2 :
重複につき誘導:2007/11/28(水) 04:01:15 ID:fdrBUiqL
ここは28スレ目になりました
4 :
OSGS:2007/12/04(火) 08:04:33 ID:MRLUFdiP
よし! 一番槍。だいぶ遅れました……あとがきです。またスレとめちまったい……
さて
今回の巻末番外編
「パイロットだ!」
「――!」
「パイロットが必要だ!」
一般宅の地下に作られた巨大格納庫のなかで、カオル・トオミネはドクター・ウエスト、否、ドクター・ワイリーのように自作ロボに怒りをぶつけていた。腕を振り上げるたびに、白衣がはためき、まるで悪の結社の科学者だった。
彼が拳を叩きつけているムサシ一号は多足型戦車であり、同時にちゃぶ台としての利用を考えられ、さらには冬場にコタツへと変貌する機能を持っている。だが、そんなムサシ一号も、博士にとっては八つ当たりの道具でしかなかったのだ。
狂人の迫力を前にして、ミナキ・トオミネは涙目だった。
これが、父。この男の遺伝子が身体の内側に刻み込まれているかと思うと、ミナキはいたたまれない気持ちになる。
「われわれがこの管理外世界に来てはや二年……こつこつと中古品を修理販売して貯まった資金。
それをすべてつぎ込んだこの雷鳳……。このまま朽ち果てさせるには惜しいと思わんか、ミナキ!」
「は、はい……」
「では、パイロットを連れて来い。なんのために大学に通わせてるとおもっとる」
「え……もしかしてそんな理由のためにわたしをこの世界の大学へ……?」
「む……いや、それは違うが……ともかくだ。若く、美しく、そして体力のある女性パイロット死亡をつれてきなさい。
一人ぐらいいるだろう! そんな超人類が! むしろ人間でなくともよい!」
「いません……ふつういませんけど……ひとりだけ心当たりがあります」
「ほう!? では明日ここへつれてきなさい! 雷鳳のセッティングは済ませておこう」
やっと開放されたミナキは一人ため息をついた。地下格納庫から自宅へと帰る。
父親の変態ぷりにはもうついていけなかった。
ため息をついていると、ぴんぽーん。
「すみませ〜ん。ピザ屋ですけどトオミネさんのお宅ですか? これがな」
「あ、頼んでいたピザかしら? は〜い」
ミナキは財布をひっつかんで玄関に向かった。赤毛の男が立っていた。
「毎度ありがとうございます」
「あれ? いつもの人と違うんですね」
「そうなんすよ、これが。どうも風引いちゃったみたいでして」
「へぇ……」
そんなことに興味はなかった。ミナキが見つめたのは男の身体だった。
ピザ屋の制服に隠れてはいるものの、強靭で形のよい体格が服の下からでもあわらだった。
「え、っと……お名前は?」
「は? アクセル・アルマーですけど……」
――続く!
以上です。次回あたりから『向こう側』の人間がちらほらです。
次回は雲が出たら投下します。では。
ずっと前の1乙。
前スレのなの魂氏GJ!
これが(もしあったら)StS編での成長にうまくつながってくれれば……。
前スレのなの魂にGJですかコノヤロー!
銀さんとなのはの馴れ初めが出てきてニヤニヤ。墓石での一連のシーンと会話がなんかすごくいい!
そして、そこでの台詞と現在への繋げ方が秀逸ですな。御見事にござりまする。
夕べは久々の投下祭りでしたねぇ。というわけで、全ての職人様にGJ!
せっかくなので、シャイニング・ウィンドクロスの5話にて登場させたティアナの心剣の資料を作ってみました。
ttp://kjm.kir.jp/pc/?p=48499.jpg …うん…もう少し画力が欲しいorz
残り二振りの心剣も、登場次第デザインしていく予定です。
>>7 GJ!
中学の頃に妄想を書きつづったノートを思い出すぜ!
ティアナの顔の微妙さ加減がたまりません><
改めて、投下おk?
おk
十八話「ゆりかご」Aパート
【聖王医療病院 ヴァイスの病室】
「ヴァイス陸曹。手術、お疲れ様でした。機動六課の、私たちの704式ヘリは壊れちゃいましたけど、ヴァイス陸曹のストームレイダーは無事でしたよ。
シグナム副隊長がちゃんと持ってきてくれました。後のこと、何も心配ないですからね。落ち着いて、ゆっくり休んでて下さい。」
アルトは眠っているヴァイスの枕元にストームレイダーを置く。
「ヴァイス先輩の後輩として、六課のロングアーチスタッフとして……皆を運ぶ仕事は、私が引き継ぎます!」
【アースラ艦内】
「ルキノ、コントロールは大丈夫?」
「はい、フェイトさん!この子の…アースラのことは、隅から隅まで知ってますから」
「そう…」
【作戦計画室】
「えええええええ!?アルトさんとルキノさんが!?」
「あ…あの…トドロキさん、そんなに顔を近づけないで…」
なのはは両手で「もっと向こうに」という仕草をする。
「あ、スンマセンッす。」
「アルトは療養中のヴァイス君に代わってヘリパイロット。」
「ルキノはアースラの総舵手。」
「へぇ…アルトさん、ヘリパイロットの資格なんか持ってたんですね。」
イブキは感心しながらアルトを見つめる。
「もともとヘリは好きでしたから。」
「ヘリかぁ…日ごろ車運転してる俺には想像もできないっスよ。」
「僕もバイクだから、想像できないなぁ…」
「あはは…そうですか…」
アルトはシュールな二人の台詞を聞いて苦笑する。
「失礼します。」
「おお、皆揃っとるなぁ。」
そしてそんな会話が続いている中、はやてとグリフィスが計画室に入室してきた。
「あ、はやてちゃん。」
「今、機動六課の方針が決まったところや。」
「地上本部による事件への対策は、残念ながら相変わらず後手に回っています。地上本部だけでの事件調査の継続を強行に主張し、本局の介入を固く拒んでいます。
よって、本局からの戦力投入は…まだ行われません。同様に、本局所属である機動六課にも捜査情報は公開されません。」
「オイオイ、俺やイブキさん達に任せて逃げたくせにプライドの方が大事かよ…お前らんとこの軍隊ってホントどうしようもないな…」
「先輩、どうしようもないなんて言えた性分じゃないでしょ?」
「…すみませんでした。」
キョウキはなのはの笑顔に恐怖心を抱き、身を竦める。
「そやけどな。私たちが追うのは、テロ事件でもその主犯格としてのジェイル・スカリエッティでもない。ロストロギア、レリック。その捜査線上に、スカリエッティとその一味がおるだけ。そういう方向や。
で、その過程において誘拐されたギンガ・ナカジマ陸曹となのは隊長とフェイト隊長の保護児童、ヴィヴィオを捜索・救出する。そういう線で動いていく。両隊長?意見があれば」
「理想の状況だけど、また無茶してない?」
「大丈夫?」
「後見人の皆さんの黙認と協力は、ちゃんと固めてあるよ。大丈夫。何より、こんな時のための機動六課や。ここで動けな、部隊を起こした意味もない。」
「黙認ってお前良いのか…」
「センパーイ♪細かいこと突っ込んだらあかんよ。」
「はぁ…そうですかそうですか…」
「了解。」
「なら、方針に依存はありません。」
「おしっ。ほんなら、捜査・出動は本日中の予定や。万全の体制で、出動命令を待っててな。」
「はい!!」
「ところで、ティアナはどないしたんや?」
「ティアさんなら、睦月さんと一緒に訓練室です。エリオ君とシグナム副隊長も、隣の訓練室のほうに…」
「ティアナが…上城先輩と?」
しえん
【アースラ訓練室】
「はあぁぁぁぁあ!!」
「でえぇぇぇぇい!!」
ティアナはレンゲルと共に訓練室で模擬戦を行っていた。
レンゲルラウザーとダガーモードの刃が激しく火花を放つ。
「どうしたティアナ!?もうガタが来たのか!?」
「馬鹿にしないでよ!あたしだって睦月兄の知らない所で…」
ティアナはジャンプし、空中からレンゲルに斬りかかる。
「強くなってるんだから!」
「おお!?」
レンゲルはティアナの積極的な攻撃に驚きつつも、レンゲルラウザーでこれを防御し、鍔迫り合いに持ち込む。
「流石…!」
「これでも、最高の師匠の弟子で、最強の兄弟子の妹分だもの、これぐらい…当然よ!」
ティアナは二人に分身し、再びジャンプする。
そして二人のティアナは足に炎を纏わせ、レンゲルに蹴りこんだ。
「バアァァァァァアニング!!ディバアァァァァァアイド!!」
『BITE』『BLIZZARD』『BLIZZARD CRASH』
「ヤアァァァァァァア!!」
ティアナのバーニングディバイドとレンゲルのブリザードクラッシュが宙で激突し、炎と冷気がぶつかり合う。
二つのキックの激突は凄まじい衝撃を生み出し、二人はその衝撃に弾き飛ばされる。
「きゃあ!?」
「うわぁ!?」
二人は壁に激突し、変身を解除される。
「へへ、強くなってるじゃん。橘さんがお前にやった「ファイア」のデータもちゃんと使いこなしてる。」
睦月は立ち上がってティアナに歩み寄り、手を差し伸べる。
「イタタ…ああ、ありがと。」
ティアナはその手を取り、立ち上がる。
「もうこのデータを受け取ってから長いもの、使いこなせなきゃ、橘さんに失礼よ。」
「だったら、このデータももう渡しても大丈夫だよな。」
睦月はミニデータディスクをティアナに渡す。
「これは?」
「橘さんがお前の為にって。これ使えば、レンゲルの力も使えるんだってさ。
その代わり、負担も大きいって。」
「そうなんだ…でも…!」
ティアナはディスクを握り締める。
「必ず、使いこなして見せるわ!」
しえん
【食堂】
「どうぞ!」
「よし…」
北岡は翔一が出したぺペロンチーノをフォークで巻き取り、口に運ぶ。
「…うん、美味い。流石は津上、吾郎ちゃん並だよ。」
「ありがとうございます!」
「ちょっと!何やってるんですか北岡さん!」
加賀美はパスタを頬張る北岡を大声で非難する。
「腹が減っては戦はできぬって言うでしょ?お前みたいにまじめ一点張りじゃ、肩がこってしょうがないよ。」
「ミッドチルダの危機何ですよ!?やる気あるんですか?」
「…」
北岡は手を止め、加賀美に視線を移す。
「北岡さん?」
「やる気が無かったらこんな所に何か来ないよ。俺は借りは返す主義だからね。」
「借り?」
「俺は、この世界に命を救われてるんだよ。だから橘の頼みも聞いたし、あのスカリエッティって奴も全力で倒すつもりだ。」
「北岡さん…(俺、北岡さんのこと誤解…)」
「それに、きっと世界を救ったとあれば、報酬も高いだろうしね♪」
「…アンタって人はあぁぁぁぁぁぁあ!!」
加賀美は号泣しながら北岡の胸倉を掴む。
「ちょ!おま…苦しい!放せ…!」
「黙れこの悪徳弁護士!!」
「ご…ゴホ!…ゲホ…!」
「加賀美君落ち着いてえぇ!」
【第二訓練室前】
「ふう…」
エリオの訓練を終えたシグナムは額の汗を拭い、溜息をつく。
「お疲れさん!」
「ん?」
そこに大介が現れ、ペットボトルに入ったドリンクをシグナムに渡す。
「すまんな。」
「お前、俺に会った時と比べて随分変わったな。」
「そうか?」
「ああ、昔のお前だったらそのドリンクだってぜっっったい受け取らなかった。」
「そこまで…固い女だったか?」
「俺のメイクが通用しないくらい…な。」
「ふん…そうだったな。」
シグナムはペットボトルの蓋を開け、ドリンクを飲み始める。
「ふぅ…ゴンは、どうしてる?」
「学校行ってるよ。もう14だ、いつまでも遊んでるわけに行かないだろ。」
「それもそうだな、誰かさんに似ては困る。」
「余計なお世話だ。」
「本当のことだろ?」
「…シグナム。」
「何だ?」
「お前の背中、俺に預けろ。」
「…できるのか?」
「俺は大切な人を二回も失いたくない。」
「…ぷっ」
「な…何だ?」
「くくくく…らしくない台詞を言うな、笑うところだったぞ?」
「わ…笑ってから、言うな。」
「それは、すまなかったな。」
「チッ…」
大介は帽子を取り、頭を掻きはじめる。
「立場が逆転した…」
「いつまでもお前に遊ばれてばかりでは、烈火の将の名が泣く。」
【デバイス調整室】
デバイス調整室…
ここでは傷を癒したスバルが、傷ついたマッハキャリバーと対面していた。
「ごめんね、マッハキャリバー。私のこと…怒ってるよね?」
「Perhaps I don't have the feeling of "anger."(『怒る』という感情が、私にはおそらく存在しません)」
「マッハキャリバーは、AIだけど心があるって、一緒に走る相棒だって、言ったのに。私あの時、マッハキャリバーのこと全然考えてなかった。自分勝手に、道具扱いして…。こんなに、傷つけちゃった…」
「No. I had a problem.(いいえ。問題があったのは私の方です)
Your best stages was not supported due to my power shortage.(あなたの全力に応えきれなかった、私の力不足です)」
「マッハキャリバー…」
「Please give me one more chance.(もう一度、私にチャンスを下さい)
Your best will be supported without fail this time.(今度は必ず、あなたの全力を受け止めます)
So that you can go as far as you want.(あなたが、どこまでも走れるように)」
「うん!今度は絶対、一緒に走ろう!マッハキャリバー!」
【アースラ艦内通路】
「訓練データの移行、大丈夫だった?」
「It was completed it without trouble.」
「うん。」
「あ、なのはさん、レイジングハート!」
二人の前にリィンが飛来し、なのはの肩に止まる。
「リィン。怪我はもういいの?」
「はいです!おかげさまで、完全回復です!」
「そっか。」
「シャーリーから、クロスミラージュたちのファイナルリミッター解除を頼まれたですよ?」
「うん。私がお願いしたの。…本当は、もう少し慎重に行きたかったんだけど、そうも言ってられない状況だからね。」
「でも皆、きっとちゃんと使いこなせるですよ。」
「だね。」
「なのはさんとレイジングハートのほうは…」
「……」
「ノーマル状態のエクシードはともかく、ブラスターモードは…やっぱり危険ですから!」
「使わないよ。ブラスターは、私とレイジングハートの…本当に最後の切り札だからね。」
「It's so.」
「エクシードだけでも、充分すぎる威力があるんだし、それでしっかり、最後まで決めてみせるよ。」
「Yes」
【地球 ハラオウン邸】
「兄貴、リンディさん、次元は繋がったのかい?」
「それが…まだなのよ…」
「思った以上に、次元を遮断しているエネルギーが強い…キングストーンフラッシュでも駄目だった…」
「クソォ…ライドロンでぶち破れないのかよ!?」
「それも無理だ…(しかし…一体誰があんな次元を遮断するほど…強いエネルギーを…
そんな真似ができるのは…!?、まさか、あの石が…「ドラスストーン」が与えた情報にあった新しい悪の組織が!?)」
【??? 作戦計画室】
謎の作戦計画室…
地獄、ゾル、死神、ブラックの四幹部が揃い、そこで会合を行っていた。
「スカリエッティ、地上本部を壊滅させるとはこの地獄大使、鼻が高いぞ。それでこそ
、次元を遮断した甲斐があったというものだ!」
「貴様、この前までスカリエッティを侮蔑していたのでは…」
「黙れブラック将軍!あれはあれ、これはこれだ!」
「…(調子の言い奴め)」
「奴め、単なるキチガイ科学者だと思っていたが、どうやら腕は確かだったらしいな。」
「そうでなければ…わぁれわれが勧誘した意味が無い!」
死神とゾルは感心しながらショッカーワインを飲む。
「これからこの男がどの様な方法で管理局を倒すのか、たぁのしみだ、くっくっくっく…」
死神は不気味に笑い、画面に映っているスカリエッティの写真を見つめるのであった…
投下終了です。
旅行前で忙しいのでゴタゴタなところには突っ込まないでくれるとありがたいっす…
帰ってきたらばんばん書く予定なんで、皆さんお楽しみに!
それにしても匠魂のファースト版サイクロンテラカコヨス
しえん
GJ!
いよいよ悪の組織が本格活動開始か。
ISSAはどうした?>悪の組織幹部
なのはクロスSSのまとめwikiを見ましたら、第8話の最後の部分が
途切れてしまっているので第8話を投下しなおしたいと思いますが、
投下してもよろしいでしょうか?
>>1 |ヽ,---、|ヽ
ヽ ヽ▼/ ノ デイヤー!
\_> ・∀・|) ∧ ≡三< ̄ ̄ ̄>
⊂彡 ,つ::' | .≡ ̄>/
/ ̄ ̄ ノ ≡三/ /
./ / ≡/ <___/|
∠,,,,,,,,;;;;;;:::::::'''''´ ≡三|______/
こ、これは乙じゃなくてザンエイダンなんだから
変な勘違いしないでよね!
24 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/04(火) 21:25:42 ID:MRLUFdiP
>>22 途切れた分なら、まとめ掲示板に修正依頼として書き込むという形でOKかと。
文量にもよりますがね。
>>25 わかりました。先ほど修正依頼として書き込みました。
人大杉解除早々↑かよ、ハァ
28 :
OSGS:2007/12/04(火) 22:04:33 ID:MRLUFdiP
ともかく解除おめでと〜、ってことで。
はぁ…、スレで直接カキコするなんて、本当に久しぶりです。
>前スレの「SHINING WIND CROSS LYRICAL」様
自分の要望を汲んで「PEACE AGAIN」を入れて頂き、ありがとうございました。
フェイトとシーナのコンビが、綺麗に謳い上げる様が目に浮かびましたです。
その前のボーリング勝負のハイテンションぶりも非常に楽しかったです。
カラオケ勝負の後半部も楽しみに待っております。
というわけで、高町家&なのはの友人'S&スバティアの交流部後半をUPしたい
のですが、今のところはまずいでしょうかね?
板の状況には疎いもので…。
>>29 板そのものには問題無いですし
「前に投下された作品からなるべく一時間は感覚空けて投下する」というルールにも該当してないんで
別に投下して構わないかと。
>>30 レスありがとうございます。
では、早速投下をば…。
「なのはさんのお兄様だけあって、やっぱり格好いいですね〜」
あいさつが済むと同時に、スバルは目をキラキラと輝かせ、ブリッコのポーズを取りながら言った。
「ちょ、ちょっとスバル! いきなり馴れ馴れしくするんじゃないわよ!!」
ティアナに怒鳴られるが、スバルはしゅんとした表情で人差し指同士を合わせながら反論する。
「でも、本当にそう思うんだもん」
「ははは、どうもありがとう」
恭也は笑顔で二人に言うのと同時に、店の入り口から恭也と同じ翠屋のエプロンをつけた、半袖の
Yシャツに作業用ズボンと運動靴というシンプルな服装の、四十代前半の男性が出てきた。
「おい、いつまで―――おお、なのはか」
男性はなのはたちの姿を見ると、顔をほころばせる。
「あ、父さん」
「お父さん、忙しいところをごめん」
なのはの父で、翠屋の店長である高町士郎に、アリサとすずかは「今晩は」と挨拶する。
「ええと君たちは、確かなのはの教え子で…ティアナさんとスバルさんだったね」
士郎そう言って挨拶すると、スバルは「はい、そうです」と、ティアナは「覚えていただいて、恐縮
です」と言って挨拶を返す、士郎はしばらく考え込んだ後、なのはに言った。
「なのは、皆さんを家に連れてってくれ。夕食は、みんなで揃ったときにしよう」
「うん、分かった」
「あ、あの…お寛ぎのところを邪魔しては――」
ティアナがそう言いかけた時、士郎はそれをにこやかに遮った。
「いえいえ、娘の部下の方々でしたら、私の家族も同然ですよ。どうぞご遠慮なさらずに」
「あ、ありがとうございます」
ティアナは、多少緊張気味に士郎へ礼を言った。
数時間後、高町家居間の食卓には和洋様々な種類の豪華な料理が並び、部屋全体にいい香りが漂っていた。
「うわぁ〜、おいしそう〜」
「すごい…」
スバルとティアナは、ミッドチルダでも当たり前に食べられているものから生まれて初めて目にする料理
まで、技巧を凝らした様々なご馳走の数々に目を輝かせ、息を呑んだ。
「さぁ、召し上がれ」
士郎の左隣に座っている、幾何学模様のワンピースという服装と綺麗な顔のため、士郎と同年代とは思え
ないほど若々しいなのはの母、高町桃子がにこやかにスバルたちへ言った。
「では、お言葉に甘えて…」
「いただきま〜す」
ティアナは桃子に丁寧に礼を言い、スバルは、手を合わせながら快活に言って箸を取り上げた。
スバルたちがおいしそうに食べ始めたのを契機に、高町家の面々となのはの友人達も食事を始める。
しばらくの間、居間の全員は食事に集中して、会話が途切れる。
全員程よく胃が満たされ、落ち着いて来た時、桃子がスバルたちに尋ねた。
「スバルさんとティアナさんは、なのはの教え子なんですってね」
その質問に、ティアナが答える。
「はい、機動六課に所属していたとき、教導官として色々と教えていただきました」
「その時のなのはって、あなたたちから見てどう?」
「そうですね…」
ティアナは、フォークを置いて天井に頭を向けながら考えてから、答えた。
「厳しいですけど、基礎から順序立って教えてくれる、分かりやすい教導をしてくれる方…って感じです」
「あはは。ティアらしくていい答えだね」
スバルはそう言って笑いかけると、ティアナは顔を赤くして顔を伏せる。
「スバルさん、あなたはどう思った?」
桃子が尋ねると、スバルは真剣な表情で桃子を見つめながら答えた。
「私は…、初めて会った時からずっと憧れの方です」
スバルは、ここで昔を思い返すような、遠い目をしながら話を続ける。
「小さい時、私はなのはさんに助けて頂いて、その時に自分の力の無さを実感して、なのはさんみたいな
強い人になりたいって心の底から思って、それからずっと…今もなお追いかけてますけど、まだ遥か先の…
雲の上の人、そんな感じですね」
「スバル、それ持ち上げすぎ」
なのはは、顔を赤くして恥ずかしそうに言うと、桃子は微笑みながら娘を見つめた。
「あら、いいじゃないの。娘が人の尊敬を得られるほど立派になるなんて、母親としてこれほど嬉しい事
はないわ」
士郎も笑いながら頷く。
「そうだな。ちょっと前までは小さな子だと思ってたけど、それがあっという間に教官として人に尊敬される
までになってるなんて、そうそうある事じゃないぞ」
「多分、我が家で一番の出世頭じゃないかしらね?」
ベージュのブリッジシャツにローライズスキニーデニムパンツという服装の、金縁の眼鏡が知的な雰囲気を
醸し出しているなのはの姉、高町美由希が箸できんぴらごぼうをつまみ取りながら言った。
「ああ、俺も美由希もそんな立場までは行ってないし、稼ぎも我が家で一番じゃないか?」
恭也が自分の境遇を憂えるように、腕を組んで難しい表情をしながら言うと、桃子は恭也の頭に手を伸ばし、
優しく撫でながら答えた。
「いえいえ、恭也も美由希も立派にがんばってますよ」
頭を撫でられている恭也は、恥ずかしそうに顔をしかめて、母親の手から逃れる。
「ちょちょっと母さん、もう子供じゃないんだから」
突然、それまで黙ってサラダを食べていたヴィヴォオが、士郎と桃子に振り向いた。
「士郎おじさんに桃子おばさんも偉いと思うよ、だって二人が居たから、ヴィヴィオはなのはママと出会えた
んだもん」
「ありがとうね、ヴィヴィオ」
桃子はヴィヴィオの頭を撫で、士郎は張り切って腕まくりしながら宣言する。
「ようし、ヴィヴィオの為に今まで一番おいしいキャラメルミルクを作ってあげよう」
士郎の言葉に、ヴィヴィオも満面の笑みで返した。
「ありがとう、士郎おじさん」
「いやぁ〜、実に幸せなそうな事で…」
「私たち、お邪魔だったかも…」
アリサとすずかが、気まずそうに縮こまっているのを見たなのはは、慌てて二人を宥めに入った。
「アリサちゃん・すずかちゃん、そんな事無いから」
支援
35 :
OSGS:2007/12/04(火) 22:50:39 ID:MRLUFdiP
服装――GJ! そして支援!
服装いいね支援。
でも推敲はしてから投下した方がいいかも。
食事が終わると、スバルは庭で恭也とシューティングアーツの手合わせを始め、ティアナは、アリサたちと
ミッドチルダと地球の文化について色々話を始める。
士郎と桃子は、ヴィヴィオのキャラメルミルク作りのために台所へ行き、ヴィヴィオも二人について行く。
そしてなのはは、コーヒーの入ったカップを手に、縁側でスバルと恭也の手合わせを眺めながら、美由希と
雑談に興じていた。
「…なのはが、初めてヴィヴィオを連れてきた時は、上へ下への大騒ぎだったわね」
美由希がからかう様に言うと、なのはは苦笑しながら答え。、
「うん。管理局に入ってからの事を、総て話した時もかなりの騒ぎだったけど、あの時はそれ以上だった」
「でも、今じゃ一緒に飲み物作ったりするぐらい仲がいいんだから、良かったんじゃない?」
「うん。多分ヴィヴィオがいい子だったから、お父さんもお母さんも打ち解けられたと思う」
そう言って二人は台所の方に目を向ける。
台所からは、キャラメルミルクのいい香りと、楽しそうに話すヴィヴォオたちの声が聞こえてきた。
「で、クラナガンの方はどうなの? リンディさんから、分離主義勢力についてちょっとは話を聞いてるけど」
なのはは、顎に手を当てて考え込みながら話し始めた。
「最近、情勢が不穏になってきてる。魔術を使える人たちと、そうでない人たちの対立が段々悪化してきてて、
街中でデモが暴動になるなんて事が結構多くなってて…」
「そうなんだ」
「私も、時々暴動の鎮圧に呼ばれる事があるんだけど、正直言って気が乗らない」
そう言った時のなのはの表情に陰りが見えたのを、美由希は見逃さなかった。
「どうして?」
「それだけ今の状況を不満に思う人が沢山居るって事でもあるから」
なのははそこで一旦言葉を切って、空に目を向ける。
「ミッドチルダって、魔法以外の技術に対して本当に冷淡なの。魔術の技能を持たない人たちって選挙権がないし、
就職に関しても色々と制約があるから、彼らが怒るのも当然だって思う」
コーヒーを飲んで一息つけてから、再び話し始めた。
「暴力行為は悪い事だけど、ほとんどの人たちは自分の生活をより良いものにしたくて、間違っていると感じている
事を変えたいから、そうやって抗議している…そんな人たちの思いまで、一時の過ちとして片付けているような気が
するの」
美由希は、なのはの肩に手を置いて言った。
「なのはは優しいね。昔、ユーノを拾ってきた時もそんな風に一生懸命だった」
振り向いたなのはを真正面から見つめながら、美由希は話を続ける。
「なのはがそう思うなら、同じように感じている人は他にも居ると思う。魔法の力を持たないけど、懸命に世の中の
ために頑張っている人たちに正しく報われるようにしたいって思っている人が」
美由希はそこで言葉を切り、手合わせを終え、庭石に相対して座りながら話をしている、スバルと恭也の方に目を
向けながら話を再開した。
「その人たちと一緒になって、より良い方向に解決できるよう頑張るといいと思うよ。今のなのはならそれが出来る、
それはお姉ちゃんが保証する」
「そうだね。ありがとう、お姉ちゃん」
なのはは小さく微笑んで、空になったコーヒーカップを見つめる。
「ちょっと、新しいコーヒー入れてくるね」
そう言って立ち上がったなのはに、美由希は笑って手を振った。
なんという古代魔法王国…支援
台所で両親達と話をしながら新しいコーヒーを淹れ、居間に戻ろうと廊下に出た時、首に下げてあるレイジングハートが
点滅を始めた。
「どうしたの、レイジングハート?」
「マスター、八神はやて様から個人向け秘匿通信が入っております」
「はやてちゃんから!?」
なのはは急いで自分の部屋に行き、空間ウィンドウを開く。
「はやてちゃん、どうしたの?」
モニターに映るはやては、緊迫した表情で話を始めた。
「なのはちゃん、お休み中のところ申し訳ないんやけど、こっちでえらい事が起きてな」
「何?」
はやての話を聞いたなのはの表情が凍りつき、コーヒーカップを床に取り落としてしまう。
カップからコーヒーが溢れ、カーペットに黒い染みを作る。
「フェイトちゃんが…」
なのはは、呆然とした表情で呟いた。
なんというSF的ミッドチルダ支援
以上で、海鳴市パートは終了になります。
次は、クラナガンの時空管理局本局ビル(旧地上本部)と艦隊ステーション『タイコンデロガ』(旧本局)
が舞台となります。
GJっす!
タイコンデロガか…。
米海軍に在籍する唯一の巡洋艦にして最初のイージス艦でもある艦を思い浮かべる自分が居る。
そこ、旧式艦って言わない!
アーレイバーク級よりも処理能力上なんだぜ!
GJ!
落ち着く話でした。
そしてほのぼのな海鳴市との違いがさすがミッドチルダ!
7つは廃棄都市区画があってStSの8年前は反管理局のテロが頻発してただけのことはある。
>分離主義勢力
スターウォーズのが思い浮かんだ。
44 :
OSGS:2007/12/04(火) 23:20:05 ID:MRLUFdiP
GJ!
ほのぼのの中に張り巡らされた伏線が、今後の展開を気にさせますっ!
GJ!
何という重厚な世界観設定…自分には決して真似できません。
魔力のないデモ市民たちの武器は原始的な投射型質量兵器『投石』だな。
>>41 >>42 >>43 >>44 皆様、感想をありがとうございます。
「StrikerS」を観ていた時、ゲイズ中将のように現状に焦っている人間が管理局内部にも居る事から、
かなり状況は悪いな…と感じましたもので。
JS事件を機に、今までの不満が爆発する…という風に描いてみました。
これからも頑張ります。
>タイコンデロガ
歴代の空母や、言及されてたミサイル巡洋艦に使われてきた名前にして、元はアメリカにある要塞です
ので、本局基地に相応しいと考えて採用しました。
直接の元ネタは「スターシップ・トゥルーパーズ」の艦隊基地ですが。
>分離主義勢力
確かにSWプリクエルに出てきた政治勢力と一緒の名前ですね。
自分は重度のSWヲタでもあるので、影響は否定できません。
『A'S』における八神家みたいに、感情移入できる敵として描きたいです。
きっと管理局の新トップはダースベネディクト(ry
>>46 >>48 カキコで洩れましたが、感想ありがとうございます。
くどくどカキコするもの問題ですし、明日の事もありますので、本日はここで失礼致します。
>新トップはダースベネディクト(ry
それ、いいかもしれませんね。
前のスレで書き込めなかったので、ガングレイヴとのクロスの続きを希望します。
今日も今日とて学校早退でデビルのクロス執筆中です、今夜中には投下します。
ってかガングレイヴクロスの希望ですか! とりあえず、もし書くとしたら元ネタ未見の方にも読みやすいようにしようと思います。
やっぱり、そういう時は投下前に知人にでも相談するべきですかね?
早退という自主休校じゃないだろうなw
一応、学校にはちゃんといこうぜ
大学だとしても授業はちゃんと受けれw
完璧な正論にぐうの音もございません…しかしもうすぐ冬休み、定期テストも終わり、俺の頭の中はSSのネタで満ちているのです、どうかご勘弁を。
やっほい、久々の休みだぁ!
最近何かと不幸な目に遭われているリリカル龍騎氏へ、支援絵を描いてみました。
前回(シャイニングSS資料)のリベンジの意味も含めてね…うん…
ttp://kjm.kir.jp/pc/?p=48639.jpg リリカルマジンガー1話ラストの部分です。やっぱりロボット描いてる時が1番落ち着く…
初代αのカイザーは見たことないので、「魔」の文字は適当に描いたのですが、大体こんな感じでいいんでしょうか?
55 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/05(水) 16:46:06 ID:6IHd39dy
タイコンデロガと聞くとむしろエセックス級月間空母を思い浮かべる
>>48 そして敵対する組織のボスはプーチン
スーパーロボット大戦Xの第10話が出来ましたので
投下予定がなければ投下します。
ノーサンキュー
いらん
何か反応ないので投下しますね。
第10話 迫り来るもの
「シャイニングガーディアンズ」の作戦は開始した。
空に浮かんだ「聖王のゆりかご」に向かう部隊、スカリエッティの居る地獄島に行く部隊、日本の東京に上陸した敵を駆逐する部隊と分かれて戦闘が開始された。
空にはガジェットや空を飛べる戦闘獣、ハニワ幻人により「聖王のゆりかご」は守られていた。
「あれが戦闘獣やハニワ幻人・・・」
「機動六課の奴らはこんなものと戦ってたのかよ!?」
戦闘獣やハニワ幻人を始めて見てそして初めて戦う管理局員達は苦戦していた。
だが大半の敵はナデシコCのグラビィティブラストにより殲滅したので比較的楽であった。
「とりあえず、あの戦艦のどこかに穴を開けないとな・・・。突入部隊が入れないぜ」
「頼むぞ、ブレン。うん? 何か来るって?」
ホランドが考え、勇がネリー・ブレンに指示を出すとブレンは何かが近づいて来る事を勇に知らせる。
「でも懐かしい感じがするってブレンが言ってる」
比瑪がブレンの言葉を聴く。そしてその何かはナデシコCとアースラのセンサーに反応する。
「艦長、後方12時の方向に高速で接近する機体一機があります。この反応は・・・、メタルアーマーです!」
「メタルアーマーだって!?」
「一体誰が来るって言うの!?」
ハーリーの応答にケーンやタップは驚き、ライトがDー3のセンサーで調べる。
「待て! これは・・・あいつだ!」
そして近づいてきた機体は「ギガノスの蒼き鷹」マイヨ・プラートの機体ファルゲン・マッフであった。
「ファルゲン!? マイヨさんかよ!?」
「久しぶりだな。ケーン・ワカバ」
自分が好意を持つ女性の兄でかつては敵同士で2年前の戦争の終盤で自分達に協力した後、行方不明だった男が自分達の前に現れたことにケーンは驚きを隠せなかった。
他の人とのタイミングが合いませんでしたが、もう投下してしまったのでこのまま投下します。
「あんた、今まで何をしてたんだよ!?」
「私は2年前の戦争が終わった後、ギガノスの軍人である私は行き場を失い世捨て人となっていた。
だが先日の5thルナの落下で私はやるべきことを見つけ、封印していたファルゲンを持ち出しその整備をしていた。
そしてあの戦艦を見て私は直感した。あの戦艦は地球を滅ぼすものだと。私はギルトール元帥が愛した地球を守るためにお前達と再び組み戦おうと・・・。
イバリューダーが近づいてる以上、協力しないわけにもいくまい」
「ま、そういうことなら歓迎するぜ」
「では私は何をすればいい?」
ケーンとのやり取りを終え、マイヨはナデシコCやアースラに指示を求める。
「今はあの「聖王のゆりかご」に突入部隊を突入させたいのですが敵が多くて・・・」
「ふ、わかった。では私が道を空けよう」
「「え?」」
マイヨの言ったことにシャーリーやルキノは困惑する。
そしてファルゲン・マッフは敵のど真ん中に突っ込んだ。当然の事ながらガジェットや戦闘獣やハニワ幻人はそれを阻止しようとファルゲン・マッフを攻撃するがマイヨの腕の前には人工知能で動くロボットの攻撃は簡単に見切られ回避されてしまう。
ファルゲン・マッフの武装である3連マルチディスチャージャーのミサイルによりガジェットや戦闘獣は次々落とされ、
遂にゆりかごまで近づき迫兵戦用レーザーソードで外装の一部を切り裂いた。
「今がチャンスだ! 突入隊は突入せよ!」
マイヨの言葉に乗りまずはなのはとヴィータとテッカマン達が突入し、穴を広げ、
ウイングゼロ、デスサイズヘル、サンドロック改、ヘビーアームズ改、アルトロンガンダム、
トールギスV、トーラスがゆりかご内に突入していった。
一方地獄島にあるスカリエッティのアジト内ではフェイト達が残っていた敵と戦っていた。
するとジョウがある提案を出した。
「すまねえが、俺は先に行かせてもらうぜ」
「ジョウ、どうするつもり?」
「飛影の速さと瞬発力ならこの中の誰よりも早いはずだ。俺が先行して敵を殲滅する。ついでにスカリエッティや他に残った戦闘機人達も見つけといてやるよ」
「でもジョウそれは危険だよ」
ジョウの提案にフェイトは反対する。だがジョウはそれに反論する。
「心配すんなってやばかったら逃げるさ。それに飛影が簡単に捕まるかよ。じゃあ行くぜ」
そう言って飛影は俊速の速さで先に行った。
「とりあえず俺達も先に進まないとな・・・」
「ああ、さっさと終わらせてやるぜ。ゲッターーーービーーーーーーム!」
竜馬が叫ぶと真ゲッター1の腹部からゲッタービームが出てきてガジェット達を残さず殲滅させた。
そしてフェイト、シャッハ、オーガン、真ゲッターは先に進んだ。
その先にも大量のガジェットが現れ、オーガンが足止めをするので「先に行ってくれ」と言い他のメンバーは先にと進んだ。
「こい、ロボットども! 俺はお前達の後イバリューダーと戦わなきゃならないんだ! ここで死ぬわけにいかん!」
先に行ったフェイト達が見たものは人造魔導師の素体で生体ポットに入れられていた人達であった。
「趣味の悪い奴のようだな」
「早乙女のじじいの方がまだいいくらいだぜ」
隼人と竜馬が批判していると突然上から今までにない巨大なガジェットV型が振ってきて、それにあわせてセインが地面の下から爆薬を仕掛け、シャッハと真ゲッターは地下へと落ちた。
「大丈夫ですか?」
フェイトが上から聞くと竜馬が何もないように答える。
「大丈夫だ。それより面白い奴がいるようだから相手をしておくぜ」
「こちらを気にする必要はない。自分の戦いに集中してくれ」
「できれば後でそちらに行きます」
竜馬や隼人やシャッハが何もないように答え、セインと対峙する。
フェイトは出てきたトーレとセッテと対峙するのであった。
戻ってゆりかご内ではなのは達突入部隊が固まってゆりかごの中を進んでいたが自分達が動力炉に進んでいて、玉座の間が反対方向だと連絡が入った。
それを聞いたゼクスが連絡員にこう言った。
「ならば、我々は全員分かれてそれぞれの破壊を目指す。それでいいな」
「わかりました」
突然のゼクスの提案に戸惑うなのははゼクスに理由を聞こうとした。
「ゼクスさん!?」
「ヴィータ三尉、君もそう言おうとしただろ?」
「お前の言うとおりだ、ゼクス。あたしも今そう言おうとしていた」
「ヴィータちゃん!?」
なのははゼクスの言ったことがヴィータの考えと同じだったことに驚いた。
いや、ゼクスはヴィータの事を察して先に言ったのだろうと思った。
「こうしている間にも外は危なくなってる。ここは分かれた方がいいし、両方とも制圧しないといけないかもしれないし、他の所も制圧しなきゃならないかもしれない」
「でもヴィータちゃん、ここまでの体力の消耗が・・・」
「大丈夫だ、あたしとグラーフアイゼンの得意分野は破壊と粉砕だ。それに他の連中に甘えるわけにはいかないしな。
動力炉はあたし一人でいい。他の連中は他の所に行ってくれ。なのはは玉座の間だ」
「いや、念の為、玉座の間にはもう2人行かせたほうがいいだろう。ヒイロ、デュオ、頼めるか?」
「了解した」
「ま、念に越したことはねえからな・・・。行ってやるぜ」
「俺もすぐに行こう」
なのはとヒイロとデュオが玉座の間に行き、ヴィータが動力炉、他のメンバーは他のところの制圧になったがブレードは制圧してすぐに玉座の間に行くことになった。
さらに一方地上ではガジェットや戦闘獣やハニワ幻人やモビルスーツが日本に侵攻していたが残った「シャイニングガーディアンズ」が懸命に戦っていた。
そしてスバルと電童組は敵に操られたギンガと会っていた。
「スバル・ナカジマ、わかっていような。お前の姉はお前自身で助けねば意味がない。私や北斗が助けられたようにな・・・。故に我らはその邪魔だでするものを排除する。よいな?」
「わかりました、兄上」
「はい、スバルさん。絶対お姉さんを助け出して下さい!」
「わかったよ。アルテアさん、北斗」
(でもギン姉に怪我させたくないから振動破砕は使えないし、魔力ダメージでのKOだな・・・)
スバルはアルテアの言葉を聞いて自分自身の手でギンガを助ける決心が固まった
ティアナはオットー達の策にはまり、結界が張られたビルの中で一人でノーヴェ、ウェンディと戦っていたが、
ディードの乱入により足を負傷してしまった。ティアナは諦めかけていたがその時頭に浮かんだのは3年も長い付き合いで組んでいたパートナーのスバルとの思い出であった。
「何でこんな時にあいつの事を考えるの・・・」
ティアナはスバルに励まされたかのように戦う気力を取り戻した。
ちなみにティアナが居るビルの近くには鋼鉄ジーグがいた。
「くそ、何て硬いバリアだ! マッハドリルで一気に突き破るか!?」
「駄目よ、宙さん! マッハドリルで破れたとしてもティアナちゃんがどこにいるのかはっきりしないと危険だわ」
「くそ、俺達は見てるだけかよ!」
鋼鉄ジーグは何とかビルに被害が出ないように結界を破る方法を考えていた。
エリオとキャロはルーテシアを見かけ飛び出してしまい、それをガオガイガー組と獣戦機隊がそれを追った。
「おい、ガキ共! そんなに前に出るんじゃねえ! 敵がきたらまずいぞ!」
「藤原、あれは言っても無駄だと思うぞ」
「何でだよ!?」
「忍、アランの言うとおりだ。あの二人はあの少女に何か特別なものを抱いているのだろう。俺達が言ったところで止まらんだろう」
「じゃあ、俺達はどうすりゃあいい!?」
忍の答えに凱が答える。
「俺達はあの二人を護衛しながら戦うべきだ。あの二人の勇気ある行動を信じて・・・」
「ふん、勇気か・・・。わかったよ」
シグナムとリインフォースUとダイモスはゼストとアギトの前に立ちふさがっていた。ゼストはレジアスに会いに行こうとしていたのだ。
レジアスは先の地上本部襲撃後地球連邦政府の事情聴取の為、一時Gアイランドのベイタワー基地にいたのだ。
「一矢、すまないがここは私とリインだけでやらせてくれないか?」
「シグナム・・・。一騎打ちをする気か?」
「ああ」
「わかった。俺はお前達の邪魔をしない。俺も同じように一騎打ちをする時は頼んでるだろうしな。
だがそれを邪魔するものには俺は容赦しない!」
シグナムと一矢のやり取りを見ていたゼストは一矢に尋ねた。
「若いな青年。お前も騎士か?」
「いや、俺は騎士じゃない。格闘家だ!」
「ふ、そうか」
言い終わるとゼストはアギトと、シグナムはリインフォースUとユニゾンし、戦いが始まった。
ダイモスはその戦いをただ見守るだけであった。
残りのメンバーは残ったモビルスーツやハニワ幻人や戦闘獣やガジェットと戦っていた。
ゆりかごではヴィータが一人で動力炉に行っていた。
「カードリッジはまだある。行ける・・・」
しかし、突如背後から何かがヴィータの背中を貫いた。
それは8年前なのはを殺そうとした機械であった。ヴィータは動揺したがすぐにこれを破壊したが、目の前には同じ機械が何十体も現れたのだ。
「お前ら、あの時なのはを襲った奴の同型機か・・・。一機残らず、ぶっ壊してやらぁーーーー!!」
ヴィータは怒りのままに敵へと向かった。
ヴィータにとって今が過去の因縁との決着を付ける時になったのだ。
投下は以上です。
戦闘面がさらに濃くなるのは次の次になりますかな・・・。
一応次の話からも戦闘面と濃くするつもりですが・・・。
やはり熱い戦闘は次の次からですね。
>>66 ううむ、なかなか展開はそそるものになってきましたが、ロボット組の仕事っぷりが地味かな…?
やっぱりちゃんと戦ってほしいものです。戦闘が濃くなるという次回に期待。
68 :
魔装機神:2007/12/05(水) 17:31:09 ID:RKZWn0Ra
や、やっと人おおすぎが解除された……
マタイ綱rか解らないけど、投下していい?
69 :
魔装機神:2007/12/05(水) 17:33:34 ID:RKZWn0Ra
ごめん、下げ忘れた
GJです。
>>69しかし投下の間隔は前の人からなるべく一時間くらいは空ける事になったんですよね。
72 :
魔装機神:2007/12/05(水) 17:40:50 ID:RKZWn0Ra
スーパーリリカル大戦(!?)外伝 魔装機神 THE BELKA OF MAZIKAL 14話 「スカリエッティ」
「うおおりゃああぁぁぁーーー!!」
「はあぁぁーーーー!!」
その頃、艦船アースラの演習場ではマサキとフェイトは模擬戦をしていた。
二人とも高軌道戦闘を得意とするため、めまぐるしく動き回る。
(早い……)
フェイトは戦いながら、マサキの強さに苦戦を強いられていた。
力が向こうが強いのは仕方ないが、スピードでもサイバスターのほうが上で、フェイトは体の小ささを生かして何とか戦っている。
(くそ、ちょこまかと)
一方マサキのほうも、体の小ささを生かして戦うフェイトに、なかなか決定打を与えられていない。
その様子をシグナムとクロノは見ていた…
「なんか目が痛くなってくる…」
クロノはこの戦いを少しため息交じりに見ていた。
お互いがスピードに特化した戦いが得意なため、訓練場を所狭しと飛び回る二人に、二人は少々目をちかちかさせながら見る(特にクロノ)
「くっそ、これじゃあらちがあたねえ!」
そういって、マサキは急にスピードを落とし、真っ直ぐフェイトを迎え撃つ構えを取る。
フェイトもそれを見て、次で決めようと思ったのか、本気を出す。
「バルデュシュ、ザンバーフォーム」
フェイトの言葉と共に、バルデュシュはフェイト自身よりも大きな大剣になり構える。
「おい、模擬戦室でこんなもの使ったら……」
クロノは冷や汗をかきながら、以前の光景を思い出す。
それは、なのはとヴィータの模擬戦だったり、フェイトとシグナムの模擬戦だったり。
勿論、最後の最後、全力全開の本気モードでだ……
「いきます」
フェイトはザンバーを構え、マサキに向かってゆく、勿論全力全開、本気モードでだ。
「おい、いくら本気で行くからってそんなもんここで使ったらやべえだろ!」
マサキはフェイトを静止させようとするが、聞こえているふしはない。
確実に戦いに意識を集中させている。
そのときだった、フェイトハ急に何かに止められる感覚に陥る。
「そこまでだ、フェイト」
「え?」
フェイトはやっと我に返って周囲を見る。
よく見ると、自分はバインドで拘束されていたのだった。
「全く、マサキも止めていたのに……何回模擬戦室を壊そうとしたら気が済むんだ?」
クロノはため息を付きながらフェイトの説教をしていた。
クロノはこうやって、模擬戦室に危機が訪れたとき(もしくは間に合わず破壊されたとき)
に、
こうやって壊した張本人をしかっている(メンバーは大体決まっている、つまりはフェイト、シグナム、なのは、ヴィータの4人だ)
「ご、ごめんなさい……」
もう何度聞いたかわからない妹の謝罪に、もう一度ため息を付く。
「もっとひどかったら、また模擬戦の使用を一定期間禁止する事になる」
クロノはそういってフェイトを見る。
73 :
魔装機神:2007/12/05(水) 17:43:27 ID:RKZWn0Ra
だが、シグナムもばつが悪そうにする。
はっきりいって、この訓練室を一番よく損傷させるのはフェイトとシグナムだ。
つまり、この二人はよく使用を禁止させられている。
なのはたちはあまり模擬戦はしないのだが、するときはフェイトたちとは比較にならないほどの損傷を与える。
ひどいときは1ヶ月ほど使えなくなったときもあった。
そして使用禁止になる期間も当然長い。
つまりは、量か質かの違いであった。
「マサキを倒せたら、シグナムに勝てるかなと思って躍起になっちゃって……」
フェイトの言葉に、シグナムはむっとする。
「私でも本気でかかって負けたのだ、到底テスタロッサには無理だな」
シグハムのカウンター攻撃に、今度はフェイトがむっとする。
「じゃあ勝負しませんか?どちらが先にマサキを倒すか」
「望むところだ、負けはせん」
二人は静かに火花を散らせる。
クロノは深いため息を付きながら模擬戦室のために、そして後ろでこれからのことを考えて固まっているマサキのために判定を下す。
「二人とも、2週間の間模擬戦室を使うのを禁止する」
「「う……」」
「なに?管理局員が既に何者かに殺されていただと?」
ここはミッドチルダにあるある研究施設。
そこには、研究者の姿をしたものと変わったスーツを着ている数人の女性がいた。
「はいドクター。私たちが駆けつけたときには既に殺されていて、管理局のものが摂取作業をしていたので、
セインに頼んでもらい予定の三人を回収しました」
その中でも最も小柄の女の子が状況を説明し、研究者はそうか……と何か考えていた。
「どうしたのですかドクター?」
ドクターに尋ねたのは眼鏡をかけている女性で、女性は楽しそうに尋ねる。
「なんでもないよクアットロ…まあ、君達の実力を確かめられなかったのは非常に残念だが、
貴重な素材を無理せず手に入れられた事はよかったよ…それに、研究所を襲撃したものもめぼしはついている」
そう、おそらくはあの男の仕業だろう。
天才とよばれたあの男の……
(クク、シュウ・シラカワ…私はついに手に入れた、戦闘機人と言う力を。これであなたを超える事ができますよ)
そう、かつては彼の元で研究をし、彼が残した戦闘機人システムを自分なりに改良して作り上げた。
それが彼女達だ。
ただ、なぜ彼が戦闘機人を作ったのかはわからない。
まあ、今となってはそんなことはどうでもいい。
私は私で研究を続け、自分の作品を作る。
そう考えると、ドクター…ジェイル・スカリエッティは笑いをこみ上げる事しかできなかった。
そんなドクターを、娘達は少々不思議そうに見るのだった。
74 :
魔装機神:2007/12/05(水) 17:46:19 ID:RKZWn0Ra
「ああ、私は少し用があるので、先にあれを頼んではくれるかい?
今日は収穫のだからね。私も終わり次第すぐに行くよ」
スカリエッティの言葉にまず最初にウーノがわかりました、といって先に部屋を出て行く。
他の姉妹達のぞろぞろと部屋を出て行った。
独りになった事を確認すると、スカリエッティはある人物とのコンタクトをとった。
「ああレジアスか。私だ、ジェイル・スカリエッティだ」
「そんなことがあったんか」
はやては今日の模擬戦の話をマサキから聞いて、じとーっとシグナムを見る。
「シグナム、あんまりマサキを困らせたらあかんよ」
す、すみません…とシグナムは素直に謝る。
今日はまだなにもしていないが、これから模擬戦内で何をするかわからない。
そんなシグナムを見て、ヴィータはニヤニヤシグナムを見るが……
「ヴィータも、ひどいときはヴィータの方が被害がひどいから、ほどほどにな」
はやてに注意され、うっと言葉をつまらせるヴィータ。
「け、けどはやて、そのほとんどはなのはのせいで……」
そう、確かにヴィータも壊すが、そのほとんどはなのはの砲撃のときだ。
だが、じーっと睨むはやてに、とうとう降参し、ごめんなさいと謝るヴィータ。
「マサキも、シグナムとフェイトちゃんの試合に全部つきあっとったら体力ももたんやろうし、
適当な理由見つけてたまには断わりなよ」
まあ、ここしばらくは模擬戦禁止がシグナムとフェイトに出されているし、ヴィータとなのはもそこまでしないから、
しばらくはゆっくりできるし、シュウ・シラカワの行方を捜すことに専念できるだろう。
けど……とはやては気まずそうにマサキを見る。
「実は、マサキは剣を使うって言うたら、恭也さんが一度剣を交えたいって……」
またかよ、とマサキは呆れる。
確か、恭也という人物なのはの兄の名前だったか。
「けど、恭也さんだったら問題ないよ。シグナムのような決闘趣味はもってへんし、一度戦ってみたいだけみたいやから」
まあそれならいいか、とマサキは一応は許可をする。
彼相手なら魔装化にならなくてもいい分気楽である。
なったらそれは明らかに卑怯だ。
ただ、少し思った……
「なあ、ちょっと聞きたいんだけどよ、あの家族で戦えないやつってなのはの母親と姉だけか?」
マサキの言葉に、いや、と首を横に振るはやて。
「美由希さんも剣術習ってるから、戦えんのは桃子さんだけや」
なんという家族……とマサキは思った。
する気はないが、あんな店では食い逃げもしたくても出来ないだろう。
「あ、そうだ、はやて」
なに?とはやてはマサキのほうを向く。
「明日はちょっと管理局の捜索も休むっていっておいてくれないか。ちょっとよりたい所があるんだ」
マサキの行きたいところ、どこだろうか、とはやては乾得た。
「家族の墓参りだよ」
75 :
魔装機神:2007/12/05(水) 17:48:32 ID:RKZWn0Ra
「ここですか……」
シュウはある家の前に立っていた。
シュウは自分の作った戦闘機人に少し興味を持っていろいろと調べ、その戦闘機人タイプゼロ、ファーストとセカンドがいる家に着く。
そこへ、シュウはあるものを置いていく。
先日クイントから奪った彼女が両手に装備している二つのリボルバーナックルだった。
ただ、そのままぽんと置くわけには行かないので、この世界でも通用するような細工を施している。
その時、シュウは庭先にいる二人の少女を見る。
シュウは気配を消してその二人を見る。
間違いない、あれが……
(タイプゼロのファーストとセカンド……)
自分が作り上げたとき違って、ある程度は大きくなっているがあの姿は間違いなく自分が作ったタイプゼロの二体だった。
(これからどうなるか、見ものですね……)
シュウは、少し微笑を浮かべながらこの場を後にした。
「そうか……」
その頃、地上本部では地上本部の責任者、レジアス・ゲイズ中将があるものと対談をしていた。
「ええ、誰かの横槍でせっかくのナンバーズの能力を試す事はできませんでした」
その相手、ジェイル・スカリエッティは心底残念そうにいう。
「もしかすれば、その相手はあなたならご存知ではないのですかな?」
スカリッティは試すようにレジアスを見る。
レジアスは知らん、と簡単に言ってスカリエッティを払う。
「ですが、素体は手に入れることが出来ました。これもあなたが部隊を遅らせてくれたおかげです。礼を言っておきます」
そう、ゼンガーたちの到着が遅れたのは彼がからんでいるのだ。
「それでは、私はそろそろこれで、趣味のオレンジ畑が収穫の時期があるので。
また例年の如くおすそ分けもしておきますよ」
そういって通信を切るスカリエッティ。
全く、意外な趣味を持つものだと思う。
それを確認すると、レジアスは一枚の写真を取り出す。
そこには、何人かの局員がいて、レジアスはその中でもあり一人の人物を見ていた。
その表情はとても悲しく、申し訳なさそうに見える。
『レジアス、いるか?』
その時、別のものから通信がはいる。
それにはレジアスの少々驚く。
レジアスは周囲を見て、誰もいない事を確認するとほっとため息を付いて鍵を閉める。
「急に現れないでください。あなた達の存在は秘匿なのです」
レジアスの言葉にすまないな、と少々笑い声が聞こえる。
その姿は……まあ簡単にいてしまえば人間の脳であった。
『ああ、それはすまないな。それで計画は予定どおり進んでいるのか?』
脳みその問いに、はいとレジアスは頷く。
「少々意外な横槍が入ったものの、スカリエッティは人造間同士の素体となるものを確保。時期に製作に取り掛かるでしょう」
レジアスの言葉にそうか、と満足そうな声をする脳みそ。
この脳こそ、最高評議会の最高幹部の3人であった。
だが、彼の存在は極秘とされ、知っている者もかなり限られている。
「またなにかあれば連絡しますので、あなた方から出てこないでください。もし誰かいれば大問題なのですよ」
わかったわかった、と軽い笑み(表情はない、所詮は脳みそだから……)を残しながら通信が切れている。
その後、レジアスは胃薬を飲みながらもう一度写真を見る。
「ゼスト……」
そこには、今頃死体となってスカリエッティのアジトにいる友人の姿がった。
76 :
魔装機神:2007/12/05(水) 17:51:34 ID:RKZWn0Ra
「う〜〜ん、今回もいい感じに熟してるわねえ」
クアットロは一面に広がっているオレンジを一つとる。
ここはスカリエッティが趣味で作っているオレンジ畑。
そしてスカリエッティ一味の副収入源でもある。
「けどドクターがこんな趣味があったんだねー」
今この中にいるナンバーズのなかで稼動暦が短いセインとディエチはキョロキョロとオレンジ畑全体を見る。
「二人はここに来るのは初めてだったね」
スカリエッティの声が聞こえて、一応はそちらのほうへ向く。
そこには、いつもの研究者は着ているような服ではなく、麦藁帽にシャツにつなぎと、
どう見ても農家にしか見えないスカリエッティの姿があった。
「さあ収穫を開始しよう。これも私たちの収入源のひとつだからね」
そういって、まだ少し唖然としているセインとディエチをよそに、オレンジの収穫が始まった。
「ん?」
収穫を開始してから数分、ディエチはある事に気付く。
「何で下のほうだけ?」
そこには、何故か下のほうだけのオレンジが取られている木が続いていた。
その後を目で追っていると……
「う……うう……」
がんばって背伸びをして自分達なら取れそうな場所にあるオレンジを必死で取ろうとしているチンクの姿が……
おそらくこのオレンジもチンクがとったのだろう。
どうしようかとディエチが考えていた。
(ここは助けるべきなんだろうけど、チンク姉は自分の身長の事を気にしてそうだから手伝っても逆にへこみそうだな。どうしよう……)
うーん、と考え込むディエチだが、その影は既にチンクに知られていた。
「ディエチ、こういうときは手伝ってもいいんだぞ」
と、少々悲しくなりながらつぶやくのだった。
投下完了。
最後はまあ、軽いほのぼのと思ってくれれば、中のヒト的にもかなり無理あるし
>>76 すごい収入源ですね・・・。(笑)
自分はOG系はやったことないのでわからないのですがシュウが強いキャラだということだけは知ってます。
>>71 そうだったのですか、こっちも勉強になりました。
>>76 や、やった!
流石は魔装機神氏、我々が手を出さないネタを平然とやってのける!
そこn(ry
GJでした! 自分も今日中には投下できるといいな…早いところ本筋に戻りたい…
GJ!
カズマ・劉鳳「「せ、声優ネタじゃねーか!」」
スカ「かっこいいだろ?」
チンク姉がカワイイ過ぎです、なんかもう”がんばって背伸び”は犯罪ですよ。
GJ!
まさか某「」とスバル以外でオレンジ畑ネタが見れるとはwww
心の奥底からチンク姉に萌え尽きた・・・!
83 :
OSGS:2007/12/05(水) 20:11:51 ID:tuRI+tMu
GJ!
チンク姉さまカワよすぎるぜ……!
デビルメイクライ3クロスの十一話できました、今回はエリキャロが主役なんですがどうでしょう。
sienn
支援
それでは投下します、今回のキャロはバージル兄さんの教育(シゴキ)でかなり強化されてますのであしからず。
魔法少女リリカルなのは Strikers May Cry 第十一話「竜巫女と氷結の獄犬 槍騎士と時の魔界馬」
目を覚まして最初に映ったのは白い天井、直ぐに医務室だと分かり傍に感じた気配に言葉をかけた。
「どれくらい眠っていた?」
「1時間くらい。バージルさんが運んできたのよ…でもバージルさんにお姫様抱っこなんて羨ましいわね〜」
白衣を着た金髪の医務官シャマル、永い時を共に生きた戦友は“仲間”の喪失に沈む私を気遣い軽口を開いた。
「そうか…」
「一体何をしたのよ? まあシグナムのことだから想像がつくけど」
「あの馬鹿者に言いたいことを言っただけだ……奴はもう行ったのか?」
「ええ…本局の転送ポートで数日中には出身世界に帰るそうよ。きっともう戻っては…」
「あいつは戻って来る」
「えっ? どうしてそんなこと…」
「私がそう信じているから…だからきっとバージルは戻って来る」
「またそんな…」
シャマルは私を呆れた顔で見てきたが、決して私の想いは揺るがない、剣を交えた強敵(とも)を私が信じない筈は無いから。
「だから早く戻って来い…バージル」
私は小さくその名を噛み締めて、去っていった仲間を想った。
アースラを新たなる拠点とした機動六課は傷を癒した隊員を乗せ、来るだろうスカリエッティとの戦いに備えていた、そしてアースラに乗り込み数日が過ぎた時に事態は急激に動きを見る。
ヴェロッサが敵の地下施設を発見した頃、スカリエッティが管理局に向けて送った通信映像と共に古代ベルカの巨大質量兵器“聖王のゆりかご”が浮上し数万を超えるガジェットドローンと悪魔の軍勢が現れた。
完成を目前にしていた地上防衛兵器アインへリアルは破壊され、地上本部へと向かう敵戦力に機動六課は、ゆりかご・地上・スカリエッティの地下施設へと戦力を振り分けてこれに応戦する事となった。
空を翔る白い飛竜の上に3人の少年少女が乗っていた、機動六課ライトニング分隊の若き槍騎士エリオ・モンディアルと召喚師キャロ・ル・ルシエに、気を失って二人に身を預けている少女ルーテシア・アルピーノ。
地上にて暴走するルーテシアをなんとか無力化した二人は、彼女を保護して、六課の仲間と合流すべく飛竜フリードの翼にて市街地の上空を飛ぶ。
その飛竜へと地上から巨大な氷塊が砲弾の如く放たれた、直撃こそしなかったものの翼をかすめた衝撃にフリードは体制を崩し地上へと身体を落とす。
「うわあああ!」
「きゃああ!」
エリオとキャロが悲鳴を上げてフリードにしがみ付きながら気を失っているルーテシアを落とさないように抱きしめる、しかしフリードの身体は地に着くことはなかった。
ルーテシアの召喚虫ガリューが自身の何倍もある体躯のフリードの身体を受け止めていた。
「何だ。竜を落としたかと思ったがまだ幼い飛竜ではないか」
恐ろしく低い唸るような声が響く、そこには先ほどの氷塊で作られた砲弾の主、人語すら解し極寒の凍気を纏った三つ首の獄犬が二人に牙を剥いていた、その悪魔の名は“ケルベロス”地獄の番犬の名を持つ上位悪魔にして凶悪なる狂犬。
「ガリュー。ルーを頼むよ管理局の人の所に運べば手当てをして貰えるから」
そう言うとエリオは抱きかかえていたルーテシアを優しくガリューに手渡す、ガリューは言葉こそ発しないものの小さく頷きルーテシアを受け取り飛び去った。
そしてエリオは地へと降り立ちケルベロスにデバイスを向ける、しかしそのエリオの足元に黒色の魔法陣が現れた。
「ダメだよ〜んエリオ君♪ 君はお馬とお遊戯するんだから〜」
道化師のようなふざけた声と共にエリオは別異層の封鎖空間へ閉じ込められる。
「エリオ君!」
突如として消えたエリオに驚く暇もなく、キャロとフリードにまたしても砲弾のような巨大な氷塊が飛来する。
「何処を見ているのだ? 飛竜と竜使いの人間よ。お前の相手はこちらだ」
地獄の番犬は、人など一瞬で丸呑みにしてしまいそうな大きな口腔から刃のように鋭い牙を少女に覗かせていた。
エリオを別異層空間に閉じ込めた主にして二人を遠くから見つめていた黒衣の道化師、名を“ジェスター”悪魔に魅入られた破戒の司祭アーカムのもう一つの姿である。
「いや〜キャロたんが。あのおっきなワンコの歯糞になる所を是非ともビデオに収めたいんだけど〜ザンネン。これからおじちゃんはゆりかごのお嬢ちゃん達の面倒を見なきゃいけないんだよね〜」
普段のアーカムからは想像もつかない軽口を吐きながら彼は転移魔法によりその道化の姿を消した。
「ここはっ!? 封鎖された空間に閉じ込められたのかっ!」
エリオが飛ばされたのは円形を成した、まるで古代の剣闘士が戦うコロシアムのような場所だった。
飛ばされたのが自分一人であることにエリオは焦る心を隠せない、キャロは今あの魔獣と一人で対峙しているのだ、例え竜召喚の技を持っているとしても凶悪なあの牙の一噛みで彼女は絶命するだろうとエリオに最悪の未来を幻視させる。
闘技場に立つ彼に一つの巨大な魔力が近づいたのが感じられた、その瞬間、空間を裂き古代の戦車を引いた巨大な魔界馬が現れる、それは時を操る魔界の戦馬“ゲリュオン”古き時代に数多の戦士を乗せた名馬が魔界の瘴気により姿を変えた悪魔である。
「こいつ…なんて魔力だっ!!」
エリオは目の前に現れた魔界馬の発する気迫と魔力に、まだ幼く小さな身体を震わせた。
ゲリュオンはまず挨拶代わりと言った具合にエリオに突進をかける、彼は持ち前の素早さを生かして身を翻して避け、さらに急制動をかけて振り回される戦車もストラーダのスラスター噴射で上方へと回避した。
「無駄だっ! これくらいならバージルさんのラウンド・トリップの方が何倍も避けずらいっ!!」
師の一人の名を叫び、エリオは空中で物言わぬ魔界馬にストラーダの穂先を向けた、しかしその刃が悪魔を捕らえる事はなかった。
ゲリュオンは現れた時のように突如として空間を裂いて別の異層へとその巨体を消した。
「なっ!?」
そしてエリオの周囲に大量の銛を思わせる長大な矢が現れ、時間加速能力により高速で射出された矢はその軌道を彼へと向けた。
<sonic move>
ストラーダの電子音が響くと同時にエリオは高速移動で矢を回避した、しかし完全には避けきれず肩や膝を引き裂かれ血で闘技場を赤に染める。
「くうっ…」
エリオは闘技場の大地にストラーダをついて倒れそうな身体を支え呻いた、致命傷ではないものの、まだ幼い彼の身体から戦闘力を削るには十分な傷だった。
すぐさまバリアジャケットの強度を調節、袖を引き裂き止血した、そんな彼をいつの間にか姿を現したゲリュオンが静かに見ていた。
「こっちが手当てするまで待ってたのか…最初の挨拶のお礼かい? 義理堅いんだね君は」
エリオはセカンドフォームのストラーダを最速の刺突の構えで狙いを定め、カートリッジをフルロードして眼前の強敵に応えた。
キャロはひたすら震える、目の前ではフリードがケルベロスの吐き出した氷弾を火球で相殺してキャロを守っていた。
キャロは最初にエリオを早く救助する為、最強の黒き火竜ヴォルテールを呼び出したのだが、天空より現れた超巨大悪魔“リバイアサン”によりその救援は断たれる、ヴォルテールは次元航空艦に匹敵する大きさの悪魔との戦いを空で繰り広げていた。
こうしてキャロはフリードだけを頼りとして氷結の獄犬の前に立つ事となった。
「フ…フリード。ブラストレイ!!」
キャロは怯える心を制してフリードにブーストをかけ、威力を上げた火球をケルベロスに浴びせる。
ケルベロスは凍気により作られた氷の鎧を削られるが、それはこの悪魔の怒りを呼び起こすだけに終わる。
「舐めるなっ飛竜! 人間の隷下風情があああっ!!!」
ケルベロスは今までとは比べ物にならない全力の凍気を発してフリードの火球を振り払い、氷の鎧を再形成、さらに驚くべき跳躍で体当たりをフリードに当てその身体を弾き飛ばす。
「さて人間。次は貴様の番だ…痛みも無く一瞬で噛み殺してくれる」
「あ…あああ」
キャロは目の前でフリードを吹き飛ばされ、獄犬の牙をその口腔から漂う冷気を頬に感じるほどの近さで見て、絶望にその小さな身体を震わせた。
思い起こされるのは、仲間の下を去った師の一人、そして彼が訓練で見せた技。
「バージルさん。ちょっと聞いて良いですか?」
それはフォワードメンバーがバージルとの模擬戦を終えたある時、エリオは汗を拭いながら彼に質問を投げかけた。
「何だモンディアル」
「バージルさんがさっき使った空間転移の魔法なんですけど…何か発動の前に痺れみたいなものを感じたんです…」
「それは空間が人為的に裂かれる瞬間の電磁的な波だろう…しかしそんなものを感じるとは随分と電磁的な感覚が優れているのだな」
「まあ数少ない取り柄ですから…」
「謙遜するな。その年でそれだけの勘の良さ。間違いなく一流の素質だ」
「その…ありがとうございます!」
やっぱいきなりルー呼ばわりは違和感ありすぎだぜ支援
彼に褒められた数少ない記憶、それが今エリオ・モンディアルの脳裏を駆ける。
エリオとゲリュオンの戦いは魔界馬の優勢に進んでいた、空間転移に加えて時間加速を駆使した超高速での矢の射出の連撃に体を刻まれ、エリオは致命的な一撃こそ受けていないが大量の出血に意識を一瞬奪われる。
(…いけない。今少し意識が飛んでた…でも今のはこの前のバージルさんとした模擬戦の夢?)
