【ジョジョ】ゼロの奇妙な使い魔【召喚77人目】

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1名無しさん@お腹いっぱい。
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【orz】http://orz.2ch.io/top.html
【iMona】http://imona.net/
     _      ここは「ゼロの使い魔」と「ジョジョの奇妙な冒険」のクロスSSスレよ。
    〃 ` ヽ     他にも避難所にしか掲載されてないSSとかもあるから一度見てみなさい 
    l lf小从} l /    投下中は空気読んで支援しなさいよ 荒らしはスルーだかんね
   ノハ{*゚ヮ゚ノハ/     職人さんは荒らし防止にトリップを付けてよね
  ((/} )犬({つ'      次スレは900か950を踏んだ人が立てること
   / '"/_jl〉` j      480KBを超えた場合も立てるのよ。 わかった?
   ヽ_/ィヘ_)〜′

【ジョジョ】ゼロの奇妙な使い魔【召喚76人目】
http://anime3.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1198842325/

●まとめサイト                               ,〜'´  ̄ヽ
http://www22.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1.html         ミハ^^ヽヽ(  | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
●避難所.                           ____. -' ヽル::::д)ζ <批判は避難所だ!君の意見を聞こうッ!
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9292/     =='、 ̄ニ|::... . . . . ...::::: :: ::〉:::.:ヽ     |_________________
●ジョジョの奇妙なAA集               ' ´   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄`!:::::::::::.. :i
ttp://jojoaa.web.fc2.com/                         `y::::::. ::ト、
●ジョジョスレUPローダ                            〉::::::::. .::`ヽ
ttp://vblave.hp.infoseek.co.jp/                        ハ:::::::: ..:λ:i
●アニメAA保管庫 ゼロの使い魔ページ                /:::::::::: .:/::::i´
ttp://aa.tamanegi.org/anime/zero-tsukaima/
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*スレ運営について意見のある方は運営議論スレへどうぞ    . *
*http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/9292/1184936505/ *
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2名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/19(土) 20:48:38 ID:uX0O/nK7
第一部+第二部
ジョナサン 卿 ブラフォード シュトロハイム シーザー スケコマシーザー
究極生命体カーズ様 ワムウ様 スト様 石仮面+ブルりん+吸血馬

第三部
承太郎 法皇花京院 一巡花京院+平賀才人 メロン花京院
ジョセフ アブドゥル ポルナレフ イギー 
DIO様 ンドゥール ペットショップ ヴァニラ・アイス ホル・ホース
ダービー兄 ミドラー デーボ エンヤ婆 アヌビス神 ボインゴ 

第四部
東方仗助 仗助+トニオさん 広瀬康一 アンリエッタの康一 虹村億泰 ミキタカ+etc 間田
シンデレラ カトレアのトニオさん 岸辺露伴 静(アクトン・ベイビー)+露伴
デッドマン吉良 猫草 キラー・クイーン 猫→猫草

第五部
ブチャラティ ポルナレフ+ココ・ジャンボ(亀ナレフ) アバ茶 ナラ・アバ・ブチャ組
ルイズトリッシュ マルコトリッシュ ナンテコッタ・フーゴ アバ+才人 ジョルノ  ミスタ
ディアボロとドッピオ プロシュートの兄貴 リゾット ローリングストーン 偉大兄貴
ギアッチョ メローネ 俺TUEEEディアボロ ペッシ ホルマジオ スクアーロ
暗殺チーム全員 紫煙+緑日 ブラック・サバス セッコ 亀ナレフ+ジョルノ イルーゾォ
サーレー

第六部
引力徐倫 星を見た徐倫 F・F アナスイ ウェザー エルメェス エンポリオ ヘビー・ウェザー
プッチ神父 帽子 ホワイトスネイク 白蛇ホワイトスネイク

SBR
ジャイロ+才人 ジョニィ マイク・O
リンゴォ マウンテン・ティム Dio

バオー+その他
橋沢育郎 バオー犬 味見コンビ(露伴+ブチャ) 決闘ギーシュ タバサの奇妙なダンジョン ジョナサン+才人
3名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/19(土) 20:49:48 ID:uX0O/nK7
・行数は最大で60行。 一行につき全角で128文字まで。
・一度に書き込めるのは4096Byts、全角だと2048文字分。
・専用ブラウザなら文字数、行数を管理してくれるので目安がつけやすいかも。
4名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/19(土) 20:50:40 ID:GWV1vXuB
            H  /y'
        /ヽ  H  /y'                  
         /`  }_ ヽTァr-,、       /7に仁二仁二仁ィ7
        /   |こ=y7 ̄`ヽ>、   /7        //
      /   } ,,{ペ.f!{    ,ノソ  ノ丿       xく/
     ./ヽ  ,j} jf}气`ハ、  ,H  />'      /> '′
    |{ハ}} ,,ィリ州|い{,mヾコエ>゙ /7      /7′
     |ルjム=.' iif !ケy ,==ミ、_,/>'     ノ7′         ;′
     k<.9ノリ jリ|ひ!((.・>.)!┴'゙      「 }          /|
    __|77ァ''´   |Y,ィ`ァ'-ヘ         ゝ`仁二仁二仁二シ
  _r'「{|,;if|'   j; ビ了父ィソ ,/y  
 /_,>ィ|,fリ     |,八八/^′/y'zZ   こ、これは>>1乙じゃなくて
 |__/ム|イ    ,イ}|ゾY^ンYメYイ ⌒ヽ   血管針なんだから
  ,.く::7ト,    州こ^ニ^/⌒ヾィ´    勘違いしないでよね!
/;゙ `>| W! _,,ィ化儿>'⌒ヾ/.:: /;l
f.::::,ィl{{リヾ比"  jf|}y' `ヾ//.:::: /;f}}
 / ,ノ| f|\V"l; |7 `ミ/^!/.::::: /,,,,,,
f{G/| {{V,ハ wリト~ミ八/.:::::: /,;;;;;;;;
5名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/19(土) 20:54:23 ID:iXGwWrWd
  \
   \\          /ビシュユウウゥゥゥ
      \、、 ゛   ",,//
        ゛     ",,         ∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧
       ゛、 ∩   ,,"       <  
        ゛ | hn "        < キラークイーン
   ,ヘ__∧   <);@;|  \      <  >>1乙の爆弾!
   | ニ ニ|   |;;;;;;;|    \\    <  
   |  〉 |  ,|;;;;;;;;|,          VVVVVVVVVVVVVVV
    ヘ -  /  ( " )              yベ.ミ'´ ̄ ̄`ヽ、
r⌒`YTTTTY ̄〃 (()             ノノ!!|,,yべヽ._ ミ \
(氏≫|| | | | | "__ノ へ           r彡" ヾ゛   ̄《_、゛ヽ
 ヽ__ノノー― ̄ ,,,,   |〃l )        (((, \    /  ̄ミ,-、|
  \彡ー  // __|_ヘ \;;;;;|         `リ ●   ●    _ノ.!
    \_/ ( _|__)  |;;;;|         ~ l⊃ 、_,、_, ⊂⊃ ア"
       \_( _|__)〔|;@;|     /⌒ヽ__ヘ   ゝ._)   j /⌒i  
        /|| ||(@)|| リ~~      \ /:::::/ >,、 __, イァ/  / 
       / ̄ ̄//⌒ヘ|.         /:::::/   ヾ::,灰.ソ::{ヘ、__∧
      |_/⌒V/|            `ヽ<     i◆|:::/ヾ:::彡' 
6スレ立て人:2008/01/19(土) 21:01:36 ID:uX0O/nK7
あー、3のテンプレ変えた方が良かったかなぁ。

たしか、いまは制限事項変わってたんでしたっけ?
先頭に改行入れたらダメとか。
7名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/19(土) 21:18:37 ID:0DuC4OAd
>>1乙!!

不覚にも>>5で和んじまったぜ・・・・
8名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/19(土) 21:21:42 ID:5+lcu83b
\\   First kiss か ら 始 ま る ふ た り の 恋 の              //
  \\   H I S T R Y Y Y Y Y Y Y Y Y Y Y Y Y Y Y !    //
   \\       こ の 運 命 に 魔 法 か け た             //
     \\ 君 が 突 然 あ ら わ れ た ァ ァ ―――z___  ッ! //
             ,ィ =个=、      _        _         _       ,。='゚=。、
    〃  ̄ ヘ   〈_/´ ̄ `ヽ    〃 ` ヽ.    〃  ^ヽ   〃 `´`ヽ.    〃了⌒ヽ
   くリ 7"バlキ〉>∩ { {_jイ」/j」!〉∩  l lf小从} l∩.   J{  ハ从{_,∩ {lヽ从从ノl∩.  ノ {_八ノノリ、∩
    トlミ| ゚ー゚ノlミ| 彡. ヽl| ゚ ヮ゚ノj| 彡 ノハ{*゚ヮ゚ノハ彡  ノルノー゚ノjし彡 ヾヘ(゚)-゚イリ彡 (( リ ゚ヮ゚ノノ))彡 >>1乙!>>1乙ゥ!
.    /ミ/ノ水i⊂彡  ⊂j{不}l⊂彡 ((/} )犬⊂彡.   /く{ {丈}⊂彡   /_ノ水⊂彡   /ノOV⊂彡
     / く/_jl ハ.   く7 {_}ハ>    ./"く/_jl〉`'l   l く/_jlム! |    }J/__jl〉」.   (7}ヽ/∧
   .ん'、じ'フ .ノ   ,,,,‘ーrtァー’  ,,,,,,んーし'ノ-,ノ   レ-ヘじフ〜l   ノんi_j_jハ_〉    /__ ノ_j

  ,,-''´  ̄ヽ   ミ 乂 彡    |!i!ii| ∩.   ,、 、   (⌒⌒⌒⌒)   /⌒⌒ミ      __
  ミハ^^ヽヽ(∩ =0o◎o0∩  (;゚Д゚)彡  ,ヘハ@ヘ∩. ( △ △∩ _|_Joミ|∩ (ミミ彡 ミ∩
  ル ゚∀゚)ζ彡 さ `Д´)彡 .  (  ⊂彡.   ゞ ゚∀゚)彡  (/ ・∀・彡   ( ´∀`)彡   ( `∀´)彡
  (  ⊂彡゛    (  ⊂彡    |   |    ( ノ::⊂彡  (  ⊂彡.    (  ⊂彡.   (  ⊂彡.
   |   |      |   | .   し ⌒J.   │  │ .  |   |      |   |     |   |
   し ⌒J.     し ⌒J             し ⌒J.    し ⌒J.     し ⌒J.    し ⌒J
9名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/19(土) 21:46:07 ID:6gggtIgY
>>8
GJ !!
左上からモンモン、シエスタ、ルイズ、キュルケ、タバサ、アンアン
左下は花京院、サンタナ?、ポル、DIO、ウェザー、承太郎までは分かるが右下の人誰?
10名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/19(土) 21:48:39 ID:6gggtIgY
左下から二番目はサンタナじゃなくてワムウか
右下も既に召喚されてるキャラだろうけどやっぱ分からん……
11名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/19(土) 21:53:51 ID:aMB/pjgU
サザエさんじゃね?リーゼントだし
12名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/19(土) 21:54:58 ID:5+lcu83b
リーゼントはもうすこしボリュームがないとわからないか、次はもう少し改良しておく。
13名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/19(土) 21:59:18 ID:aMB/pjgU
  __
(三三 ミ∩
 ( `∀´)彡
 (  ⊂彡.
  |   |
  し ⌒J

これでどうだ
14名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/19(土) 22:01:08 ID:+0w3C76w
            , -―  ――-、
             /に    (ニ==\
         //')      に二) (ヽ   >>1乙!
         〃____,r^)__,r、(ニユ|    そして>>8にも乙だッ!!
         i!   ● / /●  ヾヽヽ,!
          ヽニ⊃,// ⊂⊃}:}ソi
        /⌒ヽ__ ヘ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~/⌒ヽ
      \ /:::::  >,、 __, イァ/   /
.          \     |三/ []「/__ /
         `ヽ「ミヾr‐ 、[]「ヾ三/
15名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/19(土) 22:03:30 ID:AmyjdwOy
リーゼントの向きは逆の方がいいんじゃね?

顔のむきは( `∀´)→だし
あるいは顔の向きを(`∀´ )にするとか
16名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/19(土) 22:07:28 ID:xB47KzPK
         _..  - ―‐ - ._
        , '"          \
      /"レ'/  /\_. へ、 ∧lヽ
     / /´ {/ノノ ,ィ爪Yハ`′  ',
   /  / // ノ´    ヽ ', l
   |  /   //   :    ', l |     >>14
   | l| l  /     .::     ,,l !l |  おかしいなぁ…どうしちまったんだ
   |l |l |  ド==、、::  ,r='"-| ! |    がんばってるのはわかるんだが、全部合ってちゃしぇっこさんじゃねえだろ
  ノ|| |l l  |t‐t・ッテ,  ィrt・ッラ|l  |  それにお前さん、64スレの乙パーティーの時に新境地を開拓したいって
≦ノノll│ |  |. ´¨~〃 .,,_ ヾ~´ .|l lト、  言っていたじゃあないか これがそうなのかい?これじゃ100スレ迎える前に
_./ノ|l | |  l:.   ゙:. ′゙    ,'|l l|ヽヾニ=‐ 成長しきっちゃうぜ  うちのリーダーだって成長しているんだ
‐''"ノ| | |  ト、     `''"__  /:l  l\ー-`ニ=- なあ、俺の言ってること、そんなに間違ってるかい?  
:::´ノ,l li l  | ヽ、 '‐ニ-'' ,イ:::l  lヾミヽ::l
:::‐"/ / ハ l  | ヽ ヽ、._"_/ l:::! l`ヽ、`二>‐      少し、お茶でも飲んで話でもしようや……
:::::/ノ/ } i l― -、ヾ三/ __ll l::::::::::::::`>― ---- 、
::::"´:::::::;.' ノ、 ', ⊂) 〈フフ  _,l l::::::::::::r'´ /¨>'"  )
:::::::::::::://::| ヽ ⊂⊃ノ7 '"´l _l. ― 、`='-、/( _,∠ヽ
:::::::::/´:::(cl=  ⊂二ノ   ,r'‐、  ‐= }   `ヽ |   }
:::::::::::::::::::::::`l   ⊆¨l  ハ __ノ} <l ,' ⊂) 〈フフ\-‐'´}
::::::⊂) 〈フフ:::l    ⊂ 」  { `¨´ l_> / ⊂⊃ノ7  ヽ/}
::::⊂⊃ノ7:(cl"´┌i 00 V ム Δ /   ⊂二ノ    l/}
::::⊂二ノ:::::::::l`⊂ ⊃   {` ー''"     ⊆¨l   l/
:::::::::::⊆¨l::::::::l (フl」<)=、‐-∨⌒ヽ     ⊂ 」   /
 ̄ ̄⊂ 」 ̄ ̄ ̄r'rブノ   `  ',   ┌i 00 // ̄ ̄
  ┌i 00'" ̄ ̄} }} ̄ ¨''‐、____ノ_  ⊂ ⊃ //
  ⊂ ⊃ |`` ========''"r==、ヽ-(フl.」<)‐'´
17名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/19(土) 22:07:49 ID:aMB/pjgU
  __
(三三三_∩
 (`∀´ )彡
 (  ⊂彡.
  |   |
  し ⌒J

じゃあこれでどうだね
18名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/19(土) 22:13:32 ID:gieukdkh
                    / A \
               _/ ∀  `ー―vヘ、
            〃´  -゚-―‐゚―‐- 、0\
          l ̄` /            \ l
          | (0/               `ヽ、
          / y′  ./  j{    :.:.ヽ:.:.:.:ヽ :.:.:.:l
           ,' :/    .:.| .:八    .:.}.:.jl.::.:.:.|:. .:.:.:.|
.          | ,'.:.:..  .:./!.:./--\  :.jV-ハ.:.:.l.:.:.:j:. l
        j.:l.:.:.:{.: .:':{ ヽ{ _  ヽ.:./ _  ∨.:.:/∨
        /./\:.\::.:.l x==ミ  ∨ ィ=、 ,':.;.小>>1『乙ですわ』
.        /:.,':.〃lヽ:.{\{ ′           イ.:.:.:.l::ヘ
      /.:.:l :.:.: |.:.:.:.:ヘ        `    } .:.:.:|.:.:.ヽ 
.     /.:.:.:.!.:.:.:.:l.:.:.:.:.:.:\    (ア   /.:.:.:/l:.:lヽ:',
     {.:.:.:.::|.:.:.:.:.lヽ.:.:.:.:.:.,:> 、     ,.イ:l.:.:.:.:/.:.|:.:! l:.:lアンリビッチと呼ぶ人が
       ',.:.:.:.l..:.{:.:.:!:.:\.:.:.:.{(!_.≧く|>!| l :./.:./l:/ V
      \∧:.ヽ:.|ヘ:.}\.:.:}厂X⌒}0 j:! ! .:.!:.:{' /  最近いないので少し寂しいですわ 
          ̄ ̄_二>!:人ノ__>'´ ̄Vヘ :.W>
         _, イ    j/  /   '´  ヽ{ `ヽせっかく新しいムチを買いましたのに・・・
        /       // ゙̄ヽ         \
.       / {     o  |: 〈( !) 〉 o     {   ヽ仕方がないのでまた
       l  /      |  ヽ_/        l   l
       │ j"      |            ヘ  |    |ウェールズ様と楽しみますわ

19名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/19(土) 22:15:32 ID:ZUfusr48
>>18
ビッチ乙
20名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/19(土) 22:18:20 ID:k4cSQhIe
       |              /
       |           /           /
   >>1乙                       /
                    r 、
  r┐             _ /   \_
.<ヽヽ二>'  ̄ ̄ ` ー、   r'´ ,. - ―― - 、__}     _ _
  } } r‐┐ /  ヽ   \ |/         \
 く/ L{´  从   | !,. | |  | /| /ハ. ! |  ! ヽ
 | |  | >、i ヽ |≦、/ /!  |/>‐く レリ‐< |  〉    >>18
 | |  |{  ヒ}` |/ヒ} 」レ| |  .| { ヒ}   ヒ} } |/|
 | |  ハxx    - 、 xx{ !ハ  とxx     xx |  |      お久しぶりですビッチ!
./ ハ  |  /⌒V  / | |  ∧ ,ィ'⌒¬  人! |
/  |  .|\{   /イ  ! ヽ  ハ.{_ _ _ソく  /り
   /  |r―>く_/::|  | \\ |┴ -{. r∨ ̄}
 /   .|:\{f女V:::ハ  ! ! |>ヾ. /ぅ、`┴rー-ヘ
/    /:::::::\_/::/ヽ  ∨ノ. |/ニヽ{ レハ  }---く
   /::::::::::::><_/::\ ∨ !| ,ニ ]:::::::∧ }__]
  /:::::::::::::::::::::∧:::::::::::::::}  ∨ | `く___/ /ニヽ/
  |:::::::::::::::::::/|! !|\:::::::/  | | \ノ|――‐{ ニ、 |
  |::::::::::::::/  |! !|  ヽ/  ∧|  /    |`ーく
21名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/19(土) 22:31:09 ID:N6Z8+7/S
    |┃三            r彳云ヽ、
    |┃三          , -イ。弋ソ__ 二ミヽ/\         人
    |┃         _//> ´ ̄      ̄  ̄ ̄¨ヽ、    `Y´
    |┃       /\//        \       ',
    |┃ ≡    /| fV/          ノ\.      |  _!_
    |┃     / |_∨  /  /  /   /  ヽ. ! |  | |   !
    |┃     | /    |  /,.⊥L  /  r十|ト!、|  ! |  :
    |┃三    |{     !ィ爪 ∨\  !  _」_// / 人リ   ;
    |┃     !ヘ ヽ  ヽ| V,ィ≠ト ヽ !  {f イ|∨/  \   +       _________
    |┃     | \| \__∨|{__,イ}.    弋rリ イ     ヽ   :    /
    |┃     /   !  \弋_rり      ̄::: {     } |   ;  < 話は聞かせてもらいましたわ
    |┃ ≡  / ,   {     \:::::     `   人.   //|.|  _!_  \ >>1以外全員シベリア送りですわ
    |┃    |/| | ハ     ヽ   r _ア  , イ   // リ   i      ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    |┃三    |! | ト、 ト、     > 、 _ ィi |   /!/
    |┃      \! メ::::\!\  }ー-rく{ } |   |-- 、__
    |┃         ̄ >ー-へ |_::| |:: :||:::!\从::::::::::::ヽ
    |┃ ≡      /::::::::::::::::::∨:::r----r‐rr‐<_::::ヽ::::::::\  ガラッ
22名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/19(土) 22:31:28 ID:gieukdkh
           r彳云ヽ、
         , -イ。弋ソ__ 二ミヽ/\         人
       _//> ´ ̄      ̄  ̄ ̄¨ヽ、    `Y´
     /\//        \       ',
    /| fV/          ノ\.      |  _!_
   / |_∨  /  /  /   /  ヽ. ! |  | |   !
   | /    |  /,.⊥L  /  r十|ト!、|  ! |  :
   |{     !ィ爪 ∨\  !  _」_// / 人リ   ;
   !ヘ ヽ  ヽ| V,ィ≠ト ヽ !  {f イ|∨/  \   +
   | \| \__∨|{__,イ}.    弋rリ イ     ヽ   :
   /   !  \弋_rり      ̄::: {     } |   ;
  / ,   {     \:::::     `   人.   //|.|  _!_
  |/| | ハ     ヽ   r _ア  , イ   // リ   i  早速呼んでくださってありがとう
  |! | ト、 ト、     > 、 _ ィi |   /!/
    \! メ::::\!\  }ー-rく{ } |   |-- 、__ すぐにでも鞭で御礼をしたいのですが 
       ̄ >ー-へ |_::| |:: :||:::!\从::::::::::::ヽ
  人    /::::::::::::::::::∨:::r----r‐rr‐<_::::ヽ::::::::\  人 ウェールズ様に使用中
 `Y´ /:::::::::::::::::::::::::::::::rニニ /.// / ハ:::!::::\:::::∧ `Y´
    |:::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽこ/ノ _____ ! | :::::::::::::::::::::!  ですので少しお待ちに
    |:::::::::::::::::::::!:::::::::::::::/::|‐彳―、}./\:::::::::::::::::::|
 _!_  .|:::!:::::::::::::::::!:::::::::/::::::::|  !: : :ノ//∧__:::::::::::::!   なってくださいますか?
  !  |::::|::::::::::::::::!:::::/::::::::/|ヽ  ̄_人/  ∨\::::::\
    |::::!\:::::::::!/:::::::::/  |   |  ヘ   ∨ |::}::::::::!
    |:::::!::::::::::::/::::::::::::/\. |   | ! }    ∨:/:\:}
    |:::::!::::::::::/::::::::::::/  ∨   | 人. |    ∨:::::::::\
23名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/19(土) 22:33:17 ID:gieukdkh
またsage忘れたOTL
24風と虚無の使い魔 ◆/4V68E5Ojg :2008/01/19(土) 22:54:36 ID:aMB/pjgU
一番槍とったどー

23時、それ以上長くもなく・・・短くもなくきっかり23時に投下する能力
センター試験の試験官も似たような能力を持っている
25風と虚無の使い魔 ◆/4V68E5Ojg :2008/01/19(土) 23:00:00 ID:aMB/pjgU
風来のシレンってよお・・・
毎回ダンジョンをでるたびにレベルが1に戻るってのはわかる・・・すっげーわかる
レベルが毎回さがるのが特色だからな・・・
だが、Wiiシレンレベル維持ってどういうことだァーー!?
チョコボやトルネコと同じ轍を踏むことになるじゃねーかッ!
これとゼルダのためだけにWii買った俺をなめやがって、この作品、超イラつくぜッ!クソックソッ!

それじゃあ投下します
26風と虚無の使い魔 ◆/4V68E5Ojg :2008/01/19(土) 23:00:58 ID:aMB/pjgU
<br>
入り口にあった松明に火をつけ、タバサたちは鍾乳洞の中を進む。
先導していたミノタウロスが部屋のように開けた場所で立ち止まる。
そこには机、椅子、炭などの生活用品だけではなく、
秘薬のつめられた瓶や袋、マンドラゴラの苗床や奇妙な道具などが整理されておかれていた。
棚には奇妙な人形や仮面、鉱石、そしていくつか本が並んでいる。

「粗末な物しかないが、座りたまえ」
腰掛けたタバサが男に問いかける。
「あなた、何者?」
「ラルカスという。元は、いや今もだが貴族だ、十年前にミノタウロスを倒した」
「その格好は?」
「ああ、気になるだろうな…端的に言えば、禁忌である脳移植を行なったのさ、
人間の体、そして不治の病と引き換えにこの恐ろしいほどの生命力を持つミノタウロスの体を手に入れた」
「それで、魔法が使えるし、言葉も通じるのね!」
シルフィードがワムウの後ろから口をはさむ。
「その通りだ、しかし魔法が使える、といっても人間のときとは比べ物にならないね。
人間のときもかなりの腕の水と火のメイジだと自負していたが、今やスクウェア以上の腕はあるのではないか、と思う。
もっとも、比べる相手がいない以上本当のところはわからぬがな」
ラルカスは口の端を歪める。
「寂しくはないのね?」
シルフィードが質問する。
「もともと独り身だ、絶縁こそされなかったが事実上ただの放蕩貴族、洞窟だろうと大して変わらぬ」
「でも、おいしいもの食べられなさそうなのね、お肉はちゃんと食べてるのね?」

ラルカスの口が数秒止まるが、慌てた様に話しを始める。
「……出たところの森で生き物ならいくらでもとれる、火も見ての通りあるしな」
「その森の生き物に人間の子供を食う奴がいるのか?」
唐突にワムウが話を変えたので、ラルカスは首をかしげながら答える。
「オーク鬼だっているし探せば剣牙虎くらいはいるかもしれんが、それがどうした?」
「質問を変えるか、ここの入り口に埋まっていた人間の骨は、誰の食べ残しだ?」
27名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/19(土) 23:02:07 ID:G1WicfV6
>25
>だが、Wiiシレンレベル維持ってどういうことだァーー!?
そりゃ切ないな支援
28風と虚無の使い魔 ◆/4V68E5Ojg :2008/01/19(土) 23:02:15 ID:aMB/pjgU
<br>
場が静まる。
「そ、それは本当なのね!?」
タバサは杖を構え、椅子から立ち上がる。

険しい顔になったラルカスが声をだす。
「……あれはこのあたりに住むサルの骨だ」
「そうか、化け物なら化け物らしく残さず食えばよかったものを」

ワムウがワンステップで飛び掛かり、ミノタウロスを思いっきり蹴りあげる。
「待つんだ、話を聞いてくれ」
「俺は戦いに飢えている、戦う理由ができたというのに話し合う戦士がどこにいる。
嘘ならもう少しまともな嘘をつくんだな、もっともそれでも俺が聞く保証はないがな」

杖を抜いたラルカスが放つ水の弾をいなし、もう一度胴体を蹴りあげると、堅い皮膚は破れ、肉体が露出する。
露出した胴体をワムウは一部食い、既にラルカスは致命傷のようだった。

「なんだ、この程度か。わざわざ遠出したというのに手応えがないな」
ぶつぶつと回復魔法を唱えるが、ほとんど傷はふさがらない。

小さな声でもごもごと話す。
「…二男として生まれ、不治の病に侵され、放蕩し、俺を超える化け物に殺されるのか」
「貴様ごとき化け物ではないな、所詮人間だ」
「そうか、俺は人間か、ならば悲劇だろうか、この俺の人生は」
「そんなことはあの世で決めろ、お前の身の上話に付き合っている暇はない」
「喜劇は無理でも、英雄談、くらいはめざせるかもしれんな」
「人間にしては強いかもしれんが、メイジとしては二流以下だな。狩りに慣れても実戦でそれを生かすのには長い時間がかかる」
「……俺は人間を超えたかったのだ、このまま死ねん、このまま悲劇では終わらせん」
右手が棚にあったある物をつかむ。
ワムウが驚く。
「なぜ、そんなものがここにあるのだ!」
ラルカスは血まみれの手で、それを顔にかざす。

「俺は人間を超越する!」
石仮面は、ラルカスの顔で輝いた。

「な、なんなのねあれ!」
「あれは石仮面」
「知っているのお姉様!?」
場が静まる。
「そ、それは本当なのね!?」
タバサは杖を構え、椅子から立ち上がる。
<br>
29風と虚無の使い魔 ◆/4V68E5Ojg :2008/01/19(土) 23:03:31 ID:aMB/pjgU
<br>
『石仮面』とは
非常に堅い石でできており、古来では鈍器として使われていたという説もある。
いつごろからハルケギニアにあったかは不明で、現在はロマリア皇国が数個保持しているいわれているが、
教皇はそれを否定しており、機密情報とされている。ただし確認された事例として、使い魔召還の儀式で
召還されてきた、鎮魂歌の洞窟などで拾えた、宝箱に入っていた、円盤の入った容器と一緒に届いた、などの報告がある。
これを被った生き物は、恐ろしい生物に生まれ変われるといい、その化け物は、首だけでも生きていられる、何十年何百年も
海の底で暮らせる、ひからびても血を浴びせるだけで蘇る、相手の血を飲み干した場合は、相手の魂を取り込むことができる、
ジェットエンジンをつけて空を飛んだ、女性型アンドロイドを従える、幻想郷を霧で覆うなど数多くの伝説を残しており、
人々から長い間恐れられてきた。始祖ブリミルは恐ろしいこの怪物を倒すために四人もの使い魔を従えたという説もあり、
しかもその内ガンダールヴ以外の伝説の使い魔の死因はこの化け物によるものである、という伝説もゲルマニア東部には
根強く残っており、宗教研究家の間ではこの化け物とはエルフを指している、という説が有力である。
(出典 ブリミル書林刊「豪華哀鈴」より)

「カーズ様の作った石仮面はこんなところにまで広がっていたのか」
「きゅい!?カーズ様って誰なのね?」
「話はあとだ、あの堅い皮膚に再生能力をもたれるとなると、かなり楽しめそうだな」

仮面がラルカスから落ちる。
すでに腹部の傷は再生しきっていた。
ワムウは飛び掛かろうとし、ワンステップで高く跳躍する。

ワムウは、突然現れた人形に空中で殴り飛ばされる。
屈強な体つきで、そして頭部にハートのマークがある。
着地したワムウが呟く。
「スタンド、とやらか」
「ほう、ご存じか。その通りだ。先ほどはあまりのスピードで身を守る暇もなかったが、今は別だ。
力に、精神力に、動体視力に、体力に、全てに満ちあふれている。素晴らしいぞ、この体は!」

杖を振ってでてきた、水が鍾乳石を切り裂く。
「どうだ、この魔法は。ミノタウロスのときですら、俺は水の魔法について勘違いをしていた。
水の本質は治療でも洗脳でもない、ダイヤモンドすら切り裂く圧倒的圧力だ!」

ラルカスはスタンドを従え、杖をこちらに振るう。
鍾乳洞と、ワムウの皮膚が切れる。
ワムウの顔色が、変わった。

杖を構え、ワムウたちに向き合う。
「スタンドの名を名乗ろう、クレイジー・ダイヤモンドだ」




To Be Continued...
30風と虚無の使い魔 ◆/4V68E5Ojg :2008/01/19(土) 23:04:39 ID:aMB/pjgU
投下終了
AA規制回避のために改行部分には<br>いれときました
保管庫にいれる方はどうかその点よろしくお願いします

ところで、テンプレにゼロ魔とジョジョのAAリストが入ってるのには
なにか深い意味があるんですかね
31名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/19(土) 23:15:02 ID:Cso2oIe5
風虚無の方乙そしてGJでした!
ラルカスが厨性能な化け物に……
かつて、ワムウが敬意を払った戦士の息子が
本体だったスタンドが使われてる辺りに
因縁を感じてwktkします
32名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/20(日) 00:17:52 ID:iJVA0Iyy
豪華哀鈴吹いたwwwwwww
そしてミノタウロス+吸血鬼+クレDとは…
滅茶苦茶過ぎるwwwwwww
33名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/20(日) 01:59:04 ID:nU8pPyUR
たしか吸血鬼は柱の男達の大好物………






ラルカス乙
34名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/20(日) 03:06:01 ID:o0oDbe2r
前スレで少しだけ名前が出てるな…。
吉良や兄貴に続いて復活できますよう…。
今こそイタリア帰りの力を見せるとき。
35名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/20(日) 05:12:57 ID:lRFaGmPH
>>34には悪いが
全然関係ない人登場
久しぶりに投下します
36名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/20(日) 05:13:39 ID:lRFaGmPH
22 滴る命、染み出る命

思考に卑しいものが一片も混じってないとは言い切れない。自分本位な気持ちが無いわけがない。
言いつけは聞く。そして、私を守ってくれる。命を賭して。何故? だから殺したくないのか? 見下した憐憫の情?
初めて成功した魔法の、サモン&コントラクト・サーヴァント。その証。だから失いたくないのか? 己自信のプライドのため?
幼い頃、父親の書斎から持ち出した本を思い出す。今は禁制の、惚れ薬の本。
人の感情は複雑に絡み合い、連動している。恋心だけでなく、他の関連づけられた感情をも昂ぶらせる必要がある。
揺れる吊り橋の上で出会った二人は恋に落ちる。そんな例をあげていた。今の自分はどうだ?
わからない。それらも多分あるのだろう。でもそれだけじゃないはずだ。強い感情が私を動かす。
故に、ルイズは首を横に振る。一種の甘えであることに気付くほど、論理性を許す場面ではない。


仕事の終わりは確実に近づいてきている。空き地を取り囲む森の木陰に身を潜めながら、フーケは思う。
半泣きのメイジ。にらみ合う、顔のないゴーレム。その後ろに立つ一人の男。すぐにみんな消えてなくなる。後に残るは一本の魔杖。
森中に響く割鐘の大音声。わざわざ使い方を丁寧に教えてくれるとは。これで誰も生かしておく必要はなくなる。
頭をほんの少し動かし、空を見上げる。旋回する風竜。
なに、竜といってもほんの幼生だ。乗っている人間だって大差ない。地を見下ろす頭二つ。一人の長い豊かな髪が風に流れている、その様が見て取れる。逆はない。少なくとも、この森では。
待つだけだ。あの意外なしぶとさを見せた男は、じきに倒れて冷たくなる。
世にも珍しい人間の使い魔。世にも珍しい能力を持つ。ゴーレムを乗っ取り、喋らせるだと? それも終わる。私のゴーレムは自由になる。
後は簡単だ。彼と、彼の主人と再開させる。一体どこで? 知ったことか。
フーケの口に笑みが浮かぶ。初めは淑やかに。そしてそれを恥じ、かき消すように口の端をひくりと吊り上げる。


道を閉ざされた思いで口論を続けて――続けさせて?――いるうちに、頭が少しは冷えてきた。これだけ温かな血を流せば当然か。筋肉が引きつる。
帰り道を自分で塞ぎ、真正面にはだかるのは己が主人。息が荒い。おれもか。
どちらも良かれと思っている。たちが悪い。いや、少なくともおれの本意ではなかった筈だ。今となってはどちらでもいい。あの時はそう思った。「やらねばならない」と。
それだ。道幅を狭めている原因。
その気持ち。痛む右腕を抑えつつ、デーボは考える。その義務感、恨みとは程遠い。
ゴーレムの背中を見上げる。顎から首に冷や汗が流れる。土の右手を失ったゴーレム。土は肉より脆い。おれの右手はここにある。
多少はいびつだが、これだけの人間の相似。人形。誰かの操作が介在しようと、動かせないはずがない。恨みを持つおれならば。
力が入らない。意思とも違う、スタンドの力が。寝起きの肉体のように。火のような焦りの一方で、「そっち」はまるで腑抜けている。
誰か。誰だ。なんとかいう盗賊だ。それを見つける。それを恨む。それを叩く。その方がいい。
探して歩くわけにもいかん。相手はこっちを見ているはずだ。道が塞がっている。車はガス欠だ。だったら向こうから来ればいい。ガソリンを両手に抱えて。
盗賊は何を欲している? 何を釣り餌にすればいい? 警戒させないように、どうやってそれを垂らす?
落ち着きを取り戻しつつある。ロケットを撃たなかったルイズに感謝か。いや、それを庇ってこの傷だ。自業自得か。わからない。軽い混乱。
くそ、冷静かどうかも怪しいもんだ。考えが纏まらない。失血に伴う意識の散漫? 終わりが来ないうちに足を進めないといけない。雑な仕事か。いつものことだ。
37はたらくあくま 2/2:2008/01/20(日) 05:14:44 ID:lRFaGmPH
生まれ持った下品さを損なうことなく――フーケにはそう見えた――、ゴーレムは少女に罵言を浴びせる。言葉の質が段々と悪くなる。話法の柄が徐々に悪くなる。
少女もそれに応えるように、態度を激昂させる。二本の杖を握る手に力がみなぎっている。
互いの生死を決定付けるはずの口論は、いつしか只の罵りあいに堕している。
フーケは呆れる。死出の汽車を待つ間を、ひたすら喧嘩に費やすのか? 一人はどうやらそのつもりらしい。
哀れな少女は状況に屈している。現実を正しく捉えられないか。出来るが故に、そこから逃げ出そうとしているのか。
意識してかどうか、無邪気な遊びに夢中になっている。
ゴーレムも同様だ。表情こそないが、それでも悪意が伝わってくる。相変わらずの大声は憎憎しげ。少女を貶めるその言葉の端々に、喜びさえ感じ取れる。
迫り来る破滅から目を逸らす。弱い人間のすることだ。さっきまでの主従関係は幻だったのか? 主人を守る使い魔、使い魔を気遣う主人。

ああそうだ、使い魔はどうしたんだ? わめき散らすゴーレムの後ろにその姿。上を向いている。ゴーレムを見上げている? 違う。もっと上だ。
短剣を持った左手を強張ったように持ち上げる。頭上で振り回す。何かを指す。少女はゴーレムと終わりなき口論。気付いていない。
釣られるように男が刺す方向を見る。森への入り口。ここまで来た道。はるか向こうには魔法学院。

従者の麗しき献身は続いていた。刃を己の身で掴み、その隙に応援を呼ぶつもりか。君、君足らずとも。
ゴーレムは動けない。トライアングルメイジといえども、一度に複数の魔法は使えない。目的のものは手中にある。あとは無力な賊の殲滅か。あるいは、尻尾を巻いて逃げ帰れ、か?
ゴーレムの大声は上空でも聞こえるだろう。悪態は目くらましか。大した演技力。
空を見る。竜の姿はすでに見えない。制限時間は、もはや彼らだけのものではない。
風竜の速度。手の内を晒した自分。来るであろうメイジ達の数。状況が行動を促す。
そう、応援の数。多数来るだろう。逆に考えれば、今は二人だけだ。
計算し損ねたな。向こうは「フーケ」の顔を知らない。こっちは向こうを知っている。魔法の使えないメイジ、満身創痍の平民。盗賊にすら劣る。
フーケは動き出す。


ルイズの後ろの森から、御者がまろび出る。余計なものが釣れた。デーボは苦々しく思う。怯え、取り乱している。それはいい。本命が動かない。
御者はルイズに駆け寄る。ルイズが気付き、呼びかける。ミス・ロングビル! ああ、そんな名前だった。縋るような声。先ほどまでの罵りあいとは打って変わった声。
敵を欺くには味方から。そのつもりだったが、見抜かれて、上手く調子を合わせていたのか? だったら見方を変えるべきかもしれない。
「お願いします! デーボに、あの、使い魔に『治癒』を…!」 ルイズの懇願する声が聞こえる。答える声、わかっています。でもその前に…。
ああ、そういう手もあるか。恩恵を受けた身でありながら忘れるとは。縁のない生活をしているせいか。いや、そもそも計算に入れるべきではないのだ、善意の他人の力など。
それでも、ともかく今は利用させてもらう。限界は近い。デーボは多少大っぴらに四囲を見回す。動くものはない。気配も窺えない。
不利と見て逃げ出したか? ゴーレムを捨て駒に。だとしたら飛んで逃げるか。また空を見る。緑に囲まれた青空。もうすこしで太陽が天頂に到る。
「な……」 ルイズの呻く声。視界が少しぼやける。視線を戻す。ロングビルに抱きかかえられるルイズ。地面に投げ捨てられる。乾いた音。意識を失っている、多分。
生きるには残り少なくなった血液、その圧が今日三度目の上昇をはじめる。
何か、単純な法則に支配されている。他人のことで激情に駆られるなど珍しい。短時間で三度ともなれば、理由の推測もつくというものだ。
脳の一部が高熱で高圧。原因は目の前で伏している。これが魔法の力か?だとしたら空回りだな。
今のおれに力を与えてくれるのは、目の前で妖艶に微笑む盗賊だけだ。猛禽類の目。命を奪うものの目。腹立たしい。こうでなくては。
38はたらくあくま 3/2:2008/01/20(日) 05:15:25 ID:lRFaGmPH
「残ったのはあんただけよ」 と言っても、二人だけなんだけど。倒れたルイズの手から、破壊の杖を拾い上げる。
ゴーレム越しに杖を肩に構え、フーケは言う。男は右肩を押さえ、無言。
「驚かないのね」 つまらなさそうに言ってから気付く。男がじりじりと移動していることに。
逃げるように、ゴーレムの影に隠れるように。摺り足。それすらもふらついている。
驚かないんじゃない。そんなヒマもないほどに、追い詰められているのだ。フーケの笑みが深くなる。
気絶した少女から離れ、殊更ゆっくりと回り込む。ゴーレムの正面から、残った左手へ。
フーケはゴーレムを見上げる。右手で杖を振り、ゴーレムに新たな命令を下す。やはり動かない。大したものだ。やっぱり殺さなくては、ね。
男が血糊で塗れた草に足を滑らせる。肩膝を付き、荒い息を吐く男。観念したか、立ち上がろうとしない。お遊びもここまでにしよう。
「――聞きたいことがある」 さよなら、と言いかけたフーケに被せて、男が尋ねる。
「時間稼ぎのつもりかい? 残念だったね。その手には乗らないよ」 照準の中心に男を捉える。
「すぐに終わるさ」 そうだな。見れば判ることだった。そう呟く男。
「じゃあ今度こそ、さ」轟音と衝撃、そして暗黒。



急激な覚醒。何だこれは。体を動かそうとする。四肢に激痛。全身に激痛。思わず悲鳴。声が出ない。かすれ声が搾り出される。動けない。
視界には土の茶色と森の緑。生き埋め? 違う。これは――
森がぐるりと回転する。頭が下になる。逆さまの視界。男と目が合う。悪魔の目。人を殺すものの目。
何を言う間もなく、フーケはゴーレムに握りつぶされる。ゴーレムの左手が水分で黒く染まった。
39名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/20(日) 05:16:23 ID:lRFaGmPH
投下しました
いくらなんでもさぼりすぎだろ自分
あと名前欄gdgdすぎだろ自分
40名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/20(日) 06:15:57 ID:xzi+Vdof
デーボお帰りGJ
でも二分の三てw
41名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/20(日) 09:24:46 ID:8X/KRjeP
あくまさんおかえりそしてGJ!
この時点で洗脳効果認識は珍しいな
42名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/20(日) 13:19:18 ID:UISF7tcq
GJ!

デーボ怖ぇぇぇぇぇぇぇ!!
43名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/20(日) 14:59:18 ID:DO0mg8lO
WRYYYYYYYYYYYYYYY
44名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/20(日) 16:40:14 ID:rH6CLoKM
あっさりと殺されたフーケが哀れだが、デーボの職業は殺し屋だからしょうがない
そういえばフーケが殺されてる長編作品って意外だがDIOとデーボとFFだけじゃないか?
(デッドマンの方は生死不明、ギアッチョの方は足が使い物にならなくなったが生きてはいる)
45名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/20(日) 16:40:56 ID:DO0mg8lO
静かによんでおもったけど
ここまで主人のことを敵視している使い魔はいない
46名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/20(日) 16:45:27 ID:UISF7tcq
つチョコ先生
47名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/20(日) 16:54:04 ID:p0Y4nPg4
>>46
チョコ先生は主の事を嫌っているんじゃなくて好奇心が忠誠心を上回るから何やっても罪悪感も後悔も感じないんだよ。
あの人扱えるメイジってゼロ魔に居るのかねえ…
48名無しさん@お腹いっぱい:2008/01/20(日) 17:08:01 ID:+EOzxi4T
>>47
あえていえばガリア王くらいか・・・
 

ふと思いついたけどフーゴのウィルスもルーンで強化されるのかな?
49名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/20(日) 17:54:08 ID:ZsuBICbW
>>48
ウィルスが成長して太陽光線を浴びても平気になるんだよ!
50名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/20(日) 17:55:50 ID:DsA1Vf3q
どんな厨性能だよw

でもスタンドパラメータの欄の
「ウイルスはまた成長もするのだ」という記述に無駄な期待かけてた俺
51名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/20(日) 18:05:49 ID:DO0mg8lO
奇妙なルイズ 空条徐倫の場合の続きが読みたいな
52名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/20(日) 18:38:12 ID:VFQr+B4l
なんかそれぞれの作品のキャラのことを話しあってみたいな。
ここか避難所で。
53名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/20(日) 18:50:14 ID:9R4I9HXG
自分の好きな作品を書くスレでいいじゃん
54名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/20(日) 18:54:41 ID:gwKU1q2U
>>52
キャラクターが読者からどう思われてるのか、気になる時はあるけど、いい意味で参考になったのはルイズ座談会だな。
たった一言の台詞なのに、作者の思惑と読者の思惑は違うんだなあと認識させられたよ。
55名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/20(日) 20:01:37 ID:iJVA0Iyy
>>48
ルーンで強化されてちゃんとヨダレを拭けるようになるパープルヘイズを想像した。
56名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/20(日) 20:09:47 ID:7fHzFTaE
>>55
あれ?何かきゅんと来たぞ
どうやら、このスレに入り浸り過ぎて
スタンド萌え属性がついてしまったらしいな
アヌビス神とFFとホワイトスネイクと
ドラゴンドリームとデルフリンガーは俺の嫁
57名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/20(日) 20:12:52 ID:4VvJ6JIA
パープルの真の怖さはウィルスが本体にも効く事。近距離タイプなのに
58名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/20(日) 20:24:48 ID:rH6CLoKM
>>57
それ考えるとパープルヘイズの能力を最大限に生かす為には、鏡警備員とコンビ組むのが一番という皮肉
59名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/20(日) 20:26:14 ID:WxmiEqVk
ルーンの力でヘイズ使いこなせるフーゴ
ルーンの力でハンド使いこなせる億安
ルーンの力でチャリ乙レクイエム使いこなせるポルポル
60名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/20(日) 20:31:51 ID:rH6CLoKM
>>59
対ヴァニラ戦のポルナレフのように射程が延びれば何とかなるかな
61名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/20(日) 20:35:13 ID:PDTu7M6y
パープルヘイズ「ガンダールヴのちからでフーゴがしなないウィルスにしんかしたよ!
ルイズ?なにそれ?うばしゃあぁー」
62名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/20(日) 20:38:08 ID:ZsuBICbW
ハーミットパープルヘイズ!


ハミパで射程伸ばしてからカプセル割って攻撃
63名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/20(日) 20:42:24 ID:vvhg7JmH
>>61
吹いた
あの外見でひらがな喋りに萌えた
ルイズなにそれでもう一度吹いた

仮に紫煙がラッシュするとしたらうばしゃああああああとか言うんだろうか
アバッキオはウリアアアアか?
64名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/20(日) 20:46:58 ID:eYN0gfdr
ハー愛してるよルイズ!にみえた
65名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/20(日) 20:48:09 ID:UISF7tcq
JOJO5部を読み直してたんだが…

ペッシが召喚された際にビーチボーイの姿が見えたとしたら
変な飾りのついた杖を持つメイジに見えなくもなくね?
マントじゃないがコート着てるし
66名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/20(日) 20:51:46 ID:WxmiEqVk
>>63
紫煙は五部ゲーの必殺技もディアボロの大冒険の会心もうばしゃああああだったな
67名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/20(日) 21:08:36 ID:jYWtKggz
>>65
ペッシカッコイイ!
68名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/20(日) 21:19:56 ID:vnzbe7Kd
>>65
釣竿ぐらい流石にわかるだろ
あ、でもリールは中世には無いか
69名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/20(日) 21:25:46 ID:SirViCl6
いやギーシュが薔薇の造花を杖としている様に、杖は個人個人で違うから「釣竿を杖としたメイジ」と見られる可能性はあるぞ。
70名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/20(日) 21:27:49 ID:TCHdFeDz
フーケ戦で列車の運転士のようになってしまう
マチさんを想像してしまった・・・
71名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/20(日) 21:41:31 ID:nU8pPyUR
兄貴パワーで覚醒したペッシはかなり強くて、かなり残虐だしな…


マチさん………
72名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/20(日) 23:15:47 ID:ctiaAXke
雑談中にすまないが、投下しても構いませんか!?

構わないなら『許可』を…許可をください。
投下にはそれが必要なんだ…それで私は救われる……25分から自重しない牛を投下します。
73名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/20(日) 23:17:06 ID:SrFMWHW8
関係ない、投下しろ
74名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/20(日) 23:18:41 ID:u7BBnESE
支援
75名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/20(日) 23:20:43 ID:cXGCd6ar
寝る前の支援
76名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/20(日) 23:25:11 ID:eYN0gfdr
自重しない牛ってなんだ?
とにかく支援
77名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/20(日) 23:26:39 ID:ctiaAXke
あ、ありのまま見たことを話すよ!

わ、私は父上に国から出されて、魔法学園に向かっていた。
父上に言われた『王家の血を引きながら系統魔法を全く使えないメイジ』を探す為だよ…
でも襲撃され、私は潜在的な敵国ゲルマニアの貴族ネアポリス伯爵に助けられ、その馬車に乗ることになった。

だが、そのネアポリス伯爵は今急速に勢力を伸ばしている、『盗賊』ではなく『ギャング』』と名乗る組織『パッショーネ』の一員だった!
な、何を言ってるかわからないと思うけど、私もどうしたらいいのかわからない…!

レコンキスタだとか父上に反抗する一派だとか、そんなちゃちなもんじゃない危険を感じるよ!
当のネアポリスと目があって、私は反射的に目を伏せた。

外伝9 コロネと亀は惹かれあう…ポル? あぁ、そんな人もいたね

ジョルノは自分と目があって、すぐに目を伏せてしまったイザベラを見て、微かに心に不審が沸いた。
馬車は相変わらず、ゆっくりと確実にトリスティン魔法学院へ向かっている。
馬車内にはイザベラが撒き散らす鬱屈した雰囲気が広がっていた。
それを感じ取ったテファが、ジョルノにどうにかして欲しいと期待しているような目を向ける。
だが、ジョルノは我関せずといつも通り仕事をしていた。
手紙を読み、返事を書き、本を読むといった普段どおりの行動をしている。

この雰囲気は、イザベラがテファを殺しかねなかったので、ジョルノが思わずスタンドで殴り倒してしまったせいだろう。
それならそれで、それを利用してイザベラと悪くない関係を築くくらいの事、できるようになってもらいたいとジョルノは考えていた。

だがしかし、今のイザベラが目を伏せた態度は何か奇妙に感じられ、ひっかかった。
『イザベラは本当に殴られて警戒心とまた殴られるかもって恐怖心を持っただけなのか?
  僕の何か…例えば『組織』や『麻薬』に気付いたのか?』という疑問が浮かんだのだ。

うっかりしていたと、後で気付いて落ち込んだものだが…殴り倒した時、イザベラにかけた上着のポケットには、『組織からの手紙』が入っていた。
今、ジョルノが読んでいる、ガリア領内の官憲を買収するのに結構な出費がかかっているとかの情報が書かれた手紙だ。
これをイザベラにばらされるとちょっと困った事になる…つまり、始末しなくっちゃあならなくなるのだが。
先日部下達に金をまいたお陰で、結構金欠だって言うのにまた頭を悩ませられる問題だ。
イイニュースと言えば、表側でやっていたブランド品事業が、ちょっぴり黒字だった事と本来の狙いがやっと当たったかもしれない、と言う位だ。

イザベラに見られたかもしれない手紙を外に捨て、証拠を消す為に与えたエネルギーが手紙をモグラに変えて、土の中へと消えていく。
次に取り出した手紙。既に読んだが、改めて読んだゲルマニアからの手紙には確かにこう書かれている。

『アルマニがパクリだと疑う貴族一人を確保。伯爵様が用意された質問の回答は半分位、使用できる言語を調べた途中経過では、英語は理解している…』

ジョルノは微かに笑みを見せその手紙も外へと捨てた。
まさかって感じだったが、確かに『ジョナサン・ブランドー・フォン・ネアポリス』と言うゲルマニア貴族が、地球出身だと言う事実は、以前より確実に広まったようだ。
これでいい…利益も大事だったが、戻る可能性も模索しなければならないから。
リスクも高いだろうが、「なんでも試してみるもんですね」

「? ジョナサン、何かいい事あったの?」
78名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/20(日) 23:28:36 ID:ctiaAXke
小声で言ったが、馬車内に会話がなかったし、重い空気が堪えていたテファはジョルノの唇の動きに敏感に反応した。
向かいに座っているとはいえ、所詮は馬車だ。
二人の距離は一歩か、せいぜい一歩半ほどしか離れていなかったが、この空気からよほど逃れたいのかテファは身を乗り出していた。
ジョルノは返事をする前に隣を見ていた。
身を乗り出したその時、揺れた胸。
舗装されていない道を走る為、微妙に馬車は揺れ続け…それにあわせて揺れる胸っぽい物体に、熱い視線を注ぐラルカスが隣にいる。

見られている事に気付いたラルカスが、わざとらしく何事もなかったかのように視線を逸らす。
そしてだらだらと汗を流しながら小声で言った。

「こおおおっ………」

呼吸音ではない。
ラルカスは、明らかに声に出して言っていた。
だがそんな状況でも、テファが恥ずかしそうに胸を隠し、指の間から溢れるのをしっかりとまた目撃するのは忘れない…馬車内に冷たい空気が流れた。

ラルカスは今気付いた、とでも言うような態度で周りを見て、そしてジョルノに笑顔を向ける。

「ん? なんだジョナサン。私のハンサム顔に何かついて…ますか?」
「アンタ、違う方向に成長してるようだな」

ジョルノの指摘は至極もっともだった。
なのに何故かラルカスは酷く傷ついたような目で、テファにフォローを求めた。
テファの隣に座るイザベラが、生暖かい視線を牛に注ぐ。
そんなラルカスに天罰が下ったのだろうか?

突然、ラルカスは立ち上がり天井に頭をぶつけた。

「アンタ、天井が低い事も忘れるほど見てたのか?」

怯えていたイザベラにまで呆れたように言われながら、ラルカスは大急ぎで首を横に何度も振った。
そしてジョルノに切羽詰ったように言う。

「ジョナサン。話がある…一度馬車を止めてくれないか?」

自分が振りまいた空気を全く考えない真剣な言葉を聞き、ジョルノは御者役のガーゴイルに馬車を止めさせた。
ゆっくりと、ゆれを最小限に納めながら馬車が停車する。
颯爽と飛び出すラルカス、そして馬車内で待つように言ってジョルノが、それに続いて出て行った。

残された二人のうち、テファはまた仕事の話かなと気にせず与えられた本を読もうとして、飛んでくる伝書鳩に気付き顔を綻ばせた。
テファが窓から身を乗り出して、差し出された手に止まった鳥は、間違いなくロマリアの孤児院からの鳥だったからだ。

前受け取った手紙では、子供達は宗教色に染められて、エルフではないか?とテファに尋ねてきていた。
そして街で人間に追われ、隣に座るイザベラに先日襲われた。
だから、嬉しいはずの手紙を取り出して、テファの手は止まった。
深く深呼吸をして、その手紙を開く。ジョルノをとても慕っていた子供からの手紙が一番上にあった。
その子供のことを考えると、多分これはわざとそうしたんだろうなと微かに笑ってテファは手紙を読む。
慌てて封筒に入れたのか、少し端が折れた手紙はテファに思いもよらぬ衝撃を、ゆっくりと与えていった。

「…試験? え……?」
79名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/20(日) 23:30:31 ID:u7BBnESE
支援
80名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/20(日) 23:30:55 ID:ctiaAXke
はじめ、嬉しそうに手紙を読み進めていたテファの表情が、理解に苦しんで歪んでいった。
手紙とジョルノが内緒話の為に消えた木々の間を視線が行き来する。
その様子に、何かを期待してイザベラが腰を上げる。
気付かないテファの後ろに静に回り、手紙を覗き込む。
興奮していたのか、少し乱れた文字が紙面で踊っていて、『パッショーネの入団テストに合格したんだ! でもまだジョルノには承諾をもらえてない…怒りそうだから、テファお姉ちゃんから許してもらえるように言ってくれない?』、と書かれている。

驚愕に、イザベラは目を見開き後退る。馬車の中だから、すぐにその背中が壁に付いた。

「ジョルノ、テファお姉ちゃんには甘いからって…あの子、一体何を?」

混乱するテファの隣で、イザベラも混乱していた。
自分がとることができる手段は何か?
急いで考えなければならないと、恐怖心に駆られて。

一方…いない間に届いた手紙によって、不味い事態になっているとは知らぬジョルノは、ラルカスと共に森の中にいた。
周囲を虫、蛇、そしてディテクト・マジックなどで探査していて、まだ何も話していなかったが、ラルカスがそこまでの行動を求めていることが、この話が案外大事だという事を表していた。

一通り警戒を行ったラルカスは、安心したようにしてから、ジョルノに顔を近づけた。
そこまで、不必要に警戒するラルカスを不思議がりながらジョルノはラルカスに尋ねた。

「なんです?」

ラルカスはゆっくりと答えた。
その声は、微かに震えている。

「ジョルノ。わ、私の偏在が殺された。相手は二人だが、実質一人のメイジだ」

ジョルノは「間違いないんですか?」と聞き返した。
滅多にこんな事は無いのだが、自重できない牛野郎とはいえ、ラルカスの能力は折り紙つき。
その上常に銃を携帯し、部下を連れ二人以上で行動。ヤバくなれば地下水に代わって、スクエア以上の力と鋼以上の強固な肉体を持つメイジとなるラルカスの偏在だ。
それが、一人のメイジに殺されたというのは、意外な話だった。そして同時に、今の所、普通に戦えばパッショーネ最強のラルカスが日中にやられたとなると、今後その領内ではこれ以上無いほど警戒しなければならない、と言う事にもなる。
ラルカスは重々しく頷き返した。

「火のメイジですか?」

火のメイジが操る炎なら、ラルカスの鋼の肉体にも十分な効果がある為、最も可能性は高いと言えたが、違った。
ラルカスは首を振った。

「こちらの正体は見られなかったが、相手は多分、『烈風』だ」
「烈風、風だと? アンタの体は風の刃なんて通さないはずだが…火のメイジより先に風がアンタを破ったのか」

頷き返し、ラルカスは恐れを含んだ声で言う。
その声には恐れと共に、隠し切れない興奮をも、ジョルノには感じられた。

「このハルケギニアの歴史の中でも屈指…いや、伝説の虚無とかを覗けば最強の一人に上がる程の伝説的なメイジだ」

虚空を睨みつけ、その逸話を思い出し、自分が見た姿と照合したラルカスはそうに違いないともう一度頷いた。

「ピンク色の髪をした小柄なメイジ。引退前は顔を隠してたらしいが、あの強さ、間違いない」
「誰かわかりますか?」
「ああ」

ラルカスは神妙な顔つきをした。
もったいぶるように一拍置き、皮肉な話だがと更に前置きをしてもったいぶってラルカスは言った。

「場所はヴァリエール領。貴方も知るヴァリエール公爵夫人だ。一緒にいたのは我々が助けたカトレア嬢だな」

言うと、ラルカスは苦笑して見せた。
敗北したが、その強さに納得しているようでもあったし、カトレアの名前に苦い表情を微かに覗かせたジョルノを面白がっているようでもあった。
81名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/20(日) 23:33:59 ID:ctiaAXke
「彼女も腕の良いメイジだったぞ? 退路を断たれなければ多分私も逃げられていたからな」
「そうですか。早急に、やり方をもっと周到にするとしましょう。急いで皆に領内で更に深く、静に溶け込むよう伝えましょう」

怖れを忘れる為に、面白がりながら言ったラルカスに、迷いない口調で言うと、ジョルノは背を向けて馬車に向かい、歩き出した。
驚いて瞬きしながら、その背をラルカスは追いかける。

「お、おい。一旦手を引いた方が…」

この体で生きる事に希望を持ったラルカスは、敗北から恐れに取り憑かれていた。

『烈風カリン』の名はラルカスも若い頃に何度も聞かされている。

『最強は風』と、トリスティンの風のメイジは誰はばかることなく言う…と言われている。
実際、トリスティン魔法学院の教師の一人は生徒にそう言っているが、それを否定する声は同僚である他の属性のメイジからは上がらない。
トラブルを避けているのではなく、そのメイジの言は『烈風カリン』が現役時代に照明して見せたからだ。
それ程のメイジが動く領内で活動する危険、溶け込んでもまた見つけられ戦い、追い詰められる事を嫌でも考えて、ラルカスはビビッていた。
烈風が娘を連れ、一人で動いているとは考えにくい。
ヴァリエール家が領内で今動かしている兵士は、当時のマンティコア隊と同じく彼女の冷たい鉄のような規則が動かしているはずなのだ。
その捜査力は侮れぬし、王都の官憲などよりも、精神的にも上かもしれない。
それを感じ取って、ジョルノは足を止めた。

「ラルカス、アンタビビってるのか?」
「あ、ああ…情け無いことだとは思うが、烈風カリンが率いるマンティコア隊の精強ぶりを知る者が聞けば、今のヴァリエール領からは一旦引いた方がいいと皆言うだろう」
「成長しろ、ラルカス」

首だけ振り向いたジョルノは、木々の間から差す光を受けながらはっきりと言った。
ラルカスは、その言葉の力強さ。そしてジョルノから吹き込むように感じる爽やかな風に驚きながら足を止めた。

「僕達の組織は、成長しなくちゃならない。たった一人のメイジから、深く静かに…それとも、彼女が死ぬのを待つか? 少なくとも僕にはその時間はあるが」

挑発的な笑みを見せたジョルノに、ラルカスは、呼吸が落ち着きを取り戻していく。それに、汗がひいていくのを感じた。
不思議と、もう恐怖はなかった。むしろ勇気が沸いてくる。そんな気持だった。

「いや、私はたった今、既に覚悟を決めた。『パッショーネ』は『烈風カリン』も乗り越えてみせる、ボス。理解したぜ」
「ベネ。計画を練り直しましょう」

再び歩き出すジョルノをラルカスは追いかけ、二人は馬車に戻る。
ヴァリエールとは仲良くする。だが、引きもしない。
理想としてはそんな、パッショーネにとって都合の良い落とし所を模索しながら。
出て行く前より、更に微妙な空気になった馬車内に首を傾げながら、馬車はまた少しずつトリスティン魔法学院に近づいていく。
進路を考えるのに忙しい女性二人を他所に、ジョルノは今後の計画を練り、ラルカスはとりあえずの対処を連絡していく。
鳥を飛ばし、偏在を向かわせていると、遠くで、巨大なゴーレムが立ち上がった。

腕を振るう様子が、ジョルノの目に止まった。

「クリス。あのゴーレムを作れるメイジは、どの程度の腕になります?」
「え…!? ああ、そうだね…トライアングル。いや、スクエアかも」

ジョルノの質問に、考えに没頭していたイザベラはすぐに反応し、ゴーレムを見て言った。
王宮に育ち、腕のいいメイジの技などを見る経験は多数あったので、すぐに答えられた。

「ラルカス。馬車をあっちへ向かわせてくれ」
「? 余計なトラブルを抱え込む事になるが…?」
「構いません。向かってください」

ジョルノとポルナレフの距離は一層縮まろうとしていた。
その傍らで、ジョルノが知らぬ間に静かに、テファとイザベラも覚悟を決めようとしていた。
82名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/20(日) 23:36:39 ID:E9OCnPqX
死¥
83名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/20(日) 23:37:53 ID:ctiaAXke
以上です。
支援と前回規制のことを教えてくれた名無しさん、ありがとうございます
次で合流かなと思います
ルイズママンは娘も元気になって、今まで以上にヴァリエール家でフリーダムに動き始めましたとさ
公爵はストレスで胃潰瘍になってるかもしれませんが
84名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/20(日) 23:40:53 ID:UISF7tcq
GJ!
色々と動き始めてきたな

でも公爵は平気だよ!Mだもの!!w
85名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/20(日) 23:41:54 ID:nU8pPyUR
GJ!!
牛、少しは自重しろwww


たしかポルナレフの入ってる亀の中って
スタンドの矢も入ってるんだよね…
合流したら終りが来ないかもしれん………
86名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/20(日) 23:42:34 ID:RzVll9Tu
GJ!!いいねぇジョルノ、じつにボスって感じだ
これで15とは、ほんと末恐ろしいな
87名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/20(日) 23:46:21 ID:u7BBnESE
いずれはカリーヌさんと直接対決か?
ジョルノGJ
88名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/20(日) 23:50:59 ID:JUUxhfKK
乙&GJ!
毎度アカギとかジョルノとか見て思うけどこんな年下いねえwwww
89名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/20(日) 23:54:43 ID:jYWtKggz
                      ______                  /^l  r i /ニヽ
         /^l  r i /ニヽ     /∧∧∧∧∧∧.\               / /   ! i .| |.| |
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        / /   | .| | U |   .|∧∧∧∧∧∧∧∧∧|            / ./   | .| `ー'
       / ./   | .| `ー'    |∨∨∨∨∨V《`´》V∨.|            / ./    .| |
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     //       J        |∨∨∨|     ∀   |          //      J
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       r-- ―-、           |/∨∨|  ̄   |  ̄ !.|            r-- ―-、
       ~.= フ /        |,∧∧|  | ー-'   ,' .|             ~.= フ /
       ,' /ー"           ´|/∨|\   ̄ ̄ ̄ ,' .|               ,' /ー"
       レ              __r' └‐┘ \   " , 'ヘ┘、           レ
               ,, - ''" _|   |    \_/   ! ` 、 
   (二ニ      , -'' _ -‐  .|    i       |   |`   \
    __,,、 -‐ ニ ./`<.      |    '、__/「||_ _.|_     ヽ   (二ニ
 (二~ -― ''" /    \    |  ,-r"r= ( (●)三 _ ニ  =  `',    __,,、 -‐ ニ
        /       '、   |_/ `|-{ {  r-r'  ̄ \|    |    (二~ -― ''"
  ○    i        ',     f"ー-= | l   __   | /   ',
       .|         i     !-‐~ ̄l ノノメ.| ̄    ̄|. レ     ',
 O       |           |    /´ ―= '‐'―く.|       |. |   ○ /
        |         |   /   ―---‐r" |       ! |    /
0       .|  _,, -――- ,,_|  /    ―---r'  ヽ    .ノ !   O.|
       <_|       | /     ,,-ー''    \_ /  ,'-‐'  |
         |     ,, -'"     /            /   0  .|
90名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/20(日) 23:55:29 ID:ZsuBICbW
GJ

ピストルズw
91名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/21(月) 00:46:59 ID:7rC6CP8i
GJ!
そして何か色々突っ込みたいがw
とりあえずジョルノが格好いい!!
何と言うか、黄金の精神を持ったDIOって感じだ・・・
92名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/21(月) 02:09:52 ID:HJDOLAZQ
投下乙そしてGJ
駄目だ、何度見てもジョルノの偽名に
胸がギュッとなる
そして、そろそろポルとの再会クルー?
93名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/21(月) 06:47:24 ID:rbFy6frE
ジョルノの知らない間に、イザベラの危険度が増してるな。
カリンさんも牛もどういうシチュで何やってたんだろう。
GJっした。
94名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/21(月) 06:56:00 ID:Zno5iqF/
>>93
きっと牛はカトレアの胸に気をとられすぎたんだよ
95名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/21(月) 14:16:56 ID:7rC6CP8i
>>94
スゲー納得w
96名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/21(月) 16:45:53 ID:WjkneIvj
今日は投下来るかなー?
97名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/21(月) 16:49:01 ID:TpSm0qoy
代理投下いいっすかー?
まぁ、回線状態が良くないっぽいので、うまくいくか解りませんがー。
98アンリエッタ+康一(代理):2008/01/21(月) 16:51:18 ID:TpSm0qoy
509 名前: アンリエッタ+康一 [sage] 投稿日: 2008/01/21(月) 12:50:03 7qBnfuH2
大きなお城に住んでるというのは、こんな時デメリットにしかならない。
フロアごとに広大な面積をもつ城の中を移動するというのは一苦労。
今、康一は気を失っているらしいエレオノールを抱えているのだから更に倍だ。
「じゃあこの女の人、エレオノールさんって言うんですか?」

『ああ、そうじゃよ。君のご主人である姫殿下とは血の繋がりもある。
この国一番の大貴族の娘さんでの。いや、しかし…良いフトモモじゃぁ』
『コノジジイ、ネズミの体ヲ借リテ何見テヤガル…』
ACT3でエレオノールを抱えて、自分の肩にハツカネズミを乗せた康一。

その肩に乗ったネズミは宙に浮いたエレオノールの(スタンドのACT3を見る事はできない)、
スカートから覗く、いわゆる、美脚に目を奪われていた。
御足と呼んでもよかろう。色白な肌。そこには一点のくすみもない。
ほっそりとしながら、そしてその形を崩さぬ程度に付いた柔らかな肉。

隅々まで手間暇を掛け、磨かれぬかれた、触りたくなるようなフトモモ。
踏まれたい。ああ、ハイヒールで踏まれてみたい。力を込めて踏んで欲しい!
美しい足、これが手なら殺人鬼も大絶賛する事だろう。
もっともエレオノールの手は足に劣らず磨かれたものであるのだが。

『ハレルヤ!グレート!この世は素晴らしきフトモモじゃ―――っ!』
「おい、いい加減静かにしなよ」
肩ではしゃぐネズミに康一の手が伸び、その小さな体を掴んだ。
『うあっ!待って、ホンの茶目っ気なんじゃよ!だからお願い、苦しい、潰さんでくれ!身が!身が出る―――――!!』

必死で弁解をするネズミに対して、正直ヤレヤレな気分の康一は手を放してやる。
さすがに中身がコレでも、見た目が愛らしいハツカネズミを握りつぶすのは康一には無理だ。
プルプル震えて怯えるハツカネズミの中身の老魔法使いは、
すでにエレオノールが履いている下着の色まで把握している事は黙っておこうと固く誓った。ちなみに白。

「それで、モートソグニル」
『お、オスマンで構わんよ。使い魔の体を通してワシが喋っとる訳じゃから、そっちの方が良かろう』
見た目はネズミ、頭脳はジジイ(エロ)。今宵舞踏会に出席している筈のオールド・オスマン。
使い魔であるモートソグニルの体を通して、老魔法使いは康一に語りかけていた。
99名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/21(月) 16:51:57 ID:L/dHtmcK
COME ON ポルポルくぅ〜ん!
100アンリエッタ+康一(代理):2008/01/21(月) 16:53:06 ID:TpSm0qoy
『さっき枢機卿から君のルーンの能力の事を聞いたんじゃが、使い魔を通して会話ができるとは思わんかったよ』
「それは僕も驚いてます。でも何か変な感じだなァ。ネズミを通して人と話をするなんて、まるで生きたケータイみたいだ」
康一の右手に刻まれたルーンがボンヤリと光っていた。
強い輝きではないが、道を照らす灯火のようにも見える。

康一のルーンの能力である動物や獣と会話をする能力。
その能力が離れた場所にいるモートソグニルの主人であるオスマンとの会話を可能にしているのだ。
「それで何でこんな所に使い魔を送って来たんです?僕等はそのお陰で助かった訳ですけど」
そう、先ほど窓から飛び降りる直前に聞こえてきた声は、使い魔を通したオスマンの声であった。

康一達の部屋と二階下の部屋の窓を小さな体で必死に開けて、康一達を助けてくれたのだ。
モートソグニルの小さな体なら敵に見つかる事もなく、それを行う事ができたのである。
殊勲賞ものの大活躍である事に間違いない。何より可愛いし、そこが一番重要。
『ほっ、そうじゃそうじゃ。今ちぃとマズイ状況でのぉ。舞踏会の客等が皆やられてしまっとるんじゃ』

「な…ッ!!それってどーいう事ですかッ!アンリエッタさんはどうなってるんですッ!」
『これこれっ!声が大きい、敵に見つかってしまうぞ。キチンと説明するから落ち着きなさい』
更に康一は肩の使い魔を通してオスマンを問い詰めようとするが、さすがに今の状況は分かっている。
廊下に取り付けられたランプの灯火が揺れ、ぐにゃりと影が歪んだ。

康一は周囲を警戒しながら移動を続け、オスマンの話を聞く。
『どうやら今夜の舞踏会の食事か何かに痺れ薬のような毒が仕込んであったようでの。
それにやられて広間の者は殆ど倒れてしまっているらしい。ワシもその一人じゃよ。
しかしワシには毒が薄かったのか効き目が弱い。そのお陰で君とこうして使い魔を通し話ができているという訳じゃ。』

毒、どうやら死ぬような物ではないらしいが、しかしあまりにもタイミングが良すぎると康一は思った。
今夜マザリーニと共に資料庫へ行くと命を狙われた上に、アンリエッタの方ではこの騒ぎ。
これが別々の人間のやった事ならあまりにも偶然が過ぎる。つまり。
「同一人物か、もしくは同じグループの奴がやったのか…」

『同感じゃよ。ワシは倒れる直前に君の事を枢機卿から聞いての。
その話の途中で彼は何かに気づいたように慌てて何処かへ行ってしもうた。
それで毒に倒れてから彼が危険じゃと気付き、モートソグニルに居場所を探させとった』
101名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/21(月) 16:55:16 ID:TpSm0qoy
そこで康一達が襲われているのを知り、モートソグニルに助けさせたという事か。
『恐らくエレオノール嬢も毒にやられたんじゃろうのぉ。
毒は効き目が遅いタイプだったのかは分からんが、広間を出た後に効果が出た。
それで今は君に巻き込まれ追われていると』

どうにもならない事もある。だが、それでもエレオノールを危険に晒すのは間違っている。
彼女は無関係だった。それを巻き込んでしまったのは他でもない康一自身。
ちくしょう、と康一はボソリと呟いた。だがそれでも、どうにかなる訳じゃあない。
今までにも何度かどうにもならない事を見てきたが、その度に康一はとてもとても寂しくなる。

寂しくて、そして悔しくなる。嫌なのだ。そんなのを見るのはとても嫌だ。
理由なんか無い。そう思うのは自分の本能で心なんだろう。
だからエレオノールを助けよう。深く考えた訳じゃあないが自然と決意した。
やれることはやる。そう心に決めていた。

『それでじゃの、姫殿下の事じゃが。今は体がゆうことを利かんので分からんのじゃ。
モートソグニルを行かせる前に見たものは、周りに幾人も人が倒れている程度での。スマンな』
「いえ、そっちで何が起こってるのか分かっただけでも充分です」
『シカシ、ソウナルト急ガナキャアナリマセンネ。お姫様ガ心配デス』

そしてマザリーニも一人足を負傷しながら追っ手から逃れられるか心配だ。
今すぐにでも駆けて行きたい所だが、しかしエレオノールを放って行く訳にもいかない。
彼女はぐったりとしており、身じろぎひとつしない。
このまま置いていくのは見殺しにするようなものだ。

「でも一つ分かんないのは、どーして今まで使えなかったルーンの能力が急に使えるようになったのかって事なんだけど…」
呟くように疑問を口にした康一。右手に刻まれたルーンが光っている。
先日タバサの使い魔シルフィードと言葉を交わしてから一度も発現しなかった能力が、
今になってどうして急に使えるようになったのか。それが分からなかった。

ピンチで新たな能力に目覚めるのは康一にはよくあった事だが、これは何か違う感じがする。
精神的な成長ならスタンドにも影響が現れている事だが、しかしそれは無い。
この能力で助かった訳ではあるが、不確定な能力というのは少し不気味でさえある。
康一はルーンの能力には発動条件があると考えていたが、いつの間にかその条件を満たしていたのか?
しかしその条件が不明ではいつ能力が使えなくなるのか分からない。どうしたものだろう。
102アンリエッタ+康一(代理):2008/01/21(月) 16:57:04 ID:TpSm0qoy
悩む康一だが、思わぬ事に救いの手がACT3から差し伸べられた。
『康一様、チョットコレヲ見テ頂キタインデスガ』
「ん?」
救いの手の文字通りに、ACT3はその手を康一へと差し出す。

スタンドの透けたその手を、康一は見て、更に瞳を最大に見開き、凝視してから硬直。
「……え?何?何でッ!?」
『私モサッキ気ガ付イタバカリナンデスガネ、イツノ間ニカアリマシタ。
多分コレガ能力ヲ発現シテイル理由ナンジャアナイデショーカ?』

普段自分のスタンドをまじまじと見る事など無いために起こった偶然。
そして自分以外にスタンド使いがいない事で気付かれる事もなかった。
ACT3自身が見つけるしか、それに気付く手立てはなかった。
今日は襲われてから移動中も発現しっぱなしである為に、それに気付く事ができたのだ。

怪我の功名。本当にそうとしか言いようが無い。
『康一君…?君はさっきから誰と喋っとるんじゃね?』
「はッ!」
オスマンが微妙に不安気に康一へ問いかけた。

スタンドはスタンド使いにしか見る事ができない。
その為、オスマンには自分のスタンドと会話している康一が、コリャヤベーぜッ!みたいな感じに見える訳だ。
「いや、その、説明は難しいんですけど、ちょっと今重要な事が分かったんです」
『重要な事?』
康一は今ACT3から得た情報を魔法に詳しいであろうオスマンに伝えようと、肩にいるモートソグニルの方へ顔を向ける。そして。

ザグゥッ!

