全力全壊で"乙"
スレ立て乙でございます。
スレ立て乙です。
6 :
×DOD:2007/12/11(火) 00:57:20 ID:kbSxH9c3
乙なんだぜ!
8 :
なのウタ:2007/12/11(火) 01:07:40 ID:2NhQoByO
9 :
OSGS:2007/12/11(火) 07:32:08 ID:VovtsxDc
乙!
ホントに建てやがった。
しかもどうみても乙じゃねぇか。
おもしれぇ、おもしれぇぞソレスタル・
>>1乙!!
すいません、第13話が出来ましたので投下したいと思いますが
この時間って人こない気が・・。まあ、それでもしばらくしたら投下します。
それでは投下します。
第13話 勇気の雷鳴
エリオとキャロはクアットロによって強制的に戦わされているルーテシアを止めようと懸命に戦っていた。
勇者ロボ達もその邪魔をさせまいと地雷王達と戦っていた。
「くそ! こいつらまだ戦おうてのか!?」
「主人が操られている事に気が付いてないの?」
「いえ、この場合はこの蟲達も操られていると見るべきでしょう」
撃龍神と天竜神が疑問に思い、ビッグボルフォッグがその質問に冷静に答える。
「とにかく俺達はエリオやキャロがあの女の子を止めるのを手伝うんだ。その為には俺達がこいつらを止める必要がある。皆頑張ってくれ」
「わかりましたぜ、隊長」
「私もそれに合わせよう」
凱が勇者ロボやJに向かって言い、エリオとキャロの援護をしていた。
エリオはガリューと戦っており、ガリューからは血の涙が流れ、背中からは触手みたいなものが多数出てきてエリオを襲うが、何とかエリオはそれを防いでいた。
キャロはルーテシアの攻撃を懸命に防いでいたが、ルーテシアは自分の最大召喚獣白天王を召喚、キャロもヴォルテールを召喚した。
白天王とヴォルテールの大きさはジェネシックガオガイガーよりは小さいがその破壊力は勝るとも劣らないものであった。
しかし、火力は白天王より、ヴォルテールの方が上だったため、ヴォルテールは白天王を倒し、キャロもルーテシアを保護、
ガリューと戦っていたエリオは自分の拳に電気を溜め「紫電一閃」と叫び、ガリューに叩き付けガリューに勝つ。
地獄島のスカリエッティアジトではフェイトがバルディシュのライオットフォームを起動させ、自分を拘束していた糸を斬ったが、
AMF下である上に元々魔力消費量の激しいものであり、フェイトの疲労は溜まっていた。スカリエッティはフェイトに
母であったプレシアの話をし、動揺したフェイトの隙を見て今度は全身を縛った。フェイトはプラズマランサーでスカリエッティに当てようとするも
簡単に防がれてしまう。スカリエッティは仮に自分がここで捕まっても戦闘機人の誰か一人でも残れば、1ヶ月もしないうちに自分のクローンが出来、また同じことをすると言った。
そしてスカリエッティはフェイトを完全に動揺させることを言う。
「君と私はよく似ているんだよ。私は自分で作り出した生態兵器たち。君は自分で見つけ、反抗することの出来ない子供達。
それを自分の思うように作り上げ、自分の目的のために使っている。違うかね?
周りの全ての人間は自分の道具に過ぎない。間違いを犯すことに怯え、薄い絆にすがって振るえ、そんな人生無意味だと思わないかね!?」
フェイトの動揺は極限まで高まってた。しかし、その時
「待てぇい!」
「!?」
フェイトの後ろから男の声が聞こえた。
「戦いの歴史は大いなる悲しみを生む。しかしその凍てつく心を溶かすすべはある。いかなる悲しみをも癒す心。
人、それを慈しみと言う」
「何者だ!? 貴様!?」
「貴様らに名乗る名など無い!」
フェイトの後ろから現れたのはロム・ストールであった。ロムはエリオ達の近くで戦っていて、フェイトが捕まったことを知り、その場をジェット達に任せ一人、地獄島へと向かっていたのだ。
「ロ、ロム」
「フェイト、子供達の言葉を聞け」
フェイトの視線の先には通信越しで話すエリオとキャロの姿であった。
「僕達はフェイトさんに助けてもらって、少しだけどやっと一人で立てるようになりました」
「フェイトさんは何も間違ってないし、もし道を間違えたらちゃんと連れ戻します」
「「だから負けないで、迷わないで、戦って」」
その言葉と同時にフェイトの体が光り始めた。
「オーバードライブ、真ソニックフォーム」
「天よ地よ、火よ水よ、我に力を与えたまえ。パーーーーイル、フォーーーメーーション!」
フェイトはソニックフォームを起動させ自分を縛っていた糸を外し、ロムもバイカンフーを呼んだ。
「バーーーーイカンフーーー!」
「ゴメンね。ありがとうね。エリオ、キャロ。疑う事なんて無いんだよね。
私は弱いから、迷ったり悩んだりを、きっと、ずっと、繰り返す。だけど、いいんだ。それも全部、私なんだ」
「そうだ、フェイト。人はお互い助け合って生きるものなんだ。それをしようとしない貴様らを俺は許さん!」
「ふふ、人の思いが何だと言うのかね? あのイバリューダーも似たような事戯言を言ってた気がするが・・・」
「オーガンも人だ! そして貴様らはそれをしようとしない唯の悪! 俺達が成敗する!」
「出来るかね君達二人だけで?」
「誰が二人だけつったんだ!?」
後ろから突然声がし、スカリエッティ達の後ろから矢が3本飛んできた。
スカリエッティ達はそれを防ぐ。
「悪の心を持つものは自分の愚かな行動に気づかない。そしてその行動により正義の心を持つものに破れる。
人、それを愚か者と言う」
「誰だ!?」
「お前達に名乗る名は無い!」
その黒い影はスカリエッティ達の横をもすごい速さで通り過ぎた。その黒い影はフェイトとロムの前に現れた。
フェイトとロムの前に現れたのは飛影であった。
「ジョウ! どうしてたの!?」
「先に行ってたら、女が一人何かやってたから後ろから刀を突きつけて、その後すぐにヴェロッサって奴が来てその女を任せてくれって言うから来たんだよ」
ウーノが捕まったことを知ったセインはウーノの救出に向かったがシャッハと真ゲッターがそれを追う。
「竜馬、あの女が逃げるぞ」
「わかってらぁ! 隼人!」
「ふ、任せろ」
「「「オープンゲット!」」」
「チェーーーーンジ! 真ゲッターーーーーー2!」
真ゲッター1は真ゲッター2となり壁を掘り進み先回りしその巨大な姿はセインの前に出た。
「げ、まじで!?」
「ドリルハリケーーーーーーン!」
隼人が叫ぶと真ゲッター2の手からハリケーンが現れセインを襲った。
「「「オープンゲット!」」」
「チェーーーーーンジ!真ゲッターーーーーー1!」
そして真ゲッター2から真ゲッター1へと変形し、竜馬はセインにトドメをさそうとする。
「こいつでトドメだ! ゲッターーーーー・・・」
「やめてください。このままそれを撃ったらその人は死にます」
シャッハが竜馬にゲッタービームを撃つのをやめるよう求めた。
確かにスカリエッティの改造を受けてるとは言え、まともにゲッタービームが当たったらセインは死んでしまう。
あくまで自分達の目的は逮捕であり、殺すことではない。
「竜馬、ここはシスターの言うとおりにしろ」
「ちっ、わかったよ」
(今あの人「ちっ」って言いませんでした?)
シャッハは竜馬のちょっとした言葉に戸惑ったが何とかセインを気絶させた。
フェイト、バイカンフー、飛影がスカリエッティ、セッテ、トーレの前に対峙する。
「俺はあのブーメランを持つ女と戦う」
「じゃあ俺はあの性格がきつそうな女だな」
「「フェイト、お前はスカリエッティとやれ。俺達も加勢する」」
ロムがセッテ、ジョウがトーレ、そして二人を倒した後はフェイトと共にスカリエッティと戦うことになった。
「私達を甘く見ているようだが、君達の思惑通りにはいかんよ」
「へ、それはこっちのセリフだ。手前らのような悪党に負けるかよ!」
スカリエッティの言葉にジョウが反論する。
バイカンフーは一気に勝負を決めようと、剣狼と流星を出した。
「天空真剣極意、二刀一刃。天よ地よ、火よ水よ、我に力を与えたまえ!」
ロムは剣狼と流星の柄を合わせ一つの剣にし、セッテに向かって突進した。
セッテはブーメランブレードを十字にして防御体制をとるがツインブレードにより簡単に砕かれた。
ロムはブーメランブレードを砕きそのままツインブレードを手首で振り回し、セッテの体を斬る。
回転させながらバイカンフーの体ごと回転しセッテを切り裂き、蹴り上げる。
いつもならツインブレードの刃を相手に突くのだが殺すのが目的ではないのでツインブレードを持ってない左手でセッテを殴り叩き落し、
ツインブレードでセッテの上から斬り、着地と同時にしたらも斬った。
「これぞ、全てを断つ一刀なり。成敗!」
それと同時にセッテの体の切り傷からは血が噴き出しセッテは倒れた。
「ロ、ロム。まさか・・・」
「安心しろ。殺してはいない」
「よくもセッテを・・・」
「おっとお前の相手は俺だぜ」
怒りに燃えるトーレの前に飛影が立ち塞がる。
飛影は牽制のつもりで手裏剣を投げ、それに気を取られてる隙にマキビシランチャーをトーレに浴びせようとするがトーレはそれに気づきライドインパルスで逃れ飛影に斬りかかるも飛影も忍刀を使ってそれを防ぐ。
飛影とトーレはすさまじいスピードの中、激しく斬りあう。しかし、トーレは飛影の後ろを取る。
「もらった!」
しかし、飛影は突然と姿を消してしまった。
「な、何!?」
「バーカ、それは分身だよ」
トーレが切り裂いたのは飛影の分身であった。
つまりトーレのライドインパルスでは飛影の早さには付いていけなかったのである。
「今度はこっちの番だな」
ジョウがそう言うと飛影が5体以上に分身し、トーレ目がけで忍刀を向け切り裂いていく。
「トドメだ!」
そして飛影は忍刀で一気にトーレを斬りつけ地面に叩き付けた。
トーレも全身に血を流し倒れた。
「フェイトさんよ、俺は殺してねえよ。後はイカレタ変態野郎だけだ」
スカリエッティはフェイトやバイカンフーや飛影の足元から拘束術を使うが簡単に避けられ赤い糸は簡単に切り裂かれる。
そしてフェイトは二本のライオットザンバーでスカリエッティの頭を取るがスカリエッティは両手でそれを防ぐ。
フェイトの攻撃に気を取られている隙に飛影が忍刀でスカリエッティの腹を横から切り上げる。
上に上がったスカリエッティをバイカンフーがツインブレードで下に叩き落とし、フェイトはライオットザンバーを一つにし、
スカリエッティを壁に叩きつけた。スカリエッティ自身も改造していたため死ななかったが、二つの切り傷からは血が流れていた。
「ぐふ!」
「ジェイル・スカリエッティ。あなたを逮捕します」
ティアナと鋼鉄ジーグはノーヴェに抵抗をやめるよう説得していた。
「もう諦めろよ。お前だけじゃ俺達には勝てねえ」
鋼鉄ジーグがそういってる隙にディードが立ち上がり、ティアナを襲うが突然ティアナと鋼鉄ジーグの後ろから魔力弾が飛んで来て、
ディードに命中し、ディードは再び気絶した。それは遠いところからヴァイスが撃ったものであった。
「ディード! くそ!」
「今度こそ終わりね」
「あたし達は戦闘機人だ! 戦うことでしか生きる意味がねえ!」
ノーヴェが力強く主張する。すると鋼鉄ジーグは変身を解除し、生身の状態になり宙はノーヴェを思いっきり平手打ちした。
「な、何するんだ!?」
「お前は馬鹿か!? 俺だってサイボーグだよ!」
「な!?」
宙がサイボーグだったことにノーヴェは驚きを隠せなかった。
「俺もこの体になっちまったせいで、戦いを押し付けられたよ。
だがな、サイボーグにだからって諦めるなよ! ちゃんと戦う以外の道を考えろ!」
「あんた達だけじゃないのよ。同じ戦闘機人でもちゃんと人間らしく生きてる子をあたしは知っている!」
ノーヴェは宙とティアナの説得に応じ、抵抗をやめた。
ヴェロッサがウーノから引き出した情報や今までの戦況報告により戦闘機人は残り一人、クアットロのみになった。
クアットロはすでに残ったのが自分のみだと知っていた。
「あらあら、皆捕まってしまったのですね。使えないわね」
そう言うとクアットロは掛けてたメガネを投げ捨て、結んでいた髪をほどき、自分のお腹をさすった。
「でもま、私一人が残ればどうにでもなりますわ。ねえ、ドクター。
それに向こうの切り札も、もうじき潰れますしね」
クアットロが見ているモニターにはヴィヴィオにより壁にめり込んでいるなのは、仰向けに倒れるウイングガンダムゼロ、
両手、両膝をつくゴッドガンダムの姿であった。
投下は以上です。
次回がなのはStrikerS原作再現の最後になる予定ですが
最後の部分はクロスオーバーなどがあるので少し変わります。
さって…十九話完成…
投下、おk?
何もないので行きます
十九話「無限の欲望」
【アースラブリッジ】
「一番なって欲しくない状況になってもうたんかな?」
「「教会の…ううん、私の不手際だわ。予言の解釈が不十分だった。」」
「未来なんて、分からへんのが当たり前や。カリムや教会の皆さんのせいとちゃう。さて、どないしよか。」
「「はやて、クロノだ。本局は、巨大船を極めて危険度の高いロストロギアと認定した。
時限航行部隊の艦隊は、もう動き出している。地上部隊も協力して、事態にあたる。機動六課、動けるか?」」
「うん。」
【廃棄都市街】
「「聖王の器とゆりかごは、安定状態に入ったわ。クアットロとディエチはゆりかご内より私と交代。トーレとセッテ、セインはラボでドクターの警護。
ノーヴェは、ディードとウェンディ、13番目と一緒に…。ゆりかごが完全浮上して、主砲を撃てる位置。」」
「もう向かってる。」
「「二つの月の魔力を受けられて、地上攻撃ができる軌道位置までたどり着ければ、ゆりかごはまさに無敵…アルビノ様にも、あのゆりかごの勇姿をご覧になってもらいたいわぁ…」」
クアットロは冷たい微笑を浮かべる。
「ミッドの地上全てが人質だ。その状態なら、本局の主力艦隊とでも渡り合える!」
「そういやトーレ姉、一個疑問があるんッスけど。」
「「なんだ?」」
「あのゆりかごの中にいる聖王の器とかいう女の子って…ぶっちゃけ何?」
「「ふふふ、私が教えようか?」」
「「ドクター。」」
「「今から、10年ばかり前になるかね。聖王教会にある司祭がいてね。彼は敬謙な教徒にして、高潔な人格者だった。
それゆえに、聖遺物管理という重職についていたんだよ」」
「せい、いぶつ?」
「「聖王教会の信仰の対象。古代ベルカ時代の聖なる王様、聖王陛下の持ち物だったものとか、遺骨とかのことよ。」」
「へぇ〜。」
「「だが、司祭といえど人の子だ。彼は、ある女性への愛から、それに手をつけてしまったんだよ。
そして、聖ナイフに極わずかに含まれた血液からは、遺伝子情報が取り出された。古代ベルカを統べた偉大な王。聖王の遺伝子データがね。
そうして、聖王の種は各地に点在する研究機関で極秘裏に複製され、再生を待った。」」
「あたし達の王様になるため…だろ?」
「「生きて動いている聖王は、ゆりかごの機動キーなんだよ…王と言ってもただの器さ。」」
「はい、ドクター。質問」
「「どうぞ、セイン。」」
「レジアスのおっちゃんはまぁいいとしてさ。最高評議会だっけ?あっちのほうはいいの?
ガジェットの量産とか人造魔道師計画の支援をしてくれたのってあの人たちだよね?」
「「ああ、そうとも」」
「ゼスト様とかルーお嬢様も評議会の発注で復活させたんでしょ?評議会には評議会で何かプランとか思惑とかあったんじゃ…」
「「レジアスも最高評議会も希望は一緒さ。地上と時限世界の平和と安全。そのために、レジアスは計画を頓挫させられた戦闘機人にこだわり、最高評議会はレリックウェポンと人造魔道師計画にこだわった。
平和を守り、正義を貫くためなら、罪もない人々に犠牲を出してもいいと、なかなか傲慢な矛盾を抱えておいでだ。」」
「ん〜、何かよく分かんないなぁ」
「ッスね〜」
「ともかく、スポンサーである評議会のことを無視して、あんなでっかいおもちゃを呼び出したりしたら、怒られるんじゃないのって私は心配…」
「「はははは、ちゃんと怒られないようにしてあるさ。君たちは何も気にせずに楽しく遊んできてくれればいい。遊び終わったら我らの新しい家に、ゆりかごに帰ろう。そうすれば、世界の全てが我々の遊び場だ。」」
「へぇ…相変わらずドクターの話はよく分からんねぇ〜」
「そうッスね〜。ま、あたしら別に夢や希望があるわけでもなし。生みの親の言うとおりに動くしかないッスけどね〜」
【???】
「ジェイルは少々やりすぎだな…」
「レジアスとて、我らにとっては重要な駒の一つであるというのに…」
「我らが求めた聖王のゆりかごも、奴は自分のおもちゃにしようとしている。止めねばならんな…」
「だが、ジェイルは貴重な個体だ。消去するにはまだ惜しい。」
「しかし、かの人造魔道師計画もゼストは失敗。ルーテシアも成功には至らなかったが聖王の器は完全なる成功のようだ。そろそろ、良いのではないか?」
「我らが求むるは優れた指導者によって統べられる世界。我らがその指導者を選び、その影で我らが世界を導かねばならぬ。そのための生命操作技術。そのためのゆりかご。」
「旧暦の時代より世界を見守るために、わが身を捨て、この脳髄の姿となって永らえたが、もうさほどは長く持たぬ。」
「だが時限の海と管理局は、未だ我らが見守ってゆかねばならぬ。ゼストが五体無事であればな。ジェイルの監査役として最適だったのだが…」
「あれは武人だ。我らには御せぬよ。戦闘機人事件の追跡情報とルーテシアの安全と引き換えにかろうじて鎖をつけていただけだ。奴がレジアスにたどり着いてしまえば、そこで終わりよ…」
「失礼します…」
三つの脳髄が入ったカプセルの前に、青髪の女性が現れる。
「皆様…ホットメンテナンスのお時間ですが…」
「ああ…お前か…」
「会議中だ、手早く済ませてくれ…」
「はい…お悩み事のようですね…」
女性はカプセルの前にあるキーボードを叩きながら静かに呟く。
「何、粗末な厄介ごとよ…」
「お前が気にかけることではない…」
「はい…」
「レジアスや地上部隊からは何の連絡も無いのか?」
「ええ…未だに、何方からも…」
「そうか…しばらく慌しくなりそうだ…お前にも苦労をかけるが…」
「いいえ…私は望んでここにいるのですから…」
女性は顔を上げ、優しい笑みを三脳に送った…
【アースラブリッジ】
「「旧暦の時代。バラバラだった世界を平定したのは最高評議会の三人。現役の場を次の世代、私たちや時空管理局ってシステムに託してからも、評議会制を作って見守ってくれていた。
レジィ坊や…レジアス中将もやり方が時々乱暴ではあったけど、地上の平和を守り続けてきた功労者。だから、彼らが今回の事件に関わっているなんて、信じたくは、ないのだけれど…」」
ミゼットは瞼を閉じ、額を左手で押さえる。
「理由はどうあれ、レジアス中将や最高評議会は、偉業の天才犯罪者、ジェイル・スカリエッティを利用しようとした。そやけど、逆に利用されて裏切られた。
どこからどこまでが誰の計画で、何が誰の思惑なのか、それはわからへん。
そやけど今、巨大船が空を飛んで町中にガジェットと戦闘機人が現れて、市民の安全を脅かしてる。
これは事実。私たちは、止めなあかん。」
「ゆりかごには、本局の艦隊が向かってるし、地上の戦闘機人たちやガジェットも、各部隊と、津上さん、木野さん、北岡さん、上城先輩、キョウキ先輩、イブキさん、トドロキさん、
加賀美さん、影山さん、神代さんが協力して対応にあたる。」
「だけど、高レベルなAMF戦をできる魔道師は多くない。私たちは3グループに分かれて各部署に協力することになる…」
【アースラ艦内通路 作戦計画室前】
「別グループになっちゃったね。ごめんね、私…いつも大切な時に二人の傍にいられないね。」
フェイトはエリオとキャロの肩に手を置く。
「そんな。」
「フェイトさん、一人でスカリエッティのところになんて心配で…」
「緊急事態のためにシグナムには地上に残ってもらいたいし、アコース査察官やシスターシャッハも一緒だよ。一人じゃない。二人とも頑張って。絶対無茶とかしないんだよ。」
フェイトは二人を抱き寄せ、暖かく抱きしめる。
「はい。」
「それは、フェイトさんも同じです。」
【アースラ艦内通路】
「全く、ここまで面倒なことに巻き込まれるなんて思っても見なかったよ…」
「抜けるか?」
「冗談、今更逃げたら、ゴンに笑われる。それに、お前にメイクもできないしな。」
「今度は私を満足させることができるのか?」
「当然。」
「あの…シグナム、風間さん、途中で割り込んで申し訳ないんですが…」
リィンは自重気味に二人の会話に割り込む。
「あの騎士と赤い子…また来るでしょうか?」
「シグナムが目を付けてる奴か?」
「ゼスト・グランガイツと融合騎アギトだな。」
「え!?」
「(おやおや…お姫様はナイトのことをもうご存知か…全く…羨ましい限りだ。)」
「騎士ゼストについては、ナカジマ三佐がご存知だったよ。元管理局員、首都防衛隊のストライカー級魔道師。八年前に亡くなられたはずの、レジアス中将の…親友だそうだ。」
【アースラ格納庫】
「今回の出動は、今までで一番ハードになると思う」
「それに、あたしもなのはもおまえらがピンチでも、助けにいけねぇ。」
「だけど、ちょっと目を瞑って今までの訓練のことを思い出して。ずっと繰り返してきた基礎スキル。磨きに磨いたそれぞれの得意技。痛い思いをした防御練習。
全身筋肉痛になるまで繰り返したフォーメーション。いつもボロボロになるまで私たちと繰り返した模擬戦…」
「「「「ぐぅ……」」」」
フォワード四人は瞼を閉じ、今までの訓練や模擬戦を思い出す。
「目、あけていいよ。まぁ、私が言うのもなんだけど、きつかったよね。」
「「「「……」」」」
「それでも、四人ともここまでよくついてきた」
「「「「え?」」」」
「四人とも、誰よりも強くなった……とは、まだちょっと言えないけど。だけど、どんな相手がきても、どんな状況でも絶対に負けないように教えてきた。
守るべきものを守れる力。救うべきものを救う力。絶望的な状況に立ち向かっていける力。
ここまで頑張ってきた皆は、それがしっかり身についてる。夢見て憧れて、必死に積み重ねてきた時間。
どんな辛くても止めなかった努力の時間は、絶対に自分を裏切らない。…それだけ、忘れないで。」
「きつい状況をビシっとこなしてみせてこそのストライカーだからな。」
「「「「はい!」」」」
「じゃあ、機動六課フォワード隊、出動!」
「いってこい!」
「「「「はい!!」」」」
【アースラ格納庫ハッチ前】
「ふふふーん♪ふんふーん♪」
「五代さん…」
鼻歌を歌いながらゴウラムを磨いている五代の傍になのはが現れ、コーヒーを渡す。
「あ、なのはちゃん、ありがと。」
「なにやってるの?」
「ゴウラムを磨いてるんだよ。暫くほったらかしだったからねぇ…」
「…そうなんだ。」
なのははゴウラムの前にしゃがむ。
「スバルちゃん達は?」
「もうヘリで待機してるよ。先輩達も、皆準備は完了してる。」
「そう…」
「…五代さん。」
「何?」
「ごめんなさい…こんなことに巻き込んじゃって…」
「良いって言ってるでしょ。こんなこと、前にもあったし。」
「…あたし達…情けないよね。0号を倒したとき、もう五代さんには頼らないつもりだったのに、結局はいつも頼っちゃってる。
だから五代さんの拳は、いつもボロボロのままで…」
「ストップ。」
「え?」
「俺の戦う理由…忘れてないよね?」
【六年前】
五代「刑事さん!それと…なのはちゃん!俺…戦います!」
なのは「え!?」
一条「まだそんなことを!」
五代「こんな奴らのために!これ以上誰かの涙は見たくない!皆に笑顔で居てほしいんです!だから見ててください!俺の…変身!!」
………
「…」
「アンノウンの時も、モンスター大量発生の時も、ダークローチの時も、そして今回も理由は同じだよ。」
「五代さん…」
「それに…今のなのはちゃん、危なっかしいから。」
「うぅ…」
「君に何かあったら、おやっさんや桜子さんに怒られちゃうし、俺だって君に無事でいて欲しい。だから…俺は戦うよ。
それに俺…クウガだもん!」
「…うん、ありがと、五代さん。」
なのはは微笑み、五代にサムズアップを送った。
「どういたしまして!」
五代もなのはにサムズアップを送り、満面の笑みを浮かべた。
【数時間後…】
「ほんなら、隊長陣も出動や!」
「「うん!」」
「おう!」
アースラのハッチが開き、なのは、フェイト、はやて、ヴィータの四人が降下し、デバイスをかざす。
「「機動六課隊長、副隊長一同。能力限定、完全解除。はやて、シグナム、ヴィータ、なのはさん、フェイトさん、皆さん、どうか…」」
「しっかりやるよ!」
「迅速に解決します!」
「お任せください!」
「「うん。…リミット、リリース!」」
カリムがリミットを解除すると同時になのはとフェイトはバリアジャケット、はやてとヴィータは騎士甲冑を纏い、大空に飛び立った。
【アースラハッチ前】
「蓮…五代さん…」
「ああ。」
「大丈夫だよ…」
「よぉし!変身!!」
「変身!」
真司と連はカードデッキをかざし変身ポーズを取り、Vバックルにデッキをセットし、真司は龍騎サバイブに、蓮はナイトサバイブに変身し、龍騎サバイブはドラグランザーに、ナイトサバイブはダークレイダーに乗り、大空に乗り出した。
「変身!!」
五代もクウガ・ライジングドラゴンに変身し、ゴウラムに搭載されていた鉄パイプを取り出し、ライジングドラゴンロッドに変化させた。
そしてゴウラムの背に乗ってハッチから飛び立ち、なのはの隣に並ぷ。
「なのはちゃん…行くよ!」
「うん!(悲しい出来事。理不尽な痛み。どうしようもない運命。そんなのが嫌いで、認められなくて、撃ち抜く力が欲しくて…私はこの道を選んで、おんなじ思いを持った子たちに技術と力を伝えていく仕事を選んだ。
この手の魔法は、大切なものを守れる力。思いを貫き通すために、必要な力。……待っててね、ヴィヴィオ!)」
なのははクウガと共にゆりかごに突撃し、ヴィヴィオの救出に向かう。
そこで最大の悲劇が待ち受けていることも知らずに…
【???】
「ぐああぁぁぁあ!!」
「ぐぎゃあぁぁあ!!」
青髪の女性は手に巨大な爪を出現させ、三つの脳髄が入ったカプセルのうち二つを砕いた。
「な…なぜだ!!」
「ご老体に無理をされては…そろそろお休みを…」
「馬鹿な…貴様はジェイルの…!」
「あなた(評議会)が見つけ出し、生み出し育てた異能の天才児、失われた世界の知恵と限りない欲望をその身に秘めたアルハザードの遺児。開発コードネーム。アンリミテッドディザイアン…ジェイル・スカリエッティ。
彼を生み出し、力を与えてしまった時点でこの運命は決まっていたんですよ。
どんな首輪をつけようと、いかなる檻に閉じ込めようと、扱いきれるはずもない力は、必ず破滅を呼ぶものです。」
女性の青い髪が金髪に変わり、制服がナンバースと同様のスーツに変わる。
ナンバー2・ドゥーエがその姿を現したのだ。
「馬鹿な…馬鹿な!?」
「おやすみなさい…!」
ドゥーエは自分の固有武装・ビアッシングネイルを振るい、最後の一つのカプセルを破壊した…
【クラウディアブリッジ】
「機動艦隊、ポイント到着まで、あと三時間!!」
「三時間か…」
クロノはゆりかごの映像を見つめ、拳を握り締めた。
【甘味処たちばな地下】
「皆…揃ったかな?」
「はい!」
「揃ったぜ!」
「むぅ…」
「準備はオーケーだがや!」
「何も問題はあらへんで!」
「後は向こうに行くだけだ。」
ヒビキ、カブキ、トウキ、キラメキ、ニシキ、ハバタキの六人は勢地郎に特有のサインを送り、微笑む。
「幸い、サバキは助かったが…まだまだ安静にしていなければ駄目だ…怪人の追撃を考えると、ダンキ達もまだ行かせるわけには行かない。」
「大丈夫ですよおやっさん!俺達は、無事に帰ってきますって!」
「ヒビキ…」
「よぉし…ミッドチルダに行くぜ!!」
「「「「「おお!」」」」」
六人の鬼は階段を一斉に駆け上り、戦場に向かった。
「頼んだぞ…皆…」
【新ボード研究所エントランス】
「三原、志村、始、それから天道、乾、もうすぐ次元が繋がる。それからが本番だ。
準備は?」
「できてます。」
「別に良いぜ。」
「僕も大丈夫です、チーフ!」
「俺も…問題は無い…」
始はそう言いながら志村の手首の傷を見る。
「なんですか?」
「お前…その傷は何だ?」
「戦闘で付いたものですよ。それが、何か?」
「…いや…なんでもない…(どういうことだ…あの白いジョーカーと同じ場所に傷がある…
それにこいつからアンデッドの気配はしないが、奴はある程度自分の気配を誤魔化せると言った…
それにこいつは、あの時東京には居なかった…まさか…)」
「相川さん?」
「…!?、いや、なんでもない…本当に…」
始は志村に不信感を抱きながらも、その場は何も言わず、志村から視線を逸らした。
「天道…お前はどうなんだ?」
橘は次に天道に話しかけるが、天道は辺りを見回し、不満そうな表情をしていた。
「どうした?何が不満だ?」
「橘…役者が足りないぞ。」
「なんだと?」
「俺はそいつを連れてくる。お前達は先に行っていろ。」
天道はそう言うと橘たちに背を向け、自動ドアをくぐり、何処かへ向かった。
「なんだあいつ…相変わらずいけすかねー奴だ。」
巧は天道の態度に嫌悪感を抱き、愚痴をこぼす。
「橘…天道はまさか…」
「ああ…まさか…」
だが橘と始は不満を抱いている巧とは逆に、天道の言っていた台詞に少しの期待感を抱くのであった。
【ハラオウン邸】
「兄貴…次元は?」
「なんとか繋がったよ。もうすぐ通れるようになる。」
「よっしゃあ!」
ジョーはソファーから立ち上がり、ガッツポーズを取る。
「はぁ…はぁ…光太郎君、ジョー君、後は…お願いできるかしら?」
リンディは膝を付き、荒い呼吸を繰り返す。
「リンディさん!?」
「大丈夫ですか!?」
「はぁ…はぁ…ええ、なんとか…それより…」
「分かっています!ミッドチルダに向かえ…ですね!ジョー行くぞ!」
「おお!」
光太郎とジョーは急いでリビングから飛び出し、靴を履いて外に出て行った。
「頼んだわよ…RX…」
リンディはそう呟くと意識を失い、そのまま床の上に倒れた。
投下終了。
今回は分けずに書きました。
雑なところが多いですが、パッパと進めていきたいと思っておりますのでご了承を…
>>リリカルなのはStrikerS+仮面ライダー 氏
>>20の聖ナイフって聖骸布(せいがいふ)の間違いですね。
聖人の死後、その遺骸を包んだ布のことです。まあ、確かに聞いたことが
無いと本編の台詞を耳で聞いてもこの単語は思い浮かばないですよね。
ちなみに私達の現実世界でもイエス・キリストの聖骸布として伝えられる
ものがバチカン市国の聖ヨハネ大聖堂に保管されています。
おっとこれはいけない。
龍騎先輩に訂正をお願いするッす。
やっとデビルメイクライ3クロスの十三話が出来ましたよ…投下よろしいですか?
今回はバージル兄さんのターン、デッキのカードは「ツンの反動」何ですが。
それじゃあ投下します、デビルメイクライ3クロスで今回のメインヒロインはヴィヴィオです。
それと書き忘れましたStrikers+仮面ライダー氏GJです。
魔法少女リリカルなのは Strikers May Cry 第十三話「闇の剣士の帰還」
時空管理局それは数多の時空間の世界を法で総べる最大規模の法的機関である、そして時空管理局本局は管理局の大本営として次元の海に居を構えていた。
機動六課を離れたバージルは大型転送ポートにて元の世界に帰るために管理局本局にその身を置いていた。
転送ポートの使用時間まであと僅か、バージルは待ち時間を本局内のカフェテラスにて一人コーヒーを飲みながら読書をして時間を潰していた、そんな彼の前に一人の女性が現れる。
「この席よろしいかしら?」
バージルの向かいの席に緑の長髪を後ろで結んだ女性が立つ、服装から提督位の局員であると易く想像がつく、これが普通の局員であったら敬礼と敬語で返すのが道理であったが彼はなんでもない風に彼女に答えた。
「別に他にも席はあるだろうが。まあここが良ければ好きにしろ」
「それじゃあ失礼しますね」
そう言って女性は対面の席に座り緑茶を注文すると運ばれたその緑茶に……女性は砂糖とミルクを注ぎだしたのだ、さしものバージルもこの行為には顔を引きつらせた、今までの彼の常識と緑茶に対して抱いていた意識が根底から覆された。
(この世界の人間はこんな風に緑茶を飲むのか…)
一人驚愕を覚えるバージルにその女性が口を開いた。
「この店で時間を潰しているみたいですけど、転送ポートの時間待ちですか?」
「そんな所だ」
「こんな時期にどちらへ? よければ教えて頂けませんか?」
「俺の事なら八神から聞いてよく知っているだろうが、リンディ・ハラオウン総括官」
その女性は時空管理局総務総括官リンディ・ハラオウン、六課後見人でもありクロノとフェイトの母でもある六課隊長陣とは長年の付き合いを持つ管理局の高官であった。
「あら…やっぱりばれてましたか。はじめまして管理局総括官のリンディ・ハラオウンです」
リンディは驚かそうとしたのが失敗して、まるで少女のようにバツの悪そうな顔をした。
「それで管理局の高官が一介の嘱託魔道師になんの用だ?」
「一応あなたの出身世界を探したのは私とクロノですから、最後にあなたの案内を私が買って出たんですよ」
「そうか」
「バージルさん…一つ聞いて良いですか?」
「なんだハラオウン総括官、六課に戻れという話なら受け付けんぞ」
「そんな事は言いませんよあなたの選択はあなたが決める事ですから、ただ少し気になって……あなたは何の為に今、元の世界に戻るんですか?」
「お前に教える道理はない」
「そうですか…」
俺が元の世界に戻る理由など一つだけだ今度こそダンテからフォースエッジとアミュレットを奪いテメンニグルを起動し魔界への道を開く、今の俺の力ならば半日とかからずに終わるだろう。
それが俺の全てだ、父の力を得る為に完全な悪魔へと成る為に、それを成す為ならばこの世界で得たものなど一片の価値も無い、俺を師と呼び教えを仰いだ者も仲間と呼んだ者も……そして兄と慕った者も。
求め続けた絶対最強の頂が目の前にある、だが俺の心には微塵の昂ぶりも無かった、あるのは空虚な虚脱感と共に手にかかる重み……それは“あの時”俺の手を握り締めた少女の手の感触。
握り返せば潰れてしまいそうな弱弱しいそして柔らかく温かい手の感触だった、その温もりが何故か今この手に蘇ってきた。
『ギルバ嘱託魔道師、転送ポートの準備がもうすぐ整います受付までお越し下さい』
転送用トランスポーターの受付からリンディ・ハラオウンと共に準備を待っていた俺に放送が入った、俺は少ない荷物を詰めた小さな鞄と閻魔刀の入った刀袋を持ち転送ポートまでの短い廊下を歩く。
「あなたの出身世界は管理外世界ですから、転送の為にある程度は人目につかない場所に特定してからの転送になります、それと…」
リンディ・ハラオウンが俺に管理外世界への転送について説明をしてきたが既に知っている事だけに大して興味もなく聞き流した、そして転送の説明を終えて俺と分かれる際にリンディ・ハラオウンは言葉を残していった。
「バージルさん、最後に一つだけ良いですか?」
「何だ? 手短にしろ」
「あなたがどんな選択を選ぶにしろ絶対に自分は偽らないで…後悔だけはしないで下さい、きっと六課の皆もそう望んでいますから」
「ふんっ、下らん事を……それでは世話になったな」
「ええ、さようなら」
そう言い切った俺はリンディ・ハラオウンと別れ歩き始めた、転送の予定時間は間近だった。
「あれが例の彼?」
転送ポート受け付けに向かったバージルの後姿を見送るリンディに声をかけたのは彼女の古い親友レティ・ロウラン提督だった。
「ええ」
「それにしても世話になった六課の皆が大変だってのに薄情な人ね…」
「あの人にもきっと事情があるのよ、でも…」
六課の人間を冷たく見捨てたバージルに毒を吐くレティを諌めながらリンディはバージルの目を思い出して思わず呟いた。
「あんな悲しそうな…辛そうな目で何処へ行くのかしらね…」
その時ミッドチルダに現れた聖王のゆりかごと共にスカリエッティが管理局の全ネットワークに通信映像を送ってきた。
無能の狂った科学者が聖王のゆりかごとか言う兵器の映像と共に相変わらず訳の分からん理屈を局の通信に送ってきた、こんな自己満足の通信を入れるなど愚かの極みだな…俺は改めて無能な愚者だと感じた。
その映像と演説を冷めた目で眺めながら転送ポート受付に足を進める俺に見覚えのある少女の姿が見えた、それはゆりかご内部の玉座に括り付けられたヴィヴィオの姿だった。
「生きて…いたのか」
思わず俺は口を開いた。
スカリエッティが管理局に送ってきた通信映像でゆりかご内のヴィヴィオが映し出される、ヴィヴィオは玉座の妙な装置に括られ苦痛と恐怖に幼い顔を歪めていた、そして悲痛な叫びを漏らす。
『うわあーん いたいよおー! こわいよー!!』
バージルは思わず目を逸らした、感じる筈の無い鋭い痛みが彼の胸を貫き全身を駆け巡り鼓動が高鳴る。
(何故俺は目を逸らす!? この胸に走る感覚は何だ!? 俺が動揺しているとでも言うのか…そんな事はありえん!!)
自身の動揺を必死に抑えながらバージルは顔色だけは変えずに転送ポート受付に向かって歩き続ける、その彼の耳に幼い少女の悲痛な叫びは響き続ける。
『ママー ママー!!』
(例えあの娘が生きていようとも俺には関係ない…俺は今度こそ手に入れる…最強の力を親父の力を。それに比べればあの娘の命など…)
強い自制の心と凍りついた理性で転送ポート受付の直前まで来たバージルの足が次の瞬間に響いた声に止まった。
『たすけてええ おにいちゃああん!』
バージルに助けを求めるヴィヴィオの声が通信を介して響き渡り、彼の全てを止めた…それは足だけでない今まで冷静に働き続けた精神はおろか心臓や周りの空気さえ止まったかのような錯覚だった、その助けを求める声はどんな拘束魔法よりも彼の心と身体を縛った。
「兄と呼ぶか…この俺を…」
バージルは自分でも気づかぬ内に手を強く握り締め歯噛みしながら呻くように呟く。
「助けを呼ぶか…この俺に」
思い出されるのは瀕死の重傷を負っても血の繋がらない家族の助命を請うた隻眼の少女。
“例え血の繋がりなど無くとも…あの子達は私の家族ですから”
思い出されるのは母を無残に殺されながらも憎悪に穢れず、その手の力で希望を語った少女。
“私は魔法を…泣いてる誰かを助ける為に使っていきたいから”
そして何より思い出されるのは彼を仲間と友と呼んだ燃え盛る炎のように熱い烈火の将の言葉と曇りなき瞳。
“バージル…守れるのは、取り戻せるのは今だけだ”
“自分の心まで偽るのか…私に飾るなと言ったのはお前だぞバージル!! 人の心まで捨てるか!!”
“…お前は人間だバージル…不器用で弱くて強い…優しい人間だ”
彼女達の言葉と共にバージルの脳裏を駆けたのは家族を失った古い過去の記憶そして彼を兄と慕った幼い少女の姿。
求め続けたその力は何の為だったのか誰の為だったのか今ではもう彼自身にも分からない、ただ分かるのは今の自分の手には何かを誰かを守る力を持っているという事だった。
バージルは烈火の将に殴られた頬に手を当てる、ある筈のない痛みと熱が心の一番奥に染み込んでていくのを感じた…。
そして半魔の剣士は魔と闇に彩られた冥府魔道に背を向けて歩き出す、彼の助けを待つ者達の下へと。
実はデビルメイクライもやったこと無いんだぜー支援
夜天の王とその仲間達が紡いだ絆が、烈火の将の与えた熱き心が、無垢なる少女の悲痛なる慟哭が、凍りついた闇の剣士の心に二度と消えない炎を灯す。
「全隊後退っ!! 第三次防衛ラインまで下がって増援部隊の到着まで防衛ラインの死守や!!」
ゆりかごから射出されるガジェットと空を埋め尽くす悪魔の圧倒的な物量に、接近する事さえ出来ずに航空魔道師の部隊を指揮するのは機動六課部隊長である八神はやてであった。
はやては長距離砲撃“フレースヴェルグ”“ラグナロク”広域空間攻撃“デアボリックエミッション”等の強力な魔法の数々により敵の数を半減させる。
しかし数万を超える敵を掃討する事はできず、航空魔道師部隊の支援砲火も虚しく遂には敵の接近により敵味方入り乱れた乱戦へとなった、そして状況は混沌を極める。
「あかん! 敵の数が多すぎや…中に入ったなのはちゃんとヴィータの救援にも行かれへん!! せめて内部に突入できれば…一体どないしたら…」
悪化し続ける状況に歯噛みしながらはやては飛び交うガジェットと悪魔を射撃魔法で落としていく、例えリミッターの解除されたSSランクの魔道騎士のはやてとて数万を超える敵を限界ギリギリの出力で攻撃し続ける戦いに疲労はピークに達しかけていた。
過酷な戦況に息を切らせたはやての背後に黒い影が迫る、大鎌を振りかぶった悪魔ヘル・ヴァンガードが彼女のその首筋へと死の一閃を走らせた。
「えっ…」
振り向いた時には既にその死の刃は彼女の眼前に迫っていた、もはや防御も回避も不可能な攻撃にはやては自分の無力を思う。
(もう間に会わへん…命に代えても皆を助けようと思っとったけど何もできずに終わるんやな…ゴメンな皆、私先に逝ってまうわ…)
しかしその死神の刃がはやての柔い首を裂く事はなかった、彼女を救ったのは魔を喰らう妖刀その名を閻魔刀、振るうのは半魔の血肉を持つ魔剣士バージル。
「バージル…さん」
「どうした八神。この程度で諦めては夜天の王の名が泣くぞ」
バージルはそう言うや否や閻魔刀を斬り返し鎌を持つ悪魔を両断、さらに背に掛けた魔剣のデバイス、フォースエッジ・フェイクを周囲の敵に投げつけるそれは高回転で対象を追尾する魔剣の技ラウンド・トリップ。
次いで鞘に戻した閻魔刀に莫大な魔力が収束し鍔鳴りと共に周囲数百メートル以内の敵が大量の空間斬で刻み落とされる、広範囲に連続で空間斬を起こす閻魔刀を用いた技の最高峰“広域次元斬”である。
嵐のように掃射される幻影剣の刃も加わり乱舞する魔技の圧倒的な殲滅力に瞬く間に周囲の悪魔とガジェットは消え失せる。
「ど、どうしてここに? 元の世界に帰ったんじゃないんですか?」
周囲の敵の一掃された空で、はやては目の前に現れたこの世界から去った筈の男に目を丸くしながら口を開いた。
「予定変更だ。俺はまだ未熟だからな今の魔法知識では足らん、だから八神…」
「えっと…はい」
「再契約だ」
はやての目を見つめるバージルの瞳にはもう以前の殺気や力への渇望に憑かれた悲しみは欠片もなかった。
「…それじゃあ、私から再契約の条件が一つあります」
「何だ?」
「人は絶対に殺さへんって約束して下さい」
「断ると言ったらどうする?」
「全力でぶっ倒して言う事聞かせます」
「出来るとでも思っているのか?」
「この超美少女を舐めとったら大火傷やね」
互いに吐いた皮肉めいた冗談に二人は苦笑する、そこには以前の剣呑さは無くあるのは信頼しあった仲間同士の目に見えぬ強き絆だった。
「いいだろう。代わりと言ってはなんだが俺からもお前に再契約の条件がある」
「何ですか? 今なら大サービスでスリーサイズだって教えます! プロポーズだって受けたげますよ〜♪」
「生きろ」
「えっ? “生きろ”って…」
「この先どんな強敵、逆境が来ようとも決して死ぬな生きて帰れ。お前は生も死も急ぎすぎだ」
その言葉に込められた思いにはやては胸に熱いもの感じた、飾らない優しさが彼女の全身を満たしていった。
「…了解や。これで契約完了やね」
「ああ。それともうすぐこちらにリンディ・ハラオウンから“荷物”が届く…」
「リンディさん!? “荷物”って一体なんですか?」
「今は説明する時間が無い。とにかく届いたら最前線に送り込め」
「分かりました…」
「俺はあの泥舟を沈めに行って来る。六課の者は誰か突入したか?」
「なのはちゃんとヴィータがもう進入してます。ゆりかごに行くんでしたらデバイスに突入した経路と今までの情報も送っときますね」
「分かった。ついでだがこれは置き土産だ取っておけ」
その言葉と共にはやての周囲に10本の幻影剣が攻勢防御として展開され彼女の身体を守るため配置される、10本全ての幻影剣には凄まじい魔力が込められていた。
「バージルさん! こんな所で私に高い魔力使ったら…」
「気にするな。では行ってくる」
そう言い残し魔剣士は救うべき少女の下へと連続空間転移を行い姿を消した、魔剣士の消えた空で夜天の王は彼との間に交わした誓いを胸に、再び心に熱い炎を宿す。
「あかんなあ〜。あないな約束したらもう簡単に死ねへんわ」
はやての周囲に再び敵が集い始める、しかしもはや彼女が負ける要素など微塵も在りはしない。
周囲の悪魔達に不敵な笑みを向けながらはやての魔力が空気中に溢れる程に高まっていく、その圧倒的な力に魔界の悪魔達ですら恐怖を感じ震え始める。
「もう負ける気なんかせえへん! 夜天の王に歯向かった事を地獄で後悔しいや!!」
魔剣士の残した青き魔力の刃で守られ夜天の王が魔界の亡者を滅ぼさんと背の黒き翼を翻す。
ゆりかご内部に突入しメインの動力路を目指すヴィータは一人で群がる敵を叩き潰していた、しかしガジェットに傀儡兵さらには無数の悪魔を相手に最強クラスのベルカの騎士も傷つきその紅い騎士甲冑に血の朱を混ぜ始める。
「くそっ…全然減らねえ。数が多すぎる…」
ヴィータの前に幾度目になるのか、塵を媒介に低級悪魔ヘル・プライドを従えた大鎌の死神ヘル・ヴァンガードと天使のような白き翼を持つ悪魔“フォールン”が現れた、ヴィータは重ねた消耗の為にカートリッジを使用してデバイスに魔力を満たす。
「カートリッジは惜しいけど、ここで死んだら意味がねえ。行くぞアイゼン! ラケーテンハンマーッ!!」
魔力を込めた破壊の大槌の一撃が独楽のように回る紅い騎士の手により放たれる、轟音を響かせ悪魔共を塵に還すヴィータだが攻撃を終えた一瞬の隙に敵の接近をゆるしていた。
「なっ!?」
ヴィータに放たれたのは強い粘性を持つ強靭な蜘蛛糸、数体の蜘蛛型悪魔アルケニーがその糸で彼女を絡め取り身動きを封じた。
「くそっ! こんなもんすぐに千切って…」
ヴィータが言葉を言い切る前に既に蜘蛛型悪魔はその鎌のような足で彼女を殺そうと迫っていた、そんな時懐かしい声が彼女の耳に届いた。
「いつもの威勢はどうした鉄槌?」
そして高速移動と共に放たれた閻魔刀の疾走居合いで悪魔を斬り裂きながら闇の剣士が救援に駆けつけた。
「お前…バージル…」
驚くヴィータをよそにバージルは眼前の敵を刻みながら幻影剣で彼女の身体を縛る蜘蛛糸を切断した。
ヴィータの驚愕が冷めた時には群がる有象無象の敵は塵と鉄屑へとその姿を変えていた。
「おい…バージル…お前なんで戻って来てんだよ?」
「なんだ鉄槌、助けはいらなかったか?」
バージルの意地の悪い質問にヴィータは不満そうな顔をして答える。
「…お前って性格悪いよな意外と…」
二人がそんな会話をする中、正面にまた敵が無数に現れる、ガジェットの中には大型のV型が悪魔の中には比較的位の高いヘル・ヴァンガーやフォールンが多く混じっていた。
「少しどいていろ鉄槌」
「“どいていろ”ってお前何するつもりだよ。ここは二人で…」
「お前はこの先に用があるのだろう? ならば力は温存しておけ」
ヴィヴィオかーいいよ そんなヴィヴィオの呼びかけに反応する兄貴もかーいいよ 支援
バージルはそう言うと抜刀の構えから閻魔刀を抜いた、妖刀の刃が空間を抉り“広域次元斬”により壁や床ごと前方の敵が斬り伏せられる。
空間ごと斬り裂く数百の死の閃きを免れた敵の残党にフォースエッジ・フェイクと閻魔刀の二刀を構えたバージルが間をおかずに踊りかかる、さらに幻影剣の射出を加えた追撃はさながら嵐のような激しさで敵を掃討する。
「終わったぞ鉄槌。早く行け」
ヴィータが自身のデバイス、グラーファイゼンに予備カートリッジを再装填するのが終わる間もなくバージルは敵を掃討し閻魔刀を鞘に戻していた。
「あたしは動力炉をぶっ壊すけど、お前はどうすんだよ?」
「俺は中枢で指揮をとる者を探してから玉座の間に向かう。頭を叩けば少なくともこの泥舟も玉座の装置も止められよう。ところで高町はどうした?」
「ヴィヴィオを助けに行ってる」
「そうか」
最低限の言葉を交わして二人は道を分かれようと背を向け合う、その時ヴィータが背中越しに振り向き声をかけた。
「あのさ…バージル」
「なんだ?」
「助けてくれて…ありがとな…それと……おかえり」
「ああ」
恥ずかしげに言葉を吐いた鉄槌の騎士は少し頬を赤く染めるそして彼女は再び果たすべき目的に向かって飛び立ち、闇の剣士はこの狂った宴を催す主を断罪し運命に翻弄される少女を救うべくその足を戦船の奥深くへと進めた。
高町なのはが玉座の間で古代ベルカ王族の固有スキル“聖王の鎧”を発動したヴィヴィオと交戦をする最中、彼女の放ったサーチャーが最深部制御室でゆりかごを操るナンバーズ4番クアットロを発見した。
「…だけどここは最深部…ここまで来れる人間なんて…」
自身の身の安全が脅かされ恐怖に身体を震わせるクアットロ、本能で恐怖を感じても彼女の理性は冷静に状況を熟慮する。
(そうよ、あの女は玉座の間にたどり着くまでにアレだけの悪魔とガジェットを倒したんだからここまで壁を抜いて攻撃する余力なんて…)
現状を確認するクアットロの背後から聞き覚えのある冷たく殺意に満ちた声が響いた。
「確かに人間なら来れんだろう…人間ならな」
その言葉に冷徹に働き続ける筈のクアットロの頭脳が凍りつく、その声は以前自分を殺そうとした悪魔の声だった。
「ああ…あ、あなたが。なんでここに?」
振り返ったクアットロの目に映ったのは殺気はおろか瘴気すら立ち上らせて彼女を睨む闇の剣士バージルだった。
「俺の転移魔法ならこの程度は造作も無い、高町のサーチャーもあったしな。それよりも随分とあの二人につまらん事をしてくれたみたいだな…」
制御室のモニターに映るなのはとヴィヴィオを見ながらバージルは静かにクアットロに話しかける、彼は現在の状況をデバイスに送られた情報で知っていた、クアットロの行った悪行と悪意に満ちた言葉の数々も…
「ま…ま、待ってください。あなたが私たちに敵対する理由なんてもうないでしょう? だったら私たちと…」
その言葉を言い切る前にクアットロのつま先に魔力で作られた刃、幻影剣が刺さった。
「がああっ!!」
流血する足を押さえながら悶えるクアットロをバージルはまるでゴミにたかる蝿でも見るような目で見下ろしていた。
「どうした? もう終わりか? もっと聞かせてみせろ貴様の得意な下らん演説を…」
「ああ…ま、待ってください…私は…」
次は手の甲と肩が抉られた、クアットロは悲鳴を上げてのた打ち回り血を床に塗り始める、バージルはそんな彼女に一歩ずつ近づきながら幻影剣の射出を行った。
幻影剣はクアットロの膝を肩を肘を耳を様々な場所を少しずつ丁寧に貫き抉り裂いていく。
「まってください、た、助けてください、お願いだから…お願いだから殺さないでええ!」
クアットロは涙と鼻水と血で顔を汚しながら死なない程度に全身に付けられた裂傷を手で塞ぎ、地を這いながら命乞いをした。
「“助けて”…か」
バージルは歩みを止めてクアットロの言葉を反芻する、そして彼の顔色を伺っていたクアットロに目を合わせた、それは笑顔だったしかし目は一切笑ってなどいなかったし優しさも欠片も込められてはいなかった。
「お前は…」
言葉を紡ぎながらバージルは腰の鞘に納められた閻魔刀に手を伸ばす。
「…そう言ったあの娘に…」
そしてクアットロの目に圧倒的な絶望が色付き始める、バージルの手は緩慢ですらある速度で閻魔刀の柄にかかる、動作が遅いほどクアットロには深い恐怖が刻まれていく。
「…何をした?」
次の瞬間閻魔刀の鍔が甲高い金属音を奏でた、常人の目には追うことさえできない居合いの刃が閃いた。
「えっ…」
驚きの声を上げると共にクアットロが最初に感じたのは“熱”首筋が妙に熱いと感じて手で触れるとヌルリとした感触と共にそこに付いていたのは赤、自分の身体から流れた生命の色だったそして彼女の意識は深い闇の中に落ちて行った。
「少しやりすぎたな…」
バージルは目の前の惨状に自戒の言葉を口にする、彼はクアットロを殺してはいなかったのだ、最後に放った閻魔刀の居合いは風圧のみで軽く首の皮を裂いただけだったのだが恐怖のあまり気絶させてしまった。
「さてと、この木偶をさっさと叩き起こしてあの状態を止めねばな…」
モニターに映る聖王の鎧の力で暴れるヴィヴィオに目をやりながらバージルは静かに呟いた。
「くっ…」
ヴィヴィオを救うため玉座の間に来たなのはだが聖王の鎧を纏ったヴィヴィオの攻撃に苦戦を強いられていた、ゆりかご内でのガジェットや悪魔との戦闘に加えてブラスターモードの開放で体力魔力共に消耗し…なによりヴィヴィオと戦うという事が彼女の戦意を削いでいた。
(サーチャーに感じたのは“あの人”の魔力? だったら迂闊に壁抜きはできない…こうなったらあの技でヴィヴィオを…)
胸中で助けに来たであろう魔剣士を想いなのはは最後の手段である最強の技を使う算段をする、その時玉座の間に転移魔法の発する空間の歪みが生じ青いコートを纏った闇の剣士がその手に敵の一人を下げて現れた。
「バージルさん!」
「バージル…お兄ちゃん」
なのはとヴィヴィオは突如現れたバージルに共に驚愕を覚えて口を開いた、そしてバージルはバインドで簀巻きになっているクアットロを邪魔にならぬように横に放って二人に近づいた。
「来ないで!!」
ヴィヴィオの口から出たのは拒絶の言葉、そしてヴィヴィオは目にいっぱいの涙を溜めてバージルを見つめる。
「分かったの私…もうずっと昔の人のコピーで…なのはさんもフェイトさんも本当のママじゃないって…バージルさんは本当のお兄ちゃんじゃないって…」
そのヴィヴィオの言葉にバージルは瞳を悲しみに染めて一歩ずつ彼女に近づいて行く。
「来ないで! もう私の事は放っておいて!!」
近づくバージルにヴィヴィオは高出力の魔力を込めた拳を叩き込んだ、なのはの防御すら破壊するそれをバージルは何の防御手段も用いずに脇腹に受けた。
「がはあっ!」
バージルの身体から肉を裂き骨を折る異音が響く、折れた肋骨が肺を引き裂き彼の口元を赤く染める、魔力ダメージも加えれば常人なら重症必至の傷であった。
「あ…あああ」
口から血を吐くバージルと彼の脇腹に突き刺さった自身の拳を見てヴィヴィオは制御できない自分の力にまた悲しみの涙を流す、しかしバージルは突き刺さったその拳にそっと手を置きヴィヴィオに優しく話しかけた。
「こんな事を言った者がいた“血が繋がらずとも家族はいる”とな…」
涙に濡れるヴィヴィオの瞳を見つめるバージルの目には憎悪も怒りも悲しみもなかった、あるのは深い優しさと慈しみの想い。
「お前が望むなら…高町はお前の本当の母になろう…そしてもしお前が望むなら……」
バージルは一度言葉を心中で噛み締めると真っ直ぐにヴィヴィオの瞳を見据えて言葉を紡いだ。
「…俺はお前の兄になろう」
その言葉にヴィヴィオは濁流のように涙を零しながらまた魔力を暴走させ始める。
「うわあああああ!!」
制御できない魔力を周囲に撒き散らし暴走するヴィヴォオをバージルは優しく抱きしめて制する。
「高町。早く俺ごと撃て」
「でも! そんな事したらバージルさんまで…」
「構わん、俺ならお前の砲撃程度は耐えられる。敵からの情報では魔力ダメージで体内のレリックコアを破壊するのが最善だそうだ。なによりも……親ならば子を助けてやれ」
「…分かりました」
なのははそう言うとブラスタービットを展開しブラスターモードを完全に開放、最強の砲撃魔法“スターライトブレイカー”の準備に入る。
「これが私の全力全開! スターライトブレイカー!!!」
閃光がバージルとヴィヴィオを貫き周囲を光でを満たした、砲撃で大きく抉られた玉座の間のクレーターの中に元の幼い姿になったヴィヴィオとバリアジャケットを焼け焦がしたバージルの姿が煙を割って現れる。
「ヴィヴィオ!」
「こないで…」
なのはがそのヴィヴィオに慌てて駆け寄ろうとするがヴィヴィオはそれを制する。
「ひとりで…たてるよ…」
ヴィヴィオは一人ふらつく足で立とうとするが、その小さな身体は大きな手で優しく支えられた。
「子供が無理をするな、お前は一人ではないのだから」
「おにいちゃん…」
膝を突いたバージルが優しくヴィヴィオの身体を支える、ヴィヴィオはバージルに支えられ駆け寄ったなのはに抱き上げられる。
「ヴィヴィオ…」
「ぐすっママ〜おにいちゃ〜ん」
「まったくそんなに泣く奴があるか…」
バージルは泣きながらなのはに抱き上げられるヴィヴィオから近づいた気配に顔を向ける。
「遅いぞ。もう全て終わっている」
バージルが声をかけたのは救援に駆けつけたはやてとリィンであった、はやて達は動力炉を破壊して消耗したヴィータを助け、なのはとバージルを救うべく二人の下に全速力で飛んで来たのだった。
「あちゃ〜。活躍する見せ場はもう無いみたいやな〜」
「ザンネンです〜」
「そんなに活躍したいならそこの木偶を運べ」
残念そうにするはやて達にバージルは先ほど横に放ったクアットロを指差した、はやてはそんなクアットロに近づいてデバイスでツンツンとつついて生存を確認してから苦笑してバージルに向き直る。
「ピクピクしてますよ〜生きてるみたいです〜」
「とりあえず約束は守っとるみたいやね〜。でも女の子にあんまヒドイ事したらあかんよ〜」
「手加減はした。息があるだけでも感謝しろ」
そんなはやて達にバージルは相変わらずの答えを返す、その時玉座の間の扉が突然閉まり警報がゆりかご内部に鳴り響く。
「これは一体!?」
「なんや? もしかして“お約束”の自爆フラグかいな! ベタ過ぎて突っ込めんわ…」
「自爆に巻き込まれて終わるなんてB級映画の脇役みたいな最後は嫌です〜」
なのは達が驚く中、バージルは床に転がっていたクアットロの口に猿ぐつわとして噛ませていたバインドを緩めて質問を投げた。
「おい木偶これは何だ? 早く答えんともう2・3回抉るぞ」
「は、はいいい! こ、こ、これは船の制御と動力関係の異常に聖王の器の喪失でゆりかごが自衛モードに入ったんです、こ、このままだと自動的に衛星軌道上に出て地上を攻撃します」
「なんとかしろ。殺すぞ?」
「む、む、む、む無理です、聖王の器がいないと細かい制御は不可能に設定されてるんです」
「使えんゴミが…おい八神。とりあえず早くここから離脱するぞ」
バージルは彼の容赦の無い尋問っぷりに顔を引きつらせるなのは達に向き直り脱出を促す。
「でもバージルさん。AMF濃度がかなり高くなってます! このままじゃ魔力結合が出来ませんよ〜」
リィンが現状を確認し焦りの声を上げるがバージルは静かに閻魔刀に手をかけていた。
「お前らのデバイスと悪魔や閻魔刀の力を一緒にするな…少しさがっていろ」
そう言うと極大の魔力がバージルの手に収束すると共に鞘に刀身を埋めていた閻魔刀が閃き空間を大きく斬り裂き抉った、そして玉座の間の天井が妖刀に割られて青い空を晒す。
「俺に掴まれ。飛ぶぞ」
「分かりました」
「うん。おにいちゃんがんばって」
「はいです〜」
「了解や! でもバージルさん、美少女が掴まるからってセクハラはダメやからね〜。でも私やったらちょっとくらい乳揉んでもええよ〜♪」
なのは達からそれぞれの返事が返りバージルは魔力の結合のできないなのは達(+木偶人形1体)を抱えて割れた天井からゆりかご上部に飛び出した(ちなみにクアットロは網にかかった魚よろしくバインドによる簀巻き状態で吊るされて運ばれた)。
「まだAMFが重いみたいやね。とりあえずヘリの回収でも待った方がええみたいや」
はやてがそんな声を上げた時、全員をゆりかご上部まで運んだバージルが膝をつき倒れかける。
「「「バージルさん!」」」
「おにいちゃん!」
なのは達が膝をつくバージルに慌てて駆け寄る、いくら半魔の血を持つ魔剣士といえここまで1000体以上の敵を斬り伏せ高町なのはの最強砲撃魔法を受けた身体は過度の消耗に力を幾分か失っていた。
「大事ない。気にするな…」
バージルは心配する4人に答えながら立ち上がる、その時そんな彼らに射撃魔法の雨が降り注ぐ。
「くっ…新手か!!」
「リィン大丈夫か!?」
「はいです!」
「ヴィヴィオ、しっかり掴まって…きゃああっ!!」
なんとか防御魔法を展開する彼らに高速移動で何者かが接近しヴィヴィオを抱えるなのはを攻撃、ヴィヴィオをすかさず奪い去り距離を取った。
「貴様…生きていたのか……アーカム」
バージルは攻撃が止み煙の立ちこめる中で呻くように口を開き少女を奪い距離を取った破戒と狂気の司祭を睨みつけた。
「お久しぶりだねバージル。また会えて嬉しいよ」
男の名はアーカム、バージルと同じようにこの魔道の栄える世界に訪れた悪魔に魅入られし背徳の司祭である、かつて手を組みそして殺しあった二人の男が再び出会う。
続く。
投下終了です、ツンの後にデレが来る故にツンデレ…ならば今回のバージル兄さんのデレも当然の帰結! ってことでどうか勘弁してください。
次回は待ちに待った我らがシグナム姐さんやスバル嬢を活躍させたいと思ってます。
リアルタイムで読ませてもらいました、GJです。
今回はデレの巻だったせいか、クアットロに対する扱いが未だ易しいような気がするw
そしてなんという良い兄貴っぷり。
次回のシグナム&スバルとの絡みもワクワクしてまいます。
それにしてもはやては随分テンション高いですなw
GJ!兄貴がデレ期に入ってもうた!