その時、先ほどの白昼夢と同じ感覚がエリオの身体を駆けた、エリオはその痺れる電気的な感覚に従い身体を少し傾ける。
空間を裂いて突っ込んだゲリュオンの体当たりが、紙一重でエリオの横を通り過ぎる。
(そうか…これだったんだ)
また空間を切り裂いて姿を消した魔界馬を見ながらエリオは突破口を見出す、そして腕をだらりと下げストラーダの構えを解いた…構え無き構え“無行の位”である。
(どこから来るか分からない相手に構えは愚策…思い出せあの感覚を。考えるんじゃない感じるんだ!)
そして空気を走る電流のような刺激を、鋭敏化したエリオの電気的感覚が捕らえた瞬間、最大出力のスラスター噴射による刺突技スピーアアングリフが、空間を裂いて現れたゲリュオンの脳天を貫いた。
「ふうっ…危なかった…」
エリオは魔界の戦馬を倒して闘技場に下り立つ、そんな彼に時を加速させる悪魔の魂が“新たなる使い手”の力の波動に引き寄せられていた。
思い出されたのは彼の記憶、部隊を去った孤高の剣士の教え。
「バージルさん…あの…」
訓練の模擬戦が終わり部隊の皆が食堂で昼食をしていた時、キャロは口ごもりながらバージルに声をかけた。
「何だルシエ」
「バージルさんは恐いって感じたりしないんですよね…その…戦ってる時とか」
未だに模擬戦でバージルの圧倒的な攻撃力に恐怖を感じて身体のすくむキャロはバージルに思わずそんな事を聞いた。
「ルシエ。まだ戦いは恐ろしいか?」
「……はい」
「俺もだ」
「えっ? そんな…バージルさんは凄く強いじゃないですか!」
「覚えておけルシエ。恐怖を感じることは必要だ。確かに過度の恐怖は毒だが恐怖が無ければそれは慢心と驕りを生む」
「…必要なんですか?」
「せいぜい恐怖に呑まれぬように心がける事だ…そうだな絶対にこれより恐ろしいモノはないというものを考えろ」
「“恐ろしいモノ”?」
「ああ。しかしあまり気にするな。後方支援のお前にはまだ早い心構えだ」
そう言ってバージルはキャロの頭を軽くポンポンと手で叩いた、キャロは子ども扱いされた事とバージルの大きく温かい手の感触に顔を赤くする。
「あんまり子ども扱いしないで下さい…」
「そうか。では今度の模擬戦でもう少し“大人扱い”してやろう」
「うう…それだけは止めてください」
それは恐怖に打ち勝つ教え、恐ろしくも強くそして優しい師の言葉。
「…くない」
目の前の巨大な地獄の番犬の牙に震えていたキャロが突然、小さく口を開く。
「何か言ったか人間? 恐怖で気がふれたか?」
その小さな言葉に眉を歪めて言葉を放つ獄犬にキャロは顔を上げ涙を浮かべた目で睨み付けた。
「バージルさんに比べたらあなたなんか恐くないっ!! 恐いけど恐くなんか絶対にないっ!!!!」
空気エリオ活躍支援
それは地獄の番犬を怯ませるほどの気迫、キャロは目の前の牙に向けて至近距離から射撃魔法“ウイングシュート”を叩き込んだ。
「があっ!!」
至近距離からの攻撃に口内を焼かれたケルベロスがよろめく、その時、吹き飛ばされ瓦礫の中に身体を埋めていた白銀の飛竜がその姿を見せた。
「行っけえええっ! フリードッ!!!」
フリードはケルベロスに巨大な火球を浴びせ、同時に蹴り倒しながらその三つ首の一つに噛み付き深く牙を突きたてた、耳を覆いたくなるような獣犬の咆哮と絶叫が無人の市街地に木霊する。
しかし体格的に有利なケルベロスは単純な膂力でフリードを捻じ伏せ今度は逆にその凍れる牙をフリードの首に突き立てる、フリードに噛み付かれた首は今にも千切れそうだが獄犬の牙もまた深くフリードの首を抉っていた。
「残念だったな! 若き飛竜よ貴様がもっと成長していればもう少しやれたのだがなっ!!」
フリードは牙こそ離さなかったものの噛み付かれた首から夥しい血飛沫を上げる、ケルベロスが残った一つの首で勝利を確信した声を上げるその刹那、小さな影が高速で近づいた。
「ケリュケイオン! 自己ブーストフルパワーで行くよっ!」
<ok boost up!>
キャロのデバイス、ケリュケイオンが電子音で応えて自己ブーストを行使、キャロの身体能力と瞬間発揮魔力を限界を遥に超えた域に引き上げる。
そしてキャロは自分の腕を、先ほどまでフリードに言葉を吐いていた口の中に突き入れた、鋭い牙の並ぶ獣の口腔に無理矢理に突っ込んだ為に幼い腕がずたずたに裂かれる。
「つうっ! ウイングシュート!!!!」
キャロは腕を裂かれる痛みに涙を流しながらも、最大出力のブーストをかけた射撃魔法を獄犬の口内に直接発射した。
ゼロ距離で放たれたその威力は使ったキャロ自身も後方へ吹き飛ばす程であったが、見事にケルベロスの上顎から上を微塵にした。
「ぐおおおおっ!!!」
首の一つを飛ばされたケルベロスが衝撃に思わずフリードの首に噛み付いていた牙を離した、そして主人の覇気に呼応するかのようにフリードも最後の気力を振り絞り自身の牙に力を込める。
そして地獄の番犬はもう二つ目の首を噛み切られ、断末魔のような雄たけびと共によろめき後方へと下がる。
「ぐううっ!! まさかこんな人間の子供と若い飛竜に首を二つも落とされるとはな…しかし貴様らも満身創痍! これならば首一つで十分よ」
喉を噛み抉られたフリードの横で、切り裂かれた腕の傷を押さえるキャロは自身の勝利を吼える獄犬がその言葉を吐き終わらぬうちに魔法を行使した。
「我が求めるは、戒める物、捕らえる物。言の葉に応えよ鋼鉄の縛鎖。錬鉄召喚、アルケミックチェーン!!!」
魔法陣と共に魔力で強化された鎖が出現しケルベロスの身体に絡みつき、その巨体の動きを封じた。
「むう! 我が動きを封じる気か? しかしこの程度の鎖など直ぐに引き千切ってくれる」
「その前にあなたの負けです。シューティング・レイ!」
キャロは吼えるケルベロスに静かに答え、何を考えたのかケルベロスの上方に射撃魔法を発射した。
「何をしている人間よ我の首はここだぞ?」
「今の私にもフリードにもあなたを倒す威力の魔法は使えません…でも」
その時ケルベロスの頭上に大きな影が現れる、それは魔獣同士の戦いの衝撃に不安定となっていた市街地にあった大きな看板、その軌道は丁度ケルベロスの首を真一文字に切断するような形で落ちてきた。
「何だとおおおお!!!!!」
それはケルベロスが後方へと下がった時に気づいた地の利、利用可能な設置済みの罠。
「重さ1トン以上の鉄塊ならできます」
キャロの言葉と共にケルベロスの最後の首が、さながら古き刑罰のように跳ね飛ばされた。
「魔獣のあなたに人の法は関係ないけれど。判決は断頭刑(ギロチン)でしたね」
こうしてか弱き少女は圧倒的な力を持つ悪魔に勝った、勝利の鍵は恐怖を感じながらも呑まれなかった強き心と強運だった。
その言葉を言い終えるとキャロはその場に倒れこんだ、腕の傷からあまりにも血を流しすぎたのだ、幼い顔は死人のように青ざめていた。
「ごめんねフリード…こんな形で死なせちゃって…でも私も一緒だから…」
抉られた首の傷からの出血に、自分と同じように血の気の無くなった飛竜を撫でながらキャロはその短い生涯を終えようとしていた…しかしそこに魔獣の声が響く。
ルシエと呼ぶのは珍しい支援
「人間よ!! この地獄の番犬を倒しておいて簡単に死ぬつもりか!?」
それは先ほど落とされたケルベロスの首が最後の力で吼えたものだった、その言葉と共に氷結の凍気がキャロへと集まる。
「それは一体…どうしたのキャロ」
封鎖された空間から帰還を果たしたエリオが見たのは見慣れた飛竜の見慣れぬ姿。
「えっと…まあ色々とあって…エリオ君も凄い魔力だけど何かあったの?」
「まあ色々とね。ちょっと時間を加速できるようになったりとか…」
魔獣の魔力により蘇生した少女が跨るのは生まれ変わった飛竜、丸太のように太い前足に元の首の両脇に犬のような二つの新しい首を生やした三つ首の竜、氷結の獄犬の力を得た“氷竜フリードリッヒ”
そしてそんな彼女の下に現れたのは時を加速する魔界の戦馬の力を得た若き槍騎士エリオ・モンディアル。
「とりあえず早く行こうか。みんなが待ってる」
「うん」
今、幼い少年と少女は強大なる悪魔の力を調伏した。
続く。
思えばアースラって結局何のために出てきたんだろうか支援
投下終了、フォワード対悪魔の第一弾でした、しかしなんかキャロが勇ましい…バージル兄さんの訓練を受けていればロリキャラがこうなるのも道理ってことで勘弁してください。
ケルベロスと合体したフリードは怪獣のデスギドラをイメージしました、四足獣のキングギドラって感じで。
次回はティアナとスバル編を予定してます、ボス級悪魔やらノーヴェを出したいです。
しかし妄想電波で始めたこのSSも二桁ですか…
>>97 >氷竜フリードリッヒ
ば…化け物ー!?(ガビーン)
しかしまた凄まじい姿ですな…GJ!
GJ!
バージル兄さんの影響力は凄いぜ!指導力もあるぜ!
エリキャロの成長も納得だぜ!
そしてなんだかフリードが悪の怪獣チックになったぜ!
しかし今の二人が自然保護やってる姿は想像できねーw上もそういう仕事には回しそうにないwww
兄さんの帰還が待ち遠しいぜ!
GJ!っす
帰ってきた兄さんのツンデレ具合にwktk。
GJ!
上級悪魔達はダンテに食われた連中多くね?
同種の存在なのだろうか?そんなにいるとも思えないけど
兄貴は今頃、弟とリターンマッチやってるか
あまりのダメニートぶりにブチキレて首根っこ掴んで引きずってるかのどちらかだろうかw
実力ではどっこいどっこいのはずなのに、弟の社会適応性のなさは異常
>>101 本編内での時間は3→1→2だったからあんま問題ない
ゲリュオンは兎も角、ケルベロスはテメンニグルの門に封じられたたった一匹だろうがぁァァァァァ!!
と、思ったけど面白いから不問!! マジにGJです。
調子こいた禿神父やスカはどんな末路を辿るのか?兄貴の帰還が待ち望まれます。
>>101 週休6日主義は姐さんも真っ青なニートぶりだしな。
金遣いは荒いし、折角買ったモノもぶち壊すし。事務所のヴィンテージ物のジュークボックスは二回破壊してるし、1冒頭で犠牲になったテーブルはコクタン製の特注品、コートもブーツも特注品。
働かねぇのにどうやったら金が出てくるんだ?クレジットも審査段階ではねられりだろ。
うはあっ! やっぱり突っ込まれました…とりあえずボス級悪魔はドクターの超技術でなんとかしたって事でマジ勘弁してくださいませ。
>>103 つ悪魔退治で荒稼ぎ
本当にどうしようも無いレベルの悪魔ならそれこそ億単位で報酬あってもいいと思うんだ
うはあっ! やっぱり突っ込まれました…とりあえずボス級悪魔はドクターの超技術でなんとかしたって事でマジ勘弁してくださいませ。
それとドクターとフェイトの戦いはあんまり書く気がないです、あくまでも主役はバージル・シグナム・フォワード・ヴィヴィオ・はやて の順ですから。
>>102 上級悪魔はワンオフな連中が多い気がするけどな
それに時間軸の問題でもなくね?ファントムですら成体への成長に千年単位の時間が必要なのに数年ではどうにもならんw
まあ、面白かったからいいけど
>>104 さすがにねえよw
たまには金になる仕事もしてるのでは?
アニメだとノーマネーフィニッシュが多すぎて、EDが毎回反省会扱いされてたけどw
>>105 >>107 落ち着け
書き手がドッペルゲンガーになってどうするw
GJ!!つーか六課メンバーが悪魔の力を手にしちゃったよw
フリードは某有名怪獣化だし、何でもござれだなw
思ったんだが、悪魔の能力や武器ってスパーダの血を引くあの二人だからこそ使えるのであって、普通の人間が手にしたら瘴気にやられたり憑りつかれたりするんじゃないかな?
>>109 バージル兄さんの血を輸血しちゃいましょうよ!
>>109 勝負して勝って、力を貸してくれてるって形だから通常使用は魔力があればおkじゃね?
まぁ、流石にフリードがテビルトリガー引くのはヤバそうだが。
試験一週間前のパソコン自主規制期間に入る前にになんとか投下しておきたいんで
投下いいですか?
全力で支援いたします、どうぞ投下して下さい。
なのはStrikerS-NEXT7話「猛攻の雅人」
「やっぱこっち側の町は賑やかでいいな…。」
菊池啓太郎、神咲薫、ヴァイス・グランセニック。そして半強制的に随伴させられていた
ドゥーエの四人は草加の思惑など知る由も無く
草加達が居た場所からほど近い市場の裏路地を歩いていた。
「へー…じゃあヴァイスさんはあの事件がミッドチルダで起こった時
オーリスさんをずっと守っていたんだ。凄いなあ!」
「勇敢な方なのですね…。」
「いや〜。そんな大したもんじゃないすよ。」
啓太郎と神咲薫の持つ霊剣に宿る霊魂「十六夜」。
いちいち行動と言動に天然ぽい
雰囲気が漂う二人にヴァイスはいささか照れ気味に応対していた。
「下らない…。」
対照的に少し遅れて歩いているドゥーエはあからさまに不愉快な表情をしていた。
彼女としては覚醒の時が近いスカリエッティのクローンに
ずっと付き添っていたかったのである。もっともクローンが収まるポッドを
置いてある部屋はそうそう見つからないだろうしポッドは完全に自動で
動いているので付きっ切りになる必要は別に無いのだが彼女としてはどうしても付き添っていたかったのだ。
(その欲求が戦闘機人として作られた彼女にはおよそ似つかわしくない母性という
感情によるものだという事を彼女は知らないしそうと知ってもクアットロが
北條透に抱いていた感情を認めたがらないのと同じように頑として認めはしないだろうが。)
「フン。もうちょっと愛想よく出来ないもんかねえ。まあ言うだけ無駄スかねえ。兵器なんだし…」
チラりと振り返ると眉間に皺を寄せて嫌味を言うヴァイス。
「愛想よく…。それは例えば…。」
「ヴァイス君!」
なにやら呟き始めたドゥーエとヴァイスをたしなめる薫。
「こんな風にですか?」
…振り向いたドゥーエの顔は…。
これでもかというほどに無垢をアピールしつつ光る瞳。柊つかさを思わせるやさしそうなタレ目。
管理局三脳の傍に仕えていたころの「アイディアル・サーフェイス」モードのものと化していた。
「うおっ…。」
「どうしました?こういうのがお望みなんでしょう?」
その表情を全く崩さぬまま相手を握りつぶすような口調ですごむドゥーエ。
「チッ…食えねえ女だぜ全く。」
「別に食べられたく無いですし。そもそもあなたにはオーリスさんが居るでしょうに…。
ずうっとお守りしていたということは夜の間も一緒に居たという事でしょう?若い男女が二人っきりでしかも
女のコの方は不安に駆られしまっている訳ですから…きっと一晩中賑やかだったんでしょうねえ。
据え膳食わぬは男の恥って諺もありますしねえ…(はあと)」
眉を吊り上げて呟くヴァイスをドゥーエがさらに刺激した。
「おい!そいつぁどういう意味だッ!」
「言葉通りの意味ですが。唾が飛ぶんであんまり怒鳴らないで下さいよ。」
食って掛かるヴァイスをあくまでも静かに、しかし相手の神経を最大限に逆なでする口調で煽るドゥーエ。
クアットロをあの性格に育て上げたのは彼女であるからこの辺の煽り方の上手さはまさに折り紙つきであった。
「ふざけんな!言うに事欠いて人を盛りが付いた犬みたいに言いやがって!言っていい事と悪い事が…」
「あ、あの…喧嘩はよくないんじゃないかな…。」
いよいよいきりたつヴァイス。啓太郎が弱々しくなだめようとするが全く聞き入れようとしない。
「二人ともその辺にしときんね!こんな下らない事で喧嘩って年でもなかでしょうが!。」
見かねて薫が二人を一喝した。十七年前にさざなみ寮に居た頃すでに強豪で
知られる風芽丘学園の剣道部で恐れられており、
かつさざなみ寮でお目付け役として羽目を外したがる
仁村真雪に睨みを聞かしており、剣の腕ではあの高町恭也と互角な程であり、なにより退魔を生業とする
神咲一灯流の跡継ぎを十数年勤めていたという経歴が醸し出す
言い知れぬ迫力を持つ彼女にこう出られてはヴァイスもドゥーエも黙らざるを得なかった。
憮然とした顔で歩き出す二人。
そして少し歩いた頃。
「あ。あれってオーリスさんじゃないですか?」
啓太郎が声を挙げた。確かに薄幸そうでかつ儚げな雰囲気すら漂わせている女性が市場の外れを歩いているのが見える。
件のオーリス・ゲイズに間違い無いだろう。電信柱の影から様子を伺う四人。その時!
「……♪。」
「うわっ!」
突然ドゥーエがヴァイスを影から押し出した。
「…な、何をやっているのですか?こんなところで…。」
「え…。ああ、いや…。ちょっと近くまで来たんでその…そちらこそ何を?…。」
突然現われたヴァイスに怪訝そうな顔をするオーリス。しばらく話をすると二人は別の方向へ歩いていった。
「さて、これで五月蝿いのがいなくなったし、放っといてさっさと帰りましょう。」
一刻も早くポッドのお守りに戻りたいドゥーエが啓太郎と薫を急かしたその時!
「すいません。菊池啓太郎さんとはあなたの事ですね?これを木場勇治さんに渡して頂きたいのですが。」
スマートブレインの社員である!
「はい、そうですけど…。ってあの…これって一体なんなんですか…?あれ、いないや…。」
彼は啓太郎にメモリーカードを押し付けると足早に立ち去った。
「よし。用は済んだ。さっきの奴が戻ってくる前にさっさと失せるとするか…。む?待てよ…。
奴らと一緒に居たあの女の顔は見覚えがあるぞ。」
逃走に転じようとした社員だったがふと彼らの中の一人の顔が見覚えのあるものだと言う事に気が付いたのだ。
懐に入っていたPDAでリストを攫って見ると確かにリストに載っていたではないか。
「さっきの人一体何だったんだろうね?」
「なにやら…かなりお急ぎのようでしたが…。」
メモリーデバイスを弄ぶ啓太郎と刀身に収まったまま不思議そうに言う十六夜。
その時である!
「………!!」
「殺気っ!」
「へっくしっ!」
まず一番先に危険を察したドゥーエがピアッシングネイルを展開して身構える。次に薫が十六夜を抜刀。
啓太郎は武器を構える代わりに大きなくしゃみを一つした。
「オ…オルフェノクだーーー!」
スカラベオルフェノクが現われた。右手にはサーベルのかわりに先ほどのカイザの戦いで使う暇の無かったGM01改が握られている。
ドウッ!ドウッ!ドウッ!
一発で鉄球を粉砕する弾丸をフルオートで撃ち出すGM01改の容赦ない射撃が啓太郎達に襲いかかった!
「くっ…。」
いち早く建物の影に隠れたドゥーエと啓太郎を背後に庇いながら薫が歯噛みした。
彼女の十六夜にしろドゥーエのピアッシングネイルにしろ近接戦闘用の武器なのだ。
といって格闘戦を仕掛けるべく無理やり懐に潜り込もうとしても使徒再生の触手で
攻撃されればその時点でお終いである。
これではとても太刀打ちできない。
「薫!啓太郎様とドゥーエ様を連れて早く!」
その時…刀身から飛び出した十六夜がスカラベオルフェノクの上半身に抱きつき、視界を奪った!
「くう!なんだお前は!離れろ!」
振り払おうとするスカラベオルフェノク。だが実体を持たない霊体である十六夜を振り払おうというのは
例えれば煙を相手にするようなものだ。
「逃げろったって十六夜さんを置いて逃げられる訳無いよ!」
啓太郎が悲鳴を挙げたその時である!
「く、草加さん?」
間隙を縫って黄色い閃光がスカラベオルフェノクに突き刺さった。
何処からか現われたカイザが放ったフォンブラスターの弾丸だ。
まるでガンマンの如く左手にフォンブラスター、右手にカイザブレイガンを構えたカイザは情け容赦なく十六夜もろとも
スカラベオルフェノクを撃ちまくった。放たれた弾は実体の無い十六夜を貫通して悉くスカラベオルフェノクに命中する。
十六夜の顔が苦痛にゆがんだ。霊体であり、既に肉体を持たない彼女ではあったが
といって全く感覚が無いという訳でも無いのだ。
「あ、アンタは…一体何がやりたいんだよォ!」
GM01改を投げ捨てるとカイザに殴りかかるスカラベオルフェノク。カイザは落ち着き払っブレイガンとフォンブラスターを
腰の専用ラックとベルトに戻すとデジカメ型ツール…カイザショットに
ミッションメモリーを装填し、グランインパクトの態勢に入った。
「ふん!」
「ぐわああああああ!」
身体を沈ませてスカラベオルフェノクの乾坤一擲の一撃をかわし、返す刀で放たれたグランインパクトは見事に命中。
スカラベオルフェノクは爆発音と断末魔の悲鳴とともに爆発四散。破片が青白い炎とともに勢いよく燃え上がった。
ライダーキック支援
「…とりあえず聞いとくけど…大丈夫かなあ君たち?」
「しっかりしんね十六夜…。くっ…。」
ぐったりする十六夜を抱き起こすと穴が開きそうな程鋭い視線で変身を解いた草加を睨みつける薫。
彼女にとって十六夜とは二十年近く家族として、また相棒として暮らしをともにしてきた家族以上の存在である。
こんな仕打ちをされれば怒るのも無理は無いだろう。
「そう睨まないで欲しいもんだね。どうせ弾が当たったところでどうなる訳でも無いんだろう。違うのかい?」
だが当の草加は悪びれる事もなく、むしろ微笑みすら浮かべて言った。
「あっ…あんたって人はぁ!」
「止めてください薫!私は…大丈夫ですから…。」
「フン…滑稽だなあ。持ち主よりも刀の方が物分りがいいじゃないか。」
今にも草加に掴みかかる勢いの薫を制止する十六夜。
草加はそんな二人を鼻で笑うとオートクルーズで走り寄ってきたサイドバッシャーに誇った。
「………。君の…その考え方は…いつか必ず君自身を滅ぼすよ!」
「忠告は有難く受け取っておくさ…。だが真理を手に入れるまで俺は死なない!絶対にな!」
そうだ。自分は真理を手に入れるまで死ぬ訳には行かない。
心の中で自分にそう言い聞かせると
草加は走り去って行った
sien
ここまでで。
急いで書き上げたせいもあるんだろうがやっぱりところどころがいつもにまして稚拙だなあ…orz
でもしかし今日を逃せば書き込み&投下は再来週の月曜日までお預けな訳で…。
とらハキャラの薫&十六夜と草加の絡みについては結構よく書けたと思いますが
そもそもとらハキャラなんか知らない人も居るだろうって訳で…
http://www.remus.dti.ne.jp/~tak-chan/traha/TraJ.html ↑参照のこと。
十六夜さんと薫はとらハの中でも人気キャラだし出来れば興味だけでも持ってもらえるととらハスキーとしては有難いなあ…。
なお人間解放軍に参加しているキャラクターには吸血鬼だったりこの十六夜のように
霊剣だったりする人たちが一杯居ますが基本的にそういった秘密は全メンバーで共有されてるという設定です。
(草加が十六夜の事を知っているのもこのせい。)
Strikers May Cry支援! 今回は兄貴出てこなかったけど、回想で貴重なデレが出たからエリオによしキャロによし俺によし。
前話をゲーム画面風に補完です。シグナム姉さんはエロカッコいいw
http://kjm.kir.jp/pc/?p=48670.jpg 描いてて思いましたが、兄貴はたじろがないよね。失敗。ただキレるだけです(ぉ
バージル兄貴の帰還を正座で待ちながら支援し続けます。
>なの魂
果てしなく遅いけど、前スレGJでした!
銀さんとなのはの馴れ初めがたまらなくニヤニヤ。だから、戦いに疲れた戦士と可憐な少女の組み合わせは好物だっつーの!
一連のシーンを是非とも描き起こしたいですが、銀魂の絵柄ってシンプルでいて難しい(汗
DODに覚悟のススメ、応援したい作品は山ほどあります。腕があと二本は要りますね…
>なのはStrikerS-NEXT
なんという草加。こいつは間違いなく外道。
TV版では視聴者の子供達の精神状態が心配になるほどのムカつきぶりでしたが、こいつは間違いなくそれが正確に反映されてますねw
まあ、目に見えるほどの死亡フラグ掴んでますが、それが達成されるまでにどんな風に事態をかき回すのか…おなか痛くなってきた(汗
124 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/06(木) 01:10:29 ID:1Yyiz5ap
>なの魂
私も果てしなく遅いですが、>122の方を見習ってGJ!!
銀さんつえーな、おい。そしてなのはがどう立ち直るのか、楽しみです。
125 :
マスカレード:2007/12/06(木) 04:41:14 ID:MbI3Irzt
GJです
毎度ながら草加がいい味出してます!
ではスクリームさんの仮面ライダーファイズに続いて、仮面ライダーカブト投下します
126 :
マスカレード:2007/12/06(木) 04:50:10 ID:MbI3Irzt
加賀美が変身したガタックは、重量感のある銀のアーマーに包まれており、両肩にはガタックバルカンが備わっている。
このガタックバルカン、イオンビーム光弾を毎分5000発連射できるほか、高エネルギーを圧縮させ、プラズマ火球弾を放つ事も可能。
1km圏内のあらゆる物質を高温と超高圧で消滅させてしまうという恐ろしい威力の武器だ。
そして、ガタックバルカンはガタック・マスクドフォームの主力武器でもある。
「行くぞ、ワーム共!」
ガタックは大声でそう叫ぶと、両手を構え、力一杯踏ん張った。
次の瞬間、両肩に装備されたガタックバルカンからは、超高熱の火球が放たれた!
1発撃つ度にガタックの体に衝撃が伝わり、その砲撃は着弾する度にワームをまとめて焼いてゆく。
爆発する範囲も凄まじく、着弾した箇所の周囲にいるワームをも巻き込んでいる。
これがZECTが開発したマスクドライダーシステムの力。そしてその中でも戦いの神と呼ばれたライダーの力だ。
ガタックがバルカンからのプラズマ火球を連射している間にも、加賀美のゼクトルーパー部隊はマシンガンを放ち続ける。
闘神を部隊長とするガタック隊の猛攻撃には、アーミーサリスが何匹徒党を組もうが意味は無い。
ワーム群はこれ以上一歩も前には出られずに、どんどんと緑の炎に消えて行った。
ガタック隊のすぐ背後には、彼らが乗ってきたトレーラーと、それらを指揮するワゴン車が停車している。
「相変わらず……凄いな、加賀美の部隊は」
「うん、流石戦いの神……ってところかな。あの数のワームをああも簡単に倒していくなんて」
ワゴン車の中のモニターには、一方的にワームを駆逐してゆくガタック隊と、爆発してゆくワームの映像が映し出されていた。
二人がガタックの戦闘を眺めていると、指揮車に乗っていた『田所修一』がフェイトの隣で言った。
「当然だ。マスクドライダーシステムはワームを倒す為に開発されたシステムだからな。
元々お前達は対ワーム戦に特化している訳では無い。気にするな」
「はい……ありがとうございます」
「それにガタックの能力は全マスクドライダーの中でもトップクラスだ。勝てる奴の方が珍しいさ」
フェイト達魔導師組をフォローする田所。そんな田所に、今度はシグナムが田所に向き直った。
「ところで、田所さん……」
「何だ?」
「そのガタックはカブトを元に造られたシステムとお聞きしました。」
「ああ、その通りだ。故にカブトもまた、ガタックと同等の能力を持っている筈だ」
「しかし、そのカブトはまだ資格者が発見されていない……」
「…………その通りだ」
シグナムに問われた田所は、少し間を開けてから残念そうに肯定し、頷いた。
マスクドライダーシステムは、初めに試作型の第0号が開発された。
そしてそれを元に記念すべき第1号−カブト−が開発され、続いてザビー・ドレイク・サソードと開発されていった。
やがて第4号−サソード−までの開発に成功した時点で、マスクドライダーシステムは次なるステージへと突入。
それが5号ライダー−ガタック−の誕生である。
最強のライダーを目指して開発されたガタックは、カブトのスペックを元にしながらも、武装面ではかなりのレベルアップが施されている。
127 :
マスカレード:2007/12/06(木) 04:55:29 ID:MbI3Irzt
それ故にガタックは戦いの神と呼ばれ、事実上ZECTライダーの中でも最強の部類に入っている。
それはシグナムやフェイトを含めた八神班の一同が理解している−と言っても、秘密主義のZECTの事だ。この話もどこまで本当かは解らないが−事だ。
ガタックでこれだけの能力を持っているのだ。カブトはどんなものなのかと、想像は絶えない。
「そのカブトが誕生すれば、この戦いも少しは有利になるんでしょうか……」
「ああ、カブトがZECTかネオゼクト……そのどちらに与するかによるがな」
ワーム群は、連射するガタックバルカンと、ゼクトルーパーによる援護射撃により、残り数十匹となっていた。
「このまま一気に決めるぞ!」
ガタックは手を挙げ、ゼクトルーパー部隊による射撃を止めさせると、ガタックバックルのゼクターホーンを指で弾いた。
同時にガタックの上半身を包んだマスクドアーマー−強化チェスト−が、ゆっくりと体から離れてゆく。
そして強化チェストの離反に合わせて、両肩のガタックバルカン、両腕のマニピュレーターアームも体から浮かび上がってゆく。
「キャストオフ!」
『Cast off!!』
次にゼクターホーンを一気に押し倒すと、浮かび上がった全てのマスクドアーマーは一気に弾け飛んだ。
そのアーマーの下に隠れていたのは、蒼き体。胸の装甲−ガタックブレスト−に備わっていた『ガタックホーン』がゆっくりと起動する。
やがてガタックホーンがガタックのボーンシェルメットに装着され、ガタックの二つの目は赤く光輝いた。
『Change Stagbeetle!!』
蒼きメタリックブルーの体は太陽光を反射し、赤い瞳−コンパウンドアイ−はワーム群を見据えた。
この姿こそ仮面ライダーガタックのもう一つの姿。『仮面ライダーガタック・ライダーフォーム』だ。
ガタックは両肩に装備された双剣、『ガタックダブルカリバー』を取り外し、ワームに向かって走り出した。
「うおりゃあああああああッ!!!」
ガタックは右剣−プラスカリバー−と左剣−マイナスカリバー−で、交互にワームを切り裂いてゆく。
ダブルカリバーは、ジョウントにより無尽蔵にチャージされるプラズマエネルギーにより、並の刃物とは桁違いの切れ味を誇っている。
つまり、このワーム達はかなり高圧にチャージアップされたプラズマにより、一太刀で体を裂断されているのだ。
ガタックはアーミーサリスの大きな上半身をカリバーで切り付けては、次のワームを切り付ける動作を繰り返す。
その動きは、まるでダンスでも踊っているかのようだ。
回転しながら華麗にワーム群を爆発させてゆき、ガタックにより壊滅状態に陥ったサリスも、残り2匹となった。
「ハァーーーーッ!!」
くるりと一回転したガタックはプラス・マイナスカリバーの二刀流でサリスの体を引き裂いた。
そしてガタックは、流れる様な無駄の無い動きで、ダブルカリバーのカリバーフルカムを合体させる。
「こいつで最後だ!」
『Rider Cutting!!』
最後のサリスを、ガタックは合体させたダブルカリバーで挟み込んだ!
これがガタックの必殺技『ライダーカッティング』だ。
無尽蔵のプラズマエネルギーをプラス・マイナスカリバーに流し込み、刃先より生じる
イオンエネルギーにより30m圏内のあらゆる物体を裂断するという、これまた恐ろしい技だ。
128 :
マスカレード:2007/12/06(木) 04:59:41 ID:MbI3Irzt
全身にイオンエネルギーを流し込まれ、そのまま挟み切られたサリスは、見事に爆発。
ガタックの通った道筋は、緑の炎により燃え上がっていた。
「……終わったか」
呟くガタック。そのボディには、傷一つ付いていない。これだけいた敵の攻撃を、唯の一度も受けていないのだ。
例えサリスが攻撃を仕掛けて来たとしても、全てダブルカリバーによる攻撃で回避するか、受け流している。
やがて、ガタックゼクターはガタックのライダーベルトから離脱。そのまま彼方へと飛び去って行った。
「さて……と。みんな、帰るぞ」
加賀美は背伸びをしながら、ゼクトルーパー部隊に言った。その姿に、さっきまでの様な緊張感は無い。いつも通りの、加賀美新だ。
加賀美は、ガタックマークが施されたマントを靡かせながら、ワゴン車に向かって歩き出した。
「凄い……凄い! これが最強のライダーの力……!」
一方で、モニターを見ていたフェイトはガタックの勇姿に感動していた。
映像を見る限りでは、大量にいたワーム達が、蒼い流星の如きガタックに瞬く間に切り裂かれていったのだ。
それも流れる様な、全く無駄の無い動きで。
「ああ、流石ガタックだな」
シグナムもフェイトと同じ様にガタックを褒める。あくまでガタックを褒めているのであって、加賀美を褒めている訳では無いというのが重要なポイントだ。
そもそも、純粋に剣術だけで競えば、間違いなく加賀美よりもシグナムの方が勝っているのだ。
「いや……だがお前達も、ガタックには敵わないまでも、かなりの実力だ」
「田所さん……」
「なんせ、特別に対ワーム装備を持っている訳でも無いのに、たった二人で俺達が来るまで粘ったんだからな」
田所に褒められたフェイト達の表情も、自然に笑顔へと変わっていた。
「いえ……私達はただ、町の人々を守りたかっただけですから……」
「その通りです。それに、もし後少しでもガタック隊の到着が遅れていれば、我らもどうなっていたか解りません」
「そんな謙遜をするな。お前達の実力は本物だ……!」
「「……ありがとうございます……!」」
励ます田所。そんな田所に対し、二人の口からは自然と感謝の言葉が零れていた。
田所が相手なら、シグナムもフェイトも、自然と敬語になってしまうのだ。
特にシグナムは、主であるはやて以外に敬語で話す事は滅多に無いというのに、田所には頭が上がらない。
シグナムだけでは無い。田所が相手ならば誰もが敬語で話す。この男にはそれだけの人望があるのだ。
あの戦闘部隊長の大和や、ZECTのエリートである矢車でさえも田所相手には敬語で話すという。
「さて……もうすぐ加賀美が帰ってくる。良ければ出迎えてやってくれ」
「はい……!」
フェイトとシグナムは、席を立ち、ワゴン車を降りた。
129 :
マスカレード:2007/12/06(木) 05:04:36 ID:MbI3Irzt
「加賀美! 久しぶりだね……!」
「フェイト……!」
フェイトはゼクトルーパー部隊を収容するトレーラーを見守っていた加賀美に駆け寄った。
「相変わらず強いね、ガタックは……!」
「ああ、当たり前……ってちょっと待てフェイト。強いのはガタックじゃない、この俺だ!」
「あはは……どっちでもいいよ、とにかく強いんだから……!」
「……なんか上手く誤魔化された気がするけど……まぁいいか。そういえばシグナムは……?」
フェイトの周囲を見回す加賀美。すると、ワゴン車の方向からシグナムが歩いて来るのが見える。
ちなみにシグナムは戦闘時以外は、管理局にいた頃の武装隊甲冑のアンダースーツを身に纏っている。
シグナム曰く、「ZECTの制服は動き辛くていかん」らしい。確かに、スーツにマントというスタイルはかなり動き辛そうだ。
シグナムは、ゆっくりと加賀美に歩み寄った。
「私ならここだ」
「シグナムも、久しぶりだな」
「ああ……ガタックも、しばらく見ない内にさらに強くなったな」
シグナムに褒められた加賀美は、喜びそうになるが、ここで自分は一言も褒められていない事に気付く。
「……お前らの言葉、なんか引っ掛かるんだよな……
何度も言うけど、強いのはガタックじゃなくて俺だ……!」
「言われなくても解っている。加賀美もさらに馴染んでるじゃないか。ライダーシステムに」
「え? あ、ああ……解ってるならいいんだ! まぁな!」
加賀美は少しでもクールに見せようと胸を張るが、内心では「よっしゃ! やっぱ俺、強ぇっ!!」等と考えているのがバレバレだ。
「そういえば加賀美……!」
「ん……何だ? フェイト」
「ひよりさんにはもうプロポーズしたの……?」
「な……プ、ププププロポーズ……!?」
ニコニコと微笑むフェイト。加賀美の顔は一気に赤くなり、その表情にも恥ずかしさと焦りが感じられる。
「その様子では、まだの様だな……」
「わ、悪いのかよ!?」
「ううん、全然。こういうのは自分のペースが1番……だと思うからね……」
「そうだな……と言っても、私はひよりさんとはあまり面識は無いから、ろくなアドバイスは出来んがな」
加賀美には、意中の相手がいる。それはかなり前から周知の事実であり、もちろんフェイト達も知っている。
「加賀美は真っすぐで何でも一生懸命だし、きっとその気持ちだけは解ってくれるよ……!」
「……なんかお前……俺がフラれる前提で話してないか……?」
「え……そ、そんなこと無いよ……?」
加賀美の視線から目を反らすフェイト。別にそんな嫌味を言ったつもりは無いのだが、心のどこかで「加賀美はフラれる」というイメージがあったのは確かだ。
「……まぁいいか。俺がここまで強くなれたのも、ひよりのおかげだからな……」
「加賀美……」
130 :
マスカレード:2007/12/06(木) 05:14:55 ID:MbI3Irzt
「もしひよりがいなかったら、俺はここまで強くはなれなかった……
ひよりがいるから、俺は強くなれるんだ。今までも、これからも……」
加賀美の言葉に、フェイトもシグナムも自然と微笑ましい表情になる。
「愛の力……か」
「加賀美……本当に好きなんだね、ひよりさんのこと……」
「まぁな……」
加賀美は少し照れながら、空を見上げた。
確かに、ガタックの力は日に日に増している。強くなるために一生懸命努力を重ねているのは勿論の事、加賀美にはもう一つ強くなれる理由がある。
それは、護りたい者がいるという事だ。
ひよりを護る為に。いや……ひよりを含めた全ての人々の命を護りたい。その為にガタックは強くなり続けるのだ。
一方はやては、八神班のミーティングルームから、モニター越しに『クロノ・ハラオウン』と通信していた。
彼はフェイトの義理の兄であり、現在は時空管理局で提督としての仕事を任されている。
「済まないな……出来ればこちらからも武装局員を送ってやりたいんだが、こっちも色々と取り込んでるんだ……」
「そんなん気にせんでええよ……それに、武装局員が来た所でZECTに取り込まれるだけやろうし……」
「そうか……本当に済まないと思ってる。君達の世界を任せっぱなしにして、僕達だけミッドに帰ってしまったからな……」
「ううん、クロノ君達は自分のせなあかんことをしてるだけやろ? 気にせんでええって」
微笑むはやてに、モニター越しのクロノは申し訳なさそうに苦笑いした。
まぁ「自分達の世界の問題は自分達で解決する」と言ってしまえばそれまでだが……。
「だが、そっちの世界にはなのはやフェイト、はやて達3人と、ヴォルケンの4人で7人しかいないだろ。流石に戦力的に辛くはないか?」
「ちょっと待って下さい! それだけじゃありません! 私もいますっ!」
クロノの言葉に、自分がカウントされていない事に気付いたリインフォースUが飛び出した。
はやてはそんなリインを見て苦笑しながらも、話を続ける。
「現状のZECTでも、良くしてくれる人はたくさんおる。だから心配はいらんねんけど……」
「矢車さんとか〜田所さんとか〜カガミンとかですね♪」
はやての周囲をくるくると飛びまわるリイン。
「クロノ君も知っての通り、この世界ではZECTとネオゼクトの争いが続いとる……
積極的にネオゼクトとの戦闘に参加せぇへん私らは、味方のはずのZECTからも煙たがられてる……
ましてやフェイトちゃんやシグナムも今はおらへん。そうなってくると確かに戦力的に辛いとこもある……かもしれへん」
「……はやては、ネオゼクトをどう思うんだ……?」
クロノの問い掛けに数秒間黙ったはやては、ゆっくりと喋り出した。
「……あの人ら、ネオゼクトは自由の為とか言って好き勝手な事をやっとる……そんなんは絶対にアカン事やと思う……
でも私は……世界の全てを管理して、気にいらん物はすぐ排除しようとするZECTが正しいとも思えへん」
「……なら、どうするんだ……?」
「でも、それでも……今の私らはZECTでやって行くしかない。それで、出来る事なら、ZECTを内側から変えて行くしか無い……」
「そうか……そうだな……」
真剣な表情で話すはやて。クロノも黙って話を聞いていた。
131 :
マスカレード:2007/12/06(木) 05:24:35 ID:MbI3Irzt
「で、あの刀どうすんだよ、なのは……?」
「取りあえず……しばらくは私達が持っておく……のかな?」
ZECT本部の廊下を歩くなのはとヴィータ。もちろんあの刀とは、サソードヤイバーの事だ。
「そっか……まぁ、はやてが決める事だしな」
「うん……でも多分、ZECTにはシグナムさん以上の剣使いはいない……
サソードヤイバーがシグナムさんの手に渡るのも、時間の問題かもね……」
声のトーンを落とすなのは。
二人がそんな話をしながら歩いていると、前方から二人の男が歩いて来る。
一人は左肩にスズメバチのゼクトロゴが施されたマントを纏った男……『矢車想』。
もう一人は、ゼクトルーパー姿だが、一応矢車の部隊の副隊長を勤めている。名前は『影山瞬』だ。
なのは達が立ち止まると、合わせて矢車達も立ち止まった。
「おう、矢車じゃねーか」
「ねぇ、ヴィータ……お前達の部隊に、マスクドライダーが配備されたらしいな」
「流石矢車さん……情報が早いね」
矢車は、左手に右の肘を付け、右手を顔の近くでうねらせながら言った。戦闘時以外は、ほぼ常にこの動きだ。
一方の影山は矢車の影に隠れながら、一言も喋る事無くなのは達を睨んでいる。
「誰が装着するのかは知らないが、組織の調和は乱さないようにな……」
「……ああ、解ってるよ」
「お前達が加わる事で、我々ZECTの戦力は更にアップするだろう。
これこそが、完全作戦……パーフェクトミッションだ……」
「フフ」と笑いながら言う矢車。どうやら、矢車は八神班に期待しているらしい。
「ったく……お前って本当パーフェクトミッションって言葉好きだよな」
「貴様、矢車さんのパーフェクトミッションを馬鹿にする気か!?」
つい余計な一言を口走ってしまったヴィータ。それに対し、突然大声を出した影山。矢車は目を閉じたまま、片手で影山を制する。
「落ち着け、影山。彼女はそんなつもりで言ったんじゃない……そうだろう、ヴィータ?」
「あ、ああ……そんなに怒んなよ……」
「チッ……口の聞き方には、気をつけろ……!」
一歩下がりながらも、ヴィータを睨む影山。ヴィータも勢いで少しばかりしゅんとしている。
「ごめんね、ヴィータ。影山も悪い奴じゃ無いんだ。それだけは解ってくれ」
「お、おう……」
それだけ言うと、矢車と影山は立ち去って行った。影山は終止ヴィータとなのはを睨んでいたが。
「矢車さん、完全に私たちがライダーになる前提で話してるね……」
「ああ……あいつはいい奴なんだけど、ZECT至上主義だからな……」
ヴィータからすれば、矢車は色々と企んでいる節もあるが、基本的に部下思いないい奴という印象だ。
実際、八神班にも良く接してくれている。
「でも、おかげで部下からの人望も凄いんだよね……さっきも、影山さんだっけ?」
「あれはちょっとびっくりしたな……いや、勘違いすんなよな? 別にビビった訳じゃねぇからな?」
「う、うん……わかってるよ」
「あはは……」と苦笑するなのは。聞かれてもいない事を自分から口にする時点で怪しい物だが。
矢車には凄まじいまでの人望があるが故に、その部下達もまた矢車にどこまでも付いていく覚悟でいるのだ。
「矢車さん……か……」
なのはは、矢車が立ち去った後の廊下を見つめ、呟いた。
132 :
マスカレード:2007/12/06(木) 05:28:50 ID:MbI3Irzt
終了です
サブタイトルは「戦いの神」って所ですかね
なんかグダグダですがこれで次回を矢車話に繋げれます
サソードとカブトの行方にも注目してもらえると嬉しいかもです
GJですマスカレード氏、しかしまたしても神が素晴らしい絵をお描きになりましたね…もう嬉しすぎて死にそうです。
酷いな。なんで今日はこんなにスレ止まってんだよ
誰ひとり感想書くことなく次の職人の投下を待つつもりか
寝不足が祟ってぶっ倒れちゃったよorz
>>134 夕べからクロス・ウロス共に過疎でしたね。
みんなどうしちゃったんだろう…
>>132 GJ!
仮面ライダーは龍騎で投げた自分が憎い…次回のキバからは見てみようかな、と思う今日この頃。
GJ。加賀美…。ここでもこの扱いか…。
みなさん乙です。
……すいません、ここ数年映画館に行ってないので内容はなんとも。
ただ、ヴァイスの額(と、オーリス&ドゥーエの手首)に緑色のバンダナが見えました。
結局前スレでは投下も感想もできなかったorz
インフルエンザで欠勤したおかげで?ようやく感想を。
>>スーパーロボット大戦X氏
熱い戦闘楽しみにしてます。でも今回だけでも場面が頻繁に切り替わるので、
一つの場面を濃くしてほしいです。
>>魔装機神氏
GJ!何度も読み返してようやく声優ネタが解ったw
チンク姉も、むきになるフェイトとシグナムにもニヤニヤしました。
>>Strikers May Cry氏
GJ!エリオもキャロも成長したなぁ。とても格好良かったです。
氷竜フリードリッヒ、とんでもない姿だ……。
>>なのはStrikerS-NEXT氏
GJ!草加はやっぱり草加ですね。そういうところが面白いキャラです。
>>マスカレード氏
GJ!サソード然り、映画に出ない要素がどんな影響を及ぼすのか楽しみです。
そしてカブトはどう動くんでしょうか。
139 :
19:2007/12/06(木) 18:36:02 ID:7ru+ypq0
職人の皆様GJです!!
やっと巻き添え規制から解除された!!つーか長かった
今年で二回だった三回だったか。もう勘弁してほしいよ。
まぁ愚痴はこの辺にして、続き投下しようと思うんですけどいいですか?
早く読みたいですね、支援砲火の心構えです。
141 :
19:2007/12/06(木) 18:46:17 ID:7ru+ypq0
では、投下します
「や、二人とも。」
「あ、悟飯君。」
「悟飯。」
なのはとフェイトは時空管理局の制服を着ている
はやてもだけど仮配属期間っていうのが終わって正式に時空管理局に入局したようだ
「二人とも制服似合ってるよ。」
「えへへ、ありがとう。」
「ありがとう。そういえば悟飯は胴着なんだね。」
「うん。俺は民間協力者って立場なんだよね。服装とかに制限は無いみたいなんだけど
一番動きやすい格好でって言われたからね。俺にとってはこれが一番だしね。」
ちなみに俺はこっちでは基本的にみんなと一緒に仕事などをしている
後はここのトレーニング室を使わせてもらって修行とか模疑戦とか
そんなにはないけど凶悪犯罪者もしくはその集団などの逮捕っていうのもある
複数のロストロギアで完全武装していて、並大抵の者では敵わないそうだ
その時は時空管理局から正式に解決依頼が来たりする
まぁ、はやて達も一緒に来たりすることもあるんだけどね
「はーい、こっちもできましたー。」
声のした方を見ると
制服を着たはやてとマリーさんがいた
「似合ってるよ、はやて。」
「えへへ、ありがとな。」
はやては特別捜査官
なのはは戦技教導隊
フェイトは執務官
っていうのを目指してる
この三人なら大丈夫だろ
「でもフェイトちゃんアースラ勤務になれてよかったですね。」
「そーだね。艦長はなのはちゃんも欲しかったみたいなんだけど。」
そういえば、フェイトはリンディさんの養子なったんだっけ
あの時のフェイトはホントに嬉しそうだったな
142 :
19:2007/12/06(木) 18:48:13 ID:7ru+ypq0
「さすがにAAA級三人は保持させてもらえないって。」
「なるほどー。」
組織って大変だな
ここ以外じゃフリーザ軍ぐらいしかしらないけど…
ベジータさんが言うには階級などは完全に戦闘力順だって話だ
こことは違うみたいだ
「おかーさんとおにーちゃんといっしょでよかったな。フェイトちゃん。」
「うん。」
「私も基本的にうちの子達といっしょやしね。管理局は人情人事してくれるんやねー。
まぁ、私等の場合はレティ提督が六人まとめて高ランク戦力をゲットしよって計算が
あるかもしれんへんけど。」
「「あー、その計算は間違いなくある。」」
「ついでに言えばレティ提督、悟飯を局員にするために事あるごとに勧誘してるんよね。」
「うん。俺に会えば必ず『時空管理局に入局しない?かなりの高待遇で迎え入れるわよ。』
って言ってくるからなぁ。ほかにもここのパンフレットとか送ってくるし。」
「まぁ、悟飯君の戦闘能力見たら仕方が無いとは思うけどね。」
「そんなことになってたんだ。悟飯。」
「大変だね、悟飯君。でも悟飯君はどうするの?」
「まぁ可能性の一つとしてあるかもね。仮にそうなるとしても
平和を取り戻してからだな。」
元居た世界に戻り平和を取り戻す
これが今の俺の目的であり目標だ
民間協力者として時空管理局に協力するか局員になるか
それを決めるのはそれからだ
「そっか…。悟飯君なら必ず平和を取り戻せるよ。」
「ありがとう、なのは。」
「そういえば悟飯の居た世界の手がかりとか見つかったの?」
「こっちも必死になって探してるんだけど全然見つからないのよ。ゴメンね、悟飯君。」
「あ、いえ、探してくれてるだけで十分ですよ。みんなが忙しいのはわかってますし。」
こればっかりは焦ってもどうにもならない
みんなを信じて待つしかない
143 :
19:2007/12/06(木) 18:50:28 ID:7ru+ypq0
「主はやてこちらでしたか。」
「はやて。」
「みんな。」
いつのまにかシグナムさん達が来ていた
「あれ?シャマルさん以外の三人の制服って武装隊甲冑のアンダースーツですか?」
「ああ。局の女子制服は窮屈でな。」
「こっちの方が馴染むんだよ。」
「それにこちらの方が動きやすいしな。」
「シャマルさんは制服ですねー。」
「医療白衣もセットですよ。」
「シャマルさんは医者の方も兼ねてるんですよね。」
「ええ。何かあったらすぐに私に言ってね。」
「あ、そうそう。はやてちゃんのデバイス、シュベルトクロイツUのバージョン8が届いてるよ。」
「ほんまですか?」
はやてのデバイスは夜天の書とリインフォースさんのデバイスと同型のを使ってる
みんなの使うデバイスの中でそれが一番相性がよかったらしい
まぁ、そのデバイスははやての能力に耐え切れずに何度も改修をしてるんだけどね
ちなみに夜天の書の蒐集行使って言うのははやてにしか使えない
これはレアスキルっていうものらしい
後、物は試しとうことで何でか俺に夜天の書を使わせようとしたことがあった
勿論何の反応も示さなかった
当然といえば当然だけどね
「なのはちゃん、レイジングハートの補強終わったって。」
「あ、じゃ取りにいきまーす。」
なのはの方を見てみるとヴィータの髪で遊んでいた
「私も行くね。シュベルトクロイツUを受け取ってくるね。」
「はい。」
「マリーさん、おーきにですー。」
なのはとマリーさんはデバイスを受け取りに行った
144 :
19:2007/12/06(木) 18:52:26 ID:7ru+ypq0
「あー、やっと開放された…。」
「はは、お疲れ。」
「まったく、人の髪で遊びやがって…。」
「まぁまぁ、なのはちゃんも悪気があったやないんやし。」
すごく楽しんでるみたいだったんだけどね
「悪気があったら許さねーっての。」
「はは。そういえばなのはってデバイス取りにいったみたいだけどフェイトの方はどうなの?」
「私のバルディッシュザンバーの方は昨日辺りに調整が終わったんだ。」
「そうなんだ。みんなのも昨日辺りだったよね?」
「ああ。」
「そーいや悟飯ってアタシ等みたいに何か持って戦ったりしねーのか?」
「俺?そーだな…昔は剣とか使ってたな。後は昔お父さんから棒術を教わったこともあったな。」
「ほぉ、剣を使ってたのか。」
「と言っても俺はシグナムさんみたいにはできませんけどね。」
「どういう経緯で使うことになったん?」
「荒野に置き去りにされた時にね。」
「「「「「「「へ?」」」」」」
「あー、説明がたりてなかったか。俺が四歳ぐらいのとき俺の居た世界の地球にとんでもなく
強い奴が悪さしにやってくることがわかってね。俺の師匠であるピッコロさんが俺を鍛える
ためにね。」
「それとおまえを荒野に置き去りにするのどういった関係があるんだ?」
「あの時の俺は自分で言うのも何ですけどどうしようも無い程の泣き虫で甘ったれでしてね。」
「そんな頃があったんか…。今の悟飯を見てると想像できへんな。」
「そう?まぁその時に俺の中にはかなりの力が眠っていて俺が力を使えるかどうかで地球の運命が
決まるって言われてね。たださっきも言ったようにあの頃の俺はどうしようもないほどの泣き虫で
甘ったれでね。まずはそれを直せってことで『半年間この荒野で一人で生き残ってみせろ!!』
って言われて置き去りにされたんだ。で、一日たって起きたら胴着着て剣を背負ってたんだ。
まぁ、剣と胴着は多分ピッコロさんが俺にくれたんだろうけど。」
145 :
19:2007/12/06(木) 18:54:43 ID:7ru+ypq0
「その後どうなったん?」
「そのまま生活してたさ。食べ物は木の実とか俺を食べようとしてきた肉食恐竜を気絶させて
その恐竜の尻尾を剣で斬ってその肉を食べてたな。半年経ったらピッコロさんが帰ってきてくれて
それからの五ヶ月は食事と睡眠以外はずっとピッコロさんと修行してたな。」
懐かしいな………
あの半年間で泣き虫は直ったってピッコロさんに褒められたっけか
視線を感じて周りを見てみたらみんなが俺の方を見ていた
「あれ?どうしたの?」
「…悟飯の強さの秘密が少しはわかった気がする。」
みんなもうんうんと頷いていた
「だけど悟飯君、つらくなかったの?」
「たしかに悲しい想いやつらい想いはしました。」
仲良くなった草食恐竜を守れなかったこと
ロボットさんを俺の弱さのせいで死なせてしまったこと
…あの頃からだったな
俺が自分の意思で強さを求めるようになったの
「だけど、あの頃があったから今の俺がいる。あの時ピッコロさんに連れ出されなければ
俺はずっと泣き虫で甘ったれのまま育っていったと思う。だから俺はピッコロさんには凄く
感謝してるんですよ。俺を鍛えてくれたことに。」
「…孫。」
「はい?」
「いい師を持ったのだな。」
「はい!!」
「話は変わるが、ついさっき思い出したことなんだが…。」
「何をです?」
「テスタロッサ、デバイスの慣らしはもうすんだのか?」
「いえ、まだですけど…。」
「全力で慣らしをしたとは思わないか?」
「…いいですね。」
…この雰囲気は
ピッコロさん……支援
147 :
19:2007/12/06(木) 18:56:40 ID:7ru+ypq0
「レヴァンティンも中身はだいぶ新式だ。
怪我をさせないよう気をつけるからな。テスタロッサ。」
「おかまいなく。バルディッシュザンバーも元気いっぱいですから。」
やっぱりこうなった…
「え?あれれ?どーゆー状況?」
なのはが戻ってきたようだ
ユーノもいるみたいだ
「なのはちゃん。ユーノ君。デバイスの慣らしということで模擬戦をすることになったの。」
「なるほど。」
「うちのリーダーもテスタロッサも、まったくあきれたバトルマニアだ。」
「フェイトちゃんも嫌いじゃないから…。」
「なのはちゃんもエクセリオン戻ってきてるんやろ。参加するかー?」
「ええ!?」
「そうだね。なのはとヴィータも一緒にどう?」
「べ、別に私じゃなくても…。あ!!悟飯君はどう?」
「別に参加してもいいけど今回はデバイスの慣らしってことでもあるんだろ?
だったら俺よりもなのはの方がいいんじゃないか?」
「アタシはパス。無駄な戦いは腹が減るだけだしな。」
「何だ、つまらん。このレベルの団体戦ができる機会は貴重なんだがな。」
「あはは、それは勤務訓練の時にでもー。」
「なのはってシグナムさんとやるの苦手なんだよね。」
「やりづらいタイプってのもあるけど、シグナムさんのは訓練じゃなくて殆ど真剣勝負だから…。」
「なのはは接近戦苦手だもんな。俺と戦った時もあまり反応できてなかったし。」
「悟飯の攻撃ははなのはの防御を簡単に貫けるよね。」
「一応あれからは回避術や杖を使った攻撃方法も色々考えているんだよ。」
「ヴィータもまざらない?」
「くどいぞテスタロッサ。アタシははやてのため以外で無駄に戦う気はねー。
お前等みたいなバトルマニアと一緒にすんな。」
「あー、ひどーい。」
「と言って主や孫の前で敗北するのが嫌なだけだったりはしないか?」
148 :
19:2007/12/06(木) 18:58:29 ID:7ru+ypq0
あ、ヴィータから何かが切れる音がした
「なんだとテメェェ!!!!」
「私に!?」
何でかヴィータはなのはに掴みかかっていった
「いいぞこの野郎!!上等だ!!やったろうじゃねえか!!準備しろなのは!!」
「ええええ!?」
「悟飯!!」
「はい!?」
「アタシの勝つところよっく見とけ!!」
「あ、ああ。」
「私等もやろかー。」
「やりましょーか。」
はやてとシャマルさんも参加するようだ
「リインフォースはどないする?」
「そうですね…向こうはあの三人のほかにクロノ執務官とアルフが来ると思われるので
私よりザフィーラの方が適任かと。」
「なるほど。ならさっそくザフィーラに連絡入れへんと。リインフォースは今回は見学って
ことでええの?」
「はい。それで構いません。」
「でもそれだけやとあれやし………あ!!」
「えー今回の集団戦はベルカ式騎士対ミッド式魔導師の五対五のチーム戦です。」
何故か俺とリインフォースさんは審判をやることになっていた
………リインフォースさんは兎も角、俺は状況に流されたっぽいな
「ルールは局の戦闘訓練準拠。攻撃は非殺傷設定。武器を持ってる人は相手のバリアジャケットを
抜かないように注意すること。」
「こちらで危険と判断した場合は私か悟飯が止めに入るのでそのことも頭に入れておいてくれ。」
「両チームのリーダーははやてとクロノ。作戦会議が終わったら始めてください。」
俺がそう言った後すぐに作戦会議を始めやようだ
…ヴィータにシグナムさんにフェイトは完全に火が点いてるな
周りに触発しそうだ
無事に終わるかなぁ…
149 :
19:2007/12/06(木) 19:01:00 ID:7ru+ypq0
両チームとも作戦会議は終わったようだ
あれ?何か全員に火が点いたような…
「管理局指揮官三名とその使い魔二名!!高度な連携戦を教えに行くぞ!!」
「おー!!」
「ちょ!!クロノまた!!」
「よっしゃ!!!魔導師のみんなに騎士の戦闘を見せたろ!!」
「おう!!」
という訳で模擬戦が始まった
最初は乗り気じゃなかった人もノリノリで戦ってるな
「…いいものだな。」
「何がですか?」
「みな楽しそうにしている。」
「そうですね。」
「主はやても騎士達も楽しそうにしている。」
話してる途中に流れ弾が何発か飛んで来たのでそれらを弾き飛ばす
「はやて達がああいう風にできているのもリインフォースさんがいるからですよ。」
「そうなのか?」
「ええ。もしあの時リインフォースさんが死んでいれば表面上は兎も角心の中じゃずっと自分を
責め続けてたと思いますよ。自分自身の力の無さを。」
「悟飯…。」
「そうすることに意味なんてないのにしてしまうんですよ。どうしても。だから
リインフォースさんが生きいて本当によかった。俺の様な想いをしなくて…。」
「…悟飯。」
「ああ、すみません。気にしないでください。」
「…悟飯。」
「はい?」
「おまえには守れなったものがあったのかもしれない。だが守れたものもあったのだろう?」
「ええ、まぁ。」
「私もおまえに命を助けられた。そしておまえに命を助けられた人々も大勢いるはずだ。
私はそのことをおまえに感謝している。そしてお前に命を助けられた人々も
おまえに感謝しているはずだ。そのことは忘れるな。」
…そうだったな
たしかに守れなかったものはたくさんある
けど、守れたものもあったんだよな
「リインフォースさん…。」
「それに私が言うのも何だが、過去を忘れろとは言わない。だが、あまり過去に囚われすぎるなよ。」
「…リインフォースさん。」
「ん?」
「ありがとうございました。」
「ああ、どういたしまして。」
そういえばリインがいるんだった支援
151 :
19:2007/12/06(木) 19:02:34 ID:7ru+ypq0
突如訓練室が揺れ始めた
「な、何だ?」
「フィールド形成!!発動完了!!お待たせしました!!おっきいのいきます!!」
見るとなのはとフェイトがかなりの大技の発動準備に入っていた
「N&F中距離殲滅コンビネーション!!」
「空間攻撃ブラストカラミティ!!」
「どっこいこっちも詠唱完了や!!広域攻撃Sランクの意地がある!!」
はやてもか
屋外ならともかく室内でぶつけ合ったら…
「ユーノ。」
「結界展開完了。大丈夫、訓練室は壊れない。」
「悟飯。」
「あれを受け止めればいいのか?」
「ああ。君にしかできないことだ。」
とりあいず射線上に移動してみる
ってもう撃っちゃったみたいだ
少し速度を上げてに三人の攻撃がぶつかり合うであろう場所に移動
両サイドから迫り来る膨大なエネルギーの塊を
両手で受け止める
「え?」
受け止めた瞬間ここに居る全員を巻き込んだ大爆発が起こった
三人の技が未完成だったのかそれとも別の要因があったのか
飛んでた人は全員墜落していった
「アイタタタ…。」
「なのは…顔煤とかで汚れてるよ。」
「ふえ!?ってフェイトちゃんも!!」
「え!?」
「あ、ほんまや。」
「って、はやても!!」
「ほんま!?」
「ホントだ。」
「って悟飯もやないか。」
そう言われて少し顔を手の甲で擦ってみると汚れが付いていた
周りをみるとみんな俺達と同じ状況だった
「「「「ぷっ、あはははは。」」」」
ま、こんな一日もいっか
152 :
19:2007/12/06(木) 19:06:34 ID:7ru+ypq0
投下完了です
今回はこんなんでした
次回ははやての誕生日かな
にしても…もう今年は規制こないよな…
支援どうもでした!!
