アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ11
空間を揺らす波紋の中心で真っ直ぐに伸びた黒い剣が男の呟きと同時に風を切って勢いよく空へ吸い込まれていく。
天を破らんばかりの勢いで射出されたそれは、始めこそぐんぐんと高度を上げていたのだか、次第にその速度を落とし中空の一点で一瞬緩やかに静止したかと思うと逆回しをするかのように今度は地上へと落下をはじめた。
そして、ド派手な音を立ててコンクリの道路に盛大にぶっ刺さった、と。
気取った言い方をしてみたけど別にそんな凄いことしてる訳じゃない。
単にギルガメッシュがあのゲート・オブ・バビロンとか言う不思議アイテムでミロクを真上、つまり空に向かってぶっ飛ばしているってだけ。
何でそんなことをしているかって?あたしに聞かれても困る。
ああ、ちなみにごみ捨て場ではこれっていう発見もなく、手ぶらで戻るのもアレだったんで目についたガラクタを2、3個拾っただけで調査は終了。
それでまた移動を再開したんだけど、どあたしらが今いる場所のすぐ近くには実は高速道路が通ってたわけよ。行くとか行かないとか金ぴかが学校出るときに言ってたやつね。
当然それに気が付いた奴見ていくって言い出した。まぁそれ自体は別に問題なかった。どうせ施設を色々見て回る予定だったわけだし。
問題はその後。高速道路が目に入る位置まできたら、何を思ったのか我らの金ぴか様はふむ、と一声呟くとおもむろに地図を眺めだし、それが済むやいなや元気よくミロクを空へと打ち上げなさった。
マジ、わけわかんない。何考えてんだこいつ。
そりゃまあ、態度はでかいが頭は回るギルガメッシュのことだし、何も考えてないってことはないんでしょうよ。現に顔つきは真剣そのものだ。
だから余計に聞き出しづらい。仕方なしに、あたしは適当なとこに腰掛けてゴミ漁りに疲れた足をぷらぷらさせながらギルガメッシュの気が済むのを待っている。
つーか、基本無人だから良いけど、普通に考えたらこれとんでもない迷惑行為だろ。
何せ、あのとんでもなく重いミロクを何度も何度も飛ばしては地面に叩きつけているのだ。ミロクに傷一つつかないのはさすがだけど、地面の方はたまったもんじゃない。
既にあたしの周りの道路はひびが入っていたり塀が崩れていたりと散々な状態になってしまっている。
何も知らない人が見たら何と言うだろう。状況的に命がけの死闘でも行われたんだと思うだろうか。やたら金金した変な奴の気まぐれの結果だとは考えもしないのは確かだ。
って、危な!今落ちた場所結構近かったぞ、おい!
あたしはほんの数メートル横で土煙を上げているミロクに軽く冷や汗をかきながら、無駄に威厳たっぷりの足取りでそれを回収しにきたギルガメッシュに言った。
「ねぇ、金ぴか」
「なんだ、蜘蛛女」
このやりとりも何か定番みたいになってきたな。
まぁそれはいいとして、あたしは言葉を続ける。っても、こいつの行動が余りにも脈絡なさすぎて何から聞きゃいいんだか。
「・・・何してんの?」
ミロクを引き抜いたギルガメッシュがこちらを向いた。
手にした剣は次の瞬間には消え去っていた。自動で回収してくれるとこまで含めてこいつの宝具とか言うアイテムの能力らしい。便利なもんだ。
「これか。貴様は我が何をしているのだと思う?」
いやそんな当ててみろと言わんばかりの顔で聞かれても、ぶっちゃけそこまで興味ないって言うか。あんたのやることに一々理由考えるのも面倒くさいって言うか。
「たわけ。主の質問をそのように邪険に扱うものではないわ」
「え〜。じゃあ、お気に入りの道具が戻ってきたので大喜びで試し撃ちしまくっている、とか」
