あの作品のキャラがルイズに召喚されました part79
もしもゼロの使い魔のルイズが召喚したのがサイトではなかったら?そんなifを語るスレ。
(前スレ)
あの作品のキャラがルイズに召喚されました part78
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1193742864/ まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/ 避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9616/ --------------------------------------------------------------------------------
_ ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
〃 ` ヽ . ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
l lf小从} l / ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,. ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
((/} )犬({つ' ・ 投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
/ '"/_jl〉` j, ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
ヽ_/ィヘ_)〜′ ・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!
・議論や荒らしへの反応は、避難所でやりなさい!
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_
〃 ^ヽ ・クロス元が18禁作品であっても、SSの内容が非18禁である場合は
J{ ハ从{_, 本スレへの投下で問題ないわ。
ノルノー゚ノjし ・SSの内容が18禁な展開をする場合はクロス元に関わらず、
/く{ {丈} }つ 本スレではなく避難所への投下をお願いね?
l く/_jlム! | ・クロス元が型月作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
レ-ヘじフ〜l ・スレタイと違う内容になったり、痛い展開になったりする場合も、避難所に投下した方が無難ね。
・作品を初投下する時は元ネタの記載も忘れずにね。wikiに登録されづらいわ。
--------------------------------------------------------------------------------
,ィ =个=、 ・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。
〈_/´ ̄ `ヽ ・1レスの限界最大文字数は、全角文字なら2048文字分(4096Bytes)。
{ {_jイ」/j」j〉 これ以上だと投下できないそうです。
ヽl| ゚ヮ゚ノj| ・行数は最大60行で、一行につき全角で128文字までですって。
⊂j{不}lつ ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
く7 {_}ハ> ・次スレは
>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
‘ーrtァー’ ・重複防止のため、次スレを立てる時は現行スレにその旨を宣言して下さいね。
いちもつ
壱乙
5 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/03(土) 21:55:32 ID:HSvbvcGN
1乙!
前スレ
>>929 なぜハルケギニアが第8世界の別惑星という可能性を考慮しない?
そもそも、アルシャード世界でも機能していたけどな。
MGS2の雷電召喚は面白そうだな。
刀も持ってるしある程度は戦えるから銃はなくてもいけるな
最後の敵はハルケギニア全体の意思と思想
>>9 昔はソリダスの誘拐してきた少年兵の中でも
誰よりも殺した、通称白い悪魔(Jack The Ripper)だからなぁ
それはともかくまた他人から立場と役割を押し付けられるライデンに黙祷w
白繋がりで白い死神セルゲイ・ドラグノフを
コマンド・サンボでワルキューレを破壊破壊破壊
ギーシュの肘をヘシ折って勝利
デビルにだって勝てるんだからゴーレムだってどうにかなる多分。
デルフ? 背中に背負ってますが何か(出番は無い
>>10 通信機の代わりにデルフがシエスタやコルベールの声で
『ライデンさん、今のあなたの役割はレキシントン号を無傷で奪うことですよ。』
『さぁライデン君、ワルドを倒し我々に異世界から来た君の意思を見せてくれ。最も、君の意思は全て他人ゆずりだがね。』
投下してもいいですか?
待ってました! ハヤテかもーん!
買い物
知識では知ってる。人間が買い物しているのをこっそりと自分の目で見たことだってある。
ただ、コロボックルには、そういう習慣はない。
矢印の先っぽの国ができてから、私たちの習慣は大きく様変わりしてきた。一番大きいのは、やっぱり電気だろう。
私は電気がなかった頃の話は想像でしか分からなかったけど、ここに来てようやくお爺ちゃんが言ってたことの意味が分かったし。
変わり続けてるコロボックルだけど、頑なに取り入れない制度もある。
買い物、貨幣制度もその内の一つだ。
欲しいものがあったとき、何かに困ったとき、どうやってそれを手に入れるか、助けてもらうのか、それは一人一人が考えること。お金は、それをものすごく簡単にしてしまうんだって。
だけどね、お爺ちゃん。
ルイズのお財布の中にある、金色のお金。
それが一体どんな物に変えられるのか、考えるのって、もの凄く楽しいよ。
* * *
ハヤテは、今日はハンカチの服じゃなくて、昨日洗濯したマメイヌ隊の服を着ていた。
初めての王都、何があるか分からないものね。
ちょっと緊張してるみたい。
「大丈夫よ。裏通りに迷い込まなければ、それほど危なくないし。ただ姿は見せない方がいいと思うわ」
ん? それともマントに止まってじっとしていれば、飾りにしか見えないかも。
「ポケットノ中カラ、コッソリ見テルカラ」
「うん、今日はそうして」
可愛いドレス……ううん、動物の着ぐるみを着たハヤテが、澄まし顔で人形飾の振りをしてるところを想像して、吹き出しそうになっちゃった。
支援紫煙
「悪いわね、シエスタ」
「いいえ、とんでもありません」
故郷で経験があるからと、シエスタは危なげなく手綱を捌き、馬車は軽快に道を進む。
「それで、何を買うのか目星は付けているんですか?」
「とりあえずハヤテのベッドと、あとは適当に小物を見て回るつもり」
私の肩に座ったハヤテが、邪魔にならない程度の大きさで、笛を吹いてくれているのに合わせて身体を揺らす。
実は笛を4本作っていて、どれが一番できがいいか確かめているところなのだ。
一本目は、ちょっと高音で音が割れる気がした。今は二本目を吹いている。
「聞いたことない曲ですけど、いい感じですね」
「結構レパートリーが広いのよハヤテって、お目覚めの曲から子守唄まで何でもござれなんだから」
シエスタに自慢したら、笛がピポーと音を外した。
ぺちぺちと首筋を叩かれるけど、全然痛くないし。
「ル、ルルルルッ」
「そんなことないです、とても素敵ですよ。それに笛が吹けるって羨ましいです」
シエスタもいつの間にかハヤテの早口を聞き取れるように……違うか、今のハヤテ分かりやすいし。
照れてるだけで、ハヤテだって本気で怒ってるわけじゃない。
コロボックルは、笛の他にも色んな趣味を楽しんでるそうだ。
絵を描いたり彫刻に凝ったり。歌や踊りも、それは見事なんだそうだ。
「オ母サンノ妹ハ、くるみノ一族デ、踊リガイチバン、ジョウズ」
叔母さんといっても、ハヤテとは年もさほど離れてないし、まだ結婚もしてないから、ハヤテはお姉さんと呼んでいたそうだ。
色々な出来事から歌や踊りが生まれていて、子供たちはそういうのからいつの間にかコロボックルの歴史や祖先の物語を覚えていく。
「素敵ですね、そういうのって」
「そうね。しかめっ面の家庭教師が呪文みたいに唱える歴史なんかより、よっぽど頭に入りそうだわ」
ハヤテが吹いてくれてるこの曲には、どんな歌がついてて、それはどんな物語なんだろう。
「っと、いけない。あんまりのんびりしてたら、帰りが遅くなっちゃうわ」
「は、はい」
お昼は王都で、そこそこ上品な、だけどシエスタもそんなに気兼ねせずに入れるお店に案内してくれるというので、楽しみだ。
支援
着いたのが丁度お昼時だったので、私たちは時間を少しずらして、先に遊具屋に向かうことにした。
貴族御用達の店だと、子供のおもちゃと言っても高価なものはそれこそ天井知らずの値が付いてたりするけど、ハヤテはそんなの喜ばないことはとっくに知ってる。
それにこの通りにあるのは、そんな気取ったお店じゃない。私の、学生のお小遣いでも――
「うぎゃっ!」
何事かと慌てて振り向いたら、後姿の男の人が手を押さえてて。
周りの人が呼び止める間もなく、走って行っちゃった。
「どこかにぶつけたんでしょうか?」
「さぁ? でもごちゃごちゃしてるから、きっとそうね」
走れるんだから、大した怪我でもないんだろう。そんなことより、
「結構買い物には来るんだけど、遊具屋は行ったことないわ」
「私もです。と言うか、子供のおもちゃって、買いに行くの恥ずかしいと思ったり」
「気が合うわね」
いつぐらいからか、おもちゃを買ってもらうのが恥ずかしくなって。
遊具屋は、小さくてちょっとおしゃれな、いかにも小さな女の子が好みそうな店構えだった。
自分の身長が、年よりも子供に見られることを知ってるから。こういう店に入っても違和感がないと見られるのが、
あれ? シエスタはどうして恥ずかしいのかしら?
「その……子供のおもちゃを買いにきたんだと思われたらどうしようって」
思っても見なかったその言葉に、恥ずかしさも吹き飛んだ。
「いくらなんでも、気が早くない?」
「私の村だと、私と同い年で嫁ぐ子もいましたから」
知らなかった。なるほど、農村だとシエスタくらいのお母さんもいるのか。
つい目線が胸に行ってしまったことに気がついたんだろう。
「もうっ ルイズ様、行きますよ」
先に立って店に入ってしまった。
>>7-8 はっきり言っておく・機能していたのは月衣の収納能力だけであって
常識を隔意する能力は無かっただけだ
間口は狭かったけど、奥行きは意外とあって。それに店内には思ってたよりも色んな年頃の女の子がいた。
男の人は、流石に父親と思われる人が少しいるだけで、それにちょっと居心地悪そうだったけど。
「小さな子だけってわけじゃなかったんですね」
シエスタが、明らかにほっとしたという調子で囁いてきた。
それに頷いて、店内をぐるっと見回す。
覚えがあるような遊具に混じって、見たことのないものも沢山ある。
そういうのを見ているだけでも楽しそうだ。
「あ、私これで遊んでました」
シエスタが棚から手に取ったのは、きらきらとした飾りのついた毬だった。
「誕生日に買ってもらって、凄く嬉しかったなぁ。私が持ってたのは、ここが緑のやつですけど」
ずっと長く続いている、子供に人気のあるデザインなのかも知れない。
手にとって見ると、ふわっとした感触、それに、
「中に鈴が入ってるのね?」
振ると、優しい音がする。
「ええ。ですから子供に持たせて置くと、少し目を離していても音で大体どこにいるか分かるんです」
それに気がついたのは、自分が子守を手伝うようになってからですけど、とシエスタは苦笑い。
「妹の腰に、紐でこの毬を繋いであげてたんです。それでかくれんぼとかしてたんですよ」
それは、確かに笑うしかない。
他のお客さんの迷惑にならないように、小さな声でクスクスと三人で笑って、
「じゃあ、ハヤテのベッドを探しに行きましょうか」
「了解です」
「ウン」
人形と言っても、大は子供の半分くらいあるのから、親指くらいのまで種類は様々。
順番に見ていくと、丁度ハヤテくらいの人形が並んでるところが見つかった。
シエスタと二人で肩を寄せて、胸ポケットから覗くハヤテが周りから見えないようにする。
「ハヤテよりも少し大きいのね。でも顔とかは断然ハヤテの方が可愛いわ」
「ルイズ様ったら。でも、しょうがないですよ。このくらい細かい細工だと、本当に出来がいいものは、貴族様向けのお店にしか並ばないでしょうから」
そうかもしれない。
素朴なにこにこ顔の人形たちは、これはこれで可愛かったけど。
ただ、洋服が、人形本体に糊で布を貼りつけて合ったのはちょっと残念。
「ハヤテの着替えは、ここにはなさそうね」
「自分デ、何トカ作ッテミルカラ」
「あ、家具はこの棚ですよ」
定番のベッドから鏡台、炊事場まである。
「これって、お風呂セット? どう、ハヤテ使ってみる?」
おもちゃだけど、湯船と手桶は本当に使えそうだ。
「でしたら、お湯をポットでお持ちしますから、いつでもおっしゃってくだされば」
ほっとくと遠慮してしまいそうなハヤテだから、多少強引に進めることにした。
だって生まれた国からこんなに遠くに連れてきちゃって、なのに一生懸命してくれるんだもの。できることなら、何でもしてあげたい。
「ウ……るいず、しえすたモ……アリガト」
ぎゅうって抱きしめてあげたいくらい、可愛かった。
「そ、そうだわ、ベッド。ハヤテはどんなのが……あ、それよりも、ちょっと自分で寝て確かめてみたら?」
我ながらいい考えだと思う。湯船と違って、見た目じゃ分からないんだから。
きょろきょろと周りを見てから、ぴょんと胸ポケットから飛び出したハヤテが、一つずつベッドを確かめてる。
何故か私もシエスタも息を殺して見守ってしまったのは、ハヤテの表情がかなり真剣だったからだろう。
「ンン……コレデ寝ルノハ、チョット」
「そっか」
一通り試してみたけど、私から見ても、あまり寝心地はよくなさそう。
「アノネ、サッキ、向コウニ、ヨサソウナノガアッタノ」
支援
「え? あっちは、もっと大きな人形ですよ?」
あのサイズだと、ベッドはふかふかでも、本棚のハヤテの隠れ家には置けないと思うけど。
ハヤテの指し示す方に向かった私たちが見つけたのは……
鳥の香草焼きのランチを食べ終わって、紅茶のお代わりを口に運ぶ。
学院ほどじゃないけど、まぁまぁ悪くない。
「いいんでしょうか、私の分まで」
「案内してくれたお礼だし、それに御者もしてもらったんだから、遠慮しないで」
観葉植物と買ってきた荷物の影で、ハヤテも食事を楽しんでくれたと思う。
それにしても、
「ハヤテのベッドが、靴下なんてねぇ」
一番大きな人形の靴下なら、そりゃハヤテだってすっぽり入るだろう。
縫い目もしっかりしてるし、ぽんぽんの飾りも可愛らしい。
「ヒモデ吊ルシテ、ハンモックニスルノ」
よっぽど気に入ったんだろう。にこにこと笑ってる。
それに何に使うのか分からないけど、小物もいくつか購入した。ハヤテの部屋がどんな風になるのか、今から楽しみだ。
「ね、模様替えしたら私にも見せてね」
「わ、私もいいですか?」
「ウン、イツデモ」
……実は、シエスタには言えないけど、考えたことがある。
ハヤテの視界を借りて見せてもらおうって。
そう思うだけで、紅茶が何倍も美味しくなったような気がした。
支援
投下終了。
ハヤテ、実はこっそり掏りを撃退してます。
前スレで、誰も知らない小さな国を買ってくれてた方。
ものすごくうれしいです!
どのシーンがよかったか、後で教えてくださいね。
ちいさなつかいま乙
このまま戦いとは無縁であって欲しい二人だなあ
29 :
虚無の王:2007/11/03(土) 23:17:51 ID:X4usOjEC
「豆粒ほどの小さな使い魔」さん乙っス。
予約が無ければ、2325時辺りから投下させて頂きます。
>>7-8 別惑星って可能性は頭に無かった。
だがミッドガルドで機能していたつっても異次元ポケット効果だけのだと思う。
第8世界の常識から外れたものに対する防御能力は無いはず。
それこそゴーレムの攻撃を月衣の能力で防ぐのは無理だと思うんだけど。
月衣の効果って第8世界における世界結界の効果(常識)を遮断し、
(第8世界の)常識を無効化、軽減する能力だったと記憶しているんだが。
あぁ、そういや汎用特殊で《月の加護》なんてのもあったな・・・総合Lvの半分だけ防御上がるやつ・・・
お豆乙!
戦いの描写はお豆にはいらんね。ほのぼの感がいいよ。
そして虚無の王支援するよ!
あぁ、癒されるなぁ
そして支援
ああチクショウ可愛いなあGJ!
ほっぺたぷにぷにしたいが指でつっつくだけでも驚異だろうなあ
可愛いのに迂濶に触ることも出来ないジレンマ……
豆粒の人GJ。
ほんと和むなぁ
無敵モードになっていいのは 強敵(とも)が死んだ時か多数の雑魚に囲まれた時か、
初登場兼戦闘シーンか水の一滴が見えた時だけだ!
>>29 支援する。
投下途中に卓ゲ談義はやめて
ほのぼのGJ
そして支援
豆の人の感想忘れー
ルイズとハヤテ、二人が一歩一歩小さいけど足場を固めてゆく姿に和ませていただいてます。
GJっしたー
ごめん、自分の発言見直して避難所の毒吐きか設定考察でやるべきだと思った。
気分悪くした人ごめんなさい。
ったく、これだから疎まれてるってのがわからんのか…
サウナに不満が有る訳では無い。
暖まるだけ暖まり、徹底的に汗を流した上で冷水を浴びる。それはそれで、堪えられない快感だ。
だが、空は日本生まれの日本育ち。
研究所を脱するまで日本社会と無縁で生活し、戸籍も偽造の無国籍系日本人とは言え、時には風呂釜に張った湯が恋しくなる。
そんな時、空はヴェストリの広場の片隅で湯を使う。昼でも殆ど人が来ない場所は、人目を避けるのに丁度いい。使い古しの大釜が、五右衛門風呂代わりだ。
「ええ、お月さんや。おまけに二つも有りよる。日本じゃ考えられん贅沢やな」
「いい気分みてえだね、相棒」
すぐ側の壁で、デルフリンガーがカタカタと身を震わせる。
「さいっこーや。デル公。お前も入るか?」
「冗談は止してくれ。ついでにデル公も止めてくれ」
「じゃ、フリ公」
「だから、何故略す」
「なんや、不満か。フリチン」
「絶対に止めてくれ。第一、呼んでる方も恥ずかしいんじゃないのかい?」
「剣は男のシンボルやろ」
「相棒は哲学的だねえ。じゃあ、女のシンボルはなんだね?」
「万力。もしくはペンチ」
「痛ててっ……聞いているだけで痛いやね。それよりも相棒――――」
「ああ――――シエスタ、なんか用か?」
暗闇の中から、人影がぬっと現れる。
シエスタ。“飛翔の靴”を履いたメイドは、何やら瓶を手にしている。
「よく、分かりましたね」
今晩は、空さん――――丁寧に挨拶すると、シエスタは言った。
「この学校でそないな物履いとんのは、お前かギーシュの小僧くらいの物や」
そして、ギーシュは練習したり、ワルキューレの改造案を練る時以外に履く事は無い。
「で、どした?こんな時間に」
「実は、とても珍しい物が手に入ったんです。以前の御礼も未だでしたし、空さんに御馳走しようと思いまして」
「珍しい物?なんや?」
空が風呂釜から身を乗り出すと、シエスタは小さく悲鳴を上げた。
目を覆うにも、大きな瓶とグラスを手にしている。
逞しい裸体に、釘付けになっていた若いメイドは、数秒して思い出した様に顔を逸らす。
「あ、あの、東方、ロバ・アル・カリイエから渡来した、特別なお酒です。なんでも、お米で出来てるとか……」
「要は清酒か?」
「え、せい……?」
「あー、なんでもあらへん。こっちの話や」
シエスタはグラスに酒を注ぐと、殆ど後手に手渡した。
「こらこら。人と話す時は相手を見んといかんやろ」
「え!……でも……そんな……」
「はは。冗談や冗談。ありがとな」
チラチラと視線を送るシエスタからグラスを受け取る。
限りなく無色透明に近い液体は、仄かな光彩を帯びている。
米麹特有の甘く華やかな香りが鼻腔を擽る。
一口。湿った感触が、するりと喉を通り抜けた途端、米の芳醇な香りが口一杯に広がり、鼻腔を抜けて、消えて行った。
豆粒見てると頬が緩む。
GJ!
支援
「くっはあ〜、堪らへん……っっ」
空は満足気に息を漏らす。
「綺麗なお月さんに、熱い風呂に、旨い酒。こら、言う事無いわ」
「相棒はあれだ。ろくでなしだねえ」
その声に、シエスタは辺りを見回した。
「……今、声がしませんでした?」
「ああ。この辺、出るっつう話やからな」
「冗談でしょう?」
差し出されたグラスに酌をしながら、シエスタは猶も視線を巡らせる。
「私、そんな話、聞いた事無いですよ」
「七不思議言うてな。学校は大抵、その手の話を抱えとるもんや」
「幽霊扱いは酷いんじゃないかい?」
「ま、また……!――――」
「そこのメイドよう。お前さん、存外鈍いね」
デルフリンガーは派手に刀身を震わせる。壁が鳴る。
シエスタは振り向き、息を飲む。
「……け、剣が喋ってるっ!……」
「いいね、いいね。新鮮な反応だよ。貴族の小娘共は澄ましてた顔で、“なんだ”ときやがるからね。“なんだ”だよ、おめえさん。こちとら叶わねえよ」
暢気に捲し立てるデルフ。
シエスタはそれ所では無い。真っ青な顔で一歩退がり、二歩退がり――――濡れた地面に足を取られる。
「きゃっ」
シエスタが悲鳴を上げた時、空は手を伸ばして、酒瓶を引ったくる。
メイドの娘は、頭から風呂釜に転落した。
「……あーん。びしょびしょだあ……」
シエスタは湯から顔を出すと、まず泣きそうな声を上げた。続いて全裸の空に気付き、真っ赤な顔で俯いてしまう。
「デル公。悪さが過ぎるで」
「GJと言って貰いたいねえ。いい月、いい湯、いい酒と来たら、後はいい女だろ、相棒」
「すすす、すみませんっ」
慌てて風呂釜から飛び出そうとするシエスタ。
と、その肩を空が押さえた。
「そ、空さん……っ?」
「待ちや」
シエスタが飛び込んだ事、湯が派手に零れた。嵩張るメイド服は水分をたっぷりと吸っている。
このまま出られると、水嵩が足りなくなる。
「後、五分付き合い」
仕方が無い。シエスタは素直に従う。
“飛翔の靴”に付着した泥土や、後で丹念に手入れしてやらなければならない、と言う事よりも、背後の空が気になった。
湯船は勿論初めてだが、サウナ風呂に父や兄弟と共に入ったのも、かれこれ何年前の事だろう。
「そ、空さんは、ミス・ヴァリエールに召喚されたんでよね?」
「せやけど」
「空さんの国はどんな所なんですか?」
好奇心と言うよりも、緊張を紛らわせる為に聞いた。
空は顎を撫でた。
さて、どう説明しよう。
現代日本の現状をそのまま語っても、シエスタには理解不可能だろう。何か、ハルケギニアの人間にも通じる様な、巧い言葉は無いか……。
「日本言うてな。天皇陛下を中心とした神の国やな」
言ってから、日出づる国でも良かったかな、とも思った。
どの道、日本生まれとは言え、日本人として生まれた訳では無い空にとって、それ程、意味の有る言葉では無い。
だが、これなら王政下、封建社会の人間にも通じるだろう。
「テンノー陛下?」
「ハルケギニアには始祖ブリミルの子孫ちゅう王家が幾つか有るやろ?それが一つだけ、て思えばええわ」
「始祖ブリミル、ですか……」
シエスタは複雑な声で言った。
「私、昔から疑問だったんです。私達は神と始祖とを崇めています。でも、どうして、貴族と平民とを分けられた始祖を、魔法を使えない私達が崇めているんだろう、て」
「そうかなあ。分けたんはブリミルはんかいなあ?ワイ、違うと思うで」
「え?」
「苦労して魔法憶えて、おっかないエルフやトロル鬼と喧嘩するくらいやったら、料理作っとった方が、なんぼ気楽か判らへん。ブリミルはんが一握りにしか教えへんかったんやなくて、魔法憶えよう、言う奴がそもそも殆ど居らへんかったんと違うか?」
シエスタは以前、空が口にした言葉を思い出した。
一緒にされたないなあ――――
“我等の風”。自分をそう称して崇拝する厨房の料理人達を、空が少なからず軽蔑している事は知っている。その理由を改めて聞かされた気がした。
でも、どうしろ、と言うのだろう。6000年前の出来事など、自分達にはどうにも出来ない。
シエスタは身震いする。
今、自分が魔法を使えない様に、自分の選択一つが、また6000年後の子孫の人生までをも、決定してしまうのかも知れないのだ。
「ま、いつの時代も同じや。飛ぼう思った奴が飛ぶ。地べたに居った方が楽や気付いた、利口な奴は飛ばん。そう言うこっちゃな」
「利口、ですか?」
「飛べば落ちる事も有るわ。高く飛んでれば、それだけ落っこちた時は悲惨やで。なら、飛ばん方が安全やろ」
「でも、飛べない者は、飛べる者に対して無防備です」
「飛ぶ奴は、もっと無防備や。見てみ」
シエスタは言われた通り振り向き、息を飲んだ。
空が水面に脚を出している。膝から下が無かった。
「ワイは飛べるつもりやった。勘違いに気付いた時は手遅れや。グシャグシャに砕かれてもうてな。切断するしか無かった」
空は大釜の縁を掴んで体を持ち上げると、湯船を出た。
茫然としていたシエスタは、一部始終をはっきりと目撃してから、慌てて目を逸らす。
「ま、後悔は少しもしてへんけどな。あないなごっつい“空”見付けて、飛ばんかったら男やないわ」
ギーシュは高い目標を“空”に譬えた。空も同様だろう。
飛べる人間が飛ぶのでは無く、飛ぼうとした人間が飛ぶのだ。
二人の話から、シエスタはそんな事を考えた。
では、自分の“空”はなんだろう。
どんな人生を夢見て来ただろう――――。
アラート!支援だ、支援にかかれ!
空は踏み台にかけて、体を拭いている。
広い背中に、入れ墨が彫られている。
「あら?」
翼の入れ墨。右側しか無い。
シエスタには判らない事だが、真ん中に彫られた“翼”の字もまた、切り取った様に、右半分だけだった。何故?
「鳥は一対の翼をもって初めて天を舞う―――― 一人では決して辿り着けへん場所も有る、ちゅうこっちや」
衣服を身に着け、靴を履いたままの義足を装着すると、空は車椅子に腰掛けた。
「ほな、ワイはこれで消えるさかい。服乾かして、ついでに残り湯使ってったらどうや?」
「あ、待って」
デルフを拾い上げ、立ち去ろうとする空を、シエスタは呼び止めた。
「なんや?」
「……私、空さんが羨ましかったんです。なんのかんの言っても、私達は貴族に怯えて暮らしてる。そうじゃない人が居るのが、自分の事みたく嬉しくて……」
「別に、貴族かて獲って喰いやせんやろ」
「ええ。そうです。ミスタ・グラモンと話していて、判ったんです。貴族にも怖い物が有るんだ、て。私達と変わらないんだ、て」
そして、空。
ギーシュが手を尽くして勝とうとしている人間も、過去に大きな挫折を味わっている。
「でも、私達と違う所は、あの人はその怖い物から逃げないんだ、と言う事。戦おうとしている事。だから、私も逃げません」
シエスタは決然と言った。
「ミスタ・グラモンは空さんに勝ちます。絶対に勝ちます。大した事は出来ませんけど、私もそのお手伝いをします。絶対に勝ちます」
「なんや。宣戦布告かい?」
「そんな所です」
シエスタは微笑んだ。
気後れも無く、挑戦的な様子も無い、澄んだ笑顔だった。
「しっかしよう、小娘――――痛っ」
何かを言いかけたデルフを、空は岩に叩き付けて黙らせた。
「なんぼでも相手になる」
笑顔に笑顔で答えて、空はその場を去る。
「痛てて……酷いね、相棒。俺にもそうだけど、あの小娘にだってそうさ」
「なにがや?」
「教えてやんなくていいのかい?あの小倅、他の小娘ともう出来てるだろ」
「せやかて、お前の言う事違うわ」
* * *
>>35 背後に誰かをかばう時や味方が死んだ時もな
支援
朝――――
ギーシュは弾む様な足取りで、アウストリの広場を歩いていた。
モンモランシーとの復縁。
そして、本日予定している小旅行が、貴族の四男坊を浮かれさせている。
誘いをかけて来たのは空だった。以前、トリスタニアに出かけた時、仕入れて来た話だと言う。
ゲルマニアとの国境近くに有る小村。マルティニー村でのエスカルゴ祭り。
最初は人数を集め、馬車を雇って、泊まりがけの予定だった。
タバサの参加が決まって、計画が変わった。彼女の風竜なら、日帰りでも行ける。
参加者は発起人たる空。
彼の誘いとあっては断る筈も無いキュルケ。
貴重な“脚”提供するタバサ。
その脚を引っ張るバラストのマリコルヌ。
そして、ギーシュだ。
ルイズは授業をサボる訳にはいかない、と断った。モンモランシーも同様。
「こらーっ。なにしとんねんっ。遅いで、ボーズっ」
「済まないっ!もう少し待ってくれっ!」
準備は出来ている。
丁度、学院長の元に王宮からの勅使が訪れていて、遣わされた貴族は知り合いだった。出発前に、是非とも挨拶を済ませてたおきたい。
本塔から学院長と勅使が姿を現す。背後には数人の従者。
オールド・オスマン。モット伯爵。
談笑する笑顔はなごかやかだ。二人は極めて趣味が近い。ギーシュの父、グラモン伯爵も、それは同じだった。
「おや、ギーシュ君。ギーシュ君じゃないか」
ギーシュの姿を認めると、見事な渦眉、渦鬚の洒落者モット伯爵は、笑顔で手を広げた。
「お久しぶりです。伯爵」
「父上は御息災かな?」
「ええ、ビンビンです」
「そう言えば、お前さんとグラモンは悪友同士だったのう」
ワシはここで失礼する。ゆっくり話していけ。モット伯の肩を叩いて、オスマンは学院長室へと戻る。
何しろ、モット伯爵も、ギーシュの父も学生だった頃から学院長であり、老人だった人物だ。一体、何歳なのだろう。
女王陛下の勅使たる伯爵と雖も、頭は上がらない。
「王宮からの勅使と言うお話ですが……」
「ああ。大した事では無いよ。君に話してしまっても構わない様な内容だ。“土塊のフーケ”は知っているね」
「聞いた事が有ります。貴族ばかりを狙う、土メイジの盗賊が居る、と」
「最近、被害がトリスタニアと近郊に集中している。そこで、十分に警戒する様、注意を促しに来た訳さ。魔法学院には貴重な宝物が山と有るからね。例えば、学院長秘蔵の“圓月杯”とか……」
「それは、どんな品なのでしょう?マジックアイテムですか?」
「さあねえ。私も知らないんだ。オールド・オスマンに聞いてみるといい。巧く煽て上げれば、見せてくれるかも知れんよ?」
それよりも――――モット伯は話を変える。
君はこんな所で何をしているんだ。もうすぐ、授業ではないのか?
「実はこれから、日帰りで旅行なんです。仲間達とマルティニー・レ・バンのフォワール・オー・エスカルゴに行く予定でして」
「おー、それは素敵だ。あそこの蝸牛は最高だからね」
「お土産をお持ちしましょうか?お邸はすぐ近くでしょう」
邸と言っても、領地のそれでは無い。あくまで、王宮に出仕する際に使っている物だ。
モット伯のそれは、学院から歩いて一時間の距離に在る。
「ありがとう。それにしても、昔を思い出す。私も時折、悪友と授業をサボって飛び出した物だが、その度に鞭打ちを覚悟した物さ。その頃に比べると、学院も随分、自由になったのだねえ」
しまった――――モット伯の言葉に、ギーシュは表情を変える。
学院の規律が当時に比べて緩いのは事実だが、堂々授業をさぼる事が容認されている訳では無い。
勿論、父の感性が当時から変わっている訳でも無かった。
読んでて支援が追いつかん支援
支援
と、その様子に気付いて、モット伯は目配せした。
「あー、私は何も聞かなかった。お父上には内緒にしておくよ」
「す、すみません。有り難うございますっ」
では失敬――――モット伯は馬車に乗ると、去って行った。
平身低頭で見送ると、ギーシュはアウストリの広場へ戻ろうとする。
その体が、不意に浮いた。襟首を何かに掴まれた。
気付いた時、ギーシュは風竜の背に乗っていた。そこには、参加者が既に揃っている。
「遅いで、ボーズ」
「ああ、済まなかった」
ギーシュは一同に詫びると、居住まいを正す。
さあ、出発だ!
* * *
目的地のマルティニー村は、国境に程近い小さな村だ。
「うちの領地と、目と鼻の先ね」
キュルケは言った。つまりは、ルイズの実家ヴァリエール公爵家の領地内か、その近郊と言う事だ。
「そうなのか。ミス・ヴァリエールも来れば良かったのにな」
空はギーシュと反対の感想を抱いた。
なんだかんだと言っても、ルイズは未だ、家族の前で開き直れる程の自信はついていない。実家には近寄り難い気分なのだろう。一人で来てしまって、悪い事をしただろうか。
まあいい――――空は満面の笑顔で寝そべった。
トリスタニアとその周辺では、ここ一月で、二日しか雨が降っていない。埃っぽい事には閉口するが、陽は高く、空は澄んでいる。
「ええ気分や。ホンマ、サイッコーやな、この竜は」
「本当。何時見ても、貴女のシルフィードには惚れ惚れするわ」
空とキュルケは、口々にタバサの使い魔を讃えた。
「なあ、チビッ子。ワイと使い魔交換しいへん?」
「ひでえっ!」
空が言う使い魔とは、デルフリンガーの事だ。刀身には黒マジックでルーンが書き込まれている。
とは言っても、ただのアルファベットだが。
「駄目」
タバサはきっぱりと拒否する。
不満そうにしながらも、空は納得した。空飛ぶ竜と、喋る剣では格が違い過ぎるだろう。
空はシルフィードの背中を転げ回る。俯せになっては眼下を見下ろし、仰向けになっては太陽に手を翳す。手元には、デルフリンガーと松葉杖。
車椅子は置いて来た。風竜の背に積むには無理が有る。
「今、決闘を挑んだら、勝てるんじゃない?」
キュルケがからかう様に言った。
「ははっ。今日は折角の旅行だ。休戦とするよ。楽しみはとっておくに越した事は無いしね」
支援
「なんや、自信満々やないか」
「先日の“ハードル”。平地でのスピードは対等だったが――――」
障害物――――その時は岩場の絶壁――――を乗り越える時点で差が付いた。
ギーシュが自身とワルキューレをレビテーションで四苦八苦しながら運んでいる間、空は恐るべき勢いで駆け登って行った。
「だが、それも対策が出来た。次は負けない」
「シエスタの入れ知恵かい?」
「彼女は優れた相談役だ――――しかし、知っていたのか?」
「ああ。お前を勝たせるんや、て息巻いとったわ」
空は身を起こした。吹き寄せる風が心地よい。
「シエスタはええ娘や」
「うむ。全くその通りだ」
「せやけどな。ああ言う、一見大人しいタイプは、思い詰めると怖い」
「?……どう言う事だ?」
「月の無い夜道には気を付け、言うこっちゃ」
「なんだ、ギーシュ。お前、メイドに手出してたのか!」
横から口を挟んだマリコルヌに、ギーシュは血相を変えた。
「ば、馬鹿な事を言わないでくれ!僕と彼女は、断じてそんな関係では無い!」
「阿呆。あっちがそう考えとらんかったらしゃあないわ。お前はなんだっけ、あれ、洪水のオンモランシー?」
「香水のモンモランシーだ」
「……せや。そいつと出来とるんやろ。お前が二股かけられる程マメな質違うんは、はっきりしとるんやから。早目にはっきりさせとき。終いには、刺されるで?」
「お、大きな御世話だよ、ミスタっ!貴方こそ、ミス・ヴァリエールとはどう言う関係なんだ?」
「……なして、そこでルイズが出て来る?」
空は、本当に訳が判らない、と言った顔をした。
「貴方は彼女と一つ屋根の下所か、同じ部屋で寝ているじゃないか。これは問題ではないのか?」
「だって、ワイ、使い魔やもーん」
「何も起きて無いと言うなら、それこそ男として問題ではないのか?何かの病気とは違うのかね?」
「私も興味有るわね。本当に何も無いの?無いとしたら何故?」
「せやからなあ、ルイズは違うねんで。あいつは、あれや。妹みたいな物や」
この時、マリコルヌが身を強ばらせた事に、誰も気付かなかった。
「妹?」
「せや。ワイ、あっちじゃクソ生意気な弟しか居らへんかったからなあ。そこん所来ると、ルイズは可愛くてしゃあないわ。可愛い妹や。妹に手出す鬼畜がどこに――――」
と、言葉が途切れた。
誰かがあっ、と声を上げた。
空の体が不意に宙へ舞った。
投げ出されかけた所を、ギーシュとキュルケが慌てて掴む。
「おい、ピザ」
空は無表情で、犯人を睨み付けた。
そこでは、マリコルヌが杖を手に震えていた。
「なんの真似や、おうっ!?」
「な、なんだ……こ、怖く無いぞ。師匠……いや、貴方はもう、僕の師匠じゃない!あんな愚かな事を言い出す奴が、師匠であるもんかっ!」
「あんっ?」
「何が妹だっ。何が可愛い妹だっ。そりゃ、ミス・ヴァリエールは美少女さっ。魔法は使えないし、胸は無いし、生えても無いけど、それだって、飛びっ切りの美少女には違いないっ!
その彼女が妹だって!可愛い妹だって!貴方は、このハルケギニアに可愛い妹なんて言う生き物が棲息しているなんて、そんな御伽噺を本気で信じているのかっ!」
マリコルヌは絶叫する。魂の叫びだ。
しえん!
「畜生〈ブリミル〉っ!僕には、妹が居るんだっっ!」
その一言に、一同は沈黙した。
「しかも、僕そっくり」
「うわっ……」
誰かが声を上げた。
突き落とされかけた空さえ、怒りを忘れた。
「良かった……ホンマ、良かった……」
空は心の底から、安堵の声を漏らした。
「ワイを召喚したんがルイズでホンマ良かった……」
下手をしたら、マリコルヌの妹だったかも知れない。
いや、更に下手をしたら、マリコルヌ当人だったのかも知れないのだ。
いきなり、この世界に召喚された時は、運命の理不尽を呪いもした。だが、ああっ!自分は幸運だったっ!
「君はなんと言う愚か者なんだっ!」
と、キブラに向かって平伏、神に感謝の祈りを捧げんばかりの空をよそに、ギーシュは叫んだ。
「ああ!マリコルヌよ!風上のマリコルヌよ!愚かなのは君だ!ミスタでは無く、君だ!何故、目に見える物に捕らわれる!何故、真実に目を向けようとしないんだ!」
「僕が愚かだって!?」
「そうとも、君は愚かだ!救い様の無い愚か者だ!」
「なんだと!なら、ギーシュ!君には、その真実とやらが見えている、とでも言うのか!」
「当然だっ!グラモン家の男は事実に惑わされたりはしないっ!――――いいかね、風上のマリコルヌ!逆に考えるんだっ!血の繋がっている女など、断じて妹では無いっ!!」
刹那、百雷、頭上に轟いたかの衝撃が、マリコルヌを襲った。
その頬を涙が伝う。
「ああ!ギーシュ!青銅のギーシュ!心の友よっ!有り難う!有り難う!よくぞ言ってくれた!よくぞ僕の蒙を啓いてくれたっ!」
「判ってくれたか、マリコルヌ!」
「ギーシュっ!」
二人はひしっと抱き合った。
キュルケは呆れ返った様に二人を見つめていた。汚い物を見る目だ。
「なんで……」
タバサは“貴方はどうして、そんなにも愚かな事を言い出すのか”を意味する言葉を口走ろうとして、考えを改めた。
「さあ、ギーシュ!架空の妹について、心逝くまで語り合おうじゃないかっ!」
「ああっ!一門に一人、架空の妹だなっ!」
今の二人には、とてもそんな言葉では足りない。
タバサは読み途中の本を片手に、シルフィードの背を這い、空に寄りかかった。
「なんや?」
「ここ」
「読めばええんか?ええと……『彼女は言った――――』」
なるほど。適切な要約だ。
タバサは続いて、二人の下に躙り寄る。
「なんだね?何か用かね、チビっ子。今、僕らは大宇宙の真理について語り合っている所なのだ。邪魔をしないでくれ給え」
「待つんだ、ギーシュっ!彼女はチビっ子では無い。ロリっ子だ!言わば、今の僕らに必要な人間っ!」
「いやいや、待て待て。待つんだマリコルヌ。妹=幼女はあまりに短絡が過ぎる」
「とにかくだっ!さあ、ロリっ子よ!君のすべき事はただ一つっ!目に一杯の涙を溜めて、『お兄ちゃんの馬鹿!弱虫っ!』と僕を罵るんだっ!そうすれば、仲間に入れてあげようじゃないかっ!」
「なるほど。それは悪く無いな。良し、賛成だ。トリステイン貴族として、断然賛成でありますっ!」
二人の狂態を、タバサはいつもの無表情で見つめていた。
眼鏡の位置を直し、いつもの冷たい視線を二人に向けると、抑揚の無い声で呟く。
「童貞キモい」
刹那、空気が凍り付いた。
ギーシュは乾いた笑みを浮かべて蹌踉け、マリコルヌはその場に突っ伏した。
「あふんっ!ああっ!……もっとだ!もっと言ってくれ!君の様な幼い子に、そんな風に罵られるなんて、僕はっ!……ああっ!ああーっ!」
風竜の背を散々転げ回ると、マリコルヌは翼下に転落した。
キュルケが蹴り飛ばしたのが決定的だったが、被害者本人を含めて、それを責める者は誰も居なかった。
「ふ、ふふっ……君は間違っている」
ギーシュは笑った。無理に作った笑みだ。
態とらしく取り出した薔薇は、上下が逆さまだった。
「僕は童貞では無い。“清童”だ」
「“清童”?」
「その通りっ!つまり、それは将来、愛を捧げる女性の為に守られるべき純潔であり、乙女と同様、清純かつ価値の有る物なのだよ」
「“清童”のギーシュ?」
ギーシュは息を飲んだ。嫌な予感がした。
「“清童〈チェリー〉”のギーシュ」
「そ、その呼び方は止めろーっ!……止めてくれっ!……うわーっっ!」
ギーシュは蹌踉ける。
蹌踉け、蹌踉けて風竜から転落する。
「なんや、紐無しバンシーかい。気持ち良さそうやん」
呆然と様子を窺っていた空に、笑顔が戻った。
えいっ――――自ら飛び降りる。
「あんっ、ダーリン。お待ちになって!」
キュルケも飛び降りる。
――――そして、誰も居なくなった。
翼上に一人残されたタバサは呟く。
「なんでやねん」
* * *
もし彼等が魔法を使えない平民だったら、真っ赤なトマトと化して、無惨な最期を遂げた事だろう。
貴族の三人は、地面のスレスレでレビテーション。無事に着地した。
風竜からのダイブは、なかなか爽快な体験だった。これは金が取れるのではないか。貧乏貴族のギーシュは、ふ、とそんな事を考える。
そう言えば、昔、貴族同士の決闘でチキン・ダイブなどと言う物が有った様な無かった様な……。
空は魔法を使えない。たが、この時、誰も彼を助ける必要を覚えなかった。
“翼の道”の担い手は、風を読み、掴み、“空”を舞う。
それは訓練も重要だが、生まれつきの極めて特異な才能を必要とする。
例えば、現“風の王”南樹は幼少時、電波塔の頂点から滑空、そのまま無傷で着地している。
空は既に成人だ。体積に対する表面積の割合は、子供よりずっと小さい。
それでも、彼にはイツキと同等以上の能力が有り、何より今はガンダールヴの力が有った。
あらゆる武器を使いこなす、伝説の使い魔のルーン。
そして“無限の空〈インフィニティ・アトモスフィア〉”を操る“王”にとって最大の武器とは、“空”に他ならない。
「まるで鳥ね……」
滑空する空の姿を、キュルケはうっとりと見つめる。
「ミスタの正体がエルフでも、僕は驚かんね」
空と合流。
タバサも風竜共々降りて来た。
そろそろ、道を確認する必要が有った。精巧な地図は製作も頒布も制限されているから、どうしても、標識や現地人に頼らない訳にはいかない。
魔法学院の近郊と違い、目的地であるマルティニー村とその周辺は、じくじくとした場所だった。
鉱泉や温泉の類が豊富に湧き出る地域だ。
明るい草原に、濃緑色の森が被さる風景は、なんとも言えず美しい。
「地図は?」
「有るけど……」
殆ど緑一色。何が何だかさっぱりだった。
ギーシュが立て札を見付ける。標識か?……空は松葉杖を振り回して駆け寄る。
森のすぐ前に立て札。何故、こんな所に――――ギーシュは唖然としている。
立て札を覗き込み、空も声を上げる。
「なんや、こら?」
立ち並ぶ立て札には、確かにこう書いてあった。
『私有地につき立ち入り禁止』
『侵入者にはエアニードル。生き延びたら告訴』
これは正気とは思えない。
空は構わず、その先へと踏み入った。ここまで言われたら、臍曲がりならずとも、入りたくなると言う物だ。
不意の出来事だった。
森から影が飛び出す。反射的にデルフを構えた時、刀身で火花が散る。
空は力任せに剣を振り抜く。超人的な膂力が襲撃者を弾き飛ばす。
だが、松葉杖一本ではどうしても支えとして弱い。地面を削り、後に蹌踉ける。
マリコルヌ先生……!支援
もういろいろとなんでやねんwww
支援
「ミスタっ!」
襲撃者が再び躍りかかるのと、薔薇の花びらが舞ったのは、ほぼ同時だった。
眼前にワルキューレが立ちはだかった。
いつか見た物と形が違う。各所に小さな車輪を備え、全身は刃物の様に研ぎ澄まされいる。
左右にも二体。こちらは通常型だ。足底にウィールを備えていなければ。
まず、正面の一体が飛びかかる。
続いて右の一体。
左―――― 一番遅く動いた一体が、一番速い。レビテーションによるサポート。矢の勢いで腰溜めの一刀を見舞う。
襲撃者の一撃が、最速の一体を止める。タイミングと速度のずれに、相手は惑わされなかった。
更に、右を一打ち。
同時に、エアハンマー。魔法の一撃が正面の一体を跳ね飛ばす。
ギーシュは唖然とする。
左右の二体へ剣撃を繰り出していた筈だ。いつ、呪文を唱えた?いつ、魔法を完成させた?
恐るべき手練れだ。
ギーシュは残る四体を生み出すべく花びらを散らす。
背後からキュルケが、タバサが駆け寄って来る。
「待て――――」
と、襲撃者が掌を突き出して制した。
「君はトリステイン貴族ではないのか?」
「……無法者に名乗る名は持ち合わせていない」
「これは失礼」
杖を降ろすと、襲撃者は森陰から姿を現した。
年の頃は二十半ばと言った所だろうか。見事な鬚を蓄えた美丈夫だ。
ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド。男はそう名乗った。
子爵。そして、魔法衛士隊隊長。
その肩書きを耳にすると、ギーシュは杖を収めて畏まった。
魔法衛士と言えばエリート中のエリート。その隊長ともなれば、あらゆる高貴な少年の憧れの的だ。
一方、空は首を傾げる。
ワルド、ワルド……どこかで聞いた気がするのだが――――
「いや、済まなかった」
ワルドは笑顔で詫びた。必要以上に爽やかな笑顔だった。
「てっきり、“路傍の猟師”供と勘違いをしてね」
「“路傍の猟師”?」
「狩猟の真似事に興じる、似非貴族供さ」
ワルドは笑顔を崩さずに、顎を突き出し、両肩を竦め、軽蔑的な吐息を漏らして見せた。
連中は服が汚れるから、危険だから、と森に入る事を嫌い、街路から数メイルの場所で、魔法を、矢を、銃弾を盲撃ちに撒き散らす。
ついでに酒瓶や弁当、酒肴の包みを、所構わず放り出して帰って行く。
そんな連中に、美しいトリステインの森が汚されて行くのだ。なんとも、嘆かわしい事では無いか。
「すると、この立て札は子爵が?」
「そうとも」
白い歯が光った。笑顔だけは、どこまでも爽やかな男だった。
「ゲルマニア人供を締め出してやるのだ」
ギトー先性の教育は行き届いていますな支援
どうやら、ワルドは不逞の輩の正体を、越境して来たゲルマニア人と考えているらしかった。
その意見に、トリステインの貴族達は大に賛同する。
似非貴族――――なるほど。そんな者がのうのう繁殖しているのは、神無き国ゲルマニアを置いては考えられないでは無いか。
「全く、野蛮人供の貴族気取りには我慢ならない。紳士諸君、こんな話を知っているかね?」
或る男が、ゲルマニアの酒場において、自分こそ男の中の男である、と吹聴した。
酔漢達は言った。このゲルマニアでそう認められるには、葡萄酒を1ダース飲み干し、オーク鬼と素手で渡り合い、トリステイン女を犯さなければならない。
男は言われる通りに酒を飲み干し、オーク鬼を求めて街を飛び出した。
「数時間後、血塗れで帰って来たゲルマニア人は叫ぶのだ。『さあ、俺と素手で渡り合おう、て言うトリステイン女はどこだ!』とね」
笑顔とは裏腹の、面白くも無さそうな口調だった。
ワルドにして見れば、野蛮人とオーク鬼がまぐわったからと言って、おかしい事は一つも無いのだ。
そんなワルドの話を、キュルケは笑顔で聞いていた。
目が笑っていなかった。よくよく耳を澄ますと、キリキリと歯軋りの音がした。
「でも、ミスタ」
キュルケは立て札を叩いた。
「私の記憶が確かならば、ここはヴァリエール公爵領。貴方の領地はお隣かと思いましたけど」
「そりゃあ、ここは僕の領地と言う訳ではないがね」
ワルドは口元を歪め、眉を高く上げ、肩をすくめて両手を張り出すと、さも呆れた様に息を漏らす。
「だが、何しろ僕はトリステイン貴族だからね。連中の物よりは、僕の物に近いと言うものだろう。おわかりかな?」
さすがのトリステイン貴族達も、この意見には賛同しなかった。
「まあ、この立て札で、少しは連中の狼藉も収まると良いのだがね。待てよ、ゲルマニアの野蛮人に、我が美しい女王陛下のトリステイン語が読める訳も無いか……だが、汚らわしいゲルマニア語など論外だ。これは、どうしたものだろう、お嬢さん?」
何故、自分に聞く。
何故、聞いておいて、返事を待たない。
キュルケは人知れず米神を震わせる。
ワルドは一人、いっそ無警告に駆除するか、とか、森から離れた場所でカッタートルネード、などと物騒な事を口走っている。
「ミスタ。こんな話を御存知かしら?」
神がハルケギニアを創世した時の話だ。
世界の国々は、神に抗議した。トリステインは狭いながらも肥沃な国土、豊かな四季と折々の風物、良質な葡萄酒に、数百種のチーズと、あまりに恵まれ過ぎている。贔屓が過ぎるのではないか。
神は答えた。その代わり、トリステインにはトリステイン人を作っておいた、と。
各国は納得して帰って行った。云々。
「つまらん」
本当につまらなそうに、ワルドは言った。
「いかにも、神無き国の野蛮人が捻り出しそうな冗句だ」
ワルドはまた、肩を竦める。
殺してやりたい程、腹の立つ仕草だった。
「思い出したっ!」
怒りのあまり、キュルケの手が杖に伸びかけた時だ。
唐突に空が叫んだ。
この面子、大好きだwww 支援
「ワルド子爵言うたら、ルイズの許嫁やんか!」
「ヴァリエールの許嫁?」
キュルケの眉が跳ねた。
「お似合いの婚約者同士ですことっ!」
「いや、有り難う――――君は僕のルイズを知っているのか?」
「使い魔や」
「ほう。人間の使い魔とは珍しい。なるほど、左手にルーンが有る。一つ見せてはくれないか?」
手背のルーンを見ながら、ワルドは頻りに頷いた。ほうほう、これは珍しい。
「なあ。ルイズは最近、会えへん、言うとったで」
「ずっと忙しくてね。漸く休暇をとって、久しぶり領地に戻った所だったのだよ。すると、我が領地と言い、ヴァリエール領と言い、この有様だ。御陰で手紙を書く閑も無い。本当に申し訳なく思っている」
二十歳過ぎと言うよりも、三十路手前の婚約者は、大げさに嘆いて見せた。
「君。まず、いつも僕の婚約者が世話になっている事に礼を言おう。所で、伝言を頼まれてはくれないかね?」
「なんて?」
「――――長い間、会えずにいて済まない。だが、僕の心は常に君とともに有る。愛しい君の、おヘソのずっと下の、可愛らしい所に接吻を送る。お口の恋人ワルドより」
あまりに直接的な表現だった。
「不潔」
タバサが呟いたのも、無理は有るまい。
と、今まで笑顔だったワルドが、血相を変えた。
「なんだねっ。何か言いたい事が有るのかねっ。そこの“美少女”っ」
水色の髪をした少女は、体ごと顔を逸らすと、無表情のまま両頬に手を当てた。
「なんや、チビっ子。褒められ慣れてないんか」
タバサは頭を振って否定する。でも、
「簡潔で的確」
「自身満々やなあ、おいっ」
そうそう。空はワルドに向き直る。
マルティニー村と言う所に行きたいのだが、道を教えてくれないか――――
「任せてくれ給え。この辺りは僕の庭の様な物だからねっ」
「えー、そうでしょうともっ」
キュルケが嫌味ったらしく言った。
トリステインの子爵は意に介せず、事細かに道順を教えてくれた。
ワルドに礼を言って、一同は出発する。
「トリステイン人の標本みたいな男だねえ」
「なんなのよ、あいつっ!」
「まあ、ええやんか。ワイはあいつが気に入ったで」
空がそう言っても、キュルケの怒りは収まらなかった。相当、ワルドの事が腹に据えかねているらしい。
シルフィードで低空飛行。指示された通りに道を辿る。すると忽ち、
ヤバイッ、このワルドは美味しいw 支援
「なあ、僕達、道に迷ってないか?」
「でも、子爵の言われた通りに……」
「しかしだね。地図とさっぱり方向が……」
「あーっ、もうっ!!」
キュルケが叫んだ。
「あんた達、馬鹿じゃないのっ!トリステイン人が道を聞かれて、『知らない』なんて答える訳が無いでしょう!」
「ミス・ツェルプストー。それは偏見だ」
だが、ワルドは偏見通りの男だった。
「全く!トリステインはいい所ね!トリステイン人さえ居なければ!」
ここまで取り乱すキュルケの姿は、誰にとっても初めてだ。
一同は――――タバサも含め――――さり気なく、怒り狂うゲルマニア貴族と距離を置く。
「とにかく、このまま無駄足は御免だ。どうする?」
「ギーシュ。僕は大変な事に気付いた」
マリコルヌが手にしているのは、空が街で受け取って来たプログラムだった。
「見ろ。美人コンテストが有る」
「おお。怪しからん。女性を外見だけで判断しようなどと、実に怪しからんイベントだ。これは是が非でも、厳重に監視しなければならないなっ」
「いや、残念だけど、コンテスト自体はもう終わっている。だけど、パレードでは市長が優勝者と準優勝者を従えて歩く筈だ」
「む。確かに残念だが、まあ、それなら良しとしよう。益々、急がなければ」
「美人が二人も居るんだぜ。僕らの直感と霊感で、方向を割り出す事が出来るんじゃないか?」
「論理的な提案だ」
むんっ――――ギーシュは眉間に指を当てて念じる。
「イッメ〜〜っジっっっ!!」
マリコルヌも目を閉じて念じる。
そして同時に刮目すると、二人は同じ方向を指し示した。
「あっちよ」
キュルケが全く別の方向を示す。
「真っ先に私の方を向かない霊感なんて、当てになるものですか」
大変な自信だった。
この時、タバサが鼻をひくつかせた。風に混じる、ほんの微かな匂い。バターとガーリックの香り。
「あっち」
キュルケはまた不機嫌になった。
シルフィードが向かったのは、確かに二人が指さした方向だったからだ。
* * *
ワルドが壊れた支援
マルティニー村は端から端まで、歩いて五分とかからない、小さな村だ。
中央の教区教会へと向かう、村にたった一本の大通りは、屋台で隙間無く埋まっている。
スパイスのきいたソーセージに、ゴーフル、アヒル、鶏、鶉と言った鳥の類から、羊や牛が数頭まるごと、観葉植物から絨毯までもが売っている。
プログラムに市が入っているのは確かだが、果たして、この日、この時、この場所で大きなベッドが売れる物なのだろうか。
音楽の演奏は、あちらこちらの店が勝手気儘に楽器をかき鳴らすせいで、合戦の様相を呈している。
一同を視線の砲列が出迎えた。見知らぬよそ者に対する、田舎特有の視線だ。
それも束の間、バンドを先頭に、市長とビーティーコンテストの上位二名、関係者達の行進が始まると、一応はそちらに向き直る。
「ふん。大した事無いわね」
二人の美女を片目に、キュルケは言った。
「私の方がずっと美人よ。ね、そうでしょう?ダーリン」
「ま、な」
どうやら、機嫌は直ったらしい。
村娘と張り合ってどうする。そんな言葉を、異世界人と二人のトリステイン紳士は賢明にも飲み込んだ。
パレードは蝸牛の歩みの様に、遅々として進まなかった。
何しろ、祭りに顔を出す過半は顔見知りだ。あっちで挨拶、こっちで雑談。
市長が祖母の前で足を止めた時には、彼女が緩慢な動作で立ち上がるまでの間、全員が足踏みで待たなければならなかった。
空は自ら、行進の最後列に歩み寄った。一人の男と挨拶を交わす。トリスタニアの酒場で小休止していた空を、この祭りに誘った男だ。
フォワール・オー・エスカルゴは伝統あるマルティニーの年中行事。関係者は自前で、署名入りのプログラムや封筒を持っている。
一同は手近な店に席を取った。気温は汗ばむ程で、風の心地よい屋外の席は、葡萄酒を傾けるにはお誂え向きだった。
二人の紳士が葡萄酒と料理を調達する。
蝸牛を大蒜とバターで焼いた簡素な料理、それにパン。
アルヴィニーの食堂で時折使う、小さなやっとこが無い。どう食べる?
