あの作品のキャラがルイズに召喚されました part87

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1名無しさん@お腹いっぱい。
もしもゼロの使い魔のルイズが召喚したのがサイトではなかったら?そんなifを語るスレ。

あの作品のキャラがルイズに召喚されました part86
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1195919160/

まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/
避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9616/


    __              ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
    〃  `ヽ  .   ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
    l lf小从} l /   ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
   ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,.   ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
  ((/} )犬({つ'    ・ 投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
   / '"/_jl〉` j,    ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
   ヽ_/ィヘ_)〜′   ・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!
             ・議論や荒らしへの反応は、避難所でやりなさい!


     _
     〃  ^ヽ      ・クロス元が18禁作品であっても、SSの内容が非18禁である場合は
    J{  ハ从{_,      本スレへの投下で問題ないわ。
    ノルノー゚ノjし     ・SSの内容が18禁な展開をする場合はクロス元に関わらず、
   /く{ {丈} }つ     本スレではなく避難所への投下をお願いね?
   l く/_jlム! |     ・クロス元が型月作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
   レ-ヘじフ〜l      ・スレタイと違う内容になったり、痛い展開になったりする場合も、避難所に投下した方が無難ね。
              ・作品を初投下する時は元ネタの記載も忘れずにね。wikiに登録されづらいわ。


   ,ィ =个=、      ・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。
   〈_/´ ̄ `ヽ      ・1レスの限界最大文字数は、全角文字なら2048文字分(4096Bytes)。
    { {_jイ」/j」j〉      これ以上だと投下できないそうです。
    ヽl| ゚ヮ゚ノj|      ・行数は最大60行で、一行につき全角で128文字までですって。
   ⊂j{不}lつ     ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
   く7 {_}ハ>     ・次スレは>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
    ‘ーrtァー’      ・重複防止のため、次スレを立てる時は現行スレにその旨を宣言して下さいね。
2名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 01:35:59 ID:6P9F0rgq
>>1
3名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 01:39:19 ID:zj/vGjCU
>>1、乙でござる
4名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 01:43:06 ID:+C+Fcw0f
このスレには何よりも>>1乙が足りない!
5名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 02:08:43 ID:6puYaxTq
まずは、なにはなくとも>>1

さてここ最近の投下ラッシュは凄いなぁ
6名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 02:09:48 ID:6P9F0rgq
前スレ>>931おめw
7松下:2007/11/28(水) 02:18:17 ID:+nSgTOAr
>>1

そしてラッシュが止んだ隙に投下予約
8名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 02:21:25 ID:+C+Fcw0f
支援
今晩は、松下です。大作のあとの拙作で緊張気味。
話と登場人物が、ますます腹黒くなっていきます。ルイズが胃癌にならなきゃいいんですが。


『東方の神童・悪魔くん』こと、松下一郎がハルケギニアに召喚されてから、約4ヶ月。季節は夏。
松下の領地となったタルブは、僅か2ヶ月ほどで焦土から目覚しく奇跡の復興を遂げ、高度成長期を迎え、
今やラ・ロシェールと肩を並べる、いや相乗効果で共に栄える軍港都市へと発展しつつあった。

はぐれメイジや傭兵団、怪しげな商人や貧民、貧乏貴族も、ここにくれば(能力に応じてだが)平等に、
仕事と出世の機会を与えられる。戦争で手柄を立てれば、王国の勲章だって得られるだろう。
ラグドリアン湖周辺からの移民も、しっかりと農業・商業・手工業などの職を与えられて精勤している。
主な産業は『魔女のホウキ』の量産、ベラドンナ草の栽培、ヒキガエルの香油の精製などだ。

「うむ、見事だ。シエスタとその家族も、よく住民の監督官(エピスコプス)を勤めているようだね。
 そろそろ、自前の艦隊でも建造してみようかなぁ。ホウキもいいが、竜騎士団も欲しいところだ」
「光栄です、『我らのメシア』。千年王国の教義を小冊子に纏めて、住民に配布ないし回覧いたしました。
 文盲の者たちには、毎日の礼拝と御説教聴講への参加を義務付けています。
 メシアよ、『信者』はそろそろ千人に達します。やがて御教えは全土に、大陸中に広がりましょう」

松下は『第二使徒』シエスタを連れて、毎日ホウキを駆って領内の見回りをしていた。
「そうか。王国やブリミル教会との折り合いは、ぼくがやっている。トリスタニアにも宣教団を派遣しよう。
 ぼくを始祖ブリミルの生まれ変わりとして、崇拝する集団も出てきているようだが……」

シエスタはひざまずき、狂信の眼差しを小さなメシアに注ぐ。
「そうでは、ないのですか? はした女にお教え下さい」
「そうかも知れないな。いや、ルイズが『虚無の担い手』の一人だから、転生体は彼女なのかも知れん。
 ぼくはブリミルより上の存在、『唯一神』の遣わした救世主であるから、ブリミルとも同格以上だろう」
松下は天を指差す。シエスタは恐れ戦き、大地に五体を投げ出して、松下を礼拝した。
トリステイン魔法学院は、明日から2ヵ月半もの夏期休暇。
大多数の生徒諸君は、故郷の領地や王都トリスタニアに住む家族のもとへ帰郷する。
ルイズも一応、ラ・ヴァリエール公爵領に帰郷する予定、だったのだが……。

「女王陛下からの、親書……!」
アンリエッタ陛下から、フクロウによってルイズに書簡が届けられた。
それを読んだルイズは、タルブ戦で使った遠隔通話魔法具で、松下を呼び出す。
「これも正しく『召喚』ね。『召還』かも知れないけど。
 あいつは私の使い魔なんだから、こっちへ還って来るのはあいつの方なのよ!……早く出なさい!」

『……もしもし、松下だが。……あぁ、きみか。ホットラインがあったのを忘れていたよ。
 ……なに、女王陛下が呼んでいる? そんなこたぁいいんだよ、忙しい時に』
「いいこたぁないわよ!! 勅命だから、さっさと『魔女のホウキ』で飛んできなさい!
 さもないと例のエロイムエッサイムの呪文で『召還』するわよ!」
『爆発とともに現れるのは勘弁願いたい。分かった、すぐ行くよ』

通話を終えて、ふん、と松下は鼻息をつく。
女王陛下とルイズは、あくまでぼくを『ルイズの使い魔』という扱いにとどめておきたいようだ。

「まあ、ここはしばらく、自律的発展に任せよう。『第二使徒』シエスタ、きみと家族をぼくの名代として残す。
 あとで連絡先を知らせておくから、何か変事があればホウキで飛んできてくれ。
 そちらの情勢も、逐一ぼくの私兵メイジたちにチェックさせて、書き送ってもらうが」
「承知いたしました、『我らのメシア』。もし再度アルビオンから侵攻があったとしても、
 我々がメシアの御光臨まで持ちこたえてご覧にいれましょう」
王宮に現れた二人を、女王は温かく迎えた。密談室に通され、『東方』産の高価なコーヒーと菓子が振舞われる。

「わざわざお呼び付けして、申し訳ありませんでした。けれど、内密にお伝えしたいことがございまして」
「何でしょう? この間の件なら、しっかり報酬は頂きましたが。タルブ伯領地の拡大と、国内の余剰人材の提供、
 それに褒賞金が少々とマジックアイテムの下賜。貴女の生命や王国に比べれば安いものです」
「そうですね、改めて感謝いたしますわ、タルブ伯マツシタ殿」
ルイズが、じとっと松下を睨む。どこまで傍若無人なのだ、こいつは。

アンリエッタ女王の話は、次のような内容であった。
アルビオンは、艦隊が再建されるまで、正面からの侵攻を諦め、不正規な戦闘を仕掛けてくる。
国家の事業を妨害し、国内の反体制派を煽り、暴動や反乱、破壊活動を援助する……いわば無差別テロだ。
カネや魔法や『アンドバリの指輪』で操った人間をテロリストにし、王侯や高官を暗殺にかかるかもしれない。
勿論、王都の大商人や高官を買収し、情報戦・謀略戦を仕掛けても来るだろう。
先だっての皇太子事件とて、悪魔以外にも手引きがあったはずなのだ。

「……そういうわけで、我々は『治安維持法』を制定し、国内……特に王都周辺の治安維持を強化しています。
 憲兵や一部近衛兵も忠誠心の高い平民から取り立て、私の身辺警護に当てています。当然、女性ばかりですが」
「ご自慢の魔法衛士隊とて、グリフォン隊もヒポグリフ隊も壊滅し、残るはマンティコア隊だけですからな。
 陛下の身辺の安全と治安の維持が優先されるのには、賛同いたします」

女王は微笑み、話を続ける。
「有難う。そこで、お二人には1ヶ月ほど、『身分を隠しての情報収集任務』をご依頼します。
 平民の間に立ち混じり、不穏な動きや噂を調査して、私に直接知らせていただきたいのです。
 此度の戦争で、かなり民衆には負担を強いることになりますのでね」

一種のスパイか。まぁ、日本が先の戦争に負けたのも、軍部が暴走して貴重な情報を軽視し、
無謀な戦争へ国を導いてしまったのが原因だ。戦前の諜報活動は、国内外に向けられるべきものだろう。
だが……。
松下は、コーヒーカップを片手に、椅子の背もたれに寄りかかる。
「しかし、陛下。このぼくとルイズに、そんな役が出来ると、本当にお思いですか?
 ぼくは『ただの平民の子供』として行動する事など出来ないし、公爵家令嬢のルイズは言わずもがなです。
 それより、ぼくの私兵集団に調べさせた方が、よほど効率がよろしい」
「こ、こら、マツシタ!」

「ルイズが、ぼくが目を放した隙に、敵の手に落ちたら? 『使い魔の責任』として、ぼくは縛り首ですか?
 ぼくが、『何者か』の手にかかって暗殺されたら? タルブ伯領はどうなります?
 今やぼくには、千人に及ぶ私兵集団が付いているのですよ。勝手な真似はできませんし、危ない橋は渡りません。
 もし、そうなったら……お分かりでしょう? アンリエッタ女王陛下」

松下が、女王に脅しをかける。地球で一度暗殺されているため、以前よりは慎重になっているようだ。
もはや彼は、ただの8歳児の使い魔でも、『東方』のメイジ見習いでもない。
狂信者の集団を従え、国内に確固たる勢力基盤を築きつつある、危険な『悪魔くん』なのだ。
とは言え、彼のような存在を統御できなければ、国家を治める女王としての資格はない。毒を以て毒を制す、だ。
アンリエッタは内心冷や汗を掻きつつ、次の手を打つ。

「それは分かっております。しかし、不穏な動きはすでに兆候を見せています。
 例えば、このような張り紙はご存知ですか?」
リッシュモン高等法院長から枢機卿が入手した、例の張り紙を松下に見せる。

「ほほう、『薔薇十字団』とはね!」
「おや、ご存知でしたか?」
「ええ。ぼくのいた……『東方』で昔流行していた、魔術的秘密結社です。
 確かロマリアやゲルマニアでは、今から30年以上前に話題になったはず。
 なんでも開祖のローゼンクロイツなる人物は、かつてサハラや『東方』を旅し、
 その知識を持ち帰って弟子たちに密かに伝えたと言われ、死んでから120年後に復活したとか……」

喰い付いて来た。アンリエッタはにこやかな笑顔を浮かべたまま、続ける。
「それは興味深い。是非とも、魔法に造詣の深い貴方に調査して頂きたいですわ。
 『東方』で流行していたというなら、国内のメイジでは理解しにくいでしょうし。
 まさかゲルマニアのメイジにこんなことは頼めませんもの、ねぇ」

松下は、してやられた、と苦笑する。興味のあることに関してつい饒舌になるのは、悪い癖だった。
「ウワッハッハハハ、まっ、いいでしょう。陛下をいじめても、はじまりませんからね」
ルイズはすっかり蚊帳の外で、いじけ始めた。コーヒーは苦くて、ミルクと砂糖をたっぷり入れなくては飲めないし。
13名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 02:33:09 ID:b+wEDebC
支援
「それじゃあ、息抜きがてら、しばらく平民としての生活を楽しんでみましょうか。
 それで、ぼくとルイズに、その秘密結社について調べろと?」
「ええ、お目付けと言ってはなんですが、私の直属の部下を付けさせてもらいます。
 アニエス、お入りなさい」

女王が杖を振って『開錠』し、鈴を鳴らすと、扉が開いてその人物が入室する。
長身の女性、それも20代前半。短く切った金髪の下で光る、警戒心の強そうな、きつく吊り上った碧眼。
百合の紋章が描かれたサーコートの下には、鎖帷子が光っている。姿勢を正し、びしっと軍礼をする。
「帯剣はしていませんが、武装姿で失礼します。この度『シュヴァリエ(騎士)』として銃士隊の隊長に取り立てられた、
 アニエスです。平民出身ゆえ、『ラ・ミラン(粉挽き女)』などと呼ばれていますが」

ルイズは、貴族風を吹かそうと立ち上がる。
「平民が、シュヴァリエだなんて……それに、そんな恰好、陛下にご許可を頂いたの!?」
「ぼくは平民出身だとて差別はしない。よろしく、アニエス」
「彼女は忠実な私の衛士。女だてらに反乱兵鎮圧などに大きな手柄を立て、めでたくシュヴァリエに叙勲されました。
 今回の任務で、さらに手柄を重ねさせて上げたいのです。忠誠には、報いねばなりませんから」
ルイズがぐっと押し黙り、着席する。

「『民の声は神の声』と古代の政治家は言ったものです。しっかりと、忌憚無く民衆の意見を聞き出して下さい。
 期間は明日より1ヶ月。週に一回、報告書を提出して頂きます。その他はご自由に」
「いいですよ。ただしタルブに何か変事があれば、ぼくはルイズを連れて最優先でそちらへ行きますからね」
「ええ。それ以後は、夏期休暇をお楽しみ下さい。ルイズも帰郷を遅らせて、済みませんね」


アニエスは、蚊帳の外でいじけるルイズをあやしつつ、松下に警戒の目を向ける。
20年前、身寄りのない平民の孤児だった彼女を拾い上げ、成人まで世話してくれたのは、若き日のマザリーニ。
そして即位してからのアンリエッタは、彼女を引き取って直属の部下とし、軍功を立てさせた。
まさしく、枢機卿と女王の『子飼い』の部下なのだ。王国に対してよりも、彼らへの忠誠心は並大抵ではない。

彼女自身は、主人に使い潰されればよいと信ずる根っからの武人。
魔法こそ使えないが、剣術も武術も、拳銃を操る術も達人級である。
ワルドの裏切りで、メイジを信用し難くなったアンリエッタには、うってつけの護衛であった。

それに、アニエスには一つ、これまでの人生を賭けてきた望みがある。
これが叶えば、あとは死んでもよい、というほどの望みが。
それは20年前、自分の村と家族を焼き滅ぼした、あの事件の主謀者を……この手で殺す事。

(つづく)
15松下:2007/11/28(水) 02:37:03 ID:+nSgTOAr
投下終了。支援感謝。
すっかり『悪魔くん』な松下と、恐怖の『千年王国(ミレニアム)』教団であります。ヤクザみたい。
ただいま着々と世界征服の準備中。ええ、メルヒェンやファンタズィ〜ですから。
一応、これでも人類愛と善意に満ちてはいるらしいんですがね。なにしろ救世主だし。

では、また。
16名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 04:10:12 ID:JUmRFL8E
悪魔くん乙でした
いじけるルイズをあやすアニエスにときめいた!!
女王として政治の駆け引きにも成長していくアンアンに恐怖っす
17名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 04:29:52 ID:Rj8QERyg
>喰い付いて来た。アンリエッタはにこやかな笑顔を浮かべたまま、続ける。

>松下は、してやられた、と苦笑する。興味のあることに関してつい饒舌になるのは、悪い癖だった。

確かに女王陛下の成長ぶりは凄いなあ。
>>松下氏、超GJ。
18名無しさん@お腹いっぱい。 :2007/11/28(水) 07:51:51 ID:EyHjqYp0
乙です。

>人類愛と善意に満ちてはいるらしいんですがね
嘘だ!!
としか思えないんだよなぁ。
なんかこう、『人類救済』よりも『世界を俺色に染めてやるぜ』っていう方が納得する。
19名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 08:33:29 ID:GhDG1Wb5
>>15
投下乙であります!
それにしても相変わらず黒いなあみんな・・・。
ルイズが一番純真に見えるよw

>密談室に通され、『東方』産の高価なコーヒーと菓子が振舞われる。

なぜかここに水奇臭を感じたw

20名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 12:22:11 ID:qfxiVsmk
まあ己の理想について絶対の自信がなけりゃ救世主なんてやってられんだろうし。
しかも、その理想が輝いて見えるのが今のハルケギニアだと言うのがなんとも。
21名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 12:37:10 ID:e3wTHPRE
投下いたしやす。よろし?
22名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 12:38:55 ID:Ha5Oz90C
よろしよろし
23名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 12:41:26 ID:1hNozTE3
早くしてけろ
24ベルセルク・ゼロ5:2007/11/28(水) 12:43:36 ID:e3wTHPRE
 ルイズはベッドに腰掛け、パックの話を聞いていた。
 パックからガッツの事情をかいつまんで聞かされたルイズは本日何度目かのため息をついた。
「異世界からきた…ね…とても信じられないけど……」
 先ほどのガッツの剣幕を思い出す。実際あれほどの激情を目の前で見せられては疑うわけにはいかない。
「とても嘘をついている風じゃなかったものね……その、とても怖かったし……」
「必死だったんだよあいつも。普段はあそこまで取り乱すことそんなにないんだよ…そんなに、だけど」
 苦笑いを浮かべるパックの脳裏には出会ったばかりのころのガッツが思い出されていた。
 あの当時のガッツをこのルイズが召喚してしまっていたとしたらどうなっていたか―――想像に難くない。
「不幸中の幸いってやつだね〜」
「?」
 たはは、とパックは笑う。
 ルイズはそんなパックをきょとんと見つめていた。
 やがて―――
「よし…!」
 ぱんっ、と膝を掴んでルイズは立ち上がる。そのまま勉強机に腰掛けた。
 さんざん弱音は吐いた。泣くだけ泣いた。
 あとは前に進まなきゃ。
 とりあえず新しい使い魔をどうするか、自分の立場がどうなるかは後回し。
 自分の失敗魔法のせいでガッツに迷惑をかけてしまった。
 ならば、その責任をとらなければならない。
 ひょっとするとそれは償い切れないほどのものかもしれない。
 それでも、逃げ出すことは許されない。
 失敗を見ないことにして放り出すことなど到底許容できない。
 それがルイズの考える貴族の在り方―――これからも貫く、自分の生き方だった。
 どすんっ!
 机の上に「コレ頭叩き割れるんじゃね?」というほどの厚みのある本が置かれた。
 2000ページは優に超えていると思われる。
 それは古今東西、ハルケギニアに存在した、『フライ』を始めとする移動形魔法の種類とその詳細が書かれた、いわゆる『辞典』だった。
 パラリ―――とページをめくる。
 一枚一枚、一言一句逃さず、ルイズはその本を読み続けた。

 二時間後―――
「ぐぅ…むにゅ……すやすや……」
 ルイズは開かれたままの本に突っ伏して寝息を立てていた。
「ルイズ〜、寝るならちゃんと布団で眠りなよ〜〜」
 パックが苦笑しながらルイズの頭をぽんぽんと叩く。
 完全に寝ぼけたまま、それでも何とか目をあけたルイズは椅子から立ち上がると、もそもそと服を脱ぎ始めた。
「わわわぁ〜〜!! ルイズ、ちょ、ちょっと待った! なななにしてんのッ!?」
「む〜? なぁにってぇ〜、きがえてるにきまってるでしょ〜〜? せいふくぅ〜しわになったらぁ……むにゃ」
「はわわわわ」
 ルイズの手が下着に伸びる。緩慢な動作でそれも脱ぎ捨てると、ルイズはネグリジェを頭からかぶり始めた。
 無論、その間ルイズは丸出しである。
 エルフが人間に欲情するかは定かでは無いが―――少なくともパックはガン見だった。
 ルイズはネグリジェに着替えるとぼさっ!とベッドに飛び込む。
「むぅ〜〜…ん……すぅ〜すぅ〜」
 そのまますぐに寝息を立て始めた。
 パックはルイズの顔を覗き込み、眠りにつくのを見届けてから部屋を出ようとした。
 むんず。
「ほえ?」
 ルイズの手が飛び去ろうとしたパックを握り締める。
「んむぅ…むにゃむにゃ、ちいねえさまのつくったまろんけーきおいしい」
 そのままパックはルイズの口の中にinした。
「のおおおお!! オレの体からは栗の匂いでも出てるとですかーーーー!?」
 はぐはぐと頭頂部をルイズに咀嚼されながら、パックは心の叫びを上げた。
25名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 12:44:11 ID:Ha5Oz90C
支援
26ベルセルク・ゼロ5:2007/11/28(水) 12:45:18 ID:e3wTHPRE

 ―――夜が明ける。
 あまりにも異様だった双月はその姿を潜め、太陽がトリステインを照らし始める。
 その輝きだけは自分が見慣れたものとそう変わらないように思えた。
 ガッツは剣を抱き、壁に背を預けて座ったまま首筋を指でなぞる。
 なぞった指を確認するが―――やはり一滴の血もついてはいない。
 いつもの世界では考えられないほど穏やかな夜に、しかしガッツは背筋が凍る思いだった。
 いくら悪霊が現れず、穏やかな夜だったとはいえ、ガッツが眠りにつくことはない。
 神経が高ぶっていて寝付けるようなものではなかったということもあるが―――根本的に、ガッツはもはや夜に眠ることは出来ない。
 安全だとわかっていてもどうしても落ち着かないのだ。
 これから先も、夜に穏やかに眠れることはおそらくないだろう。
 まあこの世界に召喚された際、随分と長い間気絶していたことが幸いして、わりと頭はシャンとしているようではあった。
 太陽が覗くまで長い間自問自答を繰り返していた甲斐があって、沸騰した頭は幾分落ち着いてくれたらしい。
 ガッツはこれからの自分の行動を決めることにした。
(ルイズとかいうガキはあてにしちゃいらんねえ…やはり、自分の足で探すか)
 まだここが本当に異世界だと確定したわけではない。
 その辺のこともじっくり調べてみる必要がある。
 とすると、やはり町に向かう必要があるだろうか?
 そんなことを考えていると――――

 ぐう。

 お腹がなった。
 そういえば最後に飯を食べてもうそろそろ丸一日経つ。
「まずは腹ごしらえか……」
 さて、どこに行けば飯にありつけるのか。
 まあとりあえず適当に建物内を散策してみるか―――とガッツが腰を上げると一人の少女が目に入った。
 清楚な黒髪をカチューシャで纏めた女の子が、大量の洗濯物を抱えて歩いていた。
 その服装には少し見覚えがある。確か、貴族に仕える侍女が似たようなものを着ていたはずだ。
(この学院に居る者は―――)
 ルイズの言葉を思い出した。
 この学院の生徒とやらは全員が貴族。
 つまり、なるほど、あの少女はおそらくここで侍女として雇われているのだ。
 であるならば、彼女に聞けば飯の在り処もわかろうというものである。
 ガッツは立ち上がり、少女のもとへと歩み寄った。
「おい」
「はい? きゃあ!」
 少女はガッツの声に振り向いた拍子にバランスを崩し、抱えていた洗濯物を盛大にぶちまけてしまった。
「…悪い」
「いえ、私の不注意ですから…あら、あなたは学院の生徒じゃないですよね?」
 当たり前だ。見たらわかる。
 身の丈を超える大剣を担ぎ、黒尽くめの甲冑に身を包み、極めつけに左手は鉄の義手(大砲オプション付)だ。
 そんな生徒はどこの学校を探したって存在しない。
27ベルセルク・ゼロ5:2007/11/28(水) 12:47:16 ID:e3wTHPRE
「あなた、もしかしてミス・ヴァリエールの使い魔になったっていう……」
 ミス・ヴァリエール?
 ガッツはしばらく考えてから「あぁ、あの桃髪のことか」と思い当たった。
「ずいぶんと広まってるんだな」
「ええ、ミス・ヴァリエールは平民を召喚してしまったってすっかり噂になってます」
 まあそれはどうでもいい。噂したけりゃすればいい。それよりも。
 ガッツは少し気になったことを聞いてみた。
「あんたも魔法使いなのか?」
「いえ、私はあなたと同じ平民です。貴族の方々をお世話するためにここで奉公させていただいてるんです」
 明らかに自分を貴族より下の位置に定めている者の口ぶりだ。
 貴族がいる前ならまだしも、周りには同じ平民だと認識しているガッツしかいないのに、ここまでへりくだったしゃべり方をするとは。
 どうやらこの娘は心の底から貴族を自分より上位の存在だと考えているらしい。
(こら仕込みがいいわ)
 そんなことを考えながらガッツは少女が落とした洗濯物をひょいひょいと集め始めた。
「あ、ありがとうございます」
 ガッツの行動が意外だったのか、少女は少し驚きながら礼を述べた。
「どこまで運べばいいんだ?」
「そ、そんな! 大丈夫ですよ! ミス・ヴァリエールの使い魔の方にそこまでしていただくわけにはいきません!!」
 少女はガッツが集めた分の洗濯物を受け取ろうとするが、そうすると持ちきれない分がまた落ちるのは目に見えている。
「気にすんな。俺もあんたに頼みたいことがあるからな」
「う…それじゃあお願いします。あそこの井戸の方まで運んでもらえますか」
「あいよ」
 少女が指差した方向に二人肩を並べて歩き出す。
 少女は隣を歩くガッツを少し不思議そうに見上げてから、
「あの、お名前はなんておっしゃるんですか?」
「ガッツだ」
「ガッツさん……私は、シエスタっていいます。どうぞよろしく」
 シエスタはそう言ってガッツを見上げたまま微笑み―――
 こけた。



「ガッツさん黒髪ですよね。私と同じです」
「ん…まあ、そうだな」
 ガッツはシエスタの洗濯を手伝っていた。
 シエスタが桶で洗い上げた物をガッツが木の枝同士に張られたロープに干していく。
 ガッツがシエスタに飯を食うにはどこに行けばいい、と尋ねたところ、シエスタの厚意によりいつも厨房で出ているという賄い食を出してもらえることになった。
 洗濯が終わった後に連れて行ってもらえることになったのだが―――ただ突っ立って待っているのも手持ち無沙汰なので、ガッツから手伝いを申し出たのである。
 じゃぶじゃぶと洗濯板を使って洗濯を進めるシエスタの言葉に、ガッツは自分の前髪を少し指でいじった。
 右側の前髪だけ白い。狂戦士の甲冑を身に纏った反動だ。
 ちょびっと白い剣士。
 ほぼ黒い剣士。
 パックとイシドロに叩かれた軽口を思い出す。
 まあしかし、黒髪と言って問題はなかろう。故にガッツは曖昧に頷いた。
「トリステインでは黒髪って珍しいんですよ? 私、家族以外で黒髪の方に会ったのは初めてです。ガッツさん、出身はどちらなんですか?」
「言ったってわかんねえだろうし、本当のところは俺もわからねえさ」
 実際ガッツは自分の生まれを知らない。
 昔、かつて自分の親代わりをしてくれた男は、自分のことを『死体の股から生まれた呪われた子』と言った。
 自分の出自について知っているのはそれだけだ。
 あるいはミッドランドと答えてもよかったかも知れないが、シエスタにはわからなかったろう。
 ガッツの答えに「なんですか、それ」とシエスタは笑った。

28ベルセルク・ゼロ5:2007/11/28(水) 12:48:38 ID:e3wTHPRE

 洗濯を終え、シエスタに連れられた厨房で、ガッツは賄いのスープを口にしていた。
 ここでもガッツは驚くことになる。
 ―――スープが、うまい。
 狂戦士の甲冑の反動によって失われていたはずの味覚が戻っていた。
(つくづく魔法ってのは…すげえもんだな)
 もしかすると死者を甦らせる魔法なんてのもあるのかもしれない。
 そんなことを考えているとコック長のマルトーがガッツに話しかけてきた。
「よう、兄ちゃん! くそったれな貴族に召喚されちまったんだって!? 難儀なことだなあ! おめえの気持ちはよ〜くわかるよ! 貴族たちに使った食材の余り物だってのが癪にさわるが、今日は好きなだけ食ってくれ!!」
 陽気にがははと笑いかけてくる。
 マルトー自身もがっしりとした体躯をしているためか、ガッツに対して恐れというものは抱いていないようだった。
「ところでよ〜…お前さんのそれ…剣かい?」
 マルトーがガッツの傍らで壁に立てかけられたドラゴンころしを指差した。
「ちょっと持たせてくれよ」
 言いながらマルトーはドラゴンころしの柄に手をかける。
「ふんッ!! ……んぅううあ!! 無理ッ!! 剣っていうかただの鉄板じゃねえか!! こんなもん振ったら肩がぶっ壊れちまうぜ!! 兄ちゃんコレ本当に振れんのかい?」
「……ああ」
「ホントかよッ!! そりゃあすげえや! な、振って見せてくれよ!!」
 ……ここでか?
 ガッツは若干呆れながら厨房を見回した。
 広い厨房だとは思うが―――こんなところでドラゴンころしを振り回したらえらいことになる。
「なんだよ! やっぱりこりゃ虚仮脅しなのかい!? 兄ちゃん、見栄を張るのはいいが武器はちゃんと自分になじむものを使いな! その辺は剣士も料理人も一緒だぜ!!」
 否定するのも面倒なので、ガッツは適当に流して黙々とスープを口に運び続けた。
「ガッツさん、どうぞゆっくりしていって下さいね」
 貴族に出す分なのだろうデザートをトレイに乗せて、シエスタはガッツの前を通り過ぎ、生徒用の食堂だという部屋に入っていった。
 軽く手を上げてそれに応えてから、ガッツはスープを平らげる。
 マルトーに礼を言って厨房から出ようとドアに手をかけた時―――

 食堂の方が騒がしいことに気がついた。



 食堂ではシエスタが金髪の少年に頭を下げていた。平伏し、頭を地面にこすり付けるほどに。
 そのシエスタを、薔薇を片手に見下ろす金髪の少年の顔はなぜかワインまみれだった。
「君のおかげで二人のレディーの名誉が傷付いてしまったよ。どうしてくれるんだい?」
「申し訳ございません、申し訳ございません…!」
「申し訳ないですんだら銃士隊はいらないんだよ! 僕はどうするのかと聞いているんだ平民!!」
「ひっ…! ごめんなさい…! ごめんなさい……!!」
 金髪の少年は別に償いを求めているわけではない。
 こうやってシエスタを追い詰めることでストレスを発散しているだけだ。
「なにあいつ、かんじわる〜〜。今の悪いの完全にあいつじゃん!」
「ギーシュのやつ…朝っぱらから見苦しい真似してるわね…」
 そんな二人の様子をルイズとパックは苦々しげに眺めていた。
 事の顛末はこうである。
 デザートを配膳していたシエスタは金髪の少年・ギーシュが香水のビンを落としたことに気がついた。
 元々奉仕精神の強い彼女である。当然それを見過ごすことは出来ず、ビンを拾い上げるとギーシュに差し出した。
 しかしギーシュはそのビンを受け取ろうとはしなかった。その真意を彼女に汲み取れというのは酷な話だ。
 結局その香水がきっかけで彼の二股が明るみになり、彼は二股をかけていた少女二人から見事な制裁を受けた。
 ギーシュはその責任をこともあろうかシエスタに押し付けたのである。
「まったく、これは教育が必要なようだね……」
「お許しください…お許しください…!」
 シエスタは目に涙を浮かべている。
 ギーシュはそんなことお構いなしとばかりに彼が魔法の杖として使用している薔薇の花を高々と掲げた。
 ひい…!とシエスタは頭を抱えて蹲る。
 ギーシュはそれを見て大変ご満悦な様子だった。
「もう許さん! この怪傑スパックが制裁を与えてくれる!!」
「こら! 面倒なことに首突っ込まないの!!」
 どこからか毬栗を取り出し突貫しようとするパックをルイズは捕まえる。
 ちょうどその時だった。
29ベルセルク・ゼロ5:2007/11/28(水) 12:51:20 ID:e3wTHPRE
すんません、時間無くなった!
また時間できたら投下始めます!
30名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 12:56:18 ID:TyqPR0mr
なんというなまごろし
期待させておいてこの仕打ちか!wwwwwwGJwwwww
31名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 13:05:37 ID:Rmm5iP01
このきり方はひどいwwGJww
32名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 13:09:07 ID:Mm1FyDu+
なんという休憩時間の合間を縫った投下w
乙であります
33名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 13:09:20 ID:YlGvBqFh
うわあああ!すっごくいいところでぇぇぇぇぇ!!
34名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 13:10:28 ID:OndeDAL/
言えることは一つ



ギーシュ逃げてぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!
35名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 13:39:16 ID:NAysFlt9
ちょww生殺し過ぎるwww


で、ギーシュは……真っ二つ?
36名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 13:42:15 ID:qJmpP3s1
何言ってるんだ。


2つぐらいですむとでも?
37名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 13:47:11 ID:L38PnJEO
いっそ17分割くらい(スレチ
38名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 13:52:17 ID:mToRH5ym
GJ!
大人らしく剣で「軽く」叩いて「脅かす」だけに一票
39名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 13:53:39 ID:9oGkOunl
ギィィィシュ!!
40名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 13:53:47 ID:S7Hwet1C
青銅のゴーレムごとき鉄拳制裁で終わってしまいそうだから困る
オールドオスマンとのガチバトルキボウ
41名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 14:08:44 ID:N0nGkGTR
実はオスマンが使途とか?
42名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 14:09:25 ID:ydlBWgPp
涙鼻水失禁ギーシュが簡単に想像できるぜw
43名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 14:10:52 ID:EZIKCghg
ガッツって老けて見えるけど、年齢は確か二十代前半じゃなかった?
鷹の団加入時で13〜14、団でキャスカとやりあってた頃が17前後だったはずだし。
マチルダ姉さんも大概老けて見られるけど、ガッツには及ばないなw
44名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 14:16:17 ID:sF0T+kil
みんなギーシュが斬られるって思ってるみたいだけど、ガッツだって野獣じゃないだ。手加減してくれるよ
刃は使わずにドラゴン殺しの腹で殴ってくれるよ
45名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 14:17:28 ID:9ZuDba6Z
いや、ガッツには悪いけどあの外見みて
二十代前半って思う方がおかしいだろww
46名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 14:23:08 ID:qJmpP3s1
苦労が外見に現れてるんだよ
47名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 14:27:11 ID:47F8Glvi
ギーシュは間違いなく

・杖を振る間もなくナイフで穴だらけ
・決闘を口にする間もなく鉄拳制裁で気絶
・青銅ゴーレム出した瞬間に、ボウガンでハリネズミ

 相手になりません、どうしようもありません


つーか、まずギーシュごとき、ガッツが相手にするかどうかが問題だ
48名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 14:29:11 ID:sF0T+kil
>>47
そりゃそうだったw
食堂で騒いでるギーシュをいきなりのパンチ一発で病院送りにしそうだ
49名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 14:40:44 ID:EZIKCghg
>>48
その場合、ギーシュは助かる。
貴族に手を上げるとは何事だと絡んできたマリコルヌやレイナール達と代わりに決闘。
ドラ殺の一閃の下、一人残らずずんばらりん。
50名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 15:27:05 ID:SCvvyOGH
要するに一人以上はケガをするってことだなwwwwwwGJ
51名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 15:27:24 ID:lxvKYTo1
ガッツはドラゴンころしを使う
作者の人はなまごろしを使う……もどかしくて死にそうなのですよ
52ベルセルク・ゼロ5:2007/11/28(水) 15:28:46 ID:emqXk4uR
ごめん、お待たせ!
投下始めます
53名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 15:30:49 ID:NzVypYen
ktkrww
支援 私怨 シエンww
54ベルセルク・ゼロ5:2007/11/28(水) 15:31:27 ID:emqXk4uR
 ギーシュは床に大きな影が差していることに気がついた。
 何事かと後ろを振り向き―――
「うわあ!」
 いつのまにか現れていた巨躯の男に、驚きの声をあげた。
 驚いたのはギーシュだけではない。
「ガッツ!?」
「あいつあんなとこでなにしてんの!?」
「ガッツさん……!?」
 ルイズも、パックも、シエスタも思いがけない乱入者に思わず声をあげていた。
 ギーシュはその男がルイズの召喚した平民だということに遅まきながら気がついた。
「何のつもりだ…平民。貴族である僕を見下ろすなどと随分と不遜な態度じゃないか」
「何があったか知らねえが……もう勘弁してやっちゃくんねえか?」
 ガッツとしては一応、シエスタには恩がある。
 シエスタがここまで追い詰められているのを放っておくのは、さすがに夢見が悪かった。
「頭が高いと言っているんだ平民ッ!!」
 ギーシュが一喝する。
 自分を見下ろすこの男は貴族に対してなんら敬意を払っていない。
 それどころか―――この男は自分を見下してすらいる。
 ギーシュはそう感じていた。
 ガッツは―――ギーシュの傲岸な態度に、抑えていたものが噴出しそうになっていた。
「やれやれ…貴族ってなぁどいつもこいつも……聞くが、お前はそんなに偉いのか?」
「よかろう。名乗ってやる。我が名はギーシュ! ギーシュ・ド・グラモン!! かのグラモン伯爵家の第三子だ…わかったら平民! さっさと頭(こうべ)を垂れるがいい!!」
 両手を大きく開き、ギーシュは大仰に名乗りを上げた。
 グラモン家は最近お金の面で苦労しているとはいえ、それでもトリステイン有数の大貴族だ。
 平民に対するその威光、推して知るべしである。
 しかしガッツはそんなことは知らない。否、たとえ相手がミッドランドの大諸侯だったとしても、その態度は変わらない。
 ふっ…とガッツの口が皮肉げに笑いの形を作った。
「俺は『お前』が偉いのかと聞いたんだ。啖呵をきるのに親の名前がいるってんならずっとママと手をつないで一緒にいてもらえ、ガキ」
 シン…と食堂の空気が凍った。
 もはやガッツを敵視しているのはギーシュだけではない。
 ガッツの今の発言はギーシュの家名を馬鹿にした―――だけではない。
 親から子へと連綿と受け継がれていく貴族の名誉、その在り方そのものをあざ笑ったのだ。
 家名に誇りを持つ全ての貴族たちがガッツを睨み付けていた。
 シエスタの顔は蒼白だった。
「よかろう……そこまで貴族を馬鹿にするんだ。覚悟は出来ているだろう! 決闘だ!! 平民ッ!!」
 ギーシュがそう言い放つと周りの生徒たちから歓声が上がった。
「ヴェストリ広場に来い! ここを君の血で汚すわけにはいかないからな…!」
 そう言い捨てるとギーシュは食堂を出て行った。
「ギーシュが生意気な平民に粛清を与えるぞ!!」
「あいつは貴族を馬鹿にした!! 八つ裂きだ!!」
 食堂にいた生徒たちは是非決闘を見物しようとギーシュの後について続々と食堂を後にする。
 2,3人ほどの生徒は残り、どうやらガッツが逃げないか監視しているようだった。
55名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 15:33:45 ID:c+ZK2JhN
そうきたか、支援。
56ベルセルク・ゼロ5:2007/11/28(水) 15:33:45 ID:emqXk4uR
 普段のガッツであればこんな決闘に乗ることは無い。どれだけギーシュ達がわめこうがまったく取り合わないだろう。
 しかし今回ばかりは―――事情が違った。
 胸のうちから噴出す黒い炎を誰彼構わずぶちまけたい気分だった。
「ガッツさん……だめ、殺されちゃう……」
 シエスタはガタガタ震えている。
「あんた何馬鹿なことしてんのよ!!」
 ルイズがガッツに駆け寄ってきた。
「早く謝ってきちゃいなさい!! 確かにギーシュにも悪いところあるけど、今のは絶対にアンタが悪いわ!!」
 ルイズとて典型的な貴族だ。先ほどのガッツの発言は正直度し難い。
「メイジとやりあっちゃ、無事じゃすまないわ…! ほら、早く―――ッ!?」
 ルイズはそれ以上続けることが出来なかった。
 ガッツの目を見て、続けられなくなった。
 ガッツがルイズに向ける目は、ギーシュに向けていたソレとはレベルが違う。
 その目が直接ルイズに語りかけてくるようだった。

 ―――てめえはこんなところで何をしてやがる

 ガッツの目はそう言っている気がした。



 ヴェストリ広場で、ガッツとギーシュは向かい合って立っていた。
「ギーシュー!! 遠慮はいらねえぞーー!!」
「身の程知らずの平民め!!」
 向かい合う二人に周囲の生徒から歓声と野次が浴びせられる。
 ギャラリーの数は学院中の生徒たちが集まったのではないかというほどの人だかりだった。
 そのギャラリーの中にルイズはいた。その頭の上にはパックが立っている。
 いざとなれば、自分が出て行って決闘を中止させるつもりだった。
 こんなことになったのは、大本を正せば自分のせいなのだ。
 パックからガッツの事情は聞いている。
 大事な旅の途中であったろうガッツに、こんなところで怪我をさせるわけにはいかなかった。
「よくぞ逃げずに来た! 平民!!」
 ギーシュは胸のポケットに挿しておいた薔薇の花を抜き取り、振るった。
 そこから零れ落ちた花びらが宙を舞うと―――甲冑を纏った女剣士を模したゴーレムへと変化した。
「僕はメイジだ。だから魔法で戦う。よもや文句はあるまいね?」
「……好きにすりゃあいい」
「……いい度胸だ。改めて名乗ろう! 我が名はギーシュ! 『青銅のギーシュ』!! 名乗れッ! 平民ッ!!」
 ギャラリーの歓声が絶え間なく聞こえている。
 ガッツは一拍の間を置いて―――
「ガッツ。ただのガッツだ……ガキ」
 そう、名乗った。


 二人の様子をルイズはハラハラしながら見守っていた。
「ああ、もう、またあんな挑発して……しおらしくしてれば、ギーシュも本気出さないかもしれないのに……」
「ルイズさあ……」
 ルイズの頭の上でパックが口を開く。
「何? パック」
「相手のほうの心配したほうがいいと思うぞ」
57ベルセルク・ゼロ5:2007/11/28(水) 15:35:40 ID:emqXk4uR
「え?」
 なにか、いま、パックが信じがたいことを言ったような―――ルイズがパックの言葉の意味を理解しようとしていると、周りの喧騒がそれを妨害した。
「何だアレ!! ホントに剣なのかよ!!」
「あんなもん振れるわけがないぜ!!」
「わかったぞ! あれは剣じゃなくて盾なんだ!!」
「な〜るほど!! 戦いが始まったらすぐさまあれの後ろに隠れるわけだな!!」
「そりゃあい〜や!! 身の程知らずの平民にはふさわしい戦い方だぜ!!」
 ガッツの背中に担がれたドラゴンころしを指差して生徒たちは口々にガッツを罵った。
 実のところ、ルイズもガッツに対する認識は周りの連中とそう変わらないものだった。
 大剣を持ち上げているのは見たけれど、とてもアレを普通の剣のように振り回せるとは思えなかった。
 せいぜい、振り上げて、落とす。
 その程度の使い方しか、ルイズには想像することが出来なかった。
 無理もない。アレは、剣の範疇に収まりきるものではないのだから。

 ―――決闘が開始される。

「行け! ワルキューレ!!」
 ―――ギーシュの号令と共に青銅の女剣士が動き出す
「「「やっちまえギーシュ! ヴァリエールに遠慮はいらねえぞ!!」」」
 ―――ワルキューレがガッツに迫る
「「「あいつは全ての貴族を虚仮(こけ)にした!! これは粛清だ!!」」」
 ―――ガッツの足が一歩前へ
「「「おいおい平民がなんかやる気だぞ!」」」
 ―――ワルキューレがランスを振りかぶる
「「「無駄な努力ごくろーさんだぜ!!」」」
 ―――ガッツの手がドラゴンころしの柄を握り


      ボ ォ ン ! ! ! !


 ワルキューレの胴が舞った。


 きれいに上下に分かたれたワルキューレの胴が宙を舞う。
 一回、二回、三回。
 ぐるんぐるんと回ったワルキューレの残骸は、そのままドシャリとヴェストリ広場に転がった。
 ヴェストリ広場に静寂が満ちる。
 誰も声を出すことが出来なかった。
 目の前の光景が、自分たちの知る常識からあまりにかけ離れすぎていて。
 ルイズも、目を大きく開き、固まって。
 目の前に対峙するギーシュは最も信じがたく。自らのゴーレムが宙を舞う姿を呆然と見送っていた。

「振った………」

 誰かが漏らしたその声を皮切りに。
 ヴェストリ広場に歓声とも悲鳴ともつかない叫びが木霊した。
58ベルセルク・ゼロ5:2007/11/28(水) 15:37:15 ID:emqXk4uR
以上、投下終了です。
いやあお待たせしちゃった方々、申し訳ない!
>>43
マジ? 三十前くらいだと思ってた……
59名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 15:37:36 ID:+8dzIbi2
支援
60名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 15:38:04 ID:mToRH5ym
確かにあれは常識的に考えて無理に持っただけで腕が千切れる支援
61名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 15:38:05 ID:8rPuH3m+
支援
62名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 15:40:22 ID:A9hzgc0L
マルコのイシドロ化に期待
63名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 15:53:40 ID:NAysFlt9
乙乙!

ドラッグオンドラグーンの鉄塊しか知らないが、
あれも適当に振り回してるだけで鉄壁だからなぁ。

でかければでかいほど質量自体が暴力そのものってのは恐ろしいよね
64名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 15:55:40 ID:prnYrUaJ
鞭のようにしなる使徒もどきの腕で振り回される戦槌を普通に捌くもんなぁ。
ギーシュは犬鎧が発動しないことを祈るべきw
65名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 16:11:41 ID:dVbjhGx4
ギーシュオワタwww
66名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 16:16:35 ID:sF0T+kil
涙鼻水失禁ギーシュが現実味を帯びてきたww
67名無しさん@お腹いっぱい:2007/11/28(水) 16:19:35 ID:MhkRPPCS
ガッツもドラゴンごろしも使徒やゴッドハンドとの影響を受けて「普通の領域」からはみ出ている状態なんだっけ?
68名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 16:20:34 ID:9k3lfBlE


前髪掠めて地面割ってエンドだよな!?ガッツが何かやったらギーシュ良くても大怪我じゃないか!
殴っただけで最低でも骨折まで行きそうだ
69名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 16:32:20 ID:dYG5A00E
もういいさ・・・
ギーシュお前はよくやった・・・
いろんなssに登場して疲れただろう・・・
もう安らかに眠って良いんだよ・・・






ギーシュがイシドロポジションにつく姿がが目に浮かぶ
70名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 17:08:05 ID:PLD6B+Ku
駄目だ。(ギーシュが失禁しながら逃げ回るという)弱い考えしか浮かばねぇwww
作者さんGJ。
71名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 17:16:36 ID:arib/hFC
>>67
ガッツは確か産まれたときから片足を向こう側につっこんでるとかそんな感じだったはず

ガッツとタバサの絡みがいろんな意味でwktk
72名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 17:19:39 ID:R/OlFkoK
ドラ殺は使徒殺しまくった影響で普通の武器じゃダメージ通じない
霧とか受肉したゴッドハンドでもダメージが通るようになった
73名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 17:20:58 ID:HfC1IMAB
対策1. ドラゴン殺しに錬金をかける→多分かなり高いレベルのそれじゃないと効かない
対策2. レビテーションで浮かす→ボウガンAND炸裂弾の遠距離攻撃に切り替えてくる

どう考えても勝てません、本当に(ry
74名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 17:25:38 ID:qJmpP3s1
>71
シルフィード殴りつけてこれでホントにドラゴン殺し……はないな。
75名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 17:27:19 ID:mToRH5ym
ドラゴン殺しにレビテーション+ワルキューレの物量で遠距離攻撃からの盾に
……駄目だワルキューレまとめて粉々に粉砕したあとにレビテーションで浮かせたドラゴン殺しが途中で落ちてくるイメージが……
76名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 17:38:43 ID:dYG5A00E
2話くらいにドラゴンころしを
レビテーションで誰も浮かび上がらせなかったって記述なかったっけ?
スクウェアクラスの奴が全力レビテーションでちょっと浮かせられるくらいじゃね?
77名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 17:49:33 ID:Mm1FyDu+
とりあえず予想は程々にしておこうぜ
ずばりなネタが出てると作者の人もやりにくいだろうし
78ゼロの夢幻×:2007/11/28(水) 17:49:51 ID:d+eFhrly
ルイズがポケットモンスターの世界から何かを召喚しました。
6時丁度に投下してもいいですか?
79名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 17:50:46 ID:mToRH5ym
我はコレクター歌いながら支援
80名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 17:57:40 ID:mxlLw9zI
151のヨロコビ(注:最初期値)
81名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 17:58:16 ID:NAysFlt9
インフィニティなのかゆめまぼろしなのかわかりづらい支援
82名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 17:58:22 ID:Qix8u2Yf
投下前支援
83ゼロの夢幻竜:2007/11/28(水) 18:00:28 ID:d+eFhrly
では逝きます。

ゼロの夢幻竜  第一話「召喚の儀」

「大丈夫。次こそきっと上手くいく。」

今トリステイン魔法学校では、今年の春に晴れて二年生になった者達の「使い魔召喚の儀」が行われている。
午後から一人ずつ執り行われている非常に重要なその儀式は遂に残すところあと一人の女生徒だけとなった。
しかし彼女がそれに取り掛かってからすっかり15分近くかかろうとしていた。
他の者なら1分とかからないこの儀式に何故そこまで時間がかかっているのか?
理由は簡単。その女生徒ことルイズが悉く召喚を失敗させるからである。
彼女が呪文を唱えて杖を振ると、儀式を終えた者達から叫び声と野次がとぶほどの爆発が起きる。
ついでにその者達に召喚された使い魔達も爆発の度に大騒ぎする。
教師も今しがた、今日はやめにして明日また改めて行ったらどうか、といってくる始末だ。
その提案をルイズはもう一回やらせてください!と頼み込んで蹴った。
あと一回という事になったが、回りからは少々疲れ気味の罵倒が止む事は無い。

「いい加減にしろよ!次で何度目かこっちだって数えるの面倒なんだぞ!」
「ちょっと!使い魔宥めなきゃならないこっちの身にもなってよね!!」

いちいち相手にしていたらキリが無い。
大体あんなもの、この学園に入った時からそうだったのだから。
意識を集中させ、杖を高く掲げて声を上げる。

「宇宙の何処かにいる私の下僕(しもべ)よッ!!」

そのいきなりの口上に野次は止むが、同時にきょとんとした雰囲気も作り出す。
だがそんな空気は気にもせずにルイズは続ける。

「強く、美しく、そして生命力に溢れた使い魔よ!私は心より求め、訴えるわ。我が導きに応えなさい!」

口では格好の良い事を言っていても正直そんな事はどうでもよかった。
どんな物でも良い。
召喚されて私の感情を十分満足させてくれる生き物であるならば猫でも鼬でも歓迎するわ。
今度爆発だけで何も起こらなかったらここにいる事さえ危うくなってしまう。
失敗は許されない。もうさっき言った様なやつでも良いから何か来て!!!

84名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 18:01:06 ID:34JDyE0G
支援だ
85名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 18:01:36 ID:d+eFhrly
次の瞬間目も眩むような白銀の閃光が生まれ、次に今までには無い強烈な爆発が起きる。
その為周囲は大量の土煙のせいで完全に視界が利かなくなってしまった。
やがて大分薄くなったそれを一陣の風が遠くへ運ぼうとした時、ルイズにははっきりと見えた。
爆発の中心地に何かが確かにいる事を。

「おい!あそこになんかいるぞ!!」

そして生徒の一人もやや興奮気味にルイズの見ている方向と同じ方向に指を指す。
一瞬それは皆の目には竜の様に映った。
しかし煙が晴れて直ぐにそれは自分達の世界で知られているどの竜とも違うという事に気付かされる。
大きさにして1メイルから2メイルの中間くらい。
色は赤と白を基調としており、草原の中にいれば一目で分かる程はっきりとしている。
体は卵の様な丸みを帯びており長い首がついていた。
そして翼は一般的な竜とは違い、中折れに相当する箇所が無く体から真っ直ぐ伸びている。

「嘘だろ……ゼロのルイズが成功しやがった!」
「でも……何なのよ、あれ?!!」

確かに見た事の無い生き物のためにあれとしか表現しようの無い生き物。
そしてそれは今、目を閉じている。
気絶しているのだろうか?それともどこかで昼寝でもしているところを召喚されたからだろうか?
だがそれを呼び出したルイズにとってそんな事は瑣末な問題の一つにしか過ぎない。
魔法の成功確率ゼロ故に‘ゼロのルイズ’と言われ続けた自分が、やっと成功する事が出来たのだから。
砂漠を歩き続けた旅人が水辺を見つけた時の様に、ルイズはふらふらとその生き物の所へ足を進める。

86名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 18:02:37 ID:d+eFhrly
「や、やったわ……やったわ!!」

正に感激の極みといったところだ。
周囲が動揺していようが何を言おうが最早彼女の耳には何も聞こえてきはしない。
鼠でも鼬でもと考えていたせいか、立派な使い魔を召喚出来たのだから文句の一つも出なかった。
近づいてみると、離れていたときは分からなかったが全身の細かな体毛がガラスの破片の様にキラキラと輝いている。
体が一定間隔で上下している所を見ると、どこかで休んでいる所を召喚されたのだろう。
何より安らかそうなその顔は見ていて愛らしいところもある。

「これは、見た事の無い生き物ですね……詳しい事は図鑑で調べるか専門の研究機関に訊くかしなければ分かりませんが、
兎に角、サモン・サーヴァント成功です。おめでとう、ミス・ヴァリエール。さ、儀式の続きを。」
「あ、有り難う御座います!コルベール先生!」

儀式を監督していたコルベールが興味深げな視線をそれに送りつつ賞賛の声を向ける。
教師に褒められた事が魔法関係ではそうそう無かった彼女は感無量となる。
そして未だ周りの喧騒に微々として気付く事も無く、すやすやと眠り続けているその生き物の顔に自分の顔を近づけて言う。

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ。」

言葉と共に杖を振り、口ととれる頭部の下にある切れ込みに自らの唇を重ねる。
と、その時何かの音がルイズの心の中に響いてくる。
それは霧の彼方から聞こえて来る様な感触だった。
やがてそれははっきりと言葉になっていき、幼くも透明感のある声となる。

「あなた……だあれ?」
87名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 18:02:49 ID:NAysFlt9
ポケスペのこの子は可愛いんだよな支援
88ゼロの夢幻竜:2007/11/28(水) 18:04:42 ID:d+eFhrly
以上です。投下終わります。
ちょっと短めだったとは思いますが続きは鋭意推敲中です。
またお会いしましょう。
P.S 投下中名前欄が七四散扱いになって済みませんでした。
89名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 18:12:01 ID:wjGCYK7W
>>88
乙。
でも一言。
元ネタ何?
ポケモンだって事は判ったけど、一応投下終了後にでも正式なキャラ名は
記載しておいた方が良いよ。
90名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 18:31:04 ID:MzodpD9N
乙ー
召喚されたのはラティアスかな?
続きまってるよー
91名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 18:49:31 ID:r8orlCKl
ラティアス北ー!!
職人さん蝶・乙です。続き楽しみにしてますね。


うちもすえぞう召喚でも書いてみるかな………
ワガママ娘が来ちゃうか大人になるまでは自力で帰れない筈だし。
92名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 19:02:08 ID:rpZZIo4U
急にですが、10分から投下します
93名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 19:10:32 ID:rpZZIo4U
―――今日2度目の敵襲の始まりだった。

「なんだ!?」
地震とは少し違う衝撃。何か嫌な予感を感じ、即座にデルフリンガーを手に取る。
揺れが、いったん治まるが、予感は消えることなく余計に強くなっていた。彼は、部屋のドアを蹴破ると廊下を駆け出し、階段を一気に飛び降りる。
タバサも同様だ。戦場の気配を感じ取り、風を使い、水が流れるようなよどみない動きで一階に下りていく。
ルイズは、2人に遅れて慌てて、彼について部屋を出て階段を降りようとしていた。
彼とタバサは、一階で剣を持ったガラの悪い男たちと、すでに交戦している。
タバサが、テーブルを転がした盾に使い、魔法を最小限で最大限の効果を生むように使用していた。
彼は、周囲の壁すら足場に変え、跳弾のように動き続ける。
相手に近寄る隙すら与えず、デルフリンガーで切りつけては離れる、を繰り返す、ヒット&アウェイと呼ばれる戦い方をしていた。
体力などの消耗を抑え、距離をとり、こちらの損傷を極力避け、相手の戦力を削る。
多人数対少人数の基本戦略を、二人とも合図も打ち合わせもしていないのに、的確に実践していた。
一歩引いて高い場所から、第3者として見れば、ルイズの目にも彼らがどれだけ優れた戦士かを感じさせた。
だが、黙って見ているわけにはいかない。ルイズは、自分も彼らの手助けをしようと杖を抜いた。
ゴロツキたちは、彼女には気が付いていない。今なら、魔法を使えば一気に片付けられる。そう、彼女は思った。
杖を構え、ルーンを呟き―――

―――湧き上がる、記憶。

一瞬の空白のあと、全く見当違いのところが爆発した。その音で気がついて、ゴロツキたちが顔をあげる。
「バカ野郎ッ!」
階段を上ろうとしていた連中に、彼が巨大な火球を浴びせかける。階段が逃げ場の少ないため、逃げることは叶わない。
アギラオの炎を受け、数人が瞬時に骨だけをシルエットに残し、炎に取り込まれた。
戦法を外れ、無理に動いた彼をタバサが援護。襲う矢を、風ではじき返す。
ルイズは、自分がやったことがマイナスだったと悟る。一気に心が萎え―――
その時、突然宿屋の2階から上が、なくなった。
暴風が吹き荒れたかのように圧倒的な力でもぎ取られた2階から上は、空に軽々と舞った。
ルイズが、空を見上げる。そこにあったのは……いつか見たゴーレム。30メイルを超える巨躯を誇る―――
「―――フーケのゴーレム!?」
『久しぶりだね、小娘たち! あんたらに借りを返しに来たよ!』
風に乗って、どこからともなくフーケの声が聞こえてきた。
以前見たゴーレムと違い、土ではなく岩でできた姿だったが、やはり間違いはない。これは、フーケのゴーレムだ。
しかし、自分たちがフーケは捕まえたはず。なのにどうしてここに!?
ゴーレムが、腕を振り上げる。宿屋を中心から打ち抜かんと放たれた拳が、建物を完全に粉砕した。
「危ない」
間一髪。タバサのレビテーションが、ルイズを建物の外にはじき出していた。
そのとうのタバサはというと、彼に服の首根っこをつかまれ、中にぶら下がる形になっていた。
94力を求める使い魔:2007/11/28(水) 19:12:21 ID:rpZZIo4U
彼は、片手にタバサとデルフを強引につかんだまま、隣の民家の掲げていた旗の台座につかまっている。
彼は、タバサの側にいた。だから、その服をつかんで、屋外に飛び出した。
タバサは、自分が脱出できるとわかると、ルイズに魔法をかけた。
ルイズは、ただ呆けていた。
ルイズは、動かない。目の前の瓦礫で押しつぶされた人たちの血、肉、体。それが、自分が爆破した男のものとダブる。
中には、ゴロツキだけじゃない。ほかの一般客や、料理を運んでくれた従業員の娘たちもいたはずだ。

それが、いまでは………

ゴーレムが、足で、民家ごと彼らを蹂躙しようとする。
彼が、ギリギリのタイミングでルイズの側に駆け寄った。時間もなければ、彼に『人を抱き上げる』ような気遣いもない。
タバサの時と同じように服をつかんで、引張っていく。ルイズが、何を言おうとお構いなしだ。
今は、ゴーレムから離れるためにも全力で疾走を続ける。タバサも、どこかの路地裏に引っ込んでいた。
彼もそこまで、走りこむと、やっとルイズを放した。乱暴に、投げやるように手を放す。
「何ボーッとしてんだバカ野郎! 死ぬ気か!? だいたいヤル気あんのか、むこうは殺る気なのに馬鹿面さらしてんじゃねぇ!」
「ごめんなさい」
絞り出すようにルイズが答えた。いつもの気丈さは、ない。
その態度に、さすがに彼もルイズの異変に気がついたのか、怪訝な顔をする。そこに、タバサが姿を現した。
「……おい、どうした。 いつものやる気と生意気な態度はどこいった?」
疑問を感じている声ではない。まして、人を慰めるような優しい声ではなかった。彼の声に込められた感情は―――驚きと苦笑だった。
ルイズは、何も言わない。舌打ちすると、ルイズを無視し、タバサと彼は話始めた。
「俺らは、ゴーレムの正面を走り抜けた。なのに、こっちがどこにいるか、ろくにあの木偶の坊は分かっちゃいねぇ。
あのゴーレムは、あくまで、フーケとかいうクソ女の操作を受けて動いてる」
タバサは、首肯。彼は、立ち並ぶ民家の屋根を見上げた。
「しかも、視界は当然女もち。女の視界に入らなきゃ、ゴーレムに襲われることはねぇんだが……」
そこまで言って、デルフリンガーを握りなおし、構える。背中あわせに、反対側にタバサは杖を構えた。
何か、タバサが彼に呟いた。それに、彼が頷く。彼が二言三言返すと、こんどはタバサが頷く。
「それじゃ、こいつら蹴散らして木偶人形退治と行くか!?」
路地のむこうから、お世辞にも堅気のお仕事をしてるとは言えない姿の連中が走ってくる。ご丁寧に、全員が武器を構えている。
「……5分でカタつけるぞ。 もたもたしてりゃこいつらとゴーレム両方相手にすることになる」
彼と、タバサが詠唱する。彼はアギラオ、タバサはエア・ハンマー。路地裏という狭い環境に合わせての面の攻撃。
このときばかりは、二人とも出し惜しみしない。……ゴーレム相手に戦うには、分が悪すぎるからだ。
姿は見えなくとも、音は伝わる。つまり、姿は見えなくとも人がどこにいるか知る方法はあるのだ。
それを目印に、ゴーレムを暴れさせる。なにしろ、あの巨体だ。大体の位置で暴れるで影響を受ける範囲がべらぼうに広い。
詳細は知る必要もない。ただ、当たりさえ付ければそれでいい。あとは、自分たちを察知したゴロツキごとゴーレムでミンチ―――という仕組みだ。
95名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 19:12:30 ID:rh99GVfL
支援ぐ。
96名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 19:13:10 ID:WhBAAfCb
支援
97力を求める使い魔:2007/11/28(水) 19:13:28 ID:rpZZIo4U
相手の位置を知ることと、足止め。おそらく、街のゴロツキをわざわざ雇ったのは、このためだろう。
岩を削るように、人を吹き飛ばし、燃やし続けるタバサと彼。しかし、次々と人はさらに集まってくる。ゴーレムの足跡が、響き始めていた。
ルイズは、うずくまったままだ。
「……して?」
「クソったれ……! どんだけ金をバラまいたんだよ、おい!」
「そろそろ、来る」
「分かっちゃいるが……屋根に逃げようにも、厳しいしな」
ルイズのつぶやきに、二人は気が付いていない。完全に無視し、戦闘を続行し続ける。……殺し続ける。
「……どうして!?」
ヒステリックな声をルイズが上げる。
「どうして、そんなふうに人を殺せるの!?」
その声に、二人は驚いた。しかし、停止は一瞬。すぐに、手を動かし始める。ルイズの問いなど、歯牙にもかけてない様子で。
「するのは好きじゃない」
「ならどうして!?」
人を殺したりなんかしたくない。でも、彼女は実際人を殺しているのはないか。
生きている人間をあの……直視できないモノに変え続けているではないか。
「そうしないと、できないことがあるから」
タバサが、ルイズを見ずに言った。目は、向かい来る敵をとらえたままだ。目には……強い光が宿っていた。
「……人を、殺してまで?」
「そう」
一拍もおかない。それは、迷いのなさを示していた。決意の強さを、言外に語っていた。
「俺も、同じだな」
牙をむき出しにして、うれしそうな顔で彼は言った。ルイズには、彼の笑みの意味が分からない。
何が、それほどにうれしいのか、彼女にはわからない。
なぜなら、彼女は彼より後ろを歩いているからだ。先を行く彼は、自分がかつて歩んだ道を、彼女も進んでいることを知っていた。

どいつもこいつも馬鹿ばかりだ、まったく!

「俺は……いや俺たちみたいな人間はな、とまれないんだよ」
アギラオを、人の波にぶち込む。また何人かが崩れていく。
最初に『俺』と言った後、彼は『俺たち』と言い直した。それがいったいだれを含むのか。
「命かけてでも、叶えたいものがある。 だから、そのためなら死んだっていい」
いや違うな、と笑いながら彼は訂正した。その笑顔は、状況と裏腹に、子供のように無邪気なものに見えた。
「それを叶えられないなら……突き通せないくらいなら死ぬ。 そのかわり邪魔するなら命を賭けてもらわないとな」

―――「俺を襲ったツケは、命で支払ってもらう。 それだけだろ?」

―――襲ってきた連中を皆殺しにした時、彼が放った言葉。
彼のこれは、そこら三流の小悪党が格好をつけて言うものとは違う。
自分のすべてをかけて、俺は進む。だからこそ、邪魔をするなら刈り取る。奪う。

それは、目的に対する真摯さの裏返し。

自分は命をかけるというのに……相手の命は奪いたくない?
98名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 19:14:15 ID:lcpcSpue
支援だす
99力を求める使い魔:2007/11/28(水) 19:14:32 ID:rpZZIo4U
そんなのはまやかしだ。やさしいだけの嘘だ。
彼は躊躇しない。躊躇しては、それこそ死の意味がなくなってしまうではないか。
死を避けるために、信念を捻じ曲げることは、絶対にやってはいけない。
死と隣り合わせで……全員が生と向き合っていた大破壊の世界。そこでつかみ取ったもの。

「おめでとよ、人を……初めて殺したんだろ?」

彼の言葉の意味が、まるでルイズにはわからない。
おめでとう?  人を殺したのに? いや、なぜそうだと分かった?