「・・・我は稚児か何かか?」
結構近い、というよりほとんどどんぴしゃだと思うけど。
ギルガメッシュはまぁよい、などと言いながら再び空中にミロクを出現させる。
しかし今度はそれをすぐに発射するようなことはせず、空中でゆらゆらと固定させるだけだった。
「そもそもだ。何故我が高速道路なぞに興味を持ったか憶えているか?」
「学校でハチマキ男が暴れてるのを見てたらあんたがいきなり行くとか言い出したんじゃない。
理由までは知らないわよ」
つい数時間前のことだ。あのときもこいつは唐突に出発を指示した。
「蜘蛛女の耳には届いておらなんだか。
奴はな、河川と高速道路がどうとか言いながらそこで我が忌々しく思っている者と遭遇したと言っていたのだ」
「ああ、なっとく」
嫌いな奴の居場所が分かったから急いで潰しに行こうとしたわけだ。そういうとこが子供っぽいんだっての。
「前にも言ったが奴の捜索自体は我にとってそれ程重要ではない。問題は場所だ。
地図を見てみよ。高速道路と河川が重なるためには、ここより更に北に行かねばならん」
「あら…ほんとだ」
確認して見ると確かにその通り。つまりギルガメッシュはあのハチマキ男の移動速度が速すぎると言っているのだ。
「で、それがどうしたの?単にあいつが凄く足が早いとか乗り物を支給されたとか、そういう理由でしょう。
そもそもアンタだってあいつの言うこと全部聞いてたわけじゃないんだし」
ギルガメッシュはあたしが話に食いついてきたのを満足するように笑った。
「そうよな。
確かにそれだけなら可能性は幾らでも考え付く。たとえ我程の才覚に恵まれぬ者であってもな。だがな、奇妙なことはもう一つある。
我はモノレールから見下ろした景色に違和感を覚えた」
「違和感?」
黙って本を読んでると思ったらちゃっかりそういうとこはチェックしてたわけか。ちなみにあたしは何の違和感も感じませんでしたが。
「人の身で察知するのは難しかろうな。それこそ死後英霊となる程の者でもなければ。
違和感の元はな、ちょうど地図で言う切れ端に当たる部分から発せられておったよ。
方角に関わらずな」
ギルガメッシュは視線を南に向け、あたしもつられてそちらを見る。って言っても今見えるのはミロクが破壊した道路くらいだ。
「つまり、この地図の切れ端の部分には何か細工がしてある、と」
「そうだ。それが何であるかはさすがに我と言えど判別できなかったがな。
だが、あの男の言葉と合わせて考えれば出てくる答えはそう多くはなかろうよ」
具体的な内容はどうあれ地図の外に逃げようとしても無理なようになってるってわけだ。念のいったことで。
けど、ここまで話を聞いてさすがにあたしもギルガメッシュが何を考えていたのか分かった。
外に逃げようとしても四方は囲まれている。それなら。
「上を目指す、ってことね」
「そういうことだ。宝具が我の手に戻ったのは好都合であった。
以後はこのようなこと一々我に説明させるのでないぞ?」
お空の向こうには何があるの、という話だ。こいつはさっきからそれを知ろうとしていたのだ。でも、端から出れないんだとしたら普通に動いてる雲とか太陽とかはどういう扱いになるんだ。
それはともかく、あれだけで理解しろって言うのは無茶だって。
言われっぱなしも癪なので皮肉を言ってやる。
「あら、じゃああたしより理解力が遥かに上の金ぴか様なら、今のでもうとっくに凄い情報を掴んでるわよねぇ?」
ちょっと昔を思い出して思いっきり神経を逆撫でするような言い方をしてやる。街でたむろしてる馬鹿な男どもならこれだけで顔を真っ赤にして怒ったもんだ。
思えばあいつらはほんとに扱いやすかったなあ。誰でもおんなじような反応返してきて。
