光り輝く1乙
>>1 乙でございます。
では34スレの方で言ったバッドエンド回避シナリオのシグナム姐さんサイド話を投下しても良いですか?
あの話のシグナム姐さん主観の話でバッドエンド編のオチも付いてます(凄い蛇足ですが)。
それでは投下します。
読む際は是非ともバッドエンド回避シナリオと合わせてお読み下さい。
魔法少女リリカルなのは Strikers May Cry 番外編Bad End 回避シナリオ
Side Signum
夢を見た。
ほんの少し歯車が狂ったが為に最悪の軌跡を辿った未来で仲間や家族が死に果てる。
そして最後に自分は最愛の恋人である男の刃にかかり死に至るというものだった。
シグナムはシーツを跳ね除けるようにして眠りから目を覚ますと荒い息を整える。
先ほどの悪夢の光景が、血と涙に濡れた視線の先で自分を殺した最愛の魔剣士が悲しみに泣く様が目に焼きついて離れない。
「はぁっ はぁっ なんて夢だ…」
悪夢の残留が心に突き刺さり後から後から涙が溢れて止まらない。
それ程にあれは最悪の悪夢だった。
自分が彼に殺されるなら耐えられる、だが彼が己の心を闇に落として苦しみ悲しむ様を見せられるのはどんな苦痛よりもシグナムの心を深く抉るのだ。
シグナムはやっと涙を拭い去り、隣で眠る最愛の魔剣士へと視線を移した。
静かに眠るバージルの寝顔を見てシグナムは思わず彼に抱きつき、伝わってくるガッシリとした身体の感触と温もりで悪夢の残留を払う。
「ふぅ…しかし、いつまでもこうしてはいられんな…」
しばらくバージルの胸板に頬をすり寄せて溶け合うようなまどろみに浸かっていたシグナムだがさすがにいつまでもこうしていては妻になる身としてだらしないと思い、顔を上げる。
シグナムがバージルとこうして夜を共にして彼より早く起きる割合は半々だった。
せっかく彼より早く起きたのだからちゃんと朝食を用意しなければならない、と自分に言い聞かせてシーツから出る。
「起きろアギト。朝だぞ」
「あ〜〜さ〜? あぁ起きる〜起きますよ〜」
シグナムは別室で寝ていた(理由は聞くな!)アギトを起こして朝の準備を始める。
「アギト、私は少しシャワーを浴びてくるから先に朝食の準備をしていてくれ」
「あいよ〜、合点だ」
シグナムはアギトにそう言い残して浴室へと向かった。
昨日も寝る前に入浴は済ませたのだがシーツに染み付いた情交の残り香が身体に移っていないかと気になるのだ。
きっとただの杞憂だろうがそれでも彼の前では自分の姿をより良く見て欲しいという女としての矜持である。
シグナムはシャワーを浴びながらふと自分の下腹部を撫でる。
「それに私では妻には成れても……母には成れないからな…」
彼女は普通の人間ではない、夜天の書のプログラムとして作られた魔道生命体である。
守護騎士の身体が限りなく人間に近づいてもきっと子供は産めないだろう、その事を考えるとバージルに対してすまないという思いでいっぱいになる。
彼はその事をまるで気になどしていなかったが、せめてそれ以外では彼を満足させられる女に成ろうと思い念入りに身体を洗う。
「…だからせめて…身体くらいは綺麗にしておかねばな…」
シャワーを終えたシグナムはキッチンへと向かい朝食の準備をする。
その日の朝食は昨日の残りのホウレン草の御浸しに鮭の切り身を焼いて味噌汁を作るという純和風のものである。
シグナムは鮭の身に包丁を入れながら“結婚したら毎日こうやって朝食の準備をするのか”と考える。
(毎日これなら、今からバージルより早く起きるのに慣れなければな…)
そしてつい昨日の夜の事も思い浮かべてしまった。
「だ、だが毎晩アレでは私の体がもたんぞ! そ、そうだな週4…いや週5くらいなら……いや、でもバージルがどうしてもと言うのなら毎晩でも……ブツブツ」
何か訳の分からない事をさっきからブツブツと言っているシグナムに若干引き気味の視線を送っていたアギトが意を決して話しかけた。
「あ〜…シグナム〜? 大丈夫か? どっかで頭ぶつけたか?」
「はっ! アギト…すまんな大丈夫だ…ところで味噌汁に豆腐を入れてくれ」
「あいよ〜。でもさぁシグナム〜毎回思ってんだけど、この味噌汁味薄くないか?」
「いや、それで良いんだ。これくらいがバージルが一番喜ぶ」
「あ〜…そうなんだ…ははっ」
そのシグナムの言葉にアギトは最高に乾いた笑いを浮かべて苦笑した。
朝食の準備を大方終えたシグナムはバージルを起こしに寝室へと向かう。
「もう朝食だぞバージル」
シグナムはそう言うと同時にドアを開けた、そこには既にベッドから身体を起こしているいるバージルの姿があった。
バージルは唖然とした顔でシグナムの顔を見つめている、そして心なしか彼の顔は少し濡れているような気がした。
「どうした? 今日は休みだからといって、まだ寝ボケているのか?」
まだ頭の冴えていない恋人にそんな冗談めいた言葉をかけるが、彼は相変わらず反応を見せずにシグナムの顔を食い入るように見つめてくる。
そしてシグナムは先ほど自分が朝食の準備をしていた事を思い出す。
もしかしたら何か自分の顔に付いているのではないかと思い頬に手を当てて慌てて口を開く。
「何だ? もしかして何か顔に付いているのか?」
そのシグナムの言葉にもバージルは何も返さず静かに立ち上がるとシグナムに近づいて来た。
「どうしたバー…ひゃっ!」
バージルはシグナムに近づくや否や彼女の身体を抱き寄せたのだ。
「どうした? いきなり…」
「………」
バージルは無言でシグナムの腰に回した腕に力を込めてさらに強く抱きしめる。
「ちょっ…苦しい…本当にどうしたんだ?」
シグナムはそこで昨晩見た悪夢を思い出す。
「何か悪い夢でも見たのか?」
「……ああ」
「そうか…」
その言葉を受けてシグナムは堪らなくなる。
きっと彼がこうして己の弱い所や脆い部分を曝け出すのはこの世で自分だけだ、その事実が心を満たして涙が出そうになる。
そうしてシグナムはバージルの身体に優しく腕を絡めて抱きしめながら囁いた。
「大丈夫だ……私はここにいるから」
(そして絶対に離れない…この身と心のある限りその傍らでお前を支え続けよう…)
シグナムは胸中にて改めて彼への深い愛を思った。
「……すまんな…みっともない所を見せて」
なんというスーパーダダ甘タイム…大好物だZE☆
支援
「もうすぐ夫婦になるのだ、気にするな」
「シグナム〜味噌汁の鍋に火かかったままだったぞ〜。バージルの旦那起こすのにどんだけ…」
そんな所にアギトがやって来た、そして最高に間の悪い状態の二人を目撃する。
抱き合った二人を見たアギトは顔を真っ赤にする。
「アギト、これはだな…」
「お、お邪魔しました〜!! 2時間ぐらい外行ってるから、ごゆっくりどうぞ!!!」
アギトの去った部屋で二人は呆然としながらもやっといつもの調子に戻る。
「何だか…勘違いさせてしまったな…」
「だな」
「それでは朝食にするか」
「ああ。二人きりというのも悪くは無い」
バージルとシグナムはそう言うと自然に身体を寄せ合っていた。
「あ〜それにしても朝っぱらから熱すぎだよあの二人は……さすがは烈火ってか…」
部屋をでたアギトはフワフワと飛んで、とりあえず外で時間を潰す算段をする。
「はやてん所でも行くかな〜…でもそうしたらシャマルあたりが根掘り葉掘り聞いてくんだろうな……ん? なんだこりゃ?」
独り言を言っていたアギトがふと自分の頭に乗っていた小さなモノに気づく、それはアギトの手で掴めるくらいのプルプルしたクラゲみたいな生物(?)だった。
「キモッ!」
アギトはそう言ってそれを地べたに放り投げて潰した。
「どっかで拾った魔法生物かな? まあどうでも良いか…」
アギトは知らない、それは夢魔の中でも最低クラスの悪魔でありバージルとシグナムの二人に悪夢を見せた元凶だった事を。
あまりに魔力が少なかったので誰も気が付かなかった夢魔だが、アギトの手によりあっけなく裁きの鉄槌は下される。
烈火の剣精アギトはロードの小さな危機を偶然でも守ったのであった。
This Is True End
投下終了、マジで甘い…ってか甘すぎだろこれ!
以前、回避シナリオ投下の際に夢オチの原因は夢魔では? って言った方がいらっしゃいましたが見事にその推理は当たってました。
GJ!
てか姐さん、週5でいいんですかいw
>10
いいから鍋にブチ込んで、リンディさんを喜ばせて下さい。
俺も九時くらいに昼に投下した分の続き投下していいでしょうか?
超GJ!!
リンディ茶クラスの甘さだ……あれ実行した(砂糖とミルクの量目分量でやってみた)俺が言うんだから間違いない…
姐さん…いや、奥さんが可愛らしすぎてもだえたじゃないか。
なんという理想の嫁……バージルテラウラヤマシス
>>10 GJな甘さだぜ!出来れば他の作品でもこんな甘さが欲しいね。
GJ! GJ!
こういう姐さんを待っていた!
そして、今自分が為すべきことは、新年会スレでセフィロスと地獄の死合を繰り広げる、阿修羅のバージルを書き上げることッ!
…とーころがちょっと事情が変わって明日までかかりそうなんだな、これがorz
メイクライさんGJ
大介「ふん…本当に俺の負けか…上手くやれよ…」
>>17 大丈夫かい!?そんな反目さんを支援しよう。
一応新年会レスはつなげたけど・・・。
そろそろ投下してもいいですか?
…こんなムードの中投稿したら場がシラケるんじゃないのかなあ。
シラケるんだろうなあorz
話題に入っていきたくともデビルメイクライはてんで解らない…。
支援っす、是非とも是非とも投下を!
支援しよう。
さあHURRY! HURRRY HURRY!! HURRY HURRY HURRY!!!
>>21その言葉、何よりの励みであります…。
なのはStrikerS-NEXT12話「彼方の親友」
ひくひくと鼻らしき部分を蠢かせながらガリューは河原へ向かっていく。
どうやら同類の匂いは敏感に察知できるらしい。
と、不意にカンに障るモーター音が辺りに響き渡った。これはサイドバッシャーの駆動音だ。
「誰かと思えばお前らか、フン…。」
サイドバッシャーから降りると3人(正確には一匹と二人だが)を値踏みするように睨み付ける草加。
暇つぶしに喧嘩でもふっかけてやろうというのが見え見えだ。
こなた達は無言で脇を通り過ぎて行く。
「何にも悩みが無いって面だな。羨ましい限りだよ全く…。俺に突っかかって来る事も無くなったって事は
あのオルフェノクになってしまったお友達の事なんかもう忘れてしまったのかなあ?」
「忘れた…?かがみ達の事を…?」
笑みを浮かべながら言った草加の言葉にこなたが歩みを止め、振り向く。その顔は彼女に似つかわしくない本気の怒りを表した物だった。
「忘れてる訳、無いじゃん…。生きてるって信じてるんだよ!
突っかかったってかがみ達がかえってくる訳じゃないし
忘れたフリしてるんだよけ!今までも、たぶんこれからも…。」
「こっ…こなた…。」
激昂して言い返すこなた。肩がガクガクと震えている。そうじろうがなだめようとするがそれでも草加を睨みつける。
「勘違いするなよ。オルフェノクは敵だ。殺して何が悪いんだ?忘れたフリねえ…こっちはそんな事してくれと頼んだ覚えは無いけど…
すると本音では俺の事をどう思っているのかなあ?察するに八つ裂きにしても飽き足らないとかそんなとこかな?
でもねえ…。君がそうやって減らず口を叩ける事ひとつとってみても誰のおかげなのかよ〜く考えて見なよ。」
滅多に怒らない奴ほど怒る姿には凄みがあるものである。だが草加はそんなこなたの視線に怯む事なくむしろ笑みさえ浮かべて言った。
この男はどうも自分が嫌っている人物が激昂したり苦悩する姿に快感すら覚えているフシが見受けられる。
それも以前乾巧達と一緒に暮らしていた頃ならばまだ大人しくしていたのだが実質的に彼が人間解放軍の戦力比の五割をしめている
今となっては彼を止められる者などいないといってよかった。
支援
さらに彼と泉こなた…そして今行方不明になっている柊かがみや高良みゆきとの間には実は結構深い因縁があるのである。
「オ…オルフェノクと戦っているのは何も君だけじゃないだろう…。ヒーロー気取りで威張って回るって年でもあるまいし
みっともないと思わないのか?」
そんな中、弱々しくそうじろうが言い返した。草加が不快感を隠す事無く眉を吊り上げる。
「ふん、まあ確かにそうだけど…でも中には何かというとヘラヘラ笑うで全く役に立ってない奴も居るよな。なあ?
俺はあんたやそいつの百万倍は解放軍に貢献してるつもりだけどね。大体何なのかな君達は?
とくにそいつなんか口開けばくっだらない漫画の事ばっかりだ。いわゆるゲーム脳って奴かい?
もっとも体つきとか見る限り問題がありそうなのは頭だけじゃなさそうだがねえ。
母親はだいぶ前に死んでるんだっけ?…さしずめ低俗な趣味に関しちゃあんたを受け継いで
出来損ないの体は母親譲りって訳かなあ?」
暴言という言葉では追いつかない程の非道い言葉を悪びれる事もなく言ってのける草加。
母親を幼い頃に失った事にしても親友であるかがみ達との生き別れにしても
表面上は気にしていない様子のこなたではあったがだからといって全く悲しんでいないなどということがあろうか。
「うっ…うううう…。うう…」
今まで我慢してきたものが壊れていく。
口から嗚咽が漏れ、頬を暖かい物が伝った。その時である!
バキッ!
こなたの耳に鈍い音が聞こえた。
「人が下手に出ていれば貴様っ!訂正しろ!…謝れ!私の事ならいくら馬鹿にされたって我慢しよう!ああなんとでも言うがいいさ。
だが先立った妻と娘の悪口だけは誰が何と言おうと許さん!謝れぇッ!」
顔を真っ赤にして草加に掴みかかるそうじろう。
「お、おとーさん…。」
「…調子に乗るなよッ!」
殴られた口から垂れる血を舐めると胸倉を掴んだそうじろうの腕を振り払い、回し蹴りを食らわす草加。体力では彼の方がずっと上だ。
為す統べなく吹っ飛ばされよろよろと立ち上がるそうじろうに追い討ちをかけようと拳を振上げる草加。
支援!
「ぐえっ…。」
「グルルルルルルル…!」
ところが苦悶の声とともに蹲ったのは草加の方だった。
ガリューが目にも止まらぬ速さで割って入ると一撃を入れたのだ。
さっき召喚獣と戦ったときだってもうちょっと遠慮ぎみだったのではないかと言いたくなるような
敵意剥き出しの唸り声で草加を威嚇するガリュー。
「ッ…。面白い…そんなに死にたいのか。なら望み通りにしてやるっ!」
カイザギアが入ったトランクに手をかける。だが…。
「うっ…?」
いつのまにか近くに居たルーテシアとアギト、バルバ、そして神咲薫が敵意をたたえた
視線を持って彼を睨みつけている事に気が付いた彼は憎々しげな顔でひとつ舌打ちをすると
腹を摩りながらサイドバッシャーに誇り、派手なエンジン音とともに雪とドロをまき散らしながら、走り去った。
「大丈夫ですか!?十六夜!」
「りゅーちゃんのせいじゃないよ。私は大丈夫だって。」
刀から十六夜を開放するとそうじろうのダメージを癒す薫。
本来幽霊や妖怪を祓うための霊剣だが、その能力のひとつとして
人間の傷を癒すという能力もあるのだ。
そして自分が連れ出したせいだとでも言いたげにしょげかえるガリューを
何事も無かったかのように逆に慰めるこなた。
それから少しして
「…本当にそんな事を言ったんですか?あの男…。」
事情を聞いた薫が十六夜の鞘を握ったまま静かに言った。心なしか肩が震えているのは怒りのためだろう。
「あの男はいずれ身を滅ぼす。欲と復讐のみを目当てとして戦えば行き着く先など知れている…。
で、その虫の戦士の連れ添いを探しに行くのではないのか?」
「そだね…それじゃ、気ー取り直して行こっか。」
バルバの言葉とともに彼女達を加えたこなた達は再びガリューに付き添って歩き始めた。
雪の勢いがさらに強くなる。
「この下水管の中…?」
ディズニーランド近くを流れている排水路に注ぐ直径ニメートルほどの下水管。
なるほど、先ほどあの召喚獣が持っていったものとおもしきビスケットの包装が転がっていた。
少し中に入ったところでガリューが付いてきたこなた達を片手で制した。
「居るな…。」
バルバが呟く。
「ぐるるるるる…ぐるるるる…。」
痛む傷を抑え、寒さに震えながら凄まじく冷たい流れの中に蹲って立つ事も出来ない。
それでもその召喚獣は気力だけでか細く唸り声をあげた。
「………。」
そんな彼女をやさしく抱きかかえて毛布でくるむガリュー。
抱き上げられた彼女はガリューの腕の中でしゃにむにもがくが、やがて大人しくなった。
「何ねこれは!人間だったらすごい熱だよ。早く連れて帰らないと」
薫が召喚獣の額に手を当てると声をあげる。
「ま、人間だったら風邪を拗らせたと言うところだろうなあ。」
「博士って医者のお仕事も出来るんですか?」
ゴーグルを外して担ぎ込まれた召喚獣の脈をとる野村にスバルが怪訝そうに言った。
「わしは天才だぞ。まあ人間用の抗生物質は拒否反応があるかもしれんし熱さましだけ飲ませておけばよかろう。
なに、野生ということだしだし恐らく大丈夫だ。それよりもだ、問題はこっちだな…。」
脇に寝かされている先ほどマーティが連れてきた白い服を着た紫色の髪の女性の方に向き直る。
「体温が二十度も無いんです。でも脈はあるし体にも何処も異常はありません。
でもこれってむしろ異常極まりないですよね?」
マーティが電子体温計の表示を睨みつつ言った。
「そっ…そんな馬鹿な!」
「その体温計壊れてるんじゃねーの?」
「いや、ほんとにつめてえぞ!」
どよめきの声があがる。
その時。
「あっ…。」
周囲に驚きの声が漏れる中、かつて真一郎らとともに
「ざから」という妖怪を封印した「雪女」であり、「雪」という味も素っ気も無い名前の女性は
ゆっくりと起き上がった。
ブラック草加タイムあーんど
スーパーそうじろうタイム投下終了。
こなた達と草加の初対面の話についてはまた後ほど。
そ、そうじろう……GJ。
男達がカッコよすぎる…GJだぜ。
ときにSMC氏、例の死合の件で相談が。
セフィロスは片翼本編に先駆けて羽生やすのですが、バージルは魔人化すべきでしょうか?
ビジュアル的な面を考えて人同士で斬り合うのがいいのか、それともそんなの無視して限界バトルに持ち込むべきか…
…でも、宿敵相手にはあまり魔人化しなさそうなんだよなぁ…バッドエンドのシグナム戦の例もあるし…
>>31 たぶん魔人化はしないんじゃないかと思います。
近くにシグナムとヴィヴィオがいるので周囲に危険を伴うような力の発動はしないでしょう、今の彼はデレの絶頂ですから。
それにセフィロスが相手なら単純な剣技のみで楽しみを感じるのではないでしょうか。
>>32 了解。
では脚部ベオウルフ・フェイクによる機動力強化に留めます。
実は死合の会場は結構広い別会場が用意されていて、ヴィヴィオ達常識人はパーティー部屋から中継で見てるんですけどね。
…姐さん? あの戦闘狂はもちろん見に来てますとも。
34 :
戦国の鉄の城:2008/01/04(金) 22:50:52 ID:eUhUd8QQ
どうも、甘すぎるシグナムとバージルを見てまた一人にやけた俺です。
そしてそうじろうとガリューに痺れた。とにかくGJです。
っと、自分もモンハンクロス投下いいですかね?
36 :
戦国の鉄の城:2008/01/04(金) 22:57:50 ID:eUhUd8QQ
では、投下いたします。
んで前もって謝っておきます。続けるにはドクをこうするしか…。
37 :
戦国の鉄の城:2008/01/04(金) 22:58:17 ID:eUhUd8QQ
魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER
第四話「赤鳥」
「やぁ、ドク。改心したみたいだね。」
「なんのことかね?」
「は?」
アースラのとある長廊下。ドクとジェイは話している。
だがドクは昨日何が起こったか忘れたような素振り。
「え、だって昨日…。」
「昨日?おぉそうか、君がくだらない人生論を喋っていたことか。」
ドクはここが廊下で夜にも関わらず大声で笑っている。ジェイは呆気に取られていた。
必死に笑いを堪えながら何故笑っているかを答える。
「クク…君のようなお人よしは騙しやすいということが…クッ…わかったよ。…クク……ハハハハハハハハハハハ!!」
ひたすら腹を抱えて笑うドクに唖然としているジェイ。ようやく繋がった。ジェイは騙されていたのだ。
昨日のドクの反応に。出る間際に見せたあの涙まで偽者だったとは。非常にお節介なジェイはすっかり騙されていたのだ。
ポケットから落ちたのは目薬。ジェイは拳を震わせて怒りやら恥ずかしさやらを爆発。
「お前は俺を怒らせたぁっ!!」
ジェイの全力の拳をいとも簡単に避けてみせるドク。
「クククク…騙されるほうが悪いのだよ!」
「んのやろぉぉぉぉぉぉ!!」
よくよく考えてみるとドクも変わらないなぁと思う。度々騙すし、俺の背中に竜撃砲をぶっ放したり。これでも腕は立つんだよなぁ。
高らかな笑い声と怒声がしばらくアースラ内に響いた…というのは余談である。
38 :
戦国の鉄の城:2008/01/04(金) 22:59:33 ID:eUhUd8QQ
翌日、三人のハンターはミッドチルダの大地を踏む。
ジェイとゼクウの視線は全て大きなビルに。
「す…すげぇ…。」
「塔のようなものがいくつも…。」
そのリアクション、本当に田舎もんである。ドクはさすがミッドチルダ出身。動じていない。
はやて達についていくがやはり落ち着かない。街の様子はというと不気味といえるほど静寂に包まれている。
人がいるとすれば槍とも呼べる杖を持ち、黒いコートに身を包んだ者達。時々こちらを睨んでくるから余計にプレッシャーがかかる。
(そりゃそうだよなぁ…。)
自分の姿をよーく見てみる。「アカムトシリーズ」という鎧一式だ。兜も被って肌が露出するところなどまったくない。
おまけに背中には「インペリアルソード」という太刀。そしてアイテムボックスを引きずっているのだから不審者に間違われてもおかしくない。
はやて達が前に歩いていなければ連れて行かれるだろう。はやて達はというとバリアジャケットとかいうのに着替えている。
武器も手に持ち、いつでも戦闘可能ということだろう。自分の身体にまで緊張が伝わってきた。
そして建物の中へ。どうやら機動六課の本拠地についたようだ。
はやてがくるりとジェイ達のほうを向くと満面の笑みを浮かべた。
「ミッドチルダ、そして機動六課にようこそ。」
直ぐに正面に向くと宿舎へと案内される。そしてそれぞれの部屋へ。アイテムボックスを置き、
部屋を眺める。風呂にトイレ、ベットに洗面器にコンロ。生活しやすく改装されている。
いつも通り家でやっているようにボスン、とベットに飛び込む。ちなみに鎧はつけたままだ。身体が跳ねる。もちろん埃も立たない。結構ふかふかである。
この後なにも予定はないため目をゆっくりと瞑り、少し眠ることにした。
39 :
戦国の鉄の城:2008/01/04(金) 22:59:57 ID:eUhUd8QQ
「グギャアァァァァアァァァァ!!」
安眠は一つの咆哮で遮られた。ジェイは飛び起きて急いで武器を持ち、廊下に出る。
廊下に出るとゼクウとドクが同じタイミングで廊下に出てきた。
「この咆哮、一匹じゃないようだな。」
「あぁ、おそらく数体いるな。こいつは厄介だぞ。」
「でも、ここに雇われた以上やらなきゃいけないね。」
ジェイが手にしたのは氷属性の太刀「白猿薙 ドドド」、ゼクウが手にしたのは大剣「ダオラ=デグニダル」、ドクは珍しくハンマー「ジェイルハンマー」。
三人とも顔を見合わせて頷き走り出す。
外に出ると当然の如く飛竜がいた。本来おとなしいはずの鳥にも似た飛竜、イャンクック。
それが攻め込んできた。理由はおそらく「縄張り」だ。誰かが調査をしにいって縄張りに入ってしまってイャンクックを怒らせた。
とりあえずの憶測だが、可能性がまったくないわけではない。
「ディバイィィン…バスタァァァァァァ!!」
一匹を魔力ダメージで昏倒させた後一息、なのはの隣にジェイ達ハンターが並び、それぞれの武器を構える。
「ジェイさん…?」
「OK、皆舐めてかからないようにな。」
「お前のように油断しすぎて1ダウンするほど愚かな俺等ではない。」
「そういうことだ。まず自分の心配をしたまえ。」
「…言い返せないのが悔しいんだけどさ。」
二匹のイャンクックに向け、走り出した。
対するイャンクックは大きく吼えて三人のハンターを待ち構える。
「おぉぉおおおおおりゃっ!!」
白猿薙を頭にめがけて振り下ろす。戦いが、始まった。
やはり、ドクターはドクターか・・支援
41 :
戦国の鉄の城:2008/01/04(金) 23:00:48 ID:eUhUd8QQ
唸る轟音、
舞う瓦礫、
轟く咆哮、
流れ出る吐息、
そそり立つ火柱、
飛び散る血飛沫。
それが今赤鳥と狩人が戦っている場所の全ての光景。
「シッ!!」
太刀の刃が翼に深い傷を負わせていく。羽の先から入り、胴体へと肉を切り裂きながら進む。イャンクックが飛び立つと太刀が
抜き、ジェイが地面に落ちる。イャンクックが着地する隙をゼクウは逃さない。
「ぬぅぅぅぅぅぅんっ!!」
大剣、ダオラ=デグニダルの横凪ぎで足を滑らせて横転。立ち上がろうとするところに回転しながら進む影。
ドクだ。ジェイルハンマーを回転させながら顔に一撃、二撃、三撃。打撃を与えていく。
「私のオペは少し過激なのでな!!」
止めの振り上げ。ジェイルハンマーの球体から伸びる棘がイャンクックの顔面を襲う。巨体が、浮いた。
「遠慮はせずに、もう一撃受けていきたまえ!!」
おまけにジェイルハンマーを振り下ろす。頭蓋骨が砕けたのではないかと思うほど鈍い音が離れたところからでも聞こえる。
その巨体は地面に叩きつけられた。叩きつけられた顔面の周りのコンクリートは砕け、土が露出している。
人間の力だけでその威力が出るのかと不思議なくらいに。目は完全に光を失い、焦点が合っていない。
「っし!次!」
ちょうど振り返ると二匹目が突進してきていた。
ゼクウが入り込みダオラ=デグニダルを盾代わりにして突進をガード。腕の筋肉が悲鳴を上げようとも力を緩めない。
スピードが落ちてきたところをジェイが白猿薙の一撃を。刃が顔面に縦一線、傷をつけてイャンクックの左目から光を奪った。
「親分!」
「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
怯んだところに大剣の特権、溜め攻撃を繰り出した。尻尾に切り傷をつけただけでなく、切り落とした。
「そこの君!!」
「は、はいっ!」
「こいつを仕掛けて欲しい!地面に置くだけでいい!」
ドクは走りながら近くにいたエリオに円盤状の「何か」を投げ渡す。少し慌ててしまったものの地面に設置。
灰色のネットが円盤から射出された。それを見た三人は武器をしまう。
「走れぇぇぇぇぇぇ!!」
エリオが仕掛けた何かに向かい走り出す三人。エリオもつられて走り出した。通過しても何も起こらないがイャンクックがネットに足を踏み入れた瞬間、
地面がめり込んで尻尾、足、胴体を引きずり込んだ。…これはハンターが使う一般的なトラップ、落とし穴だ。
ドクが足を巧みに滑らせて方向転換。低く構えると腕から光が。その光はどんどん色を濃くしていく。
イャンクックの前まで走るとニヤリと笑い
「別れを言いたまえ。貴様を取り巻く全てのものに、そしてこの世界にな!!」
無慈悲な鉄槌を振り下ろした。
42 :
戦国の鉄の城:2008/01/04(金) 23:01:29 ID:eUhUd8QQ
番外その3「イャンクック」
意外に知ってる人が多いかもしれない。多くのハンターの登竜門となった飛竜、イャンクック。
ピンクの甲殻に大きなクチバシと耳。一見ユーモラスなのは確かだけど可愛いって言う人もいるなぁ。
結構人気が高いみたい。そりゃあ、狩られる運命なんだけどさ…。
聴覚が鋭いから、それを逆手に耳が劈くほどの大きな音を出せば攻撃の隙ができる。やったあと怒るけど。
驚くべきはヤツが怒ったときのスピードだ。そのスピードで何回も突進されて気絶されることが少なくない。
弱点は氷か水だな。毒とか麻痺などの状態異常の方が手っ取り早いんだけどね。あくまで弱点さ。
そんなに手強くないって思うかも知れないけど甘く見ちゃいけない。何しろ油断したせいで一回ダウンした人がいるからね……。
俺だけど、何か?
>反目さん
好き放題暴れてオケーですよ。
いざって時は舞台裏の三人に止めさせますから。
(あの三人なら魔人バージルを止められる筈…)
支援
44 :
戦国の鉄の城:2008/01/04(金) 23:03:18 ID:eUhUd8QQ
投下終了です。
やっぱり俺の頭だけでは続けるにはこうするしか思いつかなかった…。
…やはり亜種とかも出すべき?
>>リリカルスクリーム氏
GJ!!
そうじろう父ちゃんとガリューの男前っぷりに俺が泣いた。
草加の嫌な奴っぷりが原作(TV・映画両方)よりも拍車が掛かってる気がしますね。
なんだろう、サイガにあぼーんされる結末を期待している俺がいる・・・。
たっくんや翔一君、木野さんの出番ってあるんですかね?
>>44 GJです
スカ博士かっこいいな
というからしくなって来たと言うべきか
GJ!
どうでも良いけど大剣の特権って響きが気に入ったw
48 :
りりかる心太:2008/01/05(土) 00:17:26 ID:6gw49pzp
番外編その二が出来ました投下よろしいですか?
けんしん「リリカルマジカルバットーサイ♪」
>>45 木野さんは出ません。
アギト本編で死んでしまっていますから。
あと人物の生死に関する展開は変えるつもり無いんで草加はサイガにやられて死にます。
翔一くんは出番ありますよ。
岡村可奈さんを出しておいて翔一くんを出さない訳に行きませんからね。
映画本編でメインキャラとして出ている人物(たっくんとかオルフェノク3人組とかプニ嬢とか)の描写は薄めにしてるんですが
たっくんは主役ですし活躍の場は用意する予定であります。
50 :
りり剣:2008/01/05(土) 00:36:40 ID:6gw49pzp
反応がないので今日はやめておきますー
まったー!!
はyまるな!!!
52 :
りり剣:2008/01/05(土) 01:27:55 ID:6gw49pzp
シャワーも浴びたし。それではアメリカの学校から投下しますー。支援願います皆さん。
53 :
りり剣:2008/01/05(土) 01:30:58 ID:6gw49pzp
この道を選んだのは。
あの日に私を助けてくれた空の星のようなあの人。強くて、かっこよくて、優しくて。弱くて泣き虫な私を変える為にあの人を目指したから。
そして、あの日に私を助けてくれた月のような優しさを持ったあの人に私はあらためて会って謝りたい。
頬に十字傷が刻まれてるけど抱き留めてくれた手。笑顔があたたかかった……あの人はどこに居るのかな。
魔法少女リリカルなのはStrikerS−時空剣客浪漫譚−始まります。
番外編その二「えぴそーど・すくーる。嵐の前の出会い」
支援
55 :
りり剣:2008/01/05(土) 01:43:35 ID:6gw49pzp
スバルがパートナーであるティアナと朝の訓練の為に列に入った頃。スバルを心配している家族がいた。
ミッドチルダ西部 陸士108部隊 隊舎
その隊長室にはスバルの父である時空管理局 陸士108部隊 部隊長のゲンヤと。同じく時空管理局本局・査察部査察官のヨシエ・スギムラの二人が相対する形でソファーに腰掛けていた。
「そろそろ、入学式も終わったところか」
時計モニターに刻まれた時刻をゲンヤは確認しながら呟くように喋る。
するとヨシエは意味深な笑みを浮かべてゲンヤに話し掛ける。
「なんだ。複雑そうだな?」
「ったく。人の気ぐらい分かってんだろ?」
「ははは、悪ぃ。なんとなしだけどよ……スバルちゃんなら大丈夫じゃないのかーって思うんだなこれが。 なぁ、ギンガちゃんもそう思わねぇか?」
自分達の間にあるテーブルにお茶を置いておぼんを抱える少女にヨシエが尋ねるとギンガは優しく微笑みながら「ええ」と頷いて答える。
「そうですね、ちょっと内気な子ですから心配は心配なんですが……あの子はあの子なりに頑張れると思います。」
「ほら、ギンガちゃんもそう思ってんだ。なら大丈夫だって」
ギンガの意見にうんうんと頷くヨシエにゲンヤは呆れながらも納得していた。
確かに内気な性格ではあるが大丈夫だろう。だが俺は内気な性格のあいつだから心配なんだ。
「そうだと良いんだがね」
口心共に同じ発言であった。
「あ〜。茶がうめぇ」
「ふふふ、すこしお爺さんみたいですよ。ヨシエさん」
「いやぁ、そりゃ爺冥利に尽きる言葉だぜ♪」
56 :
魔装機神:2008/01/05(土) 01:46:39 ID:lKbrX+IQ
ヒテンミツルギスタイル支援
57 :
りり剣:2008/01/05(土) 01:47:06 ID:6gw49pzp
−−−−−−
エリオとシャーリーはとある建物の屋上に来ていた。
そこは陸戦訓練場で行われる実際の訓練を見学をする為に設けられた高い建物。
エリオはそこから辺りを見回していた。
「ふぇー、広いですね。」
そんな彼の反応にシャーリーは踏み台を持ってきながら答える。
「うん、陸戦訓練場だからね」
「あ、ありがとうございます」
持ってきてもらった踏み台に乗り改めて辺りを見回す。
「ここは陸戦魔導師さんの訓練校なんですよね?」
「そうだよー。ほとんどの戦闘魔導師のスタート地点で今も1番数が多い空を飛ばずに戦う魔導師たちが学ぶ場所。
フェイトさんたちみたいに先天資質でA以上とかそういう人を除けば飛行訓練はかなり大変だからね。予算もかかるし。
空戦魔導師になる場合でも陸戦魔導師として訓練や実績を積んでから……場合も多いんだよ。」
「あ、もちろん。どっちが上とか偉いとかってことはないんだよ」
シャーリーがそう言い添えるとエリオはにっこりと笑って答える。
「はい、わかってます! 陸も空も、それぞれの場所でそれぞれにはたらいて助けあってるからこの世界をまもれるんだってフェイトさんに教わりました!」
「うん、偉い偉い♪」
そう言い、エリオの頭を撫でると彼は嬉しそうに微笑む。すると、背後からドアが開かれる音が響く。
「おろ、先客がいたようでござるな」
「ん、誰かと思ったらシャーリーの嬢ちゃんにエリオじゃねぇか?」
聞き慣れた二人の声が聞こえた方にエリオとシャーリーが振り向く。
特にエリオは既に会ったことがあった二人の男性に顔を輝かせて駆け寄る。
「剣心さん、左之助さん! お久しぶりです!」
剣心、左之の二人とシャーリー、エリオの二人が会ったのは遡る事数カ月前になる。
剣心達となのは達は定期的に連絡を取ったり顔を会わせたりしていた。
訓練校に入ってから半年程過ぎた頃のある休みに剣心達は二人と顔合わせになっていた。
58 :
りり剣:2008/01/05(土) 01:51:35 ID:6gw49pzp
「おう、久しぶりだな。」
シャーリーも二人に歩み寄り、敬礼をして話し掛ける。
「お久しぶりです、剣心さんに左之さん」
「二人とも元気そうでなによりでござるな。 ところで今日はいかように?」
「あ、はい。今日はフェイトさんが学長に相談に来ていましてー。それで今はエリオくんに訓練校をあらかた案内してこの訓練場の見学に来ていたんです。」
『相談』という言葉に剣心は思い出す。
確か、フェイト殿や執務官皆はあの日の原因を探っていると以前に彼女達から聞いた。
やはり、フェイト殿の見解の通りにロストロギアが関係しているのだろう。
思考とは裏腹に剣心はニコッと微笑み、エリオの頭を撫でる。
「そうでござったか。エリオ殿にも勉強になると良いでござるな」
「あ、はい♪」
「あのぉ、左之さん」
剣心とエリオが屋上から辺りを見回しているとシャーリーは左之に話し掛ける。
「なんでぇ?」
彼女の……何か意味深な笑みに疑問を感じながらも左之は聞き返す。
「あと1時間したら話も終わると思うんで剣心さんとでフェイトさんに会ってあげて下さい。」
「1時間ぐらいねぇ……ま、確かに会ってねえけどフェイト嬢ちゃんも執務なんたらって仕事忙しいだろ?」
「あ、はい。最近はあの日の原因を追っての仕事が多くなりましたから」
シャーリーから聞かされたフェイトの近況に左之は「そうか」と呟いて黙り込む。
あの日ってーと。俺らが居たあの空港ってとこで会った日か……。
執務官ってのがどーゆう仕事するのか興味はねえけど。大変なんだろうな。
「わぁったよ。久しぶりだしな」
頭をぽりぽりと掻きながら仕方ねぇというように左之が答えるとシャーリーは嬉しそうに微笑んで答える。
「はい、お願いします」
59 :
りり剣:2008/01/05(土) 01:57:49 ID:6gw49pzp
「そろそろ朝の訓練が始まるでござるな」
剣心の言葉に二人は歩み寄って屋上から準備室を見遣ると教官が広場にコーナーを設置する。そして若々しい新入隊員が二人ほど現れて次々に与えられた課題をクリアーしていく。
「みんな中々の動きでござるな。左之」
恐らくはラン&シフトの課題か……。
彼らの動きは思っているよりも機敏であった。最初というだけあって粗削りな所も垣間見えるが時が経てばより良いものになる。
左之もまた剣心と同じ考えがでていた。超一流の剣客である彼の見立てと自分の考えが合っていた事につい嬉しく思ってしまう。
「まあな。」
「そういえば、二人は今日訓練されてきたんですか?」
エリオの質問に二人は「ああ」と頷く。
「つい10分程前、左之と刀を交えたでござる……多分、シャーリー殿とエリオ殿がここに来る前に済んだと思うでござるよ」
「わー、見たかったなぁ♪」
「あ、まだエリオは二人や蒼紫さんの闘ってる姿見たこと無いんだよね?」
「はい。シグナムさん達からは聞いているんですけど……『龍槌閃』『龍翔閃』『九頭龍閃』とか♪僕にも出来ますか!?」
「Σおろぉっ!?。し、シグナム殿……ん」
エリオの話に冷や汗をかいていたが剣心は先程入学式で見かけたスバルともうひとりの少女が出てきたのを確認する。
同じく左之も気付いたのかじっと二人を見遣っている。
「さて、どうでるのかねぇ」
60 :
りり剣:2008/01/05(土) 02:00:21 ID:6gw49pzp
しかし、二人(?)の動きは予想外のものであった。
教官が彼女らに合図を出した瞬間、スバルは走りだした。だが、それはほぼ突進に近いものであった。コーナーを確保して反転したのよかったものの。
走りだすときに出た衝撃と舞い上がった粉塵がとなりで構えていた少女にかかり……むせていた。
「……おろ」
「Σおいおい」
目を皿のように丸めて驚く剣心と呆れたようにため息をつく左之助。
遠くからなので聞こえないが教官が二人に歩み寄っているのを注意を受けているのだと感じる。
次に隊員達は設置された高い塀に集まる。昨年に経験したり、卒業生であるシャーリーにはそれが何の課題か分かる。
「しかし、なんだな剣心」
「なんでござるか左之?」
「嫌な予感がするぜ」
左之の言葉に剣心とシャーリーは納得して頷く。
何と無くであるが良い結果は出せないかもしれない。
エリオは頭に?を浮かべて三人を見ている。
「ちと、拙者は用を思い出しから席を外すござるよ」
「おう」
まだ、スバルと少女の順番が回ってきていない事を確認して剣心はその場を後にする。
61 :
りり剣:2008/01/05(土) 02:02:32 ID:6gw49pzp
−−−−−−−
ミッドチルダ 時空管理局本局
剣心が建物から降りていた頃。本局のある一室には管理局の制服を纏った蒼紫の姿があった。
彼がここに居るのは執務官試験を受ける為だ。
本来なら愛用のコートを常に羽織っているものの気候の変動と試験に挑むので本局の計らいで設けられた隊舎の自分の部屋に置いてきた。
ある程度の試験の情報は調べた……だが、まだ解らない部分もある。
……来たか。
頭に纏めていた執務官という仕事や試験に関する情報を思い出していると、蒼紫は部屋に近づいてくる足音をドア越しに聞き取って表情を引き締めなおす。
そしてドアが開かれて彼の前に現れたのは一人の青年。
「君が四乃森蒼紫か……」
「そうだ。お前が今回の試験官か?」
蒼紫がそう尋ねると青年はこくりと頷く。
「僕はクロノ・ハラオウン執務官で提督。君達が一年前に来た艦があるだろう?」
「ああ、次元航行艦。名はアースラだったな」
「そのアースラの艦長でもある。」
クロノはそう告げると蒼紫に手を差し出す。
それが握手だと理解した蒼紫は無表情のまま彼の手を握る。
「そうか……妙な縁があるものだな」
「ああ。ところで執務官試験は厳しいけど受かるつもりなのかな?」
クロノの問い掛けに蒼紫は顔を横に振る。
「今回は試験がどれほど難しく厳しいものか。を理解するために受けた。これで落ちたとしても俺は次で合格出来る」
「凄い自信だね……」
蒼紫の言葉にクロノからすればカンに障った。だが、彼の眼に宿る篤い光を見てクロノは納得する。
フェイトやエイミィが言うようにただ者じゃない事は確かだ……。
手を放し、彼に来るよう促す。
「じゃあ、さっそく筆記試験から始めよう。来てくれ」
「分かった」
剣心×スバル希望支援
63 :
りり剣:2008/01/05(土) 02:15:07 ID:6gw49pzp
−−−−−−
その頃、陸戦訓練場では教官の怒声が辺りに響き渡っていた。
「32ーっ!! 訓練中断、一度引っ込めっ!」
「「は、はいっ!」」
それはスバルとティアナの組み番号。彼女達に対してだ。
少しそこから距離をはなしたところには訓練を見学るために設けられた校舎がある。
その屋上には左之、シャーリー、エリオが見学に来ていた。
「あれ楽しそうですっ!やってみたい!」
32のやった課題に面白そうに感想を述べるエリオに左之とシャーリーは引き攣った表情で見ていた。
彼女達がやったのは『垂直飛越』という課題。
相方の手を借りて高い塀を飛び越える簡単なものだ。
だが、ツインテールの少女はまるでパチンコの球が弾き出されるようにスバルに打ち上げられ。スバルは慌てて抱き留めたのだ。
「うーん、エリオはマネしちゃダメだよー。フェイトさん泣いちゃうから」
「ちげぇねー」
「訓練初日から反省清掃……油断するんじゃなかったわ」
苛立った口調で呆れているティアナにスバルは「ごめん」と謝る。
だが、
「謝んないでうっとうしい」
「掃除がおわったらまた訓練の続きだから。あたしもっとちゃんとやるから……。ランスターさんに迷惑かけないように「あのさぁ」
しどろもどろに反省の言葉を述べるスバルにティアナは振り返ってびしっと人差し指を立てて告げる。
「気持ちひとつでちゃんとやれるんならなんではじめからやんないわけ!?
どこのお嬢が遊び半分で冷やかしに来てんのか知らないけどさ、こっちは遊びじゃないのよ真剣なの!」
その言葉がカンにさわったのか、スバルはムッとした表情を浮かべる。
「あ、あたしべつにお嬢でも遊びでも……!真剣だし……本気で……っ!」
尻窄みになりながら真剣な眼を見せるスバルにティアナは背を向ける。
「……掃除が済んだら反省の旨を教官に伝えて訓練復帰。次はもうさっきみたいな失態許さないから」
「あ……うん……。じゃあ、あたし掃除用具取ってくるっ!すぐ戻ってくるから!」
許してくれた。という喜びと未だ弱い自分に複雑な気分を感じながらスバルは微笑んでそう告げて走りだす。
64 :
りり剣:2008/01/05(土) 02:17:01 ID:6gw49pzp
憧れで見上げて。
希望で進んだ管理局魔導師への道。
あたしはやっぱりダメで弱くて情けない。
そう考えたら涙が出そうになる。だけど、泣いてちゃ……私は変わらない。
涙が出ないように私は空を見上げて走る。
決めたから、あの日出会った空の星みたいなあのひとに。
ほんの少しでめ近づけるように。
そして……大怪我していたのに私を助けてくれた月のような優しい笑顔を見せて落ち着かせてくれたあの人を見つけてお礼が言いたぶっ!?
「Σおろ!?」
空を見上げて走っていたせいで私は誰かにぶつかってしまった。
反動で私は転んでしまった。だけど身体は誰かに支えられていた。
ぶつかったこの人に謝らなきゃ。
「空の青さも良いものでござるが前を見て走った方が良い」
その声に私は一瞬言葉を失った。私とぶつかって、私を支えてくれているのはあの時の人……。
月のような優しい笑顔。頬にある十字傷がこの人だと確信する。
ようやく、思考が戻ったのかスバルは慌てて頭を下げる。
「す、すいません!!あ、あの」
スバルを放し、立たせると彼は手に持っていた箒とチリトリを彼女に手渡す。
「訓練中なのでござろう?早く戻った方が良いでござるよ♪」
「……ありがとうございます」
「では拙者はこれで♪」
ニッコリと微笑んでそう告げると彼は踵を返して歩きだす。
いきなりの事がいっぱいで私はただお礼しか言えなかった。けど、はっきりと今聞きたい事がある。
「あ、あ、あの!」
スバルの声に彼は「おろ?」と振り返る。
「私はスバル・ナカジマです!あの日、助けてくれてありがとうございます!」
「……拙者は緋村剣心。元気そうでなによりでござるよ♪ スバル殿、これから頑張るでござるよ」
優しい笑みを私に再び残し、剣心さんは再び踵を返して歩きだしていった。
風にたなびく赤い髪、腰に差したソード型のデバイス……かな?
あの人は管理局にいた……また、会えるんだ。
私は『もう少し、あの人と話したい』気持ちを抑え剣心さんから借りた掃除用具を手にティアナの所へ走って戻った。
。
目指したい二人の目標に今は届かないけど、必ず届きたい。
その三へ続く。
65 :
りり剣:2008/01/05(土) 02:19:23 ID:6gw49pzp
以上です。次は宗ちゃんと愉快なナンバーズをば。ではアデュー♪
あと職人の皆さんGJでござるよ♪
GJでーす!
67 :
魔装機神:2008/01/05(土) 02:42:51 ID:lKbrX+IQ
GJ、
こっちも応変が出来たので投下します。
(現在かなり眠たいので普段より誤字、脱字が多いかもしれません。ご了承を)
68 :
魔装機神:2008/01/05(土) 02:46:56 ID:lKbrX+IQ
特別企画、魔法少女スーパーリリカルフルメタルシャドウなのは 新年祭 後編、改め暴走編
さて、この馬鹿でカオスなSSがはじまってそうそう……
「すんませーん、もうチューハイおかわりいいですかあ?」
はやてがすでに出来上がっていた。
「あ、はやてちゃん、これ」
「お、すまんなしゃまるん♪」
そして他にも出来上がっているのが一人。
「主、あまりお酒は飲みすぎないほうが……」
「そうです。少し控えたほうが……妹とも融合してますし」
その中、真面目な烈火の騎士湖とシグナムと酔っ払っているはやてからリィンフォースと言う名前をもらった女性はそれを落ち着かせようとする。
「なんや〜〜、こういうときぐらいええやんか〜〜」
『そうですよー、ぶれいこうです〜〜〜』
「妹まで酔っ払ってるのですか……」
さて、どうしたものかとおもったふたり。
そのとき、はやてはいつの間にかかくし芸大会になっている事に気付く。
「5番ウル。変身しまーす」
そこには調子に乗ったウルがフュージョン能力で変身している姿だった。
「なんや、いつのまにか一発芸大会になっとるん?」
「ええ、まあ……」
何か嫌な予感がシグナムとリィンフォースの間を横切る。
「いくよ、シャマル!」
「はい、はやてちゃん!」
そういって会場のほうへ特攻する二人、
「6番、八神はやてと湖の騎士シャマル」
「脱ぎま〜〜〜す!!」
ぶっと噴出すふたり。しかし、そんな二人とは裏腹に、ひゅーひゅーと周りの者ははやし立てる。
「あ……主、それだけはやめてください!」
「そ、そうです。マサキはどこだ、てつだって……」
リィンフォースはマサキの探すのだが、彼も彼で大変だったのだ……
「それじゃあ私も脱ごうかしら」
「やめろサフィーネ、脱ぐな!!」
マサキもマサキで危ない人物を止めているから援護は望めない……
ふと見ると、はやては既に自分の服をつかみ、下着が見えている状態だった。
「主、申し訳ありません……」
そういって、リィンフォースはシャマルの得意魔法、旅の鏡を発動させる。
シャマルが取り込まれたときから使えるようになったこの魔法、こういうときでも役に立ったのだ。
「あぐ!」
いきなりの激痛にもだえるシャマルとはやて。
そこには二人のリンカーコアが……
「り、リィンフォース、主はともかく。我々はリンカーコアがなくなると生きていけないんだが……」
「わかっている」
そういうと、リンカーコアを友の場所へと戻す。
「二人とも、酔いはさめましたか?」
はあ、はあと、未だに胸の痛みが治まらずはやてたちは倒れる。
「き……」
「き?」
「気分悪……」
そういって、今度は口を押さえるはやて。
「烈火、湖は私が面倒を見る。お前は主を」
「わかっら。主、こっちです」
そういって急いで二人は外へと急ぐ。
69 :
魔装機神:2008/01/05(土) 02:48:22 ID:lKbrX+IQ
「なのは、大丈夫?」
「うん。ありがとう、フェイトちゃん」
完全よっていたなのははフェとの計らいで外に出て風を浴び、かなり落ち着いてきた。
「ごめんねえ。ジュースだと思って飲んだらそれがお酒で」
「べつにいいけど、ヴィヴィオにだけは飲ませないでね」
「わかってるよ。それでヴィヴィオは?」
「ウルさんにみてもらってる。あの人ボケ代表だけどこのクロスSSに出てるシャドウハーツの登場キャラの中じゃ比較的まともだと思うから」
「だよねー」
そういって夜空を見上げるなのは。
「ママーーー!」
「おい、ちょっと待てって」
その時、突然ヴィヴィオのこえが聞こえてきたのだ。
「ヴィヴィオ?」
なのははその声のほうを向くと、ヴィヴィオをそれを追いかけるようにウルもやってきた。
ヴィヴィオはそのままなのはのところへ走っていった。
「わりぃ、コイツがなのははどこだ?っていって名、しばらくはおとなしかったんだが、すぐに探し出しにいったんだよ」
それで、ヴィヴィオとなのはを同時に見つけたというわけなのだ。
「ママ、大丈夫?」
どうやらなのはを心配して探していたようだった。
なのははそんなヴィヴィオを笑いながら持ち上げる。
「大丈夫だよ、ごめんね心配かけて。じゃあ、私達も戻ろうか」
そういってなのは立ちも会場へ向かう。
そのときだった。
「主、大丈夫ですか?」
「う〜〜、微妙。吐きそう……」
「は、はやてちゃん?」
なのははシグナムに担がれている、いかにも気分が悪そうなはやてを見る。
「はやても呑んでたの?」
「ああ、シャマルと一緒にかなりの量をな……主、ここに腰掛けてください。ゴミ袋は置いておきます」
「ありがとうなシグナム……おぇ」
これ以降は機動六課部隊長権限によりお見せする事は出来ませんのでご了承ください。
さて、その頃のパーティー会場では……
「12番、相良宗介、拳銃のシリンダー換えギネス記録に挑む」
未だに一発ゲイ大会が続いていた。
宗介は器用にシリンダーを交換する。
その姿をティアナはまじまじと見る。
(ねえティア)
(なによ?)
(あれってティアのデバイスの元になったピストルってやつだよね?)
(多分そうだとは思うけど……元になってるっていうのかしら?)
そんな話をしていると……
「残念だが、ギネス記録よりも0,2秒ほど遅かったぞ」
「く、おれもまだまだということか……」
「いや、すげえとおもうぞ」
マサキの言葉に、いやと首を横に振る宗介。
「戦場では一瞬の油断が命取りになる。ゆえに戦場は少しの判断の遅れが死につながる」
「ま、まあそれは俺わかってるけどよ」
「なら解るだろ?俺はその壁を越えなければ生き残る事ができない」
そういって、再戦に燃える宗介。
「じゃあ次、いってみよー」
「じゃあ14番ヴィヴィオ、急速的に成長しまーす」
「え!?」
戻ってきたヴィヴィオの一発芸に驚くなのはたち。
70 :
魔装機神:2008/01/05(土) 02:49:58 ID:lKbrX+IQ
「じゃあやりまーす」
そういったと短ヴィヴィオは光りだす。
そこには、小さな女の子から成長した、一度なのはと拳を交えた状態のヴィヴィオがいた。
「ヴィヴィオ、いつの間にそんなものを……」
「練習したら、いつの間にか出来るようになったの」
それで、少しなのはを驚かそうとたくらんだのがこれだったのだ。
いきなりの一発芸に、場はいっそう盛り上がる。
「それじゃあ、もとにもどりまーす」
そういって、ヴィヴィオはいつもの姿に戻っていく。
「さあて、次は何をする!」
そのこと晩いまたもやこの男が名乗りを上げた。
「15番、相良宗介、爆弾解体世界記録に挑戦「もっと安全物なものにせんかーーーい!」」
宗介が箱に入っている爆弾を構えた太千鳥のハリセンにどつかれる。
「いたいじゃないか、衝撃で場k発したらどうするんだ?」
「うるさい!とっととその危ないものをしまいなさい!!」
「どこに?」
「とにかく安全なところだ!危なっかしく出怖いんだよ!」
千鳥とマサキのことばにしぶしぶと爆弾を安全地帯へ運ぶ宗介。
周囲に「地雷原注意」と書かれた場所に……
「いつの間に埋めたのよそれ……」
「埋める時間はいろいろあるからな」
「ねえ、フェイトさん」
「何、エリオ?」
「なんか、質量兵器が危ないって言うのが分かる気がしました」
「私も……」
「それはよかった」
だが、これがあんな出来事になるなんて思いもしなかった……
「そ、それじゃあ16番チンク、金属を爆発させます」
少し恥ずかしがりながら、チンクは自分のISを発動させる。
「IS機動、ランブルデトネイター」
チンクはナイフを持つ。
「見てのとおり、このナイフには種も仕掛けもない」
そういって、あらかじめ用意していた的めがけて投げつける。
「あの構え方……彼女はナイフのプロか何かか?暗殺に向いていそうな気もするが……」
「企業秘密だよ」
宗介とスカリエッティの会話に、フェイトはある意味最悪の組み合わせかもしれないと思った。
ナイフが刺さると同時にナイフは突然爆発する。
おおおお!と周りからは拍手が喝采する。
「にんきものねえ、チンクちゃん(ガシャン)ん?」
クアットロは見ると、何故か植木鉢があり、それを蹴っていた。
「なんなのこれ?」
そういってもう一度蹴ると、とつぜんどっどっどと何か音がする。
その音に真っ先に反応したのが宗介とフェイトだった。
「千鳥!いったん退避するぞ!」
「え!?」
「エリオ、キャロ、ヴィヴィオ。こっち!」
「ふぇ、フェイトさん?」
突然の二人の行動に疑問を覚える。
それが悪夢の始まりだった。
71 :
魔装機神:2008/01/05(土) 02:51:13 ID:lKbrX+IQ
「お嬢ちゃん、この植木鉢に入っていた花はカトレアといってね、私が丹精こめて育てたものなんだよ」
クアットロが蹴った花の持ち主、大貫善治は静かに答える。
「あらあ、それはごめんなさい」
しかし、クアットロは悪びれもせずに堪える。
「そうかそうか、君はこの花がどうなってもいいのだね」
「ええ、そのとおりよ」
このクアットロの言葉にスイッチが入り、大貫はどこからともなくチェーンソーを持つ。
「カトレアの恨み、今こそ晴らす!キルゼルオール、ダーイ!!」
「やってみなさい!IS,シルバーカーテン」
クアットロはゲンネイを作り出し翻弄しようとする。
「しゃーーーー!」
しかし、大貫さんは本物のクアットロを瞬時に見極め、チェーンソーを振り回す。
「嘘!?」
まさかの事に驚愕するクアットロ。
この老人、只者ではない。
「援護するよ、クアットロ」
その横で、ディエチは大貫に砲撃を浴びせようとするが、すさまじい動きで買わされてしまう。
「何をしているお前達!!」
トーレは妹を一瞥した後ISで急速に近づき、殴りつける。
「な!?」
しかし、それは素手で簡単に止められる。
その後も、ナンバーズと大貫は激闘を繰り広げるが、互角以上に渡り合う大貫。
いや……
「はあ、はあ、なんだ、こいつ」
ナンバーズを圧倒すると殻を見せ付ける大貫善治。
ナンバーズはこの大貫善治に恐怖を覚える。
「いい加減にしなじーさん、ティスカッター、霞切り」
見かねたマサキは殺さないようにディスカッターを振るう。
しかし、大貫はそれを真剣白歯取りで受け止め……
ガキ!
思いっきり噛み砕いた。
「何!?ディスカッターが折れたあ!!?」
あまりの事に職を隠しきれないマサキ。
この世界のどこに刀より硬い歯をした人間がいるのだろうか……
「ランブルデトネイター!!」
チンクは本気でナイフを大貫に投げるが、案の定大貫は避けるものは避け、避けれないと思ったものはナイフを噛み砕く。
その時、ISで爆発させたのだが、全然聞いた缶暑気がしない。
その時、チンクは気付いた。
避けられたナイフの一つが、先ほど宗介が設置した地雷原に向かっている事に……
「これ、どうなるの?」
なのはは汚れている衣服を気にしながら夜空を見る。
その周囲には、既に瓦礫とかしたパーティー会場が。
チンクのランブルデトネイターを纏ったナイフは地雷原で爆発。
そのなく初を川義理に様々なところに設置されて板嫌いがすべて爆発した後こうなったのだ。
「本当にすまない、私がしっかりしなかったせいで……」
「チンク姉は悪くないよ」
「そ、そうっすよ。どっちかって伊庭こんな原因を作ったクア姉が……」
しかし、アンバー図の一員はあまりチンクのほうを向いていない。
みんなは無傷で寝ている神代高校用務員、大貫善治のほうをじっと見ている。
結局、これでパーティーはお開きとなり、おのおの各自の世界へ戻っていった。
「わしゃあ、こんなところでなにをしてたんじゃろか……」
大貫善治が?マークを浮かべている横で……
「まあ、こういうこともあるだろう」
「いや、ないよ……」
冷静にコッペパンを食べている宗助になのははぺし、よ突っ込みを入れるのだった。
完。
72 :
魔装機神:2008/01/05(土) 02:55:07 ID:lKbrX+IQ
投下完了。
最後の締めは最凶のあの人にしめてもらいました。
というわけでこれで新年会は終了です。
ご視聴ありがとうございました。
GJ
さすが最強爺さんだ
しかしながら、誤字ひどすぎます。
74 :
前スレ361:2008/01/05(土) 14:27:12 ID:427xWOSK
スターゲイトのクロスを書くとほざいた者ですが、なんとかプロローグまでこぎつけました。
文字数は少ないです……
今のところ予約とかは無さそうなので
投下してもよろしいでしょうか?
もっとも、2chに投下するのは初みたいなものなので失敗するかもしれませんが。
まさか投稿図書にのっけてた人じゃないだろうな?
76 :
前スレ361:2008/01/05(土) 14:47:16 ID:427xWOSK
>>75 他にもスターゲイトクロスがあるのですか?
ありゃ、違う人だったならすいません。
ネギまのSS投稿サイト『投稿図書』のその他ってところに「魔法少女リリカルなのは 星の門」という作品があったものでつい
78 :
前スレ361:2008/01/05(土) 14:54:55 ID:427xWOSK
投稿図書で少し探してみたら本当にあった。
まさか自分以外にこんな超弩級マイナー作品をクロスさせる方がいるとは予想外。
とりあえず投下。
スターゲイト ストライカーズ
プロローグ
2年前、首都クラナガンの地下数十メートルで直径数メートルの環状遺跡が発掘された。
環状部分には39個の文字が刻印され、等間隔に9個のV字型の雁木細工がされている。
遺跡は考古学上の大発見として研究が行われた。
一見唯の石造りの物に見えるが、研究を進めるうちに精巧な装置であることが判明した。
遺跡が何の目的で作られたかについては様々な仮説が立てられた。
ある者はこれは惑星破壊兵器だと言い、
ある者は宇宙船の推進装置と言い、
ある者は長距離移動用の転送装置だと言った。
結論としては最後の転送装置という線で落ち着いたが、
使用方法は誰も解き明かすことはできなかった。
刻まれた文字も、管理局自慢の自動邦訳装置に通しても解読ができなかった。
「ジュエルシード」のようなエネルギー体ではない。
「聖王のゆりかご」のような危険な超兵器でもない。
結局遺跡自体に危険がないことがわかると、早々に研究は打ち切られた。
解読できたのは遺跡に蓋をするように置かれていた石版の文字のみ……。
「我等は忌まわしき蛇から先祖を守るため、天国の扉を封印する」
79 :
前スレ361:2008/01/05(土) 14:56:38 ID:427xWOSK
そして現在……
管理局遺失物保管庫、その片隅にロストロギアとして遺跡は収められていた。
その大きさ故に、保管庫内に貯蔵されている他のロストロギアよりもひときわ目立っている。
ある星では「チャパーイ」と呼ばれ、
またある星では「スターゲイト」と呼ばれるこの遺跡が、
今千年の眠りから目覚めようとしていた。
輪に取り付けられている9つの雁木細工……シェブロンと呼ばれる物が、赤く光りだす。
環状に配列された文字の部分が回転し……、
一旦停止したかと思うとシェブロンが一つずつそれをロックしていく。
回転中は遺跡自体が振動し、施設とその周辺を震度3程度の揺れが起こっている。
そして七つ目のシェブロンがロックされたそのとき。
輪の中心で水しぶきのようなエネルギーの爆発が発生した。
すぐにエネルギーは安定し、まるで水面のような時空境界線を形作り、通路は完成した。
保管庫内の異常なエネルギーを施設のセンサーが感知し、
けたたましい警報が鳴り響く。
形成されたワームホールから金属の球体が投げ込まれると、
球体からオレンジ色の光が保管庫中を走査した。
直後、同じくワームホールを通って鎧をまとった兵士が次々現れた。
兵士たちは頭を蛇に似せたヘルメットで前面をカバーしている。まるでその姿は神話に登場する神々のようだ。
兵士たちの最後列に一人金色の鎧を纏う者が現れる
その金色のヘルメットが上下に別れ、中から男の顔が見えるようになる。
男は周囲を見渡し、納められているロストロギアを見渡すと、人間の発するそれより恐ろしい声で兵士たちに命令を下した。
『運ぶことができる物は全て運び出せ!』
80 :
前スレ361:2008/01/05(土) 15:01:53 ID:427xWOSK
投下終了です。
第三期とのクロスです。
劇中の時期は……
なのはサイドが機動六課結成してしばらく。
タウリ(地球)サイドが、シーズン5の間あたりです
この話ではスカルエッティとその愉快な仲間たち、およびレリックは存在していません。
あしからず
>80
乙……って、チンク姉返せ。
乙デース
数の子たちいないのかよ!w
なかなか衝撃的ですな
新話が完成しました。
昨日のスクリームさんの作品とは空気が真逆です。
投下おk?
