あの作品のキャラがルイズに召喚されました part68

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1名無しさん@お腹いっぱい。
もしもゼロの使い魔のルイズが召喚したのがサイトではなかったら?そんなifを語るスレ。


あの作品のキャラがルイズに召喚されました part67
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1191161837/

まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/
避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9616/

--------------------------------------------------------------------------------

    _              ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
    〃 ` ヽ  .   ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
    l lf小从} l /   ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
   ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,.   ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
  ((/} )犬({つ'    ・ 投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
   / '"/_jl〉` j,    ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
   ヽ_/ィヘ_)〜′   ・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!
              ・議論や荒らしへの反応は、避難所でやりなさい!

--------------------------------------------------------------------------------
     _
     〃  ^ヽ      ・クロス元が18禁作品であっても、SSの内容が非18禁である場合は本スレへの投下で問題ないわ。
    J{  ハ从{_,     ・SSの内容が18禁な展開をする場合はクロス元に関わらず、本スレではなく避難所への投下をお願いね?
    ノルノー゚ノjし      ・クロス元が型月作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
   /く{ {丈} }つ     ・クロスはお互いを尊重しなきゃだめ。一方的なのはモテないわよ?
   l く/_jlム! |      ・不要な荒れを防ぐには、sage進行もいいんじゃないかしら。
   レ-ヘじフ〜l         ・次スレは>>950から。お願いね?テンプレはwikiの左メニューを参照よ。
2名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 00:42:56 ID:dkEpx18Z
このスレは Part 69 です。
次スレは Part 70 になります。

だが >>1
3名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 00:43:42 ID:nLBebgx+
あ、この前スレ実質68なのか!
しまったああああああああああああorz
4名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 00:44:19 ID:QyPGkg5C
>>3
どんまい>>1乙。
5名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 00:49:19 ID:70w9gsT4
>>3

そして落ち着け
実質69だ
6名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 00:51:07 ID:c8tA5B6Z
先に立てる前にレス見てからなー
まあ、>>1
7名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 00:51:07 ID:h6FxESor
京大RPG研究会
ttp://www.ku-rpg.org/
ttp://www.ku-rpg.org/column/population.html 中世の都市人口

Dragon's Lair by Water Dragon
ttp://ww2.enjoy.ne.jp/~tteraoka/
ttp://ww2.enjoy.ne.jp/~tteraoka/esse.htm 中世の食事
ttp://wdragon.fc2web.com/fg/index.html 中世ヨーロッパの装い(下着含む)


小説の書き方参考
ttp://www.feel-stylia.com/rc/creative/ ←【重要】
8名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 00:52:17 ID:h6FxESor
魔法の産業利用

土系魔法で塹壕掘り、そういう事が出来るなら耕作・開墾作業もできまつ。ファイアーボールのような火系魔法は鉄鋼生産に利用できまつ。
その他各種民生・産業分野に魔法は使え、とてつもない巨利を生みまつ。
そもそも工業製品によるサービスを手に入れる為に必要な手順として、農業を興して余剰生産物から生まれた富で天然資源を採掘し、それを加工するのでつ。
でも、いきなり工業を興すことはできまつぇん。
その前段階の、農業によって生み出される微々たる富では1000年以上に渡る蓄積が必要なのでつ。
鉄を手に入れるには人夫を集め、道具を持たせて山を掘り、採掘した鉄鉱石を砕いて炉に放り込み、薪をくべて、フイゴを吹いて、ハンマーで叩く。
採掘夫の人件費、採掘ノウハウの費用、採掘具の費用、炉の建造費、燃料代、たたら職人の人件費、採掘夫の人件費には求人費・旅費・紹介費が含まれ
採掘ノウハウを持つ人間を育てるには十年以上かかり、その間の生活費は持ち出し、燃料となる木炭も切り出すまでに30年以上人手を掛けている。
これだけの農業に関わらない人間を養うだけの余剰生産力が必要なのでつ。更に言う、ここまでで手に入ったのは 「工業製品の材料」に過ぎない。
工業製品によるサービスを手に入れる為には更なる苦労が必要なのでつ。

これだけのプロセスを個人の内側で処理してしまう魔法使いはまさに万能人型産業機械ともいうべき代物であり、反則級の代物でつ。
9名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 00:56:24 ID:QyPGkg5C
>>7-8
だからんなどうでもいいもの貼るなと。むしろスレ容量の無駄遣いだわい。

後、次スレpart70(として再利用)
あの作品のキャラがルイズに召喚されました part69
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1191599178/l50
10Zero ed una bambola:2007/10/06(土) 00:58:53 ID:Ru2wl8GJ
>>1さん乙です。
投下予約してもいいかしら?
問題がなければ10分後に投下させていただきます。
11名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 00:58:59 ID:vb5NoYKe
>>1乙。どんまいケル!!

テイルズオブファンタジアからハーフエルフの魔女アーチェ・クラインを召喚希望。
12名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 01:01:37 ID:QyPGkg5C
>>10
ロードは空いているとか。

>>11
自分が望む物は自分が一番よく書けると聞いた。
13名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 01:03:51 ID:sBtrhbcK
アンジェ支援
14名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 01:08:15 ID:HHsbJjbu
そう言えば、ルイズ(達)はシエスタの腕を折ったのはモット伯だと思ってるんじゃなかろうか支援
15名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 01:10:32 ID:SJxy8BkE
えっと‥‥該当データがないです‥‥
(__                        __)
   (_______  ________)
               |/
     ,,,,,,,,,,,,,∧ω∧
   〜′,,,,,,,,,,ミ´Д`彡
    UU"""" U U
16Zero ed una bambola:2007/10/06(土) 01:10:35 ID:Ru2wl8GJ
「くそ! あの無能貴族共め!」

ミス・ロングビルは部屋に戻るなり苛立ち気にそう吐き捨てた。

「あの馬鹿貴族! どんな調査したか知らないけど、私が人を殺した? ふざけるんじゃないわよ!」

テーブルの上に置いてあるワインを乱暴に掴み取ると一気に飲み干す。
こんなに荒れているのも全ては魔法研究所から送られた最終報告書が原因なのだ。

「結局あそこの連中もそれを信じるここの教師も皆同じか」

学院に届いた報告書にはこう書かれていた。
『モット伯襲撃の実行犯は十数人が徒党を組み行われたものと推察される。その首魁は土くれのフーケであり他のメイジが関与した痕跡は一切見当たらない。 エレオノール・ド・ラ・ヴァリエール』
簡単にまとめればこうだ。

「エレオノールとかいう貴族、少しはまともかと思ったけど結局こいつも同じ穴の狢ね。出世や保身のことばかり…」

確かに土くれのフーケと呼ばれ、幾多もの貴族の屋敷に侵入し、彼らのお宝を強奪してきた。だがが一度たりとも人を傷つけたことはない。
椅子に座り、今度はグラスにワインを注ぐ。

「人は殺さないし、傷つけもしない」

まるで自分自身に言い聞かせるように呟き始める。

「そんなことをしたらあの子達に顔向けが出来ないからね」

初めは復讐心からだった。貴族が慌てふためく様が面白くて楽しくて仕方がなかった。だがいつからだろうか、それがが虚しくなってきたのは。
ぽっかりと心に空いた虚無感、退屈な日々。それを埋めてくれたのは……。
何かを懐かしむような目でグラスに注いだワインを見つめる。何を思い出しているのか、その頬が自然と緩む。
静かに、ゆっくりとワインを飲みはじめた。

「ふぅ、さてこれからどうしようかね」

空になったグラスをテーブルに置くと小さく溜息を吐く。

「早いとこ盗みに入らないといけないわ」

アカデミーから来たあの女は近々査察が来るといっていた。恐らく尻尾は掴まれてはいないだろうが万が一のこともある。早めに仕事に取り掛かった方がいいだろう。
正直言ってもう少し宝物庫を破るための情報が欲しかったけど仕方がない、ここはいつも通り強引にことを進めるか……。

「ここでの生活…悪くはなかったけどね」

気付けばポツリと呟いていた。

ミス・ロングビル、いや土くれのフーケは慌てて首を左右に振ると自身を戒めるようにぴしゃりと自分の頬を叩いた。

「くだらない感傷に浸っている暇なんてないのよ。これも全てあの子達を食わせていくためなんだから…」

そうだ、泥を被るのは私だけで十分だ。決意に満ちた目ですっと椅子から立ち上がり、窓の方へと歩み始める。

「もう後には引けないわ」

二つの月を眺め、彼女は一体何を思うのか……
17名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 01:11:18 ID:QyPGkg5C
支援
18名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 01:13:19 ID:HHsbJjbu
マチルダ姐さんに死亡フラグが!支援
19Zero ed una bambola:2007/10/06(土) 01:13:50 ID:Ru2wl8GJ
Zero ed una bambola   ゼロと人形



「ねぇアンジェリカ?」
「はい? 何ですか」

自室に戻ったルイズはアンジェリカを膝の上に乗せ、彼女の髪を梳きながら優しく話し始めた。

「アンジェが起きる前までわたしの姉が来てたのよ」

何気なくアンジェリカに姉が来ていたことを告げる。

「ルイズさんのお姉さんですか? きっと素敵な方ですよね?」

アンジェリカは弾んだ声で答える。

「ふふ。そうね〜。ちょっとキツイ性格してるけどわたしの自慢の姉よ」

ルイズは誇らしげに語り始めた。

「わたしはね。三人姉妹の末っ子なの。ここに来てたのはエレオノール姉様で一番上の姉よ」
「もう一人の方は何というお名前なのですか?」
「ちぃ姉さま、カトレア姉さまも優しい人なんだけどちょっと病気がちなの」
「そうなのですか」

ルイズは以前から気になっていたことを口にした。

「ねぇ、アンジェ。アンジェって姉妹とかいるのかしら?」

それはただの好奇心からだった。

「ちょっとアンジェ。どうしたの?急に俯いたりしちゃって」

知るはずもないのだ。アンジェリカがどのような境遇にあるかなど……。

「覚えて…ないです…」

ポツリと、か細く、小さな声で呟いた。
20名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 01:15:41 ID:QyPGkg5C
支援
21Zero ed una bambola:2007/10/06(土) 01:16:56 ID:Ru2wl8GJ
「そんな、覚えてないって…。家族のことでしょう?」

ルイズが聞くもアンジェリカは顔を伏せたままだった。背後からではその表情は窺うことは出来ない。

「ご両親とか…姉妹のこととか…何も覚えていないの?」

アンジェリカはゆっくりと左右に首を振る。

「ごめん、アンジェ。ごめんね」

後ろからそっとアンジェリカを抱きしめた。
そう大事なことを忘れていた。今回の件で分かっていたはずだ。原因は不明だがアンジェリカは記憶を忘れてしまう……そんな症状があることを。

「ちょっと無神経だったわね。でもまさか大事な人のことまで忘れてしまうなんて…」

可愛そうに……だがその言葉がルイズの口から出ることはなかった。何故ならルイズはある考えに辿り着いてしまったのだ。
いつか……自分のことも忘れてしまうのではないか? そんな不安がルイズに過ぎる。
『嫌よ! そんなのは嫌!』

「ルイズさん。泣いているのですか?」
「え?」

気が付けば一筋の涙がルイズの頬を伝わっていた。

「泣いてなんかいないわよ」

ルイズはそう答えると抱きしめる手に少し力を入れる。アンジェリカは抵抗することもなくそれを受け入れた。

「ルイズさん?」
「アンジェ、もう少し…もう少しこのままで…」
「はい!」

うれしそうにアンジェリカは返事をするのだった。



Episodio 20

La luna per guardare gentilmente
月は優しく見守る

22Zero ed una bambola:2007/10/06(土) 01:18:12 ID:Ru2wl8GJ
NGシーン


部屋に戻るなりミス・ロングビルは一枚の紙とコインをテーブルの上に取り出した。

「コックリさんコックリさん、これからどうしたらいいのでしょうか?」

「え? ルイズタンハァハァですって? わかったわ! これから夜這いにいってくるわ!」

その後アンジェリカにボコにされたロングビルが発見されるのだった……



23Zero ed una bambola:2007/10/06(土) 01:19:42 ID:Ru2wl8GJ
投下完了です。支援に感謝。

それでは次回予告といきますか
「その口から糞垂れる前と後にはサーをつけろ!」モット伯は入隊初日に軍曹殿からそう怒鳴られた。
「よーし今日からお前はメイド博士だ」
軍曹殿につけられた素敵なあだ名、微笑みデブとの友情、陰湿なイジメ……そして微笑みデブの死…。
はたしてモット伯いやメイド博士は立派な海兵隊員になることが出来るのか!?
次回、フルメタルモット伯〜Born to moe〜


24名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 01:19:58 ID:QyPGkg5C
乙。バッドエンドが刻一刻と近づいてきてるような……
そしてNGロングビルさん何やってるんですかw
25名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 01:24:33 ID:kp8NHvzO
なんか既に終わってるのに惰性で動いている感じだな
かなり怖い
26名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 01:26:23 ID:lpb7gv8k
GJぅ! フーケが無惨な死に様を? そして微笑みデブときた。

はーい、今晩は。貴族Cです。
ちょいと遅れたが、麗しのプリンスをパラシュート付きで投下しに参りました。天地無用返品不可。
そして、王貴人と竜吉公主は俺の嫁。連投気味だが、10分後に行きまーす。
27名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 01:26:27 ID:WVKOVg8a
乙!
NGのロングビルがおばかすぎるwwwww
28名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 01:27:17 ID:l/kPJSZ/
原作にあった救いも無いエンドになりそうだな〜
29名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 01:32:09 ID:Dq/qk+OE
絶望した! 前スレ最後に絶望した!!






29なら前スレラストがアゼル=イブリスとベール=ゼファーとリオン=グンタ召喚
30名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 01:33:38 ID:SATXQpZJ
そういや、終わりのクロニクルのヒロイン?も釘宮だったよな。
31名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 01:34:44 ID:WVKOVg8a
>>30
新庄君が?初耳だなぁ
32名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 01:35:04 ID:QyPGkg5C
>>26
王貴人と竜吉公主が嫁……そんな美味しい話が有ると思っているのか。
だが支援はしてやらんでもない。

>>30
本当かね新庄君?
33名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 01:36:25 ID:9VNQv9wZ
ググって見たがマジっぽいな。新庄君
前回のあらまし:C (趙マーク;趙公明が栄光を示したい時に現れる)


プリンス・趙公明の挑戦を受け、『ヴェストリの広場』へ向かうギーシュと野次馬たち。
しかし、そこに待ち受けていたのは巧妙な罠、じゃなかった、派手派手しい『闘技場』だった。

「と……特設リング!? いつの間に?」
「「恐れずによく来たね、ギーシュ・ド・グラモンくん!! 待っていたよ!!(ドドドドドヴァアアアン)」」
豪華な音楽とドライアイスの煙を伴い、ライトアップされた趙公明がリング中央からせり上がる。
口にはバラの花を咥え、背中に色とりどりの花々を背負っている。ちょっとした小林幸子並みだ。
ルイズはセコンドについていた。

「フフフフフ、急ごしらえの特設リングゆえ、たいした仕掛けもしていないよ。正々堂々と勝負だ!
 ……さてギーシュくん、とはいえ見たところキミの実力は、残念ながら僕の足元にも及ばない。
 獅子はウサギを狩るにも全力を尽くす我が子を鍛えるため、泣いて千尋の谷に突き落とすとか。
 三分、いや五分あげよう。その間僕は手出しをせず、避けもしない。
 それまでに僕に傷を付けられたら、キミの勝ちということにしてあげよう。全力で来たまえ」

当然過ぎる程当然ながら、完全になめられている。そしていろいろ混ざっている。
ギーシュのプライドに火がついた。もはや、恐れを知らない戦士のように振舞うしかない。
「い……一分で充分です!! 行け、『ワルキューレ』!!」

ギーシュがバラの造花の杖を振る。決闘開始だ。ギャラリーから歓声が挙がる。
35名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 01:40:08 ID:QyPGkg5C
支援
バラの花びらは地面に落ち、『錬金』の魔法によって土から青銅の女戦士『ワルキューレ』を創造した!

「ほほう、青銅の女戦士を魔力で作り出し、操るとは。
 それなりの重量のハズだが、なかなか精巧だし、動きも俊敏だね。
 これを七体も作り出せるとは、少し見くびっていたかな? ……でも」
ガキン、とワルキューレたちの攻撃は、趙公明の手前で止まる。
「!! これは、マジックバリアー!!」
「これでも本来の力の千分の一というところかな。残念だが、この程度ではヒビも入らないよ」

趙公明のバリアーは、仙人界最強の宝貝(パオペエ、秘密兵器)の一つ『禁鞭』でのツッコミも防御する。
原作・最終決戦編でのパワーインフレはあったが、金ゴウ島三強の実力は、伊達ではない。
諦めーずにワルキューレがー総攻撃するけど、ヒービ一つ入らなーいよー。

「うむ、ジャスト一分か。ならばギーシュくん、こちらから行くよ。(スッ)
 伸びたまえ我が宝貝・『縛竜索』!!(ビシュシュシュ)」
趙公明は腰の鞭を抜き、フェンシングのように突きを放った!!

「そおれ、アン・ドゥー・トロワ!!!」
瞬時に、バゴバゴォッとワルキューレは全て粉砕され、はるか後方の学院の塔にぶち当たる。
左手の『ガンダールヴ』の効果も加わり、その威力は抜群だ。
さらに竜をも縛り付ける索(ムチ)は、ギーシュの胴体をぐるぐる巻きにした。
「さあ、降参かな? ギーシュくん」

実力が、兎とケルベロスぐらい違いすぎる。ギーシュはがっくりと項垂れた。
「ま……参りました、プリンス・チョウ・コウメイ。
 傷つけた女の子たちにも謝罪いたします。どうか、この僕を弟子にして下さい!!」
「フフフ、いいだろう。どこに出しても恥ずかしくない、立派な貴公子に教育してあげるよ!!」
ギャラリーはこれを聞いて、再び大きな歓声を挙げた。
かえって恥ずかしさが増すような気もしたが。
そんな事もあった、ある休日の朝のこと。
「ねえルイズ、遠乗りをしないかい? 学院に篭ってばかりでは、飽き飽きしてしまう」
「まあプリンス、素敵ですわね」
天命に従い、ルイズと趙公明は白馬を駆り、爽やかな午前の陽射しを浴びて、王都トリステインへ向かった。
当然、それを見たキュルケとタバサも風竜シルフィードで後を追う。


「フゥ……王城はなかなかトレビアーンだが、大通りの広さがこれではね。
 ム? あそこは随分人だかりがしているようだが……?」
ブルドンネ街の一角に、なにやら高級そうな店があった。グラサンに白髭の老店主が、店先で芸をしているようだ。

「取り出だしましたるこの手毬、これをテンツクと転がしますと……」
ビーチボールに似た二つの手毬は、周囲から三本の曲がった刃を出し、高速回転しながら飛翔して、的の藁人形を切り刻む。
「これぞ我が宝貝『化血神刀』。いまなら1セットがこのお値段!!」
と、提示された値段は城が買える程の趙・高額。人間に宝貝を売るな。
「高すぎるぞジジイ!!」「モノ売るってレベルじゃねーぞ!!」「そうだそうだ!!」
群衆はブーブー言いながら、散り始めた。

がっくりした様子の店主に、趙公明が声をかけた。
「おや? キミは、僕の弟子の『余化』じゃないか! キミもこの世界に来ていたのかい?」
「おおお、趙公明様! これは奇遇ですな。
 ええ、いつぞやメイジという連中に召喚されまして、今はご覧の通り武器屋を営んでおります」

彼は武器マニアの妖怪仙人、余化だ。強力な武器ばかり集めていて高価すぎるため、国に兵器を卸してもいるらしい。
「ふうむ、僕以外にも何人か召喚されているのかもな。ちょっと入らせてもらうよ」
「げっ、趙公明様……!!?」
広い店内に入ると、壁でびちびちと2メイル以上はある幅広の大剣が暴れる。よく見れば、剣身に顔がある。

「おお『飛刀』くん、元気だったかい? キミは確か、周の黄天祥くんに預けられたハズだけど」
38名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 01:45:21 ID:QyPGkg5C
支援
「『飛刀』? それ、インテリジェンスソードですか? プリンス」
ルイズも、ひょっと顔を覗かせる。
「インテリジェンス(知性)か、確かにね」
「そうとも! オレサマは千五百年以上も日月の気を浴びた結果、生命と知性を得た大剣なのさ!
 年は忘れたが、多分もう六千年くらいは存在しているぜ……人の姿は取れないがな」
大剣が、生き物のように反り返って威張る。こいつは確かに生きている。

「ろ、六千年!? 嘘でしょ?」
この『飛刀』は宝貝ではなく、妖怪仙人の二歩手前の段階にある『妖精』だ。
ハルケギニアのそれとは違い、文字通り『妖しい精怪(もののけ)』だから妖怪みたいな物だが。
ちなみに妖術も使え、幻術で手にした人を惑わす能力を備えている。

「趙公明様、ここでお会いできたのも何かの縁。
 よろしければ、この『飛刀』をお譲りしましょうか? 必要はないと思いますが、どうも五月蝿くて……」
「ギャーーーッ!! ちょ、やめてくれジジイ!! この方だと命がなくなる!! 封神される!!」
「『封神フィールド』はここにはないぞ。壊れれば死ぬだけだ」
非情な主人である。なにしろ余化は『飛刀』より格上の、魔剣の妖怪仙人なのだ。

「じゃあ、有難く頂戴しよう! 感謝するよ余化くん」
「ひいいいいい!! 趙公明さま、どーぞお手柔らかに……」
強者になびくのも世渡りのコツ。『飛刀』は諦めて、哀しげな声をあげる。

その後、しばらくルイズと高級ブティックや喫茶店などを歩き、異世界の文化に触れる趙公明。
ルイズはデート気分でウキウキだ。そこへ、知った顔の二人が声をかける。
「あらプリンスにルイズ、奇遇ですわね」
「…………こんにちは」
「キュルケ! タバサ! 何でここに」
「あら、プリンスとデートなんて素敵じゃない。私たちも混ぜなさいよ!」
「いいとも皆! 今日は僕のおごりだ、何でも好きなものを買えばいい!!(シャランラアアア)」
「きゃあ、万歳! 流石は麗しの貴公子さま!!」

趙公明のゴージャスでスタイリッシュな財布からは、金貨が溢れ出し、使っても使ってもなくならない。
そればかりか、彼の入る店にはお客が殺到し、店員は嬉しい悲鳴をあげる。
封号『金竜如意正一竜虎玄壇真君』なる武財神、つまり『福の神』である趙公明のご利益であった。

(つづく)
40名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 01:48:05 ID:Dq/qk+OE
趙・GJ!!
41名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 01:48:14 ID:NAD5jey5
もっと支援を!!
42貴族:2007/10/06(土) 01:49:19 ID:lpb7gv8k
投下終了。ううむ、ルイズが従順になってあんまり動かないのがなんとも。
武器屋の親父とデルフの代わりに、ちょいとマイナーなこいつらに来てもらいました。
たぶん召喚者を殺しているな、この妖怪ジジイ。

次回はフーケ編の予定だが、これまたあっさり決着がつきそうだのう。どうしようか望ちゃん。
43名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 01:49:23 ID:MRQtf5wI
なんてゴージャスwww
44名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 01:49:53 ID:QyPGkg5C
乙。そういや元ネタの人は蓄財が得意だったんだっけか。
45名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 07:28:30 ID:y6SyRErq
>恐れを知らない戦士のように振舞うしかない。
ぼくらの自重。ギーシュ死んじゃうよw
46名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 07:31:37 ID:OLfupEef
おはようございます
230行くらい投下します
47名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 07:32:39 ID:OLfupEef

『くれてやる』


キィィィィィィン


「?」
研究室でコルベールが軽く胸を抑える
(今の感じは・・・?いや、ありえない)
ありえるはずがない。一時の気の迷いである。決め付けて作業に戻ろうとする
(が、しかし。確かめなければ。きっと何もないだろうが、取り越し苦労であれば一番いいのだ)
深呼吸をして気を落ち着かせ、気のせいだ、気のせいだ、と自分に言い聞かせながらも
学院長室へと向かう足はなぜか徐々に速さを増していった

「なに?あの子って 土メイジだったのかしら」
横からドサっと音がして青髪の少女が地面に手を付いている
「ちょっとタバサどうしたの?」
「なんでもない。こけただけ」
立っているだけでこけるなんて事があるのだろうか
豊満な少女は少し不振に思うがすぐにルイズの変化の方に心を捕らわれていた
小柄な少女もすぐに立ち上がり本を広げる
その視線はもはや文字を追ってはいなかった


立ち上がったルイズの右腕は肘関節の辺りまで見たことの無い金属で覆われていた
内側からの圧力で千切れたブラウスがボロボロになって纏わり付いている
(まさか、ここにきて魔法が使えるようになったのか!?)
ギーシュはこの時点で最も常識的かつ可能性の高い結論にいたった
即ち『錬金』で篭手を作り出し、それで身を守っているのだと
ルイズが緩慢な動きでゴーレムの腹を殴る
それだけで充分だった。まるで朽木ででも出来ているかのように青銅のゴーレムがへしゃげる
おかしい。どう考えても細身の女の子の力ではない
もはやただのお仕置きではなくなった事を把握したギーシュは、次々と武装をしたゴーレムを作り出して差し向けていく
数体のゴーレムが剣や槍で襲い掛かるが、ルイズが腕を一薙ぎしただけで、武器ごと銅クズになってバラバラと地面に散らかされた
ルイズの腕は傷一つ付いていない。単純な力と、金属としての強度にあまりにも差がありすぎるのだ。
「あのね、ギーシュ。」
ルイズのとてもとても優しい声が響く
(憎い)
「はっきりいって今、わたしにも何がなんだかわかってないわ」
土メイジの歯が狂ったようにカチカチと演奏を始める
ルイズに、いや人間に相対しているという気すらしていなかった。
(憎い 憎い)
「ただね、これであなたを、魔法使いをぶっ殺せるっていうことだけはよおーくわかるの」
ゆっくりと、一歩、一歩、近づいてくる
「ワ、ワル、ワルキュッ」
ゴシャっという鈍い音と共に
ギーシュを守っていたワルキューレが紙のように千切れて地面に落ちた
(殺す 魔法使いを)
「さようなら、ギーシュ」
振り上げられ、自分の顔に巨大な影を落とす右腕を、ギーシュは意識が途切れる瞬間までただ見上げていた
48名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 07:36:05 ID:OLfupEef
「ルイズさん!ルイズさん!大丈夫ですか!」
へたりこんだルイズは助けたメイドによってミイラ女にされようとしていた
「大丈夫よ、ただちょっと疲れただけだから」
この泣き虫なメイドはシエスタ、というらしい。
「ごめんなさい、ごめんなさい」
泣きながらかいがいしく傷の手当てをしてくれる。器用な事だ
「だから別にあんたのせいでも、あんたのためでもないってば」
「本当に、このお礼はなんと言っていいか・・・」
シエスタが右腕にも包帯を巻こうとしていたのであわてて振りほどく
「いいのよ、こっちは」
他の所もあれだけの攻撃を受けたとは思えないほど軽傷だが
右腕は異常だ。傷一つ無く、しかもお風呂に入ったばっかりのように綺麗だった。恐いくらいに
振り返って、かつてギーシュだった物体に目を写す

白目を向いたまま気絶しているギーシュが膝を着いて頭は天を向いている
よくあの姿勢でうまいことバランスが取れるものだ
胸元から股間まで巨大な爪で衣服を裂かれ
粗末なモノから流れ出て池を作っている黄金水はつい先ほど止まったところだ
おそらく向こう3年間のアダ名は小便小僧で決まりだろう
この姿を見れば1万と2千年前からの愛も冷めるに違いない

あの瞬間、確かに自分はギーシュを殺すつもりだった。
「自分」は?
いや、確かにあんなクズは死んでもいいぐらいだと思うが
何か変だ
理由はわからないが何か、違和感を感じる
その違和感について考える前に学院の最高責任者と見慣れた教師が近づいてくるのが見えたため
ルイズの思索は闇に葬られた
「あーすまんが、ミス・ヴァリエール、実家に戻るのはもう少しばかりまってくれんか。
ちょっと話があるんじゃが、悪いが学院長室に来てくれたまえ」