「…え?」
頬を鋭い風が凪いでいくのを康一は感じた。
その後に何かが切れたような、これもまた鋭い音が聞こえた。
それはすぐ目の前から聞こえてきた気がする。康一は横に向けていた顔をそちらにやった。
103アンリエッタ+康一(代理):2008/01/21(月) 16:58:53 ID:TpSm0qoy
 
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ


杜王町で普通に暮らしていても一生の内、直に拝む事は無いかもしれない
しかし康一はこの異世界に来てから、正直見慣れてしまった感がある。
初めてメイジと戦った時に康一はコレを使いもした。
何度かアニエスや軍人の訓練を目撃した時にも使われていた。

剣だ。

長細い柄の部分が康一の顔面を捉えるように傾いで、廊下の床に突き刺さっている。
康一には一瞬、その様子が自分を威嚇している蛇のように見えた。
先ほどの鋭い何かが切れたような音は、つまりこの突き刺さった剣からでたのだろう。
そして康一の頬を汗が流れ落ちる。無意識に康一は頬を拭い、しかしそれが汗で無い事に気付く。
手の甲が赤く染まっていた。それが自分の血であると気付いた瞬間、頬の痛みを康一は自覚する。

「痛ッ!」
『康一様ッ!上デスッ!!』
ACT3の叫びが聞こえて、康一は言われた通り上を見上げた。
石造りの天井。そこから、何かが吊り下がっていた。

鋭い突起がツララのように何本も恐るべき速度で生えてくる。
鈍く輝く鋭い突起、康一はその正体を知る。
「………何で、剣が天井から生えてくるん、だ?」
あまりにも不可思議な光景に疑問が先に出た。

そして天井から剣の刀身が半ばまで生えた時、僅かにその成長が止まる。
「おいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいッ!」
『来よるぞ、康一君!』
僅かに成長を止めたのは、更なる爆発的な成長を手に入れる為の大きな助走。

僅か一夜で成長するような植物のように、剣は一瞬で完全に成長しきった。
その成長により、根を必要としなくなった剣は天より康一達へ降り注ぐッ!
「ACT3ッ!」
『ワカッテイマスッ!』
104アンリエッタ+康一(代理):2008/01/21(月) 17:00:41 ID:TpSm0qoy
ACT3は腕に抱えたエレオノールを放り出し、降り注ぐ剣を拳で迎撃ッ!
『WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!』
最速で拳を繰り出し雨のような剣をACT3が砕く。しかし。
「マズ…ッ」
砕かれてもなお鋭く尖った剣の破片は落下を止めない。

足や腕が露出したドレスを着用しているエレオノールに、その破片が突き刺さればエライ事だ。
康一は倒れたエレオノールに慌てて、のしかかるようにして覆い被さる。
正直康一では身長が足りずに多少はみ出てしまう部分があるのだが、それでもやらないよりはマシだ。
ばらばら、と砕けた刀身の破片が康一の体に落ちてくる。

そして幾つかの鋭い破片が、康一の学ランに、突き立った。
破片と言えど剣であることには変わらない。
人間の背中に刃物が刺さった、血の気が引く光景。
落下の力を得た破片はそう簡単には止まらなかった。…だが。

「う、う……学ランが、丈夫で良かったよッ。いや丈夫だからこそ学生が着るのにいいのかなァ」
幸い丈夫な化学繊維の布地が、ギリギリで康一を守っていた。
友人の東方仗助は以前バイクで、病院のドアをガラスごとブチ破ってきた事があるが、しかし学ランにガラスが突き刺さってはいなかった。
無茶をするのが若い学生の特権なのか。ぶどうヶ丘高校の学ランはことさら頑丈だった。

「あ、確か、エレオノールさんだっけッ。大丈夫ですかッ!」
当然ながら毒にやられたエレオノールから返答は無い。
康一は肌が露出した部分をチラリと失礼にならない程度に見たが、目立った怪我は見当たらない。
どうやら、とりあえずは大丈夫らしい。

康一は体に付いた鏡のように自分の顔を綺麗に映し出す、剣の破片を払い落とす。
そしてエレオノールを抱き起こして、周りの状況を確認しようとした次の瞬間。
『康一君!また剣が降ってくるぞ―――ッ!!』
耳に届いた、必死なオスマンの叫び。

康一は即座にACT3を操作して宙から降り注ぐ剣を迎撃させる。
その間にエレオノールを抱えた康一は何とか攻撃から脱しようと試みた。
しかしエレオノールは比較的体重が軽い方だろうが、人一人を連れて逃げるというのはとても難しい。
105アンリエッタ+康一(代理):2008/01/21(月) 17:02:19 ID:TpSm0qoy
そのためスタンドの操作は最低限にして、後はACT3の判断に任せる。
そうすれば意識を逃げる事に集中できる。今は攻撃から逃れる事が先決だった。
しかしエレオノールを引きずる康一の傍に、何本か降ってきた剣が突き立つ。
康一の顔をくっきりと映し出すほど、磨きぬかれた剣だ。正直な話、ゾッとしない。

「でも一体どこから攻撃してきてるんだッ。敵からこっちが見えるなら、こっちからも敵が見えなきゃあおかしいぞッ!」
康一が首を前後に振って廊下を見渡す。だが敵の姿は無い。
ここは遠くまで見渡せるほど、見通しのいい真っ直ぐな通路であるはずなのに、敵の姿はどこにも見えないのだ。
魔法は対象を視認しなければ正確に使う事は難しいと康一は聞いている。姿を消す魔法でもあるのだろうか。

しかしそんな事を考えても今の状況ではどうにもならない。
必死に全身を使ってエレオノールを引きずる康一だが、今にも剣はACT3の防御を超えてきそうだ。
これだけ切れ味が良さそうな剣に足でも貫かれれば、逃げ切る事は不可能に近くなる。
そもそも胴体をブチ抜かれれば、多分ショックで死んでしまうだろう。

康一はかなり追い詰められている事を自覚せざるを得なかった。
戦うにしても今敵がどこから攻撃してきているのかさえ分からない。
「それじゃあまともに戦う事もできないッ!」
必死でエレオノールを引きずって後ずさる康一に、背後を確認する暇など無かった。

どすん、と康一は背中が何かにブツかり、動きをせき止められてしまう。
壁があった。どうやら曲がり角だったらしい。
すぐに方向転換して康一は角を曲がる。すると、どうだろう。
「………攻撃が止んだ?」

あれだけ止めどなく降ってきた筈の剣が、唯の一本も降ってこない。
正確には曲がり角の方まで、剣は一本も飛んでこないのだ。
「もしかして、僕らの居場所が…分かってない?」
そして剣は何かを諦めたかのように降るのを止め、周囲に静寂が戻る。

『何デモイイデスケド、コノ隙ニ体勢を立テ直シマショウ』
「確かにそうだッ。早いとこマザリーニさんを追っかけないとッ」
ACT3にもエレオノールを運ぶのを手伝わせようかと、康一は思う。
だが。どうやら間隙は、本当に僅かな間でしかなかったようだ。
106アンリエッタ+康一(代理):2008/01/21(月) 17:03:52 ID:TpSm0qoy
 
ザグンッ!

康一の肩が震えた。音の出どころを見る。
またしても、剣が床に突き刺さっていた。
揺れる明かりを受けて、剣の影がゆらゆら揺らぐ。
そして再び、攻撃は開始するッ!

「くそッ!またかッ!」
『マジデ鬱陶シイ奴デスネッ!』
再び剣が天井の石材から生成され、康一とエレオノールを襲うッ!
そして更に状況が悪化している事に康一は気が付いていた。それは、天井の高さ。

「ヤバイ事に曲がり角から天井が低くなっているッ!
天井が低くなったって事は、つまり落ちてくる剣を弾く為の時間が少なくなると言う事ッ!!」
ここよりも天井が高かった場所でさえ防ぐので精一杯だったのに、この場所では更に防御する為の時間が足りなくなってしまう。
非常にマズイ。これはすぐにでもACT3の防御を超えてくるッ!

このまま手数がこちらを超えたら、完全に押し切られる。
ACT2のしっぽ文字で防御しても、文字は一箇所にしか貼り付けられない。
貼り付けた文字は回収しなければならないのだ。
それでは自分達、二人を守りきる事はできない。

康一は廊下の先を振り返って見る。
「…そうかッ!この廊下ってここに通じてたのかッ!」
廊下を少し進んだ先にドアが見えた。数日前にアンリエッタとアニエスが入っていった部屋だ。
近くに他にドアは無い。一旦あそこに逃げ込むしかないッ!

「早く…ッ!早くッ!」
『S・H・I・T!!』
康一もACT3も全力で力をつぎ込む。全力。だが。
少しだけ足りない。本当に少しだけ足りない。

ホンのちっぽけな時間があれば逃げ込めるのに、その時間が足りないのだ。
数秒の時間でいいのだ。それだけあれば、あのドアの向こうに逃げ込めるのにッ。
誰かが手を貸してくれるだけでいいのにッ!
誰かがドアを開けてくれれば、それでイイのにッ!
107アンリエッタ+康一(代理):2008/01/21(月) 17:05:25 ID:TpSm0qoy
『早くこっちへ逃げ込むんじゃ!康一君っ!!』
そして、声と同時に、ドアが開いた。
康一が声のする方を見ると、ドアノブに何か小さなもぞもぞするモノがくっついている。
小さくて、白い、しっぽのある動物。

「オスマンさんッ!」
モートソグニルの体を通してオスマンが康一へ叫んでいた。
『HO!チョット、カッコイイトコロ見セスギジャアナインデスカネ?』
康一の視線を通して見ていたACT3がぼやいた。

そしてACT3は更にスピードを上げて落下してくる剣を叩き落す。
少しだが康一に活力が戻ってきたのだ。スタンドは精神の力。
つまり精神力が強ければ強いほど、スタンドの力も上がってくるッ!

康一は開いたドアからエレオノールを力を振り絞って部屋の中へと引き込む。
そしてエレオノールの体が全て部屋の中へ収まった時、すかさずACT3がドアを閉めた。
部屋の外でドカドカ鳴っている音が次第に弱まり、遂には止んでしまった。
それを確認した康一は尻餅をつくように、どんっと勢いよくへたり込んだ。

「はああぁああぁ…危なかった―――。
ホント助かりましたよ。オスマンさん、モートソグニルも」
『礼には及ばんよ。ワシは学院長なんでのー、若いモンを助けるのが仕事じゃよ』
その言葉の後にチュッチュと鳴いた。後の方はモートソグニルだったようだ。

『しかしここは…』
「ええ、仕立て部屋らしいです」
部屋の中に一面に置かれた衣装の数々。
ほぼ全てが、城の主アンリエッタの持ち物なのであろう。

この前、今夜の舞踏会用のドレスの為にアンリエッタが来た場所。
そしてアニエスを酷く傷心させた、忌まわしき場所。
数日前に来たとき入室はしなかったため、中の様子を見るのはこれが始めてだった。
しかし女物の服ばかりなので、康一の気分は女性服売り場に来たような感じで微妙に気恥ずかしい。
108アンリエッタ+康一(代理):2008/01/21(月) 17:07:08 ID:TpSm0qoy
(あ、何かハンガーの首の辺りにハートの飾りが付いたのがある…
でも明らかにあの服、アンリエッタさんの趣味っぽくないんだけど何で置いてあるんだろう?)
しかも何だかあの服から邪悪な気配がプンプンしてくる。
嫌な予感がするので康一はこれ以上あの服の事を深く考えるのは止めた。

部屋の中を見回してみると大きな姿見の鏡がある。
あとは座って化粧をする為だろう、豪奢な鏡台もあった。
鏡台の上に裁縫用の糸だろうか、芯に巻きつけられたそれが出しっぱなしにしてある。
今日の舞踏会の為に誰かが使ったのかもしれない。

康一は特に危険は無いようだと確認して、長い竿でドレスが大量に吊られている影にエレオノールを引き込んだ。
これは康一がここなら敵に見つかりにくいかもしれないと思ってである。
康一自身もその影に隠れて、小さなモートソグニルも康一の肩に飛び乗る。
何とか一息つけそうだが、実際はそうも言っていられない。

『問題はこれからどうするかっちゅう事じゃ。早ようせんとここも危ないじゃろう』
オスマンの言う通り、確かに今は攻撃が止んでいるが、またいつ始まるかは分からない。
数分か。それとも数秒かも分からないのだ。
「そーですね。とりあえず状況を整理してみましょう。
この攻撃をしてきてる敵は土のメイジなんですかね、オスマンさん?」

石造りの天井から剣を生成しての攻撃。思いつくのはそれしかない。
『ああ間違いないじゃろうの。この攻撃密度と回数からしてトライアングルクラスではなかろうかな?
「錬金」を使った回数や精神力の総量からして敵もそろそろ余裕がなくなってくる頃じゃ。もうひと踏ん張りって感じじゃな』
確かに敵は余りに攻撃にエネルギーを使いすぎていた。つまり逆に言うと。

「まだ、何か仕掛けてくるって事ですよね」
『…君、本当に戦い慣れとるのー』
この若さで、この判断力。どれだけ修羅場を潜ったのかオスマンにも想像できない。
だてに康一はスタンド使いをやっている訳ではないのだ。

「けど問題が一つ。オスマンさん、攻撃されている時に何処かに敵の姿なんかを見ました?
姿じゃあなくても、何か不自然な物音だったり、気配だったり」
康一の言いたい事はオスマンにも分かっている。
仮にも偉大な魔法使いと謳われるオスマンがそれに気が付かない筈がなかった。
109アンリエッタ+康一(代理):2008/01/21(月) 17:08:41 ID:TpSm0qoy
『……康一君、君はネズミという種に関してどの位の事を知っているかね?』
「は…?ネズミですか?何で、いや、そーいえば」
ネズミというキーワードで康一は前に仗助から、愚痴混じりで聞かされた話を思い出した。
曰くイキナリ承太郎さんが自分の元を尋ねてきて、ネズミ狩りをする為に連れ出された事。

そのネズミは矢で貫かれたスタンド使いのネズミで、恐ろしいほどの知恵と感覚を持っていたと、仗助は話してくれた。
それは何百mも先に人間がいる事を簡単に察知して、人間が仕掛けた罠を逆に利用するほど頭が良かったとか。
そして何より重要なのが、ネズミの追跡中に水溜りでバリーの靴とミスタージュンコの靴下を泥まみれにされた事を、涙ながらに仗助は語ったのだ。

最後はカナリどうでもいいが、オスマンは康一がそれに気付いた事で再び語りだす。
『その様子じゃと少しはネズミの生態の事も知っているようじゃのぉ。
ネズミには人間や他の生物が自分から何百m先にいるか、そして何をしているかなど簡単に見通す、
超感覚ともいっていいじゃろう、恐ろしいまでの鋭敏な感覚を持っておる』

息を呑む康一。
「ならその鋭い感覚を使って、敵の位置を調べられるんですかッ」
フッフッフッ、と明らかにオスマンがもったいぶって笑う。
コノ野郎…さっさと言え、と康一は思うがさすがにそこは我慢。そして。

『ゴメン。無理』
………康一は、切れた。康一の中で張り詰めていたものがプツンと音を立てて切れた。
怒りの意思を受けたACT3がモートソグニルに拳で触れた。
『(カナリ手加減シテ)3・FREEZEッ!』

『えっ!お、重いっ!!何、ナンじゃァっ!!』
対象を超重くする3・FREEZEの能力。
かなり加減しているがハツカネズミがその重さに打ち勝つことは不可能だ。
よってモートソグニルは重さに耐えかね、床へと落下。

『ふぎゃっ』
べしゃっ、と床に落ちて身悶えるモートソグニル。
現在オスマンはモートソグニルと感覚を共有しているために、ブッ倒れている自分の体にも重さが伝わっている事だろう。
110アンリエッタ+康一(代理):2008/01/21(月) 17:10:14 ID:TpSm0qoy
康一はちょっと静かに、何気ない感じで言う。
「モートソグニルには恨みは無いんだけど。メイジと使い魔は一心同体って言うし。まぁ、堪えてよ」
3・FREEZEので拘束されたオスマンにはまさしく恐怖の言葉。
『すまんかった!ちゃんと無理なのには理由があるんじゃ!だから潰さんといてェ―――ッ!!』

自分に掛かる重さが康一によるものだと理解したオスマンは、慌てて叫んだ。
康一はふぅと小さくため息をついて、3・FREEZEを解除。
『おおうっ!』
必死で重さに耐え体を起こそうとしていたモートソグニルが、急に重さが無くなってコロリと転がった。
「うふふ……。ジョーダン、ほんのジョーダンですって。で、何なんです?無理な理由って?」

くしくし、と顔をさすってオスマンが話す。心なしか声が震えていた。
『簡単に話すと、確かにワシらを狙っておるメイジが、ここらの何処かに居る事は確かなんじゃよ。
それはモートソグニルの感覚で感じ取っている確かな事じゃ。
しかし何故かこの辺りに居る事は分かっても、正確な位置が掴めんのじゃ。これは間違いない』

オスマンの言う事に多少疑問を康一は覚える。
「それは、つまり、魔法で気配を殺してるとか、そういう事なんですか?」
『そんな魔法は聞いた事が無いが、広い世界じゃからそんな魔法もあるかもしれん。
しかしこのメイジが都合良く、そんな魔法を知っているとも思えん』

つまりそれは敵の行動が関係しているのか?それとも何か別の理由があるのか?
「もう一度確認しときますけど、この辺りに敵が居る事は確かなんですね?」
『ああ。それは死人でもないかぎり間違いないぞい』
ふむ、と康一は眉根を寄せてとりあえず今とるべき行動を決める。

「よし。エコーズACT1!」
康一の背後に長いしっぽを持つスタンドが現れた。
まずは周囲をACT1で偵察して、敵の居所を掴もうという事である。
そしてACT1は壁をすり抜け、剣の突き立った廊下を飛行して幾つもの部屋を調べていく。

「今僕の能力でこの辺りを調べてますけど、でもこれで敵が見つけられると思いますか?
魔法ってのは目で見るか、対象の位置が分かんないと正確には使えないんでしたよね」
康一にとって今一番の謎はそこだ。
こちらから敵を見つける事ができないのに、なぜ敵は康一達の位置が分かるのか?
111アンリエッタ+康一(代理):2008/01/21(月) 17:11:47 ID:TpSm0qoy
『それはワシも気になってたんじゃよ。攻撃を受けた際、何処にも敵のメイジの姿は見当たらんかった。
このワシの使い魔、モートソグニルのネズミが持つ超感覚を使ってさえ居所が掴めん…』
魔法は目視、または対象を設定しなければ正確な魔法は使えないというのにじゃ』
魔法の知恵袋であるオスマンでさえ、この謎が分からない。

『可能性としては今のワシのように使い魔の視覚を通じてこっちを見ているとか。
それに敵は土のメイジじゃ。土のメイジには馴染んだ大地を知る力を持つ者もおる。
その力を使い城の石材などから、こちらの位置を割り出してるという事も考えられる。
この敵はしばらく城の牢屋に閉じ込められておったからのぉ。城と馴染む時間はあったかもしれん』

だがこの可能性には穴がある。それはオスマンも承知していた。
「でもそれだと敵の使い魔がモートソグニルの感覚に引っかからないのはおかしいですね。
生き物の数も分かるんでしょう?」
『ああ、今周囲に感じるのは一つのみじゃ』

「それに土のメイジって言っても、杖もなしに城と自分を馴染ませるなんて事できないんじゃあないですか?」
『そうなんじゃよなぁ。一応脱獄する前から杖を隠し持っていたとか、苦しい理由なら説明がつくんじゃが』
どうも二つとも怪しい感じだ。しかしそれぐらいしかオスマンには思いつかない。

そうこうする内に、ACT1は周囲50mを調べつくしてしまった。
ACT1の射程距離外にいるのか。それともACT1にも見つからないほど、うまく隠れているのか。
どちらかというと康一は隠れているんじゃあないかと感じた。
「でも案外悪くないんだよなァ」

康一の主語が無い言葉。
『何がじゃね?』とオスマンは聞いた。
「いや、さっきオスマンさん使い魔の目で見ているって言ったじゃあないですか。
それなんですよ。目で見ているってのは案外悪くない感じなんですよ」

オスマンの代わりにモートソグニルが首をかしげた。
『どーいうことじゃね?ワシには言っとる意味がよく分からんのじゃが…』
「だから直接敵はこっちをみているんじゃあないかって事なんです。
オスマンさん、僕達が角を曲がった時にちょっと攻撃が止まったじゃあないですか。何でだと思います?」
112アンリエッタ+康一(代理):2008/01/21(月) 17:13:21 ID:TpSm0qoy
問われてオスマンは詰まった。確かにそうだ。なぜ攻撃が止まったのか。
答えられないオスマンに康一は自分の考えを明かす。
「多分あの時、敵は少しの間でしたけど僕たちの位置を見失ったんです。
そうじゃないと今まで正確に僕たちを狙ってた敵が、急に攻撃を外す理由が無い」

つまり角を曲がった事で、視界から康一たちが消えて攻撃を外したという事か。
『確かに…言われて見ればそうじゃが。たとえそうだとしても、何処から見ているのかが分からん。
敵が何処からこちらを覗いているのか分からなければ打つ手が無いぞい』
そもそも敵が自分の目で康一たちを見ているとすれば、居場所はすぐ近くだ。

そんな場所にいる敵に気付かない筈が無いのに。
「何か見落としがあるはずなんです。その見落としがあったから、今こうして狙われているんです。
きっかけがあればスグにでも謎が解ける筈なんだっ」
康一の面持ちが俄かに鋭くなり、体に力がこもった、その時。

カチャン。

「ん?」『何じゃ?』
背後で物音がした。康一は振り向いて見る。
「ああ、これって。さっき砕いた剣の欠片がまだ服にくっついてたみたいですね」
康一は床に落ちていた、磨きぬかれた金属の欠片を手に取った。

「こうして見ると結構綺麗なモンなんですけど」
確かに窓から差し込む僅かな月明かりを反射して輝く姿は、中々味があるようにも見える。
これで形が整っていれば装飾品に見えなくもないだろう。
しかし何気なく欠片を眺めていた康一が、はたとして呼吸を止める。

「……もしかして、そんな単純な事?」
『どうしたんじゃね?』
オスマンが康一の雰囲気を察して尋ねた。
「いやでも、なんか、僕たち、ちょっと深く考えすぎてたのかもしれないですよ」

少し拍子抜けしてしまったような康一の物言いにオスマンは眉をひそめるばかりだ。
そして康一は静かにこう言った。
「オスマンさんたちに、ちょっとばかり頼みたい事があるんですけど」
113名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/21(月) 17:14:04 ID:LLW6+tG1
支援
114アンリエッタ+康一(代理):2008/01/21(月) 17:14:54 ID:TpSm0qoy
 



「さーてと、ここにエレオノールさんを置いていくのは気が引けるんだけど。
僕と一緒じゃあ危ないからしょーがないかぁ」
康一は倒れるエレオノールを周りの衣装で隠した。
作戦では一人で身軽に動く必要があり、それにはエレオノールを一人にするしかないからだ。

すでに腹は決まっている。康一は背後にスタンドを発現させた。
そして僅かに一呼吸置いて、走った。
ドアを蹴り破るように開けて、脇目も降らず康一は廊下を駆け抜ける。
同時に剣が天井から不気味に生えてきた。

「さすがにこれで僕を倒せるとかは思ってないだろうけどね」
身に降りかかる殺意のこもった剣雨の嵐。
しかし康一はそれをスタンドで防御することもなく回避。
何度も見た攻撃など、身軽になった康一には簡単に避けられた。

しかし剣の雨は尽きない。それどころか更に数を増して降りかかってくる。
「まだまだッ!」
康一は更に加速。そして身を投げ出すように剣からのがれる。
さすがに何本かは康一の体を掠めるが浅い傷だ。

しかし足は止めない。まだ走っていなくては、この敵は倒せない。
そして先へと進もうとしたその時、康一は足元の異変に気付いた。
「これは…ッ!」
それは鋼で出来た模造の樹木のように見える。

だが枝の成長の速度が半端ではない。樹の命を削るかのような、激しい成長。
何と康一が今回避した剣から、新たな剣が枝のように伸びているのだ。
幾つもの床に突き立った剣から伸びる剣。
それは康一の行く手を阻むように康一を取り囲む。

何か仕掛けてくるだろうとは予想していた康一だが、さすがに意表を突かれた。
今まで上からの攻撃に気を配っていた神経は、下からの攻撃には対処しづらい。
だがここで止まっていては良い的にしかならない。
「これはさすがに覚悟を決めるしかないかな〜〜〜〜ッ!!」
いつの間にか床には剣の枝が張り巡らされているが、康一は負傷は覚悟で跳躍した。
115アンリエッタ+康一(代理):2008/01/21(月) 17:16:29 ID:TpSm0qoy
「だあああッ!」
何とか剣の枝が少ない場所を見つけて跳んだが、負傷が無いわけではなかった。
叫びで痛みを誤魔化すものの、体を防御した腕や肩から血が滴る。
だが幸い行動不能ではない。

体を起こして周囲を見ると、今度は剣の樹木から葉っぱが生えていた。
さすがに見間違いかとも思ったが、どうにもこれは現実だった。
「剣の枝から、幾つも小さな剣が…生えてきてる」
短剣ともいえない小さな刃が、剣の枝から葉っぱのように無数に突き出ているのだ。

城の廊下に生まれた無数の剣樹。こんな時でなければ、中々圧巻の光景だ。
康一の判断は早かった。即座にその場に臥せて頭部を防御。そして。
音も無く、小さい無数の刃が剣樹から打ち出された。
いくらスタンドがあってもコレだけの数の刃を叩き落すなど早々出来るものではなかった。

「アグッ!」
一応スタンドで防御はしたものの、この形態では体の重要な部分を守るのが精一杯。
守りきれなかった部分は幾つもの刃が突き刺さった。
一つ一つは小さい刃だが、数が集まればコレほど殺傷力に優れたものへと変わる。
康一はとっさに伏せたため、背中に刃が多く刺さって、まさにハリネズミと化していた。

「でも確かに、すごく痛いんだけど、死ぬほどの事じゃあない……」
痛みを堪えて康一は呟き、体をゆっくりと起こした。
血がだらだらと垂れていて、本当に見るに耐えない有様だった。
しかし立つこともできないのか、その場で力なく座り込んでしまう。

「でも痛いことは痛いし、何か今日は散々な感じだよなァ」
ぼやくような雰囲気でため息も吐きつつ、康一は言った。
その間にも天井から鋭い長剣が生成され、止めをささんと狙いをつける。
だがそんな事は気にもせずに、康一は自分の手元を見た。

康一の右手の中でコロコロと回る『糸巻き』がそこにはあった。
そしてその回転が止まって、何処に伸びているのか分からない糸の先から、
康一は確かに頼みを果たしたという意思が届いたのを感じた。
116名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/21(月) 17:18:50 ID:DtkjpD5Z
学ランすげえw支援
117アンリエッタ+康一(代理):2008/01/21(月) 17:18:37 ID:TpSm0qoy
「でもこの右手の能力って結構便利だよね。動物相手にこんな糸電話みたいな事までできるだなんて」
言った康一は自分の右手に重なるスタンド『ACT1の右手』を見る。
そのACT1の右手に刻まれた、康一と同じ文様のルーン。
二つのルーンは共鳴するかのように、ぼんやりと明るく輝いていた。

「それじゃあ問題なく敵の居場所を見つけられたんですね、オスマンさん」
『おお、君の言うとおりじゃったよ。今こやつの足に糸を巻きつけてやったぞい』
糸を伝わりオスマンの声がACT1の右手を通して康一に流れ込む。
この糸は仕立て部屋の鏡台の上に置いてあった物だ。

それを糸電話のようにして康一はオスマンと会話をしていた。
「スタンド能力を発現して初めて右手のルーンは発現する。
これって僕がスタンド使いだったから、こういう発現の条件ができちゃったのかな?
まぁ、今はあんまり気にしないでイイか」

敵から攻撃される直前にACT3から聞かされたのはこの事だった。
スタンドの右手を通してルーンの能力が発現する。
単純なようで意外と気付かない盲点。
それはこの敵がどうやって康一たちを捉えていたのかにも当てはまる。

康一は自分の傍に突き立つ剣の、磨きぬかれた自分の顔さえ映す刀身を見た。
その映りこんだ自分は、また別の刀身へと映りこみ、また別へと映る。まるで万華鏡のように。
「反射なんだッ。まるで合わせ鏡みたいに、自分が攻撃するのに使った剣の刀身に映りこんだ、僕たちを見ていたんだッ!
反射を繰り返した剣に映った僕たちを何処からか見て攻撃してきたッ。
僕たちには敵の居場所は分からない。でもッ!反射を繰り返しているなら、僕たちも反射させればいいッ!」

康一の傍らに浮遊するエコーズACT1の能力は音を操る事。
数多くの剣の群れの中から、自分の姿を敵の元へと届ける一本を探し出すなど、この短時間では不可能。
しかし何も反射するのは姿だけではない。音もそれは同じ事。
正確に合わせ鏡のように、角度を合わせて反射を繰り返すなら、音もその反射に乗せる事が出来る。

しかしヘタに音を反射させては敵に気付かれる恐れもあり、何より戦闘中に音の反射を繰り返す剣を見つける事は難しかった。
だから康一はオスマンたちに頼んだのだ。人間を遥かに超える感覚を持つ。
オスマンとモートソグニルなら、音の反射を捉えて敵の居場所を発見できる。
そのために康一は自分の体のみで剣をかわし、発見するまでの時間を稼いでいたのだ。
118アンリエッタ+康一(代理):2008/01/21(月) 17:20:10 ID:TpSm0qoy
「でもさすがにスタンド無しで真剣を避けるとかは二度としたくないなぁ」
『おっ!どうやら、こやつが自分に巻きついた糸に気がついたらしい。早くとどめを刺してやれい!』
オスマンが状況を知らせてくれる。そろそろ決着の時だ。
「分かってますよ。エコーズACT2ッ!!」

康一の傍らに形態を変えたACT2が現れた。
しっぽ文字に「ドッグォンッ」と爆発音の文字を記す。
そしてACT2はそのしっぽ文字を康一の手から伸びる糸に貼り付けた。
糸は音の効果を表し、まるで爆弾の導火線のように、糸が巻きつけられたモノにエネルギーは向かう。

ただ連絡を取り合うためだけに、康一は糸を用いていた訳ではない。
敵を見つけたならばスグに反撃を加えられるように。
敵と直接繋がる糸で音の効果を伝えられるようにするためだった。
音の伝わる速度は半端ではない。敵は糸を足から外す間もなく、そして――炸裂。

ドッグォォンッッ!!!

けたたましい炸裂音を響かせ、康一は自分の能力が届いた事を肌で感じた。
ばらばら、と少し前方で崩れ落ちる廊下の壁。その中から覗いた、囚人服のメイジの姿。
つまり魔法を使って、壁の中に空洞でも作り隠れていたのだ。まるでモグラのように。
「なるほど。確かにそれならACT1の目から隠れていられる。
色々間違えてるけど、その執念深さは本当に凄いと思うよ。いや、ホント」

体の芯を失って、崩れ落ちるメイジ。足に巻きついていた糸は爆発音の衝撃で千切れとんでいた。
それを見た康一はゆっくりと体を起こして立ち上がる。
「あたたた…。エライ時間とられちゃった。コイツはとりあえずほっといて、早くマザリーニさんの所へ行かなきゃあ」
康一は倒れるメイジに背を向けて、突き立つ剣を掻き分けて進む。

だが、僅かに背後のメイジの指がピクンと動き。その血走った目が、皿のように見開かれた。
「きいいいいイィィィィええええエエエエエエエエエエッッ!!」
耳を、食い破るかのような奇声を上げて、待機中だった魔法が発動。
康一の頭上で半ばまで生成されていた剣が、再び動き出す。
そして剣が康一をまた襲おうかという、その時。
119アンリエッタ+康一(代理):2008/01/21(月) 17:21:43 ID:TpSm0qoy
ドッグォォンッッ!!!

再び、炸裂。
「アッバッダアアアアッ!!」
爆発音を受けて、またもや吹き飛ぶメイジ。
その足には康一の、左手から伸びる糸が巻きついていた。
ずん、とメイジが廊下に沈む。

康一はそれを振り向きもせずに進みながら言った。
「気絶してるんなら、ほっといてもいいかと思ったけど、そのまま大人しくしてないんじゃあしょーがないよね」
そして右手と左手から一個づつ糸巻きを手放す。
その光景を廊下の隅っこで、オスマンとモートソグニルはじっと見ていた。

(嘘つきおって。はなっから、気絶しようがしまいが必ず二発目をくらわせる気だったんじゃろうが……
康一君。本気で頼りになるが、同じぐらい本気で恐ろしい奴じゃよ)
こうしてオスマンの絶対逆らってはならない人物像で、はれて康一はトップに輝く。
そしてモートソグニルは動物的な勘で、康一の事をオスマンより上の存在と認識するようになった。

オスマンとモートソグニルは慎重な協議の上、微妙に距離をとってから康一の後を追っていった。
120アンリエッタ+康一(代理):2008/01/21(月) 17:23:23 ID:TpSm0qoy
528 名前: アンリエッタ+康一 [sage] 投稿日: 2008/01/21(月) 13:12:38 7qBnfuH2
かなり久しぶりな投下です。正月休みがてら書くのを休んでたらいつの間にか、こんなに時間が過ぎていました
一応その分、いつもより増量でやってみましたのでお許しください
というか投下しようとして規制うけてると、何だか微妙に落ち込む

投下の内容の事ですが、エコーズにルーンが刻まれているというのは唐突に思われるかもしれませんが、
実はまとめにある22話のACT3の描写で殆ど気付かれないだろう伏線を張っていました
ようやく伏線回収できたのでほっとしています
それではどなたか時間があったら本スレに代理投下の方をよろしくお願いします

------------------

代理投下、終了しましたー。

つーわけで、アナン+康一の人乙&GJ
康一くん黒いよ康一くん
121アンリエッタ+康一(代理):2008/01/21(月) 17:24:40 ID:TpSm0qoy
アナンって誰だよ俺orz
アンアンだっての
122名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/21(月) 17:28:32 ID:LLW6+tG1
代理の人GJでしたー。
そしてこれはまとめに行かざるをえない!
123名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/21(月) 17:31:54 ID:DtkjpD5Z
代理の人アンコウの人投下乙そしてGJでしたー
こうきますかー!
124名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/21(月) 17:42:52 ID:L/dHtmcK
GJ!
怖いよ康一君黒いよ
アンリエッタ&広瀬康一の人が張った伏線!あそこすっげー自然に読んでた
125名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/21(月) 17:45:23 ID:PNs3DU2c
久々の康一君乙&GJ!
オリジナル展開でここまでできるのは素直にすごいと思う。
126名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/21(月) 19:04:02 ID:pcGow2PB
ぶどうヶ丘学院の学ランはSPW製乙
127名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/22(火) 00:46:47 ID:Xi4Hx0CV
オスマンもなかなか動きがあっていいなあ。
コーイチ君はこのままだとシュヴァリエにもなっちゃいそうな活躍だッ!
128名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/22(火) 01:45:37 ID:P4lSuhaK
アン一の人GJ!
すげー読み応えがあったw
129名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/22(火) 02:12:36 ID:xXFN5vTe
GJ!

ルーン発動の条件は何となく予想ついてた
130名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/22(火) 13:30:19 ID:lWcWan+z
キングクリムゾン!
131名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/22(火) 15:20:59 ID:pB2zE88F
この後あるだろうアルビオンへの手紙奪還の任務には、康一とアニエスに鼠の二人と一匹で行けば十分じゃね?と思った俺
その場合はルイズ関係の話の流れが大幅にずれてくるけど、いっそのことルイズが召喚したのは普通の使い魔で
彼女は虚無の使い手じゃあなかったという展開でも問題はないような気がしてきたし

んで仮にルイズが虚無の使い手だとして誰が召喚されたのか
1.主人公は俺なんだ! ぶどうヶ丘学院に転校してきたばかりの平賀才人
2.やはり康一君の親友といえば僕だな 岸部露伴先生
3.彼はビッチには渡さない! 山岸 由花子
4.一番ありえねぇ展開w 俺の傍にちかよるなぁー!! ディアボロさん
132名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/22(火) 16:06:51 ID:dr0YDgLx
>>131
国家間の使者である以上、やはりある程度の身分が必要なのでは。
133名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/22(火) 16:16:52 ID:pB2zE88F
そうなると、やはり爵位を持ってて実力もあるワルド辺りをお供につけるのが無難かな
(他に人材があるんなら親友であるルイズを死地に送り込むような真似は流石にしない……よな?)
ひょっとしたらモットさんがお供になるかもしれんがw
134名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/22(火) 17:12:05 ID:rogrVeli
まあ他人の話の予想はそこそこにしとけよ
135名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/22(火) 20:15:46 ID:450qtvx/
エピタフの予知によって今日中に誰かが投下する未来を視た
136名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/22(火) 20:25:39 ID:ez6fSw4w
だがレクイエム
137名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/22(火) 21:24:38 ID:hPJw15NO
書いても書いても終わらない。
それがG・E・レクイエム。
138名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/22(火) 22:05:13 ID:a7AHgCCJ
>>137
それは書いても書いても『書きあがって投下する』という結果に行き着かないんじゃないか?
139名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/22(火) 22:06:44 ID:Xi4Hx0CV
おかしい…話を進めようとしているのに、気がついたら話がわき道にそれている…
これがレクイエムか!
140名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/23(水) 00:46:41 ID:qCBwaAjB
ならここでヘヴンズ・ドアー!!
141名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/23(水) 12:51:04 ID:nlvwfykY
キング・クリムゾン
142名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/23(水) 13:50:21 ID:dx+G2RWj
だれか蓮見琢馬を召喚する猛者はいないか!!
143名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/23(水) 13:52:55 ID:RZP1sH4Z
>>142
144名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/23(水) 14:13:16 ID:EtarOFV5
今まで食べたパンの数を覚えてる魔少年!
今まで食べたパンの数を覚えてる魔少年じゃないか!
145名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/23(水) 14:15:41 ID:nzFfg/Go
>>142
彼は実に杜王町的なスタンド使いだからなあ……正直難しいだろうな
146名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/23(水) 14:23:54 ID:+H6VlyyP
すまない、教えて欲しいんだが
その魔少年て誰だっけ?
乙一小説のキャラ?
147名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/23(水) 14:38:13 ID:RZP1sH4Z
>>146
アラーキーの作品の主人公だよ。
148名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/23(水) 15:05:22 ID:+H6VlyyP
主人公…?
B.T.じゃないよな
イニシャル違うし
149名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/23(水) 15:07:06 ID:WPxjaQ58
>>145
そうかなぁ。結構使い勝手のいいスタンドだと思うけど。
強すぎず、しかし弱すぎず、場合によっては即死系の攻撃も出来るという・・・

>>146
魔少年は荒木の漫画の、
琢馬は乙一の小説のキャラ。

乙一の小説はスタンドバトルとか正にジョジョって感じでお勧めだよ。
150名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/23(水) 15:40:34 ID:+H6VlyyP
なるほどありがとう
琢馬のことを指して魔少年て言ってるのかと思ったけど違ったのね
151名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/23(水) 16:02:43 ID:WPxjaQ58
>>150
いや>>144では琢馬の事を指してる。
152名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/23(水) 21:08:01 ID:mViZgK2b
13巻読んで思ったが
ハルキゲニアと地球の時間って同調してるんだっけ?
だとしたらブリミルが地球人って線は消えるよね
153名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/23(水) 21:08:02 ID:p+Z/hyBh
さっきから話がややこしいことになってるんだぜ!


小説読んでない俺からの一言でした
154名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/23(水) 21:38:11 ID:w8hsXET5
魔少年とは、荒木作品の一つ『魔少年BT』を表す言葉
でも、>>144は乙一の書いた四部小説でタクマが
『魔少年』的な少年だと称されていたので
タクマを『魔少年』と形容したってことだな
155名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/23(水) 21:49:52 ID:fBB2Utmx
ややこしいな
乙一読んでないし魔少年といえばビーティーしか思いつかないぜ
156名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/23(水) 22:53:42 ID:UmjhSzMs
       /(  ヽ
  __(ヽ..ノ  'V(ノ゙ヽ
  ヽ          ヽ
.  )`V   ._   _  ._ヽ
 ./ (    ((_))((_))(_))
 ( V  ノ/~     ヽハ    れくいえむーん
  ヽ. ヽノ |リ ノ   `ヽ }_}
  ヽ  /.  ●    ● l小
   )X(⊂⊃  、_,、_, ⊂li|ノ
   .((Xへ     i⌒ヽノi|
..  /::: @>、 __,ヽ  ヽ
  /::::::}ヘ(:  .V  ∧__,ヘ
  |_:::ッリ::::.ヽ   /ヾ_:::ッリ
157名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/23(水) 23:03:09 ID:5LVOqXud
            -‐  '´ ̄ ̄`ヽ、
          /・・/:・,へヾヽ・:\  
         //,::'/ /レ'/   ヽハ 、・.ヽ
         〃 {_{ル'´    リ|l.│・:i| 
         レ!小ノ    `ヽ フ|l:i・ i|  レクイエム…
          ヽ|l ●   ●  |: ・|ノ!   でぃあぼろーん
            |ヘ⊃ 、_,、_,⊂⊃j  |・, |  
           |: /⌒l,、 __, イァト |/.|
           | /==イ,┃, ,_┃XXヽ:|
           | || |il !トー癶-イXX/━||
158名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/23(水) 23:05:24 ID:ItsfjwUF
          _, -‐'´〈〈 ̄`ヽ、
        ∠__     〉〉   \  おい…今…
       / .ヘt,'/ ̄ ̄ヾ/ ̄ヽ } 新スレ立たなかったか?
       レ'ハ/lミ! ノ     `ヽ lミ、|
          lミl ●    ● |^)! ホレ!立ってるよッ
          ヽ!⊃ 、_,、_,⊂⊃ i-'  立ってるだろォォ〜〜〜?
        /⌒ヽ__ \  ゝ._)  ,/./⌒i
      \ /:::::\ >,、 __, イ,ヘ___,/ どっかに新スレがあるはずだッ!!
.        ヘヽ丶ヾ.ニ|三/ニ /! i i,:/
         \ヾ丶i i l lェ=ュ!i l l,/

                
              _
          _, -‐'´〈〈 ̄`ヽ、 
        ∠__     〉〉   \
       / .ヘt,'/ ̄ ̄ヾ/ ̄ヽ }  
       レ'ハ/ミl         l-、!
          lミ! ノ     `ヽ lミ、.| とぅるるーん
          lミl ●    ● |^)!
          `ヽ⊃ 、_,、_,⊂⊃i-' 
           /⌒l,、 __, イ-、  
.          /i~i,,/_|三/ニ/i^iヽ
          | l l li i l l lェ=ュ}i l ,,| 
159名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/23(水) 23:05:49 ID:ItsfjwUF
上ミスったorz
160風と虚無の使い魔 ◆/4V68E5Ojg :2008/01/23(水) 23:19:23 ID:Ky5UDQ4x
なんかだいぶ早足気味な気がします
というかルイズパートごっそり削っちゃった えへへ ルイズだいすきなのに

にーさんにーまるに投下予約ゥウウウウウウ!予備兵力は全員突撃せよー!
161風と虚無の使い魔 ◆/4V68E5Ojg :2008/01/23(水) 23:20:04 ID:Ky5UDQ4x
<br>
「なによ、主人が大変だっていうのに、あいつはどこいったのよ、ほんと…」
白紙の”始祖の祈祷書”を抱えながらルイズは自分の部屋で呟く。

詔を考えろなんて言われて、あまりのことにのぼせながら承っちゃったけど…
今考えたらとてつもない重役だわ、私じゃ力不足じゃないかしら……
詩的になんていわれても、思いつかないわよ、詩人じゃないんだから。
もう、やんなっちゃうわ。

ルイズはため息をつこうとすると鍵がかかっているはずのドアが大きく開く。
「ルイズー、詔とやらはできたの?」
校則で違反されているはずのアンロックで押し入ってきたキュルケにニヤニヤしながら尋ねられる。
まったく、またからかいにきたのかしら。
そう思いながら不機嫌な顔で返事をする。
「なによ、こんな大事なこと一朝一夕でできるわけないじゃない」
「そうよねー、じゃあどれくらい書けたのよ、見せなさいよ」
う、と詰まった隙をつかれ、キュルケに下書きしている紙を奪い取られた。
「な、なにするのよ!」

それを見たキュルケが吹き出す。失礼ね。
「あはははははは!なによ、これ!
『炎は五車炎情拳!!わが身に触れるものは怒りの炎に包まれる』
『水は世が世なら百万の軍を自在に操る』
『風は風を友とし風の中に真空を走らせる その真空の力は鋼鉄をも断ち割る』
『土の歩を進ませるのはこの子供たちの心』
どこが詩的よ、あははははは!」
「そ、そんなに笑うならあなたが書いてみなさいよ!」
「なによ、私はあんたのためにいい話をもってきたのよ」
そういってキュルケはたくさんの地図を出してくる。かなり厚い。
「なによその地図の量、終わりのクロニクルの最終巻より厚いわよ」
「これでも厳選したのよ、ギーシュなんかに任せたらそれこそペリー・ローダン全巻より厚くなるわよ」
「で、なんなのよそれは」

キュルケがふふ、と笑い人指し指を立てる。
「宝の地図よ!」
「はあ?」
思わず声が漏れる。
「だから宝の地図よ、ロマンよ!ロマンホラーよ!深紅の秘伝説よ!」
「それが詔となんの関係があるのよ」
眉をひそめながら言う。
「わかってないわね…いい、詩に限らずいいものを作ろうとしたら人生経験ってのは必須なの。
どうせあなた、いいとこのお嬢さまだってことにかこつけて宝探しなんてしたことないんでしょう?」

大して年も違わないくせに偉そうに言うのは少々腹が立つが、一理ないこともない。
というか、宝探しにせっかくだから私は行ってみる方を選ぶわ、なんて気持ちもないこともない。
「ま、まあ、そこまで言うならいってあげてもいいけど?」
「なら話が早いわ、トリスタニアに一緒に行ったメイドのシエスタっているでしょ、あの子も誘ってきて」
「なんでシエスタを誘うのよ、宝探しなんでしょ?」
「シエスタの故郷がタルブなんでしょ、あの辺りに結構あるみたいだから案内してほしいのよ、
あと料理できる人いないし」
こいつ、それが目的なのね…
「わかったわよ、誘ってみるわ、いつ行くの?」
「今すぐよ今すぐ、だいたいタバサもいなくて暇だからこんなことやってるんじゃない」
「ようするにあんたの暇つぶしってわけね、じゃあ二時間後に校門で待ってるわよ」
「あいあーい」
まったく、忙しいときになんてものに誘うのかしら。
でも、気分転換にはなるかもしれない。ちょっとワクワクするしね。
162名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/23(水) 23:20:18 ID:H3BGc4vR
支援
163名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/23(水) 23:20:22 ID:ItsfjwUF
支援させていただこう
164風と虚無の使い魔 ◆/4V68E5Ojg :2008/01/23(水) 23:20:29 ID:Ky5UDQ4x
<br><br><br>
ラルカスが杖を振る。
鋭い水の刃が鍾乳石、地面、家具、そしてワムウたちの皮膚を切り裂く。
「なかなか堅い皮膚だな、同類よ」
「吸血鬼風情が偉そうな口を、貴様なんぞは餌にすぎん」
「吸血鬼?そうか、俺は吸血鬼になっていたのか。ご指摘感謝しよう、ところで君はなんなんだね、
伝説の吸血鬼の上の存在とは?学術的にも興味があるな」
「人間どもは柱の男と呼んでいた。お前が死ぬ前に脳味噌に刻んでおけ」
「『柱の男』か、いいだろう、覚えておこう。しかし私に勝てるのかね?
ミノタウロス、伝説の吸血鬼、スクウェア以上のメイジ、スタンド使い、それが私だ。
『柱の男』よ、もう神の前髪は俺の手の中だぞ」

ラルカスの絶え間のない魔法とワムウとクレイジーダイヤモンドのぶつかりあいによって洞窟が少しずつ崩れていく。
月光による筋が数本射しこめる。
「きゅいー!お姉様もワムウ様もなんとかして外に逃げるのね、外にさえ出れれば空までは追って来れないはずなのね、
きゅいきゅいーッ!」
「シルフィードは逃げて」
「お、お姉様はどうするのね!?こんなところで死ぬのも死なせるのも嫌なのね!
どうせ死ぬなら空で死にたいのね!穴の中はごめんなのね!」
「なんとかして足止めだけでもする、あの化け物を見過ごしてはおけない」
「きゅいー!お姉様、なんでこういうときは強情なのね、やるからにはやるのね、
精霊の魔法なめんじゃないのねーッ!我を纏う風よ、彼の姿を変えよ!」
青い渦がラルカスを襲いラルカスの左手がゴムのようになる。
「た、他人にこの魔法使うのなんて初めてなのね…維持するだけでせいいっぱいだから
あとはお姉様とワムウ様よろしくなのね」
ワムウは邪魔が入り舌打ちするが、一応手伝いという名目なので何もいわず向き合う。
タバサは杖で足元を狙い、飛んでくる水の刃を凍らして体積を増やし、少しでも切れ味を鈍らせる。

そこまでの努力を敷いても、ラルカスには致命傷を与えられなかった。
ワムウが攻撃することによって退けることのできないクレイジー・ダイヤモンドをかわし、
かつ安定した体勢で狙わなければ堅い皮膚は破れない。
その上多少の傷は吸血鬼の自己再生能力ですぐに治り、決定打を与えることができても、暇を与えれば
おそろしいレベルに達している水の魔法による治癒で治されてしまう。
決定打を与えられないのはラルカスも同じだが、無尽蔵とも思える精神力とスタミナに対して
経験豊富なタバサでさえもついていけなくなっていく。

「やれやれ、埒があかんな」
バックステップで下がったワムウがタバサに話しかける。
「どうする?」
「埒を開けるしかないだろう、白兵戦は硬直しだしたならば、騎兵突撃といこうか」
「きゅい?馬なんかどこにもいないの…」
「闘技『神砂嵐』」

ワムウの放った神砂嵐で洞窟の天井が崩れる。
「ほら、とっとと竜になれ」
「わ、わかったのね」

竜に変身したシルフィードに二人は乗り、天井の大穴から大空へ飛びたつ。
ラルカスが見上げながら呟く。
「ふむ、上空か、それは少し厄介だな」
ラルカスはクレイジー・ダイヤモンドをだし、あいた大穴を半分以上治す。
「どうだ、これでその竜はもう降りてこれまい、降りてこい、鬼神」
165風と虚無の使い魔 ◆/4V68E5Ojg :2008/01/23(水) 23:21:07 ID:Ky5UDQ4x
<br>
「ど、どうするのね、よくわからないけれど、あんな小さい隙間にされたんじゃさすがに降りれないのねェ〜
洞窟は狭いのねェ〜」
「行け」
「い、行けといわれてもこれでは進めないのね…」
「隙間を広げればいいではないか…行け」
「す、すきま〜〜?破片で尖った石であふれているのねェェェ」
「関係ない、行け」
「い、いやなのねえェェェ!って体が勝手にいいィ!
きゅいいいいいいい!ここまでやらせたのね、私の綺麗な肌は守ってくれるのね?」
「だめだ」
「きゅいいいいいいいいいいいい!」

シルフィードをワムウが無理やり操り、隙間に急降下させる。
隙間をワムウが破壊し、破片が飛び散る。
急降下したままタバサが氷の矢を雨のように降らせる。
「騎馬の真髄はな、突撃力だ、あそこからの急降下ならお前も無事ではすまんだろう、
バカ竜、悪いがそのまま突っ込ませてもらうぞ」
「きゅいいいいいいいいーッ!ひどすぎるのねーッ!」

シルフィードの巨体をクレイジー・ダイヤモンドでガードするが、あまりの重量と速度のためガードが弾かれる。
ワムウがシルフィードから飛び下り、スキのできたクレイジー・ダイヤモンドを飛び越え、ラルカスに突っ込む。
ラルカスは舌打ちしながらワムウにむかって激流のような水柱を放つ。

「それを待っていた」
タバサが素早く詠唱し、ワムウに水柱が届く前に全て凍らせる。
杖ごと水柱は巨大な氷柱となり、あまりの重さに右手を下げる。

「もう貴様を守る腕はもうない、神の前髪が手の中にあるだと?笑わせるな。
首から上全て持っていくのが我々柱の男だ……闘技『神砂嵐』!!」
砂嵐の小宇宙がラルカスを襲い、凍っていた杖、皮膚、角、全てを破壊していく。

「おおおおおおおッ!」
やぶれかぶれにラルカスが殴り掛かってくるが、受け止め、ボディーブローを数発決める。
ラルカスは地面に沈む。

「どうした、先ほどのスタンドの能力は治療か巻き戻し、とみたが治さないのか?治すより早く体をぶち折ってやるがな」
「なんなんだ貴様は!鬼神か!?魔王か!?軍神か!?」
立ち上がれないラルカスが喚く。
ワムウが頬を掻く。
「そうだな、強いて言えば宝石も貰ったし、女王陛下のアルバイト使い魔、といったところか」
「使い魔だと、そうか、俺は使い魔に負けたのか…主人はそこの少女かね、それとも女王陛下とやらかね?」
「いや、向こう見ずな小娘だ」
「そうか、一度その少女を見てみたかったな、では、地獄でもよろしくだ、軍神の化身よ」

ラルカスはクレイジーダイヤモンドでワムウに殴り掛かる。
それよりも速くワムウはラルカスを喰いきった。



「あーっ!そういえば外の人売りどものこと忘れてたのね!一応ボスは縛ったけど仲間は逃がしっぱなしなのね、
早く追いかけるのねーッ!きゅいきゅいーッ!」

そう言って人間に戻ったシルフィードは出口に向かって走り出した。
そして、洞窟の出口にたち、絶句していた。

「なにが起きたか、そこにはとんでもない事実が!衝撃の事実は、しーえむのあと!」
166風と虚無の使い魔 ◆/4V68E5Ojg :2008/01/23(水) 23:21:38 ID:Ky5UDQ4x
<br><br>
タバサに杖でシルフィードは殴られる。
「痛いのね、なにするのね!」
「他人のネタは使わない」
「他人というかある意味自分のネタなのね、これは韻竜の共有財産なの…」
もう一発杖が落ちてくる。
「いたいのね、わかったのね、ごめんなさいなのね」
「それで、なんなの」
「外をみればすぐわかるのね」

タバサが長いトンネルを抜けるとそこは裸賊の住処であった。

「変態なのねー!お姉様目に毒なのねーッ!」
下着だけで盗賊たちが縛られて放置されていた。
「ま、待ってくれ、俺たちの名誉のためにもわけだけでも聞いてくれ!」
「あ、ありのまま先ほど起こったことを話すぜ!『リーダーを助けようとしたら変な髭のおっさんが現れて、
気がついたらギャンブルで下着以外全て奪われていた』
なにをされたのかわからなかった…頭がどうにかなりそうだ」

シルフィードが男たちを冷やかな目で見つめる。
「変態には違いなさそうなのね、変態で盗賊なんてもうどうしようもないのね、とっとと突き出すのね、お姉様。
……ん、なにか紙が落ちてるのね?」
『タバサ様へ ロープなどの諸経費(人件費含む)五エキューを七日までにダービー商会トリスタニア店舗にてお支払い
お願いいたします。
追記、なおミノタウロスの遺体の買い取りも承っております、どうぞご利用下さい』

「……巻き上げた上にロープ数個に五エキューとはあのおっさん貴族なめてるのね、お肉いくつ買えると思ってるのね!
きゅいきゅい!だいたいミノタウロスの遺体なんて武器屋がなんに使うのね!」
「皮膚を使って鎧にしたり角を使って槍を作ったりする。肉骨粉はクラゲとあわせて発射にも使える」
「お姉様、そういうネタこそやめた方がいいと思うのね……もう疲れたのね、こいつら引き渡して、
シルフィお気に入りのタルブの村に向かうのね、きゅいきゅい」
167風と虚無の使い魔 ◆/4V68E5Ojg :2008/01/23(水) 23:22:44 ID:Ky5UDQ4x
投下終了、支援砲撃感謝する!

一話か二話探検編を書いて合流になるのかな、そろそろあの人も出さないといけないし
168名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/24(木) 00:25:24 ID:GZAOjMCo
>>152
お前考察するならどこまでもやれよ。
100から召喚されたとしても=100に召喚されるとは限らないだろ?
169名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/24(木) 00:37:46 ID:G+8Ubx9p
ダービーお前…裏で暗躍し過ぎだ!
GJ!

ところでワムウ、ラルカス全部喰っちゃったんじゃね?
170名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/24(木) 00:39:19 ID:aqI/7d6h
風虚無さんGJそして乙でした
わーい、僕らのダービーさんは今日も元気にたくましーい!
さて、タルブには一体何があることやら……
1938年より前にゼロ戦は無いだろうしなあ
171名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/24(木) 00:50:06 ID:8COdl2Ph
GJ!
フ…フフ………
ミノ+吸血鬼の肉は…お、美味しかろう………
172名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/24(木) 01:06:05 ID:U5WJ7gvw
>>168
双方の時空がずれていて等速なのか?
それだとゼロ戦の時間が不自然になったりしないか。
あるいは双方バラバラな時間軸なのか?
それだと未来の武器がハルキゲニアに流入してこないのがおかしくなったりしないか。それとも偶然入ってこなかっただけ?
あとドアの向こうから電波が届いたり。過去のメールが再び届いたりはしなかったっぽいから、召喚された時間以降なのは確実だろ
173名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/24(木) 01:11:46 ID:U5WJ7gvw
ああ、2012年以降は宇宙が一巡するからなにも召喚できないか。もはや別時空だし
174名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/24(木) 02:01:22 ID:LF7qNBH8
ワムウの人GJ!!
そしてバカ竜吹いたwwwwwwwww
175名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/24(木) 06:59:00 ID:cBSBpCKF
http://bbs11.fc2.com/bbs/img/_202300/202296/full/202296_1191283915.jpg
(ワムウ・不動明・苺谷香)の画像
このアニヲタデブ童貞40年の香具師、4年以上外出もせず毎日チャットと出会い系掲示板の引き篭もりニート生活。
詳しくは http://www.2shotchat.ne.jp/
ここで毎日、早朝から深夜までパソコンに貼りついて会える女待ってるよ。
ほ〜ら覗いてごらん!
現在も全国版・関東地方・東京都・40代専用・FREEMAIL・全国ベーター版と合計6ヶ所で掛け持ちで居るからww
しかもニートの割りにプライド高いから全部1号室。取れないとそれに近い部屋ww
凸入して「 40 歳 で ど う し て 仕 事 し な い ん で す か ? 」
     「 4 年 半 も こ こ に 居 て 女 と 会 え な い な ん て 異 常 で す け ど 何 か ? 」
と聞いてみてねw
176名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/24(木) 12:09:47 ID:mga7JN11
>>167
ペリー・ローダン全巻とかキング…もといデスクリムゾンとかネタ入れすぎw
分かる人がこのスレに何人居るんだw
177名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/24(木) 13:50:02 ID:mUIju90O
>>167
数あるゼロ魔クロスSSの中でも、詔の部分の完成度は随一でした。
ていうか凄まじく詩的じゃないですかキュルケさん!!GJ!!
178名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/24(木) 14:09:18 ID:DkyHG+Y0
キング・クリムゾン

ジョゼフ「くやしい……でも……ビクビクッ」
179名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/24(木) 20:20:55 ID:xcyC1g/i
      ll||lll  / ll||ll   /i i    / i i  ヽ i:.ill||lll i, i,
  ll||ll,      i   /  ./,i /  / | |   ! i!:. |   i !,
     |   ll||ll !  ./   /,i/  ./  | i   ! i!::. i!:  | |    ,,r;;;;''''=―--、、,_
ll||lll .|      .|  .:/ / /  ./   !.|   .|| !::.| i: lll|||   /∠,,.r_;'゙-‐-,<゙゙ヽ,'i、'‐、,
     | ll||lll  | メ,,/ /...:::/     i/    !i |::} ! .i  |  /jフ,r-、ヽ、  _,,>.゙'ー;゙' ーi,. |'i,
 ll|lll_,,i      | // `'メ_/_    ノ      !//1 /  | ./ .(゙   _>゙'゙ r''゙´'i,゙l, ,j レ! .|:|
  /.ヽi   ll||ll |  /"x"::Oヾ!i,~      ,=ニ,,.!/ !/  !  .レ'゙''‐ニ'''゙r''゙´ .゙l,ヽ,. ,ノ ゙ r''1.jノ
  !,  |     | / /::::::::::::::}         /::::゚:i`i /ll|| |  .ト、,. /./´゙ヽ;.、 ノ ,゙rッ  .,Y';V
ll||l ヽ ,|  :   | '   !;:::r--i::ノ        |::__::::! |/    .|   l,ヾ,、--、,,,、'_, r''゙ l   / li,;)
  :  ヽ,! :ll||lll |    `ー-'        `-+" ! ll||lll |   /゙,,、、、,_  ゙\!.レ゙  .| Y゙ 
  ::  i | :::  |             ,    ,!     |  ./゙    \  ゙Y:   .l /     キングクリムゾンッ!
 ll||ll |::.| :::   |                     /    |  ''" ̄`゙ヽ、 ゙'i,  |.   ' /      我以外の時はフッ飛ぶ!
 i:  i:::::| ll||l:: |                 / | ll||lll |∧、, ゙̄ヽ、. \ ゙l. |\ ./
 !:  ,i:::::::i :::  |`=、      rっ   ,イ'" .|  :   | ヾヽ,゙'ー---‐'''''ヾ-、,‐'
:/:. /:::::::::i i::. .|  `=ー:.,,,,,,,,,,,,,.=-:'":/ :  i  | ll||l|    ヽ;-‐-、,_::::__ ::..>
:::: /:::::::/i .!::. .|       ト,,,r=-、;:::::/:ll||l.:|: .| .:: |     ヾ、;:) ゙'i    `ヽ、
:::,,/=<  ! ll|::. |     |  ヾヽ `<::.::: .::i: /i .i |
''' ̄`ヽヽ  | |!::: |        ヽヽ Yヽ,:::/: ノ | ..:i |
,,,______ ヽヽ | |`i::.. !、    ,ー _,,i,! i  i ヾノ  | .:i |
     ̄\ヾ|'''!:i:. |-ー―-''"   i !i, !, `,  |.:::i .i
      ヾ人_!,i:. i___,,,,,,,..ー-' !:i, !,  i  i::/i i
        / ,,,,,,,,,i:. i,,,.. ー----='''''"`ヾi i, |  i///
180名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/24(木) 20:35:30 ID:hyg0eil3
これはかわいいディアボロ
181名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/24(木) 20:42:15 ID:YCQfWayd
           / ハ!,.   ' ll||lll \    ll||ll \
         /ll|,/ |! \ \ j_ ヽll||ll       ヽ
         .' , /!l  i  \´ヽ、  ` !    ll||ll    !
          | | |,ィ!  ヽ   \! \ ゝ,   !  ll||l |
          | |イ V         __   !:ll||ll !::     |
          | | !        '' , ‐、ヽ !:::.  |‐ 、ll||l |   
         l | !   ,.=       f f:: l Y  |ヽ !:: │  >>179よくやったッ!
         l Vヽ. /!ri !       ゝ_.フ  |ll||l | ノll|| |
         l ll||l l! ゝノ           |:   レ':   |
        |    !                , ll||ll ハ    |
        |ll||  ハ           /   ,!::. ll||ll|
          ,   !ゝ    _     ィ  / / !:.    |
          ! ll||l l  ` r --- ‐ ' _j/ ィ !__.j::ll||ll  ヽ
        !  l |   ゝll|| ゝ / / / | |: : |:::: l   ヽ`ー_ノ
   グッ!   | ll||l!      \ /ー/ ' :.:.| |: :..| :::ll||ll   ヽ
   _ ,..  ',. l !       /: : : : : : : :レ : : :ヽ::|  ll||ll ヽー、
  ,rイ  V !   ヽ.ゝヽ    ,.' : : : : : : : : : : : : :  _V       V_j
  i.    │        / : : : : : : : : : : :: | : : r' |ll||ll    l! !-'
  l     ノ        ,'r ‐'^ ‐' ヽ_.: : : : :| : :.{  | /  !l|  l! !
182味見 ◆0ndrMkaedE :2008/01/24(木) 21:37:32 ID:/+kmuNq2
避難所のとあるスレで、ちょっとした実験やってます。
183名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/25(金) 00:25:04 ID:nC2Z2mDi
メイド・イン・ヘヴン!!
世界が一巡し、みんなちゅるやさんになr…
げふん、IDが変更されるッ!!
184名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/25(金) 01:26:17 ID:HU/Vo8qM
>183
数えたことは無いが、比較的簡単な『ちゅるやAA』とはいえ、コンプリートも近いと思わされるのは凄いな。
特に、『>1乙の爆弾!』『れくいえむーん』は感動した。
185名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/25(金) 13:33:46 ID:E8xfnKQ6
久しぶりのキング・栗損!
186名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/25(金) 16:22:21 ID:52Q1sSuc
禁虞・紅璃无存
187名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/25(金) 16:43:31 ID:DHn1TBzW
知っているのか雷電!?
188名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/25(金) 19:23:07 ID:FkLBq792
『禁愚・九里無存』とは
かつて、中国に九里とよばれる盗賊がいた
盗賊集団情熱の頭だった九里は時を跳ばすことによって
誰からも彼が何処に存在するかを知られなかった
後にこの九里の存在は知られ無い、彼の正体を知ろうとするのは禁じられ愚か
という故事から禁愚・九里無存という言葉が生まれ
それがヨーロッパへ伝わり
『キング・クリムゾン』というスタンドの語源になったのは
有名な話である
なお、九里は部下の反乱にあい
『零悔獲無』という呪いを受けたため、
今なお、世界をさ迷っているという

(民明書房刊『守鍛人(すたんど)の起源』)
189名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/25(金) 19:55:38 ID:V54iHjsY
でたらめにもほどがあるwww
190名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/25(金) 20:31:50 ID:OoFsnLa3
ほんまに民明書房における中国は人外魔境やでえ

波紋のルーツって仙道だよな
仙道って中国が発祥だったような……
あれ? 洒落になってない?
191名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/25(金) 23:00:36 ID:OoFsnLa3
俺が時を止めた……20:31:50の時点でな
192風と虚無の使い魔 ◆/4V68E5Ojg :2008/01/25(金) 23:16:05 ID:5SAOSFx9
そして時は動きだす

今週の民明文庫売れ筋の本のご紹介です

『ゼロの使い魔』とは
現在刊行中のファンタジーでありながらも非常に学術的にも評価の高い小説である。
作者は雲南省出身の山口昇(発音:トゥジュカー エイジィ)で、魔法という物を
考察したファンタジーとしては非常にレベルが高く、また大学講師らを中心にインテリ層からの支持が高い。
また、扱う分野も幅広く、今ホットな超ひも理論を利用した次元の転移や、主人公の男子につけられた
ルーンを媒介に「彼は本当にそう考えているのか」と哲学的ゾンビの問題も挟んでいる。
また、文系方面の分野も非常に強く、十字軍をモデルとし、皇国によるエルフの土地への攻撃を
主人公たちに疑問をもたせ、宗教を理由とする戦争への強いアンチテーゼを持っている。
更に、その中に近代兵器を登場させ、兵站や生産、整備、訓練がなければどんな兵器も効率的に運用はできない
ということも強く実感させる代物である。また、作者がそちらへの造詣も深く、途中にでてくる
「コルベール」という人物によるポルシェ博士についての解説は非常に詳細でかつ正確ある。
もちろん、少年少女たちの心の葛藤を見事に描き出しており、文学的質も非常に高い。

兎塚エイジZeroゼロの使い魔イラストコレクション 絶賛発売中!