何もないので投下します。
【機動六課サイド】三話「アウレフ対アウレフ!本物はどれだ!?」Aパート
【ミッドチルダ中央公園】
正月…
子供達はミッドチルダ中央公園で、凧揚げやこま回し、羽子板を楽しんでいた。
「えい!」
「あ!?」
その中で、羽子板をしていた二人の少女の内の一人が、羽を強く打ちすぎて遠くへ飛ばしてしまう。
「なにやってるのよ〜」
「ごめんね〜」
少女の一人は羽を取りに行く。
そして、少女が羽を拾うと、近くに意外な人物がやって来た。
「あ…仮面ライダーアウレフ!」
「アウレフだ!」
現れたのは我らがヒーロー・仮面ライダーアウレフだ。
子供達は遊びを止め、おもちゃを持ってアウレフの周りに集まっていく。
しかし、いつものアウレフとは違い、手袋とブーツ、マフラーが黄色い。
まぁ、昭和ライダーのお約束で、子供達は誰もいつもと違うアウレフの姿に気付かないのだが…
「ねぇ!ライダーパンチやってよ!」
「ライダーキックの方が良いって!」
「とにかく何か技を見せてよ!」
「うるさい!こうしてやる!」
アウレフは二人の少女から羽子板を奪い、ボッキリと折ってしまう。
「あ、酷い!」
「なにするのよ!」
「うるさいうるさい!お前もだ!お前もだ!」
アウレフ?は他の子供達からも凧や駒を奪い、次々に壊していく。
「酷いや酷いや!」
「わーん!」
子供達は蜘蛛の子を散らすように泣きながら逃げていった。
「あーはっはっはっはっは!」
その光景を見て、アウレフ?は楽しそうに笑った。
【デパート】
正月。
機動六課のメンバーは休みを貰い、それぞれ休暇を堪能していた。
他のメンバーと同じように休みを貰っていた拓哉は、ギンガに買い物に付き合わされていた。
「はぁ〜あ♪新年の買い物はスッキリするわ!」
「って、これは買いすぎだろギンガ!」
拓哉は両手で沢山の荷物を抱えながらギンガを非難する。
「いいでしょ!改造人間なんだし、腕力もバランス感覚も常人より上でしょ?」
「改造人間は便利屋じゃない!」
「日頃影が薄い私を可哀想だとは思わないの!?」
「影が薄いのとこれは関係ないだろ!」
「あるわよ!日頃影が薄いからこそ…こういう時に楽しんで、ストレスを晴らしたいのよ!」
「だからなんで僕が…」
「「うわああああああああああん!!」」
「「え?」」
二人は子供の泣き声を聞き、近くのレストコーナーの方を見る。
そこには…
「ほら、アイス好きだろ?食べろよ?お前も食べろ!食べ過ぎてお腹壊しちゃえよ!」
「やめてよ〜!」
「ママ〜!」
子供に無理矢理アイスクリームを食べさせるアウレフの姿があった。
「「はいぃぃぃぃぃぃぃい!?」」
二人は余りにも珍妙…いや、極悪な光景に目を丸くする。
「た…拓哉君が子供にアイスを無理矢理…」
「バカ!そんなわけ無いだろ!!」
拓哉は持っていた荷物を一斉に手から落とし、レストコーナーに向かう。
「ちょ!ねぇ!拓哉君!もぉ〜…バカ拓哉!!」
【デパート内レストコーナー】
「あはははは〜」
「待て!」
拓哉はレストコーナーから出て行こうとするアウレフ?の前に立ちはだかる。
「あれ?本物が来ちゃった?」
「貴様…よりにもよってその姿に!」
「にっげろ〜!」
一目散に走って逃げていくアウレフ?。
「待て!」
拓哉は逃げていくアウレフ?を追う。
【公園】
拓哉は必死に追い続け、アウレフ?を近所の公園に追い詰めた。
「追い詰めたぜ偽者!」
「追ってこられちゃ…迷惑なんだよ!」
アウレフ?はいきなり拓哉に蹴りかかる。
「おわ!」
とっさの反応でバック転し、キックを回避する拓哉。
「このヤロ…変身!トオ!!」
拓哉はアウレフに変身し、偽アウレフと対峙する。
「偽者!貴様何が狙いだ!」
「教えてやる!貴様の信頼をガタガタにするのが狙いだ!」
「何ぃ!?」
「既にミッド中の子供達は、貴様を敵だと思い込んでいる!」
「だったらお前を倒して、僕が人類の味方だということを照明してやる!トオッ!」
アウレフはジャンプし、上空からパンチを繰り出す。
「ライダアァァァア!フライングッッ!パンチ!」
「何の!ライダーパンチ!」
偽アウレフはライダーパンチでアウレフのフライングパンチを相殺する。
「くっ!」
アウレフは空中で受身を取り、着地した。
「こいつ…やるな…」
「さっすがは本物!強い強い!あっはっはっはーーーーー!!」
偽アウレフは子供のように笑いながら姿を消した。
「野郎…僕の姿を…!」
【AAMON本拠地司令室】
「あっはっはっはっはっは!流石だ軟体怪人ドロリンゴ!」
「はは!」
偽アウレフの姿が崩れ、ゼリーのような姿をした怪人へと姿を変える。
「魔神提督が送ってきた怪人が、このような貧弱な姿だったのには驚いたが、まさかこんな技を持っていたとは…感心したぞ!」
「お褒めに預かり光栄です地獄大使…このまま、仮面ライダーの姿で悪事を続け、奴を人類の敵に…!」
「おお、行け!ドロリンゴ!」
「ハハ!」
ドロリンゴは再びアウレフの姿に変わり、司令室を後にした。
【公園】
「…」
「…」
「…」
「…あのさギンガ…追いついて早々なんでそんな恐い目で僕を見てるわけ?」
「…落とした荷物の中にあった割れ物…全部壊れてた…」
「ああ、そんなこ…」
「…!」
鬼のような形相で拓哉を睨むギンガ。
「おお!?」
「そんなこと…?」
「ご…ごめん…って!今はそんな…じゃない、割れ物のことより、偽者のことだよ!」
「…」
「あいつ、僕の姿を使って悪事を働いているんだ。このままじゃ、仮面ライダーの信用はがた落ちだ!奴を止めるためにも、今は皆に連絡して…」
「皆地球に行ってるわよ。」
「…え?」
「スバルは津上さんのレストランに…なのはさんは家族の所に…部隊長も副隊長も皆…」
「…ティアナは?」
【地球 バッティングセンター】
睦月「8、5、4!」
ティアナ「3、6、7!」
橘「よし!三人とも完璧だ!」
………
「こういうこと。」
「あ、そう。」
額に手を当てる拓哉。
「しょうがない…僕と君で探すしかないか…良いよね?」
「…」
「分かりましたごめんなさいすみません。埋め合わせは必ずしますから。」
「…リアリィ?」
「リアリィ。」
「じゃ♪協力するわ♪」
「ふう…ありがと…(まったく、先輩の言うとおりだ…美人ほど怒らせると恐ろしいものはない…)」
(アイキャッチ・機動六課サイド)
投下終了。
ええ、「ふざけるな!」と思った方も多いでしょう。
しかし、ドロリンゴはこういう怪人なんです。
詳しくはスカイ四十八話をご覧下さい。
次回は紅の石の能力が明らかになりますので、お楽しみに。
そろそろ平成ライダーサイド書こうかな…オリキャラになってから感想が少なくなったような気がするのでそろそろ版権キャラも何をやっているのか描かなければ…
皆様、あけましておめでとうございます。
…これより重爆、開始せん。
お待ちいたしておりました!
支援。
「これは…ダメだよ」
高町なのはに提出した新兵訓練案、この一言にて却下されたり。
上官なれば否やも無しだが、己があやまち正すも当方の任務。
ために聞くは、問題点と、その程度。
「短期的に効果は上がるかも知れないよ?
だけど、それだけ。これじゃ強くなるより、みんなをすり潰す方が先になっちゃう」
しかし、われらは『対超鋼』。機動六課が発足した今、いつ出撃命令が下るかわからぬ。
短期間で練り上げねば、皆を死にに行かせることになるではないか…
「覚悟くん」
「…はっ」
「身長130cmの男の子に、今すぐ180cmになりたいって相談されたらどうする?
覚悟くんなら、なんて言ってあげるのかな?」
「…………」
返す言葉、なし。
不退転の心構えをもってしても、どうにもならぬことがある!
可能な助言といえば、月並み千万な言葉しか並ばぬ。
だが、その180cm。今すぐ必要ならばどうするか。
「そのときのために、わたし達がいるんだよ。
あの子達の後ろで支えてあげるの」
「だがそれでは、他を頼った戦いが身に付いて…」
「戦えないうちはそれでいいと思うな。
まさかいきなり改造人間と戦わせるつもりは覚悟くんだってないよね?」
「うむ…だが、想定はすべきだ」
「そこが対超鋼戦術顧問、葉隠覚悟の腕の見せ所だよ。
他の部分は、教導官、高町なのはを信じてほしいな」
なるほど。勘違いをしていたか。
改造人間との遭遇時、新人四名が増援到着までこれをいかにしのぎ生存するかの手段を確立し、
これのための訓練、演習計画を提案し実行するのが当面おれに求められた役割というわけだ。
今の今まで、おれは新人四名にて生物兵器をいかに倒すかをばかり考えていた。
そのためには現行の訓練時間ではあまりにも足りぬから、時間外の特別訓練案をこの高町なのはの元に持ち込んだ次第であったが。
「それにね…この訓練案。時間外じゃなくても、みんな、すぐにまいっちゃうよ」
「かの生物兵器を倒すには最低限、これだけ出来ねばならぬ」
「これが最低限だとしても、みんなにはまだまだ遠い一歩だよ。
必要なのは強くなりたい気持ちと、地に足がついた自信。
わたし達があせったら、みんなもきっと無理をして…自分の立ってる場所を見失っちゃうから」
…だが、死狂いでなければ届かぬ場所もある。
現人鬼、散(はらら)。
きさまがこの世界にいるというのならば、おれは…
魔法少女リリカルなのはStrikerS 因果
第十二話『焦り』
「どうした、打ってこい」
「はぁ、はぁ…」
息が荒いのは酸素が足りないからじゃない。
どちらかというとこれは、緊張。
四度目の突入角が、決まらない。
「臆したか、スバル!」
「ってぇぇぇりゃああああああ」
実戦じゃ、敵は待ってくれない。これ以上ぐずぐずできないんだ。
ウイングロードを展開。仰角およそ十五度の頭上から、あたしは突っ込む。
そして。
「積極」
葉隠陸曹の鉄拳が、あたしのお腹のやや上あたりをとらえたんだと思う。
まず衝撃。吹っ飛ばされて地面に墜落。
それから、耐えがたい吐き気と痛みが襲いかかってきた。
「うげぇぇっ…げほっ、ぐぅぅ」
「焦りのままに仕掛けるな、馬鹿者!
シューティングアーツは一撃必殺にして一撃離脱。
道が通らぬままに打つは自殺だぞ」
口まで戻ってきたのを呑み下しながら、立つ。
…さすが、覚悟さんだと思う。
今は、攻撃せずに追いかけてくる覚悟さんを迎え撃つ形で、
後ろへ後ろへと引きながら、『道が通る』瞬間を見計らって打ち込む訓練の最中。
目標は、二十分以内に十発。
もう十五分経ってるのに、まだ一発も決められていないから、どうしても気が急いてくる。
この人相手だと、普段、通っているように見える道でも、雰囲気的に打ち込みにいけない場面がすごく多い。
というか多分、99%はそれなんじゃないかなと思う。
そんなだから、ごくごくたまに見える道もなかなか信じ切れなくて、
気がついたらあの人の回りをぐるぐる回ってるだけになってしまっている。
「受け身はしっかり取れたようだが防御魔法が甘い。
これが実戦であれば悶えているうちに止(とど)められよう」
「は、はいっ…」
「では来い!
十発打ち込めぬのであれば、十殺に匹敵する一撃を以てせよ」
「はいっ!」
ローラーブーツ、再加速。
旋回しながら間合いを開き、向かいの広い道路へと出る。
ここだったら、今までよりはいくらか道は通りやすくなる。
反撃する側の幅も増えるから、プラスマイナスで言えば微妙なところだけど…
覚悟さんは、乗ってきてくれた。
こっちに向かって駆け足で、あたしは頭上…見えた、道!
ウイングロード、展開…いや、早い。早すぎた。
でも今更取り消せない。このまま突っ込むしかない。
だったら迷って打ち込んだりしない。決めたら、打ち込め…
「積極」
今度は左胸、少し下あたりに拳がめり込んだ。
ああ、実戦なら間違いなく即死だな。
痛みを感じるよりも前に、あたしはそう思った。
「ここまで」
「…………」
寝転んで青空を見上げていたところで、二十分、経ってしまったらしい。
まずはすぐに立ち上がる。こんな情けない格好、ずっと見せていたくもないし。
…にしても。
「一発も、入らなかった…」
これじゃあ、訓練以前の問題。
一発も入らなかったという結果だけの話じゃない。
打ち込みに行こうにも身体が動いてくれない所が多すぎた。
戦わずして負けたみたいなもので、これじゃあ、あんまりにも不甲斐なかったけど。
「おまえの『攻め』の気は伝わってきていた。
そう悪いものでもないと思う」
覚悟さんにそう言ってもらえると、散々だった今の訓練も、少しは誇らしく思えて。
だから、次はもっとうまくやる。
「良き師に学んだようだな」
「…はいっ、おかあさんと、ギン姉に」
あなたの背中を見たあの日から。
強くなりたいって願ったあの日から。
あたしはずっと、求めてきたから。
「でも、あたしの強さは、ぜんぜん足りない」
求める強さには届いていない。
もう二度と、あの子みたいな死を見たくなくって、
だからあたしはここにいる。
「鍛えてください。誰にも負けなくなるように」
「うむ…では征くぞ、今度はこちらの打つ番だ」
「はいっ」
「…で、今日も吐いたのね」
「うん、お腹だけ守ってるわけにもいかないし」
見てるだけで胸焼けがしそうな量を胃袋にかき込んでいくのは、
いつもそんな風に、いちいち中身を絞り出してくるからなんだろうか。
特盛り二人分のスパゲティをみるみるうちに減らしていくスバルを見ながら、
しょうもないことを私は考えていた。
「わかってはいるけど、よくやるわよ。葉隠陸曹」
「痛くなくば覚えぬ、って。あたし、間違ってないと思うから」
私やエリオ、キャロも身をもって経験しているからわかるけれど、
陸曹の訓練は『痛み』という一点で過酷さをきわめる。
シューティングアーツ…拳闘を主体とするこの子は、それをほぼ毎日やっているんだ。
今は制服を着込んでいるからわからないけど、
この子の服の下は、絆創膏と湿布だらけ。
一緒にシャワーを浴びに行くたびに、新しい青アザをこさえているのを見つけてしまう。
毎日毎日、生傷の絶えない子だ。
陸士訓練校で知り合ってから全然変わってない。
ドジで不器用なくせに、危険なことは一番最初に引き受けようとする。
一番前の、一番危険な位置に、進んで身体を張りに行く。
それをフォローする私の身にも、ちょっとはなってほしいけど、
だけど、私も負けていられなくて。
この子があの人の背中を目指してきたように、私にだって、ゆずれないものがある。
「ティアもよく食べるね」
「やかましいのよ、そういうこと言わないの」
「会った頃は、もっと食が細かったから」
「しっかり食べなきゃ務まらないでしょ、それだけよっ」
肉体と魔法をフルに行使するこの仕事だ。
身体をしっかり作っておかないと、続けられっこない。
それだけ…本当に、それだけ。
たくさん食べるようになったのだって、当然の流れで。
だって、そうでしょ?
なんでこの子につられてたくさん食べなきゃいけないのよ。
むしろ私は指導する側。
何かにつけて限度を知らないこの子に、いつだってストップをかけてきた。
なんで私がこんなことをしてるんだろうって思ったことも一度や二度じゃない。
そんな私の気も知らないで、憧れの人を前に舞い上がって…いい気なものよ、ホント。
ふと、まわりを見回し、隣のテーブルの様子を目に留める。
あの二人…エリオとキャロが、仲良くご飯を食べていた。
詳しい事情は知らないけれど、キャロはやたらとエリオになついている。
エリオの方も気後れはしてるけど、まんざらじゃないみたいな様子で。
今だって、落ち込んでるキャロに頑張って話をふったり、元気づけようとしているみたい。
持ちつ持たれつはいいんだけど、私なんかの目から見たら、そうやって甘やかすのがいけないと感じてしまう。
そんな風に他人に頼った心を根付かせるから、戦闘訓練でも気後れするんじゃないのか。
…そこまで考えて、少し、むなしくなる。
だって、それを言ったら、私とスバルだって多分、似たようなものなんだから。
そろそろ考えなくちゃいけないと思う。
今は機動六課にいたって、みんないつまでも同じ道を歩くわけじゃない。
夢というのは結局、自分自身でしか面倒を見られないものだから…
「? どうしたの、ティア」
「どうもしないわよ」
「あの二人、仲、いいよね」
「…そうね。訓練もあの調子で順調ならいいんだけど」
「へ?」
目をまんまるにするスバル。
幸いにしてこの子にはまったく気づかれていないようだが、
我ながら大人げないにもほどがある発言だった。
…自己嫌悪、もとい、反省。
「明日はシグナム副隊長との模擬戦でしょ?
食べ終わったら作戦、詰めるから」
「ああ、それで」
別に、それで、でも何でもないのよ、スバル。
あんたはお人好しすぎて、たまにムカつくのよ。
ともかく、今の私に必要なのは、上司の誰かに「出来る奴だ」と認められること。
でなければ、実戦の一角にすら出してもらえないかもしれないのだ。
そして今の私達は四人で一人のようなもの。
全員で認められなければ意味がない。
私は、立ち止まりたくない。
今のポジションにあぐらをかいて、油を売ってるヒマなんか、ない。
多分、それはみんなも同じはずだ。
私達は、戦うためにここにいるんだから。
早く強くなって、早く誰かを助けに行って…
「作戦会議だったら、オブザーバーも役に立つと思うな」
そこにいきなり声をかけてきたのは、私の直属の上司にあたる人。
私を見込んで、機動六課に引き入れた人。
「た、高町一尉?」
「なのはさん、でいいってば」
スバルにとってはこの人も、自分の変化のきっかけで。
空港火災から救い出してくれた大威力が心の底に焼きついているから、
正面突破の砲撃魔法に同じ名前を借り受けて。
じゃあ、私にとっての、この人は?
「わたしも混ぜてもらっていいかな、ティア」
「…はい」
「元気ないなぁ。気合い、入れていこ?」
「はいっ」
機動六課、屋内訓練場。
第九十七管理外世界、日本国にある剣術道場を模して作られたこの場所は、
葉隠覚悟が好んで座禅を行う場所だと知っていた。
というより、おそらくはこの男の存在が無ければ、このような施設は作られなかっただろうと思う。
私、シグナムのみならず、大小様々の影響をこの男から及ぼされていることは確かだ。
そのようなこと、改めて感じるまでもないことだが。
「シグナム二尉」
案の定、私が道場に足を踏み入れると同時に敬礼を受けた。
常に感覚が研ぎ澄まされているのもあるだろうが、互いの足音を覚えているのだから当然か。
戦士が半年、一緒に暮らせば、そうなる。
「いい、楽にしていろ」
この言葉は合図だった。
楽にしろと言わない限り、部下で居続ける。
彼の最小限のけじめであり、ある意味で最大限の譲歩だ。
ほとんど誰もが九割九分、出会い頭にこう言うのだから、
もしかすれば彼も辟易しているかもしれないが、構うことはない。
「なのはから、聞いた。おまえが焦っているとな」
「新兵訓練案か。無理を心得ぬ浅慮であった」
「いや。私が聞きたいのはおまえ自身の問題だ」
「おれの…?」
大体、わかるのだ。
八神家の誰もが理解しているだろう。
私もそのことを、この身体を以て知っている。
「やはり、おまえは散(はらら)を見ている」
「む…」
「フォワード四人に、おまえ自身の姿を重ね見ているのだろう?」
いつ現れるかわからぬ改造人間。
立ち向かうべき新人達は、戦力と呼ぶには未だ頼りなく。
これは、未だ存在の確認できぬ散(はらら)と、
その姿を求める覚悟の関係に等しいものだと言えよう。
「…かもしれぬ」
「おまえの拳を何度受けたと思っている。
そのくらいは、わかるよ」
言葉にせねば伝わらぬ思いもあるが、
拳に乗せる重みは時として千の言葉に勝るのだ。
剣を合わせた者同士だからこそわかる。
「やはり、おれは未熟だ。
おれ自身の焦りが、訓練案にもにじみ出るとは」
平静そのものの表情ながらも若干うつむく覚悟に、
私は少し苦笑して。
「言っておくぞ、覚悟。
そんなおまえの姿が、私には嬉しい」
何を言っているのだかわからない。
覚悟の顔にそう書いてあるのに構わず。
「おまえ自身がいつも言っているはずだぞ。
痛くなくば覚えぬ、と。
おまえは今、自分の未熟さに痛みを感じているのだろう?」
「だが、おれ自身でそれに気づくことができなかった」
「そうでなければ、この世の誰もおまえの役には立たないだろうよ。
それとも、なのはや私、主はやては、おまえにとって無用の存在か?」
「そのようなことはない!」
鋭い目つきと声が帰ってくる。
固く揺るがぬ確固としたものを込めて。
何もそんな力んだ返事を返さなくともいいのに。
また思わず笑ってしまいながらも、私は目を合わせ、しっかり頷いた。
「…なら、それでいいということだ」
そうやって言い切ってくれる限り、私もそれに報いるとしよう。
今の返事、主はやてにも聞かせたかった。
「第一、おまえには可愛げが無さすぎる。
たまには隙を見せてくれなければ、共に戦う甲斐がない」
「隙を見せよと?」
「冗談だよ。困った顔をするな」
ともあれ、大丈夫そうだな。
慣れぬことをさせている自覚があるからか、
はやても覚悟のことを常に気にかけていて、
だから私もこうして仕事の合間を縫って話を聞いて回ることになる。
シャマルとヴィータも同じことだった。
いや、むしろ八神家ゆかりの人間全員が同じことだと言っていい。
だから、なのはの方から朝一番で私にコンタクトを取ってきたのだ。
不必要なまでの焦りが教練を行う上官から発せられては、肝心の部下が精神的に追い込まれかねない。
そういう実務的な面からも情報の共有を急いだというが、今回はそれが功を奏したと思いたい。
もっとも、覚悟に散(はらら)という宿敵ある限り、心の奥に潜んだ焦りはまたいつ顔を出すかわからないのだが、
それを本人に自覚させることができただけでも、今回は良しとするべきか…
「フォワードの四人だがな、明日は私との模擬戦だ」
「あなたの見立てはいかに」
「ここ十日を見る限り、キャロをどうにかしなければな」
「おれの、せいかもしれぬ」
魔法自体は遜色なく使えるのに、実戦形式の訓練になると、途端に失敗が込み始めるあの少女。
魔法を出すタイミングが早すぎて連携の足並みをバラバラに崩してしまうのだ。
特に、接近戦を挑まれるとその脆さはひどい。
最初のうちはそこまでまずいものでもなかったのだが、一度の失敗からどんどん軸がぶれるように悪化していき、
ここのところのフェイトの話題のほとんどがキャロの心配で占められてしまうような有様である。
「まあ、明日の立ち会いで確かめさせてもらおう。
おまえのせいかどうかもな」
「頼む」
覚悟に確かに頼まれてから、私は道場を後にした。
支援
以上です。
投下速度は、なるべく隔週を目指したく思うのですが…
>>なのは+仮面ライダー氏
なるほどなるほど・・・これはスカイライダーのDVDを借りてドロリンゴを見てみる
必要がありそうですね。
しかし、ベタに昭和っぽいと言うか何と言うか・・・。
スケールが小さ過ぎて嫌がらせ程度にしかならない位のセコい作戦ですな。
GJ
覚悟さんもですが、なのはがかっこいいな。
さすが女の中の漢
ニセライダーの中でももっともせこいあの話ですか
>>98 遂に! 待ちに待った覚悟クロスの投下GJ!!!!!
今後の展開も期待大! 個人的にはボルトの旦那を早く見たいっす!!
>>98 やった〜〜〜〜!!!!GJ!!!
新人達の訓練に悩む覚悟が、とても新鮮でした!!
覚悟もだんだん変わってきてますねえ。
次も楽しみにしています!!
なんか過疎ってるな…
年末の反動か?
>リリなの因果
あれは…覚悟氏の無明投下流れの構え……。
お美事! お美事にござりまする!!
覚悟となのは、お互いの考えが違うのは当然の事。
覚悟の命を賭した戦闘論ももちろん熱く滾るものではありますが、こと新人への訓練という点では無謀無茶だけでは通りませんな。
その辺、しっかり考えてるなのはがいい感じです。もちろん、逆も然り。どちらも正しく、ぶつかり合って良し!
それにしても、スバルがいいなぁ。ゲロ吐いてるケド、むしろそれがStSの訓練で足りなかった泥臭ささを表してて、なんだか僕には…とても素敵に見えるッ!w
スバルの性格的に、這いずって頑張る姿がメチャカッコよく映りますね。これは強くなりますよ〜。
あと、覚悟相手だとシグナムがニート侍の影すら見せないほど男前になるから困る。惚れるじゃないかw
>>106 年末の加速からきだしたひとじゃない?
あれと比べたら、ね
108 :
旅ゆく人:2008/01/06(日) 00:41:48 ID:psnSXEMW
こんばんわ。
『リリカル旅話』のインターミッションの二話目が完成したのですが、
投下してみたりなんかしちゃったりしても、よろしいでしょうか?
109 :
旅ゆく人:2008/01/06(日) 01:00:52 ID:psnSXEMW
了解、明日から仕事なので明日以降と言うことで。
では、失礼します ノシ
な、何を了解したんだ旅ゆく人氏!
19分間の空白に、誰に何をどう言われたんだw
遅きに逸したかもしれんが、投下できるなら是非カモーンッ!
実は言うと、ブーメランの人の正体がメチャ気になるんですよw
私をはじめ、何人かはブーメラン戦隊の少佐かと推察しているようですが……
謎の19分間まさにミステリー
112 :
魔装機神:2008/01/06(日) 10:12:24 ID:/iN0B7wC
久しぶりにシャドウハーツのクロスを投下します。
114 :
魔装機神:2008/01/06(日) 10:17:39 ID:/iN0B7wC
SHADOW NANOHA STS 10 いっちゃやだ
「フェ、フェイトさん?」
エリオは呆然としながらフェイトを見る。
フェイトは確か昼から用事があるからといって陸士108部隊に行っていたはずだ。
なのになんでここへ?
(よかった、間に合った)
そして、フェイトは息を切らしながらエリオを、そしてエリオに何かをしようとしている人物を見る。
何かを感じたフェイトはニ○ー○イ○もびっくりするほどの感でエリオたちの所へ最短コース、そして最速でたどりついたのだ。
流石超親ばかお母さん。
子を思う気持ちに不可能はない。
「フェイトさん……流石に規定速度を30キロオーバーはちょっと……」
そして、遅れて助手席からギンガが出てくる。
ギンガはフェイトの運転に驚いていた。
速度を思いっきり飛ばし、速度メーターがある時はちゃんと速度をギリギリ守り、通り過ぎるとまたスピードを上げてここまできたのだ。
何者なのだこの女性……
「ぎ、ギン姉?何でここに?」
フェイトが出て気ことにも驚いたが、スバルは姉である銀河まで出てきたことにも驚いた。
「あ、スバル。まあ、いろいろあって私もしばらくは機動六課にいることになったの」
普通ならそうなんだといって喜ぶのだろうが、それよりもおどろきのほうがつよかったスバルはそ、そうなんだ……と苦笑いをするしかない。
そして、スバルが何を考えているかはギンガにもわかったので、苦笑いを浮かべても何も言わなかった。
「エリオに何をしているんですか!?」
フェイトはエリオを連れて行こうとするガマを見る。
事情を知らないフェイトにとって、まるでエリオを誘拐しようとしているようにしか見えなかった。
「誰だ貴様は?」
ガマはせっかく優秀な弟子が手に入ると思ったのに、邪魔ばかりが入る。
「私はエリオを保護しているものです」
素言うフェイトに、なるほど、とガマも相槌を打つ。
「つまり、貴様はこいつの母親と言うわけだな」
「は、母親って……」
エリオはこんな場にもかかわらず、フェイトが自分の母親、といわれて少々戸惑う。
確かにフェイトには自分を拾ってくれて、さらには育ててくれて本当に感謝している。
しかし、親と思ったことはなく、そう言われて少々恥ずかしい。
「私はグラン・ガマ、諸所を渡り歩いて私が編み出した格闘技、レスリングを広めるために世界中を旅しているものだ」
そしてガマは説明した。
弟子を含め、自分たちはウルとヨアヒムと同じ世界の出身で、同じようにこの世界へ飛ばされた。
しかし、それでもめげず、逆にこの世界にもそれを広めようとしていたのだ。
ちゃんと土地も借りて、この世界の門下生も順調に増えているらしい。
そんな時、エリオを一目見たガマは彼の才能を人目で見抜き、ぜひ入門しないかと進めていたところだという。
「けど、嫌がる奴を無理やり連れて行くってのはどうよ?」
ウルの最もな言葉に、うんうんと頷く一同。
みんなまで言われ、ガマは残念そうにそうか……と頷く。
115 :
魔装機神:2008/01/06(日) 10:19:55 ID:/iN0B7wC
「君の才能に心引かれ、我を忘れていたようだ。本当にすまない」
本当に申し訳なさうに誤るガマに、そんな、とエリオも応じる。
「わ、わかっていただいたんならそれでいいです」
こうやって、今回の件は方がついた。
「ところでヨアヒムよ」
するとガマは口調を変えてヨアヒムを見る。
「これまでの間、よもや鍛錬を怠っていたわけではあるまいな?」
その表情は先ほどのものとは違い、迫力と威厳に満ち溢れていた。
「はい師匠。このヨアヒム、精進を怠ってなんかいないっち!」
元気よく堪えたヨアヒムに、そうか……と頷く。
「せっかく異世界でもこう再開し、そばに青空リングもあるのだ。せっかくだから一汗流していかんか?」
「望むところだっち!」
その後起こった事を簡単に説明しよう。
触れ合うお互いの肌と筋肉。そして飛び散る汗。
そして二人の顔は、笑顔で満ち溢れていた。
これが、漢と漢の戦いである。
それを見た一同が一言。
「きも〜〜い」
……もっともです。
実は借りた場所は公園の前で、そのトイレの前にあるベンチに座っているつなぎを着た男がそこ勝負を面白そうに見たとか見ていないとか……
「ふぅ」
はやては自室で資料を纏め上げ、ふぅ、と一息つく。
今日はまた大量の雑務をこなし、朝から始めたのが外を見ると夕暮れがミッドチルダを赤く染めていた。
「さて……」
はやては用事が終わると、ある人物と通信を取る。
「どうしたのはやて、こんな時間に?」
その人物、カリム・グラシアは突然の呼び出しに疑問を抱きながらはやてを見る。
「カリム、いきなりでごめんな……そろそろ隊長陣にあの事を話そう思って」
はやての言葉にそう…とカリムの頷く。
以前から、二人から機動六課ん本当の炉優について少し尋ねられた事がある。
その時は時が着たら話すといったが、そろそろいいだろうとはやては判断する。
「わかった。じゃあ私からクロノ君には連絡するから、はやては二人にお願いね」
おおきに、とはやては返事をすると共に通信が切れ、はやてはふう、と一息ついて先にフェイトの通信を入れる。
「はやて、どうしたの?」
そして、はやてはちょっと自分とフェイト、そしてなのはの3人で聖王教会で話したいことがあるから、戻ってきてほしいという内容だった。
「わかった。私のほうももう少しでつくから」
そういってフェイトは通信をいれ、はやては次になのはと連絡を取る。
「やだ〜〜〜〜〜!!」
「え?」
なのはと通信を入れたはずなのに、何故か聞こえてきたのは小さな女の子の声だった。
確かにこの機動六課にはキャロという10歳ほどの少女がいたが、その声はそれよりも幼い。
「ああ、ヴィヴィオ……お願いだから泣き止んで」
よく見るとその少女はなのはの制服のスカートをぎゅっと握ったまま話そうとはしなかった。
116 :
魔装機神:2008/01/06(日) 10:21:15 ID:/iN0B7wC
「なのはちゃん、どないしたん?」
はやてがなのはに尋ね、ようやくなのはもはや手の通信に気付く。
「ああ、はやてちゃん。ちょっと助けてほしいんだけど……」
どうやらこの状況にかなり手をこまねいているようだ。
この状況を見て、はやてはわらいながら「了解」といってすぐになのはのほうへ向かう。
「けど、流石のエースオブエースでもかなわん相手があるってことやなあ」
うんうんとはやては頷きながら自分の部屋を出ていく。
その頃、なのははまだヴィヴィオに詰め寄られていた。
「ヴィヴォオ、これからなのはさんは大事な用事があるんだけど」
「やだ〜!いっちゃやだ〜〜!!」
いつまでたっても話してくれないヴィヴィオ。
う〜〜ん…となのはが困っているところだった。
「流石のエースオブエースでも、この敵にはてこずっとるな」
その光景をほほえましく見ているはやてが何は立ちのところへ近づく。
「流石にこの相手はフェイト隊長でないと難しいなあ」
そういってはやては、ロビーの玄関からフェイトがやってくるのを見る。
「なのは、その子って確か……」
フェイトはなのはの状況を見てどうしたのか尋ねる。
「あ、フェイトちゃん。実は……」
なのはは今の状況を話すと、フェイトは笑いながら任せてといった。
かなりな疲れているようだ。
「こんにちは」
フェイトはその少女が持っていたであろうぬいぐるみを拾い、それを見せながらフェイトはヴィヴィオを見る。
フェイトの存在に気付いたヴィヴィオもな泣くのを止めてフェイトを見る。
「ヴィヴィオ、この人はフェイトさんで、なのはさんの大事なお友達だよ」
なのははにっこりと笑いながらフェイトの事を紹介すると、ヴィヴィオはもう一度フェイトを見る。
「ヴィヴィオはなのはさんと一緒にいたいだけで、迷惑をかけたいわけじゃないんだよね?」
フェイトの質問にヴィヴィオはうんと頷く。
「けど、なのはさんはヴィヴィオが輪がガを言っているせいで今とっても困ってるんだ」
そういって、フェイトはぬいぐるみを動かし、あたかも困っているようにみせる。
そのおくかはてきめんで、ヴィヴィオもう〜〜、と別れるのは嫌だが、仕方なくなのはからはなれる。
「だから、その間はあの人たちと一緒に、仲良くお留守番してね」
そういうフェイトの視線の先には、フェイトに続いて戻ってきたフォワード陣の姿が。
「あ、ちょうどよかった。みんな、ちょっといいかな?」
「なのはさん、どうしたんですか?」
ちょうどいいところに帰ってきたスバル達に、なのはは事情を説明する。
「というわけで、私達はこれから出かけるんだけど、その間、このこと一緒にいてほしいんだけど、いいかな?」
なのはのお願いに、スバル達は嫌な顔一つ見せずに、はいと答える。
「それじゃあヴィヴィオ、私はこれから出かけるから、その間はしっかりおるすばんしてるんだよ」
「うん……」
117 :
魔装機神:2008/01/06(日) 10:27:01 ID:/iN0B7wC
こうして、なのははやっとの事でストームレイダーへと向かう。
「けど、なかなかええもんみせてもらったよ、なのはちゃん」
はやてはヘリの中で含みのある笑みを見せ、もう…となのは弱った顔をする。
「なのは、こういうことならいつでも力になるからね。なんなら、この後世話の仕方とかいろいろあいてある本を貸してあげようか?」
さりげなくこの中で子供の扱いに一番長けているフェイトの言葉に、ありがとうとなのはも助かったような顔をする。
「じゃあ、お礼に私特製のキャラメルミルクの作り方をおしえようかな…もちろん、はやてちゃんにも」
「それはありがたいなあ。私もあれはすきなんよ」
「私も、今度エリオやキャロにも教えてあげなきゃ」
このヘリにいる間、3人は自分達が管理局員である事を少しだけ忘れ、3人の女性として楽しく話をする。
そのとき、さりげなく操縦席のドアが開いているため、話が聞こえているストームレイダーパイロット、
ヴァイス・グランセニックは普段見せない隊長たちの表情を珍しそうに見ていたりもしていた。
投下完了。
今回はフェイトさん大活躍の回でした。
投下良いですか?
待ってました!支援。
支援
ティアナの正面、次の角から先ほどと同じ灰色の機体が二機、姿を現す。
相手が発砲する前に右のクロスミラージュで魔力弾を二発発砲。長い直線、正面の目標、誘導は必要無し。
向かいあう二体も射撃開始。主武装であるガトリングガンが弾幕を張る。
「邪魔!!」
飛んでくる魔力弾をスライディングとシールドで回避。
相手の数が判らない以上、暴露面積を少なくし無駄な魔力の消費は避けたい。
打ち出した二発は多重弾殻を利用した対装甲目標用。
二発はティアナが操作する必要もなく一機の膝関節を二本撃ち抜く。
一機がその場で各坐、もう一機は射角を調整し、ティアナを捕捉しようとする。
だがティアナも然る者、スライディング中にもう二発を右のクロスミラージュの銃身兼カートリッジより
魔力弾を一発生成、弾種は最初の二発と同じ、多重弾殻。
狙いは四本の足の関節が集まる腰部、多脚兵器の弱点。
「シュート!!」
命中、貫通し機体の向こう側まで抜けた魔力弾は壁にぶつかり消滅。
被弾した機体は重量を支えきれず崩れ落ちた。
「よっと・・・」
ティアナはスライディングから態勢を立て直す。
<機種識別、ナースホルンです>
「えーと、警備・市街地戦用の機体だったかしら?」
<はい、装備はガトリングガンのみです>
「施設内にピッタリ・・・」
ティアナがクロスミラージュに返答した瞬間、右脚を打ち抜かれたナースホルンが左足のみで旋回、
砲をティアナに向ける。
「タガーモード!!」
すかさず右手側のクロスミラージュに魔力刃を形成。
さらにナースホルンの懐に潜り込み射撃できない位置へ、そしてそのまま勢いで向けられた砲身を刃部で切断する。
だが、相手はそのまま旋回、ティアナは懐に潜り込んだため、脚の旋回コースに乗っていた。
「あー、もう!!」
左手側のクロスミラージュもタガーモードへ変更。
迫る左前脚を切断し、切り飛ばした足を蹴り飛ばし、勢いを乗せたまま旋回する左後脚も斬り飛ばす。
「おとなしく・・・」
「畜生!!」
ティアナの投降勧告、だがナースホルンのハッチから搭乗員が脱出する。手にはアサルトライフルタイプのデバイス。
抵抗する気は満々、おとなしく手を上げる積もりは無いようだ。
私は支援が大好きだ
「手間を・・・」
ティアナはナースホルンの車体を使ってステップ。搭乗員の真後ろへ回り込む。
「・・・取らせない!!」
「・・・が!!」
クロスミラージュの握把を首に叩き付け一撃で気絶させる。
「おい!!てめぇ!!」
各坐させたもう一機からも搭乗員が出る。こちらもライフルデバイスを所持。
今度はティアナは落ち着いてクロスミラージュを向け発砲。弾種はスタン弾。
「ぐ・・・、まだぁ!!」
命中、一瞬バランスを崩す。だが搭乗員は気絶することなくライフルデバイスを向ける。
「抵抗するなら!!」
呪いの言葉を吐きながら今度は強めのスタン弾を発砲しつつ回避運動。
「ぎゃ!!」
今度も命中。ティアナが遮蔽物代わりの機体からゆっくりと顔を出す。今回は確実に気絶させた。
「やれやれだわ・・・」
<まったくです>
珍しくクロスミラージュが同意する。気を取り直し気絶させた相手を検分。
「武装はライフルデバイス。ボディアーマーも出回ってる対魔力・対破片用・・・、レベルUぐらい?」
それに戦車サイズの多脚機動兵器。
「只のテロリストじゃない・・・かな?」
<ナースホルンは旧式で火力も貧弱とはいえ広く使われています>
「火力が貧弱でも・・・、結構な数がいそうね・・・?」
<確かに。センサーに感、同じく二機>
閉鎖空間の為、音はよく響く。
敵性戦力の存在を目視する前にティアナは走り出す。次の角を曲がればおそらくは接敵する。
角を曲がる。予想道理正面に先ほどと同じように二機。
今度は走りつつ正面から、小技抜きで両手のクロスミラージュを発砲。さらに周囲に射撃用のスフィアを形成、
二機を弾幕で包む。
だが相手も発砲、それをシールドで防御。シャワーの如く打ち出される敵弾の中を突っ切る。
弾数なら負ける、だが、威力と精度で押せば負けはしない!!
ティアナの放った魔力弾は前部装甲で弾ける。だがその中の本命は砲身の基部と腰部に命中。
命中を確認後、炸裂させる。だが搭乗員の戦意を奪ってはいない。
案の定ハッチの開く音が聞こえた。今回はそれを折込み済み。予めスタン弾を射出・誘導。
ハッチから出ようとした搭乗員も確実に気絶させたことを確認。ティアナは一息つく。
支援
支援する
「フェイトさん、敵性機体を四機撃破。搭乗員はスタン弾で気絶させてあります」
『こっちは六機撃破。地上のトーレ達から連絡があってあっちも小隊規模の敵性勢力と交戦中だって・・・』
一瞬、通信が途切れる。
『七と八機目!!』
<敵機撃破>
雑音が混じる通信、フェイトは交戦しながら通信、その中でバルディッシュの撃破報告が聞こえた。
あちらは交戦開始の時間を考慮してももう八機撃破している。自分は四機と搭乗員四人に手間がかかった。
これが努力した凡人と天才の差かな・・・?ティアナが自嘲する。
「こちらは撃破するのには時間がかかります」
『ティアナはそのまま施設内の掃討を続けて。相手は集団で戦闘に来ないから、分散してるうちに交戦、大丈夫?』
「大丈夫です。行けます」
少しぐらい無理をしても問題はない。
『敵の数は判らない。だから十分注意して』
「了解!!」
「はぁぁ!!」
フェイトが弾幕を正面から受け、最短距離を高速で近接。ハーケンフォームのバルディッシュを振るう。
バルディッシュの魔力刃は一機のナースホルンの腰間接を勢いのまま斬り飛ばし行動不能に追い込む。
僚機に対してはバルディッシュの石突を同じく腰部に打ち込み自身の魔力変換資質を使い電撃を放電、内部の電子機器を焼く。
放電された機体は緊急機構が作動ハッチが開くが搭乗員は中で気絶している。
「はっ!!」
だが最初の一機の搭乗員はまだ“起きて”いる。
もう一機には手甲に覆われた手を押し付け放電。これでこちらも緊急機構が作動するが内部の搭乗員は気絶中。
「バルディッシュ、これで何機目?」
<ナースホルンを十機、イーゲルを二機です>
「搭乗員は?」
<死者無し>
自身にとって半身とも言うべきバルディッシュの簡潔な報告を聞く。
明確な殺意を持って襲撃してくる相手をいなし、気絶させるのは骨が折れる。
「ティアナとのリンクは?」
<室内なので厳しいです。さらに薄いですがジャミングがかかっています。近距離であれば可能です>
ティアナは現在執務官の下、執務官補の地位にある。
この立場は執務官補佐と違い、限定的ながら執務官の権限を行使できる地位として設置されたもので、
人数の不足している執務官を補助するものとして導入された。なおティアナはその一号。
執務官への階段、その一段下に位置する地位。それなりの才能と経験が要る。
「バルディッシュ、地図は?」
忠実なデバイスはすぐさまフェイトの正面にマップを表示。
「ここが資材の保管区画だとして、この下り坂は・・・」
下り坂の終わりの先は見えない。
<Sir>
「どうかした?」
<不明瞭ですが生体反応が確認できます>
表示したマップに反応を重ねて表示。反応はまだマッピングされていない奥側に固まっていた。
「・・・じゃあ、この先が正解、って言うことだね」
眼前の表示を消し、フェイトが先を見据える。
「いくよ」
<Yes sir>
地下施設内でフェイト・ティアナ組が交戦していた頃、地上にいる二組と二個小隊も戦火を開いていた。
「・・・意外と動きがいい」
敵はうまく散開し、お互いに援護できるポジションを維持し、隊形はジグザク、ツーマン・ターセルで近づいてくる。
「誘導弾、第四波来ます」
セッテの警告。トーレはさっきから飛んでくる誘導弾を視認。先ほどからほとんど同じ方向から飛んでくる。
「セッテ、迎撃しろ。飛び回るのは暫く私が相手をする」
大して問題ではない。だが迎撃のためセッテが手一杯になるのは痛い。
「判りました」
「管理局の航空隊よりは手強いだろう」
セッテが迫る巡航誘導弾へ迎撃のためEO四基を連れ、さらに上空へ上がる。
迎撃が終わるまでここに展開する敵性戦力を相手にするのは自分だけだ。
陸の局員は二人の高速戦闘には向いていない。進入口の防衛に徹して貰う。
「はっ!!」
戦闘機人の持つ策敵機能を利用し周囲を策敵。敵影は十四、探知範囲を広げると誘導弾の発射源と思われる反応を感知。
だが、今は発射源より手近な相手を減らすこと。近い位置にいた一組・二機に目標を定めて加速。
相手の機種はスーパーシミターが中心。セッテの索敵では支援機と思われるイーゲルが二機いるとの事。
案の定、狙った組の両翼の組の射線につかまる。狙われた組はバルカン砲を撃ちながら推力を生かし跳躍、
地面スレスレを飛ぶトーレの頭上を取る。
両翼下のハードポイントに装備されたロケット弾ポッドから無誘導の魔力推進ロケットが飛び出る。
ロケット弾が指向されたのはトーレの進行方向。
本来なら左右どちらかに回避するべき状況。だがトーレはさらに加速、着弾の前に相手の後ろを取る。
トーレを撃つ本命とも言うべき左右の二組はさらに前進したトーレの動きに面食らった。
目標が左右どちらかに避ければ動いたほうの組が同じように進行方向にプラズマランチャーもしくはロケットを打ち込む筈であった。
彼らにとっての目算が崩れる。だがトーレが考えたとおり、すぐに態勢を立て直す。
トーレの見立て通り相手は分散した。自身が陣形に突入したほうは四個組が、他の組はトーレを無視し前進する。
彼らに与えられた任務は出来る限りこちらの戦力を減らすことらしい。
それを迎撃すべきセッテは以前向かってくる誘導弾の迎撃に手をとられている。
『セッテ、急げ』
『次ので最後です。すぐにでも迎撃します』
『イーゲルに注意しろ。下手に射線に捕まればすぐに削られる』
『承知しています』
『フェイトお嬢様の指示もだ。誰一人殺すなよ』
『それも承知しております』
通信終わり。一々喚いたり文句を垂れるたの妹達より手がかからない事は良い事だ。トーレはそう思った。
>>127 そりゃ才能ある上に生まれてから常に鍛練を積んで来たフェイトじゃ比べる相手が悪いわw
支援
攻撃に使う魔法の相性もありそう。支援
自身の置かれた状況はスーパーシミターが地上に二組・四機、上空にも同数。
三次元機動は可能。まずは相手の数を減らすのが肝要。
目標を定める。まずは地上にいる一組。
自身のIS“ランドインパルス”を発動、加速するだけがこのISの能力ではない。
まずは前進、案の定、相手の射線に捉る。ここであえてキル・ゾーンに入り相手の射撃を誘う。
相手はこちらの高速・加速性能を考慮にいれ射撃を開始する。
見事な連携と射撃方向の設定・・・。
戦闘中であるがトーレは感心した。それも一瞬で次の動きに移る。
機動力を生かした直角ターン。勿論それを見越して射撃を受ける。
今度は後方にバックを行い、距離をとる。
一瞬で自身の高速機動によって出来るはずの相手の火網の穴を探る。
(見つけた!!)
高速機動に対応するため面制圧を重視し広く満遍なく撃ちこんだ為、どうしても薄くなる場所が出来る。
それを狙ったのだ。
まず地上の四機に再び目標を定める。四機からは自分達の射撃で舞い上がった雪等でこちらが見えていない。
一気に接近、トーレが突撃してきた事に驚愕したのか一瞬、彼らの判断が遅れる。
「はっ!!」
すかさず一機の懐に潜り込んだトーレが左拳を打ち込む。
『絶対に殺したら駄目だからね?』
フェイトの指示が脳裏を掠める。その言付け通り拳は搭乗員の体を突き抜ける事は無く打ち込まれた。
機体の機能のみを奪う。
「一機目!!次!!」
すばやく次の獲物へトーレが動く。
支援って規制回避の効果は無いんだよね。
だけどこれは応援の気持ちだから支援!
セッテは接近する巡航弾をブーメランブレードで迎撃すると急降下、地上の目標へと向かう。
まず狙うのはトーレに注意を促された二機のイーゲル。
一機の一機に標的を絞り急降下。
二機のイーゲルは待ち構えていたのか砲塔部を旋回、両腕部に装備された連装機関砲・合計四門をセッテに向け発砲する。
右へ左へ回避機動、だが目標からは目が離さない。
(もし・・・鷹の獲物が抵抗したら鷹もこのような光景を見るのでしょうか・・・?)
セッテは図鑑でしか見たことはない猛禽類達を思い浮かべた。
飛行し、獲物へと襲い掛かる。まさに自分らの用ではないか?
思考中断。今は眼前の敵を撃破すること。戦闘は先頭機人として生まれた自分にとって生きることと同義。
EOを散開させる。両手にブーメランブレードを実体化させる。
「斬る!!」
近付けば近づくほど濃密になる火網を物ともせずセッテは突入する。
狙うのは標的の胴体側の脚接続関節。
ブーメランブレードの刃が接触するかしないかの位置まで近接した瞬間、急制動をかける。通常やらないような急制動、
並の航空魔道士では命は助かっても肉体がが持たない。フェイトでもそんな非常識なことはしない。
戦闘機人であるセッテだから出来る高速機動。
そのまま後ろに向かって切り裂く。
「浅い?」
イーゲルは転倒しなかった。後ろに離脱したセッテに向けて砲塔を旋回、再び連装機関砲を発砲。
セッテはトーレと違い射撃系を織り交ぜたテクニックを使う。
回避しつつ塞がっている両手の代わりにブーメランブレードの刃先を向け、そこに射撃用スフィアを展開・収束。
「ファイヤ!!」
撃ち出したのは二線、狙いは胴体と脚の接続部と胴側の脚間接部。
射撃後、態勢の立て直しもかねて着地。速度がついていた為か新雪の上を滑る。
停止、その時にはセッテの両手にあった筈のブーメランブレードは無い。
セッテが止まるのと同時に二機のスーパーシミターも停止した。ブーメランブレードを突き刺されて・・・。
射撃後、着地する瞬間に投擲、自身のIS“スローターアームズ”で誘導、直撃させた。
「殺してはおりません」
撃破したイーゲルと二機のスーパーシミターを見てぼそりと一言。
「残り三機・・・、このセッテがお相手いたします」
再びブーメランブレードを実体化させ構える。残り三機。
「あまり時間はかけれない・・・」
地上の宿営地組、こちらも交戦中。エリオは宿営地から離れることなく支援を受けつつ遊撃戦を展開していた。
青い塗装をされた二機が交差しつつ右手で保持しているロケット弾発射機を撃ちながら接近、近接戦を挑む。
エリオは放たれたロケット弾を下がる事無く正面で回避、迎え撃つ。
「ふっ!!」
一瞬互いの間合いに入る。相手は左手を繰り出し接触する寸前、カートリッジをロード。
(ペレットパンチ!!)
あまり一般的な武装ではない。カートリッジに充填された魔力を直接収束、相手に叩きつける近接用兵器。
だがカートリッジの最大出力をそのまま叩きつけるので侮れない威力はある。
エリオは一機目のパンチをステップで回避、もう一機のパンチはジャンプで回避。
予想通り、後方にいた他の機体を確認、前方にいた味方機との同士討ちを避けるためこちらも接近戦を挑む。
<ソニックムーヴ>
機体同士の隙間を縫うようにしてジグザグ機動、無論手を出すのを忘れない。
ストラーダの刃部で斬りつける。確かな手ごたえを感じる。
エリオの駆け抜けた後、二機が背中のジェネレーターを突き刺され稼動不能に陥り各坐、
もう一機は左腕を切り飛ばされる。
「まだうまくいかないか・・・」
ソニックムーヴを利用した複数に対する一撃離脱、研鑽を重ねた技ではあるがまだ自分は未熟。
「ストラーダ、このまま誘導するよ、行けるね?」
<ヤボール>
戦闘不能の二機を残し、他の四機をエリオを追う。
エリオは不利とわかりつつ追撃を受ける。
『いいよガリュー、そのまま誘導して・・・』
ルーテシアが通信を送る。ガリューは了解という意味の短い信号を送ってくる。
具体的にわかるというわけではない。だが彼女にはわかる。ガリューと他の虫達の送ってくるコトバが。
ガリューは適当に相手をいなし誘導する。
今の所うまく言っている。予定通り・・・。
「キュー?」
「エリオ君なら心配ないよ、ルーちゃんやガリューも」
「キュー・・・」
キャロは廃ビルの二階にフリードと共に潜んでいた。
キャロの役目は一箇所に集めた相手を火力で持って動きを止めること。
「いつでも出来るように準備しておいてね、フーリド?」
「キュ!!」
「うん、がんばろう!!」
「ガリュー、そっちはどう?」
『・・・・・・』
『ガリューがちょっと遅れるって・・・』
ルーテシアの通訳がつく。エリオは一瞬考える。このまま行くか?タイミングが命、少しでも息が合わなければ
ルーやキャロ達から同士討ちを受ける心配がある。だが時にはリスクを重ねなければ強くはなれない。
騎士道に於ける師匠、シグナムはそういっていた。
「このまま行こう、キャロ、竜魂召還を用意して!!」
『うん、まかせて!!』
予定通り角を曲がる、相手はそのまま追撃してくる。道路幅は変わっていない。
左右を遮蔽され、待ち伏せ向けの場所。
前方から一寸遅れたガリューが見えた。だが誤差の範囲、いける!!
エリオとガリュー、高速ですれ違う。
「キャロ、今!!」
『すばしっこいガキが!!』
『早い、射撃が当らん!!』
『全員落ち着け、そっちはどうだ?』
『すばしっこい虫野郎を追跡中、速度はそこまででもないがゴキブリ並みにすばやい』
『そのまま追い込めこっちの白衣のガキと一緒に挟撃する』
機会はすぐに来た。エリオを追跡する四機が角を曲がりきると遅れてもう一隊に追跡される虫野郎が見えた。
『よし全機、射撃開始!!同士討ちは気にしないで撃て!!』
しかし撃とうとした瞬間、白衣のガキと虫野郎が交差したと思った瞬間、二人は飛び上がった。
『馬鹿が!!いただ・・・』
右手の発射機を空に向けた瞬間だった。
大きなピンク色の光を視認、そこから現れたのは・・・。
白銀の飛竜!!
「フリード、ブラストフレア!!」
「キュクー!!」
通りを一瞬で埋め尽くす火炎の渦。
チビ竜モードではない、本物の竜の力。一応は手加減しているが・・・。
「ルーちゃん、次をお願い!!」
「うん・・・」
ルーテシアがベルカ式の三角の魔方陣を形成。
「トーデス・ドルヒ・・・」
周囲に形成されたのは無数の黒いタガー。
「ファイヤ・・・」
一斉に加速する無数のタガー、狙いは通り全体。
着弾し爆発。
「ストラーダ!!ロードカートリッジ!!」
締めはエリオ、地面に向かいデバイスを突き立てるように垂直降下。
自身の魔量変換資質を利用して大量の電力を発生させ蓄電する。
急制動をかける。
大きな衝撃を小さな体で受ける。凄まじい圧力。だがそんなもの気にしてはいられない。
「電撃開放!!」
止めで強力な電撃を流す。エリオは一回転して華麗に着地。
ストラーダについた汚れを一振りして落とす。
前後には各坐した機体が八体。
「やった・・・!!」
キャロがフリードの上で親指を立てている。
エリオはそれに同じく親指を立て返す。そしてルーテシアにもサインを送る。
ルーテシアも小さく親指を立てて返してきた。
本当はハイファイブをしたいが我慢しよう。エリオはそう思った。
施設内ではティアナが走る。角を曲がり、あらかじめ索敵しておいた方向へクロスミラージュを向ける。
『来た!!』
『射撃開始、撃て!!』
待ち構えていたナースホルン二機が発砲。ガトリングガンのショットガン現象も併せて二機は弾幕を張る。
打ち出された弾は壁を削り、あるいは天井で跳弾、床に空ける。
『やった!?』
いくらBJといえど回避の出来ない弾幕をこれだけ受ければ・・・。
『待て!!いないぞ!?』
『まさか?』
光学系電子系のセンサーを使用し探知、確かに倒れているはずの相手がいない。
『どうなって・・・、警報?至近に魔力反応って!?』
『位置は・・・、真横!?』
二人が同時に横を見る。
そこには両手を開き魔力弾用のスフィアを拳銃型デバイスの先に生成した少女がいた。
「シュート!!」
弱点である腰部を対装甲魔力弾で打ち抜く。脱出する搭乗員に対してはスタン弾で気絶させる。
崩れ落ちる二機。
ティアナの使える“渋い”幻影魔法を使った戦術。幻術系は使用者が少ないのでうまくやれば簡単な引っかけでも
効果は絶大だ。
「フェイトさんやエリオみたいに変換資質持ってれば苦労しなくて済むけどね・・・」
<全くです>
「・・・あなた最近、誰に似てきたの?」
<そうでしょうか?>
こんな性格してる人、周りに居るかしら・・・?
ティアナは疑問に思った。
もしこの性格が本当のクロスミラージュだとしたら・・・?ティアナは戦慄した・・・。
<何をお考えですか?マスター?>
「ん?い、いやなんでもないよ?さあ行こう?」
人差し指でクロスミラージュを回転させ握りなおし、ティアナ通路を再び駆け出した。
古泉w支援
クロスミラージュw支援
以上、スーパー・ライトニング・タイムでした。
次回はそれぞれボスと交戦します。相手は秘密。
ではすべての職人の皆様にGJを捧げ、支援をして下さった皆様とGJを下さるであろう住人の皆様に
ありがとうをお伝えして・・・。
さぁ、休暇は終わりだ!!野郎共、仕事の時間だぞ!!
>>132 そうなんですか・・・、知らなかったです。
予約が無かったら13:30くらいから投下したいんですが構いませんねッ!
141 :
×DOD:2008/01/06(日) 13:15:44 ID:+NbI+uft
コテ忘れてた(´・ω・)
時間です、待ってます
エリオはストラーダの穂先をすっとなぞり、そしてはて、と首を傾げてみせた。指に残った粘着
質の感触が、意図が外れたことを告げている。
教練の中休み、昼食をとった後のちょっとした時間。オフィスを出て少し離れた、一本の木の前
にエリオはいた。その隣にはキャロとフリードリヒもいて、同じく槍の先端を横から覗いている。
木には一筋の蜘蛛の糸が垂れさがり、ゆるゆると風に吹かれていた。
槍と一緒にしゃがみ込んだ彼らの足元では一匹の小さな蜘蛛が、尻に糸の残りをくっつけたまま
慌てて茂みの中へ逃げ込むところだった。見つけたエリオが悪い事をしちゃったな、と呟く。ごめ
んねとキャロが後から続ける。
「キュっ」
キャロの肩に乗っていたフリードリヒが、近づく影に気付いて嬉しそうな声を上げる。
振り返ると、スバルの鮮やかな青髪とティアナのツインテールが並んで目に飛び込んできた。
午前の教練で相当に動きまわっていた――というよりもヴィータにこってりしごかれていた分、
いつも以上にお腹が減っていたのだろう。頬に昼食の名残のケチャップソースが付いているのと、
ティアナに言われて指で拭うのとはご愛嬌である。
「どう? 切れた?」
「…駄目です、絡まっちゃって」
しゃがみ込んだ肩越しに覗き込むスバルに、エリオがストラーダの穂をすっと差し向ける。その
先端からひゅるりと、軌跡をなぞるように何かがこぼれた。
スバルとティアナの目の前で垂れ下がったのは、一本の細い糸。
ティアナがつまむと、風に揺れるその糸はぺたりと指に張り付いた。そのまま引くと槍の刃に片
端を残っているのがわかる。さらによく見ると、つまみあげた向こう側にはこちらと同じ長さのそ
れが、纏わりつくように槍に付着していた。
粘着したその糸は、蜘蛛が吐くそれだった。
「見た目以上に難しいみたいね」
「…最初は、普通の糸の方がいいかもしれません」
「でもそれ、やっぱり変わってるね。ホントに訓練になってるのかな?」
昼食のため森からオフィスに戻る直前。二度と見せぬという竜の通訳の後、エリオの槍ストラー
ダを手にしたカイムが斬って見せたのがこの、蜘蛛の巣の銀糸であった。
そうした後に背を向けるカイムの言葉を代弁し、やってみせろと告げるドラゴン。言われるまま
に手頃なものを見つけて槍で薙いでみたエリオだが、何度やっても刃に糸が引っ付いてしまい、こ
れがなかなか上手くいかない。
四苦八苦するエリオに対し、まず他の太い糸を試せと代弁して残すと、ドラゴンはそのままカイ
ムと共に森の奥へと引っ込んでしまった。どうやらこれ以上に、今のところカイムからエリオに言
うことはなかったらしい。
この行為にどんな意味があるのか。同じく見ていたシグナムに聞いたところ、恐らくは刃を振る
う速さを上げる訓練であるとのことだった。
確かにある程度の迅さを持つ一閃でなければ、糸のように軽く風に揺れるものは斬れないだろう
とシグナムは言った。同時にここまで鋭利な剣閃は見たことが無いと、感心したように呟いてもい
た。
スバルが疑問だと言ってはいるけれども、おそらく相当な鍛錬が必要なのだろうとエリオは思う。
「それにしても…すごかったですね。あの時のカイムさん」
キャロが思い返しながら呟く。その点については、見ていた新人たちの見解は相違なかった。
ストラーダを振るう直前に彼らに見せた、背に悪寒を呼び起こす、射抜くような眼光。
目にも止らぬ槍の閃きも然ることながら、刃を構えたカイムが垣間見せた怖気を伴う異様な雰囲
気はあの暴走列車内での任務ですら見せなかった種のものだ。あのような空気の緊張を目の当たり
にしたことは、彼らは今まで経験になかった。
「てことは、キャロも見たことなかったんだ。あの人のああいう顔」
「…はい。ドラゴンさんに訓練してもらってる時は、カイムさん基本的に見てるだけでしたし」
「きゅる」
キャロに続きフリードリヒが頷いたところで、次の教練の時間が近いことにティアナが気づく。
そろそろ移動よと告げると、先に踵を返したスターズ二人の後に続くように、年少組の二人も腰を
上げた。
森に足を運ぶキャロが見続けた、感情の見当たらない無表情な顔。ティアナとスバルが雪辱戦の
時に目の当たりにし、そしてエリオに披露した、極限まで練られた数々の戦闘の技巧。
今まで見せてきた物は少なくないけれども、それでも新人たちの疑問は寸分たがわず一致してい
た。
あのシグナムでさえ眼を見開くほどの技を、彼はどんな経緯で身につけたのだろう。
ミッドチルダの外から、ドラゴンと共にやってきたというカイム。彼は一体今まで、どんな人生
を送ってきたのだろうか。
この中で最も近くにいたキャロにすら語らない、彼の過去とは――
「アンタ、何か妙なコト考えてるでしょ」
「……や、やだなぁティア、そ、そ、そんなことないよっ」
「下手な詮索は止した方がいいわよ。知られたくない話かもしれないでしょ」
「それは…そうだけど」
何か閃いたという顔をするスバルに対し、じと目で見つつそれをたしなめるティアナ。自分にも
身に覚えがあったため、スバルはそれ以上口を開けなくなってしまった。
「…何沈んでんのよ。ほら、シャキっとしなさいシャキっと」
「うん…」
「ああもう! そんなんだと、いつまで経ってもアイツに勝てないでしょ!」
「え?」
何を、といった顔でティアナを見る。
「悔しいけど、わたし一人じゃどう足掻いても無理。次のリベンジにはアンタの助力が不可欠なの!