「ふぅむ」
(何から話したもんかのう)
齢三百ともいわれる老メイジは先ほどから窓の外を見たまま動かない
(いや、考えるべきはどこまで話すか、じゃな)
部屋の中には学長、ルイズとコルベールの3人だけがおり
目を瞑って何か重大なことを思い悩んでいる表情のコルベールが時折ため息をついて
「ハァ」
重苦しい雰囲気がますます重苦しくなっていく
手持ち無沙汰のルイズは破れたそでを内側に押し込んだり
元の形に戻った己の腕をつねったり握ったり開いたりしている
「よし!」
突然オスマン学院長が声を上げてトン、と床を突く
「まあみんな思い悩むところはそれぞれあるじゃろうが、まずは決まったところから話していこうかの」
ヒゲを撫でながらルイズに向き直る
「まず、ミス・ヴァリエール」
「はいっ」
緊張そのままにピンと背を伸ばして返事をするルイズ
49名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 07:36:12 ID:rQCpBNeq
おはよう
冷静にトチ狂ってるのって物凄い怖いよね支援
50名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 07:37:58 ID:OLfupEef
「取り合えず使い魔召還の儀式サモン・サーヴァントは成功していた、と判断する。
よって留年取り消しじゃ」
「はいっ!?」
突然告げられた事実に脳が付いていかない
「あ、あの、今なんと」
「だから、留年取り消し、ミス・ヴァリエール嬢の身柄は学院預かりとする。
後に実家の方にワシの名前で訂正の文を送っておこう。進級おめでとう。」
「あ、ありがとうございます!」
(い イ イヤーーーッッッホーーーーウ!)
ぴょん、ぴょん、と白ウサギのように飛び跳ねて全身で喜びを表現するルイズ
その姿を見て2人の教師は自分のことのように嬉しくなってくる
家や個人の名誉の問題だけではない。
努力して、その結果が出たということは単純に嬉しいことなのだ
それだけに、この後の話をするのがさらに辛くなってくるのだが
「それで、わたしの呼び出した使い魔は何なんですか?」
「あー うー それなんじゃがのぅ」
「はい!」
キラキラと目を輝かせて聞き入るルイズに
目を背けて後ろめたそうに何かを考えるジジイ
コルベールはピンと来た。この顔は誤魔化そうとしている顔だ
(しかし、なんと言って誤魔化すつもりなのか)
主人のピンチにだけあらわれる魔法の武具とか?
ギリギリの線では宿主に寄生して身を守るために硬質化する魔法生物とかだろうか
「謎じゃ!」
(死んだ方がいいのでは?)
一瞬マジで口走りそうになる
ルイズのほうは見事にズッコケていた

「話しましょう校長」
コルベールが重い口を開いた
「知らないままに力を持つ、というのは本人にも周りにも決していい影響を及ぼしません。
その力が大きければなおさらです」
「ふぅーーむ」
オスマンはどっかりとイスに背を預けるとしばし目を閉じ
扉にロック、部屋の隅々までディテクト・マジックをかけた
「少し、長い話になるぞい。そしてミス・ヴァリエール、聞けばおぬしは辛い選択を迫られる事になる。
どちらを選ぼうとも茨の道じゃ。それでもいいかの?」
そう尋ねるオールド・オスマンの瞳は心の奥底まで見通すような、それでいて限りなく優しい目だった
「かまいません」
正直、根拠はあまりなかった。が、ルイズは自分の中に確かな可能性を感じていた
この右腕は間違いなく大きな力だ。魔法無しでもギーシュをぶっとばした
何気にその魔法も召喚だけとはいえ成功したらしいではないか
それに、思い出す。
今日だけではない、魔法が使えないルイズに対する皆の嘲りの目を。哀れみの目を。蔑みの目を。
あんな惨めな思いはもうごめんだ
変えたい
変えなければならないのだ
わたしがルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールとして存在するために
51名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 07:38:56 ID:rQCpBNeq
支援
52名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 07:40:17 ID:rQCpBNeq
支援
53名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 07:41:12 ID:OLfupEef

トリステイン学院の生き字引は、記憶の糸を少しずつ手繰りよせて行く様にゆっくりと話始めた
「もう二十年も前になるか、王宮のアカデミーで研究されていたとある魔法兵器が存在した
名前を、ARMSという。
兵器とは言っても誰かが考えて作りだしたわけでもないんじゃがの。どちらかと言うと生き物、寄生生物に近いかもしれん
二十年以上前のある日、アカデミーに聖地から持ち帰られたとかいう胡散臭いモノが持ち込まれてのう
なんでも来る途中に3人ほど飲み込まれたとかいうんじゃが・・・それは生きとるような岩石じゃった
その頃は愚かなことにみんながみんな聖地の奪還に夢中での、少しでもエルフと戦えそうな技術があれば血眼になって研究しておったんじゃ
そのために馬鹿げた実験も平然と行われとった。融合実験とかの。人間以外の生き物はまず全滅。
ARMSを組み込まれた人間はほとんど全員が砂になって消えた。あるいは石になって死んだ。よくわからないものになって殺された。このどれかじゃった
しかし、そう、『不幸なことに』ARMSに適合して生き残ってしまう人間も極々稀にいたんじゃ
大体は金属のように硬い皮膚を持ち秘薬いらずの回復力で、たまに特殊な能力持っている場合もあった
まあ強い方でトライアングルメイジ10人分の働きというところかの。それも全部エルフと相打ちで死んでいった
その死ににくい体のおかげで何倍もの痛みをこらえ、何倍もの長さの苦痛を味わいながらな」
そこで言葉と切るとオールド・オスマンは水を一口含み、ゆっくりと飲み込んだ
トライアングルメイジ10人分。小さな村なら一夜で消せる力だ。
(ARMS・・・)
頭が一気に冷えたルイズはローブの下で右腕に触れる。
手触り、産毛の感触、そして触れられる方の右腕の触覚、全て今までと同じものに感じる。
「ところが、ある日生まれた実験体は想像を超える恐ろしい性能を発揮した。火のスクエアメイジが何十人束になっても到底およばないくらいじゃ
暴走無しでのそういうケースはアカデミーに取っては本当に貴重な実験材料じゃからのう
エルフとの決戦に投入する前に最大攻撃力のデータを取ることになっての、むごい事にとある街がまるごと犠牲にされた
その実験体も結局その時に暴走しての。多大な犠牲を払って始末された。アカデミーにも多数の犠牲者を出し
まあこりゃあ割に合わんっちゅうことで研究は打ち切られたんじゃ。今となっては研究の証拠も何も綺麗さっぱり残っておらん
で、要するにミス・ヴァリエールの右腕がその葬られたはずの兵器によう似とるっちゅうわけじゃな」
「兵器・・・なんですか?」
オスマンは重々しくうなずく
「しゃべったり、ものを考えたりはしないんですか?」
「しないじゃろう」
老人は何が言いたいのか解らない、という風に訝しげな視線を向ける
「あの、ギーシュと戦った時、わたしじゃないモノの意志を感じたんです。いえ、わたしの意志に上乗せされてるって言うか
あれはもしかしたら、ARMSの心なんじゃないかと思います」
「ほっ?ARMSに心が?」
オスマンがちらりと横に視線を送る
コルベールは聞いたことが無い、というようにかぶりを振った。が
「・・・いえ、伝説の使い魔ならあるいは。アカデミーに持ち込まれた岩石も、始祖に作られた使い魔の胚であるという噂もあったのでは?」
「御伽噺じゃな」
「でも、声も聞こえた気がするんです!姿も見たような気がします!その、まあ、ちょっと、恐いカンジだったけど」
どうみても聖なる存在には見えなかったので言葉の尻尾の方がだんだん弱くなってしまう
「ふぅーむ、わかった、信じよう」
ルイズはほっとして胸を撫で下ろす。
とても撫で下ろしやすい。
「そのミス・ヴァリエールの話を考慮に入れた上で、本題じゃ。おぬしは選ばねばならん。選択肢は3つある。
一つ、この場で右腕に別れを告げて後顧の憂いなく左腕一本で普通のメイジとして一生を生きるか
二つ、この場で右腕を二度と使わない事を誓い、生涯にわたってその力を封印して普通のメイジとして一生を生きるか
三つ、この場で右腕を使いこなす事を誓い、・・・心があるんじゃろう?そのARMSを手なずけて一生のあいだ力をコントロールし続けるかじゃ
ぶっちゃけると、ワシらはおぬしが右腕に喰われて暴走する可能性の方が高いと思っとる。もちろんそんな時は・・・」
54名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 07:42:29 ID:OLfupEef
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・あの、どうするんでしょうか?」
「おいおい、ミス・ヴァリエール。おぬしはワシを脅迫の現行犯で逮捕させるつもりかね」
そうですか。
そうなんですね。
もしかしてロックはそのためだったんでしょうか
なんかさっきから、スキなくいつでも杖を構えられるカンジで握ってると思ったら
横のまぶしい人に至っては本気の殺気でプレッシャーをかけてきてるんですけど
コルベール先生ってこんなキャラでしたっけ?

結局、感じたことの無いプレッシャーの中でろれつの回らなくなったルイズは、なんどもとちりながら始祖と家と自身の名において三つめを誓い
うやうやしく礼をした後、右手を右足を同時に出しながら退出していった
「しかし、なんとも不憫な子じゃのう」
(なまじ名家に生まれただけに鉄のようなプライドを持ち、それゆえに折れやすい心に育ってしまっておる)
「学院長、これは本当にわたしの思い違いだと思うのですが」
「ん?かまわんよ、言いたまえ。すでに有り得ないはずの事が実際に起こっておる。どんな小さな可能性でも見逃すわけにはいくまいて」
「ミス・ヴァリエールとは別にもう1つ、感じたような気がするのです」
「なんと!」
「いえ、すみません。これは間違いでしょう」
幾多の困難を潜り抜けてきた老メイジも流石にこの報告にはかなり動揺したようだ
「最悪の事態を想定して外れても損はあるまい。他に同じようにサモン・サーヴァントを失敗した生徒はいたのかね?」
「いいえ」
「ふぅむ。なるほど・・・ふぅむ」
「もしや、アカデミーがまた」
「いや、それだけはまず無いことじゃ。人も金も資料も全て潰した。そして少しでも痕跡や臭いが残っていないか、今もって調査の手を緩めてはおらんよ」
「すると他国の可能性が?」
「・・・・・・2%・・・かの」

ノックの音が聞こえる
「お取り込み中ですか?」
「ああ、かまわんよ。今終わったところじゃ」
コルベールの退室と入れ違いに、秘書が読むだけで疲れそうな分厚い書類を持ってきた
というか、見る前から疲れてきた
「全く、いくら年を重ねてもちーとも平穏というものが訪れんわい。平和というものは人がおる限り幻想なのかのう。
これじゃあゆっくり尻も撫でられんて、なあミス・ロングビル」
「死後の世界なら平穏なのでは?」
美人秘書の尻を揉みほぐしていたエロジジイの手がつねり上げられ、その側頭部に書類の角の跡が深く残った
55名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 07:43:36 ID:OLfupEef
2話おわりす
56名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 07:43:43 ID:rQCpBNeq
支援
57名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 07:43:47 ID:C9tcFsq0
支援
58名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 07:46:00 ID:9DAg9kch
ジャバウォック支援
59名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 07:49:03 ID:rQCpBNeq
GJ!
右腕落としたところでニョッキリ生えてくるんじゃないか?
実験体てのはキースシリーズだったりするんだろうか
あとキャラクター的にスカロンが『不死身』の二つ名を手に入れてそうで怖いな
60名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 07:57:24 ID:0NuC8d45
ふむ。タバサが白兎っぽいな。
グリフォンは役柄からほぼ決定ぽいし。
女王、騎士、チェシャ猫、ハンプティ・ダンプティ、帽子屋とか役割が気になるぜGJ
61名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 08:17:44 ID:PNAGK7GE
>60
女王はティファな希ガス。
能力と性格の相性からすると丁度良いんだよね、戦いが嫌いだし。
……まあ原作の適合者とは性格と能力が真逆だけどさw。
62名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 08:23:01 ID:z/rAPkvs
となると、ナイトはアニエスかな?
63名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 08:24:14 ID:NUdfPJrC
ナイトはやっぱりキュルケじゃね?
ルイズとの熱い友情w
64名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 08:29:39 ID:y9re32FD
展開予想も程々にな。
65名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 08:37:17 ID:rQCpBNeq
「ただのメイドですよ
学院仕えのね」
そんなNINJAシエスタ
66名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 09:38:21 ID:UvSfFUvc
>>65
つまりタルブが鐙沢村(真)化してるわけか。
そして祖父を殺して出奔した人の身で先住魔法を操る妹を追って村を出るが
見つからず、やむなく自身の生活と村への仕送りを優先し学園へ就職
過ぎていく日常の中、ある生徒が行った召喚の儀より始まった大きな流れに妹の影を見出し
少女は再び刃を手にとる決意をする

シエスタ主観で一昔前の王道物ができそうなヨカン
だがスレ違いの上他人様に見せれる程日本語上手くない(´・ω・)
さらに技量が伴わなければ厨二ssまっしぐらなジャンルであったとさ
67名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 09:40:48 ID:+Nr3rx3u
シエスタがビームサーベル振り回すと申したか
68名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 09:57:50 ID:B5kduM9E
シエスタ・カルナギというのはありですか?
69名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 10:03:22 ID:19LHTpXV
ちょっとテスト
70名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 10:12:51 ID:d9zulOj3
>>66
寝起きの頭なのでぱっと見で雛見沢村と読んでしまった
71名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 10:18:15 ID:+WyWDBOl
>>70
俺もだw
みんなL5なNINJA村。
72名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 10:18:47 ID:lAQLzbhy
>>70
雛見沢の住人の召還を所望とな?
73名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 10:23:17 ID:sfuQ9n2j
>>72
むしろ雛見沢病を召喚?
74名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 10:49:17 ID:/8L24+sR
寝起きは怖えな
羽生蛇村に見えちまった
なんでだ
75名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 11:03:06 ID:WVKOVg8a
目が覚めて3時間の間は脳はまだ眠ってるらしいからな。
本格起動を始めるのが3時間ぐらいたってからだとか。

なんにせよARMSの人乙! ついでに雛見沢村は笑ったw
76名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 11:29:48 ID:XOd59fBo
>>75
僕も間違えたけど何人間違えたんだろ
77名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 11:50:55 ID:RB6M7/JV
タバサが過去に行けるキャラを召喚して父母を助けるのは無理だろうか

ドラえもんとかセレビィとかゲッターとかモスラとか
78名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 12:00:59 ID:3q97KzEI
>>77
過去の自分に召喚されればいいだろ
79名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 12:01:26 ID:c1WMqssg
ザザーンシンジ君と申したか
80名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 12:05:21 ID:ptwLIv0Q
美神令子と申したか
81名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 12:05:57 ID:gd6QH5qH
>>74
かの屍人やら赤い水やらある意味で雛見沢よりやばい所を召喚とな?
82名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 12:06:52 ID:ML+breu7
ターミネーター召喚の話を読んで他に映画作品から召喚される話を調べたら
ガメラと実写版トランスフォーマーがあった。

漫画やアニメ、ゲームではなく、映画から召喚される話を考えたんだ。
そしたら閃いたんだ。

水兵服+爆発+ドラゴン=プロジェクトA

プロジェクトAから海上警察のドラゴン(ジャッキー)を召喚。


酒場や食堂は飲食する場所ではありません、暴れる場所です。
椅子や折れた机の足も立派な武器です。手に触れる物全てが武器です。
ガラスは割られるためにあります。高い場所は飛び降りるためにあります。
積まれた荷物は崩れ落ち、果物なんかは転がり、それを人が踏んで転倒します。

そんな「プロジェクト0」を思い付いたが、
ジャッキーのアクションを文章にするに文才が無いため没。

映画って本当にいい物ですねぇ
83名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 12:08:36 ID:8zUUc84W
>>81
サイレントヒルなら来る者拒まずですよ?
去る者逃がさず……つーか逃げる気力すら無くなるかもしれんけど
84名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 12:10:55 ID:foMTLzL1
ナルトの飛段召喚という電波を受信した

避難所行き間違いないな
85名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 12:12:53 ID:70KQnar9
さて、代理投下依頼が来てるんで投下しても良いかな?
86名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 12:14:39 ID:WVKOVg8a
進路OKだ
87ルイズのおかあさん@代理投下:2007/10/06(土) 12:15:24 ID:70KQnar9


    ▽    ▽    ▽



食器を片付け戻ってきた時ものの、荒垣とルイズは沈黙したまま時を過ごしていた。
ちなみに、ルイズはベットの上。荒垣はちゃっかり椅子に座っている。
普段のルイズだったら、ここぞとばかりに主従関係を叩き込むのだが、今回はそうもいかない。
睨み合いで無念の敗北。その後自室まで運ばれ、下手すれば食べ損なっていた夕食も食べる事が出来た。
もとを辿れば睨んだ荒垣が悪いような気もするが、その後の処理をしたのも荒垣。
上手に出るか様子を見るべきか。心の中の天秤で比べてみたものの、考えれば考えるほど後者のほうに傾く。
そもそも、召喚した後はまともな会話すらしていない気がする。
「えっと、あんたは……その……へ、平民……なのよね」
ルイズの問いに、少し間を置いてから荒垣は口を開く。
「この世界で言えば、そうなるわな」
その特殊な言い回しに首を傾げるルイズだったが、平民であったと言う事実のほうが重要だったため聞き流す。
「なら、私はあんたより立場が上なのもわか……る?」
強く出ようとしたが、どうにも視線を合わせながらだと上手くいかない。
このままでは、荒垣が帰ってくるまで頭に思い描いた予想図から大きく外れてしまう。
見えないように深呼吸し、普段通りの自分を思い出して言葉を紡ぐ。
「私は貴族。あんたは平民。で、普段ならこうして私の部屋にいるのも失礼に当たるの。
  けど、あんたはあたしの使い魔だから、と、特別にここにいても良いのよ!
  もちろん、あんたがここにいる条件として色々してもらうわ! だって使い魔だもの!
  その代わり、あんたの衣食住をこの私が責任持って面倒見る。使い魔の面倒を見るのは当然だから!
  えっと、それから、使い魔だから……たしか、あっと、ととと、とにかく、あんたは私の使い魔って事!」
始めの頃は文として成り立っていたが、一気に捲し立てたため、後半部分はややおかしくなってる。
全てを吐き出して肩で息するルイズを尻目に、荒垣は動作なく立ち上がると、ルイズの眼前まで迫った。
あまりの圧迫感に、ルイズの呼吸はますます荒くなっていく気がした。
それでも、負けるものかと必死になって荒垣を見上げてみる。
「な、なによ!?」
「具体的に、俺は何をすりゃあいい」
「は?」
当たり前と言えば当たり前とも言える質問に対し、思わずキョトンとしてしまうルイズ。
だが、即座に頭を振るって気を取り直す。
後で改めて伝えようとしていた事だが、本人が尋ねてきたのなら都合がいい。
「まず第一に、主の目となり耳となり、その五感が主と……繋がらないわね」
「そうみたいだな」
「だ、第二に秘薬のための材料を探す事。けど、これは構わないわ」
「あ?」
「しゅ、主人が構わないって言ってるんだから口答えしない! それより、三つ目が一番重要なんだけど……」
そっと荒垣を盗み見る。睨みつけられると正直怖いが、それぐらいだろう。
他の貴族の男子に比べれば逞しそうだが、魔法が使えないのでは意味が無い。
「主人を守るって言う事なんだけれど、あんた何か出来る?」
ほんの少しだけ荒垣の瞼が吊り上ったが、特に何かするでもなく両手を上着に突っ込んだ。
「……何も無いな」
「そう……ま、期待はしてなかったから諦めるわ。しっかしあんた見た目ほど使えないのね」
88ルイズのおかあさん@代理投下:2007/10/06(土) 12:16:32 ID:70KQnar9


この頃には、ルイズも元の調子を殆ど取り戻していた。
だがら気付かなかったのかもしれない。目の前で静かに怒りを蓄えている男の眼差しを。
あと何度か偉そうにしたら最後、召喚した時と同じ目に会うと気付いておらず、ルイズは服を脱ぎ始めた。
「おい、なにしてんだおめぇは」
「着替えよ……って言うか、あんた私のことおめぇとか言うのやめなさい。ご主人様でしょ」
背中を向けて着替えていたため、荒垣の叱るような視線にも全く気付けない。
そうこうしているうちに、ルイズは着替えた服と下着を荒垣の背中に投げつける。
「んだこりゃ?」
「それ、明日の朝洗濯しといてよね。あんたのせいで余計な洗濯物増えたみたいだし。使い魔なんだから当然よ」
最後までこちらに顔を見せぬまま、ルイズは再び布団を被った。
もしかしたらルイズの本能が恐怖を覚えて、それで顔を見せなかったのかもしれないが、後の祭りだ。
「おい」
「ああ、そこにある毛布を特別に使わせてあげるわ。ありがたく思いなさい」
適当に方向を差したルイズの指に、なにやら硬い感触が当たる。
何かと思ってルイズが視線を移動させると、そこには無表情ながらも睨みつける荒垣の姿があった。
「ひっ」
あまりの恐ろしさに、ルイズの喉から小さな悲鳴が漏れる。
その様子を見て、荒垣はなにをするでもなく、ただゆっくり顔を近づけて呟いた。
「言葉が足りなかったみてぇだな」
「……っ」
視線を逸らそうにも身体が動かない。金縛りにでもあったようだ。
荒垣の瞳に映ったルイズの顔は、自分が予想したよりも遥かに怯えていた。
「俺は『衣食住の面倒』の代わりに『何をすりゃあいい?』と聞いたんだ。
  断っておくが、てめぇの使い魔とやらになるとは一言も口にしちゃいねぇ」
「なん――」
文句を飛ばそうとするが、いつの間にか喉が渇いて唇が上手く動かない。
そうこうしている間に、荒垣は床にあった毛布と洗濯物を詰め込んだ籠を手にとると扉へと手を掛けた。
「とりあえず、洗濯はしてやるし明日はきちんと起してやる。じゃあな」
「ぁ――」
ルイズが文句を並べる隙を与えず、荒垣は扉の向こう側へと消えていった。
いなくなった途端、体中の金縛りが解けて血が一気に巡る感覚を覚える。
「な、な、な……なんなのよあの態度!」
怖がっていたの事よりも、あの態度に腹を立てる気持ちのほうが前に出た。
「あれだけすんなり話を聞いていたくせに、最後の最後で反抗的になるなんて!
  ししし、しかも「使い魔にならない」ですって!? そんな事認める訳ないじゃない!」
荒れに荒れたルイズは、悔しそうに枕を叩いた。
(せっかく召喚できた使い魔があんなのなんて!)
だからルイズは気付かなかった。
どうして荒垣がすんなりこの世界を認めたのかも、それを一切語らなかった事も。
89ルイズのおかあさん@代理投下:2007/10/06(土) 12:17:34 ID:70KQnar9
    ▽    ▽    ▽



辺りが静まり返っている中、荒垣は月を見上げながら一人建物の外に立っていた。
「月が二つたぁ、あいつらが聞いたらいやな顔するだろうな」
その顔には、先程見せたような怒りの感情は見当たらない。
一呼吸置くと、荒垣は夜露をしのげそうな場所を探し始めた。
歩くついでに、荒垣は改めて現在の状況を確かめる。
「ロングビルって女も、シエスタって嬢ちゃんも、嘘をついてた訳じゃなかったんだな」
二人とも先程のルイズと同じような『貴族と平民』の関係を話してくれた。

曰く、この世界では魔法が使えるものが貴族である。
曰く、魔法が使えない人間は平民となり貴族に従う。
曰く、この場所はその貴族たちを育てる学校である。
曰く、荒垣はその貴族の一人であるルイズに召喚され使い魔となった。

あまりにも突拍子も無い話に頭に痛くなるが、二人とも真顔で話していたのを見る限り事実なのだろう。
では逆に、荒垣は地球や日本について自身の話せる範囲の事を話したのが、どちらも首を捻った。
念には念をとマルトーにも質問したが、二人と同じような返答であった。
結論だけ見れば、荒垣はルイズに召喚されこの異世界に飛ばされた事になる。
だが、そこに至るまでに重大な問題点があるのだ。
それは、荒垣真次郎というペルソナ使いは『一度死んだ』という事。
まさかあの瞬間が嘘だとは、荒垣は微塵も思っていない。
ならここが地獄か天国かという考えもあったが、それはあっさり放棄する。
思いつく様々な結論を消去法で削っていき、残った答えをつなぎ合わせてみる。
(つまり、あのガキに生き返えらされたってわけか)
馬鹿馬鹿しい話だが、そう考えないとバラバラなピースが綺麗に嵌らない。
だが生き返ってみたものの、正直荒垣は心を持て余していた。
生きてきた時間こそ短かったが、あの瞬間の最期まで悔いはなかった。
だから、ここで再び命を宿されても感謝の気持ちを抱けない。
さらに悪い事に、それを盾にして面倒を見ろと言うルイズに使える気にもなれなかった。
もともと人に従うのを嫌う傾向にあった荒垣が、ルイズという荷物を引き受け喜ぶはずが無い。
明確な理由があり、自身もそつなくこなす天田と違い、ルイズはただひたすら手のかかる子供だ。
90ルイズのおかあさん@代理投下:2007/10/06(土) 12:18:42 ID:70KQnar9
(とても同じガキたぁ思えねぇな)
先程の偉ぶった様子を思い出し、苦笑いを浮かべる。
ルイズは勘違いしていたが、荒垣はルイズに対して睨んだのは最初の一回。
それ以外は、殆ど子供の癇癪を眺めるように見ていただけなのである。
(ま、何と言われようが使い魔とやらをするつもりはないがな……それに)
その先を考えて荒垣は頭を振るう。拾った命だからなのか、余計な考えが頭にちらつく。
気付けば、馬小屋のような建物の前まで辿り着いていた。
「ま、とりあえず寝りゃいい考えも浮かぶだろ」
肩をすくめ、小屋の中へと入っていく。
「きゅい?」
「ん?」
足を踏み入れると、見るからに竜の姿をした生き物が、困惑した表情でこちらを見つめていた。
「っと、悪いな。お前の寝床だったか」
「きゅい」
「寝床を探していただけだ、せっかく寝ていたとこ悪かったな」
「きゅいきゅい!」
「あ?」
見ると、竜が口を突き出して荒垣の上着を銜えていた。
「いや、ここはお前の寝床だろ」
「きゅいきゅい」
上着から口を話すと、竜は自身の腹部に視線を落とす。
その意図を理解した荒垣は、こちらでは初めて見せる顔を見せていた。
「良いのか?」
「きゅい!」
「……悪い。一晩世話になる」
洗濯物が詰め込まれた籠を傍に置き、荒垣は竜の腹部に背を預け毛布を被った。
それを見届けた竜も、安心したように瞼を閉じて眠りの世界に入っていく。
一人と一匹が寝息を立て始めた頃、小屋の中で少しずつ変化がおきていた。
荒垣は気付かなかったが、他にもいた大きい生き物達が、荒垣が風で冷えないような位置に座り直していたのだ。
この晩、最近では一番冷え込んだ夜を迎えたトリスティン魔法学院だが、荒垣が風邪をひくことはなかった。



    ▽    ▽    ▽

91ルイズのおかあさん@代理投下:2007/10/06(土) 12:19:54 ID:70KQnar9
早朝に目が覚めた荒垣は、周囲にいた生き物達に礼を言うと洗濯場を探して歩き回っていた。
数分間歩いた所で、ようやくお目当ての場所に到着するが、どうやら先客がいたようだ。
「あ、アラガキさん。おはようございます。もしかして、お洗濯ですか?」
「あぁ」
荒垣の態度に気にする様子もなく、その少女は柔らかそうな笑みで仕事に戻った。
先に洗濯をしていたのは、昨日世話になったシエスタである。
シエスタは自分の持ってきていた洗濯物を手早く、けれど丁寧に洗い終えると、手の甲で汗を拭った。
「おわりました」
「みてぇだな」
「あ、その……宜しければそのお洗濯、私が代わりにしておきましょうか?」
荒垣が抱えていた籠の中身を見て、その洗濯物がルイズの所持品だと理解したシエスタ。
だが、荒垣は何も言わずにシエスタの隣に座ると、瞬時に衣類を区分けしていく。
「申し出はありがたいが、俺が請け負った仕事だからな」
「そうですか」
少しだけ寂しそうにしながら、シエスタは荒垣の手を見る。
最初こそ洗濯板に手間取った印象があるが、あとはシエスタが目を見張る程の仕事振り。
その見た目とのギャップが可笑しかったのか、シエスタはうっかり笑みを零してしまう。
「あ、すみません」
「……こういった事は慣れてるからな」
怒られると思ったシエスタだったが、その真意を汲み取りまた笑みを浮かべる。
荒垣の仕事振りを見ていたシエスタは、男ながらも繊細な作業が出来る手腕に見入っていた。
(そう言えば、アラガキさんが使い魔になったって本当なのかしら?)
良く見れば左手にルーンが掘られてある。荒垣の逞しい手にミスマッチな気がするシエスタ。
荒垣が若干距離を取りつつあるのに気付かないまま、シエスタは食い入るようにその仕事ぶりを見つめていた。
だからなのか、後ろから近付いてくる一つの影に対し無防備な姿を晒してしまう。
「おおいシエ――すまねぇ」
「ど、どうしていきなり謝るんですかマルトーさん! というかいつからそこに?」
「いやだってお前、今の表情を見たらそう思うだろう。なぁ兄ちゃん!」
「……」
シエスタからの質問に半分だけ答えると、意味ありげな視線で荒垣を見る。
が、視線を送られた本人は、熱心な様子でこびりついた汚れを退治していた。
「あの! そんな! そうじゃなくて! そう言った事じゃなくですね!」
「はっはっはっ! ま、しっかり愉しんだら仕事に戻ってくれや」
「ま、マルトーさんっ! ごめんなさいアラガキさん。その、変な事言われて……」
「別に気にしちゃいねぇよ」
慌てふためくシエスタとは対照的に、荒垣は未だ黙々と下着を洗っていた。
「えと、その……あ! もし何かありましたらまた来てください! それじゃあ!」
洗濯を終えた籠を抱えながら、顔を真っ赤にしたシエスタは逃げるように去っていく。
それを背中で見送りつつ、荒垣は丁寧な手つきで最後の下着の汚れを落としていた。
92ルイズのおかあさん@代理投下:2007/10/06(土) 12:20:57 ID:70KQnar9
    ▽    ▽    ▽