あああああルイズかわいいよおおおおお

投下します
193風と虚無の使い魔 ◆/4V68E5Ojg :2008/01/25(金) 23:16:30 ID:5SAOSFx9
<br>
<br>
「いざ進めやギーシュ!めざすはヴァルダンテ♪」
トリステインの南方目指し、馬を駆る
「ねえ、なんでこいつがいるのよ、キュルケ」
ルイズがため息をつく。
「説明しよう!ギーシュは宝探しなどという面白そうなことに関しては
鋭い嗅覚を持っているのである!」
「要するにあんたが勝手についてきたわけね、このアカポンタン」
「まあそうともいうね」
「じゃあ帰りなさいよ、一応私のためなんだから」
「なにも成果を得ずに帰ったらおしおきされちゃうじゃないか!」
「誰によ誰に」
「まあまあ、ミス・ヴァリエール、いいじゃないですか」
シエスタが宥める。
「さすが、美しい女性は僕のことをわかってくれるな!ハハハ!」
「シエスタ、こんな奴かばうことないわよ、
まあシエスタがそう言うなら許してあげるわよ、感謝しなさい」
キュルケが地図を開いて先導する。
「えーと、まずはここから東に1キロね…」
194風と虚無の使い魔 ◆/4V68E5Ojg :2008/01/25(金) 23:16:54 ID:5SAOSFx9
<br>
トリステインを数日かけて各所を周り、六日目には大量にあった宝の地図ももう残り数枚になっていた。
「なによキュルケ、宝なんて全然ないじゃない。なによこのガラクタの山は!」
「ヒンタボアイランドへの地図、星がいくつか入った黄色いボール、
変な円盤、DISCって書いてあるわね…しん・よげんのしょってなによこの汚い紙は…
あとは…波動エンジン設計図?なによこれ」
キュルケがひとつ黒いノートを拾う。
「この黒いノートなんか使えるんじゃない?なにか書いてあるけど読めないわね…
とりあえずギーシュの名前でも書いておくわ」
「あれ、ミス・ヴァリエール、ミス・ツェルプストー、ミスタ・グラモンが心臓を
抑えてもがいていますけど…あ、動かなくなりました」
「いいのよ、ほっときなさい、ギーシュだから」
「ギーシュだもんね」
「そうですか…」
ルイズが振り向いてキュルケに尋ねる。
「あとどこが残ってるのよ」
「あとはタルブ周辺だけね、シエスタ案内してくれるー?」
「ええ、もちろんですよ」
「じゃあ、ギーシュいくわよ、って動かないんだったわね…フレイムー、
ギーシュひきずってきなさーい、重かったら焼いてもいいから」
「ぎゅるぎゅる!?(そ、そんなご主人さま、それはひどすぎるんじゃあないですか!?)」
といいながらギーシュを引きずり、馬に乗せる。

「さあ、目指すは南よー」
キュルケが行く先を指さした。



「なんか薄気味悪い森ね…」
ルイズが呟く。
「いかにも今回の山場って感じだね、諸君」
「あら、ギーシュ生きてたの?」
「ギャグキャラは死なぬ!何度でも蘇るさ!」
「なにか出るかもしれないわね、警戒して進みましょう」
その言葉を聞いてギーシュがバラをあしらった杖をくわえる。
「ふふ、こんなこともあろうかと、今週のびっくりドッキリワルキューレ!
名付けて、ワルキューレ旅団!全国の女子高生の皆さんどうぞご覧下さい!」

説明しよう!ワルキューレ旅団とは、大型のワルキューレを手のひらサイズまでに小型化し、
数を増やした物である!数は増やしたが体積は減っていないため、戦力を集中させることによって
従来の敵にも対処でき、かつ一体一体の体積は小さいため、全滅させることは困難、という代物である!
偵察、威力偵察、囮、遅延作戦、多方面攻撃など幅広い任務に使えるぞ!
195風と虚無の使い魔 ◆/4V68E5Ojg :2008/01/25(金) 23:17:34 ID:5SAOSFx9
「そして、最終的には合体して超電磁やゲッター線、ミノフスキー粒子などを使えるようにする予定だ!
どうだ、すごいぞ! かっこいいぞー!戦いは数だー!ワハハハハハ!」
「…まあいいわ、やってみなさい」
大量のワルキューレをばら蒔き、森の中へ進ませる。

「第一青銅大隊はそのまま前進、第二黒金大隊は停止し、第四…じゃなかった第三偵察小隊を十時の方向に、
えーと第二青銅大隊は停止じゃなかった第五白銀大隊が、えーとそんなにないよなあ…第三黒金大隊でいいのかなあ」
「指揮が混乱を究めてるわね」
「う、うるさいルイズ、大量のゴーレムを動かすってのはすごい集中力がいるんだぞ!」
「じゃあなんでむやみやたらに増やすのよ…」
「大きくするなら大きく、小さいなら全力をかけて大量生産が僕のポリシーだからね」
「まるで使えないわね…どっかのヒゲ伍長の兵器みたいだわ」
「う、うるさいな、……ん?あれ、おかしいな第十六偵察小隊が動かないなあ、どうしたんだろう」
「あんたのゴーレムでしょ、私に聞かないでよ。そもそもなによその小隊の数は、何体いるのよあんたのゴーレム」
「あ、あれ?どんどん動かせるゴーレムが減っていく、も、もしかして敵襲かなあ…」
キュルケがため息をつく。
「偵察の意味ないじゃない…」
「で、でも敵がいることがわかっただけでも大きな進歩じゃないかね?」
「普通にゴーレム出せばよかったじゃないの、とにかくなんとかしなさいよ」
「わかった、とりあえず集合させよう、これでなにが起きてるかわかるはずだ」

ギーシュが目をつぶって杖を振る。
「お、オーク鬼の集団だ!」
ギーシュが悲鳴をあげる。
「総員退避ィいいいい!こっちまで撤退いいいッ!」
ルイズが慌ててギーシュの肩を揺する。
「ちょ、ちょっと、そんなことやったら私たちのところにオーク鬼が来ちゃうじゃない!」
「あああああ!忘れてたあああ、でももう遅いや、あはははは」

ボロボロの小さなワルキューレが次々と集まってくる。
「なんだこりゃ、オーク鬼にやられたにしては…穴だらけなんて不思議な傷だな…?」

ガサガサよ周りの藪が動く。全員杖(シエスタはフライパン)を構え、場が静まる。
そして、藪からオーク鬼が顔を出した。
「来たわよッ!」
ルイズが叫ぶ。


しかし、いたのはオーク鬼だけではなかった。
キュルケがあとずさりしながら言う。
「ね、ねえ、これはなに?ギーシュのゴーレムなの?なんか小さい兵隊で、銃みたいなのを持ってるけれど…」
「え?僕のゴーレムはもうここに全て集まって……」

小さな兵隊が銃をこちらに向ける。
「伏せなさいッ!」
ルイズが叫んだ次の瞬間、小さな銃からでた弾丸が伏せたルイズ達の上を突き抜けていく。
「ど、どうなってるんだ!?」
ギーシュがうろたえる。
「もしかして…スタンドじゃない?人間以外が持ってるってこともありえるはずよ!」
キュルケが杖を構えて距離をとりながら言う。
シエスタはフライパンを構えて震えている。
「じゃあ、この兵隊はどれかのオーク鬼のスタンドなのね……なら、こうするしかないわね、それは…逃げる!」
ルイズが振り向いて逃げようとする。
「……こともできないみたいね、見事な包囲だわ、ギーシュも少しは見習いなさい」
196風と虚無の使い魔 ◆/4V68E5Ojg :2008/01/25(金) 23:18:22 ID:5SAOSFx9
後ろにも獲物を狙う目をしたオーク鬼が何体も並んでいた。
「さて、観念する?無駄な抵抗してみる?」
ルイズが尋ねる。
「そんなの決まってるじゃない!」
「命を惜しむな、名を惜しめ、この家訓の通りに死ぬまでさ!ミス・シエスタだけでも逃がすぞ!」
二人は杖を構える。


「少年少女ども、相変わらずいい啖呵だな!こんな優れた人間どもをオーク鬼の夕食にするにはあまりに惜しすぎるゥウウウウッ!
そのとき、茂みの後ろから声が聞こえた。
「この世にナチスがあるかぎりィイイイイイイッ!共産主義は栄えないィイイイイイイッ!
この村に俺がいる限りィイイイイイイイッ!オーク鬼どもは栄えないィイイイイイイッ!」
男の後ろから彼女たちがよく見知る男がでてきた。
「やあ、ミスタ・グラモン、ミス・ヴァリエール、ミス・ツェルプストー、ミス・シエスタ、でしたかな?今週の山場ですぞ」
「食らえオーク鬼どもォオオオオオウッ!重機関砲発射ァアアアアアッ!」

機関砲をぶっ放しながら前進していく。
「どうだオーク鬼どもォオオオオオオッ!我が愛機Bf.109最新型搭載ィイイイイイ機関砲の味はァアアアア!」
小さな兵隊が銃を放つが、もちろん効果はなく、そのうち本体が倒れたのか兵士は消え去った。

オーク鬼が全てやられるか逃げていき、一息をつく。
「それにしても、なぜこんなところにコルベール先生とシュトロハイムさんがご一緒にいらっしゃるんですか?」
ルイズが二人に尋ねる。
「若者がァアアアア!天才コルベールの技術を起点にィ……このシュトロハイムの体の部品は作られておるのだアアア!」
「うむ、彼は柔軟な発想を持っていてね、私の研究を認めてくれた上に色々とアドバイスしてくれるのだよ!
非常にためになっている、研究がはかどってはかどってしようがない!」
コルベールは嬉しそうに顔をほころばせる。

「それで、どうしてここにいるんですか?」
シュトロハイムがうなずく。
「オスマンの計らいでな、この前のゴーレム騒ぎで家が壊されたからな、ここに土地を紹介してもらったのだ。
それにしてもここはいいところだ、風土もいい、人もいい、飯もいい!イギリス人も見習うべきだな!
ということでここに住まわせて貰っておるのだ、こういったところは不慣れだが、近所の人たちも色々と
世話をしてくれる。俺にとってここは第二の故郷とも思えてきたな!」

一行はコルベールに目を向けると、コルベールは口を開いた。
「うむ、シュトロハイムくんにあの空飛ぶヘビくんの話をしましたらね、感心されまして、彼はそれを応用した
『ひこうき』というものについて教えてくれたのですよ!そしてある日、友人の話を聞いていると、ここに『空の羽衣』
という道具があると聞きまして、話を聞く内に、シュトロハイムくんの言っていた『ひこうき』というものと特徴が
似ていることに気付いたのですよ!それを考えるといてもたってもいられなくなって、こちら向かったところ、
なんと彼に出会ったのですよ!」

「『空の羽衣』ですって!?」
シエスタが驚きの声をあげる。
「おや、ミス・シエスタ、ご存じなのですか?」
「ええ……私のひいおじいちゃんの、形見です。ひいおじいちゃんはそれを纏えば飛べるとも言ってたそうですけど、
誰も動かせなくて…きっとインチキなんでしょうね」
そう笑うと、シュトロハイムが口を挟んできた。
「インチキなどではないィイイイイイッ!コルベールの知力と努力の結果ァアアアアアア!
『空の羽衣』を飛ばすことは可能となったのだァアアアアア!」
「ほ、ほんとうですか!」
シエスタが目を輝かせる。
「百聞は一見にしかずゥウウウウウ、ついてこい少年少女どもォオオオオ!」

そういって背を向け歩きだすが、ふと気付いたように振り返る。
「そういえば、ミス・ヴァリエールだったか、君がナチスについてなにか悪いことを言っていたような気がするのだが」
「なに、ナチスって?私そんなもの知らないわよ?」
「そ、そうだな、そうに決まっているな、すまなかったな、では行くぞ、諸君ゥウウウウ!」

To Be Continued...
197風と虚無の使い魔 ◆/4V68E5Ojg :2008/01/25(金) 23:19:45 ID:5SAOSFx9
とうかしゅうりょー
とりあえず時事ネタ消化しとかないと えへへ
個人的にはエンディング以外は満足です、ヤッターマン


そういえば避難所の方でなんか面白そうなことやってるそうですよ
いろんな作者さんに質問したい方はぜひどうぞ
198名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/25(金) 23:24:39 ID:FkLBq792
風虚無の方乙そしてGJでした!
おじさんX……もとい、シュトロハイム再登場ktkr
さて、若干違う名の飛行機は何を意味してるのか……
ワムウ……シュトロハイム……飛行機……まさか、ね
199風と虚無の使い魔 ◆/4V68E5Ojg :2008/01/25(金) 23:26:23 ID:5SAOSFx9
>>198
ああ、Bf.109に関しては他意はないです
やっと飛ばせる程度の飛行機を愛機ともいえないですし、東部戦線じゃ日本軍機なんてまずお目にかかれないだろうなー
と思って一番なじみの深そうなのを
200名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/25(金) 23:41:18 ID:Y2osOCJB
シュトロハイムが謎の絶叫キャラにwww
201名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/25(金) 23:53:54 ID:L+WHZPsc
12時から投下の世界だ
支援を頼む
202名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/25(金) 23:55:12 ID:3VXlQ4wU
承った
203ゼロのスネイク1/9:2008/01/25(金) 23:57:54 ID:L+WHZPsc
12話



嵐のような夜は明けて、朝が来た。
「新しい朝が来た、希望の朝が・・・」などというフレーズもある朝だが、
残念ながらこの日の朝は希望もなければスガスガしくもなかった。
トリスティン魔法学院長のオスマンにとっては特に。

「……それで、ミス・ヴァリエールが不届き者に襲われとったのにも、
 土くれのフーケが宝物庫を襲って『破壊の杖』を盗んでいったのにも……。
 だーれも気づかんかったと、そういうわけじゃな?」

オスマンが眉間に皺を寄せながら目の前に並ぶ教師一同を見回す。
教師達は皆が一様に肩をすくめるだけで、何も言おうとしなかった。
その反応を見て、オスマンは深いため息をついた。

メイジには主に2種類のタイプがある。
一つは軍人のように、魔法を戦うことに使うことを得手とするタイプ。
もう一つは、戦いは得意とせず、あくまで魔法を研究することに長けるタイプ。
この魔法学院にいるのは当然後者ばかりで、
「魔法殺し」や「土くれ」のような名だたる殺し屋、盗賊と渡り合えるような猛者がいないことぐらい、
オスマンだって分かっていた。
分かっていたが…これほどの体たらくだとは思いもしなかった。
ルイズの部屋に侵入した不届き者と戦い、重傷を負ったキュルケとタバサの方が、
こいつらよりもよほど貴族らしいのには間違いあるまい、とオスマンは深く思った。

「ハァ〜〜……もうよい。君たち、ちょっとそこに立っとれ。
 ああ、それとミス・ヴァリエール。スマンの、ワシら教師がこんな有様で」
「い、いえ……」

オスマンの丁重な物言いにどぎまぎするルイズ。
オスマンはそれを見て目を細めると、その隣に立っているギーシュとモンモランシーに目を向けた。

「それとミスタ・グラモンにミス・モンモランシ。
 君らが不届き者の事と『土くれ』の件を伝えてくれておらねば、事態はもっと悪化しておったやもしれん。
 礼を言おうかの」
「い、いえ! そんな……」
「いえ、オールド・オスマン! レディを守る事は騎士の務め!
 ですのでこの程度のこと、礼には及びません」

モンモランシーが白い目でギーシュを睨む。
でもギーシュは気づいていないようで、調子よさそうにニコニコしていた。
204名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/25(金) 23:59:29 ID:Y2osOCJB
支援
205ゼロのスネイク2/9:2008/01/25(金) 23:59:42 ID:L+WHZPsc
「それは何よりじゃ。
 ……さて、ミス・ヴァリエール。
 昨日の事をもう一度、今度は簡単に話してもらえるかね?」
「はい。えっと、私が寝てたところでいきなりホワイトスネイクが大声出したからそれで目が覚めて、
 その後不届き者とホワイトスネイクが戦ってたらキュルケとタバサが入ってきて……」

余談だが、ルイズがタバサの名前を覚えてるのは先ほど事件の概要をルイズが説明した際、
タバサを「青髪の女の子」と呼んだのをオスマンに訂正されたからである。

「それでキュルケとタバサがいきなり浮き上がって、苦しそうにしてて……」
「……もうよい、ミス・ヴァリエール」

ルイズのあまりの説明下手にオスマンはたまらず待ったをかけた。
先ほどのルイズの説明も、オスマンをもってしてもまったく理解できなかったために
待ったがかかった次第だというのに……。
とは言ってもハルケギニアには無重力の概念すらないのだから、
結局のところルイズでなくともあの戦いを性格に説明する事は困難であろうが。

「……あ〜、その、なんじゃ。
 さっき君は『ホワイトスネイクと不届き者は知り合いのようだった』と言ったのう?」
「ええ、そうですけど」
「ここは、ホワイトスネイク君に話してもらうのが分かりやすいかもしれんの」
「イヤです」

ルイズは間髪いれずに拒否した。

「わたしが話します。わたしが当事者ですから」
「でも君の言う事はちょっと分かりにくいんじゃよなあ……話を早く進めたいってのもあるしの。
 ホワイトスネイク君を……?」
「いいです。わたしがわかりやすく話します」

ルイズがホワイトスネイクに説明させたがらないのは、単に「使い魔より説明下手」と思われるのがイヤなだけで、
決してホワイトスネイクを邪険に扱おうとする意思があるわけではない。
ないのだが、誤解されても仕方の無い状況になってきている。
206名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 00:00:50 ID:3VXlQ4wU
しえん
207ゼロのスネイク3/9:2008/01/26(土) 00:02:07 ID:L+WHZPsc
「……そうかね。じゃあ、もっと分かりやすく頼むよ」
「はい。
 まずホワイトスネイクが大きい声出したからそれで目が覚めて、ホワイトスネイクと不届き者が戦い始めて、
 その後にキュルケとタバサが助けに来てくれたんだけど不届き者にやられそうになっちゃって、
 それでわたしとホワイトスネイクがそれを助けに行って……ここまでしか覚えて無いです」

オスマンは椅子から滑り落ちそうになった。

(な、なんで一番肝心なとこを覚えとらんのじゃろうな?
 やっぱり使い魔の方に説明させるのが正解じゃったかの……?)

「あ〜、ミス・ヴァリエール。わしが聞きたいのはその先なんじゃが……」
「……ホワイトスネイク」

ルイズがぼそっと自分の使い魔の名を呼んだ。
直後、ルイズのすぐ傍に屈強な体躯を持つ亜人――ホワイトスネイクが現れる。
あの戦いから半日を経たホワイトスネイクの体には今も無数の傷が残っており、
特にジャンピン・ジャック・フラッシュの拳に貫かれた腹部の傷は殆どそのままで残っていた。

「状況ハ理解シテイル。ルイズノ代ワリニ、昨日ノ一件ノ説明ヲスレバ……」

ドグシャアッ!

「ッ!! ナ、何ヲスル! イキナリスネヲ蹴ッ飛バスンジャアナイッ!」
「あんたが聞かなくてもいいところを聞いてるからよ!」
「ダッタラ口デ言エ口デ! 何デ一々私ニ当タロートスルンダ!」
「何よ、ご主人様の教育方針にケチつけようって言うの!?」
「コンナヤリ方ニケチツケナイ奴ガイルト思ッテンノカッ!」

出てきた直後からぎゃあぎゃあと口論を始めるルイズとホワイトスネイク。
目の前のオスマン、隣のギーシュとモンモランシーはもちろん、周りにいた教師一同も、思わず目を覆った。
ルイズとホワイトスネイクが、二人してあまりにも子供じみていることに。

「……もう、いいかの?」

オスマンはまたため息をつきながら二人に声をかける。
その声でルイズははっとした顔になると、すぐにホワイトスネイクの足を踏んづけて黙らせる。
ホワイトスネイクは苦悶と理不尽への怒りを滲ませた表情プラス不満たらたらの視線をルイズに向けたが、
ルイズは完全にスルーした。
208名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 00:02:48 ID:Y2osOCJB
支援
209ゼロのスネイク4/9:2008/01/26(土) 00:04:26 ID:P1UVjb0g
「ではホワイトスネイク君。
 まず、ミス・ヴァリエールの話では、昨日の不届き者とは知り合いだったそうじゃが……本当かの?」
「本当ダ。奴ノ名ハラング・ラングラー。
 私ガ最期ニラングラー会ッタ時ハトアル場所ノ囚人ダッタ男ダ」
「囚人、か。
 ではこちらが不届き者について知っておることを言おうかの。
 彼奴の名はラング・ラングラー。君が知っておる名と同じじゃな。
 彼奴は囚人などではなく……殺し屋じゃった。
 それも『魔法殺し』などと呼ばれてメイジとの戦いを得手とする、何とも風変わりな殺し屋だったそうじゃ。
 最も『メイジ殺し』などと呼ばれる腕の立つ傭兵もいることにはいるが……彼奴の強さはそんなレベルではなかったと聞く」
「『魔法殺し』?」

ホワイトスネイクがおうむ返しに聞き返す。

「そうじゃ。
 これは彼奴に襲われながらもかろうじて逃げ延びた魔法衛士隊の青年の話じゃがな……。
 まず風と火の系統は魔法自体が完成せず、
 水と土の系統は魔法を完成させられても、完成させたものをコントロールすることが出来んそうじゃ」
「そ、それって、メイジの天敵みたいなものじゃないですか!」

オスマンの突拍子も無い話に、思わずルイズか声を上げる。

「風と火はダメ、か。
 どうりでキュルケたちが負けるわけね」
「水と土はコントロールできない……コントロールできないってことは、どういうことだ?」
「あんたのワルキューレとか私の水が思うように動かないってことでしょ」
「あ……なるほど」

そして同様に話を聞いていたギーシュとモンモランシーも、
「魔法殺し」の恐るべき能力を想像していた。
ギーシュは頭の弱さを露呈しただけだったが。
210名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 00:05:40 ID:Rb6KnNJX
しえん
211名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 00:05:41 ID:BHyh23RM
相変わらず萌えるスタンドだぜ支援
212ゼロのスネイク5/9:2008/01/26(土) 00:05:54 ID:P1UVjb0g
「しかし、何故そのようなことになるんでしょうな……?」

教師の一人であるコルベールが疑問の声を上げた。
彼の前頭部は今日も目映く輝いている。

「それがのう、一体彼奴が何をやったのかは青年にもちっとも分からんかったそうでの……全く恐ろしいことよ。
 ホワイトスネイク君は何か分かるかの?」
「『無重力』ダ」

ホワイトスネイクが即答する。

「『むじゅーりょく』? 一体何かの? それは」
「私ガイタ世界デノ概念ダ。
 話シテモ時間ガカカルカラナ……先ニ昨日ノ件ノ説明ヲ済マセタイ」
「そうかね。じゃあ頼むよ」
「ルイズニ2人ノ救出ヲ頼マレタ私ハソノヨウニシテ二人ヲ助ケ、ソノ後ラングラーニ止メヲ刺ソウトシタ。
 ダガソノ際、ラングラーガ部屋ノ壁ヲ壊シテ部屋カラ脱出シタノデ、私ハソレヲ追ッテラングラーニ止メヲ刺シタ。
 ソノ後フーケトヤラガ巨大ナゴーレムトトモニ現レテ宝物庫ニ侵入シ、何カヲ奪ウト去ッテイッタ」

三行で説明しきったホワイトスネイク。
流石である。

「ふ〜む……なるほどな。
 君は見たところ傷だらけじゃが、それはラングラーと戦った時に負った物かね?
 随分痛そうじゃが……」
「問題無イ。モウ半日アレバ全快スル」
「……そんなに早く治ってしまうもんなのか。流石は亜人、といったとこじゃのう」

オスマンは一端そこで言葉を切ると、

「とりあえず、ラング・ラングラーのことはもういいじゃろ。
 あとでまたホワイトスネイク君から聞けばよいしな。
 と、なると……次は『土くれ』じゃな」

そう言って、またため息をついた。
213ゼロのスネイク6/9:2008/01/26(土) 00:07:13 ID:P1UVjb0g
正直な話、こちらのほうが重大な話だった。
いくらルイズが名家の出身だといっても極端な話をすれば、所詮は生徒一人の話。
であるのに対し、こちらは王家より預かった二つと無い宝物を盗人に汚されたという、
言うなればトリスティン魔法学院のコケンに関わる話だからだ。

「フーケガ逃ゲタ先ハ分カッテイルノカ?」
「今ミス・ロングビルが調べとるとこじゃ。
 書き置きにはもうそろそろ帰ってくる、とあったが……まだかの?」
「ソノロングビル一人デカ?」
「そうじゃ。それがどうかしたかの?」
「…………」

この時点で、ホワイトスネイクはロングビルがフーケなのではないか? という疑いを持った。
「書き置き」とオスマンが言ったからには、
恐らくオスマンが気づいた時点でスデにロングビルは学院内にいなかったのだろう。
そして土くれのフーケを探すために外に出ているのはロングビルただ一人。
これがどうかんがえてもおかしい。
あれだけのサイズとパワーを持ったゴーレムを使役する盗賊メイジに対し、
たった一人で調査を敢行したのか?
「貴族のプライド」だか何だかのためにも、
例え自分一人であったとしても土くれのフーケに挑まないわけには行かなかったのです! 
とか言ってしまえばそれまでだろうが、
合理主義者のホワイトスネイクからすれば、明らかにこの行動は不審そのものだった。

「オールド・オスマン、ただいま戻りました」

と、その時。
実にいいタイミングでロングビルが帰ってきた。
214名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 00:07:41 ID:Rb6KnNJX
しえん
215名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 00:08:41 ID:KWiH+DtY
支援
216ゼロのスネイク7/9:2008/01/26(土) 00:08:52 ID:P1UVjb0g
「おお、帰ってきたか。で、フーケの居場所は分かったかの?」
「はい。近在の農民に聞き込んだところ、
 近くの森の廃屋に入っていった黒ずくめのローブの男を見たそうです。
 恐らく、彼はフーケで、廃屋はフーケの隠れ家ではないかと思います」
「そこは近いのかね?」
「はい。徒歩で半日。馬で四時間といったところでしょうか」
「すぐに王宮に報告しましょう!」

コルベールが声を上げる。
だがオスマンはそれを制すると、

「いや……それでは時間がかかりすぎる。
 そんなことをしとる間に、フーケはもっと遠くへ逃げてしまうじゃろう。
 破壊の杖と一緒にな。そこで……一つ、わしから提案がある。
 この事件、我々魔法学院の者で解決してみようじゃないか」

教師たちがいっせいにどよめき始める。

「ではこれから捜索隊を編成する。我こそは、と思う者は杖を掲げよ」

オスマンが静かに言った。
しかし誰も杖を上げない。
教師たちは互いに顔を見合わせ、皆が皆「お前が行けよ」という顔をしていた。

「おらんのか? おや? どうした!
 フーケを捕まえて、名を上げようと思う貴族はおらんのか!」
217名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 00:09:51 ID:Rb6KnNJX
しえん
218名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 00:09:58 ID:SQOruAaB
支援の世界だ
219ゼロのスネイク8/9:2008/01/26(土) 00:10:32 ID:P1UVjb0g
オスマンがそう言って、今日何度目かの深いため息をつこうとしたその時だった。

杖が一つ、掲げられた。
それを見て、教師たちが水を打ったかのように静まる。
杖を掲げたのは教師の誰でもない。
他の生徒達から「ゼロ」と蔑まれ、しかし誰よりも貴族であろうとするルイズだった。

「ミス・ヴァリエール、あなたは生徒ではありませんか! 
 それに昨晩不届き者に襲われたばかりだというのに、おやめなさい!」

ミセス・シュヴルーズが声を上げるが、ルイズは動じずに言い返す。

「誰も掲げないじゃないですか」
「ルイズ、悪イ事ハ言ワナイカラ止メテオクベキ……」
「あんたはお呼びじゃないのよ」

ダメだ、こいつ。はやく何とかしないと……。
ホワイトスネイクがそう心中で呻いたその時、

「ミスタ・グラモン、君まで!」

ルイズの隣にいたギーシュまでもが、杖を掲げていた。

「グラモン家の家訓は『命を惜しむな、名を惜しめ』ですよ、コルベール先生。
 か弱いレディがフーケ討伐に名乗りを上げるのに、男の僕がどうしてそれを躊躇えましょうか」

そういって、キザに決めるギーシュ。
キザに決めてるのにどこか抜けてる気がしてならないのはご愛嬌。

「…も、もう! ギーシュじゃ心配だから、わたしも行くわ!」

そしてモンモランシーも杖を掲げた。
220ゼロのスネイク9/9:2008/01/26(土) 00:11:56 ID:P1UVjb0g
「正気ですか、オールド・オスマン! 悪名高いフーケの討伐に年端もいかない生徒を向かわせるなんて!」

コルベールがオスマンに強く抗議する。

「いや、そうは言ってものう、コルベール君。
 それにこの面々、中々期待できる面子では無いかね?
 ミスタ・グラモンは軍人の家系、グラモン家の人間、
 ミス・モンモランシは代々水の精霊との交信を任された、いわば水のエキスパート。
 ミス・ヴァリエールは数々の優秀なメイジを輩出したヴァリエール家の息女ときておるし、
 彼女の使い魔のホワイトスネイク君は『魔法殺し』を単身で仕留めたのじゃぞ?
 土くれ相手とは言え、不足はあるまい」
「そうは言ってもですね……」

コルベールはまだ煮え切らない様子だったが、
結局この場にいた教師は一人も名乗りを上げなかったため、
反対にフーケの犯行現場に居合わせた3人の生徒がフーケ討伐に向かう事となった。

しかしホワイトスネイクはその3人の面子を見回して、一言。

「全滅スルゾ」

メメタァッ!

「グオ、ォ……」
「縁起でもない事言うんじゃないわよ!」
「ワ、私ダッテマダ全快ジャアナインダ……本当ニ全滅シカネナイカラソウ言ッテイルノニ……」



To Be Continued...
221名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 00:11:56 ID:SQOruAaB
紫煙
222ゼロのスネイク10/9:2008/01/26(土) 00:14:30 ID:P1UVjb0g
投下完了の世界

ラングラー戦でキュルケとタバサが大怪我したのはギーシュとモンモンがフーケ討伐に行くフラグでしたとさ
あとこれ以後、貴族主義のルイズと合理主義のホワイトスネイクがぶつかり合いながら話が進んでいくスタンスになります
223名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 00:15:18 ID:KWiH+DtY
投下乙。投下GJ
本当に頼りないー!
224名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 00:17:44 ID:BHyh23RM
ぶつかり合いながら成長していく、二人のヒストリーか。
実にGJでした
225名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 00:19:10 ID:GBF3auNl
GJ
ホワイトスネイクに対する色眼鏡を外してみると、
白蛇に同情してルイズに何こいつ的な感情を持ってしまって困る。
226名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 00:20:57 ID:t6oNl9sQ
投下乙そしてGJでした
ドットとライン(だっけ?)とゼロじゃ
不安以外の何者でもない
頑張れホワイトスネイク
超頑張れ
227ゼロのスネイク10/9:2008/01/26(土) 00:33:57 ID:P1UVjb0g
>>225
ルイズはホワイトスネイクがハルゲキニア以前に何をしてきたかを全部知ってるので、(8話参照)
ホワイトスネイクに対しては厳しく当たるのです
228名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 01:05:21 ID:nzn6FYTl
「全滅スルゾ」でお茶吹いた
229名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 07:54:46 ID:9wtRaJ7g
ヴェルダンデに期待。
230名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 08:21:03 ID:H+Sgja3a
このホワイトスネイク、テファに召喚されたら契約しちゃって帰ってこなくなるんじゃw
231名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 16:28:56 ID:39B5nfg+
>>230
五部の「敵かッ! 敵かッ!」の人みたいに
「胸かッ! 胸かッ!」とルイズに蹴られるところまで見えた
232名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 21:56:26 ID:kWBB6Q0t
時飛ばしが頻発しているようで
233名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 22:09:29 ID:gvGmmdof
>>232
よし、お前もなんか書くんだ
234名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/26(土) 23:43:23 ID:2UD/IOYX
俺・・・ギーシュ戦まで書きあがったら投稿するんだ・・・
235名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 00:11:50 ID:cziym3GC
>>234
それなんてナランチャ?
236名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 03:21:15 ID:FssFaOvI
よし、3時間も人がいないので投下します
237はたらくあくま 1/3:2008/01/27(日) 03:22:22 ID:FssFaOvI
23 目覚める少女、目覚める男

すべて後から聞いた話だ。

いやいやながら竜に跨った救援の教師達が、タバサの先導で空き地に辿り着いた。その時そこには動くものは何一つ無かった。
最初に目に付いたのは、盛り上がった土の小山。そして、その脇に赤く染まる草地。ぼろくずのように転がった男。愛らしい無心な寝顔を見せる少女。最後に、放り出された錆びた剣。
気絶した少女に応急手当を、男に治癒魔法をかける。ミス・ロングビルの姿を方々探し回ったが、見つけることは出来なかった。
仕方なく二人と一本を抱えて学院に戻り、ルイズを部屋まで運んで行く。使い魔の男は傷がひどい。「治癒」に秀でた教師を呼ぶ。
タバサとキュルケを従えて院長室に入る。入るも、陰鬱な気を発するの上司に耐えかね、報告は生徒に任せてそそくさと退散。
少し遅い午餐をとり、軽く話し合う。午後から、再度ミス・ロングビルの捜索に出向くことに決まった。
返って来そうに無い杖の一本などには思い入れもなかったが、学院の才媛となれば話は別だ。それに、危険は既に逃げ去っている筈だった。
救援の教師も、二人の生徒も、誰もが思っていた。つまり、失敗したのだと。返り討ちに遭い、破壊の杖は奪われ、逃亡を許し、二人が無残な姿を晒した。
そして、一人は未だ森林の中で助けを待っているのだと。
全て間違っていた。全員が真相を知ることは出来なかった。意気揚々と捜索隊を乗せた竜が、大空へ飛び上がってゆく。


ルイズは目を開く。天井が見えた。ぼんやりとした気分。何か、懐かしい夢を見ていた気がする。小さく開いた窓から、涼しい風が吹き込む。
子供の頃の夢か。多分そうだろう。ほかに懐かしいものなんてないし。それともそんな夢じゃなかったか。むくりと起き上がる。見慣れた自分の部屋。
「おう、やっと起きたか」 夢の尻尾を断ち切る声。視線を声のする方へ。見慣れた自分の部屋のドア。
「おいおい、まだ寝ぼけてんのか?」 下へ。壁際に古びた剣が落ちている。鞘から少し出た刀身。立てかけられていたのが倒れたのか。その音で目が覚めたのかもしれない。
デルフリンガーを見るルイズ。瞼も意識も、まだ半分しか働いてない。
「大丈夫かよ、おい…。後遺症でどっかおかしくなっちゃいねえだろうな」 心配そうな声までかけられた。後遺症って、なんのよ―――

目が覚めた。思い出した。助けを求めたその直後、頸に強い衝撃が加えられた。あれは多分、当て身だ。打撃の感覚が今も残っている気がする。
そして、急激に体が重くなる感覚。手からすり抜ける破壊の杖。飛び行く意識が最後に見た、ミス・ロングビルのあの笑顔、それが意味するもの。
「ミス・ロングビル…じゃないのね? あれがフーケだったのね? フーケは!?」 ベッドから飛び出るルイズ。
歩きながら服装を確認。倒れた時のまま、マントまでそのままだ。服に付いた土と葉が、シーツをうっすらと汚している。気にするな、今は。
「死んだよ」 杖はどこだ? テーブルの上に無雑作に置いてある。手に取り、床の剣に向き直る。
「フーケはあれからどうしたの!? 逃げた!?」「だから、死んだって」 え。動きが止まる。今、なんて言った。
「何度も言わせんなよ。死んだよ。殺された」 突然のことにルイズは言葉を失う。読んでいた本を急に取り上げられたような気分。
誰に、と言いかけて飲み込む。
「デーボは?」 ここに剣がある理由をふと想像する。まさか。大きな喪失案、それに僅かな安堵感が混じる。
「あいつか? 生きてるよ。今、ここのメイジが治療中だ。飛び出た骨が体内に引っ込んでくのは見てて面白いな」 感情の混合が消えゆく。
238はたらくあくま 2/3:2008/01/27(日) 03:23:06 ID:FssFaOvI
「なんつったか、ハーバードだったか? そいつが治療してるから大丈夫だとよ。知ってるか?」 知っている。学院じゃ有名な教師だ。
土+水+水のトライアングル。治癒のエキスパート、「血液」のハーバード・ウエスト。彼の手にかかれば、死体も息を吹き返すと言われる。
倫理的に世間から逸脱した彼は学院長と対立し、今は冷や飯を食わせられていると聞いている。緊急事態だ、構っていられないのだろうか。
デーボはまず助かるだろう。まだ、彼を従えることができる。…ことになった? 我知らず息を吐くルイズ。
「なんだなんだよ、その溜息は。起きてきたら礼の一つも言ったほうがいいぜ。あいつのお蔭で助かったんだぜ」 言わずもがなだ。だが、あいつのお蔭。
「あいつが…、デーボが、フーケを、その。…殺したのね?」 そうだよ。そう言ってるだろ。剣が言う。言ってないでしょ。いや、言い争う気力はない。 なくなった。
「…どうやって?」 聞きたいのか? 質問に質問で返される。聞きたくないわよ。少なくとも一人では。

「………。学院長先生に報告しましょう。」 ルイズは重い足取りで剣を拾い、学院長室へ向かった。部屋を一歩出て、廊下に置かれている人形に目をやる。
「どうする?」「後で」 恐ろしく短い会話。後は完全に無言だった。遠くから授業の声が聞こえる。誰かが魔法を失敗したか、小さな破裂音も。


森の中の空き地に、捜索隊が再度降り立った。
正義感と若干の勇気を持つ教師、下心と功名心を持つ教師、役立たずの汚名を少しでも返上しようという教師で構成されていた。
そこを基点とし、四方八方に散った。大声で呼びかけた。草むらをかき分けた。だが、見つからない
再度空に上がりもした。潰された小屋の、残骸の陰まで覗き込んだ。だが、見つからない。表情に暗い影が差す。
だが、どこを探しても見つからない。時間ばかりが過ぎる。空き地に戻った教師達の間にある予感が漂う。嫌な、不吉な、悪い予感が。
やがて、一人が意を決したように言った。そこの土山も探しましょう。幾人かが低く呻く。
万が一の事を考えて、微弱な旋風で土を削り払ってゆく。舞い上がる土埃。
山の中から黒いものが見える。杖を振る手を止め、恐る恐る覗き込む。光沢の無い黒い筒。装飾なのか、薄い板が脈絡無く貼り付けられている。ように見える。
一人が驚く。こりゃ破壊の杖ですよ! 全員が驚く。当然の如く湧き出る疑問。なぜここにある。なぜフーケはこれを持って行かなかった。
いや、理由は後から探せばいい。学院長の杖だ。すなわち手柄だ。生徒に先を越されるのを、指をくわえて見るだけだったのだ。今取らなくてどうする。
時間が経てば点滅して、そのうちパッと消えてしまう。そんな錯覚に陥った一人の教師が、慌てて小山に飛び乗った。力を込めて杖を引っ張る。
杖の大部分が見える。中程の金具に指を絡めた、土にまみれたでこぼこの細い手も。
周りで見ていた教師が驚く。山の上の教師は気付かなかった。彼の目には筒先の暗黒しか映らない。
肉と筋と皮が杖に絡みつく。杖と一緒に引っ張られる。骨は砕けてよくわからないが、長さからみて肘あたりだろうか。
地面から引きずり出される。そこまでだった。土と人の重みが胴体を抑えつけている。
教師は功を焦った。さらに力を込める。負荷がかかる。伸びきった腕に。その先の手に、指に。それが絡まるトリガーに。
乾いた金属音。空気が排出されるような音。爆発。爆風に乗って飛来する何かの破片。吹き飛ぶ土砂。怯えて飛び立つ竜。
棒立ちになっていた見物していた人間に襲いかかる。とっさに伏せることが出来る者はいなかった。ほぼ全員が何らかの怪我を負った。
鈍い動作で立ち上がった教師陣。傷の治癒も忘れ、呆然と土煙を眺める。

彼らは二つの死体を発見した。
吹き飛ばされた土の下に、圧壊した盗賊の死体。ひどくひしゃげて男女の区別もつかない。右腕は高熱を受けて焦げ爛れている。
耳鼻眼口から出た液体が土と混じり、顔中に付着している。その顔もひどく浮腫んで、人相がはっきりしない。
土まみれの髪の色と服装から判断するしかない。
失われた山の稜線。そこから少し離れた所に飛んでいった、仰向けの教師の死体。胴体の前面は炸裂した弾頭に切り裂かれ、あるいは食い込まれている。
頭が失われ、ギザギザの首の断面から血液が勢いよく流出している。
ある者は昼食を大地に返した。あるものは始祖に、理不尽な呪詛の言葉を吐いた。ある者はただ取り乱した。
言葉を失った彼らが何か建設的な行動を再開するのには、今しばらくの時間がかかった。
239はたらくあくま 3/3:2008/01/27(日) 03:23:37 ID:FssFaOvI
本塔六階、学院長室。ルイズが剣を抱えて遠慮がちにドアを叩く。

盗賊は死んだ。ミス・ロングビルも死んだ。二人は同一の人間だった。剣の言葉を信用するならば、の話だが。
信用しよう。すぐばれる嘘をつくほど、彼女も剣も卑しくはないようだ。
ミス・ヴァリエールと、彼女の使い魔の詳細な報告を聞いて考え込む。
やや青い顔をしている少女に優しく休むように促す。一人と一本が部屋から出て行き、静かになる。モートソグニルがナッツを齧る音。
気が休まった。無論、失ったものは大きい。だが思えば最初から仕組まれていたのだろう。
居酒屋で給仕をする女。媚を売るような仕草。自分のような老人に。見下されるのとも、憐れまれているのとも違うあの目つき。
思わず言ってしまった、秘書にならないか? と。快く承諾し、よく働いてくれた。それもこれも、この為だったのか。
見抜けなかったことは悔しい。あの尻も二度と触れないとなれば、惜しいという気持ちもある。
しかしあの旧い友情と、学院の威信を天秤にかけてまでのものではない。確認するように言い聞かせる。
そう、この際ミス・ロングビルの悪意は関係ない。死人の意思をどうこう言うほど狭量ではないつもりだ。
杖はもうすぐ返ってくる。ミス・ロングビルは帰ってこない。既に死んだ。要は、チャラということだ。
楽しげに飛んでいったあの教師どもが、帰り杖が宝物庫に戻ったら。オールド・オスマンは寛大な気持ちで思う。
三人の学生には褒章を与えなければならないな。
椅子に腰を掛け直す。深く、ゆったりと。壁にかかった鏡を見る。知恵と安らぎを湛えた老人の姿が映る。


薄暗い部屋でデーボは目を覚ます。薄暗いはずだ、窓がない。ランプの明かりだけが部屋を照らしている。無人の部屋。壁も天井も石。半開きのドア。
最後の記憶を思い出す。盗賊を握りつぶし、殺した。魔法が切れたのか、土くれに戻るゴーレム。全身が崩壊する痛みに耐えかねて――気絶したのか。
さて、ここはどこだ。堅いベッドから降り立つ。体の傷はほとんど癒えている。腹も減っていない。
何かの罠か? だったらこんな風に、机の上に短剣を放っておくだろうか。取る。何も起こらない。ポケットに仕舞う。
部屋を出る。廊下も暗い。燭代の明かりが不規則に灯っている。通路の奥に上り階段。ここは地下か。
「もう起きたのかね」 後ろから男の声。反射的に振り向く。同時にナイフを構え、中腰。男は肩をすくめる。
若いメイジ。マントは白い。目には微かな狂気。だが、敵意は感じられない。
聞けば自分を治療した張本人だという。男は気分を害した様子もなく、しきりとデーボの生命力に感心していた。
見送られるように地下を出た。覆いかぶさるように塔がそびえる。陰になって、光度の差を和らげる。
日の高さがよく判らない。本塔の北側に出たか。いや、ここが北半球とは限らない。考えを放棄する。
とりあえず、ルイズの部屋へ向かう。
塔の周りを半周し、日の沈む方と反対に――こっちは東なのか?わからない。地図も磁針も持っていない――向かう。


破壊の杖が、震える手で差し出された。杖の威力に恐れをなした教師達は、オールド・オスマンに見せるまで杖に触れようともしなかった。
厳かにレビテーションで運び、ただ衝撃も振動も与えないように精神力を注ぎ込んだ。
手以上に震える声で、報告する。一人が杖を暴発させ死亡。そしてミス・ロングビルもまたゴーレムに殺されたと。
セコイアの机の上に置かれた杖。その間抜けな教師の血と土と、至近距離での爆発の焦げと傷跡。そして衝撃が杖自体を微かに曲げている。
怒りが湧いてくる。死人に怒りはぶつけられない。目の前の教師達を睨む。
「フ、フーケの行方は未だ不明でして、ハイ…。我々も八方、手を尽くしたのですが…残念です」 心底残念そうな声で報告する教師。
悔しさではなく、残念? 盗賊の追撃もせず、救援にも嫌々ながら。全てが終わってから手柄を掠めようとしたそれすら出来ずに、他人事のように残念だと?
「こ、このような失態は二度と繰り返しは致しません! 再度フーケがこの学院を狙うようなことがあれば、我々が――」 限界が来た。

敷地の隅々まで響き渡る怒号が響き渡る。馬鹿め!奴は死んだわ! オールド・オスマンは竜の如く吠えた。
240名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 03:25:00 ID:FssFaOvI
投下しました
小ネタの為だけに教師の皆様にダメな大人になってもらいました
名も泣き教師のファンの方に謹んで謝罪します
241名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 03:32:21 ID:FssFaOvI
あ、修正忘れorz

>>240
× 敷地の隅々まで響き渡る怒号が響き渡る
○ 敷地の隅々まで怒号が響き渡る

他にも間違ってんだろうなあ、まいったなあ
242名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 03:43:30 ID:xEOB1yEZ
この薄寒い感じが最高です。GJ

しかし、そこがまたいいんだけど
『はたらくあくま』のキュルケ・タバサはなにやら黒く感じます。
キュルケは、
痛みを知らない子供のようでいて、痛いことを知りながら嬉々として嬲る毒婦の様で、
タバサは、
大切なものとはいずれ失うものであり、親友も道具として使えるなら使い捨てる。
そんな印象。
243名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 04:06:36 ID:FssFaOvI
>>242
うほっ、いいお言葉・・・

とりあえず自分の中のテーマじゃ
・人はわかりあえない
・死は全ての終わり
・復讐
この三本柱でいきたいと思ってるんで、タバサの少ない描写からそれを感じ取っていただけるのは
ガチ感動モンです。

キュルケはその、現実と作品世界間での命の重さのギャップについて
軽くしたほうがいいか、もうちょい重めがいいか決めかねてるのが文に現れちゃっただけで
要は私の未熟のたまものです。
244名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 08:13:12 ID:LT/F2Lk6
クトゥルフネタ多いなぁww
そのうち御大も出てきそうな勢いだ
245名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 17:49:22 ID:6rPB9IAL
きん☆くり
246風と虚無の使い魔 ◆/4V68E5Ojg :2008/01/27(日) 18:06:57 ID:+o5fenRn
18:20あたりに投下します
247風と虚無の使い魔 ◆/4V68E5Ojg :2008/01/27(日) 18:21:48 ID:+o5fenRn
他の作家さん裏設定というかプロットとかってどうしてるんですかね
いや、裏サブタイとかプロットとかのっけてたテキスト間違えて消しちゃって涙目なんですが

とにかく投下します
248風と虚無の使い魔 ◆/4V68E5Ojg :2008/01/27(日) 18:22:27 ID:+o5fenRn
<br>
「海軍少尉、佐々木武雄、異界ニ眠ル、か」
シエスタにひい祖父の墓の前に案内されたシュトロハイムが呟く。
「え、シュトロハイムさん、これ読めるのですか!?」
「腐っても大佐だ、ドイツ語はもちろん英語フランス語デンマーク語イタリア語日本語などお茶の子よッ!」
「よくわかんないけどすごいわねー」
キュルケがパチパチと手を叩く。
「へえ、平民で大佐とはすごいな、僕の家も長く武家をやってるが、平民で佐官まで上り詰めた人間なんて
そう聞いてないな。君の国はどこなんだい?」
ギーシュがそう尋ねた。
「う、うむ…ま、まあその話はオスマンにでも聞いてくれ…」
すると途端にシュトロハイムの歯切れが悪くなる。
「なによー、別にいいじゃない、言っちゃいなさいよ」
キュルケが促す。
シュトロハイムは特徴的な髪を片手でいじりながらゴホン、と咳をしてから話した。
「うむ、それなんだが…信じてもらえないかもしれないが、違う世界から来たのだ」
「違う世界ですって?そういえば私の使い魔もチキュウというところから来たって言っていたわね」
シュトロハイムがものすごい形相でルイズに振り向いた。
「なんだと、そう、俺もその地球から来たのだ!うむ、一度あってみたいな、その使い魔とやらに!」
「まあ、そのうち会えると思うわ」
「うむ、楽しみにしているぞ!」
シュトロハイムが大きく頷く
「あまり過度な期待はしないほうがいいと思うけれどね」

「よし、これで遺言通り墓碑銘も読んで機体も頂けた、あとはガソリンを入れるだけだぞ、コルベール!」
「うむ、ぜひともあれを飛ばしてみたいですぞ!」
シエスタがにっこりと笑う。
「わたしも、ぜひともあれが飛んでいるところをみたいですね」
「うむ、では初飛行と行こうか、空の羽衣、いや零式艦上戦闘機五二型のな!」



「ふむ…よい整備状況だが、少々無線とかををいじらねばな」
シエスタに空の羽衣の場所まで案内されたシュトロハイムは、周りを調べながら呟いた。
「ほう、無線とはなんですかな?」
コルベールが興味津々で尋ねる。
「まあ待て、コルベール、俺の胴体を一旦解体してくれ…うむ、そうだ、そしてそこの四角い物を
取り出して…ああ!コルベール、もっとやさしく!そこはダメだッ!ダメッ!ダメッ!
そう、そうしてそれを取り出したら、横の……」

作業が終わるのを暇そうに一行は眺める。
「それにしてもここは眺めのいいところねー」
キュルケが大きく体を伸ばす。
「ええ、わたしもこの景色、大好きですよ…田舎ですけれどもね」
シエスタがはにかむ。
「ああ、そうでした、ここのワインは景色とならんで自慢なんですよ!
後で振る舞いますのでぜひどうぞ、シュトロハイムさんたちもどうですか?」
しかし、彼らは集中しきって聞いていない。
いつのまにかギーシュも見慣れない部品でできたシュトロハイムの体に興味津々だ。
「まったく、これだから男の子ってのはねえ…」
キュルケがなにかを悟ったように呟いた。
<br>
249風と虚無の使い魔 ◆/4V68E5Ojg :2008/01/27(日) 18:23:10 ID:+o5fenRn
<br>
「うむ、これで完成だ!では飛ばすぞ!…しかし、戦闘機に乗るなど久しぶりだな、
ルフトバッフェから降ろされたのがこの体になってからの唯一の心残りだったが、それも晴れた」
エンジンが音を立てて震えだし、シュトロハイムはゼロ戦に乗り込む。
「滑走距離よし、離陸する!」

長い長い草原の上を地平線めがけて車輪が回り、機体が進み始める。
かなり長い距離を進んでいき、そして、ゼロ戦は唐突に車輪が地面から離れた。
ゼロ戦は浮き上がり、そして大空へ舞い上がった。
近くの住民たちが歓声を上げる。コルベールの歓声は一際大きかった。

「天気晴朗な…ど波高し…どう…聞こえ…か?」
空にいるはずのシュトロハイムの声が後ろから聞こえ、驚いてルイズ達は振り向く。
「ど、どこにいるのシュトロハイム!?」
「コルベ…ル…渡した機械に向か…て声を吹き込んでくれ」
コルベールはハッとして四角い箱につながれた小さな箱を拾う。
「こ、これはなんですかシュトロハイムくん!?」
「うむ…よく聞こえるぞ、コルベール、これは無線とい…てな…ある程度離れてもこうやって
会話をすることができるのだ、動力は先ほど俺から取り出したバッテリーで動いているウウウウッ!
ゼロ戦にももちろん積んであったが、我がナチスの電撃戦のカギは密接な連絡と指揮ィイイイイッ!
文字通りの機械化歩兵である俺に無線を積んでいないわけがないィイイイイイイッ!」
コルベールは興奮した顔で声を吹き込む。
「すごいですな、シュトロハイムくんの世界は!死ぬ前にお目にかかりたいものです!」
シュトロハイムの笑い声が聞こえた。
「あまりガソリンの無駄遣いはできんからな、そろそろ着陸する…全員機械を抱えて森の方まで避難してくれ」
シュトロハイムの乗ったゼロ戦は空中で華麗に旋回し、地面に車輪をつけ、数百メイル進んだのちに止まり、
中からシュトロハイムが降りてきた。

「どうだった、コルベール?」
「素晴らしいですな!あれにエンジンが使われているというのは驚きですな!
発明家としての血が沸きますぞ!」
「うむ、ではそのうちにこれを魔法学院に持っていく、着陸できそうな所を見繕っておいてくれ、
ではここの名物のワインを頂こうとするか!」
「なによ、あんたちゃっかり聞いてたのね」
キュルケがシュトロハイムをつつく。
「ワインとチーズには目がなくてな、あとはザワークラウトでもあれば言うことなしだな、
うむ、あちらの世界でちゃんと料理を学んでおけばよかった」
シュトロハイムが唸る。


シエスタの家に向かうと、近くの住民たちが集まって大がかりな歓迎会を開いていた。
この村の宝である『空の羽衣』が本当に飛んだのをみて急遽用意した、とのことだった。
村長が泣きながら現れ、コルベールとシュトロハイムに頭を下げ、シュトロハイムに抱きついた。
コルベールに抱きつくのは彼が貴族のため自粛したようだったが。

「素晴らしいワインですな、これは!」
コルベールが感嘆する。
「貴族様にそう言っていただけると光栄です」
そう言った住民にシュトロハイムが首を伸ばして酔った顔で言う。
「おい、そいつはお前が思ってるような貴族じゃないぞ、土と油にまみれた高貴さなんてかけらもない奴だ!
そんな奴に敬語なんて使ってもなにもでんぞ、わははははは!」
といって豪快に笑う。
「そ、そんな、畏れ多いですよ…」
「ははは、いいんだよ、一応教師をやっているがこうやって休暇をとって好き勝手やっているんだからね!
しかも、生徒たちにこんなところで好き勝手やっていることがバレてしまったし、面目が立たないですな!
しかし、それでもこのワインとチーズを楽しめただけでもあの『空の羽衣』を研究した甲斐はありましたぞ!」
「ありがとうございます、コルベール様、それでは次のワインを持ってきますね」
コルベールは頬をかく。
「うむ、なんだか催促したみたいになってしまいましたな…」
<br>
250風と虚無の使い魔 ◆/4V68E5Ojg :2008/01/27(日) 18:23:35 ID:+o5fenRn
<br>
生徒たちも思い思いに楽しんでいた。
「UMEEEEEEEEEE!」
「このチーズがワインを、ワインがチーズを引き立てるッ!『ハーモニー』っていうのかしら、
『味の調和』っていうのかしら!例えるならホワイトスネイクとルイズ!
神田に対する栗原!ベルリンフィルハーモニーに対するサイモン!って感じだわ!」
「ところでコルク抜きもってないかしらあ?」
ギーシュ、ルイズ、キュルケも酔っぱらい、
いつのまにかシエスタも飲み始めていた。
「るいずさーん、一発芸やりますねー、口にワインを含んでー、パウパウッ!波紋カッター!」
「すごいわねーシエスタ、それどこで習ったのー?」
「えへへー、曾祖母のリサリサっていう異世界からきたひとからー、あれれー?私の曾祖母は
普通の人ですよねー?えへへーやっぱりわかんないですー」

あまりに酔いすぎているため、これは帰らせるのは無理だと判断したコルベールは泊まっている
シュトロハイムの小屋の近くにある宿に放り込んだ。


「あー、頭痛いわ…」
そう言って一階にルイズは降りていく。
ワムウに起こされているせいか、早起きはどうやら得意になったようである。
降りていくと、コーヒーを飲んでいるシュトロハイムがいた。
「ほお、なかなか早いな。あの少年よりは軍人向きかもしれんぞ?」
「あなたは元気ね、シュトロハイムさん。私たちは全員二日酔いで唸ってるわよ」
「軍人だからな、鍛え方が違う。敵は常にウォッカ飲んでるような奴らだったしなおさらだ」
「…ねえ、シュトロハイムさん、異世界から来たって言ったけれど…元の世界は恋しくないの?」
シュトロハイムは頬を緩ませる。
「貴女は優しいな、恋しいこともある。あの風土、食品を味わえんと思うとな」
「家族とか友人は恋しくならないの?」
「父母はいるが、まあなんとかやっていけるだろう。弟は先に戦争で死んだ。友人も、部下も、
優しい上官も厳しい上官も多く死んだ。俺が死なせたものも多くいる。俺がいなくなった戦場はどうなっているか
気がかりであるが…大佐一人で歴史はかわらんさ、閣下のように伍長から政治畑に上っていく器でもない。
なるべくようになるはずだろうな」
ルイズは黙りこくる。
「地球が恋しいこともある。しかし、俺があちらで死んだ以上、あちらでの俺の人生は終わったのだ。
ここはよいところだぞ、ミス・ヴァリエール。俺には帰るべき故郷はない。
ここに骨をうずめられるならば二度目の人生としては上々だろう」
「そうやって諦めきれるものなの…?」
「そうでも思わんとやっていけん」
そう言ってシュトロハイムはコーヒーをぐいっと飲み干した。
「あっちの世界の知識のある俺なら微力ながらやれることくらいはあるだろう。悲惨な戦争を止めるほどの力はないが、
少なくともゼロ戦を飛ばすことくらいはできる。ここの人たちに笑って貰えたのだからな、かなり上等じゃないか、
お前らを襲うオーク鬼も片付けられたしな」

そう言い終わったあと、キュルケとギーシュが降りてきた。
「あら、ルイズ早いわね」
「いたたたたた、おはよう、ルイズ、キュルケは大丈夫なのかい?」
「トリステイン人とは酒への強さが違うわ」
「そうかいそうかい、どうせ僕は軟弱な下戸さ」
キュルケたちはルイズの横に座る。
「それで、どうするの今日は?」
「もう宝の地図はないし、帰るしかないじゃない」
「結局徒労だったってことね」
ルイズの言葉にギーシュがムッとしていう。
「待て待て、あのカヌーのようなものが飛ぶところをみれただけでもこの旅は素晴らしいものだったぞ!」
「学院にいてもシュトロハイムさんがくるとき見れるじゃない」
「う、まあそうだが」
「まあ、ここでグダグダ言っててもしょうがないわよ、帰る準備でもしましょう」
そういってキュルケが立ち上がったとき、轟音が響いた。
<br>
251風と虚無の使い魔 ◆/4V68E5Ojg :2008/01/27(日) 18:24:04 ID:+o5fenRn
<br>

「やれやれ、壊滅的とはこのことを言うのだな」
アルビオン艦隊にいわば『騙し討ち』といった形で攻撃されたトリステイン艦隊・ランベルト号艦長は自嘲的に言った。
「白旗をあげている艦も多くおりますな、罵ってやりたいところだが、そうもいきませんな」
側近の部下が艦長にそう漏らす。
「それで、どういたします、艦長?」
「そんなもの決まっておるだろう」
艦長は杖を構えた。
「勝ったつもりでいる奴らを教育してやる他あるまい、なに、運がよければ痛みもなく死ねるだろうからな」
「あなたも馬鹿ですな、貴族であるあなたは捕虜になるのが関の山でしょう」
「そう言うな、馬鹿な参謀め、『ランベルト』号、八時の方向に砲撃開始!一秒でも長くトリステインの空を守るぞ!」


「どうなっているのです、マザリーニ」
「アルビオン軍はタルブの村に上陸作戦を始めたようですな、もう少し言えば、ゲルマニアの助けは
得られそうもありません…さて、どうするのです?姫殿下?」
「不可侵条約があったはずでは?」
「紙のように破られたようですな」
「マザリーニはどうすべきだと思いますか?」
「タルブを捨てるべきか、水際作戦を行なうか、どちらを姫殿下が選ぶかによりますな」
「捨てられるわけがないでしょう」
「ならば、言わずもがなです」
「わかりました。南方の竜騎士部隊を急行させます。行きますよ、マザリーニ!」


「お姉様、タルブの村がなにかおかしなことになってるのね」
「降りる」
「わかったのね、ワムウ様、しっかりつかまってるのね、きゅいきゅいー!」


To Be Continued...
252風と虚無の使い魔 ◆/4V68E5Ojg :2008/01/27(日) 18:25:25 ID:+o5fenRn
投下終了、これより風と虚無の使い魔分隊はアルビオン軍と交戦に入ります

そういえば、そろそろ第三回全板トナメですね
蟻板銀河戦隊をどうぞよろしく、と布石をうっておく
253名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 18:38:54 ID:NeqSDtYY
GJ
ちょwネタまみれwwww
254ゼロのスネイク:2008/01/27(日) 19:25:29 ID:Suj/wmKW
>>252
ネタにしてくれた事を感謝

こういう、誰かに影響与えてるってのが形で分かるのはスゴく嬉しい世界です
255名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 20:09:06 ID:MRNP8jb1
投下乙そしてGJでした
もうどっから突っ込んでいいか分からないが
波紋戦士のひ孫と柱の男と世界一の科学力で作られたサイボーグ相手に
アルビオン軍はどんなことになってしまうのやらwww
256風と虚無の使い魔 ◆/4V68E5Ojg :2008/01/27(日) 20:11:40 ID:+o5fenRn
>>255
シエスタの方はジョークです、ジョークですってば!
257名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 21:03:15 ID:RDkQ29g/
オクヤスがいたりツェペリさんがいたりシエスタが波紋カッターやったりネタの多さに噴いたw


絶望した!シュトロハイムがジョセフのことを一っ言もいわなかったのに絶望した!
258名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 21:18:31 ID:wKVzBNoq
仮面のルイズ自重wwwwwww
259名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 21:26:21 ID:Ak5TOUBa
なんつーかチーズとワインがほしくなった。
260名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/27(日) 23:55:26 ID:AED+PVBs
早く吉良来ねえかな〜
あれは続き気になりすぎるだろ。
261名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/28(月) 00:42:05 ID:5iTDw2Oc
ワムウの人相変わらずネタが多すぎて吹きまくったwwww

が、実は下戸ってモンゴロイド特有の性質なのよね。
262名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/28(月) 11:22:25 ID:CFMT0Ixh
そしてキングクリムゾン
263名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/28(月) 11:59:43 ID:8X/KtQGY
投下すると予告しよう!
264仮面のルイズ:2008/01/28(月) 12:15:10 ID:8X/KtQGY
アルビオンで王党派が敗北したその日のうちに、ニューカッスル落城の知らせがトリステインに届けられた。

当時、アンリエッタに近づくことすら許されなかったアニエスは、王族が用いるユニコーンの警備を任されていた。
そこに、息を切らせて走ってくる者がいた、女王に即位する前の、お姫様だった頃のアンリエッタだ。
足を泥だらけにして、アンリエッタが血相を変えて走り寄ってくるのだ、アニエスでなくても驚いたことだろう。

「姫殿下!?」
「はあっ、はぁ、ユニコーンを!ユニコーンを出しなさい!」
アニエスは、アンリエッタを落ち着かせようとして、扉の前に立ちはだかった。
「殿下、姫様、落ち着いて下さい!」
「どきなさい!アルビオンに、アルビオンに行くの!」
アニエスは、思もしない力で突き飛ばされ、しりもちをついた。
その隙にアンリエッタは『アンロック』で鎖のついた鍵を開け、かんぬきを魔法で持ち上げて地面に投げ捨てた。

ギィ…と音を立て、重厚な扉が開かれる、藁束の上に座っているユニコーンを見つけると、アンリエッタはその背に飛び乗った。
「立って!…どうしたの!立ちなさい!…どうして、どうしてなのですか…どうして私の言うことを聞いてくれないの……!」
ユニコーンはアンリエッタを背に乗せても、黙って座り込んだまま微動だにしなかった。
まるでアンリエッタの愚行を諭すように、沈黙を保っていた。

王党派の敗北を聞いたからといって、ココまで取り乱すのは余程の理由があるのだろう。
そう考えたアニエスはある点に思い当たった、確かウェールズ皇太子はアンリエッタの従兄弟に当たるはずだ。
肉親としての情がアンリエッタを取り乱させたのだろうか?
いや、きっとそれ以上に強い『情』があったのだ、殺された恋人の敵討ちをする女傭兵がいたと聞いたことがある。
アニエスはアンリエッタを見て、内心でほくそ笑んだ。
もしかしたら『いい気味だ』と思っていたかもしれない。
265仮面のルイズ:2008/01/28(月) 12:15:37 ID:8X/KtQGY
「姫殿下、どうか心を静めて下さ…」
泣き崩れたアンリエッタに近づき、アニエスが手をさしのべた、だがその手を切り裂くようなアンリエッタの視線に射抜かれ、アニエスは呼吸を忘れ体を硬直させた。

まるで自分以外の全てを恨むような、復讐者の目つき……アニエスはたじろぎつつも、アンリエッタに手を伸ばした。

アンリエッタはアニエスから視線を外すと、アニエスの手を掴んでユニコーンの背から降りた。
「…心配をかけてしまいました、貴方の名をお聞かせ下さるかしら」
アニエスは跪き、自分を卑しい粉ひき娘ミランだと名乗った、それは『姫は卑しい者の手を取った』と、逆説的にアンリエッタを皮肉ろうと思ったからだ。
「まあ、貴方が?噂は聞いておりますわ、とても優秀な方だと聞いております。さ、顔をお上げになって」


「もったいなきお言葉でございます」
アニエスはポーカーフェイスで答えたつもりだが、内心の疑問が表情に出る寸前でもあった。
優秀とはいったいどういうことだろうか、自分はこの宮殿の中で、貴族に好印象など持たれていないはずだ。
「私はただ、建物の前で立ちつくすだけでございますから」

「そんなことはないわ、貴族に嫌われて噂されるんですもの。足を引っ張るばかりの大臣達が、平民一人の噂に踊らされるなんて、なかなかありませんわ。わたくし、一度貴方にお会いしてみたかったのよ」

「噂…でございますか」
アニエスがアンリエッタの顔を見上げた、噂とは何だろう、純粋な疑問だった。
「アニエス、貴方がメイジ殺しだと言うのは、本当ですか?」

「!!!」

おもわず息を呑んだ。
この姫の意図が理解できなかったが、一つだけ直感めいたものを感じた。
それはつまり、恨み、憎しみといった類の物だ。

その後アニエスは、魔法衛士に連れられていくアンリエッタを、跪いて見送った。
アニエスはいけすかない貴族の男から、姫様を危険な目に遭わせるとは何事かと呵られた後、アンリエッタから秘密裏に呼び出しを受け、銃士隊の構想を告げられた。

結局、ウェールズと再会し、死んだと思われていたルイズとも裁可したことで、アンリエッタは急速に精神的なバランスを取り戻したのだろうが…
王党派全滅の知らせは、アンリエッタを短い間だけでも狂気に走らせたのだ。
あの復讐者としての瞳を、自分と同じ狂気に満ちた瞳を、アニエスは忘れられなかった。
266仮面のルイズ:2008/01/28(月) 12:17:50 ID:8X/KtQGY
場面は変わり『ねずみ取り』の夜。

そうそうたる殿様方の屋敷が並ぶ高級住宅街、その一角にリッシュモンの屋敷がある。
今から二十年近く前に建てられた屋敷で、高級住宅街の中でもひときわ大きく、どれほどの贅を尽くしているのか想像もつかない。

その屋敷を目指して、雨の中馬を走らせる人物がいた、アニエスである。

アニエスはリッシュモンの館に近づくと、正門の前で馬を下り、門を叩いた。
門についた小さな窓が開かれ、中からカンテラを翳した使用人が顔を見せる。
「どなたでしょう?」
「女王陛下の銃士隊、アニエスが参ったとリッシュモン殿にお伝え願います」
「このような時間に、ですか?」
使用人は訝しげに聞き返したが、アニエスは凛とした表情を崩すことなく言い返した。
「急報です。急ぎ取り次ぎをねがいます」

使用人は首をひねりつつ奥へと消えていった、しばらくすると、ゴトンと重い音がして、門の内側でかんぬきが外された。

アニエスは手綱を使用人に預けると、屋敷の中へと歩いていくと、別の使用人が現れてアニエスを暖炉のある居間へと案内した。
しばらく待つと、寝巻きの上にガウンを羽織ったリッシュモンが現れ、テーブルを挟んで向かい側のソファに座った。

「高等法院長を叩き起こすからには、よほどの事件なのだろうな」
アニエスは長い剣をソファに立てかけ、腰に銃を下げているが、リッシュモンはそれを気にせず、アニエスを見下した態度で話しかけた。
「女王陛下と、ウェールズ皇太子殿下が、お消えになりました」
リッシュモンの眉がピクリと動き、僅かに身を乗り出すようにしてアニエスの顔を視る。
「何者かにかどわかされたのか? それとも、皇太子がらみか?」
「現在調査中です」
リッシュモンは自身の顎を右手で撫でると、うーむ、と唸って視線を下げた。
「なるほど大事件だ……。うむ、なるほど。してそれはいつ確認された?」

「女王陛下は本日午後、練兵場を視察されておりましたが、その帰りの馬車から忽然と姿を消してしまいました。ほぼ同じ頃、執務室に書類を届けようとした女官が皇太子殿下の姿がどこにも見えぬと言って、警備兵に問い合わせております」
267仮面のルイズ:2008/01/28(月) 12:22:26 ID:8X/KtQGY
「当直の護衛は?」
「我ら、銃士隊でございます」
ぎろりと、リッシュモンがアニエスを睨む。
「君たちか、ふん、無能を証明するために新設されたのかね銃士隊は」
女王陛下が誘拐されたというのに、リッシュモンは悠長に皮肉を言って、アニエスを睨んだ。
「汚名をすすぐべく、全力をあげての捜査中であります」
アニエスが怯むことなく言い返すと、リッシュモンは机をドンと叩いて叫んだ。
「だから申し上げたのだ! 剣や銃など、杖の前ではおもちゃに過ぎん! 平民など数だがあっても、一人のメイジの代わりにもならぬ!」
怯えることなくアニエスはリッシュモンを見つめている、一瞬の静寂の後、アニエスは相変わらず落ち着いた口調で呟いた。
「戒厳令の許可を、街道と港の封鎖許可をいただきたく存じます」
リッシュモンが杖を振ると、羊皮紙とペンが手元に飛んできた、リッシュモンは羊皮紙に戒厳令の旨を書き留めるとアニエスに手渡す。
「全力をあげて陛下を捜し出せ!見つからぬ場合は貴様ら銃士隊など、法院の名にかけて全員縛り首だ。そう思え」

羊皮紙を受け取ったアニエスは、退出しようとしてドアのノブに手をかけ、立ち止まった。
「何だ、早く戒厳令を敷かんか」
「閣下は……」
まるで怒りを押し殺すような、僅かに震えた声でアニエスが声を絞り出した。
「二十年前の、ダングルテールの虐殺≠ヘ、閣下が立件なさったとか」
「虐殺? ふん、人聞きの悪いことを言うな。アングル地方の平民どもは国家を転覆させんと企てていた、言わば正当な鎮圧任務だ。昔話などあとにしろ」