ていうか、あたしも何が楽しくてあんな馬鹿ども相手にしてたんだろ。あれ、何か良く分からなくなってきた。
まぁ年寄りみたいな思考は置いといて、とにかくあたしの皮肉はギルガメッシュを愉快そうにくつくつと笑わせただけだった。
まぁそんなとこだろう、とは思ったけどね。
「その程度で我の気を引くことなぞできんぞ?くくっ、まあよい。
射撃の精度を保った状態で届かせられる範囲にはこれといった発見はありはせなんだよ」
機械女をいじめていたときにちらっと触れてたけど、ギルガメッシュお気に入りのゲート・オブバ・ビロンにも制限がかけられているらしい。平たく言うと思い切り飛ばそうとすればするほど狙いがぶれるようになっているそうだ。
加えて本当は結構遠くに飛ばしたものでも回収可能だったのが、近づかないと無理になってるという。
これに気づいたときのギルガメッシュの顔ときたらさぁ。我慢てもんを誰か教えてやってよ。
「つまり道路を破壊した他に特に収穫はなしと」
「現状で到達できる限界には何もなかったというだけのことよ。
飛行可能な道具でも手に入れば、どうなるかは分からんぞ?」
珍しく負け惜しみのようなことを言う。顔は相変わらず自信満々なんだけどさ。
ギルガメッシュはだめ押しのつもりか、出しっぱなしにしていたミロクをもう一度空に向かって発射した。
けどこれが良くなかった。まさか本当に落ちこんでたとは思わないけど、さっきより発射が雑になっているのは分かった。
そのせいで狙いのぶれがでちゃったのだろう、ミロクは明後日の方向に飛んでいくと少し離れたところにある民家の密集地帯に吸い込まれるように消えていった。
少し間をおいて、ずぅんという重い音が響く。
「あちゃあ。また派手にやっちゃって」
どっかの家に飛び込んだな、あれは。
「全く忌々しいものよな。我の財に手を加えるなどと」
ギルガメッシュは本当にこれでもかっていうくらい忌々しそうに舌打ちすると、己六が落ちた方向に歩き出した。
思い通りにならずにいらつくギルガメッシュをこっそり笑いながらあたしもその後に続いた。
まぁ、割かし近くに落ちただけ良かったんじゃない?
ここなら、家の中に誰か人がいるわけでもないしさ。
「もう良い」
お説教がそろそろ終わりそうになったっていうのに、尊大な男の声がわざわざ割り込んできた。
ああ、また自分は悪くないとかそういうことを言うんだろうな。けんかになるな、こりゃ。戦闘じゃなくてけんかだ。
あたしはうんざりしながら横目でギルガメッシュを見上げる。
「言い分もっともである。この娘には我が直々に良く言って聞かせる故、怒りを収めるがよい」
「はぁ!?」
ちょっと待て。なんであたしが悪いみたいな言い方になってんだ。
「まぁ…そういうことなら。あたしもちょっと言い過ぎだったわ」
あんたも納得したみたいな顔するな。あたしは何もしてない。
この問題はこれで終了みたいな空気になってる理不尽さに腹が立ち、あたしは目を尖らせてギルガメッシュを睨んだ。
するとこいつは、いかにも分かっていると言った様子で何度か頷くと、妙にいい笑顔をして言った。
「気にせずとも良い。臣下の不始末は我の目が行き届いていなかったのにも原因があろう。
我にも全く責任がないとは言わぬさ」
何ちょっと理解のある上司みたいな顔してくれてんだ。責任はお前にしかね―んだよ。
怒りと呆れを通り越した先にある良く分からない感情を持て余していると、女が張りのある声を上げ手を叩いた。
「じゃあ仲直りってことで。おかけでくさくさしてた気分が吹っ飛んじゃった。
あなたたちまさか殺しあいをしようってわけじゃないんでしょ?