炎をかいくぐって、一人だけ男が彼に迫る。しかし、彼は落ち着いた様子でデルフを振りぬいた。
頭から腹に至るまで、たたき割られた男が地面に転がった。――何度でも起こる悪夢のフラッシュバック。
ルイズは目をそむけようとして―――
「目を背けるな!」
強い、彼の一喝。教師……いや武道やなにかの師匠が、生徒を怒鳴るようだった。
「ここで、歩くをやめるつもりか!? それでいいのか!?」
―――いいに、決まってる。
アルビオンについたら、ワルドと結婚する。もうそれでいい。誰かを傷つけることもない。無理に他者に認められる必要もない。
だって、ワルドがルイズを認めてくれるから。
「言っといてやる。 ここで、やめたら一生後悔するぞ」
ルイズは、もう一歩を踏み出した。人を、自分を傷つけてまで、叶えたい何かを知った。そして、傷つけてしまった。
自らの淵を覗いた人間は、決してそのままではいられない。そこから、目を離すことなど、できない。
蓋をするように、禁忌と変えて押さえつけ、ごまかしても、それはもっと大きな虚無感と自己の欠損に苛まれる。

―――夢は呪いと同じ。
―――叶わない限り呪われ続ける。

―――過去夢を追えばあるはずだった、今あるべき自分の欠落が真綿で首を絞めるように大きくなる。

彼は、過去を交えてそれを語った。

タバサも、それに耳を傾けている。ついに、人ごみのむこうに、空間が見えた。残るは、あと7,8人だ。
最後まで、結局彼らは押し切った。足元には、死体が積まれている。
だけど、タバサと彼は、返り血一つ浴びていない。そして、卑屈にもなっていない。後悔などしているはずもなかった。
堂々と立ち、周囲に気を配る二人の姿はルイズには、誇り高く見えた。……尊敬するワルドと同じように。
「初めてだったんだろ? そりゃつらいだろうが……いつか通る道だ。
靴を、履くな。誤魔化すな。自分の足で受け止めて……自分でどっちに行くか決めりゃいい」

汗を拭い、そういう彼。ルイズには、やはり彼のいう意味はわからなかった。
けれど……自分と向き合え、という言葉は赤い刺のように心に突き刺さったままだ。
何度考えても、ワルドの言っていることのほうが絶対に正しい。なのに……この二人の姿は美しく映るんだろう?
100名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 19:14:50 ID:nK5dsKtq
試演
101力を求める使い魔:2007/11/28(水) 19:15:34 ID:rpZZIo4U

僅かではあるが、消えた葛藤が、また心中に湧き上がる。

―――力を、求めよ。

それは、呪いだ。そして、彼女の願いそのものでもある。

結果として、相手の策は成功した。足止めはすみ……ゴーレムが姿を現した。
「どうにかもったな。こっちは……あとアギラオ1,2発ってところか。そっちは?」
さっきとうって変わって、彼はゴーレムと向き合った。タバサも、同じだ。
「3回は、できる。それで十分」
タバサと、彼がゴーレムに走り出した。走りながら、彼がルイズに指示を出す。
「俺たちが言ったら胸を爆破しろ! 人間相手じゃなけりゃできるだろ!?」
言葉を受けて、ルイズは、杖を構える。また、訪れる悪夢。しかし、ルイズはそれを拭った。
震える腕を、反対の手でどうにか押さえつける。ずっと下がっていた視線を、はじめて彼女は上に向けた。
―――ワルドは許してくれると目を背けるのではなく、まっすぐ見据えて。
しかし、本人はそのことに気付いていない。自分の本質には、人は咄嗟の時正直になるものなのだ。
ゴーレムが、腕を振り回す。それを、フライでタバサがよけた。彼は、腕を駆け上がる。

あっという間だった。

彼が、胸を岩の隙間を縫うように切り裂き、アギラオを、胸にぶち当てた。岩が幾つもはがれ、大きくくぼむ。
そこに、タバサは『錬金』をかけた。彼は、消して土のメイジではないが、土を油に変えることくらいはできる。
くぼみの奥が、どろりとして液体に変わる。彼の声が、夜空に響く。ルイズの爆発に合わせて、彼が最後の火球を打ち込む。

内側から大爆発を受けたゴーレムは、粉々に砕け散った。


―――しかし、夜はまだ終わらない。
102力を求める使い魔:2007/11/28(水) 19:17:45 ID:rpZZIo4U
支援ありがとうございました!
先の展開、組み立ててるんですが……どうも長くなってしまいますorz
そこだけで5000字オーバーって……
103名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 19:29:41 ID:NAysFlt9
乙ッ!

人を殺したことに対して真っ向から
向き合ったルイズってあまり見ないね。
104名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 19:31:06 ID:lcpcSpue
GJ
カオスヒーロー、タバサ、ルイズみんなかっこいいじゃないか
105名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 19:31:48 ID:ZP4CU+4i
小ネタ投下

カツオがルイズに召還されました

「家に帰してくれよ!」
「そんな事よりちゃんと使い魔の仕事は終わったのかしら、カツオ」
「わ、わかったよルイズさん」

ルイズの下着をシエスタまで運んで、部屋の掃除を一生懸命にやる
カツオ、何も特殊能力が無いどころかどこから見ても平民である。

「おーぃ、磯野、広場で野球やろうぜ」
「ギーシュ空気嫁」

ギーシュの香水を拾ったのがきっかけで、決闘をし友情が生まれてしまったカツオだが、決闘の方式は野球であった。
使い魔チームとワルキューレチームに分かれての試合だったが、
球が校長室のガラスを割ってしまい双方に拳骨が落ちたのだった。

ほのぼのEND
106名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 19:34:16 ID:S7Hwet1C
カオスヒーローやるに、その辺のネタは欲しかった所だよね
GJでした
107名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 19:47:24 ID:bbQ/PIvC
>>105
ヤバイ、脳内で声が再生される………www
108名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 20:03:13 ID:aCOkxvYM
>>105
じぃじぇい
109名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 20:05:08 ID:t9lIiKUw
カオスヒーロー乙です。

ちょっと誤字脱字が目立つのがザンネン
110名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 20:16:08 ID:+nSgTOAr
カツオヒーロー乙でした!

…いやカオスヒーローだ、混ざってた
111名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 21:03:16 ID:D89kjlaU
ああ
112名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 21:11:45 ID:D3M0jBvq
>>109
wiki見たらもう誤字が修正されてて吹いたw

いいなぁ、やっぱカオスヒーロー。タバサを同行させたのがキラリと光ってる。
もうルイズ&カオスじゃなくてタバサ&カオスコンビで……
113名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 21:12:49 ID:JUmRFL8E
カオス・ヒーローカッコ良すぎタバサ素敵すぎ二人の覚悟と決意に痺れたよ兄貴、頭じゃなくて心で理解出来たよ
114名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 21:17:49 ID:NAysFlt9
プロシュートもびっくりな固い決意だよな
115Mr.0の使い魔:2007/11/28(水) 21:42:08 ID:arENJOFY
カオスヒーローの人GJでした。この先ルイズはどうなるのか……。

さて、五分後ぐらいにトゥーカ予約。
116名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 21:50:16 ID:rh99GVfL
支援体制。
117Mr.0の使い魔 第三十一話(1/5):2007/11/28(水) 21:50:15 ID:arENJOFY
 入った部屋は、予想と違って無骨な武器倉庫であった。壁に据え付け
られた木枠や床に置かれた樽の中に、雑多な武器が並んでいる。流麗な
ランスからさびだらけの戦斧まで、まさしく玉石混淆だ。
 はずれかと落胆したクロコダイルは、部屋の奥を見てすぐさま機嫌を
持ち直した。奪われたデルフリンガーと二本の杖が、個別の台座の上に
安置されていたのだ。元々載っていたらしい古めかしい剣が三本、すぐ
傍らの壁に立て掛けてある。
 そのバカ丁寧な台に鎮座する魔法の剣殿は、持ち主の来訪に気づいて
口を開いた。

「ようよう、旦那。随分遅いお迎えじゃねーか」
「やかましい。拾いに来ただけありがたいと思え」

 相変わらずの軽口を鼻で笑い飛ばして、クロコダイルは黒塗りの鞘を
手に取った。特に傷もなく、奪われた時そのままだ。こんな見目の悪い
ボロ剣、普通の海賊なら見向きもせずに放り出しそうなものだが。敵も、
デルフリンガーの特殊性に気づいているのだろうか。あるいは単に中身
まで調べておらず、ボロさ加減を知らないのか。

「旦那、何か失礼な事考えてないかい」
「気のせいだ。それよりてめェの能力、空賊共にばれてねェだろうな」
「心配すんなって。特に魔法もかけられなかったし、連中は俺が話せる事すら気づいてねーよ」
「ならいい」

 鞘のベルトを腰に巻き付けて、なおも喋ろうとするデルフリンガーを
押し込める。静かになった事に満足しながら、クロコダイルはルイズと
ワルドの様子を伺った。

「さて……二人とも、杖はどうだ」
「問題ありません。随分丁寧に扱われたみたいですね」
「ルイズは?」
「大丈夫、戦えるわ」

 杖、メイジともにコンディションは良好。後はこれ以上の面倒が起き
ないうちに、頭の首を奪うだけだ。
 クロコダイルの脳裏に、つい今しがたの嫌な感じが蘇る。

(本当に呪いでもかかってるのか?)

 原因不明の不快感は、この部屋に入ってすぐに治まってはいた。だが、
さっきも一度治まった後にぶり返したのだ。この先不意に再発するとも
限らない。
 適地のど真ん中で無様に立ち往生、という最悪の結末を迎えないため
にも、まず『マリー・ガラント』号の安全を確保し、逃げ場を用意した
上で頭探しをすべきだろう。余裕がなくなりそうなら即座に退却して、
生き残りはフネごと空の藻屑にすれば後腐れもない。

「よし、今度は甲板を制圧して逃げ道を作る。頭はその後だ」
「待ってください。それなら、役割を分担した方が効率的です」
「何だと?」

 ワルドの発言に、クロコダイルは顔を顰めた。
 三人を分散させると、何をどうしても二人と一人という構成になる。
そして、自分達は電伝虫のような相互連絡を取り合う手段を持たない。
甲板制圧と頭の捜索を並行して行うのは確かに効率的だが、仮に甲板に
頭がいて、制圧組がその身柄まで抑えた場合、もう片方にすぐさま連絡
する事は不可能なのだ。誰かを伝令に出すとしても、船内を動き回って
いるのだから居場所の特定すら難しい。
118Mr.0の使い魔 第三十一話(2/5):2007/11/28(水) 21:51:22 ID:arENJOFY
 ところが。

「もう一人増やせばいい。それも、互いに連絡ができる存在を」

 場違いなほどにこやかに、ワルドはとんでもない解決策を持ち出した。


 Mr.0の使い魔
  ―エピソード・オブ・ハルケギニア―

     第三十一話


 トマスら四人を加えて総勢十一名となった頭達は、移動の前に砲甲板
前側の階段を封鎖した。魔法で鉄板を【錬金】し、物理的に塞いだのだ。
足を踏み入れたデニスが敵と遭遇しておらず、しかも後部階段には砂の
足跡が複数残っていたため、三人の貴族達は後ろから逃げたと判断した
のである。
 既に砲甲板は使い物にならないので、一同が上の階に達すると後ろの
階段も【錬金】で塞ぐ。これで、敵が調べ終わった場所に逃げ込む事は
ない。自らのフネを破壊するような行為は少なからず抵抗があったが、
頭達はあえてこの方法をとった。確実に、敵の逃げ場をなくすために。

「これは――」
「あいつら……絶対許さねぇ!」

 階段周辺の船室が荒らされていた事も、決断を後押しした理由の一つ。
特に、無惨なジョンの亡骸と休憩室の惨状は、彼らの怒りに火をつけた。
六人の死を悼む者、敵の事を口汚く罵る者、それぞれがそれぞれの思い
を抱いて、いざ敵を追いかけようとした、まさにその時。
 轟音とともに、フネが大きく揺れた。

「何だ!?」
「まさか、連中の仕業か?」

 音の出所は、フネの前の方だ。この場から移動するとして、目的地に
選びそうな所と言えば。

「まずい、第一保管庫だ!」


 駆けつけた第一保管庫は、扉が破られ、中から黒煙と火の粉が溢れて
いた。相当強力な魔法で扉を破壊したらしく、廊下を挟んだ対面の壁に
まで大穴が空いている。

「クハハハ……やっと来たか」

 保管庫から響く笑い声。杖を構えて中を覗き込んだ頭達は、炎の中で
笑う剣士を見つけ出した。隣に立つ貴族の男と共に、布を纏った小柄な
影を背後に守っている。砂粒が敷き詰められた床には、殺された六人の
死体が横一列に並んでいた。

「よくも、よくもやりやがったな!」
「そう怒鳴るな。そんなに死にたいなら、すぐに仲間の所へ送ってやる」

 トロール鬼のような憤怒の形相で吠え立てるローワンを、剣士の男は
小馬鹿にしつつたしなめる。元々短いローワンの堪忍袋の緒を断ち切る
には、十分な挑発だった。
119Mr.0の使い魔 第三十一話(3/5):2007/11/28(水) 21:52:32 ID:arENJOFY
「【ファイヤー・ボール】!」
「【エア・ハンマー】」

 杖から飛び出した炎の砲弾を、貴族が風の槌で叩き落とす。普通なら
ここで続けざまに無数の魔法が飛び交うのだが、今回は狭い船内である
事が頭達に災いした。他の誰かが追撃の魔法を撃ち込むには、入り口の
広さが足りないのだ。今から壁を破ろうとしても、詠唱に時間がかかり
過ぎて間に合わない。
 敵もそれをわかっていて、あえて逃げ場のないこの部屋を選んだよう
である。互いの魔法が打ち消し合った一拍の合間を縫うように、剣士の
男は再び口を開いた。

「自分のフネの構造ぐらい知っておけよ。敵に利用される前に、な」

 男が無造作に右手を振り上げる。
 剣も抜かずの動作に頭達は疑問を覚えた――が、部屋の入り口に立つ
ローワンは、それどころではなかった。

「な、ぁ」

 左脇から右肩までを一撃のもとに切断され、ローワンの上半身がずる
ずると滑り落ちる。遅れて断面から噴き出す紅い飛沫に、頭達は顔色を
変えた。
 剣士だと思っていたあの男もメイジ、いや、それ以上の怪物だ。杖も
持たず、詠唱もなしに、恐ろしい威力を備えた魔法を放つ。報告の時に
聞いた『悪魔』という単語が、にわかに現実味を帯びてきた。

「さて、こちらの力のほどはわかってもらえたと思うが」

 笑いながら、男は頭にかぎ爪を向ける。

「これ以上死人を出したくなければ、てめェの首を寄越せ」
「何だと?」
「今、欲しいのはてめェの命だけだ。他の連中に用はねェ。
 大人しく捕まるなら殺す手間もかからんし、無用な犠牲も増えんだろう?」
「……本当に、私の首だけで満足するというのか?」

 頭の返答に、一同は息をのんだ。
 対峙する男達も、まさか本当に首を差し出すとは思わなかったようだ。
二人とも驚きに目を見開き、それが決定的な隙となる。

「だが、断る!」

 叫んで、頭は杖を掲げた。宝玉が一際強い輝きを放ったかと思うと、
大気が鋭い刃を形作る。怒りで増幅された【エア・カッター】の呪文は、
迎撃する暇を与えなかった。剣を携えた男の体が、一瞬のうちに正中線
から真っ二つになる。左右の半身が別々に倒れる様を、頭は冷たい瞳で
睨みつけた。

「私は、貴様達のような外道に屈しはしない。
 誇りあるアルビオン王家の名にかけて、悪漢を討ち果たす!」
「王家、だと?」

 いぶかしむ貴族の男を一瞥すると、頭は自分の髭と髪に手をかける。
付け髭をむしり、かつらを脱ぎ捨て、眼帯を取り払った。そうして露に
なった素顔は、野卑な空賊の頭目などではない。

「我が名はウェールズ。アルビオン王国皇太子、ウェールズ・デューダーだ。
 貴様にまだ僅かでも貴族の誇りが残っているなら、名乗りを上げてかかってこい!」
120名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 21:53:41 ID:WhBAAfCb
支援
121Mr.0の使い魔 第三十一話(4/5):2007/11/28(水) 21:54:37 ID:arENJOFY
(どうして皇太子がこんな所にいる!?)

 ワルドは傍目にもわかるほど狼狽していた。
 何故、皇太子が空賊のフネに乗り込んでいるのか。何故、空賊の頭目
なのか。何故、この場で自分と対峙しているのか。考えても考えても、
その理由には辿り着けない。
 嫌な汗が頬を伝い、顎を離れてぽたりと落ちる。普通ならば気づきも
しない微かな感触、それでワルドは我に返った。

(違う、こんな事を考えている場合じゃない)

 自分に与えられた任務は、ウェールズの確実な抹殺だ。外様の自分が
『レコン・キスタ』で重用されるため、幹部連中の信用を得るためにも、
失敗は許されない。
 そのためにどうにかしなければならないのは、眼前の標的ではなく、
視界から消えた味方であった。ウェールズを殺す事ができようと、その
事実をルイズが知れば、可愛い妹分とは二度と顔を合わせられなくなる。
そして、自分が愛する女性とも永遠の別離となろう。
 それでは駄目なのだ。自分は死んでも構わない。だが、それは彼女を
救う手段を見つけてからだ。ようやく見つけた希望の光を、こんな所で
見失うわけにはいかなかった。

(逃して、たまるか!)

 怯えたような姿から一転、猛烈な闘気を纏うワルド。
 相対するは、水晶の杖を構え義憤に燃えるウェールズ。


「クク――クハハハハハ!!」

 両者の均衡は、突然の高笑いによって破られた。


(馬鹿な)

 ウェールズは自分の耳を疑った。記憶に新しい声の出所は、対峙する
貴族の背後。次第に色濃くなる煙の奥に、揺らめく人影が見える。

「まさか、空賊の頭がアルビオンの皇太子殿とは」

 果たして、姿を見せたのは剣士の男であった。だが、奴は確かに切り
捨てた筈。ウェールズの視線が、僅かに下を向く。

(死体が、ない!?)

 床に転がっていた躯が、こつ然と消え失せていた。半分ほどが砂中に
埋まった剣が残っているから、幻影だったわけではないようだ。魔法が
直撃した手応えもあった。
 だが、何をどうしたのか、男は平然と佇んでいる。相変わらず、薄ら
寒い嘲笑を浮かべたまま。本当に、悪魔だとでも言うのか。

「これは少し面倒な事になったな。悪いが――」

 呟く男の目が、凍えるような殺気を帯びた。同時に、右手を腰の鞘へ
伸ばす。
 またしてもあの魔法の斬撃が来るかとウェールズは身構え、気づいた。
男の腰にあるのは鞘“だけ”だ。中身は、床。

「皆殺しだ」
122Mr.0の使い魔 第三十一話(5/5):2007/11/28(水) 21:55:36 ID:arENJOFY
 ぞぶり。
 砂とともに宙を舞った抜き身の剣が、寸前で身を退いたウェールズの
肩を引き裂いた。所々欠けた刃は、鈍らのノコギリのように獲物の肉を
削ぎ落とす。ウェールズはたまらず悲鳴を上げた。

「ぐ、ああぁああッ!」
「ウェールズ様!」

 激痛に杖を落としたウェールズを援護しようと、トマスが一歩部屋に
踏み込む。その頭頂を、再度飛んだ剣がスイカのように叩き割った。

「ひっ」

 恐怖で棒立ちになったデニスの胴を貫いて、やっと剣は動きを止める。
 生き残りが何とか魔法を放とうとするも、杖を振るより早く風の刃に
喉笛を切り裂かれた。貴族の男が唱えた【エア・カッター】が、障害と
なる壁を回り込んで獲物だけを切断したのだ。熟練した風のメイジは、
大気の揺らぎから相手の居場所を特定するといわれるが――今の魔法は、
まさにその体現であろう。
 宣言して一分もしないうちに、ウェールズの率いていた部下は全員が
床に倒れていた。言葉通りの皆殺しだ。
 ざっと死体を眺めると、男は呆れたようにため息を零す。

「雁首揃えてこの程度か。これなら、上もすぐに片付きそうだな」
「十二……いや、十三人ですね。三分ほどで終わりますよ」

 ウェールズは激痛に顔を歪めつつも、会話の内容に違和感を覚えた。
口ぶりからして「上」とは甲板の事だろう。しかし、どうして人数まで
知っているのか。それも、まるで現場を直接見ているかの――。

 爆発音。

 頭上から轟いた聞き覚えのある音に、ウェールズの顔が青ざめた。


   ...TO BE CONTINUED
123Mr.0の使い魔:2007/11/28(水) 21:56:45 ID:arENJOFY
以上で三十一話終了です。支援ありがトゥー!
124名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 22:02:40 ID:NAysFlt9
乙ッ!

クロコさん恐ろしいまでに外道だな
どう収集をつけるのか……
125名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 22:14:05 ID:V2CMEYPU
GJ
いやークロコさんは外道だわw


126名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 22:16:57 ID:RnWAuAuk
Mr,0の人、カオスの人、二人とも乙!

>―――夢は呪いと同じ。
>―――叶わない限り呪われ続ける。

これを見て思わずニヤっとしてしまった。
555ももしかして好き?
127虚無の王:2007/11/28(水) 22:31:13 ID:e8zY0Wt0
予約が無ければ、35分頃から投下します。
128名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 22:33:44 ID:zj/vGjCU
支援
129虚無の王 Trick16 1/12:2007/11/28(水) 22:35:54 ID:e8zY0Wt0
 駆動輪が、カラカラと音を立てて回っていた。
 空の座す車椅子は軽く、電動の補助動力を備えている。小柄なルイズでも、押して歩くのは苦にならない。
 辺りは明るかった。
 明るく、そして何も無かった。
 靄が立ちこめた様に真っ白な世界で、車椅子の空とルイズの二人だけが、鮮やかに浮かび上がっていた。
 帽子の下で、空はいつもの笑顔を浮かべている。
 どことなく澄ました顔のルイズも、その表情は柔らかい。
 暖かな光を体一杯に浴びて、長閑に歩を進める。

「ねえ、空」

 屈託の無い声で、ルイズは尋ねた。

「今日は、どこに行く?」
「せやなあ……」

 空は軽く顎を撫でると、

「もう、ええわ」
「え?」

 意外な言葉に、怪訝な声が漏れた。思わず、足が止まる。
 その時だ。空は車椅子のステップから地面に足を降ろした。
 よいしょと掛け声を一つ――――。
 ルイズは唖然とした。
 空が立った。両脚を失った筈の男が立った。
 どうなっている?どうなっている?
 立ち尽くしている間にも、車椅子を頼っていた異世界人は、大きな足取りで歩き始めた。

「ちょっ……!」

 声を挙げるルイズに、空は笑顔で振り向く。

「ほな、さいなら」

 手をひらひら振ると、空は更に脚を早める。
 ルイズは慌てて後を追った。
 何が何だか判らなかった。
 ただ、このまま行かせてはいけない。そんな思いだけが、焦燥感と共に平たい胸の中で膨れ上がった。

「ちょっと!待ちなさいよ!」

 ルイズは小走りに追いかける。やがて、それが疾走に変わる。
 空が歩いている。目の前を歩いている。
 まるで近付いて来ない。寧ろ、離れて行く。

「待ちなさいよ!こら!御主人様の言う事が聞けないの!そんな使い魔は、食事抜きなんだからね!待ちなさい!」

 ルイズは走る。懸命に走る。
 空が歩いている。その背中がみるみる遠離る。靄に霞んで行く。

「待ちなさい!……待って!――――空!待って!行かないで!」

 肺が焼け付く。心臓が潰れそうだ。それでもルイズは走る。
 細い脚が縺れる。腿の筋肉が酸欠を起こして言う事を聞かなくなる。

「空っ――――!」

 ルイズは必死で手を伸ばし――――……
130虚無の王 Trick16 2/12:2007/11/28(水) 22:37:21 ID:e8zY0Wt0
 ルイズは手を伸ばす。
 その手には、杖が握られている。
 かつて使用していた、小さなタクトでは無い。小剣程の大きさをした、十字型の杖。四つの先端には、それぞれ異なる装飾、異なるルーンが彫られている。
 狭く薄暗い場所だった。地面と垂直に穿たれた、5メイル立法の岩室。
 桜色の薄い唇が、ルーンを紡ぐ。
 空気が弾けた――――。
 高く、小気味良く、三つの破裂音が連なった時、目の前から目標の少年は消えていた。マントが裂け、切れ端が舞い散るその中に、造花の花びらが紛れている。
 腹の下に、重い音が響く。刹那、青銅色の風が眼前を過ぎる。右に、左に。
 右後背から物音。車輪が壁を削る音にルイズは振り向く。空中に一体のゴーレム。全身に備えた車輪により、壁を利して高速反転。刃物の様な体で襲い来る。
 手刀が唸りを揚げる。文字通り、重く鈍く柔らかい、鈍器にも似た青銅の刃。
 詠唱は終わっている。杖の中央に掌を添え、平面をゴーレムに向ける。刹那、生まれる爆発の壁。
 青銅の乙女がバラバラに弾け飛ぶ。腕が、脚が壁に突き刺さり、音を立てて崩れ落ちる。
 ルイズは既に杖を翻している。
 背後からもう一体。長い先端を向け、小袋から取り出した包みを反対に詰め込む。杖は中空だ。単音詠唱で小さな爆発。飛び出す一二の鉄球が、ワルキューレを蜂の巣に変える。
 眼前にもう一体が迫っている。詠唱は間に合わない。身をかわす閑も無い。
 単音詠唱。小さな爆発が地面を抉り、ワルキューレが宙を舞う。派手に転倒する戦乙女を屈んでやり過ごす。背中を重く固い感触が転がり落ちる。身を起こすと同時に爆発――――。
 正面でゴーレムが弾けた。振り向き様、半ば盲打ちに鉄球を放つ。半身を抉られ、ワルキューレが独楽と回る。と、その影に術者の姿――――居た!
 足止めに、小さな爆発を放ち――――刹那、首筋を重い何かが、軽く叩いた。
 ルイズは一瞬、身を強ばらせた。そのまま、数秒に渡って硬直し、やがて小さく息を漏らす。

「参りました」

 声に、悔しさが滲んだ。



 深さ5メイルの岩窟で争う二人を、見下ろす影と光が有る。
 車椅子に座した空は、オペラグラス片手に長銃を弄っている。
 コルベールは眼下の勝負が決着したのを見ると、左右に視線を巡らせる。あちらこちらで飛び交う魔法の光。

「最近、勝率落ちよったなあ」

 銃声が岩場に響いた。空はオペラグラスで岩壁を遠望する。
 弾着を確認。技術力の高さで知られるゲルマニアの職工に造らせた銃だが、集弾性は皆無に近い。

「勝率?ミス・ヴァリエールですか?」
「ああ。最初“キューブ”じゃ、無敵やったんけど……」

 岩窟にはルイズとギーシュが居る。
 礼を交し、今し方の勝負について意見を交換している様だ。

「“キューブ”?」
「ああ。パーツ・ウォウのDランク」

 中折れ式の銃に弾薬と火薬を再装填しながら、空は説明する。
 向こうでやっているのが、Fランクの“ダッシュ”、向こうがEランクの“ハードル”――――
 放課後は特訓の時間だ。
 最初は二人だけだったが、そこに空を目当てにしたキュルケとタバサが加わった。更にギーシュとマリコルヌがやって来る。モンモランシーとレイナールも参加する。
 人数が増えた事で、空は合同での特訓を提案した。実戦形式の訓練で、魔法それ自体ばかりでは無く、その活用を研究する。これは、誰にとっても意義が有る筈だ。
 但し、決闘や私闘を繰り返す訳にはいかないから、ルールを決める。内容はパーツ・ウォウ。
 キュルケは面白がって同意した。彼女が賛同すると、タバサも釣れた。
 ギーシュは空との決闘でパーツ・ウォウには馴染みが有ったし、マリコルヌはこの異世界人を師と崇め奉っている。
 レイナールは二人に同調。モンモランシーは医療係を買って出た。

「空ー」
「おお。コッパゲ、これ頼む」

 手にした銃とオペラグラスをコルベールに預け、空は対戦を終えた檻〈キューブ〉へと降りて行く。
 レビテーションもフライも使えない御主人様を、迎えに行ってやらねばならない。
131虚無の王 Trick16 3/12:2007/11/28(水) 22:39:15 ID:e8zY0Wt0
 なるほど――――各所で対戦する生徒達を眺めて、コルベールは頷いた。
 魔法の実践的な使い方が身に付くのも良いが、各系統の得手不得手が判るのも面白い。
 右手の平地、レイナールとタバサが魔法を応酬しながら走っている。極めて優秀な風使いの少女は、どこかやりにくそうだ。
 移動時のみ攻撃可の競争で、後進後退禁止のルール下においては、誘導性能を持つ火の系統が圧倒的に有利。やや後に火球を放ってやれば、相手は前進しつつ後方からの攻撃に対応しなければならない。
 左手の絶壁には、マリコルヌとキュルケの姿。目標が停止している時のみ攻撃可能な障害物競走“ハードル”では兎に角、飛行に長けた風メイジが圧倒的だ。
 因みに、登攀型ワルキューレの速度で一時無敗を誇ったギーシュだが、今はワイヤーを伸ばしている所を狙い撃ちにされ、勝率が落ちている。尚、飛べないルイズは全敗。
 そして、キューブ。
 ルイズを抱えて、空が飛び出して来る。
 ギーシュの元には、モンモラシーが駆け寄る。どうやら、ワルキューレの破片が掠めたらしい。腕に出血が見える。
 限定空間の戦闘。極めて詠唱時間の短いルイズは、当初無敵だった。仲間達が開き直って、最初の一発を逃げに徹し始めると話が変わった。
 それでも、未だ上位に居る事に変わりは無い。
 また、屋外では火、風両系統の的でしか無いワルキューレも、室内戦では恐るべき力を発揮する。
 空が戻る。

「おや、仲がいい」

 コルベールは思わず呟いた。空の首に、ルイズがしがみついたままだったからだ。
 一方、教師の存在に気付いたルイズは、慌てて車椅子から飛び降りる。

「ミミ、ミスタ・コルベール、ごご誤解しないで下さい!こ、これは……」
「ああ、判っている。しっかり掴まっていないと危ないからだろう」
「え、ええ。そうです。その通りです……あの、何時いらしたんですか?」
「つい、さっき。ミスタ・空と皆さんが、何か変わった事を始めていると言う事で、オールド・オスマンから様子を見て来る様に言われてね」

 だが、これは面白い。コルベールは繰り返す。
 どう言う訳だろう。魔法や、その技術を競い合う競技と言うのは極めて少ない。
 精々、一部の男子生徒が、手を使わず、魔法でボールを籠に放り込む遊びをしているくらいだ。

「もっと参加者増えたら、上のクラスもやれる。オスマンの爺さんに、カリキュラムに取り入れる気無いか、相談して見るかな」
「どうでしょうね?それはオールド・オスマンの一存で決められる事ではありませんし……」
「この学院、学園祭とか……体育祭の代わりに、魔法祭とか無いんか?」
「魔法祭?」
「ああ、ワイの国の学校じゃ、大抵、体育祭つーのをやってな。クラス対抗で競い合うんや。文化祭やら学園祭やらを、生徒が協同で開催する事も有るしな」
「ほほう、なるほど。それは面白い――――所でミスタ・空。これは……?」
「ああ、前話したやろ。うちで作り始めた、新式の銃や」

 空が言う“うち”はコルベールと協同で経営している、トリスタニアの工房だ。
 コルベールの発明品を主として、幾つかの製品を手掛けている。

「銃?」

 ルイズはコルベールが手にする銃――――数打ちの品質をチェックする為、空が抜き取って来たと言う一丁を覗き込む。
 変わった形だ。引き金の付近で二つに折れているが、壊れているのでは無い事くらいは判る。

「ああ。後込め式や。今までの先込め式やと、訓練された奴でも二分で三発が精々やろけどな。こいつなら一分で五発はいける。それと弾が違う」
「弾が?」

 空が差し出す弾丸を、コルベールは指で摘む。
 単なる鉛丸だ。特に変わった所は見られないが……。

「土メイジに一切頼らんで造った奴でな。粗悪品やわ」
「何故、そんな物を?」
「発射時に、炸薬の熱で溶けよるんや。貰たら、悲惨やで。内臓がズタズタにされる」

 コルベールとルイズは、揃って渋い顔をした。聞いていて気分の良い話では無かった。
 何故、そんな物を?それが素直な感想だ。
132名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 22:40:02 ID:mMU9f+ot
帰ってきたぜ 支援
133虚無の王 Trick16 4/12:2007/11/28(水) 22:41:18 ID:e8zY0Wt0
「村がオーク鬼に襲われる。領主が兵隊出してくれへんから、村人は村を捨てざる得ん。そんな話をちらほら聞いたんや。それでな」
「これがあれば、平民でもオーク鬼が倒せる、と?」
「こいつだけやと辛いな。足止め用や。で、お前が今設計しとる、“空飛ぶ蛇くん”で仕留める」
「なるほど……」

 それを聞いても、コルベールの表情は晴れない。
 今、空が提案した装備を持つ平民の部隊が存在したらどうだろう。その戦闘力はメイジには及ばないにしろ、既存の鉄砲隊など問題にしない。
 そんな部隊が相対する二つの軍に広まったら?
 メイジは魔法により身を守り、治癒も出来る。その恩恵を受ける事が出来ない平民の部隊で、被害が激増するのではないか。
 この銃の設計に、自分は関わっていない。何を言う権利も無い。
 だが、コルベールはどこか釈然としない物を覚えた。

「……お前のそう言う所見ると、安心する」

 不意に、空が言った。

「どう言う事です?」
「『技術に善悪は無い。使い手が決める』――――何か有ると、科学者、技術者は大抵この一言で逃げよる」

 空は眉を顰める。
 研究には必死なっても、それが世に与える影響には目を向けない。
 客観的な事実についてはペラペラと喋るが、自分自身の考えについては、子供同然の事も言えない。

「そないなケチな連中が多くてな。お前がそうや無いのは、ホンマ有り難い――――どうせ、大した数は造れへんし、無闇矢鱈な所に売る気も無いさかい、心配すな」

 漸く、コルベールは表情を弛めた。
 自分もまた、そうした人間では無い――――そう、保証された気がした。
 一礼して、コルベールは立ち去る。放課後とは言え、教師も閑では無い。
 まして、協同工房の開設以来、この偉大なる発明家は多忙で、その忙しさを楽しんでいる。

「工房ねえ……順調なの?」
「ああ。ホンマ、姫さん様々や」

 空は笑う。
 開設の切っ掛けは使い魔品評会だ。
 空は以前コルベールに造らせた、“腕を必要としない松葉杖”で登場して見せた。
 それが、行啓していたアンリエッタ王女の目に止まり、彼女名義の施療院で採用される運びとなった。
 聊か使用条件が限られている品ではあるし、収益自体は大した物では無い。
 大きかったのは、ギルドにがっちり固められた職人街に足場を築けた事だ。
 アンリエッタ王女の名前を聞くと、ルイズは息を詰まらせる。頬が鮮やかな薔薇色に染まる。
 使い魔品評会。
 空は車椅子で様々なトリックを決め、衆目を驚かせたものの、結局はただの人間。最優等に選ばれたのは前評判通り、タバサのシルフィードだった。
 キュルケのフレイム、ギーシュのヴェルダンデもそれぞれの系統メイジの賞賛と羨望を浴びた。
 ここまでは良い。問題はその後だ。
 夕刻、アンリエッタ王女はお忍びでルイズの部屋を訪れた。互いの立場を一時忘れ、一頻り思い出話に興じる二人。
 ふと、アンリエッタは空に興味を示す。
 品評会の最初に見せた松葉杖について説明を受け、ついで、自分の友人を宜しく頼む、と車椅子の平民に高貴な御手を許す。
 ここで事件が起きた。空はアンリエッタの手を取ると抱き寄せ、唇に接吻をした。予想外の事態に、王女は意識を失い、崩れ落ちる。
 ルイズはキレた。
 勘違いした、と言う空の弁明にも耳を貸さなかった。絶対、わざとだと思った。すると、ここで不埒な色魔は、もう一度“勘違い”を起こし……

「……――――」

 杖を握る手に力が篭もった。
 あの後起きた出来事は。記す事も憚られる。
 ルイズは古い友人共々仲良く失神し、数年振りに、同じベッドで眠る事となったのだ。
 新しい杖は金属製だ。大きさも手頃で、打撃力にも優れている。
 短経の一端がやや尖り気味である事は、取り分け都合が良い。
 ルイズがもう大分古くなった話を思い出して身を震わせていた時だ。空が大きく欠伸を漏らした。
134名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 22:42:03 ID:mMU9f+ot
心の弱い奴は戦うな!支援
135虚無の王 Trick16 5/12:2007/11/28(水) 22:43:13 ID:e8zY0Wt0
「……また、決闘?」
「せや。なんか、最近色んな奴に絡まれてなあ。ワイも挑戦は拒まん質やけど、最近は忙しい身の上やからなあ。叶わんわ」

 ヴィリエとの決闘以来、挑戦が急増している。或る日、空がそんな事を口にした。
 逐一、報告させる様にすると、毎週必ず決闘があり、一対多の私闘や闇討ちまで含めると、殆ど毎日の有様だった。
 ルイズは表情を曇らせる。
 今の所、空は無事だ。だが、これ以上、相手が手段を選ばなくなれば、何が起きるか判らない。

「大丈夫なの?」
「ああ、心配要らへん。せやけど、面倒なんも確かやからな。コッパゲに相談すれば良かったわ」
「次会った時、そうしたら。教師や学院が止めに入ってくれれば、多分、収まるわ」
「せやな」

 他の勝負も決着した様だ。モンモランシーを中心に、全員が集まっている。負傷した者は治療を受ける。

「さて。勝敗はどや?」

 空はメモ帖代わりの携帯を取り出す。
 タバサが目印に突き立てたデルフリンガーを引きずっている。“ダッシュ”は彼女の勝ちらしい。
 レイナールは悔しそうだ。圧倒的有利の火系統だが、魔法を放つタイミング一つで、負ける事も有る。

「“ダッシュ”はチビっ子の勝ちか。情っけないのう、ホモ」
「な、違う!僕はホモでは無い!おぞましいホモなどでは無い!断じて違う!」

 レイナールは絶叫した。
 非生産的な性は神に背く罪悪と言う時代だ。セクシャルマイノリティーの人権なる物は、ハルケギニアには存在しない。

「スマン。なんか、知り合いのホモに似とってな」

 一方、ハードルはどうか。
 黒焦げになったマリコルヌを、モンモランシーが言葉だけは必死に、露骨な手抜きで治療している。

「こっちはキュルケの反則負けか」

 移動中の目標は攻撃禁止。
 そのルールをキュルケが破った理由は簡単だった。速度で勝る筈の風メイジが障害物を前にして後についたとなれば、その魂胆は見え透いている。

「傷はもういいの?」
「ああ。衣服が破れる方が、寧ろ辛いかな」

 ルイズの問いに、ギーシュは正直な答えを返す。衣服代か嵩んで仕方無い。いっそ、対戦用に安物と服を用意するか……。
 空は勝敗を記録する。
 競技毎、向き不向きの系統はあれど、やはりトライアングルの二人が傑出している。
 タバサの総合一位は、“ハードル”における風の優位が、“ダッシュ”における火の優位よりも大きい為だろう。
 キュルケに続いてギーシュ。キューブでは飛び抜けて勝率が高い。広地での競技はワルキューレを盾に健闘するも、誘導性能を持つ火系統には苦戦する。
 ルイズは初期に築いたキューブでの貯金を削られジリ貧。
 レイナール、マリコルヌは同系統に上手が居る為、どうしても伸びない。

「所で、杖を変えたのだね」
「ええ。つい昨日、やっと儀式が終わったから」

 ルイズが杖を差し出して見せると、一同は珍しそうに集まって来た。

「変わった形ね。どう言う意味が有るの?」
「大した意味は有らへん」

 答えたのは、空だ。
 十字架型で、四つの先端毎に装飾とルーンが違うのは、それぞれ使用する魔法のイメージを造り安くする為。これは、杖の形状が爆発に与える影響を調査した結果に基づいている。
 また、長経のみ中空の構造から、単音詠唱での爆発を利用する事で、散弾の発射筒としても機能する。
136虚無の王 Trick16 6/12:2007/11/28(水) 22:45:21 ID:e8zY0Wt0
「本人は“破烈”の玉璽〈レガリア〉なんぞと嘯いとるがな。ま、子供の歩行器みたいな物やわ」

 その言葉に、ルイズは唇を尖らせた。数種の爆発を駆使出来る様になったと言うのに、却って半人前扱いだ。
 不満を覚えて、空の胸を軽く肘で小突く。

「玉璽〈レガリア〉?」

 誰かが疑問の声を挙げた。トロパイオンの塔の伝説を知るのは、この場ではルイズだけだ。
 空はその伝承と、八人の“王”、八つの“玉璽〈レガリア〉”について説明する。

「なるほど。それで、ヴァリエールは自分の爆発を、新たな“道”にしようとしている、と……」

 笑う者は居ない。ルイズの爆発が如何に恐ろしい物かは、身に沁みている。

「ま、実際、八つの“道”から新しい物も派生しとるし、そん中から、“王”が出た言う噂も聞くしな」
「ふーん。じゃあ、私は“炎の王”て所かしら?」
「意義アリ!僕にも権利が有る!」
「僕は……一番近そうなのは、“石の王”か……?」
「私は“風の王”」
「ああ、あかんあかん」

 タバサの呟きに反論したのは、マリコルヌでは無く、空だった。

「風はワイやから。売約済みやから。お前の二つ名“雪風”やろ。雪や。“雪の王”で我慢しとき、雪ん子」

 タバサは何も言わなかったが、見る人間が見れば、どこか不満そうだった。

「何言ってるのよ。あんたは“元”王でしょう」
「へえ、ダーリンは元“風の王”。なるほどね。所で、“炎の王”てどんな人?」
「スピットファイア言うてな。燃え頭の気取った奴やわ」
「もし、私と戦ったら?」
「お前じゃ、何もさせて貰えへん。話にならん」

 空はばっさり切り捨てた。

「あら、手厳しいわね。そんなに強いの?その人」
「スピの奴はな、“時”を止めよる」

 その言葉に、キュルケは吹き出しかけた。何かの冗談かと思った。
 “時”を止める?そんな馬鹿な。そんな人間相手に、どう戦え、と言うのか。

「仮にも“王”やからな。せやけど、あいつは昔、両脚の腱切っとる。戦士としては、とっくに終わっとる男や。八人の中では、一番弱い部類やろ」

 一同は声を失う。
 そんな男が一番弱い?途方も無い話だった。
 陽が暮れようとしていた。一同は雑談混じりに、帰路を急いだ。
 ギーシュはつんと済ましたモンモランシーの御機嫌取り。
 未だ焦げ臭いマリコルヌは、レイナールと大宇宙の真理について語り合う。
 タバサも律儀に徒歩で付き合う。

「あら……」

 キュルケは声を漏らす。ルイズが空の車椅子を押している。
 最初は、気位ばかり高いあのヴァリエールが、平民に奉仕する姿に驚いた。
 その明るい表情に、春の訪れと呼ぶには幼い心中を見取って、微笑ましくも思った。
 ルイズが車椅子を押す。握りを掴む手には、どこか頑なさが見える。
 何時頃からだろう。その表情に陰が差し始めたのは。
 一体、何が有った?――――キュルケは首を捻る。
 恋愛の機微には通じているつもりだが、最近のルイズが見せる表情は、どうにも判断がつかなかった。
137名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 22:45:28 ID:WhBAAfCb
支援
138名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 22:45:28 ID:Q5YigeU1
支援するトカしないトカ
139名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 22:46:37 ID:mMU9f+ot
こっちだと玉璽はやっぱり作れないんだろうな 支援
140虚無の王 Trick16 7/12:2007/11/28(水) 22:47:14 ID:e8zY0Wt0

   * * *


 ルイズのベッドには天蓋が無い。
 最近は着替えの為、天井からカーテンを吊している。
 衣服を空に取らせる事もしない。
 一度、主人と人間ならざる使い魔と言う関係を崩してしまうと、後はなし崩し。忽ち、一六歳の恥じらいが顔を出した。
 空は忙しい。
 寝起きの悪いルイズがぐすぐす言いながらも身支度を済ませると、一緒に部屋を出る。そして、朝食を終えると、そのままどこかに出掛けてしまうのが常だ。
 最近の活動範囲は専ら学院の外で、昼間にその姿が見られたとしたら、コルベールと共に居る時だけ、と言って良い。

「今日も出掛けるの?」
「ああ。うちの工房もようやっと落ち着いたさかい。タルブに足伸ばす予定でいる」
「タルブ?」
「ラ・ロシェールの近く。シエスタの故郷の村やな」
「あのメイドの?」

 そんな所に、何の用だろう。

「あの“飛翔の靴”を作る所や。技術持った職人が居るやろ。車椅子の部品が複製出来ないかと思うてな」

 勿論、チタンやステレンス鋼が造れる筈も無いが、寿命度外視の予備部品なら何とかなるかも知れない。空はそう言った。

「一人で行くの?」
「いや。何人か閑な連中と行く事になっとる」
「そう――――」

 ルイズは目線を落とした。
 匙がスープの中をグルグルと回っている事に、当の本人は気付いていなかった。

「なんや、考え事か?」

 空に指摘されて、始めて気付く。

「あ、うん。何でも無いわ――――何人か、て事は、馬車で行くの?」
「せや。タルブはええシャトーが仰山ある言う話やからな。ついでに寄る予定や」

 実は、話としては葡萄酒が先だった。空は素直に白状する。

「そう。じゃ、私も行く」

 意外な一言だった。空は目を丸くする。

「何言うとる。駄目や駄目」
「私は邪魔だって言うの?」
「授業有るやろ。サボる気か?」
「今日行く中に、学生は一人も無いの?」
「そう言う訳や無いけどな」
「なら、いいじゃない」
「他人様は関係有らへんやろ。親御さんが折角、ええ学校入れてくれたんやないか」

 空は時折、思い出した様に真面目な事を言う。
 ひょっとすると、保護者を自任しているのかも知れない。

「いいのよ」

 ルイズはムキになった。
 空がそう考える事に不満は無いが、気に入らない。
141名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 22:48:24 ID:dVbjhGx4
うお、もう来ないかと正直思ってた虚無王さんが来てる!
支援!!
142虚無の王 Trick16 8/12:2007/11/28(水) 22:49:16 ID:e8zY0Wt0
「なにがええんや」
「どうせ、今日の授業は女子一同でボイコットする話になってるんだから」
「あ?」
「ミスタ・ギトーの講義よ」

 風の系統こそ最強。しつこくしつこく訴え続けるギトーは、大抵の学生に嫌われていた。
 その手段に変化が生じると、男子から熱烈な支持を得た代わりに、女子からは総スカンを食らう事になった。

「署名集めて、講義を担当させない様、学院側に要求したけれど、まだ受け容れられてないの。それでね」
「あいつも大変やなあ」

 実家に訴えて、圧力をかけて貰おうと画策している女学生も少なくない、と言う。
 その話を聞いて、空は同情した。

「ま、明日は虚無の曜日やし、そう言う事なら構わへんけどな――――」
「けど、なによ?」
「ギトーの奴も来るで。つーか、あいつが発起人や。ええんか?」

 ルイズは唖然とした。学生ならまだしも、教師が授業をサボる?
 だが、何しろ“あの”ギトーのする事だ。
 女子が一人も居ない教室を前にして、講義を放り出した所で、不思議でも何でも無い。

「……いいわよ。行く」

 数秒の凍結を経て、ルイズは言った。
 別に、意地になっている訳では無い。



 学院正門前には、大きな幌馬車が止まっていた。
 荷台からは、葡萄酒の芳醇な香りが、半ば刺激臭に姿を変えながら漏れ出している。

「紳士諸君っ!」

 酒瓶を片手に、ギトーは口舌も滑らかだ。
 愛する貴族令嬢達に見限られた不幸な男は、出発前から酔っていた。

「最強の系統は何か、知っているかね?」
「はい!それは“風”であります!」

 三つの声が答えた。
 風メイジたるマリコルヌの声は一際誇りに満ちていた。
 レイナールとギーシュの顔はどこか複雑だ。
 それでも二人は風こそを最強と認めている。認めなければならない理由が有る。
 ギトーは深々と溜息をついた。年来の主張に理解有る学生達を前にしても、気分は晴れなかった。

「ったく……飲まねばやっておれん。そうだろう。紳士諸君」
「だ、大丈夫ですよ、ミスタ・ギトー」

 傷心の師が見せる物憂げな表情に居たたまれなくなったのか、レイナールは精一杯慰めた。

「ミスタ・空が女子に誘いをかけてます。絶対に何人か参加する筈です」
「ミスタ・空か……」

 その名前を聞いて、ギトーの顔は若干晴れる。
 風の系統こそ最強。年来の主張に確信を与えてくれたのは、他ならぬあの男だった。
 レイナールの言葉は程なくして、現実となった。
 キュルケ、タバサ、ルイズにモンモランシー。二年生でも有数の綺麗所が、小声で囁き合い、躊躇いがちに近付いて来る。
 自分の存在がそうさせているのだ、と言う事実に気付く事が出来ない哀れな男は、少女達の見せる初々しい仕草に、大喜びで荷台を飛び降りた。
143名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 22:50:14 ID:mMU9f+ot
ミスタ・キトー 自重 支援
144名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 22:50:33 ID:dVbjhGx4
キトー支援
145虚無の王 Trick16 9/12:2007/11/28(水) 22:51:20 ID:e8zY0Wt0
「やあやあ、諸君。本日、パンチラの予定はないのかね?」

 最後まで言わせておいたのは、乙女達に残された僅かばかりの慈悲だった。
 ギトーが気取った仕草で尋ねた瞬間、学院の庭園に火の手が上がる。竜巻が人間大の炎を上空に巻き上げる。
 キュルケ、タバサに続いてルイズが杖を振るう。爆音に叩かれ、学院中の窓ガラスがビリビリと震動する。

「「汚い花火ね」」

 領地を接する二人の貴族は、同時に声を漏らした。

「ああっ!キャメラが!キャメラは無事か!」

 何故、自分の出番を残してくれなかったのか。水メイジの少女が猛然、抗議した時だ。
 ギーシュは慌てて飛び出した。荷台に落着した花火の燃えかすを、二人の仲間が慌てて鎮火しているのもお構いなしだ。

「え、なに?」
「ミスタに預けていたのだ!――――あ、有った。良かった良かった……」

 火球の魔法が着弾した衝撃で、吊り皮が切れたのだろう。
 地面に転がる木製の箱を、ギーシュは大切そうに持ち上げた。

「なに、それ?」
「ああ、ミスタ・コルベールとミスタ・空の発明品で、キャメラと言うらしい」
「それは、何に使う物なの?」
「あー……二人は例の魔道書を憶えているかな?」

 ルイズはさっと頬を赤らめた。

「秘宝の魔道書のこと?」
「おお、憶えてる訳ないでしょ!そそ、そんなによく見てないんだからね!」
「あの表紙、人の手で書かれた物では無いのだそうだ」

 何気ない切っ掛けで、空に魔道書の事を話した時だ。
 車椅子の異邦人は、腰から不思議な道具を取り出した。その絵と言うのは、こう言う物では無かったか――――突然、道具の表面に絵が浮かび上がった事に仰天しながらも、ギーシュは首肯する。

「あれは写真と言って、このキャメラに良く似た道具で作られた物らしい」
「魔道書、て、あの変な噂の元になった?」
「ああ、モンモランシー。君は見た事が無かったのだったな」

 実際に見て貰った方が話が早いだろう。
 ギーシュは懐から、大きな写真を取り出す。魔法学院を写した物だ。

「何、これ……」
「なんか灰色っぽい……と言うか色無いけど……凄いわね」
「その機械で造れるの?」

 取り敢えず、ギトーの質問の魂胆を知ったキュルケは、もう一度火球を放った。もう一度タバサが宙に舞揚げ、ルイズがもう一度爆破。モンモランシーはもう一度文句を言う。
 それにしても、この写真とやらは本当に凄い。モット伯も単なる助平貴族では無かったらしい。
 あの魔道書――――後日、直接見る機会を得た空が言うには、『エロ凡パンチ』と言う――――は、方々に多大な影響をもたらした。
 空はギーシュを通じてモット伯と接触。キャメラの開発、生産の支援を取り付けた。
 今、手元に有るのは、その誼で回って来た試作品だ。利益が出れば、紹介料として幾ばくか回してくれる、と言う。

「手広くやってるのね」
「彼は自分の国に帰る方法を探しているそうだからね」

 自国の書物が偶然とは言え、召喚されていた。
 それを知った空は、ゲルマニアの研究機関と繋がりを作りたい、と考えている。利益を急ぐのはその為だ。
 同研究機関への投資や、場合によっては、ゲルマニア貴族となる事も考えているのだろう。
 その言葉を聞いて、ルイズは人知れず睫を伏せる。
146名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 22:52:02 ID:WhBAAfCb
支援
147名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 22:52:25 ID:mMU9f+ot
タシーロ じじゅう!支援
148虚無の王 Trick16 10/12:2007/11/28(水) 22:52:57 ID:e8zY0Wt0
「僕らも大変だった」
「私は楽しかったけど?」

 ギーシュとキュルケについては、おかしな噂が立った。
 何しろ、ツェルプストー家の家宝。おまけに、嫁入り道具として持参していたそれが、グラモン家の四男の手を通じて、モット伯の手に渡った、と言うのだ。
 すわ、グラモン、ツェルプストーの両家で婚姻か。そんな噂が学院から、社交界までをも駆けめぐった。
 ギーシュは実家に戻って釈明しなければならず、学院に戻ってからは、キュルケに惚れ込んでいた何人もの学生から決闘を挑まれる羽目になった。

「勘違いだ、て言えば良かったのよ」
「信じて貰えなかった」
「あんた、弱っちい癖に。大丈夫だったの?」
「御生憎様。ミスタ・空との決闘で鍛えられていたからね。全勝さ」

 得意気に嘯くギーシュの腿を、モンモランシーは思い切り抓り挙げた。

「痛っ!モンモランシー、痛いっ!」
「なに、得意がっているのよっ!何人もの貴族を敵に回してっ!将来、マイナスになるって判らないのっ!」
「そうは言ってもっ!……痛っ!……貴族がだね……千切れるっ!本当っ!……後を見せる訳にはっ……つつつっ!」
「……ひょっとして、空に決闘を挑む貴族が増えてるのは、そのせい?」

 不意にルイズが言った。
 モンモランシーは怪訝な顔で振り向いた。漸く解放されたギーシュは、涙混じり跛を引いている。

「どう言う事よ」
「ギーシュは空に負けている。そのギーシュに負ける。その貴族の力は、平民である空に劣る、と言う位置付けになる」
「それを挽回する為に?」
「馬っ鹿馬鹿しい!」

 モンモランシーは声を上げた。ギーシュとの決闘騒ぎや、特訓時の所見から、空の能力は漠然とだが判っている。
 あれに負けた。だから、なんだ?

「あんなのに勝てるメイジなんて、そうそう居る訳が無いじゃない」
「てて……でも、有り得る事だね。それを知ってるのは、僕らだけなんだから」

 厄介な事だ。ギーシュは唸った。

「あんたが考え無しな行動を取ったのが原因でしょ」
「しかしだね……」

 ギーシュが抗弁しようとした時だ。同行する最後の一組が到着した。
 空は当然として、残りの顔が、一同を唖然とさせた。

「ミスタ・コルベール!」
「発明にはインスピレーションが必要なのですぞ!」

 何より、“飛翔の靴”の産地へ行く機会となれば、この発明狂が黙っている訳が無い。
 コルベールは頭に似合わぬ身軽な動作で、意気揚々、荷台に乗り込んだ。

「しかし、諸君っ!授業は宜しいのですかなっ!」
「何、言うとる。お前かて、他のセンセに頼み込んで授業ずらして貰たんやろが」
「いや……それは……これは課外授業ですぞっ!」

 あまりに苦しい言い訳だ。
 だが、ギーシュとモンモランシーをして声を失わせたのは、非番の魔法学院教師では無かった。

「皆さん、今日は宜しくお願いします」

 丁寧に頭を下げる少女。普段とは服装が違うので、一瞬判らなかった。ギーシュがモンモランシー言う所の、考え無しな行動を取る切っ掛けとなった人物。
 シエスタだ。
149名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 22:53:40 ID:mMU9f+ot
ギーシュの私刑執行の予兆 支援
150名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 22:54:18 ID:dVbjhGx4
きゃめらかわいいよきゃめら支援
151虚無の王 Trick16 11/12:2007/11/28(水) 22:54:50 ID:e8zY0Wt0
「あの……ミスタ?」
「ワイが誘った。あんな騒ぎが有った後も、実家には帰れてへんみたいやったしな」

 空が誘いをかけると、マルトーはあっさり承諾した。
 嫌な予感がした。ギーシュは幌の中にこっそりと逃げ込んだ。
 馬車の後で、私服のメイドと、ロール髮の貴族、笑顔と露骨な警戒心とが交錯する。

「……あんた――――」
「ミス・モンモランシですね。ミスタ・グラモンから伺っています。お二人は恋人同士なんですよね?」

 シエスタが機先を制した。

「え……ええ。まあ……そう言う事にしておいてあげてもいいわ」
「こうして、御挨拶出来るなんて夢みたいです。私、いつも遠くから見ていて、思っていたんですよ。なんて素敵な方なんだろう、て。なんて素敵な恋人同士だろう、て。お二人が結婚されて、こんなにも素敵な御夫婦にお仕えする事が出来たら、どんなに素敵だろう、て」

 モンモランシーは呆気に取られた。
 なんだ、意外に良い娘では無いか。全く、貴族の淑女が、噂話に振り回されて、メイドの娘を警戒するなど、こんなに馬鹿げた話は無い。
 モンモランシーは余裕の笑顔を浮かべる。
 その笑顔が凍り付くまでには、三秒かからなかった。
 シエスタは当然の様に、ギーシュの隣に座った。
 その時、あのメイドが見せた笑み――――あの小賢しい笑い。そして、虚ろに目を泳がせている、貴族の少年に耳打ちする。

「今日は宜しくお願いしますね。ギーシュ様」
「あ、ああ――――」

 その囁きが聞こえた訳では無い。だが、モンモランシーの脳内で厳戒態勢が敷かれるには充分な光景だった。
 こいつは油断ならない。油断してはならない。

「そこ、私の席よ」
「あ、も、申し訳ありません。ミス」

 メイドは慌てて立ち上がり、そして反対隣に座った。
 そして見せる、あの笑い。

(こ、このメイド……っっ!)

 モンモランシーは内心で歯噛みする。
 二人に挟まれ、ギーシュは脂汗を流す。

「ねえ、レイナール」

 その光景に、マリコルヌは言った。

「なんで、貴族同士の決闘が禁止されているか、知っているかい?」
「理由は知らない。知らないが、よく判る」

 この時、ギーシュの友人が二人減った。
 空は車椅子ごと乗り込んだ。部品の見本が必要な為だ。なら、丸ごと持ち込んだ方が話が早い。邪魔にならぬ様、一番奥に車椅子を固定する。
 車椅子を降りて、荷台に座り込む。座席は荷物置きとして利用する。
 その隣に、キュルケは当然の様に腰掛けようとする。
 と、寸前でルイズが割り入った。

「ごめんなさい」

 聊か強引な入り方だ。
 脚を跨れ、押し退けられかけた何人かが、怪訝な顔を見せる中、一言詫びると、空の隣にストンと腰を降ろす。
152名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 22:56:27 ID:mMU9f+ot
レイナールとマリコルヌに幸アレ 支援
153虚無の王 Trick16 12/12:2007/11/28(水) 22:56:27 ID:e8zY0Wt0
「何?」
「別に……」

 キュルケは大人しく、その隣に座った。最近、ルイズが空絡みで見せる態度は、どこか奇妙だ。
 それは、恋に生きる女を、燃え上がらせるよりも、寧ろ困惑させる類の物だった。
 参加者が揃った。
 教師はギトーとコルベール。
 学生はギーシュ、マリコルヌ、レイナール、ルイズ、キュルケ、タバサ、モンモランシー。
 平民の空とシエスタ。
 計11名の大所帯だ。
 三つの殺人魔法から、早くも奇跡の生還を遂げたギトーが御者に一声命令。
 大きな幌馬車は、巨体通りのゆるゆるとした速度で動き出す。

「ミスタ・グラモン!キャメラを貸してくれ給え!キャメラを!」
「いいですけど……随分、気に入られたのですね」
「うむ。当然だよ。これは素晴らしい。実に素晴らしい。きっと、我々に幸福を約束してくれるだろう。真に偉大なる発明と言うべきだろうな」
「嬉しい事を言ってくれますなあっ」
「あんな、ギトー」

 一人、興奮するギトーに、空が水を差した。

「そいつ、作りが原始的やさかい。露光に10秒ばかりかかりよる。お前が撮りたがってる様な物は、絶対無理やで」

 それを聞くと、ギトーは見ていて気の毒になる程、落胆の色を露わにした。
 仕方が無い。今、彼が手にする物でも、ハルケギニアの技術水準を考えれば、100年や200年は進んでいる。
 一方、女子一同はほっとする。
 よく判らないが、撮影に10秒かかると言うなら、おかしな写真を撮られる危険は少ないし、或いは、この問題教師も、風の性的な悪戯に諦めを覚えてくれるかも知れない。
 と、不意に笑い声がした。

「ははは、何を落ち込んでおられるのですか、ミスタ・ギトー。貴方らしくも無い」

 レイナールだ。態とらしく眼鏡を押さえた。

「最強たる風の系統が生み出す奇跡は、機械などでは無い。己が魂にこそ刻むべき物――――そうではありませんか、ミスタっ!」

 ギトーは弾かれた様に身を起こした。

「その通りだ……――――」

 呟く、その声は震えていた。

「全く、その通りだっ、その通りだぞっ!」
「見事な見解だ、レイナール!」
「ああっ!偉大なる師は優れた弟子を育て、よき弟子は師を育てる。なんと、美しい光景たろうっ!」

 ギトーを中心に盛り上がる男子三人を、女性陣は白けた目で見つめていた。そう、女生徒ばかりでは無い。
 今や、最強の系統を身に着けた魔法学院教師は、平民にも本性が知れ渡る程の有名人だった。

「……貴族って――――」

 シエスタが溜息混じりに漏らすと、女生徒達は血相を変える。

「一緒にしないでっ!」


 ――――To be continued
154虚無の王:2007/11/28(水) 22:57:12 ID:e8zY0Wt0
御支援どうもー

今回はここまでです。
155名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 22:59:03 ID:dVbjhGx4
GJ!
もうマジで来ないのかとか勝手に勘違いしてたから超うれしいっす。
ここまで愛着の持てる亀頭先生は他にはいまいw
156名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 22:59:28 ID:L38PnJEO
GッッッJッ!!
ギトー先性いいかげんにしろw
157名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 23:02:24 ID:NAysFlt9
乙乙!

すべからく変態な男共に吹いたwwww
158名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 23:04:40 ID:Q5YigeU1
GJ シエスタが可愛いぜ
159名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 23:06:21 ID:6puYaxTq
虚無の人GJ

いいなぁ普通?に学園生活が進んでいてw

あぁあと

(´ー`) ギーシュ死ね 氏ねじゃなく死ね
160名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 23:31:35 ID:QRyDckUT
カイジの社長を呼べば面白いかもしれん
161名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 23:32:29 ID:EZIKCghg
虚無の王の中の人氏、投下乙です。
これはもうギトーが主人公かも分からんねw
162聖石の人 ◆FIXARUtWLY :2007/11/28(水) 23:32:31 ID:QV/GVbDa
さて、寒さ増す中、パソコンという暖房器具を前に座っております。
投下OKなら40分頃に投下します。
…さむひ。
163名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 23:35:15 ID:nK5dsKtq
<<支援要請了解。これより攻撃に移る!>>
   .    .                              ヘ\
     .    .  ..                        ^/~ヽ;;;;;;‐- ,..._
  ,      ,                            ~l/`‐、::::::_,‐'''´
     `  ,  , ' `  .                        i./
彡ミ彡 人彡,彡 从.,       .
  ,,从.ノ巛 彡ミ彡) ミ彡)'' ,`
 ,)ミ彡)''人ノ゙ ⌒ヽ 彡)ミ彡)''" , '.
  ,._,,.,从'"゙゙)  从,  ミ彡ミ彡)ミ彡,,)
:''"゙⌒゙   ''"      彡 ,, ⌒ヽ 彡,  .
   ,  ⌒ 人,  彡 ,  '"゙   ミ,彡,彡,, . .,'
 ミ 从 ''," ⌒ヽ  从 ''"  人 ) ,,彡,彡ミ彡,.
..;..;.!、.>>217ヽO/    .;. ..;. ;".www.;ww..wwwwwwwwwwwww
164名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 23:36:31 ID:nK5dsKtq
いろんな意味で誤爆><
165名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 23:36:35 ID:WIQ99tka
↑ちょwww何処の誤爆だwww
166名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 23:37:01 ID:EZIKCghg
英雄王ディリータ、支援の準備は十分か? オレは出来てる。


そーいや、PCは夏場は死ぬ程放熱するくせに、冬場は暖房の足しにもなりゃしないよね。
まあ、逆に言えばそれだけ放熱性・冷却性に優れているってことなんだろうけど。
167ゼロと聖石21 ◆FIXARUtWLY :2007/11/28(水) 23:42:26 ID:QV/GVbDa
出かける前まで澄み渡った空、出かけた直後に吹雪。欝だ、投下開始。

「店長、オーダー入りました」
「うーん、ルイズちゃん頑張るわねぇ。でも、ミ・マドモワゼルと呼んで頂戴?」
「はい。お世話になってるのに何もしないのは気が引けますから、ミ・マドモワゼル」

シエスタとの旅立ちから一週間。
途中の追っ手を振り切って預けられた場所は『魅惑の妖精亭』という場所。

「私が囮になって、振り切った後に迎えに来ます」

そう言って、私はここに預けられた。
最初は抵抗があったが、スカロンさんはいい人だ。
それと―――

「ルイズ、十番のテーブルお願い」
「はーい」

従業員のまとめ役のジェシカも気が合う。
彼女はチップを集めるのがうまく、私とは年季が違う。
私も見習おう。

「ワインをお持ちいたしました」
「お、ルイズちゃんか」

この人はいつもの常連さん。
私が働き始めてからは、いつも指名してくれる。
若干目が危ないように見えるのは私の気のせいか?