洗濯を滞りなく終えた荒垣は、それを干し終えるとルイズの部屋に向かった。
洗濯はともかく、起床については自分から言い出したことなので異論は無い。
音もなくドアを開けると、ルイズは見るからに子供と言わんばかりの寝相で寝ていた。
気絶していたとは言え、あれだけ寝たのによく寝れるものだと荒垣は感心する。
(何だかんだ言っても、まだガキなんだな)
本人が聞いたら怒り狂うような考えだが、口にしていないためルイズには届かない。
近付いてみると、ベットの上の主は涎を垂らしながら笑っていた。
「くふふ。きゅるきぇとはちがうのだよきゅるきぇとは〜
  ふるえるぞおちち。もちつけるほどぼよん。きざむぞきょにゅーのびーと。ぴんき〜おーばーどらいぶー」
いきなり叫びだしたルイズは、ベットの上で奇妙な踊りを始めた。
そして、最後の言葉と共に両手を天井に突き出すと、何事も無かったかのように腕を降ろし寝入ってしまった。
「……なにやってんだこいつは」
呆れつつ部屋の隅にたたんであったタオルで涎をふき取る。
すると、満足したかのような表情を浮かべ両手でシーツを握り締める。
その様子を見て、荒垣はふと「赤ん坊を世話するのはこういう事か」と納得した。
ちなみに、もともと色気づいた類の話には、全くと言っていいほど興味が無い荒垣。
それがなくとも、ルイズを自分よりかなり年下と勝手に思い込んでいる。
さらに追い討ちを掛けるのは、百年の恋も冷めそうな今の姿。
要約すると、ルイズの姿を見て何一つ邪な思考を浮かべる様子はなかったという事。
そうこうしているうちに、ルイズはまたも身体を強引に曲げて奇妙なポーズをとり始めた。
が、荒垣はその頭を鷲掴みにすると、ゆっくりと上に持ち上げていく。
「あだ、あだだだだだだだだっ」
突然の出来事に軽くパニック状態になるルイズ。
その隙に掴んでいた手を離すと、未だ頭が混乱しているルイズの耳元で両手を勢い良く叩いた。
「きゃうぁ!」
夢の世界から強引に引き摺り下ろされたルイズは、自分の置かれている状況を認識するのに時間がかかった。
ふと、誰かからの視線を感じ顔を上げると、そこには自分を見下ろす不気味な男の顔があった。
「新手のスタンド使い!?」
「……何寝ぼけてんだ」
「ふぇ? あ、あんた確か……そうだ。夢じゃなかったんだっけ」
「喋ってる暇があったら手を動かせ。そして早く着替えろ。俺は外に出ている」
「え、あ、うん」
言われた通り着替えようとし、衣装ケースの取っ手に手を掛けたところで気付いた。
「じゃなくて! 着替えさせて!」
「……なんだと?」
「だ、だから、着替えさせてって言ったの! 命令よ!」
暫く睨み合いが続くが、聞いていた時間に遅刻すると気付いた荒垣が先に折れた。
(男相手にこれじゃ、本当にガキなんだろうな)
またも当人が聞いたら荒れ狂いそうな事を思い浮かべたが、口にはしない。
腹の中に押し込んだ怒りを押さえ込み、呆れた表情を浮かべた。
「着替えはどこにある?」
「そこよ」
「ちっ……」
舌を打ちつつも、手早く制服を取り出しベットに運ぶ。
そして、ルイズに両手を挙げさせるとつっかえる事無く着せる事に成功した。
「初めてにしては上出来ね」
「……」
着替えが済んだので、次は身だしなみを整えていたルイズが額を押さえて呻き声を上げた。
「ねぇ、なんだか頭が物凄く痛いんだけど」
「知るか。それより朝食に行かなくていいのか?」
「なんだか釈然としないけど、確かにそろそろ時間ね」
93ルイズのおかあさん@代理投下:2007/10/06(土) 12:21:59 ID:70KQnar9


額に手を当てながらも、ルイズは威勢良く扉を開けて廊下へと出た。
その後ろを、荒垣が無言でついて行く。
「はぁいルイズ」
部屋を出ると、殆ど同じタイミングで隣の部屋から誰かが出てきた。
ルイズよりも明らかに「育っている」その人物は、玩具でも見るようにルイズを見下ろし言葉を続ける。
「朝から男と連れ立って出てくるなんて、なかなかやるじゃない」
「違うわよ! これは……つか……つか」
「つか?」
「使い魔よ! 悪い!?」
「悪いも何も、まだ何も言って無いじゃないの」
「言ってるじゃない! その眼が!」
「あら。ごめんあそばせ」
態度がまる分かりなのを承知しながら、少女は悪びれもせず謝罪してくる。
その今にも高笑いしそうなその少女を、ルイズは顔を真っ赤にして睨み付けた。
「あははは、そんなに睨まないでよ。それより私の使い魔を見て」
そう言って背中から出てきたのは、爬虫類を大きくしたような姿で、赤い鱗をした生き物だった。
特徴的なのは、尻尾から途切れる事無く燃え続ける炎だ。
「この子の名前はフレイム。火竜山脈のサラマンダーよ。さ、フレイムご挨拶して」
「きゅるきゅる」
心なしか、荒垣のこめかみが動いたのだが、気付いたのはフレイムのみだった。
見詰め合うフレイムと荒垣を他所に、二人は口喧嘩のようなものを始めていた。
「しっかし、平民を呼んじゃうなんて前代未聞よね」
「くっぅ!」
「で、これがその平民って訳」
品定めをするような眼で荒垣を見る少女。
それに気分を害した様子もなく、荒垣は無言のフレイムと見詰め合っていた。
「ふぅん……そこそこいい男だけど、平民じゃあね〜。あなたお名前は?」
「荒垣だ」
「アラガキね。私はキュルケよ。ま、もしルイズが嫌になったら来てもいいわよ平民君」
「ちょっとキュルケ! 人の使い魔を誘惑しないで!」
「うふふ。相変わらず怒った顔が面白いわね。さ、行くわよフレイム……フレイム?」
「きゅるきゅる」
キュルケに呼ばれたのに気付いたものの、フレイムは名残惜しそうに荒垣を見つめてた。
「あら、私以外にこんな反応……ねぇアラガキ。あなた本気で私の所に来ない?」
「いい加減に――」
「あっはっは。冗談よ。それじゃあお二人さん。お先に」
掴みかかりそうなルイズの手をあっさりかわすと、キュルケは笑いながら去っていった。
「なんなの全く! いい、あの女に近付いちゃ駄目よ! 命令なんだから!」
「……」
「ちょっと! 聞いてるの!?」
「飯の時間に遅れるぞ」
「あ、ちょっと、待ちなさいコラ! 昨日の話の続きだってあるんだから!」
道中ルイズの叫びを無視しながら、荒垣は食堂へと足を運ぶ事となった。
余談であるが、その途中で出会った他の使い魔は、漏れる事無く全員が荒垣に視線を送っていた。
94ルイズのおかあさん@代理投下:2007/10/06(土) 12:23:01 ID:70KQnar9
以上、代理投下完了。
……支援なくても割と何とかなるもんだな。
95名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 12:29:17 ID:qDhT1fRe
ちょっと意地悪な気持ちでニヤニヤしながら見ていた。
作者&代理の人GJ
96名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 12:36:30 ID:70KQnar9
>>95
あ、アンタって人はー!?
97名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 12:41:27 ID:nY3gFwgw
GJ!
マメな性格だけどだだっ子には厳しいなあ
いいねこういうのも
98名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 12:44:43 ID:0NuC8d45
む、すまない。
まさか気紛れでラーメン屋よってた間に更新されてるとは。
投稿乙。GJでしたー
99名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 13:15:47 ID:Cig8r4gc
ガキさんの人柄なんだろうけど、実はウィンダールヴなら
ルーンは右手だよなあと思ってしまった。
乙っしたー
100名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 13:52:19 ID:uCByyXoY
お、俺、ガキさんの靴下なら洗ってやってもいいぜ
101名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 13:55:07 ID:UvSfFUvc
とかいいながら摩り替えるつもりだな貴様
102名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 13:57:26 ID:uCByyXoY
やんねーよ!
足のサイズが違うから一目でバレるのが分かってんだよ!
103名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 14:02:03 ID:rQCpBNeq
コッソリ新品と取り替えるつもりだろこのソックスハンターめ
104名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 14:04:18 ID:jr/qhEaG
新城直衛が召喚されたらハルケギニアの戦争はどうなっちゃうんだろう、と思ったんだがこのネタは話題にでたことある?
105名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 14:14:29 ID:SPLl5Fx0
日本帝国召喚

 グチャ…… グチャ……

 ――!?

 ガリア軍陣地内に足を踏み入れた日本兵達は、我が目を疑った。
 彼等が見たものは、原型を留めぬ無残な死体の山と血の池……そして“何か”を一心に貪り喰らう1頭のドラゴンの姿。

「うっ!」

 むせ返る血の臭いとかつてヒトだった肉片の群れに、歴戦の将兵達も蒼ざめ、嘔吐する者すら出始めた。

 グチャ…… グチャ……

 が、唯一生きて動いていたドラゴンは日本兵達を無視し、先程から“何か”を一心に貪り喰らっている。
 日本軍が放った擲弾で傷だらけになりながらも、一心に喰らっている。

 ガクン、ガクン

 ドラゴンの背には、もはや事切れた騎士が乗っていた。(擲弾にやられたのだろう、血塗れだ)
 下半身が固定されているために落竜することはないが、騎竜の動きに合わせて揺れ動き、時にその背と触れて音を立てる。不気味なことこの上ない。
 目の前に広がる壮絶な光景に、日本兵達は暫し硬直した。

 グチャ…… グチャ…… ニタァ。

 と、突然ドラゴンが振り向き、哂った。
 血塗れの顔で、ヒトの手足が覗いた口で、人間臭い表情で哂った。

「ヒッ!?」

 熊や狼などとは次元が異なる凄まじい威圧感が、日本兵を襲う。
 彼等は恐怖を紛らわすため、手にする銃の引き金を引いた。

 ダダダッ! ダダダッ! ダーン! ダーン!

 多数の銃弾がドラゴンに殺到する。
 日本兵達が手にするは九九式小銃に九九式軽機。従来の6.5o弾から7.7o弾へと変更した、高威力の小銃・軽機である。

 バチッバチッバチッ!

 命中と同時に、激しい火花が散る。
 ……が、ドラゴンは平然としていた。
 『至近距離ならば人間3人を貫通できる』と言われる6.5o弾よりも、更に30%以上弾頭重量を増した高威力の7.7o弾――それを至近距離で無数に喰らいながら、だ。

 お返しとばかりに、ドラゴンがブレスを放つ。
 無数のニードルブレスが殺到し、その射界にいた日本兵数人がたちまち肉片となった。
106名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 14:15:57 ID:SPLl5Fx0
 ……凄惨な光景とドラゴンの威圧感に加え、銃も効かぬという恐怖に、流石の日本兵も恐慌状態に陥いりかける。

「総員散開! 対戦車戦闘用意!」

 が、ようやく登場した中隊長の号令で正気を取り戻す。
 彼等は即座に数人単位で分散し、再度銃口をドラゴンに向けた。
 後続の兵は直接乗り込まず、土嚢を盾に援護射撃を行う。
 ……が、やはり命中と同時に激しい火花が散るのみだ。
 九九式破甲爆雷や手榴弾を複数結束した急造の“爆薬”を抱えた兵が近寄ろうとするも、火炎放射器の様なブレスを吐かれ、生きたまま焼き尽くされてしまう。

「化け物が…… 陣地内の兵は至急撤収せよ!」

 中隊長は吐き捨てると、擲弾筒の集中攻撃を行うため、陣地内の兵に撤収を命じた。
 が、それより早くドラゴンが炸裂式のブレスを連射、前方の土嚢を吹き飛ばす。
 そして信じ難い速さで、陣地から飛び出した。

 外に出ると、ドラゴンはその見かけとはかけ離れた敏捷な動きで、短距離跳躍を繰り返す。
 ……これではとても擲弾筒では狙いが付けられない。小銃や軽機も同様で、同士討ちを恐れて碌に撃つ事が出来ない。
 体当たりや爪、尾により次々と日本兵は倒されていく。

 如何な『ドラゴンは空の生き物、陸上での行動は苦手』といっても、それは中長距離移動の話に過ぎない。
 その敏捷さは、到底ヒトが至近距離で対応できるものではなかったのだ。ましてや、コイツは――

 こうして好き勝手に暴れていたドラゴンだったが、その活躍も長くは続かなかった。
 というのも、突如現れた巨大な“光の刃”によって斬り伏せられたからだ。
 ドラゴンは真一文字に斬り裂かれ、血を噴出しながら吹き飛ばされる。

「なっ!?」

「あの傷口に向かって撃てっ! 早く!」

 目の前の出来事に驚愕しつつも、日本兵達はその言葉によって反射的に銃弾を撃ち込んだ。
 小銃・軽機に止まらず、手榴弾や擲弾までも放たれる。
 たちまち傷口から血や肉片が撒き散らされ、ドラゴンは絶叫を上げて絶命した。



「……や、やったのか?」

「恐らく」

 中隊長の言葉に、横で尻餅をついたエルフが頷いた。

「……さっきのは?」

 ……聞かずにはいられなかった。
 このエルフが大上段から勢いよく腕を振り下ろした瞬間、金色に輝く“光の刃”が放たれたのだから。

「攻撃魔法ですよ、私が使える最大レベルの」

「魔法……あれが……」

 何しろ、銃弾すらも防ぐあの竜を見事切り裂いたのだ、その余りの凄さに言葉が出ない。
107名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 14:17:45 ID:SPLl5Fx0
 だが中隊長の驚嘆の呻きに、エルフは無念そうに首を振る。

「本来ならドラゴン程度、あれで即死なんですけどねえ…… 最大出力でも手負いにさせるのがやっとでしたよ……」

「……どういうことだ?」

 そういえば、あのドラゴンは手強過ぎた。
 海軍の話では、7.7o弾でも十分倒せる相手だった筈だが。

 中隊長の質問に、エルフはドラゴンの死骸に目をやりつつ答えた。

「あいつ、狂っていたのですよ」

 人肉を喰らっていたのがその証拠だ。
 ドラゴンはどちらかと言えば草食よりの雑食で、肉は殆ど食べない。食べるとすれば滋養強壮用に屑肉を飼料――牧草に雑穀類を混ぜたもの――に混ぜた場合くらいで、この様に『それと判る状態のものを喰らう』ことなど有り得ないのだ。

「……ましてや人肉など、絶対に食べません。例え細切れにされていようが、『乗り手にそう命令されない限りは』ね。
 はてさて、『狂ったから喰った』のか、それとも『喰ったから狂った』のか――」

 何れにせよ、乗り手はまともじゃあなさそうだ。そんな奴を乗せるとは、と呆れて首を振る。

「何故、狂うと強くなるんだ?」

「人間と同じですよ、“火事場の馬鹿力”って奴です。 ……ま、ドラゴンの場合はより厄介ですが」

 ドラゴンは、肉体的にも魔力的にも本来の能力の1割も発揮していない、と言われている。
 が、発狂するとこの休眠している能力の一部が開放されるのだ。
 ……当然、休眠していた魔力回路も。

「銃弾の命中と同時に激しい火花が散ったでしょう? あれは防護結界です、あのドラゴンは狂う事によって、“一時的に”とはいえ魔力出力が何倍にも膨れ上がったのですよ。 ……防護結界を展開できるほど、ね」

 銃弾をも弾く“魔法の鎧”に身を包み、普段の数倍もの筋力で暴れ狂うドラゴン――それが彼等が相手にしたモノの正体だ。

「何たる不運……いや、必然か?」

「いえ、やはり“不運”でしょうね、それもかなりの。ここまで見事に狂うのは中々……」

 敵を追い詰め過ぎたかと反省する中隊長に、エルフはそうではないと首を振る。

「不運、か……」

 中隊長は大きな溜息を吐き、呟いた。

 辺りには多数の日本兵が横たわっている。
 丘のガリア軍を掃討したことにより、40人近い死傷者を出した。
 ……その2/3が、あの狂ったドラゴンによってもたらされたものだ。

 ――もしあのドラゴンがいなければ、被害はもっと少なかっただろうか?

 そう思わざるを得ない。
 が、いくら考えても答えはでなかった。
 確かにあのドラゴンは凶悪だったが、それは敵陣地の火力とて同様だ。運不運でどちらにでも転んだことだろう。
108名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 14:17:51 ID:Xy09ZprJ
他所からのコピペするな
109名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 14:19:07 ID:SPLl5Fx0
「まあ過ぎたことは仕方が無いでしょう。何れにせよ我々は敵地上軍の殲滅に成功しました、後は無防備な支庁舎を占拠するだけです」

「……ああその通りだ」

 中隊長は、自分達が戦争をしていた事実にようやく気付いた。
 ……そう、これは今までのような“メイジ狩り”なんかではない、正真正銘の戦争なのだ。

 そんな当たり前のことに、だが支隊内の将校で最も早く彼は気付いた。

「第二小隊は死傷者を収用せよ! 残りは直ちに支庁舎に向かう!」

 中隊長は最も損害の大きい第二小隊に後始末を任せ、先を急ぐ。
 その前に、と彼はエルフを見た。

「……ところで、何でさっきから座り込んでいるんだ? 出発だぞ?」

「……腰が抜けたんですよ。十分な準備もなく、無理矢理あんな大魔法を使ったから」

 エルフは実にバツが悪そうだ。
 そんな彼に中隊長は苦笑し、肩を貸す。

「礼は言いませんよ?」

「俺も言わんから構わん」

 これでチャラだ、と中隊長。

「…………」

「…………」

 二人は暫し無言でお互いを見、ついで笑い合った。



 その後、支庁舎は抵抗することなく門を開き、支庁舎に日本旗が翻った。
110名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 14:20:24 ID:uCByyXoY
>>108
マジすか?
読みふけってた
111名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 14:21:10 ID:b9kKefhw
つか他所からのコピペもそうだけど投下宣言せずにやるな
112名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 14:22:01 ID:wABolAcH
>>105-109
乙です。
ゼロ戦の製造元が来てしまったらハルゲキニア全土がこうなりますなww
エルフが協力してるのは「虚無」を滅ぼすためでしょうか。
113名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 14:22:33 ID:iIqhPadi
シルフィー「お城についたら、いっぱい食べる! お肉いっぱい食べる! るる! るーるる!」
114名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 14:22:55 ID:LQ+Cyo1j
ゲームタイトルのほうそくがみだれる!!
115名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 14:25:48 ID:HVkOTOlb
何だ荒らしか
116名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 14:27:35 ID:Xy09ZprJ
>>110
まじっす。

ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1187842098/599
ココの作品、ゼロの使い魔とはまったく関係ない話です。
117名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 14:31:51 ID:8pZwEphb
>>104

「A君の戦争」の小野寺剛士召喚も見てみたい。
総帥ではないから、役立たずだと思うけどね。

>>105-109

巡回先をコピペすんなよ。

>>112

この帝國に協力してるのはダークエルフで、エルフとは敵対関係。
118名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 14:35:23 ID:/om1lwba
まごうことなき荒らしだな。
向こうと噛み合わせでもしたいのか?なりっこないけどな。
119名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 14:39:51 ID:nGiqRamA
本気で帝国召喚やらかしたらすごいと思うが 作品のキャラ じゃ無いのだな

そういえばこんなのがあったのを思い出した
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/9191/1183995266/
120名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 14:40:35 ID:uCByyXoY
>>116
荒らしのやることはよく分からんす。
121名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 14:47:21 ID:3LtAyMcE
秋になるとゆるんだ人が増えるからな
色んな箇所が
122名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 14:52:19 ID:Bxbq/q8H
それを言うなら春ではないのかね?
123名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 15:09:09 ID:UvSfFUvc
ああ、物理的に緩む人は増えてくるなw
124名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 15:11:59 ID:UvSfFUvc
物理的じゃないな、外観的に、か
125名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 15:14:30 ID:blUc50cY
>>119
仮に本当に帝国召喚やらかした場合、その投稿先は避難所スレか?
そっちでも半分スレ違いな気がするが。

いや、実在人物・実在団体等という括りなら桶なのか?
126名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 15:16:44 ID:uCByyXoY
>>125
スレタイには『あの作品のキャラが』って付いてるから…、
…どーなんだろうね!?
避難所?
127名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 15:18:44 ID:HVkOTOlb
実在の人物だと作者の解釈で性格や言動が左右されるオリキャラになるからダメ
って昔エロい人が言ってた
128名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 15:20:46 ID:IFYfXWsm
戦記物をあされば帝国くらいいくらでも出てくると思うけどな。
この作品の帝国を……というのであればいいんじゃないか
129名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 15:21:51 ID:8+0RQoBq
>>125
いや自衛隊が〜スレ分家に立ててやるべきかと、あそこ萌えスレもあるし
130名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 15:23:39 ID:/9d4/dyS
>>127
実在の人物っつっても、司馬遼太郎の○○さんみたいな
ある程度、脚色された形でならいいって話もあったな。
131名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 15:24:31 ID:7dzZJ37u
>>129
軍事談義で埋まりまくるからな、とてもじゃないがここでも避難所でも無理だろう。
132名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 15:30:09 ID:7vJxiLpk
1000なら続き書く
133名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 15:31:31 ID:iIqhPadi
スレの雰囲気を変えるために小ネタ投下。良いかね?
134名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 15:32:17 ID:/BxPZL5s
よそに専門スレがあるね

自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた(分家)
ttp://jbbs.livedoor.jp/movie/4152/
自衛隊が漫画、アニメ、ゲームの世界に召還されますた
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1162485120/
135名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 15:33:29 ID:7vJxiLpk
>>133
どぞ〜
13624の使い魔:2007/10/06(土) 15:34:27 ID:iIqhPadi
「ゼロのルイズが平民を召喚したぞ!」
「おいおい、あんまり召喚が出来ないもんだから、そこらへんの平民を雇ったんじゃないのか?」

失敗に次ぐ失敗を繰り返すこと24回。
ルイズの召喚魔法で現われたのは、ほっそりした黒髪の美人だった。

「ミスタ・コルベール! やりなおしをさせて下さい!」

あまりの事にやりなおしを要求するルイズだったが、コルベール先生はにべもない。
春の使い魔召喚は神聖な儀式だ、やり直しは認められないの一点張り。

「でもっ、平民が使い魔だなんて聞いたことありません!」
「実は私、平民じゃなくて貴族なんです」
「ええっ!?」
「なんですと!?」

召喚された使い魔の突然の発言に驚くルイズとコルベール先生。
貴族を召喚したとなると、場合によっては国際問題にもなりうる大変な事件だ。

「ほ、本当に貴族なのですか?」
「ええ、嘘です」

困惑しながら聞いたコルベール先生に、しれっとした顔で答える女性。

「本当は私、エルフなんです」
「ええええええ、エルフー!?」

ズサッと音をたてて女性から離れるルイズ。
他の生徒も一様に数歩後ろに下がっている。それほどにエルフは恐れられているのだ。

「どどどどどうせまた嘘なんでしょう? だって耳が長くないじゃない!」
「私の父はエルフだったんですが、人間だった母と恋に落ちて、私が生まれたんです。
でも、二人の仲を認めない周囲の人達によって二人は……そして私もあわや……」
「そんな事があったのですか……おかわいそうに、ミス、えーっと……」
「ひとみです」
「ミス・ヒトミ。それでは本当に、あなたはエルフの血を引いているのですね?」

悲痛な表情で同情したようにコルベール先生が言う。
彼は基本的に平民にも分け隔てなく優しい人物だ。
もちろん、ひとみと名乗った女性が美人だからというのも無関係では無いが。

「ええ、もちろん嘘です」
「なんですかそれはーっ!!」

ガクっとこけるコルベール先生。
周囲の生徒達も一気に脱力してしまう。
その中からいち早く立ち直ったのはルイズだった。

「ミスタ・コルベール! やっぱりこんな嘘つきの使い魔なんて嫌です!! やり直しをさせて下さい!」
「ダメですよミス・ヴァリエール。きちんと契約しないと、進級できませんからね?」
「ううううう……仕方ないわ。こうなったらさっさと契約よ」
「契約……さては私にインチキな商品を売りつけて身包みをはがそうという魂胆ですね?」
「そーゆー契約じゃないわよ!」
「そうですか、安心しました。ではこの契約書にサインをお願いしますね」
「えーっと、ここで良いのかしら……って、ちがーう! 貴方が私と契約するんじゃなくて、私が貴方と契約するのよっ!!」
「まぁまぁ、べつにどっちでも良いじゃないですか」
「良くないわよ! 大体何よこの契約書は! 『私は貴方に全財産を譲渡します』? こんな契約するワケないでしょう!」
「ちっ」
「アンタ今『ちっ』て言ったぁ!!」
13724の使い魔:2007/10/06(土) 15:35:46 ID:iIqhPadi
「しかたありません。お詫びに貴方と契約をしましょう」
「は、はじめっからそうすれば良いのよ」
「そのかわり、私の身の回りの世話と秘薬の原料を探してくる仕事、それと私の護衛は貴方がやって下さいね」
「逆でしょうがソレっ! って言うかなんでそんなに詳しいのよ!」
「ゼロの使い魔は全巻読んでますから」
「ナニよソレ?」
「もちろん嘘です。これなんてエロゲな小説なんか全然読んでません。
12巻なんか覗きとか百合とか大変な事になってるじゃないですか」
「キッチリ読んでるじゃないのーっ!!」
「タバサの冒険の2巻は今月発売なんですよね?
この近くにライトノベルが置いてる本屋さんってありますか?」
「知るかーっ!」
「でもラノベって店員さんにオタクの人が居ないとレーベルの絞りが甘かったり、在庫の揃いが悪くて大変なんですよシャナさん?」
「そーゆーこと言うの禁止! 二重の意味で禁止よっ!」
「うるさい! うるさい! って言ってください。メロンパンあげますから」
「要らないから黙れ!」
「24のひとみ実写ドラマも10月放映なのでお見逃し無く」
「ますます知るかーっ!!」

凄い勢いでボケるひとみと突っ込むルイズ。

「い…いいかげんに……ゼイ……ハァ……そのしょうも……ない発言を、やめ……ハア」
「あら、それじゃあ私は必要ないって事ですよね? では失礼しますねー」
「え!? あ、ちょっと! ハァ、ハァ、ってゆーか、ゼイ、しょうもない発言が、ハァアンタの存在意義なの……?」

ついに息切れしたルイズがゼーハーと息を整え、周囲の誰もがポカーンと呆れているうちに、スタコラと逃げ出してしまった。
既に息が切れて追いかける体力も無いルイズ。
この後当然、クラスメイトから「召喚した使い魔に逃げられた」と馬鹿にされてしまうのだった。
こうしてルイズの春の使い魔召喚儀式は失敗。
失意に崩れ落ちそうな少女は、追い討ちのように学院長室へ呼び出しを受けてしまう。

「ああ、きっと留年を通告されるんだわ……お父さまやお母様やお姉さまになんて言おう……」

思い足取りで階段を登り、いっそこのまま何処か知らない国に出奔してしまった方が楽かと思い悩みながら、
ルイズは学院長室の立派で大きなドアをノックした。
138名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 15:36:45 ID:b9kKefhw
だれだこいつw
支援
13924の使い魔:2007/10/06(土) 15:36:59 ID:iIqhPadi

「どうぞ、入って下さい」

中から女性の声が聞こえる。
しかし、それは秘書のミス・ロングビルの声ではなかった。
ついにセクハラに耐えかねて新しい秘書に代わったかと思いながらドアノブに手をかける。

「鍵はかかってますから。あと開けると爆発するトラップが」
「そんなワケあるかー! 見つけたわよ私の嘘つき使い魔!」

蹴破るぐらいの勢いで扉を開け、学院長室へ転がり込むルイズ。

「はい、嘘です」
「なんでこんな所に居るかは聞かないわヒトミ! とにかく私の進級のために契約しなさい!!」
「ダメですよルイズさん。先生をヒトミなんて呼び捨てにしちゃあ」
「誰が先生よ! もうアンタの嘘はお腹一杯なの!」
「いや、ミス・ヴァリエール。それは本当じゃ」
「え?」

ギギギと音がするような動きで首をめぐらせた先に居たのは、学院長のオールド・オスマン。

「ミス・ヒトミは今日から我が学院の教師になった。
それに伴い、ミス・ヴァリエールの進級は特例として認められたので、安心なさい」

優しく言葉をかけてくれる学院長。
しかし、ルイズにとってはもっと気になる部分があった。

「ヒトミ、先生?」
「はい」

あまりの理不尽な展開に目の前が暗くなる。
どうせオールド・オスマンは美人だからとかそんな理由で教師にしてしまったに違いない。
トリステイン魔法学院オワタ。
そう思いながら、ルイズの意識は暗転していった。

「ってお話が冒頭から全部嘘なんですけどね」

そんな声を遠くに聞きながら。
140名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 15:38:02 ID:bfG4f5JP
ひとみ先生か支援
141名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 15:38:11 ID:9XunRbho
チャンピオンのアレか、テンション高いなw
142名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 15:38:18 ID:MbX/z4cP
うそだっ!
143名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 15:38:49 ID:iIqhPadi
投下終了ー。
週間少年チャンピオン連載の「24のひとみ」から
嘘つき美人教師ひとみ先生召喚でした。

嘘ですけど。
144名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 15:39:10 ID:Ikm7aM1B
削除依頼出しとく。避難所に投下されたら規制する。
145名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 15:39:17 ID:+ioML+rV
嘘吐き女教師キターッ!

