【ノーマル】ローゼンメイデンのSSスレ 7【一般】

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153Rozen Maiden Latzt Regieren Z:The Civilization
「あなたは無意識の海に滑り落ちる…あがっ」
まだ一人で歌を続けていた雪華綺晶の後頭部を世界樹が打った。バタと地面に転げまわる。
それでもまだ彼女は転がりながら壊れたテープ再生のようにまだ口ずさんでいた。「…前に…もう一度あなたに口付けを…目が廻った」
「雛苺、いまですぅ!」翠星石が雛苺を連れて雪華綺晶に接近する。「捕まえるです!」
翠星石の世界樹がまず地面に酔いつぶれたように伏せた雪華綺晶を上から拘束し、そらにその上から雛苺が蔓で拘束した。
世界樹と蔓によって、雪華綺晶は二重に縛られる。
「ジュン、いまですぅ!」
翠星石は顔を翻してジュンに向かって叫ぶ。
「ジュン!白薔薇野郎は私達に任せて、ジュンは真紅たちを探しにいくですぅ!」
「わ…わかった!」
ジュンはぎこちなく頷き、2人の薔薇乙女を最後にもう一度見つめると振り向いて遠くへと駆け出した。

アリスゲームの結末を掛けた雪華綺晶との追いかけっこが始まったわけだ。
ジュンの向かう遥か先には、巨大な氷の結晶でできた城が聳え立っているのが見える。
みんなを助けなければ。真紅も、柏葉も、他のドールのマスター達も。
指輪が熱い。今頃翠星石と雛苺が雪華綺晶と交えているのだろう。
いまはこうするしかない。出来るだけ早く終わらせるから、耐えててくれ。ジュンは心の中で祈った。
僕がやるしかない。
ジュンは、薔薇乙女にあって以来初めて、まるで自分がアリスゲームの主役になってしまったような気がした。

「前にも思いましたが、この白薔薇ってやつは」
すっかり縛り上げられてしまった雪華綺晶の上に片足をのっけ、翠星石は言った。「正面から対峙すれば意外と隙だらけなのですぅ。
目からしてなんかボケーとしてやるがるですぅ」前回の敗北への仕返しを果たした気分になって、少し得意気な表情を浮かべながら、
如雨露を振り上げる。「眠らしちまうです!」
うつ伏せの雪華綺晶の頭へ上から如雨露の先を突き落とす。果たしてアストラル体の後頭部を殴ったところで本当に眠らすことが
出来るのかはわからないが。
「あいたっ!」
殴られた雪華綺晶が喚く。それから起き上がろうとしたが、自分の体が縛られている状況にそのときようやく気付いたらしい。「ひどい!」
「しぶてーやろーです!」翠星石がもう一度如雨露を持ち上げる。「大人しく寝ちまうです白薔薇!」
「白薔薇じゃなくて,雪華綺晶ですよ!」背中だけで抗議する。「そろそろ覚えましょう」
「モリソン気取りめ!ですぅ!」
「27歳のままnのフィールドを彷徨い歩いてそう」
「じゅ、」翠星石は顔に皺を走らせしかめっ面を作った。「重症です…これは放っておいたら次は歌いながらドレス脱ぎ出しそうです」
と、突然に雪華綺晶の体から白い茨が伸びてきた。
うようよ動きながら翠星石の世界樹と雛苺の蔓の上にさらに被さるようにしてにくるくる巻きついてくる。
「いやっ!」「うわ!」
ゆがて伝ってきた白の茨が翠星石と雛苺の体に纏わり付きだす。
「しまった…こいつの体に触れるとロクなことが起こらないってことを忘れてたです…!」
彼女達三人は、お互いに体を拘束し合う状態となった。
誰も動かない。翠星石は、冷や汗が首の後ろで滴り落ちていくのを感じ取った。

「ゲームはもう終わる!もはや盤はドールのものだけでない!」
いきなり言いながら雪華綺晶が地面で寝返りを打って顔を出してきた。
「げ!」「あぁっ!」
彼女とお互い繋がっている状態であった翠星石と雛苺の2人は、茨に引っ張られて危うくつんのめって転びそうになった。
「あなた達はもう盤を飾る主役ではない。お父様もそういっているのが私には聞こえてくるよう」
雪華綺晶の体の何処からともなく、白い小さな浮遊体が出てきた。
光るというより、燃えているように煌いている。
「"スゥーウィ"…」
さっきラプラスに呼ばれていた、七つ目の人工精霊。
それがいま、翠星石と雛苺の前に飛んできている。他の人工精霊と違い、動くたびにヴォンとう低音を轟かせる。
まずい…。翠星石は思った。茨に絡まれて体を動かすことができないが、この人工精霊は危険だ。
「私はあなたを知っていない。好きなようにしてごらんなさい、スゥーウィー」
声に応じて、スゥーウィーが己を巨大化させるが如くに白い光を強めさせる。
「まぶし…っ」
次の瞬間、フラッシュの如くスゥーウィーから放たれた強烈な白銀の閃光に、翠星石と雛苺の2人が包まれた。