見事な漢っぷりです!しかしまだ本当の全力は出してない兄貴、そして荷物ってなんだ!?何なんだ!?
45 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/11(火) 19:00:47 ID:lvByybPk
GJです。
悪魔化すらしてないのにキチガイな頑丈さだ。
GJです
お兄ちゃん宣言して、助け出したと思ったら、またさらわれるヴィヴィオ。
魔人化くるか?
そして、ヴィヴィオを、ダンテに紹介する兄さんを幻視した。
まあ週休六日制の弟よりはよっぽど地に足ついてるし子供を育てる資格は十分なのではないかと
GJ!
てっきり、弟を引きずってくるのかと思ったけどそんなことはなかったぜ
まあ、非殺傷なんて器用な真似できそうにもない弟だからしかたないかw
>>46 教育上よろしくありませんよ?
たしかに、誇り高い父の魂を間違いなく受け継いでるけど
影響されたらニート一歩手前の自宅警備員になっちゃうぞ?
物凄くGJ
今のところ一番盛り上がっている場面だな。それにしてもバージル兄さん、ここまでデレるか…敵に冷酷なトコ以外原作の面影ないな…
つーかはやて、セクハラはだめとか言っといて、一番セクハラ発言してるのはオメーじゃねーかw
GJJ!
デレ兄貴はやっぱ最高だぜwww
GJ!
最高です、兄さん!
でもアーカムを殺さないなんて無理な話だぜ、はやて。悪即斬なんだぜ。
しかしヴィヴィオをキャラクター付けするのは大変だな。
52 :
りりかる剣心:2007/12/11(火) 23:00:07 ID:mFQm+Dgc
職人の皆様GJなの♪
りりかる剣心第四話の前編が出来ました。投下やらしいですか?
やらしいのはOKだぜ!
54 :
×DOD:2007/12/11(火) 23:01:55 ID:kbSxH9c3
BBSpink自重www支援
56 :
りりかる剣心:2007/12/11(火) 23:08:02 ID:mFQm+Dgc
知りたかったのはなにげない事やった。
けど……あの人から語られた話は哀しく辛い過去。
私達が想像していたものより、遥かに。あの人の眼の奥には篤い心が宿っていた。
魔法少女リリカルなのはStrikerS−時空剣客浪漫譚−始まります。
第四話「語られた悲しみの過去。外法を斬る責務。」
次元航行艦・アースラ。
ブリッジにて模擬戦を終えた剣心、左之助、蒼紫は、はやてのある提案で艦内のレクリエーションルームに彼女らと場所を移し、楕円系のテーブルに皆は互いに顔を合わせるかたちで席についていた。
えっちなはなし支援
58 :
りりかる剣心:2007/12/11(火) 23:10:23 ID:mFQm+Dgc
「しかし、この世界の艦ってすげぇな」
改めて自分達が居た世界と今いる世界の文明の差にぽつりと呟く左之助。
「そうかぁ?」
その彼の言葉にヴィータが頭の後ろで手を組みながら尋ねると左之助の隣に座っていたフェイトが微笑んで答える。
「左之助達の時代の艦からすればそうかもしれないね」
「自動ドアなんてまだねぇしな」
「あ、そうか」
左之とフェイトの言葉に納得するヴィータ。
その向かいに。なのはが座り、彼女はどこに座るか悩んでいた剣心の姿を見かける。
「おろ 拙者はどこに座れば?」
と言ってキョロキョロと席を見回す彼に苦笑いを浮かべ、声をかける。
「剣心さん。私の隣があいてますから、どうぞ」
「かたじけない、なのは殿ι」
なのはの配慮に剣心はありがたく微笑み、彼女の隣に座る。
こっちの世界に来た事で剣心の身体が15歳ほど若返ってしまったこともあり、彼となのはの見た目は同級生のように見えてしまう。
だが実年齢は剣心の方が遥かに年上だ。
「なんか、見ためはほんまに同級生って感じやな」
「はいです。かわいらしい男の子に見えます♪」
二人からほほえましい雰囲気から、はやてとリインは微笑んでいた。
その彼女らの隣には正反対に寡黙な表情の蒼紫がコートを脱ぎ、御庭番装束の姿で座っている。
59 :
りりかる剣心:2007/12/11(火) 23:13:18 ID:mFQm+Dgc
席順は時計周りになのは、剣心、はやて、リイン、蒼紫、シグナム、シャマル、ザフィーラ、エイミィ、ヴィータ、左之、フェイト。という状態だ。
皆が席に着いた事を確認し、はやては口を開く。
「じゃあ、剣心さんに蒼紫さん、左之助くんの事なんやけど……質問方式で聞いていってええかな?」
皆を代表して尋ねるはやてに剣心達は頷く。
「答えられる質問になら答えるでござるよ」
「とりあえず、俺らはどんな暮らしをしてたか。とかの話で良いんだろ」
左之の見解に彼女達は「うん」と頷く。
剣心は彼女らに苦笑いを浮かべ、語りだす。
「拙者は流浪人として日本を旅していたでござる」
「流浪人?」
あまり耳にした事の無い名前にはやて達は頭を傾げる。
「簡単に言えば帰る家も無く、各地を歩いていたでござるよ。そして東京についた時、拙者は神谷道場の師範代。
神谷薫という人と出会い、それ以降はしばらく道場で家事をさせてもらっていた。」
自分の帰りを待つ女性の名を告げ。
剣心の心には彼女の姿が浮かんでいる……。
薫殿……今しばらくは戻れない。だが、拙者の帰る場所は……
眼からは自然と力強い光が輝きはじめる。
彼が何を考えているかは皆にはわからない。
「……」
隣にいる、なのははそんな彼の横顔を気になるような表情で見ている
「次は俺だな」
場の空気を切り替えるべく言葉を発したのは左之であった。剣心の表情から左之は察していたからだ。
薫嬢ちゃんの事を考えてやがんだな……たぶん。
話が暗くなってきたな。仕方ねぇ。
支援
支援
この後考えると暗くなるなー支援
63 :
りりかる剣心:2007/12/11(火) 23:16:37 ID:mFQm+Dgc
「俺はいろいろあって喧嘩屋やってた。けど、ある日剣心に喧嘩屋として売って。負けて……それから辞めて、プータローになったからゴロツキ長屋に住んでいて剣心が住み込んでた道場に飯食いに顔出してた。」
左之から告げられた初めて聞く喧嘩屋という職業にシグナムやザフィーラ以外の皆は「Σえぇ」と口々に呟く。
隣で座っていたフェイトとヴィータも複雑そうな表情を浮かべている。
「け、喧嘩屋……ι」
「ぶっそうな仕事やってたんだなι」
「ま、どいつもこいつも弱かったからな。つまらなかったぜ」
「いや、そういうイミじゃないってばι」
引き攣った笑みでツッコミを入れるエイミィ。
「左之はこうゆう性格でござるよ」
そう良いながらも、重たい雰囲気を切り替えてくれた左之助に剣心は有り難く感じていた。
左之、いつもすまないな……。
たいしたことねぇよ、剣心。
一瞬であったが、視線を合わせ、ふっ。と笑顔を浮かべて互いの心の言葉を交わす。
それは彼らが出会った頃、逆刃刀(人を守りたい信念)と斬馬刀(許せない組織の憤怒)を交わせてから築かれた友情。
やはり、(お主)
(剣心)だからこそ、(拙者)
(俺)は自分の背を預けて闘ってこれたのだろう。
気持ちを切り替えるべく、剣心ははやてとリインの隣に座している友人に顔を向ける。
正直言えば、アジトにおいての決着で修羅から御庭番衆御頭・四乃森蒼紫へと立ち戻った彼と話すのは不思議と気まずくはない。
観柳邸で出会い、闘った時から剣心と蒼紫は互いを認めていたからだろう。
64 :
りりかる剣心:2007/12/11(火) 23:19:29 ID:mFQm+Dgc
「次は蒼紫が話す番でござる。」
その呼びかけに蒼紫はゆっくりと瞑目し、そして皆を見据える。
「先程、シグナムが言い当てたように俺は幕末の頃に王城江戸城を警護する御庭番衆の御頭として纏めていた。お前達の言う話からすれば歴史の話か……ならば幕末は知っているな」
「うん、歴史の授業で習ったかな。黒船が日本にやってきたのを始めとして、明治時代が興るまでって」
「たしか、新撰組や維新志士が互いの正義の為に闘った時代だろう」
彼が述べた『幕末』という名称が理解できるなのはやフェイト、はやては頷き。
蒼紫の左隣にいるシグナムは主の家で知った名称を思い出しながらそれを口にする。
「ああ、そして戊辰戦争や五稜郭の戦いで幕府側は敗北した後。俺達は闘う事しか生きる事が出来ずに、部下達と共に闘いに身を置いた。しかし、部下達の多くは平穏な道を歩んでいき。
俺の元に残ったのはたった四人だ。途中、政府から様々な仕官の誘いが来た。俺だけにだ」
四人……少ないな
四人の部下。という話にはやては彼に対し、親近感を抱き始める。
そして、話をしている蒼紫の眼から彼女は感じとっていた。
蒼紫さん、悲しい眼してる。
「蒼紫さん……にだけ。ですか?」
呟くように告げられたシャマルの言葉に蒼紫は頷く。
彼のこれまでの過去を知っている剣心と左之助も静かに聞き入っている。
「四人は特殊な技能者ばかり、変わった風体や寝返った者だ。だが、俺にとっては部下とはいえ大事な家族だ。
あいつらを裏切る醜態など許せない。そして、ある男が俺達を用心棒に雇った時。
俺は部下を……家族を失った」
「…………」
蒼紫にかける言葉が見当たらなかった。
はやては悲痛そうに蒼紫を見ている。
自分にもヴォルケンリッターの四人とリインフォースという家族が居る。
そしてかけがえのない大切な親友が居る。
65 :
りりかる剣心:2007/12/11(火) 23:21:45 ID:mFQm+Dgc
「その時からの俺は……修羅に身を落とした。」
「修羅……」
ぽつりと呟くなのは。
自分も、もし大切な誰かを護りきれなかったら……彼のようになるかもしれない。
彼の声が痛いほど、悲しく聞こえる。
「その時、俺は御頭として……闘いに生きて闘いに死んだあいつらに。『最強』という華を添えると誓った。兇剣を振るい、そして、幕末最強と謳われた人斬り抜刀斎という男。奴を倒す為だけに全てを捨てて、闘った。奴に勝てたなら、俺は命を絶つつもりだった。
だが、刀を交えた時に抜刀斎は俺に言った。」
『ふざけるな。般若も式尉もべしみもひょっとこも。誰ひとりとて「お前の死」を望んではいないんだ。
蒼紫……お前は全てを捨てて来たようだが、捨てるなんてその気になれば誰にでもできる。簡単なんだ。
お前は剣の上ではこの上なく強くなった。だが、心の上では見る影もなく弱くなってしまったんだ。
家族であり、最も信頼篤い四人の部下の壮絶な死……御頭として最強の証を華として捧げたい気持ちは拙者にも分かる。
だが、その気持ちも。心を弱くしてしまった今のお前が口にしても。もはや生きることからお前自身が目をそむけるただの言い訳にしか過ぎないんだ。
心を弱くしてしまった今のお前はあの四人のためではなく、あの四人のせいにして己の兇剣を振るっているに過ぎないんだ!強き心を取り戻せ!
そして失った誇りを呼び戻せ!!目醒める時は今なんだ!』
「俺はその言葉に苛立ち、抜刀斎を殴り飛ばした。だが、奴の言った言葉は……俺を変えた。結局俺は抜刀斎の言う通り、四人の為と言いつつ。その実、自分の弱さをあいつらのせいにしていた。
そして、俺は負けた……だが抜刀斎との決着が着いた事で前に進みだせた。今思えば俺は全てにおいて奴に勝てなかったのかもしれん」
支援
67 :
りりかる剣心:2007/12/11(火) 23:24:44 ID:mFQm+Dgc
「でも、蒼紫さんは強いです、リインがそう思うんだからそうです」
話し終えた蒼紫にリインは微笑んで告げる。
辺りを見回せば。なのは、フェイト達もうんうんと頷いている。
そして、傍に座っていたはやては目に滲ませた涙を手で拭い。蒼紫を見遣る。
「蒼紫さん……」
自分もあの時、シグナムやシャマル。ヴィータにザフィーラが消えて……私は絶望した。
いやや、いやや。って。
でも、私や皆。それにリインフォースはなのはちゃんやフェイトちゃん達に。友達に救われた。
でも、蒼紫さんは私よりも長く暗い闇におったんや。そんな蒼紫も抜刀斎って人に救われたんやな……。
「にしても人斬り抜刀斎。だっけか? ずいぶんまともな事言うんだな」
頭の後ろで腕を組んでヴィータは告げた。
すると蒼紫は剣心を見据え、彼女らに答える。
「その男は幕末の頃。恐れられた。修羅さながらに人を斬り続け、その血刀でもって新時代『明治』を切り開いた。そして、鳥羽伏見の闘いの終焉とともに抜刀斎は人々の前から姿を消した。」
「そんな凄い人が居たんだ……」
人斬り抜刀斎の話にぽつりと呟くなのは。蒼紫はああ。と頷く。
だが、人斬り抜刀斎の正体に彼女達が傍にいる青年だと気付く事になるのはまだ先の話である。
「俺の話はこれで良いのか?」
「うん。ありがとうな蒼紫さん。それに剣心さんに左之助くん」
にっこりと微笑んで蒼紫に頭を下げてから、はやては剣心と左之に視線を合わせる。
しえん
冷や汗だらだらになってるだろう剣心かわいいよ剣心支援
70 :
りりかる剣心:2007/12/11(火) 23:31:12 ID:mFQm+Dgc
「いや、拙者達はただ自分の事を話しただけでござるよ。」
「剣心の言う通りだ。後は……そうだなお前らの話を聞かせろ」
なんともない。と言うように告げる左之助に蒼紫もこくりと頷く。
そして、彼の言葉になのは達は嬉しそうに頷く。
「じゃあ、何から話そっか♪」
「そやなぁ何がええやろか」
「うーん」
エイミィの言葉にシャマルやヴィータは考え込み始める。すると剣心の隣で座っていたなのははフェイト、はやてと見合わせ、頷いて剣心達に告げる。
「私達の学校の事やいろんな事を教えてあげますね♪」
「ミッドチルダの美味しいお店とかも」
「じゃあ、三人の服とか見繕いに行きながらでどうや♪」
「「「「賛成ー♪」」」」
「Σおろ」
「ノリノリだなι」
「確かにな……」
「蒼紫」
自身の腰ぐらいの高さからかけられた声に蒼紫は慣れたように答える。
「なんだ、ザフィーラ」
「服は長くなるぞ」
「俺は服の合わせかたはまだ知らんから構わん」
彼女らのテンションに剣心と左之助は呆気にとられていた。
「緋村と相楽。」
「おろ、シグナム殿」
「なんだ?」
「まぁ、お前達は覚悟しておいた方が良い。と言っておく」
「はは、かたじけないι」
シグナムの言葉に剣心はつい苦笑いを浮かべて頷く。
そして彼女の言葉通り、彼らは思い知ることになる。服を見繕ってもらう事が一時間以上もかかる事なったのだ。
しえん
72 :
りりかる剣心:2007/12/11(火) 23:33:17 ID:mFQm+Dgc
以上が前編です。
後編は服選びから斎藤の動きへ。ではアデュー。
GJです!!
左之助はやはり悪一文字は取らないのだろうか・・・。
GJ!
左之助の拘りだからなあ。
>>72 GJ。蒼紫もおめかししてみればいいのに♪w
76 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/11(火) 23:52:18 ID:mt/Nz2cY
GJ!
抜刀斎の正体を知った時の反応が気になるぜw
GJ
全巻読んだからわかっては居るのですけど剣心たちは悲しみを背負いながら戦っているんですね。
考えてみれば幕末は悲劇の士が多いですよね。
代表的な人が岡田以蔵でしょうか?
師事する武市半平太のため、沢山の人を斬って「人斬り以蔵」の異名を得るも、土佐藩に囚われた際には信じていた武市に毒を送られ、「自害しろ」と迫られ。
土佐勤王党の情報を全て自白した後斬首…
なんとも悲しい人生でしょうか…
しかも武市は実家への手紙で「あのような安方(あほう)は早々と死んでくれれば良いのに、おめおめと国許へ戻って来て、親がさぞかし嘆くであろう」とか言いやがったんですよ。
こんな最低な奴見たことないですよ。
るろ剣に登場した悪役達の三十倍近くは悪人ですハイ。
おっと、延々と愚痴を失礼しました。
そういえば剣心さん永倉さん出すって言ってましたよね。
永倉の性格が風雲新撰組寄りになるのか大河ドラマ寄りになるか、はたまたこれ以外の作品寄りになるのか楽しみです。
これからも頑張ってくださいね。
ps
そういや気になったんですけど原田左之助はやっぱり出ないんでしょうか?
スマン、sage忘れた
>>75 なにを馬鹿な、蒼紫のあのコートはおっしゃれ〜でしょう、
あれを着こなせるのは蒼紫かガンビット位しか居ないと思う。
80 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/12(水) 00:21:37 ID:ckyc7QGp
最近、シルバーの人を見ないので寂しいです
そういやちょっと気になったんだが、兄貴の
「ああ。それともうすぐこちらにリンディ・ハラオウンから“荷物”が届く…」
の荷物って何だろう。物扱いって、ひょっとして……
まあ…その…あまり深く考えないでいただきたいです。
それとりりかる剣心氏GJです。
>>81 最前線に投げ込まれそうな荷物って
思い当たるのがあるような、ないような
まあ、次回のお楽しみだろう
84 :
りりかる剣心:2007/12/12(水) 00:52:41 ID:g9YqSVub
皆さん乾燥ありがとうございます。
管理局の制服の上からコート羽織る事にはなりますねw
>>ライダーさん
永倉は江戸っ子ぽくいこうと思ってます。再筆剣心で設定されてたので。
原田左之助の方は自然保護の方で活躍してる設定です。
85 :
りりかる剣心:2007/12/12(水) 00:56:26 ID:g9YqSVub
ちなみに自分も以蔵さんは好きですよ。武市も無情な革命家として好きです。(ぇw
幕末の人物はみんな好きなんで
りりかる剣心GJ
なのは達は剣心たちに過去を一部知りましたね。
剣心達の過去をちゃんとすべて知る時は何時になるんでしょう。
これからも頑張って下さい。
>剣心さん
ってことはりりかる剣心世界では「原田左之助は馬賊になりました説」が正しいって事か…
もし出るなら仲が良かった永倉との共闘が楽しみですね。
しかし剣心さん程のお方が風雲幕末伝を未プレイとはもったいない…
機会があったらプレイすることをオススメしますよ。
倒幕編主人公の宮本宗助、佐幕編主人公の秋月小次郎のどちらもも良キャラです(印象は宗助は熱い、小次郎はカッコイイという感じです)
唯一の短所はやはり斎藤が新撰組幹部の中で一番弱いことでしょうか…(泣)
>84
服選び、一人一時間三人三時間だと思います。
「思ったより早く終わったね」
(((まだかかるの?)))
さすがに年末は投下が少なくなってきたな。
【リリカル龍騎】
[状態]:肉体的・精神的ともにKO寸前 、投下前のSSの修正作業中
[装備]:単発ボーボボクロス
[道具]:ノートPC、みかん2個、腕時計
[思考]
基本:まとめ管理や職人の皆様へのGJを行いながら、SSを書く
1:今まで感想書きそびれた分も含め、職人の皆様にGJを送る
2:修正作業を終え次第、ウロスで話した単発SSの投下許可申請
3:投下していいのか本気で迷っている
[備考]
※投下を迷う要因は以下の通りです
・そもそもクロスかどうかすら疑問
・なのはキャラが色々とぶっ壊れている
・天の助のキャラ付けがかなり怪しい
・色々とgdgd
※フルボッコ、もしくはスレ停止を覚悟しました
※Web拍手で先日の荒らしの件で叩かれたため、精神的にまいっています
>>90 迷うことはないはずだ! ネタがあるなら投下すればいい!
ためらうのなら、勇気で補え!
…と、その前にセフィロスSS1話投下してよろしいでしょうか?
今回はセフィロス様がかなり落ち込んでいます。
テラ支援
なのはクロス書き手ロワっすかwwww
・・・勝てる気がしねぇorz
支援いたします
魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使
第1話「異邦人」
セフィロスと名乗る男は、はやての呼んだ迎えによって医務室へと運び込まれた。
そこでシャマルによる治療を受け、今はベッドで横になっている。
「どやった?」
奥の部屋から出てきたシャマルに向かって、椅子に座っていたはやてが問いかけた。
「大丈夫。発見が早かったから、命に別状はないわ」
シャマルは心配そうに尋ねたはやてに対し、笑顔で答える。
「よかったぁ…何の応急措置もでけへんかったから、心配で心配で…」
「フフ…今度、止血のやり方教えてあげるわね」
「是非ともお願いするわ」
苦笑を浮かべながら、はやてが言った。
そこで彼女は何かに気付き、シャマルにそれを問う。
「そう言えば、今わざわざ奥まで入って何しとったん?」
「…ちょっと、念のため血液検査をしていたんだけどね」
そう言うシャマルの表情が、一瞬にして真剣そのものなそれに変わる。
重要な話であることを悟り、はやての顔つきも固くなった。
「彼のDNAの塩基配列に…人間のとは全く違うものがあったの」
「人間と違うDNA?」
「そう」
つまり、あの男は人間ではないということ。
応急措置の済んでいなかった状態でありながら、大事に至らなかったのも、そのことが影響しているのだそうだ。
セフィロスの身体は非常に頑丈だった。
もちろん、人間でもないのにあそこまで人間に近い容姿をした生命体など、このミッドチルダにいるはずもない。
「となると…次元漂流者?」
「でしょうね。…DNAの方の話は、本人に聞いてみないと何とも分からないけれど…」
シャマルの表情は、どことなく困ったようなものとなっていた。
「切り出しにくいわなぁ…」
「そうよねぇ…」
「「…はぁ…」」
2人は同時にため息をつく。
普通に考えて、「貴方の遺伝子を調べました。貴方は何者ですか?」などと言い出せるはずもない。
相手の機嫌を完全に損ねてしまうこと間違いなしだろう。
「…あ、そうそう」
この空気から逃れるべく、シャマルは話題を変えることにした。
「そんなことがあってものだから、念のためにリンカーコアの有無を調べてみたんだけどね…」
「あったん?」
「それが驚いたことに、物凄い魔力エネルギー量だったのよ。ひょっとすると…」
「ひょっとすると?」
僅かに興奮気味のシャマルの言葉に、はやては気持ち身を乗り出して続きを尋ねる。
「…なのはちゃんやフェイトちゃんと同レベルかもしれない」
「は〜…そりゃすっごいなぁ」
2人の親友の名前を聞き、はやては感心しきった声を上げた。
管理局のエース・オブ・エースと若き敏腕執務官と同レベルとなると、少なくともランクSはあることになる。
おまけに、ここには専門的な設備もないのだから、ひょっとすると実際はもっと高い能力なのかもしれない。
(次元漂流者…高い魔力資質…)
はやての脳内を無数の言葉が駆けめぐる。
そしてある時、彼女はシャマルに声をかける。
「なぁシャマル」
「何?」
はやては一拍の間を置き、言葉を繋げた。
「…魔導師ランクって、どこまで誤魔化せるかな…?」
「…は?」
わけの分からないシャマルは、しばらくの沈黙の後、それだけを返した。
一方その頃、セフィロスはベッドの中で、1人思考を巡らせていた。
(…この施設も、見ない建物だな…)
今のところ、目立って奇妙な技術が見られるわけでもなく、むしろ医療機器の水準は至って普通だが、
そもそもこの建物の外観が、この世界には本来ない特徴を一部有している。
おかしな点はそれだけではない。
はやてという第一発見者も、シャマルという医者も、自分を運んだピンクの髪の女も、セフィロスを見て何の反応も示さなかったのだ。
一応、セフィロスも名の知れた英雄である。
約5年前まではソルジャー最強の戦士として、皆の羨望の的だった。
そのセフィロスの姿を見て――おまけにはやては名前まで聞いている――かつての彼を思い返しもしないのは、おかしな話だった。
(どうなっている…?)
ライフストリームの英知を吸収したセフィロスにも、この状況は分析しきれなかった。
と、入り口の自動ドアが開き、はやて達が部屋へと入ってくる。
「気分はどうです?」
はやてがにこやかにセフィロスへ尋ねた。
「割とましにはなった」
セフィロスもまた、適度に相手を不快にさせないような程度で、適当な相づちを打つ。
「そか。よかったよかった」
邪気のない様子で、はやてはニコニコと笑った。
この娘は、本当に知らないのだ。
目の前のセフィロスがかつての英雄であったことも。
(星を殺そうとした者であることさえも…)
「ああ、そうそう」
と、はやての言葉がセフィロスの思考を遮る。
同時にセフィロスもまた、自分の置かれた、疑問だらけの現状へと引き戻された。
「一応こういう所やから、ちょっと簡単な職質みたいなことをせなあかんのですけど…」
「その前に、聞いておきたいことがある」
今度はセフィロスの言葉がはやての言葉を遮った。
「何でしょう?」
「この星は…一体どうなっている?
見たことのない建物に聞いたことのない組織…極めつけはあの2つの月だ。
この星はどうなった? ホーリーは…メテオはどうなったのだ?」
セフィロスが抱き続けてきた疑問の全てが、一挙に吐き出された。
返ってきたのは、沈黙。
しばらくの間、ひたすらに沈黙だけがその場に流れ続けた。
やがてはやてが口を開き、その静寂を破る。
「そうですか…やっぱり、せやったんですね…」
「…?」
はやての言う意味が分からず、セフィロスは頭上に疑問符を浮かべる。
「…セフィロスさん…この世界は、セフィロスさんのおった世界とは、ちゃうんです」
はやての口から、遂にその事実が発せられた。
「…何?」
唐突に理解不能の答えを出されたセフィロスには、他に返す言葉がなかった。
割り込みすいませんでした支援
「異次元って、知っとります?」
「…概念だけならば」
セフィロスはそう答える。
2次元がどうだの3次元がどうだの…といったレベルの知識は、ライフストリーム云々以前の問題だった。
「そういうわけで、この世界にはたくさんの異次元にある世界――たくさんの次元世界があるんです。
で…セフィロスさんは、自分のおった世界とは別の次元世界の、この世界へ飛ばされてしもたみたいなんです」
「そうか…」
嘘偽りとは思えない。それぐらい、セフィロスには分かる。
そしてそれを聞いたセフィロスは、表面上は平静を装っていたが、内心では頭を抱えていた。
(何という有り様だ…)
どうやらあのライフストリームの流れは、次元の壁を超えて、セフィロスをこの異世界へと閉じ込めてしまったらしい。
これでは人類の抹殺も、星の支配もまるでままらならないではないか。
セフィロスはかつて、自分が人間でないと知った時以来、久方ぶりに自分の気分が沈んでいくのを感じていた。
「…で、この世界はミッドチルダいって、時空管理局の地上本部があるんです」
はやての説明は続く。
「時空管理局?」
一応、セフィロスは聞き返した。下手に押し黙っていては、内心の絶望を悟られかねない。
「『魔法』って呼ばれとる技術を確立しとる次元世界全土における、法治機関のことです」
「魔法、か…」
「知っとりますの?」
「私の世界では既に滅んだ技術だ。マテリアと呼ばれる結晶を介してのみ、操ることができる」
「ふぅん…難儀なもんですなぁ」
セフィロスの話に、はやては子供のように真剣に聞き入っていた。
おおよそ警察官や軍人の類とは思えない、無邪気な反応だ。
先ほどまでの様子といい、セフィロスの常識からすれば、やはり全てにおいて若すぎる。
「…それで、そろそろ職務質問に入りたいんですけど…ええですか?」
「ああ」
もう好きにしろ、とでも言わんばかりに、セフィロスは了承した。
「んじゃまず、名前と職業を」
「…セフィロス・ジェノバ。神羅私設軍特殊部隊・ソルジャーのクラス1st」
セフィロスが名乗ったのは、5年前までの経歴だ。特に「ジェノバ」という姓などは、完全にでたらめである。
まさか「異星からの侵略者からの子孫(?)で、星を乗っ取ろうとしていた」などとは言えまい。
「神羅?」
「神羅カンパニー。兵器産業と、魔晄と呼ばれるエネルギーを利用した発電を主とした企業だ」
セフィロスは一通りの知識を語った。
魔晄ことライフストリームの詳細、神羅の権力、神羅軍及びソルジャーの組織体制…
面倒ではあったが、一応律儀にそれらを説明した。
「成る程成る程…」
はやては一連の説明を聞き終えると、背後のシャマルへと念話を飛ばした。
(…どうやろ、シャマル?)
(少なくとも、管理局に悪影響な人じゃないみたいね)
ほっとしたような声が、はやての頭に響く。
(私も同じや。…ほんなら、今から例の話を切り出すけど、構へんよな?)
(心配しなくても、私達ははやてちゃんの判断に従うだけよ)
(ありがとな、シャマル)
礼を言うと、はやてはセフィロスに正面から向き直った。
「セフィロスさん…物は相談なんやけど」
「何だ?」
セフィロスはぶっきらぼうに尋ねる。
「もしよかったら…私らに協力してくれへんでしょうか?」
「協力だと?」
自分に警備兵の真似事をしろと言うのか、とセフィロスは聞き返す。
「私らの部隊は機動六課言って、魔法文明の古代遺産・特定遺失物ロストロギアの管理を担当しとるんです。
ただ、いかんせん新設の部隊なもんで、人手が足らんのですよ」
質は揃っとるんですけど、とはやてが付け足した。
はやての目論見はこうだ。
魔法とは無縁でありながら、極めて高い資質を持ったセフィロスを、嘱託魔導師として六課に招き入れる。
前歴がまるでないのだから、魔導師ランクなどもある程度誤魔化しが利く。
つまり、保有制限にも触れず、周囲から何の文句も言われることなく、超強力なこの男を、六課メンバーに加えることができるのだ。
既に何度も聞いたような計画だが、そこは目をつぶっていただきたい。
ともかく、無邪気なようでいて、そこは一部隊を率いる長である。そんな黒い考えを張り巡らせる頭も、彼女は有していた。
それに、いくら何でも無条件でそんな話を持ちかけるわけでもない。
はやてには、ある決定的な武器があった。
それは…
「管理局の設備なら、セフィロスさんの元いた世界を見つけることも可能や思いますけど?」
「…本当か、それは?」
案の定、セフィロスはその話に食いついた。
表面上はクールでも、故郷の誘惑には勝てないはず。そうはやては踏んだのである。
無論、六課に入らなければセフィロスを見捨てる、なんてことは考えていない。
彼がそれでも断るのなら、それはそれで仕方のないことだ。その時は素直に元いた世界を探し、彼を送り出すだろう。
しかし、それをあえて伏せておくことで、交渉を有利に持ち込む。はやての判断は、要はそういうことだった。
最も、元の世界への帰還が、セフィロスにとってどのような意味を持つかは、はやてにも分からなかったようだが。
星へ帰ることができる。
その事実は、セフィロスの心に、再び野心を燃え上がらせた。
あの星へと帰れる。
愚かな人類を皆殺しにし、星をジェノバの手中に収めることができる。
(さて、どうするか…)
しかし、そこまでの過程にはやや引っ掛かる所があった。
いくら星に帰るためとはいえ、さすがに人間の下で働くのには抵抗があったのだ。
とはいえセフィロスには、ミッドチルダの人間に対しては、一切の憎悪を抱いてはいない。
(こいつらは、母さんを虐げた人間とは違う…)
彼女らとジェノバには、一切の関係がない。
ジェノバを討伐したのはあくまで自分の星の人間達の祖先であり、はやてたちの祖先ではない。
セフィロスから見れば、ミッドチルダの人間は、同じ姿をしていながらも、自分の星の人間とは全く別の動物だった。
だからこそ、そんな特に何の興味も抱けない者達と行動を共にするのは面倒極まりなかったし、
自分よりも遥かに劣る種族の下で働くことは、癪にさわることだった。
(元の世界へ帰れる設備があるのなら、いっそそれを奪って勝手に帰るか…?)
セフィロスはそうも考えたが、すぐにそれは否決した。
(…駄目だな。私には使い方が分からん)
至極当たり前な理由で、ミッドチルダの危機は回避された。
とはいえ、その他にさしたる案もなく、やはり六課に加わるという手段を取るしかないという結論に至った。
(まぁいい。星へ戻るまでのことだ。元の世界が見つかり次第帰って――)
しかし、セフィロスの思考はそこで止まる。
何故なら彼には…
「――で、どうです?」
と、そこへはやてが問いかける。
それに対してセフィロスは、
「…一晩、考えさせてほしい」
とだけ答えていた。
支援
明くる朝、シャマルから渡された朝食に一応口をつけたセフィロスは、隊舎を出て、高台から揺れる水面を見下ろしていた。
夕べ身につけていた黒いコートを羽織り、1人たたずんでいた。
(私は…星へ帰った後で…)
セフィロスの胸中に渦巻くのは、夕べからずっと同じ疑問。
(…どうやって我が悲願を為し遂げればいい?)
肝心の方法が、セフィロスには全く浮かばなかったのだ。
星を傷つけ、ライフストリームを一手に集めるためのメテオは、既に失われた。
それだけのエネルギーを、一体どうやって得ればいいのか。
エネルギー以外の手段を取るにせよ、いかなる手段なら代用できるのか。
セフィロスには全く論理がなかった。
(このような状態で星へと戻ったところで…)
一体何になるのか。
頼れる物は我が身一つ。コピーを作ったところでたかが知れている。
星中の人間を1人1人殺して回る、というわけにもいくまい。そんなことは、セフィロスにも無理な話だ。
(結局生き恥をさらすだけか…)
何もできはしない。ただそこに在ること以外には。
そんなことは、神をも目指したセフィロスの、絶対的な誇りが許さない。
そんな屈辱、セフィロスには耐えられない。
「母さん…」
自分はどうすればいい。
蚊の鳴くような――あの信念の獣、美しき片翼の天使とは到底思えない、か細い声で、セフィロスは呟いた。
「こんな所にいたのか、客人」
と、背後から近寄る者があった。
振り向くと、そこには昨夜セフィロスを医務室まで担いでいった、ピンク色のポニーテールの女。
「夕べの女か…」
「シグナムという。前線フォワード部隊・ライトニングの副隊長だ」
シグナムはそう名乗ると、セフィロスの隣まで歩み寄る。
「そういうお前こそ、こんな所で何をしている」
実働部隊の副隊長ほどの要職なら、他にやることもあるだろう、と。
「ここは私の特等席だよ」
そう言うと、シグナムは下方へと視線を促す。
セフィロスがそちらを見ると、そこには、突如廃ビル群が出現していた。
先ほどまでそこは、ただのオブジェの立ち並ぶ水面だったというのに、いきなりその姿へと変貌したのである。
「精巧な立体映像だな」
セフィロスはそう判断した。
「よく分かるな」
「他に考えられまい。…あそこで何が始まる?」
そう問いかけられると、シグナムは視線をセフィロスへと戻し、答えた。
「新人達の訓練だ」
やがて、立体映像の廃ビル群で、複数の人影が動き出した。
白い服を着て宙を舞い、魔法のような光を操る女。
それらを避けながら、猛烈なスピードでローラーブレードを走らせて間合いを詰める少女。
背後から2丁のピストルを操り、援護するもう1人の少女。
「若いな」
セフィロスの感想はそれだった。
「機動六課は教導機関を兼ねていてな。優秀な若年兵を鍛えつつ、任務に当たらせている」
「それにしては人数が少ないようだが?」
他方で戦う集団を見つつ、セフィロスはそう言った。
赤いドレスを身に纏い、ハンマーを振り回す幼女。
それに槍を懸命に振るって対処する少年。
背後から、小さな飛竜のような動物へと指示を出す幼女。
白と赤が教官で、残りが新人なのだろう、とセフィロスは解釈した。
「ウチは機動力重視だからな。身軽に動けるように、少数精鋭の姿勢を貫いている」
おかげでいつも前線は人手不足だ、とシグナムは苦笑する。
「お前は加わらないのか?」
「私は人に物事を教えるのは苦手だ。だから早朝訓練時は暇になる」
「それでここが特等席、というわけか」
「そんなところだ」
そう言って、シグナムは再び視線を訓練場へと向けた。
しばらくの間、2人は黙って水面の訓練を見続けていた。
どちらも一言も言葉を発せず、ただただ、魔導師達の戦いをじっと見ているだけ。
「…浮かない顔だな」
沈黙を破ったのは、シグナムだった。
「分かるのか」
「まぁな」
セフィロスは幾分か驚いた様子だった。
自分がジェノバの使命に目覚めた時点――人であることを捨てた時から、セフィロスは自分が無表情になったと自覚していた。
そんなポーカーフェイスの中の心境を、初対面の女に見破られたのが意外だった。
(いや…それだけ私の心が沈んでいたというわけか)
内心でセフィロスは自嘲気味に評する。
「こういう仕事をしていれば、嫌でも慣れる。そういう…何か大切なものを失った奴の雰囲気にはな」
一方のシグナムは、セフィロスの様子をそう評した。
あながち間違いでもなかった。故に、セフィロスはそれを否定しない。
「…失ったものは、目的だ」
「目的…か」
「為し遂げねばならない悲願があった。だが、それを実行する手立ては、もうなくなってしまった」
つとめて無感情に、セフィロスはぽつりぽつりと呟く。
シグナムはそれを黙って聞いていた。
その目的の内容は理解してはいなかったが、それにかけるセフィロスの想いの強さは、十分に理解していた。
自分にも、それだけの想いをかける使命――主・八神はやての守護――があるのだから。
「あれを見るがいい、セフィロス」
「…?」
シグナムが促した先にあったのは、やはり訓練場の新人達の姿だ。
「活き活きとしているとは思わないか?」
自らも視線を新人達へと向け、シグナムはそう問いかける。
「…何が言いたい」
「彼女らは、それぞれがそれぞれに、自身の希望に向かって、日々を精一杯頑張っている」
どんな厳しい訓練にも、へこたれず臨んでいる、とシグナムは続けた。
「希望、か…青臭い言葉だな」
セフィロスはそれを吐いて捨てた。
彼には理解できない。絶望の中で5年以上を生きてきた彼に、希望などどれほどの意味があるだろうか。
「言い方が気に食わないか。…なら、『願望』ならどうだ?」
苦笑混じりに、シグナムがそう訂正する。
「何…?」
「それでも駄目なら『野心』でもいい。何なら、『欲望』でもな」
彼女の言葉の意味を理解しきれず、セフィロスは怪訝そうな表情を浮かべる。
「言い回しは色々あるが…お前が目指したものも、彼女らが目指すものも、それを突き動かす感情は、同じものだろう
…若い彼女らが頑張っているというのに、お前は自分の目的を、一度の失敗で投げ出す気か?」
いつしか、シグナムの視線はセフィロスへと向いていた。
「戦えよ、セフィロス。自らの『欲望』に忠実に、みっともなく足掻け。方法が分からないのなら、別の手を見つけ出せ」
ようやくセフィロスは理解した。
この女は、自分を焚きつけているのだ。またやり直せ、と。
(…フッ…無知とは恐ろしいものだ)
仮にこれで自分がその気になったらどうするのだ、とセフィロスは内心で笑う。
元の世界の人間からすれば、シグナムの一言のせいで、自分達が皆殺しにされることになるというのに。
しかし、嘲笑の一方で、確かに自分自身を見つめなおしているセフィロスの姿があった。
考えてみれば、自分を突き動かしてきた「欲望」も、結局は人間の「希望」も同じだった。
にも関わらず、自分の「欲望」は砕かれたというのに、何故人間の「希望」は折れないのだろう。
(『希望』とは、一体何なのだろうな)
人間を演じていた頃から、セフィロスは「希望」を知らなかった。
セフィロスは強かった。求めるものは、そう長く追いかけることなく手に入った。
だからこそ、日々物足りなさを感じていた。1つの「希望」に心躍らせることなど、滅多になかった。
(人間は何故、『希望』のために突き進めるのか…)
それが分かれば、自分も立ち直る気になれるかもしれないと思った。
それが分かれば、再び使命を果す道を探せるかもしれないと思った。
「答えは、出ました?」
十数分後には、はやての部屋を訪れるセフィロスの姿があった。
「…いいだろう。私が元の世界へ戻るまでなら、お前達と共に剣を振るってやろう」
彼女らと共にいれば、その答えが分かるような気がした。
この決定もまた、そこまで大きな意味もなく、ぼんやりと思い浮かんだ、片翼の天使のほんの気まぐれだったのだが。
はやてがまた危ない人を勧誘してる支援。
セフィロスのコールサインをソルジャー1にすべきか、アサルト1にすべきか、真剣に悩んでいる今日この頃。
…スミマセン、常識的に考えてソルジャー1ですね…
というわけで投下完了。今回はややブルーだったセフィロス様。
次回はいよいよ、ランク調査のため、ヴォルケンズ相手に大暴れします。
今回そこそこに目立ったシグナム姐さんですが…もうこれ以上目立つことはないかな(ぇ
ちなみに、リリカルグレンラガン氏が「ザックスの幽霊とか出るかな(意訳)」とおっしゃておりましたが、
残念ながら彼は出ません。その代わり、あの人がスカ陣営に登場します。
その正体は…「機動六課のある休日」辺りのエピソードの話をお楽しみにw
しえーん
テラ支援
EDF氏 まだー? EDE!EDE!EDE!EDE! これは・・・民間人がEDFの旗を掲げています!
>109
俺も早く読みたいが落ち着け。EDF氏は時間をかけて良作を作るじっくり職人派だと思うぜ。
GJです、セフィロスが今後どういう行動指針で行くか気になります。
しかしシグナム姐さんの活躍がもう期待できないのは残念です、しかし六課には他にも魅力的なキャラが多いのでどんな絡みをしていくのか期待大ですよ。
GJ。
はやてはもう少し人選というのを考えた方がいい。
そういえば、このセフィロスはFF7直後という事だが変身(というかラスボス戦の時の姿)になれるのか?
GJ!
セフィロスなんて危険人物を六課に迎えて大丈夫なのか気になりますが
やっぱりどんな活躍をするのかの方が楽しみです。
さて、それはそうとデビルメイクライの弟の方の二話を十五分くらいから投下してよろしいですか?
マジっすか!? 待ってましたよ俺はまだダンテを書けないんでDevil never氏のダンテを見せていただきたい!
Devil never Strikers
Mission : 02
borrowed money from GAS-LPRF6
古代遺物管理部機動六課、通称機動六課。
その食堂でダンテはピザを食べていた。
彼がここにいる理由は一つ、彼のデバイスの受け取りのためだ。
ダンテは戦闘スタイルを変えるつもりは全く無い。
だがそれはエボニー&アイボリーを使い続けるという事で、管理局から見れば許されない事で、何らかの対策を練る必要があった。
そして出した結論はエボニー&アイボリーの改造。改造といってもマガジン部分を変更し、魔力弾のみを撃ち出せるようにするだけの改造だ。
こうしてエボニー&アイボリーの改造が始まったが、ダンテの『空薬莢が出ないと嫌だ。ちゃんとブローバックするようにしろ』等のワガママによって完成は遅れていた。
そしてついにエボニー&アイボリーS(改造を請け負ったシャーリーのS)が完成し、ダンテは受け取りに来たのだった。
ダンテがピザを食べ終えた頃、シャーリーが現れた。隣にはなのはや、新人達四人もいる。
「ダンテさん。後で模擬戦をしてみませんか?」
「ん?」
「他の子たちのデバイスも完成したので試しに模擬戦をしてもらいたいんです」
「ああ、いいぜ」
久しぶりに撃ちまくりたかった為に何も考えずに引き受けた。
デバイス調整室でダンテはエボニー&アイボリーを、新人達四人もそれぞれデバイスを受け取った。
シャーリーが説明を始めたがダンテは全く聞かずにクルクルと回し、ポーズを取るなどして遊んでいる。
説明も全て終わり、さあ模擬戦だ。となったところでモニターに赤いウインドウが表示され、アラーム音まで鳴り始めた。
「このアラートって!?」
「一級警戒態勢!?」
「グリフィス君!」
どうやら何か起こったらしい。スバルが驚き、エリオが解説し、なのはがグリフィスを呼び出す。
「はい、協会本部から出動要請です!」
「なのは隊長!フェイト隊長!グリフィス君。こちらはやて!」
グリフィスが詳しい状況を伝える前に割り込んできたのは部隊長のはやてだ。
話の内容は、協会騎士団の調査部で追ってたレリックらしきものが見つかった。
対象は山岳リニアレールで移動中で、そのリニアレールの制御を奪ったらしい。
リニア内のガジェットは最低でも三十体。他にもいるかもしれない、という事だ。
「機動六課フォワード部隊、出動!」
「「「「「「ハイ!」」」」」」
全ての説明、指示を終えたはやてが出動命令を出し、なのはたちフォワードがそれに答える。
フォワード陣が全員出動したが、フォワードでないシャーリーはまだ調整室に残っている。
そして彼女はもう一人のフォワードではない者に話しかけた。
「これじゃあ模擬戦は無しですね」
「ああ」
その言葉に答えたのは、ダンテだった。
なぜ彼が出撃していないのか、その答えは簡単だ。
ダンテが嘱託試験に落ちたからだった。
試験結果は戦闘以外は散々なもので、結局彼の機動六課入りは無かった事になった。
それでも彼がミッドチルダに居ることに関してはちゃんとした手続きを踏めば問題が無かったので、彼は今ミッドチルダに住んでいる。
何故彼が帰らずにミッドチルダにいるのかは誰にも分からない。
おそらく彼なりの理由があってここにいるのだろう。
「ところでダンテさん」
そう言いながら一枚の紙をダンテに渡すシャーリー。
「改造に掛かった費用の請求書です。ちゃんと払ってくださいね?」
機動六課の人間で無い以上、当然自腹である。
もちろん彼には払えない。
「そのうちな」
だからこう言ってお茶を濁すしかなかった。
そしてダンテは自分の今の住まいに帰り、夜まで眠った。
しばらくして目を覚まし、腹が減っていたのでピザの出前をとった。
さて、ダンテが眠っている頃、フォワードの新人達四人は無事に列車へと降下していた。
新人達だけなのは、隊長二人が空に現れた航空型ガジェットを叩きに行ったからだ。
スバルとティアナが先頭から、エリオとキャロが最後尾からレリックのある中央を目指して殲滅する形になっている。
「うおりゃああああ!」
車両の上でリボルバーナックルを突き出すスバルのテンションはいつもより若干高い。
彼女が今着用しているバリアジャケットがなのはの物を参考に作られたからだろう。
一方、車両内を担当しているティアナはクロスミラージュの性能に感嘆しつつ、ガジェットを撃ち抜いていた。
そしてティアナは今までの部屋よりも広い部屋に入った。
「貨物室?…でもレリックが無い」
この部屋はそこらじゅうに積まれているダンボール箱や木箱から見て、貨物室だ。
だがレリックは無い、という事はここは別の貨物室なのだろう。
だが、ティアナの目を引く物があった。やたらと数の多い木製の人形だ。
人間くらいの大きさのそれはボロボロで、不気味で、今にも動き出しそうだった。
だが人形が動く訳がない、そう考えたティアナは次の車両へのドアに近づく。
しかし次の瞬間、天井を突き破りガジェットが襲ってきた!
人形に気をとられていたティアナは間一髪でこれをかわす。
「油断した…」
今のガジェットの攻撃は完全に不意打ちだ。それを喰らわなかっただけ良かった方だろう。
だがいつもなら迎撃を選択していた距離で回避を選んだのだ、油断をしたと思うのも仕方が無い。
「ティア!大丈夫!?」
ガジェットがあけた穴からスバルが降りてくる。
そのままティアナと背中合わせに立ち、互いの死角をカバーする。
スバルがいるのなら隙を見つけてコンビネーションで攻撃するといったいつものパターンに持ち込めば良い。
「ティア〜何これ〜」
その考えもスバルの情けない声によって改めなければならないらしい。
スバルの言う『これ』を見るべくスバルとの位置を反転させたティアナが見たものは、さっきの人形だった。
しかも手の部分には刃物までつけられている。
間違いなく敵だろう。
ちょw試験落ちたのかよw支援
駄目ニートまっしぐらwww支援
何も無い静かな部屋で、もしかしたら動くんじゃないか?と思っていた物が全く動かず、
全く予想もしていない所から敵が現れたり、
最初の動きそうな物がいつの間にか後で動いている。
スバルがいなかったら人形が動いているのに気づいたのは触れてからかもしれない。
このまるでホラー映画のような流れに、ティアナは思った。
『これを考えた奴は性格が悪い』と。
だが恨み言を言っても事態は何も変わらない。
人形の能力を測るためにも何かしなければならない。
そのためにティアナが選んだ行動は攻撃だった。
「シュート!」
ティアナが撃ったのはヴァリアブルシュート。
選んで撃ったと言うよりはガジェットがいるためにこれ以外に手が無かったと言うべきだ。
AMFを突破する為に魔力弾に膜状のバリアを纏わせたそれは高度な技術を必要とするが、威力の増加はあまり無い。
そのヴァリアブルシュートの直撃を受けた人形は、あっけなく砕けた。
「あれ?」
「あんまり…強くない?」
いきなり現れた新手の敵があまりにもあっけなかった事に拍子抜けするも、ガジェットと合わせれば相当な数になる。
とはいえ
「うおおおおお!」
「シュート!」
訓練校から三年間のコンビである二人に、ガジェットと人形が数だけで対抗できるはずも無く、
スバルの打撃とティアナの射撃の前にガジェットと人形は次々と粗大ゴミへと姿を変えていった。
そしてスバルのリボルバーナックルが最後の一体を叩き壊した。
「良し、次行くわよスバル!」
この部屋の敵は全滅させたので、次の部屋へと移動するティアナとまた屋根の上に登るスバル。
スバルが屋根の上に登る為に、ガジェットが開けた穴の位置を確認している時、
黒い影を見つけた。
駄目だこの弟。早くなんとかしないとw
影といっても物が光を遮る事でできる影ではない。
光に遮られてもないのに水溜りのように影が出来ているのだ。
そしてそれはティアナに向かって行った。
「ティア!危ない!」
影の速度はそう早くない、せいぜい人が歩くのと同じくらいの速度だ。
スバルは影に易々と追いつきマッハキャリバーで踏みつけた。
だが影にダメージは無い。代わりにダメージを受けたのは踏みつけた足のほうだった。
スバルが踏みつけた瞬間に現れたトゲ状の魔力弾。
それががスバルの足に突き刺さっていた。
スバルの声を聞いたティアナも明らかに異常な影と足をケガしているスバルを見て、戦闘体制をとる。
「スバル、大丈夫?」
「大丈夫!」
スバルの言う大丈夫は当てにならない事をティアナは今までの経験で知っていた。
だが実際にスバルのケガは軽く、行動に問題は無さそうだった。
状況を確認している間にも敵は動いていた。
影の状態から犬の形になったのだ。
色は相変わらず影のように不気味な黒だ。
「まずは相手の防御魔法の正体を突き止めないとね」
この敵についてわかってる事は踏んでもダメージにはならない事と、スバルの足に刺さっているトゲだけだ。
だがこの謎の答えはあっさりと明かされる。
「多分、このトゲはカウンターで現れるんだと思う」
実際に喰らったスバルにはトゲが現れる所からはっきりと見えていた。
喰らったものだからこそ分かる攻撃の感触。
それがこのトゲはカウンターであることをスバルに教えていた。
ならカウンターの対象じゃない攻撃を見つければ良い。
踏みつけは一応物理攻撃だから次に試すのは魔法攻撃。
ティアナが無言で魔力弾を撃ち込む。
これがダメだったのなら様々な威力、角度、方法を試さなければいけなくなる。
だが魔力弾は普通に当たり、影の犬をよろけさせた。
「効いてる…魔法攻撃なら効いてるよ!」
「分かってるわよ!スバルうっさい!」
二人はこの影の犬の防御は物理カウンターで、魔法攻撃が有効と結論を出した。
(正確に言うのなら物理ではなく武器カウンターなのだが、魔法攻撃が有効なのは間違いでない。)
スバルが敵を引き付け、ティアナが撃つ。
この単純な行動を繰り返しているだけで、影の犬が弱っていくのが分かった。
しかし、ティアナが七発目の魔力弾を作り終えた時にそれは起こった。
「グアアアァァァァ!」
人間のものとは思えない叫び声が響いた瞬間、ティアナの体が動かなくなった。
ティアナは吊るされた操り人形のような状態で空中に固定された。
「バインド!?」
何とか動く首を回して辺りを見る。
右斜め後ろにさっき全滅させたはずの人形が立っていた。
おそらくガラクタになった他の人形に紛れて隠れていたのだろう。
思わぬ伏兵と能力によって、状況はこちらが不利になった。
支援
「生き残りがいた!?」
「ティア!危ない!」
スバルが危ないと言ったのは人形ではなく、影の犬の方だった。
ティアナが拘束されたのを見た瞬間、ティアナに狙いを定め、跳びかかろうとしている。
右斜め後ろからは人形が、正面からは影の犬がそれぞれ自分を狙うこの状況で、ティアナは七発目の魔力弾を発射した。
そのまま操り、人形の方に撃ち込む。人形はさっきのようにあっけなく砕け散り、ティアナの体に自由が戻る。
だが今の魔力弾を操って影の犬に当てるには時間が足りない。
宙吊りにされていたのでまだ地面に足がついていないので回避もできない。
着地して体制を立て直した次の瞬間に影の犬の攻撃がくるだろう。
この状況ではティアナが何をしても間に合わない。
だからティアナは何もしなかった。
地面に立つこともせずそのまま倒れこんだのだ。
ティアナが倒れこんだため影の犬がティアナの上を越えて行った。
影の犬も今の攻撃が当たらなかった事に驚いているらしいがそれで止まる事はない。
着地して振り向き、体を刃物のように変形させてから再びティアナに飛び掛った。
今度は本当に何もできない。
地面を転がって避ける事も、
横になったまま迎撃する事も、間に合わないだろう。
でもやはりティアナは何もしない。
何かするのはティアナじゃなく
「そのまま寝ててよ!ティア!」
スバルの方だ。
「一撃必倒!」
危ないと言った時からスバルはチャージを始めていた。
この状況になるのを計算していたのではなく、単に両方倒せる技がこれしか思いつかなかったからだ。
だがティアナはスバルがチャージしているのを見た瞬間にこの行動を思いついた。
もっともティアナが考えたのは『伏せなきゃヤバイ』くらいなものでここまで計算していたわけではないが。
「ディバイン!」
影の犬が跳ぶ体制を整える前にスバルはチャージを済ませていた。
だから間に合うかどうかは考えなくて良い、
考えるべきはどのタイミングで撃つかだ。
「バスタアアアア!」
そしてスバルはそれを間違えず、影の犬の跳躍の頂点でバスターを当てた。
バスターの直撃を受けた影の犬は車外へ吹き飛ばされ、最後に列車の外で爆発を起こし、消滅した。
しかしあの敵を倒したからといってまだ油断はできない、さっきもそんな風に気が緩んだ時に襲われたのだ。
だが次に二人の前に現れたのはちょっと意外な人のかなり意外な言葉だった。
「最後に爆発するのですか〜、外に出せてラッキーでしたね!」
本来ならサポートをするはずのリインだった。
「「リイン曹長?」」
「お見事です!みんな良く頑張りましたです。任務完了です!」
「え?」
リインが言うにはこの列車内にもう敵はいないらしい。
前半分の敵はあれが最後で、後ろ半分の敵はエリオとキャロがもう倒したらしい。
「ライトニングの方にばかり行っててごめんなさいです。あ、ほらあれがフリードの真の姿なのですよ」
外にはいつものニワトリくらいの大きさのフリードではなく、十メートル以上の大きさのフリードがいた。
その上にはエリオとキャロが乗っている。
あの二人は外にいるのでレリックの回収はこっちですることになった。
そして中央車両まではリインの言うように敵は無く、後は特に何の問題も無くレリックを回収できた。
機動六課、最初の任務が完了した。
同時刻、全く別の場所で、今回の戦闘を見ていた者がいた。
戦闘が映されているモニター。その前に一人の男がいた。
男の名はジェイル・スカリエッティ。
ロストロギア関連以外にも数え切れない罪状で広域指名手配されている次元犯罪者だ。
「レリックは取られたか…だが十分データは取れた」
スカリエッティが独り言を呟く。
「君達とはいい付き合いができそうだよ」
この言葉は独り言ではない、現在通信中のモニターの向こういる者に対しての言葉だ。
スカリエッティが話しかけたのは、明らかに人間ではなく悪魔だった。
「そうか」
「ああ、あのマリオネットやシャドウは気に入ったよ」
マリオネットとシャドウ。
それはさっきスバルとティアナが戦った人形と影の名前で、人形がマリオネット、影がシャドウだ。
「あれがか?マレット島ではそう活躍しなかったぞ?」
「マレット島にAMFは無かっただろう?」
そう、AMF状況下での戦闘では使える魔法が限られる。
その状態ではマリオネットでも魔導師たちにとっては脅威となるのだった。
他にもシャドウとガジェットの相性は最高だった。
武器攻撃の通用しないシャドウにダメージを与えるには魔法攻撃しかない。
だがその魔法はガジェットのAMFが封じてしまうのだ。
銃のように例外となる武器がほとんど封印されているこの世界で、この組み合わせに対抗できる人間ははたして何人いるだろうか。
「まあ良い。俺は戦いたいだけだ。じゃあな」
「もう帰るのかい?ルーテシアによろしく頼むよ」
まだ悪魔とAMFの組み合わせについて語りたそうなスカリエッティにうんざりした悪魔は通信を切った。
部屋の温度はモニター越しの悪魔の熱気に当てられたかのように少し暑くなっていた。
Mission Clear and continues to the next mission
ダンテこの世界でも駄目ニートまっしぐらじゃねぇかwwwwwww
おっと忘れたがGJだぜ
GJです、まさかダンテが嘱託試験に落ちるなんて……あの世の親父が泣くぞ。
しかし2が基準という事はスカリエッティと組んでるのはアリウスか? リベリオンは非殺傷設定に出来なさそうだけどどうするんでしょうか。
とりあえずダンテは対悪魔戦闘の専門家として民間協力者になれば職にありつけるし給料も出ると思います。
>>127 GJ!
あれ? イカしたあんちゃんだと思ってたダンテの出番がなくなっちゃったよ?w
>>112 仮に変身できたとしても、しないと思います。
それで人外だってバレてしまうのは、セフィロスにとってはマイナスにしかなりませんし…
…ま、実はとっくにバレてるのですがw
>>114 Strikers May Cryさんすみません。期待していていただいてこんなニートにしてしまってスミマセン。
でもトリッシュやレディのように『敵は同じなんだけどあまり協力しない』といったスタイルにしたかったんです。
そうなると建物ならともかく列車に乱入ってのは無理があるので今回はこんな感じです。
次回以降はダンテの活躍もきっちり書くつもりです。
ちなみにサブタイトルは訳すと『機動六課から借金した』になります。
厳密には借金ではないのですが
ダンテ + 請求書 = 借金
の方程式は間違ってないと思うのでこうしました
まさかこの書き込みで連投規制を食らうとは…orz
GJ。
この状態のままだと役立たず過ぎるぞダンテwww
多分、一番ガッカリしてるのはスカウトしたはやてだなwwww
GJ!
なんというダメニートw
ダンテ + 請求書 = 借金の方程式は彼の真理です
まあ、やればできる男ですから
2以降というのなら父を超えてるはず
一騎当千どころか万魔を斬って捨てる強さ
本気だせば魔界の9割を牛耳ってたラスボスを瞬殺可能だし(というか設定上作中最強かつ無敵
そういえば、ダンテは魔法をどのくらい扱えるのだろうか?
3だと空間転移、バリア系を少々
飛行能力は悪魔として翼を広げて飛行するものだし
なんとなく、落ちる理由がわかるような気がする
攻撃は他人にお見せできませんw
最強の力を宿した魔剣スパーダ(二つのアミュレットがフォースエッジと合体した奴)はトリッシュにプレゼントっぽいので作中最強の力を持っているかは怪しいのでは?
それとダンテはニートでもなんか似合うな…
>>135 2ラストミッションのテキストを見る限り魔剣士として成長し
自分の力だけでも父を超える実力はある
時期的に一番後なんだし、父を超えても不思議ではないだろう
本当に実力はあるのに
いつも借金に負われてアニメEDのように反省会をやってるイメージしかないな
活躍しても大半がノーマネーフィニッシュで涙目な展開多しw
あにゃー、そろそろDevil never StrikersのGJ投下から1時間が経つですか?
得てして人間、「やらなきゃやらなきゃ」と思っているとそれ以外の事をやってしまったりするもの。自分も類に漏れず、また変な一発ネタを作ってしまいました。
その名も、『StrikerS終盤はこんな風にしたら面白かったと思うんだけどな〜ワンピース風味編〜』!!
ちょっと原作とは違う所もありますが、折角作ったんだから投下したいのが人情。
もうしばらくしたら投下したいんだけど……ダメ?
支援です、しかしワンピース風って一体どんなもんでしょう? それとダンテが2で強大な悪魔をリベリオンと銃で倒してるのを完全に失念してました…
支援準備はできてます
いつでもどうぞ
ARMSクロス、五話Cパート投下いーでしょーかー?
……試験中に何やってますか自分。
ヤッホー!!!まってたぜ!
orzしえーん
あら、投下かぶった?
被りましたー
したらば落ちてるせいで専ブラの一括更新があああああ。
どうしましょ? 自分は投下後すぐの投下も別に構わないですが、やはり慣例通りそちらの投下が先で?
まー自分が後でも構わないんスが、そんな事言ってたら話が進まないし……じゃあ先に投下しても良いですか?
お返事が確認され次第、こちらの投下の決行or一時中止を決めるですよ。
では、先に投下お願いします。
……それはそうと終わ黒クロスはまだで(ry
終わ黒ごめんなさい終わ黒ごめんなさい終わ黒ごめんなさい終わ黒ごめんなさい終わ黒ごめんなさい………ッ!!!
もーいい加減やんなきゃっつうのは解ってんですけど、なんか何時も脇道それちゃうのっ!!
真剣に申し訳ありません、ですよ。まあとにかく今は一発ネタを投下しちゃいますよ。次から投下開始。
神の声「これまでの魔法少女リリカルなのはStrikerSは!!」
機動六課が追う次元犯罪者、ジェイル・スカリエッティとその一派。その正体はロストロギア“聖王のゆりかご”を復活させて強大な武力を手に入れ、全次元世界を独裁しようとする地上本部の傀儡だった。
本局で行われた公開意見陳述会の隙を狙ってスカリエッティ一派は襲撃、本局と機動六課の施設を破壊し、傍流の戦闘機人ギンガと、“聖王のゆりかご”の起動キーであるヴィヴィオを誘拐した。
これによって公式には次元犯罪者達によって本局は陥落、地上本部が時空管理局全体を指揮する事態となった。
この状態でスカリエッティ一派を追えば地上本部に行き着き、世間的には機動六課が造反して地上本部、ひいては時空管理局全体に牙を剥く、という形になる。
普通の人間達ならば八方ふさがりと思う状況、しかし機動六課は違った。仲間の為、家族の為、そして己を律する正義の為に機動六課は地上本部を襲撃する。
はやての呼び声に応えたクロノ率いる本局勢力とカリム率いる聖王教会勢力、彼等が地上本部勢力と戦う中、スターズとライトニングの双方が深部へと疾走する。
そして彼女達は施設最深部の目前まで来ていた……。
神の声「なんて感じの事があった事にしてください!!」
時空管理局地上本部、黒の高層ビルが乱立するその中にあって一際高い中央のビル、それこそが地上本部の最深部だ。それの目前にした一つのビル、その屋上でなのははドゥーエと対峙していた。
「…ダメ、こんなのじゃダメなの」
「?」
微かに笑むなのはにドゥーエは疑問符を浮かべる。
「――ヴィヴィオが攫われた時に思ったの。もっと、もっと強くならなくちゃ、私は家族を護れない」
なのはの紡ぎは止まらない。
「私には強くなんかなくたって一緒にいて欲しい家族がいるから……! 私が誰よりも強くならなきゃ、みんな失っちゃう!!」
「……ならどうするの」
強い意思を含んだ叫びを受け、ドゥーエはピアッシングネイルを構える。一方でなのはもレイジングハートを天へと掲げる。
「全力全開で戦う方法を考えた…」
『エクシードモード』
レイジングハートの宝玉が点灯、同時になのはのバリアジャケットが一新される。
「誰も失わない様に……」
『ブラスターシステム、起動』
加えてレイジングハートが新機能の始動を宣言、そして己が機械の身となのはの体に異変を起こす。
「誰も遠くにいかない様に……!!」
蒸気だ。なのはの身から、レイジングハートの身から、白い煙が噴出したのだ。
(――何? 体の中で何が起きているの?)
