を聴かせてもらったであります」
 爆音。
 ドローンのレーザーがガトリング砲を焼き落とし、僅かに残った弾薬が誘爆する。
 轟音。
 左肩の装甲が脱落しているのにも構わらず、ヴァルゼルドはライフルを撃ち続ける。
 一歩たりとも退いていない。

「上官殿と――共に昼寝をしたであります」
 ガキンと耳障りな音がライフルから発せられた。
 装弾不良――これを機と、一体のドローンがヴァルゼルドへ特攻する。
 アームを伸ばしヴァルゼルドを叩きのめそうとするドローンへ、彼は役立たずになった対装甲ライフルを棍棒のように振りかざし、渾身の力で振り下ろす。
 ガギャリッ! 不快な金属を響かせ、センサーを叩き潰されたドローンが地面へ崩れ落ちる。
 銃身が曲がり無用となったライフルを投げ捨てる。

「上官殿に――絵を描いていただいたであります」
 ヴァルゼルドは腰から大型拳銃を取り出し、たった今叩きのめされた仲間と同じように特攻してくるドローンに向け発砲する。
 ダプルタップ。
 正確無比な大口径拳銃弾の二連射は、一発目がドローンのセンサーを撃ち砕き、続く二発目は一発目と同じセンサー……そのさらに内部を撃ち砕く。
 さらにドローンたちが迫り来る。

「上官殿と――『明日』また会う約束をしました」
 二連射。二連射。二連射。装填。二連射。二連射。
 規則正しく響き渡る鈍い銃声。
 敵の攻撃が止んできた。
 敵の増援は止んでいる。
 弾薬が切れる。 
 敵は、まだ残っている。

「上官殿と――共に過ごしました。大切な時間を過ごしてきました」
 二連射。装て――。
 奇襲。
 不意にヴァルゼルドの眼前に降り立つドローン。
 アームをヴァルゼルドの首に巻きつけ締め上げる。
 ギチッ! ギリギリ……と軋みを上げる頚部。
 勝利を確信したかのようにセンサーを激しく点滅させるドローン。
 ――装填、速射。
 急所を締め上げられながらも、ヴァルゼルドは淡々と新たな弾倉を拳銃に装填し、銃口をドローンのセンサーに突きつけ零距離で銃弾を叩き込む。

 ドローンたちが、その攻撃の手を緩めた。 

 突如、廃墟が轟音と共に粉塵を巻き上げながら崩れる。
 巨体が、一体の巨大な球体が大通りへ姿を現す。
 ―――――ガジェットドローンV型。
 今まで戦ってきたT型に比べ、大幅な装甲強化と出力強化がなされた機体。
263名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 04:07:16 ID:ycmEDUWT
幼女とロボの絆・・・素晴らしいッ!!
支援
264リリカルなのはSUMMON NIGHT:2008/01/27(日) 04:07:47 ID:8sPwh/iq
 その巨体がヴァルゼルド目掛け突進する。
 避けるわけにはいかない。
 その進路方向には、己の後ろにはヴィヴィオがいるのだ。
 残った拳銃弾を全弾撃ち込む。
 しかしV型の勢いは止まることなく、ヴァルゼルドへと突進する。
 ガゴンッ!! トラック同士が衝突したような音と共に周囲に土煙が立つ。
 砕けた大型拳銃が、細かいパーツになって地面に転がる。
 それでも尚、彼は動くことのない。
 一歩も退くことのないヴァルゼルドに対し、V型は無骨なアームを振りかざし叩きつける。
 だが、それはヴァルゼルドの鋼の両腕で防がれる。
 ヴァルゼルドにアームを掴まれたV型は戸惑うことも、焦ることもなく、そのまま自身の巨体をもってヴァルゼルドを押し潰す。
 ――単純な力較べ。
 ここでは戦闘性能の差ではなく、単純な質量と出力が物を言う。
 ヴァルゼルドの足がアスファルトにめり込む。
 金属の軋む音。
 ギリギリと関節のいたる箇所から不快な音が発する。
 

「――――ですから」 
 満身創痍――それでも尚、機械兵士は少女に語り続ける。
 今まさに、自身を押し潰そうとする巨大な敵など歯牙にもかけない仕種で、彼は少女に振り向いた。

「――――自分と上官殿は『友達』であります。そうでしょう――『ヴィヴィオ』?」
 
 ――彼が、少女の名を呼んだ。
 ――彼が、己の望みを言った。


「――――自分は、ヴィヴィオと共に在りたいのであります。貴女の傍に、いたいのであります」


 長き眠りから目覚めた時。
 目の前に少女がいた。
 今にも泣き出しそうな、一人ぼっちの少女がいた。
 だから己は――――その泣き顔を晴らしたいと思ったのだ。
 一人ぼっちだった己の傍らにいてくれた少女の、花咲くような笑顔が見たかったのだ。

 少女に振り向けられた機械仕掛けの瞳――それが、微笑むように細められた。
265リリカルなのはSUMMON NIGHT:2008/01/27(日) 04:09:13 ID:8sPwh/iq
 

「――――――あ………っく……ひっく……」
 不器用に、少女を守り続けながら紡がれた言葉が、ヴィヴィオの心に染み渡っていく。
 昔のようで近い、いつかの日。
 孤独だった少女の心を救った機械兵士は。
 再び孤独に陥っていた少女の前に現れたのだ。
 少女の傍らに在りたいと、そう言ったのだ。
 孤独に震えていた自分を受け入れてくれたのだ。

 彼の世界は、いつだって優しい。
 
 視界が滲む。
 涙が堰を切ったように溢れ続ける。
 そんな少女の様子を、機械兵士は傷だらけになりながらも穏やかに見つめ続ける。
 ――いいのだろうか?
 無償の信頼を、救いの手を差し伸べてくれる機械兵士。
 無力な少女に過ぎない自分では、彼に何も返せない。
 そんな自分が彼の傍にいていいのだろうか?

 ――――ううん、それはちがうよ。
 確かに少女は彼に何も返せないだろう。
 今もなお傷つき続けている彼を、少女が助けることはできない。
 無力な少女では彼を助けられない。
 だが、それは事実であって不正解だ。
 ――――だってヴァルゼルドは『ともだち』っていってくれたから。

 溢れ出る涙を必死で堪える。
 これから言うべき言葉に涙は不要だ。
 笑って――笑顔で言わなくては。


 簡単な話だ。
 そんじょそこいらに転がっている真理の話だ。
 『友達に助けられた』――なら、それに返す言葉は?
 簡単で、平凡で、単純で、なんら特筆することのない――優しい話だ。



「――――ありっ……が……っとぉ……ヴァルゼルドぉっっ!」
 
 涙で顔をクチャクチャにしながら、それでも満面の笑みで。
 少女は彼に初めて『ありがとう』の言葉を送った。
 
 少女の、なんら力の無い一言。
 世界からすれば、なんら意味の無い言葉。
 
 だが――それは。
 彼には充分すぎる、最強の言葉だった。
266名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 04:10:27 ID:Uox7fPfu
やっべえ。やっべええええええ支援するしかねええええ
267リリカルなのはSUMMON NIGHT:2008/01/27(日) 04:10:47 ID:8sPwh/iq
 
「オ…………オオオオオォォォオォォッッ!!!!」
 轟く咆哮。
 V型のアームが持ち上げられる。
 押し潰されていた筈の機械兵士が、己より遥かに巨大な敵を押し負かしていた。
 不意に硬質な金属音が響く。
 ヴァルゼルドの右腕。それが甲高い金属音と共に、その形を変えていく。
 その右手を覆うようにして包む金属。
 ――――ドリル。
 破壊を、戦闘を目的とした削岩機が謳うように甲高い摩擦音を周囲に響かせる。
 機械兵士の思わぬ武装に、距離を取るため離脱しようとするドローン。
 だが逃亡は叶わない。
 ヴァルゼルドの左腕がV型のアームを捉えて離さない。
 そのことに気付き、残ったアームで攻撃を加えるべく振り上げようとして――。
 V型の勝利は、生存は叶わない。

「ウオオオオオオオォォォオオォオオオォォォォッッッッ!!!!!!」
 響き渡る咆哮と共に突き出されたドリルは、V型の分厚い装甲を紙のように貫く。
 装甲が千切れる甲高い耳障りな音。ドローンの断末魔の叫びが上がる。
 装甲を引き千切られ主要な内部機関の殆どを粉砕されたV型は、力無くその巨体を地面に横たえる。

 残ったT型たちは動かない。
 たった今粉砕されたV型が切り札だったのだろう。
 満身創痍、武装も碌に無い機械兵士が切り札を容易に撃破する光景を見せ付けられ、彼らのAIはヴァルゼ

ルドの戦力を測れずにいた。
 理解できないアンノウンには攻撃でなく観察のみ。それが魂無き機械の限界だった。
 
 
 
 静けさを取り戻した廃墟の街並。
 ドローンに囲まれていながら、機械兵士は悠然と少女の元へ向かう。
 
「――お怪我はないでありますか、上官殿?」
「――うん、だいじょうぶ。ヴァルゼルドがきてくれたから」
 細められた瞳。傷だらけの機械兵士が、ヴィヴィオに微笑む。
 真っ赤な瞳。埃まみれの少女が、ヴァルゼルドに微笑み返す。

「きずだらけになっちゃたね」
「大丈夫であります。修復範囲内ですので、寝れば直るであります」
「じゃあ、いっぱいおひるねしなきゃいけないね」
「上官殿もであります。今日は疲れたでありましょう」
「うん、ちょっとだけ」
「では帰ることにしましょう」
 ヴァルゼルドは、そう事も無げに言うと「すこし失礼するであります」と前置きしてから、ヴィヴィオを

その左腕の中に抱える。
 親猫に咥えられる仔猫のように無抵抗に抱えられるヴィヴィオ。
 感じる疑問は、彼の行動でなく言葉。
268名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 04:12:18 ID:ycmEDUWT
守りきったぞッ!!
支援
269リリカルなのはSUMMON NIGHT これでラスト:2008/01/27(日) 04:12:38 ID:8sPwh/iq
 
「かえる……ってどこに?」
「いつもの広場へ、と言えば格好良いのありましょうが、とりあえずお風呂が必要であります。上官殿の学校へ向かいましょう」
「がっこうって……だいじょうぶ? ヴァルゼルド」
 学校への道のりは彼らの正面、ドローン達が蠢く先の向こうである。
「問題無しであります。…………怖いでありますか?」
「ううん、へーき。だってヴァルゼルドといっしょだもん」
「自分も上官殿と一緒なら怖いもの無しでありますよ」
 そう言葉を交わしてから、機械兵士と少女は笑い合う。

「うん、じゃあかえろうか。ヴァルゼルド」
「はい、帰りましょう。上官殿」
 機械兵士と少女は、道のりを塞ぐドローンへ向き直る。


 ――後に。
 『蘇りし王』『奇蹟の少女』『聖女王』、など数多くの異名で呼ばれる事となる第28代聖王ヴィヴィオ・T・ベルカ。
 波乱と動乱に満ちた新暦90年代から数十年間聖王であり続け、伝説のような数多の戦功と業績と、御伽噺のような逸話を残した彼女。そして、彼女を守り続けた『彼』。
 彼女と、彼女の傍らに常に控えていた鋼鉄の守護者。
 
 そんな二人の初陣は、真っ向勝負の正々堂々すぎる退却戦であったことを知る者はいない。
 
 少女と機械兵士以外、知る者はいない。



「――――やっちゃえヴァルゼルド!」
「――――了解! 退却っ! 開始でありますっっ!!」



 廃墟の街並。
 その上に広がるは雲一つない青空。

 青空の下。
 少女の歓声と機械兵士の咆哮が、どこまでも響いていた――――――。 





270名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 04:12:54 ID:YUKmn7sa
かっこいい! かっこよすぎる!
これを支援せずとして何を支援する! 全軍支援体制をとれ!!
271名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 04:16:17 ID:KZj0QNlO
支援!
272リリカルなのはSUMMON NIGHT これでラスト:2008/01/27(日) 04:16:36 ID:8sPwh/iq
シリアス展開を粉砕するロボ!ヴァルゼルド!!
幼女に懐かれたかと思ったら自分が懐いていたロボ!ヴァルゼルド!!

以上で投下終了です。
熱い支援感謝であります。
投稿できなかったり、キャラ確認のため録画DVD見直そうとしたらデータが全て消えてたりと、色々波乱万丈でしたがスレ住人のおかげでなんとかなったよ!
サンクス兄弟!
273名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 04:17:16 ID:ycmEDUWT
スパロボで初めてロム兄さんの登場を見たときと同じぐらいの興奮がッ!!
支援
274名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 04:17:21 ID:Uox7fPfu
惜しむらくは、改行の調整をミスっていること……
おそらく、メモ帳で「右端を折り返す」設定にチェックが入っているのだろう。
UnEditorを使えと、あれほど言っているのに……
275名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 04:17:57 ID:KZj0QNlO
>>メタルサーガsts氏
正直、読んでいてはんたマンセー以外の何をしたかったのか分からなかったです。
クロスさせるときに、原作で明らかにミスだと思われる点を、
延々とはんただけが指摘し、なのは側は答えられないってのが多すぎます。
本気で踏み台をしたいだけとしか思えません。
明らかに駄目駄目な点は、修正したり、理由付けした方が良いですよ。

>>リリカルなのはSUMMON NIGHT氏
いいよね、こういう話も!
短編での幼女と機械兵士の触れ合い・・・・・・。
たまらないね、うん。
276リリカル! 夢境学園:2008/01/27(日) 04:22:50 ID:YUKmn7sa
>>272
フ、フフフ。もうGJ過ぎて自分のHPは0どころかマイナスだ。
カッコイイよ、ヴァルゼルド! 可愛いよ、ヴィヴィオ!
それに加えてそれら全てを演出する描写が巧み過ぎるよ!
なんというかもう全てがGJ。最高でした。

……さて、首を括ってくるか。
(これを見た後は、自分の作品が駄目ぽ状態にしか見えない)
同じサモンナイト系書いてるとはおもえねーし(褒め言葉)
277名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 04:24:40 ID:U8OGhmpo
>>リリカルなのはSUMMON NIGHT氏
GJ!です。
なんか純粋に良かったです。
278名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 04:26:33 ID:ycmEDUWT
GJ!!
なんか素晴らしいとしか言い表せないです。
邪推ですがヴィヴィオのヴァルゼルドを処遇をどうにかしてと言われて
権力をフルパワーで使うリンディーお婆ちゃんやクロノ叔父さんがw

>>275
本編で六課内から特に新人の行動について問題なしとされていたので、
はんただけが指摘ではなく、はんたしか指摘する人がいなかったのでは?
見当違いだったらすいません。
279リリカル! 夢境学園:2008/01/27(日) 04:27:12 ID:YUKmn7sa
あと言い忘れ。
出来れば、続きが読んで見たいです。凄く。
短編でも綺麗だけど、続きが凄い気になるよ。
280名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 04:32:48 ID:KZj0QNlO
>>278
あれだけ問題ある行動してるんだから、もう少し位は深く受け止めているだろうw
で、本編では殆ど描写されずに終わってしまった。
その点を、なのは達が全く気付かずにはんただけが気付いたってのが問題。
はんたに言われるまで、全く気付きもしなかったってのは、踏み台と言われてもしょうがないと思う。
なのは側に理由をつけるか、本編とは違った形にした方が良いと思ったんだ。
281名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 04:41:56 ID:ycmEDUWT
>>280
なるほど、私が浅い考えでした。
本編や漫画で描写されて無い部分なので私はあまりそのことを考えず読んでました。

282名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 04:48:29 ID:HqnmnC4D

………おっと涎が……。
まさに大好物な展開だったぜ!
GJ!!
283名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 04:52:42 ID:CnxJ8ES2
>>メタルサーガsts
GJ!どうお話が展開するのか予想がつきません。
まあ、そこが面白いところなんですが。自分はなのはさんスキーなので、
はんたのなのは達に対する容赦ない評価に、ちょっとばかし苦しくなりながらも、
>>207のヘリからの降下時のBJの換装の指摘など、ハッとさせられるところも多く、
毎回ドキドキしながら読んでます。執筆頑張ってください。
284リリカルなのはSUMMON NIGHT:2008/01/27(日) 05:24:25 ID:8sPwh/iq
もう早朝に近いというのになんたる感想の数!モニターの前でニヤニヤしてる俺マジきめぇぇぇwww!

ヴァルゼルドの武装が超捏造な件について、ちょっと補足説明させてもらうと、
ウロススレで「3の機械兵士が手持ライフルとか超ショベェェェwww(誤解を招く超意訳)」って意見があったので、
「じゃあ対物ライフルにすれば格好良いんじゃね?ついでに2のガトリングも付けてさ。ウハwww俺超天才www(この時点で朝五時、完徹明け)」って悪ノリした結果、あのような描写になりますた。
イメージはこれ→ttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%BB%E5%83%8F:L39.jpg
これが俗に言う、「ぼくのかんがえた、さいきょうろぼ」って奴。

はい、どう見ても中二病患者です。
病人の書いたSSでしたが、熱い声援を送って頂き有難うございました。

では個別に返信をば。
>>273
だから!兄貴とかロボとか親父とか動物が正義だって常々言っ(以下居酒屋トークを数時間垂れ流すので大変有害ですので省略)

>>274
は……初めて知った・・・…。
どうりで今まで投下した小ネタも改行がおかしいわけだ!わーい納得!!…………orz

>>275
だからロボと幼女は正義だってあれほど言(垂れ流し有害省略)

>>277
ストレートに褒められるとキュンッとしちゃうんDAZE☆(とても有害)

>>278
むしろヴィヴィオ自身が権力を握ってですね、……だめだ!これは駄目だ!腹黒フラグはだけは駄目だ!!

>>282
俺も大好物!!涎どころか下半身のお水も(有害略)

>>夢境学園氏
俺やったよお兄ちゃん!(超野太い声)
真面目な話、短編だからこそできるノリとテンションがあると思うんだ。あと自分が長編やると中二病ワールドが悪化して黒歴史を展開するよ!
というか長編が本当に辛い、一度に五人くらい登場人物が出てくると頭がパンクする。え?なにこのポンコツ?
だから長編書ける人とかガチで人外だと思ってる。
連載は4期が「魔法少女リリカルヴィヴィオ」だったら書くよ!多分!きっと?
でも実は小ネタっていうか、構成上入れられなかった日常シーンがあるから、近い内にそれを投下する予定。
285名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 07:04:07 ID:9I5hwV9+
>>225
原作プレイ済の人間としては正直「誰てめぇ」状態の微妙な気分で読んだんですが
う〜ん……

お前も冒険開始時はひよっこだっただろうがとか、世界が違うから色々と根本的な部分自体違うだろうがとか
主人公空気読め、俺ルール全開過ぎという印象です

レベルカンスト状態の肉体的な部分もそうですが、中身が……
一応『色々あった』ことは語られてましたけど、それでも違和感は大きいですね
286名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 07:15:25 ID:KZj0QNlO
あれ、メタルサーガの主人公って殆ど性格も分からない、
無名キャラじゃなかったっけ?
最近の作品だと、どうなってるのか分からないけど・・・・・・。
レイヴンや、ストーム1みたいな感じだったよね?
287名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 07:28:35 ID:9I5hwV9+
>>286
そうです、無個性主人公というやつですね
その分設定付け足すのは、まぁ分かるんですが

原作じゃ一般人、味方殺したりはしないわけで 敵は容赦無しですが
殺すことしか考えてないとか、人質もろとも敵狙うとか

『このSSの主人公は色々あってこうなりました』という説明はありましたが、
それでも自分の中では同一人物として見れなかった、ということです
288名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 07:49:22 ID:q0Vt9Zrm
>>287
だったらその違和感はあなたの勝手な思い込みでしか無い。
289名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 07:57:51 ID:KZj0QNlO
でも、メタルサーガ氏の作品は、
無名キャラを主人公にする際の問題点がもろに出てると思う。
主人公の思想が、作者の思想と同じになりやすいってのがあるけど、
読者視点からのツッコミたい事をはんたがやっちゃってるとか。
自分で書いてるの読み直すだけじゃ、なかなか気付かないよね・・・・・・。
290名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 07:58:55 ID:SQyj4dDe
何度も言われてるがそこらへんは個人によるものでしかないしな。
例えば新人の行動云々って話が出たけど、なのは達は結局本編でも何も言わなかったんだから俺はそれほど違和感を感じなかった。

まぁ、自分に合わないと思ったらとばすなりNG登録なんなりすればいい。
あとウロス向けだよなこの話題?
291名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 08:21:16 ID:q0Vt9Zrm
>>272
お前は俺の涙腺に何か恨みでもあるのか?
ボロボロ泣いちまったよ

もうマジGJ
本気であなたの書く長編見たいわ。
うん。ヴァルゼルドは漢だよねぇ
292名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 08:24:49 ID:q0Vt9Zrm
>>289
でもそれはあなたの個人の主観だ。
別に本編から明らかにおかしいわけでは無いんだから、気に入らなければスルーすべき。
というか突っ込みのポイントは本当に簡単なことばっかりだし
293魔法少女リリカルなのはStylish:2008/01/27(日) 08:43:08 ID:qfRFCk/S
朝の排便すら忘れて読みふけっちまったぜ…。
こんな投下を、待っていたッッッ!!

>なの魂
久しぶりの投下に何を差し置いてでも読みましたよ。相変わらず素晴らしい。
前回の記憶喪失騒動から、ようやく本編の流れに戻りましたね。ところどころ脱線するのが銀魂の味ではありますがw
とりあえず敵という立ち位置であるフェイトを勢いで助けてしまうあたり、前回も含めてやっぱり銀さん達はお人よしだなぁと思います。神楽も和解さえすれば、フェイトといいダチになれそうですね。
そして、新八の劇場版のクリリンのような扱いに吹いたw前のアルフ相手の奮闘が奇跡だったんだよね、大丈夫頑張れば出来る子だからww
そしてついに、管理局との接触で本格的に話も展開してきました。リンディが銀さんの過去を知ってる辺りがさりげないクロスオーバーの味でニヤリ。
っていうかこの人も尋常ない甘党だったよ!
クロノと銀さんの会話も、まあ穏やかなものではありませんでしたが、お互いのキャラが出ててすごく馴染んでました。まあ、確かに反りは合いそうにないですねぇ。若いぞ、クロノ君w
なんかもー、待たされた分一話に込められた内容が盛りだくさんで、感想に纏められませんが、量質ともに相変わらず素晴らしい内容でした。あのオカマ親父がこの世界では更に怪物染みてて吹きました。
盛り上がってきた本編、次回も頑張ってください。

>リリカルなのはSUMMON NIGHT
「薄幸の幼女と心優しいロボット」とか、お前……俺の好物杉だろ……。
幼女との組み合わせならなんでもいいというわけではなく、なんつーか和やかな中に別れの切なさを思い描いてしまう関係が好きな私ですがw
サモナイは知らないんですけど、興味はあったので名前くらいは知ってました。こんな素敵ロボが出てくるなら、DMC4が気になるのに買っちまいそうになるじゃないか…
元ネタは知らなくても、全く影響のないくらい本編を楽しませていただきました。
カッコよすぎだよ、ヴァルゼルド。ラストの締め方がまた上手いですねえ。
それまでのヴィヴィオとの交流が十二分に生きていて、戦闘シーンでのヴァルゼルドの決意の言葉にはマジ感動しました。
だから、俺に優しいロボのストーリーを見せるな、と。こういうの弱いんだよ、映画のアンドリューとかマルチの影響で。
294名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 08:43:15 ID:9I5hwV9+
確かにただの個人的感想ですから書き込まずにスルーすべきでしたね
そこは失礼しました

>>292
突っ込み自体はまぁこんなもんだろうと思いました
違和感があったのは主人公の性格、というか設定の方です
295名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 09:05:57 ID:XzMt6hZr
原作知らんから違和感とかはわからんが、はんたのキャラは純粋にうざい。
普段はスルーしてるけど、せっかくだから言う。
296名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 09:07:30 ID:x0m6xony
>>295
いや、言うなよwwww
スルーしておけってwwww 煽りにされてしまうぞ
297名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 09:11:18 ID:qfPTGlLF
なの魂キテタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!!
個人的に一番楽しみにしてるSSで。
ギャグもシリアスもキレがよくて面白すぎます。
298名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 09:15:15 ID:SQyj4dDe
>>295
だったらそのままスルーしとけと何度も(ry
好かん作品だと思ったらとばすかNGしろ、これこういうスレのお約束。

299名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 09:16:31 ID:Q+DGCdJF
はんたとバトー博士の関係だけは中々いい認識だと思ってる
300スーパーロボット大戦X:2008/01/27(日) 09:36:17 ID:s/NRJPhP
なの魂さんは久しぶりですね。
しかし銀時達がしばらく八神家に会わないのはさびしいですね。
折角無印とA’SとStrikerSがすべて揃っているから全てを巻き込むものかと思ったのに…。
まあそれでも内容はGJです!今後の展開を楽しみにしてます。
301名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 10:14:37 ID:VAA+nzqZ
でそうやってヘイトだ踏み台だとか煽って騒いで
正伝氏みたいに追い出しにかかるわけか。全レスうざいとか。
こんなこと言われ続けたんじゃそういうこと言われる事に
投下を躊躇しているedf氏投下してくれるんだろうか。 
302名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 10:36:38 ID:8/NjToOn
確かにヘイトだの踏み台だの言われたら
職人が投下しづらくなるのも分かるけどさ。
原作でのキャラの行動や言動をキチンと例に出した上での、
「このキャラに違和感があった」という意見まで、
「お前の思い込みだからスルーしろ」っていうのはどうなんだ?
303名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 11:00:55 ID:q0Vt9Zrm
>>302
どこにも出て無いのが問題なんだ。
304名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 11:03:15 ID:i9RkzXeM
俺はこのまま続いて欲しいな。こういうのあんまりないし
305名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 11:11:00 ID:cEY3HypD
新しく投下させてもらいます。
306リリカルなのは Nightmare:2008/01/27(日) 11:14:10 ID:cEY3HypD
プロローグ 闇夜に輝く凶星

それは…忌まわしき、闇の書事件から1年後の冬の話

 時空管理局…それは、様々な時空間で起こる犯罪を防止し、また起こしたものを見つけ出し逮捕することが仕事である。
 そこでは時空間におけるありとあらゆるトラブルを見つけ出すことが可能とされている。

「あーあー、なんで新入りの私たちが留守番で、なのはたちが休暇なんだよ」
 ヴィーダは足を机にのせて、管制塔の窓から外を見ている。
「仕方ないでしょ。あなた達のせいでずっとあの二人は働きづめだったんだから」
 エィミィは文句を言っているヴィータにきたいして強くいってきかす。
 それでもヴィータは文句をいい続けている。
 他のシグナムやザフィーラたちは、今は他の業務にへと当たっていた。仕事に慣れるにはいいことだろう。
 これは、早く仲間として打ち解けあうようにと考えた、はやてからの提案である。

突然、管内に音が鳴り響く。
「わぁ!!」
その音に思わず、イスから転げ落ちるヴィータ。
「なにがおきたの!?」
エィミィが画面を見る。そこには考えられない次元の乱れが生じている。
「なんなの?これ…」
307リリカルなのは Nightmare:2008/01/27(日) 11:17:12 ID:cEY3HypD
一方その頃…。

「なのはは今年の冬はどうするの?」
「うーん。クリスマスパーティーが家のと管理局のでかぶっちゃってるんだよね」

 寒い風が吹く夜の街を、フェイト・T・ハラオウンと高町なのはが歩いている。
 学校と魔法世界での二重生活を始めてもうすぐ、二年がたとうとしていた。
 まるで夢のような出来事が、ずっと続いている。
 魔法を使えるようになり、そして恐ろしい怪物と戦って、フェイトちゃんや、はやてちゃんとであった…。
 いろんな人に出会い、様々な経験をした。

今日も何事もなく時間だけがすぎていく。世界は平和に満ちている。

 あたりはクリスマスの色に包まれていた。街路樹に光がともり、サンタさんが風船を配っている。
 フェイトは、そんな町の風景が気になるのだろうか、目を輝かしている。
 それもそうだろう。
 まだフェイトちゃんにとってはすべてが目新しいはずだ。
 今まで彼女の母親がフェイトちゃんを統制していたのだから。
「フェイトちゃん、ひとつもらっていこっか?」
「え…」
 自分の珍しい視線が見られていたことを知って、恥ずかしさに頬を染めるフェイト。
 だがそのフェイトの手をひいて、なのはは駆け出していた。

「あんな、かわいい子が…強力な力を持つ魔法少女ねー。人は見た目に寄らないもの…か」
 
 白髪で狐目の鋭い瞳をした小柄な男子が二人の後ろを見ながら唱える。
 その格好はどこにでもいる普通の学生のようだ。
 彼が片手に持つ一つの本。
 それは『蠅の王』である。
「人間って言うのは、自分達の世界だけじゃ飽きたりない傲慢な生き物だよね。まったく」
 その少年は邪悪に満ちた笑みを浮かべ、頭上を見上げる。
 …その黒い夜の闇の中。
 月の輝きの隣に赤く禍々しい色をした星がそこにあることを誰も知らない。

「祭の邪魔は誰にもさせないよ…」
308リリカルなのは Nightmare:2008/01/27(日) 11:18:26 ID:cEY3HypD
プロローグ終了。
本編と口調等が少し違っているかもしれませんがそこは許してください。
ではでは。
309名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 11:22:34 ID:q0Vt9Zrm
せめて何とのクロスかくらいは書いてってくれ
310名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 11:23:33 ID:x0m6xony
舞-HIME?
もしかして
311名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 11:29:00 ID:x0C3ESqY
何とのクロスかわからんが、乙!