そんなにあいつの身の上が知りたかったら、その時勝って聞き出せばいいでしょ」
「…………」
「負けっぱなしなんて、絶対許せな…何よ、ハトが豆鉄砲食らったような顔して」
「…へへ。ティアって、やっぱり優しいね」
うろたえる。
「な…ばっ、別に」
「ありがと、ティア」
「わ、たしはそんな…そ、そんなキラキラした目でわたしを見るな!」
「えー」
「えーじゃなくて! だから抱きつくな! こっちくんなっ!」
「ティア、恥ずかしがってかーわいい」
「どやかましいっ!」
この時ティアナが言った、詮索を止せというあの言葉。
それは正しかった。今ティアナにじゃれかかっているスバルが知るのは、もう少し後の話である。
フェイト・T・ハラオウンは戸惑っていた。自分で望み招いた状況ではあるが、いざとなってみ
ると話しかける切っ掛けがどうにもつかめないでいた。
機動六課のオフィスは広い。急ぎ足で駆け回るのならともかくとして、説明しながらゆっくり見
てまわるとなると午前中だけではまだまだ説明しきれない部署もたくさんあるのだ。そういうわけ
で午後も引き継いでシグナムがカイムを案内する予定であった…のだが。
そこに午後は私が、と昼食の場で手を挙げたのがフェイトであった。
勿論、毎日仕事に追われ多忙な時間を過ごしているフェイトには、あまり時間的な余裕というも
のが無い。必然的に夜中や翌日に仕事がずれ込むことになるのだが、それを代償にしても、カイム
にもう少し話を聞いておきたいと思ったのだ。
未だ謎に包まれた彼が、生きてきた道を少しでも聞いておきたかった。
ドラゴンが語った、母に愛されなかった故に精神を病み、人形となった少女マナの伝説。そして
それを聞いた時の、カイムのあの妙な反応。
ドラゴンが呟いた「壊れた」とはカイムに対しての言葉であったようだが、いったいあれはどう
いう意味だったのだろう。自分も一度絶望の淵に立たされたことはあったが、彼の場合は一体、ど
んな――
…とまあ聞きたいことは色々とあったのだが、何せ相手は声を奪われた契約者。
まともな会話など成り立つはずもないし、たとえ仮に声が出せたとしても、何もないところに話
題を提供することをフェイトはさほど得意としてはいない。
そんなわけだから施設の説明を口にする以外、フェイトはカイムに対して何一つ話しかけること
が出来ないでいた。そもそも話しかけにくい風貌をしている事もあるし、なにより時間は経って慣
れてきてはいるものの、初めて出会った時この男にしてしまった恥ずかしい勘違いを忘れているわ
けではないのである。
「それと、ここが開発室…あれっ?」
マントに身を包んだ男を後ろに連れ、デバイスの調整・作成を行うメカニック・ルームを訪れた
フェイト。しかし中に居るはずのシャリオは、デスクにはいなかった。
既に大量に武器を保持しているらしいこの男には不要と言われるかもしれないが、通信用のもの
は必要だし、もしかしたら本格的に何かデバイスを組むこともあるかもしれない。ならばシャリオ
と顔を合わせておいた方がいいかなと思ったのだが、これは当てが外れてしまった。
「おかしいな…どこに」
「あ、それはそうじゃなくて、腕に…と、こうです」
ん? と振り返る。
背後には無表情な男の手を取り、その手首に何かを巻きつけているシャーリーの姿があった。
「シャーリー?」
「あ、フェイトさん。カイムさん用に、映像付きの通信機作ってみたんですけど」
「…仕事早いね。そっか、外にいたんだ」
「はい。お二人が中を回ってるって、シグナムさんから聞いて…あ、遅れました。通信主任兼メカ
ニックのシャリオ・フィニーノです」
届けに来たのだろう、腕時計の形をしたそれは、小さく簡素ながらウインドウも表示できるスグ
レモノだ。
共闘が決定してから今まで一週間も経っていない。新人たちのそれや自分達隊長陣の複雑なデバ
イス調整作業もあるだろうに、まったく良い仕事っぷりである。
「それでですね、ちょっとデバイスの参考にしたくて、一本剣をお借りしたいんですけど…」
「……………」
「いいんですか? ありがとうございますっ」
その後。今現在仕事に余裕があるということで、なし崩し的に二人に同行することになったシャ
リオ。カイムに対しても臆することなく、むしろ積極的に色々と会話を試みた。
やはり話の種は、気になる異世界の魔法技術。ただし口の利けないカイムでも首を振って意思表
示ができるよう、イエスノーで答えられる形で話を進めるのは流石といったところであろう。
今まで手を隠し続けているカイムであるが、少々馴れ馴れしくはあれ心の内にずかずかと踏み入
ることをしようとしない辺りは認めたのだろう。剣を借りたいというシャリオの願いに意外にも応
じ、マントの中、腰に備えていた曲剣「地竜の鉤爪」を手渡した。
シャリオ・フィニーノの辞書にやはり人見知りという文字はない。フェイトはそう改めて思い、
そして感謝した。自分一人では息詰まるだけの場であったが、こうして話してくれる人がいれば何
と明るい事か。相変わらず無表情のカイムの雰囲気も、張り詰めたものが幾分消えているようにも
感じられた。
「…これ…」
「? どうしたの、シャーリー?」
湾曲した剣を手にしたシャリオが目の色を変えて呟き、疑問に思ったフェイトが立ち止って聞く。
「…あ、いえ。一見簡素な造りなのに、組成がすごく複雑で…ちょっとびっくりしちゃって」
黒光りする刀身はドラゴンが言ったのによれば確か、自分も見たあの鉄球を喚ぶ魔法が込められ
ていたはず。
バリアジャケットが無いというデメリットはあるものの、話によれば発動するのに必要なのは魔
力の体内での増幅のみで、口頭による詠唱は全く必要としないという事であった。
制御機能までは付いていないのだろう。しかし自分で発動の位置を調節できるのなら、高速で発
動する強力な魔法は対魔導師戦において大きな戦力となろう。詠唱に時間のかかる、砲撃魔法を使
う前の魔導師を護衛するにはとても向いているかもしれない。
と考えたところで、やはり一つの疑念が頭を過る。
ミッドチルダ以外で、これほど強大な魔法を込めた物品を扱う世界は、ゼロとは言わないがそう
多くもない。だのに、彼らは義兄クロノから聞き出した話によると、管理も発見もされていない全
く未知の世界の出身であるという。考えられない事態であった。これは一体どういうことか――。
…カイムとドラゴンがなかなか話をしてくれない以上、ひょっとするとクロノをもうちょっと強
く問い詰めねばならないかもしれない。物理的な意味で。
「…シャーリー。それ、ちょっとアブナイ人に見えるよ」
というようなことを心の中で思いながら、再びシャリオを見たところでフェイトは言った。
斜めに握った黒い刀身を、熱いまなざしを向けつつ指でなぞる、シャリオの姿は結構怪しかった。
「えっ、で、でもこれ、ホントにすごいですよっ」
『我らにとっては、お主らの杖の方こそ異常なのだがな』
唐突に響く『声』。
何所に、ときょろきょろ見回すと、精神に直接、「上だ」と響く。
ちょうど一通りの案内は終わっていたので、切り上げるのもいいかなと、カイムに先導して階段
を上る二人。
やはりというべきか、待っていたのはあの赤い竜であった。
「あれ? フェイトさん、もう終わったんっすか?」
が、その傍らにはもう一人、男があぐらをかいて座っている。
ヴァイス・グランセニック。
確かに輸送・移送の仕事が無い時は基本的に時間にゆとりのある人間だが、彼もまたシャリオと
同じく、話す相手を選ばない気さくな人間であった。
「ヴァイスさん、こんなところに」
「ちょっと暇してたら、話し相手が飛んできたもんで」
「暇人なだけはある、良い時間潰しにはなったぞ」
「ひまっ…お、俺はそんなんじゃなくてですねぇ!」
ふふ、とシャリオから笑い声がこぼれ、フェイトも安心したように笑って見せた。
どうやら心配しなくとも、…まぁカイムはともかく、少なくともドラゴンの方は、六課の面々と
少しずつ交流を持ち始めていたらしい。
「…さて。案内は済んだのだな」
「あ、はい」
「そうか。…両手に花とはいい身分だな、カイムよ」
「…………」
その言葉には若干の嫉妬が混ざっているように感じられた。
が、フェイトもシャリオもヴァイスも、あまりに小さな声の印象だったため、言葉に出して指摘
することは結局なかった。
「あの…カイムさん」
「……?」
割と和やかになった雰囲気の中、真剣な表情になって呼び止めるフェイト。
『何だ』とドラゴンが訳す。それを聞き、続ける。
「…聞かせて欲しいんです。あなたたちと、あなたたちが過ごした世界のことを、もう少し」
今なら、話が聞けるかも知れない、そう思っての問いかけであった。
シャリオが一緒について来てくれていたおかげで、今まで彼を連れて歩いた時の、纏う雰囲気は
決して悪いものではなかったから。
それを聞くとカイムは小さく俯き、無表情のままで逡巡するような態度を見せる。
しばらくするとドラゴンに向かって顔を上げ、ドラゴンもまたカイムを見つめ返した。『声』の
会話だ。
「そうさな。少しだけ語っても良いそうだ」
「あ…!」
ぱぁっと、フェイトの顔が明るくなった。
少しずつではあるが、やっとカイムも心を開いてくれている――そんな気がして。
が。
「この男の両親は我が同族に食い殺され、故郷は焼き亡ぼされた」
飛び込んできた言葉に、フェイトに限らず場に居た三人とも、思わず耳を疑った。
「…え?」
「もともとこの男は、とある小国の王子であった。お主に話した少女マナの率いる、帝国軍に侵略
されたがな。…その後は数多の戦場を渡り歩き、その身一つで戦い続けてきた」
内容が理解できない。言葉が頭に入ってこない。
殺された? 亡ぼされた? ――あまりにもあっさり告げられた内容に、フェイトたちは混乱し
た。ミッドチルダでも犯罪は起きるし、殺人事件だって無いとは言わない。でも国と国が戦争を繰
り広げることは、少なくともフェイト達の生きる時代には無かった。
ということは、ドラゴンが言っていた『壊れた』という言葉は――
思考にはまってしまった三人を残して、カイムを乗せたドラゴンが大きな翼を屋上に広げる。
それに気づいたフェイトが引き留めようとするも、それを聞かずにドラゴンは、こう言い残して
飛び立って行った。
「続きはいずれ話そう。それが必要に迫られぬことを、我は願うがな」
「あれ…? これ」
いくらか経った後、ふとシャリオが呟いた。
思考の渦から己を取り戻し、何、とフェイトが顔を向ける。
その手には先ほどカイムから借りた湾曲した刃、地竜の鉤爪が握られていた。
「どうしたの?」
「あの…この剣。外の光で、今はじめて気づいたんですけど…」
そう言いながら、シャリオはゆっくりと、刃の腹を指で示す。
何だろう、と、鈍く黒光りのする刀身に目を向ける。
「………血?」
重厚な鋼の上に、黒ずんだその模様は刃紋と見まがうくらいに紛れてしまっている。
だがそこには確かに鉄ではない、その上から付着したとみられる赤黒い何かが残されていた。
血痕だ。
「……どうも、ワケ有りみたいっすね」
「…あのドラゴンさん、何か言ってた…?」
「いえ。自己紹介とミッドの説明してたら、時間経つのが早くて」
問われたヴァイスは首を横に振った。
竜にとってもヴァイスにとっても、会話は本当に暇つぶし以外の何物でもなかった。逆に言えば
ヴァイスがしつこく身の上を聞こうとしなかったからこそ、ドラゴンも話し相手として会話を拒ま
なかったのであろう。
「……明日、何事もなけりゃいいんですがね…」
ヴァイスがぽつりと言った。
翌日には、ホテル・アグスタでの警備任務が迫ってきている。乱入さえなければ、何ということ
ない任務のはずなのだが。
「…大丈夫だよ、きっと」
フェイトのそれは、誰に言った言葉であったか。
151 :
×DOD:2008/01/06(日) 13:55:19 ID:+NbI+uft
展開遅くね? と書いてて思います。そこんとこどうでしょう…
次回ホテル警備開始です。ようやくちょっとアクションが書けるかも。ではノシ
GJ!
カイムの愉快な仲間たちと奇怪な敵さんたちの話を聞いたらフェイト達どう反応するか楽しみすぐるw
gj 原作は知らないのですが、ハードな過去を背負っているのですね。
>>98 GJ!
とある箇所に微妙にシグルイネタがあるのが、面白かったです。
GJ
触りでこれだから、続きを話した時にはどうなることやらw
もういっそ笑い話に思えるほどにエグイかんなー・・・
155 :
153:2008/01/06(日) 15:37:30 ID:kaXaSm8I
連レス失礼。
こうなったら是非とも幸せになってほしいですな。
GJっす、いつも楽しませてもらってます
>>154 そうですよね、竜に両親を殺されて祖国を滅ぼされても、それ以降のカイムの戦いの軌跡に
比べたらマジで些細な出来事で片付けられてしまう感じですもんね…
マジで救いようのない物語だったですよねDODは。
GJ!
嫉妬するアンヘルにもう一つGJ!
これ言うと、カイムに斬り潰されてアンヘルに灰すら残さず焼やれると思うけどさ……
親兄弟が殺されて自分の国が攻め滅ぼされてってのは、まだ『よくある事』だよな。
カイムの場合、これ以降が尋常じゃない血と肉と狂気に満ちているから『突き抜けている』んだよなぁ。
次は隊長陣の指揮が冴え渡るwホテル警備ですね。
どうなる、どうなる機動6課!?
GJ!
DODはオレの友達が病みかけたといっていた。
>奇怪な敵さんたち
少年兵から皆、狂信者だからなあ。
DODは武器一つ一つに物語が用意されてるのがいい、その内容もDOD的で
地竜の鉤爪は最初石で覆われているが
生き物をその剣で殺すことで少しずつ石が削れていく。
そうとは知らずに、正攻法で削ろうとした学者は
石が削れないことに次第に狂っていき
最後はその剣に頭突きを食らわし出血死。
他の武器の物語と比べると物凄くギャグ
GJ
嫉妬するアンヘル可愛いよアンヘル。
今DODやり直してるんですが、カイム達に幸せになって欲しいと本気で思った。
故郷と両親殺されたのがまだ序の口でしかないんだからどんだけ不幸やねんと。
あと
>>159さん、帝国兵は狂信では無く病気です。
思考能力の低下、マナの言葉に逆らえなくなり疑問を感じなくなる、身体能力の向上、目が紅くなる等の症状が出ます。
感染経路などが一切不明、モンスターも人もかかる伝染病で、これにかかったら最後、帝国の為に生きる人形になります。
>>151 GJ!
よかったなシャーリー、渡されたのが地竜の鉤爪で! ゆりの葉とか日出る国だと……ねぇ。
>展開遅くね?
いや、そんなことはないと思いますよ。
カイム達の過去を考えると、打ち解けるのは早過ぎに思えるくらいだし。
次回はアグスタですか。
ぶっちゃけ一時間で強化兵2000人以上(魔法反射含む)を殺し尽くす王子にガジェット幾ら用意したって…w
>>161 俺も同意だな。あんな悲惨な過去があったら是非とも幸せになって欲しい。
ゲームじゃ最後の最後のエンディングが新宿エンドだったからなww
DOD人口こんなに多かったのか…感動した。マイナー呼ばわり
した友人に見せてやりたいくらいだ。
>>161 新宿で待ってます。頑張ってください。
>>162 >シャーリー危機一髪
ぶっちゃけ渡せそうなのがこれしかなかった。40kgの鉄塊とか持
てるわけがないしw
>打ち解け
むう、むしろ早いか。
復讐終わって心の中空っぽになった王子だから、こんなもんかと
思ってます。でもまだ内心はほとんど見せてませんし。
テスト期間入ると間隔伸びるかもだけど、ちょこちょこ書いてくので
生暖かい目で見守ってくれるとありがたいです。
167 :
×DOD:2008/01/06(日) 19:16:10 ID:+NbI+uft
だからコテ忘れた(´;ω;)
168 :
リリカル無双:2008/01/06(日) 19:17:54 ID:hakHdT+P
リリカルなのはと無双OROCHIのクロスの予告もといプロローグが出来たので投下よろしいですか?
支援
新暦75年9月
この月、71年より発生した『レリック回収事件』は『聖王のゆりかご』の破壊と首謀者・ジェイル・スカリエッティをはじめに彼の生み出したナンバーズの11人の逮捕により終結した。
この事件の後。この事件を経験した機動六課は期日により解散。六課のメンバーはそれぞれの道を歩む事となった。
だが、彼女らは新たな嵐が迫っている事をまだ知らなかった…………。
闇が広がる世界……そこにはまがまがしい巨大な施設があった。辺りには赤い熔岩が流れている堀が二重に儲けられている。
その施設の中。一人の男が水晶玉をほくそ笑みながら眺めている。
水晶に映るのは高いビルが立ち並ぶ異世界。
「このような世界にも強者達が居ようとはな……」
次々に切り替わる映像はかつての時空管理局、機動六課のメンバーやナンバーズの姿。
そして、数十年前に管理局員であった第359管理世界、第1590管理世界の実力者達の姿。
男は彼らに告げる。
「人界の強者達よ……その力を我に見せよ。小太郎、動け」
「クク……承知した」
男の傍らにいた小太郎はそう答え、つむじ風と共にその場から姿を消す。
「さあ、どう出る? 強者達よ!」
小太郎が行った事を確認すると男はある女性を呼び出す。
「妲己、プレシアはどうか?」
「まだ、何処に居るかさーっぱりです」
「そうか……」
新暦76年5月10日
時空管理局が保護をしている次元世界。
そこは豊かな自然が広がる平穏な世界。
木々が立ち並び、緑が生い茂り、川の流れの音、生命の音が聞こえる。
ここには、先の『レリック回収事件』に大きく関与したルーテシア・アルピーノとスカリエッティに囚われていた彼女の母、メガーヌ・アルピーノが暮らしている。
「お母さん」
草原を歩いているルーテシアは振り返り、母を笑顔で見遣る。
娘の声にメガーヌは微笑んで傍に寄り添う。
「エリオとキャロにまた会いたい」
「そうね、また会いに来てくれるわ」
友達をこいしがり、母に甘えるルーテシア。
その表情はあの時には見られない幸福に満ち溢れている。
「ガリュー」
母娘の声にルーテシアの召喚虫であるガリューが歩み寄る。
「お前がメガーヌか……」
「!?」
突然、聞こえた男性の冷たい声にメガーヌは庇うようにルーテシアの前に立つ。
「我は風魔。来たる混沌の為に来てもらうぞ」
「何を言っているの?貴方は……」
突然現れたにも関わらず風魔にメガーヌは毅然と立つ。
「ガリュー!!」
ルーテシアの声にガリューは頷き、風魔へと飛び掛かり右の拳を放つ。
だが、風魔は拳を流しガリューを掴み上げる。
「クク、お前の狗は中々に忠孝だな。遊んでやる」
「!!」
その言葉に激昂したガリューは、自身を掴み上げる風魔の腕を掴み彼の頭部へと神速とも感じられる蹴りを放つ。
紙一重で頭を動かして避ける。空を切り裂くような音が耳に響くと再び風魔へと拳が放たれる。
だが、風魔は拳を掌で受けると口の端をつりあげてほくそ笑む。
「クク、刹那の瞬間に我に当てるとはな……。時間だ」
そう言い放つと、風魔はガリューの前から姿を消し。
一瞬の間にメガーヌとルーテシアの前に現れる。
「ルーテシア、お前の母。預からせてもらうぞ」
「っ!? 嫌だ!!」
「駄目、危ないわ!!」
母を守らんと前に出るルーテシアにメガーヌは庇うように押し退ける。
そうはさせんと言うようにガリューは再び、風魔へと背後から飛び掛かる。だが……
「!?」
「お前とはいずれ闘う。待っていろ」
風魔は背後へと右手を翳した瞬間、腕は長く伸びてガリューを掴み遠くへと投げ、一瞬で作り上げた火球を放つ。
「何ていう事っ!? かはっ!」
「クク、なんとも美しい母娘の愛よなぁ」
そう告げると風魔はメガーヌに当て身を放ち、彼女を抱え上げる。
「駄目ぇ、お母さんっ!」
怒りと哀しみが混ざった表情で風魔に飛び掛かる。だが……風魔と母の姿はそこに居なかった。
「母を返して欲しくば……これから来る試練に勝つと良い。クククク」
言葉だけが残り……ルーテシアは涙を滲ませて泣き叫ぶ。
「うわぁぁぁぁぁっ」
どうして……どうして!! やっと、やっとお母さんと!!
風魔に投げ飛ばされたガリューも悔しそうに戻ってくるが辺りに彼の存在は感じられなかった。
「お母さん……おかぁ……さん」
鳴咽混じりの声が虚しく草原に響き渡るだけであった。
そして、この事態は直ぐに管理局に察知される事なる。
無双の嵐が……やってくる。
プロローグ的なものは以上です。
シナリオを考えるにあたり、無双の世界は管理世界で。武将達の何人かは元・管理局員だったという設定にしてます。
GJ!
なかなか面白そう。今後の展開に期待。
>>リリカルなのはStS×覚悟のススメ氏
GJ!やはり覚悟氏は流石と言わざるをえない。覚悟が焦るのも理解できるし、難しいところです。
>>魔装機神氏
GJ!ガマといえば漢祭。あのオチは未だに悪夢です。
>>リリカル・コア氏
GJ!戦闘だけでこれだけ書けるとは……凄いです。
>>×DOD氏
GJ!くっ、DOD氏のカイムの後に投下するのは、内容的に分が悪いというか陳腐と笑われそうだ。
ともあれ内容は素晴らしい。アクションシーンには期待大です。
>>真・リリカル無双氏
GJ!無双好きなのでこれは期待。風魔好きだなぁ。でも一番は半蔵なので忍対決も見てみたいところ。
OROCHIということは三国からも出るのでしょうか?
最近かなり忙しい上に、たまに暇ができると『うしおととら』を全巻読み返していたので、
かなり久しぶりに……何かモノができるまでは、とコテは自粛していましたし。
どうでもいいけど、例えるならエリオは潮でなく、キリオが歳以外にも一番近いイメージ。
LTBや錬金クロスなら弾があるのに、ボウケンジャーがやっぱり難航中。
またも読切で前後編なのですが、20:40頃に投下してもいいでしょうか?
職人の皆様GJです!
そして明けましておめでとうございます!
今年初めてちゃんと書き込んだ気がします。
>>ボウケンさん
大丈夫です!是非投下して下さい!
一応こちらも前回アンケートをとってからやたらと時間がかかってしまいましたが、リリカルBLADE第9話が出来上がりましたので、
ボウケンさんが投下した1、2時間後くらいから投下してもよろしいでしょうか?
ブレードはだんだんと重い話になってきますが……
ブレードは鬱ってなんぼですよ。
では、その次は自分が投下したい心持ちです。
小話メドレーの第3弾が出来たので、お後がよろしけりゃ投下させて頂きたく存じます。
182 :
マスカレード:2008/01/06(日) 20:36:20 ID:uP80pg1d
>>180 あ、私は時間通りに来れるか怪しいので、投下するならお先にどうぞ!
私は後でいいですよ
投下ラッシュ
嬉しい
>>182 左様ですか? じゃあその時の状況次第でしょうが……そうさせて頂きます。
※ 前編だけなのにWordで30ページ。一気に投下すると流石にうざいと思いますので、
2分割して22:30頃に折を見て投下したいと思いますがいいでしょうか?。
私は直後に投下されても全然構いませんので、寧ろその辺りで被らないようにしたいのですが、お願いできませんでしょうか?
注意 「台詞」『強調・固有名詞』《コマンド》【連携】〔閃き〕
どうしようもない危機に颯爽と現れ、蔓延る悪を打ち倒し、力無き人々を救ってくれる。誰もが一度は憧れ、反面、在り得ないと知る存在――それがヒーロー。
子供達は彼らの英雄譚に目を輝かせ、やがて成長と共に忘れてゆく。取り分け少年はそんなものは存在しないと知るのが早かった。
今、少年の前に立ったこの男は、身体には燃える炎を連想させる朱のボディスーツを身に纏っている。金色に輝くヘルメットの両側には大きな翼をあしらい、その額からは一本の尖角が天を突かんばかりに伸びていた。
突き出された拳は眩い閃光を放つ。そして両腕を組んで超然と立ち、雄雄しく名乗りを上げるのだ。
それはまさしく、いつかのあの日モニターの中を駆けていたヒーローそのものだった。
リリカル・フロンティア番外編
――HERO――その名はアルカイザー
前編【ヒーローと少年】
「ヒーロー?」
首を傾げながら、フェイトはシグナムに聞き返した。怪訝な表情からは、明らかに胡散臭いと考えていることが解る。
「ああ。どうも『サントアリオ』という『リージョン』にいて、魔道師をも上回る戦闘能力を持っているらしい」
リージョン――それはこの次元空間に幾つも点在する領域の通称である。大小様々、多くの国家や大陸を内包するものはともかく、島のようなサイズのものなら数え上げればキリが無い。
賑やかさと同時にその裏に危険を孕んだ繁華街『クーロン』、陰陽の術の修行場であり、常に夜の闇が覆う街『ルミナス』、中世日本の景色、文化を色濃く映した『京』etc、それぞれ文明も環境も全く違う世界に最初は戸惑ったものだった。
同様に種族も人間以外に、術に長け人を超える寿命を持つ『妖魔』や、様々な特性を持ち、同種族でさえとても一言では纏められない『モンスター』、果ては完全な自律行動を行う『メカ』までもがリージョン世界には散らばっている。
「でもヒーローなんて嘘っぽいなぁ……」
だが、それほど多様な種族がいても『ヒーロー』などという存在は聞いたこともなかった。
「間違いないらしいがな。少なくとも自分でヒーローと名乗っているくらいだ」
「へぇ……自分で。それは凄いと言うか困ったというか、だねぇ……」
「まぁ……そうだな」
シグナムの談では遭遇したのはヴィータらしい。レリックの捜索中、現れた黄金の戦士はガジェットとモンスターを瞬く間に倒していったのだという。デバイスやその他の武器を使った様子はなく、ガジェットの装甲を砕いたのは光る拳と脚のみ。
彼はどこからともなく現れ、そしてヴィータ達の制止を振り切って姿を消した。
「それだけの存在がこれまでずっと噂レベルだった?」
「以前から存在は確認されていたらしいが、頻繁に姿を現すようになったのはここ数週間のことだ。もしかすると新しい者なのかもしれんが……如何せん情報が少なすぎるな」
訓練後の六課隊舎にて、久々に訓練に参加したシグナムも含めてライトニングの面々は雑談に華を咲かせている。
暫しフェイトとシグナムの会話に空白が生まれると、それまでずっと聞いていたキャロがおずおずと切り出した。
「その人の目的って何なんでしょうか?」
「解らん、ヴィータからの報告を受けて初めて主も調べてみたらしいからな。おそらくはヒーローらしく、正義を成すこと……なのだろう、多分な。これまで姿を確認しているのは、テロリストからの人質救出等大きな事件のみだが、
犯罪組織のアジトの情報を得て踏み込んでみると既に全員が昏倒し拘束されていた、ということも多々あったらしい」
「それもヒーローの仕業だと?」
「逮捕された連中はそう言っている。それは黒い鎧の戦士だったそうだが……」
しかし結局は何も解っていないに等しい。シグナムの発言も「だそうだ」、「らしい」ばかりで要領を得ないのがその証明だろう。
最後に最も重要なことを、思い出したように伝えるシグナム。そもそもこの為にヒーローに関して調査したらしいのだが。
「ヴィータによると奴はこう名乗ったらしい。『ブラッククロス』の野望を打ち砕く者、『アルカイザー』、と」
シグナムと一人を除く全員の表情が強張る。しかし、それは彼の名前に対してではなかった。
その中でただ一人、エリオだけは最後まで口を開くことはなく、誰にも聞こえることのない声で呟いた。
「アルカイザー……」
ヒーロー、その言葉に最後まで複雑な表情を残して。
次の日、休日の朝からエリオとキャロは揃って街へと出た。待ち合わせの場所は空港近くのファミリーレストランである。
「よぉ。早かったな、二人とも」
店内を見回す二人は、すぐに声の人物を見つけて席へと進む。片手を上げて誘導しているのは、ライトブルーの髪を天に逆立てた奇抜な青年だった。
「おはようございます、レッドさん」
いかにも不良っぽい容貌の彼にエリオとキャロは動じることもなく、軽く挨拶をして向かいの席に座る。
レッドこと小此木烈人――彼とエリオ、キャロの出会いは二週間前に遡る。
その日、これまでミッドチルダ以外のリージョンに私用で出かけたことの無かった二人は、エリオの提案で思い切ってクーロンへと出かけた。二人きり――と言ってもデートなどではなく、子供同士でのちょっとした背伸びのつもりだった。
あまり整備されていないであろう狭い街並みには、上にも下にも電飾看板が幾つも設置され、物も人も雑然としていた。人語を解するモンスターが平気で往来を歩いたりしているのはミッドでは見られない光景だが、少なくとも活気だけはある。
リージョン世界の物流や交通の中心にあるだけのことはあって、ズラリと並んだ簡素な露店は見たこともない珍しい物ばかりだった。ショッピングを楽しむことに気を取られ、ここが治安の悪いリージョンであることを忘れていたのかもしれない。
目移りしながら歩いている内に、いつの間にか二人は人ごみに流され、気付けば賑やかで明るい大通りから怪しく暗い裏通り。薄暗く陰湿な空気、表の活気とは打って変わって不気味な静寂に包まれている。
治安の悪さで有名なクーロンも、大通りから外れなければ問題はない。だが、逆に言えば大通りから外れては危険に巻き込まれても何ら不思議はないのだ。
「ねぇ、エリオ君……。私達ひょっとして迷っちゃったんじゃ……」
「だ……大丈夫だよ!表通りに出れば大丈夫……」
と、言いつつ先程から表通りに出ようとしているのだが、迷路のような路地と、この暗さのせいで更に深く嵌っているような気さえする。遠くでスライムのようなモンスターが蠢くのが見えた。
内心エリオも不安を隠せない。だからこそキャロにその言葉を言って欲しくなかったのだが。
どちらかというと分割とかいいから一気に投下して欲しいぜ支援
アセルス様は〜?支援
ビクビクしながら路地を進むと、物陰からはチラチラと何かが覗いている。怯えるキャロがエリオのBJの袖を摘む。
「エリオくぅん……」
「大丈夫だよ……僕が付いてるから……」
それでもキャロの震えは止まらない。エリオの根拠のない励ましはキャロの不安を取り去ることはなく、次第にエリオへも伝染した。
モンスターだろうか? 息を整え、思い切ってストラーダを構えて飛び出すと、
「うぉ!?」
切っ先を突きつけられた男が仰け反った。彷徨っている時間は短いはずなのに、随分久し振りに人間を見たような気がして、エリオは自然に安堵の息を漏らした。
「デバイス? お前ら……魔導師か? それにしちゃ随分と可愛い魔導師だが……道にでも迷ったか?」
最初はこんなところをうろついている彼を警戒したものの、彼はストラーダを突きつけられても怒りもしない。
困り顔ながらも心配してくれる男の微笑みがとても温かくて、エリオとキャロは次第に警戒を解いていく。
「ええ……帰り道が解らなくて……」
男を信用して経緯を話すエリオ。並のモンスターに遅れを取ることはないが、この辺りのモンスターがどれほどのものか解らない以上、このまま迷い続けたくはない。
何よりも迷っているという不安から早く逃れたかった。
「じゃあ付いてきな。空港まで送っていってやるよ」
「本当ですか!?」
ようやく頼れる存在を見つけてエリオとキャロは、ぱぁっと顔を輝かせる。
「ああ、大丈夫だ。任せときな」
それから十分ほど歩いただろうか。周囲の景色は変わることなく、むしろ怪しくなっていく。こちらを遠巻きに見るモンスター、路傍に転がる白骨にエリオとキャロの背中に寒気が走る。
「あの……本当にこっちで合ってるんでしょうか? なんだか違う方向に来てるみたいなんですけど……」
どうにも違う方向に向かっている気がしてならない。いよいよ堪らなくなってきたエリオは男にそう言ったのだが、
「大丈夫だって。俺はこれでもクーロンの裏通りには詳しいんだぜ?」
返ってきたのはまたも"大丈夫"。しかし今度のそれは不安を消すことはなく、反対に猛烈に掻き立ててくる。しかし、今ここで別れたとしても無事に帰れるとは限らない。
もしかすると、状況は先程までより危険になっているのかもしれない。
ツンと鼻につく異臭は下水だろうか? 汚水の臭いと、日の当たることのない薄汚いコンクリートに張り付いたカビや、その他のゴミの臭いが相まって嗅覚を刺激する。
「何だか気持ち悪い……」
キャロはこの異臭に敏感に反応しているようだ。無理もない、実際エリオも鼻が曲がりそうだ。おそらく彼女の場合は気疲れや不安も関係している。
「仕様がねぇな。嬢ちゃん、良かったらこれでも飲みな」
男が懐を探って取り出したものは小さなボトル。透き通った容器の中には黒い液体が満たされている。
「わぁ、ありがとうございます」
匂いから察するにコーヒーだ。しかもかなり濃い。これなら他の臭いは気にならなくなるだろう。
湯気を立てるコーヒーを熱そうに啜るキャロが、あんまり美味しそうに飲むものだからエリオも気付けば喉を鳴らしていた。
「あの、僕も貰っていいですか?」
「ああ、好きなだけ飲みな」
男はにこやかに笑ってキャロから返されたボトルをエリオへと投げ渡す。エリオは少し危なっかしい手つきでそれをキャッチ。
口を付ける直前でエリオはふと気付く。これはキャロが数秒前まで飲んでいたものである。ということはこれは間接キス――。
エリオの顔が見事に朱に染まる。それなのにキャロはきょとんとして小首を傾げていた。
「どうしたの、エリオ君? 顔が真赤だよ?」
「な、なんでもない! なんでもないよ!」
ぶんぶん首を振ってやましい考えを頭から振り払う。それでも顔の火照りは消えなかったので、エリオは照れ隠しで中身を一気に呷った。
「うっ……げほっげほ!」
喉を流れた液体は酷く苦く、少し熱かった。
「キャロ? どうかしたの?」
更に数分後、後ろを歩くキャロの足取りが急に重くなった。疲れもあるのかもしれないが、彼女とてそれなりに鍛えている。まだ迷って一時間程度しか経っていないのに、幾らなんでも消耗するのが早すぎる。
「うん……。疲れたって言うか……急に眠くなってきて……」
前屈みになりながら辛うじて歩いていたが、やがて壁に縋るようになり、仕舞いには膝から地面へと倒れこんでしまった。
「キャロ!?」
キャロの明らかな異常にエリオが駆け寄る。倒れたキャロはすやすやと寝息を立てていた。
「寝て……る? これは……――!」
突如、エリオも急激な眠気に襲われた。
鈍くなっていく頭で必死にこの状況を整理する。可能性は幾つも――否、一つしか考えられない。
「あなたは……」
前を歩いていた男は冷ややかにエリオを見下ろし、口元を歪めた。
「悪いな、これも仕事なんだ」
その言葉でエリオは全てを理解し、己の浅はかさを呪った。こんな所でモンスターに怯えるあまりに、この男が怪しいと解っていても飛びついてしまったことを。
「デバイス込みで、お前達ならきっと高く売れるだろうさ。特にそっちのお嬢ちゃんは……」
エリオは下種な笑みを浮かべるこの男を心底憎いと感じていた。しかしそれ以上に許せないのは、自分自身。道を間違えてしまったのも、男を頼ってしまったことも、コーヒーに何の警戒も抱かなかったことも、全て自分のせい。
ならばせめてキャロだけでも守らなければ。エリオは霞む眼でストラーダを振りかぶり――自らの左太股に突き刺した。
「くぅ……ぅぁぁ!」
点々と血がコンクリートの地面を染める。痛みで声も出せない。だが、お陰で意識は少しだが冴えてきた。
「キャロは……僕が守る!」
だがエリオはこの時、背後の陰から現れたもう一人の男――スキンヘッドにサングラスといういで立ちの、どこにでもいるゴロツキ――に気付かなかった。そしてその男が、血を流しおぼつかない足取りでストラーダを構えるエリオに拳銃を向けた。瞬間、
「なるほど。迷い込んだ観光客をこうやって売買してるって訳か」
背後の男の更に後ろからの声。振り向いたエリオは拳銃を向けた男よりも、声の主に目を奪われた。水色の髪を逆立て、服装は逆に眩しいくらいに赤で統一している青年だ。
「誰だ!」
背後の男が向き直るよりも早く、
《スライディング》
青年は滑り込んでくる。素早い動きに反応できなかったゴロツキの足を容易く払う。
「う、うわぁ!」
縦に一回転して、ゴロツキは頭を強かに打ちつけ昏倒した。スライディングだけではない。倒れこむ瞬間に青年が腕を取って回したのだ。
リージョン世界では、剣術や体術を極めた人間はA〜Sランクの魔道師にも匹敵すると言われる。もしや彼もその類の者だろうか。
「て、てめぇええ!」
《精密射撃》
仲間を倒され、逆上した男は懐から拳銃を抜いて青年に発砲。青年は動じることもなく、左腕を盾にした。
凄まじいスピードで迫る弾丸は、しかし呆気なく、空しい金属音を立て、青年に届くことはなかった。ワンダーバングル――実弾の類であれば大型拳銃『べヒーモス』やガトリングガンですら弾く。『アグニSSP』程度の小型であれば造作もない。
だが、その小さな腕輪の性能もさることながら、弾道を見切っていなければ不可能な芸当であることはエリオにも理解できる。
「な……な……!」
男とエリオが驚愕する間に、青年は男に一歩の距離まで接近する。手刀で拳銃を叩き落し、男の胸倉を掴んで引き寄せた。
「おい、お前……『ブラッククロス』を知っているか?」
青年の第一声はそれだった。殴られるか咎められるかとビクビクしていた男としては意外な問い掛けだったろう。
「あ、ああ。う、裏家業をしている奴でブラッククロスを知らねぇ奴なんざいねぇよ」
「お前もその一員か?」
胸を掴む腕がギリギリと引き絞られる。睨む眼は炎のように燃えている。
「ち、違う! 俺みたいな小者じゃ連絡も取れねぇ、本当だ!」
「そうか……」
「頼む、許してくれ! 俺も弟や妹を食わせる為に……。自立してる上の妹、養子の決まった下の妹の他にもまだ弟が――」
「……もういい、行け。でも、もうこんな仕事はするんじゃないぞ」
青年は掴んだ腕を緩めて男を軽く突き放す。彼の意外な行動に、男は呆気に取られているようだ。
「ちょっと……ぐっ!」
ストラーダを地に立てて跪いていたエリオは、犯罪者を見逃す行為に抗議しようとする、が出来なかった。立ち上がろうとした際の激痛にそれは中断されてしまう。
「おい、大丈夫か? 足を怪我しているな。立てるか?」
エリオに手を伸ばす彼の表情はとても優しげで柔らかだった。しかし、今のエリオにその笑顔を素直に受け取ることはできない。そう言ってまた騙されるかもしれないのだ。
青年は噛み付きそうな目で睨むエリオに溜息を吐き、キャロの様子を見ようと彼女に近づく。
止めなければ。そう思うのだが、またも眠気に襲われる。
(くそっ! こんな時に……!)
歯痒く思うエリオの意思とは裏腹に、意識を溶かす甘い誘いに身体は傾いていく。
震える腕でもう一度ストラーダを振り上げる。狙いはもう片方の太股。取り柄である両足の移動力を奪われてまともに戦えるはずもないが、それでも痛みが2倍になれば少なくとも意識は冴えるだろう。
キャロを、仲間を守れるなら足など惜しくない。この時は本気でそう思えた。
「――!!」
振り下ろされるストラーダはそれ以上に強い力で止められた。掴まれた腕が痛かった。
腕を掴む青年は怒るでもなく、笑うでもなく、ただ無言で首を振る。振り切ることはできた。だが、無言の言葉に気圧されそれ以上力が入らなかったのだ。
エリオの景色は、次第にぼやけていく。薄暗い風景、青年の顔、全てが霞んでいく中で、青年の背後でナイフを取り出す男を捉えた。
「ぁ……」
声を出そうとするが、今度は眠気のせいか上手く発声できなかった。男はナイフを腰溜めに構え、青年の背中に忍び寄る。
「……ぁ、危ない!!」
エリオが絞り出した声と同時に、突き出されたナイフを青年は左に半身を逸らしてかわす。身体ごと突き出した為、男は体勢を崩した。
すかさず足を払い、ナイフを叩き落す。次に男の身体を逆さに持ち上げ、
《スープレックス》
軽く跳躍。そのまま叩きつけるつもりだろう。この固い地面に叩きつけられれば、当然無事では済まない。
「うわぁあああああああ!!」
男の悲鳴が裏通りに轟く。エリオも思わず目を瞑るが、いつまで経っても鈍い音は聞こえてはこない。
恐る恐る目を開くと、青年は足を立てている。男は逆さ吊りのまま、涙やら鼻水やらを垂れ流して荒い息を吐いていた。
それにエリオは不思議と安心した。悪人とはいえ、できるなら殺したくない。命を奪われるところを見たくはない。
安心すると忘れていた眠気が再びぶり返してくる。今度は逆らわず、エリオはそのまま目を閉じた。
青年を信用した訳ではない。ただ、そうしてもいいような――そんな気がしただけだった。
意識を完全に失う直前、エリオはふわりと身体が浮くような感触を覚えた。
目が覚めて最初に目に入ったのは蛍光灯の眩しい光。
「ぅ……」
片手で光を遮り数秒、ようやく意識がはっきりしてきた。周りを見回すエリオ。
白い壁、無機質な作りの部屋にベッドが幾つかと、棚には包帯や薬類。医務室のようだが、管理局のものではない。
「ここは!? っ……!」
寝かされていたベッドから飛び起きると太股が痛んだ。どうやら夢ではないらしい。証拠に傷口には丁寧に包帯が巻かれている。
「キャロ! キャロは!?」
「ぅ……ん……。エリオくん……?」
声は隣のベッドから。キャロは眠たげに目を擦っている。
「キャロ! 大丈夫かい!?」
見たところどこにも傷は無い。まだ寝惚けているキャロは状況が理解できていないようだ。
「ここ、どこ……?」
「解らない。でも取り敢えず外に出よう」
誘拐するつもりなら意識を失っている内にデバイスを取り上げるだろうが、二人ともデバイスは手元にある。それでも警戒するに越したことはない。
ゆっくりと扉を開くと、
「あら? 起きたのね」
左上から女性の声。見上げると紫の髪の女性が微笑んでいる。化粧のせいか、エリオにはフェイトやなのはよりもずっと大人っぽく見えた。
「ここは……?」
「出口まで案内するわ。付いてきて」
彼女はエリオの問いに答えることもなく、歩き出す。普通の一本道の廊下の左手には下への階段がある。
気にはなったが、女性が右の上り階段を行くので二人は大人しくついて行くことにした。
無言で廊下を歩き階段を上る間、エリオはキャロに念話であの後のことを簡単に説明した。但し、足のことだけは適当に誤魔化して。
「さぁ着いたわよ」
扉の向こうは蛍光灯よりも柔らかいシャンデリアの光で照らされていた。
清潔で落ち着いた内装の店内には、整然と並べられたテーブルと椅子、純白のテーブルクロスの上にはワイングラスが伏せられている。
「レストラン……?」
その一角にはエリオを助けた青年が座っている。テーブルに並んでいるのは、どうやらパスタ料理のようだ。
「よぉ、起きたのか。このイタメシ屋は俺の馴染みの店なんだ。腹減ってるだろう? 食っていけよ」
完全呆気に取られていたエリオとキャロの疑問を先読みして、青年は隣の女性を指差す。
「お前らを治療してくれたのはそのお姉さんだ。クーロンのそこらの医者よりも信用できるし、腕も確かだぜ」
「あらあら」
隣の女性は頬に手を当てて妖艶な微笑みを浮かべている。照れているのかどうか、その表情からは読み取れない。
「あなたは……?」
意表を突かれたエリオはそんな言葉しか思いつかなかった。キャロはというと、彼女も完全に思考停止しているようだった。
「俺は客船型リージョンシップ『キグナス号』の機関士、『小此木烈人』。レッドでいい」
「レッドさん……」
「あの人はどうしたんですか?」
キャロの言うあの人とは、エリオ達を罠に嵌めようとした男のことだろう。
「あいつならパトロールに突き出してきた。色々訊きたいこともあったしな」
「じゃあ……どうして僕達を助けてくれたんですか?」
彼はそんな質問するのがおかしいとまでに、
「子供が攫われようとしてるのを助けるのに理由が必要か?」
エリオの質問を笑い飛ばす。だが、そんなお手本のような答えは今のエリオには信じられない。優しい言葉の、その裏を疑わずにはいられない。
「本当の理由は何なんですか……?」
レッドは彼の睨みつけるような真摯な眼差しに苦笑した。幼いが故の真っ直ぐさを懐かしがるように。
「俺にも妹がいたんだよ。だから……それもあったのかもな」
たった一言だったが、"いた"という部分だけで解る。どんな理由だろうと、もう会えないのだろう。だからそれ以上を訊こうとはおもわなかった。
「そう言うお前らは何でクーロンなんかにいたんだ? 子供には5年は早い街だぜ。隙あらば他人の足を掬ってやろうって奴らも多いんだ。不用意に踏み込むには危険だって覚えておくんだな」
レッドの忠告は確かに正鵠を射ている。しかし、否、だからこそそれはエリオを激しく苛立たせた。
正面から戦えば100%、絶対に負けなかっただろう。それでも現実にエリオとキャロは罠に掛かって売られ兼ねないところだった。足を傷つけてでも守ろうとしたが、結局は何もできなかった。
「僕を子供扱いしないでください!」
エリオの怒鳴り声に、その他の客が数人驚いて振り向く。
思わず口を吐いて出た言葉は、自分が子供だと認めたのと同じ。何故だろうか、フェイトやなのはには子供扱いされても悔しくなんてなかった。自分が子供だということも自覚しているつもりだった。
「……行こう、キャロ」
エリオはキャロの腕を掴んで無理矢理出口へと進む。レッドも介抱してくれた女性もそれを止めようとはしなかった。
「エリオ君? お礼言わなきゃ……」
「……」
キャロは礼を言わないことを抗議しようとエリオの顔を覗き込み、それきり何も言えなかった。無言で手を引くエリオの目には涙が一杯に滲んでいた。キャロにはその涙の訳までは知る由もなかったが。
背伸びの代償――それは自分の未熟さと弱さを痛感させられた悔し涙。
帰ってからはフェイト達にしつこく追求され、かなり絞られたものの、なんとか厳重注意で済ませられたのは幸運だっただろう。
それでも浮かない顔のエリオを見かねたキャロはキグナスと連絡を取り、レッドを呼び出したのである。エリオは嫌がったが、キャロに本気で凄まれると仕方なくレッドと会うことにした。
そこで二人は改めて助けて貰った礼と疑ったことに対する謝罪を済ませた。レッド本人は全く気にしていない様子だったのだが。
それから三人は互いの事情を多少話した。シンロウ、マンハッタン、ヨークランド、オウミ――レッドの話す様々なリージョンの話は、殆どミッドチルダ以外のリージョンを知らない二人には新鮮なものだった。
どうやらレッドも、二人に様々なリージョンを教えるのは面白いらしく、次第に三人は打ち解けていった。
会えるのはレッドの休みと二人の休みが重なる日、しかもキグナスがミッドチルダに寄港している時のみなので、三人が会うのはこれが4度目である。
「レッドさんは今度はどこのリージョンに行くんですか?」
興味津々といった様子のキャロ。キャロは随分とレッドが気に入ったらしい。
「確かシュライクだ。済王陵と武王の古墳くらいしか目ぼしいものはないな。怪し気な研究所と……他は静かな住宅地だ。本当、何の変哲もない……」
シュライクを語るレッドは昔を懐かしむような、どこか遠い目を見せる。
「そうなんですか。またお土産話聞かせてくださいね」
レッドは言うなれば今の二人にとって社会勉強の先生のようなものだろうか。他人な分、フェイト達だと訊きにくいことも訊けるし、言いたいことも言える。
「僕はシンロウの王宮を見てみたいな。後はネルソンで帆船を見てみたいです」
自分とレッドも打ち解けたと思う。勿論レッドが好きか嫌いかで言えば好きだし、尊敬もしている。彼の話もとても面白くて惹かれる。
だがエリオは、自分の彼に対しての感情はそれだけではないような気がしていた。
「私はあの時のレストランで食べられなかったのが少し残念です。いつか行ってみたいなぁ……」
「その時は2人以上の保護者同伴だな。あの辺りは安全とはいえ、クーロンはクーロンだからな」
「もう大丈夫です。あんまり僕達を子供扱いしないでくださいよ、レッドさん」
まただ。彼と話すと一度は必ず言っている。スバルやティアナに子供と呼ばれても全然気にならないというのに。
乱れ雪月華支援
「そういうところが子供なんだよ。食べてるものもな」
レッドがからかうように、ニヤニヤして指差す。
テーブルのエリオの前に並べられているのは小盛のハンバーグとミートスパゲッティに、サラダとスープ、ドーム状に盛られたチキンライスには何処かの旗が棚引いている。俗に言うお子様ランチ的なものである。
「これは……色々食べたかったから……」
「ふふっ、エリオ君可愛い」
立ち上がって反論しようとすると、クリームを口の周りにいっぱい付けてストロベリーパフェを頬張るキャロがクスクス笑うのでエリオは赤面しながら着席した。
本当は"僕達"でなく、"僕"を、と言いたいのかも知れない。彼には何故か侮られたくない、負けたくないと思う。
背伸びした自分を、無理をしていた自分を見られたからか。
それともあれくらい僕でもできる、僕はこんなものじゃないと思うからか。
キャロが懐いているからか。
彼がなのはやフェイトのように遥かに高い存在だったならこんなこともなかったのか。
この気持ちが何なのかは当のエリオにも解っていないが、少なくとも単純な"嫉妬"や"憧憬"といった言葉で片付けられるものではなかった。
その頃、六課隊長室で八神はやては一人――比喩でなく文字通り――頭を抱えていた。
「ブラック……クロス……」
ヴィータからの報告にはやては戦慄した。ガジェットとモンスターが同時に出現、これまでスカリエッティがモンスターや妖魔を使役してきたことはなかった。
そしてヒーローの言を信じるならば、これはスカリエッティとブラッククロスが繋がったことを意味している。
ブラッククロス――次元世界の闇に潜む巨大な次元犯罪組織である。麻薬、政治家誘拐、密輸、武器製造、暗殺etc。
相当の武力を有し、世界中のありとあらゆる犯罪はどこかでブラッククロスに繋がっているというのは、あながち誇張でもないのだ。
規模の割りにその内情は全く知られていない。解っていることは四天王と呼ばれる幹部が4人、そしてブラックレイの存在。
ブラックレイとはブラッククロス所有の戦闘艦である。数少ない目撃例によるとエイ型の漆黒の船らしい。目撃例が少ないのは目撃した船の悉くが撃沈されているからだろう。
何より恐るべきは、その機動力とステルス性能。XV級すら撃沈したと言われているが、真偽は定かでない。
「これはもしかすると……」
最早六課だけの手に負える事件ではなくなるかもしれない。活動範囲も恐らくミッドには収まらないだろう。
そんな時の為の六課ではあるが、相手が相手である。色々局内での面倒も増えることは確かだ。それを考えると頭痛が止まらなくなるというもの。
「なんにせよ、今は真偽を確認することが最優先やね……」
誰もいない部屋で、はやては一人頭痛薬を含んだ。
時術はマジで鬼支援
数日後、シュライク。レッドの言う通りの閑静な住宅街くらいしかない。
フェイト、シグナム、エリオ、キャロのライトニング分隊もこの日ここを訪れていた。
「ねぇエリオ君。あれってキグナスだよね?」
「うん、本当に白鳥の形なんだね」
発着場で見かけた白鳥の船、客船キグナスを見てキャロが感嘆の声を上げた。次元空間内の混沌を進む船の形状はどんなものでもよいとはいえ、純白の翼を広げた巨大な白鳥には流石に驚きを隠せない。
初めて訪れるシュライク、それにキグナスの美しさに目を奪われるエリオとキャロ。任務中だとシグナムが軽く諌めている時、
「(済王陵付近の公園に戦闘機人出現。至急向かってください!)」
目標を発見したとの通信が入る。同時に二人の顔も一気に引き締まり、弾かれたように走り出した。
深部に立ち入った者は一人として戻らないと、永く封印されてきた曰く付きの済王墓。しかし、その中にレリックが眠っているという可能性がある。今日はそれを調査にやってきたのだ。
そしてレリックがある所には必ず現れるのが彼女ら戦闘機人。しかし彼女らが公園で一般人の前に姿を現す――それが不審であることは誰もが疑問に思っていた。
「うわぁぁぁぁぁん!! ママー!」
済王の古墳すぐ傍にある公園。そこでは奇妙な光景が繰り広げられていた。
「ちょ、大人しくしてほしいッス!」
「どうしよう……ほら、泣かないで。お菓子あげるから」
そこでは気絶している現地管理局員と眠らされた母親のすぐそばで、泣き叫ぶ子供達を戦闘機人達が捕らえていた。
ウェンディとセインはなんとか子供達を宥めようとしているが、トーレは暴れる子供の手を強く握って途方に暮れている。
スカリエッティ博士の命令に従って行動するのが、自分達戦闘機人が生まれた意味である。しかし、今回ばかりは博士の意図が読めなかった。
今回与えられた任務、それは3,4人子供を攫って生命科学研究所へ連れて行けというものだった。これまでのドクターならば有り得ない指令。
Dr.クラインとやらと接触してから、ドクターの雰囲気が変わったのは確かだった。
「(トーレお姉様、確保したなら至急生命科学研究所へお願いしますわ)」
命令を聞かされた際に疑問を口にもしたが、答えは返らなかった。そして自分達に拒否権は無い。
「ああ、解っている」
生命科学研究所――詳しくは聞かされていないが、怪しげな研究を行い近隣の住民は近寄ろうともしないらしい。
「離して! ママ、ママァー!!」
腕の中では年端もいかぬ少女が、腕をへし折らんばかりに強くもがいている。これが人が生きようとする力なのだろう。
研究所で何が行われているのか知らないが、恐らくこの子達が母親や父親と会うことはもう二度と無い。母に抱かれることも、父に撫でられることもきっと叶わないのだ。
仕方のないことといえ、罪の無い子供の人生を奪わなければならない。泣き叫ぶ少女の声、涙、感触――全てがトーレに痛みを与える。できることなら全ての感覚をカットしてしまい衝動にすら駆られるほどに。
トーレは暴れ続ける少女を薬で眠らせて抱きかかえた。同様にしたセインやウェンディも同じく表情を曇らせている。
「なんでこんなことしなきゃいけないんスか……?」
「……行くぞ」
ウェンディの問いにトーレは答えない。彼女もまた、それに答える術を持たなかったから。だから誰にも聞こえないように心で問いかけるしかなかった。
(ドクター……貴方は……)
ブライトナックル支援
時間触や停滞のルーンと組み合わせると…支援
生命科学研究所へと向かう為に公園を出ようとした時、公園に飛び込んできた一人の男がトーレの前に立った。
「その子達を何処へ連れて行くつもりだ!」
レッドはトーレ達の前に立ち、拳を構える。ブラッククロスの手掛かりを求め歩いていた時、公園からの悲鳴に駆けつけたのだ。
戦闘機人、その存在は知らずとも目の前の彼女が只者でないことは感じている。
「何故邪魔をする……、といっても……当然のことだろうな」
トーレは自嘲気味に含み笑いを浮かべ、抱えた少女をセインに預ける。
「セイン、頼むぞ。私は相手をしてから行く」
「トーレ姉、でも……」
一般人などその気になれば振り切ることは容易い。しかし生命科学研究所へ入るのを見られるのは得策でない。そして何より、
「今は少し憂さを晴らしたい……」
「……わかった」
セインとウェンディは子供を抱えて走り去った。レッドとしては追いたいところだが、目の前の女がそうもさせてくれそうにない。
離れた位置からでもピリピリした気配を感じる。
(多分、俺よりも格段に強い……)
しかしそれは生身での話である。彼は足を開いて大きく息を吸い込み、唱える。
「へん――」
「レッドさん!?」
それを遮って乱入してきたのは、既にBJを着用しているエリオ・モンディアルだった。
「お前……何でここに!?」
「レッドさんこそ!」
ストラーダを構えてレッドに並ぶエリオ。既にエリオを魔道師と知っているトーレは全く動じていない。
「私は二人でも構わない。行くぞ!」
《鬼走り》
トーレは地を擦るのではないか思う程に身を屈め、拳を突き上げる。発生した衝撃波は一直線にレッドとエリオへ向かい、会話に気を取られる二人を飲み込んだ。
「うわっ!」
「くっ!」
見た目の割りに傷は無いが、この一撃で彼女の技量が相当であることを、レッドは再確認する。
「他の皆には子供達を追ってもらいました。レッドさん、ここは僕がやりますから逃げて下さい」
「そうか、だったらここは俺だけでなんとかする。だからお前は子供達を助けに行くんだ」
その言葉にエリオは目を見張った。が、すぐにトーレを向いて答える。
「駄目です、僕は管理局員です。民間人を危険に晒したままにはできません」
《金剛神掌》
トーレは畳み掛けるように高速でエリオの懐に潜り込む。ISを使用していた為に咄嗟に反応できなかった。闘気の塊と化した正拳がエリオ目掛けて放たれた瞬間――。
「ぐぅぅ!!」
レッドがライドインパルスの速度に反応し、間に割り込んでいた。防御したはずなのに、腕は真赤に腫れ上がり、摩擦の煙を微かに立ち昇らせている。
「レッドさん!?」
「……解ってないな。お前が今、何よりも優先すべきは子供達の救出だろうが。俺は自分の身くらい自分で守れる。だから行け」
これも正直な気持ちではあるが、流石に本当の理由は言わないで伏せておく。
(お前がいたら戦えない、なんて言ったらまた膨れるかな?)
「何よりこいつは俺を殺す気はない」
エリオは未だ釈然としない表情だったが、やがて短く頷く。レッドも軽く微笑んでそれに答えた。
「よし、行け!」
エリオの脱出の隙を作る為に、レッドはトーレへ駆け寄る。同時にエリオも公園を離脱し、生命科学研究所へ向かう。
《ローリングクレイドル》
隙を作る為にも一度投げて距離を取りたい。が、正面から組めると思ったのが甘かった。
《当て身投げ》
伸ばした腕を取られ、すかさず鳩尾に肘鉄を入れられ、そのまま投げ飛ばされる。一連の動きがあまりにストレートに決まり、レッドは声も出せず転がって悶絶した。
「――!!!!」
「もういいだろう。そこで寝ていろ」
言い捨てて公園を去ろうとするトーレ。こんなことをしても憂さなど晴れるはずもなく、もやもやしたわだかまりだけが胸に残っている。
「待てよ……」
だが、レッドは立ち上がっていた。あれほど叩きのめしたというのに、まだ立ち上がってくるのは、トーレには理解できなかった。
「まだ……立つのか」
「子供達を……返せ」
ふらふらになりながらもレッドは立っている。形勢は絶対的に不利。しかし、まだ彼には切り札が残っている。
「へんし――」
《三角蹴り》
先程の金剛神掌とは比べ物にならない本気の速さ。街灯を蹴り、勢いを乗せた脚はレッドの腹にめり込んだ。
せめて苦しまないよう、一撃で昏倒させるつもりで放った蹴りだ。レッドは静かに崩れ落ち、そのまま意識を失ったらしく、もう起き上がってくることはなかった。
気絶したレッドを見つめて、トーレは顔を顰めた。不快な気分だけを残したまま通信を飛ばす。
「セイン、ウェンディ、研究所に引き渡したら撤退だ。それ以上付き合う必要は無い」
「ここ、見た目は普通の研究所みたいだけど……」
エリオは3人に合流し、今は研究所内を4人で探索している。傍目には異常は見られないが、エリオにはこれだけでも十分に気分が悪い。
所内に漂う薬品のような臭い、そして何故か獣臭。無機質な空気――過去の忌まわしい記憶、かつていた研究施設を思い出す。
妖魔エンドいいよ支援
「でも……誰もいませんね」
所内は無人だった。受付らしき場所もあったが、人影どころか痕跡も見られない。
仕方なく捜索を始めると、意外にすぐ人を発見できた。研究室らしき部屋に白衣の男性、まず間違いなく研究員だろう。
「時空管理局の者です。こちらに誘拐犯が子供を連れて逃げ込んだはずなのですが、何かご存知ありませんか?」
フェイトの問いに男は答えない。まったく聞いていないのか、虚ろな瞳でブツブツとうわ言を呟いている。まるで薬物中毒のような異様さは寒気を感じさせる。
「所長に面会を希望したい。所長室の場所を教えてもらえないだろうか?」
シグナムの問い――所長というキーワードに男の肩が震え、機械のような動作で振り返る。虚ろな瞳はかっと見開かれ、やがてその口も開かれた。
「何故こんなことに……。俺は間違っていたのか?」
掠れた声で告げると、男の身体が膨れ上がった。皮膚は甲殻と化して緑に染まり、脚は百足のように一つに結合され、背中からは無数の鋭利な突起。
蟷螂を思わせる鎌のような鋏を振りかざし、目は昆虫の如く鋭く伸び、歯は牙となった。
「な……」
全員が言葉も無く見守る中、男はモンスター『ゼロディバイダー』へと完全に変態を遂げた。
既に人としての意識は残っていないのか、独特の呼吸音を立てて鋏はキャロへと伸ばされる。
それでもキャロは動こうとしない。ようやく状況を認識して回避を取ろうとした時には、鋏は彼女の細腕に噛み付こうとしていた。
「キャロ!」
《ディフレクト》
寸でのところでフェイトが鋏を叩き落す。流石にフェイトやシグナムは、驚きながらも素早く危機に反応していた。
「……どうする? シグナム」
「やるしかないだろう……」
フェイトに対しシグナムは即答した。元は人、だが今は耳障りな音で鋏を鳴らしながら、攻撃の機会を窺っている眼前のこれを見れば当然の答えと言えた。もう――人とはいえない。
「そんな!? この人は人間なんじゃ……?」
「モンスターが人の振りをしていた可能性もある。非殺傷で様子を見てみよう」
フェイトはキャロに答えながらも、頭をフルに回転させる。その上でこれが妥当だと判断した。
《逆風の太刀》
「はっ!」
バルディッシュを構えてゼロディバイダーに突進。下に構えられていたバルディッシュは、交差した刹那に切り上げられる。それはまさに逆巻く風のような剣筋。
ゼロディバイダーは唾液を吐き出しながら悶え苦しむ。仕留めるには絶好の機会だ。
《チャージ》
次にエリオががら空きの腹部に、十分に力を溜めた一撃を叩き込む。敵は耳をつんざく金切り声を上げてのたうち回り、やがて動かなくなった。
「後は結界を張って応援に任せよう。調査の必要があるからね」
フェイトは捕縛結界の詠唱に入る。が――倒れていたゼロディバイダーが唐突に跳ね上がり、フェイトの腕に喰らいついた。
《吸血》
BJを貫通して刺さった牙はフェイトの血を啜り上げる。すぐに口内は真赤に染まり、溢れた血液を床に点々と零した。
エリオも、キャロも既に"それ"を人とは見ていない。瞳に映っているのは、ただ恐怖と嫌悪のみ。
《無拍子》
エリオよりもキャロよりも、バルディッシュを振り上げるフェイトよりも速く動いたのはシグナムだった。すべての予備動作を省き、レヴァンテインは高速で鞘を走り、ゼロディバイダーの頭を容易く切り落とす。
ごろりと分かたれ転がった骸からは遅れて血が流れ出した。その体液さえも、やはり人のそれではない。
「無事か? テスタロッサ」
「うん……ごめん」
差し伸べられた手を取らずにフェイトは立ち上がった。牙が鋭かった分、傷口もそんなに酷くはない。
《スターライトヒール》
「ありがとう、キャロ」
キャロの治癒魔法に礼を言って、フェイトはエリオに歩み寄り、膝を屈めた。当のエリオは顔面蒼白で小刻みに震えている。
「ごめんね……油断してた」
責められると覚悟していたエリオは、はっと顔を上げる。彼女は申し訳なさそうに苦笑していた。
「でも……どんな理由があっても私達に油断は許されない。今回だってシグナムが助けてくれなかったら危なかったと思う。迷ったり油断してたら、誰かが危険な目に遭うんだもんね……」
「すみません……フェイトさん」
搾り出すように、ようやく一言だけエリオは発する。
「ううん、もういいの」
優しい言葉を残してフェイトは立ち上がる。きっと自分を気遣ってくれたのだろう。だが、エリオにはそれが余計に苦しかった。
「そんな目で、見ないでくれ!」
「家に帰りたい……母さんに会いたいよぉ」
「私はただ、真実が知りたかったのだ」
「病を知らぬ不死身の体。記憶容量限界の無い脳。何故この価値を認めない?」
「もう、元に戻れないのだ。……殺してくれ!」
「赤い血の流れる体が欲しいよう……」
全て所内捜索中に出会った研究員達の遺した言葉である。喜ぶ者、嘆く者それぞれだったが、結局は全員が最初の研究員同様にモンスターと化した。
母の名を呼んだ者は人の原型すら留めぬスライム『ゼラチナスプランター』に、自らの身体を誇った者は巨大な悪魔『ゼフォン』に、
人の肉体を恋しがった者は血すら通わない『化石樹』へと変貌した。
狭い所内、そしてモンスターの強靭な生命力。ただでさえ強力なモンスターが徒党を組んで現れた以上、非殺傷で済ませる余裕は無く、結局は誰一人として救うことは叶わなかった。
ここは全てが狂っている。フェイトやシグナムでさえ、次第に無口になっていった。それは肉体の疲労ではなく、研究所の異常さと研究員達への哀れみによる精神の疲労に他ならない。
4人は複雑な所内を彷徨い歩く。応援の到着にはまだ時間が掛かるようだ。子供達も見つからない。そして――。
『ナシーラ所長の指示書』
――モンスター、妖魔、人間は常に一定量に保つよう補充すること。
モンスターの能力吸収による、変身効果については更に詳しい研究が必要。
研究員は希望者から順に実験を行うこと。情報の漏洩を試みた者にも処置を施すように。
能力の低いもの、侵入者との接触以外に最低限理性と肉体を保てないであろうもの、これら失敗作は全てブラッククロスへ処分、運用を委託している。
彼らから情報が漏れる可能性は低いと見ていい。研究に支障はないはずである。
件の警察まがいの機関についても同様。いらぬ心配は、捨て置くように――
資料室、机の引き出しに仕舞われていた指示書を発見したのはエリオだった。
恐れていた疑惑が確信に変わる。研究員達の言葉の意味がようやく理解できた。
人間を妖魔やモンスターに変える――これが、或いはこの人体実験の先にあるものが、研究所の求める真実なのだ。
指示書にはブラッククロスとの繋がりに関してもはっきりと書かれている。これは今回の事件だけでなく、ルートを辿ることができればブラッククロスの捜査においても重要な証拠になる。
頭ではそれを理解していても、身体は勝手にこの文書を破り捨てようとしている。
研究員達の言葉が自らの記憶と一つとなり、怒りのままにここの全てを破壊したくなる衝動に駆られる。しかし指示書を引き裂く寸前、エリオの腕が掴まれた。
「エリオ、これは重要な証拠だ。指示書に限らずこの部屋の全ての資料、研究所の全ての物もな。だから我々は極力これらを保全する義務がある」
穏やかな口調とは裏腹に、シグナムの腕はエリオの腕をきつく掴んで放さない。
――解っている。そんなことは全部解っている。それでも抑えようのない憎しみが、行き場を無くしてエリオの胸中で渦を巻いて膨れ上がっていた。
「解って……います」
一言、そう答えてエリオは先に資料室を出る。外ではキャロが既に待っており、エリオを見て短い悲鳴を上げた。
それもそのはず。今の彼はまるで天敵を前にした獣のように目を血走らせ、喰いしばった口の狭間から荒い息を吐き出していたのだから。
更に何人かの成れの果てを屠り、地下を降り、機械の合間を縫っていくと一際大きな部屋へと出る。3階分はあろうかという高い天井。実際、壁に沿って二階と三階に足場がある。おそらくは中心の何かを高所から見る為だろう。
広さも研究所全体の何分の1かと思うくらいの面積はある。
その中心に一人の女性が立っている。歳の頃はおよそ30過ぎあたりの、知的な雰囲気の美人だ。
「あら? ここまで来るなんて勤勉な学生さんね。私は当研究所の所長ナシーラ。見学してみて如何だったかしら?」
「私は時空管理局本局所属、フェイト・T・ハラオウン執務官です。あなたを研究所職員に対する人体実験及び、犯罪組織ブラッククロスへの組織的協力の容疑で逮捕します」
フェイトは、人を食ったようなナシーラの態度も表面上は冷静に受け流す。だが本心では、全てを操りながらにやついた笑いを浮かべるナシーラを、今すぐにでも殴ってやりたいくらいだ。
話しながらもフェイトは思う。自分やシグナムはこうして本心を隠して冷静に振舞うこともできる。
「もう一つ――」
「子供達を何処へやった!!」
フェイトの発言を遮ってエリオが吼える。
しかしエリオは違った。大人びていても彼はまだ子供である。こういった状況ならば、キャロならば悲しみが先に立つだろうが、エリオは純粋に怒りを剥き出しにしていた。
非人道的な研究施設にいた自身の過去も相まって、今その怒りは憎しみにも変わり、エリオを暴走させている。
「子供なら別室で実験の準備中よ。今はまだぐっすりと眠っているわ。"今は"、ね」
「実験!?」
「でも貴方達がそれを見ることはできないわ。さぁ、私のとっておきをお見せしてよ!」
ナシーラが手に握ったスイッチを押すと同時に、彼女の足元の床が開く。円形のゲートからせり上がってくるのは巨大な甲羅。
黒く鈍く光る大砲を鎖でがんじがらめに固定した巨体。長く伸びた首と柱のように太く逞しい四つ脚。
天井まで届くかと思うほどの巨体を震わせ、竜は雄叫びを上げた。
「これが『地竜』。私の最高傑作よ」
支援
白薔薇かわいいよ白薔薇支援
ナシーラの言葉はフェイト達の耳には聞こえていなかった。耳をつんざく程の地竜の雄叫びにかき消されたのだ。
地竜の背に乗ったナシーラは何かを囁いている。まだ聴覚が戻っていなかったが、どうやら地竜は眼前の人間を敵、或いは獲物と認識したらしい。今度は重く低く唸り、4人を睨みつける。
《鉄球》
直後に地竜の背中の大砲が戦いの号砲を轟かせた。大砲から発射された鉄球は、人の身体よりも大きい。こんなものが直撃すればBJ越しとはいえ容易く全身を砕かれるだろう。
フェイトとシグナムは飛行することでそれを素早く避ける。キャロも二人に手を引かれて逃れた。たった今まで立っていた床は、鉄球が半ば埋まり無数のヒビを走らせている。
「キャロ! ここならフリードが飛び回るだけのスペースがあるよ!」
「はい、フェイトさん!」
《竜魂召喚》
キャロの周りを飛び回っていたフリードリヒが光に包まれ、真の姿を解放する。フェイトの手を放し、キャロは巨躯を現したフリードへと跨った。
空を飛ぶと眼下の状況がはっきりと掴めた。発射の瞬間、いち早くエリオが咄嗟に回避したのは見えたのだが――。
「エリオ!?」
「! エリオ君!?」
フェイトとシグナム、キャロが同時に驚きの声を上げる。エリオは回避のみならず、既に地竜に向かって突進していた。
地竜は邪魔な蟻を踏み潰すように、足踏みでエリオを狙うが、脚の間を掻い潜るエリオを捉えられてはいない。
《地震》
しかし至近での一際大きな足踏みの衝撃が地面を揺らし、エリオの足を捕った。バランスを崩し転倒するエリオを狙って再度地竜が足を浮かす。
「ちっ!」
《シュツルムファルケン》
弓状へと変化させたレヴァンティンから放たれる矢が地竜の左目を抉り、足は大きく外れた場所に地響きを立てる。
構わずエリオは四つん這いの状態から跳躍。爪どころか、ストラーダさえ満足に立たない皮膚に刃を引っ掛け、更に高く跳ぶ。それでも高さは地竜の胴の半ばまでだが、目標の姿は見えた。
《スピーアアングリフ》
ならば後は突き抜けるのみ。エリオは地竜の口が自分に向いたことにすら気付いていない。当然、その口内の温度が急激に高まっていることにも。
《高温ガス》
吐き出される間近になると、空気の流れも可視化される。異変に気付いたのはフェイト――だが今のエリオを止めることはできないし、そんな暇もない。
《プラズマランサー》
相手がこの大きさだ。誘導することも、狙いをつける必要すら無い。数秒で作れるだけの魔力弾を発射する。
20を超える魔力弾が地竜の脇腹や首に突き刺さり、地竜は堪らず口内の高温ガスをあらぬ方向へ吐き出した。着弾の煙が晴れると無数の傷が身体に刻まれている。
エリオを助けたくとも、地竜が闇雲にガスを撒き散らすせいで接近することも難しい。
(気付いていたはずなのに……!)