敵の異変にドゥーエは推測を脳内に走らせ、しかしなのはによって中断された。
「貴方はもう、私について来れない……」
「!?」
「私の技はみんな一段階進化する」
振り下ろされたレイジングハートの先端がドゥーエに向けられる。そして電子音が一声。
『ブラスター1』
だが告げられた能力をドゥーエは一笑した。
「ブラスター? 技が進化する? 体から蒸気を噴かせて……何のハッタリ?」
しかしなのはは聞かない。
「私は、貴方達とここで会って良かった」
呟くなのはは手に持つデバイスで魔力を収束、砲撃の準備に入っている。
「ディバイン……」
「この至近で狙い撃つ気? ……私の方が早いわよ」
告げたドゥーエが一瞬でなのはに迫り、ピアッシングネイルを突き出そうとする。
「殺った!」
ドゥーエはそう判断した。だが、
「――バスター・JET!!!」
「!!!?」
唐突に視界を包んだ光、それが敵の砲撃だとドゥーエが気付いたのは自身が飲み込まれた直後だった。圧倒的な威力が全身を叩く。
だがドゥーエは倒れない。全身が傷付き、吹き飛ばされて押し戻されるが立ち続ける。その両眼は未だになのはを見据えたままだ。その様子になのはは嘆息を一つ。
「本当に頑丈だね。だったらもっと面白いものを見せてあげるの」
レイジングハートの宝玉が光を強め、
「ブラスター……」
しかしなのはが更なる力が発揮されようとした直前、ドゥーエが崩れた。響いた金属音はドゥーエの体内に含まれた機械だったのか。そんなドゥーエを見るなのはは構えと機能を解き、荒い呼吸をしていた。
「――スゴい疲れた。やっぱりまだ体がついていかないなぁ……」
しかし、まぁ今は体なんかどうでもいいや、となのはは続ける。そして微かに身を仰け反らせ、息を大きく吸い、目前に聳える地上本部最深部に向かって吠えた。
「ヴィ――ヴィ――オ―――!!! 迎えに来たの―――――――――――ッ!!!!」
……奇しくも叫ばれた直後、脱走したギンガに連れられたヴィヴィオが窓辺へと現れた。
「ヴィヴィオ!! 良かった、まだそこにいたのね!!?」
なのはが見上げる先、最深部ビルの窓辺の一角にヴィヴィオの姿がある。直後に窓ガラスが割れ、
「――ここは通さない!!」
聞き慣れたギンガの声と共に爆音、地上本部の魔導師達が穴となった窓から墜落した。
「そこで待ってて! すぐに飛んでいくから!!」
言ってなのはは両足に光の翼を展開、飛行しようとする。だがそこへヴィヴィオの拒絶が響いた。
「待って!!!」
「……!?」
驚きに身を固めたなのはが見るのは、表情を悲痛に染めたヴィヴィオの姿だ。
「何度も言ったのに……!! もうヴィヴィオは、ママ達の所には帰らない!!!」
拒絶は続く。
「帰って!!! もうママ達の顔は見たくないの!!!!」
ヴィヴィオへと振り向くギンガの姿がある。
「――どうして助けに来たりするの!!?」
呆然とヴィヴィオを見るなのはの姿がある。
「――ヴィヴィオが何時そうしてって頼んだの!!?」
そして、
「……ヴィヴィオは、もう死にたいの!!!」
この状況を嘲笑する声がある。
「ふは……ふはははははははははははははっ!!! 面白い!! 何だこいつ等は一体!! ははははははははは!!!」
笑うのは窓辺へと近付いて来た中年の男、レジアス・(C)ゲイズの声だ。野太い声で嘲笑う彼をギンガが睨んで拳を振り上げる。だが、
「邪魔だ」
新出した人影の蹴りによって弾き飛ばされた。延髄が一瞬ずれる鈍い音と共にギンガが倒れ、攻撃者達が歩んでくる。
「ははははは! ノーヴェ、そりゃ腹いせっスか? チンク姉をやられた腹いせっスか!?」
「うるせぇ。アタシは今気が立ってんだ」
窓辺に現れたのは二人の戦闘機人。続いて無数の人影がビルの各所が出現、窓辺へと足を着く。
「ふははははははは!! よォし、よく集まった“ナンバーズ”!! ――だがしばし待て…、今機動六課が内部崩壊を始めた所だ!! 見守ろうじゃないか!!? ふはははははははははははははッ!!!」
「あれ、敵って“高町なのは”一人だけ?」
「言っちゃダメっすよセイン〜。一人でもここまで来れば立派ってもんスよ、ね? ノーヴェ」
「アホ。ウェンディ……ありゃぁ死にたがりの馬鹿っつぅんだよ」
「――トーレ、ドゥーエが倒れています」
「やはり十年以上も脳みその世話では、腕も鈍るか」
「――負けて、しまった」
「ニブっとしても負けるものなのですか? ディエチ姉様」
「オットーもディードも……ううん、みんなもっとドゥーエを気遣おうよ」
レジアスの命令を聞いた風も無く、八人の戦闘機人がなのはを睥睨した。
支援です
「ねーレジアスのおっちゃーん.、さっさと行って“アレ”消せば終わる話なんじゃないのー?」
「誰がおっちゃんだ!! ……まァ待て、救出の為に造反してまで追って来て、娘扱いした小娘に最後の最後で助けを拒まれる女、こんな面白い光景を見ようじゃないか!!」
セインの問い掛けにレジアスは嗤って答える。ナンバーズは軽蔑の表情を浮かべるが、彼女達の後ろに立つレジアスは気付かない。そこへなのはの声が響く。
「……ヴィヴィオ―――――!! 死ぬなんて……何言ってるの!!?」
「ふはははは……! 聞け、この悲痛な叫び!! 見ろ、あの表情を……!!?」
レジアスが嘲笑を深めようと直後、なのはの背後で爆発が生じた。猛烈な上昇気流が屋上を突き破り、瓦礫を舞い上げる。
「――とにかく助けるから!! その後で……お話を聞かせて!!?」
そんな轟音すらもなのはは無視、そして上昇気流から解放されて墜落する瓦礫の中に二つの人影が混じっていた。
「……着地!」
「みゃっ!?」
茜色のツインテールと青の短髪をした二人の少女、ティアナとスバルだ。無傷で着地したティアナとは反対にスバルは頭から落下した。
「それでも……まだヴィヴィオが死にたかったら、その時にして!!!」
加えて上昇気流によって生じた穴、そこから紅と黒の女性が現れる。
「シグナム副隊長、乱暴過ぎます! 余波だったら良かったものを……直撃だったら死んでましたよ!?」
「む、どうしたんだお前達」
「貴方が巻き込んだんですよ、シグナム。だからやめようって言ったのに」
「……でもシグナム副隊長もフェイト隊長も、無事で良かったです」
叫ぶなのはの背後で言い合う四人、そこへ更に轟音が生じる。また屋上の一角が内側から砕かれたのだ。
「ラケーテンッ! ハンマ―――ッ!!」
破壊者は長柄の鉄槌を振り回した赤服の少女、スバルとティアナの上司であるヴィータだ。推力を噴く鉄槌を止めてヴィータは降り立つ。
「間違いなく一番乗り、このまま一気にヴィヴィオを…………ってシグナム!!?」
ヴィータが驚愕を叫ぶ。
「てめぇ! 何でアタシよりも先に……!!?」
「ああ、遅かったなヴィータ。道にでも迷ってたのか?」
「オ…! オ…オイオイオイオイ……!! どこでそんな言葉を覚えやがったんだてめェェ!!!」
いがみ合う赤の少女と紅の女性。そんな屋上に大きな影が差す。それは白い飛竜だ。その長い首には小柄な少年少女が座している。
「フェイトさん! みなさん!! よかった……合流出来た!」
「フリード、屋上に降りて!」
『オオオオ―――――ン!!!』
幼い主の名に従って飛竜が屋上に降り立って二人を下ろす。
「ふん、次から次へと……」
次々と現れる機動六課の前線メンバー、その光景にトーレが呟く。微かに楽しげな表情を浮かべる彼女とは逆に、レジアスは驚愕と怯えで目を見開いている。
「お願いだから!! ヴィヴィオ……っ!!」
そんな敵の様子も気にせず、なのはは一心にヴィヴィオへと思いを響かせる。
「死ぬとか何とか……何言っても構わないから!! そう言う事は……!!! 私達の側で言って!!!!」
「!!!?」
「あとは私達に任せて!!!」
1騎の飛竜を背景に8人が並列、各々の表情を持ってヴィヴィオと戦闘機人達を見据えた。
「は……はは…うははははははははは!!! この反逆者どもが!! たかだか8人が粋がった所で何が変わる!!!」
自らが抱いた恐怖を塗り潰す様にレジアスが浅はかな笑い声を上げる。
「この戦闘機人“ナンバーズ”の強さ然り!! 難攻不落の強度を誇る“防衛システム”の頑強さ然り!! 何より今の私には……」
そういってレジアスが懐から取り出すのは金色で塗られた小さなデバイス。それを掲げて男は言を続ける。
「この専用デバイスを使って!! “バスターコール”をかける権限がある!!!」
「!!!」
そこに含まれた単語を聞いたヴィヴィオが身を震わせた。レジアスはそんな幼女にデバイスを突き付ける。
「アインヘリヤルを搭載した三戦艦と数万のエース級局員で目的地を殲滅する、その指令こそが“バスターコール”!! そうとも小娘、脱走した貴様を運悪く匿った街!! それを滅ぼした力だ!!!」
その言葉はレジアス達を見上げる機動六課にも届く。
「ヴィヴィオを匿った世界……!?」
スバルが単語を反芻し、
「トレーラーに積まれる前にヴィヴィオがいた場所って事?」
ティアナが類推し、
「……ていうかあのおっさん、今すぐ叩き潰してやりてェ!!」
ヴィータが吐き捨てる中、ヴィヴィオが叫ぶ。
「やめて!! それだけは……!!!」
「ははは、良い反応だ!! それはこの“バスターコール”を発動要請しろという事か!!?」
半ば恐慌したレジアスの卑屈な声色が響く。だが、
「やめなさいっ!!!!」
ヴィヴィオの悲鳴が命令形と化した。微かに怯むレジアス、だが直ぐに取り直してヴィヴィオを睨む。
「小娘ぇ……、生意気な口を利くんじゃない!!」
押し潰す様なレジアスの怒声、だがその声は幼いヴィヴィオすら動じさせる事が出来ない。
「“それ”を使ったら……ここと一緒に、みんな死んじゃうよ? ヴィヴィオも、ママ達も……おじさん達も!!」
「何を馬鹿な!! 味方の攻撃で消されてたまるものか!!」
レジアスの顔に浮ぶ怯えが深まる。否定された言葉を証拠付ける様にヴィヴィオは喋り続ける。
「ヴィヴィオがヴィヴィオって名前をもらう前の、その全部をこわしちゃったあの火……っ! “それ”が……またヴィヴィオのママ達に向けられたっ!!」
叫ぶ声色は、内容は、気配は、
「ヴィヴィオがママ達と一緒にいたいって思うと!! ママ達が危なくなっちゃう!!!」
そして伝わる思いは、
「ヴィヴィオにはどこまで逃げても……ずっとついてくるものがあるっ!!!」
決して6歳前後の少女が抱いて良いものではない、悲痛なもの。
「ヴィヴィオを追いかけるのは!! ……“世界”とその“闇”だから!!!」
嘆きにも似た思いが摩天楼に響く。
「ママ達のお家が壊されたのも!! ママ達が危ない所に来たのも…!! もう二回もママ達を巻き込んだ!!! これがずっと続いたら……ママ達もきっとヴィヴィオを嫌いになる!!!!」
叫ぶ。
「きっといつか!! ヴィヴィオを捨てちゃう!!! それが一番怖い!!!」
叫ぶ。
「だから!! だから……っ!!! だから助けに来て欲しくなかった!!!!」
「ふははははははははは!! 成る程! 確かに正論だ!!!」
悲痛な思いをレジアスは嘲笑を持って肯定する。
「そうとも!! 貴様の様な兵器を動かす為だけの人造人間を抱えて!! 手放したいと思わない馬鹿はいない!!! ……見ろ、若造共!!!」
そこまで言ってレジアスは最深層ビルの天辺を指差す。そこにあるのは時空管理局全体を示す旗だ。
「あの旗こそ千万億の次元世界の“結束”を示す象徴!!! 兆は下らない人間達が正義とするものだ!!! 貴様等が歯向かうには余りに強大な力!! どれ程のものか解ったかぁ!!!」
最早壊れた様に笑うレジアス。笑いを取り損なった道化師を見る目をナンバーズが向け、機動六課の8人に至っては身もしない。ただなのはは最深層ビルの旗を見据えて、
「ヴィヴィオの敵はよく解った。……ティアナ」
短く告げた。
「――出来るよね」
「はい」
射撃の師が言外に含んだ指示、それを愛弟子は理解する。両手でクロスミラージュを構え、
「クロスミラージュ、……モード3」
『了解』
その形態を長い銃身を誇る狙撃銃へと変形させた。高々と掲げられた銃口が向くのは、屋上の旗。
「……は?」
惚けたレジアスの声。空気が伝えるのはティアナのトリガーヴォイス。そして閃光は放たれた。
「――ファントムブレイザー!!!」
収束された光は一直線に空を渡り、そして時空管理局の旗を貫いた。
「…………っっッ!!!!?」
レジアスの顔が最大級の驚愕に塗り潰された。
「……まさか」
ヴィヴィオの顔もまた驚きに彩られた。
「……あ……ああ……やりやがった……!! 旗に攻撃する事の意味が解ってんのか……ッ!!?」
そして地上本部に在する全ての人間が、敵も味方もなく叫んだ。
「やりやがったァ――!! 機動六課が……っ!! “時空管理局”に!!! 宣戦布告しやがったァ―――――――――!!!!」
「正気か貴様等ァっ!! 全次元世界を敵に回して生きていられると思うなよォ!!!!」
「望むところだァ―――――――――――――――ッ!!!!」
レジアスの怒声を、数万の魔導師や騎士達の合唱を、それら全てを上回るスバルの叫びが木霊する。
「ヴィヴィオ!! 私達はまだヴィヴィオの口から聞いてない!!!!」
そして機動六課の、ヴィヴィオを思う全ての人々の思いが轟いた。
「“帰りたい”って言って!!!!」
「帰る……?」
ヴィヴィオは叫ばれた言葉を呟いた。
それを言えば大事な全てが壊される言葉。
それは今までだれも許してくれなかった言葉。
そう言いたくて、そう願いしたくて、でも不可能だと思っていた言葉。
(でももし……それを言っても良いのなら………)
私は、ヴィヴィオは、
「――帰りたいっ!!!! ママ達のいるところに、みんなの所に帰りたいッ!!!!」
「任せて!!」
スバルが快諾し――、
「く、来るなぁ――――ッ!!」
レジアスが怯え――、
「来い、始末してやる」
トーレが挑発的に笑み、
「ク……クク、ンククククククク……!!」
スカリエッティが最深部ビルの屋上から両勢力を見下ろし、
そして、
「――ヴィヴィオ、絶対に助けるから!!!」
なのはが確約を叫んだ。
支援
つー感じで投下終了。お次の真打ちにバトンターッヂ。
そして私は山ごもり。真面目な話、これ以上一発ネタを続けちゃヤヴァいわ。
終わクロとかゴジラとか……ちょっと話数をストックする必要もあるような……まぁそんな感じで、少しの間顔見せないかも。
GJです
ディバインバスター・ギガントはどうなるのだろうかw
157 :
なのウタ:2007/12/12(水) 23:32:04 ID:DSc+XjKy
GJ〜
>>156 ゆりかごの外壁に大穴空けちまうぐらいの威力になるに違いない
ナンバーズは誰が誰役?
GJ! 本編でもこれぐらい燃え展があればなあ。曲は良かったんだが……
それはそうと『BLEACH風フェイト』が極めてナチュラルに思い浮かぶんですがどうでしょう。『NARUTO風はやて』ができれば三部作になるのか?
……ちなみに、『撃発音声』と書いて『トリガーヴォイス』ですか? ソーコムソーコムイグジスト?
投下おk?
■
「さて、突然だが―――力が欲しいかい?」
「……何だ、また地獄か」
「おやおや、随分な言い草だね?」
「目を醒まして開口一番、力が欲しいか、などと聞かれる世界だ。碌なものではあるまいよ」
「尤もだ。ではもう一度聞こう―――力が、欲しいかい?
何者にも負けぬ力が。最強を証明出来る力が。自身を唯一足らしめる力が―――欲しいかい?」
「―――当然だ」
それが契約の言葉。
手に入れたのは、剣と槍。『輝く貌』と称された、盟友に裏切られ死した英雄のそれと同じ名を持つ異端の武器。
そして、彼の支払うべき代償は――――――
■
「お、のれ……シル、バ、ァァ……」
莫大な熱を伴う光条が、鳩尾の左辺りを中心に―――
着弾の余波として生まれる衝撃で、仰向けのまま数メートルを吹き飛ばされた。列車から落ちなかったのは幸運以外の何者でもない。
首から下の感覚はない。首元までもが蒸発し、神経が物理的に存在していないのだから当然だが。
強烈な共振が、頬に刻まれた傷痕を疼かせていた。
眼球と目蓋を動かし、自身の状況を確認する。
皮一枚で首、右肩から腹が繋がり下半身はほぼ無事。最も不安なのは、赤い短剣『ベガルタ』を握った左腕だが―――肩から千切れてはいるものの、手を伸ばせば届く距離に落ちている。
『無事か? レッド』
「当然だ……貴様らは、手を出すなよ。奴は、オレが倒す」
『……無理は、するなよ』
「トーレ、誰に物を言っている?
ルーテシアとゼストにも言っておけ。危険だから近付くな、とな」
左脚で地を叩き、一挙動で立ち上がった。
見渡す―――グリーンはいない。逃走したか。
肺も心臓も骨格も神経も、既に再生されされている。右手で左腕を拾い上げ、肩の傷口に押し付けた。
「レリックの回収は?」
『……ドクターは、気にせず戦えと』
「ふん、分かってるじゃないか」
接合された左腕を軽く動かし、調子を確かめる。反応速度、筋力、瞬発力、『ベガルタ』の動作。
―――万全だ。
「俺の方に来るのは何人だ?」
『恐らく、おまえの望む一人のみだ』
「何? 『不屈のエース』とやらはどうした?」
腰に提げていた長鞘。その半ばを空いた右手に掴んで引き抜く。
殆どの相手に対しては、さして役に立たない武器。しかし奴が―――ARMSが相手となるのなら、これは極めて有効な武器だ。
―――鞘が展開される。
刃が抜き放たれるのではなく、赤い鞘に無数のパーティングラインが走った。そしてそれぞれが分割され内部機構を剥き出しに。
倍以上に伸長した蛇腹状の構造体が、余剰した外装を組み替えることによってクリアランスを埋め補強。
『……たった今、私が叩き堕とした』
最後に、柄だった部分が蛭巻の布を破り散らし擬装を解除。ある種の集積回路にも似た、独特の紋様を走らせる穂先が現れる。
その間半秒。鞘が、真の姿を顕した。
角ばった形状と、鮮血じみた配色と、異形の刃を併せ持つ、魔獣の角とでも形容すべきメカニカルな短槍。
―――槍の名を称して『ガ・ボウ』。ケルトに語り継がれし能力は―――
その半ばを右手に掴み、ヘリから身を乗り出し砲撃を放つ男を見据えた。
支援
■
時間は、僅かに遡る。
「……来たか、機動六課!」
立ち上がったトーレの視線の先にあったのは、ヘリから飛び出すや立て続けにガジェットを撃ち落とす、桜色の輝き。
―――『WR・E』起動。伝達、演算処理系リミッター解除。
『ライドインパルス』の超加速を生み出すのは、全身十七箇所に埋め込まれた加速機構。
その周囲に展開される力場の統合とバランス制御能力が、トーレという筐体の持つ特質だ。
―――大腿、両膝、足首を除く加速機構十一箇所を閉鎖。残存六箇所の力場展開方向を限定化。
後者の特性を最大限に活用することによって、瞬間の大加速と急激な方向転換への機動性特化を可能とする。
それこそが『ホワイトラビット・エミュレータ』。ナンバーズが三女トーレの切り札のひとつ。
―――動作パターン解凍、インストール成功。出力系リミッター解除。バランサー開放。
桜色の光を見据える。両の脚に力を込め―――戦闘機動開始。
両脚が三つの光輪を纏い大推力を吐き出した瞬間、彼女の意識から音が消失。
ただの一刹那で音速に肉薄した自身の速度。脳の生体部分が脳内麻薬の過剰分泌によってそれを認識している。思考の圧搾において、ときに人体は機械を凌駕する。
故に、亜音速戦闘において無用な情報が無意識にカットされ、無音の世界を彼女は翔けた。
■
聴覚や魔力感知による察知をほぼ不可能とする音速の奇襲。
高町なのはがそれに反応できたのは、ひとえに視覚による警戒を怠らなかったからだ。
下方より接近する―――否、眼前に突如出現した敵影。両脚に光を纏う長身の女。
咄嗟に右手を突き出し魔力弾生成、数は八。押し包む軌道を描いて女を狙う。
同時に空薬莢が宙を舞い、杖を中心に半球状の障壁が張られる。インテリジェントデバイスとの連携による、複数術式の並列展開。
魔導師の空戦においても、背後を取られることは致命的な失策となり得る。白兵型同士ならば、或いはある程度の距離があればともかく、砲戦魔導師が至近で背後を取られて勝てる道理は無い。
だが、この距離から背後に回るのは不可能と言って良い。それが可能なのは壁さえ足場として跳び回る一部の陸戦魔導師、あるいは足場の併用による大加速を得れる超一流の近接魔導師のみ。どちらにしろ、空中ではありえない。
故に選んだ術は障壁『プロテクション・パワード』。一人と一機の判断は、極めて順当だった。
目の前にいる相手が、その不可能さえ覆す、規格外のひとつでなければ。
■
桜色の魔力弾が、四方八方に現れた。同時に魔力障壁が展開され、直進が封じられる。
機動力の代償として防御的機能を一切持たない自分では、強引に突破するような戦術は取れない。通常ならば退くべき状況。
『通常』ならば。
つまり、この状態ならば―――違う。
炉心加圧、右脚の加速機構を出力最大、三つの光輪が高速相転。さながら足裏で宙を蹴り飛ばすように、静止状態から亜音速にまで一挙に加速。
向かって左上の隙間に身を捻って滑り込み背後に移動。左の足裏を進行方向に向け、推力を発し静止―――最大加速。残像のみを残して離脱。
―――殺さぬ程度には、手加減できるか?
そう考えつつも迷うことはなく、人体の反応速度を凌駕する迫撃を、白い首筋へと解き放った。
■
「え……?」
それは、唐突に。
ヘリから飛び出し、次々に飛行型ガジェットを撃墜していた高町なのはが―――
糸が切れたように、地上へと落下した。
後方からモニターしていたロングアーチスタッフには、それこそ人形が全ての繰り糸を一瞬で切られたかのような、正体不明の現象としか捉えられなかった。
確認できるのは、そこに立つ紫色の人影のみ。故に、五人と一体の意識が驚愕に満たされ―――しかし刹那で復帰する。
「スターズ01、撃墜されました……!?」
「そんな!」
「バイタルはどうなっとるんや! 敵のデータは!」
「血圧、体温の低下や、魔力暴走の兆候はありません……ですが、意識が! レイジングハートは稼動中!」
「あかん、ライトニング04、全速離脱―――!」
遅かった。否、いかに速かろうと、それを阻むのは不可能だったろう。
女の姿が掻き消えるや、フリードリヒの頭が跳ね上がる。女の蹴りを喉元に叩き込まれ、滑空しつつ落下した。
「……撃墜、されました……!」
『てめええええええぇッッ!』
宙へと飛んだ紅の鉄騎が、戦鎚のヘッドから爆炎を噴き加速。高速旋回からの打撃を叩き込んだ――――――紫色の残像に。
刹那を刻み音を渡った女の回し蹴り。勘で辛うじて防いだものの、ガードの上から地上へと吹き飛ばされる。
「ヴィータ副隊長まで!?」
「敵影、魔力は感知されていません。ですが……これは、この動きは……」
「―――戦闘機人、か!」
副官であるグリフィス・ロウランが手元の立体鍵盤を叩き、大型モニターの一角にウィンドウを展開。
分隊から受け取ったデータから、エネミーに関するものを表示。幾人かの姿が映し出される。
今や見慣れたガジェットの群れ。
宙に留まっているそれと同じ、長身の女。
眼帯の上に銀髪を流す小柄な少女。
そして、異形の剣腕と紅い短剣を振るう軍服の男。
「出会い頭に撃破された一体が、戦線復帰したのか!? 見逃すなんて、108分隊は何をやっていたんだ!」
「いえ……サーチャーの記録、解析出ました。出力が感知可能な域にまで上昇した、その直後に攻撃を行った模様! これでは止められません!」
「……ッ! 北東より魔力反応、二つ! 大きい……推定ランク、AAです!」
「シグナムを回しい! もう片方は、108分隊に」
「入電! 『隊長二名の戦線離脱により、戦術を形成できず。支援を要請する』」
「スターズ04に通信コードを送信しろ!」
「魔力反応、転送反応、多数出現……召喚魔導師!?」
「この上数まで増やされたら……手に負えんようなる!
レリックもガジェットも、ひとまず無視してええ。最優先で召喚者を落とす!」
『―――了解!』
「頼むで……皆」
――――――その言葉は、司令室の喧騒に溶けて、消えた。
■
「……なのはさん、キャロ、ヴィータ副隊長っ!?」
降下の為に高度を下げたヘリの中、スバル・ナカジマが眼を剥いた。上官二人と同僚が攻撃を受け、地面へと落下していったが故だ。
当然のように救助に向かおうとするが―――止められた。
ARMS支援
「やめなさい馬鹿っ! ……はい、了解しました。では、予定通りエリオには私から指示を出します」
「でもティア! なのはさんとキャロが!」「そうですよティアナさん!」
「じゃあ聞くけどね……私たちの任務は、何?」
「それは、レリックの回収と」「ガジェットの撃破ですけど……」
「ですけど、何? 大体、あのレベルの相手に私たちが向かっていっても、一瞬で落とされるだけよ。
犬死にするのはやめなさい。ギンガさんとグリーンさんまで離脱して、予定より六人も戦力が減ってるんだから」
二人の声を、ティアナは封殺する。彼女は、何処か醒めた眼で現在の状況を観察していた。
―――“火”の制御。意識の白熱している部分を、表層と深層の中間に隔離し、俯瞰する感覚。
「ロングアーチからの情報だと、命に別状は無い。バリアジャケットは残ってたから、落下の衝撃も緩和できる。
他の二人も同じ。なら、私たちのするべきことは何?」
「だけど、誰かが牽制しておかないと……」
「俺がやろう……三射で落としてやる。
……先程、グリーンと言ったな? それは108分隊の魔導師の名前か?」
アレックス―――異形と化した腕から放たれる砲撃で、地上の敵機を片端から破壊していた男は、表情を揺るがせてさえいないかった。
女が宙を走った際、微かに右目を見開いただけだ。
それも一瞬。今はわずかに眼を細め、狙撃の機会を窺っている。
「ええ、そうですけど……? それはそうと、お願いします。降りるわよ、スバル、エリオ」
「了解した……八神はやて、例のオーダーはキャンセルだ」
これで問題はないと言わんばかりに、返事を待たず飛び降りた。
表情に僅かな不満を浮かべながらも、二人は後に続く。
■
「……トーレの『エミュレータ』は、充分に実戦に堪えるようですね」
「当然だともウーノ。空戦―――こと砲戦魔導師が相手なら、あれに抗し得る者は存在しない。他でもないこの私が、そのように作ったのだから。
しかし、いかにリミッターが掛かっているとはいえ、あのクラスの空戦魔導師と、竜種をも一蹴できるとは。
手加減するまでもなく、多少は苦戦するかと思っていたのだがね」
『……申し訳ありません、ドクター』
「ああ、別に構わないよトーレ。あれだけの成果を出せたのだから、差し引いて余りある。
正面からでも倒せる見込みが大きければ、あんなしち面倒な策を採る必要は無いからね」
『いえ、そうではなく……』
空中に留まるトーレは、ち、と小さく舌打ちし、
『あの砲戦魔導師、思っていたよりはやるようです。蹴りを打ち込んだ瞬間、障壁の指向性を切り替えて炸裂させ、反撃してきました。
右脚の加速機構に影響が出ています。出力系にノイズが……』
「……エミュレータの使用に影響は?」
『これ以上は危険だと判断しますが』
「なら、直ちに通常起動に回帰させて撤退したまえ」
『了解……ッ!』
エミュレータを終了。動作状態を高速巡航用に変更、伝達、演算処理系が書き換わる感触に身を震わせ――――――その、一瞬未満の隙に狙いを定め、攻撃を放った者がいた。
その一撃の速度に比べれば、音速など牛歩に等しい。
トーレの左半メートル。超高熱の光条が、周囲の大気を歪めつつ通過した。
■
両腕を突き出し狙いを定める/磁気マップを読み解く/極限の集中―――引き伸ばされた空で、僅かに敵がみじろぎする。
左腕射撃/吹き伸びる光条―――外した。向かって右/上腕部から千切れかかった左腕を抱えるように宙を横滑りし、余波から逃れる。
それなりに速い―――が、ホワイトラビット/巴武士に匹敵しようかという動きは見る影もない。
照準修正/出力加圧/やや下方を狙い右腕射撃。身を捻って宙を掻き、回避―――
「―――無駄だ」
一瞬にして加熱された大気/発生する乱気流/姿勢制御を妨害。
姿勢を崩した敵に向かい、本命の両腕射撃を叩き込む―――
■
スバルの展開したウイングロードを伝い、高架の下へ駆け下りた。
柱の陰に三人で並び、索敵を打つ。本来のフルバックであるキャロがいない以上、センターである自分がやるしかない。
……近場に敵はいない、と。なら、
「エリオとスバルは、召喚魔導師を捕えに行きなさい。位置は北東に百六十メートルよ。
もう一人の方は、シグナム副隊長が倒しに行ってるわ。
私は108分隊を援護して、残ってるガジェットと召喚体を倒す。質問は?」
「なのはさんと、ヴィータ副隊長、キャロの救助は……」
「まだ言うの? ……そうね。三人とも進路上に落下してる筈だから、安全を確認するだけならいいわよ。
ただし、必ず二人一組で行動すること。分かったわね」
「……うん!」
「はい!」
二人とも、顔を輝かせる。この単純さは変わらないな、と思いながらロングアーチへと通信し、108分隊への通達を頼んでおく。
ついでにもうひとつ、スバルの懸念を振り払っておこうと考えた。走り出したスバルの背中に念話を飛ばす。
『スバル。二人とも無事に帰還したそうよ。アクシデントがあったらしいけど』
『良かった……て、アクシデント?』
『グリーンさんが、身体強化の使い過ぎで、腿が内出血まで起こしてたのに簡易治癒だけで再出撃しようとして』
『ギン姉に無理矢理止められた?』
『テンプルにいいのを入れたらしいわよ』
『最近会ってなかったけど、二人とも相変わらずだね……』
『あの……その名前って……?』
『108分隊のツートップよ。スバルの姉さんと……何て言うのかしらね。ああいう関係は』
『居候……かなあ。でも、今は隊舎使ってるし……相棒?』
『それが無難ね。まあ、そういう人よ』
■
「ッせァああああああッッ!」
「ゥオオオオオオォォッ!」
袈裟懸けに振り下ろされた長槍を、長剣の斬り上げが受け止め、数十回目の火花を散らした。
反発し合う磁石のように互いが飛び退き、展開した三角形の魔法陣の上で構えを取り直す。
シグナムは、左腰の鞘に剣を収めた居合いの構え。
対するゼストは、穂先を倒し右後方に刃を向けた、最速で槍を薙ぎ払う為の構え。
―――お互いに、出会った瞬間、倒すべき相手だと確信した。
言葉が意味をなさない相手だと、さながら鏡に映った自分を見るように、理解した。
双方とも、顔には疲労の色がある。
だが、瞳から窺える闘志は、欠片の陰りも見せてはいない。
(……この男、なんと堅固な槍術だ。付け入る隙が無い)
(……この女、なんと苛烈な剣術だ。返しの槍を放てぬ)
((―――強い!))
(だが、次の一撃で確実に落とす!)
(ならば、後の後ではなく、先の後を狙う!)
ただ二人
だけが、世界から切り離されたかのように、純粋な闘争を続けていた。
―――その間に、何が起こっているのかも知らず。
■
投下終了ー。×終わクロ氏すいませんでした。
次回は六課反撃の時間になる、かなあ?
通りすがりのサラリーマン支援
GJ!
トーレカコヨス、だが武士レベルにはまだ遠いな。一矢報いるなのはもさすがだぜ!
シルバー兄さんも亜音速レベルに慣れているだけのことはある、決闘時の涼なんて超音速移動まで行ってたもんな。
そしてティアナに水の心フラグが立っているような気がする。
GJ.
GJでした!
GJ!!トーレが強いッ!!個人的には負傷したチンクが気になります。
そしてタティアナさんの習得すれば見違えて強くなる水の心フラグが・・・
大好物がふんだんに盛り込まれてて非常に次回が楽しみです。
レッドとシルバーの完全体対決とかあるんですかねぇ。
GJ!
ギャローズベルの再現か。シルバー好きには嬉しい。
174 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/13(木) 02:24:36 ID:Ruf18jaK
GJ!次回も楽しみにしてます
『なのはのくせになまいきだ。』第2話出来ました。
と言うか、ゲームにちょっと飽きが来たので箸休め。ニジリゴケ検定(プロ)が通らないのじゃよー。
だいにわ ほしと いかずちと コケるスカ
はじめは、小さな洞窟だった。
少しずつ掘り進め、拡張し、ガジェットドローンを配置する。
配置されたガジェットは土中に含まれる微量な魔分を回収し、蓄積する。
それを基にして新たなガジェットを製造し、洞窟を更に拡張していく。
ある程度魔分が溜まった時点で次世代型のガジェットを開発、配備。
そして、何時しか溜まりに溜まった魔分を投入し、戦闘機人ナンバーズを生み出す。
「さぁ、我が鉄壁のアジト、突破出来る物ならしてみるが良い!
無数のガジェットが、そして私の可愛い(←これ重要)ナンバーズ達がお相手しようではないか!」
「「「トリプルブレイカー×3!!!」」」
そして、
かつて次元犯罪者ジェイル・スカリエッティのラボがあった地点には、
今後数年は草木どころかコケも生えないであろう、
半径200m以上もあるクレーターが出来たのであった……!
【どっとはらい】
177 :
×DOD:2007/12/13(木) 12:08:50 ID:6hhENJ/p
/(^o^)\
嗚呼、覚悟のススメ氏……。お待ち申しておりまする……。
なのはさんが絶望先生の声で「スターズ1、目標を破砕する。」
……という幻聴が聞こえますた……\(^O^)/
職人の皆様方GJです
…で、昨日言った奴投下していいですか?
※フルボッコ、もしくはスレ停止を覚悟しました
ワイルドチャレンジャーな龍騎氏に支援
早く読みたい支援
『高町なのは』の元へと、突如ヴォルケンリッターの一人『ヴィータ』が襲撃を仕掛けてきた。
この二人はヴィータの張った結界の内で出会い、戦い、そしてなのはが敗れる。
そしてとどめを刺されそうになった刹那、『フェイト・テスタロッサ』と『ユーノ・スクライア』、『アルフ』が助けに現れ、ヴィータを捕縛。
だが、そのヴィータの側にも『シグナム』と『ザフィーラ』が助けに入り、実質三対三の戦闘となる。
そして最後は魔力を奪われながらもなのはが放った砲撃が結界を破り、それと同時にヴォルケンリッター達も飛び去った。
……とまあ、ここまでが本来たどるはずだったシリアスな物語だが……
この物語では、とある外的要因……早い話が作者の都合で前述の物語が大きく変化し、シリアスもへったくれもなくなっている。
その変化によって引き起こされた異常事態をどうぞお楽しみくださいませ――――。
ナナナーナ・ナーノハ
ビルの屋上。先ほどのレイジングハートの警告を聞き、なのはがそこにいた。周囲を見回し、警戒しながら。
高速で飛来する「何か」との接触まであと5秒。
『来ます』
レイジングハートからの報告。それを聞くと同時に前方を見る。
「何か」との接触まであと3秒……前方から迫る何かを視認。警戒して身構えた。
飛来したものは、空気との摩擦で赤く光る球体。これが何なのかはすぐに理解した。
そしてそれを保証するかのように、レイジングハートの声。
『誘導弾です』
そう。飛来する球体は、魔力で作り上げた誘導弾。それがなのはめがけてまっすぐに飛んでくる。
かわそうとするが、誘導弾ならば自身を追ってくる。直感でそう理解したなのはは、防御魔法『ラウンドシールド』を前方へと展開した。
それから一秒と経たないうちに誘導弾が命中。ラウンドシールドで受け止めるも、その衝撃はかなりのもの。なのはが苦悶の表情を浮かべている。
……その直後、誘導弾とは別の何かが飛来。誘導弾を止めるのにいっぱいいっぱいだったのか、今度はレイジングハートでも感知できなかった。
「テートリヒ・シュラーク!」
後方に現れたヴィータが自身の得物を思い切り振り下ろす。が、間一髪気付いたなのはがもう一方の手でラウンドシールドを展開。受け止めた。
状態は拮抗……いや、なのはの足元にヒビが入ってしまっている。それほどの衝撃なのだろう。
……ふと、なのはが何かに気付いた。ヴィータの持っている得物である。
柄の部分は白くて長く、最上部とおぼしき位置は緑色。さらにはそのまま剥けそうな葉のようなものが。
これはもしかして、いや、もしかしなくても――――
「ネギだーーーー!!」
そう、ネギだ。よく料理などに使われるあのネギだ。
「ネギじゃねえ! 首領パッチソードだ!」
『いいえ、グラーフアイゼンです』
「キャラだったのそのネギ!?」
喋ったネギへのツッコミが入ると同時に、今までいたビルの屋上が爆発。なのはが空中へと投げ出される。ちなみにネギの主張は完全に無視。
それを見届けたヴィータが、ネギ……もとい、首領パッチソードを振りかざして追撃へと向かった。
ビルの屋上から叩き落とされたなのはは、落下しながらレイジングハートへと呼びかけていた。
「レイジングハート、お願い!」
『Stand by, Ready, Set up.』
なのはの呼びかけに答え、レイジングハートが起動する。それと同時に桜色の光が。
光はなのはを包み、その姿を白いバリアジャケットを纏ったものへと変化させる……本来ならば。
「……あれ?」
起動が終わり、最初になのはが疑問に思ったのは、視野角の狭さであった。
普段より周りが見えづらい。上下左右が暗く、まともに見えるのは前方のみ。
その直後に新たな疑問が発生。バリアジャケットから厚紙がこすれるような音がした。見てみようとして首を下に向けようとするが、下方向へはまともに動かない。
なんとか見えたのは……「青森のみかん」と書かれた段ボール。何故みかんなのかは誰も知らない。
『Bo-bobo Armor Mode.』
……これは、とある次元世界で『ボーボボアーマー』と呼ばれた強力な装備である。段ボールなのに。
何故レイジングハートがこれを知っているのかは定かではない。
どういう事なのかを問い詰めるべく、先ほどから違和感のある右手の方を向き、レイジングハートへと話しかけようとするが……
「レイジングハート、一体どうなって……」
レイジングハートも普段の杖の姿ではなく、別の姿になっていた。
三角の耳があり、四本の足があり、尻尾がある。ついでに言うなら「ニャー」と鳴いている。
……どこからどう見ても子猫だ。ボーボボアーマーが存在する世界では『聖魔支配剣ニャンちゃんソード』という、星すらぶった斬る剣として存在するものだが。
そしてそれをなのはが理解できるわけもなく、
「猫になってるーーーー!!」
ただ大口を開けてつっこむしかなくなっていた。
この後、なのはとヴィータの戦闘があったのだが、作者の脳味噌の都合上カットさせていただく。
ビルの内部。ボーボボアーマーを失ったなのはが座り込んでいる……いや、ヴィータに吹き飛ばされて立てないのだ。ネギで殴られただけなのに。
眼前にはヴィータの姿。視界がぼやけているなのはの目の前で、とどめを刺すべく首領パッチソードを構えている。
……一応言っておくが、ネギで殴られた程度では人は死なない。せいぜいなんか嫌な感覚になるだけだ。
だが、今のなのはは先ほどからの超展開と意識が朦朧としているのが相まってそこまで頭が回らない。
せめてもの抵抗の意思としてニャンちゃんソードを前方へと構える。ビルの壁をぶち抜いたのにこの猫は無傷。相当頑丈にできているらしい。
(こんなので……終わり……?)
いや、だから終わらないってば。前述の通りネギで人は死なないし。
(嫌だ……ユーノ君……クロノ君……フェイトちゃん!)
死なないというのにもかかわらず、死を直感するなのは。その恐怖からか目をつぶる。
そして、首領パッチソードが思い切り振り下ろされた。
ガキィン!
「そのネギの材質何!?」
ネギでは絶対に鳴らないはずの金属音。それに反応してつい脊髄反射でツッコミを入れるなのは。
ツッコミの際に開いたその目に映ったのは、会うのを待ち焦がれていた親友の姿。
……そう、フェイト・テスタロッサがそこにいた。なのはと違っていつものバリアジャケットを纏い、手には愛用のデバイス『バルディッシュ』……ではなく、一振りの長剣を持って。
「ごめん、なのは。遅くなった」
「ユーノ、君……」
そして後方から別の人物の声。こちらにいるのはユーノだ。
ヴィータからすれば、せっかく仕留められると思った矢先に敵が増えたのだ。驚くのも無理はない。
ちなみに先ほどのツッコミはスルーしているので、ネギの材質は言わない。
「仲間か……!」
そう言いながら、後方へと飛びのくヴィータ。未だ戦意は消えてはいない。
対するフェイトは、長剣を正眼へと構える。
その瞬間、なのはの視界に長剣の切っ先が入った。どう見ても剣の先端ではない。というかむしろ人の頭をかたどったような形状。
なのはがニャンちゃんソードの時のような表情になっていることには気付かず、フェイトがヴィータへと言葉を返した。
「友達だ……覚悟して、田中ソードは容赦をしないから」
「田中ソード!? バルディッシュはどうしたの!?」
またもやワケのわからない武器が登場。しかも自分の親友がデバイスをほったらかしにして使っているのだから驚きもひとしおである。
ちなみにバルディッシュはアースラに放置されているのだが、今は関係ないので流すとしよう。
そしてフェイトとヴィータが飛び去った後、さらなる異常事態が発生することになった。
「田中ソードとはとある世界の融合戦士『ボボパッチの助』が使っていた武器で――――」
「何で知ってるの!?」
いきなりユーノが田中ソードの解説を始めた。しかもかなり正確な解説である。
実際にとある世界でボボパッチの助が使っていたし、省略されたがそれ以降の解説も全て真実。どこで知ったのかが気になるほどだ。
……もっとも、いきなり解説を始めたのは奇行以外の何物でもないのだが。
自分の周りにまともな人はいないのか。
なのはは少し、泣いていた。
なのはが泣いているのと同じ頃、フェイト・アルフVSヴィータの戦闘も決着がついていた。
バインドで両手両足を封じられ、空中で拘束されている。今のヴィータの状態を見る限りでは、そうとしか言いようがない。
これで決着かと思い、田中ソードをつきつけるフェイト。武器の形状のせいでいまいち締まらない。
「終わりだね。名前と出身世界、目的を教えてもらうよ」
フェイトからの最後通告が飛ぶ。それに対し、ヴィータは反抗的な目でバインドから逃れようともがく。
その目、そして一瞬感じた気配から、アルフはまだ何かあると確信した。
「……何かヤバいよ、フェイト!」
フェイトへと警告したが、時すでに遅し。下から一瞬でポニーテールの女剣士が現れ、剣でフェイトを弾き飛ばす。
……どうやらまともな武器を持っているのは女剣士……シグナムだけのようだ。なのはは猫だしフェイトは田中だしヴィータはネギだし。
その事実に気づいているのか否か、シグナムが剣を振り上げて、命令を叫ぶ。
「レヴァンティン、カートリッジロード!」
その命令とともにレヴァンティンから薬莢が放出され、次の瞬間には刀身に炎を纏う。そして大技『紫電一閃』を構えた。
それに対し、相対するフェイトはというと……体勢を立て直し、田中ソードを構えながら、シグナムへと問いかける。
「なのはが襲われた時に「まさか」と思ったけど……ここ最近起こっている魔導師襲撃事件、あなた達の仕業ですね?」
「だとしたら、どうするつもりだ?」
「そうですか……なら、ここで倒して止めます!」
『Blitz Action.』
言葉を放つと同時に、フェイトの姿が掻き消える。加速魔法『ブリッツアクション』を使ったのだ。魔法が使えたということは、田中ソードはデバイスなのだろうか?
その超高速移動の後にフェイトが現れたのは……アルフのすぐ隣。そのまま首根っこをつかみ――――
「……ってアルフが言ってましたーーー!!」
「えええええ!?」
シグナムめがけて全力全開で投げつけた。一体この小さな体のどこにこんな腕力があるのだろうか。
一方投げられたアルフはというと、いろんな意味での疑問の声を上げながら飛んでいくしかできない。
そしてシグナムはというと――――
「そうか。ならば……紫電一閃!」
「ぎゃああああああ!!」
飛来したアルフへと紫電一閃。思い切り遠くへと吹き飛ばした。
「よくもアルフを!」
「投げつけてきたのはお前だろうが」
自分がアルフを投げつけた事実を棚に上げ、シグナムを責めるフェイト。もっとも、シグナムの言っている事が正しいので、むしろ非難するのは筋違いなのだが。
しかしフェイトはその事実を完全に無視し、田中ソードで斬りかかる。
「おおりゃああぁぁぁっ!」
しかし剣がシグナムに届くより速く、バインドされていたはずのヴィータがネギで奇襲する。反応できず、フェイトへと直撃。
ネギなので肉体的ダメージは大した事はないが、嫌な精神的ダメージが。なのはがやられていたのはこれが原因かもしれない。
攻撃された当の本人であるフェイトはというと、攻撃を受けた事よりもバインドが解けている事に首をかしげている。そしてそれを代弁するかのようにシグナムが聞いた。
「ヴィータ、拘束が解けているということは……シャマルかザフィーラが近くにいるのか?」
「ああ。ザフィーラが解いてくれたんだ。」
そう言うと、ヴィータがある一方を指し示す。そこにザフィーラがいると言わんばかりに。
つられてシグナムがその方向を向くと……人 型 の と こ ろ て ん が い た 。
当たり前だが、どう見てもシグナムの知るザフィーラではない。向こうはいかにも「私がザフィーラです」とでも言わんばかりに存在しているが。
「おっ、よーシグナム」
…………………………
「ザフィーラじゃなーーーーーーーーい!!」
おめでとうシグナム。現時刻をもって君はツッコミ役の仲間入りだ。
……まあ、そんな事はどうでもいい。ザフィーラらしき何かの姿は、シグナムの記憶とは大きく違っているようだ。
だが、自称ザフィーラのところてんはというと、あくまでも自分がザフィーラだと主張している。
「何言ってんだよ。俺はザフィーラだ」
「嘘だッ!! 私の知るザフィーラとは違う! もしそうだとしても今すぐ『ところ天の助』に改名しろ!」
その後しばらく、このところてんがザフィーラか否かというバカみたいな論争が続き、結局本人が納得しないまま『ところ天の助』へと改名されたという。
ちなみにその間、先ほど吹っ飛ばされたアルフが回復を済ませてこちらに向かっているのだが、たぶん気付いていない。
気付かれていないままザフィ……もとい、天の助の背後に回り、そして――――
「ところてんマグナム!」
「ぎゃああああああああああ!!」
渾身の右ストレート。命中箇所がくり抜かれ、その名の通りマグナム弾のような勢いでシグナムの方へと飛んだ。
幸い当たりこそしなかったものの、右手の付近を通過。風圧がその手の甲に切り傷を作った。
(何だ今のは……一体何をした?)
(ちょっと見ただけですげえ威力だってわかる……連発されたら穴だらけになる天の助だけじゃなくて、あたしらまでヤバいな)
今のところてんマグナムを見て、冷静に分析するシグナムとヴィータ。ところてんごときで何故これほどの威力が出るのかはとりあえず置いておくことにしたようだ。
その間にアルフが振りぬいた右拳を再び振りかぶる。まさかとは思うが、もう一発撃つつもりなのだろうか。
「連射ーーーーーーー!!」
訂正。一発ではなく、大量連射だった。
天の助の体に穴がひとつ増えるたび、ところてんマグナムが一発発射される。防御魔法て防ぐが、威力がありすぎて一発ごとに軋むという有様。
そんな中、外れたうちの一発が遥か彼方へと飛び……結界の壁ともいえる地点に着弾した。
ちなみに、この間なのはが何をしていたかだが……ユーノによる武器説明が終わってすぐ、ビルの屋上へと移動してその全景を見ていた。
そして詳しい経緯は省くが、レイジングハート(モードリリースされているので、現在は首飾りの宝石型)の後押しもあって、スターライトブレイカーで結界を破るべくセットアップし直したのだが……
そこに頭上を飛び去るところてんマグナムを見て、セットアップが停止。無論このことに関するツッコミは入れたが。
そして現在、更なるツッコミ要素が眼前に広がった。今回の襲撃の前ならまだしも、今のなのはにはこれにツッコミを入れないなどというのは不可能である。
さて、さらなるツッコミ要素のことだが……ところてんマグナムの着弾箇所に穴が開き、そこから結界内にヒビが広がる。
その後どうなったかは予想できただろうがあえて書こう。そのヒビから結界がどんどん割れていき、ついには完全に破壊された。
「「何で(何故だ)!?」」
なのはとシグナムのツッコミが全く同時のタイミングで入る。無論、ところてんマグナムの結界破壊に対してのものが。
この二人、じっくり話し合う機会があれば仲良くなれるかもしれない。
「驚いてる場合じゃないだろ、シグナム! 逃げるぞ!」
シグナムの固まりきった思考を正常に戻すヴィータの一声。それと同時に現在置かれている状況を思い出す。
そうだ、張った結界を抜かれ、さらに眼前には管理局の魔導師。見つかったと考えて差し支えないだろう。
すぐさま穴だらけの天の助を回収し、解散。バラバラの方向へと飛び去っていった。
ちなみに、穴だらけの天の助がこの後すぐに元通りになったのは蛇足かもしれない。
全てが終わった後、なのははポツリと呟いた。
「……一体なんだったんだろう?」
それは作者の方が聞きたい。
投下終了
やはり…私は…ギャグ書く才能が…無かったか――――
【リリカル龍騎 死亡】
てんの助…支援。
マジで大惨事じゃねーかw
GJ!
まさに……バカサバイバー(褒め言葉)
GJでした。
GJ!
お前バカだろ(褒め言葉
シグナムはへっぽこ丸?
>>189 龍騎氏、あんた本当にバカでしょう!?(褒め言葉
もーネギから先は腹筋が保ちませんでしたwwww
シリアスな長編でこの態度なら「ふざけんな」となるが
ギャグ短編ならおおいにGJ
初めから「おふざけ系」宣言あったんだから誰も怒る謂れは無いし
なんか触発されたな…雑談の方で書いたニニンがシノブ伝のクロスが出来たんですが投下いいですか?
ギャグ短編なんですが…
それじゃ投下します、ニニンがシノブ伝クロス、ギャグのハチャメチャ短編です。
龍騎氏のGJな作品の後でお目汚しになるかもしれんませんが。
魔法少女ニニンがなのは伝 「音速丸襲来!!」
魔法の使えるごくごく普通の小学3年生、高町なのは彼女はある日親友であるフェイトにこんな事を言った。
「ねえフェイトちゃん。召喚魔法ってした事ある?」
「召喚魔法? 知ってはいるけどしたことないな。でもどうしてそんな事を?」
「ユーノ君が知ってるって言うから、ちょっと試してみようと思ったんだけど。フェイトちゃんも一緒に手伝ってくれない?」
「面白そうだね、良いよ。でも何を召喚するの?」
「えへへー実はフェニックスを召喚してみようと思ってるんだ」
そんなこんなでなのははユーノとフェイトの助けを借りアースラで召喚魔法を行い高位の召喚獣の召喚を試みる事となった。
「リリカル、マジカル、フェニックス召喚!」
なのはとフェイトが魔力を注ぎ、円形の魔法陣に魔力が溢れ爆音と共に煙が立ちこめた。
「あれ…もしかして失敗?」
フェニックスが召喚できればそれは相当な大きさの筈なのだが立ち込める煙にはそんな影はない、代わりに妙に味のある濃い〜声が響いた。
「呼ばれて飛び出てアンポンタン!! ハッスルハッスル音速丸ううううう!!!!(若本)」
「音速丸さん、あんまり叫ばないで下さいよ。音速丸さんの声でまた空間が歪んだじゃないですか」
「そうですよ音速丸さん、今アニメが良いところなんですから…あれ? なんで我々こんな所に?」
煙の中から現れたのは羽のある丸っこい黄色い物体と忍者みたいな格好の人だった。
「これは一体?…」
「この人達が召喚獣?…」
突然、丸っこい物体と忍者が現れて呆然とするなのはとフェイト。
「音速丸さん! 突然見知らぬ所に来たと思ったらツインテールの美少女が目の前に!!」
「しかも二人ともステッキらしき物を持っている様子…これはもしや魔法少女的な何かでは!?」
「落ち着けお前ら〜。ここで慌てれば確実に死亡フラグ確定!! 俺がまずファーストコンタクトを試みるずらああああ!!!!(若本)」
音速丸と呼ばれた丸っこいのはフヨフヨとなのは達の所に飛んで来た。
「きゅ〜んきゅ♪ きゅ〜んきゅ♪(若本)」
「きゃっ この子人懐っこいよフェイトちゃん」
「それに意外と可愛いね、なのは」
音速丸は鳴き声(?)を上げながらなのはとフェイトに近づき擦り寄って顔を舐めたりしだした。
「音速丸さんがカワイイ系の動物キャラのマネして美少女にセクハラしてるぞ!!」
「ズルイっすよ音速丸さん! 俺たちにもおすそ分けしてください〜」
「黙れ〜い!! このクルピラ野郎共が〜!! 美少女と美女は俺のモノとハムラビ法典に書いてあんだよ〜〜!!(若本)」
なのはとフェイトにくっつく音速丸に不満の声を上げる忍者達、その忍者達に音速丸は本性を曝け出して吼えた。
「うわっ! なんかベリーメロンっぽい声だよフェイトちゃん」
「私はどっちかって言うとアナゴ的なものを感じるな」
そして落ち着いた所で音速丸たちの自己紹介が始まった。
「初めましてお嬢さんがた〜俺の名は音速丸、第108銀河大統領にして、今年度抱かれたい男ナンバー1だ。ぶるううあああああ!!!!(若本)」
「ホントですか!?」
「なのは大統領ってなにか特別なおもてなしした方が良いのかな?」
「なのはちゃんフェイトちゃんそれ嘘だから。音速丸さん純真な子供に嘘を言って混乱させないで下さい。ところで僕の名前はサスケって…」
「あ〜、こいつらは忍者その1、2、3でいいからよ(若本)」
「ひどいっすよ音速丸さん! 他の奴はともかく俺は名前があるんですよ!」
「サスケさん! 声がキング・オブ・ハートだからって調子に乗ってるんじゃないですか!?」
「五月蝿いぞ雑種!」
「うわ! 逆ギレのうえ王様モード(by fate/stay night)だよ」
ヒートアップする音速丸と忍者3人になのはとフェイトは苦笑いするしかなかった、そんな所にはやて達、八神家一行がやって来て音速丸のハチャメチャのギアを上げた。
「うわっ! なんやこのハチャメチャな空気は…っていうか何で忍者さんがこんな所におるん?」
「ピコピコピーン! おっぱいレーダーに反応ありいいい!!(若本)」
音速丸はそう叫ぶと八神家一…いやアースラ一の巨乳であるシグナムに(その胸に)飛び込んだ。
「うわっ! なんだこの丸っこいのは!?」
「おっぱ〜い! おっぱ〜い! おっぱあああああい!!!!(若本)」
「ひゃっ! 服の中に潜り込むな!」
音速丸は“おっぱい”と連呼しながらシグナムの服の中に入ろうとその丸いボディで暴れまわる。
「音速丸さんずるいっすよ〜!」
「そうです俺たちにもおっぱい分けてください!」
「馬鹿野郎がああああ!! この世のおっぱいは全て俺のものだってこの前国会で決まったろうが!! ぶるううああああ!!(若本)」
「なんかこの丸っこい子、セルみたいな声やな」
「あたしはブリタニア皇帝だと思うな」
「私はメカ沢さんの声に聞こえますよ、はやてちゃん」
シグナムにセクハラを続ける音速丸に八神家の皆は音速丸を見て各々に感想を言った、そして音速丸のセクハラはレヴァンティンの一撃で終わる事となった。
続かない。
投下終了です、書かなきゃ良かったかな…龍騎氏みたいにゃいかないな。
(*´∀`)ハァハァ
いいぞ音速丸もっとやるんだそして是非続編を!
GJです
俺の場合は真っ先にあの神父が思い浮かびました。AMEN.
…って音速丸何してやがんじゃァァァァァ!!
205 :
マスカレード:2007/12/13(木) 22:29:06 ID:/rrz7n2l
先を越された……っていうか私が書くまでも無かった!(笑)
GJです!音速さんの暴走っぷりが私の脳内で繰り広げられました!
そして私が真っ先に浮かんだのはテッカマンオメガ(笑)
そしてこんなGJ作品の後から私が同じクロス元でSSを投下するのもKYな気が……
>>リリカル龍騎さん
GJ!シグナムがおいしすぎる!
そしてザフィーラの扱いがまた素晴らしい(笑)
支援ですたい、是非とも音速丸のスーパーセクハラタイムを見せていただきたい!
207 :
OSGS:2007/12/13(木) 22:41:46 ID:66c74Ibj
GJ!!
ですが、クロス元がボーボボしか分からない……。また原作を見る楽しみが増える♪
お二人ともGJ!
しかし、ヴィータ…ネギには首領パッチハンマーという名前もあったのに
何故ソードの名称を使った!?
209 :
魔装機神:2007/12/13(木) 23:18:02 ID:1QEgtxtB
投下してもよろしいですか?
家紋!
211 :
魔装機神:2007/12/13(木) 23:20:05 ID:1QEgtxtB
今夜、特別のあの作品が帰ってきた!
えー、モニターの前の皆さん、このSSに登場するキャラクターはかなりイカれてるっす。
リリカルなのはのキャラクターにふかあい思い入れがある人は飛ばしてほしいっす。
さらに言うと、登場キャラクターのほとんどが不良っす。彼らの行為を決して真似しないでくださいっす。
最後に、部屋を明るくして、モニターからある程度距離を離してほしいっす。
以上、林田ウェンディからのお願いでした!
なのマティ高校
ガジェ沢 1
「大変だがジェ沢――!!」
「どおしたー?」
なのマティ高校、1年5組の教室にそいつはいた。
名前はガジェ沢新1、16歳。この1年5組を仕切っている人物(?)だ。
((ガジェ沢、渋い声だ(っす)))
その入り口のそばで、スバルとウェンディがその様子を見る。
「グリフィスのやつがバース高のやつともめちまったらしくてよ。こうなりゃ俺達も戦争の準備をするしかねえ」
「ええ、バース高のやつら、最近人のシマを荒らしまわって……一度あたしらで〆とかないと。喧嘩を売る相手を間違えてるってね」
「だがバース高も一筋縄じゃねえ。特に1年全体を仕切っているなのははかなりやべえらしい。こっちも兵隊を準備しねえとな」
5組の生徒は近々起こる出楼大きな戦争(喧嘩)に闘士をたぎらせる。
「ちょっとまて」
しかし、ガジェ沢は立ち上がる。
((今、ガシャンって音がした(っす)……))
スバルとティアナが真剣にガジェ沢を見る。
彼はどう見ても……
「要するに、先にちょっかいを出したのはグリフィスなんだろ?バースにはダチがいる。俺がそいつに一言わびいれておいてもらう」
「じゃあいもを引くってのか!?」(*いもをひく。不良用語の一つ)
「心配するな、俺一人がいもひいたってっことにしといてもらう」
「な……」
クラスメイトはガジェ沢の言葉に驚く。
「いいのかよガジェ沢。このままじゃお前が安く見られちまうぜ。実力あるってのに」
「きにするなよ」(カパ、ぴゅ、ぴゅ)
((油さしてる(っす)))
その中、二人はガジェ沢が頭部をカパリと開け、機械油をさしているのを目撃する。
やっぱり彼は……
「この馬鹿野郎!!」
そのなか、唖然としているうちにガジェ沢はある生徒を思いっきり殴り、村倉を掴みあげる。
「手前、まだ薬をやってやがるのか!?」
「ごめんよ、ガジェ沢。どうしても我慢できないんだ」
「それでも我慢しろ!」
無造作に生徒を放り投げ、生徒を睨む。
「別にお前の事なんてどうでもいい、けどな……」
先ほどまでの怒りに満ちた声がだんだんと穏やかになる。
「お前を育ててくれたたった一人の母親はどうなる?」
これはすばらしい大惨事wwww
シノブの勢いそのままだwwww
213 :
魔装機神:2007/12/13(木) 23:21:23 ID:1QEgtxtB
はっと生徒は自分の母親の顔を思い浮かべる。
こんな不良な自分を今でも世話してくれている母親。
そのことを思うととたんに涙ぐむ。
「ご、ごめんよ……ぐす」
「ガジェ沢は誰よりもお前の事を心配してるんだぞ」
((なんか盛り上がってる(っす)))
なるほど、これが5組の頭、ガジェ沢新1か。しかし……
「やっぱガジェ沢は俺達の頭だな」
「やめろよ、てれるだろ」
ガジェ沢は顔を少し赤くしながらクラスメイトをみる。
「ところで話は変わるけどよガジェ沢」
「ん?」
ガジェ沢は別の制をノ方を見る。
「実はよ……ずっと前からお前にいいたいことがあったんだ」
「俺に言いたいこと?」
ああ、と生徒はどこかばつが悪そうにそっぽを向く。
((ついに突っ込むのか(っすか)!?))
待ってました、といわんばかりにスバルとウェンディはガッツポーズをする。
「俺だけじゃねえ。多分、俺達全員が思ってるかも知れねえ。けど、なんか言いづらいんだ」
「なんだよお、気になるじゃないか。さっさと言ってくれよ」
((そうだ、さっさといえ(っす)!))
スバルとウェンディも早くしろと心の中でせかす。
「わかった、じゃあ言うぜ」
ふぅ、と深呼吸をしながらガジェ沢を見る。
「第2ボタン取れてるぜ」
あ、ほんとだ。とガジェ沢は取れている第2ボタンがあったとk路を見る。
((違うだろ(っすよ)おいーー!!)
