第一部+第二部
ジョナサン 卿 ブラフォード シュトロハイム シーザー スケコマシーザー
究極生命体カーズ様 ワムウ様 スト様 石仮面+ブルりん+吸血馬
第三部
承太郎 法皇花京院 一巡花京院+平賀才人 メロン花京院
ジョセフ アブドゥル ポルナレフ イギー
DIO様 ンドゥール ペットショップ ヴァニラ・アイス ホル・ホース
ダービー兄 ミドラー デーボ エンヤ婆 アヌビス神 ボインゴ
第四部
東方仗助 仗助+トニオさん 広瀬康一 アンリエッタの康一 虹村億泰 ミキタカ+etc 間田
シンデレラ カトレアのトニオさん 岸辺露伴 静(アクトン・ベイビー)+露伴
デッドマン吉良 猫草 キラー・クイーン
第五部
ブチャラティ ポルナレフ+ココ・ジャンボ(亀ナレフ) アバ茶 ナラ・アバ・ブチャ組
ルイズトリッシュ マルコトリッシュ ナンテコッタ・フーゴ アバ+才人 ジョルノ ミスタ
ディアボロとドッピオ プロシュートの兄貴 リゾット ローリングストーン 偉大兄貴
ギアッチョ メローネ 俺TUEEEディアボロ ペッシ ホルマジオ スクアーロ
暗殺チーム全員 紫煙+緑日 ブラック・サバス セッコ 亀ナレフ+ジョルノ イルーゾォ
サーレー
第六部
引力徐倫 星を見た徐倫 F・F アナスイ ウェザー エルメェス エンポリオ ヘビー・ウェザー
プッチ神父 帽子 ホワイトスネイク 白蛇ホワイトスネイク
SBR
ジャイロ+才人 ジョニィ マイク・O
リンゴォ マウンテン・ティム Dio
バオー+その他
橋沢育郎 バオー犬 味見コンビ(露伴+ブチャ) 決闘ギーシュ タバサの奇妙なダンジョン
・スレッドが1000に満たなくとも、480kbをオーバーした場合には新スレを。
・行数は最大で60行。 一行につき全角で128文字まで。
・4096Byts、全角だと2048文字分。
・専用ブラウザなら文字数、行数を管理してくれるので目安がつけやすいかも。
>>1 ∩∩ 血 管 乙 針 攻 撃 ! V∩
(7ヌ) (/ /
/ / ∧_∧ ||
/ / ∧_∧ ∧_∧ _(´∀` ) ∧_∧ ||
\ \( ´∀`)―--( ´∀` ) ̄ ⌒ヽ(´∀` ) //
\ /⌒ ⌒ ̄ヽ、ペイジ /~⌒ ⌒ /
| |ー、 / ̄| //`i プラント /
| ジョーンズ| | ボーンナム/ (ミ ミ) | |
| | | | / \ | |
| | ) / /\ \| ヽ
/ ノ | / ヽ ヽ、_/) (\ ) ゝ |
| | | / /| / レ \`ー ' | | /
,:;'";:";";"。/ 。 。ヽ 。゙'::゙::゙:'゙::゙:'゙::゙:;゙';,
,;'";:";:";;゙ 。/ o o`、o ゙;:゙:;゙';゙:;゙';゙::;゙';'',
,'";:";:";;゙ o l o o l o ;:゙:'゙::゙:'゙::゙:'゙::゙;',
;";:";:";;゙ o l o o l o ;゙;:"::゙;:"::゙;:゙;:゙;'
;゙:"::゙::゙:゙;; o 、_o_-_-__-_‐__p⊥q,;";:";:";:";:";";'
゙.;゙:、::゙::゙:;''.,;--‐一 _,<、;'";:";:";:";";,' 「スレ主」は
゙:,゙,>''" _ -‐二二,,,乂ノ \";";:";",'
/ _ ,,_二__= ̄ ー'´,_二二、_,,\ ヽ,ゝ、{´ 「
>>1乙」される
<__,.;;:zヒ/爪ゝ.`ー゚ ,` : '´_`ー゚´,,ィ l\ \ \
| V | iヘ ´¨` ´::; ` ´¨` .: | ヽ ヽ } それが法
/ミ{ ! i ∧ .ノ: .: /,| )_/ヽ.
_ /´ミ.| 八`ヽ \ :i. _; r'´| l ハ この場において
_/ニニ  ̄7´ニ.__ l l i`ー、─` ` ´ , ´ } i } i l
∠-─- 、 、ヽ、ヽ、 | | ヽ -‐=-= ー-、 ,イ、 \/ / / l | 裁判も不要
/___ _ \ヽ、ヽ、ヽ| l \\\ ` ─ -- //{.:.:.: / / ' _/ /
//、ニニヾヽ \ヽ\ヽ ヽ∧\ \ ゝ\ / /|.: ー.─く ̄\一'
/ ,ニニニヽヾヽ \ ヽ ヽ、 `ー'‐--'一`__ ̄ ̄´ / |.:.:.:.:.:. /冫 /
/二ニニニヽヾヽヽ∨ l `丶`丶`丶、ヽ、、  ̄` ー─- - ,,__/ / '/ヽ
H /y'
/ヽ H /y'
/` }_ ヽTァr-,、 /7に仁二仁二仁ィ7
/ |こ=y7 ̄`ヽ>、 /7 //
/ } ,,{ペ.f!{ ,ノソ ノ丿 xく/
./ヽ ,j} jf}气`ハ、 ,H />' /> '′
|{ハ}} ,,ィリ州|い{,mヾコエ>゙ /7 /7′
|ルjム=.' iif !ケy ,==ミ、_,/>' ノ7′ ;′
k<.9ノリ jリ|ひ!((.・>.)!┴'゙ 「 } /|
__|77ァ''´ |Y,ィ`ァ'-ヘ ゝ`仁二仁二仁二シ
_r'「{|,;if|' j; ビ了父ィソ ,/y
/_,>ィ|,fリ |,八八/^′/y'zZ こ、これは
>>1乙じゃなくて
|__/ム|イ ,イ}|ゾY^ンYメYイ ⌒ヽ 血管針なんだから
,.く::7ト, 州こ^ニ^/⌒ヾィ´ 勘違いしないでよね!
/;゙ `>| W! _,,ィ化儿>'⌒ヾ/.:: /;l
f.::::,ィl{{リヾ比" jf|}y' `ヾ//.:::: /;f}}
/ ,ノ| f|\V"l; |7 `ミ/^!/.::::: /,,,,,,
f{G/| {{V,ハ wリト~ミ八/.:::::: /,;;;;;;;;
. -―- . やったッ!! さすが
>>1!
/ ヽ
// 乙 ', おれたちにできないスレ立てと前スレで投下を
| { _____ | 平然とやってのけるッ!
(⌒ヽ7´ ``ヒニ¨ヽ
ヽ、..二二二二二二二. -r‐''′ そこにシビれる! ホれる!
/´ 〉'">、、,,.ィ二¨' {. ヽ _ _ あこがれるゥ!
`r、| ゙._(9,)Y´_(9_l′ ) ( , -'′ `¨¨´ ̄`ヽ、
{(,| `'''7、,. 、 ⌒ |/ニY { 乙 \
ヾ|/// ^'^ ′///,ノr')リ ,ゝ、ー`――-'- ∠,_ ノ
| 「匸匸匚| '"|ィ'( (,ノ,r'゙へ. ̄ ̄,二ニ、゙}了
, ヘー‐- 、 l | /^''⌒| | | ,ゝ )、,>(_9,`!i!}i!ィ_9,) |人
-‐ノ .ヘー‐-ィ ヽ !‐}__,..ノ || /-‐ヽ| -イ,__,.>‐ ハ }
''"//ヽー、 ノヽ∧ `ー一'´ / |′ 丿!///, -===- 、///}くー- ..._
//^\ ヾ-、 :| ハ  ̄ / ノ |. { {ハ. V'二'二ソ ノ| | `ヽ
,ノ ヽ,_ ヽノヽ_)ノ:l 'ーー<. / |. ヽヽヽ._ `二¨´ /ノ ノ
/ <^_,.イ `r‐'゙ :::ヽ \ `丶、 |、 \\'ー--‐''"//
\___,/| ! ::::::l、 \ \| \ \ヽ / ノ
\\ First kiss か ら 始 ま る ふ た り の 恋 の //
\\ H I S T R Y Y Y Y Y Y Y Y Y Y Y Y Y Y Y ! //
\\ こ の 運 命 に 魔 法 か け た //
\\ 君 が 突 然 あ ら わ れ た ァ ァ ―――z___ ッ! //
,ィ =个=、 _ _ _ ,。='゚=。、
〃  ̄ ヘ 〈_/´ ̄ `ヽ 〃 ` ヽ. 〃 ^ヽ 〃 `´`ヽ. 〃了⌒ヽ
くリ 7"バlキ〉>∩ { {_jイ」/j」!〉∩ l lf小从} l∩. J{ ハ从{_,∩ {lヽ从从ノl∩. ノ {_八ノノリ、∩
トlミ| ゚ー゚ノlミ| 彡. ヽl| ゚ ヮ゚ノj| 彡 ノハ{*゚ヮ゚ノハ彡 ノルノー゚ノjし彡 ヾヘ(゚)-゚イリ彡 (( リ ゚ヮ゚ノノ))彡
>>1乙!
>>1乙ゥ!
. /ミ/ノ水i⊂彡 ⊂j{不}l⊂彡 ((/} )犬⊂彡. /く{ {丈}⊂彡 /_ノ水⊂彡 /ノOV⊂彡
/ く/_jl ハ. く7 {_}ハ> ./"く/_jl〉`'l l く/_jlム! | }J/__jl〉」. (7}ヽ/∧
.ん'、じ'フ .ノ ,,,,‘ーrtァー’ ,,,,,,んーし'ノ-,ノ レ-ヘじフ〜l ノんi_j_jハ_〉 /__ ノ_j
,,-''´  ̄ヽ |!i!ii| ∩. |!i!ii| ∩. ,、 、 |!i!ii| ∩. |!i!ii|∩. |!i!ii| ∩
ミハ^^ヽヽ(∩. ( ゚∀゚)彡 (;゚Д゚)彡 ,ヘハ@ヘ∩. ( ゚∀゚)彡 ( ゚∀゚)彡 ( ゚∀゚)彡
ル ゚∀゚)ζ彡 ( ⊂彡. ( ⊂彡. ゞ ゚∀゚)彡 ( ⊂彡. ( ⊂彡. ( ⊂彡.
( ⊂彡゛ | | | | ( ノ::⊂彡. | | | | | |
| | し ⌒J. し ⌒J. │ │ し ⌒J. し ⌒J. し ⌒J
し ⌒J. し ⌒J.
前々から気になってたんだが
>>9の二段目に五人いる人って
「かかったな!アホが!」の人?
「ありのまま・・・」のひとだろ
アホが!の人、ドイツ軍人、ありのまま話す人、
兄貴、タンスの裏のものが拾えない人、
の5人だと思ってた
, -― ――-、
/に (ニ==\
//') に二) (ヽ 分かった!
〃____,r^)__,r、(ニユ| みんな大好きポルポル君だ!
i! ● / /● ヾヽヽ,!
ヽニ⊃,// ⊂⊃}:}ソi
/⌒ヽ__ ヘ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~/⌒ヽ
\ /::::: >,、 __, イァ/ /
. \ |三/ []「/__ /
`ヽ「ミヾr‐ 、[]「ヾ三/
>>15 , -― ――┛┗
/に (ニニ┓┏
//') u に二) (ヽ 知ってんだよオオオォォォッ!!
〃____,r^)__,r、(ニユ| 国語の教師か
i! ●`' ./ /´●uヾヽヽ,! テメーはよオオオォォォッ!
ヽニ⊃,// ⊂⊃}:}ソi
/⌒ヽ__ ヘ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~/⌒ヽ
\ /::::: >,、 __, イァ/ /
. \ |三/ []「/__ /
`ヽ「ミヾr‐ 、[]「ヾ三/
>>16 _ _
┌lニ「└冂 7^>┐
,rくV冂ー厂Y^ト/´/7
)‐二ニ=-=二三ニ二(
YこjW{;二=-‐<二〈
ヒp} トニpブ ̄`!ニヽ YES I AM!
|フ| | ド、~ } 'Fリ
. |゙=_'_'゙ ヽ / rく
|〈.-―ヽ V /´交ヽ
. |`⌒` ,//ヽ立ソ^ヽ
/'ァ---‐''" /.交ヽ/ ,ハー、
r「//__ /'交ヾ立ソ / / \
_,ィイ//4O) ヾ立ゾ/ / ノ  ̄`ー、_
// / |卩 lフノ-‐''" '" / / \
/ />rr<‐'´__,,.. ‐'''"
|〃ル厂フ
キングクリムゾン!
キング・クリムゾ(ry
キング・クリム(ry
キング・クリ(ry
キング・ク(ry
キング・(ry
k(wry
(ry
, -‐ '´ ̄ ̄`ヽ、
/・・/:・,へヾヽ・:\
/ :,・'/ /レ'/ ヽ ヽ:・:ヽ
l:.::・{:l 〈ソ' ー-j从:フ(;;)ヽ
| :・i:ル{レ' ●` li!: ト、::.', きんぐくりむぞ〜ん
((/⌒)i"● ⊂⊃: |ノ::i:.il
/ yi ヘ⊃ ,__, l|:: |:::・::.l
( /ス、,ゝ、_ `´ ィ<|:: |;;;)::.l
'<X)( i|l:::: i "Tーイ'^ァレ'l_::::::.l
\,,t|l:: lヾ#| /##/X)(ヽ'i
|::|l::・:lX)(∨X)(X)(彡, | :ji
ボスが大量発生しているな
ディオの息子4人が一斉に召喚されたら
凄いカオスになるだろうな
パニック障害を起こして目が見えないー><なリキエルと
亜人かと思われて希望なき人生!なウンガロとか
……あれ、見たくなってきたぞ
ボヘミアンラプソディでイーヴァルディの勇者大量発生か
ピッツァ .\ アリアリアリ /麻 ブッ殺した
はぁはぁ\ ドッピオ / 薬
目にゴミが! \ アギャギャギャーッ /
\ /兄貴
許 あっけなさすぎる \∧∧∧∧/ 燃えるゴミは月・水・金
可 < ク キ> 葉
し タンカスどもがあア< 予 リ ン> 掘
ないィ―――ッ!! < ム グ> り 帝王
─────────< 感 ゾ >──────────
無駄無駄 < ン >
< !!! の > ボラボラ ゴ
J ス /∨∨∨∨\ ゴ
・ ゴ /ス .GIOGIO \ ドドドドドドド ゴ
P 味 / タ DIO .\ ゴ
・ / ン \ エ ゴ
ポルナレフ/ ド 覚悟 \ピタフ ゴ
>>32 燃えるゴミは月・水・金 だけネタがわからん…
>>33 チョコ先生とセッコがつっこまれたゴミ回収車に書いてある文字
35 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/13(木) 23:07:23 ID:iZ/q4728
ゲスコンビは仲良くゴミ収集車に突っ込まれていきましたとさ
俺ははぁはぁがわからん
>>30 アポロ(ryもといリキエルで書きたい
随分前にプロットも粗方立てた
が、2chで(そもそもPCで)SSを書いたことがない
何より企画倒れが怖くて手が出せない orz
大丈夫、私も同じでしたから…って事で応援しつつ、45分から投下OK?
40 :
ゼロいぬっ!:2007/12/13(木) 23:46:24 ID:RVrQ/S8+
一握りの才ある者にだけ許された享楽。
それに耽っていた彼女の意識が無粋なノックで引き戻される。
『どうぞ』と不快感を感じさせない声で応対する彼女に、
扉の向こう側から用件が伝えられる。
「ミス・シェフィールド、クロムウェル様がお待ちです」
「分かりました。準備が出来次第、すぐに向かいます」
淡々と返しながら、彼女は『遠見の鏡』に布を掛ける。
そして、普通の姿見にて身嗜みを整える。
知らぬ内に浮かべていた酷薄な笑みを隠して、
彼女は『クロムウェルの秘書』としての仮面を被り直す。
既に手馴れた作業だが、それ故に次第に飽きてくる。
権力者を背後から操るのも楽しかったが、
主演が大根役者では折角の脚本も生かせない。
用が済めば廃棄される王様気取りの哀れな人形。
僅かな憐憫を感じつつ、彼女は本人の下へと赴いた。
「お待たせ致しました」
「おお…! 待ちかねたぞミス・シェフィールド」
クロムウェルの歓迎を受けながら、彼女は下げた頭を戻す。
見据えた視線の先には、負傷したワルドと手紙を見るクロムウェルの姿があった。
その手にある手紙は恐らく『例の物』で間違いないだろう。
彼の表情に浮かぶ笑みが何よりもその証明。
何度も読み返され褪せた手紙を食い入るように見つめている。
それを遠めで見つめながら彼女は嘲笑を浮かべた。
(本当に…可愛らしい事を)
自分が政略結婚に使われると分かっていながら、愛する人を一途に想い続ける。
一国を預かる立場にありながら、まるで王子様に憧れる女の子と何ら変わらない。
今頃は悲恋のヒロインを演じる自分に酔い痴れているのだろうか。
そして、それは彼女に拒絶を示さなかったウェールズも同様。
結局、国の安定も互いの恋愛もどちらも選べなかった半端者達。
為政者としては軽率で、愚かで、恥ずべき行為だろう。
しかし、だからこそ彼女は彼等の純粋さが愛しく思える。
彼女の内に沸くそれは、知性の劣る愛玩動物を愛でるかのような感情だった。
「『手紙』は奪取しましたが、『虚無の力』とウェールズの遺体は回収できず…」
「いや、君は実に良くやってくれた。
これさえあればトリステインとゲルマニアの同盟は破綻する。
それに王党派の中枢を暗殺し、連中を壊滅状態に追い込んだのだ。
賞賛こそあれ罰などは有り得んよ、そうであろうミス・シェフィールド?」
「はい、勿論です。これだけの功績を上げたのですから、
その褒賞として彼に直属の竜騎士隊を一つ任せてはどうでしょう?」
「なるほど。トリステインの魔法衛士隊に代わる私の部隊という訳だな」
ワルドの謝罪にクロムウェルは満足そうな笑みで応え、
そして自分の指輪を撫でながらシェフィールドに視線を送った。
秘書の意見を求めるのは不自然な事ではない。
しかし、盗賊として身に付けた人間観察力の賜物だろうか。
その場に同席したフーケだけが違和感に気付いた。
ラ・ロシェールでの戦いの後、追っ手から逃れる為に彼女はアルビオンまで来ていた。
ワルドの送った竜騎士の迎えが無ければ魔女宜しく火炙りの刑にされていただろう。
そのフーケの眼には、彼女に対するクロムウェルの態度はどこかおかしく映る。
秘書というよりも、まるで主人に対してお伺いを立てているみたいだ。
41 :
ゼロいぬっ!:2007/12/13(木) 23:48:02 ID:RVrQ/S8+
(…まさかとは思うけど、こいつら)
疑惑の篭った視線を彼女は二人に向ける。
彼女の脳裏に浮かぶのは、主従が逆転したクロムウェル達の姿。
“ほら! 自分が何様なのか言ってみなさい!”
“ぶひぃ! 私めは卑しい牡豚でございます女王様!”
薄暗い、牢屋を思わせる密室の中で鞭の音が響く。
裸体を晒したまま縛られて床に這い蹲るクロムウェルを、
ボディラインを露にした黒い衣装を纏ったシェフィールドが踏み躙る。
剥き出しとなった彼の素肌には痛々しい痣や傷跡が残されている。
しかし悶える彼の表情に浮かぶのは苦悶ではなく喜悦の色。
こうして彼等は夜な夜な歪んだ肉欲に身を委ねるのだった…。
「どうかされさましたか?」
「…い、いや、何でもないさね」
怪訝な表情で見つめられたシェフィールドが訊ねる。
それに慌てながら曖昧な返事を返して両手を動かす。
まあお偉いさんだから色々と鬱憤の溜まる事もあるだろう。
本人達の特殊な性癖について口を挟むつもりはないが、
ノーマルの自分まで巻き込まれたら堪ったものじゃない。
顔を引き攣らせる彼女に、首を傾げるシェフィールド。
しかし、そんな二人を余所にワルドはクロムウェルへと詰め寄る。
「そんな事よりも、閣下! あの怪物を一体どうなさるおつもりですかッ!?」
「…………」
語気を強める彼にクロムウェルは沈黙せざるを得なかった。
それに対する答えを彼は持ち合わせていなかったのだ。
国政や軍事に関わる事ならまだしも、バオーに関しては無知も同然。
ましてやシェフィールドの思惑など彼には知る由も無かった。
危険な敵がいるのならば排除するまでだ。
しかし、その程度の事で何故ワルド子爵が取り乱すのか。
尋常ならざる彼の様子に対し、あえてクロムウェルは安易な返答を避けた。
お飾りだと思っていた男の好判断にシェフィールドが思わずほくそ笑む。
そして彼の代弁をするようにワルドに答える。
「どう…と言いますと?」
「今も奴によって我が方は甚大な被害を受けているのだぞ!
城の内外に配備した地上部隊を見捨てるつもりか!?」
「撤退命令は既に出しています。
しかし前線は乱戦状態にあり、指揮系統が機能しておりません」
「それまでの間に出る犠牲はどうする!?
連中は怪物の正体も弱点も知らされていないのだぞ!」
「それでも敵が出れば戦うのが兵の務めでしょう?
命令も届かない現状では指示した所で無駄ですし」
「話にならんッ!」
彼女の返答にワルドは吐き捨てるように話を切った。
シェフィールドの考えなど知った事ではない。
最後に判断を下すのはクロムウェルなのだ。
『レコンキスタ』を率いる彼にとって戦力の損耗は避けるべき事態。
ならば理解してもらえると意気込んだ彼の提案は容易く却下された。
支援
43 :
ゼロいぬっ!:2007/12/13(木) 23:50:13 ID:RVrQ/S8+
「その申し出は受け入れられぬ。
怪物といえどアレはガンダールヴ、伝説の『虚無』への手掛かりなのだ。
それを無闇に殺める訳にはいかん!」
「ですが! 今、この瞬間にも奴は成長し続けているのです!
これ以上、放置すれば完全に手がつけられなくなります!」
天敵と思われた竜さえも奴は克服した。
『ライトニング・クラウド』と同質にして、それを凌駕する電撃。
もはや対空戦闘さえも身に付けた奴に死角は無い。
遠距離からの魔法も剣に吸収されるだけだ。
最後に残された手段は艦隊総力を上げての艦砲射撃のみ。
如何に凄まじい力といっても本物の雷には及ぶべくもない。
空気中で分散される奴の電撃は頭上の艦隊にまでは届かない。
しかし、戦艦からの砲撃は届く。
散弾を詰めて雨霰のように奴に向けて斉射する。
それも一隻や二隻ではなく、アルビオン艦隊の全てを投入してだ。
逃げ場も与えず、奴のいる地形を変えるほどに砲弾を撃ち込めば葬れる。
逆に言うなら、そこまでせねば奴を滅ぼす事は叶わない。
味方にも被害は出るだろうが、皆殺しにされるよりは遥かにマシだ。
「それは最後の手段に取っておきましょう。
しかし、まだ貴方には取れる策があるでしょう」
「何の事だ…?」
「ガンダールヴは主人を守るのがその務め。
なら彼女を人質に取れば、自らこちらの手に落ちるかと」
「何だとッ!!?」
割って入るように告げたシェフィールドの言葉。
その内容に、ワルドの目が驚愕に見開かれた。
“アレ”を自軍に引き込むなど狂気の沙汰もいい所だ。
制御できない力ほど恐ろしい物はない。
だが、ワルドは彼女の真意がそこにあると勘付いた。
思えばルイズに薬を飲ませた時点からおかしかった。
他に幾らでも手段はあったにも関わらず、洗脳という強硬手段を彼女は取った。
てっきり自分の忠誠を試す為かと思われたが、実は違う。
あの時点から、彼女は“あの怪物”を支配下に置く事を目論んでいたのか。
そして今の状況はどうだ?
彼女とガンダールヴは引き離され、
駆逐されながらも地上戦力は奴の足止めに成功している。
それに城から脱出するとすれば船だが、一度出航すれば奴にはそこまで来る術が無い。
そして地下空洞の出入り口を知っている自分には追撃も容易い。
孤立した彼女を奪い去るには格好の条件が揃っている。
まるで、自分にそれをさせる為にお膳立てをしたかのように…。
ワルドの背筋に戦慄が走った。
これが彼女の策謀から生まれたのだとしたら、その智謀演算は人の域を超えている。
自らの意志で動いたつもりで全てが彼女の掌の上。
彼女が演出する脚本の上での劇を演じさせられているのかもしれない。
44 :
ゼロいぬっ!:2007/12/13(木) 23:51:15 ID:RVrQ/S8+
「おお、それはいい考えだ。
では至急、ワルド子爵に向かって貰おう。
既に予備の風竜と竜騎士隊を待機させてある。
彼等を率いて、任務に当たってくれたまえ。
余の親衛隊としての働き、期待しておるぞ」
「はっ、御期待に沿えるよう努力します」
クロムウェルに会釈して彼は引き下がる。
疑念に心を囚われながら、彼はそれを噛み殺す。
自分が利用されているのは確かだろう。
手駒の一つだというのならそれも認めよう。
だが、僕はそこでは終わらない。
貴様を超える力を得て、必ず盤の外へと手を伸ばす。
この身に潜む野心は誰にも抑えられない。
制御出来ぬ“怪物”を抱えているのは奴だけではない。
貪欲に力を追い求める飢えた獣は、いずれ世界さえも呑み込む。
“誰にも渡さない。ルイズも世界も全て僕の物だ”
「…隣国の友人達よ、貴方がたの厚意に心より感謝します」
そっとウェールズの遺骸に白い布を被せながら副長は告げた。
その眼に悲しみを湛えながらも涙は見せない。
きっと心のどこかで彼は主の死を認めていたのだ。
それに船員達の前では示しをつけなければならない。
艦長が倒れた時、跡を継ぐ副長が威厳を見せねば船は動かない。
歯車を入れ替えるように、依然変わらぬ事を自ら証明する。
例え、それが国王だとしても…。
ウェールズ陛下を助けられなかったアニエス。
ルイズの心身を案ずるキュルケ。
そして、この場にいない彼の事を不安に思うタバサ。
皆が沈痛な面持ちで沈黙する中、副長は自分の胸を叩いた。
「今度は我々がその厚意に応えましょう。
必ずや貴方がたをトリステインまで連れ帰る!
アルビオンの船乗りに二言はありませぬ!」
ウェールズを失ったばかりとは思えない、威勢のいい声が港に響く。
彼の背後には、皆一様に声を上げて応える船員達の姿。
彼等はその手を休める事なく今も出航の準備を整えている。
城を失い、王を亡くし、帰る場所さえも失おうとしている彼等に不安の色はない。
失った物は戻らない、だからこそ彼等は先に進むのだろう。
それが倒れた者達の遺志を引き継いだ者の務め。
悲しみや怒りにただ打ち震えるだけの僕達には無い、彼等の強さだ。
僕達を逃がそうとする彼等の尽力を無駄には出来ない。
避難船『マリー・ガラント』号の甲板から、
ギーシュは同様に出航準備に入っている『イーグル』号を見上げる。
非戦闘員がこちらに全員いる以上、あの船の役目は間違いなく殿だろう。
敵の大半を引きつけて囮になる、つまりは乗組員には死が確定している。
そんな様子も見せずに働く彼等の姿をギーシュは己が目に焼き付けた。
自分が犠牲にした人間達の姿を、そして自分が引き継ぐべき魂の持ち主達を。
支援
少しPLUCK貰い支援
47 :
ゼロいぬっ!:2007/12/13(木) 23:52:31 ID:RVrQ/S8+
「…なんとか間に合ったようだな」
廃材や木箱で組み立てたバリケードを背にし、騎士は呟いた。
今より少し前、隠し港での攻防は熾烈を極めていた。
ただでさえ寡兵なのに、出航の準備にも手を割かなければならない状況。
一緒に連れてきた衛兵も応急処置を施しただけで動員された。
精神力は尽き、道中で拾ってきた銃も弾切れ。
もはやこれまでかと諦めかけた時、奇跡は起きた。
底無しと思われた敵の侵攻は止まり、今では気配さえも感じない。
陥落を目前にして敵が撤退するなど有り得ない。
あまりにも都合の良い逆転劇に、
最中に現れたアニエス達が勝利の女神に見えてくる。
しかし、隣に座る衛兵からの返事は無かった。
銃を抱えて俯いたまま、彼はその場を微動だにしない。
揺り起こそうと触れた身体は氷のように冷たくなっていた。
もはや彼が謝罪の言葉を口にする事は無い。
もう必要の無くなった銃を取り上げて、静かに彼の身体を床に寝かせた。
戦争に救いなどない事は承知していた。
だが、いつまで経っても一向に慣れはしない。
未だに他人の死を引き摺る自分の未熟さが恨めしい。
ふと顔を上げると、そこには自分が捨てた銃を拾う武器屋の親父。
見れば、束になった小銃が小脇に抱えられている。
戦闘中に不要になった物を拾い集めていたのだろうか。
視線が合った瞬間、びくりと親父の身体が震えた。
「あ…あの、これは、違うんでさ!
皆さんの為にピカピカに整備して差し上げようかと…!」
「別に構わないさ。じきに船は出航する、ここを守る意味も無い。
どうせ『レコンキスタ』の連中に奪われるんだったら、
アンタが持ってってくれた方が死んだ連中もまだ浮かばれる」
親父に合わせて言葉遣いを崩して答える。
海賊の真似事が続いた所為か、
今では堅苦しい喋り方よりもしっくり来る。
困惑する親父の顔を窺いながら、
腹の中では交渉を持ちかける機を見ていた。
「へ? 頂いても宜しいんですか?」
「ああ。その代わり、剣を一本売ってくれ。
俺のはもう使い物にならないんでね」
そう言って差し出したのは血脂と刃毀れでガタがきた鉄屑。
玉が無ければ、鉄砲を持ってても役に立たない。
それに銃が真価を発揮するのは集団戦だ。
一人で動くなら狭い通路でも取り回しが利く剣の方が良い。
渡された剣を不思議そうに眺めながら親父が尋ねた。
48 :
ゼロいぬっ!:2007/12/13(木) 23:53:25 ID:RVrQ/S8+
「そりゃあ構いませんが、もう戦う必要はないんでしょう?」
「他の奴はな。だけど城に忘れ物しちまってな。
これから取りに戻んなきゃなんねえのさ」
「戻るって…敵がわんさといる城の中にですかい!?
そんなの無理に決まってまさあ! 」
「かもな。だけど、そいつとは“死ぬ時は一緒だ”って約束した仲だからな。
何があっても、ここに置いてく訳にはいかねえんだよ」
アルビオンの騎士に二言はない。
例え冗談半分で口にした言葉でも誓いは守る。
やがて親父も呆れ返って説得を諦めたのか、
自分の商売道具の中から一振り取り出し、それを放り投げた。
鞘から抜き出された刃が明かりに照らされて鈍く光る。
「…悪くないな」
「当たり前よ。二級品の中じゃ飛び切りの品さ。
“売った物が悪かったから殺された”なんて、
あの世で言い掛かり付けられたら堪んねえからよ」
喧嘩を売るような親父の口調。
しかし、それが本人なりの景気の付け方と解釈し、
渡された剣を腰に差しながら、その厚意に心から感謝した。
去り際に一度だけ港へと視線を送る。
そこには正に出航せんと繋留索の外される、
『イーグル』号と『マリー・ガラント』号の雄姿があった。
これで副長から言い渡された任務は終わりだ。
自分が果たすべき事は全て果たした。
後は、自分の好きな様にやらせて貰う。
「…どうやら、碌な死に方しないのは俺の方になりそうだな」
交易船で自分が言った台詞を思い出し、苦笑いを浮かべる。
足は既に前へと動き出し、城内へと通じる通路を駆け出していた。
支援
50 :
ゼロいぬっ!:2007/12/13(木) 23:54:11 ID:RVrQ/S8+
絨毯は幾重にも引き裂かれ、玉座は半分に切り落とされている。
傍に控える侍従も無く、城主の身を守る近衛は影も形もない。
そこに、かつて栄華を誇ったニューカッスルの面影を見出せる者はいない。
「バリーよ、地下より響くあの音が聞こえるか。
アレはウェールズ…ウェールズの船だ」
若かりし頃より辛苦を共にした重臣に話し掛ける。
彼は命を捨てて守り通した主の腕の中で永久の眠りについていた。
しかし、命が尽きようとも彼には判る筈だ。
希望を載せた船が旅立とうとしている瞬間が…!
この世に不滅の物などない。
それは長き歴史を持つアルビオン王国とて同じ事。
しかし託された想いが次代に繋がるのならば、それは終焉ではない。
「往けいアルビオンの仔等よッ!
我等は決して滅びたりはしないッ!
諸君等の胸の中で永遠に生き続けるッ!」
彼等は果てしない航海へ漕ぎ出そうとしている。
辿り着くべき場所を示す地図も無く。
進むべき方向を教える羅針盤も無く。
ただ荒れ狂う波に逆らい続けるように、
生き延びた彼等には辛く険しい日々が待ち受けているだろう。
しかし、どれほど残酷であろうとも人はこの世界で生きていくしかない。
そこに栄光へと繋がる道があると信じて…!
叫び続けた喉から血が溢れ出る。
まるで赤絨毯のように足元を染める血を眺め、
彼は“アルビオン王国”の滅亡を静かに受け入れた。
sien
支援
53 :
ゼロいぬっ!:2007/12/13(木) 23:56:39 ID:RVrQ/S8+
以上、投下したッ!
GJ!
もの悲しい展開なのに、フーケさんの妄想で噴いたw
全く、お姐さま方と来たら誰もかれもこんなんか!
>54
お前の所為でその場面がものごっつ気になるようになってしまったじゃないかw
それはそうとしてGJ!
おっぱい子爵のお墨付きのオッパイだったり、女王様だったり、シェフィールドさんも大変だなw
わんこが囚われの身になるのか、先の展開漠然と予感しつつGJ
わんこの人乙&GJです。
わんこがジョゼフの手に渡るのは、世界崩壊の確定のような気が。
ジョゼフの場合、バオーの力の秘密を知ったら、喜々として寄生虫を増やしてばらまきそうだもんなぁ・・・
そういえばヴィンダールブはバオーを制御することは出来るんだろうか?
こんな時間に投下するが果たして人はいるだろうか。
ちょっと展開がムチャ過ぎて戦々恐々だが20分辺りから投下だ!
戦いの決着が付いてから数秒が経って、やっとメイジ達は正気に戻った。
トリステインの魔法衛士隊の隊長を務めるスクウェアメイジが、四体の遍在を駆使してなお惨敗と言う言葉さえ生ぬるい敗北を喫したのを目撃したばかりでなく、それを成し遂げたのが杖の一つも持たないただの平民の老人であるという事実を受け止めきれない者も少なくない。
しかしそれでも、アルビオン王国有数の精鋭であるメイジ達は、一斉にジョセフへと杖を向けた。
この状況で真実が把握できない以上、騒動の中心にいた者達をまとめて捕縛するのは至極真っ当な思考であるからだ。
ジョセフもまた、それを理解しているからこそ。「うぉーい! 俺の! 俺の見せ場が!」と騒ぎ立てているデルフリンガーを取りにいく素振りすら見せず、悠然と両手を挙げているだけだった。
「夜分お騒がせして申し訳ない、ニューカッスルの皆様方よ! 事情はわしではなく、わしの主人、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールが説明する! すまんが誰か主人を介抱してくれんか!」
抵抗の意思はないと判断した数人のメイジが、ルイズに駆け寄り応急手当てを開始する。
ウインドブレイクで吹き飛ばされて地面を転がされたルイズだったが、気は失っているが特に重傷を負ったというわけではないようで、メイジ達の様子に切羽詰ったものがないのが見える。
ジョセフは安堵の息をついて、警戒を弱めず自分に近付くメイジ達を眺めていたその時。
「待て! 彼らの身柄は私が預かろう!」
中庭に響く凛とした声に、その場にいた全員の目がそちらに向いた。
そこに現れたのは、ウェールズ皇太子と、キュルケ、タバサ、ギーシュ達だった。
この場で最も地位の高い王子の言葉に、メイジ達にざわめきが広がる。
「お待ち下さいウェールズ様! まだどのような事情があるのか把握できておりませぬ! ここは我々が――!」
一人のメイジの言葉にも、ウェールズは平素の悠然とした笑みを崩さずに言った。
「実は少し前にここに着いていたのでね、ヴァリエール嬢が貴君らの前に立ちはだかった直後から今までを見せてもらった。あの一連の光景を見て事情を察するべきではないかな、高貴なるアルビオン王家に仕える者としては」
にこやかに言うウェールズに、部下達はそれ以上食い下がることは出来なかった。
自分に反論がないのを見届けると、纏っていたマントを翻し、高らかに宣言した。
「彼らの身柄はこのウェールズが預かる! 貴族の風上にも置けぬこの裏切り者を捕縛し、地下牢に放り込んでおけ!」
ワルドを捕らえる様部下に命じてから、ジョセフへと鷹揚に近付いていく。キュルケ達も、メイジ達の視線を受けながら三者三様の様子でウェールズの後ろを付いていく。
「いや、すごい戦いだった。君のような戦士がもう少し早くアルビオンに来てくれれば……というのは、ただの願望だね」
警戒を全く見せず、平素の表情を見せるウェールズに、ジョセフはほんの少しの苦笑を浮かべて言葉を返す。
「宜しいのですかな、殿下。私がもし殿下を狙う暗殺者であったなら、最早この時点で殿下のお命は……」
「本当に私を殺す気がある者は、私にその様な忠告などしてくれないものだ。それに御老人にはいい主人といい友人がおられる。あの爆発音が聞こえて泡を食ってここに駆けつける最中、君の三人の友人達が懸命に事情を説明してくれた。
それを信じられぬほど、私の心は曇っていないつもりだが。それにあの貴族の鑑たるヴァリエール嬢を片や傷付け、片や傷付けられ憤る。どちらに義があるか、という話だ」
「聡明な判断に舌を巻くばかりですな。多少無警戒かと思いますが、こちらとしては都合がよいことでして」
それからジョセフは、ウェールズの後ろにいる三人の友人達に、普段と変わらない笑みを見せた。
「すまんな三人とも。王子様にあの部屋にいてもらうワケにゃーいかんかったので、ちょいとウソをついちまった」
その言葉に、不服そうな顔をしたのはギーシュだけだった。キュルケはいつも通りにあっけらかんと笑ってジョセフに答える。
「いいのよ、ダーリンが何かやろうと仕組んでる時の顔くらいもう判るわ。とりあえずルイズを起こしてあげなくちゃならないんじゃない?」
ジョセフ的にはチラ見程度のつもりだったが、周囲には気になって気になって仕方ありません以外の何物でもない視線の向け様で気絶したままのルイズを見ていた。
「おう、んじゃ行って来る」
さっとルイズへ小走りに向かうとメイジ達からルイズを受け取り、緩やかに波紋を流す。
僅かな間を置いて、小さな寝息のような声を立ててルイズの目が開いた。
まだ夢に片足入れているような表情で、自分を抱いているジョセフを見上げ。何かを言おうと口を動かそうとするが、何を言っていいのか判らず、困ったような悲しい顔で、それでも何かを言おうとするルイズの頭をそっと胸に抱いた。
「いいんじゃ、いいんじゃよ。今は何も言わんでいい。わしが守ってやるからな……」
「…………!」
平素の彼女なら、貴族の誇りや意地っ張りが邪魔してジョセフの脇腹にチョップを入れて適当に悪態を付いてジョセフの腕から離れていただろう。
だが、幼い時からの憧れであり婚約者であったワルドが醜い裏切り者で、何の躊躇もなく自分を殺そうとした殺人者で。
ルイズを守護し庇護するジョセフに縋り付いて、沸き上がる感情のままに泣き出さなかったのは、せめてもの彼女のプライドだった。
しかし、使い魔のシャツがたわむくらい強くつかんで、頭を強く胸に擦り付けることで、泣き出しそうになるのを懸命に食い止めていた。
その姿を見下ろすジョセフが何の思いも抱かない訳がない。
高慢でプライドばっかり高くて小生意気な主人が、人目があるこの状況で自分に縋り付いて感情を爆発させるのを堪えている。
この引き金を引いたのはワルドだ。だがそのワルドに引き金を引かせるべく銃を渡した張本人……レコン・キスタに、ジョセフの怒りが向けられないはずはない。
ピンクのブロンドの上から子供をあやすように背中を軽く叩いてやりながら、地面に落ちたデルフリンガーに歩いていって鞘に収めると、律儀に自分達を待っていたウェールズ達の元へと歩いていく。
その僅かな歩みのうちで、ジョセフはこれからの計画を全て築き上げていた。
「それにしても」
ウェールズは普段の朗らかな笑みの中に、少なからぬ自嘲の色を滲ませて呟く。
「それにしても、レコン・キスタは……よもや誉れ高きトリステイン王国のグリフォン隊隊長まで手中に収めるとは。なるほど、これでは我がアルビオン王国もあれほどまで容易く滅びに進まされた訳だ」
重いため息をついて双月を見上げるウェールズに、ジョセフは緩く首を振った。
「向こうの手練手管に絡め取られたのは事実、じゃがこのまま手をこまねいとれば、トリステインも二の舞を踏むことは判り切っておる。幸い、まだアルビオン王国に時間は残されておる。
アルビオン王家の滅亡を止める事は最早出来んじゃろーがッ。一つ、この老いぼれの戯言を聞いてみる気はありませんかな、殿下?」
ルイズを腕に抱いたまま、帽子の下からニヤリと笑った顔をウェールズに向けた。
明日には亡くなる国とは言え、ウェールズはれっきとした王家の皇太子である。ここで平民の老人の戯言など聞く道理などない。が、アンリエッタのいるトリステインの話を持ち出されれば話は違う。
「いいだろう、スヴェルの月夜だと言うのに随分と騒がしく眠気も覚めてしまった。一つ、夜話ついでに聞かせてもらえないだろうか」
ウェールズの興味を引いた時点で、ジョセフの計画は成ったも当然だった。
口の端を不敵に吊り上げたまま、ジョセフは友人達へ視線をやった。
「それでは、わしの主人と友人達にも同席をお許し頂きたいんですが構いませんかな?」
「ああ、大歓迎だ。それでは……ホールに行くとしよう。私の部屋は客人をもてなせる部屋ではなくなったようだからね」
苦笑を浮かべるウェールズに、ジョセフはいつも通りの悪戯めいた笑みを見せる。
「宝石箱だけはわしの部屋に何故か避難しておりました。何とも不思議なことですな」
その言葉に、一瞬ウェールズのみならずルイズ達も動きを止めた。
「アっ……アンタ何してくれてるのよぉーっ!!」
腕の中から上がったキンキン声に、ジョセフも思わずのけぞった。
王子の部屋に忍び込んで殺傷能力の高い爆弾を仕掛け、ついでに宝物を拝借する平民。何の情状酌量もなく即刻手打ちになって然るべき大罪である。
しかしウェールズはたまらず笑みを零し、それから弾ける様な大きな笑い声を上げた。
「全く!出会ってからこの方一本取られてばかりだ! しかも私の命を救い裏切り者を誅しただけでなく、私の大切なものまで守ってくれるとは!」
こみ上げる笑いを堪え切れないまま、ウェールズはルイズに向き直った。
「ミス・ヴァリエール」
「は、はい!!?」
思わず声を裏返らせてジョセフの腕の中で固まるルイズに、皇太子は愉快さを隠しもせずに言った。
「君の使い魔殿は全く以って痛快だな! 羨ましさばかりが先に立つ、大切にすべきだ!」
「言われなくてもご覧の通り、とっくにダーリンにメロメロですわよ殿下」
その様子をチェシャ猫の様な楽しがるだけの笑みで口元に手を当てるキュルケの言葉に、ルイズが毅然と反論を試みた。
「ななななな何をねねねねねね捏造ししししししてくれてるのかしら!」
「君はとりあえず落ち着くべきだ」
この騒ぎも何処吹く風で読書を続けるタバサの横で、見かねたギーシュが呆れ顔でツッコミを入れた。
そのままの賑やかさを維持したまま、つい数時間前まで華やかなパーティが行われていた大広間に到着する。パーティの片鱗すら感じさせぬほど整然と片付けられたホールは、最後の務めとなる明朝の食事を待つだけだった。
全員が一卓のロングテーブルを囲んで座ると、ジョセフは企みを含んだ楽しげな笑みを自重しようともせず、広いホールに集まったたった五人の観客をぐるりと見やった。
「さてお集まりいただいた善男善女の皆々様、少しの間老いぼれの戯言に付き合ってもらうとしますかなッ」
それからジョセフのプレゼンテーションが開始された。
最初のうちこそ、メイジ達は「愉快な使い魔の一芸」を観覧するかのような気楽さで聞いていた。
しかしジョセフの説明が進んでいくに連れ、メイジ達の両眼には誰の例外も無く驚きの色が色濃く積もっていく。
タバサでさえ本から目を離し、驚きを隠さない目でジョセフを見つめるほどだった。他の面々は、言うまでもない。
\ここにいるぞ!/
支援
さしたる時間も経たないうちに、ジョセフは五人のメイジ達の顔にただならぬ真剣さを帯びさせる事に成功していた。
「――とまァ、大体こんな感じかの。わしの見立てではこれで明日、レコン・キスタの連中に目に物見せてやれる。ただ手は幾らあってもいいんでな、わしの敬愛する主人と友人達にも助力を願うことになるんじゃが」
そのへんどうよ、とジョセフがルイズを見れば、信じられないと雄弁に語る瞳孔の開いた両眼でジョセフを見返していた。
「……それが本当なら、私達に断る理由なんてないわ。でも信じられないわ、そんな事が本当に出来るの!?」
大きく頭を振り、ジョセフが語った言葉をもう一度頭の中で繰り返すルイズ。
「わしの住んでた国ではけっこーオーソドックスな手段でな。非常に手軽で安価で便利じゃ。効果の程はわしが保証する」
「ジョジョ! 理屈は判った、でも問題は多い! 明日の決戦……確か正午だったか、それまでに本当に準備できるというのか!?」
ギーシュもまた、荒唐無稽としか思えないジョセフの言葉を信じ切れずにいた。
「なーに、このニューカッスルには三百のメイジと三百の使い魔がおる。まー多少時間は厳しいかもしれんが、問題ない」
「……でももっと大きな問題があるわ、ダーリン」
そっと手を上げたキュルケが言葉を繋げる。
「ダーリンをよく知ってる私達でさえ、今の話を信じ切れてないわ。そんな話を、どうやって他の貴族達に信じさせるというの?」
至極尤もな言葉にも、ジョセフは想定内の質問とばかりにニヤリと笑った。
支援
「なァ〜〜〜〜〜に、そんな初歩的なコトをこのジョセフ・ジョースターが考えてないワケがないじゃろ。まーァ見ておれ、ここで一つわしがいいモンを見せてやろう。
ただそれにはちょいと杖を貸してもらわなくちゃならんのと、今すぐに国王平価にお目通り願わなくちゃーならんがなッ。このジョセフ・ジョースターの真骨頂を是非披露したくはあるんじゃが〜〜〜〜〜」
そこで一旦言葉を切り、チラ、とウェールズ達を見る。
全員今にもエサに食いつきたくて仕方がないが、果たして本当に食いつくべき代物なのか悩みに悩んでいるのが手に取るように判る。ジョセフはそこで満を持してとどめの一言を放った。
「ま、どーせ信じろって言われてもムリな話じゃし。大人しくわしらはシルフィードに乗って帰るほうが無難じゃわなー」
こくり、と唾を飲んだ音が聞こえ。次の瞬間、バネでも仕掛けられたように勢いよく立ち上がった人物に、全員の視線が集まった。
「どうせ明日までの命だ、今夜以上に痛快な光景が見られるというのなら……!」
全員……いや、ジョセフ以外の視線は、驚愕。
してやったり、と笑うジョセフに、ウェールズは意を決して笑い返した。
「アルビオン王家の王子として約束しよう、今すぐにでもアルビオン王への謁見を許すと!」
六人で使うには余りに広すぎるホールに響く、皇太子の言葉。
「グッドッ!!」
68歳とは到底思えない満面の笑みにウィンクまでつけてサムズアップし、それからルイズ達に向き直る。
「さぁ、後は杖だけじゃな! さぁさぁ、このジョセフの口車に乗ってみせる向こう見ずはどこにおるッ!」
「いいわッ! 本当なら絶対、ぜぇぇぇぇぇぇったい触っちゃいけないモノだけど! 私は、私は!」
突き出された杖は、ルイズのそれだった。
「ジョセフ……自分の使い魔の本領とやら、主人として確認しなくちゃならない義務があるわッ!!」
ジョセフに向けて揺ぎ無く杖を突き出すルイズ。
その光景に、ルイズの同級生である三人は一様に驚きに捕われた。
メイジにとって杖とは、自分の誇りを示す証と言っても過言ではない。
そんな貴族の中でもプライドが恐ろしく高いルイズが、例え自分の使い魔と言えども平民に自分の杖を渡すなどとは想像だにし得なかった。
ジョセフの手が、まるで女王から授与される勲章を受け取るかのような恭しさで杖を受け取ったのを見届けると、自分の杖に掛かっていた手を離し、キュルケは愉悦を隠さずに言い切った。
「どうやら、このスヴェルの月夜は有り得ない事ばかり起こるらしいわねっ! ここを見逃したら一生悔やんでも悔やみ切れないことだけは判ったわ!」
断言したキュルケは、有無を言わさずタバサの手を取った手を上げた。
タバサも手を上げられたまま、小さくこくりと頷く。
自分以外が異様なテンションになっているのを見たギーシュは、おろおろと全員を見渡すが、最後には迷いや恐れを振り切り、叫んだ。
「ええい、こうなったらヤケだ! 僕も乗ればいいんだろう、ジョジョ!」
「そうじゃな、そうじゃなくっちゃなァ!!」
楽しくて仕方がない、と力一杯主張する笑みのまま、椅子から立ち上がった。
「さーあ、ここからわしのオンステージになっちまうワケじゃがッ。今から起こる事ははわしの友人達だからこそ見せておきたいモンじゃからなッ。しーっかり見といてもらわなくちゃ困っちまうぞ!」
自信満々に言ってのけるジョセフは、何が起こるかは言うつもりがないらしい。蓋を開けてのお楽しみ、と言う事を察したメイジ達は、一体これから何が起こるのか、大きな期待と多少の不安を胸に抱いたまま、ジェームズ一世の寝室へと向かうことになった。
支援を!貴様に!
ジェームズ一世には深夜の突然の訪問は堪えるようであった。
訪問してきたのが息子でなければ断っていただろう。
魔法のランプでほのかに灯された寝室の中、やっとの思いで半身を起こしたジェームス一世のベッドの傍らに、メイジに混じってとは言え平民の老人が跪いているのは、ある意味奇跡と称して良い光景である。
「何の用じゃ、トリステインからの客人達よ」
立ち上がるだけでさえよろめくような老いた王の声は、決して雄雄しいものではない。
「用の前に一つ。面白いものをご覧に入れましょう」
す、とジョセフが立ち上がり、杖を持ったまま寝台に近付く。
微かに聞こえる奇妙な呼吸音が波紋呼吸だと理解できたのは、ルイズ達魔法学院の生徒だけであり、王と王子にはそれが呼吸の音だとはすぐに理解は出来ない。
それからジョセフの口から呪文めいた言葉が流れるが、誰もその呪文が何なのか理解できない。それもそのはず、ビートルズの「GetBack」の歌詞を口ずさんでいるだけである。
それと同時に呼吸で練り上げられた波紋はジョセフの体内を駆け巡り、薄暗い寝室に太陽を思わせる光が灯っていく。
体内に巡る波紋を少しずつ右腕に集約させ、右手に凝縮し、杖に乗せ――
「ちょっとだけ! 深仙脈疾走!!」
ボゴァ! と迸る音と共にジェームス一世の腕に当てられた杖から凄まじい勢いで流れ込む生命エネルギー!
「お、おおおおおおおお!!?」
ジェームス一世の全身から噴き出た波紋の残滓が、寝巻きを容易く引き裂く!
「な、何を!?」
何が起こるかを説明されていない一行は、王に起こった異変に息を呑む。
しかしそれもほんの瞬間の事。波紋の光が消えた部屋の中、ジェームス一世はくたりと首を俯かせて深く息を吐いた。
「さあ陛下、お手を」
ジョセフが差し出した手に伸ばされた手は、年老いた枯れ木のような手ではなく。若々しい生気に満ちた力強い手だった。
それだけではない。破れた寝巻きの狭間から見える肉体も往年の若さを取り戻していた。
「お、おおおおお……」
王の口から漏れる声すら、パーティで見せたような老いを微塵たりとも感じさせない。
自らの身体に起こった変化が信じられないながらも、ジェームス一世はあれほど難儀していたベッドから降りるという作業を、何の苦も無く行えた。その事実に、目を見開いた。
「こ、これは如何なることだ!? 一体、何が朕に起こったというのだ!?」
誰の助けを必要ともせず、両の足だけで支えられた身体を夢幻ではないかとひっきりなしに視線を走らせる王に、ジョセフは恭しく跪いた。
「失礼ながら、王にこのジョセフ・ジョースターの操る系統の片鱗をお見せしただけに過ぎませぬ」
「系統? 朕が知る四大系統の魔法に、この様な奇跡を起こす魔法などついぞ知らぬ!」
若さと生気を取り戻した驚きと、ふつふつと滲み出す歓喜に声を知らず張り上げても咳の一つすらする事はない。
ジョセフは不敵に笑って、王を見上げる。
「魔法の四大系統は御存知の通り、火、風、水、土。しかしながら魔法にはもう一つの系統が存在します。始祖ブリミルが用いし、零番目の系統。真実、根源、万物の祖となる系統」
魔法の授業で聞きかじった単語を繋げていかにもそれらしい説明を立て板に水の例えの如く並べ立てるジョセフ。
まさかのジェームス一世の裸体シーン支援
きさま! 支援しているなッ!!
波紋の力を理解していなければ、ジョセフの口から流れてくる言葉がまるっきりの大嘘だとは誰も理解できないだろう。彼を良く知るギーシュでさえ(ジョジョはまさか本当に虚無の使い手だったのか!?)と考えるに至っていた。
まして波紋を知らないアルビオン王家の親子にとって、それを信じない訳には行かなかった。
「まさか……まさか! 零番目の系統、虚無だと言うのか!」
ジェームス一世は自らの身体に走った波紋の流れを、虚無の力だと誤解してしまった。
ジョセフは跪いたまま、ニヤリと笑って頷いてみせる。
「私はその力を、始祖ブリミルより授かりました。しかしながらこの力は軽々には見せられぬもの。ですがアルビオン王国のみならず他の王家に仇為す反逆者どもの蛮行をこれ以上見過ごす訳には行きませぬ」
いくらジョセフが奇妙な能力に事欠かないとは言えども、ジョセフの親友達は彼の真の能力をまだ見ていなかったことにやっと気がついた。
ジョセフの本領とはガンダールヴの能力でも波紋でもハーミットパープルでもない。
ジョセフの真の能力は、嘘を真実に変貌させるその頭脳と口先!
奇跡を見せ付けられた人間が、奇跡を見せつけた人間の言葉を疑うのは非常に難しい。ただでさえ甘い言葉が、乾いた砂に水を注ぐように王の心を支配していく。
老いたりとは言え一国の王が、平民の言葉を信用し、受け入れ、最後には始祖ブリミルが遣わした使徒であると完全に信用してしまう光景を、若者達は目撃した。
部屋の隅に置かれた水時計は、ジョセフ達が寝室に入ってから出るまでの時間を「23分」と刻んでいた。
後に、数人のメイジの共著により記された本は「23分間の奇跡」と題され、交渉術の秘伝の書として密かに受け継がれていくことになるのだが。
それはまた、別の、話。
To Be Contined →
GJ!
ジョセフ一国の王相手になんというハッタリ…さすがの肝っ玉だな
以上、投下したッ!
さあここからオリジナルの超展開がスタートしちまうが気にせず付き合って貰えたら嬉しいッ!
頑張れみんな、頑張れ自分!
投下乙です。
ペテン師の本領発揮でワロスw
ジョセフはやっぱりこうじゃなきゃ面白くないw
超GJ!
乙そしてGJッ!
歴代ジョジョ最高の策士
ジョセフ・ジョースターの見せる光景にwktk!
さすがはジョセフ! 国王さえも騙してのける口車!
俺たちには出来ないことを平然とやってのけるッ!
そこが痺れる憧れるぅ!
超GJ&乙です。
でもダービーには騙しあいで負けてしまったジョセフ。
あらぁちょっと油断しちゃったのかね。
オリジナル展開ドンと来い!
な訳でGJですね、
極悪人か大人物か…。
>>82 あれは未だに納得いかんのだがな、
波紋流し込んでダービーが触れた瞬間こぼれる様にすれば必勝だったのに。
俺もなぜ波紋をつかわん!ってなあ・・・
忘れてたんじゃね? ジョセフと作者が(w
DIOから、波紋の力についてある程度聞いているだろうと、警戒してたんじゃないかと思う。
長いことサボってたし、見破られないように波紋を流しきる自信が無かったんじゃないかと…。
DIO様に波紋入りハーミット千切られてたし
やっぱ鈍ってたんじゃね?
>>87 あれは波紋が届く前にハーミットちぎって逃れたんじゃないの?
身体に流されたらやっぱマズイでしょ(DIO的およびストーリー的に)
いやまあ、即座に見抜かれる思うぞ…。
あからさまに波紋の呼吸とかしだしたら。
イカサマが見破られても魂が抜かれかねんし(敗北感をうけたらアウトだったような・・・)
しかし、ジョセフの一流のペテンでどうなるかたのしみだ。
ジョセフ的には頼れるのは波紋よりペテンってことか
ジョセフの場合、波紋やスタンドはあくまでも道具であって、それをいかに使うかの方が重要なキャラだしね。
ぶっちゃけ、人間相手なら波紋やスタンドが無くても、知略と詐術だけでなんとかしちゃう人だし。
まぁダービーだって大した奴だからな
そういえば承太郎には波紋の素質は無かったのだろうか?
第三部読んでたとき、吸血鬼が相手なんだから教えとけよと思ってた
普通に考えるんだ。ホリィさんが明るく美人なママさんなのは波紋の才能があったからだと考えるんだ
6部での若さをみると波紋の呼吸をしていたと言われても違和感を感じない
以前にも言われてたな。
承太郎は若き日のジョセフのように生まれたときから波紋の呼吸をしていて、
修行してないから止め方が分からなくて若いままだとか。
つまりは こういうことですか
「少年よ ある種のことがらは死よりも恐ろしい(以下省略)」
その台詞のおかげでウォーケンを召喚するという危険な(ry
>>97つまりDIOを倒す際の罅割れみたいなのは波紋の仕業なのか
代理投下
い、今起こった事をありのまま話すぜ!
わ、私は食後の散歩中目の前に落ちてきた瓶に気付き拾い上げた。
どことなく…そうだな。死んでしまった妹の持ち物にならこんな感じの物もあったかもしれない。
女物っぽい感じの瓶だった。
だが近くに女性徒はいない。流石の私もスカートの中が見えてしまう位置にいつもいるわけではないからな。
こんな日もあるさ。
それに拾い上げたのは反射的な行動だったし、満腹感からぼーっとしてたんで誰のかはわからない。
だから私は一先ず手近な奴に聞いてみたんだが違うという。
その時、私は閃いた!
これってよくある缶のポイ捨てなんじゃねぇのか?
ジュースの缶じゃねーがこいつらは貴族、気に入らない香水位同じように捨てちまえるんだろう!
チッ、こんな態度が地球環境を汚染していくんだぜ(ここはハルケギニア?だが)
見つからないしたかが瓶一つに余り時間をかけたくは無いんで、そう考える事にした私は瓶を捨てることにした。
探すの面倒だからな。
そんなわけで通りすがりのメイドに瓶捨てを頼んだ私だったが…うっかり中身を入れたまま渡しちまった。
分別回収とかの精神に反する行為で、あまり紳士的とは言えん。
私も既に30過ぎ。瓶を渡した時の私はぼーっとしていて気付かなかったとはいえん。
そんな私にある一人の貴族が忠告してくれた。
片づけをする(そいつら貴族どもからすれば)目下の者への配慮を忘れぬその貴族の名はギーシュ・ド・グラモン。
中々見所のある奴。そう思った。
だがそれは、私の勘違いだった!
奴の行動は全て一つの事を目的とした計算済みのこと…!
私が瓶を拾うのも! 捨てようとすることも!
全て…ギーシュの掌の上のことだったのだ!
即ち…!
いらなくなった女からの贈り物である香水をわざと落とし、私に衆人観衆の前で中身を捨てさせる…ッ!
恋人だった女にこれ以上無い屈辱を与える行為…!
な、何をいっているかわからねぇと思うが、私も信じられなかった。
悪ふざけとか、うっかり落として隠そうとしたとかそんな可愛げのある行動じゃねぇ!
奴は今、泣きながら食堂を去っていく元カノに向かって流し目を送りながら、新しい女といちゃつき始めやがった!
だのにこの小僧ッどういうわけか私を睨みつけこう言った。
「もう容赦せん!決闘だ!」
勿論私の返事はこうだ。
「よかろう、受けて立つぜ!」
(常に男前だが)普段より3割増しで凛々しく私は宣言する。
ギーシュは、私に背を向け逃げるなよとだけ言って去っていった。
私はマジシャンズレッドを呼び出しカメを抱えさせると決闘に向け歩き出す。
そこへ現れたのは一応主人ということになっているルイズ。
「待ちなさい! なに勝手に決闘なんか約束してんのよ!」
「はぁ? 何言ってんだマスター」
私の返事にムカついたようだが、ルイズはそれを堪えて私にこう言った。
「怪我したくなかったら謝っちゃいなさい。カメ相手に決闘なんてこと自体馬鹿馬鹿しいんだから、今なら許してくれるかもしれないわ!」
「はぁ〜〜ッ!?」
回りからKYKYと連呼が始まる。
しかしッ、ルイズはそれをうるさいうるさいっと言って黙らせるとさっきより強い口調で言う。
「あのね? アンタは絶対に勝てないわ。勝てるわけがないわ! ちょっと喋れたり宙に浮けるようになった位で図に乗らないの! カメじゃ…ううんッメイジにはメイジしか勝てないのよ!?」
私は耳を疑っていた。勝てるわけがないだと?
メイジとカメ。勝てるわけが無い!だと?
さんざ貴族がどーとか言って威張り散らしてる分際でなんと言う弱腰ッ!
私はちょっぴりだが幻滅したぜ。ちょっぴりしか好感を持っていなかったからな。
目の前でこんなことが起きて言う事が止めろだぁ!?