「いやぁー、今日もルイズちゃんの所に来ちゃったよ」
「ありがとうございます。奥さんと仲良くしてますか?」

このやり取りも定番になった。
注文も解っているので、いつもの? と聞くだけで済む。
こうして、毎日頑張るのだった。




シエスタが預けてった女の子、ルイズ。
働き始めこそぎこちなかった物の、数日でその緊張は取れてしまった。
徐々にだが、固定客が付き始めている。
数ヶ月働けば、それだけで私に追いつけるだろう。

「故郷を救ってくれた人、か」

その実感は湧かない。
シエスタが言うには、デュライ家にしか使えない魔法を完全に使いこなすそうだ。
傍流の私ですらその一端に触れるのが精一杯なのに。
まぁ、私はその代わりの技を持っているが。

彼女がそれなりの力を持っていたとしても、それが発揮されることはないのだろう。
ここはあくまで酒場。
そんな剣とか魔法とか必要なほど荒れないだろうし、荒れても私がとっちめる。

おっと、仕事に戻ろう。
しばらくはチップレースの下地造りだ。
168名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 23:43:07 ID:Rmm5iP01
>>165
シュー板のエスココスレだろうタブン
169ゼロと聖石21 ◆FIXARUtWLY :2007/11/28(水) 23:43:34 ID:QV/GVbDa
ここに来てから大体二週間目だろうか?
来週はチップレースというイベントだ。
チップをどれだけ集めたかという内容になるわけだ。
今までの動きから見て、ジェシカはそのための布石を張っていたらしい。

そんな嵐の前、私とジェシカは買い物に来ていた。
酔い覚ましの薬の購入と食材などを買いに来たのだが…

「はぐれちゃった」

現在絶賛迷子中。
東方の食材を見ていたら、隣にいたはずのジェシカがいなくなっていた。
それだけだったら良かったのだが―――

「君、平民にしてはかわいいね。一緒にお茶しない?」

横にまとわりつく貴族様が、正直邪魔。
さっきから執拗に誘ってくるのだが、早いとこジェシカと合流して帰りたいのだ。
チップも貰えずに媚なんか売ってたまるものですか。

「あの、すみません。友人が待っていますので」
「ほう、貴族の誘いを断るのか」

貴族様が杖を抜く。
周囲は人ごみに包まれていて、誰が何をしているかなんて注目している人はいない。
だからこそ、杖を抜いて脅しに走ったのだろう。
杖に光が灯り、いつでも魔法を放てるぞと、勝ち誇った顔でこちらを見る。
情けない、その程度の魔法で―――

「だとしたら、何をするんでしょうか?」
「その友人を叩きのめして君と」

脅そうって思うほうが悪い。
右足の踵を強く踏みしめる。
同時に飛び出る剣を掴んで、貴族の喉下に突きつける。
記憶を失う以前から持っていた、不思議な剣。
このギミックを取り付けた記憶を失う前の自分に感謝した。

「き、貴族に逆らって生きていられるとでも思ったか…!」
「大丈夫ですよ。たかが平民ごときに負けたなんて恥ずかしくて言えないでしょう?」

左足の踵も同じように踏みしめ、同じ剣を左手に収める。
同時に杖に対して剣を振り、真っ二つにする。

「ね?」
「お、覚えていろよ、貴様の親族縁者もろとも台無しにしてくれる!」

捨て台詞を残して去っていく貴族様。
さて、早い所ジェシカと合流しないと。
市場の入り口を目指して、歩を進めていった。
170ゼロと聖石21 ◆FIXARUtWLY :2007/11/28(水) 23:45:10 ID:QV/GVbDa
屋根の上に陣取っていた私は、ルイズの方を見る。
最初はぐれた時、すぐ見つけることは出来た。
しかし、その周辺に貴族が居て、杖を抜きそうになった瞬間に私は建物の屋根の上まで跳んだ。
実力を見てみたいと思った。まぁ、最悪私が行けば大丈夫だし。
それにしても―――

「アレが村を救った人の裏側、か」

最初のうちは、いつものルイズだった。
少しだけ慌てながらも、客をあしらう時の手法でやんわりと断っていた。
だが、貴族の方が杖を抜いた瞬間目つきが変わった。

ブーツから剣が飛び出し、喉元に突きつける。
今までずいぶんゴツイブーツ飾りだなと思っていたものが、まさか剣だったなんて。
ただの翼の形をしたアクセントだと思っていた。
驚きを隠せないでいると、もう一本同じものを出して杖を破壊する。
どうやら二刀流のようだ。
まあ、私はジョブ特性で持っているから問題ないが。

さて、ルイズが動き出した。
私も早めに戻らないと、ルイズを困らせてしまう。
屋根の上を走りながらルイズの元へと向かっていった。



「いたいた、おーいルイズー!!」
「あ、ジェシカ。よかったぁ〜」

市場の出口に着いた後、ジェシカが走り寄ってくる。
ジェシカの手元には食材の詰まった袋が。

「ごめんね、結局買い物手伝えなかった………」
「いいよいいよ、それよりも早く帰ろう?」

申し訳なくなりながら、食材の入った袋を持つ。
肉や野菜で一杯になった袋は、ずっしりと重い。

「でも、ジェシカって運動神経いいよね」
「え? どうして?」

「だって、私が市場の入り口に向かってるとき、屋根の上走ってたじゃない」

気が付いたのは偶然だった。
変な気配がすると思って見上げたとき、ジェシカが屋根の上を疾走していた。
私が走るよりも速く、それでいて全くといっていいほど響かない足音。

「ま、まぁそこは軽い技術ってことで」

変なごまかし方をするジェシカを不思議に思いつつ、魅惑の妖精亭に戻るのだった。
171ゼロと聖石22 ◆FIXARUtWLY :2007/11/28(水) 23:47:08 ID:QV/GVbDa
いまだに、私がどこの誰なのか思い出せない。
それでも今の生活は楽しい。
だけど、時々来る思いださないといけないって脅迫概念みたいなものは何なんだろう?

―――渦なす……色…震え…止める光…七つの扉…力の…虚栄…到らん………あるがままに

失わずに残った記憶、というよりかは言葉の羅列。
この順番で正しいのかどうかも分からない。
そして、その羅列の最後に響く四文字。

「アルテマ」

この言葉を呟くたびに出る、青白い光の粒は何なのだろうか?
それに、剣を握ったときに見えるイメージ。
二対の翼を持つ、天使の姿。

わからない、全てが。
アルテマが何なのか、私が誰なのか。
何も解らないまま、日は過ぎていく。
172ゼロと聖石22 ◆FIXARUtWLY :2007/11/28(水) 23:50:30 ID:QV/GVbDa
以上で投下終了です。
うわ、話数間違えた! 正しくは22です。
そして魅惑の妖精亭での生活が始まったルイズ、がんばっています。
ちなみに、ジェシカのジョブは1対1かつ対人なら最強を誇るジョブです。
さあ、どのジョブかな? ヒントは二刀流にムーブとジャンプが高い敵ジョブ。
支援ありがとうございましたー!
173名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/28(水) 23:55:07 ID:nK5dsKtq
174名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 00:11:18 ID:PzIWMQ6c
わかった、ダークストーカー!
・・・ってあれはTOかw
175名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 00:27:16 ID:nacLJdB7
1000ならサイボーグクロちゃん召喚
176名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 00:30:47 ID:FveC8yo4
いくらなんでも気が早すぎるだろwww
177名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 00:34:41 ID:wRW0wBH5
>>1乙!
178名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 00:37:45 ID:HiqSE+3M
1001なら草薙素子メスゴリラ少佐を召還
179名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 00:48:35 ID:P7Tjnl3W
ヒント:義体にはメンテナンスが必要
180名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 00:56:24 ID:TDzwNWHT
サイボーグ系でメンテフリーっぽいのは、キャシャーン位ですかね。
古すぎて誰もついてこれないか。

注)日本馬鹿映画祭の時期の実写版は黒歴史ってことで。
181名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 00:57:53 ID:zPEZMx8d
虚無の王の作者さんは本当に上手いなあ。
俺もここまでオリジナル展開なのに自然な作品を書きてえ。
182名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 01:00:06 ID:wRW0wBH5
よし、じゃあ適当なTRPGでゼロ魔セッションしてリプレイにすればいいんじゃね?
183名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 01:02:06 ID:c6u8Npdk
>>182
風当たりつよいんだからそんなこというのは辞めておこうぜ・・・
184名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 01:13:34 ID:HgxsuILA
召喚しても契約しないタイプだったら避難所なのかな?
いや、今から投稿するわけじゃないけどね。
ふと気になった。
185名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 01:16:17 ID:Vb43iwlk
召喚されてからのifを扱うスレだから、極端なグロとか18禁展開にならなきゃここでいいだろ。
186名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 01:16:29 ID:Vg5CEEeb
しかし何故かなのはは風当たり強くないなぁ…
教えてなのい人!
187名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 01:20:12 ID:n3cMgYno
>>175
ああッ
ハルケギニアが火の海にッ
188名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 01:24:33 ID:0SpMzcjz
>>186
StSの出来が酷い事になってるからか?
189名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 01:27:10 ID:g+OAV1CY
>>186
他スレに比べて話題を引きずったり矢鱈とAAを貼り付けたりの
まったく知らない人にとって気に触るような行為が行われてないからかと
190名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 01:45:41 ID:uPE3XZ99
あれか、世に聞く鈍感力というやつか。
191名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 01:46:36 ID:VNhoaCsU
>サイボーグ系でメンテフリーっぽいのは、キャシャーン位ですかね。
サイボーグじゃなくてネオロイダー(アンドロイドに生体情報デジタル化して移植=新造人間)だからな

デビルガンダム他の機械細胞だのナノマシン系統だので擬似生命活動するもの以外
メンテフリーは理屈上ありえない事になる
192名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 01:47:23 ID:cRL9Hauj
やたらとAAねえ
193名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 02:04:48 ID:Y6BqsHCs
サイボーグ009ってメンテ必要だったんだろうか
あの9人で一番ルイズと相性がいいのは…・・・やはりジェットか?
194名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 02:19:27 ID:D8yyLeca
>>193
001と003以外は必須だった筈。
195名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 02:23:02 ID:n3cMgYno
サイボーグっていうと、サイが剣道の防具を着けたやつですよね?
196名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 02:37:52 ID:1wmAJV1x
誰かガイバーで書いてよ。
できれば3で。
197名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 03:35:31 ID:2xoL3bs3
流石に誰も居ない…
小ネタ投下するならイマノウチ
198平穏な日々:2007/11/29(木) 03:36:54 ID:2xoL3bs3

 ハルケギニアの大地で。

 ある日ある時、とある瞬間のその時から。

 さあっと潮が引くように。争いごとや揉めごとがなくなってゆきました。


 いろいろあって、すっかりやさぐれていた王様は、落ち着きと心の平穏を取り戻し。

 王権打倒を叫んでいた集団も、今以上に侵攻する気がなくなってしまい。

 外患を誘致してでも、と祖国の建て直しを目論んでいた青年も、まっとうにやろうかと考え直し。

 学園で秘書をしながら、宝物庫を狙っていた盗賊も、このまま平和に暮らそうかと迷っています。


 そんな平和になったハルケギニアのトリステインの、魔法学園では。

 今日も、明日も。きっとそのずうっと先だって。

 このまま、穏やかな時間が流れていることでしょう。


 だって、桃色の髪の女の子が召喚したのは――――



   「サザエでございまーす!」



 独特の髪型をした、彼女が居る限り。

 この先永遠に、ハルケギニアは固有結界【サザエさんワールド】の中。

 葬式ネタの時以外死ぬことも、誕生日ネタの当日限定以外に年老いることもなく。

 まったりとした日々が約束されているのですから――――

199名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 03:38:36 ID:VNhoaCsU
今日も良い天気〜♪
200名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 03:46:40 ID:KCE6wWbS
ほのぼのしてるけど
永遠の停滞ってある意味ホラーでもあるような気がしてくるから困るぜ
201名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 04:07:13 ID:UfZUokcm
>>194
001が召喚されたら面白そうだなあ……子守的な意味で。
202名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 04:30:40 ID:VNhoaCsU
>ある意味ホラーでもあるような気がしてくるから困るぜ
なんということでしょう
203名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 04:44:57 ID:NsRWG2Sw
あのアニメのキャライラスト調なルイズ達想像してワロタw
204名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 06:20:40 ID:+JuSY+8K
>>203
なんて事をw
205名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 07:37:45 ID:++uZsaVg
初期のサザエさんはまさにホラー(絵的に)
206名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 07:42:12 ID:tp1d6zd5
魔法学院の屏をひっぺがして薪にしたせいで追い出されるルイズとサイトか。
サザエも元を辿れば武士に行き着く裕福な家のお嬢様だぞ。(福岡での家はでかい)
引っ越したら普通になってしまったが。
207罪深い使い魔:2007/11/29(木) 08:35:51 ID:Zx26p8V8
誰もいそうにないですが投下予約
8:45から投下開始します
208名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 08:37:16 ID:q9sYsLW9
大丈夫、仕事でも支援だ!
209罪深い使い魔:2007/11/29(木) 08:46:14 ID:Zx26p8V8
人いましたか……
それでは投下開始します



俺達の間には主従の契約しかない。つまり友人でも仲間でもない、赤の他人だ。
少なくともルイズはそう考えていると思っていた。何せ俺は所謂『ハズレ』の使い魔だ。
当然、向こうは俺の存在を快くは思っていないだろう……そう思っていた。
なのに、ルイズは俺がゴーレムにやられたことを怒り、悲しみ、シエスタの言葉によれば医務室で看病までしてくれたらしい。
信じられなかった。今でも信じられない。少しは良いところもあると思ってはいたが、まさかそんな一面まであるなんて……
けれど、それを素直に喜ぶことはできない。
ルイズの良い面を知れば知るほど、それだけこの世界に未練が残る。
ルイズとの別れが、辛くなる。



「タツヤさん、あの……」

達哉とシエスタは今、共に学院の廊下を歩いている。
先ほど達哉に請われて案内した、学院長室から漏れ聞こえた会話はシエスタにも理解できた。
これからフーケを捕縛しに行き、宝を取り戻すということらしい。
達哉の態度が豹変したのは、そうした会話の一部始終を聞いた直後だった。

「まさか、ついて行くつもりじゃありませんよね?」
「…………」

達哉は何も答えない。ただ足早に廊下を歩き続けるだけだった。
怪我は大したことないのか、足取りはしっかりとしているが、その表情は沈んでいる。
そんな達哉を見ていると、どうしても悪い予感が拭えない。
シエスタは感極まって叫んだ。

「無茶です! 今度こそ本当に殺されちゃいます! 所詮平民はメイジ相手に勝てないんです!」
「……心配してくれるのはありがたいが、これだけは譲れないんだ。済まない」

達哉はさらに問い詰めようとするシエスタを強引に振り切り、学院内を駆けだした。
悪いとは思ったが、これ以上話しかけられてはたまらなかった。
頭が痛い。なぜかその原因が、覚えてすらいない先ほどの夢だと感じる。
一体どんな内容の夢だったのか。とても大事なことのような気がするのだが。

「……考えても仕方がないか」

実際、今は夢のことなどどうでもいい。現実に横たわっている悪夢の方がはるかに問題だ。
もし予想通り、あの場に『ジョーカー』がいたのなら、その時は……

「その時は……俺が『特異点』になってしまったということになる」

達哉の顔が歪む。それは、最悪の可能性である。
もしそれが現実になっていたとするなら、『あの日ルイズが言った解決法』も本気で考えなければならない。
達哉は腹の底でその覚悟を固めつつ、たどり着いた一室のドアに手をかけた。
鍵はかかっていない。不用心なのか、よほど慌てていたのか。
短い付き合いだがおそらく後者だと考えながら、達哉はその部屋――ルイズの部屋に侵入した。

「よう、相棒。なんだか死人みてーな顔してるぜ。大丈夫か?」
「ああ……」

医務室になかったのだから、ここに運ばれたのだろう。達哉の考えが当たる。
部屋の床には、乱暴に鞘に突っ込まれたデルフリンガーが無造作に転がされていた。
しっかりと鞘に収まっていないため、デルフリンガーも口がきけるようだ。
210罪深い使い魔:2007/11/29(木) 08:48:28 ID:Zx26p8V8
「昨日は、情けない姿を晒したな」
「何、生きてりゃ上等さ」

デルフリンガーはカタカタと身を震わせて笑う。
達哉は自嘲気味な笑みを浮かべながら、デルフリンガーを背に回した。

「お、どうした? 昨日の仕返しに行くのか?」
「まあ、そんなところだ」
「そうかい。で、俺を持って行くってことは、ちゃんと俺『も』使うつもりなんだな?」
「……あれは、ルイズにはまだ黙っていてくれ。俺が自分で打ち明ける」
「隠し事はやめにするのか?」
「ああ……」

これが最後の機会になるかもしれないからな。
その言葉はすんでの所で飲み込んだ。



昨夜のメイジ――フーケの元へは馬車で行くらしい。
達哉が学院の門に向かうと、そこには既に馬車が用意されていた。
馬は二頭。荷車は貴族を乗せることを前提に作られているらしく、それなりの椅子が備えつけられていた。
しかしほろはない。これでは雨風を凌げないが、ゴーレムに襲われた時のことを考えればこの方がいいだろう。すぐに脱出できる。

馬車の元には三人の人物が集まっていた。
ルイズがやたらと毛嫌いしていた、キュルケというメイジ。そして――なんとなく見覚えのある青髪の子供。
さらにまったく記憶にない妙齢の女性。
それらのメンバーを見て、達哉は首をかしげた。

……ルイズがいない?

達哉が盗み聞きした内容では、ルイズは真っ先に捜索隊に志願し、受諾されたはずだった。
それがなぜいないのか。

「もう歩いても平気なの?」

達哉に気がついたキュルケが声をかける。

「こんなところに何の用……って、もしかしてもう知ってるのかしら? 私達が何をしに行くのか」

キュルケの視線が達哉の背――デルフリンガーに注がれる。

「……ああ」
「あらあら、どこで情報が漏れちゃったのかしら。それで今は主人の元へと駆けつけたってわけ? だとしたら入れ違いになっちゃったわね」
「どういうことだ?」
「ルイズならさっき――」
「タツヤーッ!!」
「――貴方の様子を見に、医務室へ行ったところだったから」
211罪深い使い魔:2007/11/29(木) 08:50:40 ID:Zx26p8V8
達哉が振り返ると、そこには鬼の形相でこちらへと駆けてくるルイズの姿があった。
マズイ。
このパターンだとまた脛を蹴られるか、とすぐに身構えた達哉だったが、
ルイズは達哉の予想を裏切り、思いがけない行動に出た。

「何いなくなってるのよ、バカァ!! 目が覚めたんなら、そう言いなさいよ……!」

達哉の側まで駆け寄ったルイズは、そこでへにゃっと顔を歪ませて、抱きつくようにして達哉にしがみついた。
達哉の胸に顔を埋め、震えるルイズ。その姿を見て、先ほど盗み聞きしたルイズの言葉を思い出した達哉は狼狽する。

「おい、ルイズ……!」
「大体、なんでこんなところにいるのよ! まだ寝てなきゃダメでしょ!?」
「あなたに会いにきたんですってよ、ルイズ」
「……へ?」

キュルケが意味ありげな口調で言う。
ルイズはがばっと、達哉の胸元から顔を上げてキュルケを見、そして周囲を見回した。
そこでようやく、この場にいるのが自分達だけではないことを思い出したルイズは、
顔を真っ赤に染めて、達哉を突き飛ばすようにして離れた。
さらに腰に手を当てるお決まりのポーズをとってそっぽを向く。

「……そ、そう。あんたにしては殊勝な態度ね。でも、もういいわ。今日はあんたに休暇を与えるから、
すぐに医務室に戻ってなさい。はい、行ってよし」
「…………」

しっしっ、と手で追い払うジェスチャーをするルイズ。もの凄い変わり身だった。
しかし、そんなルイズの本音がいかなるものなのかは、達哉の胸元にしっかりと残されている。
そこには、真新しい二つの染みができていた。

「……ルイズ」

こんな状況になってしまうと、非常に切り出しにくい。それでも達哉はなんとか口を開いた。

「いや……俺も連れて行ってほしい。今日はそれを言いに来た」
「べ、別にあんたの敵討ちじゃないのよ。ただ貴族の名誉を守るために……は?」
「フーケを捕まえに行くんだろ? 俺にも手伝わせてくれ」
「…………」

ぽかん、と口を開けるルイズ。しかしすぐに我に返ると達哉を睨み、大きく息を吸いこんだ。
ああ、やっぱり。達哉は次に訪れるであろう衝撃に備える。
そして――

「ダメに決まってるでしょ! あんた昨日何されたか忘れちゃったの!?
ゴーレムに殴られて、記憶が吹っ飛んだんじゃないでしょうね!?」
「――――ッ!」

比喩なしに、空気が激しく振動した。その大音量をなんとか受け流し、達哉はさらに言葉を重ねる。

「……いや、記憶はある。昨夜は不覚を取ったが、もう油断はしない」
「ダメよダメ! 平民なんて連れて行っても足手まといよ!」
「俺はどうしてもフーケに会わなければいけないんだ。頼む」
「絶対ダメ! ダメったらだーめ!!」

ルイズの怒声は凄まじい。耳がおかしくなりそうだった。
そして、やはり手強い。達哉は必死で考えを巡らせ、説得に用いるべき言葉を捻り出そうとする。
212罪深い使い魔:2007/11/29(木) 08:53:00 ID:Zx26p8V8
「待ちなさい、ルイズ」

と、ここで声がかかる。
声の主は、先ほどから二人のやり取りをニヤニヤと眺めていたキュルケだった。
キュルケは達哉とルイズの間に割って入り、達哉のことを値踏みするような目で見据える。
その美貌で見つめられるだけで、並の男は正常でいられなくなってしまうのだが、達哉は眉一つ動かさない。
キュルケに正面から向き合う。

「……貴方、名前なんて言ったかしら?」
「達哉だ」

やはりというか、キュルケは自分の名前を覚えていなかった。

「そう……ねぇタツヤ。私達、これから行楽に行こうって言ってるわけじゃないのだけれど、それはわかってる?」
「もちろんだ」
「今日は狩りに行くのよ。獲物は昨夜、貴方をギタギタにのした『土くれ』のフーケ。
正直に言って、貴方のお守りをする余裕はございませんの」

はっきりとした戦力外通告。しかしゴーレム相手に見せた失態を思えばこれも当然だろう。
達哉は淡々とした口調で切り返した。

「邪魔をするつもりはない。俺が足手まといになった時は、いつでも切り捨ててくれ」
「な……!」

ルイズが何事か言いかけるが、キュルケがそれを遮る。
そして急に真顔になると、声を低くして言った。

「もし邪魔になるようだったら、本当に見捨てるわよ」
「ああ」
「ふーん……」

キュルケは顔を近づけて、じっと達哉の目を見つめる。口元には笑みが浮かんだが、目は真剣そのものだった。
しかしその目元もすぐに緩む。

「そう、わかったわ。なら一緒に来なさい」
「キュルケ!」

ルイズの非難めいた声に、やれやれと肩をすくめて見せるキュルケ。

「だってタツヤったら、貴方並に頑固なんですもの。これじゃ言っても無駄よ。
それに聞いた話だと彼、一人でゴーレムと戦って片腕を切り落としたらしいじゃない」

あれは切り落としたんじゃなくて、フーケが自分でやったんだが。
そう思いつつも、あえて訂正する必要はないので、達哉はつっこまない。むしろ勘違いされていた方が好都合だ。

「見たところ怪我も問題ないみたいだし、少しは役に立ちそうだと思わない?」
「思わない! 全然おーもーわーなーいー!」

両腕をぶんぶんと振り回して、全力で否定するルイズ。

「それに、平民がいたらみんな迷惑でしょ!?」
「どうかしら。ねぇ、タバサはどう? 反対?」

キュルケはここまで一言も口を挟まなかったタバサの方を見る。
最初から我関せずの態度を貫いていたタバサは、ここでようやく言葉を発した。

「好きにすればいい」
「ミス・ロングビルは?」
「賛成ですわ。馬車にはまだ余裕がありますし、男手があれば何かと便利ですもの」
213罪深い使い魔:2007/11/29(木) 08:55:12 ID:Zx26p8V8
これらの返答に、キュルケはにっこりと笑う。

「3対1よ。これでもまだごねるの、ルイズ?」
「うー……」

ルイズはしばしの間、その場にいる全員を睨みつけていたが、やがてフンと鼻を鳴らすと一人で馬車に乗り込んでしまった。
そして達哉を見下ろす。

「もう勝手にしなさい! ゴーレムに踏み潰されたって、責任取らないんだからね!!」

不謹慎だと思いつつも、達哉は苦笑を堪えきれなかった。



達哉を加え、人数を五人に増やした捜索隊は、その後すぐに学院から出発した。
学院を出た馬車は現在、整備されたなだらかな道の上を移動している。
天気は晴れ。周りは丈の低い草原で、日が高いこともあり危険はほとんどない。
そのためか、一行の間にはどことなくのんびりとした空気が流れていた。

「ミス・ロングビル……手綱なんて、付き人にやらせればよかったのに」

自ら御者を買って出、今は一人馬を操っているロングビルにキュルケが声をかける。
ロングビルは軽く首を振った。

「いいのです。私は、貴族の名をなくした者ですから」
「え? だって、貴女はオールド・オスマンの秘書なのでしょ?」
「ええ、でも、オスマン氏は貴族や平民だということに、あまり拘らないお方です」
「差しつかえなかったら、事情をお聞かせ願いたいわ」

興味津々、といった様子のキュルケに対するロングビルの返答は、微笑だった。
キュルケはさらに詰め寄る。

「いいじゃないの。教えてくださいな」
「よしなさいよ」

それを、見かねたルイズがたしなめる。

「昔のことを根掘り葉掘り聞くなんて、慎み深いトリステイン貴族の間じゃ不作法よ」
「あいにく、私はゲルマニアの人間よ」

キュルケが髪をかき上げる。二人の間に火花が散った。

「トリステインにいる間はトリステインのルールに従いなさい」
「ただ暇だからおしゃべりしようと思っただけじゃないの」
「暇なら見張りでもしていたら?」
「そんな端役はトリステイン貴族の淑女の方がお似合いよ……ねぇタツヤ?」

キュルケは、珍しげに周りの景色を眺めていた達哉に目を向ける。新たな会話相手にするつもりのようだ。
「私の使い魔に話しかけないで!」という誰かの声は、当然のように無視された。

「『風車の鎧』なんて盗んで、フーケはどうするつもりなのかしらね?」
「風車の……鎧?」
214罪深い使い魔:2007/11/29(木) 08:57:22 ID:Zx26p8V8
達哉が怪訝な表情を浮かべる。
キュルケは得心した。

「ああ、貴方は知らなかったのね。『風車の鎧』というのは、学院の宝物庫から盗まれたお宝の名前よ。
『そのまんま』な姿なんだけどあれ、はっきり言って鎧としては三流なのよね。
ミス・ロングビルはご覧になったことがございまして?」

これにはロングビルも答えた。

「いえ……ただ、とても変わった形をしている、という話は聞いたことがあります」
「そうなのよ。変わった形。風車もなんの役に立つのかわからないし、あんな鎧に価値なんてあるのかしら?」
「その、『風車の鎧』というやつは……」

なぜか、落ち着かない様子の達哉が口を開く。

「もしかして、『槍』を持っていないか?」
「さあ、どうだったかしら?」
「鎧には『風車』、両手には『杖』と『槍』が握られている。というのが私の聞いた情報です」

ロングビルの証言が達哉の予想を裏付けた。
これによりルイズとキュルケが色めき立つ。

「なんであんたがそんなこと知ってるのよ!?」
「え? もしかしてタツヤ、『風車の鎧』が何か知ってるの!?」

二人が身を乗り出す。ロングビルも興味があるのか、こちらに耳を傾けているのが伺えたが、
達哉はあっさりと答えを返した。

「いや……昨夜フーケが槍を持っている姿を見たから、それを言っただけだ。
風車の鎧とやらについては、実際に見てみないとわからないな」
「あら、そうなの」
「なによ、ビックリさせないでよね」

途端にテンションの下がる二人。それでなし崩し的に会話は途切れた。
一方で達哉は、思わぬところから出てきた情報に心がざわめくのを感じる。
どうなってる?
『槍』は『やつ』が渡した物じゃなかったのか?
一人動揺する達哉を余所に、馬車は順調に目的地へと進んでいった。
215名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 08:58:46 ID:bmZklb8X
出動前の支援!
216罪深い使い魔:2007/11/29(木) 08:59:31 ID:Zx26p8V8
やがて、馬車はフーケが潜むという森の中へと入りこんだ。
深い森だった。太陽の光が遮られ、辺りは薄暗い。おまけに不気味なほど静かで、動物の鳴き声一つしない。
その薄気味悪い様子に、誰ともなく周囲を警戒し始める。

「ここから先は、徒歩で行きましょう」

やがて道が細くなり、馬車が進めなくなった。ロングビルの声に従い、全員が馬車から降りる。
森の中を走る細い道を、躊躇なく進んでいくロングビル。
これだけの森だ。ほんの少し道を間違えただけでも遭難するだろうというのに、大した度胸だった。
それからおよそ一時間。一体どこまで歩けばいいのかと、誰ともなくそう思い始めた時に森の木々は途切れた。
一行の前に現れる、開けた空間。人の手によって切り開かれた、学院の中庭ほどもある空き地だった。
その中央に、廃屋と思われる小屋がひとつ、ぽつんと建っている。
怪しい。全員が小屋の中から死角となる場所に潜む。

「私の聞いた情報ですと、あの中にフーケと思われる人物が出入りしているらしいのです」

ロングビルが小屋を指差して言う。

「あれがフーケの隠れ家というわけか」
「こんな森の奥まで来る人間、そうそういないもの。たしかに隠れ家にはうってつけよね」
「それよりも、これからどうするのよ?」
「考えがある」

タバサの言葉に、全員が耳を傾けた。

タバサの提示した作戦は、以下のようなものだった。
まず誰かが偵察兼囮として小屋の中に入り、フーケの所在を確かめる。
もし中にフーケがいて、かつ寝ているなどして無防備な状態であったなら、そのまま捕縛。
起きていて、侵入に気づかれたら外に逃げる。
小屋の中には土がないため、フーケは侵入者を始末するゴーレムを作るため、必ず外に出る。
フーケが外に出たら、ゴーレムを作られる前に全員で袋叩きにして倒すというのだ。

「もし中にフーケがいなかったらどうする?」

達哉は真っ先に生じた疑問を投げかける。
その場合、フーケは物陰から小屋を監視しているかもしれない。のこのこと現れた追跡者を片付けるために。

「なら、私が偵察に行きましょう。いざ戦いとなれば、私の出る幕はありませんし」

そう言ってロングビルが立ち上がる。

「一人で行くのは危険じゃないですか?」
「私もドットとは言えメイジ。見つかっても逃げるくらいのことはやってみせます」

身を案じるキュルケに、ロングビルは妙に自信ありげな笑みを残してその場を去った。

「案内だけでなく偵察まで引き受けるなんてね、随分な働き者だこと。……それじゃ、囮は誰がやる?」
「…………」

キュルケの言葉に達哉がすっくと立ち上がり、背中に差していたデルフリンガーを抜き放つ。
217罪深い使い魔:2007/11/29(木) 09:02:19 ID:Zx26p8V8
「タツヤ!」
「他に適任者がいない」

ルイズの非難めいた声に、達哉はそう答える。
これには誰も反論しなかった。

「ようやく出番みたいだな」
「静かにしろ」
「へいへい……」

早速しゃべり出すデルフリンガーを黙らせ、達哉は音を立てずに小屋の側まで移動する。
そして窓から中を覗きこもうとするが、窓が曇っていてはっきりと見えない。
ただ、人の気配は感じられなかった。

「行くのか?」
「ここでもたついてる暇はない」

意を決した達哉は、小屋の正面に回り込んでゆっくりとドアを開けた。
ギギギ、とドアが軋む。もし中に誰かがいれば、この音で気づくだろう。
慎重に小屋の中へと足を踏み入れる。

小屋は外見もボロだが、中はそれに輪をかけて酷かった。机や棚などの家具は埃で真っ白になっており、
そこかしこに蜘蛛の巣がこびりついている。
ただ足下を見ると、そこには自分のものではない足跡がいくつも残っていた。
フーケかどうかはわからないが、少なくともここ最近何者かが出入りしていたのは事実のようだ。

「なんだ、誰もいねえな」
「…………」

しかしざっと小屋の中を見回しても、デルフリンガーの言うとおり人の姿は見られない。
もう逃げてしまったのかもしれない。そう考えた時、部屋の一つで『それ』を発見する。
達哉は言葉に詰まった。

「なんだこりゃ?」

デルフリンガーは素っ頓狂な声を上げる。

「もしかしてこいつが、馬車で話してた『風車の鎧』か? 見ろよ、背中に風車みてーな羽がくっついてるぜ」
「…………」

予想はしていたが、やはり『風車の鎧』はかつて『向こう側』で目にしたものだった。
ジョーカーらしき『共鳴』に、この『風車の鎧』。偶然とは考えられない。
これで『這い寄る混沌』がこの世界に干渉している可能性がますます高まる。
ただ今は、そのことに対する不安よりも、戸惑いの方が大きい。
この鎧は一体、どのようにしてこの世界に持ち込まれたのか。
キュルケとの会話から察するに、この『風車の鎧』は達哉がこの世界に来るよりも前からこの世界に存在していた。
つまりこの鎧に関しては、達哉とは無関係な要因でこの場にあることになる。
その意味するところが、達哉にはわからない。あるいは、フーケは何か知っているのだろうか?
達哉は辺りに注意しながら、そっと鎧に手を触れる。

「……ッ!?」

すると、頭の中に様々な情報が飛び込んで来た。
突然のことに、思わず手を引っ込める。

「どうした、相棒?」

その問いに答える前に、外から悲鳴が上がる。
達哉は軽く舌打ちして、小屋の入り口へと駆け戻って行った。
218名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 09:04:17 ID:6wxU0X+t
リベンジなるか支援
219罪深い使い魔:2007/11/29(木) 09:06:03 ID:Zx26p8V8
小屋から飛び出すのとほぼ同時に、小屋の屋根部分が丸ごと吹き飛んだ。
達哉が見上げたその先には、昨夜一戦交えた巨大な土の塊がそびえ立っていた。フーケのゴーレムだ。
夜空から青空へと背景を変えたその姿を、今ははっきりと見渡すことが出来る。
全高は約30メートル。完全な人型ではなく、頭が潰れており短足、そして長い腕を持つ。
しかし、昨夜とは違う箇所がひとつだけあった。ゴーレムの肩に人影はない。

……どこかに隠れて操っているのか。

達哉がそう判断したところで、すでに臨戦態勢へと移行していたキュルケとタバサが、それぞれ『火』と『風』の魔法を放った。
キュルケの『火』がゴーレムの胸部を炎で覆い、タバサの『風』は突風となってゴーレムを押し倒そうとする。
しかし火はゴーレムの表面をわずかに焦がすだけに留まり、風はゴーレムを一歩引かせることすらできない。
その圧倒的な巨体が、トライアングルメイジ二人の魔法を完全に無力化していた。

「ファイヤーボール!」

遅れてルイズも魔法を唱えるが、結果はゴーレムの爪先で軽い爆発が起こっただけだった。
お返しとばかりに踏み出されるゴーレムの足を避け、四人は一カ所に集う。

「無理よこんなの!」
「退却」
「いや、まだだ」

即座に不利と判断して、逃げ出そうとする二人を達哉が制する。

「ゴーレムがここにいるなら、フーケもこの近くにいる。隠れて、俺達を見ているはずだ。そちらを叩く」

ゴーレムなど無視して本体のメイジを直接倒せばいい。
昨夜デルフリンガーから聞いた『土』メイジ攻略の常套手段だが、二人はいい顔をしない。
すぐに反論が出る。

「そりゃフーケを直接やれるなら、それに越したことはないけど、向こうだって考えてるはずよ。
簡単に見つかるとは思えないわ」
「フーケを捜す私達を、ゴーレムは見逃さない。ゴーレムの攻撃を躱しながらフーケを見つけるのは、困難」
「でも逃げるなんてできないわ!」

ここで、ルイズが達哉の味方に加わる。考えあってのことではなく、多分に感情的なものだったが。
ともあれこれで意見は真っ二つとなる。なおも言い合おうとする四人の元にゴーレムの拳が落ち、慌てて散開する。
散り際に、達哉が指示を飛ばす。

「また俺が囮になる。あいつの足止めをするから、その間にお前らがフーケを見つけ出してくれ!」
「無理。私達が森を捜索すれば、ゴーレムは貴方を無視する」
「今度も運良く片腕を落とせるとは限らないわよ。仮に落とせても、ゴーレムは止まらないわ」
「いや、必ず止める」
220罪深い使い魔:2007/11/29(木) 09:09:33 ID:Zx26p8V8
達哉は一瞬だけ顔を曇らせた後、きっとゴーレムを見据えて前へと進み出る。何かを決意かのしたように。
「何やってんの!」とルイズが咎めようとした次の瞬間、達哉の足下から青白い光が沸き上がった。
突然のことにタバサを除く全員が驚く中で、達哉は一同を振り返らずに言う。

「皆、今だけでいい……俺を信じろ!」

この機は逃せない。フーケはなんとしても捕まえる。
しかしフーケを相手に、こいつを隠しながら戦うことなんて不可能だ。
あるいは、この戦いを最後にルイズとは別れることになるかもしれない。
それでも――退くことはできない!
様々な思いを飲み込みながら、達哉ははっきりとした声で叫んだ。

「ペルソナッ!!」


光が爆ぜ、達哉が纏っていた『平民』の仮面が剥がれ落ちる。
その下から現れたのは別の仮面。
光の象徴。生命の父。即ち、『太陽』の化身とも言える仮面だった。



投下は以上です
支援ありがとうございました
前置きが長くなりましたが、次の話からペルソナを解禁します
221名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 09:11:22 ID:bmZklb8X
キター!
やっと、やっと見せ場だたっちゃん。GJ!
すごく待ったよねw
222名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 09:23:08 ID:q9sYsLW9
乙!期待して待ちます
223ゼロの夢幻竜:2007/11/29(木) 10:27:43 ID:9G3DCgXp
第二話と第三話推敲終わりました。
あと10分程したら投下しても良いでしょうか?
224名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 10:31:20 ID:09UWCdOa
私は一向に構わんッ!!

そしてたっちゃん乙!!
ギガンフィストとノバサイザーに期待
225名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 10:37:40 ID:9G3DCgXp
では投下逝きまーす。

ゼロの夢幻竜   第二話「意思の継がり」
「えっ?!」

ルイズはその声に驚いて唇を離し辺りを見回す。
だが自分の目に映るのは相変わらずざわめき続ける同級生達と、満足げな表情をしているミスタ・コルベールのみ。
そもそもそんな声を出すくらいの子供も、自分の名前を訊くような者も此処にはいない。
という事はもしや……

「うむ、『サモン・サーヴァント』は何回も失敗したが『コントラクト・サーヴァント』はきちんと出来た様だね。」

ルイズが狐に摘まれた様な表情しているにも拘らずコルベールが嬉しそうに言う。
その段になって彼女の使い魔は目を覚ました。
目を何回も瞬かせ、頭を擡げてこちらを見つめる仕草は愛くるしいものだった。
使い魔が持つ大きく黄色のくりっとした目がそれを十分に引き立てている。
その時、またも先程聞こえてきたものと同じ声が聞こえてくる。
が、その声は今にも泣き出しそうな声をしていた。

「あついよ……てが、あつい……あついよう……たす……けて」

手、そして熱いという単語にルイズは使い魔のルーンが刻まれているのだと反射的に気づく。
そこまでいって更に彼女は事の奇妙さにはっとした。
目の前にいる竜ともしれぬ生き物はさっき見せていた優しそうな表情とは逆に苦悶の表情を浮かべていたからだ。
だとすれば本当にこの目の前の竜が喋っているというのだろうか?
流石にその事を不気味に思ったルイズは後ろにいるミスタ・コルベールに早口でその事を伝える。

「せっ、先生っ!!この使い魔喋ってます!!」
「何、喋ってるだって?どれどれ……?」

コルベールはルイズの側まで来てから地面に立膝を突き、使い魔の口元に出来るだけ耳を寄せる。
しかし、何も聞こえてはこない。
それどころか口を動かす気配さえない。

「うーん、済まないがミス・ヴァリエール、私には聞こえないみたいだ。」

済まなさそうにコルベールは後頭部を掻きながら答える。
その間にもルイズの頭にはさっきから苦しげな声が聞こえてくる。

「いたいよ……やめてよ……なんなの、これぇ……」

そのあまりの苦しげな表情に、ルイズは声の問題はさておいて使い魔をそっと抱き締める。

226ゼロの夢幻竜:2007/11/29(木) 10:38:41 ID:9G3DCgXp
「ごめんなさい……我慢してね。使い魔のルーンが刻まれるまでの間だから……」

そう言って縫いぐるみの様に柔らかい毛を持った体をそっと何回も撫でていく。
これから一生を共にする存在であり、やっと自身の魔法が成功した証。
見栄えも申し分ないこの使い魔を邪険にすれば、始祖ブリミルから何をされても文句は言えない。
というかそんな事をした時点でメイジではない気がする。
コルベールはというと表情を研究者のそれにし、感慨深げな声を出す。

「うん。どうやらルーンは此処に刻まれたようだね。」

そう言って彼が撫ぜたのは翼の下辺りにある赤い楕円状の突起部分だった。
それを見てルイズは益々訳が分からなくなってくる。
使い魔が喋ったであろう言葉が正しければそこは手に当たる部分だ。
だがそこにはただ突起があるだけで指はおろか腕すらない。
どういうことだろうか?
そんなルイズを余所にコルベールは熱心にルーンを観察し、それを携帯していたスケッチブックに書き写す。

「ふむ。珍しいルーンだな。さてと、じゃあ皆教室に戻るぞ。」
「待って先生!私は本当に……」

聞こえたんですと言おうとしたが、見事な巻き髪と雀斑を持った女の子の茶々によって邪魔された。

「爆発魔法ばっかりやってるから疲れて空耳でも聞いたんじゃないの?」
「な!先生っ!『洪水』のモンモランシーが私を侮辱しました!」
「ちょっと!誰が『洪水』ですって?!私は『香水』のモンモランシーよ!」
「あんた小さい頃洪水みたいなおねしょしてたって話じゃない。『洪水』の方がお似合いよっ!」
「よっくも言ってくれたわねっ!ゼロのルイズ!ゼロの癖になによ!!」
「こらこら。貴族はお互いを尊重しあうものだ。さあ、早く戻ろう。」

二人を宥めたコルベールが踵を返してすうっと宙に浮く。
それに伴い他の生徒達も空中に浮き石造りの校舎に向かって飛んで行く。

「なあルイズの使い魔って飛べるのかなあ?」

金髪で少々ぽっちゃりとした少年―マリコルヌがさりげなく出した質問に他の生徒はふと考えさせられる。
確かに翼―此処の常識に照らし合わせてあれが翼と無理にいうのなら―は持っていた。

「使い魔自体は飛べるだろうけど、ルイズを乗せてじゃ……」

比べてみれば体格的に乗るルイズの方が大きい。
それにバランスも悪く見えてしまう。
何よりあの使い魔の翼にそんな踏ん張りの利く力があるとはどう贔屓目に見ても見れない。
その事に関して燃える様な赤い髪の少女―キュルケが「無理ね」と断じ切る。
それから誰からともなく小さな笑い声が上がり、やがてそれは大きな笑い声となる。

「なあんだ。結局ルイズは歩いて城まで、か!相変わらずじゃあないか!」
「竜っぽい外見だったから最初はびっくりしちゃったけど、ゼロのルイズにぴったりかも!」
「見かけ倒しもあそこまでいくと質が悪いな!だが良い余興にはなったよ。なあ、皆?」

金髪の気障そうな少年―ギーシュのその言葉に皆は各々のタイミングでうんうんと頷く。
そして再び一頻りの笑いが起きた。
だがそれに交わる事も無く無表情を貫き通している少女がいた。
小柄で幼い外見をした青髪の少女―タバサはほんの極僅かだが何かを感じ取っていたからだ。
ルイズの使い魔が自分の召喚した6メイルはありそうな巨躯を持つ風竜の幼生と、どこと無く何かが似通っている事を。

227ゼロの夢幻竜:2007/11/29(木) 10:39:43 ID:9G3DCgXp
草原に一人取り残されたルイズは使い魔の方へ向き直り、優しい口調で問いかける。

「あんな奴等の言う事なんて聞いちゃダメよ?それよりあなた大丈夫?もう痛くはないと思うけど。」

そう言ってルーンの刻まれた赤い突起に目をやる。
が、次の瞬間彼女はその場から軽く仰け反ってしまった。
赤い突起が急に迫り出したかと思うとそれが前にすっと伸びて、突起から折り畳まれていたであろう先の尖った指が三つ出てきたのだ。
いや、体から伸びているか細い腕も、赤い手もその指も収納できるものだと考えていいだろう。
使い魔は不安げにルーンの刻まれた手の甲を見ていた。
それからややあって再び例の声が聞こえて来た。

「あなた……だあれ?」

それに対しては質問の趣旨を無視して『どうやって話しているの?』と聞きたかったが、そんな事をするのは流石に野暮だと思って正直に答えた。

「私の名前はルイズ。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。今日からあなたのご主人様よ。」
「ル、イ……ズ。ルイズ!ルイズ!」
「嘘っ、ルイズだけだけど、もう覚えたの?!凄いじゃない!でも、ルイズじゃなくて『ご主人様』って呼ぶのよ。いいわね?」
「ル、ル、ルイズはご主人様!ルイズはご主人様!」

使い魔は名前の定義を壮大に勘違いしているらしく、がくっとしたルイズは冷静に突っ込む。

「ええと、違うわ。『ご主人様』、それだけで良いの。それと私と話す時は……敬語を使ってね。……敬語ってこの子分かるのかしら?」
「わかった!えーとぉ……ご主人様!」
「そうよ!やるじゃない!それにこれってよくよく考えたら凄い事よね。人語を解して、話し方に上下関係の区別までつけながらどんな形だろうと話す事が出来るんだから。しかも使い魔で。」
「?ご主人様、どしたんですか?」

顎に手を置きながらぶつぶつ何かを喋っているルイズに使い魔は質問した。

「何でもないわ!何でもないの。……ところであなたの名前は?」
「わたしのなまえは……ラティアス」
「そう。ラティアスっていうんだ。変な名前だけどわたしは素敵な名前だと思うわ。」
「……うれしいです、ご主人様。」

言うとラティアスは両頬を薄紅色に染める。
照れた使い魔を微笑ましげに見つめ、ルイズは学院の方向を向く。

「さてと、学院に戻りましょうか。あっ、あなたは初めて行くのよね。」

再びラティアスの方を向くとラティアスはもう地面に横になってはいなかった。
ルイズの頭がある所とほぼ同じ位置で滞空していたのである。
やっぱり竜の一種なのかしらと思ったルイズはまたしても奇妙な事に気づく。
ふわふわとその場で5サント程上下しているにも拘らず翼が微動だにしていないのだ。
通常竜は滞空する為にを翼を動かすものだが、ラティアスにはそれが全く見られない。
風を掴んでいるのだろうかという考えは、辺りが極めて無風に近いという事で無しになった。
では、一体どうやって浮いているというのだろうか?

「ご主人様!どこへ行きたいんですか?」
「えっとね、あっちの方にあるトリステイン魔法学院っていう所。」
「じゃあ、わたしの背中に乗ってください!」
「いいわよ……って、あんた今なんて言った?」

228ゼロの夢幻竜:2007/11/29(木) 10:41:40 ID:9G3DCgXp
ゼロの夢幻竜    第三話「使い魔の飛翔」

驚いた顔をしているルイズにラティアスはにこにこと応対する。
ルイズは使い魔の体を端から端まで眺めながらこう言った。

「……あんたの体じゃわたしを乗せたりなんかしたら潰れちゃうんじゃない?」
「大丈夫です!ちゃんと飛んでみせますから、さあ早く!早く!」

ラティアスはどうぞと言わんばかりに滞空している位置を下げ、ルイズがその背中に乗れる様にする。
乗りますか?乗りませんか?
使い魔の感情を無碍にする訳にもいかないので、ルイズは出来る限りそうっとその背中に乗る。
乗った刹那、ラティアスの体は上下の振れ幅が大きくなったが、その後は何ともなかった様に地面からどんどん離れていく。
10メイル、50メイル、100メイルと高く昇る度にルイズは心の中に湧き上がる嬉しさが増えていく。
それに少しだけ蓋をしてルイズは一つ質問をする。
それは相手が人語を理解する存在であるが故に一応聞いておきたかった事だった。

「ラティアス。一つ訊いていいかしら?」
「何でしょうか、ご主人様?」
「あんたどうやって私に話しかけてるの?口少しも動かしてないのに……」

するとラティアスはなんて事はない様に答える。

「テレパシーです!えっへん!」
「てれぱしぃ?何、それ?意思疎通の手段の一つ?道具?」
「えーとですね、くわしい事はわたしも説明できないんですけど、自分が心をゆるした者との心を結ぶと年上のだれかに聞かされた事があります。」
「凄い……!心を許した者って私の使い魔になったからかしら?ねえ、私以外の周りの人に声が聞こえなかった理由は何なの?」
「この世界に来てわたしが最初に見たのがご主人様だったからです。それに……」

そこまで言うとラティアスは左手の甲に刻まれたルーンを見つめながら、またも両頬を赤く染めてうっとりするような調子で言う。

「ご主人様だけ、わたしが痛がったり苦しがったりしている時に優しい言葉をかけてくれましたから……」

その言葉を聞いてルイズは決心する。
この子にもっと優しく接してあげよう、と。
上手くすれば更に素晴らしい能力を引き出す事が出来るかもしれないからだ。
そして一応もう一つ質問する。

「あなた……声と口調からして、雌ね?それも私より年下でしょ?」
「はい!今年でちょうど10才になります!」
「10歳ですって?!!まだ子供じゃないの!!」

ルイズが驚くのも無理はない。
竜という生き物―くどい様だがラティアスがこの世界でいう竜とするならば―は人間に比べて遥かに長命で、成体ともなれば4桁の年齢に差し掛かるものもざらにいる。
となればやっと2桁台に乗った目の前にいるラティアスは赤ん坊にも等しい事になる。
ただ竜には至極稀に、それも限った種に寄るが幼い段階から聡明な個体も生まれる事があると聞かされている。
ましてやラティアスが口にした年齢が正しいとすれば、自分はそれこそとんでもない当たり籤を引いたという事だ。
そんな考え事をしているルイズへラティアスは少々膨れて応対する。

「子どもじゃないです!わたしの様な年になったら、みんな人とおしゃべりできるんです!」
「ご、ごめんなさい。ちょっと信じられなかっただけ。」
「……くすっ。気にしないでください。同じ事を言う人は結構いるって聞いた事ありますから。それにしても……ご主人様の体、暖かいなあ。」

そしてお喋りは終わりとばかりにルイズはぽーっとしているラティアスに話しかける。

「ありがと。じゃ、行きましょうか!……ってラティアス?ラティアスー?」
「は、はわわ!!すいません、ご主人様!じゃ、わたしの体のどこかにしっかりつかまっていて下さい!行きますよー。とばしますよー!」

そろそろ高度が300から400メイルに達しようかと思われた次の瞬間だった。
ラティアスは手を収納し、地面に対して45度程の角度で立てていた翼を水平にし、直後放たれた矢の如き速さで発進した。
229ゼロの夢幻竜:2007/11/29(木) 10:42:51 ID:9G3DCgXp
先に飛んでいった生徒達は学院まであとちょっとという所にいた。
既にルイズを冷やかす話は終わり、皆自分達の使い魔についての話をしている。
まあ、大抵は貴族のプライドが先に来る為か自慢合戦の様相を呈していたが。
だがそんなお喋りは誰かが発した叫び声で唐突に終わりを告げる。

「おい!何か来るぞ!」

生徒達は何だろうと自分達の後方を見つめる。
だが何もやって来る気配はない。

「上だよ!上!」

最初に叫んだ生徒は気づいてよ!とばかりに再び叫ぶ。
そこで彼等は自分達のいる空域の更に上方を見上げると、確かに何かが急速度で近づいてくる。
そして風を切る様な音と共に現れたのはあのルイズが召喚した使い魔だった。
更によく見ればその背に当のルイズも乗っている。
その使い魔は呆気に取られている生徒達をあっさりと追い抜き、学院の広場へと向かって行った。
あまりにあっという間の出来事だった為に誰も口を開こうとはしない。
やや間があってからタバサが乗っている風竜が我先にと全員の前に飛び出し、猛スピードでルイズの後を追い始めた。
そしてそれにキュルケが続き、更に後方から他の生徒達が続く。
先頭をきるタバサは何でもなかったが、キュルケを始めとする他の生徒達は一つの言葉に突き動かされるように急いだ。
曰く、ゼロのルイズに負けてたまるか(たまるものですか)!との事。

そんな連中を尻目にルイズとラティアスは学院の広場に降り立った。
少し、いやかなりスピードが出ていた為かルイズの髪は今、起きぬけに櫛を入れ忘れたかのような状態になっている。
だが今のルイズの表情はそんな事を粉微塵も感じないかのように晴れ晴れとしていた。
機嫌が言いなんて物じゃない。最高の気分だ。
風竜?めではない。更なる能力が開花すればそれ以上の存在になる可能性を秘めているからだ。
サラマンダー?大きさこそあちらが勝っているがやはりここまで直ぐに移動できたという印象の方が大きい。その自信があればサラマンダーすら野鼠の様に見えてくる。
梟?ジャイアントモール?比べるまでもない。
尚も宙に浮き続けるラティアスをルイズはそっと抱き締め優しく言う。

「最高よ、ラティアス。あなたは最高の使い魔よ。他の誰がなんて言おうと私はあなたを見離すなんて事しないわ。これからもずっと一緒にいてね。」
「もちろんです!ご主人様大好きですっ!」

ラティアスは嬉々としてその言葉を受け入れる。
そして心の底から思う。
この、自分の『ご主人様』となった人に心を許して良かったと。

「あ、でも今度から私を背中に乗せる時はあんな速さで飛んじゃ駄目。速くても良いけどこうなるのは嫌だもん。」

そう言ってルイズは自身の髪を一房分持ち上げる。
そこには強風の為ぼさぼさになった桃色の髪があった。

「はう。ごめんなさいご主人様。」
230名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 10:43:45 ID:0cVJNW14
支援ぐ
231名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 10:49:52 ID:9G3DCgXp
投下終了します。
ルイズが呼び出したのはそうです。
ポケットモンスター全国図鑑ナンバー#390のラティアスです。
本当はミュウツー(幼生)かエンテイにしようかなと思っていたのですが、
ミュウツー(幼生)はまとめを見る限り先に書いている方がいましたし、
エンテイは話をどう膨らませようか行き止まりになってしまったので(笑)。
結果いろいろ特殊な力があるラティアスという事になりました。
それではまた今度お会いしましょう。
232名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 10:57:40 ID:8qKpGePI
アニメ(っていうか映画)準拠かしらん。
ともあれ乙乙。先を楽しみにしてるー
233名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 10:58:56 ID:1wmAJV1x
力丸とか白眼力を召喚したらどうだろう。
234名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 11:45:52 ID:tVtjQ7YV
結晶塔のエンテイ?
ルイズのパパかわりになるんだろうか
自分の世界に引きこもっちゃいそうだけど、ルイズ
235名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 11:49:16 ID:0diJ943q
ポケモン乙!
そういやエメラルド途中で放置してたな……
このスレでたまに名前の出る職コロを読んだ(3巻まで)
何この変態だらけのぐちょぐちょなマンガ(褒めてる)
236名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 12:09:02 ID:d5XjoI1z
ポケモンは赤緑青で止まってるなあ。
だから金銀以降のはよくわからん。
237名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 12:10:12 ID:5Zj31OEY
>>233
REDの昆虫漫画「ベクターケースファイル」の本編だっけ?

ただのヒラタクワガタだし…
サイズ的に武器やマジックアイテムを使うのは無理
竜とかを従えるクワガタ…

238名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 12:22:06 ID:tp1d6zd5
ダークライ……は、ワルドがべロベルトにされちゃうなぁ。
ラティオスを召喚した誰かと夢写しで会話したりするのかな?何はともあれ乙でした!
239名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 12:41:21 ID:f0E8LGHy
お津でした〜

アニメはみてないがラティ子かわいいよラティ子
ルイズもあっと言う間に打ち解けていい感じだわ
240名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 12:47:27 ID:1wmAJV1x
チャンピオン系が足りないな。
チャンピオンからも召喚して欲しい。
白鷺杜夢とか、オリバとか、茜純太とか。
コーヤとヒーマなんてのも捨てがたい。
241名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 12:52:50 ID:GZSTzuFv
チャンピオンはバキとエイケソしか知らない俺からすれば
バキに素手でフルボッコされてワルド涙目&使ってもらえなくてデルフ涙目、とか
おっぱい以上の何かに囲まれてルイズ涙目、とかしか思いつかねえw
242名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 12:54:34 ID:5Zj31OEY
>>240
加藤清澄(テグスを持つとパワーアップ!)
ツンデレ王者烈海王
ガイア(普段は気弱なノムラでいざとなると豹変)

山本賢治の人間以外(猫とか宇宙人)にのみ優しく人相の悪いブラックジャックとか
カードに封印された竜王とか

バロンとか
バトロワ漫画版の桐山とか
毒舌ほのぼのさなぎさん
見えない剣で二刀流の海賊とか

243名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 12:57:23 ID:5Zj31OEY
>>241
そこで武器も使えて料理も完璧
完璧な肉体を持つツンデレ
 烈 海 王
ですよ。

「美味くないぞ」と言いながらルイズに料理を出す30歳
料理を褒められて赤面する30歳

ツンデレ*2だと話を進めるのが難しそうだが…
244名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 12:59:04 ID:0diJ943q
なんでだろ
ガンダールヴ補正が付いても加藤は加藤なのに
ワルドと互角の図が浮かぶ
245名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 12:59:26 ID:jm4Kk1nO
短編ならひとみ先生が居たけどな。

このスレで「○○が召喚されてない」とか「○○召喚を書いて欲しい」
とかのレスに言える事はただ一つしかない。

つまり―――自分で書け
246名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 13:03:32 ID:0diJ943q
>>245
じゃあ人修羅が書きたい俺にマニアクスを買ってくれ
……京都・名古屋・岡山・種子島とどっか行く度に探して回るが未だに見当たらない
一年前は結構売ってたのになあ
247名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 13:08:08 ID:5Zj31OEY
>>244
むしろ

ボロボロになりつつもワルドを圧倒する加藤
「キャオオオオ!」と勝利の雄たけび
パンッ!
ワルド「偏在だよ 君は分身を本物と勘違いして戦っていたわけだ」
そして首から血の噴水を上げて倒れる加藤
「ルイズ…御免」

そして学園OBによるワルドへの復讐劇が…
248名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 13:10:26 ID:2xoL3bs3
オリバ意外と面白そうだな。ちょっと流れだけ考えてみる

最初、ただのマッチョなオッサンと思われ、食事制限されて衰弱死しかけるオリバ
ルイズにこき使われる事になるも、プライド高すぎる理不尽なまでのツンデレが好みのため、従うオリバ
筋肉を武器と認識して発動するガンダールブ効果で、よりみっくみくにされるギーシュ
犯罪者ハンターオリバにウソを見抜かれ、討伐前に会議の席で捕まるマチルダさん
使い魔品評会でパックマンを披露され、リアクションに困る王女とその他一同
そしてやっぱり出番がなく、武器屋でいじけるデルフリンガー

こんなとこかな?
249名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 13:29:27 ID:ZdGDdYt5
アリバとか、普通に魔法学院の壁を壊しそうだな
スペックでも自由の女神壊しかけたし
250名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 13:34:00 ID:5Zj31OEY
>>249
オリバがワルキューレをジャガる(肩や脳天に手を置いてそのまま潰す)

そのまま投げる
水平に飛んだ青銅の塊が宝物庫の壁を破壊
マチルダ姉さん(青銅の固まり程度の物を投げただけであの壁を壊すってあの筋肉ダルマなんて力だい…)

こんなノリかな?

バキを呼ぶとSAGAるから18禁に…
251名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 13:34:07 ID:J4c/FUkN
待てお前等、一つ忘れてるぞ!
チャンピオンと言ったら…

 み ど ろ さ ん 

だろうて…ってもう古いか?
252名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 13:36:41 ID:Whzsm7vT
アクメツだろ?
253名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 13:38:40 ID:5Zj31OEY
>>251
「厄いわね」の言葉で
二股がばれたギーシュが痴情の縺れで殺されたり

ワルドがウェールズの怨念で取り殺される。

そしていつの間にかみどろの存在を忘れたみんな&ルイズが
適当なのを再召喚して〆
254名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 13:51:16 ID:I3zfHhCB
某所に、ルイズがルイズを召喚される話があったw
いきなり爆殺とか、ヤンデレ全開な話だったよw
255名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 14:07:30 ID:nL1AbDI3
でろでろの耳雄を召喚して、いきなり殴られるルイズ
256名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 14:17:44 ID:nfGGKv7f
>254
某所って何処?
257名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 14:18:48 ID:4MVbg1Wu
>>254
あそこか?るるるとしか言いようが無いぜ
258名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 14:30:23 ID:I3zfHhCB
>>254
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/8882/1196169788/104-
ここ。何でこんな事になったのか、この元の話を読まないと、全く意味不明w
259名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 14:37:34 ID:CSI1P314
あのるるるはもう独自の文化圏だからな。一応外部に持ち出す類の話じゃないし、自重した方がよさげかと
260名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 14:49:29 ID:Ntxq/Mg/
>>252
マザリーニの前に現れるんだろうなw
そうなると、アン様含めてハルケギニアの王侯貴族は悉く皆殺しになるな。
261名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 14:52:36 ID:T3YABhsM
>>260
つまり全てが終わった後にマザリーニはホームレスになると申したか。
262名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 15:04:50 ID:tp1d6zd5
>>251
チャンピオンと言えば舞乙だ。

マシロくん召喚のやつ、個人的にはエアルの国の配置にツッコミたいんだが。
263名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 15:24:43 ID:xyKqbqI+
オヤマ! 菊之助…



いや、忘れてくれ……
264名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 15:28:41 ID:QaI3Rx98
逆にルイズが肉体言語で戦うようになる展開が見たい

オーフェン無謀編のサモアペット教授を召喚、ルイズが目覚めるとか
265名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 15:38:06 ID:6BUdfXTB
サモア……アイツか!ww
「 ま じ ゅ つ う ぅ ぅ ぅ !」の雄たけびと共にでギーシュのゴーレムを粉砕し、
「 ま じ ゅ つ う ぅ ぅ ぅ !」の雄たけびと共にで壊れた教室をほうきとちりとりで片付けるのか
266名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 15:43:39 ID:zxWXopzf
右村、四泉寺、夜差の三人を召喚
267名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 15:45:52 ID:uRAohNv0
吸血聖女キリエがないとは・・・





マイナーでスマン!
268名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 15:54:51 ID:QaI3Rx98
イメージは
「れ・ん・き・んんんんんんん!!」猛烈にパンチ
ワルキューレ破壊

みたいな?
269名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 15:55:39 ID:slRo6WMW
在 日 参 政 権 付 与 反 対 デ モ に 来 れ る 者 援 軍 求 む !
http://sports11.2ch.net/test/read.cgi/offmatrix/1196265306/

外国人参政権がなぜいけないか
http://f47.aaa.livedoor.jp/~practice/001.html
【政治】 「放置すると、日韓関係にヒビ」 外国人参政権付与、成立への流れ加速も…公明に各党同調、自民反対派は沈黙、首相次第か★15
http://news22.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1196307239/

この法案が成立したオランダじゃ、永住イスラム人がどんどん増え
そのせいで今もどんどん文化と国そのものがぶち壊されちまってる。
そして、オランダ以外のこの法案が成立した国々でも全く同じことが起こってる。

永住外国人にはかなりありがたい法律だけど、国民にとっちゃ百害あって一利なし。

そ ん な 悪 法 が 日 本 で も 成 立 し よ う と し て る ん だ。

こんな大事になのに、マスコミは沈黙を決め込んでいる。
だから 俺らの力で何がなんでも阻止しなきゃならない。
     ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
このコピペをみた奴はMixiや自分のブログにこのことについて記事を書いてほしい。
どんな簡単な記事でもいい。まとめサイトのアドレスを張るだけでもいい。
もしくは、このコピペをどっかに投下するのでもいい。
とにかくどんな方法でもいいから、できるだけ多くの人にこのことを伝えてほしい。


お願いだ。今回は冗談抜きで日本の未来が危ない。
270名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 16:19:10 ID:7uNEFvm8
こんなところ構わずなコピペはそれだけで不快感を生むってわかってるのか?
自分で自分の足引っ張ってりゃ世話ねーぜw
271名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 16:19:56 ID:I8MUbLxu
よし、とりあえずフルアヘッド!ココからキャプテン・バーツを呼んでみよう
272名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 16:20:44 ID:CSI1P314
スルーしろよ。その上で、何か気になった奴ぁ行くだろう。連中もその程度しか期待してねーだろうしな
273名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 16:39:22 ID:IW06dtGk
>>267
BMネクタールに比べれば…

あれ呼んだら一気に人類滅亡しそうだ
274名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 16:42:32 ID:5Zj31OEY
>>273
日光や火に弱い
冷凍にも弱いから何とかなるかも?

というか召喚を生き残れるかが微妙

召喚で日に当たっていきなり死亡
干からびた死体をスープにしたら美味かった

で終わるかも?