ガジェ沢 2
「震える指、抱きしめて静か……ざーざーざー」
「ん?」
5組の生徒は、CDプレーヤーから流れてくる音楽が急に雑音に変わりち、としたうちをする。
「どうした?」
「また壊れたんだこのCDプレーヤー。誰か直せるやついねえかな?」
生徒の言葉に、いるわけねえだろ!と怒鳴る。
「うちの学校は馬鹿の集まりなんだぞ!」
「けどよ、クラスに一人くらいは機械に強いやつがいると思うんだがな……」
う〜〜ん、と男は考え、おっ、とある案を思い出す。
彼なら直せるかもしれない。
「おいガジェ沢」
「ん?」
読書にふけっているガジェ沢に、CDプレイヤーを突き出す。
さらに、以前からがジェ沢の様子を見ているスバルとウェンディの姿が。
「これがぶっ壊れてよ、お前なら直せるか持って思ったけど、直せるか?」
しかし、ガジェ沢はワリィと侘びを入れるメカ沢。
「実は俺、機械音痴何だ」
((機械音痴……))
そうか、と残念そうな顔をする生徒達。
214 :
魔装機神:2007/12/13(木) 23:23:27 ID:1QEgtxtB
「俺は、お前らの事なら命だってはれるしその覚悟もある」
けどな……とっても残念そうな顔をするガジェ沢。
「どうしても機械だけはだめなんだ(ぴゅ、ぴゅ)
((んなわけねえだろ!!))
油を差しながらそんな事をいわれても、説得力もなんもない。
「けどよ、何で俺に尋ねてきたんだ?」
「いや、お前なら何でも出来そうだから」
そうか、とガジェ沢は頷く。
「それは偏見っていうもんだ。先に着いたイメージから、頭が離れなくてそうなってしまう」
例えば……と何かを例を例えようとするガジェ沢。
「一昔前までは女は機械に弱いって言われてたけどよ、携帯が普及した今、女は俺達よりも見事に使ってるだろ?」
「ああ、なるほど」
「確かにうちの学校の女も俺らより使える」
けどよ……と何か残念そうになるメカ沢。
「それって、なんか残念な事のようにおもわねえか?」
残念な事?と疑問符を浮かべる不良たち。
「携帯などの電気製品、機械製品が普及した今、確かに世の中は便利になった。けどよ、そこに、人の温かみっていうものがない。ただそこにあるもので生活をしている」
このままじゃ、と何か恐怖におちいりながらガジェ沢は頭を抱える。
「このままじゃ俺達は、機械に支配されちまうぜー!!」
((ひょっとしてそれはギャグで言ってるの(っす)かーーー!!?))
スバル達がガジェ沢の言葉にいろんな意味での衝撃を覚える。
「ところでよ、ガジェ沢。さっきから聞きたいことがあるんだがいいか?」
「ん?」
「前から聞きたいって思ってることがあるんだけどよ……」
「なんだよまたかよ、なんなんだ?」
((とうとう言うのか))
やっとこのときがきたか、といわんばかりにスバルとウェンディはじーっと見る。
「俺達もいいとっくに気付いていてんだが、言ってしまえばなんかだめなような気がしてよ」
「なんだよ、気になるじゃないか、気にしないで言ってくれよ」
その言葉に沿うか、と意を決していく。
「それじゃあいくぜ」
((こい!))
スバル達も固唾を呑んで見守る。
「お前って顔でかいよな」
「そうかー?」
((惜しい。けど違うーーーー!!))
背景、今は天国にいるおふくろ様。
今はすっかりクロマティ高校に慣れた私ですけど、以前は中々馴染めずにいました。
ですけど、そんな生徒のために様々な救済処置のようなものがありました。
「えーと……今からでも遅くない、クロマティ高校入学至難 これで気も立派な悪に」
スバルは昼休み、その本を真剣に読む……
215 :
魔装機神:2007/12/13(木) 23:24:58 ID:1QEgtxtB
「あの時は大変だったなあ……」
スバルは学校の帰り、あの事をオ見出しあははと苦笑を浮かべながらあのときを思い出す。
あの結果は、マユをそり、髪を金髪にして散々なもので、結局元に戻るのに2週間かかった。
しかもそのひ家に帰り、その姿を見てびっくりした姉と父にこってりと絞られるのだった。
その時、父が「すまねえクイント……娘の育て方を間違えた」などと母の位牌の前で号泣していたのを思い出した。
そんなときだった。
「スバルじゃない、久しぶりね」
何か懐かしい声にスバルは振り向く。
そこには小学校からの付き合いの少女がいた。
「ティア!久しぶり!!」
親友、田中ティアナを見てスバルは笑顔を浮かべる。
その後、スバルとティアナは久しぶりの再開に話は弾む。
「ティア、そっちはどう?ティアが進んだ学校はかなり難しいって聞いたけど」
「やってらんないわ。私なんかじゃついていくのがやっと」
はあ、とため息をつくティアナに、スバルが頑張ってと励ます。
「で、あんたはどうなのよ?」
「え?」
「ナノマティっていえば悪でかなり有名な学校じゃない。くそ真面目で正直なあんたがあんなところでやってけるの?」
ティアナは心配の目でスバルを見る。
「あんたがクロマティに入ったって聞いたとき、あんたが眉そって、髪を金色に染めて、不良歩きをする姿想像したんだから」
「そ、そうなんだ……そんな事ないよ、確かに不良は多いけど、悪い人たちじゃないよ。何人か友達も出来たし」
あはは、と渇いた笑みを浮かべる。
(やっぱ鋭いな、ティアは)
そう思いながら、スバルはティアナと分かれて家に帰っていく。
これからも頑張ろう、そう心に誓って。
投下完了。
書いてて思ったけど、やっぱり1個目のほうが上手くかけてるような気がする。
今回、ただ7割がガジェ沢だけだったからなあ……
所々メカ沢とクロ高になってるぞ
お二方…GJです。
ええと……風邪で喉が痛くて熱もあってボーっとなっているせいか、SS04を先ほど
聞いた後にヘンな電波を受信してしまいました。
鬼門の某鍵作品の元作品?とのクロスのイントロ文のみ?なんですが、投下大丈夫
でしょうか?
音速丸「マキシマムスピード」
セル「マキシマムアーマー」
ブリタニア皇帝「マキシマクストレングス」
シャピロ・キーツ「クローク起動」
穴子「エネルギークリティカル」
『保障が欲しければ電化製品を買え!』
とりあえず全員GJといしかw
dozo-
220 :
217:2007/12/14(金) 00:36:12 ID:mGqAqtvR
それでは、投下します。
---------------------------------------------------------------------
繰り返す日常の中にある変わりないもの。
いつでもそこにある見慣れた風景。
好きだったことさえ気づかなかった、
大好きな人の温もり。
すべてが自分をこの世界に繋ぎ止めていてくれるものとして存在している。
* * * * * * * * * * * * * * * * *
「もう、浩平は私がいないと駄目なんだもん」
「ったく、幼馴染みならちゃんと面倒見ろよ! 瑞佳」
「フフフ……この俺がだよもん星人に引けを取るわけないのだ」
「浩平君。ちょっとやり過ぎじゃないかな? 少し…」
* * * * * * * * * * * * * * * * *
「このワッフル、とても美味しいわ」
「お褒めいただいて光栄ですリンディ提督。このお茶も、少し甘いですが美味しいです」
「あのう……茜さんって……」
「あははは……次元世界って広いねぇー」
* * * * * * * * * * * * * * * * *
「うわぁー……みさきさんも結構食べますね」
「ううん、スバルほどじゃないよ。……あっ、カレーおかわり」
「魔導師でもないのに……なんでこんなに食べれるんですか?」
「それはこっちが聞きたいわ。みさきと同レベルの食欲なんて」
* * * * * * * * * * * * * * * * *
「あの端麗な立ち姿、華麗な振る舞い……ギンガさんは乙女のあるべき姿だわ」
「何っ!? ガジェットIII型を片手で握りつぶす七瀬が、ヴォルテールとセメントマッチだt」
「ええぃ!! 折原ぁ!!!」
「あはは…はぁ…」
「(言えない……ギンガさんが陸戦Aランクのパワーファイターだって…)」
* * * * * * * * * * * * * * * * *
『あのね』
「?」
『フリードかわいいの』
「あ、ありがとうございます。澪さん」「クピューー」
「のどかやねぇ……ほのぼのやねぇ」
「ハイです。マイスターはやて」
221 :
217:2007/12/14(金) 00:38:04 ID:mGqAqtvR
「みゅ…」
「??」
キョロキョロ
「みゅーっ!!!」
「あっ…フィレットだぁ!」
ガシッ
「みゅーっ! みゅーっ! みゅーっ! みゅーーーっ!!」
「キュ…キュゥーーー(う…うぁぁぁーーー)」
「うぁー、かわいいよぉ。このフィレット」
「ところで高町隊長。あの椎名が抱きついているフィレットは確か」
「知らないの。私に黙って変身してヴィヴィオに近づいた司書長なんて…」
* * * * * * * * * * * * * * * * *
永遠なんてなかった。
「フフフ…」
そう言い聞かせた。
「レリックと…私の技術があれば…」
その絆を、そして大切な人を。
「キミの妹を……みさおクンを……」
初めて求めようとした瞬間だった。
でも、知らなかった。
「いつだって、奇跡は人との絆が起こすものなんだ」
それはとっても悲しいことだった。
「泣いてるの…?」
でも、彼女は確かにこう言った。
「えいえんはあるよ……」
魔法少女リリカルなのはStrikerS - ONE -
〜輝く季節へ〜
「……ここにあるよ」
222 :
217:2007/12/14(金) 00:40:54 ID:mGqAqtvR
続き……ません。
SS04のリンディ茶再登場で、なぜか蜂蜜練乳ワッフルを思い出してしまい……
こんなものを書いてしまいました。
スレ汚しすみませんでした。m(_ _)m
223 :
217:2007/12/14(金) 00:54:02 ID:g0Xsaw99
あ、すみません。クロス元の作品の説明が抜けていました。
Tacticsの「ONE 〜輝く季節へ〜」(Kanonの元?作品)とのクロスです。
な、何てモノを書いてくれるんだ……
久しぶりにたりたくなって、今からPC版ONEを掘り起こす事になったじゃないかw
思えば初めてやったPCギャルゲがONEだったなぁ〜
珍しくヒロイン全員を好きだった名作。正直鍵作品より思い入れは深いですね。
明日は昼特盛カツカレーにワッフル、夜にキムチラーメンとクレープ、夜食にローソクの灯りを頼りにポテチで決まりだ!
やべ……なつかしいGJ! ユーノは不憫なのかそれとも!?
ついでに投下予告をです。四十五分あたりから落としていきます。
226 :
OSGS:2007/12/14(金) 06:45:16 ID:of/63qUv
建物と建物の間に身体をうずめるようにアルトアイゼン。対峙するヴィータは地上から十メートルの位置、
アルトアイゼンのコクピットの位置で飛行魔法を停止させた。
「開始の合図……たのむぜ、シャーリー」
『Hammerform 』
言いながら、ヴィータはグラーフアイゼンを展開する。片手に頼りになる重みが生まれた。
「了解です……」
はなれた場所にいるシャリオの唾を飲む音が、通信越しに聞こえた。ヴィータとキョウスケの間にある氷
のような微妙な緊張に当てられたのか、答える声も僅かに震えていた。
なのはやシャリオ、シグナムや他の新人たちはシャリオと同じ場所――一キロほど離れた機動六課のヘリ
ポートから模擬戦を見ていた。
「あら〜……気合はいりすぎじゃない? ふたりとも」
エクセレンが二人の様子を見て言った。
話を振られたなのはは苦笑しながらヴィータに通信を送る。
「は、はは……ヴィータちゃん。アルトアイゼンはシミュレーターの作った擬似的なものだけど、ヴィータち
ゃんは生身だからね」
「ああ」
ヴィータはそっけなくなのはに答える。
「キョウスケも。模擬戦なんだからあんまり突っ込んじゃだめよ? 一応訓練弾設定にはしてあるけど、ス
テークやヒートホーンは威力変わらないんだから……」
「ああ」と、キョウスケは答えた。
なのはとエクセレンは同時にため息をついた。
「だめね。キョウスケ、完全に火がはいっちゃってる……悪いクセ全力全開ってカンジ?」
「ヴィータちゃんも……初日からあんなに飛ばして大丈夫かな……」
不安げに一人と一機をみる二人。
外野の通信をキョウスケとヴィータの両者はすでに聞いていなかった。
キョウスケはアルトアイゼンの画面に映った鉄槌の騎士をにらみつけ、ヴィータはアルトアイゼンの巨体
を凝視する。
シャリオが作ったカウントダウンが十秒を切り――
――伍、
スバルが息を呑んだ。
――四、
キョウスケはグローブを握りなおした。
――参、
ヴィータはグラーフアイゼンを握り締めた。
――弐、
鼓動が増した。
――壱
身動きが止んだ。
零――
「ぶっ潰す!」
「撃ち抜く――」
目指した夢は、すこし違った形をとって、いまやっと手のひらのなか
思いや願いはちがっても、ひとつの場所にあつまって、ひとつのことを今はじめる
出会いと再開も、はじまりはここから
それぞれ進んでいく道の、ここは小さな通過点
集まり結ぶ、新しい絆
魔法少女リリカルなのはOSGS、始まります
OSGS第二話「集結! 夜天の空に!//古い鉄の伯爵」
――高町なのは
早朝。
昨日の六課緊急出動以来、引っ張りだこになっているヴァイス・グランセニックに見送られ、高町なのは
は新たな家となる機動六課の隊舎に足を踏み入れた。
荷物の大半はすでに送ってあったので、荷物は手荷物で済んでいた。身軽に隊舎の入り口をくぐった。
ふっ、と空気が変わった。
空調が効いている。ミッドチルダの科学技術は、なのはのいた管理外世界「地球」のものとは似ているよ
うで、まったく違う。
使われていた電化製品とよく『似た』物品は存在しているが、中身は魔法技術の延長で作られているもの
が多い。そのうえ性能も段違いだった。
完璧な空調も代表的なものだ。
(けど……ちょっと、なつかしかったりもするんだけど)
便利だが、すこし慣れると不満ができる。なのは廊下を進みながら僅かに苦笑した。
――春のうららかな空気――舞う桜――澄んだ空気――地球の思い出が連鎖していく。
快適さとはまったく別の部分で感じる不満、否、懐かしさ。
仕事のおかげで長らく里帰りもしていない。そして今日からまた、忙しくなるのは間違いなかった。
「それでも……選んだ道だしね……」
大体にして、
高町なのはは、忙しさすら愛おしく思えるほど、仕事が好きだった。
まだどこかあわただしさの残っている隊舎内を進む。途中、何人かが敬礼をしてきた。
なのはは、笑顔で敬礼をかえす。
新しい仲間への礼儀と挨拶は、大切な儀式のようなものだった。
廊下を歩いているうちに、部屋に着いた。
ポケットから先々あずかっていた鍵をとりだし、鍵穴に差し込もうとして――。
ちゃり、と扉が開いた。
「おかえり……なのは」
開いた扉の向こうから同室になる女性が顔をのぞかせた。
扉の真正面に窓がある。そこからすける朝日は、彼女の金髪をやわらかく照らし出していた。
本局所属の執務官。フェイト・T・ハラオウン。十年来の親友はやわらかく微笑んでいる。繊細な筆で描
いた絵画のような容姿に、同姓であるなのはですら――惚けそうになった。
「ただいま……はおかしいかな? フェイトちゃん」
なのはがそう言うと、フェイトは悪戯っぽく笑いながらなのはを部屋へ招きいれた。
「なのは。それは家に帰ってきたときの台詞だよ」
「うん。でも……なんとなく? だいたいフェイトちゃんだっておかえりって……」
「それもまあ、なんとなくだよ」
そう、本当になんとなく。
なんとなく、懐かしい場所に帰ってきた気がしただけ。
それはフェイトが笑顔で迎えてくれたことで感じたのかもしれないし、はやてのつくった部隊の雰囲気が
アースラと似ていたのかもしれない。
なのははふぅ、と一息しながら、ソファーに腰をかけた。
「長旅、ご苦労さま」
「あ。ありがと〜」
なのはが来るのを分かっていたのか、フェイトは急須と湯飲みをテーブルに置いていた。
「緑茶かぁ。ひさしぶり」
「母さんがこのまえダンボールいっぱいに送ってきてね」
フェイトはなのはの隣にすわり、こぽこぽこぽ。
「いいお茶だから早く飲んじゃいなさいって」
急須の首からすこし濃い緑の茶が湯のみに注がれていく。
「砂糖は……いらないよね?」
「にゃはは。さすがにね」
茶請けから茶碗を手に取り、口につける。ちょうど口当たりがよい熱さの茶が喉にすべって落ちていく。
やっとひと心地つけた気がした。
ふと、視線を感じた。フェイトがこちらを見て微笑んでいる。
フェイトはどこか楽しげだ。それに別段不快でもなかった。
それからしばらく、なのはとフェイトは久しくのんびりとした時間をすごした。
これからは忙しさに追われて、こんなふうにお茶を口にする機会も少なくなるだろう、という予感もある。
(……第187世界に出現したホワイトスター。それを落とした部隊の戦隊長、キョウスケさんと所属部隊
ATXチーム、か……)
どんな出会いになるかはわからない。しかし――最初に考えていたよりも忙しくなるのは、簡単に予想が
できた。当初よりもかなり、予定が食い違ってきている。
「フェイトちゃんはもう会った? ATXチーム……アサルト小隊のみなさんに」
「ううん。まだだよ。なのはよりもちょっと早く来ただけだし、急な出向だったから、まだ格納庫もあわた
だしいみたい」
「そっか……。ヴィータちゃんの話の印象だと」
「ゼンガー少佐みたいな人だよね。すごい思い切りの良い人みたいだし……」
思い浮かべた人間はフェイトも一緒だったようだ。
懐かしいとするには少々物騒な記憶が多かったが、それでも彼ら――「連邦軍特殊戦技教導隊」との出会いは心に深く刻まれていた。
輸送中だったロストロギア「レリック」はエアロゲイターの襲撃の際に爆発し、はやての六課設立の動機
になった。
(それだけだとは思えない。だけど……)
なのはもフェイトも六課の設立の裏に何かがあることを気がついている。だが、それを表立って口にださ
ないのは十年来の友人への信頼だ。黙っているには、なにか理由がある。パーソナルトルーパーの投入も、
なにか理由があってのことだろうと見当をつけていた。
そして時がくるまで待とう、とフェイトと一緒に決めている。
「それにしてもゲシュペンストとの因縁、かな。臨海空港の襲撃事件でわたしはエルザム大尉とスバルを、
フェイトちゃんはゼンガー大尉といっしょにギンガを助けたんだよね」
フェイトがうなずく。
「ゼンガー大尉が乗っていた機体はゲシュペンストの三号機で、エルザム大尉が乗っていたのはmkUの三
号機だから……また集合したことになる」
ゲシュペンストの三号機とゲシュペンストの三号機はアルトアイゼンとヴァイスリッターに改修され、課
の格納庫にある。
その二機が『改修』をうけた理由にもなのはとフェイトの二人は関与していたりするのだが。
『高町なのは! 御託はいい! 全力全開で掛かって来い!』
『ふっ……我らを阻むものなし……!』
『む……無念……』
『ここまでか……』
「……」
「……」
若気の至りというべき出来事。二人は同じ光景を思い出し、押し黙った。
「と、とにかく」
ばたばたと思い出を追い払う。
「そ、そうだね……そろそろ時間かな」
フェイトが部屋にかけられた時計を見て言った。
「あ、そうだね。はやてちゃんに挨拶しにいかないと。わたしの荷物の整理は夜かな〜」
「うん。ちょっと待ってて」
フェイトは急須と茶碗をお盆に載せて一度ひっこみ、ベッドの脇にかけられていた管理局制服を持ってき
た。なのははそれをうけとる。
「あれ……?」
官給品にちかい制服は、どこかにまとめてほうって置かれるのが現状で、使うときにはしわだらけ、とい
うのが珍しくない。
が――。受け取った制服にはしわひとつなかった。ブラウスには糊が利いている。
相棒の心づかいをありがたく思いながら、制服を身に着けた。
「なつかしいな……これ」
フェイトがうん、とうなずいた。
「でも、これからの時間も……あとでなつかしいなって思い出せる時間にしていこう?」
「うん……あ、そうだ。これから一年間、同僚をやらせていただきます高町なのは一等空尉です。ふつつか
ものですがよろしくお願いいたします」
「こちらこそ。フェイト・T・ハラオウン執務官。ライトニング隊隊長として、六課の同僚となります。な
のは――よろしくお願いします」
「はい……なんでだろ。台詞が嫁入りみたいになっちゃった……」
なのはとフェイトは笑いあった。
――ティアナ・ランスター
決課式の直前、顔をあわせた新人フォワード陣は、互いに自己紹介をはじめていた。
スバルは自己紹介をされるまでもなく知っているし、資料を何度も見返しているせいか、エリオとキャロ
は初めて出会った気がしなかった。それに年齢以上にしっかりしている。エリオなど、下手をすればスバル
よりもしっかりとした印象があったくらいだ。
が。
「ラミア・ラヴレス。コールサインはアサルト4だ。よろしく頼む」
年齢はなのはたちと同じくらいだろうか。端正な顔立ちにアッシュグレイの髪。うらやましくなるほど均
整のとれたプロポーション。
(この人……?)
「あ、よろしくお願いします!」
エリオとキャロが頭を下げて、その後にスバルが続いた。
「よろしく……」
ティアナは一拍置いてから挨拶を返した。だがラミアに気分を害した様子はない。クールビューティーと
いう言葉がしっくり来る人間だった。
しばらく間が空く。初対面の人間同士ならではの間合いが、空気に緊張感を生んでいた。
「えっと、ラミアさんは昨日から配属になったんですよね?」
最初に口を開いたのはスバルだった。
「ああ。昨日ライトニング2に助けられた。その縁で機動六課に世話になる」
「ライトニング2……シグナム副隊長ですね。わたしたちも昨日おせわになりました」
キャロが続く。聞く話によると、エリオとキャロの二人はシグナムに迎えてもらったらしい。
戦闘の後始末がおわったあと、エリオとキャロを迎えにいったのだろう。なかなか忙しい人だ。
「あれ? そういえば、ラミアさんの声ってシグナム副隊長に似ていませんか?」
「いいえ、ぜんぜん似てないでござるでしょう」
「へ?」
エリオが目を丸くする。
「こほん。冗談だ。少々方言がきついらしくてな」
まったく冗談を言っているようには聞こえない。
「そ、そうですか……ホワイトタイガーとハヤブサを思い出したんですが、方言ならしかたないですね」
「……こちらとしても何とかしたいのだが」
ラミアは最後を小声で締めた。
「そろそろ隊長たちをお呼びします。各自、整列してください!」
時計を見ていたグリフィスが言った。ティアナもつられて時計を見る。開始予定まであと十分といったと
ころだろうか。
いそいそと移動し始める人ごみの中でも、やはりラミアは目立っていた。ティアナも年齢にしては背の高
い方だが、ラミアの長身は女性ばかりの六課にあっても、かなり目立っていた。
違和感の正体を知りたかった。
「ティア、整列するよ……?」
スバルがいつまでたっても動かないティアナの袖を引っ張る。
「……」
「ティア?」
他の誰かがラミアに話しかけていた。
ラミアはまっすぐに話主を見る。そう、まっすぐに。
「ねえ、ティアったら」
スバルがぐいっと、視界に飛び込んできた。
ティアナは僅かに上半身をひきながら、顔をつっこんでくるスバルの目をみた。
瞳。
「ああ――わかった」
「ん? なにが?」
「なんでもない……っていうかあんた。もうすこしまわりを見て行動しなさい」
「へ?」
やっとこスバルが周りを意識した。
少女の顔が少女の顔に、接吻領域まで接近しているのを、周囲の人間はどうおもうか?
周りの白い、というより興味に満ちた視線にスバルが気がついた。
「あわっ」
あわててスバルが顔を離したのを確認して、ティアナは指定の列へと進む。相棒が背中から念話で話しか
けてくるが、無視した。
視界の端にアッシュグレイの髪がなびいていた。
(アサルト4。テストパイロットにしては挙動が抜きん出てる……あれじゃまるで特殊部隊か、武装隊の動き……それに)
目。人の目をまっすぐ見てくるのだ。ナカジマ姉妹もおなじようなクセをもっていた。僅かに引っかかっ
た違和感の正体はどうやらそれらしい。
隊長たちが部屋に入ってきた。空気が一気に緊張し、皆居住まいを正した。
ティアナはそこまで考えて、思考をとめた。
だからどうということはない。ただのクセだ。
ただなんとなく、ティアナはラミア・ラヴレスに不透明な印象を覚えた。
ティアナがこのことを思い出すのは、まだだいぶ先のことだった。
決課式はちゃくちゃくと進んだ。部隊長の挨拶から、隊長格、副隊長の挨拶と順調に――アサルト隊副隊
長の自己紹介にひと悶着あったものの――進んでいった。
式が終るとバックヤードスタッフ、ロングアーチスタッフは部屋を出ていった。
取り残される形になった新人たちは、なのはの帰りを待っていた。時計の長針が十分を過ぎる頃、なのは
が再び姿をあらわした。
「おまたせ。みんないるよね?」
「はい! フォワード一同、集合しています!」
スバルが言った。なのはが満足そうにうなずいた。
「ん、了解。じゃあ場所を変えようか。あ、アサルト4は機動兵器用のシミュレーターへ。そこでキョウス
ケ隊長の指示を仰いでください」
「了解」
ラミアがうなずく。
「じゃ、きびきびいこうか!」
なのはの後を続いて外へ出る―― ティアナの、思考をしている暇が無いほどの忙しい日々は、このとき
から始まっていた。
――キョウスケ・ナンブ
スターズ、ライトニングの新人が陸戦用空間シミュレーターで教導を受けている間、キョウスケたちAT
Xチームは、六課の中に作られた機動兵器用のシミュレーターで模擬戦をはじめていた。倉庫を急造して作
った設備らしいが、機能自体にはなんの不備もない。
キョウスケは大型モニター口を引き締めていた。手元のパネルには機体のデータが浮かび、リアルタイム
に更新されている。武器の磨耗から、噴射剤の量、部品のわずかな熱劣化ですら、細かくデータにされてい
る。
(……)
第187管理外世界のものよりも高度な技術は、機体の細かいクセまで再現できていた。部品一つにいた
るまで再現されたPTとADは、現実世界と同じ挙動を行うことができる。
そして実際には存在しないはずの戦場でエクセレンの乗るヴァイスリッターと、ラミアの乗るアシュセイ
ヴァーがめまぐるしい機動で銃口を向けあっていた。なんの障害物もないコンクリートのさら地と雲も無い
灰色の空をふたつの機体が駆けている。
表現された太陽の光をうけ白の装甲を映えさせるヴァイスリッターは、上空から獲物を狙う。手にしてい
るのはオクスタンランチャー――実弾の砲身と熱量弾の砲身をあわせた試作武装。
オクスタンランチャーや各武装は、大破する前にデータを取っていたので、シミュレーション上では使う
ことができていた。データ取りならば、と認めたが正解だったようだ。
槍の意を持つ武装から、実体弾がはじき出される。槍の矛先はたしかに標的へとむかっていたが、アシュ
セイヴァー急制動をくりかえし射線から逃れてみせる。
アシュセイヴァーの移動は、細かく、しなやか。豹か虎のように有機的に動きながら上空のヴァイスリッ
ターの銃弾を避け反撃に転じる。白を基本に深緑のふちどりがされた装甲が踊る。
アシュセイヴァーも、ヴァイスリッターと同じく機動力と遠距離戦に重きを置いた機体のようだ。装甲も
うすく全体的な印象も華奢。
(勝敗は関係ない。しかし先に直撃された機体がおわる……か)
二機ともぎりぎりの攻防を繰り広げている。直撃を受ければたちまち追い込まれる。
「エクセ姐さま……タイムリミットまでに決着をつけさせてもらいますです」
「あら――じゃあこっちも本気でいくわよ、ラミアちゃん!」
両者とも時間制限でおわるつもりは無いらしい。キョウスケは黙って戦況をみつめ続けていた。
ポジションを争うような動きから、相手を追い詰める動きへ。
ある程度のデメリットを把握しつつ、だが着実に相手を追い詰められる機動を二機ははじめていた。
と――。
『キョウスケ隊長』
キョウスケは大型モニターから目をそらし、新たにパネルに目を向けた。
赤い髪の少女がいる。さきほどの隊長格ミーティングの際に着ていた制服ではなく、ゴシックロリータを
髣髴させる赤い騎士甲冑を着た少女。帽子につけられた目つきの悪い人形が、少女の異装を際立てている。
通信の主はスターズ副隊長のヴィータ三等空尉だった。
(この格好は最近のはやりなのか……?)
ふと紫の髪の少女を思い出しすぐに忘れた。
「こっちはもうすぐおわりそうだ。あとワンセットだから十分程度だ」
「了解。こちらもすぐに終了する予定だ」
モニターに視線を向ける。
オクスタンランチャーを連射しながら、動力降下にはいるヴァイスリッターが見えた。
「そちらの新人はどうだ?」
「まあまあだな。なんとかの原石ってやつだろ」
「そうか」
「ああ……。ところでキョウスケ隊長。このあとの模擬戦のことで頼みがあんだけど。アルトアイゼン……
つかってくれねえか? データは破損前にとってあるんだろ?」
「なに? データ取りならゲシュペンストのほうが向いてるだろう」
「そうなんだけどさ! なんていうか、その……新人たちにもベストな状態での戦闘を見せてやりたいんだ
よ。魔導師とPTの模擬戦は珍しいだろうからさ。こっちは、なのはの了解ももらってる」
「……それならば」
ヴィータのパネルにうなずき、再び大型モニターに目を向けた。乱射されるオクスタンランチャーの熱量
弾が、アシュセイヴァーの肩口を貫いたところだった。大きく体勢を崩したアシュセイヴァーは続いて殺到
する実体弾をさけきれない。
「……結構楽しみだったんだよ、あたしはな」
「は?」
モニターに目をやっていたキョウスケは、思いもよらぬ声にパネルを見る。
ヴィータは顔をそっぽに向けたまま、なんでもねー、と答えた。
「それよりこっちがあとに終りそうだから、それまでに用意しといてくれよ」
「……了解。だが――スターズ2。アルトアイゼンを使う以上こちらは全力だ。模擬戦とはいえ覚悟しても
らうぞ……」
ひく、とヴィータの頬が吊りあがり、すぐにもどった。キョウスケはそれを見逃さない。
「……おう。リミッターがついてるのが惜しくなるほど、あたしを追い詰めてくれよ?」
「……」
そのまま通信は切れた。モニターを見ると――勝負が決着していた。
「――エクセレン。おまえ、あの状態からどうやって負けた」
――ヴィータ
「上等じゃねえか……アサルト隊長」
擬似的に作られたビルの屋上で鉄槌の騎士は頬を吊り上げて笑った。プログラムであり、人間とは別の仕
組みで動いているヴィータでも、感情の動きは人間のそれと変わらない。まだ待機状態にある鉄の伯爵をに
ぎりしめる。手の中にある相棒の、金属の冷たさが徐々に興奮の熱をさましはじめた。
騎士甲冑を揺らしながらウォーミングアップ。身体のキレの確認をする。昨晩は夜まで仕事で、朝早く六
課に出向いてきたが、それくらいでばてるほどヤワな身体はしていない。疲れはぬけているし、すこし前に
検査をやったばかりだ。ベストコンディションといってよい状態。四肢は軽く、心も軽い。
続いて屈伸。騎士甲冑をはやめに展開したのはやる気のあらわれだ。
「ヴィータ。ここにいたか。久しくやる気だな」
背中からからかうような声がした。
「シグナム」
ヴィータがふりむくとシグナムが人の悪い笑みを浮かべて立っていた。
「そんなんじゃねーよ。だいたい見世物じゃねえ」
「お前からすればそうかもしれんが、他人にとっては大道芸だぞ。騎士とPTの模擬戦は」
「だったら変わってやろうか?」
「心にもないことを言うな。まあ、そのうち機会もあるだろう」
(そっちもやる気マンマンじゃねえか……)
シグナムから目を離し、ストレッチを再開する。
「新人たちはさっそくやっているようだな」
「ああ」
「お前は参加しないのか?」
「四人ともまだよちよち歩きのヒヨッコだ。あたしが教導を手伝うのはもうちょっと先だな」
「そうか」
「それに自分の訓練もしたいしさ……。同じ分隊だからな。あたしは空でなのはを守ってやらなきゃいけね
え」
「たのむぞ」
シグナムがヴィータの肩を叩いた。
「ああ……でもさ」
「なんだ?」
「PTの配属自体にはあんまり気が進まねえ。必要なのはわかってんだけど」
「質量兵器には質量兵器を、新暦以前の再来だ。エアロゲイターの侵略に対抗はできたが、技術は『おか』
や管理外世界に広がった。こちらがPTを所持している以上、ガジェットとともに機動兵器郡が出てきても
不思議ではあるまい」
「やっぱり出てくるのか? AMやらPTやらが……」
ぼんやりとしか覚えていない古代ベルカ――そこに存在した質量兵器郡。高度に発達した技術でつくられ
た質量兵器が群をなして風景を荒野へと変えていく。八神はやてと出会うまで、ヴォルケンリッターはそん
な戦場を駆け抜けていたのだ。新暦の宣言が出るより前に、『闇の書』は存在していたのだから。
「矛盾……にしちゃあ、あんまりにも皮肉だよ」
「この場合は矛と矛か、盾と盾になるが。つぶしあいにはなるのは違いあるまい」
シグナムが言った。
守るために作った技術が流出し、その技術が今度は人を傷つける。堂々めぐりだ。やっと封印したはずの
質量兵器がこうしてまた普及する。誰にでも扱える兵器は誰にでも牙をむく兵器となる。
過去を知るヴォルケンリッターの皆々が共通して持つ懸念。このまま質量兵器が氾濫し、あたりまえのよ
うになったら最後――再びあの――群青の空を焼いた――気持ちの悪い――グネグネとした――醜悪な人の
モチーフが頤を大きくあけはなち――夜天の書を――。
「ヴィータ?」
「っ――?」
記憶にない記憶が再生される。反射的に肌があわ立った。
肌がさっ、と泡だった。全身の血液が凍ったような感覚だった。
「どうした?」
おもわず脱力していた。倒れ掛かった身体をシグナムが支えてくれた。
「調子がわるいのか? だったら」
「なんでもねえ。ちょっといやなことを思い出しただけだ」
心配げにこちらを見るシグナムにうなずき、再び身体に力を入れる。足もふらつかないし脱力感もなくな
っていた。
(最近、質量兵器の情報を思い出そうとするとこうだ……くそっ、なんなんだ、あれは)
おぼえていないはずの記憶が、なにかの折に蘇る。しかし浮かぶ映像はほんとうに心当たりがないものば
かりだった。
「本当に大丈夫か……? そろそろ新人たちの教導はおわるようだが」
「ああ。もう問題ねえよ」
シグナムの言葉にヴィータは我にかえった。記憶の底からひきだされた気味の悪いイメージは、もう頭
のどこにもない。
(なんだ――あれ?)
質量兵器、というのがキーワードであのイメージが浮かんできたのは間違いがない。ならば旧暦時代。ヴ
ォルケンリッターがまだ『闇の書』とよばれていた時代。
一瞬、シグナムにも聞いてみようかと思ったが、やめておいた。気味の悪いイメージが浮かんだことは覚
えているが、具体的なところはまったく思い出せなくなっていたからだ。
通信が入る。どこか憮然としたキョウスケの顔が画面に映し出された。向こうの訓練はおわったらしい。
(なんにしろかわんねえ……あたしはなのはの背中を守るだけだ)
眼下では、新人が最後のガジェットを破壊していた。
――ヴァイス・グランセニック
「さ、てと。今日はこっちのパイロットやれそうだな」
ヴァイスは愛機となった新型ヘリを見上げながら今日の予定を思い出していた。
「とりあえずフェイト隊長とはやて部隊長を送って待機っと。昨日の忙しさ考えれば今日は暇か〜」
大きく伸びをしながら、ヴァイスは心地よい空気を吸う。離れ小島の陸専用シミュレーターで新人たちがな
のはの教導を受けている。すでに何戦かやっているらしい。はじめてAMFに触れる動きではなかった。
ヴァイスは同じ射撃型のティアナに注目がいく。
「ちょっと自分から走りすぎか。だけどまあ、これからが楽しみなやつ――か」
シグナムが上司だった折に、同じようなことを言われた気がした。密度の濃い日々は、それだけ人に年を
とらせるのか。つい数年前のことがまるで大昔のように記憶の底に眠っていた。ほじくりださなければ出て
こない。だがある日ひょっこりと顔をだす記憶。
ヴァイス・グランセニックにとって苦々しい記憶もそこには混ざっていたが。
「あ、いたいた。ヴァイス陸曹」
名前を呼ばれて振り向いた先に、アルトともう一人――見たことのない女性がいた。髪は肩くらいまで、
若草色のツナギと同色のキャップを頭に被っている。つばのせいで表情はよく見えない。
(身長はなのはさんと同じくらい……か?)
年もそれくらいかもしれない。そこでまだ到着していないPTのメカニック主任のことを思い出す。ああ
――なるほどな、と思いながら、
「アルト、こちらの美人さんは?」
と聞いた。
アルトが口を尖らせた。やきもちだったらうれしい。
「ヴァイス陸曹……。また初対面で失敗するつもりですか?」
「俺がいつ失敗した。初対面の空気を和らげるのはこれくらいのインパクトがいいんだよ。初対面で猫被る
より楽だろうが」
「はぁ……気がついてないって幸せですね」
ヴァイスはやれやれと肩を落とすアルトを睨む。
ぶっ、と女性が噴出した。どうやら耐えられなくなったらしい。
「ほらみろ、笑われちまった」
「陸曹のせいですよ……もう」
「――ッ。ごめんなさい。つい我慢できなくって」
女性は笑いをおさめキャップを脱ぐ。キャップにまとめていた髪がばさりと流れた。その後ピシッ、と音
がしそうな敬礼をする。
「改めまして。パーソナルトルーパーの整備班長ホクト・カミヤです。決課式には間に合わなかったので挨
拶まわりしているところです。よろしくお願いします!」
「こちらこそよろしく。で、どうしてアルトが案内してるんだ?」
「シャーリーさんにご挨拶しにいらっしゃったところで、はやて部隊長に案内を頼まれたんですよ」
「なるほどな。ここ思ったより広いだろ。最初のころアルトもルキノも迷子になったくらいだ」
「なっていません。ホクトさん。陸曹はスキルの面では信用できますけど、性格面はあんまり信用しちゃだめですからね」
「だまってろションベン垂れ」
「ショ、ションベン――!」
あまりといえばあまりの発言にアルトが顔を赤くする。
「ぶっはははははははははは!」
しばらく真面目な顔をしていたホクトが思い切りふきだした。
「いやっ、もう、陸曹最高っ!」
「ちょっと笑いすぎですホクトさん!」
「いやだってションベン垂れ――!!!」
よほどツボにはいったらしい。ホクトは腹をかかえてカラカラと笑った。
ヘリの整備をしていた局員がなんだなんだとこちらを振り向く。アルトはさらにあわてて、ホクトに組み
かかったが、本人はまったく動じない。ふとももまでたたき出した。
もともと笑い上戸なのか。
ツナギの袖で涙を拭きながら、ホクトは笑いをおさめた。それでもまだおさまらないらしく、ひくひくと
頬を痙攣させていた。
(面白い人だなぁ……)
このさき更に面白いことがおこりそう。ヴァイスの予感は五分で実現することになる。
――スバル
「お〜い! スバル〜!」
「へ?」
ヘリポートに出てきたスバルをまっていたのは、歓喜をはらんだ奇声だった。ツナギを着た女性がこちら
に手を振っている。
「え……?」
まったく見覚えがない――のは嘘だ。ヘリポートの端にいた女性はスバルにかけよった。そのままスバル
の手を握りしめた。
「う〜ん……すべすべ。ひさしぶりね、スバル」
「あ、あの? えっと?」
スバルは助けを求めてまわりを見上げる。
相棒やライトニングの二人は目を丸くしているし――憧れの女性もまた、いきなりの行動に驚いていた。
女性が突っ込んできた方向から、苦笑しながらヴァイスとアルトが歩いてきた。
「思ったより直情的な傾向がある……と」
「ヴァイス陸曹……この方は?」
やっとなのはが口を開いた。ヴァイスが苦笑しながら言う。
「ホクト・カミヤさんです。整備主任で……スバルの叔母さんだそうです」
「へ?」
いの一番に驚いたのは、当事者のスバルだった。あわてて女性の顔をまじまじと見る。
たしかに母親そっくりだった。思い出にもある。スバルとギンガの母親が存命していたときには、よく家
を訪ねてくれていた。だが名前までははっきりしない。
(えっと、ギン姉よりも大きなお姉さんが遊んでくれたのは覚えているけど――)
はたして目の前の女性だっただろうか。
(あんたそっくりね……)
ティアナのからかい混じりな念話が届く。
(ほんとにね……)
(って、あんたが驚いててどうするの。叔母さんなんでしょ?)
(……そう、なんだけど。あんまり自信ないよ)
(は?)
(ものすごく小さいときに面倒みてもらったんだと思う。顔や名前まではおもいだせなくって……)
スバルが疑問符を浮かべている間に、なのはがホクトに言う。
「あの――すみません、ホクトさん。いま訓練中なので……」
「え――あ、すみません! なのはさん」
そこでようやくホクトは正気に戻ったようだった。ようやく手を離して、なのはに向き直った。
「挨拶がおくれました。ついうれしくって……」
「スバルの叔母さん――なんですか? それにしては――」
「といっても、わたしの生まれが遅いので、あんまり年ははなれてないんですけど。ね、スバル?」
(は、話をふられても――)
スバルはあいまいにうなずくしかない。なにせ覚えていないのだ。
だが本当にうれしそうになのはと話しているホクトを見て、スバルはなんとなく、覚えてない、とは言い
出せなかった。
「ホクトさん? いまは一応、訓練中なのでそういうのは控えていただきます」
「はい……すみません。つい興奮してしまいました」
なのはよりもいくつか上のはずのホクトが、しゅん、とうなだれる。なのはは困ったような表情を浮かべ
た。
(スバル、聞こえる?)
なのはからの念話。頭の中に直接ひびく声に、スバルは答える。
(はい……あの、叔母がご迷惑を……)
(それはもういいよ。それより――叔母さん、武装隊にいたことある?)
(え……? いえ、よくわかりません。言い出しにくかったんですけど、実はあまり叔母さんのことは覚え
てなくて。まだ実感が……)
(そうなんだ。スバルの反応が悪いから、たぶんそうじゃないかなとは思ってたけど。ホクトさんにはちょ
っと残念だね)
(本当に小さいころ面倒をみてもらったんだと思うんですけど……)
(ん。了解。でも覚えてないこと、あとでちゃんと話しておこうね?)
(はい……ご迷惑おかけします)
なのはからの念話が途切れた。なのはがホクトに言った。
「お昼休みにはいちど休憩になりますから、積もる話はそのときにおねがいします」
「はい。了解です。今後ともご指導よろしくお願いします」
ホクトが深く頭を下げながら両手を差し出した。
なのはは微笑しながら、ホクトの手を握り返した。
ホクトはしばらくじっと――なのはと手をつないでいた。
――???
(コードネームは?)
(一応、レモンさんにもらったのはエキドナ・イーサッキ……)
(以前W16が使っていたものか)
(……そう、なんだ)
(だがなぜお前がここにいる。部隊への侵入は私の役目だ)
(うん。でも――希望したんだ。わたしはなのはさんたちの傍に居たかったから)
(……それで任務がつとまるのか? わたしが受けている任務とおまえの任務は同じものだろう?)
(うん……)
(レモンさまはなにを考えている)
暗号通信装置がなおっていればすぐにでも聞きだせるのだが、あいにくと故障中だった。
(エキドナ。そちらに暗号通信装置はあるか?)
(イスルギ重工の搬入パーツに紛れこませてる。定時連絡がなかったし、あの規模の暗号装置はADとか、
PTとかじゃないとつかえないし……。あ、ASRSももってきた)
(ASRSか。ならいい。整備中に組み込むとしよう。レモン様たちと『向こう』の詳しい状況は)
(レモンさんたちは計画どおりに。ただアクセル隊長がまだ行方不明で――)
(なに? 隊長が?)
(転移位置の大幅にズレたみたい。ただ転移を失敗したわけじゃないから、世界のどこかにいるのは間違い
ないよ。同じ時間軸みたいだし)
(足止めにしてはずいぶんと高くついたな。ベーオウルフズ、そこまで強力だったか)
(――向こうのなのはさん、本当に化け物だった。わたしの全力全壊の振動拳五発もはいってたのにノーダ
メージ……。W16――エキドナさんが助けに来てくれなかったら、わたしはあそこで終ってた。すぐにリ
ュケイオスで転移したから結末はわからないけど、多分あれじゃ助からないと思う)
(任務だった。それだけだ)
(受け取り方はちがうよ。わたしがもっと強ければ、エキドナさんもこっちにこられたはずだから)
(わからん……。戦闘機人とWシリーズの感性の違いか?)
(それはたぶん関係ないと思う。わたしたちって腹違いの兄弟か姉妹みたいなものだし)
(……同じく向こうに残ったW15は?)
(ウォーダンさんも……エリオをかばって……)
(そうか)
状況はおもったよりも芳しくない、がやることには変わらない。
念話を終えた女は、思い出したように陸戦用シミュレーターに目を向けた。
「赤い……な」
赤い騎士甲冑の少女と赤い装甲の巨人が対峙していた。
次回第二話「集結! 夜天の空に!(後編)//古い鉄の伯爵」
番外編
かつて、巨大な戦争があった。
あるいは、かつて巨大な侵略があった。
それは神代の時代のことで、人の記憶には残っていない。わずかに人の無意識にのこり、神話の元型とし
て語り継がれる。
だが、人は覚えていない記憶も、彼らは覚えていた。
百邪と呼ばれる怨敵に、分離をはじめた世界をこえて、終結し、対決した。
龍騎が眷属を率いて立ち上がり、蟲王が眷属を率いて立ち上がり、人は超機人をつくりあげ、その地に集
う。
決戦は666日に及ぶ。獣が集う地に、いつの間にか訪れた静寂。戦いの手を止めた彼らは、はじめて勝
利を知った。それと同時に、百邪はただ去っただけなのだと気がついた。
再び、世界は百邪に侵される。
戦場に残った彼らは誓った。
ふたたび世界に百邪が迫るとき――
それがどれだけ果てしのないときの果てでも――
一騎たりともかけることなく集い――
ともに戦うことを誓いあった――
人界の救済を望むものたちとともに――
大戦はこうして終結し、彼らはそれぞれの世界に帰っていった。
誓いを果たすものは時の移ろいとともにいなくなりつつあった。それは本来の用途で使われたすえに壊れ
たものもあれば、自らの使命を果たしたあと、眠りについたものもいた。
その機体は朽ち果てていた。
ある世界を蹂躙した魔神を倒し、機体は役目を終えていた。
だが砂礫のように小さくなった機体の動力は、機体にのこった意思の炎を消させない。
機体にはわかっていた。また再び――自分の力が必要になることを。
「いまは待て、古き友よ」
そう語ったのは鳥。全世界の風を束ねる精霊サイフィス。機体と同じ役目と運命を背負いながらも、違う
道をたどった友。
「我に体と、操者があらわれたように。お前にも。この停止した時間を振るわせる、強い思いを持ったもの
が現れる」
己の半身ともいえる存在からの助言に、機体は従うことにした。
自分を従え、存分に振るい、機体のもうひとつの役割を果してくれる操縦者が現れることを。
だから待っていた。どの時間からも隔離された空間で、ただ朽ちるままに待っていた。
悠久だったかもしれない。あるいは雫一滴落ちる短い時間だったかもしれない。計るもののいない時間を
過ごした機体は、あるとき、次元のゆがみを感じた。
因子のそろわない場所に突如現れたなにか。機体は興味を引かれた。深海のように静かだった空間に、小
さなさざなみが立っていた。
見る。
ある時間軸のある世界で。
機体は見つけた。おのれの主となるべきものを。太陽と月と。強い意志を持った彼女たち。
だが、機体は動けない。朽ちは進み、四肢は腐り果て、剣は錆ついていた。
慟哭する。古き戦友たちはすでに目覚め、戦いに備えているというのに。
機体は腕を伸ばした。空間に突き刺さった剣に指先を這わせて引き抜いた。それだけの作業が機体にとっ
てとんでもなく負担だった。剣の重さで腕のひじが壊れた。部品が飛ぶ。
だが、彼は待ち続けていたのだ。この日のために、待っていたのだ。剣が空間を引き裂いた。ゆっくりと
穴を広げていく。
動力が死んでいく。己が朽ちていく。存在が消されていく。空間が体を蝕んでいく。
だがそれでも機体はあきらめなかった。
指先を、指先に力を。己の意思を。神剣が機体の意思に応えて、空間を引き裂き始めた。
魔装機神サイバスターのラプラス・デモン・コンピュータに、ほんのわずかな魔力の流れが走った。
サイバスターに宿る風の精霊は、己とおなじく邪神と対峙する運命にある兄弟に祝福を送る。
神剣ダイフォゾンがブラーナの輝きをまとい――空間を切り裂いた。
黄昏を待つしかなかった騎士は、その日――あらたな主の元へ向かった。
グルングルングルングルンルン。以上で投下終了です。人数あつまってきたので描写が大変。でも一元三人
称は書きやすい。
オバジマの登場です。正体はまだ内緒ッ! 絶対に内緒ッ! そしてネームセンスはゼロッ! そしてアル
テアッ! さらにベガッ!
次ボツネタ。
ティアナ「アーチボルド・グリムズッ!」
はい。ボツにしました。ややこしくなります。兄が逮捕したはずのテロリストが眼前にっ!?という展開で
したがね。破棄です。理由は内緒。グリムズ家の男性は全部好きなんですけどね。
「我、無敵龍騎ヴォルテール」「我、最強白蟲ハクテンオー」
ネタです。はい。最強白蟲はサイキョウビャッコと読みます。誰がうまいことを言えと。けどネタにするに
は符合が多すぎるような気がするのですよね……いろいろと。
すずか×ストレーガ、アリサ×ガナドゥール
すずか×武王機、アリサ×雀王機
すずか×ビルトファルケン・L、アリサ×ビルトビルガー・L
ボツです。はい。でも二人の扱いはレジアスと一緒にしようかと思っとります。
OG系統の機体だと搭乗者を排斥しなければいけないので、サイバスターの遠い親戚に出演してもらいます。
何人知っているかわからないのがネックなのですが……。
次回は外伝のほうを投下ですね。一週間以内になんとか。
サイバスターの遠い親戚……ライブレード?
確かあれ二人乗りだったし
>237
乙。
時に、>229の『ホワイトタイガーとハヤブサ』って……
241 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/14(金) 15:00:19 ID:ZD2WoXmV
真魔装機神?
俺、ニードーフォースピードモストウォンテッドとクロスしたの書きたいんだけど
いいか?
一体どんな話になると!?
244 :
242:2007/12/14(金) 16:36:29 ID:6gSF9Ssg
簡単に説明するとなのは達時空管理局メンバーにある命令が下る。
それは荒くれストリートレーサーの取り締まり、それもブラックリスト上位15名一斉確保と言うものだった。
ポートロック市警のクロス巡査達と共になのは達はその15名を逮捕すべく立ち上がる・・
ちなみに乗っている車は
なのは:日産R33型スカイラインGT-R(純白のボディに美しい黒のストライプ)
フェイト:フェラーリF430カスタム(フェイト専用にフェラーリがカスタムしたF430。ブラックのボディにシルバーのバイナル)
はやて:ポルシェ911 GT3カスタム(ライトクリームのボディに黒い羽のバイナル)
スバル:(つながりで)スバルインプレッサWRX STIバージョンチューンド(STIがスバル・ナカジマの為だけに作ったスペシャルチューンドカー)
他のキャラのマシンはちょっと待って。
あと、ナンバーズも出ます!
>>240 ラミアがビーストウォーズのタイガーファルコンと同じ口調だったので
ホワイトタイガーとハヤブサだと思います。
247 :
OSGS:2007/12/14(金) 21:02:28 ID:of/63qUv
ただいまもどりました〜。正解はタイガーファルコンでござるでしょう。
すずか、アリサの機体は正解が出たようです。まだ答えは言えませんがw
機体の持ってる剣の名前がヒントかもしれません。
さて、次回はレジアスの登場でクラナガンが揺れます。ご期待してくれるとうれしいです。
では。
>>247 GJ! 複数のキャラにちゃんと焦点を当てられるのはすごい!
さてと、ではセフィロス大暴れの片翼2話、投下してよろしいでしょうか?
…でも暴れすぎのような気もする…
>>248 おk!
暴れないセフィロスなんてセフィロスじゃありませんよ、だってラスボスなんだもん。
魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使
第2話「ソルジャー・ヴァーサス・ベルカズナイツ」
機動六課の食堂で、セフィロスは書類をパラパラとめくっていた。
向かい側の椅子にははやてが座っており、隣には宙に浮くリインフォースUの姿があった。
「…やはり総じて若いな」
セフィロスが呟く。
彼が読んでいたのは、機動六課の隊員達のリストだった。
六課のメンバーは、大半がはやて達とほぼ同じくらいの年齢の隊員で構成されている。
「まあ、ウチは新設の部隊ですし、なのはちゃんやフェイトちゃんが連れてきた人達もいますから」
はやてが苦笑混じりに答える。
高町なのはとフェイト・T・ハラオウンの存在は、セフィロスも先日聞いていた。
はやてと同期でありながら、この時空管理局でも指折りの実力を持つエース達らしい。
「それはいいが、やけに女の比率が高くないか?」
もう1つ、セフィロスが気にかかったのはそこだった。
前線フォワード陣だけに留まらず、オペレーターも医務室も女、女、女…
(場違いにも程がある、か…)
もう数年で三十路に差し掛かる男の自分は、明らかにこの中では浮いている。
「あはは…それは、まあ…いつの間にかこうなってはりまして…」
「ハーレム状態は萌え萌えアニメのお約束なのですよー」
「…妙なお約束だな」
硬派なRPG畑出身のセフィロスにはそんなお約束が理解できるはずもなく、
半ば呆れたような声を上げた。
「…ともかく、今日は例の件があるのだろう」
「ええ。んじゃそろそろ行きましょうか」
そう言ってはやてが席を立ち、セフィロスもそれにならった。
今日はこれから、彼の能力を計るための模擬戦があるのだ。
嘱託魔導師の試験を何の問題もなく通過したセフィロスだが、実力を把握しておくに越したことはないだろう。
面倒に思ってはいたものの、セフィロスもそれを一応了承し、今日に至っていた。
はやてがセフィロスを水上訓練場へと案内した時の新人達の驚き様は、見ていて愉快に思えるほどだった。
何せ、全身を黒いコートに包んだ2メートル近くの男が、その身の丈すらも超える長さの刀を携えて現れたのだから、無理もない。
((((怖い…))))
4人の若き魔導師達は、そんな感想すら抱いたという。
「近いうちに六課に仲間入りする、セフィロスさんや。みんな仲良うしたってな」
一方のはやては、そんなことを気にした様子もなく、朗らかにセフィロスを紹介する。
「スターズ分隊隊長の、高町なのはです」
「フェイト・T・ハラオウン。ライトニングの隊長を務めています」
2人のエースが、セフィロスへと自己紹介をした。
(この2人を相手すれば、この世界の程度が分かる、か…)
内心でセフィロスはそう呟く。
この若さでどれだけやれるのか、実際に戦って実力を試してみたかったが、恐らくそれは無理だろう。
わざわざ隊長が模擬戦に出るとも思えない。
「…セフィロス・ジェノバだ。コールサインはソルジャー1」
セフィロスは挨拶を返すと、はやての方へと視線を戻した。
「…で、模擬戦の相手は誰だ?」
「ヴィータとシグナムいうて、副隊長の人達ですわ」
どちらかお好きな方とどうぞ、とはやてが言う。
「そうか…」
となるとあの赤い幼女か、セフィロスがここにいる要因を作ったピンクのポニーテールということだ。
やがて、それら2人が前へ出て、先ほどのような自己紹介をし、セフィロスも応じた。
「にしてもバカみてーに長い剣だな」
ヴィータがセフィロスの正宗を見て、そう評した。
日本刀にしてはあまりに長大な正宗は、元の世界では唯一セフィロスにしか扱えないと謳われた代物だ。
つまりセフィロスとは、そういう存在だった。
「今度試しに使わせてもらってみたらどうだ、シグナム?」
「…いや、剣の間合いには『慣れ』というものもある。あのような長い剣、借りたところで急には使いこなせまい」
そう言って、シグナムはヴィータの提案を蹴る。
それを聞いたセフィロスは、よく分かっているな、という感想を抱いていた。
恐らくシグナムもまた、自分やあのクラウドと同じ剣士なのだろう。
(シグナムが剣、ヴィータが金槌、か…)
「あの、セフィロスさん…管理局の制服は?」
尋ねたのはフェイトだ。
既に管理局の嘱託魔導師となったセフィロスが、どう見ても私服にしか見えない黒いコートを身につけているのは、おかしな話だった。
「セフィロスさんがおった特殊部隊では、セフィロスさんの階級は私服が許可されとるみたいでな。
いきなりこんな所へ飛ばされたこともあるし、リラックスしてもらうっちゅう意味合いで、それにならっとるんよ」
フェイトの問いかけにははやてが答える。
確かに、いきなり服装まで組織の型にはめ込まれるよりは気が休まるだろう。
そもそもそれ以前に、セフィロスがそこまで細かく指示されて従うとは思えないのだが。
「…で、私と戦うのはどっちだ?」
無駄話は終わりだとでも言わんばかりに、セフィロスが問いかける。
高圧的な態度にヴィータは一瞬ムッとしたものの、ぐっとそれを胸の内へ押し留め、シグナムに話を振る。
「どうする? お前がやりたいってんなら別にいいけど」
「いや、私は後からじっくりとやらせてもらう。ギャラリーがいては落ち着かん」
それではせっかくの勝負が興ざめだ、とシグナムが付け足した。
どちらにせよ、この決闘マニアはセフィロスと戦う気満々らしい。
腕の立つ、しかも特殊な刀を持った男などと言われれば、彼女が興味津々になるのも当然だが、はやては少々セフィロスに同情していた。
きっと彼はこれから、四六時中シグナムに追いかけ回されることになるのだろう。
(フェイトちゃんがもう少し暇やったら、それも半減なんやけどなぁ…)
と、はやては内心で苦笑した。
「面倒くせぇな…」
「どうせそう言ってずるずると引きずるのだろう。今のうちに手合わせをしておけ」
目の前では2人の守護騎士が未だに言い争っている。
セフィロス自身はどちらを選ぶのだろう、とはやては彼の顔を見上げたのだが、
「面倒だ。待たせるくらいなら2人まとめて来い」
「…はい?」
流石にこの選択は、彼女の想像の遥か斜め上をいっていた。
支援
支援です〜(リィンが手を振りながらがんばって応援してる感じで)しかしセフィロスの兄ちゃんは六課の皆と上手くやっていけるんでしょうか…
「テメェ、あたしらをナメてんのか!?」
ヴィータもこれには堪えきれず、睨みを利かせて食ってかかった。
「フッ…面白いことを言うな、セフィロス」
一方のシグナムは、むしろ不敵な笑みを浮かべている。
そこまでの自信があるのなら、実際に2対1でやり合ってもそこそこは楽しませてくれるだろう、と期待のこもった笑みだった。
「えっと…これは、どうしたらええんやろ…?」
そんな騎士達を尻目に、当の主は完全に狼狽していた。
いくら魔力リミッターがかけられているとは言え、それでもヴィータはランクA、シグナムはAAの強者なのだ。
いくら魔力量推定Sクラスのセフィロスと言えども、いきなりそんなことをして大丈夫なのだろうか。
「あのですね、セフィロスさん…?」
「構わん。やらせろ」
「あたしもやってやらぁ! コケにされて黙ってられっか!」
「まあ、たまにはこういうのも悪くはないだろう」
何とかリインが止めようとするが、セフィロスはとりつく島もない。
ヴィータとシグナムも、完全にやる気満々だ。
「…はぁ…」
はやては1つ大きなため息をつくと、
(これはもう、止めても無駄みたいやね…)
そのまま模擬戦の準備に入った。
数分後には、模擬戦の用意が整い、セフィロス、シグナム、ヴィータの3人が訓練場に立っていた。
はやてを筆頭とする残りの面々は手頃なビルの屋上で観戦。ランク判定のための設備も準備完了。
「何だか、とんでもないことになっちゃったね…」
なのはがはやてに話しかけた。
「せやねぇ…あまりえらいことにならんとええけど…」
「非殺傷設定は徹底してるから、大丈夫…だろうけど…」
そう言うフェイトの語調が、語尾に近づくに連れて弱々しくなった。
確かに、それならセフィロスが負傷することはないだろう。
ただ問題は、隊長格が2人いっぺんに暴れ回った場合、この訓練場が大丈夫なのだろうか、ということだ。
セフィロスがかなりの手練れであることは、シグナム達も了承している。
ならば、必然的に彼女らも本気で模擬戦に当たるだろう(特に怒り心頭のヴィータ)。
そんな状態では、流れ弾で訓練場がどうなるかは目に見えていた。
「それじゃ始めてくださーい♪」
設備の操作を行うリインが、セフィロス達へと呼びかけた。
ところで、上記の懸念は、いずれもセフィロスが負けることを前提としたものである。
しかし、それが原因で、彼女らの頭からは、他に抱くべきある懸念が抜け落ちていた。
セフィロスを知る者がこの場にいたとしたら、きっとこう言うだろう。
「セフィロスが袋叩きにされるなんてあり得ない」と。
全員が全員、シグナムとヴィータに対する心配をするのを忘れていたのだった。
そういえばACの新キャラは全員男キャラだったな支援
訓練場では、セフィロスが正宗を独特な形で構えていた。
顔の高さで、さながら突きを繰り出す寸前のように、真っ直ぐ前方に切っ先を向けている。
一見するとかなり戦いづらそうな姿勢だが、これがセフィロスの構えなのだ。
一方、シグナムとヴィータもまた騎士甲冑を身にまとい、それぞれのデバイスを装備している。
「一発目はあたしに行かせろ。あンのスカした面、ブッ飛ばしてやる!」
威勢よくグラーフアイゼンを振るヴィータ。
「ああ、別にそれでいい」
「よっしゃ!」
シグナムの声がかかるや否や、ヴィータは全速力でセフィロスへと肉迫した。
眼前へと到達すると、思いっきりグラーフアイゼンを振り上げる。
「おぉぉぉりゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーっ!」
気合いと共に、セフィロス目掛けてその鉄槌を振り下ろす。
セフィロスとヴィータ、両者の視線が交錯する。
衝突の瞬間。
ガキンッ!という金属音。
「ッ!?」
ヴィータの小柄な身体は、空中に浮遊したまま、微動だにしなかった。
受け止められたのだ。
この至近距離で、かつこのスピードで。
渾身の一撃を、片手の正宗であっさりと受け止められた。
「く…うう…っ!」
懸命にヴィータは押し切ろうとするが、セフィロスは微動だにしない。
(何でだ…何でビクともしねーんだよ…っ!)
想像以上の馬鹿力。
焦りと共に、ヴィータの頬を一筋の汗が伝った。
「ヴィータ、そのままセフィロスを抑えていろ!」
シグナムの叫びが響いたのは、それとほぼ同時だった。
こちらも瞬時に間合いを詰め、愛刀レヴァンティンをセフィロス目掛けて薙ぎ払おうとする。
唯一の武器である正宗を封じられた今、セフィロスに反撃手段はないはずだ。それがシグナムの判断だった。
もちろん、セフィロスがそれに気付かぬはずもない。
「うおっ…!」
正宗を両手に持ち替えてヴィータを振り払うと、後方へと飛び退いて斬撃を回避。
そのまま背後のビルの2階程の高さに、器用に両脚で貼り付くと、壁を蹴って自らシグナムへと斬りかかった。
シグナムもレヴァンティンで対応する。受け止めた途端、凄まじい重圧が彼女とレヴァンティンへ襲いかかった。
(くっ…何という剣圧だ…! これが英雄とやらの実力か!)
これでよく誤魔化しきれたものだ、とシグナムは感心する。
セフィロスの魔導士ランクは、嘱託魔導士試験結果では「B」となっているのだ。
(実力を何ランク抑えたんだ…?)