彼の心の傷がいかに深いものかも、彼が傷を与える者を決して許さないであろうことも、全て自分が一番解っている。
エリオがここに来て不安定だったことも、怒りに震える彼が戦いに影響を及ぼすかもしれないことも気付いていた。
それなのに何もしなかったことが今更になって悔やまれる。
戦い方自体は教えたことを忠実に守っていたから、怒っていてもどこかで冷静な部分が制御しているのだろう、と勝手に解釈していたのかもしれない。
しかしそれは繰り返し繰り返しの訓練で、その身に染み付いたことを実践したに過ぎなかったのだ。獣がどれだけ昂ろうと狩りの仕方を忘れないように。
エリオの狙いは間違いなくナシーラだ。彼女が地竜を操っているからには、それを止めれば地竜が止まる可能性はある。それでもフェイトは止めたいと思う。
今の彼の姿が始めて出会った頃にダブって見えるのだ。違うのは憎しみをぶつける相手が一人であることと、戦い方を身に付けているだけ。放っておけば、きっとエリオはナシーラを殺めてしまう。それだけは何としてでも避けたかった。
支援!
RB3マダー?支援
「うぉぉおおおおお!!」
穂から噴出する魔力エネルギーの勢いによって、ストラーダはエリオの身体ごと猛スピードで飛ぶ。
切っ先も視線もナシーラに定め、阻むものは何も無い。
「はぁぁあああああ!」
しかしナシーラは、雄叫びと空気を震わす殺気を当てられてもびくともしない。それどころか不敵に笑みを浮かべたままだ。
そして穂先が刺さらんとした間際――エリオの身体が側面からの衝撃に跳ね飛ばされた。
《尾撃》
「うわぁ!!」
ナシーラは微動だにしていない。指一本すら動かしていないはずなのに、だが現実にエリオは叩き飛ばされたのだ。
吹き飛ばされる瞬間、エリオが見たものは"尾"。彼女の白衣の下から伸びる長く鮮やかな色をした蛇の尾。
「私を倒せば地竜は止まる。でもそう簡単にいくかしら?」
脱ぎ捨てた白衣の下には――何も着ていなかった。艶かしい肌を晒す上半身。しかし腰から下はまさに蛇そのもの。爪は鋭く尖り、美しい髪の下は人のそれではなかった。
「妖魔……!」
『ラミア』という半人半蛇の妖魔がいる。男を誘惑し魅了する妖魔である。ナシーラの姿はそのラミアに酷似していた。
「別に元から妖魔だったから人体実験をした訳じゃないわ。私は正真正銘の人間――"だった"と言うべきね。私にとっては自らの身体さえサンプルに過ぎないもの」
「狂ってる……!」
改めてフェイトは思った。自分の身体も、他人の身体も躊躇わずモンスターに変えてしまう。これを狂っていると言わずして何と言うのか。
「そんな言葉は聞き飽きたわ。それより、そこの坊やを放っておいていいのかしら?」
エリオは未だのた打ち回る地竜の足元すぐに着地している。意識はあるが、すぐには動けそうにない。
「エリオ!」
フェイトはガスにも構わずエリオに向かって飛ぶ。高温ガスの直射はBJ越しでも彼女の肌を焼いた。それでもフェイトは飛び続ける。
「フェイトさん!」
《ブーストアップ・アクセラレイション》
キャロの援護を受け、フェイトはBJを焦がしながらも、燃え尽きる前に高温ガスを抜けた。
(もし止めることができなくても、せめて一人で戦ってるんじゃないって伝えたい……)
《ハーケンセイバー》
「はぁあ!」
魔力刃は弧を描き、地竜の皮膚を切り裂く。それによって再度地竜は足を止めた。
その隙にエリオは立ち上がり、態勢を立て直す。顔つきは戻っていないが、正面から攻めても無意味であることは理解したようだった。
地竜とナシーラは強敵ではあるが、勝てない相手ではないことも解ってきた。攻撃は確かに通っている。
それに応援も要請した。仮に攻めきれなくても持ち堪えれば増援が来る。
しかし、ナシーラはフェイトの考えを見透かすかのようにまたも笑った。それは奮い立つ4人の戦意を挫く――悪魔の笑み。
「ブラッククロス様……お力を……」
天を仰ぎ、両手を広げて捧げた祈りは彼のものへと届き、部屋を暗黒の結界で覆い尽くした。
何時間経っただろうか。冷たい雨が頬を打ち、レッドは混濁した意識が冴えていくのを感じていた。意識を失っていたのかもはっきりしない。
「目が覚めたか、レッド……」
どこかで聞いたことのある声に、僅かに顔を動かしてみる。それだけで全身を激しい痛みが襲う。
「あんたは……アルカール?」
漆黒の鎧の戦士、アルカール。サントアリオのヒーローであり、自分を『ヒーロー』にした男。アルカールは不甲斐ない自分を叱るでもなく、笑うでもなく、ただ傍に立っている。
「あの少年は強いな……そう、君よりも遥かに強い。だが幼い……そうは思わないか?」
あの少年――レッドには一人しか思いつかなかった。幼く未熟で、それ故に真っ直ぐで誰よりも強くなりたいと思っている少年だ。
多少武術を齧っただけだった自分が戦いだしたのは、まだほんの数ヶ月前なのだ。キャリアでいえば遠く劣っている。だが、アルカールの指す強さとはそうではないのだろう。
「あんた……エリオを知っているのか?」
しかしアルカールはレッドの問いに答えもせずに、遠くを見つめる。この雨の中、濡れることも厭わずに立ったまま。
「今の彼は怒り"だけ"を糧に戦っている。憎しみに支配されて己を見失っている」
まるでいつかの自分のようだ。レッドはふと自分をエリオにダブらせる。憎しみに燃え、手にした力に一時は喜びさえ感じた自分に――。
支援2
「だが我々は……人々を護る為に戦う者はそうではならない。故に私は、サントアリオの『ヒーロー委員会』は君に復讐を禁じた。家を焼かれ、家族を殺され、全てを理不尽に奪われ生き永らえた君に憎しみを禁じた」
しかしその力は復讐に使うことを許されない力だった。
「出会った時に言ったな。他者に正体を知られれば君の記憶を消し、正義の戦い以外に力を使えば存在自体を消去する、と」
痛い程に鮮明に覚えている。全てを奪われ、力を手にした日を忘れることなどできるはずがない。
「憎しみを禁じられ、仇敵と戦う。それは死よりもなお辛いことかもしれない。しかしそれに耐え得ることができずして何の為のヒーローか。人々よりも大きな苦痛と苦悩を超えずして人々を護るに足る存在になり得るのか」
冷たい雨の降り頻る公園には寄り付く者もいない。倒れたレッドも、佇むアルカールも、ただ互いの存在だけを感じていた。
「ブラッククロスの四天王、『シュウザー』に瀕死の重傷を負わされた君を助ける為、私は君をやむなくヒーローにした。そして君は図らずもヒーローとなった。しかし、ヒーローとして生きることを決めたのは君自身だ。違うか?」
「あぁ……でなきゃとっくに記憶を無くしてるか、消されるかしてるだろうさ……」
最初はそんなこと関係無いと思っていた。命を失うのが怖かったんじゃない。ただ――自分が死ねば、誰も家族を覚えている者がいなくなるのだと気付いた。そう思うと死ぬ訳にはいかないと思えてきた。
「私は君にヒーローたる資格が無いとは思わない。憎しみを仮面で隠し、怒りを拳に秘めて戦うことができたなら、君はまごう事なき戦士となれる。それが出来た時、始めてその資格を得る」
「俺には解らないよ……そんなもの……」
ヒーローの力は強大だった。大抵の敵は簡単に倒すことができた。
だからだろうか? 命を惜しんで、楽に敵を倒して――その内にこれがヒーローの戦いなのか、自分の戦いなのか解らなくなってしまった。これが誰のための戦いなのか解らなくなってしまった。
「本当は至極簡単なことなのだがな……」
アルカールはそう呟くと、大きく息を吸い込み、初めてレッドを見据えた。
「君は許すのか!? 他者の命を弄び、自らは支配し、欲望のままに栄華を極めんとする悪を! 許せるのか!? 人々の嘆きと苦痛の悲鳴が木霊し、それでも血涙を流してそれを受け入れるしか術のない世界を!」
ドクン、と心臓が跳ねるのを感じた。
熱い血がアルカールの言葉を伴って、冷え切った身体を駆け巡ってゆく。
帰る場所も迎えてくれる人もいなくなり、心の中に何も無くなる感覚も、温かい思い出に一人で泣く夜も全て思い出した。
それは本当に、本当に簡単なことだった。
「そうだな……簡単だったよ、アルカール。俺は"嫌"なんだ。誰かが俺と同じ思いをするのも、それを強いる奴が笑うことも……」
アルカールはレッドの瞳に火が灯る様に、ふっと笑った。そして、その火が炎と燃え上がるよう言葉を紡ぐ。
「英雄とは称号、ヒーローとは生き様である――サントアリオのヒーロー委員会に伝わる、我々の遥か先駆者が遺してくれた言葉だと云う。私にもこの意味が正しく理解できているのだろうか、時々解らなくなる」
「俺にも解らないよ、そんなこと……」
「それでいい。だが、問いかけることにこそ意味があるのだ、と私は思う」
もう冷たい雨も気にならない。走る痛みは身体が動く証。
ゆっくりと、故障した機械を騙し騙し動かすように手を突き、泥に塗れて身体を持ち上げる。
「手は貸さんぞ、レッド。君はもう手を差し伸べる側なのだから」
「要らないさ……!」
何度も滑りながらも強がりを吐くレッドに、満身創痍で立ち上ろうとするレッドにアルカールは最後の言葉を放つ。
「ならば起て! 小此木烈人!! ヒーローたれ! 『アルカイザー』!!」
感情を超えるものは誇り。復讐を抑えるものは使命。憎しみに打ち克つものは信念。
彼はきっと、自分はそんな大層なものではないと答えるだろう。しかし彼はそれを確かに体現している。
ゆらりと静かにレッドは立ち上がる。腕はおそらくヒビが入っている。肋骨は何本か折れているだろうか。
気を失う寸前、自分はただがむしゃらに子供を助けようとしていた。子供の泣き声が今も耳に残っている。だから――行かねばならない。
《変身》
※お好きな変身ポーズを思い浮かべてください
「うぉぉおおおおおおおおおお!! 変ッッ身! アルッ!カイッ!ザァァァァァ!!」
金色の光が消えると、そこにはもう傷ついた青年の姿は無い。ただ、戦いに臨むヒーローの姿だけがあった。アルカールはいつの間にか姿を消している。
「ありがとう……」
アルカイザーは去り際に呟く。答える者はなく、言葉は雨に溶けた。
街を駆け抜け、応援に走る局員を追い越し、アルカイザーは走った。直感が告げるのだ。敵はあそこだ、と。
無機質な廊下のその奥、暗黒の結界の力を目指し、地下への階段を飛び降りる。辿り着いた最深部らしき部屋は黒い壁に覆われている。
「トワイライトゾーン……」
ブラッククロスの連中が使う結界――半端な力では斬ることも貫くことも叶わないそれは、ブラッククロスの怪人達の力を3倍に引き出す効果を持っている。
《レイブレード》
光線剣レイブレードでさえ、容易く弾かれてしまう。そこでアルカイザーは、はっと思い出した。
自分が戦闘機人に敗北した理由――それは肉体の鍛錬が足りないことよりも、技の修練が足りないことよりも、ヒーローの力に溺れていたことにあったのではないか。
「ハァァアアアアア……!」
足を肩幅に開き、深く息を吸い、呼気と共に拳を繰り出す。
「ハァッ!!」
《ブライトナックル》
気勢を伴い放たれた正拳が闇の壁にぶつかると、甲高い音と同時に閃光が弾けた。すると傷一つ付けられなかった結界に僅かに亀裂が生じる。
今、アルカイザーは確かな手応えを感じていた。基本に立ち返ってみて始めて気付くこと。それはヒーローの絶対的な力、人々を護る力――しかし一歩間違えばそれは奪う側に回りかねない破壊の力。
(俺が一番鍛えなきゃいけなかったのは、身体でも技でもなく、ヒーローに頼らない心だったのかもしれない……)
あの女は戦技においても自分を凌駕していた。自分自身が強くならなければ勝ち抜いていけないことは、今日の戦いで身に沁みて解った。
改めてそれを胸に刻み、再度アルカイザーは脚を開く。深く膝を沈ませ、力を集中させながらも、その目は亀裂の中心を見据える。
《シャイニングキック》
「トォオ!」
渾身の力を込めた飛び蹴りに、亀裂は音を立てて崩れた。そこには、一人がやっと通れる穴が開いている。その先に待つものはおそらくは強敵、確実なのは危機に陥っている人々。
すぐさま修復を始める結界を前にアルカイザーは迷うことなく、ぽっかりと口を開けたどす黒い魔の空間に身体を滑り込ませた。
「何で……? 何で攻撃が通用しないの?」
部屋全体が結界に覆われ、照明の全てが落ち闇に包まれた空間で、フェイトは戸惑っていた。結界が発動した途端に、地竜の皮膚は硬度を増した。
攻撃が弾かれるようになり、ナシーラの爪でさえBJを切り裂く力を持ち出したのだ。
「考えるまでもない、結界だろう……。テスタロッサ、この結界……斬れるか?」
シグナムもフェイト同様に騎士甲冑をボロボロにしながら、憎々しげに結界を斬りつけるも、結界は空しくレヴィンティンを弾き返した。
「この結界……すごく頑丈。私達二人でやっても、ほんの一秒か二秒で……とても全員は……」
力を吸い取られている気さえする4人とは真逆で、ナシーラと地竜はその力を活性化させて結界内で暴れまわる。最早隠れるのも、逃げ回るのも限界に近い。
「だったら……キャロが行けばいい」
「エリオ君……?」
エリオがキャロの肩をフェイトへと押し出す。頭が冷えてきたのか、エリオの顔を見ると考え無しで言っているようには見えなかった。
「僕が撹乱して、あいつらを引きつけます。シグナム副隊長とフェイトさんは結界に集中してください」
「そんな……駄目だよ! 危険だよ、エリオ君!」
キャロの制止にエリオは静かに首を振った。
「僕がやらせてほしいんだ。皆に色々迷惑掛けちゃったから……。お願いします、フェイトさん」
確かにフェイトは結界に全意識を集中しなければならない。その間、背後の不安は残るが――。
「それは許可できない。危険過ぎるよ」
「今のお前に陽動するだけの動きが可能とは思えない」
しかしフェイトとシグナムはそれを許さなかった。エリオがキャロにしたのと同じように、エリオに首を振った。
「これは全員が生き残る為の作戦だよ。誰かが外に出て状況を正確に伝えれば、なのは達も相応の装備で駆けつけてくるはずだから……」
地竜の咆哮が近づいてくる。もう、議論している時間は無い。
「エリオも一緒にキャロと外へ出て――」
「どうして子供は弱いなんて言うんだろう……。いつだって大人になろうとしてる、子供の血の方が熱いのに……!」
エリオはフェイトの言葉を遮って、地竜へ駆け出す。
「エリオ!」
この状況下で、たった二人でなのは達が来るまで持ち堪えられるとは思えない。子供も騙せない下手で、それでいて優しい嘘だとすぐに解った。
「うぉおおおおお!」
悔しかった。子供達を助けられないこと、怒りに任せて暴走してしまったこと、倒さなければならないモンスターと犯罪者に敵わないこと、フェイトに信頼されず役を任せてもらえないこと。
――無力な自分が悔しくて堪らない。
でも、ここでキャロを逃がすことができれば、せめて一人は守ることが出来るから。
地竜はその巨体故に懐に入られると弱い。一度目のように急接近して駆け上がれば、後はナシーラの相手だけで主導権は握れると踏んだ。
《スピーアアングリフ》
シグナムの言うように、今の自分にあまり機敏な動きができる自信はない。踏み潰されれば全てが終わりだ。
焦ったエリオは素早くナシーラに近づこうと、中距離からブーストして飛び上がる。視界の殆どは暗闇、その中にナシーラの姿が浮かび上がる。
《マヒ凝視》
《鉄球》
【マヒ鉄球】
闇の中でその目だけが妖しく爛々と光る。否応にもエリオの視線はその光に吸い寄せられいった。
「しまった……!」
言い終えるのを待たずして、エリオの身体は動かなくなった。大砲が自分に向けられ、巨大な鉄球が発射される光景を、ただ見ていることしかできなかった。
不思議と恐怖は感じない。あらゆる神経は研ぎ澄まされ、後ろからは3人の叫び声とフェイトが風を切って飛ぶ音が聞こえてくる。それらの全てが別世界のもののように感じられた。
フリードのブラストレイ、シグナムのシュツルムファルケン、フェイトのファランクスシフト、地竜の身体に無数の弾が降り注ぐが、まったく堪える様子を見せない。
そして発射される鉄球。その弾速すらも緩慢で、エリオは自分の身体を粉砕する鉄球の軌道をぼんやりと眺めている。
(僕は……結局無力な子供だったのかな……)
それだけが悔やまれて仕方ない。
全ての音が止み、エリオはそっと目を閉じた。
メサルティム支援
《シャイニングキック》
轟音にエリオの目が開かれた。彼の目に飛び込んできたのは、目前にまで迫っていた鉄球が粉々に砕ける光景。その中心には人影、いや、ここは暗闇の結界である。影なら見えるはずがない。
それは言うなれば光、人を象った光によるものだった。
光は凄まじい速さでエリオを抱きかかえた。第二射を避け高所の足場に跳ぶ。三階まで一足で、"飛行"でなく"跳躍"した。
エリオは温かくて逞しい腕に抱かれている。その顔を上目遣いで窺い、エリオは目を見張った。朱のボディスーツ、黄金のヘルメット、その派手な格好はどこかで見たことがある。
それは一言で例えるならば――ヒーロー。
エリオを足場に降ろした乱入者は、高みから地竜を、ナシーラを見下ろす。両腕を組み、誇らしく立っている。
その男にナシーラは初めて動揺を露にした。トワイライトゾーン――ブラッククロスの力を借りて空間を覆い尽くす絶対の結界。それが今、破られたのだ。
「馬鹿な!? トワイライトゾーンを突き破ってこれるものなどいるはずが――」
たとえトワイライトゾーンが破れたとしても、ここは研究所の地下である。こんなところに日光が届くはずがない。ならば何故――何故、あの男の背後には後光が差しているのか。
「聴け! たとえ貴様らがどれほど強大であろうと、この世を闇が覆おうと! 人々の胸に自由と平和を望む心が宿る限り、俺の拳に不滅の闘志が滾る限り! 決して世界は貴様らに栄光を与えはしない!!」
違う。太陽ではなく、この光はあの男自身が発しているものだ。太陽の如き金色の光が男の全身から煌々と発散されている。
「この名を忘れるな! 俺はブラッククロスの野望を打ち砕く剣! 遍く人々を守護する盾!」
右手でナシーラを指差す。人差し指の先端から、纏った光の残滓が零れて、闇を仄かに照らす。
「貴様、何者だ!?」
その質問を待っていたかのように、男は突き出した指を拳へと握り、ナシーラに名乗りを上げる。
「闇を貫き光よりの使者、アルカイザー見参!!」
と。
後編予告
血潮の様に紅く、命の様に熱く、男の魂より生まれ飛び立ち、拳を鎧う。
灼熱の炎の中にも沈むことなく高らかに嘶き、激しい羽ばたきは火の粉を散らす。
それは怒りを炎へと変え、悲しみを焼き尽くす力。
ならばアルカイザーよ。今こそ――
【翔べ 不死鳥の如く】
ブラックアルカイザーマダー?支援
以上です。支援ありがとうございました。長々とすいません。
あんまり長いと読んでもらえないかな、と思いまして。しかしちょっと今回は乗り過ぎた……。
アルカイザーが強いからといって変身ばかりしてると、レッド自身のステータスが上がらず、敵のレベルは上がって今回のようなことに。
現時点では《短剄》が精々のレッドも、いずれは《DSC》をも使いこなすかもしれません。
読切のつもりが、人造魔道師計画とマジックキングダムと双子の術士、管理局と妖魔の君の双方から追われる少女、
質量兵器禁止以前の時代の遺物である任務を忘れたメカ、ロストロギアの指輪とキューブ、
脱ニートを志してミッドに上京してきた青年etc……妄想を膨らませてますが、もうちょっと温めておきます。
本当の生命科学研究所はシナリオと関わりの無い絶好の修行場。
ボウケンジャーも後編も1月内に投下できたらいいなと思います。
GJ!
我が青春のFFT、サガフロ、ゼノギアス……。
もう十年以上前になるんだなあ、あれらがでたの。
GJ!
半妖様クルー!?
223 :
169:2008/01/06(日) 21:39:07 ID:FTobKnin
>>181 む……何か勘違いをしていたようだ。スマソ。
GJ!
当時アルカイザーが一番好きだったなぁ……
サガフロ1は世界設定が予想通りなのはと相性がいい。
225 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/06(日) 21:53:45 ID:yseiL8wq
だれかうたわれとのクロスを書いて下さるネ申はおらんか?
226 :
無双:2008/01/06(日) 22:09:54 ID:hakHdT+P
>>なのはVSボウケン氏
GJです。
もちろん三國武将も出ます。劉、曹、孫等は元・管理局員にしてますww
>>225 結構前にシャマル先生の下にハクオロさん(最終回後)を召喚しようと考えたけど、
連載作品終わってなかったので諦めたw
>>227 それでいいからお願いします。
なんか先生とエルルゥを重ねるのは目に見え居ているが・・・。
んー、そろそろ1時間経過ですかな?
マスカレード御大は「先やっていいよ」との事でしたし、投下しても良いすか?
反応無しに故、次より投下しますよぅ。
小話メドレーその13『シグナムとヴィータをロード・オブ・ザ・リング風に掛け合わせてみた、の図』
降り注ぐ日光、だが大空にはそれを遮るものがある。
雲か? それも確かにある。実際“それ”は雲に見えた。だが実際は全く異なっている。
雲霞にも似たそれは――膨大なガジェットの大群だ。
あまりの量、あまりの密度に入道雲とも見間違いかねない、それ程の大群が時空管理局を目指して進む。
その行く手を遮るのは、たった二人の騎士だ。
片や紫紺の装束に大弓を構えた、烈火の騎士シグナム。
片や深紅の衣装に鈍色の鎚を担ぐ、鉄槌の騎士ヴィータ。
ヴォルケンリッターに名を連ねる歴戦の勇士、だがこの大群を前にして勝利を得る事が出来るのか。そう聞かれて肯定出来るのは、一体何人だろうか?
単刀直入に言って、これは火を見るよりも明らかな“負け戦”であった。
だが二人は退かない。背後の仲間達を、同胞達を、そして主を護る為に。
「……あ〜ぁ。よりにもよって、おっぱい魔人の隣で最後の戦いをする事になるなんてな」
ヴィータは、かつてシグナムに当てたあだ名を口にする。
それは軽口であった。絶望的な状況、それを前にして心が挫けぬ様にする為の、一種のごまかし。
シグナムもそれを理解しているだろう。そしてヴィータは軽口が返されると思っていた。
だが返されたのは、
「――親友の隣でなら、どうだ?」
返された言葉にヴィータは目を丸くして、だが直ぐにそれを崩した。満足した様な、楽しんだ様な、静かな笑みへと。
「――ああ、それなら悪くない」
小話メドレーその14『なのはA'sの最後をAIR風にしてみた、の図』
12月25日、その日の海鳴市には雪が降っていた。
深々と降り積もるのは市立病院の裏手だ。小さな丘にも似たそこを一つの影が進む。否、それは“一つの”影ではない。“二つで一つの”影だった。
一つは銀髪に赤い瞳の女性、もう一つは女性に押される車椅子の少女だ。
「……ごっつ気持ちえぇなぁ」
「はい、ごっつ気持ちええですね」
車椅子の少女は微笑んで背後の女性を見上げ、女性もまた微笑みをもって答えた。
「冬の匂いがすんな」
「どのような匂いですか?」
女性の問い返しに少女は、う〜ん、と小首を傾げてから、
「……雪の匂い」
「そうですね、しますね」
「……ほわっとした空気の匂い」
「ですね、それもしますね」
そして、
「――リインフォースの匂い」
少女の言葉に赤い瞳の女性、リインフォースは小さく言葉を詰めた。
「じ、自分の匂いがそんなにしてたら私は嫌ですよ? 主はやて」
「するよ、リインフォースの匂い」
「…本当ですか?」
リインフォースが進める車椅子の上で少女、はやては頷く。
「――この冬はリインフォースの匂いがいっぱいした。……大好きな、リインフォースの匂い」
「それ、臭かったら堪りませんね」
頬を赤くしたリインフォースは呟き、はやてもまた、堪らんね、と茶化した様に答え、
「でも、ええ匂いやった」
「――そうですか。それは…良かったです」
それからどれ程の時間か、丘を一周した二人は病棟の側まで戻ってきていた。雪が退けられた煉瓦の歩道を車椅子が進む。
「…クリスマス、終わってしまいましたね」
車椅子を止めて呟くリインフォース。それは聖夜に暴走した自分の行動を悔やんでいるのか。はやては、せやな、と肯定し、だがそこで終わらせない。
「でもええやんか、もう闇の書は終わりや。これからは私達と一緒に暮らすもんなぁ?」
はやては微笑みを向け、リインフォースも笑みをもって返した。
だがはやては気付いただろうか。それが今までの笑みとは種が異なるという事に。
「主はやて、ここで待っててもらえますか?」
リインフォースの唐突な願いにはやてはきょとんとした顔をする。
「何や? 何かあるんか?」
「はい。――何があっても、来てはなりませんよ?」
そう言ってリインフォースは車椅子から手を離し、右手から回り込んで進んでいく。
「リインフォース、どこに行くんや?」
進んでいくリインフォースの背にはやては背を伸ばすが、一寸の差で指は届かない。その様子を悟ったのかリインフォースは背を向けたまま、
「主はやてはそこにいて下さい。……主はやてはゴールなのですから。私はもう、ゴールに辿り着いたのだから」
「…そか、私、ゴールか」
はやては釈然としない表情を作り、尚も進んでいくリインフォースの後ろ姿を見る。
そして10メートルも離れた頃だろうか。無言であったリインフォースに届けるかのような声を作った。
「もういいですよ? 私は、頑張りましたよね?」
「……リインフォース?」
「――もう、ゴールの先に辿り着きましたよね」
「なんや、先に行きたかったんか? すぐに追い付くから待っとれ、んで一緒に家に……」
「いいえ。私の望んだもの、目指してきたもの……ゴールを抜けて、そこに辿り着いた」
タイヤを回そうとして、それが動かぬ事にはやては気付いた。タイヤがバインドによって固定されている事を。
「頑張ったから、もう良いですよね?」
「――っ!!」
はやてが息を飲んで見る先、リインフォースは天を仰いでいる。
「もう、休んでも、良いですよね?」
その後ろ姿が、否、その輪郭が歪んでいく。滲み、光の粒子へと崩れていく。
「まさか…消えそうなんか? リインフォース、ホンマは消えそうだったんか……っ?」
はやては両腕を車椅子の肘掛けに立てて身を起こそうとし、だがそれへ、動いてはいけません、という叫びが届いた。
「……嘘や、嘘やゆうてや。これからはホンマは元気になっていくんやろ…? 悪い夢は終わった筈やろっ!?」
「すみません主はやて。…ですが私は、全てをやり終える事が出来ました。だから、もう良いのです」
「あかんリインフォースっ…………行ったらあかん!!」
それがどれ程の意思を示すものだったのだろうか。
未だ完治に至らぬ不随な両足、しかしはやてはそれをもって立ち上がっていた。
「始まったばっかりやんか、昨日やっとスタート切れたんやないか!!」
ゆっくりと、
「――取り戻していくんや」
覚束ない足取りで、
「……何千年も前に奪われた幸せを、去年から始められた筈の幸せな暮らしを、ヴィータ達と一緒に取り戻していくんや!!」
しかし確かに、
「――私らの幸せは、始まったばっかりやんかぁっ!!」
はやてはリインフォースへと歩んでいく。だがリインフォースは振り向かない。
「……いいえ、全て出来ました。もう十分な位に。この1年に、闇の書となってからの年月を消化出来る程の幸せが詰まっていました」
「あかん、違う! 私、沢山したい事があるんや!! 大好きなリインフォースとしたい事が沢山あるんや!! ――全部、これからなんやぁっ!!!」
歩むはやて、しかし遅々とした速度はリインフォースが崩れる早さに及ばない。
「このままずっと続くと思っていた闇。
主はやてと出会った冬から始まった1年間。辛かったり、苦しかったりもしました。
ですが私は――頑張って良かった!! ――私のゴールは、幸せと一緒だったから。独りきりじゃなかっ
たから。
ですから、ですから――もう、ゴールの先へと行かねばなりません」
「あかんコレからや!! ――これからや、言うとるやろぉっ!!!」
叫びと共にはやての指先がリインフォースにかかり、……そしてすり抜けた。
「……やっと辿り着きました。ずっと探していた、場所。探していた場所、ずっと、探していた、場所」
「いややぁ、そんなん、いややぁっ」
身の向こうを透けさせるリインフォース。
空へと散っていく光の粒子をはやては掴み、しかし光は零れていく。
そして、完全に失われる直前、リインフォースははやてへと視線を下げ、
『――主はやて、ありがとうございます』
「リインフォース――――――――――――――ッ!!!」
その笑みを最後に、リインフォースは完全に消失した。
「リインフォースに何もかも教えてもらったんやないか、独りっきりやない生き方。
……置いていかんといて、私達を遺していかないで。
リインフォースとヴィータ達がいれば何も要らん。
新しい服も、贅沢も何も要らん!
リインフォース達と一緒に居れたら良かったんや。ずっと私の家で暮らそう? リインフォース、リインフォースうぅ……ッ!!!」
鳴き声は雪空に響き、しかし彼女には届かない。
小話メドレーその15『嘘予告をやってみた〜デバイスだけで頑張るのはPLUTO編』
その日ゲジヒトを目覚めさせたのは、時計のアラームでもなく妻の呼びかけでもなく、呼び鈴による電子音だった。
「……なんだ?」
ベットの上で身を起こすゲジヒト、そんな寝室へと妻が入ってきた。
「貴方、バルディッシュさんがお見えよ」
「…バルデッシュが?」
どういう事だろうか、とゲジヒトは思う。相棒として彼とは長年付き合ってきたが、バルデッシュは律儀でこそあれ強引ではない。つまり、こんな時間に来るには相応の理由がある、という事だ。
思い至ったゲジヒトは寝間着の上にガウンを羽織り、妻の横を抜けて玄関を目指す。
そして開け放たれた扉の向こう、そこに立っていたのは――黒い肌に金の髪と瞳をした男だった。
「何事だ、バルデッシュ」
「……デュランダルが殺された」
バルデッシュの告げた言葉にゲジヒトは息を飲む。
「モンブランに続いて2人目、全次元最高峰デバイスがこれで2人消えた。……お茶の水博士が私達を呼んでいる」
「――解った、すぐに行こう」
頷くバルデッシュに背を向け、ゲジヒトは身支度を整えるべく室内に戻った。
時に新暦170年、この時代には大きく分けて二つの人型があった。――人間と、デバイスである。
詳細に人間を真似た機体、その開発によってデバイス達は、最早人間達とほぼ相違無くなっていた。
――新暦170年。この時代は、人間とデバイスの境目が最も薄くなった時代。
100年近く前に開発された年代物の車、かつてフェイトが乗り回してた黒塗りのそれが科学省の門前に止められた。それから下りるのはバルデッシュとゲジヒト、そしてそれを迎えるのは二人の女性だ。
「……レイジングハート、リインフォース」
「待っていたわ。バルデッシュ、ゲジヒト」
「お茶の水博士のお部屋まで案内するです」
桜色と銀色の長髪をした二人は、バルデッシュ達を科学省の中へと導く。
ホールを抜け、エレベータに乗り、扉の先の通路を抜ければ“科学省長官室”と銘打たれた扉があった。
「失礼します」
リインフォースはノックと共に声を放ち、入りたまえ、という返事の後に扉を開けた。
4人は室内へと歩を進め、中で待っていたのは老人と少年だ。
「アトム、君もいたのか」
ゲジヒトの言葉に少年は頷く。
「はい。…今回の事件、僕達が狙われているようなので」
あらゆる次元世界の技術の粋を集めて造られたアトム達7人の新世代。
そして100年以上前の生まれでありながら彼等にも拮抗するバルデッシュ達5人の旧世代。
これらを合わせた12人は“次元最高峰のデバイス”と総称され、尊敬と畏怖の眼差しを集めていた。
「アトムの言う通り、モンブランとデュランダルの殺害は同一犯だ。……これがその証拠だ」
重々しく老人、お茶の水博士はデスク上に写真を乗せた。デスクを囲むバルデッシュ達、4対の瞳が見る2枚の写真は、残骸となった2人のデバイスの頭部だ。だが、写真にあるのはそれだけではない。
「……角?」
正確には枝か、パイプだ。それぞれ1対のそれらが、頭部の左右すぐ側に突き立てられている。まるで長い角を象る様に。
「これが何を意味するのか、それは全く解らない。解るのは……犯人がこれを残した事、そして他の次元最高峰のデバイス達も狙われるだろう、という事だ」
お茶の水博士は厳しい表情を作り、そしてゲジヒトとバルデッシュを見据える。
「君達を呼んだのは――この事件の追求、そして他のデバイス達にもこの事を報せてもらう為だ」
お茶の水博士は告げる。
「この場にいない最高峰デバイス……ノース2号、ブランド、ヘラクレス、エプシロン、そしてアギト。彼等に報せてくれ。――迫りつつある、この危機を」
迫る危機、それは地獄からの王者。
二本の長き角を讃えた、全てを砕く悪魔。
『PLUTO〜次元最大のデバイス〜』
我等の前にあるのは憎悪か、苦しみか、それとも別の何かなのか。
小話メドレーその16『ティアナさんはされど罪人は竜と踊る罰ゲームを実行しました〜なのは編〜』
「もう一回お願いします」
私の横に立つティアが眼下の道路へと声を投げた。それを聞くのは私が憧れて止まぬ高町なのはさん、彼女は全身をローブで隠し、歩道に置かれた木箱の上で大きく身を震わせている。
「早くして下さい、なのはさん」
ティアの目と声は氷点下、赤子は泣き出し老人は速攻でポックリ逝きそうな冷たさだ。それを向けられたなのはさんは何事か言葉を漏らすが聞き取れない。
「聞こえませんよ、なのはさん。もっと大声でないと商売になりませんよ? 一つでも間違えたら、また最初からやり直しですかね?」
ああ人間関係って簡単に壊れちゃうものなんだね、と私は思う。
何事か、と通行人達が囲む中、やがてなのはさんは長い溜め息をつき、何かを大事な物を失った様な笑みを作った。そしてローブを勢い良くはぎ取って、
「――年齢的にかなり無理がある、魔法少女リリカルなのは参上!!」
露になったのはドピンクのフリフリドレスを身にまとったなのはさんの異様だった。杖型となったレイジングハートを掲げてウィンク、勿論口からは照れた様に舌が出ている。
その瞬間、周囲の通行人達が一斉に退いた。男は顔を引き攣らせ、女は息を飲み、子供達はひきつけを起こした様に泣き出す。
「リリカル・マジカル・テクニカル! あなたのくだらない夢とゲスい欲望を、愛と勇気のプリティ魔法で叶えちゃうゾ、ただしバッチリ有料で(はぁと)」
更にレイジングハートを振りつつ踊り出したなのはさん。あまりの恐怖に子供達は梅図か○お的な描写となり、親達はパニックサスペンスの主人公の如く我が子を抱いて逃げ出した。
現在のなのはさんの行動は、ぶっちゃけ超弩級の変質者だった。後に残されたのは年増の魔法少女ただ一人。
時空管理局のエースオブエースことなのはさんは、耳まで真っ赤にして涙混じりの両眼でティアを見上げた。
「こんな商売成立しないよ!! 何、このカワイさ目指して痛い呪文はっ!!?」
「何を仰るんですか、かつては自分が声高々に叫んでいた呪文なのに。ていうか私に話しかけないでくれます? 変質者の知り合いだと思われるじゃないですか」
ティアは手の甲を口元にあてて高笑い。
「さぁもう一回。頑張って下さいね、時空管理局機動六課スターズ分隊隊長の高町なのはさん?」
「ティ、ティアナ、お願いだからフルネームと勤め先を言わないで! 外に出られなくなる!!」
「では急いで下さいな、時空管理局機動六課スターズ分隊隊長の高町なのは三」
「ス、スバル! ティアナどうしちゃったの!? 性格変わってない!?」
いえ私に言われても。
「私だけじゃなくスバルにも文句を言うんですか? 時空管理局機動六課スターズ分隊隊長の高町な……」
「わ、解ったから、お願いだからもうやめてぇっ!!」
「何が解ったんですか? 時空管理局機動六……」
「全力全開で魔法少女を喜んでやらせて頂きますっ!!!」
そう言ってなのはさんは大きく息を吸い、
「漢の生き様をみさらせっ!!!」
集まってきた通行人達を前に、再び踊りと呪文を繰り返していた。周囲の人々がどの様な反応をしたのか、最早見ているのも辛い。
「脇が甘い! 呪文が腹の底から出ていない!! なのはさんは不況を嘗めてるんですか!?」
「もっと真心を込めて踊って下さい! 誇りだとか自尊心だとか、人間としての大事なものなんて貴女にはもうないんですよ!!?」
「魔法で株価を上げ、魔法で世界中の戦争を止めなさい!! さもなければ終わりませんよ!」
「もっと憐れみを誘え!! 憐れみと施しこそが、魔法少女の喜びで主収入なのだ!!!」
ティアナのダメ出しは以降30分以上続き、何時しか通行人もいなくなった所で終わった。なのはさんは膝を抱えて踞り、何事か延々と呟いている。耳を澄ませば何を言っているのかが……
「……私の生まれてきた意味って何? これが私の目指した局員の高み? 否、断じて否! でもでも……」
訂正、耳を澄ませても何一つ聞こえませんでした。人として言ってはならない事なんて何も言ってませんでした。
「――もういいですよなのはさん、これまでにしましょうか」
そしてティアが廃人寸前のなのはさんに呼びかけた。
「ティ、ティアナ……貴女を頭冷やそうとして吹っ飛ばした私でも許してくれるの……?」
「勿論――あの痛みと屈辱は、この程度の罰では晴れません。休憩はここまでにしましょうか」
その瞬間、なのはさんの顔が絶望に彩れる。
「次はクラナガンの大通りに行きましょう!! 大観衆が魔法少女を必要としていますよ!!!」
「い、いや、それだけはいやぁっ!! もうミッドチルダで生きていけなくなる―――――ッ!!!」
小話メドレーその17『ティアナさんはされど罪人は竜と踊る罰ゲームを実行しました〜シグナム編〜』
星空の下に建つ機動六課隊舎を僕、エリオ・モンディアルはキャロと一緒に目指していました。今日はスターズとライトニングに分かれての訓練だったので、二人だけです。
それでふと隊舎を見上げると、二階にティアナさんとスバルさんが見えました。おーい、って手を振ったらティアナさんは優雅に返して、それから出入り口前を指差しました。
そこを見てみて、そういうジェスチャーだと思った僕は視線を向け、そこで不思議なものを見ました。
それは爪先立ちをしつつ大空に右手を伸ばす、シグナム副隊長の姿でした。
「しぐ、なむ副隊長? な、何をしてるん、ですか?」
隣でキャロが一歩後ずさる音を僕は聞きました。やがてシグナム副隊長は強ばった笑みを僕達に向けてこういいました。
「――私、わ、私は、そ、の、お星様と握手を、しようとしていた、のだ」
その瞬間、僕には解ってしまいました。ああ、シグナム副隊長は疲れているですね? 僕達が未熟で不甲斐ないばかりにストレスが溜って、お星様と一緒に遊びたくなったんですね?
「よ〜し、自分で自分を持ち上げてお月さまの所までいっくぞ〜。そこでお月さまに腰掛けて、お星さまたちの海でひと泳ぎ。そしてお星さまとお月さまに、私の大好きな主はやての事を聞いてもらうんだぁ☆」
……ああ、なんて壮絶な表情をするんだろうシグナム副隊長は。こんな哀れな姿をさせてしまうなんて、僕達はなんて不甲斐ないんだろう。
「――シグナム副隊長。人生辛い事は多いだろうけど、くじけないでまっとうな道を進んで下さいね?」
「ち、違っ、これは違うんだエリオっ! 私をそんな汚れない瞳で見ないでくれ……っ!!」
「解ってます、解ってますから」
そして僕はキャロの手を取り、全速力で隊舎に走り込みました。背後で、
「シグナム副隊長、早くお星さまに触ってくれないと終わりませんよ? ほら、並木に登ればギリギリ届くんじゃありませんか?」
という愉悦に満ちたティアナさんの声と、何かが崩れ落ちるような音を聞きました。
……な、感じで投下終了。どうですかね? 正直「やっちまったなぁ……」感はありますが。
電波駄々漏れGJ!
ちょwwwwGJwww
され竜ネタで壮絶に吹いたw何この違和感の無さww
>一つでも間違えたら、また最初からやり直しですかね?」
誤字だろうけど凶悪度が二割増しw
>>グレンラガンさん
シャマルの元に力ちゃんネタってやっぱり「良い」と思ってる人多いんですね。
僕もジョーとシャマル合わせたけど物凄い淡白…
シャマルはあくまでシャマルであって柚ねぇでもエルルゥでもないから淡白に仕上げたんですが…
やっぱりはっちゃけた方がよかったのかなぁ?
241 :
旅ゆく人:2008/01/06(日) 22:58:58 ID:psnSXEMW
> なのは×終わクロ氏
GJ、に御座りまする。
つか、AIRネタはちょっとマジに心にグッと来るですよ……。
さて、昨夜、謎の19分間wを演出した私ですが、
……単に反応がなかったのと、マジ眠かったのとで、
一旦取り止めにしただけですからw
で、改めて投下したいわけですが、
……11時半ぐらいで、おk? ですか?
支援です。
>>227 >>228 脳内に“小山力也が憑依したハクオロがシャマルのもとに行く”という、
リリカルなのはsts×うたわれるもの×うたわれるものらじお
の一発ネタが表れてきた…^^;
なのは×終わクロ氏 GJ!!
リアルタイムにPLUTOを買ってきたばかりで読んだばかりだったのでいい感じに
想像できてしまいました^^
245 :
旅ゆく人:2008/01/06(日) 23:06:52 ID:psnSXEMW
>>242 成る程……。
では、また延期。
明日朝早く、うちの地域で言うところの“とんどさん”の準備をしなくてはならないので、
そろそろ寝ます。
では、ご迷惑をおかけしました ノシ
246 :
マスカレード:2008/01/06(日) 23:14:00 ID:uP80pg1d
>>245 申し訳ないです…
そして譲っていただいたことに感謝!
12時前くらいから投下しようと思いますが、よろしいでしょうか?
今回はやたらと重い話ですが、とりあえず前回までのあらすじでも……
前回までの簡単なあらすじ
ブレードに敗北したエビルは自らを鍛える為にラダムに支配された世界へと赴く。
そこで出会ったのは、ラダムのテッカマンランス!
そしてエビルを追って来たアースラチームは、突如現れたテッカマンアックスのボルテッカを受けてしまったのであった!
まぁこんなもんですねw
む、予定が解らなくなった……
取り合えずBGMは戦え!アルカイザー流しっぱなんだが
248 :
旅ゆく人:2008/01/06(日) 23:32:31 ID:psnSXEMW
実はまだ起きてたりw
流石に、本当に寝ますがね……。
>>246 お気になさらず〜。割り込もうとしたのは、こっち〜。
まあ、更に推敲する時間が与えられたと思えば、
大したことではない、と。
しかし、頭がボワンとする……。
やはり、寝不足はいかんなぁ……。
そういえばプリキュアとのクロスもないね
カブキマンやキントレスキーやブンビーさん辺りを出してからませたい
そろそろ投下しますね。
今回は少しだけ長めです
このOPはフェイト、なのはと交互に脳内再生でお願いします
その男には、倒さなくちゃならない宿敵がいる。
それは本来なら愛すべき存在だった、大切な人……。
いつだって一緒にいたはずの、血を分けた兄弟。
そんな兄弟を……家族を引き裂いたのは、異形の姿をした、悪魔達。
悪魔に引き裂かれてしまった二人の兄弟の過去。
そして、今また牙を剥くかつての仲間……。
知ってしまった事実に、私達は立ち向かわなくちゃならない。
例えそれが、狂った結末へと続く道でも。
宇宙の騎士リリカルなのはBLADE……
始まります。
支援
「ボルテッカァァァーーーーッ!!」
アックスが放った赤い閃光―ボルテッカ―は、アースラ毎、周囲の全てを飲み込んだ。
ボルテッカの反物質粒子は、アースラを中心に爆発し、ドーム状に拡がって行く。
反物質に触れた地形は、どんなに巨大な岩石であろうと瞬く間に消滅して行く。
例えるなら、まるで核爆発でも起こったかのように輝く赤いドーム。いや、核爆よりももっとタチが悪い。
この爆発ならば、アースラは間違いなく消滅しただろう。
「……他愛ない……」
ボルテッカを発射した張本人である緑のテッカマン……『テッカマンアックス』は、赤く輝くドームに背を向けながら言った。
テッカマン同士がここまで接近したのだ。お互いが発する感応派で、相手の正体は解る。
テッカマンアックスがたった今葬った戦艦には、間違いなく裏切り者ブレードが乗っていた。
ブレードは、たった一人でラダムに反旗を翻し、数多のラダム獣を葬って来た。
そして不完全な肉体であるにも関わらず、ブレードはかつて完全な肉体を持った筈のラダムのテッカマンさえも撃破した。
それ故にアックスは心のどこかで期待していたのだ。「ブレードならばこのボルテッカにも反撃してくれるかもしれない」……と。
「……さらばだ。タカヤ坊」
アックスは、赤く光り輝くドームに一瞬だけ視線を送ると、背中のスラスターを噴射し、この場所から立ち去った。
第9話「引き裂かれた過去」
ここは、この世界の荒野にぽつんと佇む洋風の屋敷。薄暗い部屋で、暖炉に灯った炎がパチパチと音を立てて燃えている。
電気は無い為に、小さな窓から差し込む太陽光と、暖炉の火だけがこの部屋を照らす明かりだ。
部屋の雰囲気は、シャマルがよく見るような海外映画に出てくる、一昔前の洋風の部屋といった感じだ。少なくともシグナムは、そんなイメージを抱いた。
真ん中に設置されたテーブルと、それを囲むソファ。そこに、シンヤとシグナム……それからモロトフが腰掛けていた。
モロトフはふと、小さな笑みを浮かべ、言った。
「……残念だったなエビル。」
「何がだ? モロトフ」
「ブレードは、たった今死んだ……!」
「何?」
少しだけ表情を暗くし、モロトフを睨むシンヤ。一方のシグナムは、信じられないとでも言いたげな顔でモロトフを睨む。
「たった今、裏切り者ブレードはアックスによって倒された。お前の出る幕は無かったな」
「……馬鹿な。奴がそう簡単に倒される訳が……」
「無いと言い切れるのか?」
「………………」
モロトフの言葉に、シンヤは言葉を詰まらせる。たしかに、アックスならばブレードを倒せるかも知れない。
不吉な事を考え、俯くシンヤ。そんなシンヤに声をかけたのは、シグナムだった。
「そのアックスという奴は、そんなに強いのか……?」
「……ああ、シグナム。アックスは強い。もしかしたらブレードよりも……」
「ブレードよりも……だと?」
シグナムは怪訝そうな顔で、シンヤを覗き込む。ブレードの強さは、実際に戦ったシグナム自身が良く解っている。
シグナムは以前の戦いで、手も足も出せずにブレードに一撃を入れられてしまったのだから。
「ああ。何せ、アックスは僕の……いや、僕達兄弟の戦いの師匠だからね」
「……師匠……か。」
昔を思い出しながら不敵に微笑むシンヤ。その一人称は、いつの間にか「俺」から「僕」へと変わっていた。
八神家で過ごすようになってから、過去の話をする時等、たまに一人称が変わる事はシグナムも薄々感づいてはいた。
「そうか……お前達の師か。一度会ってみたいものだな……」
だからこそ、シグナムは敢えてそこには言及せずに、うっすらと微笑んだ。
シンヤのみならずあのブレードをも育て、鍛えた人物。きっとかなりの大物なのだろう……と。そう思ったのだ。
「もうすぐ会えるさ……奴が本当にブレードを倒したのなら、ね……。」
なんという投下ラッシュ支援
所変わって、ボルテッカの爆発地点。
ボルテッカの反物質粒子により生じた赤いドームが消えた場所には、何も残っていなかった。
岩石どころか、ラダム樹さえも。アックスが放った高密度のボルテッカは、草木一本残らず、全てを消滅させてしまった。
……訂正。全てでは無かった。
ボルテッカの影響でクレーターと化した大地。その中心には、巨大な黒い球体が浮かんでいた。
黒い絵の具を使った後、その筆を水に浸ければ、水と黒い絵の具が混ざり合い、渦を描く。誰しもそんな光景をみた事はあるはずだ。
この黒い球体には、その例えが相応しいだろう。銀と黒が混ざり合った球体は、まるで光を吸い込む様に浮かんでいた。
やがて球体はゆっくりと消えて行き、その中身を露呈して行く。
球体が完全に消えた時、そこに浮かんでいたのは、白い戦艦。ボルテッカに撃たれ、消滅したはずの白い戦艦だった。
「お、俺達は……助かったのか?」
「そうみたいだね……Dボゥイ」
驚愕した表情で周囲を見渡すDボゥイに、ユーノが言った。
Dボゥイはボルテッカという兵器が、あらゆる物質を瞬時に消滅させる、最強にして最悪の兵器だと言う事を知っている。
だからこそ、自分達が無事であることが信じられないのだ。
「何故だ……!? 一体何をしたんだ!? ボルテッカを受けて無事であるはずが……」
「それが無事なんだよ……いや、まぁ無事とは言い切れないかな。エイミィ、どうだ?」
「うーん……流石にボルテッカは完全には防ぎ切れなかったみたい。衝撃でサーチャーとかあちこちイカレちゃってるよ……」
冷や汗を流しながら高速でパネルを叩くエイミィ。エイミィがパネルを叩く度に、頭上のモニターは増えて行く。
「おい、クロノ……俺達は一体何故助かったんだ……!?」
「ディストーションフィールドだよ。」
「……なんだそれは?」
さっぱり解らないという様子のDボゥイに、今度はリンディが簡単過ぎる説明を開始した。
「私の魔法、ディストーションシールド……まぁ簡単に説明すれば、凄いバリアよ。結構疲れるんだから……」
「バリアだと? そんなものでボルテッカが防げる訳が無い……」
Dボゥイの脳裏をよぎるのは、対ヴォルケンリッター戦で、管理局員達が張った結界をことごとく破壊したボルテッカの雷。
「ただのバリアとは違うんだよ、Dボゥイ」
「何が違うと言うんだ、エイミィ……?」
「ディストーションフィールドは、まぁ解りやすく言えば空間を歪曲させちゃうんだよ」
「空間を……歪曲……? ……そうか!」
ハッと気付いたDボゥイは、「解ったぞ!」とでも言わんばかりにエイミィを見た。
「流石Dボゥイ、もう解ったみたいだね?」
「つまり、アックスがボルテッカを放つ前に艦長がディストーションシールドを発動。
その効果で、ボルテッカを防ぐ……というよりも、ボルテッカを反らしたのか!」
「んー……ま、ほぼ正解だね! 流石にボルテッカが相手じゃシールドもかなり劣化しちゃったみたいだけどね……
さてはDボゥイ、こういう話好きでしょ?」
Dボゥイの解析に、ニヤつくエイミィ。確かにDボゥイは、父の影響か昔からこういう科学的な話は得意分野だった。
一方で、なのは達も以前見た事があるこの魔法を思い出す。
確か、プレシア・テスタロッサを逮捕しようと乗り込んだ時にもこの魔法を使っていたはずだ。
まさかのおばあちゃん大活躍ww
っとと、支援
バーナード一人だけ、まるで話が読めずにぽつんと立ち尽くしているが、他の一同の話から、なんとなくだが状況は掴めたらしい。
そうこうしていると、バーナードの通信端末に連絡が入る。どうやらさっきの仲間達からの様だ。
『――軍曹……バーナード軍曹!』
「なんだ、聞こえてるよ」
『無事でしたか?』
「あぁ……なんとかな。お前らはどうだ?」
『もちろん、逃げましたよ! 皆こんな所で死にたく無いんでね!』
「へへっ……そりゃそうだ」
通信相手も、バーナード自身も、何が嬉しいのか「へへへ」と笑っていた。この男達はまだ出会ったばかりだ。何を考えているのか等誰にも解るまい。
「……さて、Dボゥイ。君の疑問も解決した所で、今度はこっちからも質問があるんだが……」
「……質問?」
突然話を変えたクロノの顔を、怪訝そうに睨むDボゥイ。
「恐らく、この疑問を抱いていたのは僕だけじゃ無いはずだ……そして、今さっきの君の言葉で、僕は確信した」
「……確信? 何をだ?」
「……単刀直入に聞かせて貰う。君は、本当に記憶喪失なのか……?」
クロノは声色を落とし、その核心に迫った。エイミィもリンディも、フェイトもなのはも、じっとDボゥイを見詰めていた。
一方、モロトフの屋敷に、一人の男が帰還した。
かなり体格のいい中年の男で、体もシンヤやDボゥイよりも一回り大きい。この男こそシンヤの師……テッカマンアックスこと、『ゴダード』である。
ゴダードはシンヤを見るなり、接近し、不敵に微笑んだ。
「お久しぶりです、エビル様」
「久しぶりだな、アックス……それより、ブレードは……?」
「儂が放ったボルテッカの塵と消えました」
「……間違い無いのか?」
「はい。あの爆発なら、間違いなく助からないでしょう」
再びニヤっと笑うゴダード。ゴダードは、エビルを守る事を使命としている。
ブレードがエビルに害を成すのならば、アックスは死力を尽くしてエビルを守る為に戦う。
元師匠として、シンヤを守るという使命は接近格闘戦型テッカマンに改造されてしまった後でも生き続けているのだ。
「アックスにやられるなら……ブレードもそこまでだったと言う事か……」
「シンヤ……」
少しだけ表情を曇らせるシンヤを見つめるシグナム。シンヤの複雑な感情は、何となくだが解る。
もしも、好敵手と認めるテスタロッサを他の誰かに倒されてしまえば、どんな気持ちになるだろう?
恐らく頭では解っていても、そう簡単に認めたくは無い筈だ。
「ところでエビル様、そちらの人間は……?」
「彼女の名はシグナム。人間じゃない、今の俺の仲間だ。」
「人間では無い……?」
シグナムの体を頭から足まで、確かめるように見るゴダード。
「何か……?」
「シグナム……と言ったな。アンタ、何かやるな? 武人か……?」
「……まぁな」
既に騎士甲冑は解除し、レヴァンティンも待機状態に戻してしまってはいるが、ゴダードはシグナムを見た途端に、ただならぬ気配に気付いた。
「やっぱりな。アンタはそこらの人間とは動きと、目付きが違う。」
「褒め言葉と受け取っておこう。貴方こそ、シンヤとブレードの師と聞いたが……?」
「いかにも、その通りだ。儂は幼い頃から二人を鍛えて来た」
落ち着き払った態度で、不敵に笑いながら言うゴダード。その言葉に、シグナムはいくつかの疑問を抱いた。
シンヤの兄・タカヤ。そして師匠のゴダード……こんなにも身内ばかりがテッカマンになってしまっているのには、何か理由があるのだろうか?
シグナムが聞いた話では、シンヤはラダムが生み出した地球侵略用生体兵器……のはずだ。
シンヤの話から、彼らも元は地球人であろうことが推測されるが、何故相羽家の身内ばかりがテッカマンなのだろうか?