ナイトメアと聞いてソウルキャリバーのアレを思い浮べたけど…違うよなぁwww
312リリカルなのは Nightmare:2008/01/27(日) 11:32:46 ID:cEY3HypD
すいません!!
いちお【なのは+舞HiME】です。
展開的には、違っていくとおもいますけど。
313名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 11:46:06 ID:8/NjToOn
>>303
少なくとも>>287の意見は原作のキャラの行動について例を挙げた上で、
キャラが合わないと言っていたけどな。
314名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 11:51:30 ID:YfBspBAm
>>301
サーガ氏が律儀な人であろうことは分かるが、感想に全レスはちょっと目に付く。
どうしてもしたいなら止めないけど、頻繁な状況報告も必要は無いと思う。どうしてもしたいなら(ry
315名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 11:56:28 ID:X13RdY9l
俺は状況報告はして欲しいけどな。
特に、完結してない作品の書き手さんには。
そうしないと、まだ続けてもらえるのか、もうやめちゃったのかもわからないし。
そこまで、書き手のレスを忌避してどうすんのよ。
316名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 12:03:09 ID:YfBspBAm
>>315
別に駄目だと言ってる訳じゃないし、そんな権利もない。
SSは楽しく読ませてもらってる。状況報告に関しても大いに結構だと思う。
ただほぼ毎日する必要はあるのかな、と疑問に思ったってだけ。
317名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 12:21:50 ID:x0C3ESqY
>>287 >>302
メタルは主人公に関する描写どころかメインストーリーすら殆ど無い、よってキャラの性格は書き手次第
しかも、幼なじみの父親を躊躇わずに殺る選択も可能だから外道も可!
まぁ、サーガとのクロスとしてだと…やり過ぎに見えるかもしれない……。

>メタルサーガsts氏
マックス2なら復讐者として壊れていく描写が出来たから感想も批判は少なかったかもよwww
318名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 12:26:07 ID:VAA+nzqZ
そんなssと関係ない事で何ウダウダ言ってんだよ。
別にいいじゃん人それぞれで。
消息不明でいつ更新してくれるのかより遥かに良い。
質問にも答えてくれるし。 
319名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 12:33:20 ID:Yja0M16+
>311
ナイトメアと言えば社長ですよ、どりぃ〜〜む。
320名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 12:35:10 ID:bjqPijFB
>>316
感想に全レスって、サーガ氏の作品に対しての感想に作者が全レスしているってこと?
それなら良い事だと思うんだけど。一感想に一レス使っているわけでもなく、ある程度まとめてレスしているみたいだし。
ただの状況報告なら週一回程度、もしくは作品投下時のみで構わないと思う。

むしろ1ヶ月以上音沙汰無しの作者の方々に状況報告して欲しいんだけどな。
321名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 12:49:53 ID:+XZaDnHM
>>316
レス数を無駄にふやしてるわけでなし
感想に対してのレスはまとめて返してるんだし
特に問題ではないと思うがな
322名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 12:56:57 ID:KZj0QNlO
全レス感想返し位なら、べつに良いんじゃない?
そりゃ、長々と何レスも使ってレス返しするなら別だろうけど・・・・・・。
レス返しをするもしないも作者の自由だし。
323名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 12:59:50 ID:Y1d1+i5A
なのは達とはんたは「トモダチ」や「仲間」になれるといいのう。
324名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 13:06:53 ID:7e9VjGwn
はんたの思考は現代人よりも古代北欧人とか古代イスラム、ユダヤ系に近いと思う。
対してなのは達はどちらかいうと現代人よりだから間に横たわる河の広さと深さは
とてつもない・・・・・・
325名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 13:17:02 ID:VAA+nzqZ
あの大破壊後の世界の環境と(魚屋で奇形魚が平気で売り出されてる)
しかもdrミンチの電気ショック蘇生があるから命の価値観や
死生観の違いは絶望的。戦いの考え方も。ヴォルケン達は違うだろうけど。
それ以外は特に人間関係は問題はないと思う。
326名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 13:23:29 ID:SQyj4dDe
個人的にはストレート過ぎるって感じがするな>はんた
ソフトにものを言わないからいらん軋轢を生むタイプだと思う。
327名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 13:26:06 ID:/bz6wxON
>>225
GJ!
論理的に積み重ねられた構成に脱帽です!サーガさんの愛を感じます!
それにしても昔のヴォルケンズは腕を折られて声をあげたという理由でベルカ騎士をぶっ殺してたりしてたのに丸くなったものです。
328リリカルなのは Death Note:2008/01/27(日) 13:28:58 ID:cEY3HypD
ネタ的なものでひとつ
329リリカルなのは Death Note:2008/01/27(日) 13:31:19 ID:cEY3HypD
無限書庫にはさまざまな本がある。
見なくなってしまった本、記憶の中で忘れられてしまった本…。
そんな本がここにはあある。
そしてその中には、人が触れてはいけない禁固の本というものもある。
例えば、闇の書みたいなものだ。
それ以外にも危険な本は山のようにある。例えば…。


一匹の退屈な死神(ユーノ・スクライア)が地上に、一冊のノートを落とした。


私立聖祥大附属小学校
自称平凡な小学生である、少女、高町なのはは、退屈な授業から視線をそらして、窓の外を眺めていた。
変わらない日常、退屈な毎日…
これから自分はきっとあのレストランをつがなければいけないのかと、そんなぼんやりとしたことを考えていた。

「あっ…」

 そこで目に入るもの…一冊の黒いノートが自分の視界にへと入ってきた。
 そのノートはまるで天から落ちてきたノートかのように、宙を落ちていく。

授業終了後…。

私は、先ほどのノートが落ちた場所にいってみた。
そこには確かのノートが落ちている。
なのははそれを恐る恐る手にとって見る。

「なにこれ?えーっと…英語じゃん。これじゃーなんて書いてあるかわからないよ」

私は、そのままノートを置いて帰路に…

「ちょっと!!話が始まらないじゃないか!これじゃー!!読めればいいんだから、英語ぐらい関係ないよ!!」
330リリカルなのは Death Note:2008/01/27(日) 13:33:01 ID:cEY3HypD
やり直し…。

「なにこれ?えーっと…これに名前を書かれたものは死ぬ?アハハ、なにこれ。そんな簡単に人が死んだら苦労しないってば」
 私はそういって笑いながら、ノートを地面に置く。
 しかし、なぜか気になってしまい、結局、家に持ってかえることにしてしまう。

 帰り道、クラスメイトの友達であるアリサちゃんとすずかちゃんと話をしながら、帰っていると…。
 道路の反対側で数人の不良が一人の男性を囲んでいる。
「うわぁー…かわいそう」
 アリサちゃんは他人事のように話しをしながらそのまま、すずかちゃんと一緒に通り過ぎていく。
 私はその人たちを見て、ふとさっきのノートが頭に浮かんだ。
 あの人たちは男性を食い物にする極悪非道の鬼畜、人間なんていう風上にも置けないゲス野郎。
 試してみてもいいや。そうおもったのだ。

「この男、どうしましょうか?クアットロ姐さん」
「そうね。ぶつかっておいてお金が出せないなら、このまま消してしまいましょうか」
 小柄な女子校生にイジメられている、この男性は情けない。

 私はノートをひらいて、早速名前を書き始めた。
 ノートには、その人物の名前、時間、死因を書くことが出来る。
「クアットロ、死因は破壊的な隕石(スターライトブレイカー)」
 私は名前を書き終え、どうなるか様子を見る。
 すると、突然、隕石が彼女の頭上から落ちてくる。
 そのまま彼女の姿は吹き飛ばされて見えなくなった。

「このノート、本物だ!」

 私は世界にいるたくさんの悪者を駆除し始めた。
 娘を虐げる母親。
 人間の身体を乗っ取ろうとする化け物。
 変な顔をしたロリコン科学者。
331リリカルなのは Death Note:2008/01/27(日) 13:34:42 ID:cEY3HypD
そして半月後…。
「…今日もいっぱいかけた♪」
 自分の部屋の中で、ノートを見ながら私はうっとりとつぶやく。
「随分と楽しそうだね」
 私が振り返った先には、小さなネズミ…ではなくイタチのような淫獣がそこにはいた。
「そのノートの使い方はわかっているようだね」
 私はそこにいる淫獣を見て、声を震わす。
「淫獣が喋った」
「だから淫獣じゃない!!」
 淫獣もといユーノ君は死神をしているそうだ。
 そこで退屈しのぎにこのノートを落としたのである。
 それを私が偶然ひろった。
「たくさん書いたね」
「私に仇名すものや、人間のクズの名前をたくさん書いたから」
 ノートには世界中さまざまな人の名前が書かれている。
 今まで、事故などでデスノートがこっちの世界にきたことがあるらしいが、ここまで書いた人はそういない。
「怖くなかったのかい?」
「なんで?」
「いや、人を殺してるから」
「ぜーんぜん。だって私を捕まえられる人なんかいないんだもん。私は神様になるの。誰も逆らうことが出来ない、真の支配者に…」
「あ、悪魔…」
「悪魔でもいいよ…」
 ここでユーノは、はじめてこのなのはの存在に恐怖した。

 だが…ここでもう一人の悪魔が動き出したことを、まだこのときのなのはは知らない。


 ICPQ(世界警察機構)
 相次ぐ、連続怪死事件に先立ち、世界警察機構では緊急役会を招集し時代の打開にあたることとなっていた。
 日本警察庁の代表として、八神はやてと、部下であるヴィータが出席することとなった。
 だが会議は踊るが、されど進まず…意見が出しつくされた後に、一人のコートを着た女が姿を現す。
「静粛に!この事件は、Fが担当します」
「Fだと!?」
 ざわめく会場内。
「誰?Fって」
 ヴィータがはやてに聞く。
「世界警察機構で数々の難事件を解決していった、正体不明の探偵さ」
ヴィータは胡散臭いなとおもいつつ、前を見る。
「ただいまから、我が主、Fの声をおきかせしまーす!」
 帽子をかぶりコートを着ているが、その爆乳と長いピンクの髪の毛が隠れきれていない。
 Fとの唯一、交渉できえる存在…アルフ。

『みなさん、私がFです』

 こうしてなのはとFの戦いの幕が開く。
332リリカルなのは Death Note:2008/01/27(日) 13:38:05 ID:cEY3HypD
とりあえずここまで。
なのは+デスノート
333名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 13:50:45 ID:KZj0QNlO
>>リリカルなのは Death Note氏
投下お疲れ様でした。
キャスティングクロスオーバーか・・・・・・。
ちょっと感想を書き辛い・・・・・・。
334名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 14:05:14 ID:un4ThrlX
>>325
sageじゃなくてsageな
335メタルサーガsts:2008/01/27(日) 14:27:29 ID:6V9aosCm
まずは8話の感想をくれた皆様へ最大級の感謝を。
あと、今後は時折ご指摘くださったように進行状況報告はやめようかと思います。
それでは以下、レスです。長文になってしまいましてすいません。

>>229-232
はんたの観察眼を褒めてくださってありがとうございます。
ひとえに経験値の賜物と思ってください。
シグナムかっこいいのは・・・・・・仕様ですw

>>275
そのあたりを9話でやる予定つもりです。
原作と同じ速度で書き進めているのもあるかもしれません。
心情描写書きすぎなのか、はんたの会話が多いからなのか、
8話では削れる部分が少なくて文字数がすごいことになってしまったのもあって
削れる部分の多い9話側で入れればいいかとしたのがそんなふうに感じられる原因になってしまったかと思ってます。
ご指摘ありがとうございました。
描写に注意して今後も進めていきたいと考えています。

>>278 >>280
>>278氏の解釈でそこの指摘は正しいです。
>>280氏が言われるように本編描写が削られてしまっただけかとも思ったのですが、あえて見逃してしまった解釈にしました。
誰もが六課設立直後と新人教育と事務仕事しているわけでいっぱいいっぱいです。
リニアの件もヴォルケンリッターは書類の上では報告されていますが映像では見ていないので
実際がどうだったのか大まかな流れしか知らないという解釈にし、そのあたりをヴィータの驚きで表したつもりです。
結果、メンバーの中でリニアのとき現場にいて豊富な戦闘経験と余裕があったはんただけが
今回の誤射も合わせて指摘に至れたという解釈です。
現場にいたリイン曹長の日誌においても問題なしとされてしまったのと、
映像を何度も確認していたのだけど、無事に終わったという安堵が勝ってしまったために
指摘されるまでなのは達は見逃してしまったということになります。
336メタルサーガsts:2008/01/27(日) 14:27:52 ID:6V9aosCm
>>283 >>285 >>286 >>295 >>320-327
ご指摘ありがとうございます。
違和感ひどくなりはじめようですいません。
気をつけて書いているのですが私の技量の未熟もあって表現しきれていないのだと思ってます。
ご指摘をありがたく受け止めさせていただき、今後に生かさせていただきたいと思います。
破綻だけはしないように細心の注意をしてプロットは組んであります。
最終話までどんな展開にしてどんな結末で終わらせるかも。
今回のエピソードと次のエピソードが終わったぐらいから
はんたもひよっこどももなのは達も方向が変わりはじめますので、どうかいましばらくお付き合いください。

>>317
それも考えはしたのですが、どうしてもマリアの存在が大きかったため、
復讐完了後も主人公の中でマリアの位置づけは揺れ動かない気がしまして、
壊れるまで至れるか悩んだ結果、サーガ主人公にマックス交じりとしました。
やはりマリアが超えるには偉大すぎました。
荒廃した世界の中で四六時中銃座で迎撃体勢まで整えてあり入る人には合言葉まで言わせるマリアの故郷アズサの街において
主人公拾ってからマリアは優しくなったなんて言われたからマリア以前はどれだけ殺伐な人だったのさって思ったものです。
不死身の女ソルジャーという異名まであったのも手伝って、もうこの人超えるの無理だと私は降参です。
1主人公も考えたのですけど、『ハンターなんてやくざな稼業になりたいとバカほざくなら勘当だ』で始まっていたため、
壊れる切欠になりえるイベントが無かったことも手伝いイメージが浮かびませんでした。
ウルフとニーナイベントで泣きましたが。
2主人公でエリオ達となのはの関係にマリアと自分を重ねるとか考えもしたんですが。
337名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 15:00:23 ID:p2Wdlj7I
>>336
GJ
もしもここから漫画版の「自分よりも強い相手に勝つにはどうするか」に
つなげたなら、俺はあなたを尊敬する。
338メタルサーガsts:2008/01/27(日) 15:39:37 ID:6V9aosCm
>>337
モモか?モモなんですね。
残念ながらM4持っていないんです。
スーパーコレクションと火炎水晶のほうはあるんですけど。
ずっと探しているんですけど。
しかし、そのセリフがあるのならばM4手に入れてから9話書こうかな。
339名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 15:51:18 ID:1StOdd4z
>>338
?すいません。自分の言っている漫画版は、StrikerSの方なんです。
メガミマガジンに連載されていて、10月号と11月号にありました。
340リリカルスクリーム ◆0qJqyuBpiQ :2008/01/27(日) 16:41:11 ID:54MC8AbA
皆さん乙です。
パラダイスロストクロスばかりに熱をあげて他の作品をストップしていた
ダメな俺ですがまずリリカル鬼武者の六話がやっと投下出来る分量が書き終ったんで
投下したいんですがいいでしょうか?
341Strikers May Cry:2008/01/27(日) 16:42:30 ID:Ycn47sdW
やっとシャッハの鬼っぷりが拝めるとですか?

支援ばい。
342リリカル鬼武者6話 ◆0qJqyuBpiQ :2008/01/27(日) 16:52:26 ID:54MC8AbA
リリカル鬼武者「国守山」


シャッハ達が国守山へ向かった頃…地上本部の転送ゲート周辺。

「襲ってきた怪物どもは一通り倒しました。」

武装局員の一人が隊長らしき屈強の人物に報告する。
彼らは運良く全滅を免れた陸士部隊の生き残り達だ。

「よ〜し。あいつらの戦法は基本不意打ちと接近戦だ。遠距離から砲撃すれば怖くは無いぞ。」

隊長が汗を拭って自信ありげに檄を飛ばそうとしたその時、彼らを数本の光条が襲った。

「た、隊長…何者かかが砲撃しつつ急速接近してきます!」
「こんなバカな!長距離砲撃だと…応戦しろ!…うおおおっ!」

応戦する暇もなく彼らの体はチリと消えていく。
光条はその後も間断なく襲い掛かり、あっというまに武装局員達は全滅を遂げた。
武装局員だった物の残骸の中に薄緑色の影が降り立つ。そう、ドラスである。彼らを射抜いた光条は彼が放った分子破壊砲「マリキュレイザー」だったのだ。

「弱いなあ。これじゃあ取り込む価値も無いよ。」
「どうでもいいが他の奴はもう転送ゲートをくぐってしまったぞ。
かく言う俺もたった今通るところだがな。」
「待ってよ。全くみんなツレないなア…。」

呟くドラスの横で転送ゲートに飛び込むガルガントと彼を追いかけるドラス。
さらに同じ頃…。

「う…ん…。」
「気が付いたか?」
「やっと起きましたか…。心配しましたよ。」

宗厳とカリム、ギンガ、スバルらが見守る中目を覚ますシャッハ。

「騎士カリム…それにあなたは…?ハッ…。う…うううっ…。幻魔が…そうだ…私は幻魔を…。」
疲れきった顔で辺りを見回すがほどなく、再び苦しみだすシャッハ。
「幻魔は私の敵…幻魔を、倒す!」
「な…何言ってるのシャッハ?」
「こいつ、鬼の力に…。幻魔を感じ取っているのか…。」

異様な目つきで呟くシャッハに戸惑いがちに尋ねるカリムと顔をしかめる宗厳。

「……!!」

ベッドから状況を見守っていたディードとオットーが気配を察して同時に布団を被った。
中で震えているらしく布団の山がブルブルと小刻みに揺れている。
343リリカル鬼武者6話 ◆0qJqyuBpiQ :2008/01/27(日) 16:54:32 ID:54MC8AbA
「シャッハ?」
「姿が変わった…?転送魔法?」

鬼武者の姿に変身し、それに呼応して巨大な双剣に変形したヴィンデルシャフトを構えると
シャッハは転送魔法を発動して何処かへ消え去った。
所変わって国守山。
白と紺を基調とした着物と巫女服を合わせたような服を着た気の強そうな顔をした女性が
刀身から狐色の光を放つ日本刀を携えて奇妙なもやとも霧ともつかない
物体と対峙している。そのもやは生き物のように女性へと迫っていく。それもそのはず。
そのもやはかつて人間「だった」存在…。
非業の死を遂げた人の意識が具現化した物。つまりは「幽霊」なのである。

「真威・楓陣刃!」

異様な雰囲気を放つもやのような塊が女性が構えた日本刀から放たれた狐色の霊力の波動に
包まれて消滅していく。

≪最後まで説得に耳を傾けてはもらえませんでしたね…。≫

女性が構えた日本刀…霊剣「十六夜」が悲しげにこぼす。

「……しょんなか。これがうちらの仕事たい。」

薫は俯くと十六夜への返答と言うよりもむしろ自分に言い聞かせるように静かに言った。
しかしその時。

「これは…!?」
≪来る…何か邪な物が、来ます!≫

その言葉とともに地中から
陣笠に内臓や目玉が剥きだしになった造魔「刀足軽」が

「ふぅぅぅぅぅ…。」

そして感覚器官と仲間同士での情報の共有…言わばデータリンク機能のような能力をもった器官を
兼ねた爛々と輝く三つの血の色をした目が特徴的な幻魔
「三つ目」がたてつづけに藪の陰から襲い掛かる。

「幻魔!?まさかそんな…。」
「しゃあああああ!」

いまや幻魔の名は恐怖の象徴として世界中に知れ渡っている。まして退魔の道に
携わる薫ならばなおの事だ。直接相対こそしてはいないが
その恐ろしさは嫌になるほど聞かされていた。彼女が叫んだ刹那刀足軽が襲い掛かる!
344リリカル鬼武者6話 ◆0qJqyuBpiQ :2008/01/27(日) 16:57:38 ID:54MC8AbA
「ううう…。」

何という力だろうか。自身も剣の勝負では力重視の戦法を得意とする
薫の腕にも受け止めた瞬間ズシリときた。

「な…舐めるなぁ!」

刀足軽の刀を振り払うとそのまま水月に蹴りを入れ、そして返す刀で
後から斬り付けようとした三つ目に強烈な
一撃を加える。

「ギギギギ…。」

腹から血を滴らせる三つ目。しかし!

「効いてないのか…?」

決して効いていない訳ではない。
だが幻魔は鬼の力を持たない攻撃に対しては異様なまでの耐久力を発揮する特性を持っているうえに
彼ら造魔からは痛覚を司る神経が排除されており
負ったダメージが殆ど表面に出ないのである。

「ううっ…。」

一瞬彼女がたじろいだ瞬間刀足軽と三つ目が一斉に襲い掛かった!
その時である!

「真威…桜月波!…久遠!」
「……!」

薫のものとは少し色合いの違う波動と凄まじい電撃が刀足軽と三つ目を包み込み、消し去る。

「那美、それに久遠…。」

式服姿の女性「神咲那美」そして彼女のお供(?)の中学ニ年〜高校一年ぐらいの
少女に姿を変えている妖狐の久遠だ。

「…那美…すまんね。助かった。久遠も…ありがとうな。」
「……♪」

久遠がやさしく微笑んだ。その時である!

「誰だ!」
「あ…。」
「不味い!見られちゃいましたよ!」

ティアナ達である!突然ブリッジから消え去った
シャッハを探して辺りを捜索していたのだ。

「ど…どうしようティア?」
「不味ったわね…。」
「民間人…かな?それにしては格好が…」

不安げな顔でティアナの方を見るスバルと
唇を噛むティアナ。

「君達。ここで何をしてるんだ。ここは危険だ。早く山を…むっ?」
≪来ます!≫

十六夜が警告したその時!
345リリカル鬼武者6話 ◆0qJqyuBpiQ :2008/01/27(日) 16:59:25 ID:54MC8AbA
ズガガガガガガガ!
凄まじい銃撃が一同に襲い掛かった。

「あ、あれが幻魔?」

攻撃の主を見上げた薫が怪訝そうな顔をした。それもそのはず。銃撃の主は
確かに幻魔の特徴である瘴気を立ち昇らせていたし
まさしく造魔というべき巨大で鋭角的な特徴の剣を構えた化け物を
上に乗せてはいたがパッと見ただけではただの機械にしか見えなかったのだ。
その造魔の名は「ブレインスタン」。かつてギルデンスタンがフランスを襲撃した際に得た
フランス軍新型兵器を元に開発されたメカ造魔とも言うべき代物なのである。

「くっ!」≪Shoot Barret≫

ティアナが魔力弾を撃ち出した。が…硬い装甲に傷ひとつ付けられない。

「……。」

ブレインスタンに鎮座していた巨大な剣を持つ造魔「ドルドー」が飛び降り、得物のむ
巨大な剣「怒嵐剣」を構えた。それを合図として地中からも五十を
ゆうに超える夥しい数の刀足軽や手長が現われる。

「どうやら囲まれてしまったらしいね…。君達は戦えるのか?」

自然と円陣を組むと背後に居るギンガに問いかける薫。
御互い素性は知らないがこの状況では共闘するほか生き延びる道は無いだろう。

「恐るるに足りません!と、言いたいですがかなり不味いですね…。あなた方は?」
「そっちと同じだ…幻魔は普通の妖怪とは別格だからね…。正直一斉にかかってこられたら応戦出来る自信はなか。」
「来ます!」

刀足軽と手長の群れが一斉に突っこんできた。その時!

≪Stinger Blade Execution Shift≫

魔力刃が一斉に造魔を薙ぎ払い。

≪スティンガースナイプ!≫

次いで青い閃光がのたうちながらもがく造魔達を焼き尽くしていく!
346リリカル鬼武者6話 ◆0qJqyuBpiQ :2008/01/27(日) 17:02:06 ID:54MC8AbA
「ク、クロノ提督?」

何が起こったのかと驚いて空を見上げるティアナの目に黒衣に身を包み、右手にデュランダル、左手に
S2Uを構えているクロノが映った。

「レジアス提督が指揮をとってくれる事になったのでね。さあ、何処からでもかかってきてもらおうか!」

クラウディアのブリッジ。

「鬼の力を持たないあの男に幻魔と戦う事が出来るのか?手練の者だというのは解るが。」

宗厳がクロノがデュランダルとS2Uを構える映像を見て不安げに言った。
元々ティアナ達を助ける役は彼が買って出たのだ。
鬼武者である彼ならば幻魔とも互角以上に戦える。
だがこの上民間人を戦わせるなど沽券にかかわるとばかりに
クロノが自分よりも階級が上でこういう場合指揮をとるのに
より適任なレジアスに指揮を交代を申し出ると出撃していったのである。
その頃国守山のまた別の一角では…。

「ギギギ…ガガガガガ…鬼ムシャ…殺ス…。」

別の地点でティアナ達が相手にしている数を大きく上回るほどの
大量の刀足軽を従え強固な鎧に身を包んだサイボーグ造魔「真富嶽二十号」が
機械的に呟く。
だが彼らがとりまいている相手…鎧状に変形した騎士甲冑に
もはや原型を留めないほどに形が変わってしまった
ヴィンデルシャフトを構えたシャッハは不敵に笑うと刀足軽の群れに突っ込んでいった。
347リリカルスクリーム ◆0qJqyuBpiQ :2008/01/27(日) 17:04:20 ID:54MC8AbA
ここまでで。
戦闘シーンはシャッハよりも薫と久遠(とらいあんぐるハートのキャラです。)の方が目立っちゃいましたね。
しかし次回では大暴れさせるつもりですので。
なおS2Uの台詞が英語ではなくカタカナになっているのは仕様です。
一度クロノの二刀流を書いてみたかったんですよねw
348名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 17:07:47 ID:KZj0QNlO
>>リリカルスクリーム氏
投下お疲れ様でした。
いよいよ、本格的な戦闘に入っていきそうで楽しみです。
次回のクロノの戦いも楽しみにしてます。
349スーパーロボット大戦X:2008/01/27(日) 17:28:10 ID:s/NRJPhP
>>347
久々ですね。鬼武者は。GJでした。
後、5時45分ごろにチェンジリリカルなのはA’Sの第7話を投下したいと思います。
350スーパーロボット大戦X:2008/01/27(日) 17:45:32 ID:s/NRJPhP
時間なので投下します。

 第7話 復活!! 最強の戦士達!

 フェイトは目を覚ます。しかしフェイトが目を覚ました場所はベットの上である。

(あれ? 私は確か、なのはと竜馬さんと一緒に闇の書と戦っていてそして……)

 フェイトは周りを見渡すと前に見覚えがある場所だとわかる。そこはかつて自分のいた時の庭園であった。
 そしてベットの横を見ると子犬フォームのアルフと自分によく似た少女が寝ていた。

(まさか……)
「アリシア、フェイト。朝ですよ」

 フェイトが考えると突然ドアの向こうからノックと共に自分達を呼ぶ声が聞こえる。その声にフェイトは覚えがある。その声が言ったアリシアにも覚えがあるのだ。
 そしてノックした人物が入ってくる。それは何と消えたはずのプレシアの使い魔のリニスであった。

「あら、フェイトは早起きですね。アリシア、アルフも起きなさい」

 リニスの呼びかけにアリシアとアルフは起きる。

「まったく二人とも夜更かししてたんですね。二人ともきちんと早寝早起きをしているフェイトを見習いなさい」
「はーーい」

 フェイトは戸惑いを隠せない、死んだはずのアリシアと消えたはずのリニスが自分と一緒にいる事を……。

「リニス……」
「はい、フェイト」
「アリシア……」
「うん? 何?」

 フェイトは二人に声をかけると二人とも反応をする。フェイトが何のために呼んだのかわからないリニスは少し呆れたような表情をして言う。

「前言を撤回します。どうやらフェイトの方がおねぼうさんのようですね」
「ふふふ」

 アリシアはその言葉に笑う。

「さて、二人とも着替えて食事にしましょう。プレシアも待ってますし……」

 フェイトはプレシアと言う言葉を聞いて驚く。
 プレシアは自分の母だが、自分を散々痛めつけた人物であるので、フェイトには抵抗がある。
 アリシア、リニス、アルフと共にフェイトはプレシアの元にいくが、フェイトはプレシアの姿と見て怯える。
 プレシアはそんなフェイトを見て近づいてきたフェイトにそっと手をやる。
 フェイトは最初自分を痛めつけるものかと思ったが、プレシアはやさしく自分に触れてくれる。
 フェイトは皆と朝食を取るが、心の中では戸惑い続けている。

(これは夢だ。アリシアもリニスも今はもういない……。母さんも私に優しくしてくれなかった……)

 フェイト達は朝食を終え、皆で散歩をするが、フェイトは心で戸惑い考えながらもこの時間が自分が欲しかった時間だとわかり泣く。

(でも、これは私の欲しかった時間だ……。私の欲しかった……)
351スーパーロボット大戦X:2008/01/27(日) 17:46:17 ID:s/NRJPhP
 フェイトが夢を見ている一方、はやては暗い中でおぼろげながら目を覚まそうとしていた。

「眠い……、眠い……」

 そのはやての前には闇の書の意思が立っている。

「そのままお休みを……、我が主。あなたのお望みはすべて私がかなえます。目を閉じて心静かに夢を見てください」

 闇の書の意思のままにはやては眠ろうとするが、はやては必死に抵抗をする。


 そして現実ではフェイトと竜馬がいなくなり、なのはが一人で闇の書の意思と戦っていたが、相手のパワーが強くて押されがちである。

(リンディさん、エイミィさん、戦闘位置を海の付近へ移しました。市街地の火災と修復をお願いします)
「大丈夫、今災害担当の職員が現場へ向かっているわ」
(それから闇の書さんは駄々っ子ですが何とか話は通じそうです。もう少しやらせて下さい)
「行くよ、レイジングハート!」
『Yes my master』

 なのはは諦める気ゼロで無茶をする気でもある。

「無茶しないでねって言う雰囲気じゃなかったわよね……。ところで竜馬さんは?」


 その竜馬は本局のマリーのところに急いでいてようやくついたところである。

「おいマリー!」
「り、竜馬さん!? どうしたんですか!?」

 突然やって来た竜馬に驚くマリー。

「そんな事はいい! それより真ゲッターはできただろうな!?」
「は、はい! たった今完成しました」

 竜馬はマリーから真ゲッターのデバイスを受け取る。

「ただ、竜馬さんの望むようなパワーまでは……」

 竜馬はその言葉を聞き、険しい顔をする。

「ち! 仕方ねえか……。俺もうる覚えくらいしわからねえし、やっぱりイカレてもジジイはすごい事がわかったぜ」

 竜馬は真ゲッターを作るように言ったが、真ゲッターは元々の開発者である早乙女博士でさえ、
 困難を極めて作り出された真ドラゴン護衛用のゲッターロボである。
 いくら竜馬がゲッターの構造を知っていて、真ゲッターに乗ったことがあるにしても限界がある。
 竜馬の知識だけではやはり早乙女博士が作った本物の真ゲッターには遠く及ばない。

「でも、竜馬さんの言われたとおり、ブラックゲッター以上のパワーがありますし、分離機能と大気圏突破、突入機能もつけておきました……」

 その言葉に竜馬は怖い笑顔を見せる。

「ありがとよ!」
352スーパーロボット大戦X:2008/01/27(日) 17:47:18 ID:s/NRJPhP
 そう言い、竜馬は部屋を出て行き、エイミィに通信を入れる。

「おい! エイミィ! さっさと俺を海鳴市に戻せ!」
「竜馬さん、どうして本局に!?」
「さっさとしろ! できねえのか!?」
「わ、わかりました!」

 エイミィは急いで竜馬を本局から転送するがそこは海の上で海鳴市から少し距離のある場所であった。

「あの野郎ーーーーー! 仕方ねえ……。チェエエエエーーーーーンジ! ゲッタァァァァアアアアーーーーー! 1!!」

 竜馬の叫びと共に竜馬の体は光に包まれ光が晴れるとそこには竜馬ではなく真ゲッターが現れた。
 真ゲッターもブラックゲッター同様、竜馬の体を媒体にし竜馬自身は小さくなって真ゲッターを操縦する。
 竜馬は真ゲッターの翼「ゲッターバトルウイング」を展開し、空を飛ぶ。

「さあて、今度こそあの女に引導を渡してやるぜ!」

 竜馬はものすごいスピードで海鳴市へと向かう。その途中、同じく海鳴市に向かっていたクロノを見るが、それさえも無視しながら突き進む。
 その真ゲッターのスピードを見たクロノは驚く。

「な、何てスピードだ……」

 それでもこの真ゲッターは早乙女博士のオリジナルに遠く及ばない。竜馬は飛びながらそう思っていた。

「ジジイのだったらもっとはええのにな……」

 竜馬は文句を言いながら早乙女博士のすごさを改めて考えながらも海鳴市へと向かう。


 その頃闇の書に取り込まれて夢を見てるフェイトはアリシアと出かけてる中雨が降ってきたのでアリシアはフェイトに帰ろうと言うが、
 フェイトはもう少し残ると言ったのでアリシアも残るといい、フェイトとアリシアは大きな木の下で雨宿りをする事にした。
 そんな中、フェイトはアリシアに聞く。

「ねぇ、アリシア。これは夢、なんだよね」

 その言葉にアリシアは無言でいた。

「私とあなたは同じ世界にはいない。あなたが生きてたら私は生まれなかった」
「そう……だね」

 アリシアはその言葉に悲しそうに頷いた。フェイトはアリシアが死んだ時に生み出されたアリシアのクローン。
 アリシア死亡後に生まれたフェイト一緒にいるのはおかしいことなのだ。