もし増えても
アルビオンは構造的に大丈夫だろうし…
275名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 16:48:55 ID:7uNEFvm8
あれは日光にあたっても行動不能になるだけで別に死ななかった気がするが
燃やせば割とあっさりだった気もするが、そもそも呼んだら速攻で食われる予感がする
一度増えたらもう手がつけられんから・・・
276名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 16:50:07 ID:5Zj31OEY
>>275
となると生き残るにはUSBMとけいや…
277名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 17:02:55 ID:5Zj31OEY
>>275
あいつらには知恵が無いから

ルイズを即効で食おうとする→コッパゲ先生やキュルケに燃やされて終了

契約した一匹だけはルイズに懐いて襲わないが
増えた他の個体は本能のままに襲い掛かるとか?

生き残らせるのが難しい…


無能王に呼ばせてガリアに食料革命を…
事故が起こって天井からBMが降ってきても「シンゴパパの微笑み」を浮かべる無能王…
278名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 17:56:16 ID:w3iTxkDl
ふと思ったが、創作物の登場人物ならちょび髭の伍長と愉快な仲間達とか筆髭な鉄の人とかもありなんだろうかw



「 急降下爆撃機 」 の ハンス・ウルリッヒ・ルデルがルイズに召喚されました






……いかん。素でレキシントンが撃沈されたり破壊されたゴーレムの山が出来上がりそうだ
279名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 18:01:54 ID:r5klUtzu
スツーカが無いとルーデル大佐は……まぁタルブに存在することになるが、弾薬補給出来ないとなぁ
火薬詰まった樽でも落としてどうにかしそうだけど
280名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 18:03:22 ID:oOlpqaM/
>>278
岩手の豪腕が召喚された話しもあったからおkじゃね?
281名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 18:06:44 ID:s+Ey3xJt
チャンピオンなら覚悟のススメ。短編では一回あったと思うけど
282名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 18:08:15 ID:HiqSE+3M
>>279
あえて閣下製作のA-10をタルブに置いておくとか
弾薬はハゲに複製させる?
283名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 18:10:32 ID:0diJ943q
>>278
誰だよと思ってググッた
誰っつーか何だこの化物
284名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 18:18:39 ID:dVqURsR2
もうこうなったら「不安の種+」に登場した

 お ち ょ な ん さ ん を 召 喚

これしかない!
285名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 18:25:56 ID:0diJ943q
>>284
思い出させやがって
お前なんかカバンに手を入れてしまえ
286名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 18:26:42 ID:+SdehPcQ
>>283
他にも北欧の超スナイパー、日本のリアル絢爛舞踏だとかの化物はいる
とりあえず以下

【存在自体が】戦場の伝説的英雄 9人目【危険】
http://hobby10.2ch.net/test/read.cgi/army/1193203937/
287名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 18:34:03 ID:qjTip91e
>>286
シモ・ヘイヘは狙撃銃込みで召還してコルっ禿に銃弾を量産させたらもうどうしようもないな。
288名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 18:35:07 ID:0v08O8Lp
シモ・ヘイへだっけ?<北欧の超スナイパー
逸話がもう創作としか思えんレベルだったw
289名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 18:41:46 ID:4ttnm7y7
よし 大佐で行ってみよう
暫くかかるかもしれないが
290名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 18:43:41 ID:ndrroPxd
>>333
やっぱ、仮面ライダーアギトがOPじゃ一番いいよな、歌詞が俺大好き
闇の中〜見つめてる〜 ♪
291名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 18:46:04 ID:ndrroPxd
誤爆+ageスマン
292名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 18:49:24 ID:QHKggY7Q
戦争系の”ヤバい”話。伝説のスナイパー「シモ・ヘイヘ」 通称、「白い死神」。
公式に記録されているだけで、狙撃で殺害した敵兵の数は505人。世界記録。
なにがヤバいってその記録はわずか100日程度の間に達成。
敵を撃つときは確実に殺すため必ず、頭を狙う。
ソ連とフィンランドで1939年から40年まで続いた冬戦争。
シモ・ヘイヘの使用していたライフルは敵から鹵獲した旧式のモシンナガンであり、狙撃には絶対必要と言われるスコープがついていなかった。
スコープをつけなかった理由はレンズによる光の反射で自らの位置を悟られるのを嫌ったからである。

以下にヘイヘの逸話というか、ヤバさがよくわかる文をいくつか置いておくね。

・「そんな奴いないだろ」と思った小隊が攻撃したら、1時間で全滅。
・32人のフィランド兵しかいないなら余裕だろうとソ連兵が4000人で突撃したら、壊滅状態に陥り撤退。やったのはもちろんヘイヘ。
・近距離なら大丈夫だろう思ったソ連兵が、接近戦で戦闘をしかけたらヘイヘがサブマシンガンで蜂の巣にした。
・ヘイヘ抹殺指令を受けたソ連兵はその晩、遺書を書いた。
293名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 18:49:33 ID:HiqSE+3M
>>289
mjk?!
wktkが止まらない
294名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 18:51:34 ID:CSI1P314
>>「そんな奴いないだろ」と思った小隊が攻撃したら、1時間で全滅。
俺がソ連兵でもそう思う
295名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 19:03:44 ID:1GJgkGVo
本当、大きな戦争は英雄を生むね
英雄と書いて化け物と読むけど
296名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 19:05:37 ID:Ntxq/Mg/
ルーデルも「そんな奴いないだろ」とプロパガンダだと思われてたからなw
297名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 19:05:59 ID:J2q72FrV
モシンナガンって確かボルトアクション(一発ごとリロードする)だよな。
……まさにモンスターだな
298真白なる使い魔 の人:2007/11/29(木) 19:12:35 ID:AcAPOkgF
>>262
すでにその辺のミスについては気付いているよ。
wikiの方の地図見ながら書いてたら大失敗さ ハハハ
299名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 19:17:57 ID:4ttnm7y7
ヘイヘは本物の悪夢だからw

白い死神(悪魔)
コラー(コーラ)川の悪夢
死神の丘
白い城壁

二つ名が山ほどあると言う時点でry
そういえばオリンピックのバイアスロンの選手でもあるな

こいつも大佐もカナダの変態も
どうやれば活躍できるのか
と聞かれて

「訓練だ」

で終わらせやがりますし
300名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 19:18:25 ID:0v08O8Lp
>ある狙撃訓練課程でいとも簡単そうに1分間に150mの距離から16発の射的に成功した

……ボルトアクションでよくも……本当に人間か?
301名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 19:22:18 ID:sC3AjxM1
>>292
なあ…スナイパーってサブマシンガンで200人殺せないとなれない職種だっけ・・・?
302名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 19:22:58 ID:0diJ943q
きっとサイヤ人なんだよ
……友達になりたい相手を拘束して全力全開砲撃かます白い悪魔ってガンダムだけじゃなくてここからも取ってる?
303名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 19:25:26 ID:v2Q7mE4o
ここで化物軍人繋がりでコブラ部隊を召喚
ルイズ:ザ・ボス
キュルケ:ザ・フューリー
タバサ:ジ・エンド
ギーシュ:ザ・ペイン

ソローはともかフィアー!!の人はどうしよう
304名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 19:39:43 ID:b+0x9pTZ
>>300
この感覚…ニュータイプか!
305名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 19:47:03 ID:sclChKMl
いつも思うけどこういうSSとかの方がタバサやワルドの扱いが上手いな
306名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 19:48:11 ID:n3cMgYno
>>298
おお!お久しぶりですね
時間がありましたら、続きをお書きになってくださいね〜
307名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 19:51:17 ID:b+0x9pTZ
>>305
原作のワルドの扱いの酷さは異常
308名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 19:57:59 ID:/tzSjvOL
ワルドはスクエアなのに弱いよな
309名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 20:01:11 ID:S+gA2faD
口周りの髭の形がスクエアだな
310名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 20:01:32 ID:ra5bkEa6
>>229
ラティアスと同じ速度の種族値(ようするに同速を出せる)を持つ兄のラティオスが
手を折りたたむとジェット機よりも速い(マッハ以上?、最初期のジェット機でも確か時速700Km超)ので
ルイズさえ乗せてなければラティアスに追いつけるものはそれこそ竜の羽衣ですら無理かと……

しかしラティアスは地味に微妙なポケモンだな……
特攻型だし特防の高さと多数の回復系能力で持久型にせざるを得ないんだろうが
そのためには技マシンが必要なんで技マシンがない素の状態だと……
確かに伝説系としての種族値600はそれだけで脅威なんだがな
311名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 20:07:12 ID:1wmAJV1x
ギトーとワルドってどっちが強いの?
312名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 20:08:51 ID:Ntxq/Mg/
ガトーさん
313名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 20:11:20 ID:PcsNPTnR
お前は帰ってくるな
314名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 20:12:50 ID:xyKqbqI+
>>312
いや、ヤザンだろ
315名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 20:15:07 ID:/1fLL16V
俺の目を盗みやがったなぁぁぁぁぁ!
316名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 20:15:14 ID:6WDUoNiT
ヤバい、おちょなんさんを思い出したら小ネタが一つ出来てしまった

……スランプ気味な長編の書き掛けがまだあるってのにorz
317名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 20:15:22 ID:b+0x9pTZ
>>309
誰が上手いこと言えと

ワルドはアレだよ、やろうと思えばガンダムXのビットモビルスーツばりの超連携戦闘ができるはずなんだよ?
戦略次第では数人のクロスキャラ程度なら勝てるんだよ?
エア・ニードル前衛、エア・ハンマー、ウインドブレイク後衛とかならかなり強いはずなんだよ?
318名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 20:16:28 ID:bmZklb8X
は ず なんだけどねw
319名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 20:17:48 ID:O+ZRQ9kc
>>316
――――来い。 
長編があるからと言って、書けてしまったものはしかたないし、それを消したからと言って長編が黄泉還るわけでもない。
と言う事で支援。
320名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 20:19:05 ID:0v08O8Lp
>>317
ブリューナクの槍で狙撃すればいいのにノコノコ出てってやられるシルバー兄さんみたいなもんだ。あの性格は死んでも治らん。
キースシリーズで一番弱いんじゃないか疑惑まであったなあ……
321名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 20:22:23 ID:6WDUoNiT
>>319
や、今はまだ仕事中だから落とすのは堪忍やw
期を見て落とせたら落としておくよ
322名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 20:22:59 ID:b+0x9pTZ
>>320
性格の欠陥は仕方ないからなぁ
兄さんは純粋戦闘培養だからともかく、ワルドは下級から叩き上げの隊長じゃなかったか?
今すぐ隊長やめろと

ところでキース・ロイヤルの方が先に思い浮かんだんだが
323名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 20:29:57 ID:HiqSE+3M
しかしこのスレはミリオタ多いな
と零戦目当てで見始めた俺が言ってみる
324名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 20:31:25 ID:zhPUXsez
遅くなったが、たっちゃんの人乙っす
アポロつよいけど神経系無効にはないからなぁ
どうするか見ものっす

ゲームじゃそうポンポンきかなかったきがするけどww
325名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 20:37:57 ID:R42LAZ3/
>>323
なんとなく、ヴェトナム戦争のF-4を召喚するSSを何と無く構想してる。
326名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 20:38:31 ID:v2Q7mE4o
銀英伝で小ネタをやってみようかと思ったけど
駄洒落が浮かばん
327名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 20:39:21 ID:0diJ943q
単身ハルケギニア壊滅させられる位に強いのに弱点突かれると致命的なのも楽しそうだな
今丁度アバタールチューナーやってて思った。
328ゼロの使い魔の種:2007/11/29(木) 20:40:45 ID:TO3Qigw3
>>284

春の使い魔召喚の儀。
ゼロと呼ばれる少女が高らかに呪文を唱え、杖を振り下ろす。
そして、爆発。
煙が晴れると、そこにはなにもいなかった。
学友たちの嘲笑を受けながら再度呪文を唱え、杖を下ろし。
そして爆発。失敗。
さらなる揶揄に耐えながら、十数回目の爆発を起こし、少女の目に涙が浮かぶころ、
とうとう煙の向こうに何者かの影が見えた。
幼児ほどの背丈をしたソレは、少女に近づくと抱っこを要求するように手を伸ばすと、
「ね……キスして。ねっ」
ガチガチと歯を鳴らしながら懇願する。
「キスして。ルイズ、契約して」
成人の三倍はあろうかという口が、ガチガチと。
「ぜったいかじらないから」
ガチガチ。ガチガチ。
「キスして。かじらないからぜったい。ねっ、契約して」
ガチガチ。ガチガチ。

このことについて友達と話したことはないし、これからも話すつもりはない。
                    「香水の」モンモランシー


ごめんね。おちょなんさんじゃなくてごめんね。
不安の種知らない人は下記url参照。ところでこいつの名前はあんの?
ttp://blog45.fc2.com/p/puyuyu2world/file/vi6852259098.jpg
ttp://blog45.fc2.com/p/puyuyu2world/file/vi6852263108.jpg
329名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 20:41:45 ID:5Zj31OEY
>>327
じゃあGロボの呉先生

フーケゴーレムの踏みつけも扇子で支えます。
だけど「ああっ何で私はこんな簡単な事を!」と大ポカをやらかして
活躍を相殺してくれます。
330名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 20:46:53 ID:AcAPOkgF
>>329
ルイズとワルドの結婚式において
「ワザワザ大貴族であるヴァリエール家の令嬢たるルイズとの結婚であれば、親の承認が必須のハズ。
ああっ何で私はこんな簡単な事を!」

というのが浮かんだ
331名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 20:52:15 ID:ndrroPxd
9時から投下いきます!
さらさらと書いてたらなんかやたら長くなったんで、支援多めにお願いします
332名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 20:58:52 ID:WM/GX7TF
支援
333名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 21:00:39 ID:ndrroPxd
―――しかし、夜はまだ終わらない。

「これで、終わり」
残った少ない精神力を使い、タバサが上空でフライを使う。30メイルの高さにもかかわらず、音もなく彼女は着地。
「いや……それは早いかも知れねぇな」
後方宙返りを決めて、彼も地面に遅れて着地する。しかし、彼は気を張り続けたままだ。タバサも、その言葉で周囲を警戒する。
なぜという疑念を挟む前に、周囲を見回し、チェックする。その上で、タバサが彼に問う。
「どうして?」
彼は、デルフリンガーをつかんだまま、ルイズの側に走った。
「谷でつぶした連中は、『女と仮面の男』と言ってやがった。女はフーケとして……仮面の男ってのがまだ残ってる」
よくやった、うまくいったぞと、魔法を撃った後へたり込んでいたルイズの腕をとり、強引に立たせる。
「やれば、いつも通りできるじゃねぇか。 ……それでいいんだよ」
ルイズの頭をポンポンと軽く手のひらで彼はたたいた。顔は、相変わらずの笑顔。さっきので気を使い果たし、ルイズはまだ呆けたままだ。
彼の手は、暖かった。ワルドと変わらず大きな手。
ワルドの笑顔は、自分の過ちも含めすべてを受け止めてくれる優しい父親の笑顔だった。
彼の笑顔は、厳しくも自分の娘がやった行動を素直にほめてくれる不器用ない父親の笑顔だ。
ふと、ルイズは自分の父を思い出した。そういえば、自分の父はどちらだったろう、と。
杖を握ったまま、タバサもこちらにかけてくる。
疲れて開放的になっているのか、それとも心を開き始めているのか――彼はタバサの背中を軽くはたいた。
「周りは見とく。 さっさとシルフィードに乗って船着き場に行くぞ」

彼にとっての仲間とは、友とは――どんな時も自分に合わせてくれる相手ではない。どんな時でも自分に優しくしてくれるものではない。
自分を見据え、道を進む者。そして、その時共に歩む者だ。道を違えればぶつかることも覚悟する。
それでも、笑い合い心を許せるもの。それが、仲間。

タバサが口笛を吹く。それが、シルフィードを呼ぶための合図らしい。数分で着くことを告げると、タバサはまた警戒を始める。
ルイズが空をぼんやりと見上げると、夜だというのに1羽の鳥の影が月を横切った。

あの鳥は、いったいどこに飛んでいくのだろう?

「ほら、ぼんやりするな」
気軽な調子で彼が背中をたたいた。シルフィードか来たのかと思えば―――
「―――お客さんだぜ?」
ゴーレムの進行でも倒壊を免れた民家のひとつ。その屋根の上に、誰かがいる。
黒いローブで全身をくるんでいる。ローブが、夜風ではためいた。つけている白い仮面は、月光を受け白さを強調している。
表情がない仮面は、その人間の内面がひどく無機質であるという印象を与えていた。
「所詮は盗賊。 やはり貴族と違って役には立たないか」
感情の見えない平坦な声が降る。タバサがサイド口笛を吹いた。おそらくは、シルフィードに何か指示を出したのだろう。
内容は、ルイズの推測でしかないが、今は来るな――そういったものではないのだろうか。
なぜなら、その場には、また肌を刺すような緊迫感が漂いだしていたから。
「人を差し向けて、裏でこそこそしていたやつの台詞じゃねぇな」
中段にデルフリンガーを構える。口では、まるで軽薄な台詞を繰り出していたが、実際は違う。
334名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 21:00:49 ID:xyKqbqI+
私怨
335名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 21:01:45 ID:oOlpqaM/
タイトル入れてないよ 誌円
336力を求める使い魔:2007/11/29(木) 21:01:47 ID:ndrroPxd
額に、軽い汗が浮かんでいる。
先ほどの彼の言葉をルイズは、思い出した。もう彼には、精神力――彼のいうところの魔力――が残っていないのだろう。
タバサも同様だ。さも魔法が使える、というように杖を構えているが、もうコモン・マジック数発がせいぜいの精神力しかないはずだ。
しかし、二人とも弱みは見せない。見せた瞬間、相手はそれを悟り襲いかかってくる。
こっちが逃げ出すのを、みすみす見逃してくれるほど甘い相手でもなさそうだ。

――自分が、やるしかない。

ルイズは、そう思った。2人が戦えないとしたら、自分がやらねばどうするというのだ。
ワルドは、町の端の船着き場にいる。急行しても……いやそれ以前にこの騒動を聞きつけているかどうか。
杖をギュッと握りしめる。握力が、十分に入らない。相変わらず震える腕のせいだ。それでも、決して放したりなんかしない。
「まがい物風情が……真の貴族の力をみせてやろう」
音もなく、中に仮面の男が浮く。ゆるゆると右手の杖を持ち上げる。そして一気に左上から右下に振り切った。
烈風が、瓦礫の山を駆け抜ける。地面の本当にすれすれから舞いあげられた風が、廃材を巻き上げ、土石流のように流れこむ。
今度はタバサが彼女を抱くと、残った僅かな精神力を使い、空へと逃げる。ルイズは、彼がどこへ行ったのかを目で追った。
空の月が陰る。――いた。彼は、木材や石畳に使われていた石を跳躍し、逆にメイジに接近している。
長期戦は、不利。それはルイズの目にもわかっていた。大規模な魔法を使った隙を突いたカウンター。
その一撃で決める。その大嵐を抜け、空を彼が駆け昇った。大上段で剣を振りかぶり、重力を最大限に生かし、彼が進む。
彼女は、彼を援護しようと杖を振る。目を閉じ、彼女はこうつぶやいた。
「あれは、人間じゃない、ゴーレムよ。ゴーレム。そう思えば―――」
「―――駄目」
冷水を浴びせかけるような、タバさの冷たい声。いつもの声と同じ響きなのに、なぜか冷たいと感じていた。
「結局、誤魔化してる。 ……後悔する」
「じゃあ、どうすればいいのよ!?」
彼女の焦りとは逆に、場は進行していく。
仮面の男は、ルイズのその様子を見る。……目の奥が笑っているのは気のせいか。
しかしすぐに彼に視線を戻す。仮面の男は小さくつぶやき、杖を突きだした。数本まとめてエア・ニードルが放たれた。
先ほどの竜巻といい、今の最小の詠唱によるまとめた魔法と言い、風の魔法は戦闘向けに研究されているものが多いとはいえ相当の兵(ツワモノ)だ。
エア・ニードルが、彼の足を、腕を、腹をえぐる。だが、彼の勢いは止まらない。剣をぶらすことなく、男に突っ込んでいく。
「首を取らせてもらうぞ!!」
あと、1メイル。一気に彼は剣を振り下ろし―――風の壁とぶつかった。顎が浮き、まっすぐ伸ばしていた腕が関節に従い曲がる。
彼女には、わかる。男が彼を引きつけ放ったのは、エア・ハンマー。彼が落ちる勢いを逆に利用した反撃。
強引に、彼が、振りぬく。しかし、それにはもう勢いはなく、さらに相手が魔法を使う隙を与えていた。男の目が笑っている。
「あぶない――!」
彼女の叫び。ルイズは、タバサの側で見ているしかない。今の自分にできることなんて……

――ある。

杖を一度振るだけだ。何故か、仮面の男はこちらに気を払っていない。まるで、絶対に脅威になりえない、と今のルイズの状態を知っているかのように。
杖を振れば、終わる。

距離をとって相手を確実に仕留めるため、彼を吹き飛ばさんと2発目のエア・ハンマーが放たれた。
彼は、ただ剣を振り下ろすしかない。あきらめ、とは少し違う。それしか方法がないのだ。その唯一の方法が駄目だとわかっていても。
風に触れたデルフリンガーは、風に干渉することもできず、彼は吹っ飛ば……ない。
「何ッ!?」
彼と、仮面の男の声が二重に重なる。デルフリンガーが、僅かではあるが風を取り込んだのだ。
そのほんの少しなえた風。それで、十分。裂帛の気合で放たれた剣が、風を突き破る。男が、焦って更にエア・ニードルを放とうとする。
「させない!」
気付けば、ルイズは杖を振っていた。爆発が、男の右腕を弾き飛ばす。杖ごと腕を失った男はなす術なく彼に切り倒された。
その男の姿が、切り飛ばされた胴から空気に溶けていく。おそらく、風のスクウェア・スペルの『遍在』だったのだろう。
337名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 21:02:44 ID:0cVJNW14
支援ぐ
338力を求める使い魔:2007/11/29(木) 21:02:49 ID:ndrroPxd
殺さずに、済んだ。

そのことに、内心救いを彼女は感じていた。人じゃなかった。殺しことにはならない。溜息をつき、またへたり込んでしまった。
でも、それは事後承諾的な安堵だ。彼女は、確かに『最悪殺してしまうこと』を覚悟して杖を振った。
汗が、どっとあふれてくる。手が、ひどく湿っている。
タバサが、また口笛を吹く。さっきの口笛で、周辺にいたのか、すぐにシルフィードはやってきた。
ぼんやりと彼のほうを眺め、彼女は彼に声をかけた。
「いつまでそうやってるの、早く行くわよ!」
疲れは見えていたが、食堂で食事をしていた時より、張りがある声だった。彼女が手を振るのを彼はちらりと見て―――

ドサリと倒れた。



――――アルビオン王国 医務室

「本当にもう……なんで、いつも無茶するの? 少しは体を気遣いなさいよ」
「……うっせぇ」
あの後、彼らは全速でアルビオンに向かった。その途中で、ワルドとも合流し……船を使わずアルビオンへ。
タバサ曰く、条件が良かったらしい。アルビオンが最接近する日でしかもシルフィードを郊外で休ませていたからこそ、ということだった。
彼は、出血多量の上、手足腹に大なり小なり穴が開いたのだ。ただで済む訳が当然なく……そのまま倒れて気絶。
しかし流石は風竜。うまく海賊船や貴族派の船に出会うことなく、あっという間のスピードで駆け抜けた。
その時速450リーグに迫るスピードゆえ、彼は助かった。とろとろ船で行っては死んでいただろう。
アルビオンに、水の秘薬がため込まれていたことも大きいのは、言うまでもない。
「やらなきゃならないことがあるんでしょ……もっと体を大事にしないと」
「分かってるよ、だからこうやって命張ってんじゃねぇか。むしろお前の用事はどうした。済んだのかよ」
「………うん」

沈んだ調子で、彼女は答えた。彼は、丸2日寝込んでいた。その間に、用事は済ませてある。けれど、その時を思い返すだけで憂鬱になる。



「死ぬことを……討ち死になさるのを、やめることはできないのでしょうか?」

「それは、できない」
手紙の全てを彼女に渡し、彼女がアンリエッタの個人的な友人であることを知ったウェールズは、手紙について軽く話した。
ルイズは、その言葉が酷く悲しいものに感じて、その言葉を発した。
それに対し、ウェールズは短くそう答えた。
「何故、ですか?」
本来なら、口答えすら許されない身分差。なのに、彼女は問うていた。
339名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 21:03:23 ID:HiqSE+3M
支援
340力を求める使い魔:2007/11/29(木) 21:04:03 ID:ndrroPxd
彼女は、アンリエッタの代わりに、布団をかぶって身代わりを務めたこともあるのだ。
アンリエッタは気づいてないと思っていたかもしれないが、彼女はウェールズとアンリエッタの関係を知っていた。
ウェールズは、勝ち目が絶対にないとわかっていながら死のうとしている。それが、いったい何故なのか、彼女にはわからなかった。
少し前なら、これも王族として貴族の義務、ということで納得したかもしれない。事実、ウェールズもそう言っていた。
けれど、今の彼女にはそれだけで納得できなくなっていた。『死』というものの、本当の意味、形。それが漠然とわかってしまった。

―――本当に、それでいいのか?

彼女は、ウェールズと……自分の心に問う。何故だ? 何故、タバサも彼も、ウェールズも……自分と他者の命をそんなふうに賭けられる?
死というものの恐怖は、人の命を奪う恐怖は、ないのだろうか?
渡された手紙を、握りしめる。手紙が、クシャリと音を立てて潰れたことに彼女は気付いていなかった。
「殿下、亡命なされませ! トリステインに亡命なされませ!」
彼女は、叫んだ。その言葉を、肯定してほしい。強く、ルイズはそれを願った。彼とアンリエッタを思っての台詞でもあったが、同時に、今の自分を――ワルドと結婚をする自分――を肯定させたかったのかもしれない。
もし、ウェールズが、『それ』を捨ててアンリエッタを選ぶのであれば、自分も『それ』を捨てることは間違いでない。
そう思いたかった。しかし、『それ』を決してウェールズは捨てなかった。目を閉じ、首を横に振った。
「私が行けば、トリステインはどうなる?」
「それは……」
――言うまでもない。それを口実にたちまちアルビオンは攻めてくるだろう。ゲルマニアとの同盟も白紙に戻り、一国で戦うことになる。
元々、諸侯列強が集ってできたゲルマニアは、アルビオンに味方することだって考えられる。何にしろ、戦火がトリステインを覆うのは間違いない。
「アンのことを想えば、王族としての義務を考えれば、こそだよ」
「けれど……」
なおも食い下がるルイズ。胸が痛い。動悸がする。まただ。彼の話を聞いた時と同じ、苦しみだ。
自分と、彼の差を知った時の胸の痛みだ。何故、自分の心をこれほど苛むのだろう。
何故、何故、何故、何故。
湧き上がり続ける疑問。解けることのない氷のようなしこり。そんな彼女の心中を見通しているのか、ウェールズは静かに言う。
「それが、私の生き方だからだ。『道』だからだ。 これを裏切るのであれば、私は自ら命を絶つだろう。 
だから、この『道』の果て、死する運命があったとしても、かまわない。 アンには、幸せであってほしいと思うこそ」
ルイズの頭を強く揺さぶった。彼と、まったく同じことをウェールズが言ったのだ。彼とウェールズは話したことなどないはずだ。
なのに、同一の言葉を発する意味。それはつまり。
彼は力を求めて言った。ウェールズは信じる女性と王族たる者として言った。交わっていない2つの道を進む者。
なのに、その覚悟は同じ。
341名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 21:04:19 ID:U5TsarFJ
ジャーンジャーンジャーン  げぇっ支援っ!!
342名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 21:04:28 ID:oOlpqaM/
思念
343名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 21:04:28 ID:S+gA2faD
しえーん
344力を求める使い魔:2007/11/29(木) 21:05:38 ID:ndrroPxd

『それ』の名は『信念』。

曲がらず折れず朽ちず消えず人とあるもの。

自分は……『信念』を捨てようとしている?
首をもたげ、蘇る悪夢。自分が爆破した人の死体。その瞬間の映像を、ワルドは塗りつぶしてくれた。もう傷つくことはないと。
それは、間違ってない……と信じたい。
けれど、彼とタバサは、それを洗い流してくれた。きっかけを教えてくれた。痛いだろうが、進まないと後悔すると。
ギチギチと締め付ける『それ』の……『信念』の正体。

―――力を、求めよ。
―――『相手が自分を認めてくれる』のではなく、『自分が、相手に認めさせる』のだ。
―――力を求め、渇望し、『壁』を破壊しろ。

いつか聞いた声が、体内に反響する。

結局、ウェールズは、それ以上答えなかった。ルイズは……ただ部屋を出ていくしかなかった。
ルイズと交代に、ワルドが部屋に入って行った。おそらく、三日後の結婚式のお願いをしているのだろう。


…………。
彼女は、顔を彼のベッドに寄りかかって伏せた。
あの日から、2日―――つまり結婚式は明日。結婚式は、本当に挙げていいのだろうか?
答えはでないまま、夜は更けていく。しかし、期限は決まっている。
あと、一晩。彼女は、答えを出さねばならない。
行くところもなく、廊下を歩く彼女の目に入る、アルビオン王家の宝物の数々。ふと、彼女はポケットの中から水のルビーをはめた。
それを持って、何となく祈ってみる。始祖でもいい。何かにすがりたかったのかもしれない。
ぐるぐるぐるぐると、いつの間にか同じところを回っていた。出口のない迷路のような……
いや、違う。出口のない迷路は、彼女の心の中だけだ。
廊下の端から、彼が出てきた。側にいた使用人風な男に何か言っている。そのあと、つかつかと速足でどこかに歩いて行く。
松葉杖なしではきついはずなのに、そんな様子まるで見せない。いつでも、迷わず全力全開。その生き方が、うらやましく思えた。
ふと、その使用人風の男に何を話していたのか聞いてみた。
「ああ、奥にある禍の具足を見て、どうして天魔の具足があるんだとかなんとか……」
「天魔の具足?」
「そう言われましても、私どもにはわかりかねます。ご覧になりますか?」
ブリミルが、手を焼いた禍の防具。それを彼が知っている、ということに彼女は驚いた。
『召喚の手甲』……もといCOMPと同じで彼の世界のものかもしれない。そうなると、妙に興味がわき、彼女は使用人の言葉にうなずいた。
なにか、気分を少しでも変えられればいいか。そんな軽い気持ちだった。使用人風の男のあとに付き、暗い階段と、錠の付いた扉をくぐる。
赤い、成人男性用の具足がそこにはおかれていた。別に……なにかおかしなところもない。いざ見てみると、どこにでもありそうな代物に彼女には見える。
「これがそう?」
使用人風の男は、肯定。それを何気なくルイズは手を伸ばした。別に、触る必要はなかった。
なのに、手を伸ばしてしまったことは――結局。彼女が具足に惹かれていたのかもしれない。

345名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 21:06:38 ID:0diJ943q
支援
346力を求める使い魔:2007/11/29(木) 21:06:47 ID:ndrroPxd
それを手にとった彼女は―――

――― 力 を 、 求 め よ ! !

思わず手を引っ込める。
「何今の!? インテリジェンスアイテムだったの!?」
突然響いた怒号のような声に、彼女は思わず後ろに一歩引いた。使用人風の男は、彼女の様子を怪訝な顔で見ていた。
「そんなはずはないでしょう。何も聞こえませんでしたし……禍の具足がしゃべったなど、聞いた事も御座いません」
「嘘、でも、今絶対……」

――どこかで聞いた、抑揚の欠けた男の声がした。

しかし、ただ使用人風の男は顔をゆがませるばかり。
どこでその声を聞いたのか、ルイズの心に引っかかる。引っかかるが……思い出せない。
結局、その後、彼女は部屋に引き揚げた。
そして彼女の出した答えは―――


―――アルビオン王国城内 式場の間

戦闘がもうすぐ始まるというのに、会場内は明るい声で満ち溢れていた。最期に残った貴族たちは、新たな未来につながる者達を盛大に祝福する。
ここまで残った人々に、今更裏表や二心などあるはずがない。文字通り、心からの祝福だった。
タバサは、端のほうではしばみ草のサラダをかじっている。あまり、結婚式には興味がないようだ。
彼は、この場にすらいない。
ニヤニヤと笑いながら『結果が分かってる劇なんぞみたくもない』と、妙に意味深な言葉を残し、城の屋根に登っていった。
重々しい音とともに、正面の扉が開かれる。ウェディングドレスに身を包んだルイズと、頭には新婦の冠を被せ、純白のマントを取り付けたワルド。
厳かな雰囲気のまま、2人は進んでいく。歓声がひときわ大きくなり、笑顔が二人の道には並んでいた。
ゆっくりと、進んでいく。始祖ブリミルの像の下にいるウェールズは嬉しそうに笑っている。ウェールズまでの道のりを、ルイズは噛み締めるように歩く。
二人が像の前に立つと、ウェールズは聖書を開き、誓約の言葉を二人に促す。ウェールズの声が一区切りつくと、新郎のワルドは誓いの言葉を答えた。
続いて、ウェールズはルイズのほうを向く。言葉を待っているのだろう。沈黙したまま、うつむいたルイズを見ている。
その様子を見て、ワルドが言った。
「緊張しているのかい? 仕方がない。初めてのときはどんなことでも緊張するものだからね」
「まあ、これは儀礼に過ぎぬが、儀礼にはそれをするだけの意味がある。では繰り返そう。
汝は始祖ブリミルの名において、このものを敬い、愛し、そして夫と……」

「できません」

ルイズが、会場に響く声で言った。顔をあげる。その瞳には、迷いも戸惑いもない。
ざわめきが会場に巻き起こる。どうしていいやらわからず、混乱し停滞する会場に、ルイズの言葉が広がっていく。
「いまは、できません」
「……何故だい、僕の……ルイズ」
347名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 21:07:41 ID:oOlpqaM/
どっこいしょ。
348名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 21:07:52 ID:0diJ943q
支援
349力を求める使い魔:2007/11/29(木) 21:08:06 ID:ndrroPxd
絞り出すようなワルドの声に、まっすぐ彼女は答えた。
「私は、まだ自分の信じる『道』の途中にいます。 きっと、今ここで投げ出せば後悔する。
 私は、誰にも認められていない『ゼロのルイズ』のままです。」
昨日の具足の声の持ち主を、記憶から洗いながら、彼女は、この声と、グリフォンに乗った時ワルドの言葉に対して抱いた違和感がつながるのを感じていた。
そして、ついに思い当たったのだ。思い出したのだ。アンリエッタが来た前日見た夢を………
夢が記憶の中ではじける中、彼女は夢から覚めるように気付いた。

―――自分の願いを。

そしてそれが叶わなかった頃の、気持ちを。
「私は、自分の生き方に後悔したくない。 それを、彼と、同じ学院の仲間と、ウェールズ様から学びました。
 子爵様の気持ちは嬉しいと思います。傷ついた私を受け止めてくれた時の想いは、忘れません。
けれど、傷ついてでも私は叶えたいものがあります!」
朝焼けの中、鳥が羽ばたいていくのが、ワルドの後ろの窓から見えた。
ワルドの唇が、わなわなと震えた。彼から信じられない出来事だろう。
「……ルイズ、緊張しているのだろ? そうでなければありえない」
はっきりと首を横に振るルイズ。
しばらく、彼は空を仰いでいた。身じろぎもしない。が―――
「……どうやら目的の一つは諦めなければならないようだ」
さっきまでと違う、表情のない顔。ずっど、彼の前では笑顔だったワルドが見せた、別の表情。
言葉の意味を把握できず、眉をあげるルイズに、平坦な声でワルドが言った。
「仕方ない。この旅における僕の目的は三つあった。その二つが達成できただけでも、よしとしなければな」
そういうと、ワルドは杖を抜き―――

状況を見守っていたウェールズ皇子の胸に魔法を打ち込んだ聖書を持っており、予測もしてなかった彼は、それを見ているしかなかった。
心臓の上に、丸い穴があき……服に血が見る見るうちに広がっていく。
そのことに何の感情も抱いていないのか、声色を何も変えずワルドが言葉を続ける。
「まず一つはみを手に入れることだ。二つ目の目的は、ルイズ、きみのポケットに入っている、アンリエッタの手紙だ。
 そして三つ目は、そこに転がるウェールズの命だ」
「まさか……あなた……」
騒然となる会場。そこにいた者たちが一斉に杖を抜こうとする。しかし、それよりも早く、人を圧殺する風の衝撃が吹き荒れた。
会場の四隅から出てくる4人のワルド。彼らは一斉に全身を覆う黒いローブをまとい、白い仮面をつけた。
淡々と、会場の中心にいたワルドは言った。
「その通り。僕は、『レコン・キスタ』だ。この国をいただこう」
ワルドが杖を振る。エア・ハンマーが起こり、ウェールズとルイズを吹き飛ばした。
「ウェールズ様!」
重症の彼が地面にたたきつけられぬよう、慌てて空中で手を伸ばす。しかし届かない。今の彼も、彼女も受け身を取れず、床を転がる。
「いや……まさか、こんな最期なんて、ね………」
ウェールズが口を開く。その口からは、今にも窒息するのではないのかと思うほど血がわき出続けている。
350名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 21:08:54 ID:S+gA2faD
FOX支援
351名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 21:09:07 ID:O+ZRQ9kc
くりからの剣はいずこ 支援
352力を求める使い魔:2007/11/29(木) 21:09:19 ID:ndrroPxd
「しゃべってはいけません!」
ルイズはどうにかしようとした。でも、どうにもならない。水の魔法は使えない。応急処置一つできない。
「これ、を、持って……いって、くれないか……」
ウェールズが、指から風のルビーを外し、ルイズの胸に押しつけた。おそらく、アンリエッタに対する形見のつもりだろう。
「何を言っているんですか! 勇敢な死に様を見せつけてやると言っていたではありませんか!」
阿鼻叫喚の中、足音を響かせワルドがゆっくりと迫る。その態度は、余裕の表れなのか。
「そうしたかったが……なるほど、なかなかうまくはいかないようだ。けど……」
「けどなんです!?」
押しつけられたウェールズの腕をとり、ルイズは泣いていた。――ウェールズには、自分の信じた道を突き通してほしかった。
なのに、彼の最後の矜持は、こんな形で幕を閉じようとしている。
「―――なにも後悔していない。 これで、良かったとアンに伝えてくれ」
最期の言葉は、血で途切れることはなかった。まっすぐとどこかを見つめ……ウェールズの遺体へと変わった。
その姿は、誇り高いままだ。
カツカツと足音を立て、ワルドがルイズの後ろに立った。動かないルイズの後ろ姿に冷徹に杖を振り上げた。
「さようなら、僕のルイズ」
もう、以前の温もりはない。ルイズに向けられた優しさはすべて仮面でしかなかった。ただ、冷酷に殺意を込めた一撃。
放心しているのか、ルイズに動きはない。そのままワルドは杖を―――

―――振り下ろせない。

「ええ、さようなら、ワルド」
うずくまっていた、ルイズが振り向き様に魔法を放った。一片の躊躇もなかった。ワルドそのものを爆破する魔法が放たれる。

魔法が、以前と違った。
爆発の、収束率と、熱量が違う。彼女の、集中力と熱意が違う。
ただ、無軌道に爆発するだけだったそれとは、まったく違う。
光が中心に集まり、青い球体を作った。それが、周囲に光を引き延ばす。球の中で、紫の蛍火が、踊りまわる。
今まで、彼女が打っていた爆発は、解放する弁がなく結果たまった精神力が爆発という形で放散していただけだ。
彼女は、その一部を強引にこじ開けた。 一般のメイジも、感情の爆発が、クラスの上昇につながることがある。
もちろん、それは修練の上に成り立つものだ。
彼女の決意と彼と会ってからの戦いが生み出した、新しい形の失敗魔法。
『爆発』ではなく、『爆砕』。それは……メギドに酷似していた。
視界を奪いつくす光の中、爆音ではなく轟音を響かせ光の柱が空に立ち昇る!
「――――!」
予想外の一撃に、ワルドは爆砕をうけ、粉となった。しかし、遍在だったのか、それは風に溶けていく。
ウェールズから受け取った指輪とアンリエッタから受け取った指輪を指にはめ、杖を振り上げる。
―――闇の中、見つめてる。
ワルドの見せた光は、まやかしだった。また、彼女は真っ暗やみの中だ。
でも、迷わない。だって……迷う必要などないと教えてくれた人たちがいるから。道を同じくしている間は、彼らと歩もう。
別れる時が来たら、辛くても別れよう。それでも、決めたことを悔やむことだけはやめよう。
――手を伸ばし、つかみとってみよう、自分が求めるものを
彼らほどの固い決意かは分からない。それでも、自分が手に入れた『それ』だけは……『信念』だけは疑わない。
だって、それは自分自身だから。肯定すべき根幹だから。

――新しい誇りには、新しい痛みを伴うだろう

誰もが、あきらめそうな何かに、立ち上がる。平気な顔して、夢だと笑ってもそれでもかまわない。
353力を求める使い魔:2007/11/29(木) 21:10:26 ID:ndrroPxd

力が――欲しい!

タバサが、自分の横に舞い降りる。先ほどの風の衝撃をよけ、闘っていたようだ。
見れば、王党派の貴族はほとんど残っていなかった。4人の仮面をつけたワルドだけが、その中で立っていた。
「そこまでしてほしい?」
タバサの冷たい声。感情が、なさすぎた。逆に、無理に感情押し込めたような声だった。
「何を……かな?」
一人のワルドが答える。
「人を殺してまで…………国が欲しい?」
今のルイズには、彼女の『力の渇望』がその言葉の裏あることに気付いた。声は無理に押し殺せても、心に鎧はまとえない。
瞳は、激情が渦巻いていた。こんなタバサは、始めてみる。この少女が、こんなに怒りに震えることがあるのか。
杖を回す。氷柱が、蛇のように鎌首を持ち上げ、ワルドを突き刺そうと走る。しかし、ワルドは、それをフライで飛んでよけると、蛇の脇を空気の鎚で打つ。
その隙に他の2人がウィンド・ブレイクを唱える。それを避けるため、タバサが横に移動。しかし、そこにはライトニング・クラウドが―――!
響く轟音、着弾前にライトニング・クラウドをルイズの爆砕が撃ち落とした。
「協力しない。 私も、どうしても許せないのは同じよ。『仲間』でしょ?」
タバサは……小さく『仲間』とつぶやくと、大きく頷いた。こうして、お互いの瞳を見つめて話すのは、初めてかもしれない。
2人が並び立つ。睨下には、討つべき敵がいた。2人が、動く。

――アルビオン城で起こる2つの戦い。



――その片方の幕が開いた。
354名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 21:10:47 ID:XpCCJuJp
ちょ、アギト支援
355名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 21:12:39 ID:O+ZRQ9kc
ひあうぃごー、かうんぜろ 乙でしたー。
356力を求める使い魔:2007/11/29(木) 21:13:34 ID:ndrroPxd
多大な支援、ありがとうございました!
やっと……やっとやっとやっとルイズ覚醒!
2話から少しずつ性格にテコ入れして……長かった。
これで、次の次からまたカオスヒーローサイドに戻ります。では、また!
357名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 21:15:02 ID:XpCCJuJp
乙でしたー
やっぱルイズの爆発はメギド系だよなぁ
358ゼロの夢幻竜:2007/11/29(木) 21:15:07 ID:9G3DCgXp
あときっかり三十分後に投下しても宜しいでしょうか?
359名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 21:15:48 ID:0diJ943q
GJ!
仮面ライダー好きか?
俺は好きだ
平成ではさっぱり見ない戦闘員とか大好きだ!
360力を求める使い魔:2007/11/29(木) 21:16:32 ID:ndrroPxd
>>358
よかですよー
361名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 21:25:23 ID:5leODxra
ゼロの夢幻竜を見て飴と鞭でいたいけな少女を調教するルイズに吹いた
362名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 21:39:50 ID:Vp1ALezG
>>358
コンディション・レッド発令! 支援用意!!
363名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 21:45:58 ID:0SpMzcjz
>>301
それはただの芋虫や。(スナイパーの一般的ないめーじ)
364ゼロの夢幻竜:2007/11/29(木) 21:47:12 ID:9G3DCgXp
コルベール先生!二分遅刻して済みません!!では投下します!

ゼロの夢幻竜 第四話「異世界の奇譚」

夜。ラティアスはルイズの部屋で夜食のパンを食べていた。
テーブルの上にはそれ以外にも三つの小鉢がありそれぞれスープとサラダ、そして二個の林檎が入っている。
何故こうなっているのか?
時間は召喚の儀が終わり、ラティアスがルイズを学院の広場に送り届けた直後にまで遡る。
ご主人様の髪を大変な事にしてしまったラティアスは、ルイズに詫びた後使い魔達が集まっている中庭にてすやすやと眠り始めた。
その直前『ちょっといろいろあって、張り切りすぎたせいか眠くなっちゃいました。ご主人様、ごめんなさい。ちょっと休ませてください。』と一応ルイズに断りをいれて。
ルイズは夕食時になったら目を覚ましてご飯をねだりに来るのだろうと思い、快くそれを了承した。
問題はその夕食時である。何時まで経ってもラティアスは自分の元に来ないのだ。
明日の授業の前にみんなに自慢出来たのに、という不満げな感情もあったがそれ以上の物がある。
通常使い魔は外で食事―それもかなりお粗末な物―をする事になっていたが、ルイズは特別にラティアスを『アルヴィーズの食堂』に招き入れようと思っていた。
まあそれでも、貴族以外の者を椅子に座らせるなんて事は許されていないから、床で食事してと言わざるを得ないものだが。

―自分が召喚したラティアスと一緒に楽しく食事をしたかったのに……―

やがて食事も談笑も終えた生徒が一人、また一人と食堂から去って行き、遂にルイズ一人が食堂に残される。
目の前の皿という皿はほぼ空になっており、残された料理も元の量から10分の9程が無くなっている。
仕方なくルイズはテーブルの上から残っていた白パンを二つほど失敬し、部屋に戻ってそれをラティアスに与える事にしたのだ。
そして部屋に戻り窓を開けてから『ラティアスーッ!』と叫ぶと一分もしない内に彼女は部屋の窓から中へ飛び込んできた。
その直ぐ後で床にドテッと落ちた彼女は、心配して顔を覗きこむルイズに何かをぽつぽつと言う。
聞くと、ご主人様に呼ばれるまで待っていました、ご飯はまだです……との事。
その彼女にルイズは非常に申し訳なさそうにパンを差し出す。
しかし時間が大分経ったせいかすっかり中がすっかり冷めきり、表面がとてつもなく固くなっていた。
しかしそんなパンをラティアスは受け取り「おいしいな、おいしいな」と言いながら両手を使ってさも楽しそうに食べ始める。
その様子に胃がキリキリと痛むような感触を覚え、居ても立ってもいられなくなったルイズはラティアスに部屋で待つ様に言い、食堂まで走って行く。
ルイズが辿り着いた頃、食堂ではメイドの者達がいそいそと片付けをしている真っ最中だった。
まだ間に合う!
彼女は適当にその場にあった小鉢を三つほど取り、この中に残っている分で良いからシチューとサラダと何でも良いから果物を入れなさい、と高らかに言った。
最初メイドの者達はルイズが何を言い出したのか、そしてどういう意図があるのか分からなかった為に互いに顔を見合わせた。
が、貴族の依頼事は聞かなければ酷い目に会うのは分かっている。
メイド達は急いでその小鉢に言われた物を入れていく。
それを受け取ったルイズは得意気に部屋まで戻った。

そして今に至る訳である。
食事を腹八分目にまで収めたラティアスは満足そうに広々とした部屋の中をくるくると旋回する。

「あー、おいしかったあ!!有り難う御座います!ご主人様!」

ラティアスは高さを変えつつ尚もくるくると回り続ける。
その様子を見ていたルイズはしみじみと思った。
―今迄で最良の日があるとすればそれは正に今日だ。―
と、その時ルイズの心に窓際にいるラティアスの大声が響き渡る。

「えぇええええええ?!!お月様が二つあるぅぅっっ!!」
「どうしたのよ?いきなり大声なんか出したりして。月が二つあるのがそんなに珍しいの?」

365名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 21:47:35 ID:0diJ943q
支援
366名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 21:48:19 ID:9G3DCgXp
ラティアスは丁度窓の外、夜天に輝く二つの月を見つけたのだ。
取り乱したような声がそれに続く。

「だって、だって!ご主人様!わたしの元いた所ではお月様は一つしかないんですよ!二つあるからびっくりしてるんですってば!!」
「一つしかないですって?どういう事……?」

その言葉をルイズは不思議に思う。
このハルケギニアでは、月が一つしか見えないといった事例は今までただの一回もない
常に二つ見えていなければおかしいのである。
その事はルイズにある疑問を抱かせていた。
ラティアスは本当にこの世界以外の何処か、異世界から来た存在なのだろうかと。
だが、勿論月の数が違うだけでそうだと断定する訳にはいかない。
そう思ったルイズは部屋にある机の引き出しからありったけの羊皮紙と新品のインク壷を一つ取り出す。
それをテーブルの上に置いてからルイズは敢えて脈絡の無い幾つかの質問をたて続けにしてみた。

「ラティアス、これから私の訊く事に正直に答えて。良いわね?」
「え?ええ。良いですよ。どんどんどうぞ。」
「じゃあね……あなたが元いた場所は何処?」
「地球です。近くに大きな町がありました。名前は覚えてないですけど。」

チキュウ?はて、そんな単語をルイズは今までに一度も聞いた事が無い。
取り敢えずトリステイン公用語で『ラティアス―元いた場所、チキュウ。ハルケギニアの地図には無い』と書き質問を続ける。

「そう……じゃ、そこの季節はあなたが此処に来る直前はいつ頃だった?って言うか季節ってあるの?」
「季節はあります。それも4つ。でも今みたいに春めいた感じじゃなくて凄ーく暑かったです。」

ここは同じ。違うという季節ももっと温暖な地から召喚されたのだとすれば納得がいく。
『元いた場所』の下に『四季あり。こちらと同じ。但しここより温暖な気候の可能性あり』と書いて続ける。

「ふんふん。次いくわよ。一年は何日?何ヶ月?1月って何日分?」
「一年は365日、12ヶ月あります。1月は30日あります。えーと、時たま31日になったり30日になったりします。
2番目の月はいつも28日で、4年に1回29日になる時もあります。と言ってもこれは人の感覚に限ってですけど。」

これは若干違う。月の数こそ同じだがこちらでは一年は384日である。
一月の数もころころ変わるなんて事は無い。
『一年の長さ―こちらとは19日の違い。月の数は同じ。しかしその長さはまちまち。』と書き加える。

「へえ……詳しく説明してくれてありがと。あとはね……あなたと同じ姿をした仲間はいるの?」
「はい!それはもうたくさんいます!私も数えた事は無いんですけど、元いた場所には私と同じ種類だけで多分500匹近くはいたんじゃないかと思います。」
「同じ種類で500匹近くねえ。あなたがその中に紛れ込んだら直ぐ分からなくなるわね。」
「ええ。でも呼ばれたらわたしの方がすぐにご主人様の元へ行くので問題はありません!」

彼女にとってはなんて事無い一言だったのだろう。
だがそれはルイズに良い使い魔を召喚したという充足感を再び与える一言だった。

「ホント?約束よ。それと……あなたとは姿が違うけど似た様な生き物っているの?」
「はい。前に人の多い所にいった時に研究者って人が言っていたのを聞くと、正確には493種類と言っていました。」
「結構いるのね。あんた1種類で500匹近くいるんだから全体で何匹くらいいるのかしら?」
「それはもう想像がつきません。何億、何十億……何百億っていう噂も聞いた事ありますし。」
「何百億ですって?!確かに想像がつかないわねえ。それじゃあ……」

367ゼロの夢幻竜:2007/11/29(木) 21:49:28 ID:9G3DCgXp
そんなこんなで口述筆記による質疑と応答は続いていく。
最初はすらすらと答えていたラティアスだったが質問が200問目あたりになりはじめた頃から疲れが見え始めてきた。
300問目寸前で欠伸が引っ切り無しに出る様になり、そこから50問もいかない内に滞空しながら舟を漕ぎ始めた。
ルイズの方はと言うと、周りに様々な事がごちゃごちゃと書きこまれた羊皮紙が大量に溢れかえっている事、とっくにベッドに入っている時間であるにも拘らずラティアスへの質問攻めを続けていた。
そしてそれがようやく止んだのは、新学年を迎える前に買ったばかりだったインク壷のインクが空になった時だった。
ラティアスは「もお、らむぇぇ……」と言って部屋に来た時と同じ様に床へ勢い良くドテッと落ちる。
ルイズはラティアスを抱き締めお礼を言った後自分のベッドで彼女を寝かせる。
それからは眠気を必死で我慢して書いた事の纏め上げを行った。
研究熱心な一番上の姉、エレオノールの性格に似ているせいか。
はたまた実技は『ゼロ』でも学科試験は落とさない様に猛勉強を繰り返していたせいか。
不思議とその行為に疲れは感じなかった。
大事な所を抜き出し、下線を引いて、関連事項と照らし合わせて間違いは無いか確認する。
それはまるで重要な試験を明日に控えた学生のそれであった。
そして全ての纏めが出来上がったのは空がうっすらとビロードの様な黒から、深い紺碧色に変わろうかという頃だった。
無論、厳密に言えばこれで全部ではない。
質問の最中ラティアスが眠ってしまったので、聞き出せる事はまだ少ない方だと自覚はしている。
ともかく結論としてラティアスが、自分達が生きているこの世界とは全く違う世界から召喚された事だけははっきりした。
ラティアスが嘘を吐くとは到底考えられない事だし、億が一、兆が一そうだとしてもここまで巧みな物は吐きようも無い。
また人語を理解できる存在で、声を使わず意思疎通出来るのにここまで付き合う意図も分からない。
ふとベッドの方を見ると、ラティアスが軽い寝息をたてて眠っていた。
相変わらず安らかそうで抱き締めてやりたくなるような雰囲気を出していた。
朝の食事まではまだ二時間ほど時間がある。
その内の半分位をラティアスと一緒に寝ていたって良いじゃない。
ルイズはそう思って彼女の元に近づこうとする。
が、ルイズは突然目の前で起こった出来事に足を止める。

「えっ……?!何これ?私、疲れてどうかしたのかしら?」

寝惚けているのかと思ったルイズは何度か目を擦る。
ルイズの目前で一体何が起こったというのだろうか……?
368名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 21:50:33 ID:0diJ943q
支援
369名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 21:52:49 ID:0diJ943q
支援
370ゼロの夢幻竜:2007/11/29(木) 21:54:46 ID:9G3DCgXp
投下終了します。
ポケモンの種類は敢えて491ではなく493としました。
ラティアスが地球のどういった所から来たのか、
どんな存在だったのか、雄側と何か関係はあったのか。
そこら辺はこれから徐々に明かしていくつもりです。
ではまたいつかお会いしましょう。
371名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 21:57:56 ID:0diJ943q
GJ!
>しかしそんなパンをラティアスは受け取り
>「おいしいな、おいしいな」
おい
泣くぞ
俺が
372名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 22:00:36 ID:Vp1ALezG
GJ!

ポケモンはほとんど知らんのだが、いい感じだな〜
続きをWktkしながら待ってるよ
373名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 22:05:36 ID:8qKpGePI
投下乙乙。
ちょっとダイヤ引っ張り出してラティアス育ててくる。
374名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 22:11:08 ID:NgBalPMP
ラティアスと遊ぶサトシとピカチュウはそりゃあ楽しそうだったっけ

最後のは夢映しか
ポケモン世界とテレパスが繋がったのか、誰かがラティオスを呼んだのか
Wktk
375名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 22:14:14 ID:Vp1ALezG
860 名前:虚無<ゼロ>の旋律[sage] 投稿日:2007/11/29(木) 21:34:01 ID:nmjYOgb.
人多杉で書きこめないのでこちらに投下します。どなたか代理投下お願いしていただけないでしょうか。
……諸事情で専ブラ入れられないのです……orz

との事ですので、30分から代理投下いたしたいと思います
376名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 22:22:28 ID:tp1d6zd5
>>370
GJ!!
そういえば緑の子と創世神は公式には発表されていないんだっけか。
377名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 22:23:38 ID:P0g8olFE
北海道ミルクパンのことかーーーーーーーー
378代理 虚無<ゼロ>の旋律:2007/11/29(木) 22:29:36 ID:Vp1ALezG
◇7:戦い終わって日が暮れて◇

「むう……」

 長く伸びた白い口髭を手で撫でながら、老人が唸り声をあげる。
 髭同様色素の抜けきった白髪は、地面に付こうかと言う程長く。深い皺の刻まれた顔は、長い歳月を生きた古木を彷彿とさせた。
 彼の名はオールド・オスマン。偉大なるメイジにして、この学園の学院長である。
 視線の先には鏡があり、ケティに向かって戦士の一撃を放つ小百合の姿が映っていた。
 マジックアイテム『遠見の鏡』。それは遠く離れた風景すらも意のままに映し出す。
 魔法学院の本塔の最上階に位置する学院長室で、彼は小百合とギーシュが起こした決闘騒ぎの一部始終を見ていた。
 
「光り輝く二の腕の紋章……。アレは昔見た……」

 オスマンの手がワナワナと震える。上擦った声は彼が興奮している事を意味していた。
 過去に想いを馳せているのか、懐かしげに細められた目は何処か遠くに向けられている。
 だが彼の追憶の時間は、聞こえてきたノックの音で儚く終わった。
 間隔が短く激しいその音はいかにも慌しく、扉の前に立つ何者かの焦燥が伝わってくるようである。
 無粋な来訪者に溜息をつくオスマン。懐から杖を取り出し『アンロック』の呪文をかけた。カチリ、と音がしてドアの鍵が開く。
 
「入っとるよ」
「トイレじゃないんですから! それよりたた、大変です!」

 勢い良くドアを開き、息を切らしながら入ってきたのは、禿頭が眩しい中年の教師。コルベールだった。

「なんじゃね、騒々しいぞ、ミスタ・コルベール」
「違います! 私の名前は――あれ?」
「ん? 違ったかの? すまんなあ、最近物忘れが激しくての。で、君の名前はなんじゃったかな?」

 飄々とした風情で問うオスマン。コルベールは決まり悪そうに後頭部を掻きながら弁解した。

「い、いえ。コルベールで合っています。その、学院長にきちんと名前を呼ばれた事がついぞないもので……」
「わかっとる、わかっとるよコルベール君。漸く君の名前を覚えられたからの。少しからかってみたくなっただけじゃて」

 呵呵大笑するオスマン。その科白にコルベールはガクリ、と項垂れた。

「勘弁して下さい……。それより、大変なんです!」
「それもわかっとるよ。ヴェストリの広場で起こった騒ぎの事じゃろう?」
「その通りです。そこでどうでしょう、他の教師の提案なのですが『眠りの鐘』を使っては――」
「その提案は悪くはないが、少しばかり遅いぞコルベール君。もう終ったわい。被害もあの平民が軽傷を負った位かの」

 一応は生徒として認識されていたケティの事は被害に勘定しないオスマン。
 全てを見ていた彼には、そうする事に意味が無い事を解っていたから。
 事件の元凶であるケティ・ド・ラ・ロッタと言う人物は、最初から居なかった事になっているだろう。

「そうでしたか」

 安堵の溜息をつくコルベールに、オスマンは顔を顰める。

「何をホッとしておる。問題は此処からじゃ。名門公爵家の令嬢たるミス・ヴァリエールとその使い魔に“彼等”は何をしたと思う?」

 彼等とは? 解らず首を傾げるコルベールだったが、不意に思い付き口を開いた。

「……騒ぎを観戦していた他の生徒達ですか?」

 大勢の生徒が野次馬として集まっていたらしいですね、とコルベール。
 そんな何の気無しの彼の言葉に、オスマンは眉を吊り上げ声を荒げた。
 憤り、その余り掌を強く握り締める。血が出そうなほど、硬く。
379名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 22:33:51 ID:cTJYdYbC
代理投下の支援っと。
380代理 虚無<ゼロ>の旋律:2007/11/29(木) 22:34:29 ID:Vp1ALezG
「私刑<リンチ>じゃよ。寄ってたかって攻撃魔法を浴びせておった。決闘の真っ最中だった使い魔と一緒に居た彼女に、な」
「そ、そんな……!」

 愕然とし、目を見開くコルベール。俯き、やるせなさの滲んだ苦い顔で呟く。
 
「一般人を巻き込まないのが暗黙の了解だったのではないのか……」
「何か言ったかね?」
「あ、いえ。……理解に苦しむと、何故こんな事をしたのか皆目見当が付かないと、そう言ったのです」
「そうじゃな。じゃが理由はどうあれ事実は事実。こんな事をしでかした以上、これ以上彼らをこの学園に置いておくわけにはいかん」
「オールド・オスマン! なにもそこまで厳重な処分を下さなくとも……」
「無論、退学にはせんよ。紹介状を書いて他の魔法学院への転校させる、といった所かの。一応、貴族じゃからな」
 
 その事実を認めたく無いと言わんばかりに、苦々しげに『一応』を強調するオスマン。
 もっとも、向こうの方から退学を申し出てくるかもしれんな、と心の中で1人ごちる。
 
「しかし、ミス・ヴァリエールとその使い魔には聞かねばならぬ事が沢山あるわい。いずれミス・ロングビルに彼女らを呼び出して貰わ
んと」

 誰に言うでも無く言うと、オスマンはとまるで睨み付けるような鋭い視線をコルベールに向けた。

「……で? それだけかね、コルベール君」
「え、あ、いえ。あのミス・ヴァリエールが召喚した使い魔の事について話したい事が……」

 恐らくは図書館から持ち出した書物を手に、コルベール。
 オスマンは小さくほう、と相槌を打ち目を軽く見開く。そして杖を振りドアに施錠した。
 
「詳しく説明してみなさい、ミスタ・コルベール」
「はい、それが――」

 オスマンに従い説明を始めるコルベール。
 ルイズが召喚してしまった平民の使い魔に契約の際刻まれたルーンが気になった事。
 それを調べると、かつて始祖ブリミルが使役していた伝説の使い魔『ガンダールヴ』のモノと同一だったと言う事。
 また、そのルーンが刻まれた瞬間、幽霊だった筈の彼女が普通の人間と変わらぬ肉体を得たと言う事。
 その内容を要約すればこんな所である。オスマンはコルベールが見せたルーンのスケッチをじっと見つめた。

「確かに、全く同じじゃな。決め付けるのは早計だとしても、その可能性は高いと見て良さそうじゃのう。それに、死者が蘇ったと言う
のも興味深い」
「はい。これは王室に報告し指示を仰ぐべきではないかと」

 促すコルベールに、しかしオスマンはゆっくりと横に頭を振った。
 
「それには及ばんよ。言ったじゃろう? 決め付けるのは早計だとな。それに、彼女がもし本当のガンダールヴだったとしたら、王室の
ボンクラ共に危険な玩具を渡してしまう事になりかねん。君もまた彼らに戦を引き起こさせたくはないじゃろう?」
「勿論です……!」

 腹の底から搾り出すような声で、即答。オスマンは良い答えじゃ、と微笑み、頷く。
 そうでなくとも、下手すればガンダールヴ等比べ物にならない程強大な力を持っている可能性があるのだ。
 コルベールの提案など到底受け入れられるものではない。
 何より、あんな目に遭った彼女達を少しはそっとしてやりたかった。

「取りあえずこの件は私が預かろう。私の許可あるまでこの事は他言無用じゃ」
「は、はい。畏まりました。……学院長の深謀には恐れ入ります」
「ほほ……。もっと言ってもいいんじゃよ? 此処の人間は学院長の私を讃えると言う事を知らんから困る」

 冗談めかしてそう言うと、コルベールに退室を促そうとして――最後に1つ、彼に問うた。

「そうじゃ、コルベール君。その使い魔には『ガンダールヴ』のルーン以外に何か目立った特長はあったかね?」

 ルーンとは別に、彼女に刻まれている戦士の紋章について詳しく尋ねようとしたオスマン。
 彼があの紋章についてどう考えて居るか、少し興味が湧いた為もののついでに聞いてみただけだったのだが。
381名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 22:34:59 ID:ra5bkEa6
夢幻竜乙
493ってことはアルセウスが確認されてる世界からきたのか
というかラティアスが500匹も居るってどんだけー
382名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 22:36:06 ID:ra5bkEa6
まごまご書いてるうちに投下が始まってたスマン
支援
383代理 虚無<ゼロ>の旋律:2007/11/29(木) 22:39:30 ID:Vp1ALezG
「……いえ。強いて言うなら、この辺りでは見ない服を着ていたこと、くらいでしょうか」
「ふむ、他は普通の平民と何も変わりが無いのかね」
「はい。何も変わりは在りません」

 返って来たのは、予想外の答え。思いがけない反応に、眉をひそめるオスマン。
 再び口髭を撫でながら思考を巡らせる。
 ルーンに目が行っていて気付かなかったのだろうか? 少しそれは考えにくい。
 しかしルーンに気付いておきながら、それ以上に特徴的とも言える戦士の紋章に少しも興味が行かないというのは不自然だ。
 ならば何らかの理由で紋章の事を――いや。
 彼女がメロスの戦士である事を隠そうとしている? ならば、それは何故?
 問い質そうとも思ったが、生半可な事では口を割りそうになかったし、本当に気付かなかった可能性も捨てきれない。
 見様次第では風変りな刺青に見えない事もない。
 それならば何の問題は無いのである。
 予定通り彼女らを呼付け、訊ねれば良いだけだ。だが、もし。
 彼が何かを隠していたとして、そしてその理由が予想しうる最悪のモノだった場合。
 ソレを知ろうとする事は、この学園を侵食しつつある闇に踏み込むと言う事だ。
 即ち、命の危険すら在り得ると言う事を意味していた。

「そうか。ならもう話は終わりじゃな。行きなさい、コルベール君」

 ゆえに、オスマンはそれ以上問うのを止めコルベールに退室を促した。
 今はまだ、命というコインをベットするタイミングではない。
 その選択は、良く言えば慎重、悪く言えば臆病。
 それは分かっているが、自分はこの学園の生徒及び教職員の身柄を一時的にとは言え預かる身だ。
 迂闊な行動は皆の安全をも脅かす。ならば、彼らの為に幾らでも臆病になってやろうではないか。
 そう思い直すも、思わず溜息を付いてしまう自分がいる。
 ただ手をこまねいているしかなかった事が情けなかったために。
 結局の所、自分は只の傍観者としての範疇を逸脱していない。
 どれだけ立派な考えを持とうとも、何も出来ないのであれば、何も有効な手立てが思い付かないのであれば。
 その考えに、意味を持たせる事など出来はしないのだから。
 どんなに見事な論理武装をしようとも、それは単なる言い訳に過ぎない。
 