悟飯くん支援。
>>19氏
GJ!リインがいるといないのとでは、やっぱり違ってきますね。
しかし三人も、訓練室内でそんな大技を使うなとw
GJでした、しかし初代リィンがいるってなんか不思議な感じですね。
>152
乙。
管理局制服の悟飯……にあわねぇ。
GJ!
てか管理局の制服はカッコ良くない。
あの第11話が出来ましたので9時半ごろに投下したいのですが
そのくらいの時間に投下する人はいますか?いませんでしたら投下します。
反応がないようなので大丈夫だと見て投下します。
第11話 砕かれるもの
ゆりかごの玉座の間ではディエチとクアットロが何らかの作業をしていた。
そして玉座に無理やり座らされていたヴィヴィオを見てディエチは自分達の罪の意識を感じ始めていた。
「クアットロ、正直に言っていいか?」
「どうぞ」
「正直この作戦、気が乗らない。こんな小さな女の子を使ってまですることなのか?」
クアットロはディエチの本音を聞いても何も感じてない様子であった。
「ここまでしないといけないなのかな? 技術者の復讐とかそんなのって・・・」
「あー、あれ? あんなの口先三寸ただのでたらめよ」
「!? そうなのか?」
「ドクターの目的は最初っから一つだけ。生命操作技術の完全なる完成、そしてそれが出来る空間作り。
まあ、今回の件で軽く何千かは死ぬでしょうけど些細なことよ。ドクターの研究は皆を幸せに力だもの」
ディエチはスカリエッティの真の目的に驚きそんなものの為に命を弄ぶのかと心の奥底で思ったが気の迷いだと言い、
戦闘準備をして玉座の間に向かってくるなのはとウイングゼロとデスサイズヘルを待ち構えようと移動した。
クアットロは心の中でこんなことを思っていた。
(お馬鹿なディエチちゃん、チンクちゃんやセインちゃんと同じでつまらない子ね)
もしこの言葉をカミーユが聞いていたら確実にクアットロを許さないだろう。
一方Gアイランドにある病院では怪我がほとんど治っていたザフィーラがようやく目を覚ましたヴァイスと一緒に病院に居た。
「ここはどこで俺はどのくらい寝ていた?」
「ここは地球の日本にある病院で六課襲撃から2ヶ月半だ」
「そんなに寝てたのかよ。そういや寝てる間に夢を見てたな、ラグナの夢を・・・」
ラグナとはヴァイスの妹で、かつてヴァイスはとある事件の射撃ミスでラグナの目を撃ってしまい、スナイパーから手を引いていたのだ。
実はヴァイスがミッドチルダの聖王病院で意識が目覚めてなかった頃に一度ラグナはヴァイスの病院を訪れていたのだ。
つまりヴァイスが見たのは夢ではなく現実であった。
「ラグナの目をきちんと見てやれなくて駄目ですね・・・」
ヴァイスが落ち込んだように言うとザフィーラは突然ベットから立ち上がり病室を出ようとする。
「旦那?」
「駄目かどうかはお前が決めることだが、アルト達にお前を診るよう頼まれていたがもうその必要は無いようだな・・・」
そしてザフィーラは病室から立ち去った。
ヴァイスは病室から去るザフィーラを見て自分も何かやらねばと怪我が治りきってもないのにも関わらず起き上がり、
テーブルに置いてあったストームレイダーを見て自分がすることを決めた。
地上でルーテシアとガリューと戦っていたキャロとエリオは何とかルーテシアを説得しようとしていた。
「私、アルザスの竜召喚士、管理局機動六課の魔導師で「シャイニングガーディアンズ」のキャロ・ル・ルシエ」
「同じくエリオ・モンディアルと飛竜フリードリヒ」
「お願いだから名前を教えて。あなたのお母さん探しもレリック探しも手伝ってあげるから・・・。お願い」
するとクアットロから通信が入り、ルーテシアに迷うなと言うがルーテシアはそれでも迷う。
「何だあのメガネ女!? いきなり出てきやがって!」
忍は野生の勘なるものでクアットロが気に入らない存在だと感じた。
クアットロは迷うルーテシアに対して、スカリエッティの仕込んだコンシデレーションコンソールにより強引に指示を出した。
誰の言うことも聞かないようにして、目の前の敵を殺すように指示を出す。
「何しやがった!?あのメガネ女!?」
「まさか、俺がパルパレーパにやられたケミカルボルトのようなものか!?」
凱は自分が三重連太陽系でソール11遊星主に破れ捕まった時、パルパレーパにケミカルボルトと言うものを混入されたのだ。
ケミカルボルトは混入された者の正気を保ったまま肉体を操るもので凱はそれにより同じく三重連太陽系に来た
「シャイニングガーディアンズ」の仲間を攻撃したのだ。
まさにルーテシアが受けたものはそれに近いものであった。
指示を受けたルーテシアが涙ながらに命令。
「こいつら、殺して、殺してーーー!!」
そして、大量の地雷王が姿を現した。
しかし、忍の頭の中には地雷王の事は入っておらず入っているのはクアットロの下劣な行動であった。
「あの、メガネ女ーーーー! こうなったらぶっ飛ばしてやる! 行くぜ皆!」
「忍、落ち着いてよ」
「雅人、こうなった忍は止まらないのあんただってわかってるでしょ? それにあたしもあの女は気に入らないね」
「確かにな・・・。今回は俺も同感だ」
「あの女は命をなんとも思ってない。ならば倒させばならんな」
「沙羅、亮、アランまで・・・。ま、確かに俺もあんな女好きじゃないね。俺も付き合うぜ!」
忍はファイナルダンクーガを全速力でゆりかごへと飛んでいった。
別の所で戦っていた、ドモンはレインやアレンビー、シャッフル同盟のメンバーに突然こう言ってきた。
「すまない、皆。俺もゆりかごの方に言っていいか?」
「兄貴!?」
「どうも嫌な予感がする。それに何かゆりかごの中で熱いファイトがあるかもしれんと俺の心が叫んでいるんだ」
「ドモン・・・」
「だから頼む、行かせてくれ!」
そしたら皆は快くOKしてくれた。
「でもドモン、無理はしないでね」
「ああ、行って来る」
そしてゴッドガンダムは急いでゆりかごへと急いで行った。
地獄島のスカリエッティアジトではフェイト対トーレとセッテの戦いが繰り広げられていた。
フェイトはトーレの攻撃を左手で防御し、攻撃に移ろうとしてもしてもセッテがブーメランブレードでフェイトを攻撃するため、
フェイトは防戦一方であった。フェイトには奥の手があるもののそれを使ったら他の援護にいける可能性がなくなり、
下手をすればスカリエッティに逃げられる可能性があるので使えなかった。
するとスカリエッティがフェイトとエリオに向かって通信を飛ばし、フェイトの前に姿を現した。
フェイトは間合いを取ろう上に飛ぶがスカリエッティの出した赤い糸に足とバルディッシュザンバーを縛られ、
バルディシュザンバーは砕かれ、フェイトは砲撃により落とされ、捕まってしまった。
戻って、地上でギンガと戦っていたスバルはパンチやキックを繰り出すが次々にかわされたり、受け流されたりでダメージを与えることが出来ず、
ギンガは次々にパンチやキックがスバルに当たり、改造された左手のドリルでスバルを押し出し、そして地面へと蹴り落とした。
「「あ、スバルさん!」」
「行くな! 銀河! 北斗!」
「何でだよ!? アルテアさん!」
「これはスバル・ナカジマの戦い。姉を救うにはあの女自身がやらねばならないこと我らがやったところで何の解決にもならん」
「じゃあ、黙って見てろってことかよ!?」
「そういうわけではない。本当に命の危険に晒されたら私が助ける」
アルテアは何とか銀河と北斗を説得させた。
スバルはギンガの容赦ない攻撃に泣き叫んだ。
「ギン姉・・・、ギン姉ーーーーーーーー!!」
Gアイランド上空ではシグナムとゼストの戦いが繰り広げられていた。
「「飛龍一閃」」
シグナムとリインフォースUは同じ行動を取りシグナムの技「飛流一閃」を出すが、
シグナムとリインフォースUは魔力相性が本来正反対の為か威力がそんなにあるわけではなく、ゼストとアギトが繰り出す衝撃波により簡単に相殺されてしまった。
そしてゼストはシグナムに向かって一気にたたみかけ、シグナムを地上に落とした。
一矢はシグナムが落とされたのを見て次は自分がゼストと戦おうとするが、落ちていくシグナムがこう言った。
「一矢、手を出すな! これは私の戦いだ!」
一矢はそう言われてダイモスを止めたが、その隙にゼストはアギトとの融合を解き立ち去ってしまった。
「しまった。すまないシグナム。俺は奴とは戦わないが、後だけは追わせてもらう」
「それは構わん」
一矢は急いでゼストの後を追い、シグナムもリインフォースUのおかげでうまく着地し、ゼストの後を追った。
ゼストはベイタワー基地に向かう中アギトにこう語る。
「あのシグナムとか言う騎士よい騎士だな。お前の理想のロードにピッタリだ。魔力光もお前の色と似ている。
恐らく長い間どこかに眠っていたのだろう」
「何でそんな奴が管理局にいるんだよ!?」
「わからん。だがアギトもし俺が死んだら・・・」
「旦那、縁起の悪いことを言うなよ。旦那はあたしが守るから・・・」
「そうだな」
ゼストは笑いにながらアギトに答えた。
ゆりかご外でははやてや外回りの部隊が敵を迎撃していたが、そこに下からゴッドガンダムが現れた。
「ゴッドガンダム!? ドモンさん!?」
「はやて、すまないが俺も突入させてもらう!」
「えっ、ちょっと、ドモンさん!?」
「超級覇王電影だーーーーーーーーーーん!!」
はやては突然したから来たドモンに驚き、さらには突入すると言ってきたので戸惑った。
そしてドモンははやての返事を待たずに超級覇王電影弾でゆりかごに突入した。
それから30秒後にはファイナルダンクーガまでも下からやって来た。
「はやて、悪いが俺達も行くぜ!」
「駄目や! 忍さん」
「ああ!? 何だでよ!?」
忍はけんか腰ではやてに理由を聞く。
「さっき、なのはちゃん達が入ったし、数秒前にはドモンさんも入ってもうた。それにあのゆりかごの中の大きさじゃファイナルダンクーガは大きすぎて入られへん」
「くそ! あのメガネ女をぶっ飛ばしてやりてえのによ・・・。こうなったらあの機械共を片っ端からぶっ壊してやる!」
忍はゆりかごに入れない苛立ちをガジェットや戦闘獣やハニワ幻人に向けることにした。
ゆりかご内部に戻り、なのはとウイングゼロとデスサイズヘルが玉座の間に急いでいたが大量のガジェットがそれを邪魔する。
「いちいち、相手をしてられない」
「俺に任せろ」
ヒイロはウイングゼロのバスターライフルをガジェットに向けて発射し、次々に撃墜していった。
ウイングゼロのバスターライフルは単発だけでも通常のモビルスーツのビームライフル以上に範囲が広いため、簡単に蹴散らせれるのだ。
ヒイロが何故自分の手でやろうとしたのかと言うと理由があった。それはフェイトからなのはのブラスターモードを出来れば使わせないで欲しいと出撃前に頼まれていたからだ。
ヒイロはなのはの身を案じるフェイトの事を察し「了解した」と言っただけだった。
そして進んでいると、ウイングゼロのゼロシステムにあるものが映し出された。それはディエチがヘビィバレルでこちらを砲撃する映像であった。
ヒイロはその砲撃が来る前にウイングゼロはツインバスターライフルの構えを取った。
「ヒイロさん!?」
「下がっていろ!」
そしてヒイロは有無を言わさずツインバスターライフルを発射させた。ヘビィバレルのチャージ中のディエチは突然の砲撃に驚きチャージの途中にも関わらず砲撃をしたが、
ツインバスターライフルの方が早さも威力も大きさも上だったため、ヘビィバレルは簡単に打ち消されディエチは吹き飛ばされてしまった。
ナンバーズはスカリエッティの改造のため、モビルスーツの攻撃やスーパーロボットのちょっとした攻撃では簡単に死なないように改造されていたため、
ディエチは死なずに済んだが、あまりの威力に体が動かせなくなっていた。
「くっ、何でこちらが砲撃をしようとすることがわかったんだ? あんな遠くから・・・」
そう言ってる間になのは達が近づいて来てなのははディエチとイノーメスカノンにバインドをかけた。
ディエチは近づいてきたウイングゼロを見ていた。
(あのライフルを持つガンダムは以前に見たことがある。確か聖王の器ごとヘリを撃とうとして失敗して逃げようとした時だ。
あの時は威力がよくわからなかったがまさかこんなに威力があるなんて・・・)
ディエチは知らないがウイングゼロのツインバスターライフルは本気を出せば、コロニーさえ破壊できる威力があるのだ。
実はさっきのツインバスターライフルは本気ではなく少々出力を落としていたのだ。
(そして何の躊躇もなく砲撃したあのガンダムのパイロット、本当に人間か?)
ディエチが心の中がそう思っているとなのはが「突入隊が来るまで待ってなさい」と言うがヒイロはある事を言ってきた。
「デュオ、お前はここに残ってこの女を見ていろ」
「え? ちょっと待てヒイロ、何で俺なんだよ!?」
「いくぞ、なのは」
「ええ、わかりました。それじゃあデュオさんお願いします」
「って、ちょっと待てよ!」
デュオは二人を止めようとするがなのはとウイングゼロはさっさと先に進んでしまった。
「だーーーー! 何で俺ばっかりこうなるんだよ!?」
「大変だな、お前も・・・」
「お前に言われたくねえよ!」
デュオは敵であるディエチに慰められてしまった。
投下は以上です。
戦闘面を濃くすると言ってましたが少々できませんでした。
しかし、次回は次回こそは必ず戦闘面を濃くします。
原作第23,24,25話はめちゃくちゃ熱いですからね。
やらないと絶対いけませんね。
以下なにごともなかったかのようにスレ再開
↓ ↓ ↓ ↓
なんとかスパロボXだけをアク禁にする方法は無いものだろうか
NGワード指定って言われそうですね
あー、長期の人大杉を抜けてやっと入れたー。
しかし早々に空気悪げな感触。故に溜ってた単発ネタを一本投下したいズラ。
いい加減終わクロクロスの続きかけー、とか、ゴジラクロスはどうしたー、とか突かれそうな気もするが、タイミング逃し過ぎて早いとこ解消したいんですわい。
投下希望を出しても良いでしょうか?
↑空気を悪くしてる張本人
あー、やぶ蛇だったやも。いちおー支援されたし、投下しますねー?
そこは静寂のみの空間だった。機械のみが駆動音を持って己の躍動を示すが、しかし人とそれが生み出す躍動の無いこの大部屋では、それこそ静寂を掻き立てる意味しか持たない。
そこには人がいた。否、それを人と行って良い者だろうか。歩まず、語らず、思わず、席に座してただ指先と目線を動かして機械達を操作する。それが人たる者の挙動だろうか。
それは青年だった。我等第三者がその挙動を見て人足りえんと感想したのと同様に、その青年もまた自分が人に足るとは思っていなかった。
(――僕は機械だ)
それが青年の自己評価だった。ただ有機物の体を持ったというだけの機械だ、と。
彼に親は無かった。――何故なら彼は試験管より生まれたから。
彼に友は無かった。――何故なら誰も彼と語らわなかったから。
彼に心は無かった。――何故なら誰も育もうとしなかったから。
ただ彼にあるのは、与えられた仕事を完遂せよ、という役目だけだ。
そんな日々がどれだけ続いたのか、青年は知らない。希望も絶望も無く、ただただ仕事をこなす彼に時間感覚など有りはしない。延々と、ただ延々と、青年は計算をこなす。
だがある日、大部屋の扉が開かれた。
(――誰だ?)
扉を開いてやってくるのは、いつも完遂した仕事を受け取る者だけだ。だが今回やってきたのは、どう見ても受取人とは思えない容姿だった。
子供である。それも大きな眼鏡をかけ、脇には大きな本を抱えた、二桁も歳を数えない様な。
「――だれ?」
「ウワ――、すっごい機械だね!」
猛烈に無視された。子供は目を輝かせて大部屋の機械群を眺め、こちらの問い掛けに答えない。
「こーんな沢山の機械に囲まれて、お兄さんは何をしてる人なの?」
「……僕は」
人、と呼ばれたのは始めての事だった。そして、何をしているのか、という質問も。
いつもなら、仕事を、と答える所だ。だが口をついたのは別の言葉。
「――何もしていない人さ」
何故そう答えたのか、
(――仕事もしている。計算もしている。設計もしている)
何故その事実を答えなかったのか、
(――何で僕は正確に答えなかったの?)
青年にとってこれは始めての事だった。自分の挙動が理解出来ないのも、そして、誰かと“話す”という事も。
「ねえ、お兄さん」
子供は抱えていた本を青年に差し出した。灰色の本はどういう原理なのか、そのハードカバーや挟まれたページから煌々と光を放っている。
「…これは?」
「僕の本。僕を王様にしてくれる、パートナーの為の大事な本なんだよ。――そして、本はお兄さんを選んだんだ」
それは青年にとって初体験だった。
「ねえお兄さん、お外に出ようよ。それで僕を王様にしてよ」
そして次に飛び出した言葉が、停滞していた青年の心を揺るがした。
「こんなすごい機械を動かせるのに、何もしてないなんてもったいないよ!」
キッドキター!
(……もったいない)
何かが、青年の心から溢れてきた。
(…もったいない)
それはどうしようもなく熱くて、
(もったいない)
それはどうしようもなくくすぐったくて、
(――もったいない、か!)
そしてどうしようもなく、笑ってしまいたくなる“感情”。
「……ハ、ハハハハハハハハハハハハハハハハ!」
青年は笑った。背を曲げ、口を開き、目尻に涙を浮かばせ、大声で笑った。
どうしようもなく下品で、どうしようもなく馬鹿で、どうしようもなく意味不明な行動。だが同様にそれは――どうしようもなく爽快な姿だった。
「子供よ! 君は名を何と言う!?」
「……キッド、キッドだよ!!」
青年の豹変に、しかし子供は同じ様に楽しげに答えた。
「そうかキッド! よくぞ僕……否、私を見つけ出したな! ――これで君は、確実に王となるだろう!! 私の名前は……」
言った所で青年は考えた。自分にまともな名前は無かったからだ。周囲の存在は自分を“無限の欲望”と呼んだが、今の自分はそれとは別の呼び名が欲しかった。
だから青年は別の名前を口にした。それは思いつきで決めるという、今までやった事も無いバカな行動だった。
「――ジェイル・スカリエッティ!! パートナーを必ず王様にする最高の存在だ!!」
「本当!?」
子供は頬を赤らめて食いつき、
「――ウ・ソ」
壮絶な顔で驚愕した。
CHILDREN MEMORIAL Case キッド
《ゼガルガ!》
スカリエッティの詠唱によってキッドの口から大砲が出現、閃光を放った。
「うわあああああああっ!!」
「ひいいいぃぃぃっ!?」
鋭角な一撃は地を割り、敵対する人間と異形の一組の間を駆け抜けた。交差の瞬間、人間の持っていた本を削り燃やして。
『あ、ああ、あああああああ―――――――』
本の炎上と共に異形の姿が薄らぎ、やがては陽炎か何かの様に消えていく。それと時を同じくして本を燃やされた人間は背を向けて逃げ出していた。
「勝った勝ったー! やったね、ドクター!」
「ハハハ、勿論だとも! ……だが惜しい事をした。私が目からビームを出していればもっと早く決着したのだが……っ!!」
「え!? Dr.目からビームが出るの!?」
「――ウ・ソ」
ガーン、という効果音がつきそうな程キッドは驚愕した。スカリエッティの方はただただ呵々大笑。だが笑ってる場合ではない。地平線の向こうから何台もの小型車が現れたのだ。
車体に“時空管理局”という字が書かれた、パトカーにも似た小型車の群が。
『――次元犯罪者ジェイル・スカリエッティ! 大人しく捕まりなさーい!!』
操縦席の窓から身を出して拡声器越しに叫ぶのは金髪の女性、スカリエッティやキッドとは数年越しの付き合いがある人物だ。
「はっはっは、フェイト執務官のしつこさは折り紙付きだね」
「ホントホントー! きっとヒマなんだねー!」
『貴方達が捕まれば本当に暇になるんですー!!』
そうこう言ってる間に小型車群は迫ってくる。
「おやいけない! 逃げるぞ、キッド!!」
「うん、Dr.!!」
『あ、こら! 待ちなさーい!!』
最早何度目なのか、スカリエッティ達とフェイト達の追い掛け合いが再び始まった。
出会いからどれ程の時間が流れただろうか。
キッドと出会った青年、ジェイル・スカリエッティは大分……、否、かなり変わった。
彼は歩み、笑い、語り、そして……戦う。
自分に心を与えてくれた恩人、キッドの願いを叶える為に。
キッドは未確認の次元世界から、その世界の王候補としてやって来たと言った。その手段は、他の王候補の本を燃やす事だ、と。
スカリエッティにとってそれは容易い事だった。
生まれながらに常人以上の知能を与えられた彼と、魔物が持つ力を合わせれば何だって出来るのだ――。
「な、何だお前は!! 敵か!?」
黒のマントを着込んだ金髪の少年を引き連れ、彼の少年は自宅から飛び出してきた。
事前の調査によってスカリエッティは彼等が何者なのかを知っている。
(天才少年、高嶺清麿。そして赤い本の魔物、ガッシュ・ベルか……)
ガッシュ・ベルの方は魔界では落ちこぼれだったと聞くが、この人間世界での闘いにおいては優秀な戦績をおさめている。実に興味深いコンビだ。
「ふふふ、お初にお目にかかるね、高嶺清麿君とガッシュ・ベル君。私の名はDr.ジェイル・スカリエッティ、何でも知ってる不思議な博士だ! ――勿論、君達の事もよく知っているよ?」
「何だと……?」
清麿は目つきも鋭く戦闘の構えを取る。ガッシュの方も同様だ。
(回転の速い少年達だ。それだけの実戦を超えて来たという事か)
二人は臨戦態勢をとるが、スカリエッティとキッドは至って自然体のままだ。
「ハハハハハ、そう身構えるな清麿君。――戦うのは私ではない!!」
スカリエッティは身を大きく振って背後へと腕を回す。
「君達の相手は我が娘達だ! 我がラボで生まれた不思議集団、マジョスティック・ナンバーズが!!!」
そうして出現するのは12人の少女、いずれもキッドと出会う以前からスカリエッティと共にあった者達だ。
「12人!? だが……普通の人間なら相手もならないぞ!!」
「不思議集団と言っただろう!? この子達は全員がそれぞれ超能力を持ったスーパーガールなのだ!!」
紹介しよう!! というスカリエッティの叫びで少女達が順々に飛び出してくる。
「常に冷静で全体指揮を担当!! コマンダー・ウーノ!!!」
薄紫の長髪をした鋭利な美貌の女性が進み出た。
「変装と隠密ならお手の物!! アサッシン・ドゥーエ!!!」
金髪に妖艶な笑みを浮かべた女性が鋭いかぎ爪を舐めた。
「最大速度はマッハの領域!! グッドスピード・トーレ!!!」
逞しい体つきをした短髪の女性が飛び出した。
「幻影と電子機器の魔術師!! イリュージョン・クアットロ!!!」
白いケープを羽織った眼鏡の女性が微笑む。
「物陰から忍び寄る奇襲の達人!! クノイチ・チンク!!!」
眼帯をした小柄な少女が電柱の上から飛び降りてきた。
「自在に物体をすり抜ける!! ダイバー・セイン!!!」
水色の髪に陽気な笑みの少女が地面から出現した。
「巨大なブーメランで周囲を一掃!! スイング・セッテ!!!」
一対の巨大なブーメランを持つ少女が立ち誇る。
「閃光の渦は全てを葬る!! シャイニング・オットー!!!」
少年の様な姿をした少女が歩き出した。
「鉄拳健脚の格闘家!! ファイター・ノーヴェ!!!」
赤髪の少女が清麿達を睨みつける。
「どんなに遠くても百発百中!! スナイプル・ディエチ!!!」
長髪をリボンで結わえた少女が巨大な砲身を地に下ろす。
「高速飛行で楽々スイスイ!! フライヤー・ウェンディ!!!」
盾に似た巨大な機械を持つ少女が空から舞い降りた。
「く……どいつもこいつも何て力を持ってやがる……!」
清麿が焦りに冷や汗を流した直後、
「末っ子なのにスタイル抜群!! ボイン・ディード!!!」
双剣を持った長髪の少女がおずおずとした様子で出てくる。
清麿の表情は凍り付いている。対照的にスカリエッティは赤らむ程に血行の良い笑みで、
「さあ!! 『この中で仲間はずれは誰』!!!?」
数の子にマジェスティック12かよ!w
支援
―――――クワァァァァァァァッ!!!!!
清麿が一瞬、猛烈な形相を露出し、
「………」
双剣を持つボイン・ディードを見た。
「……………」
双剣を持つボイン・ディードを見た。
「…………………」
“双剣を持つ”ボイン・ディードを見たッ!!
「――A(アンサー).ボイン・ディード」
「正解!!! 流石は世界屈指の天才少年だ!!」
スカリエッティは大いに笑い、マジョスティック・ナンバーズも沸き立つ。
「今日は私の完敗だ! また会おう、清麿君! ガッシュ君! ハハハハハハハハハ!!」
そしてスカリエッティはマジョスティック・ナンバーズを連れて帰っていく。その後ろ姿に清麿は一言。
「――あいつら、またくるのかな……?」
変わったのはジェイル・スカリエッティだけでは無かった。
命令を受けたスカリエッティによって肉体を改造された戦闘機人、ナンバーズ。
不遇の中に生まれ、一生笑みも無く生きていく筈だった少女達。
そんな彼女達もまた、キッドによって笑みと感情を得る事が出来た。
スカリエッティ達にとって、キッドが大きな存在になるのに長い時間は要らなかった――。
「ジェイル・スカリエッティ! ようやく追い詰めましたよ!!」
「……ふ、執念だな、フェイト執務官。よもやこの基地が見つけられるとは思わなかったよ」
「貴方が犠牲にした戦闘機人達も全員捕縛しました! 貴方の野望も……これまでです」
「犠牲、か。……私は無理強して彼女達を戦闘機人にはしていないが」
「それ以外の可能性を教えなかっただけでしょう! 命を弄び、そうじゃなかった筈の未来を改変した貴方は……最悪の犯罪者です!!」
「違う! 違うよ!! Dr.は最悪なんかじゃない!!そんなんじゃないよ! 僕達は好きでDr.と一緒にいるんだ!! 可能性を知らなかったとか、弄ばれたとか……そんなんじゃないよ!!!僕は……僕達は、Dr.が大好きなんだ!!」
「――ありがとう」
捕縛されたスカリエッティやキッド、ナンバーズ。
だが事態は急変する。
「――1000年前の魔物?」
「はい。前回行われた魔物達の闘い、……それに取り残された者達がロードなる魔物に操られて他の魔物達を襲っているんです。このまま収監所にいれば、いずれは貴方とキッド君も……」
「だから私とキッドもロード討伐に協力しろ、と?」
「――そうです」
「時空管理局も随分と狡い事を言う様になったものだ。……良いだろう、だがナンバーズも出してやってくれ。彼女達は優秀だ、私達の補佐になるだろう」
「…解りました」
そうして始まる機動六課とスカリエッティ一派の共同戦線。
突入した遺跡の中、彼等はロードの策略によって分断されてしまう。
スカリエッティとキッド、補佐のセインとディエチが出会ったのはベルギム・E・Oを名乗る魔物。
その余りにも強大な力が猛威を奮い、猛攻の前にスカリエッティが倒れてしまう――
「Dr.!!!」
叫んだのはキッドだったのか、ナンバーズだったのか、はたまた全員だったのか。流血のままに倒れ伏すスカリエッティには解らなかった。
(……うご、かない)
肘一つ、膝一つ、指一つ、何一つとして動かない。
(……ここで、うごけないで、どうする)
攻撃され、倒れ、そのままでいるのか。そうなればナンバーズは、キッドはどうなる。
(私は…………僕は、キッドを王にするんだ)
(――僕の心を救ってくれたキッド)
(――ナンバーズの心を救ってくれたキッド)
(――笑えなかった僕らを、笑わせてくれたキッド)
(――そうとも、僕は最悪の犯罪者だ。人間として生きれた筈の彼女達を、機械に変えてしまった)
(けどキッドはそんな僕を、彼女達を幸せにしてくれたんだ)
(そんなキッドが、もっと多くの人を救える様に――僕は戦わなきゃいけないんだ!!)
《ギガノ・リュウス!!》
ベルギム・E・Oのパートナーが呪文を唱え、攻撃が放たれた。
密度ある巨大な闇の塊、それが一直線にスカリエッティに向かう。
(……立てよ)
―――――――――迫る。
(…立てよ)
――――――迫る。
(立てよ)
―――迫る。
(立てよ!!)
迫る。
(立てよおおおおおおおおおおおッッ!!!)
迫
「いやだDr.!!! ――死んじゃいやだあッ!!!!」
瞬間、キッドがスカリエッティと攻撃の間に割り込んだ。そして、爆発。爆音と威力が叩き付けられる。
(――僕は、どうなったんだ?)
(生きているのか……? 死んでいるのか……?)
(キッドはどこだ? 守らなきゃ……。みんなは、どこに……)
「―――――――!!」
(……叫び? 誰の?)
「これ以上Dr.にひどい事してみろ!! 許さないからな―――――!!!」
(……キッド?)
それはキッドだった。
優しく、純粋で、生意気で、臆病で、いつも怯えてはスカリエッティやナンバーズに抱きついていた筈の、キッドだった。
「二人とも、今だよ!! 奴の本を奪うんだ!!」
「セイン、ディープダイバーで月の石だけでも奪うんだ!!」
「ディエチはその間にヘヴィーバレルの威力を溜めるんだ!!」
(……キッド? 本当にキッドなのか? いつも僕に泣きついていた、キッドなのか……?)
――Dr.、Dr.
(…おかしいな。戦っているキッドの他に、僕の中に直接語りかけてくる声がある……)
――Dr.、今でありがとう。……僕の本、さっきの攻撃で燃え始めちゃったんだ
(キッド、なのか? あそこで戦っているキッドとは別の、……これは、キッドの心の声?)
「やったよキッド! 月の石を取った!!」
「よし、今だディエチ! 砲撃を!!」
「――ヘヴィーバレル、ファイヤッ!!!」
ディエチの砲撃とベルギム・E・Oの最大呪文がぶつかる――
――僕がこんな指示を出せる様になったのも、Dr.のおかげなんだよ?
――ねえ、僕は成長出来たかなぁ……?
――Dr.の様に、賢くて、格好良くて、優しくなれたかなぁ? ……ドクターは、今の僕を見て喜んでくれ
てる? ……僕は、Dr.のようになれた?
――もしそうなら嬉しいな。僕は王様になれたんだ
――いつも遊んでくれたDr.
――いつも笑わせてくれたDr.
――いつも、いつも優しかったDr.
――僕ね、Dr.と一緒にいるだけでいつも楽しかった
――僕の王様はね……ずっと、ずっとずっとDr.だったんだ!!!
――だからDr.。唱えてよ、最後の呪文を
――僕の本、新しい呪文が出たんだ。……きっとこの呪文はDr.達を護ってくれるよ
今までありがとう。……僕の大好きな、Dr.ジェイル・スカリエッティ
《――ミコルオ・マ・ゼガルガ》
放たれた呪文が、敵を最大呪文や本ごと消し去った。
否、消えたのは彼等だけではない。
キッドと、その本も無くなっていた。
「……Dr.、Dr.……っ!」
「…ごめんない、キッドが、キッドがぁ……」
「――解ってる。何も言わなくていい。…………何も」
心の汗でキーボードがorz支援
という感じでガッシュとのクロスを投下してみたのす。
思い起こせば「スカリエッティとナゾナゾ博士とちょっぴり似とるな」というのから始まり、「ナンバーズとマジョスティック12も同数だしなぁ」とか思った末の作成。
アニメ版ではマジに泣いたからなぁ……この話。
……さーて、終わクロクロスとゴジラクロスを完成させねぇとなー。
ガッシュは悪く言えば使い古された、良く言えば王道故に涙腺が刺激されるGJ
でもナンバーズとマジョスティック12を=する発想はなかったわw
個人的に続きが気になるのは後者。ダーク路線も嫌いじゃないww
GJ!!キッド脱落も感動しますが、バリー脱落時のパートナーとの会話もいいものですよ。
>>184 キャンチョメも泣いた。
今週のもかなりきたけど。
>>184 そうですね、バリー脱落の会話も号泣でしたね。
あと自分的にはダニー脱落やザルチム脱落も捨て難い所。あー、バリーとザルチムの脱落、ちゃんとアニメでもやってくれたら最後まで見たのになー。
そういえば、そろそろガッシュも最終回が近そうですね。どんな最後なんだろ。
むしろ復活鬼麿のザケル連打を声と映像つきで見たかったw
アニメでないたのはグレンラガンのカミナの死とガンソードのレイの死だな・・・
ああいったのに弱いんだな之が・・・
ええと、久しぶりですが、真祖の人ですが投下おけ?
真祖ビームッ!!支援
sien
支援
真祖の人です・・・黄色の悪魔の続き投下します、誤字脱字多いかもしれませんが
――――時空管理局本局
「現在、多次元世界で確認されている『レリック』と呼ばれるロストロギアの回収と同時に現れる『ガジェット』
もしくは『ドローン』と呼ばれるUAV(無人兵器)が確認されます。」
本局統幕幹部である斎藤三弥中将はモニターに移る『ガジェット』を指しながら現状を説明する。
「ご存知だと思われますが、このガジェットにはAMFを搭載しており、我々の魔道士も苦戦しており、
ここ最近でも死亡12、負傷30名と甚大な被害を出しており…そこで我々陸戦課として。」
リンディ・ハラオウンはその後の言葉に一瞬顔をしかめる、斎藤中将がいった言葉、
そうそれは『質量兵器』の使用解禁なのだ、クロノからガジェットと交戦するにあたり陸課の部隊が独断で
質量兵器を使用する例が増えてきた報告をリンディは受けてきた、確かに法に違反した隊長達には処分が下される
のだが緊急状況的判断によって重くても減給、謹慎といった極めて軽い処分なのだ。
ではそれらの質量兵器はどこにある?話は簡単だ、時空間に色んな犯罪組織が存在している、それを取り押さえたときには大体質量兵器が存在しておりそれらは
倉庫に乱雑に積み上げられているのだ、それを目につけた隊員が適当な理由をつけて持ち出しているのだ。
「無論何も我々は旧暦時代に使用していた大量破壊兵器などの戦略兵器などの解禁を求めているわけではありません、個人携帯火器
(無論97世界から持ち出され押収したスーツケース核は論外)の使用を許可していただきたい。」
発言を終えると斎藤中将に対し
「あの旧暦の被害を繰り返すのか!」「質量兵器使用絶対反対!」多くの罵声と
「よく言ってくれた!」「その通りだ!賛成!」少数の賛辞の声が飛ぶ、それを見ながら
リンディはさっきから無言のままただ会議を眺めている将官を一瞥する。
(彼は一体何を考えている?)
その将官の名前は宗方怜士中将といった、肩書きはリンディと同じ総務統括官である、
周囲に対して好印象を持たれているリンディと違い、彼女と同じ成果(むしろそれ以上)
を挙げている彼は周囲に対して蛇蠍の如く嫌われていた、典型的な例が彼のあだ名が「蝿の王」と呼ばれることだ、
その名は敵対組織だけではなく管理局そして3提督からも恐れられている。
理由は?彼は物事を解決するときは徹底した合理主義を実践するからだ、在る時は貴重な重武装型時空航行艦に無能な連中と
ほんの少数の有能な人材を乗り込ませ戦訓を得るために囮役を演じさせ見殺しにしたり、またあるときは平然と回収したロストロギアを囮にして敵組織を一網打尽、
そして持っていかれても仕込んだ自爆装置で吹き飛ばしたり、無能なものに対していは例え名家だろうが上官で何であろうが適当なスキャンダルや危険地域飛ばしで潰している、
と色々とある意味黒いつまり、管理局の悪と過言しても言われている。(無能な味方ほど最も恐ろしいという意見もあるし、敵対組織で最も敵に回したくない管理局将官ランク1位だったりもする)
かつてグレアムが闇の書封じの為に作り上げたデュランダルの製作の協力したのは彼なのだ、本来ならそこで首チョンパで管理局法会議なのだがそれは出来ない、理由は簡単だった、
彼は他世界に色々な人脈を作り上げており彼自身も先に述べたド外道行為は滅多にしなし、管理局にとって非常に優秀な人材なのだ(無能だったらとっくの昔に豚箱行き)、おかげで中将のポストについている。
(最も本部や局での評判は最悪だが)だが宗方は何も発言することもなくただ会議を見つめている。
そしてもう一つの議題である八神はやてが唱えている『機動第6課構想』に対しては比較的賛同声が挙がったが…最も特殊部隊、緊急展開部隊構想は元軍人、警察組織出向者達から以前から唱えられていたが
何かの理由で潰されていたのだ(まぁ理由として管理局多数を占める魔法使いによる軍人、警察関連出向者に対する蔑視もある)、結局三提督の反対もあり質量兵器解禁はあくまで禁止、しかし6課成立は承認された、
そうしたまま会議は終了した、そして同じくただこの事件の経過と犯人割り出しに全力を注ぎますと口だけで言った情報局局長のゲーレンは呟いた「とんだ茶番」と。
――――本局一室(BGMは全能なる調停者(スパロボ)で)
「ふむ…やっぱり予想通りに会議は進んだな、とんだ茶番だったな。」
無表情のままで宗方は呟いた。
「予想通りと言いますと?」
肩書きとして一応は彼の部下であるチャールズ・T・ベイツ二佐が恐る恐る問うた、
ベイツは海課に所属していたが、優秀な頭脳を持っている事により(本人は海にいたがったが)
本局に引き抜かれ、何の因果か知らないが宗方の下でじっくり調教…もとい教育中だった。
「ああ、あの老害のことだよ」
悪びれもせずに宗方は言った。
「まさか、その老害って・・・」
副官的立場である情報局隊員である夏目尚康二佐の呟きに宗方はニヤリと笑った。
「ああ、あの3提督といまだ自分たちが導き手だと勘違いしている脳髄だけの連中とその取り巻きだよ。」
その答えにやっぱりという表情をする夏目、それを尻目にベイツはうめいた。
「ああ、安心しておけこの部屋は情報局の連中でしっかりと消毒している」
同じく部下であるカール・ライカー一佐は対した事ないように言う、ライカー自身も指揮する立場として
管理局内で5本の指に入るほど優秀なのだが、無能と判断した上官に対しては侮蔑を隠さない言動や行動をとる為、
上層部の受け(プライドが高いだけ無能な連中)は凄まじく悪く、本来ならクロノ・ハウラオンと同じく
XL級を指揮できるほど優秀なのだが、ある任務においてクロノの副官としてロストロギア回収を巡って、
クロノに対して馬鹿にした態度を取った為に激怒したクロノと衝突した結果、後方で冷や飯を食い続けている。
そして部屋をノックする音がする、斎藤中将直属の部下である佐藤大輔一佐だ、それを待ち望んだ
ように出迎える宗方そして佐藤はソファに腰をおろすと葉巻に火をつけると慇懃無礼に切り出した。
「やはり、あの老害連中とその取り巻きを潰さなければ犠牲は大きくなるだけ、例え6課が成立してもね…
まぁそれを解決する手はずはついてますが」
佐藤はパネルを操作するとある映像を写す、ジェイル・スカエリッティと呼ばれる男の映像と経歴、そして現状についてだった。
「ああ、あの無限の欲望か…」
「どうやらあいつは謀反を企んでいるそうだ、すでに本部に彼の手駒が紛れ込んでいる、それを知らずに本部の馬鹿共はつるんでいる」
「だが、改革の為には丁度いい、実にいい展開だ」
宗方は悪びれもせずに言う。
「頑固な連中を分からせるには血を流す必要がある、下っ端だけではなく、自分自身の…」
「はん、そうだよ…偽善者共は歴史からも現状からも何も学んでいない、ただ過去の成果にしがみついているだけ」
「歴史的必然だよ、まぁ自浄努力って言うものが必要だな」
そして本題に移る
「すでに情報局は3提督派を除いた連中は味方につけている、それに提督派の連中は少数だ」
「ゲーレン(情報局ナンバー1)とシェルドン(情報局ナンバー2)がこちらについたのは大きいな」
「まぁ彼らの尊敬すべき上官であるカナリス(前総局長)が3提督側勢力に逆らって辺境に飛ばされた挙句に死んでしまったからな」
「キーの一つである情報局はすでに味方についた、次は実働部隊だな」
「オメガはいつでも動けるようにしてある、そして軍属、特殊警察部隊出向者の各世界からの引き抜きを始めて、彼らに装備すべき武器の確保も完了しつつある、問題は、そうですな恐らく投入すると予測される遺船…
まぁヴォルケンクラッツァーやヴォルフィードに比べればたいしたことないですがね」
「…ヴォルケンクラッツァーはすでに沈んでいるし、ヴォルフィードの世界はこちらでは手出しできない世界(科学が魔法取り込んだから)だ、
まぁ予測されるベルカの遺船に対する対抗手段、すでに何を使用するかは判明した、対抗する為子飼いの藤井2佐の船(ドレッドノート)は
いつでも動けるようにしている、そして軍事技術が発展した管理外世界からツテを利用して対艦ミサイルなどの購入を急がせている」
「流石は、多数の世界に人脈を作り上げているだけはありますな、後は奴らの出方次第と言うことか」
「ああ、そうだ」
「わかりました、統幕にはそう言っておきます」
「機動6課の連中が彼らに対抗している隙を狙って…」
「最高のタイミングで殴りつける、まぁ酷い話ですよいたいけな少女達が聞いたら何ていうか」
「彼女たちは様々な場所で多くの借りを作った、ならそろそろそれらを取り立てても良い頃だ」
「ふむそうですなでは…では、また」
「ああ、斎藤君はよろしく言っといてくれ」
佐藤は宗方の部屋から出て行った、そしてベイツは思った
(チクショウ、どうやら俺もこの陰謀に買わされる1人になったのか)
それを知ったのかライカーは彼の肩に手を乗せる
(畜生!畜生!畜生!こんなどす黒い陰謀に加担するぐらいなら船に乗りたい)
彼は自分の優秀すぎる頭脳を心から呪った、それを尻目に夏目は繰り出した。
「中将、クラナガンの事ですが…どうやら彼は例の事を掴んだそうです」
「ああ、市川のことか…やめておけ彼に対して下手な真似は避けた方がいい、
でないとこちらが大変な目に会うからな、第一今我々の手もとにある実働部隊は全員彼の教え子だぞ、
沼田はともかく伊達や田宮相手ではどうにもならん」
それに沈黙する夏目、そして宗方は悪魔と契約したような笑みを浮かべ呟いた
「さて、御手並み拝見といきましょうか少女達よ、精々足掻いてくれたまえ」
リリカルなのはストライカーズ エピソード
「黄色の悪魔 2」
―――リッチェンス邸
市川は表門の前にたった。そこには見張り番と思われる若者が立っていた。若者はたずねた。
「何か用か?」
「この大きな屋敷の持ち主に面会したい」
若者の顔が赤くなった。市川は安心した。脳や顔面に血が集まっている人間の攻撃は鈍いからだった。
「それだけじゃ通せないね」
「この大きな屋敷にわたしの家族が世話になっているのだ」
「一体誰だ?」
「君ならば、そうだなうかつなことをやっただけで腕の一本を失いかねないような立場の女性だよ」
若者は市川の言葉の意味すら分からなかった。しかし、莫迦にされたことだけは察したらしい。市川に掴みかかろうとした。
市川は彼の尖った顎を僅かに突き上げ、路上に打ち倒した。そして敷地に入り込んだ。
庭の奥まったあたりにかなり大きな温室があることが分かった。
あちらこちらからスーツを着こなした若者や中年たちが飛び出てきた。
市川は彼らを眺め回した。自分を取り囲んでいる男たちの中でも最も格のありそうな1人に言った。
「リッチェンス氏にお会いしたい。私は市川。娘がここで御世話になっているそうだ」
―――邸内
内部は奇妙なつくりになっていた、通路は僅かに身体を斜めにしなければ通り抜けられないような狭さで、
不必要に折れ曲がっていた。この屋敷の主人が誰かの襲撃を恐れ続けている証明だった。その誰かとは
自分の職場だろうと市川は判断した。市川が通されたのは16畳ほども有りそうな応接室だった、
そこは冷房がしっかりと働いておりひんやりとしていた。ソファに腰をおろした市川は室内を見回した。
内装は極めて豪華であり、金を用いた装飾品や彫像があちこちに置かれていた。この部屋の飾りつけにかかった金だけで
自分の家の土地が4つほども買えそうだった、彼は好みでない豪華さの中で30分待たされた。
そして分厚い扉が開いた。最初に入ってきた男は庭で市川が話し掛けた男だった。リンデマンという名前で、
口元から微笑が消えることはないが、ふくらんだ印象のある瞼の陰に光る目には墓石のような冷たさがあった。
続いて何かを記憶する必要が認められない筋肉が発達しただけの男が二人入室し、そして主人が入室した、
仕立ての良いダークスーツを着ている。リッチェンスは市川の対面に置かれた一人がけのソファに腰をおろすと
天然木の形状を利用したテーブルに両手をつき、深々と頭をさげた。
オメガって佐藤三佐ですか支援
宗方怜士中将!メイドスキーの系譜を知っている人か!! 支援
深みのある声だった。市川よりもさわやかな声だと言ってよかった。リッチェンスは顔を上げ市川と視線をあわせる。
ほっそりとした印象の男だった。額は高く、知性すら感じさせるひとみを持っている、しかし、そこには
同時に常識で推し量れないものも存在していた。
「こちらこそ娘を預かってくれて感謝している」
「御預かりしているわけでは有りません、娘さんが自分の意思で私の元へとやってきたのです」
「貴方の見解はそうなわけだ」
「見解ではありません、全くの事実です」
「おそらくそうなのだろう、だが、納得できない、せめてのこと、彼女と二人きりで話す事が出来なければ」
「ええ、本来ならそうすべきであると私も思います。親御さんとして当然な判断です」
「ならばこの場合はどうだと?」
「娘さんは貴方にお会いしたくないと言っております。以前に、貴方の女性の友人が訪ねてこられたときも同じでした。
そして私は彼女の意志を尊重しなければならない、誠に残念でありますが」
「貴方の許しが得られるのならば、一言、二言私から話し掛けてみたい。娘の気持ちも変わるかもしれない」
リッチェンスの背後に立っていた筋肉の塊が一歩踏み出そうとするが、リンデマンが視線を向け彼を押しとどめた。
「御気持ちはよく分かります、しかし、ここは私の家なのです」
リッチェンスは深く頷いて見せた
「成る程…なら私は失礼しよう」
市川は答えた。
「一杯やってゆきませんか」
リッチェンスは言った、彼の視線の先には封の切られていない酒瓶だ、驚いた事に97管理外世界
の高級スコッチ・ウィスキーだった、だがあまり市川は好きな銘柄ではなかった。
「この4年酒を一滴も口にしていない。できる事ならば、健康の為にこのまま禁酒しようかと思っている。
恐らく無理だろうが。それに何より、私は酒を口にする環境に五月蝿い方なのでな」
「ではお帰りください」
リンデマンは扉を開けて誰かを呼んだ。市川は室外に出た、扉が閉められた。リッチェンスは何か
から解き放たれたように深いため息をついた、もしスーツを取ったらシャツは冷や汗でずぶ濡れと
言ってもよいだろう、クラナガン警察上層部や管理局本部上層部を買収する時に比べ凄まじいほ
どに消耗しきっていた。
「どうしますか?」
リンデマンが尋ねた。
「たいした男だ…流石、あの娘の父親だけのことである」
「だから殺す?」
「そこまでしなくていい」
「あんな奴―――」
先ほど市川を恫喝しようとした筋肉の塊が言った。
リッチェンスは煙草を加えた、表の慈善事業の裏家業である不正時空間密輸で入手した
ボロワーズだった、リンデマンが金色のライターを差し出して火をつけた。
「その莫迦を壁に立たせろ…左腕を水平にしてな」
リンデマンが顎を動かした。もう1人の筋肉の塊が片割れを壁に押し付けた。リンデマンが左腕を掴み、それをまっすぐに伸ばす。
リッチェンスは立ち上がった。
「リンデマン、最近若い者の扱いが甘すぎるんじゃないのか?」
「申し訳ありません」
「その通りだよ。まさか俺の下に、本当の男を見ても敬意を抱けない奴がいるなんて想像もしていなかった」
リッチェンスは壁に押し付けられた男の顔をみつめた。
「俺の顔を見ろ」
怯えた瞳が彼に向けられた。
「あの女の父親は、以前下らない正義感でこちらの事業を妨害しようとして、俺を逮捕しようとして捕まった挙句に
『親がいない妹がいるんだ、許してくれ!』とほざいたが、体重の倍にさせる程銃弾を撃ち込んできた・・・
確かランスターと言ったな、その他の屑連中と違う本物の兵士だ。いいか、俺も管理局でいたことがある。
貴様より若い頃にな。その時もあんな上官がいた。有能で、慈愛に溢れ、知性と教養を持っている。
勇気については口にするまでもない。まさに理想の管理局の職員、醜の御盾なるべく生まれたような男だった。
そいつをすべて合わせると何になるか分かるか、オイ!どんな男が出来上がるか想像がつくか?」
怯えた男は蒼白くなった顔を横に振った。
ロストシップはやばすぐる支援
「悪魔だ…あのエースオブエースと呼ばれこちらの同業者では悪魔と呼ばれているあの高町なのはという
女と比べ物にならない本当の悪魔だ」
リッチェンスは言った。
「地獄の門番にこそ相応しい勇気としぶとさを持った悪魔だ。たしかに奴は管理局に雇われた狗かもしれない。
しかし、魂まで支配されているわけじゃない。奴は何処までも自分自身だ。自分にとって最も大事な何かを守る為ならば、
管理局本部・・・いや本局にでもアルカンシェルをぶち込むような奴だ、ええ?わかるか?どうなんだ?
お前が莫迦な脅しをかけようとした男はそんな怪物なんだぞ」
リッチェンスは男の懐から銃を取り出し装弾しているか確認する。そして彼は再び男に言った。
「俺の顔を見ろ!分かっているな?お前があの男とは比べ物にならない屑だということは?
だが、その屑でも責任と言う言葉の意味を知っているだろう」
リッチェンスは壁に押し付けられた男の左手に銃を突きつけた、そして引き金を引く、銃声、絶叫、
壁に飛び散る血飛沫、筋肉の固まりの左手小指の第1関節から先がなくなっていた。
「リンデマン」
リッチェンスは振り向いて言った。
「あの男に警告を与えてやれ、決して殺すな。あれは、尊敬出来る男だ。むしろ俺はあいつのことが好きだよ」
「すぐにですか?」
「当然だ」
「分かりました」
リンデマンは部屋から飛び出した。リッチェンスは相棒を壁に押し付けている男に言った。
「後5分そのまま立たせていろ。そいつの身体からいくらかでも毒気が抜けたら、医者を呼んでやれ」
リッチェンスは上着のポケットから札束を取り出し、テーブルへ放り投げた。
「医者にはこれで払え、残ったら二人で女でも買いにゆけ、お前たちの毒気は血の中にだけ有る訳でもあるまい」
リッチェンスは男の傷口にタバコを押し付けて火を消した。再び屋敷に悲鳴が響き渡った
―――リッチェンス邸近く
市川は屋敷を出た。外は暗かった。商店はちらほらあったが繁華街から離れた場所なのでネオンや
街頭の数は少ない、そして尾行にすぐ気づいた。市川はその種の経験も豊富に持っている。彼をつ
けているのは路上に男が二人、そして車が一台だった。市川はそれを一瞥するとゲイズから貰った
葉巻を取り出す、驚いた事に97管理外世界にあるハバナの葉巻だ、恐らく別の密輸事件で押収し
たものらしい、SAS時代ですら滅多に吸えなかった高級葉巻に火をつけ辺りを見回す、尾行こそ続
いていたが、行動を起こす気配は見られない、市川は流れタクシーを止め乗り込んだ、そしてタク
シーが動き出し、スピードに乗った時である、尾行していた車から銃型デバイスの銃口が顔を見せ
タクシーのタイヤを撃ち抜いた。そしてタクシーは回転しながら柱にぶつかりL字に折れ曲がった。
――――本部・メディカルルーム個室
市川はメディカルルームで意識を回復した。視界が妙だった。その視界にオーリスが入った。市川は、やぁ、と言った。
オーリスは懸命に涙を抑えようとした後で、感情の抵抗を放棄し、ああ、あなた、ああ、あなたと二度呟くと彼に縋りついた。
市川はこの20時間昏睡状態に陥っていたのだった。そしてオーリスはさらに10分間を自分に為に消費した後で医者を呼び、
そして自分のあるべき仕事の為に名残惜しそうに退室した。
支援
そして医者と共に八神はやてと白衣を着た金髪の女性が入室したことにより市川はここが本部のメディカルルームだとわかった、そして医者は言った。
「貴方は幸運でした、本来ならあの事故の際、飛び込んだ異物で水晶体が完全に破壊されましたが、その御隣にいる女性が丁度本部にいた為に
保持スキルである程度修復できました」
そして金髪の女性は市川にあいさつをした
「シャマルと申します、貴方の事ははやてちゃ…じゃなくて八神隊長から貴方のことはよく聞かされています」
市川は目を修復してくれたことに感謝した、がシャマルは続ける
「ですが、完全というわけではありません、今後も何度か私の術で少しずつ治療してもらう必要が
あります、その間できるだけ目に何か起きないように眼帯をして頂きたいのですが」
市川は内心何かをわずかな繭の動きだけで表現した。
「眼帯は黒がいいな、ほらよく映画で海賊が好んでつけているような」
そしてシャマルはクスリと笑うとはいそうしますと言って退出した、それに習うように医者も退出
した。部屋には市川とはやてだけが残された。
「礼を言う」
「ええって、困った時は御互い様や!それに市川さんには管理局に入局した時やそれ以外にも色々御世話になってんで、そのお礼をいうわけです」
「そうか…一つ聞いてもいいか」
「何でしょうか?」
「何故私を君の構想した機動第6課に向い入れようとした?少なくとも私の悪名は知っているはずだが、
少なくとも君たちにとって相応しくないと思えるが?」
管理局で密かに市川につけられている仇名それは「子供殺し」、SAS時代の、IRAのとりわけ過激
でしられる強硬派を制圧する時に、偶然本部にいたIRAの少女を殺したことだ。だがそれは(SAS
でも本部でも)非難される事はなかった、銃を持ってこちらに撃ちかけられたら誰でも撃ち返す・・・
当然の話だ、それ以外にも彼は任務において支障をきたす存在に一切の情けは与えなかった、一部
の人たちはそのことで(他色々)で市川を嫌っていた奴らは(クロノも含む)『子供殺し』の名をつけていた。
「確かにそう呼ばれていますけど、それは関係ありません、理由として…」
はやては6課のメンバー表(仮)のリストを見せる、市川は一瞬にしてその欠点を見つけた
「成る程打撃としては優秀だが…」
「ええ、市川さんも分かっていると思いますが」
「そうだな欠点として
1、隊長や隊員を抑えるもしくは補佐するポストがいない(参謀や幕僚がいない)
2、バックサポートが少なすぎる(人がいないから仕方ないけど)
後者は君のコネに訴えれば何とかなる、問題は2だな、君たちの部隊はたしかに実戦経験者を主体に構成されて打撃力はいいが
…前衛が揃って命令違反の常習者、そしてお前自身も・・・」
「ええ、それは分かっています」
はやては隊の欠点と自分の欠点を分かっていた、前者は先も述べたが命令違反の常習しかも問題は彼女たちがそれでいいと思っていることだ
(自分も言えた義理ではないが)緊急の際に部下が思い思いの行動を取られると作戦に齟齬が起きてそのままパーになる可能性が高いのだ。
そして後者ははやても感じていただろう、そう人を失う恐れだった。確かにある程度克服したとはいえ未だに父や母が事故で死んだ影響は大きい、
その例がかつてヴォルケンリッターがグレアム(と裏で宗方)の陰謀で闇の書に吸収されてしまったとき自分が暴走してしまったこと、
そして高町なのはが重傷を負って生死の境を彷徨った時に相当取り乱してしまい医者に詰め寄ったこと。それらを踏まえて市川は言う。
「指揮官と言うのは、時に非情にならなければならない。時には部下を切り捨て、時には部下に対して死んで来いと言う必要もある…私もそんな判断をしたことがある」
それに驚くはやて、上には悪名が轟く市川だが、下や前線部隊からの評判は極めて高い、何故なら彼の下で戦えば死んでも必ずつれて帰るし、
何より負傷した部下を自ら背負って帰還する例もあるからだ、それを知っているからこそはやては驚いた。
「切り捨てた部下の家族から何か言われなかったのですか?」
「ああ、言われたよ『何であんただけ生きて帰って来た!』『父さんを帰せ!』と…罵声を…」
「後悔はしなかったのですか?」
「した、何度もした…それに伴う悪夢も見続けた。だからこそ次はどうすべきか、部下を不用意に切り捨てない為にどうするか、
考えなければならない、悔やんだまま次の作戦にそれを持ち出してさらに部下が死んだら話にならない、頭を切り替えることも大事だ」
「強いのですね…」
はやてはとても自分では出来ない感じで市川に言った。
「強いのどうのこうではない、それが部隊を預かる指揮官して当然の責務であり義務だ、君が思っている以上に指揮官というのは厳しい…」
君にそれが勤まるのか?と市川はそう言う視線ではやてを見る。
「指揮官は助からないと判断した部下も処断しなければならない・・・現にSAS時代にいざしらず他の方面で何回か瀕死の部下にグデークラ(慈悲の一撃)
を加えたこともある、君に人を殺せるのか?大事な者の命を失うことが許容できるか?」
それが出来るのか?という視線ではやてを見る、はやては何も言い返せなかった。『何とかなる・・・』
彼女はクロノやカリムに対して笑顔で言った言葉を市川に対してそうは言えなかった、大体世の中
100%という言葉は存在しない、そしてそう言えばたちまち「お前のような奴に指揮官が勤まる
か!」と首をへし折られるだろう。そして市川ははやてに大して最も言って欲しくない一言を言う。
「おまえは指揮官に向かない、優しすぎる、確かにリストで見た君たちの知り合いなら君を知っているから許してくれるだろう、
いずれ君の知らない人が入ったら?優しさだけでは部下はついてこない、時には指揮官としての厳しさ、非情さがない無理だ。」
淡々とした感じで市川は言う、はやては沈鬱な顔をして俯く、そしてはやては何かを決心したように言う。
「確かに市川さんの言う通り、私はまだまだひよっこです・・・でも私は、この6課成立の為にすべてをかけています、だからこそ
貴方の言う通りにその優しさを捨てる覚悟はあります」
それにほうと頷く市川、はやての覚悟に曇りも何もないことで彼女が心からそう思っている、だが…市川は思う、本当に出来るのか?彼女に?
「ひょっとしてこの事件で人を殺してしまうこともあるかもしれん、大事な人を見捨てるかもしれへん…だけどそれも心を鬼にして受け入れます」
はやてはきっぱりと言い放った、少なくともこの場に見る限りは信じられる、そういう回答を市川は得た。
「わかった、今は君を信じよう…ああ、すまないな話が随分と脱線した、本題を言ってくれ」
「ええ、貴方を副隊長にスカウトしたい理由、1つは貴方が様々な戦闘におけるベテランであること、確かにヴォルケンリッターは貴方以上に戦闘に対してはベテランですが、
私の意見に是として心情的に答えてしまうので、否と言い切れるベテランであること、戦況を読める目があること。2つめは万が一動揺した私や隊員達を支える補佐役として
適任であること、知っていると思いますが戦闘部隊は命令違反の常習者です…場合によっては私もそうなるかもしれません、それを抑える役目としてやってもらいたいのです」
「つまりは女房役と言うわけか」
「はい、そうです」
ああ、それもいいかもしれない、久方ぶりに若手の面倒を見るのも正直悪くはない。
「いいだろう」
「本当ですか?」
はやては喜びの声を上げる。
「仮に私を入隊させて大丈夫なのか?君のバックサポートについている友達の兄であるクロノ提督は私の事を蛇蠍の様に嫌っているし、
上層部でも受けの悪い『傷持ち』だ、君の経歴に傷がつくのじゃないね?」
「そんな経歴なんて知ったこっちゃありません、それにクロノ提督は若いのにコチコチの爺ちゃんみたいに頑固すぎるんや、
文句はつけさせません、安心してください。」
「ああ、分かったよだが決まったわけではない、私の一存で決められることではない、陸戦課がどう動くかできまるからな」
「はいわかりました」
「君も仕事があるだろ、早くいきたまえ」
「はい、了解しました」
はやては市川に敬礼をする、そして市川も敬礼をするとはやての頭を撫でる。
「だ、だからうちは子供ちゃいます!」
はやては抗議する、そして市川は罰の悪い笑みを浮かべる、だがそれにはやては不快感を覚えなか
った、父と子と並に年が離れ、新入り時代の自分を案じて世話を焼いてくれた市川の姿をはやては
かつての自分を可愛がってくれて、大きな手で自分の頭を撫でてくれた父を重ねていたかもしれな
かった、そいて病室から出て行ったはやてに市川は思った、本人の覚悟はよくわかった…だが主戦
力の2人(なのはとフェイト)は大丈夫なのか?あいつらああいったこと一番嫌っていると聞いたぞ。
―――通路
八神はやてと高町なのはとフェイト・ハウラオンは歩いていた、これから会議において機動6課成
立における役割を各課に発表する為だ、本来なら緊張ものであったが、はやてはどこか嬉しそうな
顔をしていた。
「あれ?はやてちゃん、何かうれしそうだね」
通路で一緒に歩いているなのはは言う。
「ええ、そうや」
「何かあったの?」
疑問そうにフェイトも問う
「それは6課出来てからのお楽しみや」
疑問そうな顔を浮かべる二人だった、それに対し背後にいたシャマルはクスリと笑った、彼女はその理由を知っているからだ。
―――メディカルルーム
医者が断言したとおりに身体は順調に回復していった、そしてシャマルの術によって壊された左
目も少しずつでもあるが回復していった(でも正直クラールヴィントで目玉いじくられるのはヒヤ
ヒヤものだが)、そして病室には連日彼の同僚や、部下であったものがおとずれ、彼と会話をして出
て行った、そしてゲイズ中将も面会に着た。
「やはり君はあの八神二佐の機動6課に配属されることを希望するのか?」
「ええ、ずっとは恐らく無理でしょうが、たまに女房役と言う役も悪くはないと思います」
「ふむ・・・」
ゲイズは難しい顔をする、市川はゲイズが八神二佐の事を嫌っているのは知っていたが、それと別
のような顔をしているように見えた。
「確かに、彼女達の部隊はあまりにも若すぎる、そして君みたいな人材が必要なのは承知だ…だが…」
ゲイズは珍しく歯切れが悪かった、そう、もし市川が戦闘機人計画の事を知ってしまったら?そし
て…その場合上層部に彼の始末を言い渡されたら?いくら彼とは言え殺されてしまうだろう、また
失うのか?自分とゼストと3人で共に戦場を駆け抜けた大切な戦友を?