辺りを見回すと、現地人達はパンの耳を千切って挟みに変えている。ピックで肉を一突きに鐺り出す。殻は置かずに、中の汁まで飲むのが作法と見える。
ロマリアに入りては、ロマリアの法に従え。
各人めいめい、見様見真似で突撃する。一見、何気ない動作だが、身だけを綺麗に抜き取るのは至難の技だ。
まず、紳士二人がガーリックバターの洗礼を浴びる。元々、テーブルマナーと言う概念を持たない国の人間だから仕方が無い。
キュルケは女性らしく気取ってみせるが、それでも無損害とは言えない。シャツから零れだした褐色の乳房が、油で蝸牛が這い回ったかの様にヌラヌラと照り光る様は、何とも言えず艶めかしい。
空はまず汁を全部飲んでしまう、殻を皿の上に押さえつけるなど、様々な抵抗を試みはするが、やはり手慣れぬ身、ルイズに買い与えられた白いシャツがデロデロになる。
唯一、用意周到にナプキンを持ち込んだタバサだけが、被害を免れている。
珍味に酒も進む。
空はガーリックバターで焼いたエスカルゴの粗野な味は、いかなるワインも受け付けないかの様に語る、色々と偏った自称食通の事を思い出した。
可哀相に。本当に旨い蝸牛を食べた事が無いのだろう。
ここの蝸牛は確かに大蒜は強いが、バターの風味が勝ってまろやかだし、口当たりも柔らかい。
こいつらそろいもそろって駄目過ぎる
支援
大暮のいいGDGDがノボルの日常ネタと交じり合うパーフェクトハーモニー 支援
酒杯を重ねる内に、貴族達もたがが弛み始める。
ギーシュはさめざめと泣き出す。未だ、ケティとか言う小娘が忘れられないらしい。その内、本当に刺されるのでは無いだろうか。
マリコルヌは目が据わっている。呂律が回らぬ舌で、自分は酔っていない、酔ってなどいない、とひたすらにと強弁する。
キュルケは酔っているのか酔っていないのか判らない。彼女が空に言い寄るのは、いつもの事だからだ。
「蝸牛言うんは、スットロいさかい。求愛行動ものんびりやってなあ」
「雌雄同体なんでしょう。つまらないわね」
「どっちが男役かで揉めたりしてな。その点人間様は楽でええわ」
「男と女。はっきりしている物ね」
「せやけど、蝸牛かてバカにした物やない。前戯にたっぷり時間かけよる。交尾しとるとこなんかな、なかなかカンノー的やで」
「ああ、素敵ね。ダーリン」
空も酔っているのかどうか判らない。人目も憚らずキュルケと熱烈に絡み合い、柔らかく弾力のある蝸牛を一つつつく毎に、別の柔らかく弾力の有る物もつつくが、素面でだってやるかも知れない。但し、今の様にルイズの目が無ければ。
さすがに抜き身の剣は村に持ち込めない。デルフリンガーは鞘に監禁、沈黙を強いられている。
タバサは一人、冷静だ。黙々、メニューに並ぶ蝸牛料理を端から片付けてゆく。
ピックにフォークにナイフを手繰りながら、脳裏を過ぎる心配毎は、いざ満腹となった時、連れの酔っぱらい供をどう連れ出すか、と言う事だった。
* * *
酔っ払い支援
腹がくちくなると、一同は撤退する事に決めた。
このまま小休止して、第二ラウンドに突入しても良かったのだが、彼等は一人を除いて学生の身だ。明日の学業にも備えなければならない。
帰還は夕食の直前だった。
丁度良い。空は土産の蝸牛を膝に乗せ、厨房に向かう。
ルイズに一皿増やしてやろう。一人楽しみ、酔って帰った後めたさが、彼に気を使わせていた。
ギーシュもそれに続く。抱える木箱はやけに多い。
「ボーズも土産かい。しっかし、お前のコレ……モンモン言うたか?」
「モンモランシーだ」
「どんだけ食うねん。それとも、あれか。厨房で料理させよう腹じゃなくて、そこにも相手が居るっちゅう事か?」
「だから、ミスタ。貴方は誤解されている様だが、僕とあの娘は――――」
「違う言うなら、なんで直接持ってく?貴族が立ち入る所、違うで?」
「だから、それは――――」
「おう、シエスタ!居るか!」
空は自宅のキッチンの気軽さで、厨房に入った。
「我等の風っ!」
料理人達が大げさな呼び方をするのは、いつもの事だ。だが、態度がいつもと違った。
それは決して、背後にギーシュの姿が有るからでは無さそうだ。
料理人達の目に、小さな敵愾心が見える。
沈鬱な空気が厨房を覆っている。
「なんやっちゅうねん。おい、シエスタはどした?」
「連れて行かれたよ」
小太りの料理長マルトーが苦々しく吐き捨てた。
「なんや、拉致られでもしたんかい」
空はまだ、脳をアルコールに冒されている様子だ。物騒な言葉と裏腹な、蝸牛の様に緩慢な口調。
一方、ギーシュ。
目つきが変わった。酔いが一発で醒めた。
「連れて行かれた?誰に?」
「今朝、王宮の勅使とか言うんで来た貴族が、値踏みをしていた様で……その後……」
マルトーは口調を濁した。
恐れ入っている訳では無い。思わぬ所に、思わぬ相手の姿を発見して、切り替えに苦慮している。
下手をすれば、暴言が口を吐いて出かねない。
ギーシュは身を震わせる。
王宮からの勅使。モット伯爵だ。彼の人となりはよく知っている。
なんと言う事だ――――。
ギーシュは抱えていた木箱を、有無を言わせず、空の膝に乗せた。
「あん?」
「どうぞ、召し上がれ!」
何事だ?
空が振り向いた時、貴族の少年は、マントを翻して駆け出していた。
――――To be continued
ギーシュが主人公化っつーか、新しい炎の王化してきてるー!?
GJっしたー
ギーシュ男前フラグ乙です
78 :
虚無の王:2007/11/03(土) 23:46:44 ID:X4usOjEC
御支援アリガトウ御座います〜。
今回は以上っス!。
このギーシュとワルドは新しいw
GJしたっ
GJ!
こんな漢のギーシュは珍しいな本当w
お前のせいで腹が減った
どうしてくれるGJ!
支援が途中で追いつかなかったよ。
乙&GJ!アンタのSS一番好きだ。
モット編のギーシュに期待!
オニギリのスキルを会得してるバカがいるなw
GJ!
確かにウマイ酒とツマミが欲しくなるSSだGJ!
トリステインジョークとゲルマニアジョークはちょっとどうかと思ったが。
あとロリド自重w
前スレ500kb書けよ
932 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2007/11/03(土) 21:56:37 ID:FMaMZAbZ
>>500kbなら電脳コイルのイサコ様召喚。
電脳メガネが使えなければ面白くないので、なぜかハルケギニアでも
使えるという設定で。
そげんマジんなって言っても反発喰うだけぞ?
もう少し・・・こう・・・
「書けばなる 書かねばならぬ 何事も」とか
「さあ来いよ かかって来い ハリー!ハリー!!」とか
>>85 電脳メガネで土方護サン召喚とか閃いたが、
単分子層剣とか超音波解析グラサンとかサポートと電気が無いと強さ半減なので無理だった
王の人GJ
>>87 >電気がないので動かない
・何故か動く(ただし後日原因判明)
・ルイズの魔力で動く
・ミョズとして召喚されて色々改造
>強さ半減
・別に半減させずに俺Tueeeeee
・弱いなりに機転を生かして活躍
少し考えただけでもこの程度はでっち上げれるので書いてください
白井ヴィンセント召喚
「いやぁルイズちゃん、オレ歌作ったんだけどねぇ、タイトルは『トリスティンのオレ』」
♪はぁ〜オレは使い魔ァ〜〜やってらんねぇ〜〜〜トリスティンだけにトリスで一杯ィ〜〜〜
「何それわけわかんない!」
マンキンネタを見て思い付いた。
モット伯に連れていかれたがモット伯急死、邸宅全壊で戻ってくるシエスタ。
「お祖母ちゃんに教わった人形のおまじないとお祖父ちゃんに教わったあの筒の使い方が…」
などと口走る。
モット伯の邸宅全壊の際、ほんの一秒だけ天使を見たという目撃情報が……。
>>85 荒れるネタを持ち込みなさんな。
だいたいアレはメガネだけじゃどうにもならん。
現実世界にあるインフラごと持ってくる必要があるぞ。
92 :
DOD&M:2007/11/04(日) 01:22:58 ID:K56lfftN
久しぶりに、一機投下させてもらってよかですか。
来たアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアああああああああああああ嗚呼ああああああああああああああああ!!!!
俄然支援する!
94 :
DOD&M:2007/11/04(日) 01:27:59 ID:K56lfftN
五分後に行きますー。
95 :
DOD&M:2007/11/04(日) 01:32:11 ID:K56lfftN
んだば、そろそろ。
今正に突入準備をしようと足並みを揃えていたアルビオンの陸軍兵士達。
その中の誰もが動きを固めたのは、十数騎もの竜騎士が上空で一瞬の内に焼き尽くされたのを目の当たりにしたからだった。
軍が誇る精鋭中の精鋭である者達が、いとも容易く全滅させられたというのは、彼らにとってあまりにも現実味の薄い光景であった。
だが、今この場にいる兵士の中には、アルビオンでのアンヘルとカイムの暴虐ぶりを目にしていた者も少なくない。
一人がごくりと息を呑み、恐怖に身を震わせると、程なくしてそれが周りに伝染していく。
「……あの竜は……まさかあの時の……」
誰かがポツリと漏らせば、更にざわめきが周囲に木霊し始める。
徐々に腰の引け始めた兵士達の姿を眺めながら、後方に座していたワルドが喉を鳴らして笑みを浮かべた。
それにつられ、脇で同じく笑うのは、黒竜レグナ。
「どうしようもない愚昧共だな。洗脳されて我を失った兵士の方が余程役に立つわ」
如何に強力な竜が相手であろうと、数と艦隊のおかげで圧倒的に有利だというのに。そう心中で呟き、レグナは遠い空を眺めた。
自らと同じ、カオスの形態へと進化を遂げたアンヘルの姿を目にし、鋭い牙を剥き出しにしてワルドに問う。
「舞台は整った。そろそろ儂らの出番だろう?」
「…………」
尻込みをする兵士達に対し、苦言を吐いたレグナであったが、むしろこれは好ましい事態である。
元より、自分とワルド以外を戦力として期待はいない。
レグナが他の者に求めているのは、ギャラリーとしての役割だけだった。それはワルドとしても同じ事である。
これ程の観衆の中破れるとあっては、さぞかし屈辱的な死を与えられるだろう、と、ワルドも歪んだ唇の端を更に吊り上げた。
長剣の柄をきつく握り締め、徐々にこちらへと近づいてくるアンヘルの姿を睨みつけ、彼は兵の列を掻き分け駆け出した。
「ハッ」
心底楽しそうに鼻を鳴らし、それにレグナが続く。
「第二幕の開始と行くか」
96 :
DOD&M:2007/11/04(日) 01:33:18 ID:K56lfftN
村の上空から一気に急降下しながら、アンヘルは猛スピードで隊列を組んだアルビオン軍の元へと向かう。
たった一騎で三千の兵を相手取る。一見無謀としか思えぬ行為だが、元よりこうした戦い方で今までを生き延びてきたのだ。何の問題があろうか。
キュルケもそれを知ってか、最早何を言うでもなく、凄まじい空気抵抗に顔をしかめながら、必死にアンヘルの身体にしがみつくばかりである。
愚直なまでに真っ直ぐと飛びながら、身を反らして次々に向かってくる矢の雨、魔法の雨をかいくぐり、第一陣の懐へとアンヘルは潜り込んだ。
「ひ、怯むな! 迎え撃て!」
必死に叫ぶその声は、敵の指揮官によるものだろうか。震えた声ながらも采配を振るう者に対し、苦笑いを浮かべながら、アンヘルはそのまま滑り込むようにして地に降り立った。
着地した彼女は、その勢いを緩める事無く、文字通り兵士達を蹴散らしながら敵陣深くへと向かう。
踏み潰され、蹴り倒され、灼熱の尻尾に薙ぎ払われる者達を眼下に、鉄塊を携えたカイムがそのままアンヘルの背から飛び出して纏わり付く兵士を蹂躪する。
アンヘルとカイムは、ひた走りながら、さらに深くへと切り込んでいく。
阿鼻叫喚を思わせるその惨状の中、キュルケも自慢の炎を操り、アンヘルの背から彼らが討ち損なった者を焼き尽くした。
アルビオンの兵士から見れば、悪夢再び、と言った所であろうか。
混乱の只中にいる彼らは、統率の取れぬ動きのままである。幾らなんでも一騎での吶喊など夢にも思わなかったのであろう。
そんな中、密集した兵士達を掻き分けながら進んでいく内、不自然なまでにぽっかりと空いた空間が目に付く。
「…………!」
そこにいる者は分かっている。カイムは抑えきれぬ興奮を、笑みという形で表し、鉄塊を横薙ぎに振るった。
一振りで十数もの兵を肉塊と化した刹那、彼の目の前に現れたのは、巨大な円形の業火であった。
「カイム!」
キュルケの叫びと共に、同じくしてアンヘルがカイムに向けられたものと同等のブレスを吐きかけ、業火を打ち消す。
大きな爆発音と煙幕が巻き起こり、辺り一帯が白く染まった瞬間、それを切り裂きながら、一人の男がカイムに向かって勢いの付いた袈裟懸けを繰り出した。
「…………!」
「…………」
咄嗟に鉄塊を打ち上げてそれを払ったカイムが目にしたのは、言うまでも無くワルドの姿。剣ごと身体を跳ね上げられ、彼は野獣の様な身のこなしでそのまま後方に着地した。
そして、その後方には口から黒煙を漏らすレグナ。
「ようやくお出ましと言った所か……!」
「儂らの幕引きの場としては、これ以上はないだろう」
不敵に言ってのけるレグナに、アンヘルは歯軋りで返し、ワルドとカイムは互いに凄絶な笑みを交わした。
周りの者はその光景に圧倒されながらも、巻き起こっていた混乱を胸の内で殺し、油断無く構えを取る。
「アンヘル、カイム……思いっきりやっちゃいなさい……!」
そのキュルケの一声と共に、天と地に別れ、契約者同士の決戦の火蓋が切って落とされた。
97 :
DOD&M:2007/11/04(日) 01:34:28 ID:K56lfftN
久しぶりなのに、物凄く短くてすいませんが、今回これにて。
あじゅじゅしたー。
ええい、戦いの行方が気になるぞ!
ともかく乙!
久々のあじゅじゅしたー
あじゅじゅー
支援するとか言ってできなかったよorz
ごめんだぜ。ワルド戦に期待!
お久しぶりのDOD&Mの人、GJ!
すいません2:00くらいから投下していいですか
知っているか支援!
ではいきます
ここは学院長室。
息を切らせながらこの部屋に入る教師が居た。
ルイズたちの使い魔召喚の儀式を担当したコルベールだ。
「失礼します、オールド・オスマン!」
大きな声で学院長に呼びかけ、その声にオスマンは振り返る。
「一体何事じゃ、ミスタ・コルベール」
「違います、私の名はコルベールです!」
「だからコルベールと言っとるじゃろうが」
何を言ってるんだこいつは
といったような目でコルベールを見るオスマン。
「え?あ、そうですか…」
何故か物足りず、ちょっと寂しい思いをしたコルベールであったが
自分の用件を思い出し、すぐさま顔を上げる。
「そ、そうだ。それより大変なことが分かりましたよ!
ミス・ヴァリエールが呼び出したあの青年のことです」
そう言いつつコルベールは机の上に古い本とルーン文字が写されたメモを置く。
本を開きながら興奮した様子で話を続ける。
「見てください、このルーンは始祖ブリミルの使い魔ガンダールヴのものです。
そしてコッチがあの青年に刻まれたルーンです。」
こんどはメモを指差しながらコルベールは捲くし立てる。
「全く同じものです。つまり、彼は伝説のガンダールヴなんですよ!」
「ちょ、ちょっと待て、落ち着くんじゃ。ルーンが同じだからといってそう決まったワケではないじゃろう」
興奮してずいずい近寄ってくるコルベールに若干怖いものを感じながらもオスマンはなだめる。
「ま、まあ確かに」
若干コルベールが冷静になったところにまた一人部屋に入ってくるものが居る。
「た、大変です!オールド・オスマン」
知的な顔付きをした美女、オスマンの秘書のミス・ロングビルだ。
「何じゃ、ミス・ロングビル。…どうでもいいが今日は大変なことが多いのう」
「え、なんのことです?」
「いや、いいんじゃいいんじゃ。で、何があった?」
一瞬きょとんとしたロングビルだったが報告をする。
「はい、ヴェストリ広場で決闘をしようとしている生徒がいます。
教師たちが止めようとしましたが生徒たちに邪魔されてしまい…」
「まったく、その生徒は誰じゃ?」
オスマンはうんざりといった感じだ。
「一人はギーシュ・ド・グラモン、もう一人はミス・ヴァリエールの使い魔です」
ロングビルの言葉に驚いたのはコルベールであった。
「何ですって!本当ですか、ミス・ロングビル。あの青年が?」
「は、はい。たしかに」
予想していなかったコルベールの返答にロングビルは少しうろたえる。
その様子を見ていたオスマンはしばらく考えていたが何か思いつきロングビルに声をかける。
「たかがケンカじゃ、放っておきなさい。それにちょうどよい」
オスマンはそういいながら大鏡に杖を振る。
すると広場の様子が映し出された。
「これで彼のこともわかるじゃろ。のうミスタ・コルベール」
「そ、そうですね」
二人の言っていることがわからないロングビルは問いかける。
「あの、お二人とも何を仰っているのです?」
「ええ、彼はもしかすると」
コルベールの言葉はそこで止まり、視線は広場に釘付けになる。
オスマンやロングビルも同様だ。
彼らが見たものは、ギーシュと対峙する平民が光を纏っていく姿だった。
「何なの、アイツ」
ルイズは目の前で起こった光景が信じられなかった。
ただの平民だと思っていた自分の使い魔が鎧を纏った戦士に変わったのだ。
俺はヒーローだからな
さっきアイツはそんなことを言っていた。
まさか本当に?
しかし光の戦士に変わった暁の姿がそれを証明している。
寝坊もするグータラで女の子と見れば節操なく声をかけ、ただの口げんかで決闘してしまう
アホな男だが変身をしたのは紛れも無い事実だ。
もしかして自分はとんでもないヤツを呼び出してしまったのだろうか。
ルイズが暁に対しての認識を改めているとき
暁はいつもと変わらぬ調子でギーシュに向かって叫んでいた。
「さあ、どっからでもかかってきなさい!」
ギーシュは暁の姿を見て少々動揺していた。
こいつは杖もなしに変身したのか。
ひょっとすると先住魔法?ということはこいつはエルフか。
そんな考えを振り払い、ギーシュも負けじと言い返す。
「いいだろう、後悔するなよ!」
平静を失った様子を見せるのはシャクだ。
そして自分のワルキューレを暁に向かわせた。
ワルキューレは拳を振り、暁に打ち込む。
暁はそれを片腕で捌き、逆にワルキューレの腹にパンチを放った。
カウンターにワルキューレは怯むが直ぐに体勢を立て直し、暁に蹴りを入れる。
暁もそれに反応し、ガードをするがさすがに金属の塊だ。
その強烈な蹴りに体を崩す。
「くっ」
思わずうめき声をあげる暁。
それをチャンスと見たギーシュはワルキューレを暁の懐にとび込ませる。
「なんの!」
ワルキューレの突進を暁は、がっちりと受け止め力比べのような体勢に入った。
両者力を込めその姿勢が続いたが暁は自分の体をワルキューレの下に潜り込ませそのまま持ち上げた。
「ブレーンバスター!」
暁は自ら仰向けに倒れ込み、ワルキューレの背中を地面に叩きつけた。
そしてすぐに起き上がりエルボードロップをワルキューレの顔に放つ。
その一撃でワルキューレは動きを止めた。
暁はギーシュのほうに向き直り勝ち誇ったように声をかける。
「おい、もう終わりか?」
しかしギーシュは怯むことなく言い返す。
「残念だが、まだまだこれからだ」
またもギーシュはバラを振り、花びらを巻き起こす。
すると今度は槍や剣を持った複数のワルキューレが姿を現した。
これには暁も驚いた。
「なっ、ひい、ふう、みい、よー…きったねえ五人がかりかよ!」
「僕はワルキューレが一体とは一言も言っていないよ。油断した君が悪い」
その声と同時に五人のワルキューレが暁に襲い掛かる。
暁は距離を取り、何とか策を考える。
そうだ、こういうときは
「それならコッチは超光騎士だ!」
支援
超光騎士とはシャンゼリオンの戦いを支援するためのサポートロボットである。
陸震輝、空裂輝、砲陣輝とそれぞれが別の能力を持ち、あらゆる局面で戦うことが出来る頼もしい仲間だ。
普段はクリスタルステーションに格納されているが
彼らはシャンゼリオンの呼びかけで何処にでも駆けつけるのだ。
「リクシンキ!クウレツキ!ホウジンキ!」
暁は仲間を呼んだ。
しかしその場にシーンとした雰囲気が残るのみであった。
応じない超光騎士達に暁は焦る。
「あ、あれ?どうしたんだよお前たち、俺の声が聞こえないのかよ!一緒に選挙活動もした仲だろ!」
だが超光騎士は一人も来ない。
それもそのはず。この世界はハルケギニアで、地球でも東京でもない。
超光騎士も、彼らを格納するクリスタルステーションも存在しないのだ。
そのことを暁はすっかり忘れてしまっていた。
「何をブツブツ言っているんだい」
ギーシュはそんな暁に少々呆れながらワルキューレで斬りつける。
「うわっ」
一瞬反応が遅れた暁は胸元を裂かれ、クリスタルの鎧に亀裂が入る。
膝をついた暁に複数のワルキューレが同時に武器を振るう。
急所をガードしているが暁の体には傷が増えていく。
「くそっ、五人がかりのうえに武器まで使うなんてズルいんじゃないの?」
暁はギーシュに抗議をするが
「何をバカなことを。それなら君も武器を使えばいいじゃないか。もっとも無理だと思うがね」
余裕シャクシャクで受け答える。
その言葉に暁は、何か思い出した様子だ。
「あ、それもそうか」
暁は胸の鏡、シャンディスクに手をかざし叫んだ。
「ガンレイザー!」
すると光の粒子が集まり銃の形に実体化した。
「なんだぁ!?」
ギーシュやギャラリーが叫ぶのを余所に暁は銃を掴む。
「ディスク装填」
小さな薄い円盤、CDをガンレイザーに組み込むとシリンダーが動き出す。
そしてワルキューレに向けて光弾を放った。
二人のワルキューレはそれぞれ頭、胸を打ちぬかれ倒れこむ。
「あ、あら?」
暁は不思議に思っていた。
銃を構えた瞬間向かってくるワルキューレの動きがゆっくりに見えたのだ。
しかしその考えはギーシュの声に打ち消された。
「き、貴様銃なんて卑怯だぞ!」
「それならお前も銃を使えばいいじゃないの。ま、無理だと思うけど」
さっきのギーシュと同じように言い返した。
ふんわか支援
「この、なめるな!」
一人のワルキューレが暁の死角から近づきガンレイザーを払い落とした。
「あ、しまった!」
なおもワルキューレは暁との距離を詰める。
「それならこうだ!」
すると何を思ったか暁はワルキューレにタックルをかけ、両脚を掴んだ。
その場でワルキューレを持ち上げぐるぐると振り回した。
「ジャイアントスイングで夢の中にご招待!」
二人のワルキューレは暁に近づこうにも近づけない。
そして暁は振り回しているワルキューレを放り投げ、もう一人を巻き込んだ。
残りのワルキューレが一人になってギーシュは焦る。
「くっ、調子に乗るな!」
ワルキューレは暁を斬りつけようと剣を振り上げ突進をする。
暁はまたもシャンディスクに手をかざす。
「シャイニングブレード!」
今度は剣の柄が出現し、鍔の部分が左右に開く。
そして光の粒子が伸び刀身になった。
剣を掴むとまたさっきの感覚に襲われる。
「何なのよこれ」
相手の動きが遅く見える。
不思議なこともあるもんだな
そんなことを考えながら相手の剣を捌いていく。
そしてワルキューレの剣を受け止めるとその体に体当たりをした。
暁は剣を両手に持ち直し、大きくよろめいたワルキューレを斬りつける。
そして必殺の一撃。
「一振り!」
暁の掛け声と同時に裂かれたワルキューレは真っ二つになり崩れた。
が、その影からもう一人のワルキューレが現れた。
「何ぃ!」
完全に不意をつかれた暁は剣を叩き落され、ワルキューレに押し倒された。
「甘いね、切り札は最後まで取っておくものだ!」
ギーシュが大声で言う。
彼は本来七人のワルキューレを操ることが出来る。
しかし今回見せたのは全部で六人。
暁に対して呼び出せるのは六人だけと思い込ませ最後の一人を敢えて呼び出さなかったのだ。
倒れ込んだ暁にマウントを取り、何度もパンチを打ち込むワルキューレ。
既に暁はグロッキー状態だ。
その姿を見てギーシュは勝利を確信する。
「よし、これで終わりだ!」
そしてとどめとばかりに大きく振り下ろした拳を暁は見逃さなかった。
ワルキューレの拳を受け止め、大きく脚を振り上げ背中に蹴りを入れた。
暁は最後の力を振り絞って起き上がり、吹っ飛んだワルキューレに向き直ると叫んだ。
「シャイニングアタック!」
するとシャンディスクからシャンゼリオンの分身が現れ、ワルキューレに向かって高速で飛行する光の弾丸となった。
光の弾丸に貫かれたワルキューレは大きな風穴を開けられひっくり返り、その場から動かなくなった。
「そんな…」
最後のワルキューレを倒されたギーシュはその場に膝をついた。
「参った」
ギーシュの敗北宣言を聞いた暁はその場でターンをし、指を差してポーズを決めた。
「やったぜ、俺ってやっぱキマリすぎだぜ!」
本人としたら最高に決まったのだろうがシャンゼリオンの姿の暁は結構ゴツく、あまりカッコよくはなかった。
元の姿に戻った暁はギーシュの傍に近寄っていく。
それを見たギーシュは覚悟を決めた。
「僕の負けだ。殴るなり罵倒するなり好きにしろ」
しかし暁はギーシュの手を取りがっちり握った。
「俺がそんなことをするわけないでしょ」
暁は普段通りの口調でギーシュに話す。
その反応にギーシュはあっけに取られた。
「君は負けた僕を軽蔑しないのか」
「何言ってんの。お前の強さ、よーくわかったぜ」
その言葉を聞いたギーシュは暁に微笑み手を握り返した。
「ははっ、君は変わった奴だ」
「そうでもないって。わはは」
やがて二人は大声で笑い出した。
戦いが終わればそこには怒りも憎しみも無い。
拳で分かり合えた男達は友情を深めていく。
このギーシュと暁も同様だった。
まあ、戦った理由はとてもアレなのだが。
広場の中央で高笑いをする二人を見ていたギャラリーはボーゼンとなってた。
ルイズも同じように言葉を失っていた。
ただの平民が変身して銃や剣や分身を出してメイジと戦っていたのだから当然のリアクションだろう。
いつの間にか隣にいたシエスタはルイズに声をかけた。
「ミス・ヴァリエール、一体アキラさんってどんな方なんですか。私はただの探偵さんだって聞いたんですが」
彼女も訳がわからないといった感じで話している。
その声にルイズは意識を取り戻した。
「わからない。わからないけど」
そしてまだギーシュと二人で大笑いを続けている暁のしまりの無い顔を見つめ呟いた。
「バカなのは間違いないわね」
ルイズは考えを改め直した。
たしかにこいつはとんでもないヤツだった。無論違う意味で。
「あ、ギーシュ」
「なんだい」
「俺たちなんで決闘なんかやることになったんだっけ?」
「そういえば思い出せないな」
「「ま、いいか。わははは」」
なんかふんわか・・・GJ.
以上シャンゼリオン召喚話の続きでした
支援&読んでいただきありがとうございました
シャンゼの作者GJ!
次回を楽しみに待ってるぜ!
いいぞ、ぼけぼけヒーロー。
だがしかし、元ネタが元ネタだけに、最終回いきなり鬱展開が待ってそうで…orz
DOD&Mさんが復活した…!?
こうしちゃあいられねぇ、こうなったら俺も
今 か ら 書 く !
今からかよwwwww
ちょっと吹いたw
>虚無の王
エスカルゴの描写がマジで美味そうで噴いたw
おかげで、真夜中に気合入れてラーメン作ってしまったんだぜ。
あと、ナメクジとかカタツムリのSEXのエロさは異常。
>DOD&M
あじゅじゅの人あじゅじゅしたー。
あじゅ、あじゅ、あじゅじゅじゅしたー。
>>115 ちょww
まぁこんな朝早くですが投下したいと思います。
もしよければ支援のほうお願いします。
「失礼しますオールドオスマン、大変なことが起こりました。」
オスマンがパイプを吸っているとドアをノックして秘書のミス・ロングビルが入ってきた。
「何なんじゃミス・ロングビル。その大変なこととは?」
「決闘です。」
その言葉を聞いたオールド・オスマンは口にくわえていたパイプを口から出し、大きくため息を吐いた。
「ふぅむ、どうしてこう最近の若者は血気盛んなのかのぉ…?して一体誰が?」
「はい、あのグラモン元帥の息子ギーシュ・ド・グラモンが……ミス・ヴァリエールの召喚した少女に…。」
「ミス・ヴァリエールの召喚した少女」という言葉を聞いたオスマンは目を丸くした。
「……わかった。とりあえずミス・ロングビルは決闘を止めにいってくれ……あぁ、あとここにミスタ・コルベールを呼んでくれんか。」
ミス・ロングビルがこの部屋を出てから数分後に、ミスタ・コルベールがドアをノックして慌ただしく部屋に入ってきた。
「オールド・オスマン。ミス・ロングビルから聞きましたが決闘とは本当ですか!?」
「まぁまぁ落ち着けミスタ・コルベール。今から『遠見の鏡』で見るところじゃ。」
そういってオールド・オスマンは小さい置き鏡を机に置くと杖を振った。
その鏡に今のヴェストリの広場が映し出された。二年生が円を作り、ギーシュを囲んでいる。
「しかし大丈夫ですかねぇ…」
不意にコルベールが呟いたので。オスマンはコルベールの顔を見た。
「君は少女の事を言っているのか…?それともグラモン家の息子のことかね?」
その言葉を聞いたコルベールは何とも言えないような顔をして肩をすくめた。
「まぁグラモン家の息子には悪いが、ここで少女が君の言っている『ガンダールヴ』なのか確かめさせて貰おう…」
オールド・オスマンはそう言って鏡の方に向き直った。
「諸君、決闘だ!!!!」
先にヴェストリの広場に着いていたギーシュは手を高らかに上げるとそう叫んだ。
それにつられその場にいた二年生達は歓声を上げた。
それから数秒後に上空から霊夢が降りてきてギーシュの目の前に立った。
「随分と大袈裟ね…。」
周りの異様な熱気に霊夢は嫌な目で辺りを見回す。
ギーシュは右手に持っている薔薇の造花を振った。するとどうだろう、地面から体が青銅で出来た一体のワルキューレが現れた。
「君が負けと言ったら僕の勝ち。逆に君が僕の手に持っている造花を手から取ったら君の勝ちだ。」
霊夢は針を取り出して両手に持ち、ワルキューレとギーシュを見据えた。
「ちなみに僕の二つ名は「青銅」。よって僕はこの青銅のワルキューレで君と戦う。異論は無いかね?」
「無いわよ。」
「それは結構………お?そうだそうだ、勝者は敗者に一回だけどんな命令でも下せるというボーナスも追加しておこうか。」
ギーシュは薔薇の造花を持った右手を空高く掲げた後、振り下ろすと。ワルキューレが霊夢目掛けて突撃した。
(来る…!)
ワルキューレは攻撃範囲に入ると右手で握り拳を作り、霊夢を殴ろうとするが霊夢は地面から少し足を浮かせて後ろに下がる。
隙が出来たワルキューレ目掛けて左手に持った針を全部投げた。
全ての針がワルキューレの胸部分に命中したがワルキューレは少しよろめいただけだった。
周りの観衆が オオッ! ざわめいた。
「ん?なかなかやるようだね…。」
そういってギーシュはワルキューレを自分の所にまで下がらせると薔薇の造花を振り、地面から出した短槍をワルキューレに持たせて再び突撃をさせた。
次の攻撃パターンは突きであった。霊夢はそれを右に避けると右手に持った針を全て投げた。これは頭部に当たった。
頭部に針を喰らったワルキューレは持っていた槍を手放して大きくよろめき、地面に片膝を下ろした。
(よし、まずは一体!)
霊夢はワルキューレの動きが止まるのを確認するとギーシュの方に体を向ける。
ギーシュは新しく三体のワルキューレを生み出しており、三体とも手に青銅の大きな盾を両手に持っている。
(周りを固める気ね…!なr…)
瞬間、背中から物凄い衝撃と痛みが彼女を襲い、霊夢は地面に激突した。
「どうやら君を見くびっていたようだ。少し本気でいかせて貰うよ。」
ギーシュは薔薇の造花を霊夢に向けて言った。
霊夢は地面に激突した後、後ろを見てみると針だらけのワルキューレが立っていた。
(油断した…!相手はゴーレム=動く石像…つまりあれは一時的な休憩か…!)
なんとか立ち上がった瞬間、間髪入れずにワルキューレが殴りかかってきた。
霊夢は痛みに堪えながらも足を浮かせて距離を取り、針を再び両手に持ち一斉に投げた。
針は数十本。ギーシュは針だらけのワルキューレを下がらせ盾を持たせているワルキューレを前面に出して持たせていた盾で防ぐ。
そしてまた針が数十本、ワルキューレに襲いかかるがワルキューレよりも丈夫に作らせておいた盾でまた防がせる。
次の針には全てのワルキューレを前面に出して防いだ。
針が止み、ワルキューレを自分の側面に配置させた後にギーシュは気づいた。
霊夢が自分の目と鼻の距離にまで近づいていたことを。
「……!…ワルキュー………っ!?」
ワルキューレに指示するよりも早く、ギーシュの腹に霊夢の飛び蹴りが炸裂した。
吹き飛ばされたギーシュは土まみれになりながらもなんとか立ち上がると口の中に入った土を ペッペッ と吐いた。
「さっき殴られたお返しよ。」
霊夢は地面に降り立ちそう言った後、懐から札を数十枚取り出して勢いよく投げた。
投げられた札は空色の半透明状の薄い板になった後、扇状に広がった。目標はギーシュと周りのワルキューレである。
ギーシュは急いで全てのワルキューレ達に前面を固めさせるがここで驚くべき事がおこった。
先ほどまで針に耐えていたワルキューレ達と盾は半透明状の薄い板にあっさりと粉砕されたのだ。
誰もがその光景に驚く前に、ギーシュは咄嗟に身をかがめ。そのまま通り去った板はギーシュの後ろの城壁と激突した。
城壁は大爆発を上げて粉砕した。ルイズよりもすごい爆発である。
(な…なんだよあれは…先住魔法か?先住魔法なんて聞いてな…)
すると急に杖を持っている手に鋭い痛みが走った。
ふと上を見てみると自分の杖は目の前に立っている霊夢が右手に持っていた。
それを見たギーシュは顔を俯かせると「負けだ…。」と小さく呟いた。
それを聞いた霊夢は薔薇の造花を空高く放り上げた。
放り上げた薔薇の造花は空中で四回回転をし、ギーシュの座っている横の地面に突き刺さった。
「確か勝者は敗者に一回だけ命令を下せるんだっけ?ならねぇ…。」
霊夢は顔に少し笑みを浮かべて頭を捻った。
「あぁ…。(あんなこと言うんじゃなかった。)」
ギーシュはどんな事を言われるのか恐怖してガタガタと震えていた。
そして霊夢はギーシュと目を合わせて命令を言った。
「アンタが馬鹿にしたルイズと今まで付き合ってた女の子達に謝ってきなさい。」
「あぁ…いいよ…僕も貴族だ、約束は……え?それだけ?」
あまりにも予想外な命令にギーシュは口をポカンと開けた。
「それだけよ。なに?満足いかないの?なら一発殴らせろっていう命令にするけど?」
霊夢は悪魔の様な笑みを浮かべ握り拳を作る。
「いえいえいえ!是非謝らせてください!いや本当におねがい!」
ギーシュは首を横に振りながら大急ぎで広場を抜け出していった。
「ふぅむ…。」
オールド・オスマンは杖を振り『遠見の鏡』をしまうと横にいるコルベールに顔を向けた。
「ミスタ・コルベール。さきほどの少女が出したアレ…どう思う?わしには先住魔法に思えたのだが。」
「私もです。オールド・オスマン…しかも詠唱無しで出すとは…。」
二人は先ほどの攻撃魔法に驚かされていた。
杖はおろか詠唱無しであのような破壊力を持つ魔法を出した少女に。
「ミスタ・コルベール。もしあの少女と本気で戦ったら勝てるか?」
「戦う………ですか?」
いきなりの質問にコルベールは目を丸くさせたがすぐに元に戻して質問に答えた。
「他にもあれに似た魔法を持っていたら……正直言って辛いですね。」
それを聞いたオスマンは「そうかそうか」と言い、机で寝ているモートソグニルの体を静かに撫でた。
「しかし、あれは伝説の『ガンダールヴ』よりも凄かったですねぇ…早速王室に報告しますか?」
「いや、それはよせ。今の王室の貴族どもは戦争をしたがっておる。あんなものを見せたら奴らは戦争をしかねんぞ?」
と、そのとき部屋のドアからノックの音が聞こえてきた。
「ミスタ・コルベール、この件はわしと君だけの秘密じゃ?いいな。」
「は、はい。では失礼しますオールド・オスマン。」
そういってコルベールは部屋を退室し、代わりにミス・ロングビルが入ってきた。
「オールド・オスマン。先ほどの決闘で粉砕された城壁の修理、如何いたします?」
次にオスマンは修理代の事で頭を抱えることになった。
霊夢がルイズの部屋に帰ってきたのは夕食間近になってからであった。
決闘の後霊夢は暇なので空中散歩をしていたという。
一方のルイズは霊夢にてを振りほどかれてから不貞寝していてつい先ほど起きたと言った。
「……今日、ギーシュが謝りに来たわ。」
ベッドに座っているルイズは窓から二つの月を見ている霊夢に話しかけた。
「なんて?」
「「君に魔法の才能が無いって言ってすまない。」って……。」
「そう……。」
ルイズは一度顔を俯かせると顔を上げて霊夢にもう一度話しかけた。
「あんた、どこか怪我してない?」
「別に…何処も怪我してなんか無いけど。」
霊夢は素っ気なく答えた。
それを聞いたルイズはベッドから立ち上がり霊夢の傍によると袖首を引っ張った。
「うわっ!何するのよ!?」
「いいからちょっと背中見せなさい!」
霊夢はルイズにされるがまま服とその下に付けていたサラシの背中部分を取られた。
彼女の背中には大きくとも小さいとも言えない大きさの痣が出来ていた。それはワルキューレに殴られた時に出来た傷だった。
「全く…キュルケが言ってたのは本当だったのね…。」
ルイズは大きくため息を吐くとタンスから小さい缶を取り出すと中から独特な香りのする薬を指ですくい、霊夢の背中に出来た痣にすりこんだ。
背中に薬を塗られている霊夢は背中から急に発した痛みに目を瞑った。
「いたっ!!なによこれ…。」
「我慢しなさい、痣を早く直せる秘薬だから。凄く痛いけど…」
霊夢は「うぅ…」と唸りながらもルイズに秘薬を塗って貰った。
「ハイ終わり……。でもあんた良く耐えたわね?大の大人でももうちょっと大きい声出すけど。」
ルイズは薬がはいった缶をタンスに戻しながらベッドに座ってサラシを付け直している霊夢に聞いた。
「これくらいの痛みなら……少しくらいは耐えれるわ……いてて。」
「もう…大事な片割れに心配をさせてどうすんのよアンタ。」
ルイズが頬をふくらませながらベッドに座っている霊夢の顔を見た。
霊夢はジト目でルイズに言った。
「……アンタは自分のこと馬鹿にされて痛くも痒くもなかったの?」
それを聞いたルイズはムッとしたような顔をしてこう言った。
「そりゃ確かに腹立たしかったけど…。あんなのもう慣れたわ。」
ルイズはそう言うと椅子の背もたれに掛けておいたマントを手に取って背中に付けると指をパチンと鳴らして蝋燭を消し。
ドアを開けて霊夢に顔を向けた。
「そろそろ夕食の時間よ。というかアンタ歩ける?」
霊夢は「大丈夫」と言うとそのままスクッと立ち上がり
ドアを開けて外に出たルイズの後を付いていった。
しえ
はい、これで投下終了です。
よく見たら
>>118の書き込みが3時間前だということに気づいた。
成る程、誰もいなかったわけだ…orz
まぁこれからも冷たくも暖かくも見守っていてください。
こんな朝早くから、お疲れ様でした。
霊夢の作者GJ!
朝からお疲れ様です。
979 名前:サテライト60 ◆WqrvLf.tx2 投稿日: 2007/11/03(土) 23:54:00 ID:M.W8VKJ6
どうも、サテライト60の中の者です。
少々思うところがあって、こちらのスレから撤退させていただくことにしました。
いずれ何らかの形で16話以降を公開するつもりですが、いまのところWiki掲載分の転移等は考えていませんので、掲載分はそのまま載せていただけると幸いです。
振り返ってみれば片時でしたが、七月の終わりから今日まで、大変お世話になりました。
誰もいない、投下するなら今のうち…(5レス予定)
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2a. 報告 ルイズ・ド・ラ・ヴァリエール
わたしはルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、トリステインの由緒正しきヴァリエール公爵家の三女にして虚無の担い手。
魔法学院二年目の春。
あの日を思い出すたび、なんとも言えない気分になる。
いまだに整理ができていない。
鳥の中から現れた、レミー・デンジャー。
危険という名の使い魔の記憶を。
◇◇◇
「あ、ああ、あんた誰よ?」
なんとか喋れるようになったものの。
「いいいったい何者?アルヴィー(小魔法人形)?」
うわずった自分の声が情けない。
目の前に立つ身長20サントほどの小人は、暗い緑の変な服を着て、頭には緑の丸い兜、ブーツも緑、おまけに顔の肌まで淡い緑と、見事に全身緑色。
緑じゃないのは黒い髪と、黒い手袋だけ、徹底している。
「レミー・デンジャー、身分はUSOのスペシャリスト、階級は少佐だ」
小さな声だが、ゆっくりと、はっきりとした声で小人が喋る。
「ミス・ヴァリエールの行為、いわゆる使い魔の召喚だが、私を狙って故意に行った訳ではないことは理解している」
はっきりと聞き取れるけど、その内容はいまいち理解できない。
「転移ゲートを意図的に目標を定めて開く技術はまだ存在しない、この推測は正しいと思うが?」
疑問のくせに疑問でない。
「自己紹介を兼ねて、私が所属するUSOについて説明――」
うん。
言葉はわかるのに意味がわからないのは、別にわたしのアタマが悪いからじゃないと思う。
「――なので表沙汰にする意志もない。だが既に述べた諸要素により、ハルケギニアの為にも君には――」
調子が出て来たのか、どんどん加速する小人の口を眺めてるうちに、上の姉を思い出す。
「エレオノール姉さまみたい」
速すぎて開閉が目にも止まらなくなっていた小人の口がとまる。
「あの、もう少しやさしく説明してちょうだい…お願いだから」
エレオノール姉さまを連想したせいか、自分でも意外なくらい弱気な口調だった。
何度も質問を繰り返して、レミーという小人についてある程度わかった。
スペシャリストと呼ばれる、高い地位をもった専門家だということ。
その仕事は国々の戦争を防ぎ、犯罪を取り締まること。トリステインでいう魔法衛士隊のようなものかしら。
レミーだけでなく、シガという国の住人はみんな小さい。
けれどシガに引っ越す前の、テラという国に住んでいた先祖や、今もテラに住んでる人は普通の大きさ。
そしてシガやテラがある場所は、ハルケギニアから遠く離れた星々の間。
信じられないけどレミーはそう説明した。
星空の彼方からサモン・サーヴァントの魔法による事故で召喚されたと。
そう、事故で。
この小人はどうしても事故だと言い張る。
神聖な召喚の儀式で呼び出された使い魔のくせに。
「残念だが、君の使い魔として一生を共にすることは出来ない」
「なんでよ」
「私には何としても帰還する義務がある。それはハルケギニアにとっても重要なことだ」
「あんたの仕事より、使い魔という運命の方がよっぽど重要よ!」
「運命じゃない」
いやだ。
「外交問題にしたくない」
わたしの、はじめての魔法。
「あれは、あくまでも事故」
それをゼロにする小人を黙らせようと、乱暴に手を伸ばした瞬間。
閃光が走った。
椅子から崩れ落ちる。さっきも驚いて倒れたけど、すぐに起き上がれた。
今度は違う。からだがしびれて動けない。
先住魔法?
そうかも知れない。
とん、と軽い音。
横になった顔の前に小人があらわれる。
「すまない」
なぜか悲しそう。
謝るなら、素直に使い魔になってくれればいいのに。
「故郷のシガには…」
小人は窓を見上げて呟く。
「愛する妻と三歳になる子供が待っている」
はっとした。
心臓が早鐘を打つ。
「だから私は帰る。帰りたい」
当り前のこと。
でも、わたしはそのことに気付こうともしなかった。
「私は小さい。力尽くで隷属させることもできるだろう」
なぜ?
魔法の成功に浮かれ上がっていたから。
「でも、それで君が幸せになれるとは思えない」
今すぐレミーに謝りたい。
なのに口も舌も自由にならない。
「鳥の私への素直な気持ちを聞いてね、その程度には君のことを買っているんだよ」
やさしい笑み。
レミーはわたしなんかより、きっと、ずっと年上。
「使い魔を一生やることは出来ないが…」
見た目は若いけど雰囲気からそんな気がする。
「一生の友人にはなれる。どうかな?」
こわばって動かないわたしの顔。
だけど涙は流れてくれた。
しびれがとれてから夜がふけるまで、レミーと色々な話をした。
星の世界にも、オーク鬼みたいに危険な連中もたくさんいるらしい。
ハルケギニアが悪い奴らに目をつけられたら、
「魔法を使える貴族は全員奴隷にされるだろう」
だ、そうだ。
「仕組みを調べる為、様々な実験で大勢が命を奪われる」
星の世界にもアカデミーみたいな組織があるらしい。
「ふむ、私も気をつけた方が良さそうだな…」
うん、たしかに。
レミーみたいな小人なんて、おとぎ話の中でしか聞いたことがないもの。
鳥の魔法人形もあわせて、アカデミーにとってみればかっこうの研究材料。
エレオノール姉さまに知られでもしたら確実に「没収」されちゃう…自分でも怖くなって来た。
レミーと相談して、普段は鳥の姿で生活してもらうことに決めた。
言葉をしゃべる使い魔はいるけど、猛禽類でしゃべるのは珍しいので、なるだけ片言ですごすことに。
不便をかけてごめんなさいと謝ったら、レミーは笑って返してくれた。
「何週間も黙って暮らしたこともある。大丈夫、ルイズという友人も出来た」
そう、いつまでも「ミス・ヴァリエール」じゃくすぐったい。
わたしもレミーって呼ぶ。友達なんだし。
わたしたち二人の目標も決まった。レミーを故郷に帰すか、せめて連絡を取る。
あらためて説明されてわかったけど、これはハルケギニアにとっても重要なこと。
いつ星の世界のオーク鬼に襲われるかわからないなんて、どうにも冗談じゃない。
急いでトリステイン王家に相談すべきだと思ったけど、レミーに首を振られてしまった。
なんでも星の世界には厳格なルールがあって、星の世界を知らない地上の国にかかわってはいけないらしい。
「我々が公然とルールを破ってしまえば、星の世界のオーク鬼だって黙っていない」
だから国じゃなくて、わたしや学校の先生といった個人の力をあてにしたそうだ。
でもこれは大変なこと。
実技はてんでダメだけど、魔法の知識だけは誰にも負けないつもりだ。
そんなわたしだからこそ、自信を持って、落ち込める。
「そうか…」
召喚に対応するような、送還の魔法なんて聞いたこともない。
その言葉にレミーもうつむいたけど
「とにかく、この世界に関する知識が必要だ」
すぐに顔をあげる。
「慌てるつもりはない。何年かかろうが、目的を達成すればそれでいい」
その表情を見て、わたしは母さまを思い出した。
レミーに言ったら怒られるかしら。
でも説明したらわかってくれると思う。
マンティコア隊の元隊長、その苛烈なる意志の強さと、わたしの敬意を。
2b. 報告 レミー・デンジャー
怒ったルイズが手を伸ばして来たとき、私にはパラライザーを撃つことしか出来なかった。
避けることは簡単だが、背後には脱ぎ捨てた鳥マシンがある。
そう壊れることはないだろうが、少女であってもでかぶつだ。その力は侮れないし、孤立無援のこの世界で余計なリスクは冒せない。
だが、どさりという音を立ててルイズが倒れると、すぐに後悔の念にかられる。
己の言動を顧みて、いったい誰がこの私を弁護出来よう。
ゼロと馬鹿にされて、それでも歯を食いしばって頑張っていた少女が、生まれて初めて成功した魔法。
その喜びは如何ほどのものであったか。
それを、あろうことか、召喚した使い魔そのものに否定されたのだ。
彼女の絶望は考えるまでもない。
自分の吐いた言葉を思い返す。
「義務」
「事故」
何という無思慮な言葉か!
鳥の姿で両腕に抱かれ、レミー・デンジャー、少女の何を聞いた。
今の我々に必要なのは理性ある論理ではない。
人間としての真実の叫びだ。
たとえ身体は小さくとも、シガの小人はひとりの人間だと、ハルケギニアの少女に伝えねばならない。
この身を焦がす、シガに残した愛妻ミトラと幼い息子ボジルへの思いを。
私の見込んだ通り、ルイズは友人と呼ぶに足る心の持ち主だった。
麻痺した状態で私の為に泣いてくれたのだ。
躊躇いもせず銃撃した私の為にだ!
彼女が回復するのを待って、本格的に情報交換をする。
科学技術や星間政治に関する語彙が欠けているので、どうしても説明は曖昧にならざるを得ないが、比喩表現の多用はむしろ理解に役立ったようだ。
ハルケギニア語の知識はどうやらサモン・サーヴァントによる転送時に付与されたらしい。
あの一瞬で精神を損なわずにこれだけの情報を焼き付けるとは、いよいよ怖ろしい能力だ。
この世界のオーク鬼がどんな存在であっても――ほんの数年前、銀河を騒がしたブルー族とその哀れな奴隷を思い浮かべる。
恐怖の芋虫ホルンシュレッケや、その成虫シュレックヴルムといった化け物。
自然の中で暮らすオーク鬼とは比べ物にならない脅威だ。
彼らに目をつけられていたら、ハルケギニアはすっかり食い尽くされた死の星となっていたはず。
悪党に見つかる前にUSOとの連絡を急がねばならない。
しかし、使い魔として召喚した存在を、単純に送り返す方法は知られていないとのこと。
「普通なら野生の生物が召喚されるだけだし、呼び出した主と呼び出された使い魔は、普通なら死ぬまで一緒に過ごすし…」
なので送還なんて誰も考えない、そうだ。
予想はしていたが、がっくりとくる。
前途多難だ。
しかし私は友を得た。
状況は決して悪くない。
ふたつの月に照らされた、ルイズの顔を見て笑ってみせる。
私はレミー・デンジャー。数多の困難な任務を成し遂げた、USOのスペシャリスト。
以上、投下終了。
書いたとおり、このレミー・デンジャー、かなり自意識過剰です。
元ネタでも肥大した自我とか、劣等コンプレックスをおしゃべりで糊塗してるとか言われてるし。
腐れ縁の部下のセリフですけど。
ルイズが召喚したのは、油臭い鉄の塊だった
二つの車輪がついた邪悪な外見の物体は、ドコドコと腹に響く音をたてる
やり直しが許されない使い魔の召喚、ルイズはやむなくキスをした
爆発が起きた、鉄の機械は平民とも貴族とも異なる雰囲気の男に変身した
黒い革の上着、足にぴったりした下品な履き物、油で撫でつけた髪とモミアゲ
右手に刻まれたガンダールフの刻印は既に多く彫られた刺青に隠れて目立たない
ルイズはその男、ノートンのフェザーベッドフレームにトライアンフのエンジンを載せた
「トライトン」と呼ばれるバイクが変身した男と使い魔の契約を交わした
「俺の兄弟は鉛の多いガスが好みだ」
バイクメ〜ン(望月峯太郎 著)召喚
ルイズが召喚したのは、人類かと疑いたくなるようなケモノ似の男であった
特徴的なのは刈り上げた頭と、顔全体に漂うとある動物を連想させる外見
やり直しが許されない使い魔の召喚、ルイズはやむなくキスをした
突然その男はルイズの眼前でバク転をし、驚くルイズから距離を取る
フォーマルスーツに似たスタイルを持つ濃い青系の衣服を身につけ、革靴を履いている
ルイズはその男、ゴリラに良く似た池戸定治と使い魔の契約を交わした
「………………」
「いい加減何か言いなさいよ!」
ゴリラーマン(ハロルド作石)召喚
>>138 ハルケギニアにリベラもカロリーメイト無いから大変だな
今思った、もののけ姫のアシタカが召還されたらどうなるだろ・・・
アシタカ「あの子を解き放て!あの子は人間だぞ!」
ワルド「黙れ小僧!!」
>>140 舞台背景をのけもの姫風にする事無くアシタカを召喚しただけなら
そんな事にはならないとつまらないマジレス。
ガンダールヴ効果でルイズに惚れるかもしれないが
姫やシエスタにはまったく心動かされないと思う
のけものってw
>>140 むしろこんなんで
アシタカ「あの子を解き放て!あの子は人間だぞ!」
シルフィ「きゅいきゅい、何いってるのね。シルフィはドラゴンなのね」
タバサ「(この人もエルフの呪を?)」
ルイズ「頭が可哀想な使い魔・・・ああああ」
もののけものかよw
KOFよりオズワルド召喚
誰かしてくれねぇかなぁ
>>145 You、書いちゃいなよ!
おねだりするだけじゃ前に進めないぞw
>>147 貴様…!まさか…!?
別の作品を書いてるのかー
じゃぁ、超小ネタで今から書くわ〜
カーネフェル超期待
しかし武器外の物を武器にするオズにガンダールヴの力は有効なのかw
>>150 本人の認識しだいじゃね?
世の中にはただの砂を兵器と言い切っちゃう人もいるんだから。
ガイアか?
あの砂漠迷彩のおっさん
地面を武器にする言ってたプロレスラーも居たような。
モトベ氏の息子か弟子だっけ?
書いたので投下しますね〜
おk。
「そう怯える事もあるまい…」
ルイズが数日前に呼び出した漆黒の服に身を包んだ老紳士はそう言いながら赤いサングラス位置を直した。
ほんの些細な事で始まったギーシュとの決闘だが、すでに5体のゴーレムが破壊されていた。
平民と言う事で侮っていたギーシュも流石にここに来て相手の実力が分かったのであろうか青ざめて狼狽していた。
「く、来るな〜!!」
この時点でギーシュは、作戦もへったくれもなく自身が錬金出来る残り2体のゴーレムを盾に使う事しか出来なかった。
そんなギーシュにオズワルドは、苦笑にも聞こえる笑い声を上げながら自身の持つカードで1体のゴーレムを切り刻むのだった。
その後、老紳士はゆっくりとギーシュと最後のゴーレムへ歩み寄ると冷静で落ち着いた口調で話しかけた。
「面白いものを見せてくれたお礼に…見せてあげよう…カーネフェルの真髄を!」
目で追いきれない位の速さでゴーレムを切り刻み、真後ろに居るギーシュにもその攻撃が襲い掛かってくる。
あまりの恐怖に目を瞑り頭を抱え身を縮めるギーシュだったが、ふと攻撃が止み恐る恐る目を開けると老紳士が立っていた。
「たしか、杖を落としたら負けだったと記憶していたが?」
老紳士がギーシュの薔薇の造花の杖を手に持ち弄っていた。徐にそれをギーシュに向かって放るとそのまま背を向けるのだった。
「あちらのお嬢さんから殺すなと言われてのでね。では、御機嫌よう」
そう言うと老紳士はルイズの元へ歩いていくのだった。
(カードを持った瞬間に若い時以上に体が動いた… 実に興味深い)
ルイズは自分の召喚した使い魔に… オズワルドに心底恐怖した。ギーシュを倒した技量ではなく、今自分に向かって歩み寄ってくる時の笑みが怖かった。
投下終了です
即興なのでこれだけでスマソ
オズワルドってなんだっけ。
ぱんつ脱がせてもニーソ脱がすべからず
ニーソは避妊具だ!!
押忍ワルドなら男塾にも対応できるぜ??
ドロワーズも是非避妊具の一つにしてくだしあ!
投下したいのですが大丈夫ですか?