それを聞くと、アニエスは無言で退出していった。
音もなく閉じた扉を見つめ、なにやら考え事をしていたリッシュモンだったが、何かを思いつくと羊皮紙とペンを再び取り出して、慌てたように何かを記していった。




268名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/28(月) 12:23:24 ID:f4YP6x6J
しえんすた
269仮面のルイズ:2008/01/28(月) 12:27:58 ID:8X/KtQGY
屋敷の外に出たアニエスが、使用人に預けていた馬を受けとると、馬につけた道具袋の中から黒いローブを取り出した。
極薄になめされた革のローブは、雨をほとんど通さない。
アニエスはローブの中で、慣れた手つきで拳銃に火薬を入れていった。
ふと途中で動きを止め、改めて火薬と撃鉄の動きを確認し、火蓋を閉じてベルトに挟む。
アニエスが用いているのは火打ち石を利用した新式の拳銃であり、今までとは装填にかかる手間が段違いに少ない。
長剣を背負い、戦いの仕度が整うと、アニスは馬に跨って雨の中を進んでいった。

途中、背中の剣がひとりでにカタカタと揺れだして、まるで耳元で囁くような声を出してきた。
『尾行はされてないぜ』
アニエスが背負っているのは、ルイズから預けられたデルフリンガーであった。
『あ、ワルドが近くにいるぜ、たぶんその先の路地に隠れてる』
無言のまま、アニエスは馬を進めていく。

路地の脇を通り過ぎた時、雨が降っているにもかかわらず、足音も立てずに近づく気配があった。
ちらりと脇を視ると、そこには魔法で水を避け、足音をも消しているワルドの姿があった。

「正午から、リッシュモンと、料理人が二人、使用人が一人出入りしている。街の衛兵の動きはこちらの住宅街に伝わっていないようだ」
アニエスにだけ聞こえるよう、ワルドが呟く。
ワルドは昼ごろからリッシュモンの屋敷を見張っていたが、リッシュモンと組んで金を動かしている商人の姿は見えなかったようだ。

「引き続き監視を頼む」
アニエスが小声で呟くと、ワルドは音もなく夜の闇に消えていった。

『しかしまあ、妙なもんだね』
「何がだ」
何かを不思議そうに感じているのか、人間ならため息混じりであろうデルフリンガーの呟きに、アニエスが小声で聞き返した。
『あのプライドの固まりみたいな貴族が、アンタの言うことを聞いてるんだもんよ』
「なりふりを構っていられないのさ、私も、子爵も……」
『そしてリッシュモンも、ってか?』
「だといいがな……」
アニエスは自嘲気味に呟いてから、手綱を強く握りしめて背筋を正した。
目前に迫った復讐の機会を逃すまいとして、気を引き締めたアニエスの表情から、既に笑みが消えていた。
270名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/28(月) 12:28:27 ID:vHqrxXZ0
271名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/28(月) 12:30:06 ID:vHqrxXZ0
272仮面のルイズ:2008/01/28(月) 12:32:18 ID:8X/KtQGY
『魅惑の妖精亭』の屋根裏部屋で、アンリエッタ、ルイズ、ウェールズの三人が体を休めていた。

アンリエッタはアニエスの手引きで脱出し、ウェールズはルイズの手引きで王宮を脱出した。
昨日、アニエスから指定された場所で合流すると、アニエスは王宮へと戻っていった。
ルイズはアンリエッタとウェールズを引き連れ、『イリュージョン』を駆使して城下町を移動し、魅惑の妖精亭へとたどり着いたのだ。
王宮では今頃、行方不明になった二人を捜し出すため、蜂の巣を突っついたような大騒ぎになっている頃だろう。

椅子に座ったルイズは、ベッドに腰掛けているアンリエッタとウェールズを睨んでいた。
心なしか、その目には批難の色が浮かんでいる。

アンリエッタとウェールズは、時々お互いの目を合わせては頬を染めて、微笑み合っては頬を染めて視線を逸らし、また見つめ合って、お互いの手を握りしめている。

ルイズはちょっとだけ仲間はずれ気分を味わっていた。
子供の頃、アンリエッタの遊び相手を務めていたルイズには、一つだけ心当たりがある、『愛の逃避行ごっこ』と称して王宮内で隠れん坊をしたのだ。
幼少のアンリエッタにはラ・ポルトという従者がおり、アンリエッタの教育係でもあった。
そんな彼を『追っ手』と称し、ルイズとアンリエッタは王宮内で『愛の逃避行』をしていたのだ。
今のアンリエッタとウェールズは、まさに『愛の逃避行』を彷彿とさせるシチュエーションであった。
頬を染める二人を見て、ルイズは長い長いため息をついた。



「それにしても…」
アンリエッタの声に気付き、ルイズが顔を上げた。
「アニエスが『ルイズは変装してる』と言うから、どんな意外な姿をしてるのかと思ったけど、予想したとおりだったわ、一目でルイズだと解りましたもの」

ルイズはきょとんとして自分の顔をぺたぺたと触った、ルイズの顔は骨格にも手を加えており、一目でルイズだとわかるはずがないのだ。
「……参考までに、どうして私だと解ったのか教えて欲しいわ」
相変わらず微笑んだままのアンリエッタは、よく見るとルイズの顔ではなく、ルイズの胸を注視していた。
「ルイズなら、私と同じサイズに膨らますと思ったの。三年前の園遊会の時、影武者をルイズに頼みましたよね?。あの時のことは今でも時々思い出すわ」

ルイズの頬が引きつり、不自然な笑顔になる。
「貴方に影武者を頼んだとき、服を交換しましたよね? あの時ルイズったら私の胸を鷲づかみにして『ちょっとぐらい分けてくれてもいいじゃない』とか……」

ルイズが両拳を握りしめる、ミシミシと骨のきしむ音が聞こえてくるのは、気のせいではないだろう。

「ゴホン! あー…その、そろそろ本題に入りたいんだが」
ウェールズが話を進めようとして、わざとらしく咳をする。
アンリエッタはウェールズの顔をきょとんとした表情で見つめ、一瞬遅れて顔を真っ赤にした。
自分がどれだけ恥ずかしいことを喋っていたのか気がついたのだろう、ウェールズもアンリエッタとルイズが繰り広げる百合百合な昔話を聞いて、顔を真っ赤にしていた。
「「…………」」

顔を赤くしてお互いを見つめあう二人は、しばらくしてから気まずそうに視線を逸らした。

そんな二人を見ていたルイズは、目の前で繰り広げられた若々しいカップルのやりとりに言い様のない疎外感を感じていた。

ふと、ルイズの姉であるエレオノールの姿が思い浮かんだ。
彼女はこれまでに何度も婚約と破談を繰り返しており、三十才を目前に控えていながらまだ一度も結婚していない。
魔法学院やアカデミーの後輩が結婚したと聞く度に、エレオノールは不機嫌になりルイズの頬をつねった。
『アタシが独身だからって見せつけやがって…!』
およそ貴族らしからぬ口調で、同級生の結婚式をうらやむ姉を思い出し、ルイズはちょっとだけ姉に同情した。
273仮面のルイズ:2008/01/28(月) 12:32:56 ID:8X/KtQGY
「ところで、リッシュモンの裏は取れたの?」
場の雰囲気を変えるべく、ルイズが唐突に口を開く。
アンリエッタは慌てて居住まいを正し、わざとらしくコホンと小さな咳払いをした。

「リッシュモンの経済状況を調査ましたが…かなりの額の賄賂が流れています。その額はおよそ7万エキュー。それだけではありません、彼を高等法院へと押し上げた決定的な資料がロマリアからの物だったのですわ」
「ロマリア?」
ルイズが聞き返すと、ウェールズが口を開いた。
「ダングルテールの虐殺事件については、以前少しだけ説明したね」
「覚えているわ、疫病が流行ったという理由で村人ごと焼き尽くされた村よね。新教の流布でロマリアに睨まれて…」
そこまで言って、ルイズは目を見開き、ごくりとツバを飲みこんだ。
アンリエッタはちらりとウェールズを見た、ウェールズは少し俯いていたが、その表情はいつになく厳しいものだった。
「君の想像している通りだ。ダングルテールの大虐殺は、先代のロマリア法皇が暗に示唆したと言われる『新教徒狩り』と見て間違いはない」
ウェールズの言葉を、アンリエッタがひきつぐ。
「あの村を焼き尽くせと命じたのはリッシュモンです。疫病を未然に防いだとして彼はロマリアからも感謝状を頂き、高等法院を司ることになったのです」

ルイズは、誰とも視線を合わせず、床をじっと見つめていた。
その表情はどこか寂しげだが、怒りが噴出するのをこらえているようにも見えた。
「…感謝状ぐらいで彼を高等法院に推薦したの?」
小声で呟いたルイズに、アンリエッタが首を横に振る。
「当時、マザリーニは小国であるトリステインを守るため必死になって外交、内政に尽力していましたが……。卿にとってロマリアからの感謝状は、推薦状と呼ぶより命令書のようなものなのです。」
「あの枢機卿でも、ロマリアには弱いのね。 …でも仕方ないか、枢機卿の立場を保証してくれるのはロマリアだものね」
「マザリーニには『苦渋の決断でした』と言っていたわ。リッシュモンを大臣にすれば国政の中枢に近づけてしまいます。それを防ぐために彼を高等法院へ送り、あえて私財を蓄えさせ、尻尾を出すのを待っていたんですって」
ルイズは顔を上げて、アンリエッタとウェールズを交互に見る。
ウェールズは苦笑いを浮かべてルイズの顔を見返した。


「枢機卿は、冷たいように見えて、なかなか熱い人物だよ。ダングルテールの虐殺は、トリステインの格を落とす重大な事件だと、憤慨していたのだからね」
「あの枢機卿が怒る姿なんて見たこと無いわ」
ルイズがそう言うと、ウェールズはルイズと同じように両腕を胸の前で組み、ぐっと力を込めた。
「君と同じように、彼も両腕を組んで、眉をひそめるんだ。怒りをこらえるようにね」

胸の前で組んでいた腕から、ミシリと骨のきしむ音が聞こえた。
二人はルイズの手を見る、すると、指先が腕の皮膚を突き破り腕の筋肉へとめり込んでいた。

「怒りをこらえる…そうよ、私だけじゃない。枢機卿も、そしてアニエスも爆発しそうな怒りをこらえていたと思うわ」

ルイズは自分への怒りを何度もこらえている、石仮面を召喚したのは自分。被ったのも自分。死を偽装したのも自分。自分の怒りにはやり場がない、すべて自分の責任だから。
だがアニエスはどうだろう、怒りの矛先を目の当たりにしたとき、彼女はどんな行動に出るのだろうか、信用しているつもりだが、少し不安が残る。

ルイズが思考の海に沈みかけたところで、部屋の扉がノックされた。
『サイレント』のかけられた部屋にノックの音は響かないが、ルイズは壁に背中を預けて振動を聞いていた。
ルイズは二人に「仲間が来たわ」と告げると、おもむろに部屋の扉を開けた。

274名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/28(月) 12:35:10 ID:vHqrxXZ0
275仮面のルイズ:2008/01/28(月) 12:36:32 ID:8X/KtQGY
部屋に入ってきた二人を見て、ウェールズとアンリエッタは「えっ」と驚きの声を上げた。

一人は、ウェールズにとって因縁浅からぬワルド子爵だった、だが彼の登場は予想の範囲内なので、それほどの驚きではない。
もう一人が問題なのだ、ワルドに続いて顔を見せたのは、ウェールズにとっては馴染みの深い女性、マチルダ・オブ・サウスゴータだった。

「ミス・マチルダ。君も協力してくれるのか? しかし、なぜ…」
ウェールズが名前を呟くが、マチルダは不機嫌そうに顔を背けるばかりで、何も言わない。

アンリエッタも困惑しているのか、ちらちらとルイズの表情を伺っている。
ルイズは悪戯が成功した子供のように微笑むばかりで、何も言おうとしない。

ルイズとマチルダの接点は、魔法学院ぐらいしか思いつかない。
しかし、魔法学院の秘書とルイズが、いったいどんな経緯で知り合うこととなり、今回のねずみ取り作戦に協力するのか、まったく理解できない。


ウェールズとアンリエッタが困惑しているのを見て、ルイズは満足げに頷き、口を開いた。

「紹介するわ。ご存じの通りこちらはワルド子爵。そしてこっちはミス・ロングビル。またの名を『土くれのフーケ』よ」

アンリエッタとウェールズは、口を半開きにして唖然としている。
そんな二人の様子を見て、ルイズはくすくすと笑い出した。






To Be Continued→
276名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/28(月) 12:36:33 ID:vHqrxXZ0
277仮面のルイズ:2008/01/28(月) 12:41:04 ID:8X/KtQGY
投下したッ!
途中、投下したはずの文章が亜空間にばらまかれてしまった…これが規整って奴か。
278このスレ立てた名無し:2008/01/28(月) 12:49:30 ID:SXnkZiQN
仮面さん乙&GJでしたー。
ルイズ一味勢揃いって感じですねー。


やっぱりスレ立ての時に注釈追加しておくべきだったなー。
えーと、

・先頭行が改行だけで22行を超えると、投下した文章がエラー無しにザ・ハンドされます。
 空白だけでも入れて下さい。

・・・でいいのかな?
279名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/28(月) 14:51:08 ID:0gqF4zwy
GJ!
ルイズたち勢ぞろいしましたね。
リッシュモンにはお悔やみ申し上げます。
280偉大なる使い魔:2008/01/28(月) 18:26:52 ID:kuGEb4vh
絶対絶命の状況で救いの声が掛かる。
「ミスタ・コルベール実家に連絡とは、いささかやり過ぎではないかね」
オールド・オスマン!
部屋の入り口にオールド・オスマンが立っていた。
「しかし、ミス・ヴァリエールは規則を破り・・・」
「ミスタ・コルベール」
コルベール先生の話をオールド・オスマンが遮った。
「は、はい」
「今、君がこうして暢気に授業や研究が出来るのは、ミス・ヴァリエールの
お蔭と言っても過言では無いのじゃよ」
「なんですと!?」
コルベール先生から驚きの声があがる。
「先の任務でミス・ヴァリエールはそれだけの働きをしたのじゃよ。性質上
誰彼かまわず自慢出来る事の無い任務のな。その任務で失ってしまった
使い魔を侮辱され怒りに囚われ魔法を使ってしまった・・・
一体誰が彼女を責められようか」
・・・使い魔・・・プロシュート・・・
「ミス・モンモランシー使い魔はメイジの半身じゃ、その失ってしまった気持ちを
察し、どうかミス・ヴァリエールを許してはくれんかね」
オールド・オスマンはモンモランシーに頭を下げた。
まさか学院長がわたしの為に頭を下げるなんて・・・
だが、わたしよりも、モンモランシーの驚きの方が大きかった。
「あ、頭をお上げください、オールド・オスマン。何も知らずに無責任な事を
言ってしまった私も悪いのですから」
「そうか許してくれるか。これで、この話はお仕舞いじゃ」
オールド・オスマンの決定にコルベール先生が非難の声をあげる。
「しかし、それでは他の生徒に示しがつきません」
「そんなもん、罰当番で充分じゃわい」
「しかし・・・」
コルベール先生は納得できないようだ。
281偉大なる使い魔:2008/01/28(月) 18:29:17 ID:kuGEb4vh
その様子をみてオールド・オスマンは声を掛ける。
「のう、ミスタ・コルベール。人は誰しも間違いを犯してしまう、大切なのは
責める事ではなく赦す事だとはおもわんかね?」
「・・・わかりました。学院長の決定に従いましょう」
先生から先ほどの剣呑な雰囲気がなくなったが、哀しい表情をしていた。
「今度こそ、この話は終わりじゃ。ミス・ヴァリエール」
オールド・オスマンに声を掛けられ、わたしの中に緊張が走る。
「はっ、はい」
「旅の疲れはいやせたかな?思い返すだけで、つらかろう。だがしかし、
おぬしたちの活躍で同盟が無事締結され、トリステインの危機は去ったのじゃ」
優しい声で、オールド・オスマンは言った。
「そして、来月にはゲルマニアで、無事女王と、ゲルマニア皇帝との結婚式が
執り行われることが決定した。きみたちのおかげじゃ。胸を張りなさい」
確かに手紙は取り戻した。でも、わたしの勝手な行動によりプロシュートを
死なせてしまった・・・とても胸を張ることなんて出来ない。
わたしが黙って頭を下げているとオールド・オスマンは一冊の本を差し出した。
「これは?」
「始祖の祈祷書じゃ」
「始祖の祈祷書?これが」
たしか王室に伝わる伝説の書物。国宝のはずだった。どうしてそれを
オールド・オスマンが持っていて、わたしに差し出すの?
「トリステイン王室の伝統で、王族の結婚式の際には貴族より選ばれし巫女を
用意せねばならんのじゃ。選ばれた巫女は、この『始祖の祈祷書』を手に、
式の詔を詠みあげる習わしになっておる」
「は、はぁ」
そんな事するんだ。
「そして姫は、その巫女に、ミス・ヴァリエール、そなたを指名したのじゃ」
「姫さまが?」
「その通りじゃ。巫女は、式の前より、この『始祖の祈祷書』を肌身離さず持ち
歩き詠みあげる詔を考えねばならぬ」
「えええ!詔をわたしが考えるんですか!」
「そうじゃ。もちろん、草案は宮中の連中が推敲するじゃろうが・・・。
伝統というのは、面倒なもんじゃのう。だがな、姫はミス・ヴァリエール、
そなたを拝命したのじゃ。これは大変に名誉なことじゃぞ。王族の式に
立ち会い、詔を詠みあげるなど、一生に一度あるかないかじゃからな」
心の何処かで、こんな事をしている場合じゃないとさけぶ・・・
いや違う、これはチャンスよ。アルビオンで手柄を立てたが、その成果は誰にも
言えない・・・家族にさえも。
匿名の情熱なんていらない・・・
わたしは歴史に名を残すと決めた。これは、その第一歩よ!
わたしは、きっと顔をあげた。
「わかりました。謹んで拝命いたします」
わたしはオールド・オスマンから『始祖の祈祷書』を受け取った。
これが『始祖の祈祷書』・・・

トリステインは、なんとしてでも余の版図に加えねばならぬ。
あの王室には『始祖の祈祷書』が眠っておるからな。
聖地に赴く際には、是非とも携えたいものだ。

頭の中に響く声・・・
聞いたことも無い声なのに・・・
・・・どうして、こんなに胸騒ぎがするの・・・
282名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/28(月) 18:39:20 ID:ve1aJ+Yi
ktkr
283名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/28(月) 18:41:57 ID:rirl1tzv
支援
284名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/28(月) 18:55:04 ID:Rfqr77Yy
>そなたを拝命したのじゃ
拝命ってのは(屋号とか役職の)任命・命名を受け入れる事
285偉大なる使い魔:2008/01/28(月) 20:56:02 ID:GXQu94/O
>>284
指名の間違いね・・・orz

286名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/28(月) 21:56:21 ID:tIemDU0D
仮面さん偉大さん投下乙そしてGJでした

仮面ルイズ一行相手……リッシュモンオワタ

偉大のほうは、実家に知らされ無いでよかったー
でも、兄貴と敵対することになるんですよね……
287名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/28(月) 23:20:45 ID:ik2gmcDU
あれ、、このスレいつのまにマロンから移転したんだ
288名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/28(月) 23:22:46 ID:CE1Laf3n
>>287
67人目から
289名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/29(火) 00:03:24 ID:Vsgw8P6C
メイド・イン・ヘヴン!
世界は一巡し…全員変態仮面になr
げふんげふん、IDが変更されるッ!!
290名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/29(火) 01:12:55 ID:HL6f8Rbr
お前のせいで変態仮面の格好をしたアヌビスを……オホンオホン
291始球走 ◆k7GDmgD5wQ :2008/01/29(火) 01:56:33 ID:Taijfmo6
2:00くらいからひっそりと久々投下いたしたく。
292Start Ball Run 1/5:2008/01/29(火) 01:59:22 ID:Taijfmo6
『――シエスタ。私の部屋にワインを持って来てくれ。ワインセラーの中にある、そう、少し奥にあるヴィンテージをだ。それを今日は飲みたい気分なんだ』
新しい雇い主は、彼女にそう命じると、書斎と思わしき部屋に入っていった。
シエスタは命じられた仕事に短く、はいと言って頭を下げた。地下室の鍵を受け取ると、そこにあるワインセラーから、主が望んだ一本を選び出し、それを氷を詰めた樽の中に入れようと薄い布地に包んだ。
主がこのワインを開けるのは、もう少し夜が深くなってからだろう。
……そのとき、自分には、一体どんな運命が待っているのだろう。
彼女はぶるりと、体が震える。その震えを堪えるために、シエスタは、くっと唇を噛んだ。
痛さと苦さが、震えを紛らわせる唯一の術だったのだ。
暗く、寒いワインセラーから逃げるように出入り口に振り向いて、心臓が停まりそうになった。
忽然とドアの入り口に、誰かが立っていたからだ。
「シエスタ」
誰かは、愛おしそうに彼女の名前を呼ぶ。
「は……、伯爵様」
主が、暗がりにいる彼女に、微笑を浮かべていた。

「ここの生活は慣れたか?」
主は優しく問いかける。
「……はい。皆様に親切にしていただきましたので」
幾分か張り詰めた声で、シエスタは答えた。
なぜ主がこんな場所にいるのだろうと、彼女は考える。
「それは良い。私の屋敷にいる者に協調を軽んじる者は誰一人いないからね。……シエスタ、君も皆の助けになっておくれ」
優しい声で、主が言う。
「……かしこまりました」
それにシエスタは、深々と頭を下げ、応えた。
……彼女の頬に掌が触れる。愛おしそうにシエスタの輪郭をなぞると、顎に触れた指が、シエスタの顔を持ち上げる。
主がいつの間にか、シエスタの正面に立っていた。
今ここにいるのは、シエスタと、主の二人だけなのだ。
主は目的があってここに来たのなら、それはとても分かりやすい状況だろう。
「シエスタ」
「……い、いけません。いけません伯爵様。お戯れは、お止めください……」
制止を願うシエスタの言葉など聞こえないように、指はシエスタの顔を上に向ける。その瞬間、シエスタの両目は、主人の視線と交わった。
指の動きが、止まる。時間が止まったように、彼女も、そして彼も、そのままの形で、止まった。
伯爵の顔が、徐々に近づいてくる。
目が逸らせずにいた。一瞬か。……或いは、それ以上か。
だが。
「誰だ?」
唇は重なる直前で停まり、凍りついた時間は、突然打ち破られた。
293Start Ball Run 2/5:2008/01/29(火) 02:00:23 ID:Taijfmo6
「……え?」
主が、シエスタの目を見つめたまま、問う。
「君の中に、誰がいる? シエスタ、君はいま、誰を想っている? 誰を願い、誰を望んでいる?」
「は、はく、しゃく、さま……」
主は、シエスタを見ていない。
否。
シエスタの瞳、いや、彼女の心、その奥底にいる、 誰か を見ている。
「誰だ。一体、シエスタ、その男は誰だ?」
「は、伯爵様。ご冗談はお止めください。私の、私の中には誰も――」
「嘘を吐くなあっ!」
彼女の心を見透かすような一喝に、体が竦む。
氷の入った樽を落した。頑丈なはずの樽はあっけなく留め具が外れバラバラになり、氷が撒き散らされた。
「シエスタ。君は私を望んでいない。私がいるべき場所に、す で に 誰か が 入 り 込 ん で いる」
――、こ。
       怖、い。
そう、彼女は思った。
主は、自らが使えるべき主は、先ほどは片鱗も見せなかった感情が滲み出していた。
端的に言い表すなら。
「シエスタ! 君が欲しがっている人間は誰だ!? 一体誰が、私達の間を邪魔しようとしている!?」
それは、狂気だった。
彼女は恐れた。伯爵の眼光に、背筋を冷たい何かが通り抜けていった。
手に残ったワインを、シエスタは一層強く握り締めた。そうしなければ、全身を駆け巡る震えで、膝が折れてしまいそうだった。

「 ……認めない。  認めないぞ! シエスタ! 君は私のものだ! 私だけが蹂躙し! 私だけが搾取して良い対象だ!」

両手でシエスタの肩をがっしりと掴むと、主は声を荒げ。
「来い!」
いきなり彼女の腕を掴むと、主は乱暴に地下室のドアを押し開けた。
「……お、お待ちください! い、いったい!? ど、どちらに行かれるのです!?」
ぴたり、と、伯爵は動きを止めた。そこからゆっくりと目だけを動かすと。
「決まっているだろう。私の、私と、君の邪魔をする者の……、顔を、見に行くのだ」
酷く、冷たさを感じる声が、暗い地下室に響く。
掴まれた腕が、万力で挟まれたように痛む。
痛さと力で、引きずられるように、シエスタも部屋から出る。
そのときの主の横顔を、恐らくシエスタは忘れないだろう。

真横を向いたモット伯の顔……、その顔に、 右目が二つ あったなどと。

恐怖し、混乱した頭で、幻覚を見たのだと――、シエスタは、自分に言い聞かせた。
乱暴に腕を握られ、足が縺れそうになったのを堪え、シエスタは主の書斎部屋まで駆け足で引っ張られていった。
294Start Ball Run 3/5:2008/01/29(火) 02:01:53 ID:Taijfmo6
……一方、ブルドンネネ街の路地から買い物を済ませて出てきたルイズ御一行は、城下町の入り口、馬を繋ぎ止めていた馬房へと戻って来ていた。
「なによ。まだ準備できないの?」
ルイズが、ジャイロにむすっとして言う。
ジャイロはそれを聞き流し、さっきまで過酷なレースにつきあってくれた老馬の足を、懸命に擦っていた。
「……駄目だな。筋肉が張ってる。もう少し休ませるか、歩いていかなきゃならねェ。無理させちまったらもうこいつはツブれかねねェな」
老馬はルイズとの競走で全力を使い果たし、帰路を駆けていく力は残っていなかった。
「……ったく、あんなことするからよ」
ルイズが不機嫌そうに言った。
彼女にとってみれば、さっきの競走は不毛の戦いだと思っているからだろう。
「しょーがねーだろ。おチ、……いやルイズ、才人と一緒に先に帰っててくれ。後から追いかけるからよ」
「しょーがねーな! そんじゃ相棒の相棒! 俺たちゃ先に帰ってるからよ! 道中気ーつけてな!」
ルイズの代わりに、さっき買ったインテリジェンスソードが勢いよく返事をした。
「才人。その剣黙らせなさい」
さっきよりさらに不機嫌そうに、ルイズが命じる。
「えー。なんか面白いじゃん。こいつの話聞きながら帰ろーぜルイズ」
「そーだそーだ! 俺は話すぞ! なんたって俺の特技は斬ることと喋ることだからな!」
才人が柄と鞘を掴んでデルフリンガーの刀身を少しだけ抜き出している。そうすることで、デルフリンガーは調子よく喋れるようだった。
「柄と鞘を握ってる、その格好でいなさい。その状態なら馬の背から簡単に突き落とせるから」
ルイズが結構まぶたをピクピクさせながら、そんなことを言った。
「え? なにそれ? マジでやる気デスカ?」
棒読みで才人が反応する。
「ええ。馬が走り出してからおもむろにやるわ」
殺る気満々らしい。
「わかった。じゃあ柄から手を離す。それならいいだろ」
才人が折れた。
「相棒。哀しいね。ああそりゃもう哀しいね。いくら使い魔だからって、こんなことに屈服する相棒は見たかないね」
デルフリンガーが、そりゃもう哀愁漂う抑揚で言う。
「仕方が無いさデルフリンガー。しばしの別れだ。いざさらば」
才人が柄から手を離す。
デルフリンガーはストンと鞘の中に落っこちていった。
「まったく。これでうるさいのもいなくなったし、もう帰るわよ」
ルイズがやれやれといった感じで前を向きかけた。
「だが断る! ってんだよ娘っ子!」
鞘の中に落ちたはずのデルフリンガーの刀身が、収まっていなかった。
いや、才人の手に支えられているわけでもないのに、デルフリンガーは浮いている。
「すげえだろルイズ! この鞘、ワンタッチででっぱりが出るんだぜ! これを使えばいつでもデルフリンガーは会話可能だぜ!」
「俺と相棒のことを甘く見てたろ娘っ子! そうは問屋が卸さねえってんだ!」
はっはっは。と、どこかの一件落着したご隠居のように高笑いする一人と一振り。
ルイズは何も言わずに、そいつらを全力で突き落とす。
馬を走らせていないことを、わりと、本気で悔やんだ。
295Start Ball Run 4/5:2008/01/29(火) 02:03:03 ID:Taijfmo6
「……それじゃあジャイロ。わたし達は先に学院に帰っているからね。早く帰ってきなさいよ」
「わーってる」
「じゃーなジャイロ! 先帰ってるぜ!」
「相棒の相棒! あとでな!」
軽く嘶いた馬が勢い良く駆け出す。それをジャイロは少しの間見送ると、老馬の隣に腰を下ろした。
城下町の中心、高く聳える王宮を、ジャイロは見上げていた。
「……簡単には、帰れねーか」
諦めない気持ちは、確固たる信念として彼の心に、今もある。
だが……、時間は無常に過ぎていく。その現実に、彼は静かに息を吐いた。
「あー! こんなとこにいたのね。ハァイ、ジェントルメン。お一人ならエスコートしてくださらない?」
そう呼びかけられて、ジャイロは振り向く。
なにやら大きな荷物を抱えたキュルケと、その後ろで本を読みふけるタバサがいたのだった。
「なんだ。オメーらも買い物か?」
どうでもよさそうにジャイロは尋ねる。
「そんなこといっていいの? 誰のために買い物したと思ってるのよ」
少しふくれて、キュルケが言う。
「そんなことより、ねえ! これ見て! ゲルマニアの錬金術師シュペー卿の渾身の一作ですって! これだけの品は、なかなか手に入らないそうよ」
そう言いながら、キュルケは包みをするするとほどく。果たしてそこにあったのは、さっきまでジャイロ達がいた武器屋にあった、大剣だった。
「ほー。買ったのか。高い買い物だな」
そっけなく感想を言う。
「まーね。でもあたし、愛のためならお金を出し渋りしないの」
「値切った」
胸を張ったキュルケの後ろで、タバサがボソっと言った。
にわかに、城下町の雰囲気が慌しくなる。少し先の路地から、鐘の音が乱暴に鳴り響いた。
「なんだ? なんかあったのか?」
ジャイロが鐘の音に聞き耳を立てる。
「火事」
タバサが、そっけなくも的確に説明する。
「そーかい。火事は大変だな」
それだけ言うと、ジャイロは老馬に跨り、町の外へ鼻先を向けた。
「あれれー、帰っちゃうの?」
残念そうに、キュルケが言う。
「ああ。オレはもうここには用事はねーし、あとは帰るだけだ」
馬を気遣って休憩していただけで、馬の体力が戻ってきたら、帰り支度をするのは当然だった。
「……そう。それじゃあ、はいこれ。あたしからのプレゼント」
そう言って、キュルケはジャイロに剣を渡そうとするも、ジャイロは受け取らない。
「ニョホホホ、オレは剣は使わねーんだぜ。プレゼントなら、他にするんだな」
軽いノリでそう断ると、ジャイロはゆっくりと馬を進めた。
あとに残されたのは、剣を抱えたキュルケと、本を読みふけるタバサ。
「タバサ! 追いかけるわよ! すぐ準備お願いね!」
抱えた剣を餌に釣り上げるのは、才人のほうからだと、キュルケは判断する。
才人はルイズと帰路に着いているのだったが……。シルフィードの速度なら追いつける。
恋の炎は、益々燃え上がって留まる所を知らないキュルケであった。
296Start Ball Run 5/5:2008/01/29(火) 02:03:53 ID:Taijfmo6
城下町からゆっくりと帰るジャイロは、この城下町から続く平原の景色を黙って見ているだけだった。
恐らく、運命が違えば、一生見ることはなかったであろう風景。
それを、感動も、感嘆もなく、ただ視界に入るまま、見入るだけであった。
それよりも――、今、自分の世界は。
どうなっているのか。
どうなってしまったのか。
それが、どうしても知りたい。
知らなくてはいけない。
だが……、知ってしまったからと言って、……どうすればいいのか。
戻らなければならない。
帰らなければならない。
だが、その方法が、わからない。
もし、百歩譲って見つかったとしても。
……間に合わなかったら、意味がない。
焦るのは当然。
憔悴するのは必然。
これが罰だというのなら、なんて辛苦を伴う償い方だろう。
――焦るな。そして、諦めるな。
彼はそう信じる。
『正しい道』を進めば、必ず『光』が見えてくるはずだと。
オレの旅は、こんなところで終わるわけにはいかないんだと。
「オレはまだ……、何一つ、決着をつけちゃいねェんだ」
運命に絶望することなく、男は前を見つめる。
そうするしか、ないのだと決意して。

……ふと、道の上に、何かが落ちていた。
大きな物体だ。一抱えありそうなほど、大きい。
岩だろうか、とジャイロは思った。
だが……、変だ。こんなものは、来る途中には無かったはずだ。
記憶を、思い返す。そこは、ジャイロがルイズと競走を始めた、スタート地点。
そこには、たしかに、そんなものはなかった。
いや……、あった。
あったのだ。確かに。
だが、それは地面に落ちていたものではなかった。
ルイズの愛馬につけられていた鞍――それは、絶対に、地面に落ちるものではないはずの、もの。
「逃げろ! 相棒の相棒!」
不意に、さっき聞いた声が、どこかから響いた。
「おい! 喋る剣か!? なんだ!? 何処にいる!? なにがあった!? なんでおチビと才人がいねェ! こりゃ一体――、どうなってやがる!」
「来るぞ! 逃げろぉ! 上だぁ!」
ジャイロが見上げた先に――、一羽の鳥が、ゆっくりと弧を描いていた。
しかし、それに彼が気付いたとき。
デルフリンガーの前から、彼も消え失せてしまっていた。
297始球走 ◆k7GDmgD5wQ :2008/01/29(火) 02:05:23 ID:Taijfmo6
以上投下したズラ。
いやー、なまける期間が多いと駄目だね。
なんかキーボードの討ち方すら忘れるし。
298名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/29(火) 03:00:19 ID:fM6S9B6F
G&J!!
ジャイロを襲うのは…右目だからスケアリー?
299名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/29(火) 06:12:58 ID:sDoh1Vvw
いやポークパイハット小僧だ!
しかしGJ!
300名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/29(火) 08:45:50 ID:kFn7hKRt
いやこの場合はボークパイモット伯だと思う。
301名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/29(火) 08:47:04 ID:I1qFs0lu
今日はなんてラッシュ!

みんなGJ
302名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/29(火) 13:50:57 ID:DG5JDtCb
キンクリ
303名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/29(火) 16:07:01 ID:kPV1qfvE
ここの小説のルイズにトーキング・ヘッズ取り付かせたら
極度のツンツンかデレどっちになるんだろうな
304名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/29(火) 16:25:49 ID:kwatNaLv
>>303
「この節操の無い犬ー!!」→「キュルケやメイドとも仲良くするのはいい事よ」
「いなくなっちゃヤダ…」→「帰った方がいいわね」
こんな感じじゃね?
一見すると物分りはよさそうであるw
305名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/29(火) 16:34:50 ID:n5t4UZyz
>>300
誰がうまい事言えと申したか
306名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/29(火) 17:33:33 ID:kPV1qfvE
>>304
確かトーキングヘッズの能力は「言いたい事が言えなくなる」って奴だから
呪文詠唱もロクに出来なくなるのか?
だとしたらメイズ殺しのスタンドになりそうだな
307名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/29(火) 17:35:10 ID:6oB7PjwJ
言いたいことと逆だから水が火の呪文の詠唱になるんじゃね?
308名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/29(火) 20:35:23 ID:I1qFs0lu
>>307
火の詠唱知らなかったらどうするんだw
309名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/29(火) 21:45:12 ID:O9hl06wE
ギーシュに付けたら決闘回避できるな
310名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/29(火) 22:38:58 ID:TfLaHgIk
あとフーケ涙目な
311名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/29(火) 22:40:46 ID:KrhoSqnX
ワルド(inトーキングヘッド)「大きなおっぱい…巨乳ってあるでしょう。
あれを見る時私…その…下品な話なんですがその…「勃起」…しちゃうんですよね…フフ…」

こうですね?わかりました!
312サブ・ゼロ ◆oviEMgpce6 :2008/01/29(火) 22:44:40 ID:akZULf/S
50分に投下したいんですが構い・・・いや投下するッ!
313名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/29(火) 22:45:24 ID:vxbztCKp
支援する世界だ
314サブ・ゼロの使い魔(1/6):2008/01/29(火) 22:51:04 ID:akZULf/S
「・・・それじゃあ開けるわよ・・・」
揺らめく炎が微かに照らす岩壁に、少女の声が反響する。誰も近寄らない魔物の
巣窟、その深奥に安置された古びたチェストに手を掛けて、キュルケは真剣な
眼でルイズ達を見た。少し汚れた顔を皆一様に頷かせたことを確認して、
ゆっくりと蓋を開く。
キュルケの地図によれば、犬にされた王女の呪いを解除したとも、王に化けた
トロールの魔法を見破ったとも伝わる「真実の鏡」がこの洞窟に隠されていると
いう話だった。もし本当ならば世紀の大発見である。期待と不安の眼差しの中、
箱の中から姿を現したのは――
「なッ・・・!」
粉々に割れた鏡の残骸だった。
「何よそれぇ〜〜〜・・・」
糸が切れた人形のように、キュルケ達はへなへなとへたり込んだ。
「み、見事に割れちゃってますね・・・」
「・・・真贋以前の問題」
脱力するシエスタの横で、流石のタバサも疲労の溜息をついた。
「・・・戻るか」
頭を掻きながら呟くギアッチョに異を唱える者はいなかった。


その夜。
「はぁ〜〜〜〜〜〜・・・・・・」
適当に見繕った洞穴に腰を下ろして、ギーシュは深く息を吐き出した。
「七戦全敗とはね・・・」
焚き火に手を当てながら首を振る。
そう。現在消化した地図は八枚中七枚、そしてその全てが到底お宝等とは
呼べないガラクタのありかであった。
315名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/29(火) 22:52:15 ID:vxbztCKp
DQ2支援
316サブ・ゼロの使い魔(2/6):2008/01/29(火) 22:53:02 ID:akZULf/S
炎の黄金で作られた首飾りが隠されているはずの寺院にあったのは、真鍮で
出来た壊れかけのネックレス。小人が遺跡に隠したという財宝は、たった六枚の
銅貨だった。それでも何かが出てくるならばまだいい、中には地図に描かれた
場所自体が存在しないことすらあった。

「ま、いい経験が出来てよかったじゃあねーか」
ギアッチョが戦利品の欠けた耳飾りを眺めながら言う。彼の言ういい経験とは、
無論実戦経験のことである。この数日間否応無く化物の群れと戦い続け、
ルイズ達は最後にはギアッチョの助けが無くともそれらを殲滅出来る程に
なっていた。
「おかげさまでね・・・」
「懐が暖まらないのは残念だけどね」
そう言いながらも、不思議とキュルケに悔しさは無い。そして、それは皆同感の
ようだった。
ゆらゆらと揺れる炎を見つめながら、ルイズは静かに言う。
「でも・・・楽しかった」
「・・・そうだね」
その言葉に、皆の顔から笑みがこぼれる。傍から見れば何の得も無い、くたびれ
儲けのつまらない旅行だろう。しかし――損だとか得だとか、そんなことは彼女達
にはどうだっていいことだった。
眼に見えるものは何も無い、手に取れるものは何も無い。だが彼女達が手に入れた
ものは、だからこそその胸の中で強く輝いている。
「・・・これ・・・」
ルイズは手のひらに慎ましく乗っている六枚の銅貨に眼を落とす。それは今回の
数少ない戦利品の一つだった。とは言え、とりたてて古銭というわけでもない
上どれも皆錆び放題に錆び、あちこちが傷つき欠けている。とりあえず持ち
帰ったはものの、どう考えても買い取り不可であろうこれをどうしたものか、
皆の頭を悩ませている一品であった。
「・・・・・・これ、皆で一枚ずつ持たない?」
しばし考えた後、ルイズはおずおずとそう言った。
317サブ・ゼロの使い魔(3/6):2008/01/29(火) 22:55:03 ID:akZULf/S
「・・・分配?」
意味を量りかねて、タバサは小首をかしげる。
「ううん、そうじゃなくて・・・」
「こういうことだろう?」
そう言ったのはギーシュだった。ルイズの手から銅貨を一枚取り上げると、
錬金で中央に小さく穴を開ける。ガラクタの中からネックレスを取り出し、
穴に通して首にかけた。
「う、うん・・・」
ズレてはいるが殊更外見を気にするギーシュが躊躇い無く銅貨を見につけた
ことに、ルイズは聊か驚きながら首を頷かせる。
「・・・解った」
得心した表情で立ち上がると、タバサもまたルイズの掌から銅貨を一つ掴む。
後に続いてキュルケが二枚をその手に取った。
「ほら、シエスタ」
「へっ?」
焚き火に鍋をかけていたシエスタは、キュルケに差し出された銅貨に眼を丸く
する。一拍置いて、ブンブンと手を振ると慌てた口調で言葉を継いだ。
「そそ、そんないけません!折角の宝物を私のような平民に――きゃっ!」
キュルケはシエスタの額を中指で軽く弾いて言う。
「全く、まだそんなことを言ってるの?平民だとか貴族だとか言う前に、
私達は友達じゃない 大体、貴族と平民に違いなんて何も無いことは貴女が
一番よく知ってるでしょう?」
「・・・そ、それは・・・」
「ん?」
シエスタの瞳を覗き込んで、キュルケは優しく微笑む。シエスタは少しの間
銅貨を見つめて逡巡していたが、やがてキュルケと眼を合わせて口を開いた。
「・・・私でも――いいんでしょうか」
「よくない理由が無いわよ」
きっぱりと、キュルケは断言する。シエスタは少しはにかんだ笑みを浮かべて、
静かに銅貨を受け取った。
「ありがとうございます・・・ミス・ツェルプストー」
318名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/29(火) 22:55:42 ID:vxbztCKp
支援
319ヘビー・ゼロ ◆a97Bny7H1c :2008/01/29(火) 22:56:03 ID:/Pbhtc8a
支援アンド予約
320サブ・ゼロの使い魔(4/6):2008/01/29(火) 22:57:01 ID:akZULf/S
「き、君達いつの間にそんな関係にッ!?」
「どんな関係も無いから鼻血を拭きなさい」
何やら興奮した面持ちのギーシュを適当にあしらうと、キュルケはルイズに
視線を移して、
「ほら、まだ残ってるでしょうルイズ」
「・・・うん」
意味するところを察したらしいルイズは、掌に残った銅貨を一枚取り上げて、
ゆっくりとギアッチョに差し出した。
「受け取って、くれる・・・?」
「――・・・・・・」
ギアッチョは答えずに錆びてひしゃげた銅貨を見つめる。
これは児戯だ。心に風が吹けば飛び、薄れ、消えてしまう記憶を、それでも
留めておきたい子供の。
――それでも。彼女達にとっては、この銅貨は紛れも無い宝物になるだろう。
ギアッチョは口を閉ざす。黙ったまま――その眼差しに万感を込めるルイズから、
銅貨を受け取った。
「ギアッチョ・・・」
ルイズの、キュルケ達の顔が綻んだ。どうにも居心地が悪くなって、
ギアッチョは銅貨に眼を戻す。薄くて軽いそれが、少しだけ重さを増した
ように感じた。

「さ、皆さん お食事が出来ましたよ」
やがて完成したらしいシチューを、シエスタは鍋からよそってめいめいに配る。
食前の唱和もそこそこに、動き疲れたルイズ達は少々はしたなく食器に手を
伸ばした。
「・・・おいしい」
食べ慣れないが実に美味しいシエスタの料理に、ルイズ達は揃って舌鼓を打つ。
兎肉や種々のキノコにルイズ達が見たことも無いような山菜が入ったそれは、
聞けばシエスタの村の――正確には彼女の曽祖父の、郷土料理なのだと言う。
321名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/29(火) 22:57:53 ID:FA/0ms2d
気持は分かるがギーシュ自重支援
322サブ・ゼロの使い魔(5/6):2008/01/29(火) 22:59:01 ID:akZULf/S
それから、話題はそれぞれの郷土のことに移った。少し酒の入ったギーシュは
饒舌にグラモン家の領土を語り、それを皮切りに皆わいわいと言葉を交わし
始める。ギアッチョも酒を傾けながら時折話に混ざっていたが、それを見て
タバサがふと思い出したように呟いた。
「・・・貴方は?」
「あ?オレか?」
「そういえば、ギアッチョの話は聞いたけどそっちの世界の話は聞いて
ないわね 良ければ聞かせて欲しいわ」
「・・・そうだな」
キュルケの言葉に、空になった杯を弄びながら答える。
「前にも言ったが、最も大きな違いは魔法なんてもんが存在しねーことだ」
「君のようなスタンド能力はあるのにかい?」
「こいつは例外中の例外だ スタンドを知ってる人間なんざ、さて世界に
何人いるかっつーところだな ・・・ま、そう考えるとよォォ〜〜〜、
魔法使いがひっそり存在してるって可能性も否定は出来ねーが ともかく
殆ど全ての人間が魔法なんて知らねーし信じちゃあいねー そういう世界だ」
ギアッチョの説明に、キュルケ達は一様に不思議な表情を浮かべる。
「何度聞いても想像出来ないな・・・ ということはマジックアイテムも
無いんだろう?不便じゃないかね?」
「不便ってのは便利さを知って初めて出る言葉だと思うが・・・ま、別に
んなこたぁねー 魔法の代わりに、地球の文明は科学によって発展してきた」
「・・・科学」
「あの教師――コルベールか?いつだったか、授業で簡単な内燃機関を
披露してたがよォーー、例えばあれを応用すると馬車より速い乗り物を
作れる 国にもよるが、大半の人間はそいつを足に使ってるな」
「えーっと・・・?」
案の定と言うべきか、今の説明を完璧に理解出来た者は居ないようだった。
眼鏡をかけ直す仕草の間に、ギアッチョは解りやすい例えを捻り出す。
323名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/29(火) 23:00:56 ID:vxbztCKp
支援
324サブ・ゼロの使い魔(6/6):2008/01/29(火) 23:01:06 ID:akZULf/S
「・・・簡単に言うとだ」
軽く居住まいを正すと、片手で天井を指しながら、
「あの飛行船・・・あれを動かしてる動力があるだろ」
「風石」
間を置かず補足するタバサに頷いて続ける。
「そいつを人工で作り出したみてーなもんだ」
おおっ、と全員が驚いた顔になる。
「凄いじゃない!魔法も使わずにそこまでのことが出来るなんて!」
得心がいって俄然興味が沸いたのか、キュルケが少し身を乗り出して言った。
いかにも非魔法的技術に特化したゲルマニアの貴族らしい反応である。
「あら・・・?ということは、コルベール先生は雛形とは言えそれを
一人で作り上げたということ?」
「そういうことだろうな」
油と薬品の臭気が漂う研究室で独り研究に明け暮れる奇矯な教師、という
学院一般の評判を思い出してギアッチョは答えた。「そう・・・」呟くように
言うと、キュルケは少し複雑そうな表情を見せる。

「それじゃ、他にはどんなものがあるの?」
続けて問い掛けるルイズに、ギアッチョは面倒というよりは怪訝な視線を
向けた。
「おめーにゃあ何度も話してるじゃあねーか」
「そうだけど、もっと詳しく聞きたいんだもの それに、皆は初めて聞く
ことでしょ」
「ギアッチョさん、私ももっと聞きたいです」
ルイズとシエスタの言葉に、ギーシュが頷きで賛同の意を示す。ギアッチョは
ガシガシと頭を掻いて、一つ溜息をついた。
「・・・ま、別にかまわねーが」
とは言え、乱暴な言い方をするならば殆ど何もかもが違うような世界である。
はて何から喋ったものかとギアッチョは一人思案した。
先端科学の話でもするかと考えたが、観測者の存在が観測結果に影響を与える
等と言ったところで理解は難しいだろう。考えた末に比較の可能な乗り物から
話し始めることにすると、ギアッチョは手近な小石で地面に絵を描き始めた。
「飛行機っつー代物があってな・・・」
325サブ・ゼロ:2008/01/29(火) 23:03:32 ID:akZULf/S
以上、またも久しぶりに投下したッ!

次こそは速く書くと言うと逆に遅くなる法則
俺はもう・・・何も言わん・・・。
326名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/29(火) 23:06:33 ID:vxbztCKp
サブ氏乙&GJ
相変わらずな爽やか青春路線ですな。

続けてヘビー氏支援
327ヘビー・ゼロ ◆a97Bny7H1c :2008/01/29(火) 23:07:31 ID:/Pbhtc8a
GJ!
この「俺たちは仲間だぞ!」っていう一体感がすごい好きです。銅貨を分けるくだりとか綺麗すぎる
10分から天気予報開始で
328名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/29(火) 23:10:02 ID:HL6f8Rbr
サブさん投下乙そしてGJでした!
何だかとても穏やかな時間なのが伝わってきます


そして天気予報支援
329ヘビー・ゼロ ◆a97Bny7H1c :2008/01/29(火) 23:11:06 ID:/Pbhtc8a
「本当にそこか?」
「へい。確かに金髪の見慣れない女が入っていきましたよ。ここじゃ余所者は浮きますからね、アニキ」
 話す二人を先頭に、数人の男たちがその後に続く。我が物顔で通りを歩き、周りに睨みを利かせている。
「ああ、お前は『うそをつかない』いい奴だよ。信頼してる。だがなあ、最近の奴らは友情に必要なものがなんなのかわかってねえ・・・・・・そこんとこ、俺が教育してやらなきゃあなぁ。グスッ」
 ズズズ、と何かを引きずるような音とともに、男たちはそこへ向かって足を進める・・・。

『Do or Die ―2R―』

「こいつは・・・・・・なんとも奇遇な・・・」
 客はアニエスだった。ズボンに男物のシャツを着ているために遠目からでは女性に見えなず、胸もサラシでも巻いているのか目立たないし武器も見あたらない。非番なのだろうか平民然とした恰好だった。
 意外な出会いに目を白黒させているウェザーにアニエスが尋ねる。
「何をしているんだこんな所で」
「あー・・・いや、夏休みだからバイトをな。お前は?」
「似たようなものだ」
 その時フーケがウェザーの裾を引き、小声で「誰?」と尋ねてくるので、「お前の天敵」と端折って答えてやった。
「ふうん・・・ご主人様の姿が見あたらないが、やはり貴族はこんなところにはこないか。と、そちらの方には挨拶がまだだったな。アニエス。私のことはそう呼んでくれて構わない」
「ロングビルです。ウェザーさんのお知り合いなんですね」
 見事な猫の被りっぷりであった。ウェザーは吹き出すのを堪えるのに必死で、フーケに足を踏まれてしまった。
 フーケは捕まったとは言え牢に入れられる前に脱走しているために、顔は割れていないのだ。学院側もあまりあの事件に関してぶり返すつもりはないらしい。
 何にせよ穏便に済んでよかった。よかったはずである。なのに何だか嫌な予感がウェザーの背筋を這うように上ってきていた。色々と厄介そうな事が起きそうだ。
 そして、嫌な予感というのは往々にしてよく当たるものなのであった。
 バンッ、と必要以上に勢いよく扉を開いて三度の招かれざる客が現れた。
「ようマスター!景気はどうだい」
 男たちがぞろぞろと店内に入るので、入り口の方は酷く混雑しているように見える。
「クソッタレめ。どいつもこいつも表の看板の営業時間を読んでから来いってんだ」
「つれねえこと言うなよマスター。俺だってこんな朝っぱらから働きたかねーんだ」
「ルカかい・・・・・・これまた大所帯だね」
「よおロングビル、今日も美人だな。それと・・・・・・見ねえ顔だな。まあいい・・・迷惑はかけねえよ。用があるのはそこの金髪だからな」
 いきなりの闖入者に、今度はウェザーは小声でフーケに訪ねた。
「誰だ?」
「『涙目のルカ』だよ。この辺りのチンピラを仕切ってる奴だ。右目の下に傷があるだろう?喧嘩の時にナイフを刺されても闘い続けたってえキレた野郎だよ。その後遺症で常に涙目。
 あのスコップとチューリップ柄の上着は――まあ、少ない個性を精一杯目立たせようと・・・・・・」
「聞こえてるぜ、フーケ」
 ルカが涙を拭いながらフーケに視線を移した。アニエスはその名前に眉を動かし、フーケも素の状態で咎める。
「おい『涙目』。その名前を表で出すなと言ったはずだろう?アンタ御得意の三つの『U』はどうしたんだい」
「友情を続ける三つの『U』のうち、オメーは『嘘をつかない』、『うらまない』は守ってるが三つ目の『敬う』がねえんだよ。ブチ殺されねえだけありがたく思いな」
 吐き捨てるように言って、ルカは再び視線をアニエスに戻す。
「さて、さっきも言ったとおりオレはさっさと仕事をすませてえんだ。簡潔に訊くぜ?
 お前は『組織』の周辺を嗅ぎ回っていた。すでに何人もの人間がお前の姿を見ているんだぜ・・・・・・『組織』がわざわざオレの所にまで聞きに来たくらいだからな。
 『組織』のことを犬に嗅ぎ回られるのをボスは嫌っている。お前がただの野良犬なのか、誰かの飼い犬なのかを調べてくれとオレに言ってきたのさ・・・・・・」
330名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/29(火) 23:11:24 ID:9zXUrhuc
ヤン坊、マー坊、支援!
331名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/29(火) 23:11:55 ID:owANOf9g
素晴らしい頼れるお兄さんGJ
そしてお天気おじさん支援
332名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/29(火) 23:12:03 ID:2yiYtbAH
サブさん蝶GJ&お天気支援
333ヘビー・ゼロ ◆a97Bny7H1c :2008/01/29(火) 23:14:16 ID:/Pbhtc8a
 面倒だと言いながらも説明に熱が入っているようにも聞こえる。だが、その流れをブッた切るようにアニエスが口を挟んだ。
「貴様は『組織』の者か?」
「話を今してんのはこのオレだッ!誰が質問していいと言ったッ!このボゲがッ!」
 雰囲気をガラリと変えたルカがシャベルの柄をアニエスの頬に押し付けた。それをアニエスは冷めた視線で見つめている。その視線に気づいたのかどうか、ルカは急に態度を柔らかいものにして離れた。
「ああ〜、すまない。オレって奴は頭に血が昇りやすくっていけねえ・・・・・・なに、オレたちゃアンタとただお友達になりたいだけなんだ。なあ、お前ら?」
 おう、とチンピラ共が笑いながら答えた。
「さっきも言ったが三つの『U』、それさえ守ってもらえればオレたちとアンタは友達だ。ちょうどいい、新たな友達のためにこれからここで飲むってのはどうだ!」
 再びチンピラ共が騒ぎ立てる。だがアニエスはルカを見たまま動かない。それどころか、再び尋ねた。
「三度は言わせるなよ。貴様は『組織』の者か?」
「テメーこのアマッ!アニキが質問してるってのにその態度――――」
 後からアニエスの肩を掴んだチンピラは、その数少ないセリフを言い切る間もなく床に投げ飛ばされた。受身を取る暇もなかったのだろう、白目をむいて伸びている。
 だがそこは荒事に慣れた悪たれ共。仲間の醜態にも動じることなく一斉に獲物を抜いた。
 磨いたグラスを静かに置きながらマスターがルカに言う。
「おい、『涙目』。この店のルールを言ってみろ」
「『店内での揉め事はお断り。喧嘩・刃傷沙汰は裏でやってろクズ共』だろ。だが、先に仕掛けてきたのはそこの余所者だぜ?正当防衛くらい認めろよ」
 グスッと鼻を啜り、スコップで肩を叩きながらルカが迫る。
「女だからと下手に出てりゃあつけ上がりやがってッ!テメーが大人しく従ってりゃあこの店の床を赤く汚すこともなかった・・・開店前にもう一度磨かなくて済んだんだよ!」
 周りをチンピラに囲まれて一触即発。だが、マスターもフーケもウェザーも、見ているだけで動こうとはしない。

「いいのかい?助けなくて」
「ふん。俺はあいつのしごきを直に受けたことがある男だぜ?あいつはな――」
 ウェザーとフーケの小声の会話とは別にアニエスたちの話は進む。

「取り敢えずオレ達を敬ってもらおうか・・・・・・土下座しな」
「成る程。貴様は『組織』の者ではないんだな」
「こ・・・のッ!オレはオメーに話せと言ったんだ!土下座しろと言ったんだ!両方とも逆らうッつーんだな?この『涙目』のルカに『両方』とも『NO』つぅーんだなッ!」
「いちいち教えてやらなければバカにされていることにも気付けないのか、貴様は」
 ルカの何かが切れる音が店内の全員には確かに聞こえた。
「てめーはもう・・・〜〜〜、テメーはもう〜〜〜〜〜・・・・・・テメーはもうおしまいだぁあ――――っ!」
 シャベルを思いっ切り振りかぶり、フルスイングの一撃が生身のアニエスの首に叩き込まれた。ルカの側の誰もが終わったと確信していた。が、徐々にルカの額に汗が浮き始めていた。
ルカはチンピラとしてはそこそこ強いだろう。今までの喧嘩も勝ちが多いくらいだ。だがそれでもチンピラはチンピラだった。鍛えられたアニエスの動きはその数段上をいく。
スコップはアニエスの首の後から生えている何かによって受けとめられていた。手を首の後に回し服の中から剣を抜いてシャベルを受けとめていたのだ。

 その様子を見ながらウェザーは呟く。
「チンピラごときが束になったって勝てやしねえよ、あの女にはな」
334名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/29(火) 23:14:36 ID:vxbztCKp
ここの作品では非常に珍しいルカ支援
335ヘビー・ゼロ ◆a97Bny7H1c :2008/01/29(火) 23:18:49 ID:/Pbhtc8a
 
「し、仕込み・・・」
 ルカは、慌てて距離を取ろうとするが、すかさずアニエスの白刃一閃。シャベルごとルカの鼻頭を真っ二つに裂いた。途端に鮮血が吹き出す。
「いいいぃがぁああぁッ!お、オレの鼻がああああッ!」
「ひゅぅ、やるう。マジで涙目にしちまったよ」
 見せ物を見るような感覚でフーケが笑う。それはあながち外れではなかった。頭に血が昇ったチンピラたちは一斉に襲いかかるが、相手にもなっていなかったのだ。
 もともと狭い店内ではさして数の利も活かせず、バカ正直に正面から突っ込んでは一蹴されて終わり。あっけなく全滅である。これにはルカの顔色もさらに悪くなってしまった。
「な・・・なんだお前!この強さはなんなんだッ!」
「オメーがしょっぱいだけだよ『涙目』。ところで、ボスにはどうやって報告するんだい?女一人に遊ばれましたじゃすまねないだろ」
「ぐ・・・・・・」
「この件からは手を引きな。そうすればいい隠れ家を紹介してやる。ほとぼりが冷めるまでは消えてな」
 傷口を押さえながら頭の中で打算しているのだろう。少しすると、舌打ちを一つして立ち上がった。
「命拾いしたな女。今日の所はこれで退いてやる。だが次はこうはいかねえからな・・・二度とあわねえことを祈っとけ!」
 そう吐き捨てて、手下を蹴り起こしながら出ていってしまった。
「うーむ。見事なまでの噛ませ犬。あれほど捨て台詞が似合う奴もそうはいないな」
 逃げ去る後ろ姿をニヤニヤと見ていたフーケだが、その眼前にアニエスの剣が突きつけられた。だが、同時にアニエスに杖の先が向けられてもいる。互いに瞬き一つしない。
「成る程・・・・・・逃げ出した盗賊が未だトリステインに留まっているとは、道理で見つからぬはずだ。度胸があるのかよっぽどの阿呆か・・・、だがもはや逃げおおせるなどとは思うなよ」
「逃げる?そんな心配はする必要がないんだよ。あんたが心配する事は、ここで盗賊を取り逃がしたお仕置きを飼い主のお姫様にされるかどうかだろう?飼い犬が吠えるなよ」
「陛下を愚弄するのは不敬罪だ」
「店内での抜剣はマナー違反だ」
 一転して静寂が店内に蔓延した。お互いの視線が交錯する。
 いきなり火花と物体がぶつかり合う音が響き――次の瞬間にはお互いの武器が床に転がった。互いに徒手空拳となるが、武器を拾いに行くなどという愚は侵さない。
 アニエスは咄嗟に手元の椅子を引き、遠心力を乗せてフーケの頭めがけて振り回した。椅子に座っていたフーケはそれを倒れるようにしてかわすしかなく、それを見越していたアニエスは懐に隠していた拳銃を取りだし狙いを定める。
 武器を隠し持つことが卑怯などという次元ではないのだ。なぜならフーケもまた"隠していた"のだから。椅子から転げるようになりながらも、すでに袖に潜ませていたナイフはアニエスめがけて放たれていた。
 それは偶々突き出されていた拳銃に突き当たり、二つは店の奥へと消えてしまった。だが戦闘は終わらない。
 すかさず立ち上がったフーケの右拳がアニエスを襲うが、それを見切り、カウンターが無防備なフーケの顔に向かう。一気に決着かと思われた瞬間、アニエスの体が不自然に停止した。
 フーケの拳はフェイクで本命はカウンターを狙ってきた相手の踏み込み足を蹴りで抑えてしまうことだった。バランスを崩されたアニエスは、倒れまいと持ちこたえるために足に力を込める。
 だが、フーケはそれも折り込み済みだった。蹴り足をそのままアニエスの踏ん張った膝に乗せ、そこを支点に体を持ち上げ、超至近距離での蹴りが炸裂する。
 鋭い軌跡を描いたそれは、しかしアニエスの首を刈り取ることはなかった。全体中を支える軸足に鞭打って、ほぼ後に倒れるようにして体を反らしたことにより辛うじて直撃だけは避けていたのだ。
 そのまま床に転がり込み距離を取ると、すぐさま跳ね起きる。だが、フーケもまた距離を取っていた。と、そこでアニエスは自分が鼻血を出していることに気がつく。
「・・・どうした、攻めないのか?」
「王宮の剣士相手に接近戦は怖いからねぇ」
「ふっ・・・これだけやっておいてよく言う」
 ニヤリと笑い、鼻血を拭う様は何とも男らしい。
336名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/29(火) 23:21:32 ID:vxbztCKp
ファイトクラブ支援
337ヘビー・ゼロ ◆a97Bny7H1c :2008/01/29(火) 23:22:48 ID:/Pbhtc8a
 そして、すぐさまフーケに向けて飛びかかった。小細工無しのストレート。当然フーケが狙うのは交差の瞬間を狙ったカウンター。フーケは拳を受け流そうと掌をかざす。だが、なんとアニエスはそのガードごと押し切って殴り抜けたのだ。
 たたらを踏んで後退したフーケが机に寄りかかって勢いを殺す。仕切なおすためか唾をペッ、と床に吐き捨てたが、それはうっすらと赤みを帯びて見えた。口を拭ってみれば、鉄臭い味が口中に広がる。
「やってくれるわねぇ番犬。これじゃあ酒の味も楽しめないわよ」
「そんな心配をしなくとも、これから貴様が飲むのは冷めたスープと水だけだ」
 拳を解いてぶらつかせながら嘯くアニエス。上等とばかりにフーケは駆け出した。
 休むことなく戦いは続く。武器を失した二人は完全に肉弾戦を繰り広げていた。単純な格闘ならアニエスが押し気味だが、そこは盗賊。裏をかくような動きで攪乱し、攻守が激しく入れ替わり、息を付かせない。
 女同士の戦いをキャットファイとなどと言うが――
「キャットはキャットでもライオンって感じだけどな・・・・・・」
「言ってないで止めたらどうだ。オレの店がサバンナみたいになっちまうよ」
「いやー・・・あそこに入って無事なのはセガールかランボーくらいのもんだろ」
 ここの世界では通じない名前を口走ってしまう程に激しい戦闘だった。だが、このままではどちらかが潰れてしまうのも必至。
 何とかしなければと考えているところに、調停者は扉を開いて現れた。
 その音に手を止めた女二人の間を素通りして、奥の席に腰を下ろす。その背中は随分と煤けて見えた。いや、実際に煤けているのだ。汚れで服がくすんでしまっている。
「マスター、一杯くれ・・・」
「ウチは酒は日が沈んでからだぜ。毎日来てるんだから知ってるだろうが」
 そんな風に文句を言いながらも、マスターはグラスを磨く手を止めてカウンターの棚から酒瓶を取りだし始めた。
 マスターと懇意にしている人物なのかと思い、ウェザーはその顔を覗き込んでみると・・・。
「あれ?あんた・・・・・・どこかで・・・」
 どこかで見たことのある面構えだった。それも、かなり前に。この世界に来てすぐだっただろうか。狭い路地裏、悪臭と汚物、剣の看板、薄暗い部屋に所狭しと並べられた武具たち、店の奥で煙を燻らせるパイプ。
 記憶を辿って見つけてきた断片をつなぎ合わせていくと・・・、
「お前、武器屋の親父か!」
 ヒゲが伸びほうだいではあったが、まず間違いない。現に親父と呼ばれて男は弱々しく視線をこちらに向けてきたのだ。
「おん?俺のことを知ってるのかい・・・そいつは嬉しいねえ。ようし!今日は俺の驕りだ!飲もう!一緒に!」
 だが、向こうはこちらのことを覚えてはいないようである。もしくは酔いのせいで思考が回っていないか。
「オイオイ、そう言うのはキッチリツケを払ってから言うもんだぜ。昔馴染みじゃなけりゃあとっくに追い出してるところだ。商売の方はどうなんだ?」
「へへへ・・・、店がねえのに武器が売れるかよお。俺も刀もとっくに錆びついちまったのさ・・・・・・」
 寂しそうに呟くと、グラスを一気に煽った。
「どうしちまったんだ・・・」
「あの親父、まとまった資金が手に入ったから王都で一稼ぎしようとこっちに店を移転したのよ。で、まあ運の悪いことに『組織』に目を付けられちゃってさ。回護料だなんだと姦しく騒がれたわけ。
 で、その返事に拳を返したわけよ。以来執拗な嫌がらせにあい、あえなく店は閉店。今は貧民街で細々と食いつないでるみたいよ」
 典型的な『組織』の被害者だと、フーケは呆れたようにため息を付いた。
「『組織』・・・だと?」
「そうだ。そしてその事でアニエス、お前が動いてるんだな?ルカの話だとアジトに目星をつけて動いてるようだが・・・・・・何か掴んでいるのか?それも、王宮でしか掴めないような情報が」
 しかしアニエスは閉口してしまう。恐らくは上からの命令で動いているのだろう。単独なのも、大がかりには動かせない事情からか、単に目立つからか。おいそれと他言できる内容ではないことは想像に難くなかった。
338名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/29(火) 23:23:00 ID:HL6f8Rbr
何というキャットファイト
このアニエスは間違いなく兄S 支援
339名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/29(火) 23:25:19 ID:HL6f8Rbr
武器屋の親父ぃいい!支援
340ヘビー・ゼロ ◆a97Bny7H1c :2008/01/29(火) 23:26:17 ID:/Pbhtc8a
「さすがは王宮の番犬だ。主人の命にしっかりと従うなんざ、躾が行き届いてるみたいだねえ。けど、アンタがここで貝みたく押し黙ってたってどうにもならないよ。いや、『組織』にバレてる以上、状況は悪くなったと見るべきだ。
 ルカの野郎は中途半端だ。恐らく、逃げるか報告するかで一日は悩むだろうからね、それだけの猶予はあるだろうけど、その後はもうどうしようもなく最悪さ。
 それに、アンタの素性が割れるのはこっちにもマイナスだ。王宮の動きを警戒した『組織』が裏に隠れちまったらどうするんだい?ようやく掴めるって尻尾が、目の前でスルリと逃げていくなんざあたしはゴメンだね」
「貴様の都合など関係ない。確かに・・・・・・これほど早く手を打ってくるとは思わなかったが、十分対応できる範囲内だ。それに、貴様の都合など大方『組織』の利益をガメようといった所だろう。薄汚い盗人のしそうなことだ」
 不完全燃焼なのか、フーケもアニエスも火花を散らしあっている。このままだと確実に第二ラウンド突入は間違いなさそうなので、結局ウェザーが間に入った。
「待て待て。幸い、俺たちの目的は一致しているんだ。ここで利用しない手はないだろう?お互いにな。アニエスは情報を持っている。そしてフーケも情報を持っている。実力に関しては俺が保証するまでもないだろう?
 "迷える者には手を差し伸べよ"なんてどこの神様が言ったのかは知らないが至言だぜ。俺たちは今まさに迷える子羊だ。狼に立ち向かうには群れる必要がある。スイミーだって他の魚と集合して体を大きく見せたしな」
 アニエスは唇を噛み締めて考え込む。だが、答えは出ているも同然だろう。全員がハッピーエンドを迎えるためにはどうすればいいのか・・・あとはそれを認められるかどうかだ。
 王宮が掴んでいる情報も、敵と同じ世界でいきる者の情報も捨てがたい。結果、アニエスは肩の力を抜くことで返事の代わりとした。
「正しい決断だぜアニエス。さて、鉄は熱い内に打てとも言うし、早速情報交換会と行きたいところだが――」
 ウェザーはちらっ、とマスターの方を見た。
「まあ、一件落着めでたしめでたし――といければよかったんだがな。こっちとしてはそうもいかないんだよ」
 マスターはそう口を開くと店内を指差した。フーケとアニエスはぐるりと見渡して、顔を青くしてしまった。
 ひっくり返った机。足の折れた椅子。傷だらけの床。ざっと見ただけでもヒドイ有様になっていた。『魅惑の妖精』亭の屋根裏とどっこいどっこいの有様である。
 アニエスは申し訳なく頭をかくしかなかった。
「済まない店主。今は手持ちがないが、弁償は必ずする。紙に誓約文を書いてもいいんだが・・・・・・」
「お嬢ちゃん、うちの店じゃツケはきかねえんだよ」
「しかし、それでは返せない・・・・・・」
「何言ってんだ。立派な体があるじゃあないか」
 その言葉にはいくら非があるとは言えアニエスも身構えた。
「店主・・・・・・言えた立場ではないが、もう少し穏便に済ませたい」
「だから『体』で払えって言ってるんだろうが。ロングビル」
 アイアイサーと楽しそうに答えたフーケは、アニエスの腕を掴むと二階へ連れ込んでいってしまった。
「おいおい、大丈夫なのか?」
「何がだ?それよりも、ホレ」
 マスターはウェザーに雑巾を投げてよこしてきたのだ。それを受け取りながら首を傾げるウェザーにマスターは言う。
「お前もさっさと片づけろい」
341名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/29(火) 23:26:24 ID:yDOxsMSo
sien
342名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/29(火) 23:29:33 ID:yDOxsMSo
支援だッ
343ヘビー・ゼロ ◆a97Bny7H1c :2008/01/29(火) 23:29:40 ID:/Pbhtc8a
 
 二階の一室に連れ込まれたアニエスは掴まれていた腕を乱暴に振り払った。
「貴様・・・・・・ウェザーと知り合いと言っていたな?」
「んー?そうだけどー・・・・・・これはサイズが小さいな・・・・・・」
「い、いったいどういうことなんだ?盗賊と貴族の使い魔に接点があるとは――わぷっ!」
 しかし皆まで言う前に顔に布をぶつけられてしまった。慌てて剥がして見ると、服のようだった。意味が分からず小首を傾げるアニエスにフーケは言い放つ。
「ボサッとしてないでさっさと着替えな。掃除しなおさなきゃ店も開けられないよ」
 意味が分からないまま、その投げつけられた服を広げてみると――
「っ!こ・・・・・・これは・・・・・・」
「なんだい、着方を知らないのかい?しょーがないねえ・・・・・・」
 ため息を付きながらフーケがアニエスの服に手をかける。
「ちょ、ちょっと待て!・・・本当にこれを着るのか?」
「店を壊したのはアンタだろうが」
 その言葉にアニエスも強くは出られず、フーケは再びアニエスの服に手をかけた。