「君が八神二佐と知り合いなのは分かっている・・・だが・・・」
「部署が違う?そう言うことですか?」
ずばり指摘された、海や空に何かしらの恨み(まぁ優秀な連中が引き抜かれればなぁ)をもっているゲイズに比べて、
市川は全くに意に介さずに必要な時は平然と助力を得る。
「中将、貴方の気持ちも分かります、ですが部署同士が対立して一体何の得がありますか?喜ぶのはこちらを疎ましく思っている連中です、
こっちが冷や飯ばっかり食っているというなら皆で食べればいいのです」
「…そうだな」
こいつはそうだな、上官であろうと忌憚なく意見を吐く、だがこのままでは。
「分かった、人事に取り計らっておくように要請する」
「ありがとうございます」
「だが、それが通らなかったら諦めてくれないか?」
「…わかりました」
「そして、君の娘のことなのだが」
「ええ、そのおかげで現在こうなっています」
「リッチェンスは狡猾な男だ、裏で密輸業に勤しんでいるが表では慈善活動を行っている上に、警察やこちらに利益の一部を回している」
「まぁ、つまりは」
「この管理局や警察に金の持つ魅力に心を奪われた下衆がいるということだ」
ゲイズは吐き捨てた、少なくともミッドチルダを愛している彼にとって許しがたい行為だろう。
「しかも奴は狡猾だ、金はきっちり消毒している…まぁそうでなければクラナガン近郊に堂々と屋敷を建てられるわけがないがな、
ああ安心しておけ、八神二佐やその一派にはこの事はまだ知られていないし、尻尾もつかませていない」
これに市川は安堵した、おそらく彼女のことだ、必要以上に自分を気遣う為といらぬ正義感で部下
を引き連れてリッチェンス邸に堂々と殴りこんで事態を悪化するのは自明の理だ。
「ありがとうございます」
市川は礼を言う、そして私は仕事があるからとゲイズは病室から出て行った、そしてゲイズは軽く
うめく、彼は本気だ、少なくとも娘を助けるならば悪魔に魂を売る男だ、だが彼は陸課において
要不可欠な人材だ、これ以上戦友を失わせる訳にはいかない、そして彼のことを好いている愛娘を
悲しませることは…ゲイズは歯噛みした、彼を止める手段がないからだ
友人、知人から贈り物が届いた。その中に紫色を帯びた花を束ねたものがあった。花束について
いたカードはリッチェンスと市川の娘の連名になっていた。市川はそれを花瓶へ生けて欲しいとオ
ーリスに頼んだ、贈り物にどんな意味が有るのかオーリスはわからなかった。珍しいですね、オー
リスは言った。その花はクリスマスローズの亜種だと、市川は問うた、なら負傷した父親にわざわ
ざ送りつけるような花なのか?オーリスは考え込んだ
「たしか、根にはステロイドが含まれており、強心剤と使用されたこともあるはずです」
「その花に根はついていない、それに、あの娘は貴方ほど学術的な姿勢で植物を好んでいたわけではない。
意味があるとするならば、何か、もっと素直なものだと思う」
「調べてみます」
今晩も泊り込みますとオーリスは続けた。いや家に帰って欲しいと市川は言った。悲しそうな顔をしたオーリスに笑みを向け、
いまだ、激しい運動を禁じられている状態で、貴方と夜を過ごすのはかなり辛いことなのだと言った。オーリスの笑顔は処女のようだった。
そして面会時間終盤間際、誰もいない事を狙ってフレイザーはやってきた。
「私を病院に運んでくれたのは君だと押しられた。感謝している」
「まさか、連中があれほど荒っぽい手に出るとは予想できなくて」
「そうなのか?」
「貴方がある程度の役割を果たしてくれるだろうとは期待していました、科学事件の触媒のように」
「恋と戦争は手段を選んでいけないと言うからな。想像するに、警察活動も、まぁ、そんなものだろう」
「なんとも私的な表現ですね」
「何、何年も前に娘が教えてくれたのだ」
「その娘さんについてですが」
「話したまえ」
「彼女が、望んでリッチェンスの下へ飛び込んだことは事実のようです。たしかにそうですが」
「義務に忠実な警察官として何か言いたいわけかね?」
「私はリッチェンスに対する意識はあくまで公的なものですが、貴方とリッチェンスの関係は全く個人的なものです。一人の女性を巡る愛情の問題と言ってもよい、リッチェンスがいきなり荒技を用いたのもそのためでしょう、本来あの男は、どんな場面でも慎重な実業家なのです」
「私が娘に対して抱いている感情は、畜生道に値するものではないと思うが」
「貴方はそうかもしれません。貴方にはそれだけの強さがある。素晴らしい女性の心を手に入れてもいる」
「娘は違うと?」
「私の見るところ、父親の存在を大きく認識しすぎている女性には二種類の典型があります」
「君は心理学はやるのか」
「優秀な警官は皆心理学者ですよ」
「実践心理学のご高説を承ろう」
「かんたんなことです、意識の表層で男を求めすぎているか、その逆か、それだけですよ」
「単純化しすぎに聞こえる」
「そうでもありません、意識の奥では、全く反対の願望を抱いているのですから、男好きの女は男と長く付き合えない、男嫌いの女はたまたま掴んだ男を一生はなさない。まぁそんな所です。
医者や学者ならばまた別の表現をするでしょうが、私の仕事では之で十分です。もし分からなければ専門家に尋ねたらよいのですから」
「で、私の娘はどちらに当てはまるのかと言うのだ」
「後者でしょうね。男性としての魅力に溢れた父親を持った娘の悲劇です。表層的には父親ほどの男などいないと信じている。しかし内心ではまた別の感情が有る。
そしてたまたまあの男に出会った。部分的に父親のレベルに達し、他の部分でまた別の願望、あまりに完璧な父親に対する秘めたる反感を充足してくれる相手に。言うなれば、
リッチェンスは彼女にとって理想の男性であったわけです。リッチェンスへ頼ることによって自分の内心にいた貴方を殺そうとした」
「必然だと言いたいわけか」
「冷酷に聞こえたならば申し訳有りません。しかし、貴方の娘さんは私にとって完全な三人称認識の対象ですから。警官と言う職業はそのような思考法を強制されます」
「その点については理解できる。職業病はどんな仕事においても発生しうる」
「少なくとも、娘さんはあの戦争の被害者、その一人であります。彼女のこんにちはは貴方が行方不明になった事から始まったのですから」
「不愉快な男なのかもしれないな、君は」
「不愉快なのは私ではなく、私の仕事ですよ。之でも近所では善人で通っているのですよ」
「つまりこの世は並べて不愉快さに満ちているわけだ」
「ええ、全くもって不愉快な現実です。この点については貴方の方が詳しいでしょう」
出来る事ならば、退院後、暫くクラナガンから離れてくださいとフレイザーは言った、私は本気で
リッチェンスを片付けたいと思っていますが、この町で個人的な戦争が起きるのどうも。
考えてみるよ、と市川は答えた。そして数日後オーリスが、彼女の几帳面さを裏付けるように学究的な態度で記されたクリスマスローズについてのあれこれがあった。
市川は三度読み返した。そして、娘が興味を持つだろう部分を見つけ出し、順位をつけ、判定した。人を狂気から回復させると信じられた霊薬の原料。
エデンから放逐された最初の男女が免罪符として持ち出したもの。花言葉は「我を不安より解き放ちたまえ」
退院当日、シャマルは市川が注文したとおりの眼帯を持って現れた、そして左目の水晶体も治り視力も徐々に戻っているが出来るだけ左目に衝撃を与えないで下さいと言った、
それに礼を言い、眼帯をつけた市川にはやては男ぶりあがったなぁと言った市川はありがとうと答え内心で、まさに黄色い悪魔そのものだと呟いた。
本部の前にはフレイザーが数人の部下と共に彼を待っていた。町を離れてくださいとフレイザーは言った、そして市川はかつての妻の墓参りをした後にエルセア辺りで左目を完全に直す為
にゆっくりしますよと…そして自宅で準備を行い(オーリスも行きたがったが、6課成立やレリック事件で振り回されておりとても行ける状態ではなかった)、列車に乗り込んだ、
途中でフレイザーが派遣した彼の護衛兼監視役をトイレにいくふりをして、あっと言う間に気絶させた。そして駅員に彼は疲れているのか良く眠っている置き引きに会わない様に注意して貰いたいと伝えた。
彼が降り立ったのはかなり大きな町だった。市川は駅で中古車を扱う店の場所を確かめ、そこへ向かった、店についた市川は受付の女性に店長を呼んでもらいたいといった。事務室から出てきたのはいかのも
苦労人といった風情の五〇絡みの男性だった、局にいたことがあるなと市川は見当をつけた。
すぐに持ち帰ることの可能な車はあるだろうかと彼は店長に尋ねた。店長は怪訝そうな表情を浮かべた。市川は身分証を取り出し、彼はそれを見せた。局務で必要なのだと市川は言った。
店長は背筋を伸ばし、二佐、お貸し出来る車ならばありますと言った。市川は店長へ強引に金を押し付けた。彼には4年間手付かずだった俸給があった、そして市川は目立つことを避けた色の車で、
彼が責任を果たさなければならない場所、彼自身の戦場へと戻っていった。
支援
支援
ティーダ兄さんの死に方が木曜映画劇場風だったぜッ!!支援
支援
真祖の人ですが…区切りがいいのでここまで…投稿しすぎで投下出来なくなった
真祖の人GJ
相変わらず濃い内容で続きが楽しみです。
212 :
なのウタ:2007/12/07(金) 01:22:07 ID:EeiK8KMP
職人の皆さんGJ!
なんかやっつけ感バリバリッスけど、bugの一発予告ができたので投下ー
213 :
なのウタ:2007/12/07(金) 01:23:28 ID:EeiK8KMP
夢。
それは輝ける未来。
それは自らを映し出す鏡。
それは人を繋げる絆。
そして、それは異形の“虫”の餌…………。
数年前から第97管理外世界にて広がり始めた、異形の“虫”に寄生された人間――虫憑き――の存在と噂。
その存在――それがもたらす危険性など――を調査するため、時空管理局から数名の局員が派遣されることになる。
その中には古代遺物管理部機動六課――通称、機動六課――に所属する二人の少女の姿があった。
スバル・ナカジマ。
ティアナ・ランスター。
これは二人の魔導師と虫憑きに関わる少年少女たちが織り成す一つの物語である。
214 :
なのウタ:2007/12/07(金) 01:26:07 ID:EeiK8KMP
“虫”。
それは公には存在しないとされているにも拘らず、もはやその単語を知らない者はいない超常の存在。
「えっと、スバル・ナカジマです。両親の仕事の都合で転校してきました。よろしくお願いします」
「スバル、そっちはどう? 私? こっちもあんまり芳しくないわ、確証のない噂ばっかり」
“虫”に寄生された人間は虫憑きと呼ばれ、噂の範疇から抜け出ていないにもかかわらず人々の間では差別と恐怖の対象になっている。
「あんまり、無防備にこいつに近づいちゃダメよ。大人しそうなのは外見だけで、本当はいやらしい奴なんだから」
「え、そうなの?」
「転校生にいきなり妙なこと吹き込まないでよ! ナカジマさんも間に受けて距離とか取らなくていいから!」
目撃証言や虫憑きのものと思われる異常現象は年々増加し、様々な噂や憶測が飛び交っていた。
『ちょっとスバル! 今どこにいるのよ!!』
『ティア、ごめん! 虫憑きかもしれない人を追跡中!』
曰く、“虫”は夢をもつ思春期の少年少女に寄生する。
「あぁ! アンネさん、それあたしの!」
「うっさいデスネ。こういうのは早い者勝ちなんデス。とっとと食わねー方が悪いんデス」
「少しは遠慮しなさいよ、二人とも……」
曰く、“虫”は宿主である少年少女の夢を喰らい、その代償に超常の力を与える。
「ねぇ、あたしってそんなにウザイかなあ、そんことないよね? あたし、うざくないよね?」
「も、もちろんよ! 全然気にならないわ! ス、スバルもそう思うでしょ?」
「う、うん! 別にウザイとかそんなことないよ! …………多分、いやきっと」
「お前ら、思いっきり顔が引きつってるぞ」
曰く、普段は誰に取り憑いているのかまったく分からない。
「「正義の味方〜その名はそうさ、ケ・モ・ノ・マ・ン♪」」
『ケモノマァァァァァン!!』
「ノリノリね、二人とも……」
曰く、虫憑きになると救急車がやってきて、黒いゴーグルの男に何処かへ連れて行かれる。
「ど、どんまい“まいまい”ちゃんっ! 一つや二つの失敗ぐらいじゃ全然へこみませんからっ! 今は失敗ばかりでも輝ける未来はすぐそ
こにっ!!」
「…………この子で本当に大丈夫なの?」
「…………言わないでくれ」
曰く、“虫”に夢を喰い尽くされた虫憑きは死に至る。
215 :
なのウタ:2007/12/07(金) 01:27:02 ID:EeiK8KMP
穏やかな日常
「なに……“かっこう”くん……? また、無理矢理ひどいことさせる気……?」
「……大助」
「……大助くん」
「二人して軽蔑の眼差しを向けんな! “ねね”も誤解を招くような言い方してんじゃねーよ! つーか、前にもあったよなこんな流れ!」
新たに出会う虫憑き
「ぺろぺろ。あゆゆーって呼んでくださいっていつも言ってるじゃないですかぁ、かっくん?」
「私のただの道具屋だ。それ以上でもそれ以下の何者でもない」
「お困りですね、ホモサピエンス」
「邪魔するならアンタもまとめてチョン切ってやるし」
いくつもの夢と願い
「やははっ。虫憑きになりたい、そう思うことってそんなにおかしいことですか?」
「虫憑きの居場所がないっていうなら、私が虫憑きの居場所を造ってみせるわ、絶対に!!」
「今の私には彼女に会う資格なんてない」
「虫憑きだとか虫憑きじゃないとか、そんな理由で分かり合えないなんて、そんなの絶対に間違ってる!」
深まっていく虫憑きを巡る謎
「エルビオレーネの“虫”以外に興味はないの。それ以外の“虫”は邪魔なだけなのよ」
「ですが、安心してください。ただの化け物でしかない貴方たち虫憑きを私が愛してあげます」
『力を求め……迷える者よ……我の……元へ……』
「あなたが……花城、摩理さん……?」
わざと「黄色“の”悪魔」にしてるんかな? ネタ元通りだと「黄色“い”悪魔<イエロー・デビル>」だけど。
217 :
なのウタ:2007/12/07(金) 01:31:04 ID:EeiK8KMP
「私は必ず見つけ出してみせるわ。摩理が私に“虫”を残した理由を」
「ねえ、亜梨子。私の夢、貴方に預けていい?」
槍型の少女は誓い、銀色の狩人は問いかけた。
「あなたたちのおかげで……私は……まだ夢を目指せるから……」
「私は“かっこう”さんなら私達の、虫憑きの戦いを終わらせてくれると信じています」
歌姫は微笑み、妖精は願う。
「親友に託された夢、か……」
「生憎とオレ様は戦えりゃそれでいいんだよっ!」
魔弾の射手は重ね、霞を従える戦士は笑った。
「どいつもこいつふざけやがって! 途中で投げ出しちまうような夢で虫憑きになってんじゃねえぞ!!」
「俺は虫憑きが大嫌いだ。奴らにはこの世界に存在する価値すら無い」
炎の魔人が吼え、不死の存在は言い放つ。
「そんなに強いのに、それだけの力があるのに、なんで!!」
「……それが虫憑きだ」
蒼い拳士が問い、黒い悪魔が答えた。
218 :
なのウタ:2007/12/07(金) 01:32:00 ID:EeiK8KMP
「なのは、さん……?」
少女たちの行く先にあるのは
「スバル、あなたの夢を私に教えてくれる?」
破滅か?
「そいつの言葉に耳を貸すな、スバル!」
それとも、救いなのか?
「あたしの夢は…………」
ムシウタbug×なのはStS ―夢交差する道―
少年少女の夢、虫憑き、そして“魔法”。
それは最高で最悪のガール・ミーツ・ガール!
ふゆ●たる「大助くん、スバルって誰?」
219 :
なのウタ:2007/12/07(金) 01:33:21 ID:EeiK8KMP
ついでにbugのドラマCDのOPの替え歌も投下
220 :
なのウタ:2007/12/07(金) 01:33:58 ID:EeiK8KMP
空色のアルカディア(元ネタ:銀色のアルカディア)
拳握り 崩れた街で 前を見つめる少女たち
辛い過去の記憶を胸に 現在(いま)より強くなる
明るく咲く 星はまだ輝き続けて
ただ照らされた あたしは貴方目指すよ
この強さと この勇気で 誰かを 救いたいよ
道を架けて 速く駆ける 救いの声に 答えるために
永遠に 輝いた夢へ駆け上がりましょう
空色のアルカディアへ
221 :
なのウタ:2007/12/07(金) 01:40:23 ID:EeiK8KMP
投下終了
終わクロ氏の作品の影響で自分もガッシュクロスを書きたくなったりした今日この頃でした
222 :
OSGS:2007/12/07(金) 08:27:57 ID:H95CadG6
GJ〜。
ムシウタのタイトル知ったのはなのはMADだっていうのは内緒。
さて、朝刊にはちと遅いですが投下おk? いろんな意味で外伝です。
本編がじみぃ〜な展開なので、ストレス解消に書いてみた。
223 :
OSGS:2007/12/07(金) 08:52:12 ID:H95CadG6
OSGSの外伝が完成しました。投下おk? オリジナル、改悪が多いので苦手な方はスルーをお願いし
ます。
メインキャスト
・カイ・キタムラ――戦技教導官として地上本部に招かれている軍人。
・レジアス・ゲイズ――我らが中将。地上本部へ積極的にPTを受け入れている。
・量産型ゲシュペンスト――量産型ゲシュペンストに緑のカラーリングを施した機体。カイのゲシュペンス
トは、ジェットマグナムがフル改造されている。
・グルンガスト改式――グルンガスト弐式のプロトタイプを改修した機体。スペックはオリジナルを上回る。
※電撃スパロボVOL2およびVOL5の公式外伝が出展ですが……VO2はどうやら外伝に出そうですね。
とっても楽しみ『量産型ゲシュペンスト改』。そして背負い投げジェットマグナム。
※ただし、まだ詳細がわからないのでカイの機体は『量産型ゲシュペンスト』のままです。けどあのプラズ
マバックラーのモーションがかっこよすぎる……!
※アインストは、VOL5のアインスト・ウィングガストとアインストガストランダーのオマージュです。
というかアルフィミィの台詞がそのままですね。
※本編は二部構成です。
『踊るゆりかご』
――カイ・キタムラ
その男の肉体は、鋼できている。
パーソナルトルーパー――鋼の鎧を纏っているカイ・キタムラは、一心不乱に拳を上下させる男を見て、
そんな印象を覚えた。
拳は一度肩のあたりにまで持ちあがり、そこから一気に落とされる。
腰を回した。
連動するように肩に螺旋が伝わり、折られていた右腕が伸び、拳が砂袋にたたきつけられる。理想的な形
で男の全体重が打突部に乗った。
おんっ。
砂袋が拳の形にへこむ。衝撃波は真下の床につきぬけ、振動が十メートルは離れたカイの元へと伝わった
――。
一時間前。
深夜といってよい時間、重要施設以外の明かりが消された地上本部のなかで、カイ・キタムラは砂袋に拳
を叩きつけ続ける男を見つけた。
こんな時間に利用者はいまい、と足を運ぶまで思っていたがどうやらアテがはずてしまったらしい。
幾人かの男女がトレーニングルームでおのおの汗をかいている。男性が大半だったが、なかには女性がま
ざっている。中央には簡易なリングが取り付けらていた。
さらにリングの周囲にはサンドバックやウォーキングマシンがならび、下手な軍事施設のものよりも充実
したトレーニングルームだった。
熱気とやる気が部屋に充満している。腕時計を見る。深夜だ。針は僅かに零時を回っている。皆、日中の
任務のあとにここへ来ているのは間違いない。
「これは……圧倒されるな」
出向扱いといえ、同僚となった彼らのどこまでも高い士気には感じ入るものがあった。。地上を守ってき
たというプロ意識が、防衛隊、武装隊ともに浸透しているのだ。
そしてそれは深夜でも衰えない。彼らは自分を高めることに余念が無かった。
ただ、やはり撤収の準備をしている局員もいた。
カイ自身は半休で、明日の朝は余裕がある。だからあえてこの人の少ない時間にトレーニングルームを訪
れたのだが――。
224 :
OSGS:2007/12/07(金) 08:53:54 ID:H95CadG6
予想外の人数にしばし圧倒されたが、空いているサンドバックの傍に荷物を置いた。
(さて、やるか。若い連中に負けてるわけにはいかん)
上着を脱ぎ準備体操をはじめた。
どれくらい経ったのか。
汗をぬぐう暇もなくサンドバッグを打ち続けたカイは、部屋の隅につけられた時計を見る。時計は一時を
過ぎていた。
タオルを取り出し、息をつく。
まわりはすでにあらかたかえってしまったようだ。
だが、ただ一人、サンドバッグを叩いている男がいた。
先ほど砂袋に拳をたたきつけていた大柄の男だ。着ているシャツには汗が染み、乾いている部分がないほ
どだった。体型自体は太く重そうだ。しかし拳の力強さを見ればその体型も納得できる。たゆまぬ鍛錬が見
て取れた。
男のとなりに、女性がいる。ジャージ姿で、手にストップウォッチを持ち、男の挙動を見守っていた。
「ラスト30秒です」
女性の言葉が引き金になり、男の拳がさらに鋭さと速さを増した。
たかだが30秒。だが、人間が全力で動ける時間とほぼ同じ。
腕は上がらなくなり休憩をもとめ、荒い息は空気を求める。
肉体の要望にしたがってしまえば楽だ。腕を下ろし座り込む。そんな誘惑が男を襲っているに違いない。
「あと10秒です――」
「ウォォォォォォォ!!!!」
男が吼えた。
肉体の疲弊を精神で補う。身体を叱咤し、激励する。全力を出し尽くす。粒一滴の体力さえも残さぬ勢い。
最後の一秒、男が繰り出した前膝蹴りは、サンドバッグに深く食い込み、それを吊っていた鎖に鈍い音を
させた。
(ここまでとは――。どこの武装隊の人間だ?)
カイは思わず覗き込む。疲労に座り込む男を眺めた。
(馬鹿な!)
女性にタオルを渡され、汗をぬぐう男に見覚えがある。
レジアス・ゲイズ中将。
地上本部の事実上のトップがそこにいた。
「なんという……」
「驚いたかね。カイ・キタムラ少佐」
「……」
熊が笑う。
カイは思わずうなずいていた。ミッドチルダ地上本部に出向となったときにカイは、レジアスとは顔を合
わせている。だが今とはあまりにも印象が違いすぎた。
レジアスはひげの汗をぬぐいながら、顔を覚えるのが仕事なのでな、と冗談めかして笑った。しわが寄る。
深く刻み込まれたもの。カイのものとはまた別種の苦労をかさねた人間のしわだった。
カイは自分の汗を拭きながら言った。
「最後の30秒――あれは日ごろの精神と鍛錬がなければ、なしえないことです」
「連邦軍の特殊戦技教導隊の鬼教官に、そこまで言われるほどのものではない。ただの手慰みだ」
「失礼ですが……中将はどこかの部隊出身の方でしたか?」
「むかし、少々。魔法なしのインファイトなら負けなしだった」
「お父様……そろそろお休みになりませんと」
レジアスのとなりにたった女性が言う。うむ、とうなずいたレジアスの顔からは、すでに汗と疲労がひい
ている。
大した体力だ。
局員制服の時には膨れて見えたが、ランニング一枚の姿では、レジアスの身体が引き締まっているのがよ
くわかる。着膨れするのか、あるいは――。
そう見せているのか。
(惜しい。もしも中将という役職におられなかったら……いや、俺たちの世界にいらっしゃったら、間違い
なく教導隊に入っておられたはずだ……)
めったに居ない逸材が目の前にいた。
カイが見ていたのは、体力だけではない。
サンドバッグを正しく叩き続けるにはコツが居る。
的は蹴られ殴られ、一定していない。
天井から吊られているだけのサンドバッグは拳や蹴りをうけて挙動をかえる。
その微妙に狂う「芯」に、レジアスは拳と蹴りを当て続けていた。
225 :
OSGS:2007/12/07(金) 08:55:20 ID:H95CadG6
カイが見ていた限り、あそこまですさまじいラッシュでありながら、一撃も「芯」をはずしていない。
おもわず出してしまいがちな大雑把な拳は一つもなかった。
判断力と肉体のコントロールがずば抜けて優れている証拠だった。
「中将どの」
「なにか?」
「ぶしつけなお願いですが、今度……お相手していただきたい。そこのリングで」
久しく心が躍っていた。立場を刹那の間だけ忘れた。
だが、それはレジアスも同じのようだった。
「ふむ……。オーリス。次にここに来られるのは?」
「三日後の早朝が空いていますが……」
オーリスの名を聞いて、カイはやっと思い出した。彼女はレジアスの娘だ。何かの式典の際、レジアスの
後ろに控えていたのを思い出した。
「というところだが……カイ少佐。いかがか?」
「はっ。早朝ならば」
「楽しみにしている。ではこちらもお願いしようか。一応PTの操縦技術も身につけている。なにかの折に
ご教授願おう」
「は、はぁ――中将みずからですか?」
「うむ。手慰みだがな」
「……いえ、中将の能力ならば、並みのパイロットではたどり着けないところまで行くでしょう」
「世辞などいらんぞ。これもただの保険だ。いざという時に動けないのは、な。管理局地上本部の人間とし
てはほめられたことではないだろうが……」
「……」
「――後悔は先にたたん。使える力があるのならなおさらだ。使う方法くらい知っていても悪くはないだろ
う」
では、たのしみにしていると言い、レジアスとオーリスは去っていった。
去る男の背中にはどこか哀愁が漂っていた。
望む望まぬにかかわらず、男の背中は過去を語る。
一人のこされることになったカイは、再びサンドバッグにむかった。
「中将……本当にPTに乗ったら強敵になるぞ……ゼンガーや俺でも止められるかどうかという存在になる」
拳をサンドバッグに叩きつける。特殊戦技教導隊のなかでも、もっとも多くの部下を見てきたカイがそう
断言できるほど、レジアスの潜在能力は高い。
それ以前に。
覚悟が違う。
「心が躍る……とは久しいか。とりあえずは三日後の勝負だ」
カイがここに呼ばれた理由はもう一つある。それは管理局員へPT操縦技術指導だ。
そしてその逸材がいまさきほどまでここに居た。
惜しすぎる人材――レジアス・ゲイズ中将。
カイは呼吸を整え思考を止める。三日後の勝負、苦戦は目に見えていた。
「拳一つ……届くか」
サンドバッグを叩く音は、早朝まで続いていた。
が、二人の対決は実現することはなかった。
約束の三日後、その一日前に、カイとレジアスは、後にDG事件――人物名をあてドナ・ギャラガー事件
とよばれる、聖王教会過激派のテロ行為に巻き込まれ、約束の日にリングヘ向かうことができなかったのだ。
226 :
OSGS:2007/12/07(金) 08:56:46 ID:H95CadG6
――カイ・キタムラ
カイは両手をさすりながら、地上本部に急造したPT用の格納庫に駆け込んだ。
「カイ少佐!」
顔みしりの整備員がカイのゲシュペンストのリフトの上で、手を振った。
カイは応えながら、おろされてくるリフトを見上げる。
「状況はどうなっとる」
「いま量産型ヒュッケバインmkUが出たところです。他の隣接基地の格納庫はすべて破壊されてしまいま
した。出撃不可だそうです!」
「あの特機――餓鬼だな、あれは」
「特機? 少佐、どこでそれを」
「市街地で暴れまわっていればイヤでも目立つ。それに心当たりもある。さきに出ている連中と通信はでき
るか」
「ジャマーがかけられていますので……。少佐のゲシュペンスト。いつでも出られる状態です。ただ火砲は
訓練弾からの換装作業がおわっていません」
「了解だ。左腕はつかえるな?」
「それはもう――フルチューンですので威力も折り紙つきです」
降りてきた整備員といれかわりに、カイはリフトに飛び乗った。胸部のハッチまでリフトを上げる。十メ
ートル以上の縦移動を経て、コクピットに身を滑らせる。緊急時だ。背広はそのままだった。
「こちら管制! 先に首都防衛隊が出ていますが、そちらとも連絡がとれません!」
(魔導師との連携か。高町空尉やフェイト執務官やはやて嬢ほどの手錬が出ているとは思えん……逆に厄介
か?)
以前、ゲシュペンストの評価試験時に出会い、臨海空港火災でも戦場をともにした少女たちの姿を思い浮
かべる。
「そのクラスの魔導師がここに幾人も居れば、俺が呼ばれることもなかったか」
何十度、何百回。繰り返し続けたゲシュペンストのパイロット登録認証を行い。状態をあらわすコンソー
ルに視線をすべらせる。
武装チェック。
たよりの拳――左腕のプラズマステーク、ジェットマグナム――は正常に稼動する。
コクピットが微細に揺れた。動力の起動が完了する。
「チャーリー1。カイ・キタムラ機! でるぞ!」
227 :
OSGS:2007/12/07(金) 08:57:27 ID:H95CadG6
――???
特機。スーパーロボット。
一般的にはPTよりも巨大かつ、特殊な武装を装備した機体のことを呼ぶ。
その呼称はミッドチルダにあっても変わっていない。
――公開意見陳述会の一週間まえに現れた特機は、さまざまな形を持つ特機種のなかでもあまりにも異形
にすぎた。
その特機は皮膚のない骸骨と形容できる。フレームにはりついた装甲が骨のように見えている。動力部を
確保するためか、腹は妊婦のように膨れていた。
人体のパロディ、悪質な人体模型。スポットライトに点々と照らされた機体は、陳腐な怪獣映画のような
ギミックとなっている。
いかに強力な光量でも三十メートルの巨体をもつ特機のすべてを照らし出すことはできない。
これが暴れまわるのだ。
これが暴力を振るうのだ。
腕を振るい、ビルを破壊する。
逃げ出す人々の間近に足を振り落とす。
にごった瞳――否、黄色に光る頭部センサーが眼下で逃げ回る人々を睥睨した。
いま、『彼』は巨人だった。
異星人の襲来によって四肢を動かせなくなった『彼』。
『彼』の母親は不自由になった『彼』のために、新たな器を用意した。
パトロンである聖王教会の過激派によってつくられた不細工な特機が『彼』の新たな身体だった。『彼』
の足は、コンクリートに埋まる足だ。『彼』の腕は、構造物を叩き潰す腕だ。『彼』の目は、頭部の視覚セ
ンサーだった。
ああ、なんと深い母の愛情(狂気)!
思いのままに動ける感動(義体)!
世界が砕けたかのような開放感(錯綜)!
『彼』は飛び回る//特機が街を蹂躙する
『彼』は呼吸する//特機が散布型シールドを展開する
『彼』は号泣する//特機が腕の外側につけられたブレードを振るう
『彼』は赫怒する//特機が腕をふるいあげて、迎撃にでてきたPTを破壊する
「こ、このやろぉぉぉ!!」
『彼』の優秀な聴覚は首都防衛隊の空戦魔導師の慟哭を聞き取る。
魔導師が手持ちのストレージデバイスから魔力弾を撃つ。しかし、装甲を抜くまでの威力はなかった。
駆け出しの魔導師らしい。
勢いで飛び出してきたものの、後が続いていなかった。
圧倒的な力を持った『彼』に恐怖はなかった。
興奮物質であふれた感情は、羽虫を払うのに何の罪悪感も感じなかった。
べしゃり、と魔導師がつぶれた。
いや、手ごたえはあったものの死んではいまい。バリアジャケットは展開されていた。落下死までは責任
取れない。
次にきたのは、魔導師よりもはるかに大きなパーソナルトルーパー。だがこれも相手にならなかった。
シールド粉塵散布システム。特殊な粉塵を撒き散らし、必要時に凝固させる。
単純な物理装甲となるシールドは、熱量兵器や質量兵器の双方にも効果的だ。通信を妨害する効果もある。
電波障害はこのあたり一面に発生していた。
PTが撃ってきた。弾丸はシールドを抜けない。
腕の外側についているブレードがPTに埋もれた。
なおもしつこく迫るPTに、粉塵を吐きつける。
視界を奪われたPTが、あらぬ方向に視線を向けている。
『彼』は、右往左往するPTをあざわらう。
特機は巨体に似合わぬ静粛性で、PTの背後にまわる。
叩き潰す。撃ってきた。もう一度叩きつぶ――
228 :
OSGS:2007/12/07(金) 08:59:15 ID:H95CadG6
――カイ・キタムラ
危ういタイミングだった。
振り降ろされる特機の腕をかいくぐり、僚機をよこなぐりにかっさらう。
「僚機の要因を回収後、防衛隊のバックアップに回れ!」
特機の追撃をかわしながら、僚機を放り出す。
「急げ!」
「は、はい!」
撤退する僚機に向かおうとした特機の道をふさぎながら、ゲシュペンストに構えをとらせる。
右を手刀、左を拳。
「さて……」
コクピットから特機をにらみつける。間近にみた印象はやはり、カイの故郷に第187管理外世界の『餓
鬼』に酷似していた。
腹が膨れ、痩せ細った身体に骨と皮のみの、無限に満たされない欲望を持つ、子鬼。
(餓鬼か。とんちにしては気が聞きすぎている。へたなことを聞くべきではなかったな)
あの特機に載っているものの正体を知っているカイは無意識に奥歯をかみ締めた。
カイ・キタムラがドナ・ギャラガーという女性に出会ったのは数週間前のことだった。
仕事後にたちよったバーで声をかけられ、似たような境遇から――同病相哀れむ――から顔見知りになっ
た。
カイはドナがテロ事件の構成員だとは、もちろんしらなかった。
様子では、ドナもカイの本職はしらなかったようだ。普通の飲み友達として愚痴あっていた。
それが――数時間前に一変する。
いつものようにバーの奥の席にこもっていたカイは、ドナに銃口をむけられ、なだれ込んできた構成員に
捕らえられた。一暴れならできただろうが、バーの店主を人質にとられたカイは、おとなしく彼らに従った。
カイはドナの息子に出会った。自由に動かない四肢のかわりに、特機の身体を与えられた彼女の息子に。
「他人の子供を叱りつけるのは気が進まんが……ともかく、戦場を変えるか」
この市街地ではまともに戦えない。暴れまわるだけで被害がでる。該当区画の位置を確認し、カイはジェ
ットマグナムの出力を上げた。
「では……追いかけっこといこうか」
(娘ともあまりやってやれんかったが……まさかこんなところでやるはめになるとは)
カイはコクピットで苦笑いした。
――チンク
「やっぱり下がる……か。さすがの戦歴ですねぇ?」
防衛隊の戦力把握をおこなっていたクアットロが、護衛のためにともに出ていたチンクに声をかけた。
「ああ。ゼンガーやエルザムの所属していた特殊戦技教導隊。その上司とならばこれくらいの戦術は思いつ
くだろう」
実際、緑色のゲシュペンストはよく動いていた。いくら射撃武装が無いとはいえよく避ける。
「これですこし、防衛戦力が減ってくれるとありがたいんですけどねぇ。まあ、当初の目的はPTの破壊で
すから、もう用なしだとはおもいますけど」
「……」
緑のゲシュペンストは、じょじょに戦場を移行している。追いすがる特機に適度な反撃をあて、さらに下
がっていく。
なにもない――廃棄区画へ。
「じゃあそろそろ帰りますか」
「だが、まだあの子――アルフィミィがでるのだろう?」
「そうですけどぉ。アルフィちゃんなら、何されても無事に帰ってきますよ」
「かもしれん、がな」
229 :
OSGS:2007/12/07(金) 08:59:48 ID:H95CadG6
不気味なアインストの中で唯一人間の姿をしている彼女も、この戦場に出てきている。赤い修羅――
ペルゼイン・リヒカイトとともに、宵闇にまざっている。
「わたしは見届けてから帰るとしよう」
「そうですかぁ? じゃあ、わたしはドクターへの報告もありますのでおさきにぃ……。ああでも、チンク
姉さま?」
「なんだ?」
「同じような体型だからって、余計な仲間意識はいりませんよ」
「な……クアットロ!」
「おさきにぃ〜〜〜」
言うがはやい。クアットロは飛行魔法ですでに空中へ身体を投げ出していた。
「まったく……すこしは気にしているのだぞ……わたしでも」
「なにを気にしていますのです?」
ふ、と背中の空気がゆがみ、赤い修羅が現れた。音もなく。暗がりからいきなり顕れたかのように、ペル
ゼイン・リヒカイトはチンクの背後に出現した。
だれも気がつかない。
特機に相当する大きさを持っているにもかかわらず、人間たちはペルゼインに気がつけない。
「チンクねえさま……おなやみですの?」
「アルフィミィ――いや、なんでもない」
チンクはあたらしく妹分になった少女に微笑をむけた。
アルフィミィはペルゼインの中から出てくることができない。姿をみることができるのは、映像通信くら
いだ。そのせいで感情が読みにくい、と言ったのはノーヴェだったか。
チンクはアルフィミィを他の妹とおなじように扱っている。
彼女の正体については妹ともども――チンクの姉とクアットロは別のようだが――知らされていない。だ
が、彼女に付きまとう寂しさのようなものを、チンクは敏感に感じ取っていた。
「そっちの準備はおわったのか?」
「ばっちりなのです……」
「そうか」
チンクが背後のペルゼインにうなづいた。
緑のゲシュペンストが廃棄区画に到着する。
「さて……なにが出てくる?」
戦士の瞳でチンクは、あらたな戦場に目を向けた。
――???
――???
――???
――???
杖をかざしたアインストがいた。それは白と青の身体を持っていた。
剣をかざしたアインストがいた。それは金と黒の外殻を持っていた。
刃をかざしたアインストがいた。それは紫と白の甲冑を持っていた。
槌をかざしたアインストがいた。それは赤と紅の装甲を持っていた。
「つくって……しまいましたの」
ペルゼイン・リヒカイトの胎内で、少女は切なげに笑む。
あらたな同胞の誕生に祝福あれ――。
――地上本部地下超ド級秘密格納庫
この格納庫の存在自体が機密だった。
管理局の建前『質量兵器の原則封印』に真っ向から立ち向かう、そんな代物が格納庫には眠っていた。
ありとあらゆるものがこの空間には詰まっている。
ひときわ目立つ機体が一歩をふみだす。格納庫がその一足で振動した。
黒い山が動きだした――。
次回『黒い超闘士』。
230 :
OSGS:2007/12/07(金) 09:00:37 ID:H95CadG6
以上です。なんという自己満足。バイトいってきます。
>>230 げぇっ、最強魔導アインスト軍団!
次回も楽しみにしてます。GJ!
>OSGS
これはなんというきれいなレジアス。声は間違いなく玄田ボイス。元のキャラデザがデザなだけに暑苦しいのがなんと似合うことw
オヤジ趣味のはやてに、是非このマッチョ親父と対面していただきたい(ぉ
スパロボはαで止まってる私ですが、読むだけで楽しめるのは素晴らしいです。楽しみにしてます。GJ!
実は先日、ちょっとした嘘予告ネタが脳内に降臨して、つい先ほど完成させたのですが、投下してみてよろしいでしょうか・・・?
どうぞ
どうもです。ではいざ・・・
=スーパー嘘予告ターイム!!(を)=
なのはやはやての故郷である第97管理外世界「地球」。
その地球のとある地域において、強力なロストロギアらしき反応が確認されたため、調査に派遣される事になった機動六課メンバーたち。
その調査すべき土地の名は・・・「冬木市」。
そして、そこで行われていたのは・・・
「毎度おなじみぃ〜、聖杯戦争ぉ〜、聖杯戦争ぉ〜で、ございまぁ〜す♪ご不要になった夢希望、もう諦めた野望などがございましたら、お気軽に、コロシアムまで、おいで下さい〜♪・・ふっ、すげえぜ?」
・・謎の「虎聖杯(とらせいはい)」なる物を賭けて繰り広げられる、ドタバタバトルロイヤルであった!!
そして、この騒動の首謀者の名は・・・、「冬木の虎」こと、藤村大河(英語教師・独身)!!
「・・ってえ、タイガーって呼ぶなぁぁぁぁぁーー!!(がおおおおおん!!!」
果たして、なのは達はこの苛酷(?)な戦いを生き残る事ができるのか!?そして、虎聖杯は誰の手に・・・?!
「どきなさい、白き魔術師(メイガス)よ!!私はゆかねばならないのです・・・、再び、シロウたちの美味しいごはんを、食するためにっっ!!」
「そ・・・、そんな理由で戦ってるんですか、セイバーさん!??」
「リリカルなのはStrikerS」と「フェイト/タイガーころしあむ」によるクロスオーバー作品!
『フェイト/リリカル ころしあむ』!!
公開予定・・・、全くもって未定っす!!(を)
投下完了でありますっ!!(敬礼)
・・ううっ、思わず書いちゃったけど・・、やっぱだめかな、こんなクロス・・・?(汗)
>236
あの軽い雰囲気は楽しいと思うぞ。
>>236 GJですよ〜。
Fateは型月厨なる人達の大暴れから、クロスSS読者の皆様にとっては最早トラウマ…と前に聞いた覚えがあるのですが…
このノリなら、多分大丈夫…かな? 連載楽しみにしてます。
さて、自分も遊戯王GXとのクロスで小ネタを考えたのですが、投下よろしいでしょうか?
前回の究極嫁とは異なり、リリカル遊戯王GX氏の作品とは一切関係ありません。
…というか、これが関係あったら…何かこう、色々と怖い…(ぇ
ここは僻地だぜ
月厨すら来ないのさ
>238
あ……言わない方がよかったかと
ご存じとおもいますが、型月作品とのクロスがすでにあって、しかも平穏に動いている現状、あえてそのようなことは言わない方が良いとは思うのですが。
>>240 えっ!?
…既にあったんですか…?
すいません、全くご存じありませんでした。
そもそも型月がどんな作品を出しているのか、全く知らないので…いやはや申し訳ないorz
黄色の悪魔の人ですよねたしか
今しがた確認してきました。
月姫って型月作品だったんだ…名前しか聞いたことなかった…
…しかし…この空気では投下しづらい…orz
じゃあ、夜だな
関係無いけど、固有結界「タイガー道場」はみかん1個で発動するんだぜ?
>>230 GJ!
ゲー!アインストとなんてどうやって組んだんだんよ、スカwww
そして中将キター!
>>236 GJ
体がゆるゆるになりそうですねw自分は面白いと思います。
>>210 GJ
練られた文章、そして濃い文体がすごいと思います。
ただ、作者氏も気をつけていると思うのですが、クロス先の登場人物がなんだかすごすぎて
なのは勢が踏み台になってしまわないかと、少し不安です。
以前、『なのはだけジョジョ風味』を書いてた者です。
短い小ネタですが、なのはだけジョジョ風味inStrikerSを挿絵つきで投下してもよろしいでしょうか?
GJ!
まあPTやAMが使えるならレジアスはそっちに力入れるよな。
あと修羅王様マダ〜?
なんか空いてそうなので投下します。すぐ終わります。茶菓子程度に楽しんでくださいw
なのはだけジョジョ風味
<スターライト・ストライカーズ>
第九話『たいせつなこと それは『覚悟』ッ!』
ティアナとスバルの戦法をなのはがストレートな戦闘で打ち破る形で終わった模擬戦―――。
その模擬戦の最中で、無謀な戦法に対する高町なのはの叱責と気迫に恐怖を覚えるティアナだったが、なのは自身はそれ以上訓練の後にも深く追求を行う事はなかった。
なのはが意図の読めぬ沈黙を貫く中、スバルとティアナのコンビの間に、そしてティアナ自身の心の中に、不穏な空気が漂い始める。
そして、次の訓練が行われるより早く、機動六課に出撃の命令が下った。
スカリエッティの放った空戦型ガジェットが出現したのだ。
現場に向かうなのは、フェイト、ヴィータの三人と、隊舎で待機のシグナムとフォワードの4人。
未だ、模擬戦でのなのはの様子に対して動揺を隠せぬティアナは、ヘリポートで唐突になのはから『出動待機から外れる』ように告げられるのであった―――。
「……その方がいいな。そうしとけ」
「今夜は体調も魔力も、ベストじゃないだろうし……」
「―――言う事を聞けない奴は『使えない』って、ことですか?」
優しげな声で諭すなのはの言葉を遮り、ティアナが震える声で呟く。その声色は自身が思う以上に冷淡なものだった。
これまで高町なのはを尊敬する上司として、魔導師として捉えてきた自分が、よくここまで敵意の滲む声を出せるものだと僅かな驚きすら感じていた。
しかし、なのはに告げられた言葉によって激発した感情がどうしても抑えきれない。
怒り、悔しさ、そして妬ましさ。持つ者が持たない者に掛ける言葉は常に劣等感を刺激する。ティアナは黒い感情のままに唇を噛み締めた。
そして、そんなティアナの暴言に近い台詞に対して、なのはが取ったのはまたしても沈黙だった。
なのはは怒鳴るわけでも叱責するわけでもなく、ただティアナを静かに見つめている。
「現場での指示や命令は聞いてます。教導だって、ちゃんとサボらずにやっていますっ」
何を言ってもただ黙って見ているだけの反応が何よりも雄弁に自分の行為を責めているように思えて、ティアナはなのはを睨むように見つめ、捲くし立てた。
反抗の意思を感じたヴィータが一歩踏み出すのを、なのはが片手で制する。
「それ以外の場所での努力まで、教えられたとおりじゃないと駄目なんですか!? ―――私は、なのはさん達みたいに『エリート』じゃないし」
「―――!」
その言葉に、それまで静寂を貫いていたなのはの表情が波紋のように僅かに揺れた。
ティアナは気付かない。彼女の慟哭のような言葉に気を取られていたスバル達も、ティアナの物言いに怒りを募らせていたシグナムさえ、そのなのはの変化には気付かなかった。
ただ一人、高町なのはをよく知るフェイトとヴィータだけが彼女の反応に気付いた。
「スバルやエリオみたいな『才能』も―――」
表には出ないなのはの反応を感じ取れるヴィータが冷や汗を流し始める中、ティアナは『禁句』とも言える言葉を続けていく。
「キャロみたいな『レアスキル』もない!」
「お、おい、それ以上はよせ……」
たまらず制止しようとするヴィータの声すら耳に入らず、頭に血の上り始めたティアナはなのはに勢いよく詰め寄った。
「少しくらい無茶したって……『死ぬ気』でやらなきゃ、強くなんかなれないじゃないですかっ!!」
バギィッッ!!!
「うあっ!」
次の瞬間、ティアナは殴り飛ばされた。
しかしそれは、上官に食って掛かるティアナを修正しようと身を乗り出したシグナムの手によってではなく―――『高町なのは』本人の拳によるものだった。
一切遠慮の無い、虫を振り払うような裏拳の一撃がティアナの体を吹き飛ばして地面に叩き付けた。
果たして、その可憐な細身に、普段の温厚な物腰に、一体どうしてこれほど凶悪で慈悲の無い威力が込められているのか。呆気に取られ、ショックすら受けるスバル達の前で、なのははゆっくりとティアナに歩み寄った。
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
ティアナを含む新人達は呆然とした。完全に変貌した、なのはの強烈な気迫と雰囲気に!
見下ろすなのはの瞳に、普段の時に優しく時に厳しい教導官としての暖かい光はない。宿っているのは、鮮烈なまでの『怒り』 戦士としての眼光だった。
「な……なにを?」
口から流れる血に触れてようやく恐怖を覚え、知らず声が震えるティアナが呟く。
その返答は顔面を襲う無言の蹴りだった。
慈悲や容赦など欠片も無い靴底がティアナに這い蹲らせる。なのはは罵声を浴びせた。
「この腑抜け野郎がッ! なんなの!? 今の情けない言葉はッ!!」
カエルの潰れるようなうめき声を漏らすティアナの様子など気にすることも無く、なのはは怒りのままに何度も足を踏み降ろした。
「あぐっ! 痛いっ、やめ……やめてぇ!」
「な、何をするんですか!? やめてください、なのはさんっ!!」
「やめとけ、今のなのはは完全にキレてる。あーもう、やっぱりこうなっちまったよ……」
憧れの人物の狂態とも言える姿を見て、ほとんど放心状態だったスバルがパートナーの悲鳴を聞いて我に返る。慌てて止めようとするが、それは頭痛を堪えるような表情のヴィータによって遮られた。
フェイトはヴィータより更に心得たもので、ただ静かになのはを見守っている。
エリオの顔は青褪め、体は硬直し、キャロに至っては恐怖とショックで涙さえ浮かべていた。
「ヴィータ副隊長も止めてください! いくら上官に逆らったからって、あんな……!」
「バカ、逆らったくらいでアイツが怒るもんか。自分事なら唾吐きかけられたって無視するような奴なんだ」
「じゃあ、どうしてあそこまでするんですか!?」
「見てりゃわかるよ。お前らも聞いとけよ―――アイツは優しいけど、『甘くはない』んだ」
そして、ようやくなのはが蹴りを止めた。ティアナは体を丸くして蹲り、遅い来る痛みと、何よりなのはの怒りの感情に震えていた。
魔導師の訓練によって怪我や痛みなど日常茶飯時とはいっても、風紀や倫理の徹底管理されている時空管理局の教導隊において過剰な体罰はご法度である。
ティアナもまた、上官から体罰を受けた経験などないルーキーであった。
叱責を受けたことはあれど、血が出るほど殴られた事などない。管理局においてそこまでの行為は暴力なのだ。
しかし、その常識はなのはには当て嵌まらなかった。
拳に一切の容赦などなく、踏みにじる力には殺意があるとさえ錯覚する。
それはなのはの許さないものの一つである『甘ったれた精神』であったが、初めての暴力に晒されたティアナの心はそれまでの不満や怒りを押しつぶして恐怖だけが支配していた。
「ご、ごめんなさい、ごめんなさい! も、もう無茶はしませんから……!」
とにかく今はこの怒りから逃れたい一心で、ティアナは涙を滲ませ慌てて自分の意見を撤回した。
しかし、もちろんそれがなのはにとって更に怒りを煽る原因であることは明白だった。
ティアナの胸倉を掴み上げ、恐怖と痣で満ちた顔を覗きこむ。
「ああ……たしかにそうだね……。『焦り』でする『無茶』にいいことなんてない。
組まれた訓練にだって先駆者が行ってきた『実証』と『意味』がある。従う事は大切だ!
―――だけど、真のエースを目指すなら遅かれ早かれそんな規格を飛び越えた行動を取らなきゃいけないのは、わたしだって承知の上だよ」
なのはは一言一言、出来の悪い生徒に噛み砕いて言い聞かせるように口にした。
だが、未だ怯えが大半を占めるティアナは僅かな疑問を浮かべただけで、ただ震えることしかしない。
舌打ち一つして、なのはは再び手を上げた。
「まだわからないの、兄っ子野郎のティアナ!」
「ひ、ひィ! も……もう殴らないでぇ」
今度は殴らなかった。
なのはは振り上げた手をティアナの胸に突きつけ、しっかりと視線を合わせて言葉を紡ぐ。
「いいッ! わたしが怒ってるのはね、てめーの『心の弱さ』なの。ティアナ!
そりゃあたしかに、『素手』で魔法を止められたんだ、衝撃を受けるのは当然なの。次は自分が『反撃』を受けるんだからね。わたしだってヤバイと思う!」
なのはの言葉を聞きながら、ティアナはだんだんと理解していった。
彼女の『言葉』が、頭ではなく心に響いてくることに。その込められた強い想いに。そして、自分を見る瞳に憎しみや殺意などのそれではなく、ただ純粋な叱責する為の『怒り』が宿っている事実に!
ティアナは恐怖も忘れ、ただなのはの言葉に聞き入った。そして、それはスバル達他の新人達も、彼女の説教を経験したことのあるフェイトやヴィータ達さえそうだった。
「だけど! 機動六課の他の奴ならッ!
あともうちょっとでノドに食らいつけるって『魔法』を決して解除したりはしないのッ! たとえ腕を飛ばされようが、足をもがれようともねッ!」
「「「え゛っ!?」」」
傍で聞いていた新人達に加え、盗み聞きしてたヴァイスとシャリオが思わずギョッとした表情を浮かべた。『え、自分達そこまで過剰な信頼されてんの?』って感じに、共通して内心で必死に首を振った。特に戦闘派ではないシャリオは涙目だった。
そんな周囲の反応などお構いなしに、なのははティアナと二人だけの世界を展開し続ける。
「アナタは『兄っ子』なんだよティアナ! ビビったんだ……甘ったれてるんだよ! わかる? え? わたしの言ってる事。
『才能』や『レアスキル』のせいじゃあない、心の奥のところでアナタにはビビリがあるんだよ!」
一通り叱責すると、なのははティアナの腕を掴んで、力強く引き上げた。
立ち上がったティアナは、もう泣いてはいない。ただ、泣き喚くことを怒られた後の迷子のような頼りなさげな表情で、縋るようになのはを見つめている。
なのははティアナの首の後ろを撫でるようにして引き寄せ、もう片方の手をそっと頬に添えた。その手つきは、先ほどまでとは違い、優しさに溢れている。しかし決して弱くはない。
「『成長して』! ティアナ。『成長』しなきゃあ、わたしたちは『栄光』をつかめない。次元犯罪者たちには勝てないッ!」
http://shabernack.orz.hm/lyrical/rh/gebo5089.jpg
最後にそう締めくくり、ティアナから体を離してなのはは深呼吸した。
完全になのはの話に聞き入っていたスバル達と、苦笑するヴィータ、ただ静かに微笑むフェイト、そして完全に振り下ろす先を失くした拳をフラフラさせるシグナムを見渡し、なのはは最後にもう一度戸惑いの抜けないティアナを見る。
「―――予定を変更するよ。今回の出撃に、ティアナを連れて行く!」
「「「ええっ!?」」」
驚愕の声はティアナを含む新人達からのみ上がった。
なのはという人間をよく知るヴィータとシグナムは大きくため息を吐き出すだけに留める。彼女の無茶な決断は慣れ親しんだものだからだ。
「じゃあ、はやてにそう申告しておくね。なのは」
フェイトだけは何もかも分かっているような穏やかな微笑みを浮かべて、素早く自分の作業を開始した。
「全てわたしの独断にしておいて。
―――今言ったことは『頭』ではなく『心』で理解しなきゃあ意味がない。ティアナ、アナタについて来る『覚悟』はある? わたしは、出来ている」
「は……はいっ!」
戸惑いは隠せぬまま、しかし返事だけは力強く返すことの出来たティアナに初めて笑いかけ、なのはは風を切って踵を返した。
こうして、ベテラン魔導師三人に一人のルーキーを加えた予想外の戦力が、嵐の予兆漂う夜空へと出撃するのであった―――。
バ―――――z______ン!
プロシュートの兄貴!?
支援
シグナム涙目www支援
以上、アホ小ネタです。他の人の真面目な作品の箸休めとしてご利用ください。
StSはストレスたまる展開が結構あるので、こういうジョジョネタでのIF展開でスカッとさせたいという気持ちになるんですよね。
一応、StS本編通してやってみたいなぁという気もしてるんですが、クロスとしては邪道なので及び腰。やっぱ駄目かな。
何より、このなのはさんはヴィヴィオを殴ってしつけそうなので危険ですw
あー、真面目に支援絵描かなきゃw
>>258 ディ・モールトGJ!
確かになのはさんの発言にも一理はありますが…そこまで言っちゃもうファンタジーじゃないwww
明日PCを触るまで流れないでくれよ、支援絵!
さてと…風呂入ってから、例の遊戯王単発を書いてもよろしいでしょうか?
というか、
>>258氏に先になのはさん豹変ネタをy(ry
おまけにこっちは欝展k(SLB
>>258 GJです。ジョジョ絵なのはさんに違和感なくて吹いたwwwww
>>259 いつもながらおいしいキャラですね支援。
私は今から飯で外出ですけど。
261 :
×DOD:2007/12/07(金) 20:35:55 ID:XkAYnUYs
>>258 兄貴の言葉が『心』で理解できたッ!
そして絵に吹いたッ!wwwwww
あれ?でもこの展開ってなのは死亡フラグなんj
>>259 「投下した」なら使ってもいいッ!
昼に尻込みしてから数時間…普段ならどんな空気でも、臆せず投下していた…
どうやらたちの悪い胃腸風邪のせいで、勇気を忘れていたみたいだぜ。
・再突入後の話。なのはさんがどうにかこうにかして、十代組に仲間入りしていました。
・スバル達まで来ているかは…不明、としておきます。
・なのはさんは、あの「怒」とか「疑」とか(名称失念)の洗礼を受けています。
・それに抵抗しようとする描写がありますが…そっちの方が書きやすいんだッ!
・何というか、最早AIDA並の精神の振れ幅です。
・GXなのに欝。推奨BGMは「ひぐらしのなくころに」。豹変したなのはさんが見たくないという方は、閲覧をご遠慮ください。
以上の注意点を理解し、同意したならば、勇気と共に進め!
黒い宵闇の中、岩場を歩く白い人影が1人。
栗色の髪をツインテールにし、右手には桃色と金で塗られた、魔導師の杖。
防護服・バリアジャケットを身につけたまま、その女は手頃な石に腰かけた。
「…はぁ、はぁ…はぁ…」
ずっと歩き詰めだったのか、女の息は荒い。
女はそんな息を整えると、1人夜空を仰ぎ見る。
いくつもの星々。そしてその中でも一際目立つ、異様なまでに巨大な彗星。
(どれだけ経ったんだろう…)
女は思う。
この奇妙な世界に飛ばされ、帰る手立てもなく、仲間達ともはぐれた、1人の旅。
いつになったら皆と再会できるのだろう。いつになったら帰れるのだろう。
否。
果たして皆に会った時、自分は彼らと共に歩めるだろうか。果たして帰る機会が生まれた時、自分はそのまま帰れるだろうか。
(…できるはずないか…)
今の自分に、ぬけぬけと仲間達の隣に立つことはできそうにない。
今の自分に、ぬけぬけと皆の待つ世界へ帰ることはできそうにない。
何故なら、
「――何だ、お前?」
「っ!?」
いつ頃からそこにいたのだろうか、女の目の前には、1体の悪魔が現れていた。
ミストデーモン。攻撃力2400の上級モンスター。
「見たところ魔法使いみたいだが、見慣れねぇ顔だな…」
漆黒のデーモンは、爛々と輝く赤い目で、女の顔を覗き込む。
(このモンスター、パッと見ではかなり強そうだけど…)
ただでは逃れられないと悟った女は、反射的に相手の力量を計る。
そしてその瞬間、「しまった」、と思った。
しかし、そう後悔した時には、既に遅かった。
「お前、ひょっとするとデュエリストじゃないだ…」
「ねぇ」
女の声が、ミストデーモンの詰問を遮る。
「あん?」
不意に話しかけてきた女に対し、ミストデーモンは不満気な声を上げる。
目の前の女からは、いつの間にか、先ほど空を見ていた時までの物憂げな表情が消えていた。
その代わり、淡々と相手を見定めるような無感情な視線と、冷酷な冷たい微笑みが貼り付いていた。
「貴方、強いの?」
その顔には、「虐」の一文字が赤々と輝いていた。
三大鬱ラノベ作家大好きですが何か? 支援。
……『洗脳かと思いきや本人の意思だった』って何があったっけなあ……
>>258 ちょwwGJwww
らし過ぎるw
「何だ急に?」
いきなり訳の分からないことを尋ねられ、ミストデーモンは逆にその意味を問う。
相手の豹変は特に気に留めていないようだ。もとより今会ったばかりの人間の変化など、分かるはずもない。
「言葉通りだよ。私は貴方が強いかどうか、それが知りたいの。ねぇ…貴方は強い? 弱い?」
対する女は、手にした杖を槍のような形に変え、その穂先を悪魔に向ける。
「ヒャハハハハ! 見くびるなよ! 俺は覇王軍でも指折りの悪魔だぜ」
敵対の意志ありと判断したミストデーモンは下品な笑い声を上げると、その太い腕を持ち上げる。
「少なくとも、お前みたいな細っこい女1人へし折るぐらいはわけな…」
「…そう」
閃光が走った。
轟音と共に、ミストデーモンの腕が吹き飛ばされる。
「ギ…ギャアアアアアアッ!」
直後に襲ってきた激痛に、ミストデーモンはその身をよじらせた。
「なんだ、それぐらいか…じゃあ…」
相手の底が見えた瞬間、女の品定めをするかのような目に、嗜虐的な光が宿る。
「好き放題いたぶらせてもらうね」
邪悪な笑みを浮かべ、女は杖から、尚も砲撃魔法の光を放った。
黒い悪魔が原型も分からぬ形までその身を崩され、命の消えた身体が自壊した後、女は杖を元の姿に戻す。
「…ぷっ…くくく…」
そして、不意に口元を歪ませ、そこから抑えた笑い声が漏れたかと思うと、先ほど見上げた夜空に向かい、思いっきりその口を開いた。
「…あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!」
白いバリアジャケットの女は、狂ったように笑い出す。
加虐心を満たしたのか、その美しい顔から、「虐」の文字がすっと消えた。
「あはははははははははははははははははははは! あははははははははははははははははははははははははははは!」
女の頬を涙が伝ったのは、それが消えた直後だった。
それでも女はそれを拭うこともなく、ひたすらに声を上げ続ける。
「あはははははははははははは! 私…またやっちゃったよ! あはははははははははははははははははははははははははははははは!」
狂喜の声は、いつしか悲しい笑いに変わっていた。
266 :
×DOD:2007/12/07(金) 21:06:58 ID:XkAYnUYs
支援
ひとしきり笑い終え、落ち着いた女は、元の石へと座り込んだ。
「………」
しばらくの間、女は無言だったが、再びその目に涙が込み上げてくる。
「…くっ…うう…っ…」
抑えた嗚咽が、無音の闇の中に溶け込んでいった。
こんな自分に、一体何が望めようか。
誰か敵に会う度に、感情が爆発する。
強ければ強いほど、戦いを楽しみたくて仕方なくなる。弱ければ弱いほど、虐殺を楽しみたくて仕方なくなる。
「う…ぁ…あああああああああ…っ…!」
遂に堪えきれず、女は思いっきり泣き出した。
こんな自分が、仲間達と共にいられるものか。こんな自分が、元の世界に帰れるものか。
(こんな私が…)
高町なのはを名乗れるものか。
やがて女――なのはは、笑い疲れたのか泣き疲れたのか、そのままゆっくりとまどろんでいった。
明くる日も、なのはは1人だった。
暗い空の下を、1人歩いていた。
今のなのはにできることは、せいぜいそれぐらいだった。
と、不意に上空から、巨大な羽音が鳴った。
「!」
降りてきたのは、金の身体を持つ異形の竜・カース・オブ・ドラゴン。
そして、その背中に跨がっていたのは…
(覇王…十代君…)
一目で理解できた。豪華な彫金の施された漆黒の鎧に、背中に羽織った見事な赤いマント。
何より、見知った少年の冷たい瞳が、その存在を物語っていた。
「お前か。我が兵士を次々と殺しているのは」
十代の言葉には何の感情もない。伝わるのは、覇王の覇王たる所以――圧倒的な闘気のみ。
なのはの身が震える。
そこらの低俗なモンスターとは明らかに異なる、高潔かつ絶対的な力。
戦いたい。
胸が疼く。
戦って試したい。
なのはの心が叫ぶ。
自分の攻撃にどう応えるのか、それを見てみたい。
その冷徹なまでの自信を、完膚なきまでに叩き壊してやりたい。
(駄目…)
仲間だった十代を嬉々として手にかけるなど、なのはには到底許せることではなかった。
なのは必死に己の内なる激情と戦い、抑え込もうとする。
戦いたい。
(駄目…!)
戦わせろ。
(駄目、駄目、駄目…ッ!)
しかし、そんな抵抗など無意味だ。
闘争を求める負の心は本能。闘争を抑える正の心は理性。
どちらが強いかは明らかだ。何より、抑えられるのなら、今まで苦労していない。
「…ねぇ」
あの声が響いた。
冷たく、相手に問いかける、あの声が。
「虐」の一文字が、冷酷な笑顔に貼り付いた。
「貴方…強いの?」
投下終了。
…そっか…本気で欝を書くって、こういう気分なんだ…
以前、「魔王なのはさんを出すならこういう感じでいいんでない?」と出したアイデアをそのまま使ってみました。
ただ、なのはさんの感情が、
「闘(戦いを求める本能)」から「虐(相手をいじめたい欲求)」に変わったことで、えらい形に…こっからどうなるんだろ…
…まあいっか、読み切りだし!(ぇ
…もし、リリカル遊戯王GX氏がこの案を使われる予定でしたら…ごめんなさいorz
>>268 肝が冷えるってレベルじゃネーぞ!?ww
ともあれGJでした。本当に冥王になってしまわれて・・・・w
>>268 GJ!
……原作のGXって、こんな話じゃない、です、よね……?