さぞ窮屈な思いをしただろうと同情しながら、しかしシグナムはセフィロスの剣から逃れ、カウンターを繰り出す。
「はぁぁっ!」
剣風の嵐が吹き荒れた。
絶え間なく繰り出されるレヴァンティンの一太刀一太刀が、セフィロスの身体を容赦なく狙う。
セフィロスはそれらに反撃することなく、身をよじり、バックステップをし、その都度かわしていった。
先ほどビルの壁に一跳びで到達したのもそうだが、身のこなしもかなり素早い。
リミッターによって限定されるのはあくまでも魔力。つまり、今のシグナムの攻撃スピードは、実戦の時のそれと何ら変わらない。
にもかかわらず、セフィロスはそれら全てを回避してみせているのだ。
(――シグナム、合わせろっ!)
と、不意にシグナムの頭にヴィータの念話が響いた。
突然の指示だったが、数百年を共に戦い抜いたシグナムは、ヴィータの意図を瞬時に理解する。
レヴァンティンのカートリッジをロードし、灼熱の業火を解き放つ。
「紫電…一閃っ!」
必殺の一太刀が、セフィロス目掛けて繰り出された。
無論、それだけではない。
「ラケーテンッ! ハンマァァァァァァーッ!」
セフィロスの頭上からは、更にデバイスをラケーテンフォルムへと変形させたヴィータが、
ロケット噴射の炎を盛大に噴かせて殴りかかってきていた。
自称セフィロスの思念体三人とも男キャラ支援
「…つまらんな…」
2人の守護騎士は、そう聞いたような気がした。
「正宗の刀身に魔力の収束を確認、…エ、S-ランクですぅ!」
「えぇ!? んなアホな!?」
はやてが素頓狂な声を上げた。
見たところ、セフィロスには技か何かを使っている気配はない。単に魔力を剣に上乗せしただけだ。
それだけで――シグナムとヴィータの必殺技を、受け止めたのだ。
「この程度では、何の余興にもならん」
驚愕も露わな表情で、剣と鉄の騎士は、片翼の天使を見つめていた。
自分達の必殺の一撃が――それも同時に――難なく受け止められた。
それこそ、ただの剣戟で。
銀色に輝く刃の向こうで、セフィロスの怪しく光る青い瞳が、冷ややかな色を伴ってシグナム達を見ていた。
「すぐに終わらせる」
淡々と言い放つと同時に、正宗の放つ魔力が2人を強引に吹き飛ばし、地面へと叩きつけた。
「ぐぁ…!」
「く…っ」
尻餅をつくシグナムとヴィータ。
その視線の先にあるのは、極寒の氷山にも勝る冷たさをまとう、セフィロスの視線。
遥かな高みから愚者を見下ろす視線。
殺意さえ感じられる、青い恐怖。
「…うわあああああああああああああああああっ!」
ヴィータが壊れた。
過去の歴史の中で、これほどまでの恐怖を放つ存在を、ヴィータは目にしたことがなかった。
故に、彼女の幼さを残した精神は、容易に震え上がる。
「くそっ…寄るなっ! 来るんじゃねぇっ!」
模擬戦前までの威勢はどこへやら、ヴィータは懸命にグラーフアイゼンを振るい、セフィロスを威嚇する。
無論、セフィロスはそんな物には動じない。何の反応も示さず、ゆっくりと歩み寄る。
「来るなっつってんだろぉっ!」
ヴィータのグラーフアイゼンが、真っ直ぐにセフィロスへ向かう。
しかし、セフィロスは雑作もないといった様子で、それを軽くあしらった。
「…っ! うあああああああああああああああああああああーっ!」
とうとうヴィータは涙目になり、空高くへと飛び上がった。
グラーフアイゼンを通常モードに戻し、誘導弾シュワルベフリーゲンを8つ展開する。
ハンマーを往復させ、一度に放てる最大弾数の8発を、一挙にセフィロスへと向けた。
鈍色に光る鉄球の雨が、セフィロス目掛けて降り注ぐ。
「っ!?」
突然、それらがセフィロスの身に届く前に、ヴィータの周りに灰色の光が煌めく。
次の瞬間、彼女の両手首両足首には、灰色の魔力リングが生じていた。
ヴィータは身体の自由を奪われ、その場に磔にされる。
セフィロスの放ったバインド魔法だ。
そして当のセフィロスは、シュワルベフリーゲンが自らの身体を捉える瞬間――
「…ふんっ」
それら全てを弾き返した。
八刀一閃。
そう呼ばれる、セフィロスの必殺剣である。目にも留まらぬ速さで正宗を振るい、計8発の連撃を叩き込む技だ。
その八刀一閃によって、8つの鉄球は残らず弾かれ、元の道程を猛スピードで引き返す。
「ひ…!」
その先には、バインドで拘束されたヴィータ。
「ヴィータッ!」
シグナムの叫びも虚しく、弾丸は遂に主の元へ到達した。
ラスボス支援
「かは…ッ!」
ヴィータの喉から息だけが漏れる。
シュワルベフリーゲンの1球目は、あやまたずヴィータの腹部へとえぐりこむように直撃。
続く2球目、3球目もまた、赤い騎士甲冑へと突っ込んでいく。
「くはっ…ぁ…がぁ…っ!」
一球一球が当たる度に、ヴィータが半分死んだような目で、悲痛な呻き声を上げる。
非殺傷設定故に負傷こそしないものの、その苦痛は相当なもののはずだ。
そしてセフィロスは、ちょうど5球目が命中すると同時に、手近なビルへと飛び付いた。
そのまま凄まじいスピードでビルとビルの間を縫い、壁を蹴って高度を上げていく。
遂に全弾が命中した直後、セフィロスはヴィータの元へとたどり着き、正宗の峰でその小さな身体を思いっきり殴りつけた。
ヴィータはそのまま真下へと急降下していき、声もなくアスファルトへと突っ込む。
「ヴィータァッ! く…このっ!」
『Schlangeform.』
絶叫を上げ、シグナムがレヴァンティンを蛇腹刀・シュランゲフォルムへと変形させた。
「だあぁぁぁーっ!」
土煙の立ち込める中、ヴィータのすぐ傍にセフィロスが着地すると同時に、シュランゲフォルムの刃が殺到した。
鋭利な刀身が、竜蛇となってセフィロスへと襲いかかる。
セフィロスは、しかしそれにも構わず、刃の先のシグナム目掛けて猛スピードで突っ込んでいった。
頬、腕、胸、脚…
レヴァンティンの牙はそれらを的確に狙うものの、それら全てが、正宗によって
寸手のところで払われる。
廃ビル群のひび割れた道を、セフィロスはさながら弾丸のように駆け抜けた。
「! ………」
しかし、不意にその足が止まる。
否、その手に握った正宗が止まったからこそ、セフィロス自身も動けなくなったのだった。
(よし…!)
内心で、シグナムが確かな手応えを感じ取る。
セフィロスが彼女の元に到達する寸前で、シュランゲフォルムの7度目の攻撃が、遂に正宗の刀身を絡めとったのだ。
シグナムの狙いはこれだった。
紫電一閃とラケーテンハンマーの同時攻撃を難なく返された時点で、
限定付の自分達では、正面衝突に持ち込んでも敵わないことを、彼女は悟っていた。
だからこそ、シュランゲフォルムの蛇腹刀で、セフィロスの唯一の武器である正宗を捕縛し、攻撃の手を封じようとしたのだ。
そのまま正宗を放り捨てさせるべく、レヴァンティンを握る手に僅かに力がこもる。
しかし一方のセフィロスは、微塵も反応を見せず、ゆっくりとシグナムの元へと歩み寄っていく。
(…?)
シグナムはその様子に、何やら不穏なものを感じていた。
だからこそ、眼前のセフィロスから視線を剥がすことができず、その場で棒立ちになっていた。
やがて、セフィロスが彼女のすぐ目の前まで迫る。彼はそのまま、自身の顔をシグナムのそれへと近付けた。
ゆっくりと。
しかし、確実に。
唇同士が触れ合うか否かいった距離まで近付いたところで、セフィロスは妖艶ささえ漂う動きでふっと首を傾け、顔は耳元へ向かう。
銀の長髪が、シグナムの視界一面に広がった。
「次にやる時は、魔力リミッターなどという物は外して来るんだな」
そっと、セフィロスの声が左耳で囁く。
「――サンダガ」
シグナムには見えない所で、正宗を握るセフィロスの手が、一瞬光を放った。
「…があああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!」
次の瞬間、シグナムの全身に走ったのは、痛烈な電撃だった。
「シグナムッ!」
ビルの屋上で、シグナムに起こった事態を真っ先に理解したフェイトがその名を叫んだ。
セフィロスのいた世界で用いられていたのを、本人の魔力で再現した雷撃魔法・サンダガ。
その高圧電流を、正宗、そしてレヴァンティンを通して身体に直に流されたシグナムは、目を見開いて絶叫する。
「ぐ…ぁ…あああ…っ!」
非殺傷設定でなければ、即座にあの世逝きの荒技だ。
エビ反りになった肢体が、もんどりうって倒れる。
シュランゲフォルムの呪縛から解き放たれた正宗を握り直すと、セフィロスはその峰をシグナムへと叩きつけた。
意識など当に吹き飛んだ彼女の身体は、何の抵抗もなく宙を舞い、ビルの壁へと突っ込む。
静寂。
容赦のない一方的な暴力の後、静寂の中に立っていたのは、セフィロスただ1人。
2人の守護騎士は、目立った外傷もないまま、アスファルトに倒れ臥していた。
セフィロスのみが。
輝く銀髪を妖しくたなびかせるセフィロスのみが、絶対の尊厳と共に君臨していた。
「…きゅ…救護班っ!」
はやてが我に返り人を呼んだのは、それから10秒以上経ってからだった。
スバルら新人達を下に降ろした方がまだ早かっただろうが、それは無理な話だ。
今の凄惨な模擬戦を目の当たりにし、4人は完全に竦み上がっている。
特に気の弱いキャロなどは、失禁寸前の怯えっぷりだった。
(こらトラウマもんやな…)
はやてが内心でため息をついた。
(それにしても…とんでもない人をスカウトしてしもたな)
そして視線をセフィロスに向け、はやては思う。
僅か数分。それこそ、10分とすら経っていないかもしれない。
そんな短時間で、この男はAランク魔導師を瞬殺してしまったのだ。
俗っぽい表現だが、まさに「ボコボコにした」という言葉がぴったりだった。
それだけなら、「保有制限にも引っ掛からない超絶助っ人が入った」と儲け話で済むのだが、その過程がよくなかった。
(自重…って言葉知らんのやろか、あの人?)
やりすぎだったのだ。
誰がどう見ても、セフィロスのあの戦法は「殺す気」の戦い方だった。
管理局はあくまで治安維持が目的の組織であり、殺し合いの戦争のための組織ではない。
戦闘においては、極力確保が優先される。被疑者の殺害などは、基本的に御法度。
だが、この人の場合、敵は問答無用で皆殺し…となりそうで、正直はやてにはそれが不安だった。
シグナムとヴィータの2人をああもむごたらしいやり方で倒されては、そう思っても仕方ないだろう。
(…ともかく、ここは私がきつーく言っとかんとな。部隊長として!)
正直を言うと、あのセフィロスを叱りつけるのは怖くてたまらなかったが、それでもはやては胸中にそう決心を固めた。
(下手になのはちゃん達に頼んでも、それはそれでえらいことになりそうやし…な)
背後の武闘派な親友を思い、はやては苦笑する。
そこで肝心なことを思い出すと、隣で浮いているリインへと声をかける。
「せや、リイン。セフィロスさんの総合ランク…どんな感じやった?」
「はい、それが…」
リインの操作していた設備に表示されていた魔力量ランクの欄には、「S」が「2つ」並んでいた。
その後、はやてのセフィロスに対する、「きつーく」と言うよりは「ネチネチ」と表現した方が的確なお説教は、計30分にも及んだという。
とは言ったものの、セフィロスがそのうちのどれ程を真剣に聞いていたかについては、疑問が残るのだが。
マテリアは便利すぎだぜ支援
…うん…何と言うか…真剣に自重してください、セフィロス様…
そんなこんなで投下終了。
今回結構ヤバイ目に遭ったヴィータは、次回フォローする予定です。
忘れた頃にセフィロスと絡むことになりますので、ちゃんと関係は修復しておかないとネ?(ぇ
ちなみに、
・セフィロスの年齢は推定20代後半
・セフィロスの身長は推定190〜200センチ
これらの設定を、Wikipedeiaより拝借しております。
ラストバトルの音楽は神支援
GJでっせ、なんかセフィロス兄さんってこのまま行くとツン成分99%ですね。
スカ側に勧誘されなくて良かった…あっちについてたら確実に六課メンバーはトマトのように輪切りです。
職人の皆様GJです
>>魔装機神氏
ガジェ沢…今だけはノーヴェとウェンディに同意します…
不良スバル…あれ?なんか自然に想像できた…何でだろ…?
>>217氏
クロス元が分かりませんが、続きが大いに気になりますね…
しかしリンディ茶を平然と飲める人間がいたとは…化け物かッ!
>>OSGS氏
ちょ、アルトアイゼンとヴァイスリッターができたのってなのはさん達が原因だったんですかw
しかし…ヴィータが見た謎の記憶って、一体何なんでしょう…?
>>反目のスバル氏
…どうしよう、セフィロス様が悪鬼羅刹の類にしか見えなくなってきた…
六課の面々に一言だけ…「セフィロスを甘く見ないでください。かなりヤバイですから」…いや、遅いか
ソルジャー時代のセフィロスならともかく、ラスボス戦後のヤツは実力的にも精神的にもやべえ。
これはバージル以上のツン時代が来そうだwww
GJです。
セフィロス強すぎ!!
キングダムハーツでもラスボスよりは強かったから当然だといえば当然の強さですが・・・・・・
心無い天使を使う日はいつ来るでしょうか?
そして,セフィロスに勝ったクラウドはどれくらいの強さなのでしょうね?
GJ!
あんな試験じゃいくらでも誤魔化しようがあるとはいえ、試験で自重した分欝憤が溜まっていたのでしょう。
見事なセフィロスっぷり、さすがはメテオで星一つ破壊しようとしただけのことはあるぜ!
さすがラスボス!これからもセフィロスの動向から目が離せない!
それにしてもはやては自分でスカウトしておきながら今更こんなことでうろたえてお説教するとは、
セフィロスの説明をちゃんと聞いてなかったのか?部隊長として少しでも相手を把握しようとしないと。
まあ、自分の都合だけでとりあえずスカウトするのはこれからは自重したほうがいい。
リアルでで背筋が寒くなったぜGJ!
セフィロスと戦うことになるであろうナンバーズの皆さんが悲惨な事になりそうだ。
GJです。
ただ、セフィロスの外見年齢は、ジェノバに覚醒した時、すなわち約二十歳から変わっていません。
だから六課の面子の中にいても特に違和感は無いかと。本人の顔もああですし
強さに関しては、むしろこれくらいで無いとだれだお前は状態になってしまいます。仮にもラスボスですから
ただセフィロスもメテオの動機回りの事情からフェイトとは気が合いそうだなあと思いました。
GJ。
シグナム視点で見ると……。
強そうな新人が来る→落ち込んでいたので励ます→(二人まとめて)ボコボコにされる
だから酷い話だwww
まあ、少なくとも覚醒後セフィロスは一般的に言う善人じゃないことは確かですしwww
そうなってもしかたなしwww
しかし、ここまですごいツンだとデレた時の破壊力を想像すると
ツンデレ好きの俺としては、たまらんものがある。
>>273 善人とか以前に母一人をきっかけに全人類にケンカ売っちゃう人ですから
しかも滅ぼす気まんまんでw
あれ、こう書くとフェイトとマジで相性いい気がして来た
さすがは最強のソルジャーだぜ!ツンデレでも最強だ!
>>272 強そうな新人が来る→落ち込んでいたので励ます→(二人まとめて)ボコボコにされる→惚れた!
ウィキでセフィロスの技調べてみたんですが、とんでもないですね。スーパーノヴァ とか。
まあ、美形でかっこよくて超強いお兄さんがポッと現れて
いきなり仲良しこよしで分かりあえるなんて都合のいい話は世の中にはそうそうないってこった。
280 :
OSGS:2007/12/14(金) 23:08:14 ID:of/63qUv
GJ!
てかセフィロスは絶対に説教を聴いてない……。
いや、むしろ聴いていてほしく無い!
GJ!
殺しもある世界と治安維持第一の世界とでは考え方が全く違うからな。
FF7の世界を完全に理解しないとセフィロスの思考は理解できんでしょうな。
まぁ、それ以前にセフィロス自体がぶっ飛んでるんだが・・・・
セフィロスはツンデレというよりヤンデレに近い気がする…。
>>277 それはないwww
GJ!!です。
セフィロス怖いぜ、わざわざシグナムに忠告してから感電させるとは・・・。
力を求めたタティアナさんが弟子入りしてしまうのか気になりますがちょっと無理かな?
どうも相変わらず空気読めない者です。
番外編のほうが完成したので00:30ぐらいに投下したいと重います。
後、感想を一つ。
セフィロスさん、マジ自重してくださいwww
という訳で反目のスバル氏、GJです。
sien
Aパート完成…って遅かったか…
しょうがない、終わるまでがまんしよう…
支援
288 :
242:2007/12/15(土) 00:29:59 ID:MIRLUH3e
プロローグですが、投下したいと思います
MOSTWANTEDNANOHA
プロローグ「ロックポート市警」
ヴォオオオン!!キャアアア!!
今日もストリートレーサー達が己の運と意地をかけ、レースに励んでいた。
ジジイのファック以上に気合の入っているレーサー達。
彼らの憧れであり、また恐れられているのがブラックリストランカーと呼ばれる15人だ。
一番上の「レーザー」こと、クラランス・カラハンを筆頭に「ブル」トオル・サトウ
ぼんぼん息子「ロニー」ロナルド・マクリー、DJの「JV」の異名を取るジョー・ベガに
「ウェブスター」ウェス・アレン、「ミング」ヘクター・ドミンゴ、スピードさえあれば飯はいらないと言う
女ストリートレーサー「カゼ」こと、キラ・ナカザトに宝石の意味を持つ「ジュエル」の異名を持つシェード・バレット
ランエボ使いの「アール」ユジーン・ジェームス、ブラピ似の金持ちストリートレーサー「バロン」カール・スミット
筋肉モリモリマッチョのチャイナマン「ビッグ・ルー」ルー・パーク
シルバーのRX-8を駆る「イジー」イザベル・ディアス、半永久的に13番のランクに居座ってる「ヴィック」ヴィクター・バスケス
警察とのトラブルが絶えない「タズ」ビンス・キリック、金持ちの小心息子(?)「サニー」ホー・セウン。
彼ら15人はロックポート市警の悩みの為でもあり、目の上のたんこぶだった。
クロス「くそっ!!!今日も逃したか!!」
逃げられるのはコレで16度目。
何人かは逮捕した事があるが、大抵は賄賂や、証拠不十分や釈放金支払いなどで釈放されていた。
おまけにライノ部隊が歯が立たない・・・。
住民から「税金の無駄遣い」と罵声を浴びせられた上でのこの屈辱・・・。
ついにクロスはある事を決意する・・。
クロスは静かに電話を取るとある所へ番号を押し始める・・・
クロス「そちら、時空管理局か?お願いがある・・・。」
あとがき
ごちゃ混ぜなプロローグになってしまいましたが、必ず完結させるつもりです。
ナンバーズと機動六課のメンバーが結託して活躍するので期待していただければ幸いです。
では
もし彼女に不運があるとすれば、それはとてつもない幸運に恵まれている事であろう。
もし彼女に幸運があるとすれば、それはとてつもない不運に見舞われていたからであろう。
それはどっちが幸せな事なのか?
○―――○
(なんで……こうなっちゃったのかな……)
ティアナ・ランスターは相棒であるクロスミラージュを両手に構えながらそんな事を考えていた。
本当ならばそんな事を考えている余裕すらない状況だと言うのに、なんとなくだがそんな事を考えてしまう。
己の体に傷はなく、魔力も最初に放ったクロスファイアとバリアジャケットの構成に使った分しか消費していない為、満タンと言わなくても十分だと思う。
機動六課と言う新しい職場で、新しい教官の指導のもと己の技量もそれなりに上昇してきたと思っていた。
だと言うのに、目の前の『敵』を前にするとそんなものなんら慰めにもなっていない。
「スバル……ちゃんと逃げれたかしら」
ここにはもう2人、仲間がいたのだ。 だが、既にその2人もこの場所にはいない。 当然だ。 傷ついた2人を逃がしたのは他ならぬ自分である。
本当ならば、目の前の『敵』を倒すにはその仲間2人は必要不可欠――いや、2人が居たとしてもどうにかなるかどうか分からない規格外の『敵』だ。
訓練校時代から共に歩んできたパートナーである、『スバル・ナカジマ』。
己が目指す執務官であり、自分の上司である『フェイト・テスタロッサ・ハラオウン』。
この2人はあっと言う間に倒されてしまった。 そうまるで赤子を捻るように倒されてしまったのである。
自分が今ここで無傷なのは自分のポジジョンが援護である為、『敵』と距離が離れていたに過ぎないのだ。
はっきりと言ってしまえばここに立っている事すら怖いと感じてしまう。 だが、自分はまだここに立たねばならない。
>289
それなんてゼンダライオン?
大切な仲間を守る為に。
「もう誰も傷つけさせない……!」
覚悟は決まった。
「済んだか?」
「ええ、律儀に待ってくれてありがとう、と言うべきかしらね」
「さて、な」
目の前にいる『敵』――巨大な剣を持った男は律儀にこちらとの問答を行ってくれている。
どうやら、去るものに興味はないらしい。 かと言ってここで奴に背を向ければ即座に自分は真っ二つになるだろう。
「さてと」
クロスミラージュにカートリッジを全弾再装填させる。 そして己の魔力も限界まで高めていく。 後先など考えず。 今、持てる自分の力をすべてこの一瞬に出し切る為に。
それにあわせて、目の前の男から強大な魔力が噴出してくる。 それはあまりにも圧倒的だ。
自分の魔力と比べるとあまりにも強大すぎる。 男の魔力に比べれば自分の魔力はあまりにもちっぽけなものでしかない。
だけどここで諦めるくらいなら、最初からここに立っている訳ではない。 例えどんな強大な力を持っていようとも関係ない。 今、自分が出来る事をやろうと思った事を全力でやるだけである。
「行くわよクロスミラージュ」
『了解です』
己の相棒と意思を一つにしていく。
見つめる先にいる男を己の弾丸で撃ち抜く為に――!
「我が名は『黒い刃タキオス』! 強き意思を持つ者よ、名は!?」
「ティアナ! 『ティアナ・ランスター』!」
「――!!」
「――!!」
カーテンオープンは一瞬。 そしてカーテンフォールも一瞬であった。
事実はたった一つ。 黒き刃によって、一人の少女が散った。 それだけである。
○―――○
「見事」
ティアナ・ランスターはまだ生きていた。 タキオスの一撃を受けて尚、彼女はまだ生の世界にいた。
両手に握っていた銃は、タキオスの一撃を受け止めてバラバラになって吹き飛んでいた。 ティアナもまたその場に倒れこみ血の海に沈んでいるが、呼吸が微かに聞こえてくる。
それを見て、見事としかいいようがないタキオスである。
能力に制限がかかっている今でさえ、ただの人の身では届く事のない高みにいるタキオスの攻撃を受けて生きていたのだ。 賞賛を受けるには十分であった。
「さて……」
外にいる管理局の魔道師達は撤退を始めているようだ。
ふむ、とタキオスが外のほうを見る。 大きな魔力が幾つも戦場に飛び交っている。 その魔力が通った場所のミニオン達が次々倒されている所を見ると、あちらのエースなのだろう。
ここで倒す事も出来るが、今の目的は違う。 ロストロギアを回収する事である。
「ならば残りのミニオン隊はロストロギア保管庫に向かえ」
そこにも複数の魔力反応が確認出来る。 防衛を行っている魔道師達だろう。
しかしそれ程の数はいないし、強大な魔力を持っている訳ではない。 この程度ならば大量のミニオンを投入すればあっさりと片がつく筈だ。
支援?
支援
指示を送った後、改めてタキオスは目の前で血の湖の倒れているティアナに向かって賛辞を送った。
ただの人の身であり、未熟な雛でしかないティアナがその意思だけで自分に立ち向かい見事に役目を果たした事。 それは並大抵の事ではないのだから。
だからこそタキオスは賛辞を送る。 彼は強き者には最大の敬意を払う者であった。
「もしお前が我等と同じ場所に立てたならばな」
この少女が永遠神剣を持ち、自分と同じエターナルになったらどれ程の強者になっただろうか。
そんな未来を思いながらも、その芽を摘み取る事になる事に少しだけ躊躇いを持つ。 しかしこれ程の傷だ。 もう助かる見込みはないだろう。
ならばこのまま苦しむぐらいならば、ここで介錯してやるのもまた1つの助けてである。
「さらばだ、ティアナよ」
自分の剣である『無我』を振り下ろそうとした時、
「待ちなさいタキオス」
「……テムリオン様」
気がつけば、自分の主がそこにいた。
「タキオス、その娘を回収しなさい」
「……まさか、この娘が?」
この世界――802分岐57309世界17301189時間断面。 通称『ミッドチルダ』を滅ぼすと決めてから、行っていた1つの計画。
それは、とある2つの剣の『適合者』を探し、ロウ側に傾くように教育するものであった。
だが数年前、とある事件などから『適合者』が不適合と判断。 計画は一時中断されていたのだが。
「ふふふ……ええ。 私が新たに見つけた『適合者』。 この娘ならばあの坊やに近いものを私達に見せてくれるかもしれないわ」
まさかこの少女が『適合者』だとは思わなかった。
確かに認めてはいたが、自分の主が求めている存在だとは思ってもいなかったのだ。
「では当初の予定通り」
「ええ。 この娘に調整を施した後に『求め』と『誓い』の契約者としますわ」
○―――○
「永遠神剣第4位『求め』、永遠神剣第5位『誓い』。 まさか『世界』の破片からここまで修復出来るとは思っていませんでした」
重症であったティアナをスカリエッティに治療などの仕事を託した後、テムリオンの自室でタキオスがそう口にした。
500年前の戦いで聖賢者ユウトに破れ、粉々に砕け散った永遠神剣第2位『世界』。
その破片を秘密裏に回収したロウ・エターナルであったが、まさかここまで完全な形に修復出来るとは思っていなかった。
しかし問題があった。 修復出来たのはあくまで形とその性能のみ。 肝心の剣の『意思』を修復する事は出来なかったのだ。 『意思』がない剣など抜け殻に過ぎない。 このままの状態では、真の形である『世界』にする事は出来ない。
「そう。 だからこそ剣の主が必要なのよ。 それが仮初の主であろうが」
「だからこそあの娘を?」
こう言ってはなんだが、あのティアナ以上の素質を持った存在ならあの場所にも沢山いた。
確かに意思の強さはありそうだが、それぐらいの意思――いや、それ以上の意思を持った者もいるように見えた。
それに当初は別の人物を『契約者』とする予定だったのだが。
「『高町なのは』。 この娘も『適合者』であった筈ですが」
2人の目の前のモニターに高町なのはの輝かしい経歴と、その人並みはずれた力を振るった戦闘データが表示される。
10年前にテムリオンがこの娘を、『契約者』にすると言っていた筈だが。
「ええ。 だけど、『高町なのは』より『ティアナ・ランスター』のほうが最終的な完成度は高くなりますわ」
「それはどうして?」
「簡単な話。 『高町なのは』は恵まれすぎていた。 それだけですわよ」
呆気ない一言。 だが、その一言にすべてが詰まっているように感じられる。
「確かにあの娘は未完成。 ですがその未完成が神剣の強さに関わってくると考えたのですわ」
かつて『求め』を持った男は意思の強さはあったが、何処か歪で脆いものを感じた。
だが結果を見れば、新入りのエターナルながら相当な強さを持つロウ・エターナルの数人を退けたのだ。
だからこそテムリオンはそこに目をつけた。 もしもロウ側の意思を持ったあの男のような存在を作り出せれば、それは相当な戦力になるのではないかと。
そしてティアナ・ランスターはある意味、あの男と何かが似ていた。 ひたむきに1つの目標を目指せる部分がありながら、何処か歪で闇を抱えている部分が。
「これは1つの実験。 あの坊やの『レプリカ』を作り出す為の小さな実験」
もしあの男のようなエターナルを作り出せればこれから起こるだろうカオス・エターナルとの戦争に役に立つ。
同じように作れなかったとしてもエターナルを1人、こっちの戦力と出来るのだ。 結果として、無駄ではない。
「ふふふ、楽しみだわ」
ティアナの未来がどうなるか楽しそうに考えながら、再びテムリオンは次はどうするかと思考の海に埋没していった。
○―――○
「起きなさい、ティアナ」
「……っ……。 あな……た……は?」
誰かの声に導かれ、『彼女』が暗闇から意識を取り戻していく。
だが『彼女』は自分が『何』なのか分からない。 だが、1つ思い出せる事もある。 『何か』に襲われ、死に掛けていた自分を助けてくれた人がいた事を。
そしてその人が目の前にいる事を。
「あ」
「ふふふ、目覚めましたかしら?」
「はい……。 テムリオン様……」
法皇に認められた少女が今、目覚める。
リリカル×アセリア番外編 SCENE01 『求め』と『誓い』 END
うん、ここまでなんです。
とりあえずティアナがロウ側になった経緯とかを書いてみました。
後、『求め』と『誓い』についてとか。
本編は運がよければ、明日に投下するかもしれません。
それでは。 支援感謝です!
GJです
剣に意思がないのは残念でありますが
統べし聖剣ティアにクラスチェンジする日が非常に楽しみw
gj
またルール違反ですけど続けておkですか?
もう時間ないんで…
302 :
242:2007/12/15(土) 01:19:55 ID:MIRLUH3e
うーん、GJ!
自分も見習わなきゃな。
GJ!!
そして支援
二十話「決戦」Aパート
【上空】
「行け!ドラグランザー!」
「ダークレイダー!」
ドラグランザーとダークレイダーは主の命令を受け、火球と風の刃を発射し、ゆりかごを攻撃する。
だが、強化されたモンスターの攻撃力をもってしても、ゆりかごの装甲を破ることはできず、二体の攻撃は頑強な装甲に弾かれてしまう。
「蓮!駄目だ!」
「見れば分かる!」
二人は拳を握り締め、仮面の下にある眉間に皺を寄せる。
「この足場じゃ、疾風断もドラゴンファイヤーストームも使えない…」
「クソ!」
「「二人ともあきらめんで!!」」
「はやてちゃん!?」
「「今なのはちゃん、フェイトちゃん、ヴィータ、シャッハ、五代さんが内部に突入した!後は皆に任せよう!」」
「それしかないか…ダークレイダー!」
ナイトサバイブはダークレイダーに命令し、上空のガジェット殲滅に向かう。
「皆…頼むよ…ドラグランザー!」
龍騎サバイブもガジェットの殲滅をドラグランザーに命令し、ナイトサバイブの後に続いた。
【第一廃棄都市街】
「(…雅人。)」
翔一と共に第一廃棄都市街で陸士部隊と共に待機していた木野は、自分の右腕を見ながら、心の中で右腕の提供者である弟・雅人の名を呼んだ。
「(俺は、いつまで経ってもあの頃のままだ。管理局に正式な医者として雇われ、医師免許も再び手に入れても、肝心な時に仲間を救えない。
こんなだらしない俺を許してくれ…)」
「木野さん?」
翔一はそんな木野の様子を心配し、呼びかける。
「む?何だ?」
「矢車さんの事ですか?」
「…」
「大丈夫ですって、絶対。」
「何故そう言い切れる?」
「だって俺、矢車さんすぐに目覚める気がします。」
「根拠は?」
「そういう気がするんです。」
「…フン、お前が言うなら、本当にそうかも知れんな。」
「へへへ…あ、来ましたよ。」
「そうだな。」
翔一と木野はこちらに向かって来る大量のガジェットを発見し、変身ポーズを取る。
「「変身!!」」
そして翔一はアギト・バーニングフォーム、木野はアナザーアギトに変身し、アギトはシャイニングカリバーを構え、アナザーアギトはファイティングポーズを取る。
「行くぞ…」
「はい!」
【第二廃棄都市街】
一方、第二廃棄都市街には、三人の鬼が武器の手入れをしながら待機していた。
「…」
「キョウキ君。」
「何ですか、イブキさん?」
「緊張してるの?さっきから落ち着きがないけど。」
「別に…これくらいで緊張してたら、ヒビキさんに笑われます。」
「…そう、余り無理はしないようにね。」
「二人とも、来たっスよ!」
トドロキはこちらに迫ってくるガジェットの大群を指差す。
「来た…」
「トドロキさん、キョウキ君…」
「分かってますっス!」
三人はそれぞれの変身アイテムを鳴らし、鬼戦士に変身、そして、手入れを終えた武器を握る。
「行きますよ!」
「うん!」
「ッシャア!」
【スカリエッティアジト内部】
「「別働隊、通路確認。危険物の順次封印を行います」」
「了解!各突入ルートはアコース査察官の指示通りに」
「「はい!」」
「ありがとうございます、シスターシャッハ。お二人の調査のおかげで迷わず進めます」
「探査はロッサの専門です。この子達が、頑張ってくれました。…このまま奥へ!スカリエッティの居場所まで!」
「はい。」
フェイトは猟犬達に続き、スカリエッティの元に向かう。
「頼みますよ…フェイト隊長…ん!?」
フェイトが去った瞬間、大量のガジェットが現れ、シャッハを取り囲んだ。
「来た…はあぁぁぁぁぁあ!」
だが、シャッハはそんな状況にも怯まずヴィンデルシャフトを構え、ガジェットの大群に立ち向かっていくのだった…
【ヘリコプター内部ハッチ】
アルトが操縦するヘリの内部ハッチ前。
ここではフォワード四人と睦月が、降下後の目的を確認しあっていた。
「確認するわよ。あたしたちはミッド中央、市街地方面。敵戦力の迎撃ラインに参加する。地上部隊と協力して向こうの厄介な戦力、召喚師や戦闘機人たちを最初に叩いて止めるのが、あたしたちの仕事。」
「他の隊の魔道師たちはAMFや戦闘機人戦の経験がほとんどない。だからあたしたちがトップでぶつかって、とにかく向こうの戦力を削る!」
「後は、迎撃ラインが止めてくれる、というわけですね。」
「そう。」
「でも、何だか。何だかちょっとだけ、エースな気分ですね!」
「…そうね」
「ティアナ…」
「ん?」
睦月はティアナの肩を叩きこちらを振り向かせ、真剣な目で話しかける。
「何?睦月兄?」
「…無理すんなよ。助けて欲しかったら、いつでも呼べ。」
「へ…アハハハ!ハハハ!アッハハ!」
ティアナは睦月のそんな台詞を聞き、大笑いを始めた。
「な…なんだよ…」
「だって…フフ…気弱な睦月兄が…そんな台詞…ハハ…似合わなくて…」
「笑うなよ!お前に何かあったら俺だって橘さんだって、それに…望だって悲しむんだから…」
「…分かってるよ、そんな事は。ありがと、睦月兄。」
「分かってるなら…なら良いけど…」
睦月はティアナから目を逸らし、頭を掻く。
「ティアさんと睦月さん、出張任務のとき会ったばかりなのに、兄妹みたいに仲がいいですね。」
「まるで、僕とキャロみたいです。」
「ほんと、そうだよね…(ギン姉、待ってて…すぐ行くから!)」
「「皆!そろそろ降下ポイントだよ!」」
アルトの声がスピーカーから聞こえ、ハッチが開く。
「ガジェットも戦闘機人も、迎撃ラインを突破されたら、市街地や地上本部までは一直線です」
「市民の、安全と財産を守るのがお仕事の管理局員としては、絶対!行かせるわけにはいかないよね」
「後は、ギンガさんが出てきたら」
「優先的に対処」
「安全無事に確保」
「…うん」
「よっし、行くわよ!」
フォワード四人と睦月はハッチから飛び降り、四人はバリアジャケットを纏い、睦月はレンゲルに変身しながら地上に向かって降下して行った。
【第三廃棄都市街】
「ノーヴェ、ウェンディ、例の四人、こっちに向かってる…」
「本当か?オットー。」
「ああ…でもこの前とは違う…最初から戦う気で向かってきてるし、ライダーが一人援軍に来てる。」
「なぁに、望むところっスよ!」
「ゆりかご浮上前に、中央を制圧、地上本部を抑えたい。状況に対する不確定要素は…素早く排除する…」
オットー、ノーヴェ、ウェンディ、そしてギンガの四人は、スバル達の元に向かう。
………
「…!」
エリオと共にフリードに乗っていたキャロは、廃ビルの屋上に立っているルーテシアとガリューを発見する。
「あの娘…」
ルーテシアは感情のない表情で、アルトが操縦しているヘリを指差す。
「!、皆さんすみません…フリード!」
キャロはフリードを操り、エリオと共にルーテシアの居る廃ビルへと向かっていった。
「ちょっと!キャロ!…スバル、睦月兄、プラン変更、まずはあっちから抑える!」
「分かった!」
「了解!ウィング…」
スバルがウイングロードを張ろうとした瞬間、無数の光線が飛来し、ティアナ、スバル、レンゲルを攻撃した。
「「「!?」」」
三人はそれぞれ別の場所に飛び移り、光線を回避する。
【廃ビル1屋上】
「ふう…危なかった…」
ティアナは近くの廃ビルに飛び移り、難を逃れていた。
だがティアナが油断した瞬間、背後にディードが現れ、ティアナに襲い掛かった。
「はあぁぁあ!!」
「!?」
ティアナはディードの斬撃を回避すると、とっさにクロスミラージュのダガーモードを起動し、ディードと接近戦を繰り広げる。
「はっ!」
「!…うわあぁぁぁあ!?」
だが接近戦でディードに敵うはずもなく、叩き伏せられたティアナは屋上の床ごと下の階へと突き落とされてしまう。
【廃棄都市街 鉄橋下】
「ティアナ!」
ガードレールから落ち、鉄橋の下に落とされていたレンゲルはすぐにティアナの援護に向かおうとするが、突如地面から蜘蛛男、サボテグロン、ピラザウルス、ザンジオーの強化体にされた四大怪人が出現する。
(蜘蛛男、サボテグロン、ピラザウルスの強化型はPS版仮面ライダー、ザンジオーの強化型は正義の系譜参照)
「なっ…」
四体の怪人はレンゲルの前に立ちはだかり、道を塞いだ。
「ジャマするなあぁぁぁぁぁぁあ!!ティアナアァァァァァァァァア!!!!」
レンゲルは雄叫びを上げながらレンゲルラウザーを振り上げ、怪人達に立ち向かっていく。
【鉄橋上】
そして鉄橋の上に残されたスバルの前に立ちはだかった敵は…
「ああ…」
「…」
「ギン…姉…」
【廃ビル1内部】
「くっ…この状況で個人戦は不味い…脱出を…」
ディードに廃ビルの内部まで落とされたティアナは、ディードが開けた天井の穴から脱出しようと試みる。
だが脱出しようとした直前、青い光の壁が穴を多い尽くした。
「ああ!?」
「残念…脱出はさせないっスよ!」
「…」
ノーヴェとウェンディが姿を現し、ティアナを挟み撃ちにする。
「あのハチマキとコンビで半人前、四人で一人前のヘッポコガンナーが、仲間と引き離された気分はどうスか?」
「チンク姉の痛さと悔しさ…ハチマキの前にお前に返してやる!」
「(こっちは結界の中。ライトニングもスバルも分断距離と戦力負担はかなり大きい。背中を見せたら、その瞬間で終わる!)
『ライトニング、スバル!作戦、ちょっと変更。目の前の相手、無理して一人で倒す必要はないわ。足止めして削りながら、それぞれに対処。それでも充分、市街地と中央本部は守れる。』」
「ばっかじゃねぇの!そんなに時間かかんねぇよ!」
「あんたは捕獲対象じゃねぇっすから。殺しても怒られねぇっすからね〜」
「(念話が聞かれてる?)『通信は以上!全員、自分の戦いに集中!!』
【地球 渋谷】
東京都渋谷。
十一年前の渋谷隕石の落下で廃墟となり、今も修復はされていない街。
剣崎一真はここで野宿していた。
「兄ちゃん、あんたなにもんだい?この街のもんじゃないね。」
「…」
剣崎の隣に住んでいる汚らしい服装をした中年の男は剣崎に話しかけるが、剣崎は無言のまま、飯を炊き始める。
「シカトかよ…まぁ良い、ここはアンタのようなよそ者が来る場所じゃないんだ、さっさと出てって…」
「…!」
剣崎は、獣のような眼光で男を睨みつける。
「ヒ!」
睨みつけられた男は腰を抜かし、その場に尻餅をつく。
「知らないうちにそんな目ができるようになったんだな。」
「!」
剣崎は聞きなれた声を聞き、隣を振り返る。
そこにはかつての戦友、天道総司の姿があった。
「久しぶりだな、剣崎。」
「天道…」
投下終了です。
まぁ、ムッキーはシスコンってことでお許しを…
次回も頑張りますっス。
>>リリカルアセリア氏
GJ
タキオスは強き者には敬意を払いますしね。
ただ力なきものには残酷ですが・・・ティアナ小鳥ミタクナラナクテヨカタ
テムオリンめ・・・ティアナを使って
ユートのレプリカを目指していたとは!
ユートの登場も待ち遠しいです。
>>リリカルアセリア氏
瞬は死んでる設定なのですか
好きなキャラだけに残念です
ティアナが統べし聖剣化するのか、楽しみに待ってます
>>299 GJ!
neoタティアナサンとなのはの戦いが楽しみです!
ソゥユートのレプリカ……
アレ、でもエターナルとしては大して強くなかったようなw
光陰のが頼りがいあったしかっこよかった気がする
>>313 そうだね〜。力をもっとだせる世界だったのならユート負けてましたね。
ファンタゴリズマで出せる力の限界がテムオリンなどの力も制限してましたし。
でも生まれたばかりの若いエターナルが老獪なエターナルに
勝てるほどの力を出せたのはユートの力だとは思う。
武術の技術 光陰>ユート
冷静さ 光陰>ユート
底力 ユート>光陰
ユートは戦士としてはあまり強くないな。
ただここぞという時は信じられない力を発揮するところをテムオリン
が目をつけた?
ユートレプリカを造りたいならスバルとか浚ってキモウト代わりが必要と思うぜ
もしくは仲間とか、守るべき対象が居る事で強くなれるタイプだし
今のままならシュン化しそうな。いや好きだけどあの壊れっぷりw
やっと期末終わった…。
投下おk?
と行きたいところですが
これから書き始めるところなんでしばしお待ち(俺の作品を待っていてくださる
奇特な方がいるのかどうかという点はひとまずおいといて)を。
ロングアーチの残り三人(アルト、グリフィス、シャーリー)がいずれもなにかしら特殊な存在になるという
展開を思いついたのですが…
ライダーともなのはともおおよそ関係の無い
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1399487 これ↑を聞いていたら思いついたあたり自分はやっぱりどうかしてるに違いない。
支援
どちらかというとネクストよりもスクリームの続きを待ってます
私もスクリーム待ってます良いとこでしたので
ネビュラスクリーム
322 :
なの魂の人:2007/12/15(土) 20:22:10 ID:3q2LPOc5
局長、なの魂十話の投下を開始してもよろしいでしょうか!?
遠慮はいらぬ!どんとこい!
支援する
325 :
なの魂:2007/12/15(土) 20:28:41 ID:AkYconhU
夕日も沈みかけ、蝙蝠が空を飛び始めた頃。
何故か顔を青白くした銀時は、覚束ない足取りで八神家の玄関をくぐった。
扉を開く音と足音に反応し、居間の奥からはやてがひょっこりと顔を出す。
「遅い〜! もう晩御飯できとるよー!」
そう言って頬を膨らませる。
その上から同じように新八が顔を出し、怪訝そうな表情で銀時を見た。
「忘れ物取りに行ってただけにしちゃ、随分時間かかったじゃないですか。
どこまで行ってたんですか?」
「あー……アレだ、臨海公園」
生気の篭らない声で答えながら靴を脱ぎ、廊下に足を踏み出す。
「……あれ? そんなとこ寄りましたっけ?」
首を傾げながら、新八は今日の散歩コースを思い出そうとする。
が、新八の思考は神楽の乱入によって中断させられた。
「銀ちゃん。行っとくけど、別に海に行っても失った青春は戻ってこないヨ」
「人前で平然とリバースする思春期の女に言われたくねーよ」
そう悪態をつきながら居間へ入ってくる銀時。
その顔からはいつぞやのように、まるでダメなオッサン的なオーラ。
略して『マダオーラ』が溢れんばかりに吹き出ていた。
「どっちにしろ時間かかりすぎですよ。あそこ、ここからそんなに遠くないでしょ?」
「……まァ、なんだ。帰りにちょいと、運試しってやつをな…」
そう言って新八の質問に対し、銀時は右手で何かを捻るようなジェスチャーをしながら答えた。
それを見て神楽が、呆れたような顔で言い放つ。
「またパチンコアルか」
「あー、なんであそこで止めなかったかな〜、あそこで止めてりゃお前……。
ア〜、勿体ねーことしちまったよ、あそこで止めてりゃ……」
虚空を眺めながら、なおも右手を捻り続ける銀時。
そんな彼の前に、はやてがいそいそと車椅子を漕ぎながらやってきた。
どうやら、いつものお説教モードのようだ。
銀時の眉間に人差し指を向け、悪戯した子供を咎めるようにはやては言う。
「銀ちゃん。賭け事なんかで、楽してお金儲けしよーとしたらあかんで。
悪銭身に付かずって言うやろ?」
「うっせーな。ギャンブルのねー人生なんざ、サビ抜きの寿司みてーなもんだろーが」
サビ抜きどころか、普通に寿司を食ったことすらない男は言う。
あったとしても、せいぜい回転寿司。
しかも卵、デザート、卵、デザートのエンドレスだ。
分かっている。ネタによって値段が変わるわけじゃないというのは分かっている。
だが、貧乏人の性がそうさせるのだ。
貧乏人、ああ貧乏人貧乏人。
色男、金と力は無かりけりというが、この男には美貌も財力も無く、本当に腕っ節しかないのだ。
326 :
なの魂:2007/12/15(土) 20:30:02 ID:AkYconhU
「……なァ、俺ってホントにジャンプ漫画の主人公なのか?」
突然自己嫌悪に陥り、その場に塞ぎこむ銀時。
見かねたはやてが、銀時の頭をよしよしと撫でた。
「大丈夫や。ジャンプがあかんかったら、マガジンがある」
全然フォローになっていない。
というより、フォローする気が無い。
打ちひしがれる子羊、坂田銀時。
どの辺が子羊かというと、主に髪の毛が。
そんな彼に、神楽が天使の如き囁き声をかける。
「あ、そういえば銀ちゃん。『渡る世間は鬼しかいねェチクショー』録画しといてくれたアルか?」
「ヤベェ、忘れてた。そーいや今日最終回だったな」
急に生気を取り戻し顔を上げる銀時。
神楽は彼の襟首を掴み上げて叫んだ。
「何してるアルかァァァ!!! 早く戻るアル! ピン子が私を呼んでるネ!」
「ピン子ォォォ! 待ってろよピン子ォォォ!!」
騒々しい叫びを上げながら、ドタバタと玄関へ向かう銀時と神楽、そして定春。
「え、ちょ、マジで帰るんですか!?」
新八も慌てて、彼らの後を追う。
その後ろからはやてが「ご、御飯はどうすんの〜!?」とあたふたしながら聞いてきたが、銀時は悪びれる様子も無く
「悪ィな、はやて。明日は朝飯抜いてくるから、今日の分取っといてくれや。
じゃ、そーいうことで」
と言って、大急ぎで玄関から出て行ってしまった。
玄関の扉が閉まる音。
そして少しの間の後聞こえてくる、バイクのエンジン音。
少女一人が住むには大きすぎる家に一人残されたはやては、ポツリと呟いた。
「……録画くらいやったら、うちでも出来てんけどなぁ…」
なの魂 〜第十幕 一を知って十を学べ〜
327 :
なの魂:2007/12/15(土) 20:31:42 ID:AkYconhU
遠見市、とあるマンションの一室。
「ん〜♪ こっちの世界の食事も、まあなかなか悪くないよねぇ」
そう言って、どこぞのチャイナ娘のように晩御飯にがっつくのはアルフ。
至福の笑顔を浮かべる彼女の手にあるのは、缶詰のドッグフードだ。
いくらベースがイヌ科の動物だからといって、それはないだろう。と言いたくなるが、
まあ大概の使い魔はこんなものである。
早くも三つ目の缶詰を平らげたアルフは、まだ食い足りないのか箱入りのドッグフードにも手を出す。
そして封を切ろうとして……手を止めた。
しばし黙考。
なにやら難しい顔をし、う〜んと唸りだす。
一頻り唸った後、一人で納得したようにうんうんと頷き、晩御飯の入った箱を手に立ち上がった。
そして足を忍ばせて隣の部屋へ。
「……」
その部屋は、彼女の主の寝室。
ベッドの上に横たわるフェイトの側の棚には、殆ど手のつけられていない晩御飯が置かれていた。
「あー、また食べてなーい。駄目だよ、食べなきゃ」
ベッドに腰掛け、アルフは言う。
フェイトは眠そうに目を擦りながら、むくりと起き上がった。
「少しだけど食べたよ。大丈夫……」
そう言った彼女の背中には、痛々しい傷跡があった。
刀傷でも、魔法によって受けた傷でもない。
何かで打たれたようなその無数の傷は、重なり合って奇怪な模様を作り上げていた。
それを見て、アルフは思わず顔をしかめる。
「……そろそろ行こうか。次のジュエルシードも、大まかな位置特定は済んでるし。
あんまり、母さんを待たせたくないし……」
健気に、そう言ってみせるフェイト。
しかしアルフはあまり乗り気ではないようで、声を小さくしながら言う。
「……フェイトはアタシのご主人様で、アタシはフェイトの使い魔だから、行こうって言われれば行くけどさぁ……」
「それ、食べ終わってからでいいから」
ベッドの側に置かれた、箱入りのドッグフードを指差す。
アルフはバツが悪そうに、そそくさとそれを隠した。
「そ、そうじゃないよ! アタシはフェイトが心配なの。
広域探査の魔法はかなりの体力使うのに、フェイトってばろくに食べないし休まないし……。
その傷も、まだ治りきってないんだよ!」
「平気だよ……私、強いから」
主の身を案じるあまり、つい語気を強くしてしまうアルフ。
しかしフェイトはそんな彼女を優しく撫で、そっと微笑む。
だがその笑顔は、とても辛そうで、悲しそうで……。
「……フェイト」
「さあ、行こう。母さんが待ってるから……」
328 :
なの魂:2007/12/15(土) 20:34:32 ID:AkYconhU
「……あー、タイムアウトかぁ。そろそろ帰らないと」
流れるカーライトと窓から漏れる光で彩られた夜の町を歩きながら、なのはは腕時計を見る。
夕方、家に帰った後からずっとジュエルシードを探索していたのだが、それらしいものが見つからないまま
門限の時間となってしまった。
肩を落としながらため息をつくなのは。
彼女の肩の動きに合わせて、そこに乗っていたユーノが上下に揺れる。
「大丈夫だよ。僕がもう少し残って探していくから」
なのはの頬にそっと手を触れながら、ユーノは言った。
「うん……ユーノ君一人で平気?」
「平気。だから晩御飯ちゃんと取って置いてね」
「うん」
ぴょんと肩から飛び降り、なのはの方へ向き直って小さな手を振る。
「それじゃ、行ってくるね」
通行人に踏まれないように気をつけながら、ユーノは町の喧騒へと溶け込んでいった。
なのははしばらくの間手を振っていたが、ユーノの姿が見えなくなったのを確認すると、すぐさま踵を返し
自宅への帰路を急いだ。
(アリサちゃんとすずかちゃん、そろそろお稽古が終わって帰る頃かな……)
帰り道でふとそう思い、携帯電話を取り出す。
映し出されたのは、いつも通りの待ち受け画面。
着信履歴も新着メールも、何も来てはいなかった。
「……大体この辺りだと思うんだけど、大まかな位置しかわからないんだ」
「はあ、確かにこれだけゴミゴミしてると探すのにも一苦労だねぇ」
なのは達から少し離れたビルの屋上。
そこへ降り立ったフェイトとアルフは、眼下を見る。
立ち並ぶビルの合間に網目のように張り巡らされた道には、帰宅途中のサラリーマンや学生が敷き詰められていた。
「ちょっと乱暴だけど、周辺に魔力流を撃ち込んで強制発動させるよ……!」
そう言い、フェイトはバルディッシュを構える。
このような場所でジュエルシードを発動させれば、周辺へ被害が出ることは目に見えているのだが……。
自分と同じロストロギアの探索者が現れた以上、そうも言っていられない。
おまけにその取り巻きが、常軌を逸した戦闘力を持っているとなればなおさらだ。
発見される前に、早急にこちらで確保しなければならない。
「あー待った!」
今まさに魔力を撃ち込もうとしたその矢先、アルフがそれを止めにかかった。
「それアタシがやる」
「大丈夫? 結構、疲れるよ」
329 :
なの魂:2007/12/15(土) 20:37:07 ID:AkYconhU
手にした愛機を降ろし、不安そうに尋ねるフェイト。
「ふふん、このアタシを一体誰の使い魔だと?」
しかしアルフは、得意げに笑みを浮かべながら言った。
しばしフェイトは黙考する。
あの少女――確か、なのはって呼ばれてたっけ――に見つかる可能性、真選組に駆けつけられる可能性も考えると、
速攻でケリをつけたい。
だが魔力流を撃ち込んだ直後の疲弊した自分では、恐らく多少なり時間がかかってしまうだろう。
となると、ここはやはりアルフに任せたほうが得策かもしれない。
「……うん、じゃあお願い」
「そんじゃあッ!」
アルフの周りの空気が、渦を巻くように乱れた。
直後、彼女の足元に巨大な魔方陣が展開され、巨大な光の帯が上空へ撃ち出された。
辺りへ降り注がれる、強大な魔力。
それに呼応するかのように、夜空がどす黒い雲に包まれ、雷鳴が響きだした。
突然の悪天候に、人々は空を仰ぎ――極々一部の通行人は、僅かながら魔力を感じ辺りを見回す。
同じようにユーノも異変を感じ、空を見上げた。
遠くにそびえるビルの屋上。
そこから立ち上る光の帯を見、ユーノは顔色を変えた。
「こんな町中で強制発動!?」
何も知らない一般人を巻き込むわけにはいかない。
人目のつかない建物同士の隙間に入り込み、ユーノは急ぎ広域結界を発動させた。
「……なんや急に天気悪ぅなってきたなぁ…」
自室から窓の外を仰ぎ、はやては呟いた。
そういえば洗濯物は……と考えるが、そういえば銀時が帰ってくる直前に、新八達が取り込んでくれていた。
なら取り込んだ洗濯物をたたみに……と思ったが、それも彼らがやってくれていた。
330 :
なの魂:2007/12/15(土) 20:39:35 ID:AkYconhU
「…………」
ふと、後ろを振り返る。
リビングのテーブルの上には、手付かずの晩御飯が置かれていた。
もしかしたら食べに帰ってくるかも……と思っていたが、どうやら当てが外れてしまったらしい。
ポツポツと、雨が降り始めてきた。
屋根に落ちた雨は哀しい音を鳴らし、周囲の音を打ち消す。
まるでこの家だけが辺りから隔離されたかのような、この世界には自分一人しかいないような錯覚を覚える。
自分一人……。
自分の感情がこの上なく沈み込んでいたことに気付き、はやては少し驚く。
ようやく世の中の理を理解し始めた頃、自分の両親はこの世を去った。
それ以来、ずっと自分は一人でこの家に暮らしてきた。
確かに、寂しいと思ったことはあった。
だが、それでも。
ここまで本当に「寂しい」と思ったことは、今まであっただろうか?
もう一度、テーブルの方を見る。
自分の分を平らげ、なお他人のおかずにまで手を出そうとする神楽。
それを必死に食い止める新八。
その隙に新八の皿からおかずを奪い取る銀時。
そんな彼らを見て、笑っている自分。
そんな幻が見えた気がした。
一ヶ月前に降って沸いた非日常。
それはいつの間にか、自分にとってかけがえのない日常に変わっていた。
はやては、ふっと自嘲する。
(……あかんなぁ。寝る時はいっつも一人やのに、一緒に御飯食べられへんかったくらいで落ち込んどったら、
銀ちゃんらがおらんようになってもうたら生きていかれへんな)
いそいそと部屋に戻り、本棚から料理の本を取り出す。
「……うん、そやな。残り物なんかより、ちゃんとしたもん作ってあげた方が銀ちゃんらも喜ぶやろうしな」
笑顔で本を抱えながら、ベッドの上に横たわる。
「よっし! 明日の朝御飯は、ちょっと豪勢にしたろっと」
側の電気スタンドに灯を点し、パラパラとページをめくった。
目ぼしい料理が載ったページの角を折り曲げていく。
その彼女の背後。
一際異彩を放ち、本棚に飾られていた革表紙の本が、小さく音を立てた。
今以上の非日常。
そして、仮初の幸せが生まれようとしていた。
道を行く人々は消え、先程までの喧騒が嘘のように町は静まり返っていた。
ユーノの張った広域結界のおかげで、周辺の空間が外界から隔離されたためだ。
そしてその中心。
立ち上る光の中心になのははいた。
バリアジャケットを装着し、手にはレイジングハート。
フェイトがジュエルシードの封印処置を施そうとしている場へ急行し、
そしてたった今、封印を終えたところだったのだ。
宙に浮かぶジュエルシードの前に立ち、もう一人の探索者がいるであろう方向を、なのはは見据えた。
(アリサちゃんやすずかちゃんとも、初めて会った時は友達じゃなかった。
話を出来なかったから。分かり合えなかったから。
アリサちゃんを怒らせちゃったのも、私が本当の気持ちを……思っていることを言えなかったから)
331 :
なの魂:2007/12/15(土) 20:41:16 ID:AkYconhU
「やった……! なのは、早く確保を!」
だがしかし、なのはが回収を行うその前に、上空から声が聞こえてきた。
「そうはさせるかい!」
驚き、空を見やる。
はるか高空から、大型の狼がこちらへと襲い掛かってきていた。
ユーノがすぐさま、なのはの周囲に防御魔法を展開させる。
狼……いや、アルフの一撃はその障壁によって阻まれ、彼女はその反動で弾き飛ばされる。
しかし防御に定評のあるユーノの障壁も、今の一撃には耐え切れなかったようだ。
半球状の防御魔法に亀裂が入り、そして音を立てて崩れた。
降り注ぐ雨粒と砕け散る障壁の破片に、街灯の光が乱反射する。
その光に包まれるかのように、彼女――フェイト・テスタロッサは存在した。
街灯の上に立ち、真っ直ぐになのはを見据える彼女。
なのはも同じように、真っ直ぐにフェイトを見上げる。
目の前に立つ、黒衣の魔導師。
彼女の目は、やはりあの時と同じ……哀しい目をしていた。
(目的がある同士だから、ぶつかり合うのは仕方ないのかもしれない)
なのはは一歩、前へ踏み出す。
「こないだは、自己紹介できなかったけど……私、なのは! 高町なのは……!」
だが、フェイトは応える代わりにバルディッシュをこちらへ向けた。
話す舌など持たない、ということだろうか。
しかしなのはは、レイジングハートを構えようともせず、じっとフェイトの目を見続けた。
(だけど、知りたいんだ。どうして、そんなに哀しい目をしてるのか……)
天使のダンス。とでも形容するべきだろうか。
江戸の中央に建つ次元間転送施設"ターミナル"を背景に空中戦を繰り広げる二人の魔導師の姿は、まさしく幻想的だった。
ほとばしる黄色の魔力光。
乱れ飛ぶ魔力の羽。
……いつまで経っても、桃色の魔力光が灯ることはなかった。
相手が一切攻撃を行ってこないことに疑問を感じるフェイト。
何かの罠か?
いや、それすらも行う素振りは見せなかった。
不審に思い、一旦相手との距離を取る。
白い魔導師が、ビルの屋上へと降り立った。
バルディッシュを向け、射撃体勢を取る。
相手は動こうとしなかった。
「……話し合うだけじゃ、言葉だけじゃ何も変わらないって言ってたけど……。
だけど、話さないと……言葉にしないと伝わらないこともきっとあるよ!」
声が聞こえた。
眼下の白い魔導師が、そう叫んだのだ。
時間稼ぎのつもりだろうか。
バルディッシュの先端に、魔力を収束させる。
今射撃を行い、相手を打ちのめすのは簡単だ。
だがしかし……。
332 :
なの魂:2007/12/15(土) 20:43:05 ID:AkYconhU
「ぶつかり合ったり……競い合う事になるのは、それは仕方ないのかもしれないけど!
だけど、何も分からないままぶつかり合うのは……私、嫌だ!
私がジュエルシードを集めるのは、それがユーノ君の探し物だから。
ジュエルシードを見つけたのはユーノ君で、ユーノ君はそれを元通りに集めなおさないといけないから、私はそのお手伝いで……」
その少女の声と表情は、あまりにも真剣で、力強くて。
その言葉には、自分の心に訴えかけてくる、強い意志があって。
だからフェイトは、射撃を行うのを思わず躊躇った。
「だけど、お手伝いをするようになったのは偶然だったけど、今は自分の意思でジュエルシードを集めてる!
私の大好きなこの町に、危険が降りかかったら嫌だから……」
少女は一旦言葉を区切り、そして力一杯叫んだ。
「私の、大事な人達に……危険が降りかかったら嫌だからっ!
これが、私の理由!!」
大事な人のために。
フェイトは、はっとする。
この子も、自分と同じだ。
自分と同じように、自分の大事な人のために戦っている。
そのことに気付き、構えていたバルディッシュを降ろす。
……もしかしたら、この子なら……。
「私は……」
「フェイト! 答えなくていいッ!!」
地上でユーノと戦闘を行っていたアルフが叫んだ。
突然の介入に驚き、なのはは声のしたほうを見る。
――フェイト……それが、この子の名前……。
「優しくしてくれる人達の所で……護ってくれる人達の所で、
ぬくぬく甘ったれて暮らしてるようなガキンチョになんか何も教えてなくて……!!」
「……そうだよ!」
なのはが叫び返した。
そのあまりの気迫に、アルフは思わず口をつぐむ。
「私、ずっと護られてた! いつも優しいお父さん、意地っ張りだけど私のことを一番想ってくれてる親友、
普段は何考えてるか分かんないけど、いざという時には誰よりも頼りになるお侍さん!
みんな、私のことを護ってくれてた。……でも、気付けなかった!
私が、弱かったから。私が、本当の気持ちを伝えることが出来なかったから!」
俯きながら、そう叫ぶ。
本当の、自分の気持ち。
フェイトは考える。
……自分は本当に、心から母のためを想ってジュエルシードの探索を続けている。
だが何故だろうか。
この少女と対峙するたびに、自分の心の中に黒い靄がかかっていくのが分かる。
……いや、かかっているわけではない。
元から抱えていた靄が、少しずつ、溢れ出して来ているのだ。
「…………」
フェイトは黙り、じっとなのはの話を聞く。
支援
支援
335 :
なの魂:2007/12/15(土) 20:45:16 ID:AkYconhU
「フェイトちゃん!」
なのはは叫んだ。
目の前の少女の名を、力一杯に。
「私、あなたのことを放っておけない!