「シンヤ……少しいいか?」
「ん……なんだい、シグナム?」
シンヤを呼び付け、屋敷の外へと歩を進めるシグナム。シンヤも何も言わずにシグナムの後を追う。
そして二人は、屋敷から数メートル離れた場所で向き合った。
「シンヤ……テッカマンとは……」
「フフ……解ってるよ。何を聞きたいのかはさ」
シグナムの言葉を遮るシンヤ。
「なんでこんなにも俺の身内ばかりがテッカマンなのか……って聞きたかったんじゃないのか?」
「……あぁ。その通りだ」
「いいよ、教えてやるよ……俺達に何が起こったのか……」
過去話キター支援
支援ッス
同刻、アースラ。クロノに核心を突かれたDボゥイは、表情を変えずに言った。
「……どういうつもりだ、クロノ?」
「君はさっき、あのテッカマンを『ゴダード』と呼んだな?」
「………………」
「それだけじゃない。奴のボルテッカのチャージ時間についてもだ。」
クロノの的確な指摘に、言葉を詰まらせてしまうDボゥイ。
「もしかして君は、最初から記憶を失ってはいなかったんじゃないのか……?」
「………………」
「確かに……それならエビルとかシンヤとか、相手の名前を知ってた事も納得行くけど……」
「そうね……確かに貴方とエビルの間には、ただならぬ因縁があるみたいだけど……」
エイミィに続いて口を開くリンディ。
今までのエビルとの戦闘でも、二人の間には並々ならぬ因縁が存在している事は容易に想像出来る。
そして、エビルとDボゥイの言葉は明らかに知り合い同士が交わす言葉。
今更だが、考えてみれば不自然な点が多々見受けられる。
「Dボゥイ……まだ隠してる事があるのなら、話してくれないかしら……?」
「Dボゥイ……私達仲間だろう?」
リンディに続いて、今までずっと目立たなかったアルフも一歩前へ出る。
「Dボゥイ……前に、私に妹さんの話してくれたよね……?」
「フェイト……」
「ねぇ、もしまだ何か隠してる事があるのなら、私たちに話してくれないかな……?」
「もしかしたら、Dボゥイさんの力になれるかもしれないよ……?」
「なのは……」
フェイトとなのはの顔を交互に見るDボゥイ。バーナード以外のほぼ全員が自分を見つめている。
「隠し続けるのもそろそろ潮時か……」と、Dボゥイはそう思った。
そして何よりも、これ以上仲間に隠し続ける事は、Dボゥイ自身も耐えられない。
しばらく目を閉じ、考えるような素ぶりを見せたDボゥイは、ややあって、顔を上げ、その重たい口を開いた。
「全てクロノの言う通りだ。俺の名前は、『相羽タカヤ』……
元いた世界で、アルゴス号という宇宙船の乗組員だった」
「相羽タカヤ……さん……?」
「アルゴス号……?」
復唱するリンディとエイミィ。
「俺は……いや、俺の家族と仲間達が乗ったアルゴス号は、長い航海の末に、ようやく土星の周回軌道にまでたどり着いた……」
Dボゥイ……いや、タカヤの言葉を、黙って聞く一同。長い間謎に包まれていたDボゥイの過去がようやく語られる時が来たのだ。
タカヤ達が乗ったアルゴス号は、ようやく土星にまでたどり着いた。しかし、そこで彼らを待ち続けていたのは、
その旺盛な繁殖力から、既に自分達の惑星には納まり切らなくなる程までに繁殖してしまい、他星の侵略を開始したラダムだった。
今でもハッキリと思い出せる。あの日、自分達に何が起こったのかを。
鬱支援
これは重くなる予感・・・支援
凍り付いた過去自由になって懐かしいMelody思い出してたら……支援
「前方の空間に歪みが発生しています!」
アルゴス号のブリッジで、オペレーターを勤めていたミユキ―そしてタカヤの、たった一人の妹でもあった―が、そう叫んだ。
「馬鹿な!? こんな空域に重力波とは……」
「歪み……さらに増大中!」
「ミユキ、スクリーンに転映してくれ!」
父であり、艦長である『相羽孝三』が席を立ち、ミユキに命令する。
孝三に言われたミユキはすぐに歪みの発信元をスクリーンに映し出す。
そこに映されたのは、宇宙の歪みから突き出た、地球外の技術により造られたであろう巨大戦艦。
「父さん……!?」
「父さん、何なの!? アレは!」
ミユキに続き、シンヤも混乱した様子でスクリーンを凝視する。
あれはまさしく、映画で見る様なエイリアンの戦艦だ。父である孝三は即座にそう判断した。
「コース変更だ! 重力波に巻き込まれるぞ!」
「駄目だよ、父さん! もう間に合わない!」
「何だと……!?」
シンヤの報告を聞いた孝三は、絶句した。次の瞬間、アルゴス号は重力波により生じる眩ゆい光に包まれていた。
そして、謎の戦艦は完全に歪みから抜け出し、アルゴス号の目前に迫っていた。
「それで……どうなったの?」
「……俺達は、自らその戦艦に接触を試みた」
「迂闊な……」
続けるタカヤに、クロノが呟く。
しかし、それは奴らの罠だった。
適度に進化した頭脳と、行動的な肉体……人類の肉体は、皮肉にもラダムにとって理想的な物だった。
俺達は未知の技術に興味を示し、自ら接触を試みた。そして、取り込まれて行ったんだ。
ラダムの侵略システム……『テックセットシステム』に。
「これは……」
「気をつけるんだぞ……!」
戦艦内部の奇妙な物体に触れるシンヤ。
孝三は一同に注意を呼びかけながらも、タカヤやミユキ、フリッツやゴダード、フォンやケンゴ兄さん……他にも何人もの人間を率いて戦艦内部を探索していた。
誰も居ない、何も無い……安心しかけた、その時だった。
戦艦内部の奇妙な球体が、突然乗組員の一人を飲み込んだのだ。
「「うわぁあああああーーーーー!!」」
当然俺達はパニック状態に陥り、とにかくその場から逃げ出そう走り出した。だが、それももう遅かった。
ラダム母艦に足を踏み入れた時点で、俺達家族の運命は狂い始めていたんだ。
とにかく、悲鳴をあげながらも逃げようと走り回る一同。「助かりたい!」その一心で一同は走った。
だが、四方八方から現れ、乗組員達を触手で絡めとるテックセットシステムに、一人……また一人と取り込まれてしまう。
「(あぁ……フリッツ……モロトフ……ゴダード……
ミユキ……フォン……ケンゴ兄さん……!)」
タカヤは、もはや走る事も出来ずに、ただ呆然と立ち尽くしていた。仲間が、家族が取り込まれて行く光景を黙って見ているしか出来なかったのだ。
そして、ついには……
「父さん……父さぁんッ!!」
「に、逃げろ……シンヤ……タカヤァー!」
いつも俺達を導いてくれた偉大な父、孝三までもが、そのシステムに取り込まれてしまったのだ。
俺達兄弟は父を救う為に、逃げて来た道を引き返した。孝三はそんな二人に逃げろと繰り返す。
そしてイバリューダーも誕生支援
266 :
魔装機神:2008/01/07(月) 00:54:15 ID:wDo80XSA
支援
テッカマンと言えば宇宙忍者だろ
始祖アイバ支援
「父さん……父さん!!」
だがシンヤは、聞かなかった。ただ立ち尽くすだけで何も出来なかった俺とは違い、シンヤは父に逆らい、たった一人でも父を救おうとした。
そして次の瞬間には、シンヤまでもがテックセットシステムに取り込まれていた。悲痛な叫びと共に。
「あ……あぁ……」
ただ震えながらそんな光景を見ているしか出来ないタカヤ。こうしている間にも、アルゴス号の乗組員は次々と奇妙な球体に飲み込まれて行く。
そして、ついには自分を取り込もうと球体が迫っていた。逃げようにももう遅い。
「う……うわぁああああああああああああああああああああ!!!」
……こうしてタカヤは、ラダムの侵略システムに取り込まれ、後のテッカマンブレードへと改造されてしまうのだ。
テックセットシステムは、人間の体を素体テッカマンに改造し、ラダムの意思を埋め込む事でテッカマンを誕生させるシステム。
取り込まれてしまった人間は、肉体を改造され、完全なラダム人にされてしまう。ラダム人にされてしまった地球人は、もはや地球の敵。
驚異的な戦闘能力を誇るテッカマンは、地球の敵として、地球人類にその牙を剥くのだ。
……だが、そこで一つの問題が発生した。
「「うあぁあああああああ……」」
テックセットシステムに取り込まれた人々は皆、激しい痛みに悲鳴をあげていた。
同時にシンヤやタカヤ達は、体に赤いラインが入り、うっすらとテッカマンの面影が出来上がって行く。
だが全員がそうなる訳では無かった。何人かの人間は、その過程に耐えられずに、激しい痛みと共にミイラ化、テックセットシステムから排出されて行く。
テッカマンになるに相応しく無いと判断された肉体は、フォーマット前に排出されてしまうのだ。
……そしてそれは、ラダムにとって予想外の事態を招く事になった。
「うぅ……」
テックセットシステムから排出され、床に落下してしまった父、孝三。
周囲を見渡せば、アルゴス号の乗組員達が球体の中で体を作り替えられているのが見える。
「タカヤ……!」
孝三は、フォーマットの途中で排出された為に、今のタカヤ達が何をされているのかは、良く解っていた。
「(タカヤだけでも……)」
孝三はフラフラと、覚束ない足取りで、近くに落ちていた銃を掴む。
銃を握った孝三は、狙いをタカヤのテックセットシステムへと定める。
狙うはテックセットシステムに繋がった数本の触手。あれを狙い撃てばタカヤはテックセットシステムから開放される。
「(タカヤ……!)」
そして、孝三はタカヤをテックシステムから解き放つ為に、数発の弾丸を発射した。
水晶宮の少女を買ったけどラダムの技術は半端なくヤバい支援
スパロボW自重www
機界原種マダー?支援
「……そして、父さんは俺よりもタカヤを救おうとしたんだ……」
「……それで……どうなったんだ……?」
タカヤがクロノ達に説明をしている中、シンヤもシグナムに同じ話をしていた。
「それにより、不完全なテッカマン……則ち、裏切り者……テッカマンブレードが誕生した……!」
「裏切り者、ブレード……」
「そうだ。奴は俺達ラダムに牙を剥き、そこからラダムの侵略計画は大きく躓いた……こともあろうに、父・孝三の手によってな……!」
一方で、タカヤの話を聞いていたクロノやなのは達は、まさに絶句といった感じの表情を浮かべていた。
「……そして父さんは、最後の力を振り絞って、俺を逃がしてくれたんだ……」
「タカヤ……大丈夫か……!」
「父さん……」
まだ不完全とは言え、孝三はテッカマンになってしまったタカヤに肩を貸し、なんとか脱出ポッドまで逃げ延びた。
ブレードをポッドに収容した孝三は、共にポッドには乗らず、ブレードに背を向ける。
孝三は、最後にタカヤにとある使命を託したのだ。自分では叶える事は不可能な、重大な使命を。
「(父さん……)」
俺―相羽タカヤ―は、ポッドに横たわりながら父の背中を見つめた。大きな背中。今まで、いつだって俺達を守って来た父の背中を。
――お前にはやらねばならぬ使命がある! 辛い事だが、私も出来るだけの事はする!
タカヤの耳に蘇る、偉大な父の最期の言葉。
――時間が無い……奴らは私を排除しに来たんだ!
「排除……?」
奴ら……排除……?
何を言ってるんだ、父さん!?
――タカヤ……お前の使命とは、奴らに肉体を乗っとられた、シンヤやミユキを、お前の手で倒す事だ!
「そんな……!」
酷すぎる、そんな事……
家族を、兄弟を自分の手で殺せと言うのか……!?
――辛いのは解る。だがお前には解っているはずだ……
お前がやらなければ、全人類は滅亡する! ラダムの目的は地球の侵略なんだ!
「父さん……父さん!!」
閉ざされるポッドのシャッター。途端に、タカヤの視界は暗闇に包まれる。
――さらばだタカヤ! この名前も今日から忘れるんだ……!
お前が倒す相手は兄でも弟でも無い……侵略者、ラダムなのだ!
それが、タカヤが聞いた父の最期の言葉であった。
ポッドはアルゴス号から離脱し、地球へと帰還する。こうして、タカヤの地球帰還の、長い旅が始まった。
「父さぁーーーーーんッ!!!」
タカヤは叫んだ。力の限り。もうこの声が父に届く事は無い。それでも、嫌だった。
家族や仲間……何よりも大好きだった父さんと別れるのが。
数kmのボディに無数のボルテッカを装備した異星人テッカマンとか無茶苦茶すぐる支援
おまいらWネタ自重しろ
支援
「そんな……酷い……」
「これは……想像以上に重いな……」
涙目で口を塞ぐフェイト。流石のクロノも、他の一同も完全に暗いムードになってしまっている。
それも当然だろう。自分の家族が、仲間が侵略者の手先となってしまった。
そして、自分は一人で助かってしまったばっかりに、たった一人で大好きだった筈の兄や弟を殺さなければならないのだから。
「じゃ、じゃあ……Dボゥイが今まで戦って来た相手は、自分の家族だってのかい……!?」
「そうだ……例え俺が戦いを拒んでも……奴らは俺を殺しに来る……」
「そんな……じゃあ、タカヤさんは……」
「なのは……!」
Dボゥイに、言葉を途中で遮られるなのは。あまりの剣幕に、ビクッと固まり、言葉を止める。
「頼む……その名前で呼ばないでくれ……」
「……タカ……Dボゥイさん……」
なのはも、Dボゥイの悲痛な面持ちに、涙が堪えられなくなって来る。
彼はもう自分の名前を捨てたのだ。
家族を……いや、テッカマンを一人残らず滅ぼすと誓ったあの日から。
「エビルは……奴は相羽シンヤ。俺の双子の弟だ……」
「双子……!?」
復唱するフェイト。フェイトとなのはには、心辺りがあった。以前出会った、Dボゥイと同じ、優しい顔をした青年。
その青年は優しい顔だちではあったが、目は獣の様に光っていた。彼がそのシンヤだとすれば全てに合点が行く。
「Dボゥイ……じゃあ、貴方はもう……」
「……ああ、艦長。俺は既に……テッカマンを……一人殺している。」
「「……ッ!?」」
再び絶句する一同。これはあまりにも話が重過ぎる。
たった一人の青年に、こんなにも辛い運命を背負わせる。神はあまりにも無慈悲過ぎる……リンディは、そう思った。
「……そしてラダムの侵略計画の大きな障害となったブレードは、俺達の仲間であるテッカマンダガーを殺した……」
「テッカマン……ダガー……?」
シンヤの説明に、シグナムの表情も暗くなっている。予想以上に話が重い。泣くまでには至らないが、流石に明るい表情は出来ない。
「ああ……元はアルゴス号の乗組員……フリッツという男だった」
「……そうか。」
だが何よりも、シグナムはシンヤを可哀相だと思った。八神家で過ごす様になってから、家族の温かさはシグナムもよく理解している。
それ故に、仲の良かったはずの一つの家族をこんな泥沼の戦いへと導いたラダムに、心のどこかで怒りを感じたのだ。
だが、自分にはどうすることも出来ない。そんな無力さに、また怒りを募らせる。
そんなシグナムの態度に気付いたシンヤは、軽い笑みを作り、言った。
「シグナムは何も気にしなくていいんだ。実際、僕ははやて達と暮らすようになってからラダムの事を忘れそうになる事もあったからね……」
「シンヤ……」
「だから……ブレードを倒して、闇の書を完成させれば……僕達はまた元の生活に戻れるんだ……」
「そうだな、シンヤ……。」
小説のリアクターボルテッカ凄すぎ支援
これで酷いといってるならブラスター化した後はどうするんだろうか
支援
「俺はもう、一人のテッカマンを殺した。後戻りは出来ないんだ……!」
「……Dボゥイ……」
「ダメだよ……そんなの……酷すぎるよ!」
涙を流しながらも叫ぶなのは。
「だって、シンヤさんは家族なんでしょ!? 家族なのに殺し合うなんて……」
「違うッ!!」
「……え……?」
またもびくつき、Dボゥイの顔を見据えるなのは。
「シンヤはもう死んだ。奴はラダムの、テッカマンエビルだ……!」
「そんな……そんなの……」
「奴らを倒す事が、俺がシンヤ達にしてやれる最期の手向けなんだ……!
これ以上、シンヤ達に人殺しをさせたくないんだ!」
「……Dボゥイさん…………」
なのはは、これ以上Dボゥイに返す言葉を持たなかった。家族は本来仲良くあるべきだ。
だが、それもケースバイケースだ。Dボゥイは、余りにも例外過ぎる。
「だから俺は……全てのテッカマンを滅ぼすまで戦わなければならないんだ!」
「残念だけど……それは駄目だ、Dボゥイ……」
突然割り込みをかけるユーノ。一同の視線も、一気にユーノに集まる。
「駄目……だと……?」
「さっき君も言った様に、君は複雑なフォーマットの途中でテックシステムから脱出した……言わば、不完全なテッカマンだ」
「………………」
「無限書庫に、かつて不完全な状態で戦ったテッカマンが記録されていたんだ」
「何だと……!?」
「そのテッカマンは、とある世界……多分、この世界に、死にかけの状態で現れた」
「……まさか……」
ユーノの説明に、目を見開くDボゥイ。一人だけ、思い当たるテッカマンがいる。
孝三と同じく、テックシステムから排出された者。不完全なテッカマン。たった一人の妹。
「彼女は……死ぬ直前に、自分の持てる情報を人類に伝えた。その事実が、無限書庫には封印されていたんだ」
「あぁ俺もそんなテッカマンの話を聞いた事があるぜ。なんでも、その時のデータを元に軍は最新兵器を開発したらしいからな」
壁にもたれたまま、口を開いたバーナード。Dボゥイは、一瞬バーナードを見た後、視線をユーノに戻した。
「……君は今まで、目眩とか、体調不良を訴えていたらしいけど……それも気のせいなんかじゃない。」
「……何……?」
「君がこのまま戦い続ければ……君の命は、間違いなく……近い内に燃え尽きる……!」
「な……そん、な……!」
今度は流石のDボゥイも驚いたらしく、開いた口を塞げずにいた。
なのはも、フェイトも、あまりの急展開に、そしてあまりにも辛い過去に、涙を止められずにいた。
家族の話だけでも充分辛いと言うのに、このまま戦えば、近い内に死ぬ……なんて、まだ10歳にも満たないなのはには、過酷過ぎるのだ。
それに、それだけでは無い。Dボゥイには、30分以上戦えばラダムと化してしまうという哀れなリミットも存在するのだ。
まさかこれ以上にまだ何かあるなんて、思いもよらないだろう。
まさか……目の前で、唯一人の心を持った家族―ミユキ―が、エビル達になぶり殺しにされたなんて。
だが、この話はまたの機会だ。何やら、Dボゥイが見たミユキの最期と、ユーノやバーナードが話す不完全なテッカマンの最期には食い違いが生じるているからだ。
まあ適合していても数年しか持たない使い捨てだけどな〜支援
「俺は……もう……戦えないというのか……?」
「ああ……残念だけど……」
「そんな……うぅ……」
フラフラと後ずさるDボゥイ。数歩下がった所で再び激しい目眩に襲われる。
立っているのもままならなくなったDボゥイは、低く唸りながらブリッジの床に立て膝をついてしまう。
「ほら、君の体はもうそんな状態じゃないか……」
「嫌だ……俺は戦う……! 例え明日死ぬとしても、俺は一人でも多くのテッカマンを倒さなければならない!!」
「Dボゥイ……」
悲痛な叫びを響かせるDボゥイを、ユーノはただ哀れみの目で見るしか出来なかった。
壁にもたれたバーナードは、腕を組みながらDボゥイを見つめている。心なしか、さっきまでのDボゥイを見る目とは違っている。
「アレックス……Dボゥイを、医務室へ運んで」
「り、了解しました」
リンディの言葉に、ほとんど空気同然だったアレックスは、Dボゥイの肩を、自分の肩に回した。
「僕も行きます……」
「ああ。」
そんな二人に、ユーノも付き添う。アレックスも、静かに返事を返す。
だが。
「離せ……離せ!俺はまだ戦える……!
ラダムを滅ぼすまで……この体がバラバラになるその日まで……俺は戦い続けなければならないんだ……!」
「少し落ち着け、Dボゥイ……!」
「嫌だ……! 頼む、離してくれ……! 俺は……俺は……!」
三人はブリッジから出て行った。ブリッジにはだんだんと遠ざかるDボゥイの悲しい叫びが、虚しく響き渡っていた。
「Dボゥイ……辛くてもう……見てられないよ……」
Dボゥイが去った後を見つめていたアルフは、涙を拭いながら呟いた。
「……エイミィ、アースラはどうだ?」
「……駄目だよ、艦自体は無事だけど、さすがにボルテッカの衝撃でサーチャーも、次元間航行機能も完全にイカレちゃってるよ……」
「……まずいわね……」
困り果てた顔で説明するエイミィ。リンディも、顎に手を当てて真剣に悩んでいる様子だ。
フェイトは、涙を拭いながらクロノに近寄る。
「何がまずいんですか……?」
「……要するに、僕たちは元の世界に帰れなくなったって事だよ」
「「……なッ!?」」
その一言に、なのはも、フェイトも、完全に固まった。
ブラスター化フラグキター支援
283 :
マスカレード:2008/01/07(月) 01:33:30 ID:BMjbdz5k
投下終了です。
今回は今までと比べれば重い話だったかと思います。
さて、今回は色々と伏線を張りましたが、ブラスター化はまだしばらく先です……
これでなんとか過去を語るというイベントを消化できた……(笑
多分次回は軽めです(ぇ
GJ!
この重い感じがブレードらしさを醸し出しててイイ!
そして始祖アイバはラダムに始末される直前にシグナライト号にテックシステムを送り、
後のソリッドアーマー開発に大きく貢献したんだねGJ!
重いなぁ……だがこの重さこそがブレード。GJ!
>>285 だからWネタ自重www
JやWでブレードのことを知ったという人が(たぶん)多いだろうから(自分含)、しかたがないんじゃね?>Wネタ
GJ!
この重さこそブレード!
ブレードがら重さがなくなったら、肉のない牛丼だからね。
このままなら近いうちにブラスターが!
超期待してますぜ\(^_^)/
>>283 仕事行く前に見たがなかなかよかった。GJです。
ブラスター化はまだ先か・・・。
しかし、Wネタの希望者が多いですね。俺もJやWから知った人間ですが・・・。
あとWのクロスオーバー具合が全く違和感なかったのも原因だな、
Jから知ってた自分はブレードの大筋を調べたりして大体判ってたが、
Wから知った人だとどこからがブレードでどこからがオーガンか判断しづらいだろう
クロスオーバーにおける一つの鑑ですよねー
>スパロボWブレードとオーガンの関係etcetc...
湾岸ミッドナイトとのクロスの方は、もうこられないのだろうか....。
原作見たことないけど、続きがきになるぜ
メガテンとのクロスを書いてた人の続きも気になるな
東京に出張とか転勤とかいってた記憶があるけど
記憶喪失になったダンテはどうなったのだろう?
俺はダーカーの人の続きが気になるな
結構いいところで止まってて、続きが気になる
>>294 俺もだな。メガテンの特徴の、悪魔達との話し合いがとても気になる。
両作品とも好きだったのでWはもうこの設定を知ったときは狂喜乱舞したものですよ
Ririkaru無双の第一話が出来たのですが投下よろしいですか?
いいともー!
Ririkaru無双 第壱章「嵐が来る前」
次元世界にてルーテシアの母メガーヌが風魔に囚われる数日間前の事……。
第359管理世界、この世界はある人物の政策によって國が三つ分かたれている。
それは当初、『漢』という一つの國家が世界を統べていた。が、それも盛者必衰の理。栄華を誇った漢帝國も永きに渡り綻びが生じ、滅ぶと全土で動乱が始まった。
その混乱の中、数多の男達が頭角を現しようやく乱を平定した。彼らの中でも抜きん出た政治力や魅力を持つ三人が居た。世界を三つの國に分けて統治に務めば乱が起きるのは少なくなる。と一人の男が提案し。
事後処理で三人は彼の提案の通りに、分けられた國の長にそれぞれ着き。第一国家を魏、第二国家を呉、第三国家を蜀と名を変えたのであった。
そして今、第三・国家『蜀』の首都である成都の地に一人の特別捜査官とその守護騎士であり家族にあたる五人がやってきていた。
「にぎやかやなぁ♪」
建物なども独特の造りで立ち並び、人々の生き生きとした表情に特別捜査官・八神はやては自然と微笑む。
次第に進んで行くと屋台や食事処が軒を連ねる通りに入り、守護騎士の一人であるヴィータが鼻を鳴らしては、辺りの店を眼を輝かせてで見回している。
「んー♪良い匂いがするな。なあ、はやて」
「あはは、そうやなぁ。シャマルや皆にお土産買って帰ろうか」
「はい、そうした方がシャマルもすねないかと」
シグナムの意見にはやてとヴィータは彼女が「お土産は?」と期待の表情で聞いてくる姿を想像し笑ってしまう。
シャマルが今居ないのはなのはの主任医務に就いているからだ。
「なあ、シグナム」
「なんだ?」
しばらくして、アギトから声をかけられシグナムは聞き返す。
「これから何処に行くんだよ?」
「ああ、まだ言っていなかったな。この地の政堂だ。そこにこの國の政務官が居る。今日はその政務官に挨拶に来たんだ」
「へぇ、なんで?」
「実は−−」
359ww
支援
支援
いかがいたした?
303 :
無双:2008/01/07(月) 19:18:25 ID:0LfK9Zcl
書き込みエラーしてます、すいませんーorz
304 :
無双:2008/01/07(月) 19:24:29 ID:0LfK9Zcl
さっきから書き込みが終了しましたってなってるのに書き込めてない……なんでだι 容量は足りてますよね?
>>304 慌てず落ち着いてゆっくり投稿するんだ。それでも駄目なら避難所の代理依頼スレを使うとベネ。
306 :
無双:2008/01/07(月) 19:35:51 ID:0LfK9Zcl
頭の上に疑問符を浮かべるとシグナムの代わりにリインが彼女に説明し始める。
「政務官さんはレリックの事件の時、ミッドチルダや管理局員の心配をしてて。駆け付けて協力したかったんデスけど、こちらでの政治が忙しくて来れなかったんデス」
「それで、一度様子など詳しくが聞きたいって言ってくれて。今日はこっちから来たわけや」
リインとはやての言葉にアギトは少し納得いかないといった表情で告げる。
「にしても偉そうだなぁ、こっちから来させるなんて」
「仕方ねーだろ、向こうは一人の政治家なんだから」
ヴィータの言葉にアギトは複雑な表情を浮かべるが渋々と頷く。
当初、政務官の方がミッドチルダに来ると言っていたのだが。本局がこちらでの政治もあるだろうからと考え、フリーの特別捜査官であるはやてに出向かせたのだ。
「あれは……?」
ザフィーラの眼に止まったのは商店の通りが途切れ、補整された道が広がる門の前に白を基調とした動きやすい民族衣装を着こなしている長身の男性が居た。
こちらに気付くと、男性は歩み寄って来て、はやて達の眼の前まで近づくと会釈をする。
「貴方が時空管理局の特別捜査官の方達ですね。お待ちしていました、私は皆さんのご案内をさせて頂く『臥龍』と申します」
「これはご丁寧にありがとうございます。私は八神はやてと言います。この子達は私の守護騎士です」
臥龍がはやての紹介した家族に視線を移すと。
「時空管理局、シグナム二等空尉であります」
「同じく、ヴィータ三等空尉だ」
「はやての守護をしている。ザフィーラ」
「私はリインフォース空曹長デス」
「私はアギト。最近入ったばっかだからわかんねぇ。」
307 :
無双:2008/01/07(月) 20:00:16 ID:0LfK9Zcl
「いいえ、急な事を言ったのはこちらです。お気になさらないで下さい。それに今日会えないのなら……次に会う楽しみも増えます。
それにしても良いご家族を持たれていますね」
臥龍の言葉にはやては自分達の繋がりを理解してくれたんだと嬉しそうに笑顔を見せて頷く。
「……はい、ありがとうございます。」
「では、政堂にご案内致します。どうぞ」
「あ、はい。」
臥龍に促され、はやて達は彼と共に門を潜る。
−−−−−−
石畳で補整された道を歩いて行く中、私達はこの地が険しい山に囲まれている事に気付いた。
岩肌が剥き出しになって、下手したら転げ落ちてしまいそうな……。
そう考えていると臥龍さんは私に声をかけてきた。
「街はどうでしたか?」
「あ、はい。皆生き生きしててええ顔してました。皆と帰りにお土産でも買って帰ろな。とか話してたぐらいで」
臥龍さんは「ありがとうございます」と嬉しそうに笑顔を零す。
「実はと言いますと、魏呉とはどちらが活気づく街づくりをしているかつい競ってしまうんです」
「なんか町興しみたいだな」
ヴィータの言葉に臥龍は微笑む。
「ふふ、そう言われれば似ていますね」
「この國は山に囲まれてるけどほかの國はどんな地域なんだ?」
アギトの質問に臥龍さんは丁寧に答える。
魏は平原が多く、國務官の方針から広く人材が集められ、今までのその人の略歴がどうであれ能力があれば仕事に就かせる。
呉は河や湖が多く、こちらは学力が重視されています。と
「元・時空管理局なんデスよね?劉備國務官さをは」
「はい、劉備殿や他の國務官殿もそうなります。この世界での動乱もあった為。彼らは管理局を辞職し平定に専念しました。その影響か曹國務官も孫國務官も自分達のやってきた仕事を人々に理解してもらいたく。魔法学院やミッドチルダに多く輩出しています」
支援
その後、新話が出来たので投下します。
ただ…
ギンガファンの皆さん、僕の新話が終わったら思い切り僕を憎んで構いません。
309 :
無双:2008/01/07(月) 20:17:14 ID:0LfK9Zcl
すいません、こっちは書き込みエラーが重なって遅くなるのでライダーさん先にどうぞー。
その後に続きを投下します。
では…
【機動六課サイド】三話「アウレフ対アウレフ!本物はどれだ!?」Aパート
【公園】
「で、どうやって偽者を見つけるの?」
「それなんだよ…僕も顔が知られてるし、君のデータだって多分向こうは持ってる。
必死に歩き回っても、僕らの前に奴が現れる可能性は皆無に近い。」
「駄目じゃない。」
「だから今その方法を考えるために…ん?」
何かをひらめき、手を一回叩く拓哉。
「ギンガ…」
「何?」
「埋め合わせ…今できるよ。」
「え?」
………
【市街地】
「…」
「うん♪我ながら完璧!」
ギンガは髪を桃色のリボンで結び、服装を今風の物に着替え、サングラスをかけて赤面しながら拓哉と腕を組んで歩いている。
もちろん拓哉も金髪のカツラをつけ、サングラスをかけて服装も少し不良風の物に着がえている。
「ね…ねぇ!一万歩譲って変装は分かるけど、なんで恋人のフリしなきゃならないのよ!」
「しょうがないだろ。埋め合わせしろって言ったのギンガだろ?」
「そ…そりゃあ…そうだけど…」
「これの一環で何かおごるから、それで許してよ。」
「うぅ…このことお父さんやスバルには絶対言わないでね…」
「僕だって他言されたくないよ。」
「それにしても…」
ギンガは自分が履いているミニスカートとニーソックスを見つめる。
「この…短いスカートは…」
「ギンガはまだ十七歳だろ?可笑しくないって。」
「でも…これで動いたら…あの…」
再び赤面するギンガ。
「僕は全然OKだけど。」
「…バカ。」
「さて…こんな馬鹿話は止めにして、町中歩かないと日が暮れちゃうよ。」
「ま…町中!?」
「偽者が何処にいるか分からないじゃん。」
「そりゃそうだけど…腕組んで町中って…」
「あのさ…これはミッドの平和のためだよ?それにあくまで演技なんだから、肩の力抜きなよ。」
「う…うん…」
「さってと、捜索続行。」
二人は捜査を続行する。
支援1
すみません、僕の方も上手く書き込めません。
避難所に投下するのでだれかお願いします…
なんてこった・・二人のパソコンの身に何が起きたと言うんだ?
てすつ。
今、仕事終わった…。
これより帰投します。
で、しつこいようですが、
11時半くらいに投下しても良いでしょうかね?
…どうも、携帯でもはじかれる?
弾かれないよう支援する
パリィ!
318 :
無双:2008/01/07(月) 21:18:07 ID:0LfK9Zcl
ライダーさんもですか……乙。
今からべっかんこで書き込みしてみます。
さっきから『俺の右手はゴッドハンド』が頭の中で流れてるわけだが…
主人公の名前、その他モロモロを忘れたから書けない…
いろいろ調べて出なおしてくるorz
321 :
無双:2008/01/07(月) 21:35:03 ID:0LfK9Zcl
その話を聞いていて私はミッドチルダでも有名なあの魔導師の名前を思い出す。
聖王教会に尽力してくれている一人で時空管理局本局の『知の魔導師』。
ロストロギア探索でも迅速に察知する判断力や犯罪者逮捕に携わる知略をフルに活用して有名になって……今じゃ数少ない古代ベルカ式の魔導師けど、政治家を取って辞職した。
『諸葛亮孔明』
私はどんな人なのか臥龍さんに尋ねてみる。
「あの、聖王教会で政務官さんの名前は知っているんですがまだ会った事ないんです。どんな人なんですか?」
「……そうですね、はやてさん。人に対する評価はそれぞれです。ここは、政堂に着いてからのお楽しみとなされては?」
やんわりとした口調で微笑む臥龍さんに私はつい頷いてしまう。
……優しいねんけど威厳があるなぁこの人。
「答えになってねー」
「ははは、申し訳ありません。私は問題の答えを簡単に教えたりしない考えでして。 ああ、着きました」
そう言って臥龍さんが止まった先には大きな石材を土台の上に建つ独特の造りの建物。
私にはまるでお寺みたいな印象がある……。
「ではどうぞ皆様、中にお入り下さい」
臥龍さんに促され私達は政堂の門を潜って中へと入っていくと。
臥龍さんみたいに民族衣装を着た様々な人が行き交って、バリアントジャケットを着込んでいる魔導師もおった。
皆の姿にここは正に政治を行う場所なんや。と納得する。
「ああ、馬良殿。趙雲殿は?」
近くにいた魔導師に臥龍さんは声をかける。けど馬良さんは顔横に振って答える。
「趙雲殿は自然保護隊に用があると、つい先程行かれました。そちらの方々は政務官が言われていた管理局の?」
いや! ここじゃなくて避難所に書き込んだ方が良いのでは!?
やべ…ウロスと間違えてた。
すいません支援です、どうか投下してください。
324 :
クロスSSを書いてみた:2008/01/07(月) 21:49:25 ID:XX551MoU
クロスSEED
第一章 正義の剣は他者のために
325 :
クロスSSを書いてみた:2008/01/07(月) 21:51:28 ID:XX551MoU
CE73────メサイア攻防戦。
「お前が望んだ世界は・・・本当にこんなことなのか!?」
シン・アスカに対し、叫ぶアスラン。
望んだ世界を・・・その夢を叶えるために人は戦います。
たとえ、どんな障害があろうと、他人からどんな批判を受けようと・・・
だって、その人にはそれがすべてなのだから。他人の言葉など聞いていられない。
シン・アスカも彼の言葉を聞いても、納得などできない。
326 :
クロスSSを書いてみた:2008/01/07(月) 21:52:52 ID:XX551MoU
だが、そんなとき・・・メサイアから来た味方すら巻き込まれるネオ・ジェネシスの
光が彼らをすべて包んでいった。
自責と悔恨・・・CE73、すべての人は戦いなんて
望んでいなかった。ただ、強いものが存在するためだけに・・・
弱いことはいけないことなのだろうか?
彼らにとって世界はとても悲しいものに見えていたはずだ。
飢餓、病気、汚職、腐敗、差別、戦争とテロリズム、繰り返される憎しみの連鎖。誰かが止めなくてはならなかった・・・だが、誰も止め得るすべも答えも持ち合わせてはいない。だから、戦った・・・探すために。
アスラン・ザラは体の痛みに目覚めた。
「うぅ・・・ここは?」
気づいたアスランはベッドの上だった。
「あっ!目が覚めましたか?」
そこに、金髪のツインテールをした少女が映る。
「きみ・・・は?」
「私はフェイト・・・フェイト・T・ハラオウンです」
明るく笑うフェイトにアスランはどこか笑顔になるが、傷の痛みのせいであまり表情には出せなかった。
「あなたは?」
フェイトは今度はアスランの名前を聞いてくる。
「ああ・・・俺はアスラン・・・アスラン・ザラだ。それにしても、ここはどこなんだ?アークエンジェルやエターナルはどうなったんだ?」
現状が気になり、目の前の少女・フェイトに問いかけるが・・・。
「???」
フェイトは聞きなれない言葉に、ハテナマークを浮かべていた。
「フェイトちゃん・・・ここはどこなんだ?」
書くスレが違いますよ
書くとこちげぇよ、そういうの種なのはスレに投下しろ。
というかsageろ
331 :
クロスSSを書いてみた:2008/01/07(月) 21:59:46 ID:XX551MoU
恐る恐る聞くアスランだった。
「ここは時空管理局・艦船アースラだよ・・・といってもわからないよね?」
アスランの不可解な顔を見てフェイトはアスランの答えをいう。
「たぶん、あなたは別の世界から飛ばされてきたんだ・・・」
フェイトはアスランが突然、自分たちの前に現れたことを説明する。
「そうか・・・俺はまた・・・死に損なったのか」
アスランは過去を振り返り、そして、守るべき人たちのことを思い描く。
そうこうしていると、そこにもう一人少年が現れた。
「やぁ目が覚めたのかい?僕は、時空管理局執務官のクロノ・ハラオウンだ」
クロノは入ってくるなり自己紹介する。
「執務官?」
耳に入った聞きなれない言葉にアスランはまた疑問符を浮かべる。
「管理局の役職の一つだよ。僕はその資格を持っているわけだ」
そうなのか、とアスランは納得して自己紹介をする。
直ったかな?
テストも兼ねて避難所に落とした奴投下しますけどおk?
種なのは板で勝手にスレ立てすんなよwww
334 :
無双:2008/01/07(月) 22:01:55 ID:0LfK9Zcl
どうぞー自分も駄目でした。
335 :
クロスSSを書いてみた:2008/01/07(月) 22:02:23 ID:XX551MoU
すみません。
なんかテキトーどっかに書きたいなんて思ってたから・・・
336 :
クロスSSを書いてみた:2008/01/07(月) 22:03:19 ID:XX551MoU
てか、どこが一番正しいんでしょうか?
>>336 テンプレも読めない人は、どこにいっても投下しないほうがいい
いや、マジで
339 :
クロスSSを書いてみた:2008/01/07(月) 22:05:03 ID:XX551MoU
うぅ・・・すみませんが、教えてもらえませんか?
そういう読み方。こういうのやって見たいんですよ
もうなんか滅茶苦茶だ〜!!
駄目だ…
避難所にはもう投下してあるので、優しい誰かを待つことにいたします…
避難所の予告にはもうありますが、次回の機動六課サイドはアウレフヴェイトのダブルライダーです。
でもその前にレッドドラゴンサイドか平成サイド書くのでお楽しみに。
343 :
クロスSSを書いてみた:2008/01/07(月) 22:13:49 ID:XX551MoU
なれないことはしないほうがいい・・・教訓になっちった
344 :
魔装機神:2008/01/07(月) 22:13:52 ID:wDo80XSA
それじゃあ、こっちも試しに投下していいですか?
345 :
クロスSSを書いてみた:2008/01/07(月) 22:14:32 ID:XX551MoU
とりあえず、ごめんなさい!!
>>343 とりあえずテンプレ読んで7年ぐらいROMってくれ。
>>339 つーかアンタなんなんだよ?荒し?荒しっすか?
荒しじゃないんなら種なのはスレに投下しろ!
つーか無双氏はどうなったんだ?
なんかSKYな奴のせいで止まってるみたいだけど?
>>310のリリカルなのはStrikerS+仮面ライダー氏の代理投下全部いけるかわかりませんが行きます。
【二時間後 洋食専門料理店】
二人は恋人のフリをし、いくつかの街を歩いた。
しかし偽アウレフは未だ見つからず、二人は洋食専門料理店で昼食を取っていた。
「ふう…もう三箇所くらい回ったけど、未だに偽者が出てくる気配はないな。」
拓哉はオムライスを食べながら溜息をつく。
「全くね…」
向かい側に座っているギンガも特盛オムライスを食べながら表情を曇らせる。
「ところで…ギンガ。」
「何?」
「特盛何杯目?」
「え?五杯目だけど…」
「わお…さっすがはスバルのお姉さん…」
拓哉は四枚重ねられた特盛の皿を見ながら悶絶し、冷や汗を流す。
「こりゃ、ギンガの彼氏になる男は大変だ。」
「ほっといてよ!」
ギンガはむっとしながら五枚目の皿を重ねる。
「そういえばさ、拓哉君は彼女とかいないの?」
「へ?」
「だって、拓哉君は変身しなくても運動能力は高いし、強いし、ルックスは良いし、彼女の一人や二人居そうじゃない。」
「…彼女とか、そういうのは居なかったな…」
「どうして?」
「小さい頃は運動能力が低い自分が嫌で、ジョギングや筋トレやってたから女の子と話す機会もなし…
僕が小1のとき姉さん達が死んだ後は、前以上に運動に取組んだから、余計そんな機会もなかった…。
中1の時にはもう、「蒼い竜巻」とか、「マットの白い豹・風見志郎の再来」とか言われてたっけ…」
「そんなに人気だったのに、何で?」
「僕、中学は一年半しか居なかったけど、色んな部活の掛け持ちしたよ。
キックボクシングに体操、サッカー、野球、卓球、山岳…愛好会とかじゃアクロバットとかもやったっけ?
それで、全部の部活で輝かしい成績をあげて、友達もできた。
でも、友達は男ばっかりで女の子には縁がなかったな…」
「ふ〜ん…」
「…さてと、続き始めますか。」
「そうね。」
二人はテーブルから立ち上がり、支払いに向かう。
「4800円です。」
「うわ!高…」
「よろしくね〜♪」
どうぞ!
【市街地】
昼食を終え、再び腕を組みながら捜索に向かう二人。
「さてと、次は…ん?」
視線上に遊園地を発見する拓哉。
「絶好の場所じゃん…」
「え?」
「行くよギンガ!」
「え…ええ!?」
拓哉はギンガの手を引き、そのまま遊園地に向かった。
【遊園地】
「ねぇ…ぜっっっったい下心あるでしょ。」
「無い…と言えば嘘になるかな。」
「やっぱり…」
「まぁまぁ…最初は演技のつもりだったけど、何時間も一緒に歩けば…流石にさ…ああ勿論、深い意味はないよ。」
「へぇ〜」
目を細くして拓哉を見るギンガ。
「それに…僕…デート初めてだから…」
「…」
「…駄目?」
「…ま、良いわ。」
「ホント!?」
「拓哉君が相手なら、ファーストデートあげても良いかな…」
「ありがと!」
「まぁでも、私のファーストデートを奪った埋め合わせは、キッッッッチリしてもらうからね。」
「ええ〜さっきのオムライスで帳消しじゃないの〜?」
「それとこれとは別!ほら行くよ!」
「おわ!」
ギンガは拓哉の手を引っ張り、チケットを買いに向かう。
そして、拓哉を強引に様々なアトラクションに連れ回した。
………
「ふう〜…疲れた…」
拓哉はベンチに座りながら額を押さえる。
「これじゃあどっちが誘ったのか分からないよ…」
「もう…だらしないんだから…」
「いやぁ…ごめ…」
「うわあああああああああああああ!!」
「「!?」」
二人はゴーカートの方から子供達の悲鳴を聞き、ベンチから立ち上がる。
「変身!」
拓哉はサングラスとカツラを取って変身ポーズを取り、アウレフに変身する。
「ギンガ、君は遊園地の人々を非難させた後、僕と合流してくれ。」
「ええ!」
アウレフはギンガにそう言い、走ってゴーカートに向かった。
【ゴーカート】
「そらそら!逃げろ逃げろおぉぉぉぉお!!」
ゴーカートでは、偽アウレフが子供達から車を奪い、それを運転して追い回していた。
「待て!」
「ん?」
「トォ!」
大暴れする偽アウレフの元にアウレフが現れ、ジャンピングキックで偽アウレフを車から蹴り落とす。
「おわ!」
蹴り飛ばされた偽アウレフは受身を取って着地する。
「本物!貴様何故!?俺は貴様の居るところにはいかなかった筈だ!?」
「お前、金髪のグラサン掛けたイカした男を見なかったか?」
「…おお!ポニーテールでミニスカの絶対領域がソソる美人の姉ちゃんと一緒に歩いてた金髪の野郎か!」
「(コイツ…趣味が…)ああ、そうだよ!その男が僕だよ!」
「何!?じゃああの姉ちゃんはお前の女か!?だったら貴様を倒してあの姉ちゃん俺のにしてやる!かかれ!!」
「ギィィィィィィイ!!」
突如大量の戦闘員が現れ、アウレフに襲い掛かる。
しかし、戦闘員は何処までいっても戦闘員、いつもどおりアウレフのスピーディな技に全滅させられる。
「アウチ!やっぱり駄目かよ!」
「戦闘員なんかで僕を倒せると思うな!正々堂々勝負しろ!」
「おのれぇ…そりゃ!」
「トォ!」
アウレフと偽アウレフは宙に飛び、キックポーズを取る。
「「ライダーキック!」」
そしてお互いのライダーキックを激突させる。
競り合いの結果はアウレフが勝ち、負けた偽アウレフは地表に激突し、そのはずみでドロリンゴの姿に戻る。
「それが貴様の正体か!?」
「クソォ…しまった…」
「あ!あの仮面ライダーは偽者だ!?」
「ホントだ!」
周囲に居た子供達は姿を現したドロリンゴの姿を見、驚愕する。
「そっか…偽者が僕たちをいじめたんだ…」
「ライダー、ごめんよ。」
「良いんだ、悪いのは全てあいつだ!君達は早く逃げろ!」
「うん!」
大勢の子供達は走って逃げていく。
「ドロリンゴ!あきらめて降伏しろ!」
「ふっふっふ…それはどうかな?」
ドロリンゴは再び偽アウレフに変身し、三体に分裂する。
そして分身した偽アウレフはアウレフを取り囲み、円形に動く。
「なに!?」
「これで三対一!」
「お前の負けは決まった!」
「死ね!」
三体の偽アウレフは本物そっくりの攻撃方法で囲んだ本物を攻撃していく。
アウレフは波状攻撃に応戦しようとするも、やはり数に圧倒され、苦戦を強いられる。
「オラ!」
「左…!」
「バーカ!こっちもだよ!」
「喰らえ!」
アウレフは左からの攻撃を防御するも、右と背後から来た攻撃に対応ができず、攻撃をその身に受けてしまう。
「うわ!」
「ハーハッハッハッハ!お前に勝ち目はない!」
「死ね!」
「死んでしまえ!」
「クソ…!」
「アウレフ!」
苦戦するアウレフの元へバリアジャケットを装着したギンガが現れ、協力しようと傍に行こうとするが、地面から戦闘員達が出現し、ギンガの行く手を阻む。
「ギィ!」
「くっ…こんな時に…!」
「ギンガ…(こうなったら使うしかない!)」
アウレフは立ち上がり、再び変身ポーズを取る。
「ライダーーーーーパワアァァァァァァァア!!」
するとベルトのドラスストーンが激しく輝き、赤い光がアウレフを包み込む。
そして光を纏ったアウレフはいつもの倍以上のスピードで二体の偽者に組み付き、宙に飛んだ。
「ライダーーーーーーッ!返し!!」
「「ぐぎゃああああああああああああ!!」」
二体の偽者はライダー返しで地面に叩き落され、爆発する。
さらにアウレフはそのままキックポーズを取り、ドリルのように回転しながら最後の一体に向けて急降下していく。
「ライダアァァァァァァァア!スピニングドリルッッッ!キック!!」
「おわああああああああああ!悔しいぃぃぃぃぃぃぃい!!」
最後の一体の偽アウレフもスピニングドリルキックで上半身を丸ごと破壊され、爆散した。
「はぁ…はぁ…」
戦いを終えたアウレフは拓哉の姿に戻り、荒い呼吸を繰り返す。
「拓哉君!」
ギンガも戦闘員を片付け、バリアジャケットを解除して拓哉の傍に駆けつける。
「ああ…ギンガ…あ…」
拓哉は足を滑らせ、ギンガを押し倒すような形で倒れる。
「え!?」
当然ギンガは顔を真っ赤にして激しく動揺する。
「ちょ…ねぇ!?」
「大丈夫…深い意味はないから…」
拓哉は疲れきった声で言う。
「深い意味はないって!そういう問題じゃ…」
「ああ〜…なんか布団みたいで気持ち良い…しばらくこのままで…」
「えええええええええええええええええええ!?」
「がぁ〜…がぁ〜…」
「寝るなあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
ギンガは酷く赤面しながら拓哉の頭を何度も殴った。
支援
………
「もぉ〜…とんだ正月休みだったじゃない…こんなのお父さんにばれたら大変よ…」
「はは…ごめん…」
拓哉は頭にできた大量のたんこぶを押さえながらギンガに謝る。
「ライダーパワーは、紅の石の能力で、身体能力を極限まで引き上げる。でもコレ使うと体力滅茶苦茶減る上に、二時間変身不能になるんだ。
だから戦闘後にああなっちゃったわけ。」
「だからって…あんな体勢…」
「だから深い意味は…」
「無くても嫌〜!」
ギンガは目に涙を溜めて「アレ」を思い出し、再び酷く赤面する。
「…ごめんなさい。」
「…でも…」
「ん?」
「デートの方は…少し…楽しか…」
ギンガは小声で呟く
「何?声がちっちゃくて聞こえないよ。」
「ッ〜〜〜〜!!なんでもない!この馬鹿拓哉!!」
激しい拳骨を拓哉の頭部に見舞うギンガ。
「いってえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ!!」
【機動六課隊舎医務室】
「ったく、医務室が開いてて良かったぜ…ギンガにぶたれた瘤が痛い…」
「いらっしゃ〜い♪」
「!?」
拓哉は聞き覚えのある声を聞き、下げていた頭を上げる。
そこには「ガブリエル」所属の少年医師、相馬享一の姿があった。
「きょ…享一!」
「拓ちゃん久しぶり♪」
「久しぶりだな!」
「お久しぶりでーす!」
唖然としている拓哉の前に、鎧を着た男天使型の使い魔・ウリエル(イメージCV小野坂昌也)と、白衣を着た女天使型の使い魔・ラファエル(イメージCV喜多村英梨)が現れる。
二人とも享一の使い魔だ。
「ウリエル…ラファエル…」
「どうしたんですか拓哉さん?」
「頭がたんこぶだらけじゃねーか?」
「いや…これは…」
「分かった!女の子でしょ拓ちゃん。」
「黙れ!テメェはさっさと荷物まとめてガブリエルに帰りやがれこのエロ医者!まさか隠しカメラとか持ってきてるんじゃないだろうな!?」
「嫌だなぁ…当然じゃないか♪」
「この野郎おぉぉぉお!とっとと帰れ!」
「無理♪僕正式にここの医務官になったんだも〜ん♪」
「何いぃぃぃぃい!?」
「これから宜しくね♪」
「はぁ…最悪だ…」
拓哉はうなだれ、大きな溜息をついた。
【AAMON本拠地司令室】
「えーい!だらしのない奴め!」
地獄大使は何度も地面に鞭を叩きつけて悔しがる。
「ふっふっふっふ…苦戦しているな、地獄大使。」
司令室に暗闇大使が現れ、地獄大使をあざ笑う。
「黙れ暗闇!ならば貴様が神城を倒してみよ!」
「いいだろう…現れよ!ダイノロイド五人集!!」
暗闇大使の呼び声と共に、五体の恐竜型怪人が司令室に姿を現した。
「ティラノロイド!」
「アロロイド!」
「タルボロイド!」
「ディロフォロイド!」
「アルバロイド!」
「こ…これは!?」
「はーはっはっは!恐竜の中でも特に凶暴な、肉食恐竜の改造人間だ!見ておれ機動六課…そして仮面ライダーアウレフ!
このダイノロイド五人集が、必ず貴様らの息の根を止めてくれる!」
政宗一成「暗闇大使の切り札、ダイノロイド五人集が姿を現した。
果たして機動六課と仮面ライダーアウレフは、どうやってこの危機を乗り越えるのだろうか!?」
【次回予告】
政宗一成「暗闇大使の放った、ダイノロイド五人集。
その圧倒的な破壊力は、機動六課とアウレフを退け、ミッドチルダの主要都市を次々に破壊していく。
そしてその牙は、ついに首都クラナガンへと向けられた。
絶体絶命のピンチのその時、「赤龍」の名を与えられた戦士達が、機動六課を助けに現れた!
次回、「レッドドラゴン見参!恐竜怪人対ライダーダブルキック!」
突き抜けるぜぇっ!!」
代理投下完了。
代理投下も楽じゃない気がしましたよ。
リリカルなのはStrikerS+仮面ライダー氏お疲れ様です。何とか投下完了しました。
されに加えて、トランスフォーマーのナレーション
「あの」機動戦士ガンダム艦長、逮捕しちゃうぞの課長。これも政宗一成だ!
モビルオイル…これが…政宗一成のせかい…。
GJです!
サンクス!Xさんありがとう!
ウリエルとラファエルのサイズについては二人とも「普段」はリィンサイズで。
あと…何度も言いますが、皆様からのクレーム受ける覚悟はできてるっす。
このでかいはr(ry…で。
362 :
魔装機神:2008/01/07(月) 22:33:17 ID:wDo80XSA
乙です。
個人的にはこういうのいいですよ。
無双の人がまだだめなら投下してもいいかな?
>>359 どうもお疲れ様っす。
>>345 とりあえず、2chの初心者の質問版を見てみたり
スレの呼吸をつかむ為に、半年ほど読むだけにしてみてはどうですか?
それとテンプレも重要な事が書かれていて、なにかするときは読んでみると
いいですよ。
ふぅやっと最終話完成って、投下する人多いw
そんじゃ、0時にでも投下します(・ω・』
無双の人も避難所に投下してくれれば俺が代理投下しますのに・・・。
(唯連続投下で出来なくなるかも・・・)
366 :
魔装機神:2008/01/07(月) 22:44:39 ID:wDo80XSA
無双氏の反応がないけど投下しておkですか?
>>361 GJ!
ギン姉に初めて萌えましたw
ウリエルとラファエル…
…まさかデビチr(ry
368 :
無双:2008/01/07(月) 22:46:37 ID:0LfK9Zcl
すみません、どうぞお先にー。
携帯からなんで解らないんですけど避難所はどう行けば良いんですか?
>>361 あんな素敵な姿のギン姉とデートした上に、倒れこむなんて…
何て羨ましい奴だ!!チクショー!!!!
俺と変われぇー!!!!
こんなことギン姉にしたんだから、これ以上フラグを振りまくことせず、責任取って幸せにしろ!!!
もし、他の娘とイチャついてみろ…………
その時は、オレガクサマヲムッコロスッ!!!!!!!!
>>368 何とかクロスSSのまとめサイトに行ってください。そうすれば避難所にいけますが、
俺はもう寝ようと思ってます。申し訳ありません。明日に代理投下は出来ますが、出来れば他の人がやってください。
それではおやすみなさい。
>>361 言える事は一つだけ、ギン姉GJ!!!!!
373 :
魔装機神:2008/01/07(月) 22:50:49 ID:wDo80XSA
それでは投下します。
SHADOW NANOHA STS 11 神殺しと炎の児
「ほーら、高い高いだっち」
なのはたちがでかけている頃、ウルたちとフォワード陣はヴィヴィオの世話をするために奮闘していた。
そこで一つの案としてだされた身長が高いヨアヒムによる高い高い。
これが意外と受けがよく、ヴィヴィオは大いに喜んでいた。
「もっともっと」
「おっしゃ、まかせろだら!」
こうしてしばらく遊んでいるヨアヒムとヴィヴィオ。
「間違って投げ飛ばすんじゃねーぞー」
ウルはそれを見てヨアヒムに注意した後、シャマルから話があるから来てほしいと医務室へ向かった。
「ウルさん、診断の結果なんですけど……」
シャマルは一枚のカルテを持つ。
「あなたのヤドリギの呪いを覆っている魔力の正体がわかりました」
そういって、一つのモニターを見せる。
「この白いものは魔力の源、リンカーコアです」
シャマルの言葉に、おいとウルは尋ねる。
「俺は魔力なんて持ってねえぜ。それは以前から知っている」
だが、それを知っているようにはいとシャマルは頷く。
「これは、あなたのリンカーコアではありません、別の人のリンカーコアがあなたの呪いを食い止めてるんです」
そのシャマルの言葉に、え?とウルは疑問の顔を浮かべる。
「それも呪いの進行を食い止めるほどの強い魔力です」
確かに、グレイブヤードでのあれはどこか暖かなものを感じた。
「だから、これから何が起こるか分からないから十分気をつけてね。何かあれば絶対に力になってあげるから」
ああとウルはなずく。
どこかその自身満面な顔に、少し疑問を浮かべながら。
「全く……なのは達も急な事を言うなあ」
ここはロストロギアや様々な情報が並ぶ時空管理局本局にある無限書庫。
その司書長、ユーノ・スクライアはため息を付きながら書庫のデータを調べる。
数日前、なのは、フェイト、はやての3人から「ヤドリギの呪い」について調べてほしいといわれたのだ。
どうしたのか尋ねると、何でもそのヤドリギの呪いにかかった人がいるらしく、
その呪いを直すためになのはたちも六課の運営の中、いろいろと頑張ってるらしいのだ。
だが、ただでさえ自分はくそ忙しいのだ。
無限書庫がかなり整ったとはいえ、管理局全体が人手不足で、この無限書庫でもそれは例外ではない。
それでもかなりの仕事がくるので、めまぐるしい毎日を送っている。
しかも、つい数日前その3人の一人、フェイトの義兄、クロノ・ハラオウンからいつもどおりの気が遠くなるような仕事を請求されたばかりだ。
あいつも仕事で忙しいのは解るが、出来ればもう少しこまめに来て量を分散してほしい。
その中、今回のなのは達の件だ。
「「「ユーノ((君))、お願い!」」」
しかし、あの3人にお願いと頭を下げられれば、断るわけには行かない。
なにより、嫌といった後の報復が恐ろしい事この上ない。
結局その仕事を請けたのはいいのだが、その呪いはいつ進行するかわからないから出来るだけ早くお願いという追加付きだ。
まあそういうことなら……と結局了承するユーノ。
呪いで苦しんでいる人がいるのだ、仕方がない。
だが、ユーノが忙しいということを知っていながら、そのまま後はお願いねというなのはたちではない。
ちゃんと助け舟は出した。
「ユーノ、はいこれ」
そういって、狼の耳と尻尾をつけた奇妙な女の子が数札の資料を渡す。
「ありがとう、アルフ」
374 :
戦国の鉄の城:2008/01/07(月) 22:50:57 ID:FxWsTpZC
職人の皆様GJですー。
>>361 むしろ萌えて微笑ましいからこういうのをもっとやってs(ry
しかしなんかいろいろと混乱してますねー…。状況がよくわからん。
375 :
魔装機神:2008/01/07(月) 22:53:19 ID:wDo80XSA
そう、助け船とはこの件がわかるまで、フェイトの使い魔、アルフをユーノの手伝いにこさせるという事なのだ。
数年前まではアルフも無限書庫にいた。
しかし、クロノとその妻エイミィの間に子供がうまれてからは家事や子供の世話のため、ずっとフェイトの実家にいたのだ。
だが、今回はフェイトの頼みとあってアルフとエイミィが二つ返事で駆けつけてきたのだ。
「それにしてもヤドリギの呪いか……聞いたことがないな」
うーん……とユーノが考えてきたときだった。
「ユーノ、頼みたいことがあるがいいか?」
その無限書庫にやってきたのは、先ほど話したフェイトの義兄のクロノ・ハラオウンである。
その姿を見て、うわ……と誰から見てもいやな顔をする。
大体お前は数日前に来たばかりだろ。何でまた仕事が増えるんだよ、と心の中でため息を付くユーノ。
さっきこまめにこいとは言ったが、何も今じゃなくてもいいだろう。
「なんだその顔は?」
クロノはそういうが、その理由は自分が一番よく知っているので深く突っ込まない事にした。
その時、本来ならこの場所にはいない人物を見つけるクロノ。
「アルフ、どうしておまえがそこにいるんだ?エイミィの手伝いはどうした」
クロノの疑問に、エルフは説明する。
自分はフェイトたちがあることで、忙しいにもかかわらずユーノに頼み事をして、そのお詫びに自分が手伝いに来たというのだ。
そうか……と納得するクロノ。
「こっちは人の命がかかってるから、出来ればこっちを優先させたいけど、いいかな?」
こっちも結局はそうなのだが……とクロノは思ったが、いつその呪いが発動するかわからない、
そしてこれはなのはたちが頼んだ事だろ聞いたことに、クロノもわかったという。
「じゃあ、今日の分はその仕事と以前頼んだ仕事が終わってから、改めて出す事にしよう」
クロノの言葉に、助かるよ、とほっと一息つくユーノ。
しかしそれはしばらくの間休みはないと思え、といっているようなものだ。
だが、仕事が連続で重なるよりはいい。
そう思ったときだった。
「あら〜、クロスケじゃなーい!お久しぶりぶり〜〜!」
ふと、10年位前に聞いたことがあるような声が聞こえる。
「アリア、ロッテ……なんでお前達が……」
クロノは自分の師匠、リーゼアリアとリーゼロッテガイルことに驚く。
彼女は今は既に万里極をやめているギル・グレアムの使い魔だ。
いまは彼の実家で静かに暮らしているはずだが……
「いやねえ、はやてからユーノを手伝ってほしいっていわれてここにきたの」
その言葉に、なるほど、とユーノも納得する。
どうやらはやてからも手は回してくれたようだ。
「だ〜か〜ら〜」
そういって、ロッテはクロノが持っている資料を手にとる。
「毎度毎度ユー君を過労死寸前まで追い込むクロスケからの仕事は、二人で引き受けるから」
「あなたは今やってる事に専念して」
すみません、といってクロノは仕事を再開させる。
「そ〜らクロスケ〜、手伝わないんだったらささと帰って。じゃないと……」
というロッテに、何か嫌な予感を感じたクロノはそそくさと出て行く。
流石師匠、弟子の対処法を良く知っている……とユーノは半分呆れ、半分感心しながらなその光景を見た。
376 :
魔装機神:2008/01/07(月) 22:54:57 ID:wDo80XSA
「皆さん、よく来てくれました。私は聖王教会の騎士、カリム・グラシアです」
ここは聖王教会のカリムの書斎である。
そこにはなのはたちをカリムの4人だった。
「クロノはどうしても忙しくてこれなかったみたいです。まあ、最新鋭の艦船の艦長をやってるんだから当たり前なんでしょうけど」
「それに、これはわたしがそろそろかなって今日決めた事やからなあ。おらんのもむりないか」
そういって、はやてはイスに座る。
「機動六課、スターズ1、高町なのは一等空尉です」
「同じく、ライトニング1、フェイト・T・ハラオウン執務官です」
なのはとフェイトは自己紹介をするが、それを見たカリムはつい笑ってしまう。
「私達とクロノは昔からの付き合いがあります。ですから、今は普段どおりでいて結構ですよ」
カリムはにっこりと微笑み、それを見たなのはたちはそうですか、と一息つく。
「そういえば、お兄ちゃんがいないって、そんなに忙しいの?」
フェイトの言葉にうんとはやてが頷く。
「まあた無限書庫で用事があるって……ユーノ君も災難やな」
あはは、と笑うフェイトたちだが、なのはだけは少しいい顔をしない。
「どうしたの?」
フェイトがそれを尋ねるが、ちょっとね……と自分が思った事を告げるなのは。
「私だけユーノ君を力になる事ができなかったからね……」
ユーノにヤドリギの事を依頼したとき、フェイトはアルフを、はやてはリーゼたちを手伝わせた。
しかし、自分にはそういう手がないことになのは無力感を感じたのだ。
「そんな事ないって、ユーノはそんな事は思ってないよ」
そうだといいんだけど……と、なのははまだおちこんでいる。
そこに手を差し伸べたのはカリムだった
「それじゃ、時間があいてるときにでも何か手伝えばいいんじゃないでしょうか?」
カリムのアドバイスにえ?となのははカリムを見る。
「あなたにしか出来ない協力と言うものもあるものですよ」
そうですか?となのはは尋ねるが、カリム、そしてはやても頷く。
「なのはちゃんも解ると思うけど、無限書庫っていうのはとてつもなく忙しい」
それはそうだ。出なければアルフやリーゼたちを向かわせたりはしない。
「そんなときはろくな食事を取る時間もないはず。そんな時、誰かが食べ物を持ってきたら、どれだけ助かる事やら」
「え?」
はやての言葉に、目をぱちくりさせるなのは。
「だから、時間が空いているときになのはが出来る事をすればいいんだよ」
フェイトにまで言われ、うんとただ頷くしかないなのは。
そんななのはをみて、やれやれと少しため息をつく二人であった。
「セッテ、息が上がっていえるぞ!もうギブアップか?」
「いえ、まだです!」
シュミレーションルームで、トーレとセッテは恒例の稽古をしている。
ここはスカリエッティのアジトにある模擬戦部屋。
「まーたやってるっすね、あの二人」
ウェンディは今日で既に3度目になるこの光景を見て、半ば呆れた目で見る。
おそらくまた夜に同じ事をするだろう。
ここまでして戦い方を教えるトーレもトーレならば、それをちゃんと受けるセッテもセッテだ。
この師匠にしてこの弟子ありといったところか。
「そういえば、最近ノーヴェも張り切ってるっすよね?」
ウェンディの視線の先には、軽い訓練を終わらせ、スポーツドリンクを手にしているノーヴェがいた。
「そういうお前は、ちょっとサボリ気味じゃねえのか?」
相変わらずきつい視線を向けながら、ノーヴェはドリンクのストローに口をつける。
「い〜や、いつもどおりっすよ。ただ、模擬戦室が中々使えないから今は見学してるだけっす」
377 :
魔装機神:2008/01/07(月) 22:57:16 ID:wDo80XSA
そういって、ウェンディは視線を変える。
その先には自分の武器、ロングバレルを持っているディエチがいた。
「この後、射撃訓練に付き合ってもらうっす。ノーヴェもあとでトーレ姉にいろいろと教わったらどうっすか?同じ接近タイプだし」
ウェンディの言葉に、すこし嫌な顔をしながら俯くノーヴェ。
「以前やって、腕一本パーになったの覚えてんだろ」
「ああ……あの時はびびったっすねえ」
ノーヴェが稼動してまだ間もないときに、まだデバイスは持っていなかったが接近タイプの能力と言うのは解っていて、
ノーヴェは一度トーレに接近戦の基本を教わろうとした。
しかし、トーレはそのとき始めて人に戦い方を教えるので(以前はチンクやディエチとマジバトル)力の調整を誤り、少しやりすぎてしまってノーヴェんのうでを一本へし折ってしまったのだ。
「あれ以降、頼みづらいんだよ……」
「トラウマっすか」
それ以降、ほとんど独学、もしくはトーレから教わっているセッテと模擬戦をしているのだ。
「あの時はすまない、ちゃんと反省はしている。
後ろから声が聞こえ、振り向くとそこにはトーレとセッテがいた。
「あれ、いつのまに終わったんっすか?もう少しやってると思ったんすけど」
ウェンディの質問にセッテが答える。
「チンク姉が後がつかえてるから早く変われといわれて」
どうやら、チンクがずっとウェンディとディエチが待っているのを見て、それで言ったのだろう。
「ウェンディ、いくよ」
ディエチはバレルを持って模擬戦質に入ろうとしている。
ういーっす、とウェンディもその後に続いていった。
「これは?」
なのはとフェイトはきょとんとしながらそれを見る。
カリムが何かは個を取り出し、その箱を開けるとその箱から複数の神がとびでてきて、狩生の周囲を舞うように回転している。
「これが私の能力です。ある程度の簡単な予知能力のようなものです。
ですが、あまり信憑性はありません。ちょっとした占い程度ですから」
それでも管理局にとってはその予言は重宝していて、本局のほうでは何度かその予言に助けられた事がある。
しかし……
「けど、地上本部のほうは全然その予言を聞き入れてくれんのよ。お堅い中将さんのせいで」
そういって、モニターを出し、そこに移っていたのはこの地上本部のトップでもあるレジアス・ゲイズ中将。
彼はこの手のレアスキルに関連するものを嫌っており、カリムが示した予言にも耳を聞き入れようともしない。
そして、ある予言がかかれ、それが機動六課の立ち上げる原因となった。
「地を統べる地に災いが降り注ぎ、空は赤く染まる。
そして野望を持つものが朽ちたはずの空にうかびし遺跡を復活し、そこで行われるのは禁忌とされている術」
つまり、地を統べるもの、つまり管理局地上本部が何者かに襲われ、さらに誰かが何か、おそらくはロストロギア級の何かを復活させようとしているのだろう。
「だから、独自にこの予言に対応するために作られたのが機動六課というわけや」
カリム、そしてはやての説明により、なのはは頷く。
これがもし起こるとすればかなり重大な事だった。
「それと、関係があるのかは解りませんが、このようなものもあります」
そういってカリムは一つの紙を取る。
「世界は大いなる力を持つ悪魔によって破滅の危機を迎える。
立ち上がるは星の光、駆ける雷、夜天の王と騎士。そして、神殺しと呼ばれた男と二つの炎の児」
読み終えた後、カリムはなのはたちを見る。
「これは何をさすのかはわかりませんが、おそらく星の光、駆ける雷は……」
「私たちの推理が正しければスターズ分隊とライトニング分隊、夜天の王と騎士は私たちのことやと思う」
378 :
魔装機神:2008/01/07(月) 23:00:08 ID:wDo80XSA
つまり、自分達が何かに立ち向かうのだろうか。
そして……と最後の言葉に疑問を抱く。
「この神殺しの男と炎の児っていうんが誰だか全然わからへんかった」
けど……と自分が思っている事を話すはやて。
「一度、この事をウルさんに聞いてもらおうと思う」
そう、異世界から来訪し、数多のモンスターと契約を交わしその力を得る事ができるフュージョン能力を持つウル。
もしかしたら、神殺しの男について何かしっているかもしれないからだ。
「せやから、今度私のほうから尋ねてみることにする……まあ、今回は杞憂に終わればええんやけど……」
そう、機動六課の本当の役目ではなく、表向きの試験部隊としてで終わらせたいのが本音である。
だが、まだはやてたちは知らない。
その遺跡も、悪魔も、そして神殺しの男もウルはすべて知っている事を。
そして、炎の児もすぐに知る事になる。
投下完了。
えーと、わかる人はわかったかもしれませんが、「炎の児」はシャドウハーツとは他の作品です。
いろいろな作品のクロス考え付くけど、すべてを文章が出来るはずもなく、そこで思いついたのが「カオス化しない程度の多重クロス」
と言うわけで、数話ほどしたら別の作品のキャラが出てきますので、暇な人は予想デモしてください(知ってる人は知ってるかな?)