「母さん、あんなにやさしくなかった」
「やさしい、人だったんだよ。でも死んじゃった私を生き返らせるために……」

 アリシアの言ってる事に嘘はない。プレシアはアリシアが生きていた頃は本当にやさしい女性だったが、
 アリシアが死んだ後は精神が崩壊したかのように狂気に満ちたような人間になってしまったのだ。

「ねぇ、フェイト。夢でもいいじゃない。ここにいよう、ずっと一緒に・・・・。私、ここでなら生きていられる。
フェイトのお姉さんでいられる。母さんとアルフとリニスと皆と一緒にいられるんだよ」

 本当にここにいれば自分は幸せだろう、自分が何度も夢見たのだから・・・・。

「フェイトが欲しかった幸せ、みんなあげるよ」

 フェイトはその言葉に困惑する。
353スーパーロボット大戦X:2008/01/27(日) 17:48:22 ID:s/NRJPhP
 現実ではなのはがレイジングハートのエクセリオンモードを展開させて、闇の書の意思と戦っていた。

「一つ覚えの砲撃で通ると思っているのか?」
「通す! レイジングハートが力をくれてる。命と心を賭けて答えてくれてる」

 なのははカートリッジを2発ロードする。

「泣いてる子を救ってあげてって!」
『A. C. S., standby.』

 なのはの足元にはピンクの魔法陣が形成され、レイジングハートからは6枚の光の羽根を大きく広げられる。

「アクセルチャージャー起動、ストライクフレーム!」

 先端に半実体化する魔力刃「ストライクフレーム」を形成する。

「エクセリオンバスター、A.C.S! ドライブ!!」

 そしてなのはは闇の書に向かって突撃し、闇の書の意思はそれ手を前にしてバリアで防ぐ。

 レイジングハートは四発のカートリッジを消費する。

「ブレイク!」

 レイジングハートの先端に魔力が集まっていく。

「まさか!?」
「シューーーーーーット!!」

 なのはが叫んだと同時に魔力の大きな爆発が起こった。
 爆発に巻き込まれたなのはは左肩を抑えながらもどうにか無事だった。

「ほぼ零距離、バリアを抜いてのエクセリオンバスター直撃・・・・これで・・・ダメなら」
『Master.』

 しかしそこには無傷の闇の書の意思が浮いている。

「もう少し頑張らないとだね……」

 なのはが頑張ろうとしたその時、突然巨大なトマホークが後ろから飛んできて闇の書の意思はそれを何とかかわす。
 なのはがそのトマホークを見て後ろを振り向くとそこには真ゲッターの姿があった。

「え、あれって……ゲッター? 竜馬さんですか!?」
「ああ、そうだぜ」

 なのはの呼びかけに竜馬は答える。

「そのゲッターは?」
「これは俺がブラックゲッターと同時に開発させてた真ゲッターだ」
「真ゲッター……」

 その言葉と姿になのはは驚く。

「だいぶ苦戦してるようだな。やっぱり俺がやらねえとな」
「竜馬さん、気をつけて下さい……」
「ああ、わかってる」

 竜馬もさっきまで戦っているので相手の強さはよくわかっているが、真ゲッターなら勝てる自身が竜馬にはある。
354スーパーロボット大戦X:2008/01/27(日) 17:49:18 ID:s/NRJPhP
「さて、さっきの続きといこうか!」
「機体を変えても私には勝てない」
「ふ、言ってくれるじゃねえかよ! トマホークランサーーーーーー!」

 竜馬は真ゲッターのトマホークを大量に出し、闇の書の意思に向けて放つ。
 さすがにトマホークの数が多いので闇の書の意思はかわしきれないと判断し、バリアを張るが真ゲッターのトマホークはブラックゲッターのトマホーク以上の大きさと切れ味があるのでバリアでは簡単に破壊される。
 何とかトマホークランサーを防ぎきったが闇の書の意思の上には真ゲッターがトマホークを持って突撃しながらトマホークを振りおろす。
 闇の書の意思はなのはの突撃を防いだように左手を前にしてバリアを張るが、真ゲッターのパワーはブラックゲッター以上のパワーでありバリアを簡単に破り、左手を縦に裂いた。
 わかっりきっている事だが、竜馬は真ゲッターの設定を殺傷設定にしている。
 真ゲッターはそのままトマホークを横に振り回し、闇の書の意思はとっさに回避行動をしながらさっきと同じように左手でバリアを張るがその左手を簡単に斬りおとされる。
 真ゲッターは勢いに乗ったまま今度は斜めから振り下ろし、闇の書の意思を斬りつけ、闇の書の意思は海に落とされる。

「り、竜馬さん……。あそこにははやてちゃんにフェイトちゃんがいるんですよ……」

 なのはがやるせないように竜馬に言うが、竜馬は反省の色を見せない。

「ああでもしないと奴は倒せん。心配すんなって、フェイトがそう簡単にくだばるわけないだろ」
「でも……」
「それに奴はまだ死んじゃいねえ」
「え?」

 竜馬の言葉になのはは戸惑うが、竜馬の言うとおり闇の書の意思はまだ生きていた。
 海から上がるが、真ゲッターに斬りおとされた左手の出血とさっき体を斬られた傷の出血により少し息が上がっているようである。

「さすがのお前もさっきの攻撃でまいったのか?」
「そうでもない……」

 すると闇の書の意思の傷は見る見るうちに回復し、斬られた左手も再生する。

「やっぱりもっと強い攻撃とダメージを与えないとダメってわけか……。やっぱジジイのじゃねえと攻撃力が無いな……」
「もう私に攻撃が通ると思うな」

 闇の書の意思はブラッディダガーで真ゲッターの周りを囲み攻撃する。
 ダガーの爆発による煙が晴れるとそこには何もなく突如、闇の書の意思の両手を真ゲッターが後ろから両手を奪い片足を背中につけているではないか。

「何!?」
「悪いな、俺は目を瞑っても合体できるんだよ!」
「合体だと!?」

 そう竜馬は当たる直前にオープンゲットで分離して闇の書の意思が前に気を取られている隙に後ろで合体し、後ろを取ったのだ。

「このままゲッタービームを撃ちたいがまた吸収するだろうからこうさせてもらうぜ!」

 竜馬はトマホークを出して、一瞬だけ右手を離し右手にトマホークを持ち闇の書の意思の右腕を肩から斬りおとし、
 左も同様に肩から斬りおとし、最後に腹を切り裂き、闇の書の意思は海へと落ちるがすぐに上がってきて、
 斬られた傷と無くした両肩を再生させる。

「ち、きりがねえぜ!」
355スーパーロボット大戦X:2008/01/27(日) 17:50:49 ID:s/NRJPhP
 その中でははやてが自分の望んでない事を闇の書の意思に告げていた。

「私、こんなん望んでない。あなたも同じはずや、違うか?」
「私の心は騎士たちの心と深くリンクしています。だから騎士たちと同じように私もあなたを愛おしく思います」

 闇の書は目を瞑り、はやてに話す。

「だからこそ、あなたを殺してしまう自分自身が許せない。自分ではどうにもならない力の暴走。あなたも侵食することも暴走してあなたを喰らい尽くしてしまことも止められない」
「覚醒の時に今までのこと少しは分かったんよ。望むように生きられへん悲しさ、私にも少しは分かる」

 シグナムたちと同じ、ずっと悲しい思い、寂しい思いをしてきた。

「せやけど・・・・忘れたらあかん」

 はやては手を伸ばし、闇の書の頬に触れる。闇の書は目を見開いて驚いた。

「あなたのマスターは今は私や、マスターの言うことはちゃんと聞かなあかん!」

 はやての足元に白い魔方陣が現れる。


 フェイトの方ではフェイトが決心して現実に帰ろうとしていた。

「ごめんね、アリシア。だけど、私は行かなくちゃ。私はもう自分を始めたから、みんなのおかげで始めることができたから。」
「うん」

 涙をためるフェイトにアリシアは手を差し出す。

「あ……」

 アリシアはバルディッシュを取り出し、フェイトは涙を流しながらそれを受け取り、アリシアと抱き合った。

「ありがとう、ごめんね。アリシア」
「いいよ、私はフェイトのお姉さんだもん。待ってるんでしょ、優しくて強い子たちが」
「うん」

 アリシアは顔を上げるとフェイトに笑いかける。

「じゃあ、いってらっしゃい。フェイト」
「うん」

 フェイトが答えた瞬間、アリシアは光となって消えていった。

(現実でもこんな風にいたかったな)


「名前をあげる。もう闇の書とか呪いの魔導書なんて言わせへん。私が呼ばせへん」

 闇の書の意思の目から涙が零れ落ちる。

「私は管理者や、私にはそれが出来る」
「無理です、自動防御プログラムが止まりません。管理局の魔導師とロボットが戦っていますがそれも……」
「止まって」

 はやての魔方陣の光が大きくなっていく。
356スーパーロボット大戦X:2008/01/27(日) 17:51:53 ID:s/NRJPhP
 現実では闇の書の意思が動きが止まるのを見てなのはが困惑する。

「え? これって……」

「外の方! 管理局の方! こちら…その、そこにいる子の保護者八神はやてです」
「はやてちゃん!?」

 なのはは突然のはやての通信に驚く。

「え? なのはちゃん!? ほんまに……?」

 はやても戦っている相手がなのはだという事に驚く。

「うん、なのはだよ。後は竜馬さんって人だけど……。色々あって闇の書さんと戦っているの」
(俺は関係ないだろ)
「なのはちゃん、それに竜馬さんでええのかな? 何とかその子を止めたげてくれる?」
「え?」「ああ?」
「魔導書本体からはコントロールを切り離したんやけどその子が圧してると管理者権限が使えへん」

 そのままはやては説明を続ける。
「今、そっちに出てるのは自動行動の防御プログラムだけやから」
「う……うん?」

 なのははいまいち良く分かっていないようだ。

(闇の書が覚醒しているのに管理者の意識がある。何とかなるかもしれない!)

 その通信を聞いていたユーノがなのはに頼む。

「どんな方法でもいい。目の前の子を魔力ダメージでぶっ飛ばして! 全力全快、手加減なしで! そうすればはやてもフェイトも外に出られる!」
「さっすがユーノ君、分かりやすい」
『It's so.』
「ああ、思いっきりやれるぜ!」
「あの竜馬さんはやめて下さい……」
「ああん? 何でだよ!?」

 ユーノの静止に竜馬は怒る。

「僕は魔力ダメージでぶっ飛ばしてと言ったんです。竜馬さんの真ゲッターは殺傷設定になっていて物理ダメージも与えてしまう」
「それでもいいじゃねえか!」
「それだとはやてとフェイトも死んでしまいます。お願いです。なのはだけに任せてください……。本当にお願いします」
「竜馬、ここはユーノの言うとおりにしておくれよ。あたしもフェイトが死ぬのなんて嫌だよ。だからあたしからもお願いするよ……」

 ユーノとアルフの説得に竜馬は考えて答える。

「……、わかったよ。俺は手をださねえ。だがななのは! 失敗したら俺がやる! いいな!」
「わ、わかりました!」

 なのはは竜馬の脅迫じみた言葉に驚きながらもレイジングハートを構える。

「エクセリオンバスター、バレル展開!中距離砲撃モード!」
『All right. Barrel shot.』

 レイジングハートから放たれた衝撃波と不可視のバインドにより闇の書の動きを止める。

357スーパーロボット大戦X:2008/01/27(日) 17:52:45 ID:s/NRJPhP
 はやては闇の書の意思の頬を撫で語る。

「夜天の主の名に於いて汝に新たな名を送る。強く支えるもの、幸運の追い風、祝福のエール。リインフォース」

 その瞬間、はやてとリインフォースを白い光が包んだ。


「バルディッシュ、ここから出るよ。ザンバーフォーム、いける?」
『Yes, sir.』
「いい子だ」

 フェイトはバルディッシュを上に掲げ、バリアジャケットを着る。そして、大きく構えを取る。

『Zamber form.』

 カートリッジを二発消費。バルディッシュが変形し、魔力刃を持つ大剣へと姿を変わる。
 振り上げた魔力刃が雷の魔力を帯び、フェイトの足元に魔方陣が展開する。

「疾風、迅雷!」

 バルディッシュを横に振り、周りに雷の魔力が舞い、フェイトは大きく振りかぶる。

「スプライト、ザンバーーーー!!」

 そして、力の限り振り抜き、その空間を引き裂いた。


「エクセリオンバスター、フォースバースト!」

 レイジングハートの砲口にピンクの魔力が集束していき、大きくなっていく。

「ブレイク、シューーーート!!」

 ピンクの魔力が螺旋となって闇の書の意思を飲み込み、その中心から黄色の魔力が天を突いた。
 なのはたちの上空に闇の書から脱出したフェイトが姿を現した。


「リインフォースを認識、管理者権限の使用が可能になります。」
「うん」
「ですが、防御プログラムの暴走が止まりません。管理から切り離された膨大な力がじき暴れだします」
「うん、まぁ、なんとかしよ」

 はやての目の前に夜天の書が現れ、それをはやては優しく抱きしめる。

「ほな、行こうか。リインフォース」
「はい、我が主」


 大きな地響きが、結界内の空間が大きく揺れ始める。

「皆気をつけて! 闇の書の反応まだ消えてないよ!」

 エイミィが全員に注意を促す。

「さて、ここからが本番よ。クロノ、準備はいい?」
「はい、もう現場に着きます」
(アルカンシェル・・・・・使わずにすめばいいけど)

 リンディはアルカンシェルのキーを見ながら心の中で呟いた。
358スーパーロボット大戦X:2008/01/27(日) 17:54:52 ID:s/NRJPhP
投下完了。
真ゲッターの設定は見た目は原作アニメのままですが中身(性能)は劣るという設定です。
次回は闇の書の闇のレベル(やっかいど)が上がります。
359名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 18:37:33 ID:eQ19RW6N
>>358
今更なんすけどこのゲッターは等身大サイズですか?
360名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 18:47:39 ID:ycmEDUWT
GJ!!
さすがに性能は落ちますよね。早乙女博士さすがマッドな笑い方するだけあるなw

確か人間サイズですよ。
361名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 19:37:05 ID:2zr+ulsx
この場合は新しい機体ではなく、新しいデバイスと発言したほうがいい。
でないと等身大かどうか勘違いされる。
また、オープンゲットの場面では、説明がまったくなかったので、瞬間移動したようにしか読めない。
誤字も少しは多いですね。
変な意味に繋がってしまうものもあったので、今後はなるべく注意確認を。
ストナーサンシャインを使う場合、原作の条件を無視することになりますが、それを考えてますか?
考えてないなら出さないほうがいい。
ゲッターロボには根強いファンがいるから、一歩間違えたら大変なことになる。
突っ込みどころはたくさんあるが、これくらいにしておこう。
あまり長い説教は成長に差し響くから。
362名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 19:42:00 ID:/TIM0MRZ
GJ!
あんな言動ですが、竜馬は根は優しそうですね。
でも彼はアンチとかには悪くいわれてたりするんでしょうかね……。
363リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w :2008/01/27(日) 19:45:08 ID:qfPTGlLF
ウロス盛り上がりすぎだが、今こっちに人います?
できれば投下したいんですが……
364名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 19:46:00 ID:UhgpPkLA
いつでもおk
365名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 19:46:54 ID:yCjGBMlx
支援はいりまーす
366名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 19:46:54 ID:KZj0QNlO
どぞ。
367リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w :2008/01/27(日) 19:47:33 ID:qfPTGlLF
うぃ。じゃあ投下行きますね
=======

 うーむ……俺は何故こんな所で倒れているんだ?

「……そこのアンタ、聞こえるか……?」

 ん? 誰だ?

「意識はあるか? しっかりしろ」

 う、ん……俺は高町恭也、大学一年生。
 趣味は盆栽、特技は剣術。家族は両親二人に妹が二人、
それに新顔でペットのフェレットが一本……よし大丈夫、自分の事くらいは覚えている。
 確か……そう、そうだ。町内会に頼まれた夜の見回りの途中、山道の辺りで、
二刀流の武者頑駄無が見たこともない怪物と戦っていて……それもかなり押されていて……
 それで、加勢したはいいが手負いの怪物の思わぬ反撃から彼をかばって……

 あぁ……それでこんなに血が流れているのか。

 どう考えてもこれはまずいな。油断したわけではないが、当たり所が悪かった。
 このままでは……死んでも……まぁ、おかしくはない。
 意外と落ち着いていられるものだな、死ぬ時というのは。
 そうか、じゃあ声をかけてきてるのはその武者頑駄無か。
 俺の最期を看取るのが滅多にいない同じ二刀の剣士だとは、なかなか皮肉だな。

「……アンタには申し訳ないことをした。せめてもの償いに俺の命をアンタに託そう」

 ちょっと待て。命というものはそう簡単にやり取りできるものなのか?
 いや、仮にできたとしてもそんな事をすれば死ぬのはそっちの方になってしまうだろう?

「大丈夫。傷が完治するまでの間、俺自身にかつて与えられた生命力を貸すだけだ。
 アンタも俺も『一応』死ぬことはない。ただ、やってほしい事がある」

 やってほしい事? 何だ? まさかとは思うが変身ヒーローにでもなれと言うつもりか?
 俺はどこかの光の巨人か、それとも電光超人なのか?

「フフフ……心配することはない」

 笑ってごまかすな。せめて詳細を語れ……うっ、だんだん視界が……ぼやけて……
 一体俺は、俺達は何がどうなるって言うんだ!?



巻之壱拾五「夜空に舞う白い翼なの」



「おとーさん! おかーさん! たっだいまーっ!」

 大きな庭のある広い家の玄関を勢い良く開けて、元気よく声をあげ中へ走りこむなのは。
 アパートやマンション暮らしのススムとシンヤは大きな家に圧倒されている様子だ。
 そんな彼女を、同じくらい元気そうな笑顔で出迎える人物がいた。

「おかえり〜、なのは! おかーさん達、すっごく心配だったのよ〜!」
「そうだぞ? なのはの乗ってた新幹線が事故に遭ったって聞いて……
 電話してくるまでみんな気が気じゃなかったからな。とにかく無事でよかった。
 おおっと、睨むなよユーノ。もちろんお前だって心配だったさ」
368名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 19:47:53 ID:yCjGBMlx
支援
369リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w :2008/01/27(日) 19:48:11 ID:qfPTGlLF
 天真爛漫で優しそうななのはの母、高町桃子と東京駅でも会った父、高町士郎。
 家族と仲良くしている様を見るとなのはも年齢相応に見えるな……などと、
まだ付き合いの浅いススム以外はそんなかなり失礼な事を思っていた。
 もっとも、ススムはススムで海鳴に行くと決まった時から
何か別の事に気を取られている様子だったが。

「シンヤ君……だったね。娘が世話になったみたいでありがとう。そっちの君は?」
「は、初めまして! ボクはこっちの武ちゃ丸の友達のススムと言います」
「ススム君もね、シンヤ君にトッキー君、武ちゃ丸君とおんなじ大事なお友達なの!
 あっ、ところでおにーちゃんとおねーちゃんは?」
「美由希なら今図書館に行ってて……恭也なら昨日の見回りに疲れたのかまだ寝てるな」
「見回り? 何かあったの?」
「そう言う訳じゃないんだけど、ホラ、あんな騒ぎがあったばかりで色々と物騒でしょ?
 それでね、今、町内会で分担して夜の見回りをやってるの」

 あんな騒ぎ……言うまでもなく堕悪武者幻妖の襲撃や、
へっぽこ四人組の手によるジュエルシードの暴走事件である。
 その傷跡は根深く、交通やライフラインへの被害のみならず人々に与えた心の傷も大きい。
 自分達がもう少し気を付けていれば防げたかもしれない事件の事を思い、
また少し暗い表情になるなのはを心配する一同。

「ただいまー!」

 と、そこに大きな丸眼鏡と黄色いリボンでまとめた三つ編みが目を引く少女が
元気よく人でいっぱいの玄関を開け、きょとんとした表情でその光景を見渡す。

「おねーちゃん!」
「あれ、なのは、帰ってたんだ! お帰り! それに……
 とーさん、かーさん、大変だ! なのはがボーイフレンド連れてきちゃった!」

 その一言に驚いて、互いに顔を見合わせ全身で否定するススムとシンヤ。
 バスケットの蓋を勢い良く開けて過剰反応したユーノも二人を威嚇するように見つめる。
 すでにフェレットというよりイタチ、それも恐ろしい形相の某白イタチを思わせる気迫だ。

「コラ、美由希? いきなりそんな事言ったら失礼よ?」
「てへへ……ゴメンね、驚かせちゃって。なのはに男の子の友達って珍しいからつい……
 あ、あたしはなのはの姉で美由希って言うの。なのはと仲良くしてあげてね?」

 やはり底抜けに明るい笑顔でススムやシンヤ達を興味しんしんといった感じで見つめ、
くしゃくしゃに頭をなでるなのはの姉だという美由希に困ったような表情を崩せない二人。
 そこに奥の部屋から騒ぎを聞きつけたのか、最後のなのはの家族が顔を出した。

「何の騒ぎだ……ん、なのは、帰ってきたのか。おかえり」
「あ、おにーちゃん、ただいま!」
「おはよ、恭ちゃん! この子たちね、なのはのお友達の……」
「……そうか」

 なのはの兄は妹二人には優しい笑顔を向けるが、
当の友達が男だと分かると微妙に機嫌を損ねてそっけない態度で接する。
 その態度を見かねてか、父、士郎は目にもとまらぬ早業で関節技を決めにかかった。

「くぉら、バカ息子! 君はちょっと妹離れができていないんじゃあないのかな〜!?」
「うがが……あぎぎ……ギ、ギブギブ! 悪かった!」
「さしもの恭ちゃんも、とーさんには形無しだー……」
「ご、ごめんねススム君、シンヤ君! おにーちゃん、いつもは優しいんだけど……」
「い、いや、俺達は……なぁ?」
「うん。全然気にしてないよ、なのはちゃん」
370リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w :2008/01/27(日) 19:48:33 ID:qfPTGlLF
 仲良く? じゃれあう親子をうらやましそうに眺めるススムとシンヤ。
 事情はそれぞれだが、二人とも父親とは満足に交流を持てないでいるため、
親子のスキンシップというものにいくらかの憧憬を抱いていたのだ。

「もう、二人ともいい加減にしなさい! 皆、いつまでもこんな所で立ち話もなんだから
 あがってあがって! 旅の話も聞きたいし、お茶にしましょう?」

 そしてどこの家でもやはり母は強し。
 鶴の一声であっという間に騒動を収め、慣れた手つきで一同を居間へと案内した。


「うわっ、このシュークリームめちゃくちゃウマ……じゃなかった、その、美味しいです」
「ホントー? だったらおばさんうれしーなー! おかわりあるからどんどん食べてね!」

 九州土産にと武者鷺主から頂いた香りのいいローズティーと
うず高く積み上げられた手作りのシュークリームを前に、話も弾む。
 しかし、その胸中は複雑なものであった事に想像は難くない。
 まさか危険な戦いに巻き込まれているという事を話すわけにはいかないし、
自分達の未熟さをいやというほど思い知らされた上に、
目の前で失われていく紅零斗丸の命を守れなかったのだ。
 どう考えてもいい思い出であるはずが無い。特にまだ小さななのはにとっては。
 ススム達はそんな悲痛な心情を抱いているであろうなのはのフォローに心を砕き、
あの手この手で話題を何とか旅から離そうと試みる。

「えっと、このシュークリームって喫茶店で出してるやつで、全部手作りなんですよね?
 すごいなぁ……いっぱい修行したんだろうなぁ……」
「そうね。最初は料理教室とか近所のお店のバイトから初めて、
 ヨーロッパで修行して、その後ホテルのレストランでパティシエをやって……」
「ホンマか? シュシュム、世の中やっぱり凄い人はごっつう努力しとるで!
 ワイらももっともっと頑張らんと!」
「やだー、そんな大げさなものじゃないわよ。好きな事をやらせてもらっただけだもの。
 ……って、あなた達も何か食べ物の修行とかしてるの?」
「はい、大阪の……タコ焼きを……」
「あら、ホント!? 実は私も関西育ちで……」

 互いに料理好きの血が騒ぐのか、ススム&武ちゃ丸との話に花を咲かせる母桃子。
 そんな光景を見ながらなのはの兄、恭也は感慨深げに呟いた。

「しかし……新鮮だ」
「? 私のお菓子の素材はいつも新鮮よー?」
「違う。この食卓の男女比だよ、かーさん。
 男性比率が女性比率を上回ったのなんて、初めてな気がしてさ」
「あ……そう言われて見ればそうかも」
「確かに! 忍さんとすずかちゃん姉妹にあたしやなのはの友達もよく来るしね」
「おにーちゃん、そういう時いつもすこーし肩身狭そうにしてるもんね……」
「と、言うよりお前の男友達が少なすぎなだけなんじゃないのか、恭也?」
「い、痛いところを……うん?」

 ふと、玄関のインターホンが鳴って団欒が少し断ち切られる。

「誰だろう……今日は千客万来だな。あぁ、いいよとーさん。俺が出る」

 ローズティーの注がれたカップを置き、恭也は玄関の方へと進んでいく。
 ……かと思うと、即座に戻ってきて士郎と美由希、
そしてなぜか武ちゃ丸とトッキーを連れてまた玄関へとせわしなく戻って行った。
371名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 19:49:00 ID:KZj0QNlO
支援
372リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w :2008/01/27(日) 19:49:17 ID:qfPTGlLF
「お初にお目にかかります! おれ、羽丸って言います!
 こちらに高町恭也と申される剣豪の先生はおられませんか!?」
「あぁ、高町恭也は俺だが……って、なんだ剣豪の先生って」

 木刀と荷物を脇に礼儀正しく正座をし、威勢良く挨拶する幼い男の子がそこにいた。
 普通の少年と著しく違う特徴を持った男の子が。

「初めまして……って、恭也、この子はいったい……?」
「わからない。でも……」

 白い……というより純白の肌に短い手足、緑色の大きな瞳、胸に輝く金色の宝玉。
 その人間ではありえない数々の身体的特徴に少々面食らう高町家の面々。

「……君達の知り合いじゃないのか?」

 武ちゃ丸とトッキーの方を見てそう言う恭也。
 そう、彼はただの少年ではなく、武者頑駄無の子供だった。

「いや、ワイは知らんけど……斗機丸、お前はどないや?」
「スマンが俺のデータベースにも該当する武者がいないな。羽丸君……だったか?
 君は一体何者なんだ? 少なくとも、あの日是断の門に君のような子はいなかったはずだが……」

 トッキーの問いかけに対し、これまた元気に答える羽丸。

「わからない!」
「わからないって……ひょっとして記憶喪失なのか?」
「う〜ん……それもよくわかんない。
 だって、おれは名前も故郷も家族のみんなもちゃんと覚えてるし……
 わからないのはなんでおれがこんな所にいるのかって言う事だけなんだ」
「そりゃまた随分複雑な記憶喪失だね。いつ頃からそんななの?」

 色々とややこしい事になっている羽丸の記憶に対し、率直な感想を述べる美由希。

「それもよくわからないけど、何故かやらなきゃいけない事だけはわかってるんだ。
 誰かがおれに教えてくれたような、そうじゃないような……」
「やらなアカン事……一体何なんや? よかったら教えてくれへんか?」

 武ちゃ丸の一言を待ってましたとばかりに羽丸は意気揚々と語り出す。

「一つはこの地に現れた堕悪闇軍団と戦う事。そしてもう一つは……
 そのために高町恭也さん、あなたの下で剣の修行を積まなければいけないという事!
 お願いします! どうかおれをあなたの弟子にしてください!!」

 だんだん熱を帯びてくる羽丸の語りと対照的に恭也は疲れた顔で
その突拍子もない発言に突っ込みを入れる。

「……待ってくれ。そこでどうして俺なんだ? 優れた剣の使い手なら他にもっといるし、
 実戦的な剣術ならそれこそ他の武者頑駄無に教わればいい話だろう。
 それにそもそも俺の剣は人に教えるような性質のものでは……」
「いえ! あなたじゃないとダメだって、おれの心の中で何かが叫ぶんです!」
「いや、しかしだな。いきなり押しかけてきてそんなアレな理由を言われても……
 そもそも一体どこで俺の事を知ったんだ?」

 当惑し、何が何だかわからなくなり始めている恭也に外野が追い打ちをかけた。
373名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 19:49:27 ID:KZj0QNlO
支援
374リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w :2008/01/27(日) 19:49:48 ID:qfPTGlLF
「これはまたずいぶんと惚れこまれてしまったもんだな、恭也」
「あたしは構わないと思うけど? 恭ちゃん、教え方結構上手だし、
 それに、あたしも弟弟子ができたら嬉しいなー……なんて」
「父さん、美由希……人事だと思って気軽に言わないでくれ」
「で、どうするんだ? お前の問題だ。答えはお前が決めるといい。
 うちの剣がどうのこうのはお前が気にする事はない。俺の問題だからな。
 ただし、あの子は本気だぞ。だからお前も真剣に答えなきゃいけない。わかったな?」

 士郎は恭也の肩をポンと叩き、答える事を促す。

「……そうだな。どうしてもと言うなら、考えてやってもいい。
 何日か様子を見て務まるかどうか判断してからだ。それでどうだ?」
「は、はい! よろしくお願いします、先生!」

 その答えに満面の笑みをたたえて全身で喜びを表現する羽丸。

「ただし!」

 恭也の強い語気に押され、羽丸は一瞬ビクっとして姿勢を整える。

「無理だと判断したらその時は……わかってるな?」

 真剣……というより静かに燃える炎のような、
あるいは凍てつく絶対零度の氷塊のような恭也の鋭い視線が羽丸を貫く。
 士郎と美由希はそんな彼の様を見て、「鬼コーチモード突入だぁ」だの
「お父さんはあんな子に育てた覚えは約二割くらいしかありません」だの囁き合っていた。



「……で、なのは。結局その羽丸って子、どうなの?」

 夕暮れ時、なのはと新たな魔法の習得を行うべく訓練に熱を上げるユーノは
一段落ついたところで気になっていた羽丸の処遇について訊ねてみた。

「どうなのって……うーん、私は剣の詳しい事はよくわからないけど……
 何て言うか、こう……気ばかり焦って空回りしてる……みたいな?」
「あー……分かる気がする。あの子、さっきもいろいろお手伝いしようとしてお皿割ったり、
 お米を研ぐときに台所洗剤入れちゃったりしてたもんね」
「そうでしょ? おにーちゃんもずいぶんむつかしー顔してたもの。
 それに本人も自分の事あんまり分かってないみたいだし、一体どういう子なんだろう?」

 今日一日だけで羽丸が台所で巻き起こした騒動を思い返すなのは達。
 この勢いだとトレーニング中に何かをやらかしていたとしても不思議ではない。

「そっか……とりあえず彼の素性については専門家のトッキーさんに任せてあるし、
 僕達は僕達にしかできないことをやろう」
「そうだね。ディバインバスターの射程、集束の強化……それが最優先かな?」
「それだけじゃない。威力はともかく取り回しの悪いバスターの他に
 小回りの利く他の攻撃魔法も覚えなきゃだし、劣るスピードを補う方法、
 前衛で戦う武ちゃ丸やトッキーさんの能力を強化したり、
 敵を妨害する支援魔法も充実できたらそれに越したことはないね」
「はぁ……問題山積みだね……」
375名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 19:49:58 ID:KZj0QNlO
支援
376リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w :2008/01/27(日) 19:50:20 ID:qfPTGlLF
 思わずため息をついてしまうなのはを励ますようにユーノは話を続ける。