目の前でこんな邪悪な行為を見せられて怒らない奴はいねえ!
貴族だのなんだのと言うなら、この女の…いや、紳士の敵に対して尚更じゃなきゃぁいけねえと私は思うッ!
私は止めようとカメを掴もうとするルイズの手をマジシャンズレッドに弾かせ、決闘場所である広場を他の奴に尋ねた。
そして移動する…決闘場であるヴェストリの広場は魔法学院の敷地内、『風』と『火』の塔とかいう塔の間にあった。
西側にあり、日中でも余り日は差さない…つまりは血とかがいくら流れようが目立たないという点において、決闘にはうってつけの場所ってわけだ。
人手も普段は少ないのかも知れねぇが、今は別だった。
元々決闘という行為自体娯楽に飢えている生徒を集めるには十分な餌になったようだ。
今回はそれに加えてギーシュの非道な行為が既に知れ渡り、義憤に沸く多くの生徒を集めていた。
そこに、ギーシュは一人たっていた。
取り巻きは誰もいないようだ。
「諸君! 決闘だ!」
マントを靡かせ、造花のバラを掲げた糞野郎のギーシュは憎しみを込め私を見下ろしている。
既に開始を今か今かと待っている奴の目には、私をどう料理するかしか無いように見える。
闘争心は満々ってわけか…私の能力も全くわからないくせにな。
一方私の方は既にあの糞野郎の行為に吐き気を催した同士達の連盟『嫉妬団』により情報はリークされている。
奴の能力は青銅のゴーレムを7体まで作ること。
他に少しの基本的な魔法を覚えている位だが、その青銅のゴーレムを全て同時に動かす事ができるというのが厄介らしい。
教師陣にもドットメイジの中ではとても評価されているらしい。
奴は優雅な動きで造花を一振りする。
花びらが一つ零れ落ち、甲冑を着た女戦士の形へと変わる。
…花びら一枚から人間サイズかよ?
しかも全部青銅製のようだが…これがどの程度のパワーで動くのかなどはパッと見じゃあわからん。
まぁ関係ないがな。
私は大声を出す為、息を吸い込んだ。
「僕はメ「我が名はジャン・ピエール・ポルナレフ」
何事かギーシュが言おうとしたようだが、そんな御託を聞くつもりはさらさらねぇ!
私の心は闘争心―少女を泣かせるのに一役買った自分への怒りと、義憤に燃えているのだ。
「傷つけられた一人の乙女の誇りの為、貴様如きを醜悪な輩を紳士と呼んでしまった我が愚かさの清算の為、ギーシュ・ド・グラモン。貴様を討つ!」
私の名乗りに、周囲を取り囲んでいた貴族達から歓声があがった。
それに比例するように交わされるギーシュへの罵声が奴の体を震わせている。
「もう…もう限界だーツ!!」
造花を振るう奴の叫びがヴェストリの広場に響く。
そして散らばった花びらは、黒光りする女兵士へと変わった。
数は三つ。どーみても青銅じゃねぇ…! アレは鉄だ!
「気をつけろカメ! 魔力は気力、気力は感情だ! あの糞野郎っ! この土壇場で!怒りでラインにまで上がりやがった!」
かわりに最初に作り出したゴーレムはいなくなっている。
ふむ…周りは慌てだしたようだが、私にとってはかえってやりやりやすくなったと言える!
動き出す七体のゴーレムと3体のゴーレム。どちらが厄介か考えれば数が多い方が面倒だ。
義憤に燃える私の冷静な部分は多くの戦闘経験からそう判断していた。
その間にもゴーレムは既に動き出している。
中々俊敏だ。素人なら一体だけでも対応することはできないだろう!
それには賞賛を送ってやってもいい…だが今の私には友が残してくれた力があるッ!
鉄のゴーレムが私の元へたどり着くより当然早くッ!
我が相棒、マジシャンズレッドが私が入った亀を上空へと投げた。
当然私が移動するのだから我がスタンドであるマジシャンズレッドも共に移動する事になる!
「アヴドゥル!俺に力を貸してくれ!」
私が操るマジシャンズレッドは広場上空十数メートルの高さで亀をキャッチ、両手での固定…そして大きく振り上げて私は、私の入った亀をギーシュへ向かい回転をつけて投げさせた!
「オオオオッ!」
空気を切り裂いて進む私に不意を突かれたせいかゴーレムは動きを止めている。
ギーシュは慌てるばかりで、逃げることもままならないようだ。
だが容赦はしない!
マジシャンズレッドの視界でそれを確認しながら、私の入った回転した亀は見事にギーシュの腹部に命中した!
周囲から上がる歓声!
一気に熱気があがる広場の中で、私はトーンを落とした声でギーシュに告げる。
「今のが私の分、次が貴様が傷つけたレディの分だ」
血反吐を吐き亀と同じ高さでこちらに視線を向けるギーシュに、私は容赦なくマジシャンズレッドの腕を振り上げた。
マジシャンズレッドのパワーとスピードで殴ったならば、最低でもコイツの顔を二目と見れないものにしてやることが可能だ。
だがその時!
先ほどギーシュに抱きついていた女生徒が、ギーシュの前に立ちふさがった!
「退けい!」
「嫌です!もう勝負はついた筈ですわ!」
私は十分ドスのきいた声で怒鳴りつけたつもりだったが、私の言葉にも怯まずその女生徒は亀を見返した。
場が騒然としていくが、この女性との言葉には聞き捨てならん部分が一つあった。私は大声を張り上げて否定する。
「断じて違う!報いを受けさせた時、名誉が回復された時が決着だ!」
私の返事に女生徒、ケティといったか? は表情を曇らせ、既にその影で怯えていたギーシュを見た。
「確かに、ギーシュ様は間違った方法を使われました…ミスモンモランシーには必ず謝罪いたします、ですが!」
そう言って再び私を見たケティの目には強い輝きがあった。
「ギーシュ様は私への愛ゆえに間違われてのです!お願いします、ギーシュ様にチャンスを、チャンスをくださいませ!私がギーシュ様を正して見せます!」
「なんだと?」
私は戸惑った。
この色ガキを正すだと?
未だマジシャンズレッドに振り上げさせた拳はそのままだったが、私は迷った。
それを敏感に感じ取ったのか、ケティが重ねて言う。
「私への愛ゆえに、間違われたこの方を、私の愛情で正したいのです」
言うなりケティはギーシュを抱き寄せる。
それを見た私は後一撃、多分ギーシュを殺してしまうかもしれない一撃をアヴドゥルのスタンドを使って加えるのがとても馬鹿馬鹿しいことのような気がしてきた。
チッ、興が殺がれちまったぜ。
遠い記憶が蘇る…私の脳裏には妹の敵を討とうと愚かな真似をした私をアヴドゥルは追いかけ、助けてくれた事が、思い浮かんでいた。
「ギーシュ・ド・グラモン、あんな真似までして得た相手だ。大事にするんだぞ」
「では!」
ケティの顔が輝いた。
私はうむ、とだけ言って彼ら若い恋人達から離れていく。
周囲もそれをきっかけに動き出し、ギーシュをなじりケティを褒め称えながら去っていく…
だから私は気付かなかった。
ケティは、母性的な笑顔を浮かべてギーシュを抱きしめながら、何を考えているか…
彼女はギーシュを抱きしめながら、ギーシュのポケットに少し切れ目を入れておいたことも思い出していた。
そして先ほど出来うる限り低い声で言った台詞などを思い出していた。
『わかったぜ!つまり、ギーシュはモンモランシーと付き合ってたけどゴミみたいに捨てるって事なんだよ!』
と言った事などを…思い出してその微笑みは深くなった。
腕の中には、ケティを女神か何かのように見上げる瞳がある。
ケティはギーシュにも聞こえない程の微かな声で呟いた。
「…計算通り。いえ、計算以上ね」
ギーシュはこの騒動で一気にラインメイジになった。
一時的な感情の高ぶりが齎した精神力とはいえ、一度そのハードルを越えてしまえばまた超えるのは容易になる。
恋愛とは、杖を交えず行う決闘なのよ。ミス・モンモランシー。
「クスクス、可愛がってあげるわ。ギーシュ」
ケティは年上のカレと見つめあい、少しするとカレを医務室へと連れて行った。
周りはそれを暖かく見守っていた…
ポルナレフ…気分は良くなったがルイズとはギクシャク。早く帰りてーなぁとも思い出している。
ギーシュ…モンモランシーに振られた上に評判は血に落ちたが、ケティと恋人に。涙目。
モンモランシー…ショックを受けて引き篭もりに。涙目。
ケティ…恋に勝利した。
To Be Continued...
436 名前: ポルジョルの中の人 [sage] 投稿日: 2007/12/14(金) 22:41:30 IIQTstsQ
プロバイダが規制対象らしくて本スレに書き込めません。
誰か代理投下お願いします。
今回はちょっとだけやっちゃったかなぁという気もする。
外伝も含めて…
ケティこええええええええええwww
ケティ黒いwwwwwww
こ、こいつはひでえええええぇww
というか10代の小娘にいいように使われていいのか30半ばw
なんと言う策謀……、伊達に恐ろしげな二つ名ついてないなケティ!
GJそして乙でした!
ケティ黒いw
そしてポルナレフの何というダメ三十路w
あの世でアヴさんが泣くぞw
謀略に長けたケティこわすw
>>88 OVA版のDIO様はビルの屋上を粉砕したジョセフの波紋を食らったのにもかかわらず
余裕の笑み浮かべながら、毛ほどもダメージ食らってないんだぜ?
>>115 頭部はともかく
身体は完全に馴染んでない=完全に吸血鬼じゃない
とか言ってみたり
>>116 それは無いだろう・・・・・・・・常識的に(ry
つうかケティSUGEE!!
勝利したのは(少なくとも)このスレじゃハジメテカモ。
,. -‐'''''""¨¨¨ヽ
(.___,,,... -ァァフ| あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
|i i| }! }} //|
|l、{ j} /,,ィ//| 『おれはギーシュの行動を許せずに決闘を受けて格好良く決めたと思ったら
i|:!ヾ、_ノ/ u {:}//ヘ 本当は10代の少女の恋のだしにされていいように使われていた』
|リ u' } ,ノ _,!V,ハ |
/´fト、_{ル{,ィ'eラ , タ人 な… 何を言ってるのか わからねーと思うが
/' ヾ|宀| {´,)⌒`/ |<ヽトiゝ おれも 何をされたのか わからなかった…
,゙ / )ヽ iLレ u' | | ヾlトハ〉
|/_/ ハ !ニ⊇ '/:} V:::::ヽ 頭がどうにかなりそうだった…
// 二二二7'T'' /u' __ /:::::::/`ヽ
/'´r -―一ァ‐゙T´ '"´ /::::/-‐ \ 催眠術だとかスタンドだとか
/ // 广¨´ /' /:::::/´ ̄`ヽ ⌒ヽ そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
ノ ' / ノ:::::`ー-、___/:::::// ヽ }
_/`丶 /:::::::::::::::::::::::::: ̄`ー-{:::... イ もっと恐ろしい女の戦いの 片鱗を味わったぜ…
カメナレフの人投下乙
うわぁあ くぅろぉーーーいぃ!w
ここで黄金の精神に目覚めたモンモランシーが意外な爆発力を見せるとか?
「吐き気をもよおす『邪悪』とはッ なにも知らぬ無知なる者を利用する事だ……!!
自分の利益だけのために利用する事だ… 小娘がなにも知らぬ『使い魔』を!!
てめーだけの都合でッ! ゆるさねえッ! あんたは今 再び オレの心を『裏切った』ッ!」
GJです、作者さん!
邪悪の化身ケティ!
GJ
>>122 ブチャラティwwww
ブチャが大変お怒りです
もうこのケティはDIOみたくアルファベット表記でいいような気がしてきたww
GJ!
>>126 なんかイニシャルみたいだな
よし、いっそ漢字にするか
『 鬼 帝 』
育郎様w
奴の名はケティ・・・K.Tと書いてケティだ・・・
奴はその凶悪な策謀と無知の人間を利用して自らの利益のみしか考えない
二つ名は燠火(おきび)
ケ テ ィ
通称『 鬼 帝 』
何でこんなに知名度高いんだよwwwww
皆アレ読んでるのかよwww
図書館の精大人気だなw
なんという知名度
図書館の精の人気に嫉妬したw
分からん漏れにkwsk
>>138 触手で触手なお話です。……ああ、窓に! 窓に!
図書館の精は鬼帝様の奉仕種族かw
ちょwww
皆知ってたのかw
鬼帝(K.T)が使い魔召喚したら間違いなく図書館の精になるなwwww
ふとスレ見たらなんだこの流れ
図書館の精大人気過ぎるwww
絶望した!ネギま読んでるのにわからなくて絶望した!
>>145 メ欄
そういやジョジョに触手ってあったっけ?
知りたい人は
投稿図書、ネギまで検索かけて、奥へ進んで投稿板のノーマル掲示板へ。
オリOKの方をクリックして、 恐怖!図書館に潜む謎の怪物!を読むといいよ
この流れに噴いたw
やっぱ良作は皆に知られるものなんだな
>>146 つ 法王の緑
つ 隠者の紫
つ 凶悪連結器
つ ストーンフリー
触手っぽいスタンドってこんなもんかな?
150 :
仮面@代理:2007/12/15(土) 13:40:13 ID:0mF2NY8L
151 :
仮面@代理:2007/12/15(土) 13:40:47 ID:0mF2NY8L
シエスタとモンモランシーの二人は、ヴァリエール家に到着してすぐ、ヴァリエール公爵夫人カリーヌ・デジレの出迎えを受けた。
滞在する部屋を準備させてあるので、今晩は疲れを癒すようにと言われ、二人はそれぞれ別の部屋に通された。
シエスタにとって、ヴァリエール家は「有名な貴族」であり「大きなお屋敷」でしかない。
しかし、モンモランシーは家名の『格』を気にしてしまう、ヴァリエール家は自分より遙かに目上なのだ、よってモンモランシーは、シエスタ以上に緊張していた。
あてがわれたゲストルームは、二つのベッドルームがリビングで繋がっており、モンモランシーは片方のベッドルームに行くとすぐに寝間着に着替えて眠ってしまった。
モンモランシーは緊張のあまり疲れてしまったのだろう。
一方、シエスタはなかなか寝付けず、窓から空を見上げていた。
エレノオールから聞いた話では、カトレアは生まれつき体が弱く、今まで何人もの高名な水のメイジに治療を依頼していたらしい。
だが、体を伝わる水の流れを何度治しても、またすぐ別の場所に異常が出てしまい、根治することができないのだ。
そんなカトレアの体を治すため、エレノオールは魔法アカデミーでの研究を志したと言う。
他のメイジが見向きもしなかった『波紋』の効能に、興味を惹かれたのも当然だと言える。
シエスタとモンモランシーがシュヴァリエを賜って間もない頃、タルブ村で治癒の力を使い活躍をした二人組の話が、エレノオールの耳に届いた。
エレノオールは、すぐに関連する資料を調べ上げ、オールド・オスマンへアポイントを取った。
オールド・オスマンは、モンモランシーを『将来有望な水のメイジ』として紹介し、シエスタを『オスマンと共に波紋を研究していた人物の曾孫』として紹介した。
「波紋を受け継ぐ者…か…」
ベッドの上でシエスタが呟く。
出発前、オールド・オスマンから、『波紋戦士』の立場は盤石でないと聞かされた。
何十年も昔、リサリサと共に波紋を研究していたオールド・オスマンは、波紋が人体に及ぼす影響だけでなく、魔法への干渉をも研究していた。
『水の秘薬』の効果を劇的に高めるのも、水系統の『治癒』を促進するのも波紋作用の一つ。
応用すれば、『毒』を排出することも、『覚醒作用』を持たせることも、『安心感』を得ることもできる。
波紋を好意的に受け入れて貰うためにも、またシエスタの立場を確固たるものにするために、オールド・オスマンはあえてエレノオールの耳に『波紋』の噂が届くようし向けたのだ。
あくまでも『治癒』の力として波紋を印象づければ、カトレアを治癒できなかったとしても、ヴァリエール家とのパイプは太くなる…そう見越してのことだ。
だが、シエスタには、そんなことはどうでも良かった。
ルイズが治してくれた足をさすりつつ、タルブ村に行く途中で乗り捨てた馬を思い出す。
仮にルイズが吸血鬼だとして、ルイズが人間との共存を望むとしたら、シエスタはルイズを殺す必要はないと考えている。
オールド・オスマンは、それを許すだろうか?
ルイズの血は、際限なく食屍鬼を作り出し、世界を混乱させる恐れがある。
やはりルイズを殺さなければいけないのだろうか?
なぜ私が波紋使いになってしまったのだろうか?
結論の出ない思考を続けているうちに、眠気がだんだんと強くなっていく。
シエスタは用意されたネグリジェに着替え、ベッドに入った。
その日、久しぶりにルイズの夢を見た。
152 :
仮面@代理:2007/12/15(土) 13:42:22 ID:0mF2NY8L
翌朝、シエスタとモンモランシーは、ゲストルームのリビングで朝食をとっていた。
ヴァリエール家の朝食は魔法学院よりも早いので、魔法学院での朝食と同じ時間に食事をとれるようにと、公爵が二人に気を遣ってくれたらしい。
魔法学院の料理を任されているマルトーは、学院長が直々にスカウトした程の腕前だが、ヴァリエール家もそれに引けを取らなかった。
それほど、朝の食事は豪勢で、しかも食べやすいようにと様々な工夫が凝らされていた。
「ねえ、シエスタ、あなたは緊張してない?」
「え?」
シエスタが顔を上げると、向かい側に座っていたモンモランシーと視線が重なった。
モンモランシーの瞳は力強くも見えたが、どこか儚げだった。おそらくカトレアを治療する緊張感が勝っているのだろう。
それは無理もないことだと、シエスタは理解していた。
国内有数の水のメイジに治療を施されても、病気が根治しない…そんな相手を治癒しろと言われたら緊張するのは当たり前だろう。
「大丈夫ですよ、治せるかどうか、やってみなければ解りませんけれど…ほら、オールド・オスマンが出発前に『今のミス・モンモランシーなら微細な流れも解るじゃろう』って仰っていたじゃありませんか」
「うん…そうね、そうだけど……ねえ、私が何て言われてるか知ってる?」
「え?『香水のモンモランシー』ですよね」
「そうよ、私が一番得意なのは調香。食べ物に使われてる香草や薬味は臭いで解るわ。でも…今は駄目よ、緊張しちゃって、ちょっと自信ないの。弱気になると駄目ね…私」
「そ、そんなことないです!だって、タルブ村で、どんなに酷い怪我人もすぐに治療できたじゃありませんか。今回だって、悪い結果にはならないはずです」
「……怪我と病気は違うのよ。ミス・カトレアを長年治癒していた水のメイジがいるって聞いたでしょう?その人はトライアングルなんですって。私、その人と比べられるのかと思うと…緊張して食事の味もよく分からないわ」
「それでも、私たちは私たちの役目を果たすべきです、たとえどんな結果になっても」
シエスタの言葉を聞いたモンモランシーは、驚き目を見開いた。
「強いのね」
「私は強くなんか無いです、弱いから、必死にならざるを得ないんです」
「…そっか、そうよね。弱いから必死になるのよね…」
モンモランシーは、改めてシエスタの顔を見た。
シエスタは強い、迷いがない、今ならそう思える。
平民出身のシエスタに学ぶことがあるなんて思いもしなかった、だが、今ではそれも快く受け入れられる。
タルブ村で、治療のために奔走するシエスタの行動力、そして強い意志、それは魔法学院では滅多に見られない物だった。
貴族という立場に、家名にアグラをかいている生徒達と違い、シエスタは実力だけが評価されている。
そのハングリー精神が無かったモンモランシーの父親は慢心し、水の精霊を怒らせる真似をしてしまったのではないか。
父親を悪く言うつもりは無いが、父も典型的な貴族主義の貴族であり、シエスタのような目的意識を持たない貴族だと思えた。
だからこそ、今のシエスタがとても眩しく、そして力強く見えるのだ。
「ね、シエスタ。私も波紋が使えたら自信がつくかしら?」
「それは解りませんけど…でも、モンモランシーさんが波紋を使えたら、もっと沢山の人を治せると思います。だからモンモランシーさんにも波紋を会得して欲しいです。自信なんて…その後考えればいいじゃないですか」
「…そうよね。ありがとう。シエスタ」
朝食が下げられた後、メイドから今日の予定を告げられた。
ヴァリエール公爵との面会を済ませてから、カトレアの治療に当たって欲しいとの事だった。
二人は魔法学院の制服に着替え、マントを付けて杖を携えた。
お呼びがかかるまで部屋で待機しているのだが、この時間がやけに長く感じられた。
実際には、着替え終えてから五分と経っていないのだが、何かを待つ時間はとても長く、緊張に満ちている時間でもある。
パタパタパタと、誰かが廊下を走る音が聞こえてきた。
お呼びがかかるのだろうと思い、二人は居住まいを正したが、シエスタはふと疑問を感じた。
廊下を『走る』。それ自体公爵の住まう館では、異常なことではないか?
そして不安は的中した。
コンコン、と急ぎ調子なノックの音が鳴る。
モンモランシーはすぐさま「はい」と返事をした。
「大変です!カトレア様が発作を起こされました、すぐにカトレア様を診て頂けませんか!」
メイドの声に驚き、二人は顔を見合わせた。
二人は同時に頷くと席を立ち、カトレアの部屋へと急いだ。
153 :
仮面@代理:2007/12/15(土) 13:42:53 ID:0mF2NY8L
カトレアの部屋に入った二人は、急ぎカトレアの容態を見るべくカトレアに近づいた。
ベッドの上で苦しそうに呼吸するカトレアの姿は、エレノオールとは正反対とも言える容姿だった。
シエスタの胸が高鳴る。
ピンク色の髪の毛はルイズを彷彿とさせる、顔つきもルイズによく似ている、姉妹だから当然かもしれないが、それでもシエスタにとっては大きな事だった。
カトレアの従医が杖を向けて小声でルーンを詠唱しているが、カトレアが落ち着く様子はない、ゼェゼェと息を切らせて苦しそうにしている。
「行きましょう」
シエスタが歩き出した。
モンモランシーが一歩遅れて続き、カトレアの傍らへと立つ。
「君たちがシュヴァリエを賜ったメイジかね?」
カトレアの従医が、杖を引き、二人に向かって問うた。
「「はい」」
男はカトレアに視線を戻すと、左手で自分の頭を押さえた、どうすれば良いのか解らないのだろう。
「今回のは特に酷い、水の濁りが治まらないんだ」
「濁りが?」
モンモランシーが聞き返しつつ、カトレアの体に杖を向ける。
窓から差し込む日差しに、間接的に照らされたカトレアの体は、姉のエレノオールよりもわずかに濁って見える。
それがどれだけ異常なことかモンモランシーにもよく解る。
「シエスタ!波紋を流してちょうだい…体の末端から様子を見るわ」
「はい!」
シエスタがカトレアの手を覆うように握る、そして、深く息を吸い、横隔膜をコントロールし、体の浄化能力を活性化させる波紋を流した。
その上にモンモランシーの杖が触れる、波紋がどういった効果を生み出すのか、水の流れから感じ取るためだ。
結果として、波紋はカトレアの治癒に効果があった、体のほんのわずかな変色と、カトレアを襲っていた強烈な悪寒が治まり、呼吸がだんだんと安定してきたのだ。
その間、モンモランシーはひたすらカトレアの体を観察していた。
『より微細な流れを感じ取りなさい』オールド・オスマンの言葉である。
タルブ村では、主に怪我人を相手に治癒を繰り返していた。
外傷の酷い者もいれば、内臓にダメージを負った者もいる、病人の場合は後者と同じで内臓に目を向けなければならない。
モンモランシーは、波紋によって浄化されていく体から、いくつかの『原因』を抽出していった。
三十分ほどすると、カトレアの体から汗が流れ出す、その汗は脂汗であり、冷や汗でもあった。
人間の体は、少しずつ毒を溜め込み、『水』と共に排出される。
尿や汗がそれだ、だが、カトレアの体は解毒作用が極端に低下している。
シエスタから『波紋』のサポートを受けることで、溜まっていた毒が汗として排出されたのだとしたら、間違いなくカトレアは浄化能力が極端に低下している。
肝臓か、脾臓か、腎臓か、それとも水の流れを生む心臓か。
……モンモランシーは、心を落ち着ける香水を持ってくれば良かったと、頭の隅で考えていた。
154 :
仮面@代理:2007/12/15(土) 13:44:08 ID:0mF2NY8L
「ふう…」
シエスタがため息をつく。
一時間以上波紋を流し続けていたが、全力で流していた訳ではないので体力的には疲れていない。
だが、精神的な疲労は確かにあった。
ルイズによく似ている人物が、目の前で苦しんでいるというだけでも辛いのに、それがルイズの実姉だと言うのだ。
自分が抱えている秘密…ルイズを殺すために波紋を学んだという事実を秘匿したまま、カトレアを治療すると思うと、どこかやるせない気持ちがわき起こる。
身体の様子を調べていたモンモランシーが杖を収めると、傍らで見ていた従医が入カトレアに杖を向けた。
「……ふむ、小康状態か、いや二人ともありがとう、このところカトレア様の発作が長引いておられたので、私一人では体力的にも辛いところだった。助かったよ」
そう言って額を拭う、どうやらこの医者も長く治癒を続けていたらしく、疲れが見えていた。
「カトレアは落ち着いたの?」
突然聞こえてきた声に、シエスタとモンモランシーが驚く。
声の主はエレノオールだった、いつの間にかカトレアの部屋に居たのだ。
「今のところは安定していますわ」
モンモランシーの言葉に安堵したのか、エレノオールは「そう」と呟いてため息をついた。
エレノオールは椅子を引き、カトレアの隣に座る。
汗でべたついたカトレアの髪の毛を手ですくと、寂しそうに、そして愛おしそうにカトレアを見つめた。
「ミス・モンモランシー。ミス・シエスタ。カトレアの病状は解ったでしょう…原因もよく分かっていないの。何か感じたことはある?」
「身体の中が全体的に弱まっています、毒を溜め込んでしまうような…」
モンモランシーが呟くと、エレノオールは従医に目配せをして「あれを持ってきて」と言った。
従医が退室すると、しばらくしてから何枚かの絵図面らしきモノを持って部屋に戻ってきた、エレノオールは絵図面を受け取るとモンモランシーにそれを手渡した。
「これは…日付が沢山書き込まれてる…もしかして、ミス・カトレアが今まで発作を起こした箇所ですか?」
「そうよ」
エレノオールがモンモランシーの言葉を肯定する、シエスタが絵図面をのぞき込むと、そこには人体の簡素なイラストと、いくつもの矢印と丸印、そして日付が書かれていた。
「これは…ここ一ヶ月以内のモノしか書かれていませんね」
シエスタが呟くと、エレノオールは窓の外を見つめつつ、言い聞かせるように喋り始めた。
「あの子が死んだって聞かされた時、カトレアはひどい発作を起こしたの。それから発作の頻度が多くなって……今は立ち上がることも辛そうなの」
シエスタの身体が、ぶるっと震えた。
あの子とは、ルイズのことだ。
それに気付いたとき、シエスタの身体は恐怖と武者震いで震えたのだ。
155 :
仮面@代理:2007/12/15(土) 13:45:40 ID:0mF2NY8L
「ん…」
「カトレア、目が覚めた?」
エレノオールがカトレアの顔をのぞき込むと、カトレアは薄目を開けて、自分を取り囲む人たちの姿を見回した。
身体を起こそうとしてベッドに手をついたカトレアだが、体力が衰えているためかうまく上体を起こせない。
「だめよ、寝ていなさい。…お願いだから、ね」
エレノオールが優しくカトレアの頭を撫でると、カトレアは小声で呟いた。
「……そちらのお二人が、魔法学院のお医者様?」
「ええ、そうよ。ルイズと一緒に学んだ仲なんですって」
「そうなの……あの子が沢山迷惑をかけたでしょう?」
カトレアはほほえみを浮かべた、どこか懐かしむような笑みはルイズの笑顔を彷彿とさせる。
厳しさのあったルイズと違い、カトレアは慈愛に満ちた瞳をしている。
だからこそ解る、ルイズが目指していた憧れの人とは、きっとこの人に違いないと、直感的に感じるのだ。
「私はカトレア・イヴェット・ラ・ボーム・ル・ブラン・ド・ラ・フォンティーヌ 。まずはお礼を言わせていただきますわ…。ところで、お二人の名前も聞かせてくれないかしら」
「はい。私はモンモランシー・マルガリタ・ラ・フェール・ド・モンモランシ」
「私は、シエスタ・シュヴァリエ・ド・リサリサです」
「あら、貴方がシエスタさんね、ルイズからの手紙に貴方のことが書いてあったわ」
「えっ」
静かに微笑むカトレアの瞳は、とても優しかった。
魔法学院で、自分に声をかけてくれたルイズのように、慈愛に満ちた瞳だった。
この場にいる誰も気付かなかったが、カトレアの隣に座るエレノオールの表情が少し強ばっていた。
ルイズはカトレアに懐いていた、対して自分はルイズに恐れられていた。
手紙を貰っていたカトレアが、とても羨ましく思えた。
156 :
仮面@代理:2007/12/15(土) 13:48:09 ID:0mF2NY8L
一方、場所は変わり、トリステインの首都トリスタニア、その一角。
『魅惑の妖精亭』では、相変わらずロイズ(ルイズ)とロイド(ワルド)の二人が仕事に追われていた。
ルイズは高くもなく低くもない、中堅どころの人気を得ていた。
ワルドは表に出ることなくひたすら裏方仕事を続けている。
店主のスカロンが『訳ありなのに顔を出しちゃまずいでしょ』と気を利かせてくれたのだ。
ワルドは、自分の心境の変化に驚きつつ、これが当然だとも思えていた。
ルイズと再開して母を蘇らせ、リッシュモンに復讐すると誓ったあの日から、価値観がすべて一度崩れ去った気がする。
一度崩れた価値観は、ルイズを中心として再構築され、今は自分でも驚くほど皿洗いが気に入っている。
つかの間だと解っていても、平和なのだ、この場所が。
魔法衛士隊に正式に入隊する前は、実力を見せつけるために無茶な任務に志願し、何度も視線をくぐり抜けて仕事をこなした。
時には農村を襲うオーク鬼を退治したり、はぐれの火竜を退治するなどもした。
その時、村人から感謝されたりもしたが、正直なところ何の感慨も涌かなかった。
たが今は違う、皿洗いをしたり重い荷物を運んだり、閉店後の後かたづけをして、ルイズや他の店員から礼を言われるのがとても嬉しかった。
トリステインの腐敗も、己の名誉欲も、母を蘇らせるという目的も、すべて過去のもの。
今自分がやるべき事は、リッシュモンに復讐する機会が来るまで、ここで与えられた仕事を全うすることだ。
つかの間の平和であったとしても、平和は尊い。
暗闇に光が差し込んだような晴れ晴れとした気分で、ワルドは今日も皿洗いを続けていた。
ルイズは、そんなワルドの変化を感じ取っていた。
仮面のように張り付いた作り笑いではなく、飾り立てもしない健やかな笑みがとても嬉しかった。
思い出の中の、青年時代のワルドよりもずっと魅力的に思えるのだ。
閉店時間が近くなり、ルイズが厨房へと入ってきた、ワルドの隣に並び顔をのぞき込む。
「手伝うわ」
「いや、いいさ、すぐに終わる」
「こんなに沢山皿が残ってるじゃない、私も手伝うわよ」
水場に積み重ねられた食器はかなりの数だった、タワーのように積み重なる食器を一枚一枚手に取り、洗っていく。
ワルドの付けている義手は人間と見紛う程のものだが、精密な動作は完璧ではないので不意に力がかかってしまう。
昨日、それで二枚も皿を割ってしまったので、ワルドはおそるおそる食器を洗っていた。
ルイズが横から手を伸ばすと、皿を左手に持ち、右手でキュッと音を立てて拭う。
すると不思議なことに、ルイズが手で拭った箇所が、汚れ一つ無いほど綺麗に磨かれていた。
「…?」
ワルドが首をかしげると、ルイズは掌を見せた。
ルイズの手のひらは、銀色の毛で覆われており、ブラシのようになっていた。
手首に仕込んだ吸血馬の骨が、黒と銀色の毛を掌に伸ばしていたのだ。
毛の先端は微細で、堅すぎず柔らかすぎない、どんな細かい汚れも落としてしまう。
「便利だな」
「でしょう」
カチャカチャと音を立てながら、食器を洗い続けていると、不意にワルドの動きが止まった。
ルイズは、どうかしたんだろうか?と思いつつワルドの表情を見た。
そこに居るワルドは、かつてニューカッスル城で見たような、感情の見えない顔をしていた。
ルイズの肘がワルドの腕を軽くノックする、ワルドはハッと我に返り、ルイズの方を見た。
「どうしたの?」
「耳を貸してくれ」
ルイズがワルドに密着すると、ワルドはルイズの耳元に口を近づけ、小声で呟いた。
「『遍在』がラ・ロシェールに居るんだが、フーケが何者かに襲われているのを見つけた。相手は……」
「相手は?」
「おそらく、クロムウェルが蘇らせた、ウェールズの近衛兵だ」
「…!」
157 :
仮面@代理:2007/12/15(土) 13:49:44 ID:0mF2NY8L
ルイズの表情が、心なしか厳しくなり、髪の毛がほんの少しだけ逆立つ。
「洗い物は頼むよ、僕は先に部屋に戻る」
手の汚れを軽く洗い落として、ワルドは部屋へと足を向けた。
「…助けてよ、お願い」
ルイズの呟きが、やけにハッキリと聞こえた。
ワルドは、他の店員達に顔を見られぬよう、俯いたまま部屋へと戻っていった。
怒りでも悲しみでもない、目の前の敵を排除するという目的のために、ワルドの表情は凍り付いていく。
その顔を見られたくないのだ。
部屋に入ると、ベッドの上に転がり、目を閉じた。
マチルダ・オブ・サウスゴータは、魔法学院での名をロングビルといい。盗賊としての名を土くれのフーケという。
彼女がどんな理由でラ・ロシェールにいるのか解らないが、とにかく今は彼女を助けるために尽力せねばならない。
ワルドは、トリステインで最も多く、また長距離にわたって遍在を使えると自負している。
『魅惑の妖精亭』で本体は身を隠し、遍在を使って各地の調査に当たらせていたのだ。
だが、遍在ばかりに頼っては居られない、レコンキスタからの暗殺者や、そのあたりのごろつきに『魅惑の妖精亭』が襲撃されるかもしれないのだ。
だから本体にもある程度の精神力を残しておく必要があった。
だが、今はそんなことも言ってられない。
全精神力を遍在に配分し、本体が気絶するまで精神力を使い、全力でフーケを助けるつもりなのだ。
ルイズは、フーケを信頼している。
そしてフーケもまたルイズを信頼している。
仮に、フーケがレコン・キスタに捕らえられたとしたら、水の魔法などで『騎士』の正体がルイズだと知られてしまうだろう。
それを防ぐためには、フーケを殺してしまうのが一番良いのだ。
だが、ルイズは『助けてよ』と言った。
甘い、甘すぎる。
容赦なく敵兵を殺す吸血鬼でありながら、心を許した仲間には甘い。
だからこそ自分はルイズが好きなのだろう。
そんなことを考えながら、ワルドは目を閉じて意識を集中させていった。
158 :
仮面@代理:2007/12/15(土) 13:50:22 ID:0mF2NY8L
ロングビルは、シエスタとモンモランシーを送り出した後、オールド・オスマンに頼み休暇を貰っていた。
アルビオンに残している身内が心配なので、休みが欲しいと申し出たのだ。
ロングビルの故郷はアルビオンである、現在はなりを潜めているが、戦争をしていることに違いはない。
ラ・ロシェールからアルビオンに行くには、密航しか方法がない。
オールド・オスマンはロングビルを引き留めたが、ロングビルの決意を崩すことはできなかった。
事実、ロングビルは焦っていた。
ティファニアに物資を援助している商人と、このところ連絡が付かない。
その上、ルイズから渡されたメモには、ティファニアが虚無の使い手であり、レコン・キスタが虚無の使い手を捜していることまで書かれていた。
レコン・キスタからワルドに与えられた任務の一つに、『始祖のオルゴール奪取』があった。
レコン・キスタが虚無の使い手と、キーアイテムを探しているのは間違いない。
ルイズはロングビルに気を利かせたつもりだが、逆にそれがロングビルを焦らせることになった。
ロングビルの熱意に負けたオールド・オスマンは、ついに休暇を認めたが、危険を感じたらすぐに帰ってくるようにと何度も念を押した。
そして今、ロングビルはラ・ロシェール近くの旅籠で盗賊に襲われ、街の外に逃げ出していた。
森の中で、左の上腕に火傷を負い、荒く息をついている。
ただの盗賊が相手なら、ここまで後れを取ることも無かったが、メイジ崩れの盗賊があいてでは分が悪い。
その上、かなりの訓練を積んでいるのか、統率のとれた動きでじわりじわりとロングビルを追いつめている。
「はぁッ…はぁ…ちくしょう、ちくしょうっ…」
絶体絶命だった。
一人、二人、三人、四人と、敵が姿を現していく。
相手はおそらくトライアングル、それが四人。
火、土、水、風で構成された部隊が相手では、フーケの勝ち目は皆無だった。
「…ただじゃやられやしないよ…!」
そう言って、折れた杖を構える。
すると、距離を置いてフーケを取り囲んでいた四人も、杖を構えた。
フーケは、正面にいるメイジの姿を凝視した、薄汚れたローブは胸の前が裂けており、鉄でできた角が深々と刺さっている。
この盗賊達は、フーケが練金で作り上げた槍を食らい、一度は倒れたのだ。
それで安心していたのがいけなかった、死んだはずの盗賊達が内蔵を引きずりながら起きあがり、魔法を使ってきたのだ。
風の魔法を防ぎきれず、フーケは杖を折られてしまった。
「冗談じゃないよ、ゾンビかい?」
心なしか、フーケの声は震えていた。
ゆっくりと、フーケを囲う包囲網が狭まる。
正面にいる男がぴたりと歩みを止めると、不意にフーケの視界が白く濁った。
159 :
仮面@代理:2007/12/15(土) 13:51:13 ID:0mF2NY8L
「ふあ…」
身体から力が抜け、あくびが出る。
まずい!と思ったフーケは、頭をかきむしり、髪の毛を引っ張って眠気に耐えた。
(ああ、これはスリープ・クラウドだ、私を眠らせる気なのか、このゾンビどもは)
強烈な眠気に耐えきれず、意識を失いそうになったその時。
目の前のから、ごろりと首が落ちた。
「!?」
驚いたフーケの後ろで、ドンッと爆発するような音が聞こえた。
後ろを振り向くと、もう一人の盗賊が、何かの魔法で吹き飛ばされ宙を舞っていた。
突風が吹き荒れ、風の刃が盗賊を切り刻む、特に念入りに首と胴を切り離され、ズタズタになった体が地面に落ちた。
残った二人の盗賊は、フーケではなく、突然現れた敵に向けて杖を構えた。
「死人を使って女を襲うとはな」
(どこかで聞いた声がする、そうだ、ルイズの連れていた男の声だ)
薄れゆく意識の中で、フーケはワルドの戦いを見つめていた。
エア・ニードルとエア・スピアーを駆使して、容赦なく首をはねるその姿は、死神のような雰囲気を身にまとっていた。
手際よく切り落とされた首が転がり、フーケを見る。
ぱくぱくと数秒間口を動かすと、それっきりピクリとも動かなくなった生首が、フーケをじっと見つめていた。
フーケは、生首の瞳を眠そうな眼で見返すと。
(ざまあみな)
と呟いて意識を闇に落としていった。
To Be Continued→
代理投下乙
えらい遠くまで偏在飛ばせるな、ワルド。精神が今どうなってるんだ。黄金じゃないと思うが…
このワルドはカッコよすぎだw
GJ!
しかし風のスクウェアって恐ろしいな
慢心のない黄金ワルドマジスゲー
トリスタニアからラ・ロシェールの遍在を操作して、おそらく一体で
トライアングル4人を奇襲とはいえ倒す…惚れそうw
今思った
エレ『オノ』ールじゃなかった?
エレ『ノオ』ールってなってるけど。
俺の記憶違い?
エレオノール・アルベルティーヌ・ル・ブラン・ド・ラ・ブロワ・ド・ラ・ヴァリエールだな
4レスいただきま
168 :
黄金の使い魔:2007/12/15(土) 16:44:48 ID:/QKcZexl
「魔法…って!ジョ、ジョルノさん、いえジョルノ様って貴族の方だったんですか!?
そうとは知らず無礼な真似をして申し訳ございませんっ。」
「いや、貴族であるかないかと聞かれたら僕は貴族ではありません。
説明しにくいのですがこれは魔法ではなく……」
どう理解できるように説明すればいいか考えているとさらなる訪問者が。
「朝から騒がしいわよ、あなた達。」
部屋を覗き込んだトカゲの風貌をしたモンスターを従えるその女はキュルケという名。どうやら彼女にも僕のG・Eは見えていないようだ。
ではこの生物はどう説明できる?スタンドでは無いとすると…しかし大柄なトカゲと言い切るには尻尾の先に灯る炎が余計だ。
絵本や漫画で見るようなファンタジックなモンスターが目の前にいる。
G・Eで確認すると確かに生物としての器官や骨格を持っていることが分かる。
どうにもスタンド能力としては説明できない結果。
「へぇ、改めて見るけどなかなか整った顔をしてるわねぇ、貴方。」
なんだこの女。僕の嫌いなタイプだ。
「で・も。やっぱりアタシのフレイムの方がよっぽど使い魔として使えそうよね。
平民の使い魔なんかで役に立つことなんてあるのかしら?身の回りのお世話 意・外・に。
まぁルイズにはお似合いだけど。」
やはりこのトカゲは彼女達に“見えて”いる。
「何よ、ジョルノには物を生きも…もがもが」
ふぅ、あぶない。すんでのところで口を塞ぐことが出来た。
スタンド能力を不特定多数に知られるということは弱点を作ることに繋がる。
「ご主人様に向かって何をしてるのよ、この、馬鹿犬!」
「痛ッ!」
容赦なく向う脛を蹴り飛ばされる。酷い女だ。
169 :
黄金の使い魔:2007/12/15(土) 16:45:21 ID:/QKcZexl
「へぇ、ジョルノって言うんだ。またね、ジョルノ。」
「は、はぁ…」
キュルケという女はそのまま階段の方へと向かっていったようだ。
朝食、の時間か。そういえば昨日から何も食べていないな。
故郷ネアポリスに帰ってピッツァが食べたいな……シンプルなマルガリータを…
「あ、仕事に遅れちゃいますのでこれで失礼します、では。」
シエスタも続けて去っていった。
「ッ!何をしているんだ君はッ!?」
「何って着替えよ、着替え。あなたが着替えさせてくれないから仕方なく自分で着替えてるんでしょう。」
問題はそこじゃない、僕は一応男なんだ。その目の前でいきなり裸になる女性がいるかッ?
「別に使い魔に見られたって何も恥ずかしくは無いわ。」
ああもうッ!こいつと話していると神経が磨り減る。
バタンッと扉を閉めて廊下に出て待ってみたが、別に待つ必要も無いことに気づいたので勝手にあちこちを見て回ることにした。
G・Eを出現させたまま廊下で人とすれ違ってみるがやはり何の反応も無い。
拳を顔の前で寸止めさせても不自然な瞬きさえしない。
やはり…スタンド能力として片付けられないものなのだろうか。
ふと上着の中に何か物体の感触があることに気づく。
そうだ、携帯電話を持っていたんだった。
その方面に仕事を持つファミリー員から送られた、試作機ではあるがGPSによる位置情報確認も出来る代物だ。
最近公的利用に向けた衛星を使ったサービスの実用化が進められているという話。
そのテスターとして作られたこの携帯ならば、今いる場所がどこなのか容易に分かるはずだ。
170 :
黄金の使い魔:2007/12/15(土) 16:45:54 ID:/QKcZexl
「…おかしいな、地図のどこにも表示されないぞ…?」
ひょっとしたら電波が不安定なのかもしれない。
中庭に出てみれば少しはマシになるか?
ここに来て幾度と聞いた使い魔、魔法、貴族といったふざけた単語。
そのせいでスタンドとスタンド使いの概念を他所へ一時保管して置かざるを得なかった僕の頭。
多数生まれたあらゆる疑問は中庭に出て一瞬で吹き飛んだ。
ようやく上り始めた太陽と空に淡く残る月。
この目は異常を来たしていない筈だが月は確かに二つに見える。
携帯の画面にはやはり自分の現在地は表示されていない。
ともすれば。
僕は、紛れもなく異世界に迷い込んだ訳だ。
使い魔、魔法、貴族。
その言葉は新興宗教故に拾ってきた言葉ではない。
この“世界”に在るべくしてある言葉だったのだ。
「何を空なんて見上げているのよ。珍しいものでも無いでしょうに。」
いつのまにか傍にルイズが到着していた。
─────
──────────
────────────────────
支援
172 :
黄金の使い魔:2007/12/15(土) 16:46:32 ID:/QKcZexl
「ふ〜ん。月が一つで、貴族と平民という概念が無ければ魔法さえ存在しない世界、ね…
面白い作り話ね。小説にすればどこかの偏屈な人間なら買っていってくれるんじゃない?」
まぁ想像通りの返答か。いや仕方ないさ、逆に彼女が一人で僕の世界に迷い込んでしまったとしたら、
誰も彼女の言う話など本気にする訳が無い。
「大体ね。あなた、あんな凄い魔法が使えるじゃない。何故隠そうとするのか理解できないけど。
でもあなたの世界には魔法なんて存在しないなんて言っておきながらいきなり矛盾してるじゃない。」
ここでルイズにスタンドの詳細を教えた方がいいのだろうか。
いや、ここが異世界であるとしても敵がいないという訳ではない。
スタンド使いだけが脅威ではない。使い魔と呼ばれるモンスター達を見れば分かる。
そしてスタンド能力を魔法と呼ばれた、ということはスタンド能力に近い何か、がこの世界にはある。
そう考えればここは黙っていた方がいいだろう。
「それにしてもさっきの魔法、一体どの系統に属するのかしら。
召喚……とはまた違った感じよね。物質自体が変化してたんだから。それにしても謎よね…」
「そんなことよりも。何故僕は床の上で食事しなければならないのです?」
「あなたは貴族じゃないから。
魔法が使える=貴族って訳じゃないし、それに自分でもそう言っていたでしょう?
平民が貴族と一緒に椅子に座って食事するなんてあり得ないことよ。
あなたは私の使い魔だから特別に床の上で食べさせてあげてるの。それが嫌なら──」
指差す方向は中庭。見れば使い魔達が揃って餌を食べている。
僕はアレと同類、ッて訳ね……
「はぁ…大体、使い魔の能力の凄さは主人の能力の凄さってことの証明になるのに……
なんで隠したがるのかしら…ブツブツ……
むしろ無理やりにでもさっさと披露しちゃうのがいいわね…ブツブツ……」
となんだか厄介な事を言い出したが、ここは無視しておこう。
つづく
支援
GJ!
ジョルノ、よくブチ切れないで床でご飯食べられるな
あれ?なんだかディスプレイが滲んできたよ、おかしいなぁ
なんかジョルノっぽくないね
こういうクロスって大抵プライドが許せなくて厨房でor外に出て行っての2通りでお決まり過ぎるから
とりあえずジョルノの目上に対してある程度従順な性格をじっくり考えてみたらこうなった
黄金体験でつくったカエルって食えるのかな…
カエルどころか
果物とかニワトリとか何でも作って食えると思う
某ダンジョンでは貴重な回復薬&食料だが
そうは言っても紙とか骨とか変えられると悔しいので
能力を使わせる前に抹殺してる
コルネとブ男とACDCを嫌いになるゲームだよね
結局いつも能力にマジシャンズレッドを装備する破目になるんだよね
メイドインヘヴン!
世界は一巡し全員ネコミミになr…げふんげふん!
IDが変更される!
ネコミミアヌビス神とかネコミミセッコとか
ネコミミワムウとかネコミミギアッチョとか想像しちまった……
あれ?最後のは普通にホワルバだな
もうフーゴの続きは読めないのだろうか……待ってます……
同意する。
フーゴいいとこで止まりすぎ
仮面キテターーー!
ワルド… なんという遠隔操作型スタンド
ハイエロファント以上のこの性能は間違いなく黄金ワルド
サーレーだけどテスト終了と2ch復活で何とか書けそう。
またクソにナラナイダロウカ・・・。
サーレーさんは大好きなので気長に待ってるよ。
微塵の知識も無く一から十までパソコンセットしてもらって、
知人に泣きついて、センブラ入れてもらった者としては、
強い言葉は言えないけど、専門ブラウザ(でいいのかな?)
をダウンロードすることを勧める。
専ブラ使いこなせてないけど、便利だよー。
検索も楽だし、大杉で見れないってことが無くなるし、巡回してるスレも見やすくなるし、
安価にカーソル置くだけで内容が表示されるし。
書き手さんも読み手も入れたら便利だと思う。
>>185 ゼロの方はともかく、ジョジョキャラが猫耳になったところでなぁ……笑えるけど。
猫耳エルメェス兄貴とかどうするよ。
猫耳吉良でスタンドとペアルック…
いや何でもない
.;;\ ././ .|
| ':;;;;;;〉ー''" ̄ ̄ ̄ヽ/ .|
/` 三ミー ヘ、_
ゝ' ;; ,, , ,, ミミ , il ゙Z,
_〉,.. ////, ,彡ffッィ彡从j彡
〉,ィiiif , ,, 'ノ川jノ川; :.`フ公)了
\.:.:.:i=珍/二''=く、 !ノ一ヾ゙;.;.;)
く:.:.:.:lムjイ rfモテ〉゙} ijィtケ 1イ'´
〕:.:.|,Y!:!、 ニ '、 ; |`ニ イj' この耳はロンドンの美術商から買ったものでね…
{:.:.:j {: :} ` 、_{__} /ノ
〉イ 、゙! ,ィ__三ー、 j′ 隣に変な石で出来た仮面もあったがこっちを買ってしまったよ
,{ \ ミ \ ゝ' ェェ' `' /
-‐' \ \ ヽ\ 彡 イ-、
\ \.ヽゝ‐‐‐升 ト、 ヽ、__
\ ヽ- 、.// j!:.} ` ー 、
ヽ\ 厶_r__ハ/!:.{
´ / ! ヽ
>>196 こんなジョースター卿じゃあ
ディオが捕まった所でジョジョが完結しちゃうwwww
やった!!!第一部完!!!
第二部:波紋使いのいない世界に蘇る壁の男達
一部で死ななかったウィル・A・ツェペリが二部の主役に
…は、ならないか流石に
>>196 この後、その仮面はルイズに召喚される訳ですね。
>>200 もっともらしく言いやがって納得しちゃったじゃないか
>>200 お前頭良いな。
ってことは、『仮面』の作中で起きた悲劇やらの発端は
>>196卿がうわなにをするやめr
メイジたちが地球に来たら魔法が使えなくなる替わりに
その分のエネルギーが身体強化の方にいってしまい
能力が吸血鬼や柱の男並みになったりして
じゃあ仮面のルイズが地球に来たら虚無のエネルギーまで足されてとんでもないことに
キュルケ「私のスタンド『フレイム』はその名のとおり炎を操る!必殺技はクロスファイヤーハリケーン!」
ギーシュ「これが僕のスタンド『ヴェルダンデ』第一の人形『ワルキューレ』だ」
ルイズ「無駄無駄ァ!!貴様のスタンドが一番なまっちょろいぞギーシュッ!!」
>なまっちょろい
まぁ、ギーシュだしな。
ルイズ「私が毎晩使い魔に与える仕置きはこの殺伐とした状況には格別のものだ
真っ黒としたドロドロの情念をクソ長い呪文に込めて放つ
魔法が当たると今日一日のモヤモヤが全て吹き飛んで
驚くほどの元気が体の中から沸いてくる
信じられないほどのイイ叫び声で
また新たな冒険や戦いに出て行こうという気になる
まさに始祖からの恵みだ」
いつものルイズ乙。としか言えない
諸君 私はサイトが別に好きなんかじゃない
諸君 私はサイトが別に大好きなんかじゃない
サイトが行うありとあらゆるしぐさが大好きなんかじゃない
デフルを抱えたサイトが雄たけびと共に私を守ってくれるのが好きなんかじゃない
空中高く私を両腕で抱きかかえる形になった時など心がおどるなんてことはない
サイトの操るゼロ戦の後部座席からサイトを見守るのが好きなんかじゃない
悲鳴を上げると飛び出してきたサイトが敵兵をデルフでなぎ倒した時も胸がすくような気持ちにはならないんだから!
投下しますねー
相手の船が貨物船に近接し、相手の船員が乗り込んでくる。
「空賊だ!抵抗するな!…おや、貴族の敵まで乗せてるのか」
ルイズたちを下品に舐めるように見る。
「こりゃあ別嬪だ、どうだい、俺らの船で皿洗いでもやらねえか?」
男は下品に笑う。
「下がりなさい、下郎」
「驚いた、下郎ときたもんだ!」
男は大きくのけぞって笑う。
「おいてめえら、こいつらも運びな、身代金もたんまり貰えるだろうさ」
数人の男が無言で武器を奪い取り、船倉に押し込まれる。
「やれやれ、空賊に襲われるとはついてないな」
ワルドが呟く。
貨物船の船員たちと一緒に狭い部屋に詰め込まれた一行。
「急いでるのに…」
貨物船の船長がガハハと笑う。
「おい、娘ちゃんたち、あんたらも急ぎなのかい?」
「ええ、そうよ」
「だとよ、野郎ども。このバカな空賊どもは俺らの船に乗り込んだつもりらしいが…」
船長は口の中から工具を吐き出し、右手の義手を器用に外す。その義手の中から拳銃が出てくる。
「俺らをわざわざ案内して乗り込まれたってことを教えてやろうじゃねーか!」
船員が歓声をあげる。
一行はポカンと口をあける。
ダービーはトランプをいじって、特に興味は示していない。
船員が工具を受け取り、扉の鍵をこじ開けようとすると、ワムウが横に立ち、扉を蹴り飛ばす。
「な、貴様ら何を…」
ワムウが頭部に一撃を加え、見張りの男二人は一瞬で床に沈む。
「兄さんもやるねえ!」
船員が笑い、倒れた見張りの男の道具を拾い上げる。
「野郎ども!まずは武器庫を襲うぞ!この型の軍船ならおそらく甲板の直下部あたりにあるはずだ!」
船長が船員を率いて、走り出す。
ワムウたちもそれに続く。
「脱走だァーーッ!奴らの脱走だ!」
脱走に気づいた空賊員が叫び、直後に船長に撃たれる。
走りながらワムウが船長に尋ねる。
「船長室はどこだ?」
「なんでそんなこと尋ねるんでい、お兄さん?たぶんそこの階段をあがって大広間を片っ端から探せば見つかると思うが」
「頭を潰してくるのが手っ取り早いだろう」
ワムウは進路を変え、階段を上がっていく。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよワムウッ!」
ルイズが追いかけようとするがワルドが制する。
「君は杖も無い、足手まといになるだけだ。彼なら空賊くらい敵じゃあないはずだ」
ワルドはスピードを元に戻し、ルイズの手を引きながら船長を追いかける。
船員は武器庫とプレートのある部屋の扉を蹴破る。
中に居る空賊は驚いて銃を向けるが、その引き金を引くよりも早く銃弾が空賊の肩を貫く。
「野郎ども、杖と武器を片っ端から集めろ!」
船長は銃で撃たれた空賊の襟首をつかみ、拘束しようとして相手の顔をまじまじとみる。
「お、おめー…アルビオンの兵士になったんじゃねーのか!シャチ!」
「…ってことは…貴方たちは貴族派なのね?」
船長の息子であったその兵士は空賊に扮した貴族派だということを話し、彼らは一息つく。
が、ルイズだけは一息をつけなかった。
わなわなと震え、その兵士に詰め寄る。
「あの筋肉バカを止めてこないとッ!船長室はどこなの!?」
「え、えっとここが地下ですから…階段を二つあがったフロアの奥に居るはずです」
「わかったわ、ありがとうね!」
ルイズは感謝の言葉もそこそこに、杖をひっつかんで部屋から駆け出す。
ルイズは船長室に行くまでにかなりの人間に会うことになり、一々説明することになると思ったのだがそんなことはなかった。
通路の兵士は倒れ、武器を折られ、呻き声を漏らし、積み上げられていた。
「何なんだあいつは…」
「助けてくれ…助けてくれ…化け物だ、畜生…」
「ザミエル…ザミエル…ザミエル…」
「落ち着いて素数を数えるんだ…」
日ごろの『教育』の成果かどうかはわからないが、とりあえず死者は見当たらなかった。
もっとも、ルイズはワムウが相手を見当たらないようにできることなどは百も承知であった。
おそらく船長室の真下に来たであろう、船の上からは叫び声が聞こえ、床が何度もきしむ。
「しょうがないわね、弁償代はワムウ持ちよ!」
ルイズは上に杖を振り上げ、船の天井を吹っ飛ばす。
いきなり大穴が空き驚いたのか、ワムウが上から覗き込んでくる。
「どうした、ルイズ」
「どうしたもこうしたもないわよ!その人たちは敵じゃないからやめなさい!」
ルイズの心からの叫びであった。
「ハハハ、間一髪助かったよ」
アルビオン王国皇太子、ウェールズ・テューダーは、気にしなかったように笑う。
「彼があと10人アルビオンにいたら、貴族派に負けていたことはなかっただろうね」
「ほ、本当にすみませんでした!」
ルイズが平謝りする。
「ほら、ワムウあんたも謝るのよ!」
「いや、いいんだ、試すためとはいえ、空賊などと名乗ったんだから反撃されるのは当然だ。
あの戦い振りは驚嘆に値するよ、君の使い魔だけでなく、君の父上もね」
皇太子は近衛兵であったシャチに声をかける。
「ま、誠にすみません!」
若い兵士は地面に手をつける。
「いいといっているんだ、それより君の傷は大丈夫かね?」
「はっ!数日のうちには完治すると思います!」
「そうか、では大事にな」
「失礼しました」
彼を見送った後、ウェールズはこちらに目を向ける。
「それで、トリステイン大使殿はどういったご用件かね?」
「アンリエッタ姫殿下より、密書を言付かって参りました」
ワルドが頭を下げる。
「ふむ、それで君たちは?」
「僕はトリステイン王国魔法衛士隊、グリフォン隊隊長、ワルド子爵と申します。そしてこちらが
姫殿下より大使の大任をおおせつかった、ラ・ヴァリエール嬢とその使い魔、そして友人たちです」
「なるほど、してその密書とやらは?」
ルイズはポケットの裏側を切り裂き、縫いこんだ密書を取り出し、一礼してウェールズ皇太子に渡す。
皇太子は真剣な面持ちで手紙を読み進め、途中で顔を上げる。
「姫は結婚するのか?あの、愛らしいアンリエッタが。私の可愛い…従妹は」
ワルドが無言で頭を下げ肯定する。
皇太子は最後の一行まで丹念に読み終えると、こちらに微笑んだ。
「了解した。姫はある手紙を返して欲しいということなのだな、そのようにしよう。
しかしながら、今その手紙はニューカッスルの城にあるのだ。多少面倒だが、ニューカッスル城までご足労願いたい。
シャチ、『イーグル』号の案内を頼む」
『イーグル』号は大きく迂回し雲の中を慎重に抜けていく。
ウェールズは向かうべき城の正面から砲撃を行う巨大な船を忌々しげに見つめる。
「あれが貴族派の艦?」
ルイズはシャチに尋ねる。
「ええ、かつての我々のアルビオンズ第一艦隊旗艦、『ロイヤル・ソヴリン』号です。
もっとも、奴らは我々を最初に破った地、『レキシントン』号と呼んでいますがね」
「そう、あの艦の反乱から全てが始まった、我々にとっては悪夢のような艦さ。『レヴァイアサン』号も
『ドレッドノート』号も奪われ、『ヴィクトリー』号は大破。残った船はこの『イーグル』号だけさ」
ウェールズ皇太子が話に割り込んできた。
「この『イーグル』号ではあの艦と殴り合いなどはとうてい不可能さ、だからこうして空賊に扮してこそこそと
通商破壊をするしかなかった。もっとも焼け石に水だがね。だからこうして雲中を通り、
大陸下からニューカッスルに近づく。そこに我々しか知らない隠し港があるわけだ」
艦はアルビオン大陸の下に入り込み、光がささなくなる。
シャチによれば薄々大陸の下に我々の隠し港があることは気づいているということだが、
視界もない大陸の下で座礁や衝突、同士討ちや奇襲の危険を犯すことを考えているのか、
それともこの程度の艦が一隻あったところでどうということはないと考えているのか、あるいはその両方か。
兎にも角にも、この隠し港だけは攻撃を受けていないということであった。
暫くの航海の後、真上に直径三百メイルほどの穴が空いている場所にでる。
「一時停止」
「一時停止、アイ・サー」
「3ノントで上昇」
「3ノントで上昇、アイ・サー」
ほぼ同じ速度でアルビオン兵士が乗り込んでいる貨物船も追従する。
「まるで空賊ですな、殿下」
「まさに空賊なのだよ、子爵」
岸壁に接岸した艦からルイズ達は降りると、背の高い年老いたメイジが近づいてくる。
「ほほ、これはまた、大した成果ですな。殿下」
「喜べ、パリー。硫黄だ、硫黄!」
ウェールズの言葉に集まった兵士が歓声をあげる。
「おお、硫黄ですと!これで我々の名誉も守れるというものですな!
先の陛下よりお仕して六十年、こんな嬉しい日はありませぬぞ、殿下!」
泣き崩れならが笑う臣下にウェールズも応じて笑う。
「ああ、これで王家の誇りを叛徒どもに示しつつ、名誉の敗北をすることができるだろう」
「栄光ある敗北ですな、この老骨、久々に武者震いをいたしますぞ。して、ご報告なのですがその叛徒どもは
明日の正午に城攻めを開始するとの旨伝えてきました。殿下が間に合ってよかったですわい」
「そうか、間一髪とはこのことだな!」
一しきり笑いあったあと、パリーは一行に顔を向ける。
「して、その方たちは?」
「トリステインからの大使達だ。重要な用件で、王国にお見えになられたのだ」
パリーはなるほどといった顔つきで頷き、こちらに微笑む。
「これはこれは大使殿、私めは殿下の侍従を仰せつかっておりますパリーでございます。
遠路はるばるようこそ、このアルビオン王国へ。この有様で大したもてなしはできませぬが、
今夜ささやかな祝宴が催されますゆえ、ぜひとも出席くださいませ」
こうして、老メイジは頭を下げ、去っていった。
「では、ついて来たまえ、僕の部屋に案内しよう」
To be continued.