いつでも支援できます
構わない、道は俺たちが切り開く
168 :
罪深い使い魔:2007/11/04(日) 16:50:13 ID:t/Vz4CdH
それじゃ行きます
初投下なんで内心ビクビクですが
「おいルイズ、いつまでやってるんだよ」
「『サモン・サーヴァント』も満足に出来ないのか?」
「いい加減にしろゼロのルイズ!」
うるさいわね。黙ってなさいよ! 集中できないでしょ!!
罵声を浴びせかけられた少女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの端整な顔が怒りと屈辱で歪む。
この日彼女の怒りは頂点に達していた。
もっとも、それ自体はさして珍しいことではない。彼女にとってはむしろ怒らない日の方が珍しい。
「もう無理だって。諦めろよルイズ」
「諦める!? そんな必要はないわ、次は必ず成功するんだから!」
がー、と憤怒の形相で吼えるも、周りで見ている少年少女達は嘲りの笑みを止めない。
そんな威勢は、彼らにとってはただの負け犬の遠吠えでしかない。実際その通りだった。
「あー、ミス・ヴァリエール」
見かねた中年男性――この場では唯一の大人――が苦い表情で肩を怒らせたルイズに話しかける。
「今日のところはもうこのくらいにしないかね?」
「もう少し待ってください、ミスタ・コルベール。次は必ず呼び出して見せますから!」
ルイズは必死で訴えかけるも、男性は表情を崩さない。
同じやり取りを、すでに数え切れないほど繰り返しているからだ。
今騒いでる皆の不満もそこにあった。
「そう言って何十回失敗してると思ってんだ!」
「お前のせいで俺達全員足止め食ってんだぞ!」
既に時間が押している。もうずいぶん長い時間、皆は彼女につき合わされている。
彼らの怒りももっともなのだ。だから男性は周囲を宥めるようなことはせず、言うがままにさせている。
そして彼も消極的ながら周囲の味方だった。
しぇーん
170 :
罪深い使い魔:2007/11/04(日) 16:53:05 ID:t/Vz4CdH
「しかしミス・ヴァリエール。そろそろ切り上げないと次の授業に遅れてしまう。
なにも今日中に成功させることはないんだ。だから……」
「…………」
正論だった。それも年長者の意見では言い返すことが出来ない。
しかしはいそうですかと聞き入れてしまうほど彼女は潔くはない。
意識したわけではないが、ルイズは子犬のようにすがるような目で男性を見上げた。
「お願いします。あともう一回、もう一回だけ……」
「む……」
基本的に男は女性のこうした態度に弱い。それはこの男性も同様だったが、彼にも立場というものがある。
「……わかった。ただしこれで最後だ。次で失敗したら、君がなんと言おうと『儀式』は切り上げる」
「はい」
最後通牒。それを真剣な顔で受け止めたルイズは振り返り、何もない空間をきっ、と見つめる。
これ以上は無理。もう後はない。本当に後がない。本当に最後のチャンス。
「やってやるわよ……」
ぼそっと、まるで自分に言い聞かせるようにして小さく呟く。
「私だって……メイジなんだから!」
ルイズはこれから唱えるべき言葉を思い浮かべながら目を閉じ、ゆっくりと息を吸い込んだ。
「宇宙の果てのどこかにいる、私の下僕よ! 神聖で、美しく、そして強力な使い魔よ!
私は心より求め、訴えるわ。我が導きに応えなさい!!」
支援支援支援するんだっぜ
172 :
罪深い使い魔:2007/11/04(日) 16:55:44 ID:t/Vz4CdH
……『向こう側』に着いたのか?
旅の終わりは唐突で、そして文字通り衝撃的なものだった。
辿り着いたと思った瞬間、息が止まるほど全身を激しく揺さぶられた。
しかしなんだこれはと思うのも束の間、すぐにそれは収まったので彼はひとまず安堵する。
するべきことを果たし、彼は本来あるべき場所にたどり着いた。
悲しくはあったけど、納得はしていた。
さて、これから何をしようか。そんなことを考えながら彼はゆっくりと目を開け――絶句した。
「あんた誰?」
……人?
彼は自分のことを不遜な態度で見下ろす、マントを羽織った桃色の髪の少女を見て混乱する。
お前こそ誰だ。いや、そもそもなぜ人がいる? ここにはもう人間なんていないはずだ。
そう思いながら周囲に目を向けると、そこでもありえない光景を目撃する。
人間は目の前の少女一人じゃなかった。こちらに向かって野次らしき言葉を飛ばす、
おそらくは自分とそう歳の変わらない少年少女が自分と少女の周りをぐるりと取り囲んでいた。
顔立ちや、髪の色からして彼らはおそらく日本人じゃない。
そして彼らも目の前の少女と同じく、制服らしき服の上にマントを羽織った奇妙な格好をしている。
多分、少女と彼らは同じ集団に属しているのだろう。しかしわかることと言えばせいぜいその程度だ。
こいつらは一体何者なんだ? いや、そもそも……
「ここはどこだ……?」
地面にはやわらかい芝生。目の前には歴史を感じさせる巨大な洋風建築物。
空は抜けるような快晴で、さわやかなそよ風が体をなでていく。
まさか移動に失敗したのか。
そう思い、自分の体を見下ろすと、俺の格好は『向こう側』で着ていた制服姿だった。
間違いない。少なくともこの体は『向こう側』のものだ。
だとすると、本当にここが『向こう側』――滅びた世界なのか?
んんん?何とのクロスだ?
174 :
罪深い使い魔:2007/11/04(日) 16:58:08 ID:t/Vz4CdH
「ルイズ、『サモン・サーヴァント』で平民を呼び出してどうするの?」
「ちょ、ちょっと間違っただけよ!」
笑い転げる周囲に牙をむいて見せながら、桃色の髪の少女、ルイズは内心焦っていた。
数え切れないほどの失敗を繰り返してようやく成功したかに見えた『サモン・サーヴァント』で
呼び出されたのが人間――おそらくはどこぞの平民――だったのだから無理もない。
おまけに当の平民は呼び出されたショックからか、ぽかんとした表情で自分や周囲を見回し
「ここはどこだ」などと呟いている。
なによコレ。願いと全然違うじゃない!!
いくらなんでもこれはあんまりではないか。こんなものが成功と言えるのか。いや、言えるわけがない。
ルイズは自他に対する怒りに身を震わせながら、感情のままに吼えた。
「ミスタ・コルベール!」
目の前の少女が何事か叫んでいる。よくわからないが人の名前だろうか?
その予想は当たったようで、人垣の中で唯一の大人らしい中年の男が一歩前に進み出た。
この男も大仰なマントを羽織っている。
「なんだね。ミス・ヴァリエール」
「あの! もう一回召喚させてください!」
少女は何か切羽詰った様子で男に捲くし立てた。
しょうかん? 召喚か?
「それはダメだ。ミス・ヴァリエール」
「どうしてですか!」
「決まりだよ。二年生に進級する際、君たちは『使い魔』を召喚する。今、やっている通りだ」
二年生……まあ年頃からしてこいつらは学生なんだろう。すると目の前の少女は……中二?
しかし使い魔というのはなんだ? 少なくともそこらの学生の口から自然と出るような言葉ではない。
「それによって現れた『使い魔』で、今後の属性を固定し、それにより専門課程へと進むんだ。
一度呼び出した『使い魔』は変更することはできない。何故なら春の使い魔召喚は神聖な儀式だからだ。
奸むと好まざるにかかわらず、彼を使い魔にするしかない」
「でも! 平民を使い魔にするなんて聞いたことがありません!」
こいつらは一体何を話し合っているんだ?
一段と大きくなった笑い声を他所に、彼は目の前で行われるやり取りに不気味なものを感じる。
誰もいないと思っていた『向こう側』に人がいたことは素直にうれしい。たとえそれが赤の他人でも、だ。
だがこいつらの会話は異常だ。何かがおかしい。
召喚、使い魔、平民。それらの単語になにか悪い意味が隠されているような気がしてならない。
周防達哉 支援
176 :
罪深い使い魔:2007/11/04(日) 17:00:45 ID:t/Vz4CdH
「これは伝統なんだ。ミス・ヴァリエール。例外は認められない。彼はただの平民かもしれないが、
呼び出された以上、君の『使い魔』にならなければならない。
古今東西、人を使い魔にした例はないが、春の使い魔召喚の儀式のルールはあらゆるルールに優先する。
彼には君の使い魔になってもらわなくてはな」
「そんな……」
少女はがっくりと肩を落とし、それ以上は反論しなかった。
どうやら話し合いは決着したらしい。おそらくは、少女が望まない方向で。
「さて、では、儀式を続けなさい」
「えー、彼と」
「そうだ。早く。次の授業が始まってしまうじゃないか。君は召喚にどれだけ時間をかけたと思ってるんだね?
何回も何回も失敗して、やっと呼び出せたんだ。いいから早く契約したまえ」
ここでようやく少女はこちらへと向き直った。
さて、一体何から聞くべきだろうか?
「ねえ」
こちらが何かを言う前に、少女の方から話しかけてくる。
歳は私とそう変わらないわよね。顔は……まあまあかしら。でも変な髪形。きっとセンスはゼロだわ。
……ああもう、ゼロなんて言葉思いついちゃったじゃない! 本当憎たらしい平民ね!!
「あんた、感謝しなさいよね。貴族にこんなことされるなんて、普通は一生ないんだから」
平民が怪訝そうな表情を浮かべる。
何? まだ状況を理解していないの? まったく、血の巡りの悪い平民ね。これは躾に苦労するかも。
ああ、なんだってこんなことに……
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
五つの力を司《つかさ》るペンタゴン……」
既に頭の中に完璧に暗記されている呪文を紡ぐ。これを唱える相手のことは、今は考えない。考えたくない。
「この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
さて、さっさと済ませよ。
私は呪文を唱え、平民に……って、なんであとずさるのよ!
なにをするつもりだ? いいからじっとしてなさい!
ここはどこだ? 黙りなさい!
駄目だ。まるで会話が成り立たない。
仕方なく俺は、なぜかにじり寄ってくる目の前の少女を抑えるため肩に手を置こうとしたが、
少女はそれを掻い潜って懐に潜り込んできた。
「お――」
言葉は、最後まで紡がれなかった。
五つの力を司《つかさ》るペンタゴン……」
つかさ→つかさど
支援
罪?罰?支援
179 :
罪深い使い魔:2007/11/04(日) 17:03:15 ID:t/Vz4CdH
「終わりました」
契約の儀式――キス――も終わり、私は目を白黒させている憎き平民からコルベール先生へと向き直る。
「『サモン・サーヴァント』は何回も失敗したが、『コントラクト・サーヴァント』はきちんとできたね」
先生は賛辞の言葉を並べてくれるけど、私はそれを素直に受け取ることができない。
本来なら『サモン・サーヴァント』だって一発で成功して、今後ろにいるようなのじゃない、
もっとちゃんとした使い魔を呼び出せるはずだったのに……
相も変わらず私を侮辱する周囲に苛立ちの言葉をぶつけながら、私は実家のことを考えた。
きっと呆れてしまうだろう。いや、呆れるならまだいい。これを機に私を学校から引き戻すかもしれない。
もしそうなったら……
「ぐっ!?」
見ると、たった今使い魔にした平民が苦しそうにうずくまっていた。
「すぐ終わるわよ。待ってなさいよ。『使い魔のルーン』が刻まれているだけよ」
おそらく何が起こっているのかわからないだろう平民に向かって私は優しく説明してあげた。
ただ、若干声が荒立ってしまったのはこの際仕方がないわよね。
平民は聞こえているのか、いないのか膝立ちの姿勢のまま動こうとしない。
けれど、ルーンが刻み終わると平民はすっくと立ち上がって自分の左手のルーンをしげしげと見つめ始めた。
あ、こいつ結構背が高い。顔も良いからとりあえず従者としてなら使えるかも。
……使い魔としては論外だけど。
「珍しいルーンだな」
いつの間にか近づいていたコルベール先生は私の使い魔に刻まれたルーンを物珍しげに見て、
なにやらスケッチを始めた。
けれど私にはどうでもいいことなので放っておく。というかあんな使い魔見たくない。
「おや?」
コルベール先生から疑問の声が上がる。
支援
支援支援。支援支援。
182 :
罪深い使い魔:2007/11/04(日) 17:05:10 ID:t/Vz4CdH
「右腕にもルーンが? いや、これは刺青か」
見ると、コルベール先生は平民の右腕の袖を捲り上げていた。
たしかに手首から腕にかけて黒い紋様が刻まれている。変なの。
「ん?」
なぜか平民は自分の刺青を見て驚いたような表情をしていた。
刺青なんて自分でつけたものでしょ。一体なにを驚いてるのよ! バッカみたい!
あーもう本当イライラする!
ていうかその刺青の形、気持ち悪いわよ! まるで――
「誰かに腕を掴まれてるみたい」
私の言葉が聞こえたのか、平民はビクリと体を震わせて俯いた。
なに? ショックだったの? 実際そう見えるんだから仕方ないでしょ。
ていうかこいつ扱いにくそうね。えーと……。
……そういえば、まだ名前を聞いてなかった。
「あんた、名前はなんて言うの?」
私の問いに平民は妙に辛そうな顔をして、まるで声を搾り出すようにして答えた。
「……達哉。周防達哉(すおうたつや)だ」
宇宙の果て、異世界の彼方からやってきた下僕。神聖で、美しく、そして強力な『仮面』を有する使い魔。
この時点では知る由もないが、少女の心よりの求めはある意味で叶えられたのだ。
以上、「ペルソナ2」より「向こう側の周防達哉(罰ED後)」を召喚しました。
>>177 すいません、そこ直しておいてください
「俺がガンダムだ」
「ガンダム?変な名前ね」
00の刹那(プゲラ)が召還されたら
「それが何とかビーング」とか言われてもルイズ困っちゃう。
今日から俺はの三橋召還希望
誰か邪気眼を召喚してみてよ。
>>175 アレだけの情報でタッツィー(by.みかべる版お兄ちゃん)と判ったアンタ凄ぇよ
>>127 遅レスだが
霊夢の戦い方が不自然
ワルキューレが突っ込んでくるのが見えてるんだから飛んで弾幕張ればいいだけ
わざわざ地上戦を行う必要が無い
>>190 それは自分も驚きました
わかる人にはわかるだろうと思ってましたが、
わかる人がリアルタイムで見ていたということに
ペルソナは3だけ知名度高くて1〜2はあまり語られませんからね
>>190 『罪深い』『滅んだ』『向こう側』で大体予想がついた
当たるとは思わなかったけど。
ーーーVSワルド
「ユキビタス・デル・ウィン・・・」
「術に頼るかザコどもが!」エアプレッシャー→絶望のシリングフォール
「り・・・理不尽だ・・・」
ーーーVSミョズニトニルン
「行け、ガーゴイル」
「アイテムなぞ使ってんじゃねえ!」断罪のエクセキューション→ルナシェイド
「ジョセフ様−−−−−−−」
ーーーオマケ
「僕はメイジだ。だから魔法でた・・・」
「貴様等に俺と戦う資格はぬぇぇぇぇぇえい!」チープエミリネイト
穴子を召喚させてみようかと思ったけど・・・敵が全員カウンターに引っかかるのであきらめた。
>>191 ご指摘有り難うございます。
ギーシュとまともに戦わせたいと思ったのですがやっぱり不自然でしたか。
>>191 萃夢想をイメージすればそんなに不自然じゃないぞ
魔理沙とかふみことかニナとかチャチャとかの魔法少女を召喚希望。
ちょっと小ネタ
レナ「ルイズちゃんとお話してた人って誰?」
ルイズ「し・・・知らない人よ!」
レナ「知らない人がなんでルイズちゃんに用があるの?」
ルイズ「わ・・・私が知りたいわよ!!」
レナ「じゃ、何の話をしてたの?」
ルイズ「あんたとは関係の無い話よ、いい加減に・・・レナ「嘘だッ!!!」
・・・・ごめんなさいごめんなさいごめんなさい
>>197 田中ぷにえとかひらめいたけど
ルイズが死にそうだな…
>>198 ゼロ魔本編でいうと、どの辺のシーンに入るのかね?
>>197 自分が見たい作品は自分で書いた方が良い。
>>200 たぶん、ワルドとの婚約話・・・ワルドが殺される(レナに)想像しただけでグロい・・・
投下してみたいのですが大丈夫ですか?
「いいよなぁレナは。フランカーに乗れて」
って違うか。
毎度毎度だが、投下してもいい?じゃなくて
何分に投下するよ!ぐらいのでこいよ。
カモン!
初投稿で緊張…
それでは「メタルギアソリッド」シリーズからソリッドスネークを召喚
【SnakeTales Z 蛇の使い魔】
―2010年 ニューヨーク州 マンハッタン某所 フィランソロピーアジト―
ソリッドスネークはオタコンの新型VRトレーニングを受けていた
「こちらスネーク。オタコン聞こえるか?」
『良好だよスネーク。じゃあ今回のミッション内容を伝えるね
今回のミッションはあの2009年の事件《ビッグ・シェル占拠事件》を体験してもらうよ』
「ビッグ・シェル?アレの復習をしろと?」
『違う、雷電の方を体験してもらおうと思ってね』
真っ暗な空間にVRのフィールドが構築されていく
一瞬で一年前の《ビッグ・シェル シェル1A脚海底ドッグ》が完成した
『じゃあ装備の説明をするね。今回はおまけとして無限バンダナだけ持たせておいたよ
後は現地調達だ。それじゃあがんばって!』
無線が切れる
スネークは潜入を開始した
《シェル1 EF連絡橋》
PiPiPi
オタコンに無線をかける
『状況はどうだい?』
「ああ、さっき『俺』からソーコムとタバコを受け取った
あとM9、M4、AKS-74Uを手に入れたぞ」
『ふーん。システムの方はどうだい?何か不具合は?』
不具合…なのだろうか?
気になることはあった
「オタコン、F脚倉庫にステルス迷彩が落ちていたんだが、仕様か?」
『そんな馬鹿な!?』
なにやらぶつぶつ言っている
「…オタコン、俺に何か隠していないか?このプログラムはどこで手に入れた?」
『…実はこのプログラムはnyで手に入れたんだ』
よくそんなものを信用できたものだ
「まあ大丈夫だろう。任務を続ける」
『それじゃ、がんばって』
無線を切る
幸いここには敵がいないらしい
シェル1中央棟に潜入するべく橋を渡る
この橋が落ちるのは前の潜入で知っていた
走り抜ければ問題はない、と思っていたのだが
「!?」
目の前の透明な壁のようなものに激突した
「うぉおおおおおおおおお!!!!!!!」
その直後足元の床が抜け落ちスネークは海面へまっさかさまに落ちていった
「宇宙の果てのどこかにいる私の僕よ! 神聖で美しく、そして強力な使い魔よ!
私は心より求め、訴えるわ! 我が導きに、応えなさい!!」
杖を振り下ろすと閃光と共に爆発が起きる
さてこれでこの行為をルイズがするのは何回目になったか
もはや誰も数えていないだろう
その場にいる誰もが今回も失敗かと思ったとき煙の中に人影が
もしやと思い駆け寄るルイズ
そこには―
「なに、これ?」
筋肉盛り盛りのマッチョマンが倒れていた
「…ここは一体…?」
目を覚ますとそこは見知らぬ世界でしたといった光景が広がる
自分は確かに海に落ちたはずなのだが何故だか陸の上にいる
空は相変わらず青く晴れていたが、地面は人工物ではなく芝だ
「VRの故障か…?」
オタコンに連絡が付かない
「ミスタ・コルベール!」
目の前の桃色の髪の少女が中年の男に捲し立てる
「もう一度召喚させてください!」
「それは出来ない」
「どうしてですか!?」
引き下がらない少女
「決まりなんだ。召喚した使い魔で今後の属性を固定しそれにより専門課程に進む
一度呼び出した使い魔は変更できない。なぜならこの儀式は神聖なものだからだ
好むとも好まざるにもかかわらず彼を使い魔にするしかない」
話についていけない
オタコンの見ていたアニメに似たようなものがあった気がするが忘れてしまった
「でも平民を使い魔にするなんて聞いたことがありません!」
「これは伝統なんだ、ミス・ヴァりエール。例外は認められない」
口を挟めそうにも無くスネークは置いてけぼりにされてしまった
「そんな…」
私の使い魔がこんな…オヤジ?
「では、続きを」
「…はい」
オヤジに向き直る。…やだもう。帰りたい
「感謝しなさいよね。貴族にこんなことされるなんて普通は一生無いんだから」
さっさと済ませよう
呪文を唱える
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン……」
怪訝な顔でこちらを睨むオヤジ。ちょっと怖い
「この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
以上「メタルギアソリッド」シリーズよりソリッドスネークでした
短くてすいません
スネークktkr!あとGJ。
しかし無限バンダナとはまた…
性欲を持て余す乙
>>196 言いにくいけど萃夢想をイメージするなら
ギーシュの後ろにテレポート→とび蹴りで終わりだと思う
無限バンダナにステルス迷彩って無敵じゃねーかwww
>>212 コルベール先生ならソーコムやAKの弾を作ってくれると思うんだけどなぁ…
でも無理そうだ。
公式チートアイテム装備かw
>>213 先生は人を傷つける武器とか嫌いだろうから拒否するかも。
でも麻酔弾なら妥協してくれるかもしれん。
段ボールマニアのスネークさん乙
とりあえず頑張ってツチノコとか喰いながら生きて下さい(それ違うスネークさん)
>>191決闘自体が不自然だから今更って感じ。
>>195原作のストーリーをなぞる為にクロス・原作のキャラクターを変えるなよな
身長182cm、体重75kg。職業は傭兵、
もしくは元特殊部隊(FOXHOUND)隊員。
日本人とイギリス人の血を引くとされている。
IQは180で、6ヶ国語に精通している。
1972年、恐るべき子供達計画によって誕生。
19歳前後の時にグリーンベレー隊員として戦った湾岸戦争が初陣とされる。
まーナイフ込みのCQCだけでも充分だろうよ。
正面からの戦闘より、忍び寄っての暗殺がMGSの醍醐味だし。
ラブ時空かららぶやん召還
「愛の天使 ラヴやん 見~参ッ!!!」
ワルドとかワルドとかワルドとか
「うーーーーん ルイズちゃん 今日も モエモエ〜」
(こいつ駄目人間だあーーーーーーーーー)
マルトーとかマルトーとかマルトーとか
「お・・・オッチャン 私 この牛たたき・・・!!」
「よし待ってな」
『この卑しい家畜!! 動物め!!動物め!! アニモー!!英語だとアニモー!!』
ビシ ドシ モー モー モー
シ ー ン
サンホラの領主様ことシャイターンを召喚
契約の接吻で残酷ナ永遠トイウ名ノ苦イ毒を喰らう覚悟もないのに喰らってしまう
よって人として死ぬことが許されなくなるルイズ
我コソガ君タチノ敵ダとレコンキスタに特攻するシャイターン
聖戦の保守
>>220 どっかでマルコメが召喚したって小ネタを見た気がするw
避難所だったかな?
確か、マルコメがカズフサばりのマッチョになって云々ってw
>>222 マッチョマルコメ……想像できないwwww
キスがコントラクトによるメリットを帳消しにしてなお余るデメリットを生むキャラクターって何があるかな
そこそこ前の方でキスを攻撃手段にしてるキャラクターが話題に出た気がするんだが……
鬼太郎のネズミ男とかだとキスか接近するだけで致命傷を受けそう。
キスで思い出したが
H×Hでインスタントラヴァーとかいう能力持ってた奴居たな
序盤に
ねずみ男は体臭が武器なだけで、能動的に発そうとしなければ死ぬほどではないとか
ルイズが召喚したのは、とある虚無の呪文が書かれた羊皮紙だった
ルイズが、その呪文を唱えるとピンク色の髪が、金色に染まったと伝えられている…
>>224 バスタード初期のダークシュナイダーとか
>>224 映画「バットマン&ロビン Mr.フリーズの逆襲」にそんなキャラが居たような…
植物女???
後は「甲賀忍法帖」
ふたりぼっち伝説よりガイコツ
「ふざけるなっなんで俺が小娘ごときパシリにならねばならんのだっ」
「なんだよ その胸!! ケンカ売ってんの!!あるんだか無いんだかわかんねぇんだよ!!もっとその胸を活かしてだな・・・こう男をグッと思わせるしぐさの一つも・・・」
「・・・ま いいや んなことおまえにいってもな」
ペッ
「殺ァ!!!!!!!!」
ドボクゥ
>>224 X-MENのローグ。
キスするか触れるだけで記憶と能力を奪うね。
召還教師リアルバウトハイスクールより
南雲慶一郎
カムイの拳極めてアーリマンになっちまうくらいだから
これにガンダールブ補正が加わったら
ほぼ無敵じゃないの
>>224 鉄仮面・マイロー=スタースクレイパー
体に触れた生物は無条件に透き通った結晶体になる。
ふと始祖ブリミルは遥か昔に光の国からやってきた銀色の巨人という電波が
>224
ミダス王(ギリシア神話)
触れるもの全て黄金になる
うる星のランちゃんは、キスして生命力(若さ)を吸い取る技を持つ
鬼族なのかどうか分からんが…
投下したいんだけど、空いてる?
そうかあ
世の中には触れるだけでアウトなんてキャラクターもあるんだったな
ミダス王は飲み物すらドロドロの黄金に変わるから何も飲み食い出来ないんだよね確か
では投下。
アルヴィーズの食堂の上の階が、大きなホールになっている。舞踏会はそこで行なわれていた。
着飾った生徒や教師たちが、思い思いのテーブルで豪華な料理を肴に、歓談している。
「飲もう、大いに飲もうではないかコルベール君!」
「あなたがセクハラしすぎたせいでしょうが!」
「え〜、そりゃちょっとは羽目を外し過ぎたかなとは思うが……ま、しょうがないよね」
「しょうがない、じゃないでしょう!! そこで開き直らないでください……ああ、ミス・ロングビルぅぅぅ」
「ええい、私だって悲しいんじゃ。飲まなきゃやっとられんわい!」
なにやらパーティーの雰囲気にそぐわない人間が二人ほどいたが、華やかな雑音が全てを飲み込んでいった。
それぞれが満喫している中、ホールの壮麗な扉が開き、本日の主役である三人が姿を現す。
門に控えた呼び出しの衛士が、ルイズ、キュルケ、タバサの到着を告げた。
早速、ある者は武勇伝を聞くために、またある者はダンスに誘うために、彼女たちの周りに群がる。
とくに、あのフーケを撃退したという事で、注目株になったルイズに、今まで散々ゼロだなんだと馬鹿にしていた男たちが、群がる群がる。
最初は、生まれて初めての事態に多少興奮気味だったルイズだが、辺りを見回し、アオの姿がないことを確認して、落胆したように肩を落とした。
今朝から、一度も彼の姿を見ていないのだ。
キュルケも、アオを探していたが、男たちに囲まれるとそちらの相手に大忙しとなる。
ドレスの裾を引っ張られ、ルイズが振り向くと、口をもごもごと動かしているタバサがいた。いつの間にか、大量の料理を盛った大皿を手にしている。
タバサは口の中の物を飲み込むと、短く尋ねる。
「彼は?」
「知らないわ。私が聞きたいくらいよ」
「……そう」
じっとルイズの顔を見た後、タバサは踵を返して、テーブルの料理と格闘を開始した。
近寄りがたい雰囲気のためか、彼女の周りには人が集まらない。
呆れたようにその様子を見ていたルイズだったが、その先にシエスタの姿を見つけ、なんとか人垣を押しのけながら、彼女に近づいた。
「ねえ、ちょっと、シエスタ」
「これはこれは、ミス・ヴァリエール。なにか御用で?」
シエスタがスカートの裾を持ち上げながら、首をかしげる。
「あんた、アオがどこにいるか知らない?」
「アオさん?」
シエスタの片眉がぴくりと動く。
それに気づかず、ルイズが言葉を続ける。
「そう、わたしの使い魔。またあんたたちの手伝いをして」
「知りません!」
突然、不機嫌になったシエスタは、ルイズの言葉を遮ると、そのまま足早に去っていった。
「な、なんなのよ」
そのあまりの剣幕に、呆然と見送るルイズ。
その隙に、追いついた男たちに再び囲まれてしまう。
一体どこにいるのよ、あいつは!!
ルイズは心の中で悪態をつきながら、愛想笑いを浮かべつつ、しつこく口説こうとする男たちをあしらう。
そんな彼女の瞳に、バルコニー越しの空が映った。
そこに誘うように淡く輝く、青い光を。
支援
「…五百九十九、六百」
アオは、自身が召喚された時の広場、そこに生える木の、枝を使って懸垂をしていた。
「よう、相棒……いいのかよ、舞踏会に行かないでさ」
木に立てかけられた抜き身のデルフリンガーが、遠慮がちに言った。
枝から手を離して地面に降り立つと、アオはそのまま、草むらに寝転がる。
息が荒い。
「は、はは、情けない。この程度で息があがるなんて」
深呼吸して呼吸を整えると、ものの数秒で、平時のそれに戻る。
「なあ」
「デルフ、君ならわかっているんだろ。僕に、ああいった所は、似つかわしくないって」
「まあ、な」
そのまま、デルフは押し黙る。
アオは瞬きし、今更この喋る剣が自分を心配していることに気がついた。
「デルフ」
「あん?」
「ありがと」
「……おでれーた。礼を言う使い手なんざ、初めてだ」
デルフは、『おでれーた、おでれーた』と繰り返した後、溜め込んでいた思いを口にした。
「でもよ、相棒。なんだってまたこんな事を始めたんだ?」
「こんな事って、訓練の事? ……僕が弱いからさ」
「弱いだって!?」
なんの冗談かと、デルフは思った。
「ああ、僕は弱い。いや、弱くなった。昨日はそれを、とくに痛感したよ。あの不様、鈍っているなんてもんじゃなかった」
そう言うとアオは、自分に唾を吐きたくなる気分に顔をしかめる。
本人が強くなろうとしているのだ。わざわざそれに、水をさす必要はない。
だが、それでも、デルフは言わずにいられなかった。
「なあ、相棒。気を悪くしないで聞いてくれ。お前さん……心が死んでないか」
アオは答えず、目を閉じた。デルフは言葉を続ける。
「お前さんは、笑うし、泣くし、怒りもする。けどな、全部薄っぺらいんだ。芯はまるで震えちゃいねえ」
だからこいつは、人の枠を超える強さなのに、歴代の使い手で最弱だ。
勿体ねえ。
「……すごいね、デルフは。うん、そうだね、そうかもしれない。僕はあの時、あの娘が死んだ時に、死んでいるんだろうな。自分ではわからないけどね」
そう語っているときでさえ、アオの内面は、寒気を覚えるほどに静かだった。
それがデルフに、握られてなくも伝わってくる。
勿体ねえ、本当に勿体ねえ。
だからだろうか、ぽろっと言ってしまった。
「元の世界に帰りたいとか、思わないのか?」
「帰り、たいの?」
それに答えたのは、アオではなかった。
「げ、娘ッ子」
デルフがルイズに気づき、『おお、馬子にも衣装じゃねか』と、慌てて取り繕う。
ルイズはそれを完全に無視して、泣きそうな顔で、アオを見ている。
アオはゆっくりと目を開けると、上体を起こして、ルイズを見上げた。
「やあ、ルイズ。そんな顔をしていたら、せっかくの衣装が台無しだよ」
「誤魔化さないで」
涙でにじむ鳶色の瞳に、アオは、自分の姿を見た。立ち上がると、ルイズを正面から見据え、優しく微笑む。
「僕は、君の使い魔だ。それが答えだよ」
ルイズに、そして、瞳に移る自分に言い聞かせるように、迷いなく答える。
それは、宣言であり、誓約だった。
「そうね、そうよね。あんたは、わたしの使い魔なんだもんね!」
ようやく、ルイズに笑顔が戻る。
「舞踏会はどうしたの?」
「相手がいないのよ。つまんないから、抜け出しちゃった」
「それは、……ここの男たちには、見る目がないね」
ルイズは顔を赤らめると、すっと手を差し伸べた。
「ねえ、踊ってくださらない。せっかくこんな格好なんだもの、踊らないのはもったいなくて」
アオは困ったように、その手を取ることを躊躇する。
「せっかくのお誘いはうれしいけど、ダンスなんてしたことないんだ」
「もう」
強引に、アオの手を取る。
「いいじゃない下手でも。どうせ見ているのは、あの月と、そこの駄剣ぐらいよ」
そう言って、軽やかに歌いながら踊りだす。
アオは諦めたように首を振ると、ぎこちなくだが、ルイズに合せて踊りだした。
「ねえ」
「なんだい」
「なにをしていたの?」
「鍛えていたんだ、僕は弱いからね」
「ドラゴンになるために?」
アオはちょっと驚いた顔をすると、すぐに嬉しそうに笑った。
「はは。まだまだ、ただのトカゲだけどね」
ルイズは少し俯いた。
だが次には、思い切ったように顔を上げ、言ったのだった。
「なら、私もなるわ! ねえ、二人でなりましょうよ。でかくて飛んで火を吹くやつに!」
そんな様子を眺めていたデルフがこそっと呟いた。
「おでれーた! 主人のダンスの相手をつとめる使い魔なんざ初めて見たぜ!」
そして思うのだった。
それでも僅かだが、たしかに使い手の心が震えた時があったのだ。
そこにあの娘ッ子の、主人の存在があった。
二つの月の月明かりに照らされ、二人だけの舞踏会は続く。
「なあ、相棒。おめえが、この世界に呼ばれたのは、救いだったのかもしれねえな」
終了。
短いですが、とりあえずのエピローグです。
ぽややんの方、投下乙でありますッ!
エピローグということはもう終わっちゃうのかー・・
間に合うか支援
>>249 とりあえず、切もいいことですし、しばらくROMります
ワルドをフルボッコにするまでは続きを書きたいですが、
文才の無い自分にそこまで持っていけるかどうか。
是非フルボッコワルドが見たかとです。
いつか戻ってきて下され。
GJでしたー
>>250 なるほど、早とちりして申し訳ない。
我らは待つ事には慣れておりまするが故、どうぞごゆるりと
準備完了! 当方に投下の用意あり!
支援完了!
ヴェストリの広場、そこは昼であってもあまり日の差さぬ場所。
特に何かない限り人の寄り付かないような場所である。
しかし今、そこには人と人ならざるものが。
「ワルキューレッッ!!」
掛け声と共に七体の青銅の戦乙女が疾駆する。
その先にて待ち構えるのは一人の拳士にして剣士である二闘流の少年。
両の手に青銅の剣を握り締め相手の挙動を見据える。
「―――」
初撃、槍を構えた三の戦乙女が己めがけて突きを放つ。
「ふっ!」
槍と槍の合い間を一寸で避ける九朔、隙間を縫うように駆け出す。
姿勢は極限まで低く、槍の次撃は頭上を掠めるに留まる。
「刃ッ!」
すれ違い様、三体のワルキューレの胴に剣撃が叩き込まれる。
崩れる青銅の体、地面と衝突すると同時にそれは薔薇の造花に還る。
「次だ!」
今度は真逆、迫る九朔に対して三体の戦乙女が待ち構える形。
槍三体に剣一体、先陣を切るように大剣のワルキューレが一歩を踏み出し
九朔へと構える。
人では到底扱えないであろうその鉄塊をかつぎ、ワルキューレは
標的を叩き潰さんと振り薙ぐ。
大剣は鎚、当たればただではすまないだろうその剣の軌道上にあった
九朔の身体は既になく、次の瞬間には空中へと舞い上がっていた。
無防備極まりないその体勢、見計らうように二体のワルキューレが
九朔へと狙いを定めて槍を突き出す。
肉薄する鋒鋩、しかし穂先は九朔の身体へとめり込む事はない。
槍の切っ先は両手に握られた剣に添えられ逸らされ流される。
振り薙いだ大剣は大地に深く抉りこまれ、槍は見当違いの方向に。
完全無防備の体のワルキューレは反撃敵うことなく双振りの剣に沈んだ。
「…………」
「…………」
「…………」
「…………さて」
薔薇の造花が振られ、地に伏したワルキューレと九朔の手に握られた
剣が薔薇の造花に還った。
「言ったとおり攻め方を少し変えてみたがどうだったかいクザク?」
「ああ、充分に上等の出来だ。すまぬな、我の都合ばかりで」
「いやいや構わないさ。こうやって君の鍛練に付き合うのも僕の魔法の
訓練にもなっているしね」
互いに笑みを返しあい、ギーシュと九朔は最近こしらえたばかりの木椅子
に肩を並べて腰掛ける。
あの決闘からおおよそ2週間、九朔の鍛練に今ではギーシュが参加していた。
最初のきっかけは、モンモランシーによりミンチより酷い目にあったと
人づてに聞いていたギーシュがここに顔を出したのが始まり。
場を改めての謝罪ついでに手伝いを申し出てきたので素直に是と返事を
返してみるや否や気づけばこんな事に。
もっとも、自分自身相手となる者がいれば実戦に近い形の鍛練ができるので
歓迎はしているが。
「しかし汝、授業をさぼっていて良いのか? 我の鍛練の手伝いをしてくれる
のは良いが」
「はっはっは! なあに、言ったとおり授業に出ているよりこうやって
実践する方が有意義さ。どうせ教室にいても寝てるだけだしな!」
「汝なぁ……」
そうやって力強く断言して肩をたたくギーシュの瞳はとても爽やかである。
あまりにも爽やか過ぎてまるで何も考えてないように思える、というか
正直なところ何も考えてないのだろう。
「まぁ、我には関係のないこと故深くは突っ込まぬが……」
そこまで言って九朔は考え直す。
何も考えていないこの能天気な面を見ていると、先行き将来ふくめて前途多難な
人生を送りそうなこの金髪の少年の未来を微かながらも芽生えた友情に
あえて憂いてみたくなった。
「強く生きろ、ギーシュ」
「ん?」
その言葉の意に気づく事はなく、ギーシュの笑顔はひどく幸せそうだった。
*******
「さて、どうしたもんかね」
通算おおよそ三十回目となる宝物庫にかけられた錠前への錬金の失敗に
ミス・ロングビル―――否、土塊のフーケは疲れた溜息を漏らした。
想像以上に強固な固定化の魔法は幾度の錬金にもまったくビクともせず、
傷一つするすらつく形跡がない。
破壊の杖を狙ってこの学院に忍び込んで結構な時間が経つが、やはり自分の
力量だけではどうにもできないという事なのか。
「まったく、とんだ曲者だねこの『固定化』はさ」
忌々しげに舌を鳴らしそこを離れようとするフーケだが、しかし、目の前に
現れた一人の女にその動きは止まる。
「さすがはスクエアクラスの魔法。巷に名の轟く貴方様でもやはり無理
でございますかね?」
メイド服に身を包んだその女の肌は褐色、髪は色濃い金。薄っすらと開いた
唇の奥から覗く色は血のような赤。
その女の姿にフーケは苦々しい表情を浮かべる。
「言ってくれるじゃないかニアーラ。それにここを何処だと思って……」
「まあまあご心配なさらずに。それに、今の時間ここに誰も来ること
などありはしませんさね」
フーケを気にかけることなく、ニアーラと呼ばれたメイドは笑みを浮かべて
フーケに近づく。
この女、ニアーラとフーケが出会ったのはほんの偶然、魔法学院にあるという
『破壊の杖』を手に入れるための算段をしているちょうど最中に
彼女が近づいてきたのだ。
それから事が恐ろしいほど順調に進んだのも偶然だったのだろうか。
オスマンをたぶらかし学院へ勤められるようにお膳立てをしたのも、ここでの
自分の振る舞いを怪しまれないようにしているのも、何よりオスマンが来ると
いう酒場を教え、そこの給仕の仕事を斡旋したのも全て彼女。
彼女の目的は知らない。
ただ、土塊のフーケである自分の仕事を手伝いたいだけとしか言わない。
なぜ魔法を使えもしないこの平民の女を信用しているのかフーケ自身も良く
理解できてはいなかったが、どういうわけか彼女を疑う事はなかった。
もちろん、今彼女が言った『だれも来ない』という何ら確実でもないその
言葉さえもフーケは信じている。
「………まあいいさ。で、こんなところまで来て何のつもりだい?」
「いえね、ここまで堅牢な守りを誇る宝物庫を破るにはもう少し策を練る
必要があるんじゃないかと思いましてね」
支援
「策ならこの前からずっと練ってるさ。だけど、この魔法を破る方法なんて
ありゃしないね。私はトライアングルでもスクエアクラスに匹敵するメイジ
だと自負してるが、それでも無理さ」
「そうですかね? 私にゃ、まだまだやれる余地はあるかと」
「はっ。あんたは知らないのかい? トライアングルクラスにスクエアクラス
の魔法が破れるわけが―――」
そう最後まで言いかけてフーケの唇にニアーラの人差し指が添えられた。
褐色の肌の掌は白魚のように真白で、そのコントラストが艶やかに日の光
で彩られる。
その人差し指の向こう、女の自分でさえも魅入ってしまいそうなほどの
妖艶さを秘めるその瞳がフーケを射抜く。
「まあまあ、少しちょっとばかりお聞きくださいな。同じ魔法を使って駄目ならば
もっと別の魔法を使ってみようじゃないですか。系統魔法じゃないもっと
別の、嗚呼、それはもっと強力なそれを使ってみようじゃないですか」
謳うように、嘲笑うように、ニアーラの言葉がフーケの周りで渦巻く。
ニアーラの言葉を聞くたび、フーケは言いようのない心地よさを感じていた。
初めて出会った時も、言葉をかわすときも、今、この時も。
彼女の言葉を信用してしまうのは、恐らくもなくこれが原因だった。
「先住……魔法かい………?」
「ええ、ええ。確かに貴女達が理解しうる言葉で言い換えるのならば
そうかもしれないですさね。
ですが、それよりもっと……ええ、それは矮小な人間では逆立ちしても
遠く果てしなく及ばない、異形の智の結晶、人智を超越した奇跡の産物が
この世には存在するのですよ」
ニアーラの言葉がじわりと脳内に染みていく。
それは酷く甘美で魅惑的な響き、果実のような淫靡さに脳内が酩酊する。
霧がかった脳内は正常な思考を止めニアーラの言葉だけが世界になる。
しかし同時に、得体の知れない本能的な恐怖が思考の彼方で呼び起こされる。
それに触れてはならぬと警告を発する。
しかし、身体は、魂は、それに抗う術を知らない。
「それは、本来の貴女様方では決して触れることのできないもの。
貴女様方の世界において認識の外に存在するもの。
人智の領域から隔絶した異形なるもの。
嗚呼、嗚呼、それはそれは美しくも醜き白痴の王へと繋がる道なのですよ」
ニアーラの華奢な細腕が歪に曲がってフーケの頬へと添えられる。
そして影がその人間から離れぬように、ニアーラはフーケの身体を
愛おしげに抱きしめる。
愛し子を慈しむ母親のように、ニアーラは虚ろな顔をしたフーケを抱きすくめる。
耳元に彼女の艶やかな唇が迫る。
「大丈夫、貴女様に必要なものはちゃあんと手に入りますとも。たとえ資格が
なくとも貴女様にはそれを手にする必然があるのですから」
見えぬはずのその視線の先、ニアーラの瞳はフーケの手の中の鉄の表装がついた
黒い大きな書へと向けられている。
それは、おぞましく美しい世界の断片から取り出された無垢なる悪意。
それに手を添え、ニアーラの瞳の奥が、ふと、揺らぐ。
投下終了
作者近況:虎眼流免許皆伝と思ったら何故か門弟全員に囲まれてました
マチルダさん逃げてー!
といってもこの邪神から逃げれるとも思えないけど(´・ω・`)
いったいなんの魔道書だろ。
デモベで土系統のやつは無かったはずだが。
風と水(氷)ならセラエノ断章と水神クタアトがあるが。
GJ!
にあぁぁぁらぁぁぁ!
>>262 エイボンの書あたりじゃね?
>>262 エイボンの書じゃね?
ツァトゥグア土精だし
デモンベインで鉄の表紙………………そいつは駄目だァァァァァ!!
よし、俺達の力を結集させて対抗しようぜ!
俺はネクロノミコンエキサイト翻訳版で戦う!
大本のクトゥルフ神話からサンの七秘聖典とかドール賛歌とかか?
268 :
262:2007/11/04(日) 21:52:13 ID:/mYG354E
>>264 そういやそれがあったな。あれ? ということはマチルダさんの
体に人面租がはりつく・・・
精霊さん犬形態が そぬ なナコト写本2ch版 とか?
投下の準備が出来ました。
投下よろしいでしょうか?
属性に関係無さそうな辺りで無銘祭司書?
図解クトゥルフ神話には鉄製の留め金がついた、皮装丁の四つ折本であるって書いてる
>>266 なら俺学研の魔道書ネクロノミコンで戦う
コンパニオンに1000$、宿代で700$だけ支払って酒池肉林と言えなくも無い思いをしたのは気のせいだろうか。コンパニオンの
姐さん達は多分報酬とは関係無くギーシュを可愛がり、深夜まで遊んでいた。彼女達にとってギーシュが可愛かったのと、それ程渡された
報酬が多かったのだろう。俺は酒を飲んで適当に楽しんで遊んでいた。
「お兄さん今日はありがとう。楽しかったし、こんなに頂いちゃってなんだか悪いわね」
「いや、礼を言うのは此方も同じさ。楽しかったよ」
遊び疲れて(遊ばれ疲れか?)安らかな寝息を立てているギーシュを横目に、コンパニオンの姐さん達に礼を言う。この姐さん達が居な
ければ、恐らく逃げ切れなかっただろうしな。さて、俺も今日は寝るか……。
――翌日。
「さて、ほとぼりも冷めた様だし、階下で朝食食べて学院に戻るか」
「ああ……なぁトニー、昨日の事はモンモランシーには内緒にしてくれ……」
「気にすんな、俺はそんな事言わんよ。お前は、昨日の経験をモンモランシーに如何に生かすかだけを考えてれば良いんだ」
荷物らしい荷物と言えば俺の武器と昨日の戦利品の金、この優男のいかがわしい秘薬だけなので、出立の準備にそう時間がかかるものでは
ない。入浴して匂いを消してから宿を出る事にする。
――ギーシュを連れて町の外へ出ろ
少々薄暗く日はまだ昇ってはいないが、朝食を済ませて宿を出た。正直街中を長居は出来ないだろう。このまま街を出てしまえば終る。
俺は関係無いが、朝帰りは何かと問題もあるだろうが、まぁ今回はコイツの自業自得だ。
やはり中世の時代の所為だろうか、中心から離れると人の数と建物の数は段々と寂しいものになっていく。サツの数もリバティーシティ程
では無いのも気楽な一因だろう。
「……マジかよ」
「……どうしたトニー……うあっ」
町の外に出ると、タイミングを合わせるように目の前にシルフィードが降りて来やがった。
「ちょっと何で朝帰りなのよ!!」
降りて来た瞬間、ルイズの喚き声が聞こえる。後ろと前にキュルケ、タバサとそうそうたる姉ちゃん達が一堂に会しているのは驚いた。
「凄いわね、男二人で朝帰り。何やってたの?」
「色々遭ったんだよ、このバカの所為で」
面白半分にキュルケは俺に聞いてくるが、答えられる事はこれ位なものだ。実際、ほとぼり冷ましに宿にいたと言っても、面白くも無かろう。
ましてや女を買って遊んでましたなどと言える筈も無い。
「で、お前らはどうして此処に?」
『あんた達を探しに来たんでしょうが!!』
ルイズとキュルケは声を合わせてこう叫ぶ。やはりこの二人は本当は仲がいいんじゃないのか?
「……御飯。私たち何も食べていない」
すっかり存在感が無いが、タバサが小さな声でこんな事を言う。なるほど、こいつら何も食わずに探しに来たんだな。
「私も夜も朝も何も食べてないわ……トニー、モーニング用意してよ」
「はいはい、分かりましたよお嬢様」
支援支援。
男二人女三人で結構飲み食いした筈だが、掛った金額は200$にも満たなかった。おかしい、かなり飲み食いしたのだがな……。まぁ、
これら金は全て泡銭だからな。出所は言えんが。
「それにしてもトニー、お金はどうしたの?」
「そりゃ、お前やギーシュの『仕事等』で得た金だよ」
それにしても奇妙な光景だな、俺以外全員ガキときたもんだ。だがこれで馴染んでしまうんだから、末恐ろしい。こうやって信用を得ながら
元の世界に帰る算段は付けないといけないのだが、結構危ない橋は渡るものの元の世界よりはある意味安全なので、骨休みになれば良いな。
「足りないなら、遠慮しないでまだ食べていいぞ。俺の奢りだ」
「……本当?」
「構わないさ、シルフィードに乗っけてもらって礼もあるからな」
……どうして、朝食を食べに来た筈なのに日が傾きかけてるんだ?結局、俺があんな事を言ったのが原因だったのかは俺は知らないが、
朝食を食べた後、茶会を始めたのだこのお嬢様方は。朝食を喰いに来たんだぞ?……仕様がないので、俺もそれに付き合って調子に
乗ってチーズを口にしながらワイン飲んでいたのだが、気が付いてみると夕日が差し込んできてやがる。
「タバサ!……ちょっとタバサ!!食べてないで外を見なさい!」
ルイズとキュルケ、そしてギーシュは外を見て少し顔面が蒼白している。もう夕暮れ時なのだ。
「……学院に帰らなきゃ……」
その後、シルフィードを全力疾走させ(5人乗ってるので多少スピードは落ちているが)学院にとって戻ったのだが、この二日間を併せた
これらの情景に4人はこってりと油を搾られる羽目となった。そして俺は、何も無かったかの如く、食堂で豪勢な食事にありつき、何時も
の様にマルトーとワインを口にしていた。
mission completed!
$1500
今回はこれでお仕舞です
かなり話が脱線しましたが、次からは戻りますよ
乙!
ギーシュはむしろ役得だろうがw
GJ!
みんなから人望を得ようとこっそりさりげなく昼食にアジフライを入れる黒沢なんかどう?
小ネタの投下、よろしいですか?
おk
某日、某国、某都、某一族の、某屋敷にて。
こんな会話が繰り広げられていたと、某人物は語った。
「お帰りなさい、当主様」
「ただいま、イツ花……ううぅ、流星爆の撃ち過ぎで眩暈が」
「しっかりして下さい当主様。今日は待ちに待った、『あの日』なんですからネ!」
「おお! ということは……来たのか!!」
「はい! 太照天昼子様から新しいご家族を預かって参りました! お喜び下さい!!」
「くー! ついに俺も父親って訳かぁ。何かこう、感無量だな!」
「そりゃアもう、私にとっても初めての子供ですし」
「え?」
「あーいえいえ何でもありませんよー! とにかくまずはバーンとォ! 命名と職業を――あれ?」
「どうした?」
「あれ、いえ、おかしいな……あの子、どこに行ったんでしょう」
「おいおいおいおい。しっかりしてくれよ。――あぁ、居た。あそこだ」
「あ、本当だ。……はて。あんな所に鏡なんてありましたっけ?」
「あー、こらこら。無闇に触るんじゃないぞ――って、うおおっ!?」
「…………あ。れ、れ!? き、消えちゃいましたね……鏡ごと」
「お、俺の初めての子が……」
「私の子でもあったのに……」
「……………………」
「……当主様? あのォ、ちょっと顔色が……あああッ!?」
概ね、こんな感じであったという。
*
果たしてそれは必然であったのか、それとも偶然であったのか。
それは誰にも分からない。
神のみぞ、どころか神様まで翻弄されているのだからもう、何とも言いようがない。
そんなわけで、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは使い魔の召喚に成功した。
爆煙の中から現れたのは、赤ん坊であった。
ほんぎゃあああぁぁ!!
「……私に、どうしろと」
ルイズはただただ呆然と立ちすくむばかり。
「では、コントラクト・サーヴァントを」
こんな時でも容赦ないのがハゲのハゲたる所以であろうか。
「いや、そんな……そもそも、この子がどこの子なのか、貴族なのか平民なのかも分からないし、
っていうかこの緑色のイボって何かやばいのでは」
「コントラクト・サーヴァントを」
このハゲめ……今度養毛剤をたっぷりプレゼントしてやろう。お前の飯の中にな!!
――そんな気持ちを瞳に込めて見つめても、このハゲは平然としたもので。
ああ、視線で人を殺せたら……!
ルイズが抱くと、その子は嘘のように静かになった。
……懐いている、のか?
「使い魔……人間を……しかも赤ん坊……一体誰が育てると……私が?」
まさかこの歳で『母親』になるなどとは考えもしなかった。
ファーストキスすらまだなのに……いや、今からしなきゃならないのか。
「……この子の親が見つかるまでの辛抱、と言うわけにはいかないのかなぁ」
こうして、ハルケギニアに降り立った神の子は、『ゼロの使い魔』となった。
紫煙?
支援
冗談抜きで本当に神の子だなw
*
そして二ヶ月。
顔馴染みのメイドの手を借りつつも懸命に育児に励むルイズの姿には、
見る者の心を揺さぶる何かがあった。
「寝て起きて、泣いて笑って漏らして泣いて。……まったく、赤ちゃんってのは本当にタチが悪いわ」
そう愚痴るルイズであったが、その顔は確かな充実感に溢れていた。
――だが、突然始まったルイズの子育て奮闘記は、これまた突然に終焉を迎えた。
別にルイズが育児放棄した、とか虐待の末に殺してしまった、とかそういう生臭い話ではない。
「お帰りなさいませ、母上」
「……ん、ただいま」
いやはや。子供というのはあっという間に大きくなると言うが、この子はまた格別にして別格である。
……あっという間に赤ん坊ではなくなってしまった。
「今日は留守番をしている間、ずっと『杖の指南』を読み耽っておりました。
素晴らしい本です! 何やら、読んだだけでメイジになれたような気がしますネ!!」
「あー……ええと。うん。わざわざ取り寄せた甲斐があったわ」
「はい!」
しかも、ルイズの身長を追い越してしまった。
いくらなんでも異常だろとか、こんな言葉遣いどこで覚えたんだとか、本当にメイジになってしまったらどうしようとか、
何かもう突っ込む気も起こらない。
*
さらに二月。
……本当にメイジになってしまった。あとついでにルイズが『虚無』に目覚めた。
この二つの事実から導き出される結果は。以下参照。
「ルイズの術『エクスプロージョン』の併せ、始め!!」
「ルイズの術『エクスプロージョン』の併せ、2人目!!」
「『エクスプロージョン』の併せ、3人目!!」
「『エクスプロージョン』の併せ、4人目!!」
「5人目!!」
「6人目!!」
……
「ルイズの術『エクスプロージョン』!! 13人併せて効果25倍!!」
…………
「え? 巻物があって、心と技が充実すれば、魔法なんて自然に覚えられるものでしょう?」
巻物が無いなら作ってしまえばいいじゃない。魔法学院なんだし。
……そういうものだろうか。
「さすが母上! 素晴らしい術です!!」
「あぁ、えっと、うん。ありがとう……うん」
こんなんでいいのか世の中。
子育てルイズ…これはかつて無いシチュエーションだ
貧乳が授乳(*´д`*)ハァハァ
*
さて。
「母上。私は実はこの世界の人間ではありません」
「えっ……うん。なんとなくそんな気はしてたんだけど」
「元の世界に戻り、都を荒らす鬼を退治しなければならないのです」
「なんかどこかで聞いたような話が混ざってるような気がする」
「さもないと子供も作れない上に、一年半程度しか生きられないというオマケ付きで」
「……そういう重要な事は最初に言いなさいね」
そんなノリで物語は唐突に急展開を迎えたわけですが。
果たしてルイズの選択や如何に。
*
某日、某世界の某国、某都、某一族の、某屋敷。
某女中が概ねこんなことを語ったとか、語っていないとか。
「聞きましたよ、当主様!! 私が昼寝してる隙に出陣されて、
朱点童子まで倒してきちゃったンですってね!?
まったくもォ……そんな大事な話を今まで秘密にしておくなんて
人が悪いですよ、プンプン。
で、結局、朱点童子はどうなっちゃったンですか?
イツ花にもお聞かせくださいまし」
――それはそれとして。
同じ頃、近辺で桃色の髪の少女を先頭とする謎の一団を目撃した、と言う未確認情報が数件寄せられているが、
別にだからどうしたという話ではない。
ハルケギニアは、今日もそれなりに平和である。
ハルケギニアではない方も、同じ程度には平和である。
どっとはらい。
明日をどーんとGJ!
以上。元ネタは「俺の屍を越えてゆけ」でした。
・・・おかしいな。最初はシリアスになる予定だったのに。
ちなみに、以前に俺屍ネタ書いた人とは、同一人物です。
『エクスプロージョン』の併せ 最高w
私ももう一回最初からプレイしてみます。
乙でした。
悪い子はいねが〜
ルイズの授乳とか妄想中の子ぁ誰だ〜w 乙乙
部屋の片づけをしていたら俺屍を見つけて今日やり始めた俺参上。
―――監視されてる?
295 :
俺屍の人:2007/11/04(日) 23:04:33 ID:md5J4dUD
あー、そうそう。一応補足。
召喚された子の顔、性別、名前なんかは、各自適当に想像しちゃって下さい。
お好きなように、自分の好きな顔を当てはめてOK。
GJ!ナマズ髭のふとっちょでもOK?
なんという投げっ放し。
だがそれがイイ。
まだ盛り上がりに欠けるところですが、一区切りついたので投下してよろしいでしょうか
空はあいているぜ!