最後に……炎の児だったっけ?子だったっけ?(しるか)
支援
クロススレ住人の皆様方お久しゅうございます
ダメSS書きのNOCTURNEでございます
未だに二話目の投下もならず面目の次第もございません
>>294 >>296 自分のような未熟者の作品を待っていてくださってとてもうれしく思います
何とか今月中には投下をしたいと思っていますので今しばらくお待ちください
そして全SS作者にGJを
以上、生存報告でした
381 :
旅ゆく人:2008/01/07(月) 23:28:17 ID:87wLWbWO
はぁはぁ、……すッ推敲、この一時間やりまくりんぐ……。
一昨日から、どんだけ推敲重ねてんだ、オラの阿呆ッ!
……そんなわけで、魔装機神氏の投下から一時間もしてないんですが、
やっちゃっても、良いッすか?
GOだ
383 :
旅ゆく人:2008/01/07(月) 23:33:44 ID:87wLWbWO
宜候。……照準よし、テッ!
その男は、クラナガン郊外のとある自然公園の駐車場で、
第97管理外世界では『ジープ』と呼称されている車に寄りかかっていた。
寄りかかりつつ、右手に収まっているものを見つめている。
通信端末のようだ。
ディスプレイと覚しき緑色の液晶画面に、文字が流れる。
「〈RTB〉、か」
頬に一筋切傷痕のある男は、そう呟いて、端末を運転席に放り出し、荷台に置いていたブーメランを手にした。
ジーンズのポケットから折り畳みナイフを取り出し、荷台に腰掛け、おもむろにブーメランを削り出す。
森の住人達のざわめきをBGMに、黙々と削る。
シャッ、シャッ、シャッ……。
「相変わらず、熱心だね」
聞き覚えのある声。
「待ち人来たる、か」
顔を上げる。
中肉中背で、一見すると冴えない中年の男が、目の前にいた。
「ええ、こういう時の暇つぶしには、丁度良いですから、ヤン提督」
男は、笑みを浮かべ、中年の男――ヤン・ウェンリーに言った。
「そうして、完成形に近づけていくんですよ。その過程が、たまらなく楽しくてね」
「なら、私は本日、そのまだ発展途上の、そいつのテストフライトに付き合わされたと言うことかい、ブッカー少佐」
そう言いながら近づき、作業を続ける男の傍まで来て、ジープにヤンは寄りかかる。
「フム……」
そう言われて、男――ジェイムズ・ブッカーは作業の手を止め、瞑目して、肩をすくめた。
「否定はしません」
「会心の出来だと言って、無理矢理、私を連れ出しておいて……」
やれやれといった様子で、頭を掻いた。
「提督には、いつもとは違う休暇を、楽しんでいただきたいと思いまして」
悪びれた様子はない。
「無限書庫で一日過ごすのも良いでしょうが」
削る手を止め、ヤンを見つめる。
「偶にはアウトドアを楽しむってのも、悪くないものですよ」
「……まあ、結果として悪くはない休暇だったかな」
ヤンは、微笑んだ。
「あの子達とも、知り合いになれたし」
今しがた別れた旅人たちを思い出していた。
「それに」
スラックスのポケットに忍ばせていたものを取り出す。
「これを渡してもらえるとは、ね」
一枚の、データチップだった。
>>367 『エル』は『神の』という意味ですな。
ちなみにウリエルは『神の火』
……アギトの幹部クラス、海外でのウケがとても気になるな。
「提督に、直接お渡しした方が良いかと思いまして」
「独断?」
「しわしわ婆さんの許可は、すでに」
「おいおい、仮にも自分の上司を……」
苦笑する、ヤン。
「それにしても」
「はい」
「『彼ら』の動きは、思ったよりも活発になっているのか……」
「正直、我々の予想より、『奴ら』が活動的になっているのは確かです」
「FAFの総合的な見解?」
「全ては、その中に」
ブッカーは、ヤンの手にしたチップに目をやった。
「……解った。持ち帰って早急に分析の上、管理局としても対策を練ろう」
「ありがとうございます」
ヤンは改めて、ポケットにデータチップを忍ばせた。
ブッカーは再び、ブーメランを削りだした。
少し強めの風が、吹き抜ける。
森が、一層ざわめいた。
「――つかぬ事を聞くようだけど」
「はい?」
「そのナイフのエンブレム、モチーフって……」
「フェアリィ星にあった、ヴァルキア基地訪問者用の、記念品の一つですよ」
「成る程、それでワルキューレなのか」
「なかなかよく切れる奴でしてね、ブーメラン作りに重宝してるんですよ」
「ふぅん……」
また少し強めの風が吹く。
「それにしても」
「はい」
「ああいった時空転移の事例も、本当にあるのだねぇ」
「そのようですね」
「君の持つ端末にあの通信が入らなければ、私は、なのはに彼らの保護を依頼することは出来なかったろう」
「雪風は、ああいうことには特に敏感に反応できる、戦闘知性体ですから」
「成る程……」
そう呟き、物憂げな表情で腕を組むヤン。
しばしの沈黙。
「提督」
「何だい?」
「今は、また別のことを考えておられますか」
「どうして、そう思う?」
「何となく、ですが」
ヤンは嘆息し、頭を掻いた。
「……なのはから、彼らのことを聞いてた時に、
彼らがテルヌーゼンという村に行く途中だったと聞いてね、思わず若い頃を思い出したんだよ」
ブッカーは黙々と削っている。
「士官学校時代の親友の婚約者でね、その彼女は後に同盟の代議員になったのだけど」
ヤンは、空を見上げる。
「その選挙区が、テルヌーゼンって言ったのさ」
「……その彼女に、思いを寄せておられてた、とか」
「過去の話さ」
「フム……」
また、しばしの沈黙。
「それで、そのお二人は、今も仲むつ――」
「もう、二人とも、この世にはいない」
「……」
「親友は戦死、彼女はクーデター騒ぎの最中に殺されたよ」
ブッカーの手が止まる。
「申し訳ありません……」
「別に、私が勝手に思い出してただけさ」
風が、また少し強く吹いた。
支援支援支援!
「さて、そろそろ本局に戻ろうか、少佐」
「いえ、帰りは別々の方が良いでしょう」
「うん?」
「そろそろ、来る頃です」
それから暫くしない内に、黒塗りのセダンが滑るように駐車場に侵入してきた。
「これも、あの准将の指示?」
「私の独断です」
ヤンは肩をすくめる。
セダンのドアが左右どちらも開く。
「ヤン提督」
見るからに力士のような巨漢の男が出てきた。
「お迎えに上がりました」
グレーがかった髪と瞳の、長身で洗練された容姿の男が出てきた。
そして、管理局の青い制服に黒いベレー帽を被るという、何ともアンバランスな出で立ちをした男達は、ヤンに対して敬礼した。
「おいおい、……パトリチェフ准将に、シェーンコップ一佐、何で君たちがわざわざ」
「何、我々、暇を持て余しておりましたもので」
「ははッ」
ワルター・フォン・シェーンコップが冗談めかし、フョードル・パトリチェフは笑った。
「全く……」
「お二人とも、ご苦労様であります」
ブッカーはブーメランを置いて荷台から腰を上げ、二人の前まで歩み出て敬礼した。
二人は、返礼する。
「君こそ、お勤めご苦労」
パトリチェフが言い、
「全くだ、あのしわしわ婆さんの相手は、骨が折れるだろうに」
シェーンコップがおどけて言った。
「ははッ……」
ブッカーは苦笑するしかなかった。
「さて、それでは戻るとしようか」
「「はッ」」
ヤンの言葉にパトリチェフはセダンの運転席のドアを開け、シェーンコップは後部ドアを開けた。
「すでに、今回の件に関する会議の招集について、リンディ提督とレティ提督に早期に開催できるよう、根回しを始めてもらっております。
また、あなた以上に局内の人望が高いあの伝説の三提督とメルカッツ提督に対して、
あなたのこれからの行動に対する支持を取り付けられるよう、ムライ参謀長に働きかけてもらっております」
シェーンコップが耳打ちする。
「お疲れさま」
ヤンは、肩を軽く叩く。
「とは言え、まだ君達には何も――。」
「FAF絡みとあっては、用心に用心を重ねるに越したことはありませんから」
そう言って、シェーンコップはブッカーに目をやった。
ブッカーは苦笑して肩をすくめる。
それを見て、ヤンは笑みを浮かべ、
「じゃあね、少佐。今度は、本当に会心の出来のブーメランを見せてくれよ」
そうブッカーに声をかけ、
「あと、しわしわ、……じゃない、クーリィ准将に宜しく伝えておいてくれ」
と付け足して、セダンに乗り込んだ。
シェーンコップが恭しくドアを閉める。
「じゃあな、ジャック。提督が世話になった」
シェーンコップ、ラフに敬礼。ちなみにジャックとは、ブッカーの愛称である。
ブッカー、きびきびと軍人らしく、敬礼。
そして、シェーンコップは助手席に消え、セダンは静かに滑り出し、駐車場を出て行った。
すごく……神林調です……。
フムン乙。
「ブラックベレー・マフィアが行った、か」
セダンを見送りつつ、呟く、
「さて、おれもそろそろ」
「そろそろ、何するつもりですのん?」
上空から声がする。批難めいてはいない、むしろからかうような声だ。
「……ねぐらに帰ろうと思いましてね、八神二佐。お一人ですか?」
「私だけやない、他のみんなも一緒です、少佐」
顔を上げる。
そこには、八神はやてと、彼女の守護騎士達がいた。もちろん、全員、騎士甲冑着用で。
「久しぶりの休暇中に、呼び出しを受けまして。……て言うか、あまり上官扱いせんといてください。何や、むず痒いです」
からからと笑うブッカーの目の前に降り立って、はやてが言った。
「上官も部下も関係ない。それがFAFの伝統と違いますの?」
「一応、それが礼儀だよ、はやて。とにかくご苦労様。んっ、ザフィーラは、いないのか」
「ザフィーラには、別の任務を与えております。現在は、その任務の遂行中であります」
ヴォルケンリッターの将、シグナムが言った。
「フムン」
「おー、相変わらずのブーメランオタクですか、少佐。何処に行くにも、やっぱりブーメランは手放せないかぁ」
「ちょっと、ヴィータちゃん、仮にも上官なんだから……」
ヴィータのブッカーに対するなれなれしさを、シャマルがたしなめる。
「かまわないさ。うちの零だって、そうさ。FAFはとにかく、普通の軍隊とは違うというか」
「ずれてるな。特殊戦なんて、特にそうだ♪」
ブッカーの言葉に、ヴィータがおどけて応じる。
ボカッ!
「いったた……」
はやてのゲンコツを受け、頭を押さえるヴィータ。
「ヴィータ、いくらジャックさんがああゆうてはるからて、調子に乗ったらあかん」
「……『親しき仲にも礼儀あり』、か」
肩を大げさにすくめて見せて、ブッカーは言った。
「相変わらずの日本通ぶりですね、少佐」
「そう言う君は、相変わらずの『天真爛漫さ』だな、リィン」
「えへへ、ですぅ」
照れる、リィンフォースU。
その時、
「へえ、本当に一から木を削って作ってるんだなぁ……」
感心するような、しかし、始めて聞く声。 ブッカーは目を向ける。
そこには、一見すると小悪魔にも見える、背中にコウモリのような羽をはやしたリィンくらいの小さな女の子。
「ん、……そうか、あの子が」
「はい、私らの新しい家族、アギトです」
はやてが、紹介する。
「ど、ども……」
始めてブッカーを眼にして、どぎまぎするアギト。
支援ッス
「おいアギト、初対面の人物に対して、そのような態度は」
「慣れていけばいいさ」
シグナムの言葉を遮り、ブッカーは言った。
「少なくとも、彼らと暮らしていけば、他人との上手い付き合い方も解るだろう」
「……ブッカーの、旦那」
手のひらで、アギトの頭を優しくぽんぽんと叩くブッカー。
「おれ達みたいには、なるなよ」
「えッ……?」
「言ったとおりさ、おれ達、特殊戦のようにはな」
ポカンとする、アギト。
構わず、ブッカーはジープに乗り込む。
「そう言えば君達は、何でここに?」
「まあ、ちょっと人に会いに、ね」
はやてが答えた。
「フム、……やはり、そうか」
ブッカーは、おもむろにエンジンに火を入れる。
ジープが、目を覚ました。
「じゃあな、おれも忙しくてな。ゆっくりしゃべる暇もないんだ」
そして、ギアを入れ、サイドブレーキを倒そうとした時、
「あの、ヤン提督を無理矢理連れ出した、ッてゆうんは、つまり」
「はやて、つまりは、そう言うことだ」
「……一つ、聞いて良いですか、ジャックさん?」
「主はやて?」
「何だい、はやて」
「FAFにとって、……『ジャム』って、一体何なんですか?」
「おれ達の目の前にある現実、ッて所かな」
困ったお嬢さんだ、――そんな顔だった。
しかし、同時にもの悲しそうにも見えたのは、はやての思い過ごしか。
そして、
「また会おう」
ブッカーは、、ジープと共に駐車場を出て、公園をあとにした。
風が強く吹き付ける。
森のざわめきは、更に激しさを増す。
「なあ、シグナム?」
「はい」
「機動六課のために尽力してくれた人達に対して、私ら、何をしてあげられるんやろ……」
シグナムは、答えられなかった。
他の家族も同様であった。
森は、彼らの心に敏感に反応しているかの如く、激しく、ざわめき続けていた。
それとも、この森のざわめきは、
新たなる戦いの序曲(OVERTURE)に戦慄する、この世界の心の表れなのだろうか――。
『リリカル旅話・インターミッション・2』
CMPL
支援
支援
396 :
旅ゆく人:2008/01/08(火) 00:03:49 ID:3G0DiILu
……ようやっと、投下できた――。
とまあ、前までとはかなり異色な雰囲気でお送りしましたが、
いかがだったでしょうか。
えー、途中で頂いた支援の中にもありましたが、
意識的にも無意識的にも、神林先生調の文体でやっちまっておりますです。
雪風知らない・・・orz
ともかく、GJでした!
投下されて間もないので、0:30に投下開始します。
これで、やっと作品の1つに区切りがつけれた(っー;)
旅の人乙であります。
ドライな雪風世界とウェットななのは世界が違和感なく融合しとる。
これって雪風世界では時系列どの辺でしょうかね? グッドラックの中盤くらいかしらん。
敵は海賊とのクロスとかも見てみたいですね。あの世界だと管理局って海賊認定されそうですが
400 :
無双:2008/01/08(火) 00:12:12 ID:sRVz5OTy
GJでした♪
すんなり投下出来てうらやましいですーww
401 :
旅ゆく人:2008/01/08(火) 00:12:50 ID:3G0DiILu
ちゅうか、自分で言うのも何なんですが、
……これの何処が『棺担ぎのクロ。』なんでしょうね?
まあ、ここまで忍ばせていた「いたずら」の回答編的な意味合いも強いので、
平にご容赦いただければと思います。
つか、やっぱ提督的にテルヌーゼンは、
苦い思い出のキーワードの一つだよなー……。
解らない人は、「銀英伝 スタジアムの虐殺」でググられるが宜しいかと。
あと、OVERTUREは「オーバチュア」と読むのデス……。
それでは、私はここまで、次こそは、第二章でお会いしたく。
では ノシ
追伸 これ投下しながら『雪風』のサントラ聴いてた……。
やっぱ、エディのピアノ最高ですなw
402 :
旅ゆく人:2008/01/08(火) 00:16:06 ID:3G0DiILu
>>399 黒歴史たるw、OVA第五話後を想定しております。
つか、原作とアニメの設定まぜこぜにしちゃってますがw
あと、すいません『敵は海賊』は『雪風解読マニュアル』の、
『雪風』とのコラボ小説でしか読んだことなく……orz
ご期待に添えず、申し訳ないです……。
ほのぼのを期待してた俺は泣いた
404 :
旅ゆく人:2008/01/08(火) 00:18:22 ID:3G0DiILu
追伸の追伸
度々のご支援と、暖かいお言葉、
感謝の極みであります、相変わらず。
ありがとう御座いました m(_ _)m
>404
風雲拳乙。
406 :
旅ゆく人:2008/01/08(火) 00:21:19 ID:3G0DiILu
>>403 申し訳ないです。
でも、次はほのぼのに戻ります、マジで。
そんじゃ投下します。
Part.D
天元突破グレンラガン×魔法少女リリカルなのはA's
魔法少女リリカルグレンラガンA's
私が目を覚ました時、側に居てくれたのはシモンさんとニアさんだった。
寝ていた場所は、自分の部屋のベッドだった。
起きたばかりで頭がぼやけていたけど、何かが足りないと直ぐ分かった。
そう、守護騎士達と夜天の書と祝福の風の名を持つリインフォースの姿が無いのだ。
シモンさんとニアさんに聞いてみた。
あの子達は今どこに居るのかと。
「……やっぱり、本当のことを言おうよ。ニア」
「そうですね。このままお別れなんて寂しすぎます」
2人の言葉に、私はリインフォースとのユニゾンの効果によって彼女の精神状態を感じ取れた。
「…あの子…消える気や…止めなあかん。止めなきゃ!」
私は急いで現場へと向かおうとベッドから降りようとしたけど、足は未だに動かない状態で急ぐに急げない。
焦る私に手を差し伸べてくれるシモン。
「車椅子じゃ時間が掛かるだろう?俺の背負ってやるよ」
「シモンは、こう見えても力持ちなんですよ。さぁ、行きましょう。はやてちゃん」
粉雪が降り積もる中、はやての家から少し離れた公園で魔法陣を展開し別れの魔法の準備が着々と整えられていた。
リインフォースを囲むように守護騎士達が後ろに、なのはとフェイトが左右でデバイスを持ち魔法の準備を整える。
『Ready to set』
『Stand by』
レイジングハートとバルディッシュによって、魔法の準備が完了した事が告げられる。
「ああ、短い間だったがお前達にも世話になった」
『Don’t worry(気にせず)』
『Take a good journey(よい、旅を)』
「ああ」
レイジングハート達に礼を言うリインフォース。
まさに、別れのときが迫っていた。
その別れに身を震わせるヴィータの肩を強く握るシグナム。
そんなの時、予想していなかった人物が現れる。
いいや、必然だっただろう。
「リインフォース!みんなぁぁぁ!」
みんなの目線の先には、シモンに背負われて来たはやての姿であった。
彼女の姿を見て動こうとした守護騎士達。
「動かないでくれ。意識が止まる」
リインフォースの言葉に動きを止めるヴィータたち。
「あかん!やめてぇ!リインフォースやめてぇぇぇ!!」
シモンに背負われながら、リインフォースの展開する魔法陣の直ぐ側へとやってくるはやて。
「破壊なんてせんでえぇ!私がちゃんと抑える!大丈夫や、こんなんせんでえぇ!!」
はやての必死な叫びに心打たれる、その場に居た面々。
しかし、意志を固めたリインフォースの決意を崩す事は誰であろうと出来ない。
「主はやて。いいのですよ」
「いい事無い。いい事なんて何もあらへん!」
はやての必死な叫びにとても暖かい気持ちとなるリインフォース。
「随分と長い時を生きてきましたが、最後の最後で、私はあなたに綺麗な名前と心を頂きました」
リインフォース…何言ってるんや。やっと家族全員揃ったばかりやないか。
こんなお別れなんて、絶対嫌や…嫌なんや。
「騎士達はあなたの側にいます。何も心配はありません」
「心配とかそんなん…」
「だから…私は笑って行けます」
その言葉に、フルフルと震えながらも言葉を出し続けるはやて。
「話聞かん子は嫌いや!マスターは私や。話聞いて」
そうや、私はこの子のマスターなんや。自分の子を見捨てる親なんていやしないんや。
「私がきっと何とかする。暴走なんてさせへんて約束したやんかぁ…」
「その約束は、もう立派に守って頂けました」
「…リインフォース!」
何言ってるんや!私は、まだ何にもしとらん。
シグナム達と一緒に温かい食事をリインフォースと一緒にやっとらん。
なのはちゃん達やシモンさん達と家族みんなで遊びにも行ってへん。
楽しいこと、まだ何にもやって無いやないか。
「主の危険を払い、主を守るのが魔道の器の勤め。あなたを守るための最も優れたやり方」
私は、その言葉を聴いて涙を流しているのにも気づかず話を聞かん子に話し続けた。
「やっと、やっ…」
悲しみで声が引きつり中々声が出せない。
「救われたんや無いかぁ…」
「私の意思は、あなたの魔道と騎士達の魂に残ります。そう、シモン…あなたのアニキさんと同じように」
私は背負ってもらっているシモンさんを見下ろし気づいた。
彼もまた別れを体験している。
今の私のような悲しみを彼は知っているのだ。
「…私はいつもあなたの側にいます」
それでも私は、今この状況に反逆する。
そうや、こんなお別れなんて絶対嫌や。
「そんなんちゃう。そんなんちゃうやろう…リインフォース!」
「駄々っ子は友人に嫌われますよ。聞き分けを我が主」
その言葉に私はシモンさんの背中から無理やり降り、雪の積もった地面へと倒れこみながらリインフォースを見上げる。
「…なんで、これからやないの…これからうーんと幸せにしてあげなきゃいかんのに」
そんな私のところへ歩み寄るリインフォース。
「大丈夫です」
そう言い私の頬を撫でるリインフォース。
その手は少し冷たくなっていたけど、優しい温かみがあった。
「私はもう、世界で一番幸福な魔道書ですから」
「…リインフォース」
感謝したいのは私のほうや…寂しかった私の下にリインフォース…あなたが来なかったら私は今頃どうなっていたかわからへん。
そんな風に思っていた私の頬を撫でるのを止め、優しげな瞳で私を見つめるリインフォース。
「主はやて、1つお願いが…私は消えて小さく無力な存在になります。私の名は、その欠片ではなく。
あなたがいずれ手に入れるであろう…新たな魔道の器に送って頂けませんか。祝福の風リインフォース…私の魂はきっとその子に宿ります」
「…リインフォース」
「はい。我が主」
リインフォースは元の位置へと戻り、夜天の書の横に着くと目を閉じる。
「主はやて。守護騎士たち。それから強気思いを持つ少年少女と小さな勇者達。…ありがとう。そして、さようなら」
そして、リインフォースは光へと還り、そこに残されたのは剣十字の破片のみであった。
支援
みんな支援の力を分けてくれえええ!!!! っていうか今日も何気に投下が多いぜ!!
規制?
リインフォースが消え、病室へと戻った私は剣十字の欠片を胸に掛けあの子の事を忘れぬ誓いを立てた。
まぁ誓いを立てるまでも無いことやけどな。
絶対に忘れない。みんなの心の中で生き続けるやから。
なのはちゃんたちが迎えに来てくれた時に、家の子たちの罪を償うためと、リインフォースの贈り物を大事にするため魔道師として管理局勤めをする事を告白した。
まぁ、こんな小娘が力を持ったまま地球で生活するには大変やからってのはあるんやけどな。
リインフォースの消えた日…12月25日に、すずかちゃん達の友人であるアリサちゃんの家でクリスマス会に行き、なのはちゃんの方から魔道師の事について打ち明けた。
最初はビックリしてたけど、2人は真剣に話を聞いてくれて信じてくれた。
流石はなのはちゃん達の友達やと思いました。
その後のクリスマス会はとっても楽しかったよ。
そんで、空が暗くなった頃自宅へ帰った時シモン達が玄関で待っていた。
「どうしたん?そんなとこに立ってて」
「はやて達にも別れの挨拶をしとこうと思って」
シモンの言葉に心臓が締め付けられる思いになった。
何でリインフォースが消えた日に、シモン達も消えなくちゃあかんのや。
「どうしてや…どうして今なんや」
「…リンディさんからお話がありまして、私達の通ってきた時空の裂け目が見つかったらしいのです」
「それなら、まだ帰らんでも…」
「そうは行かなくなったんだ。その裂け目は、地球時間の今日が終わるとき…消えるらしい」
何なんや…神様。何でこんなにも酷いクリスマスを下さるんや。
私が涙を流し始めたのを見たシモンは慌てて、車椅子に座っている私の膝に小さなリボンで巻かれた箱を置いた。
「え、これは」
「いいから、開けてみなよ」
シグナムたちも、私に開けてみて下さい言ってくるので涙を拭いながら包みを開けてみると中には、深い青色の宝石の原石が入っていた。
「どないしたんや?この青い宝石」
そう、削られていない原石の宝石をプレゼントされた私は驚きを隠せなかった。
涙、涙の支援!
「えっと…ほら、今まで世話になったお礼って言うか」
「世話になったって、シモンには私の方がいっぱいお世話になったよ。あの子達もいっぱい、いっぱい…」
話しながら再び私は涙を零していた。
シモンと別れるのがとても悲しかったから。
「それじゃあ…さ、はやての友人の1人からのクリスマスプレゼントとして受け取ってくれ」
「せやけど、こんな高価そうな物…」
「ああ、これは色んな世界を回って穴を掘ってたら見つけた物だよ。タダ当然…あ、あはは」
笑いながら頭を掻き、照れ隠しをする彼の仕草に私は途端に笑みが零れた。
「…分かった、受け取るよ。せやけど、何で私なん?シグナムとか家の子たちの方が面識あるやろう?」
「それは、はやて…だから」
「えっ」
シモンの言葉に声を失ってしまい、顔が真っ赤に成っている自分にも気づかず慌てふためく。
「え、えっと…その、私…シモン」
「シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ。お前達と共に戦えて楽しかったよ」
「我々も、お前達と共に居れて楽しかった」
「おう。シモンもニアもブータも元気でな…元気…で…うぅぅ」
「ヴィータちゃん…2人とも、元気でね。あなた達の事絶対に忘れない」
「お前達との時間…決して忘れぬ」
私が慌てているうちにシモン達は別れの挨拶を済ませていた。
みんな悲しい顔だけど、無理に笑顔を作ってる。
その時、ニアさんが私の顔の近くまで顔を持ってきていた。
「わっ!ニアさんビックリしたぁ」
「うふふ。いつの間にかシモンの事を呼び捨てになっていますね」
ニアさんの言葉に自分がいつの間にか呼び捨てで彼のことを呼んでいた事に気づき顔を再び赤くする。
そんな私の熱を帯びた頬に外の寒さで冷たくなっている手を置いた。
「はやてもシモンが好きなのですね。相手を好きになるのはとっても良い事です。その優しさを忘れずに、元気で居てください」
「ニアさん…おおきにな」
「はい。はやてちゃんもお元気で」
そして私はシモンに別れの挨拶を交わす。
「そんじゃ、湿ったいのはもう嫌やから、元気に送り出したる!シモン、ニアさん!元気でな!!」
「ああ、はやても元気で!またこっちに来られる事があれば必ず行くよ」
「うん。絶対に…絶対にな!」
「ああ、オレのドリルに賭けて誓うぜ」
「ほな、また会おな」
そして、シモンは海岸方面へと歩いていった。
私たちも見送りに付き添う。
別れの挨拶をした後やから、歩きながら話をするのに抵抗があって無言な時間が過ぎた。
そして海岸に着くと、なのはちゃん達が待っていた。
みんなシモン達とのお別れに集まってきてたのだ。
シモンは、みんな1人1人に挨拶をした後、光学迷彩で隠されていたグレンラガンへと乗り込む。
『みんな、今までありがとう!』
『またお会い出来ましたら、よろしくお願いします』
『ブッブー!』
そう言い残し、彼らを乗せたグレンラガンは緑色の光を放出しながら天へと昇り消えて行った。
みんなが帰っていく中、私は右手を空へと向け指を立てた。
「約束する!私は、私の力を必要とする人達のためにこの力を使う。どんなに苦しいことがあってもめげへん!
シモンに教えてもらった何事にも負けない強い意思で突破出来ない事なんて…きっと無い!私の魔法もシモンのような固いドリルと同じく折れない気持ちで出来てるんやから!!」
〜Fin〜
予告
ジェイル・スカリエッティによる時空管理局へのテロ事件後、機動六課は平穏な日々が流れていた。
しかし、ミッドチルダ上空で突如として現れた未知なる力を持ったモノの襲来を受けピンチに陥る管理局地上本部。
機動六課も出撃するも、その圧倒的力と物量に徐々に押され後が無い状態へと追い込まれる。
「ここまで何か…みんなを守れず、シモンと会えずにここで死んでしまうんか…嫌や、こんな所で死ぬなんて嫌や!」
その時、天に映る巨大な船の影と、その巨大な影から降下してくる聖王のゆりかご以上の大きさの船が降下してくる。
そこから、赤い何かが出撃してきた。
私には見覚えがあった。
子供の頃、憧れていた…そう、あの人が乗っているロボットを。
「グレンラガン…シモン!」
天元突破グレンラガン×魔法少女リリカルなのはStrikers 〜THE LAST EPISODE〜
「待たせたな、はやて!」
NEXT STAGE?
投下完了
何故か、投下しても投下されない病状に成ってました(・ω・)
今回で最終回でしたが、もし時間に余裕が取れたら外伝って感じで書くかも?
GJ!!!! シモンとニアに幸あれ!
そしてアークグレン来る!? やばいぜ、とてもゆりかごでは勝てる気がしねえ…
ゆりかごじゃ勝てないでしょう。
某検証動画によるとアークグレンラガンで十二キロメートル。
ゆりかごの大きさは・・・二キロ以下って所?
420 :
無双:2008/01/08(火) 01:35:06 ID:sRVz5OTy
グレンラガンさん乙なの♪
アークグレンラガンはなぁでかいww
続き投下できるかテストします。
421 :
無双:2008/01/08(火) 01:49:25 ID:sRVz5OTy
「ええ。特別捜査官の八神はやてさんと彼女の守護騎士の方達です」
「はじめまして。八神はやてと言います」
私達が敬礼をすると馬良さんは軽く会釈を返しててくれた。
「そうでしたか、ごゆるりとなさって下さい。趙雲殿が帰ってこられましたら呼んでいたと言っておきますよ」
「ありがとうございます馬良殿。では、また後ほど。 参りましょう皆さん」
そう促され、私達は馬良さんに挨拶をしてその場を後にする。
次に案内されたのは子供達が均等に並んだ席に座っている大きな部屋やった。
教壇みたいな所に立ってる人の話を聞いて解ったのはあの子達が受けてるのは魔法学の授業。
「これは……学校か?」
ザフィーラの言葉に臥龍さんは頷いて説明する。
「政堂の中に魔法学院を設けているんです。ここで魔法学やいろん勉学を学んでから将来に役立ててほしいと劉備殿や皆さんの配慮なのです。
といっても我が國では模擬戦を重視する子供達が多いんですけどね」
苦笑いを浮かべているけど、臥龍さんはどこか嬉しそうやった。やっぱり小さい子達が育って行くんは誰でも嬉しいやなぁ。シグナムやヴィータもほほえましそうに授業を受けてる皆を見てる。
「それは将来が有望ですね。後で見学して良いですか?」
「ええ、お願いします、子供達の勉強にもなるでしょう」
「んー。内容はミッドチルダで学ぶものと変わりないデスね」
「ええ、ミッドチルダでの内容を参考に授業を組んでいますから。」
しばらくして私達は教室から出て、景色などが見渡せる渡り廊下の前までやってきた。
その先には抜けて案内されたのは今までとは造りが異なる離れのお屋敷でどこか幽玄な趣がある。
うーん、なんか文化遺産みたいやなぁ……。
そこで臥龍さんは私達に振り向いて頭を下げる。
「今から私は政務官を呼びに参りますので、この渡り廊下の奥の間でお待ち下さい」
「わかりました。臥龍さん、案内ありがとうございました」
「いえ、では」
422 :
無双:2008/01/08(火) 01:55:46 ID:sRVz5OTy
立ち去る彼の姿を見送ってから私達は廊下に足を踏み入れて雄大な山を見渡す。その景色は最初に見た岩肌の山とは違った穏やかな表情を見せてる。
「綺麗な景色やなぁ……皆でピクニックしにきたいな」
「そうですね、その時はシャマルや皆を連れてきたいものです」
「あんな急な山は嫌だぞ」
アギトの意見に私達はつい吹き出してしまう。確かにここの山ではおちおちお茶を飲んでいられない。
「そやな、皆呼んで。やな♪」
廊下を渡りきって私達は臥龍さんに示されたお屋敷の前に辿り着く。
最初にあった緊張は景色や皆を誘う話で解れている。
「じゃあ、皆行こか」
−−−−−−
その頃
第一国家・『魏』
首都・許昌政堂にて一人の男が玉座に座り、使者の報告を聞いていた。
「ふむぅ…………報告大儀であった、下がれ」
使者を下がられ男は手元のモニターに二人の少女の姿を映す。
彼は曹操孟徳。この國の國務官である。
「ふむぅ、リインフォースにアギト……か。二「ほう、孟徳。二喬に劣らぬ愛らしいなぁ」
いきなりかけられた言葉に曹操は驚く事なく嬉しそうに答える。
「夏候惇か、ちょうど良いところに来たな。夏候淵、曹仁とでこの二人と二喬を連れてこい」
「断る」
きっぱりと答える夏候惇に曹操は額に筋を立てて彼に詰め寄る。
「ぐっ……貴様!儂の言う事が聞けんのか!」
「前にミッドチルダに行ってヴィヴィオとかいう少女に話し掛けててエースオブエースに撃たれた事忘れたか?変装してたからよかったバレてなかったものを」
「忘れてはいない。だがな夏候惇、今。あのエースオブエースは居ない。絶好の機会ではないか?」
エッヘンと答える曹操に夏候惇は青筋を浮かべ、呆れるように手をひらひらと振って答える。
「そんなに言うならもっぺん死んでこい」
「…………やはり今は政務に専念するべきだ。袁紹も侮れん」
「ああ、そうしとけ」
続く
423 :
無双:2008/01/08(火) 02:00:01 ID:sRVz5OTy
やっと全部投下出来た……
とりあえず以上です。すいませんでした。
>>423 GJ
つうか曹操さん何やってんすかwww
>>423 GJです。ごめんなさいね。代理投下できなくて・・・。
しかし曹操はロリコン設定ですか?
426 :
無双:2008/01/08(火) 13:55:54 ID:sRVz5OTy
ええ、曹操は関羽と二喬と小さい子が大好きな漢(ぇ。この二人の他にも声をかけていますw
あと訂正を。
使者を(下がられ)男は手元のモニターに二人の少女の姿を映す。の()の言葉を(下がらせ)。
「前にミッドチルダに行ってヴィヴィオとかいう少女に話し掛けててエースオブエースに撃たれた事忘れたか?(変装してたからよかったバレてなかったものを)」
こちらは(変装していたからバレていなかったものを……)
にして下さい。
演義の中で曹操が二喬を狙ってるみたいなやりとりがあって、それが無双でああいうキャラになったもんで曹操ロリコンじゃん!ってことになったんだよなwww
ついでに周喩もロリコン扱いになったりwwwww
>>427 でも、年代を考えるとあの二人って結構なお年だったと思うんだが?
無双のキャラって老けないから、その辺の認識に困るよなぁ
ウトノキフは消えてくれ。スレが穢れる。
あのあの、ちょっとした嘘予告考えてみたのですけど、投稿してみてよろしいでしょうか・・?
とりあえず、今から五分くらいして投稿する予定ですが・・(汗)
>>429 うわwww久しぶりに聞いたな、そのHNwwww
五分たったので、とりあえず投稿してみます・・。
うん?どうした、早く投下するのだ!
どした?規制か?
文字長の制限に手間取ってるんじゃない?
俺も昔はそうだった(遠い目)
確か1レス60行……だったよね
しからばその次、予約させていただいてもよろしいですか?
>436
うぃ、全然かまいませんっす。
すいません、なんか<文章長すぎ!>的なエラーくらったもんで・・。(汗)
んじゃ、投下しますっす!!
その日、彼らは出会った・・。
「だれ・・?おにーちゃん、だれなの・・??」
後に、『機動六課』へ赴くことになる、今はまだ、戦う事を知らない少女と・・
「・・まっ、あえていうなら・・、<野良になりたがってる飼い猫>、ってとこだな・・」
後に、一介の<掃除屋(スイーパー)>になる、<黒猫>と呼ばれる<抹殺者(イレイザー)>男は・・・。
BLACK CAT〜Next StrikerS〜
(BGM:ダイアの花)
数年後、この二人は思わぬ形で再会する。一方は管理局に所属する魔導師『スバル・ナカジマ』として・・
「!?あ、あなた・・、あの時、あたしを助けてくれた・・?!」
もう一方は、次元犯罪者を捕縛する事で賞金を得て、その金で生活する<掃除屋>『トレイン・ハートネット』として・・
「ん?・・あっ!お前、あん時のがきんちょか!?」
その後二人は、それぞれの身の回りの人間を巻き込みながらも、色々な出来事を通して関わっていく・・。
「・・ハートネットといったか?貴様・・、一体何者だ?」
「・・へえ、どういう意味だよ??」
「とぼけても無駄だ。貴様のその動き・・、並みの使い手や掃除屋のできる動きではない。・・いや、あえてこういうべきか?まるでよく訓練された『暗殺者』のような動きだ、と・・」
「イヴさんは・・、怖くないんですか?その・・、自分の持ってる、力が・・」
「・・別に。怖くなんてない。確かに、私の力は強力で、危険極まりないけど・・、心を強くもって使えば、問題なんかない・・。・・あなたも同じよ、キャロ」
「・・!?スヴェン、さん・・、その眼は・・!??」
「昔、色々と事情があってな・・、今はもういないダチの角膜を移植してあるんだよ。・・そのおかげか、今じゃちょっとした能力が使えるけど、な・・」
「・・!」
「・・・なあ、ティアナ。お前さんの気持ちもわからないでもない。でもな・・、たとえお前の今のやり方で、お前が望んだ力が手に入ったとしても・・、それを、素直に喜べるのか・・?例えば・・、もし力を得る過程で、お前のダチや仲間が犠牲になったとしても・・」
「・・ったく、久々の仕事があんたみたいな『メスタヌキ』からだなんてね・・、八神はやて部隊長殿?」
「あはは・・、相変わらず厳しお言葉やなぁ、リンスさん・・」
「ふん!あんたみたいなタヌキ相手には、こーでも言いたくなるわよ」
そして、彼らと敵対する事になるのは、狂気の科学者<ジェイル・スカリエッティ>と・・
「ふっ・・、ふはははははは!!すばらしい、素晴らしいよ!!!わが娘たちがこれほどまでに強くなったのは・・、全てはあなたの技術提供のおかげだ・・、<クリード>!!」
狂気の剣士<クリード・ディスケンス>・・・。
「見たまえトレイン・・。これが僕が・・、いや、<僕ら>が目指す<楽園>への、華麗なる第一楽章なんだよ!!」
彼らの凶行をとめるために・・、それぞれ進む道の違う二人は・・
「・・もたもたしてたら置いてくぜ・・、<スバル>!!」
「!・・うん、分かってるよ、<トレ兄ぃ>!!」
今、共に駆け抜ける・・!!
「!?あなたは・・、誰なんですか・・!?」
「お初にお目にかかります・・、<エース・オブ・エース>の異名を持つ魔導師、高町なのはさん。・・秘密結社<クロノス>直属の特殊部隊、<クロノ・ナンバーズ(時の番人)>が一人・・、セリフィア・アークスです」
「あ、あんた、一体誰よ!?」
「あ、自己紹介ね?俺の名前は<ジェノス・ハザード>。立場的にいうなら・・、今の所、君を救いにきた白馬の王子様・・ってとこかな?(きらーん!」
「・・あんた、頭のネジでもゆるんでるの?今時ダサいわよ、そんなナンパ・・」
「あ〜らら・・、思った以上にガードが硬いんだね・・、君・・」
思わぬ人物たちの乱入もありながらも、事件は終幕へと向かう・・。
「トレイぃぃぃン!!なぜだ・・、なぜ僕と共に道を歩んでくれないぃぃ!??」
「たりめーだ・・。・・俺の進む道は、俺が決める。どう間違っても・・、てめーとおんなじ道を歩くつもりなんざ・・、毛頭ねーんだよぉぉ!!」
「そうだよ・・、トレ兄は・・、お前なんかとは違う・・!トレ兄は・・、お前なんかに・・、絶対負けないんだから!!」
「くぅ・・!この・・、魔女めがぁぁぁ!やっと理解したよ・・、貴様は<あの女>と・・、『ミナツキ・サヤ』と同じだ!!トレインを僕から引き離す、<悪しき魔女>だぁぁぁーー!!」
果てしなく暴れ狂う剣士を前に・・、
「「これで・・、終わりだぁぁぁぁぁーー!!!」」
少女と男の魂の一撃が、炸裂する・・!!
魔法少女リリカルなのはStrikerSとBLACK CATのクロス作品!
BLACK CAT〜Next StrikerS〜
「「不吉を・・、届けにきたぜ(よ)っ!!」」
・・つーわけで、投下完了っす!!
・・え〜、てなわけで、昔ジャンプでやってた<BLACK CAT>をクロスさせて見たんですけど・・、どーでしたでしょうか??
至らない点とかありまくったなら、ほんっとすいませんっす・・(大汗)
あ、一応これ嘘予告なんで、連載するかどーかはぶっちゃけまだ考え中ですんで、あしからず・・(汗)。
まず・・が大杉
三点リーダぐらい使おうぜ
>440
す、すいませんっす・・(汗)。こーいう所でこーいうの書くの、初めての試みだったもんで・・(汗)
…は2つ繋げて……と使うのがよろしよろし
>>441 思い描いた事を直接紙面にぶつける事は作品を作る上での何よりの原動力です。
ただ、それをスマートに表現するために小説の文法は身に付けておくとお得ですよ?
検索すれば簡潔にまとめてくださっているサイトも多くヒットしますし。
>>439 嘘予告とは言わないで連載してほしいです。
>>439 とりあえず情熱を生かしてたくさん読んでたくさん書いて「ネタを蓄えて」力をつけるべし
・・・書かなきゃ力はつかないだろ?
>>439 いくつか短編を書きまくってから書いていくと何気にスムーズに書いていけますよ!!
445さんが言うようなネタも蓄えることができますよ。
一時間経ったし投下、行きますねー。人いなくなってる予感もするけど……
======
「ご注文の薔薇入りカステラ3つ、お待たせいたしました、お美しいマダム?」
ここ、博多市内のデパートで行なわれている九州物産展で、
やけに気障ったらしい口調でご婦人方をうっとりさせながら接客をこなす店員。
彼もまた天馬の国こと日本にやってきた来訪者、武者頑駄無。
その名を武者鷺主(むしゃろーず)と言った。
「ふぅ……」
「ご精が出ますね、鷺主殿?」
「あいも変わらずご婦人方に人気がございますな」
「やぁ、これは雷鳴殿! それに紅蓮殿ではありませんか」
そして爆流と同じ超将軍の称号を持つ武者、雷鳴頑駄無と、
天宮の北方、緋珠(ぴーす)の国の紅蓮頑駄無達もまたこの催しの出店者として
九州各地から集まってきていたのであった。
「……それで、ご友人の機嫌は直ったのですか、鷺主殿?」
紅蓮は鷺主がいつも連れ歩いている相棒の青い大鷲、キャリバードを見つめてそう問いかける。
「いえ……どうやら私は嫌われてしまったようです。
友情の証に海岸で見つけた美しい石を贈って見たのですが、なんとも……」
なるほど、確かに鳥にとっては恵まれた理想的な環境が整えられているものの、
その鳥、キャリバードはどこか不満そうな態度だ。
「やっと我々は戦乱の世界を越えて戦いの無い穏やかな平和を獲得したと言うのに、
一体何が不満だと言うのだ、我が友キャリバードよ……」
キャリバードは答えない。(まぁ所詮鳥だし)
その代わりにアクセサリーの中央、菱形の蒼い宝石は不気味に輝いていた。
巻之壱拾「されどその拳は烈火の如く! 対決、もう一人の魔法少女やでっ!」
「號斗丸、どうして爆流師匠の呼びかけに答えてくれなかったんだ?
堕悪闇軍団の侵攻が本格化しようとしている今、どうしてもお前の力が必要なんだ!」
「鋼丸よ、例え相手がお前や爆流頑駄無だろうと今は応じることが出来ない。
俺はただ、この地で果たすべき使命を全うするだけだ」
場所は変わってビルの合間の路地裏。
號斗丸と鋼丸はすれ違ってしまった互いの信念をぶつけ合っていた。
「それがあの女の子の手助けをする、と言う選択か。
お前の気持ちは分からんでもないがな、しかし……」
「武者たるもの、一度口にしたことをやすやすと翻すわけにはいかん!」
「ええい、お前の責任感が強いのはもとより承知の上だが、頑固なのも大概にしろ!
今は平和に胡坐をかき、ただ座している場合ではないだろうに!」
必死に説得を続ける鋼丸だが、號斗丸は頑としてその訴えに応じようとはしない。
「まさかお前まで他の連中と同じように武者魂を失ってしまったのか?
……何とか言え、頼むから何とか言ってくれ、號斗丸!」
「……何と思われようとかまわん。だが俺の答えは変わらないぞ、鋼丸」
「そうか……なぁ號斗丸、もし俺に涙を流す機能が備わっているのなら、
きっと今、泣いているんだろうな……じゃあな、號斗丸。もう会う事は無いだろう」
「…………」
そう言って、その場を去ろうとする鋼丸。しかし、鋼丸に与えられた優れた聴覚は
ただ悲しみに身を任せる事を許してはくれなかった。
「う、うわぁぁぁぁっ!? で、でっかい鳥が!?」
「バ、バケモンだーっ!!」
即座に頭を切り替え、大目牙閃光銃(おめがびーむらいふる)を手に駆け出していく鋼丸。
號斗丸はそんな鋼丸の姿を見て、屋台に残してきた面子のことを思い出し、
心配になり鋼丸とは正反対の方向に向けて走り出す。
それは、あたかも分かたれた二人の道を暗示するかのようであった。
「な、何や、こいつらは!?」
「さあな……ただ……」
先程のデパートの屋上。逃げ遅れた人たちをかばうように
武ちゃ丸とトッキーは鳥の姿をした怪物と対峙し、その真意を推し量っていた。
「……あまり友好的では無さそうだ」
「お前はいちいちんな事分析しとったんかーいっ!? そんなん見たらわかる事やろーが!!」
「むぅ……」
「『むぅ……』やない! 鎧も戻った事やし、久々に全力で行くでーっ!」
「任せろ! 来い、ウェイブライダー!」
その合図と共に、二人の周囲を鎧の部品とエネルギーが渦を成し、やがてそれは
光を放ちながら武ちゃ丸とトッキーの体に重なっていった。
「行くぜ! 武者覚醒! 武者丸!!」
「武者武装! 斗機丸!」
そして光がやんだ頃、武ちゃ丸の顔は凛々しく引き締まり、その黄色い眼からは
戦いに生きる修羅と化したかのように武ちゃ丸の時のつぶらな瞳は姿を消していた。
「よっしゃあ、気分は最高! やっぱこの姿は気合が入るぜ!」
「……なぁ武者丸、関西弁はどうした?」
「何? 関西弁がどうしたって?」
「……何でもない。忘れろ」
「はぁ?」
鎧を装着した事で心なしか口調まで変わって……というより元に戻ってしまった武者丸。
さすがの斗機丸も急すぎる変化にすっかり面食らってしまっていた。
「……まぁいいか。ところでノルマは一人五匹ほどか?」
「冗談だろ? リハビリ的な意味でもお前は七、八匹くらい斬り伏せて欲しい所だな」
「ゲッ、マジかよ!? ……まぁ、とりあえず見えてる分は斬って落とせばそれでいいか」
「頼もしいな。だが……それでこそだ!」
「おうよ! 遅れるなよ、斗機丸!」
「当然だ! この場の人々には足の爪一本、羽毛一本たりとも触れさせはせん!」
支援だ!
原因不明の投下不能状態が自分にも発生した模様。
非難所に投下しておきますので、どなたか援護お願いいたします。
>>450 こうなったらまた俺が代理投下します。俺ももしかしたら投下不能に・・・。それでもやります!
一方、ジュエルシードの気配を察知したなのは達は件のデパートにたどり着いていた。
「……人、いないね?」
「でもジュエルシードの波動は強くなってる。これはもう発動してると考えて間違いないと思う」
「発動って事は……こないだのでっかい木みたいにとんでもない事が起こってるってことか?」
シンヤの問いに首を振りつつユーノが答える。
「ええと……違うと思う。この感じは多分人間じゃなくて動物が……」
「う、うわぁぁーっ!?」
「何? 何なの!?」
その最中、三人の耳に悲鳴が飛び込んでくる。
三人が声のした方向に向かうと、大きな鳥の怪物が武ちゃ丸の親友、ススムを襲っていた。
「あれは、ええと……ススム! ……で良かったのか?」
「しまった……ジュエルシードに気をとられすぎて後を尾けられてるのに気付かなかったなんて」
「二人とも、そんな場合じゃないよ! 今は!」
「あ、あぁ、悪いが頼むぜ、なのは!」
一番心配すべき事柄から微妙にずれた考えを巡らせる男二名を横目になのはは叫ぶ。
「まかせて! 風は天に、星は空に……そして、不屈の魂はこの胸に!
レイジングハート! セェーット、アーップ!」
<<Stand by ready>>
なのははレイジングハートを起動させるプログラムである呪文を唱え、
その身に魔力によって構成される白い防護服、バリアジャケットを纏い、
左手にシューティングモードに姿を変えたレイジングハートを携え、次なる指示を下す。
「行くよ、レイジングハート!」
<<All right. Divine Buster>>
「ディバイィーン……バスターッ!!」
気合一閃。レイジングハートの先端から放たれる光の奔流が怪鳥を押し流し、
シンヤはよろけたススムをユーノの防御魔法に守られながら肩を支え、助け出した。
「馬鹿野郎! 何で付いてきやがった!?」
「だ、だって、いきなり飛び出していったから気になって……それに来るなとも言ってなかったし」
「あ、あのな……」
「それにさっきのはどう見ても魔法か超能力……だよね? キミ達は一体……」
「ぐっ! く、詳しいことは後で説明する! いいな? なのは、ユーノ」
「う、うん……」
「……何だかどんどん秘密が漏れていってるような……」
さり気に核心を突いてくるススムのまっすぐな視線から目をそらしながら、
なのは達は大きなため息を一つついた。
「と、とにかく上に行こう。さっきよりも魔力の気配が膨れ上がってる。急がなきゃ!
ススム君は僕達から離れないように、シンヤ、サポートしてあげて」
「うわぁ……ど、動物が喋った……」
「……あ、やっぱそこから説明しなきゃダメなのか」
シンヤは肩で大きく疲れを表しながらまた一つため息をついた。
「くっ……キャリバード! 聞こえているなら返事をしてくれ、キャリバードォッ!」
当の上の階では、鷺主のしもべであるキャリバードが
渦巻く魔力の激流の中心に取り残されていた。
そう、鷺主が贈った石こそ他でもないジュエルシードであったのだ。
「駄目だ、これでは手が出せない!」
「なぜだ……やっと私達は戦うことの無い世界に辿り着いたと言うのに……」
「どうして、どうしてこんな事に……」
鷺主達三人の武者頑駄無達は突如としてキャリバードを包む魔力の渦から現出した怪鳥の群れから
そのフロアにいた人々を逃がしたものの、今は全く身動きがとれずにいた。
そんな彼らを振り返ることも無く、どこからか現れた
黒い衣に身を包んだ金髪の少女がそこに向かって歩み寄っていく。
「ロストロギア、ジュエルシード……」
「……! 逃げ遅れた子供がいたのか!?」
「君、早くここから逃げるんだ!」
しかし、彼らの声が全く聞こえていないかのようにその少女は淡々と己の精神を集中させる。
<<Scythe form set up>>
「申し訳ないけど、いただいていきます」
<<Arc Saber>>
少女の携えていた杖が、その先端の形を変え死神の振るうような大きな光の鎌へと変貌する。
そして次の瞬間、その鎌の刃を魔力の渦に向け、投射した。魔力の刃は渦とぶつかり、
激しい爆発を起こすがその渦は若干速度をゆるめた程度で微動だにしない。
「やっぱり、まだ足りない。バルディッシュ?」
<<Yes, sir>>
「な……!? 何をするんだ! あの中にはキャリバードが……や、やめてくれーっ!」
鷺主の悲痛な叫びを背に、その少女は次弾に備え、バルディッシュと呼ぶ手の中の杖に念をこめて
光の球体をその眼前に出現させ、その力を増幅させる。
<<Photon lancer>>
「……ファイア!」
「だめーっ!!」
球体はまるで砲台のように渦に向け、電撃を伴う金色の魔力の槍を発射した。
しかしその間に割って入った影が一つあった。防御魔法を展開させたなのはだ。
一撃を防がれた少女は動揺を見せず、冷静に乱入者の性質を分析する。
「インテリジェントデバイスを持った同系の魔導師……ロストロギアの探索者か」
「えっ?」
「間違いない……僕と同じ世界の住人……そしてこれは、ジュエルシードの正体を!?」
「ユーノ! じゃあ、あいつが武ちゃ丸が言ってた奴に間違いないんだな!?」
「そうだ、ボクも確かにあの子を見たことがある……今年の正月、道頓堀で!」
ススムはつい昨日のことであるかのように、武ちゃ丸と初めて会った日の事を振り返る。
そこには確かに稲妻を自在に操る黒衣の少女の記憶があった。
「ここか、さっき物凄い音がしたのは!?」
「ン……あれはなのはにシンヤ!? じゃあ、きっとユーノもいるな。それに……!」
「……ススム……!」
屋上から怪鳥を駆逐しつつ、その根源を追って来た武者丸と斗機丸がそこに合流を果たす。
しかし、なのは達と共にいるススムを目にした武者丸の表情は暗かった。
「大丈夫だったか、みんな!?」
「遅いぜ! どこで油売ってたんだよ、トッキー!」
「おいおい、武者鷺主に雷鳴頑駄無、紅蓮頑駄無までいるじゃねーか!
揃いも揃ってこんな事になるまで黙って見てたってのかよ!?」
「ムシャガンダム……あの魔導師の仲間。でも、遅かった」
そう呟いた少女の後ろで魔力の渦が集束し、他のものとは比較にならない魔力を迸らせる
禍々しい姿の青い魔鳥が姿を現した。
「キャ、キャリバード……!? まさか、お前なのか?」
「ジュエルシードが動物をコアとして暴走を始めたんだ! さっきのはその分身に過ぎない。
こうなったらシーリングモードで封印するしかないよ。なのは!」
「……邪魔はしないでほしい」
「!!」
再び金色の魔力刃を発生させ、今度は狙いをなのはに定め、
その足元めがけ横薙ぎに斬りかかる少女。
レイジングハートはその攻撃に反応し、自信の判断でフライアーフィンを発生させて宙に舞い、
一の太刀を避けるがその行動は彼女に予測されていた。
なのはは先回りをした少女の上段からの斬撃を辛うじて受け止める。
至近距離で互いを見つめ合うなのはと黒衣の少女。
彼女の瞳はどこまでも暗く、どこか別の世界を見つめているかのように思わせた。
「何で……何で、急に、こんな……?」
「答えても……多分、意味は無い」
「くっ……!」
魔鳥は自分のことがほったらかしにされていることが気に食わなかったのか、
地の底から響くようなおぞましい鳴き声を上げ、自らの存在を誇示する。
「マズイ、奴が外に逃げる! みんな、追うぞ!」
「了解した! 雷鳴頑駄無達も……」
大きな翼をはためかせ、じわりじわりと空中に浮き上がり、
突風を起こし窓ガラスを割って矢のように外へ飛び出していく魔鳥。
斗機丸は手助けを願うべく三人に視線を向けるが、
皆一様に申し訳なさそうな顔をしつつ目をそらしてしまう。
「……くっ、皆すっかり武者魂を無くしちまったか!」
「いや、ここにはまだこの俺がいるぜ! 上に乗れ、武者丸!」
「その声、鋼丸のダンナか! ありがたい! なのは、ユーノ、そっちの方は任せたぜ!」
苛立ちを隠せず吐き捨てる武者丸の元に、窓越しに目牙守羽多(めがしゅーたー)形態の鋼丸が
そう話しかけ、飛行能力を持たない武者丸の足場となって斗機丸とともに魔鳥を追って行った。
「武ちゃ丸……」
「あいつらなら心配いらねーよ。それよりさっさと安全な所に退避して無いと邪魔になっちまうぜ?」
「……ゴメン、ボク、やっぱり武ちゃ丸に謝らないと!」
「謝るって……お前があいつに謝ることがあんのかよ?」
「あるよ! 武ちゃ丸の気持ち、分かってたはずなのにボクは自分が会いたいと言うだけで
武ちゃ丸が一番ボクを遠ざけておきたい世界に足を踏み入れちゃったんだ。
そりゃ勿論武ちゃ丸にも謝ってもらわなくちゃだけど……まずはボクの気持ちを伝えないと!」
「ススム、お前……わーったよ、ユーノ、武ちゃ丸じゃないがなのははお前に任せたぜ」
「ちょ、ちょっとシンヤ! ススムさんも! ……えぇーい! なのは、二人が通る! 道を開けて!」
ススムの決意に応え、その手をとって階段へと駆け出すシンヤ。
しかし、彼らに気をとられたその一瞬がなのはにとって命取りとなった。
「ごめんね……」
「えっ? きゃあっ!!」
「なのはっ!」
その一瞬を逃さず、少女は小さな謝罪の言葉と共に魔力の閃光でなのはを撃ち落とす。
ユーノは辛うじてなのはの体を魔法で受け止めたものの、そちらの方に目を向けると
すでにその少女の姿は窓の外へと消えていた。
魔法の直撃を受け、気を失ったなのはにユーノは駆け寄っていく。
「大丈夫? しっかりして、なのは! 待ってて、すぐに治療を……」
「七曜万象に宿りし大いなる精霊の礎、マナよ……盟約の名のもとに、
傷つき倒れたる我が同胞に再び健全たる生命の息吹を与えたまえ……『ミディアム』!」
「!?」
慌てふためく一方、冷静であろうと努めるユーノの背後から、
博学であるユーノでさえ聞いたことのない未知の呪文の詠唱が行われた。
驚き、なのはを見ると暖かい光は彼女を包みこみたった今負った傷を見る見る癒していく。
「これで大丈夫。もうしばらくすれば意識も戻るでしょう」
振り返ると、そこには先程立ちすくんでいた武者の一人……
武者鷺主がやわらかな魔力光を纏った手をかざしていた。
その姿を見るや、普段は温厚なユーノもこらえ切れない感情を爆発させた。
「あなたは! どうして今頃!?」
「……汚名は後でいくらでも甘んじて受けましょう、少年。
しかし今、我々には向かうべき場所があるのです」
その外では魔鳥がその羽ばたきと共に衝撃波を放ちビルの窓に被害を与えながら
糸の切れた凧のように無秩序に飛び回り、武者丸達は見失わないようにするだけで精一杯であった。
「チッ、何て速さだよ! なぁ鋼丸さんよー、もっとスピードは出ないのか?」
「オイオイ、無理を言うな! こっちはデッドウェイトを乗っけてるんだぞ?」
「なーるほど、そっかー……って、それは俺の事かいっ!?」
「二人とも、漫才なら他所で……!? おい、この道をこのまま行くと……
ナツミさんの屋台のあるさっきの広場に出てしまうぞ!?」
「な、マジかよ!? あそこには人や動物がいっぱいいるじゃねーか!」
「だが、無闇な攻撃は被害を拡大させるだけだ。相対速度を合わせないと当たるものも当たらんぞ」
「まともに追いつけないのにどうしろって言うんだよ、斗機丸!?」
「今それを考えてるんだ! 黙ってろ!」
武者丸と斗機丸が口論している間にも、願いはむなしく魔鳥は公園に差し掛かろうとする。
ビル街の様子から判断して、恐らく通過するだけでも相当の被害が出る事だろう。
万事休すか……?
だが、その行く手を燃え上がる炎のような強烈な闘気が阻んだ。
「来るなぁぁぁぁっ!!」
「あ、あれは……!」
「號斗丸の武者魂か!? す、すごい!」
「號斗丸、お前……武者魂を失ったって、さっき……まさか本当は……?」
足を踏ん張り、両手から全ての力を放ち魔鳥の進行を防ぐ號斗丸。
その號斗丸のもとに騒ぎを聞きつけたナツミが駆けつけ、必死に號斗丸に訴えた。
「號斗丸さん、私の、私の屋台の事はもういいんです!
だからあなたは本来の自分に……武者に戻ってください!」
「ナツミさん……一度武者の力に頼ってしまったら、
俺はもうこの暮らしには……ラーメン屋には戻れないと思っている! だからナツミさん、
俺は鎧にも剣にも頼らず、この姿の號斗丸(オレ)で……キミを守りたい!!」
「……號斗丸さん……!」
自分の無力さに、號斗丸の足を引っ張っている事に対する実感に涙するナツミ。
しかしそれでも、目の前の漢はその魂を熱く燃やし、敢然と立ちはだかっていた。
「す、すげえ……あれが最も最強に近い武者と呼ばれる男の力かよ……!」
「だが、あのままではいずれ力尽きてしまうぞ! 今のうちに俺たちで何とか……」
「その必要はない……」
不意に三人の後ろからか細い声がする。
振り返ると、そこにはあの黒い衣の少女が様子を伺っていた。
「てめぇは!? 何でここに……なのはをどうした!?」
「大丈夫。気を失ってるだけ。けど勝負は私の勝ち……だから、あのジュエルシードは私のもの。
バルディッシュ、封印、行くよ」
<<Sealing form set up>>
「……捕獲!」
バルディッシュは蜻蛉のような四枚の光の翅を展開し、
魔鳥のコア、キャリバードが持つジュエルシードに向け魔力を放射する。
だが、そのアプローチが行なわれても、魔鳥は依然としてその巨大な翼をはためかせ続けていた。
「!? 魔法が通らない……やっぱりまだ足りなかった……」
「魚でも大物を釣る時はまず適当に遊ばせて弱らせてからって言うしな……だったら、行くぜ!」
「お、おい武者丸!?」
鋼丸から飛び降りる武者丸を追って、斗機丸もまた魔鳥へと突撃を仕掛ける。
武者丸はそんな斗機丸を少し意外そうな目で見つめた。
「何も付き合う必要は無いんだぜ、斗機丸?」
「……あの少女の素性には不明な点が多いが、このままあいつに黙って街を破壊されるのも癪だ。
それに、堕悪闇軍団にジュエルシードを渡してしまうよりはマシだと判断しただけだ」
「気が合うな、さっすが相棒!」
「茶化すな。同時に仕掛けるぞ!」
「おう! 行くぜ、道頓堀断裂灼熱斬!!」
「必殺! 大江戸刻閃斬!!」
地上から空中から、二人の必殺の一撃が敵を裂く。しかし……
「まだ再生するのか!? なんてタフな奴なんだ!」
「チッ、前と同じか。やっぱりジュエルシード自体を封印しないとどうにもならねぇ!」
以前にも感じたことだが、ジュエルシードが原因となり現出した存在には、
物理的なダメージは決定打になりにくい。
エネルギーの源であるジュエルシードを封印することが怪物を退治するのに一番有効だ。
しかし、黒衣の少女は消耗の激しい封印魔法を行使したばかりで、迅速な対応は難しい。
せめて中心核にダメージを与えられれば……そう思ったのは、武者丸達二人だけではなかった。
「……ならばその役目、俺が引き受けた!」
一旦魔鳥がひるんだ事で身体の自由を得た號斗丸が相変わらず鎧も身に纏わず、
しかし強い威圧感を放つ瞳で相手を見つめ、再生を続ける魔鳥の前に立ち塞がった。
「我が心、炎水の境地なり……されど、この拳は烈火の如く!!」
俺のこの手が真っ赤に燃える! コアを掴めと轟き叫ぶ!!
鬼哭掃滅破(きこくそうめつは)、至近距離から持って行けぇぇぇぇっ!!」
全身から熱く闘気を迸らせ、右手に力を集中させて再生箇所の中心に飛び込む號斗丸。
その豪拳が炸裂してから数拍の間をおいて光がこぼれ出し、周囲をホワイトアウトさせる。
やがて視界が正常に戻った一同が目にしたものは、その両手で包みこむようにして
コアとなった動物を抱えた號斗丸が無事着地する姿であった。
「ジュエルシードは外したか……だが、発動させてしまった張本人はここに……!?
こ、こいつは鷺主のキャリバードじゃないか?」
その光景を見て武者丸は思い出す。デパートで見た覇気の欠片もない三人の武者を。
さらにそのうち一人は號斗丸の戦友の一人、武者鷺主であった事を……。
「……そうか! わかったぜ、ジュエルシードはこいつの願いに反応したんだ!