流星投下!(スタースローダウン)
ふたご座流星群みえねえよ クソックソッ!
もうちょい書いてるけどいい切れ目がみあたらないんでとりあえずここで切り
水曜までにはもう一度投下できるかな
投下乙!GJ
ワムウはやっぱすげえw
そして船長がコブラwww
ふたご座流星群て今流れてるの?
>>214 12月14日前後がピークらしいです
北海道はくもりっぱなしだよ クソックソッ!
ペルセウス座流星群はよくみえたんだけどね
Whamの人GJ〜〜
どうしてだろうか……
アルビオンが修羅の国に思えてきたwww
ワムウの人乙&GJ
・・・なんですが、一部王党派と貴族派を間違ってませんか?
かもしんない 途中酔いながら書いてたから
ちょっと推敲してきます
風氏乙です。ワムウはやっぱりいいですな。
それはそうと各作品をおふざけでルー語変換したら腹筋が破壊されたwwwジョジョ語変換したらもはや文として成り立っていなかったwww
風の方乙そしてGJ!
よかった、王子が食べられないでよかった……
代理投下開始します。
450 名前: ポルジョルの中身 [sage] 投稿日: 2007/12/17(月) 00:23:03 IK2G2Vw.
色々とやってみたけど無理だった。別の専ブラ探そうかと思う…
どなたか代理投下をお願いします。
何故か外伝だけあっさりできたので、今回はこちらだけにします。
451 名前: 外伝6 コロネとメロンは世界を救う ラルカス著 [sage] 投稿日: 2007/12/17(月) 00:24:06 IK2G2Vw.
領地の境界から屋敷まで一日をかけてたどり着いた屋敷でジョルノは壁際に置かれている様々な彫刻にジョルノは見入っていた。
大理石で出来た少年の像。今にも動き出しそうな躍動感に満ちた一匹の獣に挑む勇壮な男の像。この世界の英雄達らしき像。
薄布を纏った少女。ヴィーナス。etcetc…土の魔法で作られたそれらはどれも素晴らしい出来だった。
滑らかな表面には傷一つ無く、製作者の意志が込められ時には写実的でないものや不自然なポーズで固定されたものもある。
だが年代が古い物もあるだろうが、全て固定化の魔法により腐食や変色が防がれ埃なども丁寧に取り除かれている。
「見事な彫刻ですね」
「お気に召しましたか? 確かそれは…三百年ほど前のトライアングルが製作したものと聞いております。あぁそちらはこの屋敷の主人であるヴァリエール公爵の手による物で」
周りを警戒するように右へ左へと世話しなく目を動かしながら、説明するバーガンディ伯爵にジョルノは顔を向けた。
「ほぉ、ヴァリエール公爵が?」
「はい。ヴァリエール公爵は彫刻などを始めとした芸術に強い関心を持っておられるだけでなく、ご本人も土系統の魔法による彫刻制作で高い評価を得ておられます」
説明を聞くジョルノの周りでは深く帽子を被ったテファも、並べられた彫刻やそれ自体が芸術品に値する程の細かな細工が施された壁面などを興味深そうに眺めている。
ラルカスも貴族らしく多少は芸術方面に造詣があるらしくテファが興味を持ったものを一つ一つ丁寧に説明していた。
所でトリスティンを始め、この世界では絵画に名画と呼ばれるものは殆ど無い。
貴族達は魔法を使えば然程時間をかけずにジョルノが眺めているような石像が作れてしまうからだ。
水魔法で水や油を動かすことはできるが、色を作ったり配置したりするセンスも要求されてしまい彫刻に比べ長い時間がかかる。
その時間に見合うものができないというのがハルケギニアでの評価であり、その評価故に志望する人の数が少なくなり作品数もすくなくなるという状況なのだ。
ちなみに平民の手仕事には芸術は行えないとさえ考えている者が多い為平民の芸術家はほぼいない。
「ところで伯爵…なにか良いフレーズありませんか? 実はまだ彼女に贈る詩ができてなくて」
「一度位できなくても「駄目です!ワタシの命が危ないでしょう!?」
震えるバーガンディ伯を見てジョルノはため息をつく。
メディチ家歴代の美術コレクションを収蔵するウフィツィ美術館やミケランジェロの傑作『ダヴィデ像』が所蔵されているアカデミア美術館には及ばないが…
このヴァリエール家所蔵の品々は十分美術館と呼べる程の品揃えがあるというのに、何故婚約者に震える年上男の為に詩なんぞ考えなければならないのか?
ここに到着するまでも含めて、これで8回目となればジョルノの口からため息が出るのも仕様が無かった。
「では代わりの物を送ってはどうです?」
「念のために用意もしてありますが、やはり女性には詩や花が受けが良いらしくて…」
まぁ彼女の実家がコレですから普通のプレゼントでは満足できないのかもしれませんが、とバーガンディ伯は自嘲気味に笑った。
そういうものかとジョルノは適当に相槌を打つ。
こちらの女性で仲がいいのはテファ位だったし、元の世界でも女性経験が豊富とはいえないジョルノには判断が付かなかった。
母親に問題があったせいかジョルノは、平均的イタリア人男性程軽薄にはなれない性質だった。
「お待たせしてすまない、バーガンディ公爵。よく来られた」
「ヴァリエール公爵!」
かけられた声にバーガンディ伯が振り向く。
ジョルノ達もそれに習うように声のほうを向くと、初老の男女が穏やかな笑みを浮かべつつジョルノ達の元へと歩いてくるのが見えた。
バーガンディも笑顔を浮かべてそれを出迎え、ジョルノは一歩引いて声をかけられるのを待ちながら今暫し彫刻を眺める。
確かにこのヴァリエール公爵は血筋を辿れば王家にたどり着く程のこのトリスティンでも有数の貴族だ。
だが仲良くするべき相手かどうかというと、微妙な所だ。
長い歴史を持つ。それは彼らの中では美点だが、平民が金で地位を買い貴族になるゲルマニアにおいては古くからいる貴族と親交がある事に嫌悪感を持つ者もいるのだ。
そしてそんな者達こそ今上がり調子だったりするのだから、ジョルノとしては今回はどんな相手か見ることができればそれでよかった。
「すまないがエレオノールはあいにくと急な用ができてお会いする事ができない」
「そ、そうですか! いやぁ残念です。HAHAHA」
今のバーガンディ伯爵の態度では彼の紹介でヴァリエール家と親交を持っても長く続くとも思えないというのもあった。
馬車内でも少し話を聞いたが、本当に結婚できるのか?
ジョルノにはそれが疑問だった。
「ネアポリス伯爵、でしたかな? 初めまして。彫刻に興味がおありですか?」
未来の義理の息子を伴い、ヴァリエール公爵はジョルノの隣に立った。
手が差し出され、ジョルノはその手を取る。
「初めまして。ええ、私も芸術には少々興味があります。この石像、公爵の作品だという事ですが…」
「ええ、私も土系統を得意とするメイジ。練習がてら始めた事がちょっとした特技に成ったというわけです」
ジョルノは公爵の返事を聞きながらその薄く色づいた大理石の像を眺め、ついで公爵の隣に立つヴァリエール公爵夫人を見る。
「奥様ですか。初めまして、ジョナサン・ブランドー・フォン・ネアポリスと申します…公爵、この像はもしや奥様をモデルにされたのでは?」
「おや、おわかりになりますか!」
公爵は照れたようにジョルノの言を認め妻の方をチラチラと見た。
ヴァリエール公爵夫人は、一歩引きジョルノにも軽く挨拶をしただけにとどめていたので、ジョルノも彼女の手の甲に挨拶をしたりはしなかったが。
ジョルノはそれを不気味に感じていた。
夫人はバーガンディ公爵より年上の娘がいるとは思えない程若々しく見えるし、身長だけで言えばテファよりも小柄な女性だ。
が、その視線の動き、そこから感じられる微かな表情は、公爵などより余程手ごわい相手のようにジョルノには感じられた。
「ええ、奥様への想いの強さでしょうか。ここに飾られた石像の中でも特に苦心が窺えます」
畏怖とか色々と感じられましたとは言わなかった。
ただ視線を交わす。奇妙だがそれだけで分かり合える確かなものがあった。
だがジョルノは既に公爵から視線を外している。
これで確認できたからだ。
このヴァリエール家の真の支配者が誰であるか…
彼らの視線が交わるその一瞬、たったの一秒にも満たない時間が齎した深い共感を、ヴァリエール公爵夫人は敏感に感じ取ったのを理解したからだ。
彼女の小さな手が微かに揺れて…公爵の背中に滝のように汗が流れ始めたのはジョルノの勘違いではないだろう。
先ほどまでの深い共感から芽生えた同士への暖かい視線が今は間逆の冷たいものへと変わっているからだった。
今度はヴァリエール公爵から視線を外したジョルノの手が動き、少し離れていたテファが夫妻の前に来る。
「ご紹介するのが送れて申し訳ありません。私がさる方からお預かりしているティファニア嬢と、私の「使い魔のラルカスと申します。公爵様」」
ジョルノに紹介されるまでもなくラルカスはガリア貴族としての作法に乗っ取りヴァリエール公爵夫妻に挨拶をする。
それを見た夫妻は眉を顰めた。
亜人が使い魔となるという話は夫妻にしても聞いた覚えが無い。
だがその脅威度から犬や猫、カエル等よりは上だと認識している。
メイジの腕を知るには使い魔を見ろ、そう末の娘にも教えている夫妻はジョルノのメイジとしての腕を高いものと考えたようだ。
「亜人を使い魔としているとは…伯爵の事は主にビジネスの世界で噂として聞いておりましたが、メイジとして優秀でおられるようですな」
「戦闘は得意ではありません。彫刻なども…あぁ一つ。治療に関しては多少覚えがありますが」
「治療? ですと」
夫妻の間に緊張が走る…テファの胸をヴァリエール公爵が見たからだけではない。
いや、確かに公爵は更に流す汗の量を増やしていたが、何か彼らにとって重要なことに踏み込んだのかもしれない…ジョルノにはどーでもいいことだったが。
ジョルノとしてはさっさとテファを紹介させて欲しかった。
テファが今後どうなっていくかはジョルノにもわからない。
だが、テファの母は今アルビオンの貴族派との戦争において劣勢に陥っているというアルビオン王家の国王の弟の妾だった。
当然テファの父はその国王の弟であり、テファがその事を証明すれば王太子ウェールズに次ぐ王位継承権を得てしまうのは明白だった。
もし表に出る事になった場合、テファは妾との子供でしかもエルフというハンデも背負ってという事になる…
そんな考えが浮かべば、たかが大貴族夫妻相手に挨拶位はしておかせたかった。
テファが緊張した様子でジョルノを少し見上げたが、ジョルノは笑顔を見せじテファの手を引いてやるだけに留めた。
「ええ、体に空いた穴位なら修復して見せますが。さ、お二人に「ネアポリス伯爵。折り入ってお願いしたい事があります」
「カリーヌッまさか!?」
「はい。見ていただいたほうがいいでしょう。治癒だけを見れば、これほどの腕のメイジに出会ったことはありません」
妙な事になってきた。
ジョルノは思わぬ展開に戸惑う牛とテファは置いてきたほうがよかったかもしれないと思った。
そんなジョルノ達の事など見えていないように夫妻は見つめあい、言葉を交わすことも無く公爵が負けた。
幾分肩を落とした公爵がジョルノに遠慮がちに言葉をかける。
「ネアポリス伯爵。貴方の腕を見込んでお願いします。私の娘を診察していただきたい」
「…まずは詳しい話を聞かせていただけますか?」
少し考えてから、ジョルノはそう答えた。
頷き、ヴァリエール公爵はジョルノらを別の所へ…その一度ジョルノに診せたい娘の下へ向かいながら説明する。
ヴァリエール公爵家には3人娘がいる。
長女はバーガンディ公爵を恐れさせている程キツイが、今は王都だ。
末娘もどうやらキツイ性格だが魔法が苦手らしい。今は魔法学院だ。
その二人の間に挟まれ、どういうわけか二人とは全く逆の特徴を備えているのが、これから引き合わされようとしている次女カトレアだという。
つまり性格が大らかで病弱、胸が大きいってわけですか。
ヴァリエール公爵がカトレアの部屋に入り説明をする間部屋の外で待ちぼうけを食らったジョルノは冗談半分にそう考えたのだが…
公爵が部屋から出て、ジョルノ達に部屋に入るよう促す。
カトレアの部屋に通されたジョルノは…ついさっき冗談半分に考えた通りのカトレアらしき女性を目にして少し頭が痛くなった。
「今度のお医者様はとてもお若いのね。ごめんなさいね、こんな格好で」
部屋に入ってきたジョルノを見て、動物に囲まれて大きなベッドに横たわっていた二十そこそこの女性が上半身を起こす。
優しい性格で、怪我をした動物などをよく拾ってくるとは公爵から説明を受けていたが、その周りにいる動物達の種類、動物達が体を起こそうとするカトレアを気遣うような動きを見せたのに、ジョルノ達は驚いた。
「いえ、そのままにしてください」
彼女がカトレアらしい。見知らぬ侵入者に動物達が少し警戒するような動きを見せ、カトレアがそれを嗜める。
母親と同じ桃色がかったブロンドだが、表情…とりわけ眼差しが穏やかで、向けられると奇妙な安心感が心の隅に沸くのをジョルノは感じた。
寝巻きに包まれたプロポーションは女性らしく成熟しており、寝巻き姿で客を迎える事に恥じらいを覚えるような人でもあるようだ。
「初めまして。ジョナサン・ブランドー・フォン・ネアポリスです。ご説明があったと思いますが、貴方のお父上から一度貴方を診るよう頼まれました」
「ジョナサン?」
それに、勘も鋭いかもしれない。
入った所で足と止めていたジョルノは少し部屋に足を踏み入れ、次いでテファとラルカスも部屋に入り順に自己紹介をする。
ジョルノはその間に未だ警戒を解かない大きな蛇を目で圧して、カトレアの傍に寄った。
テファとラルカスの自己紹介を聞きながらも、その動きを見逃さなかったカトレアは微笑を浮かべてジョルノを迎えた。
「貴方の事はジョナサン君でいいのかしら?」
「ご自由に。シニョリーナ。キスのご挨拶をしてもよろしいですか?」
手のかかる子供でも見るような目に微かに戸惑ったジョルノは軽口を一つ叩いてみた程度の気持だったが、その一言で蛇やら鳥やら、カトレアに拾われた動物達が逃げ出し始めた。
ヴァリエール公爵の放ち始めた圧迫感のある雰囲気のせいだ。
ラルカスも少し軽薄とも取れる態度が気に入らず止めろと目で告げるが、ジョルノはラルカス達に背を向けている。
祈る事。ラルカスにできるのはそれだけだった…カトレアも戸惑ったような表情を見せていた。
「まあ!」
「…変なことを言いましたか?」
動物達が逃げるのを見たジョルノはそう尋ねた。
カトレアは首を振り恥じらいとちょっぴり残念そうな顔をする。
「いいえ。私、貴方のような若い紳士の方に言われるのは初めてだったの。でも私はこんな体ですから、何かうつってしまうかもしれないわよ?」
「そんなことを言う人がいたんですか?」
「私の体のことが何も分からない方は時折そう…お父様、どうかされましたか?」
苦笑したカトレアの言葉を聴きながら、ジョルノは柔らかい掛け布団に少し沈むカトレアの手を取りその指先と甲に口付けをする。
少し冷く、細いというより痩せた手だった。
「ネアポリス伯…! すまないがさっさと見てやってくれませんかね」
堪え切れなかったのだろう。ヴァリエール公爵の怒りの篭った声が背中にかけられ、ジョルノはカトレアの手を掴んだまま彼女の額に手を当てたりして診察していく。
カトレアにそういう態度を取ったメイジがその後どーなったかは尋ねないほうがいいのだろうなとか考えながらだったが。
今にも爆発しそうな公爵を宥める夫人の声を聞きながら係りつけのメイジや今までカトレアを診たメイジの記録を読んでも見たが、大した記録が残されていない…
患者の容態をしっかりとした記録を取って残すという考えが一般的でないのかもしれないし、ヴァリエール家としては残したくないか残してしまわない方がいいとメイジ本人が考えているのかもしれない。
その辺りは想像するしかないがこれでは詳しい状態を知るのがジョルノ一人の感覚になり、ジョルノの感覚や知識が間違っていて誤認してしまう可能性も高まる。
波紋によるスキャンに加えて、ジョルノは誤認を減らす為にカトレアに幾つかの質問をする。
水系統のメイジなら、カトレアの体を流れる水から彼女の体調等を感じ取ってしまうので余りそうした記録は取っておかないのかもしれないとちょっと不思議そうにしたカトレアを見てジョルノは思った。
フーゴと一緒に集めて作っていた亀書庫には医学書も一揃いあり、一応目は通してある。
何せ多少特殊とは言えメイジのふりが出来たほうが便利になりそうだからだが…聞くに連れて表面上はともかく、ジョルノの内面は揺れた。
ここにたどり着くまでの会話からもどうしようもないのでは?
という考えが既に浮かんでいたが、蓋を開けてみれば全くその通りでジョルノにはどうにもできないようだ。
ゴールドエクスペリエンスは体の部品を作り埋め込むことで治療を行う。
それにある程度の病なら亀の中に常備されている薬をやればいい。
抗癌剤さえ少しはある。その位の物になるとジョルノの知識で投与するのを決めてしまうのは問題があるが。
唯一効果がありそうなのはポルナレフの話から訓練を続けている『波紋』だったが、ジョルノの波紋ではどれほどの効果があるかわからない。
ジョルノの波紋は所詮壁に張り付く程度の能力。
ポルナレフの話に出てきたジョセフやリサリサなら違うのだろうか…?
多少無力感を感じるジョルノにテファが声をかける。
「ジョナサン、治してあげられそう?」
ジョルノへとかけられたテファの質問はその場の全員が思っていることだった。
ヴァリエール家の三名は半ば諦めているが…何せ今までに様々な医者を連れてカトレアの治療を頼んできたのだ。
かけた金額をそのまま領民に分ければ何割かは年単位で働かずとも暮らしてゆける。
カトレアの体に良い食べ物を手に入れる為、医者を連れてくる為、医者が必要だといった薬の材料を得る為に支払った労力をかければこのヴァリエール領はモットモット発展していただろう。
そう言ってしまえる程度のことをヴァリエール家は行ってきたが、結果はこの様だったのだ。
いや、カトレアが今生きているのはそれ位の事をしたからかもしれない…一歩引いていた公爵夫人が公爵を差し置いて出てジョルノに言う。
「ネアポリス伯、はっきり言ってくださって構いません。無理なのでしょう?」
ジョルノは頷いた。
「はい、私には治せません。私には貴女の痛みを和らげることしか出来ないでしょう」
公爵は肩を落とす妻を抱き寄せて慰めの言葉をかける。
今よりも体調が良い日が増えるなら僥倖ではないかとか、気休めの言葉を捜す公爵に背を向けたまま、ジョルノはカトレアの手をとり、考え込んでいた。
テファが話しかけてくれたことが、実に良かった。
試してみる価値のある考えが頭に浮かんでいた。
だが…本当にいってよいのだろうか?
思いついた手で目減りするのは自分の物ではない…落胆した空気が流れる部屋で暫し考えたジョルノは決断した。
「ですが、ラルカス、貴方の相棒と変わってもらえますか?」
ラルカスが頷くと同時に若干身にまとう雰囲気が軽くなる。
「なんだジョナサン?」
テファ達の前という事を考慮し、地下水もジョナサンとジョルノを呼んだ。
「俺の力を当てにしてるなら無理だぜ。確かにコイツは俺が知る中でもモノスゲー治療が得意なメイジだが、まだ足りないんじゃね?」
今度はジョルノが少し落胆する。
ラルカスは自分の体を治療する為に手を尽くしてきた水のメイジだ。
ヴァリエール家ほどの財力などは無かったが、人体…特に治療に関してはスペシャリストと言っていい。
その知識と能力に地下水の能力を+しても治療できないという…予想通りだが、これでテファにお願いするしかジョルノには手が無い。
ジョルノは気付かないようにしていたが、先程から物言いた気にしているテファに声をかける。
「そうですか。テファ、貴方の母上の形見、お借りして構いませんか?」
「ええ!ぜひ使って」
テファは嬉しそうに自分の指に嵌めていた指輪をジョルノに渡す。
ジョルノは礼を言うが、テファは付け加えるようにこう言った。
「気にしないで。貴方が言い出さなかったら、私から言い出してたわ」
そのやり取りに、公爵達は首を傾げていた。
肩身だの、亜人の使い魔が優秀なメイジだの…突拍子も無い話ばかりであるように彼らには感じられていた。
そんな公爵夫妻にジョルノは至って真面目な表情で告げる。
「…公爵。あなた方にいくつか条件があります」
「なんだね」
弱いところを見せた珍しすぎる妻を慰めるのに忙しかった公爵の声は少し憮然としていた。
「治療が成功したらヴァリエール家にはテファの味方になっていただきます。構いませんね?」
「…構わんよ。元よりそのつもりだ。治せればの話だがね」
ジョルノはさわやかだがダーティな笑みを浮かべた。
「ベネ。ラルカス、こちらへ。指輪は貴方の方がうまく使えるでしょう」
巨体に似合わぬ俊敏さを見せて、地下水が操るミノタウロスはカトレアの横たわるベッドの傍までやってくる。
初めて間近に見るミノタウロスにカトレアは怯える所か喜んでいるようだった。
地下水は配置に付き、ジョルノが波紋を流してカトレアの肉体を活性化させていく。
「チッと集中するから待ってくれよ」
「はい、これで無理ならお手上げですから」
かなり本気で二人はぼやき、地下水はミノタウロスの全魔力を込めて魔法を唱えていく。
幸い、ミノタウロスは自分の治療や移植などの経験から医療に関する知識は随一。
必要なスペルもすぐに思いついた。
ミノタウロスの手の中で、テファから預かった指輪の宝石に似た物体が溶けていく。
地下水の指示でそれはカトレアに飲まされ…そして地下水が魔法を唱え終えた。
特に光ったりだとか爆発したりという派手なエフェクトはなかったが…結果から言うと、成功だった。
波紋でカトレアの体を活性化すると同時にスキャンしてもいたジョルノにはそれがよくわかる。
「…わるいが、俺もう限界」
「お疲れ様です。いい仕事でしたよ」
カトレアの体を蝕んでいるのは先天的な疾患だったと言うのにジョルノの波紋によるスキャンで感じられるのは普通の肉体だった。
ちょっと胸など以外が痩せている為、後は健康的な生活を行っていけば完治じゃね?と言えるほどだ。
「ネ、ネアポリス伯爵…まさか!?」
「はい。カトレア。貴方の治療は完了しました。後は、良い食事と適度な運動を心がけてください」
治ったとジョルノが言うなり、公爵夫人がジョルノ達を押し退けて娘に抱きつき、公爵が他の医者を呼び事の真偽を確かめさせる為に動き始めた。
本当に治っている事がわかるにつれ、彼らの表情が笑顔になる。
「波紋+水のペンタゴン(スクエア+地下水)+水の秘宝…これで効果がなかったらお手上げでしたが、うまくいきましたね」
「うん…」
だが代わりに、テファの母親の形見でもある指輪の宝石はとても小さくなってしまっていた。
台座に残っているのは滴数滴ほどの小さく薄っぺらい塊だった。
喜ぶヴァリエール親子の傍で、ジョルノはテファのほっそりとした指へ台座の先が無くなったせいで印象ががらりと変わった指輪を嵌める。
テファは治った事を喜んでいたが、指に差しなおした指輪の変わりようを見て、テファの顔が微かに曇るのをジョルノは見逃さなかった。
「ネアポリス伯爵! 今日は宴だ。さっ貴殿には私の心からのもてなしを受けてもらわねばならん…覚悟はいいか?私はできている」
既に酔っ払ったようなテンションの公爵はジョルノの手を引いて、連行していく。
テファは夫人やカトレアに捕まっているようだった。
「まずは風呂だ。息子よ! 準備が整うまでそこでゆっくりと語り合おうではないか!」
「いつから息子になったんですか…」
「息子同然だということだ。貴公は野蛮なゲルマニア人だが、娘を治したとあっては息子同然に扱うしかあるまい!」
後で忍び込んでこっそり治した方がよかったかもしれない。
近すぎる満面の笑みを浮かべた暑苦しい顔に、ジョルノはマジでそう思った。
その後一晩で、テファがエルフとの混血であることはあっさりばれてしまったが、カトレアの大らかさと夫人の冷静さに助けられた。
ヴァリエール家はテファへの援助を惜しまないという事を言葉だけでなく書面にまで残してくれた。
だがヴァリエール家を出たジョルノの表情は余りよいものではなかった。
公爵に色々と勧められ、長話にもつき合わされたから、だけではない。
狭い馬車の中、向かいに座るテファの選択が腑に落ちないのだった。
「それでね、昨日はカトレアさんと一緒に眠ったの」
ジョルノはウンザリさせられた昨夜の事を楽しそうに語るテファの顔をジョルノは眺める。
毎日届く報告書を兼ねた手紙を読みながらだが、まだ相手にしてるだけマシだった。
地下水とラルカスは話に相槌を打つのが面倒なのかそれとも昨日飲みすぎたのか馬車に乗った次の瞬間には寝ると言ってうつらうつらしているのだから。
「なんて言ったらいいのかしら。マチルダ姉さん…ううんお母様に似た感じがして、暖かかったわ」
(まだ痩せ細っているが)健康体になったカトレアと過ごした時間はテファにとって楽しいものだったらしく、ちょっぴり興奮した様子さえ窺える。
そのせいで更にテファがここにいるのが腑に落ちないジョルノだったが、一先ず相槌を打つ。
「母? フーン…普通はあぁいう感じがするものなんですか?」
「え、どうして?」
手紙を読みながら返された返事にテファは首を傾げた。
母親に関して、どういう認識を持っているか…テファにとっては優しく暖かく包んでくれる存在だった。
幼少期の頃の記憶の中で、母と過ごしていた時間は大事なものだ。
広い館の中で過ごしたものだけだが、幸福な記憶…それの終わりが母の死であったように、テファにとって母の存在は幸福な時期を象徴する存在だった。
だがジョルノにとっては違うのだろうか?
テファの視線の意味を悟ったのか、ジョルノは顔をあげた。
「あぁ、僕は育児放棄されてましたから」
「育児放棄?」
こちらの世界にはない単語にテファは首を傾げた。
簡単に言うと、とジョルノは手紙を読みながら教えてやる。
「子育てしないってことです」
「そんな…冗談でしょ?」
絶句して聞き返したテファだったが、ジョルノは同じ事は言わなかった。
ばつが悪くなったテファは重くなってしまったように感じる馬車内の空気をどうにかしたかった。
けれど、いい言葉が思いつかない。こんな時何かを言ってくれても良さそうなラルカスはまだ眠ったままだった。
実の所、おきてはいるのだが昨日行ったカトレアの治療で消耗した魔力が完全に回復しておらずラルカスは眠くて仕方が無かった。
車輪が石に乗り上げ大きく揺れる。
「じゃあ…私がジョルノのお母さんになってあげるわ」
胸に手を当てて、顔も満面の笑みでそう言われ、ジョルノは一瞬聞き間違えたのかと思った。
コロネを弄りながら顔を上げたジョルノはなんともいえない微妙な表情でテファを見る。
見慣れないジョルノを見たテファは言葉が足りなかったと感じたのかたどたどしく説明を付け加える。
「ええっと、その…昨日カトレアさんが私の事を少し話したらお姉さんになってくれるって…! 私、嬉しかったから」
あの女は何を吹き込んでいるのか。
嘆息して揺れる馬車内でも飲み易いように蓋とストローを取り付けたコップを取り、紅茶を少し飲む。
「僕に母親は必要ありません。僕が死ぬまでそれは変わらない…それよりテファ、どうして公爵家に残らなかったんです?」
いつも通り届いた手紙から顔を上げてジョルノは尋ねた。
出る時、ジョルノはテファにヴァリエール公爵家に、というよりあの優しげでジョルノに奇妙な感覚を覚えさせるカトレアのところに残ることを勧めた。
安全で公爵はともかくカトレアはある程度信頼のおける相手と判断したからだ。
元々孤児院に向かうのが無理になったから緊急避難として一緒に行く事にしたのだから、当然だった。
だがテファは不満そうに言う。前に身を乗り出した瞬間、ラルカスの視線が揺れる一点を見つめていたが、もはや誰も突っ込まなかった。
「だって、ジョルノは亀を探しにいくでしょ? 私はまだジョルノと一緒に旅をしたかったの」
「…そうですか」
ジョルノは困ったように眉を寄せたが、口元は緩く孤を描いていた。
しかし仕事の規模が裏も表も大きくなってきている。
麻薬が一般家庭にも存在する以上、まともな薬を作ったりしなければならない。その為には金が必要なので必然的に規模を大きくするしかないのだ。
その為にジョルノはラルカスに目を向ける。
ラルカスは砂糖が吐けそうな顔をしていたが…「ラルカス、トリスティン王都に行ってもらえますか?このままでは被害が大きくなる」
「行けと命じられれば」
条件反射と言ってもいい速さで返事を返したラルカスは手早く自分の荷物を掴むと馬車の後ろに用意していた予備の馬に飛び乗る。
ラルカスの大きな体を乗せるのに足る馬に、ラルカスは牛の顔で器用に笑みを浮かべた。
だが同時に、ミノタウロスを乗せられるほどの馬をどこから用意してきたのか…手綱を馬車から切り離しながら、ラルカスは考える。
先日合流したばかりだというのに既に大きな馬を用意したジョルノに微かな畏怖を覚えながら、ラルカスは王都に向かって走り出した。
さっさと終らせなければ、まだステップ1で苦労しているとはいえステップ2や3を教わる事ができず、一日の半分とかを地下水に明け渡す羽目になる。
ラルカスはじゃあなんでジョルノはこんな事を命じたのか考えながら、急いでいた。
それを読み取った地下水がふと呟いた。
「…もしかしてテファの胸を見てたのがばれたんじゃね?」
「あ、ありえる…」
さっきも揺れていたメロンとか冬瓜とかっぽい見た目の何かを思い出しながらラルカスは唇を噛んだ。
何故ボスはあの誘惑から目を離していられるのだ…それともそれがあの強さの理由なのか!?
色々と間違った事を考えながらラルカスは叫ぶ。
「うおおおっ!」
ラルカスは馬を走らせたまま手綱から手を離し頭を抱えた。
自分はボスと一緒にいる間何をしていたのか?
波紋呼吸の練習。胸の鑑賞。皿洗い。揺れる胸の鑑sy…そうか!
不意にラルカスは理解した(ような気がしただけだった)。
「地下水。私が本能に打ち勝つ為に習っている『波紋』だが、波紋は規則正しい呼吸によって生み出されるのだ」
「そうみたいだが、今更なんだ?」
「胸を見てる私は冷静じゃあないよなぁ? その状態で規則正しい呼吸ができると思うか?」
地下水は何を言いたいのか能力で悟ってしまい呆れて返事もできなかったが、ラルカスは馬上で続ける。
「呼吸は乱れて波紋は練られない…つまり! 呼吸を乱すのは『本能!』だが『本能』を支配した時! (胸を見ないわけだから)呼吸は規則正しく乱れないッ!」
「お前、それくらいにしとけよ?」
忠告にも、ヒートアップしたラルカスは止まらなかった。
「理解したぞボス! ボスが何を考えているのか頭ではなく心で理解した…! 波紋呼吸が出来た時、既に私は『本能』を支配しているんだなッ!」
そう言って頭を抱えたまま雄叫びを上げ続ける牛男に馬の方がびくついていたが、逆に怖くなったのが実に良い鞭となってより速度を上げさせていく。
唯一この場で間違いを正せる地下水は呆れすぎて話しかけられるまで何も突っ込む気になれなかった。
「あの胸を一人鑑賞しようとしたのが間違いだったのか!」
「色々と突っ込んでやりたいがアンタ、牛の本能の前に人として本能を制御しろってことにやっと気付いたのか」
「おおおっ! すまないボス! 全身全霊をかけてこの任務達成し、成長して戻ってみせようぞ!」
「駄目だコイツ…俺がどうにかしないと…」
その雄叫びはジョルノ達にも届いていた。
テファは顔を赤くして胸を抑えている…「ジョルノ。やっぱり、私の胸、おかしいのかしら? だからラルカスも」
手紙を読んでいたジョルノはため息をついてテファへ目を向ける。
浮かんでいる表情は聊か冷たくて、テファは口を噤んだ。
「テファ、それは違います。(こんなこと説明するのも切ないですが)男って生き物はサイズの好き嫌いはともかく女性の胸が好きだし、テファ位の人はあんまりいないんで思わず見ちまうんでしょう」
言われたテファは胸を隠すように、と言っても完全には隠せないが…手で押さえながらジョルノを上目遣いに見た。
「そうなの? やっぱり普通と「普通と違うってことは希少価値ってことでもあります。大抵の男性にとってはとても魅力的ってことです」
何度か瞬きをするテファに、自分が言った言葉を考えてジョルノは馬車の外へと視線を転じた。
言っててなんだが悲しくなったからだ…
読み終えた手紙を仕舞い、新しい手紙を何通か出しながらジョルノはやれやれと首を振った。
今の言い草ではジョルノがわざと牛を横にいさせたように受け取られても仕方ない話だ。
「…ジョルノもそう思う?」
至って冷静な声音のまま解説されたテファは顔を赤くしてそう尋ねた。
それにジョルノは冷静な視線でテファの全身をザッと見てから返事を返す。
「僕は貴女の胸より目が好きです」
「目? どうして?」
疑っているというよりは単純に疑問に思ったらしいテファにジョルノは言う。
「いいですかテファ。『牢獄』で一人の囚人は壁を見ていた。もう一人の囚人は鉄格子から覗く星を見ていた。そんな話が僕の故郷にはあります。貴方は後者だ」
生まれてからは屋敷の中に、エルフと知られた母が殺された後は村にずっといて人を蔑視する事も敵視もしていない、というのはジョルノには見慣れない価値観だった。
ジョルノなら、自分の運命と決着をつける為に兵士達に復讐するだろう。
「貴女の目は、自然と星を見ている。そこが気に入っています…まぁ、どうしても気になるならこの手紙を書いた子達への返事で相談してみたらどうです?」
取り出した手紙を示しながらジョルノが言った言葉にテファは頬を赤らめて手紙を受け取る。
抽象的な言葉だったが、とても嬉しく思いながら目をあわせていられずに受け取った手紙へ視線を移す。
差出人は、ロマリアの孤児院にいる子供達だった。
何人かで一通書いたらしく、名前を書く欄には良く知った名前が並んでいて自然と口元が緩んだ。
「伯爵、馬車が一台立ち往生してますぜ」
馬車内の空気を吹き飛ばすように、御者台から報告があがる。
ガリアで購入したガーゴイルの声だ。
手紙に気を取られているテファから視線を外し、ジョルノは窓から顔を出す。
見ると、少し先で確かに馬車が一台止まっていて…この場所にはいないはずの人が地団駄を踏んでいる。
「イザベラ様。こんな所で何をしてるんです?」
「な、何を言ってるのかねぇ…わ、私はガリア王女なんかじゃ…」
傍に停車した馬車の窓から出たジョルノの顔を見て、特徴的な青い髪をそのままにしているくせにとぼけようとしたイザベラは言葉を失った。
捨て置くわけにもいかぬしと、停車を命じたジョルノは馬車をおりてイザベラの前へと出て行く。
「どちらへ向かわれるんです? よろしかったらお送りしますが」
放っておくって手も無いわけじゃなかったが、ジョルノはそう申し出た。
ここから人のいる所までは歩いていくには聊か距離がある。
見ればイザベラだけでなく足を痛めた馬を労わる御者などもいて、放って置けば彼らが必死で走らされるのは目に見えていたからだ。
「え…そ、そうだね! どうしてもって言うならアンタのその馬車に乗ってやってもいいよ」
「ええ、どうぞこちらへ」
無理をさせられ潰れた馬に一瞬哀れむような目を送り、ジョルノはイザベラを伴い馬車に戻ろうとする。
イザベラはこんな所からはすぐに離れたいのか、駆け足で馬車へと向かっていく。
乗っていた馬車の事など忘れたように見えたので、ジョルノは念のため、残されるものの処遇について言っておくことにした。
「馬は後で迎えをやりましょう。治療の手配も必要ですね」
「フンッ、あんな柔な馬潰してしまえばいいのさ。それと、私は今お忍びなんだ。名前は「イザベラ」ゲルマ…!」
愚痴を遮られ、呼び捨てにされたイザベラは振り向き声を失った。
イザベラがそんな目を向けられる事など殆どなかったとはいえ、見下ろすジョルノの視線はそれ程冷たく鋭かった。
「僕の馬車に乗る以上、それに身分を隠されている以上僕のルールに従ってもらいます。いいですね?」
「なん…う、ん」
言い草がイザベラの癇に障り、尊大かつキツイ言葉を叫ばせようとしたが、ジョルノにはそれを言わせぬ凄みがあった。
ジョルノにとってはさほど険しい顔を見せたわけではなかったが、父ジョゼフから見捨てたような態度で送り出されたせいもあったかもしれない。
王女である事を隠すため、普通の貴族となんら変わらない装束をした現在のイザベラには軽い目に見えぬ圧力にも過敏だった。
その態度をジョルノは少し妙に感じたが、ジョルノ達の馬車の後方から聞こえ始めた馬の蹄が地面を蹴る音にあっさりと考えの外に置いた。
イザベラも音を聞いたのだろう。体が一瞬大きく振るえ、それまでよりもっと急いでジョルノの馬車へ向かう。
だが、馬車に付くより早く、木々に挟まれた道に一頭の馬が現れる。
逞しい筋肉の動き、何よりその大きさから一目見てそれが軍馬だということがわかる。
しかし乗っているのはローブを深く被り素性が分からぬようにした男、…その男はイザベラを見て杖を懐から抜いた。
流れるような動きで、その男は杖を動かしている。
何か魔法を使うつもりだと思うより先に、ジョルノは懐から取り出した拳銃で馬の銅を撃っていた。
地球の技術を取り入れた拳銃とはいえ拳銃ゆえに、射程距離は然程長くは無い為だ。
口径も小さく、その場にいた人間や動物達を驚かせる事は出来たが、馬を殺すには至らない。
一瞬、音に驚いて詠唱を止めた男が撃たれた痛みに慄く馬から落ちる。
馬は撃たれた痛みにもがき苦しみ、馬自身危険な程急激に体制を崩していた。
ジョルノはそれを確認することなく彼らに近づいている。
攻撃の為の魔法を唱えていた男は、レビテーションも間に合わず今しがたジョルノの馬が通って出来たわだちに顔を突っ込みそれでも止まらず空中で回転し背中を強打する。
イザベラが悲鳴を飲み込むのを背中に感じ、徐々にその男との距離を詰めながらジョルノは男の肩に銃弾を打ち込む。
命中精度がまだ低く、威力もこの距離でもまだ致命傷を与えるには至らないが悲鳴を上げさせたり魔法を唱えられないような状態に追い込むのには十分だ。
それでも杖を落とさない胆力は褒められたものだが、ジョルノはやっと十分な距離に近づいたことを安堵しながら男に問いかけた。
「なんです? 目的と誰の手の者か吐けば命は助けてあげます」
男はそう問いかけられるまで熱いだのなんだのと喚き散らしていたが、「ごぶっ…王権の…簒奪」
「あぁなるほど」
ジョルノが呟き、男の顔面に銃弾を打ち込まれる甲高い音が辺りに響き渡る。
ゴールドエクスペリエンスで男の身元などを確認する物が無いか調べながら、ジョルノは青ざめた表情で震えるイザベラを見やった。
襲撃者の狙いが自分だったからだけではない。銃声を聞くのは初めてなのかとても驚いているようだった。
スタンドを飛ばすが、襲撃者は他には見えない。
持ち物からすると他にも仲間がいるはずだが…一枚岩ではないのかもしれない。
おつむが間抜けなお陰で襲撃者が誰かなど色々と足の付きそうな物を取ってから、ジョルノは最初に銃弾を打ち込んだ馬へと歩いていく。
暴れそうになる馬を容赦なく戻しておいたゴールドエクスペリエンスで殴りつけて静かにする。
ついでにジョルノは能力で傷を治し、ジョルノはイザベラを馬車へと誘った。
だがイザベラは警戒心を露にして一歩も動こうとしなかった。
今しがた襲撃を受けたと言うのに誘うのはおかしい…そう考えたようだ。
そう考えたジョルノに対してイザベラは後退りながら言う。
「あ、あんた…目的と誰の手の者か吐けば命は助けるって言ってたじゃないか。なのに…」
ジョルノにとっては当然過ぎて気付かなかったが、今見せたばかりの容赦ないジョルノの姿がイザベラを恐怖させているらしい。
ぶっ殺すと思った時には既にぶっ殺した後、というのが常識の世界に生きているのだが、こちらは暗殺対象になるような人物でも違うようだ。
ジョルノのことも怪しむイザベラにジョルノは言う。
「僕は貴女を殺しません…僕は今の貴女を踏み台にして喜ぶほどゲスではありませんからね。一人でどうにかするという貴女におせっかいを焼くほど世話好きでもありませんが」
言うなり置いていこうとされては、歩いて目的地に向かうという考えが頭に無かったイザベラは去っていこうとするジョルノの後についていくしかなかった。
そして…馬車に残されたテファは我が目を疑っていた。
『神父様がエルフと新教徒とだけは喧嘩していいって言うんだけど…テファお姉ちゃんはエルフじゃないよね?』
「テファ?どうかしましたか?」
「う、ううん! な、なんでもないの…そうだわ。カトレアさんが話したがってたから、今度お手紙を送るのはどうかしら?」
「…まぁ構いませんが」
戻ってきたジョルノはテファの反応から、手紙に何か書かれている事を知ったが…イザベラが乗ってきたので気付かない振りをした。
ジョルノ宛にも一通だけ、勉強の出来た子供から手紙が届いているのでそれを読めば事情が分かる…そう考えていた。
463 名前: 外伝6 コロネとメロンは世界を救う ラルカス著 [sage] 投稿日: 2007/12/17(月) 00:42:39 IK2G2Vw.
以上です。
前はローマって名前にしてたんですが、書いてて嫌になったんで「ネアポリス伯」に変更しました。
-------------------
以上、代理投下完了です。
・・・結構規制受けないモンだなぁ。
あ、あと一部長文で書き込みできなかった分を分割しました。
代理投下ご苦労さまです。
牛男、自重しろ。
宗教怖い、狂気の13課とかありそうだな。
次もお待ちしております
代理乙!
波紋の呼吸に目覚める前に乳革命に目覚める牛男色々と自重しろw
作者、代理ともに乙!
キンクリ
牛男www
ジョルノ容赦ないよジョルノ。だがそこがいい。
ティファ・カトレア・イザベラのフラグが立ちつつあるが、
どうせなら三人ともジョルノの(ry
前も出たネタかもしれないが
カトレアの病気の治療とか、タバサママの毒の解毒とかを完璧にこなせるスタンドって何があるかね?
クレイジー・ダイヤモンドは乙一小説で病気は治せないことが明言されてたし・・・
殆ど不可能が無さそうなヘブンズ・ドアー、ホワイトスネイクならいけるか?
4部小説のトニオさんを見ると治せる気がしないでもない
なんで既に小ネタがあるパール・ジャムを忘れるw
>>245 つナンテコッタ・フーゴ
しかしそう考えるとトニオさんスゲエよな
病気治療に関しては最強かもしれん
仗助とトニオさんで外科内科どっちもイケるな
さらにチープトリックで精神科もおk
>247
ちょwwww
チープトリックはダメだろw
>>247 心理学科に籍を置いている俺が言う
チープトリックは無理www
精神に関わるならエコーズact1とかじゃないかな?
>250
>エコーズACT.1
耳元で賛美歌でも鳴らし続けるの?(w
やっぱりヘブンズドアーかなぁ・・・
けどアレって要するに洗脳だしなぁ・・・
>>247 あれか?「死は全てを解決する」っていうやつか?
というかわざわざ精神課考えなくてもトニオさんの料理食べるだけで十分すぎるだろ
トニオさんはそもそも料理の腕は元から五ッ星ランクなんだから
食っただけで最高の精神治療だな。
>>246 そういえばトニオさんって世界各地で身体に良い料理の修行してたんだよな
つまりあの凄まじいまでの治癒効果はパールジャムの能力+トニオさん自身の料理の腕前の相乗効果なわけだ
トニオさんが診察→症状に効く料理を作る→パール・ジャムが治す
だからな
億泰に食べさせたときには、一品につき一つの症状しか治ら無かったことを考えると、
単に料理の薬効を劇的に高める効果しかないのかもしれんね
(スタンド自体に治癒能力があるならどんなものを食べても全部まとめて治療されるはず)
娼婦風スパゲティ
実際にはカルシウムとか取ればいいんじゃねーの?
虫歯は治らないんだっけ?
>>256 肩から異常な量の垢が出た時は、甲状腺を特別に活発にしたからだから
新しい歯の成長を促してその結果前の歯が抜ける料理だったんじゃないかと適当に言ってみる
ひょっとしたらパールジャムって普通の人(料理や病気の知識がそんなに無い人)が能力発動しても
せいぜい風邪を治す程度しかできないのかも…
素人に使わせたら、悪い効果まで強化してしまうかも、
鼻血が止まらなくなるとか、眠れなくなるとか、24時間フル勃起とか。
フル勃起とフルボッコ…一文字違いだな
正に「王には王の料理人には料理人の…、」
って奴だろ、使う奴次第だよ。
でも食材に混ぜるってことは他の人間でも使えるスタンド能力ってことになるのかな?
それともやっぱトニオさんにしか使えないのか
まあ、あれじゃないか…
俺達が使えば「味はまあまあだけどケガや病気を治す不思議な料理」
とかができるんだろうよ
精神科はチョコラータ先生こそスペシャリストだろう。
仗助(外科),トニオさん(内科)→チョコ先生(精神科及び患者のメンタルケア)→ヤッダーバァアァァァァ
何という総合病院。
パール・ジャムの能力って栄養とかを極端に引き出す能力じゃなかったっけか?
なんかトニオさんの腕前あってこそのスタンドだった気がするんだが
世界各地を放浪して料理の修業…
そうか!
きっとトニオさんの料理には波紋料理が仕込まれてるんd
>>265 ちょっと違う。
トニオさんのは料理の『薬効』を極端に引き出す能力。
だから肩こりにいい料理となれば肩こりに効というく薬効がめちゃくちゃ出る。
栄養がめっちゃ引き出されたらデブるし、ビタミンなんかだと過剰摂取は身体の毒だしね。
というか、仮にも自分のスタンドなのに『食えるかどうか考えて実行しちゃう』ようなヤツしか、パールジャムの効能気付かねえだろw
>「彼があと10人アルビオンにいたら、貴族派に負けていたことはなかっただろうね」
これなんてEDAJIMA?
>>269 むしろワムウが10人もいたら貴族派は一人も生き残らないだろう
一人?4人で十分だろ。
おや?となりから銃声が…。
神砂嵐×10か…
レキシントン号が木っ端微塵になるな
神砂嵐ぶっ放すと大理石の柱でさえ雑巾絞ったみたいになるんだぜ?
とはいえ射程距離が問題だよな・・・
遠くに逃げたジョセフは体の皮膚がズタズタになるだけで済んだわけだから、
近距離での威力は鬼でも距離を置くごとに反比例的に威力が下がるのかもしれんな
いずれにしてもゼロ距離でレキシントン号に神砂嵐をぶっ放そうものなら
まともに航行できないくらいの大穴が開くのは確実だが
覚悟のねぇ根性なしなら皮膚がずたずたくらいで杖落として戦闘不能だろ
>>274 逆に闘志を燃やす変態が一人くらいはいるかもよ
「どうする どうするんだ? 最後の王党派の兵はここにいるぞ、貴族派
倒すんだろ?勝機はいくらだ 千に1つか万に一つか 億か 兆か それとも京か」
「それがたとえ那由他の彼方でも 俺には充分に過ぎる!」
「素敵だ やはり人間は 素晴らしい」
いやいや、そんな燃え展開じゃなくても
ド M な ら 燃 え る ん じ ゃ ね ?
ドMって…ああ、なんだマチルダさんのことか
>>274 王家への忠誠が試されるな
忠誠心低い奴→杖落として戦闘不能
忠誠心高い奴→ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
>>269 天才ワムウはそこで遍在を閃き10人ワムウの悪夢を・・・。
大きいほうのボウガンが支給されて全艦を爆沈させます
>>276 それだと漫サロのスレになっちまうwww
>>273 ジョセフが皮膚だけで済んだのって大理石の柱の陰に隠れたからだったと思ったけど
シーザー戦を考えると館の入口ホールいっぱいくらいは射程圏じゃないかな
ガンダー効果で範囲増量中とかなってワルド涙目、というケースしか思い浮かばんw
なあに神砂嵐は足場がしっかりしてないと出せないからレビテーションで持ち上げてやれば大丈夫
と書き込んだところで間違いに気付いた
両腕がフリーならいつでもOKっぽいな
渾楔颯で切り方にまでこだわった
輪 切 り の ワ ル ド
こんなのを思いついた
なんというチョコ先生
代理投下
「それで、この女性を宿屋に放り込んだ後、その男は煙のように消えてしまったんだな?」
「はい、金貨を渡されまして、『丁重に休ませておけ』と言われました」
「もう一度聞くが、顔は見ていないんだな?」
「はい、帽子を深く被っておりましたので…あ、ただ、薄いグレーの髭を蓄えておりました。声も低めでしたが、重々しい感じではなく、二十代そこそこの貴族様かなぁ…と」
「ふむ……」
ラ・ロシェールの宿屋で、女騎士が店主に質問をしていた。
剣と銃を携え、シュヴァリエのマントを着けたアニエスである。
昨晩、怪我をした女性がメイジらしき男に担がれ、宿屋に放り込まれたと聞いて、事情を調査するため駆けつけたのだ。
アニエスは、その女性が誰なのか知っていた、アルビオン出身の元貴族、マチルダ・オブ・サウスゴータ。
事情を一通り聞いたアニエスは、マチルダの眠っている部屋に入り、備え付けの椅子に腰を下ろす。
マチルダがぐっすりと眠っているのを確認すると、窓の外に目を向けた。
ラ・ロシェールの岩壁や建物は、『レキシントン』からの砲弾で所々が傷ついており、壁面には傷を修復する人夫とメイジの姿が所々に見えていた。
『練金』で修復される壁面や建物、メイジの便利さが羨ましくなって、アニエスは再度マチルダに目をやった。
彼女は腕と肩に包帯を巻かれ、寝息を立てている。
椅子の背もたれに身を預けて、アニエスは昨晩の出来事を思い返していた。
アニエス達銃士隊は、基本的に近衛か、親衛隊待遇で扱われている、だがそれ以外にも『情報収集』という役割が与えられている。
トリスタニアに亡命政権を構えたウェールズ・テューダーからの密命で、トリステインに亡命・疎開したアルビオン国民の調査に当たっていたのだ。
人数を確認するだけではなく、いまだアルビオン国内でレコン・キスタに抵抗を続けるレジスタンスと接触する目的もあった。
アニエスは、ある情報通の男に頼み、レジスタンスとの接触を試みた。
情報通の男から指定された場所は、ラ・ロシェールでは一般的な宿屋で、岩山の一角をくりぬいて作られた宿屋だった。
指定された時刻になると、ラ・ロシェールの丘が月明かりを遮り、宿屋の周囲はまるで月のない夜のように暗闇に覆われる。
宿屋の主人にチップを払い、目的の部屋に案内されたが……そこでアニエスは異変に気づいた。
血の臭いがする。
宿屋の主人に扉を開けさせると、主人が悲鳴を上げて腰を抜かした。
アニエスが中を見ると、そこに生きた人間は一人もおらず、死体だけが転がっていた。
壁をくりぬいて作られた石造りの二段ベッドが、部屋の左右に作られていおり、正面には跳ね上げ式の窓がある。
簡素な机の上には、飲み物が六つ置かれ、死体が三つ。
アニエスは主人に衛兵を連れてくるように告げて、部屋の中を調査した。
三つの死体はお互いに短剣で胸を突かれ、仰向けに倒れていた。
だがアニエスはメイジの仕業だと直感的に理解し、舌打ちをした。
傷口から流れ出るはずの血が少なすぎる上、三人とも口を大きく開いているのだ。
歯の裏を指でなぞると、歯垢…ではない、粘土らしきものが指先に付着した。
心臓を突き刺されているが、ナイフが根本まで深々と刺さっているため、思ったより血は出ていなかった。
体の中は血の海だろう。
アニエスは考える。
『レビテーション』で三人を宙に浮かせ、『練金』で動きを奪い窒息させつつ、ナイフを突き立てたのだろうか?と。
二人か、それか三人の、メイジを含む暗殺者がこの部屋にいたはずだ。
だとしたら急がなくてはならない、暗殺者らしき者の情報だけでも手に入れなければならない。
暗殺者に狙われるということは、後手に回るということでもある。
アニエスは駆けつけた衛兵に後を任せると、衛兵の詰め所で伝書フクロウを借り、暗殺者が潜入していると王宮に知らせた。
そのすぐ後、郊外でメイジらしき男四人の死体が発見された。
女がメイジに襲われているのを目撃した市民が、衛兵の詰め所に知らせてくれたのだ。
アニエスは衛兵に命じて死体を片づけさせると、メイジに襲われていたという女の行方を捜した。
朝日が昇る頃になって、ようやく女が担ぎ込まれた宿屋を探し出した。
いくらチップを貰ったのか知らないが、宿屋の主人は女が担ぎ込まれたことを話したがらなかった。
ようやく発見した女性を見て、アニエスは驚いた。
女性の名はマチルダ・オブ・サウスゴータ。
魔法学院での名はミス・ロングビルである。
「ふわ…」
窓の外を見ていたアニエスが、大口を開けて欠伸をした。
昨晩からずっと動き続けていたので、眠気と疲れが溜まっているようだ。
両腕を挙げて背伸びをし、もう一度欠伸をした。
「「ふわあ…」」
欠伸の声が重なったのに気づき、アニエスがベッドの方を振り向く。
マチルダは眠そうな目をこすりながら、包帯の巻かれた上半身を起こしているところだった。
アニエスは椅子を動かし、マチルダのすぐそばに座り直す。
「目が覚めたか」
「……ここは?」
「ラ・ロシェールの宿屋だ、怪我をして担ぎ込まれたそうだが…覚えていないか?」
マチルダが自分の体に目をやる。
顕わになった胸を隠そうともせず、包帯の巻かれた自分の体を見つめていた。
徐々に昨晩のことを思い出し、同時に鈍痛を感じて顔をしかめた。
「う……アンタが介抱してくれたのかい?」
「いや、私じゃない、この宿で働いている少女がやってくれたそうだ」
「そっか…後で礼を言わなきゃね。ところで何でアンタがここに居るんだ?」
アニエスは無言で部屋の扉を開け、廊下を見渡す。
誰もいないのを確認すると、扉を閉じて鍵をかけた。
「ラ・ロシェールではアルビオンから亡命、疎開する人間がどれだけいるのか調査しているが、私はその陣頭指揮を任されている。貴方を見つけたのは偶然だよ」
「偶然ね。 ……ふああぁぁぁ」
大あくびをしたマチルダを、アニエスが「やれやれ」と言いたげな目で見た。
「薬か魔法で眠らされたのか? 心当たりがあるなら話して貰わないと困ふぁぁ……ゴホッ」
アニエスは、あくびを咳で誤魔化したが、マチルダはそれを見逃さなかった。
ニヤニヤと笑みを浮かべてアニエスを見ている。
「ええい!そんな目で見るなッ! …とにかく、昨晩何が起こったかちゃんと話して貰うぞ、それと、後でメイジ四人の死体を見て貰うからな」
「メイジ四人?」
「そうだ、貴方はメイジに襲われていたらしいな。目撃者は、貴方が四人組に襲われ郊外に逃げたと言っていた。その四人が何者なのか調査している」
「ああ、そういえば、そいつらに眠らされたんだ。あいつらは何者なんだい?」
「それは私が知りたいさ。それと、貴方をここに担ぎ込んだメイジのことも話して貰わないとな」
「それこそ、こっちが知りたいよ」
マチルダは心の中で、あんたに教える気はないよ、と粒やいた。
「「ふああ……」」
またも同時に欠伸をして、二人は恥ずかしそうに顔を背けた。
太陽の明かりが岸壁に反射し、ラ・ロシェールの町は戦時下とは思えぬほど穏やかな陽気に包まれていた。
支援
一方少し時間は過ぎ…こちらは『魅惑の妖精亭』
ワルドが目を覚ますと、誰かの顔が見えた。
「………ん?」
「起きた?」
心配するような顔で、ルイズが顔をのぞき込んでいたようだ。
ワルドは自分がどんな状態に置かれているのか、周囲を見回して確認する。
ここは『魅惑の妖精亭』の一室、住み込みで働く者のために用意された部屋。
昨晩、ラ・ロシェールで活動していた遍在が四人組のメイジを倒した後、ロングビルを宿屋に預けた。
そこで精神力が底を突き、遍在は消失し、本体は気絶してしまった。
ワルドは上体をベッドから起こそうとしたが、風邪でも引いたような気だるさがあり、体の動きが鈍く感じられた。
「ふぅーっ……さすがに疲れたな」
「ラ・ロシェールに遍在を作り出すなんて、とんでもないわね。暗殺なんかお手のものじゃない」
「そうでもないさ、トリスタニアから馬で遍在を走らせたんだ、そうでなければラ・ロシェールまで遍在を維持できないよ」
「そうだったの…で、何で遍在なんかを使っていたの?」
ルイズはワルドの背中に手を回して体を支えた。
ワルドは平静を装っているが、体に疲れが溜まっているとすぐ解った。
この状態では『サイレント』を使うのも一苦労だと思い、ルイズはワルドに顔を寄せて、小声で話しをした。
「僕がレコン・キスタを裏切ったことは既に知られているだろう。だとすれば、何らかの動きがあるはずだ、それを調べていたんだ」
「……まあいいわ、信じてあげる」
「そうしてくれるとありがたいな」
「ところで、ロングビルはどうなったの?」
「彼女は無事だよ。ラ・ロシェール麓の小さな宿に頼んでおいたからね。金貨を二枚渡しておけば上手くやってくれるだろう」
「金貨なんて、よく持っていたわね」
「彼女を襲った四人は、もう金も使えないからな。懐から少し拝借して…」
ワルドが指を曲げ、懐からくすね取る仕草をする。それを見てルイズが眉をひそめた。
「まあ、それじゃ追い剥ぎじゃないの」
「君がそれを言うのかい? まあ、死人が使うよりも、ずっと有効な使い方さ。それに、あのままでは彼らも無念だろうしな」
ワルドはカーテンの下がった窓を見て、その向こうに広がる空を想像し、ニューカッスル城の惨状を思い出した。
死体、死体、死体、青空の下、ニューカッスル城は死体にまみれていた。
それを蘇らせ、反逆者狩りに利用するクロムウェル。
トリステインを裏切った自分も、クロムウェルも、非業な最期を遂げるべきだと、ワルドは思った。
「ロングビルを襲ったのは、アルビオンの近衛兵って言ってたけど、本当?」
「ああ、近衛兵か親衛隊か、ウェールズにごく近い者達だった…見覚えがあるよ。おそらく、アルビオンから亡命した者を探していたんだろう」
「つまり、レジスタンス狩りってやつ?」
「おそらくな」
「…やるせないわね」
ルイズが目を細めて軽く歯を食いしばる。それは怒りではなく、悲しみから来るものだとワルドは理解した。
「彼らを気遣っているのか? …君は、本当に優しいな」
「え? 何よ、急に」
「僕は彼らが二度と蘇らぬよう、奇襲して首をはねるのが精一杯だった。これも皆クロムウェルのせいだと、そう思いながら戦っていたんだ」
「けれども君は違う。彼らの名誉を思って君は悲しんでいる…違うかい?」
「………ワルド」
ワルドは、心底からルイズを羨ましいと思った。
トリステインの腐敗を知ったときも、母の死を知ったときも、ルイズが死んだと気化されたときも、石仮面と戦ったときも、怒りしか無かった。
ルイズは違う、淡々と事実を受け止める強さと、悲しむだけの余裕と、そしてこれから何をすべきかを決断する力を持っている。
もっと早く、ルイズに仕えていれば、一人のメイジとして、充実した日々を送れたかもしれない。
そう思いながら、ワルドはごく近い距離で、ルイズの瞳を見つめた。
紫煙
不意に、廊下の向こうからバタバタバタと足音が近づいてきた。
二人が振り向く間もなく、バン!と音を立てて勢いよく扉が開かれる。
「おふたりさーん!遅番の時間 だ よ ……」
扉を開けたのは、店主の娘、ジェシカだった。
ベッドの上で上体を起こしたロイド(ワルド)とロイズ(ルイズ)が、ごく至近距離で見つめ合っている。
その姿はどう見ても、キスをする直前か、はたまた事後かといった感じだった。
「えーと…………お邪魔だった?」
照れ隠しに後頭部に手を当てつつ、引きつった笑みを浮かべるジェシカを見て、ルイズは自分がどんな風に見られているのか気が付いた。
男と女が顔を接近させていると言えば……キス?
「うきゃあ!」
ルイズの顔が一瞬で真っ赤になり、ワルドを勢いよく突き飛ばす。
「ぐはっ!?」
突き飛ばされたワルドは『魅惑の妖精亭』を揺らすほどの勢いで壁に衝突した。
「あー、やっぱり兄妹ってのは嘘だったんだー」
ジェシカが笑みを浮かべつつ、ルイズに迫る。
「ちちちちがうわよ!こいつとは何でもないわよ!」
ワルドに恋愛感情を抱いている訳ではないが、それでも『キス』と言われると狼狽えてしまう。
既に何度か全裸まで見られているのに、ルイズの頭の中はまだまだウブだった。
「でもキスしようとしてたでしょ?あ、それともキスした後?」
「だから違うって言ってるでしょうがあああ!」
「同じ部屋じゃ危ないよねー」
「キーーーーーーーーーーーーー!!」
壁に激突したワルドが、痛む顔を押さえながらむっくりと起きあがる。
手玉に取られているルイズを見て、ワルドは静かに、だが心底から楽しそうにほくそ笑んだ。
「やれやれ、困ったお姫様だ」
To Be Continued→
474 名前: 仮面のルイズ [sage] 投稿日: 2007/12/18(火) 18:41:20 l8ewUCEw
どなたか代理投下お願いします。
次回、魅惑の妖精亭にあの人が…?