では支援。
次の日の朝、品評会二日前まで話は進む。
その日のロングビルは朝から大忙しであった。
もしかしたら学院の誰よりも忙しかったかもしれない。
明日には王宮からの来賓がある。
そういった、やんごとなきお方を迎えるとなると準備もただごとではない。
晩餐会の手配。宿泊場所の手配。院内の清掃。品評会での貴賓席の準備。
さらには、そういったお方は大勢お付きの者を従えて来る。
そちらの方にも様々なものを用意しておかなければならない。
それらを担当しているのはコルベールではあるが、実際には授業もある彼に変わって学院長秘書のロングビルが細々としたことを行っていた。
いまも、学院長にいくつかに事項について説明をしているところだ。
学院長は神妙な顔でロングビルの言葉を一言たりとも聞き逃さぬようにしているように見える。
だが、こんな時には学院長が悪癖を見せる前兆でもある。
それを熟知しているロングビルは足下をみる。
予想通り、白いネズミがスカートの直下に入ろうとしていた。
すかさずロングビルは片足をネズミに向かって全体重を乗せて踏み下ろす。
気合いの入った見事な踏み下ろした。
だがネズミもさるもの。
直前で反転し、オールドオスマンの元に走る。
「おー。危ないところじゃったな、モートソグニル」
手に乗せたネズミ、すなわち自らの使い魔モートソグニルを耳元に寄せるオールドオスマン。
声を潜めて何事かをモートソグニルに訪ねる。
使い魔とメイジは声に出さなくても意志を通じることができるのだが、そこはそれ。雰囲気というやつだ。
「して、今日の色は?」
何の色かは推して知るべし。
その、あの、ロングビルのスカートの中のあれだ。
ああ、多少どころかかなりトウが立っているが一応、乙女秘密がここにさらされるのか、と思われたがモートソグニルは首を横に振る。
「なに!見られなかったと?それは遺憾じゃ」
どうやら乙女の秘密は守られたようだ。
だが、そんなことでは収まらない者がここに一人。ロングビルがいる。
笑っていない笑顔を満面にたたえ、最後の警備状態について書かれた書類を挟んだボードを振り上げ、オールドオスマンの脳天めがけて振り下ろす。
「うわー、これ、年寄りにもはもっと……」
学院長室が静かになった頃、ロングビルは部屋を辞した。
警備状態についての説明がまだだったがそれは仕方ない。
オールドオスマンの責任だ。
そう、仕方のないことだ。
誰もいない廊下で、ロングビルは唇を三日月のようにして笑った。
結局、あれからユーノたちは明日の品評会に何をするか思いつかなかった。
といっても一晩中考え続けていたわけではない。
ルイズがデルフリンガーを折檻し終えたあと、まずユーノが轟沈した。
すでに子供にはつらい時間だったようだ。
そのあとにルイズが撃沈。
デルフリンガーに至っては考えるつもりだったかどうかも怪しい。
そして、今日の昼に至るわけである。
授業中に考える訳にはいかないルイズに変わって、ユーノが考えているのだがどうにもうまくいかない。
煮詰まりに煮詰まったユーノは洗濯物を干しているシエスタとお喋りをしていた。
幸い周りには誰もいない。
人間に戻るのは少しまずいかもしれないが、声を出すくらいなら問題ない。
「お姫様が来るの?」
そのことをユーノは今、初めて知った。
ルイズが怖くなるくらい張り切っているのも、それなら納得できる。
「アンリエッタ様は、陛下がお亡くなりになって以来、この国の象徴的な存在なんですよ」
「そうだんだ」
そういうことならユーノもできるだけのことはしたいが、いかんせん芸事にはユーノも通じていない。
「うーん」
お姫様が満足するような芸なんて思いつくはずもない。
「そうだ、ユーノさん。こういうのはどうですか?」
「何かいい方法があるの?」
「はい。シーツと、インクと、本を用意して、それから……」
「うんうん」
シエスタのアイデアはとても素敵なものに思えた。
時間はさらに進み夜へ。
空ににかかる青い月は昨日よりさらに痩せて、夜の闇を少し深くしていた。
その闇をはらう明かりの下で、ロングビルはコルベールと明日に向けての打ち合わせをしている。
「ミスタ・コルベール。宝物庫の衛士を門の警備に回すのですか?」
「何せ、急なことなので人手が全然足りませんので」
急なことでなければ、足りていたかと言えばそうでもない。
「ここの宝物は大丈夫なのでしょうか。たとえば、土くれのフーケとか」
近辺の貴族や傭兵にも打診をしては見たのだが、盗賊が世間を騒がしているような時だ。
はいそうですか、と人を回してもらえるはずもない。
「いやぁ。とはいえ、姫殿下の護衛が目を光らせているときにわざわざ入り込む賊もおりますまい」
「ええ、そうですわね。では、明日の警備状況はこれで」
ロングビルは手元の書類に当日には宝物庫には一人も衛士を回さない旨を書き込む。
そして、唇を青い三日月のような形にして薄く笑った。
その頃、ルイズは大変盛り上がっていた。
「それよ!ユーノ!それならいけるわ」
ルイズは拳をぐっと握りしめて盛り上がりに盛り上がっている。
もう勝ったも同然、とでもいいたそうだ。
何に勝つのかは謎だが。
「それで道具は?」
「そっちはシエスタさんが用意しててくれるって」
「なら、あたしたちは練習よ。がんばりましょう!」
「うん」
その夜、遅くまでルイズの部屋の明かりは消えなかった。
品評会一日前。
学院の多くのものたちにとっては、この日からが本番といえる。
到着の先触れのすぐ後に到着した馬車から降りた王女は学院生の感嘆の声に迎えられた。
「あれがトリステインの王女?あたしの方が美人じゃない」
中には例外もいるようではあるが。
ルイズもその例外の一人といえるかもしれない。
一言も声を出さず、ただじっとアンリエッタ王女を見つめている。
「ルイズどうしたの?」
「ん……」
「おおかた王女様に見とれてんだろうよ」
「うるさい、黙ってて」
歓声を受けた王女はオールドオスマンの前に歩を進め、いくらか言葉を交わす。
今年の品評会はどうしても見たいという王女に、オールドオスマンはなぜかと聞いたが、王女はただ一言
「個人的なことですわ」
と答えたのみだった。
品評会一日前の夜。
他の学院生たちはすでに寝ているが、出遅れたルイズたちにそんな暇はない。
なんとしても今日のうちの仕上げるのだと箱を積み上げ、シーツを吊して最後の追い込みをかける。
「そこでシーツの向こうに!それっ」
叫ぶルイズ、走るユーノ、あくびするデルフリンガー。
そんな大騒ぎの中でも、三人はドアをノックする音を敏感に察知した。
このしばらくのキュルケ襲撃のおかげだ。
三人は、いつものように顔を見合わせそれぞれ様子を確認。
問題がないことを確認すると、ルイズはドアの鍵に手をかけた。
「誰かしら」
こんな時間に部屋を訪ねてくるのはキュルケ以外にはいないはずなのだが、キュルケならノックなどせずに突入してくるはず。
こうやって、鍵を開けるのを静かに待っている客というのは本当に久しぶりだ。
「どうぞ」
扉を開けると、ローブを深くかぶった少女が部屋に飛び込んできた。
少女はいきなりルイズの首に抱きつくと、感極まった声を出した。
「久しぶりね。ルイズ・フランソワーズ」
ローブが落ちて少女の顔があらわになる。
ルイズはその少女の顔と声に覚えがあった。
忘れるはずもなかった。その少女との思いではルイズにとって大切なものだったのだから。
「姫殿下!」
ユーノは自分が乗った箱の上で、首をちょこちょこ動かしながら二人を見ていた。
**************************************
今回はここまでです。
原作、というかアニメ展開そのままのとこが多くなったのでさらっと流してしまいたかったのですが、思いの外かさんでしまいました。
投下乙です
フェレットなら姫様も普通の使い魔だと思うだろうなあ
元に戻った姿がバレるのも楽しそうだがGJです
リリカル殿、GJにござりまする。
24:00頃から投下よろし?
さあ、こい
今宵は快晴なり。
つエンジェルフェザー
あと1分だ
投下予約します
でかい。
改めて見上げると、とてつもなく、でかい。
木々がまるで藪のようで、無造作に掻き分ける度に凄まじい音を立てて薙ぎ倒されてゆく。
今さらながら、とんでもない相手に喧嘩を売ったものだと我ながら感心する。
ぐっ、とデルフを握る手に力を篭める。
大きく息を吸い、酸素を全身に行き渡らせる。
「僕が奴の攻撃を引きつける。援護は任せた」
「え、ちょ、ちょっと!」
ルイズが言葉を返す暇があればこそ、弾かれたようにクロードは飛び出す。
その迅さ、まさに疾風の如し。
一瞬で間合いを詰め、ゴーレムに肉薄する。
仲間を守るために先頭に立って切り込みつつ、冷静に戦場を見渡してコントロールする。
両方をこなさなければいけないのがフォワードの辛いところだ。
自分が倒れることは、そのまま作戦の破綻、ひいては一行の壊滅を意味する。
小便は済ませた。祈りは要らん。部屋の隅でガタガタ震えている暇など無い。
恐怖を捻じ伏せ、クロードは駆ける。
「しっかし、何だろうな。このデタラメなデカさは」
「それに生身で白兵戦を挑もうってのも、相当デタラメだよ」
「違いねえ」
軽口を叩き合うクロードとデルフ。
そうでもしなければ押し潰されそうなほど、このゴーレムは巨大であった。
唸りをあげる豪腕をギリギリで避け、懐へ潜り込む。
巻き上がる風が全身に纏わりついた汗を、思わずぞっとするほどに冷やした。
体型がずんぐりしているとは言え、クロードの頭が踝にすら届いていない。
轟音と共に襲い掛かる巨大な拳は、人の2、3人はすっぽり入ってお釣りがくるだろう。
股下から見上げる腰の高さときたら、並の家屋の天井と比べるのが馬鹿らしくなるほどだ。
それはまるで、子どもの頃にテレビで見ていた怪獣がそのまま現実に飛び出してきたかのよう。
その攻撃をまともに受けた日には、防御も何もあったものではない。一発でお星様になってお陀仏だ。
巨大であるというその一点が、そのまま恐るべき武器となっている見本と言えよう。
無論、クロードも黙ってやられるようなタマではない。
一閃。二合。身を翻してもう一撃。
光の刃が土の破片を斬り飛ばす。
巨大であるところの欠点である小回りが効きにくい点を突き、
彫刻刀のようにデルフでその体を削り取ってゆく。
「まるで樵だな、相棒」
「木は自分で動かないけどな」
口調の軽さと裏腹に、デルフを構えた両手がじわりと熱くなる。
何しろ、相手は規格外に巨大なゴーレムだ。剣で削り取れる量などたかが知れている。
だが、贅沢は言っていられない。何とかして戦況を動かさなければ。
「くそっ、燃えろッ!」
「うおっ、まぶしっ!」
フェイズガンが光を放つ。
振り上げた右腕、脇の下を最大出力で狙い撃ち、轟音と共に右腕が崩れ落ちる。
これで戦況が好転すればと思ったが、残念ながらそう簡単には問屋が卸してくれない。
残った左腕で落下した右腕を拾い上げて肩口に当てると、プラモデルのように肩と腕が再び接続される。
巨大なだけでは飽き足らず、再生能力まであるらしい。何処までデタラメだ、くそったれ。
おそらく、この威力で撃てるのはあと1、2回あるかどうか。
いざと言う時のことを考えると、これ以上無茶な使い方は出来ない。
「充電器なんて、あるわけないか……!」
「俺にそーゆー機能がありゃ良かったんだがなぁ」
フェイズガンが駄目となると、基本的にデルフでクロードが攻撃できるのは足元だけだ。
戦闘力を削ぐ効果は薄いし、下手に体を削りすぎれば体が崩落し、巻き込まれる恐れがある。
だからと言って牽制ばかりで被害が大したことないと知れば、攻撃の矛先をバックスに向けてくるだろう。
それではそれこそ自分がここにいる意味が無い。
どうしろってんだよ、糞。
「……聞こえる?」
突如として耳元に飛び込んで来た落ち着いた声に、思わず振り返るクロード。
後ろには杖を構えた3人、先頭に立つのはタバサ。
よく見ると口が動いているようだが、そんなことを気にしている場合ではないと慌ててゴーレムに向き直る。
「風で声を送っている。今は事情を説明する時間が無い。
合図と同時に、あなたを『飛ばす』」
「……そうか、その手があったか!」
その一言だけで十分だった。
タバサの作戦を余さず理解し、クロードの顔に笑みが浮かんだ。
「……こんなもんでOK?」
『レビテーション』を受けてゴーレムの肩に降り立ったクロードの姿を確認し、
キュルケが片目を瞑ってみせる。
「十分。あとは彼の指示と状況次第。
彼がゴーレムに取り付いた状態を維持し続けることを優先して」
「了解! んもう、厳しいんだから」
当のタバサは次のゴーレムの一挙手一投足を見逃すまいと神経を集中させる。
クロードは着地するやいなや、ゴーレムの肩口に刃を突き立てている。
このまま腕を切り落とされては面倒と、ゴーレムも蝿を追うように手を振り回すが、
決して広くない足場ながらも、巧みにひらりひらりと立ち回って的を絞らせない。
岩の手は空を切るばかりで、クロードを捕らえることは叶わない。
クロードのあの動きからして、キュルケのフォローも加えればそう簡単に捕まることはないだろう。
とすると、そのうち狙いを変えてくるはずだ。時間の余裕は無い。
「……だーかーら、離しなさいよ!
アイツがあんなとこに居るのに、何で私が後ろに引っ込んでなきゃいけないのよ!」
「フォワードは彼が務めている。
あえて貴方がゴーレムに近づく必要は無い」
空気読め、馬鹿。
ルイズのマントを掴みつつ、喉元まで昇ってきた言葉を噛み殺す。
「ガタガタ言ってる暇があるなら援護しなさいよ!
今ならあんたの魔法でも役に立つでしょうが!」
タバサに代わって怒鳴りつけるキュルケ。
「うるさい、私に指図するなっ!」
「状況を考えなさいよ、死にたいの!?
あんたが動かなきゃ全滅するしかないのよ!」
「使い魔をけしかけておいて、自分は後ろに隠れてろって言うの?
『ゼロ』だと思って馬鹿にするんじゃないわよ!」
「少しは作戦ってものを考えなさいよ!
あんたはあんたの出来ることをやれって言ってんの!」
ルイズもキュルケも、焦っていた。
互いに自分の考えるように状況が動かないことに。
焦りは冷静さを奪い、余計な口論を呼び起こす。
そう、いつもと同じように。
そしてそれは、戦場において決定的な隙となる。
「避けろおおおおおおおおおおッ!!」
「……!」
クロードの絶叫を耳にして、ルイズとキュルケが振り返るのとほぼ同時。
─────バァンッ!
「きゃっ!?」
「ちょ、タバサッ!?」
タバサのエア・ハンマーが二人を数メイルほど先の木陰へと突き飛ばした。
その反動を利用して、タバサも別の木陰へと身を潜める。
支援
「何すん──────!?」
ルイズの不平は、一瞬遅れて襲い掛かった猛烈な土と岩の津波に遮られる。
ゴーレムがその巨大な腕を叩きつけ、大地を抉ったのだ。
「……!」
咄嗟にキュルケがルイズを抱え込み、自分もマントで頭をガードする。
背中の壁となる大木に、何か巨大なものがぶち当たるガツン、ゴツンという鈍い音が響く。
ふと視線を横に向ければ、轟音と共に流れてくる中には人の体ほどの岩に、根こそぎ吹き飛ばされた木まで混ざっている。
タバサに吹き飛ばされていなければ、問答無用で土葬にされていたところだ。
幸いにも背の大木は壁の役目を果たしおおせ、崩れることなくそこに立ち続けていた。
安堵の溜息をつくキュルケ。
「ふぅ……これじゃ幾つ命があっても足りないわよ」
「あ、あ……」
そしてルイズも事ここに至り、自分が置かれている状況を唐突に理解した。
理解してしまった。
小さな己を押し潰す圧倒的な力。
抗い得ぬ絶対的な、そして確かな『死』の存在。
数刻前に名乗りを上げた己の蛮勇が何と無邪気で、何と愚かであったことか。
「……ルイズ? ちょっと、ルイズったら!」
背中を冷たいものが走り抜け、全身の力が抜けていく。
目の前が暗い。何も聞こえない。体が動かない。言葉が出ない。
心臓だけがのた打ち回り、肺から空気が搾り出される。
脳から発せられた電気信号は筋肉へ伝わることなく、パニックを起こして全身が震えだす。
刻み込まれた恐怖が、全てを支配して──────
「──────ルイズッ!!」
パァンッ!!
乾いた音が森に響き、唐突に世界が色彩を取り戻す。
キュルケがルイズの頬を張り飛ばしたのだ。
「キ、キュルケ……?」
「いい加減にしなさいよ、この馬鹿!
彼の気持ちを踏み躙るつもりなの!?」
「え……?」
ルイズは何が起こったのか理解できず、呆然としている。
キュルケはそんなルイズの肩を掴み、縒り合わせるように視線を結ぶ。
支援
足の引っ張り合い支援
「彼は全部解ってたのよ! ミス・ロングビルが土くれのフーケだって事も!
あんたが土くれのフーケをとっ捕まえて、これまで散々『ゼロ』って馬鹿にしてきた奴らを見返したいんだってことも!
本当なら、わざわざこんな無茶なことしないで、学院に帰ることだって出来たのに!」
「え、え……? 何で、どうして!? 全然ワケわかんないわよ!」
雷に打たれたように愕然とするルイズ。
それを意に介さず、いっそうの力を篭めて、幾千万の思いを託してキュルケは言葉を続ける。
「本当に解らないの……? それをやったら、あんたの誇りを踏み躙ることになるからでしょう!
それが出来なかったから、彼はここにいるんじゃない。来なくてもよかったはずの戦場に!
全てを知った上で、あんたのために、あんたの誇りのために、ただそれだけのために彼は戦ってるのよ!
私たちなんかよりもずっと危ない場所で、死ぬほど怖い目にあっても、それに耐えて戦ってるんじゃないの!!」
「……!」
「彼は、あんたならあのゴーレムを倒せるって信じてる。
だから……だから、一番危険な場所で、あいつを足止めしてるんじゃない!
使い魔の信頼に応えられなくて、使い魔一人守れなくて、何がメイジよ! 何が貴族よ!
そんな奴、もしも魔法が使るようになったって、他の誰が認めたって、私は絶対に認めない!!」
「くっ……!」
「今ここで何をすべきか、何をしなければいけないのか……さあ答えなさい、今すぐ答えなさい!
あんたが貴族なら、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールだと言うのならッ!!」
「───うるさい、うるさい、うるさいッ!!」
ルイズは吼えた。
己の魂に賭けて。
「……」
「……」
再び交錯する視線。
心底嫌そうにフンと鼻を鳴らし、ルイズは再び大地を踏みしめる。
「まさかツェルプストーに説教されるなんてね、ヴァリエール末代までの恥だわ」
「だったらここでそれを全部丸ごと、『ゼロ』ごと濯いで見せなさいよ」
是非も無い。
右手に決意を、左手に覚悟を。
そして胸に誇りを携え、湧き上がる恐怖を捻じ伏せて少女は立つ。
彼女の使い魔である少年がそうしたように。
そこに先ほどの焦燥は無い。
彼女は知っているから。
私は独りじゃない。
自分を支え、共に進む友がいてくれる───
「ご主人様相手に隠し事をしていた罰を考えておかないとね、クロード……!」
不敵な笑みとともに、不器用な感謝を込めてルイズは呟き、杖を構えた。
「右下、5時の方向だ、キュルケ!」
「OKよ、ダーリン!」
「……!」
「フレイム・ボール、エア・ハンマー……
ええい、もう何だって良いわ! 吹っ飛びなさい!」
合図に合わせてキュルケが魔法を紡ぎ、クロードの体が縦横無尽に宙を舞う。
飛んでくる岩や破片をタバサが捌けば、ルイズの杖が振り下ろされて爆発が起こる。
撹乱。援護。防衛。攻撃。
4人の能力、特性を考えれば、これ以上無い完璧な連携と言ってよかった。
だが、これでも、足りない。
クロードは一度後ろを振り返り、状況を確認する。
後衛の三人のうち、一人だけ突出してルイズの消耗が激しい。
その息遣いは遠めにも解るほど荒く、足元はふらついている。
肩を貸そうとしたキュルケを振りほどこうとする辺り、心はまだ折れていないようだが。
「まずいぜ相棒……あの娘っ子は、ぼちぼち限界だ」
「解ってるよ、くそっ!」
噛み締めた唇に血が滲む。
考えてみれば無理もないことだった。
殆どたった一人、あの小さな体で巨大なゴーレムの体を削り取り続けてきたのだから。
レビテーションでサポートに徹しているキュルケと、迎撃という作戦上ピンポイントでしか魔法を使えないタバサ。
彼女たちの魔法を攻撃に回せない作戦の皺寄せが、全てルイズに寄ってしまった格好だ。
加えて、ここは彼女がこれまで経験したことの無いであろう命のかかった戦場。
命の奪い合いは常人の神経を容易く侵食し、精神を著しく消耗させる。
それが何よりの証拠には、レビテーション以外の魔法を殆ど使っていないはずのキュルケでさえ息が上がっている。
ゴーレムの体と同じように、ルイズの心身もまた、削り取られていたのだ。
隙を見てタバサが治療を施しているが、おそらくは気休めにしかならないだろう。
それすらも、ゴーレムの投げつけた土の塊によって中断される。
タバサのエア・ハンマーで辛うじて受け流すが、ルイズは足が動いていない。このままでは狙い撃ちだ。
そもそも、このままやり過ごし続けたところで、彼女が倒れた時点で作戦は破綻する。
(ここまで来たって言うのに……!)
ゴーレムのダメージは間違いなく蓄積されている。
全身は一回りほど小さくなっているうえ、攻撃に必要ない部位の再生は切り捨てたのか、
胴回りなどは目に見えてボロボロになっていた。
おそらく、質量で言えば半分か1/3近くまで減少しているだろう。
ぬっと伸びる掌を避けつつ、巨大な横っ面を苛立ちにまかせて蹴り飛ばす。
もう少しだけ、何か一つ決め手があれば──────
(いや、待てよ。何か忘れてないか?)
クロードの眼がカッと見開かれ、脳のシナプスが高速で回路を組み上げてゆく。
デルフは?
いや、確かに強力なのは間違いないが剣以上の機能は無い。
少なくともゴーレムを丸ごと吹き飛ばすようなタイプの兵器ではなく、
そういった機能が無いことも、本人の証言とこの戦闘から実証済みだ。
フェイズガンは?
駄目だ。騙し騙しやりくりしてきたが、既にエネルギーはほぼ枯渇している。
せいぜい拳大の石を数個破壊するのが関の山だろう。
いや、待て。『破壊』?
しりとりしようぜ
ふんどし
(──────うわああああああ! 何で忘れてたんだよ、大馬鹿野郎!!)
脳がスパークする。
眼の奥で火花が散る。
頭上で電球が点灯する。
切り札の存在をずっかり忘れていた己の愚かさに、
思わず全身を掻き毟りたい衝動に駆られる。
「ルイズゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!!」
絶叫と共に懐から取り出した『破壊の宝玉』。
タバサから何となく預かってそのままだった、学院に納められていた宝物。
使い方までは解らないが、それが何であるかは理解している。
自分の想像が間違っていないのなら、彼女ならば。
肩口から器用に胸元へと移動し、削り取られた胸元の窪みに押し込み、
もう一度、喉も裂けよと声を張り上げる。
「『破壊の宝玉』を狙うんだあああああああああっ!!!!」
「聞こえた、ルイズ!?」
「聞こえてるから、耳元で怒鳴るんじゃないわよ」
抑揚の無い声でルイズは答える。
その顔は血の気が引いて青白く、額には冷や汗が浮かんでいる。
気が緩むとゴーレムの輪郭がぼやけ、こうして話しているだけでも膝が崩れ落ちそうだ。
グッと歯を食いしばり、気合を入れ直す。
脳裏に浮かぶのは、ギーシュとの決闘でボロボロになっても立ち上がり続けたクロードの背中。
身体の限界を精神で超え、最後に勝利を掴んだ、その姿。
「使い魔に出来たことが主に出来なきゃ、サマになんないのよ……!」
今にも倒れこみそうな自分を鼓舞するように、不敵な笑みを浮かべて呟くルイズ。
そうだ。あの時、彼の受けた傷はこんな生易しいものじゃなかった。
頭がぐらつく? 殴られたわけでもないのに。
体が重い? 骨が砕けたわけでもあるまいし。
甘ったれた寝言と弱音は夢の世界に捨ててこい。
今の私に必要なのは、勇気と根性。それだけで十分だ。
今のルイズを支えているのは、クロードへの意地と貴族としての矜持。
彼女の生来の気性と気位が、限界を超えた体を立ち上がらせ、魂を奮い立たせる。
その瞳に映るのはクロードが託した希望、『破壊の宝玉』唯一つのみ。
音の無い世界でただ一人、彼女は杖を携えて呪文を詠唱する。
それはまるで、唄うように。
>>320 しえん
あー負けちゃったー
とか言わせたかったんだろこのやろう
支援n
その手に力を、その胸に誇りを。
世界よ、偉大なる始祖よ。我に加護と祝福を。
今こそ私は、私になる。
そして最後に、裂帛の気合と共に杖は振り下ろされる。
「─────私は、『ゼロ』なんかじゃ、ないッ……!!」
─────────閃光!
「……ダニー、グレッグ。生きてるかぁ?」
「……誰がダニーとグレッグだ」
「……ともあれ、死んじゃいないようだね」
放り出されたデルフの呼びかけに、木に背を預けたフーケと大の字に伸びたクロードが答える。
ここからほんの数メイルほど離れた場所、先ほどまでの戦場には、直径数十メイルほどのクレーター。
『破壊の宝玉』の力を受けたルイズの魔法の破壊力は、彼らの想像を遥かに超える代物だった。
最初から使っていれば、おそらくそれだけで戦闘が終っていただろう。
そして、その爆心地の間近に居たクロードと、
これまたそう遠くない場所でゴーレムを使役していたフーケが無事で済むはずも無く、
爆風に吹き飛ばされ、このような無様な姿を晒しているというのが彼らの現状だ。
なお、残り3人とはふっ飛ばされた方角が違う。
ここにたどり着くまで数分はかかるだろう。
「しかし、私もヤキが回ったかね。引き際を見誤るなんてさ」
溜息混じりに吐き捨てるフーケ。
その右足首は、ありえない方向に曲がっている。
吹き飛ばされた時に嫌な捻り方をしたらしく、まともに動かせない。
加えて、長時間ゴーレムを使役・再生し続けてきたことで精神が限界に来ている。
逆さに振っても鼻血も出やしない。いわんや逃げおおせるだけの体力など、あるはずもない。
「貴女が最初から脱出を目的に戦っていたのなら、こうはならなかったと思いますよ」
もっとも、そう言うクロードも状況は大して変わらない。
彼女とほぼ同じ時間、延々とガンダールヴの機動力でもってゴーレムを撹乱し続けてきた上に、
ルイズの魔法の余波に最前線で晒され続け、極め付けに『破壊の宝玉』との合わせ技。
全身打撲に擦り傷だらけ、体力はスッカラカン。
まるで簀巻きにでもされているようで、指先一つまともに動かせそうにない。
どうやら自分も、あまりルイズのことを心配できるような状況ではなかったようだ。
デスクリムゾンかw
支援。
「にしても、おでれーた。『破壊の宝玉』との合わせ技とは言え、あんな火力出るかよ?」
「全くだ。とんでもないマジックアイテムだよ」
「マジックアイテムなんかじゃありませんよ、あれ。ただの爆弾です」
「うわー、身も蓋もねえー」
「はあ? 馬鹿言っちゃいけないよ。あんなデタラメな威力の爆弾なんて、あるわけないだろう」
「だからこそ、この世界ではマジックアイテムと認識されていたんじゃないですか?
起爆装置がどうなってるか解らなかったんで、使えないと思い込んでましたけど」
「爆発上等の娘っ子の魔法なら関係なし、ってわけか」
「しかし、勝手にお宝を使っちまったんだ。帰ったら大目玉じゃないのかい?」
「ですよねえ。……ホントにどうしましょう?」
「いや、私に聞かれても」
「違ぇねえ」
「……それにしても、私らも何やってんだかね」
「……多分、今この世界で一番マヌケな二人でしょうね」
苦笑しあう二人。
先ほどまで命のやりとりをしていた二人が、精も根も尽き果てて談笑している。
むしろ、精も根も尽き果てているからこそ、だろうか。
何にしても、これほど珍妙極まりない光景などそうは無いだろう。
始祖ブリミルも意地悪なことだ。幾らなんでも格好が悪すぎるじゃないか、お互いに。
それにしても、何だろう。何時もの空しさは何処へやら。
この胸を満たす充実感は、全てを失ったあの日以来─────いや、あの頃にさえ無かったかもしれない。
全身全霊を賭けて己の全てを絞りつくし、後には清々しいまでに何も残らない。
何も残らぬことの、何と心地よいことよ。
そして、心地よさを自覚した直後にやって来る罪悪感。
(ごめんね、テファ。私ゃ駄目な姉さんだよ。
最後の最後で、あんたのことを忘れてあの娘のことで頭が一杯になっちまった)
脳裏に浮かぶ妹の姿。
ただ一人残された家族と呼べる存在。
自分の全てを賭けて守るべきものだったはずなのに。
彼女は、私のことを怒るだろうか。
いや、きっと怒るとしても『こんな危ないことはしないで』とか、そういったことだろう。
何しろ、私の妹には勿体無いくらいに優しい娘だから。
「あんたの言った通りだったね。
確かに、あの娘は只者じゃなかった」
自分の中の感情をごまかすようにフーケは呟く。
「……」
「……?」
返事は無い。
果たして、よく見るとクロードは眠っていた。
全てをやり遂げた、満足げな表情で。
デルフも相棒の眠りを妨げるまいと口を噤んでいる。
それを見てフーケはフッと小さく笑い、肩をすくめて物言う剣へと声を掛ける。
「デルフって言ったね。私も疲れたから少し寝る。着いたら起こしとくれ」
「これから死ぬ人間みたいな言い方すんじゃねえよ」
「間違っちゃいないさ。どうせ、行き先は牢獄と絞首台だ」
それだけ言い終えると、デルフが問い直す間も無く、フーケの意識は闇に溶けていった。
その寝顔が、目の前の少年と同じくらい穏やかであったことを、
そして、ほんの少しの寂しさが混じっていたことを、きっと彼女は知らない。
ルイズを背負ったキュルケと、
油断無く杖を構えたタバサがやってきたのは、その直後のことだった。
死炎
sienn
支援
支援
爆弾はなんだったんだろうか。ハーフデッドはないだろうし……
以上、16話・フーケ戦をお送りいたしました。
シリアスモードの中にネタを仕込みたくなるのは仕様です。
この後はゼロのトランスフォーマー!
チャンネルはそのままギッチョン。
乙です。後CMもw
では25分頃から。
星の使い魔乙です。
からっぽになってへにゃと笑い合う二人が目に浮かぶかも。
トランスフォーマーさん支援
それと次投稿予約ー
「あれ、タバサは?」
夏の季節も近づき、そろそろマントも薄生地夏用に衣替えする生徒達も増えた今日この頃。
うにゅぅと背伸びしながら、教室の席に腰を下ろしたルイズは、これから始まる1時間目の授業の準備をしつつ、
のそのそと教室に入室して来た、さも眠たそうに欠伸をするキュルケに問いた。
この微熱女、いつもあの無口っ子と一緒にいるのに、と思いながら。
「ま、あの子にとって授業が退屈なのは何時もの事だけどね」
微妙に遠まわしな返答ではあったが、タバサがいない理由は凡そ見当が付いた。
またサボったのである。年はルイズと同年代、容姿の方もルイズよりも幼児体系なタバサだが、
そこに秘めた魔法力は大した物で、すでにトライアングルクラスに昇格しており、
魔法学院の2年生の授業内容なぞ殆ど把握しているのだろう。
授業中も常に本を開いてる彼女にとって、講義をする教師の声は読書の妨げでしか無いのが窺い知れる。
しかしサボるにしても、その間タバサは何処にいるのだろうか。図書室で過ごしている事もあるそうだが、
使い魔の風竜に乗って学院から外出し、翌朝に何時の間にか帰ってきている目撃例もあるらしい。
一体何をやっているのだろう? 元から雰囲気からしてミステリアスな同級生ではあったが、
そもそもフルネームすら聞いた事が無い。噂によるとシュヴァリエの爵位をも得てるとか得てないとか…。
「ミス・ヴァリエール」
「へ? あ、はいっ」
暫し机に両肘を置き軽く頭を俯かせながらそんなタバサ考証をしていたルイズであったが、授業は始まっていた。
シュヴルーズに名指しで呼ばれ、はっと教壇を見る。そして、魔法の実演をするようにと手招きで呼ばれた。
はえ? と想定外の指名にきょとんとなるルイズ。
その瞬間、罵倒、ブーイング、批難、継いであらゆる文句が、ルイズ…でなく、シュヴルーズに浴びせられた。
以前もこれと似たような事があった。キュルケ達が止めたのにも関わらず、錬金の魔法をルイズに実演させ、
その結果はご存知のように、彼女がゼロと呼ばれたる所以をシュヴルーズに身をもって知らしめた。
魔法実演での生徒の失態はそれをやらせた教師の責任も大きい。
以前のケースだと教室を半壊させてしまったが、新赴任の教師だった故にルイズの事を知らなかった、
とシュヴルーズはそこまで責任を取られはしなかったが、今回は違う。
「ミセス・シュヴルーズ、貴方はまた同じ過ちを繰り返そうとしてるのですよ!?」
「ミス・ツェルプストー! 教師に向かって過ちとはなんですか!
さぁ、ミス・ヴァリエール、いつまでも明後日の方向を向いてないで、早く降りてらっしゃい」
シュヴルーズ自身、例の一件でルイズの事を魔法劣等生なのだと理解はした筈だが、彼女にはある考えがあった。
しかしさすがにプライドの高いルイズであっても、よもや爆風を浴びせてしまったシュヴルーズから
再び実演を要求されるとは思いもしなかったのだが、呼ばれたからにはしょうがない、としぶしぶ席を離れる。
ルイズが教壇に立った途端、他の生徒達は、火の炎盾、水の防御幕、風の鸚鵡返し壁、土の簡易防空壕、
その他十人十色、とさながら得意魔法披露宴の如く各々防御体勢に入り、そうでない者は急ぎ机に身を隠した。
わざわざそんな面倒な事をせずとも、教室から一端退散でもした方が手っ取り早くていいものだが、
ルイズの爆発に自身の防御魔法がどこまで耐えられるか耐久実験(あくまで爆発前提)及び、
今回は如何なる失敗をしでかすのか、と怖いモノ見たさが彼等をここに留まらせているのだろう。
「それでミセス・シュヴルーズ、何をすれば?」
特にクラスメイト達の行動に気を咎めるでも無く、ややヤケクソ気味にすっと杖を取り出すルイズ。
シュヴルーズは教壇の上にある1枚の羊皮紙を指差し、実演内容を説明した。
両氏支援っす!
紙というのは当然ながら、一箇所だけ摘んで持ち上げると、重力に引き寄せられだらんと下に垂れてしまう。
しかし硬質の魔法を紙に掛ければ、羊皮紙は重力に従わず、まるで木の板の様に持ち上げる事ができる。
さらに、硬質の魔法を微調節し、そこに物質保存等にも使用する「固定化」のスペルも組み合わせて応用すれば、
「見た目やしなやかさは普通だが、ちょっとやそっとでは破れたり、燃えたり湿気たりもしない最上質の紙」を
作り出すこともできるのだ。それを実演せよとの事だが、
これは土系統者トライアングルメイジのシュヴルーズがなせる高度な術であり、
もしルイズがそんな紙を作り上げる事を成し遂げれたならば、ルイズは土系統魔法を巧に扱える証となる。
しかし、空を自在に飛ぶスタースクリームを召喚したルイズは、周りからは風系統者であろうと評されていた
(ラプター形態のスタースクリームは一時銀色のグリフォンと称されていた程である)。
そんな彼女に、何故シュヴルーズは上級土系統魔法の実演をさせようとしているのだろうか、
と防御魔法を張り巡らせつつも、生徒達はそろって疑問を浮かべた。まさかラインクラスでもあるまいし。
シュヴルーズの考えはこうだった。
以前ルイズはスタースクリームに、お仕置きとしてなのか、只の箒を彼の体に突き刺し込んだ事があった。
これによって、スタースクリームは散々苦しめられ、その後より一層ルイズに頭が上がらなくなった節がある。
シュヴルーズはその光景を目の当たりにしていたのだが、ルーンの作用で使い魔を制御した様には見えず、
後になって彼女は、これをルイズが箒に強力な硬質の魔法をかけた結果なのだと勝手に結論付けたのだ。
御覧なさい、この秘められた強力な「硬質」の魔法の程を! ミス・ヴァリエールも成長したのです!
と、生徒達の教育に熱心なシュヴルーズは、ゼロと貶される1人の女生徒の身を立ててあげようとしたのだが…
やっぱりルイズはルイズだった。
冷静に考えれば、そんな高度な「硬質」魔法が成功するならば、以前の「錬金」の実演で失敗する筈が無い。
最早定番、派手に爆発を巻き起こし教室を半壊させ、体中煤だらけになるルイズ。
すとんとその場に座り込み、くひゅんと鼻に侵入した羊皮紙の塵屑をくしゃみで排除し、
爆風により例によって破れたブラウスやスカートを目にし、また新調しなくちゃ、とぐすんと落ち込んだ。
頃合を見計り、防御魔法を解除した生徒達の冷たい視線は無論ルイズではなく、
当然の結果を招いたシュヴルーズに向けられた。しかし彼女は目を回して気絶中。
皆はやれやれと呆れながら塵や破片を机から払いのけたりして各人掃除を始めた。
そこにギトーが登場。あのミス・ヴァリエールが魔法実演すると耳に入り、嫌な予感がして来て見ればこの通り。
ギトーはシュヴルーズの元に駆け寄り、治癒魔法を扱えるモンモランシーを呼び、シュヴルーズを介抱させた。
「ミセス・シュヴルーズ! ミス・ヴァリエールに関しては、特に注意しなさいとあれ程警告しておいたのに…」
「ううううう」
下手すれば何れ減給処分にされてしまいますぞ、とさらに付加えるギトー。
そんな光景を見ながら、キュルケは杖でそれまで自身に纏わせていた火炎幕を消滅させ、
これから後片付けに呼び出されるであろうルイズの使い魔、スタースクリームの事を不憫に思うのだった。
支援です。
今夜は凄い混みようだ…。
その頃魔法学院敷地内の、2つの塔に挟まれひっそりと建てられた小屋にて。
魔法が主要されているハルケギニアにおいて、物の発明の素晴らしさはあまり理解されていない。
この掘っ立て小屋の主コルベールは、メイジでありながらも科学と発明を愛する、言わば変わり者であった。
部屋に明かりを灯すのも、暖炉に火をつけるのも、その他大概の事は全て魔法で解決できるのも関わらず、
コルベールはわざわざ魔法不使用の別の方法で、結果的には遠回りな過程を辿るのが周りから不思議がられていた。
『よう、今日は錆止め頼む』
「やぁいらっしゃい。すぐ準備するから、そこに座って待っててくれたまえ」
そんなコルベールに、あまり大きくない小屋の出入り口を潜って挨拶をするのはスタースクリーム。
時よりふらっとここに足を運び、コルベールにメンテナンスしてもらうのが彼の習慣となっていた。
メンテナンスと言っても、摩擦損傷や鋼鉄の体への錆の浸食を防ぐ為の油差等、極々最低限の処置だけであるが。
指示通り、木箱に金属の腰を下ろしたスタースクリームは、横にある台の上に右腕を膝を付くように置き、
徐に自身の右腕の外部装甲を左手で取り外した。すると、彼の右腕内部の精密機構が露出する。
続いて、同じ要領で左腕の装甲を外す。両腕共に、火器類がぎっしり凝縮されているのが見て判る。
彼にはガトリング砲やナルビームといった銃火器が装備されており、戦闘時以外はこうして、
体内に隠すように収納されている。いざと言う際は、腕から一瞬で砲の発射口が表に曝け出される仕組みだ。
自身に装着されている火器弾丸の残数を調べてみると、左腕装備の4mmガトリング砲の弾が残り470発
(本来なら20mm砲なのだが、召喚時にサーヴァントの影響なのかF-22の機体もろとも縮小されてしまった)、
さらに右腕装着のナルビーム用の残エネルギーは、ビームを撃ちっ放しするとして、凡そ32秒で底を突く。
ちなみに‘ナルビーム’とは、機械の動きを麻痺させる特殊光線で、例えば大型エンジンや発電所主動力源等を
意図的に制御する事が出来、これは嘗て他の機械生命体を敵としたスターにとって、最強にして最大の誇り…
だったのだが、精密機械の存在しないここハルケギニアでは然程使い道が無いのが現状である。
また、まだこの世界に召喚されて以来未使用だが、ガトリング砲と並ぶように格納された誘導ミサイル
(所謂サイドワインダーミサイルでこれもまた縮小済)が、切り札として14発温存されている。
正直言って、かなり頼りない弾数である。ガトリングなど、約20秒の撃ちっ放しで忽ち薬室は空になってしまう。
以前もしやと思い、ガトリングの弾丸をコルベールに見せ、これを複製量産できるかと訪ねた所、
多少期待はしていたのだが答えは残念ながらノーと返ってきた。
この世界にも一応マスケット銃など、戦いの術の1つとして拳銃もあり、弾丸作りも個人でやろうと思えば、
決して不可能でも無いらしいが、如何せんここハルケギニアは魔法や剣術が戦いの主要。鍛冶屋での、
弾薬生産技術が然程発展して無い上、銃としては種子島程では無いにせよ比較的原始的なマスケット銃の弾丸と、
F-22ラプター装備の高精度ガトリングの弾丸とでは、技術的にも圧倒的な違いが生じている。
つまる処、一寸の狂いも無い4mmの薬莢を多数複製するのは、現段階では錬金を使ったとしても困難なのだ。
高精度機関砲故、薬莢の寸法を1mm誤っただけでも、撃った際に暴発してしまう可能性もあった。
仮に丹念に作り1発や2発は複製できたとしても、それで限界。ガトリングでなく只の単発銃に成下がる。
逆に、弾薬や火薬等ならば錬金の魔法でも使えば入手は安易ではある。薬莢が唯一にして最大の問題だった。
そこで俺に良い考えがある。なんなら弾丸ぐらい自分で手作りするか?
材料ならわりかし簡単に用意できるそうだし、薬莢さえ作れれば。とスタースクリームは一瞬閃いたのだが…
ハンドメイド弾丸完成、ガトリングに装弾、さぁ喰らいやがれと勇んで撃とうとしたが見事に手元で爆発、
ガトリング砲その物が御釈迦になってしまった上、最後にルイズから「この愚か者ー!!」と折檻…。
てな場景がふと脳裏を過ぎった為、即座に断念した。
やはり弾丸の補給は今の所叶わぬ願いなのだろう。ナルビーム用の錬金不能な特殊エネルギーも同様である
(後にコルベールは、サイドワインダーに代わる新たな誘導型兵器を開発する事になるが、それはまだ先の話)。
だからこそ、弾丸節約を考慮して剣を購入してもらったのに、その剣は今日も今日とて飽きもせず学院内を
うろちょろしている有様で、噂によると厨房のシエスタとか言うメイドと仲良くやってるらしい。
何考えてんだあの馬鹿は? そもそも奴は何故に錆びた大剣なんかに擬態してたんだ? 前の体はどうした?
ってかそこまでデルフリンガーって偽名に拘る理由はなんなんだ? それに、奴の本来の‘主’は――
「遅れてすまない、油の残りがなかなか見つからなくてね。さて、始めようか」
と、弾丸の悩みから少々脱線してた所に、準備を終えたコルベールが心成しか嬉しそうにスターに近寄った。
彼の手に握られているのは、細長い木棒の先端に布を巻きつけ、それに植物性潤滑油を染み込ませた物で、
これならば、例えば戦闘時以外は右腕二の腕部分に収納されている、
ナルビーム発射砲の射出補助シリンダー等の、細かい部分にも油を差す事が可能だ。
脱脂綿に油を染み込ませそれをピンセットで差す方法もあるが、何度か試す内に前者のほうがやり易い事が判った。
しかし、わざわざ油なぞ塗らなくても、例えば固定化の魔法でも使えば、そうそう錆付いたりする事は無い。
が、スタースクリームはそれを拒んだ。正直、魔法と言うのは彼にとって未だ得体の知れない存在で、
今一信用ならないのだ。そんなモノを体に浴びせるなど、言語道断。
以前も何度か記したが、スタースクリームは元科学者である。
やはり科学的に説明不明な方法で身を任すのは、彼の科学者としてのプライドが許さないのだろう。
だが、今自身に差されている油は錬金魔法で増やした物だったりするのだが、
その辺まったく気にしない(或いは気付いていない)のもある意味スタースクリームらしいと言える。
尚、ここでやれる事は、機体質の管理だけで無く、
装甲が凹んだり、傷を付けられたりした程度なら、溶接や金槌でコルベールが補修してくれるのだ。
スタースクリームにとってコルベールの存在は本当に有難かった。
絶海の孤島に放たれてしまい、腕に負った擦り傷の完治すら儘ならなかったが、
そこに1人だけ簡単な治療ならできる医者がいた、といった心境か。
やろうと思えば1人でもやれるかもしれないが、やはり痒い部分に手が届かない場合もありうる。
因みに、俗に自動修復装置などと呼ばれる便利な機能は彼には具わってはいない。
『んなもんあったら苦労せんわな』
「うん? 何がだね?」
『いや別に』
サモン・シエン!
雑談を交わしながら大人しくコルベールに身を任せるスタースクリーム。
以前の彼からすると絶対に考えられない光景である。
事実、ここに召喚された当初、スタースクリームはえらく屈強な態度だった。
あわよくば、ルイズ辺りを人質にでも盗り、この世界で闊歩してやるつもりですらあったのだが…、
ここハルケギニアの世情を知れば知るほど、それは不利であると理解したのだ。
例えば、一昨日3人のメイジと戦った夜。その時のルイズの「無茶しすぎ」という指摘は、確かにその通りであった。
いかにスタースクリームが己の体を熟知していようと、例えば変形機構維持装置が完全に破損してしまえば、
ここに該当補修パーツがある筈も無く、取替えは不可、2度と変形への夢はならないのだ。
極端例を言えば、スクウェアクラスのメイジに、最大出力の火炎魔法をモロに喰らわされた場合だと、
当たり所が悪ければ爆発四散も免れず、よってメイジ相手と交戦するのならば、一瞬の油断も許容されない。
―但し、スタースクリームが仮にそんな事態に陥ったとしても‘彼自身’の存在は――
ともかく、勝手を知らない魔法が飛び交う異世界で、調子に乗って身を晒すのは危険だと彼は判断した。
基本天然だが、高い応用能力は備えている航空参謀。空回りの確立が異様に高いのも事実ではあるが。
ここでしばし、のんびりと時の流れを気にせず過ごすのも悪くは無ぇか、とスタースクリームは呟いた。
「そうだね、焦る事は無いよ。君が以前いた世界と言うのは私も興味があるし足を踏み入れてみたいものが、
今はその時じゃ無いと思う。ミス・ヴァリエールの使い魔として召喚された以上、
先ずはここでの在り方をじっくり考えるのも良いんでないかね? スタースクリーム君」
コルベールの言葉で、スターは召喚された当初ここから帰る方法を探すなどと企てていた事を思い出した。
今にして思えば、極短期間だったとは言え何故元の世界に帰ろうと思っていたのだろうか。
帰還した所で、彼を心から待っていてくれる者などいないのに。
この航空参謀スタースクリーム様が孤独に脅えるだなんて、結構な笑い話だぜ。
そんな強がりも、疾うに忘却の彼方へ置いて来てしまった。
其れほどまでに、彼を生命の息吹溢れる下界に束縛した‘とある者’への復讐の念は強かった。
しかし今となっては、それすらも―
スターが内面に抱く、憤り、孤独、そして憎悪が混淆された塊は、悲憤慷慨という言葉すらも容易に霞む。
しかしコルベールが然り気無く放った言葉は、その塊をほんの僅かだが――砕いてくれた。
砕かれた反動なのか、彼の‘スパーク’――魂は激しく揺らいだ。
もし、トランスフォーマーに涙腺の機能を備える事を‘クインテッサ’が――
戦う運命を刻まれたロボット生命体達の創造主が――義務付けたのならばスタースクリームはそれを拒んだだろう。
そんな機能が付いていたら、今ここで、それもコルベールの前で、彼は泣き崩れたであろうから――
「しかし、知れば知るほど面白い体だねぇ。特にその変身能力ときたらだ」
右腕への処置を終えて、一旦油塗れになってしまった自身の手を布で拭いながら言うコルベールに、
スタースクリームは危く情けない声を上げようとした所を既の所で堰き止め、
指を細かく動かしたり、手首を回したりして右腕の調子を確認しながら、何時もの様に気丈な態度で答えた。
『ふむ、俺の変形に興味を持ったか。今さらという感じだな、他のやつ等は案外軽く受けとめてるぞ?』
「皆は解っちゃいないんだ。確かに、今では然程見かけなくなったが変身の魔法は存在する。
しかしその変身過程はあくまで魔法の力、と極めて曖昧な言葉でしか説明できないんだ。
アカデミーの研究が進めば或いは…とも思うがね。
理にかなった変身。いや、変身と言うよりも、魔法を使わないから、変形と呼ぶべきかな」
と言いながら、彼は続いて左腕に油を差し始めた。
スターは返答に困った。正直言って、変形の仕組みは自分でも解るようでよく解らないのだ。
ラプター形態では全長5メイルなのに、人型に変形すると2,5メイル弱に縮小される原理は説明の仕様が無い。
しかし、例えば玩具で変形過程を再現しようと思えば決して出来なくも無いだけ、まだマシである。
昔はもっと解説困難な状況だった。
隣に並んでた自身より背丈の高い者が、変形すると手の平サイズになる、
3体のロボットが合体した結果、何故か普通のポラロイドカメラになる等等。
スタースクリームはコルベールに言ってやった。
『無論魔法なんかじゃねぇが…大きさの概念は捨てるんだ!』
と。
「…あ、そうかね。えーと、それと、前々から気になってはいたんだが、君は栄養補給はどう対処してるのかね。
君の事をガーゴイルだと認識している者も少なからずいるが、それは見当違いだ。君は生命体だろう?」
トランスフォーマーである自分が、魔法人形ガーゴイル呼ばわりされる事に別段異論は無い。
この世界にロボットと言う言葉や概念は無い為、自身の存在を説明する際は、
我はガーゴイルだと名乗るのが一番手っ取り早くて無難であり、寧ろ便利な単語なのだ。
ルイズやキュルケはスタースクリームの事を決して魔法人形だとは思ってはいないが、
何がスターの栄養食若しくは動力資源なのかは、あまり気にしていない様子である。
以前スタースクリーム自身が『俺に物を食う概念は無い』と言っておいたからだ。
しかしコルベールは鋭かった。
「あのインテリジェンスソード。デルフだったかな? フリェンジュイーだったか。
彼は厨房でワインを飲んで養分を得ているようだね。君は彼と同じ類なのだろう?」
スタースクリームとデルフリンガーの本当の関係はややこしいのでルイズにすら伝えてはいないが、
コルベールはデルフもまたスターと同じ‘魔法を必要としない変形能力の持ち主’である事を見抜いたのだ。
そんなデルフが飲食を求めるのだから、スタースクリームも同様であろう、とコルベールは睨んだのである。
『まぁ、そのなんだ、個人差か。俺は何も摂取しなくとも良いように出来ててな。ただ―』
「ただ?」
『ラム酒ってヤツぁは美味い。バイト先で試しに飲んでみたんだが、ありゃなかなかイケるな』
記憶を辿ると、確かに前「エネルゴンに味も成分も瓜二つでびっくらこいたぜクキャッ」とか抜かしていたが、
あれはワインの事だったかのか。俺みたく好きで飲んでるんじゃなく、エネルギー補給が必要なんだろう。
なにせ、奴は――フレンジーは――まだ生きている――
デルフリンガー、と名前を偽ってまで、過去の終わりの知れない戦いに身を呈してきた自分を捨て、
ここで安堵の時間を得たいのであろうフレンジーの気持ちも、少しは判らなくも無い気がしてきたスターだった。
支援ですぅ
―その頃
「きゅい、また授業をお休みして痛っ出席日数足りなくなって痛っ留年しちゃわないか心配なのね痛たっ」
一昨日の魅惑の妖精亭での飲酒がまだ尾を引いてるのか、軽く頭痛に悩まされた風韻竜シルフィード
(自身、酒には決して弱くないのだが、一昨日飲んだ酒はどうやらかなり強い種類の代物だったらしい)
が、主人であるタバサを背に乗せ大空を飛んでいる。
伝書鳩ならぬ伝書梟が、トリステイン学院のタバサの部屋に現れたのは今朝方の事。
梟が加えていた書簡の判り切った内容を確認するまでも無くタバサは出発した。ガリアへの出頭命令が下ったのだ。
「ホントに痛っあのオデコ王女ったら痛っおねえさまをどれだけ痛っ扱き使えば気が済むのかしらなのね痛っ」
口から声を放てば放つほど、不協和音が頭に響くにも関わらず、シルフィードはお喋りを止めない。
これは風韻竜なりのタバサへの気遣いだった。ガリアへ出頭すると言う事は、
同時に何時生命の危機に曝されるか判らないような危険な任務を課せられるのを意味している。
いつだって、タバサはそんな修羅場を掻い潜り抜けてきたが、任務に同行するシルフィードは
そんな使い主が心配で堪らないのだ。煩いまでの能天気なお喋りは、元々の明るい性格もあるが、
「少しでもおねえさまの心休めになれば」と危険な任務に赴くタバサへの励ましでもあった。
一切の感情を表に出さないタバサに代わり、シルフィードが喜怒哀楽を体現していると言ってもいい。
当のタバサは本を開いたまま全く反応はしないが、シルフィードの心遣いは確り受け止めており寧ろ感謝していた。
ただ、やっぱりちょっと五月蝿いので杖でぽかぽか使い魔の頭を叩く。
元からの頭痛とも相俟って、シルフィードは大人しく黙り込み、ガリアの首都リュティスへの飛行を続けた。
古代種風韻竜は絶滅したとされ、シルフィードはその唯一若しくは数少ない生き残りである。
故に、飛行速度は伝説に残る程に速く、タバサが本を読み終える頃には目的地に到着しているであろう。
そんなシルフィードには憧れの対象が2人いた。自身を召喚し契約した強力な魔法使いであるタバサ、
そして唯一無二と思われていた風韻竜の高い飛翔能力を凌駕する飛行速度を誇り、
「トランスフォーム!」と、先住の魔法よりも短い呪文で瞬時に変身する、ルイズの使い魔スタースクリームだ。
しかし、同じ使い魔同士でもキュルケのフレイムやギーシュのヴェルダンデとは気軽に接しているが、
いざスタースクリームを前にすると、もじもじとタバサの小さな体の後ろに隠れ(余計に目立つ)、
その度に顔をうっすらと紅く染める処から察するに、どうもタバサへの好意とは若干趣向が異なる様子である。
しえん〜
タバサ自身は性格上、その辺に関し全く興味を示さず只見ているだけだと思われたが、実はそうでも無いらしい。
其れを裏付ける如く、スタースクリームと深い関わり合いのあるデルフリンガーとの会話を認めてやったり、
さらには変化の魔法と髪を茶色に染めるのを条件に、酒場でバイトするスターとの交流も許可したのだ。
ただ、一昨日は少々ハメを外し過ぎてしまったので、1ヶ月間‘魅惑の妖精亭’の出入りを禁じたが。
と、ふと気付くと、読んでいた本が作者の後書き欄を最後に締め括られていた。
本を閉じ、前方に広がる景色を観て見ると、目的地であるガリアの小宮殿が遠目で確認できた。
間も無く、宮殿の前庭上空でシルフィードは翼を羽ばたきながらゆっくり降下し、着陸。
「いってらっしゃい、お気をつけておねえあ痛たたたっ」
痛みの妨げで見送りの挨拶に失敗し、再び口を開こうとしたが、そこに衛士が駆け付けた為口篭ってしまった。
そんなシルフィードから降り、手綱を衛士に渡すと、桃色外壁の小宮殿の全形を一望する。
プチ・トロワと呼ばれる小宮殿を見て、タバサは以前訪れた時と比べ、宮殿の外見に違和感があるのを感じた。
よく見れば、宮殿内に続く建物の扉が、何時の間に工事したのか少しばかり大きく改築されているのだ。
しかしその時はそれに関し、大して気には無らなかった。ここの王女の気紛れは何時もの事である。
即座に思考内容を変え、竜用の頭痛薬でもあるだろうか、と考えながらタバサは宮殿内に入っていった。
ここプチ・トロワのまだ若い主は、余程の身分の来客で無い限りは、応接間を利用しない。
特に今日は遅い目覚めだったらしく、タバサは王女の寝室に赴く様に兵士から指示を受けた。
宮殿内を歩み、寝室に繋がるカーテンを潜ったタバサの目に飛び込んできたのは、
王女の装いで天幕付きのベッドに優々と横たわる青い髪の少女、
それと彼女の侍女達が命令通りに‘歓迎’として投げつけたのであろう卵や動物の腸詰。
そして、この小宮殿の扉を改築せざるを得なくなった原因と思われる、異質の存在―
それは、向かってベッドの右横に佇んでいる、身長2,5メイル程の不気味なガーゴイル。
恐らく、この余りにも異形のガーゴイルが宮殿内を難なく出入りできるように、扉を造り直したのだろう。
何処に触れても手に怪我してしまいそうな程の、なんとも禍々しい外見とは裏腹に、
普段から丁寧に磨かれている為か、橙色のボディからは黄金色と見違えんばかりの光沢が放たれており、
それらの点を踏まえ、そのガーゴイルは圧倒的な存在感を示していた。
「驚いたかしら? そりゃ無理も無いでしょうねぇ、こんな立派な護衛を見たらねぇ!」
自慢げに第一声を放つは、ガリア王国王女であり、タバサと同じ青い髪を持つ従姉妹のイザベラ。
その傲慢な性格上、彼女が他人を、あいや他ガーゴイルを褒め称えるとは非常に珍しい光景である。
「…調子狂うわ。お前って奴は本っ当に感情ってもんを持ち合わせてないようね?」
比較的肌色の面積が広い頭の額をぽりぽり掻きながら、鬱陶しいそうにタバサを見据えるイザベラ。
いや、タバサは表情に出さないだけで、ガーゴイルの存在に一目して興味を得ていた。
それは今まで目にして来たガーゴイルの中でも、極端に脳裏に焼き付けさせる姿をしていたからだ。
一般的にガーゴイルは、実在の動物やケルベロス等の幻獣の姿を模ったり、時折人間に似せて作られる事もある。
が、ここにいるガーゴイルは何をモチーフに造られたのか見当も付かない程複雑な構造をしており、
一体何処が胴体で、どれが手足なのかすら判断するのにも一瞬の時間を要した。
見れば、それは腕が異常に長く、やや蟹股ながらも2本の脚で確りと立っているにも関わらず、
獣の爪にも見て取れる手の甲が、床にぴったりと張り付いている事が判る。
つまり四つん這いの体勢なのだ。
また、特に目を引くのが、背中から尾の様に生えた、熊手状の突起物である。
尾とは言うが、床に垂れ下がっているのではなく、蠍の如く体よりも上に構え、常に中に浮かせていた。
それは伸縮自在らしく、タバサとそのガーゴイルとは距離3メイル程離れているにも関わらず、気付けば、
今にもタバサの額を斬りつけんとばかりに、尾の先端に具わってる合計8本の鉄爪が目の前にまで迫っている。
タバサの表情が変わる事は無いが、彼女のシンパである侍女達は、冷汗を顔に伝わせた。
しばし、そんな緊迫とした状態のまま室内に沈黙が流れ、
痺れを切らしたイザベラがむくりと上半身を起こすと、ベッドに腰掛けたまま足を床に下ろす。
「おやめ。ったく、大なり小なり反応が無きゃつまらないじゃない」
と、澄ました顔でイザベラが忠告すると、ガーゴイルは唸りながら熊手の尾を収縮させ、背中に隠した。
しかし、尾の先端まではガーゴイルの背中に隠しきれておらず、背から鋭い鉄爪が剥き出ているままだ。
2つの赤い光がタバサを睨んでいる。それが眼光であるとすれば、そのガーゴイルの頭部は何処か梟を彷彿とさせ、
尚且つ大きさは意外にもタバサの頭と同じかそれ以下で、図体の割には極端に小さい頭である事が解る。
両脚部の膝側面と足元に1つずつ、さらに背中に2つ、鞠サイズの見慣れない黒い車輪が備え付けられている。
その車輪の正体は、人工ゴムで作られた‘タイヤ’なのだが、さすがのタバサもそれを知る術は無い。
なにせハルケギニアには、ガソリンで地を走る人工物など存在しないのだから。
以上の特徴から察するに、やはりモチーフは不明のまま、というか余計に判別不能になってしまった。
ともかく人にも動物にも幻獣にも該当しない、他に全く類を見ない奇怪な容姿体躯である事は解った。
sken
ここガリアはガーゴイルの技術が発展しており、言葉を理解し会話も出来るガーゴイルも数多存在する。
しかし今ここにいるガーゴイルは言葉を発さず、イザベラへの相槌も、まるで獣の様に唸るだけである。
言ってしまえば、王女の側近を勤めるのならば、もっと上品なガーゴイルはいくらだっているのだ。
当ガーゴイルのいたる意味で尖った外見は、むしろイザベラの趣味該当から外れていると言っても良い。
加えて、ここは王女の寝室。いくら護衛にせよ、これほど嵩張る存在がベッドの真横に陣取るなど普通ありえず、
さらに首輪の類も付けてる様には見受けられないため、いかにソレが特別扱いされているのかが窺い知れる。
イザベラの召喚した使い魔とも考えられるが、それならば「私の優秀な使い魔だ」とでも自賛しそうな気もする。
ルーンの有無を確認したかったが、左手の甲を床にくっ付けているため、現時点では使い魔か否かは判別出来ない。
「あなたの使い魔?」
と率直に質問しようとも思ったが、なんとなく碌な返答が帰ってこない気がしたので止めといた。
その後もイザベラは、相変わらず何考えてるのかさっぱり判らないわ、等とタバサに対しぶつぶつ言った後、
ふとガーゴイルの方に目をやり、口を開く。
「そうそう、ボーンクラッシャー。人形娘にそれを渡しておやり」
と、イザベラがテーブルの上にある書簡に指差し命令した事により、謎のガーゴイルの名が判明する。
‘骨粉砕機’と呼ばれたそれは、先程タバサを威嚇したあの鋭い熊手で書簡を器用にも掴み取り、
ひょいとタバサの手元に放った。武骨な見た目に反し、細かな作業もこなすらしい。
書簡を受け取るタバサだが、そんな物に心あらず、新たに名称も判ったそのガーゴイルについての咀嚼を続けた。
確かに、見方によっては肋骨を彷彿ともさせる姿に対して、なるほど‘骨’という直喩は秀逸な表現と言える。
ならば‘粉砕機’という単語は何処から湧いて出てきたのだろうか?