>>268 ミストデーモン…
場合によっては何もしなくても勝手に死んじゃうんだけどね、彼って
真祖の人ですが、全職人GJ!だけど分かるネタがデビルメイクライと
ジョジョと遊戯王しか分からない・・・orzダメダナァオレ
んで、分からない人といると思うので一応人物紹介を
宗方怜士・・・三木原慧一という人の書く仮想戦記に必ず出てくる主人公的存在
作品が変わるたびにと性格や作戦の仕方がえげつなくなります。
夏目尚康・・・三木原氏の「クリムゾンバーニング」に出てくる人物、苦労人
チャールズ・ベイツ・・・三木原氏の「超弩級空母大和」に出てくる宗方のライバル的存在
だけど常識人すぎて正直かすんだりする
カール・ライカー・・・同上の作品に出てくる士官、ちなみに司令官怒らせて営倉に叩き込まれました。
斉藤三弥・・・小林源文氏の漫画に出てくる自衛隊の統幕議長、苦労人
佐藤大輔・・・同上に出てくる自衛隊士官、某作家とは同姓同名だけだそうだ
ゲーレン、リッチェンス、リンデマン、フレイザー、シェルドン・・・全員WWUに存在した軍人
型月として、某同人読んで軋間をASに放り込んでみたくなった・・・
GJ!
ああ、心の一面が大暴走ですな
>>270 原作は主人公が友を情け容赦なくオーバーキルで消滅させてたりする鬱展開があったぐらいだし
嫌な方向性へ傾くとこんな感じのはず
274 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/07(金) 21:56:27 ID:WzER5rYv
>>268 そしてなのはさんは超融合の餌食になり消滅?
デビルメイクライ3クロス十二話できました、今回はスバティアがメインですっていうかスバル主役、あとノーヴェも出ます。
投下
いけね書くの忘れた、反目氏GJです、では投下していいですか?
OK
では投下します、デビルメイクライ3クロス十二話フォワード対悪魔第二段。
魔法少女リリカルなのは Strikers May Cry 第十二話「双銃の使い手と似姿たる魔影 鉄拳の少女と白滅の魔獣」
「あなた達を保護します!」
言葉と共に、双銃を繰る少女ティアナ・ランスターは最後の敵、\の数字を持つ赤毛の戦闘機人に愛機クロスミラージュを突きつけた。
ティアナは敵の策にはまり、たった一人結界により隔離されたビルで三人の戦闘機人との交戦を強いられる、しかし見事に敵の攻撃パターンを見抜き二人の機人を撃破した今、最後の一人を確保しようと銃を向ける。
「保護だ? ふざけた事言ってんじゃねえぞお!!」
姉妹を倒され、数的な優勢を崩されたナンバーズ9番ノーヴェは猛る怒りに“アーカムに与えられた力を”解放した、次の瞬間ノーヴェから絶大な瘴気と共に魔力が溢れ周囲のコンクリートを砕きながらティアナに強烈な蹴りを出す。
ティアナは大振りな蹴りを軽く避けて距離をとり、クロスミラージュに魔力を込めてノーヴェに魔力弾を数発放つ、しかしノーヴェはその魔力弾をいとも簡単に手で叩き落す。
「凄い力だな…あのハゲ良いモン出すじゃねえか。こうなりゃもうてめえの相手なんかしてらんねえな」
そう言うとノーヴェは空を駆ける足場エアライナーを形成し天井のコンクリートを破壊し高速でその場を去る。
「くっ…逃げられた!」
自信をもって放った魔力弾を軽く弾かれた事で動揺し敵を逃がしてしまったティアナは臍を噛む思いで、既に姿を消した敵に視線を送る。
「待っててくれよチンク姉…あたしが今助けに行くから…」
結界の消失していたビルから飛び出し、最高速度でローラーブーツを加速させるノーヴェは囚われの姉を想い一人呟いた。
「地上本部管制。こちら機動六課所属スターズ04ティアナ・ランスター。敵戦闘機人を確保しました回収に人員の派遣をお願いします」
ティアナは逃げた敵は防衛に当たった他の局員にまかせるとして、無力化した二人の戦闘機人を回収させるべく地上本部に通信を入れていた、その彼女の背後から強い魔力と瘴気を宿した主無き影が静かに迫る。
「えっ?」
振り向いた時には既に彼女は襲いかかる影に別異層の結界に囚われた。
「ここは…また結界なの? でも別空間の異層って事はさっきの術者とは違うって事よね」
ティアナは円形の出口の無い結界の中でどこかに潜む敵の気配を探りながらデバイスを構える、その彼女の前に床に溶けていた魔力と瘴気が人型を成して姿を現す。
「これって…私?」
それは全身黒一色の影であったがティアナと同じ容姿をしていた、影と成り相手の姿を奪う黒き悪魔“ドッペルゲンガー”それを見れば死ぬという言い伝えどうり姿を写した人間を確実に死に至らしめる悪夢の具現者であった。
ティアナが影の悪魔と対峙していたその時、敵の手に落ちその手駒となった姉ギンガに勝利し正気を取り戻させたスバルは相棒であるティアナと合流すべく宙を駆ける道ウイングロードを展開し空を駆けていた。
そのスバルの前に見覚えのある赤い髪の少女が現れた、以前地上本部で交戦した\の数字を持つ戦闘機人ノーヴェである。
「てめえか…」
ノーヴェはその金色の目に空気が歪むと錯覚させる程の殺気を込めてスバルを睨んだ、全身から殺気と瘴気を発するノーヴェにスバルは以前とは違うその様に思わず身構える。
(これは魔力? 戦闘機人がなんで? もしかして新しい武装なの?)
思考を疑問に溢れさせるスバルにノーヴェは脚部の武装ジェットエッジの回転刃を唸らせながら吼えた。
「てめえとあの悪魔野郎のせいでチンク姉が…チンク姉を助けるまでこの力は温存するつもりだったけどやめだ。ハチマキてめえは今ここでぶっ殺すっ!!!!!」
言葉を吐くと同時に凄まじい魔力波動を発しながらノーヴェは跳躍し踵落としを仕掛ける、スバルはその攻撃を苦も無く避けるがその効果に愕然とする。
スバルに避けられたその蹴りは、近くの道路にめり込みアスファルトは衝撃に半径20メートル以上のクレーターを作る。
「この破壊力…凄い」
「へっ! どうだこの威力。この前のあたしとは違うんだよハチマキ!!!」
ノーヴェは跳躍と共に手甲のガンナックルにより光弾を雨のように射出した、スバルはこれを防御障壁で防ぐが前回の交戦時を遥に上回る威力に障壁を砕かれさらに飛び蹴りを受けて吹き飛ぶ。
「くっ!」
しかし後方に飛ばされたスバルはすぐさまウイングロードを形成し体勢を立て直すと拳を構えてノーヴェを見据える。
(直接接触して分かった。この力は固有技能じゃない。なにか別の強力な魔力ソースが体内にあるんだ…バージルさんの教えてくれた剄と拳の技が敵の動きを教えてくれる)
「ありがとうございますバージルさん…」
今は別の世界を歩んでいるだろう師に感謝を想い、スバルは冷静に眼前の敵を見る。
(凄い魔力…ロストロギア級の強力な魔力ソースなら過度の衝撃は自殺行為。どうやって倒せば…)
攻略法を考えるスバルにノーヴェはエアライナーを作り出して再び迫る、超高速で繰り出された絶大な威力の蹴りを捌きながらスバルは“読む”敵の動きを技をそして体内から感じる強大な魔力波動を。
(触れれば伝わってくる、次の動きが繰り出す技が。後はこの魔力の源の正確な位置が分かれば…)
「おらあああ!!!」
しかし、無数に放たれるノーヴェの渾身の蹴りが遂にスバルに命中し彼女の身体に衝撃と激痛を与える。
「くううっ!! でも掴んだっ!!」
強烈な打撃に顔を苦痛に歪ませながらもスバルは確信する、敵の持つ力の源を、願いを叶える魔の宝石の位置を。
「訳わかんねえ事ほざいてんじゃねええっ!!!」
ノーヴェは今までで最大の魔力を込めた後ろ回し蹴りをスバルに放つ、ジェットエッジの加速能力を加えたその破壊力はリミッター下ならば高町なのはの防御すら砕く程の威力を秘めていた。
スバルはその攻撃に防御障壁すら展開しない、このまま当たればスバルの頭はスイカのように砕け散るだろう…しかし命中したのはノーヴェの蹴りでなくスバルの拳だった。
いかに早く重い攻撃だろうともバージルの格闘の技からすればあまりに稚拙、スバルはカウンターの拳をノーヴェの腹部に当てて魔法陣の展開と共に技の名を叫ぶ。
「ディバインバスター!!」
封印効果を付加されたスバルの大技がノーヴェの身体に仕込まれた魔石に放たれた。
「ぐああああっ!!!」
体内のジュエルシードの力を封じられたノーヴェはスバルの放った青い閃光に吹き飛ばされてひび割れたアスファルトの上を転がった。
「やった。聴剄やっぱり凄い技です…バージルさん!」
スバルは勝利の喜びと師の技に感嘆の言葉を漏らす、そんな彼女の前に先ほど倒れた筈のノーヴェがふらつく足を必死で制して近づいた。
「まだ…終わってねえぞ…ハチマキ…」
「そんな!?」
スバルの最高の技を喰らってなおノーヴェはその目に闘志を燃やし、ボロボロの身体を引きずりスバルに迫る。
「もう戦うのは止めて! これ以上無理したら本当に危ないんだよ!!」
傷ついた身体でまだ戦おうとするノーヴェをスバルは必死で止める、そのスバルの言葉にノーヴェは静かに答える。
「死ぬのなんか恐くねえ…てめえを倒して…早くチンクを!」
その言葉を吐くと同時にノーヴェは傷ついた身体を酷使して拳を放つ、しかしその拳は呆気なくスバルを空振り反動でノーヴェの身体をまたアスファルトに転がす。
「大丈夫!?」
スバルは思わず心配して声をかける、帰ってきたのは先ほどの覇気が嘘のような弱弱しい言葉だった。
「返せよ…」
「えっ?」
「チンク姉…ぐすっ…返せよお…」
ノーヴェは泣いていた、その金色の瞳に涙を溢れさせて自分の無力と奪われた家族の悲しみに号泣する。
「えぐっ…チンク姉を返せよお…ぐすっ…ひどいことすんなよお」
まるで母親とはぐれた幼い子供のように泣きじゃくるノーヴェを見てスバルは思う。
(この子同じだ。あの時のギン姉を奪われた時の私と…怒りが憎しみが悲しみが…押さえ切れなくて暴れるしかなくて…他人も自分も傷つけて)
「約束するから…」
「…えっ?」
スバルは泣き続けるノーヴェの手を取り優しく、しかし強い意志を込めた言葉で語りかけた。
「あなたのお姉さんには酷いことなんて絶対させない。だから戦うのを止めて…そうすればあなたをお姉さんに会わせられる」
「そんな事っ! 信じられる訳が…」
ノーヴェは否定の言葉を繋ごうとしたがスバルの強く優しい眼光と言葉に遮られる。
「もしその時は私を殺して良いから。だから信じて」
一片の曇りなき瞳に射抜かれノーヴェは言葉を失う、スバルの眼光はその意思の強さをノーヴェに感じさせた。
「ぐすっ…約束だぞ…ハチマキ…破ったら殺すかんな…」
「スバルだよ」
涙を拭うノーヴェにスバルは満面の笑みで答える。
「…スバル?」
「スバル・ナカジマ私の名前。お前とかハチマキじゃなくて名前で呼んで。そうすればきっと分かり合えるから。だからあなたの名前も教えて?」
「…ナンバーズ9番…ノーヴェ…」
「ノーヴェか…いい名前だね。約束は絶対守るよだからもう泣かないで」
「えぐっ…泣いてなんかねえよ」
支援っと。
思えば何でティアナはこの時保護なんて言ったんだ?挑発か?支援
まだ涙を流すノーヴェに肩を貸しスバルは地上本部魔道師の控える防衛ラインに向かって歩きだした。
(ティア…待ってて。この子を預けたら直ぐに行くから)
スバルはきっとまだ何処かで戦っている相棒に心中で言葉をかけた。
「きゃああっ!!」
闇と影に支配された空間にまた少女の悲鳴と鮮血が流れる、ティアナの身体をドッペルゲンガーが模倣した彼女と同じ射撃魔法が貫いた。
戦いが始まってからというものドッペルゲンガーはまるで殺さないように注意して戦っているようだった、それは圧倒的な力量差から来る遊び…まるで小動物にでもするように悪魔は少女を嬲り甚振り弄び楽しんでいた。
(防御障壁もバリアジャケットも簡単に貫通される! 私と同じ射撃魔法なのにこんな威力があるなんて…それにしてもこいつの攻撃さっきから外れてばっかりだけど…)
敵の圧倒的な魔力と弾幕に戦略を練るティアナの思考がある考えを浮かべた。
「まさか…わざと外してる? 遊んでるの?…」
今までの攻撃に致命打が無いのは精度的な問題でないという憶測がティアナの背中に冷や汗を流させた、そしてドッペルゲンガーは恐怖を感じ始めたティアナにその影を歪める。
「こいつ…笑ってる…」
悪魔は暗黒のように黒い顔に歪な笑みを浮かべる、その輪郭こそティアナと同一の姿形だったがそのどす黒い狂笑はまさに人外のものだった。
「うわあああっ!!!!」
そのあまりの恐怖にティアナは常の冷静さを失い、過剰に魔力を収束した射撃魔法“クロスファイアシュート”を発射する…しかしその攻撃を受けたドッペルゲンガーはまるで“攻撃など受けていない”ように無傷な姿を晒す。
「嘘でしょ…障壁もなしで…」
傷の一つくらいは付けられるという自信を持って出した技に敵は無傷、ティアナの心を絶望が侵食し始めた。
ティアナが影の悪魔に絶望を覚えていた時、ノーヴェと共に歩くスバルの眼前に巨大な白い影が飛来した。
それは舞い降りた衝撃でスバルの目の前のアスファルトに巨大なクレーターを作り、立ち込める土煙を6枚の白い翼で払いながら鋭い牙を晒して口を開いた。
「スパーダの血の者の匂いを感じて来てみれば、人間ではないか…おい人間よスパーダの血を継ぐ者は何処だ、答えろ」
地の底から震えるような低い声を発して6枚の白い翼を広げる巨大な魔獣はスバルに声をかける、隻眼の面体に白光を閃かせ絶壊の豪腕を持つ超上位の悪魔、その名を“ベオウルフ”太古の英雄の名を持つ白滅の魔獣である。
「悪魔かよ…あのハゲ野郎こんなもんまで」
「スパーダの血?」
圧倒的な魔力と気迫にスバルとノーヴェは共に身体を震わせながら呟いた。
「悪魔の力を持つ剣士のことだ。剣と銃を繰る赤い服の者、そしてもう一人はおそらく刀を使い次元すら裂く剣士だ。素直に教えるなら殺さずにおいてやろう…どうする人間」
(刀を使う次元を裂く剣士ってバージルさんの事? 聞いたことも無い高位の魔獣…もし本局の事を言ったら転移魔法を使うかも…)
魔獣に聞こえない程度にスバルは隣のノーヴェに静かに声をかける。
「ノーヴェ…一人で歩けるよね? この先を真っ直ぐ行けば管理局の防衛ラインがあるから…一人で行って」
「一人でって…お前はどうするんだよ?」
「私はこいつを止める」
「止めるって…そんなん無理だ! こいつすげえ強いぞ!」
「大丈夫。直ぐに私も逃げるから」
決して曲げない意志を込めた目で言い放つスバルにノーヴェは仕方なく答える。
「………わかったよ。でも死ぬなよ…約束破んじゃねえぞスバル」
「うん。だから行って…ノーヴェ」
ノーヴェはスバルから離れ一人去る、スバルは拳を構えてベオウルフを見据える。
「なんのつもりだ…人間」
「バージルさんの居場所なんてあなたには教えない。あなたはここで私が倒す!!」
怒りにその顔を歪め皺を刻み、鋭く尖った牙を見せる魔獣にスバルは戦いを挑んだ。
「バージルさん……やっぱり私って弱いですか?」
バージルとの模擬戦が終わり消耗から大地に倒れて横になっていたティアナが口を開いた、それは自身の無力を感じて思わず言ってしまった言葉。
「俺からすれば大抵の人間は弱いぞランスター」
「えっと…そうじゃなくて。スバルとかエリオから比べたらって事です」
「なるほど確かにお前は魔力量も低く身体能力も高くない。おまけに何か特殊な技能や技術が有る訳でもないし空も飛べん。使えるのは射撃魔法と幻術だけだからな」
「うう…思いっきりハッキリ言いますね」
あまりに飾らない厳しい評価にティアナは顔を俯けて落ち込んだ、そんなティアナにバージルはまだ言葉を続けた。
「だがもし。お前ら4人の中で最も強い者を挙げるならば、それはお前だランスター」
「えっ!? そんな事ありませんよ。スバルやエリオから見たら私なんて…」
「ランスター。恐竜と鼠はどちらが強い?」
「いきなり何を…それは恐竜ですよ、だって大きさが違いすぎます」
「だが多くの世界で恐竜のような巨大な獣は滅んでいるぞ」
「えっと…それは」
「生き残るのに必要なものは何も単純な膂力とは限らんという話だ。場合によっては適応力の方が命を助ける、ただの馬鹿力や強大な魔力量が戦力の決定的な差にはならん」
「そうなんですか?」
「確かにナカジマやモンディアルはお前より魔力量も身体能力も高い。しかし敵として対するならお前のように冷静で状況を客観視できる者のほうが厄介だ」
「…褒めすぎですよ…そんな事言われたら私調子に乗りますよ」
「事実を言っただけだ。もっと胸を張れ、お前ほど後ろ向きな考え方ならば少しくらい慢心した方が良いかも知れんな…そろそろ隊舎に戻るぞ、ほら手を貸してやる」
バージルに手を貸されて立ち上がり、その手の感触と自分を評価する言葉を初めて聞きティアナは幾分か恥じらいを感じた(それとバージルに手を貸されているのをスバルが凄い視線で見てくるのに寒気を感じてもいた)。
それは姿を消した魔剣士の記憶、胸を張れと言ってくれた師の言葉。
「はあっ はあっ」
ティアナはドッペルゲンガーの攻撃に防戦一方となり疲労はピークに達し息を切らせる、さらに先の戦闘機人との戦いで負った足の傷の為に上手く攻撃を避けることも出来ずバリアジャケットを血の赤に染めていた。
(もう駄目かな…この化け物に殺されて終わりか。我ながらツマンナイ人生だったわね…)
その目を閉じて諦念と絶望に身を任せようとしたティアナの脳裏にバージルの言葉が過ぎる。
“…4人の中で最も強い者を挙げるならばそれはお前だ…”
“…恐竜と鼠はどちらが強い?“
“…敵として対するならお前のように冷静で状況を客観視できる者のほうが厄介だ”
その言葉を思い出した瞬間にティアナは目を見開き眼前に迫ったドッペルゲンガーの魔力弾を防御障壁とダガーモードの魔力刃で防いだ。
ティアナの纏う雰囲気が突然変わった事にドッペルゲンガーは見かけこそ黒い影のままだが明らかに動揺した、今まで嬲り殺す対称だったものが戦士の空気を放っていたからだ。
「私…何諦めてんのよ…あの人にフォワード最強って言われてこんな死に方したらあの世で幻影剣喰らうわよ」
ティアナは先ほどの絶望に染まった目とは別人のように鋭く覇気に満ちた目で悪魔を睨む。
(でもどうする? こっちの攻撃が最初っからまるで効いてないし…こいつは何か特殊な特性を持ってるの?)
思案するティアナにドッペルゲンガーはダガーモードの魔力刃でもって襲い掛かる、これにティアナは即座に形成した誘導弾を打ち出すが急造の誘導弾は狙いが甘く円形の結界の壁に当たる。
それを失敗と考え一瞬歯噛みするティアナだがその失敗は思わぬ僥倖を見出すした、誘導弾の当たったのは壁の丸いライトのような物だったがそれが衝撃を受けて強い光を発した、光を浴びたドッペルゲンガーは身体の瘴気を飛ばされて苦しそうに呻く。
(もしかしてこれって…)
それは結界と外界を繋ぐ封印の割れ目だった、ティアナは論理を分からずとも影の悪魔は強い光の下で力を落とす事を漠然と理解した。
外界との割れ目はまた閉じて結界内を闇で満たす、魔力と瘴気を再び纏ったドッペルゲンガーはティアナのそれを遥に超える威力と数の誘導弾と共に魔力刃を引っさげて彼女に襲い掛かった。
ドッペルゲンガーのその攻撃は全てティアナに命中した、しかしその彼女の像は揺らめいて消えた、影の悪魔は幻術に騙された事に驚愕を覚える。
「自分の弱点が知られた途端に焦って過剰殺傷なんて…あんたみたいな化け物でも恐怖とか焦りってあるのね」
離れた場所からティアナの声が響く、彼女は先ほどドッペルゲンガーが呻いている間に幻術“フェイク・シルエット”と“オプティックハイド”により間合いを取っていた。
そしてティアナは幾つかの誘導弾を作り悪魔を見据えると、その誘導弾を四方に放つ。
「教えてあげるわ。鼠でも勝てるって事をね!!」
ティアナが放った無数の誘導弾は結界周囲に点在したライトのような結界の割れ目に当たり結界内部を光で満たした。
「オオオオオオッ!!!!」
強烈な閃光に瘴気を剥がされた悪魔が苦悶の咆哮を上げる、ティアナは消耗しきった身体に残された魔力と気力の全てを双銃のデバイスに収束した、そして彼女の持つ最強の技が今放たれる。
「これで終わりよ!! ファントムブレイザアアアア!!!!!」
ティアナの放った狙撃砲の魔力の渦が影の悪魔を飲む込む、そして闇で作られ彼女を模倣した悪魔の身体は塵と消えた。
「これに懲りたら猿真似なんてやらない事ね」
魔力量の差、敵の持つ特殊特性、消耗した魔力と体力、数多の不利を捻じ伏せて少女は悪魔に勝利した。
ティアナは背後に妙な魔力波動を感じ背後に銃を構えて振り返った、その彼女の目に自分と全く同じ姿と魔力波動の少女の像が現れる。
「何…これ? 私?」
この時、器を失った影の悪魔の力が双銃を繰る少女に宿った。
それは兄と師と慕った人の記憶、自分達と別れて己が道を行った魔剣士の思い出。
「“発剄”ですか?」
それはスバルがバージルに頼み込み始めた個人練習、彼の知る様々な拳の知識と技を習得する中での一幕。
「ああ、打撃の際に使う技法のひとつだ。まあ流派により色々とあるが…とりあえず実際に見てみろ」
バージルはそう言うと目の前で防御障壁を展開する訓練用ガジェットに軽く魔力を込めた拳を振った、次の瞬間ガジェットはその金属製のボディを破壊されバラバラに吹き飛ぶ。
「うわああっ! 凄い!! たったあれだけの魔力で…」
「要するにインパクトの瞬間の剄の練りだ。よく練られた剄は相手の内部まで破壊力を伝えるこれを浸透剄と呼ぶ。気や魔力を振動とインパクトでもって合わせて使えばこれくらいは容易い」
「とても私にはできそうもありませんけど…」
「一応はお前に教えてきた技術を組み合わせれば使える。だが一朝一夕にこなせるものでもない、ゆっくり覚えろ」
「分かりました。“お兄ちゃん”」
「その呼び方は止めろ」
「うう…1秒で否定された。そう言わずに言わせてくださいよ〜」
「全力で断る」
「あうう…」
それは今は遠く感じる過去の思い出、師と仰ぎ兄と慕った闇の剣士の記憶、彼の教えた最強の打法の術理。
「がはあっ! げほっげほっ」
スバルはアスファルトに大量の吐血をして一面を血で赤く赤く染め上げる、ベオウルフとの戦いは圧倒的などという表現では生ぬるい程の凄惨の様を呈していた。
絶望的なまでの破壊力を持つ豪腕と鋭い爪は掠っただけでスバルの防御障壁とバリアジャケットを紙のように削り彼女の身体を木の葉のように弾き飛ばす。
その両腕の届かぬ場所とて安全ではない、離れれば背なの翼から羽根を誘導弾のように飛ばしスバルの身体を深く切り裂きその白い服を血に染める。
白を基調とした筈のバリアジャケットはもはや白い場所など一辺もない、その全てがスバルの流した血の紅に染まっているからだ。
(痛い…血たくさん吐いちゃった、胃とか破れちゃったかな。肋骨もたくさん折れてる胸郭がグラグラだ…肺が破れたりしたら終わりかな…でもまだ負けれない)
それでもスバルは立ち続け、その鉄の拳をベオウルフへと構える。
「まだ戦うか、さっさとスパーダの血族の居場所を吐けば良いものを…そろそろ死ねい!」
そう言うとベオウルフはその巨大な腕を振り上げスバルの脳天めがけて振り落とす、しかしその一撃が穿ったのは道路のアスファルト、スバルは最低限の動作で身を翻しその悪魔の豪腕の内側から飛び上がった。
「日輪!…」
“日輪脚”空中に飛び上がりながら放つ連続の蹴り技がベオウルフの顎先を捉えた、そして反撃はそれだけに終わらない。
「月輪脚うう!!!」
“月輪脚”回転しながら振り下ろす蹴り技が今度は魔獣の脳天に決まる。
的確に急所を突く強烈な蹴りの連撃にさしもの魔獣もたじろぐ、スバルはさらに宙に飛びウイングロードで反動を付けて最高の蹴り技に繋ぐ。
「流・星・脚うううううっ!!!!!」
重力落下とウイングロードの反動を乗せた重い蹴りがベオウルフの腹部に深く決まり魔獣がその衝撃に呻く。
「ぐるああっ!!」
それはバージルの使った技の数々、スバルは彼の技を自分が使いこなせる事に苦痛と恐怖を忘れて泣きたいほどの喜びを感じていた。
(やりましたよバージルさん…ちゃんと使えました、敵の動きを読めました、当たりましたよ!!)
「人間風情があああっ!!!」
しかし喜びもつかの間、ベオウルフは両腕に渾身の力と魔力を込めて大地を叩いた、その衝撃は地震かと思えるほどの振動で一帯のアスファルトをまるで嵐の海のように波打たせる。
「うわっ!」
距離を取って体勢を整えようとしていたスバルはその衝撃に動きを止められた、そして白き破壊の魔獣がその巨体を躍らせる。
「死ねえええ人間!!!!!」
ベオウルフは突進からの体当たりを行なう、単なる体当たりでもこの魔獣が繰り出せばその破壊力は重戦車の正面衝突すら軽く凌駕するものだった。
支援
高速での巨体の衝撃にスバル大きく後方へと飛ばされる、傷だらけの彼女にこの攻撃は過剰殺傷もいいところだった、流石に格下相手に力を出しすぎたと感じたベオウルフは苦い思いを感じる……しかし鉄拳を持つ少女は再び魔獣の前に現れた。
スバルは攻撃の瞬間に大きく後方に自分で飛び敵の攻撃の威力を半減させた、しかし半減されてもその圧倒的破壊力は彼女に絶大な苦痛と傷を与える。
「くっ… ごほっ…今度こそ死んじゃうかも……でもノーヴェと約束したから、みんなを助けなくちゃいけないから。まだ終われない…死ねないよ…」
激痛に耐え死の恐怖を制しスバルは震える足で立ち上がり手にした“もう一つのデバイス”を取り出す。
「お母さんギン姉。ちょっとだけ…力を貸して…」
光と共にスバルの左手にもう一つの鋼鉄の拳が装着される、それは姉から託された母の形見、左手のリボルバーナックル。
両手に鋼を纏い鮮血に染まった紅い服を着た少女が立ち込める土煙を割って白き破壊の魔獣の前に歩む。
「まだ生きているか人間」
「人間じゃない。私の名前はスバル。時空管理局機動六課スターズ分隊所属、スバル・ナカジマ! それが私の名前だ!!」
スバルは一片も臆さずに白き破壊の魔獣に名乗る、込めるは誇りそして大切なものを守りたいという気高き想い。
「面白い! 悪魔を相手に名乗りを挙げるか…ならば応えよう。我が名はベオウルフ! 太古の英雄の名を持つ白滅の魔獣也! その意気に免じて最高の破壊力で葬ってくれるわっ!!」
その言葉と共にベオウルフは全魔力をその両腕に注ぎ絶壊の白に染めていく、対するスバルは静かに闘志と決意を高めていく。
(私が勝つには生半可な威力の技じゃダメだディバインバスターでもまだ足りない…“アレ”しかない…使ったら私もただじゃすまない、下手したら一生腕が使えなくなるかも…)
スバルはその瞳を金色に染めて自身の戦闘機人としての能力を解放して口を開いた。
「…でもやるしかない!」
同時に飛び出す二つの影、ベオウルフはその二つの豪腕に溢れん魔力を込めて打ち下ろす、スバルは腰に溜めるように両の鉄拳を構えてマッハキャリバーの最高加速で躊躇することなくその巨腕をかい潜らんと死の一撃に向かって駆ける。
そしてスバルは見事その死の鉄槌を潜りベオウルフの懐に潜り込み魔法陣を展開した二つの鉄拳を魔獣の腹部に振るった。
「一撃必倒おおおおお! ディバインバスタアアア!!…」
ディバインバスターの魔力波動が展開するその刹那、スバルが練った剄と共に彼女の固有技能(IS)振動破砕の超振動が全く同じ瞬間に発動した。
「…バーストオオオ! オシレーション(爆震)!!!!!」
発剄と共にディバインバスターの魔力波動に振動破砕の超振動を乗せるスバルの秘技“ディバインバスター・バーストオシレーション(爆振)”その威力は高町なのはの本家ディバインバスターはおろかエクセリオバスターに匹敵する威力を内包していた。
その絶技がいま白滅の魔獣の胴を貫く。
「ぐるるうううあああああっ!!!!!」
青き閃光にその身を貫かれ、地を揺らす咆哮と共に純白の羽根を散らしながらベオウルフは倒れた、噴出する夥しい魔獣の血潮にスバルはまた紅く染まるが、今の彼女にそんな事を気にする余裕は無かった。
「くううっ…痛っ…痛いよ〜ぐすっ」
自身で使用を禁じていた程の威力の大技にスバルの腕は著しく破壊された、両肘関節は後方に脱臼し、肩はあちこちで神経ケーブルや靭帯組織が断裂、拳骨に至っては全て粉砕骨折を起こして動かすのもままならい有様だった。
常人なら気絶必至の激痛だが普段の並々ならぬ訓練(主にバージルとの模擬戦)により彼女は泣きじゃくるに止まる。
「むう〜我を倒した勇ましさは微塵も感じられんな…これではそこらの人間の童と変わらんではないか」
スバルの壮絶な技に倒れたベオウルフが彼女の泣く姿に呆気にとられる、この程度の傷で泣き出すとは魔界の悪魔には理解できないのも道理であったが、何より先ほど自分を倒した勇敢な姿と技のキレからかけ離れたスバルの泣き様に純粋に驚いていた。
「ぐすっストライカー(自称)だって泣く時は泣くよ〜ホントに痛いんだも〜ん…えぐっ」
スバルはボロボロと涙を流して今まで死闘を演じた魔獣と語らう、死力を尽くした二人の間には妙に穏やかな空気が流れていた。
「があ〜はっはっはっは」
「ぐすっ…何がおかしいの?」
「これが笑わずにいられるか!? 魔界最強の一角に数えられたこの我を倒したのがこんな泣きじゃくる人間の童なのだぞ? まったく己の事とはいえ可笑しくてたまらんわい!!」
「だからって…笑わなくったて…」
ベオウルフは穿たれた身体の傷をまるで意に介さず立ち上がりスバルの顔に赤い隻眼を寄せた。
「久しぶりに本当に愉快だったぞ人間…いやスバル・ナカジマ。戯れに貴様に我が力を貸してくれるわ!!」
獣臭と共に言葉をスバルの顔にかけると、その五体を白い羽根と消して強大な魔力と魂をスバルの拳足に与えた。
「これって…一体!?」
次の瞬間にはスバルの傷は治りバリアジャケットも眩しい純白へと戻る、全身には今まで感じたことの無い強大な魔力が溢れていた。
そして手足のデバイスが魔獣との融合に劇的な変化を遂げる、両腕のリボルバーナックルと両足のマッハキャリバーは各所が鋭角的で鋭さを増した攻撃的なデザインになったのだ。
「うわ〜ん。お母さんのリボルバーナックルがイメチェンしちゃったよ〜! ごめんなさいお母さ〜ん」
(驚く所はそこか!?)
「あれ? この声は?」
(我は貴様の武具に憑いてやっただけだ変形は貴様の意思で解除できるわい。このうつけ者が。それくらい融合の瞬間に理解しろ!)
「うう〜ベッキーったらひどいよ…何もそこまで言わなくても」
(ベッキーとな?)
「えへへ〜可愛い呼び方でしょ? 今考えたんだ〜」
(スバル貴様…我を愚弄する気か?)
「え〜可愛いと思うんだけどな〜」
(むう〜、とにかく我が力。見事使いこなしてみせよ!!)
こうして少女スバル・ナカジマは強大な白き破壊の魔獣の絶大な力を鋼の拳足に得た。
「まさかティアも新能力ゲットしてるなんて思わなかったよ」
「私だって驚いてるわよ。まさかあんたもこの化け物の力を取ったなんてね…」
機動六課のヘリパイロット、ヴァイス・グランセニックの操縦するヘリコプター内部にてスバルとティアナは互いの得た新たなる力について言葉を交わす。
悪魔との戦いを終え合流した二人は今、空を蹂躙する戦舟“聖王のゆりかご”にて戦うなのは達の救援に向かっていた。
「取ったんじゃなくてベッキーは力を貸してくれてるんだよ。それに化け物じゃなくて“悪魔”だって言ってるよ」
「ベッキー? まあいいわどうでも…」
「ティアってば冷たいよ〜」
「今はそれよりも、この先のゆりかごの戦いに集中しなさい。なのはさん達がどんなピンチか分かんないんだから」
「そうだね…あと少しでいいから力を貸してねお母さん、ギン姉、ベオウルフ」
魔獣の宿った手甲を頬に寄せスバルは師の窮地に思いをはせる、ゆりかごまでの距離はもう目と鼻の先まで迫っていた。
続く。
泣くなよwww支援
投下終了、それとフォワード強化計画終了です。
そして次回は待ちに待ったバージル兄さんのターンです、どうなることやら…
斎藤声でベッキー…まさかぱにぽに!?支援
GJ!
ようやく兄さんがクル━━━(゚∀゚)━( ゚∀)━( ゚)━( )━(゚ )━(∀゚ )━(゚∀゚)━━━!!!!
そしてなんという超強化、間違いなくこのステエキはエリート街道一直線。
聖王のゆりかごなんて怖くないぜ!
>>293 リアルタイムで見せていただきました、GJ!!
ベオウルフとドッペルゲンガーの力を得たスバルとティアナ・・・大変な事になりそうだw
次回の兄貴の活躍にwktkせずにはいられない。期待してます!
>>293 GJ!
このタイミングでの新人ズのパワーアップ…まさか、揺りかご決戦後に何か戦いが!?
そして、ベソッかきスバルに萌えです。腕は悲惨な形になっちゃってますがねw
最後にこの言葉で締めくくりましょう。
スバル「先生だぞ!」
あれだけ容赦の無いツン別れをしたバージル兄貴なのに、それまで積み重ねてきた時間が四人を助ける…
その流れに貴重なデレを見たwww
それにしても、ティアナにドッペルゲンガーは強力そうですな。幻影に実体を混ぜて使ったら、えらい効果ありますよ。
でも、魔力バカ食いしそうだなぁ。ゲームでもDTゲージフルで使い切るスキルだし。
GJ。
新人ズはもう非殺傷設定が無意味になりそうなほど危ない強化してるなwww
バージル兄さんも一安心だw
……ネヴァンマダー?
300 :
OSGS:2007/12/08(土) 00:11:04 ID:TR27hqBf
今日って投下日集中ですかね? GJっす! でも元ネタがほとんど未プレイ、未見……。
だがいいものはイイ! みなさまGJ!
>>268 反目のスバル氏
遊戯王GXはバイトでナカナカナカナ見られんのですが、
『あの「怒」とか「疑」とか(名称失念)の洗礼』の回は偶然見てました。
うわぁい、なのはさんの黒い魅力が満載だぁ〜。GJッ!
>>293 Strikers May Cry氏
不覚にもノーヴェとスバルに萌え死に。
個人的にあの二人の絡みはもっと深くてもよかったな〜と思ってたので、
この流れに感動。そしてティアナの底力にGJ!
この場を借りて謝辞。
GJと感想をくれた方々、ありがとうございます。
>>反目のスバル氏
いつもシンクス! でも身体をお大事に……
>>232 地上本部総司令官レジアス。
「おおぅ……ゼェスト……」
結構あってるw
>>246 まだひみつっす。ネタバレをブチまけたいのはやまやまなんですがw
>>249 ……コンパクト3やってない♪ 外伝待ちです。
プロットの段階で考えてなかったので、修羅関係は空気参戦……かも。
後編は剣客商売よみ終わってから投下します。では、長々失礼しました〜。
301 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/08(土) 00:19:04 ID:5HZwv7HY
これだよ……こういう与えられた設定をフルに使った限界バトルが見たかったんだよ〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!!!
技名もかっこいいし! 畜生……こういうバトルをアニメで見たかったなぁ
GJ!
スバルはダンテすら引き分けたベオウルフによく打ち勝てたものだ
ドッペルゲンガーは消耗がきつすぎる玄人向きの能力
そういえば、兄貴は今頃何やってるんでしょうね?
人手不足でしょうがないというのに
週休六日主義の弟の頭を物理的に冷やしてるとか?
>>301 sage忘れた!
やばいな、にやけが止まらんwwww
ラッシュの止んだところで、小ネタ行きます。
だいいちわ ぼくに SS をかけというのか
「という訳で、PSP用ソフト『勇者のくせになまいきだ。』を買ってきた」
「唐突やな。ほんでこれをネタにSS書こう言うんか」
「有無。
簡単にゲームを説明すると、ダンジョンを掘って魔物を育て、やがて来る勇者を待ち受けて撃退すると言うものだ」
「あ、ええと、『フィールド・オブ・ドリームス』みたいなもの?」
「……間違ってるような、間違ってへんような例えやな」
「ネタが微妙なのは伝統を重んじたからだ。
さて、SSタイトルの通りだと、魔王の待つダンジョンになのはが挑む事になる」
「いやちょい待ち」
「むしろなのはが魔王では?」
「それが、このゲームの魔王は偉そうなだけで何もしない。
何かするのはPLこと破壊神だ」
「ははあ、つまりなのはが魔王以上の破壊神や、言うんか……」
「ユーノやクロノ兄さんが挑んで破れると……」
「……二人とも、何を逃げ腰になっ」
『ちょっと、お話が必要なの』
「……い、今の声は何?地獄の底から響くような……
ひっ!?ピ、ピンクの光が!窓に!窓に!」
予定では、第二話以降は、なのはキャラやガジェット等を駆使したダンジョン物になります。
たまに『なのはの不思議なダンジョン』になります。
筆者が撃たれるのは仕様です。
>293
実はバージル兄さん、チンク姉に林檎の皮を剥いてやるのに忙しいので六課を離れました。という電波を受信しました。
ドッペルゲンガーはやべぇw
ほとんどザ・ワールドな上に物体の運動エネルギーを停止させるからなw
それはゲリュオンのクイックシルバーでは(汗
ドッペルゲンガーは実体のある影を操る能力ですよ。
258
ジョジョ風味シリーズは全編とうしてプロシュート率が高くて楽しいですw
なのはの説教を聞いてると次元犯罪者が皆、漆黒の意思を持った奴らに見えて
恐ろしい。
希望なんですが、謝罪するグレアムとジョジョ風味なのはの会話とかが読みたいです。
310 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/08(土) 01:02:31 ID:0oEbK4we
クイックシルバーはどちらかと言うとメイド・イン・ヘブンなのでは?
やべぇクイックシルバーの方だったww
素で間違えたw
312 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/08(土) 03:20:47 ID:tZt+ONGT
| ・ ・
| )●( | 水樹は死ね!水樹信者も死ね!声優界のゴミ、
\ 皿 ノ
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Strikers May Cry氏、GJです!
にしても、あのベオウルフをベッキーって…ある意味流石だなスバル…
あとは雷の魔女と炎風の双子の悪魔だけだな
出てくることを期待します
Strikers May Cry氏GJです!
ドッペルゲンガーにスバルはベオウルフすか。手から気弾とか地面を殴って衝撃波とかやらかしそうですねww挙げ句の果てにはリアルインパクトかッ!?みんな逃げてー!
315 :
×DOD:2007/12/08(土) 13:09:40 ID:0BcKIMs4
魔法少女リリカルグレンラガンA'sを投下する。
規制に掛からぬ様支援を求む。
天元突破グレンラガン×魔法少女リリカルなのはA's
あらすじ
別の世界へと飛ばされてきたシモン達によるヴォルケンリッター達との戦いは、乱入者の登場によって逃げられる結果となった。
後日、再び彼女らと出会った際、ニアによってリンカーコアの蒐集作業を手伝う事を取り交わされる。
1人の少女を救うために、グレンラガンは管理局を敵に回してしまうのであろうか。
魔法少女リリカルグレンラガンA's
第三話『テメェの心に聞きやがれ!』
八神家での決意表明の翌日、シモンとニアは、グレンラガンと一緒に時空管理局本局へと出向いていた。
今回ブータは、ハラオウン家にてお留守番だ。
グレンラガンは、次元空間航行戦艦アースラがメンテナンスを受けているドッグでデータの搾り出しをされている。
クロノによると、もし破損した場合に修復するための処置との事だ。
実際、グレンラガンの頭部であるラガンのデータは解析不能部分が多すぎるらしくボディ部分であるグレンの修復に重点が置かれている。
ダイグレンの内部に似た近未来的な通路を歩きながら、クロノに案内され、顧問官という役柄に就いている人物との面接を受ける事に成っているのだ。
「来る前にあれだけ説明したから分かっていると思うけど、今回会う方は管理局内で重要なポストに就いていた人物だ。決して粗相が無いように」
クロノに散々注意され、少し嫌気が差してきたシモンは、
「わかったよ。そう、何度も言わなくて良いだろう?」
「ニアならともかく、君には作法というものが無いから心配なんだ」
それを言われると言葉が無いシモンは、黙り込むしか無い。
そんな彼の肩に優しく置かれる白く綺麗な手。
「シモン、悩まないで。今度私が礼儀作法についてお教えします。だから、いつもの元気なシモンで居て下さい」
「あ、うん。ありがとう、ニア」
雑談を交えながら歩いていると、目的地に着いたらしく立ち止まる。
どんな人物が、この先で待っているのか息を呑むシモン。
こういった偉い人との面接などした事が無い彼には、穴を掘る事よりも疲れる出来事である。
「失礼します」
ドアが自動で開き、クロノは挨拶をして中へと入る。
それに続いて入室するシモンとニア。
部屋の中には、グレーの髪に若干白髪が見える60代前後の男性が立っていた。
名は『ギル・グレアム』。現在は、フェイトの保護監察官をしている人物だ。
「急に呼び出しを掛けてしまって済まなかったな、クロノ」
「いいえ。一度、彼らの処遇についてご意見をお聞きしたかったので、丁度良かったです」
「そうかい、それは良かった。そこの2人が」
「はい。別の世界から来た漂流者の」
「シモンです」
「ニアです。ごきげんよう」
「あぁ、ごきげんよう。お嬢さん」
ニアの挨拶に優しく答えるグレアム。
グレアムに進められソファーへと座る2人。クロノは、シモン達を連れてくるだけだったので立ったまま話を聞く体勢をしている。
手元にあった資料を見ながら、グレアムはシモン達に問い掛けた。
「シモン君とニア君は、自分達が住んでいた世界の事は、あまり知らないようだね」
「はい。俺は、ジーハ村っていう地下にある村で暮らしていました。そこに、獣人が乗るガンメンが落ちてきて…初めて、地上があることを知ったぐらいです。
自分達が住んでいる世界のことなんて、考えたことも無かったです」
「私は、お父様の下で暮らしていましたので、外の世界については教えられていませんでしたので、大体の事しか分かりません」
「大体で良いから、教えてくれないかい?」
「はい。私達の住んでいる星の名は『地球』です」
ニアの素直な答えに驚愕するグレアム。
彼女の口から地球と言う単語が出てくるとは思ってもいなかったからだ。
そんな彼の心の揺らぎを気にせず話し続けるニア。
「お父様は、何故人が地下で暮らす事になった事についてお教えになられませんでしたので、私もシモンと同じぐらいの認識しか持ち合わせていません」
「…ふむ、その事は一先ず置いておこう。君達を呼んだのは他でもない。ロストロギア『闇の書』の捜索に協力を要請したいと思ってね」
その一言に驚き、声を荒げるクロノ。
「何て事を言い出すのですか!彼らは民間人ですよ」
「それは分かっている。だが、今の時空管理局の人員では、これ以上闇の書の捜索捜査に人員を裂けないのが現状だ。ならば…」
シモンとニアを見つめるグレアム。
「協力をしたいと言ってくれている君らに、是非とも協力を頼みたいのだよ。そう、あの未知の機動兵器のパワーは、この事件に関わっている人物達とも渡り合えると踏んだのだがね」
「はい。俺達は助けられた身ですし、協力できることなら何でもやります」
「右に同じく、です」
「その返事を期待していたんだよ。ありがとう、君達には『グレンラガン』の操縦許可を取っておいたので、存分に扱いなさい。肩書きは民間協力者という事でね」
「はい!ありがとうございます」
元気良くシモンは返事をする。これで、シグナム達に協力が出来るからだ。
これで、はやての病気を治す手助けをして、人を襲わないように頑張れば上手く行く。
もう、知り合いが死ぬ光景なんて見たくない。
俺のドリルと、ニアの強い思いが、あの子を助けて彼女達を悲しい戦いから解き放ってやるんだ。
そんな事を心の奥で思っていたシモンは、信頼の証に手を前に出していた。
グレアムは、良い目をしている少年から差し出された手を握り強く握手をする。
話を終え退出するクロノ達だったが、最後に外に出ようとしたシモンを呼び止めるグレアム。
「少し話をしたいのだが、よろしいかね?」
「あ、ええ、いいですけど」
「そう言う事だ。クロノ、少し待っていてくれないか?」
「はい。分かりましたグレアム提督」
シモン1人に話がある事に少し引っかかるクロノだったが、元々グレアム提督の人柄から企みなど無いと思い、ドアの横でニアと共にシモンの戻りを待つ。
グレアムに呼び止められたシモンは、窓の外の風景を眺める彼の背を見つめる。
「君は、八神はやてと言う少女と接触したね」
「えっ!?な、なぜそれを」
「ははは、君は嘘がつけないタイプのようだね。まぁ、それを知ってのお願いなのだがね」
「お願いですか?」
「そうだ。これを受け取ってくれたまえ」
グレアムから渡されたのは、手の平サイズの端末であった。
赤いボタンを押すように言われ押してみると、映像が浮かび上がる。
「これは?」
「それは、指令用の文章が映し出され、更に目標地点へ行くための地図にもなる…ん?」
青い顔をして冷や汗を流すシモンの姿を見て、どうしたのかと思うグレアム。
「おれ…文字が…」
「あぁ、この世界の文字はまだ読めないのだったね。ならば音声が出るようにしておこう」
「あ、ありがとうございます」
「なに、これから頼むお願い事に対して全然割に合わないよ」
微笑みながら端末を操作するグレアム提督に、どんなお願いをされるのかと冷や冷やするシモン。
調整が終わった端末を受け取ったシモンへ、お願いの概要を説明するグレアム。
数分の話が終わり、部屋から出てきたシモンはクロノとニアと共に転送ポートへと向かう。
先頭を歩くクロノに聞こえない程度に、ニアへ先程の話を説明し始めるシモン。
「ニア、良く聞いてね。この話は、誰にも話しちゃダメだよ」
「はい、分かりましたわ。それでお話とは何ですか?」
「グレアムさんから、クロノ達には気づかれないように、シグナムさん達と行動を共にして欲しいんだって」
「あら、グレアムさんは、はやてちゃん達ともお知り合いなのですか?」
「そうらしいね。ハッキリとした事情は言ってくれなかったけど、はやての事を心配していたよ。管理局で仕事をしているから、表立って助けられないみたいなんだ。
そこで、俺達に相談を持ちかけてきたんだ」
「なるほど、私達ならシグナムさん達とも面識がありますし、管理局の人ではないですしね」
そう、この話は俺とニアとの間だけで止める。
無闇に話せば、はやて達に被害が及びかねない。
確かに、人を襲うのはいけない事だ。
でも、人を殺めるわけじゃない。
だから、俺たちが協力して他の手段を取らせる様に頑張るしかない。
もう、誰も悲しい目に合わせない為にも、俺は俺の進む道を作ってみせる。
だから、カミナの兄貴…見ていてくれよ。
紫塩
本局からハラオウン家へと戻ったシモン達は、リンディさんに出迎えられ、どんな話があったのかを聞かれる。
最後に話したグレアム提督との密談は伏せたまま、大まかに自分達が時空管理局に民間協力者として参加すると伝える。
最初は、今すぐ辞退してきなさいと言われるもシモン達が自分の意思で参加を希望した事を伝えると溜息を吐きながらも了承した。
「でも、危険な事は絶対ダメよ。危なくなったら、直ぐに逃げなさい…良いわね?」
シモンとニアの肩に手を置き、2人の目を見て真剣に言うリンディに「はい」と答える2人であった。
小学校から戻ってきたフェイトと共に買い物に行き夕食の買い物を済ませたシモン達は、調理を開始する。
調理主任はリンディで、シモン、ニア、フェイトはお手伝いだ。
ただ、調味料の加減はフェイトにやってもらうようにとのクロノの強い主張に(・3・)となるリンディとニア。
クロノの助力により、甘ったるく無く、地獄の料理でも無い、家庭的な料理が出来てフェイトとエイミィとクロノには安息の食事になれた。
一方、シモンとリンディにとっては物足りない食事となる。
ニアは、みんなで楽しく食事が出来れば良いので気にもしていなかった。
食後に雑談などをして午後10時ごろ、フェイトにお休みの挨拶をした後、クロノ達と別れてグレンラガンを隠している森へと自転車に乗り移動する。
グレンラガンを時空管理局本局まで取りに行くには時間が掛かるため、時空管理局側で用意した森に隠しているのだ。
一般人に見つからないよう、対象を光学迷彩で隠す装置で保護している。
グレンラガンを置いてある場所へと辿り着いたシモンとニアとブータは、自転車を降りてグレアムから貰った端末を使用し光学迷彩を解除する。
各自グレンラガンのコクピットへと乗り込み、起動させる。
起動したグレンラガンを操作、背中に装着されているグレンウィングと呼ばれる翼を広げ、その中央から下部分に装着されたトビダマから緑色の光が溢れ出す。
シモンは、上着のポケットに入れていた端末をラセンモニターの上に増設されたスペースにセットする。
端末からのデータをグレンラガンのコクピットの画面に表示させ、移動先の位置を把握したシモンは、2本のレバーを握り締める。
トビダマから放出される光が推力となり、グレンラガンを宙へと浮かせ目的地へと出撃する。
グレンラガンを進めさせた先には、以前出会った仮面の戦士が2人も空中に浮かんでいた。
仮面の男達はこちらを待っていたかのように、近づいてくる。
シモンは反射的に、グレンラガンを戦闘態勢にする。
「お前達、なぜここに居る!?」
「それには答えられないが、お前達をヴォルケンリッター達の下へと送り届ける事は出来る」
「ヴォル…って、何だよ?」
「ヴォルケンリッターとは、誰の事を指しているのですか?」
2人が全く知らないという風に答えたため、仮面の戦士達は顔を見合わせながら何か会話して、再びグレンラガンの方を向く。
「ヴォルケンリッターとは、八神はやての騎士達の総称だ。過去にも彼女らは現れ、蒐集作業を行っていた。多くの人々の血をすすりながらな」
「血を…って、どういう意味だよ!?」
「言葉の通りだ。だが、今のヴォルケンリッターは過去の人格とは若干違うようだ。あの小さき主を救おうと動いている」
「そうだ。あいつらは、はやての為に戦っているんだ。お前達が何を言おうと、あいつらは……良い奴らなんだ」
「ふ、その答えを待っていた。その気持ちなら、管理局へ情報を漏らさないだろう」
仮面の戦士たちは、グレンラガンを囲うと次元転送魔法陣を出現させる。
足元に出現した魔法陣に驚き回りを見回すシモンとニア。
魔法陣の光は更に大きくなり、グレンラガンを包み込む。
「「転送」」
仮面の戦士達は同時に魔法を発動させ、グレンラガンをある世界へと転送させる。
光と共にグレンラガンは、別の世界へと転送され地球から姿を消した。
転送を成功させた仮面の戦士達は、即座にその場から姿を消していった。
俺たちは仮面の戦士によって激しい光に包まれたと思うと、次に目を開いた時には周囲は広大な砂漠が広がる世界だった。
自分達がいる位置がモニターの横にあるMAPの中央に表示され、別の方向に赤い光点が現れている。
『赤い光点が魔法生命体の現在地を指しています』
機械的な女性の声が端末から発せられる。
そうか、これがグレアムさんの言っていた音声説明か。
なら、この赤い点の先にあいつらが居るんだ。
それにしても、魔法生命体って何だろう?まぁ良いか、気にしても意味ないし。
「ニア、地図に出てる赤い点の場所へ向かうよ」
「はい。行きましょう、シモン」
シモンは、余計な考えを頭の隅っこに追いやり、赤い光点がある場所へとグレンラガンを進ませる。
見渡すばかりの砂漠と所々に点々とあるオアシスの上を通過しながら、赤い光点が居る場所へと進むと、砂漠の上を歩く人物を見つける。
「シモン!あの子…ヴィータちゃんじゃ、ありませんか?」
「何でこんな所に1人で…行くぞ、ニア!」
「はい、シモン」
支援
上空からグレンラガンが近づいている事など露知らず、ヴィータはグラーフアイゼンを杖代わりにし、強い魔力反応のある場所へと傷ついた身体に鞭打って移動する。
彼女が動く理由、それは自分達に平穏な日々を与えてくれた主はやてを救う事ただ1つ。
魔力反応のある場所へと到着すると、砂の中から現れたのは硬い装甲に覆われ丸い口には多数の牙が生えた巨大な砂竜だった。
「…優しいはやてがニコニコして待っててくれてるんだ。あたしは、すっげぇ幸せなんだ…だから、こんなの全然痛くねぇ!」
巨大な口を開き襲い掛かる巨大な砂竜を横に飛んで避け、空中へ飛びグラーフアイゼンを構える。
正面からモンスターを迎え撃とうとした瞬間、真横からもう1匹砂竜が出現する。
グラーフアイゼンを正面の敵へ振り下ろし叩きつけていたヴィータには、対処の使用が無く巨大な口が小さな少女を飲み込もうと迫る。
(ちくしょう…やられても復活できるけど、はやての為に貯めたページが減っちまう…くそぉぉぉ)
食われると思い目を閉じるヴィータだったが、天より炎に包まれた熱いアイツが降って来た。
「兄貴譲りのぉぉぉ!燃える男の火の車キィィィックッ!!」
ヴィータが砂竜を叩き砂に叩きつけた音と、グレンラガンの炎のキックによって吹き飛ばされた砂竜のもがく音が鳴り響く。
目を開き真横に来たグレンラガンの姿を見て驚くヴィータ。
「な、なんでお前らがここに居んだよ?」
「昨日言っただろう?助けるって!」
「そうです。お約束もしましたし、お友達なのですから助け合うのが当然です!」
「お、お前ら」
なに、熱血バカしてんだよ。そんな事、一言も頼んでねぇじゃねぇかよ。
突然現れて助けに来るなんて、どこの戦隊のヒーローだよ!
けどよ、礼は言わねぇとな。うん、はやても言ってたじゃねぇか、助けてもらったらお礼を言うのが礼儀だって。
「あ、ありが…」
「あら?ヴィータちゃん。どこか、痛むのですか?身体中がボロボロですよ」
「う、うっせぇよ!良いから、お前らも助けに来たんなら手ぇ貸せよ!」
「あぁ、当然だ!」
シモ……じゃない支援!