変態仮面代理参上
サルさん回避スレの仮面さんだいりしますねー
うおう更新してなかった、
投下しようと思ったときには投下されているんだね…
>>300 「"代理投下する"と心の中で思ったのならと心の中で思ったならッ!その時スデに行動は終わっているんだッ
"代理投下した"なら使ってもいい」
というプロシュート兄貴の教えを守らなくて今回は正解だったなw
まだまだ初心な仮面ルイズに(*^Д^*)
そろそろ誰かが心の魔術師、悪の力をもって善を成す美女を呼び出すんじゃないかと
思っているんだが・・・・「わたし残酷ですわよ」と言われる日が迫っている気がするんだ
3期か…
2期のデキからいってあまり期待はできんが
乳革命が見れるとあっちゃー、見ないわけにはいかねえよなあ?
三期やるなら何だって最終話を通勤ラッシュの車内に客を詰め込めるだけ詰め込んだよーな話にしたのかと小一時間問い詰めたい気分だ
ゼロ魔アニメのスタッフ陣に計画性無いのは一期からわかってた事だけどさ・・・
モット伯のような愛すべきオリキャラが現れますように。
というか今度こそタバサが空気にならずに活躍してくれるのかッ!?
仮面さん&代理投下の方、乙です!このあまりに脆そうな日常空間が目に痛いぜ…
しかしアニメ三期か。テファとシルフィ祭りになるのは予測済だが、イザベラ様は空気だろうな
正直、TVアニメの続編じゃなくて「OVA・タバサの冒険」で充分d(ry
>>303 その人、召喚してみたいんだけどさ…今の連載が終わらんことにはムリなんだよね…
今書いてる話が詰まってる時に限ってネタが次から次へと出てくるから困る
連載してる途中でサブタイトル案を思いつくから困る
今までいれなかったのに途中から入れるのもなんだし、ということで全部後付けしようと画策中
今時が飛んだぞッ!
ボスの『キング・クリムゾン』だッ!
今まで最もタバサが活躍した連載ってなんだろうな
タバサの大冒険では(避難所)
おもわず「(ネタバレ削除)っさ〜〜〜ん!」と叫んでしまったぜ…
それはあまり関係ないか? まぁ素敵な作品だ
いえ、サブゼロの兄貴のワルド戦でプッツンしたタバサも素敵だし
鉄のリーダーの虫食いを倒したタバサも素敵だし
…書き切れんな
>>312 テメー頭脳はマヌケか?
vs虫食いのタバサを出しといて
その直後にあった惚れタバサを出すのを忘れてるぜ!
つまりこういうことか?「俺は
>>311で「活躍した」と書かれていたので
戦闘描写のみを抜粋して語っているのかと思ったら実はそうではなくて
それら以外のクーデレや「かかったなアホが」とはしばみ草をキュルケに食べさせたり
逆に食べ過ぎて「妊娠したの?」と疑われるような総体的な活躍を語っていた… ということか?」
∨ / / ,,.. -一ァ',二二二{
V ,..,/ ,.ィ彳 f==<r'二二二{、 | ̄ ̄ __|__ |
∨| ヘ`<=''~ 弋ッ-ミ'''テ~ナ/ |ー― \/ ´ ̄| 「 ̄` | | \/
〉'| | ト、 i{ ,..`二/ =|/''′ |__ /\ 匚]__ !__, |_ | __/
//ヽヽぅ ヽ { =|
//匚 ̄]〕 丶,-‐ ,> ( そ の と お り で ご ざ い ま す )
/´r┐|__,|ト、 、____`7´
__人..二.」' l>、 ヽ`,二/
キング・クリムゾン
キング・クリムゾンは絶好調。
ずっとボスのターン
それがキング・クリムゾン・レクイエム
キング・クリムゾン
でも、時を飛ばしちゃう…ビクビクッ!!
ピッツァ .\ アリアリアリ /麻 ブッ殺した
はぁはぁ\ ドッピオ / 薬
目にゴミが! \ アギャギャギャーッ /
\ /兄貴
許 あっけなさすぎる \∧∧∧∧/ 燃えるゴミは月・水・金
可 < ク キ> 葉
し タンカスどもがあア< 予 リ ン> 掘
ないィ―――ッ!! < ム グ> り 帝王
─────────< 感 ゾ >──────────
無駄無駄 < ン >
< !!! の > ボラボラ ゴ
J ス /∨∨∨∨\ ゴ
・ ゴ /ス .GIOGIO \ ドドドドドドド ゴ
P 味 / タ DIO .\ ゴ
・ / ン \ エ ゴ
ポルナレフ/ ド 覚悟 \ピタフ ゴ
やたらと時を飛ばしまくるボス、貴様は俺達の心を裏切った!
しかるべき報いを喰らわせry
そろそろ神父のご加護が欲しいのー
>>322 どんなSS読んでも「どこかで読んだような」デジャブを感じるのか…
大変だな。
さらに此処でキング・クリムゾン+87 ★8を発動
時を飛ばすッ!
ヘタレなボスなら時を吹き飛ばして
気がついたら死んでそうだよな
死因 いつの間にか死亡
ルイズが呼んだのは小さなリスだった
契約しようとした瞬間、食い千切られてしまった
SJRの二部を読んだら、こんな電波を受信したから困る
「経過は全て消し飛ばされ結果だけが残る…
そう、私が死ぬという結果だけがな」
っぽく言わせてみても、やっぱりダメだなww
くっそー!
キングクリムゾンでこいつらをぶっころ・・・
・・・・・・え?俺?
もしブリミルの使い魔がスタンドだったら?
神の左手スーパーフライ。勇猛果敢な神の盾。大地に突き立ちし鉄骨で、あらゆる攻撃を跳ね返し、導きし我を閉じ込める。
神の右手がチープトリック。心優しき神の笛。あらゆる獣を呟きで操りて、導きし我を苦しめるは朝昼晩。
神の頭脳はヨーヨーマッ。知恵のかたまり神の本。あらゆる知識を垂れ流し、導きし我に蛙皮の衣服と悪臭を呈す。
そして最後にもう一人……。記すことさえばかばかしい…ハイウェイトゥヘル …。
四人の僕を従えて、我は死にたくなってきた……。
ブリミル可哀想だ…
おいコラww
カステルモール「これは罰だ…
あのお方の忠誠を思わずひとり占めしようとしたこの卑しい欲望と私の心の弱さに対する罰ッ!
やはりこの『地下水』はこのガリア王国を支配するシャルロット王女の物ッ!
うおぉぉおぉぉおぉぉ!全身全霊を尽くしましょうッ!」
こうですか!わかりません!
>>329 攻撃:スーパーフライ
防御:チープトリック
能力:ハイウェイトゥヘル
目の前にヨーヨーマッ
と申したか
これはヒドイw
つかよく生きてるなブリミル
>>336 その状況で生き残るからこそ伝説になったんだよきっと
単にホワイトスネイクの罠踏みましたとかだったり
>>336 ヒント:死にたくても死ねなかった(GER的な意味で)
そりゃエルフから悪魔呼ばわりもされますよ
どーでもいいけど、キング・クリムゾンの能力は
『変更不能な絶対予知、エピタフ』『それに唯一干渉可能な、時の吹き飛ばされた空間』
なんじゃないかと勝手に思ってる。
キンクリ飽きたけどキンクリ
次からはクラフトワークにしようぜ
サーレー乙
諸君、ニュースだ。
HELLSINGのキャラがルイズに召喚されました part3 にて兄貴が新作を投下したぞ!
神の左手ガンダールヴ。
勇猛果敢な神の盾。
右に握った細剣とテイクオフする甲冑で
導きし我を守りきる。
(でも便所運がない)
神の右手がヴィンダールヴ。心優しき神の笛。
あらゆる獣を従えて
導きし我を運ぶは地海空。(でも我の顔で屁をこく)
神の頭脳はミョズニトニルン。
知恵のかたまり神の本。
あらゆる知識を溜め込みて、
導きし我に助言を呈す。
(でも友達いない)
そして最後にもう一人……。
記すことさえはばかれる……。
(だってブ男だし)
四人の僕を従えて、我はこの地にやってきた……。
※()の中は後の歴史家により削除されました
カメナレフとイギーは分かった
3部繋がりでミョズ花京院、はばかりアヴドゥルか?
確かにジョジョで友達いないといえば花京院だな
そしてジョジョでブ男と言えばアヴドゥルだなw
>>348 待て
はばかりって言うと一部ではトイレって意味になっちゃう
351 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/20(木) 16:53:38 ID:KJL/tM3q
ミョズはヘヴンズドアーの先生じゃないか?
花京院であってると思うぜ
あれ?でもこれだとブリミルはどっちかのジョジョってことに……
テイクオフ<離陸>する甲冑ってなんだよw
>>354 ブ男との戦いで使ってたよ
何でも脱ぐと凄いらしい
主にスピードと防御力が凄い事になるな。
前々から思っていたんだが…
銀戦車が分身するのは高速すぎて残像が見えているからだよな?
……なんで一体一体バラバラに喰らってんだろう…
A:凄み
A:多重次元屈折現象
A:実は本当に分身しているのにポルポルが気づいていない
分身させた後、後ろ側にいる銀戦車がなんか勝手に動いてるのに気づかないポルポル。
後ろを向いたらすぐに体勢を戻す銀戦車。
傍で見ている承り太郎達唖然。
こうですか?よくわかりません><;
>>355 遅レスだが・・・
それってテイクオフじゃなくてキャストオフでね?
>>362 ゲームでの技名がアーマーテイクオフだったはず。
神の左手ガンダールヴ。
勇猛果敢な神の掌。
世界を削る右腕で
たまに導きし我を削り取る…。
神の右手がヴィンダールヴ。心優しき神の笛。
あらゆる音を操りて
導きし我を唯一慰めてくれる…。
神の頭脳はミョズニトニルン。
経験のかたまり神の筆。
あらゆる知識を溜め込みて、
導きし我すらも本にする…。
そして最後にもう一人……。
あれ?記すと時間が巻き戻る……。
こんな僕に囲まれて、恨み晴らさでおくべきか…
虚無使いが普通の魔法が使えなくて覚醒するまでバカにされる?
八つ当たりですがなにか?ざまぁwwww
【『始祖の日記』(後に焚書)より】
>>362 英熟語「take off〜」の一般的な意味として「離陸する」と「〜を脱ぐ」があるだろ…常考……。
そして、
>>354のはあえてギャグとして後者の意味をとってるんだろ。
なのに、それにマジレスしちゃダメだろ。
>>364 億泰・康一・露伴・吉良の4部セットですか。
康一以外ろくなのいねぇ(w
>>364 ガンダールヴ=億康
ヴィンダールヴ=康一
ミョズニトニルン=露伴
最後のもう一人=吉良?
・別バージョンで思いついたヤツ
そして最後にもう一人……
髪が(この後、記載がなく、血の跡が付着)
血管針攻撃の4人組で作ろうと思ったけど
個性が足りなすぎて無理だった
>>358 一瞬で退場したから仕方ない
てかブリミルにロクな使い魔いねえなw
370 :
369:2007/12/20(木) 20:36:28 ID:rAMF2dLx
血管神の左手ペイジ。
勇猛果敢な神の盾。
血管針で
導きし我を守りきる。
血管神の右手がジョーンズ。心優しき神の笛。
あらゆる血管針で
導きし我を運ぶは地海空。
血管神の頭脳はボーンナム。
血管のかたまり神の本。
あらゆる知識を溜め込みて、
導きし我に助言を呈す。
そして最後にもう一人……。
記すことさえはばかれる……。
四人の僕を従えて、我はこの地にやってきた……がすぐにスト様にであった。
久しぶりに10分から投下します。
支援の準備だァァーーーー!
血管針という言葉が残っただけで良しとしようw
そして支援
支援準備OK
377 :
ゼロいぬっ!:2007/12/20(木) 22:11:31 ID:fvVzbPEh
「左舷より竜騎士二騎接近!」
「『イーグル』号の姿はまだ確認できないのか!?」
「この濃霧の中では何も分かりません。あるいは逸れた可能性も…」
「引き続き捜索を続けろ! 動ける者は消火に当たれ!」
次々と齎される状況報告を耳にしながら、船長の顔を冷や汗が伝う。
地下空洞を抜けた『マリー・ガラント』号を待ち受けていたのは、
空において比類なき戦力を持つアルビオンの竜騎士隊を率いるワルドだった。
霧に視界を奪われた上に、周辺に浮かぶ岩礁が船足を殺す。
ましてや交易船に竜騎士を相手する力などはない。
甲板は炎に包まれ、砕かれた船体の一部が無残に内部を晒している。
乗組員の中にも負傷者が続出し、板を打ち付けるだけの応急修理が精々。
そんな、いつ撃沈されてもおかしくない攻勢を受けながら船は突き進む。
『マリー・ガラント』号が沈められなかった理由は二つ有る。
一つは、この船に乗ったルイズの存在だ。
ワルドにとって彼女を奪取する事が何よりも優先される。
その為、間違っても彼女を殺さぬように艦橋や船室を避け、
舵やマストに集中して攻撃を仕掛けて来ているのだ。
ただ皆殺しにするだけならば壊れた外壁から炎を吐き掛ければ事は済む。
そして、もう一つ。
竜騎士隊を妨害する者がそこにはいたのだ。
青い風竜を駆り、炎と風の魔法を操る二人のメイジ。
しかも彼女達はこちらの意図を把握し、要所の守りだけを固める。
彼女達がいなければワルドは船へと乗り込んでルイズを確保していただろう。
赤と青、風に靡く二人の髪の色がワルドの眼に苦々しく映る。
(もう! ここ凄く飛びにくいのね!)
(……我慢)
(嫌! 嫌なのね! シルフィの羽に傷が付いちゃうのね!)
船外を取り囲む岩礁を巧みに避けながらシルフィードが愚痴る。
それを何とか宥めながらタバサは周囲の敵を警戒する。
自分の使い魔は嫌っているが、この霧と岩礁が助けとなっている。
竜騎士の本領は他の竜騎士との連携によって発揮される。
だけど岩礁で思うようには動けず、霧の所為で互いの姿が目視出来ない。
故に、『マリー・ガラント』号に向かってくるのは主に単騎。
集団行動が取れていない相手ならば、彼女達でも防ぐ事が出来る。
そして何よりもキュルケの活躍があってこそだ。
『微熱』の二つ名に相応しくないほど、烈火の如く怒りに猛る彼女の炎。
それは術者の心を反映するかのように激しい物だった。
精神力の消耗さえも考えずに竜騎士隊に炎が降り注がれる。
視界も利かない中、突如として襲い来る猛攻に彼等も二の足を踏まざるを得ない。
下手に飛び込んで直撃を受ければ無事では済まないと分かっているからだ。
加えて、火竜であれば誘爆の危険性だって考えられる。
「居るんでしょう、ワルド! 隠れてないで出てきなさい!
あの子にした事への落とし前、ここでキッチリ付けさせて貰うわ!」
彼女の麗しい顔立ちとは裏腹に、荒々しい言葉が口を突いて出る。
感情の高ぶりが、キュルケの力を一時的に底上げしているのだろう。
あれだけの魔法を放ち、まだ余力を残す彼女の姿に驚きを隠せない。
先の見えぬ脱出行にタバサは僅かな希望を見出していた。
わんこ支援
キュルケスクェアモード化! 明鏡止水の音楽を流しながら支援!
380 :
ゼロいぬっ!:2007/12/20(木) 22:13:33 ID:fvVzbPEh
「……下らんな」
キュルケの見え透いた挑発を聞き流し、
たった一騎で奮戦する敵を具に観察する。
閣下より与えられた兵達が火竜なのに対し、相手は機動力に勝る風竜。
体格的に見て成体ではないだろうが、それ故に小回りも利く。
主人とよほど深い信頼で結ばれているのか、
その巧みな機動には自分をして眼を見張る物がある。
これでは個々で仕掛けた所で意味はあるまい。
この戦況を変えるには、自分から打って出るしか無いだろう。
だが、僕にはそんなつもり更々無い。
騎乗の腕に掛けては右に出る者がいないと自負しているが、
負傷した今の状態で十全の実力は出せはしないだろう。
それに奴との戦いで精神力の大半を損耗した。
ともすれば万が一という事も有り得る。
それに、そんな事をしなくても自分は既に勝っているのだ。
もうすぐ『マリー・ガラント』号は岩礁と霧の中から抜け出す。
だが、そこに広がるのは一面の星空などではない。
その先には貴族派が誇る大艦隊の包囲網が待ち受けている。
確かに僕の竜騎士団は船の確保には失敗した。
しかし、連中の気付かぬ内に誘導させる事には成功していた。
岩礁や竜騎士の攻撃によって脱出路を限定させて追い込む。
所詮、相手は戦闘経験も無い交易船。
危険を察知する本能に劣る分、狩りよりも遥かに容易い。
「チェックメイトだ」
自分の意思とは関係なく口元に浮かぶ笑み。
薄霧の中を往く『マリー・ガラント』号を見据え、ワルドは楽しげに呟いた。
「霧を抜けるぞ!」
次第にその濃度を薄めていく霧を見て、マストの上のギーシュが叫ぶ。
彼は倒れた船員に代わり『マリー・ガラント』号の“目”の役割を務めていた。
何度も折られかけたマストは錬金とワルキューレで必死に持ち堪えている。
標的と定められている場所に彼は震える足を堪えながら立ち続ける。
次々と襲い掛かってくる竜騎士を前に何度逃げ出そうとしただろうか。
それでもギーシュは退かない。
見上げれば、そこには多数の竜騎士を相手に戦う少女達の姿。
自分がいるマスト以上に危険な最前線に彼女達はいる。
女性に戦いを任せて、自分は船室でブルブル震えていて良いのだろうか。
否。断じて許される訳が無い。
彼が信じる貴族の誇りはそんな無様を許さない。
出来る事ならば、自分が先陣に立って戦うべきなのだ。
だけど、それだけの実力が今の自分には無い。
だからこそ自分が出来る事を全うしようと心に決めた。
自身の心中と同様、澄み渡っていく空。
そこには彼等の行く末を祝福するかのように、二つの月が輝いていた。
紫煙
382 :
ゼロいぬっ!:2007/12/20(木) 22:15:38 ID:fvVzbPEh
「バカな…!」
目の前の光景を信じられないのはワルドだけであった。
此処には確かに艦隊が布陣している筈だった。
しかし、そんな物は影も形も見当たらない。
濃霧で方向を見失う等という失態は犯していない。
指示した場所には間違いは無かった。
だとすれば艦隊に何かあったというのか?
「ワルド隊長ッ!!」
先行した艦隊との連絡役が帰還する。
その様子からして不測の事態である事は分かっていた。
だが、艦隊の足を止めるほどの大事が起きるとは思えない。
事の真相を聞きだすべくワルドは部下に話を促す。
「目下、艦隊は敵の反撃を受けて応戦中!
とても包囲には間に合いそうにありません!」
「反撃だと? 敵の戦力など高が知れている。
相手は竜騎士隊か? それとも、まさか奴が…!?」
「敵勢力は『イーグル』号一隻のみ!
こちらの砲撃には一切構う事なく、旗艦『レキシントン』に向かっています!」
部下からの報告にワルドが舌打ちする。
もはや『レキシントン』を制圧する力も残されていまい。
進退窮まっての特攻か、見苦しいにも程がある。
されど相手は一隻、その程度の抵抗で遅れが出るだろうか?
それとも『イーグル』号以外の伏兵を警戒しているのか。
他の無能共ならいざ知らず、少なくともミス・シェフィールドは違う。
彼女は『イーグル』号に何かしらの危険を感じているのだろう。
それが何なのか、彼には理解できなかった。
瞬間。ワルドの脳裏に閃きが走った。
ウェールズの立案では城門は爆破される予定だった。
しかし彼が城門を制圧した際、終ぞ火の秘薬を発見する事は出来なかった。
『マリー・ガラント』号から奪取した硫黄を元に、彼等が火の秘薬を合成していた事は間違いない。
結局は運び込まれなかったと見て放置していたのだが、
そこに使われる予定だった火の秘薬は何処に消えたのだろうか。
符合する二つの事実が彼に危険を告げる。
「直ちに旗艦の援護に向かう! ここは任せたぞ!」
「はっ!」
踵を返し本陣へと帰還していくワルドの背を見送った後、
敬礼していた男が唾を吐き捨てた。
彼はワルドの事が気に入らなかった。
最強と謳われたアルビオン国王直属竜騎士隊にこそ選ばれなかったが、
自分の実力はそれに匹敵する物だという自負がある。
それを認められたからこそ精鋭を集めた竜騎士隊の隊長を任されたのだ。
しかし、その座は後から現れたワルドに容易く奪われた。
確かに功績自体には目を見張る物がある。
だが、それも裏切りという恥ずべき行為があってこそだ。
その程度の事ならば奴でなくても誰にでも出来ただろう。
ましてや大した兵もいないニューカッスル城で手傷を負うなど、
精強を誇るアルビオン貴族派のメイジにおいては考えられない事だ。
そんな人間の下に就かなければならない不遇を、彼は呪った。
C-EEEN
384 :
ゼロいぬっ!:2007/12/20(木) 22:19:14 ID:fvVzbPEh
これはそんな自分に訪れた千載一遇の好機と確信した。
未だに交易船一隻沈める事さえ出来ずに現場を放棄したワルドに代わり、
自分が部隊を指揮して戦功を上げれば自ずと評価は逆転する。
そうすれば自分が隊長に成り代わる事とて夢ではないだろう。
「余所者に好き勝手やられてたまるか…!
アルビオンの空は俺達の物だ!」
男の手が高々と上げられる。
それは竜騎士隊の総攻撃を示すサイン。
交渉する相手もいないのに、わざわざ非戦闘員を捕虜にする意味はない。
そう判断した男は早期に決着をつけるべく指示を飛ばした。
ワルドが指揮する事を前提にしていた為、彼には知らされていなったのだ。
この船を沈めてはならないという重大な命令を。
撃ち込まれた砲弾が外壁を砕き、船内に破片を舞わせる。
足に刺さった木片を引き抜きもせず、船員は尚も艦隊に撃ち返す。
それは砲撃戦というには、あまりにも一方的だった。
こちらが一度撃つ間に百を超える砲撃を浴びせられているのだ。
ここまで撃沈されずに来れたのは『イーグル』号の性能と、
それを生かす優れた船員達の腕と、何よりも僥倖があればこそだった。
「もう撃ち返す必要はない。
我々は艦隊の戦列に踏み込んだ…我々の勝ちだ」
船内に副長の言葉が静かに響き渡る。
圧倒的な火力を誇る彼等にとって真に恐れるべきは、
『イーグル』号の砲撃ではなく艦隊の同士討ちである。
竜騎士の攻撃も残存している王党派の竜騎士が防いでくれている。
全ての状況を把握し彼は勝利を確信した。
だが、そこに歓喜の声はない。
作戦が成功しようとも彼等が生きて戻る事はない。
元より戻るべき港も主も失われた。
これが『イーグル』号にとって片道にして最後の航海となるのだ。
「…すまんな。出来ればお前とはもう少し冒険したかったんだが」
まるで長年連れ添った親友に話し掛けるように、副長は舵に優しく手を触れた。
そして同様に、自分に付き従った船員達に謝罪の言葉を述べる。
「お前達にも貧乏クジを引かせてしまったな。
もう引き返す事は出来んが…」
385 :
ゼロいぬっ!:2007/12/20(木) 22:20:38 ID:fvVzbPEh
「副長、何を言われるかと思えば…。
諸悪の根源を討ち滅ぼせる大任、他の誰に譲れましょうか」
「左様。主の仇討てずに何を以って騎士を名乗れというのですか」
「それに、船と運命を共にするのは船乗りの宿命ですよ」
「このまま引き返して本当の海賊になるのも悪くないですがね」
口々に副長に反論する朗らかな声があちこちから聞こえる。
今から死にに往くとは思えぬ輝いた瞳。
中には手傷を負いながらも笑い飛ばす者もいる。
長年苦楽を共にしてきた戦友達の頼もしい姿に、
緊張に固くなっていた副長の頬も綻ぶ。
そして決意を込めた眼で彼は見上げた。
自分達の直上に存在している敵を…!
「『ロイヤル・ソヴリン』! 王権の名を冠する船よ!
我等と共にあるべき御方の元へ逝こうぞ!」
『イーグル』号の舵が大きく切られる。
遺された者達に受け継がれたウェ−ルズの作戦が決行される…!
私怨
387 :
ゼロいぬっ!:2007/12/20(木) 22:22:06 ID:fvVzbPEh
以上、投下したッ!
次回もまだまだ逃亡行。
わんこ乙&GJ
投下していい?
だが断る!
スマン、ありゃウソだった。
支援してやるぜ!
わたしが医務室に着くと、既にモンモランシーが治癒を受け終わり、
ベッドで静かに寝息を立てていた。
わたしも続けて治癒を受け終わり、わたしとギーシュとモンモランシーの三人
だけとなった。
なんと声を掛ければいいのか考えてるとギーシュから声を掛けてきた。
「すまなかったねルイズ、彼女は君がチヤホヤされる事に嫉妬してたんだよ。
彼女には僕が良く言い聞かせておくよ」
てっきり、わたしを責めるかと思ってたのに。
「ギーシュ・・・どういう風の吹き回しよ?」
ギーシュはファサと髪をかきあげた。
「なに、兄貴に君の事を頼まれたからね」
・・・・・・?
「ちょっと待って、頼んだのは連れて帰る事で、ずっと面倒を看ることじゃ無かっ
たと思うんだけど?」
「いいじゃないか、そんな細かい事は」
あっはっは、と高笑いをあげた。
「細かくないわよ、あんた一生わたしの面倒を看るつもり?」
「一生じゃないさ、君が一人前のメイジになるまでは見守るつもりさ」
「あんた、わたしが『ゼロ』だということを忘れたの?」
「その事について僕は大して心配なんかしてないさ。君は兄貴を召喚したんだ
近い内にきっと僕など足元にも及ばないメイジになるさ」
ギーシュがわたしをプロシュートを通じて認めてくれている。
「ほ、褒めたって何も出ないんだからね」
「別に見返りが欲しくてやっている訳じゃないさ」
コンコン。開けた扉からキュルケがノックをしていた、タバサも一緒だ。
「お邪魔だったかしら?」
「ちょ、キュルケ!そんなんじゃないんだから」
「よしてくれたまえキュルケ。僕には心に決めた人がいるのだから」
わたしは不快を隠さずキュルケに問う。
「で、何しに来たの?」
「何しに来たのとは、ごあいさつね。お見舞いに来たんじゃないのよ。後、報告」
「報告?」
「さっきの騒ぎ、授業に来たコルベール先生の耳に入ってね、珍しく恐い顔を
してたわよ。後でここにも来るんじゃないかしら」
バタバタと廊下から足音が聞こえてきた。
「早いわね、もう来たわ」
キュルケが廊下を見ながら呟いた。
「コルベール先生・・・」
先生が息を切らせながら部屋に入ってきた。
「よかった、無事だったのですね」
先生は静かに眠っているモンモランシーの顔を確かめ息を整えてから、
こちらを向いた。
「ミス・ヴァリエール、事情は聞きました。
きみは自分の魔法をミス・モンモランシーに打ちましたね」
確かに、今のコルベール先生は恐い顔をしていた。
何人も人を殺しているような・・・プロシュートと少し雰囲気が似てる・・・
・・・まさかね・・・。
「はい、その通りですミスタ・コルベール」
後悔はしていない。わたしはモンモランシーが許せなかった・・・
「この貴族の学び舎で『規則』を破り魔法を打ち合うなどと、とても許せる
行為ではありません。この事は実家に連絡させていただきますので
そのつもりでいるように。」
今、何て言いました?
「ごめんギーシュ、もう一回先生を呼んできてもらえる?まだ耳の調子が
良くないみたい・・・実家に連絡するって聞こえたわ」
「聞き間違いではありませんよ、ミス・ヴァリエール」
きっぱりとコルベール先生は言った。
「ちょっ!ちょっと待ってくださいよッ!」
「う、嘘ですよね。ちょっとおどかして気合を入れてから
あとで本当は許してくれるんですよね、罰当番とかで」
コ・・・コルベール先生の目・・・
いつもの暖炉の火のような暖かい眼差しなんかじゃなく
トライアングルスペルの炎の如く全てを焼き尽くさんと燃えている・・・
わたしの取るべき行動は・・・
わたしは部屋の窓を開け、窓枠に両手をかけ足を乗せ、そして・・・
「ちょっとルイズ、ここ三階よ!」
キュルケに後ろから羽交い絞めにされた。
「放して、放してよキュルケ」
死に物狂いでもがくが体格の差で、わたしは部屋の中央に戻された。
「もうダメよ・・・おしまい・・・コルベール先生に連絡されたら・・・
あたしもう・・・生きてられない・・・もう死にたいわッ!!クソッ!!クソッ!!
飛び降りたいよ〜、窓から飛び降りたいよ〜」
嘆くわたしをキュルケが冷たく見下ろしている。
「・・・さっき、あなたの目の中にダイヤモンドのように固い決意をもつ『気高さ』を
みたわ・・・だが・・・堕ちたわね・・・ゼロのルイズに・・・!!」
「ンなこたあ、どーでもいいのよッ!」
キュルケの侮辱も今はどーでもいい・・・
「お・・・おわりよ・・・わたしはもう・・・おわったのよ・・・」
「ちょっとルイズ、一体何なのよ」
わたしの只事じゃない様子にキュルケが心配そうに声を掛けてくる。
「親がそんなに恐いの?」
親という単語が出ただけで震えが止まらない。
「な、なんて言ったら理解してもらえるのかしら・・・
そうね、プロシュートが『二人』説教しに来ると想像してみて」
嫌な沈黙が場を支配する。
支援
「ご、ごめんルイズ。あたし用事を思い出したわ」
キュルケが慌てて部屋を出て行こうとする。
「用事って、どこに行くのよ?」
「ちょっとスティクスに会いに・・・」
「別れたんじゃなかったの?」
「・・・じゃあ、ペリッソン」
「じゃあって何!」
わたしとキュルケが言い合いをしている脇をそっとタバサが抜けようとしていた。
「ちょっとタバサ、どこに行くのよ?」
「・・・シルフィードにエサあげなきゃ」
「あんた、いつも放ったらかしでしょうが!」
視界の隅にギーシュが映る。モンモランシーをやさしく起しているところだった。
「さあ。ここは騒がしいので自室でゆっくりと休もうじゃないか」
「ギーシュあんたは見捨てないわよね、わたしを見守ってくれるのよね」
蜘蛛の糸に縋る思いでギーシュを見つめた。
人目があっても『あの方』の罰が緩くなるとは思えないが、もしかしたら九死に
一生を得るかもしれない。
「うむ、確かに言った!」
ギーシュは力強く頷いた。
「だが、それはそれ、これはこれだ!!」
「うらぎりものおおおおおおぉぉ!!」
人の性格がそんなに簡単に変えられ
成長できるなら誰も苦労はしません
投下終了!!
乙!
>>397 ギーシュがえらく熱血な漫画家にwwwww
いぬさんGJッ!
わんこは、そしてルイズとワルドはどうなってしまうのか……
偉大さんもGJッ!
前回のルイズの怖さが抜けて、正直ホッとしました
そして兄貴×2とか想像しただけで怖いw
そうだな…わたしは“投下”だけを求めてはいない。
“投下”だけを求めていると、人は感謝をしなくなるものだ…
感謝しない時真実を見失うかもしれない。作者のやる気も次第に失せていく。
大切なのは『作者に感謝しようとする意志』だと思っている。
感謝しようとする意志さえあれば、たとえ次の投下が遅れたとしても、いつかは続きが来るろう?
向かっているわけだからな…違うかい?
犬さん…偉大なる使い魔さん…君たちは立派にやったのだよ…そう…わたしが乙に思うくらい立派にね…
GJだ、実にブラボー…おお、ブラボー!
犬さんと偉大さん!
いだいぬGJ
偉大さん&いぬさんGJ!!
どっちもこれからの展開にwktkなんだぜ
そして、キンクリ
きん☆くり
金栗
ボス「ゴールド・マロン!」
神父が昨夜3部スレに出張してたみたいだな
菌栗
キングクリムゾンッ!
決闘の過程は消し飛び、ギーシュが負けたという結果しか残らない…!
>>411 ボロボロのワルキューレと杖へし折られて色々とバキバキされたギーシュだけが残るのか
つまり愚者
あえて言わせてもらおうか。
クリスマスや正月なんていらねえんだよ!仕事量が異常に増えるからな!
SS書く時間なくなるんだよ!
俺と正反対で羨ましいな
使い魔の種類は属性によって決まる。つまり同属性のメイジが召喚した使い魔は共通点があるはず。
ならばルイズがJOJOキャラ召喚したならほかの虚無の使い手も共通項のあるJOJOキャラを…と妄想してみた。
王道主人公なルイズと承太郎!
世界征服に燃えるガリア王とDIO様!
人知れず暗躍するロマリア王とディアボロ(&ドッピオ)!
ウエストウッドで静かに暮らすティファニアと吉良!
とりあえず時を操るスタンド使いでまとめてみたが想像以上にぴったりくるわこいつら。
特に四番目。テファが記憶を、吉良が肉体を消してウエストウッドが原作以上の隠れ里にw
>416
肉体消したら記憶消す意味無いやんw
つかテファがヤバイ、手だけにされる。
テファが吉良の殺人鬼としての記憶を消すのが先か、吉良がテファを消すのが先か。
殺人鬼の記憶を消しても、人を殺さずには折れない性は消えないと思うな・・・。
例えば今の自分の記憶が消えたからといってロリコンが直るのか・・・?直らないだろうな・・・きっと・・・orz
デッドマンズQという前例があるじゃないか
子煩悩なヴァリエール公爵の使い魔は、これまた子煩悩な吉良の親父。このりくつはおかしい?
>>420 でも吉良の親父が子煩悩なのは確か息子に対する懺悔みたいな感情からだったはず・・・
母親が吉良を虐待していて親父はそれを黙って見てたとかインタビューで言ってたし。
そんな設定あったの?知らなかったな。
でも、そういう設定を聞くと吉良が一番にならない理由や女を殺したくなる
理由が納得できる気もする。
その設定、荒木さん本人も言ってるけど、本当本編で出さなくて良かったと思うよ。
もし出されてたら吉良パパの頑張りだけで涙が出てくる…。
が、ヴァリエール公爵なら長女や妻が末娘にキツク当たってるんで吉良パパを呼び出してもおかしくないかと。
ヴァリエール家のあれは虐待ではないだろう。
ある意味虐待より始末が悪いけどな!w
スタンドの能力に優劣なんて無い使い方次第だという話はよーくわかるんだが
正直吉良パパの能力は華が無い…
コルベール先生の使い魔がアヴさんだったら
かっこいい話になると思ったが
契約シーン想像したらDIOに会った花京院みたいになりかけた
オエエ……orz
召喚しただけとか、偶然助けて友人に、とかだとセーフかな……
実はサイトくん、僕が結婚しないのには訳があってだね・・・
ムウン!赤い炎蛇(レッド・スネーク)!
こうですか?わかりません><
>>424 この設定出したら吉良が悪役じゃなくなるって荒木先生も言ってたしな
ジョジョの良い所は、バトルが難解な癖にストーリーは同情の余地の無い悪を、正義こそ自分たちのパワーといわんばかりの主人公たちが倒すという単純な所だと思う。
それだけにドッピオのさびしいよぉぉ〜は…orz
>>正義こそ自分たちのパワーといわんばかりの主人公たちが
エンヤ婆が力の源とは驚きです、
便器を舐めてレクイエム発動ですね。
ジョジョは悪役は勿論端役まで全員が独自の哲学に従って行動するのがいいところなんじゃあないかな
悪いことするから悪とかいう薄っぺらな価値観じゃなく、その行動が周囲と絶対的に相容れないから悪だという事が描写されているのが素晴らしい
>>その行動が周囲と絶対的に相容れないから
妖怪伝説のため土地の買占め
キャラの信念がはっきりしていて悪と正義というのが分かりやすいのがいいな
いちいち何が正義か悪かなんて考えたりしない
なんというか荒木の善悪観がにじみ出ているのが好きだ
>>435 そりゃ彼はある種の変人ですから
ふと、ディオ様はジョースターだの一族でもジョジョと呼んだのはジョナサンだけなんだよな
ディオ様にとってジョジョはジョナサンだけだったと考えるとジョナサン倒してから死ぬまである種の空虚感とか感じてそうだ
認めたのもジョナサンであってジョースターの一族じゃないしな
人がいないとは思いますが45分から投下
「で、カッコつけてみちゃったものの、一体どーすればいいと思う。ACT3?」
若干気が抜け気味な声で康一が自らの精神の力、ACT3に尋ねた。
『非情ニヤベー感ジデス。何モ考エテイナカッタノデスカ?S・H・I・T。』
OH!とスタンドのくせにACT3が呆れて天を仰いだ。
「だからお前に何か考えがないか聞いてんじゃあないか。それと言い方が微妙にムカつくぞ」
自分の精神から生まれた存在に呆れられるというのは結構ムカついたりする。
何で自分に自分をバカにされなきゃあならないのだ。
普段こんな物言いはしない康一だが、ACT3に対しては多少荒っぽい言葉遣いにもなろう。
『ヤレヤレダゼ、ッテヤツデスネ。…ストップ!ソンナニ怒ッタ顔シナイデクダサイ』
「だったら、何か、いい手があるんだろうね?」
無かったらブチのめすぞ、と言わんばかりの康一が凄みを利かす。
そんな康一の問いかけに、悩んでいるような表情のACT3が逆に尋ねた。
『因ミニ、ソレハ康一様ガ生キ残ル方法ナノカ。
ソレトモ、マザリーニ氏ヲ優先スルノカ。一体ドチラデショウカ?』
ACT3にふざけた様子は一切無い。声音も表情も、立ち居振る舞いに真剣さが滲んだ言葉だった。
突然だが、スタンドの覚醒とは実に様々な要素が絡み合っている。
康一の場合、虹村形兆が所持していた『矢』に刺されてスタンド能力に目覚めた。
しかし彼は貫かれた矢によって一旦は死亡しかける。
だが康一の親友の一人。東方仗助の能力によって傷を治され、一命を取り留めた。
その上で広瀬康一はスタンド使いとなり、様々なスタンド使いが起こす事件に巻き込まれてゆく事になったのだ。
『エコーズ』は三つの形態を持つスタンド。
このスタンドは本体である康一が精神的に成長するたびに、段階を経て成長していった。
ACT3に成長した際は、今までとは比べ物にならない怒りを康一は感じた。
怒りからくる闘争心と、傷ついた空条承太郎を守ろうとする心が、康一を成長させたのだ。
その精神は如実にACT3にも現われている。
特殊能力、3・FREEZEは対象を超重くする。迫り来る敵の動きを止め、仲間を守る為に生まれた力。
自我を持ったスタンド。故にそれは本体のあり様を映し出す「鏡」とも言える存在。
確実に康一が持つ、守ろうとする心はACT3にも受け継がれている。
支援だ!
そのACT3の守ろうとする心が生み出すのが、康一への問いかけだった。
スタンドは本体の心によって性質を変える。いわゆる純粋さを併せ持つような気がする。
純粋であるために歪な心から生まれる能力は歪になってしまう事もある。
否、人間というのは大小に関わらず、どこかしら歪んだ面を持っているのかもしれない。
それでもスタンドには一本の筋のようなものが生まれる。
見紛う事なき輝ける精神から生まれた能力は、また輝く精神を持つ存在になる。
『サア、ドチラデスカ?命令シテクダサイ、私ハソノ言葉ニ従イマス』
ACT3は心のままに康一へと問いかけた。
精神には精神、心には心で返すのがスタンド使いの流儀。
康一は僅かに呼吸を整えて言った。
「…もちろん、僕とマザリーニさん。二人で生き残る方に決まってるッ!」
『Good!最初カラ選ブト分カッテイマシタガ、本人カラ聞イテミルト、グッとキマスネ』
何だか少年のように笑うACT3を見て、逆に康一は苦笑してしまった。
『正面カラ突ッ込ムノハ死ニニ行クヨウナモノ。
ドウニカ不意ヲ突イテ、先手ヲ打ツノガ最良ダト考エマス。
幸イコチラハ一人ナノデ隠レテ攻撃スルノハ容易イ。ソレヲ利用シマショウ』
確かに現状それぐらいしか使えそうな手が無い。
恐らく前方から廊下を突き進んでくるだろう敵の三人を考え、康一は手近な部屋に隠れようとドアノブに手を掛ける。
探知の魔法で位置を気取られる前に、一撃で戦闘不能に追い込めるならこちらが有利。
が、手を掛けたとたんにドアはノブを捻っていないのに内側へと開く。
(ちゃんとドアが閉まってなかったのかな?)
鍵が掛かっているよりは良いが、何か不気味な感じがする。
開く、開く、ドアは止める間も無く開ききる。そして。
「…うっ」
呻き声だと康一が理解する間も無く、ドサッ!と音を立てて何かがドアの前に倒れた。
部屋の内側、ドアのすぐ横にあった物がドアが開いた事で倒れてしまったのか?
そんな事を思った途端、かなり不味い事に康一は気が付いた。
今の物が倒れた音はかなり大きかった。そして夜の静まり返った城に、そんな音はよく響く。
間違いなく今の音を聞きつけて敵はこちらにやってくるだろう。
不意を打って攻撃するのは、これでパーかもしれない。
心の中で激しく舌打ちしながら、康一はこれからどうするべきかを考えなおす。
時間は残り少ない。そもそも時間が残っているのかさえ疑わしいというのにっ!
『……様ッ!康一様!』
康一は自分の名前を呼ばれた事でハッとして振り返る。
そこにはかなり焦った感じのACT3が視線をドアの向こうにやっていた。
一体なんだと思い、反射的に視覚を同調してみる。
そして見た。瞬間、硬直しかけるが何とか持ちこたえ、今度は自分の目でそれを見る。
倒れた者。誰か自分の目の前に倒れた人がいた。
まず目に入ったのは金の輝き。一際目を引くその金色の髪を康一は一度見ていた。
既視感が康一に倒れた人が誰なのかを教える。
「この人は…確か…かなりキツイ感じの……まるで由花子さんみたいな人…ッ!」
山岸由花子に聞かれたらラブ・デラックスで絞め殺されること請け合いのセリフである。
康一は明らかにロクな覚え方をしていない。
倒れている彼女は今夜康一が見回りの際に声を掛けてきた女性。
男を引き付ける美しい相貌の女性の名は、エレオノール・ラ・ヴァリエール。
康一の主人のアンリエッタと血の繋がりのある由緒ある家柄の子女だが、異世界人の康一には知るはずも無い。
よって康一の認識での彼女は、微妙に性格がキツめの可哀想なお姉さんといった感じだ。
大切なのは、何故彼女がこんなところに倒れているのか。
今まさに戦闘の最中だというのに、こんなヤバ過ぎるタイミングで現われてきたのか、ということである。
自分とマザリーニが襲われているのに巻き込まれていたのか?
しかし現実は無情にも康一を更に追い詰める。
「「「………………」」」
僅かに聞こえてくる零れた言葉。少しだけ康一は目を向ける。
そこには影が三つ。六つの瞳が康一を見据えていた。
明らかに呪文の詠唱。命の危機。体を動かす。
ダンッ!と力の限り地を蹴って、エレオノールをACT3で抱え康一は部屋の中へ飛び込むッ!
「うおおおおおッ!」
火炎の爆裂、氷の破断、鉄槌の粉砕。三つの魔法が康一を襲う。
支援です、受け取ってください
火炎はその熱量が皆全て焼き払い、氷はその場で爆ぜて周囲に氷弾を撒き散らし、幾つもの鉄槌が雨の如く降り注ぐ。
殆んどは康一の立っていた部屋の前辺りに効果範囲を設定していたらしく多くは回避できた。
しかし残りの余波といえど三つ集まれば相当な打撃力
康一は成すすべもなく壁へと吹き飛ばされて激突。
「あぐッ!」
したたかに背中から打ち付けられ酸素と胃液が喉から零れた。
だがさすがと言うべきなのか、ACT3で抱えたエレオノールはしっかりと受け止めている。
半ば反射的な行動だったが、いかにも康一らしい行動といえるだろう。
しかし状況が悪すぎる。奇襲をかける筈が逆に奇襲され、一人で身軽に行動するという僅かなアドバンテージもなくなってしまった。
元々三対一だったのに今は更に一人守る者が増えてしまっている。
さすがの康一も冷汗が止まらない。一体どうすればいいのか。
後何秒で追撃が部屋の中に放たれるだろう。
そうなれば魔法が康一とエレオノールは一瞬の内に死亡。
冷凍肉がハンマーで砕かれ焼肉にされるのは想像を絶する。そんな死に方はゴメンだ。
何とか活路は無いのか。だが先ほど体を打った衝撃が僅かに思考を狂わせていた。
僅か数秒の狂い。しかし今の康一には死に至る狂いだ。
思考が纏まらず自分の意志を何処に向ければいいのか分からない。
擦り切れそうな精神的圧力。思考が無意味にループしてしまう。
こんな簡単に追い詰められるなど想定してなかった。
どうする!?どうする!?どうする!?
そして僅かに時が過ぎてから、部屋の中に魔力が渦巻き、派手に魔法が弾けとんだ。
康一く〜ん!支援
投下完了、前回から投下の感覚が開いている上に短いという
本気でもうちょっと気を入れないと完結できないんじゃないかとビクビクしています
自分でも前回を読まないと出だしが分からなくなりそうなほど、展開が急ですがご勘弁下さい
康一君乙でした、短い?この先を想像しつつ待つのが楽しいんじゃないか!
またストーキングされるのか
GJ!!!
ACT3との会話が良かった。
三枚のカードを持って悩んでいる康一が頭に浮かんだ
一羽でオラオラ
二羽で無駄無駄
三羽そろえば
.,,_ _,,=-、
'、  ̄_ _.,! __ .r-,. _ r −、
_/ _!」 .└ 、( `┐ .,,=! └, !、 .ヽ ヽ 丿
.(. ┌-'( ヽ~ ,.-┐ `┐ .r' r.、''" r' ./
゛,フ .,. | `j .`" .,/ .r'" ヽ | .l '、ヽ、
,,-.' , 〈.| | i' .__i'" .( .、i .{,_ノ ヽ ヽ \
、_ニ-一''~ ヽ | \_`i 丶,,,,、 } ヽ_丿
ヽ__,/ ~''''''''''''″
一羽目から牙をむいてるじゃねーかwww
投下じゃ
投下するのじゃ
今回は自分なりにゼロ魔っぽさを追求してみたがおかしい事になったのでお蔵入りさせようかと思ったがそれもあほ臭いのでそのまま採用れっつごー
わーあぬびすだー
「投下した」なら(ry
アヌビス支援
本陣が前線に近づいていたとは言え、最前線までは余りに遠かった。
「相変わらず揃って脳みそがマヌケか!
戦略的にその辺把握して足並み揃えりゃ良かった事だろうが!
二階級特進しろ、派手に散れ。
何で前もって検討しておいて合図送れば済む事が出来ねえんだよ!」
「それより、なぁんか爆発音が近づいてる気がするのは俺の気の所為かね?」
デルフリンガーの言葉にワルドがキョロキョロと周りを伺う。
「確かに。
あれは恐らくは艦砲射撃の炸裂音か。
さてはシェフィールドめ、僕らをこの場ごと吹き飛ばして葬るつもりか」
確かにそれは理に適ったやり方と言えた。
例え先程の偏在二刀流を持ってしても、『風』のスクウェアスペル『カッタートルネード』を持ってしても、こういった単純物量火力による質量攻撃をいなすのは難しい。
「手は無いのか?」
「おめーら、何か手はねーのか?」
「何か良い手はあるかい?」
三者の声が重なる。
「クソ!何でこんな下らない事だけ、以心伝心呼吸ばっちりなんだよ!」
アヌビス神のその愚痴と共に、犬が『がおー』と遠吠えするような幻覚が見えた気がした。
「完全に落ち目じゃねーか。ワルドの旦那も前はこんなに間抜けなイメージじゃ無かったんだがね」
デルフリンガーの鍔のかちゃかちゃ音が何時もと比べてやたらと挑発的だ。
「キミらのペースに飲まれたんだ!」
それらの攻勢にワルドが二振りをぶんぶんと振り回す。
「にゃにおー!このおれだって元々そこそこクールな敵役のクレバーなイメージだったんだ!」
「しかたねーなあ。ここは最年長の俺っちが適案を教えてやらあね」
間抜けな言い合いを止めるべく、デルフリンガーが、胸を張るようなイメージで鍔をちゃきちゃきと何時もとは違う重くも頼もしく鳴らす。
「さてはデル公、新たな隠し機能か!」
「ブリミル仕込みの七つの秘密機能な訳だね?」
アヌビス神とワルドがデルフリンガーを覗き込む。
「ねえよ!そんな面白機能あるわきぇねえよ!」
「じゃあ」「では」
「「どうするんだ?」」
重なるその言葉にデルフリンガーは笑って答えた。
「こういう時はなァー」
「「こういう時は?」」
「逃げるんだよォォォー!!」
うわ、遍在が偏在になってるぅぅぅ
そしてワルドは走っていた、グリフォンを繋いでいた場所へと。
「おせーぞ急げ!」
アヌビス神が急かす。
そこらかしこで爆発が巻き起こり、何時消し飛ばされても可笑しくはない。
「これでも全力なのだがね」
先程の偏在二刀流の酷使で足腰が悲鳴を上げる中、鍛え上げられたワルドの肉体は良く頑張っていた。
ドカンと派手な音を立てて、側に有った荷台が消し飛ぶ。
爆風に煽られワルドは吹き飛ばされた。
「余裕綽々で帽子直してんじゃねーよ!」
立ち上がり、羽帽子を軽く叩いて被り直すワルドへデルフリンガーが文句を言う。
「はは、問題無い、目的地に到着したからね」
「だが、何も無いぜ?誰も居ないぜ?」
アヌビス神のその言葉にワルドは淡々と返した。
「あれだけの砲撃、砲弾の雨。逃げない方が可笑しいとは思わないかね?」
つまりは、グリフォンはこの場からさっさとトンズラしていた。
「役にたたねー!!」
「ちゃんと訓練してるのかよ!」
「しているさ。だから独自判断で危険なこの場を離れた。ちゃんと自分で繋いでいた器具も外してるだろう?」
「アホかあ!もっと思慮深くだなあ!」
「獣に期待し過ぎってものだ!」
「シルフィードなんかなあ!あいつだったら絶対迎えに来るぞ?
しかも目の保養にもなるんだぞ?さり気にむちむちぷりんだ!」
「落ち着けアヌ公、発想がオスマンだ!しかも多分その事判る奴少ない」
再び近場に砲撃が着弾し、一同は吹き飛ばされる。
砲撃は正確さを増してくる、恐らく補足されたのだろう。
「ヴェルダンデなら潜って余裕なのによおー!」
アヌビス神の声を残し、ワルドがぼろ切れの様に再び宙を舞う。
「さらばワルド。この高さで、この姿勢なら楽に首折って死ねる。
いや、死んじまえ」
「つれない事を言ってくれる」
ワルドは、何のこの程度とばかりに宙で身を捩り……。
「やあ、ここで良いのかい?ヴェルダンでぶおああああぶじゅぅーるるる」
ぐちゃ
何かを踏みつぶした。
「おわぶっぐべべべべっ」
バランスを崩しワルドは顔面から、アルビオンの大地へkissをした。
「ヴェルダンデ!ヴェルダンデじゃねえか、……とギーシュじゃねえか!」
アヌビス神のその言葉にワルドが叫んで飛び起きる。
「『ギーシュさん』!?やはり『ギーシュさん』!」
モグラ叩きされて穴から覗かせた上半身を地面に突っ伏すその姿、間違いなくギーシュ・ド・グラモンその人であった。
「僕を助けるためにまさか……。
は!?もしや、あの砲撃で?許せん!」
潰れ、己の使い魔にもぐもぐ言われて介抱されるその姿を見て、ワルドは拳を強く握る。怒りを遥か彼方の上空に浮かぶ戦艦へと向けて吼える。
支援
しえん
「馬鹿やってないでさっさと退きなさいよ!邪魔よ邪魔!」
そんなワルドの眼前で、突然蹴り出されるようにしてギーシュが宙を舞って地面に転がった。
「ご主人さまじゃねーか」
続けて穴から這い出てきたのはルイズであった。
更に続けてタバサ、キュルケ、フーケが這いだしてくる。
最後に途轍もなく不満げなきゅいきゅいとの鳴き声と共に、シルフィードが這い出てきた。
「きゅいきゅいきゅいきゅいきゅいきゅいきゅいきゅい!!!!(狭かったのね、この姿の侭だなんて、お姉さまも無茶を言うのね!)」
「助かったぜご主人さま!流石やる時はやるタイプ!
ピンチに駆けつける仲間がこんなにありがたいとは、おれ知らなかったね」
アヌビス神が大喜びでワルドの腰から騒ぐが、それ以上に砲撃音が騒がしい。
どかんどかんと、辺りの形ある物が次々と吹き飛び砕け散る。
「撤収」
タバサは簡潔に言うと、穴へと飛び込んだ。
総員慌てて穴へと飛び込み、最後にヴェルダンデがギーシュを引きずるようにして慌て穴へと滑り込む。
はっきり言って窮屈だ。
大人一人増えただけで、その穴はもうすし詰め状態である。
「離れて」
「むほほ、むほほん(無理だ、動けん)」
タバサの胸元に偶然顔を埋めたワルドが、やたらと生き生きして見える。実際は真っ暗で殆ど何も見えないのだが。
多分鼻がブラウスのボタンの間と布と布の隙間ストライクなのも奇跡的偶然である。
「動かないで、むずむずする」
駄目だこの男!
「ちょっ、だ、誰よ。やだ」
左手がルイズのお尻を触っている。あくまでも偶然である。
「この肘は誰のよ。ちょ、こら!」
右肘はフーケのたわわな何かを歪めている。
「あん。誰?動かしちゃ駄目よ」
右膝はキュルケの太股の狭間にある。
「く、暗いよ兄貴ぃ。ど、どど、どこだ、どこに居るんだ」
「落ち着けアヌ公。皆すし詰めで纏まってる。
しかしこの男、体勢は偶然だがタイミングは故意じゃねーのか!」
暗くても状況把握出来ているらしいデルフリンガーの言葉に対して、ワルドは弁解しようと声を上げる、すると鼻が更に幸せホールに潜り込んで幸せそうだ。喋ろうとした時に舌が何か触った気がする。
全てを置いといて、この一瞬の味だけは一生大事にしようと心に誓う。
しかしこりゃたまらん。
眼前以外も超スゴイ。
左手のこのグレイトな弾力、そして張り。
この絶妙な肉の厚さ、少な目さがこれまた程良い脂肪。
はははは、これは見ずとも、触り心地から想像しただけで誰の物か判る!
僕の物だ!もとい僕のルイズの物だ。
右肘に当たる、ぽよんぽよんましゅまろ。自分には見ずとも判る。
これはアルビオンの驚異だ!
じゃなかった。マチルダちゃんもといフーケのおっぱいだ。ソムリエだから判る。
期待以上の感触、何とか右手を……
右脚を締め付ける感覚がやばい。なにか残らず絞り取られそうだ。
これは魔性の兵器だ。挟み込む力と弾力のバランスが実に傾国。これからはふとももの研究もせねばなるまい。
ワルド絶頂!
おっぱいソムリエ支援&涙するぜ
ギーシュさん、久々登場! 支援
尚誤解の無いよう改めて明記しておくと穴の中は薄暗いので、目と鼻の先程しか確認できず、色々誤解を招かずに済んでいる。
弁解の声は誤解の元である。
実際、全て他意は無く偶然巻き起こった事なのだから、慌てる必要は無いのである。
ワルドは深呼吸して落ち着くことにした。紳士として振る舞わねばならない。
どうにも先日アヌビス神に何かされてから色々フリーダム過ぎていけない。とても宜しくない。
すぅ〜……はぁ〜……。
やばい、物凄い良い香りだ。鋼の理性をどろどろに溶かす魔性の香りが嗅覚を擽る。
しかも息を吐くと同時に「や……はぁ……」とか少し上から何か堪えるようなかみ殺した声が聞こえた。
そもそも多少の老若問わずに女性に劣情を催すのは、男性として正常では無いだろうか。ワルドの脳裏で天使が高説をたれた。
Q、つまりは僕は今何をするのが正しいのだろうか?
模範解答A、ロイヤル・ソヴリンへ向かい敵の撤退を促す。
模範解答B、口を大きく開き最大限深呼吸で酸素を確保、手が強ばらないように軽く運動をし、腕が冷めて動きが鈍らぬように良く動かし、先程酷使した足も良く動かしてほぐすべき。
模範解答C、穴を広げるべく努力をする。
つまりはBか!
人生の絶頂とはまさにこの事!
舌も手も腕も足も更なる奥地を目指して、進むべきでは無いだろうか。それならば、ABC全てを兼ねている気がする。心のブリミルが笑顔でそう囁いた。
まてよ。こういう時の独断は不味い、正常な判断が行えていないかも知れない。
人生経験豊富な者に相談すべきだろう。
「アヌビス、デルフ、僕は男だよな?」
流石に密集状態で心の落ち着きをある程度戻したのかアヌビス神も落ち着いて答えた。物騒発言の余裕は無いようだが。
「寝ぼけたのかよ、どうみても男だろ。むさ苦しいまでに野郎だ」
「酸欠で意識でもやばいのか?どう考えても男だぁね」
「判った、では男として行動する」
「何すんだ」
「掘り進む」
「なるほど狭いから広げるってこったね?」
まずは鼻を左右に振り多少強引に!壁となっている物が緩んだ所で右……いや、左の僅かな盛り上がりをどうにかすべく攻める!そこで一気に息を吐き吸うように……うむ、口だろうが舌だろうが使ってでも掘り進むべきだ、併せ技だな。
左腕は指先の感覚を頼りに少しづつ穴を広げ……。
どすん
念入りにプランを練っている所でいきなり体勢が崩れた。
「ヴェルダンデ、無事穴は広がったかね」
「もぐもぐ!」
突然辺りはひらけ、うっすら明かりが射す。どうやらギーシュが錬金で土より作った油を布に染ませ、即席松明としたようだ。
「くっ!良い所で誰だ!
はっ!?『ギーシュさん』だと?」
そうか、僕は人としての道を踏み外しそうに。『ギーシュさん』がそんな僕を踏み止まらせてくれた。
ワルド・・・ダメだこいつ・・・支援
何が良い所なんだ?
先程とは体勢も変わり、密集団子状態が解除されてばらけた為、言葉の真意が伝わる事無く、誰もがそう思った。
そして、耳に聞こえたその天啓も同じ『ギーシュさん』の声にワルドは勝手に感動し、心で笑顔のブリミルに『ギーシュさん』の素晴らしさを説いた。
なお現状のワルドは四つん這い状態であり、そして辺りにタバサの姿は見当たらない。
いや、ワルドに組み伏せられ手いた。偶然!
彼女は先程のくすぐったいのに耐え、若干涙目で頬を紅潮させている。ブラウスの胸元が何故かボタンが外れ緩んでいる有様である。
言葉の真意が伝わった。
「わ、わわわ、ワルド?」
その状況を嫡子して硬直したルイズの上擦った声がほら穴に響く。
耳に飛び込んできたルイズのその声に、素早く状況を確認し、下を見、そして生唾を飲み込む。
取り戻した理性が消し飛びそうな光景が視覚を激しく刺激した。
ワルドの脳内では、先ほどのルイズの声が静かに木霊する。
落ち着け、皆見てる。
顔を再び上げきょろきょろと周辺を伺う。
漂う気まずい沈黙。
「どいて」
タバサの小さな声が静かにこぼれた。
ワルド、誤解ではないが大いに誤解された。
「なあ兄弟」
「何だデルフ」
「すげー、オスマンじゃねえか?」
「言葉の意味は判らんが、何となく大体合ってる気がする」
望まぬ侭、共に奇異の視線を浴びるのに巻き込まれた二振りがトホホと言葉を交わした。
『こんな事なら思い切っておくべきだった!』
僅かにでも、こう思考を走らせた彼を誰が責めることは出来るだろうか。いや、出来はしない(男性は)
這うようにして抜け出し、着衣の乱れを直しボタンをとめる為、胸元を庇いながらごそごそとするその姿はある種官能的であった。
『次のチャンスは必ず!』
ワルドは思わず、ぐっと握り拳を作る。
いや、やはり責めるべきかもしれない。
「はは、きみたち何ぼやっとしているんだい」
一人早々にヴェルダンデに穴を広げさせ、何時の間にやら、やれやれと状況に呆れたフーケを宥めながらエスコートし、先へと歩み始めたギーシュが振り返り言った。
ルイズとキュルケは釈然としなかったが、この天然薔薇男が一番まともな事を言って行動をしているので、状況改善の為、素直に従う事にした。
To Be Continued
アヌビス神乙&GJっしたー。
ワルド・・・お前はどこに行くんだ・・・w
ギーシュさんが一番まともッつーのもめずらしやw
乙
ギャグキャラのはずのギーシュがまともだなんてこれは死亡フラグに違いない
今回はここまで
偏在になってたのを直そうとして、慌てて遍在であってる方を偏在にしてしまったわー
取り合えず多分年内はこれが最後になる可能性も
わーい、アヌビス神さん乙そしてGJ!
ワルド、ちょっと落ち着け
自分を解き放つんじゃない、落ち着くんだ!
そんなことでは、『愛』からは程遠いぞ!
>>470 さんをつけろよデコ助野郎!!
このワルドはもうダメだ(いい意味で)
ギーシュは自分の境遇に馴れてきたかなぁ
アヌビスGJ!
>>473 お前も「さん」をつけんかー!!!
このゴボウ男めが!
絶対死なないな、このワルドw おっぱいにくわえてふとももの道まで歩みだしおったw
すでにギーシュさんとおっぱいソムリエには逆死亡フラグがかかってるなw
アヌビスさん&ギーシュさんGJ!!
流石はギーシュさん、邪まな変態野郎から少女を守るなんて最高に格好いいですよ!
ところで今小ネタ投下してもおk?