あの頃の私と……自分が、誰にも見てもらえてないと思ってた頃の私と、同じ目をしているあなたを……放っておけない!」
「戯言をぬかしてんじゃないよ! アンタに、フェイトの何が分かるっていうんだい!」
アルフが叫ぶ。
どこの馬の骨とも知れない奴に、自分の主の事が分かるはずがない。
分かっているかのような口を利かれるのは、気分がいいものではない。
だがなのはは、アルフが予想していたのとは全く真逆の答えを口にした。
「……分からないよ。だから、知りたいんだ!」
強い意志の宿った目で、フェイトの目をじっと見つめるなのは。
――お前は、お前のやりたいようにやればいい。
あの時の彼の言葉が、胸に響く。
私のやりたいことは……。
「あなたのこと、もっと知りたい! それが……私が今、一番やりたいこと!」
丁度その頃。
「はァ〜、まいったねどーも。まさか木刀忘れてきちまうとはなァ」
両隣に新八と神楽を従え、銀時ははやての家の玄関先に立っていた。
そんな彼を、新八は白い目で見る。
「主人公がトレードマーク忘れちゃ洒落にならないですよ。
つーか、なんで僕らまで駆り出されてるんですか?」
「察してやるネ、新八。銀ちゃんこう見えても怖がりアルよ。
夜中に一人でトイレにも行けないアル」
口元を押さえ、プフッと吹き出す神楽。
今日放送された『渡る世間は鬼しかいねぇチクショー』の最終回。
その内容が「登場人物全員が車椅子の少女の霊に祟り殺される」という、なんともピンポイントな内容だったのだ。
おまけにその容姿が、目の前の家の主そっくりだったというのだから、たまったものではない。
銀時は冷や汗を浮かべながら声を震わせる。
「バカッ、おめ、怖いとかそういうんじゃないよ、言っとくけど。
むしろお前らが怖いんじゃないかと思ってついてきてやってんだよ。ありがたく思え」
「僕別に怖くないんで、いいっすわ」
「早く帰って定春の御飯作ってあげないといけないアル」
回れ右をしてその場を立ち去ろうとする二人。
二人の無情な後姿を見て、銀時は泣きそうな声を上げる。
いい大人なのに。
「待ってェェェ! 神楽ちゃぁぁぁん! 新八くぅぅぅん! ご免なさァァァい!
もうそこでドラえもんの歌、歌ってくれてるだけでいいから!」
336 :
なの魂:2007/12/15(土) 20:47:22 ID:AkYconhU
叫びながら二人の後を追う銀時。
その時だ。
「……え?」
突然、彼らの周りが明るくなった。
ほんの僅かな時間だったが、紫がかった光が彼らを包み込み、目の前に大きな人型の影を映し出した。
銀時達は後ろを振り向く。
それとほぼ同時にその光は鳴りを潜め、辺りには暗闇が戻ってくる。
後に残ったのは、降り注ぐ雨の音。
だが、辺りが完全に闇に包まれる直前。
紫の光が、はやての部屋の窓に吸い込まれるようにして消えていったのを、確かに銀時達は見た。
「中で花火大会でもしてるアルか?」
首を傾げる神楽。
いや、それはないでしょ。とツッコむ新八の隣で、銀時は険しい表情をした。
花火ではない。電灯でもない。
銀時はそう確信していた。
何故なら、あの光には……明らかに不自然な"紋様"のようなものが浮かび上がっていたからだ。
「……新八、少し借りるぞ!」
「あ、ちょっと銀さん!?」
新八から木刀を引っ手繰った銀時は、手にした傘を放り投げて玄関を蹴破った。
「……起動したか」
はやての家から程なく離れた民家の屋根。
そこで双眼鏡を覗きながら、桂は呟いた。
……結局、銀時達に事態を伝える前にこの時を迎えてしまったか。
双眼鏡を懐へしまい、屋根から飛び降りる。
「奴らが素直に耳を傾けてくれるかどうかは分からんが……行くしかないな」
"騎士"達が起動したとなれば、多少は事態も好転するだろうが……それも、その場凌ぎに過ぎない。
根本的な脅威を取り除かない限り、あの少女には安息は訪れないのだ。
恩人の顔、そしてかつての仲間の顔が脳裏を過ぎる。
(高杉……お前は何を望む。力の果てに、一体何を求める?)
海鳴市郊外の埠頭。
そこに停泊している一隻の大型船に彼らはいた。
「……思っていたよりも早かったじゃねーか」
ほんの僅かな、蝋燭程度の明かりに灯された船内の一室。
額に巻かれた包帯で左目を隠し、女物を思わせる派手な着物を身に纏った男が、キセルを咥えながら呟いた。
その隣では、白衣を着た男が不気味な薄笑いを浮かべている。
「恐らく、この娘の存在が影響しているのだろう」
白衣の男がそう言うと、目の前の虚空に映像が映し出された。
そこに映るのは、小柄なチャイナドレスの少女。
337 :
なの魂:2007/12/15(土) 20:48:56 ID:Qf9/CFxO
「彼女から無意識のうちに発せられる大量の魔力によって、リンカーコアの成長が促され……結果、闇の書の覚醒を早めた。
そんなところだろう」
映像が切り替わり、一軒の民家が映し出される。
それに重なって、薄い紫色の画像が映し出された。
サーモグラフィに似たそれは、民家の周辺だけを濃い紫色に染め上げる。
観測地点の魔力濃度が表示されているのだ。
「しかしこれだけの魔力を完全に隠匿するたァ……大層な能力じゃねーか、"4番目"とやらも」
「稼動して間もないので、少々問題もあるがね」
包帯の男が漏らした感嘆の声を聞き、白衣の男は苦笑する。
「問題といやァ……"5番目"は、まだ塞ぎこんでるのか」
5番目――銀髪の、小柄な少女を思い出し包帯の男は言った。
「もう一人の父親とも呼べる存在が、"不幸な事故"で死んだのだ。落ち込みもするさ」
底冷えするような含み笑いを見せる白衣の男。
包帯の男はキセルをくゆらせ、彼に疑念の目を向ける。
「エラくナイーブな兵器じゃねぇか。使い物になるのか」
「フン……僕の作品を、あまり甘く見ないで貰いたいね」
白衣を翻し、男は背を向ける。
「……どこへ行く」
「"拾い物"の様子を見に行くだけさ」
そうとだけ言い残し、白衣の男は闇の中へ消えていった。
その後姿を見送る包帯の男。
白衣が完全に見えなくなったのを確認し、男は呟く。
「……"僕の作品"ねぇ」
キセルに残った灰を落としながら、男はくぐもった笑いをあげた。
(人の褌借りて作ったクセに、よく言いやがる)
338 :
なの魂の人:2007/12/15(土) 20:51:15 ID:Qf9/CFxO
以上で第十話投下終了です。
うん、自分でも無茶したと思ってる。
風呂敷広げすぎたと思ってる。でも反省はしていない。
つーか、今月のアニメ銀魂が神ラッシュで困る。
よりにもよって年末にミツバ編は反則。
…ふと思ったけど、ミツバ編後のトシと総悟がグレアム提督と会ったら
大惨事になりそうな気が…
更新乙カレーです
初めてリアルタイムで読めてラッキーでした
無印とA’Sのクロスオーバーにもなるんですね。こいつは支援もんだ。
ところで9時15分ごろに投下をしたいのですがよろしいでしょうか?
アレ、時間軸ズレてる?闇の書が起動したのはこの位の時だったっけ?
高杉と一緒にいるのは、若き日のスカ?それとも?
とにかく作者様GJ!
GJ!!なにやら壮大な物語の予感。本当に続きが楽しみです。
>>340 come on!
>>338 無印とA’sとSts(プロローグ的な部分だけど)が平行で進んでる!?w
これは冒険的ですな。いろいろと期待しつつ、続き待ってますノシw
なの魂氏GJです、しかし無印とA’sとSTSの話を混ぜるって事になるんでしょうか? この先は想像もできねえっす。
そういえばなの魂作中のニュースで研究所爆発ってのがあったけどまさか…
では送ります。今回はすごい長文です。
第14話 約束の空へ
玉座の間に続く通路ではデスサイズヘルが突然やってきた多数のガジェット達と戦っていた。
「な、何で!? 私がここにいるのに・・・」
「こりゃ、もう敵さんはお前さんの事は用なしだから俺ごと始末しようて腹だぜ」
デュオはガジェット達が自分を襲って来たので返り討ちにしていたがそのガジェットはディエチにも襲い掛かってきたのだ。
デュオはバインドで動けないディエチを守るためにデスサイズヘルのコックピットに入れていた。
「まさか、クアットロがそんなことを・・・」
「クアットロ? お前の他にまだここに戦闘機人がいるのかよ?」
デュオはディエチに他の仲間の事を聞きだそうとしたがディエチは驚きのあまりその答えには答えられなかった。
「ま、そのクアットロって奴はお前らには隠していた部分を出してんだろうぜ」
「そんなあのクアットロが・・・」
ディエチは誰よりもクアットロと組んでいたのでスカリエッティ以外ではクアットロの事は誰よりも知っているはずだった。
まさかここまで冷酷で妹まで殺そうとするなんてとは思いもよらなかったのだ。
「デュオ、私のイノーメスカノンを取ってくれ。あれでどうにかする」
「どうにかってお前、体は動かねえだろ。それにその頼みはお断りだぜ」
「何故だ?」
「ここに置いてくのは武器と戦争だけにしたいからよ!」
その時デスサイズヘルの後ろから叫び声が聞こえた。
「クラッシュイン、トュルネーーーード!」
その叫び声と同時にデスサイズヘルの目の前に光が走り、ガジェット達は撃墜されていった。
そして光が消えるとそこにいたのはテッカマンブレードであった。
「Dボゥイ!」
「デュオ、お前がここにいるという事はなのはやヒイロはこの先にいるんだな!?」
「ああ、さっきドモンの奴も行っちまったが、三人が帰ってこないところを見るとよほどの相手がいるようだ。
Dボゥイは先に行ってくれ」
「わかった。お前も気をつけろよ」
「ああ」
そしてブレードは玉座の間へと進んだ。
「お前、さっきまで自分も行こうとしてなかったか?」
「あの三人がここまで時間がかかるって事は俺じゃあ役にたたねえからよ」
「自分のことわかってるんだな」
「だからそういう事をいちいち言うなってのっておっとと・・・」
デュオがよそ見していたためデスサイズヘルは敵の攻撃が当たり後ろに倒れてしまったがデスサイズヘルに目立った損傷は無い。
しかし、その揺らぎでコックピットの中ではデュオの顔面にディエチの胸が当たってしまっていた。
「きゃあああああああ!」
いつもは無表情なディエチが女の子らしく叫んだ。
「顔の近くで叫ぶな! それより早くどけ!」
デュオとディエチはコックピット内で色々揉めていた。
ゆりかご外でははやて達が奮戦し、何とか敵の数は減らしていたが転送魔法などでまた増えてきていた。
「こうなったら埒があかん。私も突入する。ガロードも手伝ってえな!」
「お、俺もかよ!?」
いきなりはやてに指名されたことに驚くガロード。
「ゼクスさんからの情報では中の状態を聞くとダブルエックスのサテライトキャノンを中で撃っても壊れへんそうや。だからガロードも突入や」
「わ、わかったよ」
「八神部隊長、突入はもう少し待って下さい」
はやてがガロードと共に突入しようとしたらアルトがそれを止める。
「もう少しだけでいいんです。今八神部隊長に大切なものを届けますから」
アルトの乗るヘリにはリインフォースUも乗っており、アルトははやてにリインフォースUが来るまで待って欲しいと言ってきたのだ。
「わかったでアルト。私は突入はもう少し後にするけど、ガロードは先に突入して玉座の間の方に行ってくれへんか」
「わかったぜ!」
そしてガロードはウイングゼロ達が入っていった穴からガンダムダブルエックスと共に入っていった。
ゆりかごの玉座の間ではヴィヴィオのパワーによりなのは、ウイングゼロ、ゴッドガンダムが苦戦を強いられていた。
正直な話、ゴッドガンダムがいなかったらさらに苦戦をしていただろう。
「ゼロ、いけるな」
「まだだ、まだ俺の闘志は折れていない!」
「ヴィヴィオ・・・」
「きやすく呼ばないで!」
なのはが何とかヴィヴィオを説得しようとするもヴィヴィオは聞く耳持たずの状態であった。
ヴィヴィオがなのはに向かって魔力弾を打ち込み、なのはは避ける。
ゴッドガンダムがヴィヴィオに向かって連続でパンチを繰り出すがヴィヴィオはすべて受け止め、ゴッドガンダムを蹴り飛ばしゴッドガンダムは吹き飛ばされる。
ウイングゼロもビームサーベルを持ちヴィヴィオに向かって振るがヴィヴィオはそのビームサーベルも受け止め、ウイングゼロを後ろに押し出し、
ウイングゼロに魔力弾を撃ちウイングゼロも吹き飛ばされた。
その時ようやくブレードが玉座の間に着いた。
「なのは! ヒイロ! ドモン! 無事か!?」
「Dボゥイさん、危ない!」
ヴィヴィオはブレードに拳を向けブレードはテックランサーを出し、防いだ。
「こいつは一体!?」
「その子はヴィヴィオです」
「何!?」
なのはが言った事にブレードは驚きを隠せなかった。
「どういうことだ!?」
「簡単に言おう。今のヴィヴィオは操られている」
ヒイロが簡単に説明した。
「しかし、何てパワーだ・・・」
「はあ!」
「うわあ!」
ヴィヴィオのパワーにブレードは押し負けた。
「Dボゥイさん! こうなったらブラスター2!」
(ブラスター2だと!?)
ブレードはなのはが言った「ブラスター2」と言う言葉が気にかかった。
ブレードはブラスター化の事をフェイトに言った後、フェイトからなのはのブラスターモードの事を聞いていたのだ。
「ブラスタービット!」
gj
なのはの回りからは3機ものブラスタービットが現れた。そのビットはνガンダムやサザビーなどが使うファンネルと非常に似たものであった。
ブラスタービットはヴィヴィオにバインドをかけ、ブラスタービットはνガンダムのフィンファンネルが使うIフィールドバリアに似たクリスタルケージを作り出し、ヴィヴィオをそのバリア内に閉じ込めた。
なのははファンネルの事は以前からアムロに聞いていたためブラスタービットをアムロが使うフィンファンネルのように扱えるのだ。
なのはのブラスターモードの秘密を知ったクアットロはヴィヴィオやヒイロ、ドモン、ブレードに向けてある事実を言った。
「わかりましたわ、陛下。その強化魔法の正体は術者とデバイスの限界を遥かに超えての自己ブーストによるもの。どちらの命も削るものですわ。
ですから時間をかけてどんどん消費させてください」
「何だと!?」
クアットロが告げた事実にブレードは驚いた。なのはは自分の命を賭けてでもヴィヴィオを救いたいと思っているのがよくわかったからだ。
ブレードもブラスター化があるがそれは命ではなく記憶を削るものである。しかし、ブレードはなのはの覚悟を知って自分も覚悟を決めた。
「なのは、俺もお前に付き合おう!」
「え?」
「うぉおおおおおおおおお!!」
ブレードが叫ぶとブレードの外装は見る見るうちに変わり、先ほどよりも何倍も外装が強化されているのがわかる。
そう、テッカマンブレードはブラスター化し、ブラスターテッカマンブレードとなったのだ。
「いくぞ! ヴィヴィオ! 俺もお前を助けるために俺の命も賭けよう!」
ブレードは先ほどまでとは比べようもないスピードでバインドとバリアを破ったヴィヴィオに向かって突進し、テックランサーを出した。
ブレードはテックランサーでヴィヴィオを攻撃するが、ヴィヴィオは拳でそれを防ぎ、ブレードを後ろへと押す。
後ろに押されたブレードはテックランサーの先からフェルミン砲を出しヴィヴィオを攻撃するが、
聖王の鎧と虹色の魔力光「カイゼル・ファルベ」によりフェルミン砲が防がれてしまった。
「何!?」
「この程度、何て事は無い!」
今度は逆にヴィヴィオがブレードに向かって突進するが、ヴィヴィオの横から、バスターライフルのバスターが飛んできた。
ヴィヴィオはそれを何とか後ろに下がる事で避けた。
「お前の相手はブレードやなのはだけではない」
「まだ俺達がいる事を忘れるな!」
ヒイロとドモンがヴィヴィオに向かって言う。しかし、ウイングゼロは接近戦型ではないので接近戦が得意なゴッドガンダムの方がまだ分はある。
それでもヒイロは戦う事を諦めていない。そしてヴィヴィオはなのは、ブラスターブレード、ウイングゼロ、ゴッドガンダムとの死闘を繰り広げた。
一方、動力炉ではヴィータとグラーフアイゼンがボロボロになりながらも動力炉の破壊をしていたが、なかなか破壊できずにいた。
「こいつをぶち抜けなきゃ、意味ねーんだ! 皆が危ないんだ。だから皆を守るにはこいつを止めねえと・・・。
ぶち抜けーーーーー!!」
渾身の力を込めて、グラーフアイゼンを動力炉にぶつけたが動力炉はビクともせず遂にグラーフアイゼンは大破し、
ヴィータは下に落ちて行こうとしていた。
「駄目、だったよ。はやて、皆、ごめんな・・・」
その時ヴィータの前に黒い羽が見え、そして自分を抱えるリインフォースUと融合したはやてとリインフォースUがいた。
「はやて・・・。リイン・・・」
「はいです」
はやて到着と同時にアルトロンガンダムも到着した。
「これが動力炉か・・・」
「五飛さん、もう動力炉に攻撃せえへんといてな」
「何故だ?」
五飛ははやてが動力炉攻撃をやめるよう言う理由を聞く。
「ヴィータ、謝る事なんて、何もあらへん。鉄槌の騎士ヴィータとグラーフアイゼンがここまで頑張ったんや。壊れんはずは無い。
それにこの世で砕けないものなど何もあらへん」
はやてがそう言うのと同時に動力炉は粉々に砕けていった。
「ヴィータ、貴様の正義、見せてもらった」
「五飛さんはヴィータを頼みますわ。私とリインは玉座の間へ・・・」
「わかった。この女の正義を俺が守ってやろう」
ヴィータを五飛に任せ、はやては玉座の間へと向かった。
クアットロは動力炉が破壊されたのを知り、すぐに自動修復をさせていた。
「自動修復開始、はは、まだまだ・・・。は!?」
クアットロは後ろから近づくものを感じた。それはなのはが放っておいたエリアサーチであった。
なのはやヒイロの所にはクアットロの位置が確認された。
「Wide Area Search successful.(WAS 成功)
Coordinates are specific. Distance calculated.(座標特定、距離算出)」
「見つけた・・・」
「はああ!」
「は!? ドモンさん! Dボゥイさん!」
「「任せろ!!」」
なのはは自分に向かってくるヴィヴィオに向かってバインドをかけバインドが解けてもすぐに攻撃できないようにドモンとブレードにヴィヴィオの事を頼んだ。
クアットロは自分を探していた事気づいた。
「エリアサーチ!? ずっと私を探してた? だ、だけどここは最深部ここまで来られる人間なんて・・・」
このゆりかごは特殊フィールドを持ち、ボソンジャンプが不可能であり、ブラックサレナでも入れないのである。
その言葉とは裏腹になのはと後ろにいるウイングゼロは砲撃体勢を取った。
「ターゲット、ロックオン」
「壁抜き!? まさかそんな馬鹿げた事が・・・」
しかし、クアットロは思い出した。4年前に起こったミッドチルダでの空港火災の際になのはは砲撃で天井を突き破った事を・・・。
そして2年前の戦争のデータでウイングガンダムゼロがシェルターシールドが張られていた大統領府のシェルターを破壊した事を・・・。
「確認する。最深部にシールドは張っているな!?」
「あ、ああ」
「お前の防御は完璧なんだな!?」
「ああああああ」
もはやクアットロには恐怖しかなく、ヒイロの警告が全然聞こえていなかった。
「Clearance confirmation. Firing lock is cancelled.(通路の安全確認、ファイアリングロック解除します)」
「ブラスターーーーー3!」
なのははブラスターモードを第3段階まで上げ、ブラスタービットが4つに増えた。
「ディバイイイイイン」
なのはのレイジングハートとウイングゼロのツインバスターライフルにはターゲットのクアットロが完全に映し出され、ロックされていた。
「バスターーーーーーー!!」
なのはの叫びと同時にディバインバスターとツインバスターライフルが発射された。
その中でディバインバスターとツインバスターライフルは混ざり合い、次々に壁を破壊し、最深部まで到達した。
「いやああああああああ!!」
クアットロは叫びながら必死に逃げようとするが、レイジングハートとブラスタービットから放たれたディバインバスター、
二つのバスターライフルから放たれたツインバスターライフルの広範囲の前にはもはや逃げようが無く、
混ざり合った一つの光はクアットロを飲み込んだ。
「ドクターの夢が・・・。こんな・・・」
クアットロはかろうじて生きていた。手加減していたとは言え、ツインバスターライフルがディバインバスターと混ざらなかったらクアットロは死んでいた。
クアットロが倒れたのと同時にガロードが玉座の間へとたどり着いた。
「何だよ、今のものすごい音は?」
ガロードがその音の正体をなのは達に聞こうとしたら突然ヴィヴィオが苦しみだした。
「うう、うぁあああ」
「ヴィヴィオ」
「・・・。なのはママ?」
「え? じゃああれがヴィヴィオかよ?」
ガロードはヴィヴィオの変わった姿に驚いた。ヴィヴィオはクアットロの精神操作から開放されたがそれと同時にゆりかご全体に警報がなった。
「今度は何だよ!?」
「Wir werden beschädigt. Niemand hat die Kontrollposition. Heiliger Kaiser verliert Kampfwille.(駆動炉破損 管制者不在 聖王陛下、戦意喪失)
Ab jetzt gehen wir in die Automatikverteidigungssituation ein.(これより、自動防衛モードに入ります)
Jagdflieger, aufbieten!(艦載機、全機出動)
Alle Fremdkörper wegbekommen!(艦内の異物を、すべて排除してください)」
ゆりかごの廊下では中ゆりかごに搭載されていたガジェット達が全機稼動し、中に入っていたメンバーを襲っていた。
「ゼクス、これは・・・」
「おそらくさっきの警報は侵入者を排除するものだと言っていたのだろう」
「つまり・・・」
「我々を殺す気だと言う事だ」
玉座の間に続く廊下ではデスサイズヘルが懸命に戦って全滅させ一息ついていたらまた敵が現れたのにデュオは飽き飽きしていた。
(ガロードが通った時はデスサイズヘルの回りに敵はもういなかった)
「くそ、まだ来るってのかよ?」
「デュオ、後ろから誰か来る」
「誰かって熱源がねえから人って事だよな・・・」
「ああ、魔導師だ」
デスサイズヘルの後ろから来たのははやてであった。
「はやてか!」
「デュオさん、無事でしたか」
「ああ、だがヒイロ達がどうかわからねえ」
「ここから先は私とリインに任せてデュオさんは下がってください」
「お言葉に甘えてそうさせてもらうぜ。じゃあしっかりどこかに捕まってろよ!」
デスサイズヘルははやてにその場を任せて撤退して行った。
「デュオさん、コックピットに誰か乗せてたんでしょうか?」
「そうかもな。それよりいくよ、リイン!」
「はいです!」
玉座の間では精神操作から開放されていたヴィヴィオがまだなのは達を攻撃していた。
「ヴィヴィオ、何でだよ!? 何で俺達を攻撃するんだよ!?」
「ヴィヴィオ!」
「来ないで!」
ヴィヴィオは拳でなのはやダブルエックスを殴り飛ばし、なのはは地面に倒れた。
「「「「なのは!」」」」
「大丈夫、それよりヴィヴィオ・・・」
なのははヴィヴィオに殴られてもヴィヴィオに近づこうとする。
ヴィヴィオは泣きながらあることを言う。それは自分が聖王となって知ってしまった事実である。
「駄目なの・・・、ヴィヴィオ、もう帰れないの」
「!? どういうことだ!?」
ドモンがヴィヴィオに聞く。
「わかったの私、もうずっと昔の人のコピーで、なのはマ・・・なのはさんもフェイトさんも本当のママじゃないんだよね・・・。この船を飛ばすための唯の鍵で、玉座を護る生きてる兵器・・・」
「違うよ・・・」
「本当のママなんてもとからいないの! 護ってくれて、魔法のデータ収集をさせてくれる人を探してただけ・・・」
「違うよ!」
「違わないよ! 悲しいのも、痛いのも、全部偽者の作り物! 私はこの世界にいちゃいけない子なんだよ!!」
なのはがヴィヴィオの言ってる事を否定しようとするが、ヴィヴィオは自分の存在意義を決め付けていた。
「そんな理屈、わかってたまるかーーーーーー!!」
ガロードが怒鳴りながらヴィヴィオの存在意義を否定する。ヒイロ、ブレード、ドモン、そしてなのはが否定していく。
「お前自身の事はお前が決める事だが、俺はお前のその考えを否定する」
「お前は必ず誰かに必要とされる存在だ。それはこの船を飛ばすためのじゃない。誰かを助けたりするためのだ!」
「お前が造られた人間だろうが、お前も人間。人間は自然の一部だ。だからお前もその自然の一部として生きねばならん!」
「生まれ方は違っても今のヴィヴィオは、そうやって泣いているヴィヴィオは偽者でも作り物でもない!
甘えんぼですぐ泣くのも、転んでも一人じゃ起きられないのも、ピーマン嫌いなのも、私がさびしいときに『いい子』ってしてくれるのも私の大事なヴィヴィオだよ!!」
ヴィヴィオはここまで本来の自分の生きる意味を否定してくれた皆に向かってまた泣いた。
「私はヴィヴィオの本当のママじゃないけど、これから本当のママになっていけるように努力する!
だから『いちゃいけない子』だなんて言わないで!! 本当の気持ち、ママに教えて」
「私は・・・私はなのはママのことは大好き! ママとずっと一緒にいたい!! ・・・ママ・・・助けて!」
「助けるよ、これからも」
「俺達も助けてやるぜ!」
なのはは皆にヴィヴィオを助けるには魔力ダメージでKOさせるしかない事を告げるが、
ヴィヴィオには聖王の鎧と虹色の魔力光「カイゼル・ファルベ」が邪魔をしているのだ。
「くそ! どうすればいいんだ!?」
ガロードが悩むがブレードがある賭けを言い出した。
「俺のボルテッカならその虹色の魔力を消せるかもしれない」
「でもDボゥイさん、ボルテッカは反物質砲。失敗したらヴィヴィオも死んじゃう」
ブレードに言い分になのはは反対するが、ヒイロがさっき見ていた事を言う。
「それは大丈夫だ」
「え?」
「さっきDボゥイがテックランサーからフェルミン砲を出したが、ヴィヴィオは虹色の魔力でそれを防いだ。ならばボルテッカも防げる事になる」
「で、でも・・・」
「これは分の悪い賭けだがどうする?」
ブレードは皆にボルテッカを使うべきかを聞く。
「俺はDボゥイを信じるぜ」
「俺もだ」
「ならば俺もだな。だがDボゥイ。お前はどうなんだ?」
「分の悪い賭けは嫌いじゃない」
「・・・。わかりました。Dボゥイさん、お願いします」
「わかった。絶対ヴィヴィオを死なせない! ヴィヴィオ!」
「え!?」
ブレードはヴィヴィオに危険な賭けをする事を告げる。
「お前は今からあの虹色の魔力で俺の攻撃を全力で防げ! 全力でだ! じゃないと死ぬぞ!」
「わかったけど、体が・・・」
ヴィヴィオはブレードに襲いかかろうとしていたがゴッドガンダムがその拳を止め、なのはがヴィヴィオにバインドをかけた。
ブレードはヴィヴィオからある程度距離をとり、両肩と両手首のスラスターをスライドさせた。
「うおおおおおおおお! ボルテッカアアアアアアアアアアアアアア!!!」
ブラスターブレードから放たれたブラスターボルテッカはヴィヴィオを飲み込んだ。
ヴィヴィオは全力で「カイゼル・ファルベ」を出し、何とか防ぎきった。
そして計算どおりヴィヴィオの回りからは虹色の魔力光が一切無くなり魔力供給が追いつかない状態になった。
しかし、聖王の鎧があるのでスターライトブレイカーだけでは出力が足りない。
打ち破るにはツインサテライトキャノンの威力が必要だが物理ダメージのみなのでそのまま撃ったらヴィヴィオは確実に死んでしまう。
そこでブラスタービットをダブルエックスのツインサテライトキャノンの砲身に入れ、物理ダメージを魔力ダメージに変換する事にした。
再び、ヴィヴィオにバインドをかけ、なのはとダブルエックスはチャージ体勢に入った。
本来サテライトキャノンは月が出てる時でないと撃てないのだが、この地球ではどこにいようがマイクロウェーブが届き、
サテライトキャノンが日中だろうが屋内でも密室でなければ撃てるのだ。
「ヴィヴィオ、少しだけ痛い我慢できる?」
「うん」
「ガロード、いくよ!」
「ああ、こっちもOKだぜ!」
「全力、全開! スターーーライト、ブレイカーーーーーーー!!」「いっけーーーーーー!!」
レイジングハートと2機のブラスタービット、そしてダブルエックスのツインサテライトキャノンからピンク色の魔力光が放たれ、
ヴィヴィオを光へと包み込んだ。
「ううう、ああああああああ」
「ブレイクーーーー、シューーーート!」
「ああああああああああ」
ヴィヴィオが光に包まれる中ヴィヴィオの体からレリックが現れ完全に砕け散った。
その余波のすごさにツインサテライトキャノンを撃ったダブルエックスだけでなく近くにいた、ウイングゼロやゴッドガンダムやブラスターブレードも吹き飛ばされた。
なのはは何とかその場で着地し、自分達が撃ってできたクレーターに行き、ヴィヴィオを助けようとする。
「来ないで。一人で立てるから・・・。強くなるって決めたから・・・」
そこにいたのは自分達がよく知っている幼いヴィヴィオの姿であった。
ヴィヴィオはなのはの力を借りずに立ち上がろうとし、立ち上がった。
なのはは急いでヴィヴィオの元に駆け寄り思いっきり抱きしめた。
「これでいいんだよな」
ガロードが他の皆に聞くが答えは決まっていた。
「「ああ」」「任務完了」
「なのはちゃん! 皆!」
すべてが終わった頃にはやてが到着し、ガロードがやれやれという感じで言う。
「はやて、もう終わっちまったぜ。全部な」
「いや、まだのようだ」
ヒイロがガロードの言葉を否定するかのように再びゆりかごから警報が鳴った。
「Heiliger Kaiser keine Reaktion. Funktionsverlust des Systems.(聖王陛下、反応ロスト システムダウン)
Alle magische Verbindung wird abgehängt.(艦内復旧のため、)
Für die Regenaration des Kronschiffs.(全ての魔力リンクをキャンセルします)
Alle Mann am Ort, Minifunktion!(艦内の乗員は、休眠モードに入ってください)」
なのはとはやての魔法が解除され、なのはは飛べなくなり、はやても融合を強制解除された。
さらには玉座の間の扉がしまってしまった。
「げ、これってまずいんじゃ・・・」
ガロードが不安になるのも無理は無い。この状態ではなのはとはやては魔法を使う事ができない上に、ブレードは一回きりのボルテッカを使い、
さらには密室になってしまいマイクロウェーブが届かず、ツインサテライトキャノンが撃てなくなってしまっていたのだ。
残ったのはウイングゼロのツインバスターライフルだが、度重なる戦闘により出力があまり上がらなくなっているのだ。
「なら俺に任せろ」
ガロードの不安をドモンが打ち破ろうとする。
支援
雑談の方に書いてあったんですが、スパロボX氏の投下はこれで終了みたいですよ。
>なの魂
やべぇえええ! おいちゃん完全に油断してたよ!
これはいい意味で騙されましたね。てっきり無印のみのストーリーかと思いましたが、もうすでに闇の書が起動するとわ。
おまけに、どうにもスカと数の子たちも関わってきてるご様子。これは期待せざる得ない。
StSで銀さん三十路になっちゃうの? と心配&期待してただけに安堵しつつもちょっぴり残念w
360 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/15(土) 23:09:16 ID:vdMGHjAV
>なの魂 GJ!!
次回はついにヴォルケンリッターが登場か。
スカと数の子まで出て、先の展開が読めない。
こりゃ次回が楽しみです。
>なの魂氏
相変わらず再構成のやり方が上手いです。
ここでStSまで引っ張ってくるかぁ?!
いずれはフェイトと銀さんがあいまみえることもあるんでしょうか。
ともあれ次回も期待です。GJ。
皆さん乙。
スパロボXさん、文末に『〜た。』が続くと読みにくいので、『〜である。』『〜する。』等を混ぜるといいかと。
真祖の人ですが・・・投下OK?
orzヤッパドマイナーネタジャムリカナァ
さぁいざいかん
真祖の人支援
それじゃ投下させていただきます
――――本局のある将官達の会話
「うげ、新設部隊の為こちらの部署の予算削るんだとさ」
「嘘だろ、ただでさえこっちの部署は予算不足でピーピー言っているんだぜ」
「どれもこれもすべては3提督やとりまきの口添えだとさ」
「うがぁー、あの老害め、いつまで居座ってやがんだ!」
「おい、本局で滅多なこと言うなよ、カナリスの例知っているのか?」
「ちくしょ〜〜、ここは何処の独裁者国家だよ」
「しかもあいつら例の3名を自分の後継者にするんだとさ」
「けっ!結局は魔法至上主義の影響力残したいだけじゃないか、いたいけな少女達をだまくらかしやがって」
「例の対ガジェットを想定した特殊部隊ねぇ、高レベル魔道士はイパーイ」
「予算はいたれりつくせり、しかも本部でさえまだ配備されていない最新機材配備だってさ」
「だから、陸戦課は怒り狂っているよ、レジアスに気持ち分かるわ」
「「「「「「「「「「「やってらんね〜〜」」」」」」」」」」」
―――時空管理局本局一室
「宗方になにか動きはないのですか?」
リンディ・ハラオウンは、情報局局長のラインハルト・ゲーレンに問うた、会議が終わった後に宗方の部屋に
斎藤中将子飼いの部下佐藤大輔三佐が入ったことに何か疑念を感じたからだ。
「ええ、彼は彼の任務を着々とこなしているだけです、レリックの件もありますがそればかり構っていられる
ほど時空間に暇はありませんから」
「そうですか」
リンディはホッとする、ゲーレンは有能であることはレンディも認めている。正直彼女は宗方が何を
企んでいるのか全く分からないし、何せレティに至っても「宗方?あいつは何考えているのか分からん」と言われるほどだった。
「ああ、それと例のレリックと共に現れるガジェットの件ですが、犯人の特定は出来ましたか?」
「いいえまだ特定出来ていません、現在割り出しを急いでいます」
「そうですか…」
しかし宗方が例えどう行動とって損害を与えても結局は管理局の益になるばかりだから迂闊に口出し
出来るはずもないが…まぁもし彼の考えを知ったら、速攻彼の逮捕へ向かうだろう?何故だって?
だって彼の考えは新暦における管理局の根底を覆すうえに、下手をすると自分の娘たちをあの世に送る行為なのだから…
彼女がそれを知るのは到底無理だろう、何故ならすでに情報局主要幹部全員(有力な提督派のスクライア一族は叩き出している)
が宗方派であるからだ。そして通信がきられ、ゲーレンはタバコを取り出し火をつけ、吸い、煙を吐く、一息ついて呟いた・・・「馬鹿め」
それは何も知らないリンディの事だろうか?それとも管理局そのものなのか?それは彼にしか分からない。
――――時空管理局情報局一室
「たいした役者だよ貴方は」
呆れ果てた様に、ハンティトン・シェルドン副局長はゲーレンに言った。
「敵を騙すにはまず味方と言う諺があったはずだが?」
「ああ、それはそうですね、しかしまぁ…貴方も中将(宗方)とグルになっていると知っていたら彼女いや…上層部はどういう顔をするでしょうね?」
「そんな事私にとって何も価値はない」
ゲーレンは素っ気無く言う、毎日膨大な書類相手に何でそこまで相手にしなければならないのか、
彼の偽らざる心境だった、まぁゲーレン(とシェルドン)も現在の未だ(さっさと引退すればいいのに)
巨大な発言力を保持する三提督とそれに便乗するとりまき、とりわけ魔法至上主義者には心底うんざりしているのだ。
「所で、例のガジェットの対抗手段は?」
「捕獲したガジェットに対する実験では、普通の拳銃弾でも機能停止に持ち込めますよ、ま、あのサイズである程度の武装を供えた上に、
多少の機動性の保持、そしてAMF発生する為の発電(魔力)装置、そうすると必然的に直接装甲は最低限なものになります、まぁスカエリッティは
AMFで大丈夫だろとタカくくっているそうですからね」
「つまりワンショットライターというわけか」
「まぁそう言うことですよ」
「スカエリッティもとんだ道化だな」
「自分が管理局本部を手の平で操っていると思っても、結局自分も踊らされている・・・」
「哀れだな」
そしてゲーレンは宗方に機密通信回線を繋いだ。
―――――管理局本局 宗方部屋
「ふむ、まだリンディ総務統括官が私の動きに疑問を抱いていると?」
「ああ、まぁこちらが知らないといったらあっさり納得した」
「そうか、だが場合によっては提督派の情報局局員に内偵を行うかもしれん」
「えらく弱気だな」
「小さな穴が時に大きな穴になるきっかけを作る」
「確かに…まぁそういった局員は管理世界に飛ばしているし、こちらには二重工作者である沖田静がいる、フン、
三提督派の莫迦共はまんまと騙されている」
「ふ・・・わかった」
「私も管理局の腐敗に目を被うばかりだ、其の為にお前にあえて機密情報を流している…だから…お前に賭けている」
ゲーレンは嘆くように宗方に言う、確かに尊敬でき、尚且つ恩師であるヴィルヘルム・カナリスを辺境に飛ばした挙句
死なせた事に深い恨みを持っていた、しかしゲーレンの嘆きは情報という重要的存在を蔑ろにし、あまつさえ折角得た情報を握り潰したり、
時には自分達の成果だと喚くアホ共に心底うんざりしていた、だから闇の書事件だけではないPT事件でも早期に警告したにも関わらず、
御偉方が無視したせいで(優秀な魔道士2名確保したとはいえ)危うく大惨事になる所だった。其のことについて宗方は知っていた。
「ところで、あのスカエリッティについてだが…いつか犯人割り出しを発表しないと、やばいぞ」
「言われるまでもない、なに、局の御偉方にも何名かスカエリッティのやっていることを黙認している奴がいる、
そいつらに情報をわざと流させて、意図的に妨害させる」
「そしてすべてが終わった時に情報局の失態はそいつらに転化されると言う事か」
「ま、そういうことだな」
「だが、これから先はどうなるか分からない、歴史は常にどう動くかわからない」
「お前のことだ、いくつかの手段は想定してあるだろ」
「当然だ」
「お前らしいな」
リリカルなのはストライカーズ エピソード
「黄色い悪魔」
―――道中
「あれ?」
はやてはフェイトが運転する車の助手席で見た対向車に市川がいたことに疑問を思い浮かべた、
たしかエルセアにある亡き妻の墓参りするって聞いたんだが…まぁ彼には彼の事情があるのだろう、
はやてはそう思った、だがもし市川がこれから行おうとする事を知ったら間違いなく彼女は有無言わずに彼を取り押さえようとして
…殺されただろう。
―――時空管理局施設某所
市川が目的の場所についたのは夕暮近くだった。そこはクラナガンから隔離されたように周りを森で覆われた中で
ポツリと建てられていたが重厚なつくりの建物だった。そして身分証を提示し、かつての部下を呼び出させた、
小走りで掛けてきたかつての部下は彼の車へ乗り込んだ、そして市川は言った。
「頼みたいことがあるのだ」
「二佐のおっしゃることならばどんなことでも」
カリウス曹長は答えた、十年程前に、カリウスは市川に人生を救われたことがあった。
「君は今、押収質量兵器の管理をやっているはずだな」
「はい、ほとんど倉庫に放り込んであるだけで、いい加減な物です。誰も、何がそれだけあるか知りません、
そのおかげで仕事のストレスが溜まった局員が憂さ晴らし場所ですよ」
まぁつまり、ストレスが溜まった局員が射撃場で押収した質量兵器をぶっ放して憂さ晴らしを行うある意味知る人ぞ知る、
リフレッシュ場所だ。(実はゲイズやゲンヤも愛用していたりもする)
「いくらか融通してもらえないか」
「理由をお尋ねしても宜しいでしょうか?」
「犯罪ではない。少なくとも私はそう信じている。可能な限り、君に迷惑をかけないように努力する」
カリウスは市川の横顔に視線を走らせた。任せてくださいと答える。彼も、かつての上官が抱えて
いる個人的な問題についての噂話を耳にしていた。そして二人は押収兵器が治められている倉庫に
向かい、中に入った、そして武器特有のあの油臭い臭気が鼻をついた、そしてどの武器を必要かカ
リウスは問うた。
「そうだな、短機関銃はサイレンサー付きMP5、弾倉は10個、拳銃は同じくサイレンサー付きのベレッタMF92Fこれも弾倉10個、あるか?」
「ええありますよ、97管理外世界の質量兵器の優秀さは他世界より群を抜いています」
それを勝手にコピーした反管理局組織によって酷い目に会った連中は沢山いますよとカリウスは言
った。
「手榴弾もほしい、破片型と閃光型とをあわせて10個ずつ出来れば音響も一つか二つ」
「もてますかね?」
「体力は落ちてない」
「了解」
「それとC4と雷管、2つくれ」
武器を袋に納めた二人は射撃場に向かった。誰もいない射撃場でMP5、ベレッタ、を取り出し試射を行う、
修復しつつとはいえ片目を失ったのは痛かった、かつてなら五〇メートル先にでも拳銃弾を標的の中心に
収束させることが出来たが、今では15メートルが限界だった、MP5は…まぁ言わなくても分かる、
試射と分解組み立ては1時間で終わった。
「すまない、しかし私は責任をとらねばならない。無論、おろかな行為だと言うのは分かりきっている」
「貴方は局法会議にかけけられそうになった3等陸士を救ってくださいました。とてつもなく愚かな事をやらかした莫迦な下士官を、
それがもし親族ならば、ええ、当然と言ってもよいと思います。どの道自分の局歴は、二佐、貴方に貰ったものなのですから」
「ありがとう」
「貴方からその言葉を与えられること、それに勝る光栄はありません、二佐」
ああ、それから、ずっと御預かりしていたものをお返ししますと刃が少し曲がった、刃渡り60セ
ンチぐらいの刀、ククリナイフを取り出した。それにほぅと市川はうめいた、そうSAS時代に銃
弾を喰らって動けなくなったグルカ人を助けた際に譲り受けた業物だった、それからこのククリと
は任務で市川の助けとなり、多くの命を奪っていった。そしてそのククリナイフはよく磨がれて
いた。そして二,三度振り回した、貴方の帰りをお待ちしていましたといわんばかりに手に馴染んだ。
「ミッドチルダにおいて絶滅したと言ってもいいマイスターと呼ばれる鍛冶屋を探し出して磨ぎ直してもらいましたよ」
「随分と軽い感じがするな、そして刃がちょっと違うな」
「ええ、持ち出したオリハルコンを使用しています」
「ほう」
「本来なら違反ものですけど、何それぐらいゲイズ中将は握りつぶしてくれますよ」
「中将には世話になりっぱなしだな」
「まぁ共に戦い続けた戦友に対する礼儀ですよ、ああ、並のAMFぐらいや最近現れたガジェットぐらいなら簡単に切り裂けますよ」
「ああ、そうだなそんな感じがする」
そして市川は自分のバリアジャケットを着込んだ、平服で戦場に向かう気にはなれないからだ。そして彼はバリアジャケットのデータを改竄し
かつて自分が所属した特殊戦隊の軍服にアレンジする、そして鏡の前に立ち自分が服装規定を満たしているか確認した、背筋を伸ばす、
胸につけられた様々な略綬が士官として自分がどのような人物であったか証明した。無数の栄光と勝利。義務への献身。管理局への忠誠。
ただ一人の娘を救えなかった父親が勝ち得た様々なもの。そして市川は軍帽を丁寧にかぶり、黒い眼帯をはめた黄色の悪魔の姿を映し出された。
市川は背後を振り向いた。カリウスが敬礼を送った。彼は答礼した。二人は別々の射撃場から出た。
―――施設外
市川は衛兵に答礼し、車で営門を出た。後席には武器弾薬の詰まったバッグが置かれていた
そして営門のそばに車が停車していた、市川は其の前に自分の車を止め外に出る、そしてフレイザーも外に出た。
「酷い人ですよ貴方は…一応貴方につけた人はクラナガン警察において一番の腕利きと太鼓判押した人のですがね…
まぁ軍属には適わないと言うことですか」
「まぁな、しかし私は娘に会わねばならないのだ、例えそれが管理局を裏切ってでも」
「正直に言ってはどうです。この時空管理局本部がおかれているクラナガンで戦争を始めたいと」
それに対し市川は断固たる口調、むしろ悲鳴に近いほどの感情をこめた声で言った。
「君は誤解している、始めたいわけではない。終わらせたいのだ」
「可及的速やかに?」
「可及的速やかに」
フレイザーは悲しげな微笑を浮かべ、運転は私がしますと言って市川の車に乗り込んだ、そしてフレイザーは助手席の市川に兵隊言葉で尋ねた。
「で、二佐、指揮官の構想は?」
「私の目的を果たすと同時に、君にも礼をしたい」
「なるほど」
「まず、リッチェンス氏の指揮下にある人間を一人、調達せねばならない」
「了解」
「君は構わないのか」
「私にもあれこれと考えるところがあります」
「そうか・・・」
市川はある場所に殺気を込めた視線を送った、それに疑問を抱くフレイザー
「どういたしましたか?」
「何、ちょっとした鼠がいたような気がしてな…では行こうか」
フレイザーは車を発進させた。
――――茂み
「やっぱバレてたなぁ…適わないなぁ」
狙撃銃型デバイスを構えていた伊達英明二尉は呟いた
「はぁ、やっぱ4年収容所に放り込まれても、殺気を感じる感覚は衰えないか・・・」
補助兼その他役の伊達と同期の田宮秀司二尉も感嘆そうに呟く、彼らが宗方から受けた任務は可能であれば市川の阻止、
無理ならしょうがないといった任務であった、そして田宮は連絡を入れる。
「阻止失敗、後は天に祈るのみ」
――――本局
「やはり、伊達では彼の阻止は不可能か…」
宗方は呟く…そして行動に乗り出す、市川が成すべき任務を終了した後の事を沈静化するための行為だ。
――――本部 ゲイズ室
レジアス・ゲイズも市川がこれから何をするのか、すでに施設内から送られた情報によって分かった…あいつはミッドチルダで
忌み嫌われた物を持って、よりによってクラナガンで戦争を起こすつもりだ…たった一人で。だが自分に何が出来る?
レジアスは深刻な顔をする、手持ちの局員を派遣すれば彼を取り押さえることも出来るが、だがその場を凌いでもあいつは娘の為になら
…ゲイズは溜息をついた、そして羨ましくも思った、思えば自分も娘に対しては幼い頃に愛情をあまりそそいでやれなかった
(仕事優先で家庭を顧みなった)、その贖罪の為かある程度の地位を(まぁオーリス自身も猛勉強したがな)
与えている、だから彼女にとって私は父ではなく、上級将官として自分を見ているだろう…だが彼は大事な娘を父親として取り戻そうとしている
…そしてゲイズは再び溜息をつき、デスクにおいてある写真を見ながら呟いた。
「なぁゼスト…」
死んだ戦友の顔を浮かべ懐かしむように呟く、そしてある人物を呼び出した、陸戦課第一実働部隊の部隊長であるスナブノーズ一尉と副隊長だ、
無論彼らも市川の個人的問題を知っている。そして入室する二人…
「急に失礼なのだが…非殺傷設定で市川守二佐を取り押さえる事は出来るかね?」
「「無理です」」
二人は即答し、スナブノーズは理由を述べる。
「彼はSASだけではなく数多の戦場で鍛え上げられたおかげで、多少の非殺傷設定での魔法攻撃は通用しにくいと思われます、
そして4年間虜囚の閉鎖された時代を過ごしても身体的、ならびに魔法能力は全く衰えを見せていません、それに彼の魔法は
主に攻撃よりも身体強化、非殺傷で取り押さえようとしてもこちらの損害は多いだけです」
「では君達二人ではどうかね?」
「…抑えることは出来ると思いますが、双方ともただではすみません、中将も知っておられますが彼はあのイリヤ・ジェルジンスキー
を単独で叩きのめしたのですよ」
イリヤ・ジェルジンスキー、ある世界の過酷な暮らしの森林民族出身で2mを軽く越す身長と、凶暴なグリズリーも素手で殺せるほどの筋力、
殺傷設定の魔法攻撃を喰らってもびくともしないお前本当は試験管から生まれたモンスターじゃないのか?といわれる陸戦課では有名な局員なのだ。(何と妻帯者)
「うううむ…」
顔をしかめるゲイズ、少なくとも実戦経験では市川には及ばないが、積んでいる2人が揃って言うのだ、そしてゲイズは言った
「すまないが至急準備して市川の後をつけてくれ、万が一の場合は彼を支援もしくは撤収の為の援護をお願い出来ないか?」
「「了解しました」」
スナブノーズと副長は敬礼すると準備の為部屋を出た。
―――通路
「しかし、まさかクラナガンで戦争を起こすとは流石二佐と言うべきか…しかし相手は地上課の潜入局員を次々と屠ったマフィア…それに単独で挑むとは」
副長はぼやく
「だが、彼にはそれに勝つだけの度胸と技量がある、我々以上のな…」
「それもそうですな」
――――繁華街外れ
フレイザーは繁華街外れに車を停め、待っていてくださいと外に出る。市川は其の間に戦争を起こす準備をした。
そしてフレイザーは30がらみのリッチェンスの部下を引っ張ってきた。市川は車から降りた、フレイザーが訪ねた。
「こんなところでどうです?」
「充分だ」
市川は、男の腹を殴りつけ昏倒させた、男を後席に乗せると彼は言った。
「さっ、ゆこう」
「どこにです?」
「もちろん、リッチェンス氏を忌み嫌っている所で最も有力なところな」
「まさか…」
「君の思う通りだよ、安心しろ死者は出さない」
「…ちょうど108部隊のゲンヤ3等陸佐とその配下がいますよ」
「それは好都合だ」
次の目的地までさして時間はかからなかった。
――――クラナガン警察署前裏門
周辺に人はいなかった、フレイザーは車の速度をゆっくりと落として停止させた。
「何をするつもりです?想像はつきますが」
「君はここにいてくれ」
市川は車から降り、後席で昏倒している男を路上に放り出した。そしてホルスターからベレッタを抜き署に向けて弾倉から弾がなくなるまで発砲し、
弾倉を交換してから閃光手榴弾と音響手榴弾を堀越しに投げつけた、そして恐らく不運にもそこにいた警察官か、果たして108部隊の局員が叫び声を上げ、
うめき声をあげる、それを尻目に市川は車に乗り込み扉を閉める。
――――署内
ゲンヤはクラナガン警察とのクラナガン及び周辺地域の治安などの会合に出席していた。
「な、何がおきたんだ!」
ゲンヤ・ナカジマは突然おきた銃声と轟音と閃光に仰天した、そして警察官がドアを蹴飛ばすようにあけて叫んだ。
「リッチェンスの部下がついにやりやがった!」
そう、上層部は買収されていたとはいえ、一部の上層幹部とかもリッチェンスの密輸業に怒り狂っていたのだ、
しかしリッチェンスは狡猾にもそうやって汚れたお金などは消毒するか、慈善団体として孤児院などに寄付していたのだ、
そして証拠を得ようと内偵調査はことごとく失敗し続けていたのだ、ようやく掴んだ強制捜査の証拠、沸き立つ署内、
大急ぎで屋敷突入(抵抗するのは分かっているから)の準備が行われる。
「すいません、108部隊の支援も頂きたいのですが…」
警部と思われる男からの要請にゲンヤは快く承諾した、そしてギンガと何名か隊員を呼び出した。
「悪いが、ずっと追っていたリッチェンスに対する強制捜査が行われる、すまんが同行してくれギンガ」
「はい、御父さん」
――――別の車
「ゲッ!本当にやりやがった」
「相手の戦力を分断させる作戦か」
「しかし、何もそこまでやりますかね?」
「彼だからこそよるのだ、大切な存在を守る為にな」
スナブノーズと副長はこっそりと市川の車の後をつけた
―――車
「表門の様子が見えるところまで移動してくれ」
フレイザーは車を急発進させた、そして民家の影で止まった車の中から警察の様子を窺った、
そうすると大慌てで警察官や局員がパトカーに乗り、表門から飛び出した、皆武装していた、そしてフレイザーはうめいた。
「何てこった、本当に戦争になっちまった」
「まだまだこれからだ、彼らより5分ほど遅れて行動しよう。それで十分なはずだ」
「リッチェンスの屋敷へ?」
「我が娘の下へ」
目的地へと向かう車内で市川は言った。
「屋敷の西側につけてくれ」
「貴方の娘さんがいる部屋は、恐らく南側にあります」
「庭に面しているのか?」
「いいえ」
「君には感謝しなければならないな、例え私が逮捕されても、君が心配する必要はない。確約する。私は尋問に慣れているのだ」
「貴方が車から降りてから20分待ちます」
「何故そこまで親切にしてくれる?」
「警察としての巧妙を上げたいからですよ」
「それだけだとは思えない。君のような警官にとって感状や昇進はそれほど意味のあるものではないはずだ」
「トーベイという局員を覚えていませんか。あの戦争で貴方の部下だった」
「ジョン・トーベイ3等陸士。いい局員であり、兵隊であった。魔力ランクは低いがそれを補うほどの射撃術の腕は最高だった。
子供に好かれるような男だった。彼に微笑みかけられた子供と其の母親は必ず微笑を返すほどだった。
管理局員に対してある種の恐れと侮蔑とは無縁ではないあの戦争でもそれは変わりなかった。」
「ええ、あいつは他愛のないほどに子供好きな男でした」
「彼は負傷し、ミッドチルダに送還になった。幸運だった」
「彼は私の弟です」
「名字が違うな」
「男の子がいない親戚の家に貰われたんですよ。それなりに金のある家です。別に珍しくもない話です」
「やはり幸運な男だ」
「ええ、しかし、あいつはそこで幸運を使い切ってしまった。傷が癒え、帰還して、家に戻り、交通事故で死にました。戦争が終わる直前です。莫迦な奴ですよ。何の為に生きてきたのか分からない」
「成る程」
「貴方のことは弟から教えられました。弟は本当に尊敬していましたよ、市川二佐の事を。
兵隊が例え血の池地獄に落ちても、そこに飛び込んで助けてくれる人だといって。
あいつが地雷原の真ん中で腹を撃たれてうめいた時も貴方はは地雷原と相手の攻撃を駆け抜け、
私の弟を救ってくれた。彼はその事を酔うたびに話してくれました」
「当然だ」
市川は当然の義務のように答える。
「襟に付けた線の数が私にそれを要求していたのだ」
「現状における私の立場も余り違いはありません。誰も困らないならば、何が悪いと言うのか。警察にあるまじき発想ですがね」
「可能ならば、機会を捕らえて墓参りさせてもらいたい。勿論君の許しを得た後に」
「喜びますよ、あいつは」
デバイスから魔力弾が放たれ応戦するように銃声が響いてきた。フレイザーは車を裏通りへ乗り入れた、屋敷の西側につける、
市川は扉を開けた、そしてフレイザーは念押しした。
「20分ですよ…二佐、御武運を祈ります。まぁ、武運は貴方の得意技なんでしょうが、兎も角、戦争を終わらせてください。可及的速やかにね・・・」
「ありがとう、警部補」
――――リッチェンス邸正面
当然と言えば当然の事だった、警察と局員が邸宅へ強制捜査に踏み込もうとして、リッチェンスの部下たちと揉み合いとなって、そして誰かが発砲したことにより、警察、局員そしてリッチェンスの部下たちはたちまち撃ち合いとなった。
「これ、本当に家なの?」
ギンガ・ナカジマはうめいた、そらそうだ、壁には若干とはいえAMFが貼られており、警察は苦戦、そしてギンガも
ウイングロードで空中から突入しようとするが、リッチェンスの部下が配備していた対空用の重機関銃(後にZU-23と判明)
による攻撃で迂闊に攻撃を駆けられないのだ、確かに張った防御魔法トライガードもたとえ1,2発ぐらいなら弾でも何発も喰らうと
あっさりと砕け散るだろう。
「丸で要塞ね」
ギンガは思った、そして悲鳴が上がる、警察の一名が銃弾によって倒れたのだ。ギンガは歯を噛み締める…そして空が駄目なら…、
ギンガは警察の指揮官に連絡を入れる、自分が壁をぶち抜くので其の為援護をしてほしいと、指揮官は言った、大丈夫なのかと、
AMFが貼っているじゃないかと。しかしあのぐらいのAMFなら自分のデバイスで充分ぶち抜けますと、指揮官は難しい顔をしたが、あっさりと了承した。
そして警察官や局員が自分を支援するように弾幕を貼る、そして怯んだ隙を狙って、壁に向かって突進する、何発か銃弾が飛んできたが、大体は外れて、
そして当たりそうなのはトライガードで防いでいた、そして魔力を貯めた左手に装着しているリボルバーナックルのカートリッジの薬莢を撃ち出し、
そこによって発生した魔力を直接壁に叩き込んだ、轟音がして壁の一角が崩壊した、歓声が上がるが、リッチェンスの部下達はしぶとく抵抗する、
まだ邸内突入は無理だ…そう思い一端離脱(自分の銃弾が集中してきた為)した・・・
だが突然裏口から爆発が起きる。あれ?まだ後ろに回った部隊はいなかったはず、では一体誰が?
――――邸裏口
市川は周囲の状況を確認し、塀の弱い部分を確認、C4を取り付け雷管を作動させ、飛び跳ねるようにして距離をとり伏せた、
そして爆発が発生し、塀が崩れ落ちた、一応AMFを貼っているといっても膨大な破壊力を持つ質量兵器の前では無力と言って過言ではなった、
そして市川はMP5を構え、崩れた塀を乗り込えた、愛すべき娘の下へ行く為…
――――某車
「突入したようだな」
「ええそうですね」
スナブノーズも副長も既に戦闘体制を整えつつあった。
「暫くは様子見だ、こっちにノコノコやってきた連中は」
「とりあえず、暫く冷たい地面の上でお昼ねと言うわけか」
「殺すなよ…」
「隊長も拳の威力抑えといて下さいよ、隊長の拳は簡単に人殺せますからね」
orzココマデ、アア、ナノハキャラガゼンゼンダセネェ・・・マジダメポ、ツギハソコソコデルトオモウケド
ジェルジンスキーwwwwwww
20世紀最後の狂戦士を倒すって……どんだけー!?
昨日はどうもすみませんでした。
ところでBパートを投下したいと思いますがOKですか?
ではBパートを投下します。
一方、地上ではスバルの決死の攻撃により正気を取り戻したギンガはブリッツキャリバーをスバルに渡し、ギンガは電童達によりベイタワー基地へと運ばれていた。
スバルはビルから出てきたティアナからなのは達のピンチを聞き、なのは達の救出に向かうべく、カミーユのZガンダムに乗ってゆりかごへと向かって行った。
ちなみにビルに残っていたノーヴェ達は宙に任せている。
ベイタワー基地ではシグナムがゼストとの一騎打ちに勝利し、シグナムはゼストからこの事件に関するデータを譲り受け、アギトの事を託されていた。
シグナムは死んだゼストとレジアスの死体を並べ、自分も空に上がろうとしていた。
「アギト、お前はどうする?」
「アンタ旦那を、殺した。だけど、騎士として、誇りある最期をくれた。 だから一緒に行って見極めてやる! だがな、アンタがもし旦那の期待を裏切るようだったら・・・」
「その時は私を焼き殺すがいい」
そしてシグナムとアギトは手を取り合い融合し、空に上がった。
その姿を見た一矢は驚いた。
「シグナム、その姿は・・・」
地獄島のスカリエッティアジトではクアットロにより自爆装置が作動していたため、フェイトが懸命に自爆装置の停止をしていた。
「フェイト、さっさと逃げた方がいいんじゃねえか?」
ジョウがフェイトに逃げるよう勧めるがフェイトはそれを断る。
「それは出来ない。まだ生態ポットにいる人達は生きてるかもしれない。その人達を見殺しになんて・・・」
「だったら俺がその生態ポットを運んでやるぜ」
ジョウはそう言い、飛影で生態ポットを持ち出し、外に出ては戻っての繰り返しを始めた。
「俺も手伝おう」「俺もやります」
ジョウの行動にロムとオーガンも協力した。ちなみに真ゲッターはさっさと外に出ていた。
フェイトはシャーリーとルリのハッキングの協力のおかげで自爆を止めることができた。
「よかった・・・」
安心したものつかの間、フェイトの上から天井が崩れてきたのだ。フェイトや他のメンバーはあまりの出来事に間に合わない。しかし、その時
「Sonic Move.」
その声と共に光が走り、フェイトを崩れる天井から救った。光の正体はエリオであった。
「エリオ・・・」
「はい」
「あのガキ、最後の最後でおいしいところ持っていきやがって・・・」
ジョウはフェイトをお姫様だっこしているエリオが羨ましかった。
フェイト達は外に出てきて、外に待っていたキャロにフェイトは抱きつかれた。
「ほほえましいものだな」
ロムがオーガンとのリンクを解除したトモルに聞く。
「そうですね。オーガンはこれも求めていたのかも・・・」
そしてトモルは改めて近づいてくるイバリューダーと戦う決意を固めた。
ゆりかごの外では大量に出てきた、ガジェットや戦闘獣の迎撃にシグナムが出ていた。
アギトと融合したしたシグナムの姿は雄雄しいもので、上着がなく背中から4枚の炎の翼が生えていた。
「一気にいくぞ! アギト!」
「おうよ!」
「「火龍一閃!!」」
そう言いながらシグナムは巨大な炎の剣を伸ばし、ガジェットや戦闘獣を大量に撃墜していった。
「なぜだろうなアギト、お前との融合は不思議と心が温かい・・・アギト?」
「うるせえ、うるせえよ」
アギトは泣いていた。アギトもシグナムと同じ不思議な気持ちになっていたのだ。
ゆりかご内部の玉座の間でははやてが気絶したクアットロを抱え戻ってきた。
「ドモンさん、お願いします!」
「よし、ならばいくぞ! ばああああく熱ゴッドフィンガーーーーーーー、石破天驚けーーーーーーーーーーん!!」
ゴッドガンダムの手から放たれた流派東方不敗の最終奥義「石破天驚拳」が扉を突き破った。
「よし、行くぞ!」
そしてなのは達は玉座の間を後にし戻ろうとした。
進んでいるとまだガジェット達が通路にいたのだ。
「このままじゃ・・・」
「超級、覇王、電影だーーーーーーん!!」
ゴッドガンダムは間をおかず超級覇王電影弾で通路にいたガジェット達をすべて蹴散らした。
「もたもたするな! 早く行くぞ!」
「はい!」
ゆりかご周辺では未だに出てくる敵にジャミル達は奮戦していた。
「このままではガロード達を乗せたまま宇宙に出てしまう!」
「アキト! お前のボソンジャンプで入れないのか!?」
「駄目だ、あの戦艦には何故かボソンジャンプで入れないようになってる」
リョーコがアキトにボソンジャンプでの救助するように言うがそれが出来ないのだ。
「これってピンチだよね・・・」
「動揺しても、どうよう?」
「お前らのんきな事ばかり言いやがって・・・」
緊張感の足りないヒカルとイズミに怒りを顕わにするリョーコであったが、その時全員に通信が入った。
「僕達に任せてください」
通信が突然割り込んできた。それはカミーユのZガンダムからであった。
「Zガンダムで一気に中に突っ込みます。スバルがなのはさん達を救出したら僕達もすぐに脱出します」
「しかし、Zガンダムで突っ込めるのか?」
「大丈夫です。前にモビルスーツに突っ込んだ事がありますから・・・」
カミーユは2年前の戦争で人を道具のように扱うパプティマス・シロッコの乗るモビルスーツ、ジ・Oに向かって、
Zガンダムは死者達の魂を吸って突撃し、シロッコを倒した事があるのだ。
(皆、また僕に力を貸してくれ!)