「・・・・・・」
 一階の店ではウェザーが黙々とモップを動かしていた。倒れた机を直し、足の折れた椅子は取り替える。当然ながら、飲食店でのバイトも経験しているので手慣れたものだった。
「しかしここに来てから働いてばかりだぜ・・・昔に戻ったみたいだな。どうせ戻るなら、ペルラみたいに出会いがねえものかな」
「何言ってやがる。上の二人と仲がいいってだけで儲けものじゃないか。欲張るとろくな事がないぞ」
 カウンターでグラスを磨くマスターが独り言に反応を返してきた。というかマスターは最初っからグラスしか磨いていない気がする。いったいこの店にグラスはいくつあるんだ。
「気が強い女も魅力的ではあるが、気が強すぎるのは考え物だぜ。体がもたねえよ」
「まあ、あの二人は気の強い女の筆頭だろうなあ」
「そいつは悪かったねえ」
 二人の会話に割って入ってきた声にビクリと体が反応してしまった。ゆっくりと首を回してみると、案の定フーケが階段に立っていた。が、ウェザーは別のことで驚いてしまった。
 普段着のシャツではなく、黒い服を着ていたのだ。ウェイトレス・・・・・・と言うよりもメイド服に近いもので、夏らしく半袖なのはいいがスカートの丈がやけに短い気がする。フリルの付いたエプロンまで付けている。
 明るい緑の髪と、外用の柔らかい目元に眼鏡という組み合わせが優しい印象を出していた。
「というかマスター、ここってただの『カッフェ』・・・喫茶じゃねえとは聞いてたが、どう見てもあっち系の喫茶店じゃねえか・・・」
 グラスを磨くマスターの代わりにフーケが返事を返してきた。
「落ち着きなって。まだ慌てるような時間じゃないよ。これだけじゃあないんだからさ」
 そう言うと階段の前からどいた。そして、階段の影から姿を現したのは――フーケとお揃いのメイド服を纏ったアニエスだった。
 黒を基調にした衣装はアニエスの金髪がよく映え、その短い髪もフーケとは異なった印象を与える。スカートに慣れないのか恥ずかしいのか、耳まで赤くしながらスカートの裾を握りしめて俯いている。
「・・・・・・・・・」
「せ、せめて何か反応しろッ!」
「お、おおぅ・・・・・・そうだな」
 アニエスの恰好に思考が止まっていたウェザーだったが、アニエスの声に我に返る。
「いや、結構似合ってるじゃん。うーん、かなり、イイ」
 するとフーケが前に出てきた。
「どーよ?まだまだあたしらもイケるだろう?」
 そう言ってくるりと一回転。長い緑髪とスカートが翻り、ふわりと甘い香りがウェザーの鼻をくすぐった。ニーソックスなどルイズで見慣れていると思っていたが、太股が逆に強調されて見える。
「ま、客のニーズに応えるのものも客商売の基本さね。もっとも、厳密なリサーチのもとに作られているとは言っても着る人間が良くなきゃね」
344ヘビー・ゼロ ◆a97Bny7H1c :2008/01/29(火) 23:33:13 ID:/Pbhtc8a
「う・・・む・・・」
「おやおやぁ?その顔を見るに悩殺されちゃったかい?」
 ニヤニヤ笑うフーケは顔を俯けたままのアニエスの背後に素早く回り込むと、腕ごと抱きかかえてスカートの裾をヒラヒラさせ始めた。
「わっ、ちょっ、な、なっ!」
 慌てるアニエスの方に涼しげな表情で顎を乗せるが、手は止めない。見せびらかすように裾を撫でる。女は本当にこういう服の話が好きなのであった。
「最近街で流行の仕立屋『OKKI』の作品で胸元には控えめながらに絹入りだ。ほら、よく見ると肌が透けて見えそうだろ?これで反応しないのは不能か男色の神官くらいのもんだね」
 親切にも裾から太股に手を這わせ、腰から胸に伝わせながら説明してくれる。アニエスの息が荒くなっているのは気にしない方向らしい。
 ふと、グリーンドルフィンの時の事が蘇った。エンポリオの部屋で男衆がたむろしていた時だ。

『なあウェザー』
 アナスイが視線はテレビに向けたまま呼びかけてきた。画面では"世界の面白い場所百選"という番組が流れ、ちょうど日本の都市部が映し出されているところだ。
『オレはな、徐倫を愛している』
『知ってる』
 アナスイがこういったことを言うのは今に始まったことではないので、ウェザーもエンポリオも適当に相づちを打つことを覚えていた。ウェザーは開いたテレビガイドから視線を動かさずに答えた。
『いいか、オレは徐倫はの全てに惚れ込んだんだ。特にあの心ってやつにだが、全部だ。内面も美しいが、容姿だって美しい。それにあの服のセンスにはシビレるね!蜘蛛の巣に蝶だぜ?あれが"エロカッコイイ"ってやつかな?』
『俺はお前のセンスに脱帽だがね。"エロ卑猥"ってやつだ』
 その言葉にパソコンをいじっていたエンポリオが吹きだした。アナスイの服装は肌の露出が多すぎるのだ。だが、アナスイも今さらその程度では動じない。
『そう言ってお前いつも帽子脱がねーじゃねーか。・・・とにかく、徐倫は美しいんだ。だが同時に可愛くもある!そしてその可愛さは着る服で何百倍にも膨れ上がるんだよッ!』
 そして、見ろッ!と豪語してテレビの画面を指差した。ウェザーが視線を上げたそこには、フリフリの給仕服をきた女性が喫茶店で接客をしている姿があった。
『ああ、それは"メイド喫茶"っていう日本特有の喫茶店だよ。ほら、日本にはジャパンアニメーションの聖地があるっていう話で、そこを中心に繁盛してるみたいだよ。確か・・・アラハバキ・・・いや、アキハバラだったかな?』
 訳の分からないウェザーにエンポリオの親切な解説が入る。物知りは伊達ではない。
『そのメイドさんがご奉仕してくれるっていうサービスさ』
『そうッ!そうなんだ!いいか考えても見ろ?もしも徐倫があの恰好でご奉仕してきたらどうする!
 "ご主人様、コーヒーができました"盆を持った徐倫が主人に恭しくそう告げた。それに主人は満足そうに頷く。"うむ、ではもらおうか・・・熱いッ!"なんと徐倫はコーヒーをこぼしてしまったのだ。主人の服が見る間に黒く染まっていく。
 "ああ、すいませんご主人様!こぼしてしまいました!すぐに拭きますから・・・"そう言って徐倫が布巾で拭いていく。そしてその手がある場所に伸ばされる。そこに触れたとき、徐倫の顔が恥辱に染まったのだった。
 "どうしたんだい徐倫?早く拭いてくれたまえ。それと火傷してしまったかも知れないから口で冷ましてくれ"愉悦に顔を歪ませながら主人は無情な言葉を投げかけた。
 だが、仕える身である徐倫に選択の余地はなく、顔を朱に染めながらも震える手でズボンのファスナーを下ろしたのだった。そして一言、"ご、ご奉仕させていただきます・・・"、と・・・・・・』
 アブナイ世界に飛んでしまったアナスイは、まるでそのストーリーの中にいるかのような臨場感で語りだした。
『へえ・・・で、そのご主人様っていうのは、いったい誰なのかしら・・・?』
『それはもちろんこのオレさ!なぜならオレと徐倫は結ばれる運命――"なのかしら"?』
 途端にアナスイの汗腺から嫌な汗が噴き出し始めた。ぎこちない動きで振り向けば、いつの間に来たのかそこにはプッツンした徐倫が引きつった笑顔で立っていた。
『じょ、徐倫・・・』
『んー?』
『愛してる』
 その言葉も全て言う前にオラオララッシュの前に塵と化したわけだが。
『哀れすぎて何も言えねえ・・・・・・』

 ああ、やっぱり思い出すんじゃなかったと後悔しながら現在に意識を戻すと、とんでもない光景が目に飛び込んできた。
345名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/29(火) 23:33:22 ID:HL6f8Rbr
よし、絵師ディシ降臨待ち支援!
346名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/29(火) 23:36:19 ID:vxbztCKp
アナスイ自重しろ支援
・・・・無理かあいつは
347ヘビー・ゼロ ◆a97Bny7H1c :2008/01/29(火) 23:37:11 ID:/Pbhtc8a
「あんた・・・意外と胸あるわね・・・」
「や、やめろぉ・・・はっ、はあ・・・ぁ」
 後に回り込んだままの姿勢でフーケがアニエスの胸を揉みしだいていたのだ。揉みしだいていたのだ。
 思わず二回繰り返してしまうくらいにデッカイ衝撃だった。
「まあ、こんな調子で店の売り上げに貢献してくれればいいからさ。笑顔で接客すりゃあ、このウェザーみたいに悩殺されちゃうんだから。男なんてこんな服着るだけでど真ん中なんだからチョロいわねー」
「いや、俺ってどっちかっていうと女教師とかお天気お姉さんとかの方が好みかな。あのタイトスカートから覗くストッキングに包まれた太股がな、香り立つ大人の色香を――よし、まて、引くな、落ち着け、引きすぎだお前ら」
 嫌悪感丸出しの表情で二人が距離を取っている。半分冗談だというのにそこまで引かれるとさすがに傷つくと言うものだ。
 と、見かねたのかマスターが重い口を開いた。
「こんな所で性癖の暴露大会なんかしてないで、開店の準備を始めてくれ」

 その後、成り行きから働かされることになったウェザーもいつもの黒服ではなく、店員用の白いシャツに着替えさせられていた。
「そもそも、四人も人が働くほど広くはないだろ・・・・・・」
 襟を直しながら愚痴って店内を見渡す。事実店自体は広くなく狭くなくと言った感じで、お茶や酒はマスターが担当し、軽食やらつまみをウェザーが担当することになりそうだった。そしてフロアは――――
「接客は笑顔。腰を曲げて上目遣いを意識してな。はいやって」
「い、いらっしゃいませ・・・」
 顔面神経痛みたいに頬をひきつらせている。どう贔屓目に見ても笑顔とは言えそうにない。
「ガンつけてどうすんだよ!普通にビビるわ!もっとリラックスして、眉を寄せるな!」
「む、むう・・・」
「声が小さい!胸ついてんのかッ!口でクソ垂れる前と後にサーを付けろッ!」
「さ、サーイェッサー!」
 一巡した世界でだってそんな闘魂溢れる接客はしねーよ、とつっこみたくなるような二人が担当するわけだ。・・・・・・この店は今日潰れるかも知れない。
 そんな一抹の不安を抱えながら、フーケのレッスンを必死に受けるアニエスを見ていると、ウェザーはルイズのことを思い出した。
 あれからどうしただろうか。上手くやれているのか。
「・・・・・・いや」
 問題はないだろう。あれで結構マジメだ。それに何より、自分のご主人様だからな、というのは少々親バカが過ぎるだろうか。
 しかも、タイミング良くフーケがルイズの話題を口に出す。
「そう言えばさあ、ヴァリエールの嬢ちゃんは本当にどうしたわけ?」
「あいつは今修行中だ。今のルイズをこの件に絡ますのはヤバそうだからな」
「で、置いてきたと。はっ、保護者は大変だねえ」
「でもないさ。可愛い娘ができたと思えばな」
「反抗期真っ盛りじゃないかい」
「いやあ、ありゃあ猫が爪を立てる感じだな。それくらいの方がいいんだよ」
 雑談に耽っていると、いよいよ店の扉が開かれた。開店である。
「いらっしゃいませ」
 この分では会議は夜中になりそうではあるが、仕事は仕事だ。アルバイターの意地に懸けて、究極にして至高の働きをするまでである。そう思いながら、ウェザーは骨を鳴らした。
348名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/29(火) 23:39:37 ID:HL6f8Rbr
支援
>男色の神官
ウェザーのあn……
349ヘビー・ゼロ ◆a97Bny7H1c :2008/01/29(火) 23:40:48 ID:/Pbhtc8a
 
 燭台の明かりに頼らなければならなくなってからどれほどの時間が過ぎただろうか。時刻は夜中となる時間だ。昼はお茶と軽食を求めてやってきた客も、今やその目当ては酒に変わってきている。
「しかし、情報と一括りに言っても、いったいどういった内容のやり取りをしているんだ、ここは?」
 客も少なくなり、手の空いた三人はカウンターに集まって話していた。
「表立って頼めない依頼やヤバい情報を扱うのさ。こっちで持ってる情報を欲しがる奴が買う。やってることは普通の商いと変わらないよ。まあ、自分達で持ち込んだ情報の交換のための場所でもあるかな」
 そこを見てみな、とフーケが指した席を見る。
 商人風の男とマントを羽織った男がテーブルを挟んで取引をしていた。マントが金貨を十枚置くが、商人は首を横に振る。もう五枚足した所で商人は立ち上がり店を出ようとしたが、マントがもう五枚叩きつけると振り返った。
 席に戻ると先ずは金貨を数え、確認が済んでから客相手の愛想笑いをし、商品を渡す。商談が成立したようだ。
「あれは希少価値の高い宝石の取引だね。火竜山脈見たいな危険地域か、どこかの貴族が所有してる鉱山辺りから持ってきたんでしょ。ウチで情報を買っていったんだ。ここじゃ珍しくもないけど。
 表だって頼めない。地元の領主はあてにならない。依頼者の理由は十人十色ながらも受ける方はいたってシンプル。報酬の桁だけだ。そしてここではその情報を扱う際の手数料をいただくわけ」
 他にも『七つの龍玉探してます』や『王家の墓の七つのアイテムを集める勇者求む』と言った収集系から、『国境付近の鉱山に住み着いたミノタウロスを退治してくれ』だの、『エアーマンが倒せない』といった討伐系まで様々だ。
「村で待ってれば勇者が来るなんて、ファンタジーやメルヘンじゃあないんだから。時代はアクティブ。自ら動かぬ者に得るモノはないわ」
「いいのか捕まえなくて?あれって非合法だろ?」
 ウェザーは茶化すように言う。堅物であるアニエスはまたぞろ憤慨するだろうと踏んだのだ。だが、予想に反してアニエスは静かだった。
「特殊任務にあたっていると言ったろう。身分を公にはできない以上、今の私に拘束力はない。それに、こういったものを一つ一つ取り締まるのは得策ではない。私なら泳がせておいて元を締める」
 スカートの裾を気にしながらそう言った。そんなに引っ張ったっところで裾は伸びないのだが。
「へえ、堅物だと思ってたけど、わりと柔軟な頭してんじゃないかい」
「貴様はふやけているがな」
 威嚇しあう二人にウェザーはため息をついた。追う者追われる者だから仕方ないとは言え、先が思いやられる。どことなくこの二人には似た者同士というか、親近感が持てるのだが。
 ウェザーが仲介に入ろうとしたとき、店の一角が騒がしくなった。
「やったー、念願のアイスソードを手にいれたぞ!」
「殺してでも奪い取る」
「な、なにをするきさまらー!」
 どうやら強盗騒ぎらしい。ウェザーがマスターにそのことを告げる前に、フーケとアニエスが駆け出していた。そして騒ぎを治めにかかる。
 機敏な動きで即座に争いを収めるのを見る限りはとても息のあった熟年のパートナーといった風なのだが、本人たちは犬猿の仲だと言うだろう。つっぱった感じは似ていると思うのだが。
「水と油っつーか磁石の同極って感じだな。SとSは反発するしな。似た者同士は好意と同時に嫌悪し合う・・・ってやつか」
「好きな子ほど虐めたいんだって」
「ツンの反対はデレってことさ」
「お前ら・・・・・・」
 グラスを磨きながらそう言ったマスターと、グラスを傾けた武器屋の親父は大人の風格を醸していたが、言ってることが月までブッ飛んでいるせいで色々と台無しだった。
350名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/29(火) 23:42:42 ID:kLd5dvG1
ガラハゲ支援
351ヘビー・ゼロ ◆a97Bny7H1c :2008/01/29(火) 23:44:30 ID:/Pbhtc8a
 
 
「えー・・・、第一回『で、これからどうするよ?』会議〜。司会進行は俺、ウェザーが務めさせてもらいます」
「学校じゃないんだからさあ・・・」
「ご託はいいから進めるべきだ」
 女性陣から早速非難が上がるこの会議は、夜も更け仕事もはけた所でフーケの部屋にて開催されている。恰好は当然元に戻っている。最も、会議とは言え床には酒につまみが山積みされ、宴会と言った方が正確なほどだ。
 不平不満を述べる女性陣に対して、ウェザーも不満げな表情で答えた。
「うるせえなあ。元はと言えばお前らの仲があまりに悪いから俺が明るく振る舞わなきゃならないんだろうが」
 ウェザーの言葉に二人はお互いを見て、心底嫌そうに眉をしかめた。
「まあ、使い魔に盗賊、あげくが銃士隊長と揃いも揃ってろくな職について無い者同士だ。共通点があれば少しは仲良くできるだろ?」
「組み合わせ的にはアンタがいなけりゃおかしいこともないんだけどねえ・・・番犬」
「"表に出れる"という共通点からして、抜けるべきは貴様だろう。引き際が寛容だぞ盗賊」
 憎まれ口しかたたけないのかこいつらは。ウェザーはそう毒づきながら頭を抱えた。が、すぐに切り替える。
「オッケー、わかった。じゃあ俺たちは利害の一致でくっついているだけでいいから、話を進めよう」
 親睦はゆっくりと深めるしかないとわかってはいても、二人の間にある溝はバリバリ裂けるドス黒いクレバスのように深い。が、そこは現実主義者そうな二人であるから、いざとなれば折り合いを付けてくれることに期待するしかない。
「貴様から話せ。その話の信用度如何でこちらも話す」
「けぇっ。何様のつもりだよ」
 フーケは不承不承、唇を尖らせながら語りだした。
「あたしが掴んだ情報は敵のアジトさ。あ、あ、あ。興奮すんなよ、本部じゃあない。いくつかの小さなアジトだ。実際にこの足と目で確かめてきているから間違いはないだろうね。当然『土くれ』としての証拠は残さないように務めたよ。
 チクトンネ街とブルドンネ街の辺りはあらかた見たけど、それらしいところはなかったし、怪しげな事をするにはさすがに人が多すぎる。あたしの調べで残ってるのはあと二つだよ」
「随分と簡単にいったものだな」
「まあ『組織』自体はできて間もないベイビーだし」
「ならば早めに手を打てば簡単に潰れるとでも言うのか?」
「それができてりゃアンタの顔なんざ見ないですんだんだけどね」
 フーケの挑発に噛みつくアニエスを手で制してウェザーは先を促す。
「ふん。ところがどっこい、この場合はベイビーの親が問題でね。たらふく食わしてやったらしくて、『組織』は規模だけはそこそこデカくなっちまいやがった。身体は大人おつむも大人って悪い冗談だよ」
「パトロンがいるというのか・・・・・・まさかッ!」
「イェス、その親バカなバカ親はトリステイン貴族さ。『組織』ができてから声をかけたのか、創設に関わっていたのかは知らないけどねぇ」
「まてフーケ。アルビオンの時もトリステイン貴族が援助していたのか?空の上だぞ?」
「そこら辺は詳しくは解ってないけど、他にも強力なパトロンが付いていると見てよさそうだね」
 予想以上に敵が膨れ上がってきていることに、ウェザーもアニエスも不気味さを感じずにはいられなかった。
「『組織』の特徴はその細かな分担。護衛や麻薬、果ては暗殺専門のチームもいるって噂さね。いい考えだよ、バカには簡単な役割を一つ与えておけばそれがベストだからね。しかも大人数と来ている。
 ま、人数はいてもまだまだ統率を取り切れてないってところが唯一の付け入る隙かな。ただ・・・」
 と、そこでアニエスはひどく思案顔になった。まるで喉に引っかかった小骨が気になってしょうがないとでもいうような顔だ。
「ここ最近になってやり方が変わった。ひどく粗野で強引な感じに・・・。誕生はひっそりと――そして大きくなってからは暴れる・・・。一見すれば当然の流れに見えるけど、違和感は拭いきれないのよ」
「宗旨変えしたのか――」
「頭がすげ換わったか・・・・・・」
352名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/29(火) 23:50:27 ID:FA/0ms2d
支援
353名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/29(火) 23:56:15 ID:64NP2KDT
リーフシールドを手に入れればいいんじゃない?


支援
354ヘビー・ゼロ ◆a97Bny7H1c :2008/01/29(火) 23:56:47 ID:/Pbhtc8a
 内部で分裂でもあったのかはわからないが、
「迷惑なことに変わりはない。換わったというならばその新しい頭ごと叩き潰すまでだ」
「癪だがあたしも同意見だね。奴らは悪性の病気だ。やられる前に取り除く」
 二人の表情に変化はないが、その声に怒気が含まれていることは十分すぎるほどに理解できた。
 各人がここまでのことを整理するためにしばし黙り込んだが、おもむろにアニエスが口を開いた。
「本拠もわからないのか・・・・・・ならばせめて頭の情報はないのか?逆に"暗殺"という手もある」
「「はぁ?"暗殺"ぅ?」」
 ウェザーとフーケがハモった。だが二人の驚愕も当然と言えよう。よもや騎士から"暗殺"を持ちかけられるとは夢にも思わなかったのだ。
この意外性にフーケは少しアニエスに気をよくしたようだが、ウェザーは黙ったまま眉根を寄せた。
「へえ・・・・・・騎士様はなかなか過激なことを言う」
「貴様らのように常に薄汚い策を弄するわけではない。国を思えばこの程度どうと言うことはないだけだ」
「はっ。言ってくれるじゃないかい。吠える上にホラまで吹けるなんて芸達者な犬だねぇ」
「貴様ら程でもないさ、盗賊」
「埒が明かん。フーケ、先を」
 へいへい、と組んでいた腕を解いて肩をすくめる。
「結論から言やあ、現段階での暗殺は不可能だね」
「なぜ?」
 そのアニエスのもっともな問いに、
「ボスの顔がわからないからさ」
 フーケはもっともな顔で答えた。
「な・・・ッ!貴様調べたのではないのか?」
「調べたよ。調べたけど何もわからなかった。それだけさ。影も形もどころか、本当にそんな存在がいるのかどうかも掴めない。さらに恐ろしいことに、『組織』の構成員でさえその素顔、姿を見たものは誰一人としていないと来てる」
「だが・・・・・・現に『組織』はこうして存在し、絶望を振りまいているじゃないか!もし本当に頭がいないというのならばッ!それはもはや『組織』とは呼べない、ただの集団だ!」
 それっきり皆一様に黙り込んでしまった。
 強力な後ろ盾。組織化された構成員。どちらも脅威だ。
 が、やはり気になるのは決して姿を見せないボスだった。よほどの用心深さだ。古株にさえその姿は愚か声すら聞かせていないのだから。情報の伝達は恐らく紙か何かによる伝言だろう。
 それでも『組織』を纏め上げているということは、相当のカリスマの持ち主か、相当の力の持ち主ということになる。
「あたしの手札はここまでだよ。で、あんたは何を歌ってくれるんだい?」
「・・・・・・我々が掴んだ情報は、パトロンについてだ。川向こうにある貴族街、その一部にまでは絞れているが・・・」
「へえ、すごいじゃあないか。で、その貴族の名前って言うのは?」
「・・・っ」
 しかしアニエスは喉まででかかった言葉を飲み込んだ。二人は気づいていない。
 この名前を言う必要はない。この名前は私が奴を殺したとき、憎悪を込めて呼ぶ名なのだから・・・・・・。
 アニエスは瞬時に話をすり替えた。
「その前に気になったんだが・・・。貴様、肩にケガをしているだろう?着替えの時に包帯をしていたな」
 アニエスの言葉にウェザーはいぶかしむようにフーケを見た。
「・・・実は前に侵入したとき、一度返り討ちにあっててね。ウェザーを呼んだのもそのためさ」
「つまりスタンド使いに遭遇した・・・と?」
「そう言う名前なのかい?あたしはただ何となく、感覚があんたに似ていたから参考までにと思っていたんだけどね。詳しい説明が欲しいんだけど・・・・・・」
 拒む理由もないウェザーは、スタンドについて話し出した。
355ヘビー・ゼロ ◆a97Bny7H1c :2008/01/30(水) 00:00:13 ID:/Pbhtc8a
  
「ふうん・・・。能力以前に見えないっていうのが怖いわね。先制されたら対処のしようがないじゃない」
「まあな。だが、『スタンドはスタンドでしか触れない』と言うルール、ここでは少々変わってくるようなんだ。ワルドと戦った時、奴の魔法は俺のスタンドにダメージを与えている」
「『スタンドのダメージはスタンド使いに反映する』・・・成る程ね」
「恐らくはスタンドも魔法も精神的な要素が大きいからだろうと推測しているが、確証はない。もしもこの仮説が当たりなら、見えなくとも感じられるはずだ。その辺については体験済みだろうがな・・・」
 学生組よりも頭の回転はいいらしく、フーケと先に知っていたアニエスは色々と対策を講じ始めているらしい。
「ま、なんにせよ、アダルトチーム結成だ。門出に乾杯といこうぜ」
「平均年齢はいくつくらいになるんだ?私は23だが・・・」
「やーい!行き遅れー!」
「そういう貴様は?」
「・・・・・・23」
 そんな泣きそうな顔で言われても。
「うるさいうるさいうるさーい!じゃあウェザーはどうなんだよ!あたしらより下って事はないだろう?」
「39だが?」
「さんじゅ・・・・・・と、言うことはアダルトチームの平均年齢は約28歳ということに・・・」
「お前が一人で平均上げてんじゃねーか!って言うかその年で独り身かよ。いい加減腰を落ち着けろって・・・・・・・・・言ってて悲しくなってきたや。ちくしょう!飲むぞッ!」
 そう言って酒がなみなみと満たされたグラスを一気に空ける。それを横目で見ていたアニエスが小馬鹿にしたように笑った。
「ふっ。そうやってガバガバとやけ酒をして、明日に響いてさらに歳を実感して嘆くのがオチだぞ」
「はんっ、んなこと言ってるが・・・どうせお前は下戸なんだろ?よかったでちゅねー、おこちゃまで。23歳のお子様だぜ!あっはっは!」
「なんだとッ!」
「結成早々お前ら・・・」
 何だか雲行きがよろしくない。そう悟ったウェザーが仲裁に入ろうとするが、先にフーケの挑発が入ってしまった。
「悔しかったらグイッと飲ってみなよ!」
「面白い!受けて立つッ!」
「グッド!」
 結果は絶対にバッドだと理解できたが、ウェザーにこの二人を止める勇気はなかった。
 そして当然の帰結として二人は出来上がった。フーケに至っては何が楽しいのか一人でわいわいと騒いでいる始末である。
「にゃはははははは!ウェザー飲んでるぅ?」
「飲んでる飲んでる」
 絡み酒らしく、落ち着かない様子で酒を飲んでいる。酒でタガが外れているせいか一オクターブくらい声が上擦っていた。
 アニエスはと言うと、酒瓶を抱き枕にして床に転がっていた。酔いつぶれているとしても、床で寝るのは体によくないだろうと様子を見てみる。
「おい、寝るならベッドに入れ」
「くっくっく・・・」
「笑ってる?なんだ、起きてるのか・・・・・・」
「フハハハ・・・・・・ハァーッハッハッハッハ!」
「悪の三段笑い!?」
 しっかりと酔っていたようだ。
356ヘビー・ゼロ ◆a97Bny7H1c :2008/01/30(水) 00:02:02 ID:/Pbhtc8a
「お前らいい加減に・・・・・・」
「よっしゃ、好きな人告白大会しようぜ!」
「またコイツは何を言い出すやら・・・・・・それこそ修学旅行じゃねーんだから」
「一番フーケ!ウェザーが好きれす!」
 そう叫ぶやウェザーめがけて飛び込んだ。ウェザーも危機を察知していたらしく、頭を押さえてそれを阻止する。が、酔いのせいか一切加減せずに突っ込んでくるのだ。
「あ、ずるいぞ!私もだ!」
 おまけとばかりに、あろうことかアニエスまでもが悪のりしだす始末である。ふざけている子供なら可愛いものだが、酔った大人は始末に負えない。
「最後ウェザーはられが好きぃ?」
「少なくとも酔っぱらいはねーな」
 そう言って抑えていた二人をベッドに向けて突き飛ばす。二人はバランスも取れず、無様にベッドに沈んでしまった。
「おら、とっくに消灯時間だぜ。そんなに欲求不満なら二人で仲良く乳繰りあってろ」
 呆れたように言い捨て、絡まってもぞもぞしている二人を残してウェザーは部屋を後にした。
 しかし、まさかアニエスが絡み酒だったとは意外だった。悪酔いというのもあったが、そうなるとアニエスも実は年齢を気にしていると言うことだろうか?・・・・・・いや、それはないだろう。
 フーケならまだしも、アニエスでそれは考えづらかった。おかしな表現ではあるが、腐ってもアニエスとでも言うのだろうか。とは言え、あの様子ではさしもの『鉄女』アニエスも明日は二日酔いだろう。
 と、そんなことを考えながら自室の扉の前に立ってようやく明日のことを聞いていなかったことを思いだした。今のフーケから聞き出せるかは定かではなかったが、聞くだけ聞いてみるかと来た道を戻る。
「WAWAWA忘れ物〜」などと鼻歌を歌いながらフーケの部屋の扉を開く。だがすでに部屋は薄暗く、もう寝たのかと一歩踏み込んだその時――
「あ・・・はあ・・・引き締まった良い体してるわぁ・・・・・・」
「はぅぅ・・・・・・そこはダメだぁ・・・」
「ふふふ・・・・・・かーわいーの。そぉれ!」
「うああああ、ダメもうダメ〜っ!」
 ホントに乳繰りあってるー!
 心の叫びが体を突き破って出そうな勢いだった。
 月明かりに晒されたベッドの上、そこではまるで蛇が絡み合うようにフーケとアニエスが艶めかしく縺れ合っていた。衣服もはだけ、露わになった肌を重ねている様は、『ヴィーナスの誕生』のように美しい。
 ウェザーは口を塞ぐことが出来ずにしばらく立ち尽くしていたが、「ごゆっくり・・・」と小さく呟いて部屋を後にした。
 ウェザーは当てられた自室のベッドの上で天上を眺めながら、「本当は仲いいんじゃねえか?」「というかこんなんでこの先大丈夫か?」という不安に悩まされ、悶々としたまま眠ることが出来なかったという・・・・・・。


   To Be Continued…
357ヘビー・ゼロ ◆a97Bny7H1c :2008/01/30(水) 00:02:48 ID:/Pbhtc8a
以上投下完了!
ゼロ魔分はここで補充しとかないと後半暗くなりそう・・・
358名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/30(水) 00:03:07 ID:HL6f8Rbr
シリアスなのにどいつもこいつも可愛いな支援
359名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/30(水) 00:07:41 ID:re3PjfSK
ヘビーさん乙&GJ

・・・なんつーか相変わらずツッコミどころ満載だなー。
それも絵師ディ氏が喜びそうなのが。

フーケ&アニエス、いくら行き遅れてるからって同性に走らなくても・・・
360名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/30(水) 00:08:01 ID:ESU/GQ/S
な・・・、なんて非生産的なオチ・・・。

でもGJ!!
361名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/30(水) 00:08:31 ID:eHJ6D1Lj
投下乙そしてGJでした
カリスマ性に組織……か
さて、鬼が出るか蛇が出るか
あるいは、神が出るか悪魔が出るか、と言ったとこですかね
とりあえず絵師さんは
・メイド服なフーケ&アニエス
・キャットファイトフーケ&アニエス
・酔ってウェザーに絡むフーケ&アニエス
・乳繰り合うフーケ&アニエス
・アナスイの妄想とその背後の鬼神(徐倫)
のいずれかを描いてくださいお願いします
362名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/30(水) 00:16:46 ID:+58HR+94
けしからん!!女性同士でなんて実にけしからん!!!
本当にけしからん!!!!実に素晴らしくけしからん!!!!!
最ッ高に『けしからん』ってやつだァー―――!!!!!!
ちなみにどっちが攻めでどっちが受けなんですか?
363名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/30(水) 00:18:03 ID:yS5+1can
ごめん、ウェザー…君の気持ち、すげーわかる
GJ…いや、これはないだろ!凄く良い意味で

>>361
催促するなよ…俺たちは願うだけだ。頼むんじゃあない。
364名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/30(水) 06:43:23 ID:TDITGefh
キング・クリムゾン!
365名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/30(水) 09:55:29 ID:afxsJPrg
フフフ。その下品ですが、乳繰り合ってるのを想像して
『勃起』してしまいましてね…
366名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/30(水) 11:47:51 ID:Q9L1/4Ux
乳繰り合うフーケとアニエスに乱入しないウェザーの気持ちが僕には理解できません
せっかくの3○フラグだというのに……
367名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/30(水) 12:25:03 ID:Wrh9cIdn
おまいら、ここはピンク板じゃないですよw自重www
ヘビーさん、お疲れ様でしたァン!!
いつも小ネタを散りばめてくれるので、腹かかえて笑いながら読んでます!
やっぱ、組織のボスって彼なんですかねぇ。そして暗殺チームのメンツがすごく・・・気になります。


>>325
サブ・ゼロさんお疲れ様でしたー!久しぶりにデレッチョが見れて癒されたwww
段々と丸くなってくる千代にnrnrするしかないww

>これは児戯だ。心に風が吹けば飛び、薄れ、消えてしまう記憶を、それでも
留めておきたい子供の。

いいっすね・・・青春だ。ギアッチョはこういう交流をまったくしなかった人間だろうから、
この場面はきっと千代の胸に思い出として残るんだろうなぁ。
368名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/30(水) 14:06:12 ID:K/1+4uuh
>>366
考えても見ろ。
事に及んだ次の朝、酔いの醒めたドS二人に見下ろされているところを・・・
369名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/30(水) 14:26:59 ID:Q9L1/4Ux
>>368
逆に考えるんだ
二人まとめてウェザー無しでは生きていけない身体にしちゃえば……

おや、急に画面にboat.の映像が
370名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/30(水) 16:31:31 ID:vBVho5fp
ギアッチョの人ヘビーの人、投下乙!

「〜いったいこの店にグラスはいくつあるんだ。」←吹いたwww
371名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/30(水) 17:04:59 ID:BvbKNoCF
>>368
つまりご褒美だな
何か問題が?
372名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/30(水) 18:16:31 ID:L/BOY8su
二十分から投下しますが構いませんねッ!?
373名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/30(水) 18:20:00 ID:U5mAqiy0
紫煙
374ゼロいぬっ!:2008/01/30(水) 18:21:32 ID:L/BOY8su
「では貴君は今回の行動に関して弁明する事は何一つないと?
後詰としての任務を放棄したという抗命罪の嫌疑が掛かっていますが」
「部下の証言は既にお聞き及びでしょう? ならば言う事は何もありませんな」

年老いた貴族の士官が悪びれる様子もなくしれっと答える。
その飄々とした態度に歳若い高級士官は完全に手玉に取られていた。
戦争の経験も無い若造には負けんと言わんばかりに鼻を鳴らす。
それを見てボーウッドは愉快そうに笑みを浮かべた。
かつて同じ釜の飯を食った同僚は、あの頃と変わらぬままだった。

しばらく経ってから老士官とボーウッドは肩を並べて部屋を後にした。
窮屈な態勢に痛む腰を擦りながら彼は上官に親しげに語り掛けた。

「随分と早く終わったな。君が手回してくれたのか?」
「ああ。責任の所在などと言った所で他人の粗探しに過ぎん。
そんな事に貴重な時間を割くのは無駄だからな」
「大した出世振りだな。もっとも君の実力からすれば当然の評価か」

それに比べて自分は何と出世から遠い事か。
一番の出世頭だったボーウッドを例外にしても他の連中にさえ追い越されていく。
自身の性格故と判っていてもそう簡単に変えられるものではない。
ふとボーウッドの言葉に違和感を感じた老士官が問い掛ける。

「しかし君も妙な事を言うな。これでアルビオンの内戦は終結したではないか。
行動を起こすとしても戦後の処理か残党狩り程度だろう?
外敵がいなくなった今、何をそんなに焦る必要があるというんだ」
「……だが議長は新たに敵を作る気でいる」
「もしや他国へ侵攻を始めるというのか!?
まだ国内の混乱は続いたままだぞ! 無謀にも程がある!」
「税の大半を軍に注ぎ込んでいるのだ。
国民を納得させる成果が必要なのは理解できるがね」

そう言うボーウッドの顔は苦みばしり、その言葉が額面通りではない事を伝えていた。
確かにアルビオンの軍事力は比類なき物だと自覚している。
しかし狂ったように戦争に終始する国家体制は歪以外の何物でもない。
破滅への道を歩んでいると分かっていても国の決定には従わなければならない。
それが軍人であろうとする彼等の訓示であり誇りだった。
375ゼロいぬっ!:2008/01/30(水) 18:22:52 ID:L/BOY8su
「となると侵攻先はトリステインか」

前王が死去して以来、王宮の腐敗は留まる所がないと聞く。
加えてワルド子爵という内情に通じた人間もいる。
更には婚礼を前にアンリエッタ姫殿下の恋文が公表された事で、
アルブレヒト三世との婚姻を前提としたゲルマニアとの軍事同盟も解消されたという。
偶然にしては出来すぎている、恐らくは内戦中から準備をしていたのだろう。

「ああ。その際、地上部隊を君に指揮して貰いたい」
「は…?」
「まだ決定した訳ではないが、そうなるように手筈は付けている
無論、それに相応しい階級も与えられるだろう」

きょとんとしたままボーウッドの言葉を聞き流す。
せいぜい大隊を指揮するのが関の山の士官がアルビオン地上部隊の指揮官?
戦時任官だとしても有り得ない昇進により歓喜も驚愕も浮かばない。
ようやく言葉の意味を理解した彼がボーウッドに聞き返す。

「何で私なんかが…」
「決まっている。他にやりたがる者がいないからだ」

キッパリと断言するボーウッドに、彼は項垂れるように肩を落とした。
アルビオンの戦闘の花形は竜騎士隊と大艦隊を擁する空軍だ。
地上部隊に期待されるのは残敵の掃討と拠点の制圧ぐらいなもの。
それでも手柄を立てようと名乗り出る者は後を絶たないだろう。

しかし、今度の攻城戦に参加した士官数名が死亡。
残った者達も臆病風に吹かれて指揮官の任命を拒んでいる。
その原因は“ニューカッスル城の怪物”と噂される蒼き獣の存在だ。
そのたった一匹の獣に城内の傭兵達は悉く殺され、竜騎士隊を含む正規軍さえも壊走した。
俄かには信じがたいが生存者から証言が得られた以上、信じる他あるまい。

そして、その混乱を収めるべく議長が怪物の正体を軍上層部にのみ明かした。
“アレはトリステイン王国が世界を支配せんが為に作り出した生物兵器である”と。
それは次の戦いにも、あの怪物が出現するかも知れない事を意味する。
侵略戦争を正当化する為のただの大義名分なのかもしれないが、
命を賭してそれを確かめようとする奇特な人間はいないだろう。
かくして死んでも大した損害にならない老士官へと白羽の矢が立ったのだ。
最悪、侵攻に失敗した際に全ての汚名を被せる事も視野に入れての判断だった。

勿論、ボーウッドも使い捨ての駒として彼を指名した訳ではない。
歳を食っても口の減らない人物だが、戦闘経験はアルビオンの中でも随一だろう。
軍事の才能こそ無いものの、どうすれば兵を生き残らせる事が出来るかを知っている。
それに、かつての同僚として引退前に花を持たせてやりたいとも思っていた。
僅かに考えた後、老士官は口を開いた。
376ゼロいぬっ!:2008/01/30(水) 18:24:18 ID:L/BOY8su
「承諾するに当たって二つほど条件があるんだが」
「良かろう。言ってみたまえ」
「まず一つ目。この戦が終わったら引退しても構わんかね?」
「ああ。希望するのであれば士官学校の教員としての席も用意しよう」
「ありがたい話だが遠慮しておくよ、座りっぱなしは腰に響くのでな。
もう一つ、軍から支給される年金の話なんだが…」
「当然、退任時の階級に合わせて支払われる予定だ」

今の階級と比較して数倍に達するだろう高額の年金。
それを前にして老士官は本気で迷っていた。
彼の人生において、ここまで美味い話は一度としてなかった。
父からも口癖のように“美味すぎる話には飛びつくな”と警告された。
ギャンブルも大負けした事はあっても大勝ちした事はない。
かといって、ここでボーウッドの誘いを断ればまた査問委員会に掛けられるかもしれない。
悩み続ける彼に、ボーウッドは懐から一枚の金貨を取り出した。

「運を天に任せて、こいつで決めるというのはどうかな」

その誘いに彼も頷く。
それならば断るにしても角が立たなくて済むからだ。
彼の了承と同時に、親指で弾かれた金貨が宙を舞う。
回転を繰り返しながら落ちてきたコインを受け止めて手の甲に乗せる。
開かれた手から出て来たのはアルビオン王国の紋章が描かれた表面。
それを目にしたボーウッドが笑いを浮かべて口に出す。

「決まりだな」
「ああ。どうやらそのようだ」

こんな方法で上官を決められてしまう部下達を哀れに思いながら、
老士官は自分の身に圧し掛かる苦労を想像して溜息をついた。
そんな彼の表情は実年齢以上に老けて見える。
しかし、ボーウッドには、まだ彼に告げねばならぬ事実があった。
事前に伝えなかったのは断られるのが目に見えていたからだ。

「艦隊を含めて三千に上る戦力が投入される予定だが、
先の戦闘で恐れを生した傭兵達の穴埋めに別の傭兵部隊が編入される」
「それがどうかしたのか? 別に珍しい話でもあるまい」
「そいつ等が曰く付きの連中でなければな」
「まさか…! その傭兵というのは、あの狂人の!?」
377ゼロいぬっ!:2008/01/30(水) 18:25:56 ID:L/BOY8su
言葉を濁したボーウッドに老士官が詰め寄る。
しかし、それに答えを返したのは彼ではなかった。
突如、響いた靴音に二人の視線が音のした方へ向けられる。

「これは、これは。随分な言われようですな」

その声には不満を感じられない。
むしろ、その評価こそが相応しいと誇るかの如く
噂の張本人は愉しげに自らその場へと姿を現した。
メイジというよりはトロール鬼を思わせる巨体が二人の行く手を塞ぐ。
明らかに嫌悪するかのようにボーウッドは彼に反論する。

「確かに功績だけを見れば君は優秀な兵だよ。
尤もこちらが被った被害に眼を瞑ればの話だがね」

彼の戦い振りを直接目にした事はない。
だが、それは僥倖と言うべきだろう。
報告書に目を通しただけで吐き気が込み上げてくる。
王党派の協力者を探し出して始末する名目で街一つを焼き討ちにし、
森に敵兵が逃げ込めばその周辺の村落ごと森を焼き払う。
彼にとって全てを焼き尽くす事こそが目的。
傭兵をしているのもその手段に過ぎない。
そう思わせるほど彼は道徳と呼ぶべき物が欠落していた。

「これは異な事を。火の特性は分け隔てなく全てを燃やし尽くす事。
私はただ、その在り様に忠実に従っているに過ぎません」
「だが火を弄ぶ者は往々にして自らの炎で焼かれる運命を辿るものだ」

光を失ったという傭兵の眼が静かに二人を見下ろす。
何も見えないはずなのに『何か』を見通すのにも似た不気味な視線。
怖気走るのを堪えてボーウッドは彼に忠告した。

「それもまた本望。炎が我が身を欲するというのであれば、
喜んで魂さえも焼べてご覧に入れましょう」

だが男は厳かな表情を浮かべてそう答えた。
決して冗談で口走った言葉ではない。
まるで始祖に祈りを捧げるかのように、
彼は炎に命を捧げる事さえ厭わない事を宣言したのだ。

この瞬間、ボーウッドは男を理解した。
否。正確には『理解できない事を理解した』のだ。
この男は自分達とは違う生き物、それこそ化け物と呼ぶべき存在。
誰にも理解されずに、誰も理解せずに周囲を破壊するだけの暴力の塊。
それを人間の尺度に当て嵌める事こそ間違っているのだ。
378ゼロいぬっ!:2008/01/30(水) 18:27:38 ID:L/BOY8su
「では、これで失礼させて頂く。
部下達にも準備させておく必要があるのでね」

ゆらりと陽炎が蠢くように男の巨体が二人の横を通り抜けていく。
その後姿を彼等は呆然と見送った。
しかし、ふと思い出したかのように男は振り返り告げた。

「ミスタ・ボーウッド。
貴殿の焼ける匂いはさぞや芳しいものでしょうな」

それは彼なりの褒め言葉だったのかもしれない。
だが、その言葉に感じる物は悪寒でしかない。
吐き捨てるようにボーウッドは言い放つ。

「……狂人め」

それは『白炎』の二つ名を持つ彼、メンヌヴィルに対するボーウッドの正当な評価だった。
彼が去った後も忌々しく廊下を睨むボーウッドに老士官が口を挟む。

「条件をもう一つ加えて良いかな。
頼むからアイツと同じ艦にだけはしないでくれ」
「当然だ。『レキシントン』にも乗せる気もない。
奴は後詰めとして後方の艦に待機させておくつもりだ」

奴を投入すれば敵味方問わずに被害は甚大なものとなるだろう。
怪物には怪物というつもりか、どちらにせよ出番が来ない事を祈るしかあるまい。
だが気掛かりなのはメンヌヴィルだけではない。
彼の脳裏には、トリステインから来たもう一人の怪物の姿が浮かんでいた。


男はその光景を悪夢としか認識出来なかった。
自身の両脇を固めているのは、自分の部下となる筈だった竜騎士隊隊員。
そして抵抗できない自分に抗命罪や敵前逃亡などの罪状が次々と読み上げられていく。
その自分を見下ろすのはワルドの感情の見えない視線。

直属竜騎士隊と交戦し命からがら『レキシントン』に帰還した彼を待っていたもの。
それはワルドの指示による身柄の拘束だった。
独房に監禁されようとも何かしらの手違いと信じて止まなかった。
だが、その事実はここに到ろうとも変わらない。

「よって釈明の余地なく死罪を申し渡す」

そして判決は下った。
処刑人の代わりに彼へと歩み寄ったのはワルドだった。
しかし、その姿は何よりも恐ろしい存在だった。
周囲を見渡しても彼に手を差し伸べる者はいない。
彼とワルドを取り巻く竜騎士隊も、ただ黙って事の成り行きを不動の姿勢で見つめる。
379ゼロいぬっ!:2008/01/30(水) 18:28:33 ID:L/BOY8su
「た、隊長。私はただ…」
「釈明は無用だ」

狼狽する彼の言葉をワルドは遮った。
そして彼を抑えていた部下達を下がらせ、手に持った杖を彼へと放り投げる。
床に転がった杖へと視線が向けられる。
それは拘束時に押収された自分の杖だった。
何故、杖を返すのか疑問に思いながらワルドを見上げる。
男の視線に応えるようにワルドは口を開いた。

「杖を取れ。もし僕を殺せたならば無罪放免だ」

ワルドの声に身を震わせながら杖へと手を伸ばす。
だが、その直前で彼の手は止まった。
あるいは自分の忠誠を試す罠ではないかと疑ったのだ。
しかし手を引こうとした彼にワルドが冷徹に言い放った。

「何かを手にしようと思うならば自らの手で奪うしかない。
僕の命を奪えば、お前は自分の命と隊長の座を手に出来る。
その力も意思も無いというのならただ奪われるだけだ」

ぞくりと男の背筋がその一言に震えた。
ワルドの射抜くような視線が本気である事を告げていた。
何もしなければ間違いなく彼は自分を殺す。
どの道、殺されるのならば抵抗した方がまだ可能性はある。

落ちていた杖を力強く握り締める。
直属竜騎士隊に劣っていたのは空戦能力だけの筈だ。
魔法の腕は誰にも負けないという自負がある。
ワルドに悟られぬように小声で詠唱を終える。
全ての準備を終えた後で再びワルドを見上げる。
その手は杖に掛かっておらず詠唱さえもしていない。
勝利を確信して男の口元は歪んだ。

刹那。ワルドへと振り上げられた杖は宙を舞っていた。
血飛沫を撒き散らす自分の腕と共に。

「……え?」

腕を斬られた事に男が気付いたのは、彼の腕が地面に落ちた後だった。
痛みなど感じる間もなく突き付けられるワルドの杖。
斬られた腕を抑えながら男は悲鳴を上げた。
しかし何も感じぬままワルドはその口内に杖を押し込んだ。
エア・ニードルを帯びたそれは頭蓋を穿ち、男の脳髄を突き刺し抉った。
ワイン樽に空けられた穴の様に、男の頭部から夥しい血が零れ落ちる。
その惨状を前にしても竜騎士隊は目を背けずにワルドの言葉を待つ。
380ゼロいぬっ!:2008/01/30(水) 18:29:51 ID:L/BOY8su
「よく見ておけ。これが任務を果たせぬ者、敗れた者の末路だ。
奪われたくなければ奪うしかない、例えそれが何であろうともだ」

杖を引き抜き、両の手を血に染めながらワルドは言葉を紡ぐ。
それは彼自身が導き出した、この世界の真理だった。
狂気に満ちた彼の姿を目の当たりにしたシェフィールドの顔に愉悦が浮かぶ。
自らの実力を示して信頼を得ると共に、その恐怖によって鉄の規律を布く。
それがこの公開処刑を行ったワルドの思惑だったのだろう。
確かに、これで竜騎士隊は文字通り彼の手足となって働く筈だ。
だけど以前の彼であれば、このような手段は取らなかった。
無為に味方に犠牲者を出す事を嫌い、反論していたワルドはもういない。
ここまでの豹変を遂げた彼には『進化』という言葉こそ相応しい。
ならばこそバオーの相手に相応しいのかもしれない。

バオーについて、主から下された命は“ワルドに全て任せよ”それだけだった。
捕獲とも処分とも明確な指示はなく、その言葉にシェフィールドは困惑を示した。
バオーにさして興味を感じなかったのか、それともバオーに世界を滅ぼされる事を是としなかったのか。
理由こそ判別が付かなかったものの、どちらに転んでもいいように彼女は手を尽くす。
軍上層部にバオーの正体をトリステインの生物兵器と伝えたのも、その一手。
最悪、トリステインがバオーの存在を他国に隠匿していた事実も、
バオーの屍と資料さえあれば世界に納得させる事が出来る。
そして、それはトリステインという国の危険性へと挿げ替えられる。
アルビオンだけではなくハルケギニア全ての敵として認識されるだろう。
一番恐れるべきは事前にバオーが処分される事だけ。
しかし、それとてトリステインの総力を上げても出来るかどうか。
あるいはアルビオンの侵攻を待たずに滅びるかもしれない。

「さてマザリーニ枢機卿のお手並みを拝見させて頂きましょうか」

まるで自分の手番が終わった棋士のように、
シェフィールドは対戦相手の思慮する姿に思い馳せていた。


火竜が森の上空を滑空するように飛ぶ。
周囲は霞掛かり、目視で索敵する事は不可能。
戦闘空域を離れて相当な距離を飛んでいた筈だが、
自分が何処を飛んでいるのかさえも皆目見当が付かない。

「霧が深いな。まだ追撃してくる敵はいるか?」
(……いや、敵どころか味方の姿も見えないな)

隊長の言葉に、彼の使い魔である火竜が返答する。
最初は彼が何を言っているのか理解出来なかった。
視界を覆う程の霧など森の何処にも掛かっていない。
もし自分の視界を共有されていたら、気付かれていただろう。
霞んでいるのは、彼の眼に映る景色だけだという事に。
火竜は知った。もう彼と共に戦場を駆ける事は出来ないのだと…。
381ゼロいぬっ!:2008/01/30(水) 18:31:41 ID:L/BOY8su
「連中なら大丈夫だ。きっと命令を守って生き延びるさ。
全く、隊長の俺だけが命令を果たせんとは不甲斐ないな」

赤黒く染まった脇腹に添えられた手。
その指の隙間から湧き水の如く血が溢れ出る。
艦隊から放たれた散弾は確実に彼の身を抉っていた。
それを押して尚、彼は部下に悟られぬまま指示を出したのだ。
誰にも知られる事も語られる事もなき武勇。
それを彼の騎竜として心より誇りに思う。

傷だらけとなった火竜の翼に彼の手が添えられる。
新たに付けられた傷の下にも数多くの古傷が残されている。
それは共に戦場を駆け抜けた二人だけの勲章。
その一つ一つを彼は昨日の事のように思い出す。

今もなお褪せる事なく彼の目蓋の裏に浮かぶ一匹の竜との出会い。
その出会いは、英雄を夢見た彼の行く末を決定付けた。

「今までありがとう我が生涯の友よ」
(何を礼を述べる事がある?
感謝すべきは私の方だ、我が主にして無二の友よ)

臆面もなく使い魔は主に感謝を告げた。
奇跡とも呼べる確率で彼は主人と出会った。
その日から、彼はその眼で主の成長を見届けた。
少年が青年に、青年が遂に英雄となる姿に立ち会ったのだ。
それも傍観者ではなく彼の相棒としてだ。
そのような幸運に恵まれる竜が、どれ程いるというのか。

「俺は、あの背中に追いつけたのか…?」
(勿論だとも。お前以上の英雄など五人と居るまい。
いや、どの様な者がいようとも私の英雄はお前一人だ)

世辞でも誤魔化しでもなく火竜はそう確信していた。
アルビオンを発った者達は決して彼の事を忘れないだろう。
孫の、その孫の世代に渡ろうとも彼等の活躍は語り継がれる。
その命が尽きようともアルビオンの魂と共に存在し続ける。
そして、いつの日か彼の背を追い英雄を目指す者が現れるだろう。

「それは、光栄だな」

不意に手綱に掛かる力が緩む。
意識さえも朦朧としているのか、落ちそうになる主を必死に支える。
眼下に広がるのは一面の森。
街であれば即座に憲兵へと引き渡されるだろうが、
ここならば身を隠すには都合が良い。
火竜が急降下して森へと不時着する。
翼を切り裂く枝にも構う事なく、彼をその場へと降ろした。

息も絶え絶えに、彼の目は色彩は失っていた。
火竜にも、もう助からない事は判っていた。
ならばこそ心静かに終焉を遂げさせたかったのだ。
382ゼロいぬっ!:2008/01/30(水) 18:32:46 ID:L/BOY8su
もう何も映さなくなった瞳。
その代わりに走馬灯のように浮かぶ過去の記憶。
目指した道を突き進み、何物にも変えがたい戦友達を得て、
騎士の誉れとすべき主君達と巡り合えた。
そして、最後に果たすべき務めを終えた今、心残りなど何もない。
何もないというのに……。

「やっぱり、死ぬのは怖いなあ」

気が付けば、当たり前の事を彼は最期に口にしていた。
力を失い、緩やかに途切れた呼吸。
その亡骸に寄り添うように火竜は身を伏せた。
共に死ぬという約束、それだけが火竜に残された最後の支え。
この程度の手傷で死に至る事はないだろうが、いずれは飢えて死ぬだろう。

直後、火竜は身を起こした。
彼の感覚が此処に近付く人間の足音を感知したのだ。
それも一人ではない。少なく見積もっても四、五人はいるだろう。
樵や猟師がそんな徒党を組み筈が無い。
何処に落ちたかは知らないが残党狩りの手が及んでいたのか。
此処で退けば主の屍は晒され、敵兵に辱められるだろう。
何よりも主の下に旅発つ事に何の恐れがあろうか。

火竜の上げた咆哮が森を揺るがす。
近付く者を威嚇する雄叫びは、亡き主への嘆きの声にも似ていた…。
383名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/30(水) 18:47:20 ID:qmI/Te54
しえん
384ちょっと代理:2008/01/30(水) 19:11:15 ID:+/qZKvUJ
529 名前:ゼロいぬっ![sage] 投稿日:2008/01/30(水) 18:38:19 ID:p90xmsJc
投下終了宣言の時にさるさんを受けてしまいました。
どなたか代わりに投下終了宣言をお願いします。

アルビオン側が終わったので次回はトリステイン側での悲喜交々です。
385名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/30(水) 22:23:21 ID:26l61qv7
犬の人GJ!
・・・いやあ、あなたの書くアルビオン軍はホントかっこいいな。
386名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/30(水) 23:09:34 ID:JpGivoGi
GJ!
さすが
387名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/31(木) 07:35:38 ID:TuJ1a4vF
キン☆クリ
388名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/31(木) 08:42:52 ID:jXFc4Z42
偉大なる使い魔乙!
よかったなぁ家族に連絡いかなくて…
実は、家族が来るのもちょっとだけ期待しちゃったかも

試走球GJ!
怖いぞこのモット伯。
ジャイロを襲い来るのは誰だろう…

サブゼロGJ!
キュルケ×シエスタか…いいね!
これはいい竜の羽衣フラグ、ギアッチョが途中で自分の言葉にキレ出さないかと心配です。

ヘビーゼロGJ!
涙目のルカぁぁあ!?なぜこいつまでここに。
メイド服のロングビルとアニエス…ハァハァ…
相変わらずウェザーが司会するとか、笑いが混ざってていい、原作の暗さと比較するといろんな意味で楽しそうだ、ウェザーに幸あれと思ってしまう。
23で行き遅れ!?ご褒美ですよご褒美!
389名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/31(木) 09:17:07 ID:UDLdusgn
光放たぬ闇色ワルド… GJ!
390名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/31(木) 10:01:52 ID:jXFc4Z42
ゼロいぬGJ…!
なんという任務遂行、なんというワルド。
悪役冥利に尽きる気がする。
391名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/31(木) 10:31:06 ID:9+xwKjaD
犬の人GJ!ほんとGJ!!
思わず目から汗が…
392名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/31(木) 20:11:02 ID:W1kJac02
ギコナビのログが全部消えちまったぜ・・・
もう気軽に過去ログみれねえや・・・
393名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/31(木) 21:08:00 ID:DZx+WH2O
昨日の投下はどれもGJ過ぎる…まだ自重しておいた方がいいのか迷ってしまう世界だ。
だが、一方でせっかくだし21時半から投下を行いたいって気持もある…複雑な心境だ。
21時半から予約がなければ投下して構いませんかッ?
394名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/31(木) 21:16:25 ID:p3HbxsE0
GO!GO!
395名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/31(木) 21:33:27 ID:DZx+WH2O
…あ、ありのまま今起こったことを話すぜ。
わ、私は『土くれのフーケ』を捕らえる任務に参加して、『土くれのフーケ』が誰かわかっちまったからそいつを撃退した。
だが私は『土くれのフーケ』が目覚めるのを待って『土くれのフーケ』にごめんなさいした。

な、何を言ってるのかワカラナイと思うが、私にも何が起こったのかわからなかった。
これも全て『土くれのフーケ』の罠だとか私の正直さが悪いとかそんなチャチなもんじゃねー!
男と女の間に横たわる深くて広い川の存在を味わったぜ!

対岸は見えそうだが、今は流れが速すぎて渡れそうにねぇ…その事は、マチルダお姉さんに同情的なルイズ達を見ればよくわかるぜ。
ここにジョースターさんがいれば、私をからかいつつもマチルダお姉さんを罠に嵌めてくれただろう。
『土くれのフーケ』ことマチルダお姉さんはもう冷静にこの状況を理解したらしく、そう考えて自分を慰める私をちょっぴりの哀れみの視線と、
勝利を確信した笑みを浮かべて見下ろしてくる。

「ミス・ロングビル。本当に申し訳ありません。このエロ亀が…!」
「顔を上げてくださいミス・ヴァリエール。私全く気にしてませんから、オールド・オスマンに比べれば可愛いくらいじゃないですか」

余裕たっぷりに対応するマチルダお姉さんの言葉に、ルイズは感謝する。
よかったわね、ヴァリエールなんてキュルケが珍しく慰めるような言葉をかけ、次いでルイズが学院の男性陣が如何にアホかと言う事を論じていく。
私の事を哀れんだような目で見ただの、目つきがいやらしいだの、上級生のベリッソンの食事のマナーが悪いだの…私は悔しさに打ち震えた。
だが、今の私が発言すると完全に冷戦状態に陥ってしまうような気がする。
この後『土くれのフーケ』が用意した罠をかいくぐり、盗まれた『破壊の円盤』を奪取するにはチームワークが必要なのだ。
私は我慢した。先程マチルダお姉さんに謝った時の正座の姿勢のままで…ジッと耐える。
それに同調したマチルダお姉さんにより、偉大なるオスマンが「偉大な方ですが、毎日スカートの中を使い魔を使って覗こうとしたり、
お尻を触ろうとしたりセクハラばっかりで…」と言われ、マチルダお姉さんがため息をつく度にオスマン株が下落していくのを、ただジッと耐えるしかなかった。

「幻滅したわ。偉大な方だと聞いてましたのに…」
「偉大さとスケベさが奇妙に同居した方ですから…噂によると、風呂場を覗いて今は亡きオルレアン公に半殺しにされた事もあるとか」
「…本当に?」

何故かその時だけ、黙って周囲を警戒しながら先を進んでいたタバサが、興味を示した。
あくまで噂ですがと、マチルダお姉さんがしれとした顔で言うが、討伐に出る時に出会ったオスマンを思い出し、『ちょっと意外だがやりそう』と私でさえ思った。
しかし…タバサがオルレアン公とかいう奴に興味があるなんて、なんか妙な感じだった。
あって少ししか時間が経ってないが、この件でオールド・オスマンに学院長室に呼び出された時はおろか、
荷馬車の中とかでキュルケがそれとなく話に参加させようとした時でさえ、タバサはずっと本を読んでいただけだったんだぜ?
そんな、友達とさえ特に話さねぇタバサが、オルレアン公の名前が出た時には強く興味を示したように見えたんだ。
シュヴァリエとかいう、なんか功績を残さないと貰えない爵位を持ってる事といい、妙なガキだぜ。

「全く、男と来たら毎日毎日む、むむ胸胸胸胸…!」

タバサの様子を見ようとした私の心に言葉がサグサ突き刺さる。
本当に刺されたわけでもないが、私は胸を抑えて正座して痛くなった足を投げ出すように倒れこんだ。
痛みに呻きながら見上げたルイズとキュルケ、その…どことは言わないが、どうしても比べてしまう私は反論できなかった。
苦笑して相槌を打っていたキュルケがあっけらかんとした調子で言うのが、悔しさをかみ締める私の耳に届いた。

「あら、案外可愛いいと思うけど?」
「アンタは慎みが足りないのよ! ヴィリエ達が時々食堂で何話してるかしらないの?」
「知ってるわよ」

鼻息荒く言うルイズにまぁそのボディじゃあねぇとキュルケとマチルダお姉さんは口には出さないものの勝者の余裕を漂わせながら苦笑する。
ルイズがそれに気付き、自分の胸とキュルケの胸を見て歯軋りした。

「かか、か体でしか気を引けないなんて女性として、ど、どうなのかしら!? ね、ねぇタバサ。そそ、そんなのにつられてくるような男って碌でもないと思わない?」
「…どうでもいい」

素っ気無くタバサが呟き、足を止めた。
396名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/31(木) 21:33:50 ID:hNDN/cdq
「投下した」なら使ってもいいっ!
397名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/31(木) 21:37:35 ID:DZx+WH2O
それに気付き皆、順々に足を止める。タバサが足を止めた場所から1メートル程の距離から、森が開け視界を遮るものの無い小さな空間ができていた。
マジシャンズ・レッドの視界には小屋が一つ見えている。元は木こり小屋かなんかだったんじゃねーかと思うが、今は廃屋みたいだ。
しかし、久しぶりに固定化がかかってない建物を見たな。
錆び付いた釘やうっすら浮いた苔、朽ちた様子に、うまく言えねぇが、奇妙な味があった。
私は小屋から目を離し、小屋の中から見えないようにと、森の茂みに身を隠したまま廃屋を観察しているルイズ達を見る。

「私の聞いた情報だと、『土くれのフーケ』はあの中にいるという話です」

いや、マチルダお姉さん…アンタが土くれだろ?

マチルダお姉さんが笑いながら言ったことを、ルイズ達は緊張した様子で人が住んでいる気配が全く無い小屋を見ている。
いやだからよ。後ろでマチルダお姉さんが笑ってることに気付こうぜ?
果たしてどう行動すべきか、ルイズ達は相談を開始した。
その中心になったのは意外なことにタバサだった。
てっきり、ルイズとキュルケが言い争うと思ってたんだが、タバサが地べたに正座して、ここに来る間に考えていた作戦を説明し始めた。
枝を手に、地面に絵まで書いて解りやすく説明していく。

「あーもうッ! おまえらな!! いるわけねぇって!! だから『土くれのフーケ』はその女だって言ってんだろ!!」

タバサ達は私の入った亀を一瞥して、疲れたようなため息をつくと相談を再開しやがった。
マチルダお姉さんがそれを見てプププと噴出しそうになっているのがまた腹立たしい。

「無視かッ! 手前ッ笑ってんじゃねーぞッ!?」
「何の事でしょうか?」

私が突っ込みをいれた時には、もうマチルダお姉さんは真面目な表情に戻り作戦を聞いていたような振りをしている。
命懸けでエジプトへ旅した時が、懐かしいぜ…私は涙を堪えた。

その間にルイズ達の相談は進んでいく。
まず。偵察兼囮が小屋のそばに赴き、中の様子を確認する。
そして、中にフーケがいれば、これを挑発し外に出すという作戦らしい…
土系のメイジ。特に巨大なゴーレムを作るには小屋の中では無理で必ず外に出ると言うのだ。
そこを外で待機する残りのメンバーが、魔法で一気に攻撃をする。
ゴーレムなど作る隙は与えずに、集中砲火でフーケを静めるという作戦だった…そのフーケは作戦会議に参加してるけどな。
「で、偵察兼囮は私がやるのか?」
「よくわかったわね。アンタ、ギーシュと決闘した時素早かったから適任よね」

全員が私を見ていた。
なんというか、…複雑な気分だ。一言で言うと私コイツの使い魔やってていいんだろうか?って気分だ。
まぁ、別に契約してねぇから逃げられなくも無いが…
私はそんなことを思いながらマチルダお姉さんを見る。

「……いいだろう。だが私は魔法には詳しくない、メイジの協力が必要「ミス・ロングビルなら駄目よ」

私は亀の中で口をパクパクさせた。
やっぱりか…あえて言うならそんな気持の篭った目が、私を見下ろしていた。
濡れ衣なのに…! マジで今回だけは濡れ衣なのに…!
隠れてニヤニヤするマチルダお姉さんを見上げ、私は食い下がった。
398名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/31(木) 21:38:27 ID:DZx+WH2O
「い、いや私一人だと何か起こった時対応が…」
「その時は逃げてくればいいのよ。こっちにはトライアングルが二人もいるんですからね」

食い下がる私に、キュルケが言いながら杖を振って見せ、タバサも頷いた。
ま、待ってくれ。なんなんだこの状況は…!
普通、普通の話をするぜ。

こう言う場合、既に正体がばれちまったマチルダお姉さんが焦って、3人がマチルダお姉さんを怪しむ場面じゃあねぇのか?
それが、どうしてこいつらは聞き分けの無い私を説得する大人ぶったような態度で話を進めてるんだ?

私は、この難解な謎について考える余り、亀の中で頭を抱えた。
あの太ももは間違いなくマチルダお姉さんなんだぜ? それは間違いない。
いや、こういう言い方だから不味かったのか?
私は不意に気付いてしまった。
ちょっと嘘入れて、顔を見たとかなんとか言っておけば今頃帰還中だとか、そういうことか?

「ちょっと、私もいるわよ!」

混乱する私を置いて、話は進んでいるようだ。
ルイズも杖を構え、やる気を見せるが、一緒になってマチルダお姉さんが杖を構えてる辺り駄目過ぎる…
駄目だ、こいつら………私がなんとかしないと…!

言いようの無いやるせなさを感じながら、私は小屋に向かった。

腑に落ちないが、これは考えようによってはチャンスでもあるからな。
『破壊の円盤』に一体どのスタンドが入っているのか、私には気がかりだった。

ジョルノ達から効かされた『グリーン・デイ』や『ノトーリアス・B.I.G』なんていう無差別攻撃する奴じゃなきゃ…まぁ、なんでもいいがな。
一応背後を取られてる形になっちまうんで、私の目は背後をうかがったまま小屋に近づいていく。
何も言わぬマジシャンズ・レッドだけが頼りだぜ…私はマジシャンズ・レッドの視界で、念のため小屋の中を窺った。
この世界のメイジ達が罠なんぞ使うとはあんまり思えないが、念のためだ。
外から見た感じでは何も無い…私は再度念を押して、一度亀を下ろし、マジシャンズ・レッドに壁を素通りさせて中を見る。

小屋の中には一部屋しかなく、真ん中に埃が積もったテーブルと椅子が一つあるだけだった。
後あるものといえば、崩れて使い物になりそうにない暖炉位か。
いや…テーブルの上に、私は光る円盤を見つけた。
いないぜって合図をルイズ達に送り、私は中に入っていく。
ここからは時間の勝負だ。ルイズ達より先に『破壊の円盤』を確認しなきゃならん。

回り込むのも面倒臭いんで、私は窓をブチ破り、中へと駆け込んだ。
そして室内の埃を押しのけて、私は円盤を亀の中へといれさせた。

手にとったディスクは埃が付いちまっていたが、傷は付いていないようだ。
しっかし、こっちの世界の連中はいまいち作法がなってねぇな…こんな置きかたをしたらディスクに傷がつくじゃねーか。
私は急ぎディスクを傾け、照明の光を調節して当てていく。
こうするとうまくすれば中身が何か、光の反射で垣間見ることができる時があるのだ。

「カメナレフ! フーケは? いえ、『破壊の円盤』はあった!?」

私は駆け込んできたルイズに、ちょっと考えてから「いや、まだ見つかってねぇ」と嘘をついた。
まだ中身を確認してねぇのにこいつらに渡すわけにはいかなかった。

「ちゃんと探したの?」

ルイズは埃っぽい部屋を見て嫌そうにしながらも部屋の中を捜索していく。
タバサは何も言わずに崩れた暖炉の中に入りそうな勢いだったが、私はディスクの確認に忙しかった。

「もう逃げた後なのかしら?」

キュルケが言いながら、炭にでもするつもりだったのか積まれたまま埃を被った薪を崩す。
399名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/31(木) 21:42:27 ID:DZx+WH2O
マジシャンズ・レッドの視界でそれを見ながら、ディスクを少し傾ける。だがまだ映らない…しかし、マチルダお姉さんはなんでこれをあっさり返したんだ?
その事を疑問に思った私は、急いでマジシャンズ・レッドに周囲を確認させる。
マチルダお姉さんの姿は、もう見えなくなっていた。
焦って確認してる間に逃げられたのか!?

「ん…!? おい、ルイズッ、マチ…いやミス・ロングビルはどうした!?」
「…アンタ、また何かする気じゃあ「いいから教えてくれ」っ外で周囲を警戒してるわよ!」

キツイ口調で私に言うと、ご主人様になんて口きくのよ、とか全く、そんなにあの人が好きならあの人の使い魔になればいいのよ、とかなんとかルイズはブツブツ言いだす。
だが、そんなルイズに突っ込みを入れてやる余裕は、私からは消えようとしていた。

なんだと!?
私は慌ててマジシャンズ・レッドを外に出す。
だが、もう遅かった。
その時には、マチルダお姉さんは既に造られた、大体30メートル位はありそうな巨大な土のゴーレムに捕まれ、森へと投げ捨てられる瞬間だった。
私にはわざとらしく聞こえる悲鳴を聞いて、ルイズ達が小屋から飛び出してくる。

舌打ちをして、私はディスクの中身を見るのを後回しにして、退却を決断した。
このゴーレム相手。しかも本体が逃げちまった状況で戦うのは、かなり不利だぜ。
だが、問題が一つある。ルイズだ。

先日、このゴーレムにまっすぐ向かっていったルイズの行動を考えるなら、ルイズがこのまま何の手柄もなく下がるなんてことは無理だろう。
私は手の中にある円盤を見た。せめて…コイツをゲットしねぇとルイズの頭に退却はない、かもしれねぇな。

「ルイズ、一旦退却しようぜ…!」
「ふざけないで…! 私達は何をしにきたと思ってんのよ!」

一応試しに提案したが、あっさり断られた私はイライラを誤魔化す為に頭をかいた。
ルイズだけじゃねぇ、仕方ないって顔してキュルケまでが杖を抜いてやがるのが、マジシャンズ・レッドの視界に写っている。

どうすりゃいいんだ?
さっさとディスクを渡しちまえば撤退できるのかもしれない。
だが、ディスクに対する執着が、私を迷わせていた。
まだ中身も確認できてねぇってのに、渡しちまっていいのか?