478 :
伝説の使い魔:2007/12/22(土) 19:30:46 ID:VzPGXKfH
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨なバトルを頻発
女性に肉の芽植えるのは日常茶飯
恫喝したけでモット伯が泣いて謝った、老化する貴族も
あまりにも格好良いからバオー来訪者のゼロ魔クロス小説でもジョジョ魔扱い
その小説もヒット
ルイズを最後まで護り抜くなんてザラ、2巡どころか無限に死んでルイズの使い魔をするガンダールヴも
昔を思い出しただけで5万人くらいカタツムリになった
ガリア王ジョゼフとその使い魔シェフィールドをデルフでなく単なる鏡で処理してた
『スタンドなしでフーケ戦の終盤ギリギリまで戦い抜く』というファンサービス
あまりに投下があり、中には最初から死んでるという新感覚なガンダールヴも
スタンド全開にすると仲間の見せ場が無くなるので力をセーブしてた
ガンダールヴがフェノメノンした姿にキュルケのレーダー(性的な意味の)が反応してしまうのでフェノメノン中は警戒されていた
返答は常に『逆に考えてみるんだ』
ガンダールヴのおかげで触手、調教、姉妹・親子丼に目覚めました
ガンダールヴをワルキューレで殴りつづけてもレなない
神砂嵐の原因は、ガンダールヴが敵に手を振ったせい
ガンダールヴって吸血鬼から生まれたんだよね
死んだ仲間に『過去に囚われず、仲間の影に縛られない事』を約束
ガンダールヴ対策のためにルイズの洗脳が実行されたが、なんなく洗脳を解いたのは有名
ガンダールヴの体液がちい姉さまを『最ッ高に「ハイ!」ってやつ』にさせているのはあまりにも有名
ガンダールヴは、いつも店先のペンダントを物欲しそうに眺めるルイズにペンダントを爆破してあげたことがある
ガンダールヴが一睨みしただけでキメラ犬が怯えて飛んでいく
ガンダールヴが剣とかスタンドとか、役割間違えてんだろうが…萌えすぎじゃねえか…
納得が出来なければ相手が王女であろうと説教する、手を踏むことも
ツンデレ、無口キャラ、巨乳、メイド、美女怪盗とのフラグが立った事にまだ気づいていないガンダールヴも多い
変態orカオスorタバ茶に奇妙な縁を持つガンダールヴのせいかジョジョ・ゼロ魔キャラ以外の作品のキャラまで見える
ルイズの代わりにツンデレになったガンダールヴも
惚れ薬イベントでルイズを百合に目覚めさせた
デルフ無しで三章までルイズを護った
ガンダールヴの精神操作のおかげでおっぱい子爵が誕生したのはあまりにも有名だったんだがなあ
とある貴族と決闘する時、スタンドが発現出来ないので覚悟と誇りと知恵だけで決闘に勝ったという話はあまりにも有名
ルーン効果で加速もしてるけどスローでよく見ると爪先立ち歩きなんだよな
対峙したばかりの閃光のワルド、ガンダールヴが手で撃った銃弾で撃沈
ガンダールヴは以前、飛行中のアルビオン行きのフネに飛び乗ってルイズに追いついたことがある
479 :
伝説の使い魔:2007/12/22(土) 19:33:07 ID:VzPGXKfH
神の左手ガンダールヴ、勇猛果敢な神の盾
左に握った大剣と、その身に宿す能力で、導きし我を守りきる
神の左手ガンダールヴ、心優しき神の笛
砕けぬ覚悟は時を超え死を超え、導きし我を守りきる
神の左手ガンダールヴ、知恵のかたまり神の本
知識、経験、記憶を使い、導きし我を守りきる
神の左手ガンダールヴ、強くて優しくて賢くて…本当に我の大切な…
べ、別にあいつの事なんか好きでもなんでもないんだからね!?ちょっと感謝してるだけよ!!!
ガンダールヴを我はどう思っているか、記す事すらはばかれる…
鳥捨印書房発行 著者不明『ハルケギニアの伝説(使い魔編)』及び『始祖の祈祷書に挟んであった謎の紙切れ』より抜粋
以上、投下完了
なんというカオスwww
テンプレ改変だけここまで濃い空気になるとはww
軽く4回吹いたwwwww
そういえば13巻出たな
槍が魔法瓶とは思いもよらなかったぜ
女性に肉の芽植えるのは日常茶飯
ガンダールヴのおかげで触手、調教、姉妹・親子丼に目覚めました
ガンダールヴは、いつも店先のペンダントを物欲しそうに眺めるルイズにペンダントを爆破してあげたことがある
これはダメだろw
凄い、凄すぎて言葉が出ない…。
単にカオスなんじゃなくて色んな作品の要所要所から抜き出されてる。
どれがどの作品のか分かると更に面白い。
自分の作品から数点出ていて読んで貰ってるんだと嬉しく思ってしまう。
最後のガンダールヴ四人だけ該当するのが多すぎて分からないw
最初のは多分、育郎だと思うけど。
待ってましたのアヌビスGJ!!
ワルド!!お前と言う奴は堕ちるとこまで堕ちやがって!!
486 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/22(土) 20:38:00 ID:uFFxfHrm
>ガンダールヴが剣とかスタンドとか、役割間違えてんだろうが…萌えすぎじゃねえか…
ここが激しく同意すぎてどうしようもない
誰か元ネタを教えてくれ
>>484 二番目は時超え=キンクリ 死超え=レクイエム
だからボス
多分小ネタのボスだろうといってみる
三つ目は隠者ジョセフかな?
しかし巧いなーGJだ
>>486 剣は言うまでもなくアヌビス神
スタンドはホワイトスネイクとブラックサバス
チープトリックも召喚されてたが、あれは萌えないし怖いからきっと違うだろう
皆さん感想有難うございます。蛇足ですが、最後の紙切れ抜粋からは
一人目はスタンド、波紋、フェノメノンその他特殊能力を持つキャラクター全員
二人目は
>>487>>488さんの言うとおり短編の綺麗なボス
三人目は露伴先生、ジョセフ、ホワイトスネイクを元ネタとしております。
つまりこういうことか?
『四人目はあなたの心の中のベストガンダールヴだ』と
>>492 うまい事言ったつもりになってんじゃねーぞwww
>>492 Exactly(マジにその通りでございます)
『そして四人目は…皆さんにとって一番素敵なガンダールヴを思い浮かべてください、それが貴方だけの四人目です』と書き込もうとする
↓
ちょっとその前にトイレに行く
↓
スレを確認する
↓
Holy shit!!←(今ココ!!)
アヌビスGJ!
ワルドのソムリエっぷりは感動の域ですな。
伝説の使い魔GJ!
各作品の要所要所を取り入れていて、面白い!
この投下が終わったら、俺、全作品を読み返すんだ・・・・・・
「これは・・・・・・お前が一人で乗り越えなければならない『試練』だ」
その言葉と共に、無情に床板は閉じた。だが、ルイズはその場所から目をそらすことが出来なかった。
そして、どれほどの時間が経っただろうか。朝日が窓から差し込んできたとき、ルイズは初めて自分が泣いているのだと気づいた。
だが、なぜ泣く?
ウェザーに見捨てられたから?頬を叩かれたから?
どれも違う。この涙は悔し涙だ。
「わたしは・・・・・・」
わたしは一体何をしていたのだ。何が『虚無』のメイジだ、何が自分に相応しい任務だ、どこが汚らしい仕事だ!初めて手にした力の大きさに弄ばれて、自分は特別なのだと驕っていた。
成長したと思っていたのに、
気づけば振り出しに戻っていた。
ルイズは唇を噛み締める。
誰かの力になろうという気持ちが、貴族としてこうありたいと思い誓った心が、風に揺らめく火のように消えかけていた・・・・・・
『破壊の杖』の時よりも、アルビオンの時よりも、タルブの時よりも・・・・・・。"信じている"と言われ、命を何度も救われて、その期待に応えるために強くなると誓ったのに、
「・・・驕っていた」
最初に強くなりたいと思ったのはただ認められたかったから。二回目は大切な人の力になりたかったから。そして三回目は――――
「忘れていた・・・・・・」
魔法が使えるから何だ!
『虚無』が使えるから何だ!
ヴァリエールがどうした!
『魔法が使える者を貴族と呼ぶのではない。敵に後を見せない者を貴族と呼ぶ』
ならばわたしは貴族ではない。今のわたしなど、亀のクソにも劣るただのクソガキだ。この困難に背を向けて逃げ出した、ちっぽけなママッ子。強大な力を持った途端にこのザマだ。お笑いだ。チクショー。
「・・・・・・強くなりたい」
魔法も身体も、精神も。もっともっともっと強くなりたい。でなければ、わたしは仲間と肩を並べて笑うことは出来ない。
「強くなるのよ・・・もっと、もっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっと」
この涙は拭わない。驕りも慢心も、涙と一緒に流れてしまえ。でもこの惨めな気持ちは捨てない。この悔しさを忘れはしない。この頬の熱さを忘れるな。心に刻むんだ。深く深く刻むんだ。
わたしは強くなる。『貴族』になるために!
ずっとガンダールヴのターン!
それにしても13巻はいろいろとゼロ魔的にもジョジョ的にも凄い設定が出てきたぞ、みんな目を通しておくんだ。
そしてヘビー支援
第三十三話 『貴族の在処』
涙が乾いたのは日もそこそこに高くなってからだった。この部屋には鏡がないので確認は出来ないが、きっと酷い目をしているのだろうとルイズは思った。
「それじゃあダメだわ、チップは貰えない。これは『試練』なんだもの。この仕事と任務、両方こなした時、わたしは――――」
ルイズはすっくと立ち上がると、服を着替えて階段に向かった。頭の中で思ったときにはもうすでに行動は終了している。それが今の理想だ。
「あっ!」
「っと!」
厨房の水を借りて顔を洗おうと思い、ホールに出たときにジェシカと鉢合わせてしまった。昨日のこともあって気まずい沈黙が流れてしまう。だが、昨日の件ではルイズに日があったのは明らかだ。謝ろうと視線を上げると、
「・・・・・・あなた、泣いてた?」
ジェシカの目が赤くなっているのに気づいてしまった。頬にも涙の跡が見て取れる。そう言われてジェシカは慌てて腕で顔を隠してしまった。
「う、うっさいわね!だ、だいたいあんただって泣いてたんじゃないの?そんなに目を腫らしてさ!」
ルイズはハッとなった。そう言えばここには顔を洗いに来たのだったと思い出し、ジェシカと同じように慌てて顔を覆った。
はたから見れば奇妙きわまりない恰好の二人が、睨み合ったまま静止する。だが、以外にもジェシカはあっさりと視線をそらしてしまった。
ルイズも意外に思ったのかジェシカの顔色を覗き見るが、ジェシカはその不安を弾き飛ばすかのように捲し立て始めた。
「そ、そうそう。あんたもいい加減にこの店に貢献してくれないと困るのよね。商売道具の顔ぐらいしっかり作っておいてもらわないと、あんた何も残らないわよ」
少しばかりの棘が含まれていることに、ルイズは少し傷ついた。心配してやってるのに、何よと。確かに今までは足手まといだったかもしれないけれど、今日からわたしは変わるんだ。
「心配しなくても、今日からは真面目にこの仕事をこなすわよ。文句も言わない。チップだってしっかり稼ぐわ」
「へえ、言うじゃない。でも、企画倒れになるのがオチでしょう?」
「女に二言はないわ」
「ふうん・・・。じゃあ、丁度いいわ。明日から一週間、チップレースがあるの。文字通り、その週のチップの数を競うのよ。優勝者には賞品もあるわ。それで賭けましょう」
「賭け?不謹慎じゃないの?」
自分は変わるんだ、自分は変わるんだと暗示し、あくまで大人な対応をとろうと心がけるルイズだが、
「あっそう。真面目になればチップ稼ぐのなんてわけないんじゃないの?それとも、やっぱり自信がないのかしら」
心にも体にも、と続けた瞬間、元来の負けず嫌いの気がルイズの中から沸き上がってきた。
「おもしろそうじゃない。わたしがその気になれば楽勝よ!で、何を賭けるのかしら?」
ようするに、この仕事でチップを貰うたびに自分は成長できるのだから、これはこれでオッケーよね。と自分の中で納得した。
支援
1
「そうねえ・・・・・・それなら、ウェザーを賭けましょう」
「え?」
面白いことを考えついたという風な笑みを浮かべてジェシカは続ける。
「そう。ウェザーを賭けるの。買った方は一日ウェザーを好きにできるってのはどうかしら?」
「そ、そんなの・・・・・・あなたにメリットはないでしょ。ウェザーなんか賭けたって」
「さあ、それはどうかしら?」
「どういう意味よ」
「さあね。でもさ、ルイズもしかして自信ないの?」
「ああああるわよ!バカにしてんのあんた!い、いいわよ、やったろうじゃない。ウェザーを賭けて勝負よ!」
「グッド!」
本人のいないところで話は進んでしまっているのだが、二人にとってそれは些末な問題でしかないようだった。賭の対象は面白い方がいいのだ。
ジェシカは不適に笑いルイズを挑発するので、ルイズはいよいよやる気が最高潮に達した。熱くなりすぎたせいでジェシカの異変に気が付けなかくもあったが。
兎に角、ルイズは闘志に燃えて戦いに望もうとしていたのであった。スカロンの開店前の話もいつもより集中して聞いていた。そんな時、話の中でウェザーのことに触れる。
「で、ウェザーなんだけど、彼は用事でしばらく出てこれないから、その分をみんなで埋めあってちょうだい」
一同はしばしざわめいたが、用事の内容などには深く触れてこなかった。ルイズも、これはウェザーがわたしに課した試練なのだと思っている。一人で乗り切らなければいけないと。もとよりそのつもりだが。
「じゃあ、今日も元気に開店――――なんだけど、ルイズちゃんは今日は厨房ね」
「な、なんでですか!」
自分はまだ今日は何も失敗していないはずだ。なのになぜ外されなければならないのか。
「やる気があるみたいで申し訳ないんだけど、さすがにその顔じゃあねえ・・・・・・」
「ふえ?」
言われて触れてみると、頬のところに山があった。いや、これはまさか・・・・・・
「は、腫れてる・・・・・・」
今日も今日とて『魅惑の妖精』亭は繁盛している。陽気と猥雑な、酒と香水の匂いが交じる、まさに魅惑の空気の中、一人だけ不機嫌そうに皿を洗っている者がいた。
「・・・・・・なっとくいかない」
作業の邪魔にならないように後で束ねた桃髪を揺らしながら、ガシガシと皿を擦る。ルイズの不機嫌オーラは明らかに店内で浮いていた。
「殴られるのもわかるけど、手加減ってものがあるでしょうが!あの使い魔はッ!」
怒りを皿に向けて放ちながら片していく。不思議とそちらの方が作業効率はいいのだが、やる気を出したすぐにこれでは、出鼻を挫かれてガックリと来てしまうのも頷ける。
あの後スカロンに湿布を貼って貰ったので明日には腫れは引くだろうが、大事な一戦の前にこうなるとは思わなかった。結局今日は一日ホールにはでられない。
だが嘆いてばかりもいられない。勝負を受けてしまった以上は負けられない。ましてウェザーがかかっているとなればなおさらだ。負けてあの女にウェザーを好きにさせてみようものならば、ウェザーの貞操は哀れ花と散るだろう。
怒りと焦りが思考回路を混乱させておかしな事を考えてしまっているが、深呼吸を三度して気を落ち着ける。
自分の未熟さは百も承知だ。ましてここはアウェイ。今自分がすべきことは何か。それを考えれば自ずと道は見えてくる。
ルイズは視線を皿から店の方に移した。ここから改めて見てみると、女の子たちが己の武器を持ち闘う、さながら戦場のように見えてきた。そして、戦場といえば兵法。『己を知り敵を知れば百戦危うからず』だ。
女の子たちの手際を見て学ばせてもらうのだ。
百戦錬磨の女たちの中でも、特に手練手管に優れ、『魅惑の妖精』亭の頂点に君臨する二人――ジャンヌとジェシカ――から学ぼうと決めた。二人の動作を見落とさぬよう、目を皿のようにして食い入る。
――ジャンヌの場合
最初はただ普通にこなしているだけに見えたが、何回か目の前を行き来しているうちにあることに気が付いた。
ジャンヌのやり方は仕込みから始まるのだ。
と言っても別に料理を作るとかではない。自分の足に躓いたり、よそ見をしていて柱にぶつかったり、客とぶつかってメニューを取り落としたりするだけだ。
初めはただじっと仕込みに精を出す。だが、これが後々に効いてくるのだ。まるで蛇の毒が体に回るかのように――――
「あ、あの、ご注文はおきまりですか?」
弱々しげな女の子の役で客に接する。前の仕込みも手伝ってちょっと抜けた娘だなと思わせることに成功する。完全無欠の美女よりもどこか抜けたかわい子ちゃんの方が、手を出しやすく男の気持ちを動かすのだ。
「じゃ、いつものやつで」
「はーい、ただいまお持ちしますね」
そして、料理や酒を持ってくるわけだが、その際にも躓く。だがすんでの所で料理は死守する。決して客に迷惑はかからないようにできているのだ。当然客はジャンヌを助け起こすのだが、ここで決め技が炸裂した。
「あ、ありがとう・・・」
はにかんだような、恥じらいの笑みとでも言うものを浮かべ、頬を染められてはたまらない。そう言えばこの子いつも危なっかしいよなあ、と思い始めるのだ。保護欲を刺激される。仕込みがここで活きてくる。
「ほら、気を付けろよな。まったく、お前は本当におっちょこちょいだなあ」
「え、えへへ・・・・・・ごめんね?わたしったら、本当にそそっかしくて」
客はまるで自分がジャンヌの彼氏にでもなった気になり、守らなければいけないという使命感が生まれ始めてる。ジャンヌの毒牙が皮膚に突き立てられた。
「で、でもいつもはこんなんじゃないんだよ?今日は、その・・・・・・あなたが来てるから気になって集中できなくて・・・・・・」
そして一気に牙を食い込ませる。深く食い込んだ牙は客の体中に毒を送り込み、脳を麻痺させてしまう。普通ならお世辞と解るこの一言も、毒の回った男には本心に聞こえてしまうのだ。
「お前はしょうがないなー。まったく、そんな調子じゃチップが貰えねーだろ?」
そう言ってチップを握らせる。
「でも心配すんなよ。オレはお前が頑張ってるのをちゃんと見てるからな」
「ぁ・・・うん!」
涙まで浮かべて頷く。ドジッ娘が精一杯頑張っているんを認められた嬉し涙。客の目にはそう映っているのだろう。
「そ、それでさ、ジャンヌ。今度の休みに・・・・・・」
「あ、いけない!厨房の手伝いに呼ばれてるんだった!」
そして引くのだが、ただでは引かない。
「その料理実はあたしが作ったんだ」
ぼそりと囁いて手を振り去っていく。これでジャンヌの毒は完全に客を支配したのだった。さらに仕込みは他の客にも効いている。狙った"獲物"は決して逃さない。
これが『魅惑の妖精』亭ナンバー2、『毒蛇』ジャンヌの戦法である。
――ジェシカの場合
ジェシカはまずこれと決めた客に冷たくするのだ。
怒ったような顔で料理を客の前に置く。そんなジェシカの態度に客は驚く。
「おいおいなんだよジェシカ。えらく機嫌が悪いじゃねえか!」
だがジェシカは冷たい目で客を睨んだ。
「さっき、誰と話してたの?」
その嫉妬が職人技だった。巧みを肥えた神技。いや、神さえ騙せ仰せるだろう。それほどなのだから、当然客はジェシカが自分に惚れていて、今激しくやきもちを焼いている、と勘違いをするのだ。
「な、なんだよ・・・・・・。機嫌直せよ」
「別に・・・・・・、あの子に酌して貰えばいいじゃない。好きなんでしょ」
「ばか!一番好きなのはお前だよ!ほら・・・・・・」
そう言って客はチップを渡そうとする。しかしジェシカはその金を突っぱねた。
「お金じゃないの!わたしが欲しいのはあなたなの!この前言ってくれたこと、あれ嘘なの?わたし、すっごく本気にしたんだから!なによ!もう知らない!」
「嘘なわけないだろ?機嫌直してくれよ・・・・・・オレはお前だけだって。なあ?」
「みんなに言ってるんだわ。ちょっと女にモテるからってなによ」
男はどう見てもモテる顔ではない。いつもならそんなお世辞は信じないだろう。だが、ジェシカはそのことを"褒める"のではなく"責める"のだ。しかも、つい言ってしまったと言う調子で。男はそれで騙される。
「モテないって!ほんとだよ!」
「そうよね。その唇にキスしたいなんて思うの、あたしくらいよね。よかった。でも、はう・・・・・・疲れちゃった」
「どうしたんだよ?」
「今ね、チップレースだなんて、ばかげたレースをやってるの。あたし、チップなんかどうでもいいんだけど・・・・・・、少ないと怒られちゃうの」
「なんだよ、そんなこと。オレがチップをやるから問題ないって」
「いいの!あなたはあたしに優しい言葉をかけてくれるから、それでいいの。その代わり、他の子に同じ事言ったら怒るからね?」
トドメに上目遣いで見上げる。これで男はイチコロであった。
「はぁ・・・、でも、チップのためにおべっか言うのって疲れちゃうな。好きな人に、正直に気持ちをうち明けるのと、おべっかは別だからね・・・・・・」
「わかった。これやるから、他の客におべっかなんか使うなよ。いいな?」
「いいって!いらないわ!」
「気持ちだよ。気持ち」
拒むジェシカに男はチップを握らせる。はにかんでありがとうと呟き、ジェシカは男の手を握る。気をよくした男はそんなジェシカからデートの約束を取り付けようとするが。
「で、今日店がひけたらなんだけど・・・・・・」
「あ!」いけない!料理が焦げちゃう!」
もらうもんもらえば、用はない。ジェシカは立ち上がる。
「あ、おい・・・・・・」
「あとで、またね!他の女の子に色目使っちゃいやよ!」
そう言い残して背を向ける。するとジェシカはぺろっと舌を出した。当然、全部演技である。
ジェシカが去ったあと、客は仲間に、やきもちを焼かれて・・・・・・などと頭をかいていた。
以上が『魅惑の妖精』亭不動のナンバー1、『女帝』ジェシカである。
あのキュルケでさえ子供に見えてしまう、手練手管の演技であった。しかも恐ろしいことに、ジェシカは嫉妬を見せる技を何種類も持っており、それぞれの客の趣向にあわせて使い分けるのだ。人を見る目をフルに活用していた。
なんという女の戦い…
なるほど、確かに二人がチップをかき集められるのも納得がいく。二人はプライベートでも仲がいいと聞くが、チップレースでは非情になるのだろうか。正直な話、拮抗した二人が遠慮しあったり潰しあってくれれば・・・・・・。
「・・・・・・無いわね。だいいち、他力本願じゃ意味がないのよ」
その日の業務も終え、屋根裏に戻ったルイズはベッドの上で今日のことを反芻する。明日から始まるチップレースのための策を。だが、その前にやるべき事を思いだし、机に見立てた木箱の上の羊皮紙とペンを握った。
「っ痛!」
ペンを握ろうとした瞬間、ルイズの指先を激痛が走った。見れば、慣れぬ水仕事によって赤く荒れ、あかぎれが痛んだ。
その傷を見てまた思うのは自分の弱さだった。たかが一日見ず場にいただけでこの有様だ。今まで自分がどれだけのうのうと生きてきたのかが、痛みとなってルイズに教えている。
シエスタはいつもこんな冷たい水で洗濯をして皿を洗っているのか。厨房の人たちは毎日あんなハードな仕事をこなしているのか。
「・・・・・・」
ルイズは傷を見つめたままそこをなぞった。この傷が痛まなくなる頃には自分は成長できているんだろうか。そう問いかけるように。
「レディースエーンドジェントルメン!ご機嫌いかがかしらフェアリーズ?いよいよお待ちかねのこの週がやってきたわ!」
「はい!ミ・マドモワゼル!」
「ついに始まるアリスゲー・・・おっほん、失礼。はりきりチップレースの始まりよ!」
拍手と歓声が店内に響き渡る。
「さて、皆さんも知っての通り、この『魅惑の妖精』亭は創立四百年を超えるわ。トリステイン魅了王と呼ばれたアンリ三世の治世にまで遡るわ。絶世の美男子で妖精の生まれ変わりと呼ばれたその王様は、ある日お忍びで街にやってきたの。
そして恐れ多くも、開店間もないこの酒場に足をお運びになられたわ。といっても、当時は『鰻の寝床』亭なんていう色気もへったくれもない、生臭そうな名前だったんだけどね。
ま、とにかく、そこで王様はなんとあろう事か出会った給仕の娘に恋をしてしまいました!」
うっとりとしたり急に悲しげになったりと、表情豊かに語り進める。
「王様が酒場の給仕に恋するなど、あってはならぬこと・・・・・・。結局、王様は恋を諦めたの。でも王様はビスチェを一つお仕立てになって、その娘に贈り、せめてもにお恋のよすがとしたのよ。
わたしのご先祖様はその恋いに激しく感じ入り、そのビスチェにちなんでこのお店のお名前を変えたの。美しい話ね・・・・・・」
「美しい話ね!ミ・マドモワゼル!」
「そしてこれがその話に出てきた『魅惑のビスチェ』!」
ガバッとスカロンは上着とズボンを脱ぎ捨てた。その下から現れたのは、スカロンの体にピッタリとフィットする、丈の短い色っぽい、黒く染められたビスチェだった。
「このビスチェこそ我が家の家宝!このビスチェは着用者に会わせて大きさを変えてピッタリフィットする魔法と、『魅了』の魔法がかけられているわ!」
「ステキね!ミ・マドモワゼル!」
「んんんん〜〜〜〜!トレビアン!」
感極まったあまりに、スカロンはレベル4のポージングを取ってしまった。そしてそのまま演説を続ける。
「今週から始まるチキチキチキンレースもといチップレースで優勝した妖精さんには、この『魅惑の妖精のビスチェ』の一日着用権と、魅惑の妖精の頂点の証である『東西南北中央魅了マスターフェアリー』の称号を与えちゃいまーす!
もうすっごいわよ!この称号を持っているだけでチップがわんさか貰えちゃうわよ!想像するだけでもう!ムキがドネドネ!」
いや、それはビスチェのおかげだろう。と誰もが思っているがここはあえてスルーした。
「そんなわけだからみんな頑張るのよ!」
「はい!ミ・マドモワゼル!」
「よろしい!では皆さんグラスを持って!」
全員がグラスを掲げるのを待ってから、スカロンが口上を述べる。
「チップレース成功と商売繁盛と・・・・・・」
こほん、と咳をするとスカロンは真顔になり直立する。いつものおネエ言葉ではなく、低く凛々しい中年男性の声で、
「女王陛下の健康を祈って。乾杯」
と言って杯をあけた。
スカロン支援
チップレース一日目。
店の女の子たちが各々カモを見つけて店内を駆けめぐる中、ルイズは未だ出撃していなかった。すでに何人かはチップを貰っているのだが、ルイズは落ち着いていた。
フフフ・・・せいぜい焦るがいいわ。今日のわたしは今までとは違うわ。強力な武器をひっさげてこの戦場に帰ってきたのよ。今日からわたしのことを毒婦と呼んでもいいわ。男を騙す悪いお・ん・な。
隅の方でニヤニヤと笑っていたルイズだが、ついに行動に出た。
まず、目標の客を見つける。女の子がまだ付いていない客。そしてその後はいつも通り皿をかたしたりメニューを運んだりするのだが、その際にわざと躓いたり柱にぶつかったりするのだ。
要するに、ジャンヌのマネである。パクリと言えばそれまでだが、ルイズはルイズなりに考えた上での行動だ。以前なら平民のマネなど誰がするものかと端から突っぱねるところだが、今は純粋にその技が羨ましかった。
そして何度かそれを繰り返してから目当ての客の下に向かおうとしたとき、ルイズは信じられないものを見てしまった。
「あ、あの、ご注文はおきまりでしょうか?」
なんとジャンヌがルイズが狙っていた客に付いていたのだ。さっきまで別の客に付いていたはずなのにいつの間に・・・・・・全く気づかなかったが、どうやらジャンヌも仕込みをしていたらしい。
その後もルイズは客を変え手を変えて挑むが、ことごとくジャンヌに阻まれてしまったのだった。接客された方はみな幸せそうな顔で帰っていく。
ようやくジャンヌが手を付けていない客を見つけるが、それは別の子が付いている。遅すぎたのだ。
というか、
「普通の接客方法は最初から接触できる分話しやすいし素人から玄人まで幅広く使われているお水の基本接客。
対してジャンヌの接客方法は最初の段階で客を取られやすいけど、あえて最初に距離を置く分、接触したときのトキメキと手放したくない独占欲をかなり増加させて、次からも長く指名して貰えることを目的とした玄人好みの扱いにくすぎる接客術。
使いこなせないと単にスッとろい娘に見えるただの厄介者みたいなものだって言うのに、何であの子は?」
吹き出しにして三個分くらいで言ってしまったが、要するに一朝一夕でできるものではないのだ。それほどまでに自然で、隙のない仕込み。そして獲物を見つける嗅覚。
これがジャンヌ。
ルイズは床に膝から崩れ落ちた。
「も、もう立つ事すらままならない・・・」
一日目結果。一位:ジャンヌ(二十エキュー二十六スゥ)二位:ジェシカ(十六エキュー九十六スゥ四ドニエ)三位:ツキシマ(十エキュー二ドニエ)・・・・・・ビリ:ルイズ(0)
支援!へヴィー!
チップレース二日目
「よし!」
気合い十分のルイズはさっそく獲物を見つけて駆け寄った。そして怒ったようにメニューを叩き付けた。ルイズの態度に客は驚きを隠せないでいる。
「な、なんだよいったい・・・」
ルイズは冷たい目で客を睨んだ。これは得意分野である。
「さっき誰と話してたの?」
いきなり嫉妬しているように見せ始めたルイズ。ようするに今回はジェシカのマネをしようというのだ。前回は玄人ものに手を出して失敗したが、これはアレよりマシなはずである。
「な、何だよ・・・・・・機嫌悪いみたいだけど」
「別に・・・・・・あの子のことが好きなんでしょ?」
「はあ?・・・ああ、なるほど。違うよ、一番好きなのはお前だって。ほら・・・・・・」
男がチップを差し出してきたとき、思わず手を伸ばしそうになってしまったが、何とか耐える。ここでがっつくのはいけないんだ。
「お金じゃないの!わたしが欲しいのはあなたなのに、あなたは他の子ばっかり見て。なによ!もう知らない!」
本来ならここで男が食いついてくるはずだったのだが・・・・・・
「あ、そう?じゃあしょうがないね」
と、あっさりチップをしまってしまったのだ。しかもあろうことか、
「ていうか、オレ君の名前知らないんだけどね」
「へ?」
と言うことは、自分は名前も知られていないようなそれこそ赤の他人相手に芝居をしていたのか・・・・・・。は、恥ずかしい・・・・・・。
「おーい!ジェシカちゃーん!酌してよー!」
「はいはーい!」
唖然とするルイズを腰で跳ね飛ばしてジェシカが割り込んできた。そして床に座るルイズの目の前であれよあれよという間にチップを男から手に入れてしまったのだ。そして戦利品を胸に挟んでルイズの正面に立つ。
「さあどうしたの?まだ客を一人逃しただけじゃない。稼ぎなさい!肌を晒して色気を出せ!脇を絞めて谷間を作れ!やる気を奮って立ち上がりなさい!チップをかき集めて反撃してみなさいよ!」
ルイズを見下ろす形でジェシカは言い続ける。
「さあ夜はこれからよ!稼ぎ時はこれからよ!」
言いたいだけ言うと、ジェシカは踵を返して去っていってしまった。
常連にはそろそろ名前を覚えて貰っているかと思っていたのに、まだまだだったこと。ジェシカとの格の差。それらが一緒くたになってルイズにのしかかった。
二日目結果。一位:ジャンヌ(四十二エキュー四十スゥ九ドニエ)二位:セラス(三十八エキュー九十スゥ四ドニエ)三位:ジェシカ(三十八エキュー二十六スゥ九ドニエ)・・・・・・ビリ:ルイズ(0)
夜明けは遠い。
支援支援
三日目。
その日は"何か"様子がおかしかった。街の空気が張りつめているのが店の中からでもよくわかったくらいだ。
「何かあったのかしら?」
「なんかやばそうな感じするよねー。また例の奴らかな?」
「昨日お客さんが言ってたんだけど、例の奴らって貴族と繋がりがあるらしいってさ!」
「えーッ!じゃあ国が保護してんの?嘘でしょう!」
集まり始めた女の子たちが思い思いに喋っているのを、ルイズは一人静かに聞き流していた。どうやら何かの『組織』に動きがあったようだが、その詳細までは解らない。ただ、この空気の張りつめかたは異常だ。表を歩く人もいない。
「・・・一応姫さまにも連絡しとこうかしら?」
どうまとめるかを考えていると、スカロンがやってきた。その面もちは深く読みとれない。
「えー・・・みなさんにお知らせがあります。今日の営業は中止です」
店がざわつく。スカロンが静めるが、動揺が走っているのが傍目にもわかる。
「はいはい!しーずーかーに!今日は早く帰って、早く寝なさいね。明日からまたたくさん働いてもらうんだから。なんだか物騒だから必ず二人以上で帰りなさいよ」
最初こそ様々な憶測が飛び交ったが、なんだかんだで休暇がもらえるのは嬉しいようで皆早々に店を後にした。ルイズが厨房から出てきたとき、まだ残っているのは指で数える程度だった。
布巾で手を拭いていると、不意にジェシカの姿が目に入った。何気なくその姿を目で追っていると、変な違和感を覚え始めた。
机の上に椅子を上げる作業をしているのだが、たまにチラチラと視線を上げている。しかもすぐに気まずそうにそらしてしまうのだ。
らしくない。
いつものジェシカなら、自分から視線をそらすなんてマネはしないだろう。胸を張って(悔しいけど)自信ありげな笑みを浮かべる。長くはない付き合いだがそれぐらいはわかる。長くはないが短くもないのだ。
「ふうん?」
奇妙に思ったルイズはジェシカの視線を追った。その先にはまだ残っている何人かの女の子たちが、帰り支度でもしているのだろうか集まっていた。そして、視線はその中のジャンヌに向けられているのに気が付く。
だとすればますますわからない。あの二人はライバルではあるが仲がいいはずだ。仕事以外であまり自分を出さないジャンヌが気兼ねなく話せる相手。なのにこの二人の間に横たわる気まずい空気はなんなのだろうか。
「そういえば・・・・・・」
そういえばこの二人、最近調子が悪いのだ。体調のことではなく、仕事の方である。
聞いた話では以前のチップレースでは二日で五十エキュー稼いだらしいのに、今回は全然奮わない。ジェシカに至っては三位に落ちるというていたらくである。
そのことに気が付くと、今までのジェシカもおかしいように思えてきてしまう。
勝負をふっかけてきたときもどこか違和感があった。そう言えばあの時泣き腫らした跡もあったのを思い出す。昨日もどこか無理矢理元気を絞り出しているようでもあった気がする。
ルイズは急ぎ足で裏口に向かった。壁に背を預けると、ずずず、と力無く腰を落とす。
「あたし、何やってるんだろう・・・・・・」
不調のジェシカにすら勝てず、いやそれ以前に未だにゼロ枚の現状。敵に背を見せないとは言え、右も左も解らないこの職場ではどちらが前なのかさえよくわかっていない始末だ。
だからこそあの二人をマネたのだが――――
「そう簡単には上手くいかないわよね・・・・・・」
猿まねは猿まね。郷に入って郷に従ったからと言って何事も円満に進むとは限らない。
「痛ッ!」
突然ルイズは叫んだ。顔をしかめながら布巾で覆った手を揉みほぐす。
「あら、ルイズちゃんじゃない。どうしたのこんな湿っぽいところで?」
ナーバスな雰囲気を吹き飛ばすように陽気な声がかかった。顔を上げるまでもなくそれがスカロンのものであることはルイズにはわかった。
「それにお顔まで暗いわ!そんなんじゃ頭にキノコ生えちゃうわよ」
「・・・・・・・・・」
俯いたままのルイズの視界に影が差した。どうやら正面に立ったらしい。そう思った瞬間に、手を取られた。いつの間にか目の前に腰を下ろしていたのだ。
ルイズは驚いていたが、スカロンはその手を優しく撫でた。ヒンヤリとした感覚が気持ちいい。
「それは?」
「水荒れに効くクリームよ。よく効くの」
慈しむような顔で、あかぎれのできた手に優しく包むようにクリームをすりこんでいく。ルイズはただ黙ってその様子を見ていた。
「あかぎれだらけでひどい手ね」
「・・・・・・」
「でも、綺麗な手」
何でもないように呟いて、逆の手も同じようにすりこんでいく。
「だって、誰よりも多くお皿を洗ってくれてるんだものね」
「なっ!」
「知ってるのよ?いつも皿洗いを手伝ってくれてることも、最後まで残って片づけしてくれることも、一生懸命チップ集めてるのも」
「あぅ・・・」
知られていると思うと、途端ルイズの頬が熱くなった。そんなルイズをスカロンは笑顔で見つめる。
「ありがとうね」
「べ、別にあんたのためにやったわけでも、感謝のためでもないんだからね!ただ手が空いて暇だったからやってあげただけなんだから!」
「でもね、あのやり方じゃチップは集まらないわよ」
スッパリとダメだしされた。
「あれはジャンヌやジェシカのやり方でしょう?それじゃああなたが見えてこないわ。この店に来るお客さんはね、みんな"温かさ"を求めてやってくるの。だからお酒を飲んで女の子とお話しする。
そこには様々な悩み、思い、考えがあるわ。だからこそ色んな女の子がここにはいるの。もしもみんながみんなジェシカだったら、どう?ちっとも面白くないし、誰も輝けない。何より"温かさ"がないわ。
それじゃあダメ。だから私は色んな女の子に声をかけてるの」
「でも・・・・・・わたし、自信がないわ。私にこの仕事は無理なんじゃないかって・・・・・・」
「・・・・・・私はね、人を見る目には定評があるの。私が見つけてきた子、誰かに紹介された子、ここには色々いるわ。でも過去に何かあったかとか、そんなもの関係無しにここでは誰もが輝けるの。どうしてかわかる?」
ルイズは素直に首を横に振った。
「酒場では本当の自分が出るからよ。お客様も、女の子たちも、着飾るけれど心は裸。おべっかだって自分の心から出た言葉を使うのよ。ここでは、身分を着るのは無粋で、無礼講こそが礼儀なの。だからとっても温かい。
ルイズちゃんも、無理して誰かになる必要はないわよ。あなたはあなた。ルイズちゃんじゃない。自分を信じていいのよ」
その瞬間、ルイズは自分の肩から余計な荷物が無くなるのを感じた。すうっと身が軽くなるような、水に浮くような感覚。気負いすぎていたのだろう。それも、スカロンのおかげでおりた。
ルイズが一つ頷くと、スカロンは静かに立ち上がり去った。
「風邪ひかないようにね」
スカロンの背中がとても大きく、温かかった。
四日目。
戦いも中盤戦を迎え、みんなの気合いの乗りも違った。衣装は際どく、化粧にも気合いが入っている。昨日の休みのおかげか調子もいいようだ。
ちなみに、話によると昨日は何やらチクトンネ街で大捕物があったらしく、貴族街にまで捜査の手が及んでいるというのだ。店内でもその話で持ちきりである。
だが、そんな中でもルイズは不適に自然体だった。白いワンピースに身を包み、長い桃髪は左右で縛って垂らす、所謂ツインテールにしている。
そのルイズは視線をチラリと移した。流石と言うべきか、ジェシカもジャンヌも昨日の動揺を全く表面に出さないでいる。
「昨日はお休みで稼げなかった人も、一日お休みで好調かしら?それじゃあチップレース四日目、開店よ!」
昨日一日禁欲させられた客たちが我先にと雪崩れ込み、女の子たちも上位に食い込むために早々とめぼしい客についていく。
ルイズは焦らず、深呼吸をした。吸って。吐いて。吸って。吐いて。よし。
奥の席に目を付け、近づく。入ってきたばかりの客で、まだ女の子は付いていない。だが、ルイズが近づき声をかけると、露骨に舌打ちをされてしまった。
「なんだよ、お前かよ・・・・・・。オレはワインをこぼされるのも、蹴られるのもごめんだぜ」
名前はともかく、どうやら悪評だけはしっかりと覚えられているらしい。だがルイズはそれには答えず、と憮然としてメニューを促した。
「ちぇっ、手が空いてりゃあジェシカにお願いしたいところだけどな・・・しょうがねえからお前でいいよ。麦酒くれよ。こぼすなよ」
それに対しても、やはりルイズは憮然としたまま去ってしまった。客は「なんでえ、態度わりいの」とぼやく。どうせまたヘマするのだから、せいぜいそれを笑って酒の肴にしてやるかとさえ考えていた。
だが、予想に反してルイズは早く、それもしっかりと注文の品を持ってきたのだ。しかも小さなつまみも添えてある。客は思わず驚いてしまった。
「おお!今日は早いじゃねーか。飲むのに一時間は待つ覚悟だったんだぜ?」
からかうように口にするが、それにルイズはそっぽを向き、頬を染めながら言った。
「か、勘違いしないでよね、別にあなたのために急いだわけじゃないんだからね――ただチップが欲しかっただけなんだから!」
ルイズは本心を言っただけだ。本来ならこんなこと言われて誰がチップなどくれてやるものか!となりそうなものだが・・・・・・
瞬間、客に電流走る。
それほどまでに客はそのルイズの仕草に、言葉に、衝撃を受けていた。
初めての感覚。言っていることはこちらを冷めさせるような内容だ。だと言うのに、ちっともそんな感じがしないのはなぜだ。むしろ本心はオレのために急いでくれたんじゃなかろうかとさえ思えてしまう。
ジャンヌの保護欲をかき立てるものではない。ジェシカの嫉妬に近いものがあるが、その怒り方は酷く理不尽だ。云われもないのに勝手にツンツンしているのだから。だが、それがあの一言でプラスの方向に一気に昇る。
「そ、そうか・・・ち、チップはさ、オレの気持ちだから持っていってくれよ」
気づいたときには、男はチップをルイズの手の中に握らせていた。すると、ルイズは「そこまで言うなら貰ってあげなくもないわ。べ、別にあんたのチップだからじゃないからね!」と言うのだ。
それがまた男の琴線をライトハンド奏法で掻き鳴らす。男は気が付くと立ち去ろうとするルイズを呼び止めていた。
「な、なあ!お前名前は?」
「・・・・・・ルイズよ」
「ルイズか・・・可愛い名前だな。なあ、またお前に酌してもらってもいいかな?」
「調子に乗らないでよね!で、でも・・・どうしてもっていうなら、やってあげなくもないわ」
ツンと澄ましてはいるが、心なしかその頬が赤い。これが決め手だった。呆ける男を置いて、ルイズは足早に立ち去った。
けなげなルイズ支援
これが!これが!!これがツンデレだッ!!
そいつに萌えることは支援を意味するッ!!
やった。やってやったわよコンチクショー。
チップを貰ったルイズはすぐに厨房から裏口に引っ込んできた。
握られた手を開いて見つめる。
ルイズが初めて貰ったチップは、たかが銅貨一枚だった。だが、それを手にした時、ルイズは己の心の中に『何か』が戻ってくるのを確かに感じた。
「ルイズちゃん」
いつから見ていたのだろうか、裏口に立ったスカロンがルイズに声をかけた。
「おめでとう」
無意識のうちに、ルイズの手は銅貨を握りしめていた。
「・・・とうございます」
呟いた声は小さすぎて届かなかっただろう。それでもよかった。きっと気持ちは届いている。ルイズもまた、スカロンが後で微笑んでいたことを知らないのだから。
ルイズはその後もこの手でチップを集めていった。自分に最もあったやり方を見つけたルイズは、気づけば店中の客に名前を覚えられるまでになっていたのだった。
四日目合計。一位:ジャンヌ(八十三エキュー五十五スゥ二ドニエ)二位:マレーネ(七十八エキュー二スゥ二ドニエ)三位:ジェシカ(七十七エキュー六十七スゥ九ドニエ)・・・・・・ルイズ(十七エキュー六十スゥ一ドニエ)
ルイズ、一日にしては上々の稼ぎ。そして、この日より新たな妖精伝説が始まる。
五日目。
コツを掴んだルイズはこの日も稼いでいた。ツンとした態度で接するだけで、男共はチップを弾んだ。冷たくされているはずなのに、なぜか客の顔は幸せそうなのだ。
だが、あだジェシカとの差はある。敵の様子を探るようにジェシカの方を見てみると、またジャンヌの様子を見ているらしい。
この真剣勝負の最中によそ見をするとはいい度胸ね、ジェシカ!と、内心でイラッとし始める。もっとも、ルイズのやり方に影響は何ら出ないのだが。
そんな風に、欲望と愉悦の坩堝の中で競い合っているところに、新たな客の一群が現れた。先頭は貴族と思しきマントを身につけた中年男性。肥えた腹と、額に未練たらしく張り付く髪の毛が特徴的だった。
お供の者達も下級の貴族らしい。中には腰にレイピアのような杖を下げた軍人もいる。
その貴族が店内に入ってくると、店内は静まり返った。気まずい空気が漂い出す。と、そこへスカロンが疾風の如くにその新来の客に駆け寄った。
「これはこれはチュレンヌ様。ようこそ『魅惑の妖精』亭へ・・・・・・」
「ふむ。おっほん!店は流行っているようだな、店長」
「いえいえとんでもございません!今日は偶々と申すもので。いつもは閑古鳥が鳴くばかり。明日にでも首を吊る許可をいただきに寺院へ参ろうかと娘と相談していた次第でして、はい」
「なに、今日は仕事ではない。客だ。そのような言い訳などせんでもいい」
「あー・・・しかし、チュレンヌ様。本日はほれ、この通り満席となっておりまして・・・」
「満席?どこがだ?」
チュレンヌがとぼけたようにそう言うと、取り巻きたちが杖を引き抜いた。それを見た客たちは酔いが急激に醒めていき、一目散に入り口から消えていった。貴族の杖とはそれだけでこれほどの威力があるのだ。
「なるほど、この様子では閑古鳥すら寄りつかないのではないのか?」
ふぉふぉふぉと腹を揺らしてチュレンヌの一行は真ん中の席に陣取った。それを見ながら、ルイズはいつの間にか近くにいたジェシカに尋ねた。
「あいつは?」
「この辺の徴税官を務めてるチュレンヌよ。ああやって管轄区域のお店にやってきてはあたしたちにたかるの。嫌な奴よ!銅貨一枚払ったことないんだから!」
忌々しげに説明するジェシカ。周りの子たちもそれに賛同するかのように頷いた。
「貴族だからって威張ってさ!そのくせ機嫌を損ねるととんでもない税金をかけられて店を潰されちゃうから、みんな仕方なく言うことをきいているの」
ルイズはチュレンヌを見て、驕る貴族の姿を見た。あのまま気づかなければ、自分もこうなっていたかと思うといたたまれなかった。
と、誰も酌に来ないことにイラついたのか、チュレンヌは難癖を付け始めた。高級酒を扱っているだの、女の子の服がガリアの仕立てだのと騒ぎ立て、増税をほのめかす。取り巻きたちももっともそうに頷く。
「女王陛下の徴税官に酌をするのだぞ!それ相応の対応を見せたらどうかね?」
言外にトップの女の子を要求しているのは明らかだったが、誰も動こうとはしない。
「触るだけ触ってチップ一枚よこさないあんたに、誰が酌なんかするもんですか」
ジェシカが憎々しげに呟いたその時、
「そう言えば最近この辺りで違法な秘薬を扱っている者達がおるときいたのだが・・・、もしそうならば、これは由々しきことよのお。その者は勿論、関係者たちにもその累が及ぶかもしれぬ・・・・・・」
いきなり脈絡のないことを言い出したチュレンヌに、女の子たちは首を傾げたが、何人かは確実に反応を示していた。ジャンヌとジェシカである。その反応を楽しげに眺めてからチュレンヌはもう一度言った。
「誰か酌をする者はおらんのか?」
ゆっくりと言い含めるような口調に、足を踏み出したのはジャンヌだった。女の子たちはどうしたのだろうかと心配そうな顔をするが、構わずにチュレンヌの下に向かう。
「ふぉふぉふぉ。そうかそうか、お前が一人で相手をしてくれるのか」
ジャンヌの腰に手を回しながら笑う。ジャンヌの顔色は悪く、手を固く握りしめてそれに耐えているようだった。
だが、とうとう見かねたのか、ジェシカがチュレンヌのもとに向かった。一人では心配だったのだろう。何より、チュレンヌはジャンヌが"薬"をやっていることを知っていたのだ。警戒するに決まっていた。
「おお、この店のナンバー1、2がお相手してくれるとは!両手に花とはこのことだな!」
両脇に侍らせてチュレンヌはバカみたいに笑う。それに合わせて取り巻きたちも笑い出すのでバカに拍車がかかっている。
「貴族の相手ができるのだ、喜ぶがいい!ふぉふぉふぉ!」
ジェシカはジャンヌを見た。何をやっているのかと。こんな奴に従う必要はない、さっさと離れようと目で訴えるが、ジャンヌの目は弱々しかった。
その目を見てジェシカはあの時のことを思い出してしまう。ジャンヌに余計なことをするなと言われたあの時を。すると、途端に力が入らなくなってしまった。今自分がしていることも余計なお世話なのかと。
チュレンヌは大人しくなった二人に気をよくして、その体に手を伸ばす。ジャンヌもジェシカも、それを拒む力はなかった。だが――――メシャッ、と言う音とともにチュレンヌの首から上が吹っ飛んだ。
いや、実際にはそれほどの勢いで蹴られただけなのだが、椅子をひっくり返し、その豊満な体を二回三回と床で弾ませて転がった。
「な!な?なあッ!」
鼻血をだくだくと垂れ流す鼻を押さえて、涙目で宴への乱入者を見上げた。
そいつは机の上に仁王立ちし手腕を組み、桃色の髪を棚引かせて薄い胸を張っていた。取り巻きたちが――店中が唖然とするなか、ルイズは口を真一文字に引き結んでチュレンヌを睨み続けている。
「き、貴様・・・平民風情が貴族たるこのチュレンヌ様の顔を足蹴にしてくれたなッ!」
そうチュレンヌが叫ぶと、ようやく取り巻きたちは杖を引き抜いてルイズに向けた。テーブルを囲むようにして、ルイズも囲まれているのだ。
「あ、あんた何やってんのよ!早く下がりなさいよ、殺されるわ!」
ジェシカが慌てたように叫ぶが、ルイズは意に介さない。そして静かに口を開いた。
「あなたが、貴族?」
「いかにもそうだ!由緒ある家柄の、やんごとなき地位に立ち、権力を持つこの私を貴族と呼ばずして何と呼ぶのかッ!」
「ふざけないでッ!あなたが貴族を名乗るなどおこがましいにも程があるわ!家柄だの地位だの権力だの貴族だの・・・・・・貴族がどこに在るかも知らないクセに!」
貴族はどこに在るのか。
地位に在るのか?
――――違う。
金に在るのか?
――――違う。
権力に在るのか?
――――断じて否。
貴族とは――――
「貴族とは心に在るのよ」
あまりにもはっきりと、そう言ってのけたルイズに周りはまるで時が止まったかのような感覚に陥る。それほどまでに、そのルイズは眩しかったのだ。
「ジェシカたちもそうよ。何に遠慮してるのか知らないけれど、ビクビクしてたって何も始まらないわよ!ケンカしたのかしらないけど、距離を置いてたら仲直りもできないじゃない!
口さがないのがあんたの取り柄でしょ、ジェシカ!引っ込み思案もいいけど、たまには自分から歩み寄ってみなさいよジャンヌ!あんたたち友達なんでしょーがッ!」
うってかわって場違いなことをギャーギャーとわめくルイズに、店の子たちも吹きだしてしまった。ははっ、とジェシカも口が開いてしまう。
「へ、平民風情が貴族を語るとは不届きな!貴様五体満足で朝陽が拝めると思うなよッ!」
呆けていた取り巻きたちがはっとなり、再び杖を向けた。ルイズもスカートの下に杖を忍ばせてはいるが、この人数を相手取るのはキツイ。
「くくく・・・・・・今さら後悔しても遅いわ!死ねィ!」
チュレンヌの号令に従って、バガンッ、と鈍い音が店に響いた。だが、倒れたのはルイズではなく、取り巻きたちである。その代わりに立っているのは椅子やお盆を手に持ったジェシカやジャンヌたち店の女の子だった。
「な、なななな何をするか貴様らッ!こ、こんなことをした以上、貴様ら全員生かしてはおけん!全員処刑だ・・・・・・」
「その必要はない」
チュレンヌの言を遮って現れたのはルイズにも見覚えのある人物だった。厳ついヒゲ面に敵を震わせる低い声、そしてマントに縫われた幻獣の刺繍。紛れもなくマンティコア隊の隊長、ド・ゼッサールであった。
意外な登場人物に開いた口が塞がらないチュレンヌに一枚の紙を突きつけてゼッサールは喋りだした。
「トリスタニア・チクトンネ街担当徴税官チュレンヌ、並びにその配下は売国行為を行い祖国に害をなした罪により連行させてもらう」
「な、なんで!」
「なんでもなにも、貴様ご贔屓の『組織』は壊滅したぞ」
チュレンヌの肥えた顔が青くなり白くなり、最後には土気色になってしまった。
「ちょ、ちょっと待ってください!何かの間違い・・・」
「黙れ」
ゼッサールの迫力ある凄味でチュレンヌは腰を抜かしてしまった。そしてゼッサールが合図を送ると一斉に衛士隊が店内に雪崩れ込み、気絶している貴族たちを連行していく。
チュレンヌも両脇を掴まれながら引きずられていった。さながら捕まったグレイのようだ。
それを見届けてから、ゼッサールは店の女の子たちを見渡した。慌てて凶器を隠すが、時すでに遅しというものだ。しかし、ゼッサールはふっと口とを緩めると、
「売国奴の捕縛に"ご協力"いただき感謝する」
そう言って、最後にルイズを見たが、何も言わずに店を後にした。
嵐が去ったかのように静まり返る店内。だが、ルイズが机から下りると割れんばかりの拍手がまきおこった。
「やるじゃんルイズ!あたし見直しちゃった!」
「あのチュレンヌの顔ったらなかったわ!」
「豚は豚箱にゴーホームってとこよね!もう最ッ高!」
ジェシカが、みんなが、ルイズを一斉に取り巻いた。そして、やってしまったと気が付く。あんな見栄切ったら貴族だと公言しているようなものだ。ジェシカだけならまだしも店中に知られてしまった。
頭を抱えて俯くルイズの肩をスカロンが叩く。
「いいのよ」
「へ?」
「ルイズちゃんが貴族だなんて、前からわかってたわ」
「そうそう」「だって仕草や態度を見ればねえ」「バレバレだって」
女の子たちがスカロンに続き笑い出す。ルイズはいよいよ恥ずかしくなってきた。
「大丈夫よ。私達はファミリーだもの。ここには、家族の過去の秘密をバラすような子なんていないんだから」
女の子たちが笑顔で頷く。ルイズはまた類然が緩みそうになったが、さすがに人前では堪えた。そんな姿を皆、慈しむように見ていた。
「さて、お客さんも全員帰っちゃったしねえ。今日は店仕舞いにしましょうか。ところで・・・・・・」
そう言ってスカロンは財布を一つ差し出した。
「さっきまでそこに転がっていた豚さんが置いていってくれたチップなんですけど・・・・・・当然これはルイズちゃんのモノよねえ」
「ええ!」
「あの熱血接客だもの。これくらい貰って当然よ」
中には金貨がけっこうな額入っている。そして店の者達にも異論はないようだった。ルイズはそれをしっかりと受け取った。再び拍手が起こる。
「さあ、明日はいよいよ最終日よ!最初から最後までクライマックスでいきましょうねッ!」
と、そこでジャンヌが口を開いた。
「そのことなんですけど・・・・・・わたし・・・・・・今日で辞めます」
ざわっ、とみんながざわめき出す。ジャンヌは皆の視線に貫かれているような気に陥ってしまう。
「すいません店長。わたしは・・・ここに来るときに誓った『二度と薬に手を出さない』という誓いを破ってしまいました。わたしにこの店にいる資格はありませんから・・・・・・」
頭を下げて謝るジャンヌの後頭部をジェシカがひっぱたいた。ジャンヌは驚いて目を白黒させる。
「え?え?」
「なーに言ってんのよ、あんたは。パパの話聞いてなかったの?あたしたちはファミリーでしょうが!あたしもルイズも、ジャンヌもよ!あたしも何を臆病になって遠慮してたんだかね・・・・・・。
あんた一人でできないって言うのなら、今度はあたしたちが手伝ってあげるわよ。家族を見捨てておける子がこの中に一人でもいる?」
ジャンヌはみんなの顔を見回した。みんな、笑顔で頷いてくれる。ジャンヌはその場に崩れ落ちると、今まで堪えていたのだろうか、泣き出してしまった。みんながかけより、抱き締めてあげる。
「ご、ごめんねぇ・・・ジェシカぁ・・・・・・わたし、ひどい事言っちゃって・・・・・・」
「あたしこそごめんね。もっと早くに気づいてあげられたのに・・・・・・」
その光景を見ながら、ルイズは家族の顔を思い出していた。良い思い出ばかりではなかったけれど、やっぱり少しは恋しかった。この夏は帰省できなかったが、近い内に必ず顔を出そうと誓う。
と、輪から抜け出してきたジェシカがルイズの前に立つ。
「ま、家族だから勝負しないワケがないんだけどね」
「ふふん、ようやく『勝利』の感覚が見えてきたわ」
そして不適に笑い合う。
「勝たせてもらうわ、お姉様」
「百年早いわよ、妹様」
五日目合計。一位:ルイズ(百二十エキュー)二位:ジャンヌ(百九エキュー三十二スゥ)三位:ジェシカ(百四エキュー四スゥ)
決戦は、明日。
To Be Continued…
支援
以上投下完了!
今回は表の闘い。次回は裏の闘い。
次からのは日をおかずに投下したいから、たくさん書かないと・・・
あと、ボスにはぜひクリスマスをキング・クリムゾンして欲しいんですが、かまいませんね!
GJ!
女って怖いよ……
でもミ・マドモワゼル曰くあれが素なのか……
やっぱり怖いよ!
投下乙!
まさかヘビーゼロをwikiでよんでたら投下がくるとは思わなかったぜ!
>>522 乙!相変わらず読んでて飽きが来ない良作っぷり
師匠にジャンクにブラック魔王てwwwwwww
何という究極生物スカロンwwwww
そしてクリスマスをキングクリムゾンするだなんてとんでもない!
課長がリアルタイムで挑戦すると知っての狼藉か!
GJ!
ルイズそれが戦法だったか!迂闊!
GJ!
女の戦いの最中成長するルイズがとてもよかったぜ!
その後にこんなですまないんだが、私も『投下』させてもらっても構いませんか!
他の人の予約がなかったら12時から投下させていただく…『許可』を。投下にはそれが必要なんだ…
(なかったらいただけるように頑張るぜってのがアナスイクオリティだと信じてますが)
歩道が空いているではないか
あ、ありのまま今起こったことを話すぜ!
わ、私は投下しようと思ったらデータが消えていた…
何を言ってるか分からないと思うが、私にも何が起こったのか分からなかった。
間違えて削除したとか書いたというのは私の妄想だったとかそんなちゃちなもんじゃねー
モット恐ろしいものの片鱗を味わったぜ!
ちょwww
あー、南無です……
というわけでこんな時間になっちまったという話…本編はここから投下になるッ
「聞いてくれカメナレフ! モンモランシーが僕の説明を聞いてくれないんだよぉぉぉおっ!」
「てめぇは頭脳が間抜けか? と先日決闘したばっかりなのを忘れたのか?」
決闘から数日後。先日決闘した場所の隅っこで私はゲーシュの相談を受けていた。
私は授業の間待ってろを言われ、いつも通り使い魔達と一緒に待っていたんだが、そこへこのギーシュが授業をサボって現れやがってな。
私はギーシュにとって都合のいい場所に移動して泣きつかれている。
どうしてこんなゲーシュと話しているのかって?
べ、別に跡でギーシュがいいものを分けるといったからじゃないぜ…?
ともかくギーシュの野郎はとげとげしい返事を返した私の亀に頬ずりしそうな勢いで顔を寄せていた。
ちょっと酒臭いなこいつ。
「モチロンそんなことは分かってるさッ! だが、僕の話を聞いてくれる相手はもう君くらいしかいなさそうなんだから仕方ないじゃないか!」
堂々と情け無い事を言うガキだな…
私はため息をついて、返事をする。
まぁ確かにあんな事があったのにコイツと仲良くするような友人はそうはいないだろう。
私なら、まぁマジシャンズレッドやジョルノ…アイツは仲良くするというよりは矯正される気がするな。
「あのな。普通あんな振られ方をしたらお前とはなしたくなんかねぇだろ」
「だからそれが誤解だと言ってるじゃないか! 僕はケティとは手を繋いだこともなかったんだ。「香水の件はどう「それこそ誰かが勝手な事を言っただけさ! ちゃんと後で回収するつもりだったんだ!」
私は白い目でゲーシュを見る。
亀の中からだったが、無言の圧力を感じたのかゲーシュはちょっとだけ引き下がった。
私はちょっとばかし剣呑な声でギーシュに問いかける。
「それは、ギャグで言ってるのか?」
「ち、違う! 信じてくれ!! だからこうしてボコボコにしてくれた君にまで相談してるんじゃないか! ケティの目を盗んで君とこうして話す機会を作るだけで僕がどれだけ苦労したと…!」
(そのケティが黒幕だとはこれっぽっちも思っていない)私は素早くマジシャンズレッドを出してギーシュの顔面を殴った。
吹っ飛んで頬を押さえる程度に加減しておいてやったが、それでも奥歯位はぐらぐらになったっぽいギーシュを見下ろして私は言う。
怒りが私を包んでいた。
このゲス野郎に対してチョッピリでも哀れみを感じて相談に乗ってやったのが愚かな行為だったのか?
私が野菜人ならもっと、更に髪が逆立ってる所だぜ!
「テメェ、あの状況で貴様を庇ったケティ嬢になんて言い草だ。ゲーシュのくせに生意気だぞッ!」
ジャイアニズム全開な私の罵り。しかしギーシュはケティ嬢に助けられた事に関しては思うところあるのか素直に罪悪感を表情に表せた。
そして謝罪を口にする。
「すまない…だが、僕が好きなのはあくまでモンモランシーなんだ! ほら、見てくれ…今度開かれる舞踏会に向けてエルメェスのパンティを」
「セクハラじゃねぇか!」
まだ寝言をほざくゲーシュに吐き捨てるように言いながらもう一発顔面にアヴドゥルの気合が篭ったパンチをお見舞いする。
奴が取り出そうとしていたプレゼントの包みが宙に飛び、流石にそれが地面に落ちちまうのは何だと思った私はマジシャンズレッドに受け止めさせた。
「っていうかエルメェス?」
私はハッとして殴られてきりもみ回転しながら吹っ飛んだギーシュに確かめるように聞く。
私の世界でもエルメェスはある。ファッションブランドの一つだ。
元は1837年に開いた馬具工房で、ナポレオン3世やロシア皇帝などを顧客として発展した。
かのナポレオン3世や、ロシア皇帝ニコライ2世も愛用するほどの品質は一言で言うと…いや、言うまでも無い。
”何十年程度では駄目にならないほど丈夫”な皮革製品をちゃんと使っていれば分かる事だからな。
今では服飾品・装飾品・香水、などの分野にも手を広げ、それらの製品のデザイン、製造、販売するメーカーになった。
だが、アトリエ・エルメスの屋上にはHERMES/SELLIER(鞍屋エルメス)が残っており、今でも完成まで1つ27時間かけて馬具を作り続けている。
話が逸れちまったが、私の腑に落ちない態度を見たギーシュは頬を押さえながら私に説明を始めた。
「あ、ああ。ゲルマニアのネアポリス伯が始めた事業の一つで、最近貴族の間でちょっとした人気になってるんだ。と言っても馬具やバッグなどでの評価が高いらしいがね」
他のブランドまではまだまだチェックできていないんだと言うギーシュ(一応説明してもらっているからゲーシュ呼ばわりは勘弁してやるぜ。今はな)
ネアポリス伯は他にも、工房を纏めたり職人を集めたりしていて、ジュエリーブランドのテファニーだかティファニーアだかやアルマニという服飾工房を始めているらしい。
伯自身が細かく要望を出して作らせているという製品全てが高品質かつ斬新で洗練されたデザイン、と出来て間もないと言うのに既に各宮廷の流行を引っ張る紳士や貴婦人の評価を得ているとかギーシュは説明していたが…
私はそれを聞いてそのネアポリス伯爵が誰かわかった。
(ジョルノだ。間違いない…あいつ私を迎えに来ないで何やってやがる。パクリじゃねぇか!)