だったらさ、見て欲しいものがあるんだ」
「いや、あたしはまだ納得してな…」
「ほう。よかろう、我が見るに値するものなのであろうな」
あたしの反論は好奇心の入り交じったギルガメッシュの声に遮られた。
あたしに責任を押し付けたままそいつは女の先導に従い妙にすいすいとした足取りで家の中に入っていく。
この珍しいもの好きが、と怒りも冷めやらぬままに思ったそのとき、あたしは前を歩くギルガメッシュの首元で何かがきらりと光るのを見た…ような気がした。
一瞬だったので見間違いの可能性が高いけど、あたしの目が確かならあれは…汗?
ちょっと待て冷や汗か?冷や汗かそれは?偉そうな顔で説教されながら実は内心でやっべ、どうしようとか考えてたのか?んで、あたしに全部責任なすりつけて自分はさっさと次の話題に移ったってわけですか?
何だそのこれから何が出てくるかで頭が一杯ですって顔は。ぶっ飛ばすぞ。
あぁ…何かもういいや、どうでも。
青い髪の女はアレンビー・ビアズリーと名乗った。
人探しをしていたところに襲撃を受け、仲間と探し人をまとめて殺され本人も傷を負ったので休んでいたという。
体のあちこちに治療の跡が見えるのはそのせいだったか。中々に壮絶だ。
ていうか、多分この場にいる人間は皆似たような状況なのだろう。ある意味のほほんと移動を続けているあたしらみたいなのはかなり特殊なんじゃなかろーか。
アレンビーが見て欲しいといったのは言ったのは、逃げる際に持ってきたという仲間達の支給品の山だった。
「形見みたいになっちゃったけど使わないってわけにもいかないしね。
あたしには良く分かんないのもあるし、いるものがあったら持っていきなよ」
仲間が殺されたときのことを思い出したのか、悲しげに目を伏せながら言う。
食事の後に整理をしていたという部屋に通されたあたしが最初に見たのは、床中に並べられた様々なもの中に邪魔をするかのようにそびえたつミロクの姿だった。
「あ〜あ…思った以上に派手にやってるわね」
本当に窓から飛び込んだのだろう、庭に面した窓は跡形もなく床にはガラス片が飛び散っている。
これはびっくりするわ。へたすりゃ死んでたっておかしくない。あたしなら間違いなく説教かます前に攻撃するか逃げるかしている。
だというのに、それをした張本人は全く悪びれる様子もなく並べられていた中にあった一振りの剣をしげしげと眺めている。まぁ、今更この程度のことを気にされたら逆に気持ち悪いけど。
「ほう…雑種、中々に良いものを揃えているな」
「『ザッシュ』?あたしの名前はアレンビーだって」
「ああ、雑種っていうのはこいつの国の言葉で『あなた』っていう意味だから気にしないで」
こいつの脳内にある国でだけど。余計なトラブルになるのも面倒なので適当に取り繕っておく。
まぁ分かんないのも当然か。あたしは威圧感に呑まれてすぐ字面が思い浮かんだけど、人のことを素で雑種なんて呼ぶ奴は常識人の頭には存在しない。
にしてもギルガメッシュは今持ってる剣がかなり気になるようだ。豪華な作りだし、金色がかってるから分からなくもないけど。
「どうしたの金ぴか。やけにその剣気にしてるじゃない」
あたしが言うとギルガメッシュは小馬鹿にするように鼻をならした。
「分からぬか。我のものとは数段劣るとは言え、この剣もまた宝具だ。
そしてこれはな、我が妻となるべき女が使っていたものだ」
「へ〜彼女がいるんだ。そんな大事なものあたしが持ってるわけにはいかないね。
持ってってよ」
恋愛話にアレンビーが目を輝かせる。いや、こいつと本当に結婚しようなんて女がいるとしたらそいつは天使だとあたしは思うけど、相手の人が実際どう思ってるかは分からないよ、こいつの場合。
ギルガメッシュは素直に自分に物を与えるアレンビーが気に入ったようだ。餌付けって言うんだっけ、こういうの。
「良い心がけだ。それにしても英霊がむざむざ宝具を奪われるとはな。
騎士王も高が知れるというものよ。慌てふためく様が目に浮かぶわ」
自分のことを棚に上げるとは正にこのことだ。けど、それを指摘するといきなり切れて暴れだしかねないので黙っておく。
「だが…」
ふいにギルガメッシュの目が曇った。気になることがあるらしい。