ボーンクラッシャー、と語呂も悪くは無いが、イザベラのセンスにしてはやや長い命名な気がしてならない。
とすると、ガーゴイル製造者に名付けられたのか、はたまた自らが名乗ったのかは定かではないが、
骨粉砕機の名はそのガーゴイルの固有名詞であると判断される。
このガーゴイルにボーンクラッシャーと言う名称があるのなら、タバサにもシャルロットと立派な本名を持つ。
が、イザベラはタバサの事を決して本名で呼ぼうとはしない。これに関してはタバサを嫌っているのが理由だが。
身分上、外交する事のある地主や政治家の名前は仕方無しに頭に入れておくとしても、
イザベラは宮殿を守る側近兵や身の回りの世話をしてくれる侍女達の名前すらもいちいち覚えていない
(これは彼女に限った事ではなく、部下や召使への扱いが適当な王も探せば結構出てくる)。
たかが護衛のガーゴイルとなれば尚更で、本来なら存在すら把握しているのかどうかも危い。
例外があるとすれば、せいぜいガリア東薔薇騎士団で最も良く働くカステルモールぐらいであろうか。
そんなイザベラから名前で呼んでもらえると言う事は、それは彼女から特に目に懸けられている証だと捉えて良い。
ボーンクラッシャーについてそこまで考えた処で、タバサはイザベラに早く任務に向かうよう促された。
因みに書簡の内容は、リュティス近郊のとある村に現れ占拠している十数匹の野良オーク鬼の退治。
これまでも多種多難の任務をこなしてきた、百戦錬磨のタバサにしてみれば比較的軽い任務である。
タバサは退室しようと身を反転したが、ふと何か思い出したのか、再びイザベラの方に顔を向けた。
「あん? いっちょまえに去り際の文句でもあるっての?」
「頭痛薬」
「一生痛んでろ! さっさと行きなっ!」
ちゃーらりーららー支援(直後爆発するウルトラマグナス)
タバサが緞子の向こうに姿を消し、敢て聞こえるように大声で笑うイザベラであったが、
不意に顔を歪ませ、1人の侍女に対し手にした扇子をちょいなちょいなと振り、ここに来いと仕草する。
まだイザベラとそう歳の差の無いその侍女は恐る恐る、ギロリと瞳を光らせるボーンクラッシャーの前を横切り、
足を組んでベッドに座るイザベラの前で、王女が自身を見下ろす形になる様に膝を突いた。
「お前さぁ、今なんて言った? 正直に御言い」
「わ、私は何も…」
「残念だったわね。いかに恍けようったって、この耳がシャルロットって言葉を聞いた事実は変わらないの。
しかも、お労しや? 労しいですって? 私の方がよっぽど労しいわよ! ええこら!!
歓迎の卵投げだって全部外しやがって!!」
そう、確かにこの侍女は、タバサがここを退出した直後に、思わず呟いてしまっていた。
嗚呼お労しや、シャルロット様…、と。ある意味自業自得だと言えなくも無い。
しかし思わず口にしてしまったとは言え、漏れたのは蚊の飛ぶ音の方が大きいのではないかと思うほど小さな声。
常人ならばまず聞き取れない。しかし、イザベラは常にディテクト・マジックでも
使ってるんじゃないのかと思えるほど、高度な地獄耳の持ち主で、
こと‘シャルロット’という単語に関しては、例え暴風雨の中であろうと正確に聞き取れるのだ。
これが、自らの身分が何時まで保たれるのかに不安を覚え、そのコンプレックスにより生じた
身の回りの人間の言葉を確実に聞き入れる特化した身体能力なのかは定かでは無いが、
それにしても、どうも最近は過剰なまでに敏感になっている節はあるにはある。
微妙に引き攣った笑顔からは、いかにも不満であると主張するオーラが放たれており、
そんな表情を浮べながらベッドから立ち上がるイザベラを目の前に、呼び出された侍女は恐怖に慄く。
どうかお許しを、と侍女は床に叩きつける様にして何度も頭を下げるが、
「この前のは保守的なデザインだったけど、今日はちょっと趣向を変えてみない?」
と、必死な侍女になぞ目もくれず、ボーンクラッシャーに妙な言葉を振るイザベラ。
こくりこくりと頷くボーンクラッシャーだが、言っている意味を理解しているのかどうかは判らない。
イザベラの機嫌を損ねて罰を受けるなど、ここの侍女達にとってはトイレへ行く事よりも頻繁な日常行事なのだが、
近頃はワケが違う。そう、この新参入ボーンクラッシャーの存在が、罰への恐怖を増幅させているのだ。
ちょwボンクラー!?
支援
にや〜っと、好からぬ笑みを浮かべるイザベラに 彼女の命令を無表情で待つボーンクラッシャー。
かつてこれほどまでに、鬼に金棒と言う諺が似合う組み合わせが、このハルケギニアに他あっただろうか。
いいえ絶対無いわ、と自問自答しながら、今にも破裂しそうな心臓をどうにか抑える侍女。
と、イザベラが、ボーンクラッシャーの厳つい肩を、裏手でドアをノックする如くとんとんと叩く。
ぱっと主人の顔を覗くボーンクラッシャーに、イザベラは片目を瞑り、ウインクをして見せた。
普通ウインクをする女性の仕草は大変可愛らしいもので、特に美しい女性がしたならば尚更だ。
イザベラとて、多少目つきは悪いが、美人だと断言しても、誰も御世辞抜きで否定しない美貌の持ち主である。
が、彼女がボーンクラッシャーに送ったソレは、どう見ても侍女に死刑判決が下った瞬間にしか見えなかった。
「ボーンクラッシャー、こいつを美しく飾っておやり。せいぜい‘やさしく’ね」
待ってました、とばかりに、素早く尾を伸ばし構え上げ、狙いを侍女に定める橙ガーゴイル。
ウヴァッ、と呻きながら身を揺らすボーンクラッシャーを目前に、ひっ! と侍女は後退るが、
「せっかくやってあげるってのに、動いたら意味無いわよ? 不器用だしね、この子」
と言うイザベラの‘やさしい’忠告に、侍女はがたがた震えながらも、
彼女が此処で勤め始めて以来最大の勇気を振り絞って足を止めた。
パチンと指を鳴らすイザベラ。それを合図に、グゥと吼えながら、
ボーンクラッシャーは‘やさしく’侍女の服を熊手の尾で切り裂き始めた。
恐怖に縛られ、悲鳴を上げる事すら忘れた侍女は硬直し、戦慄に引き攣った表情のままその場に直立する。
御蔭でボーンクラッシャーは、自身の思うが儘に、服を斬新なデザインに仕立て上げる事が出来た。
胸元の生地を縦に10サント程切り開き、袖に縫われた派手なフリルはより複雑さを増し、下腹部が露わに……。
侍女の身体に一切の傷は付けられてはいないが、不幸な彼女はショックのあまり、その場で卒倒してしまった。
ショック死や失禁を免れたのは幸いか。
「ふぅん、今日はなかなか良いデキじゃないの。あっはははは!」
と、変わり果てた侍女(あくまで服が)を見下ろしながらイザベラは手を叩いてけらけらと笑った。
一息入れると彼女は他の侍女達に、気絶した侍女の処置を命令し、ついで赤ワインを1瓶持ってこさせる。
瓶を持ってきた侍女は、恐る恐るそれをイザベラに差し出そうとしたが、イザベラは無言で顎を左横に決る。
はっと新護衛のガーゴイルの方を向く侍女だが、彼女の手元からは知らぬ間にワイン瓶が消えていた。
鉄爪の尾によって既に取りあげられていたのだ。慌てて一礼し、元の位置に戻る侍女。
ふん、と鼻を鳴らすと、イザベラはボーンクラッシャーの小さな頭を、まるで犬でも可愛がる様に撫でてやった。
それに答え、このボンクラはヴァウゥと低く一鳴き。ますます犬である。
支援
気さくな王女といい、最近のイザベラ様は素敵過ぎるww
>>318 誤字指摘
>
「だったらここでそれを全部丸ごと、『ゼロ』ごと濯いで見せなさいよ」
汚名悪名の返上・解消を意味するのは「雪ぐ」と書いて読み「そそぐ」
おまけ
すた☆すく 第2話
「…素晴らしい…。何故今まで気付かなかったのだろうか、やはり見れば見るほど君は魅力的な体をしている」
『おい。コルベール先生よ』
「ふふふ、ジャンでいいよスタースクリーム君」
『目が怖いんだが。さっさと用件を済ましてくれないか? 話ってなんなんだ』
「おっと、コホン、失礼。私とした事が。それでだねスタースクリーム君。話というのはだね」
コルベールは棚から鼠色の何かを取り出した! それは!?
「き、君にこの新開発した‘空飛ぶへびくんめたるす’をととと、取り付けてみていいかね」
『そりゃいっこうに構わんが、涎垂らしながら言わないでくれないか頼むから』
じゅるりと袖で涎を拭うコルベール! 普段の温和な彼と同一人物だとは微塵も思わせない仕草である!
「いいのかね!? では早速取り掛かろう! そこの台の上に寝転がってくれたまえ! 四の五の言わず!」
『う、うむ。で、次は?』
「ちょっとそのまま動かずに待っていたまえ!」
素直に台に仰向けで寝転がったスタースクリームの手と胴体を縄で束縛し、
さらに魔法でそれをしっかり固定するコルベール! その狙いとは!?
「まず大股に開脚してくれたまえ。ゆっくりとだ。そう、それでいい。ごくり」
『何故そこで唾を飲む』
今度は開かれた脚を縄でがっちり固定するコルベール! これでスタースクリームは完全に自由を奪われる!
そして!
「ふふふ、この‘小型爆転的骨穴突貫工事用装置ぷぅあぁせぷとぅわぁくん’を試す時も訪れたようだ!」
『ぷ、ぷぅあぁせぷとぅわぁ?』
不適に笑みを浮かべるコルベールは、木箱から円錐螺旋状の鉄棒が取り付けられている謎の道具を取り出し、
螺旋棒を魔法で高速回転させた! ぷぅあぁせぷとぅわぁくんとは言わばドリルなのである!
それを目に額に冷たい汗を滴らせるスタースクリーム! ちなみに汗とは彼の現心境との直喩法表現である!
『あぁすまん、や、やっぱやめ』
「大丈夫、痛みは感じはしないさ! 恐らく! では簡単に行程を説明しよう!
君の人間で言えば大腿骨の付根にあたる恥骨部分にへびくんめたるすを装着する!
さすれば恥骨筋が発達し股関節と中間広筋に著しい変化を与え君の下半身は驚くべき進化を遂げるだろう!」
おぞましいまでの回転力を誇るぷぅあぁせぷとぅわぁくんを片手に力説するコルベール!
その瞳には得体の知れない何かが宿っていた!!
『ま、待て! 言ってる意味が解らない上に多分それは人間での話であって俺はロボッ』
「理論上は同じさ! さぁ、始めるぞ!! まずぷぅあぁせぷとぅわぁくんで恥骨中央部に穴を開けよう!」
『おい話聞いてんのか! こら!! ちょっと!!! やめろ!!!! やめてお願い!!!!!』
見よ今まさに骨粉砕機と役目を果たそうとせんばかりに唸り唸る冷たきドリルを!
亜高速ベクトルを生じた影響下に対し切羽詰るは身動きの利かない航空参謀!!
『だ、誰か助けてくれぇぇぇ!!! うわああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!』
さあ、スタースクリームよどうなる!!
続かない!!
投下乙
今日読了した『時砂の王』メッセンジャー・Oとか召還させたら面白いかもなあ、と思った。
「私は26世紀の世界から来た。
ただし、この時間軸ではない。
数多くの滅びた時間枝を渡ってきたのだ」
以上です
> 続かない!!
なぜっ!
イザベラ様の横暴っぷりが美味でした。
それでは投下させていただきます。
支援する
乙
支援
ルイズに聞いてみたら、契約の力で、言葉を話せるようになる使い魔もいるって。
そのことを聞いてから、私もあのどらごんと話をしてみたくって、時々様子を窺ってた。
あの大きさなのに、主人である女の子よりも子供っぽい声で話すのは、可愛いくて可笑しい。
そんな風に思ってたんだけど、見てるうちに気がついた。あの二人は、話ができるのを、ないしょにしてる。
それで、話しかける機会を逸してしまった。
青い髪の女の子が、ルイズの手の火傷を魔法で治してくれたとき、ちゃんとお礼を言えなかったのは、彼女のないしょの一つを知っちゃったから。
そのことが、まだ私の中で引っかかってる。
あの子が、どらごんに会いに行くのは、早朝か、日が落ちかけた今くらいの時間。
「るいず、チョット、外走ッテクルネ」
「あんまり遅くならないでね」
窓の隙間から飛び降りる。これも、考えないといけないことの一つ。
雨が降ったときとか、どうしようかな。冬は窓が開いてたら寒いし。
いつもの草原にいた女の子。だけど、その顔はいつもより強張ってて、目つきが暗かった。
任務? 生徒なのに。
どらごんに乗って、飛んで行っちゃった……
* * *
私に声を掛けてから、多分、窓から出て行ったハヤテ。
何か気になってることがあるみたい。
本当は、こんなときこそ視界をつなぐべきなんだろうけど、どうしてだか、ハヤテが自分で話してくれるまで待っていたい。
「私にとって、危険だとか、そういうことじゃない。これは確かよね」
それならもっと早く言ってくれてるだろうし。
私はどうだろうか。今の私に、ハヤテの話を聞いてあげられる余裕があるかな。
365 :
銀:2007/11/05(月) 00:59:06 ID:XTxYpP3S
SIENッ!
さて…空気作品だが、豆氏の投下後しばらくしたら落させてもらいますよっと
支援
一番を占めてるのは、やっぱり魔法のこと。コルベール先生に、ここしばらく考えたこと、練習したことを、レポートにまとめて提出した。
属性と反発するんじゃないかと思ったまではよかったんだけど、それだとコモン魔法まで爆発する理由が説明できなかった。
あ、違う、書き忘れてた。魔力の込めすぎ。
でもこれも、私の魔力がそんなに桁外れなのか、自信がない。
四属性じゃなくて、膨大な魔力を必要とする魔法があれば確かめられるかもしれないのに。
ああいけないハヤテのこと考えてたのにすぐこれじゃあ。これじゃハヤテが言えなくて抱え込んじゃうの仕方ないじゃない。
羽ペンを転がして、思いっきり背筋を伸ばす。
また煮詰まってるのかなぁ。
ハヤテを失望させるのが怖い。だから、やりすぎちゃうのかも。
ぐうと仰け反ったら、本棚がさかさまに見えた。
ハンモック、あれは、傑作だった。お腹から力が抜けて笑っちゃう。
横板に止めたピンと毛糸を上手く使ってて。自慢げに靴下のベッドに足を組んで寝そべって、私とシエスタに笑いかけてくれた。
あれは絵に残しておきたかったかも。
他にも、ダイスの椅子に、タペストリーだと思ったのはキャンディーの包み紙だったり。
「痛っ?」
ずきっと、こめかみが痛んだ。それと一緒に、頭の中に割り込んできた、これは?
舞い上がっていく風竜を見上げてる、その視点、一瞬だったのに、草の匂いまで感じたような気がした。
「……ぁ」
消えた。というか、途切れた。
あれは、タバサの使い魔だったと思う。背中に小さな人影が見えたし。
だけど、こんな時間に、どこに行こうと言うんだろう。窓から外を見ても、もう薄暗くて。
偶然竜が飛ぶところを見て、それでハヤテがびっくりして、そのせいで私と繋がっちゃった、とは思えないんだけどな。
「るいずっ」
「お帰りなさい、ハヤテ」
私も、それにハヤテも話があるんだろう。私の肩じゃなくて、インク瓶の上に座った。この方が、視線を合わせやすい。
「あのね。わざとじゃないことは信じて欲しいんだけど、さっきハヤテの目と繋がったわ」
さっきみたいに視界が繋がる、まではいかなくても、そういえばこのところ、ハヤテが近いなって感じること、けっこうあった気がする。
一瞬だし、気のせいだとばかり思ってたんだけど。
「ル……私ハ、今マデソンナコトナカッタケド、明日ノコトヲ少シダケ見タリ、遠クノ人ヲ感ジタリスルころぼっくる、少シダケイルノ」
「じゃあ、ハヤテもそうなったのかしら」
本人もよく分からないみたいで、首を傾げてる。やっぱりハヤテが意識して私の視界を繋いだわけじゃないんだ。
「るいず、コレノセイジャナイノ?」
ハヤテが差し出したのは、左手。使い魔のルーン。
そう言えば、使い魔になると、何か特別な力を得ることもあるんだった。言葉を話せるようになったり。確かに有り得るわね。
うん、落ち着いて話せてる。本題に入ろう。
「それで、ハヤテが最近気になってたのって、タバサ――あの、あのときキュルケと一緒にいた、青い髪した子のこと?」
ハヤテは頷いてくれた。
「アノ子ガ、ナイショニシテルコト、私ガ知ッチャッタノ」
そのことをタバサは知らないって。
それは、謝ろうとしたら藪を突付きそうだし、かと言って黙ってるのも気まずいわ。
本当は忘れてあげるのが一番なんだろうけど。
「でも、気になるんでしょう?」
「ン……るいずト、チョット、似テル気ガシタノ」
スタスクは薔薇の世界に旅立った!(有耶無耶な表現)支援
支援
私に似てるから気になる?
それって、ハヤテは私のことが気になるってことで……ああ違うそういう話じゃないのよね。ポットから冷めた紅茶を注いで、半分ほど飲み干した。ちょっと部屋が暑い。
ハヤテにも、注いであげる。
だけど、タバサの顔を思い浮かべてみる。キュルケと違って、印象が薄い。
あんまりしゃべらないし、表情も変わらない。
キュルケ以外と話してるとこだって、ほとんど見たことないもの。
「それなのに、私と似てるの?」
なんか、やだな。
……タバサが似てるのが嫌なんじゃなくて……タバサも、使い魔を呼ぶまで、私みたいに一人で泣いてたりしたのかな。
考えたことなかったから、初めてなんだけど。自分のなら我慢できるけど、人が辛いのって、我慢できない。
それって、私だけなのかな。
「ハヤテ」
「少シシカ、知ラナイ。聞イタノハ、偶然ダカラ。デモ、凄ク辛ソウダッタノ」
ああ、もう。
そんな顔して言わないでよ。
「タバサは、どっかに飛んでっちゃったのよね。何処に行ったかは、知らないか」
時々授業を休んでたのは、体調を崩してたんじゃなくて、こんな風に学院を抜け出してたのかもしれない。
「ねぇ、ハヤテ。タバサにコロボックルのことを話したら、だめかな」
こんなことしか考え付かなかった。
後ろめたいままじゃ、話なんてできないもんね。
どうして私、ハヤテの言うことこんなに信じてるんだろう。
コルベール先生が元軍人だとか、タバサが辛そうだとか。ただの変な先生と、無表情な女の子なだけかもしれないのに。
どうして……タバサが早く帰ってこないかなって思ってるのかなぁ。
>>360 > > 続かない!!
> なぜっ!
>
あんた何期待してんのwww
支援
投下終了。
ハリネズミとアルマジロだけど、抱え込んでるのが似てるって思ったハヤテでした。
ほい。ではまた支援。
姉妹スレと違い投下感覚が早いなここは…
「そうか…フーケは見付からなんだか」
「ですが、『呪いの大剣』取り戻せたので上出来ではないでしょうか」
学院長室でオスマンがフーケ改めロングビルから報告を受けている。
今居るのは、ルイズ、キュルケ、タバサ、イレーネ、ロングビル、コルベール、オスマンの7人。
「途中、呪いを受けたと思われる者と戦い、なんとか勝利しましたが…学院長はご存知だったんですか?」
「なんと…よく無事で戻ってきたの」
あの覚醒者の姿を思い出したのか、三人娘の顔が若干青くなっている。まぁ無理も無い。
「彼女がいなければ、全員殺されているところでした」
全員の視線がイレーネに集まったが、何時もと変わらない表情だ。
「分かったじゃろう?あれが持ち出し禁止になっていたわけが」
「とても」
「すっごく」
「非常に」
三人がほぼ同時にそう答えたが、もちろん、イレーネだけは別だ。
「フーケは取り逃がしたが、『呪いの大剣』を取り戻し
化物を討伐したからには『シュヴァリエ』の爵位申請をしておくが…王室の堅物どもがどう出るか分からん。却下されても悪く思わんでくれ」
現物を見ればそうでもないだろうが、死体は高速剣によって肉片にされてしまっている。
「代わりと言ってはなんじゃが、夜の『フリックの舞踏会』は君達が主役じゃ。せいぜい着飾っておくのじゃぞ」
「そうでしたわ!フーケの騒ぎで忘れておりました!」
少しばかり残念そうだった三人だったが、キュルケを筆頭に一気に明るくなる。
「では、私もこれで」
先に、ロングビルが退室し続いてキュルケとタバサが外に出たが、イレーネが残った。
「私は、この御老体に話がある。先に行ってろ」
「…分かったわ。ちゃんと舞踏会に来るのよ」
ルイズが外に出た後、コルベールも気を利かせて外に出ると、部屋にはオスマンとイレーネの二人だけになった。
今日はラッシュだな。支援
「どれ、何か聞きたい事があるようじゃな。エルフのお方」
「この大剣…クレイモアを何処で…いや、何時手に入れた?」
オスマンが目を細めたが、構わずにイレーネが続ける。
「印がある以上、これは我々が使っていた物だ。そしてあの覚醒者」
「これは…一年ぐらい前じゃったか。私の命の恩人の形見じゃ」
一年前と言うと、キュルケがそのあたりから行方不明者が出ていると言っていた頃だ。
「森を散策し、ワイバーンに襲われたところを彼女が救ってくれたのじゃが、怪我をしている体で剣を振るい、ワイバーンを切り伏せてしまった」
「なるほど、負傷した身体での妖力解放か…」
覚醒した原因はそれだろう。
妖力から見て20前半〜10後半ナンバーの戦士と見たが、そのクラスなら妖魔如きにそれ程の負傷を負うはずはない。
覚醒者狩りの直後と見て間違い無さそうだ。
「剣の呪いを受けたのか、苦しみ出しての…私に向かって『人として葬ってくれ』と言ってきた」
「だが、やらなかった…というところか」
「治療しようと学院に運ぼうとしたのだが…結果は知っておるのじゃろう?」
「よく逃げ切れたものだな。一般人が逃げ切れる相手ではないぞ」
「…美味しくなさそうって言われての…ありゃあショックじゃった…」
どこか遠くを見ているが、まぁそうだったのだろう。
「まぁいい。お前達が言う呪いだが、この大剣にはそのようなものは無いぞ」
「本当かね?だが、彼女は確かに呪いで…」
「ああ、確かに呪いといえば呪いだろうさ。違うのは剣にではなく私達に…という事だろうが」
訝しげにしていたので論より証拠。何も手にしていない様態で軽く妖力解放をしてみせた。
「これは…!」
「妖力解放。一割で目の色が変化し、三割で顔付きが妖魔に近くなり、五割で体付きも変化する
八割を超えると限界を超えたという事になるのだが…恐らく、御老体が出会った戦士は負傷のせいで限界を超えてしまったのだろうな」
「限界とは?」
「我々、クレイモアと呼ばれる戦士は妖魔の血肉を身体の中に取り込んで作られた存在でな
妖魔を惨殺する我々にも妖魔の力を使うと人としての精神の限界を迎え、それを越えると『覚醒』する」
「エルフではないと…?」
「見た目で判断せんでもらおう。我々の特徴としては、妖魔の血肉を取り込んだ時点で髪の色素が抜け落ち、瞳の色が銀色になる」
「そのため、『銀眼の魔女』『銀眼の斬殺者』と呼ばれていてな、皮肉な事だが、その戦士が覚醒すると妖魔よりも厄介な存在へと変貌する
大抵は、限界を超える前に自ら命を絶つか、殺されたい仲間に黒の書というものを送り覚醒を防ぐのだが……」
もっとも、この件に関してはオスマンにどうこう言う気は無い。
向こうですら一般人に対する建前は覚醒者の事を異常食欲者という妖魔の一部という事しか知らされていないのだから。
「そもそも、私が居た場所では魔法なぞ無かったし、月も一つしか無い。生活レベルは同程度だが、これは致命的に違う事だぞ」
「ふむ…月が一つという事は別の大陸から…というわけではなさそうじゃの」
「別世界というのも陳腐な話だが…召喚という事を考えると、そう考えたほうがいいのかもしれん」
「ふむ…」
この状態なら、ナンバー6あたりまでの戦士となら渡り合えるだろうが、上位ナンバーが召喚されでもしたら少しばかり分が悪い。
そもそも、筋力は一般人並に落ちているのだ。
そこで、知っているかもしれんとして聞きだす事にした。
「剣の類を掴むと力とスピードが上がっているようになっているんだが…分かるか?」
「…その左肩の印がガンダールヴの印という伝説の使い魔の印で、ありとあらゆる武器を使いこなしたとそうじゃ。だが…私はお主が武器を使う所を見ておらんので…」
オスマンがそこまで言うと、イレーネの周りの装飾品や床が一瞬にして無数に切り裂かれる。
「技の名は『高速剣』。さっき言った妖力解放を右腕のみに使った技だ」
半分呆然としているオスマンを放置して続ける。
「これでも、力とスピードは前の半分といったところだが…再生した腕では出せる物ではない。見てのとおり、腕の強度も戻っているわけではないしな」
おかげで、持続力も大分落ち込んでいる。回復するのにも妖気を必要とするため、やがり多用できる技ではなくなってしまっている。
「やはりガンダールヴのようじゃの。剣を持った時にルーンが光っておる」
「なるほどな。まぁ、それはいいとして、頼みがある」
「言ってごらんなさい。できるだけ力になろう」
「…もし私が限界を超えそうな時は、躊躇せずに首を撥ねろ」
「それは…」
「御老体が遭遇したのより遥かに強大な化物が産まれる事になる。これでも、かつてのナンバー2だったんでな」
ナンバー2と言っても、かつてのナンバー1であり深淵の者の一人。
南のルシエラと同等の力を持つラファエラにも両腕さえ健在なら勝つことが出来る程の力の持ち主だ。
覚醒すれば、深淵の者クラスの覚醒者になるだろうという事は容易に想像が付く。
まして、対抗する他の深淵の者も居らず、組織も無いのでは国どころか、ハルケギニアが終わりを迎えかねないのだ。
ただ、それ故テレサとプリシラは別次元の存在だと認識居ているのだが。
「何時になるかは分からんが…覚醒しそうになったら、頼むぞ」
「すまんの…ただ、私はお主の味方じゃ。これだけは覚えておいて欲しいガンダールヴよ」
「そうしておこう。それと、この大剣だが…私が貰っておいても構わんな?少なくとも人が扱える代物じゃないよ。こいつは」
全長165cm、重量7Kというクレイモアをマトモに扱える一般人はそうは居ない。振れたとしても肩が外れてしまいかねない。
「恩人の形見だったが…いいじゃろ。元々お主達の物だからの
それと、お主がどういう理屈で、こっちの世界にやってきたのか私なりに調べてみよう」
「期待せずに待ってるよ」
今のところは帰るつもりは皆無だ。
むしろ帰ると粛清されるので、こっちに居たほうが都合がいい。
部屋から出ようとした時にデルフリンガーが話しかけてきた。
心なしか、声が震えているような気がする。
「相棒…その剣なんだけどよ…」
「これか?お前なら分かるはずだ。呪いなんぞ掛かってはいないさ」
「いや、違うっつーか…なんでもねぇ」
「?…まぁいいが」
丈夫さだけが取り得のボロい錆びた剣。錆び一つ無く、丈夫でしかも使い慣れた剣。
一般的に考えればどちらを選ぶかというのはデルフリンガーにも分かった。
だが、聞こうにも何時もと同じ冷静さを保っているので逆に聞き辛く聞けないでいる。
いつもと同じに、さらりと『いらん』と言われた日には再起不能になりそうだったからだ。
>>356 「そそぐ」は「すすぐ」の変形で、汚名を濯ぐと書いても間違いではない。
食堂の上の階の大ホールでフリッグの舞踏会が行なわれていたが、イレーネは特に何もする事が無く、会場を眺めていた。
性質上、料理は食べずに済むし、ワインも飲む必要も無いからだ。
さすがに、シエスタがわざわざ持ってきてくれた料理には少し手を付けたが、それで十分だ。
デルフリンガーとクレイモアの二本を背負っているので結構浮いてたりもする。
ホールを一瞥したが、キュルケが沢山の男に囲まれ笑っている。
こういう場所は彼女の独壇場らしい。
近くのテーブルではパーティドレス姿のタバサが、小柄な身体に似合わず料理を順調に食べ進んでいく。
「正直、お前達を見ていると羨ましくなるよ。我ながら、つまらん生物だとは思うが…やはりこの手の場所は性に合わん」
戦士になる前ははどうだったかとも思ったが、今はあまり覚えていない。
戦士になってから、常に生死の境を渡ってきたので、この手の場所には全くと言っていいほど慣れていないのだ。
「…お礼」
タバサがそう言ってサラダの乗った皿を差し出してきた。
森の件での事…という事らしい。
「少し貰おうか」
特に断る理由も無かったので口に運んだのだが…危うく妖力解放しかけた。
不味い。この上なく不味いのだ。
不味いだけならともかく、体験した事の無い類の苦味が一瞬にして広がった。
顔には出さないが一杯一杯である。
なおも、皿を付き出してくるタバサが何か別の物に見えたぐらいだ。
(あら…イレーネさん…どうしたんですか?駄目ですよ…一度手を付けた物は…全部自分で食べてください…)
「プリ…シラァ…!!」
「?」
プリシラの声が聞こえたような気がしたが、多分幻聴か何かだ。
「ああ…すまん…これで十分だ」
「美味しいのに」
一先ずそれで収まったのか、再びタバサが料理に手を出し始めたが、例のサラダを苦にした様子も無く食べる姿に心底驚いた。
「私はまだ…タバサを過小評価していたというのか…?やつはまだ……やつはまだ…おかわりすらしているんだぞ…!」
一瞬、化物を見た気分にしてくれたが、思い出したくないので忘れる事にした。
シエン
「どうしたんですか?顔色が少し悪いみたいですけど」
「…分かるか?」
「ええ、イレーネさんでもそんな事があるんですね」
声を掛けてきたのは、忙しそうにしているはずのシエスタだ。他人から見ても少し顔色が悪く見えたらしい。
「何か用か?忙しい中だ。それだけではあるまい」
「あ、はい。ミス・ヴァリエールがお呼びです」
「分かった。行こう」
しばらくするとホールの扉が開きパーティドレスに身を包んだルイズが出てきた。
「ヴァリエール公爵が息女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール嬢のおな〜〜〜り〜〜〜!」
衛兵が到着を告げると、ホールの男子生徒の目線が釘付けになる。
その後ろに、戦士の物とは違う銀の装飾で纏められた軽装の鎧を付けたイレーネも。
はっきり言えば実戦向きではないし、邪魔なだけだったがルイズに『お願い』され承諾した形になる。
ルイズは長い桃色掛かった髪をまとめ、化粧を施し元来持つ高貴さを嫌と言うほどに出し
対照的にイレーネは、殆ど素のままだったが、銀の装飾の鎧、銀の長い髪、銀眼、と
銀一色で纏められたその全身がホールの光を反射し、輝いているようにも見えた。
エルフ的な容姿もあり、それは一層強調されている。
「まったく…邪魔な装備が多いなこれは。役に立たんぞ」
「いいのよ。飾りなんだから」
イレーネが歩く度に、銀髪が揺れ光を乱反射し、ある意味ルイズより目立ってはいるが
この場合、ルイズに付き従う騎士という具合なので、ルイズを引き立てているようになっている。
男子生徒は、ノーマークだったルイズの美貌に気付き群がるようにダンスを申し込んできたが
イレーネの場合、どちらかというと女子生徒にダンスを申し込まれていた。
長身、鎧姿、隻腕、背に背負ったクレイモアと、美しいというよりは、格好良い範疇に入るのでそうなってしまっている。
ヅカ的なノリだ。ナンバー9『ジーン』ならばイレーネより適任であろうが、この場に居ないので仕方無い。
「おい…どうにかしろ」
「いいじゃない、相手に合わせれば。訓練とか受けてるんでしょ?」
「ここまでは予想外だ。そもそも、このような場に我々が出ること自体がだな…」
「それなら、このキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーが、ダンスのお相手を勤めさせて頂いてもよろしいかしら?騎士殿」
「…勝手にしろ。片腕しかないからな。どうなっても知らんぞ」
もう諦めたようだ。どうせやる事になるのなら、知っているやつのがいいと、キュルケで妥協した。
元々、運動能力がズバ抜けているクレイモアだ。そして、そのナンバー2。
最初こそ少し慣れないでいたが、数十秒もすると完全にキュルケに合わせられるようになっていた。
「惜しいわねー…」
何時もと変わりない冷静な表情のイレーネを見てキュルケが呟く。
何が惜しいかと言うと、無論性別だ。逆なら確実に『微熱』が燃え上がっているところである。
これをきっかけに禁断の世界へ行ってしまうのかキュルケよ支援
この後、数人相手し、何故か感銘を受けたギーシュの相手を済ますとバルコニーのテラスに身を運んだ。
元の場世とは違い月光が大分ある。それを銀が反射し、近寄りがたい雰囲気を出していたが、ニヤニヤ顔のルイズが近付いてきた。
「ダンス踊ったのホントに初めて?横から見てても、初心者とは思えなかったんだけど」
「こういう扱いをされるなど…向こうでは無かったからな」
「この前言ってた、月が一つしかなくて、魔法が無いって所ね。…信じてあげるわ」
「急にどうした」
「あんなの見たら、信じたくもなるわよ…」
覚醒者を見ては無理も無い。あれに匹敵する異形の化物はこの世界には存在しないようだ。
「ねえ、元の世界に帰りたい?」
「いや、気になるやつはいるが…戻る気は無いさ。それに、こう見えても追われる身なんでな」
「何やったのよあんた…それに気になるやつって?」
「組織を抜けただけだ。別に犯罪を犯したわけではない。気になっているのは、出来の悪い弟子の事でな、生き延びていればいいが…」
「弟子って…あんたまだ若そうに見えるけど実際のとこどうなの?エルフじゃないんでしょ?」
「私達は成長はするが老化はしないんでな。死ぬまでこの姿だ」
もう一つ、覚醒し妖魔化する。…ということは伏せておいた。今言う事でもないし、なによりルイズの爆発では死にそうにない。
「やっぱり、エルフ…いえ、エルフ以上ね。それで、その弟子の名前は?」
「…クレアだ」
パーティが終わり、各々部屋に戻っていったが、学院の外を一つの影が疾駆している。
大剣とデルフリンガーを背負ったイレーネだ。
奇妙な事に、この魔剣はあれから一言も喋ってはいない。珍しいことだ。
「相棒…何処に行くんだ?てか何を…」
「少し用があってな」
ようやく鞘から出たデルフリンガーだったが、さっきより怯えている。
「どうした?剣が気分が悪いと言うのではあるまい」
「そういや…その剣、どうするんだ?」
「ああ、二刀流というわけにもいかんしな。『処理』させてもらうぞ」
『処理』。その言葉を聞いた瞬間デルフリンガーが鞘を戻した。カタカタと震えているような気もする。
無論、そんな気にしないイレーネはさらに速度を上げる。
そうして着いたのは、あの森の小屋があった場所だ。
まだ、覚醒者の血肉が飛び散り、妖気が残留している。
一月ぐらいすれば、自然に綺麗になるだろうが、それまでは人が近づける場所ではないだろう。
「さて…この辺りでいいな」
「最期に一つ言いたいんだけどよ…」
「何だ?」
「そのよ…そりゃあ俺は錆びて、そいつみたいじゃないけどよ、捨てるってのはひでぇんじゃねぇかって思う…んだけどな」
「…何を言っている?お前」
「せめて、予備でもいいから、手元に置いといてくれ!せっかく、良い使い手に出会えたんだからよぉ〜〜」
涙目。剣に目があるのかどうか分からないが、とにかく、そんな感じだ。
「…お前、自分が捨てられると思っていたのか。そうか、それが妙だった理由か」
そこから移動し、少し見晴らしが良い場所に着くと、大剣を抜き、堅い地面に深く突き刺した。
「へ?そいつ使わねぇのか?」
「これはな…我々が死んだ時には、それがそのまま墓標になるんだよ。
見ろ、ここに印がある。戦士は、この印と同じ物を与えられている。あの覚醒者は、この印のはずだ」
「いや、てっきり、俺が捨てられるもんだと思ったからよ。それならそうとな?」
「私が死ねば、お前がそうなるんだからな。今のうちに覚悟しておけ」
「いや、相棒なら、そう簡単に死なねぇだろ」
「死なないか…幸運は、あの時使い果たしているからな。どうなる事やら」
あの瀕死の状態から、ありとあらゆる幸運で命を繋いだ。
幸運に許容量があるなら、恐らくもう残ってはいないはずだ。
だからこそ、限界を超えそうな時は躊躇無く首を撥ねて貰わねばならない。
大剣がしっかり刺さっているのを確認すると、学院に向かい人外の速度で再び疾駆する。
後に残された物は、限界ギリギリまで人のために生きたであろう戦士が存在したという証だけだった。
デルフ、死亡フラグを寸前で回避!
超空気な作品だが…久々に投下したッ!
クレイモアのキャラソンのイレー姉さんの『疾風』がものスゴク良かった
空気だなんてとんでもない。イレー姉さんかっこよすぎ
銀眼の人、乙でしたッ!
乙!
キャラソンなんて出たのか
あれ?
疾風の二つ名持ってる奴どっかにいなかったか?
まあ言葉のイメージがイレーネにあってるからいいか
探して買って聞いてみるよ
何を仰る、待ってましたよ〜。乙です。
気が向いた時でも良いので続き待ってますぜ!
銀眼乙でした。
キャラソンのイレー姐さん、どうしても「バーローw」の声にしか
聞こえな(ry
>>259 遅レスだがGJ。
そしてデモベで鉄の表紙のついた魔導書持ちとなると……………まさか存在が18禁なあの御方ですか?
銀眼の人乙!
いい感じに仕上がってますね
んでちょっと指摘なんですけれどナンバー9のジーンという描写がありますが、ジーンはプリシアの覚醒でナンバー1のテレサからナンバー5のプリシアが
実質全滅したため下位ナンバーのジーン達のナンバーが繰り上げ、もしくはそれプラス月日の流れ出の成長と思うんですがどうでしょう?
イレーネは組織と関係を絶ってたためジーンがナンバー9だと知るのはちょっと不自然かな〜って・・・
細かいことすいませんw
ああ、ジーンさんのとこはイレ姉さんが言ってるわけじゃないって事でさ…こらえてくれ
ほんと、性格といい、顔といいヅカ的な人ですよ、ジーンさんはw
かなり遅れた反応だけど・・・
≫228
おいおい失敗したら即L様降臨じゃないか!(^◇^;)
まあ失敗して喜ぶのはあとがきの神○先生と部下Sだけだかと・・・
と、スレイヤーズネタがきたので
リナ・インバースがルイズに召喚されたらをシミュレートしてみる・・・
ルイズの召喚でリナ登場
↓
ルイズ、流石に人間を使い魔したら不味いと思いやり直しを要求
↓
コルベール、やはりネジが外れてるのか留年を盾にリナを使い魔にする事を強要
↓
ここでやっと状況を理解したリナはハゲに対して問答無用で攻撃呪文でぶっ飛ばす
↓
ハゲの惨状を気にしないでやり直すにもまた人間を召喚しないかと不安になる涙目のルイズ
↓
リナが代わりに魔王竜を召喚するからそいつと契約しろと提案
↓
喜ぶルイズはクラスメートからのズルいなどの批判を無視して提案をのむ
↓
リナ、ナーガ直伝の魔竜吠で魔王竜を呼び出すも最後一小節をクシャミでのミスり制御出来てない魔王竜があばれる
・・・と簡単なシミュレートしてみました。
>>395 本当にすいませんww
クレイモアに凝ってしまってこの有様ですわww
読み直して見ましたが、イレーネが覚醒した戦士のクレイモアを墓標にしに行くシーンが凄く良いですね
これからも楽しみに待ってますんで頑張ってください!
>>394 節子。それプリシアとちゃう、ナンバー2のプリシ『ラ』や
(テレサ討伐時点で、イレーネさんナンバー3落ち)
9:30より投下
悟空がハルケギニアに召喚されてから、一週間が経とうとしていた。
元来死人である悟空にとって、時間の経過は大した問題ではないが、ルイズの使い魔という立場上、一応彼女の生活リズムに合わせた活動をしなければならない。
まず朝。ルイズより先に起きて、前夜彼女が脱ぎ散らかした洗濯物を籠に詰めた後、ルイズを起こす。
トリステインは地球と同じく1日が24時間なので、時差ボケに悩まされる事も無かった。
以前クリリンや悟飯に聞いたところによると、ナメック星は夜が無いので、いつ寝れば良いのかピンと来ず、地球に戻ってから暫く苦労したらしい。
ルイズを起こした後、彼女の身支度を整え、朝食のために彼女と一緒に部屋を出る。
食堂に着いたら、シエスタに洗濯物を預けて食事。ここ最近は隣国で内乱が起こっているらしく、そのせいで食材の集まりが芳しくないのか量が少なめの時があった。
そういう時は付け合せとして食卓に載っているはしばみ草を齧れば、物凄い苦味に襲われるもののとりあえず空腹感は無くなるので、どうしても食い足りない時はそうするようにしている。
食後、ルイズは授業に出る。どうやら使い魔が授業に出なければいけないのは、教師が生徒の使い魔と面通しする最初の一週間だけでよいらしく、ルイズもそれからは好きにしなさいと言っていたので、悟空はこの時間を利用して修行に打ち込む事にしたのだった。
「なあ、相棒」
「何だ? デルフ」
トリステイン魔法学院から2リーグほど離れたところにある小高い丘。その頂上に悟空は結跏趺坐の姿勢で座っていた。
その傍らには、常時携帯を言い付かったデルフリンガーが置かれている。
「お前さん、修行するって言っときながらそうやって黙ーって座ってばっかだけどよ、そんなんでホントに修行になんのかね?」
「気をコントロールするには、こうやって瞑想してるのが一番いいんだ」
欲を言えば組み手の相手が欲しいところだが、生憎ここハルケギニアには、悟空の相手が務まりそうな武道家は居そうに無かった。
ギーシュのワルキューレも、彼自身が知覚できる範囲でしか動けない。
彼はフーケ討伐時に精神力をだいぶ消耗してしまったらしく、しばらく修行の相手は休ませてくれ、と悟空に頼んでいた。
というわけで、悟空は肉体的な鍛錬はお預けにして、主に気力を高める修行を行うことにしたのである。
神様の元で修行していた頃から、この修行は悟空にとって欠かせないものになっていた。
全身の感覚を研ぎ澄ませ、四肢に気を満たし、それを練り上げ、増大させていく。
そうする事によって、肉体はより大きな気の流れに耐えられるようになり、瞬間的に爆発させる気の最大値も増え、結果として自己の鍛練に繋がるのである。
この修行は地味ながら見た目以上に効果があり、始めてから2年余りで悟空はかめはめ波のコントロールや舞空術をマスターし、精神と時の部屋では、超サイヤ人の壁を乗り越えるヒントを悟空に与えるきっかけとなった。
目指すは、息子・悟飯が到達した、超サイヤ人を超えた超サイヤ人への変身。
自分もあの域に達したい。もっともっと強くなりたい。
死して尚、悟空は自分が誰より強くありたく、また強い相手と戦う事を欲していた。
「そんなもんかねえ……。まあ、相棒がそう言うってんなら、そうなのかね」
やがて、昼休みが訪れる。
悟空がいる所からは魔法学院のチャイムは聞こえないが、ルイズ達生徒の気が一ヶ所に集まるので、悟空はそれによって昼休みの時間を知る。
デルフを拾い、来た時と同じように舞空術で魔法学院に戻る。
最初は瞬間移動で直接ルイズの元に行っていたが、大抵は食堂で落ち合うので、そのままデルフリンガーを携えた状態で厨房に行くのは衛生上問題があるとマルトーに咎められてからは
(見るからにボロッちい錆びた剣なのだから当然だ)一旦ルイズの部屋に置きに行くようにしていた。
昼食後、まずコルベールの元に行き、デルフの事やこの世界の理について二、三講義を受ける。午前中はコルベールの授業があるため、授業が無い午後の早い時間に行く事になっていた。
また、コルベール自身、この未知の訪問者に対する興味は尽きなかった。
「時にゴクウくん。君は余所の世界から召喚されたそうだが」
「そうらしいな」
「そうらしい…って、ミス・ヴァリエールからはそう聞いているが」
「オラ、よくわかんねえ。前にも似たような事があったし」
「例の…ヤードラット……とかいう世界のことかね」
「ああ。あの時は召喚されたんじゃなくって、不時着したんだけどな」
「戻ろうとは思ったりしないのかい? 元いた所に」
「戻るっつっても、あの世だからな……。別に急いで戻る事もねえと思うぞ」
コルベールはあまり熱心な信奉者ではなかったので、悟空が用いた「あの世」という概念についても、特に異論を挟むつもりは無かった。
かつて、自らが冒した過ち以来、彼は宗教や争いというものを忌避していたのである。
「ここにいりゃ修行になっかもしんねえしな。それに、ここのメシはすっげえ美味いんだ」
「は?」
「ルイズの使い魔やる代わりにあんな美味いメシが食えんなら、オラずっとここにいてもいいや」
魔法という、悟空にとって未知の技を使いこなすこの世界の住人は、悟空にとって刺激的な存在だった。
もしかしたら、ヤードラット星に滞在していた頃のように、新しい技を覚えられるかもしれない。
そして何より悟空が気に入ったのは、この世界の料理が非常に美味しい事だった。
死んでいるのだから食事は採っても採らなくても同じ筈なのだが、あの世での食事は文字通り食べた気がしないのだ。実際に身がある下界の食事の方が余程美味であった。
その後、悟空は午後の修行のため再び学院の外に出る。
午前中と同じ丘の上まで来ると、携えたデルフリンガーを手に取る。すると、左手のルーンが光り、身体中に力が沸き起こってくる。
この時に上がった自分の力を目標として、悟空は再び瞑想に入り、自分の気の限界値を上げていくのである。
日毎に悟空の気は少しずつだが上がっているので、結局堂々巡りなのだが、それでも自分の身体にまだまだ向上の余地があるという事は、悟空の修行にある種の指標を与えていた。
「それにしても、不思議なもんだなあ」
「俺からしてみりゃ、座ってるだけで力が増すお前さんの方が不思議だよ」
もうひとつ、サイヤ人の特性を活かした修行法もあるにはあるのだが、仙豆のように体力を全快にするようなものは、ここハルケギニアには存在しないらしい――水のメイジが秘薬を使えばできない事は無いが、費用対効果に問題があった――ので、自重していた。
もっとも、仮にそれができたとしても、お気に入りの胴着がボロボロになってしまうのでやらなかったであろうが。
なんだかんだ言って、悟空はこの胴着に愛着があった。
そして、夕食の時間になると再び学院に戻り、食後シエスタから朝頼んでおいた洗濯物を受け取り、ルイズと一緒に部屋に戻る。
これが、フーケ討伐後の悟空の日常であった。
支援
やがて、オスマン氏が通常の執務に戻れる程度に回復し、改めて悟空はオスマン氏に呼ばれる事となった。
「確か、あの老人はお主と同じ世界からきた人間なのじゃったな」
「ああ」
「教えてくれんかの。あの勇敢なメイジは、彼はどんな人間じゃった?」
「え〜と…」
困った。
あの男に関しては、どちらかというと悪い印象しかない。
それを馬鹿正直にこの老人に話してしまうのは、何となく思い出を汚してしまうような、そんな悪い気がした。
「実はオラもよく知らねえんだ。オラの師匠の、昔のライバルだっつう事くらいしか」
「そうか……残念じゃな」
「オラも訊きてえ事があるんだ」
「何じゃい?」
「このルーンって、一体何なんだ? コルベールのおっちゃんは何とかのルーンだっつってたけど」
「伝説の使い魔、ガンダールヴのルーンじゃ」
「それが何でオラに刻まれたんだ?」
「私も正直、よう判らん。じゃが、もしかしたら、お主がこっちの世界に来た事と何か関係があるのかもしれん」
オスマン氏もまた、悟空が異世界からの来訪者だと信じていた。
外宇宙との接触を経験していないこのハルケギニアでは、異星人よりも異世界人の方が通りが良かったためだ。
実際のところ、悟空は異星人でもあり、異世界人でもあったのだが。
「まあ、そちらについては、私なりに調べてみるつもりじゃ。
お主というイレギュラーを抱えてしまった事によって、このハルケギニアにどんな影響があるか、未知数じゃからな」
「オラそのへんの事はよく判んねえけど、よろしく頼むな」
「で、その間じゃが……。よければ今まで通り、ミス・ヴァリエールの使い魔を勤めて欲しい」
「判った。オラとしてもそのつもりだ」
翌日、トリステイン魔法学院で、『フリッグの舞踏会』が開かれた。
生徒や教師の枠を越え、更なる親睦を深めることを目的とした、伝統ある宴である。
そのため、パーティ会場ではそこかしこで、男と女の熱い駆け引きが繰り広げられていた。
キュルケもその中に混じり、次々と口説きにかかる男どもを舌先三寸であしらっていた。
一週間前の『破壊の杖』奪還の功労者とあって、キュルケ達4人はオスマン氏からパーティの主役のお墨付きを貰っている。
ギーシュも別の一角で、女生徒達からの誘いに鼻の下を伸ばしている。その背後で、モンモランシーが見た事も無い形相で睨んでいるとも知らずに。
そして、そんな熱い駆け引きとは無縁の人物が2人いた。
タバサと悟空である。
2人は、とにかくテーブルの上にある豪華絢爛な料理を1mgでも多く胃袋に収めようと、その両手と口をフルに駆使していた。
膝と胸に置かれたナプキンを派手に汚している悟空とは対照的に、ナプキン無しで黒いパーティドレスにシミひとつ着けないタバサは、さすが貴族といったところか。
暫くしてキュルケがタバサを誘いに来たが、物凄い勢いで料理を平らげる二人の様子を確認すると、苦笑してまた自らの縄張りに戻っていった。
「…おなかいっぱい」
先にギブアップしたのは、当然ながらタバサだった。
食堂では他の生徒が食事する様子など気にもならないが、さすがに悟空が相手だと、ついつい張り合ってしまう。
周囲の助長もあって、珍しくタバサは満腹になるまで思う存分料理を堪能した。
そこへ、何処から来たのか、一羽の伝書フクロウが飛び込んできた。灰色のフクロウは、まっすぐにタバサの元へとやってくると、その肩に留まった。
タバサの表情が僅かに硬くなった。その様子に気付いた悟空が、タバサに問いかける。
「また任務ってヤツか?」
「そう」
フクロウの足から書簡を取り上げる。そこには短く『出頭せよ』と書いてあった。
満腹でボンヤリしていた目に、強い光が宿る。
「オラも一緒に行くか?」
「任務の内容次第。まだいい」
「わかった。気をつけてな」
「ありがとう」
タバサがバルコニーの奥へ消えると、入れ代わりにルイズがやってきた。
「こんな所にいたのね……。まあ、ある意味あんたらしいけど。探したわよ」
「おうルイズ。おめえも何か食うか?」
「そうね。じゃあそのシュリンプを…って違ーう!」
「?」
「踊ってあげても、よくってよ」
「オラ、踊った事ねえぞ」
「だーいじゃうぶ。わたしにまっかせなさい!」
ビシっと握った手から中指だけ立ててルイズが笑みを浮かべる。
そこに、焼き立てのパイを持ったシエスタがやってきた。
先ほどから、悟空とタバサに給仕をしていたのである。
「ゴクウさん、デザートをお持ちしました」
「おほっ、美味そうだなー」
「う! そ、それはクックベリーパイ……」
「ミス・ヴァリエールもお召し上がりになられます? 熱いうちが食べ時ですよ」
「い、いただくわ」
ルイズ・ヴァリエール。16歳。色気より食い気のお年頃であった。
2人でデザートのパイを平らげ、一息ついたところで、ルイズが口を開いた。
「聞いたわ」
「何を?」
「元の世界に戻る気が無いんだって」
「無いっつうか、急いでねえってだけなんだけどな」
「……喚び出しといてなんだけど、いいの?」
「気にすんな。この世界も結構面白そうだしな」
「……あんた、妊娠でもしたの?」
「してない」
「じゃあ何なのよ、そのお腹は」
「…迂闊」
トリステイン南西に位置する大国、ガリア。
その首都リュティスに築かれた宮殿の一角で、タバサと彼女の従姉妹、イザベラが対峙していた。
学院からここまでの道中、程よく捏なれたタバサの胃袋は、収められた料理を消化して腸へと送り込んでいる最中であり、イザベラは、そのせいでぽっこりと膨らんだタバサの腹に興味津々であった。
ガリガリの四肢と相俟って、まるでお腹一杯ミルクを飲んだ子猫のようである。
まじまじと見つめられ、タバサは顔には出さないものの、恥ずかしそうに両腕でお腹を隠した。
「……見ないで」
「…ぷっ、ぷぁっはっはっはっはっは! あーっはっはっはっはっはっはっはっは……!!」
上目遣いに抗議され、イザベラは普段からは想像もできないタバサのそのギャップに、笑いを堪えることができなかった。
「今回の任務は、戦いは無い」
「じゃあ、オラが手伝う必要もねえって事か」
「そう」
「わかった。じゃあな」
「…………」
学院に戻り、悟空に任務の概略を説明した後、タバサは悟空の後姿を見送り、人知れず呟いた。
「体型変わってない…羨ましい……」
タバサwwwwwww
支援
今回は以上です。支援ありがとうございました。
とりあえず、原作第1巻に相当するエピソードを書き終わりました。
なるたけ忠実に原作のイベントを消化させるつもりでいましたが、悟空みたいなある意味厨性能キャラは
そのままなぞるよりも暴れさせた方が面白い、との指摘を頂いたので
2巻目以降はもう少し原作よりもはっちゃけた事をさせてみようかと思います。
なんというピザまっしぐら・・・
乙ですw
どんだけ食ったんだよ!