迷う私の耳に、爆発音が届く。
誰より早く、ルイズの爆発がゴーレムをちょっぴり焦げさせたのだ。
それを物ともせず、ゴーレムが振り下ろし、タバサの「エア・ハンマー」がその腕を叩き、軌道を逸らす。
一部だけ腕が砕かれ、風に吹かれて私たちに土砂が降り注ぐ。
ゴーレムの砕け散った部分は、また土を集めて急速に再生しようとしている…
それを見た私は、歯軋りしながらディスクを渡す事を決めた。

その間にキュルケの炎がゴーレムの足を焼く。大きな足の一部を溶かす熱が、風に乗ってこちらまで微かに届いていた。
キュルケがつけたの炎は、勢いが衰える事無く一瞬で燃え広がってゴーレムを焼く…マジシャンズ・レッドの能力は炎を操る事、その炎を操り、巨大な足を一本溶かす勢いにまで高めていく事も可能!
これで少しは時間が稼げるはずだ。

「おかしいわね…あんな動きをするなんて」

その炎を放ったキュルケが鋭い目をして言ったが、それを確かめるより今はゴーレムの相手をするのを優先し、次の魔法を唱えていく。
私も、炎が妙な動きをした事を誤魔化すより先に、次の行動に移っていた。
こんなもんじゃ腕と同じで、すぐに治しちまうだろうからな。
そう考えて、足を片方なくして、地響きと共に倒れるゴーレムを警戒しながら、私はディスクを亀の中から出し…固まった。

亀から出そうとしたディスクの表面は、炎に照らされ輝いていた。そのせいで、見えちまったんだ。
ディスクの表面に、見よう見ようとしていたディスクに込められたスタンドの姿が…一瞬だが、はっきり見えた。
400名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/31(木) 21:43:47 ID:DZx+WH2O
忘れようもない…
あのスタンドは…あのスタンドは…!

ディスクをルイズ達に渡して、撤退をしょうと決めていた私の心は、酷く乱れた。私は決断を再び迫られていた。
このスタンドと他のスタンドを渡すのは、私にとってはわけが違った…ルイズ達はゴーレムに視線釘付けのはず、ディスクには気付いていないはず…そんな考えが浮かんじまう!
亀の中にしまって戦うか、それとも先程考えたとおりにディスクを渡して目的達成したから退却するぜ!って流れに持っていくか、どうすりゃいい…!?

迷っていられる時間は、少なかった。
周りに土はたくさんあるからな。倒れたゴーレムの体は、もうすぐ再生し、立ち上がってくる…!

「畜生ッ…! ルイズ! 『破壊の円盤』を見つけたぜ! 目的は果たした…一時撤退だ!」

あんまり強くかみ締めたせいで、歯が軋むような音を立てた。
悔しいが、仕方ねぇ…ガキが自殺しにいくのを止めるのは大人の甲斐性だからな…!

だが…糞っ
あのディスクは…あのディスクに刻み込まれているスタンドは…!
間違いなくDIOの『世界』だ…!
確かに無差別に人を殺すようなもんじゃねぇが…
あんなもんを、たかが一人のメイジに侵入されて盗まれるような魔法学院にみすみす渡すしかねぇのか?
迷いが、そして共に奴を倒す為に旅した仲間達の姿が私の頭を過ぎるが…私はルイズにディスクを投げ渡した。
言ってみりゃハイスクールの学生と変わらないこいつらを、私の都合で危険に晒すような真似は、私の誇りに傷をつける。

だが…承太郎、! アブドゥル、ジョースターさん、!花京院! イギー!
これで正しかったのか…!?
私は、亀の中でそう思わずにはいられなかったのも、確かだった。

もう一発エア・ハンマーを食らうのは避けたいのか、ゴーレムのまだ回復しきっていない腕が振り上げられ、私達の上に影を落とす。
横倒しになってるくせに、いや、だからこそ改めてデカさを実感しながら、私はマジシャンズ・レッドを操り、ルイズを抱えてその場を離れる。
キュルケとタバサは、レビテーションだかフライだかわかんねぇが、自分で逃げ出せていた。

「よくやったわ! カメナレフの意見に賛成よッ! 一旦退却しましょう!」

キュルケが賛同する声が聞こえる。そして、タバサの使い魔である風竜がマジシャンズ・レッドの視界に写った。
だがディスクを受け取ったルイズの顔は、喜んでる顔じゃあなかった。むしろ怒りに包まれているように見えた。

「嫌よッ私は貴族…盗賊如きに後ろを見せるなんてできないわ!」

…ジョルノなら間違いなく見捨てただろうな。
腹立ちを抑えながら、私はマジシャンズ・レッドを操り近くまできたシルフィードの背中に、私の入った亀と、暴れるルイズを投げた。
ルイズは乱暴に扱われて怒ったようだが、私が渡してやった『世界』のディスクを持っていない方の手に杖を持っているのを見て、私はもっと怒りが沸いていた。
ったく何の為に『世界』のディスクを渡してやったと思ってんだ?

「目的は円盤が第一だろ!? 一旦距離をとるぜ!」
「イ・ヤ・よ! 私は貴族なのよ! 魔法が使える者を貴族っていうんじゃないわ! 敵に後ろを見せない者を貴族と呼ぶのよ! まだ何もしていないのに逃げるなんて…そんな貴族的らしくない振る舞い…できるわけがないじゃない!」

キュルケが呆れたような、感心したような顔を見せる中、私は愕然とした。私にはそれはただのヒステリーな言葉に聞こえた。
その間にタバサのエア・ハンマーが、ゴーレムをまた砕いてその足を止めにかかる。
足を掬われた形になり、倒れていくゴーレムを見て、ルイズの顔には悔しさが浮かんでいた。
ゴーレムを、そしてタバサを睨みつけるルイズの目に、私はルイズが長年溜め込んだ、どろどろした、鬱屈した感情が見えたような気がした。

『ゼロ』、そう繰り返し呼ばれ、見下され、貴族としてこれ以上ない侮辱を受け続けてきたことが、この頑なな態度を作り上げている、
のだが、今の私にはそんなことはわからなかった。
今のルイズじゃあ、どう考えても勝てるわけがねぇ…解ってるのはその一点だけだった。これは確定だろう。
401名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/31(木) 21:44:39 ID:DZx+WH2O
なんせ相手は『土くれのフーケ』じゃなく、『土くれのフーケが作ったゴーレム』だ。
ルイズの爆発で倒せるかどうかも微妙な所だが、別にゴーレムなんぞ倒す必要はねえ。
キュルケ達はどう考えてるかはわからんが、倒した所で何の意味もありゃしねえんだ…遠隔自動操作型のスタンドみたいなもんだからな。

だが、ルイズは、あのゴーレムから逃げることが恥だと勘違いしてやがる…私はそう思って拳を握り締めた!
そのせいで、馬鹿にされることを恐れて、ルイズは無謀な事をしようとしてやがるんだ。
ゴーレムにミンチにされちまうってわからねぇ程馬鹿じゃねぇだろうが、また馬鹿にされて悔しい思いをする方が、ずっと納得できないと思い込んでいるらしい…
ルイズの一見気高い、だが私にすれば、サイズ的に言って、例えて言うならノミの蛮勇でしかないこんな行動をさせるわけには行かなかった。

ディスクの奪取だけで十分な功績と、私は思うからな…口の悪い連中は、どんな功績を挙げようが陰口を叩くもんだぜ。
胸糞悪くなった私は吐き捨てるように言う。

「そういう奴らは、どうせ何したって言う。言わせとけばいいじゃねぇか!」
「黙りなさいカメナレフ! あいつを捕まえれば、あいつを捕まえさえすれば、誰ももう私をゼロのルイズとは呼ばないでしょ!」

私はそれを聞いて舌打ちする。
私も若い頃無鉄砲だったと思うが、ここまで酷くはなかったぜ。

ジョースターさんが撤退するのに反対し、DIOに向かっていこうとした時の私もこんな風に見えてたんじゃねぇだろうな?
承太郎が来なきゃあ、こんな、無謀な真似を…こんなのは誇り高い、勇気を振り絞った行動じゃねえってのに。
私は反吐が出るような気分で、覚悟を決めた。戦うと。

「チッ、こんな事なら渡さなきゃよかったな…わかったぜルイズ。だが、今は距離をとる」
「嫌だって「いいから聞け! アレはフーケじゃねぇ! フーケが作ったゴーレムだ!いるとすれば…」

反論しようとするルイズを怒鳴りつけ、私はマチルダお姉さんが落ちていった辺りを見る。
マジシャンズ・レッドの目でも、まだ見えないが、近づけば見つけられないことは無いはずだ。
最悪、森を焼いちまうって手も無いことも無い…やりたくはねぇがな。

「いるとすれば、フーケは森だ! この辺りにはいねぇんだからな! そっちを叩きゃいいんだ…魔法の事はよくわからんが、なんせ向こうはゴーレムを作ってる。本人は無防備なんじゃねぇのか?」

私の言葉に、ルイズはちょっぴり冷静さを取り戻して森を見る。
だが、飢えたような目だ。功名に焦り、周りが見えてねぇ…そんな風に感じられるぜ。
心配する私を他所に、ディスクが傷つきかねない強さで、ルイズは指に力を込めていた。

「あのゴーレムと…他の強力な魔法を同時に使うのは、無理」

私の言葉にタバサは同意してくれたようだ。
シルフィードがきゅい、と鳴いてゴーレムから逃げる動きから、マチルダお姉さんが落ちていった森へと向かう動きへ変化する。
キュルケが後ろを振り返り、乱れる髪を押さえながら手を伸ばしてシルフィードを掴もうとするゴーレムを見た。

「そうね…それに幸い、シルフィードの方がゴーレムより速いわ」
「でも、…どこにいるのよ!」

焦りを口にするルイズの頭をマジシャンズ・レッドの手でくしゃくしゃにしながら、私は言う。
こいつらは信じちゃあいないが、『土くれのフーケ』は間違いなくマチルダお姉さんだ。
それはこれまでのマチルダお姉さんの態度からもはっきりしてる。

「まずはミス・ロングビルが落ちた辺りだ。どこにいるにしろ。あの人を拾おうぜ」

そして見つけ次第私はまた殴り倒す。そうやってゴーレムが消えちまえば、流石にこいつらも認めるだろうからな。
シルフィードが私の言葉を聞いたタバサの指示を受けて、飛んでいく。
マジシャンズ・レッドを飛ばし、私はマチルダお姉さんを探す。
402名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/31(木) 21:49:18 ID:bVrNRq36
しえん!
403名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/31(木) 21:50:14 ID:TEptNV/A
遅れたか?兎に角支援だっ!
404名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/31(木) 21:53:23 ID:Q0bro872
基本的にポルポルはいいやつなんだよな 支援
405名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/31(木) 21:56:40 ID:DZx+WH2O
しかし、遠距離操作型のスタンドとの戦いは、本体を叩くに限るんだが、まさかファンタジーでも通用するとはな。
後の問題は眼下に広がる森は広大で、人一人探しながら巨大なゴーレムの攻撃もかわさなくちゃならねぇってことだ。
ジョースターさんなら、あっさり見つけられるかもしれない。
ちょっと回りを攻撃したりして、それに対するゴーレムの反応とか、『ハーミット・パープル』の能力なら位置を絞り込むのかもしれん。
だが私にもマジシャンズ・レッドにもそんな能力は……私はそこでいい事を一つ思い出した。

フフッ、今日の私は冴えてるぜ。

「マジシャンズ・レッド!」

私は、炎の線で結ばれた、四方と上下の6つで一つを構成する炎を生み出させ、その様子を見る。よし、賭けだったが、私にもできたか。
突然叫び、炎を出現させた私にルイズ達は驚いていた。

「カメナレフ、貴方…先住魔法が使えたの?」
「先住? いや違うが、炎は操れる」

炎に照らされているだろうマジシャンズ・レッドの視界で燃え上がる炎を見つめ、死ぬ直前のアブドゥルを思い出して私はしんみりした気分で説明を始めた。

「この炎は生物探知機だ。人間とかの呼吸や動く気配を感じ取る」
「6つの炎は、方向?」

私は説明されるまでわからなかったんだが、タバサは検討をつけたらしい。
あぁ、と私は頷いた。

「半径15メートル…こっちじゃメイルか? その範囲内にいるものならどの方向にどんな大きさのものが隠れているかわかる!」

私の説明に、低空飛行を始めるシルフィード。
それを指示したタバサに、どうせ見えはしねえだろうから、そのままの高さを保つように言って、私は炎を操る事に集中していった。



以上です。

間違えてまた規制に引っかかる行為を続けてた私頭が間抜けOTL
今回はちょっとだけポルナレフシリアスでした。
それと、前々からどうしようか迷っていたのですが、
13巻で新たに明かされたことを考えると、やっぱり私の力では今後明かされることを全部反映していくのは無理だと考えました。
ですので、このポル+ジョルノでは12.13巻前後以降の設定は、全部反映しないことにしました。申し訳ない(′・ω・)
406名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/31(木) 21:58:56 ID:GYLTrV+z
GJ!
そのイライラ感はよくわかるぜカメナレフw

ところで>>392はまだいるかい?
407名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/31(木) 21:59:27 ID:p3HbxsE0
GJ!
ジョルノは登場しなかったのが残念…5部メンバー同時登場を狙っていたのに…。
てかザ・ワールド!?だれが使うんだその能力!?

10時半より投下予告。
408名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/31(木) 22:01:18 ID:bVrNRq36
GJ!

409名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/31(木) 22:07:58 ID:DZx+WH2O
ごめん一つききたい事書き忘れてました。
書いてて思ったんだけど、『ザ・ワールド』の価値を十分すぎるほど知ってて、この状況でネコババしないのは、ポルだけじゃないかと思うんだけどどうかな?
だから『世界』にしたんだけど・・・他のキャラだと、確かに困難だがryで両方やってしまう気がするから、出さなかったかもしれない(。。)
このまま投下にwktk
410名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/31(木) 22:24:36 ID:b6lWC356
まあ3部のボス能力だしジョジョ的に見てもトップクラスの能力だからな。
411slave sleep〜使い魔が来る:2008/01/31(木) 22:26:41 ID:p3HbxsE0
チクショウッ!やっとオリジナル分終わりかッ!!
次でやっとフーケ戦突入とかバカじゃねーのオレ!

とにかく当分オリジナルをやめてやるからなッ!
しばらく原作薄なぞりだコノヤロー!!
412名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/31(木) 22:30:26 ID:u2C6WqeC
支援間に合わなかった・・・orz 
ポルナレフの報われなさっぷりにポルファンの俺涙目wwww
413slave sleep〜使い魔が来る:2008/01/31(木) 22:33:14 ID:p3HbxsE0
「お姉さま!しっかりして!お姉さま!」
ルイズを背負ったイルククゥがキュルケがお姫さま抱っこで運んでいるタバサをつついて起こそうとしていた。
「お姉さま!おいちびすけ!気をしっかり持たないとダメ!きゅいきゅい!」
「大丈夫よ。ダメージと言ってもダーリンがぶっ飛ばしたアイツの下敷きになった程度よ。
それよりルイズの足がかなり危険よ…。早く直さないと。」
キュルケの心配そうな目に気付き、ルイズが言う。
「アンタなんかに…心配されるほどひどくないわよ。アンタがアイツに喰らったダメージのほうが
やばいんじゃない?」
「問題ないわよ。ヒョロヒョロのアンタよりはタフだから。主に胸周り的な意味で。」
「こんな時までその話題やめなさいよ!いよいよ持って頭に来るんだから!」
しかし軽口を叩くキュルケもやはり結構アヌビスの攻撃でボロボロになっていた。
一方キュルケはルイズの周りからバカにされてもめげなかった心の強さを知っている。
これだけ言い返せれば問題はないだろうと思いつつキュルケはブチャラティの心配をしていた。
(アイツの能力は危険すぎる。もう最後はほとんどの攻撃をあっさりといなしていた。
同じ攻撃はいっさい奴には届かない。どうやってしとめる気…?ダーリン。)
いつになく苦しい表情をみせるキュルケ。
しかし目の前の建物をみてやっとその表情が緩んだ。
デルフやアヌビスを売っていた武器屋だ。あの店主がまだ固まっている。
「やったわあの武器屋よ!ねえ!さっきの剣の鞘まだある!?」
「ハッ!…ええ、鞘だけ置いて行っちまったのが気になりましてね、ずっと持ってやした。」
鞘をキュルケが受け取るとそのままスタコラサッサと店主は逃げていった。
「よし!コイツがあれば奴を封じ込めることが出来る!!」
「きゅい!私が持っていくわ!この子持っててほしいのね!!」
ルイズをキュルケの背中に乗せてイルククゥが疾走する。
「フギャ!ちょっと!重傷人に二人もあずけないでよ!二人も持てるわけ…あら、持てるわね。
アンタたちどんだけ軽いのよ。全く。」
ルイズはなぜか顔を赤くしたまま何も言わなかった。
414slave sleep〜使い魔が来る:2008/01/31(木) 22:37:27 ID:p3HbxsE0
「人を操り、先頭データを記憶し、しかも防御不能の刃。これほどやっかいな能力に会うのも
ずいぶん久しぶりだ…。」
ブチャラティが嫌な汗をかきながらそうつぶやく。
右手にアヌビス神、左手にキャラバン・サライの杖でもあるナイフを持ってアヌビスが佇んでいた。
お互いに走る緊張。ブチャラティとアヌビスが睨みあう。
その最中、ブチャラティはアヌビスを倒す方法を考える。
(つまり同じ方法にはもうひっかかからないと言う事か?奴を倒したければ策を使いまわすことをするな
と言うことなのか?)
「フフフ。ブチャラティ、お前オレを恐れているな?同じ手も通用しない、防御もできない、
そんな奴に自分の能力が通じるのか?とな。」
アヌビスが余裕をこめてそう挑発気味に言う。しかしブチャラティは首を振る。
「おまえの能力はやっかいで、正直オレに勝てるかどうかわからない。それは認めざるを得ないな。
けど、これまでだって予想だにしてなかったようなやっかいな能力を相手にしてきたからな。いまさら恐れると言われてもな。」
ところで、とブチャラティが続ける。
「おまえ、さっきタバサやそいつの記憶を読み取ったと言ってたよな。じゃあそいつが殺されても文句はいえない
ような悪党だってことはわかってるだろ?」
何を言い出すんだ?と思いつつもアヌビスはキャラバンの記憶を読み取る。
「なるほど、ずいぶん血なまぐさい。オレも一応悪党のつもりだがこいつは典型的なクズだな。
この戦闘能力は気に入ったけどな。で、何が言いたいんだ?」
「さっきはタバサを操られてたから本気を出すことは出来なかったが…。」
『スティッキィ・フィンガース』と一声上げるとブチャラティの傍にいつものようにスタンドが現れる。
加えて、デルフを構えることで、ブチャラティの殺気がようやくアヌビスも感じられた。
「おまえがそいつを操ってる今、もうオレにお前を殺すためらいはない。それだけ言っておくからな。」
「敵に忠告とはちょっと甘いんじゃないか?いいとも。結局殺し合いに違いないからな。」
415slave sleep〜使い魔が来る:2008/01/31(木) 22:38:09 ID:p3HbxsE0
「『ウインド・ブレイク』ッ!!」
アヌビスの呪文で突風が吹き荒れる。
ブチャラティに向けて横殴りの突風を吹かせてバランスを崩す。
そして一瞬の隙を突いてどてっ腹をかっさばいてやろうとした。
あっけないがこれだけで素人だったら一撃必殺なのだ。だがバランスを崩されたブチャラティは逆に!

逆に思いっきりのけぞったのだ!!

「ああ!?何やってんだ!?」
当然のけぞったブチャラティは地面に倒れる。
だがブチャラティが一瞬で地面にジッパーを発現させて背中から中に入る。
「この断面はジッパー…。近距離パワー型の殴ったところにジッパーを出す能力?」
しかしブチャラティの能力を理解するほんの一瞬の隙すら命取り。
ジッパーで地面に隠れてからほんの2秒、すぐにアヌビスの背後からブチャラティが顔を出す。
と同時にデルフの刃を振るい、アヌビスにすぐ感づかれてその斬撃を受け止めた。
「感のいい奴だ…。ジッパーから吹き込んで来る風の動きに感づいたか…。しかもなかなか素早い動きだ…。
純粋な戦闘能力だけならあの老化のスタンド使い(プロシュートと呼ばれていたか?)や地面を潜るスタンド使い(マジに名前を知らない)
にも勝る動き…。大した実力と判断するぜ。」
「そのジッパーの能力、トリッキーな動きがウリなのか…。クックック。たしかに憶えたぞ!」
ブチャラティが訝しげに顔をゆがめながらスタンドの拳を叩き込むが素早く避けられた。
(憶えた…。もう憶えたのか?スピードだけじゃあない。こいつの成長性は生半可な代物じゃない!)
「しゃあああああああああああッ!!!!」
アヌビスが刃を振るう。ブチャラティはすんでのところで避けるが額にかすり傷を作った。

416slave sleep〜使い魔が来る:2008/01/31(木) 22:38:38 ID:p3HbxsE0
「うおおおおおお!!!このスピード!!どんどんオレのスピードを憶えているのか!?」
「スピードだけじゃねえ!拳と剣の攻撃パターンも憶えている!その一撃一撃がおまえをじりじりと追い詰める!!」
余裕のアヌビスがブチャラティを精神的に追い詰める。
だが追い詰めたと思ったブチャラティは、まだ喰らいついてきた。
ブチャラティがその場で身を下にかがめて言う。
「ならまずは!スティッキィ・フィンガース!!」
ブチャラティが前方の地面を殴ってジッパーを発現させる。
「なんだ?隠れて斬るのはもう憶えたと…うおおお!?」
アヌビスの右足に階段を踏み外すような不自然な浮遊感が襲う。
そこにはブチャラティの拳からアヌビスの足元まで伸びるように開いたジッパーの『落とし穴』があった。
「閉じろジッパー!!」
両側から右足を固定するようにジッパーが閉まる。
「おおっと!?あぶねえ!」
アヌビスが足を上げて固定を防ぎブチャラティに反撃を返そうとして!
ドグシャア!という鈍い音が腹に突き刺さる。

ブチャラティが地面に作ったジッパーはアヌビスの足をかける落とし穴のジッパーだけではなかったのだ。
落とし穴に目をやったアヌビスの視界から死角になるように足の間にもう一つジッパーを左足よりに用意し、
2つめのジッパーの持ち手を持ちながら『閉じろ』の合図で加速して突進を喰らわしたのだ。
狙い通りアヌビスが足を開放する一瞬の隙にねじ込むようにブチャラティの頭突きが決まったのだが。
「本当はスピードに乗せて拳を叩き込み一気に杖のナイフを手ごと切り離す予定だったんだが…。
ジッパーの閉じるスピードまで上がっちまうなんて…。」
「なにもかも強化しちまうのも考え物って奴か?相棒!」
アヌビスが口から出た血をぬぐって思考する。
(なんて…なんて応用に富んだスタンド能力!だがその手も憶えたッ!!)


417名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/31(木) 22:41:15 ID:u2C6WqeC
間に合うか!?支援!!
418slave sleep〜使い魔が来る:2008/01/31(木) 22:41:51 ID:p3HbxsE0
「スティッキィ・フィンガース!」
ブチャラティはアヌビスに休む暇を与えないように今度はデルフに拳を叩き込んだ。
「アダッ!もう少し優しくできねーのかよ!!」
デルフの恨み言が聞こえたと同時にその刃が離れたところからアヌビスの元に飛ぶ!
「今度はジッパーで刃を切り離しやがったか!まるでポルナレフの『剣針飛ばし』!
だがだからこそ対処は簡単だ!」
ヒョイ、とわりとあっさりと回避した。
「このまま切り裂いてやるぜッ!!『エア・ハンマー!!』」
風の打撃がブチャラティを襲う。ブチャラティは当たり前のようにS・フィンガースで防御するが、
おたがい優れたスピードを持った物同士、一瞬の隙が命取りなのはすでに承知の事実!
一刀両断。この言葉を現実の物とするかのごとくブチャラティの頭部に振り下ろされる!
「スタープラチナやシルバーチャリオッツのスピードを取り込んだこの一撃!憶えたお前の動きで
防げはしないぜ!これで正真正銘の終わりだッ!!くらえ!」
無常に振り下ろされるアヌビスの凶刃。その刃はブチャラティの頭から正中線をかっさば…かなかった。
スカッという手ごたえのなさに一番驚いたのはアヌビスだ。
「な…?え!?」
ブチャラティはすでにエア・ハンマーを喰らうまえに自分を打ってジッパーを発現させていたのだ。
そしてアヌビスの攻撃が来る前に緊急回避して致命傷を防いだのだ。
ブチャラティはこのチャンスを逃さなかった。
「遅いッ!!」
ブチャラティの拳が襲い掛かるッ!アヌビスは思わずもう片方の左手で防いでしまった。
杖でもあるナイフを持った片手で。

パックリと、左手にジッパーが発生して切り離される。ブチャラティは地に落ちるのを待たずに
拳の連打をナイフに食らわす。
そして空中でナイフを粉々に砕いた後、その拳が避けようとしたアヌビスの左肩に当たる。
「うぐえええッ!!」
といううめき声を上げながらアヌビスは後ろに吹っ飛んだ。
だがそれも良くなかった。

スパァァァァッ!!

全く警戒してなかった方向からアヌビスのすぐ脇をデルフの刃がブチャラティの方向に戻る。
その動作によってアヌビスの脇に刃が深くかすり、ドバッと血が吹き出る。
「グオァ!?な、なんで見切ったはずの斬撃が今襲い掛かってくる!?」

419slave sleep〜使い魔が来る:2008/01/31(木) 22:43:09 ID:p3HbxsE0
「やった!これで奴の魔法は封じたぜ!チャンスだ!」
ブチャラティが帰ってきたデルフの刃を受け止める。
だが今のアヌビスは魔法の使用不能以上に突然わき腹に出来たダメージに関する疑問でいっぱいだ。
だが、アヌビスは見た。ブチャラティが元の形に戻そうとしているデルフを。
(なんだ?柄と刃が…紐状のジッパーで繋がっている!?)
ブチャラティがその視線に気付いて言う。
「お前さっきポルナレフと言う名を言ったな?なぜ彼の名を知っているのかしらないが、
これはお前の知っているような技じゃない。」
簡単なことである。つまり今度の剣針飛ばしは長い紐状のジッパーで柄と刃を繋いだまま投げたのだ。
紐がついたことでいちいち拾いに行かなくても戻すことができるし、柱などに軽く交差して反対方向からの
攻撃などを行えるブチャラティ好みのトリッキーな技。
「いわば『有線剣針飛ばし』と言ったところか。これがオレの強みだ。単純な能力をアイディア次第でいくつもの
手数を用意することができる。これを全て憶えられる前に片付けれるとなればいくらおまえでも少しやばいんじゃあないか?」
「ク、クソッ!ジッパーの能力でここまでやるとは…!!」
アヌビスがもはや左肩の付け根から切り離された手を見て毒づく。
『アヌビス神』の学習能力は確かに頭を抱えたくなるくらい厄介で、
それこそ時を止めるなり、学習できても意味ない能力でもないと屈服させられない能力だ。
これまでのアヌビスの勝因も相手の全ての手を読みきり、万策尽きた相手をバッサリ切ることで勝負をつけていた。
だがブチャラティの『スティッキィ・フィンガース』のジッパーの能力は単純だが、その一言で片付けていい物ではなかった。
開く動作、閉じる動作、繋げる動作、それらの組み合わせのバリエーションは幅広く、
アヌビスの能力でも全ての動作を憶えるにはあまりにも時間がかかりすぎるのだ。
なかでも開く動作が一番アヌビスを苦しめていた。
(クソッ!今の緊急回避といい…、最初の切り離しによる開放といい、この幅広い応用力といい…!

『スティッキィ・フィンガース』の能力!この『アヌビス神』の能力と相性が致命的に悪いッ!)

あげくのはてにアヌビスはたった今片腕と魔法という攻撃手段を失って状況は最悪だった。
魔法はルイズに使いすぎてどの道精神力が底をついていたからともかく、実戦で片腕を失うだけでかなりの
戦力ダウンになってしまうのは避けられない。



420名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/31(木) 22:43:50 ID:u2C6WqeC
もういっちょ、支援!
421名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/31(木) 22:44:38 ID:GYLTrV+z
しえん
422名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/31(木) 22:44:40 ID:lkf5e5y/
支援
423slave sleep〜使い魔が来る:2008/01/31(木) 22:46:59 ID:p3HbxsE0
ブチャラティが冷たい目線をアヌビスに投げかける。
「どうした?背中が煤けているな。もうあきらめて投降するか?」
「ナメるな……!」
(いくら手数が多いからって所詮は有限!長期戦に持ち込めれば体力も手数もすり減らすことができるはず!
むしろ奴の勝機は短期決戦しかないんだッ!どんなに相性が悪くても所詮……!)
だがアヌビスは気がついた。短期決戦しか勝てる方法がないという事を今アヌビスが気付いた事で、逆に不安が生じたのだ。
(いや……。ダメだ!そんな簡単に行くとは思えない!長期戦に持ち込むのが定石だからこそ逆にヤバイと思うぜ!
短期決戦でないと勝てないのに奴だけが気付いてないとは思えない!むしろオレが安直にそういう戦法を取ってくることを
逆手にとって一手打たれて返り討ちかもしれない!奴を相手に長期戦の戦法を取ることほど危険なことはないと判断するぜ…!)
しかしアヌビスはキャラバンの顔にほんのわずかだが笑みを浮かばせる。
(そうとも。奴はそういう戦法を取ってくるために長期戦の戦法に対する策を練ってるだろうからこそあえての短期決戦!
まさか自分の不利な状況を自ら選ぶとは思っていまい!)
アヌビスの思考がブチャラティを欺くためにある手を閃く。
(そう…。ならばこちらもねこだましと行こうじゃないか…!)
そう思ってアヌビスが取った行動。まずそのアヌビス神の持ち手を口でくわえ、ある物を拾う。
「それは!?」
ブチャラティの目線がそれを捉える。
それは先ほどまで操られていたタバサの所持品。彼女の身長よりもある杖だったのだ。
「まさか…それで魔法が使えるのか!?」
「それはないぜ相棒!自分に合った杖でもないのに使えるもんかよ!」
だがアヌビスは含みのある笑いを浮かべる。
「使えるんだよ…。おれが今まで操ったことのある人間の杖ならいくらでもな!」
アヌビスが杖を前に掲げる。
「見せてやるぜ!必殺の『瞬間移動』って奴をッ!!」




424名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/31(木) 22:48:01 ID:u2C6WqeC
ブチャラティとslaveさん頑張れ支援!
425slave sleep〜使い魔が来る:2008/01/31(木) 22:48:58 ID:p3HbxsE0
アヌビスがタバサの杖の先で地面を強く突く。ブチャラティが本気で警戒したその時だ。
「くっ!?」
不意にブチャラティが反射的に視界をほんの一瞬だが閉じてしまう。
すぐ見開いた時にはすでにアヌビスは視界から完全に消えていた。後に残るのはタバサの杖のみ。
「なにっ!?ヤツはどこに消えた!?」
ブチャラティが息を呑む。アヌビスが宣言どおりに消えて見せたことに本気で驚いたのだ。
だがデルフの声で我に帰ることが出来た。
「ちがう相棒ッ!後ろだァーーーーーーーーーーーーッ!!」

ザクリ、と音がした。デルフの声が聞こえた時には背中に定規とカッターナイフを使ったように綺麗に背中を斬られた。

「あ…がぁッ!!」
ブチャラティが背中を押さえる。だが血液が大量に噴出しはしなかった。
斬られたのは背中だけでその間の服は切れなかったからだ。
その代わりのようにブチャラティの服の背中の部分が血でにじみつつあった。
アヌビスが歯噛みしながら言う。
「チィッ。デル公に救われたか。その声を聞いた一瞬で前に踏み出すなんてよ。
おかげで一撃ではしとめることは出来なかった…。しかもそのジッパーそういう使い方もアリなのか?」
ブチャラティが瞬時に服の下の背中の傷をジッパーで塞ぐ。これである程度は止血ができるのだ。
しかしジッパーの隙間からは血が流れ続ける。
やはりアヌビスは『瞬間移動』など出来なかった。ただのハッタリだったのだ。
まずタバサの杖を持ってブチャラティに大きくアピールし、ブチャラティの目をタバサの杖に引き付ける。
次にタバサの杖でブチャラティの目に向かうように計算して地面の小石を突く。
ブチャラティの視界を一瞬閉ざしているうちに立てたタバサの杖を踏み台に上に飛び、建物の上に飛び乗る。
後はハッタリに気付かれる前にブチャラティをその刃で葬るという作戦だったのだ。
ちなみにこの手はとある少年がおじさんXを嵌めるために使った手の応用だが、アヌビスはそれを知らない。
とはいえ、この一撃はブチャラティに大きな打撃を与えた。
ブチャラティの息が明らかに荒くなる。顔色もだんだん悪くなっていった。
そのため、うっかりブチャラティがよろけた時だ。
「隙だらけだッ!討ち取ったりィィーーーーーッ!!!」
アヌビスが正面から喉元を狙ってとどめを刺そうとする。
だがそれは。

「うりゃーーーーーーーーーッ!!!」

という少し抜けた高い声が遮った。

426slave sleep〜使い魔が来る:2008/01/31(木) 22:51:29 ID:p3HbxsE0
アヌビスがふいに横から発せられた声に反応する。
だがその方向から大量のレンガの雪崩が押し寄せて来た。
「お、お、おおおおおお!?」
アヌビスがうろたえる。だがその対処は速い。
目にもとまらぬほどの剣さばきでレンガの雨を粉々に切り捨てる。
さばき終わった後でアヌビスが声のした右上方向をみる。そこにあったのは。
「きゅーーーいーーーーーー!!!」
大きな岩を抱えていた青髪の女性が今まさに屋根からアヌビスに向けて投げかけていた光景だった。
「イルククゥッ!!」
「うわわわわわ!!!」
アヌビスが思わず後ろに下がる。
イルククゥはそれを確認せずにブチャラティに手を差し伸べる。
「おかっぱさん捕まってッ!!」
ブチャラティが躊躇せずに手を掴み屋根によじ登る。
その際に、イルククゥが背中の傷を見る。
「きゅい!?おかっぱさんその背中大丈夫!?」
「問題ない。一旦退くぞ!」
そのままブチャラティがイルククゥの手を引いて屋根を飛び飛び走る。
「あっ、おかっぱさん!?」


427名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/31(木) 22:55:43 ID:b6lWC356
支援。
おかっぱさんって呼び方にちょっと萌えた
428名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/31(木) 22:56:25 ID:u2C6WqeC
ブチャ、痛そう・・・。
それにしてもアヌビスってマジで凶悪なスタンドだなぁ。
操させる生き物さえいればだけど。
429slave sleep〜使い魔が来る:2008/01/31(木) 23:02:22 ID:p3HbxsE0
「逃げに徹するかぁ!逃しはしねーよッ!!」
続いてよじ登ったアヌビスがすぐ後ろをつけてくる。
「走れ!オレから離れるなッ!!」
イルククゥがブチャラティに手を引かれなすがままに走る。
「あ・・・。」
イルククゥは今、自分が危機のど真ん中にいることはわかっていた。
だが、自分の今抱いた気持ちはその焦りを薄れさせていく。
胸の辺りに暖かい物が広がっていくような感覚がする。
自分の手を引くブチャラティの手は暖かく、とても頼もしかった。
イルククゥはその手を絶対に離すまいとしっかりその手を強く握り締めた。

「高い位置にいけばわかるとは思ったが、やはり見つかった。」
ブチャラティが走りつつ、あたりを見回して言う。
イルククゥの方向は向かないまま言う。
「まずここで降りるぞイルククゥ!コケるなよ。」
「え?だってここまだ屋根じゃ、え?あ、きゃあああああッ!!」
ブチャラティがジッパーで屋根に穴を開け、そこから建物の中にこの上なくナチュラルな動作で入る。
だが虚を突かれたイルククゥがズッターーーーーンッ!と、ハデな音をたてて着地失敗した。
ついでに顔面からその家の住人らしき女性の昼食に飛び込んでしまう。ケチャップらしいソースでイルククゥの顔が真っ赤に染まる。
「きゃッ!?なんなんだよ君たちッ!?ボクの昼メシに顔から突っ込んだりして!人を呼ぶよッ!!」
「騒いですまない。命を狙われてるんだ。走れイルククゥ!」
「さっきからいたい目にばっかりあってるのね…。ヒドイわよねこんな仕打ち。」

430名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/31(木) 23:05:46 ID:u2C6WqeC
ブチャは上司の娘だけじゃなく、主だけじゃなく、韻竜までも夢中にさせるのか支援
431名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/31(木) 23:06:03 ID:85n5hZMv
支援
432slave sleep〜使い魔が来る:2008/01/31(木) 23:08:01 ID:p3HbxsE0
ブチャラティがジッパーで地面から家を出る。
飛び込んだ家から三軒隣の家から出てイルククゥに話しかける。
「ところでイルククゥ、鞘は持ってきたのか?」
「きゅい!バッチリ持ってきたのね!」
イルククゥはやけに張り切った様子で腰に巻いていた鞘を見せる。
ブチャラティも確かに先ほど間近で見た鞘と同じものと判別したところで足を止めた。
「よし、ここでいい。イルククゥ!鞘はおまえが持っていろ。あとこれはタバサの杖だ。
タバサと縁があるんだろ?おまえが持っているんだ。」
「きゅい?うん、持っているのね…。」
いつの間にジッパーで体内にしまっていたのか持ってきていた杖をイルククゥに渡す。
そして屋根を飛び飛び進んだ果てに、妙に開けた場所にたどり着いたようだ。
「よしイルククゥ。奴が来る前に早いとこ隠れろ。」
「きゅい!?何いってるの!?」
イルククゥが珍しく怒った様子で頬を膨らせる。
ブチャラティの事を心配して来たのに本人が「おまえは足手まといだから隠れてろ。」と言われては
流石のイルククゥも怒ってしまう物だ。
「確かにシルフィ…イルククゥはおかっぱさんみたいにスタ…ンド…だったっけ?それが使えたりはしないのね。
でも相手はどんどん技を覚えていくんでしょう?だったら一人じゃ危険だわ!でも協力すればもしかしたら…!」
「イルククゥ。お前に言われなくともオレは奴が一人で相手をするにはいささか危険な相手だということも
リスクを背負いでもしないと勝てないことも最初からすでにわかってる。だから必ず勝つためにもう一度忠告しよう。隠れてろイルククゥ。」
433名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/31(木) 23:08:49 ID:b6lWC356
ししぇん。
434slave sleep〜使い魔が来る:2008/01/31(木) 23:11:02 ID:p3HbxsE0
「どうやら、追いついたみたいだぜ。」
アヌビスが立ち止まってしまったブチャラティを前にして言う。
(クソッ!こいつに会う前に桃色の髪の女が放った爆発で食らったダメージが残ってるな…。
コイツが人並みはずれた丈夫さを持っているとはいえかなりまずいかもな。)
ブチャラティが待ち構えていた場所は何の変哲もない広場だった。
辺りに細い柱が数本立っているが、流石のブチャラティもこの柱には隠れられそうにない。
これと言って罠を仕掛けている気配もなく、デルフリンガーを左手に持ってアヌビスを睨み付ける。
「さっきの女に剣を持たせて二人がかりで戦ってくるというオチはないって判断していいのか?
まあ、戦いやすい場所を選んでくれたことには感謝してやるがね。」
しかし、ブチャラティからの返事はない。
その代わりにブチャラティが再びジッパーの紐で繋がった剣の刃をアヌビスめがけて左斜め上の角度から放つ。
「おっと!」
しかしアヌビスが憶えた技を真正面から使って来ても通用するはずもない。すぐさま反応『しようとした』。
しようとしたが、失敗したのだ。

不意に左から柱が倒れ、繋げているジッパーの紐を押したからだ。
凛と張っている紐は柱に押されて刃の角度が急変化する。

435名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/31(木) 23:11:05 ID:85n5hZMv
しえん
436slave sleep〜使い魔が来る:2008/01/31(木) 23:13:39 ID:p3HbxsE0
「うおおッ!?ちょっとばかし切れたか?」
結果、角度の関係で撫で斬る様なパワーが少々殺されてしまったような攻撃になってしまったが、アヌビスに攻撃があたる。
胸の辺りを斬られたアヌビス。だが次に反応したのは即座に距離を詰めようとするブチャラティ。
ジッパーの紐を持って鎖鎌のようにデルフを叩きつける。
アヌビスも即座に対応するが鎖鎌は不規則な動きをするのでなかなか受け辛いのだ。
数百年前ほど前に戦った時もスタンド使いでもない相手にそういう風にほんのちょっぴり手こずった事を思い出しながら言う。
「あの時も鎖鎌の不規則な動きを受けるのは苦労したぜ。最も今はその時のデータを憶えているから
対処するのはたやすいモンだがな!」
ガキンッ!!と簡単にはじき返したが、ブチャラティはその後ろからすでにスティッキィ・フィンガースを
放ってたたみかけようとする。
しかしアヌビスは冷静に対処を図った。
「そろそろとどめと行こうか?ただしこのブチャラティ抜け目ない奴。安全策を取ってからとどめといくか。
さっき背中を斬ったおかげで…。用意は出来ているッ!」
アヌビスは一歩後ろに下がって横薙ぎに剣を振るう。
一歩下がったせいでスティッキィ・フィンガースにかすりもせず空を切った。完全に空振りだった。

振るった事でさっき背を斬った時に刃についたブチャラティの血が目元に飛ばなければ完璧に大ハズレだった。

「ぐうッ!?」
ブチャラティが思わず目をつぶってしまう。
先ほどの不意打ちをもう一度やる気か。自らの感覚は次の攻撃を予測した。
しかしもう遅かった。すでにアヌビスは背後に飛んでいた。
「どうだ!この血の目潰しはッ!勝ったッ!死ねィッ!!」
声で方向を把握する。右後ろだ。
437名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/31(木) 23:14:25 ID:b6lWC356
しぇん。
第三部完!
438slave sleep〜使い魔が来る:2008/01/31(木) 23:15:15 ID:p3HbxsE0
ブチャラティは対処しようと手を背中に向けようとしてやめた。
代わりに薄目で見たのは前方の入り口。
「とうとうあきらめやがったか。動かなければ楽に死ねるぜ!」
「いや、あきらめるんじゃあない。やめたんだよ。どうやらいい具合でかけつけてくれたみたいだからな。」
「あ?」
ブチャラティは上の太陽を薄目で見て角度を確かめる。

「そろそろ30分だったか。べネ。おかげで思いのほか簡単に倒せそうだ。」

不意に、後ろで何かが大きな物に叩きつけられるような物音がする。
まるで後ろの奴が『エア・ハンマー』を叩きつけられたような音だった。
やがて入り口から広場に入って来た3人のうちの一人がブチャラティに話しかける。
「間に合った、のかな?少なくとも君のピンチギリギリには間に合った気はするけど。」
「いや、十分だ。来てくれてうれしいよ。」
ウェールズ、ギーシュ、マリコルヌの三人だった。ブチャラティがわざとノロノロ時間をかけて逃げ回り、
30分後に広場にたどり着くよう時間つぶしをしていたのだ。
一人で倒せない相手なら複数の力をぶつけて倒すしかないからである。
「重ね重ねすまないがウェールズ。奴がひるんでるうちに『トルネード』を奴を中心にして作って奴を閉じ込めてくれないか。
後ギーシュ、『ワルキューレ』を出せる数全部出してくれ。…ん?お前たち少し怪我してないか?」
特にウェールズの肩にある傷はおのハルケギニアではなかなかお目にかからなそうな傷。――――弾痕だ。
肩から後ろへ銃弾で貫通している。ルイズに聞いたこの国にあると言うマスケット銃より威力がありそうな傷。


439slave sleep〜使い魔が来る:2008/01/31(木) 23:17:02 ID:p3HbxsE0
ウェールズがそこで肩をおさえながら『トルネード』でアヌビスを閉じ込めてから説明する。
「いや、少々奇妙な奴にさっき会ってね。どうも彼は誰かから逃げているようだったが…。
かなり挙動が怪しいし、服装も珍しかったからどうやらこの騒動に一枚噛んでいたみたいだと判断して尋問しようとしたんだが、
肩を撃たれて逃げられてしまった。奇妙な奴だった。銃を持ち歩いてたようには見えなかったのにいつのまにか銃をもっていてね…。」
ウェールズが肩を抑えながら言うが、彼は気がついていなかった。広場に立つ木の一本に小さく折られた紙が枝にかかってたことに。
「アイツらオレをつけているのか!?しばらく隠れて身を隠そうとしてたのによ!」
「どうやらぼくらはそうとう運が悪かったらしいな……。しかしこうやって隠れているのはいいかもしれない。
あのブチャラティ、ぼくのカンではなにかこれから先目の前に立ちふさがりそうなヤバイ奴だと言うことはよくわかったからな…。」
ホル・ホースがニヤリと笑って喋る本に話しかける。
「オレたちのスカウトを断られる場合もあるしな。どうだ?『観察』の調子はよ?」
「あと少しだ…。奴の顔色は悪い。多少の恐怖はうかがえる。あともう少しで奴の恐怖のサインを見つける
ことができそうだぜホル・ホース。ところで…。」
「どうした?」
「奴のあの左手なんだけど、なんか気になるんだよな…。スタンド使いという事は奴は地球から来た人間のはずだろう。それはほぼ間違いない。
だが、だからこそあの『ハルケギニアの文字が書かれた左手』は少し不自然だと思わないか…?」
ホル・ホースが自らの目でそれを確認し、その言葉に答える。
「少し、高みの見物と行こうかね…。あのルーン、オレには見覚えがあるッ!!こいつはひょっとしたら想像以上の土産になるかもしれねぇからな。フフフ…。」


『トルネード』で閉じ込めたはいいがアヌビスが脱出の用意をしている。トルネードくらい簡単に突破できると言う事だろうか。
「ぬぅんッ!真上に飛んでしまえばトルネードなんざ屁でもねーぜッ!」
飛びぬけたと同時に辺りを警戒。閉じ込められている間に体制を直し、一気に叩きにくると読んでいたアヌビスが身構える。
予想は的中ッ!5体の青銅の人形たちがアヌビスを襲う。
「芸がねーな。いくら数増やしたって一度憶えた手は絶対使わないといってるだろーがッ!」
アヌビスがワルキューレの攻撃をテンポ良く受け流しつつ、続いて来るであろうブチャラティたちの攻撃に備えて、

おもいっきり背中をスタンドで殴られてしまった。

「ゴガァッ!!な、えッ!?なんでゴーレムからスタンドが!?」
その答えは簡単に判明した。またブチャラティだ。ブチャラティはすでにアヌビスに近づいていた。
すでにワルキューレにジッパーで潜り込んでいたのだッ!警戒されている以上、一瞬でも目をだます必要があったためである。
しかし背中を気にした一瞬が良くなかった。すかさずウェールズの一撃。
「『ライトニング・クラウド』ッ!!」
虚をついた一撃はアヌビスに見事決まるッ!
「ヤ…ベェ…!こいつら無駄なく攻撃をかまして来やがる…!マズイッ!今のでまたブチャラティを見失ったッ!
どのワルキューレに潜んでいるんだ!?」
目の前のワルキューレを斬ってもブチャラティの血は吹き出ない。
2体、3体と切り刻んでもハズレばかりだ。4体目を斬ったところでアヌビスが言う。
「ということはッ!そこかブチャラティッ!」
残るワルキューレからブチャラティが出てくる。完全に虚をつけた。
「アリアリアリアリ!!」
スティッキィ・フィンガースが拳でアヌビスを叩く。手ごたえあり。勝負あった。
440名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/31(木) 23:17:20 ID:Q0bro872
アヌビスが素敵に負けフラグを立ててるなw 支援
441slave sleep〜使い魔が来る:2008/01/31(木) 23:19:11 ID:p3HbxsE0
・・・・かに思えた。
だがアヌビスにとどめを差したと錯覚したブチャラティが気づくッ!
「ブチャラティ!叩いたのはアヌビスじゃない!影武者だぁーーーーッ!『エア・ハンマー』ッ!!」
マリコルヌが叫ぶと同時に呪文を放つッ!
ブチャラティの背後を取ったアヌビスは冷静に対処しようとハンマーを切り裂く。
「空蝉の術だっ!やはりおまえの上を行ったのは!このオレだったようだなァーーーーッ!!」
ブチャラティが気づくッ!スティッキィ・フィンガースを出しながら振り返り、すでに自分を一刀両断しようと
向かって来たアヌビスを把握する!
ブチャラティが白刃取りのかまえを取る、白刃取りでもないかぎり受けられそうにない。
「白刃取りも緊急回避も無駄だぜッ!緊急回避した場合は腹の辺りで斜めに払って切り裂くッ!
言っただろうがマヌケッ!このオレに憶えた技は通用しないとッ!」
「わかっているとも。だから考えたッ!新しい『策』をッ!おまえを確実に掴み取りやぶる策をッ!!デルフッ!」
「おし!『大鋏』了解ッ!!」
その時だ。デルフの刃が縦に裂ける。ジッパーでハサミのように縦に開いたのだ。
そのままアヌビスの刃に向かって掴み取ろうとする。
「こいつ!掴むものが増えたからなんだと言うんだ!すり抜けておまえの頭を切り裂けば終わりだッ!」
アヌビスがさらに前に。もう引くことなど出来ない。こんどこそ決着がつく。
だがブチャラティは引こうとしない。一歩も引かない。冷静にアヌビスに告げた。

「よく見ろ。掴み取ると言ったのはお前の首の事だッ!!」

アヌビスがハッとした。スタンドは自分を掴もうとしているがデルフの鋏は首を取ろうとしている。
断面がジッパーだから首を切断しようとしてるわけではない。
首から掴んで横に投げつけてやりすごすつもりか。
「それにしては遅すぎるんじゃあないか!?スピードが足りてない何度言わせれば気が済むんだァーーー!?」



442名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/31(木) 23:21:06 ID:TuJ1a4vF
寝る前支援
443名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/31(木) 23:23:35 ID:u2C6WqeC
気になって寝れない支援
444名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/31(木) 23:26:50 ID:85n5hZMv
sien
445名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/31(木) 23:26:51 ID:33yul9jG
支援
ジッパーマジ便利だな
446slave sleep〜使い魔が来る:2008/01/31(木) 23:29:23 ID:p3HbxsE0
アヌビスが自分を信じて前に踏み込んだその時だ。

バチンッ!!とアヌビスの刀を持つ手が払われる。

「え…?」
ブチャラティ自身の二つの手はデルフを持っている。スティッキィ・フィンガースの手は白刃取りしようと
前に出てるはず。
この『5本目の手』による攻撃などありえないはずだった。
「おおおおッ!!」
そのままスティッキィ・フィンガースの手がアヌビスの肩に当たる。肩からジッパーが発現する。
そしてキャラバンの意識が目覚めようとした時に最後の攻撃の正体を知った!
「こいつ…!ジッパーの能力で…!」

(確かにシルフィ…イルククゥはおかっぱさんみたいにスタ…ンド…だったっけ?それが使えたりはしないのね。
でも相手はどんどん技を覚えていくんでしょう?だったら一人じゃ危険だわ!でも協力すればもしかしたら…!)
(イルククゥ。お前に言われなくともオレは奴が一人で相手をするにはいささか危険な相手だということも
リスクを背負いでもしないと勝てないことも最初からすでにわかってる。だから必ず勝つためにもう一度忠告しよう。『隠れてろ』イルククゥ。)
うな垂れるイルククゥ。かみ殺したような声で言った。
(お願い…。お姉さまと同じくらい私はアナタに死んでほしくないのね…。心配で手を出さずには…!)
(タバサを助けたい。オレも助けたい。両方やらなくちゃいけないのがお前の言い分か?
お前の覚悟を感じ取った以上、言われなくともオレはお前を最大限まで使うつもりだ。
だから言ってるんだ。隠れろと。)

「オレのジッパーは…。人間につけてその中に入る事も可能だ。それも入られた本人も違和感ないまま
動くことができる。これが何を意味してるかわかるか?
つまり逆に使えば、オレの体内に人間をしまうことだって出来るということだ。」
「コイツッ!さっきの女を体内に隠してやがったァーーーーーッ!!!!」
イルククゥがタバサの杖で両手を失ったアヌビスに狙いを定めて言う。
「この杖はッ!おおおこの杖はッ!!お前がお姉さまを操って使ってた杖だぁーーーーー!!!」
ガキンッ!と音を立てて頭部に思いっきり振りかぶるッ!!
「がああああああああああああッ!!!」
「お前がいかに憶えるのが速くても…。全く予測できない技を出されればそれまで…。
お前に本当に必要だったのは、相手がどんな攻撃をしえるか予測する発想力だったようだな。
そして、ルイズの仇を今こそ取ってやるぜ。」
「うっ、うっ、うっ、うっ…!」
447slave sleep〜使い魔が来る:2008/01/31(木) 23:32:42 ID:p3HbxsE0
「うわあああああああああああああああああああああああ!!!!!」
「アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ
アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ!!」

スティッキィ・フィンガースでキャラバンに機関銃のように高速の拳を叩きつける。
その目に慈悲の心などなかった。
「ガッ!ぼっ!ぐがっ!!あがっ!バカな…!ちくしょおおおおおおおッ!!!」

キャラバンの五体がバラバラに砕け散る。
ブチャラティがアヌビスを触らないように鞘にしまう。
そしてブチャラティの手の中でアヌビスが6等分になって完全に行動不能になった。
イルククゥはキャラバンのほうを見る。
「死んじゃったの…?」
「生かしたところで、ルイズを付け狙うのをやめるとは思えなかったからな。
こいつもルイズを殺そうとした以上、逆に殺される覚悟も出来てるだろうさ…。」

ポカンとしているギーシュとマリコルヌ。
ウェールズも息を呑んでいた。こうもあっさりと冷徹に徹したブチャラティを前にし、
少しばかり驚いていた。
しかし、直後ブチャラティがそのまま倒れる。
「おかっぱさん!?」
「大丈夫、気を失っただけだ。手当てしてやればまだ目を覚ましてくれるはずだ。」
フードを被りなおしたウェールズがブチャラティを押さえた。
「彼には、まだ聞かなければならないこともあるしね…。」
しばらくして、二人を抱えるキュルケとウェールズの率いていた小隊が追いついたのだった。
448名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/31(木) 23:35:44 ID:LOvLQzMK
老化してるのに覚醒ペッシを倒せるブチャラティはマジ強い支援
449名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/31(木) 23:39:16 ID:b6lWC356
しぇん。
マジで戦闘をジョジョテイストで書けるの尊敬する。
450slave sleep〜使い魔が来る:2008/01/31(木) 23:39:38 ID:p3HbxsE0
夕暮れになってからブチャラティは目を覚ました。
傷は小隊の水のメイジの魔法で少しばかり癒えていた。
「何考えてるのよアンタッ!アイツから逃げていればこんな怪我しなかったのに!」
「足のアキレス腱を断ち切られたお前には言われたくないな。」
ウェールズはブチャラティの説明を聞き、今後の対処法を練っていた。
「ああ言う変則的なスタンドは対処法があっても倒せない場合がある。勝つことよりも
動きを徹底的に封じるほうがいいだろう。自分から姿を現したりするのは近距離パワー型の能力だと判断していいから
相手のパワーに気をつけるんだ。」
「ありがとう。これからはより良く敵と渡り合って行けそうだ。ん?ちょっと待ってくれ。」
部下からなにか話を聞いて言う。
「…すまない。突然なんだが緊急事態だ。これからこの場を離れなきゃいけない。
また会えることを楽しみにしているよ。『破壊の杖』を見つけたら教えてくれ。もしかしたらアレは…。」
「…破壊の杖?」
ルイズが耳をピクリとして聞き返す。
「いや、ではこの辺で!ありがとうブチャラティ!!」
ウェールズはそのまま去っていった。
ルイズはその後姿を見て、首をかしげる。
彼の姿がなにか引っかかっているのだ。
「あの人どこかで見たような…。ブチャラティ、あの人は何者なの?」
「そういえば最後まで何者なのかわからなかったな…。まあ、いずれ会えるかもしれない。
スタンド使いって言うのは厄介なことを引き続ける代物だからな。」
その時、後ろからキュルケが抱きついてきた。
豊満な胸を押し付ける。男としては心踊るシチュなのだが。
「あーん!ダーリン!!もう心配しちゃったわよ!背中大丈夫!?」
「たった今傷口が開きそうになった。」
「もー意地悪!」
後ろから見ていたタバサは大きな杖で体重を支え、親友をジト目で見る。
綺麗な唇が開いて静かに言う。
「どっちかというと意地悪はキュルケ。」
451風と虚無の使い魔 ◆/4V68E5Ojg :2008/01/31(木) 23:42:40 ID:gSF7jtiZ
S・H・I・E・N!
452名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/31(木) 23:43:20 ID:33yul9jG
支援
453slave sleep〜使い魔が来る:2008/01/31(木) 23:43:25 ID:p3HbxsE0
そしてタバサがイルククゥ、もとい人間姿のシルフィードを無表情なまま見る。
無表情だからどのくらい怒っているのかわからなくて怖い。
「後で、はしばみ部屋行き確定。」
「きゅい〜!お姉さま〜!もうしないからそれはかんべんしてほしいのね〜!きゅいきゅい!」
だがタバサは怒りが急に収まった様子でブチャラティのほうを向く。
「あなたは先に行かなくちゃいけない。彼に別れを告げるなら今。」
「あ、そうね…。きゅい。」
彼女はブチャラティに近づいた。

「おかっぱさん!」
ブチャラティは青髪の女性を見た。イルククゥともシルフィードとも名乗るこの女の子を。
「イルククゥ。どうした?」
ルイズが「そういえば結局この女はアンタとどういう関係なの?」と聞いてくるが無視し、
イルククゥは、シルフィードに戻るために別れを告げる。
「あの、その、おかっぱさん…。」
「?」
イルククゥは少しどもって、顔を赤らめるが言う。
「その、イルククゥとお姉さまを助けてくれてありがとう!」
ぺこり、と頭を可愛らしく下げて言った。
ブチャラティも普通に返した。
「ああ、こっちこそグラッツェ。お前こそ助けてくれた。」
そしたらイルククゥはもっと近づいて言う。
「えっと、人間はお礼の挨拶がわというか、ごほうびにこんなことするんだったっけ?きゅい…。」
「?」
「何?言っとくけど人の使い魔にあまりべたべたしないでほしいんだけど…。」

というルイズの制止を無視し。

イルククゥの唇がブチャラティの頬に当てられた。
454名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/31(木) 23:46:17 ID:K82xUAYE
良い!スゴク良いッ!ベリッシモ良い!ディ・モールトベネ!支援
455名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/31(木) 23:46:31 ID:85n5hZMv
ズキュゥゥゥゥン
456名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/31(木) 23:47:57 ID:33yul9jG
ズギュウゥゥウン支援
散々言われただろうが明らかにキスに伴う効果音じゃないよな
どっちかというとエナジードレインだ
457名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/31(木) 23:53:16 ID:b6lWC356
チュッ

じゃなくてズキューンだからなw
458slave sleep〜使い魔が来る:2008/01/31(木) 23:53:31 ID:p3HbxsE0
一番に驚いたのはルイズだった。
顔を真っ赤にして手をばたばたさせ、「な、あ、ああ、アンタ、使い魔だって言ってるのに…!」
とうろたえにうろたえる。
キュルケもこれには驚いた。
「あら、意外と大胆じゃない…。」
ブチャラティ自身もわずかだが動揺し頬に手を当てる。
イルククゥはブチャラティに背を向けて言った。

「ありがとう!また会おうねおかっぱさん!」

そう言って青い韻竜は夕焼けへと走っていった。
タバサがそれを見て一言。
「…惚れた?」

一方、ホル・ホースたちは仲間の女性シェフィールドと合流していた。
妖艶な空気を纏うシェフィールドは少しばかり落胆したように言う。
「で?結局失敗して逃げ帰ったという事ね。ずいぶんとあきらめよく帰ってきたようだけど。」
「無論、他の土産があるからだぜ、シェフィールド。」
「そうそう。僕らも手ぶらで帰るのも気が引けたからこうやって手土産を用意したんだ。」
シェフィールドはにらんだような目で見続ける。
「そこまで言うからには相当おおきな土産なのでしょうね。」
「アヌビス神よりも大きな土産だぜ。大ニュースだ。海老で鯛を釣ったようなモンだ。

459風と虚無の使い魔 ◆/4V68E5Ojg :2008/01/31(木) 23:54:29 ID:gSF7jtiZ
アパーム!支援もってこいアパーム!

それはそうと奴隷さんの次に投下予約
第二次攻撃隊発進準備します
460名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/31(木) 23:54:51 ID:hrj4zX8J
ハートを打ち抜く音だと思っている、支援
461名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/31(木) 23:57:42 ID:tIka+Bbw
SHIENッ!
しかし、アヌビスと相性が最大に良いのって兄貴のG・Dだよなぁ…
本体が老化しちまえば覚えていようとも関係ないし、動けば動くほど遅くなる
462名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/01(金) 00:00:17 ID:ZDTuclJo
C-EEEN
メタリカキンクリザ・ワールドマンインザミラーパープルへイズゴールドエクスペリエンスあたりが相性良いんじゃね?
463名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/01(金) 00:02:15 ID:TJTrGm8j
特殊能力持った中距離型だとある程度有利に戦えるタイプではあるな支援
464名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/01(金) 00:03:07 ID:wFQjQIKr
オレは今、使い魔の書き手さんに「敬意」を表するっ!!!
乙でした〜。
465名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/01(金) 00:04:49 ID:ZzrNz1QE
あ、あれ?乙って終わったの?
466風と虚無の使い魔 ◆/4V68E5Ojg :2008/02/01(金) 00:07:52 ID:ZzrNz1QE
15分たったし、規制にでもかかったのかな?それとも終わったのかな
と、投下しちゃっていいんだろうか
467風と虚無の使い魔 ◆/4V68E5Ojg :2008/02/01(金) 00:09:45 ID:ZzrNz1QE
もうどうにでもなれー
ヘビー・ゼロさんがキャットファイトなら俺はドッグファイトだ
投下するよ
468slave sleep〜使い魔が来る:2008/02/01(金) 00:09:46 ID:w2XsJk2r
シェフィールドがホル・ホースを見据えたままだ。
ホル・ホースの次の発言を聞くまでは。
「今回調べろといわれてたスタンド使いはあるメイジの使い魔になっていた。この意味がわかるか?」
目を見開くシェフィールドをみてホル・ホースはしめたと思った。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

「何を言ってるのか…わかっているのかしら?」
「テルがブローノ・ブチャラティの左手に奇妙なハルケギニア文字に気づいてな、調べていたんだ。
奴は、インテリジェンスソードを持った瞬間、急に身体能力とスタンドパワーが上がった。
この効果は…たしか、何だったけか?」
「神の左手…ガンダールヴ…!」
シェフィールドが冷静さを崩さないように言う。
「使い魔という事は…主人は?」
「桃色の髪のレディだったぜ。学生だったようだがな。」
「おそらく、疑惑を持っていた人物の一人だわ…。そいつはおそらくヴァリエールの三女ルイズ・フランソワーズ!
想像以上の収穫をしてくれた…。」
「立場が立場だから手ぶらでは悪いと思ってな。」
ニヤリと女は笑って言う。

「流石はホル・ホースといったところかしら?この私直属のスタンド使い遊撃隊『隊長』ホル・ホースと…。」
「おれとしては副隊長のほうがよかったんだけどな。」

「いいわ。お咎めはなし。あなたには正式に報酬を与えましょう。次の作戦まで待機しなさい。」
「へいへい。行こうぜ、テル。あと、お前が隊長かわらないか?」
「本が隊長になってはまずくないか?」

一人になったシェフィールドが武者奮いをしながら笑う。
「もうすぐ…。もうすぐ作戦は始まる…。ウフフフ…。」
風が彼女の髪を捲る。
その額にはブチャラティの左手のようなルーンが刻まれていた。
469風と虚無の使い魔 ◆/4V68E5Ojg :2008/02/01(金) 00:10:21 ID:ZzrNz1QE
<br>
轟音を聞きつけ、ルイズたちは宿を出る。
そして、空を見上げ、絶句する。
「なんてひどい…」
ルイズがショックから立ち直り、そう漏らす。
「あれは…アルビオンの艦隊だね、つい最近不可侵条約を結んだはずなのだが…」
「ふん、不可侵条約など両方の打算で結ばれるのだ、状況が変われば攻められる、そんなことは当然だ。
それより、一騎青い竜が近づいて来るぞ、撃ち落すか?」

「あら、あれは…もしかしてシルフィードかしら?それに、あなたの使い魔もいるわね。
シュトロハイムさん、あれは味方よ」
シルフィードが着地する。
「なにが起きて…」
「貴様はァーーーーーッ!」

降りてきたタバサがキュルケに状況を聞こうとすると、シュトロハイムが怒号で遮った。
「貴様は、ワムウッ!なぜ生きているッ!ジョセフに殺されたはずだ!」
「ほう、お前は…ジョセフの知り合いか?」
「質問に質問で返すなァーーッ!もしかしてカーズも生きていやがるのかァーーッ!」
「カーズ様が?その言い方だとカーズ様もやられたのか」
「そうだ、ジョセフがやったのだ、知らんのか!?」
「あの女と戦う予定ではなかったのか?」
「にっくきカーズは騙まし討ちをしたのだ、そして究極生命体へと生まれ変わったのだ。
しかし、ジョセフが命を賭けて救ってくれたのだ!」
「ほお、カーズ…確かに、カーズ様とは意見の合わん部分もあった…しかし、そうか、ジョセフが
やったのか、あいつめ、そこまで成長しおるとはな」
そういってワムウは笑う。
「俺はなぜ生きているんだと聞いているんだ」
「さあ、俺に聞くな、むしろそっちのルイズの方が詳しいだろう」
シュトロハイムは振り向く。

「もしかして、異世界から来た使い魔とは…」
「え、ええ。ワムウだわ」
「奴はなぜ生きている?」
「し、知らないわ。召還したときにはあの体だったもの」
頷いて、再びワムウに向き合う。
「ふん、どうやらこの少年少女たちも知り合いのようだな、どうした、柱の男?
身近な人間を食わないとは人道主義か博愛主義か、友情にでも目覚めたか?さて、俺とやる気があるのか?」
「波紋戦士や強い戦士だというなら、受けてやろう」
「ふん、今じゃなければ向かっていってやるがな」
シュトロハイムがそっぽを向いたので、ワムウはルイズに尋ねた。
「おいルイズ、どういうことなんだ?」
「新生アルビオン軍がおそらく攻めてきたのよ」
「なるほど、それは面白そうだ、今度は持ち出さねばらならぬ手紙もない、思う存分やらせてもらおう」
ワムウは指を鳴らす。

「そういうことだ、どけ。あいつらを叩きのめしてくれるわ」
そういってシュトロハイムはゼロ戦の所へ行こうとする。
「なにをする気よ!?あなた一人でなにができるっていうの!?」
ルイズの制止にシュトロハイムは鼻を鳴らす。
「ゼロ戦を飛ばす。あれは道楽ではない、兵器だ。木造艦隊など木っ端みじんにしてくれるわ」
「…だめよ、トリステイン軍が出ていないわ、アルビオンと交渉中かもしれないのよ!」
「そんなことを言っている間に首都まで進まれても文句は言えんぞ、ここには冬将軍はいないのだからな」
そういって自嘲する。
「なら…私も行くわ!トリステイン人として、部外者に戦わせて私たちが指をくわえて待っているなんてできないわ!」
「ミス・ヴァリエール!」
一喝しようとしたコルベールを制して、シュトロハイムは話を続ける。
「そう言って、訓練もままならるまま敵に突っ込み、死んでいった勇敢な部下たちを何人も見てきた。
お前たちはこのトリステインの未来を担う人材なのだからな」
ルイズは必死で続ける。なにか不吉な未来が見えるかのように。
470風と虚無の使い魔 ◆/4V68E5Ojg :2008/02/01(金) 00:10:45 ID:ZzrNz1QE
あちゃー やっちゃったー
ごめんなさい
471名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/01(金) 00:11:47 ID:ZDTuclJo
まだだ!まだ奴隷さんのターンは終わっちゃあいないッ!
風虚無さん、さっさと投下を中断しな!話はそれからだ!
472slave sleep〜使い魔が来る:2008/02/01(金) 00:12:01 ID:w2XsJk2r
キャラバン・サライ―――――死亡
アヌビス神―――――――――捕獲、宝物庫送り。
              時々、夜中に「イヤアアアアアア。ユルシテエエエエエエ。」という声が聞こえるらしい。

To Be Continued... 
473slave sleep〜使い魔が来る:2008/02/01(金) 00:13:40 ID:w2XsJk2r
スマンスマン。なんか好きな車は?とか表示されていて。
とにかくこれで次からフーケ戦!やっとみえてきたけどフーケ戦!
このスレ一番のスローライターの俺でよければこれからもよろしく。
474風と虚無の使い魔 ◆/4V68E5Ojg :2008/02/01(金) 00:15:15 ID:ZzrNz1QE
乙!
割り込みごめんなさい
18分から投下再開します
475風と虚無の使い魔 ◆/4V68E5Ojg :2008/02/01(金) 00:19:51 ID:ZzrNz1QE
「じゃあ、なんであなたが行くのよ!」
「俺はトリステイン人でもトリステイン軍人でもない、ただの一人のドイツ軍大佐だ、こんな汚い戦争などは、
戦争にしか生きられない軍人に任せておけ、帰る故郷も、家族もいない異邦人の軍人にな」

シュトロハイムは、ゼロ戦のコクピットに入ろうとし、片足をかけたところで足を止めた。
「ワムウ、お前に頼むのもなんだが…お嬢さんがたは頼んだぞ」
「俺を知っているのなら、俺がただの人間風情に遅れをとらんことくらいわかるはずだ」
「そうだったな、化け物め、では行くぞ。コルベール、無線で逐次連絡を取るから、確保してくれ、
あとギーシュといったか?お前は男だろう、しっかりお嬢さんたちを守ってやれよ」
コルベールとギーシュにシュトロハイムは頼み込む。
「ああ、もちろんさ、僕の薔薇の針は可憐な花を守るためにあるのだからね」
「わかりましたぞ、生徒と無線を守るくらいはやってみせますよ…それにしても戦争というのは嫌なもんですな」
「ああ、どこの世界でも嫌なものだ。こんなものを利益なしに望むのは狂人だけだ。その点、俺も見知らぬ土地で
機銃を振り回すのだ、大して変わらないのかも知れんな。だが、俺は戦士を操る軍人、狂人だが、
戦闘機がある以上俺は騎士でもある、自分の知り合いくらい守らねばならん、難儀なものだ」
「人間とは難儀なものだな、まあいい、終わったら手合わせ願おう。こいつらガキどもの護衛、確かに承ったぞ、
戦士、シュトロハイムよ」
「ふふ、俺を戦士と呼ぶか、戦い狂いの化け物め。いいだろう、空は俺に任せろ。コルベール、ワムウ、武運を祈るぞ!
では、ルドル・フォン・シュトロハイム、ドイツルフトバッフェ大佐、出撃する!」

エンジンが猛烈な音を立て、ゼロ戦は舞い上がった。


「さて、任された以上やらねばならぬな…この程度の人間の数ならば、メキシコですでに三度はやっている」
「やれやれ、味方になっても頼もしいを通り越して恐ろしいな」
無線からシュトロハイムの声が入る。

「我がサイボーグの視力はーッ!世界一ィイイイイッ!九時の方向に敵を数体発見、今日のエースは俺だァアアアッ!
記録係は瞬きするんじゃないぞッ!」

この世界ではありえないスピードで、竜騎士に接近していった。


右手に杖を、左手に無線をを持ったままタルブの民衆を避難させるコルベール。
もし、空から彼らを狙って来るアルビオン兵がいたとしたら、容赦なくコルベールにやられていただろう。
しかし、シュトロハイムの活躍が功をそうしてか、その機会はなかった。
地上では向かってくる兵士は文字通りワムウに吸い込まれていくのを顔をしかめて見ていたが、
やがてタルブの一般人の保護に集中するようになった。

ワムウに向かっていく兵士は、幸か不幸か、一斉にではなく、多くとも小隊単位で向かっていくにすぎなかった。
小隊を、分隊を、歩兵を、銃兵を、弓兵を、メイジを、階級に関わらず無傷で屠っていくにつれ、そのあたりに
アルビオン兵が現れることはなくなった。もし、一斉に攻めていたら…傷くらいはつけられたのだろうか。

「この地域の方々はほぼ集めました、あとは残っている領主の兵士の方に護衛をお願いしましょうか」
この地域でも手際よく非戦闘員を集めたコルベールは、次の場所に向かおうとする。
「…ミス・ヴァリエール、ワムウくんを止めてきてくだされ」
集めた石を敵陣地のあるであろう方向に投げる。
ただの石もワムウにかかれば榴弾砲の様な威力となる。矢継ぎ早に飛ぶ石は空中でぶつかりあって降り注ぐ。
スピードがあるだけに、大抵は致命傷にはいたらないまでも脅威の対象となっていた。
「ワムウ、そろそろ行くわよ、あんたの仕事はアルビオン兵の殲滅じゃないのよ、わかってるの?」
「わかっているから投石なんぞで我慢しているのではないか、お前らがいなければとっくに突っ込んでいるわ」
「……はいはい」
476風と虚無の使い魔 ◆/4V68E5Ojg :2008/02/01(金) 00:21:05 ID:ZzrNz1QE
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「十九騎目ェイッ!とろい、とろいぞォオオオッ!そんな反応では東部戦線では一日で葬式が出るぞォオオッ!」
元戦闘機乗りとだけあって、七.七ミリ機銃を効果的に当て、強力な二十ミリ機銃を温存している。
「しかし、素晴らしい機体だ、東の黄色人種がアメ公相手に通用するのもうなずけるな!
航続距離も長い、二十ミリ機銃の威力もなかなかある。これだけの性能なら竜ごときには遅れはとらんわ!」
そして、前方を見て舌打ちをする。前方の巨大な船から数体
「しかし、あの化け物をなんとかせねばな…航空母艦は航空母艦でも空に浮く航空母艦とはな、
やれやれ、空飛ぶ要塞などといった異名が霞んで見える」
少し考え込むが、顔を上げ、操縦桿を強く握りなおす。
「どうにかせねばならんが…まあ後回しでいいだろう、相手が哀れなコミュニストでなくなったがやることは一緒だ、
アルビオンの竜騎士よ、運が悪かったな…アーメン」
シュトロハイムは発射把柄を握った。

錐揉み状態で前方の竜騎士が落ちたのを確認し、辺りを見回す。
そして、ある一点で目を止める。
「ふん、仰々しい格好をしおって、大きな杖を構えて、あれが噂の巨人使いのようなメイジということか?
少々遠いが、威嚇射撃でもしてやろう」


機銃の砲身が短い音を発し、数発弾丸が飛んでいく。
距離があるため、当たりはしないが、相手の騎士は特段驚きも慌てもせず、スピードも軌道も
変えずに進んでくる。
シュトロハイムは機首を上げ、上昇すると、遅れながらも竜も上がってくる。
機体を傾け、竜の側面から攻撃しようとする。
竜はそのまま上昇し、ゼロ戦が近づいてくると、体をひねらせ、ブレスを吹きながら突進してくる。
シュトロハイムは慌てて機体をひねりながら急降下させ、すんでのところでかわす。
「危ないところだった、しかしここまで近づかれると戦闘機の優位が霞む、少々距離をとるか」

機体を少しだけ上げ、出力急降下に切り替えてスピードを上げ竜から距離をとる。
ある程度距離がとれたのを確認すると、出力を上げて上昇させる。
かなりの高低差が生まれたと判断したシュツロハイムは、旋回し、降下してスピードを上げながら竜に
突っ込む。かなりのスピードに相手は判断が鈍り、予めとるべきだった回避行動をとれなかったようだ。
射程距離に入ったとみたシュトロハイムは発射把柄を握り、機銃をぶち込む。
相手は杖を振り必死で弾丸から身を守るが、数発竜に当たっていく。
とうとう、前方の竜はきりもみ降下していき、シュトロハイムは出力を落とした。

機体が揺れた。
シュトロハイムのゼロ戦が大きく揺れる。
なぜならば、機体の下部に穴がいくつか開いていたからだ。そしてほぼ同じ数がシュトロハイムにも開いていた。

落ちていく竜に乗った騎士の背中から飛び立った竜と騎士は、下からゼロ戦を追い越し、
母艦『レキシントン』へと戻っていった。
<br>
477風と虚無の使い魔 ◆/4V68E5Ojg :2008/02/01(金) 00:21:42 ID:ZzrNz1QE
<br>

「子爵、どうでしたか?」
ボーウッドが椅子に座って目を瞑っていたワルドに尋ねた。
「ああ、やったよ、僕の偏在は確実にあの乗り手を竜ごとエアカッターで何発も貫いた、まず助からないね」
「さすが子爵ですな、では作戦に移りましょう、野蛮な無差別砲撃にね」


グラグラと揺れるゼロ戦を見て無線に向かってコルベールが叫ぶ。
「シュトロハイム君、どうしました、シュトロハイム君!」
「な…が起きたんだ?落…し…はずの竜騎士…背中…ら、もう一体の竜…士が…」
「シュトロハイム君、ゼロ戦が下がっていますぞ!立て直さねば!」
機体はハッとしたかのようになんとか態勢を戻す。

ルイズが無線に向かって話しかける。
「ねえ、もしかしてその騎士って、杖を構えて、黒い帽子をかぶっていた?」
「その通りだ」
「おそらく…ワルドだな、つじつまもあう」
ワムウが呟く。

コルベールが続けて話す。
「機体に穴があいていますぞ!早く着陸せねば危ないのでは!?」
笑い声が聞こえた。
「無駄だ、コルベール。油断してつけたま…であった増槽にも穴が…けられた。脚も降…ん、胴体着陸できるほど
整備され…飛行場…ない。それに…俺自身、もう助からん、それに無線…もガタがきて…る」
先ほどから強いノイズが入ってくる。
「ふん…忌々し…巨大…艦め、高度を下げて…る、おそら…制空権を取…たと判断して地上砲撃に入るのだ…う、
お前ら…けでも避難したほ…がいい、あ…な化け物の艦隊…砲撃を受…たらワムウでも無事で…すま…だろ…」
ノイズが強くなり始める。

「コルベ…ルよ、ゼロ戦のエ…ジン、渡せなくてすまんな。
ギーシュくん…、し…かりお嬢さ…方を守…よ。
そしてルイズ、タ…サ、キュ…ケ。そ…いえば苗字も聞…ていなか…たな…
礼を言わ…てもら…う、君たちが…なければあの巨人…倒…れ、ここに…いなか…た…もしれん。
シエ…タ…ワイン…美味であったぞ…ゼロ戦を快く渡して…ただい…重…重ね感謝す…
そ…て、忌々し…柱の男よ、お前…なぞ言…ことは一つし…ない……頼んだぞ」
「シュトロハイムくん!なぜそんなことを言うのですか!シュトロハイムくん!諦めてはいけませんぞ!」

<br>
478風と虚無の使い魔 ◆/4V68E5Ojg :2008/02/01(金) 00:22:04 ID:ZzrNz1QE
「コルベ…ル、か?もう、よ…聞…取れんよ」
弱弱しい声で返事をする。
「…お、友よ!この…うな調べでは…い!そんな調べ…り、も…と心地よく歌い始め…う、喜…に満…て!」
弱弱しい声でシュトロハイムは歌い始める。
「歓喜よ…美し…神々の煌め…よ…土から来た娘よ…我等…炎のよ…な情熱に酔…て天…の彼方、貴方の聖…に踏み入…」
シュトロハイムは気力と体力を振り絞り、ゼロ戦を上昇させる。
「貴方の御力によ…時の流れ…容赦な…分け隔たれ…も…は、再び一つとな…
全て…人々は貴方の柔ら…翼…もとで兄弟になる!」
『レキシントン』号の真上にゼロ戦は出力全開で上がっていく。
散弾がゼロ戦とシュトロハイムに容赦なく刺さっていく。エンジンは黒煙を吹き出し始めた。
霞む目でシュトロハイムは目標を探す。
「我が祖国ドイツよ!我が故郷タルブよ、永遠なれ!」


ワルドは部下に命令する。
「最後のあがきという奴か、だがじきに息は止まるだろう、とどめに散弾を叩き込んでやれ」
竜からは煙が出始めた。
しかし、それでもまだ上がり続ける。
部下が絶句し始める。
あまりの速さに。
あまりの高高度性能に。
あまりのタフさに。
あまりの気力に。

ワルドが部下に怒鳴る。
「なにをしている、散弾の数を増やせ!全力で落とすのだ!」
「子爵、まさかのことです…想定外のことです、あんな高さまで上がるなど竜、いや艦でさえもありえないことです!」
「だからどうしたというのだ!どんな高さでも構わん、叩き落せ!」
「それが無理なのです!この船は浮遊大陸アルビオンで使われていたもので、上から攻撃することはあれど、
あんな高さの敵に対処するなど全く想定していないのです!」
「…つまり、上は死角だと?」
「それだけではありません、武器庫、観測塔、そしてこの部屋も全て甲板の上にあるのです!
上から攻撃されては一たまりもありません!」
「なんという体たらくだ!」
ワルドは手直にあった机を蹴り倒す。
「…まずいです!あの竜が猛スピードで降下してきました!あのままいけば…武器庫です!」
「なぜピンポイントで武器庫が狙われるんだ!」
「武器庫は中からの事故の被害が抑えられるよう特殊な設計をしています、先ほど言ったとおり
上からの攻撃は想定していませんので、偽装もなにもしておりません、見る人によっては一目で看破され…」

『レキシントン』号の甲板上に爆音が響き渡った。








To Be Continued...
<br>
479名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/01(金) 00:32:17 ID:chJcb82Q
戦士に敬礼・・・!
480名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/01(金) 00:44:03 ID:ZDTuclJo
GJ
シュトロハイムは―――風になった。
マジに格好良かったぜ…無意識のうちに敬礼を取っていた。
481名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/01(金) 00:44:28 ID:jTCsJzW0
ブチャラティGJ!
逆転に次ぐ逆転の繰り返しがスゴクイイ!