「これは…いささか雑種の手垢に汚れすぎているな。
いかなセイバーの剣と言えど、これでは使う気にならん。蜘蛛女、持っておれ」
「うわっ、いきなり投げないでよ。危ないっての。ていうかどんだけ贅沢なのあんた」
消しゴムとか一回使っただけで捨てるタイプだな。
ギルガメッシュはふんと鼻を鳴らすだけで答えず、後は淡々と「貰うもの」を決めていった。
それは歯車みたいなものがついた変な機械だったり、緑色に光る石だったり、まりもみたいなものを浮かべた管だったりとギルガメッシュの趣味がとても良く反映されていた。アレンビーはそれを全て了承した。
「ナオは?何か知り合いのものとか欲しい物とかない?」
「あ、じゃあ少し食べるものを」
アレンビーに聞かれて咄嗟に答えた内容に、頭を抱えたくなる程悲しくなった。いつからこんな所帯染みちゃったんだろうなぁ、あたしは。
しかし、とさすがに変に思った。いくらなんでも初対面の相手に太っ腹すぎじゃないの。ギルガメッシュはそれが当然だと思ってるから気にしないだろうけど。
それについて聞くと、アレンビーは深刻そうな顔で奇妙なことを言った。
「うん…そうなんだけどさ。
ねぇ、あたしの仲間にさ。殺し合いなんか大嘘で、もし死んじゃっても別の場所で目覚めるだけだって言う子がいるんだけど。それってほんとだと思う?」
あれ、意外と弱々しいことを言うんだなとあたしは思った。
まぁ、仲間が無惨に殺されたばっかだっていうしそういう風に逃げたくなる気持ちは想像できなくもない。
でも答えは決まっている。現実はいつもいやなことばっかで、そんな都合のよいことが起きるなんて期待するだけ無駄なのだ。こればっかりはギルガメッシュも同意見だろう。
果たして、あたし達二人の解答は一致していた。
「そんなわけないじゃん」
「いかにも脆い雑種の考えそうなことよな。現実を見ることのできぬ大馬鹿者は放っておくが良い」
ギルガメッシュの方が数段表現はひどかったが。
あたし達の答えを聞くとアレンビーは噛み締めるように頷いて言った。
「そうだね…。あいつも一も本当に苦しそうだったし、キールだって。でも、そしたら…」
何やら真剣に考え込んでいる。アレンビーしばらくそうしていたがやがてぱっと力強く顔を上げた。
その表情は、何か強い決意に満ちているように見えた。
「ごめん。あたしもう行くよ。守ってあげなきゃいけない子がいるんだ。
持ってる物をあげたのはここから出ようとしてる人に有効に使って欲しかったから。
それじゃあ、気を付けてね」
言うと同時に素早い手つきで荷物をまとめ始める。その背中に向けて聞いた。
「行くって、どっかあてでもあんの?」
「うん、こっから南の豪華客船で…あぁ、そっかそっちの伝言もあったんだっけ」
アレンビーはあたし達に高遠遥一とか言う人物の伝言を伝え、良ければ一緒に行かないかと誘った。
脱出を目指す希望の船とかいう名前の集団らしい。希望の船。希望の船ねぇ。
はい、答えは決まってますよ。そりゃもちろん。
「行かない。うさんくさいし」
「行かぬ。群れるのは雑種だけでしておれ」
あたし達の返事を聞いてアレンビーはそう言うと思った、と笑った。
「でもこっちは信用できると思うよ?戦うつもりがないならその内会うかもね。それじゃ」
「待て」
颯爽と駆け出そうとしたアレンビーをギルガメッシュが止めた。なに、と振り返る。
そしてギルガメッシュは、かつてない程に衝撃的で、余りにも予想外な、あたしの人生観を根底から覆すようなことを言った。
「献上品中々の質であった。褒美をとらせる。望みの物を言ってみよ」
「えぇえ!?」
素で絶叫してしまったあたしを責められる者はいないだろう。ギルガメッシュのうるさそうな視線も気にならない。
「何を驚いておるか。
礼節を知るものに相応の返礼もできぬようでは、王としての器を疑われるのだぞ」
「え…あ、いや…なんていうか…………えぇえ!?」
間違いなく歴史的な瞬間に立ち会っている。あたしはそう思った。
幸いアレンビーが返事を考える間にあたしは冷静さを取り戻すことができた。つまり、アレンビーは結構な時間悩んでいた。
「別にお礼が欲しかった訳じゃないし…欲しいものって言われても…そうだ!