支援

>>138
週間チャンピオンで連載している漫画
「24のひとみ」
146名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 15:41:07 ID:FwvImp9O
これは所謂age厨かな
147名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 15:41:33 ID:b9kKefhw
>>145
ありがとー。
コミカルなキャラ好きだぜ。GJ!
148名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 15:41:39 ID:OtOTMRhd
あれ実写で出るんでしたっけ?


話を変えて、久しぶりに投下しますか。微妙な47分から。
149名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 15:43:35 ID:+ioML+rV
>>148
まさか「エージェント47」召喚ですか?
150T‐0+平面:2007/10/06(土) 15:44:51 ID:OtOTMRhd
あ、久しぶりすぎて名前忘れてた。
151名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 15:46:05 ID:iIqhPadi
>>148
いや自分も「ひとみ先生のフルネームってなんだっけー」とググってたら出て来てビックリ。
ttp://www.tbs.co.jp/program/24hitomi.html
152名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 15:46:30 ID:HVkOTOlb
シュワちゃん支援
153T‐0:2007/10/06(土) 15:47:19 ID:OtOTMRhd
じゃ、ひさびさに……

 数度目の激突の際、ターミネーターの体はとうとう硬く厚みある石壁を貫き、
 突き飛ばした2体のワルキューレもろとも壁の向こう側へと大の字になって倒れた。
 その上に、崩れた壁が岩石となって体に落ち、ターミネーターの足が言葉もなく跳ねる。
 タックルを敢行したワルキューレは2体とも肩口から潰れ、さらに落ちてきた岩によって完全に原型を失った。

「おっと、僕としたことが……平民相手に本気を出しすぎたかな?」

 気障ったらしく杖を翻し、額から落ちる汗もぬぐわず口元に笑みを浮かべる。
 ついさっきまでガタガタ震えていたのはどこのどいつだよ! とは、誰も突っ込まなかった。 

「ターミネーター……」

 自分の使い魔のなすすべなくやられる姿を最前列で見ていたルイズは、壁の穴から半分
 ほど突き出ている黒い脚がピクリとも動かないことを知り、その場にへたり込んだ。
 現実を受け止めたくない。そう思うと体が呆然として、力がうまく入らなかった。
 「しょせん、やるだけ無駄だったんだよ」と、歓声に紛れてどこからか声が聞こえる。
 落胆したような、舌打ち交じりの低い声だった。

 一頻りの歓声の後、自然と広場から生徒たちが去っていく。
 まだ興奮の余韻に浸り、その場で馬鹿みたいに騒ぐものも何名かいるが、大半の生徒は興味を散らし、
 ばらばらと自分の部屋なり、新しい遊び場なりに帰っていった。
 
 キュルケもそんな一人だった、応えるように馬鹿みたいな立ち振る舞いをするギーシュを見ていても楽しいはずはなかった。
 あの使い魔――『たーみねーたー』だったかしら? ――には少し、期待のようなものを感じていたけれど、
 あれじゃあさすがに死んでしまっただろう。まったくもって、おもしろくない。
 艶のある赤い髪をなびかせ、自分も部屋に戻ろうと踵を返した……のだが、振り向いた直後に袖を掴まれた。
 何事かと目を配らせてみれば、タバサが小さな手でくいくいと袖を引っ張っている。

「タバサ? どうしたの?」

 尋ねてみると、タバサは頭を左右に振った。


「まだ、終わってない」
154T‐0:2007/10/06(土) 15:49:02 ID:OtOTMRhd

「う、うわああああああああぁっ!!?」

 悲鳴。耳を劈くような強烈で悲痛な叫びは、唐突な破壊音と同時に響き渡った。
 振り向いた先の当人――ギーシュ――は、驚きと恐怖に腰を抜かしてしりもちをつき、
 不恰好に両手でがさがさと地面を弄っている。
 ギーシュの見上げる先には、ターミネーターの姿があった。皮膚のところどころ剥げ、
 うっすらと光る銀色の骨が垣間見えるという痛々しい面持ちにもかかわらず、やはりというか、一切の感情がそこにはない。
 ターミネーターの一歩後ろには、大きな穴の開いた石の壁があった。
 そう、彼はギーシュのもたれていた分厚い石壁を、背後からブチ破って登場したのだ。

「わ、わあっ!」

 しりもちをつき、虫のようにずるずる這い回るギーシュの手から、ターミネーターは一瞬の早業で杖を奪い取った。
 そして、次の瞬間にはバキキッと音を立て、杖を握りつぶした。
 もとより魔法を扱う精神力は切れ切れになっていたが、メイジが杖を折られた。
 大前提に従い、通常の決闘の場合この時点でギーシュの敗北は決定したのだが……、ターミネーターは止まらない。

「え!? だ、だめっ!!」

 ほとばしった悪寒からか、ルイズは素早く起き上がると共に駆け出し、じりじりとギーシュに迫るターミネーターの背にしがみついた。
 精一杯の力で何とか止めようとするが、しかし、彼は背中にルイズを引っ付けたまま、まったく問題なく動き続ける。
 屈強な殺人マシーンをか弱い少女一人で止めるには、土台無理があった。
 ルイズはただっ広い背中を掴む自分の手が、いつも以上に小さく、なんとも頼りなく見えた。

「だめよ、だめっ! それ以上やったら後々大変なことになっちゃう!
 あんたが強いのはわかったから、もう止めなさい!!」

 何とか肩によじ登り、精一杯耳元で叫んでやる。
 それでも、ターミネーターは変わることなく歩を進めた。
 元から短絡的だったルイズは、自分の言うことを聞かないこいつに、少しイラっとした。

「止めなさいって、言ってるでしょうが!! いい加減にしなさい! このオンボロっ!!」

 そして、キレた。
 
 同じ叫びでもギーシュのそれとは正反対の、怒りのこもったそれは、
 至近距離で耳に当てられれば間違いなく鼓膜が破裂するだろう強烈な音波。
 さすがのターミネーターも、凍りついたように動きを止めた。
 くるりと首をまわすと、ややむっとした顔つきで至近距離にあるルイズの顔を覗き込んだ。

 不機嫌に見える彼の顔は、近距離で見ると余計に怖かったけれど、ようやく止まった。
 額の汗をぬぐうルイズの口から、「ほっ」と安堵の息が漏れたのだった。
 
 ギーシュは腰を抜かしたまま、しかししぶしぶ降参宣言をし、決闘は終局を迎えた。
 ルイズは黙って踵を返したターミネーターの背にしがみついたまま、部屋へと戻るように指示を促した。
 道中、いい加減彼の服を握り閉めている手が痛くなったのだが、ターミネーターがタイミングよくルイズを持ち上げ、
 そのままゆっくりと地面に下ろしてくれたおかげで、とりあえず痛みを我慢する必要はなくなった。
 
155T‐0:2007/10/06(土) 15:50:13 ID:OtOTMRhd

 時を同じく、場所は変わり、学院長室――。
 
【炎蛇】こと、禿げ頭に汗を滲ませるコルベールと、長い口髭を撫で回すオールド・オスマンの二人が
 壁にかかった鏡――もちろん、鏡に映るものは、ヴェストリ広場での決闘生中継の様子――を見つめ、顔をしかめていた。

 ここに来るとたいてい落ち着かない様子を見せるコルベールはともかく、オールド・オスマンの表情に
 いつもの飄々とした面影は見られない。真摯な瞳で、ただじっと事の流れを見届けていたのだ。
 
 ちなみに、ミス・ロングビルには既に、この場から退出してもらった。
 コルベールがオスマンに“話すべきこと”を示した直後から、オスマンの表情は変わっていたのだ。
 ただ、オスマンは詳しい説明を大して受けもせず、コルベールの話の上辺をさらりと聞き流した後、
 さすが思い当たる節があるのか、腕を組んで物思いにふけ込んだ。
 そのしばらく後、ロングビルからの決闘報告を聞くなり、オスマンは何も言わず『遠見の鏡』を作動させたのだった。
 
 そして決闘が終わった今、鏡から映像が消えた。
 しばらく放心したようになっていたコルベールは、おそるおそるオスマンに話しかけた。

「勝ってしまいましたね」
「うむ……」
「それも、圧倒的に勝ちましたね」
「うむ……」
「ギーシュは『ドット』クラスのメイジですが、ああもあっさり勝つとは……
 彼はただの平民ではない! 初見から只者ではないと思っていたが、やはり彼は伝説の――」
「『ガンダールヴ』じゃな」 

 コルベールの言葉を引き継いで、つぶやくようにオスマンが続けた。

「そうですよ! これはものすごい大発見ですよ!」 
 
 精神的に高揚しているのだろう、コルベールは慌てて机上に置かれた古い本をめくり、もう一方の手で持っていたスケッチを開いた。
 それらに目を配らせ、自分で見合わせたあと、オスマンの眼前に見せびらかすように突きつける。
 決闘の最中からそれを何度も見せられていたオスマンは見飽きていたらしく、うんざりした様子でそれを手で払うと
 「わかったわかった」とばかりに大きなため息をひとつ漏らした。
 
 どうにも、嬉しそうではない。コルベールは疑問に思った。
 歴史的大発見を目の当たりにして、この人はなぜ、こんなにも気分が悪そうなのだ?

「伝説の『ガンダールヴ』か……。また厄介なものが転がり込んだもんじゃのう……」 

 顎鬚を撫で、片手で頭を抱えると、オスマンはコルベールに聞こえぬようため息を吐くと、
 心の中でぼそりとつぶやいた。 
156名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 15:51:21 ID:iIqhPadi
し☆え☆ん
157T‐0:2007/10/06(土) 15:51:37 ID:OtOTMRhd

 部屋に戻ると、急に疲労感が襲ってきた。
 肉体的にはそんなに疲れることをしてないから、たぶん、これは精神的なものからきているのだろう。
 おぼろげにそんなことを考えながら、ふらふらとおぼつかない足取りでベッドに倒れこんだ。
 ベッドが体の重さ分沈み込み、体に感じる適度な弾力さと柔らかさは、なんともいえぬほど気持ちがいい。 
 うつ伏せに付して顔をうずめていると、今度は眠気が襲ってくる。
 体を返し、ボーっとした瞳で天井を眺めているとき、視線の端に黒いものが映り込んで、
 ふと、思い出したようにルイズは言った。

「怪我のほうは大丈夫なの?」

 仰向けの状態で目線を下に配らせると、黒いものがはっきりと輪郭を現した。
 筋骨隆々とした男は言わずもがな、現ルイズの使い魔であるターミネーター『T-800』である。
 彼は物静かに仁王立ちし、ドアの傍からルイズのことを眺めていた。
 
「自然に治る」 

 彼は重苦しく閉じ合わさった口を少し開き、低い声で言った。
 彼の顔はいたる所に裂傷、打撲の傷跡を着けさせ、ひどいものでは皮膚がはがれ、血で滲んだ骨が垣間見えるほどである。
 ルイズはふーんと興味なさそうに返事をすると、のろのろと上半身を持ち上げ、ターミネーターを見上げた。

「ねぇ……ターミネーター。あんた、いったい何処から来たの? 本当に……本当に人間じゃないの?」 

 嫌に落ち着いた声でルイズが尋ねると、ターミネーターはルイズの目線まで体をしゃがませた。
 顔についた傷をより近くで見ることになったが、ルイズは傷そのものよりも、あることに目を奪われた。
 ターミネーターの右目上の裂傷、ほんの数センチ程度の傷であったが、中に見える、骨にだ。
 それは部屋に掛けられたわずかなランプの光を拾い集め、鈍く重々しい“銀色”に光っているのだ。本来、骨の色は白ではないのか、
 【白骨】という言葉もあるくらいだし……。 

 不意に、頭の中に映像が流れ込んだ。薄暗い世界、積み上げられたゴミ屑。間違いなく、昨夜見た夢……悪い夢だ。
 その夢の最後を思い出した。駆け出した自分の先に立っていたのは間違いなくこの使い魔。
 けれど、その顔は半分の皮膚が焼け爛れたように黒く禿げ、驚愕に体の動かない自分を、煤にまみれた銀色の頭蓋骨と、赤く光る目が見つめていた。
 
              ――――『おれはターミネーターだ』――――
 
 映像が脳に焼きつき、さらには最初に質問した時のターミネーターの答えが、映像にそっくりリンクし始める。 
 しかし、考えても使い魔について何の知識もない自分がわかるはずもなく、たまりかねて、こうした質問したのだ。
 
「おれはターミネーターだ。2029年から1994年のロスに送りこまれた後、理由はわからないが、ここに送られた。」 
「だーかーらーっ、その“ろす”とか2029年とか1994年っていつのどこよ?」
「おれのいた世界の地名と、年号だ。おれがもともと『造られた』世界では、人間は存亡を掛けて戦争をしている」   
「戦争って、そのくらい…………ちょっと待って、あんた今“おれのいた世界”って……?」 
 
 ターミネーターは「ああ」と頷いた。

「おれはこの世界とは、違う世界から来たようだ」
158T‐0:2007/10/06(土) 15:52:55 ID:OtOTMRhd
投下終了支援感謝。
短くて進んでなくて申し訳なし。
159名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 15:56:59 ID:HVkOTOlb
おつー
160名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 16:00:25 ID:b9kKefhw
ギーシュ死ななくてヨカター
GJ!
161名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 16:02:37 ID:L7h6dABT
支援しそこねた…
ターミネーターGJ
162名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 16:56:35 ID:pbpX60G8
今「空の奇跡SC」PSP版やってるんですけど。
それやってて、クローディア(クローゼ)に後を譲ったアノヒトがルイズに召喚されハルゲニアにきて、いろいろあった結果ルイズやアンリエッタなどに「おばあさま」って呼ばれて、トリスティンをいい国へと導く・・・。
なんてことを幻視(妄想)しました。
163名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 17:16:38 ID:a/vGHn1d
そうですか
164sage:2007/10/06(土) 17:28:24 ID:lYAD36XB
それはよかったですね
165名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 17:30:27 ID:eiTdYVcn
ああそう、自分で書けや
166sage:2007/10/06(土) 17:30:34 ID:ZxCSrPe4
なにこいつら
167名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 17:31:24 ID:HVkOTOlb
sageくらい覚えてから書き込みなさいよ
168虚無界行:2007/10/06(土) 17:33:28 ID:wVQUzvGd
皆さん乙。
そして相変わらず展開遅いですが、第3章の投下準備をば。

今回ルイズが出てないや。てへ(フィル・ローパー風に)
169名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 17:33:50 ID:z+R/Rpm5
「空の境界」のキャラ召喚はこちらでいいのかな?
170名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 17:36:32 ID:eiTdYVcn
避難所が理想的
171虚無界行:2007/10/06(土) 17:36:43 ID:wVQUzvGd
第3章 穏やかな朝に

翌日、まだ日が昇りきらぬ時間に南雲は目を覚ました。
ベッドに横になったまま再度目を閉じると、自身の『内』へと意識を集中し、全身の状態チェックを開始する。

異常無し。

(後はこの『使い魔のルーン』とやらか)
身を起こし、左手に目をやる。
これは契約完了の証だという・・・こちらの意思を訊かずに契約も何もないだろうに。
毒になるようなものではない、とはルイズの弁だが信用してよいものかどうか。
己の身にルーンを刻んでその作用を観察したメイジも居まい。
メイジ達自身も知らないような妙な効果が無い事を願うばかりだ。

南雲は部屋を出て学園内を散策することにした。
当分の間拠点となる場所の詳しい間取り・施設の位置等を把握しておきたかったのである。

日が昇り始めている。
静謐な空気の中、日の光が世界を夜から塗り替えようとしていた。
春の風も、夏の陽も、秋の月も、冬の雪も。
―――――その一つ一つが、思い出の背景を美しく、鮮明に彩っていく事だろう。
確かにここは、学び舎にふさわしい環境であった。

と・・・建物の角の手前で、角の先からパタパタと小走りで
こちらへ向かってくる足音を南雲は聞き取った。
足を止める。数秒後、洗濯物がうず高く積まれた籠を抱えた少女が現れた。
メイド服をきっちりと着こなしている。学園の使用人だろう。
黒髪とそばかすがよく似合う、素朴な感じの可愛らしい少女であった。

「?・・・えーと・・あの・・・」
メイジにも見えず、さりとて顔見知りの使用人でもない。
南雲を目にした少女は、しばし怪訝な顔で考え込んでいたが、
「・・・あ!?もしかしてミス・ヴァリエールが呼び出された使い魔の方ですか?」
すでに噂になっていた平民の使い魔の事を思い出した。
物を抱えていたのに思わずポンと両手を打ち合わせてしまい、「あわわ・・・」と慌てて抱えなおす。
172名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 17:37:01 ID:I/5YsSh4
終クロの悪役召喚ものってあったっけ?
173名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 17:37:08 ID:olnxxuDv
174名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 17:37:13 ID:r1GZUV5b
>>169
テンプレ読もうな
175名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 17:37:40 ID:qDhT1fRe
176虚無界行:2007/10/06(土) 17:38:46 ID:wVQUzvGd
「まぁ―――――そうだ」
その様子に内心苦笑しながら、答える南雲。
「これから洗濯かね?邪魔をしたようだな、済まない」
ひょいと少女の進行方向から体を外し、散策を続けようとしたが、
「あっ、あの・・・何かお急ぎの御用事ですか・」
少女の問い掛けに、再度足を止める。

「いや、来たばかりでここの事は殆ど分からなくてな。
 細かい間取りを知っておきたくて歩き回っているだけだ」
「はぁ、なるほど・・・お仕事熱心なんですね」
使い魔としての任務に燃えているのだとでも思っているのか、
好感の篭もった眼差しで南雲を見つめる少女。

「そうだ!もし良かったらお教えしましょうか?学園の中なら私、細かい所まで知っているから
 お役に立てると思いますが・・・」
「それはありがたいが、洗濯の時間は大丈夫なのかね?」
「大丈夫、それぐらいの時間なら余裕綽々です!」
ニコッと、愛らしい笑みを浮かべて少女は請け負った。
「そうか―――――では、よろしく頼む」
「はいっ。じゃあ、取り合えず洗濯場まで一緒に来てくれますか?あそこは開けているから、
 主な建物は全部見通せて説明しやすいし、良く分かると思います。
 あ・・・いけない」
しゃんと背筋を伸ばし、南雲を見据えると
「私、ここでメイドとして奉公させていただいてます、シエスタと申します。あの・・」
礼儀正しく自己紹介をした。

「南雲秋人。南雲が苗字であき人が名だ」
南雲も名乗る。このハルキゲニアに来てから、初めての穏やかな会話であった。
177名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 17:39:30 ID:Ikm7aM1B
態々ダイヤルアップ接続し直してまで書き込んでるウィルコム厨は何がしたい。
178名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 17:39:34 ID:qDhT1fRe
支援
179虚無界行:2007/10/06(土) 17:40:06 ID:wVQUzvGd
しばし後、ここは厨房。
今朝も早くから、コック達が貴族の朝食の仕込みで大わらわである。

そこへやってきたシエスタを見て、コック長のマルトーが声をかける。
「おう、シエスタ!何だ、もう洗濯が終わったのか!?今日は洗う物が多かったんだろ?」
「あっ、マルトーさん。ええ、今日はこちらの方が手伝ってくれて・・・。
 ミス・ヴァリエールの使い魔の南雲さんです。ほら、南雲さん」
グイグイと腕を引っ張られ、厨房の中へ入ってくる南雲。振り払うわけにもいかなかった。
水牛の突進すら片手で止めうる男が、今は少女1人に身の動きを任せていた。
―――――これもまた、南雲を良く知る人間が見たら驚愕するに違いない。

興味深そうに南雲を眺めるマルトー。
「ほぉ、その兄さんが・・・にしたって早かったな」
「はいっ!凄かったんですよー南雲さん!もう、こうやってドシャーッてなって、
 見る見るうちに綺麗になって、それをまた片っ端から物干しに―――――」
興奮気味に喋るシエスタ。よほど感動したらしい。

仕事中に時間を割き、親切に説明してくれた礼代わりに洗濯の手伝いを申し出た南雲だが、
その後の光景は確かに、ちょっとした見物であった。

洗濯に何か大仰な技を使ったわけではない。ただ、そのスピードが常軌を逸していた。
到底1回では洗えぬ量を、軽々とかき混ぜて洗い上げ、
これまた1人とは思えぬスピードとテンポで物干し台へそれらを掛けていく。
通常一時間はかかるであろう量の洗濯物を、20分足らずで干しまで完了したその手並み。
超人は、戦闘以外においてもその力を遺憾なく発揮していた。

―――――バイオニック・ソルジャーの生みの親であるダグラス・マクルーア博士が
先ほどの様子を見たら、果たして何と言うだろうか。

ともかく、その様子を熱く語られて職人気質の塊ともいえるマルトーも大いに感嘆した。
「へぇ!そりゃあ俺も見たかったな。
 世話になったな兄さん。礼だ。ちっと早いが、朝飯を拵えるから食っていきな。
 俺達が普段食ってるまかないだから、遠慮は要らないぜ」
「実は私も、南雲さんに朝ごはんをご馳走したくて連れて来たんです」
マルトーもシエスタも、100パーセントの善意で勧めているのは間違いない。
「―――――いただこう」
南雲は観念すると、用意された椅子に腰掛けた。
180名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 17:40:33 ID:b9kKefhw
支援する!
投下中は雑談自重しようか。
181虚無界行:2007/10/06(土) 17:41:11 ID:wVQUzvGd
ほどなく食事の用意が整った。
焼きたてのパンと熱いシチュー。数種類のジャムにバター。
新鮮な野菜を用いたサラダに、牛乳らしい飲み物。
異世界の料理がどういうものか多少気にしていた南雲だが、どうやらあまりかけ離れてはいないらしい。

南雲は一口一口、ゆっくり租借しながら食事を進めた。見事な味であった。
コックの腕はもちろん、食材自体も一流の物を使っている。
まかないだけでも、貴族の食事の贅沢さが想像できた。

「見事なものだ。貴族の食事を任されるとなると、やはり並みの腕では駄目なのだろうな」
表情のいつもの無表情であったが、賛辞に嘘は無い。

マルトーはそれを聞くと、大いに気を良くして語り始めた。

メイジは魔法を使える。そりゃあ大した物だし、おかげで生活が支えられてる。
だが、こうやって美味い料理を作るのだって料理人にしか使えない魔法だ。
それをあの貴族のガキ共はちっとも分かっちゃいない。
美味い料理が無い人生がどんなに味気ないか、想像してみろってんだ、とこういう調子である。

愚痴も混ざった話ではあったが、陰鬱な雰囲気ではなく和やかに話は進む。
そして話題は南雲の使い魔としての話へ飛んだ。

「そういえば、いきなり召喚されたのならお洋服の着替えとか、色々要りますよね」
シエスタの何気ない一言。
南雲にとってもそれは考えるべき事であったが、並みの特殊部隊員でもナイフ1本有れば
密林の中、1年はサバイバル生活をするだけの技術を持っている。
ましてやこの男は超人であった。
人並みの食事や柔かい寝床など、一生無縁でも過ごせるに違いない。
182名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 17:41:15 ID:z+R/Rpm5
>>170
「避難所か理想郷」だろ
183名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 17:41:48 ID:olnxxuDv
支援
184名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 17:43:59 ID:b9kKefhw
支援する
185名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 17:44:11 ID:2+l9L4VJ
>>182
型月は避難所もNGです支援
186虚無界行:2007/10/06(土) 17:45:17 ID:wVQUzvGd
「生活の事については、主人と話が出来なくてな」
出来なかったというよりは南雲の方から一方的に会話を打ち切ったのであるが、その簡単な
言葉を聞いたマルトーとシエスタは、気の毒そうな顔を南雲に向ける。
主人の面倒臭がりか、ケチか・・・貴族側の一方的な理由で南雲の事を
放って置いていると考えたのである。

「ったく!本当に貴族ってのは・・・!平民の、それも使い魔の事なんざ適当で良いと考えてやがる。
 おい、秋人!腹が減ったらいつでもここへ来な。腹一杯食わせてやらぁ!」
力強く言うマルトー。いつの間にか呼び方が変わっている。
貴族は嫌いなようだが、太っ腹で気のいい『親父さん』であった。

「―――――そうだな。頼らせてもらおう。
 だが貰いっぱなしという訳にもいかん。俺に手伝える事があったらいつでも言ってくれ」
南雲も答える。その言葉に、「義理堅い所がますます気に入った」とマルトー。

それを見たシエスタも慌てて、
「あっ、じゃあほら、使用人の制服なら確か余っているはずですし、南雲さんが使っても
 大丈夫だと思います。
 その代わり、今度お洗濯のコツ教えてください。

 えと、それから・・・・」
一旦言葉を切るが、やがて意を決したように言い切った。
「・・・私も、名前で呼んでも良いですか?秋人さん、って」

年頃の少女の胸の内を察するのに、この様子だけを見れば十分であろう。
頬を染め、熱を帯びた目で南雲を見つめるその姿を。

「・・・・それは、構わないが」
187虚無界行:2007/10/06(土) 17:46:46 ID:wVQUzvGd
そんな2人を見たマルトーは、ニヤリと笑って棚へ近づく。
戻ってきた時手にしていたのは、一瞥しただけで高級と分かるワインだった。
「本当は平民はこんな上等なワイン飲めないんだが、まぁ黙ってりゃバレやしないだろうよ。
 ほれほれ、一杯いきな。新しく生まれた愛の前途を祝って、な」
「ま、ま、ま、マルトーさん!」
プシューと湯気でも出そうなほど顔を赤くするシエスタ。
かまわずマルトーは3人分のグラスにワインを注ぎ、1つを南雲に差し出す。

南雲はグラスを受け取る。豊穣な香りが漂ってきた。
人生の、大事な時に飲むのにふさわしい味だろう。

悲しい傷を癒す時にも―――――嬉しい心を、より膨らませたい時にも。

「―――――ありがとう」
・・・この言葉を口にしたのは、いつ以来だろうか?

胸を、腹腔を満たす温かいもの。
戦いの中で生きてきた男。戦いの中では機械となった。成り下がった。
究極の兵士、バイオニック・ソルジャー。

だが、南雲秋人は確かにこの一時、『人間』であった。

いつしか、南雲の鉄のような無表情に、別のものが浮かんでいる。
―――――微笑であった。

自分達がちょっとした奇跡を引き起こしたと知るわけも無く―――――
マルトーはまた豪快に笑い、シエスタは顔を真っ赤に染めながら、ニコリと微笑みを返した。


第3章―――――了
188虚無界行:2007/10/06(土) 17:49:25 ID:wVQUzvGd
以上ですー。後3回くらいで決闘イベントまで行きたいなぁ。
南雲をレベル75としたらギーシュは20くらいかしら。
189名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 17:51:15 ID:b9kKefhw
乙&GJ!ギーシュは生きてぇぇぇぇぇ!!



あと>>169>>182IDくらい変えれば?w
190名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 17:54:11 ID:dL0qV/4z
>>169>>182wwwwwwww
191名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 17:55:41 ID:qDhT1fRe
GJ
投下乙でしたー
192名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 17:56:39 ID:7nT2EXlB
俺は>>170に気を遣うべきだと思うぞ
>>170GJ
乙でした
193名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 17:57:42 ID:qDhT1fRe
194名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 17:59:43 ID:7nT2EXlB
>>193
よくわからんが?
195虚無界行:2007/10/06(土) 18:01:12 ID:ND4u2Q50
あ、感謝を忘れていた。俺のアホ。
支援してくださった方、ありがとうございました。
196名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 18:03:34 ID:+T8nKrsk
>>194
空の境界=型月
197名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 18:04:13 ID:qDhT1fRe
最初割り込んじゃって申し訳ない。
面白かったよー
198名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 18:07:51 ID:7nT2EXlB
>>196
検索して相関は理解した
でも、なんで特定の作者の作品を毛嫌いするんだ?
199名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 18:08:59 ID:soLpkBNQ
詳しくは言わないが型月関連はとんでもなく荒れるから
200名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 18:09:37 ID:T9KZ/VpU
>>198
避難所の毒吐きの過去ログあさってこい
201名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 18:09:40 ID:WVKOVg8a
>>198
荒れるらしい、月関連は。
202名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 18:10:14 ID:/Z/R6BgZ
腐女子と一緒
通った後は何も残らない
203名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 18:12:00 ID:ZEW6qyOA
それに、月関係は単独スレあったんじゃなかったっけ。
もう消えてる?
204名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 18:12:12 ID:aybQvM0O
>>198
そうやって話題に出すこと自体が忌避されてる。
自覚は無いだろうが、君のやってることは、ID:z+R/Rpm5と大差無い。
205名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 18:17:39 ID:wjicA5LC
ここの住人が理不尽に他作品を嫌ってるからこのスレが荒らされるんだな
206名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 18:22:58 ID:/pZH4lRD
スルー
207名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 18:23:05 ID:+agZzqX0
まあその落ち着け
208名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 18:27:37 ID:EH+iLDV9
解りやすく言えば、FANを捌けないから。
扱いムズイもん
209名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 18:27:52 ID:uCByyXoY
虚無界行氏 GJ!!
南雲のビジュアルイメージがBLAME!の霧亥になるのは何故なんだぜ
210虚無界行:2007/10/06(土) 18:37:14 ID:ND4u2Q50
>>209
どうもです。南雲って実年齢50越えてるのに、
えらい若いんですよね。実際老化は遅いんですが、挿絵でみると
20代にしか…。
211名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 18:39:56 ID:kp8NHvzO
>>210
遅れたが乙です
212名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 18:41:08 ID:+ioML+rV
決闘イベントはどうするんだろう?