ワムウGJ!
あ〜んシュト様が(ry
482名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/01(金) 00:48:16 ID:hgAaCveR
GJ
ああ、シュトロハイムが〜
でもひょっこり生きて帰りそうだよな……
483名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/01(金) 00:59:29 ID:0DCZPUC2
GJ!
感動し・・・しかしシュトロじゃあな。生きてそうだ・・・
484名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/01(金) 01:06:07 ID:iAS28u9Q
GJ!!
シュトロハイム…格好つけすぎだよ…
生きて帰ってきて欲しい、マジで。
485名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/01(金) 01:18:09 ID:/M25wTEs
シュトロハイムは風になった――

ワムウ達が無意識のうちにとっていたのは「敬礼」の姿であった――

涙は流さなかったが 

無言の男の詩(うた)があった―― 

奇妙な友情があった――



そして、風と虚無の中の人氏にも敬礼!
486名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/01(金) 01:56:26 ID:cjbncFvM
皆さん投下乙そしてGJでした!
>ジョルノと亀ナレフの方
よりにもよってそのスタンドですか……
ポルナレフ、頑張ってくれ
これしか言えない

>奴隷の方
人外にまでフラグを立てた!
そこに痺れる憧れるゥ!
そしてホル、いくら何でも本が隊長は無理だろw
そこまでNo2が好きかw

>風と虚無の方
誇り高きドイツ軍人ッ!
ルドル・フォン・シュトロハイム大佐に敬礼ッ!
貴方の雄姿を忘れないッ!
487名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/01(金) 02:17:48 ID:waqLleNX
BGM:風にひとりで

偉大なるドイツ軍人に敬礼!
488始球走 ◆k7GDmgD5wQ :2008/02/01(金) 04:07:53 ID:3Q+MmLL4
4時ごろの投下は久々ですがさせていただく。
489Start Ball Run 1/5:2008/02/01(金) 04:11:04 ID:3Q+MmLL4
ジャイロが、正体不明の敵から攻撃を受ける、ほんの僅か前の出来事。
ルイズと才人と、才人の後ろで喋り続けるデルフリンガーは学院に戻る平坦な野道を喧々諤々と、騒がしく進んでいた。
「ほー。そーか相棒、おめーも大変な目に遭ってんだな」
デルフリンガーが、才人の境遇を聞いては、相槌を打ったり同情したりする。
「ああそうだよデルフ。俺はこれまでずっと大変だったんだ。そりゃもう、絶望に打ちひしがれる毎日を過ごしていたわけだよ」
才人が感情を込めて今までの苦悩の日々を語る。時には涙あり、時には怒りありの毎日を、講談家のように話しては、デルフリンガーに感想を述べてもらう。
「そーさな。相棒の歳でその苦労はなかなかねえな。いや、立派だよ。立派だよ相棒は」
「だろ? 俺頑張ってるだろ? なあ俺頑張ってるよな?」
「あー、頑張ってる。相棒はものすごく頑張ってる。そのぐれー頑張ってるなら、誰かから褒美もらってもいいくれーだ」
「……だよな。だよな、そうだよな! そのぐらいは許されるよなあーーーー!」
……ちらり。
そんなことを言っては、才人はルイズに視線を向ける。こんなことを道中、何度も繰り返していた。
「うっさいわね! また突き落とすわよ!」
ルイズが後ろで騒ぐ連中を怒鳴りつける。それに、デルフリンガーは、ふぅ、と溜息のように一息つくと。
「相棒の主人は、すげえ怒りっぽいね。……おい貴族の娘っ子。そんなに怒ってちゃ可愛げなんて一欠けらもありゃしねえよ。もう少し節度ってもんを……」

「 ア ?」

そう剣に言われて振り向いたルイズの目には、なんとも形容しがたい、 何か が宿っていた。それに直視され、才人は真っ青になり、さすがにデルフリンガーも、口をつぐんでしまった。
「……ま、まあなんだ相棒? 辛いことばっかりでもねえんじゃねえか? なんかこー、楽しかったもんとかはねえのかね?」
話題を変えようと、剣は才人に尋ねる。
「いやー……、正直、あったのかどーか。だってこっちに来てから、テレビも映画も見たことねーし。パソコンも動かねーし」
「テレビ? ……映画? 相棒、そりゃなんだね?」
「そうね……。サイト、それ、わたしも気になる。ねえ、それってどういうの?」
剣とルイズが、同時に才人の言葉に興味を持った。
「ああー……、テレビも映画も、いつでも見れる芝居みたいなものかな。テレビは箱の中に舞台があるように映って、映画は巨大なスクリーンで眺められる」
「箱? スクリー……? 相棒の見た芝居ってのは、ずいぶん変わってるやね」
「ああ、うん。……なんて説明したら、わかってくれんのかな。とにかく、そーいうもんなんだって」
才人が、頭を掻きながら慣れない説明をする。
「要はお芝居なんでしょ? そういうものなら、城下町でも見れるわ。別に珍しいものじゃないわよ」
テレビや映画の正体が芝居だと言われ、ルイズは興味をなくしたようだった。
「いや、見れるのは芝居じゃないんだって。ニュースもあるし、バラエティーだって……。テレビなんか、最近じゃ超薄型プラズマってのが出てきてさ……。映画だってビッグタイトルが……」
才人が語るその言葉は、ルイズにとっては呪文のように聞こえる。
彼にとっての現実が、ルイズにとっては虚構に聞こえる。それが何故か、才人には悔しく思えて、いつの間にか説明にも熱が篭っていた。
490Start Ball Run 2/5:2008/02/01(金) 04:12:07 ID:3Q+MmLL4
「それじゃいつか、連れてってあげるわ」
ルイズの突然の言葉に、才人は目をぱちくりさせた。
「あんたがそんなに芝居好きだなんて思わなかったわ。そんなに好きなら、ちゃんとわたしのいう事聞いていたら、連れて行ってあげる」
「……あ。ああ。あ、ありがと」
別にそんなに好きなわけじゃないけど、と、つい言ってしまいそうだったが、なんとか才人は礼だけ言えた。
「そんかわし今すぐは駄目よ! あんたには剣買ってあげたばかりだし。ちゃんと言う事聞いてからだかんね!」
それっきり、ルイズはぷいっ、と前を向く。
「相棒。こりゃ話が変な方向にいっちまったね」
デルフリンガーが、呆れたように言った。
「いや、デルフ……。これは、……チャンスだ」
才人が、剣の耳と思わしきところで、ぼそぼそ呟く。
「チャンス? なんの?」
「フラグ成立の」
「フラグってなんだ?」
「愛だろっ、愛!」
思わず、大きな声をあげてしまう。悲しいかな、才人もしっかりゲーム脳であった。
「つまり、どういうことさね?」
「これをきっかけに、ルイズは俺になびく」
「へえ。そうなるもんかね」
「なる。絶対させる」
現実を見ろ。そう見えない誰かに言われた気がするが、気にしない。
「相棒の腕の見せ所だね。応援する」
「ああ。まかせとけ」
となれば、まずはスキンシップとばかりにルイズの体を触ろうと、才人がじりじりと腕を伸ばす。密着してもおかしくない距離だというのに、それが何故かとても長い。
あと少し、もう少しでルイズの体に、才人の指が触れるというところで。
「そういえばサイト。さっき言ってたパソコンって、一体どんなの――」
ルイズが振り向く。 

才人の姿は、消えていた。
491Start Ball Run 3/5:2008/02/01(金) 04:13:57 ID:3Q+MmLL4
「…………サイト?」
さっきまで後ろにいたはずの才人が、消えていた。
「サ、サイト!?」
愛馬の足を停め、ルイズが周りを見渡す。
「ど、どこよサイト! どこ!? どこにいるのよーーっ!?」
落馬!? サイト、落馬したの!? 
ルイズは周りを探す。才人の姿を見落とさぬように注意しながら。だが、才人の姿はどこにもない。
どこにもいない!? こんなに見晴らしのいい、平坦な道の上で、サイトが消えた!? ルイズはその現実が信じられない。
まさか、地面に裂け目でも? その中に落ちた? まさか!?
「サイト! 返事しなさーーい! どこよーー! サイトーーーーッ!」
大声を上げながら、ルイズは才人を呼ぶ。返事は、一向に無い。
がらん、と、何かが落ちる音がした。
音のした方向を向く。そこにも、才人はいない。だが。
「つ〜……、いってて。いや、衝撃が身に染みるね。おい。おい聞こえるか、貴族の娘っ子」
さっきまで散々聞いた声。
「その声……、インテリジェンスソード!? どこ! サイトはどこにいったの!?」
「落ち着け娘っ子! いま危ねえのは相棒じゃねえ! おめえだ! 娘っ子!」
デルフリンガーが、ルイズに危機を伝える。
「え?」
「貴族の娘っ子! 逃げろ! 相棒はもうやられてんだ! 俺は相棒が連れ去られる途中で抜けたんだ!」
「や……、やられたって……誰に!? 誰が!? なんのために!!?」
「知らねーよ! それよりも逃げろ! そんなとこに突っ立ってると格好の餌食だ!」
ルイズの頭は、正直言って、パニックを起こしかけていた。
サイトを一瞬で倒した敵。それが、次は自分を狙っているということに。
「逃げろ!」
剣の一喝が、彼女を後押しする。愛馬に鞭を入れ、風が巻き起こり勢いのままに、馬は駆け出す。
しかし。一瞬だけ感じた、無重力。
減速する速さ。力なく垂れる手綱。
ルイズの愛馬は、ルイズが見ている目の前で、消えてしまった。
「そ……そんな。わたしの、わたしの馬も。 消えるなんてっ……!」
地面に無造作に投げ出され、ルイズは体を打ちつけた。痛みに、呼吸が数瞬止まる。
「娘っ子! 無事か!」
デルフリンガーの声が、まだ近くで聞こえる。
「上だ! 上から来る! 逃げろ! あそこの雑木林まで!」
ルイズが目を向ける。その方向には、木々が密集する林があった。
あそこまで行ければ……、助かるかも、知れない。
でも、その望みは今すぐにでも、断たれてしまう。
ルイズの真上――、高く雲が浮かぶ、青空の中。
一羽の鳥だけが、悠然と泳ぐように飛んでいた。
そしてそこから、鏃のように何かがルイズ目がけて降ってくる。
それに追いつかれたら、わたしも、サイトのようになるのだと。彼女は理解した。
咄嗟の判断だった。躊躇したらやられてしまう。だから、思わず。
右手で掴んだ杖を高く振り上げて、呪文を呟く。
彼女の直前で、爆発が起きる。
そこからはもう、ひたすらがむしゃらに。
巻き上がる砂埃が、幸運にも、彼女の体を覆い隠し。全力で、駆け抜ける。走った。林まで、一直線に。
その途中で、後ろから強烈な力で、引っ張られる。
ルイズは、それを間近で見てしまう。
水が、水が強固なカギ針と、ロープと化していた。それが、空を漂う鳥から繋がって。まるで釣りをするかのように、ルイズのマントに食いついていた。
マントの結び目をほどく。紐が首をなぞるように後ろにすり抜けた瞬間、もう一本のカギ針が、マントを突き刺し、空高く連れて行く。
間一髪で、林に飛び込んだルイズは、それをただ呆然と眺めることしかできなかった。
「なによ……。あれ。 あれも……、魔法、なの?」
あんなのは、あんな魔法は、聞いたことがない。
いったい誰が、あんな力を、どうして、なんでわたしに!?
考えても考えても、余計に混乱するばかりで。そしてそれしか考えていなかったから――、見落とした。
「逃げろ! 相棒の相棒!」
はっとして、ルイズは見た。
けれどそのときには、もう遅く。
彼女のもう一人の使い魔も、あっけなく――、空に消えていく。
どうしようもない絶望感で、ルイズは膝をついてしまった。
492Start Ball Run 4/5:2008/02/01(金) 04:14:59 ID:3Q+MmLL4
次々と、空に消えていく。
ジャイロが乗っていた老馬も、ルイズの愛馬の鞍も。
「お、おい!? 俺もかよ!」
デルフリンガーも、とうとう空に連れ去られた。
そして、誰もいなくなった平原に、再び、水で出来たカギ針と、ロープが二本。
林の中にいるルイズを取り囲むように、ゆらゆらと動いていた。
「とことん……。わたしまで連れ去るつもりなのね」
ルイズは林の中で、外を見つめたまま、動けずにいた。
「最近巷を騒がせてる盗賊……にしては、ずいぶん理解不能ね。荷物は全部奪われたし、馬も、鞍だって……」
はっ、と、ルイズは気付く。
「『荷物』……『馬』……。『鞍』 ……」
まさか、敵は。 
「敵は捜して、いるの? 敵の『目的』は!?」
ルイズは、今まで自分でも、忘れていたものを、じっと見つめた。

『 捜している――――――!? 』

「わたしの、わたしの左腕にある『ミイラの腕』! これなの!? 敵は、敵はまさか、これを――狙っている!?」
この状況で、敵の目的が。
「わかりかけてきた……。どうしてわたしが持っているのか、わかったのはわからないけれど……。敵は、それを知って!」
――襲ってきたんだ。
「なんなの……、この『腕』! 誰の腕なの!? いったい! このミイラに! どんな秘密があるっていうの!?」
木々の隙間から、空を見上げる。
木漏れ日だけが、優しくルイズを照らしていた。

「どぉぉこおぉぉだぁぁぁぁぁーーーーーー。 ゥィーーン」
書斎部屋と思われたその部屋は、異様な造りだった。
部屋の中央に、噴水と見まごうばかりの大きな水鏡が置かれ、主――モット伯は、その中を楽しそうに眺めていた。
その部屋に乱暴に連れ込まれたシエスタは、いきなりその水鏡の前に立たされる。
「見るんだシエスタ。水面を見ろ!」
伯爵に言われるまま、水面を見つめる。
するとどういうわけか、水面に部屋とは違う景色が映し出された。その中心にいたのは。
「……っ」
この屋敷に連れてこられたとき、無意識に助けを求めた人達の姿が、写っていた。
「は、伯爵様! これは……、これは何かの間違いです! この人達は、この人達は何も関係ありません! ですから――」
シエスタは必死に弁解する。
だが、当の主は。
「ふっ……、ふっふっふ。ふひふひフヒフヒフヒフヒ。ヒィーーッヒッヒッヒッヒ!」
彼らの姿を見るなり、狂ったように笑い出す。
そして。

「みぃーーーーつぅけぇたあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁッ!!!」

絶叫して、歓喜した。
「シエェェェスタ! みつけたよぉ! つぎをさがすまでどれだけかかるかとおもっていたのに! こんなところでみつかったあ!」
抱きかかえるように掴んでいたシエスタの腕をいきなり突き放すと、モット伯はおもむろに杖を手に取った。
そして鳥かごに入っていた小鳥を一羽かごから取り出すと、なにやら唱え、水鏡へ沈める。
その途端、小鳥の姿は水の中から消え、水鏡の景色は、流れるように動き出した。
鳥が空を飛ぶように、景色は動いていく。
「さあ。さっそく手に入れよう」
伯爵はとても嬉しそうに、杖を振った。
493Start Ball Run 5/5:2008/02/01(金) 04:15:52 ID:3Q+MmLL4
「伯爵様!」
シエスタが次に見た光景は、まるで悪い夢を見ているかのようだった。
モット伯が眺める水面が、突如波立ったかと思えば、それは割れるように開き、誰かがその中から引き上げられた。
「……サ、サイトさん!?」
それは、シエスタがよく知る少年、平賀才人だった。
あわてて駆け寄る。ぐったりとしている才人だったが、息はある。
その次に水から現れたのは、立派な毛並みの馬。次は魔法学院のマントが、姿を現す。
そして。
「ジャイロさん!」
ジャイロまで、水面から姿を現したのだった。
「ジャイロさん! サイトさん! しっかり! しっかりしてください!」
「やかましいぞシエスタ! いまいいところなんだ! 邪魔するな!」
シエスタの絶叫に、主が激昂する。
「やはりこいつらは持っていない……。となるとさっきの女だ。あのガキがもっているんだ!」
手に入れてやる! 手に入れてやるぞ! 
そう嗤いながら叫ぶ伯爵の姿に、シエスタの恐怖心は限界に達していた。
それでも。
「お止めください伯爵様! こ、この方達の主人は、トリステインの名門、ヴァリエール家の方です! いくら伯爵様でも! あの方と諍いを起こしては!」
シエスタは必死に止める。
才人のためでもあり、ジャイロのためでもあり、そしていま窮地に陥っているルイズのために。
そして道を踏み外そうとしている主人のために。

「だからどうしたぁっ!」

だがシエスタの言葉は、彼には届かない。
否、この男には、誰が、何と言おうと。
そう、例え――この国の王が言ったとしても。
「あいつはもっているんだ! もっているんだよシエスタ! いかなる権力より! いかなる財宝より待ち望んだものを! どんなものよりも優先されるんだ! あれを手に入れることが! 正しいことなんだ!!」
そう断言したモット伯が、なにやら呪文を唱えると、才人、ジャイロ、そしてシエスタの四肢が、まとわりついた水によって拘束される。
「……えっ、やっ。なに、動けないっ……」
「黙って見ていろ!」
次々と引き出される。岩、木、動物。植物……。
ルイズを引き上げるまで、無差別に引っ掛けては釣り上げる。
そして、シエスタの隣に、ずごん、と何かが突き刺さった。
「ほー……いててて。いくら見てくれが悪いって言っても、まったく扱いが乱暴だぜ」
何かが、喋る。でもそれは人の姿ではないことに、シエスタはどんな反応をすればいいのかわからなくて、悩んでしまった。
「おや? 相棒がいるってことは、ここが敵の居場所かね? なあそこの娘っ子」
「あ……、貴方、は?」
「俺か? 俺さまはデルフリンガーってんだ! よろしくな、娘っ子」
呑気に挨拶をするデルフリンガーに、シエスタは呆然としながら、会釈だけする。
「さーーーーあ。どこにいるんだああぁぁーーーー。  ウィーン。 ガシャーーーーン」
嬉々としてルイズを追い詰めるモット伯の声だけが、高らかに響いていた。
494始球走 ◆k7GDmgD5wQ :2008/02/01(金) 04:17:39 ID:3Q+MmLL4
以上投下したズラ。
多分避難所向きになりつつあるなあこのネタ……。
495名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/01(金) 06:12:31 ID:H60VorNT
やはりポークパイモット伯…!
そして乙
496名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/01(金) 13:30:05 ID:y6VtUqPq
菌愚・栗む損!!
昨日のラッシュはなんだったんだ・・・すげーよ、職人さんたち。
そして始球走の方、乙ですた。

ミイラって・・・・・どっちの世界の御方なんだ!!?
才人、フラグ立てがんばれ!デルフの活躍はあるのか!?
果たしてルイズは成長することができるのかッ!?そしてシエスタの運命は・・・!
そしてジャイロの見せ場はあるのか!まて次号!!
497名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/01(金) 15:01:00 ID:2FDBVwj6
>>496
ジャイロの濡れ場に見えちまったよぉー!!
498名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/01(金) 15:59:54 ID:wFQjQIKr
>>497
おいwww
499名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/01(金) 16:01:40 ID:VBKnLqlj
>>497
そういえばシエスタは第27話でジャイロと才人がアッー!な仲だと勘違いしてたのを思い出したw
500名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/01(金) 17:58:32 ID:fZCp23Kn
「愛だろっ、愛」で、サントリーのカクテルバーのCMを思い出した俺は異端。
501名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/01(金) 21:09:08 ID:1SHlXrqo
各職人さんGJであります!

ところでまだレスが半分しか進行してないのに
容量が400KBなのは一体・・・
502名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/01(金) 21:25:44 ID:XHuLOiyx
あまりに作者さんがラッシュするもんだからロードローラーで埋まったんだよ
503名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/01(金) 21:54:31 ID:cxWqGzu6
今数えたが、なんと今までのレスの4分の1が作者連の投下だ
特にアン×康一の人、ブチャの人、ワムウの人の投下量が多かったな
504名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/01(金) 22:20:10 ID:XHuLOiyx
暇だから作者別投下数 作品の部分のレスのみを数えた 量は無視

奴隷 23(1回投下)
ワムウ 19(5回投下、平均3.8)
康一 19(1回投下)
ウェザー 13(1回投下)
ポル+ジョルノ 11(2回投下、平均5.5)
ジャイロ 10(2回投下、平均5)
白蛇 9(1回投下)
仮面 8(1回投下)
いぬ 9(1回投下)
サブゼロ 6(1回投下)
デーボ 6(2回投下、平均3)
偉大 2(1回投下)

総計135/504 (投下回数19回、平均レス数7.1)

奴隷さん一度しか投下してないのにダントツトップの23
一方ワムウは平均4弱を5回投下の投下数トップで弾幕はってますな


505名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/02(土) 00:09:20 ID:BLp7UxtA
メイド・イン・ヘヴン!!
世界は一巡しすべてランランルー!

            , -―  ――-、
             /に   u (ニ==\   …は違う…
         //')  u    に二) (ヽ  うぐぐ………
         〃____,r^)__,r、(ニユ|  角砂糖…じゃない……
         i!   ● / /● uヾヽヽ,!  輪廻転生でもなくて……
          ヽニ⊃,// ⊂⊃}:}ソi
           ヘ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~`=ーノ
           /⌒l,、 __, イー-<
.          /lilili/ |三/^ oOo,ヽ
          |三 lキヾr-、[] 「! (ニ }
506名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/02(土) 00:16:21 ID:9EmecIPu
オレは基本溜め込むタイプだから…。
それより今更ながら私奴隷はブチャラティを描く上で一番やってはいけないミスに
気がついてしまった…。

「アリーヴェデルチ(さよならだ)」って入れんの忘れてんじゃねーかッ!!
まとめ直しとこ…。
507名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/02(土) 00:19:50 ID:+tCVA1mD
人がいるのなら……「投下」させていただきたい

30分を予定して……「投下」を開始する世界だ
508名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/02(土) 00:21:59 ID:c5IpHwjw
うわあああ〜っ
しっ支援するよ〜うっ
509名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/02(土) 00:23:57 ID:bI55UurQ
投下すると思ったならッ!その時既に行動は終了しているんだぜ!
『世界は一巡した』なら使ってもいい!支援
510名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/02(土) 00:25:18 ID:6B7tLAd6
もう寝ようと思ったのに!
だが支援する!
511ゼロのスネイク1/10:2008/02/02(土) 00:25:58 ID:+tCVA1mD
では改めて……よろしくお願い申し上げます

13話


ガラガラと音を立てて馬車が走る。
乗っているのはルイズ、ギーシュ、モンモランシーの3人。
ちなみにホワイトスネイクも発現状態でこの場にいたが、
浮いているので「乗っている」ことにはならない。

「それにしても……ミス・ロングビル。何で貴方が御者なんかやってるんです?
 学院に仕えてる平民の誰かにやらせればよかったじゃないですか」

モンモランシーが手綱を握るロングビルに声をかける。

「いえ……いいのです。私は貴族の名をなくした者ですから」
「え? でも、ミス・ロングビルはオールド・オスマンの秘書なんじゃ……」
「あの方は貴族と平民の区別に拘らない方なのです」
「トイウ事ハオ前ノ他ニモ下仕エ以外デ学院ニ勤務スル者ガイルノカ?」

突然ホワイトスネイクが会話に割って入った。

「いえ、そういうわけでは……」
「デハオ前ダケガオスマンニ取リ立テラレタ、トイウ事カ?」
「……私が知る限りでは」
「ト、ナルト平民トハソンナニ無能揃イナノカ?
 ソンナ筈ハアルマイ。
 有能デアル事ニ加エテオ前ハ恐ラクオスマンニ何カヲ持チカケタナ?」
「ちょっと、ホワイトスネイク! あんた失礼よ!」

ホワイトスネイクの追求にルイズが声を上げる。
この場で「ロングビル=フーケ」あるいは「ロングビルがフーケの配下」の可能性を疑うのが
ホワイトスネイクだけである以上、仕方の無いことではある。

「その通りだ使い魔君。ミス・ロングビルはレディーなんだからそういう態度はだね」

ギーシュもルイズに賛同して声を上げたが、

「「あんた(オ前)は黙ってなさい(黙ッテロ)」」

ルイズとホワイトスネイクのダブルパンチで黙らされた。

「ね、ねえモンモランシー。あの態度は、ちょっと無いんじゃないかな?」
「あんた、ミス・ロングビルに手を出したらただじゃおかないから」
「ひ、ひどい……」

そしてモンモランシーに出した助け舟も艦砲射撃一発で沈められ、目に涙を浮かべながらギーシュは黙り込んだ。
512名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/02(土) 00:27:07 ID:BLp7UxtA
し、支援なんだよぉぉぉぅ
513ゼロのスネイク2/10:2008/02/02(土) 00:27:53 ID:+tCVA1mD
「持ちかけたとは……一体何を?
 根も葉もない疑いをかけられては、私も黙っていかねますが」
「ソウダナ、例エバ……」

「色仕掛ケ、トカ」

ぶすっ

「ッ!! ツ、杖デ目ヲッ! 一体ドーイウ教育ヲ受ケタラソーイウコトガ平気デ出来ルンダッ!?」
「それはこっちのセリフよこのバカ蛇ッ! 
 どーいう生活環境にいたらあんな失礼極まりないことがいえるのよ!!
 ああもう、本当にすみません! うちのバカがこんなので……」
「い、いえ……」

ルイズの剣幕に思わずたじろぐロングビル。
だが彼女がたじろいだ理由はもう一つあったのだが……それは今ここでは言うまい。

「まったく……それにしても、何であんたが志願したのよ、ルイズ。
 大体あんた、魔法使えないじゃない」
「魔法が使える使えないは関係ないわ。
 土くれのフーケを放っておくのは、貴族として恥ずべきことよ」
「……あんた、プライドだけは一流よね。
 そのプライドのおかげで、わたしまでついて行くことになっちゃったし」
「あんたがくっついてったのはギーシュでしょ」
「ち、違うわよ!
 わたしはただ、ギーシュが心配だから……」
「そーいうのが『くっついてく』って言うんじゃない」

きゃあきゃあと言い合いをするルイズとモンモランシー。
と、そこへ。

「モンモランシー! やっぱり君は僕のことが」
「「あんたは黙ってなさい」」
「しゅん……」

またも会話にしゃしゃり出たギーシュだったが、
ルイズとモンモランシーによる言葉のクロスボンバーであえなくダウンした。

そんなギーシュを見てホワイトスネイクが一言、

「修行ガ足ランナ」
「え? って言うか君、ちょっと前に召喚されたばっかりだろ!?」
514名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/02(土) 00:28:36 ID:UfVs0D08
支援だッ!
515名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/02(土) 00:29:43 ID:6B7tLAd6
全滅しないといいね 支援
516名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/02(土) 00:30:33 ID:c5IpHwjw
さる対策
517ゼロのスネイク3/10:2008/02/02(土) 00:30:47 ID:+tCVA1mD
そんなことをしているうちに、馬車が止まった。
まだ昼間だというのに、周囲は生い茂った木々のせいで光が届かず、薄暗い。

「ここから先は徒歩で行きましょう。
 そろそろフーケの隠れ家が近いので、馬車では音で気づかれます」

皆がロングビルの提案に従い(ホワイトスネイクも何も言わなかった)、歩いて森の中を進む。
歩いているうちに、やがて開けた場所に出た。
この場所だけは木も少なく、光が注いでいるかのように明るかった。
そして……古びた小屋が、一つあった。

「あれがフーケの隠れ家です……身を隠してください。
 フーケがまだ、中にいるかも……」

手ごろな位置にあった木に身を隠しながらロングビルが言う。
ルイズたちもそれに従い、慌てて近くの木に隠れた。

「……ホワイトスネイク。あの中、見てこれる?」
「距離ニシテ約30メイル。ルイズガ小屋カラ視認デキル位置マデ移動スル必要ガアルナ」
「つまりわたしも危険、ってことね……」
「ソノ通リダ。私ハアマリ推奨シナイ。ソレヨリ……」

そう言ってホワイトスネイクはあたりを見回すと、突然腕からDISCを「二枚」取り出した。
初めて見るロングビルが唖然としている中(ギーシュとモンモランシーは授業で一度見ている)、
ホワイトスネイクはそのうちの一枚をおもむろに上空へと投げた。

「……あんた、今何したの?」
「見テイレバ分カル」
518ゼロのスネイク4/10:2008/02/02(土) 00:32:08 ID:+tCVA1mD
ホワイトスネイクがルイズにつれない返事を返した直後のこと。
突然、一羽の鳥が上空からすいーっと小屋に近づいて窓の縁に着地すると中を覗き、
それからすぐに飛び立って真っ直ぐにホワイトスネイクの方へ飛び、その掌の上にちょんと乗った。

一同が呆気に取られてみている間、ホワイトスネイクは鳥の頭部に指を突き刺すと、
すぐにそこから一枚のDISCを取り出した。
そしてそのDISCを今度は自分の額に差しこみ、しばらくしてから、

「アノ小屋ニハ誰モイナイヨウダ」

そう言い切った。
ルイズがそれに対して何か言おうとしたが、

「ルイズモコレヲ見ルトイイ」

そう言ったホワイトスネイクから差し出されたDISCを
得体の知れないものに触るようにおずおずと受け取ると、
さっきホワイトスネイクがやったように、そろ〜っと自分の額に差し込んだ。

その瞬間、ただ日の光を反射しているだけだったDISCに、映像が映り始める。
最初は空中の映像、それが一気に急降下して木で出来た何かに、いや、どこかの小屋に着地した。
それに連続して小屋の中の映像が始まる。
小屋の中には、誰もいなかった。
ルイズがそう感じた瞬間、映像の視点は180度反転して再び空中を飛んだ。
直後、映像にはルイズと、ギーシュ、モンモランシー、ロングビルが小さく映し出され、
それがどんどん大きくなったと思った瞬間、
視点が「何も無いように見える」場所に着地し、そこで映像は終わった。
519名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/02(土) 00:32:25 ID:BLp7UxtA
支援って今さ!
520名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/02(土) 00:32:42 ID:6B7tLAd6
口は災いのもと 支援
521ゼロのスネイク5/10:2008/02/02(土) 00:33:10 ID:+tCVA1mD
「ホワイトスネイク、これって……」
「先程ノ鳥ノ記憶ダ」
「記憶って……ちょっと! それってやられた相手は死んじゃうんじゃないの!?」
「問題ナイ。生命活動ニ支障ガ出ナイ程度ノ、部分的ナ記憶ダ」
「……本当でしょうね?」
「本当ダ」
「ちょっとルイズ。それ、わたしにも見せてくれない?」

そういうモンモランシーにルイズがDISCを渡すと、
モンモランシーはルイズがやったように自分の額にDISCを差し込んだ。

そして、しばらくしてからDISCを抜き取ってルイズに返した。
その表情には驚きの色が強く現れていて、そして何も言わなかった。

「……私も拝見します」

その様子を見てロングビルもDISCを受け取ると、同様にDISCを差しこんだ。
この時、ホワイトスネイクは小屋のほうをじっと見つめていて、ロングビルには目もくれていなかった。
そしてDISCを抜き取ったロングビルはやはり同様に驚いた様子で、DISCをルイズに渡した。
だがその表情には恐怖を感じさせる、引きつった「何か」が感じられた。

ホワイトスネイクの目はロングビルの方には向けられていなかった。
だが彼が持つDISC――腕から抜き取りながらも、結局投げなかったもう一枚のDISCには、
ロングビルの表情が反射で映し出されていた。
そしてホワイトスネイクは……それを見ていた。
522名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/02(土) 00:33:30 ID:bI55UurQ
C-EEEN!ホワイトスネイクを支援しろッ!
523ゼロのスネイク6/10:2008/02/02(土) 00:34:34 ID:+tCVA1mD
「僕にも見せて欲しいんだけど」
「「「あんたは(オ前ハ)見なくていいのよ(見ナクテイイ)」」」

ルイズ、ホワイトスネイク、モンモランシーからの集中砲火でギーシュは何も言えずにうずくまった。

「ミス・ヴァリエールの使い魔の……ホワイトスネイクさん、でしたか?
 貴方が、今やった事は……」
「最初ニヤッタノハ『命令』。
 生物ニ対シテ拒絶不可能ノ行動命令ヲ下ス事ダ。
 ソシテ鳥カラ抜キ取ッタノハ『記憶』。
 私ハドンナ記憶デモ、ドンナ後ロメタイ記憶デアッタトシテモ……
 ソレガ『ロングビルノ記憶』ダッタトシテモ……必ズ形ニシテ抜キ取レル」

ホワイトスネイクの言葉に、思わずロングビルは一歩下がった。

「い、一体……何がいいたいのですか?」

ごくり、と生唾を飲み込んでロングビルが言う。

「私ガ今一番見タイ記憶ハ……ロングビル、オ前ノ記憶ダ。
 アノ小屋ノ中ニハ誰モイナイ。
 ナラバフーケハドコニイル?
 獲物ヲ待ツ蛇ノヨーニ我々ヲドコカカラ見テイルノカ……アルイハ」
「あ、あの! さっきのホワイトスネイクさんが取った鳥の記憶の風景に、箱のような物が映っていました!
 もしかしたら、それが破壊の杖かも!」

唐突に話題を変えようと試みるロングビル。
しかし。

「ソウ思ウナラ自分デ取ッテ来ルベキダ。
 小屋ソノモノニ何カブービートラップガ仕掛ケラレテイタラ……
 ソレガルイズヲ傷ツケタリシタラ大変ダカラナ」

まるで人事のように言うホワイトスネイク。

言うまでもなく、小屋の中に「箱のようなもの」が映っていた事はホワイトスネイクも確認している。
だが……

「ソシテ逆ニ聞キタイ。
 ソモソモ、何故ソノ「箱のような物」ヲ破壊ノ杖ダト判断スル?」
「う………」
「名ノアル盗賊ガ折角手ニ入レタブツヲ置キ去リニスル事コソ考エ難イノニナ……何故ソンナ事ヲ言ウ?」
「それは……その……」

しどろもどろになるロングビル。

その様子を見て、さすがにルイズやモンモランシーもロングビルに一抹の疑いを持ち始めた。
ギーシュには、ホワイトスネイクが一方的にロングビルを言葉責めにして、
ロングビルがそれに困っているようにしか見えなかったが。
524名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/02(土) 00:34:47 ID:6B7tLAd6
小鳥を手にのせたホワイトスネイクに萌えた 支援
525ゼロのスネイク7/10:2008/02/02(土) 00:36:39 ID:+tCVA1mD
「ソレニ、ダ。ロングビル。
 オ前ノ言動ニハ一ツノ意思ヲ感ジル。
 ココマデ誘導シタノニモ……ソレ以前ニ、最初ニフーケノ居場所ガ分カッタト言ッタ時カラ」
「わ、分かりました! 私、今から小屋に向かいますので、後方支援をお願いします!」

ホワイトスネイクの言葉を途中で遮り、ロングビルは駆け足で小屋へと向かった。
一方、ホワイトスネイクは自分の言葉を遮られたことには意も介さない様子でその後姿を眺めながら、

「ギーシュ、モンモランシー。
 オ前達ニ何ガ出来ルカヲ把握シテオキタイ。
 ソレト使イ魔ノ情報モ、ダ」
「いいけど……何で今なの?」
「ロングビルガ小屋ニ入ッタ後……恐ラク直グニフーケノ攻撃ガ始マル。
 フーケハ罠ヲ張ッテイルハズダカラナ」
「……分かったわ」

モンモランシーが緊張した面持ちで答える。

「私は水のライン。
 20メイル先ぐらいまでなら水で攻撃できるわ」
「威力ハ?」
「まともに当たれば骨ぐらいは折れる威力よ」
「分カッタ。デハ使イ魔ハ?」
「カエルのロビンよ」

カエル、と聞いた瞬間、ホワイトスネイクの体が微妙に震えた。

「ロビン自体にはあんたみたいに戦闘力はないわ。
 せいぜい感覚の共有で私をサポートするぐらい……って、どうしたのよ?」
「…………何デモナイ」

猛毒のカエルが雨あられの如く頭上に降り注いだ記憶が一瞬フラッシュバックし、
すごくイヤな気分になったホワイトスネイクであった。
526名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/02(土) 00:36:42 ID:bI55UurQ
支援
ギーシュ本当に可哀想な子、いじめられっこ的な意味と無能的な意味で
527名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/02(土) 00:36:44 ID:BLp7UxtA
ギーシュはダメな子だなw支援
528名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/02(土) 00:37:05 ID:6B7tLAd6
ギーシュ空気読んで!支援
529ゼロのスネイク8/10:2008/02/02(土) 00:37:57 ID:+tCVA1mD
「……デハ次ハギーシュダ。
 オ前ノ魔法ハ既ニ見テイルカライイ。
 使イ魔ノ情報ヲモラオウカ」

使い魔、と聞いて精神的にやつれていたギーシュが輝かんばかりの笑顔になった。

「僕の使い魔の事を聞いてくれたのかい!?
 いやあ、嬉しいなあ!
 僕の愛しのヴェルダンデの事が気になるなんて、君もいい趣味してるじゃないか!」
「戦力ニナルカドウカガ知リタイダケダ。サッサト言エ」
「まあまあ、そんなに急かさないでくれたまえ。
 僕のヴェルダンデはジャイアントモール。
 地中を水の中の魚みたいにすいすい動けるんだ!」
「……ツマリモグラカ?」
「ちょっと待ちたまえ。僕のヴェルダンデはただのモグラなんかじゃあないんだ。
 モグラよりもずっと強くて、ずっと賢くて、ずっと愛おしい、それが僕のヴェルダンデさ!」
「トリアエズモグラノ類デアル事ハ分カッタカラモウイイ」

そう言ってホワイトスネイクが会話を切った瞬間だった。

みしり、と大地そのものが軋んだ。
瞬間、ホワイトスネイクは小屋に目を向ける。
目を向けた先にいたのは、全長30メイルはあろうかという巨大ゴーレム――フーケのゴーレムだった。

そのゴーレムは拳を大きく振り挙げると、
子供が砂の城を崩すより容易く、小屋を根こそぎ吹き飛ばした。
人型の何かが、小屋の残骸と共に森の中に吹き飛ばされるのがホワイトスネイクにも見えた。
そしてそれは、ルイズにも、モンモランシーにも、ギーシュにも見えた。
530名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/02(土) 00:38:21 ID:c5IpHwjw
ガンバレ白蛇、蛇ならカエルを飲み込めるさ。
支援
531名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/02(土) 00:38:43 ID:6B7tLAd6
蛙が苦手な蛇とか可愛いじゃあないか 支援
532名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/02(土) 00:39:38 ID:UfVs0D08
支援支援
533ゼロのスネイク9/10:2008/02/02(土) 00:39:49 ID:+tCVA1mD
「い、今のって!」

モンモランシーが思わず声を上げ、ギーシュは口をぱくぱくさせる。
そして一方、ルイズは呆然として、声を上げる事すらできなかった。
自分もロングビルを疑っていた。
ホワイトスネイクがロングビルを責めるのにつられて、わたしも!
そのために、今、ミス・ロングビルが――

「落チ着ケ、ルイズ」

自責の念に駆られるルイズの前にホワイトスネイクが立つ。
ただしルイズにはその背が向けられており、ホワイトスネイクは真っ直ぐにゴーレムを見据えていた。

「今見エタノハ何ダ? 見エタノハ『人型の何か』ダ。
 アノ程度ナラギーシュダッテ作レル」
「………」

沸騰しそうになる頭をどうにか平静な状況に持っていき、やっとのことでルイズが口を開く。

「……その、根拠は?」

ホワイトスネイクは暫し考えた後、

「私ヲ信ジロ」

確かにそういった。
534ゼロのスネイク10/10:2008/02/02(土) 00:41:11 ID:+tCVA1mD
自分を、信じろですって?
ルイズは、自分の耳を疑いたくなった。
ここに来る前にあんだけのことをしといて、それでどの口がそんなことを言えるの?
こいつ、本当にそれでわたしが納得すると思ってるの?
そんな思いが脳裏を次々と掠める。

だが、自分の心を過ぎる感情の中に一つ、しかし決して見逃せない感情が、一つあった。



――自分が信じないで、誰がアイツを信じるの?――



その感情に咄嗟に反駁しようとした。
したが……できない。
自分が信じなければアイツはどうなるの?
誰もがアイツを危険視して、誰にも近寄られないで、それでも一人で、わたしを守ろうとするに決まってる。

そんなのは、絶対にダメだ。
あの夜――アイツと3つの約束をした夜、誰にも言わないで自分の心にだけ誓った事。
ホワイトスネイクを自分の使い魔にしてみせる、という誓い。
今ここでアイツを信じなかったなら、もう二度と自分はアイツを信じられなくなる。
そんなのは、絶対にダメだ。
だから――

「信じるわ」

自分でも驚くほど、その言葉はすらりと出てきた。
そしてその言葉は、ホワイトスネイクにも僅かながら衝撃を与えた。
それは、背中越しに、ルイズにも確かに伝わった。

「了解、ダ」

ホワイトスネイクはやはり背中越しに、ルイズにそう返した。
しかしその口端には、微かに笑みが浮かんでいた。


To Be Continued...
535ゼロのスネイク11/10:2008/02/02(土) 00:43:26 ID:+tCVA1mD
投下完了の世界

ルイズが少しホワイトスネイクに歩み寄りました
次からvsフーケが本格的に開始する世界

それと、あのですね
イジられキャラに落ち着いてるうちのギーシュは間違ってるんじゃあないかと最近心配な世界なのですがいかがでしょうか
536名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/02(土) 00:43:59 ID:BLp7UxtA
GJ!
なんという萌え蛇
この話のヒロインはまちがいなくホワイトスネイク
537名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/02(土) 00:44:46 ID:UfVs0D08
GJ信頼回復までの流れが美事にございまする。
ギーシュは二枚目にも三枚目にもなれる重要キャラなんだよ!だからそれはそれで大丈夫ですよ!
たぶん。
538名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/02(土) 00:46:45 ID:c5IpHwjw
アンタが信じないで、誰がアンタを信じるんだい?
自分の思うとおりに書けばいいのでは。
自分は貴方のギーシュが好きです。
でもホワイトスネイクはもっとスキです。
539名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/02(土) 00:48:30 ID:6B7tLAd6
スネイクさん投下乙そしてGJでした

使い魔と主の共通点
意外ッ!それは蛙嫌いッ!
ギーシュがイジられ役?逆に考えるんだ
彼は欠かせない存在なんだとそう考えるんだ
540ゼロのスネイク:2008/02/02(土) 00:53:25 ID:+tCVA1mD
皆サンクス
勇気が沸いてきたからうちのギーシュは今のままで行く世界だぜ
541名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/02(土) 00:57:38 ID:XTewPQto
GJ!
え? ギーシュは呼吸するように二枚目と三枚目を行き来する生物だろ?
542名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/02(土) 02:18:55 ID:3Pu+hAVN
しかしカエルって聞いただけでビクッとしてたら、
ロビンの毒々しい外見見た時にどうなってしまうのかw

@クールな白蛇は全力でロビンを殺しにかかる
Aルイズが爆破してくれる
B逃げる。どうにかできるわけないでしょう、ファンタジーやメルヘンじゃあるまいし
543名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/02(土) 03:15:23 ID:3MX9sAKm
いや、別にそんな極端なキャラじゃないだろ白蛇さんはw
544名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/02(土) 11:44:18 ID:eipJR1g8
>542
3.は「動けなくなった所で顔に張り付かれる。現実は非情である」
じゃないか?
545名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/02(土) 11:46:47 ID:g/Nr9nK3
キャーカエル、ココは地球破壊円盤ヲ・・・
546名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/02(土) 12:17:18 ID:3Pu+hAVN
>>545
白蛇えもん乙www
547名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/02(土) 15:21:57 ID:76Qm2AVJ
むしろ素数を数えだしそうだな
548名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/02(土) 15:29:44 ID:vAkv7fsd
カエルが苦手なのはハットリくんでござるよ、ニンニン
549名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/02(土) 18:39:54 ID:MRrYc/I3
真帆良の忍者もカエルが嫌いです
550名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/02(土) 23:32:22 ID:penQ+8h9
鳴鏡の忍者もカエルは苦手だな
551名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/03(日) 00:54:08 ID:h4xwi4yT
忍者と言えば鎖かたびらだが、網目に包まれたおっぱいもいいよな。
552名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/03(日) 01:35:01 ID:VWd1cNAS
お銀のことか
553名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/03(日) 01:46:14 ID:yFHcv/0f
何?イジられキャラに落ち着いているだって?
逆に考えるんだ。殺っちまえばイジる事もできないって考えるんだ

うん…惜しい事したよホントさぁ
554名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/03(日) 02:23:48 ID:pm0IxYYm
兄貴乙……あるいは旦那か?
555名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/03(日) 03:09:02 ID:tKW+czDL
ふと思ったんだが
宇宙一巡の瞬間、ビッグクランチ→ビッグバンの瞬間にハルケギニアにいたら
次の宇宙でそいつは生まれてこないのかな
556名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/03(日) 12:54:42 ID:7P4zAGXk
代わりの人が生まれるんじゃないかなと思う
ハルケギニアは地球と同じ宇宙なら一概には言えないが
557名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/03(日) 14:20:22 ID:MgVM1rrQ
一応異世界って事になってるけど単に別の惑星の可能性もあるしな
558名無しさん@お腹いっぱい:2008/02/03(日) 15:15:25 ID:pqMLQSvp
奴隷はブチャの二刀流に期待したいとこだけど
ガンダールブってアヌビスも扱えるのかな?


奴隷に表紙を付けるとすれば
ブチャの両の頬をシルフとキュルケが舐めあっているのを
ルイズが横から睨んでいるというのがいい
559名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/03(日) 15:30:13 ID:3nhNcWIX
どんな表紙だよw

アヌビス神妖刀流舞の表紙は
ルーンの刻まれたアヌビス神だけでいいと思う
で、表紙めくったらキャラ紹介のあのビラビラ部分で
ルイズに思い切り踏まれてる絵が載ってるんだ
荒木絵でも兎塚絵でもいいな
アオリは『覚えたぞ!』
異世界に召喚されてしまった刀のスタンドアヌビス神
魔法使いの体を乗っ取り殺戮の限りを繰り返す……なんてことはなく
エロ剣と勘違いされたまんま、ワガママな美少女
ルイズの使い魔をやることになるのだが……?
ハイテンションバトルストーリーの幕がここに上がる!

……何考えてんだか、自分
560名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/03(日) 15:31:57 ID:BwPrS8w3
>>558
ガンダールヴ効果は
・身体能力の上昇
・武器の使い方を把握
だから、アヌビスを完全に支配するのは能力で出来る範囲内から逸脱してるように思う

ところで、地下水ってどうやって持ち主を操ってるんだっけ
水の先住魔法かそのあたりか?
561名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/03(日) 15:53:13 ID:iIFFbYWs
>>559
君のアイデアと覚悟に敬意を表す
もし販売したら迷わず買う
562名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/03(日) 16:26:37 ID:nj8feEh/
いつ発売されますか?
563名無しさん@お腹いっぱい:2008/02/03(日) 19:36:58 ID:tP/d+ZLA
ゼロいぬでのサイトの待遇が気になる
564名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/03(日) 21:02:33 ID:8ToPivMt
前の使い魔と同じ待遇でってことで普通に犬扱いとかw
565名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/03(日) 21:44:03 ID:pm0IxYYm
それはむしろご褒美だ
566名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/03(日) 21:46:39 ID:DITpjWJc
つ、つまりルイズの顔を嘗め回したり全裸で片足上げてティンコ丸出ししてもかまわんと言うことか
567名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/03(日) 22:05:29 ID:BwPrS8w3
>>566の方にDISCが一枚飛んでいくのが見えた
568名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/03(日) 23:14:55 ID:q+Q/WqiT
後のスタンド使いである
569名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/03(日) 23:20:54 ID:ui2XUHe2
オスマンとヴァニラの中の人が一緒だったなんて……
570名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/03(日) 23:25:46 ID:T5B9qAk/
オスマン最強最大の魔法は『ガオンッ!』か・・・
571名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/03(日) 23:38:12 ID:BwPrS8w3
>>569
やたら長生きなのは半分吸血鬼だったからなんだな
572名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/03(日) 23:44:36 ID:wEfcrjCv
つまりエロジジイを演じているのはかつてDIO様を慕っていたことを隠すためだったんだな
573名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/03(日) 23:52:20 ID:tfQ0m8yE
あのローブの下は革チョッキにブルマなマッチョと申すか
574名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/03(日) 23:54:28 ID:q+Q/WqiT
さらに緑色の神様なんだね
575避難所に投下した宣伝:2008/02/04(月) 00:44:17 ID:EUWsWdGS
避難所に、新しい『味』を仕込んでおいたぜ……
576名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/04(月) 08:51:17 ID:0jHsjHZt
スゴあじ・・・!
577名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/04(月) 12:21:29 ID:bxN6ab2F
ヨシェナベとっても美味しかったです、と日記には書いておこう
578名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/04(月) 18:21:25 ID:9Ymeje6e
キング・クリムゾン
579名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/04(月) 21:04:54 ID:yefgCULm
ホル・ホースが好きだからなんか書けないもんかと考えてんだが、
ギーシュもワルドも眉間に一発で終了しちまう……

さすがDIOが認めただけのことはあるぜ!SSとしては駄目だけど!
580名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/04(月) 21:05:50 ID:+v45BplP
キンクリ発動するヒマがあるならなんか書こうぜ
581名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/04(月) 21:20:58 ID:ti3B79B+
>>579
ホルホースは脇役としてのスペックは最強なんだが主役を張るとなるとどうも難しいよな
582名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/04(月) 21:23:30 ID:ti3B79B+
そして思い付いたぜ
ホルホースをアニエスの補佐として銃士隊に入れてしまえば……



ん?
こんな時間に客とは珍しいな
ちょって行ってくる
583名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/04(月) 21:34:29 ID:szzAra8h
おいおい、ギーシュに召還させようとしてるネタをあたためてるのにどうしてくれるんだ
584名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/04(月) 21:46:02 ID:/gBh6A4Z
俺なんか暖めすぎて糸を引いてるんだぜ
585名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/04(月) 22:08:02 ID:O4JwNzTS
腐りかけが一番おいしいんだぜ?
586名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/04(月) 22:15:47 ID:0k9xYma+
つまりホルホース×アニエスフラグ?
復讐の為に女であることを捨て置くアニエス
しかしホルホースは「美人なのにもったいない」
「気の強い女も好きだ」と言い続け
いつしかアニエスは彼に心ひかれる
だが、彼は極度のフェミニストで
他の女性も口説いていた
アニエスは、王宮の宝物庫にあった破壊の刃を盗み
以下nice boat



あれ?何かバイクの音がして
587名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/04(月) 22:55:18 ID:X8/U4s9L
今、マライア姐さんで書いてるけど、なんかホルホースもいい気がしてきた……
どうしよう
588名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/04(月) 23:09:39 ID:UnGjX4/q
>>587
逆に考えるんだ、かつて初代スレ506さんが行っていたように2つ以上の連載をすればいいんだと考えればいいんだ
589名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/04(月) 23:38:27 ID:X8/U4s9L
分かったよ兄貴!
ようし、同時進行で二つ書いてやるぜ!!
590名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/04(月) 23:45:42 ID:BoT2xiAl
待てそれは停滞フラグだ
591名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/04(月) 23:47:13 ID:Bn3lW5O9
>>588
3つじゃなかったけ?
592名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/05(火) 00:14:23 ID:Twr3YHiW
三個か? SS三個書きたいのか? 三個……いやしんぼめ!
いや、実際すごいことだと思います
593名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/05(火) 00:14:39 ID:I0O9o0x0
ホルホース×アニエス?
それをお望みと申したか。
594名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/05(火) 00:22:35 ID:8t264l4C
二つ同時連載したいなら、せめて片方はモチベーションがある内に一気に書き溜めておかないと
後で泣きを見るぜ!一方が詰まるともう一方のSSも得てして詰まりやすくなるしね

…そんなこんなで俺も四ヶ月新しいSSが書き上がって無いぜ…短編はタマ〜にチョコチョコ出してるけどね…
595名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/05(火) 00:44:12 ID:WywvFhgr
短編を書いたなどと嘘をつくなあああああ!
596名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/05(火) 09:03:58 ID:8UygrgyG
どう考えても短くないです
本当にありがとうございました
597名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/05(火) 16:52:24 ID:f0v8ovAg
キン★クリ
598名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/05(火) 22:00:00 ID:TSzo1k60
    ./  . . :・・: : :,! 'i: ';\: : : : i,: :・: : : i,
    /  . . : :・: : : i|: |   |: i \: : : |: i: : : :!,
   .| ・・ : : : i: : :,!|: |   'i:!  \: :,|-|:・: :|
   .|. : : : i: : |: : ! |.:|    i|  /ヽ:i'i|: : : : |
    |: : ・:: ト,i,|_:|. !|     ` /,,,,、'!:| 'i: :・:|
    .|: : : : |:| |:| `_ヽ,    γ"-。, `ヽ | :・ :|
    |: i: : :|:|. /,-。,`       i::::::::   :: : :|   きんぐ くりむぞん!!
     |:|: :・・/ ,':::::::::i     '=:;;ノ   '{:・: : |
がおー |:!; : !, ヽr,,,=' __   '   _    }: : i:|
      |::|: : : |     ,.v'  `ー- ''  `ヽ /: : i:|
     |: :|: : : |、  i             ノ ".|: ・ |~' .
     |: ::|:: ・・'i,`=..ヽ       _,. -" r=|: :.!..::'V
     !: /`i : : '|,,,_  ̄'''''''ニ''" /  .}}:|: :,i: :,..i
     ,!:/:|'':'|: : : 'i,{'=:.,,,,,r=:.、   r=-ー" |: :,i'':'": .|
    //|::|..:..'!; : : :ヽ:......:.. : !==":.....,,::''''|::i:|...:.. :''|
599名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/05(火) 22:11:37 ID:RrUZhSSY
      /(  ヽ
  __(ヽ..ノ  'V(ノ゙ヽ_
   )`V   ._   _  ._ヽ
 ./ (    ((_))((_))(_))  だがレクイエム
 ( V  ノ/~     ヽハ
  ヽ. ヽノ |リヽ    /ヽ}_}ハ.
  ヽ  /. ●    ● l小
   )X(⊂⊃ 、_,、_, ⊂li|ノ
   i⌒ヽ.   (_.ノ   ノi|__/⌒)
..  ヽ  ヽx>、 __, イl::::::::ヽ /
  ∧__,ヘ}ヘ(  V  )Θ'::ハ
  ヾ_:::ッリ::::.ヽ:   ./::::::/''
600名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/05(火) 22:19:19 ID:3jGrgl9a
                 /ソヘヘ      ,−−、
                 'v=0=w`    _|Jo_ミ
     じょ…承太郎ッ!!>('(゚∀゚;∩'    ('(゚∀゚∩<そして時は動き始めるよ!
                  ヽ::::ノ〈ゝ     ヽl「~'〈
               []   ヽヽ_)      ヽヽ'.)
               ||___________
             / ̄:l:  .―:l:――――:l:/___丶,―、
             |  :|:./ E:|: EEEEl  :|:|:   :  ̄ ̄||`l
            / ̄ ̄丶 ̄丶 EEEEl  :|:|:__:___||._|
            /  ,●、  |  |777777|:|   l, ―┴、┴――、
           | ●|  |.● |  |/////// .:|:| /     丶    丶
           丶  `●'  .|  |====:|:| |====l===|
            丶____/_/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~'丶_____/____/
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄'"''''''''''''"'"''"'"'"'"''''''''
601名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/05(火) 23:23:42 ID:8xVrwMIz
>>598-600
お前らwwwwwww
602名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/05(火) 23:40:06 ID:sikWR3ZF
誰も投下することなく、今日も一日が終わろうとしている。

いいのか?本当に、このままでいいのか!?
俺は良くない。だから、SS初心者でも勇気を持って投下する。

マライアさんは書き溜めるとして、ホル・ホースで導入部を書いてみた。
プロットなしで突っ張り知りたいと思う。

行くぞオラ!
603名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/05(火) 23:41:07 ID:Ree47AYB
君が!規制されるまで!支援をやめない!
604名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/05(火) 23:41:33 ID:AW4QW0Qz
支援だ!
605銃は杖よりも強し:2008/02/05(火) 23:43:53 ID:sikWR3ZF
0 その後の皇帝

 ジェット機のエンジン音が遠く聞こえる。
 カイロ空港のロビーから見える景色には人工的に植えられた木々が満ちていたが、季節
の趣はあまり感じられない。
 特に季節の変わり目でもないのだから、そうそう変化があってもおかしいのだが、男は
それが無性に寂しく思えていた。
 灰皿に最後の一本となったタバコを押し付け、腕時計に目を向ける。
 予約した便は砂嵐の影響で遅れている。風自体はもう収まっているが、滑走路の整備に
時間がかかるらしい。
 特に急ぎの用もない。ゆっくりと待つとしよう。
 そう思って、男はポケットの中の小銭を適当に握った。
「きゃあああああ!!」
 背後で悲鳴が上がった。
 途端に騒々しくなる空港内の様子に頭を掻いた男は、ゆっくりと振り返ってその光景を
目に入れた。
 オランウータンだ。
 檻に入れられたオランウータンが、若い女性旅行客の足を握って檻の中に引きずり込も
うとしている。
 搬送していた運送会社の人間が数人、慌てて近くにいた警備員に助けを求めていた。
 鼻の下を伸ばした類人猿の姿に、男はつば広の帽子を深く被って情けない溜息をつく。
 そのオランウータンに、男は見覚えがあったのだ。
 檻の周りでは援護に入った警備員や、檻を運んでいた男達が必死になってオランウータ
ンの腕を引き剥がそうとしているが、純粋に腕力が違いすぎるために上手くいっていない
ようだった。
 女性の悲鳴が一層高まる。周囲の人間が引き剥がそうとしているせいで、足を掴んでい
るオランウータンが力を入れているのだ。
 放っておけば、遠からず女性の足は潰れてしまうだろう。
「やれやれ」
 肩を竦めた男は、自分の乗る予定の便が動き出したというアナウンスを聞きながら檻に
近づいて行った。
606銃は杖よりも強し:2008/02/05(火) 23:45:39 ID:sikWR3ZF
 西部劇に出てくるようなガンマンの格好をしている、どこか場違いな雰囲気の人物に人
垣が割れて道を譲っていく。
「よう、フォーエバー。久し振りだな」
 檻の前に立った男は、オランウータンに向かって声をかけた。
 この男はサルと知り合いなのかと、周囲の人間達は驚いた様子で目を向けたが、男はそ
んな視線を気にした様子も無く、女性の足を掴むオランウータンの手に自分の手を重ねた。
「んー、好色だってのは話に聞いてたが、まさか人間の女が相手だったとはなあ」
 そう言いつつ、男はオランウータンの手の甲を摘み、捻った。
 オランウータンが悲鳴を上げる。それと同時に、女性の悲鳴も上がった。
 手を抓られても放す気はないらしい。手に篭められた力が増したようだった。
「おいおい、いい加減放してやれよ。溜まってるのはわからんでもないが、女性はもっと
優しく扱うもんだぜ」
 男はオランウータンから離れ、足を掴まれた女性の体に手をかける。
 肩を抱き寄せ、その顔に手を添えた。
 女性の顔は涙と鼻水、それに剥がれた化粧でボロボロだった。
「あーあ、美人が台無しじゃねえか」
 上着のポケットから取り出したハンカチを女性の顔に当てて、乱れた化粧と涙を拭う。
 最後に鼻をかませて、男はハンカチを近くのゴミ箱に放り投げた。
 放物線を描いてゴミ箱の入れ口に収まったのを見て、グッと拳を握り締めた後、男は改
めて女性の顔を見た。
「あ、ごめん」
 拭った下から現れた顔は、あまり美人とは言えなかった。
 思わず謝ってしまった男に、女性は足の痛みも忘れて男の胸倉を掴みあげる。
「アンタ、今の謝罪はいったいどういう意味よ!」
「いやあ、その、アレだ、なんだ、ほら、いろいろだよ」
「いろいろってなによ!いろいろって!」
 なんだなんだと周囲を囲む人の数が増えて、騒動を楽しげに見始めた。
「人の顔を見て謝るって、アンタ、あたしに謝んなきゃいけないことしたわけ!?あたし
の素顔はつい謝っちゃうほど酷いの!ねえ、答えなさいよ!」
「いやあ、平均っちゃあ平均なんだけど、やや下かなあ。あ、いや、ウソウソ!美人だよ
美人。世の中の男共がなんと言おうと、アンタは美人だ。オレが補償してやるさ!」
「まだなんか、馬鹿にされてる気がする……」
 男は意図的に同音異義語を混ぜて男は女性を適当に宥めると、視線をオランウータンに
向けて手を伸ばした。
「手前も、笑ってんじゃねえよ」
 いつの間にか女性から手を離したオランウータンが歯をむき出しにして、男をバカにす
るように手を叩いていた。
 その眉間に男の軽く握られた人差し指の先が向けられる。
 唐突に、オランウータンは笑うのを止めて、怯えるように檻の奥へと体を寄せた。
 それを見て小さく悪態をつくと、男は立ち上がって周囲に睨みを利かせる。
607銃は杖よりも強し:2008/02/05(火) 23:46:52 ID:sikWR3ZF
「オラ!見せもんじゃねえぞ!」
 さっきまでの男の情けない姿のせいで、その叫びには迫力が無い。しかし、集まってい
た人間達は、もう楽しそうな騒ぎは終わったみたいだと、少し不満そうに散っていった。
 足元に小銭が投げられているが、まさかショーかなにかだと思われたのだろうか。
 何なんだ一体。と男は頭を抱え、それでも一応投げられた小銭を拾い集めていた。
 自由の身となった女はそれを見てちょっと頬を引きつらせたあと、大げさに頭を下げる
運送員の男達に名刺を受け取った後、何も言わず立ち去っていった。
 床に転がった小銭を拾い終えた男は、やれやれと溜息をついて、帽子を被りなおした。
「まあ、テメエのことだ。これからも好きに生きるんだろうが、もうスタンドは以前のパ
ワーは出ねえんだろ?あんまり無茶すると、あっさり始末されちまうぞ」
 のそりと体を動かして佇まいを直したオランウータンは、男に別れを告げるように手を
振ってニヤリと笑う。
 言われなくても分かっている。そう言っているかのようだった。
 大人しくなったオランウータンの檻に暗幕を被せて、警備員を連れた運送会社の人間が
男に一言礼を言って、檻を押していく。台車の下の車輪が、磨かれた床に滑って高い音を
立てた。
 遠ざかっていく懐かしき戦友の姿を見送って、男は天井から吊り下げられた運行電子掲
示板に目を向ける。
 予定の便は、もう搭乗を開始していた。
「おわっと、ヤバイヤバイ!乗り遅れちまう!」
 旅行鞄を引きずって駆け出した男の後姿。それをじっと物陰から見つめて、オランウー
タンに足を掴まれていた女が無線機のボタンを押した。
「目標が飛行機に乗ります。C班は準備をお願いします」
『了解。対象の危険度に変化は無いか』
 無線から渋い男の声が響く。
「ありません。依然、C以下と考えてよいでしょう」
『……ふむ。一芝居打ったが、あまり意味は無かったようだな』
「ですが、フォーエバーが我々に協力的であることが分かっただけでも、我々にとっては
十分な収穫だと考えます」
『それもそうか。いや、ご苦労。君はしばらく任務に空きがあるだろう。エジプト観光で
もして来ては……、なに?』
 無線の向こうで慌てたような声が聞こえてきた。
 男女の入り乱れた声と無線に出ていた男の声が重なって雑音に変わる。
 それから三十秒も経った頃、無線の向こうの慌しさはそのままで男が再び無線に出た。
「どうしました」
 女の声に、男は唸り声を上げて状況の説明を始める。
『C班がホル・ホースを見失ったらしい。金属探知のゲート前で荷物を抱えていたのは見
ているのだが、人込みの中に一瞬姿を見失った後、煙のように消えたとか』
608銃は杖よりも強し:2008/02/05(火) 23:48:18 ID:sikWR3ZF
「新手のスタンド使いでしょうか」
『わからん。とにかく、君の休暇は返上になりそうだ。大至急、ゲート付近に展開するC
班と合流、捜索チームとしてホル・ホースの身柄を確保してくれ』
「了解」
 通信が切れる。
 はぁと、息が漏れた。
 女は久し振りの休日が潰れたことに嘆いて首を横に振る。
 まったくもって冗談ではない。こちらはもう一ヶ月も働き詰めなのだ。
 愚痴が零れそうになるのを我慢して、大きく息を吸った女は、ゆっくりと空気を吐き出
して全身に力を篭める。
 自由時間の少なさと山ほどある禁則事項。だが、その代わりに報酬は破格だ。
 そんな仕事に就いた自分を呪いつつ、女は荷物に隠した帽子を取り出して頭に被った。
 帽子の前面には彼女の所属する組織の名前が刻まれている。
 スピードワゴン財団。それが、男を追っていた人間達の正体だった。

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司
るペンタゴン。我の運命に従いし、“使い魔”を召喚せよ」
 少女の声が、どこか遠くで響き渡った。
609名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/05(火) 23:49:09 ID:AW4QW0Qz
支援ぬ
610名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/05(火) 23:49:42 ID:3jGrgl9a
フォーエバー何やってんだw
そしてエンペラー支援
611名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/05(火) 23:50:20 ID:9aeO+JGh
C-EEEN!
612銃は杖よりも強し:2008/02/05(火) 23:50:56 ID:sikWR3ZF
 導入部で短いですが、以上であります。
 って、投下してから気付いたけど、これ避難所向けだったわ。orz
 しかも、投下前の宣言で早速打ち間違いしてるし……

 次回からは避難所で続けて行きたいと思います。
 何とか完結させますよ!!
613名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/05(火) 23:56:11 ID:aEjIITgu
こういうオリジナリティのある導入部は好きだぜ!
がんばってくれ! 応援してる!
614名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/06(水) 00:22:52 ID:kkcfytmt
投下乙そしてGJでした
続きが気になる出だしですなあ
ワクワクします
615名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/06(水) 00:34:21 ID:PjzHys5d
乙!
初心者にしてはスタートはいい感じじゃないか。がんばれー
616名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/06(水) 00:42:11 ID:gl7zSWRO
サル財団に雇われたのかよwww
617名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/06(水) 00:55:28 ID:7Vq19GBl
DIOの配下で真っ先に社会復帰したのがエテ公かよw

しかしこれはかなり期待できそうだぜ
618名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/06(水) 01:24:45 ID:VpNcuppB
こっちで投下してくれ
619名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/06(水) 11:51:11 ID:YCg6I3Ol
そして今日も金☆クリ
避難所への投下と本スレへの投下の基準って何が基準になってるの?