「そうでもないよ。新生夢者遊撃隊と言うチームを編成できたおかげで、
 やらなければならない事がハッキリしてるからね。なのは一人だったらもう大変だよ?」
「得意な魔法が魔法だから、たいして変わらない気もするんだけど……
 じゃあ、ユーノ君の使命のため、私のレベルアップのために頑張りますか!」
「うん、じゃああの子が使ってたみたいな魔力弾を遠隔誘導操作する魔法……
 あんなのができたらいいんだけどな?」
「うん、牽制や中間火力になる魔法は必要だね。スキが大きいなら何とかカバーしないと。
 ただ、レイジングハートにはそういうのは入力されてなかったと思うから、
 やるなら一から術式プログラムを組まないとね」
「う……難しそうだね。ユーノ君、レイジングハート、分からないとこあったら教えてね?」
<<All right>>

 ユーノの指示に答え、新たな魔法を習得すべく前に一歩進んだなのは。
 結局、前回の旅では黒衣の魔導師と言い、魔刃頑駄無と言い自らの技量を上回る相手には
手も足も出なかった。ならば結局は自分のスキルを高めるしかない。
 その為に二人は熱心に特訓を重ねた……それこそ時間を忘れるほどに。


「ふえぇ、すっかり遅くなっちゃったよ! もう真っ暗!」
<<Sorry, my master>>
「ごめん、つい張り切りすぎちゃって……また怒られちゃうかな?」
「いちいち言い訳しなきゃならないのが余計に心に痛いね……」

 案の定特訓に集中しすぎてすっかり暗くなった街並みの中、家路を急ぐなのはとユーノ。
 その途中、たばこ屋の角を曲がったところで
二人は出来たら顔を合わせたくなかった身内二人と顔を合わせてしまう。
 ランニングの帰りと思われる恭也と美由希だった。

「……なのは。ユーノの散歩に一体何時間かかっているんだ?」
「ごめんなさい……」
「もう、そんなの後でいいじゃない! なのは、途中で羽丸君見なかった?」
「羽丸君? あれ、そういえばいないね。まさか……」

 少し憮然とした表情の恭也と不安そうな態度の美由希。
 そこから事態を推理してしまったなのはは口に手を当て、顔を青ざめさせる。

「そう、ロードワークの途中であたし達についてこれなくなったのか見失っちゃったのよ!
 みんなで探してるんだけど、さっぱり見当たらなくて……」
「本当に!? じゃあ私も……」
「駄目だ。なのはは帰ってかーさんと一緒に待ってるんだ」
「でも!」
「なのは」
「……はい」

 自分も手伝おうと食い下がるなのはを言葉少なに説得し、再び夜の街に探しに戻る恭也。
 その姿を見て、美由希は落ち込むなのはを諭すように語りかけた。

「恭ちゃんね、ああ見えても結構心配してるし、責任も感じてる。
 後はとーさんに、なのはのお友達の武者頑駄無さん達も探してくれてるから、
 きっとすぐに見つかるよ。だから、なのはは安心して待ってて。ね?」
「うん……」

 そう言った美由希もまた羽丸を探しに戻り、そこにはまたなのはとユーノが残された。
377名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 19:50:28 ID:KZj0QNlO
支援
378リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w :2008/01/27(日) 19:50:39 ID:qfPTGlLF
「なのは……どうするの?」
「放っておけないよ! 私達の魔法で何とか探せないかな?」
「そりゃ、前にジュエルシードを探した時のやつを使えばできるけど……
 今日はもう今までの特訓で魔力も体力も結構消耗してるよ?」
「いい!」

 即答するなのはにユーノは処置なしといった風情で首を振り、こう答えた。

「それなら、僕と同時に魔法を発動しよう。負担も半減できるはずだよ」
「ありがとう、ユーノ君! じゃあ広域探索魔法、いっくよー!」
<<Wide Area search>>

 そうして二人は疲れた体に鞭打って羽丸を探す。
 発動自体はそれなりに力を使うものの、妨害などもないためすんなり羽丸は見つかった。
 ……場所が今までいた自然公園の近くという事実は割と二人をげんなりさせはしたが。

「……で、見つかったけどどうする? 恭也さん達に連絡した方が……」
「迎えに行こう、二人で」
「やれやれ、なのはの事だしそう言うと思ったよ。でも……」
「大丈夫! こう見えても私、結構丈夫なんだよ?」

 先日トッキーに言われた事もあり、なのはの身を案じるユーノであったが、
同時に彼女の言い出したら聞かない性格も重々承知していたため、
その場は黙って従う事にした。


「あっ……いたよ、あの子じゃない?」
「シッ、なのは、少し静かに……何か言ってるよ?」

 自然公園の広場、藤棚のベンチに一人座っている羽丸を見つけた二人。
 羽丸が何か囁いているのを聞きつけた二人はそのまま様子を見る。

「綾乃……おれ、やっぱ駄目だよ……何が何だか訳がわからないし、
 道に迷って先生達には置いて行かれるし、おふくろ様には迷惑かけっぱなしだし……
 おれ、なんでこんな所なんかにいるんだよ……父ちゃん、母ちゃん、帰りたいよ……」

 涙をぼろぼろと流しながら月を見上げ、遠い故郷の事を想う羽丸。

「……羽丸君、ホームシックにかかっちゃってるみたいだね……」
「無理もないよ……事情も分からず見たこともない世界に放り出されて、
 しかもいきなり失敗ばかりじゃあ……って、ちょっと、なのは!?」

 ユーノの制止を振り切り、悲しみに暮れる羽丸になのははそっと話しかけた。

「やっと見つけた。みんな心配したんだよ、羽丸君?」
「あ、先生の下の妹さんの……」
「なのは。高町なのはだよ。さ、一緒に帰ろう?」

 なのはは優しく微笑み、羽丸に手を差し伸べるがその手は振り払われてしまい、
羽丸も後ろを向いてしまう。
379名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 19:50:52 ID:KZj0QNlO
支援
380リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w :2008/01/27(日) 19:51:13 ID:qfPTGlLF
「……駄目だよ。おれ、今日も失敗ばっかりで……きっと先生、すごく怒ってる。
 おれ、もう先生の弟子にはしてもらえないんだ……
 弟子になれればひょっとしたら何かわかると思ってたのに!」
「そんなことないよ。おにーちゃんは不器用さんだけど、ホントはすっごく優しい人。
 たぶん私なんかよりずっと羽丸君の事を心配してる。
 それに、あきらめるのはまだ早いよ。だってまだ一日目でしょ?
 それじゃあ失敗とかいろいろやっちゃって当たり前だよー」
「けど!」
「私もね、この間結構失敗して、友達にたくさん迷惑かけちゃったんだ」
「……え?」

 羽丸の隣に座り、同じ目的を持つ競争相手の少女に完膚なきまでに敗れたこと、
自分にできる最高の技術を駆使しても、足元にも及ばない人物と相対した時のこと。
 念のため魔法や戦いに関わる真相を隠し、自らの失敗の体験を語り聞かせるなのは。
羽丸も真剣な顔つきでその話を聞いている。

「……だから、ホラ、んーと、何て言ったらいいのかよくわかんないけど……
 私も頑張るから、羽丸君も頑張ろ? じゃないと、きっと後悔すると思うんだ。
 何も分からないなら試しにできる事をやってみる事って、そんなに悪くないと思う。
 おにーちゃんに怒られたら私も何か言ってあげるから、ね?」
「おれに……できる事……」

 なのはが差し伸べていた手に羽丸が手を伸ばす。
 しかし、その手は背後から忍び寄る影の放った飛苦無によって断ち切られてしまう。


「ウフフ……ジュエルシードを探しに来てみれば、こんな大物に巡り合えるなんて。
 アナタ、羽流鋭様が仰っていた魔導師のお嬢ちゃんね?」
「私の事を知ってる……? あなたは一体誰なんですか!?」

 羽丸をかばうようにして勇敢にその影を見据えるなのは。
 それに答えるかのようにその影は実体を表した。

「ワタクシの名は堕悪翔妃(しょうひ)。
 堕悪闇軍団、空魔忍軍の紅一点。美しき蒼空よりの刺客ヨ」
「わかりました。なら翔妃さん、どうして私を襲うんですか!? 答えてください!」

 なのははいつものように話し合いから入ろうとし、相手もそれに応じる。

「勇ましいですのね。そう言う娘、ワタクシ嫌いではありませんわよ?
 氷魔忍軍の華紅羅様はアナタの事を大層高く評価しておいでなの。
 いつかは恐ろしい障害になる……ってね。
 見つけ次第、勧誘するか洗脳するかしてこちらに引き込むよう仰せなのヨ」

 自分の扱いに対し、ただ事でない策略が動いている事を知ったなのは。
 しかし、彼女の疑問はなぜか脇道にそれていて別の疑問に頭が支配されていた。
381リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w :2008/01/27(日) 19:51:43 ID:qfPTGlLF
「えっと……一つ質問があるんですが」
「なぁに?」
「多分ですけど、空魔忍軍と氷魔忍軍って別の部隊ですよね。
 なんで違う班の人の言う事聞いてるんですか?」
「あぁ……色々ね、あったのヨ」
「いろいろ?」


 同時刻、空魔忍軍詰所――

「うーん、うーん、砂糖が、茶が……」
「……なぁ、ウチの頭領いつまでああしてるんだ?」
「さぁ……一体都でどんな恐ろしい目に遭ったのであろうか」
「噂だが、頭領様をあそこまで追いつめたのは人間の小娘だというぞ」
「小娘だと!? まさか、頭領が……」
「うぬぅ、天馬の国とはなんと恐ろしい所だ」

 空魔忍軍団長、羽流鋭はいまだに寝込んでいた。


「あぁン、だけど寝込んでおられる羽流鋭様もス・テ・キ!」
「そうですか。それはお大事に」

 なのははジト目で自分の世界にトリップ中のアブない翔妃を見やる。
 こんな大人にはなりたくないな。こっそりそう思いながら。

「ほ、本題に戻りましょうか?
 華紅羅様はああ仰ったけど、ワタクシ以外に美しい者はあまり多くても困っちゃうわ……
 ダ・カ・ラ♪ よろしかったら、ここで死んで下さいませんこと?」

 あくまで明るく、丁寧な口調で恐ろしい事をさらっと言ってのけるこの刺客に
背筋が震える感覚を覚えながら、それでも立ち塞がることをやめないなのは。

「死……!? じょ、冗談はやめてください!」
「アラ、冗談なんて言ったつもりはなくってヨ。
 人間なんて私達に例のエネルギーを供給してくれる存在でしかないもの。
 だからあんまり目立った事してくれると邪魔なのよね……
 伸びすぎた雑草はさっぱり刈らないと、ネ?」
「そ、そんな事……」
「そんな事、させるもんか!」

 なのはが反論しようとした時、物陰から飛び出してきたユーノの声と
なのはの前に躍り出て、木刀を構えた羽丸の声がシンクロする。

「あら、かわいいボクちゃんとオコジョちゃんね。けど、邪魔するなら容赦はできませんわヨ?」
「ふざけるな、オバサン! おれだって武者頑駄無なんだ!
 堕悪闇軍団の好き勝手にはさせないぞ!」
「オバ……サン……?
 ……今、オバサンとか抜かしやがったかこのクソガキィィィッ!?」

 その「オバサン」という羽丸の不用意な発言は翔妃の逆鱗に触れた。
 それまでの遊び好きの淑女然とした装いはなりを潜め、その残虐な本性をあらわに
翔妃は羽丸の襟元をつかみ上げ、ぎりぎりとその首を締めあげ始めた。

「このアタイの美しさを理解しねぇようなゴミ虫は、死んじまいなァッ!!」
「は、羽丸君っ!!」

 翔妃は羽丸の体を空中に放り投げ、鋭い爪の一撃でその小さな体を切り裂く。
 羽丸は宙に弧を描きながら藪の方に向って弾き飛ばされていった。
382名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 19:51:49 ID:yCjGBMlx
支援
383リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w :2008/01/27(日) 19:52:15 ID:qfPTGlLF
「せん……せぇ……なのは……やっぱ、おれ、駄目なのかなぁ……
 何にもできないまま、ふるさとにも帰れないまま死んじゃうのかなぁ……
 悔しいなぁ……おれが、もっと強かったら……」

 ――羽丸――

「あれ……誰の声だろ……どっかで聞いたような……」

 ――羽丸……右手を掲げろ……胸の玉に意識を集中させるんだ――

「みぎ、て……たま……」

 羽丸は薄れゆく意識の中、幻か現実かも定かではない不思議な声を聞き、それに従う。
 すると、羽丸の意識は閃光のような激しい光に包まれ、ホワイトアウトしていった。
 そして……

「羽丸……くん……?」
「さぁお嬢ちゃん、次は貴女の番ですわよ?
 このワタクシの美しい手で葬って差し上げるわ……ズタズタに引き裂いてなァッ!」
「なのはーっ! バリアジャケットと防御魔法を、急いで!」

 突然の凶行に呆然とするなのは。ユーノの叫びも聞こえず立ち尽くす彼女に
血に濡れてぎらりと鈍く光る爪が振り上げられる。
 ――絶対絶命!?
 ユーノがそう思い、自らの魔法で攻撃を遮ろうとしたまさしくその瞬間だった。
 雷を纏った金色の剣閃が双曲線を描き、翔妃自慢の爪を見事に切り落とす。
 意識を取り戻したなのはやユーノが天を見上げると、白い大きな翼をはためかせ、
悠然と藤棚の上に降り立つ二振りの刀を携えた武者頑駄無の姿がそこにはあった。

「ア、アタイの爪がぁぁぁっ!? そこの鳥男! 何てことしやがる!?」
「たとえ女であろうと、堕悪武者にかける情けは存在しない。
 ましてや貴様のような外道になど!」

 その武者は冷徹なまでの威圧感に満ちた声音でそう吐き捨てると、
翔妃はさらに頭に血を上らせ、ヒステリックに喚き散らす。

「アンタ、よっぽど死にたいみたいだねぇ……だったら望み通りにしてやるよ!
 出てきな、紅陽炎(べにかげろう)ども!」

 翔妃が合図をすると、何もない空間から突如として
どことなく昆虫を思わせるフォルムの赤い鎧と翅をもつ雑兵、紅陽炎が姿を現した。

「えっ、な、何!?」
「空間転送に似た術を使った!? これだけの数を一度に……まずい!」
「心配するな、なのは。あれ位、俺一人でも十分だ。そこで見ていろ!」
「えっ……な、なんで、私の名前を!?」

 胸に輝く、どこかで見た記憶のある金色の宝玉を気にしながらその武者は構えをとり、
雲霞のごとく押し寄せる翔妃の呼び寄せた雑兵、紅陽炎を
まるで八艘飛びの様に刀を振った反動を用いて次々と斬り倒していく。

「しゃらくさいねぇ! だったらこれはどうだい? 堕悪乱撃鋭爪弾!!」
「……!」

 闇の魔力で強化され、極端に圧力を高めた圧縮空気弾を乱れ撃つ翔妃。
 さすがの白い翼の武者もよけきれずいくつかをその身に受けてしまう。
 絶え間なく放たれる空気弾に身動きの取れない白い翼の武者の胸の宝玉は
いつの間にか光の明滅が始まっており、彼はしきりにその事を気にしている様子だ。

「ハハン……どうやらそれがアンタの命綱って所かい? じゃあ、フィナーレといこうかい!」
384リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w :2008/01/27(日) 19:52:46 ID:qfPTGlLF
 その様子を感じ取った翔妃はとどめをささんと一際大きな空気弾を作り出し、
その照準を動きの鈍くなった白い翼の武者に定める。

「ユーノ君……私、もう黙って見ていられない! アレ、使ってみる!」
「アレって……まさか!? 駄目だ! 今日覚えたばっかりで、なのはだって消耗してるのに!」
「平気だよ。これくらいできないと……私も失敗を越えて行けない!
 行くよ、レイジングハート!!」
<<All right>>

 なのははレイジングハートを起動し、純白のバリアジャケットを身に纏う。
 すでに今まで相当の魔力を使っているのでこれだけでもかなりの負担になるはずだが、
それを押し殺し、目を閉じて新しく身につけたばかりの呪文を詠唱し始める。

「リリカル、マジカル……福音たる輝き、この手に宿れ。導きの下、鳴り響け!」
<<Divine Shooter>>
「ディバインシューター、シュートッ!!」

 なのはの思念制御とレイジングハートの補助により、放たれた複数の魔力の光弾……
 新魔法「ディバインシューター」は最小限の動きで正確にチャージ中の空気弾数発に命中し、
魔力同士の反発を起こして互いを対消滅させる。
 この予想外の方向からの、予想外の相手による攻撃に動揺を隠せない翔妃。

「なっ!? こんな術、情報にない! あの小娘、この短期間でもう成長したってのかい!?」
「どうした? 戦闘中に余所見とは、余裕だな」
「!!」
「悪いがもう時間がない……これで終わりだ!」

 攻撃が途切れた一瞬をつき、白い翼の武者は即座に距離を詰めてその刃を振るう。

「受けよ、必殺! 双爆雷斬!!」

 電撃を振り撒きながら、白い翼の武者が持つ両手の刀は隙を見せた翔妃を十文字に斬り裂いた。

「そ、そんな……アタイがこの空で敗れるなんて……ば、羽流鋭様ーっ!?」

 翔妃が炎に包まれ、消滅する様を見届けるとなのはは力尽き、その場にへたり込んでしまう。
 ユーノは駆け寄って何とかなのはを助け起こそうとするが、
悲しいかなフェレットの力ではどうにもならない。
 そこに銀色に光る月を背に白い翼の武者が舞い降り、なのはを抱きかかえてベンチまで連れていく。
 そして武者は早くなる宝玉の明滅と警告音をしきりに気にしながら
無言でその場を飛び去ろうとするが、それをなのはが呼び止める。

「待って……あっちの藪に羽丸君って言う小さな武者頑駄無の男の子が倒れてるの……
 すぐに手当てをしないと……」

 息も絶え絶えになのはは弾き飛ばされた羽丸の身を案じ、白い翼の武者は
心配ないと言いたげな優しい瞳でこう答えた。

「……あの子なら大丈夫。すぐにまた会えるさ。保証したっていい」
「待ってください! あなたは一体……」

 今度はユーノが白い翼の武者に質問を浴びせる。

「……武者ウイングゼロ。今の俺が答えられるのはこれだけだ……いずれまた!」
385名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 19:53:07 ID:KZj0QNlO
支援
386リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w :2008/01/27(日) 19:53:17 ID:qfPTGlLF
 そう言い残し、鳥のような姿に化身してはるか高空に飛び去っていくウイングゼロ。
それを見守りながらユーノはぽつりと呟いた。

「武者……ウイング、ゼロ。あの人は一体……って、考えてる場合じゃない!
 なのはの回復を……いやいや、それより羽丸君を探す方が先で……
 うあぁ、僕はいったいどーしたらいいんだーっ!?」

 最優先事項が山積みとなり、軽いパニックに陥るユーノ。
 そんな彼の混乱をさらに招く要因がすぐそこに近づきつつあった。

「おーい! なのはーっ!」
「あれ、その声……羽丸君!?」
「あっ、お前なのはの友達のいたちじゃないか……お前、しゃべれたのー!?
 妖怪か? お前妖怪だったんだな!? すっげーっ!!」
「……もういいよ、妖怪でも何でも……それより今から君を回復させるから……って!?」

 そう言って先程羽丸が傷つけられた辺りを調べるユーノ。
 しかし、傷があったはずの場所には何の痕跡もなく、胸の宝玉は静かな輝きを放っていた。

「? どうしたんだ、いたち?」
「……いや、何でもないよ。それよりなのはを回復させないと。
 そしたら一緒に帰ろう。……あ、僕が喋れるって事は皆には伏せといてね」
「それはいいけど……なのは、一体どうしたんだ?」
「え? あぁ……疲れちゃったんだよ。色々無茶したから……それより、君はどうなの?」
「おれ? 全然だいじょうぶだけど、なんか堕悪闇軍団が出てきてからがよく分からなくて……
 なぁ、いたち。いったい何があったの?」

 きょとんとした顔の羽丸を見つめ、ふと、ユーノは疑念を抱く。

(……羽丸君が吹っ飛ばされて、ウイングゼロが現れて、そしてゼロが帰ったと思ったら
 怪我ひとつない羽丸君が……まさか……いや、まさかね)

 消耗したなのはを魔法で回復させつつ、その疑念を振り払ったユーノは次なる問題、
家に帰ったはずのなのはがどうしてこんな遅くに羽丸を連れ帰ったか……
という質問攻めの困難をいかにして乗り越えるかと言う問題と格闘することにした。

 夜空に輝く月だけが、そんな彼らを物言わず見つめていた。
387名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 19:53:30 ID:KZj0QNlO
支援
388リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w :2008/01/27(日) 19:54:40 ID:qfPTGlLF
次回予告(ねくすとぷれびゅう)

「ふぅ……」
「あれ、どうしたのなのは?」
「今は声をかけない方がいいよユーノ。
 街で出会った男の子が気になるんだってさ」
「な、何だってー!? だ、誰? どこの誰!?」
「ボクは知らないよ! なんでも黒い髪の……」
「黒い髪!? よし覚えた! ちょっと行ってくる!」
「あー、ユーノ……行っちゃった。
 なのはと羽丸が街で出会った黒髪の少年、彼は一体!
 そして再び現れる黒衣の魔法少女、立ち向かうのはなのはと……?
 さらにボクらは狼のような女の人を相手に時間稼ぎをするハメに!
 ボクは生き延びることができるか!?
 次回、SD頑駄無対魔法少女 リリカル武者○伝、巻之壱拾六!
 『空中激突! 青い稲妻と金の閃光やでっ!』!
 リリカルマジカル、明日の夕陽は見れないかもね……」


登場武者符亜意留(ふぁいる)

武者ウイングゼロ
出典:ムシャ戦記 光の変幻編
モデル:ウイングガンダムゼロカスタム

 背中に巨大な白い翼、飛翔の翼を背負い、双刀・爆雷剣による二刀流を得意とする凄腕の武者。
 霊鳥角と光翼刃(ビームエッジ)というカスタム武具を身に纏い、
「カスタム武装」する事で飛行能力を得てパワーアップする。
 また、その状態では霊鳥ゼロバード形態に変形し、超高速で飛行することが可能。
 幼い頃に命を助けられた旅の武芸者にあこがれ、修行を積んで武者となった。
 元々は孤独を愛する一匹狼的な性格で、天魔軍団に妹を殺されたと思い込み、
その復讐心からたった一人で天魔軍団と戦っていたが、
ある事件を経て仲間の大切さを知り、最終的に討魔光刃隊(別名・機動烈士隊)の一員として
かつての命の恩人、ファーストガンダム大将軍と共に歴代大将軍の魂が見守る中
本来は調和と安寧のために使われるべき闇の力を悪用し、数百年の長きにわたって
天宮の人々や歴代の武者頑駄無達を苦しめた天魔大帝と壮絶な最終決戦を繰り広げた。
 必殺技は爆雷剣から繰り出される双爆雷斬や天地一閃など。
 ちなみに妹は綾乃と言い、少々シスコン気味のきらいがある。
 日本では埼玉県庁の観光課で働いていたらしい。


======
今回は以上です。支援ありがとうございました!
それに絵板の方で私めの作品に支援画像をくださった職人様、本当にありがとうございました!
宝物にします!
389名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 19:55:24 ID:yCjGBMlx
支援
390名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 20:02:12 ID:KZj0QNlO
>>リリカル武者○伝氏
投下乙です。
何というウルトラマン・・・・・・。
あと、変態な敵って素晴らしいよね、うん。
391反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/01/27(日) 20:02:12 ID:TXEZORiP
GJ!
自分も昔作りましたよ武者ウイングゼロ! いやぁ、感動だw
392名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 20:04:14 ID:yCjGBMlx
毎度毎度、よくこれだけネタかけるよなあwwww
393スーパーロボット大戦X:2008/01/27(日) 20:08:47 ID:s/NRJPhP
>>361
そうですか、そんなに誤字が多かったなんて…。もっと注意しなければいけませんね。
ストナーサンシャインは出す予定ですね。まあ当然色々意見はあるでしょうけど、出します。
394名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 20:09:48 ID:ycmEDUWT
リンカーコアあるようですし、威力が落ちても同じような技はできそうですよね。
395名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 20:16:52 ID:+XZaDnHM
GJ!
ウイングガンダムゼロカスタムと言うと赤黒い4枚羽バージョンを思い出すな
396仮面ライダーリリカル電王sts:2008/01/27(日) 20:24:00 ID:lVmAnMoy
GJ!武者ウィングゼロカッコイイ。さて、次回の男の子が気になる。
397名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 20:30:06 ID:WKvPklIH
>>395
トゥルーオデッセイのやつ?
398名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 21:05:21 ID:uRIVqVns
>>393
361のが言ってるストナーサンシャインの条件分かってる?
ゲッターを見た人ならみんな分かる至極当然の条件だよな。
ゲッターをゲッターとしてる最低条件だし。
399名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 21:11:56 ID:D6LUSI+i
三十分後くらいに投下したいんですが構いませんねッ!
400×DOD:2008/01/27(日) 21:12:42 ID:D6LUSI+i
だからコテ忘れた(´;ω;)
401スーパーロボット大戦X:2008/01/27(日) 21:12:52 ID:s/NRJPhP
>>398
それはやはり三人の心を一つにですよね。
そこは何とかカバーします。
402名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 21:16:39 ID:n9eQT7gj
ゲッターを信じて、「三つの心を一つにする」ですね
しかし真ゲッターを出すのは少し無理があるような気がします
隼人ならともかく竜馬ではゲッターを改造するのが限界だと思います
あとオープンゲットが有るのも変です
竜馬のブラゲは変形機構はオミットしてあるんですよ?
この真ゲッターを作ったのが竜馬ならオープンゲットは必要ない気がします
そもそもオープンゲットはパイロットが三人居るからこそ高速での変形・合体が可能な訳でして
一人ではオートで合体させてる間に撃墜されますね
長文失礼しました
403名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 21:16:50 ID:x0C3ESqY
>>399
投下したなr(ry
404名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 21:18:59 ID:ycmEDUWT
君が!泣くまでッ!支援するのを止めないッ!!
405名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 21:19:23 ID:KZj0QNlO
>>399
あぁ、待ってるぜ!
406名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 21:23:08 ID:n9eQT7gj
気合を入れて支援します!!
407スーパーロボット大戦X:2008/01/27(日) 21:24:03 ID:s/NRJPhP
>>402
そこは煙のせいです。煙の時間が思ったよりも長く竜馬に合体の時間を与えたからです。
それに竜馬は第1話でも一人だけのゲッターでもオープンゲットで合体がはやかったはずですし。
408反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/01/27(日) 21:24:33 ID:gXB8G18L
アウヌッ! 先を越された!orz
…今日はもう無理かな…支援
409名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 21:25:19 ID:2zr+ulsx
ゲットマシンごとにそれぞれの心を通い合わせて一つにしなくてはならない。
つまり、オープンゲットを入れた時点で、ストナーサンシャインは使用不可能になってしまう。
もともとダメだった条件を、更に悪化させたわけだ。
まだオープンゲットできないで使うほうが言い訳がたつ。
もう言い逃れはできないが、まだ2つほど手があるから、どっちかを使うかもしれないな。
どっちも博打だけど。
410名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 21:28:21 ID:v8QliCJo
>>407
そういう所はSSで語らないと駄目なんじゃないかと
411スーパーロボット大戦X:2008/01/27(日) 21:31:14 ID:s/NRJPhP
>>410
そうですね。もう少し説明を入れよう。
納得できない人が多く出るかもしれないがこれだけははっきり言います。
ストナーサンシャインは何とか理由をつけて出させます。
412名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 21:35:16 ID:Qw2/euYN
>>411
地の文が説明文すぎる気がする。
もっと小説を読んで、演出の仕方を覚えた方が良いと思う。
413名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 21:36:31 ID:eQ19RW6N
ところで人間サイズのゲッターでオープンゲットしたら
乗ってる(着込んでる?)竜馬が一時的にバラバラになるのでは
414名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 21:37:49 ID:x0C3ESqY
>>411
まとめに載る前に龍騎様に載せないで下さいましと土下座して書きなおすべし
415名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 21:40:17 ID:x0C3ESqY
>>413
竜馬の体がゲッターに合わせて小さくなってる不思議仕様
416×DOD 五章四節 1/8:2008/01/27(日) 21:42:25 ID:D6LUSI+i
 オークション会場であり警備任務の地であるホテル・アグスタ、屋上のヘリポート。留め金が嵌
まる音がふたつあった後、ヘリから降りたカイムの服のみの軽装は、再び革の外套に包まれた。外
見からはやはり大量の武器を持っているとは窺えず、背中に負った巨大な鉄塊以外は、完全に衣の
下へと隠れてしまっている。
 そこにはやての守護騎士の一人、シャマルが歩み寄り、ヘリの中でできなかった施設の構造、細
かい配置の説明と、任務に当たっての注意事項――被疑者を殺害してはならない、確保を優先する、
など――を伝えていく。カイムと彼から間接的に話を聞いていたドラゴンには、まだ任務内容の一
部しか伝えていなかったのだ。教練後などの時間でフォワードたちが事前に受け取っていた情報を、
この男にも伝えておく必要がある。
 ホテル外で何か異常があった時の指揮はシャマルに委任され、はやてがホテル内部に入り直接命
令をしないと聞いた時には一瞬疑問の視線を向けはしたが、ドラゴンが音なき声で割り込まなかっ
たということは了解の意志とみていいだろう。
 そのうちバリアジャケットも無くて大丈夫ですかと尋ねられたが、カイムはドラゴンの仲介で返
事をすることもなく、ただシャマルを見続けるだけだった。
 基本的に反応が無いときは手出し口出し無用なのだ、というのは六課の面々も理解しつつあり、
カイムと今まで接点がほとんどなかったシャマルも何となく察したらしい。同じ問いを二回繰り返
すことはなく、腕に巻いた通信機の受信方法を念のためにと確認しはじめる。
 その様子を、ティアナは笑みを消したまま見つめていた。
 先ほどヘリの中で男の持つ数々の武器を見ていた時のような、割と和んだ表情は無く、向けてい
る目はどこか厳しい。表情は固く、唇は真一文字に結ばれていた。
 目線の先には、カイムの背の鉄塊。
 それだけではない。外套の裏から視界には入らないものの、ティアナの脳裏には男が機内で見せ
た武器が、次々とよぎっていた。
 氷を生んで見せた黄金色の「草原の竜騎槍」、やはり以前自分たちにも使われた黒い雷の短剣、
竜の解説によれば縮小できないため魔法を使って見せることはなかったが、先の任務で鉄球を出現
させたという湾曲した鉤型の剣。
 当然だがどれも見たことのない武器であり、デバイスの造られていない世界からよくこれほどの
魔法具がと、その時は皆と同じように思った。
 自分と、そして飛び入りだが共闘を張ったスバルがカイムに再戦を挑んだ時、それらが全く使わ
れなかったことには、自分はまともに相手にされていなかったのかと思い一瞬だけ怒りを覚えはし
たが……よく考えればそれはヴィータも同じこと。実際次々と出てくる武器を目の当たりにして、
彼女は複雑そうな、でもどこか得心した顔をしていた。そういうこともあってティアナはもう、そ
の件については割り切ることにしていた。
 だが、カイムが鋸の様な刃を持つ白蝋の剣を手に取って魔法を使った時、ティアナの表情は途端
に一変した。
 剣に込められた魔法の名はインビジブルブレス、使用者の身体を透明にして視認を防ぐ魔法。自
分が使う幻術魔法の一部と、全く同じ種のものであった。
 竜の『声』がその説明をするのを聞き、まさかと思い見るティアナの前で、カイムが魔力を集中
し剣に通すと、刃から白い輝きが溢れ出して光の被膜が全身を覆っていく。そうして次の瞬間、彼
は見事なまでに不可視となってみせた。
 目を見開く自分の左右から、おお、と驚きの声が漏れて、スバルはティアと同じだなどと言い出
して、嬉しそうに肩を叩いてきて――。
417リリカル龍騎@携帯 ◆YHOZlJfLqE :2008/01/27(日) 21:44:41 ID:g+9CWEfO
>>414
既に載せてますが何か?
支援
418×DOD 五章四節 2/8:2008/01/27(日) 21:45:04 ID:D6LUSI+i
「……」

 無言のままにティアナが見ると、説明を受け終えたカイムは硝子が陽光を照り返すのを見、屋上
から見下ろせるホテルの全容を眺めていた。かつて住んでいた世界はミッドチルダほどの文明を持
っていなかったこともあって、その視線はいつもの無関心さとは違い、珍しいものを見た人間の見
せる種の、興味の色がほんの少しだけ混ざっている。
 視界の隅では、カイムの様子を下から見上げていたキャロが、唐突に手を取られて驚き振り返る
ところだった。幼い召喚士が顔を向けた先にはフェイトがしゃがみこみ、ケリュケイオンの嵌めら
れたキャロの小さな手を、同じく横に並んでいたエリオのそれと一緒に、ぎゅっと握っている。
 疑問と共に訊ねる二人に目線の高さを合わせたフェイトは、何やら表情を引き締め、

「気を付けてね……」

と、いたく真剣な顔で言い聞かせた。
 そこに同僚や上司たちの視線も加わり、しかしそれもどこか微笑ましげ雰囲気が混じっていて、
二人の子供達はどうにも居心地が悪そうだった。とはいえ少なくとも、内心では決して嫌という訳
ではなさそうである。戸惑いと一抹の恥ずかしさは感じているようだが。
 ティアナは目を背けた。
 新型となった己の相棒、カード型の待機形態を保ったクロスミラージュをぐっと握り締めて、テ
ィアナは己の体内に巡る魔力の流れを確認する。何かに急かされるかのように。
 スバルのようにカイムの魔導を、自分のそれに同じ技術だと無邪気に喜ぶ気にはならなかった。
 見回せば背後には歩く巨大魔導砲、守護を司る四人の騎士とその主。二人の子供を気遣っている
のは疾雷の戦斧使いで、その子の一人が橋渡しをしているのは、戦場を生きたという竜の騎士。
 誰もがティアナの頭上の、遥か高みから見下ろしている気がした。
 実際彼らは新人ごときが到底力及ぶはずもない大魔導師であり、自分たちより長い時を生きた先
達であり、教師だ。おのれの上に居るのは当たり前のこと。そんな事をとやかく考えるほど、自分
はもう、幼くはない。
 フェイトの秘蔵っ子、竜の召喚士と疾風の槍使い。そして親友は自分の何倍もの魔力を持つ、勇
気あふれる拳闘士。レアスキル持ち。高魔力保持者。それが何だ。ティアナ・ランスターは才能と
いう薄っぺらな言葉に跳ね返されるほど、弱くなど、ない。

「そろそろ時間です。皆さん、頑張りましょう!」
「スバル、ティアナ、配置はヘリで言ったとおりだよ。ガジェットが確実に来るとは言えないけど、
気を付けてね」

 リインの激励を追って、隊員二人を気遣うスターズ分隊長のなのは。スバルとティアナの返事が
重なるのを皮切りに、有事の際に屋上で指揮を執るシャマルを除いて、魔導師たちが屋上からホテ
ル内部へ向けて歩を進めはじめた。
 その中カイムがどういうことか、他の魔導師たちが行くにもかかわらず動こうとしない。気づき
振り返るフェイト。フェイトの真後ろにちょうど位置していたなのはとキャロ、ティアナが何かと
目を向ける。
 屋上から森を見たままだったカイム。ここまでの道で別れたドラゴンを気にしているのだろうか。
それとも思念を飛ばして、二人だけで会話をしているのだろうか。
419名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 21:45:33 ID:KZj0QNlO
支援
420名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 21:46:00 ID:KZj0QNlO
支援
421名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 21:47:23 ID:n9eQT7gj
愛用武器だったインビジブルブレスだ!
そして支援
422×DOD 五章四節 3/8:2008/01/27(日) 21:48:34 ID:D6LUSI+i
 だがキャロが近付き呼ぶと、彼は振り返って歩き出した。会話を切り上げたのか、単に気になって
いただけなのか。
 その内心を読みきれず、やはりどこか得体が知れない男だと思いながらティアナが視線を切って、
後ろで呼んでいるスバルの方へ向かおうと踵を返す。その時ちらりと、隊長二人の顔が視界に入る。
 そして、見た。

(え?)