カミーユが心に思うとZガンダムは光だし、ウェイブライダー形態になりゆりかごへと突撃した。
「うおおおおおおおおおお!」
Zガンダムは全身をゆりかごの中に入れることに成功させた。突入したところはすでに突入していた部隊が皆一つに固まっていたところだったのだ。
「Zガンダム!?」
「ゼクスさん! 皆を連れて先に脱出してください!」
「カミーユ! 君はどうするんだ!?」
「僕はスバルを降ろしてなのはさん達が戻ってくるまで待ちます」
「ならば、私も残ろう」
ゼクスも残ると言ってきたがカミーユはそれを断ろうとする。
「いえ、残るのは僕だけでいいです。それにゼクスさん達は皆もう機体がまずいはずです」
「だがそれは君も・・・」
「構いません! 行って下さい!」
カミーユの熱意にゼクスは折れた。
「わかった。我々は先に脱出している。君達も脱出しろよ」
「「わかってます」」
「全員、ゆりかごから脱出だ!」
ゼクスの言葉に従い、プリベンダー、スペースナイツ、管理局の魔導師達はZガンダムが入ってきた穴から全員脱出した。
Zガンダムはモビルスーツ形態に戻り、コックピットを開けスバルを行かせた。
スバルの持つ戦闘機人の力はゆりかごの魔力キャンセルに関係なく発動できるので今はスバルの力が頼りなのだ。
なのは達はドモンのおかげであと少しのところまで進んだが、再び扉が立ちふさがりドモンも体力を消費しすぎていた。
「くそ! これまでか」
「はあ、はあ、まだだ、はあ、まだ俺はいける!」
「ドモンさん無理しないで」
ガロードが諦めかけ、ドモンはまだやろうとするが、なのははそれを止めようとする。
すると突然、扉が打ち破られたのだ。そこには両手にリボルバーナックルをしたスバルの姿があった。
「なのはさん! 皆さん! 大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ、スバル」
こうしてなのは達はスバルの助けもあり、なのはとヴィヴィオはウイングゼロへ、
はやてとリインフォースUと気絶しているクアットロはダブルエックスへ、スバルはZガンダムのコックピットに入り、
Zガンダムが空けた穴から無事ゆりかごから脱出した。
そしてゆりかごは宇宙に上がり、クロノの率いるクラウディアの艦隊がゆりかごを集中砲火した。
しかし、それでもゆりかごは壊れなかったのだ。
「何!?」
クロノは驚いた。スカリエッティはロボットなどのデータの参考にゆりかごの耐久度を上げていたのだ。
その報告を受けたはやて達は焦り始めた。
「じゃあ、急いで私達も宇宙にあがらなきゃ・・・」
「ですが簡単に宇宙には行けませんよ」
ルリの言ってる事はもっともである。すぐに宇宙に行ける機体がないのだ。
しかし、一機だけ簡単に大気圏離脱ができ、なおかつ強力な攻撃が出来る機体が残っていた。真ゲッターである。
真ゲッターはスカリエッティアジトでは全力で戦っていない上に、ゲッター線が満タンの状態になっていたのだ。
「じゃあ、俺達が行ってやるよ」
「ホシノ少佐、はやて。いいな!?」
「わかりました。それじゃあお願いしますわ」
「よし! じゃあ行こうぜ! 隼人! 弁慶!」
「ああ!」
「任せろ!」
「「「真ゲッターロボ! 発進!!!」」」
真ゲッター1はものすごいスピードで宇宙へと向かった。
「頼みましたよ。竜馬さん、隼人さん、弁慶さん」
真ゲッターにはものすごいGがかかるがゲッターチームはそれをもろともせずに宇宙空間に出て、ゆりかごの目の前までにたどり着いた。
「竜馬、いっきにストナーサンシャインで決めるぞ!」
「ああ、わかってる!」
「クロノ提督、悪いが艦隊を全部下げてくれ。艦隊も巻き添えをくらうぞ」
「わかった。あなた達の健闘を祈ろう」
そしてクロノは艦隊を全て次元航行空間に退避させた。
「よし、いくぜ!」
「「「うおおおおおおおおおおおおおお!!」」」
真ゲッター1が光だし、広げた両手の間からは小さな太陽なものが出てきていた。
それはゲッター線を吸収し、大きくなっていった。
「ストナーーーーーーーサンシャイン!!!」
竜馬が叫ぶと同時にストナーサンシャインは真ゲッター1から放たれ、ゆりかごへと飛んでいった。
ストナーサンシャインはゆりかごとぶつかりゲッター線が広がり大爆発を起こし、ゆりかごはこの世から消えていった。
「終わったな」
「ああ」
竜馬達からゆりかごの完全破壊の報告を聞いて「シャイニングガーディアンズ」全員大喜びをした。
しかし、アースラの方ではなのはとヴィヴィオとヴィータが疲れて眠っていた。
この後、機動六課はスカリエッティやナンバーズをクロノ達に任せ、引き続き「シャイニングガーディアンズ」と行動を共にし、
「シャイニングガーディアンズ」はイバリューダー本隊と戦うために月まで出て行くことになるが、
その一方ではネオ・ジオンが秘密裏にある計画を進めていたのだがその話は次の機会にしよう。
投下は以上です。イバリューダーとネオ・ジオンとの戦いは外伝になります。
次回が最終回でオリジナル回になるのですが、ネタがなかなか思いつきません。
最終回後はしばらく書くのをやめて、しばらくしたら外伝を書く気です。
>>373 読みにくい。もっと改行と空欄を増やしてくれ。
383 :
×DOD:2007/12/16(日) 12:37:33 ID:vpb7huRh
12:45くらいから投下したいでござる、と予告
支援
正気を失ったエルフの女の、幼子の血と死の匂いに濁った意識は、何とも居心地の良いものだった。
上位精霊として世界をさすらい出会った、死に瀕する女は文字通りの狂人であった。負の感情と
すら定義されぬ混沌とした衝動。混濁した子供への狂愛に惹かれ、二つの棘は歪んだ女と契約し、
そして女の心赴くままに戦った。
殺戮の欲望を封印された女は、それでも禁忌を感じることもなく、死臭に焦がれるかのごとく殺
戮を繰り返した。共に旅をした剣士と違い、完璧に精神が崩壊した女はそこに偽りの大義など見出
しはしない。彼らにとってそれは心地よさですらあった。もとより精霊たる彼等も、人間の死に感
じるものはそう多くない。
だがしかし、快い時間は唐突に終わった。
千切れ散り散りになる身体、字のままに八つ裂きに裂ける意識。狂乱の精神は子を喰らい、そし
て自らも喰らわれる喜びに打ち震えながら、おぞましい赤子の歯にすり潰された。
女は敵に、文字通り「喰われた」。
神の御使いの糧となり、世界の時間を止める母体へと吸収される。天使たちを束ねる司令塔とし
ての役割を兼ね、世界崩壊の役を与えられた最悪の大天使へ女は成り果てた。
赤子に喰われるという壮絶な最期であったが、その瞬間には恐怖の慟哭も、憤怒の断末魔もなか
った。愛する我が子の幻影を重ね合わせたのだろうか、死ぬ直前のあの言い知れぬ歓喜の叫びは、
今でも記憶に強く刻まれている。
そしてその時点で、女と命を共有する彼らもまた、その生命を終えるはずだった。
水の上位精霊ウンディーネ、同じく火炎のサラマンダー。狂惑の未亡人アリオーシュと契約した
彼らの命は、その死とともに失われ、消えゆく運命を避け得なかった。
女と生死を共にする事を決めた彼らにとって、そのこと自体については別にどう思う事もなく受
け入れられた。己の命への執着よりも女の意識の心地よさを選んだ精霊たちだ。契約の瞬間に、そ
のことはもう承知している。
…だが。どういうわけか、彼らの生命はまだ、失われてはいなかった。
――『声』を女に向けて飛ばすも、いつもの様な甲高い答えは聞こえない。契約により精神が繋
がっている以上、ここから導かれる事実はただ一つ。精霊たちの契約者、アリオーシュは確かに死
んだのだ。
精霊たちは混乱の最中にあった。一体何故、自分たちはまだ存在しているのだ?
命を共有し強大な力を得る、契約とはその代わりに絶対の制約を有するのだ。契約相手の辿る運
命は一蓮托生、それがたとえ死であろうと、例外などありはしない。
(何が起こったのだ?)精霊たちは自問する。彼らが最期に過ごしたのは調和が失われ秩序が崩
壊した世界であったが、それでも契約は確実に効力を発していた。自分たちが生きているなど有り
得ぬこと。なのに――
…ふと思うところあって、彼らの意識は周囲へと向けられる。
――空を見た。
青。滅亡の赤ではない。
――――地を見た。
……茶。鮮血の朱ではない。
――――――背後を見た。
緑。業火の紅ではない。
意味不明であった。
帝都の虚空から舞い降りる殺戮の天使は、もはや契約者たちの力でも斃し尽くすことは不可能。
よしんば討てたとしても、「崩壊の鍵」マナの死とともに失われた調和は、もう二度と回復するこ
とはない。世界は間違いなく、神の意志により滅びを迎える宿命だった。
それ故に、青い空など有り得ぬはずだ。
いつの間にかそこに居た、としか彼らに表現する術はない。周囲に鮮やかなのは炎ではなく、緑
が地平の果てまで続いている。そこはどうやら森の一角のようであった。
彼らは茂みを出た。
母体となったアリオーシュの影響なのか、それともこの奇妙な状況が生んだ結果か。彼らの「力」
は未だに失われることはなく、むしろいくぶん増大しているように感じられた。魔力で飛ばす体は
軽く、旅の連れに居たフェアリーを彷彿とさせる。
落雷にでもあったのか、抜けた先には倒木があり、そこに陽光が降り注いでいた。
世界から暖かな陽の光など、永遠に失われたはず。もはやそこが、彼らのもといた場所でないの
は明白だった。しかし彼らの困惑はさらに深まる。事実がなぜか、受け入れがたい。
幻術の類か?
精霊をこうまでも嵌める幻想魔法など在りはしないのだが、彼らの叡智を以てしても、この状況
の前には混乱せざるを得なかった。「あり得ない」生存、「あり得ない」光景。彼らは死を確信し
ていたがゆえに、裏切られたことの反動はそれだけ大きい。
ふらふらと、彼らは緑の中を飛んだ。行動をともにするアリオーシュの気配は、少なくとも近く
にはない。
やはり、死んだのか。ようやく彼らは現実を認めつつあった。そうして後にようやく、その疑問
が浮かぶ。
――これから、どうすればいい?
自問する精霊たち。戦いで己を保っているとある剣士ほどではないものの、彼らはアリオーシュ
との契約の時点で、戦いと殺戮以外の未来をすでに棄てていたのだ。
どこへ行けばいいのだろう。また世界を旅するのか?
旅をして、その果てに何を求めるのだ? 何の宛てがあるのだ。
あの女の狂気以上に惹かれる存在に、出会うことはあるのか――?
「………?」
唐突に感じ取った、規則正しい息の気配。
鋭敏繊細な彼らの感覚が、空気の震えを感知した。混乱のためだろうか、いつからか接近を許し
ていたらしい。生物のそれと思しき、息の気配が背後から感じられる。
「……あっ」
漏れる声。
人語。人間だ。人間の――
人間? 滅びの運命を辿った筈の?
いや、ここがあの世界だとも限らない。そう思い、彼らは振り返る。契約相手が神の御使いと成
り果てたのであれば、神の国に飛ばされたとしても何の不思議もないであろう。
しかし果たして、そこにいたのは、神などではなかった。
そこにいたのは、一人の少女であった。
「青い子と……赤い子………?」
上位精霊を何だと思っているのか。目の前の少女は彼らの姿を見ると、確かめるように呟いた。
彼女は不思議な視線で精霊たちを見、精霊たちはその目に感情の乏しさを感じ取る。
狂気が「動」ならば、それは「静」であろうか。何もかもが希薄な精神の生むものだ。
「…おいで」
唐突に言った少女。
このまま無意味な旅をするのならと、彼らは少女の許へと向かった。去ったところでどうせ、行
くあてなどありはしない。
彼らが出会ったのは魔導師のローブを被った、紫色の髪の少女だった。
「新たな玩具か。熱心なことだ」
「本当だよ。これまで色々なものを弄ってきたけど、これほどまでに美しい術の組成は初めて見るね」
皮肉交じりでゼストが言うが、相手には通じているのか通じていないのか。ウインドウの中、ス
クリーンの向こう側では、ジェイル・スカリエッティがやや高揚した面持ちで視線を返してくる。
レリックが関わらぬ限り不可侵を決めている彼らにとっては、普段このような通信は有り得ぬこ
とである。
それでも現実にそんな機会が設けられているのは、単にスカリエッティの、こんな言葉が切っ掛
けであった。
「いい武器があるんだ。君に使ってくれればと思ってね」
「一言一句違えず、その台詞は昨夜聞いた。そんなものは要らないと言ったはずだ」
突然の提案に、珍しいこともあったものだと思ったのは先日の事だ。
しかしゼストはそれを直ぐに飲まななかった。この男、スカリエッティは他人を利用し自らの欲
望を満たす、彼の嫌う種の人間だ。協力するのは特定の条件下に限られ、基本的に彼と関わる気は
ゼストにはなかった。
それに彼が、他人のために無償で動くことなどありえない。何らかの見返りを求められることく
らいは容易に想像が付くのだ。
「データが採りたいだけなんだ。心配しなくていい。一応確かめたけれど、危険はないはずだよ」
「必要がない」
見返りはデータであったようだ。どうせそんな事だろうと思っていた。
こちらの都合などお構いなしに言うスカリエッティ。しかしその最中にも、彼はちらちらと視線
を外して別のモニターを確認していた。
その中には彼の「新たな玩具」、大きな白い球体が映っていた。意識がそちらに散るところを見
ると、よほど気になるのだろうか。
「そうか…ではこうしよう。捨ててくれても構わない」
「何?」
「先に言ったが、私には別に調べたいものがあるのさ。この武器のデータ以上にね」
「ならば、それも必要ないだろう」
「有るに越したことはないというやつだよ。そういうことだから、欲しくなったらルーテシアに言ってくれ。
転送の仕方は彼女に伝えてある」
ゼストが待て、というのも聞かず、スカリエッティは通信のウインドウを閉じる。
言ってしまえば、どうでもよかった。彼の頭は話に出した武器の事よりも、それらの傍に出現し
ていた白い球体のことでいっぱいだったのだ。
「それにしても…驚いたね、あの時は」
それがラボの付近に突如として出現した、あの瞬間は今でも忘れられない。
レーダーの索敵範囲に検知された、謎の魔力の気配。魔導師とも魔法生物ともつかぬ異様な反応
に、スカリエッティは直ぐに動いた。
魔導による一時的な封印、そして移動。同時にそこらに転がっていた、見たこともない何振りか
の剣の回収。労力はそれなりに使ったが、しかしそれだけの価値はあった。
「外殻の解析はまだ半分も至らないが、生物の組成らしきものが多かった…ガジェットへ応用して
もよし、再生してもよし、だね」
スカリエッティは思わず笑みをこぼした。未知との出会いは科学者との喜び。そういう意味で、
球体は彼にとってまさに神の恵みであった。
封印を維持しつつ調査を進めてみたところ、「卵」の外殻だけでもとてつもない魔力を秘めてい
る。さらにそれを取り囲むように、複雑難解に入り組んだ呪術の式。解読を進めれば進めるほど新
たな情報と謎が浮かび上がる、彼が得たそれはまさに魔導の迷宮であった。
とはいえ、天才ジェイル・スカリエッティに解けぬ魔導など無い、というのが彼の身上である。
事実異様な好奇心に駆られた彼は、恐るべき速度で「卵」の解読を進めつつあった。
彼は「卵」を、生命のソースの貯蔵庫の様なものだと推測している。
得られたデータを分析、適切に翻訳し再構成して得られたものは、ミッドチルダはおろか、どの
世界にも存在しない生物のものがほとんどであった。そしてその全てが、その中央部に向かって、
魔力の志向性を帯びている。
あたかも、全ての生物を超えた新たな生命体を、作ろうとしているかのようだった。
「外殻が終われば、あとは内部か…容易ではなさそうだが、是非とも解読しなくてはね」
まだ、彼には聞こえていない。「卵」の中から響く、生命の脈動が。
世界崩壊の鍵とは別に、かつて世界の調和を保ち続けていた、一人の女の魂の声が。
――兄 さん
にいさ ん
ニ イサ ン
ワタ シヲ ミ ツケ テ
「!」
背筋を走る「何か」。
雪辱を申し込んできたティアナの山吹色の光球を抜剣もせず打ち飛ばし、火炎の弾丸で返礼した
カイムは弾かれたように、ミッドチルダの空を見やった。
背骨の芯を通り、爪先から抜けてゆくような違和感であった。生理的な不快感を伴ったそれが身
体を這い下り、肩を上って、得体の知れぬ何かを脳に伝えている。
これは。
これは?
「………」
殺那的な、言い知れぬ不安であった。
しかし未だに脳裏に残るそれは、カイムが知っている種のものだ。マナを殺し、崩れゆく空中要
塞を駆け抜けた時の、忘れもしないあの悪寒――
魔剣の呪法に通じていても、占術の類いを学んだことはない。未来を労せず知ろうなどとはおこ
がましいし、予感や虫の報せなどというものが基本的に当てにならないのはあの世界で学んだ。
だが、これは何だ?
言葉にできない、纏わりつきわだかまるような、この漠然とした、胸騒ぎは。
「…………………」
苛立ちを振り切るようにスバルの足を払い、カイムは守る腕ごと、乱暴に蹴り飛ばした。
391 :
×DOD:2007/12/16(日) 12:55:45 ID:vpb7huRh
終わりです。さようなら四章。こんにちは五章。
今回はおまけ無しです。では失礼。
心ならずもクロスでのはやては、水滸伝の宋江に見えてくる。
6課は梁山泊なのか?確かに武闘派多いけど。
>392
では、誤学人は誰が?
>>391 GJです。
相変わらず表現がうまいな。
アリオーシュの契約者はそこに行きますか……
そしてスカリエッティの言う武器とは?
というかスカ…自殺志願者かお前は…
よりによってフリアエ入りかよ卵…
これからの展開に蝶・期待デス
>>391 GJですよ〜
表現力の差に時々自信を失いますがorz
さてと…予想よりもちょっとだけセフィロスがデレた第3話、投下してもよかとですか?
>>395 ああ、片翼の天使を聴きながら許可します。
魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使
第3話「力と恐れと」
セフィロスがSSランクというでたらめな数値を叩き出した模擬戦から4日後。この日は六課敷地内の森林にて、個別指導が行われていた。
なのはとティアナ、ヴィータとスバル、フェイトとエリオ・キャロという組み合わせで、
それぞれのスタイルに合わせた教導がなされている。
そんな中、セフィロスはというと、1人正宗の素振りにいそしんでいた。
(シグナム、セフィロスさんの様子はどうですか?)
そして、それを横で見ていたシグナムの元へ、フェイトの念話が届いた。
(相も変わらず素振り中だ)
(そっか)
(でも、ちょっと意外だよね)
次に聞こえてきたのは、なのはの声。
この念話は、なのは、フェイト、シグナム、ヴィータの4人の隊長格の間で繋がっており、
位置的に離れている4人が会話をするのに一役買っていた。
とは言え、これは仕事中にこっそりネット掲示板で「うはwwwワロスwww」などと雑談しているようなものなので、
指導している新人達4人には内緒である。
(なのはもそう思う?)
(うん。こう言っちゃうとアレだけど…面倒くさがって来ないと思ってたから)
言うまでもなく、セフィロスの人付き合いはそういい方ではない。いや、はっきり言って悪い。
なのは達とはろくに話そうともしないし、愛想も悪すぎる。
そんなセフィロスだったが、自ら指導者側に加わることはないまでも、少なくとも訓練へは毎日参加していた。
あのシグナムですら、訓練時間中は事務仕事かぶらぶらするかなのに、である。
よって今日はセフィロスの観察役(監視役?)としてシグナムを駆り出し、その様子を見ていてもらうことになった、というわけだ。
(アイツも人並みに暇だと思っているんじゃないか? 私の場合はヴァイスが話し相手になってくれるが、アイツはそうもいくまい)
(本当にそれだけかな…ヴィータちゃんはどう思う?)
(どう思うっつーか、確定情報なんだけどな…アイツもアイツなりに気にしてるんだとよ)
(何を?)
(剣の腕だよ)
本人曰く、剣速がやや遅くなっているのだそうだ。
普段はまだいいが、必殺技の八刀一閃の際に、ごく僅かに振りが遅くなるらしい。
知覚できるかできないかの、それこそ誤差のようなラグだが、本人にとっては深刻な問題だ。
そもそもセフィロスは5年前からほとんど剣を振っていない。
死した身体の再構成の間は身動きが取れず、戦闘はコピーを介してのものだった。
復活してからの戦いは、いずれもその身を変異させてのものであり、正宗は使っていない。
いかにジェノバの遺伝子により人ならざる力を得たセフィロスとは言え、その間に僅かに腕がなまったようだ。
無論、よりにもよって何も知らなかったソルジャー時代の方が巧かったなど、セフィロスのプライドが許すはずもない。
それで、普段から素振りをして実力を保てるようにしていたのだ。もっとも、ヴィータもその複雑な背景までは知らないのだが。
(しかし、お前もへこたれないな)
感心したような声を、シグナムがヴィータに送る。
(何がだよ?)
(模擬戦でああも取り乱していたというのによく立ち直ったな、ということだ)
(…まあ、あたしも色々あったんだよ)
(セフィロスさんと?)
(なぁっ…!)
なのはに図星を指され、ヴィータの狼狽した声が響いてきた。取り乱すほどということは、よほど知られたくないということか。
(何があったんだヴィータ、言ってみろ。ん?)
シグナムの表情は気持ちニヤニヤしていた。
(私も知りたいな)
(何があったの、ヴィータ?)
「う…うっせーな! 誰が言うかっ!」
遠くの方から、念話ではなく、ヴィータの肉声が微かに聞こえた。
「えっ!? な、何ですかヴィータ副隊長!?」
やがて、今度はスバルの驚いた声が聞こえてくる。
その様子にシグナムはやれやれとため息をつくのだが、セフィロスは気にも留めず、黙々と素振りを続けるのだった。
事は2日前――模擬戦から2日経った日に遡る。
丁度その時、セフィロスは食堂の椅子に腰掛け、コーヒーを飲んでいるところだった。
ミッドチルダのコーヒーは、元いた星よりも少しだけ美味い。
無論、セフィロスにとっての元の星の味は5年も前の味なので、今はどうだか分からない。
それでも、少なくともその味よりは、今飲んでいるものの方が、彼は好きだった。
『ここにいたのか、セフィロス』
と、不意に下の方から、低い男の声がした。久々に聞く男らしい声だったが、そこには若干違和感があった。
下の方から、なのである。
声はかなり低い所――テーブルの陰になるような高さから聞こえてきたのだ。
そんな身長の人間などいるのかと思ったセフィロスだったが、
(…リインフォースも小人だったか)
と思い直し、視線を声のする先へと落とす。
そこにいたのは、青い体毛を豊かに蓄えた狼だった。少し毛が多いので、ともすれば犬にも見える。
確かはやてがよく連れている狼だったな、とセフィロスは思い出していた。
『驚かんようだな』
『お前のような獣は、私の星にもいる』
落ち着いた狼の声に応じると、セフィロスはカップのコーヒーを飲み干した。
『ザフィーラという』
それが狼の名前だった。
曰く、彼はシグナムやヴィータと同じくはやての従者で、
あと1人、医務室のシャマルを含めた3人と1匹は、とあるロストロギアから生まれた魔導生命体なのだそうだ。
理解するのが面倒だったので、召喚獣のようなものだとセフィロスは認識しておくことにした。
『それで、その番犬が何の用だ?』
『主から用を預かっている』
特に気にした様子もなく、ザフィーラは言った。
この日はやては、用事があって六課を離れていた。流石に部隊長ともあれば、出頭の機会も多いだろう。
『お前と戦って以来、ヴィータの気分が優れなくてな』
そう言われて、セフィロスは先日の模擬戦を思い出した。
(そういえば、かなり怯えていたな…)
だからどうというわけではない。
怯えられて然るべきの手は使ったのだし、戦いに罪悪感を覚えるなんて馬鹿げた真似もしない。
要するに、セフィロスにとってはどうでもいい話なのだ。
『それで、私に何をさせたい?』
『謝ってこい…だそうだ』
これにはセフィロスもほとほと呆れた。
どうして自分が謝る必要があるのだ、と。自分はちゃんと言われた通り、模擬戦に出ただけだと言うのに。
先日の説教で十分だろう、とセフィロスは思っていた(それさえも聞き流していたのだが)。
本来、職場の仲間をあのようにつらい目に遭わせた場合、何かしらの罪悪感を持つのが普通なのだが、
彼にはその仲間意識というものが特になかったという問題があったのだ。
『不本意かもしれんが、明日のホテル・アグスタでの任務までに本調子になってもらわんと困るのでな。行くだけは行ってくれ』
そんな心情を察してか、ザフィーラがフォローを交えながら言う。
『…それに、俺としても、仲間がああでは心配なんだ』
と、最後に付け足した。
結局この場はセフィロスが折れる形となり、ザフィーラに案内され、隊舎にあるヴィータの部屋を訪れることになった。
『ザフィーラだ。入るぞ』
部屋のドアの前で、ザフィーラがヴィータに対して名乗る。
特に拒絶の言葉もなかったので、彼はそのまま部屋に入ることにしたのだが、
『…すまんが、開閉スイッチを押してくれ』
そのままではスイッチに届かないので、セフィロスに頼むことになった。
一応立てば届くには届くのだが、それはこの姿ではかなり手間がかかる。
仕方がないのでセフィロスが押したが、彼が人の姿になることもできるのを知れば、多分怒るだろう。
自動ドアが開き、まずザフィーラが部屋に入った。
『セフィロスを連れてきた』
『………』
ヴィータはセフィロスを一瞥しただけ。何も答えず、再び視線を落とす。
それは、普段のヴィータからはかけ離れた、かなり痛々しい様子だった。
ベッドの上で体操座りのように座り込み、赤い目をしたウサギのぬいぐるみをぎゅっと抱いている。
プライドの高いヴィータなら、そういう姿を見られるのを何より嫌うはずだが、この日は何の反応も示さないという重症ぶりだった。
瞳の色は暗い。完全に意気消沈といった表情で、彼女はふさぎこんでいた。
セフィロスは特に何も言わず歩み寄り、ベッドの横に立つ。
『俺はどうすればいい? 外に出るべきか?』
ザフィーラがセフィロスへと問いかける。
この狼は、かなり気の利く奴のようだ。
少なくとも、セフィロスは今までに会った六課の面々の中では、まともな部類だと認識していた。
次点にはシグナムなどもいたが、彼女はリベンジと称し、ことあるごとに模擬戦を挑んでくる。
それさえなければ静かな奴なんだが…と、セフィロスは内心でため息をついた。
『別にいい』
と、そこでセフィロスはザフィーラの問いに答えた。
『そうか。では…』
そう言って、ザフィーラは部屋の床に寝そべる。
セフィロスは何も言わない。ただ黙って、その場にじっと立っていた。
ヴィータも何も言わない。ただ黙って、ベッドの上で縮こまっていた。
ザフィーラも何も言わない。ただ黙って、床からその様子を見ていた。
誰も何も言わない。全員が全員、じっとして黙り込んでいた。
当然室内では、物音1つ立つことはない。非常に重苦しい沈黙が、その部屋に流れていた。
相部屋のシグナムが戻って来たら、さぞ驚くだろう。
彼女もどちらかと言えば無口な方だが、さしもの彼女も、この中に入れば真っ先に折れるはずだ。
『…怖かったんだよ』
それが一瞬だったのかはたまた永遠だったのか、この時間感覚さえ狂うような沈黙の中では分かるはずもなかったが、
ともかくそんな沈黙を破ったのは、他ならぬヴィータだった。
『お前は怖えーぐらいに強かった。化け物…なんて失礼なことは言わねーけど…それぐらいは強かった』
ぽつりぽつりと、うつむきながらヴィータは語る。
実際に化け物であるセフィロスの目には、何の感情も映らない。何を思っているのか、表情からは読み取れなかった。
『何の自慢にもなんねーけどよ…あたしは、お前ほど強い奴と戦ったこと、ほとんどなかった。
お前ほど怖えー奴なら尚更だ。…自分の強さには、そこそこ自信あったんだけどな…』
自分の無力さを痛感した。弱い自分が許せなかった。
10年前の「あの悪魔」よりもなお恐ろしいセフィロスに、ヴィータは言った。
『…強くなりたいのか』
そして、ここにきてセフィロスは初めて彼女に声をかける。
『………』
問いかけというよりは確認だった。無論、言うまでもない答をヴィータは口にしない。
『私のようになりたいのか』
今度はそのように尋ねた。
『…でなけりゃ、はやてを守れねぇと思うから』
守るべき主の名前を、ヴィータは口にした。
『私のように恐れられたいのか』
『えっ…』
そう言われて、ヴィータは初めて視線を動かす。
驚いたような顔つきで、反射的にセフィロスの方へと顔を向けていた。
『私のようになりたいと言う者は、大勢見てきた』
セフィロスは語る。
――俺もアンタみたいに英雄になるんだ!
――アンタを尊敬していたのに…憧れていたのに…!
セフィロスの脳裏に浮かぶのは、黒と金、2人の若い剣士。
1人は彼と同じソルジャーとして、その誇りを貫いて散り、
1人は彼と同じ英雄と呼ばれ、他ならぬセフィロスを斬り捨てた。
『だが、私のようになるということは、大勢の人間の恐怖や憎悪と向き合うことだ』
軍人たるセフィロスの力と栄光は、戦場での犠牲に裏打ちされたものだ。
故に、彼はソルジャー時代から既に、多くの人間の恐れや憎しみを背負ってきた。
『それは、むしろお前の方が覚えがあるだろう』
ヴォルケンリッターの鉄の騎士へ、セフィロスが問いかける。
10年前にはやての従者となる前までのヴィータの幾百年は、まさに闘争と殺戮の――他者の憎悪に追われる歴史だった。
『お前はまた、そこへ戻る気か?』
『…それは…』
そんなことは、ヴィータの望みではない。その道ははやての最も嫌う道である。
何よりヴィータ自身が、やっと手にした心休まる日々を手放すことを――あの過去へ戻ることを、したくなかった。
『…じゃあ、どうすりゃいいんだよ?』
どのような力を求めればいいのか、とヴィータが問いかける。どうすれば、この無力感から逃れることができるのか、と。
『…なまじ1人で戦おうとするから、必要以上に強くなりすぎてしまう』
一拍の間を置いて、セフィロスが答えた。
『1人で全ての敵に止めを刺そうとするから、ああいう戦い方になる』
他を頼れないから、恐ろしいまでに非情な力と戦法が必要になるのだ、と。
『皆で強くなればいい。そうすれば、戦場で必要以上に目立つこともなくなる』
それが結論だった。
『…結局、今のままでいろってことかよ』
『本来の実力があれの2段上なら、それで十分だ。恐れられるのが嫌なら、今のままで仲間と群れていろ』
『言ってくれるじゃねーか』
いつの間にか、ヴィータの顔には、いつもの強気な笑みが戻っていた。
『…最後に言っておくが』
そして、それを見届けたセフィロスが、そうして念を押した。
『何だよ?』
ヴィータがその先を促す。
ややあって、セフィロスは再び口を開き、言葉を続けた。
『私は謝らんぞ』
と、短く言ったのだった。
しばらくヴィータは呆気に取られた顔で黙っていたが、やがてそれがツボにはまったのか、
『…ぷっ…ははははははははははははは!』
と、大層愉快そうに笑い出す。
『ぷくく…誰がお前の謝罪なんか要るかよ気持ちわりぃ!』
セフィロスが頭を下げる姿を想像してか、そのままヴィータはそこそこ長い時間笑い続けた。
確かに、彼のそんな姿は似合わないにも程がある。
だが、それをまるで自覚していないセフィロス本人は、何がおかしいのかと、内心で首を傾げるのだった。
そしてザフィーラは、相変わらずその様子を黙って見ているのだった。
『ヴィータの件だが…普段の調子を取り戻した』
翌日、ホテルでの任務から帰還したザフィーラがセフィロスへと報告した。
この日セフィロスは、一時的に無防備となる六課の防衛のため、出撃から外されていたのだ。
『それがどうした』
『なに、お前のおかげなのだから、礼を言っておこうと思ったまでだ』
寡黙な狼の語調が、その日は僅かに明るかった。
『礼もいらん』
『フッ…だろうな』
『何がおかしい』
セフィロスがザフィーラへと問いかける。
『いや…最初の頃に比べて、少しおしゃべりになったと思ってな』
『私がか?』
そう問うセフィロスの声は、少し驚いたような響きを持っていた。
(思えば…何故私はあの時、あのようなことを言ったのだ)
そして今。素振りを繰り返すセフィロスは、当時を思い出し、自分自身の態度に疑問を抱いていた。
らしくない。自分が下等生物を励ますようなことを言うなど。元の星にいた頃では考えられないようなことだった。
(まあいいか)
しかし、それで別段困ることもないので、セフィロスはその件のことを考えるのをやめた。
そして再び、無心に素振りへと打ち込む。だが、間の悪い人間というのは必ずいるものである。
「セフィロスさん。今日の訓練時間、終わりましたよ」
そう言って歩いてきたのはなのはだった。背後には新人達の姿も見える。
「いや、私はもう少し続けている」
なのはは良心から伝えに来たのだろうが、今からもう一度真剣に取り組もうとし
ていたセフィロスには、余計なことこの上なかった。
「一緒に帰りましょうよ〜セフィロスさん。適度に休まないと身体に毒ですし」
場を和ませようとしたのか、スバルがセフィロスにそう促した。
「私はそんなにやわじゃない。先に帰れ」
「さ…サーイェッサー!」
だが、セフィロスに突っぱねられ、思わず敬礼の姿勢を取る。
新人達も彼に少しずつ慣れてきたようだが、未だに模擬戦の恐怖は身に染みついていた。
過程はどうあれ、上下関係をはっきりとさせることには一役買ったようだ。
「それでは、私達はこれで…でも、無理はしないでくださいね」
結局なのはがそう言って帰ることで、その場は片付いた。
そのままセフィロスはもう一度素振りをしようと正宗を構えるが、今度は横から声がかかる。
「なら、私と手合わせしないか?」
未だ帰らずにそこにいたシグナムだった。
足元に置いていた木刀を投げ、セフィロスがそれを受け取る。
「ヴィータから、腕前のなまりを気にしていると聞いた」
それを聞いて、セフィロスは微かにだが、むっとしたように眉を細める。
「そう怒るな。まあともかく…そうして素振りをしているよりは、誰かと実際に戦った方が勘を戻しやすいんじゃないか?」
口元に笑みを浮かべながら、シグナムがもう一振りの木刀を手に取り、構える。
「魔力ありの模擬戦では負けたが…単純な技量では負けんぞ?」
半ば挑発的な響きを含ませ、シグナムが言った。
こういう所が、セフィロスにとっての苦手な所なのだ。
いちいち相手を自分のペースに引き込もうとしてくる。そして、断りづらい流れを作る。
(そういうのは私の専売特許のはずなのだがな…)
それに翻弄される自分に呆れながらも、セフィロスは正宗を置き、木刀を構えた。
実際、シグナムの言うことにも一理ある(それが気に食わないのだが)。
技の冴えを確かめるには、1人よりも、「生け贄」がいた方がいい。
「その自信が続くと思うなよ」
「どうかな?」
こうして、セフィロスはこの日、初めてシグナムの申し出を受けることになった。
ちなみに結果が出たのは4分後で、セフィロスが八刀一閃でシグナムを制していた。
「アレが出るまではいい勝負だったんだがな」
とはシグナムの弁。
「8発中4発も食らうようではまだまだだ」
とはセフィロスの弁。
翌日、セフィロスは早く起きていた。
正確にはこの日も、と言うべきなのだろうが、それでも普段よりも1時間は早く起きていた。
未だ時間は4時13分。
食堂でコーヒーでも飲んで時間を潰そうにも開いておらず、たまには図書館で本
を読もうとするもやはり開いていない。
結局できることと言ったら、正宗を携えて森に入り、素振りをするくらいだった。
前日のシグナムとの試合で完全に勘を取り戻したセフィロスだったが、鍛練はするに越したことはない。
せっかくのジェノバの力も、使わなければなまってしまう。
そういうわけで、当分は素振りを続けてみることにした。実際問題、それで技術が向上でもすればいい儲け話だ。
早朝の森の中は静かだった。
無音、というわけではなく、静か、なのである。
微かな小鳥のさえずりは心地よいし、さわさわと揺れる葉の音も涼しげだ。
ただし、やはりセフィロスの場合は例外だった。
彼はそれらに何の興味もない。でなければ、メテオで星を傷付けようなんて行動には出ない。
おおよそ自然愛護には、セフィロスは無縁の存在だった。
(ジェネシスなら、話は別だろうがな…)
セフィロスは、詩を愛していたソルジャー時代の友人の顔を思い出す。
と、自然の音に混じって、奇妙な音が聞こえてきた。
何かが回転する音、車のエンジンのような音、そして銃声…
セフィロスにも違和感が感じ取れるほど、早朝の森には似つかわしくない人工的な音が、断続的に聞こえてくる。
(木こりの作業の音ではあるまいし…)
そう思い、セフィロスは音のする方へと歩を進める。
やがて、木々の間に、開けた場所が見えるようになってきた。
そこには、2人の少女の姿があった。
オレンジの髪をツインテールにし、二挺拳銃を構える少女が1人。
青い髪をボーイッシュに整え、特徴的なグローブをはめた少女が1人。
そして彼女らは、セフィロスにも見覚えがある顔だった。
どうやら自分はミッド式勢よりもベルカ式勢の方が好きなようです。
…あれ? 六課メンバー中3分の2以上がベルカ式だ。
さて、もうお分かりでしょうが、次回はいよいよあの回です。
みんなお待ちかねのキーワードが飛び出すよ♪ せーのっ! ↓
>>403 少し…頭冷やそうか…。
何はともあれGJ。
はたして彼はどんな言葉を一同にかけるのやら。
ザッフィーが目立っていて個人的に良かったです。
次回も期待しております。
GJ。
セフィロスに少しずつ変化で出て来た様ですね。
次回はなのはより先にセフィロスがティアナの頭を冷やすのかな?
……何故か、顔面にブリザガをくらうティアナが脳裏によぎったぜ。
GJだぜよ!! それにしても冷たいセフィロス兄さん萌え、はぁはぁ ザッフィーにもちゃんとセリフがあって嬉しいっす。
次回はティアナとの絡みですか? もう今から辛抱たまらんです。
ところで前に書いたシノブ伝のクロスの続きを書いちゃったんですが…投下いいですかね? またギャグの短編なんですが。
幼女で妹だからて、調子乗ってんじゃねぇぞ支援
それじゃあ投下をいたします、まあ前回と同じく音速丸がオチャメする…ただそれだけです。
魔法少女ニニンがなのは伝2 「女風呂…それは神が与えた最後の楽園(エデン) by音速丸」
前回のあらすじ、世界一の美男子こと音速丸様が美少女だらけの世界に降臨! 心優しき音速丸様は全ての女どもを妻にしてやるのだった…
「音速丸さん! 何を勝手なナレーション入れてんですか!?」
「ぶるうああああ! 黙れサスケエエエ!!! こういう世界は言ったもん勝ちなんだよおおおお!!!(若本)」
「なんですと!? それじゃあ俺はあの美少女たちのお兄ちゃんになるううう!!」
「ずるいっすよサスケさん! それなら俺は白衣のシャマルさんと医務室でムフフ…」
「なら俺は未亡人のリンディさんとおおお!!」
音速丸とサスケ&忍者その1と2は今日も勝手な妄想で限界ギリギリなヒートアップを巻き起こす。
本当のあらすじ、なのはの召喚魔法で呼び出された音速丸たちは何故かこの世界に居座っていた。
「リンディさんお茶ください」
「フェイトちゃんお醤油とって」
「クロノ君、ご飯のおかわり頂戴」
「お〜いクロスケ〜、その焼き鮭を1/3+1/6+1/2だけくれ〜(若本)」
ハラオウン家の食卓で勝手放題の音速丸とサスケ軍団、彼らはどういう訳かすっかりアースラにも馴染んでハラオウン宅に居候していたのだった。
「誰がクロスケだ! それに君の要求じゃ僕のおかず全部くれって事だろうが!」
「ちっ、ばれたか〜(若本)」
「音速丸さん、そんなにおなか空いてるなら私のおかず上げますよ。食べかけでよかったら」
「お〜ありがとさんフェイト〜。やっぱり持つべきものは美少女だな〜(若本)」
「ずるいっすよ音速丸さん! 美少女の食べかけなんてレアアイテムを!」
「なら売ってやるぜサスケ、一口5000円だ〜(若本)」
「なら俺は5500円出します!!」
「いい加減にしろおおお!!」
今日もクロノが突っ込みを叫ぶ、そんなクロノに母リンディは微笑んで口を開いた。
「クロノ、そんなに怒っちゃダメよ。賑やかでいいじゃない」
「でも母さん!」
「さすがマダムは話が分かる。でもあまりお美しいと美人罪で逮捕しますじょ〜(若本)」
「まあお上手♪」
呆れるクロノをよそに食卓の賑わいは続いた、当分クロノは音速丸たちに頭を悩ませることになるだろう。
「さて諸君、緊急だが緊急定例会議だ!(若本)」
「緊急なのに定例会議ですか…」
「何か激しく嫌な予感が…」
音速丸に呼び出されたサスケ+忍者1と2がいつものごとく突っ込みを入れるが音速丸は気にせずに続ける。
「ま〜気にすんな。それより今、アースラ女性陣はどこにいると思うかね諸君〜(若本)」
「女性陣? さっき訓練するって言ってましたよ音速丸さん」
「甘え〜なサスケ〜、食べごろのベリーメロンのように甘え〜よ。今あのメス猫どもは訓練の汗を流すべく入浴中と来たもんだ…そこで俺たちがすることなんて〜決まってるよな〜(若本)」
「ま、まさか覗きに行くって言うんじゃ…」
「その〜まさかよサスケ〜(若本)」
「いや、さすがにそれは問題あるんじゃ…」
「そ〜言えば、シグナムもシャマルも入るとかなんとか〜リンディママンもいるってよ〜(若本)」
「隊長! 我らあなたに死ぬまで付いていく所存であります!」
「どうか指示を!」
「奴隷とお呼びください! 音速丸様!」
「ふっ話の早い奴らめ…よ〜しでは女どもの肢体をた〜っぷりと覗き尽くしてやるとするか〜行くぞ野郎共おおお! ぶるううああああ!!!(若本)」
音速丸を神輿に担いだサスケ+忍者1号、2号はアースラ内の風呂場に向かって駆け出す、その彼らの前にクロノとユーノが立っていた。
「ぶるううあああ!! そこを退け〜いチビコンビ!! 俺たちは弾ける女体の神秘をこの目とカメラに収めるという重大な使命があるんじゃああ!!!(若本)」
「っていうかただの覗きだろうが! そんな不謹慎なことを許せるか!」
「音速丸さん、僕はなのはの裸をあなただけには見せる訳にはいかない!!」
「音速丸さんヤバイっすよ〜あの二人って子供だけど凄い魔法を使うそうじゃないですか…」
「しかたあるめ〜。忍者1号、2号〜ちょっとこのセリフを呼んでみろや〜(若本)」
「はい、何々〜“ここは俺にまかせて先に行け!”」
「“俺、帰ったら実家のパン屋を継ぐんだ”ってこれ死亡フラグ的なセリフじゃないすか!?」
音速丸とサスケは二人を置いて既に先に進んでいた。
「ぬはははは!! 死亡フラグを立てたお前らを生贄に〜覗きに行くって寸法よ〜。だが安心しろ〜いお前らの分もこのキャメラ(カメラ)にたっぷりと女どもの痴態を収めてやるぜ〜(若本)」
「了解です隊長! 我らの分も天使たちの姿をそのキャメラに収めてきて下さい!!」
「おう! おう! お〜うチェリーボーイズ! 俺たちをただのアニメオタクだと思ったら火傷するぜ! 音速丸さん! 俺たちの分もエロ写真とエロ画像お願いします!!」
「邪魔するな変態忍者!! 母さんとフェイトを覗くなんて許さ〜ん!」
「退け〜! なのはの裸体を他の男に見せられるか〜!!」
「あっ! 本音を言いやがったなこのエロガキ!!」
クロノとユーノを相手に忍者二人は(かなり絶望的な)戦いを挑むのだった。
「よ〜し、ここが天国〜つまり風呂場か〜(若本)」
「音速丸さん…俺、漂う石鹸の匂いだけでどうにかなりそうっすよ」
「ふふっ…青いな〜サスケ〜。よしそれじゃあキャメラをスタンバイレディ!! 風呂場の通気口にドライブ・イグニッションとしゃれこもうぜ〜(若本)」
「ラジャー!」
「そこまでだ! 変態ども!!」
その時、覗き準備を整える音速丸とサスケに青き狼ザフィーラが立ち塞がった。
「むむむ〜犬ッコロが〜邪魔をするんじゃねえ!! 俺たちはこれから聖域(サンクチュアリ)へと羽ばたかねばならんのじゃああ!!(若本)」
「どうします音速丸さん!? ザフィーラさんを足止めする生贄はもういないっすよ」
「よしサスケ、ちょっとこれを読んでみろい(若本)」
「え〜っとなになに“おいこのバター犬野郎、俺のモノでも舐めやがれ”って何てモン読ませるんですか音速丸さん!!」
「ほう…サスケ貴様どうやら本気で死にたいらしいな?」
「うわ〜!! ザフィーラさんが獲物を狩る獣の目で俺を見てる〜〜!! どうするんですか音速丸さん!? あれ音速丸さん?」
音速丸は既にカメラを持って一人で風呂場の通気口へと侵入していた、そしてサスケはザフィーラを激昂させて注意を引く生贄として捨て置かれたのだった。
「サスケ〜おめえの尊い犠牲はムダにはしねえぜ〜。さてさて〜女どもはど〜んな痴態を晒しているのやら〜もう俺っち辛抱たまらんぜよ!!(若本)」
通気口の出口に来た音速丸はカメラを構えて風呂場を覗いた!!
後日、音速丸の遺体(本当に死んだ訳ではないが…)が風呂場の隅で発見された、彼の脳裏とカメラに残っていたのは輝かしい女体などではなくアースラ所属の屈強な武装局員の入浴シーンだった。
時間を間違えた…ただそれだけの話である、音速丸のガラス細工のように脆い精神は武装局員たちの筋肉質な身体と無駄毛の映像に破壊されたりした。
続かない…たぶん
投下終了です、またやっちまった…なんかシノブ伝のアニメを見てたらいつのまにか書いてました。
真祖の人氏GJ!
はーどぼいるど&だんでぃ な世界観と登場人物達がたまらなく好きです。
てか、きれいなレジアスが映画版ジャイアンのような友情厚き好漢でニタリと笑ったよ俺w
なんか、スコッチとかブランデー呑みたくなってくるぜ!
×DOD氏もGJ!
今回の一番の被害者はスバルw 間違いない!
そしてスカ山はホイホイ死亡フラグを構築中……
数の子達が心配でならねぇ!!
音速丸(若本)
君には何も言わない方が良いんだろうか……
敢えて一言贈るなら
ゴッドスピード
今はただ音速丸(若本)の冥福を祈る……
>>391 GJ!
スカ程度で真性揃いのDODの狂気に勝てるわけねえだろ…常考。
この奇跡的作品の連続投下……しかもスゲエ! 珍しいことに全部元ネタ知ってる!w
>DOD
今回は敵パートでしたね。
カイムとアンヘル参戦で「やった! 機動六課の無双開始だ!」と思ってたけど、やはりそう簡単にはいかんご様子。
敵にも武器が渡って、ゲーム中で使えた武器ほど不安になりますな。やっぱスピア系?
契約相手も、下品妖精より安心でゴーレムよりは不安という中間点。どうなるか、全く予想できません。
>片翼
まだ歩み寄りの状態ですが、セフィロスのデレがちょっぴり見れて幸せですw
例の二人との邂逅がどうなるか……スバルとティアナの両方のタイプとの面識経験ありそうで、意外といい教導してくれますかね?
>ニニンがなのは伝
君の心に今すぐアクセス。
アニメも漫画も制覇してる自分としては、もはや脳内若本ボイス再生余裕ですw
っつか何気にフェイトの声がシノブだし、食卓でのシーンはこんなつながりがッ。
やってることはセクハラなのに、そこらのエロゲーの主役なんかよりも全然ムカつかないのが、音速丸たちの素敵なところですねw
なのは伝ハゲワラタwwwww
管理局もいいけど、スカ宅に居候する音速丸軍団も見たいw
どうも、2週間ぶりになります。
都築…もとい、続きが出来ましたのでUPしようと思いますが、よろしいでしょうか?
支援するっす
ブラックアウトは俺の嫁支援
3
クラナガンは、時空世界を統括するミッドチルダの首都である。
旧暦時代の戦火で廃墟と化した都市を取り壊し、区画整理しながら拡大・発展してきた。
時空世界の中心地として、管理内外の様々な世界の種族が集まるこの超巨大都市には、三つの政府機関がある。
一つ目は、行政機関として総ての時空世界に君臨し、政府の意思決定機関でもある元老院。
二つ目は、立法を司り、唯一の法律制定機関である最高法院。
そして三つ目は、司法・軍事・治安を一手に引き受けている時空管理局。
その中枢である時空管理局本局ビル(旧地上本部)。
1000階建てのセントラルタワーと、その周囲を守護騎士の如く囲む500階建てのサブタワーが周囲を圧倒する
この超高層建築物には、JS事件後の組織改革で管理局の全機能が集約される事となった。
しかし、同事件で500階より下のフロアの多くが破壊又は損傷を受け、その修理工事も完了してない現状では、
999階に長官室、998階は統合幕僚会議の議場、それ以外のフロアは、陸上部局と次元部局の臨時オフィスと
NMCC(国家軍事指揮センター)の一部が稼動を開始しただけである。
アール・デコ様式の幕僚会議議場控え室は、招集をかけられた管理局幹部及び、上級職員でごった返している。
彼らは、議場が開くまで雑談したり、ホールのあちこちにある空間モニターで、最新のニュースをチェックしたり
していた。
モニターには、現在クラナガンで起きている、デモ隊と管理局治安部隊の衝突についてのニュースが流れている。
綺麗にメーキャップされた、青いスーツ姿のアナウンサーが営業スマイルを顔に貼り付けて、原稿を淡々と読み
上げていた。
「本日朝8時より、クラナガン第28区のフューリーダ通りで行われている、分離主義派一般民によるデモは、デモ隊
内部に紛れ込んでいた過激分子によって暴動に発展し、現在、管理局機動一課第6師団の陸士部隊が鎮圧に当たって
おります」
画面は緊張した表情で体を屈め、絶えず背後を気にしながら実況をしている、青色の肌に二本の触角状の角を頭に
持つ、水色のYシャツを着たレポーターに切り替わり、画面下部には、地球人類のとは異なる文字のテロップが
表示される。
テロップを日本語訳すれば、KBC(クラナガン放送局)のロゴと生中継の表示、バーズ・ダドゥアという
レポーターの名前になる。
ならば、スタースクリームは俺の嫁
ついに冥王対破壊大帝かッ!?支援ッ!!
容赦のないSF支援
「フューリーダ通りのデモ現場です。えー、現在わたくしの背後では…デモ隊と陸士部隊の
激しい衝突が繰り広げられております」
それと同時に、カメラは衝突現場の方へズームする。
画面には、魔方陣を展開して暴徒鎮圧用に設定された魔力弾を発射する陸戦魔導士数名と、
その攻撃から逃げようと必死に走るデモ隊が映し出される。
路上には弾が命中して、うずくまったりのた打ち回ったりするデモ参加者と、投石に使われた
石や逃げる際に捨てられたプラカードが見える。
プラカードの幾つかには「我等に当然の権利を!」「私達は奴隷ではない!」と書かれている
のが読み取れた。
「えー、最初はデモ隊が陸士部隊の前でプラカードを掲げ、シュプレヒコールを叫びながら歩いて
回っておりましたが、いつしか自然発生的に石を投げつける者――」
すぐ近くで物が割れる音がして、レポーターの話が途切れる。
「えー、それからプラカードで殴りかかる者や、停まっている車をひっくり返す者が出始めた為、
その鎮圧のために陸士部隊が発砲を―――」
今度はヒュッと何かが目に見えない速さで走る音がして、画面端に映る車のフロントグラスが粉々に
砕け、破片がレポーターや画面に降りかかる。
「伏せろ! 伏せるんだ!!」
レポーターはそう言って地面に倒れこみ、画面も上下左右に揺れる。
再び画が安定した時、視点は地面スレスレにまで下がっていた。
画面には、石や、どこから持ってきたのか8インチのテレビモニターを投げつけるデモの群衆、
そこへデバイスを向ける陸士たちが通りの向こうに映っている。
彼らの発砲で、五〜六人が倒れるのが見えた。
それと前後して、複数の人間の怒号が聞こえたかと思うと、画面真正面に路面へ叩きつけられる
人の顔が映る。
苦痛にゆがんだその顔を陸士のブーツが踏みつけるのと同時に、画面はスタジオのキャスターに
切り替わった。
「中継が途切れましたので、スタジオより引き続き…」
なんて冷静なキャスター支援
「ふん、何が“我らに当然の権利を”だよ」
ブラウンカラーの管理局職員用スーツにミニスカートの、どう控えめに見ても十五歳以上
には見えない少女が、キャスターの解説を聞き流しながら苦々しげに呟いた。
「あたしら管理局が次元世界と主要地上世界の安全を守る為に、どれだけの犠牲を払って
きてるか分かって言ってんのか?」
「ヴィータ」
ヴィータという名の少女の横に立つ、ピンク色の長髪をリボンでポニーテールに束ねた、
同じ制服にミディスカートの、二十代前半の女性がヴィータを窘めるように言う。
「でも、そうだろシグナム? 魔術の力も無く、身を守る術のない只の一般民が――」
ヴィータがシグナムと呼んだ女性は、ヴィータの肩に手を置いて厳しい表情で言う。
「ヴィータ、お前は主はやてに同じ事を言えるのか?」
シグナムの言葉に、ヴィータははっとした表情でシグナムを見つめる。
「主はやても、かつては彼らと同じ…いや、それ以上に無力だったのだぞ。それを忘れるな」
「う…うん」
ヴィータが力無く俯いて答えた時、白の教官用制服を着たなのはが二人の所へやって来た。
「お待たせ。ヴィータちゃん、シグナムさん」
「ああ、なのはか」
「なのは…」
弱々しく呟いて顔を伏せているヴィータに、なのはは訝しげな表情で問いかけた。
「ん? どうしたの、ヴィータちゃん?」
「いや、あの…」
言いよどんだヴィータに、なのはは微笑みながら言う。
「何か悩み事があるなら、私でよければ聞いてあげるよ」
俯いていたヴィータは、意を決したように顔を上げてなのはに言った。
「なのは…。あたし、いつの間にか思い上がってみたいだ」
「え!?」
ヴィータが先のことを話そうとした時、二等陸曹の階級章を付けている、蠅の顔をした管理局員
がやって来た。
創元SF文庫やハヤカワSF文庫を読んでる気分だぜ支援
守らなければならないが、守ってやっているに変わってしまったのか・・・
支援
「高町なのは一等空佐と…シグナム三等空佐にヴィータ一等空尉でございますね?」
三人が頷くと、陸曹は空間モニターを開いて説明を始める。
「皆様がこれから受け取る情報は、機密扱いです。よって議場内でお聞きいただく内容は、親類縁者は
もちろん、無関係の局員に対しても全て他言無用です。この会議も機密となり、皆様がここに来た事も
公式の記録には残りません」
三人とも気後れする事無く普通に頷いた。仕事柄、この種の制約に受ける事がザラだからだ。
「では、こちらの機密保持誓約条項に捺印を願います」
三人は陸曹が開いたモニターに、一人ずつ人差し指を押し当てる。
「大変お待たせいたしました、議場へお入りくださいませ」
陸曹はそう言って丁寧に頭を下げると、他の雑談をしている将校グループの方へと歩み去る。
「じゃあ行こうか」
なのはが言うと、シグナムとヴィータの二人は頷き、議場入口へと向かう。
「で、ヴィータちゃん。さっきの話って何だったの?」
なのはに促されて、ヴィータは先程の事を再び話し始めた。
管理局統合幕僚会議々場は、最大一千名を収容できる大規模なホールで、演壇のあるステージを基点に、
扇形に聴衆用の座席が置かれている。
議場全体は音響設計とデザインの両立を目指した幾何学的オブジェで彩られ、暗幕が下げられたステージ
の後ろには、管理局のエンブレムが吊り下げられている。
議場中央部の辺りの聴衆席、7〜8メートルはあろうかという身長の長い鼻の巨人の隣に、なのはたち三人は、
話をしながら座る。
「そうだったんだ…」
ヴィータの話を聞いたなのはは、難しい表情で言った。
「シグナムに思い上がりを指摘されるまで、すっかり忘れてたんだ。
かつて、はやてと出会うまであたし達がどんなに道具として扱われてきたか、それがどれだけ嫌な事だったかを…」
そう言って落ち込んだヴィータに、なのはは慎重に言葉を選んで答える。
「ヴィータちゃん、人が…危険を承知で一生懸命主張している事に対して、無力だからって見下げるのは確かに
良くない事だよ」
なのはの言葉に、ヴィータは顔を伏せ、両手を強く握ってかすかに頷く。
「でもね、そうやって自分で過ちを認められたんだから、その間違ったと思うところを改めて行けばいいと
思うよ」
なのはは、そう言ってヴィータの頭を優しく撫でる。
「そうか…って、撫でんなぁ!」
なのはに頭を撫でられて微笑んでいたヴィータは、自分が子ども扱いされている事に気付き、頬を赤く染め
ながら、頭を振って腕を振り払う。
「あはは。ごめん、ヴィータちゃん」
「ふんっ!」
なのはが頭を掻きながら謝ると、ヴィータは顔を赤くしたまま、腕を組んでなのはから顔をそらした。
うるさいデモ市民なんて非殺傷設定でパパッと処理しちゃいましょうよ支援
分離主義者たちに絶望的な状況のときにある種のカリスマと魔法を使用せず
素で強いメガトロンが来たらそこに痺れる憧れるぅ!!支援
「しっ、長官が参られたぞ」
人差し指を口に当てながら言ったシグナムの言葉に、二人は話を中断してステージに視線を向ける。
緑の顔に金色の鶏冠のある蜥蜴人間を先頭に、日系や白人と思われる地球人類系や『エイリアン』を
思わせる、後ろに頭の突き出た亜人種といった男性数人と、二十代後半の冷たい雰囲気を漂わせる
眼鏡をかけた女性一人の、幕僚たち数人が演壇へと歩いていた。
全員、青の上級幹部用スーツと男性陣は白のスラックスを、女性はシグナムと同じミディスカートに
ストッキングを履いている。
「オーリス秘書官、私の見たところ、その…ずいぶんと若い者が多いように感じるのだが」
演壇に立った蜥蜴人間が、周囲を見回しながらオーリス・ゲイズという名の女性秘書官に言うと、
オーリス秘書官は淡々と答える。
「ゲラー長官、全員各部門のエキスパートです。
最近、管理局では目ぼしい人材を学卒の段階で確保するようになってきておりますので、必然的に
若者が多くなります」
ここで少し間をおいてから、オーリスは念を押すように言う。
「重要なのは能力であって、年齢ではありません」
初代時空管理局長官ディグ・ムデ・ラ・ゲラーは、それでも不安げに首を振りながら言った。
「それはそうだ。しかし、今回は事の重大さを考えると、多少なりとも成熟した人材の方が望ましい
のだが…そう思わんかね? ナカジマ空佐」
話を振られた初老の日系男性、ゲンヤ・ナカジマ一等空佐は苦笑いしながら長官に答えた。
「理想を言えばその通りでしょうが、現実はこの通りですし、若くても成熟した人間は幾らでも居ますから」
ゲラーは、首をすくめて頷くと、もう一度聴衆を見回し後でマイクを口元に寄せた。
「ディグ・ムデ・ラ・ゲラーだ。来たばかりの者は、空いてる席に適当に座ってくれ」
具体的な自己紹介の必要はないという事が分かっているので、ゲラー長官は、早速話を始めた。
「分かっている者も居るとは思うが、まだ、状況を飲み込めていない者も居るだろうから、改めて
説明しよう。
昨日、現地時間十七時三十八分、第1158管理外世界のセギノールという地にある、管理局中央基地が
攻撃を受けた。
当基地には、陸士部隊五百十九人と空戦部隊百四十六人が常駐し、攻撃当時は次元航行艦一隻に
ロストロギアの探索任務中だった執務官一名が居たが、不意の攻撃になす術が無かったらしい。
現在のところ、生存者は確認されていない」
ゲラーはここで一旦言葉を切り、聴衆に意味が浸透する時間を置く。
初めて事情を知った者たちからの、不安げなざわめきが議場に満ちる。
ゲラーが話を再び始めると、全員彼の話を一言一句聞き漏らすまいと、息を潜めて聞き入った。
魔力のあるなしに関わらずメガトロン様の御姿を見たらその魅力の虜だよ支援
質量兵器復活で一般人でも無問題だよ支援
魔法が使えないなら石を投げて戦えばいいじゃないか(管理局幹部談)支援
「一般には一時間後に公表するが、諸君らには先に伝えておく。
今のところ、何処の勢力による攻撃かは不明だ。また、分離主義派を含む、反管理局勢力からの
声明もない。
手がかりとなるのは、この信号音だけだ」
ゲラーが振り向いて頷くと、オーリスは空間モニターを開いて何事か言う。
すると、議場全体に設置されたスピーカーから、耳をつんざくような甲高い騒音が響き渡った。
「これは、襲撃者が管理局のネットワークシステムをクラッキングしたときの信号だ。
後の調査で、攻撃の目的は我々のネットワークの最深部に侵入する事だったと推測されている。
幸い、基地職員の賢明かつ勇敢な判断で、クラッキングは途中で阻止する事が出来た。
しかし、どんな楽観的な見通しに立っても、同種の攻撃が再度行われるのは確実であるため、
現在タイコンデロガは信号の解析とクラッキングの対策に取り掛かっている」
ゲラーは身を乗り出して、議場の聴衆一人ひとりを見つめながら、念を押すように言う。
「元老院は、第1158管理外世界に次元航行部隊と地上部隊の大規模派遣を決定した。これに伴い、
管理局もDEFCON3体制へ移行する。
ここに居る者は、戦闘と諜報のエキスパートだけだ、君たちのこれからの働きに期待する」
ゲラーは演壇から去ろうとした時、言い忘れていた事が一つある事を思い出して、マイクに向き
直った。
「諸君らに、聖王の加護が有らん事を」
そうか、メガトロン様が来たらその魅力と強さでメガトロン様を頂点にTF以外はみな平等の社会が
出来るのか。支援
持つ者持たざる者支援支援
本日はここまでです。
この次にはシャーリー初登場と、フェイトたちの状況を描く予定です。
んで、今回のオリキャラ元ネタ
ディグ・ムデ・ラ・ゲラー:『V』ビジター
リポーター:『スタートレック』アンドリア人
蠅顔の陸曹:『蠅男の恐怖』フランソワ・デランブル
なのはたちの隣に座っていた鼻の長い巨人:『エイリアン』スペースジョッキー
幕僚の一人:『エイリアン』エイリアン
オートボッツ司令官「ミッドチルダの人々はまだ若い種族だ」支援
すげえSF映画風味の異種族GJでございます。
しかしエイリアンって…
GJ!
俺の嫁のブラックアウトの活躍にハァハァするシャーリーが次回見られるわけですね?
しかし嫁が居ながら生命体8472の登場にも期待してしまう俺は破廉恥な男なのかもしれん。
>「諸君らに、聖王の加護が有らん事を」
なんか嫌なフラグが立ったような気がする…
GJ!!です。フェイトの状況を知った怒りのなのはとメガトロン様の戦闘が待ちどうしい
です。
>>441 俺はメガトロン様とスタースクリームの感動の再会が待ち遠しいぜ。
どうもです、現在サウンドステージ4を聞きながらカキコしております。
マリエル技官の“抹茶レイプ”はバカ受けですが、ヨーロッパでは本当にそうやって
飲んでいたそうです(今でも飲んでる人が居るとか)。
皆様、感想ありがとうございます。
>嫌なフラグ
…確かにそうか知れませんですねぇ、長官は聖王教会の信者ってだけのつもりなんですが。
――いや、ネタに使える…?
>>442 ダムでの閣下ッ!!シーンはついに総力戦だッ!!と燃えました。
あとジャズを引きちぎるスタースクリームにも。
>>444 「おおぅ…ジャズ…」
でもジャズを破壊したのはメガトロン様だぜ!
GJです。
というか考えてみればDVDの発売は来週の水曜日だ!
デビルメイクライ3クロスの十四話が出来ました、今回は前後編に分けて書いたんですが投下いいですか?
今回も例によってなのはとフェイトの出番は無いんですが…
一時間過ぎてますからOKだと思います。
頑張ってください支援。
>今回も例によってなのはとフェイトの出番は無いんですが…
逆に考えるんだ、その分バージル兄さんの活躍が見られると。
それじゃ投下します、今回のヒロインはデビルメイクライのシリーズの中でもバージル兄さんの次に好きな”アイツ”が登場!