自ら支援
せっかくお礼を言ってやろうと思ったヴィータだったが、礼はこいつらからリンカーコアを奪ってからだと思い直し武器を構える。
大きさは全長20m程の長さの2匹の砂竜は、グレンラガンとヴィータに向かって再度攻撃を開始した。
ヴィータに叩かれた方の砂竜は、彼女に復讐しようと巨大な口を広げ食いに行く。
砂竜の動きに長年戦ってきたヴィータは直ぐに反応し、飲み込み攻撃を回避。
「アイゼン!」
『Raketen form』
カートリッジを1発消費し、ラケーテンフォルムへと形態変化したグラーフアイゼン。
更にカートリッジを1発消費し魔力を燃料にしてロケットのように噴射させ、更にヴィータ自ら回転し遠心力を得て目標へハンマーの尖った先端部分を砂竜の背中に叩きつける。
その一撃によって、多大なダメージを受けた砂竜はもがき苦しみながら倒れる。
一方、シモン達を乗せたグレンラガンは砂竜の巨体を生かした体当たりを交わし、相手が背中を見せた瞬間に右拳を叩きつける。
「だあぁぁぁ!!」
素早いインパクトと強力な螺旋力によって、相手の分厚い装甲と化した皮を通り越し内部へ多大なダメージを与える。
その一撃に凄まじい痛みを受けた砂竜は、同じく倒れている砂竜の上へと倒れこむ。
シモンは、その隙を見逃さず即座に2匹の砂竜の上へと立つと右腕を相手の身体に当て、
「グレンコレダァァァッ!」
右腕の2つの吐出口から出たドリルは、砂竜の背中の装甲を貫き膨大な螺旋力を電気へと変換し相手に注ぐ。
凄まじい電気ショックに、砂竜の2匹は瞬く間に気を失ってしまった。
ヴィータは、即座に左脇に挟んでおいた闇の書を開き砂竜達からリンカーコアの蒐集を開始した。
以外に大きかったため、闇の書は6ページ分ぐらい埋まった。
ヴィータは、闇の書を元に戻すと滞空しているグレンラガンに向かって礼を言う。
「ありがとな、お前ら」
「どういたしまして」
「うふふ」
「な、何が可笑しいんだよ?」
「ヴィータちゃんのお礼の仕方が可愛くて」
「う、うっせぇぇぇ!」
赤くなって怒るヴィータを笑顔でたしなめるシモンとニアであった。
何とかヴィータを落ち着かせたシモン達だったが、帰り方が分からない事に気づき慌てる。
仕方ないなと、ヴィータはシモン達を一緒に元の世界『地球』へと転送して行った。
海鳴市周辺の上空へと舞い戻ってきたグレンラガンとヴィータは、既に戻っていたシグナム達と合流した。
突然の来客に驚くシグナム、シャマル、ザフィーラだったが、ヴィータの説明を聞き納得した表情をする。
そして、コクピットから顔を出しているシモンとニアの方を向くシグナム。
「なるほど、お前達がヴィータを救ってくれたのか。感謝する」
「たまたま、タイミングよく通りかかっただけだよ」
「そうか…では、お前達の協力には感謝する…だが、手を引け」
「なっ、なんで」
「お前達は管理局側だろう?裏切り行為にしかならんぞ」
「そうかもな…でも、あの子を助けるためにやってる事なんだろう?」
「そうだ。今の我々には、主はやてを闇の書の主として覚醒させる以外に助ける方法が無い」
「なら、時空管理局に相談を持ちかければ良いじゃないか!何か良い提案をしてくれる奴も居るかもしれないじゃないか」
「それも考えた…我々が消えれば主はやては助かるかもしれない。しかし、もし彼らが助ける手段を見つけ出せず主はやてを封印する事になった場合を考え、
今の行動に移ることに決めたのだ。我々の命、主はやての笑顔を失わぬために使う」
シグナムの覚悟に、心打たれるシモンとニア。
今まで会ってきた人達とは、全く違う価値観を持つヴォルケンリッター達。
カミナの兄貴のように、地上に出て皆に希望をもたらすような大きな事じゃない。
でも、1人の女の子の為に命を差し出す意気込みがある彼女らは、それにも負けないような意志を感じる。
「なら、俺達も負けてられないな。ニア」
「えぇ、シモン。シグナムさん達に負けてられません」
「何を言っているんだ。お前達は?」
2人の話に困惑するシグナム。
シモンとニアは、まるで心が通じ合っているかのように同時にある答えをヴォルケンリッター達へ伝える。
「俺も、はやてを助けたい!」「私も、はやてちゃんを助けたいです!」
2人の答えに、シグナムは頭を抱える。
この2人に諦めるという言葉は無いのか。
シグナムは、どうするべきか悩む中、シャマルの手が彼女の肩にそっと置かれる。
「シグナム、あの子達にも手伝ってもらいましょう。あんなにも、はやてちゃんの為に手伝ってくれるって言ってくれているんだから」
「しかし…」
「あいつらは、信じても良いと思うぜ…あたしの意見だけどな」
「ヴィータ……ザフィーラは、どう思う?」
「我らのリーダーに任せよう」
仲間3人の意見を聞き、シグナムは決断を下した。
「分かった。シモン、ニア…我々の仲間として迎え入れよう」
右手をシモンへと差し出すシグナム。
慌ててシモンも、右手を差し出し手を握る。
その時シモンの肩に乗っていたブータが、鼻を鳴らして何か言いたがっていた。
「あぁ、お前もよろしくな。ブータ」
「ブッブゥー!」
ブータは胸を叩いて「まかせろ」と言う風に、身体全体を使って皆に元気良く伝える。
その姿を見たヴォルケンリッター達は、良い笑顔で笑い始める。
シモンもニアも、釣られて笑い始める。
その場全体が、とても温かい雰囲気へと変わっていった。
この後、シモンはフェイト達への蒐集行為は止めて欲しいとシグナム達へ願い出る。
その代わりグレンラガンで、強力な魔力反応を持つ相手と戦うと。
ヴォルケンリッター達は、その願いに頷き了承するのであった。
「そんじゃ、また明日ここでな!」
「あぁ、風邪引くなよ!」
「風邪なんて引くかよ!そっちこそ、気をつけろよな!」
ヴィータ達と別れの挨拶をしたシモン達は、グレンラガンを隠しに戻りハラオウン家へと帰宅した。
その後、グレンラガンとヴォルケンリッター達は自分達が移動できる世界へと飛び、闇の書の蒐集作業に明け暮れていた。
ヴォルケンリッター達の協力をしていた事で、蓄積ダメージからグレンラガンのボディはフルメンテが必要となり、本局へと送られた。
そのため、出撃不可能になったシモンとニアは、はやての家でお泊りをした。
シグナム達が留守だったため、はやては快くシモンとニアとブータのお泊りを了承したのだ。
その夜は、ゲームをやりTV番組を見て雑談などをして楽しい時間を過ごした。
雑談の際に、誤って自分達の世界での冒険談を話してしまったシモンだったが、はやてには、どこかのファンタジーの話だと思いあまり気にもしなかった。
そして、シモン達が楽しい時間を過ごしていた中、シグナムとヴィータとザフィーラは、なのはとフェイトとアルフとそれぞれ戦っていた。
しかし、仮面の戦士の介入によってフェイトのリンカーコアは闇の書に蒐集されてしまった。
翌朝ハラオウン家へと戻ったシモンとニアは、グレンラガンを受け取り行くと共にメンテの終わったアースラで入院中のフェイトのお見舞いに行った。
蒐集されながらも、笑顔で平気だよと答えるフェイトに罪悪感を覚えるシモン。
そして、シモン達はグレンラガンで再びヴォルケンリッター達に出会った際、シグナムへと突っかかる。
規制回避に支援
資鉛
「なぜ、フェイトを襲った!」
「…返す言葉も無い」
「なぜ、約束を守らない」
黙り込むシグナムに、怒りを隠せずに居るシモンをニアはたしなめる。
何とか、シモンを落ち着かせたニアは、答えられないシグナムに変わって冷静そうなザフィーラへと問う。
「ザフィーラさん、いったい何があったのですか?」
「…あの仮面の戦士が突如現れ、我々の中でシャマルのみしか扱えない『旅の鏡』に酷似した魔法で、あのフェイトと言う少女のリンカーコアを摘出したのだ。
シグナムは渋ったのだが、我らの目的を言われ…すまぬ」
「…分かりました。でも、これ以上人を傷つける行為はしないで下さい」
「心得た」
たしなめられたシモンは、不機嫌なままだったが、シグナムが頭を下げてきたのを見て「もう、仲間を傷つけないでくれ…ただ、それだけなんだ」と答えた。
その後、はやてが入院するまでに体の調子悪化したことをヴィータとシャマルから聞いたシモン達は、シグナムの取った行動をこれ以上攻める気に成れなかった。
何とか絆崩壊の危機を乗り切った、大グレン団とヴォルケンリッター達は、新たに発見した巨大な魔力反応がある世界へと次元転送していった。
一同黙り込んだまま、新たな次元世界へと到着すると、そこは薄気味悪い森が広がる世界であった。
到着早々、シャマルは森付近の大気が有毒ガスで充満している事に気づき、みんなに一旦動くのを止めるよう促し解析に入った。
シャマルは有毒ガスの成分を分析し、そのデータを騎士甲冑へロードさせ防護フィールドを機能させる。
更に、グレンラガンにも防護魔法を掛け安全性を高め、みんなに行動開始の合図を送る。
シグナムを先頭に、魔力反応のある位置へと向かった先には遺跡のような場所で巨大で歪な卵を発見する。
「これか…嫌な感じだな」
「お、シグナムも変な感じがするのか」
「ヴィータも、か…だが、形振り構っている時間が無い…回収するぞ」
近づいた瞬間、多数の蟲が一斉に襲い掛かってくる。
その大きさは、地球に居る昆虫とはサイズが違いすぎる。
「ひいぃぃぃぃぃぃ!!いやぁぁぁぁぁっぁ!!」
「と、とり、取り乱すな、シャマル。こ、この程度」
その光景を見て慌てふためき涙目になるシャマルに、慌てるなと言いながらもシグナム自身もレヴァンティンを持つ手が震えている。
近くに居たヴィータも、涙目になりながら全方位防御魔法パンツァーヒンダネスを展開し逃げ腰だ。
はやてとの生活で、一般的な価値観を持ってしまった故の恐怖であった。
動けるのはザフィーラと、グレンラガンに乗っている為、素手で戦う訳ではないシモン達のみ。
「行けるか?グレンラガン」
「俺は大丈夫だけど…ニア?」
「ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…」
「少し動きが鈍くなるけど、大丈夫。行ける!」
グレンラガンとザフィーラはシグナム達の前に出ると、襲い掛かる蟲達に向け攻撃を開始する。
ザフィーラは、人型に成り己の拳で次々に自身の体格以上ある蟲達を砕いていく。
グレンラガンも、前方にある吐出口からドリルを生成し蟲達へと向ける。
「ドリラッシュ!」
シモンの掛け声と共に吐出口から多数のドリルが発射され、蟲達を貫き倒していく。
しかし、倒しても、倒しても出現する蟲の大群に徐々に押され始めるグレンラガン。
いくら膨大な螺旋力を持ったシモンであっても、こうもノータイムで襲い掛かる蟲相手にスタミナが無くなり始めている。
「こいつら、倒しても、倒しても襲ってきやがる」
「それでけ、あの卵に近づけさせたくないのだろう」
「これ以上出てこられると、流石に疲れるぜ」
「…次は大物のようだ」
ザフィーラの言うとおり、森が浮かび上がったかのような巨大なトンボに似た蟲が出現する。
こんな巨大な蟲相手に、スタミナが切れる寸前のシモンが駆るグレンラガンでは対応しきれない。
守護獣であるザフィーラは、防御に特化しているため巨大な敵相手は不利だ。
シモンは意を決して、脅えているシグナム達へ活を入れる。
「シグナム!ヴィータ!シャマル!ニア!」
グレンラガンから発せられる怒声を聞き、身体をビクッとさせる4人。
「今この状況を覆すには、お前達の力が必要だ!相手が蟲だろうが、俺達の目的の前では…ただの脆い壁だ!」
その一言に、ハッとする4人。そう、はやてを救うために戦っているのだ。
こんな所で立ち止まってどうする。
はやての笑顔を守るのが、目的なのだから。
「目が覚めたよ、シモン。お前は真なる戦士だ」
「はやての痛みと、こいつらの気持ち悪さなんて比べるまでもねぇ!」
「それに、こんな大きなモノが蟲だなんて思わなければ大丈夫です!」
「はい!こんな壁、シモンと私のドリルで貫いて見せます!!」
4人が気力を取り戻してくれた事に、喜ぶシモンとザフィーラ。
「よし、行くぜ!みんな!!」
「「「「「おぅ!」」」」」
規制恐れ支援
気迫に満ちた声と共に、巨大なトンボ型の蟲へと攻撃を開始する。
シモンとニアは、必殺技の為に螺旋力を貯めるため動きを止める。
その間、シグナムとヴィータで巨大トンボから出てくる蟲を次々と叩き落していく。
ザフィーラとシャマルは、防御魔法でグレンラガンへの蟲による突撃を防ぐ。
目の前にあるラセンモニターに表示されるラセンゲージが、最大になりシモンは叫ぶ。
「必殺!」
グレンラガンの胸に装備されているサングラスブーメランを2枚投げつけ、標的を空中へ貼り付けにする。
圧倒的大きさを持った巨大空母クラスのトンボ蟲であっても、この力には逆らえず今までこの技を食らってきたガンメン達と同じ貼り付けにされる。
その背後には螺旋銀河が広がる。
「ギガァッドリルゥゥゥッンンンブレイクゥゥゥッ!!」
戦闘空間を螺旋銀河へと通じさせ、全ての螺旋力を右腕に集束させた超巨大なドリルへと化し、体当たりを仕掛ける。
螺旋王が駆るラゼンガン以外に破られていない最強の技が、巨大空母型のトンボ蟲の口へと突入し尻尾の尾からドリルと化したグレンラガンが貫いて出る。
地表へと降り立ち、敵を背にしてサングラスブーメランが胸へと戻ってきた後、巨大空母型のトンボ蟲は膨大な螺旋力によって砕け散った。
その光景を急いで距離を取って離れて見ていたシグナム達は、その力に驚愕する。
「これが、グレンラガン…否、シモンの力か」
「ちげぇだろ?シモンとニアと」
「ブータちゃんの力ね」
「ふっ、その通りだな」
「蟲も退散したようだ。蒐集を始めるとしよう」
こうして、未知の卵から蒐集した魔力によって闇の書は20ページも埋めることが出来た。
シモン達は思った。この調子なら、必ず闇の書は完成しはやての病気は完治すると。
だが、事態は最悪の運命へと進んでいたのだ。
クリスマスイブの日、グレアムからグレンラガンのメンテをするため本局へ来るように言われ向かったシモンとニア。
しかし、それはヴォルケンリッターからグレンラガンを引き離す罠であった。
その隙に、仮面の戦士達によってシグナム達は闇の書の完成のための糧とされ、その一部始終を見せられたはやては絶望し、
闇の書の意思に願いを問われた時、最悪の答えを出してしまう。
それに答え、はやての身体にユニゾンした闇の書の意思は完全覚醒し、目の前に居るなのはとフェイトに戦いを挑んだ。
闇の書の覚醒を見届けた仮面の戦士の2人は、次の段階へと進もうとした時クロノに拘束され素顔を暴かされる。
仮面の戦士の正体は、ギル・グレアムの使い魔であるリーゼアリアとリーゼロッテであったのだ。
そして、彼女達を捕らえ直ぐに本局へと向かったクロノと武装局員数名。
本局へ戻ったクロノがグレアムへ尋問を開始した時、門番をしていた武装局員を押しのけ部屋に入ってくるシモンとニア。
エイミィからの連絡で、闇の書が覚醒しヴォルケンリッター達が消滅した事を聞き、更に事件の首謀者を知り、怒りを爆発させながらやって来たのだ。
シモンは、怒りの形相のまま座っていたグレアムの襟を左手で乱暴に掴み取り立たせると、右拳を振り上げる。
「グレアムッ、歯ぁっ食いしばれぇっ!!」
その直後、シモンの怒りの鉄拳がグレアムの頬に食い込み、あまりの威力に彼は床に叩き付けられる。
強烈な一撃に数秒間意識が飛んでいたグレアムだったが、駆け寄ってきた彼の使い魔のリーゼアリアとリーゼロッテの肩を借りて立ち上がる。
口の中を切ったのか、グレアムの口から血が流れている。
そんなグレアムに再び殴りかかろうとするシモンを、クロノが羽交い締めにして止める。
「離せ、クロノ!こんな奴には、こんな一撃で済ませてたまるかよっ!!」
「シモン!君こそ頭を冷やすんだ。こんなところで争っていても、事態は進展しない!」
「でも!」
「八神はやてと言う子を助け出すチャンスさへ、失う事に成っても良いのかっ!」
その一言を聞き、身体の力を抜いたシモン。
彼の表情は、今も怒りが収まらず険しいままだ。
何とかシモンをソファーに座らせたクロノは、同じくソファーに腰を下ろしたグレアムに事の経緯を話すよう促す。
グレアムは語った。
最後の支援
11年前当時の闇の書事件で、クロノの父親を死なせてしまった事への負い目などから闇の書の封印を目指していた。
その事件後から独自の調査で早期に闇の書の動向を察知しており、両親を失ったはやての「おじさん」として財産管理や資金援助を行っていたのだ。
なぜシグナム達の行動がバレていた事に、今頃気づいたシモンは悔しさのあまり握る手から血がにじみ出る。
そんなシモンの事を気にかけながら、クロノはグレアムへ話を続ける。
「…主を捕らえようと、闇の書を破壊しようと、直ぐに転生してしまうから。だから監視をしながら、闇の書の完成を待った…見つけたんですね、闇の書の永久封印の方法を」
「両親に死なれ、身体を悪くしていたあの子を見て心は痛んだが、運命だと思った。孤独な子であれば、それだけ悲しむ人が少なくなる」
「あの子の父の友人を騙って、生活の援助をしていたのは…提督ですね」
「永遠の眠りに着く前ぐらい、せめて幸せにしてやりたかった…偽善だな」
封印の仕方を聞き出そうとした時、突然シモンがソファーを立ち出口へと向かっていき、ニアも共に出口へ向かった。
2人が、今からどこへ向かおうとしているのかと問うクロノ。
シモンは振り向かず背中で語った。
「あいつらを助けに行く。はやても、なのはも、フェイトも、シグナムたちも…全員だ」
「闇の書の守護騎士達は既に」
「そんな事、分かってるよ!でも、それでも、俺は行く。道はこの手で作ってみせる。そんな運命なんて、俺のドリルで貫いてやる」
「そうです、シモンのドリルは…天と地と明日を作るドリルなのですから。それでは、失礼しました」
ニアはお辞儀をして、先に行ったシモンを追いかけて行った。
その後クロノに計画を看破されたグレアムは、クロノへ切り札であるデュランダルを渡す。
クロノが急ぎ現場へ向かった後、グレンラガンへと通信を開き、ある問いをするグレアム。
「シモン君、1つ聞きたい…なぜ君は、そこまでするんだ?」
『テメェの心に聞きやがれ!』
その一言を言い終えると、現在戦いが繰り広げられている海鳴市上空へと転送されるグレンラガン。
シモンの凄みのある一言に、ソファーに背を埋めながらグレアムは悟った。
「そうか、彼もまた悲しみを増やさないよう力を振るっている…か。対する私は、結果的に1人の子の人生を終わらせようとしていた…本当に大バカだな、私は……
シモン君、クロノ…この事態の収拾、君達若き者に託すよ…老人は、全ての尻拭いをするとしよう」
『熱き男、己の想いの強さに突き動かされ、赤き巨人を駆り仲間の下へと急ぐ。慕う女、信頼する男の支えと成り、友を救うため男と行く。
小さきモノ、友の肩に乗り親しき者達の下へ向かう。運命と言う道理を蹴り飛ばす者達が、漆黒の天使が待つ戦場へと突貫する』
次回予告
漆黒の天使が宙を舞い、桃色と金色の輝きと衝突し合う。
友のため、己のため、男と女が運命に抗うため突貫する。
少女が絶望に立ち向かった時、奇跡が起きる。
その名は、天元突破。
次回 魔法少女リリカルグレンラガンA's
最終話『ほな、また会おな』
CV:八神はやて
投下終了しました。
なんとなく最後はグレンラガン風の次回予告にして見ました。
支援ありがとう!
GJです、シモン格好良すぎです本気で惚れそうです、俺もグレン・ラガンのクロスが書きたくなりました。
しかし巨大な蟲ってナウシカ?
GJ!シモン、かっこいいぜ。しかし、天元突破ってまさか、最終回に出てきた天元突破グレンラガン!?
天元突破グレンラガンまで進化したら間違いなくバランスブレイカーだわな
そして乙。次が最終回か。期待しています
>>リリカルグレンラガン氏
かなり駆け足な展開でしたが、その分テンポ良く話が進んで、GJでございました!
グレアムの画策したことに怒りを爆発させる、それでこそシモン!
次回はついに最終回だそうですが、熱い展開を期待しております!
感想ありがとうございます。
>>しかし巨大な蟲ってナウシカ?
その感じ、YESだね。
そうです。ナウシカに出てきた蟲です。
卵は、あれです。
天元突破は、DS版かTV最終話版か悩んでます…どっちがインパクトあるだろう?(笑)
空気読めない量の一発ネタ完成。
誰も居なさそうなので12時から投下するっす。
クロスネタは漫画版カルドセプト。
7巻での重大なネタバレがあるので、まだ読んでない方、これから読もうとしている方は逃げて!早く逃げて!!
しえ〜ん
一人の騎士がいた。
強大な敵を相手に決して退かず、戦い続けた騎士がいた。
決して敵に背を向けず、その大きな背中に小さな主を守り続けた騎士がいた。
――――誇り高き、一人の騎士がいた。
女神カルドラにより作られた創造の書「カルドセプト」。
一筆書き加えれば、その通りの世界が創造される森羅万象の書。
かつて、その創造の書を巡り世界が滅びかけた日があった。
――邪神バルテアス。
邪神は女神カルドラより創造の書を奪い、世界を己の恣に書き換えようとした。
大空を埋め尽くし全てを腐らす蝿の王にして風の王「ベールゼブブ」
大地を喰らい毒を撒き散らす巨人の骸にして地の王「ダークマスター」
大海を制し大陸さえも沈める八つ足の異形、水の王「ダゴン」
旧世界の全てを焼き滅ぼす破壊の神にして火の王「フレイムロード」
これら四属の王に仕える屈強な戦士の一族「ミゴール族」
バルテアス神が作り上げたクリーチャーにより、世界は流血と混沌に満ちていった。
空は風の王に埋め尽くされ、もはや昼と夜の区別も無く。
大地は毒で汚染され、奇形の動物で溢れ。
大陸もろとも数え切れぬの命が海に沈み。
森林、山地、平野、あらゆる場所にミゴール族が現れた。
世界の守護者たる古竜たちが立ち向かい、数多の敵を屠ろうとも、バルテアスが創造の書に一筆書き加えるだけで邪神の軍勢は数万に増える。
古竜たちは絶望的な戦を繰り広げ、一匹また一匹と大地に墜ちていった。
古竜たちに落とされた風の王は、その死骸ですら毒を撒き散らし大地を汚す。
――――世界は滅びへと向かっていった。
歪んでいく世界を見つめ、女神カルドラは決断を下す。
女神は大地の邪神バルテアスに光の剣を振り下ろし、邪神を創造の書ごと、さらに数百万の地上の命を巻き添えしながら討ち倒した。
自らの創造物の命を奪った女神は、その日を最後に世界から離れ、二度と姿を現すことはなかった。
砕かれた創造の書は、無数の欠片となって世界に降り注いだ。
創造の書の断片。
断片となっても尚、力を失わぬソレは魔力やクリーチャーを呼び出すことを可能とし、カード状の断片から力を引き出せる人間は「セプター」と呼ばれるようになった。
カードの研究が行われる中、ある錬金術師が一つの仮説を立てた。
『創造の書の断片であるカード。これらを全て集め、創造の書を復元した者は神の力を手に入れる』
かくして動乱の時代が幕を上げた。
カードを手に入れるためにセプター同士が争い、魔物を従え自然現象を操る人智を超えた力は無力な民の脅威となり、セプターを忌み嫌う民により罪無きセプターが処刑される。
戦乱の世の中、ある集団が現れる。
『黒のセプター』
本来単独で行動するセプターとしては異例の、統制されたセプター集団。
カードを奪取するために幾つもの都市を、その住民ごと滅ぼす無慈悲なる集団。
カードコンプリートまで残り三枚となった彼らは、最後の拠点へと侵攻する。
――エンダネス島
民との衝突を良しとしないセプターたちの隠れ里であり、唯一のセプターのためのギルド。
賢者ホロビッツら「三賢者」が、唯一の生き残りとなった水の王と契約し、水の王たる『彼女』がギルドマスターとして守護する島であった。
セプターたちの天国であった里は、黒のセプターの襲撃により原形を留めていなかった。
黒のセプターによって復活、繁殖された風の王。
魔具により強化されたミゴール族。
そして黒のセプターが長、ベルカイルによって放たれた広域殲滅魔法「メテオストーム」
もはやエンダネス島は死骸と瓦礫、魔物で溢れる魔都と化していた。
――――己の槍は届かなかった。
セプター・ナジャランの最も忠実なクリーチャー『ナイト』は、その4m近い巨体を壁に打ち付けられたまま、茫洋とした思考の中で、その言葉だけが浮かんだ。
専心の一撃であった。
黒のセプターが長、ベルカイルに対し放った一撃。
だが、それが奴に届く直前、己は弾き返され壁に打ち付けられたのである。
槍を握っていた右腕は、その鎧装の全てを粉砕され、胸部装甲の一部が崩壊している。
内部機関にも重大な破損が見られた。
身体のあちらこちらから不快な噴出音がする。
蒸気が流れ出るように、魔力が流出し続ける。
「……馬鹿な!ドワーフ鋼製の俺の刃が……砕かれた!?」
相棒の槍――リビングウェポンの声が聞こえる。
身体の半分を砕かれたが、何とか生きているようであった。
かすむ視界の中、己を鎧袖一触で打ち払った相手を見る。
己と同様、人には在らざる巨体。
威容を誇る漆黒の鎧。
業物と一目で分かる剣と盾。
――――『首無し騎士デュラハン』
『ナイト(騎士)』などという一兵卒である自分などでは到底適わぬ『魔将軍(ジェネラル)』であった。
故に、これは必然であった。
敵手と己では能力に歴然たる差がある。
さらに完全な不意打ちで行われたカウンター。
損傷は致命的だった。
外部装甲だけでなく、内部機関への重大な破損。関節部位にも影響が見られる。
恐らく今の状況では歩行するだけで、己の身体は破損し崩壊していくだろう。
止まらない魔力の流出で意識が深い闇へ沈みかけた――――その時
『助けて――――父ちゃん』
声が聞こえた。
己の主である、少女の声が聞こえた。
どんな修羅場であろうとも、決して諦めない少女だった。
人ならざる黒のセプターと対峙した時も、風の王と対峙した時も、地の王と対峙した時も、人とは比較にならぬ魔力を持ったエルフと対峙した時も、つい先ほど、魔都と化したエンダネス島を駆け抜けた時も、決して臆することなく立ち向かっていった少女だった。
いつだって笑顔で前を向いていた少女の、初めて聞く、弱弱しい、今にも泣きそうな、助けを呼ぶ声だった。
――――――心臓に火が灯った。
沈みかけていた意識を無理やり叩き起こし、役立たずだった目を開かせる。
『敵』を見た。
巨体である己よりも巨大な体躯。肉の塊に巨大な目がついた醜い化け物。
『デスゲイズ』
命を奪うのではなく、存在を構成する『創造の書』の記述を抹消することにより、相手の存在そのものを宇宙の因果から永遠に抹消する邪眼。
邪眼が、主を、少女を視界に捉えた。
身体を起こす。
急激な動きに耐えられず、装甲が崩壊する。魔力の流出が一層激しくなる。
――それがどうした。
邪眼から放たれた光が少女を包む寸前に、己の身体を少女の前に割り込ませる。
「ナイト!?」
驚愕と共に放たれた主の声には返答できなかった。
これから己が為すことは、きっと彼女を傷つける。
それでも尚、この場を退く訳にはいかぬ。
未だ鎧装の残る左腕を盾にするものの、装甲は光を受けた端から崩れ、消えていく。
――それがどうした。
――――デスゲイズ?デュラハン?到底適わぬ?
――――――それがどうした!それがどうしたというのだ!!
――――――――己の主を守るという誓いの前に、そんなものが障害足り得るか!!!
だが、予想していたより光の奔流の圧力が強い。
氾濫した濁流のような光は、容赦無く己の巨体を押し流そうとする。
このままでは己は盾にさえ成れない。己を飲み込んだ後、光は少女を飲み込むだろう。
それだけは容認できぬ。それだけは、決して容認できぬ!
前に進まなくては。前へ、一歩でも前へ。
しかし、己の足は動かない。デュラハンによる一撃が、脚部に深刻な損傷を与えている。
己の意思通りにすら動かぬ身体に殺意にも似た怒りを覚えた時。
「だめ……やめてナイト!あなたが消えちゃう!!」
今にも泣きそうな少女の懇願の声。
己が退けば、次に消えてしまうのは自分だというのに。
ストン、と今まで意識を占めていた怒りが、あっけなく消える
――嗚呼、いつもそうだった。
力あるセプターである少女は、どこにでもいるような、天真満欄な年頃の少女だった。
ただ、誰かの悲しみに涙を流すことができ、誰かの不幸が許せない少女だった。
――いつもそうだった。
少女が力を振るう時、彼女が怒りを見せる時、それはいつだって誰かが、友が傷つけられた時だった。
そして、その誰かの、友の中には己たちクリーチャーも入っていた。
セプターにとって、カードのクリーチャーなど道具でしかないのに。
少女にとっては大切な、共に暮らす仲間だったのだ。
――――少女は、自分よりも少しだけ、他の誰かが大切に思えることができる人間だった。
ズシン、と鈍い音が聞こえた。
一歩、足が地面を踏みしめた音だ。
先ほどまでの苦難が嘘のように身体が動く。
一歩、また一歩と前に、着実に前に進む。
身体が消える。
既に装甲は全て消滅し、鎧の無くなった己の素体まで消えていく。
記憶が消える。
己という存在が消えていく。
己が経験した記憶が、思い出が消えていく。
――いつの頃だったろう。まだ幼い少女が己の鎧に頭をぶつけ、大泣きしたのは。
――いつの頃だろう。師に酷く叱られ、己の鎧の隙間に逃げ込んだのは。
――少女に言われ、最後に己がジャガイモの皮は剥かされたのは、いつの頃だろうか。主は家事がことさらに苦手だった。あれではいつか苦労するだろうに。
暖かい、穏やかな、愛しき記憶。
だが、たった今思い浮かべようとした情景さえ、次に一歩進めば消えてしまう。
それを哀しく感じながらも、前に進むことは止めなかった。
一歩進む度に空っぽになる。
ガラクタになっていく己。
しかし、一番大切なことだけは覚えていた。
――――あの日の誓いだけは、忘れない。
一番大切な想いだけは――――決して。
「やめなさいナイト!!命令よ!」
もはや少女の声は涙を隠せなくなっている。
後ろを向くことはできないが、きっと少女の顔は涙でグチャグチャになっているだろう。
しかし、止まるわけにはいかぬ。
今回ばかりは己の我侭を貫かせてもらおう。
「申し訳ありません。我が君」
初めて少女に答える。
それは、初めて、そして最後に『彼』が少女の命令に逆らった言葉だった。
「ですが今こそ……前の主君の命を果たす時です」
――女神カルドラよ、まだ声が発せることに感謝します。ですが、出来うれば後もう一言。
邪眼まであと10m、右腕で剣を抜く。
もう、左腕は無い。
「先代の主君……ナジャラン様の御父上が、最後に私に命じられました」
少女の父もまた、セプターであった。
力あるセプターでありながら、力の在り様を間違えなかった。
力あるセプターでありながら、一人の人間、一人の父で在り続けた。
セプターとしての在り様を、世界との付き合い方を少女に教えたのは彼であった。
――誇らしかった。
それまで幾人かのセプターに使われてきたが、道具でなく、一人の騎士として己を扱ったのは彼が初めてだった。
気高きセプターを主君とし、その主君に騎士と認められたことが誇らしかった。
だからこそ、己が憎い。
あの日、主を守ることができなかった己の無力が憎い。
あの日、あの時、主君は敵に囲まれ自身も深手を負いながらも、決して戦うことを諦めなかった。
その戦場のなか、主君はいつもと変わらない、人好きのする笑みで己に託したのだ。
――――あの日の誓いを今、ここに。
駆ける。
もはや身体など半分も残っていない。
だが駆けることはできた。
駆けながら剣を大上段に構える。
消えていく身体。
消えていく記憶。
だけど――これだけは憶えている。
『ナジャランを守ってやってくれ』
――――誓いと守るべき人の名、これだけは憶えている。
剣が振り下ろされる。
落下にまかせた駄剣などではない。
精確かつ鋭い斬撃として、邪眼を袈裟懸けに斬り裂いた。
斬り裂かれた邪眼が、断末魔の叫びの如く雷光を撒き散らす。
――断言しよう。私は幸せなカードだ。
二代に渡り、気高き主君に仕えることができた。
道具でなく、クリーチャーですらなく、騎士として生きることができた。
主君を守れなかった駄剣であったが、それでも最後の最後には守ることができた。
――断言しよう。私は、世界で最も幸せな騎士だ。
後悔は無い。
己は転生すら許されぬ道を辿るだろう。
だが、誓いを果たすことはできた。
――――後悔はない。
――――だけど。
――――だけれども。
太陽のように笑う少女の、悲痛な泣き顔だけが――――いつまでも心に残った。
そして、邪眼を斬り裂いた剣が落ちるよりも早く、騎士の身体は消滅した。
これが、ある宇宙、ある世界での、誇り高き騎士の最期であった。
『リリカルなのはCuldcept ―Belkan Holy Knight―』
「…………?なんだろうコレ?」
学校帰りの裏路地で、高町ヴィヴィオは不思議な物を見つけた。
ちょっとした冒険のつもりだった。
いつもとは少しだけ違う帰り道、いつもと少しだけ違う街角、いつもと少しだけ違う雑踏。
少女にとっては十分冒険であった。
少女の通う学校は規則に少々うるさい傾向にあり、また少女の御目付け役であるシスターは、それに輪をかけて口うるさいのである。
そんなガミガミシスターも今日は別の用事があるらしく、少女の帰宅には付き添わない。
千載一隅のチャンスであった。
出かける直前にシスターは
『いいですね。寄り道は駄目です、買い食いも駄目です。真直ぐお家に帰るんですよ』
と言っていたが、そんなの関係ねぇ!と言わんばかりに少女は燃えていた。
いざ行かんヴァルハラへ!というテンションである。いや、ヴァルハラは駄目だろ。
かくして少女の日帰り冒険が始まったのであった。
とは言え、大岩が転がるでもなく天井が落ちてくるわけでもなく、野良猫を撫でようとして逃げられた辺りが彼女の冒険のクライマックスであった
そしてエンディングを向かえ、スタッフロールが流れる辺りで、少女は『それ』を見つけたのだ。
道端に落ちていた『それ』はカードのようだった。
表に円の中に4色の丸が入った模様。そして、裏には騎士の絵が描いてある。
学校の男子たちが夢中になっているカードに似ているようだったが、男子たちが遊んでいるカードは紙で出来ているのに対し、『それ』は石や鉄で出来ているようだった。
カードというよりも、むしろ板と言った方が近い。
『それ』をヴィヴィオは一目で気に入った。
男子たちがカードに夢中になっている姿を見て、何が楽しいんだろ?男の子って変なのー、などと思っていたが、それは撤回しよう。
カードに描かれた騎士
それがヴィヴィオを強く惹きつけた。
古びたカード。
だが、そこに描かれた騎士は、何者にも屈さぬよう雄雄しく見え、そして誰よりも優しく見えたのだ。
カードを上着のポケットに仕舞い込む。
宝物を見つけた時は、決して落とさぬ様そこに入れるのだ。
思いがけない宝物の発見に、ヴィヴィオは上機嫌で自宅への道を歩いていった。
それは運命だったのかもしれないし、ただの偶然だったのかもしれない。
ただ、言えることは
――――その小さな冒険には、意味があったのだ。
「……脱走者?」
昼を過ぎ、客足もまばらになった喫茶店のテーブル。
意外な単語を聞き、高町なのはは親友である八神はやてに思わず聞き返していた。
「そや、今月だけで既に十人を越えとる。しかも脱走者にはAAAランクの空戦魔導士までおったみたいでな、上じゃ大騒ぎになっとる」
「AAAランクまで!?」
基本的に志願制である管理局で、脱走は非常に稀である。
さらにAAAランク。ミッドチルダでも有数の高給であり、本人が望めば後方勤務も可能。
臆病風や待遇への不満では到底説明できない異常事態であった。
不満でなければ別の理由が。明確な理由がある筈である。
なのはの、そんな内心を汲み取ってか、はやては話を続ける。
「脱走者には皆、共通点があってな」
――共通点。この異常事態において、おそらく唯一の手掛かり。
「――ベルカや。脱走者は皆、なんらかの形でベルカに関わっとる。ベルカ系移民の末裔、近代ベルカ式の使い手やったりとかな」
「カリムんとこの聖王教会でも脱走者が出とる。向こうはもっと深刻みたいでな、シャッハと一緒に本部で缶詰や」
「フェイトちゃんも、この案件を追うとる。うちも古代ベルカ式を使うとるせいで、上から睨まれて碌に動けん状況や」
そこまで一気に言い切り、はやては真直ぐな瞳で親友を見つめ、言った。
「気をつけてな、なのはちゃん。この事件、きっと厄介なことになる」
昼下がりの喫茶店。
その穏やかな静謐、それが酷く不気味だった。
八神はやての予感は、現実のものとなる。
ミッドチルダ首都、クラナガン市内各所で唐突に発生した無差別テロ。
故レジアス・ゲイズ中将が鎮圧に成功して以来10数年ぶりの、そして空前絶後の大規模テロであった。
各基地同士の連絡は絶たれ、さらに別の基地を襲撃する陸士・空士部隊まで登場。
味方からの攻撃。連絡を絶たれた状況で、誰もが疑心暗鬼に陥る。
クラナガンは戦場と化した。
戦火の中、なのはは一人の騎士と対峙していた。
襲撃を受けた基地へ救援に向かう途中、突如として襲い掛かってきたのだ。
自分より少しだけ年上と思われる、青年と言って差し支えない騎士。
手に持った片手剣、三角の魔方陣、身に纏った魔導甲冑。
どこか烈火の将にも似た、まぎれもないベルカ騎士であった。
先日の、親友との会話が思い出される。
答えは直ぐ導き出された。
「君が脱走者の一人だね。――何で?何でこんなことが出来るの?」
眼下には燃え落ちる街並。
本来は人々の笑顔で溢れている筈だったのに。
そして、その笑顔を守るにが自分たちの、管理局の役目だった筈だ。
許容できない。決して許容できない。
彼女にしては珍しい、明確な怒りを持って相手の答えを待つ。
彼女の怒りに、感情の抜け落ちた瞳で、騎士は淡々と答える。
「最初に質問は否だ。だが、彼らは俺たちの同志だ。次の質問については――」
一度、騎士は言葉を区切る。
瞳に感情が宿る。
――意志。
狂気にも似た、鉄のような意志が宿った。
「――――ベルカ復興。我らが祖国に、再び栄誉を」
一瞬、彼の言っていることが理解できなかった。
魔法技術としてのベルカでも、自治区としてのベルカでもない。
かつて栄華を誇った次元世界。ロストロギアの暴走で滅びた国。
それを復活させる。青年は、そう宣言したのだ。
「そんな……、そんなことのために!!」
罪無き人々を傷つけたというのか。
「これ以上ない理由だ。俺たちと君では、根本的に立ち位置が違う」
なのはの怒りに満ちた瞳を前にしても、騎士の語り口は変わらない。
淡々と、自明の理だと言わんばかりの口調。
それが、さらになのはの心を逆撫でにする。
そのせいだろうか。彼女の次の言葉は、無意識の内に、騎士にとって最も触れてはならない場所に触れてしまっていた。
「そんな……! 滅びた国のために、当の昔に自滅した国のために――」
「――――違う」
騎士の様子が豹変する。
今までの感情の抜け落ちた声とは全く異なる、暗闇から這い登るような、暗い声。
「自滅などでは無い……自滅などでは断じて無い!」
騎士の言葉に、絶望と狂気が入り混じった瞳に、なのはは声を失う。
騎士の声は止まらない。
「俺は……俺たちは見た! 祖国が! 守るべき民が! 友が! 家族が! 愛する人が、次元の狭間に消えていくのを!! 死体すら残らなかった!!!」
「俺たちは、『あの日』『あの丘』で見続けることしかできなかった!!!」
――――慟哭。
「……それしかできなかった。貴様らミッド人共の作戦を止めることが出来なかった俺たちにはな」
――――懺悔。
騎士は慟哭と懺悔と共に語った。
ベルカは滅びたのでは無い。他ならぬ、ミッドチルダの手によって滅ぼされたのだ、と。
それを自分たちは見届けたのだ、と。
「それじゃあ……あなたは」
生々し過ぎる慟哭。
ただ理想を語るだけでは到底達し得ない言葉の重み。
導き出されるのは一つの結論。
「――そうだ、我らは聖ベルカ騎士団。聖王陛下の忠実なる騎士にして愚かな敗残兵。君らの言う古代ベルカの騎士、150年前の騎士だ」
絶望は、憎しみは連鎖し、継承される。
「俺たち騎士団は誓ったのだ、あの丘で。再びベルカを再興させると」
「ある者は生き残りを集め組織を作った、誓いを後代に継承させるために。ある者は怨敵に恭順した、敵地で再起を伺うために。ある者は地下に潜り同志たちを募った」
「そして俺たちは永い眠りについた。再起の折、同志たちの剣となるために」
「地獄だったよ。永すぎる冷凍睡眠と、不完全な装置は重大な障害を発生させる。二度と目覚めなかった同志がいた。老化が止められず朽ちていった者もいた。半ばで意識が目覚めたものの、カプセルが開かず餓死した者すらいた。40人近くいた同志は、半分以下になっていたよ」
――妄執。
国を、理想を、家族を、友を、恋人を、大切なものを何一つ守ることができなかった騎士たち。
彼らの絶望は、後悔は、無念は、150年に渡り消えることは無かったのだ。
150年の時をかけて受け継がれ、広がり続けた想いは、黒泥が如き妄執と化し、クラナガンを覆う戦火となっていた。
しえm
sien
sien
声が出ない。
青年の絶望が、後悔が、無念が、痛いほど伝わる。
人々の笑顔を奪われ激怒した自分。
だが、もし自分が彼と同じ状況に陥ったら?
親友を、家族を、『あの子』を、大切な人たち全てを奪われたら?
――そんな自分を棚に上げ、彼を否定できるのか?
これ以上、彼の瞳を見ることができない。
きっと、考えてはいけないことを考えてしまう。
「だが、そんな地獄も終わりだ。俺たちが待ちわびた御旗は立ったのだ」
だが、聞き逃せない言葉に顔を上げる。
青年と眼が合う。
先ほどまでの狂気はなりを潜め、今はただ、静かな瞳をしていた。
「この状況が理解できたか? そう、俺たちの目的は唯一人。我らが唯一にして無二の主君、聖王高町ヴィヴィオを迎えることだ」
大切な人の、名前がでた。
「彼女を迎え、戴冠させることによって御旗は立つ。聖王の御旗のもと、俺たちはミッドチルダに宣戦布告を行う」
騎士は宣告する。
高町なのは。聖王の保護者であり、Sランク魔導士。最も懸念すべき不確定要素。
彼は、自分一人を足止めするために来たのだと。
「……私には、君のことをとやかく言う資格は無いのかもしれない」
彼らの想いは理解できる。理解できてしまう。
――だけど。
レイジングハート。
不屈の名を冠する相棒を構える。
彼の瞳を真直ぐ見据える。
「あの子には――ヴィヴィオには手を出させない! あの子は私が守る!!」
これだけは断言させてもらう。
彼に大切な人がいたように、自分にも大切な、譲れない人がいるのだ。
砲口を向けられながらも、青年は僅かに笑った。
それは憧憬だったのかもしれない。
――出来れば、そういう風に戦いたかった。
だがそれは、もう手遅れだ。
心も、身体も、何もかもが遠い。
許されるならば、最期の敵手に敬意を。
「すまないが、高町なのは一等空尉。俺は君とは戦わない」
予想外過ぎる言葉に、構えた砲口が揺らぐ。
「一体何を言って!?」
「言っただろう、永すぎる冷凍睡眠は重大な障害をもたらすって。俺も例外じゃなった。戦闘に、リンカーコアが耐えられないんだ」
青年は自嘲するように笑った。
「だったら投降し……」
て、と続けようとした時。
周囲の風景が変わる。
結界魔法。それも外界と遮断する隔離結界。
そして、青年が剣を自身の胸先に突きつける。
気まずさを隠すかのような苦笑。
「昔話に付き合ってくれて感謝する。それと、対峙がこのような結末で、すまない」
苦笑と感謝と謝罪。
それだけを残し、青年は己の胸へと剣を突き刺した
「なっ……なんで!なんでそこまで!!」
突然の自害、彼の意図が分からず、また先ほどまで会話していた相手の死に混乱するなのは。
だが、彼の意図はすぐに判明した。
結界が、魔方陣が紅く染まる。
術者が死亡したのに、結界は未だに存在し続ける。
未だ空中に浮かぶ『彼』の遺骸から流れ落ちる血が、魔方陣に飲み込まれていく。
「レイジングハート!?」
《大量の血液を媒介に結界を維持しています。該当データ無し。おそらく古代ベルカの秘術かと》
これが『彼』の役目だったのだ。
大切なもの全てを失い、永い眠りの果てに戦う術まで失った『彼』は、己を命のみをカードとして、なのはの前に立ち塞がったのだ。
「レイジングハート、破れる?」
《申し訳ありませんが不可能です、構成内容すら不明。魔力量は限られてますので、時間経過による結界の弱体化を待つしかありません》
「……どれくらいかかるの?」
《二時間は》
唇を噛む。
150年に渡る妄執は、その手を広げ続け、狂気じみた周到な計画を作り上げたのだ。
二時間という時間を稼ぐためだけに、若き騎士の命を捧げるような計画を。
一刻でも早く、あの子の元に行かなければならないのに。
「…………ヴィヴィオーーーーっっっ!!!」
紅い天空を見上げ、大切な人の名前を呼ぶ。
それが意味の無い行為だとしても、止めることはできなかった。
いつかの日、『彼』もそうしていたのかもしれない。
口の中で、血の味がした。
ヴィヴィオは震えていた。
朝起きたら、世界の全てが変わってしまったのだ。
街並が赤い。
つい昨日冒険した街並が、炎と黒煙に包まれていたのだ。
轟音。
遠くで炎が上がるのが見えた。
今、彼女は装甲車の中にいた。
眠っていたとき、突然アイナに起こされたのだ。
変貌した世界。
それに泣き出す暇もなく、突如部屋に押しかけた教会騎士たちによって連れ出されたのだ。
自分を助けるためだ。そう騎士たちは説明していたが、アイナを一緒に連れて行ってはくれなかった。
ぐずる自分を無理やり自宅の前に停めていた装甲車に乗せ、赤と黒に染まった街を疾走する。
震えが止まらない。
不安で押し潰されそうになる。
管理局に務める母達は、自分の傍に居ない。きっと誰かを助けるために、あの赤い街を飛び回っている。
アイナは一緒に来てくれなかった。
装甲車に空きは無く、アイナ自身も管理局から召集がかかったのだ。
震えが止まらない。
誰かに一緒に居て欲しかった。
大切な人たちに一緒に居て欲しかった。
小さな身体を、小さな腕で抱く。
そうでもしないと、不安で押し潰されてしまいそうだった。
震えが止まるよう、ギュっと強く、精一杯の力で身体を抱きしめる。
――腕に何か、硬い物の感触がした。
上着の胸ポケット。
とりあえず着て来たジャケット。昨日冒険した際に着ていたジャケットだ。
そのポケットには唯一の戦利品が入っている。
戦利品を取り出す。
昨日と何一つ変わらない、古ぼけたカード。
何一つ変わらない。
全てが恐ろしく変わって世界で、そのカードは、カードに描かれた騎士は昨日見つけたときと変わらず、まるで怖い物全てから自分を守ってくれるように雄雄しく、優しげだった。
カードを胸元に抱きしめる。
少しだけ、身体の震えが止まった。
車が止まる。
瓦礫が道を塞いでいる。
一人の教会騎士が傍に寄り、諭すように言う。
「ここから先は車じゃ行けない。でも、シスターシャッハの居る場所はすぐそこだ。それまで歩くことになるけど、大丈夫だね?」
その問いに、ヴィヴィオは黙って頷く。
カードを一層強く抱きしめた。
赤い街並。黒煙。瓦礫の山。
間近で見るそれは少女の心を掻き乱す。
時折視界に入る、炎ではない赤。黒い人型のナニカ。
それらを見ないよう、必死になって歩く。
教会騎士たちも、ヴィヴィオを中心に散開しながら進む。
彼らの緊張が、自分にまで伝わってくる。
しばらく歩き続けたその時。
突如、教会騎士たちが陣形を組む。
ヴィヴィオを守るように組まれた陣形で、騎士たちは各々の武器を前方に向ける。
直後、前方から声が飛んできた。
「よせ!味方だ!!こちら教会騎士団第三小隊、シスターカリムの命で援護に来た!」
それを証明するかのように教会騎士団の甲冑を着た男たちが五人、武器を頭の上に掲げて歩いてくる。
陣形を組んでいた騎士たちから安堵の吐息が漏れる。
向こうの騎士たちが合流する。
「すまない、気が立っていてな」
「この状況が仕方ないさ。通信網があらかた死んでいる、シスターカリムから直接命令書を受け取ったくらいだ」
そう言い、合流してきた騎士が命令書を見せる。
「この一帯の安全は確保した、二ブロック先の通りに車両を用意してある」
「助かった。こんな状況で、これ以上ハイキングは続けたくないからな」
騎士たちから緊張が解ける。
いつ、どこで襲撃されるか分からない状況での護衛任務は、彼らの精神を酷く磨り減らしていたのだ。
「これから楽しいドライブさ。……ところで護衛はこれだけか?」
「ああ、通信の遮断が痛かったな。俺を含めて四人、即席の混成小隊だ。何か問題でもあるのか?」
「――――――いや、好都合だ」
護衛の騎士たちの身体から刃が伸びる。
丁度二拍。その間を置いて、騎士たちは声も無く地面に倒れ伏した。
立っているのは五人。
たった今、合流してきた騎士たちだった。
その手に血で濡れた剣が握られている。
――ベルカの妄執
脱走者だけではなかった。
150年に渡る妄執は管理局にみならず、聖王教会の内部深くまで及んでいたのだ。
支援
sien
支援
その光景を、ヴィヴィオはまるでテレビの中の出来事のように感じていた。
つい先ほどまで、一緒に居た人たちが倒れている。
たった今、話していた相手を殺す。
それを、その行為を、少女は理解できない。心が理解を拒む。
呆然として座り込むヴィヴィオに、男たちが迫る。
血に濡れた刃。
その鈍い光を見て、ヴィヴィオは初めて状況を理解した。
座り込んだ姿勢のまま、必死で後ずさろうとする。
「……っ!いやぁ……やだぁ来ないでぇ」
視界が歪む。
周りを囲む赤い世界。
誰もいない。
自分を助けてくれる人なんて一人もいない。
鼓動が異常な早さを刻む。
起き上がり、逃げ出そうとした瞬間。
「我々と共に来て頂きます。――聖王陛下」
足が止まる。
呼吸が止まる。
心が止まる。
聞いてはいけない言葉を聞いてしまった。
『聖王』
そんなものを望んだわけじゃい。
それが彼らにとって、どれだけ重要な事なのかも知らない。
だけど自分にとって、それは。
――傷つけた。たくさんの人を傷つけた。
ほんの一年前のことなのだ。
忘れるわけがない。
自分は、今思えばどうでも良いような理由で、数え切れない人々を傷つけたのだ。
大切な人たちを傷つけたのだ。
忘れようとしていたのに。
耐えられないから、とても耐えられなかったから忘れようとしていたのに。
でも、追いつかれてしまった。
いくら忘れようとしても、それは向こうから追いかけてきたのだ。
その結果が、目の前の世界。
炎と瓦礫の赤い世界。血を流し倒れ伏す騎士たち。
自分のせいで、また誰かが傷つく。
自分のせいだ、世界が変わってしまったのは。
だから、これは罰なのだ。
自分の周りに誰も居ないのも。
アイナが居ないのも。
シスターが居ないのも。
誰も、自分を助けてくれないのも。
――母が、助けに来てくれないのも。
涙は流さない――そんな資格は無いから。
逃げださない――そんな資格は無いから。
助けは呼ばない――そんな資格は無い。
喉が、胸が冷たいナニカで詰まる。
男たちが迫る。
それを少女に似つかわしくない、諦めの眼差しで迎えながら。
支援
支援
支援します
支援感謝
規制食らった(´・ω・`)
Jane先生が働いてくれません
ちょっと風呂行ってきます。
>370
……イ`
そして力不足でスマソ
おおっ、いつの間にか新たな職人さんが!
支援します。
…規制中でしたら、今のうちにStrikers May Cry氏への支援絵を投下してよろしいでしょうか?
ウロススレで描くと言っていた、スバルのアレです。
(PCの前でJane操作しながら)動け!動けよぉ!!
という状況なので俺に構わす投下しちゃって下さい
ふと、胸元で握り締めていたカードを見た。
騎士は変わらず、そこに佇んでいる。
――やめて。あたしは助かっちゃダメなんだから。
――騎士は変わらない。変わらず、少女の瞳を見つめる。
赤い世界で、ちっぽけな少女に、ちっぽけな勇気をくれた騎士。
だから、少女は少しだけ縋ってしまった。
「………………………………たすけて」
小さな、蚊の鳴くような声。
たとえ、すぐ傍にいても聞こえないような幽かな声。
それは無意味なものに終わるはずだった。
――――――――だが『彼』には、それで十分でだった。
大切なものを、何一つ守れなかった騎士たちの無念。
人が、人として生きるために必要な想い。それが奪われた人間の想い。
それは150年の時を経て、蟲毒が如き妄執と成り果てた。
それに、唯の人では太刀打ちできない。
人であるが故に辿りついてしまった感情の極致は、容易く人を飲み込む。
ならば何が、誰がこの妄執を討ち果たせる?
妄執に囚われた騎士たちと、正面から斬り結べるのは?
――答えはここに、少女の小さな掌に。
『ソレ』は何も無い空間に漂っていた。
何も無い空間。
夜と昼も区別も無く、白と黒の区別も無く、上と下の区別も無い。
ただ、『在る』だけの空間。
『ソレ』は何者でも、何かでも無かった。
形も無く、声も無く、思考も無い。
ただ、何も無い空間を何もせずに漂うだけのもの。
何も無い空間。
ただ時折、何かが聞こえるのだ。
それが聞こえる時、『ソレ』は『彼』になった。
聞こえてくる、声のようなもの。
何故か『ソレ』は、その声に強く惹かれるのだ。
聞こえてくる声。それが何なのか、何故自分はこの声に、こんなにも惹かれるのか。
そう思考する時だけ、『ソレ』は『彼』になるのである。
何故、自分はここにいる?
一体自分は何処から来た?
あの声は誰のものなのだ?
答えの出ない思考。思い出せない記憶。
だが、そのときだけ『彼』は形を持つのだ。
少なくとも両手と両足はある。
そして、その右腕には何かを握っていた。
捨ててしまえば良いのに、何故かそれを捨てる気にはなれなかった。
捨ててしまえば、今度こそ自分は戻れなくなる。
一体何に戻りたいのか。
それすら分からず『彼』の意識は再び何も無い空間へ沈んでいく――
『――――――――たすけて』
声が聞こえた。
幽かな声が聞こえた。
少女の、弱弱しい、今にも泣きそうな声が聞こえたのだ。
――――――心臓に火が灯る。
霧散しかけた形が戻る。いや、新しい形となっていく。
急速に集まりつつある身体で、『彼』をそれを握り締める。
右腕に握っていた何か。それは剣であった。
自分は何処から来たのか?
此処は一体何処なのか?
何一つ分からない。
何一つ憶えていない。
でも――これだけは憶えている。
太陽のように笑う少女の悲痛な泣き顔――――――自分は、その涙を止めたかったのだ。
ヴィヴィオの持っていたカードから光が溢れる。
突然のことにヴィヴィオも男たちも動きを止める。
唖然とする周りを尻目に、カードの変化はさらに激しくなる。
カードは、まるで機械仕掛けのように分解し、周囲に魔力を撒き散らす。
光が収まった後、その場には一体の異形がいた。
巨大な、4m近い鋼鉄で出来た体躯を持つゴーレム。
否。
全身を包む重厚な鎧。
右腕には、その巨体に見合った巨大な剣
――――『騎士』がいた。
ある宇宙、ある世界から放逐された騎士がいた。
全てを失おうとも、身体が消えようとも、記憶が消えようとも。己が消えようとも。
一番大切なものだけは守り抜いた――――誇り高き騎士がいた。
――――その『騎士』が今、少女を守るかのように男たちの前に立ち塞がっていた。
ヴィヴィオはただ呆然と『騎士』を見上げていた。
カードに描かれていた騎士。それが今、現実として目の前にいる。
『騎士』は自分と男たちの間に立ち塞がり、無言で男たちを見据えている。
不意に『騎士』が自分へと振り向く。
まるで男たちの存在など知らぬ、と言わんばかりに堂々とした動作で振り向いた。
『騎士』と眼が合う。
人間では無いということは一目で分かる。だけど怖くはなかった。
兜の隙間から覗く瞳に、明確な意思を持った瞳に、視線が吸い込まれる。
「私を喚んだのは君か? 少女よ」
低い、鉄のような声。だけど、どこか優しげな、穏やかな声。
その声を聞いた瞬間、視界が歪んだ。
さっきまで胸を占めていた冷たいナニカが消え、代わりに熱いものが込み上げる。
握り締めた手の甲に、温かい滴が落ちる。
赤い世界。
誰も来ない筈だったのに。
助けを呼ぶことなど許されなかった筈だったのに。
「助けを呼んだのは君か? 少女よ」
――――助けは来た。
途端に、涙が堰を切って溢れる。
嗚咽が止まらない。
恐怖のせいではない。
未だ世界は赤く、『騎士』の背には男たちがいる。
だけど、もう大丈夫なのだと。
幼いながらも、それだけは理解できた。
『彼』は黙したまま少女の答えを待つ。
少女は、あの声の主とは違った。
だが、涙を流すことすら耐えている少女の顔を見たとき、懐かしさを憶えたのだ。
何かのために、誰かのために涙することすら耐えようとした少女。
その姿が、記憶の奥底にある、いつか見た少女の表情に似ていたのだ。
少女の瞳から、堰を切ったかのように涙が零れる。
己が何者なのか。何処から来たのか。それは未だに分からない。
だが、為すべきことは決まった。
――――この少女の涙を止めよう。
――――この少女を傷つける、あらゆる害悪から守ろう。
きっと己は、そういう風に生きてきたのだろう。
ならば、これからもそうで在り続けよう。
『騎士』は少女の答えを待つ。
それは儀式であった。
新たな誓いを立てるための儀式。
炎と瓦礫で埋め尽くされた街。
そこで泣きじゃくる少女と、少女の傍らに佇む機械仕掛けの騎士。
どこか絵画を思わせる光景だった。
少女が口を開く。
今度は、ハッキリと、『騎士』に聞こえるように。
「―――――――――助けてっ!」
「―――――――――承知!!!」
『騎士』が吼えた。
瓦礫の街全てに響き渡るような咆哮だった。
その直後、『騎士』が振り向き様に剣を振り下ろす。
4m近い巨体から、捻りを加えて放たれた斬撃は暴虐じみた威力となり、『騎士』の背後に迫っていた男を叩きのめした。
文字通り人外の威力と精確さを兼ね揃えた一撃は、男を魔力障壁と魔導甲冑もろとも粉砕し地面にめり込ませる。
鎧袖一触。
その有様に男たちの警戒が跳ね上がる。
全員が得物を取り出し『騎士』へと向ける。
四つの刃に身を晒されながらも、『騎士』は身じろぎ一つしない。
ただ、少女を守るように一歩前に出て剣を構える。
一歩たりとて退かぬ。
そう言わんばかりの、泰山が如き構え。
常に、その背中に守るべき人がいた。その人を守るための剣だった。
「来い、下郎共」
『騎士』が言い放つ。
その言葉に男たちが殺気立った。
「下郎と呼んだか。我らがベルカ騎士を、下郎と呼んだか!」
男たちの一人が、殺気と共に言い返す。
「そうだ。少女一人に武器を持ち、多勢で取り囲む。それで騎士とは笑止!!」
『騎士』は一度たりとて理想を語るようなことはしなかった。
ただ、守るべきものがなんであるか、それだけは常に理解していた。
「来い。この子には指一本とて触れさせぬ」
殺気が膨れ上がる。
『騎士』もまた、剣先を妄執に向ける。
何も守ることが出来なかった騎士たちの妄執。
都市を飲み込み、たった今、少女を飲み込もうとした妄執の前に。
―――― 一人の騎士が立ちはだかる。
――――この日、戦場と化した街で。
――――幼き聖王は、世界を放逐された気高き騎士と出会った。
支援
以上で投下終了です。
支援の皆さん感謝です。
そして反目氏GJ!
少女とロボがやりたかった。うん、それだけなんだ。
少女xロボとかオッサンとか動物とか兄貴とかさ、純粋な少女と不器用な漢達との交流って中々心揺さぶるテーマだと思うんだ。
でも兄貴を「おっきいお兄さん」と書くと途端に性的。
日本語って不思議!
本編に関してはお目汚し失礼としか。
ベルカ騎士のくだりは蛇足。ベルカって何なんだろう、疑問から20秒でできた設定だし。
つか、あれ誰?中盤出張った兄ちゃん。暴走しすぎだろ、名前すら考えてないのに。
以上、ご清聴感謝です。
なんという燃える展開
一発ネタといわず続けて欲しい
>>380 原作ナイトの死に様に泣いた俺が再び泣いたぜGJ!
・・・でも原作カルドが長期休載にされていった。どうなるのだろう。
>>380 用事があってしばらくレスできませんでした。GJ!
何とカッコいい男達の生きざま…読み切りというのが残念です
>>380 GJ!
ええもん読ませて頂きました!!
>少女xロボとかオッサンとか動物とか兄貴とかさ、純粋な少女と不器用な漢達との交流って中々心揺さぶるテーマ
自分もそういうの大好きですね〜。
『ジャイアントロボ』とか『ミカヅキ』とか『勇者シリーズ』とか。
純粋な心を持つ少年少女を、時に優しく、時に厳しく導き護る、無骨で不器用な漢達(ロボ・人外の存在)って「グッ」ときます。
元ネタ知らないけどGJだぜ、それと反目氏…遂にスバルwithベッキーを描いちまいましたね。
このゴツイ感じ最高ですよ、それと何といっても“シッポ”が良いですね…
素晴らしい…
たまらん!!
もうもたんな…
カルドセプトとは…これを読んだらSS版を引っ張り出すしかないですよ。GJ!!
良作投下の後に気が引けますが投下を1700を予定。
許可を!!
今回は第四話の一部と外伝第一回を投下します。
なお番外編が笑いで外伝がちょいシリアスを予定。
では・・・。
魔法少女とダンスだ!支援
未踏査世界“アビス”
旧暦時には主要世界の一つとまで言われた世界。
だが、旧暦から新暦にいたる過程で行われた再構築戦争により幾つもの世界が崩壊、忘れ去られていった中で
この世界もまた管理局によって未踏査世界として分類され忘れられていった。
その後、管理局と異なり、過去の歴史・技術の発掘・再生に熱心な企業−大企業は大半−によってかつての
歴史が発見された時、そしてそこにあったであろう技術を求め、非合法の調査隊が派遣され風化し朽ち果てて
行くのみの世界から技術が持ち出されるまで、誰もその世界のことなど忘れていた。
管理局の知らぬ間に持ち出された技術は再生され、
だがそれは誰も知らぬ間に、何者かの手によって−一般にはレイヴンといわれている−破壊され、
再びその世界は忘れ去れて言った。
時はすべてを風化させていく。
過去に生きたレイヴンの妄執も、誰に知られることも無く深い地下で風化させていくはずだった・・・。
都市部の廃墟、戦火の爪跡は年月の風化と共に消え去りもはや廃墟のみ。
端部の砂が都市を呑み込みつつある前線ともいうべき場所。
防砂堤など無い。年月と共に消えつつある廃墟都市の外郭部に不釣合いにきれいな船が着座していた。
それが高速輸送艦LSH21級だということを知る者はこの世界にはいない。
周りで船の周りに立つ天幕の周囲で動く人間達を除けば・・・。
ティアナ、目標の施設までどのくらい?」
「スミカ女史から教えてもらった座標では、直線で五キロ程度先に目標があるようです」
輸送艦が撮影した付近の地図を照らし合わせながらティアナが答える。
「この世界は都市跡の廃墟を除けば殆どが砂漠地帯ですね。あとは少しの湖のみ。旧暦の戦争後に捨てられたという
のも分かります」
指揮所用に割り当てられた天幕内でフェイトは
周りでは持ち込まれた通信機材に隊員が取り付き、
「フェイト執務官、周囲の調査が終了しました。都市部の大半が廃墟です、生きてる物一つ無し」
機動小隊長の一人が報告する。
「分かりました。事後はベースキャンプの警備をお願いします」
「了解しました」
小隊長が敬礼を一つ返して天幕から出て行く。その後姿を見ながらフェイトは今後の予定を頭の中でくみ上げる。
「明日、警備の小隊を残して目標の研究施設に向かおう。ティアナは私と一緒に施設内に。
エリオ達はここに残してトーレとセッテには一個小隊の皆と施設の地上面で警戒。ティアナ、調整をお願いできる?」
「分かりました」
「フェイトさん、フェイトさん!!」
「エリオ?どうしたの?」
天幕の入り口から勢いよく入ってきたのはエリオ。何故か妙に興奮している。
「雪、雪が降ってきました!!」
言うが早いかフェイトの手を無理やり牽いて天幕の外に出る。
「雪?さっきまであんなに晴れていたじゃない?」
まさかという顔でティアナが半信半疑で天幕から顔を出す。
「うそ・・・、ホントだ・・・」
先ほどまでは雲一つ無い快晴だったはず。だが今の天候は大玉の雪が降る雪景色となりつつある。
「異常気象なんですかね?・・・うぅ寒い。さっきまで晴れてたのに・・・」
ティアナが両腕を抱えながらぼやく。
そんなボヤキを聞いたフェイトや周りの隊員が苦笑する。
フェイトがふと視線を移すと白い雪が降る中、一人キャロが佇む。フリードは何故かいない。
「キャロどうかしたの?」
「えっと、フェイトさんと初めて会った時のこと、思い出しちゃって・・・。感傷って言うんでしょうか・・・」
「そうだね、あの時も雪が降っていたね・・・」
二人でそっと感傷に浸る。
こんな時間もいいかな?
なんとなくフェイトはそう思った。
なおフリードは・・・。
展張された一つの天幕の中、隊員たちが持ち込んだストーブに群がっていた。
だが一応は任務中、休憩時間を利用して暖を取り、食事を済ませる。
「おい、ストーブの火力を上げろよ。雪が降って寒くて堪らん」
「少し待て。入り口をちゃんと閉めろよ」
「分かったよ、コーヒーあるか?」
「あるよ。ポットの中だ。自分で注げよ」
「おいチビ竜、食うか?」
隊員の一人が携帯口糧の中からパンを一切れ、ストーブの傍で温まっていたフリードの上から落とす。
「キュ!!」
フリードは素早い反応でパンを加え咀嚼、飲み込む。
「キュ、キュゥ!!」
フリードが次を催促、隊員達はそれを見て笑う。
「まだ食うのか?ほれ、俺は食わんからやるよ」
他の隊員が封を切った甘味物をフリードの前に置く。
それをすこし警戒して鼻先を向け、すこし逡巡してから口をつけると問題が無いと判断したのか夢中で食べ始める。
夢中で食べているフリードから取り上げる。
フリードが抗議をしようとその手の主を見る。
「・・・おいで」
ルーテシアだった。
一瞬、警戒したのか体を大きく動かす。
だが、すぐに警戒を解いたのかルーテシアの膝上に乗り、取り上げられた食べ物にまた夢中になる。
そんなフリードの後姿をルーテシアが細い指先で撫でる。
食べ終わった後、フリードはそのまま膝の上で丸々まってまどろみ始める。
ルーテシアもそれを見ながら自身もうつらうつらと舟を漕ぐ・・・。
なお、ガリューは雪の降る中、廃ビルの屋上で佇んでいた。
雪の中のフェイキャロって綺麗なシーンだなー支援。
うわぁ・・・
データが間違って尻尾が切れてるよ・・・
すいません、第四話はここで終わりです。
引き続き外伝一話を・・・
平和だなー支援
リリカルコア外伝 第一話 「過去」
「状況を開始します。現在時、1500」
高町なのは一等空尉が厳かに口を開き言葉を紡ぐ。
「状況はこうです。ここから南西へ約四十キロ、かつて企業の所有していた軍事基地に正体不明の部隊が
出入りしているのが確認されました」
なのはの言葉を一語一句聞き逃しまいと隊員たちが耳を傾ける。
「航空中隊は陸戦二個小隊と輸送ヘリ四機を増強し同施設を制圧、安全化します」
陸戦小隊長が小言で中隊長に耳打ちする。何を話しているのかは分からないが中隊長は首肯する。
「なお、今回使用するデバイスはすべて実戦設定で行います」
その言葉に隊員達、中隊長以下小隊長が数名がどよめく。
「作戦完了時刻は2000とします。状況説明は以上です。・・・質問は?」
静聴していた隊員たちが小言でささやきあう。
「ありません」
代表して中隊長が宣言する。
「分かりました。では私と採点官は以後、皆さんの訓練の採点を行います」
状況がなのはから下達され、それを受けた中隊長が命令を下達。
命令を受けた部隊は待機していた隊員たちを叩き起こし、寝ぼけ眼のまま準備をする、
航空中隊の隊員は空戦用の甲冑を装着。
陸戦小隊は一般の隊員が使う戦闘装着セットを取り出して装着する。
輸送へリ四機はエンジンを始動、機長・副機長・機付員二名の四名が機体をチェック。
中隊長の命令下達後、一時間程度でここまで出来る。
いつでも出撃可能な状態。この状態で待たされるほど士卒に辛い事は無い。
「この中隊は錬度が高いね」
なのはは隣にいる赤毛の小さなパートナーに話しかける。
「そうだな、上下の意思疎通が良く出来てる」
隣に立つのは八神はやてデザインの赤い騎士甲冑を着込み、“鋼鉄の伯爵・グラーフアイゼン”を
肩にかけるのはヴィータだった。
「うん、そろそろ出るのかな?」
「みたいだな、偉いやつらが出てきたぞ」
ヴィータが顎で示した先、中隊長と小隊長クラスが最終調整を終え、隊舎から出てくる。
各小隊長が配置に着くのを確認した中隊長が腕を大きく振る。
それを合図に航空魔導師約四十名、輸送ヘリ四機にそれに詰め込まれた陸戦魔導師約四十名が空に飛び立つ。
それを見送ったなのはは自身もアクセルフィンを展開、空に上がる。
「じゃあ、行って来るね。ヴィータちゃんはここから監視よろしくね?」
「おう、任せておけ。しっかり採点してやっといてやるよ」
なのはが笑いながら手を振り、飛び上げると南西の方向に消えていった。
「んじゃ、あたしも仕事するとしますか・・・」
それを見送ったヴィータは訓練の統制室の隊舎へと足を向けた。
『第四小隊、降下開始』
『ミル51よりパパ、配置完了』
『ミル51、チョーク降下、完了後警戒位置に着け』
『了解。各チョークへ、LZに着陸する。すぐに降りろ』
どうやら訓練は無事に進行している。
先行小隊が降下し、橋頭堡を確保し、そこに陸戦小隊が降下する。
おそらく他の三個の航空小隊もすぐに降下し、施設内に突入するだろう。
手際が良い。各隊員の錬度も高い。
なのはは頭の中でチェックリストを反芻し、指揮官の指揮、隊員の動きをチェックしていく。
『ミル54よりパパへ、方位342、単騎で接近してくるのがいる』
『パパよりミル各機へどんなヤツだ?』
『・・・砂埃で分からない』
中隊長がなのはをちらりと見る。
なのはは首を傾げる。戦技教導隊で作成された訓練内容の予定には無い、状況外の事態。
「陸戦小隊、展開急げ。航空小隊は突入を続行」
中隊長が不測の事態にも拘らず冷静に命令を下し、迎え撃つ準備を行う。
『こちらミル52、機体が見えた!!接近してくるのはレイヴンだ!!』
『待て、こちらはスレッジハマー、戦闘の意思は無い、戦闘の意思は無い。繰り返す戦闘の意思は無い・・・』
通信でそう宣言した本人が突然、丘の向こうからジャンプで現れ機体を着地させる。
「おいおい、撃つなって・・・。」
頭部ハッチが開く。そこから顔を出すのは二十代後半から三十代前半ぐらいの青年。
その周囲を陸戦小隊の隊員達がデバイスを構え取り囲む。
「除装しろ!!さも無くば・・・」
「・・・わかったよ」
案外おとなしく機体を除装し、青年が出てくる。
その脇を手馴れた手つきで二名の隊員が抱え、動きを封じる。
「名前は?」
「ボス・サヴェージ。こいつはスレッジハマー」
「レイヴンか・・・」
中隊長が顔を顰めながら呟く。
「ここに来たのは仕事のためだ。この廃墟を調査しろって言うのが仕事でな。来て見ればお前達がいたって・・・」
「黙れ、お前達はこいつを監視してろ。機体には封印を掛けておけ」
そう吐き捨てると中隊長がなのはに目配せをする。
「これは状況ですか?」
「いいえ、これは状況外の事態です。一旦状況を中止しますか?」
「予定外とはいえ闖入者は拘束しましたから問題は無いでしょう。訓練を続行します」
『こちら第二小隊、降下許可を』
『パパよりゴルフ21、降下を許可する。降下後、施設に突入しろ』
『こちら第二小隊、異常なし』
『第三小隊、整備用と思われる機械が散乱しているが』
『こちら先導小隊、おそらく最奥部と思われる格納庫まで到着。隠し部屋の類は確認できない』
「こちら本部、了解。各班は各階層の掃除を実施しろ。高町一尉、異常ないようですな」
「そうですね」
「航空総隊の本領、緊急展開の良い訓練にはなりましたな。後は・・・」
そう言うと中隊長が横目で拘束されているボス・サヴェージをみる。
「彼にお帰り願いましょう。彼の依頼人には何も無かったと報告していただくことになるでしょうな・・・」
どうやらこの人物はレイヴンに対してあまりよい感情を抱いていないらしい。
「そろそろ頃合だな・・・」
「え・・・?」
「ん?」
「こちらスレッジハマー、時間だ、始めろ」
なのはと中隊長が声のほうを見る。
視線の先、ボス・サヴェージと名乗った男が自身の駆るスレッジハマーに乗り込み起動させるのが見えた。
「おい待て!!・・・っが!!」
止めようと駆け寄った隊員をスレッジハマーの右腕に装備されたバズーカで殴り飛ばす。
なのはには一瞬何が起きているのか分からなかった。よく見るとボス・サヴェージを監視していた隊員が
二名倒れこんでいた。地面に血溜りを作りながら・・・。
<マスター!!>
レイジングハートが警告を発する。
我に返り戦闘態勢で構えるとボス・サヴェージ=スレッジハマーは右腕に装備された大型バスーカを向けていた。
「・・・っな!?」
だが次になのはの目に飛び込んできたのはバスーカの方向から打ち出されたロケット弾。
<プロテクション>
レイジングハートがオートガードを発動、ロケット弾を受ける。
「くっ・・・。どうして!?」
『悪いな、これが俺の仕事なんだよ。お前を抹殺することがな!!』
「なにを・・・。第一陸戦小隊!!各個に射撃開始!!やつを逃がすな!!第二陸戦小隊は援護しろ!!」
隊長の命令一過、入り口を守っており戦闘待機状態にあった第一小隊が素早く反応しレイヴンに集中射撃をくわえる。
だが、重装甲が売りのスタンハンマーは命中弾を受けながら回避機動を、バズーカと背部に積まれた誘導弾を放つ。
「うわ・・・!!」
「シールド!!」
「只の誘導弾じゃない!!分裂・・・」
最後まで言い終わることなく隊員達の周囲に着弾。
爆風に吹き飛ばされる者、破片で負傷するもの・・・。一部の隊員は倒れ伏したまま動かなくなる。
『こちら第二航空小隊!!敵性魔道甲冑と接触、交戦中!!』
『どこから出てきたんだ!?』
『あそこだ!!隠しゲート!!』
『さっき調べただろう?見落としたのか?!』
『違う、巧妙に偽装されてたんだ!!・・・うわ!!』
施設内でも戦闘が開始されていた。通信内容は悲鳴と怒号が響く。
「中隊各員!!これは訓練ではない!!各小隊は合流し・・・」
中隊長が怒鳴り声で指揮を執ろうとする。だがそこへスレッジハマーが突撃、左手で殴り飛ばす!!