ホル・ホースが好きだからすげー楽しみ!!
エテ公自重しろw
620名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/06(水) 12:06:19 ID:OxQ38j9r
>>619
今の基準は分からないけども避難所行きはゼロ魔キャラがスタンドを身につけるとかだなぁ
本スレだと荒れるようなものだろうねぇ
621名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/06(水) 12:33:10 ID:nFD1dSjF
>>619
あとルイズが、面識の無いJOJOキャラ同士を複数召喚している作品も避難所行きかな
622名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/06(水) 12:34:05 ID:ePegHGu+
正直ここまで人が減ったら荒れないと思う
623名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/06(水) 12:48:20 ID:wEEc7pGj
ホルホース超期待
避難所よりもこっちでやってくれると嬉しいな
624名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/06(水) 14:40:21 ID:bwED2nI+
>>620
それはDISCもこみで?
625名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/06(水) 15:38:00 ID:OxQ38j9r
>>624
そこまではわからんけども、俺が知ってる避難所に投下されたのはギーシュがオリジナルスタンドを身につけた奴だし
流石にDISCまではわからんなぁ
626名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/06(水) 16:05:27 ID:nFD1dSjF
>>624
多分DISCでも矢でもゼロ魔キャラがスタンド覚えるのは避難所行きじゃないかな
例、ゼロの奇妙な白蛇、ギーシュの奇妙な決闘
627名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/06(水) 16:15:55 ID:C4pv6yb/
スタンドを単体で使い魔として召喚してる場合はこっちでも良かったと思う
628名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/06(水) 16:28:54 ID:QrJDJSak
キャラが原作を大幅に逸脱するかどうか、と言うのも基準ですな。

ゼロ魔キャラがDISCでスタンドを覚える話でも、こっちに投稿されたものもある。
「奇妙なルイズ」と「鉄塔の使い魔」やね。

あと、ギャグの場合はストーリーが逸脱しても問題ないと思う。
「ゼロの変態」とか「アヌビス神」とかね。

たしかギーシュの奇妙な決闘は、「ギーシュがオリジナルのスタンドを覚えて活躍する」というのが
原作からの逸脱が激しい、と言うことで避難所に投稿されたはず。

「ゼロの奇妙な白蛇」は、ルイズの暗黒面が強いんで避難所になったんじゃなかったっけ?
おなじ白蛇の「ゼロのスネイク」はこっちなんだし。

まぁ、それを言っちゃうと「DIOが使い魔!?」なんてダーク方面に逸脱しまくりなんだが。
629名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/06(水) 16:30:28 ID:S5p+RdJ+
DIO、変態、俺TUEEE、番鳥
…いつまでも待っていますよ
630名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/06(水) 16:42:42 ID:nFD1dSjF
「DIOが使い魔!?」は確かに続きが気になるけど……
どんどん主要キャラが吸血鬼かゾンビか肉の芽で奴隷になっていくのは読んでて辛いわ
631名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/06(水) 16:48:53 ID:b8mL0uv0
>>628
だがゼロのスネイクもシエスタがスタンド使いになりそうな伏線が……
632メロンの使い魔:2008/02/06(水) 16:50:16 ID:Fl4P7qUD
流れを切るようで悪いですが、投下しますねー。
633名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/06(水) 16:52:08 ID:6riEtP/N
しえん
634メロンの使い魔:2008/02/06(水) 16:52:22 ID:Fl4P7qUD

十一話 虚無の曜日

 花京院は夢を見ていた。
 エジプトのカイロで、DIOと対峙する夢だ。
 張り巡らせたハイエロファントの結界、降り注ぐエメラルドスプラッシュ。逃げ場はない。全方位の攻撃を防ぐ手段もないはずだ。
 一瞬の間もなく、吹っ飛ばされる。
 建物に叩きつけられ、DIOを見上げる。
 吸血鬼、最強のスタンド、悪の化身……DIO。
 DIOは花京院から視線を外し、ジョセフの方へと向けた。

 そこで、視界が一瞬途切れた。

 次に見えたのは、惨劇の後だった。
 血を吸われ、干からびたジョセフが倒れている。
 血を流し、ポルナレフが苦しそうにうめく。
 全身をナイフで串刺しにされ、ピクリとも動かない承太郎。
 これ異常ないほど、絶体絶命の状況だった。
635名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/06(水) 16:52:59 ID:QrJDJSak
>631

別に問題はないでしょ。
それでシエスタが暗黒面に堕ちて原作と別物になるようなら避難所だろうけど、
性格変わらずにルイズ達と一緒に闘う、っていうんなら本スレでしょ?
636名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/06(水) 16:53:24 ID:QrJDJSak
しまった支援
637メロンの使い魔:2008/02/06(水) 16:53:40 ID:Fl4P7qUD
 今すぐ助けに行きたかった。勝てなくても、相手にならなくても、仲間のために戦いたかった。しかし、それはできない。
 ……僕がそこにはいないからだ。
 心の中で花京院は呟く。
 ……ハルケギニアという、異世界にいるからだ。
 それに気付いた瞬間、視界が揺らいだ。
 砂漠で見る蜃気楼のように景色は歪み、真っ暗になった。

 いきなり目が覚めた。
 身体を起こし、何度か瞬きをする。
 横のベッドに横たわるルイズを確認してから息をついた。

「……夢か」

 最近、同じ夢ばかり見る。
 仲間がみんなやられていて、花京院は助けにさえも行けない夢だ。
 いつ見ても、何度見ても、助けに行くことができない。
 自分だけが置き去りにされ、傍観するしかない。

 花京院は首をめぐらせ、窓の外を見た。
 外は既に明るくなり始め、どこかから小鳥のさえずりが聞こえてくる。
638メロンの使い魔:2008/02/06(水) 16:54:25 ID:Fl4P7qUD
「夢だ。夢に決まってる……」

 自分を納得させるように、花京院は何度も呟いた。
 ……そんなはずはない。仲間がやられるわけがない。
 真実を知ることができない花京院は、ただそう信じるしかなかった。

       +    +    +

 花京院が悪夢を見ていることなど、ルイズは露も知らない。
 しかし、花京院に元気がないことには気付いていた。
 ルイズが話し掛けてもどこか上の空で、時々ぼーっと遠くを眺めているのだ。
 最初は故郷を恋しがっているのかと思っていたが、どうもそうじゃないらしい。寂しいとか哀しいとかではなく、焦っているような感じだ。

 どうすれば元気付けられるだろうか、とルイズは考えた。
 待遇を変えるというのは無しだ。使い魔の態度でころころと待遇を変えてしまったら主人として失格だし、もしかすると調子に乗ってしまうかもしれない。

 ……じゃあ、どうすればいいのよ?

 そう考えたルイズの頭に、名案が閃いた。
639メロンの使い魔:2008/02/06(水) 16:56:13 ID:Fl4P7qUD
「これよ!」

 思わずルイズは叫んでしまう。
 財布を調べてみると、まだそこそこ残っている。それに、明日は虚無の曜日だ。
 買い物に行くのに、これほど都合の良い日はない。
 ルイズはある物が売っている場所を調べて、それをメモに書き記しておく。
 ぼんやりと買ってあげたときのことを想像してみる。
 主人の優しい配慮に喜ぶことだろう。感激して涙を流すかもしれない。
 そう考えると、自然と心が高鳴った。

       +    +    +

「起きなさい!」

 その日、珍しく花京院はルイズに起こされた。
 寝ぼけ眼をこすりながら花京院がルイズを見上げると、既にルイズは着替えも終えていた。
 起こすのも、着替えさせるのも花京院の仕事のはずなのに、ルイズが自分でやっている。
 珍しいを通り越して、奇妙でさえあった。

「……今日は何か特別な日なのかい?」
「そうよ。虚無の曜日じゃない」
「虚無の曜日?」

 花京院は聞き慣れない単語に首を捻った。
 虚無の曜日とは自分のことは自分でやる日なのだろうか。
 ルイズはため息をつきながらも、説明してくれた。
640名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/06(水) 16:56:41 ID:QrJDJSak
支援
641メロンの使い魔:2008/02/06(水) 16:56:53 ID:Fl4P7qUD
「休日よ。学校の授業もお休み」
「なるほど。それで?」
「あんた、わたしが何の用事もなくあんたを起こしたと思ってるの?」

 だんだんとルイズの表情が険しくなるが、わからないので素直に頷く。
 ルイズはドアを指差して言った。

「出かけるから、に決まってるでしょ」
「出かける?」

 そういえば、花京院はこの学院から出たことがなかった。
 しかし、この学院の外にも世界は続いているのだから街や村があるのだろう。食べ物もあるということは畑や農場などもあるはずだ。
 あまりにもこの世界について知らないので、今度図書館にでも行って調べてみようと花京院は思った。

「街に行って、買い物するのよ」
「買い物……何か買うものがあるのかい?」
「わたしじゃないわ。あんたのよ」
「僕の?」

 花京院は何を買うか想像してみるが、わからない。
 答えを求めてルイズを見ると、ルイズは何か企んでいるような笑みを浮かべている。
642メロンの使い魔:2008/02/06(水) 16:59:49 ID:Fl4P7qUD
「まあ、何を買うかは街に着いたら教えてあげるわ」
「腑に落ちないが、行くと言うなら同行しよう」
「いい心構えね」

 理由はわからないが、逆らわない方が良さそうだった。
 珍しくルイズは上機嫌なのに、わざわざ不機嫌にさせるのも馬鹿馬鹿しい。
 それに、まだ見ぬ外の世界とやらにも興味がある。

「それじゃあ、これ持ってて」

 ルイズは机の上に乗っていた財布を投げて寄越した。
 受け取ると、ずっしりとした重みを手のひらに感じる。

「財布は下僕が持つものだから。落としたりしないでよね」

 ルイズはそう念を押した。
 中を覗いてみると、金貨がぎっしりと詰まっていた。
643メロンの使い魔:2008/02/06(水) 17:00:42 ID:Fl4P7qUD
「街中ではスリにも気をつけなさいよ」
「わかった」

 花京院は返事をすると、上着の内ポケットに財布を入れた。
 ルイズは杖があることを確かめ、何かのメモを慎重に仕舞った。
 忘れ物がないことを確認した後、二人は部屋を出て行った。

To be continued→
644メロンの使い魔:2008/02/06(水) 17:06:53 ID:Fl4P7qUD
十一話終了です。
支援の方、ありがとうございます。
思えば、前回から一月近く開いてますね。
もう少し短い間隔で投稿したいものです。
次回辺りでデルフリンガー出すつもりです。
それでは。
645名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/06(水) 17:09:13 ID:QrJDJSak
メロンの人乙です。

いやぁ、1ヶ月なんてなんの問題もないでしょ。
二ヶ月三ヶ月、中には半年以上放置なんてのも山ほど有るんだし。
ご自分のペースで頑張ってくださいな。
646名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/06(水) 17:20:04 ID:kretvc4/
一番見た目が美味しそうなスタンド乙
647名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/06(水) 17:24:10 ID:cLYS/YRr
バックブリーカーフラグが
648名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/06(水) 17:44:51 ID:3k1wDkDS
こいつはメチャ許せんよなァ〜
649名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/06(水) 18:06:48 ID:kkcfytmt
投下乙そしてGJでした
花京院の見る夢が悲しい……
650銃は杖よりも強いって言い張る人:2008/02/06(水) 21:14:26 ID:+PHTKxoW
メロンの人、GJ!です。
間隔が空くのは仕方ないですよ。


さて、ホル・ホースで昨日書いたナマモノですが、
「本スレで続けていけ〜」という声をお聞きしました。
しかしながら、ルイズ以外による召喚や複数召喚は避難所向けではないかと思う次第。

どうなんでしょう。
651名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/06(水) 21:30:05 ID:SIiik1Eo
とりあえず避難所に投下しなよ
652銃は杖よりも強いって言い張る人:2008/02/06(水) 21:30:57 ID:+PHTKxoW
了解!
653名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/06(水) 21:39:23 ID:EESGZXBS
ルイズ以外の召喚は本スレでもOKだと思うが
複数は避難所が無難かな。
654名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/06(水) 21:40:25 ID:q/sR1CKJ
ルイズ以外なら女教皇と青銅の魔術師やアンリエッタ+康一、使い魔は刺激的
微熱のカウボーイとかがあるぜ

いや、避難所かはしらんが…
655銃は杖よりも強いって言い張る人:2008/02/06(水) 21:41:54 ID:+PHTKxoW
荒れる原因になっても困るので、避難所行きます。

ご忠告感謝!
656名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/06(水) 23:37:20 ID:EESGZXBS
頑張れ!
ホルホース好きだから期待してる。
657名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/07(木) 00:53:01 ID:qIcoRzJF
ホルホース、なんだか面白そうですね。







さ、投下しよう。
658はたらくあくま 1/3:2008/02/07(木) 00:53:37 ID:qIcoRzJF
24 揺れる誇り、折れる正義

自分の部屋に帰ってきた。心なしか安らぐ。人が生きるには自分の世界が必要だ。例えどんなに小さくても、だ。
人形が二つ、置きっぱなしになっている。可愛らしい白磁の少女。精悍で豪奢な青年。廊下を挟んだ反対側の壁にもたれかかって、無表情にルイズの部屋を眺めている。
ここの廊下に西に開いた窓はない。薄暗い廊下に佇む人形に、いつ動きだすとも知れぬ不気味なものを感じる。
このままにしておくのは気が引ける。既に今日も、他の生徒が部屋の前を通ったはずだ。不審に思われただろうか。まず間違いないだろう。
剣を机の上に投げ出す。ルイズは廊下に出て、人形を部屋に入れる。小さい方は剣の横へ。そちらは片手ですんだが、大きい方はそうはいかない。持ち上げようとして倒れる。やたらと重い。木じゃなくて金属製か。
体勢を崩した人形の下から這い出る。裏返して肩の下から手を回し、ひきずって部屋に入れる。誰かに見られはしないかと見回す。誰もいない。みんな授業中か。キュルケもか?
苦労して運び入れ、ドアの横に座らせる。ベッドに腰掛ける。静かだ。体の疲れを実感する。

しばし、何も考えずにぼんやりと過ごす。気付けば異物に目がいっている。首が少し垂れ、薄ら笑いの相。見ていて落ち着かない。
立ち上がり、歩み寄る。人形の首と姿勢を直す。戻る。まだだ。知らない顔があるのがいけないのかと思い、首を180度捻って後ろを向かせる。ひどい違和感。ルイズは顔をしかめる。
結局元に戻す。目を閉じて溜息。ベッドに身を投げ出す。たかが人形一個で、なにをドタバタしているんだろう。組んだ手を枕代わりに、天井を見ながら考える。
男の形をしているのがいけないのか。だったら使い魔はどうなる。そこまで考えて気付く、こんなことは使い魔に任せればよかったのだと。
「あー…あ」 大きく伸び。デーボなら自分で歩かせるぐらい出きるだろう。勿論、それ以上の事も。伸びがぎくりとこわばる。
置いてある剣を見る。学院長室での説明。掴んで、「絞って」、捨てる。想像がつかない、したくもない。
起き上がり、また人形のもとへ。やっぱり外へ出そうか。ルイズは腕を組む。
その時、何かがカタカタ鳴った。机の上だ。剣が身を震わせている。手にとって、鞘から抜く。
「どうしたの?」 錆びた刀身に話しかける。低い音。なんだ?
「いや、おめえが行ったり来たりするのが面白くってな。…すまん」 半笑いの釈明。震えの正体は、声を殺して笑っていた反動らしい。
人形に気を取られている一部始終を、人以外のものに見られていた。自分はそれに気付かない。なにか、今の自分にとって象徴的な気がした。

ドアが鳴った。今度はなんだ? 剣を睨み、鞘に収める。ドアを開ける。
くたびれたローブを着た、頭の禿げた中年教師が杖を片手に立っていた。「炎蛇」のコルベール。訳のわからない道楽を授業に持ち込むせいで、生徒からの評判は芳しくない。
そして、それよりも。ルイズにとっては使い魔との契約を強いられた方が問題だ。土くれのフーケが死んだのも、元をただせば先生のせいと言えなくもない。
さらりと出てきた考えに、我ながらげんなりする。事件に対する半端な関与のせいか、どうにも現実感がわかない。
死体を見ていないからかもしれない。ルイズは思う。まるでゴーレム自体が盗みを働いて、暴れまわったような印象だ。
「何か御用ですか?」 不埒な考えを頭の隅に追いやって、ルイズは聞く。まさか個人的な用事ではあるまい。
「ああ、うん。ミス・ヴァリエール、学院長がお呼びだよ。話があるそうだ」 心なしか憔悴した顔で答えるコルベール。声にも張りがない。
ルイズの持っている剣に目を落とす。それはインテリジェンスソードかい? そうです。どうかしましたか?
「それも一緒に持ってくるように、とのことだ」 ああ、使い魔の彼が起きられるなら、彼も一緒につれて来てくれ。頼みたいことがある。
それじゃ、準備が出来たらすぐに来てくれたまえ。言うだけ言うと、コルベールは踵を返す。キュルケの部屋のドアをノックする姿が見える。ルイズはドアを閉める。
頼みたいこと。一体なんだろう? 剣に聞く。何か心当たりある?
「さあな。けど他の剣じゃなくて俺なんだ、喋れか黙れかだろうよ」 そういうと剣は口をつぐんだ。考えてもわからない。ルイズは部屋を出る。
659名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/07(木) 00:54:05 ID:7BKplK1l
よし
支援しよう
660はたらくあくま 2/3:2008/02/07(木) 00:54:30 ID:qIcoRzJF
本塔に向かう途中でデーボを見つけ――歩道の敷石を無視して、芝生の上を歩く大男は目立つ――、剣を持たせて学院長室へ向かう。
日は傾き、もうすぐ西の山へかかる。デーボがそれを指差し、あっちが西かと訪ねた。ルイズは呆れる。当たり前じゃない。
「月が二つあるのも当たり前か」 そうよ、当然よ。頭の上から溜息。使い魔の顔を見る。傷だらけの顔。眩しげに顔をしかめている。人間臭い表情に、ルイズはなんだかホッとする。
あとは二人ともだんまりだった。ルイズには苦にならなかった。得体の知れない安心感。夕日に照らされ、二人の影が長く伸びる。

昼に来た時と違い、今は不思議と落ち着いている。観察眼にも若干の余裕。西日が差し込むその部屋はガランとして見えた。
「何度もすまんのう、ミス・ヴァリエール」 少し座って待っててくれ、まとめて話がしたいんじゃ。穏健そのものの口調でソファを勧めるオールド・オスマン。
遠慮すべきかどうか迷っている内にドアがノックされ、コルベールに引きつられたキュルケとタバサが入ってくる。
キュルケがこっちを見る。なんだ、無事だったんだ。そんな表情。睨み返す。
おほん、と空咳をするオールド・オスマン。これで全員そろったようじゃ。始めるとするか。にっこりと笑う。

途中まではさっき聞いた話だった。学院長には悪いと思いつつも、退屈を紛らわせるために視線をさまよわせる。
学院長の座する机の横にコルベール先生。なんだろう、苦痛に耐えるかのような表情。ああ、もしかして? いや、止めよう。下司の勘繰りだ。
机の前にルイズと並んで立つ、キュルケとタバサ。横目で窺う。
フーケの正体と彼女の死を聞いた時の、二人の反応が印象に残った。大袈裟に口を開け、両手でそれを隠すキュルケ。虹彩を絞る以外に、微動だにしないタバサ。
そして、デーボ。部屋の隅でソファの背に寄りかかっている。自分が手にかけた人間の話にも、眉一つ動かさない。

「――という訳で杖も戻ってきた、多少汚れたがの。一件落着じゃ。そう、学院にとっては一件落着じゃが――」 歯切れの悪い言葉。視線を戻す。
「君たちの『シュヴァリエ』の爵位申請を、宮廷に出しておいた。追って沙汰があるじゃろう」 何だ? 話が見えない。
学院長は穏やかに続ける。君たちの功績を考えたら当然のことじゃ。大の大人がしり込みするなか、破壊の杖を取り戻したのじゃからな……。
「フーケを取り逃したとはいえ、な」 え? 取り逃がした? 死んだんじゃなくって? デルフリンガーは死んだと言った。嘘をついた?
ルイズは混乱する。こちらを窺うオールド・オスマン。
「ああ、といっても、ミス・タバサは既に爵位を持っているから、精霊勲章の授与を申請しておいた」 だめだ、理解不能のままに話が進む。
「あの「そして、もちろんミス・ロングビルにもじゃ。爵位だけでなく、勲章もな」 質問の声は遮られた。そしてその内容。意味がわからない。
「彼女は勇敢に盗賊と戦った。ゴーレムに潰されるその瞬間まで、いや、死んでも杖を話さなかった。彼女こそ『シュヴァリエ』の名にふさわしい。そうは思わんか?」
理解可能。嫌悪感で血が冷える。保身だ。
宮廷にはそう報告したのか。質問する。
「そうじゃ」 学院長は重々しく言う。まさか、ありのまま言うわけにもいかないからのう。
ありのまま。ルイズはやっと気付いた。責任の一端は自分にもあるのだと。
まんまと宝物庫に侵入され、杖を盗まれた。当直は寝ていたという。事件を王室に隠し、子供に盗賊を追わせた。罠にかかっているとも知らずに。
そのとどめに、殺してしまった。尋問もなし、裁判もなし――あればあったで、まず確実に死刑だろうが――。国を軽んじ、面子を潰す行為。
ありのまま報告すれば処罰は免れまい。学院も、たぶん自分も。使い魔の功績は主人のもの、咎は使い魔のもの。口ではそんな風に嘯くが、現実はそうはいかない。
661名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/07(木) 00:55:29 ID:GIjE0eSL
支援
662はたらくあくま 3/3:2008/02/07(木) 00:55:57 ID:qIcoRzJF
使い魔を切り捨てるような真似はしたくない。王室を裏切るのも、自分を裏切るようで嫌だ。自分が罰せられれば、学院長の手管も無意味なものになる。学院全体に責が行く。
どちらかを選ばなくてはならない。悩む耳に声がする。
「それで構わないと思う」 タバサが部屋に入ってきて、初めて口を開く。顔は相変わらずの無表情。彼女も、腹の底で何か計算しての発言だろう。
「そうね、タバサが言うなら私も構いませんわ」 キュルケが言う。生きてるだけでも儲けものだしね。そう小さく呟き、こちらに目を向ける。
キュルケにも思惑があるのだろうが、それよりも気になるものがあった。タバサが言うなら。他人など蔑ろにしていそうな彼女にも、信頼できる友人がいる。
自分には友人は、いない。いるとすれば使い魔か。魔法が使えないことを心底恨めしく思う。
ふと思いつく。デーボには叙勲は無しか? 即座に却下。聞くまでもないことだ。使い魔は平民だし、なにより犯罪者じゃないか。
キュルケの視線。学院長の視線。デーボは。見ようとしてこらえる。主人は自分だ。使い魔は手足だ。手に意見される頭などいない。
真実と憂鬱な未来か、嘘と爵位のついた生活か。
「……謹んで、お受けいたします」 たっぷり1分も考えただろうか。ルイズは首を縦に振った。満足そうに頷くオールド・オスマン。
「これで本当に一件落着じゃ」 学院長はうれしそうにそう言って、ぽんぽんと手をうつ。この話はこれでおしまい、とでもいうように。

「さてと、今日の夜は『フリッグの舞踏会』じゃ。事件も解決したし、予定通りに執り行う」 何事もなかった。その宣言。間断なく続く日常への回帰。
キュルケが歓声を上げる。切り替えが早い。責任を負わなければ、自分も顔を輝かせていたか。
難しいだろう。『シュヴァリエ』。その称号に足る成果を、自分達は確実にあげてはいない。仮に学院長の嘘の通りだとしてもだ。
それでも通った。通したのだろう。偉大なるメイジの力だ。何のために? 決まってる。口止め料代わりだ。それを理解してなおも笑えるのか?
笑えるのかもしれない、彼女なら。自分はどうだ。気分が落ち込む。


「今日の舞踏会の主役は君達じゃ。用意をしてきたまえ」 せいぜい、着飾るのじゃぞ。髭の長い年寄りが言う。なんの地位にあるかは判らないが、まあ、偉いのだろう。そんな風貌だ。
白々しい。とんだ茶番に付き合わされた。何故、おれまで呼ばれなくてはならない。
その疑問はすぐに解決した。生徒達が部屋を出る。暗い表情のルイズに続いて自分も出ようとすると、その年寄りに呼びかけられる。君に話があるんじゃ。
ルイズがふりかえり、不安げな目で見上げる。迷惑げな目で見返す。睨まれる。デーボは目を逸らす。小さな唸り声と足音。扉が閉まる音。
「で、話ってのは」 机に向き直る。正面から相対。柔和な笑みは消え、表情の読み取れない顔。太陽は山の向こうに沈み、空は茜から紫色に。
663名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/07(木) 00:57:55 ID:qIcoRzJF
投下しました
文章上手い人うらやましいわー。しかも初SSであのクオリティ。
なんですかこの雲泥は。
664名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/07(木) 00:59:22 ID:qIcoRzJF
へこんでる場合じゃねえ
支援ありがとう!
665名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/07(木) 01:19:01 ID:7BKplK1l
GJ!
怖い、怖いぞ。
もしかして尋問ですかぁーーっ!?
666名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/07(木) 05:17:17 ID:7BKplK1l
投下します。
667仮面のルイズ:2008/02/07(木) 05:21:44 ID:7BKplK1l
「土くれのフーケ?彼女が?」
ウェールズが唖然とした表情のまま、ルイズに問いかける。
マチルダが土くれのフーケだという事実は、あまりにも予想外だったのか、アンリエッタもウェールズと同じようにきょとんとした表情で固まっている。

「どこから話そうかしら…そうね、私が『死んだ』時のことから話しましょうか」

ルイズは、呆然としている二人に、土くれのフーケとの馴れ初めを話し出した。
吸血鬼になったルイズが、魔法学院を自主退学しようとした日は、奇しくもアンリエッタが魔法学院に立ち寄った日だった。
ロングビルとしてオールド・オスマンの秘書をしていたフーケは、アンリエッタが来る日に宝物庫の警備が手薄になると気づき、ゴーレムを用いて物理的に宝物庫を破壊しようとしていた。
宝物庫にはヒビが入っており、そこを土に練金してしまおうと思ったが、固定化を崩すことができなかった。
そのためゴーレムを用いて物理的に宝物庫の壁を破壊した。
フーケは、集まってくる衛兵の目を誤魔化すためゴーレムを囮として走らせ、その隙に反対方面に逃げようとした。
その時偶然、馬車に乗って立ち去ろうとするルイズが、フーケの姿を目撃しており、すぐさま追跡を開始した。
人間よりはるかに鋭敏な吸血鬼の五感を用いて、ルイズはフーケを追跡し、隠れ家を発見した。
そしてルイズはフーケと戦った、土くれのフーケがロングビルだったのには驚いたが、それ以上にルイズの心を支配したのは『喜び』だった。
情報収集のための手駒を欲していたルイズは、フーケをやんわりと説得し、協力を約束してもらった。

「ちょっと待ちなよ、どこが説得だよ、あの時アタシ本気で怖かったんだからね」
ルイズの説明を聞いていたマチルダが口を挟む、それを聞いてルイズはすこしむっとした顔で言い返す。
「何よ、あなた無抵抗な私を鉄で押しつぶすわ火で焼くわ、殺そうとしてたじゃない。私はぜんぜん手出ししてないわよ」
「よく言うわ、あんな殺気ぷんぷんさせて見つめられたら誰だって身を守るために攻撃するわよ」
「そう?」

ウェールズは「ははは…」と力なく笑った、苦笑と言った方がいいかもしれない。
アンリエッタを見ると、彼女もウェールズと同じように驚いていた。
ワルドは既にフーケのことを知っているので驚きはしなかったが、ルイズが楽しそうに喋っているのを見て、ほんの少しだけ嬉しそうにはにかんでいた。



「コホン……ルイズは私のこと騙してらしたのね。ずるいわ、もう」
アンリエッタがぷいと横を向いて拗ねてしまったが、どこかかわいらしい。
フーケのことを黙っていたのが気に入らないのか、演技がかった仕草で顔を逸らしている。
ルイズは「ごめんね」と言ってアンリエッタの手を取った。
「ごめんなさいね、アン。クックベリーパイの食べ方なんて、そんな細かいクセまで覚えていてくれて、私は嬉しかったわ…でもフーケの事まで言って良いのか、その時はまだ判断できなかったの」
アンリエッタはルイズの謝罪を聞いて、ふぅとため息をつき、一呼吸置いてから呟いた。
「仕方ありませんわね。土くれのフーケと言えばトリステインを騒がせた大盗賊ですもの。それにあの時の私は単なるお飾りでした…フーケのことを黙っていたのは、むしろ英断だったかもしれません」
ふとマチルダの表情を伺うと、アンリエッタを値踏みするような目で見つめていた。
一瞬だけ視線が交差すると、マチルダはふぅとため息をついてルイズに視線を移した。
「ルイズ。そろそろちゃんと説明してくれないかい。アタシをこの二人に紹介して何をしようってのさ」
「そうね、じゃあ説明をするけど…その前に仕掛けをしておかないとね」
ルイズが腕を前に出すと、腕に仕込んだ杖が筋肉によって押し出され、手のひらに三分の一ほど露出した。
それを握りしめ、静かにルーンを唱えていく、詠唱時間の長さからそれが『虚無』のルーンであることが予想できた。
ルイズは、屋根裏部屋の窓際に移動し、部屋の入り口である小さめの扉に向かって杖を向けた。
周囲から霧のようなモノが集まり、ぐにゃりと景色が歪むと、ルイズは杖を腕の中に収納してため息をついた。
668仮面のルイズ:2008/02/07(木) 05:22:11 ID:7BKplK1l
「フーーっ……『イリュージョン』を使ったわ。衛兵が来ても音が漏れなければ大丈夫よ。無人の部屋に見えるわ」
そう言ってルイズは部屋床に座り込む、額にはうっすらと汗が浮かんでいた。
「ルイズ、大丈夫?疲れたならベッドで横になった方が…」
アンリエッタがルイズの身を案じてくれたが、ルイズは首を横に振った。
「これぐらい大丈夫よ。ちょっと疲れただけ。気にしないで。……それじゃあマチルダを引き込んだ理由を、王子様から説明して頂こうかしら」

ウェールズはこくりと頷いてから、マチルダの方に向き直った。
「ミス・マチルダ。アルビオンから亡命・疎開した者は、確認されているだけでも二千人。そのうち540人が既に死亡している」
マチルダの眉がピクリと動いた。
「君を襲ったのは、私の部下達だ……だが彼らはニューカッスルと運命を共にし、僕を逃がすために皆死んでいったはずだ。生きているはずがない」
ウェールズの視線が、ワルドに移る。
「ラ・ロシェールで君を襲った連中の顔を、彼にも確認してもらったよ」
マチルダもワルドの顔を見る、偶然ワルドが通りかからなければ、今頃自分は死んでいた。
ワルドはちらりとマチルダに視線を移すと、おもむろに口を開いた。
「僕はニューカッスル城で、クロムウェルが死者を蘇らせるのを目の当たりにした。あの時生き返った近衛兵と同じ顔をしていたんだ。クロムウェルはアルビオンの衛士を操り人形にし、脱走者狩り、亡命者狩りをしている。
リッシュモンの元に出入りしている商人は、レジスタンスにも接触しているとアニエスから報告があった。それ以外のカネの流れを見ても、リッシュモンがアルビオンと繋がっているのは間違いない。」

「リッシュモンね…そいつ、ヘドが出るわ」
マチルダが呟く、その言葉はこの場にいる一同の思いを代弁していた。
ルイズが膝に手を置き、ゆっくりと立ち上がる。
首を左右に振るとゴキゴキと骨の鳴る音がした。
「ここからが大事なところよ。逃げ延びた者の話によると、レコン・キスタはレジスタンス狩りと称して、都市部だけでなく農村部にも捜索の手を伸ばしたと言っていたわ」

「……!」
マチルダの目が強く見開かれる。
ティファニアが危ない…そう思うと、居ても立っても居られなくなる。
マチルダはルイズに向き直ると、内心の焦りを隠そうともせず、強く言い放った。
「まどろっこしいね、アタシに何をして欲しいのか、見返りは何なのかとっとと言っておくれよ!」

ルイズは笑みを見せることなく、こくりと頷いた。
「ワルド共に街に出て、リッシュモン狩りを手伝って貰いたいの。これが私からの要求よ」
「見返りは?」
「リッシュモン狩りが終わり次第、私とワルドは『虚無』の魔法を駆使してアルビオンに潜入する予定なんだけど……そこに、貴方を追加してあげる」
「アタシをアルビオンに連れて行ってくれるのかい?アルビオンに到着した後は、アタシは何をすればいいのさ」
「ティファニアを守ってあげて」
「…それなら、言われるまでもないよ」
「交渉成立ね」
「何が交渉よ、はじめからアタシをハメる気じゃないか…」
「ごめんね…貴方の家族を引き合に出したら、確かにフェアじゃないわよね」
「フン…ああ、そうだそうだ、折角だから今ココで質問させて貰おうかね」

マチルダは、ウェールズとアンリエッタを睨み付けた。
とうの昔に貴族の立場を追われた身だが、心の何処かで『無礼だ』と自分に言い聞かせている気もする。
「ティファニアの身の安全は、保証して貰えるんだろうね? でなければ…今度こそアンタを殺す」
殺気を隠さずに話すと、いつになく低い声が出てしまう。
マチルダは本気で、ウェールズに殺意を向けていた。
「始祖ブリミルに誓って。そして彼女の従兄妹として、約束する」
ウェールズはマチルダの殺意に怯えることもなく、力強く頷く。
「私も約束いたしますわ、ミス・ティファニアは私にとって従姉妹にあたります。彼女が日の目を望むのならそれを、望まぬのならそのままに彼女を守りましょう」

二人の言葉を聞いたマチルダは、身をかがめ、恭しく跪いた。
669仮面のルイズ:2008/02/07(木) 05:23:48 ID:7BKplK1l
小一時間後、ワルドの遍在とアニエスは、リッシュモンの家の近くで身を隠し、機会をうかがっていた。
アニエスは馬に乗ったままじっとリッシュモンの邸宅を見張っており、ワルドはその傍らに立っている。
アニエスに背負われているデルフリンガーも、こんな時に無駄話をするほど野暮ではない。

体の冷えを感じた頃、リッシュモンの屋敷に動きがあった、静かに扉が開かれると、年若い小姓が顔を出していた。
年の頃は十二、三歳ほどだろうか、頬の赤い少年がカンテラを掲げて、恐る恐る周囲を見渡している。
辺りに人の気配がないと思ったのか、小姓は門の中に姿を消し、すぐに馬を引いて姿を現した。
小姓は馬に飛び乗ると、カンテラを持ったまま馬を走らせ、繁華街の方角へと走り出した。
アニエスはそれを見て、薄い笑みを浮かべると、小姓の持つカンテラの明かりを目指して追跡を開始した。
ワルドはアニエスの馬に飛び乗ると、自身とアニエスに『レビテーション』をかけ、馬の負担を減らした。

小姓はかなり急いでいるようで、後ろからでも必死に馬に掴まっているのが解る、アニエスは気取られぬ程度に距離を保ち、ひたすら小姓を尾行していった。

しばらくすると小姓の乗る馬は高級住宅街を抜け、繁華街へと入っていった、繁華街と言ってもその奥にはいかがわしい店もある、いくら急いでいるとはいえ、リッシュモンの小姓が繁華街の裏通りに入っていくのは怪しすぎた。
途中、女王を捜索する兵士達や、夜を楽しむ酔っ払いの脇をすり抜けて、目的の場所にたどり着いた。
アニエスは少し前から馬を下り、ワルドの『サイレント』で足音を消しながら小姓を追いかけている、裏路地をいくつか曲がったところでアニエスは、小姓がある宿屋に入る瞬間を目撃した。

「小姓はメッセンジャーだ、あれが出て行ったら中に入ってくれ」
「わかった」
アニエスはワルドに指示すると、宿屋に入り小姓の後を追った。
ワルドは宿屋の前を通り過ぎ、別の角度から入り口を見張る。
魔法衛士であったワルドは剣状の杖を愛用していたが、剣状の杖は目立つので今は所持していない、義手に仕込んだ杖を取り出して、右手で杖の重さを確かめつつ待つこと五分。

ワルドは、宿屋から小姓が出てくるのを見届けると、ルーンを唱えて義手を外した。
その間に小姓は馬に跨って、夜の街へと消えていく。
それを見送りながら、ワルドは外した義手を鞄の中に入れると、ローブを脱ぎ捨てて腕を露出させた。
レビテーションの応用で頭に布を巻き付けると、そのままゆっくりと宿屋の中に入っていった。

隻腕の傭兵など珍しくない、ワルドが宿屋に入ると、店の者はワルドを一瞥しただけで、特に興味も示さなかった。
ちらりと二階に続く階段を見ると、階段からアニエスがワルドに視線を向けていた。
ワルドとアニエスが二階へと移ると、アニエスは小声で客室の番号を呟いた。
「203…そこに間者がいる。合図をしたら扉を吹き飛ばしてくれないか、時間をかけて鍵を開けていたら逃げられてしまうからな」
「扉を吹き飛ばすのは簡単だが、証拠まで吹き飛ぶぞ」
「そのときは自白させる」

ワルドはアニエスの言葉を聞き、にやりと笑みを浮かべた。
腰に差した杖を握りしめると、短く一言『エア・ハンマー』のルーンを口ずさむ。
瞬間、木製のドアが粉々に砕け散った。
間髪いれず、剣を引き抜いたアニエスが中に飛び込む、中では商人風の男が、驚いた顔でベッドから立ち上がり杖を握りしめていた。
男は部屋に飛び込んできたアニエスにも動じることなく、素早く杖を突きつけルーンをつぶやいた、それによってアニエスの体が空気の固まりに吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。
商人風の男がアニエスにとどめの呪文を打ち込もうとしたとき、不意に自分の腕が視界から消えた。
ワルドの『エア・ハンマー』が、商人風の男の、杖を持つ手に直撃したのだ。
男はあらぬ方向に曲がった手を見て、ほんの一瞬呆気にとられたが、すぐさま逆の手で床に落ちた杖を拾おうとした。
だが、立ち上がったアニエスが、杖を取ろうとした男の腕を剣で貫いた。
「うがあっ!?」
そのまま床に転がった杖を蹴飛ばすと、アニエスは捕縛用の縄を掴んで男を捕縛する。
商人のようななりをしている中年の男だが、目には戦士のような眼光が宿りぎらついている、それなりの実力を持った貴族なのかもしれない。
「動くな!」
アニエスが男を捕縛して猿ぐつわを噛ませたところで、何人かの宿の者や客が集まって、部屋を覗き込もうとしていた。
「手配中のこそ泥を捕縛した。見せ物ではないぞ」
そうワルドが呟くと、宿の者はとばっちりを恐れて、顔を引っ込めた。
670仮面のルイズ:2008/02/07(木) 05:26:22 ID:7BKplK1l
リッシュモンからの手紙を見つけると、アニエスはその内容を確かめ笑みを浮かべた。
他にも机の中や、男の服の中、ベッドの下などを洗いざらい確かめていくと、いくつもの書類や手紙が見つかった。
アニエスはそれらを纏めると、内容を確かめるため、一枚ずつゆっくりと読み始めた。
「なるほど、この男か」
商人風の男を見て、ワルドが呟く。
「知っているのか?」
アニエスがワルドに問うと、ワルドは鞄から取り出した義手を装着しつつ答える。
「いや、見たことはない。僕に接触したアルビオンの間諜とは別の奴だ」
「そいつは?」
「一昨日始末したよ」
事も無げに言うワルドに、アニエスは「ほう」と簡単の声を漏らす。

「さて…親ネズミと落ち合う場所は…」
アニエスはいくつもの書類の中から、一枚の紙を見つけた。
それは建物の見取り図のようであり、いくつかの場所に印がついている、座席数から見て城下町の劇場に間違いはないだろう。
「貴様らは劇場で接触していたのだな? そしてこちらの手紙には『明日例の場所で』と書かれている…ならば例の場所とは、この見取り図の劇場に間違いないか?」
アニエスの問いにも、男は答えない。じっと黙ってアニエスから目をそらしている。
「答えぬのか。ふん、貴族の誇りとでも言うのか」
アニエスは冷たい笑みを浮かべると、床に突き刺した剣を抜いた。
そのまま男の足の甲に剣を突きたて、床に縫いつける、すると猿轡を噛まされた男がうめき声を上げ、体を硬直させて悶絶した。
そして、男の額に拳銃を突きつけ、静かに言い放つ。
「二つ数えるうちに選べ…生か、誇りか」
商人風の男は、額に汗を浮かべて狼狽えた。
ガチッ、という音が響き、撃鉄が起こされる。

ワルドはその様子を見て、何か思うところがあった。
『石仮面』の正体がルイズだと知らず、全力を以て石仮面を殺そうとした、あの時の自分とよく似ている。
石仮面を殺すことこそが自分の存在意義だと思いこんでいたあの時と、とてもよく似ている。
アニエスは、リッシュモンと、ダングルテールの虐殺に関わったすべての人間を殺すために、生きているつもりなのだろう。
だからこそアニエスは、復讐のためならどこまでも残酷になれる。

涙を流しながら、アニエスの尋問に答える商人風の男を見て、ワルドはやれやれと首を振った。
671仮面のルイズ:2008/02/07(木) 05:27:45 ID:7BKplK1l
そして夜は明け、昼が近づく。
サン・レミの聖堂が鐘をうち、十一時を告げると、申し合わせたようにトリスタニアの劇場前に馬車が止まった。
馬車から降りた男は、タニアリージュ・ロワイヤル座を見上げた、リッシュモンである。
御者台に座った小姓が駆け下りて、リッシュモンの持つ鞄を持とうとしたが、リッシュモンがそれを制止した。
「よい。馬車で待っておれ」
小姓は一礼して御者台に戻った、リッシュモンはそのまま劇場の中へ入っていき、切符売りの姿を見た。
切符売りはリッシュモンの姿を認めると一礼し、そのままリッシュモンを中へと通してしまう。
高等法院長の彼にとって、芝居の検閲も職務の一つなので、彼の姿を知らぬ者は劇場にいないのだった。
中にはいると、客席は若い女の客ばかりだったが、席はほとんど空いている。
開演当初それなりの人気があった演目だが、役者の演技がひどいため評者に酷評され、その結果客足が遠のいたらしい。
リッシュモンは彼専用の座席に腰掛け、じっと幕が開くのを待った。





続いて劇場の前にやってきたのは、アニエスと、ワルドの遍在だった。
劇場の前でしばらく待っていると、二人の前にもう一人のワルドと、ウェールズ、そしてアンリエッタが姿を現した。
アンリエッタとウェールズは平民の服を着ていたが、その気品は見間違えようもない。
その姿を確認すると、ワルドの遍在はポン!と音を立てて煙のように消えてしまった。

アニエスとワルドは、アンリエッタの前で、地面に膝をついた。
「用意万端、整いましてございます」
アニエスが呟くと、アンリエッタがにこりと笑顔を見せた。
「ありがとうございます。あなたはほんとに、よくしてくださいました。そして子爵も…よくつとめて下さいましたね」
アンリエッタは、アニエスとワルドを労った。
辺りに気をつけていたウェールズが、遠くにグリフォンとマンティコアの姿を確認した。
獅子の頭に蛇の尾を持つ幻獣にまたがった、魔法衛士隊の隊長は、劇場の前に居た者達を見つめて目を丸くした。
「なんと!これはどうしたことだアニエス殿!貴殿の報告により飛んで参ってみれば、陛下までおられるではないか!」
苦労性の隊長は慌てた様子でマンティコアから降り、アンリエッタの元に駆け寄った。
「陛下! 心配しましたぞ! どこにおられたのです! 我ら一晩中……」
声を張り上げる隊長に向けて、アンリエッタは口を塞ぐジェスチャーをした。
口を閉じた隊長の前で、アンリエッタはフードを深く被り、必要最低限の声で呟いた。
「心配をかけて申し訳ありません。それより隊長殿に命令です。貴下の隊でこのタニアリージュ・ロワイヤル座を包囲して下さい。蟻一匹漏らさぬようにです」
隊長は一瞬、怪訝な顔をしたが、アンリエッタが姿を隠さねばならぬほどの重大な事件であると悟り、すぐに頭を下げた。
「御意」
「尚、事情はそちらのワルド子爵がご存じです。子爵、隊長殿に説明をした後、『彼女』に合流しなさい」
「御意に」
「な、子爵殿…!?」
ワルド子爵と聞いて、隊長は目を丸くした。
魔法衛士隊の中では、彼はトリステインを裏切ったなどと噂されているのだ。
事実、彼はトリステインを裏切り同胞を手にかけていたし、その事実も報告されている。
そんな彼が陛下の元でアニエスと行動を共にしていた……隊長は驚きと疑いのあまり、ワルドの顔をまじまじとのぞき込んでしまった。

「それでは、わたくしは参ります」
アンリエッタは、ウェールズと共に劇場へと消えた。
アニエスは別の密命があるのか、馬にまたがりどこかへ駆けていく。
隊長とワルドは立ち上がると、部下に劇場を包囲するよう命令を下した。
「…ワルド子爵、その、説明をして頂けるか?」
「長くなるぞ。まあ細かいところは後にしよう……さてどこから話そうか」
マンティコア隊隊長の問いに、ワルドは笑顔で答えた。
672仮面のルイズ:2008/02/07(木) 05:30:54 ID:7BKplK1l
673仮面のルイズ:2008/02/07(木) 05:31:28 ID:7BKplK1l
劇場の中で、幕があがり、芝居が始まる。
女向けの芝居なので、観客は若い女性ばかり。
役者たちが悲しき恋の物語を演ると、それに合わせてきゃあきゃあと黄色い歓声が上がる。

リッシュモンは眉をひそめていた、役者の演技が悪いからではない、若い女どもの声援が耳障りなわけでもない、約束した時刻になったのに待ち人が来ないのだ。

リッシュモンは、女王の失踪について、さまざまな考えを巡らしていた。
アルビオンからの間者が自分に何の報告もせず女王を誘拐したとは思えない。
トリスタニアにアルビオン以外の、第三の勢力があるのか、それとも単に自分を通さず行ったアルビオンの工作なのか……。
「面倒なことだな」
リッシュモンは、小声で呟いた。

そのとき、自分のすぐ隣に客が腰掛けた。アルビオンの間者だろうかと思ったが、そうではない、深くフードを被った女性がそこに座っていた。
その隣にも男が座っていた、どうやら二人組らしい。

リッシュモンは、小声で隣に座った二人組にたしなめる。
「失礼。連れが参りますので、よそにお座りください」
しかし、二人組は立ち上がろうとしない、リッシュモンは苦々しげな顔で横を向き、再度口を開いた。
「聞こえませんでしたかな? マドモワゼル」

「観劇のお供をさせてくださいまし。リッシュモン殿」
フードの中から覗く顔を見て、リッシュモンは目を丸くした。疾走したはずのアンリエッタがそこに居たのだ。
「せっかくの演劇です、相伴させて頂きましょう」
更にその隣に座る男は、よくよく見てみれば、ウェールズ・テューダーである。

アンリエッタは、舞台を見つめたまま、リッシュモンに問いかけた。
「これは女が見る芝居ですわ。ごらんになって楽しいかしら?」
リッシュモンは内心の焦りをおくびにも出さず、落ちつきはらった態度で、深く座席に腰掛けた。
「芝居に目を通すのは私の仕事です。そんなことより陛下、そして殿下…。お隠れになったと噂がありましたが。ご無事でなによりでございます」

「劇場で落ち合うとは、考えたものですわね。あなたは高等法院長ですし。芝居の検閲も職務のうち。あなたが劇場にいるのを不審がる人などおりませんでしたわ」
アンリエッタの言葉に、ウェールズが続く。
「今までは、ね」

リッシュモンの目つきが、ほんの少しだけ厳しいものに変わった。
「さようでございますかな。それにしても、私の何をお疑いで?私が、愛人とここで密会しているとでも?」
リッシュモンが笑う。しかし、アンリエッタは笑わず、まるで狩人のように目を細めた。
ウェールズは腰に差した杖を握りしめ、いつでも魔法が発動できるように心を落ち着けていく。

「お連れのかたをお待ちになっても無駄ですわ。切符をあらためさせていただきましたの」
そう言って、手に持ったメモを取り出す、それはリッシュモンが小姓に持たせた手紙だった。
「この切符、劇場ではなく牢獄の切符のようだね。この切符を受け取った商人は今頃チェルノボーグの監獄だよ」
ウェールズが皮肉たっぷりに言い放った。

「ほほう!なるほど、お姿をお隠しになられたのはそのためですか。私をいぶりだすための作戦だったというわけですな!」
「そのとおりです。高等法院長」
「私は陛下の手のひらの上で踊らされたというわけか!」
リッシュモンの口調が強くなると同時に、劇場の声が一斉に止んだ。
「まったく……、小娘がいきがりおって……。誰《だれ》を逮捕するだって?」
「なんですって?」
「私にワナを仕掛けるなど、百年早い。そう言ってるだけですよ」

気がつくと、今まで芝居を演じていた役者たち、男女六名ほどが、上着やズボンに隠していた杖を引き抜いていた。
アンリエッタとウェールズの二人に杖を向けると、若い女の客たちは、突然のことに驚き、わめき始めた。
役者の一人が観客に向かって叫ぶ。
「静かにしろ!顔を伏せていれば、殺しはしない」
劇場の中で風が舞う、メイジが脅しをかけるために風を作り出したのだ。
それに驚いたのか、観客は萎縮し、そのまま身を伏せてしまった。
674仮面のルイズ:2008/02/07(木) 05:33:35 ID:7BKplK1l
だが、そんな状況にあっても、アンリエッタは毅然とした態度を崩さないで、リッシュモンに言い聞かせるように言葉を放つ。
「……信じたくはなかった。あなたが、王国の権威と品位を守るべき高等法院長が、かような売国の陰謀に荷担しているとは……」
「陛下は私にとって、未だなにも知らぬ少女なのです」
「貴方は、私が幼い頃より、わたくしを可愛がってくれたではありませんか、わたくしを敵に売る手引きをしたのは、私を未だに少女だと思っているからでしょう」
「その通り。貴方は無垢な、いや無知な、少女。それを王座に抱くぐらいなら、アルビオンに支配されたほうが、まだマシというものですな」

ウェールズは内心は怒りに燃えているが、多数のメイジに囲まれたこの状況では何もできなかった。
「私を可愛がってくれた貴方は、偽りだったのですか?」
「主君の娘に愛想を売らぬ家臣などおりますまい」

アンリエッタは、自分の信じるべき家臣がまた一人減ってしまったのかと、悲しみに目を閉じた。
信じていた人間に裏切られるのは辛いが、裏切られたわけではない、この男は出世のために自分を騙していたのだ……と自分に言い聞かせた。
この作戦を発案したアニエスと、それを実行に移す決意をしたウェールズがいなければ、自分はリッシュモンの正体に気付かぬまま過ごしていただろう。
リッシュモンの言うとおり、自分は子供なのかもしれない。

でも、もう子供ではいられない……アンリエッタは毅然とした口調で、リッシュモンに告げた。
「あなたを、女王の名において罷免します、高等法院長。おとなしく、逮捕されなさい」
「ははは!野暮を申されるな。これだけのメイジに囲まれて、逮捕されるのは貴方がたでしょう。陛下だけでなく殿下の命もこの手に握れるとは、いやはや私の日頃の行いはよほど良いと見える」
「外はもう、魔法衛士隊が包囲しておりますわ。さあ、貴族らしいいさぎよさを見せて、杖を渡してください」
「まったく……、小娘がいきがりおって……。かまわん、痛めつけてやれ」
リッシュモンがそう言うと、次の瞬間、ドォン!と、何十丁もの拳銃の音が轟いた。
音響を考慮された劇場の中で、まるで雷鳴のようにも聞こえ、皆の鼓膜を叩く。

拳銃の黒煙が晴れると、役者に扮したメイジたちが、舞台の上で無惨な姿をさらしていた。
体中にいくつもの弾を食らい、呪文を唱える間もなく撃ち殺されているのだ。
リッシュモンの顔色が変わる、余裕の笑みは消えており、目を丸くして客席を見ていた。

客席に座っていた女性達は、実は皆銃士隊の隊員たちだった。
銃士隊は、全員が若い平民女性で構成されているため、リッシュモンにも、役者達にもその正体が見抜けなかった。

ウェールズが立ち上がると、アンリエッタに杖を手に持つよう促す。
そしてリッシュモンに冷たい声で言いはなった。
「リッシュモン殿。 銃声は、終劇のカーテンコールだ」

リッシュモンは、ふらふらと立ち上がると、高らかに笑った。
銃士たちがいっせいに短剣を引き抜き、ウェールズが杖を向ける。
気がふれたかと思えるほどの高笑いを続けながら、リッシュモンはゆっくりと舞台に上る。
その周りを銃士隊が取り囲み、剣を向けていた。何か怪しい動きを見せれば、即座に串刺しにする態勢だった。
「往生際が悪いですよ! リッシュモン!」
アンリエッタが叫ぶ、だがリッシュモンは笑みを崩さない。
「ははは…まったく、ご成長を嬉しく思いますぞ、陛下! 陛下は実に立派な脚本家になれますなぁ!この私をこれほど感動させる大芝居……くくくく」
リッシュモンは大げさなな身振りで両手を開くと、周りを囲む銃士隊を見つめた。
「さて陛下……陛下が生まれる前からお仕えしている、私からの、最後の助言です」
「おっしゃい」
「昔からそうでございましたが、陛下は……」
リッシュモンは舞台の一角に立つと、足で、どん!と床を叩いた。
ウェールズが即座に『エア・カッター』を唱えようとしたが、それよりも早くリッシュモンの足下が落とし穴のように開かれた。
「詰めが甘い!」
リッシュモンはそう言い残すと、身をかがめてまっすぐに落ちていった。
銃士隊が駆け寄り落とし穴の中を見ようとするが、即座に床が閉じてしまい、押しても引いても開かない。
「銃士隊!離れろ!」
ウェールズがそう叫び、エア・ハンマーを床に打ち込む。
ドン!と音がして床板が弾けたが、床板の下から出てきたのは頑丈そうな鉄板であった。
ガーゴイルか、ゴーレムか、何らかの強固な魔法技術で作られた仕掛けのようだ。
「出口と思わしき場所を捜索!急いで!」
アンリエッタはそう叫ぶと、悔しさに唇をかみしめた。
675名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/07(木) 05:34:52 ID:E078G4nt
支援
676名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/07(木) 05:37:26 ID:VMVQqMr8
支援
677仮面のルイズ:2008/02/07(木) 05:38:10 ID:7BKplK1l
リッシュモンが逃げた穴はいざという時の脱出路であり、リッシュモンの屋敷まで地下通路で一直線に繋がっている。
屋敷まで戻れれば何とでもなる、集めた金を持ち、アルビオンから送られてくる間者に協力を求めれば、アルビオンで再起も可能だ。
リッシュモンは杖の先に魔法の明かりを灯しつつ、亡命計画を反芻していた。

「しかしあの姫にも、王子にも困ったものよ」
リッシュモンは亡命した後のことを考えて、顔を視にくく歪めた。
クロムウェルに願い出て、一個連隊預けてもらおう。
そして今度は、アンリエッタを捕まえて、ウェールズに見せつけるように辱めてから殺してやる。

そんな想像をしながら、地下通路を歩いていると、あるはずのない人影が見えた。
リッシュモンは思わず後ずさり、人影に向かって杖を向け身構える。

「おやおやリッシュモン殿。変わった帰り道をお使いですな」
暗闇の中から姿を現したのはアニエスだった、薄い笑みを浮かべてリッシュモンを見据えている。
「貴様か…」
リッシュモンは笑みを見せて答えた。
この秘密の通路を知っているのは痛いが、メイジではない、ただの剣士ごときに待ち伏せされても何のことはない。
リッシュモンは他のメイジ同様、剣士というものを軽く見ていた。
「ふん、どけ。貴様と遊んでいる暇はない。この場で殺してやってもよいがな」
リッシュモンの言葉に、アニエスは銃を抜いた。
「…私はすでに呪文を唱えている。あとはお前に向かって解放するだけだ。二十メイルも離れれば銃弾など当たらぬ。命を捨ててまでアンリエッタに忠誠を誓うか?そんな義理など、平民の貴様にはあるまい」
「陛下への忠誠ではない」
アニエスが殺意を含んだ声で答えた。
「なに?」
「…ダングルテール」

アニエスの言わんとしていることに気付き、リッシュモンは笑った。
リッシュモンの屋敷を去るとき、わざわざダングルテールの事をアニエスが問いかけていたが、その理由がわかったのだ。
「なるほど、貴様はあの村の生き残りか!」
「貴様に罪を着せられ、なんの咎もなかった、わが故郷は滅んだ」
アニエスは、唇をかみしめ、腹の底から絞り出すような声で言いはなった。
「貴様は、わが故郷が『新教徒』というだけで反乱をでっちあげ、焼き尽くした。その見返りにロマリアの宗教庁からいくらもらった?」

リッシュモンは、にやりと唇をつりあげ、笑った。
「金額など聞いてどうする、教えてやりたいが、賄賂の額などいちいち覚えておらぬわ。聞いたところで貴様の気など晴れまい?」
「浅ましい奴だ。金しか信じておらぬのか。”元”高等法院長」
「ハハハ!おまえが信じる神と。私愛するカネと、いかほどの違いがある?……ああ、卑しい身分の信じる神など、貴族の愛するカネと比べれば塵芥にも等しいわな」

すぅ、とアニエスの頭が冷めていった、怒りで熱くなるのではなく、怒りが体から温度という感覚を失わせている。
これ程の怒りがかつてあっただろうかと、アニエスは思った。
「殺してやる」
「お前ごときに貴族の技を使うのは勿体ない、が、これも運命かね」
リッシュモンは短くつぶやき、呪文を解放させると、杖の先端から巨大な火の玉が出現してアニエスに向かって飛んでいった。
678名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/07(木) 05:46:42 ID:E078G4nt
支援
679名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/07(木) 05:53:19 ID:VMVQqMr8
支援
680仮面代理:2008/02/07(木) 06:18:35 ID:oT7XKXkm
容量が限界近いので代理投下スレに誘導します。

http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/9292/1180365976/532-535
681名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/07(木) 08:56:53 ID:Z8+4Jkbu
さて、本当に要領がヤバいので立ててきます。
682名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/07(木) 08:59:44 ID:Z8+4Jkbu
http://anime3.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1202329825/

あぶねえ、すでに立ってたよw
683名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/07(木) 12:41:56 ID:ocdgt+HN
GJの一言に尽きる!
684名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/07(木) 17:45:55 ID:KVnG8NmB
キンクリ
685名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/07(木) 18:38:07 ID:KpcwOxVW
仮面の人乙!
そろそろ容量アレだけど梅?
686名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/07(木) 18:41:38 ID:KE91NkYs
king・埋めムゾン!
687名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/07(木) 18:53:30 ID:gv9QRRnw
600から700で終了とは、今回は密度が濃かったねぇ。
500なら停滞作品多数復活。
688名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/07(木) 18:58:04 ID:bJNdp6lh
    ∩   ∩
     |-|  |-|
.    |ー|  |ー|        厂 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄⌒ヽ
   ,r|ー|ニニ|ー|、     /             |
  .,<X;|ー|'つ|ー|X>、   |  お れ の 名 は  |
  {ニ{ス!ーl;;;;;;!ーl、.,E}     |  ペ イ ジ         |
  {ニ}ハ'⌒M⌒'ハ_E}     |             /
_,{゙人゚,>;兀;<.゚人゙}   _,厶.________,/
ノ兀ヽ``゚i};' {f゚" ,ノ-r;ァァ7
f二フハ.n,|;'; |J/|⌒ヽ`ヾ(
⌒Ytf| |0{;'; ,};;| |⌒Y;{0ヽ、
..::シ ,人.ト(_)イノ}::`)爪`、:.`
⌒ヾ" :::V^^V ,ノ⌒Y丶ヽ::.
..:::ノ ̄`'ー'゙ ̄`ー '^::::..ヽ::
689名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/07(木) 18:58:53 ID:h69uvohV
      f0、
       Y(
        .jミ!
   , -‐''⌒}ヨ、
  / _/~´}ヨ:ど~≧zrァ-、
_,,ノツ´,イ ,;/ヲ ,,,ノヽ、{ノ‐'^`ヽ
,j'ト,ム ッ ''/ヲ_イ'´ ,ニ火巡_,jリ    厂 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄⌒ヽ
'゙ ミ:.いイ,_,Yノ,.‐''⌒`ヾ"' ヾ))   /            |
孚~えj廴,ヾ{(f;;, ,ィ ツノこ,;シ)   |  ジ ョ ー ン ズ  |
こ}! }!ご,,_ミ<・,)>ー今(・スj(   |            /
'’公くti廴,_`ス(yハ 'マ介ふ   `ー;z______/
ぇ、、`,>彳"´ ;i}〉9ミ乢'片    /
Vl兀lマrァ、,_,,.ィ/´ ミY `ヽ   ´
f\Nハ!八ハハァ-ミ尖ァ-ミ}__
ミ;, ヽy'},. '},}^;'f} ノjひハ. }-、`丶
〈:_,lt;,`〈_} {' iV|イ'!j   jノ .::\
:.. `{_ f:.t.:>'l:.  ',Yl_`丶、...:::::::::::::.
:::.  `{_;' Y V'l }∧\,:';ヽ  ...:::
:::::..   ヽ!`《__!ー‐しl::::::};;';};;;;;;;:::::
:::::.........::::ヽ、Z__;;}_,ソ!::::ノ;';〃⌒`
690名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/07(木) 19:01:33 ID:oSO2pFbl
     ∴・’
    /ヲ `
    jミf
    E{
` ・ ,,}ヨ   _/゚ ̄>ー 、
'’|ミ| }ヨ  ,ヘ〕〕〕)  /   /
 lミ| E{ ,ヒレ}  _ ノ|。 |
 lミ! `<ェfヒjX7フノ |。::...|。
 ヽ>、_]ヨy曰xrュ ハ、::::.\。   厂 ̄ ̄ ̄ ̄⌒ヽ
  `'┴<ソ×jヒ{^xtf) ヽ::::::.ヾ   /         |
    ,ノr'M_,しヒ「\。  \:::::  |  プ ラ ン ト  |
    {r/@`Yg゚c ハ。   ヽ   |          /
    レゞ==彳〉∝{ {。 ;  _,,厶_____,/
     ヾr孑ノ人゚__,/Zス。_
     い゚,ハ△-'┴宀=一'
     `>'´ ,. -zッェfff{{に"
      ,ゝィだう-ィひ少゙,,,;
      ./^>'\ー'",ァ''´,.ィ仞}
    /^Y_,ィTレ'´,∠彡ゃ彳
 _,zュノ升{レ'/,ィ幺少ハ三廴
691名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/07(木) 19:17:56 ID:MEyqylqr
            H  /y'
        /ヽ  H  /y'
         /`  }_ ヽTァr-,、
        /   |こ=y7 ̄`ヽ>、
      /   } ,,{ペ.f!{    ,ノソ  ノ丿
     ./ヽ  ,j} jf}气`ハ、  ,H  />'
    |{ハ}} ,,ィリ州|い{,mヾコエ>゙ /7
     |ルjム=.' iif !ケy ,==ミ、_,/>'    厂 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄⌒ヽ
     k<.9ノリ jリ|ひ!((.・>.)!┴'゙     /           |
    __|77ァ''´   |Y,ィ`ァ'-ヘ      |  ボ ー ン ナ ム  |
  _r'「{|,;if|'   j; ビ了父ィソ ,/y  _,厶             /
 /_,>ィ|,fリ     |,八八/^′/y'zZ    \______,/
 |__/ム|イ    ,イ}|ゾY^ンYメYイ ⌒ヽ
  ,.く::7ト,    州こ^ニ^/⌒ヾィ´
/;゙ `>| W! _,,ィ化儿>'⌒ヾ/.:: /;l
f.::::,ィl{{リヾ比"  jf|}y' `ヾ//.:::: /;f}}
 / ,ノ| f|\V"l; |7 `ミ/^!/.::::: /,,,,,,
f{G/| {{V,ハ wリト~ミ八/.:::::: /,;;;;;;;;
fハ `ヽ.| ll{{V∧VF ,イ /.::::::::::/.............
;ifツ\_ハ、j}}}l>、ヾレシ´.:::::::::;/,;;;;;;;;;;.;.;..
692名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/07(木) 19:47:39 ID:242bOPgI
           血       管       針       攻       撃  !
                       ・                  H /y'
                      /ヲ∴’                 LiニTヽ
                        jミf                 /\     ヽ>、
       r'^7  .r'^7     f{ヽ    E{                /`  }こY`y'7 ,ノソ    /ソ
       iーl  iーl  ,ー-Y(-、.   }ヨ  _/゚ ̄>ー、   /   }::;,|ヘ/ fi{ . H     H
      ,. '´iーlニニ!ーl r'´ツ/y,}ヨど≧ァ〈〕〕〕〕)  / /..  /::、::. j}::;;|爻メハ_ノソ r―┬</
    /XX,iーl____,iーl \'´,イ/ヲ ノ{人 jiヽ}  _ ノl。 l...   |{ハj::.. .ィ州い{/}ミ、_ /y' ̄ ̄
   {ニ{ニスi_」  ヽ_ノ、.E}ムハ/ヲy巡_,jパシリ77フ  l。:..l。.    kル!:<●ソ:|ケy●ーヘエ/
   {ニ{ニハ\; ; ; ; ;;/}_E}ミY\y火、j,/}_))\,xtfハ、::\。 ...|ァ"⊂⊃;;;|,、_,父⊂ン
   {゙}ハ'^ ● M ●lス}从●_}ラ::{●スjr'(●)  ャハ::::ヾ....r|'::.   : ::j;;|ノ ハハノ  ,r/⌒)
    \``⊂⊃、元_, ⊂lノi⊂⊃、_,、_,⊂「⊂⊃.、_,、_,} \::}/>!:.  イ};:北_, イー、 /: `ー..イ
    i⌒ヽ j  (_.ノ   ノ/⌒)(wwノKノ⌒)イ (_.ノ Z__,ノ//⌒)    ..::ト、/^ヽィ/: : : : : :ス
    ヽー={ヽ>、 __, イアlヽ,/ニニ_イ::::::;/x>、 __, イ_/xff!/>-ィイ化y^ヾ/^/i: : :: : :/:/
     \ニ}γ⌒Y⌒ヽ爪/;;;;;;;;;;;/ }::/ 三チト| L//l  /\.! f! v'レ〈_//:::|: : :: /:,イ

      ペ  イ  ジ  ジ ョ ー ン ズ  プ ラ ン ト   ボ ー ン ナ ム

693名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/07(木) 19:53:09 ID:Iuvt55hi
500ならテファは子持ちに。
694名無しさん@お腹いっぱい。
      ┌                     n /7
      ヘ 「ト                  L|ム//)
     く  ゝ)      _        へ人  ヘ∠
      て彡      |  ハ        `┤フ⌒ヘ⊃
       .| ヘ     .| ノ |-イ_  - 不 ーーイ
       |\ ⌒\  .Y / √ /イ  \二 彡
        ヘ  i⌒ <〜 Y//  / ヘ /    ノ
        ーへ //⌒>イ.( ヘ  入   /
         \《   / / |ヘ ノ </ーイ
           ヽヘノ へ ヘ√  | |
            | |ーー| |へ ム┘
           //ーー// √
          √(⌒)□へ      ww      ザ・500kb!
           i (^"^)\  ゝ    <イヘ|     スレは止まる!
           |/ ヽイ⌒ -イヘ    ヽヲiヘ
         . / /ヽヒ/ /  ヽ / フ⌒( ヘ
         ./ ん )ヘ (   <⌒ へ  ト ノ
        ./   )/  \ヽ人 ⌒) )イムi )
       ん   /     √  イイヘムイ
       | ) (  n /彳ヲ/ミヲ   | ヘ
        イ(⌒) ヒ >    /  ( \ (彡ヘ
       .|  イ Eイ  イ |   ヘ  ) mm7
        ) (  <  イ ヽヘ  ヘ ゝ
        へイ   |ア~ヘ   く ヘ人
       入ノ    \_/ヘ   ヽ|_\へ
       //      | ノ)     へ ヘii|
             ∠_/      んゝ \
                        ̄ ̄
【ジョジョ】ゼロの奇妙な使い魔【召喚78人目】
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