GJです
これからはタバ曾根と呼ぶ
>>408 御疲れー
いよいよサイヤ人の本領発揮かwこれは期待せざるを得ないw
悟空乙
山田西南を召喚したら
アルビオンに向かう途中で盗賊に襲われまくって涙目に
でも相手貴族なもんで全員捕まって盗賊涙目。
さらに釣られて現われたレコン・キスタも捕縛されて涙目。
そいつのミスでワルドの正体が割れて涙目。
西南ならここまで行くと思うな。
サイヤ人の中の人乙
アルビオンまでどうやって行くのか、まずそこから楽しみだなあw
>>413 何とか逃げおおせたワルドさんがタルブに攻め込んでくる時はやたら縁起のよさそうな格好をw
「ガンダールヴ、これが幸運艦隊だ!」とか何とか。
でも悟空なら、ワルドも七万もアルビオン艦隊も、1秒で消し飛ばせるよな
この後、どうするんだろう・・・?
ワルドがヤムチャ化します
「弱くて怖い閃光のワルド」
弱すぎて怖いんだろーなw
GJ
タバサがデブになっちゃうwww
>>416 って言うか悟空の場合、アルビオンに行くのに瞬間移動を使わなくても一時間かからんと思う。
行きはともかく、帰りは瞬間移動であっという間じゃんwww
七万の超セルなら悟空といえども苦戦するはず!!
そこでメタルクウラですよ。
実は魔人ブウの卵がハルギニアにあってな・・・
悟空を捕らえてエネルギーを吸い取ろう、とか?
んなことやったらまたゼロ魔の意味無いて叩かれるぞ
モット伯と息が合ったブウは彼の使い魔に
河童、札幌の奥座敷。
旅行に行ってきました。
さて、温泉で固まったほぐしてきました。
投下よろしいですか?
いかん、頭をほぐしすぎた。
上のやつでほぐしてきたのは頭ですよ〜。
OKなら14:10から投下します。
特に問題なさそうなので投下開始!
今日来た客は、凄く変わった集団だった。
大抵酒場の儲け話に乗るのは傭兵集団やゴロツキと相場が決まっている。
しかし、今日は違った。
ガキが五人、どこかの制服を着ていたから多分メイジなんだろう。
貴族のガキが一体何を?
だから、第一声を聞いた瞬間、驚かされた。
「とりあえず、ミルクを。それと最近噂になってること聞きたいんだけど」
まさか、儲け話を探しに来た貴族がいるなんて。
トリスタニアの酒場で聞ける話は幅が広い。
些細な噂話から大局を見据えた話までさまざまだ。
最も聞ける噂はアンリエッタ様がゲルマニアとの婚姻するという話とレコンキスタに関する話題。
婚姻についてはお膝元だけあって、その手の噂は飛び交っている。
レコンキスタに関しても、次の目標はどうしてもトリステインだということで、あちこちでささやかれている。
そして、マスターに本題を切り出す。
「マスター、何かいい話無い?」
「お嬢さん方、実力者と見るからこんな儲け話があるぜ」
マスターの話に耳を傾ける。
こういった場を取り仕切るマスターがそう言うのだ、相当な話だろう。
「ラ・ロシェール周辺にあるタルブ村、その近くに森があるんだが……最近オーク並に怖い魔鳥が現われるんだと。
その森を突っ切ると、街道を進むより道の短縮になるから重宝されていたんだが…
今はその魔鳥、便宜上タイニーフェザーと呼ばせてもらうヤツ等がそこを陣取っていて、安心して通れないんだ。」
確かに、街道は安全だが若干遠回りになってしまう。
森は気をつけるところに気をつけておけば、最高の短縮ルートになるのだろう。
しかし、その問題となっている魔鳥が道をふさいでしまっていると。
「タイニーフェザー? 魔鳥? コカトリスとかそういった類の?」
ここでマスターが首を振る。
「いや、先住魔法とかの恐ろしさじゃなくて、物理的な恐ろしさらしい。
命からがら逃げてきた冒険者によると、鋼鉄製の鎧に穴を開けるほどのくちばしを持ち、
森の中なのに落石が襲い掛かってきたりと言っていたな。
そのうえ集団で襲いかかってくるそうだ」
なんだろう、そのとても怖い鳥は。
話を聞く限りでは先住魔法を使いこなすみたいだが、遭ってみないことには分からない。
「その魔鳥を退治してほしい、もしくは新ルートの開拓をしてほしいということね」
「話が早くて助かる。どうする?」
全員に目線を合わせ、意思を確認する。
当然ながら、受けると。
なぜかシエスタ以外。
そもそもなぜ、私達がこんなことをしているかというと……
「諸君、我々にはお金が無い」
食堂でお茶していたところ、ギーシュが宣言した。
まぁ、アルビオンに行くまでの準備とか着いた後のごたごたで出費が重なっている。
私も金額換算で三十三エキューと二十スゥを使っている。
「今こそちょっとした冒険で小遣い稼ぎといこうじゃないか!」
「半分は賛成。宝探しよりも効率的な手段を探したほうがいい」
と、タバサ。
ギーシュの持っている宝の地図が目に入ったのか、それを見てからの提案。
これについてはギーシュ以外全員同意だ。
「じ、じゃあどうやって…」
「酒場に行く。儲け話の一つぐらい紹介してもらう」
なぜタバサがそんなことに詳しいのか、誰も突っ込めないままトリスタニアまで行くことになってしまった。
情報どおりに森の近くまで進む。
全員がたかが鳥、問題なく退治して終了と息巻いていた。
やっぱりシエスタ以外。
むしろ青ざめている。
「どうしたの? たかが鳥じゃない。酒場の主人が名前を大げさに言ってるだけだって」
「そうだといいんですが……もしアレだったら………」
「大丈夫だ、相棒。いくらなんでもアレが逃げ出してるわけねーよ」
「―――手紙に、つがいのアレが逃げ出してなかなか見つからないって書いてあったとしても?」
「……おでれーた。まさかマジでアレが逃げ出したのか? そうなるとヤバイなんてもんじゃねーよ」
デルフと話すシエスタの様子がおかしい。
あの剛剣無双なシエスタが怯える何かが待ち構えているというのか?
「ねぇ、シエスタにデルフ。アレってなに?」
ナイスキュルケ!
こういうときにズバズバ聞く性格が頼もしいわ!
「―――鳥、デスヨ? 話ノ通リ、クチバシデ鎧ヲ貫ク」
「―――遭えば分かる。アレと戦った話なんてしたくも無い」
何だかよく分からないまま、馬車は肝心の森へと進んでいった。
「鬱蒼としてるわね、こんな樹海があるなんて」
「地元の話によるとオークの住処」
「オークは嫌だな。臭いし、汚いし」
「―――オークの方がまだマシです……」
「止まって、何か聞こえない?」
その言葉に全員が耳を潜める。
―――プギャー!! フゴー!!
これはオークの声か。
それにしてはずいぶん痛々しい悲鳴がいっぱい上がっている様な…
―――クェー!! クァー!!
この声がタイニーフェザーというヤツだろう。
声がしたほうに、もうちょっと接近してみる。
シエスタだけ、何かを諦めたようにデルフを抜いて戦闘態勢に入る。
視界が開け、木々の隙間からぽっかりと空いた広場が見える。
数体のオークが襲われている。
噂のタイニーフェザーに。
黄色や黒の羽毛。
鳥の癖に大地を駆けるその勇姿。
頑丈な鎧でも貫けそうなくちばし。
そして、二メイルはあろうかという体躯。
どう見ても温和そうな生物がオークにくちばしを突き立てて蹂躙している。
「あぁ、やっぱり…」
「アレだけの大所帯だ。さぞかし縄張りは広いだろ」
シエスタとデルフが絶望の淵に立ったような声をあげる。
そこまで怖いものなのか?
いや、現実を直視しよう。
振り下ろされる棍棒を、すばやいバックステップで避ける。
脂肪の鎧に包まれた腹に深く突き刺さるくちばし。
謎の球体がオークに襲い掛かり、地面に打ち据える。
傷を負ったタイニーフェザー同士が寄り添って、ケアルに似た光を発して傷を癒す。
これは、一方的だ。
オークが逃げ出そうとして、背を向けた瞬間に降り注ぐ岩石。
降り注いだ岩石はオークを押しつぶして消えた。
オークの逃げようとした先から、赤いタイニーフェザーが出てきた。
「シエスタ、正直に話して。アレは一体なに?」
「お爺様が村に来たときに持ち込まれた、タルブ村にのみ生息する巨大鳥、チョコボです」
「爺さんの話によると、赤いのは先祖返りした獰猛な赤チョコボだ。
黒いのは黒チョコボって言って、空を飛び回る。
厳密にチョコボって言うのは一番数の多い黄色のヤツだ」
「でも、たかが鳥でしょ? どうしてそんなに……」
「野生のチョコボは、完全武装した騎士団でも討伐が難しいと言われるほど危険なんです」
「相棒も昔戦ってボロボロにされた事があるぜ」
全員が絶句する。
「でも、足はそんなに速くなさそうだし、鳥だから賢くないんじゃ?」
「馬かそれ以上の速度が出ますよ? 森の中でもない限り逃げるのは無理です」
「おまけに賢いんだよ」
そのとき、小枝が折れる音が響く。
ギーシュが姿勢を変えた瞬間に踏みしめてしまったのだ。
広場にいたチョコボが一斉にこちらを向く。
「これって、かなりヤバイ?」
「下手すると絶体絶命といった感じです」
後にルイズはこのことを『史上最悪の戦い』と言い残した。
シエスタは後の世に、『温厚な人とチョコボは怒らせるな』という格言も残した。
―――ここからが、本当の地獄だ。
∩___∩
| ノ ヽ
/ ● ● | クマ──!!
| ( _●_) ミ
彡、 |∪| 、`\
/ __ ヽノ /´> )
(___) / (_/
| /
| /\ \
| / ) )
∪ ( \
\_)
以上で投下終了。
フィナス河の悪夢現る。
どう戦う、というか生き残れるのか!?
ありがとうございましたー。
聖石乙
チョコボの怒り……たしかフレアの効果だっけか
チョコボヤバイヤバイチョコボ
これは地味にいやな相手だな!
タイニーフェザーと聞いてロマサガから特別出演かと思ってしまった
投下乙です。
ゲームでもせいぜい数匹で出現する程度だったのに、「群れ」を形成しているのか……。
これならオーク鬼どころかアルテマ&アルテマ・アルケオデーモンですら蹂躙できるだろ。
マジでピンチw
>>238 うおお、マジ感謝です。
本当にゲーム画面じゃないですかこれって位うまいですね。
PS版FFTでチョコボにフルボッコにされて投げた俺が来ましたよ。
ムスタディオが見事にヌッ殺されてクリスタルに…。
それはともかく聖石の人乙でしたー
『時砂の王』の召還SSってネタがスルーされたなぁ……。
やっぱハヤカワSFは近頃売れてないのかしら。
>>441 自分で書けばいいと思うよ
とネアンデルタール人物理学者召喚を挫折した俺が言う
ハルキゲニアが中世辺りから分離した地球の時間枝で
二つ目の月はカティ・サークの本体で
んでもって襲来してET相手にハルキゲニア連合軍で相手取り、とか
妄想はできるんだがなあ、SSにするとなると時間が足りん
「喋る剣」という意味ではカティとデルフの絡みも見てみたいし
牧場でデルフは増殖できるのだろうか……
個人的にはゲキリュウケンとの絡みがみたいw
446 :
罪深い使い魔:2007/11/05(月) 15:52:37 ID:WAY2iHWl
16:00から投下予約します
支援
448 :
罪深い使い魔:2007/11/05(月) 16:00:11 ID:WAY2iHWl
「俺が特異点であることに変わりはない……。
俺がいれば……『こちら側』はいずれ『向こう側』に飲み込まれるだろう……」
すべてを思い出したあの時から、頭のどこかでわかっていた。
いつかはこうなる。こうしなければならない。こうする以外の方法はない。
ただ、心がそれを拒絶していた。
帰りたくない。ここにいたい。みんなと一緒が良い。一人になりたくない。
でも、そんな願いは決して許されない。
『あいつ』を倒しても、俺という存在が『こちら側』を蝕む存在であることには変わりがない。
俺のせいで、みんなが生きる『こちら側』を壊したくない。
それに、約束も果たさなければならない。
「帰るよ……『向こう側』へ……」
辛くないと言ったら嘘になる。悲しくないわけがない。逃げ出したい気持ちに偽りはない。
それでも、『向こう側』で生きていけるだけの勇気を、みんなが与えてくれたから。
だから俺は、『向こう側』へ旅立っていける。
「俺達は、この海を通して繋がっている……いつでも……会えるさ……」
『こちら側』の俺から離れ、心の中で『向こう側』を思い描く。
複雑な手順は必要ない。ただ戻りたいと願うだけで『向こう側』へ戻れる。
ここでなら、それができる。
(さようなら、みんな)
急激にぼやけていく視界。崩れ落ちる『こちら側』の俺。表情の読めない仮面の男。見守る仲間達。そして……
涙を流す、大切な人。
(ごめん……摩耶姉)
視界が、眩い光で満たされた。
奇妙な感覚。
ものすごい速さで地面に落下しているような、逆に上昇しているような。
上も下も、右も左もわからない光の渦の中を、しかし『そこ』へ向かって進んでいるのだということだけはなんとなくわかる。
これから帰る『向こう側』に思いを馳せながら達哉は目を閉じ、この旅の終わりを静かに待つことにした。
そのため彼は、光で満たされたこの空間に漂う異質な存在に気がつかなかった。
大きな鏡という、彼の人生を大きく変えるその存在に。
449 :
罪深い使い魔:2007/11/05(月) 16:02:26 ID:WAY2iHWl
「あいつ『フライ』はおろか、『レビテーション』さえまともにできないんだぜ」
わけがわからない。自分がどうにかなってしまったかのようだ。
こちら側にいるはずのない人間。
初対面でいきなりキスしてくる不可思議な少女。
左手に刻まれた意味不明な紋様。
自分の目の前で空を飛んで見せた少年たち。
そして……
「…………」
達哉は制服の袖を巻くり上げ、その中にあるものを見つめる。
手首から腕にかけてべったりと張りつく、黒い痣。
皮肉にもその痣が彼を混乱から立ち直らせてくれた。
「やつとの因縁は、まだ切れていないということか……」
達哉の顔が歪んだ。
「あんた、なんなのよ!」
達哉が声のした方を見ると、今しがたキスしてきた桃色の髪の少女がこちらを見上げて眉を吊り上げていた。
ようやく発言の機会が回ってきたということか。
改めて見るとかなりの美少女だが、どう見ても中学生、下手したら小学生にしか見えないその子供は
達哉にとって好みの対象外だ。もちろん彼女個人に興味もない。しかし彼女が持っているであろう情報は別だ。
「それはこっちのセリフだ。お前らは一体なんだ? ここはどこだ?
地上か? それともシバルバーのどこかか?」
「何をわけわかんないこと言ってるのよ……まあいいわ。見たところ相当な田舎者みたいだから説明してあげる」
そう言って少女は腰に手を当てて、妙に尊大な態度で答える。
「見ればわかるでしょうけど、私たちはメイジ。そしてここはかの高名なトリステイン魔法学院!」
どうだと言わんばかり胸を張り、こちらを見据える少女。
そんな得意げになられても、こちらとしてはさっぱり意味がわからない。
「メイジとはなんだ? それに……魔法学院?」
「あんた、メイジを知らないの!? 一体どんな田舎から来たのよ!!」
信じられないといった顔で驚く少女。
どうやらこの状況を理解するには長い時間が必要なようだ。
達哉は嘆息した。
450 :
罪深い使い魔:2007/11/05(月) 16:04:30 ID:WAY2iHWl
ハルケギニア。トリステイン。メイジ。貴族。魔法。
サモン・サーヴァント。コントラクト・サーヴァント。使い魔。
外で話し合うのもなんだということで場所を移し、少女――ルイズ・ド・ラ・ヴァリエールの自室で
俺は思いつくままに質問を行った。その結果返ってきた答え――ここが自分の知らない『異世界』だということ――
はどれも信じられないものばかりだった。
それは向こうにも言えたことらしく、俺の知る限りの知識を語って聞かせても
ルイズはただ疑わしげな目を向けるだけだ。
「……じゃあ、あんたは異世界から来たって言うの? その、空飛ぶ街以外何もなくなった世界から」
「正確には、その世界に帰るはずがここにたどり着いてしまったんだ」
「なんでわざわざ何もない世界に帰るのよ。その『やり直した世界』に居座ればいいじゃない」
「その世界に俺の居場所はなかった……『特異点』である俺が無理に留まろうとすれば、あの世界はやがて滅びてしまう……」
己の恥なのであまり語りたくはない内容だったが、この際仕方がない。
ここに至るまでの経緯を簡潔に説明する。だが、結果は予想通りのものだった。
「……なるほどね。平民にしてはなかなか上手くまとめたお話じゃない」
ルイズは腕を組んで俺の『過去』をそう評する。もちろん心の中では言葉通りの評価を下していないだろう。
「で、本当のところはどうなの? 最後まで聞いてあげたんだから正直に話しなさい。
あなたの生まれはトリステイン? ゲルマニア? ガリア? アルビオン? 実はロマリアとか?」
「……やはり信じてはくれないか」
「当たり前でしょ!」
それはそうだ。
俺だって夜になってから現れた二つの月を見るまでは、ルイズが俺を騙そうとしている可能性を捨て切れなかった。
しかしあんなものを見てしまった以上、もう信じるしかない。
「どうしてもって言うなら証拠を見せなさいよ、証拠!」
これは難題だ。
俺は二つの月のような、有無を言わさない証拠など持っていない。
というか身一つでこの世界に来た俺に一体どんな証拠を示せを言うんだ?
……アレ、か?
だが下手に晒すとややこしいことになるかもしれない。
そう思い、何気なくポケットをまさぐってみると――
「…………」
冷たい感触がした。
451 :
罪深い使い魔:2007/11/05(月) 16:06:50 ID:WAY2iHWl
「なによ、それ?」
「ライターだ」
達哉は慣れた手つきでライターの蓋を開け、シュボ、と火を灯してみせる。
「へぇ、『火』のマジックアイテムなんて持ってるんだ」
「マジックアイテムじゃない。火花を起こして中の燃料に火をつける着火装置だ」
「ふーん」
その反応を見るに、どうやらライターではダメらしい。
「でもそれじゃ証拠にはならないわ」
「……らしいな」
達哉はライターの火を消し、蓋をチンチンと鳴らす。
『向こう側』ではこれが癖になっていたが、『こちら側』にいた間は久しくやっていなかった。
そんな懐かしい音を聞いていると、ルイズがまたも怒鳴り始めた。
「まったく、いい加減諦めなさい! そんな適当なこと言ったって私からは逃げられないんだからね!」
どうやらルイズは、俺が語る異世界の話をここから逃げ出すための口実と受け取ったらしい。
「変な意地張るのはやめて私の使い魔になりなさいよ。そりゃ使い魔の契約を交わした以上あんたを家に帰すわけにはいかないけど、
でもちゃんと衣食住の面倒は見るし、故郷に手紙くらいは出させてあげるわ」
「…………」
本人は善意で言ったつもりなのだろうが、その言葉は達哉の胸に深く突き刺さった。
もし手紙が届くなら、書きたい。たとえ会えなくても、
摩耶姉やみんなと手紙のやり取りができたら、それだけ救われるだろう。
でもそれは多分、永久に叶わない。
「……いや、いい。それより、その使い魔っていうのは何時まで続ければいいんだ?」
「あんたが死ぬまでよ」
「な!?」
何気なく聞いたつもりだったが、その言葉を聞いて達哉は目を見開く。
「それはできない」
はっきりとした拒絶。
話が上手くまとまりかけてると思っていたルイズは達哉の豹変振りに驚く。
しかしただ驚いているわけにはいかない。彼女も彼女なりに必死なのだ。
「で、できないじゃないでしょ!? それにどっちにしろ、あんたの話が事実なら帰る手段なんてないわよ!」
「……どういうことだ?」
「『サモン・サーヴァント』は呼び出すだけ。使い魔を元に戻す呪文なんて存在しないのよ」
「呪文でなくてもいい。何か他に手段はないのか!?」
「ああもううるさいわね! あんたの世界には何もないんでしょう!?
だったらずっとこっちにいればいいじゃない! 『向こう側』とかに帰らなくて済んだんだから
めでたしめでたしでしょ!!」
「…………!」
452 :
罪深い使い魔:2007/11/05(月) 16:09:03 ID:WAY2iHWl
その通りだ。人がいない世界で孤独に生きるより、人のいる世界で使い魔をやってる方が良い。
そのことに関して達哉は否定しない。だが、状況はそれを許していない。
達哉はそれを、自分の右腕を見ることで理解した。
だから彼はルイズに『それ』を見せつける。
「これを見ろ!」
「その刺青がどうかしたの?」
「これは『あいつ』が俺につけた印だ! あいつが、『ニャルラトホテプ』が完全に力を失っていない証拠だ!」
『あの戦い』でニャルラトホテプはどこぞに追いやられた。だが、完全に消え去ったわけじゃない。
というより、それは不可能なのだ。すべての人間の負の面であるニャルラトホテプは人間が存在する限り決して滅びない。
それでも、今は……
「一度倒されたやつの力は弱まっている。だからすぐにどうにかなるということはないと思う。
だが、やつはいずれ力を取り戻す! その時こいつを目印にこの世界に来るようなことになったら……!」
「悪いけどこれ以上あんたの妄想に耳を傾けるつもりはないわ」
にべもなくそう言い放つと、ルイズは哀れむような目つきで達哉を見つめた。
「どう騒ぎ立てようと、あんたは死ぬまで私の使い魔よ。これはもう、どうあっても覆ることがない決定事項なの。
そのニャルなんとかがこの世界に来ようが関係ないわ」
達哉の話などまったく信じていない口調でそう言い放つ。
それでも達哉は食い下がる。
「……使い魔の契約を破棄する方法は?」
契約とやらが切れれば『向こう側』に帰れるかもしれない。こうなったらそれしかないと達哉は思った。
しかし、そんな達哉の言動はルイズをさらに不快にさせた。
「……そんなに私の使い魔になるのが嫌なの?」
冷たい視線。頑として首を縦に振らない使い魔に対し、積み重なった怒りは
いまや憎しみを通り越して殺意になろうとしている。
「それなら……死ねば?」
「……なんだと?」
ハンマーで頭を殴られたような衝撃が達哉を襲う。
「あんたが死ねば使い魔の契約は切れるわ。そのニャルなんとかってのもここへは来れないんじゃないの?
私もあんたが死ねば新しい使い魔を呼び出せるようになるし一石二鳥よね」
たっぷりと嫌味をこめてルイズはそう言い放つ。
しかし次に達哉が発した言葉にはさすがに顔を青くした。
「……そうか、その手もあったな」
「ちょ……なに言ってるのよ!?」
支援。
454 :
罪深い使い魔:2007/11/05(月) 16:11:11 ID:WAY2iHWl
ルイズが騒ぎ始めるが達哉は気にしない。
達哉は今、ルイズが示した方法について本気で考えていた。
もしニャルラトホテプとまた戦うことになったとして、次も勝てるという保障はどこにもない。
なにせ一度は負けた相手だ。勝率だけ見ても五分と五分、それに戦うとなれば必ず犠牲が出る。
しかし今ならこの世界と『向こう側』を繋いでいるのは俺一人。ルイズの言うとおり、自分が死ねば
ニャルラトホテプはこの世界に干渉できなくなるかもしれない。
もっとも、この世界にも人間はいるのでいつかニャルラトホテプが手を出してくる可能性はあるが、
少なくとも『向こう側』を利用したものではなくなるはず。そうなったら、あとはこの世界の人間の問題だ。
だが……本当にそれでいいのか?
俺は『向こう側』で精一杯生きていくと、心に決めた。
辛い道のりだが、それをこんなわけのわからない出来事を理由にすべて放り出していいのか?
それが……罰と言えるのか?
「……死ぬのは最後の手段だ。俺は……帰る方法を探す」
まだ諦めるには早い。ルイズが知らないだけで、帰る方法はあるかもしれない。
それを見つけて『向こう側』へ帰る。それがベストだ。
「ああ、そう」
一方のルイズは達哉の言葉を聞いて、ほっと胸をなでおろす。
彼女とて、呼び出した使い魔にいきなり自殺なんてされたらさすがに夢見が悪い。
それにしても、ちょっと会話しただけなのに妙に疲れたわ。こいつ本当に扱いにくい。
「それじゃ、あんたが私の使い魔になるんなら、私もあんたが『向こう側』に帰れる方法ってのを
探してあげるわ。それなら文句ないでしょ?」
「ああ」
未知の異世界で一人、なんの当てもなく彷徨うよりは遥かに効率的だ。
「それじゃ確認するわよ。あんたが『向こう側』に帰るまで、あんたは私の使い魔。これでいいわね?」
達哉は無言で頷く。
支援
456 :
罪深い使い魔:2007/11/05(月) 16:13:25 ID:WAY2iHWl
「なら、あんたには私の使い魔として働いてもらうわよ。
まず、使い魔は主人の目となり、耳となる能力を与えられるわ」
達哉がルイズを見つめる。
どういう意味だ? と目が語っている。
その態度にルイズは少し苛立ったが、これ以上余計なことを言って追い詰めると後が怖い。
「つまりあんたが見たもの、聞いたものを私が見たり聞いたりできるのよ。
でも、あんたじゃ無理みたいね。わたし、何にも見えないもん!」
「……そうか」
あ、返事した。よしよし、良い感じだわ。
……見えないのは残念だけど。
「それから、使い魔は主人の望むものを見つけてくるのよ。例えば秘薬とかね」
「秘薬?」
「特定の魔法を使うときに使用する触媒よ。硫黄とか、コケとか……」
「それを探すのか……」
「でもあんた、そんなの見つけてこれないでしょ? 秘薬の存在すら知らないのに!」
「そうだな……」
だんだん話に乗ってきた。うん、これならなんとか……なるわよね?
「そして、これが一番なんだけど……、便い魔は、主人を守る存在であるのよ!
その能力で、主人を敵から守るのが一番の役目! でも、あんたじゃ無理……どうしたの?」
「守る……?」
再び達哉の様子がおかしくなったことにルイズはぎょっとしたが、それが戸惑いの類だと理解すると
すぐに興味をなくした。きっと、荒事が苦手なんだろうと解釈する。
「まああんたには期待してないわ。人間だもの」
達哉が何か言う前に、ルイズはその仕事を免除した。
単なる平民、それも妄想語ったりいきなり死のうとするような人間にそんな危ないことはさせられない。
「というわけで、あんたにできそうなことをやらせてあげる。洗濯。掃除。その他雑用」
「……わかった」
要するに住み込みの下働きみたいなものか。
そう達哉なりに解釈する。
「あ〜疲れた」
ルイズは大きなあくびをする。
実際ルイズは疲れていた。変な使い魔のせいで。
私怨
458 :
罪深い使い魔:2007/11/05(月) 16:15:33 ID:WAY2iHWl
「さてと、しゃべったら、眠くなっちゃったわ」
そう言ってルイズが次に取った行動を、達哉は軽い驚きと共に見つめる。
なんと達哉が見ている前でいきなり服を脱ぎ始めたのだ。
「なんの真似だ?」
「寝るから、着替えるのよ」
「俺がいるのにか?」
「使い魔に見られたって、なんとも思わないわ」
「……そうか」
本人が気にしないというなら、達哉に文句はない。
ただ着替えをじっと見ているのもなんなので、達哉はルイズから目をそらし、部屋を見渡す。
そこで達哉の頭にある疑問が浮かんだ。
「俺はどこで寝れば良いんだ?」
「床」
「…………」
「まあ、これくらいは恵んであげるわ」
ルイズは毛布を放ってきた。
「…………」
雨風がしのげるだけマシか。そう思い大人しく毛布に包まり、床に寝転がる達哉。
しかし目を閉じようとしたところで何かが頭の上に降ってくる。
枕でも寄越したのかと思って手に取ったそれは、今しがたルイズが身に着けていたキャミソールだった。
呆然とする達哉の頭に生暖かいパンツが乗る。
「明日になったら洗濯しといて」
見ると、素っ裸になったルイズが頭からネグリジェをかぶろうとしているところだった。
「……!?」
達也は自分の頬が紅潮するのを感じた。それがお世辞にも発育が良いとは言えない、
見た目13〜14歳の子供であるルイズの裸でも彼には刺激が強すぎた。
それでも表面上は勤めて冷静に、渡された下着をその辺に置いて再度毛布に包まる。
先ほどの悲壮感もどこへやら、唐突に見せつけられたルイズの非常識さに達哉はただ目を白黒させるだけだった。
しえん
460 :
罪深い使い魔:2007/11/05(月) 16:18:18 ID:WAY2iHWl
「……異世界、か」
しかし、それも一時のもの。明かりが消え、ルイズが寝静まると達哉の胸の内に様々な思いが生じる。
達哉は懐からライターを取り出し、それをじっと見つめた。
「淳……」
昔、親友と交換したその宝物を見ていると、自然と心が熱くなってくる。
このライターをくれた淳は俺のことを覚えていない。思い出すこともない。でも、約束は失われていない。
「俺は必ず『向こう側』に帰る。お前たちの世界にも、この世界にも、迷惑はかけない」
達哉はライターをぎゅっと握り締めた。
すると、まるでライターの火がついているかのように手が熱くなる。
「俺はもう逃げない。そう心に決めたんだ」
先ほどはあんなことを言ったが、死んで終わりにするのはただの逃避だ。
そんな結末を認めるわけにはいかない。
仲間だって、俺がこんなところで死ぬことは望んでいないはずだ。
「俺、頑張るよ。だから……みんなも見守っていてくれ……」
そう呟いて、達哉はようやく眠りについた。
二つの月が、小さな炎をただ静かに見下ろす。
以上です
支援ありがとうございました
乙
ジョーカーさまああ!!!GJ!!です。
紙袋被ったほうのジョーカーがきそうでガクガクブルブルです。
乙!
なつかしいな。ルシファーとサタンのハルマゲドン思い出した。
乙です。
でも何か問題が起きたら達哉がトラブル収拾しても
感謝よりも疑惑や奇異の目で見られそうな気がするのは考えすぎですかね?
乙です。
話が進んでくると面白いんだけど、いつもこのシーンで「誰かルイズにガツンと言ってくれないかな」とか
身分ではルイズを上回る、魔法を使えるキャラが来ないかな、と思ってしまう。
ときめきトゥナイトの愛良とか、ファイブスター物語のマグダルとか。
ちなみに自分は受験生だから書く暇はない。
乙!
半ば勢いで買ったGBAの真・女神転生の1と2が積みっぱなしだったの思い出した
>>465 つまりルイズは自分より身分上の相手にあんなこと言うほどアホだと
そう言いたいんですね?
>>467 愛良の場合は亜人だから、
マグダルの場合は指名で皇女になったのであって、両親は皇族ではない
(おばあさんが王女だったような記憶もあるけど………)
と言う理由で格下に見ていた相手の身分を
魔法の威力等やどう見ても先住な魔法で実感して呆然となるルイズに興味があってなwww
>>465 そもそもあの展開は主人公サイトで話を導入するための流れだからな
忘却の旋律のとか、いくつかガツン言われてるのあるけどな。鉄拳含む。
>>469 そうなんだろうけどやっぱり腹が立つっつーか
まあ実際ガツンと言ったら言った奴フルボッコしたくなるけどw
冷静に対処するとゼロの旋律とかみたいな感じにしかならんからな。
どっかで読んだが神をよんでボロクソにされたルイズとかあったし。
初期ルイズが自分より家格が上で魔法が使える使い魔なんて呼んだら
それこそコンプレックス直撃されて歪んじゃいそうな気がする
しかし魔法はともかく家柄については大抵の場合異世界からの召喚だから保証できないぞ
トレーズ閣下クラスのエレガントさがあれば歪みはしないだろ。
人柄と第一印象によると思う。
「こんなんだったら魔法使えなくてもいいや」的な性格の天災
もとい、天才とか
パタリロあたりだとすごい波乱になりそうだ
>>478 コルベール先生と共同で改良型レーザー砲作ったりしそうだ(しかし電源は相変わらず人力)
レコン・キスタ涙目w
>>475 ハルケギニアはまだ未知の地域があるみたいだし遥か東のロバ・アル・カリイエ辺りの出身とか思われるんじゃね?
あとコンプレックスは人柄にもよるな
なにもかもどうでもよくなるようなアレな人とかエレガントという概念が服着て歩いてる人とか
その辺はもうルイズの使い魔になってくれそうw
ようするに趙華麗な使い魔の事だな!
オズヌのスカーレット・ザ・スーパースター(本名:紅蝙蝠)辺りは両立しそうだなぁ、それw
風の呪禁やウィングのせいで、亜人扱いされそうな気もするが
ここで妖怪コンプレックスを召喚
>>474 ある意味ハクオロさんとかは格上じゃね?
最終的には強国の皇なわけだし。
>>475 マグダルならナ・イ・ンがルイズに教えてくれそうだな。
愛良は……どうだろう。
昔売り払ったメックウォーリアーリプレイを買い戻そうと注文掛けた所だけど、
ユージン=サモンジとかAC20とかって単語で反応する人いる?
電圧不明のスタンガンだとかレベッカはオレの嫁とかストームプリンセスなんて
単語は全くわからんな。
シャドウセイバー?モリ大佐?イワンの死亡フラグてんこ盛り?
なんのことです?
マッドドッグとかいう機体名が浮かんだんだが
ところでIMACとかTCK、シンセミア召喚って言われて解る人は居るんだろうか
493 :
子守唄:2007/11/05(月) 20:10:12 ID:GaU6HglW
箱根の歩道は開いているか? 当方に投下の用意あり!!
おーけー、みんな大好きだ
日の昇らぬ夜は無い。
何事にも終わりはあるという意味。
じゃあ、これは、いつ、終わる?
終わらせるために戦って、傷ついて、磨き、憎悪をたぎらせる。
いつ、終わる?
仮に日が昇ったとして、その光は何色をしているのだろう。
第13話 悪夢の終わり
立派な屋敷の割りに少ない使用人の数を不審に思いながらも、
キュルケが「人それぞれ事情があるのよ」とけん制してきたため、
ハクオロ達はあえて何も訊ねず遅い夕食をご馳走になり寝室を用意された。
ハクオロとギーシュの男部屋、ルイズとモンモランシーの女部屋に分かれる。
タバサとキュルケは先日からすでに同じ部屋で寝泊りしていたようだ。
ふかふかのベッドに入り、深い眠りについて、朝爽やかに目覚める。
ただそれだけの、夜。
「……逆に眠れん」
夜が更けて、ふかふかのベッドの寝心地にハクオロはゆっくりと起き上がった。
何せ召喚されてから基本的に藁を敷いた床を寝床にしていたのだ。
シエスタ宅でも寝場所が無かったため、床で毛布に包まっていた。
だから、いきなりこんな上等な寝床を用意されても、寝つけない。
「むにゃむにゃ……薔薇の棘は女の子を守るためにあるのさ」
隣のベッドではギーシュがぐっすりと眠っており、楽しそうな寝言まで言っている。
苦笑を漏らしながら、ハクオロはベッドから降りた。
「……相棒、どこに行くさね?」
壁に立てかけられていたデルフリンガーが、鞘から口を出してきた。
「デルフ、起きてたのか?」
「俺は寝る必要がねーからなぁ」
「そうか。どうにも寝つけないから、ちょっと用を足しにてこようかと」
「なんでぇ、小便か。道に迷うんじゃねーぞ」
「ははは、注意するよ」
「注意していたんだがな……」
トイレから出てきたハクオロは、廊下の左右に首を向けて、溜め息をひとつ。
「ここはどこだ」
寝室を出て、ランプ片手にトイレを探して廊下を歩き、角を曲がり、後戻りをし、
階段を登って、角を曲がり、トイレらしき戸を開けて間違いに気づき、
廊下を歩き、角を曲がり、階段を降り、トイレらしき戸を開けて間違いに気づき、
角を曲がり、廊下を歩き、階段を登り、廊下を歩き、角を曲がり、ついにトイレ発見。
歩いているうちに夜の寒気もあってか尿意の増していたハクオロは、
一心不乱にトイレの中で思う存分用を足すと同時に、
帰りの道順も頭から綺麗サッパリ流してしまった。
つまりハクオロは完全に道に迷ったと言える。
「確か、右の方から来たはずだ。そして、えーと……?」
うろ覚えの記憶を頼りにハクオロは屋敷内を歩き回る。
食堂か、ロビーといった場所からなら帰り道は解るはずだ。
あるいは見覚えのある道に出れば思い出せるかもしれない。
「こんな時間に人を起こすのもな……何とか自分一人で部屋に戻らねば」
微細な空気の流れの変化、寝息にかき消されるほど小さな足音。
それらを気配として察知したタバサは、静かに目を開いた。
目の前にはキュルケのたわわな乳房があり、側頭部には一肌のぬくもり。
腕枕をされて眠っていた事を把握したタバサは、
キュルケを起こさぬようシーツが擦れる音すら無く起き上がると、
ベッドの脇に置いてあった自分の身長よりも長い杖を手に取る。
寝巻きのまま、タバサは廊下に出た。
周囲の空気が張り詰めていく。
タバサの氷のように冷たい精神が身の回りのすべてを警戒。
賊か?
だとしたら人数は?
実力は?
狙いは誰か?
キュルケ達を起こすべきか否か?
凄腕の暗殺者などと戦う場合、実戦経験の少ないキュルケ達は足手まといだ。
狙いがキュルケやルイズではないのなら、わざわざ起こして危険にさらす必要は無い。
それにキュルケ達が屋敷に来ている事を知る人間はほとんどいない。
だから、狙いはキュルケ達ではなく、自分か、あるいは――!!
タバサの思考がそこに至るまで一秒とかからなかった。
だからタバサは、寝室を出て一秒としないうちに目的地へと走り出した。
怒りと憎しみを振りまきながら。
「この扉……うむ、見覚えがある。この扉こそ……元の寝室のものだ!」
暗闇の中、ランプだけを頼りにハクオロは扉を確認していた。
しかもなかなか寝つけなかったための眠気が、今になって丁度いい具合に襲ってきている。
扉を開けたら一直線にベッドに潜り込んでまぶたを閉じよう、ハクオロはそう決めた。
扉を開ける。
部屋が広い。ベッドが大きい。人の気配がするがギーシュのものではない。
部屋を間違えてしまったと気づくと同時に、ベッドの上の人間が半身を起こした。
「誰?」
女性の声だ。
暗がりでも窓から射し込む月明かりのおかげで、長い髪をしていると解る。
「も、申し訳ない。部屋を間違えてしまったようで……」
「そう。そうなのね、あなたも私からシャルロットを奪いに来たのね」
「は?」
「出て行きなさい! この卑劣漢め、私達は屈しない!
夫を殺せたように私達をも殺せると思うな! シャルロットは絶対に渡さない!」
叫び狂いながら、守るように抱きしめているそれが、
恐らくシャルロットなのだろうとハクオロは思ったが、しかしそうなると、妙な話だ。
女性の胸に抱かれている、赤ん坊ほどの大きさのそれは、
人の形をしていたが、決して人ではなかったし、それどころか生命ですらない。
人形だ。
古びた、小汚い人形だった。
「出て行きなさい! おお、シャルロット。大丈夫よ、私が命に代えても守りますからね。
だから笑ってちょうだい、シャルロット、笑顔を見せて。シャルロット……」
ともかくこれ以上彼女に関わるのは得策ではないと判断したハクオロは、
「無礼をお詫びします、では」と言って扉を閉めた。
そして振り返ると、そこには杖を構えたタバサの姿が。
「……タバサ?」
「……どうして、ここに」
「厠に行ったのだが、道に迷ってしまって……すまない」
「そう」
ハクオロに害意が無い事が解ると、タバサは杖を下ろして自分の寝室に戻ろうとした。
その後を、ハクオロがついていく。
「……何?」
「いや、だから道に迷ってだな……」
「こっち」
振り向きもせずタバサは答え、客室へと案内する。
道中、ハクオロは悪いと思いながらも、一度だけ聞いてみる事にした。
「タバサ。先ほどの女性は……その」
「母様。心の病気」
「……すまない」
「いい」
最低限の単語だけで答えるというのは普段のタバサと変わらなかったが、
口調からできれば口にすらしたくないという意思と、悲しみと、憎しみが感じられた。
これ以上訊く必要はあるまい、と、彼は思う。
しばらく無言のまま二人は歩いた。ふと、ハクオロは窓の外へ視線を向ける。
双月の光が綺麗だ。しかし冷たい色をしているように感じられた。
風が吹く。
窓は全部閉じているはずだと、タバサは奇妙に思った。
そして、ガラスで覆われているため風が吹いたところで消えぬはずのランプが、消える。
ランプを持っているはずのハクオロの姿を確認しようと、タバサは振り向いた。
灯りが消えたとはいえ、まだ窓からの月明かりで人の輪郭くらいは認識できる。
振り返った先は、一面の黒。月明かりの届かぬ暗黒だった。
「!?」
何事かが起きた。タバサの行動は素早く、現状把握のためライトの魔法を唱えた。
光は闇に呑み込まれ、闇はタバサの方へと侵食していく。
闇の根源は、ハクオロがいた場所にある。
この現象を引き起こした何者かは、彼を最初のターゲットに選んだのか、
それとも彼を利用して何かを仕掛けてきたのか。
ともかく、ライト程度ではラチが開かない。タバサは後退しながら探知の魔法を使った。
反応は、無い。
魔法ではない? ならば先住魔法か。
あるいは、そう、探知に反応せずしかし確かな破壊力を見せた天照らすものに類するものか。
解らない。どう対応すればいいか、まったく。
ならば、今は逃げるのだ。この闇に呑み込まれるよう逃げねばならない。
友を起こし、助けを求め、母を連れてみんなでここから逃げ出すのだ。
「ソノ憎悪……晴ラシタイカ、小サキ者ヨ」
しかしその考えは、聞くだけで畏怖を覚えるほどの重圧な響きによりさえぎられた。
声は、闇の中から。
「……誰?」
「ソレトモ悲シミカラ解放サレタイカ、小サキ者ヨ」
動かない。足も、杖を振るう手も。
酷く喉が渇く。息苦しい。
尋常ではない何かが、ここに、いる。
ここに?
タバサは、それが誰であるか思い至った。しかし。
「与エラレタ機ヲ無ニスルカ、小サキ者ヨ」
「あなたは、誰?」
問わずにはいられない。
暗闇から問いかけてくる者の正体が想像通りだとしても、信じられない。
高い天井に届くほどの高さから、鋭い双眸を光らせて見下ろしてくる怪物を前にしては、
自分の推測などとても信じられない。
気がつけば、タバサに退路は無かった。
前後左右、すべてが闇に閉ざされている。
月明かりの射し込む窓すら見つける事ができない。
「我ガ何者カヲ知ル、ソレガ汝ノ願イカ」
怪物は問いかけてくる。どうやら、タバサから願いを聞き出したいらしい。
いや、口振りからすると、その願いをかなえようとすらしているように思える。
「あなたの望みは何?」
逆に、タバサは問い返す。この怪物の狙いを探るため。
「我ハ眷属ヲ求メテイル」
「眷属?」
「我ニ汝ガスベテヲ差シ出セ。ソノ身体、髪一本、血ノ一滴、魂ニ至ルマデ。
サスレバソノ代償ニ、汝ガ願イ、カナエヨウ」
「……願いを……かなえる?」
「ソウダ」
暗闇の中で、それが笑う。
しかしタバサは毅然と言い返した。
「必要無い」
「何?」
「私は私の力で成すべき事を成す。誰かの力を借りるつもりはない」
昔読んだ本をタバサは思い出していた。
願いをかなえてもらうため悪魔と契約した主人公が、
最後は悪魔を含むこの世のすべてに裏切られ、後悔と絶望の淵で魂を奪われる様を。
目の前にいる怪異もその類いのものだとしたら、甘言に乗るなど愚行でしかない。
「……ソウカ」
感情の読めない声で、それは言った。
「ナラバ汝ノ母、ソノ手デ救エルトイウナラ、ソレモヨカロウ」
ハッと息を呑むタバサ。
甘言のあまりの甘さに、氷のように冷たく研ぎ澄ました精神が、溶ける。
「サラバダ、小サキ者ヨ」
「待って」
震える声で怪物を呼び止める。気配は、その場に留まったままだ。
……いる。
目の前に、杖を向ければ届きそうな位置に、それはまだいる。
自分の言葉を待っている。
「……母様を、救えるの?」
「母ヲ救ウ。ソレガ汝ガ願イカ」
「質問をしているのは私。母様を救えるの? あの毒を解除できるの?」
「汝、我トノ契約ヲ望ムカ? ナラバ、スベテヲ捧ゲヨ」
胸の鼓動が、早鐘のように打つ。
不安と、期待に。
蜜の甘さに。
「……本当に母様を救えるというなら、救ってみせて。もし、救えたのなら……」
捧げる。
私の魂を。
それは答える。
「今ココニ、契約ハ成立シタ」
「汝ガ願イ、カナエヨウ」
「ソシテ」
「未来永劫、我ガ剣トナリテ我ガ敵ト戦エ」
「未来永劫、我ガ剣トナリテ我ガ敵ト戦エ!」
「未来永劫、我ガ剣トナリテ我ガ敵ト戦エ!!」
闇が消えていく。声が消えていく。それが消えていく。
刹那、タバサは見た。光るルーンの文字を。
ああ、やはり、そうだったのか。
しかし今の自分にとって、そんな事は些細な問題。
タバサは闇が消え去らぬうちからもう、駆け出していた。
走る。走る。これほどまでに走った事が、かつてあっただろうか?
これほどまでに急いだ事が、不安に、期待に、胸が震えた事があっただろうか?
あの日から、狂ってしまった自分の世界。
その扉、震える手で、そっと開く。
月明かりの中、戸の開く音に気づいた彼女が、ベッドから身体を起こした。
こっちを見ている。でも、表情が解らない。
怖い。
拒絶の言葉が、今ならいつもの何倍もの痛みで、胸に突き刺さるだろう。
「……シャルロットなの?」
でも。
かけられた言葉は、とても懐かしくて、あたたかくて。
「母様――!!」
タバサは、母親の胸に飛び込んだ。
支援
「――ハァッ、ハァッ」
飛び起きたルイズは、荒い息遣いで上下する胸を、自らの手で押さえた。
胸が熱く痛む。
ハクオロの夢を見た後はいつもこうだったが、こんなに酷いのは初めてだ。
それに、見ていた夢はハクオロの夢ではなかった。
ハクオロと契約してから、ずっと見ていた、黒い夢。
もう随分それを見ていなかった事をルイズは思い出した。
「……何だってのよ、もうっ!」
苛立たしげに呟いたルイズは、隣のベッドで寝るモンモランシーに視線を向けた。
「むにゃむにゃ……私を恨んだりは絶対にしないでよね……」
何の夢を見ているやら。
「……はぁっ。寝直そ」
ルイズは布団の中に潜り込み、目を閉じた。まだ、胸は熱いまま。
この屋敷の執事、ベルスランが戸をノックする音でキュルケは目を覚ました。
「う〜ん……なぁに?」
「ツェルプストー様、朝で御座います。シャルロット様はまだお眠りでしょうか?」
「タバサ? まだ寝て……」
と、ベッドの上を見回して、キュルケの眠気が急速に覚めていった。
「ない、わね。あれ? タバサ、もう起きてるみたいだけど」
「妙ですな、お見かけしておりませんが」
どうやらベルスランは、いつも早起きのタバサが一行に起きてこないので、
様子を見に来たらしかった。が、すでに寝室にはいない。
「どこ行ったのかしら、あの子」
キュルケは手早く着替えをすますと、ベルスランと一緒にタバサを探した。
すると、廊下の壁に背を預けて眠りこけるハクオロの姿を発見する。
なぜこんな所で眠っているのか。
まさか賊に魔法で眠らされたのでは、と最悪の想像が二人の脳裏をよぎる。
「ダーリン! ダーリン起きて!」
平手打ちを受けたハクオロはすぐに目を覚まし、
なぜ自分がこんな所で眠っているのかをキュルケに訊ねた。
当然キュルケが知る由もなく、逆に何でここで寝ているのかを問いただされ、
ハクロオは昨晩の記憶を手繰る。
「確か……厠に行って、道に迷い、タバサに会って、案内をしてもらって……」
「タバサに会ったの? そんな夜中に?」
「あ、ああ。それで、急に眠気が襲ってきて、途中から記憶が曖昧だ」
キュルケとベルスランの顔が蒼白になる。
間違いない。ハクオロはスリープ・クラウドで眠らされたのだ。
そしてその犯人の狙いは当然、タバサか、あるいは。
支援
「お嬢様……奥様!」
真っ先にベルスランがタバサの母親の部屋へと駆け出し、キュルケも後に続いた。
ハクオロもただ事ではない様子に、慌てて後を追う。
走りながらキュルケは毒づいた。
一昨日、ほんの一昨日、誓ったばかりなのだ。
王弟の娘として、王女として幸せに生きていたタバサ。
しかし謀略により父が殺され、母はタバサをかばって毒薬を飲み、心を壊した。
タバサが、いや、シャルロットがタバサと名づけた人形を自分の娘と勘違いし、
今もなお人形を愛娘シャルロットとして愛し、
実の娘を、自分から娘を奪おうとする者と思い込んでしまっている。
だからシャルロットは人形の名前タバサを名乗り、
母を守るためガリア王家からの命令に従っている。
もうあの子は十分苦しんだ。
だから自分の『微熱』でタバサのすべてをあたためて上げたい。
力になりたいと、誓ったばかりなのに。
「タバサ……無事でいて、タバサ!」
目的地に到着したキュルケ達は、部屋の扉がわずかに開いている事に気づき、
何者かが部屋に侵入したという推測から最悪の絵を頭で描いた。
扉を開けた瞬間、そこには、すでに息絶えた母娘が。
「そんな事、あってたまるもんですかっ」
キュルケはベルスランを押しのけ、部屋の扉を突き飛ばすようにして開けた。
「タバサ!」
部屋に飛び込んだキュルケが見たのは、ベッドで眠るふたつの青い髪。
そのうちの一方が身を起こすと、ベルスランの姿に気づいた。
「静かに。シャルロットは、まだ眠っているのですよ」
そう言って、彼女は、人形ではなく、かたわらで眠る少女の青い髪を撫でる。
「お、奥様……何と、これは……」
「何事かありましたか? そちらの方々はどなたです?」
「解るのですか。奥様、お嬢様の事がお解りになるのですか?」
彼女は不思議そうに首を傾げた。
「当然でしょう? この子は、私に残された唯一の愛しい娘なのですから」
母のかたわらで眠る娘、シャルロット、あるいはタバサは、
とても安らかで幸せに満ちた、あどけない寝顔を無防備にさらしていた。
日の昇らぬ夜は無い。
タバサの見ていた長い長い悪夢は、ようやく終わりを迎えた。
でも。
昇った日の色は、何色をしているのだろう。
それは、タバサが目を覚まさなければ解らぬ答え。
505 :
子守唄:2007/11/05(月) 20:23:33 ID:GaU6HglW
ようやくタバサママンまで書けたよぉー。
ついでに俺の口内炎も治して欲しいよぉー、代償にタバサの似顔絵捧げるから。
NGシーン
「今ココニ、契約ハ成立シタ」
「汝ガ願イ、カナエヨウ」
「ソシテ」
「未来永劫、我ガ嫁トナリテ我ヲ萌エサセヨ」
「未来永劫、我ガ嫁トナリテ我ヲ萌エサセヨ!」
「未来永劫、我ガ嫁トナリテ我ヲ萌エサセヨ!!」
タバサは私の嫁、これはもはや常識。by某赤い彗星兼蠍座兼分身
嫁がされるもの 完
乙
つ ビタミンB
エゴだよそれは!
乙!
GJ〜!
こうしてハクオロのハーレムは増えていくわけだwww
乙!
口内炎が月2回はできるこの体何とかしたら
何とかしてあげる!もちろん口だけ!
口内炎にはプロポリスが良く効くよ。ちょっとお高いけど。
俺は毎朝ヨーグルトに入れて摂ってる。
口内炎は普通にビタミンの不足の場合が多いから
錠剤か野菜ジュースをまず試してみようぜ
512 :
子守唄:2007/11/05(月) 20:55:32 ID:GaU6HglW
なぜSSより口内炎で盛り上がる・゚・(つД`)・゚・
心配されてるんだよ・・・
もしくはそうなって欲しくて話題を振ったんじゃないのか?
>>512 最初にネタを振ったのは貴殿だが(・∀・)
歯磨きしたあとにもう一回歯磨きするといいって聞いた
子守唄の人乙。タバサがゲンジマルのような終わりを迎えない事を祈っておこう。
口内炎は上で大量に対策書かれてるから何も言わない、しっかり治しておくれ。
口内炎は食べた後に歯磨きを忘れずにすれば治るよ。
久し振りに雑談に参加した直後でなんですが、覚えてる人居ますかい?
個人的にはリステリンを15分間口に含む地獄をお勧めする<口内炎
朝昼晩やったら2日で治ったよ
俺みたいな体質だと上の治療法も医者のレーザーすらも関係ない場合あるから
そのときはドンマイ!
そして支援準備!
>>519 週に一度はあなたのSSを読み直す我々に何を言ってるんですか
うんにゃ、猫が布団にションベンしやがったのでキャメルクラッチかけてきた。
という訳で投下しやす。
何処だ、此処は?
『それ』は眼下に拡がる青い惑星の大気組成を分析しつつ、見慣れない形の大陸を凝視していた。
『それ』が僅か数分前まで見下ろしていたものとは、明らかに異なる形状の大陸。
そして頭上には、在る筈の無い『2つ目』の衛星。
有機生命体とは根本から異なるにも拘らず奇妙な類似を示す思考は、在り得ない状況の説明に理論的な根拠を求め、即刻調査を開始すべしとの結論を下す。
そして未知の推進機関を始動させ、想像を絶する推力によって惑星外周を回り―――――導かれた結論は、信じ難いものだった。
この惑星は、『地球』に非ず。
呆然と―――――ただ呆然と、眼下の青い惑星を視界に収め―――――
次に沸き起こったのは、歓喜。
予期せぬ時、予期せぬ形で転がり込んだ、予期せぬ幸運。
最大の障害と共に、目的を、配下を、全てを失った矢先に開けた、新たなる道。
これが歓喜せずにいられるものか。
やがて『それ』は紅蓮の火球となり、青い惑星の大気へと降下を開始した。
その擬似視界に、またしても―――――在り得ない、在り得る筈の無いものが映り込む。
遥か彼方の地平。
夕焼けに照らされた、紅い草原。
そのほぼ中央に刻まれた、深く長い溝。
『何か』が高速で衝突した事によって抉られた事を示す、巨大な爪跡。
既に相当の年月が経過しているのか、溝の内外は青々とした草に覆われている。
そして―――――その先に鎮座する、捻れ、潰れ、黒く焼け焦げた、歪な鉄塊。
知っている―――――『あれ』を知っているぞ。
覚えている―――――忘れるものか。
あの屈辱を―――――その滑稽さを。
知っているぞ―――――『地球人』!