「第二陸戦小隊は負傷者を施設内に運んで!!彼の狙いは私。私が相手をする!!」
「了解!!」
無傷か負傷が浅い隊員がなのはの指示を聞いて負傷した中隊長や隊員を抱えまだ安全な地上施設内に逃げ込もうとする。
「第一層にもいる!!」
「どうにか掃討しろ!!」
「相手は少数だ!!恐れるんじゃない!!」
必死に戦っているであろう隊員の声が聞こえる。なのははそれを背中に受けながら
ボス・サヴェージ=スレッジハマーと向き合う。
『機種解析・・・、不知火だ!!』
『・・・何だって?』
『狭霧もいる!!』
両機種とも高性能を売り文句にする機体。
ちょっとやそっとでは購入・維持できるものではない。
『各隊、壁を背にして動け!!飛べない状態では勝ち目がない!!』
『小隊長、上!!』
『な・・・』
通信が途絶える。やられたのかそれともジャミングがかけられているのか・・・
施設内での戦闘も激しくなっているのだけは確実。
だが航空総隊の隊員はそう簡単にやられるような隊員達ではな
い。だがそれはあくまでも広い空でのこと。
狭い空ではその実力は発揮できない。
だが航空総隊の隊員はそう簡単にやられるような隊員達ではない。
だがそれはあくまでも広い空でのこと。狭い空ではその実力は発揮できない。
なのはは歯噛みしながらボス・サヴェージ=スレッジハマーを見る。
「どうして・・・、なんでこんな・・・!!私が狙いなら・・・、私だけを狙えば・・・」
「まだ分からんのか?!」
ボス・サヴェージ=スレッジハマーが語尾を強くしてなのはの
言葉を遮る。
「イレギュラーなんだよ!!お前は!!」
ボス・サヴェージ=スレッジハマーが怒鳴る。
その言葉の意味を理解するのになのはは少々の時間を有した・・・。
404 :
リリカルコア:2007/12/09(日) 17:43:15 ID:mE0q2wHT
投下終了…
途中で規制を頂きました…
久しぶりのPCからの投下なのにグダグタ…orz
次回はもっと纏めて投下できるようにします…
支援ありがとうございました
>>404 GJ。
原作知らないから世界観がよく分からないけど・・・・これは本編とは別の時間軸でしょうか?
それにしてもるーるーかわいいよるーるー
>>404 GJです。
ボス・サヴェージ、懐かしすぎて涙出てきました
彼の名言もでてきて、なのはがイレギュラー認定されましたねー
本編と外伝どちらも今後も期待してます
第12話が出来ましたので9時半ごろに投下したいと思いますが
他に投下する人はいますか?いませんでしたら投下します。
支援
支援も出ましたので投下します。
第12話 静と動
なのははデュオにディエチの事を任せ、エリアサーチを3つほど放ちヒイロと共に玉座の間へと向かった。
そしてディエチの事を任せられたデュオはディエチをデスサイズヘルの手の上に乗せ会話をしていた。
話しているうちにディエチの本音を聞くことが出来た。
「じぁあ、お前はこれが悪いことだからやめたいって思ってたのかよ!?」
「そういうことになるな」
「だったら何でやめなかったんだよ!?」
「やめたくても駄目なんだ。私は戦闘機人。戦うことでしか生きる意味がない。だから・・・」
ディエチは泣きながらデュオに謝るがデュオはため息をつく様にディエチに言い返した。
「あのな、俺は戦闘機人とかそんなの関係なくお前以上に機械のように生きてた奴を知ってんだぞ。」
「え?」
「さっきお前のバスターを破ったガンダムあるだろ? あのガンダムのパイロットが昔そうだったんだよ」
デュオはディエチに自分が知ってる限りのヒイロの事を教えた。
ヒイロは幼い時にドクターJに拾われ、破壊工作員としてのスキルを身につけさせられヒイロは戦闘マシーンとして生きていた。
だが3年前、ヒイロはリリーナと出会ってからは今まで無くしていた感情が甦ったりなどして戦闘マシーンのように生きるのをやめたのだ。
もっとも今のヒイロは昔より柔らかくなっただけで、性格はそんなに変わってないのだが・・・。
「それに俺達の所じゃ、お前達みたいなサイボーグはいるは、普通に喋るロボットはいるはで別にお前達が特別だとは思ってねえよ。
ただ悪いことをしているだけの奴らとしか思ってねえだろうぜ他の連中も・・・。」
デュオが言い終わってもディエチは泣き止まなかった。
ディエチは自分達のやってることがただの悪いことだと本当に心の中でも気づいたからだ。
(私はちゃんと償いたい)
ディエチは心の中で本気でそう思った。
そうしていると後ろからゴッドガンダムがすごいスピードで近づいてきた。
「よう、ドモン。どうした・・・んだ?」
ドモンはデュオの事を無視してさっさと玉座の間へと進んでいった。
「何であいつ、俺を無視するんだよ・・・?」
「お前、嫌われてるんじゃないのか?」
「んなわけねえだろ!」
さっきまでディエチにいい事を言っていたデュオは台無しにされた気分であった。
一足先に玉座の間に付いたなのはとヒイロが見たものは玉座に座らされ苦しんでいるヴィヴィオとそれを見て何も感じてないクアットロの姿であった。
「お前がヴィヴィオを操っているのか?」
「そうだと言ったら?」
「お前を殺す」
ヒイロはクアットロを脅すように言うが、クアットロはそれに動じない。
「あらあら、怖いですね。殺すなんて・・・。しかし、お二人ともすごいですね。特にそこの教導官さんは・・・。
仲間の危機と自分の子供のピンチにも表情ひとつ変えずにお仕事ですかぁ? いいですねその悪魔じみた性格・・・」
クアットロの挑発になのははクアットロに向けてバスターを撃ったがクアットロは消えた。それは立体映像であった。
ようやくゴッドガンダムも到着した。そこでなのはとヒイロとドモンはクアットロから重大な事を聞かされる。
それはヴィヴィオがトラックを破壊して逃げたことや真ゲッターが出てこなくてもディエチの攻撃では死ななかった事を・・・。
そしてクアットロはヴィヴィオを強制覚醒させた。
「させるか!」
ドモンはすぐにヴィヴィオの横にあるものをすべて破壊しようとしたが強力なバリアが張られていたため破壊が出来なかった。
「くそ!」
「ヴィヴィオ!」
「すぐに完成しますよ。私達の『王』がゆりかごの力を・・・無限の力を・・・究極の戦士・・・」
そしてヴィヴィオは「聖王」として覚醒した。その姿は今のなのはと同じくらいの年代の姿で髪もなのはのいつもの片方だけのサイドポニーテールであり、服もナンバーズの服を黒くしたものに近かった。
「ほら、陛下?いつまでも泣いてないで。陛下のママが助けて欲しいって泣いてます。陛下のママをさらって行ったこわーい悪魔達が『ソコ』にいます。」
頑張ってそいつらをやっつけてホントのママを助けてあげましょ? 陛下の身体にはそのための力があるんですよ? 心のままに・・・想いのままに・・・その『力』を解放して」
そしてクアットロの通信が終わり聖王として覚醒したヴィヴィオはなのは達を睨み付ける。
「あなた達が、ヴィヴィオのママを何処かにさらった」
「ヴィヴィオ!? 違うよ! 私だよ。なのはママだよ!!」
「違う! 嘘つきアナタなんかママじゃない!!」
「ヴィヴィオのママを返して!!!!」
なのはの事を思い出させれないようにしたのか、ヴィヴィオはなのはの事を完全に敵と認識した。
「聖王ヴィヴィオ、今のおまえを殺す」
「ヒイロさん!?」
「落ち着けなのは、ヒイロは聖王のヴィヴィオを殺すと言っただけでヴィヴィオそのものを殺すと言ってない」
しかし、ヒイロはさっきからウイングゼロのゼロシステムを見ていたが今のままでは自分達が勝てる見込みが無いことを悟っていた。ヒイロはどうすればいいのかと考えていたがなのはは決心し、ブラスターモードを発動させた。
「ブラスターリミット1解除!」
「はああああ、はあ!」
ドモンもそれに合わせてゴッドガンダムのハイパーモードを発動させた。
「その娘を止める事ができたら、このゆりかごも止まるかも知れませんねぇ?さぁ・・・親子とそのご友人達で仲良く殺し合いを・・・」
地上に戻り、スバルがギンガと戦っていたがギンガの強さとスバル自身のためらいに為にスバルはなすすべなくやられ、そしてギンガがトドメをさそうとしていた。
「「スバルさん!!」」
「スバル!」
銀河と北斗が叫び、アルテアが急いでスバルの援護に向かおうとした。
スバルの意識は朦朧としていた。スバルはそんな意識の中ある事を思い出していた。
母が生きていた時の幼い時となのはが自分が何故この道を選んだかと言われた時、そしてドモンから明鏡止水の事を聞いた時のことだ。
「ドモンさん」
「うん? 何だスバル」
「あたしもドモンさんみたいに明鏡止水が出来ます?」
それは早朝訓練が終わって一息つこうとした時の話である。スバルはドモンの明鏡止水を見て自分も使ってみたいと思いドモンに聞いてみたのだ。
「どうだろうな。正直、俺にはわからん」
「そうですか。でもドモンさんはどうやって身につけたのですか?」
「それは2年前、ギアナ高原での修行の時だ・・・」
ドモンは自分が明鏡止水を身につけたときの事とその経緯を話した。かつてドモンはシャイニングガンダムに乗っていた時、怒りでスーパーモードを発動させていたため、それではいかんとシュバルツ・ブルーダーに警告されそのシュバルツから体で教えられたと言う。
その結果ドモンは任意でスーパーモードを発動できるようになった。そして師匠の東方不敗マスターアジアや兄のキョウジと戦ったことを話した。
ちなみに明鏡止水とはなんのわだかまりもなく、澄みきって静かな心の状態をいう。(国語辞典より)
「だから、お前が会得できるかどうかはお前しだいと言うことだ」
「ごめんなさい。そんなつらいことを思い出すようなこと言っちゃって・・・」
「気にするな。シュバルツやキョウジ兄さんや師匠の魂は今でも俺の中で生きている。だからお前が気にする必要は無い」
「はい!」
(そうか、あたしはここで死んじゃうかもね。ごめんねマッハキャリバー)
スバルは走馬燈のように色々な人の事を思い出す。
(母さん、ギン姉、一矢さん、ロムさん、宙さん、凱さん、ドモンさん、ティア、なのはさん)
この時のスバルの心はなんのわだかまりもない済みきった状態であった。
スバルは諦めかけていた。しかし、マッハキャリバーはまだ諦めてはいなかった。
「Calibur shot, left turn!(キャリバーショット、左回転!)」
そう言われるとスバルは無意識のうちの体を回した。
「Shoot it!(撃って!)」
そしてスバルはギンガに向けて攻撃し、無意識のうちにウイングロードへと着地した。
「Just as rehearsed.(練習通りです)」
ようやくスバルの意識が戻った。
「We can still take actions... you and I.(まだ動けます・・・私も、あなたも)」
「マッハキャリバー・・・」
「We can still fight. So why abandon now?(まだ戦えます。なのに、こんな所で終わる気ですか?)
「You taught me the reason of my being here, my strength and power which you adore so much.(あなたが教えてくれた、わたしの生まれた理由。あなたの憧れる強さ)
「Don't make everything a lie.(嘘にしないでください)」
「わかったよ、マッハキャリバー」
その時スバルは心の中であるものを見た。それは零れ落ちる水の一滴であった。
「見えた! 水の一滴!!」
スバルはの心は明鏡止水の領域に達した。
「今のスバル・ナカジマはドモン・カッシュと同じように心が澄みきっている。私が行く必要がなくなったようだな」
さっきまでスバルの救援に行こうとしたアルテアだったが、スバルが明鏡止水に達したことを悟り救援をやめた。
「いくよ! マッハキャリバー!」
「All right buddy.(はい、相棒)」
「ギア・エクセリオン!」
スバルはリボルバーナックルをカードリッチロードしエクセリオンモードを発動した。
「Ignition.」
マッハキャリバーの両脇に小さな蒼い翼が出てきた。
「A.C.S. Standby」
スバルはものすごい勢いでギンガに殴りかかった。ギンガはそれを防ごうと手でガードしたがスバルの勢いの方が強くガードした腕もろともダメージを受けた。
仕返しにとばかりにギンガはスバルを殴ろうとするがスバルはギンガの攻撃を見切ったかのごとく、簡単に避けた。
ギンガはパンチのラッシュをスバルに向けるが明鏡止水の領域に入っているスバルにはその攻撃の嵐を避けることなど造作も無かった。
そしてスバルはギンガの腹を目掛けて殴り見事命中させた。
スバルはギンガが怯んだ隙にパンチのラッシュをギンガに浴びせた。さっきまでのスバルの劣勢が嘘かのように次々にパンチが決まり、今度はギンガが劣勢になっていた。
しかし、ギンガもただやられるわけにはいかず、回転してスバルのパンチをサマーソルトで弾き、そのまま左手のドリルでスバルに入れようとするが、スバルも空中に舞うかのように
横に空中回転をしてその攻撃を避け、ギンガの背中に蹴りを入れギンガの体勢を崩そうとしたがギンガはうまく体勢を立て直してスバルから距離をとった。
そしてスバルとギンガはものすごい勢いでお互い突っ込んできて、パンチとドリルを入れた。スバルは頭、ギンガは腹部にバリアを張っているが、ドリルで攻撃されているためか、スバルのバリアの方が持つ時間が短かった。
それにも怯まずスバルはパンチをやめず、ギンガのバリアを破ろうとする。
「一撃! 必倒ーーーーーーー!!」
スバルのバリアが破壊されたが、スバルは顔をしゃがませたことでドリルがかすっただけで済み、ギンガのバリアを破ると同時に反対の手で準備していたディバインバスターがギンガの腹部の目の前に出てきた。
「ディバインバスターーーーーーーー!!」
その叫びとともにギンガはディバインバスターの光に飲み込まれた。
同じ頃ティアナが閉じ込められているビルの近くにいたオットーがシャマルとザフィーラに捕まり、ティアナを閉じ込めていた結界が無くなった。
ノーヴェ達は結界がなくなったことに驚いてる間にティアナは物陰から姿を現し、ショットをウェンディとディードに向けて撃った。
二人はそれを回避し、ティアナに攻撃をしようとするが、ビルの真ん中の上から鋼鉄ジーグが降ってきた。
鋼鉄ジーグは結界の外にいた時にこのビルの真ん中が空洞だということを知り、結界がなくなったのと同時に上から入ってきたのだ。
三人が鋼鉄ジーグの乱入に気を取られてる隙にティアナはこっそりと他のショットを撃っていた。鋼鉄ジーグよりも先にティアナを倒そうとディードがツインブレイズでティアナの後ろを狙ったが、
ティアナはクロスミラージュのダガーによりそれを止め、こっそり撃っていたショットを操り、ディードの後頭部に当て、ディードは気絶した。
同じようにウェンディにも当てようとしたがギリギリの所でガードされてしまった。
「危なかったっすね。でももうやられないっすよ」
ウェンディがそう言い、ノーヴェと一緒にティアナに襲い掛かろうとしたとき、鋼鉄ジーグは叫んだ。
「マグネットパワー・オン!」
鋼鉄ジーグはマグネットパワーでウェンディとノーヴェを自分に引っ付けようとした。
そしてウェンディはライディングボードを持っていたため、鋼鉄ジーグの胴体に吸い寄せられた。
鋼鉄ジーグは胴体に来たウェンディをおもいっきり抱きしめた。
「この野郎! ジーグブリーカーーーー! 死ねぇ!!」
いくらスカリエッティの改造を受けていたとはいえ、鋼鉄ジーグとウェンディとのサイズ差はあまりにありすぎるため、なんとかウェンディは死ななかったが完全に気を失ってしまった。
「宙さん、まさか殺してませんよね?」
「いつものくせで死ねぇって言っちまったけど、死んでねえと思うぜ。ジーグブリーカーで死ぬ奴は胴体が真っ二つだからよ」
ティアナがウェンディの安否を確認した所気絶しただけだとわかった。
「て、手前ら。よくもウェンディとディードを・・・」
「もう諦めた方がいいぜ」
「あなた達を逮捕します」
一方ゼストはレジアスのいるベイタワー基地へと突入していき、シグナムと一矢がその後を追っていたが空の敵が多いため、一矢がシグナムを先に行かせ、シグナムもベイタワー基地に入った。
シグナムは急いでレジアス達がいる部屋に急ごうとすると、火麻参謀がアギトの作った結界により立ち往生していた。
「旦那はただ昔の友人と話がしたいだけだ! ここは通さねえ!」
「くっ、こうなったら失敗する確率を勇気で補って強行突破を・・・」
「参謀、お待ちください。私がやります」
シグナムは強行突破しようとする火麻参謀を止め、レヴァンティンでアギトの結界を切り壊した。
シグナムはリインフォースUとの融合を解除した。
「元よりこちらは話し合いをしたいと思っていたところだ。リイン、お前は主はやてのところに行ってくれ。火麻参謀、この先は私とアギトで行きます」
「わかりましたです」
「気をつけろよ。勇気ともに!」
「では行ってまいります」
そしてシグナムとアギトはゼスト達の所に向かった。
ゼストはレジアスに8年前自分と自分の部下を殺させたのはレジアスの指示だったのかと問い質していた。
実際はレジアスはその襲撃のことを知っていたが、殺すよう指示したのはスカリエッティの独断であった。
レジアスはその真相をゼストに話そうとしたが突然ゼストは何者かにバインドをかけられ、レジアスは後ろからかぎ爪のようなものに刺された。
刺したのベイタワー基地のスタッフに化けたナンバーUのドゥーエであった。
すぐに近くにいた娘のオーリスが父のレジアスに駆け寄るがドゥーエにより壁に吹き飛ばされ、気絶してしまった。
それを見たゼストは力ずくでバインドを破りフルドライブを使い、ドゥーエを壁に叩きつけ殺した。
その時のものすごい物音を聞いたシグナムとアギトは急いだが、そこで見たのは気絶しているオーリスと死んでいるレジアスとドゥーエ、
そして立ち尽くしていたゼストの姿であった。シグナムはゼストに聞いた。
「これは一体?」
「そうだ、俺が殺した。俺が弱く、遅すぎた」
しえん
投下は以上です。
次回は第24話部分になります。
原作と違いフェイトにも援軍がきます。
久しぶりにまたまた、勝手に替え歌を投下します。 今回は仮面ライダーV3の
「戦え!仮面ライダーV3」の替え歌 「戦え! フェイト・テスタロッサ」です。
輝く 輝く 輝く髪のフェイト バルディッシュ・アサルト 閃光の戦斧
優しさと愛が力が出すよ。 母よ 兄よ 友よ
光と導きに従って 力の限り立ち向かう
敵は地獄のナンバーズ 戦え! 正義のフェイト・テスタロッサ
「フェイト・テスタロッサ・ハラオウンは管理局の魔導師である。
彼女はプレシア・テスタロッサによって作られたアリシアのクローンで
ある事を知りショックを受けるが、優しい魔導師高町なのはによって
その事から救われ、管理局の魔導師として立ち直った。」
418 :
×DOD:2007/12/09(日) 22:28:57 ID:LKzw7lTV
22時45分くらいから投下したいんだがいいかな?かな?
支援
鬱支援
支援
はじめて人を斬り捨てたあの日からいくつの命を奪ってきたか、カイムはもう憶えていない。
戦うことと生きることが同義であり、ついには神の児さえもが敵に回ったあの世界。殺す事で生き長らえる
生活、その繰り返しの中でカイムにとっていつしか、「死」こそが日常となった。
兵どもの断末魔は鬨の声にかき消え、血肉の飛沫は渡り歩く戦場に埋もれていく。憎悪の炎に焼かれながら
肉を潰し、骨を砕き、ひたすら斬り続けるだけの日々。
「……」
「こっちです、カイムさん。あと、ここを右に曲がって…」
その果てに、待っていたのは。
「…我らの方から出向くと言った筈だぞ」
「それが、訓練スペースの調子が…」
「…あれだけ好きに暴れれば、仕方あるまいか。なあ」
「っ」
バーチャルシステムを使う予定だった午後の教練。カイムとドラゴンが見に行くはずのそれは、当初の計画
から外れて急遽森の奥へと変更になった。
先のカイムとヴィータの模擬戦は最終的に破綻したが、しかし激しかったのである。宙から落下し鉄槌が撃
ち放つ鉄球の連続に、頑丈な訓練施設といえど無傷とはいかなかったらしい。
「さっすが、ヴィータさん!」とは調整に当たったシャリオの言だ。彼女に全く悪気はなかったが、ヴィー
タにとってはむしろその方が責められている気がするから不思議である。
ちなみに昼食時、ヴィータにいろいろとカイムの見立てを聞いていたシグナムはここにはいない。
教練にはもともと参加していない彼女であったし、聞くと「やりたいことができた」との事だ。自分たちと
別れた後にリインについて行ったところを見ると、ひょっとしたら今頃カイムのデータの解析に立ち会ってい
るのかもしれないと、なのはは思った。
「北に向かえば森は開ける。だがカイムは生憎、東の岩場だ」
「あ、じゃあ、私が迎えに行きます」
「きゅる」
「そうか…今、『声』をかけた。時間までに戻らなければ先に行くぞ」
「キャロ、大丈夫?」
「大丈夫です、道は知ってますからっ」
血しぶき支援
支援
連れてくるためにわざわざ竜の巨体に飛んでもらうのはあれかなと思ってキャロが言い出すと、フリードが
小さく肯き、そしてドラゴンが念を飛ばした。
移動の時間を少々長めにとっていたため、訓練開始までそれくらいの余裕はある。加えればキャロは何度も
森へ出向いており、カイムも一応見慣れた顔ではある。邪険にはするまい。
キャロは気を付けてねと心配そうに言うフェイトにうなずいて、そうした後くるりと踵を返してカイムのも
とへ向かった。
「……あの人…カイムさんの魔法は、剣から?」
「そうだ。カイムの得物は全て呪術の類いが秘められておる。お主らの杖と根源の違いはあるが、行き着いた
先は似ているようだな」
残された魔導師たちはしばらく静かにしていたが、いくらかすると再び朝のように、ドラゴンに話を向けは
じめる。
一度話をしているということで当初あった緊張気味の空気は薄れ、今回のそれは幾分和やかであった。
「じゃあ…あの時の黒い雷も、あの剣の魔法ですか?」
「火炎は大剣、鉄球は曲刀。使える術は一振りにひとつ。黒き雷は短刀のそれだ」
今のように新人も時折混ざってはいるが、問うのは竜に面識のあった隊長の二人がメインだ。ヴィータはと
いうと先ほど言われたのが効いているのか、こちらはドラゴンと話す気は起きていないらしい。
手合わせの機を逸してしまった反動か、それともこの先の共闘を懸念に入れてか――もしくはその両方かも
しれない。尋ねる内容は先の任務と模擬戦で見せた、カイムの魔法についてが多かった。
出会ったばかりの者も少ない中で手札を見せるのは避けたくあるが、しかし助力を約束した以上、その意は
示しておかねばなるまい。今まで見せていないものは詳細を伏せ、言うなれば当たり障りなくドラゴンは語っ
た。
以前クロノが「調査」とやらで森に来た時も、いやに武器に興味を示していたなと思い返しながら。
「へー…ひょっとしてそこの、大きなのもですか?」
「全てがそうだ。あやつ自身は魔法より剣を好むがな」
そう聞いたのはスバルだった。視線の先では剣と呼ぶのもはばかられるような、巨大な鉄の塊が木の根本に
突き刺さっていた。先の任務で竜が投げ、カイムが受け取り持ち上げるのはもう既に目撃しているが、しかし
何せあの威容だ。目を引くのは当然である。
まだ訓練前ということで軽くになった空気に、スバルは新人たちの中でもいち早く警戒を解いていた。ドラ
ゴンが会話そのものを割と嫌ってはいないと悟ったらしく、先程から積極的に口を開いている。
以前この森で黒焦げにされたのも、今はあまり気にしていないようだ。それが半分カイムの魔法の試し撃ち
を勧めたドラゴンのせいだったとキャロから聞いても、特に思うところはないらしい。
(…まったく)
ティアナは内心呟いた。
切り替えが早いというか、適応能力が高いというか。それとも三歩歩けば忘れるとするべきか。
血の雨支援
だがまあ少なくとも悪いことではないかと、横で見ていてティアナは思う。
それによくよく思い出してみれば、確かスバルはカイムの援護に礼を言い、敵対心を拭えぬはずのティアナ
自身も、つられて頭を下げていた。彼女の正直さにを見ての反応であったが、傍にいるとたまにああいうこと
があるから不思議である。
「……持ってみてもいいですか?」
「好きにしろ。落として足を斬り飛ばしても知らぬがな」
「やたっ…って重っ!」
「す、スバルちょっと、こっち来たら危ないでしょ!」
「ティ、ティアっ、ヴィータ副隊長、援護えんごーっ!!」
「馬鹿言うなッ! 自分で持て!」
「…訓練前に筋肉痛めないでね、スバル」
教練の準備運動とばかりに勢いよく剣を引き抜いたはいいが、あまりの重さにぐらつくスバル。
ふらふらよろよろと近づいてくる親友にヴィータと一緒になって罵声を浴びせながら、いずれにせよ自分が
振り回されることは変わりないなとティアナは憂えた。
カイムの魔法の話を一通り終えると、今度はドラゴンが逆に、なのはたちにミッドチルダの魔導について問うた。
当たり前の話である。ミッドチルダの住人にとってカイムとドラゴンの魔法が未知の技術であるのと同時に、
ドラゴンにとってもなのはたちの魔法は初見のものなのだ。キャロを導きはしたが戦闘にまで顔を出す気はな
かったため、特にそれについて深く問うたことはなかった。
ドラゴンの求めにはなのはとフェイトが応じた。これも共闘には必要だし、時間的に余裕もあるので異存ない。
魔力の話はさて置くとしても、説明はデバイスの基本的な部分からということになる。とはいえ最近新人の
レクチャーをしたばかりの二人、特に教導には慣れっこのなのはには、説明はお手の物だ。通信をはじめとし
たデバイスの技術から、攻撃・補助に至る多彩な魔法能力まで、小規模ではあるが実際に例を見せて語っていく。
「あ…カイムさんにも、見せた方が」
「よい。あやつのことだ。簡単に話せば、一度見た時に理解しよう」
初対面で自殺者と勘違いしてからおよそ一週間、竜騎士の名を呼ぶのにようやく慣れてきているフェイトが
思い出したように言い、しかしそれをドラゴンが遮った。事実あの男は闘いの技術、とりわけ武具の扱いに精
通している。その道についての理解は早いし、訓練の時に実際の魔法を見れば自分で考えるであろう。
というのもあるが、話を暗に急かしたのは実のところ、ドラゴン自身の興味を引いたのが大きかった。
特に明確な意志を持つ杖、レイジングハートとバルディッシュを見た時の驚きは、声には出さぬがひとしお
であった。邪悪な秘法や呪いの類いではなく、純粋に人間の技術で造られた意志の存在を見たことはない。
「お主ら全てが、これを持つのか」
「杖だけじゃなくて、いろいろ種類はありますよ」
肯定したたなのはがちらと目くばせすると、ヴィータが鉄鎚・アイゼングラーフを掲げ、「鉄塊を何秒持て
るか対決」に興じていた新人たちも小型化した己の相棒を手に取って示した。
なのはたちがカイムの得物に対してそうしたように、ドラゴンもまた興味を持って視線を向ける。
その様子が魔導師たちには、何だか少し新鮮だった。何でも知っていそうな目の前のドラゴンには、とても
未知の物があるようには見えなかったのだ。
支援
自分とDOD氏はなぜか投下が重なる支援
4
「そちらの方が小回りも利くようだな。威力もカイムの火炎に劣らぬ。便利なことだ」
「補助も防御も攻撃も、全部できますから。近接戦闘もこなせますし」
「全身に武器を仕込む必要もないという訳か。…竜の娘の、手甲の宝玉もこの類か?」
「はい。ケリュケイオンは攻撃じゃなくて、補助や強化の方が得意ですけど」
召喚士とやらに合わせてか、とドラゴンが言うと、なのはは肯定の意を返した。その後に続いて、ポジショ
ンで分けて行動を決めていると告げるのはフェイト。
昨日の列車での任務を思い返せば、確かに二人一組で迅速巧みに戦いを繰り広げていた。集団戦という考え
が基本的に無いドラゴンにとっては、割と意外であった。
どうやら魔法の体系もそうだが、戦い方そのものが、少数での戦闘を主とする契約者たちとは違うらしい。
「あの…その、キャロのことで少し」
「何だ、黒金」
そんなことを考えるドラゴンに、ふとフェイトが声をかける。
「………」
「何をする心算だ。何やら白いのが見ておるぞ」
「え」
その横顔を、少々恨めしげに見つめる顔があった。
なのはだ。
(…黒金……いいよね、フェイトちゃん……かっこよくて……)
(な、なのは、それは私に言われても…本人に言った方が)
(……朝、それでからかわれたもん…)
(大丈夫だよっ、もう一回言ってみれば……きっと)
昼の続きらしい。再びどんよりと沈み始める親友に、張本人たるドラゴンは一体何なのだと首を傾げた。
その後もなのはとフェイトの密かな会話は続き、フェイトが本題、今までキャロが森で行ってきた訓練につ
いて竜に訊ねたのは、見かねたヴィータがひとまず場を収めてからの事であった。
「あたしもそれは聞きたかった。映像で見たけど、あいつ降下前から顔つきが違ったしな」
とは、なのはが立ち直ってからのヴィータの一言である。ようやくドラゴンとも、会話をする気にはなった
ようだ。
任務の一部始終はリインがしっかり記録しており、そこに参加できなかったヴィータもシグナムも、新人た
ちの(実質的な)初出動はどうだったかと昼のうちに確認していた。
今まで封印をずっと維持し、訓練の時も解放できなかったフリードリヒの本来の姿。それをヘリからの落下
の途中で、何にも迫られず己の意志で解き放ったキャロの顔は、普段見ているそれにはない凛とした強さがに
じみ出ていた。
もちろんだがそんな姿は今まで見たことがなく、知っているとすればまずこの竜以外にはいまい。
「…エリオ、どうしたのぼーっとして」
「えっ?! あ、いや、何でもないです!」
何かを思い出すように少々抜けた顔をするのは、光輝くスフィアの中でその顔を間近に見ていたエリオであ
った。
その頬は心なし朱に染まっている。
スバルもティアナも、それで察しがついた。
まあ、バレバレというやつだ。しかし何となく微笑ましくなって、二人は慌てるエリオの横顔を見やった。
臓物支援
そんなのどかな声を背景に、竜は己がキャロに課したものを語ることにした。
この程度なら別に渋ることはなかろう。そう思い言った内容は実際、ドラゴンからすればあまり大したこと
もないと言えた。
火炎や魔力の制御などはドラゴンが気がつけば身につけていたものだし、それを教えると言っても実際に炎
を作らせて、あれこれ口を出していたくらいのものである。どんな過酷なことをと思っていた新人たちは案の
定拍子抜けしたようで、時折の相鎚もどこかおざなりな様子だ。
求めるレベルの高さにキャロが苦労したのを知らないのだ。無理もない。
「具体的には?」
「本来の火炎を吐かせた。暴走した分は我が相殺してな。…一度ではあるが、封印を完全に開放させたことも
あったか」
しかし「教える」立場にいる隊長格、なのはとフェイト、ヴィータは別であった。ドラゴンの言葉に真剣に
耳を傾け、どんな、どうして、と問い返しさえしている。
キャロ一人を特別扱いするわけではないが、自分たちの知らぬ「竜」についての技術を得ることで、少しで
も彼女の助けになればと思ったのだ。
それにもしかすると、今後の教練で参考にできることもあるかもしれない。
「そんな、強引な…」
「危機に瀕さねば出せぬ力など、所詮は付け焼きの刃に過ぎぬ。それ程都合良く戦いは進まぬものだ。それで
は戦場は生き残れぬ」
強制的な封印の解除という言葉を聞いた時に、無理矢理といえば無理矢理な内容にフェイトが呟く。
しかしまあ、ドラゴンの言うことにも一理はあった。土壇場で身につけた力よりも、修練の果てに身につけ
た技の方が身体に馴染むのは明白。
危険な訓練ならば頂けないが、さすがにその辺りはドラゴンも配慮してくれていたようだ。
「……そうですね。そうかも」
「幼子の身には厳しくあったのは認めるがな。少なくとも弱音は吐かなんだ」
「キャロは、強いですからッ」
……親馬鹿という言葉は実在したようだ。
全く迷いなく言いきったフェイトを見て、ドラゴンはそう思った。そしてふと、思い出して告げる。
「…そういえば黒金、お主を心配してもいた。少しはまともな休みを取れとな」
「それは、私よりなのはに言った方がいい気が…」
「私? そんなことないよ?」
「嘘言うな。昨日も資料探しまわってたじゃねーか」
「……な・の・は? 私、任務後はゆっくりしようって言ったよね…?」
「…あ、あはは…」
初対面に比べて大分意気投合してきた魔導師たちとドラゴンの視界の隅に、困惑気味の竜騎士を連れた、
件の少女が映っていた。
ホモ格好良いよホモ支援
業者に怒りを叩き付けつつ支援
「キャロは、あの人怖くないの?」
森での教練を終え竜と竜騎士に別れを告げた帰り道、スバルはふとキャロに訊ねた。
訓練を見ていたカイムは常に沈黙したままだったが、射抜くようなあの目と重々しい空気は、黙っていた方
がむしろ強くなったように感じて恐ろしい。事実それほど気が強いわけでないスバルは、未だにカイムと正面
から目を合わせられてはいない。
これから協力することが確定した今となっては、仲間として少しでも近づくのはスバルにとって当たり前で
あった。そのためにはまず、普通に彼の名を呼び、迎えに行って呼んで来さえするキャロに話を聞こうと思っ
たのである。
ティアナが思ったように、火炙りにされたことについてはもうあまり気にしていない。それよりも仲間が増
えたことで、仲良くなりたいという気持ちの方が大きかった。
「? いえ、カイムさん静かですし…」
「…慣れってすごいね」
「ていうか、あの人一体何歳だろう。結構年取ってそうだけど」
ほぼスバルと同じ状態のエリオが言い、ティアナが思い出したように顎に手を当てた。
彼らもまあ、これから協力する人間ではあるということで、カイムの事をスバルほど熱心ではないにしろ、
知りたいとは思っていたのである。
「あ、確か二十四です」
「あはは、そんなまさか………え? ほんとに?」
「はい。前に聞いたら、ドラゴンさんが言ってました」
「…見えない。絶対見えない」
長い時間を過ごしてきた者の持つ、乱入した任務で見せた不動の安定感。
戦い続けてきた絶対的な経験量に由来するそれは、二十やそこらで出せるものでは決してなかった。さらに
口周りに無造作にたくわえた無精鬚、古びた革の外套を纏った厳然たるその風貌も、キャロが口にした年齢と
は到底結びつくものではない。
歩きながら聞き耳を立てていたなのはもフェイトも、ヴィータでさえもこれには思わず顔を見合わせた。隊
長達と五つしか違わないとは、思ってもみなかった。
「でさ、他に何か聞いてない? 生まれた場所のこととか、好きなこととか剣の名前とか。フリードリヒは何
か…って、喋れないか。ごめんごめん」
「きゅる」
「さ、さあ、特には」
「スバル。熱心なのはいいけど、キャロが困ってるわよ」
「だって仲間になるんだし、仲良くなりたいなあって」
「まったく、少しは警戒しなさいよね」
ふうとため息を吐きつつ、ティアナが言った。しかしまあ、スバルのこういうところの御蔭で自分も友達を
得たと思えば、そこまで悪い気もしない。
そのせいで今まで大変な目にあってきたのは、否めぬ事実なのだけれども。
東京タワー☆支援
「じゃあみんな、今日は解散。明日は訓練場が直ってると思うけど、万が一もあるからその時は連絡するね」
「ちゃんと休めよ。明日も早いんだからな」
「キャロ、エリオ、もう暗いから気を付けてね」
ともすると帰り着き、隊長たちは口々に言いながら新人たちと別れて行った。これから彼女たちにはデータ
の整理から始まり、特になのはは翌日の訓練メニューの設定という仕事も待っている。
新人たちも隊長を見届けると、それぞれ思い思いの場所へと向かった。シャワーを浴びに行く者もいれば、
その前に軽く一口と食堂へ向かおうとする者、汗臭い身体で馬鹿言ってんじゃないわよとその後ろ襟を引っ掴
んでいく者などさまざまである。
…つまりは、行先は同じになってしまうのであるが。
「じゃあ、ここはエリオも一緒にみんなでシャワーにけってーい!」
「ええっ、い、いいですっ、僕はそのっ」
「冗談だって。あれ、どうしたのエリオ。キャロの方なんか見ちゃって…」
「〜〜〜〜〜っ」
ニヤニヤしながら白々しく言い、真っ赤になったエリオに追いかけられるスバル。
あれではエリオが可哀想だ。シャワーから出たら少しは自重しろと言ってやろうと、ティアナは一応心に誓
っておく。
見ていて面白いので、今回は放置しておくけれども。
「キャロー、置いてくわよー」
「あ、はい」
お疲れのフリードリヒに小さなビスケットをご馳走していたキャロが、後ろから呼ばれて振り返る。その顔に
はどこか嬉しいような、ほっとしたような表情が貼りついていた。
カイムとドラゴンが六課の面々に顔を見せると決まった時はどうなることかと心配していた。
だが任務前に色々あったにもかかわらず、特に軋轢が生じることもないと分かったのだ。
フェイトと共に任務へ出る時もそう思ったが、自分の師匠が仲間として共に戦ってくれるのは、嬉しくも心強
くもある。そう思うと、自然と笑顔が浮かんでくるのであった。
「平和な人間どもだ」
魔導師たちが去って静けさを取り戻した森。開けた草原でカイムの体の重みを脇に感じながら、ドラゴンは
そう言った。
戦争がない世界で育っただけの事はある。カイムに話しかける者もいれば、恐る恐るドラゴンに触れてくる
者もいた。これほど僅かな時間で警戒を解いてしまうなど、あの世界では決してあり得ないことだというのに。
人間でない者が混じっていたことから、皆それぞれ訳ありの人間かとは思う。
しかし竜と竜騎士の目の前に現れたのは、一点の陰りもない真っ直ぐな者たちばかりであった。地獄を経験
していないだけあって甘さを感じたのは否定できないが、それでも人間としてどちらがより望ましい姿かとい
えばそれは、明らかに――
カイムの過去話は壮絶すぐる、妹とかライバルとか支援
8
「………」
「…そうだな。戦いの無い世界に、皮肉なことだが」
それに訓練を見て分かったことだが、彼女たちの戦闘技術は決して底の浅いものなどではない。長年の研究
によって生み出されたデバイス、それを使いこなす技量、特に隊長たちのそれはどれも、カイム達の予想を超
えている。
実際なのはは、カイムの火球と似た光弾をいとも簡単に作りだして見せた。
あの様子では、さらに魔力を練った時にどれほどの威力になるか。「母」との戦いを経て力を増したドラゴ
ンの奥の手、竜語魔法には及ばないかも知れないが、それでもあちらも力を封じているとの話を考えると、一
撃の破壊力はカイムの火炎を集束しても及ばないと見た方がよいであろう。
しかし異常なほど高い魔法への抵抗力を持つ、自分たちにそれが通じるかは別の話ではある。
それにカイム達には人智を超えた魔力量と、如何なる者をも屠る剣と火炎の技、どれ程の絶望と苦痛にも抗
う精神力があるのだ。
まあ、それ以前の話として敵対することが無いと決まった以上、比較することにも意味はなかろう。
「…そうだな」
デバイスを始め、見せられた技術を思い返し
「………」
「…そうだな。戦いの無い世界に、皮肉なことだが」
それに訓練を見て分かったことだが、彼女たちの戦闘技術は決して底の浅いものなどではない。長年の研究
によって生み出されたデバイス、それを使いこなす技量、特に隊長たちのそれはどれも、カイム達の予想を超
えている。
実際なのはは、カイムの火球と似た光弾をいとも簡単に作りだして見せた。
あの様子では、さらに魔力を練った時にどれほどの威力になるか。「母」との戦いを経て力を増したドラゴ
ンの奥の手、竜語魔法には及ばないかも知れないが、それでもあちらも力を封じているとの話を考えると、一
撃の破壊力はカイムの火炎を集束しても及ばないと見た方がよいであろう。
しかし異常なほど高い魔法への抵抗力を持つ、自分たちにそれが通じるかは別の話ではある。
それにカイム達には人智を超えた魔力量と、如何なる者をも屠る剣と火炎の技、どれ程の絶望と苦痛にも抗
う精神力があるのだ。
まあ、それ以前の話として敵対することが無いと決まった以上、比較することにも意味はなかろう。
「…そうだな」
デバイスを始め、見せられた技術を思い返しながら、竜は言った。発達させてきた技術は、カイム達の世界
のそれとは随分方向性も、程度も違う。
それは戦いの質そのものの差異のせいだと、ドラゴンはそう捉えている。カイムに『声』で訊ねたところ肯
定の意が返ってきた。任務中、任務後の様子と今日の訓練で見た情報を踏まえた、彼なりの結論はドラゴンの
それと一致していたらしい。
つまりなのはたちの「任務」は、長期戦を前提としていない。
昨日の空で見たなのはやフェイトの攻撃魔法はほぼ直線一方向のみで、ヴィータの鉄鎚を受け止めるスバル
の防御は一対一とはいえ、後方への意識の払いが甘い。その外にも足元や頭上など、個人差はあれどどれもみ
な、どこかに隙が見つけられた。
逆にいえばそれは意識の集中であり、一撃の威力を上げれば単独撃破、短期決戦には強力な武器となろう。
逆に次々戦力を投入された場合を考えると、隊長はともかく新人たちにはどうしようもあるまい。
一対多の戦いを繰り返し、最後まで生き抜くことが目的だったカイム達とはまるで真逆の力だ。
「……そこまで考えて我らを誘ったのなら、あの娘も大したものだ」
足りぬものは外から持ってくる。実に合理的な考えだ。
そうなのかとはやての顔を一瞬思い出し、そして首を振った。聞けばわかるが、それもどうでもよいこと。
鉄屑の襲撃はあっても、問題ではない。どうせ赤子も、操られた帝国兵の大群も、もういないのだから。
対人海戦術に特化した自分たちの、特にドラゴンの力が、使われぬのならそれでいい。
それでいいのだ。
――きゅる…
――…あ…、左だっけ、フリード? す、すみません、カイムさんっ…
「…………」
カイムの名を呼ぶ者が。
ドラゴンを師と慕う者が。
キャロだけではない。世界にたった二人残された者たちに、お互い以外に何の打算も悪意もなく語りかける、
喪われてしまった者がここにいる。
穢れの無い幼子が、手を優しく引いて歩く。この男にあるはずのかったそんな未来が、ここにはあるのだ。
「今宵は冷える。寄れ」
優しさなどでは決して救われぬこの男も、癒されることはあるのかもしれない。
カイムの心に生じつつある、微かな変化。それを見抜いたドラゴンは、ひそかにそんな事を考えていた。
人を滅ぼす主の意志も、呪われし契約者の手も、この世界に及ぶことはない。ふたりはそう信じていたのだ。
この時は。
フリッフリッフリッフリッフリフリ-!ブリブリブリブリブリー!!だもんな支援
442 :
×DOD:2007/12/09(日) 23:02:24 ID:LKzw7lTV
終了。
そして今回はおまけ付き。いつか言った武器物語だけどおkですか?
おk
444 :
×DOD:2007/12/09(日) 23:06:13 ID:LKzw7lTV
おまけ・WEAPON STORY
レイジングハート
優しさと強さを持って生まれた、不撓不屈の
魔導師の愛杖。才に恵まれた少女は幾つもの
戦いを乗り越え、大魔導師として成長する。
しかしある時、少女は再起不能の傷を負う。
正しき教えを受けず、自らの訓練の苛烈さが
招いた事故。才ある彼女には、師がいなかった。
奇跡的に回復し、己の過ちを知った魔導師は
弟子を集め導きはじめる。味わった苦痛を、
悲しむ人々の顔を、繰り返させないために。
「誰も傷つけたくないから!」…やがてその
前には、力に執着する教え子の涙。彼女は
それを自ら墜とす。茨の道は、二度と踏ませぬ。
…やっぱり難しい。
今度こそ終了です。ではノシ
まとめwikiに行くとアダルトサイトに飛ばされるんだが・・・
同じく
GJ!
カイムの昔話はなあ、凄絶なだけでなく敵も味方も変態ばっかだから話したらドン引きされるのは間違いなしだ。
>448
どもです
バイト帰りに電波受信。
カルドセプトのオマケが出来たので投下よろし?
ごーごー
むしろ待ってた
支援っす
『リリカルなのはCuldcept お爺ちゃんは出オチの巻』
――――旧き大陸に三人の賢者あり
――――古の英知と、先の世の技に通じ、数百の従魔を操る
――――滅びの予兆あるところ、必ず現れ魔を打ち破る
――――『滅びの賢者』と民に畏れ呼ばるる
――――神出鬼没の賢者なり
その日、世界が赤く染まった。
――ベルカの妄執
脱走者だけではなかった。
150年に渡る妄執は管理局にみならず、聖王教会の内部深くまで及んでいたのだ。
その光景を、ヴィヴィオはまるでテレビの中の出来事のように感じていた。
つい先ほどまで、一緒に居た人たちが倒れている。
たった今、話していた相手を殺す。
それを、その行為を、少女は理解できない。心が理解を拒む。
呆然として座り込むヴィヴィオに、男たちが迫る。
血に濡れた刃。
その鈍い光を見て、ヴィヴィオは初めて状況を理解した。
座り込んだ姿勢のまま、必死で後ずさろうとする。
「……っ!いやぁ……やだぁ来ないでぇ」
視界が歪む。
周りを囲む赤い世界。
誰もいない。
自分を助けてくれる人なんて一人もいない。
鼓動が異常な早さを刻む。
起き上がり、逃げ出そうとする。
しかし、そんな小さな少女の抵抗は、男たちにとって意味を為さない
少女の身体に男たちの手が伸びた――――その時
「――――そこまでじゃ!! 悪党共っっっ!!!」
肺腑を響かせる怒声。
クラナガン全域に届くのでないか、そう思わせる程の大音声。
まるで閻魔大王が如き、憤怒の声であった。
「――――っ!? 何者だっ! 何処にいる!?」
突然の大音声に戸惑いながらも、男たちのリーダーと思われる一人が声を上げる。
なんだかお約束のような台詞を吐くリーダー。どうやらフラグが立ったようです。
「ここじゃ、分からぬか若造」
頑固さを思わせる声が、上空から響いた。
全員の目線が上を向く。
瓦礫と化した街、瓦礫と化したビルの屋上。その屋上から道路に突き出された尖塔。
――――その尖塔の先、一人の老人が腕を組み佇んでいた。
白で染まりきった髪。
深い皺が彫りこまれた顔。
齢八十は越えている老人であった。
だが老人は、常人とはかけ離れていた。
両の瞼を麻糸で縫い付けた異貌。
老人とは思えぬ、戦士かくやという程鍛え抜かれた体躯。
デバイスも持たないのに、その身体からは濃厚な魔力が発せられ、周囲の景色を歪ませる。
不安定な足場の上、強風が叩きつけられても尚、老人は身じろぎ一つしない。
――――老人が、褌一丁で佇んでいた。
引き締まったお尻がとってもセクシー。
「儂の名はホロビッツ。なぁに、ただのお節介爺よ」
飄々とした自己紹介の最中でも、その閉じられた瞼から言い知れない圧力が放たれる。褌で。
「ご老体、申し訳ないがこれは我らの事情。関わらないで貰おうか」
その圧力に負けじと、リーダーが声を上げる。
だが、その威圧を老人か矍鑠とした笑みで撥ね返す。褌で。
「事情? 事情とな? 少女を多勢で拐かそうとする小悪党の事情とは何じゃ?」
――小悪党。
その言葉に男たちが殺気立つ。
「構わぬ! 総員射殺せよ!!」
やはりお約束な反応を示すリーダー。なんだかんだでこの男、ノリノリである。
五つの刃から放たれた光弾は容赦なく尖塔へと吸い込まれていき、ビルそのものを飲み込む爆発となる。
倒壊する音。粉塵の混じった煙が舞い上がる。
未だ煙が晴れぬ中、リーダーが言う。
「やったか!?」
フラグ確定しました。死亡フラグです。
そう言い終わるや否や。突如煙が揺らめく。
――そして。
「この……っ! うつけ者がーーーーーーっっっ!!!!!!」
老人が、傷一つ無い老人が、火矢が如き勢いで煙を吹き飛ばしリーダーに迫る。褌一丁で。
反応すらできない男たちの陣形の中心に飛び降り、容赦なくリーダーを打ち据える。
支援
――――乱舞。
そう言わんがばかりの乱打乱撃。
岩すら砕く憤怒の一撃。
それが、わずか二拍の内に数十発近く彼の身体に吸い込まれていく。
「騎士を名乗るなら、理想を語る前に恥を知れぃっ!!」
金剛が如き憤声。
怒れる賢者の拳が、男たちを捉えた。
〜〜これよりホロビッツ先生による愛の鉄拳制裁が行われます。しばらくお待ち下さい〜〜
『イメージ画像』
∧_∧ ∧_∧
( `・ω・)=つ≡つ);:)ω・).,,';
(っ ≡つ=つ ⊂ ⊂)
/ ) ババババ ( \
( / ̄∪ ∪ ̄\_)
ヴィヴィオはただ唖然として、その光景を見続けた。
何がなんだか分からない。何とか混乱した頭で必死に状況を整理してみようと努める。
街が大変なことになりました
↓
剣を持った怖い人たちに連れて行かれそうになりました
↓
お爺ちゃんが現れて怖い人たちをボコボコにしました。
余計混乱した。
そもそも、あのお爺ちゃんは誰なのだろう。
自分の知っている人間の中に、あそこまで高齢の人はいなかった筈だ。
それに、何故自分を助けたのだろう。
他人である自分を、あそこまでして助けてくれる人がいるのだろうか。
混乱する思考の渦に陥りかけた、その時。
「もう大丈夫じゃ、幼子よ」
不意に、温かい声が聞こえた。
声の主を見上げる。
老人が矍鑠とした笑みを浮かべ、まるで世界に恐ろしいものなど何一つ存在しない、と言わんばかりの笑みを自分に向けていた。
その笑みを見て、幼い心ならではの純粋さで、ヴィヴィオは理解した。
きっと目の前の老人は、いつもそうやって生きてきたのだろう。
誰かが涙したとき、誰かが助けを呼んだとき。
どんな障害があろうとも、どんな地獄であろうとも。
そんなものは大したことじゃない。そう言わんばかりの笑みを浮かべ、誰かのために戦ってきたのだ。
「親御殿がどこに居るか分かるか? そこまで連れて行こう」
座り込んでいる自分に、老人が手を差し出す。
この老人は信用しても大丈夫。
不思議と、それだけは確信できた。
褌一丁であることは考えないようにした。
「……あっ、ありがとう」
ございます、そう続けようとして。
取ろうとした老人の掌に、植えつけられている眼球と目が合い。
――――きゅう、という擬音を発しながら、高町ヴィヴィオは失神した。
人物説明
賢者ホロビッツ……漫画版「カルドセプト」の主人公ナジャランの師匠。縫い付けられた両目と両手の掌に植えつけた眼球という、アップが少々心臓に悪いヴィジュアルを誇る。
その正体は齢数百歳を越える名高い『滅びの賢者』の一人であり、世界で唯一のセプターギルドの理事長である。
当初はただの老人キャラかと思われたが、漫画7巻において実はマッチョであることが判明。褌一丁で主人公のライバルを文字通りボコボコにするというインパクト溢れる初戦闘を行い、多くのマガジンZ、単行本をお茶で濡らした素敵老人。
オチもなく終了。
以上ここまで。支援各位感謝!
老人×筋肉×褌の破壊力は異常。
そしてそれを幼女と絡めようとする俺の頭も異常。
gj
あの…まだ時間経ってないけど投下おk?
もう余り時間ないので…
全力で支援します。
十八話「ゆりかご」Bパート
【聖王医療病院 ヴィータの病室】
ここはヴィータの病室、シャマルはここで、ヴィータの体調チェックを行っていた。
「シャマル〜、まだかぁ?」
「うん、もうちょっと」
「仕事溜まってんだよ。さっさと済ませてもどらねぇと」
「後少しだから、じっとしてて。」
「傷の治りが遅くなってんのとか、蓄積ダメージが抜けづらくなってんのなんてもう何年か前から分かってることじゃんかよ〜」
「再生機能だけじゃないのよ。守護騎士システムそのものの異常も不安なの。私たち同士の相互リンクも弱くなってるし、緊急時のはやてちゃんからのシステム復旧とか、魔力供給も…だんだんできなくなってきてる。」
「別に、そんなん日ごろからしっかりやってりゃなんの支障もねぇ。もういいな?行くぞ。」
ヴィータはベッドから立ち上がり、上着を着る。
「…ヴィータちゃん。」
「あたしらの身体の異状さ。たぶんこれ、守護騎士システムの破損とか異変とか、そういうんじゃねぇと思うんだよ。あたしたちが闇の書の一部だった頃から、心のどこかで望んでたことが、叶い始めてんだ。
死ぬこともできずにただずっと生きてきたあたしたちが、最後の主の…はやての下で、限りある命を大切に生きられるようにって、初代リィンがあたしたちにくれた贈り物。
それの続きさ。いいじゃんか。怪我したらなかなかなおらねぇのも。やり直しがきかねぇのも。何か、普通の人間みてぇでさ」
「うん。シグナムもザフィーラも、同じこと言うのよね。最初で最後の私たちの命。大切に、だけど精一杯使って生きればいいって…」
「シャマルは?」
「私も同じよ。危険は怖くないし、永遠になんて興味ない。
でも、私たちの優しい主、はやてちゃんのことと同じくらい、私はヴィータちゃんやシグナム、ザフィーラ…それに、想さんや瞬たちが心配。
皆で一緒に、誰もいなくならずに、はやてちゃんとリィンちゃんのこと、ずっと支えていきたいから…」
「なら、心配ねぇ。二代目祝福の風が、リィンが力を貸してくれる。あたしとシグナムは絶対に堕ちねぇ!ザフィーラも…矢車だってきっと手術が成功して、すぐに目を覚ます。
10年の間に守らなきゃならねぇものが随分増えちまってなぁ〜。
きっちり全部守って、ちゃんと元気で帰ってくるさ。心配性で料理が下手な湖の騎士を、泣かせたりしねぇようにな!」
「…馬鹿ね。」
シャマルはヴィータを抱きしめ、目に浮かんだ涙を拭う。
「少し、邪魔するぞ。」
「あ…」
「ドクター…」
病室の扉が開き、木野が入室してきた。
「木野先生…」
「矢車の手術だが…成功したよ、一命は取り留めた。お前の止血が早かったおかげだよ。」
「ホントか!?良かったじゃねーかシャマル!」
「…どれくらいで…目覚めるんですか?」
「…」
木野はサングラスの下にある瞼を閉じ、唇を歪める。
「先…生?」
「…それは…分からない…」
「!?」
「なんでだよ…手術は成功したんだろ!?ドクター!」
「傷が予想以上に深かった…あれでは、俺でも完全には…」
「アンタそれでも世界一の医者かよ!?友達一人マトモに助けられないで、何が世界一の医者だよ!!えぇ!?」
ヴィータは物凄い剣幕で木野に食いかかる。
シャマルはそんなヴィータの肩を震える腕で再び抱きしめる。
「シャマル…」
「木野先生は悪くないわ…だって、最善を尽くして想さんを助けてくれたんだもの…怒る理由なんて…一つも…ないじゃない…」
「シャマル…」
「元の部屋に戻してある。行ってやってくれ。」
「…!」
シャマルはヴィータを放し、病室を走って出て行った。
「…影山には?」
「もう…話してある。神代にもな…」
【第三訓練室】
「ハアァァァァァァァア!!」
「オオォォォォォォォオ!!」
木野から矢車の事を聞いた影山と剣は、第三訓練室でライダーに変身し、模擬戦を行っていた。
「あいつらあぁぁぁぁぁあ!!」
パンチホッパーはジャンピングローリングパンチでサソードを攻撃し
「よくも…矢車を!!」
サソードは斬撃でこれを打ち返す。
「クッ…!」
打ち返されたパンチホッパーは受身を取って着地する。
「どうした影山…その程度か!?」
「まだまだ!」
「よぉし…来い!俺は模擬戦においても頂点に立つ男だ!!」
「行くぞぉ…!」
パンチホッパーはダッシュでサソードに殴りこみ、サソードもサソードヤイバーを構え、パンチホッパーに斬りかかる。
「「はあぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」」
二人の荒々しい模擬戦は続き、ホッパーの拳と激しく火花を散らす。
四十分ほど経った後に自動的に変身が解け、二人は床に寝そべった。
「はぁ…はぁ…剣…」
「はぁ…はぁ…何だ?」
「兄貴の為にも…あいつら…!」
「分かってる…俺は…仕返しにおいても…頂点に立つ男だ…!」
【矢車の病室】
「…」
「想さん…」
シャマルは眠っている矢車の頬に触れ、優しく撫でる。
「もう…日頃こんな美人を捕まえて悪口言ってるから、こんなことになっちゃうのよ…
ほんとに、貴方はしっぺ返しばかり受けるんだから…
まだまだ…立て替えてあげたお金…残ってるのに…呑気に寝てる…場合なんて…無いでしょ…!」
シャマルの瞳から涙が零れ落ち、矢車の寝顔を濡らす。
「想さん…想さん!」
シャマルは矢車の胸に顔を埋め、泣き崩れた。
「起きて…死なないで…また三人で飲みに行こう…ねぇ…ねぇ!」
シャマルは必死に矢車の体を揺する。
だが矢車の瞼は硬く閉じられ、開くことは無かった…
………
【???】
「アインヘリアルの制圧、完了しました。妹達も、初回出動からのデータを全て蓄積、データに反映できています。」
「ああ…すばらしい…すばらしいよウーノ…」
スカリエッティは冷たくモニターに写っているウーノに微笑む。
「失敗の目立つ人造魔道師と比較して、私たち戦闘機人はトラブルが少ないですね」
「元は最高評議会主動で、管理局が実用寸前まではこぎつけていた技術だからねぇ。それから私が随分と時間をかけて改良したんだ。」
「良質なはずです。」
「人造魔道師の製造もまた、ゼストやルーテシアが長期活動してくれたおかげで、随分と貴重なデータをとることができた。彼らの失敗と成功のおかげで、聖王の器も見事完成をみた。」
「この聖王のゆりかごを発見し、触れることができて以来、その起動はあなたの夢でしたから。そのために聖王の器たる素材を捜し求め、準備も整えてきた。夢が…叶う時ですね。」
「まだまだ〜。夢の始まりはここからなんだよ、ウーノ。古代ベルカの英知の結晶。ゆりかごの力を手にして、ここから始まるんだ。誰にも邪魔されない!楽しい夢の始まりだぁ!」
【スカリエッティアジト前】
スカリエッティのアジトへの入り口。
ここには既にアジトの場所を掴んだヴェロッサとシャッハが待機していた。
「凄いですね、ロッサ。こんな場所、よく掴めました。」
「シャッハ、いいかげん僕を子供扱いするのは止めて欲しいなぁ。これでも一応カリムやはやてとおんなじ、古代ベルカ式のレアスキル継承者なんだよ。」
「無限の猟犬、ウンエントリヒ・ヤークト。あなたの能力は、存じ上げていますよ。」
「ま、今回の発見は、フェイト執務官やナカジマ三佐の部隊の、地道な捜査があってこそのものだけどね。」
ヴェロッサは猟犬たちの頭を撫で、はやてに通信を送った。
【アースラブリッジ】
「はやて!こちらヴェロッサ。スカリエッティのアジトを発見した。教会騎士団から戦力を呼び寄せてるけど、そっちからも制圧戦力を送れるかい?」
「うん。シャーリー。」
「戦闘機人、アインヘリアルから撤収。地上本部に向かっています。…!!あの騎士も、別ルートで本部に向かっています。」
「……」
本部に向かって飛んでいくゼストを真剣な表情で見つめるシグナム。
「(あいつが…シグナムが気になってる奴か…渋い顔して人の女の気を引きやがって…!)」
そして全然空気が読めていない大介。
「…ん?」
ルキノは別の反応をレーダーでキャッチし、キーボードを操作する。
「廃棄都市から別反応。エネルギー反応膨大!これは…戦闘機人!こちらも、地上本部に向かってます!」
ルキノは映像をモニターに映す。
「!?」
そして合流していたスバルはモニターに目が釘付けになった。
地上本部に向かっている戦闘機人軍団の中に、ギンガの姿があったからである。
「ギン…姉?」
【スカリエッティアジト前】
「さてシャッハ…僕らは先にとつ…」
ヴェロッサがそう言い掛けた瞬間、大きな地鳴りが起きた。
その地鳴りは激しく、スカリエッティのアジトを覆っていた岩山に亀裂が入る。
「うわ!?…これは…!」
「シャッハ!」
「あ…はい!」
ヴェロッサはシャッハを抱え、足元に術式を展開して飛行する。
「ロッサ…」
「!?」
アジトを覆っていた岩山は完全に崩れ落ち、中から巨大な金色の戦艦が姿を現した…
風来のシエン
………
「さぁ、いよいよ復活の時だ。私のスポンサー諸氏、そしてこんな世界を作り出した管理局の諸君。偽善の平和を謳う聖王教会の諸君も……見えるかい?
これこそが、君たちが忌避しながらも求めていた絶対の力!
旧暦の時代、一度は世界を席捲し、そして破壊した。古代ベルカの悪魔の英知、聖王のゆりかごだ…
見えるかい?待ち望んだ主を得て、古代の技術と英知の結晶は今その力を発揮する!
さぁ!ここから夢の始まりだ!はははは!あーははははは!!」
すっげ早いですが投下終了。
いくらなんでもカットしすぎたか…?