フラフープか新体操用のリボンみたいな形の武器って持ってない?」
いやそんなの持ってるわけないって。何でそんなの欲しがる。
「ふむ。我の宝物庫を開けば出てもこようが、忌々しいことに今は開くことができぬ」
あんのかよ。
アレンビーは余り期待はしていなかったようで、それ程落ち込んだ様子もなかった。
でもまぁ、ギルガメッシュじゃないけど、本当にギルガメッシュじゃないけど、親切心でこれだけ気前よく物をくれた人に何もなしというのは、まぁ気が引けないでもない。
そのとき、あたしは学校で拾ったでかい十字架のことを思い出した。
「ねぇ、金ぴか。あれあげたら?ほら学校にあったやつ。
何かすごいもん見たいに言ってたじゃない」
「あれか。ヒトという種が所有するには最上級の兵装かも知れぬがな」
「ああ、それでいいよ。せっかくの気持ちなのに、何も受け取らないのも悪いしね」
アレンビーはそう言って、あたしが苦労して取り出した人間程もある大きさの十字架を軽々と持ち上げた。何だ、やっぱり生き残る人っていうのはそれなりの理由があるもんなのね。
そうして、アレンビーは振り回すのにちょうどいいと十字架を持ったまま、今度こそ立ち去ろうとする。
「待て、最後にもう一つ尋ねる」
しかし、アレンビーの足は待たしてもギルガメッシュの声に止められた。
ただ、今度の言葉の内容ははさっきの何かとは比べ物にならないくらい小さく、すぐに忘
れてしまいそうなくらい細かいものだった。
多分言った本人も単なる気紛れで、深い意味もなく言ってみただけというのが正解だろう。
ギルガメッシュが言ったのは、そんな程度の言葉だった。
「放送で言っておった“螺旋の力に目覚めた少女”について、知っていることはないか?」
アレンビーはしばらく考える仕種をした後に、変わらない快活な声で言った。
「知らない。言われてみると、何のことかしらね」
【D-3中部/民家/1日目-夕方】
【ギルガメッシュ@Fate/stay night】
[状態]:健康
[装備]:王の財宝@Fate/stay night 黄金の鎧@Fate/stay night
[道具]:支給品一式 ミロク@舞-HiME シェスカの全蔵書(1/2)@鋼の錬金術師 首輪 (クアットロ)
[思考]
基本思考:打倒、螺旋王ロージェノム。【乖離剣エア】【天の鎖】の入手。
0:ふむ。そうか。
1:異世界の情報、宝具、またはそれに順ずる道具を集める(エレメントに興味)。
2:出会えば衛宮士郎を殺す。具体的な目的地のキーワードは【高速道路】【河川】 。
3:“螺旋の力に目覚めた少女”に興味。
4:目障りな雑種は叩き切る(特にドモンに不快感)
※地図の端と上空に何か細工があると考えています。
※エクスカリバーを使う気は余りない