支援
嗤い声。
人には決してそうとは解らぬその声は、耳障りな電子音として中空に鳴り響く。
そして轟音と共に鉄塊の上空を横切った『それ』の視界に、非常に原始的な建築物が寄り集まった集落が移り込んだ。
更に―――――その外れに位置する、明らかに異常な文化的差異が見て取れる建築物内に安置された、またも異常な構造物の存在も。
『それ』は嗤い、呟く。
正しく『この宇宙は望みを捨てぬ者を助ける』、だ。
それは、ルイズがブラックアウトを召喚する8年前の出来事。
季節外れの冷たい風が吹く、夕暮れの紅い草原に面した小さな村での事だった。
未だ微かに白煙の燻る、サウスゴーダ、ウエストウッドの森。
一昼夜にも亘る消火活動を終えた水系統のメイジ達が、その表情に疲れを色濃く滲ませて、ロサイスへの帰路に就く。
周囲には無数の兵士達が其処彼処と騒がしく駆け回り、大地に刻まれた巨大な暴力の爪痕に対する検分に追われていた。
そんな中、1人の女性が焼き払われた森の中へと歩を進める。
彼女は森の奥深く―――――破壊が最も集中している地点へと辿り着くと地面へと屈み込み、散乱する黒く炭化した木片を手に取った。
自然には存在し得ないその造形は、何かしらの家具の破片だろうか。
元がどの様な意図を持って創造されたものかを窺い知るには、この場は余りにも閑散とし過ぎていた。
黒く焼かれた木々。
抉られた消し飛んだ大地。
鼻を突く異臭。
嘗ては子供達の笑い声と優しい旋律に満ちていたウエストウッドの森の一画は、あらゆる生命の存在を拒絶する死に支配された領域と化していた。
「此処に居たか」
彼女の背後、掛けられる声は若い男性のもの。
しかし彼女はその声に振り返る事無く、手の中の木片を見詰めている。
男もそれを気に留める様子は無く、淡々と言葉を続けた。
「此処に来たという事は、既に聞いているな?」
彼女は答えない。
「想定外だった。まさか彼女の使い魔があの様な……『化け物』だったとはな」
ふらり、と彼女は立ち上がり、男へと向き直る。
歩み寄るその姿を感情の窺えない瞳で見詰めていた男は、同じく無感動な声で言葉を紡いだ。
「これも、その使い魔の仕業らしい」
「……!」
その言葉と同時、彼女は男の襟首に掴み掛かる。
男はそれを払い除けるでもなく―――――ただ静かに、劇場に身を震わせる彼女を見据えていた。
528 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/05(月) 21:27:07 ID:mVEUtkEf
「あいつらは……」
ここで初めて、彼女が声を発した。
絶望と、憤怒と、悲観と、憎悪が入り混じった、低く、暗い声。
そして―――――その感情は抑えられる事無く、爆発した。
「あいつらは―――――ヴァリエール達は何処だッ!」
アルビオンより帰還してからというもの、ルイズとっての日常とは現実感に乏しいものだった。
アルビオン、ロサイス近郊―――――あの森の中で、己の使い魔と銀のゴーレムが繰り広げた、想像を絶する闘い。
吹き飛ぶ木々、微動だにしないスコルポノック、血溜りに沈む友。
そして―――――彼女を殴り、昏倒せしめた、平民の少年。
暴行を受け意識を失った彼女が次に目覚めた時、其処は既に見慣れた学院の自室だった。
現状を把握出来ずに戸惑う彼女の前に現れたのは、何時だったかギーシュが絡んでいたメイドの少女。
意識が戻ったのか、身体に違和感は、記憶ははっきりしているか、と詰め寄る彼女を宥めて、ミスタ・コルベールを呼んできてくれないかと頼めば、数分後にはその人物が室内に佇んでいた。
同じ様にルイズの身体を気遣う質問の後、彼は事の仔細を語り始めた。
彼が言うには、フーケ討伐の際を再現するかの様にブラックアウトが中庭へと飛来。
その機体下部に吊り下げられた物体が『地球』のものであると看破したコルベールが、直々に彼女等を出迎えたのだという。
しかし、機体から恐る恐る降りてきたのは10を超える人数の子供、そして見慣れぬ少年少女。
少年は明らかに右腕を骨折しており、更に全身が血に染まっている。
少女は見慣れぬ服装だったが、その胸部もまた喉下からの出血により朱が滲んでいた。
更に、デルフの声に従い機内へと踏み入れば、其処にはルイズを含め、意識の無い4人の生徒達の姿。
またもや学院は上を下への大騒ぎとなり、4人は水のメイジによる集中治療を経て自室へと移されたのだという。
それが3日前。
ルイズはこうして目覚めたが、残る3人は未だに意識が戻らないのだという。
コルベールが言うには、3人は身体の各所を高威力の、恐らくは『地球製』の銃弾によって射抜かれており、一時は生死の境を彷徨った程の重傷を負っていたとの事。
それでも今は持ち直し、後は意識の回復を待つばかりだという。
その言葉に安堵し、ルイズはあの2人―――――平民の少年と、ハーフエルフの少女について訊ねた。
彼等はどうなった、此処に居るのか、安全は保障されているのか?
コルベールは最後の言葉に意外そうな表情を浮かべたが、心配は要らない、2人とも学院が保護していると返答。
後は自分達に任せ、もう少し休みなさいとだけ言って、部屋を辞した。
そうなれば、ルイズも再び襲い来る睡魔に負け―――――
そういえば、デルフの声を聴かないな。
そんな疑問を脳裏に浮かべながら、安らかな眠りへと墜ちていった。
「よう」
再び目覚めた時、彼女は枕元に立った小柄なメカノイドに見下ろされていた。
常人ならば驚き、肝を潰す光景であろうが、ルイズにとっては何よりも安心を齎す存在。
安堵こそすれ驚愕などする筈も無い。
しぇん
「……おはよう、デルフ」
「おはよう、っつーにはちょいと遅いな。今は夜中だ」
その言葉に意識を覚醒させれば、成る程、窓からは月明かり。
これだけ明るければ十分だろうと、ルイズはランプを灯す事も無くベッドの上でデルフへと向き直る。
蒼い月明かりに照らされた少女とメカノイドの姿は何処か幻想的ですらあり、同時に鋼の様な冷たさをも併せ持っていた。
しかし2人―――――1人と1体の間に流れる空気は、穏やか且つ緩やかなもの。
暫し静謐のままに時は過ぎる。
「……状況は?」
不意に紡がれた二言目に、デルフが低く笑いを洩らす。
むっ、と眉を寄せるルイズに、デルフはひらひらと手を振り、答えた。
「段々と『らしく』なってきたな、ルイズ。それでこそ俺達の主だ。順応してきた、ってとこかな」
「何の事よ」
ふん、と鼻を鳴らしてデルフを睨むルイズ。
対してデルフは、打って変わって何処か真剣な声で彼女を諭す。
「此処で余計な会話から始める様じゃ、まだまだだって事だ。お喋りは状況確認の後でも出来るんだからな」
そう言ってまた、くく、と笑いを洩らすデルフに、ルイズは照れ隠しの様に咳払いをすると報告を求めた。
「私が寝ている間に何が在ったのか、報告しなさい」
「了解」
デルフの報告は簡潔で、且つ驚くべきものだった。
王党派の乗り込んだ『ビクトリー』号は無事にラ・ロシェールへと入港。
予め待機していたアンリエッタ王女からの使いの者により、王宮への取り次ぎに成功したという。
亡命という扱いになるとの事だが、その辺りは王宮の問題なので省略。
本来の目的であった『手紙』がレコン・キスタの手に渡ったか否かは不明だが、恐らくはブラックアウトの攻撃によって焼失した可能性が高いとの事で一時保留。
王女はウェールズの生存を喜び、同時に意識の戻らぬルイズを心底案じている様子だったとの事。
と、此処で、ルイズが報告を続けるデルフの声に割り入った。
「何でそんなに詳しいのよ」
「俺も話の席に居たからだ」
聞けば先日、デルフはオスマンに掛け合い、共に王宮を訪ねて報告を行ったのだという。
変形する事を王女に明かしたのかと問えば、既に彼女はウェールズから直々にデルフ、ブラックアウトについて聞かされていたとの事だった。
どうにもウェールズは、デルフやブラックアウトを危険視しているらしい。
王女に余計な事を吹き込まなければ良いのだが。
「覚悟しとけよ。下手すりゃお前さん、あの姫さんの都合の良い『兵器』扱いされるぜ」
「そんな事……無いとは言い切れないわね」
溜息を吐くルイズ。
感情や過去の記憶に惑わされる事無く冷静に判断するその姿に、デルフのプロセッサに満足感を表す信号が走る。
無論、そんな事は露知らず、ルイズは続きを促した。
「続けなさい」
「はいよ」
デルフはその言葉に従い、報告を再開する。
・・・はっ! つい読みふけってしまった支援
王女、そしてウェールズ、ジェームズ1世は、最早レコン・キスタとの開戦は避けられぬと判断。
手紙が焼失したのならば、予定通りゲルマニア皇帝との婚儀を執り行うとの結論に達した。
無論、其処には苦悩と葛藤が渦巻いていただろうが、其処はデルフにとって感心事足り得ない。
ルイズにしても、納得のいかない事ではあるが、取り立てて今口にするべき事ではないとの認識が在った。
「で、此処からが本題だ」
「……あの2人の事ね」
「それとあの『お友達』の事だ」
此処からの報告は、更なる驚愕と混乱をルイズへと齎した。
先ず、あの戦闘だが……仕掛けたのは、此方からだったとの事。
ブラックアウトが『ミサイル』とやらを発射、それをあの銀のゴーレムが撃ち落としたのだそうだ。
あの爆発は敵の攻撃ではなく、射出されたミサイルが迎撃された際に起こった爆発だという。
何故、勝手に攻撃したのかと問えば、それについては後ほど話す、とはぐらかされた。
驚いたのは、あの平民の少年についての報告だった。
彼は何と『地球』の住人であり、あのハーフエルフの少女に使い魔として召喚された存在だというのだ。
これにはルイズも心底から驚愕し、しかし同時に納得した。
あの少年の振る舞いと言動―――――デルフから聞かされた『地球』の体制からすれば、ハーフエルフを迫害する者も、暴虐に映る貴族の振る舞いも、両者共に嫌悪の対象だろう。
聞けばあの少女、アルビオン王家の関係者らしい。
父親がエルフの妾を囲っている事が発覚し、家族、従者諸共に皆殺しにされたのだという。
怨んで当然だ。
それを守護する使い魔なら尚の事、貴族というだけで十分に排除の対象となり得る―――――
「……随分冷静だな、ルイズ」
「……まぁ、ね。仕方無いわよ、非はこっちに在るんだし……それに『地球』にはもう、貴族なんて特権階級は無いに等しいんでしょう? なら、軽蔑されるのも仕方な―――――」
と、ルイズはある事に気付き、デルフへと疑問を投げ掛けた。
「ねぇ、デルフ。アンタ、私の事、名前で―――――」
「んで、だ。2人は学院の方で……」
唐突に、デルフは報告を再開。
ルイズは質問を遮られた事にむくれたものの、直にそれがデルフなりの照れ隠しなのだと悟り、悪戯っぽい笑みを浮かべる。
デルフは相変わらず報告を続けていたが、もしその顔に表情というものが在れば赤面していたのかもしれない。
楽しげに先を促すルイズを前に殊更、無機質さを心掛けて音声を紡ぐ。
2人は学院側が保護する事で決まった。
ジェームズ1世は、即刻処刑すべし、と主張したが、デルフの『説得』により学院にて監視するとの名目で保護が決定したと言う。
「『説得』って、何言ったのよ」
「事実を言っただけだ。『今あの2人を殺せば、あの銀のゴーレムが黙っちゃいない。相棒も損傷が激しく、それを撃退出来る可能性は低い。運良く撃破出来たとして、その頃にはトリスタニアの人口は半分以下になってるだろう』ってな」
「……それは脅迫っていうのよ」
2人は教員棟の一室に住む事となり、彼等と共に暮らしていた孤児達に関しては、王都の孤児院に預けられる事となった。
ジェームズ1世はいずれ、その子供達を人質に2人を処刑するつもりだったのだろうが、それは叶わないとデルフは言う。
この件に関しては、ウェールズに入れ込んでいる為に王女は当てにならないが、先ずオスマンが黙ってはいないだろうとの事。
彼の手は長い。
王都の子供達に何か在れば、それは即座にあの2人とゴーレムに知れ渡る。
その際に何が起ころうとも、こっちは責任を持たない……という様な事を暗に仄めかすと、ジェームズ1世は口を閉じたという。
そのジェームズ1世の頭の固さ、思想に若干の嫌悪を抱きつつ、ルイズは内心、良い気味だ、とほくそ笑んだ。
一方、デルフはといえば何処までも現実的で、折角の手駒を失う訳にはいかないと、彼の王を嘲笑うかの様に言い捨てる。
「手駒?」
「ああ」
「どうして? ブラックアウトにとっては敵なんでしょう?」
「味方になれとは言ってない。交換条件だ。俺達はあいつらを護り、更にその為に必要な『手段』を与える。あいつらはお前と、お前のダチを護る。悪くない話だろ」
「『手段』?」
首を傾げれば、デルフは何でもない事の様に返した。
「『銃』だ。同郷のモンだし、問題は無ぇだろ」
驚愕し、然る後に納得した。
成程、あれだけの力を持つ兵器だ。
それを使えるとなれば、例えメイジであっても敵ではないだろう。
詠唱を行っている間に仕留められる。
だが……
「それって、弾切れになるまでの関係じゃないの?」
「お前、相棒がどうやって弾薬を補給してるか忘れたのか」
「あ……」
そうだった。
ブラックアウトやスコルポノックは、消費した弾薬を自己生成しているのだ。
ならばあれらの銃の弾薬を生成する事も不可能ではあるまい。
「でも、それならあのゴーレムにも出来るんじゃ……」
「だとしても逃げられはしねぇさ。王都のガキどもが居る。ジェームズは人質としての活用を諦めた様だが、こっちは精々利用させて貰うさ」
「……ホンっと悪どいわね」
「要領が良いと言ってくれ……で、あの『お友達』だがな」
デルフの話では、あのゴーレムはブラックアウトの同類らしい。
同じ要因、同じ過程で誕生した存在でありながら、その起源を異にする永遠の敵対的存在、その一員。
名は『ジャズ』。
幾度も映像で見た、『地球』の主要な乗り物である『自動車』に変形するとの事。
「一度に乗れるのは2人までだが、速度はなかなかのモンだ。少なくとも、陸上を走るモンでアレに追い付ける奴ぁ居ねえ。流石―――――」
「デルフ」
唐突に、ルイズがデルフの言葉を遮る。
彼女はその目に殊更真剣な色を浮かべ、目前のメカノイドを見据えていた。
「……何だ」
「教えて頂戴。ブラックアウトは……スコルポノックは、あのゴーレムは……一体何者なの?」
部屋に沈黙が降りる。
真っ直ぐに自身を見据えるルイズを見返し、次にデルフは窓の外へと視線を向けた。
其処に座するは、月明かりに蒼く照らされた巨大なペイヴ・ロウと、シルバーの塗装が輝くソルスティス。
正面から向かい合い、互いに軸をずらして最大限に距離を置いた位置に着いている。
決して『敵』から注意を離さず、互いを監視し合うポジション。
しかし間違い無く、彼等はルイズとデルフの会話をモニタしている事だろう。
それでも、何ら通信が入らないという事は―――――
「良いだろ―――――」
「もう寝るわ、デルフ」
またもや唐突に―――――そして一方的に、ルイズは会話を切り上げた。
心底驚いているのか、はたまた呆れているのか、デルフは呆然とルイズを見詰めたまま、シーツに包まる彼女を止めようともしない。
それでも、何とか言葉を発しようと試み―――――
「デルフ」
―――――しかし、それは先手を打たれる事によって頓挫した。
ぴたり、と伸ばし掛けた腕を止め、シーツに包まり背を向けて横になったルイズを凝視する。
「キュルケ達は、目覚めた?」
その会話の切り替えを訝しく思いながらも、デルフは答えを返した。
「……ギーシュと青い髪の嬢ちゃんは起きたが、あの嬢ちゃんはまだだ。出血が酷かったからな。一時は本当に危なかった」
それだけ聞くとルイズは寝返りを打ち、デルフへと向き直る。
そして、言った。
「なら、今はまだいいわ。貴方がそれを語るのは、全員が揃ってから。その時こそ、全部話して貰うわよ」
おやすみ、と言い残し、ルイズはすぐさま寝息を立て始める。
デルフは暫く、その寝顔を呆然と見詰め―――――
「……おやすみ」
やがて一度、優しくその髪を撫ぜると、瞬時に剣へと変形し部屋を飾る置物と化した。
そして、更に3日後―――――即ち、現在。
「……」
「……」
ルイズ、キュルケ、タバサ、ギーシュの4人とデルフは教員棟の一室、1人の『地球人』と1人のハーフエルフに割り当てられた部屋に居た。
室内には張り詰めた空気が漂い、ルイズを除く3人の手には杖が、ハーフエルフ―――――テファに寄り添う『地球人』―――――才人の手にはStG44が握られている。
正に一触即発の空気の中、部屋の中央に置かれたテーブルの上に、デルフが1冊の古惚けた本と2つの指輪を置いた。
536 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/05(月) 21:32:04 ID:Pa3/askb
ブラックアウトキターーーーーーーーーーー!!!!!
劇支援!!!!
「自己紹介は―――――必要無ぇか。ま、いいや。聞こえてるよな、相棒、ジャズ?」
6人の耳には何も聞こえなかったが、確かに返答が在ったらしい。
デルフは何処かに向けていた視線を本へと戻し、語り始める。
「先ず、確認だが……ジャズはお前さんの召喚の際に、付近に現れた。本人が言うには記憶が無い―――――これは間違い無いよな?」
才人とテファは無言のままに頷き、ルイズ達は首を傾げた。
「ヘリも車も『地球』のもの、しかし人型になるモン何ぞ存在しない―――――少なくとも現時点では。そうだな?」
その言葉に、弾かれる様に皆がデルフ、そして才人を注視する。
そして5対の視線に晒される中、才人はゆっくりと、だがはっきりと頷いた。
「……どういう事?」
「彼等は……『地球』の兵器ではないのかい?」
俄かに色めき立つギーシュ、キュルケ。
ルイズは口に手を添えて思案に沈み、タバサは無言。
テファは驚きを隠そうともせず、隣の席に腰掛ける才人を見遣っていた。
そんな中、才人が口を開く。
「逆にこっちが訊きたいぜ。お前等は何なんだ? ジャズはともかく、いきなり攻撃してきたあのヘリといいテメェといい、一体何者なんだ」
「宇宙人」
即座に返された答えに、才人は音を立てて立ち上がる。
はっとした様に杖を握り直すキュルケらを制止し、デルフは静かに語り掛けた。
「落ち着け、『使い手』」
「こないだといい今日といい……『使い手』ってのは何の事だ。大体『宇宙人』だと? ふざけるのも大概に―――――」
「ふざけてなんかいない」
才人の言葉は、デルフの硬質な音声に遮られる。
思わず小柄なメカノイドを見遣れば、それは卓上の本に手を置いたまま、才人を真っ直ぐに見据えていた。
「……」
「お前さん方は炭素原子を基本骨格とする有機生命体、俺達は異なる原子からなる無機生命体。お前さんは『地球』で、嬢ちゃん達はこのハルケギニアで発生した。そして、相棒達は―――――」
デルフは一旦間を置き、答えた。
「『セイバートロン』で」
誰もが顔を上げ、呆然とデルフを見詰める。
その視線の先で、メカノイドは始まりの惑星、その記憶を語り始めた。
「『セイバートロン』には、起源を異にする2つの勢力が在った―――――」
オデレータ支援
1時間後―――――疲れた様な表情を浮かべる面々を前に、デルフは古惚けた本を掲げてみせた。
「『始祖の祈祷書』」
その言葉に、弾かれる様にして視線を集中させる面々を無視し、デルフは卓上の2つの指輪を指す。
そして指輪の正体に気付いたのか、ルイズが声を洩らした。
同時にテファもまた、その一方を見て口元に手を遣る。
「あ……」
「『風のルビー』、『水のルビー』」
一心にそれらの国宝を見詰めだす6人。
デルフは続いて、ルイズとテファに指輪を嵌めるように指示した。
「いいの?」
「元々その為に借りてきたんだ。いいから嵌めろ」
そして2人が指輪を嵌めた事を確認し、デルフは『始祖の祈祷書』を捲り、2人の眼前に翳す。
あ、という小さな声が2つ、洩れた。
「読めるか?」
何が何だか解らず、訝しげに互いと視線を交わす面々。
それにも構わず、只々一心に『始祖の祈祷書』を覗き込んでいた2人の口から、ほぼ同時に同じ句が零れた。
『序文。これより我が知りし真理をこの書に記す―――――』
全員が動きを止め、2人へと視線を向ける。
しかし当の2人はそれにも気付かないのか、淡々と言葉を紡ぎ続けた。
『―――――神が我に与えしその系統は、四の何れにも属せず。我が系統はさらなる小さき粒に干渉し―――――』
どうしたのか、何を言っているのかと口にしようと試みるが、そのどれもが声にならない。
得体の知れぬ重圧が部屋に満ち満ち、誰もが口を開けないのだ。
『―――――四にあらざれば零。零すなわちこれ《虚無》。我は神が我に与えし零を《虚無の系統》と名づけん―――――』
『《虚無》!?』
聞き捨てならない名称に、サイトを除く周囲の3人が立ち上がると同時、音を立てて『始祖の祈祷書』が閉じられる。
それと同時、ルイズとテファが我に返った。
「あ……私……?」
「『虚無』……伝説の?」
戸惑う2人。
デルフはそんな2人へと歩み寄ると、その指から『風のルビー』、『水のルビー』を抜き取る。
そして、再び『始祖の祈祷書』を開いて翳した。
「読めるか?」
その問いに、全員が開かれた頁の正面へと移動する。
しかし―――――
「……何、これ」
「白紙じゃないか……」
誰もが首を傾げ、ルイズとテファを見遣る。
2人もまた混乱し、目に手を遣ったり、額に掌を当てたりしている。
「お前ら、誰でもいい。この指輪を嵌めて、これを見てみろ」
その言葉に、才人を除く全員が代わる代わる指輪を嵌め、『始祖の祈祷書』を覗き込む。
しかし、其処に文章を見出す事が出来たのは、ルイズとテファの2人だけだった。
「どういう事……?」
ふとタバサが洩らしたその呟きに答えたのは、デルフだった。
「その書を読む事が出来るのは、『虚無』を受け継ぐ者だけだ。ルイズ―――――」
再び指輪を嵌めたルイズに、デルフは先を読み進めるように促す。
ルイズはそれに従い、何処か興奮気味に声を紡いだ。
「―――――たとえ資格なきものが指輪を嵌めても、この書は開かれぬ。選ばれし読み手は『四の系統』の指輪を嵌めよ。されば、この書は開かれん―――――」
そこで再び、書は閉じられる。
もう、誰も言葉を発しようとはしなかった。
「もう解ったろ? お前さん達は『虚無の担い手』なんだ。系統魔法が使えねぇのも、爆発が起こるのも、『虚無』が原因だ。お前さん達は『ブリミル』の意思を継ぐ者なんだよ」
呆然と―――――只管、呆然とする面々を余所に、デルフは才人へと向き直る。
「お前さんの力……あらゆる武器、兵器を使いこなす能力はな。即ち『使い手』―――――『神の左手』、『ガンダールヴ』。『神の盾』。色々呼び名は在るが―――――」
「『ガンダールヴ』だって!?」
唐突に、才人が叫ぶ。
それに対し、意外とばかりにデルフが返す。
「何だ、知ってたのか」
「テファ。確か、あの歌……」
「歌?」
聞き返すデルフに、今度はテファが恐る恐る頷く。
支援
規制北かな
支援
リアルタイム代理投稿行きます。
「……この指輪を嵌めて、王家の秘宝であるオルゴールを回した時に聴こえてきたの。随分と昔の事だけど……はっきり覚えているわ」
「そりゃ『始祖のオルゴール』だな。成程、それを聴いて忘却の魔法が使えるようになったって事か。歌の内容は?」
デルフが、その歌詞を述べるよう促す。
テファは頷き、しかし、ふと才人を、続いて他の面々とを見遣ると、歌にする事なくただ歌詞を詠み上げた。
「『神の左手』『ガンダールヴ』。勇猛果敢な『神の盾』。左に握った大剣と、右に掴んだ長槍で、導きし我を守りきる」
テファを除く全員の視線が、才人の左手に刻まれたルーンへと注がれる。
才人は右手でそれを抑え、信じられぬとばかりに目を見開いていた。
歌詞は、さらに続く。
「『神の右手』が『ヴィンダールヴ』。心優しき『神の笛』。あらゆる獣を操りて、導きし我を運ぶは陸海空」
誰もがブラックアウトを思い浮かべ、しかし直に否定する。
確かにあらゆる場所へと主を運ぶが、あらゆる獣を操る能力など持ち合わせてはいない。
そもそも、『ガンダールヴ』のルーンが歌詞の通りに左手に刻まれている事から推測するに、『ヴィンダールヴ』のルーンは右手に刻まれている筈だ。
「『神の頭脳』は『ミョズニトニルン』。知恵のかたまり『神の本』。あらゆる知恵を溜め込みて、導きし我に助言を呈す」
これも違う。
デルフを通じて齎される知識は膨大だが、ハルケギニアについては殆ど何も知らない。
これでは『ミョズニトニルン』とはまるで逆である。
そして遂に、その一節が詠み上げられる。
「そして最後にもう一体―――――記すことさえはばかれる―――――」
窓の外、快晴の空。
重々しい風切り音と共に、巨大な影が蒼穹を横切った。
ティファニアが最後の一節を詠み上げる頃。
ブラックアウトは自身の思考中枢より溢れ出る膨大なデータを処理せんと、プロセッサへの負荷を無視して状況確認を開始した。
此処は何処だ?
自分は何故此処に居る?
『オールスパーク』はどうなった?
連絡の取れなかった『スコルポノック』が何故此処に?
何故システムが起動している?
自分はカタールの生存者である『地球人』にスパークを射抜かれ、活動を停止したのではなかったか?
『バリケード』は?
『フレンジー』は?
『ボーンクラッシャー』は?
あの忌々しい副参謀は?
『メガトロン』卿は、どうなったのだ?
気付けば、空を飛んでいた。
何処へ行くべきか、何をするべきかも解らない。
ただ、空へと舞い上がる。
その時、ブラックアウトは己のシステムに介入する、未知のプログラムの存在に気が付いた。
この惑星の原生生物によって構築されたらしき、原始的で粗悪なプログラム。
しかし如何なる原理か、それは着実に防壁を突破し、徐々に、徐々にブラックアウトの思考中枢を侵してゆく。
電子の咆哮。
巨大な金属音が、周囲の大気を揺さぶる。
怒り狂うペイヴ・ロウは気流をかき乱して転進、巨大な石造りの建造物に向かって突進を開始した。
距離60リーグ、目標『1』。
原生生物、有機生物学上分類結果『ヒト』。
未知のエネルギーを保有。
現在侵攻中の攻性プログラム発信源と断定、早急な排除が必要と判断される。
最適武装システム、多目的ミサイル。
武装選択、ロック。
発―――――
絶叫。
擬似視界の片隅、突如現れたルーンの切れ端が、視界全体を覆い尽くしてゆく。
ブラックアウトは自身のシステムが乗っ取られてゆく異常な感覚に、堪らず狂気の雄叫びを上げる。
ジャズによって破壊された正規の発声モジュールを介したものではなく、各部制御系が上げる、システムの電子的絶叫。
有機的生命体の耳には決して届く事無く、しかし確かに発せられるスパークの悲鳴。
デバスター「ワタスノケモノデスカ?」
その絶叫は徐々に小さくなり、やがて消える。
高速で学院へと突進していたペイヴ・ロウはその速度を落とし、程無くしてギアダウン、学院中庭へと着地した。
もし、普段からこの使い魔を目にしている者がこの場に居たとして、果たして『それ』に気付いただろうか。
蛇の様に蠢き、装甲の隙間へと消えてゆく、古代文字のルーン。
情報媒体という仮初めの形を取った鎖はその役目を果たし、在るべき姿へと戻る。
誰にも、自身の主にもその役目を悟られる事無く。
主の命を繋ぎ止める、唯一にして絶対の『命綱』は、ただ静かに、己が繋ぐべき『獣』の身体に捲き付いた。
支援
ルイズ達が解散したのは、それから更に2時間ほど後の事だった。
デルフは、今はまだ『虚無』の目覚めるべき時ではない、とだけ告げ指輪を没収。
部屋へと戻るや否や、白紙の『始祖の祈祷書』をルイズに押し付け、王女の言葉を伝えた。
「ゲルマニア皇帝との婚儀で巫女を務めて欲しいそうだ。まあ、コイツを貸し出す為の大義名分なんだが。式の詔を考えておきな。そいつを持って、それを詠み上げるんだと」
未だ思考が追い付かず、曖昧に頷くルイズ。
既に限界に近い思考を持て余し、ベッドへと倒れ込もうとした、その時―――――
「ルイズ」
デルフが、剣の形態のまま、無機質に声を発した。
「……なに?」
「1つだけ言っておくぜ。よぉく考えるんだ。お前さんが、その力を振るうべき時は何時か」
そして、とデルフは一端の間を置き―――――
「最初に『消す』ものは何か。よく考えておけ」
それは、アルビオンよりの帰還から7日後。
キュルケの提案により、トリステイン国内の『異物』探索が開始される4日前の事だった。
支援
781 名前:ディセプティコン・ゼロ 投稿日:2007/11/05(月) 21:54:36 [ wKhtv9M. ]
投下終了。
今回は繋ぎです。
人には言えない理由で指を骨折し、しばらく執筆から遠ざかっておりました。
忙しい為、前ほどの頻度ではありませんが、少しづつ書き進めさせていただきます。
代理人の方、有難うございました。
そしてサルさんのアホー!
ガン=カタゴッコデコッセツシタナンテイエナイ……
============
以上で代理投稿終了です。
GJ&代理乙!
って何してたんだアンタwwww
783 名前:ディセプティコン・ゼロ 投稿日:2007/11/05(月) 21:57:45 [ wKhtv9M. ]
追記 デバステーター、素で忘れてました。
まとめで修正しておきます。
ゴメンね……ゴメンねデブ……orz
=========
追加。
乙ッス!
それと「有機体のカスめが!」のお人が来ていて吹いたw
・・・ルイズの命綱は、ルーンか。切れたら即効で殺されるな。
乙。
ディセプティコン・ゼロの人の投下が無いのは、てっきり
『君の考えたトランスフォーマーを映画で活躍させよう!』キャンペーンに、
一生懸命応募しているからだと考えていました。
自分の画才が無いのが恨めしいよ。
ガンカタゴッコに吹いた乙w
GJそして乙でした!
ヤバイ、どんどん怖くなっていく
最初の頃の激しい、とか二人目、とかの
ささやかなギャグ展開が遠くなったなあ
ハルケギニア人がこの先生きのこれますように……
投下って、予約してもいいんですかね?
できたら四十分ころから投下したいんですけど・・・。
期待して待ってる
40分ならもう10分切ったZE☆
来るか二刀流! 支援
心に乙、輝く支援
では、投下します。
カード交換と引き換えに、キングが要求したのは、「中庭にくること」だった。
あの根性が捻くれたやつのことだ。またなにか企んでいるに違いない。
剣崎は、ルイズが寝たのを確認すると、静かにデルフリンガーを背負い、
ラウズバックルがポケットにあることを確認してから部屋を出た。
キングがなにを考えているにせよ、無傷では済まないだろう。できれば無傷で帰りたいが。
「おい、こんな時間にどこ行くんだよ」
「静かに」
声を発したデルフリンガーをぺし、と軽く叩いて黙らせる。
廊下も静かで、どうやら生徒たちはみんな寝ているようだった。
学院に戻ってきてから、三十分おきに中庭を確認したが、キングは現れていない。
最後に中庭を見に行ってから、ちょうど三十分。そろそろ、いつもの携帯をピコピコいじっているころだろう
立ち止まって、深呼吸をする。
上等だ。決着をつけてやる。
頬を両手で軽く叩き、自分に気合をいれる。もいう一度、深呼吸をし、剣崎は改めて歩き出した。
キュルケは、いつまでもボケッとしているタバサを急き立てた。
「タバサ!早く!」
タバサは、キュルケに言われたとおり、本を閉じると、杖をもって部屋を出た。キュルケもそれに続いた。
「中庭って言ってたわよね。あなたのシルフィードによると、まだどっちも来てないんでしょ?」
質問をするキュルケに対し、タバサは無言で廊下を進んで行く。相変わらずね。
と、キュルケはひとり愚痴、なにか話題をふることにした。
「そういえば、あなたが他の人に興味を示すなんて珍しいわよね?どういう風の吹き回しよ?」
タバサは立ち止まり、短く呟いた。
「カードの魔法」
「ああ・・・ルイズの使い魔の、『魔法』ね。確かに詠唱らしきものは聞こえたけど、聞いたことのない、言葉だったわよね」
「それに興味がある」
タバサはそれっきりなにも言わず、また歩き出した。
これくらいに書き込めば、支援になってるかな?
今日、虚無の曜日。キュルケの注目は、ルイズが召喚した平民だった。
本当は昨日の夜あたりに誘惑するつもりだったのだが、部屋をノックするより前に、
剣崎の悲鳴と、ルイズのハッスルする声が聞こえてきたので、自重した。
そして、今日こそモノにしてみせる、と意気込んで部屋に乗り込むと、そこは空であった。
途方にくれるキュルケの目に、窓から馬で出掛けるルイズと剣崎の姿が映る。
そんなこんなでタバサに頼み込み、彼女の使い魔であるウィンドドラゴンに乗ってふたりを追跡していると、街についた。
ルイズたちが一軒の店に入っているあいだ、暇を持て余していたキュルケだったが、数分とたたぬうちに、剣崎が店からすごい勢いで出てきた。
ラッキー、と微笑を浮かべ、そのまま剣崎を尾行していたふたりと一匹だったが、
行き止まりの通路にさしかかった瞬間、それまでと状況が一変した。
剣崎が、何かを話している。相手はこの前の侵入者だ。
「あいつを、追いかけていたのね」
キュルケは音を立てないよう、風竜の上で杖を胸から引き抜いた。
「危険」
「そうね」
キュルケは杖をかまえ、いつでも魔法を打てるようにする。タバサも、杖をふる姿勢をとった。
三、四分程度だろうか。ふたりは普通に会話を終わらせた。
「なによあれ。普通に終わってるじゃない・・・まさか、あのふたり、グルだったとか?」
「中庭」
「え?」
「今日、中庭に来い。そう言ってた」
タバサはそれだけ告げると、ウィンドドラゴンを上昇させ、そのまま飛び退る。
「ちょっと!?」
「敵かどうか判断するには、中庭で待つしかない」
それもそうね。
キュルケは、とりあえず、早すぎる風の流れに身を任せることにした。
支援
これ支援してもいいかな?
結果から言って、剣崎の予想は的中した。キングは長い年月を生きた、不死の生物である。
しかもカテゴリーKという、最強に分類されるであろう戦闘能力も持ち合わせている。
が、精神年齢は著しく低く、地上の覇者を決定するためのバトルファイトでさえ、ゲームのように扱っていた。
「じゃーん」
「おい!そりゃないだろ!?」
見た目は大人、頭脳も大人。でも性格は子供。
そんなキングが今宵、取り出したのは、ロケットランチャーというとんでもない代物だったのだ。
「『破壊の杖』っていうんだってさ」
「ふざけんな!なんでそんなものがここにあるんだよ!」
「フーケとかっていう、面白いやつと知り合ってさ。
そいつが、これを宝物庫から盗みたいって言うんだよね・・・」
「それで、手伝ったのか!」
「うん。やれば、面白いもの見せてくれるっていうしさ」
「なんでも遊びみたいに考えるな!」
むっとしたような表情で、キングがロケットランチャーを構えた。
不味い。悪寒を感じた剣崎は、急いでラウズバックルに手をかけた。
『Turn up』
オリハルコンエレメントをくぐり、ブレイドへと変身する。
ブレイラウザーと、デルフリンガーの二刀で、構えをとった。
「来るならこい!」
「じゃ、行くよー」
本当に撃つのか!!
気合は本気、でもキングがランチャーの撃ち方を知っているとは夢にも思っていなかったブレイドは、腕を交錯させ、防御の姿勢をとるくらいしかできなかった。
しゅぽっと栓抜きのような音がして、直後、ブレイドの体は吹き飛んだ。
「相棒!?」
デルフリンガーが声を上げる。辺りに轟音が響き渡った。
しえん
しえん
支援
とにかく、なにが起こったか認識できなかった。気づいたら目の前で爆発、そして衝撃。
ブレイドは壁にめり込んでいた。大の字になっていた両手が、だらりと下がり、壁の破片がパラパラと零れる。
「うわ、ブレイド超悲惨」
「ちょっとあんた、使うなんて聞いてないわよ!」
「そりゃそうだよ。言ってないし」
キングは、ロケットランチャーを放り投げ、ポケットから携帯を取り出す。
女性はさらに文句を言おうとしたが、さきほどの爆音で飛び起きた生徒や教師の足音を聞きつけると、
舌打ちし、キングが放り捨てたランチャーをかかえて夜に消えた。
「く・・・」
体中の痛みに耐えつつ、ブレイドはブレイラウザーを支えに立ち上がった。
「おお!生きてたんだ。でも、今日はもう十分楽しめたし、また今度ね」
「待て・・キング」
制止の声も聞かず、キングは笑みを浮かべ、その場から一瞬で消えさる。
「ちょっと、あんた大丈夫!?何があったの!?」
音で起きてしまったらしいルイズが、剣崎のほうへ駆け寄ってくる。他にも、ルイズと同じように飛び起きた生徒たちが、中庭に集まってきていた。
ルイズを見て安心したからなのだろうか。気づくと、変身は解けていた。
改めて、自分の格好を見る。なんとも情けない姿である。仮面ライダーとしての使命を果たそうと思えば、見られるのは、惨めなところだけ。
本当に、剣崎は自分を情けなく思った。
「もう、勝手に、なにしてんの!」
「ごめん」
謝罪の言葉が溢れてくる。こんな使い魔でごめん。とにかくいろいろごめん。
「ルイズ、その使い魔、怪我してるの?見せて・・・」
「モンモラシー・・・」
巻き毛の、モンモラシーと呼ばれた少女は、慌てたふうに剣崎の体を調べる。
「あら、大した怪我じゃないわね。ちょっとした打撲よ」
モンモラシーはそれだけ言うと、剣崎から離れた。
生徒たちは、剣崎を興味深そうに見ていたが、教師たちに急かされ、口々に文句を言いながら部屋へと戻っていく。
残った教師たちの中から、コルベールが一歩前に出た。
「あー・・・話を聞きたいんだが。ミス・ヴァリエール、使い魔くんは大丈夫かね?」
ルイズは困ったように剣崎を見つめた。
「では、容態がよくなったら学院長室に来てくれるか?」
「はい」
教師たちは、それだけ聞くと学院の中へと戻っていった。
支援
支援
なぜか二個入る支援
なぜか二個入る支援
中庭には、剣崎とルイズのふたりだけが取り残された。
夜風は、あたたかい屋内に入るのを急かすように冷たく吹いていた。
「とんだ災難だったわね」
ルイズがいきなり口を開いた。
それは、以前、自分がルイズを励ますために言った言葉だった。
「ほら、早く行くわよ。体に悪いじゃない」
「ごめん」
ルイズは、剣崎になにか感じるものがあったのか、妙に気を使ってくれているようだった。その目は、いつものような攻撃的なものではなく、とても優しい母親のような目だった。
「ごめんな」
剣崎は、自分の無力さを噛み締めるように、静かに泣いた。
風竜の上からふたりの様子を見ていたキュルケは、気まずそうにした。
「な〜んか、出ずらい雰囲気よね」
キュルケは大きく伸びをした。
タバサはさっきまで中庭を見ていたが、今では本を読んでいる。
「それより・・・『土くれ』のフーケって、女だったのね」
「以外?」
「そういうわけじゃないけど。結構大胆な手口も使うから、もっとゴツいオッサンかと思ってたわ」
そして、はぁ、と大きな溜め息。キュルケはだるそうに髪をかきあげた。
「面倒なことになりそうだけど、先生に言わないわけにはいかないわよね。それに、カズマにも悪いことしちゃったし・・・」
「カズマ?」
「ルイズの使い魔の名前よ。ケンザキカズマ。にしても、『破壊の杖』って案外破壊力ないのね。
直撃したときはどうなることかと思ったけど・・・ピンピンしてるし」
キュルケは、中庭にいるふたりを見下ろして言った。
支援
こうして見るとキングってタチの悪いリュウタロスだな支援
支援
ルイズと剣崎が、ランチャー直撃の際に吹き飛んだデルフリンガーを回収し、学院長室へ行くと、教師たちが話し込んでいた。
さっきいた教師のほかに、オスマン氏も加わっている。
「で、誰が宝物庫から、『破壊の杖』を盗んだんじゃ?」
「『土くれ』ですよ!壁に犯行声明が刻まれていました」
顔を赤くして、コルベールが言った。
それほど、先ほどの出来事が大変なことなのだろう、と別世界の剣崎でも察することができる。
「『土くれ』って、誰?」
「ここらで有名な盗賊よ」
ルイズは、一番近くに立っているコルベールに話しかけた。
「あの」
「おお!ミス・ヴァリエール。よく来た、ささ、見たことを説明してください」
「いえ・・・私も、先生より一足早く中庭に着いただけで・・・その、私の使い魔が説明します」
そして、ルイズは剣崎を、教師たちの前に押し出した。一斉に視線が集中し、少々居心地の悪さを感じる。
「どういうことか、説明してくれるかね?」
オスマン氏はよっこらせ、と椅子に腰掛けた。
剣崎は、一部始終を説明した。犯行には、その『土くれ』だけではなく、侵入者として警戒されているキングも一枚噛んでいること。また、今日行った街で、キングに呼び出されたこと。決死の覚悟で出向いたが、瞬殺されてしまったことなど。
とにかく、憶えているほとんどのことを話した。それを聞き終わるや否や、教師たちは勝手に騒ぎ始める。
「衛兵はなにをしていたんだね?」
「衛兵などあてにならん!所詮は平民ではないか!それより・・・」
「落ち着くんじゃ」
オスマン氏は、喧騒を遮るように、低く呟いた。その威厳に、教師たちも押し黙る。
「今、真っ先に考えるべきことは、『土くれ』と『キング』という少年が、手を組んだことじゃ。仲間内で揉めてどうする」
その言葉に、教師たちは恥ずかしそうに、顔を見合わせた。オスマン氏は咳払いをし、剣崎に向き直った。
「して、君に聞きたい。『土くれ』はこちらの世界の者じゃ。
じゃが、キングとやらは違う。そこで、キングについて・・・教えてくれんかの」
「・・・キングはアンデッドという種類の生物です。アンデッドは共通して、不死の特性を持っています」
「不死!?」
コルベールが素っ頓狂な声を上げ、周囲にも不安の色が走る。
「アンデッドは封印できます。でも、この世界で封印できるのは、多分、俺だけ・・・だと思ってたんですけど」
剣崎は、ポケットの封筒から、カテゴリーKのカードを出し、オスマン氏に見せた。
「これは、アンデッドが封印されたカードです。先日、俺に宛てられて届きました。
オスマンさん、キングはこれはあなたが送ったものだと言ってたんですけど」
「いかにもそうじゃ。しかし、何故、ばれたのかの?」
オスマン氏は首をかしげた。
「キングは神出鬼没なんです・・・で、このカードは?」
「それはこの学院の宝物庫に納められていたものじゃ。生徒たちから、君が似たものを使っていたと聞いてね。君なら、役立ててくれるだろうと思ったのじゃが・・・そんな代物だとはの」
「宝物庫にあったって・・・勝手に持ち出していいものなんですか!?」
コルベールが、剣崎の持つカードを指差して言った。オスマン氏は首をふると、カードについて解説をはじめる。
支援
支援
「別に問題なかろう。あれは用途も不明。価値も不明。ただ発掘されたから、という理由で、たまたま宝物庫に入っていただけじゃ。
そんなものの一つや二つ、なくなろうと誰も気づきやせんわ」
「他のカードは見たことありませんか?」
剣崎は、他にもハートのカードを取り出し、机に広げてみせた。オスマン氏と教師たちは、興味深そうにそれらを覗き込んだ。
後ろのほうで、ルイズもそれを見ようと一生懸命背伸びしている。
「う〜む・・・何枚かは見たかもしれんが。忘れてしまったのう。なんせ、何年も前のことじゃから」
「そうですか」
剣崎が肩を落とすと、学院長室の扉がノックされた。
「誰じゃ?」
「オールド・オスマン」
「おお!ミス・ロングビルか!今までなにをしとったのじゃ」
入ってきたのは、ミス・ロングビルと、後ろにキュルケとタバサもいる。
「申し訳ありません。先ほどから、急いで調査をしておりましたの」
「調査か・・・して、後ろのふたりは?」
「はい・・・なんでも、一連の事件を目撃したから、とこの部屋に入るところでしたので」
キュルケは剣崎を見つけるとすかさずウインクした。ルイズがキュルケを睨みつける。タバサは無表情で突っ立っている。
「あの子、だれ?」
「タバサよ」
ルイズはそれだけ告げると、再びキュルケを睨みつける。オスマン氏は咳払いをし、ミス・ロングビルに尋ねた。
「調査結果は?」
「結果からいうと、フーケの居場所はすぐ分かりました。近所の農民に聞いたところ、近くの森へ急ぐ、黒いローブの男を見たと言っていました。さらに、その男は森の廃屋に数日前から住んでいるそうです」
剣崎が言った。
「黒ずくめのローブ・・・ってのはフーケだと思いますけど」
「そこは近いかね?」
オスマン氏は、目を鋭くした。
「はい。徒歩で半日。馬で四時間といったところでしょうか」
「すぐに王室に報告しましょう!王室衛士隊に頼んで、兵隊を差し向けてもらわなくては!」
コルベールが叫んだ。
支援
オスマン氏は、コルベールをなだめるように呟いた。
「それでは遅すぎる。それに、キングという不死の者もおるやもしれん。
現物を見ていない、王室の連中など、対処にしようがない」
「しかし、以前、我々はその不死のアンデッドも退けました!衛士隊ならば、もっと上手くやってくれるでしょう!」
すると、オスマン氏が目を剥いて怒鳴った。その凄まじい剣幕は年寄りのものとは思えないほどである。
「ばかもの!あれはあちらも油断していたからだ!次はない!
相手は『不死』という最大の武器を盾に、他にも様々な能力を行使できるのじゃぞ!魔法学院の宝が盗まれたのじゃ・・・これは、我々で解決すべき問題であろう!」
ミス・ロングビルが静かに微笑んだ。
オスマン氏はまた咳払いをすると、剣崎を見た。
「捜索隊を作りたい・・・すまんが、捜索隊に入ってはくれんか?」
もとより、キングを封印できるのは自分だけの剣崎は、迷わず頷いた。
「私も行きます」
「ミス・ヴァリエール!」
ミセス・シュヴルーズが驚いた声をあげた。
「あなたは生徒ではありませんか!ここは教師に任せて・・・」
「私は、自分の使い魔だけ行かせるなんてできません!」
ルイズは意志のこもった瞳で言い放った。そんなルイズは凛々しく、高貴さを醸しだしていて、美しい。剣崎は、ルイズの肩に手を置き、その瞳をしっかりと見た。
「危険だぞ。キングは、人が死ぬことなんか、全然気にしない」
「でも、あんただって盾くらいにはなるでしょう」
ルイズは優雅に微笑んだ。
ルイズのことを、少しばかり理解しつつある剣崎は、自分が説得しても無駄だろうな、と悟った。
「私も行きます」
キュルケが手をあげ、それに続きタバサも挙手する。
「キュルケ?」
「ヴァリエールには負けられないもの」
支援
支援
訝しげなルイズを見て、キュルケは妖艶に笑った。
「うむ。では、頼むとしよう」
「オールド・オスマン!わたしは反対です!生徒たちをそんな危険にさらすわけには!」
「では、君が行くかね?ミセス・シュヴルーズ」
「い、いえ・・・」
「彼女たちは、敵を見ている。それにキングを封印できるのは彼だけじゃ
・・・それに、ミス・タバサは若くしてシュヴァリエの称号を持つ騎士だと聞いているが?」
「ちょっと、それ本当なの?タバサ」
キュルケが目を丸くしてタバサを見た。タバサは小さく、こくんと頷いた。
「他にも、ミス・ツェルプストーは、ゲルマニアの優秀な軍人を数多く輩出している家の出じゃ。
ミス・ヴァリエールも・・・その、数々の優秀なメイジを輩出したヴァリエール公爵家の息女である」
オスマン氏が、自分のところだけ濁したことに不満を持ったのか、ルイズはむっとした視線を向けた。
「おほん・・・では、馬車を用意しよう。それで向かうのじゃ。深夜だが、早く向かうに越したことはない
・・・魔法は温存するように。ミス・ロングビル!」
「はい。オールド・オスマン」
「頼んだぞ」
ミス・ロングビルは頭をさげた。
「任せてください」
そして、学院長室から、教師らがどんどん去っていく。最後に残った剣崎たちも廊下に出た。キュルケは、思わせぶりに剣崎に近付くと、耳元で優しく、囁いた。
「『土くれ』が男ですって」
タバサもそれに同意するように、頷いた。なんのことだか理解できていなかった剣崎だが、二人の言わんとしていることと、さきほどの会話が結びつき、納得した。
なるほど。そういうことか。確かに、あの人の言っていることは、俺が見たことと食い違っている。
どうやらこの二人も、その点について、彼女を疑っているようだった。
「男ねえ」
剣崎もつられて、少し笑う。
唯一、なにも分かっていないルイズだけが仲間はずれにされ、不機嫌そうに剣崎の尻を蹴飛ばした。
支援
オンデュルオジュジュジュハー。支援。
以上で今回の投下終了です。支援、ありがとうございました。
ロケランを大したことないてあんたw
そりゃライダーだからこそできるだけだってwww
ここでのルイズはアフォっぽいな〜(まあそれくらいでいいかもな
ここで綺麗なワルドが後に登場したら凄いが…ギャレンなりレンゲルなりなったら(どちらかで方向性が違うが
オンドゥルの使い魔の人〜。乙っす〜。
wiki登録したのですが、「・・・」のところを「…」に仮置き換えしてあります。
行頭にこれがあると、wikiのシステム上、段落記号として扱われてしまいますので…。
一部だけ変更するのも変だったので、とりあえず全部置換してあります。よ。
オンドゥルの人乙!
ルイズザン、(カードを)カンショーシーンデス
感想や、ウィキ登録ありがとうございます。
ルイズは気づいたらアホになってました。すいません
飼い主はペットに似るという
逆じゃないのか?w
もうすぐ日付が変わりそうだけど投下していいですか?
支援
支援
よし!じゃあ投下します!!
トリステインの朝は早い。
日が昇り始めた頃、通りは店の準備などで活気付く。
「んん〜!今日も清々しい朝ねぇー!」
今日の話はチクトンネ街にある『魅惑の妖精亭』、大衆酒場兼宿場であるこの店から始まる。
「さ、今日も可愛い妖精さん達と一緒に頑張るわよぉー!」
“彼”の名はスカロン、この『魅惑の妖精亭』の店長である。
「もう、あんまり大きな声出すんじゃないよ!まだ寝ている人だっているんだからね!」
次に2階の窓が開き、黒髪の美しい娘が顔を出した。
彼女はスカロンの娘であるジェシカ。父と共にこの店を切り盛りしている。
ズシン…ズシン…
と、店の裏から地響きが聞こえる。
スカロンはそっちに目を向けると、パアッと顔が明るくなった。
「まぁボブちゃん!もうゴミの片付けやっちゃったの?」
「……!…!」ゴオォォ!シュゴー!
ボブと呼ばれた者は、返事の代わりに体から奇妙な音を上げる。
紹介しよう、彼が今回の話の主人公…
本多忠勝………改め、本田ボブである。
異世界BASARA番外編「忠勝のアルバイト」
支援
支援
ボブw
何故彼はこんな所にいるのか、事の発端は2週間前であった。
パーティーで食べた野菜…いや、草のような物を食べた途端、体が言う事を聞かなくなり、空を暴走しながら飛び回っていた。
丁度視界に街が見え始めた時、彼の意識はそこで途絶えた。
そして翌日の朝…気がつくと忠勝はこの店の屋根に頭から突っ込んでいたのである。
「それにしてもあなた、空から降ってくるなんて…ひょっとして天使さんかしら♪」
「こんなごっつい天使がいるわけないでしょ、あの屋根の穴どうするのよ…」
「…!!…!」ブルルル!ヴィン…
その後…忠勝は行くあてもないと誤解され、『魅惑の妖精亭』に住まわされる事になる。
忠勝自身も、屋根を破壊したまま帰るのは悪いと思っていたのでこれを承諾した。
ちなみに、一応名前を聞いたが、「プシュー」や「ギギギ」としか言わないので、とりあえず「ボブ」と呼ばれる事になった。
可愛いじゃなぁ〜い♪がスカロンの言い分である。
「それじゃあボブちゃん!今日の買出しもはりきって行っちゃうわよ!」
そして現在に至るという事だ。
「も〜ボブちゃんが来てから店が繁盛しているような気がするわ〜♪」
「……!」キュイーン!
スカロンは忠勝の肩の上でクネクネと悶えている。
今日の買出しを終えた忠勝はスカロンを肩に乗せ、店への帰路を急いでいた。
『魅惑の妖精亭』で住み始めて1週間…
今では店の雑用の大半をこなすようになっていたが、忠勝は1つだけ気になる事があった。
この世界での自分の主…タバサの事である。
彼女に何の連絡もしていないのが彼の気がかりであった。
しかしそれをスカロンに伝えようとしても理解してもらえない。
このハルケギニアという世界において忠勝の言葉を理解出来るのは主だけであったとつくづく実感した。
狭い道を移動しながら、忠勝は今日の夜中にこっそりと抜け出して学院に戻ってみるかと考えていた。
ここから学院まで自分ならそんなに時間は掛からないし、主も夜遅くまで本を読ん
「ボブちゃんストオオオォォォォォォォーーープッ!!!!!」
考え事をしていると、いきなり首を後ろに引っ張られた。
「!?!!」ガギギギ!ギュウロロロ!!
驚く程の強い力のせいで忠勝は急停止する。それはもうそのまま折るのではないかという強さであった。
何があったのかとスカロンの方を見ると、彼は噴水広場に目を向けている。
「ボブちゃん、悪いけど先に帰っていて頂戴!開店前にはちゃんと戻るから♪」
そう言うやいなやスカロンは忠勝の肩から飛び降り、凄い速さで噴水広場に走って行った。
とりあえずでボブなのかwww
支援
ボブはねぇだろボブはw支援
しえん
しえん
「ああ、それは可愛い女の子を見つけたんだよ。たまにスカウトしてんのさ」
「………?」ブルルル
スカロンの言う通りに店に戻り、料理の下ごしらえをやっていた忠勝にジェシカは言った。
ちなみに、彼の体は厨房には入らないので外でやっている。
「……!!…」ウイィン!
「あら、もう済んだの?」
剥いたじゃがいもをボウルに入れ、窓からジェシカに渡す。
「みんな〜た・だ・い・ま〜♪」
丁度その時だった、スカロンの声が奥から聞こえてきたのは。
「いいこと?可愛い妖精さん達〜」
「「「「はい!スカロン店長!」」」」
「ちっがーうでしょぉー!!店内では"ミ・マドモワゼル"とお呼びなさいっていつも言ってるでしょ〜!?」
「「「「はい!ミ・マドモワゼル!!」」」」
それを聞いたスカロンはトレビア〜ン♪と言いながら体をくねらせる。
店内ではそう呼ぶのが決まりなのだが、忠勝にはあまり関係なかった。
「カ・イ・カ・ン♪さて、今日は皆さんに嬉しいお知らせがあります!」
そこまで言うとスカロンはポンッと手を叩く。
「何とこの魅惑の妖精亭に新しいお仲間が出来ます!それじゃあ入っていらっしゃ〜い♪」
スカロンがもう一度手を叩くと、奥から小柄な少女と妙な格好をした青年が現れた。
「ルル、ルイズなのです〜!よろしくお願いなのです!!」
「ししししゃしゃしゃなだゆゆゆきむりゃにごごござる!!こ、これからせせ世話になりまするっ!!!」
なんと、現れたのはルイズと真田幸村だった。
ルイズは引き攣った笑顔を浮かべ、幸村は今にも倒れそうな真っ赤な顔をしている。
「ルイズちゃんはね、お父っつぁんの博打の肩に売り飛ばされそうになった所を、お兄さんと町まで逃げてきたのよヨヨヨ…」
スカロンはハンカチで顔を覆いながら言った。それに続いて従業員の女の子からも可哀相と声が上がる。
勿論そんな訳がないのだが…
「だから皆仲良くしてあげてね!はい拍手〜♪」
スカロンがそう言うと、女の子達から歓迎の握手が上がった。
「さて、新しく入った2人には紹介しておかなきゃね。この店のマスコットキャラを!」
「ま、ますこっと?」
スカロンの言葉に幸村が顔を赤くしたまま答える。
「そう!この店には入らないけど立派に仕事をこなす働き者!気は優しくて力持ち♪」
そういいながら窓に近づき、取っ手に手を掛ける。
そして、一気に窓を開きながらこう叫んだ。
「紹介します!!ボブちゃんでえぇ〜す!!」
そこには、ルイズ等2人にとって凄く見慣れた顔がいた。
「んなあぁ!?あ、あんたタバサの使い魔…!!」
「た、忠勝殿!?」
「…!!……」プオォォォォォン!!!!