「スマンの。今の私に出来る事と言ったらこれ位じゃ。メロスの戦士よ」

 しばし宙を仰いでいたかと思うと、今ここには居ない彼女に弁解する。
 この世界に迫りつつある驚異、それをもたらすモンスター。それに対して余りにも無力な自分。だのに、何が偉大なメイジか、と。
 それにしても、と思考を切り替える。だが、希望はあるのだと。
384とあるの人 ◆3WQsphoeLI :2007/11/29(木) 22:41:20 ID:YpdgqFGk
しえーん&予約します!
385MtL:2007/11/29(木) 22:42:05 ID:YhpipzxZ
その次に予約しますー。
386代理 虚無<ゼロ>の旋律:2007/11/29(木) 22:45:07 ID:Vp1ALezG
「あの怪物に対抗できた存在が、かの伝説の使い魔『ガンダールヴ』とはのう。なんとも運命的なモノを感じるわい」

 先程とは打って代わりニヤリとほくそ笑み、ドアの方を振り返った。

「――所で、何用かね?」
「……何時から、気付いていらしたのですか?」

 ドアから静かに歩み出たのは、メイド服を着たおかっぱ頭の少女、シエスタである。
 気まずげに目を伏せるメイドの少女。
 これからどんな咎めと罰を受けるのだろうかと戦々恐々として居るのだろう、その顔色は微かに青く額には汗が浮かんでいる。

「コルベール君が退室した少し後からかの。のう、モートソグニル?」

 己の使い魔の名を呼ぶオスマン。その声に、シエスタの足元に居たネズミが小さく鳴き声をあげる。
 ドロワーズもなかなかいけるのう、という呟きが緊張に固まるシエスタに聞こえなかったのは幸いなのかどうか。

「それは兎も角、盗み聞きは感心せんな」
「もも申し訳御座いませんッ! 実は、ミス・ヴァリエールの使い魔と貴族様が決闘を……」

 しどろもどろなシエスタ。
 手伝いを頼んだ事が決闘騒ぎのきっかけになったと思いつめた彼女は、なんとか止めようと教師にかけあったのだった。
 だが、平民たる自分の言葉に耳を貸すものなど居らず。
 最後の手段として学院長であるオスマンに、この首をかける覚悟で直談判しようと赴いた時には、既に先客のコルベールが居た。
 その会話の内容に慌てて物影に隠れ、結果盗み聞く形になり……現在に至る。

「安心しなさい、彼女は無事じゃよ。君を咎めるつもりも毛頭無い。ただ、この事は誰にも話さぬようにな。いいかね?」
「は、はいッ!」

 凄みの利いたオスマンの声に背筋をピンと伸ばし、体を強張らせ。裏返った声で返事をするシエスタ。
 その反応に満足そうな笑みを浮かべると、シエスタに退室を促した。
 ギクシャクと部屋を後にし、駆け足で通路を移動しながらシエスタは先程盗み聞いた内容を反芻していた。
 その中で彼女の最大の感心は、音無 小百合がメロスの戦士だと言う事。
 もしそうならば。彼女が、私の――

(私の“選ぶ”べき人なのかもしれません。……ツナギさん)

 首から下げた円錐状のモノを握り締める。するとそれはぼう、と淡く光り。
 シエスタの額が、それに呼応するかのように、微かに光を放った。
387虚無の王:2007/11/29(木) 22:46:37 ID:JILqfydQ
うおっ、今日は凄ひ……

では、私はMtL氏の次に予約します。

支援っっ
388名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 22:48:44 ID:bmZklb8X
虚無王のひとキター。
続けて支援。
389代理 虚無<ゼロ>の旋律:2007/11/29(木) 22:49:12 ID:Vp1ALezG
ケティとの戦いを終えた小百合達に待っていたのは、キュルケやギーシュの友人連中含むクラスメイト達の質問攻めだった。
 無理も無い。目撃者を出さないように、ヴェストリの広場から締め出されていたのだ。モンスターユニオンだった一部の生徒によって。
 
「あのまま僕、或いは周囲のモンスターユニオン達が2人を殺せば、決闘中の事故として処理される事になっていた」

 とは後のギーシュの弁。
 しかし、彼等からの無数の問いに対し、小百合とルイズはあの時の事を馬鹿正直に話すわけには行かなかった。
 もし事情を話せば、自動的に何も知らない無関係な人間を巻き込んでしまう。
 仮にそうでなくモンスターの関係者ならば、此方の不利になるだけ。どちらにせよ、話す事に何のメリットもない。
 だから、小百合達とギーシュは皆を納得させる為のカヴァー・ストーリーをでっち上げた。
 ――最初はメイジであるギーシュが優勢だったが、一方的な展開に飽きた彼が、ハンデにと剣を造って小百合に寄越した。
 ――その剣を手に持った瞬間、見違えるように動きの良くなった小百合によってワルキューレは瞬く間に全て切り倒された。
 ――そのまま剣を突きつけられ降参を迫られたのでギーシュは負けを認めざるを得なかった。
 皆に小百合は『遠い異国から召喚された元傭兵』と説明した為、短時間で考えたにしては良く出来た話とも言える。
 それでも、メイジと平民の力量差を考えれば多分に無理のある内容。
 その事を十分に分かっていた為「ギーシュが勝った事にしよう」と小百合とルイズは再三提案したのだが、ギーシュはそれを頑として受け付けなかった。例え嘘でも小百合に勝ったなどと言えはしない、と。
 第三者から見ればそれは愚かしい考えなのかもしれない。けれど、その程度にはギーシュ・ド・グラモンは貴族だったと言う事だ。
 結果として、小百合はメイジ相手に勝利した異例の平民として生徒達の記憶に刻まれた。
 もっとも、小百合がもっととんでもない存在である事を知っているルイズとギーシュにしてみれば、甚だ苦笑モノだったのだが。
 そして全てが終り。少しだけ時は流れ、夕方。トリステイン魔法学院の学生寮の一角。ルイズの部屋。
 授業中における失敗魔法騒ぎに始まり、ギーシュとの決闘。そしてこの世界においては初めてのモンスターとの戦い。
 密度の高い1日を過ごした小百合とルイズにも、漸く安息の時が訪れていた。
 2人はそれぞれ椅子に座って向き合っていた。ルイズの左手には深さが数サント程の円筒状の容器が。
その中にあるのはなんとも言えない色と匂いが特徴的な軟膏。
 モンモランシーから貰った傷に効果のある魔法薬である。ギーシュが謝罪と共にルイズにあげるよう懇願したものだ。
 ルイズは開いた右手でその軟膏を微かな量を掬い取り、小百合の傷に塗りこんで行く。
 1つ1つは大して深くはないのだが、体中に無数にあるとなるとどうにも痛ましい。
 
「……疲れた」
 
 言葉の通り疲れに目を少しトロンとさせながらぽつり、と呟くルイズ。
 その声にも力が無く、誰かに言おうとしたというよりは、思わず口を突いて出たように見える。

「疲れてるんなら、無理しなくていいわよ」

 軟膏くらいなら自分で塗れるっていったでしょ、と苦笑する小百合。
 ルイズは無言で溜息をつくと、軟膏を塗りこんでいた傷口をぐいと指で押し込んだ。

「……っ!」

 突然の事に流石に苦悶の表情の小百合。恨めしげな視線を向ける彼女にルイズはソレ見た事かと半眼を返す。

「そんな気遣い、余計な御世話。貴方は十分に使い魔の勤めを果したでしょ。なら主はその働きに応えなきゃなんないの。……これ位させなさいよ」
「……ルイズ」

 それきり口を噤み、軟膏を塗りこむ作業に戻るルイズだったが。
 暫くして、やがて何か逡巡する様に視線を泳がせ、そして。

「一度しか、言わないから、光栄に思いなさいよ?」

 気恥ずかしげに視線をそらし、軟膏の付いた手をもじもじと弄びながら、とてもとても小さな声で。

「…………護ってくれて、ありがと」
「……ん」

 不器用なルイズの感謝の言葉に、小百合は小さく頷いただけだった。
 時には、思いをあえて言葉にしない方が良い場合もある。
390名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 22:50:37 ID:Ntxq/Mg/
支援をしようと思ったら、既に次の投下が始まり、さらにその次の投下予約まで入っていた。
何を言っているかわからーねと思うが、断じて支援!
391代理 虚無<ゼロ>の旋律:2007/11/29(木) 22:54:13 ID:Vp1ALezG
「ねえ、これからどうしたら良いと思う、サユリ?」

 軟膏を塗り終え、容器の蓋を閉めながら、ルイズ。言葉の端に滲むは不安の色。
 仕方ない、と小百合は思う。
 誰が何時自分達の命を狙ってくるか分からない状況で、安心しろと言う方が無茶と言うものだ。
 ルイズは、安心する為の材料を欲しがって居る。「これならもう大丈夫」だと、身の安全を保障する根拠を求めて居るのだ。

「貴方の実家に戻ると言うのはどう? そこなら信頼できる人間ばかりだと思うのだけど」
「ダメ。家族に危険が及んじゃうし、第一使用人1人1人まで把握してないもの」

 手で×印を造り、それならとルイズは提案をし返す。

「王家に助けを求めたらいいんじゃない? 私、この国の王女様とは幼馴染でね――」
「ダメね。話したでしょう? モンスターには同じモンスターの力かメロスの戦士の力でないと有効なダメージを与えられないって」

 死体の山を造るだけよ、と小百合。ルイズは意気消沈し肩を落とす。
 余程強力な破壊兵器でも在れば話は別だけれど、と小百合は思うも。科学技術が中世レベルのこの世界では考えるだけ無駄だ。
 科学技術の代わりである魔法がどれ程の力を持っているのかは知らないが、少なくともモンスターの脅威には成り得ない様だ。

「助けを求めるのもダメ、安全な場所を見つけるのも難しい、どうすればいいのよ」
「……現状維持しつつ様子を見るしかないわ。もどかしいけれどね」

 途方に暮れるルイズに、悔しそうにそう言うしかない小百合。
 孤立無援、四面楚歌。窮地は脱したものの、その状況には変わりはないのだった。
 重苦しい雰囲気に乗せて、溜息のユニゾンを奏でる2人。
 それに終止符を打ったのは、控えめなノックの音。たちまち室内を支配する緊迫した空気。
 小百合はルイズを庇う様に立ち身構え、ルイズは慌てて杖を手にとる。
 覚悟を決め、ルイズはどうぞ、と扉の外に居る何者かに声をかける。自分の声が余りに乾き、擦れていた事に彼女は驚いた。
 やがてノブが捻られ、ゆっくりとドアが開けられ――

「やあ」

 おずおずと入室してきたのはフリルの付いたシャツを着た、金髪の青年。
 小百合は全身の力がドッと抜けるのを感じた。立って居られるのが不思議なくらいだった。

「……ギーシュ、驚かせないで」

 顔を顰める小百合に、ギーシュは決まり悪げな顔でルイズの方を向いた。

「ええと、何かまずかった?」
「とても拙いわね、タイミングが。物凄く、とてつもなく」

 部屋の床にへたり込みながら、ルイズ。緊張の糸が急に切れた所為で腰が抜けてしまったらしい。

「で? 何の用?」

 小百合の手を借りて椅子に座りつつ、胡乱な目で不躾に聞くルイズ。羞恥で僅かに頬が赤かった。
 すると、ギーシュは急に真面目な表情になる。元々端正と言うか耽美な部類に入る顔つきであるため、非常に様になっていた。
 ルイズは、彼が女生徒から黄色い声を浴びる理由が少し分かった気がした。
392名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 22:55:00 ID:0tRRHZq9
支援
393代理 虚無<ゼロ>の旋律:2007/11/29(木) 22:59:15 ID:Vp1ALezG
「謝りに、来たんだ。勿論、謝って済む問題じゃないのは解ってる。でもそうでもしないと僕の気がおさまらない」
「いいわよ、別に。貴方も被害者っぽいし、そんな場合じゃないし」

 手をひらひらと振るルイズに、ギーシュは怪訝な表情。

「そんな場合じゃない?」
「そうよ。私達はね――」

 ルイズはギーシュに先程の会話の内容を話して聞かせた。
 すると、ギーシュはははあ、そんな事かと安堵の笑みを浮かべた。

「その点に付いては、今の所心配は無いと思う」
「どうして?」
「一応元モンスターユニオンだったから解るんだけど、彼等は事が表沙汰になるのを避けている節があるんだ。無関係な人間を巻き込む事もね」

 もっとも“食事”の時以外だけど、と肩を竦める彼の言葉に、小百合は戦争に勝利した後のモンスターもそうだったと思いだす。
 アレは影から世界をスムーズに操る為だったが、此方においてもそうなのだろうか。それとも、何か別の理由があるのだろうか。

「だから、少なくとも今直ぐキミ達に何かを仕掛けてくる可能性は極めて低いと思う。それに、ケティの話によれば今日の件は彼女の独断だったようだしね」
「当面は安心できるってこと、か。それでも、油断は出来ないわよね。何か出来る事は……そうだわ」

 何かを思い付いたのか、ぽんと手を叩くルイズ。

「武器を買いに行きましょう。今度の虚無の曜日にでも。弓矢が無ければ力を発揮できないんでしょ」
「確かにそうだけど……私、一文無しよ?」
「勿論、お金は私が出すわ。必要な物を買うのを躊躇うようなケチじゃないわよ。自分の命がかかってるしね」
「なんなら、あの時みたいに僕が造ろうか?」
「一発撃つ度に壊れるのなんか要らないわよ。ねえ、サユリ?」

 ギーシュの提案を一蹴するルイズに曖昧な笑みを返す事しか出来ない小百合。
 彼の厚意は嬉しいのだが、ルイズの言う通りでもあったから。

 To be continued……
394代理 虚無<ゼロ>の旋律:2007/11/29(木) 23:03:10 ID:Vp1ALezG
以上、代理投下終了です

多大なる支援、ありがとうございました
このまま、次の投下に備え支援体制に移行いたします
395とあるの人 ◆3WQsphoeLI :2007/11/29(木) 23:03:55 ID:YpdgqFGk
投下GJ!代理の方も乙ですー


それでは久々ですが、5分後に投下したいと思います
396名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 23:05:21 ID:0tRRHZq9
とあるの人支援


397とあるの人 ◆3WQsphoeLI :2007/11/29(木) 23:08:20 ID:YpdgqFGk
「もうすぐ着く」
 上条当麻は短いタバサの言葉によって、閉じていた目を開く事になった。
 実際に眠っていたわけではない。たまには、という意味も含まれてのんびりと過ごしていただけだ。
 正直、ここに来てから落ち着いた試しがない。いや、記憶を失ってからもなんだかんだいって毎回のようにトラブルに出くわして、これも一環の流れのように感じられる。
 学院襲撃事件、皇太子暗殺、タルブ村での開戦、アンリエッタ女王誘拐未遂。こうも短い間にいくつものトラブルにあうのは、自分の不幸体質からなのであろうか。
 が、別にそれが苦にはなっていない。ただ、一人の人間として少しはゆっくりとできる休暇が欲しいという願望はもちろんある。
 というか、いつもルイズの行動に付き合わされている状態から解放されたのは、今回を含めて数える程度。
 貴重な時間を過ごしたなーと思いながら、当麻は上半身だけを起こし、周りを見渡す。相変わらずタバサは本を読んでいるし、周りの景色も目を閉じる前と同じような光景だ。
 どうやら自分らは田舎の方へと向かっているようだ。
 以前シエスタの故郷、タルブ村に赴いた時と似たようなイメージが沸いたので、当麻はその答えに至るまで時間はかからなかった。
 もっとも、異世界の住人である当麻は、ここの地名を言われてもさっぱりである。なので目的地を聞いた所で特に変わるような事はない。
 と、当麻達が乗っているシルフィードが降下をし始めた。
 もとからそこまで高くは飛行していなかったためか、あっという間に大地へと降り立つ。
 パタンと読んでいた本を閉じ、タバサは「来て」の一言を残してシルフィードから降りた。
 そんなタバサの対応に当麻は戸惑う。否、それもあるが、どちらかというと目の前のそびえ立つ建物に対しての方であった。
 貧乏人で、学生の寮で普段暮らしている当麻でもわかる。

 どう考えても豪邸だ。

 ヨーロッパの観光パンフレットに出てくるような、古風なイメージが纏まっている感じだ。
 普通、このような屋敷に赴いて、誰の屋敷かと尋ねたら一人しか浮かばない。
「なあ」
 それを確認すべく、当麻はタバサに声をかける。
 すたすたと歩いていたタバサはピタッと止まり、こちらへと振り返る。当麻から視線を離さないその目が、用件を早く言うよう訴えかけていた。
「ここ、タバサん家だよな?」
398とあるの人 ◆3WQsphoeLI :2007/11/29(木) 23:09:45 ID:YpdgqFGk
 なにを今更、といった表情でコクリと頷く。そして、再び門へと歩きだす。
 当麻は呆然と立ち尽くしていた。
 確かに貴族=金持ちという方程式をこの世界の常識として学んだのだが、
(これほどまでとはなぁ……)
 いかに自分がちっぽけな存在かとあらためて認識される。自分が想像していたそれよりもはるかに立派であった。
 本当は、タバサがガリア王家の王弟家だからという理由があるのだが、当の当麻に知る由がない。
 瞬間、
「こないの」
「うおっ!?」
 今まで動かなかったのが不思議に思えたのか、タバサが近寄って来た。が、その近さが半端ない。
 後もう少し互いの唇がくっつくような距離に、当麻は後ずさり、尻餅をつく。
 タバサは当麻の行動が理解できなかったのか、首を傾げる。どうやら彼女にはそのような感情は存在していないらしい。
「あー、いや、なんでもないですはい」
 後頭部に手をまわし、ごまかすように苦笑いしながらも立ち上がる。
 これ以上無駄な雑談を省きたいのか、タバサは再び口を閉じ歩き始める。もうこれ以上は構ってやらないと思える態度に、慌てて当麻も後を追いかけた。
 門から敷地内に入った時、当麻はあることに気付いた。
 門に刻まれている交差した二本の杖、おそらく紋章だと判断する。しかし、そこには傷がついていた。
 それぞれの杖に一本の傷。それは、特に意識せずともバッテンという風に見えてしまう。
 なにかあったのだろうかと思い、当麻は前を歩くタバサに尋ねようとした。
 しかし、後一歩の所でそれを喉へと飲み込んだ。
(あまり気にしない方がいいだろうな)
 どう考えてもこれは喜ばしい事ではない。
 過去タバサの身に何があったか個人的には知りたいが、あからさまに負の感情しか残らない昔話を本人に聞くのは失礼だ。
 結局、最後の最後までその紋章が気になり、他に目を向ける事はなかった。
 門を越え、玄関までたどり着くと、一人の老執事が迎えにでてきた。
「お嬢さま、お帰りなさいませ」
 畏まったように頭を下げる。タバサは普段通りなのだが、当麻は慣れていないせいか、思わず頭を下げ返す。
 どうやらこの執事しか出迎える者はいない様子。もっとメイドさんとかがずらりと並んでいるような光景を思い浮かべていたが、どうやらこちらの世界では違うようだ。
 当麻の姿に、執事は僅かばかし驚いた表情を浮かべる。どうやら予想外の客人であったようだ。
399とあるの人 ◆3WQsphoeLI :2007/11/29(木) 23:11:51 ID:YpdgqFGk
 しかし、それは一瞬の出来事であり、すぐに後ろへと振り返った。
 どうやら客間に招くようだ。二人は執事の後につき、その場所へと案内される。
 そこは広々としていた。以前自分が寮で暮らしていたよりも何倍も広く、またきちんと手入れがされており、綺麗である。
 が、人がいない。辺りはしーんと静まっており、なんとも感想がつけがたい場所だ。
「人は……いないのか?」
 コクリと頷くタバサ。
「俺らだけ、しかいないのか?」
 もう一人いる、と今度は否定した。そして、当麻の腕をガシッと掴んだ。
 ドバァ! と当麻の心臓が跳ね上がり、顔を真っ赤に染めるが、タバサは全く気にすることなくそのまま引っ張っていく。
 女の子に腕を掴まれる、というのに対しての抵抗力が皆無である純情少年は、なんとか理性を保つ事ができた。
「えとー、タバサさん? なにをしたいのでしょうか?」
「ついてきて」
「と言われてもやっぱりこうやって手を繋いでいくのは恥ずかしいと思うのですが!? えぇい、話を聞く気はないのですかターバーサーさーんー」
 耳元で多少音量を抑えてシャウトするが、タバサは臆する事なく、しかも心なしか力がさらにこめられた。
 ズルズルと引っ張られてく当麻の姿を見て、おや? と執事は怪訝な表情を浮かべた。


「ここ」
 それは、とある部屋の扉の前であった。扉、だけをいうのであれは普通の一室を想像できるシンプルな造り。
 が、それでも古くから使われてきたイメージがあり、ぼろいという言葉はなんだか失礼に値するものだと思えてしまう程だ。
「……ここで俺はなにをすればいいんだ?」
 腕を思いきり握られていた為、痛がっている当麻は少し涙目で同じ内容を尋ねた。
 目的地にまで連れてこられたというのに肝心の部分は教えてくれない。
 タバサが困っているなら喜んで助けになるが、内容を知っておきたいという気持ちもある。
 その意図にようやく気付いてくれたのか、タバサはこちらを見ずに告げた。
「助けて欲しい人がいるの」
 そう言い、ドアを開ける。そこに、助けて欲しい人物がいた。
 なにもない、シンプルな一室であった。
 机と椅子、そしてベッド。以前訪ねた事のあるウェールズの部屋と似たようなイメージを浮かべる。
 タバサが助けて欲しいといった人物は、目の前にいる女性の事だろう。他に誰もいないし、実は部屋を間違えましたというオチもないはず。
(身内……母親か?)
400名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 23:12:44 ID:0tRRHZq9
試演
401名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 23:13:09 ID:J2q72FrV
幻想殺しか。
救えるのかな……支援
402とあるの人 ◆3WQsphoeLI :2007/11/29(木) 23:14:14 ID:YpdgqFGk
 顔を伏せているので容姿はわからない。しかし、その髪の色に加え、ここがタバサの家である事から大体は想像がつく。
 なのに不思議だ。
 いくら当麻であっても、ここが魔法学院から遠く離れている事ぐらいはわかる。ならば、自分の娘ないし身内が家に戻ってくるのならば歓迎するのが普通だ。
 なのに、女性はうんともすんともしない。
 なにか理由があるのだろうか? と思いながら、当麻はタバサに視線を移す。
 瞬間、
「誰?」
 声がした。
 タバサでも自分でもない。ようやく女性は自分らの存在に気付いたのだろう。
 タバサは返答として一歩前へと踏み出す。
 同時、女性が顔をあげる。
 それは、お世辞にも美しいとは言い難い姿。いや、確実に美人という枠組みに入ると思うのだが、
 老けている。
 しわが多々あり、当麻の第一印象は五十代ぐらいのおばさんだ。なのに美人だと思わせる不思議な感覚を当麻は覚えた。
 見た目は五十代なのだが、無理矢理なってしまったという説明が一番わかりやすいのかもしれない。
「ただいま帰りました。母さま」
 当麻の予想通り、彼女はタバサの母親であった。タバサは近づくと、深々と頭を下げた。
 しかし、
「下がりなさい無礼者。王家の回し者ね? わたしからシャルロットを奪おうというのね。誰があなたがたに、可愛いシャルロットを渡すものですか」
 返答は拒絶であった。母親の声は冷静ではあったものの、後なにか加えたら爆発しそうな程怒りが感じられる。
 しかし、タバサはそれに臆する事なくただじっと頭を下げたまま。
「おそろしやこの子がいずれ王位を狙うなどと誰が申したのでありましょうか。
薄汚い宮廷のすずめたちにはもううんざり、わたしたちは静かに暮らしたいだけなのに、下がりなさい! 下がれ!」
 離れようとしないタバサに苛立ちを感じたのか、母親は近くにあったグラスを投げつけた。
 それは確認してからでも避ける事ができるゆったりとしたスピードであったが、タバサは動かなかった。
 いくらスピードがなくてもそれはガラスでできた物。ゴン! と鈍い音を発してタバサの額に直撃した。
「タバサ!?」
 突然のできごとに当麻は駆け寄る。どうして避けようとしなかったのだろうか。
 一方の母親は抱きしめていた人形に頬ずりをした。余程その人形を気に入っているのだろうか、その頭は擦り切れて綿がはみ出ている。
「あなたの右手で触って欲しい」
403名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 23:15:02 ID:/opVH/V9
しえん
404名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 23:16:44 ID:abYXntFn
支援
405とあるの人 ◆3WQsphoeLI :2007/11/29(木) 23:17:10 ID:YpdgqFGk
 こうなってしまったのは、どうやら魔法の影響であった。
 当麻も疑問を抱かなかった。
 以前にも同じような体験をした事がある。とある呪いにかけられた女性を幻想殺しという名の右手が救った。
 おそらく、今回はそれと似たようなタイプだ。
 故に行動は早かった。当麻は黙って頷くと、未だに「下がれ!」と怒鳴る母親に近づき、なんの躊躇いもなくその右手で肩に触った。
 …………、
 …………。
「…………あれ?」
 しばらく触ったままでいたが、幻想殺しが発動する特有の感覚が現れない。
 その間にも、
「下賎な手で私に触るな!」
 ドンッ! とタバサの母親は当麻の胸倉辺りを思いきり押した。
 一応反撃が来るのもある程度は予測していた為、当麻は後退したものの倒される事はなかった。
「っと……ってうわっ!?」
 バランスをとるため一度足元へと移した視線を戻した瞬間、再びグラスが飛んでくる。
 視界が一瞬によって物が全体を覆う。タバサみたく当たりたくはないので、咄嗟に身を伏せた。
 おかしい。
 当麻は右手を使ってタバサの母親に触れた。ならば幻想殺しが発動してもおかしくないはず。
 しかし、タバサの母親の様子は変わらない。早く出てけと訴えるかのように怒鳴り散らしてくる。
 タバサが嘘をついているとは思えない。ならば幻想殺しが不発のまま終わったと考えるのが妥当だ。
 そうなると不発した理由は一つしかない。
 当麻はちらりとタバサを見る。
 未だに無表情。しかし、どこと無く当麻を心配している感じがする。あくまで感じに過ぎないが。
「タバサ、一体その魔法はどこに影響してるんだ?」
 当麻は、タバサの母親に影響している箇所を触らなければならないと推測を立てた。
 脳に影響しているなら頭、憑いているとしたら背中のように。
「心」
「…………………………あー」
 どうやら予想通りの展開となっとしまったようだ。
 心――といえば胸と言われている。となると、当麻が触らなければならない場所は……
 もちろんあそこだ。
 カァーっと真っ赤に染まった顔をブンブンと勢いよく何度も横に振る。
(不可抗力ですから! つーか、これって不幸だよな……?)
 心の中の自分に言い訳をする当麻。見方によっては幸福なのかもしれないが、彼の思考ではやはり不幸な事だと感じているようだ。
406名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 23:17:21 ID:/opVH/V9
支援
407とあるの人 ◆3WQsphoeLI :2007/11/29(木) 23:19:40 ID:YpdgqFGk
 老いた――と言っても特に変わることはない。確かに彼女のは(失礼だが)よれよれとしているが、「それ」になんら変わりはない。
 つまり――、
(えぇい、何を考えているんだ俺!)
 それ以上の思考を理性が止めた。というか、このままでは埒があかない。
 当麻は何回もごめんなさいと心の中で繰り返しながらも、再び近づき、

 タバサの母親の胸を触った。

 当麻の手の大きさ程の膨らみに、うまく重なった。
 いらぬ誤解を与えぬようただそれを置いたように優しく触れたのだが、恥ずかしいものは恥ずかしい。
 パシュッ、となにかが抜けてしまったような感触を当麻は右手に感じた。
 多分これで魔法は去った。なのだが、
「………………」
「………………」
「………………」
 とてつもなく気まずい。
 三者沈黙に加え、タバサとその母親は場の空気のと同じくらい凍っている。
「あはは……はは?」
 耐え切れなくなった当麻がスバッと手をそれから放して、苦笑いを浮かべる。
 しかし、被害者であるはず母親は呆然としている。まるで今自分が何をしているのかわからないような。
「……ッ」
 その対応にほうけていたタバサはハッとした表情を浮かべた。
 先程までとは当麻に対しての対応が違う。ならば、先程と違ってしまった理由など一つではないか。
 一人の娘として、
 安否を気遣う娘として、
 ずっと願っていた娘として

 少女は、母親に駆け寄る。

 しかし、

 母親の目は以前と同じ、死人のような目であった。


「心を狂わす魔法、か」
「さようでございます」
 客間に戻った当麻は執事から事情を聞いた。
 タバサが継承争いの犠牲者である事。父親を暗殺され、母親には心を狂わす魔法薬を飲まされ独りぼっちになってしまった事。彼女が解決困難な仕事をやらされている事全て。
(くそったれが……)
 ふざけるなと思う。
 この世界ルールなど当麻は知らない。継承者争いが過酷であるのなんてどうでもよい。
 ただ、タバサがこんな辛い目にあうのが許せなかった。
 たった一人の女の子に対してそこまでするのが、当麻には絶対許せなかった。
 そして、少し離れたところに居座るタバサとその母親に視線を移した。

 魔法で心を病まれた婦人。それを幻想殺しで打ち消しハッピーエンドという程現実は甘くはなかった。
408名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 23:20:24 ID:abYXntFn
支援
409とあるの人 ◆3WQsphoeLI :2007/11/29(木) 23:22:37 ID:YpdgqFGk
 確かに魔法は消え去った。今までの幻想殺しの威力を目の当たりにしてきた当麻ならはっきりと断言できる。
 しかし、それはあくまで魔法だけ。今まで培ってきた心へのダメージは残ったままであるのだ。そして、幻想殺しには回復効果がない。
 信じたくない。だが、そうでなければ今の母親の状態を説明するなどできない。
 悔しいが、これが現実。紛れも無い、現実。
 よくなった部分もある。以前のように暴れる事はなくなり、外に出るようにもなった。今もこうして客間にくつろいでいる。
 しかしその代償として、呼吸という最低動作しか行おうとしない。感情もない。一言でその状態を表すとするなら人形が一番だ。
 一方のタバサはつきっきりで母親の手を握っている。
 これが望んでいた結末と言えば全然違う。しかし、母を苦しめる魔法が消えただけでも十分だ。
 そう言い聞かせるかのようにタバサは小さく笑う。
 久しぶりだ。
 いつまでも感情を表に出さなかったタバサが、笑ったのだ。
 それは本当に小さく、一瞬であった。しかし、十分過ぎる一歩、大きすぎる一歩だ。
 その姿に執事は目を丸くしていた。
「まさかお嬢さまが……」
 おそらく今まではありえなかったのだろう。言葉と感情を失ったあの日から、きっと執事は見た試しがなかったのだ。
 と、その時だ。

 タバサの母親も、また小さく笑ったのだ。

 その瞬間をタバサは見逃さなかった。
「母さま」
 もしかしたら、なにか起きたのかもしれない。
 淡い期待を抱いて声をかける。奇跡がここで起きたらどれだけ素晴らしい事なのだろう。しかし返事はない。
 すでに無表情に戻っており、再び人形と変わらない状態になっている。
 それでも、それでもだ。確かに笑ったのだ。タバサと同じようにとても小さかったが、疑いの余地はない。
 ならばどうして笑ったのだろうか? 心はもう壊れているはず。ならば感情を出すのは不可能なはずなのに。
――心はまだ生きている?
 ドクン、とタバサの鼓動が一瞬だけ大きくなる。
 まさか、と思う。そんな事は理論上ありえない。魔法は確実に心を壊したはずなのに。
 しかし、
 一度思った疑問(げんそう)は離れない。
 そうでなければ先の体験を説明できる術がない。そうでなければきっと自分は納得しない。
 そこまで考えてタバサは結論に至った。
――まだ、母親の心は生きている

奇跡(げんそう)は、起きたのかもしれない。
410とあるの人 ◆3WQsphoeLI :2007/11/29(木) 23:24:02 ID:YpdgqFGk

 その日の夜、眠りにつこうとした当麻はタバサに呼び出された。

「どうした……? こんな夜に」
 当麻の指摘はもっともだ。辺りは寝静まっており、起きているのはこの場にいる二人だけであろう。
 時刻はおそらく深夜をまわっている。時計がないため確認はできないが、窓から見える月の高さで何となく判断した。
 当麻は一回あくびをし、未だに眠たそうな表情を浮かべる。
 一方のタバサは平気な様子。むしろ、今までずっと起きていたのかもしれない。
「あなたに感謝をしたくて」
 ありがとう、と付け加える。
 いつもと同じく、簡潔に締める。そして沈黙。どうやらこれで終わりのようだ。
「……あのー、それだけですか?」
 当麻の質問に、タバサはこくりと頷く。
 わかりやすくて有り難いのだが、話がこれで終わってしまうのはどうかと思う。
(まぁ仕方ないか……)
 当麻はタバサの過去を聞かされた。そして、それがどれだけ辛い出来事かなんてわかるはずがない。

 ただ、それは一人の少女に感情と言葉を失わせる代物であるとだけはわかった。

 そこまで考えて、当麻はある結論に至る。
 失ったのならば、再び手に入れさせればいい。それぐらいなら、今の自分でもできる。
「なぁタバサ」
なに? と聞き返したタバサに当麻は続ける。
「どうせ寝れないんだろ? 話し相手にでもなろうか?」
 タバサはもう感情と言葉を失う必要がないのだ。いや、違う。
 今のタバサには感謝と言葉が必要なのだ。
 母親にお手本を見せるために、
 母親の心を取り戻すために、
 今まで失っていた時間を取り戻すために、
 きっと、それは必要になっていくものだ。
 最初、タバサは当麻の言葉が理解出来なかったようだった。
 口をポカンと開けて呆然と眺める。そして、しばらく経ったのち、ぽつりと呟いた。
「そこまでやらなくても――」
「おいおい、いまさら途中退場とか特別ゲスト扱いしないでくれよ」
 タバサの内容は当麻のそれによってかき消された。どうやらやる気満々であるらしい。

 再びなにかを言ったところできっとこの少年の意思は変わらない。
 それだけこの少年には心強いなにかがある。それだけこの少年には頼れる部分がある。
 特別な力はその右手にしかないのに、
 それ以外は普通の人間となんら代わりがないのに、
 でも、『強い』と思えてしまう。
 そう思う自分がいる。そう思う感情がある。
 悔しい。
411とあるの人 ◆3WQsphoeLI :2007/11/29(木) 23:25:29 ID:YpdgqFGk
 こうすることが最善だと思っていた。誰にも頼らず、己だけですべてを解決しようとしたらいつの間にかこうなっていた。
 自分が間違っているとは思えない。しかし、
 この少年の行動が羨ましいと感じてしまう。
 自分はこのような行動を求めていたのだろうか?
 違う。少女はその問いを即座に否定した。
 自分は求めていた。少年のような行動を取ってくれる人物を。
 自分は求めていた。そのようなヒーローに守られるヒロイン(自分)を。
 だから、悔しい。この少年はとあるメイジの使い魔なのだ。
 そこに、自分の場所はない。
「あなたにはルイズが……守るべき主がいるから」
 だからそこまでする必要はない。たとえ少年が首を縦に振ろうとも、少女は立ち去るつもりであった。
 本当は悪い事をしたのだと思っている。勝手に他人の使い魔を連れ去るなんてとんでもない事だ。
 それでも、その時は救いたい一心だった。
 目の前には自分の母親を治す事ができるかもしれない能力者がいる。それを見過ごせる事などできるわけがない。
 だから、もうこれだけで十分であった。これ以上自分のわがままに付き合う必要などないのだ。
 自分の感情と言葉など、一人でなんとかなる。誰かの助けが必要とか、そういった要素もない。
 しかし、
「何いってるんだ?」
 少年は疑問を浮かべる。否定ではなく疑問。
 少女は目を丸くする。なにか自分は間違った事を言ったのであろうかと。
「たしかにルイズとは使い魔と主の関係だけどさ、だからってお前を助けない理由にはなんねーだろ?」
 え? と思わず聞き返した少女に、何をいまさらと言った表情で少年は答える。

「だって俺たち友達だろ? 困っていたら助ける、当然の事じゃねーか」

 少女の時間が、止まった。
412名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 23:28:58 ID:xyKqbqI+
支援
413とあるの人 ◆3WQsphoeLI :2007/11/29(木) 23:30:26 ID:YpdgqFGk
「ってお前が俺と友達じゃないっていうのなら、アンリエッタを救うときに最後まで付き合ってくれたんだ。こっちも最後まで付き合わせてくれよ」
 少年は少女の状態など気にせずに続ける。
「あー……、それともあれか。一人でこっそりと努力したい奴とか? それなら、しゃあないけど……」
 勝手に納得し、勝手に唸る少年の姿は少女の視線に入っていない。
 まず最初に浮かんだ言葉が『おかしい』であった。
 何年振りであろうか。この気持ち、この感情。
 それは、もう二度と味わう事ができる物だと思っていなかった。
 それは、あまりにも懐かしくて一体何であったか思い出すのに時間がかかってしまった。
 その感情が久しぶりに現れてくれたのが嬉しいのか、少女の体が小刻みに震える。
 居場所が、ある。
 自分は、一人じゃない。
 そう感じた瞬間、
 少女の頬に透明な雫が伝った。
「って泣いとる!? 待って、俺なんかまずいこと言った!?」
 女性に涙を流すなど死刑ものだと思っている少年は慌てる。しかし、少年の姿を見て、少女はさらにポタポタと涙が零れていく。

 彼女の視界には少年以外の姿が写っていた。

 それは幻想だろう。なぜならこの場にいるはずがない面子なのだ。
 少年の主に少年を慕うメイド、少年に決闘を挑んだ貴族にその幼なじみ、そして、
 かけがえのない親友。
 いたのだ。
 今まで一人で生きてきたと思っていた。今まで一人で戦ってきたと思っていた。
 だけど、それは違う。
 一人なんかじゃない。
 仲間が、友達がいるのだ。
 大切な、大切な仲間が。
 手を差し出せば届くような距離に、
 ずっと、ずっと待っていたのだ。
「あなたは幻想殺しなんかじゃない……」
 そこまで思って、浮かんだ言葉を少女は口にする。
「だって、こんな素晴らしい幻想をわたしに与えたのだから」
 涙でぐしゃぐしゃの顔であるが、無理矢理笑おうとする。それは不器用で、不細工で、不恰好で、しかも口元が僅かに緩んだ程度の物。
 しかし、少年ははっきりとそれが笑っているのだと理解する事ができた。
 なぜなら、今の少女は、

 とても幸せそうに感じられたから。
414名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 23:30:33 ID:/opVH/V9
当麻イイヤツだなー支援
415名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 23:30:40 ID:J2q72FrV
とうまはどこに行ってもとうまだな支援
416名無しさん@お腹いっぱい。 :2007/11/29(木) 23:32:02 ID:EKnWlnSR
支援
417名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 23:32:42 ID:abYXntFn
支援
418とあるの人 ◆3WQsphoeLI :2007/11/29(木) 23:33:50 ID:YpdgqFGk
以上、いつもより少し長めでした。
タバサの母親についてはいろいろ言われると思いますが、
とりあえず心は壊れたけど接し方では治るかも、と思ってくれたら幸いです。

では次の方どぞー
419MtL ◆kuURZAsPV. :2007/11/29(木) 23:36:39 ID:YhpipzxZ
では40分から投下しますー。
420名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 23:38:22 ID:bmZklb8X
いい話や。うるっときたよGJ!
421MtL ◆kuURZAsPV. :2007/11/29(木) 23:41:11 ID:YhpipzxZ
マジシャン ザ ルイズ (25)正気か否か

浮遊大陸、白の王国、空の真珠、風の国。
詩人にそのように称えられたアルビオン王国は今に無く、取って代わったはずの神聖アルビオン共和国もまた無い。
そこにあるのはありとあらゆる者が死滅し、腐敗し、死に損なって徘徊する黄泉の国。
吐き気を催す邪悪の気配を感じる地、それが現在のアルビオンであった。

かつてはその美しさを歌に謡われた王都ロンディニウ。そしてその王城であるハヴィランド宮殿においてもそれは変わることが無い。
その中枢、王の間。
数少ない生者の一人が、王にのみ座ることを許された玉座に腰掛けていた。
周囲には闇、粘度を持ってこびりつく様な黒が蟠っている。
染み一つ無い真白を纏っているにも関わらず、違和感なく暗黒と同化している男、彼の名はジャン・ジャック・ド・ワルド。
灯によって生まれ変わり、多次元宇宙ドミニアを渡り歩く力を得た存在、プレインズウォーカーの一人である。

数万からなる死者の軍勢を従えた王は言葉を発さない。
だがその顔には、怒りと、苦悩と、そして狂気が刻まれていた。
世界そのものを左右しうる比類無き神の如き力、それを手に入れたワルドが思い煩うことはただ一つ。

(ルイズ……ルイズ、ルイズ、ルイズ、ルイズ、ルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズ
 ルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズ
 ルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズ
 ルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズ
 ルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズ
 ルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズ
 ルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズ

 始祖の再誕、虚無の花嫁、次元の姫君、僕のルイズ!」

いつしか想いは何時しか奔流となって、その口から迸っていた。

ワルドにとって唯一つの執着、それはあの若き日の婚約者ルイズ。
彼はただ一人の女性を想い焦がれ、その一挙手一投足にまで思いをはせる。
彼女の瞳、彼女の髪、彼女の指先、彼女の身体、彼女の声、彼女の力、その全てを思い描いたワルドは得も言われぬ恍惚感を感じ……そして激怒した。
「――なぜだ!!??」
石作りの王城に、雷鳴の如き叫びがこだまとなって響き渡る。
返事をするものはいない。
そもそも、この城において生きることを許されたものは、彼を除けば二人しかない。
そしてその二人はこの場に居合わせておらず、ならば答えるものなどいるはずが無い。

「なぜだルイズ! なぜ君は僕を分かろうとしない!? なぜだなぜだなぜだ!?」

体から溢れ出た魔力が衝撃となって四方へと伸び、周囲の床がびしりと音を立ててひび割れた。
「僕はこんなにも君を愛しているというのに! なぜ君は受け入れようとしない!」
猛り狂う感情が魔力の放出に拍車をかけ、床や壁から細かな破片が飛び散る。

そう、ジャン・ジャック・ド・ワルドはルイズ・ド・ラ・ヴァリエールを、深く深く愛していた。
トリステインへの侵攻を企てていた神聖アルビオン共和国皇帝クロムウェルを真っ先に抹殺したのも、それを唆していたシェフィールドを葬ったのも全ては彼女の為。
虚無の担い手であるルイズに対して良からぬことを企てていたガリア王ジョゼフを誅殺したのも彼女の為。
両国を利用し、トリステインへと宣戦布告したのも、ゲルマニアを制圧したのも、ロマリアと交渉し不干渉を取り付けたのも全ては彼女を手に入れる為。
少々の予定外はあったが、何もかも彼女の為。どのような手段を用いてもルイズ個人を手に入れる為に起こした行動なのであった。
422名無しさん@お腹いっぱい。 :2007/11/29(木) 23:42:45 ID:EKnWlnSR
支援
423名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 23:42:55 ID:4UHcbssl
Tropical Island買ったついでに支援
424MtL ◆kuURZAsPV. :2007/11/29(木) 23:44:09 ID:YhpipzxZ
全ての戦争、全て争い、現在起きている全ての混乱、悲劇、憎しみ、悲しみは、一切がルイズという個人に帰結するものであった。
自分自身の愛の深さをルイズに示し、そして彼女の全てを手に入れる。
その為にもまずはトリステインという国を人質にして、その身を手に入れる。
そうしてからじっくりとルイズと心を通じ合わせるつもりでいた。
彼女が自分を愛するようになるまでは時間がかかるかもしれない、だが必ず分かってくれると思っていた。

――だがどうだ? 彼女が自分を見る目は怯えしか宿していなかったのではいか?――
握り締めた拍子に、玉座の縁が砕け散った。

「……違う」
そうだ、悪いのはあの男だ。
あの男がルイズの傍に立って、彼女を誑かしているのだ。
ウルザがルイズと自分の間に障壁となって立ちはだかっているのだ。

確かに、四千年もの年月を積み重ねたウルザの力は強大だ。
『転生』したばかりの存在である自分とは比べ物にならないほどの力や知識、技術を有しているだろ。
だがそれが何だと言うのだ。屈してなるものか。
あれは亡霊だ、過去に取り付かれた悪鬼だ。
未来を紡ぐ事ができない、ただの狂人だ。
過去を振り返るしか能の無い老人は死ね、未来を生きる自分に道を譲って死ね。
死ね
死ね死ね
死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね

ワルドの瞳が朱に輝く。

そのとき、ふいに闇の中、影が動いた。
一つではない。
一つ、二つ、三つ、四つ、五つ。否、正しくは五人。
闇に紛れ姿を隠した黒装束の男達。
それまで潜んでいた彼らは、錯乱したかのようなワルドの様子を好機と受け取ったのか、殺気を隠さず襲いかかった。
暗闇に生きる彼らにとって視界を閉ざす黒は傷害になり得ない。
そこすでに必殺の間合い。

けれど、彼らは読み誤った。
闇こそはワルドの化身。
その姿を捉えることなど、今の彼にとっては児戯より易い。


王座に座ったままのワルドが、右の手首を払う。
それだけで一人目の暗殺者の上半身が文字通り闇に食われ、消滅した。
――殺してやる――
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね


左手で虚空を握りつぶす。
飛びかかろうとしていた二人目の暗殺者が、肉片と化して弾けた。
――僕とルイズの未来のために――
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
425名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 23:45:08 ID:VL66E49U
支援
426名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 23:45:53 ID:abYXntFn
支援
427名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 23:46:04 ID:Vp1ALezG
支援
428名無しさん@お腹いっぱい。 :2007/11/29(木) 23:46:12 ID:EKnWlnSR
支援
429名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 23:46:17 ID:4UHcbssl
狂気の瀬戸際支援
430名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 23:46:50 ID:b+0x9pTZ
なんか避難所スレスレ支援
431MtL ◆kuURZAsPV. :2007/11/29(木) 23:47:11 ID:YhpipzxZ


仲間の屍を踏み越え肉薄した暗殺者が、大振りなナイフをワルドの心臓へと突き立てようとする。
刃が触れた途端、三人目は時間を早送りされたように腐敗し朽ち果て、そして砂となって崩れ落ちた。
――貴様は死ね――
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね


ワルドが朱色の軌跡を残しながら正面を向いた。
不運にも視線を正面から見てしまった哀れな四人目は、その瞬間に心臓を停止した。
――そして彼女を手に入れる――
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね


慌てて逃げようとする最後の一人に、ワルドは一言呪いの言葉を呟いた。
その瞬間、五人目には永遠に逃れることのできない狂気と、慈悲深い緩慢なる死が約束された。
――待っていろ、プレインズウォーカー・ウルザ――
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね


今なら分かる。人間とプレインズウォーカー、その存在としてステージの違いを。
人がプレインズウォーカーに挑むというのは、蟻が人に挑むことに似ている。
どれだけ粋がったところで、下等な虫けらが人間に挑むなど滑稽でしかない。
人の身でどれほどの修練を積み、どれほどの技を身につけたとしても、プレインズウォーカーに適うはずがない。
思い出されるのはラ・ロシェール、そしてニューカッスル城、二つの戦い。
人間ワルドがプレインズウォーカー・ウルザに挑んだ。
なんと滑稽なことだろう。自分はあのとき八つ裂きにされ、磨り潰され、塵芥に分解され、次元の彼方へと追放されてもおかしくなかった。
けれどあの老人はそれをしなかった、わざわざその力を抑え人としての身で自分と戦った。
――憎い――
それは余裕の表れか、滑稽な余興のつもりだったか、それとも人の身であった自分への哀れみか。
どれにしろ、あの男は自分を高みから見下していたのだ。
だが、自分は力を手に入れた。あのときとは違う。
足りない力は補えばいい、そうして自分は今度こそあの男を同じ目線で戦うことができる。
先の戦いでは邪魔が入ったが、次こそはあの男を十全の力をもって葬り去ろう。

そうしてルイズを手に入れるのだ。

再び一人になった闇の中、ワルドがおかしそうにくつくつと声を殺して嗤う。
暗殺者達の死体は、既に痕跡すら残さず消え去っていた。

ルイズを求めるワルド。
だが、彼は気づいているのだろうか?
その考えが、ところどころ破綻をきたしていることに。
そもそも、本来は目的の為の手段としてルイズを手に入れようとしていたことを覚えているのだろうか。

彼の胸元で、ペンダントが虚しく揺れていた。


432名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 23:49:14 ID:H3I8tXDU
支援
433MtL ◆kuURZAsPV. :2007/11/29(木) 23:50:09 ID:YhpipzxZ
小さな吐息が聞こえる。
人々が寝静まった静寂の時間、部屋には二人の姿。
一人はベットの中で安らかに眠るルイズ、そしてもう一人は机に向かうウルザ。
彼は机の上に置かれたランプの灯りを頼りに、開かれた本に淀みなくペンを走らせている。
そうして彼は今、手先を細かく動かしながらも別のことを考えていた。

思索に耽っているのはルイズの病についてのこと。
進行性変性症候群。
それが彼女を蝕む病の名であった。
その病こそは古代スラン文明の文献・伝承に繰り返しその名を語られる不治の病『ファイシス症』に違いなかった。
曰くファイシス症に侵された者は、身体の内外から腐り果て、やがては死に至る。
そして、その治療法は見つかっていない、昔も、今も。

ルイズが眠っている間に様々な検証を行った、だが、得たものは少ない。
手にできたものは、大きな確証に小さな進歩。
ルイズの身に起きている異変がファイシス症の急性発症であるとの確証と、ウルザの力を持ってしてもその病を取り除くのは不可能だという事実。
古代スラン文明において、パワーストーンに長期間接することで発症するとされたファイシス症、なぜそれが彼女に発症したかについては、彼なりにいくつかの推測を立てていた。
その中でも、これまで彼女が何度も示してきたパワーストーンへの高すぎる順応性が仇となったのではないかとの仮説が有力であるのだが、今更それを抑制したとしても発症した病の治癒には繋がらない。

実のところ、ウルザ自身もファイシス症の患者を実際に目にするのはこれが初めてとなる。
パワーストーンに支えられていた古代スラン文明が崩壊してすでに七〇〇〇年、力を残すパワーストーンそのものが希少である為、それに由来するファイシス症の患者は長く確認されていない。
かつてトレイリアのアカデミーにおいてこの分野についても研究が進められていたが、ウルザ自身はそのような研究に興味を惹かれなかった為深くは関わらなかった。
このことが今となっては悔やまれるとは当時は思っても見なかった。
あるいは家族を弔うべく、トレイリアをまきの山と化したバリンであったならば、何かを知っていたかもしれない。
ウルザ自身はあくまでアーティフィクサー、役割で言うなら魔術的なことはバリンが受け持つというのが、ここ千数百年の習慣だった。

息を吐き、絶え間なく動かしていたペンの動きが止まる。
バリンを、友であり、良きパートナーであり、そして最後は復讐にとりつかれたドミナリア最強のウィザードを思い出し、しばし思考と指先を停止させた。

ファイシス症の最もやっかいな点は、魔法による治療が不可能であるという一点に尽きる。
その治療に有効とされる方法は、彼の知識の内には外科的なアプローチの他にない。
あるいはバリンの知識があったとしても、彼には何も手が打てなかったかもしれない。
そういう意味では、この場にいるウルザこそが治療には相応しいと言える。
しかし、このプレインズウォーカーを持ってしても、決定的に欠けているものがある。

それはデータだ。

現在ウルザはルイズに対して、投薬による治療を続けている。
魔法を一切使用しない、科学的な薬剤療法。これは確かに魔法による治療に比べれば格段の効果が認められた。
実際に彼女は起きて話していたし、暫くすれば立って歩くことも可能だろう。
だが、それは目に見える外面の部分だけである。
彼女の体の内部や末端神経、そういった部分は確実に病魔は蝕まれている。そのことは彼女自身にもすでに自覚症状となって現れているに違いない。
やはり、投薬による治療には限界があると言わざるを得なかった。
ならばなぜ、このような効果の薄い治療を続けているのか、それは臨床データの決定的な不足に起因していた。
外科的治療を行うにしろ投薬治療を続けるにしろ、限られた時間の中でこれ以上の進展を求めるなら、臨床データの入手が急務といえる。
そして、現在のハルケギニアでそれが手にはいるとすればただ一つ。
434名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 23:51:07 ID:4UHcbssl
《結核/Phthisis》支援
435MtL ◆kuURZAsPV. :2007/11/29(木) 23:53:16 ID:YhpipzxZ

思考を閉じて、再びペンを走らせる。
閉じれば厚さが拳一つ分はあろうかという本、そのページに超人的な速度で文字が躍る。
間断なく書き綴られていくのは、現在この世界で読み書きされる二種の文字、ルーン文字と公用文字。
ハルケギニアのメイジなら誰でも簡単に読み進められるそれで、ウルザは自身が知るドミニアの魔法とその理論とをびっしりと書き込んでいく。
ウルザの手によるそれは、この世界で初となるハルケギニアのメイジ向けに書かれたマナを用いた実践魔術書と言えるものだった。
今は白、緑、赤、青、黒、五色のマナについての項目を記述しているところであった。
膨大な紙面を割いて理論を説明し、マナの練り方と土地からの供給法、そして基本的ないくつかの魔法を書き記した。
治癒の軟膏/Healing Salveの作成法、巨大化/Giant Growth、ショック/Shock、ぐるぐる/Twiddleの使用法、暗黒の儀式の秘術。
基礎から応用、実践までを一冊に纏めた教導書であり、魔術書でもあり、秘本でもあるそれは、ただ一人のために書かれている。

ルイズを救う為の方法の一つ、その為の下準備としてウルザは書を記す。
試せる手段があるなら、それがたとえどの様な犠牲を払うこととなろうとも、ウルザはそれを試すつもりでいた。
そのことに対してルイズ自身がどのような感情を抱くとしても。




プレインズウォーカーには狂気が宿る。
久遠の闇からの祝福を受け、多次元宇宙ドミニアを渡る力を持ち、神の如き力と強大な魔力を有するプレインズウォーカー。
しかし、彼らは多かれ少なかれその身の内に、必ず狂気の種子を持っている。
故に、彼らの正気の度合いを測るのは難しい。


                         狂っているって?狂っているとしたら、それはお前自身だ。
                                    ―――ワルドからウルザへ
436MtL ◆kuURZAsPV. :2007/11/29(木) 23:55:16 ID:YhpipzxZ
以上で投下終了です。

それでは、次の方どうぞー。
437虚無の王:2007/11/29(木) 23:56:13 ID:JILqfydQ
MtL氏乙です〜

では0時頃から行きます。
438名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 23:57:07 ID:4UHcbssl
乙。ルイズの寿命について悲観的にしかなれない。
そしてファイシス症の臨床データを持っているといったら……ヨーグモスしか居ないじゃないか。
439名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/29(木) 23:59:25 ID:WM/GX7TF
傑作の連続投下にただ圧倒されるばかり支援
440虚無の王 Trick17 1/18:2007/11/30(金) 00:00:42 ID:A27m5nRv
 春が終わり、季節は夏に差し掛かろうとしていた。
 早朝の風は爽やかだが、日中ともなれば、日陰で暑さをかわすのが賢明だ。
 この季節は天気が変わりやすい事もあり、幌付きの馬車は良い選択だった。
 タルブ村はラ・ロシェールの近郊。魔法学院から馬で二日ばかりの距離に位置している。 
 昨日はやや強行軍。一晩を宿で過ごした。目的地はもう、目と鼻の先だ。

「紳士諸君っ」
「はい、なんでしょう?ミスタ・ギトー」
「そう、諸君は紳士だ。そして、あちらは御令嬢。それを、等しくメイジと呼ぶのは、不適切ではないだろうか?」
「しかし、他に適当な呼び方もありません」
「無ければ作ればいい。そう、例えば“魔法少女”と言うのはどうかね?」
「おおっ!魔法少女ですか!」
「素晴らしい御提案です!ミスタ!」

 ギトー、マリコルヌ、レイナールの三人は相変わらずだった。

「貴族って……」
「だから、一緒にしないでっ!」

 シエスタが軽蔑的に呟く貴族に、ギーシュは含まれていない。身贔屓とは違う。
 幼馴染みの貴族令嬢と、脱いだら凄いメイドに挟まれた少年は、仲間達が交わす崇高深淵な会話に、参加したくても出来ない状態だった。
 右に左に、ギーシュは目を泳がせる。
 額に浮いた汗は、初夏の暑さだけが原因では無い。
 一見澄ましたモンモランシー、満面に笑みを浮かべたシエスタは、宿を発ってから殆ど一言も無く、ただ自分を挟んで意味あり気な視線や仕草を交換している。

 ギーシュですが、馬車内の空気が最悪です――――

 内心で、そんな呟きが漏れる。
 溜息を一つ。ギーシュは小さな決意と共に、ぐっと身を起こした。
 これは、試練だ。
 薔薇の運命を背負った自分に、天が与えた試練なのだ。
 薔薇はその美しさをもって、荒んでしまった人の心を癒す存在でなくてはならないのだ。

「……時に二人とも。一つ、質問が有るのだがね」
「質問ですか?」
「何よ?」

 今朝の出発から、二人と初めて交わした会話がこれだった。由々しき事態だ。

「なに、ちょっとした心理テストさ。旅の無聊の慰めになれば、と思ってね」

 野に咲く一輪の薔薇を見掛けたとする。それを見て、貴女はどうするか?
 それが、ギーシュの用意した設問だった。自分が、自身を薔薇に喩えているのは周知の事実。
 さて、この二人は薔薇を――――自分をどうする?

「……その薔薇、綺麗なの?」
「とても美しい薔薇だ。この世に二つと無いだろう」
「そう。なら、切り花にするわ」

 モンモランシーは迷わず答えた。

「切り花……かね?」
「ええ。日が経ったら、色が褪せない内に、魔法で氷中花にするの。そうすれば、この世に二つと無い薔薇を、何時までも自分の物にしておけるでしょう」

 その答えに、ギーシュはぞっとした。薔薇より先に、自分が凍り付きそうだった。

「えっと……その薔薇はどんな所に咲いているのでしょう?」

 シエスタは別の事を確認した。
441名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 00:00:55 ID:AiJHKGGB
支援
442虚無の王 Trick17 2/18:2007/11/30(金) 00:02:00 ID:A27m5nRv
「荒野だ。辺り一面、何も無い茫漠たる地だ。何日にも渡って彷徨い、疲労困憊した旅人は、一輪の薔薇に心を癒されるのだ」
「なるほど……そう言う事でしたら、食べます」
「……食べ……るのかい?」
「ええ。薔薇の花弁の汁は甘くて美味しいんですよ。古くから、旅人の渇きを癒した、と言いますし」

 ギーシュは震える。
 それでは、シエスタは潤うかも知れないが、自分はカラカラに搾り取られてしまう。

「で、あんたは?」
「え?」
「ギーシュ様はそんな時、どうなさるんですか?」

 一瞬、遅れてモンモランシーは気安い呼称に気付き、睨みつける。
 メイドはわざとらしい笑みで、自身の頭を小突く。

「あら、いけない。私ったら。人目が有るのに」

 ギーシュは慌てた。
 人目が有るのに?無い時は、何をしている?
 あらぬ疑いに、モンモランシーの眉がつり上がるのが見えたからだ。

「そ、そうだね。僕はだね……」

 さて、どうする。
 その場を収めようと、急いで答えたものの、ギーシュは答えを全く考えていなかった。
 薔薇の花と言えば、自分以前に、可憐な女の子達だ。迂闊な事は言えない。
 どうする?どうする?どうする?君なら、どうする?

「どうするの?」
「どうなさるんですか?」
「そ、それは……やっぱり、無闇に手を触れたりせずに、ゆっくり鑑賞するかな。うん。薔薇の美しさは野に在ってこそだよ。はは。あはは。あはははははっ……」

 ギーシュは笑った。乾いた笑みだ。
 いかにも白けた様な、二人の視線が痛かった。

「“清童〈チェリー〉”のギーシュ」

 その様子に、タバサは感情の籠もらない声で呟いた。
 ギーシュが睨みつけるが、お構いなしだ。

「“清童〈チェリー〉”のギーシュ」

 これはモンモランシーだ。ギーシュが振り向いた時、ぴったりじゃない、と呟いた。
 シエスタは無言だった。無言だったが、何を言いたいかは誰の目にも明かだった。
 ギーシュはいたたまれなくなった。



 馬車の中は三つのグループに分かれていた。
 ギトーを中心として、貴族の有るべき姿と、生命の神秘、大宇宙の真理について語り合うレイナールとマリコルヌ。
 ギーシュを挟んで、無言の闘争を続けるモンモランシーとシエスタ。小動物はストレスに弱いと言う事実は念頭に無いらしい。
 そして、空を中心とした残りの一団だ。
 空の話題は、座学の時間を利用してルイズに聞かせている類の物だった。つまりは、日本を中心とした地球諸国の説話、偉人伝等だ。
 文明圏が違い、時代が違い、当然の様に価値観も異なる為だろう。現代日本人なら聴衆は素直に感心する所、議論が百出する。
 何故、それがいい話なのか。彼女はどうしてそんな事をしたのか――――誰だ?ヒロインに好きな娘の名を付けろ、などと勧めた奴は。
 発言の多くはルイズとコルベール。トリステイン人と言う奴は議論好きだ。
 キュルケは所々で鋭い指摘を入れる。
 タバサは一人、本を読んでいる。黙々と、では無い。時折、思い出した様に意見を挟む。
 どうやら、周りの会話もきっちり耳に入っているらしい。器用な物だ。
443名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 00:02:30 ID:v8wgkJ3u
Nice ギーシュ 支援
444虚無の王 Trick17 3/18:2007/11/30(金) 00:03:18 ID:A27m5nRv
「こらこら、雪ん子。仲間と居る時くらい、本は止め。風のメイジなんやから、空気読め」
「あんた、て偶に真面目よね」
「いいのよ。その娘は。でも、本当に本が好きよね。まるで新教徒みたい」

 キュルケは笑いながら、小さな頭を撫でてやる。
 空は顔を帽子で被った。
 その光景はまるで親子の様に微笑ましかったが、口にすれば相手の気分を害するだろう。勘の良い二人の事だから、表情だけでも気付きかねない。

「……なんか、ここに来てから、ワイ、大人んなった気がする」

 テロの下準備から、平和な生活に落ち着いていた為だろうか。
 それにしても――――

「雪ん子、まさか本当に新教徒やあらへんやろ?」
「読んでるだけ」
「そら、安心やわ」
「新教徒だと何か?」
「危険な連中や」
「危険、ですか?」

 コルベールの声はどこか複雑だったが、気付いた者は居ない様だった。

「オリジナルが不明で、偽書だらけの聖典を根拠にした実践教義言う話やからな」
「それが何か?」
「団体毎、地域毎、一握りの人間が、聖典を解釈する権利を独占出来る言うこっちゃ。体制によっては、聖典自体を書き換える事かて出来よる」

 教会組織が脆弱な宗教は、しばしば権力者に悪用される。
 ここで言う権力者とは、必ずしも国家政府を意味しない。寧ろ既存の秩序とは無縁な、暴力的支配者達が当てはまる。

「例えば、今、お隣さん大変やろ。貴族派が支配地で新教の強制を始めたり、紛争で孤立した地域が新教徒に制圧された場合を想像して見い」

 そこには、支配者が神の如く振る舞う事も可能な、悪夢の閉鎖社会が誕生する。
 その上、他の偽書を奉じる団体とは当然、相容れず、摩擦が起これば激突するしか無い。

「独裁者言うんは、自分の物にならん権威を一等憎みよるからな。この辺りならブリミルはんやろけど、その教えを自由に出来る。どこのどいつが考えたんか知らへんけど、うまいこと出来とるわ」

 思想を兵器とする発想は、幸い、未だハルケギニアには存在しない。
 それよりも、お隣の国の貴族派と言う言葉の方が、若い少年達の正義感を刺激した。

「貴族派か……」
「最近、元気ええらしいな」

 蜂起から数ヶ月。貴族派の活動は停滞していた。
 王党派の大貴族は勿論、その傘下にある下級貴族や、若い貴族達に対しても、なかなか切り崩しが進まず、遠からず自然崩壊するのでは、と見られていた。

「王党派引き込も言うなら、王家が約束している以上の物を与えんといかんからな。せやかて、仲間が増えたら、切り分けられるパイも減りよるわ」

 おまけに、現王家を倒したら、と言う空手形だ。彼らの勢力拡大が頭打ちになったのも、当然と言えば当然と言える。
 それが、何故今になって情勢を挽回所か、王党派を追い詰め始めたのか?