 なのはとフェイトが、こちらに向かって歩くカイムに目をやっている。その顔色に乗った、どこ
か不安と心配を孕む気配をティアナは見た。
 見たことのない表情だった。六課へ引き抜き配属されてからフェイトはともかくとして、なのは
と毎日のように顔を合わせている、ティアナですら。
 咄嗟に記憶をたどってみるも、なのはが彼女に見せたことがあるのは気づかいを含む優しい表情
と、教練時の厳しくも真剣なあの顔つきだけ。彼女はいつだって「スターズ分隊長」であり、「高
町なのは教導官」であった。それが今、何故あの男を見て、あのようなかおを?

「なのはさん?」
「……うん。行こう、ティアナ」

 ティアナがなのはに呼びかけるとその表情は消え、心配など微塵も感じさせない、普段通りのあ
の明るい笑顔に戻っていた。
 フェイトをも見るがこちらも、先程の名残のないいつもの顔だ。先に入口のドアへ向かったなの
はに続き、カイムがそこに向かうのを見て、金髪を揺らして彼女たちの後ろを歩きはじめる。
 ティアナもまた歩き出す。疑惑の男の背中を、目で追いながら。
 思い返せば、異世界から来訪したというこの男と竜は、今まで機動六課に割と良い影響を与えて
きた。彼ら自身の力に加えてさらに、なのは以外に竜にも教えを受けたキャロの竜召喚の制御、フ
リードリヒの火炎と翼の扱いはここのところ急激に成長している。もともと強力だった隊の陣容は
その戦力をさらに増大させ、制限付きとはいえもはや異常なレベルに達していた。その上エリオや
スバル、そしてティアナ自身の意欲を刺激したのもまた事実。
 なのに今の、見間違いとは思えないあの表情は、いったい何だったのだろうか。
 ――それが、カイムの過去を一端とはいえ知ったなのは達が、クロノから彼とドラゴンの最後の
闘いの顛末を聞いたがゆえに抱いた、未知のなにかへの言い知れぬ感情なのだと、ティアナが知る
術はない。
 だがなのはとフェイトの後ろ髪を眺め、カイムの後ろ姿を見て彼女は思い出す。以前自分とスバ
ルを雪辱戦で散々に負かしてみせたこと。
 そしてつい先ほど己と同種の幻術魔法を使い、ヘリの中で姿を、音もなく視界から消してみせた
ことを。

「……」

 舌打ちがこぼれそうになり、ティアナはそんな自分を戒める。先行くなのは達を追って、足の運
びを速めていった。心を乱してはならない。目指す夢がどれだけ遠くとも、どんな壁があったとし
ても、彼女はそこに辿り着く気でいた。
 自分の実力と勇気で、ティアナは「証」を追い求める。ランスターの弾丸の、力の証を。
423名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 21:49:42 ID:KZj0QNlO
支援
424名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 21:51:45 ID:+XZaDnHM
支援
425×DOD 五章四節 4/8:2008/01/27(日) 21:52:03 ID:D6LUSI+i



 厳重な警備が必要なほどの大オークションが行われるだけあって、ホテル・アグスタの敷地も施
設そのものも相当に巨大である。警備をすると一口に言っても様々な場所を入れ替わり立ち替わら
なくてはならない。
 その為には任務のデータを入力したデバイスによる位置や時刻のサポートが、スムーズな移動や
地形の把握に重要な役割を果たしてくれるのだ。
 が、当然ながらカイムはデバイスなど持っていない。
 腕に一つだけ巻いた通信機のみだ。いかなシャーリー製のスグレモノとはいえ、なのは達が持つ
インテリジェントデバイスの様な高度な機能はさすがに持ち合わせていなかった。
 その通信機に向かって逐一指令を出しても良いのだが、あまりにも頻繁になるようだとサポート
部隊の負担も大きい。デバイスによるデータのやり取りに慣れ過ぎてしまい、紙の地図をこの場に
持参しなかったのは隊長陣全員の失念であった。任務中に地図の紙を広げることなどてんで無かっ
たので、不可抗力ではあるのだけれども。
 そこでカイムはホテル周囲で、ある程度自由に動き、敵が出た場合の遊撃の任にあたる運びとな
った。こういう場合下手に行動を指示すると、バックアップの負担が増えるだけでなく彼自身の混
乱をも招くとの配慮があってだ。
 内部見取り図の無いカイムのために、一度六課オフィスをぐるりと案内していることもあって、
ややこしいホテル内の移動は、任務開始前限定でシグナムが付き添う事になった。
 引き受けた時は何やらカイムに言いたいことがあるような顔をしていたが、大体の意図ははやて
には分かっていた。任務がまだ始まっていない今のうちに、彼女を相手にして模擬戦をする意志が
あるかどうか、探りを入れておきたかったのだろう。
 そんな二人の剣士が、同じく地上を警備するティアナやスバルと共にホテル正面方向へ向かう。
シャマルは屋上に残り、ヴィータはホテル内の別の棟へと足を向け、ライトニングの二人の子供達
とザフィーラは地下の駐車スペースへ歩を運んだ。
 なのはとフェイト、そしてはやてはそんな隊員たちと別れ、受付を済ませた後、今頃一般客も入
りはじめているであろうオークション会場へと歩く。
 ホテル内もまた、外観を負う立派で清楚な造りをしていた。
 移動の便宜と幾何学的な美しさを両立した棟の配置、汚れや塵一つない清潔な硝子。けばけばし
さを感じないよう計算されたシンプルな塗りの壁の前には、観葉植物や緻密な描き込みの絵画が適
度な間隔に配されている。無駄に飾らぬ壁面の代わりに、鮮やかな緑や油絵の具の豊かな色彩が、
見る物の目を飽きさせることはなかった。
 そして、そんな道すがら。
 高級感ある赤絨毯の敷かれた通路。隊長達三人が歩くとある廊下で、一つの偶然が起こった。

「あ……」
「……え?」

 Tの文字に交差した通路、三人の中心を歩くなのはに、ばったりと出くわしたこの男。
 眼の奥の柔和な光。落ち着いた雰囲気、優しい表情は唖然としたまま固まっている。
 ややあって互いに事実を正しく認識できたらしく、口を半開きにした情けない顔のまま見つめあ
っていたなのはと男は、はっと我に返った。そうしてからようやく、体裁を保とうと顔面の筋肉に
意識を傾ける。あまり功を奏さなかったけれども。
426名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 21:52:38 ID:KZj0QNlO
支援
427×DOD 五章四節 5/8:2008/01/27(日) 21:55:33 ID:D6LUSI+i
 出くわしたのは、ユーノ・スクライア。
 幼少の高町なのはが故郷で出会い、魔導師となるきっかけをくれた男。お互い忙しくて最近は直
接顔を合わせることも少なくなっていた、大切な幼馴染みだった。

「ひ、久し振り、なのは」
「う、うん、そうだね、ユーノ君」

 二人とも心なし顔が赤い。
 事前にちらりと影を見ていればまだ違っただろうが、お互い存在を予想だにしていなかった。そ
のため二人ともまるで無防備からの再会だ。口がうまく回らぬのも無理はない。

「こ……こ、には、任務で?」
「う、ん。警備の依頼が、機動六課に来て、それで」

 何所からどう見ても、地から足が浮いている。驚きから立ち直ったフェイトとはやてが見かねて、
口をはさんだ。

「久しぶりだね、ユーノ」
「私らも居るんやけど。やっぱり、ユーノ君はなのはちゃん一筋なんやなぁ」

 悪戯っぽい笑顔で見つめるはやての前で、二人は目も当てられないほど赤面し狼狽した。



 とはいえフェイトとはやての存在を確認したことで、二人ともなんとか平静を回復した。
 あまりに唐突な再会ではあったけれども、お互い話したいことはいくらでもある。いつまでも硬
直していたのでは時間が勿体無い。この後ユーノはオークションでの骨董品の鑑定、なのはは当然
ながら会場ホール内での警備任務が待っている。
 ただオークション開始まで、そして任務開始まで幾許か時間があったため、会場へと向かいなが
ら近況を報告し、旧交を温める運びとなった。
 立ち上げたばかりの機動六課の新人教導の日々を送るなのは。相変わらず忙しい巨大データベー
ス「無限書庫」の司書長を務めるユーノ。機動六課設立からはあまり連絡を取る時間が無かったた
め、短い時間であったが、それでも大いに話の華が咲いた。双方充実した日々を送っているとわか
り、横で聞いているフェイトやはやても含めて、自然と皆の口元に笑みがこぼれた。

「じゃあ、ここで。気を付けてね、なのは」
「うん。ユーノ君も頑張ってね」
「ほな、行こか」

 なのはたちは会場内へ、ユーノは舞台の上へ。オークション出演者専用の通路への分かれ道に辿
り着いた四人。
 やはり少々名残惜しいが、公私混同は厳禁である。一瞬残念そうになった表情は、道の向こうを
見据えると同時に毅然としたものに引き締まった。ユーノが脇道に入り、なのは達は会場へと足を
踏み出した。
428名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 21:56:27 ID:KZj0QNlO
支援
429×DOD 五章四節 6/8:2008/01/27(日) 21:59:38 ID:D6LUSI+i
「ユーノ、ちょっと」
「ん?」

 が、途中でフェイトが引き留める。
 てっきりこのまま会場に直行するものと思っていたこともあって、なのはとはやても何だろうと
振り返った。
 顔を向けたユーノの穏やかな瞳が、視線で静かに話を促す。見てとったフェイトは、一つ呼吸置
いて、こう尋ねた。

「封印魔法『声紋』と、『おおいなる時間』……この言葉、聞いたことある?」
「クロノも同じことを聞いてきたけど……」

 問いの内容と返事になのはとはやてが驚き、この返答にはフェイトもまた目を見開いた。

「お兄ちゃんが?」
「うん。だいぶ前に、個人的に連絡してきたんだ。何かあったの?」
「違う世界から来たドラゴンと竜騎士が、いま機動六課にいるんだけど……」

 なのはは語った。突然現れ、ミッドチルダにクロノが連れてきたカイムとドラゴン。彼らが最後
に戦ったという敵が破壊を企んだのが「おおいなる時間」であり、それを防ぎ封印した彼らの手段
を、クロノが「声紋」と呼んだこと。
 耳を傾けるユーノは興味津々といった様子だった。考古学の道を歩むが故か、それとも自分の得
意とする結界や封印の魔法の中で、未知の種の話である故か。

「そうだったのか。クロノも、話してくれてもいいのに」
「クロノ君は何て?」
「『個人的な興味』の一点張り。口止めもしなかったし……きっとなのはたちも聞きに来るって、
読んでたんじゃないかな」
「……」

 思案顔のフェイト。義兄とその興味の向く先が、彼女もかなり気になるらしい。
 クロノらしいや、などと言っていたユーノはそれを見て、こう提案した。

「僕も聞いたことは無くて、ちょうど今調べてたんだ。何か分かったら、そっちにも連絡するよ」
「あ、うん」

 そう彼は締めくくると、じゃあと言い残して、手を振って去った。
430名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 22:00:43 ID:KZj0QNlO
支援
431名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 22:01:25 ID:x0C3ESqY
龍騎さん、仕事早いw
そして支援
432×DOD 五章四節 7/8:2008/01/27(日) 22:03:29 ID:D6LUSI+i
 


 任務開始の時刻を通信機が告げてから暫く時間が経ったものの、視線の先に広がる森は未だに静
寂を保っている。
 同じくホテル外周を守ることになっているティアナから離れ、ホテルの逆の端にカイムは独りで
陣を構えた。即刻戦闘を行うならともかく、今はまだ索敵の段階であり、しかも今回は防衛戦だ。
一か所に複数の人間が集中することは目的にそぐわない。
 任務の範囲を超えてはいけないとはいえ、久しぶりの単独行動であった。ドラゴンはここの西の
森で、六課オフィスとホテルのいずれの非常事態にも駆け付けられるよう待機している。
 「封印の女神」となった妹と別れ、連合軍の傭兵として剣を振い続けた頃の記憶が思い起こされ
る。当然ではあるがあの時まさか自分が世界を旅立ち、異世界を訪れるなどとは、カイムは予想だ
にしていなかった。
 全く、数奇な旅路であった。

『殺さぬ戦いを、お主が呑むとはな』

 ここにはいない、竜の声が男の頭に響く。任務の事を言っているのだろう。
 返事の『声』は返さず、カイムは少しだけ首を曲げて、ホテルの玄関へと視線を投げる。ホテル
そのものの人員は機動六課が前線を守るということで、会場の方に割と多くが向けられていた。そ
れに万が一戦闘になった時に足手まといになるという事は解っているのだろう、入口に人影は無い。
 見取り図の無いカイムのためにと、広大なホテル内の移動には女騎士シグナムが付き添ってきた。
 その際「定期的に模擬戦をするといい。対魔導師の練習になるだろう」とか「手合わせの相手を
探しているのだが、中々骨のある者が居なくてな」など、何やら言いにくそうに言葉をこぼしてい
たが、当たり前だがカイムが返答をできるわけもない。
 頷くことも首を振ることもしないカイムを見続け、しばらくすると彼が口を利けぬのだとようや
く思い出したのか、「この任務が終わったら手合わせして欲しい」と半ばやけになって言ってきた。
首を縦に振ったカイムに「最初からそうすればよいものを」と響いたのは、一部始終を聴いていた
ドラゴンの内心の愚痴である。
 
『――――――――』

 先程の返答を、カイムは思念の波に乗せてドラゴンに飛ばした。
 一瞬驚いたような気配がした後、それでもどこか納得したような空気を感じる。
 そして竜の側から何か『声』を送ろうとする気配があって、ほどなくカイムへと届き……それと
同時に、彼らは気づく。
 音。魔力。森が、騒ぐ。
 直後、ふたりの意識はお互いに、全く同じ言の葉を投げかけた。


 ――来た。
433名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 22:03:48 ID:KZj0QNlO
支援
434名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 22:04:39 ID:n9eQT7gj
シグナムに萌えたw
支援
435×DOD 五章四節 8/8:2008/01/27(日) 22:10:04 ID:D6LUSI+i
 
『召喚魔法を確認しました! 敵が来ます!』

 そう通信が入るよりも早くカイムは革の衣の中に腕をまわし、愛剣を鞘から抜いて外套の内側に
握りしめた。どこか無機質さを感じる異音が遠くから鼓膜を震わせ、彼の鋭敏な聴覚はそれをすで
に捕えている。
 森に在らぬはずの、命ある者の出さない奇妙な音だ。「召喚魔法」と通信が告げたのは本当のよ
うで、その向こうには確かに魔力のゆらぎを、魔導の気配を感じる。
 茂みから姿を現そうとしているのが機械兵・ガジェットドローンであると予測し、カイムはおの
れの内に闘志の火と、赫怒の炎とをくべ始めた。
 術者の魔導師の存在を予想してのことだった。召喚という言葉から小さな娘を思い出し、確証を
得て。
 自分と竜に一度牙を剥いた者を、カイムはもう許す気は無かった。戦う相手は彼らの平穏なる生
を、生きる為に殺す必要のあらぬ夢のような時間を、一瞬でも踏み荒し蹂躙した者。どんな理由が
あろうと、誅に付さねば気が収まらなかった。
 おのれの殺人の欲望ではなく、純粋な怒りから来る衝動だった。それに殺してはいけないのなら、
別の方法で償わせるだけのこと。
 ――殺さぬ程度に膾斬りにするまで。
 殺さぬだけ、お主も少し変わったようだなと、聞いたドラゴンはそう返していた。

 音が近づいてくる。やはり生者ではない。茂みの向こう、霞む視界の果て、急速に接近する影が
三つ。カイムは長剣を握りしめ、体内から魔力を練り始めた。わざわざ姿を晒す愚を犯す所はやは
り、魂無き者の振舞いに相応しい。この種の相手は間合いに入る前に先制して、叩き伏せるに限る。
 だが、近づく者たちの全容が木陰の中から視界に入るにつれ、カイムの目はしだいに疑念の光を
宿し始める。
 そしてある瞬間、深海を思わせる瞳の暗黒が驚きの色に塗り潰された。
 普段は滅多に変わらぬ表情が驚愕に歪み、カイムは、大きく目を見開いた。

 現れた影は、ガジェットではなかった。
 魔導師ですらなかった。
436名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 22:10:11 ID:KZj0QNlO
支援
437×DOD:2008/01/27(日) 22:11:33 ID:D6LUSI+i
「魔法少女リリカルなのはStrikerS ハードモード」\(^o^)/ハジマルヨー


な四節でした。では次回をお楽しみに。
438名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 22:12:24 ID:n9eQT7gj
投下GJ!
そしてここからが本当の地獄だw
439×DOD:2008/01/27(日) 22:12:53 ID:D6LUSI+i
追伸
>>「一行目にスペース入れる」って前に言ってた人

ありがとう。マジで助かった。
440反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/01/27(日) 22:13:24 ID:gXB8G18L
ユゥーノォー! GJ!

さぁ、片翼の時間ですよ。BGMは「Pray」推奨。
可能なら11時ぐらいを目処に予約取ってもいいですかね? 結局無理になるかもしれませんが…
「いくぞ、最後の戦いだ」(柿原ボイスで)

…まだ最終回じゃないけどね。
441スーパーロボット大戦X:2008/01/27(日) 22:15:14 ID:s/NRJPhP
>>440
支援しますが、俺が見るのは明日の朝になりそうだ…。
442名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 22:16:39 ID:KZj0QNlO
>>×DOD氏
いやっほぉ、相変わらず最高です。
いよいよ大規模な戦闘と、新たな敵の登場。
次の話も楽しみにしてます!
443名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 22:17:40 ID:HqnmnC4D
GJ。
クルヨクルヨ。
ジゴクガクルヨ。


あと、スバルギア・ゲッチュの続きも待ってます。
444名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 22:18:24 ID:4qjaUonS
ちょっwwww この引きはねぇよwww
続きメチャクチャ気になるじゃねえかwwwww
445×DOD:2008/01/27(日) 22:22:49 ID:D6LUSI+i
>>443
ちょこちょこ書いてますが、どうしても先にDODの方が来てしまう。「両方万遍無く」の難しさを感じてます。
待っててくださいです。停滞しててごめんよ。

>>444
(^^)
446322 ◆tRpcQgyEvU :2008/01/27(日) 22:34:43 ID:uekazYmK
久しぶりの近況報告。
日々の忙しさ+展開の迷いのせいで今まで続きをけなかった私ですが、
EDFの今後の方針も固まり、仕事も幾分か楽になってきたので執筆を再開。近いうちに続きを投下できると思います。
詳しく言うと……次スレの中頃あたり?
447リリカル! 夢境学園:2008/01/27(日) 22:36:16 ID:xbMNZsM2
GJ!
次回が気になります! というか、実はまだ続きがあるよとかそういう素敵なオチはないですよね?!
次回が待ちきれない……
448名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 22:42:09 ID:aLecu9ju
446
セントリーガンのリロードをしつつ貴方の復帰を待ってます、ストーム1!
449魔法少女リリカルなのはStylish:2008/01/27(日) 22:54:41 ID:qfRFCk/S
>DOD
まさか、白蝋の剣の魔法を伏線に使うとは…これは盲点だった。
流れ的にはDODお得意の欝展開の前フリっぽい、不安あおりまくりなティアナの心理描写でしたが、しかしある意味これもスーパーティアナタイム!
この辺の心境の変化が以降どう影響していくのか、楽しみで不安でお腹イタイw
そして、ここまでの穏やかな流れに楔を打つかのごとく、次回へなんか黒いものを漂わせながら引きましたね。
ハードモードがどうなるのか、楽しみです。楽しみだけど原作ゲームの内容を思い出すとそれを上回るストレスで更にお腹痛いですww
450反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/01/27(日) 22:58:49 ID:gXB8G18L
2分ほど早いけど投下。

魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使

第17話「願い、みんなで」

「――ブレイクゥゥゥゥゥ! シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥートッ!!!」
玉座の間に、エース・オブ・エースの雄叫びがこだまする。
全力全開のスターライトブレイカーが、聖王ヴィヴィオの鎧目掛けて一斉に襲い掛かる。
ヴィヴィオをそこから解き放つために。
空中に浮遊するブラスタービットから放たれた桃色の奔流が、しかしリフレクのオートガードに阻まれる。
あらゆる魔法攻撃を反射する、射撃・砲撃魔導師との相性は最悪の壁。
桃色の魔力光と不可視の防壁の拮抗。
ややあって、遂に4本の砲撃は、全てあらぬ方向へと弾き返され、壁や床をえぐり、巨大なクレーターを造り出す。
(まだまだ!)
不屈の心は諦めない。
なのは本人による5発目の砲火が叩き込まれた。
正面から放たれたスターライトブレイカーが、リフレクの壁に真っ向からぶつかる。
猛烈なエネルギーの反発。
凄まじいまでの魔力に、周囲の風景が歪む。
壮絶な大衝突は、しかしスターライトブレイカーの消滅という形で終わった。
それでもなお、なのはの顔に落胆はない。むしろ何かを掴んだような強い視線で、ヴィヴィオを見据えていた。
(よし! あの壁の効力が薄まった…!)
ヴィヴィオのリフレクが、初めて攻撃を反射することに失敗したのだ。
これまでいかなる攻撃でさえも跳ね返してきた絶対防壁が、その特性を失った。
度重なる強大な魔力を真っ向から受け止めたことで、バリアマテリアが急激に疲労しているのだ。
(間違いない…次の一撃で破れる!)
2撃目のスターライトブレイカーを叩き込み、それを受け止めた瞬間、耐久限界を超えたマテリアは破壊される。
なのはが決意を燃やし、再びレイジングハートを構える。
「っ!?」
突然、視界の風景が持ち上がった。
否、なのはが落下しているのだ。
いつの間にか、足元にアクセルフィンの感覚がない。
「あうっ!」
訳の分からぬうちに、なのはの身体が床に叩きつけられる。
混乱している場合ではない。幾多の戦いを潜り抜けてきたなのはの身体は、反射的に立ち上がろうとする。
しかし、
(! …う…動かない…っ!?)
それも叶わなかった。
完全な燃料切れだ。
ブラスターモードで限界以上に酷似した身体が、今の攻撃分で、遂にその気力の全てを使い果たしてしまったのだった。
「く…うぅ…っ!」
身を起こそうにも、その身体は今や鎖で地に縛り付けられたかのように重い。
「お願い…動いて…!」
今立ち上がれなければ、ヴィヴィオを助けることができない。
これまでの戦いが、全て無駄に終わってしまう。
そんなことは堪えられなかった。
動けない自分が情けない。そんな終わり方はしたくない。
「ママッ!」
目の前でヴィヴィオが自分を呼んでいる。
あんな幼い子にまで心配をかけてしまっているではないか。
だから動け。
あんな啖呵を切っておいて、こんなみっともない形で終わっていいのか。
しかし、全身を貫く激痛と脱力感は、容赦なくなのはの身体を押さえ込む。
「ヴィヴィオ…ッ!」
こんなに近くにいるのに、その距離がぐんぐんと遠ざかっていく。
なのはの手が、ヴィヴィオに向かって伸ばされた。
451反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/01/27(日) 23:00:01 ID:gXB8G18L
「なのはさんっ!」
唐突に、爆発音と共に聞き慣れた声が響いてきた。
自動防衛モードへの移行と共に閉じられた扉を派手にぶち破り、スバルが玉座の間へと突入してきたのだ。
猛スピードでなのはの元へ駆け寄るスバルに遅れて、ティアナ達3人も入ってくる。
「スバル…みんな…」
「大丈夫ですか、なのはさん!?」
憧れの上官の痛ましい姿を見て、スバルが心配そうに声をかける。
「うん…大丈夫、だから…」
そう答えながら、なのははレイジングハートを支柱代わりにして立ち上がろうとする。
しかし、その足元すら頼りなくふらつき、震える手では上手くレイジングハートを支えにできない。
「そんな…無茶ですよ!」
スバルが止めようとした。
全然大丈夫ではないではないか。こんなふらふらの状態では、ろくに戦うこともできるはずがない。
「ヴィヴィオが…呼んでるの…助けを、待ってる…」
「それならあたし達が助けますからっ! だから…!」
これ以上砲撃魔法を使っては、無理が祟ってどうなるか分からない。最悪死んでしまうかもしれない。
必死にスバルが制止しようとする。それでもなのはは止まらない。
「ヴィヴィオは…私が助けるん、だから…」
自分が助けると言ったのだ。だから、こんな所で倒れてなんかいられない。他人任せになどできはしない。
虚ろな目で、半ば取り憑かれたかのような様子で、なのはは動かぬ身体を酷使する。
「――ッ!」
スバルの目が、細められた気がした。
途端、不意に何かが首元に触れ、強引になのはの身体を持ち上げる。
次の瞬間、なのはは吹っ飛んでいた。
「…!?」
遅れて来る、頬の激痛。
先ほど落下した時以上の混乱が、なのはの脳を襲う。
一瞬の出来事故に、何が起こったのかまるで理解できない。がんと頭を殴られたかのように。
…殴られた?
「ス…スバルッ!?」
困惑も露わなティアナの声を聞いたことで――そして、こちらを睨み付けるスバルの視線を見たことで、なのははようやく理解した。
自分はスバルに思いっきり殴り飛ばされたのだ、と。
ティアナの狼狽ももっともだった。
突然殴ったのも衝撃だが、リボルバーナックル越しの鉄拳を食らっては、それこそ命まで吹っ飛ばされるかもしれない。
「…いい加減にしてください、なのはさん…!」
固く唇を噛み締めた後、スバルが口を開く。
恐らく初めてであろう、彼女の辛辣な言葉。
誰よりも傷付くのが怖かったが故に、誰よりも傷付けるのを怖れるスバルの、初めてのキツい言葉。
「なのはさんが、強くてカッコよくて…少しくらい無茶をしても、平気だってことは分かります…」
それはこの場の誰よりも、スバルがよく知っている。
命を救われ、その背中を追い続けてきた彼女だからこそ、その輝く部分は誰よりも知っている。
「でも…」
それでも、スバルは言わねばならなかった。
「何でもかんでも自分で背負い込んで…!」
思い出されるのは、他ならぬなのはの言葉。
無茶が祟ったことで味わった、撃墜と苦行の日々…その証言。
「自分が壊れちゃったら、意味ないじゃないですかっ!」
そうして今度こそ、完全に我が身を滅ぼすつもりか。
スバルは叫んでいた。
「前々から、ずっと思ってたんです…」
なのはが色々と頑張りすぎているということを。周りに迷惑をかけないことを考えすぎていることを。
「…あたし、なのはさんのおかげで強くなれました…あのギン姉にも勝てました…」
スバルは必死に言葉を紡ぐ。
「…それでもまだ足りませんか!? そんなにあたしは頼りないですか!?」
その瞳に涙さえも光らせて。
「誰かに肩を貸すっていう…そんな当たり前のこともできないと思ってるんですかっ!」
452反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/01/27(日) 23:01:17 ID:gXB8G18L
そしてそれを、なのはは呆気に取られたような表情で聞いていた。
スバルが自分の前で、こんなに怒るのは久しぶりだ。あの模擬戦以来だろう。
能天気だけどどこか気弱な彼女は、いつも笑うか落ち込むか泣くかの三択だったから。
「…もっと、頼ってくださいよ…」
不意に、スバルの声のトーンが落ちた。
烈火のような怒りはなりを潜め、今は消え入るような声と共に、その顔に暗い影を落としている。
「命令してくださいよ…援護しろ、私を助けろ、って…」
訴えかけるようなスバルの声。
自分がなのはと同じ機動六課に入って、必死に訓練を続けた日々。
なのはの背中を追いかけたのは、ただその勇姿を眺めるためではない。
「あたし…どこまでも、ついて行きますから…ッ!」
――手にした力で、なのはを支えるために。
真っ白な広い背中に時々見える、黒い陰り。その身に背負いすぎた重荷や苦しみを、ほんの少しでも、共に抱えていくために。
「…スバル…」
少女の流した熱い雫が、なのはの頬へぽつりと落ちる。
「――まったく、見ちゃいられねーな」
と、そこへ別の少女の声と共に、再び爆音だ轟いた。
壁を破壊して派手に姿を現したのは、ギガントフォルムの鉄槌を携えた騎士と、その背後に立つ2人の人影。
「ヴィータちゃん…」
「教え子に説教を食らうようでは、教官としてはまだまだだな」
銀の長髪を揺らし、孤高の英雄が口を開く。
「セフィロスさん…」
「まあまあそう言わんと。…でも、確かになのはちゃんはちょっと頑張りすぎやね」
祝福の風と一つになった最後の夜天の主が苦笑いを浮かべる。
『皆さんが心配してるのを分かってるなら、もっと応えてあげるべきですよー!』
「はやてちゃん…リイン…」
今度は斬撃の音が鳴った。
魔力の光を放つ蛇腹刀が床を切り裂き、空いた穴からまた新たな人影が姿を現す。
「お前が我らに迷惑をかけまいという気持ちはよく分かる…痛いほどにな」
灼熱の翼を羽ばたかせる烈火の将が。
「だからこそ、我々もおのずとお前を頼ってしまうのだろう」
盾の騎士の名を冠する寡黙な狼が。
「でも…私達も、たまには頼ってもらう側になってみたいのよね」
柔らかな笑みを浮かべる風の癒し手が。
「シグナムさん、ザフィーラさん…シャマルさん…」
「やれやれ…君も相変わらずみたいだな」
そして更に、黒衣に身を包む若き提督がため息混じりに。
「それでもつなら頼もしいで済む話だが、一度折れかけると危なっかしい以外の何者でもないぞ」
「クロノ君…」
新人フォワード達が、ヴォルケンリッター達が、隊長陣が、そして戦艦の提督までも。
戦場のあらゆる仲間達が、一同に玉座の間へと集う。
「――なぁぁぁぁぁぁ〜のはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜っ!!!」
と、今度は入り口の方から、間延びした絶叫が聞こえてくる。
声の主は猛スピードで飛来すると、勢い余ってつんのめり、床にダイビングして土煙を上げた。
「いってててて…」
そして、その声の主は、ある意味なのはが最も慣れ親しんだ声だった。
「ユ…ユーノ君っ!?」
「おい…お前、何でここに来たんだ!?」
無限書庫司書長ユーノ・スクライア。10年前になのはと共に地球の空を駆けた、唯一無二のパートナー。
本局にいるはずの彼の登場に、なのはのみならずクロノも驚愕の声を上げる。
「はぁ…はぁ…なのはが1人頑張ってるって考えると、いてもたってもいられなくて…」
バリアジャケットのマント姿で息を切らせながらユーノが言った。
いかなる職に就こうと、結局のところユーノはなのはのパートナーなのだ。
「まあ…それを言われると、僕も人のことは言えなくなるんだが…」
「にゃはは…」
クロノが困ったような顔をして、なのはが苦笑を浮かべる。
それでも何だか、それが微笑ましくもあった。
453反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/01/27(日) 23:02:27 ID:gXB8G18L
『なのは…聞こえる?』
その時、なのはの通信回線から聞こえる声があった。
声の主は、スカリエッティのアジトへ向かっていた者。彼女が最も信頼する親友。
心優しき金の閃光。
「フェイトちゃん!」
『ごめんね、なのは…遅くなって』
ばつの悪そうな笑顔を浮かべて、フェイトが言った。
今ようやく、スカリエッティの身柄を地上本部に引き渡してきたのだ、と。
『…ねぇ、なのは』
そして不意に、彼女はなのはの名を読んだ。
『なのはは…自分が1人じゃないってこと、よく分かってると思うんだけど…』
フェイトの口が言葉を紡ぐ。
優しく、静かに、ゆっくりと、一声一声に想いを込めて。
『みんな一緒に並んで歩いていくってこと、ちょっと誤解してると思うんだ』
「えっ…?」
突然の言葉に、思わずなのはは虚を突かれたような顔になる。
『並んで歩くっていうのは、隣の人に追いつこうとすることや、その人を支えることだけじゃない…』
疲れて倒れそうになった時には、周りにおぶってもらうことも大切なのだ、と。
「あ…」
すっかり忘れていた。
自分は周りを心配させないよう、弱みを隠すことばかり考えていた。
最近思いっきり弱音を吐いたのは、ヴィヴィオをさらわれた時ぐらいだ。
でも、昔の戦いを思い返してみれば、挫けそうな自分を助けてくれた人は、周りにたくさんいた。
そしてあの頃のそうした記憶の方が鮮明なのは――あの頃の方が、素直だったから。
「はいは〜い! アルフさん到着〜!」
と、そこへ、場違いに陽気な声が響いてきた。
ユーノと同じく入り口から入って来たのは、豊満な肢体を黒いマントに包んだ、赤い犬耳の女性。
「やれやれ、みんなやっぱあたしがいないとてんで駄目だね〜」
「あの…貴方は…?」
面識のないティアナが、女性に問いかける。
「ああ、あたし? フェイトの使い魔だよ」
アルフ。10年前、フェイトの相棒としてなのは達とぶつかり合い、共闘した、赤い狼。
久々に大人の人間の姿を見せた彼女は、何故か大きな白い包みを担いでいた。
「少し遅いよ、アルフ」
「ユーノが急ぎすぎなの! …さーてみんな、お土産持ってきたよ!」
そう言って、アルフが豪快に包みを開く。
中にあったのは、金属の光沢を放つ、色とりどりのカートリッジ。それぞれに合った物が、山のように積まれている。
「本局からかき集めてきたんだ。どうせみんな、もうあまり魔力もカートリッジもないんでしょ?」
「おおー!」
荘厳な光景に、スバルが歓声を上げた。
『周りを見てごらん、なのは』
そこで、フェイトが再び声をかける。
見渡してみると、そこにはいつの間にか人、人、人…
あらゆる立場の者達が、状況も距離も超えて、なのはの元に集まってきている。
それぞれがそれぞれに、頼もしい笑みを浮かべてなのはを勇気づけている。
なのはの周りには、いつの間にか、こんなにたくさんの人達がいたのだ。
『みんながなのはを支えてくれているんだよ』
フェイトの声が優しく響いた。
いつしか、周りの人は、皆守るべき人だと思っていた。
でも違っていた。自分が皆を守るように、自分を守ってくれる人もいた。
それも、こんなにたくさん。
「みんな…」
なのはの瞳から熱いものが込み上げる。
細かな水滴が、すっと頬を伝う。
「――ありがとう」
そして、最高の笑顔で、そう言うのだった。
ようやくなのはは、本当の意味で、1人ではなくなった。
454魔法少女リリカルなのはStylish:2008/01/27(日) 23:02:40 ID:qfRFCk/S
皆に感動だけど……淫獣、お前がナンバー1だ! 支援。
455反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/01/27(日) 23:03:38 ID:gXB8G18L
『さーってと…で、今結局どーゆー状況なのさ?』
融合騎アギトが問いかけてきた。
元はゼストとユニゾンをしていたのだが、今は彼の遺志に従い、シグナムをロードとしている。
彼女の服装や髪色が普段と違うのは、そのためだ。
なのはは瞬時に表情を毅然とした戦士のそれに変え、状況を説明する。
「まず…ヴィヴィオが今、身体にレリックを埋め込まれて、ああいう姿に変えられてしまったの」
視線の先のヴィヴィオの外見年齢は10代後半。オッドアイの情報がなければ、一見では分からないだろう。
「ヴィヴィオの身体の周りの丸いやつは?」
「セフィロスさんの世界のマテリア」
ヴィータの問いになのはが答えた。
あれによって発動する、カウンター能力と攻撃魔法を反射する壁によって、彼女は大いに苦しめられた。
しかし、今はバリアマテリアの耐久力が大幅に落ちてきているので、あと一撃で破壊できる、と説明した。
「大したものだ」
セフィロスが素直に賞賛した。
マテリアが使いすぎで壊れるなど、彼ですら聞いたことのないケースだ。
「なら、突破は私らの出番やね!」
はやてが右拳で胸をぽんと叩いた。
彼女とシグナム、ヴィータが第一陣となり、バリアマテリアへ攻撃を仕掛けて破壊する。
バインドが解けかけているヴィヴィオをザフィーラが抑え、重症を負ったヴィータをシャマルが回復。
「なら、僕達は防衛に回ろう」
「カウンターでの攻撃はヤバそうだからねぇ。あたしも賛成〜」
そして、クロノとアルフが全体の防衛を行うこととなった。
クロノはカートリッジで魔力を底上げすることができないし、アルフも一斉攻撃に向かない格闘しか攻撃手段がない。
「後は、レリックを破壊する第2陣やね…」
「だったら、それはあたし達がやってみせます!」
威勢よく名乗り出たのはスバルだ。
新人フォワード4人組全員の攻撃を束ね、聖王の鎧に対抗するという。
「せやったら、それで決まりやね」
「リイン、アギト、その時にはサポートを頼むぞ」
『はいです!』『おうよ!』
2人の小さな融合騎が同時に答えた。
「最後は、本命のなのはちゃんやね」
「うん」
なのはが力強く頷く。
スバル達4人はまだ隊長陣との能力差が大きいだけに、手加減して攻撃するなどと甘いことは言ってられない。
必然的に全力投球となってしまうのだ。これでは元に戻ったヴィヴィオさえも巻き込んでしまう可能性が大きい。
そこで、なのはがユーノの結界を纏い、攻撃の中をアクセルフィンで突入。レリックを破壊されたヴィヴィオを救出する。
これで作戦完了。
「せや…セフィロスさんはどないする?」
そこではやてが、まだセフィロスの意見を聞いていなかったことに気付き、問いかける。
「悪いが、今日は疲れた…俺も防衛に回るとしよう」
「あらら、セフィロスさんも弱気なこと言うことがあるんやね」
「どちらも大事な仕事だ」
言い訳っぽい語調で言うと、セフィロスはクロノらと合流した。
時々見せるこうした子供みたいなところに、ふっと笑みをこぼすと、はやては皆の方へと向き直る。
「よーし、それじゃみんな行くよ!」
堂々と、決意を込めて。
「――機動六課、最終作戦開始や!」
「「「おうっ!」」」
カートリッジが一斉にロードされた。
456名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 23:03:55 ID:q0Vt9Zrm
なんという燃える展開
支援だ! 支援せねばならぬ!!
457反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/01/27(日) 23:05:05 ID:gXB8G18L
やがて全員がそれぞれの配置に着き、準備が整う。
上空からリフレクを破りにかかる第1陣。地上最前線に立って後衛を守る防衛ライン。
地上からレリックを破壊する第2陣。そして最後方に、なのはとユーノ。
「響け、終焉の笛…!」
はやての足元にミッド式の、正面にベルカ式の魔法陣が形成され、眩い白光を放つ。
シグナム、ヴィータ、ザフィーラらもまた、それぞれに準備を整える。
(絶対に助け出す…!)
この手で救いの一手を切り開くことができれば、それは大きな自信になる。
大切な人達を守るために、戦っていける。
「行くよ、みんな!」
号令が発せられた。
「鋼の軛ぃ!」
「轟天爆砕!」
「燃えよ!」『隼ぁ!』
守護騎士達もまたそれぞれに呼応し、雄叫びを上げる。
「でぇぇぇぇぇぇぇやっ!!!」
ザフィーラが鋼色の楔を放つ。
「ギガントォ! シュラァァァァァァークッ!!!」
ヴィータが巨大な鉄槌を振り下ろす。
「『フランメファルケン!!!』」
シグナムが灼熱の一矢で狙い撃つ。
「――ラグナロク!!!」
そして、はやてが純白の波動を解き放つ。
徐々にその効果を薄れさせていたバインドに鋼の軛が突き刺さり、ヴィヴィオの身体を固定。
続けてギガントシュラーク、フランメファルケン、ラグナロクの三連撃が迫る。
4つの砲火と1つの鉄塊に対抗すべく、即座にリフレクが展開された。
ヴィヴィオの無敵の壁とヴォルケンリッターの一斉射が真っ向から激突し、凄まじいまでのスパークを輝かせる。
否、最早その障壁は無敵たり得なかった。
はやてとシグナムの魔法が爆ぜ、ヴィータのグラーフアイゼンが跳ね返る瞬間、リフレクもまたガラスのように砕け散る。
光を放っていたバリアマテリアにもまた亀裂が走り、遂に音を立てて粉砕された。
「よしっ!」
これで防御は突破した。第2陣以降が気兼ねなく攻撃に入れる。
はやてが小さくガッツポーズを作った。
しかし、まだ油断はできない。
カウンターが攻撃に反応し、ファイガ・ブリザガ・サンダガの三重奏を奏でる。極大の魔力がスコールとなって、六課陣営に降り注いだ。
「防衛ライン!」
「任せろっ!」
「待ってました!」
はやての指示に合わせ、クロノ達が躍り出た。
クロノがブリザガを、アルフがサンダガを、そしてセフィロスがファイガを防御する。穴の空いた部分は、シャマルの防壁が補った。
「くっ! …なのはちゃん…これ程の攻撃を受け止めてたなんてね…」
雲霞の如く襲い来る攻撃を、苦悶の声と共にシャマルが受け止める。
「よくもまぁ、あんな小さな身体にこんな物を持ってたもんだよ…!」
共に遊んだ時の無邪気な笑顔。そこからは、この圧倒的な破壊係数はまず感じられない。
アルフの頬を冷や汗が伝った。
そして彼女の眼下では、セフィロスとクロノが踏ん張っている。
「どうした提督殿、顔色が悪いぞ」
皮肉るようにして、セフィロスがクロノへと声をかける。
「フッ…お前こそ、しばらく見ないうちにやつれたんじゃないか?」
クロノもまた自棄気味な笑みを浮かべ、挑発的な言葉をセフィロスへと浴びせた。
どちらも魔力はからきし。カートリッジは使えない。だが、こいつより先に倒れるのは癪に触る。
男達もまた奮闘していた。
458魔法少女リリカルなのはStylish:2008/01/27(日) 23:05:34 ID:qfRFCk/S
そういえば、アドベントチルドレンのラストもこんな展開だった!
駆け付ける旧知の仲間たち。BGMはもう決まりだ!
459反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/01/27(日) 23:06:17 ID:gXB8G18L
防壁ラインの背後に立つ、第2陣メンバー達。それぞれに魔法陣を展開し、タイミングを見計らっている。
狙うは、ヴィヴィオの反撃が途切れた瞬間。でなければなのはが危なくなる。
『エリオ、キャロ…なのはのこと、お願いね』
通信越しにフェイトが2人の子供達に語りかける。彼女も全速力でゆりかごへと迫っているが、この最後の戦いには間に合わないだろう。
「分かってます。なのはさんは、私達が全力でサポートします!」
「だからなのはさんは、ヴィヴィオを助けることだけに集中してください!」
エリオとキャロが、勇ましく宣言した。
いつの間にか、この子達も立派なストライカーに――勇気を与える者になったものだ。そう思い、なのはもまた、柔らかな笑顔で応じる。
その一歩前には、スバルとティアナの姿もあった。
「ティア…結局いつもティアに頼っちゃうけど、タイミングを…」
「やれやれ…結局人を突き動かすのは、熱血漢の臭い台詞ってわけね」
攻撃のタイミング指示を頼もうとしたスバルだったが、それはティアナが不意に発した、独り言めいた言葉に遮られる。
「ティア?」
思わず怪訝そうな顔をして、スバルがそちらを向く。
いつもの、何だかんだ言って世話焼きなティアナの笑顔があった。
「今回はアンタに花持たせてあげるわよ。あたし達4人のトリガー…アンタに預ける」
この状況はスバルの功績だ。スバルの鉄拳と叱咤があってこそ、今の自分達がある。だから、その役目はスバルのものだ、と。
「…その代わり、絶対成功させなさい!」
厳しい戦士の顔に表情を改め、ティアナが言った。
「…うんっ!」
スバルは満面の笑みでそれに答える。そして正面に視線を戻すと、その瞳を閉じた。
(…おかーさん…ギン姉…)
この身体があるのは母のおかげだ。この左腕の力はギンガの力だ。
(そして…なのはさん)
そして、その右腕の力はなのはが育ててくれた、自分の力。
(みんながあたしを支えてくれるから…あたしが今、ここにいる)
それが、スバルの伝えたかったこと。
戦闘機人に生まれ、空港火災の死の淵から助けられたスバルだからこそ、最もよく知っていること。
(だから、この一撃は絶対に成功させる!)
今再び1人の身体に揃った、両の手のリボルバーナックルが振りかぶられる。
(みんなの想いを乗せたこの力…!)
母の魂はこの胸に。相棒の支えはこの両脚に。
ギンガの優しさはこの左腕に。なのはの願いはこの右腕に。
全身全霊に宿る人々の想い。
(――エクセリオンバスターを!)
それら全てを、己の両拳に込めて。
攻撃の豪雨が、遂にぴたりと止んだ。
「GO!」
スバルの掛け声に合わせ、それぞれがそれぞれに自身の魔力を解放する。
「クロスファイア・シュート!」
ティアナの生み出す無数の弾丸が。
「サンダーレイジ!」
エリオのストラーダが放つ電撃が。
「ブラストレイ!」
キャロがフリードに命じた業火が。
「エクセリオンバスター!」
スバルの作りし魔力スフィアへと集束する。
はやての身体からリインが、シグナムの身体からアギトが離れ、巨大なスフィアをコントロールする。
膨れ上がった絶大な魔力は、ブーストアップによって威力を高められ、祝福の風と烈火の剣精の加護を受け、その結合を強固にした。
「集束率、安定完了!」
「いつでも行けるぜぇ!」
リインとアギトが合図した。
狙うは一つ。一撃必倒。持てる力の全てを込めて。
「いっけぇぇぇぇぇぇぇ!」
スバルが叫ぶ。
「エクセリオォォォォォォォォォォォォォォォーン…ッ!!」
4人の戦士達が声を揃えた。目指し続ける、誇りの名を。
「「「「ストライカァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァーッ!!!!!」」」」
460反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/01/27(日) 23:07:34 ID:gXB8G18L
激震が走った。
一点に集束された魔力が、極太の奔流となって解き放たれる。
さながらダムの大決壊。幅だけを見ても、スターライトブレイカーに倍するほどだ。
猛烈なエネルギーの帯が、真っ直ぐにヴィヴィオ目掛けて叩き込まれた。マテリアの1つが砕ける。
それに呼応するように、ぱん、ぱん、ぱん、と、無数のマテリアが次々と粉砕されていく。
遂にレリックへと達した魔力は、凄まじい速度で赤き宝石を侵食していった。
「なのはさん!」
スバルが呼び掛ける。
この時、ユーノの結界も展開完了。なのはの身体の周囲に、薄い魔力の幕が出来上がる。
カートリッジによって瞬発的に得られた魔力を、全てアクセルフィンに集中。離陸態勢を整える。
「なのは」
と、そこへユーノが声をかけた。
「この戦いが終わったら…大切な話がある」
「ユーノ君…」
振り返ったなのはの目に映るのは、真摯なユーノの目線。
「だから、絶対に帰ってきて!」
「…うん!」
ユーノの言葉に、なのはは力強く頷いた。
(不屈の心は…この胸に!)
胸中でしっかりと呟く。どんな壁も乗り越える、魔法の言葉を。
遂になのはは飛び立った。
バリアジャケットと結界のみを頼りに、合体魔法・エクセリオンストライカーの奔流の中へと飛び込んでいく。
薄壁1枚を通して伝わる圧力と振動。目を覆いたくなるほどの魔力光。
とんでもない子達を育ててしまったな、と思わずなのはは噴き出していた。
(ヴィヴィオ…分かる?)
そして、胸の中で語りかける。
(私を助けてくれる人が、こんなにたくさんいる)
光の先で自分を待つ、愛する我が子に向かって。
(この人達はみんな…ヴィヴィオのためにも戦っているんだよ)
ヴィヴィオを助けるために、みんな頑張っている。ヴィヴィオはいちゃいけない子なんかじゃない。
(ここが――ヴィヴィオの居場所なんだよ)
なのはは更にアクセルフィンを加速させる。
(みんながヴィヴィオを助けてくれる。みんなが私を助けてくれる…)
だから。
(戦える!)
彼方にその姿が見えた。漆黒の鎧が砕けていく。
その先に――ヴィヴィオが待っている。
「ヴィヴィオォォォォォォォォォォォォォォォォォォーッ!!!」
力一杯に叫んだ。
「なのはママァァァァァァァァァァァァァァァァァァーッ!!!」
伸ばした互いの腕が、固く結ばれた。
ヴィヴィオの小さな身体を強く抱き締め、なのはは一気に急上昇する。
猛烈な加速でエクセリオンストライカーの流れを割り、光の中から飛び上がる。
そして、その腕にしっかりと我が子を抱き抱え、力強く鉄の床を踏み締める。
偽りの玉座を吹き飛ばす大爆発が、純白のバリアジャケットを盛大に照らした。
「…怪我はない、ヴィヴィオ?」
「うん…」
腕の中で頷くのは、あのいつものヴィヴィオ。
取り戻した。
これで全ての作戦は完了だ。向こうでは、仲間達が歓声を上げている。
なのはもそれに応えるべく、手を振ろうとする。
その時、その拍子に、足元がふらりと揺れた。
「あ…」
力の抜けてしまったなのはの身体が、そのまま倒れそうになる。
瞬間、閃光が瞬いた。
なのはを抱き止めたのは、愛すべき金と黒の魔導師だった。
「遅くなってごめんね…なのは」
見上げた先で、あの笑顔が微笑んでいる。
「…ありがとう、フェイトちゃん」
461反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/01/27(日) 23:08:51 ID:gXB8G18L
全ては終わった。
ゆりかご攻防戦最後の作戦は大成功。
後は、途中でディエチの身柄を確保し、今引きずってきているクアットロ共々回収するだけである。
全てを見届けたセフィロスは、静かになのはとヴィヴィオの元へと歩み寄った。
「あ…こわいおにいちゃん」
相変わらず、ヴィヴィオは容赦のない呼び方をしてくる。脇でなのはとフェイトがくすくすと笑った。
それがどうした。今はこの際「こわいおにいちゃん」で十分だ。
セフィロスはそのヴィヴィオへと声をかける。
「…1人で立てるのか」
なのはの手を握りながらも、確かに地面を踏み締める足を見て、セフィロスが問いかけた。
「うん…つよくなるって、やくそくしたから」
いつしか、ヴィヴィオの赤と緑の目には、微かに今までにない頼もしさがあった。
最も、セフィロスに取っては、それが少し心配でもあったのだが。
「そうだな…だが、子供のうちは、もう少し母親を構ってやってやれ」
でなければ寂しがってしまう、とセフィロスが言った。
「俺には母がいないからな…」
屈んでヴィヴィオに目線の高さを合わせながら、そう呟く。
セフィロスに親はいない。産みの親は結局最後まで分からず、遺伝子の親は遥かな昔に死に絶えた。
しかし、たとえ血が繋がらずとも、ヴィヴィオには母が2人もいる。
いつまでも味方でいてくれる、大切な人がいる。
「お前は恵まれているんだからな」
だから甘えられるだけ甘えてやれ、と。
セフィロスの手が、優しくヴィヴィオの頭を撫でた。
彼が初めて見せる、あからさまなまでの優しさ。
それを間近で見届けたなのはとフェイト――そして、少し離れた所のはやてもまた、穏やかに微笑んでいた。
「あーっ!」
そんな心暖まるムードを真っ向からぶち破るように、スバルのすっとんきょうな
声が上がった。
「ンだよスバル?」
「たたた大変です! あたし達、この人数でどうやって帰ればいいんですか!?」
言われてみればその通りだ。この場に集まったのは計18人と融合騎2人。全員魔力はすっからかんで、自力での飛行は不可能。
外に待たせたヘリも、いくら何でもこの人数は乗せられない。即座に重量オーバーだ。
あっという間に周囲に動揺が広がる。
「ああ、それなら大丈夫」
しかし、それが消えるのもあっという間だった。
「僕達が乗ってきたヘリがある。半分そっちに乗ればいいんだよ」
「ふっふっふ〜…まさかあたし達が、生身で飛んできたとでも思ったの?」
助け船を出したのは、ユーノとアルフだった。
「いやっ…たああああああああああ!」
またもスバルの声を皮切りに、再び歓声が巻き上がる。
帰りの道は確保できた。後はとっとと外に出るだけだ。
「さあ、脱出するぞ! 僕らがいては、艦隊の攻撃の邪魔になる!」
クロノの号令と共に、皆が一目散に出口へと駆けていく。
それはセフィロスも同様だった。
「今回は、なのはちゃんに見せ場譲ってもうたね」
と、横から声がかけられた。
見ると、すぐ隣ではやてが走っている。
「たまには俺も休みたいからな」
「またまたぁ〜♪ ホントは目立ちたかったんやないのぉ?」
ぐりぐりと肘を当てながら、はやてが無邪気な笑顔を向ける。
それをセフィロスは、毎度毎度ながら、ため息をつきながら好きにさせるのだった。

かくして、機動六課の面々は聖王のゆりかごを脱出。
本局の次元航行艦隊の一斉攻撃により、ゆりかごも撃沈された。
ここに、ミッドチルダ最大の危機・JS事件は、終了したのだった。
462反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/01/27(日) 23:10:05 ID:gXB8G18L
「ああ、せや。セフィロスさん」










「…セフィロスさん?」










そして、ヘリの中、










「セフィロスさんっ!」










セフィロスは意識を失った。
463名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 23:10:06 ID:iKgM58wN
支援
464反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/01/27(日) 23:11:14 ID:gXB8G18L
投下終了。…アルフおっぱいサイコー!(ぇ
まぁそれはともかく、何だかヴィヴィオとセフィロスの会話がSMC氏と被ってしまいました…無念orz

実は3話を書いた頃には既に仕上がっていたこの台詞。
発端は「スバル=空気」という書き込みでした。
意地でもスバルが準主人公だってことを分からせてやる! …と思って構成したのですが…どうでしょう?
StS本編でもこれぐらいのフルボッコやればよかったのに…

エクセリオンストライカーは、遊戯王ドーマ編での究極竜騎士のイメージ。4人の台詞もあの素敵カットインでw

さて、いよいよ次回が最終回です。
465名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 23:14:03 ID:iKgM58wN
こころが震えた。

GJ!
466名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 23:14:31 ID:q0Vt9Zrm
>>464
GJ
そしてセフィロスが…次回どうなるんだろう。
全く予想できない
しかし死亡エンドじゃないよね?
もしそうならはやてが哀れ過ぎる
467魔法少女リリカルなのはStylish:2008/01/27(日) 23:17:48 ID:qfRFCk/S
>「この戦いが終わったら…大切な話がある」
ええっ、この状況でその台詞はまずいよユーノ君!? ……と思ったら、セフィロスの方が倒れちゃって安心やらまた新しく不安やら。思えば、セフィロスも死亡フラグ持ちだもんね(汗
最終決戦に相応しい展開、お見事でした。そして、次回もう最終回が来てしまいましたか。
長いようで短かかったっすね〜。
寂しい気もしますが、まだラストにセフィロス絡みの大展開が待ってそうなので、感慨深くなるのはとっておきますw
原作主人公に相応しい活躍と根性をみせたなのはもすばらしいですが、今回は意外な登場とその仕方で注目を引き付けたユーノが自分的見所でした。かっこ悪いけどカッコいいぜ、淫獣!
468リリカル! 夢境学園:2008/01/27(日) 23:19:35 ID:xbMNZsM2
うえええええい!!(発狂)
熱い、熱いですよ、反目氏! GJ!!
怒涛のラストバトルから、最後に意識を失ったセフィロス!?
最終回が待ちきれません! いつも凄い内容で羨ましい限りです。

さて……俺も続きを書くかな。
469名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 23:20:31 ID:KZj0QNlO
支援にこれなかったOTZ

>>反目のスバル氏
GJでした。
A’sの最終決戦を彷彿とさせる戦闘シーンに、
スバルのなのはへの一言・・・・・・。
まさに、締めに相応しい話でした。
最終回も楽しみにしています。
470リリカルなのはStrikerS+仮面ライダー:2008/01/27(日) 23:26:24 ID:XPB8Ccx1
GJ反目さん。
僕も、四十一分頃投下しようかな…
471名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 23:27:17 ID:TEYH78Xj
投下乙です。
なんとも熱い展開、原作よりこっちの方が(ry

最後はセフィロスらしく終わると予想。
472名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 23:28:20 ID:HqnmnC4D
なんという少年漫画的王道展開。
心が震えるぜ。
GJ!!