腑抜けてしまったご主人様にもう一度武者魂を蘇らせようとして!」
「その通り……私は、私達は大きな過ちを犯してしまったのです……」
意識を取り戻したキャリバードは號斗丸の手から何者かの下へと羽ばたいていく。
その先には、先行していたススムとシンヤに伴われた三人の武者たちが完全武装で立っていた。
「鷺主、お前……どうしてここに!」
「號斗丸、鋼丸、それに未来の武者たちと白き魔導師の少女……
私達は皆の戦う姿を見て真に大切なモノを取り戻したのです! 心に宿る、武者魂を!」
「その言葉、待っていたぜ、先輩さんよ!」
「騎士の名誉と誇りにかけて、自分で蒔いた種は自分の手で刈り取ります!
キャリバードよ、その真の姿を今ここに! 転身、マッハウィングフォーム!!」
そのかけ声に応え、キャリバードはその姿を自らの真の姿……一振りの聖なる大剣に変え、
鷺主もまた左肩の鎧を展開し、翼のように背負い大空へと舞い上がる。
「聖剣ウイングキャリバーよ、その刃に我が魂を移し、邪悪なる者を斬り裂け!
必殺! ファイナルスラッシュ!!」
ジュエルシードの魔力のみでその体を保つ魔鳥に向け、
平和ボケと決別した鷺主の必殺の一撃が炸裂した。
そして敵を再生させまいと他の二人も追い討ちをかける。
「平和とは溺れるものではない、自分達で勝ち取り、維持していくものだ! 鷲主殿に続け!
我が魂、七天星が『火』の力、その身で味わえ! 灼熱業火弾!」
「この九州は……私達だって守っているのです!
白鋼の雷牙よ、我が雷砲、稲妻に雷帝の力を! 轟け、稲妻爆雷撃!!」
続いて無数の火炎弾が、稲光のような激しい閃光が魔鳥を貫く。
もはや敵に抵抗する力は残されていなかった。
「……何かさぁ、ろくに動けない相手に最大火力の集中砲火ってえげつなくないか?」
この壮絶な光景を目の当たりにし、
何だか世の色んな物を否定する問題?発言をさらっとしてしまった武者丸。
せめて彼が月の無い夜道で桜色の閃光に背後から撃ち抜かれない事を祈ろう。
「さぁ、マドモアゼル! 仕上げを!」
「……いまいち状況に付いて行けないけど……」
<<No problem. This is good situation>>
「バ、バルディッシュ? 順応が早いね……とにかく、今度は外さない!」
半ば置いてけぼりの少女と対照的にノリノリの杖。
内心こんな子だったっけ……?と思いつつ少女は再び封印の魔法をジュエルシードにぶつけ、
ジュエルシードはその本来の姿を取り戻し、無事少女の杖に封印された。
「捕獲、完了」
「あ! ま、待つんだ!」
ジュエルシードの封印を確認すると、少女は即座に飛び去ろうとするが、
情報を集めておきたい斗機丸は彼女にいくつか質問をぶつける。
堕悪闇軍団ではないとはいえ、ジュエルシードを巡って対立する相手には間違いないのだ。
「君は一体何者なんだ? そのジュエルシードで何をしようと言うんだ!?」
「知らなくてもいい事。もし今後邪魔をするならその時は実力で排除します。それと……」
「それと?」
「……あの魔導師の女の子は?」
伏し目がちに、恐らくなのはの事であろう人物の身を案じる少女。
彼女の言わんとする事を察した鷺主は斗機丸に代わり言葉を続ける。
「私がすぐに治療の魔法を唱えました。そろそろ目を覚ましているかもしれません」
「そう……ですか」
「言付がお有りなら、承りますが?」
「もう私の前に現れないように伝えてください。それと……改めて『ごめんなさい』と」
「……確かに。あなたが私達の敵とならない事を祈りますよ、マドモアゼル」
自分の言いたいことだけ言うと、黒衣の少女は振り返らずその場を飛び去ってしまう。
全力状態の斗機丸もかくやと言わんばかりのスピードであっという間に見えなくなってしまうと、
その場に集まった一同は鷺主の下へと集まった。
「止めないでよかったのか、鷺主?
結局あの子がジュエルシードを何に使うかは聞き出せていないんだぞ?」
「恐らく大丈夫でしょう、號斗丸。少なくとも彼女はジュエルシードを争いの元凶にはしませんよ」
「……なぜ、そう言い切れる?」
一方的に少女に肩入れした発言を行う鷺主に対し、號斗丸はなおも食い下がる。
「簡単な事ですよ。最初から破壊が目的なら相手に向かって謝罪などしませんからね
それに、騎士の家名にかけて女性の事は信用しなくては……ね」
「結局それか……何度学んでも騎士道は俺にはよく分からん」
結局何一つ情報を得る事は出来なかったし、
やはり今後衝突は避けられない相手であろう事実を再確認したにとどまったが、
誰もが皆彼女に対して単純にネガティブな印象を抱くことは出来なかった。
しかし、後に鷺主は彼女の背後関係にまで視点が及ばなかった事を激しく後悔することになる。
彼女にジュエルシードを「集めさせている」存在に……。
「じゃあ、結局ジュエルシードは……」
「今回の最終的な決断を下したのは俺だ。すまないユーノ、君の足を引っ張ってしまって……」
「いえ、そりゃあジュエルシードは僕が集めなきゃいけないし、問答無用でなのはを倒した……
あー、その、『敵』であることは、残念ですが間違いないと思うんですけど……。
現時点で脅威的な度合いが高いと言えるのは明らかに堕悪闇軍団の方ですし、
少なくとも最悪の判断では無かったと僕も思います」
戦い終わって陽が暮れて。トッキーとユーノは戦闘の余波で散らかってしまった公園を清掃しつつ、
それぞれの状況を確認しあっていた。
「そう言ってくれると少しは気が楽になるよ……ところで、なのはは今どうしてる?」
「まだ気を失ってます。今はシンヤが見てくれてますけど」
「そうか……今回の件で、ショックを受けてなければいいんだが……」
「彼女、表面上は大丈夫そうに見えても、やせがまんしたり、
いろいろ溜め込んで無理して自爆してしまうタイプだから僕らが気をつけないと」
「そうなのか……なぁユーノ、今日みたいに彼女に何かあったら側でしっかり支えてやれ」
トッキーは一旦竹箒を置き、ちりとりを支えるユーノにいつもより真剣な顔をして話しかける。
「互いの欠けている部分を補いあえるパートナーがいる限り、どんな事があっても乗り越えられる。
忘れるな、コンビを組む以上は二人で一人……相棒は自らの半身だって事をな」
「……なんだかトッキーさんと武ちゃ丸の事を言ってるみたいですね」
「俺と武者丸? ハハッ、そうかもな……個人的には全否定したい意見だが」
「ス、スミマセン……ところで武ちゃ丸、ススムさんと仲直りできてるんでしょうか?」
武ちゃ丸とススムが未だに仲直りできていないことを思い出し、不安そうに尋ねるユーノ。
しかし、再び竹箒を手にしたトッキーは何でも無さげな顔で余裕たっぷりにこう答えた。
「なに、大丈夫さ。あいつは喧嘩をすることはあっても、友達を裏切った事は一度も無いからな」
同じ公園にある池のほとり。
武ちゃ丸とススムは話をつけるために二人きりでベンチに並んで座っていた。
「武ちゃ丸……ごめん。キミの気持ち、わかってたはずなのに、ボクは……」
「…………」
「けど、黙って見ていられなかったんだ! だって、ボクはキミの……一番の友達のつもりだから!
だから……黙っていなくなるなんて事……するなよ……」
「…………」
「……武ちゃ丸?」
ずっと憮然とした態度を崩さずにいた武ちゃ丸は急に勢いをつけ、ベンチから飛び降りる。
そしてススムの方を振り返り、少し言いにくそうにしていたが思い切ってその口を開いた。
「あー、ハラ減ったなー。こんな時はタコ焼きが一番やで!
どっかに焼きたてのタコ焼き食べさせてくれるトコあらへんかなー?」
「……!」
「……ワイの方こそゴメンな、シュシュム。
しんどい目ぇに会うてわざわざ来てくれたっちゅうのに……
ホンマは嬉しかったんやで? ワイとシュシュム、揃って初めて日本一のタコ焼き屋やさかいな!」
「うん! 待ってて武ちゃ丸、すぐに最高の奴を作るよ! だから戻ろう、みんなの所に!」
「よっしゃーっ!! 夢にまで見たシュシュムのタコ焼きやで!」
「よーし、みんなの所まで競争だ! 負けないぞーっ!」
ほんのちょっとの意地の張り合いが生んだすれ違い。
喧嘩の後は雨降って地固まる。二人の絆は前よりも少し固くなった事を感じていた。
「……遅かったな、武者丸。話は済んだのか?」
「勿論や! 號斗丸、お前さんらのほうはどないや?」
「うむ……その事も含めて、俺から皆に伝えなければならない事があるんだ」
「何や、あらたまって? もうハラ減ってしゃーないわ。言いたい事があるならはよ言うてや!」
號斗丸は片付けも一段落して集まった一同を前に、
屋台の片付けを続けるナツミを背景に神妙な面持ちでゆっくりとその口を開く。
「わかった……皆、聞いてくれ! 俺は……俺は武者をやめる!」
「何やそんな事か。武者やめるくらいでそんな勿体振らんでも……って、うえぇーっ!?」
全ての武者の中で最強と呼ばれ、そして最も熱い男の爆弾発言はその衝撃も最も強かった。
號斗丸の発言の真意とは、一体!?
――次回を待て!!
次回予告(ねくすとぷれびゅう)
「俺は武者をやめるぞ、Mushamaruゥゥゥゥッ! URYYYYYYYYYッ!!」
「いやそれ全然違うから、それじゃどっかの吸血鬼だから!」
「波紋を呼ぶ號斗丸の衝撃発言、謎の黒衣の魔法少女となのはの葛藤!」
「マイクを握る紅い武者の正体は、そして最後の夢者遊撃隊、鎧丸の行方は!?
そして黒衣の少女の複雑な事情って、一体……?」
「ワイらはついに真の目的地、名古屋に向けて出発や!」
「次回、SD頑駄無対魔法少女 リリカル武者○伝、巻之壱拾壱!!」
「『勇気は明日への道標なの』!」
「リリカルマジカル、貴様は今までに食べたタコ焼きの数を覚えているのか?」
「聞きたいんか? 昨日までの時点で88888個や」
「適当な事言っても駄目!」
登場武者符亜意留(ふぁいる)
武者鷺主 [ムシャローズ]
出典:新SD戦国伝 超機動大将軍編
モデル:ガンダムローズ
騎士道精神を貴び、常に正々堂々とした態度を崩さない華麗な男。
騎士ガンダムの世界、スダ・ドアカ・ワールドから航海の最中に遭難、天宮に漂着した。
その時自分を助けた飛駆鳥大将軍に恩義を感じ、頑駄無軍団の武者として彼に仕えるが
飛駆鳥が密かに魔星大将軍に成り代わられてから圧政を敷く頑駄無軍団に疑問を持ち、
討伐の命を下されていた相手、武者號斗丸に協力し闘覇五人衆の一人として戦う。
キャリバードという大剣ウィングキャリバーに化身する鳥を常に連れ歩いている。
必殺技はそのウィングキャリバーから繰り出すエネルギー衝撃波「ファイナルスラッシュ」。
その他、ミディアなどある程度故郷の回復魔法も使いこなす事が出来る。
後にその力を認められ、闘覇四天王「密林の鷺主」の称号と鎧を授かる事に。
日本では長崎のカステラ屋に勤務し、平和に溺れ武者魂が衰えてしまっていたが、
盟友號斗丸達の奮戦とキャリバードの願いを目の当たりにして戦線に復帰した。
代理投下完了。リリカル武者○伝さん。改行多すぎで何度も怒られちゃいました。
やはり代理投下は楽じゃないし、これじゃあ俺代理投下職人ですよ。後、明日くらいに外伝9・5話を投下します。
460 :
無双:2008/01/08(火) 21:49:13 ID:sRVz5OTy
武者さんGJなの♪武者頑駄無懐かしい〜、ぐれーど丸登場に期待します。
リリ無双の小ネタが出来たので投下してみて良いですか?
>>460 投下、支援です。でもまさかまた俺が代理投下するんじゃ・・・。
ならしなくていいけど
つか「題名(代理)」が普通なんじゃね?
463 :
魔装機神:2008/01/08(火) 22:07:27 ID:1lqgfH5L
レッツ&ゴーだ(古)
464 :
無双:2008/01/08(火) 22:08:19 ID:sRVz5OTy
小ネタ「義義義のエリオ」
自然保護隊、隊務中
馬超「ん、お前があのレリック回収事件をくぐり抜けた猛者、エリオ・モンディアルだな?」
エリオ「あ、はい。エリオ・モンディアル二等陸士です!馬超二佐」
馬超「うむむ……良い眼をしているな。そのデバイスは槍と聞くが?」
エリオ「はい、ストラーダと言います」
ガシッ。
エリオ「え?…あ、あの」
馬超「ならば俺が正義の槍を教えてやろう!」
エリオ「Σえぇぇ!?」
??「待ちたまえ!」
馬超「ん?貴様は長政か!?」
エリオ「あ、長政三佐!」
長政「エリオくんは信義の槍を学ぶべきだ!」
馬超「何を!正義の槍こそ彼に相応しい!」
長政「いいや、信義の槍だ!」
エリオ「あ……あの、僕は「待ちたまえ、お二方!」
馬&長「誰だ!?」
エリオ「Σか、兼続さん!?」
兼続「ここはエリオの意志を尊重すべきだろう……」
馬&長「Σっ、そうだ……我々は彼の意志を無視して……大事な義を忘れていた」
エリオ「ほっ……」
兼続「ここは基本に立ち返り。『義』を教えれば良いのだ!」
馬&長「おおぉぉ!」
エリオ「Σ誰か助けてー!」
数日後……
エリオ「今こそ、正義のストラーダを義!
フェイトさん義!
見て、僕とフリードは信義の絆で結ばれたんだキャロ義!
天に変わって義を放つ義!」
キャロ「エリオ……どうしたの義、いったい何が。義」
長&兼&馬「これで良し、!」
フェイト「Σあんたらの仕業かぁー!」
終
465 :
無双:2008/01/08(火) 22:09:50 ID:sRVz5OTy
こんな感じですー。お粗末様でした。
>>464 今、電人ザボーガーを思い出した・・・怪奇の事件はΣの仕業
>>468 邪帝のせいで出番がなくなった帝ですか?
ちょっと二分後投下します。
駄目だった場合は…明日避難所に投下します。
ちょっと二分後投下します。
駄目だった場合は…明日避難所に投下します。
空気読まずに・・・電人ザボーガーGO!!
連投スマソ
【平成ライダーサイド】一話「シロクマ奇械人の、南極解凍作戦」
【AAMONアジト手術室】
地球にある、AAMONアジト。
ここでは老紳士タイタンの命により、新たな奇械人が作り出されていた
奇械人はフードを被り、手術台の上で眠っている。
「タイタン様、手術終了です。」
科学院はタイタンに手術の完了を伝える。
「よし…起きよ、シロクマ奇械人!」
「ベアアアアアアアア!!」
手術台の上に眠っていた奇械人はシートを取り払って起き上がる。
シートの下から現れたのは、白い毛皮を持ったシロクマ型の怪人だ。
「タイタン様、シロクマ奇械人、今ここに誕生しました。」
「シロクマ奇械人、貴様の使命は、我々の完成させたウルトラヒーターを使い、南極の氷を全て溶かし、世界中を水浸し、水没させることだ!」
「ハハ!」
「行け!そして世界中を混乱に陥れるのだ!」
「ベアアアアアアアア!!」
………
それから一週間後、世界各国で海の水位が上昇し、津波が発生した。
【新ボード研究所】
新ボード研究所では、橘と所長である烏丸が、この問題を解決すべく対策を練っていた。
「どうやらこの一連の津波や推移の上昇、機動六課からの情報にあった、「AAMON」と関係があるかもしれん。」
「おそらく、奴らの仕業でしょう。」
「近頃南極に、怪しい巨大な機械が運ばれたという情報を手に入れた。
おそらく敵は南極だろう。」
「すでに矢車、影山、シャマルの三名を南極に向かわせました。所長あの三人なら何とかしてくれますよ。」
「うむ。そうだな。」
【南極】
その頃三人は…
「はぁ〜…あったまるわ〜…」
「全くねぇ…」
「…」
今南極で人気の観光旅館「南極温泉」の温泉を堪能していた。
「南極温泉」は人工的に揚湯された露天風呂で、今南極で人気絶頂のスポットである。
ちなみに混浴であり、勿論水着着用はOK。
矢車影山が履いているのはトランクス型の水着、シャマルが付けているのは緑色のビキニである。
支援
昭和仮面ライダー世代の怪人達はホントにそのまんま分かりやすすぎてウケルw
えーい駄目だ!一体どうしたというんだ!?
避難所行ってくるっス…(泣)
もうみんなには忘れられたと思うけど、1ヶ月半ぶりに投下してもいいかな?
477 :
なの魂の人:2008/01/08(火) 23:42:30 ID:z6HwSnJS
OK、ここで新たなチャレンジャー登場
ちょい見直ししてからなの魂投下しようと思います
24時頃に投下OKですか?
478 :
なの魂の人:2008/01/08(火) 23:43:36 ID:z6HwSnJS
ウホ、被った
お先にどうぞですよ〜
では 久しぶりに投下!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【5】天空に舞う希望 BARSITY 後半
2番機のアルトマンに対し、シグナムの駆るフルクラムが烈しい機動を見せた。
《では、無理矢理にでもこちらへ振り向かせてやる》
翼端から雲を長く曳きながら、バレルロールした機体をスライドさせ、アルトマンの背後を窺う距離に付く。
だが、アルトマンもイェーガーを援護できる位置でありながら、
シグナムからの攻撃は回避できる絶妙のポジショニングを取る。
《隊長、そろそろ決めにかかってください》
《弱音を吐くとは珍しいなライナー》
隊長のイェーガーは振り切ろうとするフェイトの動きだけではなく、後方のアルトマン、更にその後方のシグナムの動きも考えていた。
《さすがにこれほどのパイロットから回避を続けるのは骨です》
囮役を務めるだけあって、キレの良い動きを見せるフェイトのF−20タイガーシャークは決定的なチャンスを掴ませない。
ファイトはカウンターアタックで背後に回ろうとする動きは見せたものの、
積極的に格闘戦で背後に回りこもうという動きはみせなかった。
その飛行は囮役としては当然の事だったが、
フェイトは自分の囮としての役割をゲルプ隊に見破られた事には気がついていなかった。
敢えて策に乗られているとは全くの想定外していない。
上空ではなのはが攻撃開始のタイミングを図れずに躊躇していた。
「ありゃ?予定、狂っちゃったね」
敵のフォーメーションを崩して2機を引き離すのが目的だったが、
シグナムを後ろに従えながら、ゲルプ隊がフェイトを追っていた。
単純化すればフェイト・イェーガー・アルトマン・シグナムの順で追いかけっこをしているように見える。
アルトマンがシグナムの攻撃を振り切ろうとしなかったのは誤算だ。
<シグナムさん。私も下に降りて援護します>
<助かる。強敵とはいえ、戦う気がないので、上手くかわされる。仕掛けられん>
機体をロールさせ、一気に高度を落とすと雲を曳くフルクラムの位置が容易に特定できた。
「あれだね・・・」
軽く呟くと相棒に確認する
「レイジングハート? 行くよ!」
「All right My Master」
なのはがスロットルを全開にしながらフェイトにも指示を出す
《フェイトちゃん? 方位1−5−0 高度11000まで上昇》
《了解!》
F−20タイガーシャークのエンジンノズルが開き、蒼い炎をちらつかせながら、フェイトが急上昇を始めた。
イェーガーはタイガーシャークの飛行パターンが唐突に変化したことに訝りながらも、
急上昇をチャンスとみて、ミサイルトリガーに親指を乗せ、力を込めようとした。
瞬間、そのタイミングに併せて別の敵機が迫ってくる気配を感じた。
ゲルプ隊の2機はフェイトを追って急上昇を行っているが、
その後ろ、ウスティオのフルクラムが追従していないことに違和感を感じたのだった。
シグナムが追尾を止めて、そちらにゲルプ隊の意識を集めさせた隙に
なのはが2番機アルトマンめがけてアフターバーナー全開で突っ込んできた。
《頂き!》
翼下のパイロンからAAMが放たれる。
《アルトマン 狙われているぞ》
《ちっ・・・あまり・・・やりたくないが》
なのはは絶対の自信のある距離でミサイルを放ち、
高機動のSu−37といえども逃さないという気迫をもってミサイルの誘導制御に集中していた。
ミサイルからの回避運動は恐ろしく神経と体力をすり減らす。アルトマンとしては起死回生の賭けに出ざるを得ない。
なのはの目の前を遠ざかっていったアルトマンの機が一瞬だけ奇妙な動きを見せた。
それまでの激しく鋭いがダンスのように流れるように華麗な一連の飛行から、一転した明らかに不調和な飛び方だった。
「えっ!?・・・」
その直後、ファントムめがけて白い煙が迫ってくる。
白煙はやがて長細い白い槍に変わり、コクピットの右に流れさろうとする。
「ミサイル!」
突然の出来事で全く予想していなかった展開に、なのはの中で視覚以外の五感が完全に停止していた。
一瞬の出来事をなのははスロー再生のビデオのようにゆっくりと、
だが、
何の反応もできないままミサイルが自らの愛機に命中するのをじっとに見守った。
強烈な衝撃がなのはの全身を包む。
「きゃぁぁぁぁぁぁあああ」
ファントムの右主翼が裂け、爆発に包まれる。
なのはを乗せたまま、きりもみ状に急速に高度を落としていく。
まだ生きているが幾つかアラームが鳴り響くコクピットで、なのはは懸命に操作しようとしていた
だが、急激なG変化に耐え切れず、やがて意識を失った。
右主翼を完全に失い2基のエンジンも破壊された白いF−4Eファントムがなのはを乗せたまま
不規則な回転をしながらぶざまに落下していった・・・。
アルトマンが土壇場で行った奇襲は、意外なほどあっけなくなのはのファントムを撃墜したが、
アルトマンもなのはのミサイルで損害を蒙っていた。
ミサイルの追われているという極限状況の中でもアルトマンは
なのはが無警戒な飛行をしていることに気がつき、
ミサイルの誘導を中断させようと、突然無理な機動で逆撃をしかけていた。
結果的にファントムは撃墜できたが、回避に専念する飛行から急に反撃行動に移ったことで
後ろを執拗に追い回していたミサイルに食いつかれてしまった。
《痛っ・・・やられた!》
但し、なのはと違ってミサイルに追われている状況を冷静に検討するだけの余裕があった。
被弾する直前に機体を捻り、主翼やエンジン重要部にダメージを受けるのを避ける。
《こちらコルモラン2、後部警戒レーダーと右エンジンノズル、エルロン周りを吹っ飛ばされた。》
《戦線離脱しろ。命令だ》
いくらTOPエースでも大きく損傷した機体では空戦を勝ち抜くことは難しい。
《2対4ならともかく、1対3ではな。 勝てなければ負けないようにする》
ゲルプ隊の隊長イェーガーはどこまでも冷静だった。
「「なのは!」」
白いファントムが落ちていく場を目撃したフェイトとシグナムは、
首筋の辺りからぞっとするような恐怖が心の中に入り込んでくるのを感じた。
飛行魔法も十分に使えないこの世界では戦闘機から飛び出して救難に向かうこともできない。
「クソッ!」
機体の限界まで追い込んだ旋回と自身の魔法による空力・重力制御の相乗効果で
タイガーシャークはSu−37に負けない機動を見せたが、中の人には大きな負担がかかっていた。
重力制御の許容を超えた旋回でフェイトは意識が徐々に途切れそうになるのを必死で踏ん張る。
《テスタロッサ、そのまま右ロール。後ろを取りにいくぞ!》
シグナムが僚友にサポートの声をかけながら、もう一人の僚友に通信を送っていた。
《シャマル! タカマチが落ちた》
元々口数が少ないシグナムだが、
その切羽詰った様子は低空で機会を伺っていたシャマルにも只事でないとはっきりとわかるものだった。
《嘘っ・・・・》
シャマルは衝撃の大きさに声を失ってしまい。シグナムに言葉を返せなかった
《北東方向に向かって落ちていった。捜索を頼む!》
聞かされる者は俄に信じられないが、自分の目で確認した者の言葉は受け入れやすい。
それでもショックは大きい。
《わかりました!》
シャマルも俄には納得しがたいが、シグナムが戦いの場で冗談を口にするとは考えられない。
シグナムのサポートもあって、意識を半分失いかけながらも
フェイトは機体を右に捻りこみ、高度を下げた。
《こいつか!?》
そのSu−37は飛ぶのがやっとというぐらいに大きく損傷していた。
「なのはを落としたのはコイツだ。」
直感的に理解したフェイトの心にどす黒い感情が湧き上っていた。
《この・・野郎・・・殺してやる!》
普段の穏やかで秀麗な顔に似合わないと殺意と憎悪に満ちたフェイトの声は、
ゲルプ隊の2人にも無線が入っていた。
《変わった娘だな・・・自分達が無敵だとでも思っていたのか?》
どこか嘲笑するようにも聞こえるし、呆れたようにも聞こえる。また諭すようにも聞こえる声は
フェイトの前を飛ぶ傷ついたSu−37、アルトマンのものだった。
不思議な事に真後ろにフェイトが迫るにも関わらず動揺する気配をみせなかった。
《おのれ、貴様!》
フェイトは自分でも気がついていないほどの烈しい感情に駆り立てられていた。
こいつは、赦さない。地獄に叩き落してやる・・・・・!
ミサイルで落とすのは容易いと思ったフェイトは敢えてガンアタックを選択した。
さらに距離を詰める。
意識を集中させ、HUD越しに傷ついたSu−37の後姿が大きくなると操縦桿の発射ボタンに指をかけた。
だが、あまりに意識を前に集めすぎていたため、後方ががら空きになっていた。
そんな単調な飛行をイェーガーが見逃すはずも無く、
機動を絡めあっていたシグナムのMiG29フルクラムを強引に引き離し、
部下の危機を察知して全力で接近してきた。
フェイトはアルトマンの背後に迫ってからは特に空戦機動をとってはいなかったので、
あっという間に距離が詰まる。
タイガーシャークの機内で後方警戒レーダーが鳴り響き、バルディッシュが警告する。
《Bandit's aprroaching direction 1-8-5》
執念深い憎悪に燃えていたフェイトもアラームで咄嗟に冷静さを取りもどし、
堪らず機体をロールさせ、深いバンクのナイフエッジターンで追いかけてきたイェーガーの機体を確認する。
《貴様達、まとめて片付けてあげるよ!》
支援」
支援」
相手は最新鋭とはいえ、大型機。
軽量なタイガーシャークなら十分に勝算はあった。
互いに長い雲を曳きながら後ろを奪い合う。
上昇、旋回、減速、急降下、フェイトの操縦技術もこの世界に来たころと比べれば随分上達していた。
本来の空戦技能でも元々中距離攻撃に重点をおいているミッド式魔法でSランク保持者であり、
個人的に得意な間合いは中近距離、と極めて高いレベルでバランスしており、魔導師の理想形に到達している。
ただ、フェイトは魔法に頼らなければ戦闘機での空中戦では技量はともかく、体力が持たない事を判っており、
いつもなら強烈なGを和らげるために制御魔法を使っていた。
「バルディッシュ、重力制御、モードリリース」
身体への負担は承知のうえで、できるだけミサイルの誘導に注力しようと考えていた。
「I do not recommend turning off the gravity control.」
ひとこと反論しながらも主人に忠実なバルディッシュは、素直に従った。
「ぐ・・・、負ける・・・か!」
途端にズン!と全身に襲い掛かるGがフェイトを襲う。
奥歯を軋ませて踏ん張ろうとしたところに、
横合から飛び出してきた薄紫の機影がフェイトの視界を遮った。
バランスを崩し、ふらふらと挙動を乱すタイガーシャークがようやく立て直した所で、
邪魔者の正体を確認した
《シグナム!? 邪魔しないで!》
《テスタロッサ、憎悪を糧に戦うな。逆にやられるぞ》
《頭ではわかってる。でも、心が納得しない!》
一旦フェイトの横に並んだシグナムが、騎士としての忠告をする。
《受け入れろ。タカマチが落ちたのは誰のせいでもない。タカマチ自身の責任だ》
キツい言葉だったかもしれないが、弁舌爽やかな政治家ではなく、必要なことを最小限で語るシグナムの言葉は、
フェイトには残酷なまでに無慈悲に響いた。
《だからといって見逃す訳にはいかない》
《ああ、無論だ。上手くいくか判らんが、策がある。聴く気はあるか?》
フェイトはシグナムが説明した作戦でこの忌々しいSu−37を落とすことに同意した。
フェイトのF−20タイガーシャークがシグナムのMiG―29フルクラムの真後ろにへばりつく。
イェーガーのSu−37が正面から突っ込んできた。
シグナムが照準ロックもかけないままにAAMを連続して発射する。
が、
イェーガーに判るはずもない。堪らずバレルロールで回避していた。
《今だ》
シグナムのフルクラムが急激に機首をもたげて、迎え角を極端に大きくとる。
プガチョフコブラとよばれるトリッキーな動きでイェーガーの注意をひきつける。
その動きは敵に機体の腹を晒すという危険なものだった。
こちらの予測通り、イェーガーがシグナムの機に攻撃を仕掛けようと速度と針路を微妙に調整した。
どれほどエースパイロットであっても攻撃の始まる直前と攻撃中はしっかりと安定した飛行姿勢をとる。
それが狙いだ。
フルクラムの後ろにぴったりと隠れていたフェイトがイェーガー機を狙う。
フェイトは前を飛ぶフルクラムが機首をもちあげて壁のように立ちはだかっても、躊躇することはなかった。
ほぼ正面を向いているが、敵はもう一つの味方機を狙っているので、タイガーシャークの攻撃に対応する間は無い。
一瞬の迷いにつけこんで、イェーガー機のカナードと右主翼に風穴を穿つ。
フェイトは攻撃に手応えを感じなかった。
確実な戦果を確認するまでは発射ボタンを押す手を緩める訳にはいかなかった。
だが、Su−37はフェイトのガンアタックで多少のダメージを喰らったものの、
優美で鋭い翼が折れる事はなかった。
それどころか、腹を晒しているフルクラムに機銃を浴びせているではないか!
《この・・・・・・っ! 落ちろぉぉ!》
支援
ウスティオ軍の2機とベルカ軍の1機が交叉した一瞬の戦いは、
そのままイェーガーのSu−37が全力離脱したことでそのまま幕切れとなった。
既にアルトマンの機体も遠方に離脱を果たしており追撃は困難な距離だった。
ウスティオ軍側にも燃料の問題もある。
《してやられたな。 ここは退くぞテスタロッサ。あとはシャマルに任せるんだ》
《え?・・・ええ、判った・・・・糞っ ガン!》
低く毒づいてから、
フェイトはタイガーシャークのコクピットパネルに拳を乱暴にたたきつけた。
シグナムは無線越しに聞こえてくるフェイトの荒れように対してかける言葉を必死で捜していたが、
自らの表現力の乏しさを嘆きつつ、無言で見守るしかなかった。
シャマルにとってシグナムからのなのは被弾の連絡は俄に信じがたいものだったが、
戦いの最中に冗談をいうような人物ではない。
《こちらシャマル・・・・・捜索を開始します!》
シャマルはトーネードの可変翼を一杯に広げ、超低速に速度を落とすと周囲を捜索を始めた。
ただ、戦闘機のコクピットから下の地面を見るというのはなかなかに難しい。
「んもう!地面が見ずらいわねぇ・・・っ!」
誰に聞かせるでもなく、シャマルは一言ボヤくと機体をロールさせ、トーネードを背面飛行させた。
そして背面飛行したトーネードの大きな垂直尾翼が森の木にぶつからないように少しだけ高度を高くとる。
背面飛行でなら操縦席から上をみれば地面が良く見える。
地面を舐める超低空での背面飛行を難なくこなすあたり、
シャマルも空中戦とはまた異なる点で良い腕を隠し持っていた。
4つ目の山の稜線を背面飛行で超えた先、
ソーリス・オルティスの北東に広がる森林地帯に黒煙が不気味に立ち上っていた。
支援?
支援!
491 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/09(水) 00:19:41 ID:o76GiTdm
まだ規制喰らうほどじゃないと思うけど・・・・支援
そしてsage忘れスマソorz
《黒煙を発見、確認に向かいます》
その一帯は空挺部隊が降下した地点とソーリス・オルティスを挟んだ反対側で、
運の悪いことにその森はまだベルカ軍の勢力地帯だった。
シャマルが黒煙が立ち上る周囲に接近すると、戦闘機の部品が周囲に散乱しているのが見えた。
墜落時に炎上したらしく、それは黒っぽい金属の塊のようだったが、
よく目を凝らしてみると、周辺に白地に青ストライプが入った機体の外装らしいものが散乱していた。
「嘘・・・でしょ?」
目を凝らして見直せば網膜に映る情景が訂正されると信じてシャマルは戦闘機の墜落現場の上空を定円旋回しつづけた。
「なのはちゃん・・・」
ようやく状況を受入れ、なのはの消息を探そうと周辺探索を行おうとした時に
トーネードのミサイル警報が狂ったように鳴り響いた。
「敵!?」
それは携帯SAMだったが敵勢力下の上空で単調な旋回飛行をしていたトーネードは絶好の標的だった。
シャマルはトーネードの可変翼を折りたたんで、急上昇を開始し、後ろから迫るミサイルを右に左にと回避する。
ミサイルをかわしきり、高空へ一旦逃げたシャマルは公式通信で連絡を入れた。
《こちらガルム4タリズマン。ガルム1サイファー機の墜落を確認、場所はソーリスオルティスから北東40km地点》
《こちらイーグルアイ、報告了解。パイロットの消息は確認できたか?》
《いいえ、まだです。対空攻撃を受けたので、周辺を制圧してから確認に移ります》
上品な口元を強い意志で結んだシャマルは再びトーネードを低空に降下させた。
そのシャマルのトーネードを出迎えたのは散発的な対空機関砲の攻撃だった。
だが、突進するトーネードを捉えることができない。
「邪魔しないで!」
軽く機体をジンクさせながら、ミサイルを対空砲に叩き込み、吹き飛ばす。
もう一度、ファントムの周囲を探索したところ、クラールヴィントが森の中を進むベルカ地上部隊の存在を告げた。
墜落した機体の調査とパイロットの身柄確保にやってきた連中だろう。
なのはちゃんのファントムには近づけさせない!
「次元の彼方まで吹っ飛ばしてあげる!」
まだ残弾のあるJP223ディスペンサーで広域制圧するつもりだ。
クラールヴィントが示した位置に向かって、突き進んでいたトーネードが可変翼を一瞬広げ速度を微調整した。
針路良し、高度良し、投下まで5、4、3、2
<シャマルさん ダメ!>
<なのはちゃん? なのはちゃんなの?>
いきなり思念通話での呼びかけはなんとも嬉しい驚きだった。
シャマルも慌てて攻撃軸線から機体を旋回させ、周辺の探索を行う。
<どうにか、脱出できたけどね。周りに敵の兵隊さんが一杯。今は隠れている所だよ>
<じゃあ、なおの事、一気に吹きとばして・・・>
<それで、敵と一緒に私も吹き飛ばすの?>
声を立てずに笑う声は思念通話であっても元気そうに感じられた。
<って、そんなに近いの?>
<目の前、3メーターってところかな。靴しか見えないけど、20人ぐらいは居そう>
<なのはちゃん、怪我は?>
<あちこち打ち身とか捻挫とか・・・あ、大した怪我は無いよ大丈夫。けど>
言葉の最後を逆接の接続詞で結ばれ、
シャマルは心臓を氷の手でつかまれたように感じた。
<けど?>
シャマルは続きを聞くのが怖かった。
<疲れた。動けない>
<とにかく、じっと隠れて休息を取ること。いい?医務官としての忠告よ>
<はい。シャマル先生>
苦笑とともに聞き分けの良いなのはの返事が返ってきた。なのはは医者の言う事は良く守る。
<みんなには私から連絡するから。魔力も温存してね>
<シャマルさんも早く戻って。敵が対空ミサイルを展開しようとしているみたいだよ>
<判ったわ。救難が来るまで待っててね>
<できれば黒塗りの高級リムジンで>
シャマルは意識して大きく笑った。
<手配するわ。なのはちゃん>
こちらを安心させようとしているのかもしれないが、
冗談をいう余裕があるのはいいことだ。と思いながらシャマルはヴァレー基地に針路を取って全速力でソーリス・オルティスから離脱した。
しえん
支援します!
ちょっと考えて今回はここまでです。
撃墜されるのは誰にするか迷いましたが、結局なのはをゲルプ隊に撃墜させました。
次回はなのはの脱出行編で既にもう書けているんスが、
レイプや処刑描写のあるダークっぽい展開なので、健全なココのスレに投下したものかどうか・・・・
>>497 GJ!後の展開にwktkしてますww(←鬼畜スキー)
499 :
なの魂の人:2008/01/09(水) 00:36:09 ID:r/wnFxMS
GJでやんすー。
さて、しばらく間を置いたほうが良いと思うので、自分は1:00から投下を行おうかと思います
OK?
一時なんて待ちきれないでさァ旦那。
502 :
なの魂の人:2008/01/09(水) 00:55:59 ID:r/wnFxMS
さあ始まるザマスよ
というわけで、五分早いけど投下開始です
503 :
なの魂:2008/01/09(水) 00:57:41 ID:r/wnFxMS
江戸の外れにある、稼動してるんだかしてないんだかよく分からない工場。
そこの一室で、無精髭を生やした白髪混じりの男――工場長が、煙草の煙を吐きながら手元の履歴書を見た。
「え〜と、山崎……ん? コレ何て読むんだ」
そう言って眉をひそめる。
彼の向かいで、ボトルコンテナを椅子代わりにして座っていた青年が答えた。
「『さがる』です。山崎退」
そう、彼の名は山崎退。
泣く子も黙る、武装警察真選組の監察である。
そんな彼が、何故このようなくたびれた工場に面接に来ているのかというと……。
「あ、そっ。おたくもリストラ? 最近は職にあぶれた侍で町あふれ返ってるもんな〜。
かくいう俺も昔は腰に刀さしてたんだがね、今はコレさ」
そう言って工場長は山崎に工場の案内をする。
しかし勿論、彼は真選組をリストラされたわけではない。
彼のような監察・密偵が動く時。それは事件の匂いをかぎつけた時だけだ。
「まァここはアンタみたいな落ち武者が沢山いる。似た者同士、仲良くやってくれ。
おーい、みーんな。新入りだぞ」
作業場まで山崎を案内した工場長は、従業員達に声をかける。
その場にいた者はみんな、好奇の目で工場長と山崎を見た。
なるほど。確かにみんなどこか人生にくたびれた様な顔つきをしている。
侍崩ればかりが集まっているというのは、あながち間違いではなさそうだ。
「うぃーす」
一人の従業員が元気よく返事を返した。
肩にかけた手ぬぐいで顔を拭くその男は、この場に似つかわしくないくらい若かった。
天然パーマの白髪。年齢は、まだ二十代前半くらいだろうか?
とてもリストラされて、ここに流れ着いたようには見えない。
山崎が疑念の目でその男を見ていると、ひとしきり汗を拭った彼が手ぬぐいを下げた。
――その男は、このような場所にいて良い人間ではなかった。
なの魂 〜第十六幕 一番似合う話が出る頃にはOP曲が変わってる〜
「いいいいい!! 万事屋の旦那!? アンタなんでこんな所に!?」
山崎は思わず大声を上げてしまった。
それはそうだ。
あのお騒がせ男が、なんでこんな場末の工場に?
山崎は銀時のそばまで寄り、コソコソと耳打ちをする。
「俺ですよ俺。真選組の山崎です。実は訳あって潜入捜査でここに潜り込んだんですがね……」
「オイ、言っとくけどそいつ記憶喪失で、昔のことなんも覚えてねーぞ」
「記憶喪失!?」
支援!
援護支援
そうか、アレが来るのか支援
507 :
なの魂の人:2008/01/09(水) 01:03:45 ID:r/wnFxMS
おk、俺も犠牲者になったようだぜorz
通常接続と携帯からの接続両方試してダメだったから、やっぱサーバーの方に問題あるみたいね
とりあえず避難所に落としてきます
509 :
なの魂の人:2008/01/09(水) 01:32:24 ID:r/wnFxMS
傍にいる 例えどんなに 哀しい夢だとしても構わない
というわけで避難所に十六話投下してきました
書いてる途中でPrayのサビがエンドレスで流れた上、アニメの某シーンまで脳内再生されて
ボロボロ泣いてたのはココだけの話
いや、マジであの話は反則
この流れなら言えるっ!
A'sにPray流してみた作ったのは俺です、ゴメンなさいっ!
乙ッす! なの魂毎回楽しみにしています
銀さんの記憶も戻ったし、これでまたヴォルケンズとの絡みも見られるんで次が楽しみでさぁ
それにしてもフェイト……( ´Д⊂)カワイソス……
乙&GJ!!
待ってたかいがありました!
今後のなのはパートもめっさ楽しみにしてますぜィ。
メガトロン「なの魂さん、お疲れチャンプルーだ。いつも楽しみにしてるぞ。
みんな、お久しブリタニアは反逆のル○ーシュ。俺様だ、ビーストストライカーズの主役メガトロン様だ!」
ノーヴェ「質問。なんで今までBstsのロケがなかったんだ?」
メガトロン「そりゃ、おめぇ俺様最近、アニメの音響監督やってっからなぁ〜」
コンボイ「何だと?メガトロン貴様ぁー!私に黙ってギャラ貰うとは!」
メガトロン「おめぇだってBLで稼いでんじゃん!
ふふふ、ならば俺様にロケ参加して欲しかったら……面白い事言ってみろ主役ヒロイン!」
フェイト「Σえっ、ど、どうしよう……ね、なの……あれ、なのはは?」
はやて「おらん……いつの間に……ん?」
ひらり舞い落ちるメモをはやては拾ってフェイトと見る。
なのは:二人ともがんばって面白い事言ってね♪
ps:オッパッピー
フェ&は「ゆーたいりだつー」
ヴィヴィオ「フェイトママー、はやておばちゃん。出来てないよー?」
フェ&は「Σうわぁーん!!」
メガトロン「ぐすっ、えー話やなぁ」
ノーヴェ「何処がやねん!」
とゆうわけで久々のBstsでしたーw。
>>509 オイィィィ局長またやられてんのかよ!?w
GJでした。またドタバタをやってくださいww
皆様GJ!
>>512 >ゆーたいりだつー
ちょwww何してんのwww
>>509 GJ!!銀さんも本格復帰。続きが楽しみです。
>>512 なのは勢でそれをやると面白いw
516 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/09(水) 10:07:11 ID:KgITKSYm
>>なの魂GJ
蝮ZVSSLBを想像してしまいました。無論負けるのは蝮Z。
そしてフェイト、近藤さんの頭に電気ショックをやるんだ。
次回も楽しみにしてます。
感想があるけれどなの魂氏の代理投下しましょうか?
518 :
メガトロン:2008/01/09(水) 14:25:39 ID:9GvoaFHh
投下しちくれー、続きが気になってピアノのお稽古も集中できねぇんだ。
520 :
なの魂氏代理:2008/01/09(水) 14:47:38 ID:k5V1B9b8
江戸の外れにある、稼動してるんだかしてないんだかよく分からない工場。
そこの一室で、無精髭を生やした白髪混じりの男――工場長が、煙草の煙を吐きながら手元の履歴書を見た。
「え〜と、山崎……ん? コレ何て読むんだ」
そう言って眉をひそめる。
彼の向かいで、ボトルコンテナを椅子代わりにして座っていた青年が答えた。
「『さがる』です。山崎退」
そう、彼の名は山崎退。
泣く子も黙る、武装警察真選組の監察である。
そんな彼が、何故このようなくたびれた工場に面接に来ているのかというと……。
「あ、そっ。おたくもリストラ? 最近は職にあぶれた侍で町あふれ返ってるもんな〜。
かくいう俺も昔は腰に刀さしてたんだがね、今はコレさ」
そう言って工場長は山崎に工場の案内をする。
しかし勿論、彼は真選組をリストラされたわけではない。
彼のような監察・密偵が動く時。それは事件の匂いをかぎつけた時だけだ。
「まァここはアンタみたいな落ち武者が沢山いる。似た者同士、仲良くやってくれ。
おーい、みーんな。新入りだぞ」
作業場まで山崎を案内した工場長は、従業員達に声をかける。
その場にいた者はみんな、好奇の目で工場長と山崎を見た。
なるほど。確かにみんなどこか人生にくたびれた様な顔つきをしている。
侍崩ればかりが集まっているというのは、あながち間違いではなさそうだ。
「うぃーす」
一人の従業員が元気よく返事を返した。
肩にかけた手ぬぐいで顔を拭くその男は、この場に似つかわしくないくらい若かった。
天然パーマの白髪。年齢は、まだ二十代前半くらいだろうか?
とてもリストラされて、ここに流れ着いたようには見えない。
山崎が疑念の目でその男を見ていると、ひとしきり汗を拭った彼が手ぬぐいを下げた。
――その男は、このような場所にいて良い人間ではなかった。
なの魂 〜第十六幕 一番似合う話が出る頃にはOP曲が変わってる〜
「いいいいい!! 万事屋の旦那!? アンタなんでこんな所に!?」
山崎は思わず大声を上げてしまった。
それはそうだ。
あのお騒がせ男が、なんでこんな場末の工場に?
山崎は銀時のそばまで寄り、コソコソと耳打ちをする。
「俺ですよ俺。真選組の山崎です。実は訳あって潜入捜査でここに潜り込んだんですがね……」
「オイ、言っとくけどそいつ記憶喪失で、昔のことなんも覚えてねーぞ」
「記憶喪失!?」
521 :
なの魂氏代理:2008/01/09(水) 14:49:02 ID:k5V1B9b8
工場長の言葉に、山崎は再び大声を上げた。
銀時は申し訳なさそうな顔をし、山崎を見る。
「そういうことなんでスイマセン。旧知のようですが僕は覚えてないんで。
えーと真選組の何? 真ちゃんとか呼べばいいかな?」
「ちょっとォォ!! 潜入捜査って言ってるでしょ!」
と銀時の頭を引っぱたく山崎。
直後に「あっ! 言っちゃった!」と言いながら口を押さえ、辺りを見回す。
他の従業員達は何事も無かったかのように作業を続けている。
どうやら、運のいいことに誰にも聞こえなかったらしい。
改めて銀時の顔を見直す。
彼は少しだけ不機嫌そうな顔をしていた。
「なんですかアナタ。人の頭パンパンパンパン、タンバリン奏者気取りですか。
じゃあ潜入捜査の潜ちゃんとかどうですか」
「嫌がらせ? 山崎って言ってるでしょ」
「いや、覚えてないんでタンバラーで」
「覚えてないっつーか覚える気ねーじゃねーか!」
そこまで会話を続けたところで、山崎は違和感に気付いた。
……目が死んでいない。
目の前にいる男は、どこからどう見ても万事屋のあの男だ。
だが普段は死んだ魚のような目をしている彼の目には、いつもと違い光が灯っていた。
そういえば口調もいつもと違うし、一人称も『俺』ではなく『僕』だった。
だが、今の彼にはふざけている様子など微塵も無い。
どうやら記憶喪失というのは本当らしい。
「え? でも万事屋は? 他の連中はどうしたんですか?」
山崎が問いかける。
すぐには返事は返ってこなかった。
辺りをベルトコンベアーが流れる音だけが支配する。
「万事屋は……」
重たげに銀時は口を開いた。
シグナムは思わずため息をついた。
というのも、玄関先にずっと居座り続ける主の後ろ姿を見つけたからだ。
銀時が姿を消してから四日。
はやては食事や就寝などの時以外、ずっとこの場所に居続ける様になってしまった。
シグナムは静かにはやての後ろへ歩み寄る。
「主。いつまでもここにいては風邪をひいてしまいます。居間へ戻りましょう」
春先とはいえ、まだまだ気温は低い。
そんな時期に防寒も何もない玄関にずっと居ては、体に障ってしまう。
だがはやてはシグナムの言葉に対し、首を横に振った。
「……もうちょっとだけ……」
522 :
なの魂氏代理:2008/01/09(水) 14:50:03 ID:k5V1B9b8
そう言って玄関の扉を見続けるはやての身体は、小刻みに震えていた。
やはり寒いのを我慢して、ずっとこうしていたのだろう。
シグナムは困った。
主の身を考えるなら、無理やりにでも居間へ連れて行くべきだ。
しかし主はそのことを許さないだろう。
実際に昨日、ヴィータが居間へ連れ戻そうとした時などは、凄い剣幕で怒られてしまった。
どうしたものかと首を捻るシグナム。
そんな彼女の視界の片隅で、何かが動いた。
(シグナム)
(ん?)
念話が聞こえてきた。
辺りを見回し、そして目線を下にやる。
(これを使え)
綺麗に折り畳まれた毛布を背負った蒼い狼――ザフィーラがいた。
彼の妙に空気を呼んだ気遣いに若干驚きつつ、シグナムは毛布を手に取った。
そしてそれを広げ、はやての両肩から彼女を包み込むように掛ける。
掛けられた毛布を胸元へ手繰り寄せながら、はやては呟いた。
「なぁ、シグナム……」
「……なんでしょうか」
はやては、すぐには続きを言わなかった。
まるでその言葉を口に出すのを恐れているようだった。
シグナムは静かに主の言葉を待つ。
しばらくの間をおいて、ようやくはやての口から次の言葉が紡ぎ出された。
「……銀ちゃん、もう戻ってこーへんのかな……」
彼女の声は震えていた。
シグナムはすぐに答えることが出来なかった。
こういう時、一体どういう言葉をかけてあげればいいのか。
彼女にはそれが分からなかった。
長い沈黙。
ようやくシグナムは口を開く。
「……分かりません。ですが、いざとなれば、我々が草の根を分けてでも探して……」
「……違うんよ……」
はやては首を横に振り、言った。
ひどく寂しげな声だった。
「今の銀ちゃんは、銀ちゃんやない……私はな……」
ふっと目を閉じ、肩の毛布を掛け直す。
再び開かれたはやての目は、遠い昔を懐かしむかのような、寂しい目だった。
「いっつもやる気なさそーな顔して、子供みたいなことばっかして、周りの人困らせて……。
でも、すっごい優しくて……いっつも、私の傍にいてくれる……。
そういう、いつもの銀ちゃんに戻ってきてほしいんや」
523 :
なの魂氏代理:2008/01/09(水) 14:51:14 ID:k5V1B9b8
主の言葉に、シグナムは聞きとれてしまっていた。
考えてみれば、自分達は銀時達と会ってそれほど日も経っていない。
本人には失礼だが、彼女は銀時のことを『腕は立つがちゃらんぽらんな男』としてしか認識していなかった。
それでも最低限の礼儀として、今まで敬語を使ってきていたが。
だが、主は違った。
いつも傍にいてくれる、優しい人、と。主はそう言った。
言われてみればそうだ。
今までの主よりもお人好しとはいえ、本当にどうしようもない男を、この少女がいつまでも家においておくわけがないのだ。
こうして、いつまでも帰りを待ち続けるわけがないのだ。
そこまで考えて、シグナムは気付いた。
主が力を求めなかった理由。
優しい人。
いつも傍にいてくれる人。
主が求めているのは絶対的な力などではなく……そういった『温もり』のようなものなのではないか?
……そうだとすれば、自分達に出来ることは……。
シグナムは、そっとはやての両肩に手を乗せた。
「……銀時殿は幸せ者ですね。主に、これだけ慕われているのですから」
はやては小さく頷き、じっと目の前を見続けた。
シグナムは主の姿を見る。
少しでも力を入れてしまえば、すぐに崩れ去ってしまいそうな小さな身体。
……歴史の闇に長く身を置いていた自分達では、役者不足かもしれない。
だが、あの人達なら。
主が心から信頼しているあの男達なら、『温もり』になれるかもしれない。
ならば待とう。
主の信じる、あの男を。
もはや瓦礫の山と化した翠屋の二階。
そこからキィキィと椅子を揺らす音が聞こえてきた。
「神楽ちゃん」
玄関があった場所から、奇跡的に残っていた事務デスクへ向かって声がかけられた。
若い青年の声だ。
玄関に背を向け、酢昆布をかじりながら椅子に座っていた神楽は何も言わなかった。
返事代わりにキィキィと椅子を鳴らし、ポリポリと酢昆布をかじり続ける。
「……また、ここに来てたの?」
今度は幼い少女の声が聞こえた。
そして同時に、二つの足音が神楽に近づいてきた。
足音は事務デスクの前で止まる。
神楽は振り向かなかった。
だが、今自分に声をかけたのが誰なのかは分かった。
新八となのはだ。
「ここ、いつ崩れるかわからないから危ないって言ったろ」
「早くうちに戻ろう。定春も心配してるよ」
新八となのはは言う。
神楽は何も言わず、ただ無心に酢昆布をかじり続けるだけだった。
ポリポリと歯応えのありそうな音だけが辺りに響く。
そしてそのまま、時間だけが空しく過ぎてゆき……。
524 :
なの魂氏代理:2008/01/09(水) 14:52:28 ID:k5V1B9b8
「いい加減にしろォォォ!! ポリポリポリポリポリポリぃぃぃ!! 掘さんかお前はァ!!
こんなに酢昆布買い込んで何するつもりだ!?」
新八がキレた。
彼は激昂し、事務デスクの上を指差す。
そこには、山のように積み上げられた酢昆布の箱があった。
しかもそのうち半分……とまではいかないが、相当数の箱が既に開封されていた。
「……ひょっとして、神楽ちゃん……」
新八の脳裏に、一つの考えが過ぎる。
「銀さんが帰ってくるまで、ここで待ってるつもりなの?」
そう問いかけるが、神楽からの返答は無かった。
先程と変わらず、ポリポリと咀嚼する音だけが聞こえてくる。
「……お医者さんが言ってたよね。人の記憶は木の枝のように複雑に入り組んでるって。
だから、木の枝一本でもざわめかせれば、他の枝も動く始めるかもしれないって……」
俯き、静かに語る新八。
「でも……もし木そのものが枯れてしまっていたら……もう……枝なんて、落ちてなくなってしまっているかもしれない。
僕らみたいな小枝なんて……銀さんは、もう……」
「枯れてないヨ」
不意に声が聞こえた。
新八は顔を上げた。
酢昆布を咀嚼する音は、いつの間にか聞こえなくなっていた。
「枯れさせないヨ。私達、小枝かもしれない……でも枝が折れてしまったら、ホントに木も枯れちゃうヨ」
そう言う神楽の表情は、新八達からは見えなかった。
だがその言葉には、確かな意思が込められていた。
「だから私、折れないネ。冬が来て葉が落ちても、風が吹いて枝がみんな落ちても……私は最後の一本になっても折れないネ」
それは新八に向けての言葉なのか、それとも自分自身に言い聞かせるための言葉なのか。
それは分からない。
ただ、一つだけ言える事がある。
「最後まで、木と一緒にいるネ」
彼女は、銀時を信じている。
信じているから、こうしてずっと待っている。
……そうだ。まだ木は枯れていない。
その証拠に、自分達小枝はまだこうして生きているじゃないか。
『……ハァー……』
ため息が二つ聞こえてきた。
次いで、ゴソゴソと何かを開けるような音。
神楽は後ろを振り向いた。
新八となのはが事務デスクの上に座り、手にした酢昆布の箱を開けていた。
525 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/09(水) 14:53:39 ID:k5V1B9b8
「……ホントに戻ってくるのかな……あのマダオ」
「早くしないと僕ら、緑色のウンコ出るようになっちゃうよ」
そう言いながら二人は酢昆布をかじりだす。
神楽はしばらくの間、呆けたように二人の姿を見ていた。
が……。
「てめェらァァァァァ! 何勝手に食ってんだァァァ!」
『ぎゃあああ!!』
自腹切って買ってきた酢昆布に勝手に手を出され、少々ご立腹になった様子だ。
問答無用で二人に鉄拳制裁を食らわす。
しんみりした雰囲気から一転、阿鼻叫喚な場面が展開された。
「おやおや、随分騒がしいと思ったら……」
玄関先から声が聞こえてきた。
三人は一様にそちらを向く。
「……困るんだけどねぇ。こうなった以上、早く二階取り潰さないと危なくて営業再会できないんだけどね」
「お父さん……」
立っていたのは士郎だった。
彼の言葉に、三人は抗議の目を向ける。
神楽は一歩前へ踏み出し言う。
「待ってヨ。私達、必ず銀ちゃん連れ戻してくるから」
「連れ戻すって、彼の居場所も知らないのにかい?」
途端に三人の顔が暗くなる。
あの日以降、銀時の行方は全く分からなかった。
既に日も経っている。
もしかしたらもう、江戸にはいないかもしれない。
悪い想像は、悪い想像を誘発させるものである。
だんだん新八達の顔から生気が無くなり、不安に押しつぶされようとしているのが手に取るように分かった。
そんな彼らの前に、唐突に一枚の紙切れがヒラヒラと落ちてきた。
拾い上げ、目を通してみる。
そこには一つの地図のような物と、細かい文字が書き込まれていた。
「そこの住所にある工場で、最近白髪頭の男が住み込みで働いているらしい」
士郎はそう言い、新八達に背を向けた。
新八達の表情が明るくなる。
「……たまった家賃、早く払ってもらわないといけないからね」
士郎は笑いながらそう言い残し、その場を立ち去った。
新八と神楽、そしてなのはは互いの顔を見合わせ、頷きあう。
地図を手にした彼らは、足取り軽く万事屋を後にした。
526 :
なの魂氏代理:2008/01/09(水) 14:55:22 ID:k5V1B9b8
駅前のネット喫茶で、フェイトは難しい顔をして目の前のモニターと睨めっこをしていた。
慣れない手つきで、手元のキーボードをカタカタと叩いていく。
検索用のテキストボックスに打ち込まれた文字は「記憶喪失の治し方」。
エンターキーを押し、検索結果をまじまじと見つめるフェイト。
しばらくの間マウスをカチカチと鳴らしていた彼女だったが、とあるサイトを見た途端、彼女の動きが止まった。
(ショック療法……)
そのサイトには、人為的に脳に刺激を与えて記憶を呼び戻すという療法が記されていた。
例えば、冷水を思いっきりぶっかけるとか。
例えば、死なない程度に脳天を金槌で殴りつけるとか。
そして例えば……電気ショックで脳に刺激を与えるとか。
電気ショック。
この一文を見たフェイトの脳内で、豆電球に灯りが点るイメージが映し出された。
自分が最も得意としている魔法は、雷撃を纏うものだ。
ということは、威力を限界ギリギリまで落として当てれば、もしかすればもしかすると、である。
少々荒っぽいが、やってみる価値はあるかもしれない。
早速実行に移そうと席を立つフェイト。
が、すぐに重大なことに気付く。
そういえば、あの白髪の男の居場所が分からないのだ。
先日こっそり病院へ様子を見に行った時には、既に病室はもぬけの殻だったのだ。
一瞬記憶が戻って退院したのかと思ったが、近くにいた看護士に聞いてみたところ、
記憶を失ったまま姿を消してしまったらしいという答えが返ってきたのだ。
その時に彼の住所も聞こうとしたのだが、個人情報やらなんやらの都合で、ついには教えてもらうことが出来なかった。
結局また振り出しに戻るのか。
フェイトは思わずため息をもらした。
「こーんなところで何やってんの?」
そんな彼女の後ろから、女性の陽気な声が聞こえてきた。
フェイトが振り向くとそこには、黒い大きなハンチング帽で犬耳を隠したアルフの姿があった。
ジュエルシードの探索を任せていた彼女がここにいるということは、何か情報でも手に入れたのだろうか。
しかし、それなら念話を送ればいいだけのはずである。
「アルフ……」
しかしフェイトには、そんなことを不審に思う余裕は無かった。
五日前のあの日から、自分を助けてくれたあの男の事が気になって仕方ないのである。
容態は悪化して無いだろうか。ちゃんとご飯は食べているだろうか。とにかく無事でいるだろうか。
もうほとんど我が子を心配するお母さん状態である。
不安げな目をしてアルフの顔を覗き込むフェイト。
そんな彼女の姿を見て、アルフは苦笑した。
「あーあー、言わなくてもいいって。分かってるからさ」
そう言ってアルフはズボンのポケットから小さな紙片を取り出した。
「ほら、調べておいたよ。あの人の居場所」
フェイトに手渡し、ニッと笑顔を向ける。
やはり持つべきものは相棒だ。
フェイトはパアっと表情を明るくし、アルフを見た。
アルフは頬を掻き、照れくさそうな顔をしていた。
「ご主人様のお役に立つのが使い魔の本懐! ……ってね」
527 :
なの魂氏代理:2008/01/09(水) 14:56:21 ID:k5V1B9b8
「オイぃぃぃ! テメっ何やってんだ!? こういう流れ作業は一人がミスったらラインが全部止まっちまうんだよ!」
「ス……スイマセン」
工場長の怒声が作業場に響いた。
向かいでは山崎が理不尽そうな顔をして頭を下げている。
何か失敗でもやらかしたのだろう。
だがその程度の謝罪では工場長の怒りを納めることは出来なかったようだ。
「スイマセンじゃねーよ! テメーよォ、何度も同じこと言わせやがって!」
そう怒鳴りながら工場長はベルトコンベアの前へ立つ。
そして流れてくる部品を手に取り、せっせと何かを組み上げていった。
「簡単だろーがこんなモンよォォ! コレをここに乗せ、コイツを立てればいいだけだろーが!」
ドンッ! と言う音と共に山崎の目の前に珍妙な物体が突き出された。
いや、珍妙というかシンプルというか……なんとも形容に困る物体である。
それは上部に半円型の突起が付いた円柱で、両サイドに棒が一本ずつ生えており、突起には物憂げな目と口が描かれた人形のような物であった。
山崎はそれを手に取り、冷や汗をかきながら工場長に尋ねた。
「……っていうか、コレ何作ってるんですか? この工場何を生産してるんですか?」
「アレだよお前、ジャスタウェイに決まってんだろーが!」
力強く言う工場長。
しかしそんな説明で理解できるはずも無い。
「だからジャスタウェイって何だって聞いてんだろーがァ!」
「ジャスタウェイはジャスタウェイ以外の何物でもない! それ以上でもそれ以下でもない!」
「ただのガラクタじゃないかァ! 労働意欲が失せるんだよ! なんかコレ見てると!!」
叫ぶ山崎。
そんな彼を工場長は「お前は何も分かっちゃいないな」と言いたげな表情で見つめる。
「てめーらは無心にただひたすら手ェ動かしてればいいんだよ。見ろォ、坂田を」
ため息をつきながら工場長は銀時の方を見た。
山崎と、彼の近くにいた従業員達もそれに倣う。
「うおおおおお! スゲェ速ェェェ!!」
「さすが坂田サンだ! ものスゴイ勢いでジャスタウェイが量産されてゆく!」
どよめく従業員達。
彼らの視線の先では、銀時がビデオの早回しの如きスピードでジャスタウェイを作り上げていっていた。
しかも妙に上手い。
両サイドに付いた棒の手などコンマ一度の狂いも無く、全く同じ角度で同じ場所に付けられている。
工場長は感心した様子で銀時を見て言った。
528 :
なの魂氏代理:2008/01/09(水) 14:57:17 ID:k5V1B9b8
「次期工場長は奴しかいねーな。みんなも負けないように頑張れ!」
「そんなんで工場長決まるの!? おしまいだ! ココおしまいだよ!」
ツッコむ山崎。
だがしかし、彼に反応する者は誰一人としていなかった。
「ハイ……いや、こっちはまだ何もつかめてませんが、ハイ……。いっ!? マジすか!?」
昼休み。
工場の外れで銀時と昼食を取っていた山崎は、携帯電話片手に一人焦ったような様子をしていた。
「分かりました、すぐ戻りますんで」
会話も終わり携帯電話を閉じる。
山崎の顔には、明らかに焦燥の色が浮かんでいた。
「旦那ァ、俺もうココひきあげます。意識不明で入院してた局長が、なんか行方不明になってるらしくて」
急き切った様子でそう言う山崎。
そんな彼に銀時は真摯な態度でこう言い返した。
「ジミー、アレくらいでへこたれるなよ。誰だって最初は上手くいかない。人間なんでも慣れさ」
「ジミーって誰!? それはもしかして地味から来てるのか!? それから俺は密偵で来てるだけだから!」
やはり彼も新八と同類の人間なのだろうか。
とりあえずツッコみを入れてすくっと立ち上がる。
そして少しだけ逡巡し、銀時を心配そうな目で見た。
「旦那も早いとこ引き払った方がいいと思いますよ。ここの工場長、何かと黒い噂の絶えない野郎でね」
そこで言葉を区切った後、山崎は言葉を続けた。
「巷じゃ職にあぶれた浪人を雇ってくれる人情派通ってるらしいが、その実は攘夷浪士を囲い幕府を転覆せんと企てる
過激テロリストと噂されてるんです。他にもこの工場で、裏じゃ攘夷浪士の武器を製造してるとか、
近く大量殺戮兵器を用いて大きなテロを起こそうとしているとか、ロクな噂がない」
そう言ってため息をつく山崎。
彼は懐に手をいれ、先程のジャスタウェイを手に取った。
「まァ、結果こんなモンしか出てきませんでしたがね。火のない所に煙はたたないというし……」
そこまで言った時だ。
銀時が突然立ち上がり、怒気をこもらせながら大声を上げた。
「おやっさんがエロリストだと! 言いがかりは止めろ! おやっさんは僕を拾ってくれた恩人だぞ!」
声を荒げる銀時。
山崎は「それを言うならテロリストね」と銀時を宥める。
銀時はしばらく肩で息をしていたが、呼吸を整え、静かに語った。
「それに僕は、以前の堕落した自分は受け入れられない。生き直そうと心に決めたんだ」
529 :
なの魂氏代理:2008/01/09(水) 14:58:14 ID:k5V1B9b8
その目は確かに、一つのことを決心した目であった。
山崎はそんな彼をじっと見る。
何か思うところがあったのだろうか。
だが山崎はすぐに苦笑しながら銀時に背を向けた。
「そうですか。ちょっと残念な気もしますが……。
アンタ、確かに一見ただのチャランポランでしたがね、局長も沖田隊長も一目置いてるようだったので」
彼はこんなところでくすぶっていていい男ではない。
漠然と山崎はそう思ったのだろう。
だが本人がこう言っている以上、無理やりシャバに戻すわけにもいかないし、そこまでする義理もない。
「坂田さーん、仕事始まりますよ」
「おっといけねェ。じゃ、俺はこれで……」
そんな物思いに耽っていると、工場の奥から従業員の声が聞こえてきた。
どうやら昼休憩はもう終わりのようだ。
厄介事に巻き込まれる間に退散しようと山崎は立ち上がり、そして何気なく声のした方を見た。
「坂田さん、ちょっと僕のジャスタウェイ見てくれませんか? どうですかコレ」
「そうだね。もうちょっとここ、気持ち上の方がいいかな、ゴリさん」
銀時と共に、手にしたジャスタウェイの感想を述べ合うその男は……紛れも無く真選組局長、近藤勲その人であった。
「お前何してんのォォォ!!」
思わず近藤の顔面に右ストレートを叩き込む山崎。
近藤はもんどりうって地面にぶつかり、鼻から血をだらだらと流し始めた。
「ゴリさァァァん!!」
「もしもーし、バカ発見しました。……ええ、スグ連れて帰りますんで」
大慌てで近藤に駆け寄る銀時を尻目に、山崎は携帯を開く。
青筋を浮かべて仲間と通話する今の彼は、普段の温厚な彼からは想像も出来ない姿であった。
「ゴリさん、しっかりしろ! ジミー、なんて真似するんだ!」
白目をむいて鼻血を垂らす近藤を支え、銀時は激昂した。
「ゴリさんはなァ! 僕と同じように記憶を失っていて、頭はデリケートに扱ってやらないとスグ飛ぶんだ!