好戦的なキャラなら簡単に喧嘩になるが…


モグラに一肌脱いでもらう?
持っていた宝石か何かにモグラ突進

殴り飛ばす

ギーシュ「何するだ〜!許さん!」
213名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 18:48:55 ID:b10wBjRA
>>212
そいつは野暮ってもんスよ。
楽しみに待ってましょうや。
214子守唄:2007/10/06(土) 19:02:48 ID:7QD0BMDt
箱根のみなさーん! ジャック・バウアーですよー!
って訳で投下いいかな? いや投下すんのはジャック・バウアーじゃなくてハクオロさんなんだけども。
215名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 19:04:12 ID:IFYfXWsm
いいともー
216白き使い魔への子守唄 1/7:2007/10/06(土) 19:04:25 ID:7QD0BMDt
帰還したルイズ達はさっそく学院長室へ赴き、オスマンとコルベールに報告する。
ミス・ロングビルの正体が土くれのフーケだったという事実は、
彼女の色香に全力で騙されていたオスマンとコルベールにとって相当の衝撃だった。
オスマンは酒場で偶然出会いお尻を触っても怒らなかったから秘書に採用したと言うし、
コルベールも実はロングビルに宝物庫の弱点を聞かれてペラペラ喋っちゃったりしてる。
大丈夫かこの学院。

   第9話 ルイズと踊れ

「ま、何はともあれみんな無事でよかったよかった!
 君達に『シュヴァリエ』の爵位申請を王宮にしといてやったから、
 その冷たく蔑むような視線はそろそろ勘弁してくれんかのー」
学院長の身でありながら下手に出るオスマンに皆一様に呆れたが、
シュヴァリエという餌に釣られたルイズとキュルケはすっかり上機嫌になる。
だが、ふいにルイズの表情が陰った。
「……オールド・オスマン」
「む? 何かね、ミス・ヴァリエール」
「あの……その、えっと」
ルイズは、自分達の後ろで控えているハクオロへ視線を向けた。
感情の読めない表情で見つめ返され、すぐにオスマンへと向き直る。
「……ハクオロには、何もないのでしょうか?」
「彼は平民の上、お前さんの使い魔じゃからのう。
 いわば彼の手柄は主の手柄、彼への褒美は君達がシュヴァリエの称号を得る事じゃよ」
「じゃ、いらないわ」
あっけらかんとした口調で突然とんでもない事を言うキュルケ。
さすがのタバサも驚いた。
「あー、それは、ミス・ツェルプストー……シュヴァリエの爵位を辞退する、と?」
「シュヴァリエの爵位くらい、いずれ自力で取るからいいわ。
 それに、ハクオロは私からの贈り物を受け取らなかったのに、
 私だけ受け取るっていうのは、どうもね」
キュルケは後ろにいるハクオロに振り向いて、ウインクを決める。
「ま、待ってくれキュルケ。剣の件だが、自分は結局あの剣を折ってしまった。
 本来弁償しなければならないのに、君はそれをいともたやすく許してくれたろう。
 だから、私の事など気にせずシュヴァリエの爵位を得るべきだ。
 私抜きにしても、君達一人一人の功績は十二分に大きいものだ」
「そうね。誰一人欠けていてもフーケを捕まえて天照らすものを取り返すのは不可能だった。
 四人全員が力をひとつにしたからこその功績なの。
 だから、ハクオロがいなければ私達は生きて帰る事すらできなかったかもしれない。
 そのハクオロのご褒美が、私達への爵位だというなら、本当にいらないのよ」
「キュルケ……」
「オールド・オスマンや、あなたの言う事はよく解るわ。間違ってるとは思わない、でも。
 あなたからの贈り物はこんな形じゃなく、あなたの手から直接渡してもらいたいもの」
どちらからともなく、キュルケとハクオロ双方が微笑む。
すっかりなごやかな空気に変わったところで、タバサも口を開いた。
「私もいらない」
なごやかな空気がまた驚きに染められるが、キュルケだけはクスクスと笑っている。
「あら、どうして?」
「もう持ってる」
「そう」
そして、ルイズ。今度は彼女が何か言い出すだろうとオスマンとコルベールは視線を向ける。
キュルケとタバサも、ハクオロもルイズに視線を向けた。
217白き使い魔への子守唄 2/7:2007/10/06(土) 19:07:03 ID:7QD0BMDt
ツェルプストーのキュルケが辞退し、タバサまで辞退した今、
ここで自分だけシュヴァリエの爵位をもらいますなんて言ったら、
空気読めないとか浅ましいとか、貴族として非常によろしくない評価を得てしまう。
『ゼロのルイズ』としてコンプレックスを持っていたルイズにとっては、
喉から手が出るほど欲しいシュヴァリエの爵位。しかし、しかし!
「……わ、私も辞退します」
精いっぱい強がって、何ともないって表情の裏で、号泣するルイズ。
わざわざつき合う事ないのに、とキュルケは呆れ顔を浮かべながら、どこか嬉しそうだ。
ハクオロも「もったいない」と溜め息をついている。
コルベールは困り顔、オスマンは残念なような嬉しいような曖昧な表情。
「どうやら三人とも、シュヴァリエ以上に大事な貴族としての精神を持っているようじゃ」
貴族としての精神。
そのキーワードに、ルイズが反応する。
(貴族……貴族としての、精神……)
ギュッと唇を噛んだルイズを見て眉根を寄せながらも、オスマンは話を終わらせようとする。
「では、とりあえずこれにて解散とするかの。皆、ご苦労じゃった。
 今宵はフリッグの舞踏会、主役は諸君等三人。思う存分楽しんでおいで」
キュルケとタバサが一礼し、ルイズは、拳をきつく握って、吐き出すように語り出した。
「も、申し訳ありません! 天照らすものが奪われたそもそもの責任は、私にあります!」
いったい何度驚かされればいいのか、とコルベールはすっかり驚き疲れている。
一方オスマンは「ほう?」と余裕たっぷりだ。
「あの晩……私は塔の外壁に魔法をかけてしまい、その、失敗しました。
 ご存知かとは思いますが、私の魔法は失敗すると爆発を起こします。
 外壁が私の爆発で崩れた直後、土くれのフーケが現れて……」
「なるほどのう。フーケ如きに破られる壁ではないと思っていたが……。
 しかし魔法の失敗による爆発か。それが固定化などに変な作用を起こしたのかのう」
「今まで黙っていて、申し訳ありませんでした。いかなる罰でも……」
「いや、罰など与えんよ。失敗魔法程度で崩れる壁が悪い、我々の管理責任じゃよ。
 さ、舞踏会に備えて着飾ってきなさい。あー、それと、ハクオロ殿は残るように」
今度こそお開きと思いきや、ハクオロだけ残るように言われ、ルイズは困惑した。
だがハクオロはそうではないらしく、残される心当たりがあるようだ。
「あの、ハクオロに何か?」
「何、たいした事ではない。ちょっと世間話でもしようかと思っての」
どうやらハクオロだけを残したいようだと察したルイズだが、
当のハクオロはそうなるつもりは無いらしい。
「何の話なのかは想像がつく。だが、ルイズもこの場に残して欲しい。
 彼女は無関係ではないと……私は思う」
「ふむ……。ミス・ヴァリエール、どうするかね?」
218名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 19:08:23 ID:j+LMaIQh
しえんするぅーものぉーおれたちしえんするものーヘヘイヘイ♪
219白き使い魔への子守唄 3/7:2007/10/06(土) 19:08:36 ID:7QD0BMDt
キュルケとタバサ、それからコルベールも去り、
学院長室にはハクオロとルイズ、オスマンが残った。
オスマンは早速、取り返してもらった天照らすものを机の上に置く。
「報告では、ミス・ヴァリエールがこの腕輪の力を引き出したそうじゃな」
「ええ。土くれのフーケは、クスカミの腕輪を使えなかった。
 なのにルイズには使う事ができた……その理由をご存知なら教えてもらいたい」
「クスカミ……とな?」
オスマンの双眸が細まり、ルイズもクスカミの腕輪という単語を奇妙に思い眉根を寄せる。
「……なぜか、この腕輪の起こした雷光を見ていたら、その名を思い出した」
「ほう。やはり、そうであったか」
「オールド・オスマン。クスカミの腕輪についてご存知の事を、すべて話して欲しい。
 どこで手に入れたのか。誰から手に入れたのか。使い方は。
 ルイズが使えてフーケに使えなかった理由は。この腕輪は私と何か関わりがあるのか」
「そんないっぺんに質問されてものー。とりあえず順番に話すとするか」

オールド・オスマンとクスカミの腕輪の出会いは約五十年ほどさかのぼる。
若き日のオスマンはある日、とある森でワイバーンと遭遇し襲われていた。
当事のオスマンにワイバーンを退けるだけの力は無く、殺されるのは時間の問題。
しかし突如、十本近くにも及ぶ数の巨大な雷光がワイバーンに降り注いだ。
その天を照らすが如き凄まじき威力と閃光にオスマンは驚愕した。
いったいどんなメイジがこんな魔法を。
しかし、その場に現れたのは、獣の耳と尾を持った亜人だった。

「――亜人?」
ハクオロの問いに、オスマンがうなずく。
「奇妙な亜人じゃった。亜人は人間と交流が無いとはいえ、ある程度は認知されておる。
 じゃが、奇妙だったのはその娘の着ておった服。
 我々人間の着る服とはまったく異なる装い、では亜人の装いか? そうではない。
 少なくとも人間、亜人を含め、ハルケギニアに住む者の衣類ではなかったのじゃ。
 私は考えた。この亜人の娘は、ハルケギニアの外、東方から来たのではないかと。
 そして……その娘の着ていた服、男女の違いはあれど、お前さんの服とそっくりじゃった」
「では自分は東方の人間……?」
「しかしすぐ、その娘が東方の者であるという考えは否定された」

――ここは、どこですか。なぜ、月がふたつあるんですか。
そう言って、娘は倒れた。ついさっきまで戦場にいたかのような重傷を負っていたのだ。
オスマンはすぐに彼女を学院に運び、手厚く看護したが。

「死んでしまった……と」
「うむ」
落胆するハクオロの言葉を、短く肯定するオスマン。
その瞳は憂いの色に満ちていた。今でも、その恩人の死を悼んでいるのだろう。
「クスカミの腕輪はその娘が持っていたのか」
「最初は先住魔法かと思ったのだじゃが、彼女は腕輪の力を解放しただけと答えてくれた。
 オンカミヤリューでもない自分が術を使えるはずがないと苦笑しておったな」
「オンカミヤリュー?」
聞き覚えのある、しかし意味の思い出せない単語にハクオロは腕組をして頭を捻る。
「オンカミヤリューとは、恐らく彼女のいた世界でのメイジを差すものと私は考えておる」
「彼女のいた……世界? まさか、月が」
「勘がいいのう」
220白き使い魔への子守唄 4/7:2007/10/06(土) 19:11:02 ID:7QD0BMDt
亜人の娘は、オスマンや学院の人々の服装や、何より耳や尻尾が無い事に驚いていた。
耳はあるにはあったが、毛が生えていないと驚かれた。
オンカミヤリューかと一瞬勘違いしたらしいが、
それでもあるべきものが無いためオンカミヤリューではないと判断されたらしい。
重傷で、助かるかどうか際どかった彼女は、オスマンにいくつかの事柄を言い残そうとした。
その中に結局オンカミヤリューとは何かというものは含まれていなかった。

「彼女は言った。自分はケナシコウルペという国の薬師だと。
 その国には、いや、その国があった大陸には月がひとつしかなかったらしい
 いくら東方といえど、月が一個減るなどありえぬ話よ。
 じゃから私は、彼女がいた国は、距離をという概念を越えた別世界だと考えた」

――ここがどこかは解りません。けど、きっと私のいた國から遠く離れた所なのでしょう。
息も絶え絶えになりながら、彼女は懸命に遺言を伝えた。
己の主であるケナシコウルペ皇(ウォルォ)に、最期まで尽くせなかった事を詫びて欲しい。
大恩あるワーベ様に、この腕輪を与えてくれた事を今一度感謝したい。
同じ薬師として尊敬するトゥスクル様に、もう一度ご教授願いたかった。
――そして、ハクオロ殿。
――あのお方が何者であるかは解らない。しかしあのお方はこの戦を勝利に導く最後の希望。
――ハクオロ殿から与えられた任務をこなせぬまま異境で果てる我が身を許して欲しい。

「そう、お前さんに与えたハクオロとは、その娘が言っておった名前じゃ」
オスマンに視線を向けられ、ハクオロは戸惑った。
話に入り込めずにいたルイズの混乱も、ここで一気に高まる。
「ですが、オールド・オスマン。なぜそのハクオロという名を、私の使い魔に?」
「ハクオロというその男は、顔半分を骨のような白い仮面で隠していたという」
「仮面……」
ルイズは改めてハクオロの仮面を見た。
確かに、あの白い仮面は綺麗に磨いた骨のように見えなくもない。
何かの生物? の、頭蓋骨を元に作ったと考えると、案外しっくりくる。
ハクオロは己の仮面を撫でながら、静かに息を吐いた。
「……しかし私はそのハクオロという男ではない」
「じゃろうな。彼女が死んだのは約五十年ほど昔の話じゃ。
 その時、ハクオロという男が何歳だったかは知らぬが、生きていたら五十を越える。
 お前さんはどう見ても二十から三十の間くらいにしか見えんのう。
 しかし同じ『月がひとつ』の世界から来たであるお前さんに相応しい名は、
 ワーベ、トゥスクル、ハクオロの三つの名しか知らぬ私にとって、ハクオロしかない」
「……その娘は、己の名は明かさなかったのですか?」
「…………」
221白き使い魔への子守唄 5/7:2007/10/06(土) 19:12:54 ID:7QD0BMDt
――ケナシコ……ウルペの王。ワーベ。トゥス……クル、ハクオロ。覚えたぞ。
――そ、その方々に、私の、最期の言葉を、どうか。
――うむ、伝えてみせるとも。いつかきっと、月がひとつの世界に行き、伝えるとも。
――腕輪、は、お礼に上げる
――礼など、私は君に命を救われたんだ。しっかりしろ、気を強く持て。……死ぬなっ。
――あり、がと。オスマン。
――最後に教えてくれ。君の名前は?
――私、は………………。
――聞こえない。……頼む、死なないでくれ。恩人の命も救えず、名も知れずでは……。
パクパクと、唇を動かす事しかできない亜人の娘。
オスマンは、彼女の手を握り、何とか言葉を聞き取ろうと口元に耳を近づける。
と。
娘は最後の力を振り絞って、オスマンの頬に、唇を。
驚いて飛び上がったオスマンが彼女の顔を見下ろすと、満足気に笑っていた。
死に顔は笑っていた。

「惚れると同時に逝きおった」
どこか遠くを見つめながら、オスマンは天照らすものを撫でる。
この老齢の男にも、そんな甘酸っぱい、しかし苦々しい過去があるのだと二人は知る。
「彼女を埋葬した私は、礼としてもらった腕輪を試してみた。
 だが何をしようと腕輪は反応せず、ディテクトマジックも無意味じゃった。
 しかし宝石の中で渦巻く蒼の奔流を見て、このアイテムはまだ生きていると確信した。
 そこで私は『天照らすもの』と名づけて学院の宝物庫に封印したのじゃ」
「それでは……なぜルイズがクスカミの腕輪を使えたのかは、解らないと?」
「それはむしろ、腕輪の本当の名前を知るお前さんが知ってるはずの知識じゃ。
 まあ記憶喪失じゃあ仕方ないがのー。ほっほっほっ」
楽しそうにオスマンは笑ったが、ハクオロは気難しい顔をしている。
自分の故郷だと思われる所の情報は得られたが、月の数が違う別世界などどう帰ればいい。
オスマンの言う通り、月の数が違って見える國など同じ世界にあるとは思えない。
月の数が違う、という現実を受け入れるならば、SF的な考えになるがここは別の星?
しかし異星人というほど自分達が違った存在には見えない。
パラレルワールドだとか異世界だとか、そういった単語の方がしっくり来る。
「……考えれば考えるほどに解らなくなる」
ケナシコウルペの薬師という娘も、ここがどこであるか解らなかった。
ならば同じ世界から来たと思われる自分も、
記憶を取り戻そうがここがどこでどうすれば元の世界に帰れるのか解らないのではないか。
「まあ、解らん事は無理に考えん方がいい。
 情報不足でどう考えても答えが出せぬだけだとしたら、無為に疲れるだけじゃ」
「……そうかもしれませんが……自分の場合、考える事で記憶が戻るかもしれませんし。
 あるいは何かきっかけが……そう、クスカミの腕輪のようなきっかけが」
「クスカミ、か」
オスマンは水パイプで一服すると、クスカミの腕輪を持ち、ハクオロを手招きする。
「あの、何か?」
「平民で使い魔だから褒美をもらえないお前さんに、私から特別サービスじゃ」
と、オスマンはハクオロに、恩人の形見を手渡した。
先の話で、オスマンの恩人に対する思い入れは重々承知している。
だからその形見を渡すという行為は、如何なる意味を持つのか。
「これは私がもらった物だが、記憶の手がかりとして持っておくがよい」
「……いいんですか?」
「どうせ使い方も解らんし、いつかお前さんが元の世界に帰れた時、
 せめて彼女の遺品だけでも……などとセンチメンタルなアイディアが浮かんでのう。
 さあ、そろそろ行かんと舞踏会に遅れるぞ。行った行った」
222名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 19:13:29 ID:PBDcyy6S
おれは〜バウア〜ジャック〜バウア〜
とどういう歌詞だったか覚えてないや支援
223白き使い魔への子守唄 6/7:2007/10/06(土) 19:14:35 ID:7QD0BMDt
ケナシコウルペという國と、その皇。
クスカミの腕輪の元々の持ち主らしいワーベという男。
薬師のトゥスクル。
白い仮面の男ハクオロ。

約五十年も昔の人物ではあるが、自分と何か関わりがないだろうか。
そう考え、月がひとつの世界の人々の名を心の中で反芻する。

ケナシコウルペの皇。ワーベ。トゥスクル。ハクオロ。
なぜだろう、そのすべてが、とても懐かしい。胸が、ざわめく。
特に、トゥスクルという名。
使役した事があるような、世話になった事があるような、
喪った事があるような、大切な何かに名づけたような、そんな不思議な名前。

「飲みすぎだぜ、相棒」
フリッグの舞踏会はアルヴィーズの食堂の上の階のホールで行われた。
陳列された料理の数々に舌鼓という気分ではなかったハクオロは、
一人宴の席を外れ、バルコニーで月見酒を飲んでいた。
「デルフ。私は、何者なのだろうか……」
「……さあねえ」
柵に立てかけられたデルフを相手に、ハクオロはワインを不味そうに飲む。
今宵の宴に出されたワインは年代物の高級品だが、気分の問題で味は変わる。
「あの爺さんの話は俺も聞いてたけど、正直チンプンカンプンだわ。
 ケナ……何とかやら、トゥススルだとか、変な名前ばかり出てきやがるし」
「ケナシコウルペとトゥスクルだ」
「あー、そうだっけ? それからあれだ」
「ワーベか?」
「クスカミ。雷を出す腕輪が、何でクスカミって名前なんだ?」
「確か……水の神の名前だったはずだ。
 火はヒムカミ、水はクスカミ、風はフムカミ、土はテヌカミ」
「相棒のいた世界の四大系統って訳か」
「ああ。フーケを捕らえた後、気がついたら自然と思い出せていた。
 多分クスカミの腕輪を見たのがきっかけになったのだろう」
「しかし水の神の力で雷たぁ、変わってるな。こっちじゃ風系統の力のはずだ」
「いや、そもそも雲は水蒸気の集まったもので、雷雲は高空で凍った水滴などが、
 上昇気流にあおられて摩擦される事で静電気を生じ……」
「悪ィ。相棒が何言ってんのかさっぱり解らねーや」
「そうか……。まあ風と水の両方が必要なのは間違いないな」
懐からクスカミの腕輪を取り出したハクオロは、宝石の中で蒼く渦巻く光を見る。
自分はこの腕輪を知っているようだが、原理はさっぱり解らない。
少なくとも科学的な技術で作られたものではない。
恐らく、元の世界でメイジに相当するオンカミヤリューが術を使って作ったのだろう。
だとするとワーベとはオンカミヤリューだという事か。
(ワーベ……オンカミヤリュー……ワーベ……賢大僧正(オルヤンクル)……ウ、ウル……)
「ウルトラマン?」
「いきなり何を言ってんだ相棒?」
「いや、何でもない」
ハクオロはグラスに残っていたワインを一気にあおると、
新しいワインの瓶を開け、空になったグラスをなみなみと赤く染め直す。
(赤い……赤、血、血……? 吸血……蚊? ……カ、カ……ミ、……カ……ユ……)
「かゆみ。……いや、違うな。むしろ……ムーミン……? ムーミンッ!」
これだ、とばかりに握り拳を掲げるハクオロ。明らかに酔っ払いである。
224白き使い魔への子守唄 7/7:2007/10/06(土) 19:16:19 ID:7QD0BMDt
「何意味不明な事を月に向かって吼えてんのよ」
プスッ。後頭部に何かが刺さった。
「アイダッ!」
ワインをこぼし、涙目になりつつ振り向くハクオロ。
そこには白いパーティードレスに身を包んだ、可憐な美少女姿のルイズがあった。
ただし右手にはフォーク。
「またそれか!」
「な、何よ。こんな所でいじいじ飲んでる方が悪いのよ。……せっかく着飾ってきたのに」
最初は凶器に目が行ったハクオロだが、改めて見直してみれば、
なるほどルイズのドレス姿は清楚で可憐で美麗でと褒め言葉がいくつも浮かぶ。
しかし。

「フォークのせいで台無しだな」
「アンッ!?」
ルイズのガン飛ばし。
「いえ、何でもないです」
効果は抜群だ。

「しかし、よく似合っている。それならダンスの相手にも困らないだろう」
「相手なんていないわ」
場の空気をなごませようと言ったが、ルイズはぶっきらぼうに切り返してきた。
もしかして、馬車の上で頬をはたいた事をまだ怒っているのだろうか。
「だから、踊って上げても、よくってよ」
「……はい?」
いきなり想定外の発言。
仮面の下で目を丸くするハクオロと、顔を真っ赤にしながら手を差し出すルイズ。
しばし、沈黙が流れ、ハクオロはルイズの手を取った。
「私のような素性の知れぬ者が相手でよろしければ」
「素性なら知ってるわよ。あんたは、私の使い魔でしょ」
二人は一緒にホールへと向かい、ダンスの輪に加わる。

武芸の心得はあるらしいハクオロだが、ダンスの心得は無いらしく、
ぎこちない踊りになってしまったものの、
ルイズがうまくリードしてくれたおかげで何とか形にはなっていた。
「ねえ、ハクオロ。……あの、ごめんね」
「ん? 何がだ?」
「馬車で叩かれた時、私、謝れなかったから」
「自分も、叩いたりして悪かった」
「あんたはあの後すぐ、謝ったじゃない。だからいいのよ」
「そうか」

二人は踊る。夜空に浮かぶ双月のように寄り添って。
しかしいつか別れが来る。
ハクオロが、月がひとつしかない世界から来たのなら。
ホールで踊る双月も、いつかひとつに欠けてしまうのではないか。
そんな不安を、ルイズは胸の奥の扉にしまって、鍵をかける。
225子守唄:2007/10/06(土) 19:18:06 ID:7QD0BMDt
という訳でオスマンの恩人は、前大戦の折ハクオロ陣営にいた人でした。

NGシーン
「彼女を埋葬した私は、礼としてもらった腕輪を試してみた。
 だが何をしようと腕輪は反応せず、ディテクトマジックも無意味じゃった。
 しかし宝石の中で渦巻く蒼の奔流を見て、このアイテムはまだ生きていると確信した。
 そこで私は『シャイニングフィンガー』と名づけて学院の宝物庫に封印したのじゃ。
 その後、指輪じゃなく腕輪なんだからもっと相応しい名前があるのではと思い至った。
 三日三晩考え思いついたその名前『バスターコレダー』という。
 しかし『バスターコレダー』使えるかどうか実験するたび、
 大声で叫びまくって喉に負担がかかり慢心相違になってしまうので、
 今度は『ライトニングプラズマ』と名づけてみたものの、
 いちいち精神力を極限まで燃焼させるのがしんどいものだから、
 新たに『シャインスパーク』ってつけてみたけどペダルを踏むタイミングが――」
最終的に採用された『天照らすもの』という名前が出てきたのは108個目だったとか。

   わしの名づけは108式まであるぞ 完
226名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 19:23:02 ID:uCByyXoY
子守唄氏、トウカ乙です!
最後が酔っ払いで台無しwww

>>225
趣味に走りすぎです、オールド・オスマンw
227名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 19:25:59 ID:b9kKefhw
フォークはひどいよルイズさん。
GJ!
228名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 19:28:31 ID:soLpkBNQ
GJ、オスマン自重しろw
229名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 19:44:21 ID:rQCpBNeq
GJ!
オスマンのことだからNGシーンでは死体にセクハラってか死か(ryしてるもんだと
俺が不謹慎でした
シャインスパークってメトロイドか?
確かにあれはコツ掴むのに小学生だった当時一週間かかったなあ
230名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 19:54:40 ID:p4R7QIxJ
投下しますよー。2レス分の短編だけんども。
231名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 19:55:52 ID:rQCpBNeq
支援準備
232My name is…?:2007/10/06(土) 19:56:02 ID:p4R7QIxJ
最初にそう感じたのはギーシュとの決闘の時。
ゴーレムに殴られれば顔を腫らし、槍に貫かれたら内臓がぼーんと飛び出た。
でも死なない。普通に蘇ってギーシュをフルボッコして勝った。
次に頭を痛くしたのはモッド卿の時だ。
シエスタが半ば拉致られたのを憤慨した使い魔がモッド邸宅に突撃し、文字通り
全てを吹き飛ばして帰ってきたのだ。
余波でシエスタがアフロになっていたのは本当にどうでもいいことだろう。
そうそう、土くれのフーケの話も忘れてはならない。
巨大なゴーレムの右ストレートの直撃。
それだけで終わればいいが、今回のフーケは一味違う。
不死身っぷりをこれだけ主張していた使い魔だ。念を入れすぎて困ることは無い。
いつの間にか現れた巨大なリングにロープ。
弾力のあるロープに勢いよくバウンドし、∞の軌道を描くゴーレムの前へとその身を躍り出させる。
嗚呼、これこそがあらゆる敵対する存在を地に伏す最強にして絶対の連撃。
振り子の動きに遠心力を加え、全体重を乗せた拳を叩きつける絶技。
デ ン プ シ ー ロ ー ル
倒れ伏すまで穿ち続く拳
そんなどこぞの型月風な名を持つ乱打は使い魔をミンチどころか何かわからない肉片に変化させた。
これで死んだ!勝った!第三部完!!
そう思っていたときが私にもありました。
普通に生き返りました。そしてフーケのゴーレムを盗み出された破壊の棒でぶち壊しました。
フーケがミス・ロングビルだったことは驚いたが、お花畑の蝶々を追っている使い魔のせいでどうでもよくなりました。
持っていた棒がいきなり小さな子供に変化したことなんか心底どうでもよく、
ついでにフーケも捕まえて私たちは学校に戻って勲章を授かりました。まる。
そんでもって次に大きな事件はワルドっち。
道中のごたごたは省いていきなりウェールズ皇太子暗殺の危機!
私は迷うことなく自分の人生を振り返っている使い魔を思いっきりワルドに投げつけた。
なにやら嫌な音で激突したおかげでとりあえずウェールズ様は助かりました。
ついでにワルドと使い魔が濃厚なキスをかましていたらしく、お互いが気まずくも熱っぽい目で見詰め合っています。
これこそファーストキスから始まる二人の恋のヒストリーですね、と冷静に分析。
そんなこんなでアルビオンから脱出。ワルドは愛のためにどこぞの首魁を殺ってくると気合充分。
なんか王侯派が逆転しそうだなー、と思いながら私たちは馬(?)でアルビオンから脱出しました。
しかしこの馬万能だなー、とか思っていると使い魔は誇らしげにしていた。
なんでも馬でも竜でも自在に操れるらしい。馬が。
馬じゃねえ、と皆の気持ちが一つになりました。いや実際馬というには何かが違うんだけど。
233名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 19:57:38 ID:rQCpBNeq
支援
234My name is…?:2007/10/06(土) 19:58:06 ID:p4R7QIxJ
大変です。なにが大変って、色々ですお母様。
戦争が始まりました。原作通りです。相手はレンコン記したです。間違えましたレコン・キスタです。
ついでに私も虚無に目覚めました。凄いよ私、やったね私。
おかげさまでけっこう好き勝手に使われています。チクショウ。
まあゼロと呼ばれなくてすむからいいかなー、とか思っていた矢先。
 撤 退 戦 の 殿 任 せ や が っ た コ ン チ ク シ ョ ウ
あんたらアレでしょ、虚無をドラ○もんかなにか勘違いしてませんか?
七万ですよ?たった一人で足止めしろって?またまたご冗談を(AA略)
でも言われたからにはやるしかありません。
  使  い  魔  が
どうせ死にはしないしー?死んでくれればオッケーオッケー?
使い魔を適当に褒めちぎって戦場に向かわせ、私は帰還します。
さあ久しぶりの学院だ。クックベリーパイが懐かしいわー、とか現実逃避しながら逃げ帰りました。