「その空手形の中でも、最近、新たに提示し始めた物が、どうにも魅力的らしくてね」

 両隣の少女を放って、ギーシュは言った。
 忌々し気な声だ。余程、腹に据えかねているらしい。
445名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 00:03:59 ID:rk+xwSrG
虚無の王の作者さん、この文章量を連日ってなんて執筆速度だ……。
446名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 00:03:59 ID:v8wgkJ3u
ヒロイン?ドラゴンだろう?JK…… 
姫に好きな子の名前なんて付けるもんじゃない。 支援。
447虚無の王 Trick17 4/18:2007/11/30(金) 00:04:40 ID:A27m5nRv
「色々有る様だけど、一番気になったのは、相続権の平等かな」
「“平等”ね……」

 眼鏡を押さえるレイナール。
 ルイズの不愉快そうな声は、決して眼鏡男子の態とらしい仕草が原因ではあるまい。

「ほう。そら、三女のルイズや、四男坊のボーズにゃ、悪く無い話なんやないか?」
「で、良ければ財産の分散を避ける為、僕は修道院送り。悪ければ家門が衰退する、か。冗談じゃない」
「けど、アルビオンの貴族が皆、そんな風に考える訳じゃないからね」

 彼らの目標は王権の打倒、共和制の樹立、ハルケギニアの統一だ。
 そして、実現する理想社会の根幹をなすのが、自由、平等、人権――――。

「馬鹿馬鹿しい。王権は貴族によってのみ偉大となり、貴族は王権によってのみ名誉を得る物だ。連中は王家を破壊して尚、貴族で有り続けられるつもりなのか?」
「大体、自由と平等、て矛盾してるじゃない」
「でも、内憂も払えない王家じゃねえ。存続する意味有るの?」
「君はゲルマニア人だからそう考えるんだろう」

 伝統深きトリステイン貴族の言葉に、新興国ゲルマニアの貴族令嬢は吐息を漏らす。さも、つまらなそうな顔だ。
 その様子を、コルベールは黙って眺めていた。貴族派のやり方はともかくとして、その主張の一部には、共感出来る物も有る。
 尤も、それが口に出来る雰囲気では無さそうだ。

「……進歩的革命思想か。虚構の理論つー奴やな」
「虚構の理論?」

 その声に、喧々囂々意見を交わしていた若い貴族達は、一端言葉を打ち切った。

「一見、正当性が有りそうやけど、実態は無い。現有の体制は破壊しても、新しい秩序を作る事には益しない。
こいつの厄介な所は、概念それ事態が神聖不可侵で、止む事無く追求すべき、無謬の価値かの様に錯覚を起こさせる所でな」

 貴族派膨張の理由はそれだろう。
 新しい概念に飛び付いた若い貴族達。王権さえ省みない彼らが、今更主家を気にかける訳が無い。
 寧ろ、古い伝統に縛られた一門は、理想実現の上で、邪魔な存在となる。
 貴族の少年達は歯噛みする。
 空が言う通り、アルビオンでは若い下級貴族達による謀反、主家領地の乗っ取りが横行している。

「なあ、ルイズ。“福祉”て憶えてるか?前、話したやろ」
「ええ、憶えているけど……そう言えば、何だか貴族派の主張に当てはまる様な……」
「そらそうやろな。福祉言うんは、家族制度の対極に有る物や」

 無い袖は振れない。高度な福祉を実現する為には、国民に負担を強いなければならない。
 負担が大きくなれば、国民は相互扶助の力を失う。
 行き着く所まで行けば、国家以外に頼る事が出来なくなる。

「虚構の理論に共通しとるのは、権力者と民衆の間にある中間共同体の破壊を目的にしとる点や。宗教、階級、組合、地域、家族。皆、独裁の邪魔になりよる。バラバラの“個人”相手が一番、楽やからな」
「しかし、ミスタ・空。彼らの主張の一つに有る、“人権”は……」
「人権は人道と違うで、コッパゲ。あないな物は、説教強盗のへ理屈や」

 一同は青ざめる。キュルケも心なしか表情が硬い。
 社会が信仰と善意で成り立っていると信じる若い貴族達にとって、空が語る偽善と悪意の社会はおぞましさの度が過ぎていた。

「けどなあ。普通、この手の理屈は体制にきっちり組み込まれて生きとる者からは出て来いへん。せやから、虚構言うねんけど……」
「貴族派は裏から操られている?」
「せやなかったら、自分の手足喰う様な真似せんやろ。大抵、既存社会に特権をねじ込も言う、外来の少数派が出所なんやけど……」

 空は歯切れが悪い。ハルケギニアでは民族問題や移民問題をまるで聞かない。
 すると、貴族派の裏に居るのは何者だ?
 誰が彼らに、その思想を吹き込んだ?
448虚無の王 Trick17 5/18:2007/11/30(金) 00:06:07 ID:A27m5nRv
「いまいち、思い当たる集団は無いけど、貴族派を叩けば、尻尾を出すのではないかな?」
「でも、アルビオンの内紛でしょう。内政干渉になるわ」
「隣国の動乱は自国の危機でしょう。内乱を収め切れない政府に、そんな言葉を口する資格は無いわ」
「しかし、下手に手を出して、不安定な地域に引きずり込まれるのもね……」
「奴らは今や、ハルケギニアに於ける、あらゆる秩序の敵だよ。神の敵だ。王党派が力を残している内に、挟撃して叩くべきだと思うね。さもないと、取り返しのつかない事になる」

 戦争は貴族の本分。軍事、戦史、英雄譚こそ紳士に相応しい話題とされる。昨今は男女平等なる怪し気な思想の下、女性も戦闘意欲旺盛で、この手の話を好む。
 真剣かつ活発に意見を交わす若者達を、ギトーは頼もし気に、コルベールはどこか浮かない顔で見守っている。
 もう一つ、物憂げな顔が有る。

「皆さん、戦争、お好きなんですか?」

 一人、話題に取り残されていた人物。平民のシエスタだ。
 ぽつり、と呟くその一言に、一同は怪訝な顔を見せる。
 ルイズは身を強張らせたが、それに気付いた者は居なかった。

「私、戦争は嫌いです。私達平民は何時も巻き込まれるばかりで……」

 殺し合うなら、貴族同士、自分達だけで殺し合えばいい――――
 その本音は、さすがにこの場所では、口に出来なかった。
 一同の反応はまちまちだった。或る者は嘆息し、或る者は肩を竦め、或る者は呆れた様子で頭を振った。ルイズはじっと、目を伏せた。
 誰もが、平民の言葉に感銘を覚える事も無ければ、歓迎もしていない、と言う一点だけで一致していた。

「君、それは誤解だ」

 一人、真剣に反駁したのはギーシュだ。メイドとの特殊な関係がそうさせた。
 自分達は平民を戦いに巻き込んでいるのでは無い。守る為にこそ戦うのだ、と。

「例えば、そうだね――――」

 ギーシュは幌の窓を開けて、外を覗き込む。街道の淵から、地平線までが、鮮やかな緑に染まっている。
 タルブの大草原。
 まるで緑の海とでも言うべき光景に、同じ様にして外を覗き込んだ学生達は感歎の息を漏らす。

「美しい草原だ」
「ええ。以前、お話しした草原――――憶えていて下さったんですね」
「ああ。だが、これだけ広大な草原は、艦隊の絶好な降下地点になる。もし、アルビオンが貴族派の手に落ちれば、近隣の諸地域は、神を知らない蛮人供の軍隊に蹂躙されてしまうだろう」

 不吉な宣告に、シエスタは青ざめた。

「判るかい?僕はそんな事にはなって欲しくはない。この美しい草原が戦火に焼かれ、神を信じて生きる、我がトリステイテンの良民が侵されるのを見たくは無い。だからこそ、今すぐにでも、アルビオンの動乱に介入すべきだと考えているんだ」
「……でも、それではアルビオンの人々が苦しむのでは?」
「彼等は貴族派によってこそ苦しめられている。我が軍は、蛮人供とは違う」

 勿論、アルビオンの民に一切の影響無しとは言わない。
 だが、座して自国の領地、領民が侵されるまで待つ事との二者択一となれば、どちらを取るべきかは考えるまでも無いだろう。

「戦を好む平民は居ない。貴族嫌いの平民も少なくない。だが、そうした者達も含め、我々貴族は民を守る為、戦わねばならない――――父の教えだ。
無名の師は忌むべきだが、守るべき名誉が有る時、躊躇う貴族は居ない物だよ」

 シエスタは沈黙した。納得した訳では無い。
 ギーシュは戦争が不可避である事を前提として、どこで戦うかだけを語っている。
 戦争それ自体が起きない道が有る筈では無いのか。そう思いたかった。

「ま、固い話はこの辺にしとこか」

 空は手を叩いて、皆の注意を引いた。

「村が見えたで」
449名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 00:06:19 ID:v8wgkJ3u
さすがテロのプロ 支援
450名無しさん@お腹いっぱい。 :2007/11/30(金) 00:06:54 ID:Tnaz8HIu
支援
451名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 00:07:13 ID:AiJHKGGB
支援
452虚無の王 Trick17 6/18:2007/11/30(金) 00:07:31 ID:A27m5nRv

   * * *


 タルブ村は小さな村だった。
 タルブ村は奇妙な村だった。
 広さで言えば、以前に訪れたマルティニー村と大差が無い。端から端まで、五分とかからない。
 その狭い村のあちこちに、木製のハーフパイプが設えられている。
 “飛翔の靴”を履いた若者が、右に左に振り子の様に漕いで加速を付けるや、エアでトリックを決める。
 この辺りでは珍しい事に、各民家の周りは鉄の格子柵で囲われてるが、これとて必要が有っての事では無い。明らかにグラインド――――ウィールを使わない滑走――――の為に用意された物だ。
 まるで、スケートパークだ。どうやら、村民老若男女挙って、インラインスケートにはまっている村らしい。中世欧州より、ややマシな程度の文明圏の小村で、だ。
 一同は村の入り口で馬車を降りた。
 田舎村特有の、よそ者に対する警戒心を帯びた視線が出迎えたが、それも集団の内に同胞を発見するや、途端に弛む。

「シエスタだ!」
「シエスタが帰って来たぞ!」
「“王”の帰還だ!」

 あちらこちらで走っていた若者達は、口々に叫んだ。

「“王”?」
「あっ。私がこの辺りでは、一番“飛翔の靴”が巧くて……それだけです」

 シエスタの知り合いと判るや、村人達はきさくな面を見せた。とは言っても、馴れ馴れしくも無礼でも無い。あくまで、距離を置いた親切な態度だ。
 久しぶりに走らないか――――度重なる誘いに、ローラーメイドは着替えてから、と断りを入れる。

「ヒットぉぉおぉおおっっっっ――――!」

 突然の悲鳴に、一同は振り向く。
 傾斜した鉄柵の脇だ。一人の若者が倒れたまま、鈍い痙攣を見せる。

「メガヒットだっ!」
「鬼ゴケだ!」
「……無茶しやがって……」

 どうやら、村人の知人の貴族と言う珍客を前に、いい所を見せようと難度の高いトリックに挑んで失敗したらしい。

「……大丈夫なの?随分、苦しそうにしているけど」
「あかん。レールがもろ脇に入った。肋骨イっとるな」

 口々に囁くルイズと空。途端にモンモランシーが駆け出す。
 杖を振るう貴族の少女を、若者達は不思議そうな目で見つめている。一番、不思議な顔をしているのは、怪我をした当人だ。
 地獄の苦痛がみるみる引いて行く、と言うのは、何とも言い難い体験だった。
 姿勢を正し、深々と頭を下げる若者達。
 そんな彼等の姿を、空は無言で見つめている。その並外れた聴覚は、狭い村のあちこちで交わされる会話を捉えている。
 彼等の使う用語が、殆ど現代日本のインライン用語と合致しているのは、召喚以来度々経験している翻訳効果の為か。
 それとも……――――

「なあ、シエスタ。この村に、“飛翔の靴”が広まったのは何時頃や?」
「え……曾祖母が未だ若い頃に広めた、て聞いています。オリジナルなら、寺院に有りますけど、見て行かれます?」
「“オリジナル”?」
「ええ。今、村で使われている物はレプリカ……なんだそうです」
「じゃ、後で案内して貰おか」

 曾祖母が若い頃――――となると、用語は翻訳、と素直に考えて良さそうだ。
 ここで、シエスタは一同と別れる。
453名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 00:07:45 ID:o52+I22Q
ギーシュの幸せを祈りつつ支援
454名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 00:08:12 ID:zarHFl7H
読みふけって支援が追いつかねえ支援。
455虚無の王 Trick17 7/18:2007/11/30(金) 00:09:15 ID:A27m5nRv
「あの娘は来ないの?」
「滅多に無い帰郷や。酒飲むより、家族と過ごしたいんやろ」
「それもそうね」

 ギトーの行きつけだと言う酒蔵に向かう。村の外れだ。
 ハーフパイプやミニランプ、グラインド用のレールとしてしか機能していない鉄柵等に目を奪われて気付かなかったが、タルブはインライン一色の村である前に、まず葡萄酒一色の村だった。
 日に焼け塗装が落ちた物、未だペンキの匂いがしそうな新品、瓶に手書きで文字を書いた物、新旧大小形状、どれをとっても様々な葡萄酒の看板が、至る所にかけられていた。

「ミスタ・ギトーは葡萄酒がお好きなのですね」
「?……いや。あまり好きでは無いが」
「また、御冗談を」
「何を勘違いしているかは知らないがね。私は葡萄酒も、貴族令嬢も好きでは無いのだよ」
「……ミスタ?」

 レイナールは唖然とした。一瞬、我が師の頭がおかしくなったのかと思った。
 彼の存在意義を揺るがしかねない、爆弾発言では無い。

「……ま、またまた、御冗談を……」
「冗談では無い。だからこそ、私は葡萄酒にもパンチラにもうるさいのだ。本当に美味な葡萄酒、本当に美しい御令嬢以外は、口にしたくないし、見たくも無いのだよ!」
「!……ああ!我、未だ師に及ばず!」

 レイナールは叫んだ。ギーシュは感歎の息を漏らし、マリコルヌは感涙する。
 反対に女生徒達は沈黙する。一体、村人達がこの会話を聞いてどう思うのか……。

「「「「「貴族って……――――」」」」」
「一緒にしないでっ!」

 一斉に呟く村人達に、女生徒は叫ぶ。ルイズとモンモランシーは悲鳴の様に、キュルケは心底不愉快そうに。
 酒蔵は高い石壁に囲われていた。
 中には細長い、飾り気の無い建物が聳えていた。
 主人と思しき、白髪の男が一同を出迎える。
 遠い所をようこそ。よくいらっしゃいました――――好きな様に利き酒をして、気に入った物を買って行けば良い、と言う。なかなか太っ腹な話だ。
 蔵の中は薄暗く、初夏の日差しを浴びて歩いて来た身としては、寒い程だった。
 思わず肩を震わせていると、グラスが配られる。これもまた、ヒンヤリと冷たい。

「何これ」

 ルイズは仰天した。ワイングラスのつもりで受け取ったそれは、まるで脚の付いた金魚鉢の様だった。
 瓶の2/3は入ります――――その説明は、貴族の少女を二重に驚かせる。

「なんで、利き酒にこんな大きなグラスが必要なのよ」

 所が、文句を言っているのは、ルイズ唯一人だった。
 残りの面々は最初から飲む気満々だ。
 口に含んだ酒を、飲みもせずに吐き出せる程冒涜的な人物は、どうやら極めて少数派の様だった。

「明日は授業が有るんだからっ。皆、程々にしときないさよっ」

 ルイズは魔法が使えない。だからこそ、返って貴族らしさに拘泥する。昨今では珍しい程、真面目な学生だ。
 “ゼロ”故に人望が無い為、単なるうるさ型と見られがちだが、並程度にでも魔法が使えれば、クラスの纏め役となった事だろう。

「僕はねえ……僕はねえ〜」
「僕は酔って無い。まだ、ちっとも酔ってないぞ!」

 さめざめと泣き出すギーシュに、真っ赤な顔で捲し立てるマリコルヌ。仕切りに眼鏡を押さえてポーズを取るレイナール。
 ルイズの言うことなど、誰も聞いていない。それ以前に、早くも酔っている。
456虚無の王 Trick17 8/18:2007/11/30(金) 00:10:35 ID:A27m5nRv
「あら、ヴァリエール。何、ぼーっと突っ立ってるのよ」

 キュルケが金魚鉢に接吻すると、赤い液体はみるみる消えて行く。
 どうやら、ツェルプストーの家系は色ばかりで無く、酒に対しても豪であるらしい。

「何よ。私はそんなに飲んでないわよ」

 言葉通り、モンモランシーは大して飲んでいない。味を確かめては、足下の排水溝に吐き捨てている。
 と、波々と白の注がれたグラスを手にしたタバサが、無言のまま、目の前に立った。

「……なによ?」
「手品」

 タバサがじっと瞳を覗き込んで来る。何だろう。ルイズも見つめ返す。
 その目が、不意に右を見る。釣られて倣う。
 前に向き直った時、グラスは空になっていた。

「不思議」
「目放した隙に飲み干しただけでしょっ」

 それはそれで凄い事だ。だからと言って、褒める気にはなれなかった。
 改めて、辺りを見回す。
 酒蔵の中は壮観だ。直径が4メイルは有る樽が、ずらりと並んでいる。
 奥は霞んで見えない。樽の一つ一つには、チョークで産地と年代とが記されている。
 引率者たるべき教師はどうしているだろう。
 ギトーはテーブルに突っ伏して眠っている。酒には弱いらしい。比較的平和な酔い方に、ルイズは安堵する。
 一方、コルベール。赤の注がれたグラスを両手に、じっと目を伏せている。まるで、ゆらゆらと光を弾く葡萄酒の表面に、人生を覗き見ているかの様だ。
 その半径3メイルだけ、一際薄暗く、空気が重いのは気のせいだろうか。

「ひゃっ」

 と、不意に後から背を突かれた。空だ。

「空っぽのグラス片手に歩き回っとってもしゃあないやろ。何か飲んだらどや?」
「そうね……口を含んだ葡萄酒は、あそこに吐き出せばいいのかしら?」
「そら、そうなんやろけど……飲まんのか?折角の上物を」
「美味しいの?」
「奥の方に有る、熟成した奴は悪く無い」
「明日、授業が無ければ良かったんだけど……」
「オリーヴオイルを匙一杯飲んどけばええ。胃に膜が出来て、悪酔いせんで済む」
「そうなの?」

 空が頼むと、主人は早速オリーヴオイルを持って来てくれた。
 言われた通り、スプーンに一杯啜る。

「手品」

 見ると、タバサがキュルケを前に、同じ事をやっていた。
 年上の少女は、凄い凄い、と相手の頭を撫でている。

「ねえ。前から思ってたんだけど、あの二人、母子みたいじゃない?」
「し。聞かれたらマズい」

 恐らく、どちらもいい顔をしないだろう。
 空が奨める一杯をグラスに軽く注ぐ。まずは、若く軽い物から。
 グラスを揺らし、香りを楽しむ。アカシアの花にも似た熟成香が、鼻腔を擽った。口に含む。辛口で程良い酸味が有る。
 なるほど、空の言う通り、これを排水溝に吐き出すのは罪悪と言うべきだろう。
 数種類を試していると、何やら香ばしい香が漂って来た。主人と使用人が両腕一杯に料理を乗せている。
457名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 00:10:59 ID:v8wgkJ3u
契の王はいないだろうから…… 誰だろ、支援
458虚無の王 Trick17 9/18:2007/11/30(金) 00:12:06 ID:A27m5nRv
「昼食は未だなのでしょう?これはサービスです」

 簡素な木造のテーブルに、様々な料理が並んだ。
 胡椒の実入りのソーセージ、栗の葉で包まれた山羊のチーズ、唐辛子のマリネ。バスケットには大蒜とオリーヴオイルで揚げたパン。ハーブとマスタードを使った野ウサギのローストに、鴨の脂で煮込んだポテト。
 否が応でも酒が進む。
 この手の込んだサービスで、主人はそれ以上の物を回収した。
 二時間の約束で利き酒を始めた貴族達は、結局三時間たっぷり飲んだ上で、気前よく追加料金を払い、アルコールに淀んだ頭で、山程の葡萄酒を買い込んでいった。
 懐が決して暖かくない大多数は、後日、二日酔いとは別の意味で頭を抱える事になる。



「では、皆さん、こちらで〜す」

 ふわふわとした足取りに、ふわふわした口調で、シエスタは先導する。
 時間を見て酒蔵に赴いた時、ろくでなしの貴族達は相変わらず飲んでいた。結局、30分ばかり付き合う羽目になったのだ。

「ああ、シエスタ。君には双子の姉妹が居たのだね。初めて知ったよ……」
「ベタですけど……ギーシュ様、酔ってますねえ」
「僕は酔ってなーいっ!」
「あー、はいはいっ。ミスタ・グランプレはあまり飲まれなかったんですね。はいはいっ」

 ギーシュとマリコルヌは道幅を一杯に使って右に左にフラフラと歩く。
 終止無言のレイナールもそれは変わらない。時折、思い出した様に眼鏡を押さえる。

「えーと……よくお似合いです。そのお眼鏡」

 気を使ったつもりで、シエスタは世辞を言った。失敗だった。
 レイナールは延々、私服姿のメイドの周りで、眼鏡を押さえ始めた。

「諸君。酔い過ぎですぞっ。これは紳士に相応しい飲み方では無い」

 ゆっくりと飲んでいた為だろう。コルベールは殆ど素面だ。
 少し飲み過ぎたのだろうか。モンモランシーの足取りには力が無い。時折、思い出したかの様に頭を押さえる。
 キュルケはいつもより、やや陽気で多弁。程良く酔っているらしい。
 タバサはほんのりと桜色に染まった顔で、時折眠そうに目を瞬かせる。目尻には涙が浮いている。
 ルイズは大して飲んでいない為か、女子陣の中でも酔いが浅い。透明感の有る氷肌に、薄紅色がうっすらと透ける。
 一人、殆ど飲んでいないギトーは、最後尾で少女達の火照った項を楽しんでいる。慎ましい彼は、何時でも最小限で満足する。

「こら、らくちんや」

 すっかりと良い気分になった空は、ルイズに車椅子を押されて、天を仰いでいる。
 寺院が見えて来る。
 最初に目についたのは、階段両側の壁でグラインドを決めるライダー達だ。
 この村の人間は本気でインラインスケートが好きらしい。滑りの良い大理石は格好の餌食だ。

「ルイズ。ちと……」

 空は少し酔っていて、機嫌が良かった。ルイズに手を放す様に言うと、寺院前の階段へと向かう。
 驚くべき速度の車椅子に、一人が気付いた。二人目が振り向いた時、自在輪が階段にかかっていた。空は両腕に力を込めて漕ぐ。
 車椅子が跳んだ。
 重い車椅子が、重量感はそのままに、羽根の軽さで舞う。
 乗り手と椅子とが一つの車輪と化した時、ライダー達は声を失った。
 彼等にとって、階段〈ステア〉とは上からエアを決める為の物であって、下からジャンプランプとして使う物では無かった。
 後方宙返り。
 着輪は五段上だ。更にもう一転――――トリックを決める空よりも、見ている方の目が回った。
 有り得ない。クレイジーだ。ゆっくりと回転する車椅子が、陽に溶ける。
 更にもう一回転――――更にもう一回――――髪の毛が階段を叩く。
 ――――サスペンションが軋み、車椅子が音を立てて跳ねる。
 車椅子が階段上に到達し、イカれた乗り手が腕を差し上げた時、階段の上で下で、歓声が爆発した。
459名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 00:13:22 ID:zarHFl7H
食べ物の描写うますぎるだろ。
腹減ってきたよ支援
460虚無の王 Trick17 10/18:2007/11/30(金) 00:13:23 ID:A27m5nRv
「おい、あんたっ!凄ぇっ!何者だっ!」
「ダーリン!凄いわ!凄い!」

 比較的、酔いの浅い女子陣は階段を駆け上った。ルイズは途中、帽子を拾ってやる。

「なあ、あんた達、どこから来たんだ?」
「トリスタニアや」

 魔法学院と言うよりは、この方が判り易いだろう。敢えて、細かい所は省く。
 それを聞くと、ライダー達は残念がった。一緒に走るには、少し遠過ぎる。
 と、空の後に続く集団の服装に気付いたか、若者達は姿勢を正した。

「皆さん、折角来られたのですし、どうですか?村の名物、“飛翔の靴”。体験されて行きませんか?」

 ライダー達の目は空と、誰よりもモンモランシーに向けられていた。先刻の出来事は、既に村中に広まっている。
 彼女が居てくれれば、難度の高いトリックにも挑戦し易い。そんな思惑が有る。

「結構よ。私達はスカートだし……」

 モンモランシーはちらり、と男子陣を見やる。
 完全に泥酔している。論外だろう。

「ああ、それなら大丈夫です」

 村の若者は、さらりと言ってのけた。

「タルブ村“飛翔の靴”競技規則第一条!酒気を帯びていない者の出場は、これを認めず!」
「認めず!」

 後に控えた一団が復唱する。
 正気だろうか?――――モンモランシーはシエスタに振り向くと、

「ええ。本当です」

 笑顔で返されてしまった。
 他にも、得点勝敗は衆議を以て決すべし。審判、実力者の鶴の一声を以て決すべからず。
 競技中の悪意に満ちた野次、中傷、妨害行為はこれを推奨する、と言ったルールも有るらしい。
 いずれも、品性の有る貴族の少女達には、理解し難いルールだった。

「良ひっ!そ、その挑戦、受へた!」

 ギーシュが叫んだ。呂律が回っていない。かなり酔っている。

「ちょ、ちょっとあんたねえ……」
「グラモン家の男は決して後を見へないっ!見せなひのでありますっ!」
「何言ってるのよ!大怪我するわよ!」

 モンモランシーは制止するが、ギーシュは聞き入れない。酔って気が大きくなっている訳では無かった。
 生まれついての性分であり、教育故だ。

「グラモン家家訓その七!獅子は我が子を千尋の谷に突き落とすにも、全力を尽くすと言うぅうっ!」

 ここまで言い切られては、止めようも無い。

「……戦場では真っ先に死ぬタイプね」
「もう!好きになさい!」

キュルケは呆れた様に嘯く。
 さすがのモンモランシーも、恋人を見捨てた。
461名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 00:13:44 ID:v8wgkJ3u
なんか、腹へって来た 支援
462名無しさん@お腹いっぱい。 :2007/11/30(金) 00:14:17 ID:Tnaz8HIu
しえん
463虚無の王 Trick17 11/18:2007/11/30(金) 00:14:56 ID:A27m5nRv
 ここで二つのグループに別れる。
 男子陣は揃って“飛翔の靴”に挑戦。そこには、タバサも紛れている。
 事故に備える衛生兵モンモランシー。
 コルベールは監督責任を感じつつも、結局、“オリジナル”への好奇心に抗う事が出来ず、寺院参拝に。
 ギトーがどちらに着いたかは言うまでも無い。

「所で、“オリジナル”は何時頃から有るものなんや?」
「それも、曾祖母の頃から……と、言うか曾祖母が持ち込んだ物なんです」

 シエスタは説明する。
 曾祖母は或る日、村にふらり、と現れた。その時、山の様な荷物を抱えていて、その中に“オリジナル”が紛れていた。
 これは羽だ。曾祖母はそう言った。自由を求める雛鳥達が、成鳥となって空を目指す羽だ、と。

「誰も、信じなかったらしいですけど……だって、実際に飛べないんですもの。曾祖母は色々、言い訳したらしいですけど……」
「イカレとった訳か」
「家族は苦労したんじゃない?」

 と、言うよりも、イカれたよそ者が良く家族を持てた物だ。

「それが、凄い人気者だったらしいですよ。美人で、人を乗せるのが巧くて、いつの間にか、集団の中心に居る人だったそうです。
レプリカも地元の職人にあれこれ注文して作らせたそうですけど、皆、文句一つも言わずに付き合った、て言いますし……
この辺りの職人さんが器用なのも、その御陰らしいです」
「“オリジナル”はなんで、こんな所に?」
「一度も使われないまま、貴族に固定化の魔法をかけて貰って保存してあって……それを、曾祖母をよく知っている人達が、ここに安置したそうです」

 寺院の本堂は黴っぽく、薄暗かった。
 目が慣れて来ると、まず十字架が目に止まった。
 周囲には、大小様々な金属の箱が並ぶ。

「何これ?」
「罪人を磔にする刑具でしょ」
「なんで、こんな物が寺院に?」
「はて……しかし、ただの十字架では無い様な……」

 二人の少女と、一人の中年が怪訝そうに呟く中、空はしきりに目を擦っていた。

「……アカン。ワイ、飲み過ぎたかも知れへん。妙な物が見えよる」
「もう……。大丈夫?」

 と、外から悲鳴が響いた。続いて爆笑。
 誰かが派手な失敗をやらかしたらしい。

「大丈夫でしょうか?」
「まるがりが着いとる。心配要らへんやろ。それより……」
「あ、はい。この箱に収まっているのが、“オリジナル”です」

 比較的、気軽に触れられる物なのだろうか。シエスタは手近な箱を開けた。
 中を覗き込むと、空はますます目を擦り始める。

「もう。どうしたのよ」
「アカン。本気で目、おかしくなりよった」
「だったら、触っちゃ駄目よ……モンモランシー、呼んで来る?」
「いや。ええ、ええんや。そりよりな、ルイズ。お前には、箱の中、何に見える?」
「え?……」

 ルイズは言われた通りに、箱を覗き込む。
464名無しさん@お腹いっぱい。 :2007/11/30(金) 00:15:42 ID:Tnaz8HIu
支援
465名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 00:16:07 ID:zarHFl7H
しぇん
466虚無の王 Trick17 12/18:2007/11/30(金) 00:16:21 ID:A27m5nRv
「……例の“飛翔の靴”に見えるけど……ちょっと、手の込んだ」
「素晴らしい!」

 不意に、コルベールが叫んだ。
 “オリジナル”は保管状態を上から眺めるだけでも、発明狂のメイジを失禁させかねない代物だった。

「なんや、おかしいのは、ワイの目やのうて、頭の方かい」

 空は“オリジナル”に手を伸ばす。

「どうなっとんねん。一体――――」


   * * *


 一同はタルブ村で一晩を明かす事にした。
 学生はその日の内に、タバサの風竜で帰る予定だったが、男子生徒の酔いが酷く、怪我を落ち着いて治す必要も有った。
 “飛翔の靴”を借り、寺院階段側壁のグラインドに挑んだメイジ達は敢え無く転倒。ギーシュは壁の向こうまで跳んで行き、レイナールは石段を一番下まで転げ落ちた。
 それでも、ギーシュ達は貴族の勇気を示す事が出来た事に満足し、それは決して間違いでは無かった。
 村の若者達は揃って、貴方方の“生き様”は目に焼き付けた、と語った。それが、初めて難トリックに挑む初心者の背中から滲み出る物である事を、幸いにして、誇り高き貴族達は知らない。
 ともあれ、村の若者達は勇敢な少年達を歓迎し、受け容れた。あの貴族は、お高く止まって村の遊びを馬鹿にする事も無く、寧ろ体を張って参加した。最高にイカれた連中だ。
 あちらこちらから、一晩の宿を提供する声が上がった。だが、何しろ人数が多過ぎる。
 分散しても良いのだが、結局の所、村の集会所に落ち着く事になった。村人は親切に食事や寝具を提供してくれた。
 食後――――。
 一足先に入浴を済ませた女生徒達は、寝台に腰掛け、くつろいでいた。

「サウナ風呂もなかなか気持ちがいいわよね」

 集会所のすぐ隣に有る協同浴場は、丸ごと客人達に供されている。
 サラマンダーの発する熱さえ、涼しいくらい、と嘯くキュルケは、庶民の使うサウナが存外気に入った様だ。

「それで、どうしてあんたは夏に弱いのよ」
「熱いと暑いは違うのよ。ほら、あんたも機嫌直して」

 キュルケはタバサの頭を撫でてやる。
 寺院を離れてから、小柄な少女は終止無言だった。
 カーブ――――角の有るグラインド対象――――を貫通出来なかった事が、余程悔しいらしい。

「でも、凄いですよ、ミス!」

 寝具の準備をしていたシエスタは、心底感心した様に言った。

「初めてで、あそこまでお出来になるなんて。カーブは真上に乗り難いですから、長距離は難しいのに、半分も行ったじゃないですか」
「彼は貫通した」

 タバサは漸く口を開いた。彼とはマリコルヌだ。

「え、でもあれは……」

 グラインド中、マリコルヌは見事に転倒した。その場で半回転。頭から大理石の上に転落する。
 そこで、奇跡が起きた。大理石の角に脳天を抉られた肥満児は、そのまま頭髪と引き替えに頭頂部でカーブを滑り切り、爆笑と喝采を同時に浴びる事となったのだ。

「ライバル……」

 呟くタバサの目線は、協同浴場に向いている。今は、男性陣が入浴している筈だ。
 シエスタは苦笑する。
 これを切っ掛けに、タバサが“飛翔の靴”にはまってくれたら、仲間が増えて嬉しいのだが……。
467名無しさん@お腹いっぱい。 :2007/11/30(金) 00:17:19 ID:Tnaz8HIu
支援
468虚無の王 Trick17 13/18:2007/11/30(金) 00:17:50 ID:A27m5nRv
「それにしても、これが玉璽〈レガリア〉ねえ……」

 部屋の真ん中に並ぶ機械部品の数々。
 その一つを手にとって、キュルケは言った。

「てっきり、杖みたいな形してる物だと思ったけど、靴型ってのは意外だったわね」
「でも、全部が靴、て訳じゃないみたい。例えば、あの十字架とか……」

 寺院に安置されていた“オリジナル”。
 それは“王”の証である“玉璽”、そして雑多なエア・トレックパーツと整備用機材の山だった。

「確かに、靴の形してんのは殆ど無いけどね。でも、これなんか、多分、部品なんじゃない。車輪みたいよ。“炎の玉璽”」
「“雷”は鎧っぽいわね」
「“風”は?」

 タバサが聞いた。

「無いんだって。全部が揃ってる訳じゃないみたい」
「それにしても、ちょっと信じられない話よね」

 シエスタの曾祖母は、空と同じ国の出身だと言う。
 それ所か、二人は知り合いだったと言う。
 ここまでなら、未だ信じても良いのだが、祖国に於て、二人は変わらない年齢だった、と言う。
 ここまで来ると、さすがにもう滅茶苦茶だ。

「空は色々とよく判らない事言ってたけど……時間の流れが違う、とか……量なんとか負債、とか……タイム……パラなんとか、とか……」
「時間の流れなんて、どこも同じだと思うけど」

 アインシュタイン以前の古い時間概念の中で生きるハルケギニアの人間にとって、空の言葉は理解を超えている。
 無理も無い。専門の学生でもなかなか理解出来ない難解な理論だ。
 ホーキング博士の元には未だ週に4、5通のペースで、相対性理論は間違っている、と言う内容の手紙が届く。

「ともあれ、これは私達が……と言うか、ダーリンが貰って行っちゃっていいのよね?」
「ええ。墓碑銘を読める人間が来たら、渡して欲しい――――曾祖母はそう遺した、と言う話ですから」

 ただ、村人には断りを入れた方がいい。シエスタはそうも言った。
 曾祖母を直接見ている年寄りにとっては思い出の縁だし、“飛翔の靴”を駆る若者達にとっては、神聖なシンボルだから、と。
 シエスタはオリジナルの一足を手に取る。
 “牙の玉璽”――――
 その全容を目にした時、コルベールは鼻血を噴いてぶっ倒れた。
 今は他の男性陣に先駆けて、カーテンの向こうで眠っている。

「……あの、これ動くんでしょうか?勿論、普通の“飛翔の靴”としてじゃなくて……」
「壊れてさえいなければ、すぐにでも動かせる、て」
「これを履けば、本当に飛べる……?」
「特別な人間にだけ使える、特別な物だそうよ。力の足りない人間が使っても、大怪我する恐れが有るし、そうでなくとも、その能力を引き出す事は出来ない、て……」

 内心で、シエスタは項垂れた。また、“特別な人間”だ。
 やはり、自分の様な凡人は、一生飛ぶ事は出来ないのだろうか。

「あそこに有った部品で、幾つか普通のが作れそうだ、て言ってたわ。その気が有るなら、それで練習しろ、て」
「ミス・ヴァリエールはそうされる、おつもりなんですか?」
「私は止めておくわ。今はそんな事より、魔法の修練の方が大切だし」
「私もパスね」

 これはモンモランシーだ。
 とにかく、秘薬の研究に忙しくて、それ所では無い、と。
469名無しさん@お腹いっぱい。 :2007/11/30(金) 00:18:25 ID:Tnaz8HIu
深遠
470虚無の王 Trick17 14/18:2007/11/30(金) 00:18:56 ID:A27m5nRv
「私は興味有るわね」

 キュルケは浮き浮きとした口調で言った。目が輝いている。

「慣れれば、ダーリンが車椅子でするみたいに、走ったり跳んだり出来る訳でしょう。素敵じゃない」
「そう言えば、空の車椅子は、そのエアトレックとか言うのの技術で改造した物、て言ってたわね」
「ダーリンと夜空の散歩と洒落込むのも悪く無いわねえ。ヴァリエールはやらない、て言うし」
「と、当然でしょ。要はこの村の人達が履いてる玩具の延長じゃない。淑女の使う物じゃないわね」
「私はやる」

 これはタバサだ。
 シエスタは冷や汗を流した。果たして、自分にまで回って来るだろうか?

「それにしても、大丈夫でしょうか。空さん」
「んー、何だか、ずーっと考え込んでる風だったけど……」

 空の言う事は、信じ難い。だが、墓前で目にした背中は、演技で見せられる物とも思えなかった。
 沈黙が降りた。壁が薄い為だろう。耳を澄ませると、浴場の話し声が聞こえて来る。

{ボーズ!お前、夢無いんか?}
{夢かね?}
{そや、夢や!男やったら、なんか有るやろ!}
{決まっている。魔法を極めて、父の様に偉大な貴族となる事だ}
{阿呆!そないな物、夢ちゃうわ!一人前なりたい、言うとるだけやないか!夢や!もっとでっかい夢や!}

 どうやら、元気そうだ。ルイズは苦笑を浮かべた。

「男、て――――」
「まあまあ。殿方はやっぱり情熱が無いと」

 呟くタバサ。
 キュルケが肩を竦めながらも、フォローを入れる。
 シエスタは口元を押さえながらも、無言で耳を澄ませている。
 そっぽを向いているモンモランシーの耳朶もぴくぴくと動く。

{ピザ!お前はどや!}
{このマリコルヌ・ド・グランプレには夢が有る!}
{おう!どないな夢や!言うてみい!}
{御存知か、師よ!つい数十年前まで、通常、風呂は混浴であった事実を!}

 なんだか、話が怪しくなった。

{その時代に戻りたい、て?}
{いやいや……やはり、混浴はつまらない。見られて当然、ならば女の子も防御を固めているに決まっている。僕の夢は、無防備に入浴を楽しむ、女の子の姿を目にする事!}

 女子陣は目を見合わせる。
 何言ってるの、こいつ――――誰もが、そう言いた気な目をしていた。

{ああ、想像しただけでも、色々高鳴る……おっぱいの触りっこをして、また胸大きくなったね〜、とか……}

「何、この妄想!」
「そうよねえ。ヴァリエールなら、寧ろ抉れ込んで行きそうだし」

 ルイズが殺人的な視線で振り向いた時だ。
 浴室から、ぎゃっと悲鳴が響いた。
471名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 00:19:16 ID:KWmVE5AZ
タバサ手品ってwww支援
472名無しさん@お腹いっぱい。 :2007/11/30(金) 00:19:45 ID:Tnaz8HIu
支援
473名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 00:20:06 ID:v8wgkJ3u
ほぼ全部の玉璽!? 支援
474虚無の王 Trick17 15/18:2007/11/30(金) 00:20:10 ID:A27m5nRv
{なんや、ピザ。小っさいのー}
{痛いっ!もげるっ!マイ、ジョニー!もげるっ!}
{あー?こないなんが夢や無かったんかい?}
{し、師匠!僕の夢は男同士ではなくて……}
{全く、何をし……うわっ!――――れ、レイナール……!}
{ははは、ギーシュ。また、胸板厚くなったなあ}
{こら、ギトー!なに、女みたいに隠しとんねん!}
{いやあぁああっっっ!!}

 一同は沈黙した。
 一体、浴室で何が起きているのだろう。想像するだに、おぞましかった。
 片隅で、シエスタが溜息を漏らす。人生を諦めたかの様な、深い深い溜息。

「貴族、て――――」
「一緒にしないでっ!」

 悲鳴にも似た叫びが、夜空に響いた。


   * * *


 翌朝――――
 一同は早朝の内に出発する事にした。
 馬車はギトーが御者と共に、責任を持って学院に届ける、と言う。
 異論は無い。葡萄酒で一杯の荷台は、立錐の余地も無い有様だ。
 村外れの草原には、既にタバサの風竜が待機している。
 揃って“飛翔の靴”を着用。仕事の最中でも練習を怠らない若者達は、手を振って見送っている。
 同じカーブで共に難トリックに挑み、名誉の負傷を負った連中が、仲間で無くてなんだろう。
 貴族の少年達も、たった一時を共にした平民の若者に、奇妙な友情を覚えて手を振り返す。

「そうだ!写真を撮ろう!」

 唐突にギーシュは叫んだ。折角、持って来たのだ。使わない手は無い。
 幸い、ギトーは未だ出発していなかった。床に放置されたカメラを手に、急いで戻る。
村の若者達は未だ解散していなかった。姿が見えなくなるまで、手を振るつもりだろうか。
 存外、風竜を珍しがって、飛翔の瞬間を目にしよう、と待ち構えているのかも知れない。
 一緒に写真を撮ろう――――そう誘うと、若者達は怪訝な顔をした。まず、写真から説明しなければならない。
 この箱は、覗き込んだ光景を自動で絵にしてくれる機械なのだ、と。
 カメラをモンモランシーに預け、三人の男子は若者達と整列する。彼等はチームフラッグを手にしている。

「なんだね、それは?」

 この村では、数人毎にチームを作り、“飛翔の靴”の技術を競っているのだ、と言う。

「皆さんもチームを作られては?多分、タルブ以外では初めてですよ」

 撮影――――露光に10秒かかる。その間、被写体は身動ぎ一つする事も出来ない。
 後日、出来上がった写真を送る事を約して、貴族と平民、それぞれの少年達は別れた。
 と、言っても、村人達は解散しない。それ所か、益々人数が増えている。風竜はそんなに珍しい物だろうか。
475名無しさん@お腹いっぱい。 :2007/11/30(金) 00:20:47 ID:Tnaz8HIu
支援
476名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 00:21:16 ID:zarHFl7H
亀頭先生悲鳴カワユスwww
支援。
477名無しさん@お腹いっぱい。 :2007/11/30(金) 00:21:33 ID:Tnaz8HIu
支援」
478虚無の王 Trick17 16/18:2007/11/30(金) 00:21:41 ID:A27m5nRv
「私達も撮らない?」

 キュルケが提案した。異論が有ろう筈も無い。
 学生一同、タルブの大草原とシルフィードを背景に整列する。

「空は――――?」

 と、ルイズはぐるりを見回した。
 空が居ない。コルベールもだ。

「ああ。ミスタ・コルベールはもう少し残るそうだ。村の鍛冶技術が見てみたい、て」
「多分、ミスタも一緒じゃないのかな。あの二人、トリスタニアの工房で色々作ってるんだろ?」
「そう――――」

 村人に頼んで撮影して貰う。扱いは簡単だ。だからと言って、オートフォーカスが有る訳で無い。あくまで原始的なだけだ。
 他の村人が羨ましがる中、若者は興奮気味に操作。撮影――――

「さて、そろそろ行こうか――――」

 手を振る村人達に応えつつ、学生達は風竜に乗り込む。
 ルイズは一人、村を振り向いた。
 風竜がせかす様に翼を一打ち。突風に下生えが靡き、スカートが舞い上がる。

「ミス・ヴァリエール、早く!……授業に間に合わなくなる」
「……ごめんなさい。私、今日は休むわ」
「なんだって?」
「私も後から帰るから。行って」

 言うが早いか、ルイズは小走りに駆け出した。
 ギーシュは唖然とした。
 あの生真面目な公爵家の三女が、授業をさぼって学生同士の旅行に同行しただけでも驚きなのに、更にもう一日、場合によっては二日の授業を休む、と言う。
 正直に想像を絶していた。

「どうなっているんだ、一体?」
「最近、偶に変なのよ、あの娘」
「んー、察するにあれだ。恋煩いなのではないかね。ミス・ヴァリエールにも遅い春が来た、と」
「平民相手に?」

 モンモランシーは意地悪く言った。
 自分の恋人にメイドが接近している腹いせから、必要以上に言葉がきつくなる。

「だといいんだけどね……」

 キュルケは嘆息した。
 本当に、ルイズが空に懸想しているだけならいい。
 だが、あんな暗い、不安な瞳をして恋をする女が居るものだろうか?
479名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 00:22:30 ID:zarHFl7H
支援
480名無しさん@お腹いっぱい。 :2007/11/30(金) 00:22:52 ID:Tnaz8HIu
支援n
481虚無の王 Trick17 17/18:2007/11/30(金) 00:22:56 ID:A27m5nRv
 ラ・ロシェールの港町に、旧い練兵場が在る。
 嘗ては閲兵式にも用いられ、或いは決闘の舞台として、退屈を持て余した社交界の紳士淑女に一時の慰めを提供したこの場所も、今では資材置き場に化けている。
 今、その片隅で対峙するのは、杖を手にした二人の騎士では無い。
 一人は白い仮面で顔を隠した、貴族と思しき男。
 もう一人は車椅子に掛けている。
 空が左手を差し出すと、男は右手を差し出す。そして、軽く手背を打ち合わせる。
 これは二人が日頃用いる挨拶であり、仮面で覆われた素顔を特定する為の手段でもあった。

「浮かない顔をしているな。らしくもない。何が有った?」
「気にせんでええ。個人的な問題や。ちと、考えなあかん事があってな」
「まあ、いい。“おでこさん”から恋文だよ、“左手くん”」

 男は懐から、一通の封書を取り出した。
 空はツールナイフの小さな鋏で、丁寧に封を解く。

「何が書いてある?」
「見てへんのか?」
「御覧の通りさ」
「お前に届けさせる、つー事は、見て構へん言う事違うんか?」
「どうかな?僕を試しているのかも知れない」
「まあ、ええわ。お前がこっち着くんなら、教えたる」
「ふむ。残念だ」
「はっ」

 空は鼻で笑った。

「あのケチな連中に、何、義理立てとんのか知らへんけどな。あのクロムウェルたら言う坊主、道化やで。判っとるんやろ?」
「だが、力の有る道化だ。道化ならこちらからも操りようが有る。現状がより目的に近い、と踏んだ――――君の御陰も有るがね」
「そか。まあ、ええわ――――火」

 男は杖を抜く。剣にも似た拵えを持つ杖だ。
 先端に生まれた火球に、空は手紙を翳す。紙片にみるみる火が広がる。

「何を考えている?」

 足下で忽ち灰に変わる手紙を見つめて、男は言った。

「何がや?」
「君の行動は、あまりに唐突過ぎる。つい、少し前までは、利潤を求めるただの商人に過ぎなかった。更にその前なら商人ですら無かった。それが、今では“こちら側”に首を突っ込んでいる。何が目的だ?」
「は。人の心っちゅうんはな、気紛れっつー風でくるくる向き変える風見鶏やで。気紛れや気紛れ」
「気紛れ?」
「……ちゅうのは、まあ冗談やけど――――あいつらには感謝せな。ええヒント貰たわ」

 空は口元を浮かべた。
 今後の方針に頭を悩ませていた時の事だ。厨房の料理人達が目に止まった。
 彼等はその日も、貴族に勝った、貴族に勝ったと浮かれ狂っていた。調子に乗るあまり、ついには学生達に反抗的な態度さえ見せ始めていた。
 大多数の学生は、平民如きを相手にするのも大人げ無い、と無視を決め込んでいる。
 だが、その心中は決して穏やかでは無い筈だ。露骨に、怒りを露わにする者も居る。
 空は呆れ返った。何時か、大事になっても知らんぞ。貴族と戦争でもする気か――――そこまで考えて、はた、と気付いた。

「一体、何を企んでいる?」
「ええ役者が育っとるんや。ちょいとばかり、個性的な演技をする役者でな。派手に売り出して、世間様に認めさせよ思うたら、役者に合った、ええ舞台が要るやろ」
「舞台?」
「そや――――でっかい舞台や」
482名無しさん@お腹いっぱい。 :2007/11/30(金) 00:23:57 ID:Tnaz8HIu
支援
483名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 00:24:17 ID:zarHFl7H
考えが深いなマジで。
支援
484虚無の王 Trick17 18/18:2007/11/30(金) 00:24:20 ID:A27m5nRv
 抜ける様な青空は、自由の象徴だ。
 だが、それは決して万国共通と言う訳では無い。
 夜空を解放と捉え、青空に束縛を見る民族も居る。頭上を覆い、閉じこめる檻と見做す民族が居る。
 東方にそうした思想が有る事を、ルイズは一冊の本で知った。
 鍛冶師の元に居たのは、コルベール一人だった。仰天する教師に、空の居所を聞く。
 ラ・ロシェールに向かった、と言う。
 ルイズは後を追う。タルブの草原を走る。

「考えてみれば……――――」

 ルイズは膝に手をついて、息を切らせた。

「……近郊、て言っても、歩いて行ける訳無いじゃない……」

 タルブの草原はどこまでも続いていた。
 走っても走っても変化の見えない大草原。
 頭上には、青空が果てしなく続く。
 なるほど、これは檻だ。青と緑の檻だ。
 一体、どこまで行けば、解放されるのだろう。
 陽が高くなって来た。
 火の様な日差しが肩にどしりとのし掛かったが、日陰はどこにも見当たらなかった。
 ルイズは“空”を仰ぐ。

「……空、て……こんなに遠かった……?」

 昨日の出来事を思い出す。
 “風の玉璽”は無い。自分がかつて操った玉璽は無い。
 肩を落とす空に、どこか安堵している自分が居た。
 いつからだろう。こんなにも空が遠く感じられる様になったのは。
 いつからだろう。あの夢を見る様になったのは。
 空が立ち上がり、立ち去ってしまう夢――――
 初夏の太陽の下で、ルイズは身震いした。吹き出る汗に、冷たい物が混じった。
 確か、モット伯の一件から一週間が過ぎた頃だった。空はいつもの笑顔を浮かべて、言ったのだ。

 ルイズ、戦争好きか――――?


 ――――To be continued
485虚無の王:2007/11/30(金) 00:25:10 ID:A27m5nRv
御支援どうもありがとうございましたーっ

今回はここまでです。
486名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 00:25:52 ID:zarHFl7H
すげえ。毎度ながらクオリティ高すぎるだろ。
GJ!展開が楽しみすぎる。
487名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 00:25:52 ID:v8wgkJ3u
これはなかなか 支援
488名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 00:29:24 ID:v8wgkJ3u
ミョズさんともうお知り会いになってるんかー!
ワルドとの仲も良いし、空の人の本領が出てきてるなぁ。 
ルイズ、とにかく頑張れ。ギーシュ、とりあえず死ぬな。
GJっしたー。
489名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 00:30:09 ID:KWmVE5AZ
GJ!
読んでたら支援が追いつかなかったwww
490名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 00:35:51 ID:rk+xwSrG
相変わらず食い物を書かせると右に出るものはいないなあ。
491名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 00:49:30 ID:6tqILPZ1
ゾフィー隊長を呼びたい
492名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 00:56:59 ID:UqZEgf5f
王の人乙&GJ

最後の一行で『シュート!』を思い出した私。
トシ、サッカー好きか――――?

そして、
「早く、戦争になぁ――れ♪」
とやってるイザベラ様を連想したのも私だw

>>491
キュルケにトサカ燃やされる図しか思い浮かばないのですが。
493名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 00:59:47 ID:SMs3ykn6
GJ、その食い物描写の巧さには正直嫉妬する。


>>491
某誤学人や某司令官並みに使えなさそうだ。
494夏休みの使い魔:2007/11/30(金) 01:10:10 ID:jBROjJMy
キョン召喚、第一話投下します
495夏休みの使い魔(1/2):2007/11/30(金) 01:11:36 ID:jBROjJMy
それは―――彼らから見て、天頂方向より来た。

孤島でトンチキな推理劇を演じる事になったSOS団夏期合宿から帰ってきて、
ようやく俺は夏休み気分を味わい始めていた。
言うまでもなく学校からわんさと背負わされた課題の山なんぞを切り崩す気には全然ならず、
いつの間にやら八月も半ばを過ぎようとしていた頃……。
それは訪れた。

「あんた誰?」
抜けるような青空をバックに、俺の顔を覗き込む女の子が一人。
黒いマントの下に、白いブラウスとグレーのプリーツスカートを着込んでいる。
顔は……可愛い。桃色の髪に透き通るような白い肌。
勝気そうにくりくりと動く瞳が誰かさんを連想させ……いかん。
その目に一抹の不安を覚えた俺は、慌てて周囲の状況を確認する事にした。
俺はどうやら仰向けに寝転んでいるらしい。立ち上がって辺りを見回す。
携帯電話を取り出そうとして……寝巻き姿だった事に気付き、やめた。
「誰って……俺は……」
「どこの平民?」
平民?いや、確かに俺は生粋の平民と言えば平民だが、
改めてそれを指摘する事に一体全体何の意味があるというんだ?
「ゼロのルイズ!平民を召喚してどうするんだよ!」
「ちょ、ちょっと間違っただけよ!」
「間違いって、いつも通りだろ!」
「ルイズはいつもそうだ!」
俺を覗き込んでいた奴は、どうやらルイズというらしい。
外人みたいだ。いや、実際外人なんだろう。
周囲を囲む少年少女も異国情緒を振り撒く顔立ちばかりで、
まるで少々昔に流行ったファンタジー映画に出てくる魔法使いのようにマントを羽織り、
ご丁寧に小さな棒まで手にしている。コスプレか?それとも真性の……。
「ミス・ヴァリエール。どうやら『サモン・サーヴァント』は成功したようですね」
「ミスタ・コルベール!」
大きな木の杖に真っ黒なローブ、薄い髪の毛にメガネと、
その存在の全てで自分は魔法使いです、と主張しているかのような男が前に進み出た。
「さあ、契約を済ませてしまいなさい。召喚と契約の間は短ければ短いほど良いのです」
「で、でも!人ですよ!」
「前例はありませんが、使い魔は使い魔です。召喚した以上は、責任を取らなくてはいけません」
使い魔?サモン・サーヴァント?何なんだ、さっきからこいつらは何を言ってるんだ。
まさか妙な儀式をして、俺を使い魔とやらに仕立て上げるつもりじゃないだろうな?
「あんた、感謝しなさいよね。貴族にこんなことされるなんて、普通は一生ないんだから」
貴族?アホか。何が貴族だ。どうやらこの方々は自分は特別なんだと思いたいばかりに、
自分は魔法が使える、魔法が使えるんだから偉い、などと独特の論法を完成させた特殊な方々のようだ。
その貴族ってのも、どうせどこぞの団長様のように適当に偉そうな称号を選んだだけなんだろ?
俺は流石に嫌気がさして、何とかしてお暇しようと頭の中で適切な言い訳をこねくりまわしてみるのだが……。
「ちょっと、屈んでくれないと届かないでしょ!」
しかし。ルイズとかいう奴は俺の服を掴んで、ぐいっと引っ張ってある一言を放った。……ああ。
よりによって同じセリフを似たようなシチュエーションで吐く奴が二人いるとは思わなかった。

「協力しなさい」

俺は完全に虚を突かれて、このルイズとかいう奴のなすがまま、少し体を屈めてしまい……。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
抗議の声を上げようとした俺に、ルイズは強引に唇を重ねた。
こんなことって、こんなこと?
世界中の時間が、停止したかと思われた。
ルイズとやらは顔を真っ赤にしてわめき散らしている。
いわく、これはただの契約であって、それ以上の意味合いはない。
いわく、わたしの使い魔になったことを光栄に思うべき。
いわく、使い魔は主人の剣となり、盾となり、手足となり―――
496夏休みの使い魔(2/2):2007/11/30(金) 01:12:52 ID:jBROjJMy
それにしてもよく動く口だな、と、俺が何気なく口に右手を当てたその時。
目の前の右手がまるで焼印でも押されたように痛み出し、
俺は悲鳴を上げて転げまわる様を衆人環視のもとで見せ付ける派目になった。
小さい女の子だと思って油断していたが、あの『儀式』の間に何か小細工をされたのか!?
「ぐあっ……!俺の手に何をしやがった!」
ようやく搾り出した俺の抗議に、ルイズとやらは平然とした顔で宣告する。
「使い魔のルーンが刻まれているだけよ。もう大丈夫でしょ?」
いつのまにか痛みは治まり、右手には奇妙な文字が刻まれていた。
「ふむ……珍しいルーンだな」
いつのまにか近寄っていた中年魔法使いが、俺の右手に刻まれた文字を見てそう呟く。
「さて。教室に戻るとしましょう」
中年魔法使いはそう言い残すと、宙に浮いて教室とやらに向かう。
それを見ていた少年少女たちも、彼に倣うように空を飛んで、建物の中へと消える。
「すごい飛んでる!」
俺の驚愕の叫びに、ルイズとやらはこともなげに答えて、言った。
「メイジが飛ぶのは当たり前でしょ?」
メイジ?メイジで貴族?これ本当に魔法使い?
呆然と彼らの飛んでゆく姿を見続けるうちに、
後に残されたのは俺と、ルイズとかいう自称貴族様だけになった。

数分間の沈黙の後、まず始めに口を開いたのは俺だった。本来ならば、
何の罪もないごく普通の高校生であるこの俺をこんな目にあわせる理由を小一時間問い詰めたい所ではあるが、
このルイズとやらはどうみてもまだ子供だ。子供に対して本気で問い詰めるような態度をとってしまえば、
いかに正当な理由があろうとも、責められるのは年上のお兄さんであるこの俺のほう。
おもに妹との長い長い戦いにより獲得したこのような経験則から、
俺は内心のもやもやを理性という光で押さえ込んで、できるだけ穏やかな風を繕って話を切り出した。
「まず、俺をここに連れてきた理由を聞きたい。使い魔とか言ったが、具体的にはどうするつもりなんだ?」
それを問うた俺に、ルイズとやらは『やっと話を聞く気になったか』と言わんばかりの期待の眼差しを俺に向ける。
「使い魔はね、そう……まず、主人の目となり耳となる能力を与えられるの」
目となり耳となる?別段見る世界が変わったような感覚はないが……。
いまいち反応が良くない俺を見て、ルイズとやらは使い魔の解説を補足する。
「それからね、使い魔は主人の望むものを見つけてくれるのよ!秘薬とか、宝石とか」
期待を滲ませて俺を見つめるルイズとやらに、俺はしかしため息を一つついて返答とした。
だんだんとしょんぼりしてきたルイズとやらに少々罪悪感を憶えたが、できないものはできないのだから仕方ない。
なにせ俺自身は生粋の凡人、ただ周囲に少々変人が集まっているだけの高校生にすぎないのだからな。
「じゃあ、主人を色んな敵から守ることは……」
ルイズとやらは縋る様にそう言って、俺の返答を待つ。
「……できると思うか?」
おそらく予想はしていたであろうその答えに、ルイズとやらは深く肩を落として落胆を表現する。
「じゃあ……掃除、洗濯、雑用……」
しゃがみこんでいじけながらもようやく言葉をひねり出したルイズとやらに、
しかし俺は望む答えを用意することはできない。
「言っとくが俺は洗濯なんてできないぞ。掃除だって『キョン君はいいよ』って言われるぐらいで……」
「やるのよ」
ルイズとやらはどうにかして俺に存在価値を見出したいようだが、
あいにく俺は要求された使い魔としてのスペックを満たす自信は持ち合わせていないし、満たしたいとも思わない。
「白いブラウスが青斑色に変身したり、食器が神隠しにあったりする不思議時空を体験したいと言うなら話は別だが」
「あんた本当に使えないのね。いいわ、朝の洗い場にメイドがたむろしてるから、頼んで何とかしてもらいなさい」
「メイドに頼むって……やってくれなかったらどうするんだ?名前出してもいいのか?」
「そこまでご主人様に言われないと何もできないの!?バカ!ルイズ様の使い魔ですぐらい自分の判断で言っていいわよ!」
へいへい。いつまでここにいることになるのかはわからないが、どうやら俺はここでも似たような運命を辿る事になりそうだ。
雑用係としての運命をな。

……まさか、このルイズとやらも常識外れの特別な力があるとか、そんな奇跡……いや、悪夢はないよな?
俺は誰ともなくそう問いかけたが、もちろん答えが帰ってくることはなかった。
497夏休みの使い魔:2007/11/30(金) 01:13:38 ID:jBROjJMy
とりあえず今回はここまでです
498名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 01:33:02 ID:WO7FRqnv
とりあえず、投下乙です。
「夏休みの〜」なんてタイトルに謳ってあるから、
てっきり「ぼくのなつやすみ」からボクくんでも召還されたのかと思ったぜw
499名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 01:37:36 ID:uASzD3df
またキョンか

これで何人目だ?
500名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 01:39:05 ID:J24vahzZ
8/32からボクくん召喚と申したか
501名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 01:44:13 ID:fBVGuRyD
>>500
よりにもよって悪夢ワールドからww
502名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 01:47:28 ID:WO7FRqnv
>>500
あのボクくんが迷い込んだのはサイレントヒルの世界だろw
503名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 01:56:58 ID:tmYFlEBO
>>500
ちょwwwそこからかよwww
まさに終わらないなt…ゲフンゲフン
504名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 02:23:38 ID:zarHFl7H
>>500
どうがんばってもホラーにしかならねえよw
LSDの世界じゃんw
505名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 03:52:29 ID:8EsJ2UxR
まあでもキョンを召喚して続いたものを見たことがないから頑張って欲しい
506名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 04:19:55 ID:simJVIHP
今日原作読んだ
いいね いいね
507名無しさん@お腹いっぱい。 :2007/11/30(金) 04:55:10 ID:5c7FreWV
のぞいてみたら再び憂鬱の人が・・・
508名無しさん@お腹いっぱい。 :2007/11/30(金) 04:55:57 ID:5c7FreWV
のぞいてみたら再び憂鬱の人が・・・
509 ◆m9.upBLdeg :2007/11/30(金) 06:36:44 ID:tU/Y1Wjp
1分後に投下します。
510 ◆m9.upBLdeg :2007/11/30(金) 06:38:55 ID:tU/Y1Wjp
ももえの里帰りに付き合うことになった、ルイズとキュルケとタバサ
今晩は宿を取って、明日ももえの実家に向かうことになったのだが―――
「お客様、明日はどちらへ?」
夕食をとり終えた4人に対し、宿主はこんな事を聞いてきた。
「明日は、あの森のほうへ行くことになってるわ。」
ルイズは窓から見える森を指差して言った。それを聞いた宿主は大いに驚いてルイズにこう忠告した。
「お客様、悪いことは言いません。あそこはお止めになったほうが………」
「どうしてなのよ?」
「いや、お客様、そういうつもりじゃありません。ただ………」
「ただ?」
宿主は冷や汗を流しつつも恐る恐る口を開いた。
「あそこは人や動物が入るとそのまま帰って来れなくなる魔性の森と呼ばれております。
馬すら恐れて近づこうともしないところでありまして、ですから…………」
「じゃあ明日から歩きだね!」
ももえはにべも無くそう宣言した。
「ちょ、ちょっと! あんたそんな危険なところに私達を連れて
「行くよ。ここから歩いていけば半日ぐらいで実家に着くはずだから。」
実家という単語を耳にした宿主は恐怖に慄き、「あははは………」
これにはキュルケも苦笑するしか術がなかった。
(ちい姉さま………私、何も成し遂げられずに死ぬかもしれません………。)
ルイズは天に祈りをささげるしかなかった。一方その頃、タバサは紅茶のおかわりを頼んでいた。
「おかわり。」
「あっ、はいただいま!」
タバサが空のカップを軽くかかげると宿主は慌てて厨房に向かって走り出した。

ゼロの臭い魔実写化決定!制作はTMA「ゼロの使い魔死神友情タバサの裏設定フレイムデルフリンガーシルフィード香水下級生ももえサイズ」

「もーもえサイズを知ってるかい?」
「「「もーもえサイズを知ってるかい?」」」
「ももえとゼロ魔のクロスがでーるぞっ!」
「「「ももえとゼロ魔のクロスがでーるぞっ!」」」
「カオス!」
「「「イミフ!」」」
「カオス!」
「「「イミフ!」」」
「カオス!」
「「「イミフ!」」」
「カオス!」
「「「イミフ!」」」
「ひーめなカメナもよろしくねっ!」
ももえは胸に「死神」と書かれたワッペンが刺繍された体操服を着て3人を先導する。
更に、ルイズ達もそれぞれの名前が書かれてるワッペンが刺繍された体操服を着ていた。ルイズ達にはその文字が自分たちのことを意味するとはわからなかったのだが
タバサは見た感じ思いっきりマッチしていたが、キュルケの場合胸がぱっつんぱっつんなので、走るたびに胸が擦れる音がルイズの耳元まで聞こえてくるのである。
(………何よ、おっぱい星人のくせに!)
ルイズは自分のブルマが思いっきり股に食い込んでいることに気づかずに走り続けていた。
511 ◆m9.upBLdeg :2007/11/30(金) 06:40:16 ID:tU/Y1Wjp
「これを着て、これを歌いながら走ってちょうだい。」
この宿を出る前に、ルイズ達はももえから体操服とブルマ一式を渡されていたのだ。
「あの、これは………」
「これを着て走らないと大変なことになるから」
そう言って、渋々着たのである。キュルケとタバサはまんざらでもなさそうだったが
「ゼロ魔のクロスはおもしろいっ!」
「「「ゼロ魔のクロスはおもしろいっ!」」」
「マイナーすぎても気にしない!」
「「「マイナーすぎても気にしない!」」」
「有名ーなものだとアンチ湧くっ!」
「「「有名ーなものだとアンチ湧くっ!」」」
「たとえばt
「ちょ、ちょっと待って! これ以上はさすがにきけ…」
「危ないっ!」
思わず足を止めたルイズに大きな口をあけたワームのようなものが触手を伸ばして襲い掛かってくる。
「きゃあああ!!!」
「とうっ!」
ももえは軽やかに飛ぶと体を光らせてそのままワームに突撃する。
「はああああああっ!!!!」
『デルフリンガーの能力』
そのままももえの体はワームを貫通し、ワームは程なくして消滅した。
「ごっ、ごめ
「歌うのを止めちゃだめ!」
ももえにそう言われて慌てて歌の続けるルイズ達
程なくしてももえも追いつき、更に歌は続いていく。
「ももーえサイズはおもしろい!」
「「「ももーえサイズはおもしろい!」」」
「でも他人には勧めづらいっ!」
そこでももえは足を止めた。思わずルイズ達も足を止める。すると
「うわぁ…………」
そこには現代風の一軒家があった。扉には一つ目がついていて、とても不気味な建物だとルイズは思った。
「ここが………」
「そう。」
さっきまで明るかった陽が急に影を潜め、突如として大きな雲に覆われた。
更に、風がびゅうびゅう音を立ててルイズ達に容赦なく襲い掛かる。時々目も開けられなくなるぐらいの激しい風だった。
「ここが私の実家。」
ももえはうれしそうにそう答えたのであった。