初期のファミコン並みなんだぞ!」
バキン、という音と共に山崎の握った携帯が二つにへし折れた。
山崎はまるでこの世の終わりを目の当たりにしたかのような表情で近藤に詰め寄る。
530 :
メガトロン:2008/01/09(水) 14:58:49 ID:9GvoaFHh
支援だ!
531 :
なの魂氏代理:2008/01/09(水) 15:16:22 ID:k5V1B9b8
「記憶喪失ぅ!? マジですか局長ォ!! アンタバカのくせに何ややこしい症状に見舞われてんのォ! バカのくせに!」
「言いすぎだぞジミー! バカはバカなりにバカな悩み抱えてんだ!」
「うるせーよ! もうダリーよ! めんどくせーよ! おめーら!」
頭を抱える山崎だったが、すぐに思い直し近藤の襟首を握った。
そうだ、今はこんなことをしている場合ではない。
もしこの工場が情報通りテロリストの巣だったとしたら、近藤の命が危ない。
「とにかく! 一緒に帰りますよ局長!!」
そう言って近藤を無理やり引きずり帰ろうとする山崎だったが、近藤は両手に一杯のジャスタウェイを抱え
子供のように駄々をこね始めてしまった。
「やめろぅ! 僕は江戸一番のジャスタウェイ職人になるって決めたんだ! 何でもいいから一番になるって
おやっさんと約束したんだ!」
「だったら安心しろ、お前は世界一のバカだ。さっ、早く!」
近藤の身体を思いっきり山崎が引っ張る。
その拍子に近藤の手にしたジャスタウェイがすっぽ抜け、空高く舞い上がってしまった。
「あっ!」
思わず声を上げる近藤。
飛び上がったジャスタウェイは空中で綺麗な弧を描き、そして……。
地面にぶつかると同時に、巨大な轟音と爆炎を撒き散らした。
「うおわァァ! 爆発だァァァァァ!!」
銀時達のいる場所から少し離れた広場で従業員が絶叫した。
彼らの視線の先では、嘘みたいに巨大な爆発が次々と巻き起こり、工場のありとあらゆる施設を飲み込んでいった。
「工場長ォ! こいつはジャスタウェイが暴発したんじゃ……」
「やばいぜ、倉庫で次々とジャスタウェイが誘爆してる!」
口々に叫ぶ従業員達。
工場長は驚愕した面持ちで、顔面を蒼白にしながら怒鳴りたてた。
「誰だァァァこんなマネした奴ァ!!」
「「「ぎゃああああああああああ!!!」」」
いつらです。こ
銀時、近藤、山崎は絶叫しながら、後ろから迫り来る爆発の渦から逃げ惑っていた。
532 :
なの魂氏代理:2008/01/09(水) 15:23:23 ID:k5V1B9b8
「ウソォォォ!? ジャスタウェイが!?」
「そんなァァァ! 僕ら爆弾を作らされていたってのか!?」
信じられないといった様子で山崎と近藤が叫ぶ。
彼らと並んで走る銀時もまた、沈痛な面持ちでぼそりと呟いた。
533 :
なの魂氏代理:2008/01/09(水) 15:24:17 ID:k5V1B9b8
「なんてこった……まさかホントにおやっさんが……。
確かに上の連中のせいでリストラされたとか、あいつら皆殺しにしてやるとかグチってたけど……まさかおやっさんが」
「まさかじゃねーよ! 超一流の食材が揃ってるじゃないスかァァ! 豪華ディナーが出来上がるよ!」
怒鳴りたてる山崎。
しかし彼の仕事(ツッコミ)はこれで終わりではない。
なにしろ重度のバカがもう一人いるのだから。
「悪いのはジャスタウェイではない! 悪いのはおやっさんであってジャスタウェイに罪は無い!」
そう叫ぶ近藤の手には、まだ多数のジャスタウェイが抱えられていた。
それを見て山崎は顔を青ざめさせる。
「局長ォォォォォ! まだ持ってたんスか!? 早く捨ててェェェ!!!」
などと馬鹿げたやり取りを繰り広げている間にも、爆発は徐々にこちらへ近づいてくる。
……いや、近づいてきているのは爆発だけではなかった。
「てめーらかァァァァァ!! よくも俺の計画を台無しにしてくれたなァァァ!
スパイどもが、血祭りじゃああ!!」
怒声とともに工場長が、刀片手にこちらへ向かってきたのだ。
しかもその後ろには多数の従業員達を従えている。
どうやら山崎の掴んでいた情報は真実だったようだ。
怒り狂う暴徒達の姿を見、思わず狼狽する山崎。
「ジミー、こっちだ」
そんな彼にどこからともなく声がかけられる。
辺りを見回してみると、いつの間にか銀時達が工場の屋根に登っているのが見えた。
山崎も彼らの下まで駆け寄り、壁に張り出したパイプをよじ登る。
「おやっさんとはやり合えん。なんやかんや言っても恩がある」
屋根のすぐ近くまで登ってきた山崎に手を貸す銀時。
だが、そう簡単には逃がしてもらえないようだ。
「逃がすかァァァ!」
刀を振りかざしながら工場長が跳躍してきたのだ。
いつの間にこんなに近くまで来ていたのだろうか。
そのまま振り下ろせば、間違いなく山崎を背中から真っ二つに出来るという距離だ。
もはや絶体絶命かと思われた、まさにその時。
ゴンッ。と鈍い音がした。
山崎は後ろを見た。
……工場長の顔面に、大人一人半ほどはありそうな巨大なドラム缶がめり込んでいた。
ドラム缶と工場長は、そのまま重力に引かれて真っ逆さま。
壮絶な音をたてて地面に激突した。
そして追い討ちをかけるように、近藤が手にしたジャスタウェイを地面に放った。
同時に発せられる衝撃波と黒煙。
「おいィィィィィ! やり合えないんじゃなかったのかァァ!? おもっクソ殺っちゃったじゃないか!」
どうにか屋根の上に登りきった山崎は、開口一番そう叫んだ。
銀時と近藤は白々しくお互いの顔を見合わせる。
534 :
なの魂氏代理:2008/01/09(水) 15:25:52 ID:k5V1B9b8
「そんな事言ったか? ゴリさん」
「ダメだ、思い出せない。記憶喪失だから」
「便利な記憶喪失だなオイ!」
その山崎の叫びとともに、彼の喉元に白刃が突きつけられた。
「ククク、動くんじゃねーぞ」
驚く彼らの耳に入ってきたのは、あろうことか工場長の声だった。
まさかあの爆発の中で生き残るとは。
銀時達は戦慄し、冷や汗を垂らす。
「残念だったな。こう見えても、かつては同心として悪党を追い回し、マムシの蛮蔵と呼ばれていたのさ。
しつこさには定評があってね」
徐々に煙が晴れ、工場長の姿が明確になってくる。
なるほど、確かに今の彼の目は、獲物に喰らいついたマムシを連想させる凶暴な目だった。
「やってくれたじゃねーか……まさかてめーらが幕府の犬だったとはな。
てめーらのおかげで、俺が長年かけて練ってきた計画も水の泡だ」
そう言って辺りを見回してみる。
周辺の爆発はようやく収まり始めてきたようだが、それでもまだ他の場所では爆発音と共に火の手が上がっているようだ。
先ほど銀時達がいた場所などは、無残にも黒焦げになった瓦礫が山のように積み重ねられている。
「もう少しで幕府に目にもの見せることが出来たのに……だが、こうなったらもう後へは引けねェ。
準備万端とは言えねーが、やってやるぜ。腐った世の中ひっくり返してやらァ」
工場長は不敵な笑みを浮かべて、そう呟いた。
工場の外には多数のパトカーと野次馬達が並んでいた。
ひっきりなしに起こる爆音と共に、工場に大きな火柱が発生する。
野次馬達はそれ見てどよめき、真選組隊士達は表情をこわばらせる。
そして今また、彼らに程近い倉庫で一際大きな爆発が起こった。
爆発は暴力的な黒煙と破片を周囲に撒き散らす。
ガン、と不意に鈍い音がした。
「は〜い、危ないから下がりなさ〜い。この人のようになるよ〜。
ポーカーフェイスを気取ってるが、ものっそい痛いんだよ〜。恥ずかしいんだよ〜」
そう言って沖田は野次馬達を現場から離れるように促す。
彼の隣には、飛んできた破片を脳天にぶつけ血をダラダラ流している土方の姿があった。
「エライ事になってるな」
血濡れの煙草に火をつける土方。
冷静を努めてはいるが、内心穏やかではないだろう。
その証拠に、流れる血の量が今さっきとは比べ物にならないくらい増えている。
535 :
なの魂氏代理:2008/01/09(水) 15:27:39 ID:k5V1B9b8
「土方さんもエライ事になってますぜ」
「コレ山崎の野郎死んだんじゃねーのか」
「土方さんも死ぬんじゃないですか
536 :
なの魂氏代理:2008/01/09(水) 15:28:25 ID:k5V1B9b8
彼らがそんなやり取りを続けている間にも爆発はどんどん広がっていく。
工場は文字通りの火の海と化していた。
状況は悪いな……。
そう思いながら顔をしかめ煙草の煙を吐き出す土方の元に、十番隊隊長・原田右之助が駆け寄ってきた。
「副長、今情報が入りまして。山崎と一緒に局長もこの中にいます」
原田の報告に、土方はさらに顔をしかめた。
面倒くさそうに頭を掻き、ため息をつく。
「あんだと? ……オイオイ、山崎一人なら見捨てようかとも思ったが、局長がいたんじゃそうもいかねーな」
同意を求めるように隣に目を向ける。
だが、そこにいるはずの人物は忽然と姿を消していた。
不審に思い土方は辺りを見回す。
彼の探し人は彼らのすぐ後ろ、野次馬と隊士達の間を隔てるように駐車されたパトカーのすぐ傍にいた。
「土方さん、俺笛家に忘れてきたんでちょっと取りに帰ってきまさァ」
「ああ、二度と戻ってくるな」
今まさにパトカーで戦線離脱を図ろうとしていた沖田に言葉を投げつける土方。
彼はくわえていた煙草をその場に落とし、踏みにじってから工場へと歩き出した。
「情けねェ、もういい。俺一人で行ってくるから、てめーらここで待ってろ」
そう言い、土方が工場の敷地内へ足を踏み入れたまさにその時。
隊士の一人が驚愕した声を上げた。
「おい、アレ見ろォ!」
隊士が指差した先。
工場の二階部分から、機械音と共に巨大な物体がせり出してきたのだ。
その姿は煙に隠れており、ここからではよく見えない。
「何か出てきたぞ! なんだアリャ!?」
じっと目を凝らして見続ける。
しばらくして煙が晴れ、ようやくその物体の全貌が明らかとなる。
それを見た隊士達の顔には、明らかに困惑と焦りの色が浮かび上がっていた。
「大砲!? バカでけー大砲が出てきやがった!」
「ア……アレが……連中が秘密裏に作っていた兵器……」
狼狽し、その場に立ち竦む隊士達。
土方は正面に鎮座する超大型の大砲を見据え、静かに呟いた。
「総悟、俺分度器家に忘れたからちょっと取りに帰ってくる」
「土方さん大丈夫でさァ。分度器ならここにあります」
沖田は手にした分度器を土方の目の前でちらつかせた。
537 :
なの魂氏代理:2008/01/09(水) 15:29:15 ID:k5V1B9b8
○月△日
今日、生まれて初めて親父に殴られた。
重い拳だった。それは己の背中一つで、俺達家族や様々な重責を背負って生きてきた男の拳だった。
自分の拳が酷く小さく見えた。仕事をやめ二年と三ヶ月、ゲーム機のコントローラーしか握ってこなかった負け犬の拳だ。
「別になァ、上手に生きなくたっていいんだよ。恥をかこうが泥にまみれようがいいじゃねーか。最高の酒の肴だバカヤロー」
そう吐き捨てて仕事に出かけた親父の背中は、いつもより大きく見えた。
今からでも親父のようになれるだろうか……初めて親父に興味を持った。
二年ぶりに外へ出た。自然と親父を追う俺の足。
マムシの蛮蔵。それが親父のもう一つの名前。
悪党どもをふるえあがらせる同心マムシ……。
親父の顔が見たかった。働くということがどういうことなのか、彼を通して知ろうと思った。
――マムシは、ワンカップ片手に一日中公園でうなだれていた……。
マムシは一ヶ月前にリストラされ「いやああああああああ!!!!」
そこまで呼んだところで、工場長――蛮蔵は手に持ったノートをビリビリと引き裂いた。
ノートの表紙には「太助日記帳」という文字。
蛮蔵は泣きながら怒鳴り声を上げる。
「お前らにわかるかァァマムシの気持ちがァァァ!!
息子の日記にこんなこと書かれた、かわいそうなマムシの気持ちがァァァ!!
もう少しだ! あとちょっとで息子も更生できたのにリストラはねーだろ!
おかげでお前、息子は引きこもりからヤーさんに転職だよ! 北極から南極だよ!」
敷地内に木霊するマムシの悲痛な叫び。
土方は冷めた目つきで蛮蔵の見ながら呟く。
「最高の酒の肴じゃねーか」
「飲み込めるかァ! デカ過ぎて胃がもたれるわァ!」
返ってきた叫び声からは、何故か哀愁のような物を感じずにはいられなかった。
蛮蔵は大業に腕を振るい叫び続ける。
「こちとら三十年も幕府のために滅私奉公してきたってのに、幕府も家族もあっさり俺をポイ捨てだぜェ!
間違ってる!! こんな世の中間違ってる!
だから俺が変える! この秘密兵器"蝮Z"で、腐った国をぶっ壊して革命起こしてやるのよ!」
大砲に手を乗せる蛮蔵。
果たしてこの秘密兵器とやらがどれほどの威力を持っているのか。
それは真選組達の知るところではない。
もしかしたら、ただの張子の虎という可能性もある。
だが、下手に撃たれて周りに被害が出たらたまったものではない。
土方は一歩前へ出、蛮蔵に語りかける。
「腐った国だろうが、そこに暮らしてる連中がいるのを忘れてもらっちゃ困る。
革命なら、国に起こす前に自分に起こしたらどうだ? その方が安上がりだぜ」
「うるせェェェ! てめーらに俺の気持ちが分かってたまるかァァァ!!」
蛮蔵はすでに聞く耳を持たないほどに頭に血が上っていた。
土方もこれ以上の話し合いは無意味と判断し、ため息をつきながら隊士に命令を下す。
538 :
なの魂氏代理:2008/01/09(水) 15:30:07 ID:k5V1B9b8
「大砲用意」
命令と共に、大砲に備え付けられた車輪がゴロゴロ回る音が聞こえてくる。
その音は土方のすぐ背後まで迫り……土方の後頭部に、何かがコツンと当たった。
訝しげに土方は後ろを振り返る。
「……いや、そこじゃなくて」
眼前に迫った大砲に冷や汗を垂らし、土方は呟いた。
土方の声は砲口へ飛び込み、中で小さく木霊を繰り返す。
圧倒的な存在感を示す円柱の向こうでは、沖田が驚愕の表情でこちらを見ていた。
「何びっくりしてんだァァ! こっちがびっくりだわァァ!!」
「副長ォ! ア、アレ……!」
土方が沖田を掴みかかろうとしたその時、彼らの隣にいた原田が沖田以上の驚愕の表情で工場を指差した。
砂煙に包まれた蝮Zの基部。
そこにうっすらと映し出された三つの人影を見て、土方は目を大きく見開いた。
間違いない、その三人とは近藤と山崎。そして……。
「……アレ!? なんでアイツもいんだ!?」
あの万事屋の銀髪の侍だった。
彼らは一様に縄でぐるぐる巻きにされ、屋根に据え付けられた看板に張り付けられていた。
「クク……こいつらがてめーらの仲間だってのは分かってる。
俺達を止めたくば撃つがいい。こいつらも木っ端微塵だがな。クックックッ」
蛮蔵は不敵な笑みを漏らす。
と同時に、近藤達を包み込む巨大な爆発が起こった。
爆風にあおられ、蛮蔵と従業員達は工場の奥へ吹き飛ばされる。
唖然とした表情でその光景を見つめる土方。
彼の中で嫌な予感が走る。
その予感を確かめるべく、彼は後ろを振り向いた。
案の定、先程土方に向けられていた砲口から白い煙が立ち昇っていた。
沖田は感嘆の声を上げながら着弾点を仰ぎ見ている。
「総悟ォォォォォ!!」
怒鳴る土方を横目で見ながら、沖田は愁いを帯びた声でポツポツと語り始める。
「昔近藤さんがねェ、もし俺が敵に捕まることがあったら迷わず俺を撃てって。
……言ってたような言わなかったような」
「そんなアバウトな理由で撃ったんかィ!!」
「撃ったァァァァァ! 撃ちやがったよアイツらァ!」
一方屋根の上では、山崎が怒りと恐れの混じった叫びを上げていた。
銀時も同じように、顔を青ざめさせながら叫ぶ。
「なんですかあの人達!? ホントにあなた達の仲間なんですかァ!?」
「仲間じゃねーよあんなん! 局長! 俺もう真選組やめますから! ……アレ? 局長は?」
539 :
なの魂氏代理:2008/01/09(水) 15:31:16 ID:k5V1B9b8
ふと辺りを見回してみると、近藤の姿が見当たらない。
まさか爆風で吹き飛ばされてしまったのか?
その折、不意に彼らの後ろから声が聞こえてきた。
「オウ、ここだ。みんなケガはないか、大丈夫か?」
「局長ォォォォォ! アンタが大丈夫ですかァァァ!?」
振り向いた山崎の目に入ったのは、体中すすだらけになり、脳天に木片が突き刺さった近藤の姿だった。
どうやら爆発をモロに浴びたらしい。
だが、悪いことだけではなかった。
爆発の衝撃で近藤を縛っていたロープが解けていたのだ。
「まるで長い夢でも見ていたようだ」
近藤は頭から噴水のように血を流しながら語る。
「局長、まさか記憶が……ていうか、頭……」
「ああ、まるで心の霧が晴れたような、すがすがしい気分だよ。山崎、色々迷惑かけたみたいだな」
「いえ……ていうか、局長……頭……」
心配する山崎だったが、近藤はそんな彼をよそにさっさと屋根を降りようとする。
「とにもかくにも、今は逃げるのが先決だ。行くぞ」
「局長、待ってください! まだ旦那が!」
近藤はロープが解け、山崎も爆発のおかげで、彼を張り付けていた看板が屋根から剥がれていた。
おかげで移動することに関してはなんら支障は無い。
だが銀時は違った。
あれだけの爆発が近くで起こったにもかかわらず、彼のロープは解けていないし、看板も全くの無傷だったのだ。
これでは身動きが取れない。
しかし銀時はそんな状況にもかかわらず、近藤達に向かって言った。
「いい、行ってくれ。ジミー、ゴリさん。早くしないと連中が来るぞ」
真剣な眼差しで近藤達を見る銀時。
自分のことを犠牲にしてまで、他者を助けようというのか?
銀時のその真摯な態度を目の当たりにした近藤は、僅かに逡巡した後舌打ちをした。
「クソッたれ!! 普段のお前なら放っておくところだが、坂田サンに罪はない!
記憶が戻ったら何か奢れよテメー!」
銀時の背負った看板に手をかけ、力を込める。
だがしかし、看板は微動だにしない。
このままではテロリスト達が戻ってきてしまう。
もし今見つかれば、その時は……。
「ふんごぉぉぉぉ!!」
540 :
なの魂氏代理:2008/01/09(水) 15:32:15 ID:k5V1B9b8
近藤は唸った。
するとどうだろうか。
先程までビクともしなかった看板から、ミシミシと何かが引き千切れていくかのような音が聞こえてきたのだ。
あと少しだ。近藤は渾身の力を込め看板を引っ張った。
同時に屋根板ごと看板が外れ、その反動で近藤と銀時は真っ逆さまに地面へ墜落していった。
それを見た山崎も、慌てて二人の後を追って屋根から飛び降りる。
541 :
タランス:2008/01/09(水) 15:32:54 ID:9GvoaFHh
支援っス、うしゃしゃ
542 :
なの魂氏代理:2008/01/09(水) 15:33:11 ID:k5V1B9b8
「今だ! 撃てェェェ!!」
これを好機と見た土方は即座に隊士に発砲命令を下した。
配備された大砲から連続して砲弾が撃ち出され、工場に大穴を開けていった。
「工場長ォ!」
従業員が叫ぶ。
工場内はまさに阿鼻叫喚の地獄絵図だった。
各所で爆発と振動が巻き起こり、壁から天井から破片が舞い飛ぶ。
逃げ惑う従業員達の悲鳴が、その混沌に拍車をかけていた。
そんな中、蛮蔵は意を決し爆発にも負けない大声で怒鳴った。
「撃てェェェ!! 蝮Zだァァァ!!」
叫びと共に工場に据え付けられた巨大な大砲が起動した。
禍々しい音と共に、砲口の奥に赤紫の光が充填されていく。
マズい。嫌な予感がする。
本能的に危険を察知した銀時達は、工場へ背を向け土方達の方へ一斉に駆け出した。
……が、時既に遅し。
彼らが駆け出したと同時に、砲口から巨大な光が放たれたのだ。
「「「うおわァァァァァ!!!」」」
三人は必死の形相で逃げ回る。
しかし、明らかに向こうの弾速の方が上だ。
このままでは三人とも消し炭になってしまう。
最早万事休すか。
山崎の脳裏にそんな考えが過ぎった、まさにその時だった。
彼と銀時の身体が突然何者かに押し出され、射線の外へと突き飛ばされた。
山崎は自分達が元いた場所に視線を向け、目を見開く。
「局長ォォォ!!!」
彼の叫びと共に、近藤の姿は膨大な光と砂煙の中に飲まれていった。
「おーい、みんな生きてるか?」
横倒しになったドラム缶から顔を覗かせ、土方は辺りを見回した。
彼の声に反応するように、辺りに散らばった瓦礫の影から隊士達が顔を覗かせる。
「こいつァとんでもねェ。本当に国ぐらい消しちまいそうな威力だ」
土方の隣から顔を出した沖田はそう呟いた。
目の前に広がる光景は、まさに焼け野原であった。
砲撃の後、巨大な半円型に抉れた地面からは白い煙が立ち昇っており、射線上にあった障害物は破片すら残っていなかった。
「局長ォォ! 局長、しっかりしてください!!」
煙の中から山崎の悲痛な叫びが聞こえてきた。
彼の傍らでは、近藤が仰向けになったまま意識を失っている。
直撃こそ免れたが、どうやら衝撃波でかなりのダメージを負ってしまったらしい。
山崎は近藤を呼び続けるが、彼が目を覚ます気配は一向に無かった。
543 :
なの魂氏代理:2008/01/09(水) 15:34:36 ID:k5V1B9b8
――……なんでだ。
山崎の遥か後ろ。突き飛ばされ地面に倒れた銀時は、信じられない様子で目の前の光景を見やる。
――何で彼は、身を挺してまで僕のことを……!
「見たか蝮Zの威力を! これがあれば、江戸なんぞあっという間に焦土と化す!
止められるものなら止めてみろォォォ!! 時代に迎合したお前ら軟弱な侍に止められるものならよォ!」
蛮蔵が怒鳴る。
もはや正気を失ってるとしか思えない彼の言葉は、まるで悪魔の叫びのように聞こえた。
真選組は動こうとしない。
いや、動くことが出来なかった。
再射までにかかる時間が分からない以上、下手に動けば隊の全滅を招く恐れがあるからだ。
土方は歯噛みし、蛮蔵を睨みつける。
「さァ来いよ! 早くしないと次撃っちまうよ、みんなの江戸が焼け野原だ!」
狂気をはらんだ蛮蔵の大声が辺りに響いた。
今度こそ万事休すか。
工場を見上げ、銀時は思う。
ああ、目の前も暗くなってきた。
どうやら僕の短い人生は、ここで終わりらしい。
「どうぞ撃ちたきゃ撃ってください」
……いや。
目の前が暗くなったのは、彼が絶望に打ちひしがれたからではなかった。
聞き覚えのある青年の声と共に、彼の影が銀時に覆いかぶさったのだ。
「江戸が焼けようが煮られようが知ったこっちゃないネ」
別の声が聞こえる。
今度は女の子の声だ。
その子の影もまた銀時に覆いかぶさり、まるで銀時を護るかのように蛮蔵との間に立ちふさがる。
そして……。
「でも、この人だけは撃ってもらったら困ります!」
最後に聞こえてきた、年端も行かない少女の声。
彼女の影は、先の二人の間に入るように銀時に覆いかぶさった。
「なっ……なんだてめーらァァ!? ここはガキの来る所じゃねェ、帰れ! 灰にされてーのか!?」
あまりにも場違いな乱入者達に、蛮蔵は困惑をあらわにする。
だが三人は彼の言葉に耳を貸さず、その場に立ち塞がり続けた。
「な……なんで……なんでこんな所に」
別れを告げたはずの人物達の突然の介入に、銀時は困惑する。
544 :
なの魂氏代理:2008/01/09(水) 15:35:22 ID:k5V1B9b8
――なんでだ。
――なんで彼らは、こんな所まで……。
「僕のことはもういいって……もう好きに生きていこうって言ったじゃないか。なんでこんな所まで……」
銀時が言葉を言い終える前に、彼の顔が地面にめり込んだ。
最初に言葉を発した二人が、銀時の頭を思いっきり踏みつけたのだ。
545 :
なの魂氏代理:2008/01/09(水) 15:36:09 ID:k5V1B9b8
「そんなこと、言われなくても……!」
最後に言葉を発した少女――なのはが言う。
「こちとらなァ、とっくに好きに生きてんだヨ」
ぶっきらぼうにそう言うのは、二番目に言葉を発した女の子――神楽だ。
「好きでここに来てんだよ」
そして、最初に言葉を発した、木刀を手にした青年――新八が語気を強めていった。
三人は銀時の方を見ようともせず……しかし、絶対に銀時を撃たせまいと互いの体を寄せ合い、叫んだ。
「好きでアンタと一緒にいんだよ!」
「好きでオメーと一緒にいんだヨ!」
「好きであなたの傍にいるんです!」
――なんで……どうしてだ。
空。
空が真っ白だった。
いや。
白いのは空だけではなかった。
辺りに広がる草原も。
目の前にそびえ立つ、丸裸になった大木も。
全てが白と黒だけで彩られていた。
――ちゃらんぽらんと呼ばれていながら、なんで僕は……。
ひゅう、と一陣の風が吹いた。
足元に生える芝生は、そよそよと風に揺られ音を立てた。
大木は全く揺れなかった。
張り巡らされた小枝も、全く動こうとはしなかった。
――なんでみんな……。
不思議だ。
なぜこの木は、風に吹かれても動こうとしないのだ。
試しに手で木を揺すってみた。
やはり大木はビクともしなかった。
ひゅう、と再び一陣の風が吹いた。
――なんで……
……動いた。
それは酷く微弱で……目を凝らさなければ分からないほどだったが。
確かに、小枝が音を立てて動いた。
546 :
なの魂氏代理:2008/01/09(水) 15:36:56 ID:k5V1B9b8
「ガキ共はすっこんでな。死にてーのか」
「あんだと、てめーもガキだろ」
「人を見かけで判断しないでください!」
「なんなんスか、一体」
「不本意だが仕事の都合上、一般市民は護らなきゃいかんのでね」
……今のは、全て幻想だったのだろうか。
気が付けば目の前では、先程の三人が黒い服を着た男達と口論を繰り広げていた。
……いや。
黒いのは彼らの服だけではなかった。
先の三人も、周りの景色も、先と違わずみんな白と黒の二色で彩られていた。
不意に三人がこちらを振り向いた。
周りの景色も変わった。
焼け野原などではなく、先程自分が見ていた、大木のそびえる草原に。
白黒に彩られた映像の中で、三人が微笑んだ。
……揺れた。
葉も落ち、丸裸になった枝が。
ざわざわと大きな音を立てながら……揺れた。
幻想的な光景だった。
枝が揺れるごとに、大木に木の葉が生い茂っていった。
同時に、周りの風景も少しずつ彩られていく。
目の前の彼らもだ。
枝は揺れ続けた。
やがて大木は、緑の生い茂る立派な木となった。
視界一杯に広がる草原も、かつての緑を取り戻し、風に吹かれそよそよと揺れていた。
目の前の少年少女達は、笑顔のままずっとこちらを見続けていた。
「そういうことだ。撃ちたきゃ俺達撃て。
チン砲だかマン砲だか知らねーが、毛ほどもきかねーよ!」
隊士達を従え、銀時の前に立ちふさがった土方はそう怒鳴った。
新八達もそれに倣い、口々に怒鳴り始める。
「そうだ撃ってみろコラァ!」
「このリストラ侍が!」
「ハゲ! リストラハゲ!」
仮借ない口撃の連続。
蛮蔵は口の端を引きつらせ激昂する。
「俺がいつハゲたァァァ!! 上等だ、江戸を消す前にてめーらから消してやるよ!」
しかし、今の新八達がそのような脅しに怯むはずも無かった。
各々の得物を構え、工場を見据える新八達。
「私達消す前にお前消してやるネ!」
「いけェェェ!!」
547 :
なの魂氏代理:2008/01/09(水) 15:38:05 ID:k5V1B9b8
真選組、そして新八と神楽は一斉に工場へなだれ込む。
この人の波を止められる者など、おそらくこの世界にはいないだろう。
そう思わせるくらいの苛烈な勢いだった。
「こうなったら、私も……!」
一人銀時の前に佇んでいたなのはも、待機中のデバイスを握り締める。
さすがに軽率すぎる行動だとは思ったが、ここで一人指をくわえて見ているわけにもいかなかったからだ。
レイジングハートを掲げ、戦闘態勢を……。
「オイオイ……切り札は最後まで取っておくモンだぜ?」
……取ろうとしたその瞬間、彼女の後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「ぐっ……蝮Zは!?」
「ま、まだチャージが……!」
予想外の事態に蛮蔵は狼狽した。
震える声で切り札を発射を命じるが、まだチャージが完了していない。
このままでは、チャージを終える前に連中が工場内に入り込んでしまう。
そうなればこちらの敗北は確実だ。
「ジャスタウェイだ! あいつらを工場に近づけさせるな!」
怒声と共に、従業員達がジャスタウェイを抱え屋根の上に登った。
ここから爆弾を投擲し、内部への侵入を阻むつもりだ。
敵を射程内に捕らえ、従業員達は次々とジャスタウェイを掲げる。
そして彼らの手からジャスタウェイが離れようとしたその瞬間だ。
「な……!?」
屋根が爆発した。
遥か彼方から"黄色い光弾"が屋根に降り注ぎ、辺りを飲み込んだのだ。
屋根に乗っていた従業員達は全て、爆発の反動で工場内に吹き飛ばされる。
「土方さん、今のって……」
訝しげに爆発を眺める沖田。
彼とは対照的に、土方は不敵な笑みを浮かべながら刀を鞘から抜き放った。
「へっ……意外と義理堅い嬢ちゃんじゃねーか!」
そのままの勢いで工場へ突っ込もうとする。
彼の後ろでは、新八が肩で息をしながら土方の後に追いすがっていた。
「オイ新八、木刀持ってきたろうな?」
そんな彼の後ろから、男の声が聞こえてくる。
「え? あ、ハイ……」
548 :
なの魂氏代理:2008/01/09(水) 15:38:46 ID:k5V1B9b8
思わず返事をする新八。
刹那、彼の手に握られた木刀が姿を消した。
そしてその代わり……。
土方達のいる遥か向こう、工場の入り口が眼前に迫るその場所を、木刀片手に疾走する銀髪の男の姿があった。
549 :
コンボイ:2008/01/09(水) 15:39:19 ID:9GvoaFHh
支援する!
550 :
なの魂氏代理:2008/01/09(水) 15:39:40 ID:k5V1B9b8
「工場長! すんませーん今日で仕事辞めさせてもらいまーす!」
叫び、木刀を構えるその男は。
……見紛うはずも無い。
坂田銀時、その人だった。
「ワリーが俺ァやっぱり……」
銀時は跳躍した。
屋根よりも、そして大砲よりも高く。
「自由(こいつ)の方が……向いてるらしい!」
常人では考えられない高度で木刀を掲げ、険しい弧を描きながら一気に加速をつけ落下する。
「死ねェェェェェ坂田ァァァ!!」
蛮蔵が叫び、チャージの完了した蝮Zの砲口が銀時へ向けられる。
獲物を捕らえる蝮の如く口を開く砲口内では、膨大な量の光が蓄えられていた。
その光の塊が、一層大きな光を放つ。
しかし銀時は臆することも無く、手にした木刀を振り下ろした。
「お世話になりました!」
渾身の一撃を受け、砲身が木っ端微塵に砕けた。
雨霰の様な砲撃にも、嵐のような魔力弾にも耐え切った砲身が、一際派手な音と共に砕け散った。
発射口を砕かれ、行き場を失った光はその場で膨張し……。
本日最大の、猛烈な爆発が工場を包み込んだ。
爆発の余波に身体をあおられながらも、何とかその場に立ち留まった新八は工場のあった場所へ目をやった。
神楽となのはも新八の元へ駆け寄りながら、彼と同じように心配そうな顔つきで同じ場所へ視線をやった。
立ち昇る黒煙。
無残にも瓦礫の山となった工場。
……足音が聞こえてきた。
新八達は目を凝らす。
瓦礫の中心から、一人の男がこちらへ向かってきているのが見えた。
……銀時だ。
彼は俯き加減のまま新八達の目の前まで歩み寄り……そのまま通り過ぎていった。
彼の表情は見えなかった。
もしかして、また記憶を失ってしまったのだろうか。
一抹の不安が新八達の脳裏を支配する。
不意に銀時が足を止めた。
顔を上げ、振り返ろうともせずその場に佇む。
「……帰るぞ」
呟き声と共に、銀時が再び歩き始めた。
……「帰るぞ」。
その言葉の意味は、咀嚼する必要も無かった。
新八達は駆け出した。
彼の傍へ行くために。
彼らのいるべき場所へ"帰る"ために。
551 :
なの魂氏代理:2008/01/09(水) 15:40:42 ID:k5V1B9b8
「ハハ、やっぱアイツらはアレじゃないと。ねっ、局長」
万事屋達の後姿を眺め、山崎は言う。
「君は誰だ?」
彼の傍で倒れ込んでいた近藤が、不思議そうな表情でそう言った。
「……やれやれ、アタシ達が出向く必要もなかったかもしれないねぇ」
銀時達から少し離れた上空。
アルフが頭の後ろで手を組みながらそんな事を言った。
「そうだね……」
風に髪をなびかせ、並んで歩く四つの人影を見守っていたフェイトも、アルフに同意して呟く。
四つの人影のうち、一番小さな人物が不意に空を見上げた。
フェイトは内心どきりとする。
そんなはずは無いのに、何故か一瞬目が合ったような気がしたからだ。
その人影は、こちらへ向かって何かを言っているようだった。
もちろん、この距離では聞こえるはずも無い。
だが、今のフェイトには……彼女が言った言葉が、なんとなく分かるような気がした。
――"ありがとう"
「……いい家族だね」
不意にそんな言葉が口をついて出た。
……家族。
いつかは自分も、あんな風になれるのだろうか。
フェイトは眼下の四人をじっと見続ける。
胸の奥を締め付けられるような……それでいて、暖かい。
そんな不思議な感情が、彼女の中を満たしていった。
ふと、隣に目を向ける。
アルフが哀感を帯びた目で不安げにこちらを見ていた。
フェイトは微笑みながらアルフの頬に手を添える。
「帰ろっか、アルフ」
そう言ってアルフに向けられた笑顔は、普段の作られた笑顔よりもずっと柔らかかった。
552 :
なの魂氏代理:2008/01/09(水) 15:43:53 ID:k5V1B9b8
ふ〜〜〜終わりました・・・・。
なの魂氏、一ヶ所ミスをしてしまいすいませんでした・・・・。
それと支援をいれてくれた方々ありがとうございます。
553 :
メガトロン:2008/01/09(水) 15:48:13 ID:9GvoaFHh
気にするな、次誰かが面白い事を言ってくれるぞ。
もうそろそろ新レス立てないと俺が立てようと思いますが
どうやればいいでしょうか?
いえいえ、僕が立ててきますよ。
Xさんにはお世話になったので。
ではいってきます。
駄目だった…スレも立てられない…
こりゃ暫くは避難所行きかも…
避難所に投下してある平成ライダーサイド一話、申し訳ありませんがどなたか代理投稿お願いしますです…
スレも立てられない…
こりゃ暫くは避難所行きかも…
避難所に投下してある平成ライダーサイド一話、申し訳ありませんがどなたか代理投稿お願いしますです…
いきなり連投スマソ
>>558 それでしたらまた俺が代理投下しますよ。
スレは普通に新規スレとして立てればいいのですか?
聞きそびれたのですが、代理投下を先にしてから新スレを立てたほうがいいですか?
新規…でオーケーですね。
あとは1の文章ををコピーして書き込んで、過去スレのアドレス欄にこのスレのアドレスを乗せて、後は新規スレ作成クリックでオーケーです。
代理投下…お願いしますです…
再び連投ごめんなさい。
どちらが先でもオーケーだと思いますよ。
このスレも容量まだ大丈夫だと思いますし。
>>562>>563 わかりました。なら先に代理投下してから新スレを立てます。
では代理投下します。
>>473の続きです。
「でもさぁ兄貴、シャマ姉、南極まで来て露天風呂に入るって、何か変な感じだよね。」
「まぁ、確かにそうかも…」
シャマルはそう言いながら影山の隣に来る。
この時影山の目線がシャマルの胸の谷間に行ってしまうのは男として当然の反応だろう。
「…」
「?、瞬?」
「あ…いや!なんでもないよ!!」
「先に上がるぞ。」
矢車は二人にそう言い、湯から出る。
「兄貴、もう良いのかい?」
「ああ…これだけ浸かれば沢山だ。」
矢車は湯船から出、更衣室に向かった。
「もう、想さんったら…あたしのナイスバディを見て上せちゃったのかしら?」
自分の胸をぎゅっと寄せるシャマル。そしてそれを見て鼻血を出し、湯船に沈む影山。
「ちょ!?瞬!?」
「ブグブグブグブグ…」
【食堂】
「はぁ〜…」
一方、早めに上がった矢車は、浴衣を着て食堂で牛乳を飲んでいた。
「温泉…か…四年ばかり前までは、こんな所に来れるなんて思わなかったな…」
以前の矢車は闇の住人を名乗り、娯楽の一切を断ち切って生きてきた。
「そんな自分が今こんな場所に居られるのは、あの時自分と影山を救ってくれたシャマルのおかげだ。」
矢車は心の中でそう思い、シャマルと出会った日のこと、そして共に過ごした日々を思い出した。
【四年前】
「兄貴…腹減ったよ…」
「…」
矢車と影山は路上で倒れ、腹の音を鳴らしている。
二人は今金欠で、腹を減らせて死に掛けているのだ。
影山「はぁ…ここまでか…」
矢車「闇の住人の俺たちにとって…相応しい最期だな…」
二人が全てをあきらめた時、助けてくれた女性…それがシャマルだった…
「大丈夫ですか!?…って、貴方達は…」
「ん?」
「あんた…あの邪魔な魔法使い共の…」
【八神家】
「はぐばぐはぐはぐはぐはぐ!」
「がつがつがつがつがつがつ!」
シャマルが作った特盛カツ丼を十杯平らげる地獄兄弟。
「ふう…腹は膨れたな。」
「助かったよ!」
「どういたしまして。それで…味は?」
「不味い。」
「人間の食えたものじゃないね。」
「ガーン!」
しかしこういいながらも、二人はたびたびシャマルの料理を食べに来た。
………
「…」
「影山君?」
「…」
「矢車さんは?」
影山「…うわああああああああ!」
シャマルに泣きつく影山。
「や!ちょっと…どうしたの!?」
「兄貴が…兄貴が間宮麗奈にぃ…」
「ええ!?」
………
「…」
顔に傷を負って歩く矢車。
そして彼を影山とシャマルの二人が待っている。
「おかえりなさい、兄貴。」
「…ただいま。」
「ほら、言ったでしょ?すぐ戻ってくるって。」
………
「遅かったな…兄弟。」
「俺は…兄貴も知らない暗闇を知ってしまった…」
一瞬だけネイティブの姿に変身する影山。
「連れて行って欲しかったけどさ…俺はもう…一生この暗闇から出れないよ…」
矢車に背を向け、パンチホッパーに変身する影山。
「さよならだ…兄貴…」
「相棒おおおおおおおおおおおおお!!」
キックホッパーはライダーキックをパンチホッパーに向けて放つ。
しかし、キックがパンチホッパーに当たる直前、シャマルが二人の間に割って入る。
「駄目えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ!!」
「「!?」」
シャマルはバリアを張ってライダーキックを防御する。
そしてキックホッパー、パンチホッパー共に変身を解除し、シャマルの前に並ぶ。
「…!」
シャマルは涙を流しながら二人の頬に平手打ちを見舞い、その後、優しく二人を抱きしめた。
「馬鹿…本当に…馬鹿!!」
「…!」
「う…うわああああああああああああああ!!」
矢車は心を許した弟がワームになってしまったことに一筋の涙を流し、影山は人間でなくなったことの哀しみに打ちひしがれ、号泣する。
シャマルは心がズタズタに傷ついた二人を、深く抱きしめた…
………
「想さん?」
「…ん?」
矢車はシャマルの声を聞き、我に返る。
シャマルは浴衣を着て矢車の前に立っている。
少し濡れた髪と紅くなった頬がシャマルをより可愛く見せている。
もちろん、矢車はそんなことには興味を示さないが。
「どうしたの?ボーっとして。」
「お前には関係ない…相棒は?」
「今鼻血止めて、部屋で休んでる。」
「鼻血?…まぁいい、そろそろ仕事だ。行くぞ。」
「そうね。」
二人は準備のため、部屋に戻った。
代理投下完了。
なかなか感動的ですね。GJです。
自分は平成(クウガ)からのものは全部見てましたので・・・。
では新スレ立てに挑戦してきます。
ありがとうございます!
一話目から地獄兄弟でごめんなさいっす。
でもカップリングには過程が大事なのでこの場を借りて地獄兄弟とシャマルの出会いから過ごした日々の一部を書きました。
次回は地獄兄弟による悪の計画阻止ですので、お楽しみに。
新スレを立てようとして、書き込み完了が出たのに出てない。
一体これはどういうことなんでしょうか・・・。
2回連続になってすみませんが、また新レスたてをしてみましたがダメです。
書き込み事態は出来るのに一体何に問題が・・・。
新スレって何か特別なものがあるのでしょうか?
そんじゃ私が新スレ立ててきましょうか?
初の試み(・w・)b
>>571 すいません。俺も初めての試みだったから出来れば俺がしたかったのですが、
出来ない以上他の人に任せるしかありません。
お願いします。
そうだったんですか・・・地獄兄弟が光に這い上がる事が出来たのも、今の影山が
あるのも、シャマルのおかげだったんですか。
三人があんなに仲が良いのも、何だか納得です。
ところで・・・「邪魔な魔法使い共」ってどう言う事です?
>>572 報告!同じ病状みたいですOrz立てられてない
これは、プロバイダーによっては立て禁止でもされてるのかな?(涙)
>>574 そうですか・・・。お願いします!誰か新スレ立てれる人。
立ててください!お願いします!
>>573 影山はザビーの頃はなのは達と敵対していたんですよ。
だからシャマルはその頃の彼にとって敵でしかなかったんです。
今は善き理解者の一人ですけどね。
シャマルは地獄時代の彼らの唯一の味方だったんです。
志賀の山奥から帰ってきましたよ〜
ほんでは、ちょいとスレ立て挑んできます
これは何としたこと…「書き込みました」と出たものの、一向にスレが姿を現さないorz
なんたるちゃ!
ならば自分が
無理でしたーorz
ここ最近この板おかしいぞ
それじゃぁ俺が試してみますねー
ダメでした、反目氏と同じ状況です。
そんじゃあ自分がやってみます
たぶん駄目だろうから過去ログの部分を思い切って削るとか
一体全体どぎゃんしたと?この板は?
あれ、なんか変だな…
ここ最近の仕様変更で長文が書き込みにくくなってるからもしやと思ったがやっぱりか。
過去ログへのリンクをどうするかを考えないといけないなぁ。
>585
それはそうとスレ立て乙。
下山してすぐにPCに向かい、ウロスで書くと宣言した「キノの旅」との単発クロスを執筆完了。
スレのシメに投下してもおk?
バッチコーイ!
キノの旅 第X話「魔法使いの国(前編)」
(注:万が一原作に「魔法使いの国」が存在したとしても、当方は一切責任を負いません)
山道を1台のモトラド(注・二輪車。空を飛ばないものだけを指す)が走っていた。
運転手は耳を覆うたれとツバがついた帽子をかぶり、銀色のフレームがところどころはげたゴーグルをしている。
茶色のコートを着て、余った長い裾を両腿に巻いて止めていた。
「ねぇキノ、今度行く国はどんな所?」
モトラドが運転手に問いかけた。
「とても技術が発達した国だって聞いてるよ、エルメス」
キノと呼ばれた運転手が答える。
「ただね…一つだけ、気になる噂があるんだ」
「へぇ〜。どんな噂?」
エルメスと呼ばれたモトラドが、キノに尋ねる。
「言っても絶対信じないと思うけど」
「でも言うだけ言ってみてよ」
キノはしばらく黙り込むと、ややあって口を開いた。
「…これから行く国は、『魔法使いの国』なんだって」
「それ絶対ガセ」
間髪入れずにエルメスが否定する。
「でも、そういう噂が流れる根拠っていうのはあると思うよ」
「“品のないお風呂に湯煙は立たない”ってやつ?」
「…えっと、“火のない所に煙は立たない”?」
「そうそれ!」
そんなやり取りをしているうちに、進路に国の姿が見えてきた。
無数のビルが建ち並び、上空には何台かヘリコプターが飛んでいる。
「ほら、あれだよエルメス」
キノはエルメスを停車させてそう言うと、そのままその国をしばし眺めていた。
「でもさぁキノ。仮に魔法があったとしたら、ここまで近代的な国にはならないんじゃないのかな?」
「それってどういうこと?」
キノが逆にエルメスに問いかけた。
「だって、何でもできる魔法の力があるんなら、無理に機械とかを使う必要はないじゃない。
それなら工場もビルも要らないよ。それにヘリなんてなくても、自分で空を飛べるだろうし」
「あ…それもそうか」
「ほら、やっぱりガセだ」
幾分か得意げな様子で、エルメスが言う。
「でも、それにはそれなりに事情があるんじゃないかな。案外、魔法っていうのも万能な技術じゃないのかもしれない」
そう言って、キノは再びエルメスを走らせる。
「何にせよ、行ってみないことには分からないよ、エルメス」
検問に入ると、茶色い制服を身に纏った若い男が出迎えた。
「旅人さんですね。ようこそ、ミッドチルダへ。この国には何日間滞在されますか?」
とりあえずキノは、いつも通り3日間の滞在を希望し、安くてシャワーのあるホテルの場所を教えてもらった。
そして簡単な持ち物検査を受けることになったのだが、
キノが持っていたパースエイダー(注・パースエイダーは銃器。この場合は拳銃)を見ると、男が申し訳無さそうに口を開いた。
「すいませんがキノさん、これはこちらで預からせていただいてもよろしいでしょうか?」
「この国にはパースエイダーを持ち込めないんですか?」
キノが尋ねる。
この手の国には何度か立ち寄ったことがあったので、別段驚くことはなかった。
「防犯のため?」
今度はエルメスが尋ねた。
「それもありますが、そもそもこの国では、質量兵器の使用そのものが全面的に禁止されているんです」
「質量兵器…ですか?」
聞きなれない単語に、キノは首を傾げる。
「ああ…そうでしたね」
そんなキノの様子に気付いた男が、説明を始めた。
「質量兵器というのは、パースエイダーやミサイルなど、魔法技術を用いない兵器群の総称です」
「へぇ、本当に魔法なんてあるんだ」
そこに注目したエルメスが、感心したように呟く。
「そういうわけで、これらのパースエイダーは国内に持ち込むことができないんですよ」
「…分かりました。そういうことなら」
そう言ってキノは渋々ながらも、カノン、森の人、フルートの、計3丁のパースエイダーを男に預けた。
「他には、ナイフなどはお持ちではないですか?」
「………」
図星を指されたキノはしばらく押し黙る。
「仕方ないよ、キノ」
「分かってるよ、エルメス」
エルメスに諭され、キノは身体中の至る所に仕込んだナイフを取り出し、
20以上もの数のナイフを検問の窓口に積み上げた。
そして、そのままエルメスを押して入国しようとして、
「あっ…」
あることに気付き、立ち止まる。
「…すいません。手榴弾とか催涙ガスとか、後は閃光弾とかも駄目ですか?」
結局、キノは丸裸も同然な装備でミッドチルダに入国する羽目になった。
明くる日の朝、キノは相変わらず夜明けと同時に目を覚まし、エルメスを叩き起こした。
そして、ホテルの室内で、日課であるパースエイダーの抜き撃ち訓練をしようとして、
そこでパースエイダーを検問に預けていたことを思い出した。
「結局、何で質量兵器を持っちゃ駄目なのかな?」
手ぶらでの訓練をするキノに対して、エルメスが問いかけた。
「それもそうだけど、ボクは魔法がどういうものなのかっていうことの方が気になるかな」
「そういえば、まだ実際には見てないね」
「誰か詳しそうな人に会ったら聞いてみよう。とりあえず、先に朝食だ」
訓練を終えたキノが言う。
その後、キノは朝食をたらふく胃袋に詰め込むと、エルメスに乗って街に繰り出した。
クラガナン市内には、様々な施設があった。
高層ビルがその高さを競い合うように建ち並び、各店舗にはキノが見たこともないような物も多数置かれている。
キノはそれらの珍しい品物を買い溜めると、エルメスにくくりつけたトランクに押し込んだ。
曰く、よその国で売るつもりらしい。これだけ高度な技術の結晶ならば、どの国でも破格の値段で売れるだろう。
「びんぼーしょー」
エルメスがこの台詞を呟くのもお決まりだった。
やがてキノがエルメスを走らせているうちに、海に面した公園に辿り着いた。
エルメスを停めると、キノは出店で売っていたクレープを購入し、ベンチに腰掛ける。
「あれ、ひょっとして昨日この国に来た旅人さんですか?」
と、そこへ若い声が聞こえてきた。
キノがそちらを見ると、そこに立っていたのは、自分と同世代ほどの2人の少女。
声をかけてきた方は青い髪をボーイッシュにまとめており、もう1人はオレンジの髪をツインテールにしていた。
そしてそのどちらもが、昨日の検問の男と同じ茶色の制服を着ていた。
「そうです。…警察か、軍隊の方ですか?」
「キノと変わらないような歳なのに立派だねぇ」
キノが立ち上がりながら尋ね、エルメスが感心したような声を上げる。
1人と1台の言葉を聞いて、一瞬2人の少女は顔を見合わせた。恐らく、言葉を話すエルメスに驚いたのだろう。
だが、すぐにオレンジの髪の少女が一歩前に出て、口を開く。
「えっと…この国では、私達の組織は『管理局』と呼ばれています」
「管理局?」
昨日同様聞き覚えのない単語を出され、キノはオウム返しに尋ねる。
「警察と裁判所が一緒になったような組織で、複数の国家が共同で運営しているんです」
「ちなみに、本部はこのミッドチルダにあるんですよ〜」
オレンジの髪の少女が説明し、青い髪の少女が得意げに口を挟んだ。
「他には、各世界の文化管理や、災害救助とかを行っています」
「つまり何でも屋さんなんだ」
エルメスはそう解釈した。
「そうだ…1つ聞きたいことがあるんですけど、いいですか?」
そこで、思い出したようにキノが尋ねる。
「何でしょう?」
「そんなに時間を取るようなことじゃないと思うんですけど…魔法っていうのは、一体何なんですか?」
兼ねてから疑問に思っていたことを、キノは問いかけた。
「あ、そっか。キノさんはここに来たばかりだから、魔法のことは知らないんだよね」
青い髪の少女が言う。
「んじゃ、ティア解説よろしく!」
「やれやれ…」
ティアと呼ばれたオレンジの髪の少女は、調子のいい青い髪の少女に対してため息をつきながらも、キノの質問に応じた。
見たところ、ティアと青い髪の少女の関係は、キノとエルメスの関係に似ているようだ。
「魔法というのは、術者の魔力と呼ばれるエネルギーを行使して、自然摂理や物理作用をプログラム化し、
それを任意に書き換え、書き加えたり消去したりすることで、作用に変える技法のことです。
…簡単に言うと、魔力を敵目掛けて撃ったり、それで空を飛んだり、バリアを張ったりすることができます」
「最後だけ分かりました」
キノは正直に答えた。
「キノには絶対扱えないね」
キノと異なり理数系の知識に明るいエルメスが言う。
それをそのまま聞き流すと、キノは次なる質問をティアにした。
「…それで、そういう計算ができれば、誰にでも扱えるものなんですか?」
「いえ…魔力量には個人差があって、あまり少ないと扱うことはできないんです」
「やっぱり魔法っていうからには、頭がいいだけじゃホイホイとは使えないか」
ティアの説明には、キノの代わりにエルメスが解説を漏らした。
「ありがとうございました。ティアさんと、…えっと…」
「スバルです。スバル・ナカジマ」
と、青い髪の少女が名乗る。
「ちなみに、こっちはティアナ・ランスター。お気軽にティアって呼んでくださいね〜♪」
「う…うっさいバカスバル!」
ティア改めティアナが、スバルに厳しいツッコミを入れた。
「面白い人達だね」
「そうだね。…あ、コイツはエルメスです」
相槌を打つと、キノはエルメスを指して言った。
「よろしくね、エルメス」
2人の少女のうち、スバルがエルメスのライトの高さにしゃがみ込んで声をかける。
「ん、よろしくー」
エルメスもまた、そう言って応じた。
「では、あたし達はパトロール中なので、これで失礼します」
ティアナがそう言いながら小さく頭を下げる。
「今日はありがとうございました」
キノもまた、ティアナに感謝の言葉を述べた。
「それじゃ、キノさんもエルメスも、また会えたら色々とお話ししましょうね〜!」
スバルのそんな陽気な声を残し、2人はビル街の方へと歩いていった。
2人の少女の姿が群集に紛れて見えなくなった頃に、キノが口を開く。
「とりあえず、魔法が思ったよりも近代的な技術だってことは分かった」
「うん。どうりで機械方面も発達してると思った」
エルメスが言う。
「ついでに、誰もが魔法を使える国じゃないってこともね」
と、キノが付け足した。
国民全員が魔法を使える国であれば、その他の技術をここまで発展させる必要はないだろう。
むしろ、魔法を使えない人が大多数を占めているからこそ、この国はこういう形なのだ。
「ところでキノ、質量兵器云々の話は聞かなくてよかったの?」
そこで、思い出したようにエルメスが問いかけた。
「あ…そういえば、聞くのを忘れてたな」
「駄目じゃん」
「まぁ、まだ明日もあることだし、また適当な管理局の人を見つけて聞いてみるよ」
そう言って、キノはエルメスにまたがると、クラガナンの街に戻っていった。
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投下終了。
思ったよりも少しだけ文量が多くなったので、前後編に分けての投下となりました。
ミッドチルダや管理局に関する設定は、キノ世界に合わせていじってあります。
…ううむ、この世界にはクラウディアあるのかな…
次回は質量兵器に関する話題になるので、今回よりもキノらしい話になるかも。
596 :
メガトロン:2008/01/09(水) 21:54:53 ID:9GvoaFHh
お疲れ様だー。くそー俺様もキノみたいに旅がしたいぞ。
温泉にグルメに宿に人々との出会い。視聴率独占じゃねーか。
俺様にも仕事分けてくれー
597 :
旅ゆく人:2008/01/09(水) 22:00:41 ID:kHZI8R2n
> 反目のスバル氏
……くっはぁ、『キノ』は、名前だけでしか知らないので、
何と申して良いか解らないのですが、
これだけは言える。
こういう話も、ものすごく好き。
たいへん、GJで御座いました。
次回も楽しみにさせていただきます。
あー、芋焼酎の水割りのみながら、こういう作品に舌鼓。
サイコーッッ!!
598 :
戦国の鉄の城:2008/01/09(水) 22:03:10 ID:RvXhSLG8
なんかこういうほのぼのした作品って、いいですよねー。
とにかくGJ!
自分未成年なので芋焼酎とはいきませんがなんかこう…飲み物片手に読んでみたい。
GJ!会話の間といい、雰囲気といい、とてもキノらしかったと思います。特にエルメス。
埋めついでに、嘘予告的なものの投下してもいいですか?
というか埋めでもなけりゃ投下できない代物……。
600 :
旅ゆく人:2008/01/09(水) 22:10:37 ID:kHZI8R2n
>>599 投下したら宜しいのでわ?
かむかむw
あー、酒が進む、弱いくせにw
601 :
嘘予告:2008/01/09(水) 22:15:33 ID:D7o4KR9y
「もう……あの子ったらどこへ行っちゃったのかしら……」
時空管理局、ミッドチルダ地上本部の廊下をアイナ・トライトンは駆け回っていた。
折角のなのはの休日、それなのに昨今のスカリエッティ事件のせいで、急遽課長と両隊長は地上本部へと会議に出かけてしまった。
当然ヴィヴィオはかなり泣いてごねたのだが、なんとか宥めて、ようやく泣き止んだと思ったのだが、暫くするとまた泣き喚く。
あれほど楽しみにしていたのだ。なのはとの休日が台無しになってしまい、ヴィヴィオはどうしても泣き止んでくれない。
仕方なくアイナはヴィヴィオを連れて本部で待たせてもらおうと考えたのだ。彼女も本部は珍しいだろうし、終わってすぐなら少しは遊ぶ時間も作れるだろう。
しかし、どうやらその考えは甘かったようだ。許可を取って本部に入ったのはいいものの、ヴィヴィオは少し目を離した隙になのはを探して何処かへ行ってしまった。
「人見知りする子だから、知らない人に付いて行ったりはしないと思うけど……」
その頃、ヴィヴィオは無機質な廊下に飽きて中庭をぶらついていた。アイナと一緒でも、本部に来ても退屈は紛れない。
蹴った小石を探して辺りを見回すと、どこから入ったのか風変わりな人物が歩いていた。背負った箱には、中央に大きな目。
服装もミッドチルダではまずお目に掛かれない、派手な着物。しかしヴィヴィオが最も目を引かれたのは、頭巾の下の顔であった。
――顔に変なお化粧をした男の人。ちょっと怖い顔だけど、なんだか怖くなかった。
目の周りには赤のメイク、と言うよりも歌舞伎の隈取りに近い。整った鼻筋にも沿って縦に走っている。
「お嬢ちゃん、ここの建物の奥まで案内してくれませんか?」
ヴィヴィオが話しかけるよりも早く、男はヴィヴィオに近づいてきた。
そして今、芝生に座り込んだヴィヴィオの前には男の箱が置かれ、様々な珍品が並べられていた。
ヴィヴィオが知らないと答えると男は立ち去ろうとしたのだが、何故かヴィヴィオはそれを引き止めていた。
――遊んで! ってくっついたら、その人は仕方なさそうにいろんなものを見せてくれた。
「これなぁに?」
変な箱、微妙な面、奇妙な像――のような物。見るもの全てが珍しかった。
「それは……」
「これは?」
男の言葉も聴かずにヴィヴィオは次の引き出しを開ける。翼を広げたような人形、両翼の先端には皿が乗っている。下部は尖っているにも関わらず、指先にぴんと立ってちっとも痛くない。
「天秤ですよ」
「てんびん?」
天秤はヴィヴィオに向いて、鈴を鳴らしてぺこりとお辞儀をして見せた。
――お嬢ちゃんが気に入ったようだ、ってその人は言ってた。ちょっと嬉しくなった。
「おっと、この段はお嬢ちゃんにはまだ早い……」
ヴィヴィオが下から三段目の引き出しに手を掛けようとすると、男の手が先んじてそれを遮った。
「え〜、見たい見たい見たい〜!」
駄目と言われれば余計見たくもなるというもの。だが男はきっぱりと首を振る。
「秘密……」
「けち! ……じゃあこれはいい?」
箱の上部を開くと短剣が一本、収められていた。柄尻には変な顔と房毛が付いている。
「どうぞ」
――"けん"なんて触るんじゃありません、って言われると思ったけど、男の人は簡単に触らせてくれた。だって壊れてるんだもん。
「ぜんぜん抜けない……」
602 :
嘘予告:2008/01/09(水) 22:18:41 ID:D7o4KR9y
「おじさんも"まどうし"なの?」
――不思議な道具とか、剣みたいなのとか、後はなんとなく……。
"おじさん"に一瞬眉を顰めたようにも見えたが、男は相も変わらず飄々とした様子で答える。
「いえいえ。私はただの……『薬売り』、ですよ」
直後、中庭まで伝わる程の大きな悲鳴が局内に響き渡った。
「あなたは誰? こんな所に薬の用なんてある訳ない……」
「斬りに来たんです……『物の怪』を、ね……」
転がり出たのは無惨な骸。かつてはレジアス中将と呼ばれたそれを前に拘束された男は動じもせず答えた。
「怪しいのは尤もですがね。奥にも札を貼らないと……危ない、ですよ」
「物の怪の『形』と『真』、そして『理』を剣に示さねば、退魔の剣は抜けませぬ。真とは事の有様、理とは心の有様を指す……。よって皆々様の真と理――お聞かせ願いたく候!」
男はヴィヴィオが壊れてると評した剣を掲げる。剣に付いた顔がカタカタと震えた。
「物の怪とは人の情念や怨念に取り憑くもの……。この中の誰かを、或いは全員を帰したくない、そう誰かが思っているのかもしれませんね」
男は会議室内に集められたなのは、フェイト、はやて、カリム、クロノ、ヴェロッサ、オーリス、そしてヴィヴィオとアイナを次々に見回した。
次々に倒れていく人々。一人、また一人と倒れる度に男は真実に近づき、退魔の剣はカチンと歯を鳴らす。そして三度歯が鳴り、形、真、理が揃いし時――哀しき物の怪を前に躊躇せず男は唱える。
「真と理によって、剣を……解き――放つ!!」
その様を目の当たりにして、なのはは思う。ヴィヴィオがこの男を引き込んだのは、この不可思議な事件を解き明かす為だったのではないか、と。
魔法薬売り リリカル・モノノ怪
乞うご期待
という夢を昨日見た。寝る前に旅ゆく人氏の作品を見たんですが、クロちゃんより胡散臭い人とヴィヴィオとの絡みが出てきたんです。
でも本編で薬売りは子供と喋ってたかどうかうろ覚えなので、ヴィヴィオ相手に口調がよく分からないです。
知っているぜ・・・こしょこしょの人、支援。
604 :
旅ゆく人:2008/01/09(水) 22:29:25 ID:kHZI8R2n
>>602 ……あー、ども、あじゅじゅしたー。
そして、GJ。
{ _. - " ̄ ̄ `ヽ、 \ ザ・500KB!
__ヽ / \====ミ、\
⌒> ′ '^ヽ、 }ハ '´「 「_.`ヽ´ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ` 、
/ \ r Y'|、 |/ ヽ < \\
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l / / ハ. 、\\ヽ> ∨ | | | ;'┐ _|___/^ヽ、 / 、〈 / ./
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