「のう棒王、デル何とか。余はなんでこんなところに居るのだろうかのう?」
「いやそりゃ相棒が口車に乗せられたのが悪いんだろ?」
「なぜ麿までこんな目に……」
『女の願いを叶えてやるのは男の甲斐性だぜ』
「のう、余は死ぬかのぅ?」
「それはねーな」
「というかどうやったら死ぬのだ貴様は」
『俺もそれを知りてーな』
「ふっ、王は死なぬか。ならば行こう!彼奴らに王の戦いというものを教授してくれるわ!」

結果から言ったら、いやもう壮絶なものでした。
なぜか爆発する釣竿に釣られた魚が戦場を大混乱に陥れ、おまけに謎の世界最速二本足で走ったほうが
速い馬がかき乱し、叩きつけるたびに雷を呼び出す破壊の杖。ついでに魔法無効化の剣。
ついでかよ!という声を無視しながら王は戦場をひた走る。
不死の肉体を持ちありとあらゆる死を乗り越えてきた最悪にして最凶の使い魔の王。
「いや、あのね。アンタっていったい何もんなのよ?」
「そんなことはもう告げたであろう!余の名は―――」
235名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 19:58:49 ID:dIrTuynP
ネタはあるし、このスレ見て書きたくなったんだけど
原作はまだ9巻までしか持ってない…
やっぱり全巻読んでからのほうがいいかな?
236名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 20:00:58 ID:p4R7QIxJ
以上です。支援ありがとうー
で、書き終わってから気づいたがルイズたちがもらったのって爵位だったよorz
出典は世の名はズシオから、ズシオでした。
正直瀬戸嫁よりこっちのほうが好き。
237名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 20:02:36 ID:b9kKefhw
おつかれちゃーん。
元ネタわからないけどとにかく不死身キャラなのね。
238名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 20:04:39 ID:/cFIvfTi
>>235
9巻までと既刊全て。後者の方がより優れておる。
239名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 20:05:16 ID:7QD0BMDt
ズシオはどこに行ってもズシオだなw
風雷や汁婆のみならず破滅の剣まで出てくるとは。
240名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 20:06:23 ID:dIrTuynP
>>238
了解! とりあえず全巻そろえてから来るよ
241名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 20:07:52 ID:EApxF/qB
チャーリールイズエンジェル
242名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 20:13:03 ID:Bxbq/q8H
乙です
ズシオが打ち切りになって久しいですが楽しめました
243名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 20:16:05 ID:RB6M7/JV
>>240
タバサ主役なら外伝2巻発売してからのほうがいいよ
244名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 20:17:31 ID:2HF6a001
ズシオってこんなキャラだったのかw 乙です。
245名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 20:58:11 ID:VAuNVFRm
>>232
乙です

ズシオは面白かったのにいつのまにか打ち切りになって作者はエースからガンガンに移籍してたな
246名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 21:58:14 ID:ln9graLV
今日は普段に比べて更新速度が比較的緩やかだな。
247名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 22:17:52 ID:Gl6WMe4+
この時間帯に一時間近く書き込みが無かったのは久しぶりな気がする。
248名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 22:22:30 ID:9VNQv9wZ
小ネタ投下よろしいだろうか?
249名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 22:22:55 ID:KcSePJbd
GOGOGO!
250名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 22:23:24 ID:+Nr3rx3u
だれか断る男がここに一人でもいるとお思いか?
迷わず進めぇっ!
251名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 22:23:35 ID:XOd59fBo
支援
252名無しさん@お腹しえんいっぱい。:2007/10/06(土) 22:24:35 ID:XOd59fBo
支援
253名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 22:24:58 ID:9VNQv9wZ
では投下


マダオな使い魔



「宇(略)」

珍しくルイズは一発で召喚に成功した。
爆発の煙が晴れて現れたのは…

「ああ…俺…今度こそ新しい仕事がんばるから……って…あれ?」

手に持った何かに語りかけるサングラスをかけた中年のまるでダメそうなおっさん…略してマダオだった。




「あれ?どうなってんだ?電話が切れたというか…夜から昼になってるというか…ここどこだぁ!?」

混乱するマダオ。ギャラリーもゼロのルイズが平民を召喚したとか、マダオを召喚したとかはやし立てる…
そんな中…ルイズは恒例のやりとりをコルベールとしてから混乱してるマダオに口付けた。
キスされたことに呆然となるマダオ。と、ルーンが刻まれた…サングラスの横に…
マダオも再起動し喋りだす。

「ちょ…お嬢ちゃん!?何やってんの!?俺既婚者なんだけど!?
ただでさえこないだの裁判のときやばいことハツにしちゃったのにこれ以上変な噂広まったら
マジで愛想つかされ…」
254名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 22:25:50 ID:XOd59fBo
変なところにしえんが入った。支援
255名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 22:26:00 ID:9VNQv9wZ
バリーン!!!

そんな音がした…見るとルイズがマダオのサングラスを手で握りつぶしていた。
周囲が呆然とする中、ルイズはコルベールに言う

「ちょっとォーーーー!?俺のグラサンーーーー!!高かったのにィーーーー!!」

「ミスターコルベール、もう一度召喚させてください」

「あの…今契約しましたよね?」

「サングラスにルーンが刻まれてました=あの男の本体はあのサングラスということです」

「で、では彼はなんだというのです?」

返ってくる答えが怖いがそれでもコルベールは尋ねた。

「あれはただのグラサンかけ機です」

「あの…グラサンかけ機って…」

「グラサンを掛けとく棒的なアレです」

「そんなものそのへんのフックでいいでしょう!?というか君の定義なら私はめがねかけ機だとでもいうのか!?」

「フックですよあんなの…ヒゲの生えた。あんたはハゲの」

「あっ!君っ!人が気にしてることを!」

「俺は人間だ!!」

「お二方…昔から人々の間では、
人の心というのがどこにあるのか取り沙汰されてきました…
人の心は心臓に?それとも脳に?私は違うと思う…それはきっとグラサ…」

「「君(てめぇ)に心はないのか!?」」

ドォン

そんな音がちょうどコルベールとマダオの間を通り過ぎた…
発生源を見るとルイズが杖を構えていた…

「お前ら、うるさいネ。ずべこべいわず召喚させるネ」

「「はい」」

有無を言わさぬルイズの迫力にいい年した男2人はうなずかざるを得なかった…

(お嬢ちゃんだ…声だけかと思ったら完全にチャイナのお嬢ちゃんだ…)

マダオには知り合いの誰かに見えたようだ…
256名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 22:26:02 ID:gvNC+RkH
>>229
いやいや、ペダル踏んで発動のシャインスパークって言ったら
ゲッタードラゴンだろ
257名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 22:26:59 ID:XOd59fBo
支援
258名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 22:27:01 ID:9VNQv9wZ
そして…

「宇(略)」

再び一発で召喚は成功した…煙のなかから現れたのは…

「「え?」」

「お♪」

呆然とするルイズとコルベールをよそにマダオが召喚されたそれを拾う。
そして自分の顔にかけた…そう、ルイズが召喚したのはグラサンだった…

「ふう…落ち着…」

バリーン

グラサンをかけて落ち着いたと言おうとしたマダオの台詞を最後まで言わせず
ルイズはグラサンを握りつぶした…
そして、再びコルベールにやり直しを求める…あまりの恐怖にOKを出すしかないコルベール。
というかルイズは返答を待たずして召喚を始めていた。



結局何度呼び出してもグラサン(しかも同じデザイン)しかでなかったためルイズはグラサンで我慢することにした。

ちなみに一度だけ変わったグラサンを呼び出したこともあった…
グラサンの癖に手足が生えたり喋れたりコンマとかいう名前持ちだったりしたが
コルベールとマダオも加わり速攻で破壊した。『ギャァァァ』とかいう悲鳴が聞こえたが気にしない。
3人曰く…

「気色悪い」

「何か危険な感じがした」

「かけたら鼻毛が巨大化したりしてマルハーゲとかいう連中とかと戦わされることになって
収集がきかなくなる気がした」

とのこと…




で、次に呼ばれた普通のグラサンと契約することにしたが口付けてもルーンが刻まれない…
コルベールの提案でかけた状態のマダオにキスしたらルーンが刻まれた…

その場にいたマダオ以外のものたちの心は

(やっぱりグラサンが本体なのか?)

と100%シンクロした。
ちなみにそのあとマダオはルイズに憂さ晴らしに殴られた
それとその夜、ここが自分のいた世界じゃないとわかると絶叫した。

「なんでだよぉ!!!何でよりにもよって仕事決まってハツと電話してるときに異世界召喚されてんだよぉ!!!
大体、使い魔ってなんだよ!!!家畜以下じゃねぇか!!!まだ、無職の方がマシだよ!!!
つうか、こんなところでも俺はグラサンしか価値がねぇのか!!!ちきしょう!!!」
259名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 22:28:08 ID:9VNQv9wZ
翌日…昼時にギーシュとメイドのシエスタとの間でトラブルが起こった。

「君のおかげで2人のレディの名誉が傷ついてしまったじゃないかどうしてくれるんだね?」

「アッハッハッハ!!すいません!!アッハッハッハ」

「アッハッハッハ!!…じゃないだろう!!馬鹿にしてるのかね君は…」

「いや〜…曾お爺ちゃんの口癖がうつってまして…」

「まあまあ、お若いの…その辺に…」

仲介しようとするマダオだったが…

「うおっ!?」

蹴躓いた…そして…

「あああーーーーーー!!!???こ、これは…」

見ていたものたちの目に映ったのは

「き、キン肉バスター!?」

「い、いや!長谷川バスターだぁぁ!!!」

マダオはなぜかギーシュにキン肉バスター…もとい長谷川バスターをかけていた…

「ギーシュ!!しっかりしろ!!死ぬなーーーー!!!」

「えええ!!??何でこんなことにぃ!?」

この後、復活したギーシュと決闘することになったがグラサンかけているうちは素手で
ワルキューレを砕けるほどの強さだったがグラサンが外れると一気に弱くなるという現象が起こったらしい…
最終的にグラサンかけなおしたマダオが勝ったようだが…



武器やにて…
ボロい剣を手に取るマダオ…と、剣が喋りだす

「おでれーた!おめぇ、使い手か!?」

「あん?」

「ふん…知らねえのか…まあいい…俺を…」

と、少し後からキュルケとともに来ていたタバサがマダオのグラサンを外した

「…あり?…あ〜…ワリィ…やっぱ勘違いだった…うん…別に買わなくていいや…」

タバサがグラサンを返す。

「あ〜…やっぱ、使い手か…俺を買え!俺を…」

外す

「やっぱ買わなくていいや…つうか、触るなや」

「ちょっとォ!?なにそれェ!?てめぇまでグラサンが本体扱いィ!?」
260名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 22:29:12 ID:XOd59fBo
支援
261名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 22:29:17 ID:9VNQv9wZ
7万の大群が迫る中、マダオに当身され非難させられたルイズが目を覚ました…

「ハッ!?マダオは!?」

「マダオならそこに…」

指差されたそこには…

「…ってグラサンじゃないのーーーー!!!」

「アッハッハッハ!!そうですよ、長谷川さんはグラサンですよ。アッハッハッハ!!」

「そうじゃなくてマダオがグラサンしかないじゃない!!!」

「そうよ。マダオはグラサンしかないよ」

「あのバカ残ったの!?まずいわよ…早く戻ってつれてこないとマダオ…」

「アッハッハッハ!!嫌ですよ。今戻っても全員アルビオン軍の餌食になるだけだし…」

「それによく考えてみよう!これ…ぶっちゃっけ、長谷川さんじゃないかい?」

「どっからどう見ても汚ないグラサンじゃない!!」

「いやいや、現実から目を背けずよく考えてみよう!コレと残ったヒゲ、ぶっちゃけどっちが本体だ?」

「あんたがが現実をしっかり見すえなさい!!」

「アッハッハッハ!!ミスヴァリエールもあっちはグラサンかけ機って言ってたじゃないですか!!」

「い、いや…えっと…そりゃ…そうだったけど…」

「アッハッハッハ!!…ん?」

シエスタは何かが落ちたのに気づき拾い上げたがどこか腑に落ちない感じだ…

「どうしたの?」

「あれ?なんで差し入れに長谷川さんに渡したはずの栄養ドリンクが…渡す物間違えたかな…
まあいいや…アッハッハッハ!!」
262名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 22:30:37 ID:9VNQv9wZ
その頃…マダオは…

「なあ…おっさん」

「なんだ?デルフ」

語りかけるデルフと応対するグラサンのないためおっさん扱いのマダオ。
心なしかどこか呆然といった感じがある…

「何でこんなことなってんだ?」

「…」

2人が見るのは現状の惨劇…数分前までマダオと激戦を繰り広げていたアルビオン軍は同士討ちしていた…
本来の目的を忘れ味方に攻撃をし始めたほうのアルビオン軍の兵士達は
なぜかマユゲが繋がっておりゾンビのように行動していた…
そして、そんな兵士達にやられた正気の兵士も同じように正気をなくす…
正気を失った兵士達の中には持ってきた食料をあけ宴会を始めている者さえいた…

「たしか、メイドの嬢ちゃんからもらった栄養ドリンクが割れたと思ったらこうなってたんだよな…」

「おっさんは何で平気なんだ?」

「…前に感染したことがあるからなぁ…しかし、グラサンねぇと落ちつかねぇなぁ…」



「アッハッハッハ!!思い出した!!長谷川さんに渡したの
曾お爺ちゃんがバクフとかいうのに処分頼まれた疫病がはいっとるけぇ、絶対に割るなっていってた
やつだったわ!!間違えて持ってきちゃってた!アッハッハッハ!!」



この日よりハルケギニアにマユゲが繋がり行動がおっさんになってしまうという奇病が蔓延する…
それの被害はアルビオンはもちろんガリア、ゲルマニア、ロマリアはおろかエルフ達の住む領域まで及んだ…
奇病の蔓延はタルブ村から治療薬のサンプルが発見され各所で治療薬が完成するまで続いたという…
中には巨乳な妹分が感染したり精神崩壊した母がそうなっててうつ病やノイローゼになった者もいたという…
まあ、後者は治療したら精神崩壊も治ってて結果オーライだったらしいが…
ちなみにこちらに来る前に一度感染しており平気だったマダオと剣なため平気なデルフは
一人と一本だけで感染者の群れに突入し繋がり眉毛をそり落とすというある意味7万のアルビオン軍を
相手にするよりタチの悪い治療方法の執行人に従事させられることになる…
なお、この功績が認められ何度も勲章やら階級を授与されそうになったが…
そのたびに受け取る直前ですっ転び長谷川バスターをかけてしまい一転して処刑されそうになりそうに
なったという…



「あ〜…俺の運が悪いのは自覚してんだが…なんで地の文までマダオ呼ばわり?」

あんたがマダオだからだ。

「…もう…どうでもいいや…」



投下終了。え〜…とりあえず…シエスタファンの皆様、なんかすいまっせーん!!
263名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 22:38:11 ID:FZ/C9b3S
マダオかよ・・・。しかもオチがRYO−Uかよ!!
でもってシェスタの曾爺さん坂本かよ!
GJ!(褒めてるようにみえねー)
264名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 22:38:46 ID:17uykNfy
乙〜。>>262
でも何を呼んだのんかさっぱりっすわ〜。
265名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 22:39:38 ID:HVkOTOlb
マダオ乙!
266名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 22:41:14 ID:HR8AHgXF
なんという大惨事……
これはGJと言わざる得ない
267名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 22:41:52 ID:foMTLzL1
シエスタ・サカモト自重しろwww
268名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 22:42:18 ID:dG59p6l/
乙!
>>264
銀魂からマダオ(本名シラネ)
269名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 22:42:51 ID:c8tA5B6Z
銀魂の長谷川泰三
270名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 22:44:35 ID:c/x/YwBa
キバヤシが呼び出されたらどーなるんだろ。
271名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 22:46:11 ID:/cFIvfTi
>>270
キバヤシ「人類は滅亡する!!」
ルイズ&キュルケ&ギーシュ「な、なんだってー!?」
キバヤシ「俺たちは…遅すぎたんだ…」
272名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 22:47:18 ID:17uykNfy
>>268 269 どもっす!
元ネタわからずでwiki登録でけねかったっすよ…。
273名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 22:48:25 ID:I0QT3CCL
キバヤシはなんかエルフ側っぽい

4と4と4、これの意味するところは以下略・・・的な何か
274名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 22:48:39 ID:vb5NoYKe
このシエスタのひいおばあちゃんは陸奥だろうか。快援隊が不時着したと勝手に予想。
275名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 22:49:33 ID:SmV6g2o3
あー、やたら笑ってたのはシエスタだったのかw
そういえば坂本もサングラスかけてたな。
276名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 22:50:26 ID:9VNQv9wZ
>>272
すいません、後で自分でやっておく気だったのに煩わせてしまいまして…
277名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 22:51:26 ID:5Qx95NDK
小ネタ投下します。

注意・ミョズニトニルンのせいでガリアの人々が壊れ気味です。
278名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 22:52:05 ID:KcSePJbd
支援だ
279名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 22:52:35 ID:17uykNfy
>>276 いえいえ。前スレからの投下分がほとんど登録されてなかったので纏めて作業してただけですから…

>>277 支援!
280おかしな使い魔(1/3):2007/10/06(土) 22:53:04 ID:5Qx95NDK
ルイズはこの上なく緊張していた。
この儀式、サモン・サーヴァントだけは失敗するわけにはいかない。サモン・サーヴァントさえ失敗するようなら、
皆が…なによりルイズ自身が、ルイズを魔法使いだとは認められなくなってしまう。
「始祖ブリミルよ…私は今まで、誰よりも真面目に勉強しました。魔法の修練だって、一日も休まずにこなしてきました」
ルイズは桃色の髪を翻らせて、杖を掲げる。
「だから、この儀式だけは、サモン・サーヴァントだけは!成功させてください!」
ルイズは呪文を唱えて、勢いよく杖を振り下ろした。
あたりに、盛大な爆音が響き渡る。

煙の中から、こんもりした何かの山が姿を現した。

またいつもの通り失敗か。そう思って口を開こうとした生徒達の間に、ざわめきが生まれた。
「見ろよ、ゼロのルイズが…何だあれ?」
「マジックアイテムか?石か何かみたいな大きさだが」
「生きてるのか?山になってるぞ」
ルイズは召喚が『一応』成功した事に安堵しながら、自分でもそれが何なのか分からず、
すがるようにコルベールへと視線を送る。コルベールは未整理ながらも、自説を語り始めた。
「えー…ミス・ヴァリエール。あれが何なのか、私にもわかりません。一つ一つが生きてはいないようですが、
何らかの魔法に近い力はあるようです。ですから、あれは使い魔たる要件を満たす存在であろう、と私は判断します。
おそらくは群体生命といってさしつかえないのではと考えられますので、
そのうちのどれか一つと契約を行ってください。それで『コントラクト・サーヴァント』は完了するでしょう」
長ったらしいコルベールの解説にため息で答えて、ルイズはあらためて『それ』に向き直った。
薄茶色の本体の上に、こげ茶色の染料が塗られている。かすかに嗅いだ事のない甘い匂いが漂ってきて、
それが未知のアイテムである事をうかがわせた。
「ルイズちゃん、やればできるんだね。こんな使い魔、見たことも聞いたこともないよ」
『それ』に向き合い値踏みするルイズの戸惑いを察知したのか、
大きな杖を持った少女がルイズを励ました。
「シャルロット…」
シャルロットは、笑顔の似合う優等生。
魔法が使えずバカにされていたルイズを何度となく励ましてくれた、
ルイズの唯一の『親友』なんだろうとルイズが勝手に思っている、そんな存在。
「ルイズちゃんが召喚したんだから、きっとすごい使い魔になるんだと思うよ。卵か何かかな?」
「だといいんだけど」
シャルロットの快活さにわずかに励まされたルイズは、
自らの呼び出した謎の石と契約するべく、歩を進めた。
意外と軽く柔らかかったそれを掌にのせ、契約の呪を唱え、口付ける。
顔を近づけたルイズは、その石の甘い香りに気がついた。もしかしたら、これは何かお菓子のようなものなのだろうか?
使い魔のルーンが刻まれ、コントラクト・サーヴァントは滞りなく終了した…かに見えた。
だが次の瞬間。なんと『それ』がみるみる膨らみ、ついには二つに分裂し始めたではないか!
「え、えええ!?」
あぜんとするルイズをよそに、残りの『それ』にもルーンが刻まれ、二つは四つに、四つは八つに、八つは十六個に…
草原の上の小山が、みるみる大きくなってゆく。
その様子を見ていた生徒達はまず反射的に笑い転げた。
「見ろよ!初っ端から使い魔を暴走させてるぜ!」
「さすがルイズ、無機物の使い魔すら制御できないのか!」
生徒達がルイズを嘲笑する間にも、『それ』は分裂を繰り返し、無軌道に増殖を続ける。
「これは…まずいかもしれませんね。ちょっと、皆さんは下がっていなさい」
ようやく事態に気付いたコルベールが、巨大なファイヤーボールを『それ』にぶつけたが、
炭化した部分の体積はそのままに、みるみるうちに元の薄茶色とこげ茶色の石が全てを覆いつくし、
また何事もなかったかのように分裂は再開。
いつのまにか、その柔らかい石は魔法学院の中庭を埋め尽くすまでに増殖していた。

柔らかい石のような使い魔。彼には本当の名前がある。

そう、生を受けた世界で彼は「くりまんじゅう」と。そう呼ばれていた。
281おかしな使い魔(2/3):2007/10/06(土) 22:54:17 ID:5Qx95NDK
ガリア王ジョゼフの待つリュティスの王城に風竜が降り立ったのは、間もなくの事であった。
「た、大変なのね!魔法学院でおかしな使い魔が召喚されて、それで、どんどん増えて、
そろそろこっちにも来ちゃいそうなの!」
「なんだと!魔法学院からここまでか?」
「シャルロットは!シャルロットは無事なのかい!?」
「大丈夫なのね、全部やっつけられるほどゆっくりじゃないけど、押し潰されるほど早くもないのね」
一通りの状況を掴んだジョゼフは、いかに対処すべきかと知恵を働かせ始めた。
その傍らでしきりに頭をかいているのは、オルレアン公シャルル。
ガリア王ジョゼフの弟であり、王を影に日向に支えてきた人物。シャルロットの父でもある。
「それにしたって僕の娘が、そして世界が大変なのは間違いない!兄さん、一緒に来てくれるかい?」
「当然だ、我が弟。我らには…」
ジョゼフはそこで言葉を切り、玉座の裏から奇妙な形の箱を二つ取り出して、にやりと笑った。
それを見たシャルルはわが意を得たとばかりに頷くと、重々しい決意の篭った声で呟いた。
「自分の力ではどうしようもない時…ド・ラ・エモンの言ったその時がついに来たんだね、兄さん」
282名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 22:54:29 ID:ZAHCRdj4
支援
283名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 22:54:36 ID:hu0z5+Gq
のび太自重し(ry
284名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 22:54:45 ID:fdwLu7VG
デルフのくせにひどいwww
285おかしな使い魔(3/3):2007/10/06(土) 22:55:22 ID:5Qx95NDK
魔法学院は、既にそのほとんどをくりまんじゅうによって埋め尽くされていた。
魔法の使えないルイズや使用人たちは分裂が起こるたびに右往左往し、
その上に浮かんだ生徒や教師が魔法を使って何とか事態を収拾しようとするが、
圧倒的なくりまんじゅうの物量の前になすすべもなくただ浮いている、そんな状況である。
そんな状況の中。空中に桃色の扉が現れて、二人の人物が飛び出した。
言わずと知れたガリア王ジョゼフと、オルレアン公シャルル。
シャルルの箱から取り出された「どこでもドア」が、二人を一瞬にして魔法学院に誘ったのだ。
二人は空中から状況を俯瞰し、その圧倒的な物量に言葉を失う。
「これは…」
さすがのジョゼフも、どう対処していいのかわからない。
「兄さん、どうしたらいいんだろう!?」
「心配するな、ド・ラ・エモンはこんな時のために、おれにもこれを残して行ってくれたのだ」
そう言ったジョゼフは、小脇に抱えた奇妙な形の箱を置くと、蓋を開いた。
中にあったのは、円筒形の太く短い棒のようなもの。杖にしてはすこし太すぎるような気がするが…
ジョゼフは迷うことなくそれを掴み、天高く掲げて雄叫びを上げた。
「ビッグライト〜!」
それが収まっていたその脇には、ハルケギニアの文字で「ビッグライト」と書かれているようだ。
二人はたがいにその光を浴びせあい、学院の塔のその上まで届く高さにまで巨大化し、
そして、学院中に広がったくりまんじゅうをわしづかみにして、食べ始めた。

殲滅が始まった。そのやわらかい物体をお菓子と睨んだジョゼフの推測は、どうやら当を得ていたらしい。
だが、あまりに量が多いために、殲滅は遅々として進まない。
「兄さん、僕らだけじゃ食べきれないよ!」
「困ったな、おれもだんだん腹いっぱいになってきたぞ」
弱音を吐いた二人の前に、呆然と父の姿を凝視していたシャルロットが現れた。
「何をしてるの?」
「おおーシャルロット!いいところに来た!何か知恵はないか?」
「うむ、このお菓子を殲滅せんと二人で頑張ってるわけなのだが…そろそろ限界が近くてな」
「なーんだ、簡単だよ。二人でダメなら、皆で食べればいいじゃない」
満腹の腹に無理やりくりまんじゅうを押し込んでいた二人は、思わず顔を見合わせた。
「ははは、そうか!ここには立派な貴族たちがたんといらっしゃるじゃないか!一緒に世界を救ってもらえばいいんだね!」
「よし、シャルロット、この『ビッグライト』を使って、皆さんに協力してもらいなさい」
「うん!」
シャルロットはビッグライトを受け取って、魔法学院の教師・生徒たちに事情を説明し始めた。
男子を中心に志願者が多く集まり、次々とライトの光を浴びては、くりまんじゅう殲滅に参加してゆく。

そんな中、マリコルヌは志願者に加わらず、とあるチャンスを一心に待っていた。
そう。聡明な男子なら既にお気づきであろう、『見える』瞬間。
ビッグライトの光を浴びた女子が無防備にスカートの下を曝け出し、
巨大なレース編みのそれを拝む、ただその一瞬のためにマリコルヌは名誉を捨てた。
マリコルヌの心臓が早鐘を打ち、いまかいまかとその瞬間を待ち構える。
しかし、マリコルヌは見落としていたのだ。
ビッグライトを使うのがシャルロットであり、シャルロットは実に聡明な女子であるという事実を。
すなわち、シャルロットはマリコルヌに視線を走らせ、男子だけを巨大化させた。
巨大化したマリコルヌは、その憤りを全てくりまんじゅうにぶつけた。否、そうするしか、なかった…。