「…おかえり…なさいま…せ。ももえ…お嬢様」
門をくぐると、メイドが一人出迎えてくれた。
魔法学院のシエスタとは違いこのメイドはとても物静かな雰囲気を漂わせていた。
「この娘が私の家でメイドをしているメイドのメイちゃんだよ。」
「…ももえ…お嬢様の…ご友人…です…か…。 …はじめ…まして…メイドの…メイ…と申します……」
「はっ、始めまして……モモエの友人のルイズです。」
彼女の恭しくも礼儀正しい態度に押されて、ルイズはつい友人だと嘘をついてしまった。
それを見ていたタバサがももえに耳打ちをする。
「………」
「………」
更にももえはタバサに耳打ちをした。
「どうしたの、タバサ?」
キュルケがタバサに小声で尋ねるとタバサはこう答えた。
「彼女はあれがデフォルト」
「あっ、そうなんだ。」
キュルケもなんとなく納得した。
512 ◆m9.upBLdeg :2007/11/30(金) 06:41:51 ID:tU/Y1Wjp
通された客間は靴を脱がなければならないらしく、靴を脱いだメイやももえの後に続いてルイズ達も靴を脱いで下駄箱の中に入れる。
客間の中央には小さなちゃぶ台が置かれていて、メイとももえは真っ先にそこに腰を下ろした。ルイズ達もそれに続く。
程なくして、それぞれの目の前に熱い茶が入った湯呑みが置かれた。
ルイズはそれを飲む気がしなかったのだが、タバサはそれを音を立てながら飲んで「おいしい」とひとり、呟いた。
しばらく沈黙が続いた。タバサがおかわりと一緒に柿の種をぽりぽり食べる音以外は何一つ音がしなかった。
ルイズの目の前のお茶がすっかり冷めてしまった頃に、ももえはようやく立ち上がった。
「あんた達はここで待ってて。」
「ちょ、ちょっとあんた、私達を置いてどこに
ルイズは思わず反論するものの、ももえはそれを聞く耳持たずに客間を出て行った。
「…柿の種…食べます…か?」
「いや、私はっ、あのっ、その………」
突然メイが声をかけてきたのでルイズは大いに慌ててしまった。あたふたを手を振って自分でも何をしているのかよく分からなかった。
「…柿の種が…お気に召さない…のでしたら……御福餅…も…ありますけど…。」
???ものしり館???
御福餅【おふくもち】
御福餅本舗が製造販売する菓子のこと。
パッケージが赤福と類似していることで有名。また赤福と同じく製造日・原材料の偽造を行ってたとして農林水産省から立ち入り検査を受けた。

「じゃ、じゃあっ、そ、それをいただくわっ」
ルイズは不本意ながらもメイの好意に甘えることにした。それを聞いたメイは恭しく礼をすると立ち上がって下駄箱のほうまで向かう。
「はぁ………」
ようやくルイズは目の前の冷め切ったお茶に口を付けた。
無理も無い、初めて使い魔の家にやってきていきなりこんな見た事も無いようなメイドに迎えられたのだ。
緊張しない者は普通ではないとまで思った。お茶は少し水っぽくてよく味が分からなかった。更にお茶を飲もうと湯飲みに口を付けると
「すいませーん! 私はこのキヨーケンのシュウマイをひとつ!」
ルイズは思わず音を立ててお茶を噴出した。

ももえは屋敷の一番奥の部屋をノックした。返事はない。いつもの事だ。
ももえは扉を開けた。部屋は大きく殺風景なものだった。安楽椅子に腰掛けている部屋の主がそこにいた。
部屋の主は痩身の女性だった。美しい顔が病のせいで見る影も無くやつれていた。「誰だ」
「ただいま帰りました、お母様」
ももえはその女性に近づくと、深々と頭を下げた。
しかし、その人物はももえと認めない。そればかりか目を爛々と光らせてももえを睨み付ける。
「下がりなさい無礼者。王家の回し者ね? いい加減に諦めたらどうですの? 私は死んでもこの娘を手放しはしないのだから。」
ももえは身じろぎもしないで、母の前で頭をたれ続けた。
「下がれ! 下がれと言ってるのが分からないのか、このバカ野郎!!」
母はそう言って、ももえに向かってテーブルの上のグラスを投げつけた。ももえは避けることなくそれを受ける。
頭に当たったグラスは床に当たって大きな音を立てて砕け散った。頭に少し血がついたももえは顔を上げた。
「こんな茶番劇やってられっかぁーーーー!!!!!」
ももえはカマを取り出して思いっきり振りかぶった。
ざしゅっ
母の首は壁に当たり、そのまま音も無く床に転げ落ちた。
『ももえのカマで斬られた者の存在はももえが肩代わり』
「………ママ?」
513 ◆m9.upBLdeg :2007/11/30(金) 06:43:57 ID:tU/Y1Wjp
「裏設定の齟齬?」
ルイズがそう問い返すと、メイは頷いた。
「ここから先はわしが説明いたしましょう。」
そう言ったのが御福餅が乗っている皿を持ったメイに対し、崎陽軒のシュウマイが乗っている皿を持った老齢の男性だった。
「ももえお嬢様の教育係を勤めておりますシュテンプケ博士と申します。以後お見知りおきを」
突然現れた男に事の顛末を説明されるのはどこか嫌な気はしたものの、メイが話すと恐らく聞いてる方がいてもたってもいられなくなるので正直ありがたいとルイズは思った。
「そうでございます。……このタバサ殿にも裏設定があるように、ももえお嬢様にも裏設定がございます。」
「はぁ………」
ルイズはわかったような分かってないような顔で頷いた。いや、実際にはほとんどわけがわかってないのだが
「タバサ殿の裏設定とももえお嬢様の裏設定……例えば二人ともそれぞれに母親がいたとしたらどうします?」
「えっ?」
ルイズは思わず首をかしげた。それに構わず博士の話は続く。
「タバサ殿の裏設定には執事がいて、ももえお嬢様の裏設定ではメイドがそれぞれいました。
それはもう互いに自らの存在を賭けて争ったわけなのであります。その戦いに勝利したメイはタバサ殿の裏設定を完全に消し去りメイドの地位を手にしましたが……」
ルイズはあごに手を当てて考え始めた。つまりタバサとももえの裏設定が入り混じったのがこの家であり、メイドであり、母親であったりすることを。
「って、ちょっと待って。今さっき"消し去った"って………」
「タバサ殿の裏設定とももえお嬢様の裏設定であるお館様は必死に戦ったのであります。しかし、お館様は敗北されてしまわれて母親の中に封印されてしまったのであります………」
「つまり、タバサの母親の中にモモエの母親がいるってわけね?」
「その通りでございます。」
キュルケの問いに博士は頷いた。キュルケはシュウマイを手にし、それを口に運ぶ。
「おいしい!」
「お褒めの言葉を授かり、光栄でございます。」
キュルケの賛辞に博士は恭しく敬礼した。ふと見るとルイズの目の前には御福餅を持ったメイがいた。
「…あーん…してくだ…さい。」
「いや、その別にあーんなんてしなくても。」
「…お願い…です。……あーん…してくだ…さい。」
見ると、メイは泣きそうな顔でこっちを見ている。餡だらけになった手から今にも餡が零れ落ちそうである。
「しっ、仕方ないわね。じゃ、あー……
そう言ってルイズが口を大きく開けた瞬間、客間の扉が開いた。
「ご挨拶が送れて申し訳ない。私が死神家当主死神デス子だ。」
そこには水兵服を着て、禍々しい竜のようなものをかぶった女性が仁王立ちしていた。ももえもその横にいる。
「あ………」ルイズは愕然とした。
柿の種の2袋目を食べていたタバサも、シュウマイに舌鼓を打っていたキュルケも、ももえもデス子も、博士も皆、ルイズのほうに注目していたのだ。
それを知らずにメイは御福餅を餡がついた指ごとルイズの口の中に突っ込んだ。
「!!!!!!」
ルイズは顔を真っ赤にしてはだしのまま客間を飛び出した。
「あーあ。どうしたんだろうね、ルイズちゃん。」
誰一人止めるものもおらず、ルイズは屋敷内を走り回るのであった。
『食後の運動は危険ですので止めましょう。』
「あっ、倒れた。しかもものすごく苦しそうに。あー、わき腹押さえちゃって、足をじたばたさせてるね。」
ももえは遠くからルイズの状況を事細かに実況する。すかさずメイは水の入ったコップを用意する。
「いや、その必要は無いだろう。」
デス子は冷静にそういった。その瞬間、ルイズの居たところの床がすっぽりと抜け落ちルイズはそのまま落下した。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………」
「さすがにアレはちょっとやばいんじゃ……」
「なあに力尽きたら担架で担がれて勝手に戻ってくるから安心しろ」
それを聞いたタバサは安心して3袋目の柿の種に手を伸ばしたのであった。

※ おわり これまでのご愛読、ご支援ありがとうございました。
※ 次回から始まる「ゼロの使い魔死神友情タバサの裏設定タバサの母フレイムデルフリンガーシルフィード香水下級生ももえサイズ」に乞うご期待!!!
514 ◆m9.upBLdeg :2007/11/30(金) 06:45:40 ID:tU/Y1Wjp
以上です。ではまた
515名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 07:21:44 ID:XOiXg0E4
GJ!!!朝からなんというカオスwwww


ちなみにキュルケは再三おっぱいおっぱい言われているが、
実際には胸はやや大きくて、しっかりくびれてるという理想体型で、目立った爆乳という訳ではないらしい。
PJとかの下着ブランドのモデルみたいな感じだろう。
516名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 07:52:38 ID:oI0NcTaA
ももえサイズ面白杉てお茶吹いたw
517名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 08:03:37 ID:zQ2WFzbw
>>515
PJと聞いてパトリック・ジェームズ・ベケットが真っ先に浮かんだ
518名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 09:16:48 ID:o6eaIZu0
PJっつったらPJベリーだろ。パラッパの。
519名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 10:47:05 ID:XjTyPHdS
3番目死神風紀委員長中学2年生エスパーBHプラ板縦ロールヘリコプターボーリングトビウオとその妹ロボ絶滅ナルト学び舎パワードスーツラミカスパイの大作戦友情ウニタ○ゴ裏設定青大将
放射ダクトヤニタコプレ三つあみメガネ文庫悪魔の坊クラゲ無頼カマボコ板夏のお嬢さんスレイヴ大○魔竜ブルマ宇宙怪獣大きなお友達消しゴムケーキ解説羊の顔建前盗撮鈍く光ったマグナム弾
天プラ魔改造亜光速801リンゴの皮トロロしっぽマスクトサカ草輪廻転生迫撃少女風紀団担英タネコウモリダコタコイカたまみ両親ストーカーおた2ブレイクサルSD力さすらいの保険医体温計
ネコ天使ズ歩くサンマー担Xペン蔵ころねシャチョー天使博士ヒルメイドオクタイケモンゴッドシニガミ14号サイシュウカイ番長鼻行類チョコ零式 CCPG電撃ももえサイズ
最終話のタイトル長いな。こっちではどこまでいくんだろう
520名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 11:25:51 ID:3NVX8gnr
ドリフターズ召喚。
爆発との相性は抜群。
521名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 12:44:30 ID:cmnsEDo8
>>520
荒井注か志村けんで悩むなぁ
522名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 12:46:17 ID:cmnsEDo8
sage忘れスマソ
523名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 14:56:43 ID:awwHKF72
こんな状況見てみたい

ttp://cgi.2chan.net/u/src/1196350327845.png
524名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 15:01:01 ID:yVSxhEIw
橋沢育郎が召喚されたら
525名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 15:05:13 ID:6WCIR4E2
ブロントさんが償還されたら
526そこはウェールズだろjk:2007/11/30(金) 15:20:45 ID:6WCIR4E2
288 名前:名も無き冒険者[sage] 投稿日:2007/11/30(金) 02:36:01 ID:h0HhgxXF
【海外/英国】国旗・ユニオン・ジャックのデザイン変更か
http://news22.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1196294182/l50

連合王国の象徴であるユニオン・ジャック(英国旗)が約200年ぶりに変わるかもしれない−。
国旗にデザインが採用されていないウェールズの不満を背景に、ホッジ文化担当閣外相が
「変更を検討する」と語り、注目を集めている。

英国旗のデザインは1606年、イングランド(白地に赤十字)とスコットランド(青地に白の斜め
十字)の組み合わせで原型ができ、1801年にアイルランド(白地に赤の斜め十字)が加わった。
ただ、ウェールズは早くからイングランドに併合されていたため、ウェールズの旗にある赤い竜の
デザインは組み入れられなかった。

こうしたことから、ウェールズの国会議員らは「4つの連合国を表現するデザインに変えるべきだ」
と訴えてきた。ホッジ文化担当相も「すべての国民が望むデザインを考えることはより大きな課題
だ」と述べ、国旗変更の可能性を示唆した。

ttp://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2007112900115


301 名前:名も無き冒険者[sage] 投稿日:2007/11/30(金) 09:37:06 ID:I68qmluX
>>299
いやまぁ、ν速のノリで作ったからw

俺的には他の人が作った物だが、↓が一番気に入ったんだけどね。
http://news23.jeez.jp/img/imgnews2054.png


(°д°)
527名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 15:21:45 ID:gK2IjLE4
>>524
ジョジョスレにもうある
528名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 15:25:21 ID:lJlxdeP7
>>524
ウォォォム!バルバル!
って既にあった様な…

529名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 15:49:28 ID:lKsj+k1n
>>526
ウェールズ地方だけにな

まぁ、俺としてはテファの方が嬉しいけども
530名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 16:58:33 ID:wkZYz6Pj
シナモロールからシナモン召喚…

何か普通のコメディ系の作品になりそうだな
531名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 17:09:08 ID:lJlxdeP7
>>244
普通の少年のサイトで良い勝負出来るなら
一般人から見れば化け物の加藤ならボロ雑巾に出来ますよ

ビール瓶を数本放り投げてそれを蹴りですべて割って目潰しに使えるぐらいに強い

>>243
召喚後
烈「朝の稽古はどこですれば良い?」
ルイズ「その辺で」
ムア〜っとした熱気で起こされ
烈の汗汁スプラッシュを浴びるルイズ

ギーシュに対して
「人形を操り戦わせる ここまでたどり着いたことは褒めてやろう
しかし中国においては三国志の妖術で既に通過した!
貴様が立っている場所はわれわれが2000年前に通過した場所だ!」

ワルドに対して
「自らの分身を操り戦わせる そこまでたどり着いたことは褒めておこう
しかし中国においては西遊記で既に通過した!
貴様が立っている場所は我々が1000年前に通過した場所だ!」

と風の教師も真っ青な蛮勇を奮う…
でも料理を褒められるとデレる

宝物庫に安置されているのは打岩
オスマンの恩人は郭か劉

532名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 17:18:05 ID:+OXc9M+O
分家で第一部外伝1「事変前夜」 新作です

http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1194994629/75-84
533名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 17:23:04 ID:aMg7dCHB
>>531
中国どんだけ
……男塾的に考えたら控え目だしいいか
534名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 17:35:49 ID:3NVX8gnr
あの辺りの国は6000年の歴史があるんだが…。
535名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 17:42:37 ID:lJlxdeP7
>>533
最近は丸くなっていますが「グラップラー刃牙」の頃の彼は
序盤のルイズ以上にプライドが高く我侭です
「空手を完成させた」といわれている男に
「中途半端な中国拳法を中途半端にパクッた出来損ないと認めろ!」(要約)
と因縁をつける人です。


>>534
基本的に中華思想ですから
「6000年の停滞より我々の4000年の進化のほうが上だ!」
とか言いかねない
536名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 17:45:43 ID:P36LMzb+
ハルケギニアと中国では、サイト用のスープと貴族用のスープ位歴史の密度が違う。
537名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 17:48:15 ID:xdL1XSxh
>「6000年の停滞より我々の4000年の進化のほうが上だ!」

ああ……ものすごいそういうこと言い出しそう……だって烈だから
538名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 17:51:51 ID:tAtWAXvT
烈は後になると、打岩のごとく丸くなっていったが召喚されても丸くなっていくのだろうか。
539名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 17:55:07 ID:lJlxdeP7
>>538
(ガングロマッチョが)料理を褒められて赤面したりしますから…


そして学園から中華料理がハルケギニア全土に広がる。
540名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 17:55:33 ID:4XGz2axy
両方ツンデレだしいいんじゃない?
541名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 17:59:57 ID:aMg7dCHB
料理が出来ると言うからやらせてみれば意外と美味しかったが
意地でも美味いなんて言うものかと思ってたらタバサが素直に感想を述べてデレる烈
それを見てますます意地を張るルイズ
542名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 18:00:07 ID:aytImvNX
>丸くなる
丸くなった烈って…ヒロインとヒーローが両方ツンデレってだめじゃんw

「あ、あんたの事を心配してるわけじゃないんだからっ」
「お、お前のためにやったわけではない、心配されるいわれは無い!!」
「「ふんっ」」

「「(……言い過ぎた、謝りにきたら許してやろうか)」」
(両者顔を合わせて)
「「……(許してやるから早く誤れ)……」」
「……何よ」
「……何がだ」
「「ふんっ」」

(両者布団の中で)
「「(……何やってんだ私は……)」」
543名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 18:02:24 ID:zarHFl7H
いや、最高に面白そうだなおいw
だけどデルフ涙目、でもないな。烈は武器もつかえるし。
544名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 18:09:27 ID:rk+xwSrG
久しぶりに爆笑した雑談だった。
545名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 18:09:28 ID:lJlxdeP7
>>543
むしろ使えない武器を探すほうが難しそう…

作中で使っただけで
ヒョウ(小型投げナイフ)
青竜刀
消火器
酒(火炎放射)
分銅

蟷螂拳から八極拳まで使える烈なら
和刀とか苗刀も使えるだろうし…

この人は闘技場の外のほうが危ない…
(元部と違って闘技場でも強いし)
546名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 18:14:12 ID:aMg7dCHB
ワルド(裏切り後)が平民に何が出来ると笑って
「貴様は中国武術を舐めたッッ!」
凄いリンチに。
デルフで背中からバッサリ。
547名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 18:14:23 ID:zarHFl7H
さんせつこん(漢字わかんね)もあったな。

まさに召喚してくださいと言わんばかりの男。
548名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 18:16:25 ID:aMg7dCHB
>>547
数字の三
関節の節
棍棒の棍
で三節棍じゃないか?
549名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 18:19:16 ID:lJlxdeP7
>>546
それもバッドエンドに見えるが実は烈フラグの一つ

>>547
召喚時は地面に現れた召喚ゲートに落ちて「救命阿!」
550名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 18:24:29 ID:aMg7dCHB
学院に運ばれギーシュに叩きのめされて寮のギーシュの部屋前でマント敷いてるワルドが見えた
551名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 18:39:06 ID:bHDCGK35
>>546
烈はあれでも礼儀正しい部分がある(郭や劉には常に敬語)ので
自分と一応主人を裏切ったりしたらそれこそ膾にされるだろうなw
552名無しさん@お腹いっぱい。 :2007/11/30(金) 18:41:07 ID:5c7FreWV
小ネタ投下、OKでありましょうか?
小というにはちょっと長めになっちゃったけれど
553夜明けの人:2007/11/30(金) 18:41:31 ID:y/Ok8H5m
ちょっとパソコンが違うのでトリップ付けられませんが、五分後から投下します。
554夜明けの人:2007/11/30(金) 18:42:42 ID:y/Ok8H5m
っと、お先にお願いしますー
555名無しさん@お腹いっぱい。 :2007/11/30(金) 18:44:34 ID:5c7FreWV
ではまた時間を改めますね
556夜明けの人:2007/11/30(金) 18:47:56 ID:y/Ok8H5m
って、あ、ええと、先に投下してください、という意味でしたごめんなさい。
557名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 18:51:26 ID:rk+xwSrG
ID:5c7FreWVさんが先に投下、次に夜明けの人ね。
558名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 18:52:14 ID:WO7FRqnv
ここで、上島竜ちゃんが召還。


竜ちゃん「よし、じゃあ俺が……」
夜明け氏&小ネタ氏「「どうぞどうぞ!」」
559夜明けの人:2007/11/30(金) 18:56:29 ID:y/Ok8H5m
ええと、小ネタの投下はないようなので先に投下させていただきます。
560名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 18:57:11 ID:94rIF1I8
私怨
561夜明けの使い魔1/6:2007/11/30(金) 18:58:12 ID:y/Ok8H5m
 その姿を見て、ガリア兵は一時恐慌に囚われた。
 未だかつて見たことのない亜人、それも半ば竜の姿をした怪人達である。
 その、軍勢。数の上では大きくヒトが優るが、そんな数のアドバンテージなど覆しかねないほどの勢いを竜人達は持っていた。
 来る闘争の予感に酔いしれ、死闘を渇望し、荒れ狂う闘争本能を制御しようという気持ちなどつゆほどに存在しない。
 それが、初戦をアムルタートに譲る一因となったのは疑うべくもない。
 ごうごうと唸る竜人達の吐息が火焔であると悟れる距離に達してなお、背後の上官が構えよとの下知を下してなお、ガリア兵は身動きを取らなかった。
 十数メートルの間をおいて、両軍は対峙した。
 竜人兵達はその目を血走らせ、その鱗のある顔貌を歪め鋭い牙をうち鳴らしている。
 僅かな刺激でもあれば、その軍勢が怒濤の如く襲ってこようと言うのは赤子でも理解できるだろう。
 蛇に睨まれたカエルの様だ。身動き一つ取ることができない。
 未知数の敵を前に、ガリア兵は萎縮した。敵手が異形の群れであるのも理由の一つであったのかもしれない。
 荒々しい呼吸が耳に届く。その劫火が自らを焼く想像をして、兵達は身を震わせた。
 と、旋風を巻き起こして、先陣切って一人の竜人が駆けた。
 手にするのは長大な戦斧。それを片手で振り回して、竜人兵はガリア軍に肉薄した。
 その光景を見て、遅れを取るまいと後ろの竜人兵達も地を蹴った。
 ここに至って、ガリア兵達はようやく戦いの構えを取った。
 軍の規律を取り戻したから、ではない。そうしなければ死ぬと悟ったからだ。
 だが、すでに遅かった。
 彼らが構えようとした刹那、嵐が巻き起こった。
 それに巻き込まれた兵達は、そう感じた。
 先陣切った竜人がその戦斧を振るったのだ。
 軽々と、釣り竿でも振るうように。
 魔法のようにヒトが飛んだ。
 その竜の一撃で、ガリア兵が幾人も薙ぎ払われていたのだ。
 動揺が走った。
 その膂力、果たしてただの人間が抗しうるのか。
 その軍勢、ヒトの軍のセオリーが果たして有効なのか。
 そして、なによりも。
 ――この戦、勝てるのか。
 それを惰弱と笑うなかれ。
 彼らの心を未知が埋め尽くしていた。
 未知の敵、未知の軍勢。
 そもそも彼らはこの戦がなぜ起こったのかすら知ってはいない。
 己が捨て石にされたのではないかと言う疑念すら沸き上がる。
 雪崩を打って襲いくるアムルタートの軍勢。
 その攻勢をしのぐことができるだろうか。
 彼らは自らの命が風前の灯火であることを理解し、死にものぐるいで手にした武器を振るいはじめた。
562名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 18:59:03 ID:94rIF1I8
本当に夜明けの人ならフタナリなはず支援
563夜明けの使い魔2/6:2007/11/30(金) 18:59:47 ID:y/Ok8H5m
「酷いわね」
 ガリア王ジョゼフの傍らで、黒い少女が嘲るように囁いた。
 その言葉が示すのは軍のことか、廷臣のことか。
 ジョゼフの周囲にある将校達も、今は恐慌に囚われまともな指示を出せないでいる。
 そんな中、ジョゼフただ一人のみが平然と戦場を眺めていた。
「勝ち目はある?」
 少女の言葉が示す通り、戦場は大きくアムルタート側へと傾いている。
 いかにジョゼフであろうとも、この状況から覆すのは不可能に思えた。
 ジョゼフは何も応えない。
 ただ、戦場を眺め黙考するばかりだ。
 その心中には目の前の戦場を盤にしたゲームと、未だ帰らぬ姪の姿がある。
 戦況を変える手は見える。否、まだ覆しうると考えてはいる。
 アムルタートは真っ向から突き進むのみで陣というものをあまり考えてはいないように見える。
 一部の指揮されている隊にはあるのだが、大部分が単純にその暴威を持って暴れているのだ。
 そこを突けば状況をひっくり返すことも不可能ではない。
 だが、それ以上にジョゼフの心をかき乱すのはタバサのことだった。
 両軍の激突からすでに幾ばくかの時間が過ぎている。それでもまだタバサは帰らぬのだ。
 別に身を案じているというわけではない、のだろう。
 タバサは何かをつかんでいるのかもしれない。
 故に、その情報を待ちわびているのだ。
 それだけにすぎぬ、と口には出さず呟いて、ジョゼフはしばし瞑目した。
 そもそもにして、タバサは娘の出す無理難題をこれまで幾度となくしてのけたのだ。
 それがこのようなことでしくじるものだろうか。
 タバサに死なれるわけにはいかない。何故いかないのかを考えることもせず、ジョゼフはその目を開いた。
 傍らには、変わらず黒衣の少女がいる。
 戦況は変わっていない。
 周囲の将校達も、慌ただしく声を荒げているばかりだ。
 ふと、その顔を優しげな笑みに歪めた少女がジョゼフの耳に囁いた。
「この状況を覆す力が必要なら、いつでも……」
「いや、いらぬ。このような窮地においてこそヒトはその真価を発揮するものだ」
 気づけば、最後まで言葉を継がせずにそう言っていた。
 言って、ジョゼフは僅かに愕然となった。
 あまりにも己らしからぬ言葉だ。
 どちらかと言えばその言葉を嘲弄するのが己だったはずだ。
 やもすると、それは少女への反意が言わせた言葉だったのかもしれない。
 だが、口にしたものは口にしたものだ。
「弓兵、砲兵には敵の後続を狙わせよ。数の上ではこちらが優る。分断して囲めば勝機はあるぞ」
 揉めあう将校にそう告げる。
 それを聞いて、部下達は慌ただしく立ち上がり、その指示を部隊に届けに向かった。
「騎士団を出せ。歩兵で囲み魔法を打ち込めばあらがいようもあるまい。可能ならばゴーレムで押さえ込め」
 チェスのようなものだ、とジョゼフは呟いた。
 一度に動かせる駒は一つではないが、それでも相手の手を読むという一点を突き詰めれば変わらないのだ。
「一刻も早く艦隊を動かせ。直接に本陣を叩くぞ」
 指示を下し終え、ジョゼフは戦場に向き直った。
 相変わらず劣勢ではあるが――それが覆る時を想像して、ジョゼフはその顔に楽しげな笑みを浮かべた。
 同時に。
 ジョゼフの後ろで、少女が忌々しげに唇を歪めているのを、ジョゼフはついぞ気づかなかった。
564夜明けの使い魔3/6:2007/11/30(金) 19:01:22 ID:y/Ok8H5m
 それは全くの幸運だった。
 一人の兵士の放った一撃が、竜人兵の堅固な鱗を越えてその命を刈り取ったのだ。
 どう、と大きな音を立てて竜人兵はその場に倒れた。
 一瞬、その周囲に沈黙が流れた。
 倒したのだ、竜人兵を。
 その血で塗れた剣を手にしたまま、兵士はぽつりと呟いた。
「勝てる……? 勝てる、のか……?」
 それは確認のようなものだった。自らのなしたことが理解できていないと言うように、幾度かその言葉を繰り返す。
 周囲にざわめきが生まれた。
 リレーのように同じ言葉が繰り返される。
 勝てる、勝てるのか、と。
 その声は次第に大きくなり、ざわめきからうなりへと姿を変え。
 僅かのち、その場にいた誰もが口々に叫んでいた。
「勝てる、勝てるぞ!」
「倒せるぞォッ!」
「下がるな、攻めろ!」
 直前まで絶望感と悲壮感に囚われていた兵士達が、敗北を投げ捨てた。
 半ば逃げだそうとしていた事実を振り捨てて、その手の剣を振りかざす。
 突如の猛攻に、アムルタート達も応え、吼えた。
 挟撃を受けて深手を負う竜人兵。
 荒れ狂う戦斧をくぐり抜けて剣を振るう兵士。
 竜の膂力を持って兵士を振り払おうとするアムルタート。
 その一撃を受けてなお食らいつく人間。
 ここにきて、戦況はようやく対等な状況へと変わり始めた。
 同時に。
「囲め! 竜どもを分断させろ!」
「弓兵、打ち込め!」
 王の指示を受け、歩兵以外も動き始めた。
 斧より早く迫る騎馬の一撃がアムルタートを傷つけ、魔術師による風の牙が竜人兵を薙ぐ。
 音を立てて飛来した矢が深々と突き刺さり、砲弾が戦列を乱す。
 誰もが敗北などということを考えなくなった。
 竜も、人も。
 互いに全力を掛けて争い、その果てに自らこそは勝ち残るのだと信じている。
 傷つき、息絶える者は数えるを待たない。
 だが、それは互いにそうなのだ。
 幾多の犠牲者を出しながら、戦況は続いた。
565夜明けの使い魔4/6:2007/11/30(金) 19:02:40 ID:y/Ok8H5m
 タバサがそこに辿り着いたのは日も暮れかけた時刻だった。
 竜と人の屍がそこかしこに転がり、血の臭いを漂わせる戦場。
 シルフィードの上からそれを見下ろして、タバサは僅かに身を震わせた。
 恐怖に駆られた、と言うわけではない。
 自分がもっと早く帰り着いていれば、それで何が変わったとも言えないが、それでも何か意味があったかもしれない。
 その後悔が震えとなって現れたのだ。
 シルフィードに命じて、ジョゼフがいると思しき天幕の近くに降ろさせる。
 シルフィードの姿を見て見張りの兵は一瞬動揺したが、その背にタバサがいるのを見て取りあわてて姿勢を改めた。
「しゃ、シャルロット様! 何故このような場所に……!」
 騎士の一人らしいその見張りが、驚いたように問うた。
 本名での呼びかけには何も言わず、タバサは一度自分を指さし、次にすっと天幕を指さす。
「斥候。報告」
 たった二言のその宣言に、騎士は敬礼をした。
 その目に一瞬、幾ばくかの不満のような憤懣のような色が滲み掛けたが、それも即座に姿を消した。
 天幕へと入る。
「陛下、斥候が報告を持って参りました」
「構わぬ、入れよ」
 中から届いた返事を聞いて、タバサは天幕に足を踏み入れた。
 入れ替わりに、ジョゼフに立ち去るよう命じられた衛兵が一礼し、天幕の入り口をくぐる。
「随分と遅かったではないか。なあ?」
 突然に投げかけられたジョゼフの声に、しかしタバサは何も応えず目礼だけで返す。
 ジョゼフは運ばせた椅子に腰掛け、いつもと変わらぬ鷹揚さでタバサを見下ろしていた。
「お前のおらぬ間に三百も死者が出た」
 事実を告げるようでいて、その実責め立てる言葉を受けて、それでもタバサは無言のままだ。
「負傷者に至ってはその数倍を数えるぞ。今も水のメイジが総動員で治療に当たっておる」
 これは甚大な被害だ、と言外に語っている。
「さて、我が姪よ。こういうとお前を責めるようで非常に心苦しいが、兵達が命を賭して戦っている間に、お前は何を掴んできたのだ?」
 何を白々しく、とタバサは胸中で吐き捨てた。
 心苦しいなどとどの口で言うのだろうか。そうやって責め立てるのが一つの目的には違いない。
 とはいえ、タバサもそれに反抗するだけの言葉を持たない。
 自らの不注意で帰還が遅れたのは事実だからだ。
 仕方なく、タバサは己の知り得た限りを口にした。
 曰く、彼らは闘争を好む種族であること。
 曰く、彼らの目的はその王族であること。
 曰く、その所在すら知れてはいないこと。
 それらを聞いて、ジョゼフは眉間にしわを寄せた。
「それではこの戦、無意味ではないか」
 確かにその通りだ。
 真龍とやらをガリアは知らないし、勝ったところで得るものはない。
 それに対してアムルタートの方は――恐らく、闘争そのものがこの戦の理由なのだろう。
 つくづく、この戦は無意味なものだ。
「結局のところ役立つような話はないな、そうであろう?」
 嘲るようなジョゼフの声にも、タバサは言い返すことができなかった。
 事実だ。アムルタートの本陣にまで潜り込んで様々な話を聞いたが、その一つとして戦争の役に立つものではない。
 真龍を手中にしていればまた別なのだろうが、ジョゼフの口振りではそれも恐らく無理な話だ。
 ふと、ジョゼフが何事か呟いているのが目に入った。
 目の前にはタバサしかいないが、タバサに向けたものではない。
 怪訝に思っていると、ジョゼフが一度、頷いた。
「少し表に出ようではないか、おもしろいものが見られるやも知れぬ」
566夜明けの使い魔5/6:2007/11/30(金) 19:03:56 ID:y/Ok8H5m
 この時、ジョゼフの傍らには彼以外の目には映らないあの黒い少女がいた。
 彼女がジョゼフに囁きかけたのだ。
「面白いものを見せてあげる」と。

 すでに日は沈んでいる。
 周囲は夕闇が深くたれ込んで、陰惨な血の光景を覆い隠していた。
 その中で、戦場を灯火が揺れ動く。
 一瞬それが鬼火に見えて、タバサはぎくりと足を止めた。
 だが、違う。
 その炎の横には竜人達の顔が浮かび上がっている。松明を手に戦場を歩いているのだ。
 何をしているのかと見れば、その背に同胞の死体を背負い陣に戻ろうとしていた。
 悲しげな声が、風に乗って流れ着く。
 死者を悼む声だ。それを耳にして、タバサはそれが葬儀であると知った。
 確かに、それはタバサの文化圏とは違う様式を持つもののようではある。
 だが、果たしてこれが面白いものだろうか。
 そうだとするなら、悪趣味なことこの上ない。目の前の伯父への感情がより悪い方向へと傾くのを感じた。
「……ふむ」
 だが、そのジョゼフもこれが面白い光景だとは思っていないようだ。目を細め、憮然とした面もちで葬儀を見守る。
 では何が面白い光景なのか。
 それを問いかけるより早く、答えは目の前に現れた。
 がさり、と戦場が揺れた。誰もいない戦場だ。
 あるのはただ屍のみ。日中の激戦の痕跡以外はそこにはなく、生ある者は死体を集めた竜人兵が引いて、既に存在しない。
 それが、揺れた。
 あちこちで、具足を身につける音がした。
 あちこちで、武器を構える音がした。
 何が起こっているのか伺おうと目を細めて、タバサは恐慌に囚われた。
 死者だ。
 首のない者。腕のない者。足のない者。はらわたのない者。
 それが、武具を装備しあたかも生きている人のように立ち上がっていた。
 悲鳴を上げることすらできない。
 一瞬意識が遠ざかり掛け、その次の瞬間に大地の振動で意識を取り戻した。
 地震だろうか。ガリアでは地震など滅多に起こるものではない。天変地異と言うにふさわしい。
 目の前に生きる死者、同時に天変地異。
 自分が気丈に意識を保っていることに、タバサは驚いた。
 本当なら悲鳴を上げて、この場を逃げ出していてもおかしくはない。
 だが、何かがタバサの足を引き留める。見届けなければいけないと、そう感じさせた。
 そして、知る。
 その地震は自然の起こすものではなかった。
567名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 19:04:00 ID:txtXz2G1
ハッタリ自重支援
568夜明けの使い魔6/6:2007/11/30(金) 19:05:26 ID:y/Ok8H5m
 その光景をなんと表せば良いだろうか。
 黒い柱が聳えていた。
 ただの柱ではない。その直径は数十メートル、下手をすれば百メートルを超え、高さはその数倍はあるだろう。
 大地を突き破り、その黒はこの世に姿を現したのだ。
 なんだこれは、とジョゼフは知らずのうちに呟いていた。
 その表面で蠢く何か。
 屍の兵士達が、まるで引き寄せられるかのようにその柱に近づき、そして吸収されていく。
 なんだこれは、と彼は再度呟いた。
 黄泉還る屍だけならば、彼とて知らぬものではない。それがありえぬとは言わぬ。
 だが、これはなんだろうか。その屍をその身に取り込む黒い何か。
 ふと、その巨体が揺れた。
 轟音をあげて崩れかかるその身は戦場となった平原を越えて遠く横たえられた。
 死んだ、わけではないだろう。
 その証拠に、巨大な黒い影の表面は絶えず蠢き、さらには蠕動している。
 そこへ来て、ジョゼフはふとそれが蛇に似ていると感じた。
 規格外の巨体を持つ、化け物蛇だ。
 同時に、絶えず泡立つ表面の正体をも彼は目にした。
 死者だ。青白い顔をした、死者の顔がその中に無数に存在している。
 つまりは――これは、死者の集合体だとでも言うのか。
 冗談ではない、と彼は呟いた。
 そんなもの御伽噺にすら存在しない。そんな訳の分からないものが唐突に現れて盤上を荒らすなど、これはどんなイカサマだ。
 ぎり、と奥歯を噛みしめた瞬間、蛇がずるりと這った。
 現れた場所からまだその胴体が溢れ出る。
 そして――そして、その蛇は巨体を振るい、アムルタートの陣に襲いかかった。
 襲いかかったと言っても、特別なことは何もしていない。
 ごろりとその体を転がしただけだ。
 ただそれだけの単純な行為で、アムルタートの勇猛な兵士が叫び、逃げた。
 圧倒的な暴威である。
 なんだこれは、と彼は三度目の呟きを口にした。
 これでは茶番だ。デウスエクスマキナにしても話にならぬ。彼の望んだ戦とは、このようなものではない。
 傍らに侍る黒の少女がその耳に囁きかける。
「面白いでしょう? これが新しい駒よ」
 その言葉が、決定打となった。
 何が面白いものか。唐突に押しつけられた物が盤面を書き換えたとて、そんなものはジョゼフの望むところではない。
 指し手は己でなければならないのだ。このような、何も知らぬうちに起こったことで決着をつけたところで――
 その通りだ、とジョゼフは呟いた。
 これではまるで己が駒ではないか。
 くだらない、それは彼の望むところではない。
 他者を駒とするのは良い。だが、彼自身が他者の駒になるなど到底許せるはずもない。
 故に、彼は端正なその顔を歪めた。――笑みに。
「感謝しよう。ああ感謝しようとも。ようやくに目を醒まさせてくれたものだ。
 危うく矜持も何も擲って愚かな駒の一つになるところであったわ。
 新たな駒だと? 笑わせるわ。つまりは余も駒の一つと言うことか。
 ふざけるな。余は指し手よ。駒になどなってたまるものか!
 良いさ、ああ良いさ。余の相手はアムルタートなどではなく――」
 言って、ジョゼフは宝剣を抜いた。
「貴様であったのだな!」
 切っ先を突きつける。周囲の臣が突然の奇行に、否、唐突に姿を現した黒衣の少女に混乱する。
 だが、そんなことは知りはしない。
 その刃を突きつけられて、少女は顔を怒りに歪めた。
「そう、敵に回ると言うのね」
「無論」
 忌々しげなその姿に向かって、彼の後ろにあったタバサが氷の槍を放つ。
 違わず、その槍は少女を貫いた、が。
 その体が闇へと溶けていく。貫かれて、それでもなお怒り混じりに少女は笑っていた。
「良いわ、お相手してあげましょう。この破滅の瞳、グリシーナがね!」
 その声だけが、少女が消えた後も周囲に響いていた。
569夜明けの使い魔7/6:2007/11/30(金) 19:08:11 ID:y/Ok8H5m
本日は以上となります。
自分のパソコンが壊れてしまったもので、投下にかなりの間が空いてしまいました。
支援の方、ありがとうございました。

とはいえ、今回はカオスフレアの制作者のネタは無く、私も別に小太刀さんでもふたなりでもないのでその奇妙な支援は気を付けていただきたいです……!
570名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 19:15:25 ID:94rIF1I8
GJ!
物語が動いてきたな。
そしてジョゼフが反逆開始とは。
レッツフタナリ!
571名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 19:20:57 ID:Wqo3ZCHl
乙&GJ

>化け物蛇
なにもんだろう?
グリシーナが用意した以上アポルオンではありえないし
(まさかオリジンの太陽ごともってきた?)
形からすればぺリュトンじゃないし。
572名無しさん@お腹いっぱい。 :2007/11/30(金) 19:34:22 ID:5c7FreWV
空いているようなので、小ネタ投下まいりますね
573凶鳥:2007/11/30(金) 19:39:01 ID:5c7FreWV
 「くそ、くそ、くそくそ!」
 森をかけながら、セレスタンは何度も叫んだ。
 荒い息の中、幾度も後ろを振り返る。
 何故だ、何故こんな目に。
 右の手首が、ひどく寒かった。
 おかしなものだ。
 もう、そこには何もないのに。
 無残に手首から先を失った右腕を見て、セレスタンは思わず笑いそうになった。
 血が噴き出ている。
 急いで治療をしなければ、ならないが――そんな余裕はなかった。
 逃げなければ。 
 あいつが、くる。
 右手をも、あいつに奪われたのだ。
 「くそう……!!」
 セレスタンは恐怖の中で叫ぶ。
 何なんだ、何なんだよ、あいつは。
 このような目にあうなど、ほんの二、三日前までは、想像さえしなかった。
 その時は、自分はまだ騎士のはしくれだった。
 ただし、日の目を見ない汚れ仕事専門の、だったが。
 北花壇騎士団。
 表に出ることのない非公開組織の騎士団である。
 そこに所属していたセレスタンは、他の騎士団と揉めたことが原因で今日解雇された。
 もともとそこでの仕事や立場に思い入れがあったわけではないセレスタンは、傭兵でもやっていこうかと、城を出たのだが――
 出てからしばらくもしないうちに、襲われた。
 正体は、わからない。
 敵の姿はおろか、その位置さえもわからなかったのだ。
 気がついた時には、杖を持った手首が地面に転がっていた。
 一体いつやられたのか、まるでわからなかった。
 ただ、びゅうと風の音が聞こえたような気がしただけだった。
574名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 19:39:59 ID:YOMmpKC9
乙!

なるほど、確かに魔法にはあんま耐性ないっけな。


っジョーカー
っスキヤキ
っ魔石
っ焼肉
575凶鳥:2007/11/30(金) 19:41:09 ID:5c7FreWV
 風の魔法?
 あわてて左手で杖を拾おうとした途端、杖が砕けた。
 ほぼ同時に、右の耳が落ちた。
 悲鳴を上げようとした途端、何かが全身を打った。
 打たれた箇所全てから、血が噴き出す。
 それでも、セレスタンは死ななかった。
 当たり前だ、全て急所をはずされていたのだから。
 だがそれがわかった時、セレスタンは震え上がった。
 ただ打ちまくっただけではない。
 全て、致命傷にならないように急所をはずして打ってきたのだ。
 そこで、相手の姿は見えないが、意図はハッキリと理解できた。
 なぶり殺しにするつもりだ。
 気がついた時には、セレスタンは逃げ出していた。
 裏の仕事で培ってきた技術も、自信も、全て流れ去っていた。
 死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。
 頭にあるのはそればかりだった。
 再び振り向いた時、セレスタンはふわりと浮きが上がった。
 魔法を使ったのではない。
 何者が、セレスタンの首をつかみ、軽々と持ちあげたのだ。
 この時セレスタンはようやく、追跡者の顔を見ることができた。
 途端、その瞳が驚愕に歪む。
 それを見て、そいつはにぃと笑った。
 何かを叫ぼうとしたが、声の代わりに出たのは、ごぼごぼという嫌な音と、血の塊だけだった。

 数分後、リュティスの路上で、傭兵らしき一人男の死体がさらされていた。
 一体誰がいつ、そんなものを投げ捨てたのかは、わからない。
 男は、まるで巨大な猛禽類にでも襲われたかのように、全身を引き裂かれていた。
 その死に顔は、凄まじいまでの恐怖で歪んでいた。
576凶鳥:2007/11/30(金) 19:43:18 ID:5c7FreWV
 ああ、またこの不快な時がきた。
 シャルロット――タバサは内心深く深く嘆息した。
 できることなら、さっさとこの場から逃げ出し、使い魔のシルフィードに乗って飛んでいってしまいたい。
 しかし、それはかなわないことだ。
 プチ・トロワの一角。
 清潔な造りのその部屋には、白いテーブルの上に良い香りのするお茶とお菓子が並んでいた。
 タバサは席に座り、身動き一つせずにいた。
 その後ろでは控えのメイドたちが居心地わるげに、あるいは心配そうな目で彼女を見ている。
 しばらくしてから、その部屋に一人の少女が入ってきた。
 その瞬間、ほんのわずかだがタバサの瞳に険しいものが宿る。
 「お待たせ、シャルロット」
 少女はタバサを見て、微笑した。
 大きく派手な王冠と、体のラインが見えにくい青いドレス。
 イザベラ。
 今現在のガリアの王女。
 タバサ――シャルロットにとっては従妹であり、父を奪い、母の壊したに組むべき男の娘。
 「どう、調子は?」
 席についたイザベラはにこやかに話しかける。
 「――」
 タバサは応えない。
 しかしイザベラは気にするでもなく、話し続ける。
 あの貴族がどうだとか、最近はやりの服はどうだとか、誰と誰が怪しいだとか、年頃の少女がするような、たわいのないの話題。
 それら全てをタバサは無視する。
 カップに注がれたお茶にも、お菓子にもまったく手をつけない。
 イザベラもまるで気にした様子はなく、一人で話して一人で笑ったりむくれたりしている。
 それはまるで、人形に話しかける幼い子供のようで、一種不気味でさえあった。
 「そういえば――」
 お茶のおかわりをしてから、イザベラは話題を変えた。
 「最近、お母上の調子はどうかしら?」
 その言葉に、かすかにタバサの眉が動く。
 「相変わらず、心を壊されたままなのね――?」
 「――」
 「お気の毒ね、あなたも」
 イザベラはタバサを見ながら、ふうとため息を吐く。
 「私としても、何とかしてはあげたいんだけれど……。下手なことをしたら、私が父上に殺されてしまうのよねえ」
 「――」
 「あなたも知ってるでしょうけど、父上は邪魔になれば実の娘だってあっさり殺す怖い人なのよ」
 「――」
 「まあ、仮にそうでないとしても、あなたのお母様が正気に戻ったら、戻ったで、私の命が危ないのは変わりないんだけれどねえ」
577名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 19:44:10 ID:lalwPfcb
支援
578凶鳥:2007/11/30(金) 19:44:47 ID:5c7FreWV
 イザベラはお菓子を一つ摘んでから、天井を見上げる。
 「――」
 「叔母様が正気に戻ったとして、それでメデタシメダタシ……ってわけにはいかないでしょ? ほら、私も父上も嫌われ者じゃない? おまけに、父上は魔法の使えない無能だし、私も似たようなもんだしー」
 これでもけっこー辛いのよねえ、とイザベラは首を振る。
 「叔母様が直ったら、それいけー!ってなもんで、あなたを立てて私ら親子をやっつけようって人たちがわんさかいるのは確実だしさ。いや、直らなくってもそういう人はいっぱいいるわけだし」
 「――」
 「ほんでまあ、反乱とかが起こって父上が殺されたら……ま、それは自業自得としてもよ? 私がどうなるか、わかる? これよ、これ」
 と、イザベラが手首で自分の首をはねる動作をしてみせた。
 「仮に命は助かったとしても、簒奪者の娘ってことで、石投げられて国を追われるのが関の山じゃない?」
 「――」
 「たとえ、あなたや叔母様がそんな気なくっても、周りがそれを熱望してたら、無視できるかしら?」
 「――」
 「無視しても、周りが勝手に暴走したら?」
 「――」
 「そうなったら、こっちは悲惨だわ。いざとなれば、味方なんかほぼゼロだろうし……人徳のあった叔父様の娘で、かつ魔法でも天才があなたがお姫様、いえ、女王様になってほしいってのは、貴族だけじゃなく、平民だって多く望んでいるんだから」
 あー、つらいつらい、とイザベラは首を振る。
 「簒奪者はつらいわ」
 と、そこでイザベラは自嘲的に笑ってみせる。
 何とも言えない、底冷えのする笑みであった。
 「時々ねえ、思うわけよ」
 イザベラは笑みを浮かべ、タバサを見つめる。
 「いっそさあ……。いっそ、王女なんかやめて、どっか遠くにいきたいなあって……というか、むしろ――」
 イザベラはくくく、と獣がうなるような笑い声をあげる。
 「むしろさあ――この国の貴族も、平民も、みーんな死んじゃえって思ったりするわけよ? ちょっとやばいかしらねー。いやー、やばいわね、こりゃ実際」
 からからと笑ったかと思うと、ぴたりとそれが止まる。
 「みんな、私をいらないんだ。だからみんな死んじゃえ」
 感情のこもらない、人形のような顔つきでイザベラは言った。
 タバサは一瞬、部屋の空気が全て凍てついたような、そんな錯覚を覚えた。
 「私がいてもいなくても誰も同じなんだ。何も変わらない。だからみんな死んじゃえ」
 「――」
 タバサは無表情を保っているが、メイドたちはみんな顔面蒼白になっていた。
 耐え難い空気が、イザベラを中心に広がっていくようだった。
 「むしろいないほうがいいんだ。だから、私も死んじゃえ」
 感情のまるで見えない目が、タバサを見つめる。
 しばらく、不気味な見つめあいが続く。
 「なーんてねえ? 冗談よ、じょーだん。びっくりしたあ?」
 イザベラはおどけた表情となり、きゃははと笑う。
 「――」
579凶鳥:2007/11/30(金) 19:50:51 ID:5c7FreWV
 「……でもねえ、私はまだしも、父上は似たような気持ちを何度も味わったはずよ。下手をすれば、それ以上にハードなね」
 「――」
 「ねえ、シャルロット? 父上が……憎い?」
 イザベラは何気ない声で、そうたずねた。
 「……」
 「聞くまでもないか……」
 イザベラは無表情なタバサを見て、苦笑する。
 でもね――と、イザベラは続ける。
 「叔父様が、あなたのお父上が悪いとは言わない。でもね……ことの原因は、叔父様にも一因があるのよ」
 「――!」
 タバサはキッとしてイザベラを睨んだ。
 「あなたのお父上は、天才だった。幼い頃から優れたメイジだった。周りからの信望も厚く、多くの人間が玉座の座ることを望んでいた……」
 「――」
 「それに対して、私の父は王族でありながら魔法をまったく使えない無能者だった。そんなに人間がどんな評価を受け、どんな風に見られ、どんな風に呼ばれるか、聞くまでもないわよねえ?」
 イザベラはカップを取り、お茶の香りをかいだ。
 「有能で人望厚い弟と比較されて、蔑まれる続ける毎日。生き地獄とはこのことでしょうね……」
 「――」
 「でもねえ、言っちゃあ悪いけれど、これで叔父様が父上を見下したり、バカにしてたら、まだ良かったのよ」
 イザベラはカップを置いて、
 「でも、叔父様は優しい人だった。人を思いやる気持ちもあった。だから、父上を何度も励ました……そう聞いているわ。けれど、そんなものがどれだけ救いになったのかしら?」
 その時、イザベラは初めて悪意らしきものをみせた。
 「叔父様はそんなつもりは微塵もなかったでしょうよ。でも、結果としてさらにお父様は引き立て役になったのよ、叔父様のね」
 「――」
 タバサはイザベラの顔から視線をそらし、その手元を見た。
 白い手袋が見えた。
 イザベラは常に手袋をしていて、まず人に素手を見せようとはしない。
 理由は良くわからない。
 「叔父様は、聡明なかたであったようだけど、決定的に欠けているものがあった。何か、わかる?」
 「――」
 「それはねえ、悪意よ」
 悪意、とイザベラは繰り返す。
 「怒り、憎しみ、嫉妬。そういったものが、叔父様にはあまりにも足りなかった」
 「――」
 「無理もないわね。王族として生まれ、魔法の才能にも恵まれ、多くの人から、慕われ、愛される――」
 「――」
 「それが当たり前の生活を送ってたのだから……。そんな人間に、蔑まれ、見下される続ける人間の気持ちを、理解できると思う?」
 小さな子供に尋ねるように、イザベラは言った。
 「わかるわけがないわ。わかるというなら、それはとんでもない思い上がり。そして、その無垢な優しさや純真さが、父上をさらに歪ませたのよ――」
 がたん!
 たまりかねて、タバサを立ち上がった。
 ひい、とメイドたちから悲鳴を上げる。
 「どしたの?」
 「次の任務を――」
 「ああ、それね……。別にそんなにあせらなくてもいいわよ? 特に急ぐわけでもないしね。せっかく帰ってきたんだし、二、三日ゆっくり……」
 「次の任務を」
 タバサは鋭い声で繰り返す。
 「わかったわよ……せっかちね」
 イザベラは肩をすくめ、今回の任務について語り出した。
580名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 19:52:51 ID:DtCQ0Cgi
支援
581凶鳥:2007/11/30(金) 19:53:45 ID:5c7FreWV
 「相変わらず、あそこは嫌なのね……」
 空を飛びながら、シルフィードはかすかにプチ・トロワを振り返り、身を震わせた。
 「お姉さま、あそこ、すっごく不気味で怖いのね、お姉さまも近づかないほうがいいのね?」
 「わかってる」
 同感だとばかりに、タバサは使い魔である愛竜の上でうなずいた。
 「シルフィにはわかるのね。あそこには、ものすごく強くて、ものすごく怖いのがいるのね! きっととんでもない怪物なのね!」
 青い韻竜の言葉には、強い恐怖の念がこもっている。
 「……」
 「だから、お姉さまも近づかないでー!」
 タバサとて、できればそうしたい。
 いく度にあの従妹の『お茶会』につき合わされるのだから、憂鬱極まりない。
 あれなら、ガーゴイルと罵られるか、腐った生卵でもぶつけられるほうがまだましだ。
 イザベラ。
 妙な少女であった。
 あまり人前に姿を見せず、たまに見せてもすぐにどこかにいってしまう。
 それ以外ではベッドの上に寝転がっているかだ。
 時には王族としての公務の場さえさぼることがあるようだ。
 さらに、素肌を見せることを極端に嫌がり、着替えなどでも絶対にメイドなどには手伝わせない。
 それは手にも及び、いつも手袋をつけてはずさない。
 いつもどこに隠れて、何をしているのか。
 少しばかり調べてみてが、皆目わからなかった。
 部屋に引きこもっているのかとも思ったが、それにしても何か変だった。
 宮殿でも、イザベラはどちらかというと疎まれている。
 ヒステリーを起こすとか、傲慢だとか、そういうわけではない。
 物腰そのものは、どちらかといえば柔らかである。
 しかし、その反面、ひどくやさぐれていて、嫌なことを笑顔で言ってくれる。
 「どーせ私のこと、死ねとか思ってるんでしょ?」
 「無能王の娘は、やっぱり無能って言いたいわけ? ま、事実そうだけどね」
 「叔父様の代わりに、父上が死ねばよかったと思ってるんでしょ? わかってるのよねー、こちとらだって」
 そんな台詞がぽんぽん出るのだから、たまったものではない。
 嫌味の言い方がものすごく陰険だ。
 魔法の才能にめぐまれず、すっかりいじけてねじまがった嫌味姫。
 周囲の、イザベラに対する評価はおおむねこんなところだろう。
582凶鳥:2007/11/30(金) 19:55:04 ID:5c7FreWV
 けれど、タバサの評価は違う。
 時折、イザベラの顔がひどく仮面じみて見えることがある。
 その態度も、ひどく芝居じみて見えることがある。
 イザベラの態度も言葉も、全て偽り、フェイクではないかと思えることがある。
 そして、その仮面の下には得体の知れない素顔があるような、そんな気持ちにさえなる。
 それにシルフィードの警告。
 もしかすると、シルフィードが脅える城に潜む恐ろしいものは、イザベラの使い魔なのかもしれない。
 イザベラがサモン・サーヴァントを行ったという情報はない。
 だが、気になる情報はある。
 数えられぬ北花壇騎士団員――ロストナンバーズ。
 団長すなわち、イザベラの直属であり、他の騎士からもその存在を隠された騎士、ロストナンバーズが存在する。
 そいつは、裏切り者や使い者にならない騎士を始末することを任務にしているという。
 実在するのかどうかは、本当のところはわからない。
 何しろ北花壇騎士はおのれ以外の団員の顔を知らないのだから。
 だがその噂は、無言の圧力が団全体にかけているようだ。
 裏切り者・離反者は必ず殺すという無言の脅迫が。
 もしかすると、ロストナンバーズというのは、イザベラの使い魔なのではないか。
 少し前に、リュティスで見つかった傭兵の変死体。
 あの死体は、もと北花壇騎士だったものではないか。
 シルフィードの背中で、タバサはそんなことを考える。
 イザベラの顔を思い出し、タバサは身震いした。
 あの女は、嫌いだ。
 今日の『お茶会』でさらに嫌いになった。
 ――お前の父は偽善者だ。
 遠まわしに、そんなことを言われたような気分だった。
 ――お前の父の、薄っぺらな優しさで、私の父は歪んで、壊れてしまった。
 ――さあ、どうしてくれる?
 イザベラの言葉の裏には、そんな意味がこめられているような気がした。
583凶鳥:2007/11/30(金) 19:57:21 ID:5c7FreWV
 バッソ・カステルモールは緊張を感じていた。
 全身から嫌な汗が噴き出す。
 暗闇の中、明確な殺意がこちらを見ている。
 だが位置はわからない。
 杖を構えながら、用心深く周囲を見回す。
 血のにおいと鼻についた。
 先ほどまで自分が駆っていた馬。
 今は、首と胴が切り離されて地面に伏している。
 何という不覚。
 カステルモールは自分で自分を呪った。
 オルレアン公の残した姫君――シャルロット。
 彼女へ自らの意思、否、東薔薇騎士団の総意を告げ、別れた直後、いきなり襲撃を受けた。
 人目を避けるための単独行動が仇になったのか。
 だが、それも無意味だった。
 すでに尾行されていたのである。
 いきなり攻撃を受け、馬をやられた。
 追跡者は森の闇に溶けこみ、姿を見せない。
 「出て来い、卑怯者め!」
 無駄であろうと思いつつも、カステルモールは叫んだ。
 と、前面で何が動いた。
 (女?)
 黒いローブに身を包み、フードで顔を隠しているが、どうやら女であるらしい。
 杖を手に持ち、カステルモールを見ている。
 「何者だ」
 問いかけるが、返事はない。
 代わりに、女は杖を突き出す。
 呪文が詠唱され、風の刃が飛んだ。
 カステルモールも呪文を唱え、風の幕でそれを防ぐ。
 幾度魔法の攻防が続いた後、カステルモールは訝しさに首をかしげた。
 このメイジは、てんで大した相手ではない。
 様子見の魔法ゆえに一見互角勝負が続いているが、カステルモールが本気を出せばあっという間にかたがつくだろう。
 それだけなら問題ではない。
 カステルモールはちらりと馬の死体を見る。
 最初に受けたあの攻撃だ。
 この程度のメイジに、あの鋭く恐ろしい風の刃が放てるわけがない。
 と、すれば、第二の敵がいると見てよろしい。
 何故沈黙を続けているのかはわからないが、そいつはどこか近くでこちらを見ているとみていい。
 (こいつは、囮か)
 カステルモールは杖に魔力をこめた。
 エア・ハンマー。
 風の槌が、メイジを吹き飛ばした。
 (これで――!)
 次の敵が動きを見せる。
 しかし、カステルモールの予想に反し、第二の敵はいっこうに現れない。
 どうなっている? そうカステルモールが思ったとき、
 「あー、やめやめ! やっぱ魔法じゃダメだわ」
 さばさばした声が響く。
 と、思うと、吹き飛ばしたメイジがふわりと起き上がった。
 まるで重さを感じさせない動きだった。
 「やっぱり、得意分野でいかしてもらうわ」
 笑みを含んだ声で、女はローブを脱ぎ捨てる。
 「……!!」
 カステルモールは息を呑んだ。
 「バカな……」
 そこに立つ女。
 そいつは、カステルモールにとって打倒すべき敵の一人。
 「イザベラ!!」
 「様をつけろよ、様を」
 にいぃ、とイザベラは凶悪な笑みを浮かべた。
 カステルモールは上から下までイザベラを見る。
584凶鳥:2007/11/30(金) 19:59:22 ID:5c7FreWV
 普段の素肌を隠したドレス姿ではなく、動きやすさを重視した軽装だ。
 両手、それに二の腕が露出している。
 腕はカステルモールのそれと比べると細い。
 けれど、そこには引き絞ったように鍛え上げられた筋肉が隆起していた。
 さらにその手……。
 幾度も爪をはがせばこのようになるのではないか。
 人間の手ではない。
 まるで、猛禽類のそれだった。
 これを隠すためか。
 カステルモールはイザベラが人に素肌をさらさない理由を理解した。
 残虐な輝きを帯びた青い瞳が、カステルモールを見ている。
 「私を討ってみるかい、忠誠の騎士」
 イザベラが笑い、一歩踏み出す。
 無意識のうちに、カステルモールは後退していた。
 「逃げるなよ、チャンスだよ。簒奪者の娘を討つ絶好のチャンスじゃないか。ここなら、他に誰もいない。鼻の曲がるような臭い猿芝居をする必要もない」
 サディスティックな声で、イザベラは笑う。
 プチ・トロワでのひねくれ、いじけた態度とはまるで別物。
 いや、むしろ――
 (こっちが本性か)
 同時に、自分の本意を見抜かれていたことに動揺する。
 それを悟られぬため、忠誠を誓うシャルロットに無礼な態度をとってさえいたというのに。
 「いつから気づいて――」
 「最初っから」
 カステルモールの途中でさえぎり、イザベラは鼻で笑う。
 反射的に、カステルモールは魔法を放つ。
 魔力で生み出された電撃がイザベラを襲った。
 イザベラはすっと手を突き出し、それを受け止める。
 閃光が消えた後、イザベラの手のひらからかすかに煙が上がる。
 でも、それだけだった。
 「――で?」
 つまらなそうな顔でイザベラは言う。
 「これで終わり?」
 バカにしたようなその声が、カステルモールから冷静さを奪った。
 頭に血を上らせ、続けざまに攻撃魔法を放つ。
 結果は全て無駄だった。
 ある時はひょいとかわされ、ある時はハエでも追い払うように打ち払われる。
 怒りはやがて驚愕に、驚愕は恐怖に変わっていた。
 「打ち止めかい?」
 知る限りの攻撃魔法を打ち尽くした後、イザベラの青い瞳がカステルモールがせまっていた。
 その瞳を覗いた時、カステルモールは反射的に顔をかばっていた。
 衝撃が腕に走る。
 骨の砕ける感触が、嫌というほど明確に伝わってくる。
 右腕はもう使えない。
 (不覚)
 カステルモールは奥歯を砕けんばかりに噛み締め、イザベラを睨んだ。
 「魔法がチャチすぎるよ。なあ、バッソ」
 青い髪の王女は、酷薄な視線をカステルモールに注いでいる。
 「そんな魔法じゃ、私は獲れないよ」
 「〜〜〜〜〜!!!」
 「ウサギ狩りに使うような矢が、虎やライオンには通じないようにね」
 認識を誤っていたと、カステルモールは自覚する。
 驚きの中で、自分はこの相手をなめていた。
 所詮は簒奪で王位を得た無能者の娘。
 だから、楽に勝てる相手だと――
 先ほどの、魔法の応酬もそれに拍車をかけていた。
 だから、ああもう無様に片腕を砕かれたのだ。
 左手で杖をつかみ、ゆっくりと間合いを計る。
 イザベラの所作をあますところなく観察する。
 魔法ではない――おそらくは、武術。
 隠し武器でないとすれば、素手に特化した格闘技であろう。
585凶鳥:2007/11/30(金) 20:00:50 ID:5c7FreWV
 その動き、体つきからそのように推測する。
 (そうか)
 あの馬を切り裂いたのも、魔法ではなく、武術によるものに違いない。
 だが、人が素手であんな真似ができるのだろうか?
 できるのだろう。
 カステルモールはイザベラの猛禽のような手を見て、冷たい汗を流す。
 恐ろしい。
 カステルモールは改めてそう思う。
 隙を見せれば、いざべれは一瞬で間合いを飛び越え、あの馬のように自分を引き裂くだろう。
 人の速度をはるかに超えた速さで。
 油断してぼやぼや呪文を唱えていれば、あっという間に終わりだ。
 生半な魔法は精神力の浪費に終わる。
 なめてかかるな。否、人と思うな。
 巨大で、獰猛で残忍、狡猾な魔獣と思え。
 カステルモールはおのれに言い聞かせる。
 もう認めよう。
 こいつは、今までであった敵の中で最大最強の相手だ。
 魔法の力で劣る?
 だから、何だ。
 そんなものは、ライオンに対しナイフがフォークが持てないといって優越感に浸るようなものではないか。
 自分の最強の魔法で、討つしかない。
 「本気の、本気か――」
 イザベラの顔から笑みが消えた。
 「なら、こっちも本気だ」
 すう……と息を吸い、吐く。
 「臨技・殺殺爪」
 呪文とも何ともつかない言葉と共に、イザベラの全身から暗い紫に似た光の奔流が走った。
 「アイス・トルネード」
 その時には、カステルモールも詠唱を終えていた。
 無数の氷刃からなる竜巻、いや、疾風の槍がイザベラに向かって放たれた。
 それに応えるように、イザベラは紫の光を放った。 
 それは巨大な猛禽類――鷹へと姿をとり、カステルモールへと襲いかかった。
 風の槍と、紫の鷹が、ぶつかりあった。
 爆発が、森を揺らした。
 (やったか!?)
 土煙が上がる中、カステルモールは杖を握る。
 その前に、青い髪がなびいた。
 「……!?」
 ふわりとイザベラの手がカステルモールの胸に触れる。
 「臨技・疾風砲」
 言葉と共に、ドンと大砲のような音が響いた。
 自分の胸が妙にすーすーとするのを感じながら、カステルモールは崩れ落ちた。
 胸にぽかりと大きな穴をあけて。
 「正直……驚いたよ」
 二度と目を開かなくなったカステルモールを見つめながら、イザベラはつぶやく。
 左腕にいくつもの氷が突き刺さり、しばらくは使えなくなっている。
 「……メイジもバカにしたものじゃないね。いや、私がまだ未熟なだけか」
 しかし、悪くない。
 ぞくぞくとするような悦びがイザベラの中を駆け巡る。
 これを得るために、地獄のような修行を重ねているのだ。
 いや、それが何ほどのものであろうか。
 初めて自然石を割れた時。
 初めて猛犬を素手で殺した時。
 初めて岩を砕けるようにになった時。
 初めてトロール鬼を叩き殺した時。
 初めてメイジをその手で引き裂いた時。
 修行の苦しみが、痛みが、その何百倍もの悦びと変わった。
 そして、これからもその悦びを得るために――
586名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 20:03:54 ID:DtCQ0Cgi
支援
587凶鳥:2007/11/30(金) 20:08:32 ID:5c7FreWV
 グラン・トロワの中。
 イザベラは父であるジョゼフの前にかしずいていた。
 「謀反の企みを持つ者を、討ってまいりました」
 イザベラの前には、カステルモールの首が無造作に置かれている。
 「殺したのは、早計ではなかったかな、イザベラよ」
 娘を見下ろしながら、ジョゼフが感情の見えない声で言った。
 「ご安心を」
 イザベラは微笑み、
 「すでに謀反人どもの動きはつかめておりますわ。父上からご命令さえいただければ、いつでも一網打尽にできます」
 「皆殺しにすると?」
 「いつまでも、過去の記憶にとらわれて現状を見ることの出来ぬ馬鹿者です。さっさと死んでくれたほうが綺麗さっぱりです」
 「イザベラのやり方は、血生臭くていけない」
 「これはこれは……。実の弟を謀殺されたかたのお言葉とは思えませんわね?」
 「言葉がすぎるぞ、青鷹よ」
 「………!」
 その言葉に、イザベラは口を閉じ、顔を伏せる。
 ただし、それはジョゼフの口から出たものではなかった。
 王座の背後から現れた亜人のものである。
 「若い血が滾るのは仕方ないとしよう。だが、今は我らの存在を表に出す時ではない」
 異国の装束をまとった、鳥のような亜人であった。
 「はっ……」
 「メイジの多くはその特異な力で増長し、堕落した輩だが――油断はならぬ。お前に傷を負わせたような、剛の者も数多くいよう。それに、虚無の使い手のこともある……」
 「父上以外の者、ですわね?」
 「左様。すでにそれらしき者の情報も入っている。そやつらが小癪なことをせぬとも限らぬのでな――」
 「はい」
 「お前の従妹である、シャルロットという娘、あやつの級友が人間の使い魔を召喚したという話は聞いているな?」
 「それが、伝説の使い魔であるらしいとか」
 「いずれ――そやつと戦うことになるやもしれぬ。青鷹よ、油断なく、技を磨け」
 「ははっ」
 ジョゼフは亜人と娘のやり取りを、他人事のように見ていた。
 もはや、娘の心が自分から離れていることは明白だった。
 自分が召喚した恐るべき使い魔。
 拳法という、未知の武術を操り、メイジの魔法はおろか、エルフの先住魔法さえものともしない。
 というより、メイジもエルフも、その速度にはついていけず、その破壊力にこうすることは出来ない。
 さらに面倒なことに、油断のならない狡猾さも身につけていた。
 メイジの魔術など児戯に等しい――そんな傲慢な言葉とは裏腹に、メイジたちを極めて冷静、いや、冷酷に観察し、その能力の把握につとめる。
 メイジの弱点を知り尽くそうというわけだ。
 亜人は使い魔となること当初は鼻で笑っていたが、ジョゼフの狂気を知るや、
 「面白い。憎しみこそが力を生む。貴様の野心に力を貸そうではないか」
588凶鳥:2007/11/30(金) 20:10:34 ID:5c7FreWV
 空の拳魔・カタ。
 それが亜人の名だった。
 やがてカタは、娘であるイザベラを弟子とし、自らの操る武術を教えだした。
 臨獣ホーク拳。
 そのような名前であったか。
 「お前の娘は、素晴らしいな」
 幾度となく、カタはそんな言葉を口にする。
 「我も多くの拳士を見てきたが、あれほどの素質を秘めた者は見たことがない」
 「まさに、臨獣拳を極めるために生まれた娘だ。我がこの世界に召喚されたのも、うなずけるというものよ」
 これは、親として喜ぶべきことなのか。
 魔法の才に恵まれなかった娘。
 だが、拳法の才は凄まじいまでのものであった。
 常人なら死、良くても発狂するような過酷な修行を繰り返し、師であるカタの教えを見る間に吸収していく。
 拳を振るうたびに、命を奪うごとに、その力は増大しているようだった。
 ジョゼフは、イザベラの背後に眼をやる。
 騎士らしき姿をした者たちが、控えている。
 イザベラと同じく、カタから教えを受けた臨獣拳使いたち。
 国内外から密かにかき集めた数多の候補者の中で、修行に耐えられた者はイザベラを含め十人そこそこ。
 後はみな、過酷な修行に耐え切れずに死んだ。
 もっとも死しても、彼らはそこで終わりではない。
 道半ばで斃れた者たちは、カタの秘術によって生ける死者・リンリンシーとして蘇生している。
 北花壇騎士団の尖兵として。
 「……伝説の使い魔『ガンダールヴ』。どれほどのものか――」
 詩でも吟じるように、イザベラは言った。
 「とても、楽しみですわ……」
 その瞳はすでに、まだ見ぬ強敵『ガンダールヴ』に、そして、
 「……あの子も、シャルロットも。これから、どれだけ強くなるのかしら?」
 くふふ。
 イザベラは笑う。
 「どんなすごい力を見せてくれるのかしら? 天才と呼ばれた叔父様の娘だもの、これからどんどん強くなってくれるのは間違いないわあ……」
 強敵の存在に、シャルロットは歓喜していた。
 「楽しみよお、シャルロットぉぉ……。すごく待ち遠しいわ、あなたと殺し合える日が…………」
 まるで遠くの恋人に呼びかけるように、イザベラはつぶやく。
 ジョゼフはその時、ひどく娘が――イザベラが羨ましくなってしまった。



 ・・・
 以上で投下終了です
 支援のかた、どうもありがとうございました
589名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 20:15:20 ID:6udiK+Pj
GJ、面白かった
調べて分かったけどゲキレンジャーなのね
そうか、今の特撮はこんなすごいのがいるのかあ
そして最初はガイアが召喚されたと思った俺を許して
590名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 20:18:14 ID:bHDCGK35
匣の中にはGJがぴったりと入ってゐた
591名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 20:19:07 ID:94rIF1I8
GJ!
臨獣拳や幻獣拳はもう拳法じゃねーよ!w
592名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 20:20:51 ID:DtCQ0Cgi
こういう調理の仕方は大好きだわ。GJ!
593名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 20:22:23 ID:lJlxdeP7
>>591
ロマサガ3の「超次元ペルソナ」だって体術です!w
594名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 20:27:55 ID:d2t/iQV2
こういうのが小ネタなんだよ
最近は召喚して終わりなのを小ネタって言い張るから困る
ともあれGJです
595名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 20:32:11 ID:zarHFl7H
小ネタらしい小ネタ久しぶりに見たよ。GJ!
596名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 20:33:37 ID:mh5W06Z2
ロストナンバーと言われてGUN-HO-GUNSのオカマを思い浮かべた俺は駄目ですか?
597名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 20:33:44 ID:JZKSnQp9
乙!