投下終了。
いきなり人多杉になってちょっとビビッた…
乙!
支援
>>595 たしかブレイドのスーツって100tぐらい耐えられるんだよな。
620 :
蛇の使い魔:2007/11/05(月) 23:59:53 ID:BJ29buDr
投下準備OKですか?
進路くりやー。じゅんびおっけー。の、巻。
しえーん☆
623 :
蛇の使い魔:2007/11/06(火) 00:05:01 ID:BJ29buDr
少女が顔を近づけてきたと思ったら
「―!?」
いきなりキスをしてきた
手厚い歓迎だな
どうやら敵ではなさそうだ
「いったい何のつもりだ」
俺の話を聞かない少女
「終わりました」
「【コントラクト・サーヴァント】はきちんとできたね」
賛辞の言葉だが少女は嬉しそうではない
いまだに状況が読めない
「おい、一体どういうこt―何だ!?」
左手の甲が熱い
激痛で地面をのた打ち回る
「使い魔のルーンが刻まれているだけよ。我慢なさい」
「一体俺に、何をした?」
それだけ言うのがやっとだった
顔には脂汗がにじむ
「すぐ終わるわ」
「答えになっていない!」
痛みが引いたのか怒鳴りつけてくる
ただのオヤジじゃなくて雷オヤジね
「私だって不本意なんですからね!なんだって平民なんか使い魔にしなきゃならないのよ…」
立ち上がったオヤジの顔をにらみつける。結構でかいわね
「何の話だ?使い魔とか…ルーンとか」
「…?そんなことすら知らないの?」
どんな田舎から来たのよこのオヤジ
「おや?」
近くに居たコルベール先生から疑問の声が上がる
ルーンをじっと見つめスケッチし始めた
「珍しいルーンだね」
珍しいのはルーンよりこいつの格好だと思う
着てるものが変じゃない。こんなパッツンパッツンの服見たこと無いわ
名前だって…そういえば名前を聞いてなかった
「あんた名前は?」
「…ソリッドスネーク。スネークと呼んでくれ。君は?」
「そう。私はルイズ、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ」
「そうか。それじゃ、ルイズと呼べばいいな?いくつか聞きたいことがあるんだが」
「何よ?」
「ルイズ、ここは一体どこなんだ?」
一瞬何を質問されたのかわからなかった
そんなことも知らないの?
「ハルケギニアのトリステイン魔法学校よ」
全くわからないと言う顔でルイズを見るスネーク
>オンドゥル
モンモラシーでなくモンモランシーだ!
「あんたバカ?」
「大人をバカにするもんじゃない、ルイズ」
聞いたことも無い地名だ
前にも似たような故障には巻き込まれたが一応は知っている場所だった
今度の故障はいつもとは違う
知らない場所の上見たことも無い生物…
先ほどの痛みで夢ではないのはわかっている
「オタコン…早く助けてくれ…」
青空に向かって呟いた
ルイズの部屋でこの場所について聞いてみた
ルイズからの話を分析するとやはりここは俺の居た世界ではないらしい
そのことをルイズに話すとやはりバカにされた
「あんた主人バカにすんのもいい加減にしなさいよ?」
「バカにしてなどいない。俺は大真面目だ」
「だったら証拠を見せなさいよ!」
証拠…この世界になさそうな物を見せるわけか
壊れていないことを祈ろう
シュンという音と共に姿を消すスネーク
いや正確には―見えにくく―なった
スネークのいた場所がゆがんで見える
「これで信用したか?」
目を丸くしているルイズに勝ち誇って言った
「すごいこと出来るじゃないの!さすがは私の呼んだ使い魔だわ!」
飛び跳ねて喜ぶ。これでみんなにバカにされない!
よくやった私!
しかしスネークが言いにくそうに切り出した
「喜んでいるところすまないんだが…これはステルス迷彩と言ってな、俺の能力じゃない
科学だ。これを使えばルイズにも出来る」
「なんだ…」
でもこれでスネークが他の世界から来たってことが証明されたわけね
「俺にも何が起きているかわからない。どうして俺はここにいるんだ?」
左手を見ると実に覚えのない刺青
先ほどの儀式で出来たルーンだ
「私が召還したからでしょ?そのルーンが証拠よ
私だって認めたくないけど」
なんだってこんなオヤジを…などつぶやいている
「俺だって呼ばれたくて呼ばれたわけじゃない。早く元に戻してくれ」
ルイズは首を振る
「出来ないわ。使い魔を戻すなんて聞いたことないもの」
「…クソッ」
うなだれるスネーク。しかし、この程度ではまだあきらめない
「ルイズ、使い魔について教えて欲しい」
話を聞くこと数十分
スネークは話を聞いたことを後悔した
「使い魔の事、わかったかしら?」
「…」
まさかこんな小さな女の子にこき使われなきゃならないとは微塵も思っていなかった
「使い魔ってのは使用人か?」
「いいえ。でもあんた何か特殊な能力とか持ってないじゃない
さっきも言ったでしょ?『使い魔はメイジの目となり耳となる』。
これくらい普通よ」
呆然とルイズの顔を見るスネーク
「…酔っ払いたくなってきた」
「あっそ。それじゃお休み」
ベッドに入って眠るルイズ。俺は床か…オタコン、早く助けてくれ…
626 :
蛇の使い魔:2007/11/06(火) 00:07:08 ID:BJ29buDr
朝
装備を確認する
M9(麻酔銃)、ソーコムピストル、グレネード、スタングレネード
C4、BOOK、段ボール箱、無限バンダナ、ステルス迷彩そして煙草
どうやらアサルトライフル類を無くしたようだ
レーション…はなくしたが食事くらいなら出るだろう
という淡い希望はすぐに叩きのめされることになるがスネークはまだ知らない
「ルイズ、起きなくていいのか?」
寝顔は可愛いものだ、素直にそう思う
ゆっくりと目をあけるルイズ
俺の顔を見た瞬間飛び起きる
「あんた誰よ!?」
「スネークだ。目が覚めたか?」
ようやく目が覚めたようだ
まったく朝からうるさい子だ
「じゃ、着替えるから」
「そうか、じゃあ俺は部屋の外に…」
「は?あんたが着替えさせなさいよ」
そういえばそんなことを言っていたような気がする
いくら体が小さくても16歳の女の子だ
恥じらいって物を持って欲しい
「やれやれ…」
やっぱり気の強い女は苦手だ
「はぁ」
どうして私の使い魔はあんな中年オヤジなのかしら
確かに普通の平民じゃなさそうだけどなんかむさ苦しい
着ているものも変だし、バンダナが妙に長い
髭くらい剃りなさいよ!
それだからおやじ臭さが増すのよ
「どうした?」
「なんでもないわ」
どんな格好であれ使い魔は使い魔。しつけはしっかりとしよう
「朝ごはん、いくわよ」
「それは楽しみだ」
「これは一体どういうことだ?」
「あんたの朝食」
「これだけか?」
「そう」
渡されたのはパンとスープだけ
「俺を死なせたいのか!?」
「あんた普通はここに入れもしないんだからね?」
取り合っても意味がなさそう
「ジャングルの食事の方がマシだったな」
ぼそりと呟く
後で外へキャプチャーしにいこう
これだけではとてももたん
627 :
蛇の使い魔:2007/11/06(火) 00:08:45 ID:/JFYnG97
「じゃ、私は授業の準備をしてくるわ
後で迎えに来るから、いい子にしてなさい」
「('A`)」
へんじがない ただのようへいのようだ
亡霊のような動きでスネークは外へ向かった
しばらく草むらなどを探すと一匹だけ蛇を見つけることが出来た
「サバイバル訓練がこんなところで役に立つとはな」
と手の中の蛇を見ていると風と共に消えてしまった
「な!?」
風下を見ると青いドラゴンが蛇に食らい付いていた―タバサの使い魔シルフィードだ
「待て!それは俺のだ!」
しかし空へ逃げられ結局全て食べられてしまった
「きゅいきゅいw」
心なしか笑われている気がする
「俺は、負け犬だああああああああああああああああああああ!」
本気で悔しがるスネークにメイド服の女の子が話しかける
…大人の男の人が本気で悔しがってる。変な人だなぁ…
着てる服も変だし、バンダナ長いし
でもどうしたんだろう?
「ど、どうしたんですか?」
「食事を取られた。もぉ死にたい」
体育座りで地面に蛇の絵を描きながら言った
あれ、食べる気だったんだ…
「確か貴方はミス・ヴァリエールの…」
「そう使い魔だ。スネークと呼んでくれ」
共食い?と思ったが口には出さない
スネークの腹が大きく鳴る
相当おなかが空いているようだ
「私はシエスタと言うメイドです
残り物で良いなら厨房にありますが、いかがですか?」
「うますぎる!最高だ!」
「ふふ、そう言ってもらえると作った者も喜びます」
出されたものをひとつ残らずスネークは平らげた
一品一品感想を述べながら食べたためかなり時間がかかったが
「いや本当にうまかった。ありがとうシエスタ」
「また来てください。このくらいならいつでも出しますよ」
花のように笑うシエスタ
食事に誘うには…いやなんでもない
「ひとつ、いいですか?」
「なんだ?何でも答えよう」
言いにくそうにもじもじしながら言った
可愛すぎる!
「その…その服って一体?」
「ああこれか。これは『スニーキングスーツ』といってな
防弾・防刃、保温、防水に優れている。それに特殊ラバーが貼り付けてあって足音がしにくい
まさにスニーキング用の服と言ったものだ」
「…?」
何を言っているのかわからないようだ
「着てみるか?」
と、スニーキングスーツを着たシエスタを妄想する
…性欲をもてあます
「遠慮します」
「そうか。また会おう」
スニーキング支援
>>625「私が召還したからでしょ?そのルーンが証拠よ
召還×
召喚○
630 :
蛇の使い魔:2007/11/06(火) 00:11:31 ID:/JFYnG97
スネークはネタキャラに徹しようとすればいくらでも徹することができるからいいな
是非どこからかタキシードも調達してきて欲しい乙です
天罰支援
進路クリアー。どんぞー
エンジェリックの方も楽しみにしてるっんだぜ。
乙です。
ポケダンからセレビィを召喚。
ポケモン同士でなくても言葉は話せそう。
ただ、本来なら神様女神様ランクなのにポケダンでは
ちょっと特殊能力がある女の子、くらいの扱いなんだよな……。
つか、ルイズが逆召喚されてエネコになって、ピカチュウのサイトと探検する方が書きやすそうだ。
ジャングルの食事でちょっと?となったが、
ソリッド・スネークも密林での任務経験ぐらいはあるよなーと勝手に納得した俺
では、行きます。
トリステインの王都から少し離れたところにあるトリステイン魔法学院に一人の生徒がいました。
彼女の名前はタバサ。実年齢よりも凄いロリ………いえ、少々幼く見える女の子です。
ある日、タバサちゃんは使い魔召喚の儀式で一匹のネコを呼び出します。
そのネコはタバサちゃんの心の中に語りかけてきました。
どうやら人間の言葉は話せないのですが、タバサちゃんと心でお話ができるようです。
彼女はネコの精霊サーリア。自分はタバサちゃんをある場所に連れて行くために現れたのだと言い
ます。
嫌な予感がしたタバサちゃんは儀式の監督教師にやり直しを要求しようと思いました。
しかし、その隙にサーリアによって、有無を言わさず不思議な回廊に連れ去られてしまいます。
タバサちゃんが回廊に着くと、そこには黒髪に豊かな胸を持つ天使様がいました。何故かメイド服
を着ています。
「私の名はステファ。け、決して魔法学院に勤めてるメイドじゃないんだからね」
他人にあまり関心の無いタバサちゃんはメイドの顔なんていちいち覚えていません。
目の前の天使様の顔も見覚えが無いので、特に反応しませんでした。
その様子に安堵した天使様は言葉を続けます。
「ハルケギニアの征服を企む輩がいるわ。そう、この世界は狙われているの」
そう告げると、タバサちゃんに魔法のバトンを手渡します。
先端に可愛いウサギの顔が付いていて、赤いリボンが結んであります。
好事家に見せても、値段が付けられないようなファンシーな一品です。
「このバトンで天使の力を使うことができるわ。お願いタバサ。この世界を『悪』の手から守って
ほしいの」
ずっと天使様のターンな展開に胃が痛くなってきたタバサちゃんはバトンを返そうとしますが、天
使様の腕力は思ったより強く、強引に押し返されてしまいます。
その後も断り続けていたのですが、天使様の機嫌はどんどん悪くなっていきます。
このままでは元の場所に帰れなくなるかもしれません。
結局、タバサちゃんは天使様のお願いを引き受けることになってしまいました。
「良かったぁ。引き受けてくれるのね。じゃ、後はサーリアに聞いてね。説明するの面倒だから」
天使様はタバサちゃん達を満面の笑みで見送ってくれました。先程まで不機嫌だったのが、まるで
嘘のようです。
こうして、タバサちゃんの『悪』の手からハルケギニアを守る戦いが始まったのです。
……そういえば重要なことを忘れていました。タバサちゃんは自分が戦うべき『悪』が誰なのかを
知らないのです。
天使様に聞きそびれてしまったので、サーリアに聞いてみることにします。
みんな今夜も投下乙
オンドゥル読んでたらカブトの最終回後の加賀美で書いてみたくなった
差別化が難しそうだが
そういえばオスマンと大佐の中の人は同じだったな
『実はサーリアもよく知らないのですよ〜』
前言撤回。まずは『悪』の正体をはっきりさせることが先のようです。
それから数日後。学院である事件が起こりました。
宝物庫に保管してあった『破壊の杖』が『ダイナマイト・フーケ』を名乗る盗賊に持ち去られてし
まったのです。
早速、『破壊の杖』の捜索隊が結成されることになりました。
メンバーはタバサちゃんとサーリア、親友のキュルケ、クラスメイトのルイズと使い魔の平民、そ
の他に学院長オスマンの秘書ロングビルを合わせた5人と1匹です。
ロングビルはフーケの潜伏場所を突き止めていたので、案内役に抜擢されました。
捜索隊が馬車で学院を出発してから4時間後、『破壊の杖』は森の中にひっそりとたたずむ小屋の中
で見つかりました。
あっけなく見つかったことに皆が拍子抜けをしていた時、小屋の外で轟音が鳴り響きました。
慌てて外へ出ると、巨大な土のゴーレムが立ちはだかっていました。ゴーレムの肩には一人の女性
が乗っています。
「あたしの名はダイナマイト・フーケ! 死にたくなかったら、その破壊の杖をこっちに寄こしな!」
キュルケはいい年してその名前は無いだろうと思いながら、得意の炎の魔法をゴーレムに放ちまし
た。
しかし、ゴーレムには全く効いていません。
「無理よ、こんなの!」
皆が撤退を始めようとした時、サーリアがタバサちゃんに話しかけてきました。
『タバサちゃん、今こそ天使の力を使う時です! 変身するですよ!』
『変身? どうやって…』
『魔法のバトンを構えて、呪文を唱えるです!』
タバサちゃんはいつもの自分の杖ではなく、天使様から貰った魔法のバトンを持ってきていました。
バトンでも普通に魔法を使うことができますし、こちらの方が可愛いので、杖の代わりに持ち歩く
ことにしたのです。
タバサちゃん自身の雰囲気にも合っているらしく、周囲の評判も上々です。
『サーリアの後に続いて呪文を唱えるですよ! ハ○ジ・ゴデ○バ・トリ○ノン!』
「ハ、ハイ○…ゴ○ィバ…ト○アノン…」
『モロ○フ・リ○デ・ディッパー○ン!』
「モ○ゾフ…リン○…ディ○パーダン…」
呪文を唱え終えると、タバサちゃんの全身を眩い光が覆い始めました。
あまりの眩しさにフーケも攻撃を繰り出せません。この世界でも変身中に攻撃できないのはセオリ
ーのようです。
やがて光が収まると、タバサちゃんは別の姿に変わっていました。
いつもの学院の制服姿ではなく、ピンクを基調としたミニのワンピースを身に着けています。
腰にはバトンと同じ色のリボンが結んであり、とてもよく似合っています。
「タバサ…何なのよ、その格好は…」
唖然とするキュルケにタバサちゃんはこう返しました。
「今の私はタバサじゃない。私は…エンジェルタビィ」
「…そ、そう…エンジェルタビィって言うんだ…」
キュルケは何か思うところがありましたが、タバサちゃんの名誉の為にこれ以上、突っ込むのを止
めることにしました。
「さっきから何をブツブツ言ってるんだい! こっちを無視するんじゃないよ!」
フーケのゴーレムがタビィ目掛けて拳を振り下ろしますが、タビィは上空に飛び上がって難無くこ
れをかわします。
『タビィ! 今こそトドメを差すです!』
『分かった』
タビィは上空からフーケのゴーレムに向かってバトンを構えたまま、必殺技の詠唱に入りました。
以前、サーリアから聞いた話では、この世界のスクウェアクラスの魔法を上回る威力だそうです。
「必殺! 乙女の怒りエターナルハートフルボンバー!」
言っていて恥ずかしくなりそうな名前を叫び終わると、とても表現できないような何かがバトンか
ら放たれます。
その直撃を受けたフーケのゴーレムは跡形も無く消え去ってしまいました。
「とっても、スパイシィィィィィ!」
フーケは必殺技の直撃を受けた時の衝撃でよく分からない叫びを上げながら、お空の彼方に消えて
いきました。
「天罰」
地面に降り立ったタビィは決め台詞を呟きました。そして、変身を解いて元の姿に戻ります。
『タバサちゃん、やったです〜。初勝利なのです〜』
『これもサーリアのおかげ』
『そんなことないです〜。照れるですよ〜。でも〜、フーケを捕まえなくてよかったのですか〜?』
「あ……」
とりあえず『破壊の杖』が無事だったので、一行はフーケの捜索を諦めて学院に戻ることにしまし
た。
学院に到着後、事後の報告をしようと学院長室を訪れた一行は、そこでとんでもない光景を目にし
ます。
オスマンとフーケが頭に大きなコブを作った状態で倒れていたのです。部屋の窓ガラスが割れ、辺
りに破片が散乱しています。
どうやら、タビィの必殺技で吹き飛ばされた時の到着地点が学院長室だったようで、窓に背を向け
て座っていたオスマンの後頭部に、窓を突き破って入ってきたフーケの頭が激突したようです。
フーケは気絶したまま、無事に城の衛士に引き渡されましたが、オスマンは打ちどころが悪かった
為、1ヶ月間入院することになりました。
その後の調べで、フーケの正体があのロングビルであることが分かりました。
以前、酒場で働いていた彼女を気に入ったオスマンが直々に雇ったそうですが、彼女にとってはあ
くまで『破壊の杖』を入手する為の手段に過ぎなかったようです。
そうなるとオスマンが気の毒に思えてきますが、彼はロングビルに対して日頃からセクハラ行為を
繰り返していたので、自業自得でしょう。
つまり、タビィはフーケに『天罰』を下すと同時に、オスマンにも『天罰』を下したのです。
こうしてハルケギニアの平和は守られました。
しかし、エンジェルタビィの戦いはまだ始まったばかりなのです。
これからの戦いは、より激しさを増すことでしょう。
けど、負けるな。タバサちゃん。完全に平和を取り戻すその日まで。
戦え! エンジェルタビィ!
敵の正体をはっきりさせる方が先だけど!
王都トリスタニアの中央に位置するトリステイン城のとある一室。
枢機卿のマザリーニですら立ち入ることを許されないその部屋で、部下からの報告書を読み終えた
アンリエッタは軽く溜息をついていました。
「ふぅ。やはりフーケは失敗しましたか。けど、『破壊の杖』は我々が求めている物とは違ったよう
ですね」
「はい、その通りです。既に次のターゲットに狙いを定めて計画を進めております。アンリエッタ
王女殿下」
「その呼び方はお止めなさい。今の私はアンリエッタではなく、『レディ・アン』です。あなたもこ
こでは『ビューティ・エレオ』と名乗りなさい」
「ですが、何もそんなに恥ずかしい名前を名乗らなくても宜しいのでは…」
「何を言うのです。我々の目的を達成する為には、表の名を捨てるくらいの覚悟が無ければ務まり
ません!」
「は、はぁ…」
支援するだー。
彼女達の表の顔はトリステイン王家の王女アンリエッタと、ラ・ヴァリエール公爵家の長女エレオ
ノール・アルベルティーヌ・ル・ブラン・ド・ラ・ブロワ・ド・ラ・ヴァリエールですが、ある目
的の為に同じ組織の中で行動していました。
その組織の名はネオ・トリステイン。混沌と化したハルケギニアの秩序を取り戻す為、この世界を
征服しようと企む一応、悪の組織です。
ここではアンリエッタは総統『レディ・アン』、エレオノールは作戦参謀『ビューティ・エレオ』と
名乗っています。フーケも前線指揮官『ダイナマイト・フーケ』として活動しています。
ネオ・トリステインの当面の目的は、全て揃うとどんな願いでも叶うと言われる『始祖の秘宝』を
全て手に入れることです。
しかし、組織を立ち上げてまだ日が浅い為、中々思うように進まないのが現状です。
実は天使様がタバサちゃんに言っていた『悪』とはこのネオ・トリステインのことなのですが、これだけ近くにいると、
エンジェルタビィと相対する日もそう遠くはないようです。
これにて投下完了です。
エンジェリック・ゼロの方も頑張って書きます。
それじゃ、おやすみなさい。
エンジェルラビィなんて外伝?が出てたのか…しらなかった…。
乙!そしておやすみよ〜
>>645
>>638 ガタックゼクター召喚とかは考えたことある
契約したものの全然言うことをきかないゼクター
破壊の杖の変わりにベルトがあって、フーケ戦で巻いてみるも何も起こらず
絶望の内にボコられるルイズ
だがその時
「今生の希望・・・それはすべて打ち砕かれねばならぬ・・・絶望の底にこそ・・・人は真の希望でおのれを救う事ができる」
>ディセプティコン
このデルフは本当いい感じにムカつけるなw
サイトたちにスクラップにされて、悪党らしい最後を華々しく飾ってもらいたい。
GJでっす!
ちょwシルフィードww
650 :
松下:2007/11/06(火) 00:50:35 ID:V4AoofmO
皆様乙&GJ! では10分後に投下予約します。
りりかるマジカル、ガマガエルになぁ〜れ! マジカル少年松下くん、はじまるよ!
>>648 ルイズに少しずつデレてってるとことか可愛くね?
>>647 いいね!
そこで燃える変身シーン。
女の子ライダーはあまりいないからねぇ。
トリステインとガリアの国境をなす、ハルケギニア随一の名勝《ラグドリアン湖》。
王都トリスタニアから馬車で二日あまり、面積はおよそ600平方リーグ(q)。
琵琶湖(670平方q)や東京23区(622平方q)よりやや小さいが、淡路島(592平方q)がほぼ入る広さだ。
青く澄んだその水は、巨大な『水の精霊』そのものだと伝えられ、この湖を支配する生きた神とも言える。
それは死の概念も老いるという事も知らず、永久に存在するため、永遠の誓いを護る『誓約の精霊』とも呼ばれるのだ。
そして、万物の母なる《水》は生物の肉体と精神を司る。かの精霊の体は、それ自体が秘薬と言ってよい。
それこそが『水の精霊の涙』なのだ。その高級な秘薬を手に入れるため、ルイズと松下はここへやって来たのだが……。
「ああ、ようやくラグドリアン湖だわ! そろそろ日が暮れるじゃない」
「どこかで宿をとろう。流石に『魔女のホウキ』でも、結構かかるな」
『二人と四匹』が湖畔に着いたのは、出発が遅めだったので、もう夕方。しかし、急がねばならない。
「ああ、待ってモンモランシー!! まだ泳いじゃダメよ! そんなに遠くへ行かないの!
ギーシュ!! 土の中から出てきなさい! 彼女を呼び戻して!」
怪奇『蛙女』と化したモンモランシーが湖に跳び込み、使い魔の蛙・ロビンを連れてすいすいと泳ぐ。
『モグラ男』ギーシュはヴェルダンデと一緒にまた土の中だ。もぞもぞと何か貪っている。
「まだこいつらがホウキに乗れてよかった。『ヴィンダールヴ』で操れるのはいいが、もう人間の言葉も忘れたかな……。
あと三日もすれば魂を乗っ取られ、完全変態を遂げてしまうところだった。危ない危ない」
「……始祖ブリミルよ、私をお許し下さい……罰を受けるべきなのは、マツシタだけですので」
ルイズが涙ながらに祈りを捧げる。さして仲良しではなかったが、友人の変わり果てた姿を見ると精神的に危険だ。
ぐわぐわぐわ、ゲゲゲゲゲ、とモンモランシーが双月を見上げて、楽しげに鳴いている。
それに唱和して、ロビン、ギーシュ、ヴェルダンデ、湖の周りの蟲たちも歌い始める。それが湖面に木霊する。
「おお、なんという見事な交響楽だろう。立派な芸術の域にまで高められている!」
ルイズのしくしくしくしく、という泣き声もそれに和した。
ばちゃり、と湖面で何かが跳ねた。それは人間ほどの大きさがあり、手足もあった。
人影はすいすいと水中を泳ぎ、モンモランシーのところまで寄ってきた。
「うむ? なんだ、あれは?」
「え? …………ああ、あれは『ヴォジャノーイ』という亜人の一種ね。水の精霊に仕えていて、
小柄だけど怪力で人間を引きずり込んだりするそうよ。彼女を仲間だとでも思ったのかしら……」
ヴォジャノーイ……確か、ロシアなどの水辺に棲む妖怪だったな。
いや、というか、あれはどう見ても……《河童》じゃあないか?
「おおい、モンモランシー! ロビンとそいつを連れて、戻って来い! 聞きたい事がある!」
松下が『右手』を挙げて叫ぶと、三匹はすいすいと岸辺に泳ぎ着いた。
なるほど、河童だ。全身は青緑色でぬるぬるしており、オカッパ頭には皿が、背中には甲羅がある。
口の突き出した猿のような顔で、指の間には水掻きがある。下品なガリア語で話しかけてきた。
「なあ人間、こいつ歌が上手で別嬪さんだなあ! あんたの使い魔か? 俺の嫁にくれよ!」
「残念だが、そういうわけにも行かない。彼女を人間に戻しに来たんだ。もう一人いるが」
「そうよ、貴方は水の精霊に仕えているのでしょう? お願いよ、案内して!」
それを聞いたヴォジャノーイは、吃驚して遠ざかる。
「精霊は今、お怒りだ! この湖は増水して、周りの人間どもの集落を呑み込んでんのさ!
それもこれも、皆てめえら人間のせいだ! 恨むんじゃねえぞ!!」
彼はばしゃんと水音を立てて、湖の奥深くへ潜って行った……。
「増水ですって? そう言えばなんだか、以前より水位が上がっている気もするわね……」
「あれを見ろ。なるほど、水底に村々が沈んでいるぞ……」
注意して水面を見ると、黒々と藁葺き屋根が見える。精霊の怒りを買うような事を、彼らがしたのか?
「ともあれ、明日調査してみよう。そのあたりの大きな家を捜して、一泊だ」
ひどい、ひどすぎる、ゲッゲッゲッ!
別の作品になりそうだ支援
二人(松下とルイズ)と四匹(モンモン・ギーシュと使い魔たち)は、村長らしき家に泊まらせてもらう事にした。
貴族の子弟『二人』とその使い魔と聞いて、小さな村では歓迎のため大騒ぎになる。
「貴族のお嬢様に御曹子さま、『水の精霊』との交渉に参られたそうで!
いやはや、助かりました! 女王陛下も領主さまも、わしら辺境の村々をお忘れではなかったんですなあ!」
「どうか、よろしくお願いいたします! 船着場どころかお寺も田畑も持ち家までも沈んじまって、
わしらの暮らしが立ち行かなくなってるんです! ヴォジャノーイどもは大喜びだし……忌々しい!」
下にも置かない丁重なもてなしだ。不器量な村娘や老婆までも歓迎の踊りを始める。
「そ、そうよ! この私が、女王陛下の内密の詔勅をいただき、直々に来てあげたんだからね! 感謝しなさい!
この、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール公爵令嬢がねっ!!」
「この度、前線基地の建設監督官に任命されたイチロウ・マツシタ・ド・タルブ伯爵だ。
事情により、こちらの調査にも来ている。協力してくれ」
へへ――――――っ、と村人全員が土下座する。まだ子供だが、公爵令嬢と伯爵さま(?)のご来訪だ。
「へえ、じりじりと水嵩が増えだしたのは、そう二年半ばかりも前になりますかねえ。
誰が何をしでかしたのか、メイジでもなく精霊と話せぬわしらには、分かりかねます」
「前の領主のド・モンモランシさまも、数年前の領地の干拓の時にアレの機嫌を損ねて、だいぶ領地を失われました。
代々交渉役を務めて来られた名家だったんですが、それ以来借金して没落しまして、今は別の貴族が領主さまです。
お家は存続しておられるらしいんですがねえ……」
「新しい領主さまは、宮中でのお付き合いに忙しくって、めったにこちらには来られません。
そのくせ、税金は前どおり取っていかれますよ。まあ、アルビオンとの戦争もありますし……」
「ふうーん、モンモランシーの実家のド・モンモランシ家が、前の領主だったのね。
二つ名はやっぱり『香水』じゃあなくって、『洪水』じゃないの!」
いろいろと情報は入るが、やはり『水の精霊』に会わない事にはどうしようもない。
「『水の精霊の涙』かあ……確か、ご禁制の『惚れ薬』の材料にもなるのよね。相当高いんでしょ?」
「ぼくのポケットマネーでも、なんとか出せる程度にはな」
『水の精霊の涙』、小瓶にほんの少量。それだけで末端流通価格が700エキューは下らない。
年収120エキュー(月収10エキュー)の平民が一人慎ましやかに暮らして、5〜6年は生活できる計算だ。
およそ現代日本での円に換算して、仮に1エキューが2万円とすれば年収240万円で、涙が1400万円。
1エキューを1.5万円としても、平民の年収180万円で、涙が1050万円。
間を取って1エキュー1.75万円とすれば、年収210万円のところ涙が1225万円。
庶民の涙がちょちょぎれたって、そうそう出せる金額ではない。
それはさておき、翌朝早く。二人と四匹は、再びラグドリアン湖岸へ向かう。
「ぼくの『ヴィンダールヴ』があれば、河童もといヴォジャノーイぐらいなら操れるだろう。
亜人にも効くのかどうかは分からないが……さもなければ、実力行使かな」
「『水の精霊』は強いわよ。風で凍らせたり、火で蒸発させたりすればダメージは行くでしょうけど、
規模の桁が違いすぎるもの。あの湖全体が、一つの生き物と考えていいわ」
「ほう、博識だなルイズ」
「まあね。アレは『全にして個』なるモノで、私たち人類とは根本的に違う存在なの。
争いを好まないから神代以来あそこにじっとしているけど、怒らせたら怖いわよ。
少しでも水に触れたら一瞬で精神を支配され、永久にアレの下僕よ。ヴォジャノーイもきっとそうなのかも……」
ふうむ、と松下は思案する。モンモランシーの実家が前の交渉役だと言うなら、彼女を利用すればいいのでは?
「よし、『第三使徒・モンモランシー』よ。きみを『ヴィンダールヴ』の力で操り、交渉役とする。
ロビンの方は残しておいて、連絡係だ。手に負えないようなら水面まで呼び寄せるのだ」
「グワッグワッグワッ、ゲロゲロゲロ」
モンモランシーから『蛙女』になりかかっているソレは、肯いてちゃぽんと水中に跳び込む。
ルイズとギーシュが心配そうに水面を覗き込む。
やがて、ロビンがクワックワッと鳴きだした。
「おお、ようやく連絡がとれたか。よし、『水の精霊』が出てくるぞ」
ルイズが緊張する。あのタルブでの『虚無』の覚醒から、簡単なコモンマジックは使えるようになったが、
いまだに系統魔法では爆発しか起こせない。強敵には敵わないのだ。
やがて、岸辺から30メイル沖の水面が、虹色に輝いてぐねぐねと動き始める。
それはざばりと持ち上がって蠢き、色と形を変えながら様子を伺っている。
「我、汝を求め、会う事を得ん! 『水の精霊』よ、汝がここに来たれるは嬉し!!」
松下が両手を掲げ、言霊で歓迎する。
「我らに似たる姿を取りて、我が要求に答えよ!」
『水の精霊』はそれに応え、粘土細工のように自ら姿を変化させ、『蛙女』の形となる。
モンモランシーは役目を果たし、岸辺に戻ってきた。
《……我を呼び出したのは貴様か、単なる者よ。この『蛙女』の体を流れる液体を、我は覚えている。
月が52回交差するほど以前、この女は我と接触した。そして今、我の『欠片』も混ざり合っている……》
「ようこそ、『水の精霊』よ。その女と、ここにいる『モグラ男』の心身を元の人間に戻すため、
新たな《涙》が欲しいのだ。きみがその女から『欠片』だけを分離できれば、やってみせてくれ」
精霊の表面に、ざざざざざと細波が立つ。
《我にはできぬ。この者の心身と、異様な媒体によって結び付けられ、溶け合っている。
我の『欠片』を再び与えれば、確かにこの者は元に戻るであろう……》
「では、頼む。できる範囲でのお礼はするつもりだ」
《条件がある。我は今、水を増やす事に力を注いでいるが、そのゆえにか襲撃されている。
対岸、貴様たちがガリアと呼ぶ地の岸から、ここ数日、毎晩メイジが水底まで来て襲ってくるのだ。
手下のヴォジャノーイも数体殺された。奴らを撃退すれば、『欠片』を与えよう》
「メイジが襲撃ですって? あ、あの、なぜ貴女は水嵩を増やしているの? そうしなければ、襲われないですむわ」
《汝ら単なる者には、我の価値判断が理解できまい。条件をのめば教える》
ルイズはむっとするが、敵に回せば恐ろしい相手だ。うかつに攻撃は出来ない。
「分かった、『水の精霊』よ。我々がその者たちを捕らえ、二度と害をなさないようにすれば、《涙》をくれるのだな。
そして、それを実行するに当たって、もう一つ。我々が撃退に成功した場合、水嵩を元に戻してくれ。
周辺住民に被害が出ており、いずれはきみをまた騒がせる事になるからね」
《よかろう。まずは、奴らを追い払うのだ。この我が、己の誓約を破る事はない》
かくして、二人と四匹はガリア側の岸辺へ向かう事になった……。
(つづく)
投下終了。金銭の現代日本円換算(1エキュー金貨=1.7万円前後)は戯れですが、大体こんなものかな、と。
そうすると新金貨(0.67エキュー)が1万円あまりで、デルフ(75エキュー)は120万円前後、ちょっとした車並み。
シュペー卿の宝飾大剣(2000エキュー)が3400万円ほど、確かに田舎なら森つきの家が買える。
1スゥ銀貨(1/100エキュー)が170円で1ドニエ銅貨(1/10スゥ)が17円、ってとこでしょうか。
ただシエスタの買った本(55スゥ)が9350円にもなるんで、55ドニエじゃないかしら。近世の本はこんなもの?
17世紀は海外銀の流入で『価格革命』が起きて、激しく物価変動している時期。まあ、物の値段も各地域でいろいろです。
オランダではチューリップ・バブルとかも起きていますし。最高時には球根一個が金貨2000枚!
……あんまり細かくリアリティをやると設定スレ行きですんで、ほどほどにしますが。計算違いがあれば恰好悪いな。
では、また。
ギーシュとモンモン、なんとか人間の姿に戻れたとしても…
怪奇モグラ男とカエル女と成り果てていた時のことを覚えているだろうか?
こんばんは。
投下してよいですか?
GO GO!!
シエスタと話すようになってから、ルイズの気持ちに余裕ができてきたと思う。よく笑ってくれるようになった。
怒ってるのより、その方がずっといい。
それにシエスタが厨房でよくルイズのことを話してくれるおかげか、働いてる人たちも、ルイズのことそんなに馬鹿にしなくなった。
ただ、私のことはあまり言わないでってお願いしたけど。
今日も、お日様が昇る前の、朝一番の花の蜜を集めてきて、額に一滴塗ってあげるおまじない。これをしてあげるのは、ルイズとシエスタだけ。
いい夢が見られますように。そして、気持ちよく目が覚めますように。
買い物にも行ったし、ここにも随分慣れて来た。左手の使い魔のるーんは、少しも薄くなったりしない。変わらずにここにある。
教科書とは違う文字。
違う国の文字なのかな。
ルイズに聞いてみようと思ったんだけど、別に急ぐつもりはない。
ここに繋がれちゃってる、そんな気がするから。
桃色の花びらに、鳥の胸毛で作った羽ペンで、お母さんと、隊長と、それからみんなへの手紙を書く。
隠れ家を作ったときに、ルイズからもらった宝石箱には、手紙を入れていこうって決めてたから。
きっと、ルイズが私のこと、本気でいらないって思ったら、そのときこのるーんが消えて、私は矢印の先っぽの国に帰るんじゃないかな。
* * *
>661
待ってました!
支援!
コルベール先生とこうして向き合うと、やっぱりまだ緊張する。
あの時の胸が痛かったのとか、まだ覚えてるから。
「読ませてもらったよ。君が、たった一人でここまで考えていたとは、正直思っていなかった。その点でも君を見誤っていたわけだ。本当にすまなかった」
どうしてだろう。謝ってもらっても全然嬉しいとかやったとか思えない。
それよりも、コルベール先生にこんな顔させちゃったことが、いけないことしちゃったみたいで。
「ミス・ヴァリエール、君には聞く権利がある。座ってくれたまえ」
座りの悪い丸いすに腰を下ろした。
「私は、以前軍に所属していた。幾度かの実戦を経験し、魔術の腕を認められて、ある部隊の隊長を任されるようになった」
抑揚の薄い、平坦でざらざらした声が、私の背中を内側から爪で引っかく。
「詳しい任務の内容を話すつもりはない。君にはそれこそ何の関係も責任もないことだからね。ただ、そこで私は……あまりよくないものを、そればかりを見てしまったような気がする」
先生の研究室は、汚くて、埃っぽくて、わけのわからないガラクタが散乱してて。
だけど先生の背中は、こことは違うどこかに、今も繋がってる。
「ミスタ・コルベールは、そこで……何の魔法を使っていたんですか?」
唾が喉の奥で粘ついて、だからこんな掠れた頼りない声しか出せないんだ。
先生が、力なく笑いながら、よく分かったねと、
「爆発の魔法を使っていたよ」
しばらくの間、私も先生も動けなかった。
「だから、だろうね。君の魔法を見ているのが辛かった。君が熱心であればあるほど、あの時の自分に重なってしまって。君がゼロと呼ばれて、追い詰められていたのも知っていた。好都合だ。君がそのまま潰れてしまえばもう見なくて済むと」
先生。
ハヤテったら、恥ずかしがって、私が見てる前ではお風呂に入ってくれないんです。だけど昨日、泡でいっぱいの湯船から気持ちよさそうに顔を出してるとこ、こっそり覗いちゃいました。
シエスタと今度遠乗りに行く約束をしました。料理長さんにお願いして、特製のお弁当を用意してくれるそうです。楽しみのために、メニューは当日まで内緒だって言われました。
何が入っているか、ハヤテと賭けをしています。
だから私は、先生に飲み込まれたりしません。
先生はいつも、私がゼロと呼ばれるのを止めようとしてくれましたよね。
去年質問をしたとき、わざわざ本を取り寄せてくれたこと、感謝しています。
「先生。私の失敗魔法は、先生の爆発魔法と同じですか?」
「いいえ、違います」
「でしたら、研究がお好きなミスタ・コルベールにとって、格好の研究材料だと思いませんか?」
マメイヌ隊の副隊長さんも、やっぱり髪の毛が薄いのかな。
「ミス・ヴァリエールは……それで、いいんですか?」
「いいもなにも、私の方がお願いする立場なんですけど。授業の合間を縫って、耳が痛くなるような爆発にたっぷりと付き合っていただこうとお願いに窺ったんですから」
先生のお話の殆どは、私じゃない誰かに向けて話してたと思う。
私を見てください。
私は、先生が昔どこかで遭った誰かじゃないし、鏡に映った先生でもない、ヴァリエール公爵家の三女でトリスティン魔法学校二年生のルイズなんですから。
「今日は、もう遅くなっちゃいましたね」
窓の外は沈みかけた夕日の赤。
ですから、明日こそしっかりと補習をお願いします。
頭を下げて、堂々と背中を向けて、先生の研究室から外に出る。
出た途端、空気に咽そうになって、真っ直ぐ立てない。
壁に寄りかかってずるずると滑り落ちた。口を抑えて、何か出そうになってるのを押さえる。
背中、ドアの向こうから、コルベール先生の笑い声が聞こえた。
泣いてるみたい。
「ハヤテぇ……重くて、こわかったよぉ……」
蹲る私に頬を寄せてくれるハヤテがここにいる一人だったら向き合うこともできなかった本当にすごく怖かった。
「エライ、るいず、ヨクガンバッタネ」
ここにいたら、先生が出てこられないし、他の人にこんなとこ見られるのはもっと嫌だ。
私、意地っ張りかもしれない。
支援
涙を袖で拭って、頬を揉んで強張ってた顔を解す。よし。
これでまた一歩前進だ。
早く顔を洗いに行こう。
「ハヤテ」
「ナニ?」
「……もう一回……よく頑張ったって褒めて」
ハヤテは、本当にすごかったって、そう言って、私の頬にキスをしてくれた。
「ミス・ヴァリエール、もう一度、さっきと同じところを狙って撃ってくれるかね」
「はい、ミスタ・コルベール」
そうして、轟く爆音。
何と言うか、私もだけど、先生も遠慮がなくなったような気がする。
かなり派手にあちこち地面が抉れてるんだけど、まったく気にしてないみたい。
ふむふむなんて機嫌よさそうに頷きながら、羊皮紙に何か書き込んでる。
「爆発と言う現象を取ってはいるが、君のこれは火属性ではないことがこれではっきりした」
「あ、ありがとうございます」
自分でも薄々そうじゃないかと思ってたけど、こうしてはっきり言ってもらえてよかった。
「さて、ここで君に確かめなくてはいけないことがある」
昨日の今日だというのに、先生は元気一杯だ。
「君は、タブーに踏み込む勇気があるかね?」
上から覗き込まれて、思わず唾を飲み込んで、
「あります!」
あれ? 考える前に、言葉が飛び出しちゃった。でも考えたってきっと答えは同じだと思う。
「道ははっきり言って険しい。手がかりも皆無と言っていいかもしれない」
それが何だ。
私はもう、ゼロを怖がらないって決めたんだから。
「私は、君が極めるべき道は、これだと思う」
そう、先生が差し出した羊皮紙の一番最後に、大きな走り書きで、
「虚――っ!」
指を口の前に立てる仕草に、慌てて叫びそうになったのを飲み込んだ。
本当に、無茶苦茶だ。
よりによって虚無か。誰もが伝説と謳い、始祖プリミル以外にその存在を認めないだろう虚無の属性か。
「キョ、ム?」
だけどここに、虚無を畏れないハヤテが、私の使い魔がいてくれる。
使い魔が畏れないものに、主人が背中を向けるなんてそんなみっともない真似、絶対にしてやらないんだから。
「プリミル以来6000年。誰一人として紡いだ者のない伝説の魔法だ」
「ミスタ・コルベール……私思ったんですけど、先生って本当に私のこと嫌いでしょう?」
「よく分かったね。何しろ昨日は思いっきり虐められたから」
虐めてなんかいませんっ
ああもう、笑いが止まらない。
生きてる間に辿り付けるかどうかも分からないのに、それでも挑戦したくなってる。
「やります、先生」
どうせ規格外なんだ。だったら規格外を極めて見せようじゃないか。
「それでこそミス・ヴァリエールだ。私も全力で君をサポートさせてもらおう」
「お言葉に甘えます。まずは教職員専用の図書から、虚無関連の資料を片っ端から」
「はっきり禁書と言いたまえ。分かっているとも」
そして、涙が零れるほど、先生と馬鹿笑いをした。
投下終了。
コルベール先生と仲直りです。
支援
いつもは和むけど、今回は違った。
ワクワクした。
GJです!
お疲れ様ー
今は眠いので、明日Wikiでまとめを見ますよ
>>647 なるほど、ゼクターは盲点だった
ルイズが変身する展開いいな
小ネタ投下してもいいですか?
いいよ
じゃあ投下します
678 :
ママの使い魔:2007/11/06(火) 02:11:27 ID:IaQv1Bjg
トリステイン魔法学院で二年生による春の召喚の儀式が行われていた。
順調に進んでいく中、一人の生徒だけが召喚を失敗し続けていた。
十数回後、ついに召喚の手ごたえを感じる。
その生徒は爆煙の向こうに、何が呼び出されたのか、その小さな胸を期待に膨らませた。
あたし、ずっと探し回ってたの。
ずっとずっとずーーーっとママを探してたの。
怖い人たちとか、いっぱい居たんだけど頑張って探したの。
怖い事とか痛いことも沢山されたわ。
だけど、めげちゃ駄目でしょ?
だから頑張ったの。
それでね、やっと見つけたの!!
ママ!!!ああ、ママ!!!
かわいそうにこんな所に閉じ込められて!!!
でも今あたしが出してあげるから!
ママ!!やっと合えたわママ!!
それでね、ママを手に持って逃げようとしたんだけど、怖い人が居たから逃げられないかと思ったの。
だから、怖かったけど、崖の下に飛び降りる事にしたの。
だって、怖い人に捕まるよりいいでしょ?
だから飛び降りたの。
えいっ、て。
そうしたら、落ちてく先におっきな鏡があったの。
それでね、気が付いたら原っぱに立ってたの。
ビックリしたわ、周りに変な人たちがたっくさん居るし、眩しかったから。
けど大丈夫、だってあたしはママと一緒だもん!
ねえママ。
ママがいるから、あたし安心なの…ママ…
679 :
ママの使い魔:2007/11/06(火) 02:12:39 ID:IaQv1Bjg
あたりは嘲笑でざわついていた。
その嘲笑は召喚を行った者と、召喚された物に向けられていた。
「見ろよ!ゼロのルイズが平民を召喚したぜ!」
「ああ、しかもバアさんか?こりゃ」
「やっぱりゼロはゼロだよな!」
ゼロと呼ばれた生徒、ルイズ・フランソワーズは怒りと悔しさと悲しさで肩を震わせていた。
召喚された者は、平民、しかも頭巾を被った老婆に見えた。
薄汚れてボロボロに成った半そでのシャツと、ロングスカートを着ており、そこから見える手足もいい加減汚れており傷だらけだ。
背中が曲がっており、両腕をだらんと前に垂らしている。
無気力に垂れ下がった両手には、乳白色の球形の物を持っていた。
そのさまは、どう見ても、ドラゴンやグリフィン、サラマンダーの様な高等な使い魔には見えない。
召喚された事に戸惑っているのか、オシなのか、黙ったまま立ち尽くしている。
何を考えているのか、その顔色は頭全体を覆うような頭巾によって隠されていて伺うことが出来なかった。
「ミスタ・コルベール!!召喚のやり直しをさせてください!!」
「だめだ」
コルベールは光る頭を振った。
「召喚の儀式は神聖な物だ…やり直しは許可できない」
「……」
ルイズもそれは判っていた。
召喚のやり直しをする為には、召喚された者が死ななければ成らないのだ。
気に入らないからといって殺すわけには行かない。
ルイズは腹を決めることにした。
その老婆のような者の方へ近づいていく。
「ねえ、そこのあなた…名前は?」
返事がない。
「ちょっと!平民が貴族の質問を無視する気?!」
680 :
ママの使い魔:2007/11/06(火) 02:14:08 ID:IaQv1Bjg
やはり返事がない。
周りから、ゼロだから平民からも馬鹿にされている、等と言う嘲笑が聞こえる。
血圧が上がって行くのを感じたルイズだが、同時にその老婆の異変に気が付いた。
持っているものが重いために、背中を曲げて両腕を前に垂らしているのかと思ったが、そうではない。
手かせを…それも普通の護送用ではなく、かなり頑丈な手かせを嵌められているから、両手を前に垂らさざるを得ないのだ。
良く見ると、くるぶしにも足かせの一部が付いている。
つまり、罪人を召喚してしまったんだろうか?
「ねえ……何とか言いなさいよ」
………
もしかして聞こえてない?
それとも、召喚された生き物はしばらく大人しくしているけど、人間も大人しくなるのかしら?
反応を見ようにも、ほぼ頭全体が頭巾によって覆われているので、顔が見えない。
邪魔ね…剥ぎ取っちゃおうかしら?
そう考えて近づいて行ったルイズは、老婆の様な者から1メイル半ほどの距離で固まってしまった。
「どうしたのかね?早くコントラクト・サーヴァントを済ませなさい」
急かすコルベール。
だがルイズは動かない。
不審に思ったコルベールがルイズに近づく。
「さあ早くし「ミスタコルベール!!」…何かね?」
話を途中でさえぎられ、少しムッとしたコルベール。
「こ、こここ、この者が被っているずずず頭巾って!!」
「その者の頭巾がどうかしたの…か……!!!ま…まさか!これは!!」
周囲の生徒たちは、二人が何故薄汚れたボロ頭巾の事を話しているのか判らなかった。
「こここここれって…そそそのこれはひ「そんな事はない!!」…」
コルベールが叫ぶ。
681 :
ママの使い魔:2007/11/06(火) 02:15:22 ID:IaQv1Bjg
「そんな事があるはずないじゃないか?!これはサルの皮だ!サルだよ!!そうに違いない!!」
「そ、そうですか?」
「そうだよ!サルの顔の皮を張り合わせているだけだ!そういう頭巾だってあるだろう!さっさと契約を済ませたまえ!!二年生に進級したいのでしょう!!」
「はいぃ!」
コルベールに推され、半ば強引にサモンサーヴァントの呪文を唱えるルイズ。
「ちょっとあんた!!そこを動くんじゃあないわよ!!」
と怒鳴ってから口付けのために近づいていく。
やはり…近づけば近づくほど、そうとしか見えない。
いや!これはサルの皮サルの皮!!
世界は広いのよ!こういうサルも居るわ!!
ルイズが勝手に頭巾をめくり口付けしようとするが、その老婆の様な者に動きはない。
次の瞬間「ひッ!」っと、短い悲鳴を上げるルイズ。
頭巾の下に存在していた顔には、唇がなく歯が剥き出しで、頬の肉すら無い。
眼窩の中に目玉が納まっているが、それも白濁している。
ま、まるで亡者…亡者を見たこと無いけど。
死体を漁って貪り食うっていうあれね…
だけど、これは逆に喜ぶべきことよね?
あたしが平民を召喚したんじゃあないという事なんだから!!
そうよ!空飛ぶ目玉とか、蛸の化け物とか、気色悪いカエルが立派な使い魔なら、こいつも立派な使い魔よ!!
良くわからない不気味な生き物だけど、平民よりずっとましよ!
さっさと契約を済ませて、この汚らしいボロ頭巾を取って平民じゃないって皆に見せてやらなきゃ!
そう意気込んだルイズは、その老婆の様な者の歯に(唇が良かったけど)口付けをした。
682 :
ママの使い魔:2007/11/06(火) 02:16:34 ID:IaQv1Bjg
この人は誰?
ピンクの髪の毛なんて…気持ち悪いわ。
まさか…ママを連れて行こうとするつもり?
そんな事したら、暴れてやるんだから!
ここに居る皆を殴ってやるんだから!!
本気なんだからね!!
…でもそうじゃないみたい。あたしの顔を覗き込んだわ。
何をするの?
痛いことするの?
……
キスしたわ。
そうしたら手が痛くなったの。
でももう痛いのには慣れたの。
いっぱいいっぱい銃で撃たれたから慣れたの。
でも…何?この感じは…?
ママ?…あれ?ママは?
これは…ママじゃない!!
折角見つけたのに!!
ママ!!どこいったの?!!
ママ!!どこなのママ!!
…あれ?この人……ママ?
ママなの?
ママなのね?
ああ!やっぱりママだった!
何で間違えてたんだろう?
この人があたしのママだったんだわ!
髪の毛の色が変わってもわかったもんね!
でも…体が小さくなってるの。
何でだろう?
きっとあの悪い奴らに体を取り替えられちゃったのね?
だから間違えちゃったんだわ。
まかせて!あたしが何とかしてあげるから!
怖いけど支援
なんだかわからないけどルイズ逃げて〜
支援
685 :
ママの使い魔:2007/11/06(火) 02:17:55 ID:IaQv1Bjg
「ミス・ヴァリエール、いつまで口づ…オホン…コントラクト・サーヴァントを続けているつもりですか?」
軽く口付けをすればいいだけの儀式を手間取っているルイズにコルベールが注意した。
周囲からは、ゼロだから念入りにやってるんだよ、そっち系の趣味なのかも、などと聞こえてくる。
だが、様子がおかしい。
そう思った時、ルイズの足元に、老婆が持っていた乳白色の物が落ちている事に気づいた。
それは年月を経た人の頭蓋骨だった。
いつの間にか、老婆の様な者の手が、ルイズの顔の方に伸びている。
そして、必死にその手を押さえるルイズ。
コントラクトサーヴァントを手間取っているのではない!あの者に顔を掴まれているのだ!!
「ミス・ヴァリエール!!」
そう叫びコルベールはルイズと使い魔の方へ駆け出した。
その刹那、嫌な音が当たりに響いた。
ブチ…ブチブチ…ビリビリビリビリィ!!
ルイズの顔から、まるで花びらが散るように周囲に鮮血が噴出した。
「…ぁぁあああああああああああああああああああッ!!!!!!」
ルイズは悲鳴を上げ、弾ける様に後ろに転がった。
叫びながら顔をさえうずくまって行く。
周りの生徒たちは何が起きたのか判からず、ただ狼狽している。
「ミス・ヴァリエール!!!!しっかりしろ!!!」
コルベールが素早くルイズを助け起こしす。
「う!…」
絶句するコルベール。
「何ということだ…!」
顔が無かった。
ルイズは顔の皮膚を完全に、下あごから髪の毛の生え際まで全て失っていた。
剥ぎ取った顔の皮はルイズの使い魔、リサ・トレヴァーの手の中に在った。
リサはしばらく眺めると、それを高々と掲げた。
そして、この世界に召喚されてから初めて、言葉を発した。
「……マ゙ァァマ゙ァァァアアアアアアア!!」
支援するより逃げた方が良さそうかも支援
687 :
ママの使い魔:2007/11/06(火) 02:19:00 ID:IaQv1Bjg
以上です。
バイオハザード1のリメイクから悲劇の少女リサ・トレヴァーを召喚してみました。
リサの独白は3、4歳ぐらいの子供をイメージして書いてみました。
後、ルーンの弊害も書きたかったんで。
ママを手に入れて大人しくなっていたのに、ルーンのせいでルイズをママと誤認してしまったと。
顔を剥ぐ動機に成らないんじゃないかと言う突っ込みは無しで。
関係ありませんが、リサの「マ゙マ゙ァ」を最初に見た時泣きそうになりました。
後、眠いんで文章が変になってたら、仕様だと思ってください…すみません。
バイオからかよ・・・
あいつかぁぁぁぁぁぁぁ!トラウマ支援
バイオカァッァアl!?
ヤバいヤバいヤバいヤバい
よくわからんがとにかくヤバい
支援
GJ。
ルイズがもし生きててもその後の生活が・・・
この後、大蛇独歩みたいに傷だらけの顔で、ほぼ不死身のゾンビを従えた虚無の使い手が…
ホラーだ…
蛇使い&バイオ小ネタの作者乙ッシタ!
OK・OK!
トラウマというにはまだ大丈夫だ、兄弟!
そうだよく考えたら秘薬や水のメイジというものが存在するじゃないか!
なんか恐ろしい痕が残りそうだがGJ!
ぐ、GJ……
これから寝ようと思ったのに……
よう考えたらリサも可哀相な存在だよな。
ウェスカーを怨みなさい
>>647 虚無の担い手それぞれの元に召喚されるゼクター達
しかしルイズのはよりにもよってケタックゼクターで…
>>687 乙ー
たださ、内容的にここよりも避難所向きな気がする
後、最初に内容に関する警告が欲しかった
>>700 ルイズが流れ星になると申したか
702 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/06(火) 04:04:12 ID:uYOIUiHu
顔を剥ぐ…、メガテン3にも居たなぁ、そしてそろそろ次スレかな?
悪魔の生贄乙
確かに、いきなり顔の皮剥ぐとかは避難所向けっぽく思う
……つうか、この風体の相手にも早くやっちゃいなさいと言えるコッパゲマジ外道