こうして、くりまんじゅうは跡形もなく消え去った。
だが、ゼロのルイズがいるかぎり、第二第三のくりまんじゅうが召喚されないという保証はどこにもないのだ。
「兄さん、何とかなったね。これからも、一緒に頑張っていこうね」
「ああ。何と言っても、ド・ラ・エモンとの約束だからな。皆、仲良くしないと…な」
ド・ラ・エモン。君が出て行って、おれの部屋はがらんとしちゃったよ。今日も君がいてくれたらって何度思ったかもしれない。
でも、おれが守る。君が素敵だって言ってくれたこの世界を、おれが絶対に守るから。
だから安心して、ノビ・ノビタ君のそばにいてやってくれよな。
286おかしな使い魔:2007/10/06(土) 22:56:58 ID:5Qx95NDK
おわります
287名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 22:56:58 ID:17uykNfy
無限分裂は支援せねば…
288名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 22:58:26 ID:kkQGpBOx
この発想は無かったわ・・・。
GJ!
289名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 22:58:31 ID:OLfupEef
最後の段だけで思い出して泣けるwww
卑怯だwww
290名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 23:06:42 ID:Ikm7aM1B
あのロケットに括り付けて宇宙の果てに飛ばした栗饅頭に続きがあるとはw
291名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 23:07:08 ID:+Nr3rx3u
オチがw
292名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 23:08:55 ID:EQwVHWvo
いきなりだんごかと思ったぜw
293名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 23:09:32 ID:Gl6WMe4+
ひでぇやw
294名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 23:11:17 ID:foMTLzL1
ええとコレはつまり
以前ミョズとしてドラがジョゼフ呼ばれてて
彼に感化されたジョゼフは弟と仲良くなって
それに安心したドラはのび太のとこへ帰った後
ということでおk?
295名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 23:15:26 ID:vb5NoYKe
FSSからすえぞうとねーちゃん召喚。

ねーちゃんの方ってすえぞう育ててる時はファティマじゃなくて単なる痩せてる美人にしか見えないんだっけ?
296名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 23:17:22 ID:I0QT3CCL
やべえwwwこれはやべえwww
GJすぎるwww
297名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 23:18:14 ID:c8tA5B6Z
国府高専のぬいぐるみ師召喚。
あの人材料工学修めてるからコッパゲもう感涙。
298名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 23:19:38 ID:+Nr3rx3u
ブレイクエイジか!
いや、俺は大好きだけど何人わかるか不安だ
299名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 23:20:00 ID:KcSePJbd
>>297
でもゲームの無い環境に一日も耐えられないのだよ
300名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 23:22:07 ID:c8tA5B6Z
>>299
召喚された書物以外に召喚された遊具とかあってもイイんじゃないかな……。
もちろん電池、電源がないために発狂しながら電圧その他を調整した電源を作り上げる一大叙事詩。
その名もプロジェクト-0とかw
301名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 23:22:28 ID:9DAg9kch
知ってないと駄目だが知ってれば名作GJ
302名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 23:22:33 ID:Dq/qk+OE
>>297
じゃあのれんじゃーも呼ぼうぜ!!
303名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 23:26:25 ID:KcSePJbd
どうせならDPでプレイ中に召喚されて、TSが実体化でいこうぜ。

ビデオ戦士レザリオンみたいに。
304名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 23:26:54 ID:Dq/qk+OE
というか、前にディートリッヒ・高原を召喚するというのを構想したが断念したw


いや、皆を楽しませたいというだけでコッパゲと協力して、平民から貴族まで平等に楽しめるDPを作り上げるという大長編。
最後は、DP越しに地球と繋がってイーディスの皆と話して終わる。
305名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 23:30:20 ID:Ikm7aM1B
トカゲのおっさん召喚
306名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 23:30:41 ID:UjywSJks
>>300
とりあえず亜鉛と銅と塩水があれば電池はできるんじゃね?
問題は電圧調整か
307名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 23:30:54 ID:Dq/qk+OE
ミルガズィアさん自重www
308名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 23:31:56 ID:iIqhPadi
この場を借りて小ネタ大量登録してくれた人にGJと言いたい。
マジ感謝。とってもありがとうゴザイマス&お疲れ様。
309名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 23:32:23 ID:sibFTNgq
腹の中で無限増殖とかしないよな?
GJ!!
310名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 23:33:52 ID:c8tA5B6Z
>>304それはすげぇw
だが、遊具関連でも一番いいスタート地点なのがガリアという罠w
>>306
ぬいぐるみの方に仕込んであるのをどう応用してくかがカギになりそうw
……第一巻のコッパゲから考えるにミス・ロングビルを巻き込んでダラダラとした日常になりそう。
311名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 23:34:40 ID:aH8zM3ay
>>305トカゲのおっさんていうとがんばれゴエモンのあれしか思い出せないから困る
312名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 23:36:00 ID:Dq/qk+OE
>>310
まぁ、ちまちま打ち込んでいるから5年くらい待っていてくれ。
登場人物が極端にいい人になっているが。



まじブレイクエイジは面白いよなぁ……
いつか出来ることを夢見て戦場の絆でもやりに行こうぜ。
もしくは俺達で作ろうぜ!
そしてハルキゲニアと繋ぐんだ!
313名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 23:37:26 ID:c8tA5B6Z
>>312
おーw

 
 

ああ……、魂の熾火がまだ、あそこで燃えている……
314名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 23:40:25 ID:Dq/qk+OE
プロトベンケイはマジカッコイイ。
召喚してくれる人いないかなw



LET YOUR HOPE BE YOUR PILOT
315名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 23:42:32 ID:IFYfXWsm
ジョゼフがゲーマーになりそうだな
316名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 23:44:27 ID:Dq/qk+OE
>>315
それだ!!

ヤバイ、なんか停滞していたものが動き出しそう。
ちょっと真面目にプロット立てて書くかも。


FOR OUR FUTURE CHILDOLEN
317名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 23:45:23 ID:IFYfXWsm
なら、まじめにプロット立てて書いてくれー。
いや、マジで
318名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 23:46:45 ID:Dq/qk+OE
おう!

問題なのは地元に零魔の本とブレイクエイジ全部置いてきてしまったことだ!
ちょっと買ってくるか。
小説とか設定の奴は全部揃っているけどな!
319零魔娘娘追宝録の人:2007/10/06(土) 23:48:39 ID:fI6cSn02
道は空いてるっぽい?空いてるようなら投下したい。
320名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 23:48:55 ID:Dq/qk+OE
歩道が空いているではないか
321名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 23:49:32 ID:KcSePJbd
今の時間は歩行者天国
322零魔娘娘追宝録:2007/10/06(土) 23:50:12 ID:fI6cSn02
了解。では投下させていただきます。
------------------------------------

                  奪われた宝物を取替えさんとす
                   ルイズと静嵐刀はいかにして
                          『土くれのフーケ』
                  操るゴーレムと渡り合ったか?
                           そして戦いの後
              ルイズの胸に去来するものやいかに?


「困ったことになったのお。まさかあれが奪われてしまうとは」
 老人――魔法学院学院長であるオスマンが困ったように言う。
 静嵐とタバサとの戦いの後、巨大なゴーレムを使って宝物庫の壁を破壊し、
 禁断の宝物『魔封の札』を奪い去っていった怪盗『土くれのフーケ』
 そのフーケが事件を起こすところを目撃したルイズ、静嵐、タバサ、キュルケはフーケ追跡の任に志願したのだった。
 その一環として、まずは事件の顛末をオスマンに報告するべく学院長室に集まったのである。

「申し訳ありません……。私たちの目の前で宝物を奪われてしまうなんて」
 悔しげにルイズは言う。フーケを止められる位置にありながら、みすみす奴を見逃してしまったことを悔いているのだ。
 そんなルイズに、オスマンは笑いかける。

「いやいや、仕方無いよ。相手はかなりの手だれのメイジじゃ。手を出せばただでは済まなかったじゃろう。
君たちに怪我が無くてよかったと思うべきじゃ。奪われたのは『魔封の札』だけというのも不幸中の幸いだったことであるし」
「その、奪われた『魔封の札』とはいかなる宝物なのですか?」
 興味深そうに、事情聴取に同席していた教師のコルベールが訪ねる。
 オスマンは髭を撫でながら説明する。

「形は一冊の、変わった装丁をした冊子での。
数枚のページ一枚一枚が、とても強力な魔法を封じ込めたマジックアイテムになっておる。
それ故に『魔封の札』と名づけたのじゃ」
「名づけたとはどういうことです?」
 ルイズたちの供述を筆記していたオスマンの秘書、ロングビルが問う。
 彼女はオスマン自らがスカウトしてきたという才媛で、
 今回の事件においてもいち早くフーケを捜索し、その居所の目星をつけているという。
 そのためルイズたちの引率兼案内役として同行することになっていた。

「あれは本来そういう名前ではないのだ。ワシが手に入れたときには、きちんと別の名前があっての。
何と言ったかのお? もう何年も昔のことじゃから、はっきりとはせんが、
とにかく覚えにくい名前だったから保管する際にワシが名づけなおしたのじゃ」
 再びコルベールが質問する。
「どういう経緯でそれを入手したんですか?」

「三十年前のことになる。ワシは森を散策中にワイバーンの群れに襲われたのじゃ。
幸い群れは小型のものばかりで、一匹一匹はたいしたことがなかったんじゃが何せ数が多かった。
必死に応戦するワシの精神力も切れて、もはやここまでかと思ったその時。『魔封の札』を携えた男がワシを助けてくれた」
「マジックアイテムを持った男? どんな人物だったんですか?」
 三度目のコルベールの質問に、オスマンは何かを懐かしむように目を細める。

「見たことも無いような服装……ちょうどそこの、ミス・ヴァリエールの使い魔のような服装をしていての。
手には一本の長い棒と大きな槍を持っていた、それ以外はどうにも掴みどころの無い凡庸な姿の男じゃった。
ただ、物腰はしっかりとしていたことから、軍人か何かだったのではないかとワシは考えておる」
「……それで、その人はどうやって札を使ったんですか?」
 真剣な面持ちで、ロングビルは問う。
323名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 23:51:05 ID:+Nr3rx3u
しぇーん
324名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 23:51:06 ID:KcSePJbd
支援
325零魔娘娘追宝録:2007/10/06(土) 23:52:35 ID:fI6cSn02

「男はワシに駆け寄り、冊子から破り取った札の一枚を、ワシの口に札をねじ込んで食べさせた。
すると不思議なことにワシの精神力は見る間に回復し、間一髪でワイバーンを倒すことができたんじゃよ。
その後男は、『魔封の札』をワシに託し、いずこかに姿を消した。
ワシは窮地を救ってくれたその男を友と思い、託された『魔封の札』を保管し続けてきたのじゃ」

 そう言ってオスマンは遠くを見るような目をする。
 ほんのわずかな邂逅、しかし人生を左右する一瞬の中で自分を救ってくれた友。
 その友の思い出の品が無惨にもフーケに奪われた。オスマンとてさぞかし無念であろう。
 ルイズは決意する。そんな大事なものを奪うような輩を許すことはできない。
「大事なものなんですね。――わかりました、必ず取り戻してみせます」

 ルイズの言葉に、オスマンは嬉しさと心配さの入り混じったまなざしを向ける。
 その性癖……というか趣味ゆえに誤解されやすい男であるが、これでも生徒たちには人気のある学院長なのだ。
 オスマンは重々しく頷き、ルイズたちに同行するロングビルに向き直る。
「……うむ。くれぐれも気をつけてな。ミス・ロングビルも、この娘たちを頼む」
「はい。しっかりと、彼女たちをエスコートしますわ。『土くれのフーケ』のところまで、ね……」
 そう言ってロングビルは嫣然と微笑んだ。

                  *


 ロングビルに案内されてやってきたのは林の中の一軒の小屋だった。
 元は樵の小屋か何かだったのだろう、打ち捨てられた小屋の中には家具が残っている。
 ロングビルの話では、どうやらここにフーケは潜伏しているという。
 なるほど、それらしいと言えばそれらしい。このすえた廃屋の雰囲気は、いかにも盗賊の根城と言った風体である。

 小屋の中を、タバサ、ルイズ、そして静嵐が探索する。
 ロングビルは林の中の見回り、キュルケは小屋の外での警戒である。
 小柄な二人と頑丈さが取り柄の使い魔である静嵐は、小屋の内部で『魔封の札』の捜索するのが仕事だった。
 どたんばたん、と家具を適当にひっくり返し、それらしいものを探す。

 ロングビルの情報が確かならば、この部屋の何処かに『魔封の札』が隠されているはずである。
 そのまま『魔封の札』を回収し脱出、あわよくばフーケを待ち伏せて捕縛しようというのがルイズたちの作戦だった。
 ここまでは順調。シルフィードに乗って近づいたり、無闇に魔法を使ったりしていない以上、フーケに感づかれている様子は無い。
 だが、


 なんとなく静嵐は思った。
「もしかして、フーケが全て仕組んだ罠かもね」


「!」
 静嵐の言葉にタバサはぎょっとした表情で静嵐を見つめる。
 声を落し、ただでさえ小さな声を押し殺し、囁くような声で問う。
「何故、何故そう思ったの?」
 何故か、と問われて静嵐は考える。
 考えてふと気づく。何故自分はその結論に至ったのだろう?
 それがさっぱりわからないことに気がついた。

 静嵐は状況を分析する。
 この状況下で、フーケが『魔封の札』を餌に罠を仕掛けるという可能性はたしかにある。
 だが、学生であるとはいえメイジ三人を相手に、盗賊がそんな危険な橋を渡るであろうか?
 わからない。情報が足りない。静嵐がフーケを見たのは、ほんの数秒であったのだ。
 フーケがどんな人物かなどわかりようもない。だから静嵐は素直に自分がそう思った理由を言う。 
「いや、なんとなく。根拠は無いよ」
326零魔娘娘追宝録:2007/10/06(土) 23:53:49 ID:fI6cSn02

 静嵐の言葉に、タバサは全身の緊張を解く。
 静嵐はそれが、自分の答えのあまりのいい加減さに、脱力したのだとは気づいていない。
 脱力したタバサは、その無表情を崩して恨みがましい視線を静嵐に向ける。
 それはまるで「こいつの言葉に一瞬でも驚いてしまった自分が情けない」と言わんばかりである。
「……」

 自分よりも遥かに年下の、小柄な少女に睨まれて、静嵐はうろたえる。
「な、なんだいタバサ。そんな怖い顔して」
「……別に」
 そう言ってタバサはついとそっぽを向き、またしてもごそごそと部屋の探索を再開する。
 ベッドをひっくり返し、敷物を引っぺがす。その手つきは妙に乱暴であった。
 何か悪いことを言っちゃったかな、と静嵐が思っていると。

 二人のやり取りに気づかずチェストを探っていたルイズが歓声をあげる。
「あったわ! これがそうじゃない?」
 その声に、タバサと静嵐は駆け寄る。
「へえ? どれどれ――これは!」
 なるほど、ルイズの開いたチェストの一段の中に、それらしき冊子が収められていた。
 だが静嵐が驚いたのは、それがそこにあったことではない。

「どうしたの、セイラン?」
 静嵐は珍しく真面目な顔をして、おそるおそる書物を手に取り、内容をあらためる。
 表紙に踊る、荒々しい文字は見たことがある。
 この独特の紙の手触りを指は覚えている。
 そして何より、この、『同属』の感覚を静嵐は知っている。
 つまり、これは
「……これは宝貝だよ、ルイズ」

 そう。紛れも無い。これは自分と同じ宝貝だ。
 静嵐の言葉に、ルイズは驚きの声を挙げる。
「パオペイ? あんたと同じ?」
 そう言って、静嵐の手から『魔封の札』――いや、宝貝をひったくって確かめる。
 宝貝に触れた瞬間、ルイズは表情を変える。
 静嵐のような確固たる人格を持たない宝貝には、己の名や能力を所有者に伝える機能がある。
 その機能が、ルイズに教えているのだ。自分が宝貝であることを。

「わかる、わかるわ。このパオペイ、名前はフホウロク、センジュツを封じたフを封印するためのパオペイ。
製作者は……リュウカですって?」
 そう。その宝貝の名は『符方録』
 仙人の使う魔法にも良く似た技、『仙術』を『符』という形にして保存したものを封印するための宝貝だ。
 仙術を封じた『符』は扱いが難しい。むき出しになった仙術的力は、ふとしたことで勝手に解放されかねない。
 そのため『符』はそのまま状態で保管しておくことができず、ひょうたんなどの保管宝貝か、
 符を封じる為の宝貝つまりは『符方録』のようなもので保存するしかない。
 そしてこの符方録の製作者は龍華。静嵐刀と同じ製作者の仙人である。

「そう、僕と同じなんだよ。つまりこれは」
 かつて、とある道士が誤って封印を解いてしまい、散逸してしまった七百を超える宝貝たち。
「あんたと一緒にバラ撒かれたっていう、欠陥パオペイの一つ? でも、なんでそれがここにあるの!」
 ルイズの疑問はもっともだった。
 このハルキゲニアという世界と、自分たちの元いた世界は遠く離れている。

 自分のように『召喚』されたわけでもない宝貝が、この世界に存在しているのは不自然だ。
 そう思った時、小屋の外からキュルケの叫び声が聞こえた。その瞬間、
「タバサ! ルイズ! 早くそこから出なさい!」
 タバサと静嵐は行動を起こす。
327零魔娘娘追宝録:2007/10/06(土) 23:55:17 ID:fI6cSn02
――タバサは一瞬だけ静嵐に瞳を向け、静嵐はルイズに向き直り、タバサすぐに視線を戻し、
静嵐はルイズを見て、ルイズは符方録をつかんだまま、タバサは窓から外に向かって飛び出す、
静嵐はルイズの腕をひっつかみ、ルイズは「え?」と声を漏らす、静嵐はルイズを抱きかかえ、
ルイズがキュルケの言葉の意味を脳で理解しようとした時、静嵐はルイズを抱えて小屋の外に飛び出す、
小屋は轟音を立てて崩れ落ちる。

 戦いに慣れた少女であるタバサと、武器の宝貝である静嵐であったからこそできた芸当であった。
 小屋の外で静嵐とタバサが体を起こした時、ほんの一瞬前まで自分たちが居た小屋が押しつぶされているのを見る。
 そこに居たのは、忘れもしないあの巨大な土人形。土くれのフーケのゴーレムであった。
「またこいつ!?」
 ようやく状況を察したルイズが、ゴーレムを見て叫ぶ。

 そしてゴーレムは、自分の攻撃が無意味だったと気づいた風も無く、再び静嵐たちに向かって拳を振り上げる。
 どうやらこの辺りに潜んでいたフーケが、自分たちを攻撃しようとしているのだ
「待ち伏せされていたみたいだね。気配を隠していたのかな? でも、この辺りには僕たちの気配しかなかったのに」
 この小屋に入る前あたりの気配を探った静嵐は、このあたりには自分たち、
 つまりはルイズ、タバサ、キュルケ、ロングビル、そして静嵐の五つの気配しかないことを確かめている。

 無論、凄腕の武人であるならば静嵐の気配探知を誤魔化すことは可能であるし、
 罠の宝貝の類を使えば武器の宝貝を欺くことなど容易い。
 だが、それらの『ごまかし』に対する違和感すら感じなかったというのはどうにも変である。
「こっちに来る!」
 窓と入り口。それぞれ別方向に逃げた静嵐たちとタバサ、どうやらゴーレムは静嵐たちに狙いを定めたようだ。

「ルイズ! 早く逃げなさい。」
 上空に待機していたであろう、タバサの操るシルフィードに拾われたキュルケが叫ぶ。
 空中に逃げれば、ゴーレムとて手は出せない。だが、
「くっ!」
 再びルイズを抱え、静嵐は跳躍する。一瞬遅れて、二人のいた場所にゴーレムの拳がめり込む。

 シルフィードはそんな二人を拾いあげようとするが、風竜の巨体が災いしてなかなか近づくことができない。
 静嵐一人であるならば、鈍重なゴーレムの攻撃を回避することなど容易いが、腕に抱えたルイズが邪魔でそれもできない。
「静嵐、私のことはいいからあんたはさっさと逃げなさい!」
 悔しさのあまりか、ルイズの瞳に涙が浮かぶ。
 ルイズは自尊心が高く、またその自尊心にに見合うだけの人間であらんと努力する少女だ。
 そんな自分が、己の使い魔の足を引っ張っている。それがどうにも許せないのだ。

「そんなわけに……、いかないよ!」
 ゴーレムの拳が、静嵐たちをかすめる。間一髪回避し、静嵐はなんとか距離をとる。
 ルイズの体が震えている。怖いのだ。一撃で自分を殺しうる存在に狙われる。
 そのような恐怖を、ただの少女が耐えられるわけがない。
 ルイズは悔しげに歯噛みする。怖がっている自分が悔しいのだ。悔しいと思っても何もできない自分が情けないのだ。
 そんなルイズを見て、静嵐の心がわずかに震える。

 このどうしようもなく弱い、だが並ぶものがないほど気高い、ご主人様を助けねば、と心の底から感じた。
 ルイズは自分自身に筋を通そうとしている。それは、彼の創造主たる龍華にもよく似た態度だ。
 ルイズが龍華と違うのは、彼女は圧倒的に無力だということだ。
 だが、今のルイズは一つだけ力を持っている。宝貝、すなわち自分だ。
 なればこそ、自分がやることは一つしかない。

「……デルフ、今回はごめん」
 静嵐は背中の剣、デルフリンガーに一言謝る。
 デルフリンガーは少しだけ不満げにそれを受け入れる。
『ま、しょうがねえな。気をつけろよ、相棒。相棒の刃は俺より鋭いが、なにせ相手がデカすぎる』
「わかってるさ」
 静嵐は背中の剣を上空に放り投げた。シルフィードに乗ったタバサがそれを器用に受け止める。
328名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/06(土) 23:55:42 ID:KcSePJbd
支援
329零魔娘娘追宝録:2007/10/06(土) 23:56:51 ID:fI6cSn02

「何をする気なの?」
 自ら武器を捨てた静嵐に、ルイズは問う。
 静嵐は、自分の腕の中のルイズを見つめて言う。
「ルイズ、僕を使って戦うんだ。このままじゃ逃げ切ることもできない」
「!」
 その言葉に、ルイズは息を呑む。

 静嵐は己の真の姿、刀の形態に戻った時。使用者の体を操ることができる。
 ならば、ルイズの体を操ればそれだけ逃走もしやすくなる。
 しかしそれは、彼女自身が生身で敵と向かい合うということでもある。
 果たしてそれに彼女が耐えられるか? いや、耐えられる。そういう芯の強さを持った少女なのだ。自分の主人とは。
 ルイズは意を決し、うなずく。そしてさらに、ルイズは静嵐の言葉の一部を否定する。それは違う、と。

「逃げるんじゃないわ、あいつと戦うのよ、私たち二人で。いいわよね?」
「……了解さ!」
 逃げるのではなく、戦う。そう答えるだけの強さを持った主人がとても誇らしい。
 ルイズを下ろし、静嵐の体は爆煙に包まれる。

 煙が晴れた時、そこには刀を片手に持ち、柔和な笑みをわずかに細め、敵を見据えて構えを取るルイズの姿があった。
 ルイズは無造作にゴーレムに向かってわずかに歩を進め、そしてすぐに駆け出す。
 すらり、と刀を抜き放ち、鞘を撫でる。鞘はそのまま、静嵐の外套へと姿を変える。
 鎧代わりにもなる長い外套をマントの上に羽織り、そのまま流れる風にはためかせ、ルイズは跳ぶ。

「まずは……!」
『一太刀!』
 鈍重なゴーレムの体を駆け上り、高く上空に跳躍する。
 刀宝貝の十八番。素早さを生かし、重量の無さを補うことのできる常套手段。高空落下攻撃だ。
 ルイズの動きのあまりの速さに対応できないゴーレムは、その頭部に一閃を受ける。
 頭部に一撃を見舞ったルイズは、落下の反動をそのまま利用して後ろに跳び、再びゴーレムに向き直る。

 ゼロの使い魔、静嵐刀。そしてそれ手にする、ゼロのルイズの一太刀。
 これから先、二人の経験することになる、幾度のもの長い戦いの連続の中で振るわれた、最初の一太刀であった。

                  *

「タバサ! なんとか二人を拾えないの!?」
「無理」
 タバサはわずかに表情を悔しげに歪ませて否定する。
 静嵐たちの近くで拳を滅茶苦茶に振り回すゴーレム。無理に近づけばシルフィードとて無事では済まない。
「見ていることしかできないなんて!」
 悔しいのはキュルケとて同じであった。

 上空から何度か火魔法を放ってはみたが、まるで効果は無い。
 それはけして、キュルケの魔法が貧弱だというわけではない。
 フーケのゴーレムが規格外に大きいため、少しの攻撃に意味がないだけだ。
 あれを倒しきるのなら、もっと大きな火力。トライアングルクラスのメイジ数人がかりの大規模な爆発が必要だ。
 そんなものを、今ここでどうやって用意できるだろう。このまま二人を見捨てるしかないのか?

 キュルケの心がわずかに諦めに傾きそうになった時、異変が起きる。
 何を思ったのか剣を捨て、ルイズを地面に下ろす静嵐。
 まさか捨て身の囮にでもなるつもりか? もしそうならば、ルイズだけでもなんとか回収しなければ。
 だが、実際に起こったのはもっと驚くことだった。静嵐の体が爆煙に包まれる。
 ルイズが何か魔法でも使ったのかと思ったが、彼女は杖を抜いてすらいない。
330零魔娘娘追宝録:2007/10/06(土) 23:57:55 ID:fI6cSn02
 爆煙が収まったとき、そこに静嵐の姿は無く。かわりにルイズが一本の剣を握っている。
 どう考えても、静嵐の体が変化したとしか思えない。
「何あれ! セイランが剣になったわよ!」
「あれが彼の正体。パオペイと呼ばれる異世界のマジックアイテム」
 タバサは既に知っていたのであろう。冷静な声でそう言う。

 そうか、と納得する。静嵐の正体がそのような特殊な存在であるが故に、タバサはあれほど彼のことを気にしていたのだろう。
 視界の中のルイズは抜き放った剣を片手に、ゴーレムへと突進する。
「でも、どうする気なの? まさか、剣一本であの巨大なゴーレムと戦うつもり?」
「わからない。でも、彼がパオペイなら」
 ルイズの動きはあきらかにいつものものとは違う、滑らかで淀みの無い洗練された動きだ。

 それが一流の武人がとる動きであるとはキュルケは知らなかったが、先ほどまでの静嵐の動きに通じるものがあると見て取る。
 あのような動きができるのならば、鈍重なゴーレムの攻撃にも対処できるかもしれない。
「たしかにあの動きは普通じゃないけれど……」
 だが、剣一本で何ができる? いや、そのようなことを考えてる場合ではない。

 ままよ、とキュルケは逡巡し、杖を抜く。
 すでにキュルケの精神力はかなり消耗していたが、やはりそれでも何もせず見ているだけなどは御免だ。
「とにかく、二人を支援するわよ。タバサ!」
 タバサも頷き、二人は同時に杖を振るった。

                  *

 時間はほんの一瞬遡る。
 ゴーレムに向かって駆け出したルイズは、彼女の体を操る静嵐に話しかける。
 宝貝と使用者の間の、音を通じない光の速さに匹敵する意思伝達。
 それは瞬間にも満たない、静嵐とルイズの会話だった。

『セイラン! 何か無いの? あのゴーレムに勝つ方法が!』
『もし僕の考えが正しければ……あるといえばあるよ。あのゴーレムに勝つ方法』
『ホントに? なら早くそれを教えて!』
『でも危険だよ。少しでも失敗すればあの鉄の拳を叩きつけられて体はバラバラになる』
『…………いいわ。私は貴族よ、敵に背を向けて逃げるくらいなら死んだほうがマシよ。それに』
『?』
『使い魔のあんたがやれるって言うなら信じるわ』
『……ありがとう。では、行こうか!』
『ええ!』

 静嵐はルイズに作戦を伝えた。ルイズは驚く。それはとても単純で、とても難しい作戦だ。
 失敗は即座に死につながる。拳の下で挽き肉にされる自分の姿が一瞬浮かんだ。
 ほんのわずかだが、ルイズの心に迷いが生まれる。自分たちは勝てるか?という迷いだ。
 だが、それと同時に、自分たちならば勝てる!という思いもまた沸き上がる。
 ならば、剣を持った自分のやることは一つだけだ。
 敵を斬る。ただそれだけ。


 落下攻撃を行い、距離をとるルイズ。
 そんな彼女らに上空からキュルケが大声で呼びかける。
「ルイズ! あなたたちだけじゃ無理よ!」
「大丈夫だよキュルケ。勝算はあるんだ。僕たちに任せておいて、君たちは力を温存しておいてくれ」
「え……?」

 ルイズの口から出たのは、彼女の使い魔のように穏やかな口調だった。
 いつもとあまりに違う話し方に、キュルケは面食らったような顔をする。
 体を操るというが、まさか喋ることもできるとは! 
 ルイズは驚きとともに赤面し、手に持つ剣に怒鳴る。
331零魔娘娘追宝録:2007/10/06(土) 23:59:01 ID:fI6cSn02
「ちょっと、セイラン! 勝手に人の口を使って喋らないでよ」
「ごめんごめん。だって僕はデルフと違って、刀の状態じゃ声を出すことはできないんだ」
「だから口を使うなって言ってるでしょうがー!」
「いや、だってさぁ……」

 小言を言うルイズ、弁解するルイズ。どれも口調こそ違えどルイズの声に他ならない。
 傍から見ると独り言を言ってるようにしか見えないはずだ。
 それはなんとも間抜けなことだろう。使い魔ののん気さが自分にも伝染したのかと思い、ルイズは頭痛を覚える。
 ルイズの頭痛を知ってか知らずか、キュルケは呆れたように言う。
「……けっこう余裕ありそうね。貴方たち」