その、なんというか、勃起モノでした(*´Д`)ハァハァ
598名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 20:38:13 ID:pFjsDyO9
劣等、覆すことが出来るかは本人しだい。
何処までも悲しい…       GJ。
599名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 20:39:25 ID:+PC4bOlL
GJ、そして乙でしたー!
空の拳魔様かっけえ!
そしてイザベラ様からルーツっぽい臭いがするw
600名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 20:42:56 ID:si/lzfw5


そろそろベルセルクのフルボッコギーシュ投下こないかなぁ
601名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 20:45:48 ID:SMs3ykn6
GJ、これは良い小ネタだった。こーゆー小ネタならいつでもカモンカモン。

数ある既存の小ネタの中でもお勧めってあるかね?
602名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 20:50:34 ID:fPowEm25
サボテン君とストーム1、後は使い魔消失事件かな
特に使い魔消失事件の後日談は死ねるww
立ち読みできない漫画が元ネタだけのことはある
603名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 21:00:14 ID:6udiK+Pj
俺、あれのせいでゲルマニア皇帝がパンチパーマなイメージなんだ……
604名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 21:01:57 ID:pj8HbkQW
このイザベラ様、かっけえなぁ。気さくなイザベラ様クラスにまで化けそうな所がGJです。
ということはルイズが召喚したのはゲキレンメンバーかマスターか?
タバサがイザベラ様に完敗し、
対抗するために激獣拳に弟子入りとか、話がどんどん膨らむ余地がある所が良いっす。
605名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 21:05:29 ID:yMFcDC5k
ディセプティコンさんまだかなぁ…
早くスタスクの雄姿が見たいよ
606名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 21:08:22 ID:V85DTP5a
ルイズがフリーザさまを召喚したらっと妄想したけどカオス・・・
私の戦闘力は530000です…ですが、もちろんフルパワーで
あなたと戦う気はありませんからご心配なく…
なんてギーシュとの決闘の時に言うんだろうな。
607名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 21:09:11 ID:TAkrKKmb
>>604
きっとルイズが召喚したのはリオ様で
ルイズが臨獣ツンデレ拳を(ry
てかツンデレと臨獣拳はバターと醤油くらいあってると思うのは俺だけか
608名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 21:10:47 ID:lJlxdeP7
>>606
ラディッツでも
「戦闘力たった5かゴミめ」
な悪寒
ワルキューレを出して30ぐらい?

609名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 21:13:12 ID:biGYlEEN
リオ様大好きラブウォーリアードコー?
カタの人GJです!いやーこういう小ネタは面白い
どこか読ませていく力がありましたな
610名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 21:16:06 ID:aMg7dCHB
GJ!
臨獣拳アクガタや激獣拳ビーストアーツは北斗神拳の親戚だと思う
いや元ネタは形意拳辺りだろうけど。
611名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 21:28:31 ID:e3UQo2kz
>>609
そりゃ一緒に召喚されてルイズとメレの大怪獣バトルやがな
612名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 21:48:30 ID:fhLPl+x9
ワルキューレで30いくの?
613名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 21:51:56 ID:Yx3epr2g
ちょっと遅いけど凶鳥の人、気合いの入った小ネタだった

GJ
614名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 21:52:27 ID:Qi/ATCd7
ツンデレと臨獣拳は相性いいけど
ツンデレとツンデレは相性最悪だぞ多分
615名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 21:53:44 ID:At3PlLPH
やってみなければわかるまい!
616名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 21:56:20 ID:GSY23HX+
>>612
むしろ元の戦闘力がマイナスだろうから0ぐらいじゃね?
617名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 21:59:58 ID:v8wgkJ3u
比較的長めに感想ー

>夜明けの人
ジョゼフ強いよジョゼフ 主にメンタルの意味で。
欲を言えばグリシーナの誘惑で「あなたにもう一度弟を殺す喜びを味合わせてあげるわ」とか
いろんな意味でブチ切れ入るだろうけど言って欲しかったかも。
とまれ、これでクライマックスに入ってゆくのかしら。
……ひょっとして今回のタバサはチャンピオンか?
GJっしたー。

>凶鳥の人
すげぇ、魅入った。冷めた感じのイザベラ様がすっげー可愛い。
読者の視点からで言うとこのぐらい言ってもバチはあたらないとか、素で思ってしまったわ。
こっちのジョゼフもさらに化けて欲しいなぁ。
GJっすー。

618名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 22:20:44 ID:qoZfjQLN
夜明けの人GJ
ここのジョゼフはツンデレか
「べ、別に心配してるわけではない。ただお前の持つ情報が欲しいだけなのだ」
619名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 22:23:57 ID:h6g/xt+2
名前欄に「凶鳥」なんて書いてるから某フッケバインかとおもた(w
620名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 22:26:38 ID:6WCIR4E2
あの飛び方は大佐か!?
621名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 22:27:39 ID:MfXefEZl
バンナムとサンライズに存在を消されそうになった機体のことか
622名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 22:30:30 ID:h6g/xt+2
623名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 22:38:19 ID:bHDCGK35
ああ、あのガンダ・・・ゲフンゲフン
624名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 22:40:26 ID:27Jek/Hw
そういやガンd……ゲフンゲフンバンプレオリロボじゃなくて、物質転換炉を積んだロボも居たような希ガス。
625名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 22:43:46 ID:TAkrKKmb
佐藤大輔は正直一本くらい話を完結させろとw
獏ちゃんみたいに牛歩でも一応続けてるならともかく
626名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 22:46:58 ID:6tqILPZ1
続編決定記念でハーメルを呼びたい
627名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 22:52:00 ID:lJlxdeP7
>>612
銃を持った農夫が5だっけ?

何とかなるようならならないような微妙なライン…
武器には反応しないが本人の気とか魔力に反応するならそれぐらいはいきそう
628名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 22:58:40 ID:XOiXg0E4
カメハウスの住人を丸ごと召喚しました。


ワルキューレがアクセルダンスで一刀両断されるところまでは思い付いた。
629名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 22:59:33 ID:h7GRG3d2
>>614
最近こっちに越してきた銀様召喚の話は
「今夜は私とあなたでダブルツンデレよぉ」って感じで相性抜群だぞ
630名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 23:09:01 ID:M5h/k6NP
5分前にこのスレをみつけた
どれから読めばいいんだ、このまとめの量・・・
631名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 23:10:29 ID:5Zlb8Pl6
好きなのからでいいじゃん!!
632名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 23:11:13 ID:j5zU9dvr
ツンデレで鈴科百合子召喚を思い付いたがまずルイズが死んでしまうな
しかし負傷後だと妹達居ないから役立たずだし……
633名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 23:13:39 ID:6sugQ/Dr
>>632
役立たずだからルイズ死ななくて済むんじゃね?
で、水系統の治癒で寝たきりから回復して皆殺し。
634名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 23:13:48 ID:opzr4gm7
>>630
当たり外れはあるが、まず自分の知ってる作品とキャラを選ぶべきだな。
それで長編を総当たり。出だしで判断してくれ。

慣れてきたら知らない作品のを。
635名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 23:15:04 ID:cUJ2ZBT6
百合子さんは妹達抜きでも噛み付き攻撃とかできるし
636名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 23:21:32 ID:Yx3epr2g
>>630
まずは知ってるキャラの小ネタから、かな

 慣れてきたら、完結した長編をどうぞ
637名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 23:30:18 ID:M5h/k6NP
>>634>>636
把握した。
とりあえずバーニィから入るわ
638名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 23:31:39 ID:MfXefEZl
いきなりそれから逝きますか
639ゼロの夢幻竜:2007/11/30(金) 23:33:42 ID:ZwvBiWZz
流れぶった切る様で済みませんが投下して良いですか?3分後くらいに。
640名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 23:34:45 ID:6WCIR4E2
しえん
641ゼロの夢幻竜:2007/11/30(金) 23:36:27 ID:ZwvBiWZz
では投下逝きまーす!

ゼロの夢幻竜 第五話「偽りの姿」

ラティアスが眠っているのは分かる。
問題は彼女が呼吸をして体を上下させるのと、南の窓から強烈な朝日が入ってくるのが同時に起きた時の事である。
ガラスの破片の様に眩しく輝く彼女の羽毛が強烈に輝くのと同時に、そこに銀色をした小さな人型の塊が浮かび上がるのだ。
それも突然そうなるのではなくてスウッと変わるのである。
しかしそれはあくまで人型をしているだけである。
しかもコンマ5秒にも満たない一瞬の事なので、顔をはっきりと捉える事も出来なければ、胴体部分の凹凸も良く見えない。
だが確実にラティアスの体は人間の体に変わったかのように見える。
夢か幻でも見ているのだろうか?
暫くルイズはその光景に釘付けとなっていたが、ラティアスが目覚めた事で終わりを告げた。

「ふああ……はふぅ。ん……はわわっ!ご、ご主人様!おはようございます!」
「お、おはよう。よく眠れたかしら?」
「はい!とっても……って、わたしは使い魔のみなさんが寝る所で寝てなきゃいけないのに!
しかも、わたしがご主人様を起こさなきゃいけないのに!ご主人様、申しわけ有りません!!」

慌てふためき最後に涙声で謝るラティアスをルイズは一応落ち着かせる。

「お、落ち着いて。昨夜質問ばかりして眠たげにしているあなたを振り回した私がいけないのよ。だから落ち着いて。」
「わ……分かりました。」

その言葉にラティアスはほっと一安心する。
それから一時間半ほどルイズはテーブルに突っ伏して仮眠を取る事にした。

先に目を覚ましたのはラティアス。再び目を開けた時には随分と明るくなっていた。
それから彼女はルイズの服が、見たところ昨日のままであるという事に気づいたので、ルイズが起きたのと同時に取り敢えず言ってみる。

「改めましておはようございますご主人様。ところで服を着替えた方が良いんじゃないでしょうか?」
「え?ええ、そうだけど……」
「それじゃ、ちょっとそこに立っていて下さい。」

いいわよとルイズが返事をすると、ラティアスはしまっていた両手を出してルイズの着替えに取り掛かった。
クローゼットからご主人が着ている物と同じ物―つまりブラウスやスカート、ニーソックス―を、順次エスパーの力を使って取り出しベッドの上に置いていく。
その際、杖も使わなければ手も使わずにそれをやった事についてルイズは驚嘆していた。
ラティアスにとっては同じ仲間も出来る能力の一つに過ぎなかったが。
それからルイズに服の脱がし方というものを教えて貰いながら着替えを行う。
途中下着という物の存在があった為に、再びクローゼットの開閉をしなければならなかったが全てはスムーズに進んでいった。
着替えが終わったルイズは部屋を出ようとする。
その時汚れた服の入った籠を持ったラティアスが、開いた状態で忘れてられたクローゼットの引き出しを閉めようとした時何かに目を留めた。
それは鏡台の上に置かれた化粧箱。
隅の方に小さく何か書かれている。
この世界の文字が分からない為か気になって仕方が無い。
好奇心に負けた彼女は思い切ってルイズに訊いて見ることにした。

「ご主人様。これ何て書いてありますの?」
「それ?ああ、『カトレア』って書いてあるのよ。私の姉さんの名前。ここに入る時に譲っていただいた品なの。」
「そうなんですか……どんな人なんですか?」
「どんな人……ちょっと待って。……この間修復するから実家に戻す為に壁から外したのをうっかり忘れていたわ。」

642名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 23:36:53 ID:MfXefEZl
ならば
支援、君に決めた
643ゼロの夢幻竜:2007/11/30(金) 23:37:37 ID:ZwvBiWZz
そう言ってルイズは部屋の中に戻り、ベッドの後ろから何かをごそごそと取り出す。
出てきたのは割と小さく、少し色褪せてはいるが立派な画だった。
そこには3人の女性が寄り添って描かれている。
真ん中にいる少女がルイズだという事は直ぐに分かる。面立ちがほぼ今のままだからだ。
という事はその両隣に立つどちらかの女性がカトレアという事になる。
左隣の女性は年の程は15、6歳位で年相応に均整の取れた体をしているおり、コロコロと笑っているという言葉が似合っていそうな笑顔をしていた。
右隣の女性はその女性より3、4歳ほど年上に見える。凛々しく気品のある顔立ちをしていてその点では綺麗だと思えた。
鼻の下から嫌な匂いがしているにも拘らず、『笑ってください』と言われて無理矢理捻り出した様な笑みをしていなければ、だが。
さて、どっちだろうか。
答えはルイズが杖を使って直ぐに示した。

「左にいるのがカトレアお姉さまよ。右にいるのはエレオノールお姉さま。」

その言葉と共にラティアスは二人の姿を情報として処理し頭の片隅に保管する。
いずれ自分の姿を偽らなければならない時の為に、平面という断片的なものからでも参考にしておく必要があったからだ。
ルイズは絵を元の位置に戻し戸口まで行く。

「行きましょ!ラティアス!」


644ゼロの夢幻竜:2007/11/30(金) 23:38:59 ID:ZwvBiWZz
ルイズとラティアスが部屋を出ると、同じ様な三つの木で出来た扉の内一つが開く。
出てきたのは燃えるような赤毛をした女の子、キュルケである。

「あら、お早うルイズ。」
「お早う、キュルケ。」

キュルケはルイズを見るとにやっと笑ったが、ルイズは顔をしかめ忽ち不機嫌になった。
ラティアスはルイズが不機嫌になったのを見て、目の前にいるキュルケという女の子に意思疎通を許すか躊躇する。
それからラティアスは彼女をしげしげと眺めた。
身長、肌の色、雰囲気、体つきが全てルイズと対照的だ。
この事もやはり情報の一つとして処理され、頭の片隅に保管しておく。何が役に立つか分からないからだ。
その視線に当の本人が気づかない訳が無い。

「ねえ、ルイズ。あなたの……鳥?竜?どっちでもいいわ。こっちをジロジロ見すぎよ。ちゃんと躾は始めてるの?」

その言葉にはっとなったルイズはラティアスを「ちょっと!」という雰囲気で体を押す。
それに気づいたラティアスは、ゆっくりとルイズに振り向き一つだけ質問する。

「ご主人様。この人とは意思疎通をやってもいいでしょうか?」
「駄目。絶対駄目。天地がひっくり返ったって駄目!!」
「何が駄目なのよ?」

キュルケからの尤もらしい質問にルイズとラティアスはビクッとする。
そう。傍から見ればルイズが一方的にラティアスに対して話している様にしか見えないのだ。
ルイズは慌てて何でもないという風に手を振って話を続ける。

「何でもないわよ。それより何か用?」

その様子にキュルケは少し拍子抜けしてしまった。
ここで自分に突っかかってきたら、自分が昨日一発で召喚したサラマンダーのフレイムを見せてからかってやろうと考えていたのだ。
意外に自分を軽くあしらっている様な雰囲気さえ見せるルイズにキュルケは嘲笑混じりに答える。

「別に。私のフレイム見せるついでに、あなたの召喚した使い魔がどんなものなのか見てやろうかなって思っただけよ。
それにあなたその使い魔に随分入れ込んでいるようだけど、速く飛ぶ事なんて風竜にだって出来るわ。それ以外の使い道あるの?」

その言葉に反応したのか、キュルケの背後から真っ赤で巨大なトカゲが現れる。
大きさは虎と同じ位。尾では小さな炎が燃え盛っていた。
ラティアスはそれにも一応目をやるものの、人間を対象として監察している頭の中で叩き出された答えは『許容範囲外』。
お話にもならなかった。
そしてルイズはやれやれと言わんばかりに肩を竦めキュルケの側を通り過ぎながら言った。

「有るわよ。この子はね、とてもあなたの頭じゃ考えが及ばない位、物凄い能力を持っているわ。
それにあなたもその使い魔に随分入れ込んでいるようだけど、秘薬とかを持ってきたりする事なんて大方の使い魔が出来る事じゃない。それ以外の使い道あるの?」

それでお終いとばかりにルイズは階下へ降りていった。
その後に籠を抱えたラティアスが続く。
自分の使った嫌味を倍返しにされた様なその言葉に、キュルケは少しだけムッとしたが直ぐにやれやれといった表情になり、むんとした熱気を放つフレイムの頭を撫でる。

「この間は言い返す余裕も無くてむきになってばっかりだったのに……一端に言い返せるようになっちゃって……」

それはゼロと呼び続けていた相手が生意気に自分をやりこめた事への不満か。
それとも好敵手がやっと自分に相応しいほどの格を持った事への満足感か。
その答えの真意を知るものは誰も居ない……
645名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 23:39:48 ID:bEhw2uMy
支援ついでに…


おまいら、ルイズが大英帝国に進出ですよ
http://www.telegraph.co.uk/news/main.jhtml;jsessionid=T5TA5HJIUZZGVQFIQMFCFFOAVCBQYIV0?xml=/news/2007/11/30/nflag130.xml
646ゼロの夢幻竜:2007/11/30(金) 23:40:01 ID:ZwvBiWZz
寮の外、水汲み場の辺りでルイズはラティアスに、洗濯をなるべく早く終わらせて食堂に来るように言った。
だがその時になってラティアスは食堂の位置を知らない事に気づいた。

「どうしましょう。メイジが近くにいないで使い魔が本塔の中をうろうろするなんて事出来ないし……」
「ご主人様、大丈夫です。直ぐに洗濯を終わらせて食堂に行きます。」
「えっ?でも食堂がどこかなんてあなた知らないんでしょう?」
「大丈夫ですって!さ、早く行かないとみんなから遅れちゃいますよ。」

後ろから背を押されたルイズは、遂に仕方なくその場を後にした。
その場に残されたのはラティアスただ一匹だけ……
いや、違う。5メイル程離れた場所から仕事を終えたので休憩がてらに散歩をしているらしいメイドが一人いた。
ラティアスはそのメイドも一応観察しておく。
ポイントになったのは、ご主人様ことルイズや先程会ったキュルケとは違う、所謂メイド服を着ている所だ。
短く切られた黒髪はカチューシャで纏められており、面立ちは柔和その物である。
体つきに関してはルイズより少々斜め上を行っているらしく、出るところは出て引っ込んでいる所は引っ込んでいる。
それを情報として処理した後、ラティアスは水汲み場の近くにある物陰にその身を隠した。
処理できる情報は既に許容量一杯である。
それらの情報を選りすぐり、断片的な部分を組み立てていく事で仮の姿を得る事にした。
それに伴いラティアスは意識を集中させる。
647ゼロの夢幻竜:2007/11/30(金) 23:41:24 ID:ZwvBiWZz
先ず年とそれに伴う身長。これに関しては勿論ルイズと同い年くらいか1、2歳下に見えた方がいいだろう。
顔の印象は?ちょっと考えたが、部屋で見せてもらった絵に映っていた左の女性に似せる様にする。
髪の長さは?ルイズと同じ。
服装や装飾品は?これは同じでは面倒な事になる。校舎で先生に捕まるとか、誰かに話しかけられるとか。
無難な所で先程のメイドと同じ物にする事にした。
では体つきは?これは控えめな方で……
と、その項目にはいった時、ラティアスも持つ雌としての見栄が出張ってしまう。
ルイズを劣等感に沈ませたり、悲しませたりしたくは無かったが、こればかりはどうしようもない。
ご主人様ごめんなさいと呟いて、キュルケとメイドを足して2で割った様な外見にした。
最後に回してしまった髪の色だが、ルイズと同じでは怪しまれる。
キュルケと同じではルイズが黙ってはいないだろう。メイドと同じにするか。
と、考えたその時だった。

「あのう……どなたかそこにいらっしゃるんですか?」

姿が見えないが故に誰なのか分からないがラティアスは先程のメイドだと見当をつけた。
突然聞こえて来た声に驚いたラティアスは残っていた項目をうっかり自分の毛と同じにしてしまった。
但し、その色は老人を差す様な白髪ではなく銀の輝きを持つシルバーブロンドとなったが。
兎も角それで仮の姿の想像は一段落ついた。
それからラティアスは人間で言えば深呼吸をする様なポーズをとる。
直後眩い光が彼女を包み込み、その中で彼女は人間時の姿を構成していく。
光が止むと……そこには外見だけはお淑やかそうなメイドが一人出来あがっていた。

「や、やったぁ!!上手くいった!上手くいった!!」

ラティアスは初めて人間への変身が上手くいったせいか、隠れている場所を飛び出て水汲み場まで躍り出る。
そこで彼女ははっと我に返った。
自分の姿を凝視し続けている先程見かけたメイドがいる事を。

648名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 23:42:23 ID:6WCIR4E2
>>645
>>526

しえん
649名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 23:44:17 ID:KWmVE5AZ
そういえば光の屈折を利用して幻像みせられるんだっけ支援
650名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 23:44:45 ID:zarHFl7H
支援
>>645
こういうことするのって本物の馬鹿なんだな。
651名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 23:46:44 ID:ZwvBiWZz
投下終了します。
化粧箱や画についての設定はオリを出してしまいどうだったかな〜?という心境です。
あと過去ログ見ると「ここのスレは一週間の一回の投下では遅い方」とか
「せめてフーケ戦ぐらいまではサクサクッと」と書いてあったので俄然やる気が出てきました。
ではまた何時かお会いしましょう。

P.S 参考で訊きたいのですが……
   皆さんはここのラティアス、脳内音声変換は誰になってます?
652名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 23:48:14 ID:bEhw2uMy
支援ついでに…

ちなみに掲載されたのは英国のマジマスコミ「デイリー・テレグラフ」

・イギリスで「ウェールズ国旗もユニオンジャックにデザイン汁!」
・ねらーが色々画像作成
・画像、まじに英国マスコミに掲載される

http://news23.2ch.net/test/read.cgi/news/1196429793/
653名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 23:49:55 ID:sOT/xs73
>>651
乙。ラティアスかわいいよラティアス
林原かな?劇場版で声担当だったわけだし。ただし「昔の」な
654名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 23:51:13 ID:zQ2WFzbw
>>622
ウォルフガング・ブフナーのが浮かんだ

ところで爆熱の使い魔の続きってまだなのだろうか
655名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 23:52:46 ID:KWmVE5AZ
>>651
乙!

アニメや映画を見た経験がないから声優の名前は知らん
でも俺のイメージでは小学生くらいのおにゃのこな感じ。
656名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/30(金) 23:59:31 ID:gHSu/lEZ
 これまで召喚された使い魔の危険度・有用度をランキングしてみたらラティアスはかなりいいところ行くかな?
 しかしまとめWiki見るとどんだけ交友範囲が広いんだルイズさん。

>>651
 ラティアス可愛いよラティアス。
657名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 00:05:20 ID:MfXefEZl
ラティ可愛いよGJ

656
まて、ランキングは荒れる原因なるよ
658名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 00:05:34 ID:t00hjb3H
ラティアスは捕まえるのが凄く難しいポケモンなんだよな
出現地域はコロコロ変わるし、メタルスライムより逃げ足速いし
影踏み持ったソーナンスは微妙な攻撃は苦手で、ギリギリまで削るのが難しいし
眠らせてもなかなかボールに入らないし、眠ったまま逃げるし
そもそもクリア後にしか現れない
これを一発で契約するルイズはどんだけ運いいんだと
659名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 00:07:28 ID:KWmVE5AZ
>>658
夢幻のチケットもってれば無人島でゆっくり戦えますぜ旦那。

オリジナルのチケットはおすそ分けできるからかなり貴重。
660名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 00:07:37 ID:JZKSnQp9
>>652
夜食のチキンラーメン噴いた
661名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 00:11:44 ID:Or4/v5LH
1000ならテリーマン召喚
662名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 00:15:43 ID:5sa18tn/
>>658
原作でも落ちこぼれ転じて選ばれた素質の持ち主だし、ただの平民と思っていた使い魔も大化けするし。
主人公orヒロイン特権といえばそれまでなんですが。
663名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 00:16:18 ID:jyNy+1rr
>>661
マルトーさんからシェスタ救出を頼まれるも
「こんなはした金では動けませんね!」と断る初期テリー
664名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 00:23:34 ID:5sa18tn/
>>663
それをルイズがぶん殴って改心させるんですね。
「貴族の誇り、か……。
 オレもいくぜ!」
665名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 00:29:14 ID:LDBe+jBN
>>652
ようするに、エゲレスが召喚されましたssキボンヌということでつね
666名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 00:29:34 ID:b13/oQHr
>>654
某獣人漫画の主人公で本家のゲームまで登場した牙を思い出した
ヴォルフガング・ジルヴァー懐かしいなぁ……

絶対シルフィに同類扱いされるな
667名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 00:30:19 ID:t00hjb3H
>>664
「トリステイン魂が守ってくれるわ」

こうですか、わかりません
668名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 00:32:49 ID:ywqO6/Iw
テリーマンか……

キン肉バスター、キン肉ドライバー、未完成マッスルスパークを一度見ただけでマスターするとか
後半のテリーは超高性能すぎるだろwww
669名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 00:38:00 ID:In8mmET1
エメラルドドラゴンからアトルシャン召喚

SFC版だとドラゴンチェンジできるぞ
670名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 00:44:02 ID:Z8nes9IJ
「アトルシャンが悪いのっ!」


うむ、ルイズでも全然違和感無いなw
671名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 00:46:21 ID:QvFtssRR
>>670
しかも後半はほとんど治療してくれない。

合いすぎだw
672名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 00:49:06 ID:l3gFssX8
タムリンレーザーが虚無に置き換わる・・・・・
・・・・・・違和感無ぇぇぇぇぇぇ
673名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 00:57:51 ID:fCiLkoZr
ドラゴンなら 巣作りドラゴン のドゥエルナもいいな。
思いっきり人間文化に毒されてるあの人。
きっと、「冒険」の一種としてルイズに協力してくれるに違いない。
パワーバランスは、「無粋」の一言上手く使えばなんとかなりそうだし。

まあ、手加減に失敗すると強すぎて虚無不要になるけど。
674名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 01:07:28 ID:CoGFRkin
>>652
送ったヤツは洒落のつもりかもしれんが、世界レベルで恥をさらすた事に・・・。
また日本が非難される
675名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 01:13:41 ID:ji7IJSy3
タムリンレーザーは軽くトラウマ
676名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 01:16:56 ID:VsfgQz0a
>>674
元々この問題はウザがられてるし、原文を見ても向こうもウェールズ側へのおちょくり目的での掲載だろ。
677名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 01:18:06 ID:ZogGjS3s
騒ぎすぎなんだよなー
678名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 01:31:15 ID:Jb6cztvr
あと50KBか
679名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 01:33:46 ID:FVHxd0as
>>674
元の記事を意訳するとこうだ↓

「ウェールズの国粋主義者の阿呆が国旗を変えろと馬鹿を言ってるので、
 グゥレイトな新国旗を皆で考えようじゃないか労働者諸君!
 さて、ここでクールなニュースだ。
 あのアニメーションの国日本から、国旗問題にステキなアイデアが送られてきた。
 その一部をここで紹介しよう」

つまり載せた記事の方もシャレと言うかブラックユーモアだ。
680名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 01:42:32 ID:t00hjb3H
じゃあこういうのもシャレなんかね


オーストラリア、日本人を殺すCM
http://ime.nu/www.youtube.com/watch?v=LbRoCFlNfkQ

http://ime.nu/jp.youtube.com/watch?v=ZLiXM3uWo3I
681名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 01:43:57 ID:oDlQgr5a
ウェールズの人種差別主義者は怖いぞ
682名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 01:45:07 ID:4AcExHPi
国旗がダサいウェールズへの皮肉だろ
日本の某新聞だってNYTから都合のいい記事を拾ってきてマッチポンプするじゃん
イギリスはこういうジョークに寛大だから大丈夫だよ
ルイズとウェールズの関係を知ってるかどうかは分らんが
683名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 01:46:57 ID:llBtnpd6
そんなことよりラティの姿にwktkしようぜ!
684名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 01:48:04 ID:ZogGjS3s
ウェールズなんて岩山だらけのド田舎だよ。
685名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 01:54:43 ID:LDBe+jBN
記念にイギリス絡みのネタでも

ミスター・ビーンか
ジェームズ・ボンドか
マーガレット・サッチャーか
それともモンティ・パイソンか
686名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 01:58:20 ID:YibOugp3
のっぽのトルケ…いや冗談だ
687名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 02:00:11 ID:X/l8Xy2a
クヌートたんは俺の嫁
688名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 02:01:04 ID:+ZC2KHp4
ウェールズとか言われると、石を拾って魔力探知したくなってしまうから困る。


サモンナイトでクロスに挑んだ馬鹿者(ほめ言葉)っていませんかね?
689名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 02:01:10 ID:oDlQgr5a
チャーチルを呼ぼうぜ
690名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 02:01:29 ID:t00hjb3H
イギリスネタか

ロビンマスクか
691名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 02:02:17 ID:dRmSqTJX
>>686
のっぽと聞いてのっぽさんを思い浮かべた俺は教育テレビ派
692名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 02:08:27 ID:FVHxd0as
「……そして三つ目は貴様の命だ、ウェールズ皇太子!」

ルイズを騙し、彼女と女王の手紙の奪取、そして皇太子殺害を目論んだ裏切り者・ワルドの兇刃が奔る。
魔法の風を纏った杖は一直線にウェールズの胸を狙っていて、それが当たればこの優しい皇太子の命は儚く散るだろう。
だが、ワルドの魔の手から皇太子を守るように突然一つの影が跳び込んで来た。

「な、なんだこいつは!?」
「ウェールズ!」
「無事であるか、我が主ウェールズよ」

そこに現われたのは、なんだかブサイクな赤いドラゴンだった。
眼つきとか地味に恐い。
この赤い韻竜こそ、皇太子が異世界より召喚した使い魔。
己を王権の象徴と証するドラゴンは、偶然にもその名をウェールズと言った。

「くっ、おのれ邪魔立てをっ! だがドラゴンとてスクウェアメイジである私の手にかかればっ!」

暗殺を阻止されそうになったワルドは激昂して魔法を唱える。
その姿が風に霞んだかと思うと、そこには5人のワルドが現われていた。
最強の風スペル、遍在である。

「死ねっ! ブサイクなドラゴン!」
「なんのっ!!」

一端散開し、五方向から切りかかるワルド。
だが、ドラゴンはその攻撃を両手と尻尾に握ったニラネギで受け止める。

「ちょwwおまっwww」
「ふん。このニラネギこそ勇猛果敢な王国男子の象徴。暗殺者風情の杖などに打ち破れるものでは無いわ!!」

豪放一閃、三本のニラネギに打たれ、三体のワルドが消滅する。
慌てて距離をとるワルドに、しかし間髪入れずドラゴンのブレスが放たれた。
高温のブレスに、あっと叫ぶ隙も無く燃え尽きるワルド。
最後の一人となったワルドは、ドラゴンからとった間合いを保ちつつ、再び遍在のスペルを唱えようとする。
だが。

「ぐがあぁ!?」
「ウェールズに集中し過ぎるのはともかく、私の存在を忘れるのはいけないね、子爵?」
「ウ……ウェェルズこうたいしぃぃぃぃ!」

背中から風を纏った杖で貫かれ、憎悪に歪んだ表情で息絶えるワルド。
かくして裏切り者の逆賊は、皇太子とその使い魔によって討伐されたのであった。

その後、ルイズ達を逃がしたウェールズ皇太子は国軍を指揮し、使い魔と共に華々しい最期を遂げる。
使い魔のドラゴンに乗ったウェールズは単騎で数百の敵を屠り伝説となった。
後年、再興されたアルビオン王国で新たに作られた国旗には、ブサイクな赤い竜の姿があしらわれたと言う。


あの国の国旗がウェールズ皇太子に召喚されました・完
693名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 02:21:32 ID:h42LFNTM
ワロタ
694名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 02:30:06 ID:/nFjcnqe
ちょwww確かにブサイクだけどwww
695名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 02:31:23 ID:l3gFssX8
話の流れから即興で小話を組み上げるか
まさにこれぞ正しい小ネタの在り方の一つだな
696名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 02:35:24 ID:OlwtA6PY
すげえ時事ネタGJ
697虚無界行:2007/12/01(土) 02:44:21 ID:ujo215+x
今晩は。空いてますかね?
698虚無界行:2007/12/01(土) 02:51:31 ID:VKqt7MJ7
誰も居ないかもだけど、第6章の前半を投下。
遅くなった割には相変わらず展開が遅いから頭を抱える。


第6章 鬼神蹂躙

激昂しながらもこの場で仕掛けてこなかったのは、食堂を戦場をするのは流石に気が咎めたのか。
ギーシュは先にヴェストリの広場に向かい、友人たちがわくわくした表情でそれに続く。
周囲で事の推移を見ていたほかの生徒たちもである。
ギーシュの友人の内1人は残った。南雲が逃げ出さないように監視するためであろう。

南雲はその目を気にすることも無く「さてどうするか」と、冷静に思考していた。
先ほどの感情の高ぶりはすでに消え失せ、波一つ立たぬ水面のような精神へと戻っている。

戦いを避ける理由は特に思いつかない。

決闘という古めかしい申し入れをされるとは思わなかったがそもそも、
激昂した相手が攻撃を仕掛けてくるだろうと最初に予想した上で手を出したのだ。
(というより、アレで起こらなかったらそれはそれで情緒面に問題があるだろう)
そして―――――

「良い機会、か」

メイジとの戦闘を経験する良い機会、という事である。
どこへ居ようが、戦いから逃れる事など出来そうに無い。これまでの道行きがそれを証明している。
このハルケギニアという異世界でも、だ。
そして南雲は、戦うことを悲観も否定もしていない。ならば話は簡単だ。

戦えばいい―――――己が力の全てを血潮へと注ぎ込み、その最後の一滴が流れ出す瞬間まで。
そこまで考え、決定した瞬間。

「な・・・・何やってるのよアンタはぁーーーっ!?」
大声で叫びながら南雲に近づく少女が居た。無論ルイズである。
昼食の後、用足しに食堂を離れており、ついさっき戻ってきて生徒の一人から事情を聞いた所であった。

「何を勝手に決闘なんて約束してるのよっ!」
「お前の許可が必要な事では無い」
返す言葉はにべもない。正確には南雲は受けたとも断るとも言っていないのだが、
戦う事は自分でも既に決めているので、まぁ大同小異だ。
699虚無界行:2007/12/01(土) 02:52:57 ID:VKqt7MJ7
「うっ・・あ、アンタねぇ・・・とにかくっ!謝ってきなさい!
 いい?メイジに平民は絶対に勝てないの!怪我で済めば運が良いのよ?」
それはこのハルケギニアにおける常識であり、魔法が使えないルイズにとってもそうである。
(もっともあの『失敗魔法』は、単純な破壊力だけで見れば相当なものだが)

「そ、そうですっ!」
新たな声が飛んできた。シエスタである。驚愕の事態に硬直しきっていたのが、ようやく動けるようになったらしい。
「あ…秋人さん…殺されちゃいますっ―――――逃げてください、早くっ・・・・」
言葉にも顔にも、紛う事なき心配の色があった。
先ほどのルイズの言葉にもそれは混じっている…それのみでは、無いのだが。
さて―――――2人の真摯な言葉を受けて南雲秋人はどうしたか?

ヴェストリの広場の方へと歩み始めたのである。
聞こえていないわけは無い―――――では、聞く気が無いのだろう。

その南雲の前に新たな人影が立った。
長身と、炎のような髪の色の少女…キュルケである。

「―――――今回ばかりはヴァリエールの言う通りね。
 ギーシュ、怒ってるなんてもんじゃないわよ?下手したら本当に殺されちゃうわ。
 見張りは今居なくなったから…逃げたら?」

「つ、ツェルプストー・・・!?」
思わぬ人間の登場に、ルイズは目を見開く。

見れば確かに、見張りとして残った生徒が居ない。
キュルケが「自分が見ておく」とその生徒に言い、去らせたのである。

「勘違いしないでヴァリエール。あなたのためじゃなくて彼のためよ。
 
 ―――――ねぇ、怒った気持ちは分からなくもないけど、死んじゃったら何にもならないわよ?」

3人目。ルイズもシエスタもその効果を内心で期待し…そして少女たちの顔は、南雲の次の一言で引き攣った。

「殺しもありか、決闘は。

 ―――――ならば、ちょうど良い」

本気でメイジと戦い―――――殺すつもりだというのか、この男は!?

「だ・・・駄目よっ!止めなさい!」
ルイズは南雲に向かって駆けた。論理的思考によっての行動ではない。
直感が「行かせるな」と叫んだのである。

ルイズの手は、南雲の腰の辺りを掴みかけ―――――空を切った。
そして、気づけば逆にルイズの首筋へと南雲の手が伸びているではないか!

少女達は己の目を疑った。
3人とも南雲から目を離していないにもかかわらず、彼が今
どのように体を動かしたのかが、全く分からなかったのである。
700虚無界行:2007/12/01(土) 02:55:10 ID:VKqt7MJ7
「メイジに平民は絶対に勝てないと言ったな。

 ―――――お前にも、か?」
「「「っ―――――!」」」

言葉には、殺気が添えられていた。まだ『ゆるい』方だとはいえ、超人の気である。
同様の気を受けるのはルイズは3度目。キュルケは2度目。シエスタは初めてである。
回数の差こそあれ、少女たちの心を満たしたのは同様の思いであった。

『目の前の男が―――――南雲秋人が―――――恐ろしい』

―――――勝てないから止めろと言うルイズとキュルケの声に、己の言葉への疑念が滲んでいたのは何故だ?

感じ取っていたのではないか?
この男を戦わせたら・・・単にメイジが平民を痛めつけることよりも、もっと『取り返しのつかない事』が起こると。

「他人に命令するなら体を張る覚悟を持て。ものを言うだけで何かをしてくれるのは神だけだ。

 ―――――俺は『神』は嫌いだがな」
言い置いて、南雲はルイズから手を離す。

もう、この場においてそれ以上南雲を留めようとするものは居なかった。

歩き出す前、南雲は最後に一度シエスタの方を見た。
目が合った瞬間、体を震わせて後ずさるシエスタ。
顔にははっきりと恐怖の表情が浮かんでいる。怯えきらせてしまったのだろう。

彼女は何も言わない。南雲も、何も言わなかった。
決闘の結果がどうなろうと、もう以前と同じように接しては来まい。

それで良いと思った。
自身の歩む道に深く踏み込んで来た者達は、大半がその生を全うする事も出来なかった。敵味方関わらずに。
―――――だから、それで良い。

ヴェストリの広場へと向かう南雲の顔から、人間らしさは既に遠く消え去っていた。

体調に問題は無い。超人としての力は全て健在だ。
更に南雲は、全身の細胞がふつふつと活性化しているのを感じ取った。
未知なる戦いに備えてのDNAの超変貌であった。

やはり、戦いこそが活力の源なのであろうか―――――『ソルジャー』の名を冠する男には。

魔法の基礎を知り、実演も目にしたとはいえ、メイジと本格的な戦闘を行うのはこれが初めてである。
バイオニック・ソルジャーの力は果たして、メイジに対し通用するや否や―――――?

「これも、実験か」
呟いたその言葉は、誰の耳へも入ること無く風に溶けて消えた。
701虚無界行:2007/12/01(土) 02:57:12 ID:VKqt7MJ7
中央の建物と、それを取り囲むように配置された4つの塔で構成されるトリステイン学院。
ヴェストリの広場は『風』と『火』の塔に挟まれた位置にある中庭である。

南雲が到着した時には既に噂を聞きつけた生徒たちで溢れかえっていた。
確かに今回の決闘の経緯は特異であろう。
周囲の生徒たちからも、負の感情―――――憎悪、敵意、侮蔑など―――――が混ざり合った視線が、
幾つも南雲に向かって飛んでくる。
どぶ泥のような凶念と言って良い。南雲にとってはたっぷりと慣れ親しんできた類のものであった。
隠そうともせぬその思念は、貴族も結局は『人間』である事の証明に他ならなかった。
『人間』とは『鬼』の別の呼び名であった。…この世界で鬼と言って通用するかどうかは分からないが。

そして、南雲は人垣の中央でギーシュと対峙した。

「諸君! 決闘だ!」
ギーシュがバラの造花を掲げると、周囲から歓声が津波のように巻き起こる。
殆ど全ての生徒が集まっているのではないか、という数であった。
ひとしきり手を振って答えたギーシュは、南雲に向き直る。
「逃げずに来たことは、勇敢だと褒めておこう」
紳士的といえる調子の言葉・・・だが、内心の憤怒を押し隠していることが南雲には良く分かった。

「戦いの場で、無理をして上品ぶることもあるまい。
 それに、お前が今感じているような、下卑た類の欲望は
 隠そうとしても隠しきれるものじゃない・・・無駄な努力はよせ。
 
 さっさと来い」
嘲笑も痛罵も無い、むしろ穏やかとさえ言える南雲の返答。
だがその言葉は、周囲のほぼ全ての人間に火をつけるのに十分な効果を発揮した。

その感情を表現するには一つの単語で事足りる・・・『やってしまえ』である。

ギーシュのこめかみにも、派手に血管が浮かぶ。
「―――――どこまでも、ふざけた平民だっ・・・!」

もはや闘志と殺意を隠そうとはせず、薔薇の造花を振るった。
そこから花びらが一枚落ち・・・・たちまちの内に、人間サイズの人形が出現する!
甲冑を着た金属製の、女戦士の人形である。

「我が名はギーシュ!『青銅』のギーシュ!
 そしてこれが我が青銅のゴーレム『ワルキューレ』!
 貴様には、この一体で十分だ!」

南雲秋人―――――超人は、この敵をどう迎え撃つ!?

「行けっ!ワルキュー『ガァンッ!』―――――え?」

金属同士が噛み合う、何とも言えぬ響音。
直後、ワルキューレは仰向けに倒れ・・・地面に激突し、重い音を立てた。
そしてその頭部が・・・まるでハンマーで強打したかの如く、ひしゃげて無残な様子を晒していた。
限界を超えたダメージだったのか、起き上がることも出来ぬまま、ワルキューレはゆっくりと崩れ去っていく。
702虚無界行:2007/12/01(土) 02:59:13 ID:VKqt7MJ7
「!!???―――――な、何っ!?何だ、何だこれは・・・・!?」
ギーシュは一瞬でパニックへと陥った。それはそうであろう。自慢のゴーレムを、出して攻撃させようと思ったら
『一瞬で』『何がなにやら分からぬまま』撃破されたのである。
ギャラリー達からも驚愕のざわめきが広がる。

否、これは本当にあの平民がやったのか?奴はあの位置から一歩も動いていないではないか!?

周囲の生徒たちも含め、この現象を理解できた者は誰も居なかった。
―――――いや、僅かに一人居た。

前列で観戦していた、眼鏡をかけた小柄な青い髪の少女である。彼女は誰にも聞こえぬ声で呟いた。
「何か、投げた・・・・?」と。

疑問系なのは、投擲のモーションも、また投げた物も判別できなかったからである。
先ほどは懐に入っていた南雲の手が、今は抜き払われていた。
正しく瞬きの間に変化したその動きから、推理したというだけである。


この場の全員が絶句したであろう―――――南雲が、何の変哲も無い『釘』を投擲し、ワルキューレを撃破したと知ったなら。

「わ・・・・ワルキューレッ!」
ギーシュは再度造花を不利、新たなゴーレムを作り出す。数は6。全部で7体のゴーレムがギーシュの武器である。
パニックになりながらも、次の対応のために最大戦力を投入したその考えは間違ってはいない。

南雲は相変わらずの無表情。
繭一筋動かすことなく、戦闘マシンと化した頭脳が戦力の分析にかかる。
数は6…青銅製、強度もそれに準ずる…内部は空洞…スピードは並。

問題は無い―――――破壊できる。

南雲は懐のコンバットナイフに手を伸ばす。
―――――その精神に刹那、先ほどの食堂での光景が浮かび上がった。
シエスタと。ギーシュと。周りの貴族達と。
力ある者が、無い者を理不尽な事で傷つける姿と。
それを止める事もなく見世物のように見物する周りの連中と―――――

それに続いてフラッシュバックしたものがある。南雲にとっては、永遠にも等しい過去の光景。

荒れ狂う水。大鰐の牙。噛み裂かれる肉体。苦痛に歪んだ顔。
―――――ロス市警の死体安置所。立ち尽くす南雲の眼前には・・・・・。

一瞬、南雲の胸中を感情が駆け抜けた。間違っても、哀しみではない。

憎しみ―――――紛れも無い、憎悪であった。

かつて、超人兵士南雲を誕生させたマクルーア博士と軍当局が、
最終的に彼の軍からの引退を認めた理由はこれであった。

情動制御(パッション・コントロール)―――――不完全。
機械レベル達成―――――75パーセント=最低値。
機械になりきれぬバイオニック・ソルジャー。

―――――だが、この時。
『感情の揺らぎ』が、南雲自身も予想だにせぬ効果を生むことになる。

ヴ・・・・ンッ・・・・!

ナイフに触れた瞬間、左手のルーンが微かに輝き始めた。
鮮血の赤と、夜の闇を思わせる黒とが混じりあい、溶けている―――――そんな光だった。
703名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 02:59:50 ID:aJDupWKd
sienn
704名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 03:02:00 ID:S3xxr37l
支援させて頂きます
705虚無界行:2007/12/01(土) 03:03:47 ID:VKqt7MJ7
今回は投下終了です。

思ったよりも長くなって・・・いやこれで長いとか言ってたら笑われますな。

えらい難産の最中です。
後半も、出来る限り早く書きたいと思います。それでは。
706虚無界行:2007/12/01(土) 03:06:32 ID:VKqt7MJ7
おっと。

>>703-704
こんな遅くに、ありがとうございました。
707名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 03:47:00 ID:oDlQgr5a
                                          ○________
                               なぎはらえー     |:|\\:::::||.:.||::::://|
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  ト、     ,.    ̄ ̄Τ 弋tァ―    `ー /   从 |メ|_l  l_.l斗l |ヽ V |:| ̄ フ  ̄ ̄ ̄ ̄
  ヽ \__∠ -――く  __       .Z¨¨\   N ヒj V ヒソ l .l ヽ\| / /
   ヽ  ∠____vvV____ヽ   <   ≧__/ ゝ、t‐┐ ノ .|┐ ./ /
.    \\_____ivvvvvvvv|   V.    (  (  /Tえハフ{  V / /
       \!      |   / 入_.V/|      >-ヘ  \:::∨::∧   / ∠ ___
 __  |\       l/V  _{_____/x|    (_|::::__ノ   }ィ介ーヘ ./  ,. ---――
  )-ヘ j ̄} /|        /___/xx|       _Σ___/| | |V::::ノ/ ∠___
  {  V  /`7.         /___./xXハ    ( |:::::::::::::::::ハ   >' ____二二
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    |   ヽ        /____|]]∧  __|__L.∠ ム'  <`丶 、 `丶、
    |     ',         {     |]]]>'  __      ∧ l\ \   丶、 `
   ノ     }       l ̄ ̄ ̄.|] >' ,. '  ̄ / .// :/  V'  \ ヽ    `
  / ∧   { \      |      .|>' /      // :/ :/ :   ', l   \ ヽ  ,.-―
 入ノ. ヽ  く  ヽ______7 ー―∠__    〃  l :/    :l l     \V
`ー′   \  `<  | {      /   | /〃   :|/  __V/ ̄| ̄ ̄{
708名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 04:09:06 ID:S3xxr37l
>>706
投下乙です。
今回いい所で終わってしまったんで、次回の更新を楽しみにしています。

>>707
もう出来たのかw
バロスww
709名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 06:35:09 ID:QG9CFXxg
精霊使いの覚羅を・・・・・と頭がよぎったが


勝てる人間誰もいないじゃないかwww
敵意向けた瞬間に雷がw
710名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 07:46:52 ID:1xbGzoA8
>>651
閣下…と言いたいとこだが、菊地美香か明坂聡美。
711名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 08:09:18 ID:s6LNutim
>>706

ていうかギーシュめちゃヤバくね?南雲の中の冷静さと憎悪のどっちが勝るかでまさに運命の分かれ道。
712名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 08:44:52 ID:DIifAl0X
ギーシュも大変だなあ
DIO様とかとらとかドモンとか化け物とばかり戦って・・・
713名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 08:51:25 ID:z2jcIJa7
しかも時には死んだりするし・・・
714名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 08:58:35 ID:gtVrUjTB
>>706
久々の投下乙です

南雲の殺気は強烈すぎる
食堂で放ってたら、決闘云々の前にギーシュは腰が抜けるか気絶してただろうなw
タバサ、確信はなくても南雲が何かを投げたことに気づく辺りは流石だな
タバサも暗い復讐の感情を持つ者だから、今後の南雲との絡みに期待
715名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 09:08:11 ID:jSdDr+GG
>>712
ドモンの場合はあげく弟子入りするしな
でも本人は幸せそうだ
716名無しさん氏んでも代わりはいるもの:2007/12/01(土) 09:21:49 ID:TV3MpdqR
やはり菊地テイストが入ると空気が締まって実によい。私もアニエスとタバサとの
絡みに期待。どれだけ死体の山ができるか楽しみです。でもルイズママンと高慢ちき
の姉のほうは殺すだろうな・・・。でも南雲の戦い方って実はオーソドックス
な方だから書きやすいな。
717名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 10:33:12 ID:KlyeFvGs

話ブッタギリでところでアルビオン編でウェールズ生存な話っておk?
718名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 10:34:49 ID:KlyeFvGs
あ、ミスった話ブッタギリですまないがだった
719名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 10:42:23 ID:POJYXk2h
>>716
基本銃器と武術だからな
メフィストとかピエールとか八千草あたりになると正直無理
720虚無界行:2007/12/01(土) 10:56:43 ID:ujo215+x
皆さん感想意見ありがとうございます。来週中には後半を投下したい…。

>>716
仰る通り、菊地作品のキャラの中ではオーソドックスな方です南雲は。
他を探せばもっとブッ飛んだキャラが幾らでもいるのが恐ろしい所。
タバサとの話は私も書きたいです。それでは。
721名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 11:10:34 ID:koDoHF8g
>718
別にかまわない・・・というか、すでにいくつかあるよ。
エデンの林檎とかゼロのgrandmaとか、兄弟スレの仮面のルイズとかヘビー・ゼロとか。
まぁ、生き残った後、扱いに困る可能性が高いが。
722名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 11:34:34 ID:yhK36W4I
 「赫奕たる異端」終了後のキリコ=キュービィーをスコープドッグと一緒には駄目かな……?

 駄目か。あいつ神にだって従わないと公言するような奴だし、ルイズに従う理由がない。
 そもそもあいつが行く先全て壊滅するし。
723名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 11:37:46 ID:X/l8Xy2a
そろそろ、ベルダンディが召喚されてもいいんじゃなかろうか…
モグラではなくて、女神さまっの方の。ミカヤはいるけど。
724名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 11:43:03 ID:xeweGHK8
もうルイズはメイジになるより召喚師になった方がいい気がしてきた。
725名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 11:44:14 ID:SopXq8OL
二度寝したらタバサとイザベラ様が一緒に
飛行機×5の合体する戦隊系のロボに乗って
イザベラ様が召喚した巨大な使い魔と戦う
という電波を受信してしまった

寝る前にスレ覗くもんじゃないな……
726名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 11:46:56 ID:fJ8y8ogV
むしろ学院の主要なメンツが合体出来るロボを呼ぶとか
なんかカクレンジャーにいたあの五対一の出来るロボ達みたいな
727名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 11:50:22 ID:yVCj1cmG
>>726
そしてリーダーたるレッドの座をかけて血で血を洗う闘争を繰り広げるルイズとキュルケ。
728名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 11:52:38 ID:jyNy+1rr
>>727
そして「あんたをリーダーと認めたわけじゃないんだからね!」と言いつつ
他に落ち着くルイズ…
729名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 11:59:22 ID:1xbGzoA8
メガシルバーはコッパゲな。
730名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 12:08:30 ID:kx/832r3
学院のそれぞれの棟がロボに変形。
731名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 12:13:34 ID:POJYXk2h
色は髪の色に対応だな

>>730
なにその絶対無敵
732名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 12:14:39 ID:6JCQa7xc
都庁ロボと慎太郎を召喚
トリスティンを国盗りした慎太郎は周辺国を震え上がらせる独裁制を敷くが
ルイズと一緒の時は、ヨット遊びをしたり障子を破ったりのオチャメな面も

彼とルイズの間に生まれた子は、あまり腕のよくない気象のメイジになったとか
733名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 12:18:17 ID:yuRPAqmV
そういえばトルネコが召喚されたって話ないな
734名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 12:20:20 ID:S3xxr37l
旦那のいぬ間にネネさんがライアンに寝取られと申したか?
735名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 12:20:31 ID:l3gFssX8
>なにその絶対無敵
絶対無敵は「中から出てくる」のであって
変形かましてくれるのは熱血最強の方だ
736名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 12:37:28 ID:qrJZqtVt
出来たは良いが教室が無かった、優&魅衣の寸鯉高校じゃないのか?
737名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 12:51:11 ID:yuRPAqmV
>>733
トルネコならガンダールブとミョズニトニルン のどっちでもいけそう
738名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 13:00:06 ID:XjA/1fOK
ガンニトニルンで
739名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 13:06:11 ID:zNHo92Je
トルネコさんならきりのいいところでリレミト読んだらあっさり帰れそうだ。
740名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 13:17:27 ID:kx/832r3
いやトルネコ自体は何の能もないだろ。
741名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 13:24:06 ID:ByxYBKW2
>>735
絶対無敵も校舎変形しなかったけ?
742名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 13:32:44 ID:nWxXxMFE
>>740
でもトルネコってDQ4だとどんなアイテムも鑑定してみせるからなー。地味に凄いぞ?

>>741
絶対無敵はグラウンド・プール・体育館・校舎の地下に機体を格納してる。
校舎自体は発進のためにカタパルトが出てくるくらいしか変形しない。
5年3組の教室だけはバクリュウオーの中に格納されることがあるけど。
743名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 13:36:50 ID:VsfgQz0a
次スレ立てるぞ
744名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 13:37:17 ID:yM0ykHeN
>>740
不思議のダンジョン2を見る限り、魔法使いとしても戦士としても大成しうる才能はあるらしい。
ついでに、素でマジックアイテムは使いこなすようだから、能がないということはないな。

ガンダールヴになったら、はやぶさ切りとかの技と、マジックアイテムを使いこなす使い魔になるだろう。
745名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 13:37:29 ID:VsfgQz0a
746名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 13:38:21 ID:yM0ykHeN
>>745
乙ですよ〜
747名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 13:39:26 ID:nWxXxMFE
>>745
乙〜
500kb争奪にはまだちょっと早いか。
748名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 13:39:54 ID:zE5XAdo0
>>745
749名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 13:41:48 ID:zNHo92Je
合成の材料にされるデルフ…というのが頭に浮かんだ。
750名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 14:01:10 ID:WNvAv5V/
>>749
魔法攻撃を完全無効化する
魔法の盾の剣バージョンだなw
751名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 14:14:24 ID:sVc5XM8j
>>749
くちなしの巻物で黙らされるデルフ
752名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 14:27:32 ID:ndHm7kvF
>>730
エルドラン「ハルケギニアを任せたぞ、子供達…」

か?
753名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 14:44:17 ID:V3k3xZk8
以前、ヒットマンネタで書こうかと思っていたものです。
長めのプロローグを投下しようと思うのですが、これは次ぎスレに行うべきでしょうか。
754名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 14:47:29 ID:1xbGzoA8
長いんなら次じゃないかなぁ。
ヒットマンってリボーン?
755名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 14:50:48 ID:yXy3yCs3
寝る前にこのスレはヤバイ・・・・
ルイズがハサハさんを召喚なネタを布団のなかで延々と妄想
そして、起きたら内容忘れてる悲しさ
756名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 14:52:57 ID:yXy3yCs3
Sage忘れた、ごめん。。。
757名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 14:54:15 ID:V3k3xZk8
>>754

わかりました。では次スレの方で投下します。
ちなみに、元ネタはゲームのHitmanからです。詳しい説明は、投下後に

短い間かもしれませんが、これからよろしくお願いします。
758名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 14:58:06 ID:jyNy+1rr
>>757
ハロー47 
作品は次に頼む

…何人かは「事故死」するんだろうな…
759名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 15:07:48 ID:sVc5XM8j
久しぶりにサイト巡回してたらゼロの最強の使い魔が更新されてて俺歓喜

それにしても投下無しで埋めるにはちと多いなぁ・・・
760名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 15:09:53 ID:hWFvhaOP
                                          ○________
                               なぎはらえー     |:|\\:::::||.:.||::::://|
                                              |:l\\\||.:.|l///|
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  ト、     ,.    ̄ ̄Τ 弋tァ―    `ー /   从 |メ|_l  l_.l斗l |ヽ V |:| ̄ フ  ̄ ̄ ̄ ̄
  ヽ \__∠ -――く  __       .Z¨¨\   N ヒj V ヒソ l .l ヽ\| / /
   ヽ  ∠____vvV____ヽ   <   ≧__/ ゝ、t‐┐ ノ .|┐ ./ /
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       \!      |   / 入_.V/|      >-ヘ  \:::∨::∧   / ∠ ___
 __  |\       l/V  _{_____/x|    (_|::::__ノ   }ィ介ーヘ ./  ,. ---――
  )-ヘ j ̄} /|        /___/xx|       _Σ___/| | |V::::ノ/ ∠___
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   ノ     }       l ̄ ̄ ̄.|] >' ,. '  ̄ / .// :/  V'  \ ヽ    `
  / ∧   { \      |      .|>' /      // :/ :/ :   ', l   \ ヽ  ,.-―
 入ノ. ヽ  く  ヽ______7 ー―∠__    〃  l :/    :l l     \V
`ー′   \  `<  | {      /   | /〃   :|/  __V/ ̄| ̄ ̄{
761名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 15:35:28 ID:POJYXk2h
500なら銀英伝でネタを書く

かもね
762名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 15:57:01 ID:8iW1D258
500なら停滞作品多数復活。
763名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 16:03:52 ID:NzCmx1MF
500なら自作品全部撤去して書き直す。
764名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 16:08:46 ID:1xbGzoA8
500なら黒き死の女神召喚。
765名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 16:28:17 ID:1G1r++fl
>>755
サモナ2の狐の子か


・二重誓約扱い?
 というか契約の時点で泣きだしそう
・初日からルイズのベッドに潜り込むイベントだぜ…
・あれに決闘挑んだら幼児虐待
・召喚使えるなら戦力としては十分。イズナ眼と招雷だけでもいけそう


「ハサハ、お姉ちゃんの使い魔だから…」
or
「お姉ちゃんのお嫁さんに(ry」
(((゜д゜;)))
766名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 16:31:28 ID:GwRsSTUR
500なら世紀末リーダー伝たけし!よりたけし召喚
767名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 16:38:56 ID:pEjJewgq
500ならサイレントメビウスの香津美リキュール召喚
768名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 16:42:32 ID:2/DX2H6O
500なら願い石を召喚
769名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 16:44:07 ID:S3xxr37l
>>766
500なら世紀末リーダー伝たけし!よりしまぶー召喚……法廷に。
770名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 16:44:29 ID:NZkC4aal
500kbなら大日本帝国海軍航空隊を召喚
771名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/01(土) 16:47:21 ID:GwRsSTUR
ボンチューあたり召喚したら素手でゴーレム倒せそうだが・・・
ボンチューってあれで小学1年生って設定なんだよなぁ・・・
772名無しさん@お腹いっぱい。
因数分解のできる1年生か……。