再会したらジョルノに問い詰めなければならない。
ギーシュが取り出したプレゼント用の包装にはきっちりあのエルメェスのロゴとそっくりのが入っている。
薬にパクリとか幾らなんでも金儲けに走りすぎだとおもうぜ。
アルマニは多分あの「ミラノの3G」が立ち上げたアレが元ネタなんだろうが…彼は語録で「私はニセモノが嫌いだ。見せかけの真実は見たくない」と言うほどの漢。
確かにこっちじゃあ彼はいないわけだが…知ってるんならもっと敬意を払うべきじゃあねぇのか?
納得の行く説明を奴がしやがるかはわからんが、問い詰めなければ…
「とりあえず黙れってくれ」
まだ説明をするゲーシュにもう一発、顔面に私のやるせなさが篭ったパンチをお見舞いする。
これ以上そんな話をされるとこっちの頭が痛くなっちまいそうだ。
「何をするんだ! 君が知らなさそうだから説明してやってたのに!」
またも吹っ飛ばされたギーシュの顔はちょっぴり原型を留めていなかったが、私は追い討ちをかけるように言葉をかける。
「とりあず言っておく。貴様への私の返事はこうだ…諦めろ! 既に貴様はゲーシュッ、手ひどく女を振ったゲス野郎で彼女との縁なんぞとっくに消滅しているッ!」
私に殴られただけではない。
もうモンモランシーとの未来なんぞ存在しないという宣告にわかってはいたのだろうが、呆然とするギーシュ…
それを見ていると、まるで本当にうっかりしちまっただけに思えてくるから不思議だ。
(チッあんなことが無かったら可哀想な奴と気を許しちまうところだぜ)
これが、ゲーシュかとある種感心しながらも私は今度は騙されなかった。
だがしかし、こいつの演技は真に迫っているというのも確かだ。
もしかして演技じゃあないのか?
と疑問が頭を過ぎる…いいや、と私は頭を振った。
このゲーシュとあの時のケティ嬢。
どちらを信用する?
ゲス野郎を庇う美少女とそのゲス野郎。
二つを並べてどちらかを選ぶなら当然美少女を選ぶ。
誰だってそーする。私もモチロンそうだ。
貧乳はステイタスって言う位当然だ。
噂をすればなんとやら…いつの間にかゲーシュの背後からケティ嬢が迫っているしな。
しかし余り目立たない場所を選んだというのに見つけるとは、流石に良く見ているといったところか?
「亀さんこんにちわ。ギーシュ様、こんな所で何をされているの?」
「ケティ! い、いや…これは、その」
声をかけられるまで全く気付いてなかったこの間抜け野郎はプレゼントの包みを気にしたが、それが駄目だな。
その目の動き。きっちり見られてるぜ?
「あぁすまない。ギーシュが貴女にプレゼントしたいものがあるんだがどうやったらうまく渡せるかと私に相談しに来てな」
「ポルナレフ!?」
私の咄嗟の嘘に、ゲーシュの野郎が何か慌てているが知ったこっちゃ無い。
奴が言うには下着が入っているらしいエルメェスのロゴマーク付きの包みはバッチリケティ嬢の視界に入っちまってるんだからしかたねぇだろう?
純真無垢そうな彼女にゲーシュの奴が、『手ひどく振った前の女とよりを戻そうとして人気急上昇中のブランドで下着を購入してきた』なんぞといえるだろうか?
私にはそんな残酷なことは言えなかったが、ケティ嬢は気付いてしまったようだ。
隠し切れない悲しみを私とゲーシュに見せながら、耐えるような彼女の仕草が私の胸を打った。
「ギーシュ様、まさか…」
「け、ケティ…すまない。だが僕の話を聞いて欲しい。これは…今度の舞踏会の為に、あの事件が起こる前に注文した品だったんだ」
「…わかりました。信じますわ」
ケティは男ならグッとくるような寂しさを漂わせた笑顔でそう答え、私とゲーシュはまた言葉に詰まった。
ゲーシュは言葉もなく彼女を抱き寄せ、私は見てられねぇと目を逸らそうとした。
偽ブランド品www支援
だが私は、奇妙だがケティ嬢から目を離せなかった。
一つ、気になった点がある。
…?
気のせいか?
ゲーシュの野郎の言葉を信じる彼女には頭が下がる想いだったが、どういうわけか私はまた疑問が頭に浮かぶのを止められずにいる。
クッ自分が情けないぜ…
だがしかし、今の表情、何か嘘っぽく無いか?
むしろ、今微かに見えた表情は。
そんな事は知ってますわって感じじゃあなかったか?
馬鹿なと首を振る私にケティ嬢はギーシュを伴い、「亀さん、ギーシュ様の相談に乗ってくださってありがとうございました」と言って去っていった。
その際、何故か一度女子寮へと視線を向けたケティ嬢に私は首を捻ったが、「あぁ私でよければまた相談してくれ」と返した。
「ありがとうございます…そうだわッ!」
ケティ嬢は思い出したように、そして名案が浮かんだとでもいう風な態度でギーシュに待つよう頼んで私へと可愛らしい顔を寄せた。
「それなら亀さん、ミス・モンモランシーがまだショックで部屋に閉じこもっているので…(もし名案が浮かぶようでしたら)貴方からも励ましてあげてくださいませんか? 私には…かけてさしあげる言葉がありませんから」
相談場所に選んだ中庭に冷たい風が吹いたような気がして、私は一度だけ身震いをした。
「あ、あぁ。任せてくれ。そういうのは苦手なんだが、できることがあればやってみよう」
ケティ嬢はお願いしますともう一度お願いしてから二人連れ立って去っていった。
「全くいい子だな。奴には勿体無い」
あぁ、そろそろ授業が終るな。
毎日のことなんでなんとなくそう感じた私は校舎へ視線を向け、ルイズが授業を受けている教室へ移動していく。
その時先程頼まれたばかりだからだろうか?
私はミス・モンモランシーの事が気にかかり女子寮へと視線を向けた。
部屋の場所は分からないが、私が目を向けるのと同時にカーテンが一つ閉じたのが、マジシャンズレッドの視界では確認できた。
まさかとは想うが…それが彼女の部屋じゃない事を祈るぜ。
なんせさっきゲーシュの野郎がケティ嬢を思わず抱きしめてたし、今も腕を組んで戻っていくからな。
酷い野郎なんだからスッパリ忘れちまえとはいえねぇ …失恋したばかりの彼女には、酷な光景だ。
私はため息を一つついて使い魔達の待つ場所に戻った。
*
さっきの授業が午前の部の最後の授業だったんで、程なくして教室から出てきたルイズに連れられ、私は食堂へ行った。
ここでも使い魔達と一緒じゃあねぇ。
例のゲーシュ事件以来私の中でのルイズ評価は下がったが、「貴族を見るには使い魔を見ろ」という言葉もあるらしくルイズと私の周囲からの評価は上がっており、また話せるってこともあって私は食堂の中で飯を食うことができるようになっていた。
「っつーことがあってよぉ、私は感心したね!」
「ふーん、ゲーシュは相変わらずね。ケティもゲーシュなんかの何がいいのかしらね?」
私の言葉にルイズはワインを飲む手と止めて相槌を打つ。
ちなみに私があんまり好かんルイズと一緒に飯なのは使い魔だからってのもあったが…ルイズって友達少ないからな。
魔法が使えないメイジの扱いなんぞ悪いもんだ。
入ったばかりの、魔法がスゲー苦手な奴らでも一つ二つなら使えるからな。
たった一つ二つ。
だがそれが何よりも高い壁となっている。
分からない奴は醜いアヒルの子でも読んで勉強してくれ。
ルイズが白鳥の子供かどうかは分からんけどな。
ルイズは妙な誇り高さとコンプレックスがあるからそういう奴らとも付き合う気は無いらしい(どっちにしろ馬鹿にされるだけみたいだな)
キュルケはある意味友達ともいえるようだが、一番侮辱しまくるのもキュルケなんでルイズ的には友人とはいえないだろうな。
私にとってはゲーシュ戦のことがムカつくが、それ以外は案外順応してきたんでここで一番ルイズと話すのは私かもしれない。
うっかり向こうの事やいつまで経ってもこねージョルノの事を愚痴っちまうからギブアンドテイクって感じかね?
「品評会? 私に見世物になれってのか?」
だが、そんなルイズがあぁそうだとか言って口にした使い魔の品評会ってのは気にイラねぇ。
私に見世物になれって話をなんで承諾してやらなきゃならねぇんだ?
当然そう思った私は拒否する意向を伝えるがルイズは駄目よと全く取り合う気がなさそうな返事を返してきた。
「今年は姫様も来られるんだから、絶対に無様な真似はできないの。適当に空飛ぶだけでいいからやってもらうわよ」
そう言うルイズの言葉にはムカついたが、私は反論しなかった。
何か切羽詰ったものを感じてこう思ったからだ。
その使い魔の品評会、もしかしたらルイズの親も見に来るんじゃねぇの?
早くに親を亡くした私にも一度位は授業参観の経験はある。
ああいう場所で親の前で恥をかくのってかなりきついものがあるからな。
実際恥じをかいた経験がある私は…すぐに仕方ねぇから付き合ってやることに決めた。
以上です。
ちなみに偽ブランドはマジにデザインをパクって工房の職人の修正でハルケギニア風にされたりして出てます。
もうちょっと詳しい事とか理由とかは、機会があれば…
クリスマス?
そんないい話が私にあると思っているのか?
イヴもイヴイヴも仕(略
ネアポリス伯は自重しねえw支援
なんという腹黒コロネwww
まちがいなく中身はチョコレート味www
乙そしてGJでした!
ジョルノ何やってんのジョルノw
ポルナレフが両親を亡くしていたことを思い出して
ちょっと涙目
親を亡くし妹を亡くし便器を舐めさせられ
友を亡くし社会的に抹殺され
肉体的にも殺され年下に呼び捨てにされ
亀ナレフ(笑)と言われディオの息子にやや見下され
ツンデレに召喚され腹黒少女に利用され……
ポルナレフが幸せになれるといいな、と本気で願う
>>540 こうやって見るとポルポル君がえらく気の毒に思える
まぁ本人は楽しくやってるみたいだがねww
GJ!
しかしこのケティ真の邪悪である
>>540 そういわれると明らかに不幸なキャラなのに、全然そうは思えないのは本人の人徳だと思っておこう
それよりギーシュとモンモランシーが哀れでならん。
GJ!
しかしこの鬼帝様相変わらずどす黒いなw
カメナレフGJ!!
>>544 すでに定着してるのかwwwwwwww
怪帝(けてぃ)ではどうだろうかと思う日曜の朝
吐き気をもよお(ry
しかしこの鬼帝外道である
いっそギーシュ開き直って積極的に優しくしてやれ
きっとあの鬼帝も真赤になったりしてうろたえるに違いない
・・・あれ?普通に萌えるぞ?
>>478 >ガンダールヴをワルキューレで殴りつづけてもレなない
>納得が出来なければ相手が王女であろうと説教する、手を踏むことも
>ルイズの代わりにツンデレになったガンダールヴも
>惚れ薬イベントでルイズを百合に目覚めさせた
ここらへん誰か教えてくだちい
>ガンダールヴをワルキューレで殴りつづけてもレなない
鉄の使い魔?
>納得が出来なければ相手が王女であろうと説教する、手を踏むことも
ゼロの兄貴
>ルイズの代わりにツンデレになったガンダールヴも
承太郎orギアッチョ?
>惚れ薬イベントでルイズを百合に目覚めさせた
愚者の使い魔
551 :
478:2007/12/23(日) 15:50:32 ID:JJw59j9u
>>550 説教で済ませるのはジョセフで、手を踏んで説教のコンボは兄貴。
ツンデレはギアッチョ、承り、ヨシカゲ(デルフに対して)
レなないと百合は
>>549さんの書いたとおりです。
キィーングクリムゾォーン!!
GER!
スタープラチナ・ザ・ワールド!!
キラークイーン第3の爆弾!パイツァダスト(負けて死ね!)
スターダストクルセイダーズの人間組の内誰かが
ルイズに召喚されてる設定で
アルビオン戦争イベントの時に森に倒れてる彼を
マチルダに召喚され、村とテファを守るために
番犬をやってた白と黒のボストンテリアが発見する
という電波を受信したから困る
>>556 テラダニーwwwwww
多分誰かはジョセフか承太郎だろう…血統的に考えて
ボストンテリアはイギーだろ、三部的に考えて
何を言っているんだ?
ダニーはネズミだろ!
>>559 一部ダニーより出番が多いダニーじゃないか
恋人がサンタナー
本当のサンタナー
熱風を追い越して
サンタアナって荒木先生の捜索じゃなかったんですね
今月のニュートンに乗っててビックリしました
さーて避難所で宣言した投技「聖夜嵐」一投目を20分あたりから投下します
いつもの3倍の量で100万×3の300万パワーっ!!そしていつもの3倍の投下をすれば300万×3の…
サンタクロース、おまえをうわまわる900万パワーだーっ!!
聖夜に私怨
ごめんなちゃい、もうちょいかけそうなんで投下延期します
40分までには書き上げるッ!
支援の準備?俺はいつでも出来てるぜッ!
聖夜、そういえばそうだなあ
サイレント・ナイト…新手のスタンド使いッ!?
クリスマスといえばやっぱり干し芋だよな!
ローストチキン?ケーキ?なんだそれ?
投下するぜべいべー
一行はウェールズに案内され、彼の居室へ向かう。
そこは皇太子の部屋とは思えない質素な部屋であった。
ウェールズは机の引出しをあけ、宝石が散りばめられた小箱を取り出し、つけていたネックレスの先に
ついている小さな鍵を小箱の鍵穴に差し込み、中から一通の手紙を取り出す。
ウェールズは名残惜しげに手紙を開き、目を通した後、丁寧に畳み直し封筒にしまい、ルイズに手渡す。
「この通り、確かに返却した」
「ありがとうございます」
ルイズは深々と頭を下げ、手紙を受け取る。
「明日の朝、非戦闘員を乗せた『イーグル』号が出発する。貨物船は代わりに接収させてもらうがね、
それで君達はトリステインに帰りなさい」
ルイズは目を伏せていたが、決心したように目をあげ、問い掛ける。
「あの、殿下…先ほど栄光ある敗北とおっしゃりましたが、王軍に勝ち目はないのですか?」
ウェールズは即答する。
「ないよ。こちらは三百、あちらは五万。攻勢側は防衛側の3倍の戦力が必要というが、3倍どころか100倍を優に越している。
それに、防衛側というのは有利な分、奇襲などで戦力差をひっくり返しにくい。
いくらこちらの士気が高かろうと、全員が玉砕覚悟でぶつかって三百も潰せれば成功した方だろう」
「その玉砕覚悟でぶつかる兵には殿下も含まれているのですか?」
ルイズは詰め寄る。
「当然だよ、だが不幸にも僕は皇太子でね、真っ先に突っ込んで死ぬわけにも行かない。生き長らえるつもりも
ないけれどね。今までこんな戦いに付き合ってくれた兵士たちを見届ける義務がある。一人でも多く戦えなくし、
一本でも多く武器を折り、一秒でも長く粘るつもりだ」
ルイズはウェールズの再び頭を下げる。
「殿下、失礼を承知でお聞きしたいことがあります」
「なんだね」
「この、ただいまお預かりした手紙の内容、もしかしてこれは…」
「ちょっと、ルイズ」
キュルケがたしなめるが、ルイズは意にも介さない。
「この任務を申し付けた姫様と手紙を預かっていた殿下のご様子、尋常ではありませんでした。
もしや、アンリエッタ姫様とウェールズ殿下は…」
ウェールズは微笑んで応える。
「そう、その手紙は君の想像の通り、恋文だ」
「やはり、殿下は姫様と恋仲であらせられたのですね?」
「昔の話だ」
ウェールズは顔色を変え遠くを見るような表情になる。
「殿下、トリステインに亡命なされませ!」
ルイズの声色が強くなる。
ワルドがルイズの方に手をおき、諌めようとするが止まらない。
「お願いでございます!我々と一緒にトリステインにいらしてくださいませ!」
「おいルイズ、それくらいにしておけ」
ワムウがルイズに低い声をかける。
「なによワムウ、あんたには関係ないでしょ!」
「それはお前も同じだろう、お前は話を聞いていて亡命などできんことがわからんのか?」
「そう、彼の言う通りだ。臣下達を見捨てて亡命などはできんし、仮に臣下達を逃がせるとしても
トリステインに迷惑をかけるわけにもいかないし、彼らも、僕も亡命などは選ばないだろう」
「なぜですか!自分の命が惜しくないのですか!おそらく姫さまも手紙で亡命を薦めているはずです!」
ルイズは涙を流しながら声を張り上げる。
「惜しい、惜しいに決まってるさ。怖いし、恐ろしいし、辛いし、今すぐにも逃げたいさ。
だが、人間には命以上に大切なものというものがあるような気がする。武人として、貴族として、皇太子として、
アルビオン人としての名誉と、臣下の信頼を裏切って亡命などできない。
…人間は高度な知性を持っていると言うが、もしかしたら最も馬鹿な生き物なのかもしれないね」
ウェールズは自嘲気味に笑い、続ける。
「君は、正直な女の子だな、ラ・ヴァリエール嬢。正直で、真っ直ぐで、いい目をしている。
しかし、忠告はしよう。そう正直では大使など務まらないよ、しっかりしなさい」
ルイズに微笑みかけ、そういった。
「…だが、亡国への大使としては適任かもしれないね。明日には滅ぶ政府は誰よりも正直だからね」
ウェールズは腕に巻かれたこの世界でも珍しい、魔法で動く腕時計に目を通し言った。
「そろそろ、パーティの時間だ。おそらく我らの王国最後の客人よ、ぜひとも出席をお願いしたい」
一行はワルドを除いて部屋を出て行く。
ワルドは一礼し、ウェールズになにか頼み込んでいた。
城のホールで行われる華やかなパーティ。
「明日で終わりだっていうのに、随分華やかね」
ルイズの言葉にワルドは頷く。
「明日で終わりだからこそ、ああも明るく振舞っているのだ」
貴婦人達の間から歓声が上がる。ホールの入り口から皇太子がつかつかと玉座へ近づき、
何事か父王に耳打ちする。
国王、ジェームズ一世は立ち上がろうとするが、年のせいかよろけ、倒れそうになる。
会場のあちこちから屈託のない笑いがこぼれる。
「陛下、お倒れになるのはまだ早いですぞ!」
「明日まではお立ちになっていただけなければ我々が困ります!」
会場から野次にも似た軽口が飛ぶが、国王も悪意はないとわかっており、軽口で返す。
「おのがたも二日酔いで決戦に参加するのだけは勘弁願いたいのう」
ウェールズが体を支え、立ち上がった国王が咳を一つすると会場の全員の顔が引き締まる。
「諸君。いよいよ明日正午、このニューカッスル城に立て篭もった我らを駆逐しようと逆賊どもの
総攻撃が行われる。この無能な王に、諸君らはよく従ってくれた。しかし、明日は戦いではない。
おそらく一方的な虐殺となるであろう。これも、無能な諸君らの責任である。朕は諸君らの
馬鹿さ加減にはほとほと呆れた。よって、ここにいる自分以外の全員、全てクビとする。
獲物になってやるネズミは朕一人で充分だ」
会場がざわめく。
「…明日の朝、巡洋艦『イーグル』号がここを離れる。国王として最後の命令だ、どこの港に
着けるかはわからない…しかし、止めてもらえる港へ風石が続く限り飛べ!ただ今より全員に暇を与える!」
ざわめきが大きくなる。
「諸君らがこの忌まわしき大陸を脱出した後、この老いた城は老いた貴族と共に散る。以上!出発の準備をせよ!」
「あらら…、クビかよ」
「まいったね」
「どーする?」
兵の中から声が漏れる。
貴族たちが大声を上げる。
「殿下!老いた貴族と呼ばれるほどまだ私は老いていないと思っていたのですが!」
「私たちはもうクビにされた一人の人間、その命令は誰に言っているのですか?」
「これだけネズミが居れば、猫の数匹の喉を切り裂き、派手に散れるでしょうな!」
「耄碌するには早いですぞ、殿下!」
国王は涙目になる。
「この大馬鹿どもめ!だから貴様らはクビにされるのだ!一人も二人も百人も大して変わらん戦力差だぞ!
ここまで無能だとは思っていなかったぞ!」
「無能な貴族に守るものは名誉しかございません、殿下」
「アルビオン人として名誉を守り通しましょう、殿下!」
「アルビオン王国万歳!我らが名誉よ、魂よ、結束よ!永遠なれ!」
支援いたす
辺りは喧騒に包まれ、客人であるルイズ達に貴族らがかわるがわる訪れ、
料理を勧め、酒を勧め、冗談を言った。
ルイズは、泣き言も愚痴も一切言わない彼らの行動が逆に悲鳴をあげているように見えた。
いたたまれなくなり、ルイズは外へ出て行く。ワルドはそれを追いかける。
「ワムウ…」
ルイズが外に出て、最初に目に入ったのは甲板でたたずんでいるウェールズと話しているワムウだった。
「ねえ、ワムウ…なんであの人たち笑うの?なんであんなに明るいの?」
ワムウは返事をしない。
「どうして、彼らは死を選ぶの?皇太子さまは、姫さまが…恋人が逃げてっていっているのに…
なんでそれでも逃げないの?愛する人より大切なものなんかあるの?」
「俺は戦いに生きる。奴らは名誉に生きる。似たものとは言いがたいが理解はできる。
それが、人間というものなのだろう。ひ弱で、短命で、傲慢だが、いや、だからこそ俺は人間に
一目おくこともできる。もしかしたら、我ら柱の男以上に素晴らしい生き物なのかもしれない」
「なにが素晴らしい生き物よ!死んで残される人のことなんか考えてないお馬鹿さんばかりよ!」
「名誉のために、国や話したことも無い人間を守るために散っていく者は我が世界にもいた。
しかし、考え方は違うが精神的に戦士である彼らを馬鹿にすることは許さんぞ」
「あんたも、大馬鹿者ね。あんたは私なんかじゃなくてここのお馬鹿さんの使い魔になればよかったのにね」
ルイズは呟く。
そこに、追いかけてきたワルドが現れる。
「ルイズ、パーティを抜け出して、どうしたんだい?ずいぶん探したよ」
「ワルド様…どうしたんですの?」
「ルイズ、大事な話がある。使い魔君も聞いてくれたまえ」
「なんですか、ワルド様?」
「ウェールズ皇太子にも許可をいただいた。衣装も用意した」
「もう、なにをなんです?」
ワルドが一泊あけ、ルイズの肩をつかみ、強く言った。
「日程は明日、媒酌は皇太子に頼んだ。場所はここの教会でだ。ルイズ、結婚しよう」
To be continued.
なんだ、いつもの量じゃないかこれ
もうちょい書いたような気がしたんだがむしろいつもより少ないぞこれ
とりあえず次の投下は今日24時までになると思うよー
支援…
ありー?投下終了してたのね…GJ。
ワムウの誇りと王党派の名誉は似てるからお互いわかるんだよなぁ
さてさて、ワルドの絞り雑巾wktk
今まで敵ほぼボコボコだからねえ
ガチワルドさんには頑張ってもらいたいわけですよ ええ
雑巾絞りか、懐かしい技だな、
小学生の時以来だ、
もっともワムウのは本気で捻じ切るから性質が悪い、
左腕も秒読みか・・・。
GJ!
何かいつもより人間臭い王子だった。
>>572 ワムウは負けると判っている戦いをした事はないぞ。
というか、守るものも残すものも無くただ死ぬことを選択したジョジョキャラは居ない。
・・・マックイイーン以外。
胸のキズだろうがちぎれた腕だろうが全てを利用して勝利を掴もうとするしな
文の質がディ・モールト高いっすよ風の人!
GJッス!
ところでレスついでに……
避難所の、某の駄文も見てやってください。
「味も見る」はブチャと露伴先生の名コンビぶりに感動するぜ
ジョジョキャラは誠実な人が多いが、ジョジョキャラで一番誠実な人って誰だろ
ゼロ魔キャラで一番誠実な人はコルベール先生?
誠実に「狂信的なほど」って単語を付け加えてもいいなら
プッチ神父もたいがい誠実だと思う俺
神父様!それは意外な盲点!!
逆に誠実さと無縁なのは1部ディオとカーズ様かね
実は一番誠実なのって仕事にかける情熱の異常さで露伴先生?
やっぱり康一君かなあ。
ブチャも誠実だと思うんだが、どうだろう
トニオさんも負けてはいないぞ!(料理限定)
辻彩もだッ!(メイク限定)
第一部終了後〜のワゴンは誠実だぞ
作中でもジョセフのからかいの対応からわかる
13巻読んだ
ネタバレ防止のために本筋には触れないが・・・
うん、その、なんだ
アン様はやっぱりアン様だな
ビッチはなににしょうがビッチか……
ビッチが一体なにをしたんだ・・・
さすがアン様!俺たちに出来ないことを(ry
な事だと期待
いや、アレはいくらなんでも変わりすぎではなかろうか。
何らかの精神干渉を行われたのではと邪推してみる私は、避難所に投下してきたぜ!
このスレでの13巻最大の収穫は
なぜかDISKやスタンド使いがハルケギニアに来ていることへの説明がついた所
じゃないか?
らあああああああすとくりすます
7時くらいに二投目オラオラ行くぜジョニィ
もう書きあがってるけど届いた13巻に目を通して推敲してから投下することにます
あれまだ5時じゃん、時計みまちがえた
ということで6時過ぎくらいに
、--‐冖'⌒ ̄ ̄`ー-、
/⌒` 三ミヽー-ヘ,_
__,{ ;;,, ミミ i ´Z,
ゝ ''〃//,,, ,,..`ミミ、_ノリ}j; f彡
_) 〃///, ,;彡'rffッ、ィ彡'ノ从iノ彡
>';;,, ノ丿川j !川|; :.`7ラ公 '>了
_く彡川f゙ノ'ノノ ノ_ノノノイシノ| }.: '〈八ミ、、;.)
ヽ.:.:.:.:.:.;=、彡/‐-ニ''_ー<、{_,ノ -一ヾ`~;.;.;)
く .:.:.:.:.:!ハ.Yイ ぇ'无テ,`ヽ}}}ィt于 `|ィ"~なに今日はイブだって?
):.:.:.:.:|.Y }: :! `二´/' ; |丶ニ ノノ
) :.: ト、リ: :!ヾ:、 丶 ; | ゙ イ:} 逆に考えるんだ
{ .:.: l {: : } ` ,.__(__,} /ノ
ヽ ! `'゙! ,.,,.`三'゙、,_ /´ 「正月イブイブイブイブイブイブイブイブ」でめでたい
,/´{ ミ l /゙,:-…-〜、 ) |
,r{ \ ミ \ `' '≡≡' " ノ と考えるんだ
__ノ ヽ \ ヽ\ 彡 ,イ_
\ \ ヽ 丶. ノ!|ヽ`ヽ、 投下する
\ \ヽ `¨¨¨¨´/ |l ト、 `'ー-、__
\ `'ー-、 // /:.:.} `'ー、_
`、\ /⌒ヽ /!:.:.|
`、 \ /ヽLf___ハ/ {
′ / ! ヽ
「僕は、結婚式をあげたあと、僕達はグリフォンに乗って帰る。君たちは『イーグル』に
乗って帰ってくれ、といったと思うんだが…」
ワルドは絶句する。
「あら、ルイズの結婚なんて格好のネタ逃せないわよ、攻めてくるのは正午なんでしょう?
いざとなったらタバサのシルフィードで無理やり逃げるわよ」
タバサは頷く。
「わざわざ危険を押して来たってのに空手で帰るわけにはいきませんからね、
ここの勇敢なアルビオン兵士さんたちは六文銭さえあればよいみたいですからね、
武器を売る相手ならここほど羽振りのいい相手が見つかる場所は滅多にありませんからね。
最悪、貴族派数人買収しても儲けがでそうですからな…ええ、それは20エキューです…」
ダービーは王党派の兵士たちに武器を売りさばいている。
「なあに、これでも歴戦の船員らさ、火砲飛び交う戦場を強行突破なんてなんどもやってきてらあ、
なあ、野郎ども!」
船長の言葉に船員が片手をあげ肯定する。
「非戦闘員の乗ったあの船は人が多すぎるんでな、狭くてかなわん。
無事着港できたのに数人消えていたなどシャレにならなそうだからな」
ワムウはけろりと言う。
「みんながそういうなら残るしかないじゃないか、男として」
ギーシュが呟く。
「やれやれ、僕たちの臣下も馬鹿者だと思っていたけれど、どうやらこんなときに
こんなところにいらっしゃった客人たちも利口じゃないね」
ウェールズ皇太子がシャチと共に入ってくる。
「では、ついてきたまえ。結婚式を執り行う」
皇太子は背を向け、歩こうとするが、振り向く。
「そうそう、君たちも出席するのかね?君たちの船は接収したと言ったはずだが…
そうそう、今は警備がたまたまいなかったんだな…これは独り言だ。
どちらにせよ、逃げるならそろそろ脱出しておいたほうが吉だと思う」
船長はその言葉を受け、畏まる。
「えー…お前ら…少し重要な話がある。今皇太子様がおっしゃった通り、こんなとこ逃げた方がいい。
だが、俺は残らせてもらう。どこで育て方を間違ったのか、この馬鹿息子はな、親の願いも聞きゃ
しねえ。まあ、育て方を間違ったのは俺の責任だしな、息子の晴れ姿を見るために残らせてもらう。
あの船なら俺一人いなくても動かせるだろう。ほら、とっとと行きやがれ」
しかし、船員は動かない。
「ぷっ…あはははははは!」
船員は笑い出す。
「何がおかしい!笑ってる暇は無いぞ!これは船長命令だ、とっとと逃げやがれ!」
「おい、ウッド。俺らの船の甲板下に隠してある武器と火薬、片っ端から持ってきやがれ」
「はい、わかりました!機関長どの!」
「何言ってんだバカどもッ!こんなことに付き合うんじゃねえ!」
「何言ってんです船長、この船はあんたの独断専行で動いてきたんだ。あなたなしじゃ
エンジン1つ動かせないんですよ」
「いつも道り堂々と立って、俺らをコキ使ってください、このままだと俺ら、仕事の邪魔ですから」
「この馬鹿どもめ!俺の息子といい、こいつらといい…だから水兵なんてのは嫌なんだ…クソッ…」
船長は涙ぐんでいた。
皇太子は咳をする。
「ミス・ルイズ、ミスタ・ワルド、彼らの参加は構わないね?」
ルイズは頷く。
「わかった。ではついてきたまえ」
支援
案内された教会は静かで、窓から差し込んだ日光で空気が透き通った水晶のように見える。
教会の席には多くの船員と数人の貴族と一人の大男が座っており、正面の台上には
媒酌を務めるウェールズと護衛のシャチが戦時下で出来る限りの正装をして立っている。
教会の扉が開かれ、黒いマントのルイズと、いつもの魔法衛士隊の制服のワルドが手をつないで入ってくる。
こころなしかルイズは人生の晴れ舞台だというのに重々しい表情に見える。
ワルドが歩くのを促し、ルイズは歩を進め、台の上へと昇る。
新婦の冠を頭に乗せられ、黒いマントをワルドに外され、純白のマントを纏わせられる。
「では、式を始める」
皇太子が重々しい声を発する。
「新郎、子爵ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド。汝は始祖ブリミルの名において、
このものを敬い、愛し、そして妻とすることを誓うかね」
「誓います」
ワルドは頷きながら言う。
「新婦、ラ・ヴァリエール公爵三女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
汝は、始祖ブリミルの名においてこの者を敬い、愛し、そして夫とすることを誓うかね」
しかしルイズは答えない。
この国の悲しみ。この国に残る兵士の悲しみ。おそらく死ぬとわかっていてそれでも残る船員たちの悲しみ。
残されたものの悲しみ。この悲しみに包まれた荒城で、私はなにをやっているのだろう。
私はどうすればいいのだろう。なぜ彼らはこれほどまでに悲しいのだろう。問う相手もいない。答える相手もいない。
天窓の向こうに見える、あのぼんやりとかすんでいる二つの月、荒城の月にルイズは問い掛けたかった。
「新婦?」
ウェールズがルイズを見る。
声に気づいたルイズはハッと顔を上げる。
「緊張しているのかい?仕方が無い、初めてのことはなんであれ緊張するものだからね」
皇太子はニコリと笑う。
「これは儀礼にすぎんが、儀礼とはそれをするだけの意味がある。では繰り返そう、
汝は、始祖ブリミルの名においてこの者を敬い、愛し、そして夫とすることを誓うかね」
ルイズは一拍置いた後、深呼吸し、首を振る。
「お二方には大変失礼をいたすことになりますが、私はこの結婚を望みません」
ワルドの顔が赤くなる。
ウェールズは微笑し、花婿になり損ねた男に告げる。
「子爵、誠にお気の毒だが、花嫁が望まぬ式をこれ以上続けるわけにはいかぬ」
しかし、ワルドは返事もせずルイズの手を取る。
「緊張しているんだ…そうなんだ、そうだろうルイズ…きみが、僕との結婚を拒むはずが無い」
ワルドはルイズの肩をつかむ。
「世界だルイズ。僕達は世界を手に入れるんだ!君は僕にとって必要なんだ!
君の能力が!君の力が!」
ワルドの雰囲気が変わる。その剣幕にルイズが一歩引く。
「私、世界なんていらないわ」
「違う、ルイズ、君に言っただろう。君は始祖ブリミルにも劣らぬ優秀なメイジに成長するだろう!
君はそれに気づいていないだけだ!その才能に!その力に!その強大な、力に!
トリステイン、アルビオン、ガリア、ゲルマニア、ロマリア…このハルケギニア全てを火の海に
変えることも、支配することも可能な力に!聖地の異端の化け物どもを独り残らず潰し、聖地を
我らの手に取り戻すことのできる力が君にはあるんだ!僕には君が必要なんだ!ルイズ!わからないのか!」
ウェールズがルイズとの間に割り込む。
「子爵、君は振られたのだ。いさぎよく引き…」
「ウェールズッ!おまえごとき薄っぺらな藁の城の皇太子が深遠なる目的の
わたしとルイズの砦に踏み込んで来るんじゃあないッ!」
ワルドはウェールズの手を強く跳ね除け、ルイズに向き直る。
「ルイズ、どうしても僕と一緒に来てくれないのか?」
ルイズはきっとワルドの目を見る。
「そんな結婚、死んでも嫌よ!あなたが熱烈なラブコールを送っているのは私じゃなくて、
ありもしない私の魔法の才能よ!そんな理由で結婚しようだなんて、こんな侮辱はないわ!」
引き離そうとするウェールズをワルドは突き飛ばす。
突き飛ばされたウェールズは杖を抜き、叫ぶ。
「なんたる無礼!子爵、今すぐラ・ヴァリエール嬢から手を離したまえ!さもなくば、我が魔法の刃が君を切り裂くぞ!」
「やってみろッ!この権力の奴隷がッ!貴様の城はもう藁の家だ!
貴族派『レコン・キスタ』中隊隊長ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドが貴様の藁の鎧を吹き飛ばしてやるッ!」
ワルドも杖を抜く。
一瞬であった。
一瞬の間にいたはずのワルドは掻き消え、護衛のシャチがかばう暇も無いまま、背後からエア・カッターを放っていた。
ウェールズの胴体から血が吹き出す。
シャチが叫ぶ。
「貴様ァッ!それは遍在か!」
ワムウが飛び込みルイズを遮蔽物の後ろに引きずり込む。
引っ張られながらルイズがワルドに向かって叫ぶ。
「ワルド!あんたよくもッ!どうして!」
ワルドは頬の横をゆがめて笑う。
「我々は国境を越えてつながった貴族の連盟だ。ハルケギニアを統一し、聖地の異端の化け物どもを残さず駆逐し、
そして聖地を奪還する。その第一歩として君と、ウェールズの命と、その手紙を手に入れたかったのさ。
君はもう大人しく諦めよう、だが手紙は頂かせてもらおうかッ!」
ルイズは杖を構える。
「あなたは昔はそんな人じゃなかったわ!なにがあなたを変えたの!?」
「時間ほど影響を及ぼすものは無い。君がこの腐敗した王党派につくというのなら、
腐りきった貴族たちと一緒に死にたいというなら!いいだろう、ボロ雑巾のようにひねり潰してやる!」
扉から兵士が飛び込んでくる。
「ウェールズ皇太子様ッ!貴族派が正午という時間をやぶり、総攻撃を開始しました!非戦闘員の乗った
『イーグル』号は撃破され爆破し、まもなく正門が…ウェールズ様ッ!?」
ワルドは杖を一振りすると、その男の背中が裂け、倒れる。
シャチが憎憎しげに見つめる。
「貴様ら…約束も守らぬ、一片の誇りさえないとは…猫ですらない、泥にまみれた狐であったか!」
「なんとでもいえ、死ねば生ゴミ、死ねば虫ケラ以下だ。敵との約束を無条件に信じるなど鼠でもしまい。
では、大人しく貴様は獲物になってもらおうか、なあに墓は立ててやる。鼠用のな」
ワルドは杖をシャチに一振りする。
そこに、誰かが飛び込んでくる。
「親父ッ!」
目の前で血まみれで倒れる赤鯱に息子は声をかける。
「へッ…バカどもばかりかと思ったけどよ…俺が一番バカだったな…
まったく、親に晴れ姿も見せないまま逝かせるなんて、親不孝者…め…」
今にもワルドへ飛び込んでいきそうなシャチをワムウが制する。
「行け、あいつなど俺一人で充分だ。皇太子は死に、国王は危篤。実質指揮するのはお前の役目だろう」
船員たちがシャチに話し掛ける。
「俺らはどうすればいいんですかい、新船長?」
シャチは、目をぬぐう。
「全力で正門の防衛に当たる。行くぞ、野郎ども!」
「合点承知!」
船員たちが出て行き、ワムウはワルドを見たまま後ろの一行に話し掛ける。
「お前らも行ってやれ、こいつは俺が始末してやる。こいつに『ボロ雑巾のようにひねりつぶす』
ということがどういうことか教えてやる」
「嫌よ」
ルイズが即答する。
「だって、私はあんたの使い魔だもん」
ワムウは鼻を鳴らす。
「じゃ、わたしも前線で商売に励まさせていただきましょう。その前に…」
ダービーはある商品をワムウに渡す。
「あなたなら片手でこれを使えるでしょう、料金は後払いで構いませんよ、では」
キュルケやギーシュたちも一緒に出て行く。
「では、人間ごときに、『風』の使い方と『ボロ雑巾のようにひねりつぶす』方法を教えてやるとするか。
ルイズ、デルフリンガー、そして…スレッジハンマーよ」
To be continued.
投下終了。
13巻なんか急展開っすね
乙でした。
次回はワムウ大暴れですな。
神砂嵐はカッタートルネード×2位だと思っている。
スレッジハンマー・・・まさか・・・
ドグシャッ!
すでにエンジン付きw
コッパゲあわれ
元ネタが解らん…
スレッジハンマーって2つしか候補ないと思うんだが、なんかあったか?
もちろん候補1の油塗られてるほうね、ワムウ貰ったのは ってかワムウ知ってる武器それくらいだろ
>スレッジハンマー
1部と2部に一個づつあるな
SPWがゾンビ潰しに使ったのとジョセフのやつ
教皇 君こそ「真ノ邪悪」ダ
君には敵意もナケレバ 悪気もナイシ
誰にも迷惑ナンカかけてナイト思っテイル
自分ヲ 被害者ダト思ってイルし
他人に無関心のクセニ 始祖ガイツカ自分を 助けてクレルト望ンデイル
だがソレコソ 悪より悪イ 「最悪と」呼バレルものダ
他人を不幸ニ巻き込んデ 道づれにスル 「真ノ邪悪」ダ
ワムウの神砂嵐がワルドを引き裂くのか!
なんにしてもワムウの人乙&GJでした続き楽しみに待ってます
ワムウは頭の飾りで真空竜巻起こせるくらいだから並みの風じゃヘでもないんだろうな
しかしこのワルドつくづくゲスである
>>612 ブチャとか承太郎の改変もいけそうだよな>教皇
あとあの狂信ぶりはアンデルセン神父とかイスカリオテ機関とかと同系統かな
教皇は別にそこまで狂信者って感じしなかったけどなー
いやいや、母親の件だけでもヤバイだろ。
きゃあああああああ
停電で 次の話の途中まで 全部吹っ飛びました
みなさん上書きはこまめにね
ドンマイとしかいえねーなぁ…
>>615 教皇「教義の為なら神の教えに背いた母親を、逃げ込んだ村ごと虐殺するのも仕方の無いことです」
けっこうステキな感じに狂ってると思うよ
でもそこまで狂信じゃないと思うなー
じゃなかったらアニエスとっくに殺されてると思うし
GJです、ワルド逃げてぇ!状態ですね、
でも一つだけツッコミ入れさせて下さい。
ルイズが「私はあんたの使い魔だもん」
って言ってますが、
「あんたは私の使い魔だもん」の間違いだと…。
もしかしていつの間にか主従関係逆転した?
「(夜のベッドの上では)私はあんたの使い魔だもん」
どこまでも燃え上がれ、俺の小宇宙(しっとの心)よぉぉッ!!
自分で書いてて血管千切れそうなほどムカついたw
>>623 主従関係は
人間<柱の男達 の関係じゃね?(食物的な意味で
奴等明らかにピラミッドの頂点じゃないか、
奴等にすれば我等が悪の救世主DIO様すら餌でしかないんだぞ?
あいつらに勝てる存在が思い浮かばねぇ。
え?ニューヨークの孔明の存在はどうした?
原作での出番がほとんど無いキャラ召喚を妄想してる
ゲームとwikiあれば平気だよね!と思ったが
やっぱ原作無いとキツいわ……
サンタさん、自分のトコにジョジョ全巻とか
持ってきてくんねーかなー
自分を知れ…
そんなオイシイ話が………あると思うのか?
おまえの様な人間に
>>629 だからお前は何時まで経ってもマンモーニなんだペッシ!
ジョジョが読みたいと思ったら!既に全巻購入しているんだ!
正直調子に乗り過ぎました。反省はしている。
今回はペンウッド卿ですか。そおいえば姉妹スレは最近寂しいや
そおいやスレッジハンマーって元ネタらしき洋楽があったね
エア・サプレーナ島にも元ネタがあったし
>>629 ジョジョ全巻か………
1〜5部までで63冊
6部が17冊
鉄球走が現時点で14冊
バオーが2冊
BTが1冊
死人Q&露伴で1冊
アイリンが1冊
変人奇人が1冊
乙一小説版が1冊
4部までの画集が1冊
ジョジョアゴが1冊(とても本とは言えない大きさだが…)
運ぶサンタさんの体も考えてあげて下さい
つ三部小説
五部小説は...いらんな
634 :
629:2007/12/25(火) 01:06:06 ID:zdKxEuQY
正直スマンカッタ
よし、今日とりあえず5部の文庫一冊と13巻買うわ
自分へのセルフクリスマスプレゼントだよ!
フフフ……
そんな君達に避難所にプレゼントを用意したよ……
喜んでくれるかな?
ゲロ以下の臭いがプンプンする奇天烈乙、
そして味見さんGJ、
ワルド如きでは男の世界は使いこなせなかったようで。
>>629 アニマックスの福袋でジョジョ全巻が当るかもしれない
う〜んマンダム!同じ髭でも悪奴じゃダメだったようですね
味見さん乙&GJですた
クリスマスにも負けずSSを書くぞ!と思いきや風邪をひいたぜ…
これがスタンド能力発現の前フリだったら嬉しいが、世の中そう都合のいい話があるとも思えん
>>639 目覚めるとしたら時間系だな
「クリスマスを消し飛ばす」能力ッ!
だがイブは消し飛ばないのであまり意味は無いぜ…
>>639 永遠に一人のクリスマスを過し続ける…、
これがゴールドエクスペリメンスレクイエム…、
終わりがないのが終わり…、
>>639が楽しいクリスマスに辿り着くことは…、無い…。
>>640 今日(クリスマス)は当然のように仕事で昼飯はどんべえ
イブは祝日なのに、緊急で呼び出され19時まで仕事、晩飯はコンビニ弁当
……どんなスタンドが来ても負けんぜ、俺は!
>>642 君のような勤労青年は胸を張って誇るべきだ
今年はサンタナさんがプレゼントをくれることを祈ろう
>>642 なあに人生辛いことばかりじゃあない、きっといいこともあるさ
今夜あたり妙に若々しくて歳を取らないサンタが石造りの仮面を持ってやってくるに違いない
>>642 自分も今年『も』クリスマスは良い事ありませんでしたorz
エシディシさんみたいに泣き叫ぶか、カーズさんみたいに高笑いすればスッキリしますよ、多分…
みんな、何を言っているんだ!
クリスマスというのは元々、冬至が過ぎて、これから春になることを祝う日なんだぞ!
某聖者とも、恋人達とも、なんの関係もない日なんだ!
ちゃんと世界が滅びずに、核の冬も来ず、春が来ることそのものがいいことなんだよ!
・・・自分で書いててむなしいw
今年のクリスマスはムシャクシャするから悪い事を沢山やってやる!!
まずウザイ一人目の弟にはPS○とモン○ンポータブル2をセットでプレゼントして勉強の邪魔をしてやる。
二人目の弟には手袋を買い与えてやる、手が暖かくなって手袋が湿気るという地獄の苦しみを味わうが良い。
父には新しい財布を押し付けてやる、愛着のあるボロボロの財布を捨てる最悪の屈辱を味わわせてやる。
最後に母にはルクルーゼとか云う値段が高くて使いづらい鍋を渡してやる、コゲつかない様に気を付ける事で精神に負担を掛けるが良い。
しかもこれだけプレゼントに金を掛ければ、折角先月にアルバイトを一生懸命頑張った俺の頑張りを捨てる事で余計に傷つくであろう。
こんな俺にはきっと黒い服来て矢を持った恐ろしいサンタが来るだろう。
今年のイブですか?
…使われていない鉄塔に登って
夕焼けの町を一人で見ていましたよ
>>647 >クリスマスというのは元々、冬至が過ぎて、これから春になることを祝う日なんだぞ!
>某聖者ともなんの関係もない日
そういえばどっかの本に書いてあったような
ついでに言うと別の宗教のお祭りパクって無理矢理誕生日に仕立て上げたとも書いてあったが
ラブクラフティアン初級の俺には今日はユールの日だということしか知らないな
メリーインスマス
>>648 アンタにはきっとドラゴンズドリームとかエコーズとか
クレイジーダイヤモンドの劣化版的スタンドとかヘブンズドアーが身に付くよ
初期のキリスト教は布教の為にそれまであった宗教の行事を幾つかパクってキリスト教の物した。
クリスマスもその一つ。
ちなみにクリスマスはキリストの「誕生を」祝うのであって「誕生日だから」祝うのではない。
>>652 デビルマン乙といわれなくてちょっと悔しいw
裏切ーり者のー名をー受ーけてー
仲間と共にたーたかうおーとこー
ブチャパンチは飛び道具
ブチャラッシュでバラバラに
ブチャイヤーは難聴で
ブチャ舌で嘘見抜く
矢で力、身につーけたー
ネアポリスのヒーロー
ブチャーラティー、ブチャラティー!
>>657で噴いたw
え?クリスマスですか?女の子と一緒に
4時間カラオケですよ!
女二人でエアーマンが倒せないとか真っ赤な誓いとか
二人の恋のHISTWRYYYYYとか高らかに歌いましたが何か?
何か? って・・・萌えますが何か?(*´Д`)
>>658 君せっかくだからちょっとこっち来て一緒に歌いなさい
(野郎一人で絶対運命黙示録声高らかに歌い上げバーチャルスター発生学を予約にIN)
お前ら何やってんのw
あ、いや、俺は家だけど…
い・は・んすれー
い・は・んすれー
ユールの日ー
クリスマスに投下しようとか思っていたけど、別にそんなことは無かったぜ!
よくて来年かな
やべぇよ!
俺も663の兄貴みたいに来年になっちまいそうだ!
そこでキンクリの出番ですよ
プッチ神父はミサに出かけているのか、静かだ。
この時間帯にボスが来るのも珍しや。
やっぱ13巻があまりにもアレだったからか?
ちょこっと投下させてもらうぜ。
むかしむかしのお話です。
ある国に貴族なのに魔法がまったくつかえないルイズという少女がいました。
たくさん勉強してたくさん練習しても、いつもいつも失敗ばかりです。
そんな彼女ですが今日ばかりは失敗するわけにはいきません。
今日は一生を共にする使い魔を呼び出す大切な儀式の日なのです。
「それではミス・ヴァリエール」
「は、はいっ!」
ルイズは胸を張って前に進み、右脳を左回転、左脳を右回転させて
脳幹に生じる小宇宙的な精神力をのせた強力な呪文を高らかに唱えました。
その威力はすさまじく、地面に隕石がぶつかったような大きな穴を開け、
広場は戦場跡のような焼け野原になってしまいました。
これにはいつもルイズをからかっている生徒たちもびっくりです。
「と…とんでもない威力だ」
「これじゃあ呼ばれた使い魔も死んでるんじゃないか?」
まわりの生徒がざわめくなかで、ルイズはじっと土煙の向こうを見ていました。
そのこころは不安でいっぱいです。
やがて煙が晴れてルイズは爆心地の中心になにかを見つけました。
それは麻袋の上でのんきに昼寝をする一匹の猫でした。
「ルイズが魔法に成功したぞ!」
「この状況で昼寝するとは図太い猫だぜ」
ルイズは嬉しさのあまり、ひとつ歌でも歌いたい気分になりましたが
それをぐっと抑え、猫に近づいて契約の口づけをしました。
「フギャアァーー!!」
「こ、こら!暴れないの!」
ルーンが刻まれる痛みに暴れる猫をルイズはぎゅっと抱きしめました。
猫のからだを穴だらけにしてしまうぐらい、ぎゅっと抱きしめました。
猫が爪でひっかきますがそれでも離しません。
やがて猫も諦めたのか口から泡を吹いてぐったりとしました。
「ふむ、珍しいルーンだな」
猫に刻まれたルーンを霞のような目をした教師がメモに書き留めて
そのあとに生徒たちに解散を命じました。
ルイズはウキウキ気分で痙攣する猫を抱きかかえ、いっしょに呼び出された
麻袋を引きずりながら寮へと戻っていきました。
「アンタの名前も決めなくっちゃね」
気絶したように眠っている猫をお気に入りのクッションの上にのせて
小さなタオルをかけながらルイズはそう呟きました。
そして自分も寝巻きに着替えようと服を脱いだところで麻袋が目に入りました。
「そういえば、これって何がはいってるのかしら」
麻袋を開けてみると手のひらくらいの丸いものがたくさん入っていました。
芽が出ているので植物なのでしょうが、ルイズは見たことがありません。
一番上の姉がアカデミーという魔法の研究所ではたらいていることを思い出し、
ルイズはこのふしぎな植物を調べてもらおうと手紙を書いてから眠りにつきました。
今日はいい夢が見られそうです。
翌日、ルイズは教室の掃除をしていました。
授業でまたもや失敗してしまったからです。
以前なら敗北感でこころがいっぱいになるのですが、今日のルイズはちがいます。
たったひとつ成功した魔法が目の前にあるからです。
主人が掃除をしているのに、使い魔の猫はぐうぐう寝ていましたがルイズは気にしません。
使い魔を見ているだけでこころの底から希望とやる気がムンムンわいてくるのです。
ルイズはあっというまに教室を片付け、寝ている猫を抱きかかえて中庭に向かいました。
中庭では生徒たちがお茶を飲みながら歓談に花を咲かせていました。
その中でも薔薇の造花を持った少年がとても目立っています。
「なあギーシュ!お前、今は誰とつきあってるんだよ!」
「つきあう?僕にそのような特定の女性はいないのだよ」
あれやこれやと話しかける級友の相手をするギーシュという少年は、カッコつけながら
背中にベットリとした汗をかいていました。
その理由はふたつあります。
ひとつは、彼は同級生と下級生のふたりの少女とつきあっているのです。
絶対にバレるわけにはいきません。
もうひとつは、同級生からもらった香水を地面に落としているのです。
そして、下級生の少女がこちらに向かっているのが見えます。
いまの彼は、吸血鬼を騙そうと死んだふりをする老けた学生のような心境です。
この状況をなんとかしたいのですが迂闊なことをすれば級友にバレてしまいます。
そんな絶体絶命のピンチを救ったのは一匹の猫でした。
「ニャ?」
その猫はきらきら光る香水のびんを珍しそうに前足で転がします。
そして、ぺしぺし叩いて草むらへ運んでいきました。
それを見たギーシュは胸を撫で下ろして、下級生の少女にこころの中で詫びながら
猫のあとを追ってその場を立ち去りました。
「さあ猫くんこれを食べたまえ。僕からのお礼だよ」
「ニャオ」
ギーシュはさっきのお礼としてさかなを猫へ与えました。
猫は警戒しながらくんくんとさかなの臭いをかいでから、ぱくぱくと食べはじめました。
おなかが減っていたのでしょう、すぐにさかなを食べ終わるとどこかへ行ってしまいました。
ギーシュが猫の後姿を見ていると、手にお皿を持ったルイズがやってきました。
「ねえギーシュ、猫を見なかった?わたしの使い魔なんだけど」
「君の使い魔かわからないが、猫ならヴェストリの広場の方へ歩いていったよ」
ルイズはありがとうと言ってヴェストリの広場へ駆けていきました。
ギーシュも中庭に戻ろうとしてふと立ち止まりました。
あの意地っ張りでいつも怒っているルイズがお礼を言ったのです。
珍しいこともあるものだとギーシュは思いました。
それから中庭に戻り、二股がバレて枕を涙で濡らしました。
なんかほのぼの(´ω`)支援
朝からご苦労様しえん
猫を使い魔にしてからルイズは悩まされていました。
なぜなら毎朝目が覚めると枕元にゴキブリやらネズミやらの死骸が置かれているのです。
犯人はもちろん猫です。
ルイズも猫とはそういうものだと二番目の姉に教わっていたので怒ることができません。
ですが、今日はちがいました。
いつものように枕元にはネズミが置かれていました。
ただし、今日は半分生きていて半分死んでいる状態です。
しかもそのネズミは学院長の使い魔なのです。
ルイズは大慌てで学院長にあやまりに行きました。
学院長は引きつった笑みを浮かべながらもルイズを許してくれました。
ルイズは二度とこんな事がないように猫を叱りました。
「白いネズミはとっちゃダメ!それから今日はごはん抜き!」
叱られた猫はしょんぼりしながらどこかへ行ってしまいました。
ルイズはそれを見てちょっと言い過ぎたかなと思いました。
「どこにいるの〜?返事くらいしなさ〜い!」
ルイズはお昼ごはんを食べたあと、さかながたくさん盛られたお皿を持って
あちこちをさまよっていました。
授業中に、猫が獲物を持ってくるのは自分を褒めて貰いたいからということを
二番目の姉が言っていたのを思い出したからです。
罰は朝ごはんを食べさせなかったことで終わらせて、お昼ごはんをいっぱい
食べさせてあげようと猫を探しているのですが見つかりません。
「どこにいったのかしら?そうだわ、またあそこかも」
猫がヴェストリの広場で唯一、日当たりの良い石の上で寝るのが好きなことを
思いだして広場へと向かいました。
思ったとおり、猫は石の上でぐでんと横になって寝ていました。
ルイズはご主人さまとしての威厳を取り繕いながら猫に近づいていきました。
ふだんなら猫は誰かが近づくとすぐに起きるのですが、今日はなかなか起きません。
ルイズはおなかがすいているからだと思うと同時に、奇妙な違和感を感じました。
猫が寝ている石はあんなに赤かったのでしょうか?
なぜ猫はすぐ近くまで寄っても起きないのでしょうか?
「うそよ…こんなことって」
猫は喉をぱっくりと切り裂かれて死んでいました。
落としたお皿が割れた音で我に返ったルイズは、猫を抱きかかえると慌てて医務室へと走りました。
ですが、いくら魔法でも死んだものを生き返らせることはできません。
ルイズはわんわん泣きました。
ルイズは朝のことをとても後悔しましたが猫はもう戻ってきません。
ルイズは悔やんでも悔やみきれずに泣きつづけました。
そうして泣いているといつの間にかギーシュが傍にいました。
「ミス・ヴァリエール、使い魔をなくした君の気持ちはぼくにもわかる。
だが、彼をいつまでも放って置くわけにはいかない。ちゃんと弔ってあげよう」
ルイズとギーシュはヴェストリの広場の隅に猫を埋めてあげました。
猫が好きだった場所です。
ルイズはさかなを、ギーシュは薔薇をたくさんお墓に供えてあげました。
その夜、空も猫の死を悲しむようにしとしとと雨が降りました。
翌朝、ルイズははじめて授業を休みました。
ですが、授業を休んでも自分の部屋には居られませんでした。
ほんの短い間でしたが猫とすごした日々を思い出してしまうからです。
そうして俯きながらとぼとぼ歩いていると、男子生徒の会話が耳に入りました。
「昨日は傑作だったな!」
「ゼロのルイズに使い魔はもったいねぇよ!」
ふたりの会話を聞いてルイズはさらに落ち込みました。
自分に呼び出されたから猫は死んでしまったのだと、自分を責めたてました。
ですが、男子生徒の次の言葉を聞いた瞬間、ルイズの中でなにかが切れました。
「でもよぉ、魔法の試し打ちにはちょうど良かったぜ!」
誰かに羽交い絞めにされてルイズは我に返りました。
まわりを見渡すと木が薙ぎ倒され、そこかしこに穴が空いていました。
ルイズを止めたのは偶然通りかかったギーシュでした。
「ルイズどうしたんだね?!わけを話すんだ!」
「あのふたりが!あいつらがっ!」
ノッポとデブと呼ばれているふたりの生徒を指差しながらルイズは叫びました。
ギーシュも彼らが素行不良なことを知っていましたが、とても信じられません。
なぜなら彼らも使い魔を先日呼び出したからです。
他人の、ゼロのルイズの使い魔とはいえ殺したとは考えられませんでした。
「テメエにゃ使い魔なんざ必要ねぇだろ!」
「俺たちに感謝するんだな、ゼロに仕える可哀想な使い魔を天国に送ってやったんだからな!」
ノッポとデブはルイズを指差してギャハハと笑いました。
怒りと悔しさで顔をクシャクシャにしながらルイズは叫びます。
ギーシュも怒りを堪えられませんでした。
「けっ決闘よ!!」
「広場へ来な……ひさしぶりに…ブチ切れちまったよ…」
広場にはたくさんの生徒が集まりました。
ただし、それは決闘を見物しに来たのではありません。
一心同体である使い魔を愛さない貴族はこの学院にはいません。
広場に集まった生徒はみんな、ルイズとギーシュが負けてしまったら
次にノッポとデブに決闘を申し込むために集まったのです。
「オラどうした!口先だけのキザ野朗!!」
「テメエらも使い魔といっしょにおネンネするか!」
ノッポとデブはラインクラスでした。
ドットのギーシュとゼロのルイズでは勝ち目がりません。
ルイズは悔しくて泣きそうになりましたが、歯を食いしばって涙をこらえました。
ノッポとデブは自分たちが置かれている状況を知らずに勝ち誇りました。
そして、デブがふたりをバカにしたように鼻をほじったそのときでした。
「ギャース!!」
「ギニャアァーー!!」
咆哮と共に破裂音が聞こえて、デブの指が鼻の穴をつきぬけました。
よく見ればデブの指がヘシ折れているのがわかります。
なにが起こったのかわからずに生徒たちがおどろき、声のした方を振り向きました。
「な、なんだこれは?!」
「生き物なのか…?」
そこにはだれも見たことがない、ふしぎな草が生えていました。
信じられないことですが、ルイズとギーシュにはその草がなんなのかなんとなく理解できました。
その草が生えている場所は、猫を埋めた場所なのです。
「こ、この!潰れちまえ!!」
ノッポが放った風の槌がふしぎな草に襲いかかります。
ですが、風の槌はふしぎな草に届くことはありませんでした。
ノッポは様々な魔法を唱えますが、そのすべてがふしぎな草を避けるようにして
外れてしまいます。
「ギニャアァーー!!」
またもや破裂音がしてノッポは悲鳴を上げて倒れ、動かなくなりました。
だれもが混乱する中でルイズはその草に近づき手を伸ばしました。
あぶないとだれかが叫びましたが、なにも起こりません。
「猫…なの?わたしの…使い魔の…」
「ウニャ?」
その草の喉らしきところを撫でてやると、ゴロゴロと気味の悪い音が鳴りました。
ふしぎな草の左のはっぱを見ると、そこにはルーンが刻まれていました。
間違いありません。
この草は死んだはずのルイズの使い魔なのです。
ルイズは嬉しくてわんわん泣きました。
ギーシュも涙を浮かべて感動に浸っています。
まわりの生徒もようやくなにが起こったのかわかりました。
「主人を守るために生き返るなんて信じられない!」
「あの猫…草?どっちでも良いが、使い魔の鑑だ!」
「ミス・ヴァリエールの思いが始祖に届いたんだ!」
生徒たちは口々にルイズと使い魔を褒め称えて拍手を送ります。
猫草はルイズに抱きしめられて、うっとおしそうに鼻を鳴らしました。
しばらくして騒ぎを聞きつけた教師たちがやってきて、デブとノッポは医務室に運ばれました。
生き返ったとはいえ、他人の使い魔を遊びで殺してしまったふたりは退学処分になりました。
そして、ルイズとギーシュも貴族同士の決闘が禁じられているのも関わらず、
決闘を挑んだ罰として、学院長から三日の謹慎を命じられました。
ルイズは喜んでそれを受けました。
なぜなら三日間ずっと使い魔といっしょに過ごせるからです。
ルイズは鉢植えに植え替えた使い魔を抱えながら、ウキウキと学院長室を後にしました。
その夜、ルイズは猫草をベッドの傍に置いて眠りにつきました。
今日はいい夢が見れそうです。
支援
投下終了。
次はフーケさんとワルドさん辺りまで終わらせたいな。
「ねこと 」さん乙でした、ギーシュがナイスガイすぎて惚れそう
ルイズと猫草に幸あれ
ぬこの人GJ!!