しかし最後の問題、セフィロス……。
果たしてどんなラストが待ち受けているのか?
続きが気になるぜ。
473リリカルなのはStrikerS+仮面ライダー:2008/01/27(日) 23:47:32 ID:XPB8Ccx1
【機動六課サイド】五話「溶けるなアウレフ!ライダーダブルクラッシャーチョップ!!」Bパート
【廃ビル1階】
「拓哉君!あったわ!」
「よし…」

拓哉は壁に掛けられていた古い絵の入った額縁を外す。
額縁の下には青いスイッチが隠されていた。

「これか…」

拓哉が青いスイッチを押すとスイッチの隣の壁が開き、階段が現れる。

「行くよ。」
「うん!」

二人は階段を下り、地下アジトに向かう。

【地下アジト通路】
「やけに簡単に忍び込めたわね…」
「そういうもんだって習ったよ僕は。」
「へぇ…」

ギンガが拓哉と話をしながら歩いていた時、突然壁から巨大な針が飛び出し、彼女を襲う。

「!?」
「ギンガ!」

拓哉は間一髪ギンガを庇い、彼女と共に伏せて針を回避する。

「トラップか…ギンガ、大丈夫?」
「あ…ありが…」
「「!?」」

顔を上げた瞬間、お互いの顔が近いことに気付き、赤面しながら慌てて目を逸らす拓哉とギンガ。

「か…顔…近いわよ…」
「ご…ごめん…」

二人は針の下を潜り抜け、安全圏まで進んでゆっくりと立ち上がる。

「とにかく、今度は僕が君の前を歩くよ。」
「大丈夫なの?」
「うん。君は僕が守るから。」
「あたしじゃなくて拓哉く…ってえ!?」

再び赤面して戸惑うギンガ。

「ああ!勿論!ぜっっっっったいに深い意味はないよ!」

拓哉は慌てて付け足す。

「そ…そうよね!あはははは!」
「そうそう!あっはっはっは!」
474リリカルなのはStrikerS+仮面ライダー:2008/01/27(日) 23:48:17 ID:XPB8Ccx1
【アジトロケット弾格納庫】
二人は数々のトラップを回避しながらアジトを進み、遂にロケット弾格納庫に辿りついた。

「ここね…」
「あれがロケット弾か…」

既に完成間近の大型ロケット弾を見つめる二人。

「よし…ギンガ、今の内に破壊しよう!」
「ええ!」
「それはどうかな?」
「「!?」」

二人の背後にブラック将軍が現れる。

「貴様…ブラック将軍!」
「神城拓哉、ここまで来れたのは褒めてやるぞ。」
「(あたしは無視?ねぇあたしは無視?)」
「貴様の野望もここまでだ!」
「それはどうかな?」
「何?」

ブラック将軍は赤いスイッチを取り出し、それを押す。
すると拓哉とギンガが立っていたフロアが開き、二人はフロアの底に落ちていった。

「「うわあああああああああ!?」」

………
「イテテ…キンガ、大丈夫?」
「ええ、なんとか…」
「神城拓哉!これを喰らえ!」

頭上からブラック将軍の声が聞こえた後、両側の壁から虹色の光線が放たれ、二人の体を包み込む。

「きゃ!?」
「ぐあ!?」

すると拓哉の体からエネルギーが、ギンガの体から魔力が吸収された。

「これは…」
「特殊な吸収光線だ!これで貴様らは変身できまい!ここで凍りつくが良い!」
475名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 23:49:08 ID:ZQoILL/+
支援
476名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 23:49:50 ID:KZj0QNlO
支援
477リリカルなのはStrikerS+仮面ライダー:2008/01/27(日) 23:49:50 ID:XPB8Ccx1
ブラック将軍の声が聞こえなくなると同時に上から二人に向けて冷凍ガスが降り注ぐ。

「不味い!冷凍ガスだ!」
「ええ!?」
「(生体改造でほとんど生身の僕だけど、ドラスストーンのおかげで持つ…だけど…いくら戦闘機人とはいえ、バリアジャケットも纏っていないギンガが、僕のエネルギー回復まで持ってくれるか…)」

考える間に冷凍ガスは周囲に充満し、二人の周りを覆っていく。

「拓哉君…寒い…寒いよ…」
「しっかりして!ギンガ!」

【ロケット弾格納庫】
「ハッハッハッハ!邪魔者は死んだ!ロケット弾の準備に取り掛かれ!」
「ギィ!」

ブラック将軍の指示により、ロケット弾製造に着手する科学員達。

【一時間後】
一時間後、二人が閉じ込められたフロアの内部は−40℃を超えていた。

「チッ…(感覚が鈍ってきた…僕も…エネルギー回復まで…持つだろうか?)」
「た…た…拓…哉…君…」

ギンガは今にも凍えそうな声で口を開く。

「ギンガ?」
「お願い…ある…」
「何?」
「ここで…凍って…死ぬ…ぐらいなら…拓哉君の…手で…あたしを…」
「!?、バカ!何言ってるんだ!?」
「こんな死に方…嫌なの…でも拓哉君に殺されるなら…あたし…笑って天国に…」
「…!」

ギンガの頬に平手打ちを見舞う拓哉。

「え…?」
「ふざけるな…もしそうなったとして君は…残された妹の…スバルの気持ちが分からないのか?」
「スバル…の?」
「…僕は姉さんと義兄さんを事故で失った…いや、僕が殺した…」
「!?」

拓哉は、姉・縁と義兄・利春は、有頂天になり、注意力が散漫となっていた自分をトラックから庇い、命を落としたということを教えた。
478名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 23:50:14 ID:KZj0QNlO
支援
479リリカルなのはStrikerS+仮面ライダー:2008/01/27(日) 23:51:22 ID:XPB8Ccx1
「…」
「それは…拓哉君のせいじゃ…」
「皆そう言ったさ…でも僕は自分がもっとしっかりしていれば、あんなことにはならなかったと思っている…」
「…」
「その後の僕に残ったのは、罪悪感と深い悲しみだ…姉さん達が死んだ後、僕は親戚の家に預けられて過ごした…
おじさんもおばさんも良い人だったけど…僕の悲しみは癒えなかった…
辛くて…悲しくて…心が欠けたみたいで…そんな思いをスバルにさせるなんて…僕は許さない!」
「…!」

瞳から涙を零すギンガ。
零れ落ちた涙は床に落ち、凍りつく。

「…」

拓哉はそんなギンガを暖めるように背後から抱きしめる。

「死にたく…ない…」
「ギンガ…」
「生きたい…スバルに…会いたい…拓哉君…助…けて…」
「…!」

拓哉はギンガを抱きしめる両手に少し力を混め、腰のドラスストーンに語りかける。

「(ドラスストーン…お前に意思があるなら…力を貸してくれ…この娘を…救いたい!)」
『良いよ…ボクとしても君に死なれたら困るから…』
「!?」

幼稚な声が拓哉の心の中に響き、直後にドラスストーンから発された紅い光が拓哉を包み込んだ。

【ロケット弾格納庫】
「ブラック将軍!完成しました!」
「よし…ハヤブサイモリ!ガスを詰めろ!」
「ジュギュウゥゥゥゥゥウ!」
「待てっ!」

フロアを突き破り、ギンガを抱きかかえて出現するアウレフ。

「貴様…何故!?」
「…」

そしてアウレフはギンガをゆっくりと降ろすと、憎悪の篭った目でブラック将軍を睨んだ。

「ブラック将軍…許さん!」
「おのれ…ハヤブサイモリ!奴を殺せ!殺さなければ死刑だ!」

ブラック将軍はハヤブサイモリに命令し、自身は姿を消す。

「分かりました!ジュギュウゥゥゥゥゥウ!」

ハヤブサイモリは溶解スモッグを吐き、アウレフを攻撃する。
ガスはアウレフに直撃し、ハヤブサイモリは勝利を確信した。
しかし、アウレフはガスの中を悠々と突き進み、ハヤブサイモリに接近していく。
480名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 23:51:35 ID:KZj0QNlO
支援
481リリカルなのはStrikerS+仮面ライダー:2008/01/27(日) 23:52:03 ID:XPB8Ccx1
「ば…馬鹿な!?」
「クラモト博士から貰った、スモッグを防ぐ特殊オイルを体に塗っておいた…貴様のガスは通じない!」
「クソオォォォォォオ!!」
「そしてガスの発射装置は…貴様の口の中だ!ライダーパンチ!!」

アウレフは拳に渾身の力を混めライダーパンチを放ち、ハヤブサイモリの口内に装備された溶解スモッグ発射装置を破壊する。

「ジュギュウゥゥゥゥゥウ!!」

口から火花を上げ、よろよろと後退するハヤブサイモリ。
しかしアウレフの怒りは収まらず、大ダメージを追ったハヤブサイモリに素早い拳打と足技の連撃を叩き込む。

「ジュギュゥ…」
「今だ!トォ!」

アウレフは宙に飛び、フライングチョップをハヤブサイモリの顔面に打ち込み、その反動で再び舞い上がる。
そしてきりもみを付け、一直線に降下して再び、ハヤブサイモリにチョップを浴びせた。

「ライダーーーー!ダブルクラッシャーチョップ!!」
「ジュギュウゥゥゥゥウ…」

ライダーダブルクラッシャーチョップを受け、吹っ飛ばされたハヤブサイモリはロケット弾に激突し、アジトとロケット弾諸共大爆発を起こした。

【翌日 機動六課隊舎ギンガの部屋】
翌日、−40℃の空間に閉じ込められたせいかギンガは風邪を引いて高熱を出し、寝込んでいた。

「こんちはー。」
「あ…拓哉君…」

そんなギンガの元に、拓哉が大盛りのお粥を持ってくる。

「ギンガ、大丈夫?」
「ハックション!…うん…大丈夫…」
「大丈夫じゃ無さそうだな…」

ギンガの額から落ちたタオルを自分が持ってきた水で冷やし、再びギンガの額に置く拓哉。

「戦闘機人も風邪引くんだな…」
「まぁね…でも…ホント大丈夫だから…仕事しないと…」

苦しそうに息をしながらベッドから上半身を立ち上げるギンガ。

「…」
「ふぇ!?」

拓哉はそんなギンガの額に自分の額を重ね、ギンガの熱を確かめる。
482リリカルなのはStrikerS+仮面ライダー:2008/01/27(日) 23:52:35 ID:XPB8Ccx1
「な、な、な、な…」
「ダメダメ、まだまだ熱い。寝てなって。」
「う…うん…」

拓哉はそれだけ言うとお粥を置き、ギンガの部屋を出て行った。

「…!!!」

ギンガは顔を真っ赤にさせ、大盛りのお粥を五秒で平らげ、横になって布団をかぶった。

「もぉ〜〜〜!馬鹿拓哉!!」

【次回予告】
政宗一成「死神博士は、強力な戦闘能力を誇るスーパーマシン、ダークセーバーを作り上げた。
ダークセーバーを与えられた怪人ジャッカル男は、ダークセーバーの激しい攻撃でアウレフとガルベストンを追い詰める。
ピンチのアウレフを救うため、ティアナは新型マシン・クリムゾンウインガーで大地を駆ける!
次回、「爆走!クリムゾンウインガー!!」
突き抜けるぜぇっ!」
483名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 23:53:19 ID:KZj0QNlO
支援
484リリカルなのはStrikerS+仮面ライダー:2008/01/27(日) 23:53:45 ID:XPB8Ccx1
投下終了
いつもどおりな上に戦闘パート短いですね…ほんとうにおもさげねがす…
ZOとJはもうちょっと待って…
485名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 23:54:03 ID:yCjGBMlx
し、しがみひろしさん!?
486名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/28(月) 00:03:17 ID:D6LUSI+i
空いてたら避難所のリリカルなのはMSの代理投下を、0:30〜で予約したい。大丈夫でしょうか。
487名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/28(月) 00:08:53 ID:aIO47SDm
よし、支援は任せとけ。
488名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/28(月) 00:17:50 ID:H7YjxJPi
全職人GJ!真祖の人ですが、1話Aパートが出来ましたので、代理投下後投下してもよろしいでしょうか?
出来るだけ誤字、脱字見直したつもりですがありましたら、本当にすいません
489名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/28(月) 00:19:28 ID:4GzaKKw5
>>484 リリカルなのはStrikerS+仮面ライダー
GJ!!
アジトに侵入するも落とし穴のトラップで窮地に陥るのは昭和ならではの展開。
ドラスストーンからの声が今後どのような波紋を起こすのか注目です。

そして……
拓ぁぁぁぁあ哉ゃぁぁぁぁぁあッ!!!!!!!
ギン姉とあんなに密着しやがって、なんて羨ましい奴ッッ!!!!
最近ギャルゲー主人公への階段を上りつつある拓哉。
ライダーとしての本分を忘れずにいるのはいいが、
女性関係に関してはホント気をつけてもらいたい。
最終的にギン姉泣かすようなことになったらただでは済まさんぞ!!!

とりあえず拓哉サイドはギンガが大幅にリードなのかな?
490489:2008/01/28(月) 00:22:16 ID:4GzaKKw5
>>484 リリカルなのはStrikerS+仮面ライダー氏

名前に「氏」をつけ忘れてしまいました。
大変失礼いたしました。
以後気をつけます。
491名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/28(月) 00:31:39 ID:0qoJcLYu
時間になりましたので、代理投下を開始します。
492リリカルなのはMS 代理:2008/01/28(月) 00:32:33 ID:0qoJcLYu
 新暦71年4月29日、この日、ミッド臨海空港が炎に包まれた。
 それは初めは小さな火だったが、すぐに建物全てに燃え広がる業火と化した。
 炎は逃げ遅れた人々を遠慮なく焼き、その命をデスの下へとへと引きずり込む。
 この青い髪の少女『スバル・ナカジマ』もまた、その炎に包まれた空港の中にいた。

「お父さん……お姉ちゃん……」

 スバルは泣いていた。
 父を求め、姉を探し、既に火の海と化している空港内を彷徨いながら、ただ泣いていた。
 死の恐怖や孤独、もちろんそれも泣いている理由には含まれるが、他にももう一つ理由がある。
 先程炎の中で一瞬だけ見えた、炎を纏った人型の巨大な何か。それが辺りに火をつけながら移動するのを確かに見た。
 おそらくあれが、ミッドチルダで最近確認され始めた異形……モンスターなのだろう。
 モンスター達が多くの人々を殺す。その事実がスバルが泣くのに拍車をかけている。
 自分も殺されるのだろうか? 瓦礫の爆発がスバルを吹き飛ばしたのは、ちょうどそんな事を考えていた時であった。
 爆風は子供を吹き飛ばすには十分すぎるほどの威力。その爆発によって、スバルは天使像の正面まで吹き飛ばされた。

「痛いよ……熱いよ……こんなのやだよ……帰りたいよぉ……」

 スバルはただ、泣いていた。


 光がやみ、次にグレイが見たものは辺りを焼き払う炎。
 彼は辺りを見回し、落ち着いて自分の今置かれている状況を確認する。
 まず理解したのは、ここが建物の中だということ。広さはミルザブールの街にあった城と大体同程度だろうか。
 次に理解したのは、どうやら今は何らかの理由で火事になっているということ。
 真っ先にイスマス城での事件を思い出すが、あれはモンスター軍団の襲撃によるもの。これとはおそらく無関係だ。
 続いて装備を確認。自分が使っていたディステニィストーン『邪のオブシダン』と『水のアクアマリン』がなくなっていた以外は万全の状態だ。
 そして最も重要なこと……一緒に来たはずの仲間が周りにいないということを理解。
 転移の時に事故でも起こって散り散りになったのか、それともグレイから見えないだけで近くにいるのか。今はそれを確認できる状況ではない。

「……全く、エロールもふざけた事をしてくれる」

 とにかく出口を探すべく、すっかり手に馴染んだ古刀を手に歩き出した。


 Event No.01『ミッド臨海空港』
493名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/28(月) 00:32:43 ID:aIO47SDm
支援
494リリカルなのはMS 代理:2008/01/28(月) 00:33:03 ID:0qoJcLYu
 ピシィッ。
 天使像の根元にヒビが入る。それも不幸なことに傾いている方向は正面……すなわち、スバルのいる方向だ。
 だが、当のスバルはそれに一切気付かない。今もこの場で泣き続けている。

「助けて……誰か、助けて!」

 ここにはいない誰かへと助けを求めるが、それを聞き届けられる者は誰もいない。
 さらに悪いことに、それを嘲笑うかのようにヒビが像の表面へと面積を広げていく。そして―――――ビキィッ。
 スバルが音に気付き、後ろを見る。そしてその目に自分への直撃コースで倒れてくる像を見た。
 自分の死が確実になっていると本能で理解し、とっさに目をつぶってうずくまる。そんな事をしても何にもならないと分かっているのに。
 そして、その像はスバルを――――

【レストリクトロック】

 ――――押し潰さなかった。

「よかった、間に合った……助けに来たよ」

 いくつもの光の輪が、倒れこむ天使像を縛り上げて落下運動を封じる。
 その後ろ上方には、白い服に身を包んだツインテールの女性……『高町なのは』の姿。彼女の使った魔法が像を止めたのである。
 そしてなのははスバルの所まで下りていくと、優しく笑ってスバルを安心させる。

「よく頑張ったね、えらいよ」

 死を覚悟したときに来てくれた助け。それはスバルの緊張の糸を切り、再び泣かせるのには十分だった。
 但し、今度の涙は先程までのものとは全く違い、恐怖ではなく安堵で流したものだが。

「もう大丈夫だからね……安全な場所まで、一直線だから!」


『上方の安全を確認』

 防御魔法『プロテクション・パワード』で護られたスバルを背に、なのはが愛杖『レイジングハート』を構える。
 レイジングハートが上空を確認。彼女(AIが女性の人格なので、彼女としておこう)が言うには、上は安全。
 それはつまり――――思い切りブチ抜いても問題は無い、という事だ。

「レイジングハート、一撃で地上まで撃ち抜くよ!」
『All light. ファイアリングロック、解……』

 空港の天井をブチ抜くべく、デバイスの制限であるファイアリングロックを解除しようとする。
 だが、その寸前にレイジングハートが何かの反応を検知。一瞬の後にはその正体を理解し、なのはに報告していた。

『マスター、人間とモンスターの反応を確認しました』
「え!? レイジングハート、数と方向は?」
『数はそれぞれ一つずつ。うち一つはあの少女のいる方向から接近していまs「グオオオォォォォォォ!!」

 レイジングハートがそれを言い終える頃には、既にそのモンスターが近くまで来ていた。
 魔族系モンスターの中でも高位に位置する炎の魔人『イフリート』。それがそのモンスターの名だ。スバルが見たモンスターというのもこいつである。

「あ、ああ……」

 スバルの顔に恐怖が蘇り、へたり込む。
 だが、そんな事など知らぬとばかりにイフリートが拳を振り上げた。
495名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/28(月) 00:33:15 ID:aIO47SDm
支援
496リリカルなのはMS 代理:2008/01/28(月) 00:33:24 ID:0qoJcLYu
【ヒートスウィング】

 拳を思い切り横に振り抜き、炎を纏った拳撃を放つイフリート。それを見たスバルは反射的に目をつぶる。
 だが、どうやら今日のスバルは「潰されそうになるが潰されない」というパターンに縁があるらしい。
 あらかじめなのはが張っていたプロテクション・パワードがスバルを護る。いくらイフリートの攻撃でも、さすがに一発や二発では壊れはしない。

「グルルルゥゥゥ……」

 防がれたことを本能で理解するイフリート。どうやらかなり苛立っているようだ。
 だが、執念深いモンスターはその程度では諦めない。再び拳を振り上げる。
 どうやら一度で駄目なら壊れるまで叩くつもりのようだ。
 そして再び―先程までは気付かなかったが、斬撃の痕がついた―拳を振り下ろした。

「させない! アクセルシューター……」

 それを視認したなのはが、すぐさま自身の周囲に光弾を形成。その数、およそ十。
 目標、スバルへとヒートスウィングを繰り出そうとするイフリート。光弾の発射準備完了。

「シューーーート!」

 そして、一斉発射。
 その光弾は狙い過たず(外れていたとしても遠隔操作できるが)イフリートへと接近し、そして――――

【アクセルシューター】
【強撃】

 まるで示し合わせたかのようなタイミングで、なのはの魔法ともう一つの反応の主……グレイの斬撃が決まった。


 時間は少し遡る。
 グレイはこの世界に着いてから、ずっと空港からの出口を探していた……が、一向に見つからない。
 まあ、彼はここの構造を知らない上に、出口に繋がっているであろう道も炎や瓦礫で閉ざされているのだから当然ではあるのだが。
 おまけにマルディアスにいた炎関連のモンスターまで襲い掛かってくるのだから、そのせいでさらに時間が浪費される。
 ……と、またモンスターが近寄ってきた。外見からしておそらくはイフリート。だとすればかなり厄介な相手である。
 幸い、以前戦った時にイフリートは聴覚で相手を探しているということを知ったので、やりすごすのは楽だ。一対一でこんなものの相手をするのはかなり骨である。
 息を殺し、身を潜め、イフリートが通り過ぎるのを待つ。そしてイフリートが通り過ぎ……る前に、あるものを発見。
 グレイがその目に捉えたのは、泣きじゃくるスバルの姿。悪いことにイフリートの進行方向にいる。
 彼は必要とあらば人殺しすら厭わない性格だが、さすがに目の前で子供が襲われるのを見過ごすほどの冷血漢ではない。

【光の腕】

 だからこそ、刀からの光線をイフリートめがけて放った。
 それは見事に直撃し、さらに着弾箇所がパァンと起爆。イフリートを怯ませる。
 この行動は、スバルが助かったという意味では吉だったが、グレイにとってはおそらく凶。今のでイフリートに気付かれてしまった。
 戦闘開始である。

【払い抜け】

 先手を取ったのはグレイ。刀を構え、素早く横をすり抜けるように斬りつける。
 そしてその勢いに乗ったまますぐに離脱。何せ相手がどれ程の怪力かは身をもって知っているのだ。喰らったら到底ただでは済まない。
 ふと、熱と焦げ臭いにおいを感知。発生源である右腕を見ると、火がついていた。

「ちっ……なるほど、セルフバーニングか」

 火を消しながら、この火の原因を理解する。そういえばイフリートは常時火の防御術である炎のバリア『セルフバーニング』を張っていた。
 幸い火のダメージも、皮膚の表面が少し焼けただけで大したことはない。
 いずれにせよ、下手に近付けばセルフバーニングで焼かれる。ならば離れて光の腕などで攻撃すべきか?
 そう考えていると、いつの間にかグレイの体が宙に浮いていた。そのままイフリートの正面へと引き付けられる。
497リリカルなのはMS 代理:2008/01/28(月) 00:33:45 ID:0qoJcLYu
(まずい……!)

 グレイは何度かこの技を見ていたし、受けたこともあったからその正体を知っている。
 この技は高位の大型魔族が扱う大技『コラプトスマッシュ』。簡単に言えば目の前まで相手を浮かせ、ラッシュを叩き込むという技だ。
 だからこそ、すぐに離れようとするが体が動かない。どうやら念力か何かで引き寄せているようだ。

【コラプトスマッシュ】

 ズドドドドドドドドドォン!
 グレイの体にイフリートからのラッシュが入る。一発だけでも相当の威力があると音で分かるような打撃だ。並の人間なら軽く死ねるだろう。
 そのままラッシュの勢いを殺さずにグレイを放り投げ、空港の床へと叩きつけた。その箇所を中心にしたクレーターの出来上がりである。
 これで死んだだろうと思ったのか、イフリートがグレイへと背を向けてスバルの方へと歩いていった。

 だが、イフリートは一つ大きな誤算をしていた。

「まだ、だ」

 それは、グレイがこれで死ぬほどやわではないということ。
 確かに普通ならこれで死んでいた。だが、グレイは長旅の間に大いに鍛えられていたのだ。それこそイフリートのような高位モンスターとも真っ向から戦える程に。
 もっとも、これでダメージが少ないという訳ではない、というかむしろかなりのダメージを受けているのだが。
 イフリートはそんなグレイに気付かず、スバルへと接近。そして咆哮。ヒートスウィングを繰り出すが、それはプロテクション・パワードで止められた。
 一方のグレイは刀を杖代わりにして立ち上がり、再び構えてイフリートへと駆ける。
 そして、イフリートが二発目のヒートスウィングを放とうとした時――――

【アクセルシューター】
【強撃】

 全くの偶然だが、なのはの攻撃と同時に強烈な一撃を見舞った。


「人……? レイジングハート、もしかして」
『先程キャッチした反応と一致。どうやら彼があの反応の主のようです』

 なのはがグレイの姿を見て、先程のレイジングハートの報告を思い出す。そういえば人間とモンスターの反応が一つずつと言っていた。
 すぐにその事を問うと、返ってきたのは肯定の意。どうやらもう一つの反応の主はグレイで間違いないらしい。
 手に持っている刀と状況から察するに、おそらくイフリートの腕に斬り傷を付けたのも彼だろう。
 そのような事を話している間にグレイがなのはに気付き、言葉を発する。

「あの子供とは別の人間だと……?」

 グレイが知る限りでは、先程までなのはの姿は無かった。それなのにここにいる。
 ならばスバル同様にここに迷い込んだか、もしくは何かの目的があってここに乗り込んできたか、である。
 この火災を起こした張本人という可能性も一瞬考えたようだが、それを考え出すとキリがないのですぐに切り捨てた。
 それに……今はそんな事を考えている場合ではない。なぜなら、

【ヘルファイア】

 イフリートはこの二人の思考が終わるのを待つほど律儀な相手ではないのだから。
498名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/28(月) 00:33:57 ID:aIO47SDm
支援
499リリカルなのはMS 代理:2008/01/28(月) 00:34:06 ID:0qoJcLYu
 なのはとグレイ、この二人からの攻撃はイフリートをキレさせるには十分。怒りに任せて火炎弾を放った。
 グレイはこうなることも予想していたのか、重傷の体にムチ打って回避する。

【プロテクション・パワード】

 一方のなのはも、すぐさまプロテクション・パワードを展開。ヘルファイアを受け止めた。
 このバリアはヒートスウィングでも受け止められる程の強度を持つ。ならば最下級クラスの攻撃術くらい、防げない道理は無い。

「魔法盾だと? イージス……いや、セルフバーニングか?」

 それを見たグレイが驚く。このような術はマルディアスでは見たことが無い。
 一瞬セルフバーニングや盾を作り出す土の防御術『イージスの盾』が頭に浮かぶが、どちらとも全く違う……ならばこの世界特有のものだろうか?
 いずれにせよ、こんな事を考えている場合ではない。それよりもイフリートをどうにかする方が先だ。
 炎の中で炎の魔物を相手にする事ほどの下策は無い。外に放り出せば少しはマシになるだろう。
 だが、グレイ一人では到底無理だ。今の満身創痍の状態はもとより、万全の状態でも厳しいだろう。
 キレたイフリートの打撃を避けながら、どうやって放り出すかを考える。クリーンヒットを喰らうのと策を思いつくのでどちらが先かと思いながら。

【アクセルシューター】

「アクセルシューター、シュート!」

 声とともに形成された五つの光弾が、イフリートの背に突き刺さる。声の主はなのはだ。
 イフリートの出現により救助が遅れているので、いいかげんに何とかしないとここにいる二人も助けられないと思ったのだろうか。
 そのままカートリッジをロードし、さらなる光弾を形成して立て続けに撃ち込む。何度も撃ち込めばさすがに参るはずだ。
 ちなみに遠くからの攻撃なのでセルフバーニングの影響は無い。セルフバーニングで防げるのは炎のみなのである。
 これらの攻撃は確かに効果はあった。だが、それは同時にイフリートの怒りを増幅させる。
 次の瞬間、なのはの動きが止まった。その体勢のまま浮き上がり、イフリートの前へと引っ張られる。
 これはもしかしなくてもコラプトスマッシュの予備動作。このままいけば徹底的にボコボコにされるだろう。

 結果だけ言えば、なのははボコボコにはされなかった。

【かぶと割り】

 初撃が打ち込まれる前に高く跳んだグレイが、そのまま頭をかち割るかのような一撃を見舞ったのだ。この体のどこにそんな力が残っているのだろうか。
 さすがにこれには参ったのか、イフリートの束縛が外れる。その隙に距離を取った。
 さらにその近くにグレイが着地し、なのはが礼を言うより前に問うた。

「おい、奴を遠くに吹き飛ばす術はあるか?」
「え……はい、それならいくつか持ってます(術……? 魔法のことかな?)」

 術という聞き慣れない単語に首をかしげるも、おそらく魔法のことだろうと思って返事をする。
 なのはの持つ魔法には『ディバインバスター』や『スターライトブレイカー』といった砲撃が存在する。これならばイフリート相手でも遠くへ吹き飛ばすくらいはできそうだ。
 そしてその答えに満足したのか、グレイは先程思いついた策を話した。


「あの人達も、モンスターと戦ってくれてる……なのに、私は……ッ!」

 スバルは未だ、泣いていた。但し、先程までの恐怖とも安堵とも違う理由で。
 あの二人はあんな大物モンスターと戦っている。それも、なのはの方は間違いなく自分を助けるために。
 それなのに自分は何も出来ない。それが悔しくて泣いているのだ。
 もちろん、何の力も無い自分が行っても一撃でハンバーグにされるのは目に見えている。だが、それでもだ。

「もう嫌だよ、泣いてばかりなのも、何もできないのも……」
500名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/28(月) 00:34:27 ID:aIO47SDm
支援
501リリカル! 夢境学園:2008/01/28(月) 00:37:00 ID:uYkB9pPM
支援!
502リリカルなのはMS 代理:2008/01/28(月) 00:40:00 ID:0qoJcLYu
【腕力法】

 気の補助術『腕力法』で腕力を高め、疾駆。後方ではなのはが杖の先端に魔力のチャージを始めている。
 このまま斬りかかって来るかと思ったのか、イフリートが腕を横薙ぎに振るおうと構える。
 が、その腕は結果的に空中を空振ることになった。
 グレイが床に刀を突き立て、結果的にそれが軽いブレーキとなって減速。結果、そのままなら命中するはずだった腕はむなしく空を切った。
 そして、それが大きな隙となってイフリートの命運を決めることとなった。

【天狗走り】

 床から刀の切っ先が離れ、それが大きな反動を生む。
 そして反動は巨大な運動エネルギーを生み、イフリートの体を直撃した。
 エネルギーをその身で全て受け止めることになったイフリートは当然耐えられるはずもなく、空高く舞い上がった。
 命中と同時に左腕が燃え上がるが、すぐに腕を振って鎮火する。
 そして、その時こそがなのはの待っていた好機。すぐさまレイジングハートを空中のイフリートへと向け、そして叫んだ。

「ディバイィィィーーン……


【ディバインバスター】


 ……バスタァァァァァーーーーーー!!」

 閃光。
 レイジングハートの先端に集められた魔力が、光の砲撃となってイフリートへと飛ぶ。
 砲撃はそのままイフリートを飲み込み、それだけでは飽き足らず天井をブチ抜く。
 その結果、天井にはそのまま脱出路に使えそうな大穴が空いた。姿の見えないイフリートはおそらくそこから放り出されたのだろう。


 一方の外……正確には空港付近の海面。

「グギャアアアアアアァァァァァァァ……」

 海上へと浮かび、これから地獄に堕ちるような悲鳴を上げるイフリートがいた。
 イフリートの体は大部分が炎でできている。それが大量の水でできている海に落ちたとすればどうなるか?
 答えは簡単。今のイフリートのように体の炎が消え、そのままあの世へと逝く、である。
 そうしてイフリートは消えていく体の炎とともに命も消した。
503名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/28(月) 00:40:24 ID:aIO47SDm
支援
504リリカルなのはMS 代理:2008/01/28(月) 00:40:54 ID:0qoJcLYu
 
「こちら教導隊01、エントランスホール内の要救助者、女の子一名と男性一名を救助しました」

 空港上空。なのはがグレイとスバルの二人を抱えて飛んでいる。ちなみにグレイの意識は無い。
 コラプトスマッシュを喰らってボコボコにされ、さらにそこから無茶な戦闘。気の回復術『集気法』を使う間もなく気絶するのは無理もないだろう。
 そして二人を抱えているなのはだが、その状態でも平気な顔をしている。一体どこにそんな体力があるのだろうか?