自分でやっておいて消化不良だ…
次回頑張ります。
この先のスカの演説後はヴィヴィオの“ママー”発言…ヴィヴィオに萌えると同時にスカに怒りの炎が燃える所ですね。
書き忘れた、GJです俺も明日辺りにはデビルメイクライ3クロスの十三話を投下できるように今日は徹夜だ!
>>467 GJ! さあいよいよネタバレが怖くなってきましたよ!w
>>469 考え直せ!
徹夜なんてしようものなら、身体が耐久限界を超えて、何かこう吐き気とかすごいことになるぞ!
…まあ、一週間以内に5回も徹夜した自分が悪いんですが…
(ちなみに、自分の方は昨日完治しました)
大丈夫ですよ反目氏…今日は日曜でよく寝たし明日学校があっても反目氏の描いたスバルwithベッキーを思い出せば力が湧いてきますから。
472 :
なの魂の人:2007/12/10(月) 01:46:45 ID:113DAOm9
GJでっす
恐ろしく投下祭りになりそうですが、自分も投下してよろしいでしょうか?
474 :
なの魂:2007/12/10(月) 01:54:26 ID:113DAOm9
「……銀ちゃんも新八さんも、なんか元気ないなぁ…」
温泉旅行から帰ってきて数日。
神楽とババ抜きに興じていたはやては、そんなことを呟いた。
視線の先では、銀時と新八が茶をすすりながらニュース番組を見ている。
神楽もはやての様子に気付き、銀時達の方を見るが、すぐにはやての方に向き直ってしまった。
スペードとダイヤのキングをテーブルの上に放りながら、彼女は言った。
「きっと女湯覗くの失敗してガッカリしてるだけアル。放っとくヨロシ」
「う、う〜ん……あの二人が、そんなことするとは思えへんけどなぁ…」
「はやては、銀ちゃんの普段の生活知らないからそんなこと言えるネ。
私のマミー言ってたよ。男はみんな獣の皮被った狼アル。はやても気をつけるアルよ」
「神楽ちゃん。それ被ってる意味あらへんから」
釈然としない物を感じながら、はやては苦笑した。
もう一度銀時達の方を見る。
先程と同じように、銀時達はソファーに座ってニュース番組を眺めていた。
画面ではリポーターが、炎上する建造物を背景に何かを喋っていた。
どうやらどこぞの研究所が事故で爆発し、従業員全員が亡くなるという大惨事が起こったようだ。
「……やれやれ。物騒な事件が多いこって」
手元の煎餅をかじりながら銀時は呟いた。
「あの……銀さん」
彼の隣で、同じようにボーっとテレビを見ていた新八が突然小声で話しかけてきた。
「なのはちゃん……大丈夫なんですかね…」
ちらちらと後ろ――テーブルにいる神楽たちを気にしながら、彼女達に聞こえないように話を続ける。
先日の温泉での事件。
あれ以来、なのはと顔を合わせることが殆どなくなってしまった。
たまに顔を合わせても、無理に笑顔を作りながら軽く会釈をしてくるだけだった。
「本人はいつも通り振舞ってるつもりみたいですけど……なんか、家でも元気無いらしいですし…」
「悪いクセが出ちまったか。昔っからそうなんだよ、アイツは。
何か悩みを抱えるたびに、自分の周りに壁を作ってそこから出てこなくなっちまう」
テレビを見たまま、銀時は物憂げな表情でそういった。
新八は黙り込む。
なのはが落ち込んでいる理由は、なんとなく察せた。
彼女は普段から人一倍他人に気を遣っていた。
誰にも心配をかけないように。誰にも迷惑をかけないように。
にもかかわらず、他人に心配され、かつ助けられたことに胸を痛めているのだろう。
「俺達が心配することじゃねーよ。アイツは、ちゃんと一本の芯を持ってる。
ほっとけば、自分で壁破ってくるさ」
「でも、銀さん」
楽観的とも思える銀時の発言に、新八は言い返す。
「……その、なのはちゃんを支えてる一本の芯。……もし、それが折れてしまっていたら…」
「…………」
475 :
なの魂:2007/12/10(月) 01:55:55 ID:113DAOm9
今度は銀時が黙る番だった。
人は誰しも、心の中に芯をようなものを持っている。
それがあるから、どんな困難な、絶望的な状況でも真っ直ぐに立っていることが出来る。
だが、もしその支えが失われてしまったら……。
銀時は無言のまますっと立ち上がった。
「バカなこと言ってんじゃねーよ、新八よぉ。あの士郎の旦那のガキだぞ?
そう簡単に折れるわけあるめーよ」
そう言い、頭を掻きながら居間から出て行こうとする銀時に、新八は声をかける。
「どこ行くんですか? 銀さん」
「……散歩だ」
「あ、私も一緒にお散歩行きたいなぁ」
ぶっきらぼうに言い残し、居間の扉に手をかけようとしたその時。
後ろからはやてが声をかけてきた。
懸命に車椅子を漕いで銀時の隣へやってきた彼女は、目一杯の笑顔を浮かべていた。
銀時は思わず、心の中で自嘲する。
――やれやれ、こっちが心配されてちゃ世話ねぇな。
「それなら私も一緒に行くネ」
そう言って神楽も銀時の隣へやってくる。
「世間知らずのはやてに、悪い虫がつかないように見張らないといけないネ」
「虫もつかねーよ。こんなちんちくりんなガキ」
ぽん、とはやての頭に手を乗せ言う銀時。
お子様扱いされたはやてはもちろん怒り、銀時の手を払い落とそうとムキになって手を振り回す。
が、子供の力で抵抗しきれるわけもなく。
イヤーな笑みを浮かべた銀時に、いつぞやのようにわっしゃわっしゃと髪の毛をかき乱されてしまう。
あぅー、と情けない声を上げながら神楽に助けを求めるはやて。
相変わらず子供のようなことをする銀時を見、新八は思う。
(……なんだ。一番心配してるの、銀さんじゃないか)
呆れたようにため息をつきながら、彼は銀時達の後を追った。
なの魂 〜第九幕 こだわりがあるのと頑固なのは紙一重〜
「……いい加減にしなさいよ!!」
昼休みの教室。
辺りの喧騒を吹き飛ばすような、アリサの怒声が教室に響いた。
何事か、と周りの生徒達が彼女に視線を向ける。
しまった、と思いなのはは顔を上げた。
目の前には、怒りで顔を赤くした親友の姿があった。
「さっきから何話してても上の空でボーッとして!」
「あ……ごめんね、アリサちゃん」
支援
477 :
なの魂:2007/12/10(月) 01:57:30 ID:113DAOm9
謝るなのはだが、今のアリサにとっては逆効果だった。
彼女は怒りに任せて一気に捲くし立てる。
「ごめんじゃない!! 私達と話しててそんなに退屈なら、一人でいくらでもボーッとしてなさいよ!」
そう言い放ち、そっぽを向いて教室から出て行く。
「ア、アリサちゃん……」
アリサを引き止めようとするすずか。
しかしなのはは、そんな彼女を止める。
「いいよ、すずかちゃん……今のは、私が悪かったから……」
「そんな事ないと思うけど……とりあえず、アリサちゃんも言いすぎだよ」
少し話ししてくるね。と言い残し、すずかもアリサを追って教室を出て行く。
静まり返る教室。
しかし次第に辺りは喧騒を取り戻し、いつも通りの騒がしさが戻ってくる。
なのはは俯き、小さく呟いた。
「……怒らせちゃったな。ごめんね、アリサちゃん……」
「アリサちゃん! アリサちゃん!!」
「……何よ」
階段の踊り場でようやくアリサを捕まえたすずかは、息を切らしながら言う。
「何で怒ってるのか、何となくわかるけど……。駄目だよ、あんまり怒っちゃ」
「だってムカツクわ! 悩んでるの見え見えじゃない。迷ってるの……困ってるの、見え見えじゃない!
なのに、何度聞いても私達には何も教えてくれない……! 悩んでも迷ってもいないって、嘘じゃん!!」
背を向けたまま、アリサは怒鳴る。
その表情はこちらからは見えないが、その声には怒りだけではなく、悲哀のようなものも込められていた。
すずかは、なおもアリサを諭す。
「いくら仲良しの友達でも、言えない事はあるよ……。
なのはちゃんが秘密にしたいことだったら、私達待っててあげるしか出来ないんじゃないかな……」
「……だからそれがムカツクの! 少しは役に立ってあげたいのよ!」
振り向き、叫ぶアリサ。
同時に、彼女の頬を何かが伝った。
驚いた様子でアリサは自分の頬を拭った。
どうやら、自分でも気がつかないうちに泣いていたらしい。
その手は僅かに湿り気を帯びていた。
「……分かってるわよ」
濡れた自分の手を見つめながら、アリサは呟く。
478 :
なの魂:2007/12/10(月) 02:00:14 ID:113DAOm9
「なのは、あんな性格だから。アタシ達に心配させたくないって事ぐらい、分かってるわよ。
多分、アタシ達じゃあの子の助けにならないって事も……」
そこまで言い、アリサは顔を上げた。
目尻に涙を溜め、頬を赤くしながら彼女は叫ぶ。
「待っててあげるしか出来ないなら……じゃあ、アタシはずっと怒りながら待ってる!
気持ちを分け合えない寂しさと、親友の力になれない自分に!」
そう言って、またすぐにすずかに背を向けてしまう。
口調こそ強いが、その言葉にはもう怒りは込められていなかった。
親友の後姿を見つめ、すずかは小さく微笑んだ。
「……いじっぱり」
「……ふんだ」
同時刻。
八神家の前に一人の男が立っていた。
右手に錫杖、左手に紙袋、行脚僧のような服装、そして鬱陶しいくらいの長髪。
見るからに怪しいその男は、インターホンを鳴らしこう言った。
「ごめんくださ〜い。桂ですけど〜」
本当にこの男は、自分が手配犯だということを認識しているのだろうか。
桂は頭に乗せていた笠を被り直し、八神宅を見上げた。
――まさか、このような形で再びここへ来ることになるとはな。
しばし、物思いに耽る。
しかしいくら経っても住人が出てくる様子がない。
「……チッ、こっちも留守か。事は一刻を争うかもしれんというのに…」
舌打ちをし、その場から立ち去ろうとする桂。
その時、彼の後ろから玄関の開く音が聞こえた。
振り向き、視線をそちらへやる。
……玄関には、留守番を任された定春が居た。
「……すっ、すみません…銀時くんいますか?」
などと言いながら定春に歩み寄る桂。
しかし、いくら定春が常識外れな犬だといっても人語は話せない。
きょとんと首をかしげ、桂をじっと見つめる定春。
「……あの、じゃあ茶菓子だけでも置いていくんで、どうぞ食べ……」
そう言って左手に持っていた紙袋を差し出そうとする。
その瞬間、突然辺りが暗闇に包まれた。
……否。
定春に、頭を丸齧りにされてしまった。
見様によっては前衛芸術に見えないこともない体勢のまま、桂はしばらくその場で固まっていた。
479 :
なの魂:2007/12/10(月) 02:04:21 ID:113DAOm9
時間は経ち、放課後。
なのはは一人で、とぼとぼと近所の臨海公園を歩いていた。
すずかとアリサが、バイオリンの稽古のために先に帰ってしまったからだ。
だが、わざわざ寄り道をしたのは別の理由からだ。
みんなに、今の自分の顔を見られたくなかったから。
きっと今の自分は、心情を隠しきれずに消沈した面持ちをしているだろう。
そんな姿を見せたら、きっと家族に心配をかけてしまう。
だから、ひとまず気持ちを落ち着かせるために一人ここへやってきたのだ。
ふぅ、とため息をつきベンチに座る。
目の前に広がる海は夕日に照らされ、燃えるような緋色を散りばめていた。
しかし今の彼女には、それを素直に綺麗だと思える余裕はなかった。
周りに迷惑をかけ、挙句親友を怒らせて。
つくづく駄目な子だな、自分は。
自虐的な考えを巡らせ、もう一度ため息をつく。
「ガム食うか?」
突然隣から声が聞こえた。
鬱屈そうに声の主のほうへ顔を向ける。
――本当にこの人は、いつでもどこでも現れるな。
そんなことを思いながら、なのはは困ったように笑みを浮かべた。
いつの間に腰掛けていたのか、目の前にはフーセンガムを膨らませた銀時の姿があった。
辺りを見回してみても、他の人影はない。
どうやら、彼一人だけのようだ。
「……遠慮しときます」
「そーかい」
申し出を断られた銀時は、さして残念がる様子もなく手を引っ込めた。
そういう気分ではなかった、というのもある。
だがそれ以上に、彼の申し出を拒絶したい理由があった。
差し出されたガムの包み紙に書かれていた文字だ。
――チョコレートパフェ味。
何かの冗談かと思ったが、ガムを包み込んだ紙には確かにそう印刷されていた。
あの甘ったるい味が、咀嚼するたびに、何度も口の中に広がってくるというのだ。
考えるだけで胸焼けしそうである。
そんなキワモノ食べたくない、というのが申し出を断ったもう一つの理由である。
「…………」
しかし、ガムを拒絶したことに少しだけ後悔する。
会話が続かなくなってしまったのだ。
辺りに響く木々の揺れる音と、打っては寄せる波の音。
それ以外には、何も聞こえない。
まるで、この世界に自分達二人しかいないような感覚。
あまりの静かさに、居た堪れなくなってくる。
適当に茶を濁してその場から去ろうと、なのはは立ち上がった。
「誰にも迷惑かけたくねぇ。誰にも心配かけたくねぇ。でも目の前で困ってる奴がいたら助けてやりてぇ。
……信念持って行動するのはいいけどよ…」
だがなのはが口を開く前に、銀時がポツリと、そう呟いた。
喋る機を逃したなのははそのまま黙り込み、銀時の言葉に耳を傾ける。
「……お前、それに拘り過ぎて、大事なコト忘れてんじゃねーのか?」
480 :
なの魂:2007/12/10(月) 02:06:48 ID:113DAOm9
こちらを見ようともせず、銀時はそう言った。
「……大事な…こと?」
銀時の方を見、なのはは聞き返す。
立ち上がったにも関わらず、彼の顔の高さは自分とそう変わらなかった。
「人ってのはよォ、護り護られ生きていくモンだ。オメーは自分の主張通すのに必死で、
自分自身が、いろんな誰かに護られて生きてるってコト忘れてんじゃねーのか?」
なのはは静かに、その言葉を聞く。
銀時は言葉を続けた。
「生きてりゃ、誰かしらに迷惑かけたり心配かけたりするモンだ。
誰にも心配されねー人間なんざいるかよ。誰にも心配されねー、気に掛けてもらえねー人間になりたいのか?」
そう言った銀時は、やはり海のほうをじっと見つめ、こちらを見ようとはしなかった。
なのはは言葉に詰まる。
――違う。
気に掛けてもらいたくないわけじゃない。
気にして欲しかった。
誰でもいい。自分をちゃんと見て欲しかった。
寂しかった。
……だから、誰にも嫌われたくなかった。
心配をかけたり、迷惑をかけたり。
そんなことをしたら、きっと嫌われてしまうと思った。
だから誰にも心配をかけないように、迷惑をかけないように。
そう生きてきた。
誰かに必要とされたかった。
そうすれば、きっとみんな自分のことを見てくれるから。
だから、自分のことをかなぐり捨ててでも、他人を助けようとしてきた。
――結局、全部自分のためだったのかな……。
銀時が不意に立ち上がった。
なのはに背を向け、ゆっくりと歩を進める。
「……ケツの青いガキが他人に気ィ使うなんざ、10年早ェんだよ。
お前はお前のやりたいようにやればいい。お前が落ちそうになった時は、そんときゃ俺達が何度でも拾い上げてやる。
だから……」
足を止め、こちらに振り向く。
緋色に包まれた彼の姿は力強く、また優しくもあった。
「俺達が落ちそうになった時は……そん時は、お前が俺達のこと拾い上げてくれよな」
――不思議な感覚だった。
暖かな陽の光が、ゆっくりと氷塊を溶かしていくような……そんな感覚だった。
何も求める必要はなかった。
自分を見てくれている人は、ここにいた。
自分を必要としてくれる人は、ここにいた。
いや……。
きっと自分の周りにいる人達は、みんなずっと前から。
家族も、親友も、きっとみんな……。
銀時の後姿を見送っていたなのはは、ふと今まで座っていたベンチに目を落とす。
先程差し出されたガムが一枚だけ、ぽつんと置かれていた。
何気無しにそれを手に取る。
支援
482 :
なの魂:2007/12/10(月) 02:09:10 ID:113DAOm9
(お前は、お前のやりたいようにやればいい)
彼のその言葉が、心の中にまで響いてきた気がした。
(私のやりたいこと……か)
包み紙を空け口に含んだそのガムは、予想の斜め上をぶっ飛んだ甘さだった。
「……そっか、喧嘩しちゃったんだ」
家に着き、自室でいつもの服に着替え、今日の出来事をユーノに話した。
案の定、彼は心配した様子でそう言ってきた。
「違うよ。……私がボーッとしてたから、アリサちゃんに怒られたってだけ」
なのはは苦笑しながら言う。
微妙な沈黙の後、ユーノが何か言おうと口を開きかけた。
だがそれよりも先に、なのはがポツリと話し出す。
「……私のお父さんね、私が生まれてすぐの頃に、大怪我して入院しちゃったの。
それで、お母さんはお仕事で忙しくて、お兄ちゃんとお姉ちゃんはお父さんの看病と家の手伝いで……。
私、一人で家にいることが多かったんだ。……その頃からかな。
『誰にも心配や迷惑かけちゃいけない』『なんでも自分でしなくちゃいけない』って思うようになったの」
ふっとため息をつき、なのはは言葉を続ける。
「……そのことで、銀さんにも怒られちゃった。
『人は、護り護られて生きていくものだ』って」
そう言った彼女の目は酷く寂しそうで――。
放っておけば、そのまま消え入ってしまいそうだった。
483 :
なの魂:2007/12/10(月) 02:10:16 ID:113DAOm9
「……みんな、私のことを見てくれてた。
……みんな、私のことを護ろうとしてくれてた。
でも……私は自分のことで精一杯で……ずっと、そのことに気付けなかった」
自嘲気味に笑いながら、なのはは言った。
「みんなの好意から逃げて、自分の好意だけ押し付けて……。
……弱い子だよね、私って…」
「……なのは!」
今までずっと黙ってなのはの話を聞いていたユーノが、突然声を上げた。
何かを決意したような目で、何かを必死に訴えかけるような目でこちらを見据え、言った。
「護るから……君は、僕が必ず護るから、だから……!」
「……うん。私も、絶対に護るから。ユーノくんとの約束」
ユーノの頭にそっと手を置き、撫ぜるなのは。
突然のことに、ユーノは顔を赤くして言葉を失ってしまう。
そんな彼を見てなのはは微笑み……小さく呟いた。
「……ありがとう」
小さな、本当に小さなその言葉。
目の前の彼にも聞こえるかどうか分からない。
だが、その言葉は確かに向けられていた。
自分の大事な……本当に、護りたい人達へ。
484 :
なの魂の人:2007/12/10(月) 02:12:45 ID:113DAOm9
以上投下終了です。
ああ、ダメだ。
空知みたいな気の利いた台詞なんて思いつかないよ。
なんかご都合主義っぽいですが俺にはこれが限界ですごめんなさいっ
次回からようやくクロスらしい展開に…なるのかなぁ?
なの魂の人GJです!!
朝見たら更新されていたんで、思わず読みふけっちゃいましたよ。
今更だけど、なの魂の世界のなのはやはやては、着物なんですかね?
着物バンザイ。
銀時の兄貴ィィィー! やっぱり、銀さんはすげーや!
あれですよ、やさぐれた男が少女に癒される展開は好物ですが、悩む少女を普段ダメな男がそっと押してあげる展開もまた好物なのですよ。
もう、ちゃくちゃくとなの魂の世界を積み上げてますねぇ。二人が並んで座ってても全然違和感ないやww
>>486 自分は原作通りの恰好で想像してます。
地球が次元世界と交流を持ち始めてから文明が休息に発達し、原作なのはみたいな洋服が広まっていると予想。
ただ、未だに日本の風流を捨てきれない人もいるから、着物も不思議ではない、って感じじゃないですかね?
銀魂でも洋服と着物着てる人が半々くらいだったし、銀さんはそれを合わせたような恰好ですからね。
GJです、なんか俺も幼なのはが書きたくなりました…キャラの数や設定的に俺はストライカーズを選び易い傾向があるな。
久々に投下・・・と思ったけど、先にスレ立ててからの方がいいかな?
後50KBもないからその方が良いかと…しかしデビルメイクライ3クロスの十三話がなかなか書き終わらないぜ。
491 :
なの魂の人:2007/12/10(月) 22:40:19 ID:4R2Qi311
感想サンクスなのです
>>489 まだ450kbですし、建てなくても大丈夫じゃないですかね?
>>486 >>487氏の想像通りですね。ぶっちゃけ和服着てるほうが少数派だったりします。
なのはもたまに和服着てるときがあるらしいです
…一度、銀八先生の質問コーナーとか作ってみるかな
あれそうでしたっけ、俺よ慌てんな…
>>490-491 ほむ……では危なくなったら立ててきます。
というわけで投下ー
リリカル遊戯王GX 第八話 恐怖のバーンデッキ! 守り抜けブラストフレア!
なのはが人生初の告白に困惑している頃、天井裏では十代とヨハンの二人が保健室へ向けて進んでいた。
「っ!? 十代、あれを!」
「保健室の天井が、開いてる!?」
真下には保健室があるであろう位置、
そこの天井の一部が無理矢理破られていた。
すでにゾンビが入り込んでいたのかと焦り、二人は急いで保健室の中へと降り立つ。
「鮎川先生、レイ! 無事か!?」
荒れている室内を見渡し、ベッドに眠っているレイとその傍に座っている鮎川を発見する。
無事だったとほっとしながら声をかけるが、鮎川はこちらを向こうとしない。
「鮎川先生? 薬を持ってきたぜ、早くレイに……」
「……薬? ああ、そうだったわね……でもね、ダメなのよ」
「え……?」
それはどういう意味なのか、
もうレイは手遅れだったのか、自分たちが来るのが遅すぎたのか。
十代は愕然とするが、どうにも様子がおかしい鮎川にヨハンは警戒を強める。
「だって……レイちゃんにはこのまま仲間になってもらわないとねぇ!」
「なっ、鮎川先生も!?」
「十代、気をつけろ!」
ヨハンの言葉に回りを見ると、すでに入り込んできていたであろうゾンビ生徒達が物陰から現れる。
二人はディスクを構えるが、鮎川が他のゾンビ達を制止した。
「ダ・メ・よ……この子達は、私の獲物なんだから、ウフフ……」
「くっ、鮎川先生をなんとかしないと、レイに近づけない……!」
「鮎川先生、俺が相手だ!」
ヨハンはレイの側から鮎川を引き離そうと考えるが、
その間に十代が前に出てディスクを展開する。
「十代!? ここは俺が――」
「いや、ヨハンは砂漠でデュエルをしちまってる! ヨハンはレイを頼む!」
「くっ……わかった!」
鮎川がディスクを展開する一瞬の隙をついて、ヨハンはレイを抱きかかえてその場を離れる。
だが、扉の前に他のゾンビ生徒が立ちふさがりヨハン達の逃げ場を塞いでいた。
「ダメよ……みんなここで仲間になるんだから……」
「鮎川先生……ちくしょう、デュエル!」
―十代 LP4000― ―鮎川 LP4000―
「私のターン、堕天使ナース−レフィキュルを召喚」
鮎川の場に、全身を包帯で巻かれた悪魔の羽を持った看護師のようなモンスターが召喚される。
―堕天使ナース−レフィキュル― 攻撃力1400 守備力600 効果モンスター
その召喚された時の衝撃が狭い室内で暴れまわり、壁や天井の一部が軋みをあげる。
「うわっ! こんなところだと、モンスターを召喚するだけで一騒動だぜ……」
「二枚のカードを伏せ、ターン終了よ」
予想以上の衝撃に部屋が大丈夫か不安に思いながらも、十代はカードを引く。
「俺のターン、ドロー! 魔法カード融合を発動、手札のフェザーマンとバーストレディを融合! フレイムウイングマンを特殊召喚!」
―E・HERO フレイムウイングマン― 攻撃力2100 守備力1200 融合・効果モンスター
翔達から逃げる時に呼び出したしたモンスターを再び召喚するが、その瞬間鮎川の場のカードが発動する。
「永続トラップ発動、ダーク・キュア! 相手の場に召喚されたモンスターの攻撃力の半分の数値分、相手のライフを回復する!」
「なっ、俺のライフを回復? いったい何を……」
「更に堕天使ナース−レフィキュルの効果発動、相手のライフ回復効果が逆転する。喰らいなさい!」
「うわぁぁぁぁ!! く、くそっ……そういうことかよ……!」
―十代 LP2950―
「十代!」
「だ、大丈夫だ! 要はレフィキュルを倒せばいいんだろ、攻撃力はフレイムウイングマンのほうが高いぜ!」
「残念ね、永続トラップ、サディスティックポーション発動。相手にカードの効果でダメージを与えたターン、一体のモンスターの攻撃力を1000ポイントアップ!」
―堕天使ナース−レフィキュル― 攻撃力2400(ターン終了時まで)
「なっ! フレイムウイングマンの攻撃力を上回った!?」
「ちゃんと予防接種はしないとダメよ? うふふ……」
「くっ……俺はカードを三枚伏せ、ターンエンド……!」
ティアナの放った魔力球が斧を持った戦士のモンスターに斬り捨てられる。
―アックスレイダー― 攻撃力1700 守備力1000 通常モンスター
その隙に脇を駆け抜け前方の敵の配置を確認する。
スバルもティアナもほとんど魔力が残っていない、その上スバルはエリオとフェイトの二人を背負っているため反撃することもままならなかった。
最小限の牽制をかけてわずかな隙を100%以上活用、それでもこの包囲を突破できるかはわからない状態だ。
「ティア、また来るよ!」
「わかってる! 二人を落とさないでよ!?」
ディスクを構えるゾンビに向かってクロスミラージュを向け、
その射撃から主を守ろうと巨大な盾を持ったモンスターが射線上に割り込んでくる。
―ビッグ・シールド・ガードナー― 攻撃力100 防御力2600 効果モンスター
ティアナはその巨体と盾によって視界が塞がれたそのゾンビを無視し、そのまま走り抜ける。
最小限、最低限の動きで包囲網を突破し――背後から聞こえてきた悲鳴に足を止めてしまう。
「スバ――っ!?」
「ティア、避けて!!」
目を覚ましたエリオが暴れ、それを抑えながらスバルが叫ぶが、その瞬間にはティアナの体に飛来した鎖が巻きつき捕らえられていた。
焦りながら鎖をはずそうともがくが、鎖は更にティアナの体を締め上げる。
スバルもフォローに回りたかったが、フェイトを背負いバインドがかかっているとはいえ暴れるエリオを抑えていては身動きがとれない、
そんな二人へ「鎖付きブーメラン」を持ったアックスレイダーが迫るが、白い影が飛び込んできた。
「フリード!」
「チビ竜!?」
突然現れたフリードに驚く間もなく、アックスレイダーへ火球を放って吹き飛ばし、フリードはエリオの側へと飛んでくる。
「キュル……」
「ふ、フリード、ダメだよ……今のエリオは……!」
「フリードも、戦いたいのかい……?」
フリードはスバルに抑え込まれながらも呟くエリオの瞳をじっと見つめ――
「キュウ」
火を吐いた。
「うわぁ! エリオー!?」
「ち、力づくで黙らせるって……キャロと一緒の時は気付かなかったけど、意外と鬼なのね、あんた……」
スバルは再び気絶したエリオを抱きかかえ、なんとか鎖から脱出したティアナと共に走り出す。
フリードが前に出てゾンビやモンスターたちを牽制していく、
頭数が一人増えるだけで取れる戦略は膨大に増える。
それは逆に非効率的な行動を取りやすくもなるということだが、ティアナはそんなミスは犯さず、フリードとスバルに的確な指示を出しながら通路を駆け抜けていった。
アモンが戦っていたゾンビが倒れ伏す。
デュエルに勝利し、デスベルトによる虚脱感に顔を顰めながらもこれからの行動に関して思考を巡らせる。
このまま保健室に向かっても、十代達がすでにレイを救助している、もしくは敗北してゾンビ化しているかのどちらかだろう、
ならば先に体育館へと向かい、守りを固めていた、と言う方がメリットが大きい。
「ちっ、長々と考える時間もないか」
起き上がり始めたゾンビに舌打ちしながら、体育館へと駆け出していく。
「待ってろよ十代、すぐに行くぜ!」
ゾンビを倒し、ジムは迷わず保健室へと向かっていた。
だが、彼の前に新たなゾンビ達が立ちふさがりディスクを展開する。
「くっ! 次から次へと……このままじゃ……!」
オブライエンはゾンビ達から逃げながら思考を巡らせる。
なのはの援護で大分数は減ったが、だからといってまともに戦ったのでは別のゾンビが来る可能性が高い、
向こうも手間取っているのか、なのはが駆けつけてくれる様子もなく、オブライエンは自力でゾンビ達を撒くルートを考えそちらに進路を変えた。
なのはは早くオブライエンの援護に向かいたかった、それなりの数は引き付けたとはいえ、まだまだ彼に向かったゾンビは多いのだ。
だが――それ以上にこの目の前の状況をなんとかしなければならなかった。
「うおおおおお! 彼女には触れさせない!!」
「……ユーノくーん……」
恐らくなのはとの距離が最も近いであろう無限書庫の室長の名前を思わず呟きながら、なのはは頭を抱える。
バスターブレイダーは確かに強い、力だけでなく、その剣技も目を見張るものがあった、
自分とフェイトの二人がかりで戦ってもかなり苦戦をするであろう、そんな彼(?)が味方になってくれたのは心強いのだが――
「今度こそいくよ、レイジングハート!」
『……All right』
疲労など感じないはずのレイジングハートの声が疲れたように聞こえたのはなのはの気のせいではないだろう。
何しろ――
「アクセルしゅ――」
「うぉりゃぁ!」
『……』
なのはが狙いを付けた端からバスターブレイダーが斬り裂いていき、なのはは先ほどからさっぱり攻撃ができていない、
どうやら「なのはが迎撃態勢に入る」→「なのはが狙ってる敵はなのはを攻撃しようとしている」→「やらせるか!」という凄まじい思考が働いているようだ。
このままではバスターブレイダーに任せるしかなく、一体ずつしか倒す術のない彼のみではここにいるゾンビ達をたおすのには時間がかかってしまう。
「ば、バスターブレイダーさん……でしたっけ?」
「ええ、その通り! 何かあったか!? おおっとさっきの返答ならばこいつらを倒してからで構わないぞ!」
『マスター、後ろから撃ち抜きましょう。その方が早いと判断します』
「レイジングハート、落ち着いて……そ、その、私仲間を待たせているので、急ぎたいのですけど……」
何故か敬語になってしまうなのはに、バスターブレイダーは少しだけ思案し……大きく頷く。
そしてどうするかと思ったら――今まで迎え撃っていた戦法を突如変え、相手へ目掛けて突っ込んでいく!
「ふ、ふぇ!? そんな無茶な!」
「足りない! 足りないぞぉ!」
心配するなのはを余所に、一斉に襲いかかってくるモンスターたちを次々と斬り裂きながらバスターブレイダーは叫ぶ。
「貴様たちに足りないもの、それは!」
次々と散っていくモンスターたちにゾンビは焦り、カードをセットしていく。
「情熱思想理念優雅さ勤勉さぁ! そしてなにより――」
どこかで聞いたようなセリフを吐きながら大きく剣を振りかぶり――
「愛が足りないっ!!」
最後の一体を真っ二つに切り裂いた。
なのははあまりの光景に唖然とするばかりで、バスターブレイダーはそんな彼女に兜の下で笑いながら振り返り――砕け散る。
「え……!?」
「トラップカード、道連れ発動……自分のモンスターが破壊された時、相手のモンスターを一体破壊する……」
「そ、んな……!」
別段、なのははバスターブレイダーを仲間だとも思ってはいなかった。
戦いの中で召喚された以上、どちらが勝ったにせよそのバトルが終了すればその時点で消えてしまう運命なのだ。
いくらなのはでも、そのような存在に情を持つほど愚かではなく、むしろしつこい求愛から逃れられて助かったぐらいである。
そう、だから――
『……マスター』
「……本当に、カードゲームなんだね。こんなにも、あっさりと……」
だから、なのはは冷静だった。
冷静に――怒りを感じていた。
相手へなのか、それとも自分へなのか、何に向けての怒りなのか、それすらも分からぬまま……なのははレイジングハートを振りかざす。
「エクシードモード……ドライブ!」
エクシードモード、なのはの強化形態であり、以前無茶をして倒れたなのはの事を気遣われ負担を減らしたモードでもある。
姿の変わったなのはに怯えるように、ゾンビは慌ててカードを発動させる。
「マジックカード……融合、手札のキャノンソルジャーと融合生物を融合し、迷宮の魔戦車召喚……」
全面にドリルが三つついた、巨大な戦車が現れなのはへと突撃する。
―迷宮の魔戦車― 攻撃力2400 防御力2400 融合モンスター
まともに食らえばなのはの体などあっさりと吹き飛ばされてしまうだろう、
だからこそ――撃ち抜く。
「ディバインバスター!」
「っ!?」
先ほどと比べ遥かに高密度、高精度になった魔力砲撃が魔戦車を貫き破壊する。
このモンスターはなのはが撃ち負けたバスターブレイダーにも迫る攻撃力をもっていたはずだが、それがあっさりと倒されたことにゾンビ達はわずかに動揺を見せた。
「レイジングハート、一気に片付ける!」
『All right!』
ゾンビが次の手を打つよりも早く、なのはは高速移動魔法で天井近くまで舞い上がりゾンビ達が全員見渡せる位置で構える。
なのはが魔力を解き放つ寸前になってようやく何匹かのモンスターが召喚されるが――遅い。
「アクセルシューター……広域爆撃!」
ティアナのクロスファイアを遥かに超える、視界を埋め尽くすほどの魔力球が放たれる。
いくらなのはであっても、この量の魔力球を制御しきることは不可能だ、
ならばどうするのか――簡単である、制御しなければいい。
「シュート!」
無数の魔力球、それが全てなんの制御も受けずに落下していく!
誘導制は確かに0だ、だが、この目の前全てが桃色の光に埋め尽くされている状態で、魔力を扱えない人間にそれが何の気休めになるだろうか?
数秒後……そこには倒れ伏したゾンビ達と、ゆっくりと降りてくるなのはの姿があった。
「私のターン! 魔法カード、篝火を発動、デッキからレベル4以下の炎属性モンスター、燃える藻を一体手札に加える……さらに、魔法石の採掘を発動!」
「二枚カードを捨てて墓地の魔法カードを一枚手札に加えるカード……まさか!?」
「そう、私は二枚の燃える藻を墓地へ捨て、篝火を手札に加える。そして燃える藻の効果発動! このカードが墓地へいった時、相手のライフを1000回復する!」
「その効果は……レフィケルによって逆転する!? 十代!」
「ぐわぁぁぁぁぁ!!!」
「さらに、サディスティックポーションの効果でレフィケルの攻撃力アップ!」
―十代 LP950―
大幅にライフを削られ、十代は堪らずその場に膝をつく。
「なんてデッキだ……バトルをせずに、どんどんライフを削られていく……!」
「まだよ、私はもう一度篝火を使い三体目の燃える藻を引き、攻撃表示で召喚! さあ、フレイムウイングマンに負けてらっしゃい!」
―燃える藻― 攻撃力500 守備力1500 効果モンスター
燃える藻ではフレイムウイングマンには勝てない、そしてそのまま墓地に行けばレフィケルによるコンボによって十代は敗北する……
咄嗟に十代は場のカードを発動させてその攻撃を凌ぐ。
「トラップカード、HEROバリア! E・HEROへの攻撃を一度だけ無効にする!」
「よし、なんとか凌いだ……!」
「ふふ、でもレフィケルの攻撃は防げないわよ?」
鮎川の言葉と同時に、レフィケルの髪が刃となってフレイムウイングマンを斬り裂き破壊する。
―十代 LP650―
圧倒的に有利な立場となり、鮎川は笑みを深くし――十代も笑みを浮かべる。
「っ!?」
「トラップ発動! HEROシグナル! デッキからE・HEROと名のつくレベル4以下のモンスターを特殊召喚する!」
「なっ、十代正気か!? お前のライフじゃ、何を呼び出しても致命傷だぞ!」
「俺はワイルドマンを特殊召喚!」
ヨハンの忠告を流し、一人の屈強な戦士が召喚される。
―E・HERO ワイルドマン― 攻撃力1500 防御力1600 効果モンスター
「ふふ、この瞬間、ダーク・キュアはつど――発動、しない!?」
「ワイルドマンは孤高の戦士、罠になんかかからないぜ!」
「トラップを無効化するモンスター……!」
「更に魔法カード、天使の施しを発動! カードを三枚引き、二枚を捨てる」
引いたカードを見て十代は笑みを増す。
このターン十代に効果ダメージはないため、レフィケルの攻撃力は1400のまま……
「いけ! ワイルドスラッシュ!」
「くっ!」
―鮎川 LP3900―
鮎川のコンボの基点であるカードを破壊するが、十代は攻撃の手を緩めない。
「伏せカード発動、リビングデッドの呼び声! 墓地からエッジマンを特殊召喚する!」
―E・HERO エッジマン― 攻撃力2600 守備力1800 効果モンスター
天使の施しによって墓地にいったエッジマンが場に召喚され、更にアンチ・キュアの効果で十代のライフも回復する。
―十代 LP1950―
「しまった……!」
「いいぞ、レフィケルがいない今、回復効果はそのまま適用される!」
「まだまだぁ! エッジマン、燃える藻に攻撃!」
「くぅっ!」
―鮎川 LP1800―
―十代 LP2950―
ライフポイントで逆転され、鮎川は顔を顰め――続けて出された十代のカードに動きを止める。
「速攻魔法発動! 速攻融合! 場のワイルドマンとエッジマンを融合し、ワイルドジャギーマンを召喚!」
―E・HERO ワイルドジャギーマン― 攻撃力2600 守備力1800 融合・効果モンスター
―十代 LP4250―
「これで、止めだ!」
「きゃああああ!!」
―鮎川 LP0―
ワイルドジャギーマンの攻撃を受けて鮎川が倒れ伏す。
だが、その一撃が止めとなり、デュエルの余波を受け続けていた保健室が崩壊を始めてしまう。
「や、やばっ!」
「十代、こっちだ!」
レイを抱きかかえたままヨハンが駆け出し、十代もそれに続く。
保健室の扉はゾンビ達が塞いでいたが、この崩壊によって崩れてしまった壁から外に脱出する。
「いってぇ……よ、ヨハン! レイは無事か!?」
「ああ、よく眠ってるよ」
「はは……こんな状況で寝てられるなんて、大した奴だぜ……っ!?」
呟きながら保健室を振りかえり――硬直する。
保健室「だった」場所は瓦礫の山となっており、十代は鮎川や他のゾンビ達が潰されてしまったのではないかと慌てて駆け寄ろうとするが――
「逃がさないわよ……十代君……デュエルしましょう……!」
「あ、ゆかわ先生……」
瓦礫の山から這いずり出てくる姿に、十代は恐怖する。
その姿は本当にゾンビのようで、そんな状態でもデュエルをしようと近づいてくる。
「十代君、ヨハン君!」
「なのはさん!?」
なのはは無事な三人の姿を見て胸を撫で下ろすが、鮎川達が立ち上がろうとするのを見てヨハンからレイを受け取る。
「急いで体育館へ!」
「で、でもオブライエン達は!?」
「大丈夫、みんなには誘導弾を送っておいた、安全なルートを見つけられるはず!」
「よし、十代行くぞ、ゾンビ達が集まってくる!」
「スバル……生きてる?」
「なん、とか……」
「キュル―」
体育館まであと少しの所まで来ながら、スバル達は通路の影に隠れながらへたり込んでいた。
完全に体力と魔力を使い果たしてしまっていた、フリードが心配そうに鳴くが、それに応える余裕さえない。
とにかく少しでも回復を……そう考えた直後、まるで眼球のようなモンスターが二人の目の前に現れる。
―異次元の偵察機― 攻撃力800 守備力1200 効果モンスター
「なっ――!」
「ティア、来るよ!」
影から顔を出すと、ゾンビ達がこちらに向かって真っすぐにやってきていた。
目の前のモンスターは行動をしようとせず、ただ辺りを漂うだけだ、
――このモンスター、まさかレーダーの役割を!?
ティアナはすぐさま撃ち落とそうとするが、腕は上がらず、魔力球も生成できないことに気づく。
「まずっ……チビ竜!」
ティアナの合図でフリードがモンスターを破壊する。
だが、すでにゾンビ達はすぐそばまで来て――突然現れた恐竜に吹き飛ばされた。
「え……!?」
「よかった、間に合ったザウルス!」
剣山が二人へと駆け寄り、エリオとフェイトを抱え上げる。
呆然とする二人へ少し申し訳なさそうにしながら説明する。
「キャロちゃんには二人を信じるって言ったけど、俺に混ざっている恐竜さんのDNAが何かを伝えてきたんだドン」
「きょ、恐竜のDNA……!?」
「それで二人を助けにきたザウルス、俺について来て欲しいドン!」
二人が色々と突っ込むより先に、剣山は呼び出したモンスターの後に続き走りだす。
慌てて二人も限界を告げる体を酷使しながら後に続いていった……
続く
十代「やばいぜ、みんな空腹が我慢できなくなってきちまった!」
なのは「みんな落ち着いて! ここで仲間割れをしても意味がないよ!」
次回 リリカル遊戯王GX
第九話 学園分裂!? 腹ぺこデュエル!
十代「こうなったら、ヨハン達に全てを託すぜ!」
なのは「おかしい、このデュエル……まるで私たちの目を集めるかのような……」
なのは「今回の最強カードはこれだよ!」
―フリードリヒ―
光属性 ドラゴン族 ☆4
攻撃力1300 守備力800
このモンスターが召喚された時、相手の場の魔法・罠カードを一枚破壊することができる。
なのは「フリードの真の力はキャロがいた時に発揮されるんだ♪」
十代「次回もよろしくな!」
>>503 GJ!
バスターブレイダー…最期まで彼の辞書に「自重」の文字はなかったようでw
新作のプロローグができましたので、3レス分投下してもよろしいでしょうか?
…またSO2クロスが疎かになる…orz
支援です。
「!」
鮮血が頬を伝う。
胸、腕、脚…全身から赤いしぶきが噴き出す。
金髪の男の青い瞳が、自分が切り刻んだ私の姿を見つめていた。
(…ここまでなのか?)
身体が消えていくのを感じた。
否、消えるのではない。流れに飲まれているのだ。
粒子のように細かな光となって、ライフストリームの巨大な流れに溶け込んでいく。
男は、ただそれを見守っているだけだった。
怒りとも憎しみともつかぬ、ただただ純粋な敵意をこめた眼差しで。
私もまた、遠ざかる男の顔を見続け、やがて肉体の感覚を喪失した。
(…メテオが…)
次に見たのは、ミッドガルの街だった。
灼熱する赤き星と輝く白き帯が、魔晄都市上空で激突する。
凄まじい反発エネルギーが、ミッドガルのプレート都市の街並みを粉砕していく。
星の全てを破壊せんとするほどの衝突を押さえたのは、またもライフストリームだった。
緑色の眩い光が四方八方――この星の全土から集まり、ミッドガルにて集束する。
黒のメテオと白のホーリーを、緑のライフストリームが鎮めていく。
そして私は、それらの光景を「遠ざかりながら」見ていた。
(どうなるのだ…?)
私はどこへ行くのか。
私はどうやって戻ればいいのか。
私は何をすればいいのか。
私はそもそも何をできるのか。
(私は…)
ライフストリームの流れから分かれた支流の中、私の意識はそこで暗転した。
「彼」が再び目を開いた時、視線の先にあったのは、平穏な夜空だった。
驚くほどに平穏な夜空だ。メテオとホーリーの衝撃波も、ライフストリームの輝きもない。
あの大衝突は、遠く離れた土地からでも確認できるほどの衝撃だったはずだ。
星を砕くほどの破壊を招いたのだ。それが見えない場所などあるはずもない。
(…全て、終わったのか?)
であれば考えられる可能性は1つ、ライフストリームによるメテオとホーリーの消失である。
ともかくも現状を確認すべく、「彼」はその身を起こそうとした。
(…?)
ここにきて「彼」は、ようやくある違和感に気が付いた。
自分の身は、当にライフストリームへと溶け込んだはず。にもかかわらず、肉体の喪失感が消えているのはどういうことか。
「彼」は自身の周囲を見回した。
まず、胴体がある。両腕がある。身を起こすと、両脚も見える。腰には愛刀・正宗の姿すらある。
光となって散ったはずの「彼」の身体は、五体満足な状態でそこにあった。
途端、全身を鋭い痛みが走る。
(…完全に元通り、というわけにはいかんか…)
見ると、「彼」の素肌に着込んだ漆黒のコートには、所々血が滲んでいる。
それらは全て、先の戦いで負った傷口からの出血だった。
(動く分には問題ないが…)
どうしたものか、と「彼」は思考する。
人をとうに超えた存在である「彼」は、これほどの傷を負ってもなお、歩くことぐらいなら可能である。
だが、彼には問題のその先が分からない。
現在地はどこなのか。
それを知ることができる物はどこにあるのか。
自然治癒を待ってから探すのと今探すのと、どちらが効率がいいのか。
思考を張り巡らせながら、「彼」は何気なく、夜空に再び視線を向けた。
(…?)
そこで、「彼」の目は、次なる違和感を訴えかけた。
(…何故月が2つある?)
初めは見間違いかとも思った。
しかし、そんな間違いをするはずもない。であれば、本当に月が2つあるということ。
(どうなっている…?)
目の前のそれが指す意味が分からず、「彼」の頭は久々に混乱することとなった。
「――うわっ!」
と、近くから人の声が聞こえた。
そちらに顔を向けると、1人の女が駆け寄って来るのが見えた。
「大丈夫ですか!?」
女は「彼」の元に着くと、しゃがみこんで問いかける。
独特のイントネーションの声が、「彼」の耳に届いた。そう言えば、こんなしゃべり方の猫がいたような気がする。
「ああ…」
ひとまず、「彼」はその女の問いかけに答える。
人間は憎いが、無下にして目立つわけにもいかない。身体に刻まれた深手が、「彼」を慎重にしていた。
「ともかく、今人を呼びますわ。そのままじっとしとってください」
若い女はそう言うと、ハンドバッグの中を探り出した。
それにしても若い。着ている服はどことなく軍服にも見えるが、どう見ても外見年齢に似つかわしくない格好だ。
(クラウドと2つか3つ違うぐらい…それも年下か…)
自らを切り捨てた男の名を浮かべ、「彼」は女の年齢をそう判断する。
「…問題はない。自分で歩ける」
「そんなわけあらへんやないですか! じっとしてて!」
立ち上がろうとした「彼」だったが、女はそれをそこそこの剣幕で制す。
(…やれやれ…)
ほんの僅かにたじろいだ自分に呆れながら、「彼」はなされるがままにした。
やがて女は通信端末のような物を取り出すと、仲間と思われる者を呼び、通話を切った。
ずいぶんと手際のいいことだ。
だが、肝心の傷の止血に悪戦苦闘する辺り、年相応の様子が感じられる。
「う〜…私止血なんてでけへんのにぃ…」
「別に後でいい」
「そない言われても…、あ」
そこで女は、何かを思いついたような表情を浮かべる。
「せや…私は、時空管理局所属の陸上二佐、八神はやていいます。よかったら…お名前を聞かせてくれへんでしょうか?」
まっすぐと、「彼」の顔を見据えて、女は言った。
(時空管理局…?)
聞き慣れない単語に、「彼」は内心で首を傾げる。
本格的に自分の周りはどうにかなってしまったのではないか、と「彼」は思った。
しかし、ひとまず「彼」にはやるべきことがある。
名前を聞かれた時にはちゃんと答えるのが、衝突を避ける最善策だ。
「…セフィロス」
魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使
…白状します。
自分が見たことのあるセフィロス様の資料は、
・FFZアルティマニア・オメガ
・FFZAC
・FFZCC
…肝心のZ本編は全くやったことありません。
弟が借りてきたZをやっていたのを隣で見てはいましたが、クラウドのニブルヘイム回想までです。
…それでもアルティマニアだけで8割方分かってしまうという不思議。
ともかく、破綻しないように頑張ります。
一応、Z本編とACを繋ぐ内容です。
GJ、しかしマジっすか? やってないならやった方が…持ってる人多いから誰か貸してくれるのでは。
ああ、そうそう。キングダムハーツUを忘れてました。
しゃべり方はKHUとCCから学び、人となりはアルティマニアから学び…
…あれ? 何とかなりそうな気がしてきた
バスターブレイダー自重w
原作だとまともな剣士に思えたけど、装備魔法のせいで乱心しすぎw
FFは一応本編やっとくべきかと
まあ、設定資料集で大半がわかるけど
動きも加わるから尚更
>>510 アルティマニアが恐ろしいほどの情報量を内包していますので(性格・台詞・本編中でやったこと)、
多分何とかなるかと。既に最終回までのテロップを立てている俺ガイル。
(そもそも肝心のセフィロス様が、諸事情によって一部CCセフィロス寄りになるので)
幸いFFマニアの友人がおりますので、迷った時は彼を頼ります。
雑談の方で冗談で言った男塾クロスの嘘予告が出来てしまったので投下良いですか?
しかしこんな狂ったブツを作っちまうなんて…
それでは投下します、男塾クロスです
魁!! 非魔法少年(!?)リリカル源次 偽第一話「男塾万歳!」
その男は異様な…否はっきり言って異常な風体をしていた。
学帽は分かるそういう学校もある、だが長ランの下に上半身裸で腹にサラシを巻き下はボンタンとローファーという服装、こんな格好はいまどき大学の応援団くらいである。
おまけにやたらとゴツイ顔にはちょび髭を生やし右目の所に縦に走る傷を持っている、こんな男を子供が見たら泣くのは確実だろう。
男の名は富樫源次、男塾という私立の学校(狂気の戦闘集団)に通う学生である…ついでに言うとまだ十代の少年だ。
「ちっきしょう!! こりゃ遅刻確実じゃねえかよ!! なんで虎丸の奴起こしてくれねえんじゃあ!!」
富樫は叫びながら歩道を疾走していた、その日の朝は寝坊して寮の他の塾生に置いてけぼりを食らったのだ。
「シゴキ喰らうのはゴメンだぜ! 早くしねえとおお!!」
その時凄まじい音が道路から響いた、振り返れば巨大なトレーラーが横転事故を起こして数台の車を巻き込んで倒れていた。
「義を見てせざるは勇なき也、か…こりゃシゴキ確実だぜ」
男塾で自分がシゴキを受けるより目の前の人間を助けることを選ぶ、富樫源次とはそういう男である、富樫はすぐさま事故を起こした車に駆け寄って横転したトレーラーや巻き込まれた車の中から怪我人を運び出した。
富樫は事故現場で救助活動を大方終えようとしていたそんな時富樫に小さな声が響く。
「にゃ〜」
それは道路を渡ろうとしていた小さな小猫であった。
「おいチビ危ねえぞ!」
トレーラーの横を通ろうとしていた小猫に富樫が駆け寄る、その時トレーラーの中に詰まれていた特殊な装置が起動し周囲を爆炎で包んだ。
そうして富樫源次はこの世界から消えた、だが彼は死んではいなかった、その時起動した装置とは“他次元空間波長干渉装置試作七型”という名の機械…別異層の空間に干渉し物体を転送する装置だった。
根性の塊とまで言われた男が今、ある魔法世界に送られた。
「なんじゃあこれは〜! 空に出来た道の上をローラーブレードのような物を付けた女の子が走って丸っこい機械と戦ってやがる〜!」
長年男塾の戦いで解説(驚いて自然に敵の動きを実況)をしてきた富樫は今日もまた一人で叫びを上げていた。
富樫が見慣れぬ場所で見たのは空を駆ける魔力で作られた青い道の上をローラーブレードで走りながら丸い形の機械と戦うハチマキを付けた少女だった。
「ちょっとそこの民間人の方! 危ないですから早く逃げてください」
その時両手に拳銃らしき物を持ったオレンジの髪の少女が富樫に声をかけてきた。
(なんじゃあこいつは? なんで銃なんぞ持っとるんじゃ、っていうか俺よか年下だろうが)
先ほどとは明らかに違う場所に突然送られて富樫は少し驚いたが、男塾で狂った教育や戦いを経験した彼は案外落ち着いていた。
「危ねえ!!」
そう言うと富樫は少女の側方に飛び込んだ、彼女を狙った戦闘機械ガジェットドローンがその金属製アームで攻撃を仕掛けて来たのだ。
「ぐおおおおお!!」
身を挺して少女を守り富樫は身体中を切り裂かれて夥しい出血をする、一般人から見れば立ってもいられない負傷だが数々の死闘を耐え抜いた富樫を倒すには遠いものだった。
「この程度の傷がなんぼのもんじゃあ!! 男塾を舐めんじゃねええええ!!」
身体の傷など物ともせず富樫は懐から愛用の短刀(長ドス)を取り出してガジェットに切りかかり敵のボディにドスを突き立てて単純な馬鹿力で引き裂いた。
日々男塾で苛烈なシゴキや戦いを経験してきたその膂力は常人を遥に超えるものであった、装甲を切り裂かれたガジェットは小規模の爆発を起こして四散、富樫は何故か頭の学帽を両手で守っていた。
「ちょっ! 大丈夫ですか? 凄い血が出てますよ!」
「な〜に、こんなもん大した事ねえよ」
富樫の常識離れした戦い方に唖然としていた少女が声をかけてきたが富樫は軽く返した、彼にとってはこの程度の傷は日常茶飯事である。
「ティアー! 大丈夫!?」
先ほど空に出来た道をローラーブレードで駆けていた少女が二人の下にやって来た。
「うん…この人に助けてもらったんだけど」
「うわっ! 凄い怪我だ、早くシャマル先生に連絡を!」
「だから大丈夫だってよ…」
富樫が出会ったのは時空管理局機動六課の若きフォワード、ティアナ・ランスターとスバル・ナカジマの二人だった、富樫は結局二人に連れられて治療を受ける事になるそして彼が別の世界から飛ばされたという事が明らかになる。
「え〜っと。じゃあ富樫さんは日本の事故現場から突然こっちに飛ばされたってことですか?」
「おうよ。紛れも無い日本男児、男塾塾生だぜ」
富樫は機動六課で部隊長のはやて達に事情を説明していた、時空遭難者は決して珍しい訳ではないそれよりも六課の隊員は彼の生命力に驚いていた、ガジェットの攻撃を受けてピンピンしているのだから当たり前の話だった。
「確かに日本で特殊な次元干渉可能な装置が運送中にトラブルを起こしたってニュースになってるみたいだよ」
金髪の執務官フェイト・T・ハラオウンが説明を入れる、しかし富樫はそれよりも未知の世界の魔法というものに驚いていた。
「しっかし魔法の世界か〜。こりゃ良い土産話が出来たぜ」
「いや…あんまり話さんで欲しいんやけど」
部隊長である八神はやてはバツが悪そうに苦笑する、そんな時おもむろにスバルが富樫に尋ねる。
「そう言えば富樫さんは何で事故現場から逃げなかったんですか?」
「ああ。こいつがな」
「にゃ〜」
そう言うと富樫は頭の学帽を取りその下に隠していた小猫を取り出した。
「道路を渡ろうとしてたんでな。引っつかみに行く途中で飛ばされたって訳よ」
「わ〜カワイイ。ねえカワイイよティア♪ 富樫さんって見かけによらず優しいんですね」
「こらっ! ばかスバル! 失礼なこと言ってんじゃないわよ…すいません富樫さん」
「な〜に気にすんな」
富樫は特に気にするでもなく返した……まあ実際は結構気にしていたんだが。
「そう言えば富樫さんの学校の男塾って大学なんですか? どこにあるんですか?」
はやてがふと感じた疑問を口にした、そして次の瞬間返ってきた富樫の答えに場の空気が凍りつく。
「男塾は大学じゃないぜ。まあ高校みたいなもんだな」
「はいっ?」
はやてが面白い位にマヌケな顔と声で聞き返した。
「それじゃあ…富樫さんの年って…」
「花も恥らう17歳だぜ(推定)!」
その言葉に場は混乱に包まれる。
「うそおおおお!」
「なんやってえええ! 私らより年下なんか…」
「信じられない…」
そんな風に騒ぐ六課メンバーの下に再びガジェットの出現が知らされ出動する一同、そして富樫は六課の一同の乗り込んだヘリに勝手に忍び込んだのだった。
「なんで着いてきたんですか!?」
ガジェットとの戦闘で混乱する現場でティアナは声を荒げたが、そんな言葉に引く男塾塾生ではない。
「じゃかあしゃあ! この富樫源次! 女子供に危ねえ橋渡らせて黙ってられる程にフヌケじゃねえ!!」
富樫はドスを振り回し力任せのケンカ殺法でガジェットを破壊していく(基本的にこの男に常人の理屈は通らない、物理的にも精神的にも)。
そして突如現れた赤い髪の戦闘機人、ナンバーズ9番ノーヴェが襲いかかるも富樫は一切反撃せず全身を血だらけにする。
「てめえなんで反撃しねえんだよ!?」
「うるせえ!! 男、富樫源次! 腐っても女に手を上げる根性無しじゃねえ!!」
ノーヴェを逃がすもなんとか発見したレリックを死守した六課だが、富樫はまたも凄まじい怪我で運ばれる。
「まったくこんな傷で何してるんですか!?」
医療班のシャマルはあまりの傷に驚き思わず大声を張り上げる。
「死んでも悔いはねえ…男塾万歳…」
「富樫さん!? 富樫さあああん!」
いつもの今わの際のセリフを言って富樫は死んだ(もちろん5分後にはゴキブリのような生命力で蘇生したが)。
続く(嘘)。
濃い、濃すぎるw
やっぱり民明書房とか雷電の解説がないと魅力半減ですね…しかし俺は富樫が好きなんですよ。
もしまた男塾関係を書くなら富樫と雷電のやりとりを入れた方が良いすっね。
>>515-516 GJっすw 雷電なら何故か魔法の事を詳しく知っていて、いつものように解説しまくりそうだw
それとみんな思っているだろうけれど、江田島塾長なら一人でゆりかごを沈めたうえに、三脳やレジアスもまとめてぶっ飛ばしちゃうよなw
誰もいない?
初作品
投下します。
彼はごく普通の男だった
父と母、そして妹の3人が彼の家族だった
彼は戦士だった
父、母、妹を殺され復讐のため、彼は戦士になった
彼には仲間がいた
技の戦士がいた
力の戦士がいた
足りない力をその知恵で補った戦士がいた
海を駆ける戦士がいた
野性の力を宿す戦士がいた
電気と拳で戦う戦士がいた
大空を翔る戦士がいた
五つの腕と拳法で戦う戦士がいた
完全機械の忍びの戦士がいた
彼らとともに、人類の自由と平和を守るために戦った
―――●●●●●●!!!頼む!俺を●●●●にしてくれ!!!―――
それは決意と始まりの言葉
―――後は頼んだぜ!!●●!!―――
激しい戦いが続き、戦友は一人、また一人と散っていった
彼は独りになった
それでも彼は戦い続けた
友が信じた正義を、託された想いを胸に抱き
傷つき、倒れようとも立ち上がり
ついに平和を手に入れた
誓った仲間はもう誰もいなかったが彼は満足だった
穏やかな日々が続き
そうして、人類は自ら滅んだ
彼は本当に孤独になった
―――魔法少女リリカルなのはA's―S.I.C―帰ってきたV3――――始まります
見渡す限りの砂漠の世界。時折、文明の名残かビルの残骸が見える
天空には三つの太陽が輝き、地表を灼き尽くさんばかりに照り付けている
人類が滅んだこの世界では砂竜が食物連鎖の頂点である。
彼らは環境の変動による突然変異で誕生した。
本来ならばこの世界のかつての人類のように魔力をもつことはあまりない
しかし、稀にこの種の中から莫大な魔力を持つリンカーコアを保持するものが生まれることがあった。
「なんなんだよこいつは……!?」
はやての為、リンカーコアを回収するためにヴィータは砂竜と戦っていた
そこそこ手強い相手ではあるもの、その強さに比例しない強大な魔力を持った相手であり、ページを増やすにはうってつけの相手の"はず"だった。
そう、そのはずだったのだ。
単なる経験値の高いボーナスモンスターのような存在だと思った。
敵を侮り、逃げる砂竜相手に狩猟気分を味わいながら追い詰めた。
実際は深追いし、気がつけば巧みに誘導され、20匹ほどの群れに囲まれてしまっていた。
ヴィータが追っていた砂竜は他の固体とは明らかに際立っていた。
ふたまわりも大く全身が白く、後頭部(?)から2本の触覚が生えていた。
先ほどから周囲を囲んでいた雑兵は手を出さず。ボス砂竜は"にやり"と嗤った
「!!?」
明らかに嘲笑だ!
この鉄槌の騎士ヴィータが嗤われた!ベルカの騎士である自分が!嘲られた!蟲ごときに!!
いや、もう蟲とは呼ぶまい!獲物とは呼ぶまい!
鉄槌の騎士ヴィータはこいつらを倒すべき"敵"と認識した!
「でえええええええええゃゃああああああああああ!!!!」
吼えた!目の前の敵を打ち倒すべく、愛する主に誓いを立て騎士は立ち向かった!!
GUUUUUOOOOOOOOOOO!!!!!!!!
鬨の声をあげ砂竜が応える。
1対20
覚悟を決めたヴィータの相手にはやや不足の相手かもしれなかった。
しかし「鉄槌の騎士」といえど連日の戦闘、管理局の目を盗んでのリンカーコア回収による疲労は確実に戦闘力を削いでいた。
それに加え、砂竜どもは巧みに連携し、死角をつき、仲間が倒されようともかえりみず襲い掛かる。
6:4でこちらのやや不利だったが気にしない邪魔する相手を叩き、潰し、崩し、抉り、鬼神の如き有様で葬り去っていった。
>>522 予告してから投下しないとマナー違反だぜ
「テートリヒ・シュラーク!!」
最後の雑兵が倒れた。
こいつらをいくら倒してもリンカーコアを得ることはできない。
ボスはそこにいた。
どうやら2本の触覚で雑兵を操っていたようだ
こいつにとっては部下など換えの聞く駒でしかないらしい
全ての雑兵が倒れようやく動き出す。
「残りはてめぇだけだ!!」
魔力はほとんど残っていなかったがそれを微塵も感じさせぬほどの気迫だった。
ボス砂竜は大きく口を開け、灰色の巨大な魔力を収束させている
原始的な魔力砲だ。普段なら何の問題もないが満身創痍の自分には危険だ。
一撃で決めるしかない!
「ギガント……シュラーク!!」
残りの魔力を全てつぎ込んで、相棒グラーフアイゼンが身の丈10倍に迫る巨大なハンマーに変化する。
それと同時に魔力砲が発射された。
魔力砲をぶち抜いて、本体を潰す!ギガントシュラークをたたきつけようとした瞬間
「轟天………!!爆さ…!?」
ガゥン!!!
轟音とともに巨大砂竜の頭部が揺らぐ
「………あ?」
ガゥンっ!!ガゥン!!!ガゥン!!!
GUSYAAAAAAAAAAAAA!!!!!
最初の銃声から3発、計4発で巨大砂竜は断末魔の叫びを上げて崩れ落ちた
穿たれた穴から毒々しい色の体液が噴出し、ヴィータに降り注ぐ
「うぇ!べっべっ!!きたねぇ! くせぇ!!」
降り注いでくる体液に辟易しつつ射撃地点と思われる方向を見る。
そこに人の容をした"ナニカ"がいた。
赤い仮面、緑の複眼、2つの風車を模したようなベルト、継ぎ接ぎに見えるプロテクターをまとった"何か"がマフラーを棚引かせて立っていた。
その手には先の砂竜を屠ったと思われるひょうたん型の奇妙な銃が、硝煙をくゆらせている。
「いったい…なんなんだよ………?」
「……人間?………女の子だと?」
短いですが以上で投下終了です
526 :
マスカレード:2007/12/11(火) 05:17:36 ID:MpWvWwil
支援
今度からは投下予告してから投下しようぜ
>>527 すいません。誰もいないと思ったものでいきなりやってしまいました。
次から注意します
それに、ここはそろそろ埋めないとな
GJ! これはまた、マニアックな・・・当然機械な人も出ますよね!?
埋めついでに
結構独自設定加えてます
その複線も一応ありますが次に出せると思います。
予想外に砂竜の戦闘に梃子摺ったorz
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|::∧:::V:ヘ | │ x. | | リ!:::|:/l:∧厂 く
く ヽ{ハ:::マ:个ーtz‐r-r=彳´「|:::厂  ̄`\ す
す \∨^ ̄ ヾ∨ ̄ 》/´|/___ ヽ ん
ん /ニ二二ニ}〕亢〔 |´-―――-、\ハ :
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V |: li ::Vi:l: lァ=ト V / V=ヽi.l`iヽlj:j://::/::j: :::|. : : : : :
l: |l ::iヽヽ{{! i} {! i}ij/jリノへヽ:/l: : :l:. : : : : :
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l / / ハ. 、\\ヽ> ∨ | | | ;'┐ _|___/^ヽ、 / 、〈 / ./
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