そして今頃丈助にフルボッコにされている吉良をエピタフww
隼人?
奴なら猫草以外の攻撃手段を見つけますよ
GJ!
展開速度的に中篇ってとこか?
このギーシュは漢だ・・・
しかしあれだ、普通に動物呼び出すと普通にいい子だなルイズ
なんというか才人は当たりではずれだったんだなぁ
猫草の人GJ
この雰囲気好きだ
やべ、感動したGJ!
絵本みたいな雰囲気いいね、俺こういうの好きだよ
>>683 隼人の思考回路と覚悟は異常(いい意味で
エンポリオも子供で覚悟を見せたけど、スタンド持ってたし
スタンド持たない、見えないで母親を守るために戦い挑んだり爆死の危険冒してまでオクヤス助けるとか
間違いなく隼人はスタンド使いになったら強い
隼人の覚悟と機転は
波紋の戦士になっても生かされるな
よく考えたらデブとノッポって
シビれる憧れるゥ!の奴らだったのかな
早人は矢差したら絶対スタンド発現するだろうな
>>688 素で間違えたスマソorz
>>690 怪我の症状から第二部初めにでてきた警察二人組みと思われ
早人がスタンド使いならもう『星の白金』とか『世界』とかと肩を並べる強さのやつなんだろうなぁ
いやいや「スタンドはその人となりを写す」そうだからビデオカメラとかに縁のあるものじゃないか?
けどこうして妄想を楽しむのは良いんだけど能力として出すとしたら厳しいがねぇ…
むしろコォォォと息を吐き始める方向で
猫草GJッ!
何というほのぼの感
ねこさんの話は童話みたいな感じでほんわかしてて好きです
こちらも20分から投下してみたいと思います
康一達が居た部屋は、もはや大規模災害の跡地と化していた。
魔法による破壊は全てを薙ぎ払った上で粉微塵に砕いたのだ。
壁には幾つも風穴が空き、明らかに見通しがよくなっている。
バラバラと天井から塵のような物が落ちてきた。
まるで廃墟のようなその部屋に、この惨状の元凶等が姿を現した。
三人のメイジが、ジャリッと元が何なのかも分からぬ破片を踏み潰す。
会話は無かった。いや、そんな必要は無いらしい。
三人は何を言うでもなく、まるで一つの意思に統括されたかのように、行動している。
全員が全員を補完しあって行動している。一筋の乱れも無い、見事だった。不気味な程に。
そんな中、一人が「ディティクトマジック」を発動。
探知の魔法は、この場にある全てを使用者に教える効果を持つ。
康一達が今この部屋の何処に居るのか。全てを教えてくれる、ハズだった。
僅かに体が揺れた。それは驚きか、疑問か。
いないのだ。康一達はこの部屋で生きてはいない。
だが、またこの部屋で死んでもいなかった。
魔法で死んだとしても死体ぐらいは残る。それも二人分なら必ず。
たとえ火炎で爆散しようと、氷弾で穴だらけになろうとも、鉄槌で踏まれたカエルのようになろうとも、だ。
つまりこの部屋に死体が無いという事は、どこかに隠れたか逃げた、という事になる。
一人の探知が全員に教えた。まだ狩りは終わっていない事を。
あくまでも戦闘態勢のまま、一人が探知を続行。
隅から隅まで無表情に調べつくす様はまるで、本当に、機械だ。
まるで感情が見えない。僅かに動揺のようなものは見られるが、それも儚い。
しかし探知は部屋の中に何も教えない。何故か。
探知は範囲を広げて続行される。その範囲が部屋の外にまで及んだとき、また体の揺れ。
窓を見る。魔法の衝撃でガラスが吹き飛び、端に残った欠片が付いた窓。
窓は開ききっていた。衝撃で全開になってしまったのだろうか?
だがそれならメイジが窓に目を向ける理由が無い。
ゆっくりとメイジは窓へと近づき、そこからの世界を見下ろす。
見下ろすその先。フワリ、と柔らかくカーテンが舞った。
それだけで何があったのか、その者は全てを悟った。
二階層下の窓らしい。この部屋のほぼ直線下にある窓からカーテンが顔を覗かせていた。
カーテンは窓の内側に取り付けられる。つまりこの窓は今は開きっぱなしの状態にあるという事。
一応下の地面も見てみるが康一達の姿は見えない。
暗いので足跡があるかどうかまでは見分けられないが、これでハッキリした。
逃げやがった。あの必死とも言えるタイミングで、この窓から飛び降りたのだ。
女を抱えて、瀬戸際に生き延びやがった。
そして二階下の窓にどうやったのか分からないが飛び込んだ。
あの残った時間でメイジが完全なレビテーションを使うのは不可能に近かった。
不完全な浮遊なら、勢いを殺しきれずに地面へ激突する。
しかしどうやらそんな事も無く、階下の窓から別の部屋へと飛び込んだのだ。
魔法の技ではない、とその者は感じる。
どうも不可視の攻撃をしてくるし、挙句にどうやったのかこの逃げ方。
あの使い魔の少年の能力だろうとアタリをつける。
しかしこのまま悠長にしている時間は無かった。時間を与えるのはとてもマズイ。
与えれば与えるだけ相手の有利に状況は進んでしまう。
一刻も早く、命を刈り取らなければならない。
窓を覗いていたメイジは錬金を詠唱。対象は自分の立つ床に設定。発動。
足元のガラクタごと床は錬金によって塵芥と変わり、その上に乗っていたメイジごと自重で階下へと抜け落ちる。
すたん、と軽く階下に降り立つと更に一度錬金を詠唱。
しかし今度の対象は足元ではない。ばすん、とメイジの足元から30cm程前の床に穿たれる穴。
そして探知を発動。その探知の結果によると、どうやら康一達は階下の部屋にはいないようだ。
当然だが康一達もゆっくりとしている訳では無かったらしい。
一人でメイジは穿たれた穴から落下。
――――――逃がしはしない。
支援
康一は死んだ。
正確には康一はあのままでは死んでいた。
一体どうすればいいのか?目前の死に康一は対応しきれなかった。
あまりにも考える時間がなかったし、完全な手詰まりだったのだ。
だからその状況を打破するには他の要素が必要だったのだ。
そしてそれは死の目前に起こった。
康一の思考がマトモに回り始めた時はすでに手遅れだった。
いや、エレオノールを見捨てれば康一は助かっただろう。
今から床をACT3でブチ抜きそこから逃げるとしても、意識のないエレオノールを階下に落とし、康一自身も降りるには時間が足りない。
かといって自分の命惜しさにエレオノールを見捨てて逃げることなど、はなから康一の考えの中には無い。
残る手は一つだけだった。それしか残らなかった。
康一はそれを実行しようとACT3を操作する。と、その時。
『こっちじゃ!早うこっちへくるんじゃ!!』
何処かしわがれた声が聞こえてきたのだ。
部屋に自分とエレオノール以外の人間はいない。幻聴だろうか。
そう考えるも、康一には何か呼び声に力を感じた。
僅かにエレオノールの長い金髪がなびいた。風が、吹いている。
いつの間にか窓が開いているのだ。そこから空気が部屋の中へ入り込み、風を生み出している。
『飛べぃ!』
また声が何処からともなく康一の耳に届いた。
間違いなく幻聴ではない。ハッキリとした意思を感じる。
声はどうやら窓から飛び降りろと言っているらしい。飛べば地面に真っ逆さまだろう。
エレオノールをACT3で抱えて窓から飛び降り、その後ACT2のボヨヨオォンの文字を地面に貼り付けるには時間が足りない。
だが自分一人ならエコーズの能力で助かる。
瞬きする間の無いほどの時間で康一は決断した。
まさに渾身の力を込めて彼は飛んだ。何故なら、このままでは魔法で死ぬからだ。
しかし飛べばエレオノールはペシャンコになってしまうだろう。
だから、助かるのは、彼女であるべきだ。
康一の後を追随するACT3の腕にはエレオノールが抱えられていた。
エレオノールが自らの意思で死ぬのならともかく、自分に付き合わせて死なせる訳にはいかない。
声の主が何を思って飛び降りろと言っているのかは分からないが、少なくともACT3で墜落から守ればエレオノールは助かる。
「だからこの人は助ける。死ぬのなら僕のほうだ。つまらない意地かもしれないけどッ、僕はッ、そうするッ!」
但しやすやすと康一は死ぬ気はない。重傷かもしれないが生き延びる。
生き延びて必ずアンリエッタを守りぬく。故郷に、杜王町に帰るのだからッ!
そして康一は声の言う通りに窓から、その身を投げ出した。
ACT3もエレオノールを抱え、康一の後に続く。
宙に身を躍らせた康一は、遠い彼方にある地面を視界に捉えて、その目を見開いた。
それとほぼ同時に、部屋の中で魔法が炸裂。爆音と共に衝撃が宙を舞う康一達にも伝わる。
「ああぁぁあああぁぁぁッ!!」
叫びながら落下する康一。当然だがACT3はエレオノールを抱えているため康一にまで手は回らないのだ。
生き残る為の細い命綱。それは自身の肉体のみで掴み取らなければならない。
近づく大地。正直言って何も考えられない。
ACT3の操作さえも放りだして、ただ一点に集中する。
本当に掴めば千切れてしまうかもしれない、命綱に。
手を伸ばす。伸ばすッ。伸ばすッ!
届くか届かないかの、本当にギリギリの瀬戸際を康一は渡る。
そして――――――触れた。
指先で感じた柔らかい布の感触。その頼りない命綱に、手が届いた。
カーテンだ。帆船の風を受けて張った帆のように、それは多きく広がっていた。
康一は何も考えずに掴んだ。鉛筆などベキリとヘシ折れる程の握力で掴んだ。
がくん、と体が揺さぶられる。落下する力が薄いカーテンで受け止められたからだ。
手に汗でもかいていてしまっていたのか。ずるん、と手が掴むカーテンから滑り落ちる。
「うあぁあッ!」
若干情けない悲鳴を上げながらも、しかし更に康一は手に力を込めて生命線を繋ぐ。
「あぐ!」
次いで体を激しく打つ衝撃。体が痛みを訴える。窓のへりに体が打ちつけられたのだ。
体を打った衝撃が柔いカーテンにまで伝わる。
ぶちり、と繊維が千切れるような嫌な音が康一の耳をうった。
元々二階上から飛び降りた康一の体を、千切れもせずに繋ぎとめたこと事態が驚き。
カーテンを止める為の金具が外れてしまってもおかしくは無かった。
だが幸運。康一はその低い身長のお陰で、体重が軽かった。
康一の親友である体格のいい彼等なら無理だっただろう。
しかしこの軽い体重が康一の命を救ってくれた。
何とかカーテンは持ちこたえてくれ、康一は宙吊りとなる。
『康一様、早ク窓カラ部屋ノ中ニ入ッテクダサイ。
ソノママデハ、イズレ地面ト熱烈にキスする事ニナッチマイマス』
「う…ああ、そうだね。微妙に手が痺れてるから早くしないと」
康一は空中でエレオノールを抱えるACT3に促され、足を窓のふちに掛けて力を込める。
「よっと。………はぁ〜〜〜〜〜。助かったァ…」
窓から転げ落ちるように部屋に飛び込み、床に寝転がる康一。
体が虚脱状態に陥ったかのように力が入らない。
いつの間にか荒くなっていた呼吸を整えて、酸素を体にめぐらせる。
『確カニ。ドーダコーダ言ウワケデハナインデスガネ、今回バッカリハ死ンダト思イマシタ。S・H・I・T』
康一の横でACT3が冗談にならない軽口を叩く。エレオノールは床に転がっていた。
何とか呼吸を整えて康一が体を起こす。
「でも一体誰だったんだろ?声が聞こえたと思ったら、いきなり窓から飛び降りろなんて言われるし。
本気で危ないところを助けてくれた訳だから敵じゃあないと思うんだけど」
『私ニモ聞コエマシタ。何カ爺クセー声デシタネ。
シカシ声ガ聞コエタ時、アノ場ニハ私達以外ノ者ハイマセンデシタ。
遠クカラ魔法デ声ヲ飛バシテキタンデショーカ?』
実際康一もACT1で同じような事が出来るのだから、魔法でそれが出来てもおかしくは無いかもしれない。
「でもそれだとこの部屋と、さっきまでいた部屋の窓が開いていたのが説明できないんだよなァ〜。
実際にその場所に居ないと魔法を掛けるのは難しいって、確かアンリエッタさんから聞いたんだけど」
もちろん難しいというだけで不可能と言う訳ではないが、それでは多少不自然だ。
しかし魔法に疎い康一にこれ以上の推察ができる筈も無い。
「分かんないモンはしょーがないし、僕等が死んでないって上の奴等が気付いたら、
追ってくるだろうから今はさっさとこの人を連れて逃げた方がいいか」
『マ、ソンナモンデショーネ。逃ゲルガ勝チデス』
何でそんな諺をスタンドのお前が知ってるんだという突っ込みは無し。
しかしマザリーニを逃がす為に敵を足止めする筈が、こちらまで逃げることしか出来ないとは。
あの足のケガでは追いつかれるのは時間の問題かもしれない。
いつまでもこうしている訳にはいかなかった。康一はACT3を操作してエレオノールを抱える。
そして脳裏にこの階の地図を広げて、まず人のいる所へ行くべきだと判断し、部屋のドアノブへ手を掛け、ようとした。
『おぅい、待っとくれんかね』
妙にノンビリとしたようなしゃがれ声。
康一は咄嗟に振り向き、ドアを背にして背後を確認する。
部屋の中は暗かったが、多少暗さに慣れた事もあって見渡すのに問題はない。しかし。
「どこに、いるんだ?」
『私ニモ居場所ハ分カリマセン。幽霊ジャアアルマイシ。BEEITCH!』
見つけられないのだ。さっき助けられた時と同じく、声はしたが姿が見当たらない。
本気で幽霊のような感じだが、しかし康一は恐ろしさを感じなかった。
以前本物の幽霊に出会った事が幸いしている。でないと普通にビビッていただろう。
しかし命の恩人らしいとは言え、姿が見えないのは不気味である。
「いるならさっさと出てきてくれないかな?助けてもらったのは感謝してるんだけど、今は時間が無いんだ」
さすがにこれ以上時間を食ってはいられないと、康一は声に問いかける。すると。
『ほほっ!やはり聞こえておるのかね。いや、長生きはするもんじゃのー』
問いかけに反応はあったが、やはり出てくる事はない。
それに何となく話をしている事を楽しんでいるフシがある。
さすがに康一も微妙に気が抜けてしまった。
「……行こうか」『同感デス』
もう康一は声を気にせず、行ってしまう事に決めたらしい。
『いや、ちょっと待って!マジ御免なさい!ほらここじゃよ、ここっ!』
しかしさすがの声の主も置いていかれるのは嫌だったらしい。
自分の事をアピールして康一を引きとめようと声を張り上げる。
「どこだよ」『潰スゾ』
だが康一とACT3には本気で姿を捉える事が出来なかった。
というかACT3が康一の二面性を微妙に発揮し始めてる感じでちょっと怖い。
『下じゃよ、下!!ワシはここじゃーっ!!』
自身の危機を感じ取ったのかは知らないが、声の主は更に大きく叫ぶ。
「下ぁ?」
何だそりゃあ、と言った感じで康一は下。つまりは床を眺めてみる。
暗い部屋の中に双月の明かりが差し込んでいた。
その中で僅かに小さく影が揺らぐ。錯覚だろうか?
だがその揺らぎは康一に見つめられていると気付くと更に大きく揺らいだ。
まるでそこにいる自身の存在を示すかのように。
「………はぁ?」『………S・H・I・T?』
思わず口癖まで疑問型になってしまったACT3。
彼等が見つめるその先には、小さいが必死に動いてアピールする小さな白い奴。
「…ネズミ?」『…mouse?』
ACT3よ。そこは英語であることに意味はあるのか?
そんな事は気にもせず、床の上で白いハツカネズミは後ろ足で仁王立ち。
体を大きく見せ、康一に気付いてもらおうとする涙ぐましい努力は、酷く愛くるしい。
ぼてっ。
後ろに倒れた。しっぽで支えていたらしいが、さすがに限界があったらしい。
とゆーか、和む。
投下完了、今回は少し早く投下できて安心しています
最近話が停滞していましたが、ようやく大きく進められそうな感じ
ACT3がいい話し相手になってくれて本当に助かる
支援
アンリエッタ+康一の人GJ!
康一かっけぇw
そしてモートソグニル登場か、次回も期待して待ってますw
全然支援が間に合ってないよ、俺
投下が始まったら、すぐ支援しなきゃだめですね
康一がピンチをどう切り抜けるのか、次をわくわくしながら待たせてもらいます
GJ
アンリエッタ+康一の人乙そしてGJ!
仁王立ちするモートソグニル可愛いよモートソグニル
>>695 スタンド名・ミスターVTR
破壊力 スピード 射程距離 持続力 精密動作性 成長性
C B A C A S
撮影した(視界におさめた)情報を編集し、編集に合わせて現実を改竄する。
しかし編集するには全体像を撮影する必要がある為に必然的にミスターVTR自身には使えない。
また編集も自由自在というわけにはいかず、例えば山全体を撮影できたとしても
いきなりなんの脈絡もなく山を消失させるなどといった編集は現状では不可能である。
だがあくまで「現状では」の話であり今後の成長次第ではあるいは・・・
キンクリの亜種みたいなものになってしまったな。
具体的にどういったことが出来るのか、ってのがほしいなw
特にその持続性Cってのは、スタンドを解除したら元に戻るってことか?
>>711 破壊力とスピードがCで、持続力はAじゃなかろうか
元ネタの方は本人が死亡してても編集による改竄は有効だったし
スタンド談義で盛り上がっているところ悪いのだが投下させてもらおう。
まさかもう続きが来るとは 支援
謹慎期間が終わり、猫草とすっかり仲良くなったルイズの元に一通の手紙が届きました。
アカデミーではたらいている一番上の姉からです。
その手紙には猫草といっしょに呼ばれたふしぎな植物のことが書かれていました。
あの植物はハルケギニアのどこにもない新種の植物で、痩せた土地でも育てやすく
栄養豊富で保存しやすくて、簡単な調理でもおいしく食べられるという素晴らしいものでした。
ルイズは自分を助けるために生き返っただけでなく、こんなにも素晴らしい贈り物まで持ってきた
猫草のことがますます好きになりました。
そして手紙の最後に、この植物の名前を決めてほしいと書かれていました。
ルイズは困りました。
彼女はなにかに名前をつけるのがとても苦手で、いまだに猫草にも名前をつけていないのです。
それにあの植物はひょっとしたらハルケギニア中に広まるかもしれません。
妙な名前をつけるわけにはいきませんでした。
とても困ったルイズはギーシュに相談することにしました。
土系統の家系で、芸術家肌の彼ならいい名前を考えてくれるかもしれません。
「ねえギーシュ、どんな名前がいいかしら」
「う〜ん、作るのも食べるのも簡単なら、Make.In、メークインなんてどうだろう」
その簡単で覚えやすい名前を気に入ったルイズはさっそく手紙を送りました。
もちろんその手紙にはギーシュが考えた名前だということも書いてあります。
ずっと未来のおはなしになりますが、このメークインと名づけられた植物は
ハルケギニア中を襲った飢饉から多くの人を救うことになります。
そして、その植物は後にキラークイーンと名前を変えてみんなに親しまれることになります。
続きktkr 支援
あの決闘以来、ルイズは生徒たちから馬鹿にされることが少なくなりました。
それはルイズが見せた勇気と猫草の主人を思いやるこころが多くの生徒たちに
伝わったからです。
ルイズとその使い魔の絆の深さをまわりの生徒は羨みました。
そして、自分たちも負けないように使い魔たちとの絆を深めていきました。
教師や学院長もルイズと猫草を優しく見守っています。
相変わらず魔法は使えませんがルイズと猫草は毎日を楽しく暮らしていました。
そんなある日のことです。
毎年学院では国の偉い貴族たちを招いた使い魔の品評会が行われます。
そして今年はなんと、この国のお姫様であるアンリエッタ姫が観賞に訪れるのです。
ルイズとギーシュは困ってしまいました。
アンリエッタ姫と幼なじみのルイズはなんとか姫様にいいところを見せようと考え、
ギーシュはきれいなお姫様にカッコいいところを見せようと思い、ふたりで頭をひねっていました。
しかし、当日になってもいい考えは浮かびませんでした。
はなしは変わりますが、この国は最近ある盗賊に悩まされていました。
その盗賊の名前は土くれのフーケといいます。
神出鬼没で貴族の屋敷ばかりを狙って盗みを働くフーケを捕まえようと、魔法衛士隊まで
駆りだされましたが一向に捕まえることができません。
「そろそろわたしの番だわ、あの子ったらどこにいったのかしら」
「あの猫くんなら、たぶんぼくのヴェルダンデといっしょにいるよ」
ヴェルダンデとはギーシュの使い魔の大きなもぐらのことです。
猫草はずんぐりむっくりしたヴェルダンデがお気に入りでよくいっしょに遊んでいるのでした。
どうやら二匹は会場の反対側の広場でお昼寝をしているようです。
さっそくふたりは二匹を迎えにいきました。
ギーシュがすっかり親友支援
二匹を迎えに広場にきたルイズとギーシュはおどろきました。
なんとそこには今まで見たことがないとても大きなゴーレムが腕を振りかぶり、
ご〜んご〜んと学院の壁を殴っているのです。
それは学院の宝ものを盗もうとやってきた土くれのフーケが作ったゴーレムでした。
ふたりは慌ててゴーレムを攻撃しますがまったく歯がたちません。
無駄とわかりましたがもういちど攻撃しようとしてゴーレムを見ると、胸の辺りに
なにかがいました。
「あ、あれはぼくのヴェルダンデ!」
「見て!頭にはあの子がいるわ!」
ゴーレムの胸からヴェルダンデが顔を覗かせ、あたまには猫草が生えていました。
二匹はお昼寝の最中にフーケの作ったゴーレムに巻きこまれてしまったのです。
ヴェルダンデはもぐらなので土は平気でしたが、猫草は怒っていました。
せっかくルイズがきれいにお手入れしてくれたからだを土で汚され、お昼寝まで
邪魔されたのです。
猫草はマヌケな盗賊のあたまに全力で空気弾を撃ちこみました。
「ギニャアァーー!!」
絹を裂くような悲鳴と共にゴーレムから人が落ちてきました。
ギーシュが魔法を唱えて落ちてきた人を受け止めます。
それと同時にゴーレムはがらがらと崩れはじめました。
ヴェルダンデは崩れるゴーレムの中を掘り進んで逃げ出し、猫草は空気の膜でからだを
包んで地面に落下します。
落ちてくる猫草はボヨヨ〜ンとルイズの胸の中に収まりました。
そしてふたりと二匹は落ちてきた人の顔を覗きこみました。
恋人にならないか期待支援
猫草かわいい支援
ほのぼのしてて和むぜ支援!
「この人って、学院長の秘書じゃない!」
「ああ、たしか名前はロングビルだったかな。年齢は23歳、結婚適齢期はすぎているが
魔法学院美女ランキングで常に上位をキープしているね。スリーサイズは上から…」
手帳を取りだしてセクハラまがいの説明をするギーシュを無視して、ルイズは猫草を
地面に置くとロングビルこと土くれのフーケを縛りあげました。
ちょうど縛りあげたころに、こんなこともあろうかとロマリア彫刻のように美しく鍛えあげた肉体を
見せびらかしながらマザリーニ枢機卿があらわれました。
「なんと!君たちふたりがフーケを捕まえたのか!」
「いえ、わたしたちではありません。この使い魔たちが捕まえたのです」
マザリーニ枢機卿は、ううむとうなりました。
使い魔と主人は一心同体ですが多くの貴族たちは自己顕示欲が強く、使い魔の手柄を
自分の手柄にしてしまうことが多いのです。
ですがルイズとギーシュは誇らしげに手柄を使い魔にゆずりました。
そしてアカデミーからの報告で、ルイズの使い魔が国のためになる植物を持ってきたことを
マザリーニ枢機卿は知っていました。
もちろんその植物の名前を決めたのがギーシュということも知っています。
マザリーニ枢機卿は感激の雄叫びをあげながら新レベル7のポージングでふたりと二匹の
栄誉を称え、略式ではありますがシュバリエの称号を与えました。
ルイズとギーシュは顔を引きつらせながら喜んでそれを受け入れました。
そして、猫草とヴェルダンデにはおいしいものをたくさん食べさせてあげました。
もちろん品評会の優勝もこの二匹で決まりです。
偉い貴族たちが新レベル6のポージングで見守る中、顔を引きつらせたアンリエッタ姫から
お褒めの言葉をいただき、ルイズとギーシュは引きつった笑みを浮かべながら喜びました。
その名前のジャガイモは親しめねえ支援
ルイズは猫草が大好きでした。
彼が使い魔になってからいいことばかり続いています。
ルイズが昼間のことを思い出しながらうふふと笑い、猫草を撫でていると扉が叩かれました。
「ノックしてもしも〜し!ルイズ、わたくしですわよ!」
「こ、この声はもしかして!」
ルイズは慌てて部屋の扉を開けると、なんとそこにはアンリエッタ姫がいるではありませんか。
アンリエッタ姫を部屋の中に招き入れると、ふたりは仲よく抱きあいました。
それからふたりでむかしのはなしを楽しく語り合いました。
楽しいはなしを語り終えると、アンリエッタ姫はゲルマニア皇帝との結婚が決まったと悲しそうにいいました。
ルイズも悲しみました。
アンリエッタ姫はアルビオン王国のウェールズ皇太子と愛しあっていたのです。
ですが、いまはレコン・キスタと名のる貴族たちの反乱でアルビオン王国は滅びようとしていました。
アンリエッタ姫も皇太子様を救おうとがんばりましたがどうにもなりません。
「ルイズ、あなたにお願いがあって参りました」
「はい姫様、なんなりとお命じ下さりませ」
アンリエッタ姫はルイズにウェールズ皇太子から、むかしの恋文を取り戻してほしいとお願いしました。
もしそれがレコン・キスタの手に渡るとゲルマニア皇帝との結婚が取りやめになり、
この国はとても強いレコン・キスタと一国で戦わねばならなくなってしまうのです。
「かしこまりました姫様。わたしの命に代えても必ず手に入れて見せます」
「お願いしますわルイズ、それにあなたの使い魔にも」
アンリエッタ姫は猫草を撫でようと手を伸ばしました。
ルイズもほほ笑みながらそれを見ています。
アンリエッタ姫に撫でられながら、猫草はきらきら光る冠が気になって仕方がありませんでした。
だから、空気弾でそれを打ち落としてしまったのも仕方がないことなのです。
仕方なくねえw 支援
なんか顔がにやけるぜ支援!
>新レベル6
ジョジョ立ち支援w
やべぇ和む支援
「ギニャアァーー!!」
「ひ、姫様!ア、ア、アンタなんてことを!」
怒るルイズを無視して猫草は手に入れた冠をぺしぺしと叩きます。
ルイズが吹っ飛んだアンリエッタ姫を起こして謝ろうとしたとき、ギーシュが部屋へと入ってきました。
なぜ彼がここにいるのか、それはアンリエッタ姫を影ながら護衛、というよりストーキングしていたからです。
「ギーシュ!アンタなんでいるのよ!」
「そんなことよりもだ、姫様!あなたは間違っています!」
ギーシュの家は代々軍人の家系です。
彼は父や兄たちから上官の負う責任の重大さを聞いて育ってきたのです。
だからギーシュはアンリエッタ姫の、お願いという形をとり責任逃れをするその態度が許せませんでした。
それに叱られることに慣れていない姫様をあえてお叱りすることで、覚えをめでたくしたいという
下心もありました。
アンリエッタ姫はギーシュの言葉を聞いて目が覚めました。
それから冠をもてあぞぶ猫草を見ました。
ルイズの使い魔はその卑怯な態度が許せなくてアンリエッタ姫を撃ったのです。
アンリエッタ姫はそう思いましたが、猫草はそんなことは知ったことではありません。
彼はふつうの猫よりもちょっと変わっただけの猫なのですから、自分のやりたいことをするだけです。
アンリエッタ姫はウェールズ皇太子あての手紙と、水のルビーをルイズに与えました。
そして姿勢を正してふたりに命じました。
「あらためて両シュバリエに命じます。アルビオン王国に赴き、必ずや手紙を奪還するのです」
「「杖にかけて!」」
ギーシュテラカッコヨス支援
このスレで屈指のまともなギーシュ支援
勘違いしたー!? 支援
馬鹿なボンボンでない人格者のギーシュ始めて見た
翌朝、ルイズとギーシュが馬の準備を終えて旅立とうとすると、魔法衛士隊の制服に身を包み
グリフォンにまたがったひとりの立派な青年があらわれました。
彼の名前は、ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド。子爵という地位に登りつめて
魔法衛士隊の隊長に抜擢された、閃光の二つ名を持ち風を自在に操る高貴なる魔法使いです。
そして、ルイズの婚約者でもありました。
「やあ僕のルイズ!とても美しくなったね!」
「こ、困りますわワルドさま」
婚約者であり、憧れの人でもあるワルド子爵との思わぬ再開にルイズは頬を赤く染めました。
だからワルド子爵の風にゆらめくヒゲを、胸に抱いた猫草が獲物を狙う目で見ていたことに
気づかないのも仕方のないことなのです。
「ギニャアァーー!!」
「ワ、ワルドさま!」
猫草の手加減なしの空気弾を間近で受けたワルド子爵は、哀れなことに顔が某国の不動産王が
発想のスケールで負けてしまった、とても強い男の攻撃を受けたみたいになってしまいました。
そして、吹っ飛んだワルド子爵のふところから一枚の手紙が舞い落ちました。
それを見つけたギーシュがいけないことと知りつつも好奇心からその手紙を見てしまいます。
手紙を見たギーシュはとてもおどろきました。
その手紙には秘密の任務についてのことが細かく書かれていました。
そして、なんと手紙のあて先はあのレコン・キスタの総司令官であるオリヴァー・クロムウェルでした。
ワルド子爵は裏切り者だったのです。
このことはアンリエッタ姫とマザリーニ枢機卿へと伝えられ、ワルド子爵は捕まりました。
アンリエッタ姫とマザリーニ枢機卿から感謝の言葉を賜り、ルイズとギーシュはたくさんの貴族たちに
新レベル4のポージングで見送られ、顔を引きつらせながら意気揚々と旅立ちました。
猫草のほのぼのとナイスガイなギーシュ、この二つの強力なトキメキは無敵なんじゃないだろうか
投下終了です。支援ありがとうございました。
猫草&ギーシュナイスwワルド哀れw支援
トリステイン貴族はジョジョ立ちが作法なのかw支援
王子の死亡フラグが消えた…
新世界まで旅立つ果て無きGJを送る
和む笑う惚れるw
キラークイーン吹いたw
そしてみんなジョジョ立ちしすぎだw
投下乙です
猫草お手柄過ぎる
しかしジョジョ立ちw
枢機卿wwwwwwwwほのぼの と笑いの両方をこなす猫草さんGJ!
瞬殺されるフーケとワルドが気の毒でなりませんw
あとトリステインの貴族達が本編とは別の意味で駄目すぎるw
こ、このままほのぼのとアルビオン編が終わってしまうのか!?w
明らかにこの貴族達の誇りは魔法よりも肉体だと思われるw
うおおGJGJGJッ!
ほのぼの猫草と男前ギーシュ
ジョジョ立ち貴族と見所満載すぎる!!
しかし、そのジャガ芋食べたら爆発しそうなんだがwww
ねこダメの投下が来るとみんな支援して盛り上がるねw
トリズテインがこーなら、アルビオンの貴族はどーなっているのか今から気になってしょうがねえw
猫草がほんとに行動猫だなあ。ちゃんとなつかせとかないとギーシュもルイズも大変だぞ
やべぇこのノリで行くとロマリア教皇ヴィットーリオと下手すればジュリオまで鍛え上げられた肉体になってしまうwww
GJ!
それどころか乳革命なんか胸だけじゃなく筋肉も革命してるかも…
ザ・ガッツみたいなテファはいやです
全員エルメェス兄貴化と申したか
>>754 タバサやキュルケまで兄貴化したら俺涙目wwwww
ニャンダールヴ
>>756、貴様ッ!姉妹スレのモンハンネタを読み込んでいるな!?
>>756 最近のネコバァは良い猫を仕入れてくれないから困る
>>751 ヴィットーリオは、低く、唸るような声とともに息を吐いた。
今まで耳にしたことのない、美しくもどこか鋭い、旋風のような呼気だった。
パウ、パウ、パパウ、パウッ!
教皇 「これが始祖の系統……、“波紋”です」
アン様「おお……、聖下。 聖下」
テファはリサリサ先生みたいに『養豚場のブタを見るような目』で子供達を見てるんじゃあなかろうか
その流れて行くと、さしずめウェールズ王太子は↓こんな感じになるのか?
「私はワルドとの戦いの時、ひそかにルイズにあこがれた…
あの虚無の魔法に、使い魔に!私も虚無と使い魔が欲しいと思う!
死した今…なにものをも超えた生き物になりたいと願う!」
俺は人間をやめるぞアンリエッターーッ!
ワルドッ!お前の血でだ!
モンモン・キュルケ・タバサ「フフフフフフフフフ」
ルイズ「なにがおかしい!」
モンモン・キュルケ・タバサ「虚無の一族はいつもの同じセリフをはく。
私たちが初めて西の果て(聖地)から砂漠を越えてきた6000年前も今も
『杖の一本や眼が見えぬぐらいでへこたれるか』
『よくも使い魔の命を奪ってくれたな』と………
だから笑ったのだ」
>>755を見て
ルイズがマックイィーン(だっけ?)を召喚してしまい、
彼を止めるためにルイズが脱ぎたてのパンティーを
彼に渡す場面を想像してしまった
「あ、ありがたく受けとりなさいよね!
へ、平民が貴族の下着を、し、しかも脱ぎたてを
手に入れられる機会なんて、ないんだからねッ!」
>>763 キュルケ…火のエシディシ
タバサ…風のワムウ
とするとモンモンが究極生物に…
光はコルベールだろ・・・頭髪的に考えて・・・
767 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/27(木) 01:05:33 ID:rCsIX0tR
頭巾で隠しているのか…
そこ(ハルケギニア)に天才が生まれた。その天才はより長い髪が欲しいと願った
そして自分の頭にはまだ知らぬ未知の発毛力が隠されていることを知り
その能力を引き出すために天才は「石仮面」を作った
(中略)
コッパゲ「バカ者どもがッ!禿を克服したいとは思わんのかッ!
長髪を入手したいとは思わんのかッ!あらゆる恐怖をなくしたいと思わんのかッ!」
何という禿神…コイツは間違いなくヅラ
その癖ビッチながらも美人侍らせてやがんぜ
>>769 キュルケはビッチじゃねぇ!あまりにも情熱的でアバンチ(ryだけなんだよ!
「真のビッチもとい悪」はアンアンである。最新刊でもまた・・。
最新刊のアン様はなぁ・・・どうしようもなくビッチだよなぁ・・・
サイトを完全に道具扱いしてる感が・・・
二巻冒頭のルイズ
てめーおれの貞操を盗めると思ったのかッ このビチグソがァ〜〜〜っ!
ヘドぶち吐きなッ!
この こえだめで生まれた平民の使い魔野郎のくせに
おれの貞操を! そのセンズリこいたチンポでぎろうなんてよぉ〜〜っ!!
こいつはメチャゆるさんよなああああ!!
タカさんのいる魅惑の妖精亭があったような記憶が……
姉妹スレだったかな?
最近ツンデレが不足しているので、ついカキ氷を食い過ぎてしまう。
一々ジョジョ立ちする貴族に吹いたwwww
デッドマン分が不足しててつい墓に行っちまったぜ
今までで一番時間かかった作品投下しちゃうよ
うへへへ
「ワルド、単刀直入に聞こう。なぜ、ウェールズを殺した?敗戦は確実な以上、貴様らがその気になれば
殺すのは簡単なはずだ」
ワルドは首をかしげる。
「言ってることがよくわからないな、その気になったからここで殺したんじゃないか」
「ならば言い換えよう、なぜ戦士を戦いで死なせてやらなかった?」
ワムウのかつてない気迫に、ルイズは鳥肌がたつ。
「なにを言っているんだね君は、これは決闘でも訓練でもない。戦争だ。アルビオンの腐りきった王族の
名誉など考えているのかね?『目的のためには手段を選ぶな』、これがレコン・キスタの標語でね、
頭から潰せば崩壊も早いと考えればこんなのは必然さ。もちろん、国王も僕の献上した
とびきり上等なワインを飲んで、そろそろ部屋で遺体になっている彼が見つかる頃だろう。
彼らは死ぬために戦っている。そんなオークのような相手に真っ正面から戦うなど愚の骨頂だ。
むしろ、死ぬと決まった相手を早めに殺し、僕たちの兵を生かす。これが善い事でなくて
なんだというんだね?中立の視点から見てみればわかることさ」
「戦士の名誉と、名誉など考えないものの命、どちらが軽いかは明白だ」
「価値観の相違、というやつかな、もっとも君と合わせるつもりはないしね。が、喜びたまえ、
君は風のスクウェア、ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドとの戦いの中で死ねるのだからね」
ワムウが口の端を歪める。
「俺を殺すだと?笑わせるな、人間が。波紋も使えない、戦士としての誇りもない、そしてこの
風の流法の使い手に風のスクウェア、だと?年季の違いをわからせてやろうか」
「確かに君は強い、強いがしょせんは力だけのオークにすぎないね。そこらの風のスクウェアになら勝てる
かもしれないが、僕は『立ち向かうメイジ』だ。いくら、力があろうとも運命には勝てない。
僕は運命に立ち向かい、過去に立ち向かい、聖地に立ち向かい、全てを乗り越える能力を
ブリミルから授かったのだ!忠告してやる、『遊び』のときと同じに思わない方がいいぞ」
そう言って、ワムウは五体に分身する。
「あれが奴の能力とやらか」
「違うわ、あれは遍在。風の魔法よ。能力とやらがあるなら、たぶん他のはずだと思うわ」
「おでれーた、自由自在に動かせる遍在四体とは滅多にみれねーぜ相棒。おそらくあいつらも同じように
魔法を放ってくる筈だぜ。ただ、おれっちの勘だが、ただの遍在じゃあない気がするぜ」
ワムウはデルフを鞘に押し戻し、スレッジハンマーを構え、ルイズと一緒に柱の影に隠れる。
「そう、集団戦で心強い火や巨大なゴーレムを生み出す土、治療から工作まで行なう水をさしおいて、
風が最強と言われる所以は…確か…」
ワルドと遍在は、風の刃を続けざまに放ってくる。
同時に撃たず、一定の間隔をあけ、途切れないように撃ち、風の弾幕を作る。
何発か隠れている柱に当たり、柱が軋み始める。
「そう、狭い場所での決闘こそ、風のメイジの独壇場。昔は貴族同士の決闘が重視されていたから
風が最強という名誉を受けていたって習ったけれど…」
「なるほど、この狭い室内で二人相手にするにはまさにうってつけというわけか。
だが、惜しいな、ワルド。俺も決闘は得意でな」
ワムウはデルフを左手に持ち、言うが早いか、風の弾幕へ突っ込んでゆく。
スレッジハンマーとデルフを盾にし、遍在の一人に飛び掛かる。
あっというまに一体の遍在のみぞおちにスレッジハンマーの一撃を叩き込み、遍在は床にくずれる。
飛び掛かった勢いで近くの柱に転がり込み、振り返って次の攻撃に備える。
数カ所血が出ているものの、柱の男の治癒力でふさがっていき、ほとんどダメージはない。
「遍在が五体揃っているもっとも有利なときに仕留められんとは、あれだけ豪語した割に聞いてあきれるな、
一人ずつ、詰将棋のようにかたをつけてやろう」
ワルドは三体をワムウの方向に向け、エアハンマーを放ち始める。
鋭さはないが、風の槌であるゆえ、ワムウにたとえダメージがなくともよろめかせることはできる、
とみて呪文を変えてきたのだろうか、同じように三体は交互に呪文を放つが、人数が減った分間隔が開いている。
残りの一体はルイズのいる柱へ向かう。
ワムウは、柱を飛び出し、デルフをルイズに向かう遍在に投げつける。
「久しぶりに使ってもらえると思ったらこんな使い方かあああ相棒うぅーッ!」
飛んできたデルフを遍在は魔法で弾く。
振り向かせ、ルイズに向かうまでの時間を稼ぎ、その間にワムウは風の槌の隙間を突破し、
遍在に飛び掛かり、飛び蹴りを食らわせる。
そうなる、筈だった。
ワムウは誰もいなかったはずの空間、先程遍在を一体倒したはずのあたりから
『ライトニング・クラウド』を背後から受け、倒れ、周りに遮蔽物のないあたりの壁に『エア・ハンマー』で
叩きつけられる。
ルイズも同様に、遍在からエア・ハンマーを食らい、同じ場所に吹っ飛ぶ。
「だから言っただろう、力じゃぼくには勝てないとね」
「貴族派は約束を守らず、先程攻撃を開始しました!」
「国王、崩御ォーーーッ!」
「ウェールズ皇太子様、ワルドの裏切りにかかって戦死いたしました!」
「『イーグル』号、貴族派『テメレイル』号の砲撃を受け、撃破されました!」
正門の手前、アルビオン王党軍は大混乱の最中であった。
守るべきはずの者が乗った『イーグル』号が無残にも撃沈され、泣き崩れる者。
国王及び皇太子が立て続けに亡くなったと聞かされ、自暴自棄に突撃し矢と銃弾と魔法の餌食となる者。
どうすればいいかわからず、オロオロとする者。
友人の死体を抱え、半狂乱になる者。
もし今敵が雪崩込んでくれば、まともに応戦もできず皆殺されるだろう。文字通り、虐殺、殲滅、崩壊だ。
「小隊長は自分の部隊をまとめよ!小隊長が戦死している場合若い番号の分隊長が小隊長を努めよ!
まとめた後は応戦を開始し、各隊長は部隊の生存者数をオールド・パリーに報告した後指揮に移れ!
あと数十分間、正門前の堀の端を死守せよ!」
シャチがそう叫び、彼の正規兵・水兵・メイジ混成部隊が応戦を開始する。
「ギーシュ、間違ってもゴーレムなんか作らないでよ、どうせ一分も持たないんだから精神力は
温存しときなさいよ。代わりにバリケードかなんかでも錬金しなさいよ
「自分の能力くらいわかってるさ、今バリケード作り始めてるから、数十秒待ってくれ」
「野郎ども、突撃してーのはわかるが堪えろよ、ただあそこに一歩でも入った奴は
容赦しねえで一人残らず止めやがれ」
「使えるものは好きに持ってってください、全部5エキューで構いませんよ。
…釣りはいらないって、じゃあアフターサービスです、この地下水ってナイフもおまけしますよ。グッド!」
城中から、部屋中から、船中から、港中から、ダービーが叩き売りしているわけのわからぬ珍武器ですらも、
武器として使えそうな者は片っ端から集め、とりあえず動けそうな奴に手当たり次第配っていく。
正門前はキュルケとタバサを他のメイジや銃兵、射手が援護する。
「シャチさん、できるだけ効果的に足止めのためだけに使って精神力は温存してるけど、
いつまでも持たないわよ!」
「わかってる、わかってるがもう作戦もなにもない、なんとか堪えてくれとしか言えない。すまんな、
こんな指揮官で。代わりに援護する銃兵を増やす、ミスタ・ダービー、銃二十丁、釣りはいりませんので
そこの兵に持たせてください、持った兵はバリケードの内側から彼女らの援護にあたれ!
オールド・パリー、大方の生存者報告は終わりましたので港の方の指揮に移ってください、こちらは
私が受け持ちます。…あと、数十分なんだ…どうか、皆頑張ってくれ…」
ありったけの飛び道具で城の上から、横からも足止めの威嚇をするために攻撃する。
正門上にある部屋の窓から何人かの兵士とともにギーシュが攻撃する。
ドットのためキュルケやタバサほど威力があったり正確な攻撃はしかけられないが、
多少窓枠が壊されても修理ができ、また攻撃はドットであるゆえ精密さはあまりないが、
上から石の礫が落ちてくるため、なかなか派手で威嚇には十分であった。
ギーシュは一息ついて、祈るようにつぶやく。
「もし、ワムウが来れれば…早く終わるかもしれないな」
「さてどうした、ワムウ君。あの程度の電撃じゃ死はおろか、気絶もしてくれないんだろう?
僕は、君を高く評価している。…できれば、ルイズと一緒にレコン・キスタにきてくれれば
頼もしかったんだが、そうはならない以上、念入りに殺させてもらおう」
ワルドの遍在三体が、ルーンを唱え始める。
周りに遮蔽物もなく、ワムウの射程は見切ったのだろう、三体は一斉に雷撃を放とうとする。
「ワムウ、一端逃げるわよ」
「…どこにだ?」
ワムウは舌打ちするが、さすがにあれだけの攻撃を真っ向から受ける気にはならなかったらしい。
「決まってるじゃない」
ルイズは杖を壁に振り、壁に爆発で穴をあける。
「わざわざ相手の得意な場所で戦うことないでしょ、どうやって外に出ようと思ってたけど、
好都合なところにこんなところに飛ばしてもらったからね」
ワムウはルイズを抱え、穴を無理やり広げながら外へ飛び出す。
そのまま身をかがめ、間一髪で雷撃をかわす。
「さすが僕のだったルイズ、機転が利くね。確かに風相手なら室内で戦うのは不利だろうね」
「誰があんたのルイズよ、あんたのものだったときなんて一秒たりともないわ!」
ワルドも同じように魔法で壁に穴をあけ、遍在たちが全員外に出てくる。
すかさず、ワムウが突っ込もうとするが、ルイズが止める。
「気持ちはわかるけど、あいつのいう通り力だけじゃ勝てないわ、あいつの能力を探るのよ…
なんか、変な感じがするのよね」
「おう、俺っちも今までみた遍在とはなんか違う違和感を感じるぜ、なんだろうなあ」
遍在たちは詠唱を終え、魔法を放ってくる。ワムウはルイズを抱え、教会の上に飛び乗る。
「ねえ、ワムウ。遍在が背後から来たとき、なんか気配とか感じなかった?」
「全方位の風の動きを見ている。全員の体は風で動いているようだからな、普通に来たならわかるが、
あれは一瞬で先ほど倒した死体から『出現』したように感じた」
「死体…?そうよ、死体よ!おかしいのはそれよ!遍在は倒したら消えるはず、死体なんて残らないわ!」
「ご名答」
いつのまにか外に出ていた遍在が一人欠け、教会の中から飛び上がってくる。
「この距離ならかわせまいッ!ライトニング・クラウド!」
電撃が杖から放たれ、ルイズたちを襲う。
「相棒!俺であの魔法を防ぎやがれ!」
デルフの体が光る。
剣は雷撃を吸い取り、霧散させた。
「これが俺の本当のハンサムな姿さ!相棒、ちゃちな魔法なら全て吸い取ってやるぜ!」
デルフリンガーは今研がれたかのように、光り輝いていた。
「なるほど、それは便利だ」
ワムウはデルフリンガーをワルドに投げつける。
「そりゃないぜ相棒ぅーッ!」
ワルドの遍在はエア・ハンマーで弾こうとするが、風は吸い取られ遍在に深々と突き刺さる。
下のワルドの遍在が呟く。
「なるほど、ただの剣ではなかったようだな。さて、どうしたものか、面倒だ、降りてこい」
「いいだろう」
ワムウは飛び下りようとする。
「ワムウ、後ろよ!」
なんと、先ほど倒した遍在の背中から他の遍在達が出てくる。
「一斉にでてくるわァーーッ!」
遍在達は雷撃を一斉に放つ。
「ちょっと痛いけど、我慢しなさいよ!私は二回目なんだから!」
ルイズは杖を振り自分たちの目の前で爆発させる。
爆風でワムウたちは吹っ飛び、教会の下にワムウがルイズを抱え、着陸する。
「あれが、あいつの能力ね…」
ルイズが呟く。
「そう、ご名答…僕の能力を、僕と親しい者の間では『TATOO YOO!』と呼んで使っている。
たぶん君たちが察している通り、もちろんこれは魔法ではない。スタンドだ」
ルイズがワムウに耳打ちする。
「ねえワムウ、あの遍在の死体食えないの?」
「難しいな、食っている最中に中から雷撃を食らえば流石の俺でもダウンしかねん。そもそも
中で風が渦巻いてその魔料で動いているようだからな、食えるかどうかもわからん」
「じゃああの喋る剣で吸い取れないの?魔法なら吸い取れるんじゃないの?」
「教会の上の奴に刺さったままだな」
「しょうがないわね、なら一撃必殺よ」
教会の中の遍在の死体に移っていく。
僕の遍在は不思議なことだが、普通の遍在と違い、スタンド能力の影響だろうか、
なぜかやられても本体が魔法を解くまでは死体として残り続ける。
安全な距離から詠唱し、背中のタトゥーから腕だけ出して魔法を放つこともできる。
遍在を一体刺客として差し向け、遍在を倒して油断したところを暗殺する。
広範囲に遍在を散らばらせ、敵を見つけた途端に一カ所に遍在を集中させることもたやすい。
ノーリスクで強行偵察や背後からの攻撃や挟撃も思い通りだ。
派手さは無いが、一瞬で移動できる、というのはどんなことにも利く応用性を持っている。
ある軍人はこう言った。
『私の軍人としての一生の半分は、あの丘の先に敵がいるか悩み続けることであった』
僕は、その悩みを克服したも同然である以上、魔法衛士団の隊長などで燻っているべきではない。
レコン・キスタで戦果をあげて、権力と人脈を手に入れれば、母の死についてなにかわかるかもしれない。
そのためにも、残念なことであるが、僕の婚約者には死んでもらう必要がある。
運命と過去に立ち向かうには、これくらいの覚悟がなくてどうする、ワルド。
遍在を二体教会から出す。本体は中で待機させる。
ついでにひっつかんできた剣がカタカタ言っているが、無視する。
ルイズが、大きなハンマーを両手でぎこちなく構えているが、ワムウが見当たらない。
逃げたということは考えられない。周りは草原、隠れる場所などないし、
逃げるとしたら我々の軍の包囲に突っ込むことになる。もう少し言えば奴の性格からして
ルイズを放って逃げる、というのは考えにくい。ルイズがワムウを連れて行くならともかく。
奴はなにか能力を隠していたのだろうか、透明になる能力、だろうか。
奴は風の流法を使うなどといっていた…確か透明になる魔法を水と風のスクウェアの一部が使った、
という話を聞いたことがある…水水水風、だっただろうか。
水蒸気を体にまとわせ、光を反射させることによってあたかもそこに人がいないように見せかける。
奴はメイジではないようだが、なにかおかしな能力を使う。そもそも人でない以上、先住魔法の
一つや二つ隠していても不思議ではない。ここは遍在を囮にして、様子を見てみるか・・・
ワルドは遍在を一体無防備に出す。
しかし教会の中に戻したもう一体の遍在が詠唱し続け、いつでも遍在の背中から攻撃をできるようにする。
「どうした、来ないのかね?ルイズ、ワムウ」
挑発してみるが、ルイズは杖を向けたまま動かず、ワムウも襲ってこない。
ルイズに魔法を放ってもいいが、正面から放つとなると尋常ではない速さで爆発が襲ってくる。
この距離で先に放てば、良くて相討ち、悪ければ無駄死にだろう。
さすがに遍在をここで意味もなく失うというのは少々辛くなってくる。
ならば、背後から攻め落としてやろう。
教会の上に本体を一体出す。
背後から奇襲するため、詠唱中でフライを使えないのは困る。
多少危険だが、教会の中に本体を放置しておくよりはマシだろう。
あの破壊力で透明なら数体犠牲にしなければ止められない。
教会に入ってきて1/3で自分がやられるってのは御免被りたい。
一発囮の遍在に軽く魔法を放たせ、その隙にフライで背後の木へ飛び移る。
上手くルイズの反撃をかわせたようだ、詠唱をさせる。
ワムウを殺せないのは少々後が怖いが、現在の目的はルイズごと手紙を奪う事だ。
ルイズを後ろから抱え、他の遍在のタトゥーにルイズごと移動すればいい。
おそらく、どこかにワムウが潜んでいるのだろうが、僕にスタンドならば逃げおおせることは容易。
意を決して、背後からルイズに飛び掛かる。
「闘技…『神砂嵐』!」
体がズタズタにされる。至る所の骨が折れる。腕が動かない。杖も振れない。
夥しい量の血が出てくる。足はピクリとも動かない。肩の筋が裂ける。
ワムウはルイズのすぐ近くに潜んでいた。
近くというか、目を疑った。ワムウは、ルイズの『中』に潜んでいた。
まだ生きているのは幸運だろうか、ワムウの剣が盾となったのか。
あれだけの威力の攻撃を受けたというのに、傷一つついていない。
ルイズとワムウが迫ってくる。
精神力を振り絞って、スタンドを発動させ、移動する。
ルイズは、ワムウを体の中に潜ませていた。
ワムウが吸血馬の中に潜んでいたように、モットの屋敷で衛士に潜んでいたように、
ルイズの体にワムウを潜ませていた。
「血が出るってことは、いきなり当たりみたいね」
ルイズ達は、ボロ雑巾のようになったワルドの本体に近づいていく。
後ろから雷撃が飛んでくるが、距離がありすぎた。苦もなくかわす。
視界をワルドに戻すと、ワルドは消えていた。
グリフォンが教会に突っ込み、ワルドの遍在が本体を抱え、逃げ出していく。
「どうやら、逃げられたみたいね」
「飛ばれてはどうにもならん、口惜しいが逃がすしかないな。だが、かなり強い者であった。
精神は戦士とはほど遠いが、雪辱戦で向かってくるときが待ち遠しいな」
「雷撃食らってフラフラになってるってのに、あんたらしいわね。足が痺れて『神砂嵐』が
放てない、っていうから体貸してあげたくらいなのに」
「まあいい、だいたい治った。とにかく正門に急ぐぞ」
「待って」
ルイズがウェールズの骸の横に座り込む。
ワムウも覗き込むと、ワムウの持っている指輪と虹を作る。
「…姫さまのために、持っていかせてもらいましょう」
ルイズは指輪を綺麗な指から引き抜き、手紙と一緒にしまいこんだ。
ギーシュは精神力が尽き、見よう見まねで倒れた味方の銃を撃っていた。
「やれやれ、まさか貴族だってのに銃を撃ち続ける羽目になるとはね」
正門の兵士も武器が尽き始め、もう敵は目前に迫っていた。
タバサとキュルケももうドットクラスの魔法すら散発的にしか撃てない。
ダービーはもうタダ同然で武器を売りさばいている。
「やれやれ、遅いぞワムウ君」
ギーシュが汗だくになりながら声をかける。
「シャチさんは?」
「けっこう前にパリーさんと一緒に港に行ったわ、なにやるのかしら」
「どうやって脱出するのよ」
「そこはもう考えてないわよ、シルフィードが飛び立てるようなそこの庭にでてったら
数十秒で蜂の巣ね、泥船だとわかってて乗り掛かったんだから諦めなさい」
死守するよう言われた橋に敵が一斉に雪崩込んでくる。
「橋は落とさないのか」
「私たちに言わないでよ、落とすのは待ってくれって言ってたし」
キュルケも首をかしげながら言う。
そのとき、ルイズが気づいた。
「ねえ、あの船、私たちが乗ってきた貨物船よね?」
斜め上を見ると、貨物船が進んでいる。
パリーとシャチも乗っている。
貴族派も気づいたのか、上空に向けて攻撃をし始め、貨物船が火を噴き始める。
「確か、硫黄を積んだままだったわよね、まさか…」
ルイズが感づく。
貨物船は火を噴きつつも、落下の勢いと出力を全開にし、どんどん加速していく。
「アルビオン王家の誇りよ、精神よ!永遠なれ!」
敵が雪崩込んできた橋に火の秘薬を積み込んだ貨物船が突っ込み、橋と貴族派の兵士が音を立てて
崩れ落ちていく。轟音をたてて貨物船は爆発した。
「シャチさん…」
ルイズが漏らす。
タバサが口笛を鳴らす。
「申し訳ないけど時間がない、脱出する」
シルフィードが城の中から這い出すように飛び、中庭に着陸する。
ルイズ、キュルケ、タバサ、ギーシュ、ダービーが乗り込むが、ワムウは乗り込まない。
ルイズはいいたい事を察する。
「ワムウ、これはアルビオン王家の戦いなの。それに私たち客人が水をさし続けるわけには
いかないのよ、命を賭けて脱出の時間を作ってくれた彼らの意志を無駄にする気?」
ワムウは、銃を構えた貴族派の兵士に石をぶつけ、シルフィードに乗り込む。
一行は、ニューカッスル城を脱出した。
To Be Continued...
投下終了ー
もうこんなに書き直すのは嫌です
ワムウの人、乙&GJです
GJっす!
あのスタンドが来てあそこまで強力になるとは思わなかったなぁ…
GJ!
メンバーを補充できるTATOO YOU!は反則に近いなあ
乙そしてGJです
ルイズからワムウが生えてるの想像したら
何か噴いてしまった
何つーかダービーが馴染んでるなw
この先もちょくちょく出てきたら個人的には嬉しいが
ダービー馴染むのはいいが何売ってる
地下水が普通に投げ売りされて吹いた
>>788 やっぱ綴りはそれでいいんだよな?
文中には「TATOO YOO!」になってたからさ
敢えてこう言おう、GOOD!
さすがワムウなんだってやってくれるぜ
ところでダービー兄まさかあのゼロ魔世界だとチート級威力の銃売ったのかwてか地下水www
あれ?この人は確かダービー兄本人じゃなくて
ダービー兄と同じ能力を持つだけの別人だと
前に見た気がするんだが……
みんながダービー兄言うからわかんなくなってきた……
795 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/27(木) 21:55:35 ID:ZbWoNN3Q
愚者
兄貴
DIO
仮面
ファイト
サブ・ゼロ
さん・・・・・・続き待ってます。
が
ん
ば
つ
て
く
だ
さ
い
>>794 きっと彼はオービー君なんだよ
別にバービーでもいいけど
797 :
ゼロいぬっ!:2007/12/27(木) 22:41:17 ID:YO139dNu
名前が無かったんですけど、50分から投下して構いませんねッ!?
こいッ!!
もうダービーあのままレギュラーになっちまえよ
>>795は腹を切ってゼロいぬさんに詫びるべき支援
801 :
ゼロいぬっ!:2007/12/27(木) 22:50:44 ID:YO139dNu
『ロイヤル・ソヴリン』号はアルビオン空軍の技術の粋を尽くした名艦だ。
巨体とそれに搭載した火砲の威力を誇るだけの船ではない。
並の砲撃では揺るぎさえしない強度と、船体に見合わぬ最高速度さえも併せ持つ。
恐らくはあと十年経とうとも、この最高傑作を超える船は建造されないだろう。
しかし、その『ロイヤル・ソヴリン』号とて不沈艦ではない。
その巨体ゆえに、唯一旋回性だけは克服し切れなかったのだ。
そして急所とも呼ぶべきその横腹に向けて『イーグル』号は特攻した。
『ロイヤル・ソヴリン』号に劣るも『イーグル』号とて優秀な軍艦だ。
火力では足元に及ばないが、機動力ならば他の艦も圧倒できる。
確かに砲撃では破壊できないだろう。
だが、密接した状態で満載した火の秘薬を爆裂させればどうか?
『ロイヤル・ソヴリン』号の火薬庫に誘爆すれば即座に轟沈。
そうならなくとも充分過ぎるほどの損害を与えられるだろう。
肉食獣が獲物の脇腹に牙を突き立てるように、
船首が『ロイヤル・ソヴリン』号へと近付いていく。
瞬間。彼等の行く手を風竜に跨った一騎の竜騎士が遮った。
その男の顔を見た直後、副長の全身を激流にも似た熱い血が巡る。
忘れられようも無い。かつての主、そして今の主の命を奪った怨敵の顔を…。
今すぐにでも斬り殺したい衝動を堪え、副長は告げた。
内に秘めた憎悪は、それでも声色に滲み出る。
「一足遅かったな…もう貴様であろうと止められはせんぞ」
「いや、止めはしないさ。死にたいのなら好きにすればいい」
しかし、それさえもワルドは軽く受け流す。
高々と掲げられた彼の杖に迸る雷。
網膜を焼かんばかりの閃光に副長の背筋に悪寒が走った。
『ライトニング・クラウド』…!
風系統の中でも凶悪な殺傷力を誇る魔法。
だが満身創痍とはいえ軍艦である『イーグル』号を一撃で沈める事は出来ない。
そんな事はワルド自身が一番理解している筈だ。
それなのに彼の顔には一切の揺らぎが感じ取れなかった。
「…ただし、死ぬのはお前達だけだ。
敗者の道連れなどにされてたまるものかよ」
雷鳴が轟くと同時に、稲妻が船体を貫いた。
艦を揺さぶる衝撃も無く、一筋の雷光が瞬く。
突風が通り過ぎた後にも似た刹那の静寂。
それを打ち破ったのは『イーグル号』を引き裂く光と熱の奔流だった。
船内から吹き上がった炎が舐め尽くすかの如く『イーグル』号を飲み込んでいく。
爆風を避けて生き延びた者も生きながら焼かれ朽ち果てる。
船体の中央を吹き飛ばされ、二つに分かたれた船首と船尾がのたうつ様に浮き上がる。
802 :
ゼロいぬっ!:2007/12/27(木) 22:52:25 ID:YO139dNu
何が起きたのか、瞬時に副長は理解した。
艦に積み込んだ大量の火の秘薬、それが落雷で引火したのだろう。
だが、船内を見通すかのように的確に狙い打てるものなのか。
困惑する副長を見下ろしながらワルドは呆れるように呟いた。
「城内に入るまで僕が何もしなかったとでも思ってたか?」
「ワルド…!」
何かを口にしようとした瞬間、副長の背後より炎が上がった。
それは振り向く間さえ与えずに一瞬にして彼を包み込んだ。
ゆらゆらと揺れる陽炎の向こう側に僅かに映る蠢く人影。
何もかも焼き尽くす炎を眺めるワルドに罪悪感など微塵も無かった。
時折響く絶叫さえも何も感じさせてはくれない。
ルイズを傷付けてしまった罪苦に比べれば見える物全てが無価値に思えてくる。
いや、元より価値など無かった。
そこに価値を見出そうと人は足掻いているに過ぎない。
だけど母上を失ってから僕の世界は刻一刻と色彩を失っていった。
しかし彼女ならそれさえも変えられる。
虚無の力ならば、この下らない世界を塗り替えられるのだ。
僕達は始祖の時代へと大いなる回帰を果たす。
ルイズの進むべき道には栄光の光が差している。
後は、彼女の手を引いて歩み出すだけなのだ。
今は安っぽい使命感や使い魔との親愛の情に揺れているが、
彼女だって自分の力の価値にいずれは気付く。
共に歩むと言ってさえくれれば、それを教える事が出来るというのに…。
「ご苦労様です。それでこそ貴方に竜騎士隊を任せた甲斐があったというもの」
見下ろした『レキシントン』号の甲板の上にはシェフィールドの姿があった。
目の前であれほどの惨事があったにも関わらず平然と立ち尽くす。
至近ではないにしても、あれだけの炎と爆風が襲ったのだ。
並の船なら間違いなく轟沈、たとえ軍艦だろうと損傷は免れない。
なのに、船体に傷どころか彼女の髪にさえも焦げ跡一つ付いてはいない。
「何を驚かれているのですか?