『ありがとうございます! でも、なのはさんにしては時間がかかりましたね』

 相手の通信士がはずんだ声で答える。が、それと同時に疑問を返した。
 救助に向かったのはエースオブエースとまで呼ばれる程の腕利きの魔導師。それにしては少し救助に時間がかかっている。
 大方、要救助者がなかなか見つからなかったのだろうと思った通信士だが――――

「……中にモンスターがいたんです。多分、かなり強力な」

 ――――全く予想もしない形で返された。

『モンスター!? 何でそんなものが空港に……』

 いくつかの疑問が浮かぶが、とりあえずそう聞き返す。
 それに対し、なのはが返したのは沈黙。彼女にも理由などというものは分からない。

「……とにかく、西側の救護隊に引き渡した後、すぐに救助活動を続行しますね」

 そう言うと、なのははすぐに救護隊の元へと飛んでいった。
505名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/28(月) 00:41:16 ID:aIO47SDm
支援
506リリカルなのはMS 代理:2008/01/28(月) 00:43:24 ID:0qoJcLYu
投下終了。終始スバルが空気orz
ここのグレイは刀スキルと大型剣スキル、それと気術法スキルを習得しています
今回出すモンスター、他にデストロイヤーとフレイムタイラント(裏)とで迷ったんですが……

デストロイヤー……最終試練のモンスターは別個体いるんだろうか?
フレイムタイラント……こんなやばいの出せるかボケ

ということでイフリートに決定という経緯がありました




-------------------

代理注:最後のレスで改行制限をオーバー(64行/60行)していたため、勝手に二つに分けてしまいました。
申し訳ありません。

あとIDが変わりましたが>>486と中の人は同じです。
507名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/28(月) 00:47:24 ID:VFEbNbMi
>506
お二人とも乙。
残りのメンバーにも期待。
508名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/28(月) 00:50:47 ID:aIO47SDm
今はいないかもしれないけど、
>>リリカルなのはMS氏
投下お疲れ様でした。
これから長い話になるでしょうが、楽しみに待ってます。
509名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/28(月) 00:53:37 ID:H7YjxJPi
真祖の人ですが代理終わったようなので投下大丈夫ですか?
510名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/28(月) 01:01:16 ID:rLiTpghx
GO GO!
511フルメタなのは:2008/01/28(月) 01:04:04 ID:MMkI1b0C
九時からコピペを始めて、今までかかってしまった……携帯は時間がかかる…

》真祖の人 氏
どうぞ投下して下さい。

自分のは明日にして、今日はもう寝ます。さいなら。
512名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/28(月) 01:08:34 ID:H7YjxJPi
では投下させていただきます
とりあえず・・・シャッハ酷い目にあいます、紫外道ゲージ上昇中

―――ベルカ 聖王教会
「ふぅ…」
『プロフェーティン・シュリフテン』預言者の著書という意味の成すとおり完全とは言わないが未来を予言出来るというスキル、
そのレアスキルを保持するベルカ聖王教会の騎士カリム・グラシアは書類を一通り終わらすと一枚の紙を見る、
自身の能力によって書かれた管理局の未来…
「古い結晶と、無限の欲望が集い交わる地。死せる王の元、聖地よりかの翼が蘇る。死者たちが踊り、なかつ大地の方の塔は空しく焼け落ち、
 それを先駆けに、数多の海を守る法の船も砕け散る…」
と…それは明らかに時空管理局そのもの崩壊を予言したものであった、管理局の崩壊、それは時空間に秩序という存在がなくなり、
古の昔のような惨劇が繰り広げられる事になるだろう、小さな溜息を吐く、そしてその次にかかれた文を読む。
「されど運命に歯向かう剣を持つ者達、大いなる困難を越えし時、古の罪人の加護ありて、その運命を覆し、法の船は守られる」
「困難、古い罪人…一体それは?」
カリムは訝しげな顔をする、歯向かう剣は恐らく親友であるはやて達の事を指すが、問題はその2点だ。困難は生み出されるもの、
では誰が生み出すのか?そして罪人とは誰なのか?その答えはまだ誰も知らない。
「辛そうですね」
自分の従者とも言えるシャッハ・ヌエラが励ますような声で言う。
「ええ…」
少し辛そうな笑みを浮かべるカリム、「無理をしているな」とシャッハは思う。
あの予言を見たときのカリムの深刻そうな顔は今でも焼きついている、こんな時自分が歯痒かった、何も出来ない自分が…
「少し早いですがお茶の用意をしましょう」
「ありがとう、シャッハ、気を使わせて」
「いいえ、それが私の役目ですから」
シャッハはそう言い、給湯室に向かう。その時だ、突然シャッハの目の前にある空間が文字通り「ぱっくり」と裂けて…

「ゆあ〜〜〜〜」

と日傘を持った、緩いウェーブがかかった金髪が印象的な美しい女性がその裂け目から頭を下にしてぬっと出てきたのだ。
「うわぁぁぁぁぁ!!!」
突然目の前に出てきてビックリ仰天してずっこけるシャッハ、そして頭が床にモロ直撃して鈍い音が教会に響く。
「あ、頭がぁぁぁ、頭がぁぁぁぁ」
シャッハは激痛にのた打ち回りそして、痛みを堪えながら立ち上がり侵入者に向かって叫ぶ。
「また貴女ですか!頼みますから正門からしっかり連絡入れてから入ってきてください!」
丸で前から知っているようにシャッハはその女性に向けて叫ぶ、そしてその女性は扇子で口元を隠しながら謝る、その女性をカリムは迎える。
「あら、久しぶりですね紫さん」
「久しぶりね、カリム、それにシャッハも…」
「そうそう、カリム、今日は貴女に紹介したい人がいるの」
そう紫が言うとスキマの中からもう一人の女性が降り立つ。
「貴女が騎士カリム・グラシアですか?」
「ええ、そうです」
「私の名前はリインフォース、かつて闇の書の管理プログラムを務めていた者です」

              リリカルなのはストライカーズ
             〜祝福の風はミッドチルダに吹く〜
        第1話「介入者、凡骨・のろま大覚醒、危うし白い魔法使い?」
        パートA「女達の茶会、スキマと騎士と修道女と罪人と」
513名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/28(月) 01:11:41 ID:H7YjxJPi
ひとつのテーブルには4つの紅茶が入ったコップと、ポットそれにお菓子が置かれていた。
「まさか驚きましたわ、はやてが言っていた人とこう巡りあえるなんて」
驚いたようにカリムは言う。
「ええ、本来私はあの時消滅したはずでした」
リインはあの公園での別れた後の経緯を説明した、気がつくとどこかに飛ばされていた事、
そして通称:山田(閻魔)に裁きを受けた事、そして今何しているのかと。
「そうですか、はやてが聞くときっと喜びますわ」
そう微笑むカリムだが、リインは首を振る。
「騎士カリム…」
「ふふ、カリムでいいですよ」
「有難う、カリム、出来ればはやてやヴォルケンリッター達に私が存在している事は内緒にしておいて欲しい、
 私は一度消滅した身、彼女達はそう認識している以上そのままの方が幸せと言えるからです」
「そうですか、分かりました」
「それにしても紫とカリムが知り合いだとは初めて知りました」
外に出る事がほとんどないと言える幻想郷の住人が外の世界にそう知り合いが出来るとは思えなか
った。だが…リインは失念していた。
「あらリイン、10年以上の付き合いなのに私の能力がどのようなものか忘れているの?」
悪戯のような顔を浮かべた紫を見てリインは思い出した…そうだ紫の能力は…
「あらゆる境界を操る能力、その能力の前では世界と世界の壁すら無意味…」
カリムが言う、何故それを知っている?
「そう古代ベルカの文献に乗っていたからですわ、紫さんの事は…」
リインは一瞬飲んだ紅茶を吹き出しそうになった。
「それに紫さんの記述は他世界の古代文献に大体載っています」
リインは一瞬眩暈がした。こいつは…紫は本当にただの妖怪…それ以前に他世界の歴史まで弄くっ
ているのかこいつはと。そしてカリムは幼少の時に紫と会い、時々一緒にティータイムを過ごしていると言った。
「そして紫さんはよく知り合いをつれてきてくれます」
自身の式である藍とその式である橙を筆頭に、西行寺幽々子や魂魄妖夢、蓬莱山輝山や八意永琳、魅魔その他と言う、
ある意味デンジャラスというか管理局潰せそうな人外な面子を連れてきてくれるのだ、まぁカリムの温和な性格の
おかげか茶会の雰囲気と言うのもそう悪くはなかった、しかしカリムの護衛を務めるシャッハは毎回冷や汗タラタラであった、
何故なら先も述べたように一応カリムの護衛的立場である自分では到底及ばないデンジャラスな人たちが目の前にいて落ち着いていられるなんて
そう出来ないし、それに管理局に知られればそれこそ一大問題になりうる行為であったからだ。(無論カリムもそれに対しては口止めを求めている)
そして他愛ない、そううら若き…紫はうら若くな(スキマ)…女性同士が話し合うそんな時間が過ぎていった。
「一つ聞いてもいいですか?」
リインははやて達が今どうなっているのか聞いた、気になったから。
「はやては、今クラナガンでレリックと言うロストロギアとそれと同じく現れるガジェットドローンと呼ばれる自動機械に
 対処する特殊部隊機動6課の成立させ今その隊長を務めています」
カリムなりの好意だろうか、部隊表まで見せてくれた。流石に10年と言う時も過ぎれば人間の身である以上はやてもなのはもフェイトも以前とは容姿も顔も違っていた、
しかし変わらない所があった、それは『目』だ、3人ともあの純粋で真っ直ぐな目は10年前と変わらなかった、そしてヴォルケンリッターの部隊表を見てリインは思わず吹き出した。
「シグナムが副隊長か、まぁ彼女はヴォルケンリッターの将を務めていたから分かる、シャマルも自分の担うべき立場がよく分かっているが…
 ヴィータは…とても副隊長と言えるほど器量は…そしてザフィーラ、いくらなんでも部署なしとは…」
ヴォルケンリッターの元でもあり彼女達を知り尽くしているリインにとってその部隊表はある意味
笑ってしまうものであった、そして紫はシャッハを嬲り始めた。
「全く、貴女はいつも頑固ね、貴女の必要なのは男かしら?そのコチコチの頭を柔らかくしてくれる人が」
514名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/28(月) 01:12:54 ID:H7YjxJPi
そしてシャッハは顔を真っ赤にして言う。
「余計な御世話です!私はこの道でずっと暮らすつもりです」
「あらあら、折角可愛いパンツ履いている癖に?」
邪な笑みを浮かべる紫の言葉にシャッハは顔を真っ赤にしながら叫んだ。
「み、見たのですか!」
「ええ、あなたがずっこける時にそれもクッキリと」
「うわ〜ん、もうお嫁にいけない!」
そうシャッハが泣け叫んだりして茶会の時間は終わる。
「カリムありがとうございます」
「リインさんもお気をつけて」
「フフフ、また来るわカリム、シャッハ」
そしてカリムは少し邪な笑みを浮かべ紫に問うた。
「所でシャッハはどのような下着をはいてらしたので?」
そして扇子で互いの顔を隠すように紫は言う。
「決まっているんじゃない、犬マスコットのバック…」
「ワ〜ワ〜ワ〜ワ〜ワ〜ワ〜!!!」
シャッハは顔中を真っ赤にしてヴィンデルシャフトを紫にむけて振り回す、紫は「クスクス」と笑
いながらそれをかわし続ける。それを見ながらリインは最初見た時からシャッハが誰かに似ている
と思い続けており、その人物が誰かと思いついた。おかっぱで頑固で、近接技主体でどこか苦労人
気質で上司はほんわかな人で…
「妖夢にそっくりだな」
今自分が住んでいる館でよく主に振り回されている、先輩にして妹的存在の顔を浮かべる、しかしある一点を見てリインは思う。
「そこだけは全然違うけどな」
そこはシャッハの胸、妖夢と比べて圧倒的な膨らみがあるのだ。

「あれ?僕は??」
一人外にほっぽり出されているヴェロッサ・アコースがいた。

―――白玉楼 
「・・・・・」
「あら、どうしたの妖夢?」
「幽々子様、今猛烈にリインに切りかかりたい衝動に…」
「だめよ、貴女、近接戦でもリインに負けっぱなしでしょ」
「みょん」

―――聖王教会
シャッハもやっと落ち着いてくれた、そして、紫とリインフォースのお陰で心の重石も一時的に取
れたような気がした…ふとあの予言についてカリムは思った。
「ひょっとして、困難と古き罪人とはまさか、あの二人の事では?」
紫は単体でも管理局を叩き潰す事は出来るが、それを望んでいるのあれば当の昔に滅んでいたはず、なら管理局を滅ぼす存在ではない、だが…予言最後の部分である項目が頭にこびりつく…
「大丈夫よね…」
カリムは呟いた。

―――スキマ空間
「リイン、かつての主達がどうしているか気にならない?」
「ええ気になりますが…でも今更会いに行く事は…」
「姿さえ見つからなければいいんじゃなくて?」
「確かに」
「じゃ、きまりね!」
「嫌、答えはまだだし…って人の言う事聞いてくださいよ」
「気にしない気にしない♪」
515名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/28(月) 01:13:43 ID:iGOkamq0
支援
516名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/28(月) 01:14:10 ID:I14nUoTM
支援
517名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/28(月) 01:15:50 ID:H7YjxJPi
―――機動6課 訓練所
「私は強くなりたいから!誰も傷つけたくないから!」
日頃の冷静さもなく、ただ回りのプレッシャーに遂に心が折れたツインテールの少女は叫ぶ、認めて欲しかった、自分にも力があることを、
自分が局に入った理由を自分なりの答えで分からせたかった、少女ティアナ・ランスターは叫ぶ。
「だから…強くなりたいんです!」
(分かっているよそれぐらい、ティアナが何故管理局に入ったのか、
 ティアナが強さを求め続けるのも、そして血を滲むほど人一倍練習しているのも)
叫ばれている少女(?)高町なのはは思う。
(だけど、ティアナは何も分かっていない、自分がどのようなポジションにいてどのような事を行うか、貴女はいま自分が何をやっているのか
 本当に分かっているの?私はティアナの冷静さを買っているのよ)
例え少女が必死に言っていても、なのはの心を動かす事は無理、所詮本来自分のあるべきポジションを無視しているだけのただ我侭を
叫んでいるだけの子供にしか見えないからだ、言葉で分からないのなら力で分からせる、認めたくないし、使わないと思った言葉

「強者こそ正義」…だがその言葉をもって分からせるつもりだ。

「うわぁぁぁぁぁ!!ファントムブレ…」
「クロスファイアーシュート」
無機質な声で放たれた魔力弾はティアナをあっさりと打ち抜く、そして落ちてもまだ立ちあがるティアナに再び魔法を放とうとする。
「バインド…なのはさん!」
その傍らでティアナの相棒が止めてと叫ぶ、仲間を思う気持ちは分かる。その点はスバルの良い所、だけど今はね…
(分からせなければいけないんだ、本来自分が行うべき点を忘れ、ただ自分勝手に力を使うティアナに現実を叩き込むから…)

―――ティアナ サイド
(なのはさんに分かって欲しかった…)
虚ろな目でなのはさんが自分に向けて何かを放とうとしている事をただ見つめることしか出来なかった、
避ける事も防ぐ事も考えれずティアナは思った。

(力が欲しい…)

でも適わない夢…その時だ…

(なら、あげましょうか、力を?)
(え?何?)

突然違う女性の声が響いた。
(貴女は、自分が何故力を求めるかわかっているでしょ)
(私は、見て欲しかった、認めてほしかった、自分の力で誰も傷つけず守れると)
(ええ、でも彼女はそれを理解してくれなかった)
(分かってもらうにはどうすればいいと思います?)
(力…)
(そう、彼女に認めさせてもらう力をあげましょうか?)
(でも、他者から貰う力に…)
(貴女の奥底に眠る力、それを解放してあげると言うのですよ)
その響きはティアナの心理を付き、言葉巧みに誘導する。
(私の眠っている力?)
(そう、その力、代償は付くけど)
(構わない、なのはさんに自分の力を認めさすぐらいなら多少の代償は!)
(契約成立ですね、では貴女の奥底に眠る力解放させて挙げましょう)
(待って!貴女は誰?)
(私?私は親切で美人で若い御姉さんですよ)
ティアナには一瞬扇子で口元を隠し、日傘をさしている女性が見えた気がした。
そしてふと気付くとなのはがこちらに向かって攻撃をしかけてきたのがわかった、
だけど…急に力が漲って来た、これなら…そして虚ろな目をしている自分に覇気を入れ、
その攻撃に対してウイングロードを蹴って一気にかわした、そして驚くなのはに向かって
クロスミラージュを構えた、これならいける!

          ――――ちなみにその力別名「火事場の馬鹿力」と言う。
518名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/28(月) 01:17:42 ID:H7YjxJPi
―――虚空空間 訓練所を見下ろして
「一体、あのティアナと言う少女に何を吹き込んだのですか?」
少し非難じみ、そして呆れたような目でリインは紫に言う。
「何って?具体的には自分を認めてくれない人を認めさせてもらう為の力を与えただけですわ」
「あのティアナと言う少女は、自分の立場を無視して、喚くだけのダダッ子だが…本音は?」
「まぁ見ていて一方的な蹂躙戦と言うのがどうも気に食わなくて、せめてもう少しぐらい足掻きをみせてくれたらいいかな〜って」
悪びれもなくさらりと言う紫にリインは一瞬怒りを覚えた。
「ではどんな力を与えたのだ?」
そしてフフフフと笑うと紫は言った。
「人間は本来リミッターがついていて、すべての力が出せないようになっている…」
「まさか、そのリミッターを!」
「完全ではないけどね、それを左にあったのをちょびっと右に移しただけですわぁ、まぁ、
 代償は全身筋肉痛と一時的な魔力減衰って所ね」
紫はどう見ても悪女全開の笑みでティアナの足掻きを見る、そして
「次はあの相方の子でも煽って見ましょうか、ふふふふふ、リイン、貴女も少し人生を楽しむべき、
 人の足掻きを観察するのも悪くないわよ」

     ――――パートB「再戦!覚醒凡骨・ノロマVS冥王」に続く

ちなみに、ナム戦のさい、戦友を助ける為火事場の馬鹿力でUH−1の残骸1,8トン相当を持ち
上げた兵士がいるらしい。

おまけ
遠野家の人々はTVを見ていた(琥珀の部屋で全員集合)、勿論見る番組は
リリカルなのは ストラトライカーズ…
(変身シーン)
のろま「スバル・ナカジマ!トランスフォーム!」
ブチ!
凡骨「ティアナ・ランスター!メイクアップ!」
ブチ!ブチ!
露出狂「フェイト・テストロッサ・ハラオウン、フォームアップ!」
ブチ!ブチ!ブチ!
冥王「高町なのは!マジカルチェェェンジ!」
・・・プツン

志貴は凄い形相の秋葉を必死に取り押さえる。
秋葉「兄さん放して!どいつもこいつも見せつけたように揺らしやがって!!!」
志貴「秋葉、落ち着け!そうムキになるなって!何でゼルレッチの宝剣もっているんだ!」

そして、機動6課に怒り狂った赤い髪をしたつるぺったんな女性が殴りこみをかけたのは別の話

琥珀「ジェイル・スカリエッティさん…ふふふいい仲になれそうです」

今日はここまでです、2番目読みにくくなってしまってすいません。そして職人GJ!
519名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/28(月) 01:18:45 ID:H7YjxJPi
ストラトライカーズになってます、ストライカーズに変換しておいてください
orz何やってんだ
520旅ゆく人:2008/01/28(月) 01:28:18 ID:95brIkdp
> 真祖の人
あー、いい加減寝ようと想ってた時に、
あなたは何てものを……。

ちくせう、GJなんだぜッ!
ゆかりん、流石だぜ、ゆかりん♪
みょん、やっぱりかぁいいよ、みょん♪

あー、もういい加減、自分の方も作品書き上げンとなぁ……。
明日、明後日は、ほぼ缶詰決定なんだぜ……。
521Strikers May Cry:2008/01/28(月) 01:37:43 ID:kBjuxflZ
>>464
GJ、これでもうすぐ最終回ですね、どう絞めるのか楽しみです。

しかし最後はなんちゅうフルボッコ…いくらなんでも人数多すぎだろこれ? ちょっとヴィヴィオが可哀想になりました。
522名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/28(月) 02:34:58 ID:ivFSQ/wO
>>518
一つだけ言わせてもらう

クロスSSで東方の二次ネタ使うのやめてくれ
知らない人に誤解されそうだ
523名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/28(月) 03:31:35 ID:aIO47SDm
>>522
この作者に言っても無駄な気がするが・・・・・・。
月姫クロスの頃からなのは踏み台だし。
524名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/28(月) 03:33:56 ID:T7OrUX74
なのは系の「技術としての魔法」と
東方や型月みたいな「概念を用いた魔法」は
死ぬほど相性悪いのは、魔法スキーの常識だと思ってた
525名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/28(月) 03:38:32 ID:aIO47SDm
>>524
型月との相性は意外と悪くない。
鯖に苦戦するが、飛行能力でしのげる程度の戦力差と見ることができるから。
話の都合でなら、型月の一般魔術師よりも強いくらいでも理屈付けできる。
東方はどうやっても無理だなw
そもそも、そのインフレした能力を戦闘に使う事がないし・・・・・・。
弾幕ごっこはお遊びだから。
526スーパーロボット大戦X:2008/01/28(月) 08:04:24 ID:2jNbC/3i
仕事前に見ましたが反目さん、GJです!
ユーノや大人アルフも出るとは思いませんでしたよ。
全員登場を見るとスパロボXのIFストーリーで主人公機全員をだしたくなりますね。
俺はどうやら反目さんとSMCさんの影響を受けやすいようです。
クリスマスネタもIFストーリーもお二人の影響で作ったものですし。
とりあえずチェンジリリカルなのはA’Sが終わったらIFストーリーで書こうと思います。
527名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/28(月) 08:10:01 ID:SYn3zY/N
飛行能力あったり正統派キャスターだったりすると勝ち目無くなるけどな>鯖

>>524
しかし後者に拘った作品との相性も良くはない。なのはのお粗末さが浮き彫りになる。
観測効果でプランク定数と熱量の不確定性を云々、ってレベルにはほど遠いし。
528名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/28(月) 08:16:43 ID:SYn3zY/N
×後者
○前者
529名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/28(月) 08:18:43 ID:EmHwbhrq
まだ次スレは建たないようだね諸君
530スーパーロボット大戦X:2008/01/28(月) 08:27:08 ID:2jNbC/3i
>>529
立てようとしたらまた立てれなかった。代わりをお願いします。
531名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/28(月) 08:29:44 ID:ICmBuHMU
>>529

YOU(ry
532リリカル龍騎 ◆YHOZlJfLqE :2008/01/28(月) 09:43:53 ID:perMc6GM
職人の皆様GJです

>>506
代理投下ありがとうございます

次スレ?せっかく規制解けたことですし、俺が逝ってきます
533リリカル龍騎 ◆YHOZlJfLqE :2008/01/28(月) 09:48:22 ID:perMc6GM
立ててきました

リリカルなのはクロスSSその41
ttp://anime3.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1201481211/

テンプレに勝手に避難所のアドレス張りましたが……まずかったでしょうか?
534名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/28(月) 10:06:15 ID:LJOZPkqK
私はまずくないと思います。
では、いつもの通り埋め作業ですか?
535名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/28(月) 10:51:32 ID:H9LtWE3a
長くてつらい埋め作業か
536節制の14 ◆6EgzPvYAOI :2008/01/28(月) 10:53:18 ID:VFEbNbMi
むしろ、穴を掘るディグダグとのクロスとか。

……ええ、『なまいきだ』のスカのアジトの二の舞になるんでしょうねぇ……
537名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/28(月) 11:03:26 ID:TEppQ0ZN
さて埋めついでに話題を一つ

ふと思ったんだが、王国の心弐のドライブってユニゾンじゃね?

つーかあの服も魔法使いに魔法を掛けて貰った服だからバリアジャケットと大差ない筈だよな
538埋め用嘘予告 竜†恋+StS:2008/01/28(月) 12:00:22 ID:Rg4Sl9J9
【──夢(ロマン)が必要だ。誰もが夢見る英雄譚。子供に語る御伽噺】

「ディバイィィィン……バスタァーーーーッ!」
「……ダメです! 体表で完全に無効化されています!」
「これが、真竜……!」
「高エネルギー反応! ドラゴンブレスが来ます!」
「総員退避! まともに受けないで!」
「間に合わ、うわぁぁぁぁっ!」

【空を焦がし、大地を抉り、暴虐の限りをつくす竜】

「──キャロ・ル・ルシエ二等陸士の殺害を命じる」
「納得できません!」
「真の竜にはいかなる攻撃も通じない! 召喚者を排除する以外に無いんだ!」

【暴虐の竜に捧げられしは、心優しき純白の巫女】

「行こう、ストラーダ。友達を……キャロを助けるんだ」

【雷鳴の騎士が携えしは、蒼天を駆ける青き槍】

「おねがい……エリオ……もう、誰も傷つけたくないの……!」

【少年は竜を倒し勇者となる】

「わたしを…………殺して!」

そんな、物語(ロマン)
539名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/28(月) 15:29:28 ID:6T3l0DyM
埋め?
540名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/28(月) 15:41:11 ID:Rg4Sl9J9
             ,.ッ―v―ッ===tz_ ―-.     
         ,.</: :/: : /: : : : : :\`'<  
        /: :/: : :./: : : : {ン: : : : ト、 \: :\   
      /: : ,イ: : ,¬j/―匕 {l: : : :.:fト、 \ ヽ: :\    
      ムイ.从 ノ .≠===八: : : :リ__`ー.)) )人 ), 
      {X |人 {          \ ノ`气ミ(ノ乂: :) ハ 
     ( j八: :ヽ廴⊂⊃          ⊂⊃ |/'     うー。うー。
     )X: :\: : :.\              r┘        埋めるッスよー。
    Y⌒ : :ノ : : :ノ      ×    从  
    乂 : :(: : : :.(_           ,イヽハ 
541名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/28(月) 16:16:58 ID:Rg4Sl9J9
なかなか埋まらんなあ

 ヾヽヽ      _ _    、、
 (,, ・∀・)  1  丶|丶|  ー-,  -千- __   ヽ     |
  ミ_ノ   ┴ ./、|/、|   (    ノ  ___|__ __ノ   o
  ″″

 ヾヽヽ    ヾヽヽ       _ _    、、
 (,, ・∀・) (,, ・∀・)  ⌒,  丶| 丶|  ー-,  -千- __   -千- __   ヽ     |  |
  ミ_ノ    ミ_ノ  /    /、| /、|   (    ノ  ___|__  ノ  ___|__ __ノ   o o
  ″″    ″″   ̄ ̄

 ヾヽヽ    ヾヽヽ   ヾヽヽ     _ _
 (,, ・∀・) (,, ・∀・) (,, ・∀・)  ⌒, 丶| 丶|  ソ フ_ ニ .| 十``
  ミ_ノ    ミ_ノ   ミ_ノ   ̄). /、| /、|  て ´__) ん しα
  ″″    ″″   ″″   ̄

       .,,_  _,,=-、
       '、  ̄_  _.,! __       .r-,.  _   r −、
      _/  _!」 .└ 、( `┐   .,,=! └, !、 .ヽ ヽ  丿
     .(.     ┌-'( ヽ~ ,.-┐ `┐ .r'  r.、''" r' ./
      ゛,フ .,.  |   `j .`" .,/ .r'" ヽ  | .l  '、ヽ、
     ,,-.'  , 〈.|  |  i' .__i'"  .( .、i .{,_ノ ヽ  ヽ \
  、_ニ-一''~ ヽ   |  \_`i   丶,,,,、     }  ヽ_丿
         ヽ__,/            ~''''''''''''″
542名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/28(月) 17:54:55 ID:H3ruDROc
しかし週末効果はすげえなぁ、二、三日で新スレに移行だもんな
543反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/01/28(月) 18:21:55 ID:eMDFypw4
>>521
なのはさんとスバルでダブルディバインバスターをやろう!

せっかくだからティア達も混ぜようと思い、エクセリオンストライカー誕生

ここでなのはが既に攻撃するだけの魔力がないことに気付く(合体攻撃組からなのはを除外)

盛り上がりを足すためにヴォルケンズ&クロノ君追加

頭の中で淫獣がわめき出し、ユーノ君追加

おっぱい! おっぱい!

…とまあそんなわけで、最初は2人での締めだったのが、いつの間にやら気がついたらあんな大人数に…
サーセンw
544名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/28(月) 18:31:41 ID:xtyy56MJ
何でこんな所にまでぽんこつ魔王のAAがあるんですかw
545名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/28(月) 18:50:05 ID:4sS8N/16
なのはさんが無理しすぎて魔力が減ってぽんこつになったから
546リリカル龍騎 ◆YHOZlJfLqE :2008/01/28(月) 19:02:09 ID:perMc6GM
>>541
「牙をむく」吹いたwww
547反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/01/28(月) 19:23:13 ID:eMDFypw4
                             ヽ、
                  , :<´ ̄ ̄> 、}}ノ
              ー=≠": : : : : : : : : : : : :\
                 /: : : :/: {: : ヽ: ヽ : : ヽ:ハ
               i.: ::{ 斗-ハ: : :}十ト:i :}: :}: :}
               | { :|:W示h: :j示Y j: :|: :l
                    v|八:代り ソ辷リ }/: :i /
                Y:ヘ  _     } : /′
                 Yヽ. ヽノ   /: /ヘ  ユーノ・スクライア強化月間につき僕が埋めです
                   ヽi{`>- イ´/W}<
             /⌒ヽ   /i>く´   }ヘ\}
              {=x ノー ': ,/{/こ)'ヽ/ : l: : :`>: 、.._
           /^こヽ{ : : : / :| ,ハ   ∧: : }: : : : : : : : :`ヽ
             ノ  ヽノノ: : : : >:|/ || /: :`<: : : : : : :/: : : :}
         ∧/^Y,イ}: : : : く : {' l」/: : : :/ : : : : : /: : : : :|
         /: :{^ノ|: /|: : : : : ヽヘ、/: : :/「^}___ {/: : : : : ヘ
        ,/ : 〃: ||/: |: : : : : : :\' : /{⌒ 'こ} :〈 : : : : : : :〉
こ二二二二二二二二二二二二二二二二二二}> 、} : : : : : {
                              | : : : > 、 : : |
                              | : : : : : : : > 、
548反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/01/28(月) 19:25:20 ID:eMDFypw4
 _...-..-.._ 、 ヽヽ
    __`ヾ、.|ノ
>.'.". . . . . .`.`.丶、
. . . . . . . . . . . . . . . . ' 二二二、ヽ
. . . . . . . . . . .u . . . . . . . .>: : :ヽヽ
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . .<: : : :.ヽ',
ヾ、. . . .u. . .,,ィ'"""ヾ、. . .',`: : : : : :l|
 ||. . . . . . ..|l|     |l|. .u..',: : : : : :,'
.ノ'__. . . . .ヾ、   ノノ. . . .l: : : : :/
.f::::::::::::) . . . . ゙''''''". . . . . .: : :./
 `ー ´    .:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. イ
        ―-. . ..__. . . . ..|  2KB近く余ってしまった…
       丶、  . . . .``. .ト .._
.r       、、 `丶、. . u. . .|、  `` - .._
 `l7´``ー-‐〈 .ヽ . .`丶、. . 、ヽ      `
  ゙ー----- ' . . .ヽ. . . . トト、ヾ
. .      . . . . . . . ..ヽ イ  `ヽ、
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . ..ヽ     `丶、
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .| ヽ
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . ..l  ヽ
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .!  ヽ
549反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/01/28(月) 19:27:10 ID:eMDFypw4
                  , r
              _,..ゝ' _ `ヽ-、
               ;' ミ (゚:ノ .o.ヾj_
              ゝ-=彡' - `ナミ、
             /l/    .:/   とりあえず埋め              ´ノ"゙  :.:::::i
       __.      /      j
   ,. '´    `j     /,  ';   ..:!
  /    ,.-‐ ´  / !  i   ! !
  !   、,'    , '   `、 ',  ,' /、
  ',.   ` ..__  !    、 ヽ.j Lノ ',
    ` 、    ̄l     ', ゙´   ! l
      ` ー---',.    }   ノ ノ
           ゝ.、._.ノー-‐'丶゙__)
           Liノ
550反目のスバル ◆9L.gxDzakI
              /
                /
              \ /
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         l:.:/:⌒: : : ⌒: ミ:.:.',
        l:.l ○:__: : ○: :「:./               ,ィ
.   ―――-/// ゙_," '///:.|/_          ,イ' !
  _... -―¬lニ Y´::`Y 、¬ト、   ̄ ̄      /  l  気がついたら↑のがズレてたよ
.    ,. -'"´ヘ  |::::::::::| 丶{、 ``丶、       ト'  l
  /     イ: ..l、__j .:.:.:.ト `ヽ、   丶    ,'   !
        |: : : . . . : : : :.|    \     /    ,'
          !: : : : : : : : : :.:|            /   ,'
        l: : : : : : : : : : :.|        /     ,'
          !: : : : : : : : : : :.:!.        /.    ','
         l: : : : : : : : : : : :.|-―. 、,   ./: : .   ,'
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