魔法少女リリカルなのは Strikers May Cry 第十四話「Devil Strikers(前編)」
「ママー! おにいちゃーん!」
「ヴィヴィオ!」
青い空の下で母子が再び引き裂かれる、闇の剣士はその理不尽に心に宿った炎をさらに熱く滾らせた。
古代ベルカ文明の残した最強の戦船”聖王のゆりかご“その上に立つのは神に背き悪魔に魅入られた暗黒の司祭アーカム、ヴィヴィオを奪った彼をバージル達は魔力を高めて戦闘態勢をとる。
「アクセル…」
「刃似て、血に染めよ。穿て…」
ヴィヴィオを奪ったアーカムになのはとはやてが射撃魔法の呪文を紡ぎながらバージルは無言で射撃魔法の照準を合わせる。
「シューター!」
「ブラッディダガー!」
言葉と共にアクセルシューター・ブラッディダガー・幻影剣がアーカムの脳天めがけて飛び交う、非殺傷設定において一撃で昏倒させれば後はヴィヴィオを拾い上げるだけだったがその猛攻は強固な防御障壁で防がれた。
「警告無しで攻撃とは穏やかじゃないな」
アーカムは涼しい顔でなのは達の攻撃を防ぎ、手にしたヴィヴィオをバインドで宙に固定した。
「子供さらうハゲに容赦するほど甘くないだけや!」
余裕の表情のアーカムにはやてが吼える、ヴィヴィオを奪われ怒の炎を燃やすが今までの消耗になのはとはやては顔を歪める、そしておもむろにアーカムがその口を開いた。
「バージル、また私と手を組まないかね? このまま順調に行けばミッドチルダはじき私の手に落ちる。別にその人間達に肩入れする義理はないだろう?」
「断る、俺は貴様が気に入らんのでな」
「そうかね…しかし随分と変わってしまったのだなバージル」
「何?」
「かつての君は鋭く冷たい抜き身の刀身のような目だったが…今の君の目はまるで優しい人間のようだ」
「勝手な事を…」
バージルはアーカムの言葉に幻影剣を展開しフォースエッジ・フェイクを構えて答える、なのはとはやてもデバイスを手に身構えてアーカムを見据える、その時はやてが念話を展開した。
(バージルさん。この腹立つハゲって知り合いなん? なんか情報あったら教えて!)
(以前の世界で少々手を組んだ男だ、名はアーカム。以前はこれほどの力は無かったが、この世界で何か力を手に入れているようだな…現在の実力は未知数だ)
(それでも3人で戦えばなんとか…)
(却下だ高町)
(えっ!?)
(お前は今までの消耗が激しすぎる。そこの木偶を持って離脱しろ)
(でも! でもそんな…)
(こんな所でお前が死んだらあの娘はどうなる? 俺が必ず助ける、お前は引け)
(分かりました…)
(八神! 俺が隙を作る、融合しろ。この男の性格から考えればまだ何か小細工を打ってくる可能性が高い)
(了解や! 全力でいてこましたる! 行くよリィン!!)
(はいです! 幼女をさらうようなロリペド野郎には全力全壊です!!)
次の瞬間バージルは空間転移でアーカムの周囲に幻影剣を展開しその頭部に向けて射出、その隙になのははバインドで簀巻きになったクアットロを連れて離脱、はやてはリィンと融合し戦闘準備を整える。
「行くぞ八神」
「準備完了や。行くでオッサン! 今日のはやてちゃんは優しくないから覚悟しいや!!」
アーカムはこの幻影剣の攻撃を軽く防ぎ、戦闘準備を整えた二人に余裕の顔を崩さぬまま周囲に大型の魔法陣を展開した。
「君達ほどの強さなら普通の悪魔では物足りないだろう? 特別に上位の悪魔でお相手しよう」
その言葉と共に強大な魔力を纏った3体の悪魔が現れた、その圧倒的なプレッシャーにはやては背筋に寒いもの感じる。
溶岩の如き灼熱の体液が身体に流れサソリのような尾針を持つ巨大な蜘蛛型悪魔“ファントム”、幾つもの顔が集まった頭部に赤い雷光を全身から放つ大鷲の悪魔“グリフォン”、骸骨のような顔と身体に黒き炎の魔力を燃やす剣持つ隻眼の悪魔“ボルヴェルク”。
魔界の中でも最高位に属する3体がさらに中・低級の悪魔やガジェットを引き連れてバージルとはやての前に姿を見せる。
「彼らは呼び出しが出来ても従える事が不可能な程の上位悪魔でね…しかしスパーダの血族が相手なら喜んで殺してくれるだろう」
「こんな美少女と美男子にゴツイ敵出して…趣味悪すぎや、あんた地獄行き決定やな」
はやての言葉が終わるや否や一斉に襲い掛かる敵の軍勢、ガジェットの射撃攻撃に加えてファントムが口から巨大な火炎弾を吐き宙を舞うグリフォンが雨のように雷撃を落とす、二人は防御障壁の構築と同時に側方に回避、射撃魔法でこれに応戦する。
ガジェットと低級悪魔ヘル・プライドの群れを遠距離攻撃で散らす二人に死神の姿の悪魔ヘル・ヴァンガードと両手に鎌を持つ“デス・サイズ”らが接近、死を与えんと手の鎌を次々に振りかぶる。
「シュヴァルツェ・ヴィルクング!!」
声と共に高魔力を込められたはやての両の拳が鎌もろとも数体のヘル・ヴァンガードの身体を四散させた、バージルも幻影剣を円周展開しながら閻魔刀とフォースエッジ・フェイクの刃でデス・サイズ以下数体を斬り裂き滅ぼす。
「邪魔だああ! 人間!!」
その時、人外の低さを持つ声と共に上空からグリフォンが雷撃を纏ってその巨体を躍らせ鋭い鉤爪をはやて目掛けて急降下を仕掛けてきた、回避の間に合わないはやてをバージルが高速転移魔法で接近し彼女を抱えてその攻撃を避ける。
「大丈夫か八神」
「私は大丈夫です。それよりバージルさんの方が…」
バージルははやてを助ける際にその身で彼女を守り背中をグリフォンの爪で大きく切り裂かれていた、傷からは止めどなく血が溢れ彼の青い服をどす黒く染める。
しかしはやてがバージルの傷を心配する暇も無く、燃え盛る体液を滾らせながら蜘蛛型の最上位悪魔ファントムが接近、二人を穿とうと巨大な前脚とサソリのようなその鋭い尾針で刺突の一撃を見舞う。
はやてが防御障壁でそれを防ぎ軋む障壁に顔を歪める、バージルはファントムの頭上に転移し兜割りを見舞おうと両手の白刃を振りかぶる、しかしその彼の身体をグリフォンの吐き出した赤い雷撃が襲う。
「バージルさん!! こうなったら…バリアバーストッ!!!」
はやては防御障壁を意図的に指向性炸裂させ眼前のファントムから距離をとり雷撃に吹き飛ばされたバージルに駆け寄る。
「大丈夫ですか!? こうなったらデアボリックエミッションかラグナロクで一掃して…」
「却下だ八神、お前の高威力の攻撃では魔力消費も隙も大きすぎる、不発に終われば一瞬で殺されるぞ。それにこの距離の大威力魔法ではその余波であの娘が危ない」
「そんなら一体ずつ各個撃破かいな…きつすぎやな」
バージルとはやては傷ついた身体で背を合わせて敵を一瞥する、二人を前後から挟み込むようにファントムとグリフォンがにじり寄り他の悪魔やガジェットも二人の周囲を囲み込む。
「さ〜そろそろ死んじゃう時間だよ〜ん♪ ヴィヴィオちゃんの前で派手におっ死んでね〜」
いつの間にかその姿を黒い道化ジェスターに変えたアーカムが二人の危機を喜び耳障りな笑い声を上げる。
(融合してなんとか保っているが八神も消耗している。こうなったら“魔人化”で一気に叩くか? しかし俺と八神達の攻撃を軽く防いだアーカムの防御力を考えれば温存しておきたいのだが…)
迫る敵の脅威にバージルが自身の最高の切り札を出す算段を考えた時、遠方にてゆりかごに近づく影が呪文の言の葉を紡いだ。
三つ首の竜の上に立った一人の少女が静かに、だが強い意志を込めて呪文を唱える。
「我が求めるは極寒の凍気、氷結の獄犬よ、その凍て付く息吹きを我が竜に宿せ! フリージング・ブレス!!!」
その言葉と共に空を駆ける三つ首の氷竜フリードリッヒが高出力の魔力と凍気で形成された氷塊を撃ち出し灼熱の大蜘蛛ファントムの巨大な身体を凍りつかせた。
目の前で悪魔の中でも最上位に属するファントムが動きを封じられた事にグリフォンは声こそ上げなかったが大きな驚愕を覚える、その刹那上空を通り過ぎたヘリから白き閃光が舞い降りた。
「流ううううう星えええええ脚ううううう!!!!!!!」
それはバージルから学んだ最高の蹴り技、白き破壊の魔獣の力を宿した脚部のデバイスで少女はグリフォンの身体を貫いた。
「ぐおおおおお!!!」
絶叫を上げて悪魔が羽根を散らしながら吹き飛ぶ、さらに氷竜の上で己が得物を構えた若き槍騎士が身体に宿った時の悪魔の力を解放する。
「時よ加速しろ! クイックシルバー発動!!」
次の瞬間その槍騎士の身体は影も捉えられぬ速さで加速し、ゆりかご上部に集った低級悪魔やガジェットを一切の抵抗を許さず斬り裂き全て瞬殺した。
驚愕に目を丸くするジェスター(アーカム)の眼前に銃型デバイスが唐突に現れた。
「随分と大きな鼻ね、なんなら2つ3つ穴を増やして風通しを良くしてあげるわよ?」
突如現れた双銃を構える少女がジェスターの顔をその銃口で捕らえた、道化は魔力を込めた拳で少女に攻撃を仕掛けるがその攻撃は少女の身体を通り抜けたまるで水面の“影”のように、しかし少女の放った魔力弾は道化の顔を捉えたのだった。
「何!?」
元の姿の司祭服に戻ったアーカムは目を見開いた、先ほど目の前にいた少女は煙の如く姿を消してはるか遠方に移動していたのだ、高速転移の形跡は無いまるで“影”のように現れそして消えたのだ。
「至近距離の顔面直撃でも倒せない…なんてタフなのよ」
少女は双銃を構え仲間達と共にバージルとはやての下に集まる、それは悪魔の力を得た若き戦士達、機動六課フォワードメンバーである。
「お前達…」
「みんな…」
「バージルさん! 八神部隊長! 助けに来ました!!!」
突然の救援に唖然とするバージルとはやてに己が鉄拳に魔獣の力を纏った少女スバルは満面の笑みで答えた。
「スバル! 挨拶は後回し、こいつらまだ潰れてないわよ!!」
銃型デバイスを構えた少女ティアナが叫ぶ、フリードの凍気で凍りついたファントムがその灼熱の魔力を高めて全身を覆う氷を溶かし始めスバルの蹴りを受けて吹き飛んだグリフォンが再び宙に舞いバージル達に狙いをつけて赤き雷撃をその身に纏う。
「どうしますかバージルさん、部隊長!?」
「お前らはこの悪魔どもを叩け、俺はあの男を斬る」
バージルはティアナにそう言い残し即座にフォースエッジ・フェイクを構えてアーカムに向かって駆けた、しかし隻眼の悪魔ボルヴェルクがそのバージルに踊る。
ボルヴェルクはこの戦いの開始早々から自身の足元に剣を付きたて戦いの行方を見据えていた、バージルが後ろのアーカムに用があると感じたボルヴェルクはバージルが単身こちらに向かって来るまで待っていたのだ。
そしてその予想は的中しかつて自分を倒した最強の悪魔スパーダの息子であるバージルと剣を交えボルヴェルクは剣を荒々しく振るう、言葉で無く剣を持ってのみ語る魔界の武侠が歓喜に剣を躍らせる。
ボルヴェルクの轟剣を斬り返し早くヴィヴィオを助けんと閻魔刀を引き抜くしかし隻眼の悪魔はその剣速を上げてバージルと互角に斬り結ぶ、その時そんな二人の間に超高速の槍の刺突が割って入る。
それは魔界馬の力で時を加速させたエリオだった、エリオはストラーダの刃でボルヴェルクの剣を受け止めて叫ぶ。
「スバルさん! 今です!!」
「ベッキー行くよ! ゾディアック!!」
スバルがベオウルフの力により強力な白い魔力弾を撃ち出しボルヴェルクの剣を受け止めるエリオに支援攻撃を出す、その光弾はボルヴェルクの顔面に直撃しその身体を吹き飛ばした。
「バージルさん行ってください! ヴィヴィオを助けに!!」
「ここは僕達が何とかします!!」
スバルとエリオが勇ましく吼える、もはやバージルがヒヨッ子と呼んだ面影は微塵も無いあるのは正義を胸に抱く誇り高き戦士の気概のみ、バージルはその二人に背を向けてアーカムに向かって駆け出し、そして静かに呟いた。
「もうヒヨッ子呼ばわりは出来んな…」
ツン支援
勇ましく成長した弟子の姿に魔剣士は聞こえない程度の感嘆を残し守るべき少女を救わんと刃を構え邪悪なる司祭の下に向かった。
瞬時に発動した空間転移で距離は詰まりフォースエッジ・フェイクで繰り出されたバージルの斬撃がアーカムの意識を刈らんとその首筋に真一文字に走った、しかしその一閃はアーカムが出した黄金の剣に遮られる。
「君のデバイスはこの程度かね? バージル」
「何!?」
次の瞬間バージルの身体はアーカムの黄金の剣の発した高熱の光の波動に吹き飛ばされた。
「くっ!」
「どうだね? このエクスカリバー(聖剣)の威力は、これでも絞ったものなんだがね」
「下らん名前だな…貴様にはお似合いだ」
「これでもどこぞの管理外世界のロストロギアをデバイスに改造したものなんだよ、名前はともかく威力は素晴らしいだろう?」
アーカムはそう言いながら剣を天にかざして身体に魔力を高めていく、人間ではありえない凄まじい瘴気がその五体から立ち昇る。
「君とダンテに倒された私はこの世界に飛ばされてね、君達から受けた傷が深くて元の身体は使い物にならなくなってしまったよ…だから私は変わったのだよ今度こそ人間を超えた存在に…」
その言葉と共にアーカムの身体は黒い司祭服を突き破るほどに隆起して鋭角的で攻撃的な人外のものへと変える。
「悪魔の体組織を人造魔道師の技術で培養した身体に戦闘機人と同じ身体強化とAMF併用の対魔道師戦闘能力、さらにレリックコアを埋め込んで得られた無尽蔵の魔力を持つ。人造魔道師と戦闘機人の技術を基に生まれた人造悪魔…」
そして現れたのは翼と角を持つ悪魔の身体、在りし日の“伝説の魔剣士スパーダ”を模した身体へとその身を変えたアーカムの異形の姿、それはもはや人などではなかった。
「スカリエッティの作った最強最高の改造体、開発コード“人造悪魔ディアボロス”それが今の私だよ」
自分の父の姿を模倣されバージルはその顔に怒りの感情を刻む、そしてアーカムはその手をバインドで縛ったヴィヴィオに伸ばす。
「無敵の身体に最強の聖剣そして…」
アーカムは腹部から飛び出した無数の触手でヴィヴィオの身体を自分の胴体に括り付けた。
「やだ〜! おにいちゃ〜ん!!」
「これが君に対する最高の盾だよバージル。君にこの子供ごと私を斬れるかね? それとも消耗した君で今の私をこの子供だけ避けて斬れるかね?」
人間としての身も心も捨て悪魔と成った闇の司祭は幼き命を盾に魔剣士にその手の聖なる剣を向けた。
「日輪脚うううう!!!!」
決闘を邪魔された怒りにより激しさを増すボルヴェルクの剣だが、鉄拳の少女スバルはベオウルフとの融合で爆発的に威力を増大させた蹴りでこれを弾き返しさらにカウンターの連撃を叩き込みその強力な蹴撃でボルヴェルクを吹き飛ばした。
「エリオはティア達の所に行って!」
「えっ!? でもスバルさん一人じゃ…」
「私は大丈夫。ティアの新しい能力は魔力消費が大きいみたいだからサポートしてあげて」
「分かりました…でも無理しないで下さいね」
エリオはそう残してファントムとグリフォンの猛攻に晒さているはやてとフォワードの下に駆けた、スバルはそのエリオに目もくれずに拳をボルヴェルクに構える、一瞬でも隙を作れば殺されるという認識がスバルの意識を敵に釘付けたのだ。
(スバルこやつを一人で相手にするのは少々厳しいぞ…)
スバルの頭に自身の得物と融合した悪魔ベオウルフの声が響く。
「強いのは戦って分かったけど…何か知ってるのベッキー?」
(こやつは魔界の戦士ボルヴェルク、我と同じくスパーダに敗れた悪魔の一人。魔界の中でも最高位に属する猛者よ)
「そっか…」
(今からでも遅くは無い。一人では苦戦は必至、他の者の助力を請えスバルよ)
「それは違うよ…私は一人じゃない」
(何?)
「私のこの拳には、お母さんとギン姉のなのはさんとバージルさんの技と心があるから…だから一人じゃない。それにマッハキャリバーとベッキーが一緒なら絶対に負けないよ!」
スバルは満面の笑顔でベオウルフに答える、その瞳には一片の恐怖も怯みも無く相棒のデバイスと自分に力を貸した悪魔に対する信頼に溢れていた。
(言ってくれるわ…あのスパーダの息子を助けるのは癪だが、そこまで言われて引いては白滅の魔獣の名が泣く! 我が力存分に振るえスバル!!)
「うん!!」
そう言うと同時にスバルは最高の加速でマッハキャリバーを駆ける、魔獣を宿した鉄の拳が魔界の戦士を倒すべく閃いた。
身体を覆っていた氷の封印を灼熱の魔力で破壊したファントムはアーカムの下に向かったバージルに激しい怒りを露にして溶岩のような体液を滾らせる。
「裏切り者の血族が! 逃がさんぞおお!!」
その巨大な悪魔に両手に銃型デバイスを持った少女は射撃魔法を見舞って注意を引き付けた。
「あんたの相手は私よデカブツ!!」
双銃の少女ティアナの射撃魔法はその大蜘蛛型悪魔の強固な外殻には傷一つ付けられなかったがそれは悪魔を逆上させるには十分な効果だった。
「ちっぽけな人間風情が!!!」
「“ちっぽけ”ねえ、あんたは随分と無駄にでかい図体してるけどちゃんと筋肉意外に中身は詰まってるのかしら?」
自分を越える圧倒的な力を持つ悪魔にティアナは小ばかにしたような挑発を仕掛けた、ファントムは怒りにその目を赤く光らせその巨大な前脚の一撃をティアナに振り落とした、しかしその攻撃はティアナの身体を煙の如く通り抜ける。
「残念、ハズレよ」
その言葉と共にファントムの眼前にいたティアナの身体は陽炎のように消え去り、ファントムの頭の上に“本物”のティアナが下り立ち悪魔の無防備な頭部に魔力弾を次々と叩き込む。
実体を持つ影“アフターイメージ”を操り敵を攻撃する力この能力こそ影の悪魔ドッペルゲンガーより得たティアナの新たなる能力である、先ほどファントムに攻撃と挑発を行ったのはこの影であり本物の彼女は幻術で姿を隠し隙を伺っていたのだ。
「ぐおおおおお!! 調子に乗るなあああ!!」
ファントムは頭上のティアナを突き刺そうとそのサソリのような尾針で刺突を繰り出す、しかしその一撃は時間加速の超高速移動で駆けつけた若き槍騎士エリオ・モンディアルの刃で弾かれる。
ゲリュオンの時間加速能力“クイックシルバー”を得たエリオからすればファントムの尾針の攻撃など止まっているも同然だった。
ファントムは自分の身体の上に乗ったティアナとエリオを振り払おうと脚部に凄まじい力を集中し跳躍、十数メートルの距離を一瞬で飛び上がった、その衝撃にティアナとエリオは身体を振り落とされる、二人は落とされると同時にデバイスを構え臨戦態勢をとった。
「エリオ、あいつの外殻かなり固いわよ。並の攻撃じゃ歯が立たない、狙いは頭部周辺! 全力で行くわよ!!」
「了解!!!」
急降下の軌道を二人に定めて落下するファントムの巨体を避けながら二人は同時にその身に宿った悪魔の力を解放した。
ゆりかご上空を飛ぶ巨大なる鷲の悪魔グリフォンが魔力で作り出した赤い稲妻を放ち目の前を飛び交うはやてを落とそうと執拗に攻撃を仕掛けてくる。
「どうした人間、もう限界かああ!?」
高速で繰り広げられる空中戦にはやては大技を使う隙を見出せず苦悶の表情で回避を続ける、はやては今までの魔力、体力の消耗にリィンとの融合も限界に近づき徐々に動きを鈍らせていく。
「これで終わりだ人間。死ねええええ!!!」
グリフォンの叫びと共に雷光で作られた電撃で作られた鳥“電気分身”がはやて目掛けて放たれる、高度の追尾性能を持つ電撃の大鷲にはやては遂に致命的な被弾を受けた、その怯みを逃さずグリフォンがその鉤爪を立てて迫る。
「フリード、ブラストレイ! フリージング・ブレス!!」
若き竜召喚師キャロ・ル・ルシエの掛け声と共に氷結の獄犬の力により三つ首の氷竜となった使役竜フリードリッヒがその三つの顎から紅蓮と凍気の塊を次々にグリフォンに放ちはやてへの追撃を食い止めた。
「ぐおおおお!!」
叫びと共にグリフォンは軌道を逸らし明後日の方向に飛んでいく、悪魔の雷撃を受けふらつくはやての下にキャロが三つ首の氷竜を従えて現れた。
「部隊長! 大丈夫ですか!?」
「キャロ…私はまだ大丈夫やから、それよりまた来るみたいや」
グリフォンはフリードの攻撃に翼に穴を穿たれながらも少しも勢いの衰えぬ力強さでまた宙を舞い雷撃を纏ってはやてとキャロに迫る。
「がはあっ!!」
黄金の聖剣が繰り出す斬撃にバージルは夥しい血飛沫を上げてその身に裂傷を刻まれた、アーカムとバージルの戦いはバージルの劣勢により凄惨を極めていた。
バージルはアーカムの身体に括られたヴィヴィオの為に閻魔刀を抜けず切り札“魔人化”も使えない状態で性能面で圧倒的に劣るフォースエッジ・フェイクをもってエクスカリバー(聖剣)と切り結んでいた。
「どうしたバージル、閻魔刀を抜かないのか? 魔人化はしないのか? 出来ないだろうな〜、使えばその威力ではこの子供がただではすまないからねえ」
ツンツン支援
アーカムは異形と化した悪魔の顔を醜く歪めて血に塗れたバージルに嘲りの笑みを向けた、バージルは亀裂や刃こぼれを起こして崩壊寸前のフォースエッジ・フェイクを構えてその異形の人外に未だ覇気の衰えぬ眼光を注ぐ。
「はぁっ はぁっ…下らんことばかり…ほざくな…」
「哀れだなバージル、たった一人の人間の為に力を解放する事も出来ずに消耗し続けるなど哀れすぎて笑える程だよ」
アーカムは言葉と共に高速展開でバインドを形成しバージルの脚部を拘束、転移魔法による回避を封じ、手の聖剣型デバイスに魔力を収束し高出力の魔力波動を込めて大上段に剣を振りかぶった。
その斬撃を受ければ今のバージルの防御障壁は斬り裂かれフォースエッジ・フェイクは脆く砕け散ると易く想像が付く、悪魔の身体を持つ彼なら死にはしないだろうがヴィヴィオの救出は困難を極めるだろう。
しかしその刃はバージルに届くことはなかった…炎の翼を持つ誇り高きベルカの騎士が闇の剣士の救援に舞い降りる。
「大丈夫かバージル?」
暴虐たる聖剣の侵攻を食い止めたのは炎の魔剣レヴァンティン、振るうは烈火の剣精アギトとの融合を果たした誇り高き剣の騎士、地上本部に迫る悪魔とガジェットの軍勢を殲滅し戦友(とも)の救援に馳せ参じた烈火の将シグナムである。
「スカリエッティは逮捕された、戦闘機人も全員確保済みだ。もう貴様に勝ち目は無い! 大人しく投降しろ」
聖剣と鍔競りながらシグナムは凛とした声で敵の最後の司令塔であるアーカムに投降を促した。
「その程度がなんだと言うのだね? 戦闘機人を一体でも手に入れれば、あの男のコピーは確保できる。ゆりかごが軌道上に上がればミッド地上は殲滅、管理局の艦隊も沈められよう。つまり私の勝利はまったく揺るいでなどいないのだよ」
「ならば貴様をここで倒すっ!!」
シグナムは掛け声と共に爆炎を纏わせたレヴァンティンを払い悪魔の持つ聖剣を薙いでバージルと共にアーカムから距離をとる。
「その姿は…あの融合機か?」
「ああ」
「ゼストはどうした」
「死んだ。私が斬った」
「そうか、やはり…」
バージルはかつて自分と死合った男の死に一抹の寂しさを覚えた、刃を交えた際にその死期が近いことを漠然と感じていたがもし次があるなら今度こそ邪魔無しで戦いたかったという未練が僅かに脳裏を駆けた。
「…お前の剣に敗れて死んだのならばあの男も悔いはあるまい」
バージルは一言だけ今は亡き好敵手の為の言葉を小さく吐いた。
その二人の前に聖なる剣を手に下げたアーカムが悠々と歩み寄る。
「随分とまあ人間と仲良くなったものだなバージル? 人にも悪魔にも成りきれぬ哀れな半魔の君らしい…」
「黙れえっ!!!」
アーカムはシグナムの救援に救われたバージルに再び嘲りの言葉を吐くがその言葉はシグナムの激昂に遮られる。
「その汚い口で我が戦友(とも)を愚弄する言葉を吐く事は許さん!!」
シグナムはその鋭い眼光に紅蓮の怒りを込めてレヴァンティンをアーカムに突きつけた、しかしその身に覇気こそ満ちていたがシグナムの身体は地上本部防衛の戦闘により魔力を消耗し余裕など欠片も残されていなかった。
「まだ戦えるなバージル?」
「もちろんだ、お前こそ足を引っ張るなよ」
聖なる剣を持った邪悪なる悪魔に傷ついた闇の剣士と烈火の将はその刃を向けた。
続く。
もうなのはたちいらないんじゃね?支援
投下終了、俺の好きなアイツそれはもちろんファントムたんでっす、だって彼ったら怒ると目が赤くなるんだぜ? 王蟲みたいで萌えます。
とにかくアーカムはフォースエッジ無しではゲームみたく強化できないのでスカの改造を受けてもらいました、ちなみにダンテ&バージルに倒された後に直接この世界に来ているのでレディに殺されていません。
さらに外道ウェポンの“ヴィヴィオシールド”を使用、物理的には意味無いけどバージル兄さんには効果大です。
それにしても凄い変則的なタッグだよな、はやて&キャロ、ティアナ&エリオ、バージル&シグナムと来てスバルだけタイマン…この先ちゃんと書けるのかよ俺?
ともかく、後は2〜3回くらいで終わりの予定です。
GJ!
バージル兄さんを最大限に支援だ!
GJ!
姐さん登場か!!それにしても出番の無いフェイト&なのは涙目。
決着はそろそろですね。あれ?“荷物”ってまだ登場してませんよね?
>SMC
オリジナルバトル来ましたねー。
敵もオールスター、ゲームから出張ご苦労様ですw
そして、出番のないなのはさん&フェイト……まだ慌てる時間じゃない。二人ならきっとやってくれる!
ってか、とうとう終わりが見え始めましたか。どういう結末になるのか、気になりますな
GJサンクスです、荷物はまだ到着してないですよ、まあリンディさんなら次回あたりには持ってきてくれますよ…たぶん。
しかしデビルメイクライ2がもう家に無いからボルヴェルクの戦い方が詳しく分からないな…とにかく記憶を探って書くか。
SMC氏の作品に刺激されて「よぉし、僕はダンテを主役に書くゾウ!」と意気込んだのですがすでに別の方が書かれてorz
それで一週間ほど悩んだのですが、やっぱり投下してみようかなと思います。話の展開は全く違いますし。
×DMCの作品ですが、投下させていただいても宜しいでしょうか?
あ、そうか。リンディさんが持ってくるんでしたね。
ようつべ辺りで2のスーパープレイ映像なんかあるのでは?3は結構ありますけど。確認するにはいいのでは?
支援です、俺はダンテをまだ書けてないので是非とも見せて頂きたい! クールなナイスガイ? それともダメニート? どっちも好きだぜえええ!!
カモン!
他ならぬSMC氏ご本人から許可頂いたので、速やかに実行いたします。
一週間悩むうちになんか長くなっちゃったので、支援お願いします。
タイトルは「魔法少女リリカルなのはStylish」
ノイズ交じりの念話からは、もう悲痛な同僚の悲鳴しか返っては来なかった。
出来ることなら、出せる限りの悪態を吐いてしまいたい気分だ。『畜生』『くそったれ』『ファック』……汚らしいスラングは山と湧いてくる。酷い状況の時こそ人間は負の感情を吐き散らしたくなるのだ。
しかし、それさえも過ぎれば―――もうあとは誰も彼もこう言うしかなくなる。
ああ、『神よ』―――と。
「神よ……」
ティーダもまたそうだった。
右手に握る銃型のデバイス。数々の修羅場を共に潜ってきた長年の友を、手のひらから噴き出す汗で取り落としそうになる。
銃身は小刻みに震え、あたかもティーダ自身の今の心境が相棒にまで伝わっているようだった。
今、ティーダが感じているのは、紛れもない『恐怖』だった。
「畜生! 化け物、化け物めっ!!」
「来るなぁ、来るなよぉおおーーー!」
「助けて、たすけ……!」
空戦魔導師の舞台である空は、今や血染めのダンスホールと化していた。
飛行魔法で高速移動するティーダの耳に届く、文字通り四方八方からの悲鳴。
それらが全て同じ部隊の戦友が生きながら喰われる声だと理解して尚正気でいられるのが、彼自身にも不思議でならなかった。
違法魔導師を追跡、捕縛する任務を受けた数時間前に、こんな地獄の光景を部隊の誰一人として予測し得なかっただろう。
出来るはずがない。
こんな光景が、この世に実現するはずがないのだ。
夜空一体を覆うように浮遊する、おびただしいまでの『人間の頭蓋骨』―――それが、自分の武装隊を襲った者の正体だった。
淡く光る亡霊のような虚ろな輪郭と、頭だけの存在でありながら人間を一飲みに出来るサイズが、それを尋常ではない存在であると証明している。
仲間達は、突如出現したこのおぞましい存在達に次々と喰われていった。
「化け物め……!」
恐怖を悪態で噛み殺し、襲い掛かってくる頭蓋骨の眉間に向かって引き金を引く。
この亡霊としか表現出来ない怪物が人間を襲う瞬間だけ実体化するパターンを、魔力の浪費を経てようやく理解できていた。
「この……っ」
人の頭が弾けるようにソイツは消滅する。
しかし、眩暈のするような数の同種の存在が、今やティーダとわずかな生き残りを完全に包囲していた。
「―――<悪魔>めぇぇ!!」
今度は数体、同時の襲撃を決死の射撃で迎え撃つ。魔力弾は悪夢を吹き飛ばし、消える傍から新しい悪夢がティーダに襲い掛かった。
回避というより逃走に等しい動きで飛行し、この悪夢の原因へ視線を走らせる。
誰もが錯乱し、発狂しそうになる中、彼は最も冷静だった。
まだ視認できる距離にいる、逃走中の違法魔導師。
(奴だ! 『あの男』がこの化け物どもを……!)
それが分かりながら、決して追跡不可能ではない距離をその間に浮遊する無数の人骨の化け物が絶望的に遠くしている。
しかし、あの魔導師をどうにかしなければ、自分達はこの悪夢に食い尽くされるしかない。
「うぉおおおおおおおーーーっ!!」
ティーダは残された魔力を全て結集し、最大速力で死の道筋に乗り出した。
群がるように動き始める無数の悪夢。
回避などという余分な行動を取る事は出来ない。あまりに絶望的な前進を、彼は選択した。
「ティアナァアアアアアアアアーーーッ!!!」
断末魔の如き叫びが夜空にこだまする。
それがこの世に遺すことになってしまうであろう、愛しい妹の名であることを、彼に襲い掛かる悪魔どもが知る由などもちろんありはしなかった。
ティーダ=ランスター一等空尉―――逃走違法魔導師追跡任務中に殉職。その死因はもちろん他殺だが、原因だけは依然として判明していない。
ティーダの殉職の知らせを聞き、駆けつけた男の名は<トニー>と言った。
同じ空戦部隊に所属していたわけではなく、むしろ魔導師ですらない。お互いにごく私的な付き合いのある友人だった。
当然、親類や部隊の同僚が出席するティーダの葬儀に招待されるワケもなく、トニーがようやく目的地の墓地に辿り着いた時には、すでに棺が地中へ収められた後だった。
最後の死に顔も拝めなかったことを残念に思い、大きくため息を吐くと、乱れたコートの裾を直して静かに参列者の傍へ歩み寄った。
整然と並ぶ喪服や軍服姿の参列者達の中で、黒いコートで申し訳程度に正装した彼は酷く浮いていたが、厳かな空気の中それを指摘する者はいなかった。
長身のトニーは参列者の最後尾から、祈りの言葉を捧げる神父と棺の収まった穴を見下ろす。
そして、一人の少女を見つけた。
最後に死者へ捧げる為の花と、オモチャの銃を胸に抱いた小さな少女。今年で10歳になったはずだ。
ティーダの、この世に遺された唯一の肉親である妹<ティアナ>だった。
天涯孤独となったティアナは、兄の亡骸の納まった棺を前に、泣くこともなく決然とした表情で前を見据えていた。
トニーの瞳が痛ましいものを見るように細まる。
親しい部隊の仲間は共に殉職し、両親もとうの昔に他界して、この葬儀に立ち会っているのはティアナにとって他人のような遠い血縁と、他人同然の軍人や職員だけ―――。
ティーダ=ランスターの死を、本当に悲しんでいるのは彼女しかいないというのに、その少女自身が涙を流さぬ姿が、トニーには酷く悲しいものに映るのだった。
出直すべきか……。
トニーが気まずげに踵を返した、その時。
「―――名誉の殉職には程遠いな」
囁くような声が、トニーの耳に障った。
参列者の内、軍服を着た者達の間から漏れた言葉だった。小声のつもりだろうが、静寂の中でそれは酷く耳障りに響く。
「航空隊の魔導師として、あるまじき失態だ」
「無駄死にだな。最後の通信を聞いたか? 『悪魔に襲われている』だそうだ」
「状況に混乱し、あまつさえ目標すら取り逃がすとは」
「部隊の面汚しめ」
誰がどれを言っているのかは、もはやどうでもよかった。
ただ、彼らの心無い侮蔑の囁きが、死者とその家族を限りなく傷つけていることだけは確かだった。
彼らの言葉に反応するように、小さな肩を震わせるティアナを見つめ、トニーは返した踵を再び反転させた。その歩みに怒りを宿して。
「おい」
「ん? なんだ君は? ここは関係者以外……」
全て言い切る前に、男の顔には鉄拳がめり込んでいた。
男が意識を手放し、鼻血を噴出して昏倒すると同時に、トニーの周囲を敵意が取り囲む。
「な、なんだ貴様!? 我々は時空管理局の―――」
「さっきのふざけた言葉を言ったのが誰か、別に探し出すつもりはないぜ」
怒りで脳の煮え滾ったトニーは全てを無視して、ターゲットを軍服を着たその場の全員に決めた。
「あの毎朝トイレで聞くような腐った言葉を聞き流した、テメエら全員が同罪だ。一人残らず顔面整形して帰んな」
「取り押さえろ!」
周囲が騒然とする中、トニーは厳かに告げる。その場の管理局員全てを敵に回し、彼は拳を振り上げた。
数分をかけて、トニーは自分が言ったとおりの事をやった。
骸骨サルガッソー萌え支援。
「な、何のつもりですか……! この静粛な場で、アナタはなんという……っ」
死屍累々と横たわる管理局員達。彼らの顔面を一つ残らず陥没せしめた元凶の男を震える指で指し、神父は恐怖と怒りを向けていた。それ以外の参列者はほとんどその場から逃げ出してしまっている。
トニーは神の使いに中指を立てて応えた。
「死者を罵るのが静粛かい? とっとと失せな。ここはティーダが眠る場所だ」
言って、周囲を睨みつけるトニーの凄みに、残った者達も慌ててその場から逃げ出した。
静寂を取り戻した墓地に残されたのは、トニーと、彼の友人の眠りを妨げた愚か者の末路、そしてただ黙って事の成り行きを見守っていたティアナだけだった。
「悪いな、余計に騒いじまって」
「いい……ありがとう」
バツの悪そうなトニーに、再び棺に視線を落としたまま、ティアナは小さく礼を言った。
ティーダの眠る棺の前。トニーとティアナは肩を並べて佇む。
「……あなた、お兄ちゃんの知り合い?」
「個人的な友達さ。趣味が合ってね、コイツには『こっち』に来てから世話にもなった」
答える声に哀愁の色は無かったが、この男が兄の死を悼んでいることが幼いティアナにはなんとなく理解出来た。
トニーが持参した酒瓶を棺の横に添える。それに倣うように、ティアナが花を放る。
そして、沈黙が流れた。
沈痛なそれではなく、ただ穏やかな静けさが。
周囲が兄を『無能』『役立たず』と評する中、ただ静かに悲しんでくれる目の前の男の存在が、初めて救いのように思えた。
「……ねえ、お兄ちゃんは『役立たず』でも『嘘吐き』でもないわ。お兄ちゃんは頑張った。そして、頑張ったお兄ちゃんを殺したのは、<悪魔>なのよ」
「ああ、そうだ」
独白のようなティアナの言葉を、当然のようにトニーは肯定した。
それは、彼女への慰めでも相槌でもなく、歴然とした事実だったからだ。
「<悪魔>は実在する。
そして、ティーダはそいつらを命と引き換えに倒したのさ。さっきのクソどもが呑気にバカを言えるのも、全部そのおかげなんだ」
断言するトニーの決然とした横顔を、ティアナは見上げた。
妄言を吐く狂人を見るような眼ではなく、ただ真摯に見据える少女の瞳がそこにあった。
「―――俺は、ここに誓いに来た。ティーダ、お前を殺った奴は、この俺が必ず切り裂いてやるってな」
「なら、それはあたしに誓わせて」
今度はトニーがティアナを見る番だった。
「ティーダ=ランスターの仇は、妹のティアナ=ランスターが取る。そして、お兄ちゃんの果たせなかった『執務官』の夢を引き継ぐ!」
少女の誓いの叫びが、静寂の中に響き渡った。
激情と共に湧き上がる涙を拭い、しかしもう二度と泣かぬと決める。
その少女の尊く痛ましい姿を、トニーはかつての自分を見るような瞳で捉えていた。
胸中に去来する感情は酷く複雑で、しかし唯一つ言えることは―――自分が亡き友人の為に出来ることは、この少女の行く末を見守り、支えることだけだということだった。
諦めと安堵の中間のような苦笑を漏らし、トニーはそっとティアナの頭に手を添えた。
「OK。聞いたぜ、お前の誓い。それが良い事なのかは分からんがね」
「後悔はしないわ」
涙を止めたティアナは、トニーの手をそっと取り払った。
「……ねえ、ところであなたの名前はなんていうの?」
そして、兄よりも高い位置にある顔を見上げ、改めて尋ねた。
トニーがニヤリと笑う。それは彼の生来持つ、お得意の不敵な笑みだった。
「トニー。トニー=レッドグレイヴだ、お嬢さん(レディ)―――だけど、お前には特別に『本当の名前』を教えておいてやるよ」
不思議そうな顔をするティアナに、彼は悪戯っぽくウィンクしてから答えた。
「俺の名は<ダンテ>だ―――」
魔法少女リリカルなのはStylish
第一話『Devil May Cry』
『<ダンテ>について何か教えろって? あんた、奴の何が知りたいんだ?
生憎、俺はあいつが何を考えてるのかすら分かりゃしねえよ。
この間だってそうさ。
いきなり事務所をおっ建てるとか言い出して、いい物件を探しといてくれ、ときた。
しかもできるだけ物騒な場所にしてくれとかぬかしやがる。商売する気があるんだかないんだか……。
ま、俺も仕事だからちゃんと物件は探してやったがね。
廃棄都市街の一角さ。無断居住者がゴミみてえに集まる無法地帯。ミッドチルダに点在する黒染みみたいな場所だな。まあ、その住人の一人である俺の言えたことじゃねえが。
管理社会のミッドチルダで物騒な場所と言えばこれくらいしかねえ。時空管理局の管理から零れた肥溜めだ。
お気に召したらしく大層喜んでたよ。
ミッドチルダじゃ見たこと無いタイプの人間だ。社会に適応できないはぐれ者の溜まり場の中で、アイツだけがギラギラとやけに光って見える。
笑うとガキみたいな顔をしやがるくせに、仕事となりゃ魔導師でもねえのに魔力弾の雨の中を妙な剣一本で駆け抜けていく―――そういう奴さ、ダンテってのは。
―――家族?
ああ、最近小さなお嬢ちゃんを連れて回るようになったみてえだが。
死んだダチの妹らしいが、しかし引き取ったとは聞いてねェな。さっきも言ったが、奴が何を考えてるかなんて俺には分からねえのさ。
まあ、奴の家族らしいものなんてそれくらいしか思いつかねェ。何も分からねェんだ。
1年前、フラッと現れていつの間にか居座っていた。誰も気付かなかったのに、今は誰もが奴に目を向ける。
付き合いの長い俺から見ても謎の多い奴さ。
そんなに気になるなら、直接会ってみな。とびっきり物騒な場所に、奴の<店>はある。
どんな店かって? そりゃ行ってみれば分かるさ。
暗闇の中でバカみたいに派手なネオンの看板を見つけたら、それがそうだ。
店の名前は奴が考えた。ダンテにピッタリさ、何せ奴が相手ならきっと『悪魔だって泣き出す』だろうからな。
―――その店の名前は<Devil May Cry> この世からあの世に渡りをつけられる、唯一の場所だ』
とある情報屋の証言より。
シャワーの音に紛れて事務所の方から電話のベルが聞こえた。
念願の仕事の到来に、ダンテは口笛を鳴らす。
ポンコツボイラーの湯の温度は常に熱すぎるか冷たすぎるかで、毎度の事ながらお世辞にも快適なバスタイムとは言い難かったが、自分を呼びつけるベルの音に機嫌はよくなっていた。
未だに事務所の借金を抱える身としては、金になる仕事はありがたい。
何より、怠惰な日常は度を過ぎれば苦痛だ。人生を楽しくするには刺激が必要なのだ。
汚れ物のバスケットの中から最もマシと思えるタオルを選んで体を拭き、半裸の肩から湯気を上げながらダンテは扉一枚隔てた事務所へと顔を出した。
途端、電話のベルが止む。
「デビル・メイ・クライよ」
店主以外の少女が、電話を取っていた。
電話の対応をする不法侵入者に対するリアクションを軽く肩を竦めるだけに留める。店に鍵など掛けた試しはなかったし、シャワーやトイレを貸してやるくらいの度量はある。
何より、その少女はダンテの数少ない知人だった。
「―――いえ、悪いけどウチはもう閉店時間よ」
受話器越しに数言聞いただけで、少女は素っ気無く電話を切ってしまった。
「ヘイヘイ、お嬢さん。店主の俺の意見も聞かずに切るなよ」
「『合言葉』がなかったわ」
「余裕があれば、そういう選り好みもするんだがな。このままじゃ干上がっちまう」
「それで、また前みたいに小銭で女の子の猫探しを引き受けちゃうんでしょ?」
「いい男は女に優しいからな。第一、あれはお前が受けたんだぜ―――ティア」
じゃれ合うような軽口の応酬の後、ダンテと月日を経て13歳になったティアナは笑い合った。
「今日は一体どうしたんだ? しばらく試験とかがあるから、こっちには寄り付かないって言ってなかったか?」
「うん、その事で結果を報告に来たんだけど……」
「おっと、その前にこっちの用事を済ませてくれ。いい知らせは後で聞いた方がいい」
ティアナの顔に浮かぶ喜色の笑みから、それが朗報であることを悟ると、ダンテは苦笑しながら台詞を遮った。
乱雑な調度品の中で唯一事務所らしい備品である机の上に無造作に放られた銃型のデバイスを手に取る。
弾丸こそ入っていないが、頑強なフレームで構成されたそれは武器としての凶悪さを表していた。
「最近コイツの調子が悪いんだ。ちょっと見てくれ」
ダンテは手馴れた仕草でデバイスを振り回すと―――おもむろに銃口をティアナの眉間に突きつけ、ぶっ放した。
炸薬を使用した弾丸とは違う、高密度の魔力弾が空気の炸裂音と共に飛び出す。
それは絶妙のタイミングで首を逸らしたティアナの頬を横切り、いつの間にか背後で大鎌を振り被っていた黒い影に直撃した。
人ならざる影は、見た目どおりの怪物染みた悲鳴を上げて魔力弾に吹き飛ばされる。
「―――本当ね、魔力の集束率が落ちてるみたい」
何の前触れもなく撃たれた事にも得体の知れない敵が出現した事にも関心を示さず、影が再び立ち上がろうとする事だけにティアナは頷いて返した。
ダンテの魔力はカートリッジの使用なしで絶大な威力の攻撃を可能にする。普段なら仕留め損なうなど在り得ないのだ。
「フレームの歪みかしら? 結構気合い入れてチューニングしたのに」
ぼやきながら、ティアナは自分のデバイス<アンカーガン>で立ち上がろうとした影の頭らしき場所を無造作に撃ち抜いた。
致命傷を与えられた影の怪物は、そのまま最初からいなかったかのように消滅していった。
―――闇が凝固し、人の形を取って人に襲い掛かる。
そのおぞましい光景が現実に起こることを、知る者は少ない。
日常を侵食する異常―――『それら』を知り得るのは、『それら』を駆逐する者達だけである。
ダンテと、この数年間彼の傍にいたティアナの、この二人しか知らない。
それらは<悪魔>と呼ばれることを―――。
「それにしても、相変わらず『こいつら』はダンテに引き寄せられるみたいに現れるわね」
ダンテからデバイスを受け取り、椅子に腰を下ろしながらティアナは先ほどまで影が凝固していた場所を見た。
今はもう跡形も無い。
「熱いアプローチは大歓迎だが、別の場所でお願いしたいね。そうすりゃ仕事になる。ぶっ殺すのには変わりないんだからな」
「でも、出現頻度はなんだか最近上がってるみたい。公にはされてないけど、クラナガンの方でも『出た』らしいわ」
「管理局も忙しくなりそうだ。<悪い魔法使い>の次は、<悪魔>が相手と来た」
「あたしも、もう他人事じゃなくなるけど……」
ダンテのデバイスを弄りながら小さく呟いたのを、相手は聞き逃さなかった。
「へえ。じゃあ、やっぱりいい知らせかい? 陸士訓練校ってヤツの試験に受かったんだろ?」
「うん、まあね」
「ハハッ、やったじゃねえか! 来いよ、キスさせてくれ」
「バカ」
大仰に両手を広げるダンテに対して素っ気無く返しながらも、それが照れ隠しであることはティアナの赤い顔を見ればすぐ分かる。
肉親を失い、兄の夢であった執務官を目標に努力してきた。その孤独な奮迅を、目の前の男だけがずっと見守り続けてきてくれたのだ。
その彼からの祝福の言葉に胸から込み上げるものを、ティアナは何気ない表情の下に押し隠した。
「しかし、そうなると俺の愛銃を整備する人間がしばらくいなくなるな。まいったぜ」
「そう思うなら、もうちょっと丁寧に扱いなさいよ。アマチュアの自作とはいえ、単純な簡易デバイスだからその分頑丈に作ったのに……」
ティアナのアンカーガンもそうであるが、ダンテの銃型デバイスは、同じ変則ミッド式を扱うよしみとしてティアナが自作したものだった。
ただ魔力弾を放つだけのシンプルな機能しかない分、フレームの強度はアームドデバイス並のはずだが、それすらダンテの酷使に耐え切れずにダメージを負ったのだ。
「せいぜい気をつけるさ」
返答とは裏腹に、ダンテは性に合わないとばかりに肩を竦めた。
「いざとなったら、裏に仕舞ってある『本当の銃』を使うしな。相棒はいつでも準備万端さ」
「質量兵器が違法なのは分かってるわよね?」
「おいおい、別にミサイルや爆弾を使わせてくれって言ってるわけじゃないんだぜ?」
「大小は関係ないのよ。あたしも今年からそれを取り締まる側に回るんだからね」
「大丈夫さ、もし取調室で目が合っても他人のふりをしてやるよ」
「そういう問題じゃないっての……はい、終了」
メンテナンスを終え、ティアナがデバイスを手渡す。
ダンテはここ数年で第二の相棒として大分手に馴染んだそれを軽く玩び、クイックドロウのパフォーマンスを決めた。
ティアナに言わるとこの「頭の悪いカッコよさ」にこだわるのが、彼のスタイルだった。
「―――それじゃあ。報告も済ませたし、もう行くわ。またしばらく顔は出せなくなると思う」
「なんだ、随分と急ぐな? 馴染みの店でパーティーしようぜ」
「訓練校も寮制だから、準備とかもあるし……。訓練が始まったら、休みもなかなか取れないと思うから」
急くように立ち上がり、店を出ようとするティアナだったが、その言葉が全て言い訳に過ぎないと自覚していた。
素直になれない少女を数年間見続けてきたダンテは、心得たものだと苦笑する。
「なるほど、長居すると余計恋しくなるってワケか」
「な……っ! ち、違うわよ、バカ!」
反論の説得力は赤面する顔が全て台無しにしていた。
ニヤニヤと笑うダンテに何か言おうとして、それが無駄だと悟ったのか、あるいは図星を突かれたと認めたのか、ティアナは顔を赤くしたまま背を向けた。
そのまま出て行こうとするティアナに、ダンテは笑いながら声を掛ける。
ティアがニールのバァさん役か支援
「―――がんばれよ。お前ならやれるさ」
不意打ちだった。
普段の調子のいい口調ではなく、優しい言葉だった。
「……っ」
熱いものが目元まで沸きあがってくる。
それを堪え、ティアナは精一杯の気持ちで素直じゃない自分の口を開いた。
「……あたしの兄弟は、死んだ兄さん以外いないって……そう思ってる。でも……っ」
同情でも哀れみでもなく―――ただ、いつも傍で見守っていてくれた。
「頑張ってくるわ……兄貴」
その言葉を口にした一瞬だけ、ティアナにとって兄は二人になった。
「<兄貴>ねぇ……」
気に入りの椅子に身を預け、ダンテは楽しそうに呟く。
ティアナの立ち去った後の扉を眺めているだけで、ニヤニヤと思い出し笑いが口の端を持ち上げた。
「呼ばれるのは新鮮だな」
悪くない。悪くない気分だ。
あの少女と共にいた数年間。特別意識したことなどなかったが、あれでなかなか可愛げのある妹分ではないか、と思う。
なんとなく他人のように思えなかったのも事実だ。
あれで器用そうに見えて不器用にしか生きられないところなど、自分とよく似ている。
<この世界>に来てから、以前とはまた違った出会いと別れの連続だ―――。
「悪くないね。刺激があるから人生は楽しい……そうだろ?」
応えるように電話のベルが鳴った。
投げ出した足が机を叩き、反動で受話器が宙を舞う。
それをキャッチすると、ダンテは受話器越しに相手が震え上がるようなクールな声色で囁きかけた。
「デビル・メイ・クライだ―――」
その日、多忙な筈の無限書庫司書長は珍しく優雅な午後の紅茶を楽しめていた。
未開の無限書庫のデータベースに手をつけて以降、圧倒的な仕事量とそれに反比例する人手不足に忙殺され続けているが、ふと嵐が過ぎるように休暇が取れる。
その貴重な時間を彼は食堂の片隅で安息と共に噛み締めていた。
「ユーノ君!」
「なのは! 久しぶり」
そして、そんなささやかな時間に二人が顔を合わせられたのは、ちょっとした幸運ですらあった。
ユーノ=スクライアと高町なのは。
互いに働く部署が分かれて以来、再会が数ヶ月越しになる事すらある、未だ友人以上恋人未満のラインに留まる幼馴染の久方ぶりの対面だった。
珍しく誰も同伴していない二人は、向かい合って再会を喜び合う。
「ユーノ君、休み取れたんだ?」
「休憩ってレベルのものだけどね。相変わらず本を相手に大忙しだよ」
「大変だね。でも、その割りに休憩時間まで本と一緒なの?」
苦笑しながらなのははユーノの手元を指差した。
飲みかけのレモンティーと、古ぼけた本が一冊がページを開いて置いてある。
「うん、ちょっと珍しい本を見つけてね。仕事とは関係ないんだ」
ユーノの指がなぞる先には、とても文字とは思えない難解な模様が何行も描かれている。
専門外のなのはにはワケが分からない代物だったが、しかしそれはユーノにも言えることだった。
「見つけたのは偶然だったけどね、これは僕にも読めないよ。読書魔法の解読も効かない。どうやら文字ですらないみたいなんだ」
「ふーん。でも、何の魔力も感じないみたいだけど」
「うん、この本自体はただの記録媒体に過ぎない。魔道書の多い無限書庫では珍しい本なんだ。
だけど、内容は見たことも無いほど複雑に出来てる。文字に見えるのは、実は伝説を主張するレリーフの集まりみたい。だけど比喩が深い。これを読み解くには、純粋に膨大な知識が必要になるだろね」
「へぇ……」
そんな物を休みの時間まで使って解読しようとするあたり、根っからの学者肌であるユーノらしかった。
だが、なのはにも何となくその気持ちが分かった。
ページの破れや染みに長い歴史を刻んだ、いかにも伝説の書物と言った風情のそれが纏う雰囲気は、人を惹きつける魔性のようなものを感じる。
「『されど魔に魅入られし人は絶えず』―――」
「え?」
不意に呟かれた言葉に、なのははドキリとした。
「本にあった一説だよ。この一行を解読するだけでも、すごく時間がかかったけど……どうやらこれは<悪魔>について記した本らしい。よくある神話の本さ」
「<悪魔>……」
<悪魔>という言葉を完全にゴシップとして捉えたユーノとは反対に、なのははその単語が酷く心に残っていた。
管理局内で囁かれる噂を思い出したのだ。
実際に被害が出ているのに、それ自体はまるで与太話のように信憑性を失っている、奇妙な噂。
―――魔導師たちの中に<悪魔>に襲われた者たちがいる。
被害記録は確固として残りながら、誰もが被害者の報告を信じない。まるで人の無意識が、それから目を逸らそうとしているかのように。
「……続き」
「うん?」
「他に、読める所はないの?」
なのはの中で、その本への興味が大きくなりつつあった。
「そうだな、まだ手をつけたばかりだから……そう言えば、少ないけど共通して使われてるフレーズがあるね」
「それって?」
「<スパーダ>っていう単語だよ」
スパーダ―――。
なのはは自分でも知らぬ内に、その言葉を深く心に刻んでいた。
不意に時計が時刻を告げるアラームを鳴らす。昼の休憩時間が終了したのだ。
なのはは思考を切り替え、ユーノとの別れを惜しみながら立ち上がった。
「―――そう言えば、なのは。この本のタイトルなんだけど……」
立ち去るなのはの背に声を掛け、ユーノはその名を告げた。
その名を<魔剣文書>という―――。
後に、高町なのはにとって重大な事件に発展する、これがその最初の一端に触れた瞬間であった―――。
to be continued…>
<ダンテの悪魔解説コーナー>
・サルガッソー(DMC1に登場)
アフリカ大陸の西に広がる広大な海域は、計器や通信技術の発達していない昔に航海の難所として有名だったらしい。
いわゆる船の墓場。その海域の名こそが<サルガッソー>ってワケだ。
それと同じ名を持つこの悪魔は、海と魔界の狭間を行き来する低級な連中で、近くに生命を感じると反射的に実体化して喰らいついてくる。
見た目は捻りの無い『しゃれこうべ』の亡霊だが、必ず集団で現れる脅威と不気味さだけは十分な恐怖だな。
前記した特性の通り、距離を取った状態での攻撃は効果が無い。
だが、その特性を知ってるだけで敵の怖さは大分違ってくる。近づいて、実体化したところを好きに料理してやるといい。
知能も耐久力も並以下だが、唯一数だけが脅威だ。サルガッソーの遭難で帰れなくなった船みたいにならないよう、せいぜい油断はしないことだぜ。
GJでんな〜、ティアナに萌えまくりですよもう…この先なのはにダンテ仕込みのガン型を披露ですな!
しかしダンテがトニーの名を名乗ってたって事はバージル兄さんとはまだ殺り合ってないか。
激しく燃えました!
次が楽しみです!
しっかしなのはとDMCは親和性が高いのかな?
GJです
イイ感じの第一話ですねぇ
続きが楽しみで気が狂いそうです。
しかしサルガッソーは中〜遠距離がメインの一般的な魔術師には相性最悪ですね。
自分達の最強クラスの砲撃が効かない敵に接近戦挑むのも弱点知らなければきついでしょうし
つーかティアナの可愛さが異常すぎて困る。
さすがダンテ。強くてイイ女が周りに集まって来る。
最後に規制orz
投下して分かったけど、長すぎて狂っちまいそうだ!(こめかみに銃を当てながら
なんでダンテがミッドチルダにいるの? とかゲームのどの時系列? とかは物語上で徐々に語っていこうと思います。
メインキャラは、ダンテとティアナになる予定です。次回もよろしくお願いします。
GJ!!ダンテとティアナのコンビがかなりいい味出してるな
今後の投下にも期待するとしようか
面白すぎて狂っちまいそうだ!!!
で、そろそろ次スレの季節だな
このスレで初めて格好良いダンテを見た!
借金? ほら、借金塗れはデフォだしw
てか妹分可愛いよ!
ダンテかっけー そしてティアかわいい
やっぱりDMC買ってやるかな…
取りあえず次スレ立ててきますね。
ごめん、ダメだったorz
GJ!
>>482 DMCってほかのものを思い出すんだがw
>>491 デトロイトメタルシティの事かー!!
クラウザーさんミッドに呼んだら恐ろしくカオスな事態になるぞwww
エロパロ行きだろ、デトロイトは
全年齢にしちゃ、ネタが・・・・・・
曲目
レールウェイ上でファッキンガム宮殿。ガジェドロV型を警官殺し。
模擬戦中にSATSUGAI。歯ギター披露。
ゆりかご突入しながら黒い恋人。
マイナーなクロスなら、アトラク=ナクア希望。
といっても姉様では無理だな。凶悪過ぎるし。
でも、姉様の娘ならまだいけるかも。
>492
「ミッドチルダはクラウザーさんがベルカをレイプして生まれたんだー!」
>>495 ナ ゝ ナ ゝ / 十_" ー;=‐ |! |!
cト cト /^、_ノ | 、.__ つ (.__  ̄ ̄ ̄ ̄ ・ ・
/ ̄\ / ̄\ / ̄\
│ | │ | │ |
\ / \ / \ /
| |_ | |_ | |_
それでは今からちょいとスレ立て挑んできますよノシ
Strikers May Cryさんと魔法少女リリカルなのはStylishさんGJ!
バージルもダンテも両方かっこいいのにうちのダンテはニートですいませんw
>>485 GJ!幼いティアナが傷つかずに本当によかった……。
ここのティアナは六課に入っても無茶をしなさそうですね。
>>500 シグナム「我等をニート等と呼ぶなっ!自宅警備員という誇り高き名称があるのだ!」
>>501 いやむしろダンテの影響で無茶にしか見えない(自覚無し)スタイリッシュアクションをだな
ちょうど2丁拳銃だし
Stylish氏
ああ、なんてダンテがダンテらしんだろう。
クールなようでいてやっぱり熱くて、心の底から痺れた!
そして異常なまでに可愛いティアナ。嗚呼、素晴らしいとしか言い様がない。
普通のGJなどでは到底足りよう筈もない。
故に、GOD JOB!!
大変美味しゅうございました!
識っている、識っているぞ。明らかにSSを書き慣れている貴方の文体を、僕は識っているぞ……!
ス……いや、間違ってたらアレなんでやっぱ聞かなかったことにして下さい。
トニーがニートのアナグラムにしか取れないんだがあの名前にはなんか理由でもあるのか?
「トニー=レッドグレイヴ」は小説版で使ってる偽名ですな。公式小説が二冊出てます。
小説ではまだダンテの本名を隠してた頃。
うちのSSでは純粋に偽名として使ってます。時間軸的に小説の時というわけではありません。
ちなみに原作の時間軸的には「小説」→「DMC3」→「DMC1」→「小説その2」→「DMC2」だと睨んどります。
現在「DMC4」が1と2の間に来るっぽいですね。
GJ!
そういえば、兄貴は魔剣文書読めなかったな
弟の方は一生縁がなさそうな書物だなw
誰が書き残したのやら、もしかしてスパーダ本人とか?
>>504 無茶やりすぎて頭を冷やされるのか
GJ!
なにこの完成度
レベル高いよ
みんなこのスレ埋めないと・・・
うめぇ
埋まる埋まらないはう(ん)め(い)です。
/| /:.:/ /
/:.{ /:.:.:./x ――一ァ ,.. -/―――-- 、
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.ハ:.:.:.:| 辷」 ヘ:.:|辷ソ {:.:.:ト、! T ┴- ...」_.ヒzリ___ ヒzリ ハ. |/
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イ ∨ へ、 ` ` イ |/'| | // /`ヽ
. イ |. | |:.∧ ̄:::/:.:.:.| | | ___ // /
. イ ハ. レ ̄ヽ|、:. |::::::/:.:/レー、| |_r‐┬―‐r< >`「「 T ー-く/ /
. イ } V:.:.Vヽ/`く:.:.:} /ハ/| レ‐‐ゝ‐‐/―、| ト、  ̄``¨
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埋め
ママはここにいるよ
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表 ',:::::l.ハ:::ヘ|::小. | ゞ=' `ヾ/::/}::::l :::::::: l:.:.:.:.:.:.:.:: ! | 裏' 一ー´
\{ \{| 八. j .彡イレ |::::l ::::::::::l::.:.:.:.:.:.:.: ! | !、____. ,r'ミニ三ミ_ィ,
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ヽ::::{ `ト、 | イ /:::::/ |::::l::::::::::::l .:.:.:.:.:.:.: ! | !、 __ __
>く/`=≧-z≦=|`∨:/ ! ::l ::::::::::l .:.:.:.:.:.:.: ! |  ̄ ̄ ''ミ_ィ,
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ぶち殺すぞ…クソガキ……
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l l l/ト{ トッ::::} ///',rテ V//l l l ! j / / / 〃 //1 l ヽ \. i `' ´ ___`ヽ、
l l l _ゞ..ソ ' u ト:ソ//l l j j レ'/ / ̄/_Z_フ〃 ト!j1 l l l ヽ ヽ } ̄ `` ‐ 、 ´ ̄ `ヽ、``
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'|! | ,. -‐┐ } レ'//r/l/Vイ ヽ{ トッ::リ ,fi }〃/ l l l_/__/,.ィj /l ヽl \ ハ
.li l u ( ノ ,.イl l/ヘ. ヽ l | `ー'′ トリ1 }} l jリ ,.=_-ミ// /トl、1 l l l ヽ ヽ.i}
-! l` 、  ̄ _, ィ´l li | ヽ ヽl l u __ ' ゙' j 〃/l /LV イッ1 / / rテlヽ l l l トi |ノ
ハ ト、.__/、ー-ァ'/ // リ l | \l l i´ ノ u,.イイ/イ /イリ 辷リ .{:リ }jイ } }i l l リ
.い l } ` ‐- く/ l ,l ├-- 、_,.ヘ. ト、_ `ー‐' _,. '´/ / l l '`'゙/ //!,リl リ lソ
. ヾi ト、 j l l`ト< l ilヽヽ `マ ヽヽ._7ー‐ ' / / l l u i´ ノ / l/// j/
l トv′ l l j .j l ,リ l l ', ヽ ^1 ` ーrく / __,l ト.ヽ、 ´,. ィ l/
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f´ .| .| Y{可}≫ 、 `ヾ. v' , ' /
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