アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ8

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317螺旋博物館U ◆j3Nf.sG1lk
 はげ頭でひげ面の大男と育ちの良さそうな雰囲気を纏った少年。
 その二人が奇妙な螺旋型にモチーフされた扉の前で立ち尽くしている。
 二人を足止めしているのは、何てことは無い、ただの張り紙だ。

 『特別展示準備中』

 改めて言う事でもないが、この一枚の紙切れその物に何ら力は無い。
 紙が扉に硬い鍵をしているわけでも、紙その物が人間を押し返すような障壁を作り出しているわけでもない。
 なのに、人間はたかが紙一枚に行動を制限されてしまう。それはなぜか。
 簡単な話しだ。人間には知能があり、必然的に与えらた情報から物事を推察してしまう生き物だからである。
 紙と、そこの書かれている文字、その二つが扉の前に立ちはだかっている以上、人間は情報から事実を推察しようとし、必然的に動きを止めてしまうのだ。

(準備中?なら今は準備している人の邪魔になってはいけない、後でまた来よう)

 その張り紙を見た人間は自然とそう考える。
 これは人間社会で培われた当然の考えであり、言い換えればモラルというものである。
 現代社会程度の文明で相応の年月を社会で過ごした者ならば、この程度のモラルは当たり前、そういう次元の話なのだ。
 当然、その扉の前に立つ二人も……。

「……フンッ」

 大男が躊躇いも無く扉に手をかけ、力を入れて扉を押し開こうとする。
 モラル云々の話しが一気に霧散した瞬間だった。
 しかし、それも仕方の無い事とご理解いただきたい。
 時と場合によっては間違いなく警備員や関係者に注意を受けるであろうこの行為も、
 今この瞬間だけで言えば、そう責め立てる様な行動ではなくなってしまっているのである。
 なぜなら、今大男と少年を取り巻く環境が『殺し合い』という常軌を逸した状況であり、生き残る為にモラルさえも捨てなければいけない環境だからだ。
 張り紙一枚で行動を制限され、その隙に殺されたのでは死んでも死に切れない。
 ゆえに、切迫している状況で張り紙に掛ける配慮などあって無いようなものであり、大男の行動は至極当然というべきものなのである。