他の艦とは比べ物にならない数のメイジが、
この『レキシントン』に乗り込んでいる事をお忘れですか?」
「…なるほど。そういう事か」
風系統のメイジならば旋風の守りで矢や弾丸程度なら軌道を曲げられる。
それが集団ともなれば砲弾さえも食い止める事は可能だろう。
ならば『レキシントン』にいる全メイジが結集すれば爆風を遮るなど造作も無い。
「ちょうど良い。貴方に作戦の変更を伝えます」
「変更? その心配はない。もうすぐルイズの乗った船を止められる。
艦隊が間に合わなくとも作戦はこのまま続行可能だ」
相手は風竜一騎のみ。
交易船の火力など高が知れている。
ルイズが倒れた今、虚無の魔法を使われる恐れも無い。
濃霧の中では発揮されなかったが、歴戦の竜騎士隊の実力を以ってすれば容易い。
しかし満面に自信を浮かべるワルドに対し、
シェフィールドは明らかに悲観的な反応しか示さない。
これがただの指揮官ならばワルドもただ不安がっているだけだと思っただろう。
しかし彼女の智謀は自分を遥かに凌駕した位置にある。
反論を喉の奥に押し込み彼女の言葉に耳を傾ける。
803 :
ゼロいぬっ!:2007/12/27(木) 22:53:56 ID:YO139dNu
「貴方には今からガンダールヴの所に行ってもらいます」
「…! 地上部隊を率いて奴と戦えと言うのか?」
「いえ、交戦中の制圧部隊は総崩れ、壊走を始めたそうです。
誰が行こうとも、もう立て直す事は出来ないでしょう」
「連中の代わりに足止めをしろとでも?」
「まさか。その余力が残っていない事は貴方が一番ご存知でしょう?」
自嘲気味に笑うワルドに、シェフィールドも笑みで返す。
どこか嘲笑の入り混じった表情に彼は不快感を露にする。
それも、目の前の疑問の前では取るに足りない事だった。
では何故、今更あの怪物の待つ城門に向かわなければならないのか。
その疑問を口にする前に、シェフィールドが解答を告げた。
「間違いなく彼女はそこに来ます、彼を迎えに」
「………!!?」
「これが最後の機会ですワルド子爵。
彼女を説得して我々『レコンキスタ』に引き込んでください。
それが出来ない場合、彼女にはもう一度壊れて貰う事になりますわ。
今度は決して元に戻せないようにしてね」
ワルドの視界が大きく歪む。
聞かされたそれは命令ではなく脅迫だった。
ルイズに薬を飲ませた時の後悔を彼は決して忘れない。
それを繰り返す恐怖はどれほどの物だろうか。
罪の悔恨に今度は自分が壊れてしまうかもしれない。
否。そうなると決まった訳じゃない。
今度こそルイズを連れ戻せばいい。
そうすれば全ては誤解だったと分かって貰える。
今ならまだ取り返しが付くのだ…!
支援!
805 :
ゼロいぬっ!:2007/12/27(木) 22:55:37 ID:YO139dNu
「ハッ…!」
ワルドが騎竜を駆って空を舞う。
決意に満ちたその雄姿を見上げながら彼女は呟いた。
「我が主、全ては順調です。
これで虚無の少女が手に入るなら良し。
そうならなくとも…」
彼女達はワルドを高く評価している。
それこそ“バオー”に勝るとも劣らぬ程に。
腹心として抱えるには危険すぎる大きな野心。
そしてひたすらに力を渇望する貪欲さ。
更には自分達と同様、彼も世界を激しく憎悪している。
その心中に潜む魔獣こそワルドの本質。
それでも彼女の主には遥かに及ばない。
全てが狂気で満たされた主に対して、
彼の心には僅かな聖域が残されているからだ。
それがミス・ヴァリエールへの想い。
最後まで守り通した唯一の人間の部分。
彼女の目的は、それを完膚なきまでに破壊する事だった。
傭兵達を使った挑発で“バオー”を本来の姿にした様に、
ワルドには彼女の目の前で裏切らせ、心を壊す薬さえも使わせた。
そして殺しこそしなかったが、遂にワルドは自身の手で彼女を傷付けた。
あと一押し。それでワルドは完全に生まれ変わる。
本当の意味で“我々の同志”となるのだ…!
口元が吊り上がった酷薄な笑み。
ワルドを見上げる視線にはどこか憐憫を漂わせていた。
806 :
ゼロいぬっ!:2007/12/27(木) 22:56:56 ID:YO139dNu
船体各部から吹き上がる黒煙。
かろうじてタバサが延焼こそ防いでるものの、
次々と上がる火の手を消して回る事は叶わない。
消火の指示を飛ばしながらアニエスは数門の大砲で反撃する。
弾が尽きた砲には釘を詰め込んで撃たせた。
足を引き摺りながらも懸命に戦う姿に避難民でさえも勇気付けられた。
しかし、それも恐怖に抗う為に自分を奮い立たせているに過ぎない。
水系統のメイジも居らず積載した水も尽きた今、手作業で消火するには限界があった。
窮地に立たされているのは『マリー・ガラント』号だけではない。
四方八方から仕掛けてくる竜騎士隊の急襲は、
彼女達の抵抗を嘲笑うかのように精妙で狡猾だった。
前方から迫ってきたと思えば反転し、
別の竜騎士が真横からシルフィードに襲い掛かる。
背後を取ったと思えば、追撃する彼女達を複数の竜騎士が襲撃する。
それは空戦を初めて体験する彼女達にとって手痛い洗礼だった。
キュルケの肩は弾むように上下し、詠唱する合間にも荒い呼吸が漏れる。
燃え盛る炎とて永遠に続く訳ではない。
一時的な感情の爆発で力を引き上げたとしても、彼女の精神力はトライアングルの域を出る事は無かった。
ペース配分も考えずに全力で飛ばし続けた代償が重く圧し掛かる。
心配そうに見つめるタバサに彼女は黙って首を振る。
シルフィードを降りる訳にはいかない。
今戦えるのは私とタバサだけ。
彼女一人に全てを任せて舞台を降りれる筈が無い。
「こんな事になるんだったらフレイムも連れて来るんだったわ…」
シルフィードの負担にならないように学園で留守番させた自分の使い魔の事を思い浮かべる。
私が戻るまで、きっと彼は一人でずっと待ち続けるだろう。
なら何としてでも戻らなくちゃ…!
私の友達も、彼の友達も連れて皆で一緒にあの学園へと帰る。
だから…!
だから……!!
「邪魔するなって言ってるでしょうが!!」
杖の先から放たれた火球が火竜を爆発四散させる。
例え火勢が衰えようとも、彼女の内で燃える炎はまだ輝きを放ち続けていた。
『マリー・ガラント』号の舵を握る船長の汗ばんだ手が震える。
出航してから延々と続けられる襲撃に彼の精神は限界を迎えた。
この船に待っている運命は撃沈のみ。
ならば、せめて無関係な船員だけでも助けようと彼は思った。
降伏して避難民を引き渡せば少なくとも自分達だけは助かる。
それに、捕まった方がまだアルビオンの避難民だって助かる可能性はある。
自己弁護を繰り返しながら彼は恐怖心に負けて舵を切る。
だが、その手は喉元に突き付けられた刃に止められた。
何が起こったのか判らず、振り返ろうとする船長の耳に声が響く。
「止めときな。安物だが人間に首掻っ切るぐらい出来らあ」
そこにいたのは剣を抜いた武器屋の親父。
覗き込んだ彼の目が脅しではない事を明言していた。
何故、このような暴挙に出るのか理解出来ず船長は硬直した。
その彼に親父は諭すのにも雰囲気で語り掛ける。
807 :
ゼロいぬっ!:2007/12/27(木) 22:58:18 ID:YO139dNu
「人を殺す武器を売ってる俺が言うのもなんだがな、
人の命を取引しちゃあいけねえ、それは商人の範疇を超えちまってる」
「しかし…このままでは遅かれ早かれ…」
「だけどまだ生きてるだろ。嬢ちゃん達も姐さんも諦めちゃいねえ。
ここにいる連中だって全員そうさ」
親父が親指で背後の乗客達を指差す。
まだ幼さを残す少年が船室に開けられた穴に板を打ち込む。
誰のか分からぬ子供達を老婆が怯えぬように優しく抱き締める。
燃え移ろうとする火を身を挺して消そうとする船員達。
誰もが生き残ろうと必死に抗っていた。
「あいつらの可能性を摘み取っちゃいけねえ。
もしかしたら奇跡だって起きるかも知れねえのによ」
船長の呼吸に嗚咽が入り交じる。
思えば今この船に乗るアルビオンの避難民にとって、
火の秘薬を売り捌いた自分達は親族や友人達の仇かもしれないのだ。
それなのに責める事さえせず自らの運命を託した。
ウェールズ陛下がくれた最後の贖罪の機会。
自分はその意味を理解せずに放棄しようとしていた。
舵を握る手に力が篭る。
ただ一度、夜が明けるまででいい。
あうかどうかも分からぬ勇気を振り絞り恐怖に立ち向かう。
そうしなければ二度と自分の心に陽は差し込まない。
未来永劫、罪に苛まれて生きるだろう。
それを打ち払う為に、彼は勇気と共に踏み切った。
「…さてと」
剣を鞘に収め、親父が辺りを見回す。
怪我人と子供や老人、それと船を動かすのに必要な船員達。
どう考えても戦える人間は自分以外にいない。
渡そうと思っていた小銃を背負って彼は船室を出て甲板へと向かう。
火薬も弾もないがアニエスならば持っているだろう。
ああ言った手前、自分だけ蚊帳の外にいる訳にはいかなくなった。
(こういうのは俺のキャラじゃねえんだけどなあ…)
心の中で愚痴を零しながら甲板へと駆け上がる。
開けたそこには見渡す限りの星空がある筈だった。
しかし、彼の目の前に広がるのは赤一色。
視界に立ち塞がったのは防衛線を突破した火竜の巨体だった。
火竜の喉下で燻る炎の吐息。
それを見て親父は自分の終焉を確信した。
やっぱりこういう事をやって上手くいくのは物語の英雄だけと相場は決まっている。
それを身の程を弁えずに飛び出すと三下はこういう目に合うのだ。
世間の世知辛さを痛感しながら目前の死を刮目する。
808 :
ゼロいぬっ!:2007/12/27(木) 22:59:12 ID:YO139dNu
刹那。火竜の喉元には深々突き刺さる剣があった。
体勢を崩した巨体が自身の炎に巻かれながら地上へと落下していく。
何が起きたのか分からぬ親父の耳に再び竜の羽ばたきが響く。
再度襲来してきたと思い頭を低くして蹲る親父に親しげな声が掛けられた。
「悪いな親父! どうやら返品し損ねたみたいだ!」
視線を向ければ、隠し港で若い騎士がそこにいた。
雄々しき火竜に跨り、背後には竜騎士達が付き従う。
『マリー・ガラント』号の真上で旋回する彼等を目撃した貴族派の竜騎士達の動きが止まる。
突然の増援に面を食らった事もあるだろう。
だが、彼等の手を止めたのは驚愕ではなく恐怖だった。
まるで淀みなく連携する竜騎士の技量。
そして、その騎竜に掲げられた紋章。
それはアルビオン王国全ての人間にとって畏怖と敬意の象徴。
「明日を生きる同胞達の為!
トリステインの友人達の恩義に報いる為!
亡きウェールズ陛下の命によりアルビオン王直属竜騎士隊が貴艦の護衛に当たる!」
809 :
ゼロいぬっ!:2007/12/27(木) 23:00:24 ID:YO139dNu
以上、投下したッ!
GJッ!親父かっけぇえ!!
GJッ!やべえ武器屋の親父がかっこいい!
これはまさか親父×アニエスフラ……何か犬が鳴いてるな
ちょっと見てくるか
乙!
イーグル号民間人ごと落としちゃった俺としては武器やさんの言葉が身に沁みるぜ
10CH見てて荒木弘彦の名前でて吹いたw
GJ!
親父かっけーよ親父ィ―――ッ!
ちょっと聞いてくれ。
逆行にはまり満喫でリプレイJというのを読んできたんだがジョジョが出張していたんだ。
何を言っt(ry
今日初めて魔少年ビューティーを読んだ俺は
ポルポルの「しかるべき報いを与えてやる!」の元ネタが魔少年だったことを知ったぜ
あとワムウの原型とも言えるキャラがバオーにいたことも今日初めて知った
少年よ、ある種の事柄は死よりも恐ろしいry
殺らいでかバオー!のウォーケンさんが召喚されそうで怖い
そんなことをしたらギーシュが塵と化してしまいます
バイオレンスジャックに見えるのは俺だけじゃないはず
武器屋のオヤジがキャラなりしてて噴いた。そして最高に燃える引き。GJ!
魚拳さんが召喚されたらデルフがヒートソードになるな
あと水の精霊涙目
振動を魔法と捉えて吸収されたりしそう
まて、もう500に近いが次スレは?
ちなみに俺は立てられん
>>1で480KBを超えたらとなっているからまだ大丈夫だが
油断も出来ない微妙なところだな
多分大丈夫だと思うので、投下します。
826 :
仮面のルイズ:2007/12/28(金) 20:31:51 ID:zBhsvF1W
『魅惑の妖精亭』でルイズ達が働き始めてから数日が過ぎた。
ルイズは酒場で聞いた話などを記憶し、それを書き留めて伝書フクロウで毎晩王宮に送っている。
女王となったアンリエッタの評判が、ウェールズが構えた亡命政権、神聖アルビオン帝国から疎開した人の話、レジスタンスの噂…
他にも、アルビオン帝国はガリアからの援助を受けているとかの、胡散臭いうわさ話も含まれているが、とにかくルイズはうわさ話をアンリエッタに送り続けていた。
王宮を出る前に、アンリエッタに頼まれたことが一つある、それは『民の正直な言葉を聞きたい』というもの。
アンリエッタが国民にどう思われているのか知ろうとしても、王宮の貴族達は良い評判ばかりをアンリエッタに伝える。
まるで、アンリエッタを非難する国民は存在しないと言わんばかりに、アンリエッタを賛嘆する。
だが、それがアンリエッタの不安を煽っていた。
タルブ村での戦いで、アンリエッタはウェールズと共に巨大な魔法を用いて、アルビオン軍を撃退した。
しかし、ルイズがいなければ皆死んでいたかもしれないのだ。
アンリエッタとウェールズだけの戦果ではないのに、女王となったアンリエッタに謁見する者は、兵士達の功績などをみじんも気にかけず、二人のヘクサゴン・スペルばかりを褒めちぎる。
最初は褒められて浮かれていたアンリエッタだが、ウェールズの一言が認識を変えさせた。
『彼の声は誰の声なのだろうね』
その一言が、アンリエッタを深く悩ませた。
自分を取り巻く貴族達のおべっかを信じ込んでいられれば、きっと幸せに違いない。
だがいずれ裏切り者を見落とし、気づいたときには滅びしか残されていないかもしれない。
だからこそアンリエッタは、ルイズに『民の意見を直接聞いてみたい』と告げたのだ。
ルイズは、余計な気遣いをせず、くだらない話も、建設的な意見も、何もかもをアンリエッタに伝えようと決意した。
ある日の晩、伝書フクロウが珍しく返事の手紙を携えていた。
ルイズが中を見ると、そこにはロングビルがアニエスに保護されてトリスタニアに引き返していると書かれており、ルイズを安堵させてくれた。
もしかしたら、魅惑の妖精亭に立ち寄るだろうか?
そのときはロングビルをからかってやろうと思いつつ、床についた。
827 :
仮面のルイズ:2007/12/28(金) 20:32:32 ID:zBhsvF1W
翌日、ルイズは『魅惑の妖精亭』の一室で、ジェシカに化粧を教わっていた。
虚無の曜日を翌日に控え、今夜は一週間で一番忙しい日になる。
「ほら、目元はこうするのよ」
「え?」
「え?じゃないわよ、ちゃんと見てた?ほら。こうやるの」
ルイズが鏡の前に座り、ジェシカが化粧用の筆でアイラインを整える。
「ああ、うん。ありがとう。これって濃い目だから調節が難しいわ」
「ロイズちゃんは元が整ってるから、あっさりとした素朴なメイクが良いわよ、素材の味を生かすってね」
ジェシカの指導を受けながら化粧をしてみると、骨格をいじるのとはまた別の意味で、新しい自分になれる気がする。
魔法学院の舞踏会の時に使ったルージュよりずっと安っぽい、平民の化粧品。
だが、ルイズにとっては何もかもが新鮮だった。
「ジェシカ、こんな感じでどう?」
「綺麗じゃない!それならもっとチップ貰えるわよ」
化粧をしたルイズを見て、ジェシカがルイズの手を引いた。
椅子から立たせると、準備しておいたトレーを渡す。
「ロイズも、今日はもっとチップ貰えるといいわね」
「ありがとう。じゃあ早速行ってくるわね」
給仕口から出ようとしたルイズが、ワルドの視線に気付く。
ルイズはワルドにウインクをして、笑顔で店に出ようとしたが…
一歩足を踏み出したところでUターン。
そのまま物陰に張り付き、焦ったような目つきで店内をのぞき込む。
それを訝しんだワルドがルイズに声をかけようとしたが、ルイズは指を口の前に立てて「静かに」とジェスチャーをする。
ワルドの目つきが変わった。
ルイズがこんな焦る姿など見たことがない。
もしやリッシュモンが城下町を視察し、魅惑の妖精亭に目を付けたのか?
ワルドはルイズに近寄り、耳元で呟く。
「何かあったのか?」
「………同級生がいるわ」
「なに?」
「魔法学院の…」
「……なあ、ル…ロイズ」
「何よ」
「今、君は”ロイズ”なんだ。姿形も身長も違う、そう簡単に気づかれるはずはないじゃないか」
「駄目よ、ワルド、あそこに居るのは”風上のマリコルヌ”と”青銅のギーシュ”よ。ギーシュはともかくマリコルヌは危険だわ」
「どうしてだい」
「アイツは、魔法学院の宝物庫より強固な、女子浴場の覗きに成功したと言われてる男よ。オールド・オスマン対策がされた浴場のトラップを超えたのは魔法学院創立以来彼しか居ないと言われているわ」(※噂です)
「あれは僕でも無理だったのに」
「なんですって?」
「いや、何でもない」
「まあいいわ、後でみっちり問いつめるから。…どうしましょ、あの二人が帰るまで店に出ない方が良さそうよね」
「そうかもしれないが…」
一方、ジェシカは、ルイズとワルドの様子を店内から見ていた。
「何やってるのかなー、あの二人」
物陰でこそこそしている二人を見て、頭に?マークを浮かべたジェシカだが、気にしてても仕方がないので接客を再開することにした。
軽く店内を見渡すと、奥の席に座った二人組が、女の子を見ては鼻の下を伸ばしている。
その二人はマントも着けていないし、杖も見あたらない。
だが身なりの良さが貴族であることを示していた。
この店にくる貴族と言えば、ガラの悪い貴族か、世間知らずの坊ちゃんに分けられる。
後者であることを祈りつつ、ジェシカは二人のテーブルに足を向けた。
828 :
仮面のルイズ:2007/12/28(金) 20:33:38 ID:zBhsvF1W
事は数時間前にさかのぼる。
アルビオンとの戦争を控えたトリステインでは、軍備の増強計画が図られていた。
ギーシュは王宮で働く父と兄に呼び出され、魔法学院を休学して軍隊の訓練を受けろと言われた。
そんな時、偶然にもマリコルヌが、グラモン元帥の下に顔見せに来たのだ。
マリコルヌの父は、息子可愛さのため、マリコルヌを補給部隊に回して欲しいと考えて挨拶に来たのだ。
親の思惑はともかく、偶然にも王宮で再開したギーシュとマリコルヌは、親同士の話が終わった後城下町に繰り出すことにした。
「ふう…」
「どうしたんだ、マリコルヌ、君らしくもない。ため息ばかり出してどうしたんだ」
「うん、ちょっと悩み事がね」
「悩み事?」
「ああ……はあ〜……」
秘薬屋の近くを通りかかった時、マリコルヌは長いため息をついて、辺りを見回した。
気のせいか目が少しうるんでいる、が、どこか寂しそうな目つきでもあった。
「まさかマリコルヌ、ここで偶然見かけた女性に一目惚れしたとか?」
からかうような口調で、ギーシュが呟くと、マリコルヌは顔を俯かせて小声で応えた。
「そうなんだ」
「なんだそうか…って、何!?君が一目惚れだって!」
「ちょっとギーシュ!声が大きいいって!恥ずかしいじゃないか!」
「あ、ああ、すまない。でも君が一目惚れとは考えられないねえ。それはどんな人なんだい」
「シエスタって居るだろう?彼女と同じ黒い髪の子でさ、笑顔が素敵なんだ」
「ま、待て待て、それはつまり、君は平民に恋をしたって事か」
「……」
「君が覚悟しているなら僕は何も言わないが……恋愛の先輩として忠告しておこう。平民で遊ぶのは止めた方がいい」
「女の子二人の純情をもてあそぶ、二股のギーシュがそれを言うのか?」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!僕はそんな二つ名じゃないぞ、青銅だ!せ・い・ど・う・のギーシュだ!」
「解ったよ落ち付けって。僕だって解っているさ…でもあの笑顔に僕はやられたんだ」
「そうか。まあクヨクヨしていても仕方がない、とりあえず今日はもう魔法学院に戻ろうじゃないか」
マリコルヌの肩に手を置き、ギーシュは『やれやれ』と言いたげに首を横に振った。
「その前に、仕立て屋でシャツ買っていきたいんだ」
「わかったよ、それにしてもマリコルヌが恋愛とはね。仕立て屋で上等なハンケチでも買って、プレゼントしてあげたらどうかね」
「プレゼントしようにも、その娘がどこにいるか解らなきゃしょうがないじゃないか」
「それもそうか。ところで、黒髪って言うのはあんな感じかい?」
マリコルヌは、ギーシュが指を指した方向を見て、絶句した。
「!!!」
「マリコルヌ?どうした?」
「あの娘だ…!」
マリコルヌは無言で、人の影に隠れつつ、ギーシュが指さした女性を尾行し始めた。
ギーシュはマリコルヌの様子に呆れたが、仕方ないなと呟いて、マリコルヌの後を追いかけた。
尾行を続けた二人は、その女性が『魅惑の妖精亭』に入っていくのを確認した。
扉から店内をのぞき込むと、ボディラインが丸見えなビスチェを着けて、女の子がチップを貰っているのが見える。
「いいいいけないよマリコルヌ、こんな店に入ったとバレたらモンモランシーに殺されてしまうよ」
「何を言ってるんだ、ギーシュはもう帰ればいいじゃないか」
「いや、僕は友人として君を見守る義務がある!」
二人は、マントを折りたたんで服の中に隠し、『魅惑の妖精亭』に入っていった。
支援
830 :
仮面のルイズ:2007/12/28(金) 20:34:36 ID:zBhsvF1W
「お客様、ご注文はおきまりですか?」
ジェシカが前屈みの姿勢で、豊満な胸の谷間を見せつけつつ二人に注文を聞く。
「そそそそうだな、とりあえずワインを貰おうかな」
ギーシュの視線は、ジェシカの胸に釘付けになっている。
「ぼぼぼぼ僕はこの料理を貰おうかな」
マリコルヌも、ジェシカの胸と顔を交互に見て、顔を赤らめつつ注文をした。
ジェシカは二人から注文を受けると、にこりと微笑んで華麗にターンして、厨房へと注文を伝えた。
「なあ、マリコルヌ、凄い店だな」
「ギーシュ、君でもそう思うか」
「女性はもっとおしとやかであるべきだ。この店は下品だよ」
「ギーシュ!言葉は嘘をつけるが、顔は嘘をつけないよ、君の鼻の下は地面に落ちんばかりに伸びているじゃないか」
「い、いや、これはだね。女性を喜ばせる薔薇としてだね!ああああ」
そんな風にギーシュとマリコルヌが店の雰囲気を堪能していると、羽扉が開き、新たな客の一群が現れた。
中年の男性貴族を先頭に、軍人らしき風体の貴族や、お供の下級貴族がわらわらと店に入ってきた。
マリコルヌは、先頭に入ってきた貴族に見覚えがあった。
でっぷりと肥え太った体型に、薄くなった髪、記憶に間違いがなければ税務官の一人『チュレンヌ』だ。
その貴族達が入ってくると店内は静まり返る。
そこに、スカロンがもみ手するような勢いで貴族達に声をかけた。
「これはこれは、チュレンヌさま。ようこそ『魅惑の妖精亭』へ」
チュレンヌと呼ばれた貴族は、ナマズのような口ひげを指でいじると、ふんと後ろにのけぞった。
「ふむ。おっほん! 店は流行っているようだな?」
「いえいえ、とんでもない! 今日はたまたまと申すものですはい。いつもは閑古鳥が鳴くばかりでございまして…。」
チュレンヌは、スカロンを蔑むような目で一瞥し、店内を見渡した。
「なに、今日は仕事ではない。客で参ったのだ。そのような言い訳などせんでもいい」
「お言葉ではございますが、チュレンヌさま、本日は満席となっておりまして……」
「わたしにはそのようには見えないが?」
チュレンヌがそう呟くと、取り巻きの貴族が杖を引き抜き、店内にいる全員に見えるようそれを掲げた。
貴族が杖を抜くということは、命の危険があってもおかしくはない。
杖におびえた客たちは酔いがさめ、一目散に入り口から消えていった。
何が起こっているのか解らないマリコルヌやギーシュはそのままだが、店は一気にがらんとしてしまった。
「閑古鳥と言うのは、本当のようだな!」
ふぉふぉふぉ、と腹をゆらしつつ、チュレンヌの一行は邪魔な椅子を押しのけ、空席となった真ん中の席についた。
ちらりと、取り巻きの貴族がギーシュとマリコルヌを見る、すると軍人らしき貴族が「放っておけ」と呟いた。
ルイズがふと気づくと、ジェシカが隣にやってきて、忌々しそうにチュレンヌを見つめていた。
「ねえ、あいつ何者なの?」
ルイズが小声で呟くと、ジェシカは心底から忌々しそうに話し始める。
「このへんの徴税官をつとめてるチュレンヌよ。あいつの管轄してる区域のお店に来ては、”たかり”をするの、嫌な奴よ! 銅貨一枚払ったことないんだから!」
「そう……」
「あいつの機嫌を損ねたら、とんでもない税金かけられてお店が潰されちゃうの。だから渋々言うこときいてるの」
「なるほどね…」
ルイズはふと、ワルドの表情を伺った。
そこには、ニューカッスル城で会ったときと同じ、冷たい仮面のような表情のワルドがいた。
ルイズは慌ててワルドの襟首を掴み、店の奥に移動させる。
「ルイズ、二十秒でカタをつける。同級生の二人を外にやってくれないか」
「だ、駄目よ!気持ちはわかるけど、今はその時じゃないわ、この店に迷惑をかけちゃ駄目なんだからね!」
「…解っている。だが、僕は、あれが貴族を名乗っているのが許せん」
ワルドの怒りは当然かも知れない、だが、この店で貴族が殺されたとあっては、店の人間に迷惑がかかる。
ルイズにも怒りはある、だが、この店に迷惑をかけたくない。
何とか音便にコトを済ませる方法を考えていたが、不意に顔を上げて、ワルドの袖を引っ張った。
「ワルド、ちょっと手伝って」
「?」
831 :
仮面のルイズ:2007/12/28(金) 20:35:16 ID:zBhsvF1W
店の中では、チュレンヌが忌々しげに店の女達を見ていた。
誰も酌をしようとしない、それが気にくわないのか、店に難癖をつけ始めた。
「おや! だいぶこの店は儲かっているみたいだな!このワインはゴーニュの古酒じゃないかね?」
チュレンヌに続いて、取り巻きの一人が女の子の衣装に難癖をつける。
「おや、そこの娘の着ている服は、ガリアの仕立てではありませんかな。どうやらこの店は思ったよりも儲かって居るようですなあ」
チュレンヌは実に嫌らしく、ふぉふぉふぉと笑って呟く。
「今年の課税率を見直さねばならないようだな!」
取り巻きの貴族たちも、わざとらしく頷きながら、チュレンヌの言葉に同意した。
「女王陛下の徴税官に酌をする娘はおらんのかね! この店はそれが売りなんじゃないのかね!」
チュレンヌがわめくが、店の女の子は誰も近寄らない。
「触るだけ触ってチップ一枚よこさないあんたに、誰が酌なんか……」
ジェシカが呟くと、不意に奥のテーブルから声がかかった。
『ああ、このブルゴーニュのワインを一つくれないか』
「はい?」
振り向くと、マリコルヌと目が合う。
マリコルヌは何が起こったのか解らないようで、え?え?と小声で呟き、目をぱちくりさせていた。
「はい、ただいまお持ち致します」
ジェシカは笑顔で注文を受けると、マリコルヌの席にワインを届け、丁寧にワインを注いだ。
「どうぞ」
『ああ、ありがとう。とっておきなさい』
ワインを注ぎ終わると、マリコルの手がテーブルの下から跳ね上げられる。
それと同時に、どこからか出てきた金貨がふわりと飛んで、ジェシカの胸に収まった。
「きゃん」
金貨の冷たい感触に驚き、ジェシカは思わず声を上げた。
それを見たマリコルヌは、ジェシカの色っぽい仕草に顔を耳まで真っ赤に染め、恥ずかしさを誤魔化すように腕を組んで笑顔を浮かべた。
ところが、隣に座るギーシュは青い顔をしている。
チュレンヌ達が、中央のテーブルからギーシュ達を睨んでいるのだ。
むこうは五人。その中には軍人らしき貴族もいる。
マリコルヌとは対照的に、ギーシュの顔はどんどん青くなっていった。
(マッ、マリコルヌ、まずいぞ、まずいよ)
ギーシュがマリコルヌに耳打ちする。
「え?何を言ってるんだ美味しいワインじゃないか」
だが当のマリコルヌは、思い人のちょっと色っぽい仕草を見ただけで有頂天になり、ギーシュの言葉なんてほとんど聞いちゃ居なかった。
むしろチュレンヌのことなんてすっかり忘れていた。
「はっ、随分と豪勢なことだな!この店は随分儲かってるじゃないか、税率は二倍がいいか、三倍が良いか?皆どう思う」
「この店は風紀を著しく損なうようですな、罰金も支払わせましょう!」
取り巻きの貴族達が、そうだ、そうだと、口々に言う。
それを聞いたスカロンは、何とかご機嫌を取ろうとして、中央のテーブルに近づこうとした。
「あ、あの、チュレンヌ様」
「まったくこの店はなっとらんな!こんな怠けた店でもやっていけるとは、禁制の偽酒でも使っているのかな?」
「いえ!決してそんなことはありません、はい」
取り巻きの貴族が杖をちらつかせながら、『レビテーション』の応用でジェシカを転ばせた。
「きゃあっ」
ガチャンと音がしてグラスが割れ、ジェシカは破片の上に手をついてしまった。
「痛っ…」
それを見た貴族達は、ハハハと笑った。
『そこまでだ』
不意に、誰かの声が笑い声に水を差した。
誰だ?と疑問に思う間もなく、ギーシュに視線が集中する。
「…え?」
だが、当の本人は何が起こったのか解らず、きょとんとしていた。
「何だ小僧、何か言いたいことでもあるのか?」
「え?え?」
832 :
仮面のルイズ:2007/12/28(金) 20:36:36 ID:zBhsvF1W
実は先ほどのマリコルヌの声も、ギーシュの声も、本人の声ではない。
ワルドが作り出した『空気の管』をギーシュの背後に伸ばし、ルイズが声色で喋ったのだ。
魔法学院の同級生だったとはいえ、二人の声を完璧に再現できるとは思っていなかったが、場の雰囲気のおかげか疑われることは無かった。
マリコルヌの腕が勝手に動いたのも、ジェシカの胸にチップの金貨が舞い込んだのも、ワルドの『レビテーション』。
当の本人達は、何が起こったのか全く理解していないだろう。
ふと、転ばされたジェシカと、ギーシュの目が合う。
ジェシカは手から血を流し、目に涙を溜めていた。
(どうした?僕は女の子を喜ばせる花じゃなかったのか。女の子が泣いていて何もしないのか!僕は!)
ギーシュは、チュレンヌ達が恐ろしかった。
実力差も数の差もある、それに、もしかしたら家名も高いかもしれない。
戦っても勝てるはずはないし、そもそもこんな店に入ったこと自体、親の耳に入ったら困ることだ。
でも、女の子の涙を見て、どうして引き下がれようか。
惚れ薬の件では、シエスタに迷惑をかけてしまった。
ジェシカの髪を見ると、惚れ薬を飲んだとはいえ、ワルキューレでシエスタに決闘を挑んだときの後悔が胸に突き刺さる。
今度こそ、僕は女性を守る茨になりたい。
ギーシュは震えながらチュレンヌ達を睨み返し、薔薇の造花を握りしめた。
「大丈夫かい?」
「だ、大丈夫です」
いつの間にか、マリコルヌが怪我をしたジェシカの手を取り、ハンケチを巻き付けていた。
「僕は治癒が苦手だから、申し訳ないね」
「いえ…そんなこと、ありません」
「さ、君はちゃんと怪我を治した方が良い、今日は休ませて貰うといいよ」
そう言って、マリコルヌはジェシカの手を引っ張り、立ち上がらせる。
ジェシカの肩をぽんと叩き、店の奥に下がらせると、マリコルヌは顔を真っ赤にしてチュレンヌ一行を見据えた。
怒りではなく、恥ずかしさから顔を真っ赤にしているのだが、他人はそう見てくれない。
マリコルヌは今、『顔を真っ赤にするほど本気で怒っている』と思われていた。
「はっ、なんだなんだ、君たちは貴族か!若いのに場末の汚い酒場にいるとはなあ、恥を知りなさい!」
自分たちのことは棚に上げ、偉そうに言い放つチュレンヌ。
ギーシュは震えを必死で押さえ込む、シエスタにゴーレムを差し向けた時の、モンモランシーの泣き顔を思い出して、必死に『自分は正しい!』と言い聞かせた。
「無闇に女性を傷つけておきながら、恥を語るのは何処の恥知らずかな?」
「何だと…!」
取り巻きの一人が杖を抜き、席を立った。
どう見ても怒っている。
ギーシュは早くも自分の発言に後悔した。
だが、意外にもそこで、マリコルヌがずいと前に出て反論した。
「汚いのは、貴族の杖をそんなことに使っているお前らの方だっ!」
「貴様!」
マリコルヌの言葉がしゃくに障ったのか、チュレンヌ達は一斉に立ち上がり、杖をギーシュ達に向けた。
(怖い、怖い怖い。怖い!)
ギーシュの心中は恐怖に支配されかかっている、だが、今ここで正しいと思ったことを貫き通せずに何が貴族だろうかと思い、心を奮い立たせる。
『命を惜しむな、名を惜しめ』という家訓が、ギーシュの体を辛うじて支えていた。
一触即発の雰囲気が、店内を支配する。
どちらかが動こうとしたその時、勢いよく羽扉が開かれた。
833 :
仮面のルイズ:2007/12/28(金) 20:37:04 ID:zBhsvF1W
「そこまで!双方杖を引け!」
店内に入り声を上げたのは、女王陛下直属の部隊、銃士隊のアニエスだった。
体をすっぽりと多う外套を身につけており、腰に差しているはずの剣と銃は見えなくなっていた。
チュレンヌは胡散臭そうにアニエスを見て、鼻で笑う。
「ハッ、誰かと思えば、この間シュヴァリエを賜ったという……なんだったかなあ。なあ皆、知っているか?」
「さあ。知りませぬ、粉ひき娘ではありませんか?」
「チュレンヌ様は城下を視察されておる!貴公が何者であっても、女王陛下から賜った徴税のお役目を妨げるなら容赦はしませんぞ」
チュレンヌ達は、あからさまにアニエスをバカにする。
ハハハと笑っている貴族達に向け、アニエスは懐から一枚の羊皮紙を取り出し、見せつけた。
羊皮紙を胡散臭そうに見ていたチュレンヌだったが、その顔が少しずつ青ざめてくる。
ほんの十秒ほどで、店内は驚くほど静まりかえってしまった。
「あ、あの、これは?」
突然、チュレンヌが低姿勢になる。
「解らないか?貴殿を逮捕しに来たのだ。女王陛下は、不当な徴収で私腹を肥やす貴族がいると聞いて、大変胸を痛めておられる。自ら出頭するならまだ罪は軽くなりますぞ。ミスタ・チュレンヌ」
アニエスが氷のように冷たい目つきでチュレンヌを見る。
時間にして一分だが、一時間にも感じられる沈黙が流れた。
チュレンヌは、ふぅ、とわざとらしくため息をついて、杖をテーブルの上に置き、観念したように椅子に座った。
だが…
「…かかれッ!殺してもかまわん!」
チュレンヌは杖を掴むと、ルーンヲ唱えつつアニエスに向けた。
同時に、取り巻きの貴族が動いたが、それよりも一瞬早くアニエスのマントが翻った。
遠巻きにその光景を見ていたジェシカ達は、アニエスのマントの中で、刃物がギラギラと光るのが見えた。
アニエスのマントがふわりと垂れ下がる。
チュレンヌ達は、二度、三度とルーンを唱える、だが魔法は発動しない。
チュレンヌの取り巻き達は、自分たちの持つ杖を見て、ぎょっとした。
杖が真っ二つに折られていたのだ、アニエスのマントが破け、中から二つの刃が姿を見せる。
長さ50サントの刃が、アニエスの近くにいた二人の杖を破壊したのだ。
チュレンヌの後ろにいた貴族二人は、驚いて後ろに下がりつつルーンを唱えようとしたが、一人は青銅のゴーレムに取り押さえられ、もう一人は『エア・ハンマー』で杖を吹き飛ばされていた。
奥のテーブルでは、ギーシュとマリコルヌが杖を掲げている。
二人が手伝ってくれたのだ。
アニエスは、腰が抜けて立てなくなったチュレンヌの真正面に立ち、静かに呟いた。
「自首して頂けますか」
チュレンヌはがっくりとうなだれ、小声で「はい…」と呟いた。
834 :
仮面のルイズ:2007/12/28(金) 20:38:34 ID:zBhsvF1W
その後間もなく、町の衛兵がやって来た。
チュレンヌとその取り巻き達は馬車に乗せられ、王宮へと送り届けられるそうだ。
『魅惑の妖精亭』の皆は大いに喜び、ワルドはスカロンに抱きつかれ大いに迷惑。
アニエスにもお礼を言おうとしたが、ギーシュとマリコルヌに『協力を感謝致します』と告げた後すぐにどこかへ行ってしまった。
「格好良かったわねえ、あの女シュヴァリエ様」
「ホントよね、貴族ってあんな人たちばかりならいいのに」
『魅惑の妖精亭』の女の子達は、固まってアニエスの話ばかりしており、ギーシュとマリコルヌのことなどこれっぽっちも話ていない。
ギーシュは寂しそうにワインを飲んだ。
「はあ、一時はどうなることかと思ったよ。それにしてもマリコルヌ、僕は君を見直したよ」
「いや、ギーシュも一緒に杖を構えてくれたじゃないか。だから僕にも勇気が出たんだ」
「そんなものかね」
グラスに残ったワインを飲み干して、ギーシュはため息をついた。
コトッ、と小さな音を立てて、ワインがテーブルの上に置かれる。
よく見ると、上等な古酒らしく、古ぼけたラベルには有名な産地の名前が見えた。
「今日は、ありがとうございました。あの…このチップはお返しします。こんなに沢山頂けません」
ワインを持ってきたのはジェシカだった、テーブルの上に金貨を置き、すまなそうに頭を下げる。
マリコルヌは驚いて、両手バタバタと左右に振った。
「ちょ、ちょっと待ってよ。これ僕のお金じゃないんだ、どこからか突然出てきたんだよ」
「そんな、謙遜なさらないで下さい」
「これは謙遜じゃなくて…えーと、ど、どうしよう」
隣を見ると、ギーシュがにやりと笑みを浮かべていた。
テーブルに置かれた金貨を手にとって、ジェシカに渡す。
「彼は口べたでね!僕が少しだけ通訳をしてあげよう。彼はこう言いたいのさ『君は金貨と同じぐらい美しい』と」
驚いたマリコルヌは、ギーシュの言葉を訂正しようとして、慌てて喋りだした。
「ち、違うよ、金貨よりもっと綺麗………あ、いや、その…」
自分が何を口走ったのか途中で気づき、マリコルヌは顔を真っ赤にして俯いてしまった。
だが、ジェシカは嬉しそうでもなく、悲しそうでもない表情で、「ありがとう」と呟き、小走りで店の奥へと隠れてしまった。
「…なあ、ギーシュ」
「なんだい」
「僕、何か悪いこと言ったかな」
「表現が悪かったんじゃないかな。からかっていると思われたとか?」
「そうなのかなあ」
マリコルヌは残念そうに顔を俯かせたが、またこの店に来れば会える、またここに来ようと決意して、勢いよくワインを飲み込んだ。
ジェシカは、店の物置に置かれている、大きな鏡の前に立っていた。
自分の表情をじっと見つめていると、不意に涙がこぼれる。
「ジェシカ」
「あ…お父さん」
いつの間にか、物置の入り口にスカロンが立っていた。
「ジェシカ、どうしたの?」
「…わたし、嬉しいのに、どんな顔をすればいいのか、解らないの」
「笑顔でいいじゃない、ジェシカの笑顔は、みんな好きだって言ってくれるでしょう?」
「違う、違うの…作り笑顔を見せちゃ駄目だって思ったの。本当の笑顔じゃなきゃ失礼だって思ったの…でも、顔が笑ってくれないの…」
「ジェシカ…ごめんなさい、私がずっとあなたにこの仕事をさせたせいで」
「ううん、お父さんは私のためを思ってくれてる。お父さんのせいじゃないわ」
「ね、ジェシカ、今まで嫌なお客さんにも笑顔を見せてきたわよね。今度から無理をしなくていいから、だから、貴方の思うとおりにやりなさい」
「…できない、今更、そんなこと出来ないよ」
「じゃあ、今度あの人が来たら、正直に打ち明けて、謝ってみなさい。ジェシカが本心から笑顔を向けたいと思ったのなら、そうすべきよ」
「…うん」
ジェシカは、父スカロンに顔を見られないように、力一杯抱きついて、涙を流した。
835 :
仮面のルイズ:2007/12/28(金) 20:40:53 ID:zBhsvF1W
しばらく後、マリコルヌとギーシュの二人は、『魅惑の妖精亭』を出て馬に乗り、魔法学院への帰路についていた。
「なあ、ギーシュ」
「なんだい」
「女の子達、たくさんサービスしてくれたよな」
「ああ」
「領民を守るのも、あんな感じなのかな。僕でも誰かを守れるのかな」
「かもしれないな」
「なあ、ギーシュ」
「なんだい」
「僕、前線に出るよ、親は僕を補給部隊に入れようとしてるけど、それじゃ駄目だと思うんだ。僕は僕なりに頑張ってみたい」
「いい心がけだと思うよ。それにしても…」
「?」
「君があんなに勇気があるやつだと思わなかったよ」
「思うところがあるんだ」
「そうか、深くは聞かないでおくよ」
「うん。そうしてくれると助かる」
マリコルヌは月を見上げた。
あの日、シエスタが空を飛ぶ練習をしていた時、マリコルヌは『遠見』の魔法を使ってスカートの中を覗こうと躍起になっていた。
あの日、突然シエスタの体が不自然な方向に飛ばされたのを、マリコルヌは見てしまったのだ。
『遠見』で周囲を見渡すと、火の塔の一角でシエスタを見ている人物を発見した。
杖を持っていたことから、そいつが犯人だと確信していたが、それを誰かに告げる気にはならなかった。
男は、三年生の寮に入っていった。
そして別の日にも、その男は同じようにシエスタに風の魔法を当てていた。
唇の動きは、エア・ハンマーのルーンを呟いていたと見て間違いはない。
後で調べてみると、その男は『風風のライン』であり、人当たりがよく平民にもやさしい男だった。
そんな男がなぜシエスタの邪魔をしたのだろう。
解らなければ、直接聞いてみればいい。
シエスタに、僕たちの友人に何をするんだと詰め寄ってやればいい。
だが、『ドット』の自分では『ライン』に敵うはずがないと思って、誰にも言わずにいた。
魔法で転ばされ、怪我をしたジェシカを見て、マリコルヌは少しだけ覚悟を決めることができた。
ジェシカの姿が、シエスタに重なったのかもしれない。
月の浮かぶ夜、二人はいずれ来るアルビオンとの戦いに、自分なりの道筋を見つけた気がした。
ギーシュ達が『魅惑の妖精亭』を出てすぐ、ワルドは部屋で遍在を作り、外にいるルイズを迎えに行った。
ルイズは『イリュージョン』を駆使して人目を避け、ワルドに背負われて窓から部屋に入る。
顔を隠していたフードを取ると、そこにはアニエスの顔をしたルイズがいた。
ルイズは「ありがと」と言って遍在の背中から降り、部屋に備え付けられた鏡の前に立った。
「まったく、あの二人なんでこの店に来たのかしら、平民の女の子には手を出さないと思ったのに」
ぶつぶつと呟きながら、アニエスそっくりに切りそろえた髪の毛を体内に再吸収し、ベッドの下に隠した茶色の髪の毛を頭に植え付けていく。
ゴキゴキと音を立てて、ルイズが骨格を調節していると、隣にいたワルドの遍在が呟いた。
「いいものを見たよ、トリステインの若いメイジにも、彼らのような者がいるのだな」
「そう見える?」
「…女の子目当てかもしれないが、それでも立派さ。杖は平民を脅かすために使う物ではない。守るために使う物なんだ。彼らはそれを貫いた」
「そうね……うん。確かにそうね」
体つきを元に戻し、顔の形を調節し終わると、ルイズは窓の外に浮かぶ月を見上げた。
「いずれ、戦争が始まるのよね……誰も、死んで欲しくないな」
ルイズの呟きは、星空に消えていった。
To Be Continued→
836 :
仮面のルイズ:2007/12/28(金) 20:43:17 ID:zBhsvF1W
投下したッ!
次スレ立ててくる。
乙!おもしろいよ、乙!
GJと言わせてもらおう!
自らの進むべき道を見出し始めた若き二人のメイジの幸運を祈る!
……それはそれとしてジェシカの好感度があがったマルコメうらやましす
つーかルイズからの評価高いなマリコルヌw
いい・・・仮面は実にいいなぁ、支援!
840 :
仮面のルイズ:2007/12/28(金) 20:50:34 ID:zBhsvF1W
GJ
ふと思ったんだ、もし!もしもホイールオブフォーチュンが召喚されたら
どう活躍するんだろう?馬車をベースに融合スタンド展開するんだろうか
なんて考え出すとキリがないぜ!
仮面さん投下&スレ立て乙です。
マリコルヌ・・・お前・・・偽物だな!?偽物だろう!!
お前はドMのマゾコルヌじゃなかったのか!!?
まぁ、恋は人を変える、と言うことで。
頑張れマリコルヌ、黄金の精神に目覚めろ。
仮面さん、投下とスレ立てダブルGJ!!
マリコルヌとギーシュは黄金の精神に目覚めつつあり、アンリエッタは立派な女王になるべく努力して、ワルドはダメ人間の片鱗を見せる。
登場人物がどんどん成長していく…次は誰がどんな風に変わっていくか楽しみです。
スレ立て、感謝いたしますッ!
では…
,..、
,rニ二ゝ、
/ l l、 ,、
| 、 ト. ヽ ,. /
| | ハ. |/ '
ヽ/、_,...{、,イヨ´
>‐--ャド.〈
j__,.ノ´ lイ|
,.ィ ,r',ハ ヽ Y
| レ'/、 〉 | |
ヽヽ:;;;::;} l | ,! ,,;::;
`゙l;::;;:).| ,! ,' __;r:;;:,.,::.:
. ヾ::;:l| / /゙;;::`;:;;::..::;:
. {:;;:l/ /''::;:,:::;;;'':.::,:;
゙~/ {
L三、
投下と次スレ乙!
完ッ!じゃねえよまだ残ってるwww
マリコルヌ……流石だな(色々な意味で)
立て方ワカンネ。●持ってないとダメなんだったけ?
もうビンビンにたってるぞ
β<既に立っていると言わせていただこうッ!
見直して23時20分頃から投下させていただきたいんですが構いませんねッ!?
一言でいい…『許す』と投下の許可を与えて欲しい。
それだけでいいんだ…それだけで(題名は相変わらず思いつかないけど)私は救われる。
今の私には必要なんだ。『許す』を…!
あ、でも新スレあるみたいなのでそっちに投下すべきですかね?
新スレへgo
... -.、 ._ - --‐ - .,_. 、 .-- ,,_
..l,,,, .l ‐''"´´.、 : . ̄´ ̄ ̄"''''''‐ .`''''‐‐.ゝ---" . `"'''‐ ,,
./ : : : : : ヽ : : : : : : : : : : : : : : : i".i': : : l,_,,、.,. ..`"'- ,,,
_ ./ : : : : : : : : : : `''- 、_.: : : : : : : : : : .ゝ.l: : : : : : .-, `‐、, : : ...-- 、 `''-、,
.| . / : : : : : : : : : : : : `"'''''‐--..,,_ : : l: : : : : : : . \ `-、,: : : : .l l: : : : : `'''._,,,..,
´ | .、_: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : .": : : : : : : : : .`'-、_`" / "''_: : : : : : .、 .!._
.l : : `''- ..,,,,,,,,,............ --‐‐: : : : : ,.. --‐‐‐‐‐、,: : : : : : : : : .`" `: ." .....,,二,゙,゙_,゙. '"..,,`'-、 .,.‐''‐、
ヽ: : : : : : : : : : : : : : ._.... .‐" - ‐"'-_,;ニ_ `''-,: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : . ̄ ̄´. : ヽ_/
ヽ.: : : : : : : : ._、: : : ., ''ミ,, .ヽ . ヽ .---...'、/ / /`,",、`\,,: : : : : : : : : : : : : : : : : : : _..-'"-": : : 、 .'、
`' ...‐-‐'''"´: : / ‐ ,, " ... ..、 / ,i`'- '....'-._./ .../ ‐- ..,,_.: : : : : .-‐'"´: : : : : : : : : : .ヽ " . -、
,.. ‐'' ,二ミ"'- : ! ヽ ヽ ` / ! .´ /'"/`,、 i‐ ´.l: : : : : : : : : : : : : : : : : : : ` /
/,..-''" : : : : ...l .-‐ l゙: .,ゝ ." `.\/_/ヽ´‐ ": : : : : : : : : : : 、. ..,,,,....、 ,゙''''
.,i'./ ´ : : : : .ヽ,,,,,,./ i" ..-、 ._,,..--......,, ../ !´ -,i / : : : : : : : : : : : : .`"'‐---‐ l
.___! ,,, -'''""___ ヽ‐'' .i' ."'''''''-''ニ'''''-..,: `ヽ ` .- .、: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : /
: : .``''‐、, / _,, -'" `" .|, .!- | `''- ,`'i .l ../ ;;_ |: : : : : : : : : - ..,_: : : : : __ ./
: : : : `./ .,/´ ._.. -‐‐-..,,_: ヽ " "." ., / / : : 、.: : : : : : : : .`""´´/
: : : : : l.` .i''"´ .,,,,,゙'‐ヽ. --- ..,,, .,./ /.`/ 、"' / ..、: : : .`'‐ .._.: : : : ,, /
: : : : : : : : : : l ` ''"/ .'" 、 `''-..,, .'‐ ._,,.. / : : ヽ,__..‐',,,,, : .` ............ -`-'"´
: : : : : : : : : ヽ . ,/,゙_ / ., ``"''''''"´´.-、,'-、.: ヽ .、 `'-、.ヽ
: : : : : : : : : : .´ ./ ._./ . / ,./ ´: : : : : : : : : : : : : .ヽ ゙l: ,゙..,,,,,_ ...l \,
: : : : : : : : : : : : , .\, ,/´ ./ : : : : : : : : : : : : : ! .,./ .`;; !: .! : : : `'-、
: : : : : : : : : : : : : . l,. ´ ./ : : : : : : : : : : ,, .! l `'、: : : : : : .ゝ
: : : : : : : : : : : : : : .、 \ l, ! : : : : : : : : : : ./ \,,,,,,,,.../ i'. ̄ヽ : : : : : /
: : : : ,i': : : : : : : : l゙ `'-..,,." l.: : : : : : : : : : : : : : / ,/´ |. .,./ : : : : : /
,-, ;; '--''" ,.,"''-.,, ;.,';, 'i,
,i';;;;l ';,:. l;;;'i, "''-,,.,,'i,
,i;;;;;;;l ';;,:. ,i;;;;;;l ''i,
i;;;;;;;;;l,..-.., .,., ';,::.. .,i;;;;;;;l 'i,
l .,-.,i';;;;;;;;;;l=' ;:; .l l ';::::... l;;;;;;;;l-..,, l
,_i;;,,,;;;; .l''i '' .,i;;;;;;;;;;;l'--'' ='-'= ';;::::l;;;;;;;;;l;';, ,-,"''-.,, ..'i,
.;;;;''" i .'-, '-l;;;;;;;;;;;;;l ';;;i;;;;;;;;;;l; ;.,i i, ,:.,':,, "'-.::::l
;;;;; i,-''" ,i;;;;;;;;;;;;;;l ___ ,;,i;;;;;;;;;;;l ',,''"' '-,,:' ..::;:;;l
'';;;;,,,..::' l;;;;;;;;;;_,,:-''''"",-,"'''-,,i';;;;;;;;;;;;;l  ̄""''-.,,,.:::;;;;;l
,.., .i;;.,-''__,,,,....,,, ':..,.;; ,i';'i,"',-,.;;;;;;l :. ''-;;;;;l
,i;;;i .,-''::: ,,i;;i  ̄"''-,"'' i,...,;;''-;l :::::::...... 'i;;l
l;;;;l,i'. ,,::: ,i;;;:;;l "''-,,;; ';i,:: ,.-, ,--.,''-..,, 'i,
''"''-,, ,i;;;;;i ,i';;i:::. ,i';;;::;;l,i''i, .,,....,,i'':i, ..:;:,i''i 'i,.,;.;' 'i,.,i' ',:;, ;.'i,
l;;;;;;i,';::;;i:::::.,i';;;:::;;;i,__'i,i:i'"i';;::;;l..::::,i;:;;l ,i;i__,,,,....,, '-' ;; i,
i;;;;;;;;;::;;;l:::::,i;;;;:::;;;;l ."',i;;;::;;i:::::i';:;;;;l:. ,i;;;l ""'''.;; "''i,
;;;::'' ,i;;;;;;;;;:::;;;i::::,i;;;;;:::;;;;l .,i';;;;;::;;l ,i;::;;;;l:::,i;:;;l''"':;, ,,.-..,, 'i,
';;,, ,i'::;;;;;;;;:::;;;i::,i;;;;;;;:::;;;;l ,,,.,i';;;;;;;;;;;l ,i';:;;;;;;l::,i;:;;;l,,-''"':;,-,:;;',, ';, l
..:::i;;:;;;;;;;;;;::;;;i::l;;;;;;;;::::;;;l 'i,i';;;;;;;;;;;;l,i';::;;;;;;l ,i;::;;;l '-l l-'";'";, "''-.; i'
.:::: 'i;;:::;;;;;;;;;;;;l,i;;;;;;;;;;:::;;;l ,i';;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;i,';:::;;;;i' ;';' ; ;,; ;,i' i, ,;i'
.:::'i;;:::;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;l,i';;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::::;;;:,i'::... '' '' '-:,i,;;l
::::::i;;;;:::;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:::;;;;;;;:::;;;:,i' ',;::;;;::''" "';,, ,i'
::,i;;;;;::;;i'-.;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::::::;;;;::;;;:,i' .:::''' ::..::;;l
,i''i;;;;;;;;'i,i ,'i,;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::;;;;i, :::... .:::::;;;;l
,i' .'i,;;;;;;;;'-,,':,:;;;;;;;;;;;;::,-';.-,:-:;'';;;;;;;;,i'_....,, i''::::::::::::::::: ::''::;;;;l
l 'i,:::_;;;;;;;;;:;::;;;;;;;;;;;;";';;;;';;'";;;;;;;;;l i:i .'-.i'i .,i'- 'i,::''-',:;l
.i .'i, "''"~"'':;;:::::::::::::::::_,-''i'";l,:',,..-‐'''"""''-..,.:::,-i',il
. ,i' .i, ;'':.,,.._ ~"'''''''"~,,:''::::;;l " . ::"'' 'i,
. 'i, i ''-::._,:' . ,::'' :::;;l__,,,,,......,,,,,___.,, :: ,i'
l .'i, ,;;.., ,..-''"'i .,, ;;l-,.,:'':, ,:'':,, ,:''":,"''-.,;;i'
,,i' l '':l''" i' l'l, , l;' '-' '--' ':..,,: ..:::;;:l
i ,:,.i 'i l ":i,.l'''""'''''"""::''-..,,'-::: l
l i ' 'i,.i' ;;;l,,_ :: ::: l
l ,.i :::::::: .;;l "''-,,. ::. l
.i i ' ::: ::::::::: 'i,/'i, ,-,, ,....,.;; l
'-' ::: ::::::::::.i,'-' i,..,;. .''i i';;;;'"';,,;l
/ /. ; i /i`ヽ::ハ
/ ,' ,' i ノ) ,.ヘ;j
.. / / / / l { ,' ト、i オレは「メ 几. i |王l
/ / ./ ,. ' /Y ; fネ 木又 /\ノLム,.」と呼ばれている
/ / , ' / ./i l i _ ',
/ / /,.イ / / ヽ! !-ン´ 少なくとも新聞はそういっていたし
/ , ' ,. ''"´ / /⌒ヽ! lノ オレ自身も かなりそう思う
. / / , '" / / ./.l l
. ,' , '´ r--ァ'ヽ´.`>、/ l l 新スレが立った時 命をかけれるか?
. ,' , ' ./::/´ / \ ハ. l ! と聞かれた時『 i 、 i 、 _.L⊥、
. ; / ,.'::::::/`/、 ><. i l.l レ ! .レ !. | ‐' 』と答えた
i / /::o::j' i/ > < ソ! リ
. i ,' ,':::::::::{ヽト、 / ヽ/!.l 今でも そう答えるかもしれない
. L; i i:o:::::::::ヽ!/ 丶、 ./ヽK! そのためには 俺の心は動かなかった
l-‐┴┘::::::::::::::V / \ ,,.l`l
l:o:::::::o::::::。:::::o:レ' X ハ,i
. l::::::::::::::::o:::::::::::l \,. イ i::/
l:::::o::::::::::::::::o::i / 丶、/i'
. !::::::::::::o:::::::::::::}' ,. イ `ソ、
ヽ:::o:::::::::::o:::/ ̄¨ ‐- 、i/ !
\::::o:::::::::i / `',∧
i:::::::::o::゙、‐-/.._ )/ヽ_
\::o:::::::i∨ >< l /l:::l`i
/ / / ,.-、 / \:ヽ
, '" / ./-、 \,,. ヽ:',
,,. イ / .i / r 」 / /リ だが 死んでいたオレを
/ , ' l ! レク / ,.ヘ. i´ . . .. . ... .
/ /ヽ \f/ / 、\j 生き返らせてくれた
, ' / /ヽ .) / liヽ, } i .. . . . . . . ..
./ , ' ノ/ ./ / ヒソソ 旧スレ埋めのためには
/ / ./ .,' / / i` .. . . ..
, ' _,.. イ /〈 ;. ,' ,. -', 命を懸けれる
,. '´ / /:::::::ハ i ,' ..,,_ ヽ
/ / / ./ i::::::::::::∧! .; ー 、ヽl-‐ ¨´
/ , ' / i::::::::::::::::i ; ヽ.__)¨
/ / ./ ノ- :_:::::::l i !
/ヽ/ ./ >! i:i ノ
,' i / /l i ¨
| 三_二 / ト⊥-((`⌒)、_i | |
〉―_,. -‐='\ '‐<'´\/´、ヲ _/、 |
|,.ノ_, '´,.-ニ三-_\ヽ 川 〉レ'>/ ノ
〈´//´| `'t-t_ゥ=、i |:: :::,.-‐'''ノヘ|
. r´`ヽ / `"""`j/ | |くゞ'フ/i/
http://anime3.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1198842325/ へ
. |〈:ヽ, Y ::::: ,. ┴:〉: |/ 行け
. \ヾ( l ヾ::::ノ |、
j .>,、l _,-ニ-ニ、, |))
! >ニ<:| 、;;;;;;;;;;;;;,. /| ___,. -、
| | !、 .| | ( ヽ-ゝ _i,.>-t--、
ヽ| | ヽ\ _,..:::::::. / .| `''''フく _,. -ゝ┴-r-、
..|.| | :::::ヽ<::::::::::::::::>゛ |_ _,.-''"´ / ̄,./´ ゝ_'ヲ
..| | | _;;;;;;;_ ̄ ̄ |  ̄ ̄ / _,. く / ゝ_/ ̄|
:.ヽ‐'''!-‐''"´::::::::::::::::: ̄ ̄`~''‐-、_ / にニ'/,.、-t‐┴―'''''ヽ
\_:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\ / / .(_ヽ-'__,.⊥--t-⊥,,_
\  ̄\―-- 、 _::::::::::::::::::::__::/ / /  ̄ ) ノ__'-ノ
\ \::::::::::::::`''‐--‐''´::::::::::/ / / / ̄ rt‐ラ' ̄ ̄ヽヽ
ヽ ヽ\ \:::::::::::::::::::::::::::::::::::::/ / ゝニ--‐、‐ |
l ヽヽ \:::::::::::::::::::::::::::::::/ /‐<_ ヽ |ヽ