 よりにもよってあのツェルプストーの女に心配されたことに戸惑い、
 それと同時に間抜けな姿を見られたことに対する恥ずかしさでルイズは混乱する。
「もう! いいからさっさとやるわよ、いいわね!静嵐」
「了解――あ、いけね。また口に出しちゃった」

                  *

 それらを見ていた『土くれのフーケ』は、驚きとも呆れともつかないような声を漏らす。
「どうコメントすりゃいいのかわからないわねえ……」
 剣に向かって怒鳴った少女は、そのまま自分のゴーレムに向かって再度駆け出す。

 無駄なことを、と思う。
 少女の持つ剣。いかなる魔法を使ったか、あの青年が変化したものだとはわかったが、
 どんな名剣であっても、剣一本で自分のゴーレムに向かっていくことなど自殺行為でしかない。
 なるほど、たしかにあの動きは速い。ゴーレムの攻撃が当たる確率は万に一つというところだろう。
 だが、それでいい。このまま彼女たちが攻撃を続けても、自分のゴーレムが破壊されるということはないのだ。
 この戦いは千日手ではない。拮抗もしていない。

 自分には万に一つの勝算があるが、彼女らにはその万に一つすらありはしないのだ。
 優勢か劣勢かで言うならばフーケは劣勢であろう。
 だが、優勢であるということが勝利しうるということはではない。劣勢であるということが敗北に至るということではない。
 たしかにそれらはよく似ている。しかし『よく似ている』というのは『違う』ということなのだ。
 その、薄氷のごとき小さな違いこそが戦いを左右することは、長い戦いの経験の中でフーケは学んできてある。

 少女は縦横無尽にゴーレムの周囲を駆け回り、斬撃を繰り返す。
 刃は硬いゴーレムの体を斬る事ができている。並の剣ならば一撃で剣のほうが折れているだろう。
 試しに一度、体の一部を鉄に変化させてみたが、それすら少女は勢いを込めた一撃で切り裂いてみせた。
 いかなる製法で作られたのかわからないが、あの剣を造った人間は天才だ。
 そう、自らも優秀な土の系統のメイジであるフーケは分析する。

 だが、それも自分のゴーレム相手には無駄なことだ。
 いかに懸命に立ち回ろうと、それはゴーレムに何の痛痒も与えない。それほどの、純然たる質量差がある。
 少女の一撃がゴーレムの右足を薄く削ぐ。そしてそのまま大きく後ろに跳んで距離を開ける。
 少女の居た位置をゴーレムは蹴り上げる。空振り。 
 だが、今の一撃は危うかったはず。もし当たってれば勝負は決まっていた。
 そう、これでいい。『偶然の一撃』が出ればそれでいい。
 一撃で相手を倒しきる自分のゴーレムに比べて、少女らはあまりにも非力だった。

「よく頑張ったほうだけど……潮時ね」
 このまま、あの娘たちを潰す。良くて大怪我、運が悪ければ死ぬだろう。
 胸が痛まないわけではない。年端もいかない、『あの娘』と同じ年頃の娘を無惨にも踏み潰すのだ。

 それに何の感慨も浮かばないほど、フーケは腐った人間ではない。
 ただ、『貴族』というシステムも、それに胡坐をかく馬鹿で愚鈍な魔法学院の生徒も許せない。
 この世界にある、歪んだ機構に復讐するため、自分は貴族相手の怪盗になったのだ。
 そのためには……犠牲も厭わない。
332零魔娘娘追宝録:2007/10/07(日) 00:00:26 ID:fI6cSn02
 わずかに少女が体勢を崩す。ゴーレムが彼女を踏み潰そうと左足を上げる。
 少女は未だ体勢を立て直していない。
「さようなら……可哀想だけど、恨むのなら実力を弁えず格好をつけたことをした自分を恨みなさい」
 フーケがそう呟き、潰されようとする彼女からわずかに目を背けようとした瞬間、

「馬鹿な!」
 ゴーレムは音を立てて崩れた。

                  *

 上空から、ルイズの戦いを見守っていたキュルケはぽかんと口をあける。
「崩れ、た?」
 ルイズが体勢を崩し、そのままゴーレムが彼女を踏み潰さんと足を上げた時。
 いきなり何が起きたか、ゴーレムは崩壊したのだ。

 冷静に、事の成り行きを見ていたタバサが口を開く。
「……二人は全体を闇雲に攻めるふりをして、右足を少しづつ削っていた」
 右足。ゴーレムは左足でルイズを踏み潰そうとした。つまり、その時右足は軸足となっていた。

「片足が脆くなっていったゴーレムは、急激な重心の移動に耐えられなくて転んでしまう」
 右足が軸足になった瞬間。ゴーレムの全体重は右足の一点に集中する。
 巨大さを武器にしているが故に、ゴーレムの超重量はそのまま自身が支えきれない錘と化す。

「最初に頭を狙ったのはそれに気づかせないため。ああして見せることで右足への攻撃をを目立たなくさせた」
 大きく、派手に。これ見よがしに頭部への高空落下攻撃。
 生物ではないゴーレムは頭部が弱点だということはない。
 むしろ必要性というならば四肢よりも重要度は劣る。冷静に考えるならば攻撃する意味は無い。

「そしてわざと、体勢を崩して見せる。腕で攻撃されても駄目。右足で攻撃されても駄目」
 たしかにあれは不自然といえば不自然だ。それまでの流れるような動きを無視しての急激な静止。
 だが、一撃で自分を殺しうる敵の前で足を止めるという思い切りの良さは異常であると言える。
「左足で狙われる位置だけを狙っての演技。それ以外の位置では即死」
 ゴーレムの動きを確実に読まねばそれは適わない。間合いを完全に見切っての行動。

「最後に転んだ衝撃で、囮として少しづつ削っていた部分が崩れた。それだけ」
 囮の攻撃。右足を狙っていたことを気づかせない為の、全身への無数の斬撃。
 それはそのまま、ゴーレム全体の強度を弱めるように繊細な注意を払ってつけられた傷であったとしたら?

「……そんなことが可能だっていうの?」
 どう考えても、並の人間にできる芸当ではない。無論、ただの少女であるルイズでも。
 全てが神業と呼べるの行動。常識では考え付かないような、細い糸のような綱を渡るような手段で、
 わずかな勝機を手繰り寄せる。それを神技と言わずなんと言う?
「そういうことができるのが、彼――パオペイの力」

                  *

 崩れ落ちたゴーレムの傍らに、ルイズはへたり込む。
 ボン、と再び爆煙が起き、煙の中から静嵐が姿を現す。
「なんとか倒せたね。いやぁ、正直冷や冷やしたよ」
 ルイズは体勢を崩したふりのままうずくまり、もはや立ち上がる気力も無い。

 あれほどの緊張の連続は、今までの人生で一度も無かったのだ。無理もないだろう。
 疲れた表情でルイズは言う。
「……もう二度とやりたくないわ」
「同感だね」
 シルフィードが地上に降り立ち、キュルケとタバサが二人に駆け寄る。
333名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 00:00:35 ID:HIJn0+MA
支援
334零魔娘娘追宝録:2007/10/07(日) 00:01:32 ID:fI6cSn02
 と、林の中を探索していたロングビルが、騒ぎを聞きつけたのかおっとり刀で現れる。
 ロングビルは心配そうな顔でルイズを覗き込む。
「ミス・ヴァリエール! 怪我は無い?」
「ミス・ロングビル! 無事だったんですか?」
 ルイズは、彼女がフーケにやられてしまったのかと思っていたのだ。
 ロングビルは申し訳無さそうに言う。

「ええ、なんとかね。林の中で気絶させられていたの。あなた達も無事でよかったわ。――フホウロクは?」
「ここです」
 ルイズは懐から『魔封の札』、つまり符方録を取り出して渡す。
「……そう。ありがとう、ミス・ヴァリエール」
 何故か強引に、ひったくるようにして符方録を手に取るロングビル。

 そしてルイズはふと気づく。
 そう言えば、何故ロングビルはこの『魔封の札』がフホウロクという名前だということを知っていたのだ?
 ロングビルはそのままルイズを抱きしめる。
「ミス・ロングビル?」
 何か、彼女からよからぬ気配を感じるが、ロングビルはぎゅっとルイズを抱きしめる。

「本当にありがとう。わざわざ人質になってくれて」
 そして懐から短刀を取り出し、ルイズの喉元に突きつける。
「!」
「な、なにをするんですか!」
 静嵐が驚き、ルイズを守ろうとするが、ロングビルはそれを手で制する。

「『動くな』というやつよ。そこのお嬢さんたちは杖を捨てなさい。
――やられたわね。まさか剣一本で私のゴーレムが倒されるとは思わなかった」
 私のゴーレム、という言葉に、杖を捨てたキュルケは苦々しく口を開く。
「そう、そういうことね。貴女が『土くれのフーケ』だったのね、ミス・ロングビル」
「ご名答。秘書の振りをして学院内の情報を集めていたの。あのスケベジジィのおかげで、潜り込むのは簡単だった」
 そう言ってロングビル――いや、フーケは笑う。乾いた笑いがルイズの耳元に響く。

 こんな状況だというのに、静嵐はやたらのん気に言う。
「道理で僕たちの気配しかないわけだ。最初から敵が紛れ込んでたんなら気配も増えようが無いはずだよ。
――ん? ということは僕は何も悪くないじゃないか!」
「どっちにしろ気づかないなら同じ事でしょうが!」
 自分が気配を探るのに失敗したのではない、と言いたいのだろうが。
 今こうして、敵に捕まってしまいる以上、どうでもいいことである。

「なんで、こんなことを」
 タバサが問う。フーケの行動の意味がわからないのだ。
 符方録が狙いであるならば、こんなことをせずにさっさと逃げればよいものを。
 タバサの問いに、フーケは少しバツの悪そうな顔をする。

「……これの効果がわからなかったのよ。
このフホウロクが教えてくれるのは、これがマジックアイテムを封印するためのものであるということだけ。
おまけに中身の札に書かれている文字は、どこのものだかさっぱりわからないと来た。
追っ手を何度か踏み潰していけば、そのうちこれを使えるやつが来ると思ったんだけどね」
 呆れたものだ。盗んだものの使い道がわからないとは。

 だが、とフーケはニヤリと笑う。
「でも、オスマンが出かげに喋ってくれたおかげでわかったよ。こうすればいいんでしょ?」
 そう言ってフーケは片手で符方録の一片を引きちぎる。
 それをひらひらと、わざとらしく振るってみせる。
335名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 00:01:58 ID:KcSePJbd
疎遠な支援
336零魔娘娘追宝録:2007/10/07(日) 00:02:34 ID:JibpNby5
 それを見た静嵐は、何かに気づいたように口を開く。
「あのー、それはですねえ」
「あんたは黙ってなさい。変な剣になる力があるみたいだけど、あとでじっくり料理してあげる」
 どうせ愚にもつかないことを言うのだろう、とフーケは静嵐の言葉を遮る。
 この短時間の間であっさり静嵐はそのわかりやすい性格を把握されていた。

 フーケは札を丸め、飲み込む。
 どうやらフーケはゴーレムを呼び出したことでその精神力を消耗していたようだ。
 そうだろう。あれほどの巨大なゴーレムを操るのは、トライアングルクラスのメイジであったとしてもかなりの消費が大きいはず。
「オスマンの話が正しければこれで精神力が回復するはず。あとはもう一度ゴーレムを呼び出してペシャン、さ」

 ぐ、とルイズは歯噛みする。このままではキュルケたちがやられるのを黙ってみているしかない。
 逃げ出そうにも、フーケの拘束は固く。抜け出ることは容易ではない。
 緊張する一同。だが、静嵐は一人だけ違った。
 静嵐は困ったように頭をかき、言った。

「あー……食べちゃった、か」
 それは、敵に回復の手段を与えてしまったというよりは、むしろ気の毒な敵自身を案じるようでもあった。
 ルイズはその意味を理解できない。だが、異変が起こる。
 ルイズの目の前にはフーケの髪が一房垂れている。よく手入れされた、美しいその髪が一瞬ぞわりと震える。 
 思わずルイズは声を挙げる。

「な、何よこれ!?」
「ん、何を言ってるの? お嬢、ちゃ……んんんん!?」
 ルイズの声に、下を向いたフーケは自分の髪を目にする。
 驚いたことに、自分の髪の毛が七色に光っている。ぞわぞわと光が乱反射するように様々な色に変わる。
 キュルケもタバサも、驚いている。フーケ本人の驚きは相当なものだ。思わず手に持っていた短刀を取り落としてしまう。

 その隙を見逃す静嵐ではなかった。静嵐はすっと左腕を上げる。
 上空を舞っていたシルフィードが、デルフリンガーを落す。
 静嵐はデルフリンガーを掴み、神速の動きでフーケの鳩尾にデルフリンガーの柄を叩き込む。
 フーケは声もなく気絶し、そのまま倒れこんだ。
 デルフリンガーは気楽に言う。
『ありがとよよ、相棒。最後に出番作ってくれて嬉しいぜ』

                  *

 ぐるぐると荒縄で気絶したフーケを縛り上げ、ようやく解放されたルイズは不思議そうに言う。
「い、一体何だったの……?」
 精神力を回復する仙術が封じられていると思ったのに、何故かフーケはそうならずただ髪の色が変化しただけだった。
 静嵐はフーケが取り落とした符方録を拾い、ルイズに手渡す。

「彼女が食べたのは体力回復の符なんかじゃなかったんだよ。あれは『髪染の符』さ」
「髪染……? なんでそんなものが? これは強力無比な魔法――センジュツを封じているんでしょ?」
 髪の毛の色が変わった理由はわかった。だが、何故そんなものがあったのかという疑問が出てくる。
 尽きかけたオスマンの精神力を一瞬に癒したという符、そんなものに比べれば髪染の符など冗談のようなものである。
 ルイズの問いに、静嵐は明後日の方向を向いて誤魔化すように言う。

「まぁ……、強力無比ではあるかな?」
 何故か嫌な予感がして、ルイズは符方録の一ページをめくる。
 荒々しい字で書かれた、自分には読めない文字がそこにある。
 それを静嵐に見せて問う。
337名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 00:03:03 ID:HIJn0+MA
才媛を支援
338零魔娘娘追宝録:2007/10/07(日) 00:03:44 ID:JibpNby5
「……これは何の札なの?」
「それは『育毛の符』だね」
「いく、もう?」 
 育毛とはあの育毛か? そりゃあ、髪染があるのだから育毛があっても不思議ではないが。
「簡単に言うと毛生えの術。たとえ頭の皮膚が無くなっても毛が生えてくるくらい強力だよ」
 何だそれは。そんなものを欲しがるのはコルベールくらいなものだろう。

「こ、これは?」
 ルイズは別のページをめくる。さきほどとは違う文字が書かれている。
「『焚きつけ用、火炎符』。どんなに湿った薪でも火がつくようになる。生木ででも水の中ででも火がつくよ。ただし植物限定」
 水の中ででも使えるとはたしかに強力だ。だが、たかが薪に火をつけるために符を使う者などいるのか?
 ルイズは次のページをめくる。

「これは!」
「『安産の符』。効果は言わずもがな」
「これ、これ、これこれこれ!あとこれも!」
 どんどんページをめくってみせる。静嵐は無駄に高いその動体視力を発揮し、それら一枚一枚を解説する。
「『滋養強壮の符』、『山賊避けの符』、『火災防止の符』『野兎捕獲の符』『宿酔い覚ましの符』。最後が『商売繁盛の符』さ」

 どれもこれも、どうせ書いてあるとおりの効果しかないのだろう。ならばこれは、この符方録には、
「くだらないものしか無いじゃない!」
 道理であっさりと、オスマンを助けた男はこれを譲り渡したわけだ。

 未だに気絶し、縛られたフーケに目をやる。彼女の髪は未だ虹色のまだら模様のままだ。
 殺されそうになったというのに、こんなものを盗んでこんな目に逢ってしまったフーケにわずかに同情の念が沸いてくる。
「どれも効果自体はもの凄く高いんだけどね。そういう冗談が好きな人だったんだよ、龍華仙人って」
 そう言ってのん気に笑う静嵐。彼もまた、符方録と同じ欠陥宝貝である。

 思い出すのは、静嵐を召喚した日のこと。静嵐が己の正体を明かした夜。
 あの日のルイズもまた、宝貝を手にしたことに喜び、そして思わぬ結果に裏切られたのだ。
 こうして欠陥宝貝に振り回され、散々な目に合ってしまったフーケとあの日の自分。両者に果たしてどれほどの差がある?
 再びがっくりとうな垂れ、ボロボロになってルイズは言う。
「わ、笑えないわ……」

                  *

「ただいま……」
「お帰り、ルイズ」
 部屋に帰ってきたルイズに、部屋で留守番をしていた静嵐は出迎える。
 フーケを国に引き渡し、学院に戻ってきた静嵐とルイズたち。
 ルイズは報告のため学院長室に行っていたのだ。

「それで、ご褒美は何か貰えそうなのかい?」
 散々にトリステインの国中を引っ掻き回してくれた大怪盗、土くれのフーケ。
 その正体を暴き、見事捕獲せしめたルイズたちはちょっとした英雄になっていた。
 オスマンの話では国から何らかの褒美が与えられることは間違いないらしい。

「とりあえずあんたにはこれよ、フホウロク。使い方がわかる人が持っていたほうがいいだろう、って。
変よね。大事なお友達からもらったものだっていうのに、あんたに渡すならって学院長はあっさり譲ってくれたの」
 そう言ってルイズは符方録を静嵐に手渡す。渡された静嵐は少し困る。
 普通の武器や道具などならともかく、宝貝が宝貝を使うということはあまりない。
 道具としての相性があるせいで、妙な誤作動を引き起こしたり、本来の機能を使えない場合があるからだ。
 しかし符方録のような類のものならばそれもないだろう。中身はルイズのために使えばいい。
339零魔娘娘追宝録:2007/10/07(日) 00:04:48 ID:JibpNby5

「まあ、くれるっていうなら大事にするよ。それで、ルイズには何かないの?」
 静嵐自身はあまり褒美などには興味がない。道具だからだ。だが、自分の活動の評価は気になる。
 自分の評価はすなわち使用者であるルイズの評価である。
 自分の協力でルイズが何か大きなものを得たならば、それはそれで静嵐としては喜ばしいことだ。
 静嵐の言葉に、何故か浮かない顔でルイズは言う。

「……私にはシュヴァリエ、騎士の称号が与えられるそうよ」
 騎士、というのはよくわからないが。おそらくは軍で言う『士官』のようなものであろう。
 実際に従軍するわけではなく、名誉職としてその称号が与えられたのだと思われる。
 泥棒退治の褒美としては破格ともいえるのではないか?
「騎士かあ。そいつは、すごいじゃないか!」

「すごい、のかしら?」
 ルイズの表情は明るくない。褒美が嬉しくないのだろうか?
「ん? 嬉しくないのかい?」
「だって、私は何もしていないもの」
 そう言ってルイズは拗ねたような顔をする。
 何を馬鹿な、と静嵐は思う。堂々とフーケのゴーレムとかいう術と立ち会ったのに。

「僕を使ってフーケのゴーレムってやつと戦ったじゃないか」
「その私の体を操ったのはあんたでしょ、静嵐。やっぱり私は何もしていないわ……」
 そうか。それが気になっていたのか、とようやく静嵐は納得する。

 たしかにゴーレムに対する作戦を立てたのは静嵐であるし、実際に体を操ったのも静嵐だ。
 彼女が何もしていないと言えばしていない。
 だがそれは、静嵐にとっては間違っている。
 静嵐は微笑んで言う。
「……ねえ、ルイズ。前に話したよね、僕たち宝貝が持っている『道具の業』について」
 ルイズは思い出すように首をかしげる。このことを話したのは、たしか初めて出合った日のことだ。

「ええ……。道具であるあんたたちパオペイは、人間に使われたがっているってやつでしょ?」
「嬉しかったよ。ゴーレムと戦う時に、ルイズが僕の言うことを信じるって言ってくれたこと」
 思い出すのはゴーレムと対峙したあの瞬間の会話。

      『でも危険だよ。少しでも失敗すればあの鉄の拳を叩きつけられて体はバラバラになる』
      『…………いいわ。私は貴族よ、敵に背を向けて逃げるくらいなら死んだほうがマシよ。それに』
      『?』
      『使い魔のあんたがやれるって言うなら信じるわ』

「僕もね、宝貝なんだ。道具として主人に信頼され、そして振るってもらう。それこそ宝貝冥利につきるってものじゃないか。
たしかにちょっと手は貸したけど、僕はあくまでもルイズの道具――いや、使い魔かな? 
だから、何もしていないなんて言わないでおくれよ。僕の力はルイズの力なんだ。
ルイズはその無い胸を張って褒美を受け取ればいいんだよ」

 静嵐の言葉に、ルイズは驚いたような顔して、そしてすぐに微笑む。
 見るものが見れば、思わず心を惹かれるような笑みだった。
「そう……そうね。そうするわ、あんたは私の使い魔、使い魔のお手柄は私のお手柄。そうよね?」
「そうそう、その通りだよ!」
 そういうふうに強気でいるほうが彼女らしい。静嵐もまた、このご主人のことを気に入っているのだ。

 なんだかいい雰囲気になる二人。だが、ルイズは思い出したように口を開く。
「ところで、ねえ静嵐?」
「何かな、ルイズ」
 ルイズは笑ったまま言う。
「あんた今『無い胸』とか言ったわね」
 静嵐はその言葉の意味に気づかない。
「言ったけど、それが何か?」
340零魔娘娘追宝録:2007/10/07(日) 00:05:58 ID:JibpNby5

「……たしかにあんたは今回役に立ったし、さっきの言葉も忠誠心の現れよね。正直感動したわ。
そんな健気な使い魔にはご主人様として、義務を果たしてやらなくちゃいけないわよね?」
 この上何かご褒美をくれるのか、と静嵐は期待する。
 ルイズはごそごそとチェストを漁り、何かを取り出す。
「いやあ、そんな、お気遣いな、く……?」
 静嵐の顔がにやけた笑いで固まる。

 ルイズが取り出したのは乗馬用の鞭であった。
「使い魔を躾けるのもご主人様の義務。物事を正確に表現できないような使い魔はお仕置きしないとね」
 ルイズは鞭を振り上げ、叫ぶ。
「この……欠陥宝貝!」
 そう怒鳴るルイズの顔は、己の使い魔に似た、少しだけ緩んだ笑みであった。

第一章 『零を騒がす落し物』 完
341名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 00:07:17 ID:JibpNby5
そういうわけで第六話、原作第一巻分を終了でござい。支援してくださった皆様方、ありがとうございました。
思わず長々とした投下になってしまいました。最初に全部で何レスか書いておくべきですなぁorz

今回の悩みどころだったゴーレム攻略。割と正攻法な感じでいけたのではないかと思っております。
あと、タバサがなんかやたら戦闘のプロっぽくなってます。そりゃもうスクランブルダーッシュてな具合に。
あるいは「知っているのかタバサ!」状態でしょうか。いやあ、解説役って便利ですねえ。

ともあれ、次回からは原作第二巻分、アルビオン編に突入します。
皆大好きやられ役「閃光のワルド」登場や、デルフリンガー覚醒などなどと美味しそうなイベント盛りだくさんで、
今からどう料理してやろうか迷います。こう、さっぱりとしたアスファルト風味とかに。
あとは姉さまの出番を増やしてやりたいもんです。もちろん、『将軍』や符方録以外の宝貝についても。

ぽちぽち更新していきたいので、待ってくれる人は気長に待っててください。夏までくらい。
てなところで紙数も尽きた。ではまた。
342名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 00:07:52 ID:2lnyaiiR
乙!!

二人の信頼関係がいいなぁー。
それにしてもコッパゲが育毛の符のことを知ったら……
343名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 00:09:43 ID:+BsMmir9
GJっしたー
コッパゲ
 
    ゆずってくれ!たのむ!
    ころしてでも うばいとる
 ニア ところでこのゆかいなへびくんをみてくれ どうおもう?
344名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 00:11:35 ID:HIJn0+MA
>>342

「殺しても奪い取る…」


ってか、『滋養強壮』と『無病息災』の符を使えばタバサママもカトレアも治せるんじゃ?
345名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 00:13:09 ID:ucTA6pWi
乙っしたー!
ああもう、おもしろいなあ。次も期待してるっすー。
346ゼロガー:2007/10/07(日) 00:23:26 ID:lBC3s4xl
投下開始
347名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 00:24:17 ID:+BsMmir9
応 支援
348ゼロガー:2007/10/07(日) 00:24:30 ID:lBC3s4xl
目から高圧で体液を射出し、気化冷凍法を使って暴れまわるタバサの母を取り押さえた時には陽は西に傾いていた
「強敵であった…」
天井が綺麗さっぱり無くなったパブの床に横たわるガーゴイルのボディにはあちこちヒビが入っている
「生きてるって素敵…」
茜色の空を見上げソファに寝転んだキュルケが呟く
「いや〜いきなり大回転エビ投げハイジャンプ吸血破壊光線を出してきた時はもう駄目かと「それは作品が違います」」
バレスターのボケにケルプがツッコミを入れる様をぼんやりと眺めていたルイズは、ふとその場にオシリスとギーシュがいない事に気付いた
349ゼロガー:2007/10/07(日) 00:25:44 ID:lBC3s4xl
「ここにいたか」
街はずれの丘の上で彼岸花達に囲まれ、一人物思いにふけるオシリス
いつもなら威圧感たっぷりにじゅるじゅるとうねる触手も心なしか元気が無い
「ひょっとして落ち込んでるのか?」
『“あれ”を見せつけられてはな…』
自嘲気味に笑うオシリス
普段の高飛車な態度からは想像も出来ない力の無い笑みだった
タバサが望んだこととはいえ、タバサの母の変貌は100%オシリスの投与した万能薬が原因である
変化は一過性のもので、現在はもとの状態に戻っているのが不幸中の幸いだったが、不完全とはいえ自分の能力にそれなりの自信を持っていたオシリスにとっては大ダメージだった
「体質に合わん事すると風邪ひくぞ?」
何気に酷いことを言うギーシュ
『要らぬ心配じゃ、役立たずな万能薬じゃが妾にだけは完璧に効k……!!』
オシリスはいきなりギーシュを抱きしめた
『お主は天才じゃ!』
コロンブスの卵と言うべきか
オシリスの万能薬は他の薬と混ざると変質してしまう
ならば万能薬をその薬に合わせて改良すればよいのだ
方法は簡単、タバサの母に使われた毒薬をオシリスが飲めば後は自己進化機能によって毒を中和するのに最適化された万能薬が生成される
自分の考えに夢中のオシリスは豊かな胸の谷間にギーシュの顔を挟み、両腕で頚動脈を決めていることに気付かない
意識を手放す直前、ギーシュの脳裏に「ギリギリぷりん」という謎のフレーズが浮かんだ
350名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 00:26:02 ID:+BsMmir9
支援
351名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 00:26:13 ID:bMZsPM5W
352ゼロガー:2007/10/07(日) 00:26:55 ID:lBC3s4xl
その夜
(これではまるで…夜這いではないかッ!)
息を殺し、足音を忍ばせながらイザベラは心の中で毒づいた
「おねーさま、やっぱり私は気が進まないのね」
小声で話しかけてくるシルフィードを振り返ってギロリと睨む
「お黙り」
イザベラのアイアンクローがシルフィードの顔面を襲った
白魚のような指が風韻竜の鱗に食い込む
「おねーさま!痛い痛い!ギブアップなのね!」
本気で痛がっているシルフィード
イザベラ侮り難し
シルフィードを開放したイザベラは、人差し指を立てた拳を唇の前に持っていく
万国共通“シーッ!”のサインだ
目の端に涙を浮かべたシルフィードが頷くと、イザベラは再び移動を開始する
抜き足、差し足、忍び足
ピッタリと壁に張り付き、カニ歩きで進む姫君と身長6メイルの風韻竜
なかなかにシュールだった
「でもやっぱり間違ってると思うのね、イザベラおねえさまとシャルロットおねえさまが戦うなんて」
シルフィードは鳥頭だった
「シルフィードには分かるのね、イザベラおねえさまは本当はシャルロットおねえさまが大好きなのだわ」
百合な妄想に浸るシルフィードはイザベラから噴き上がる怒気に気付かない
「ジェームス三木も言ってるのね、愛が欲しければ誤解を恐れずにありのままの自分を太陽に「黙れと言った」ウォシャレッ!?!」
鼻の穴に人差し指と小指を突き入れられ悶絶するシルフィード
ちなみに拳の形は鞏家兜指愧破だった
353ゼロガー:2007/10/07(日) 00:28:02 ID:lBC3s4xl
「何あれ?」
「従姉」
珍しく露骨に嫌そうな顔をして答えるタバサ
賑やかな隠密行動をとる一人と一匹はとうの昔に察知され、ガーゴイル達は母屋の斜め向いにある納屋の陰からイザベラ達を監視していた
「どうやらタバサ嬢の拉致もしくは暗殺が目的のようですが、強いのですか彼女は?」
「微妙」
ケルプの問いに限りなく簡潔に答えるタバサ
実はイザベラのメイジとしての実力は決して低くない
そうでなくては風韻竜を使い魔にすることなど出来ないし、何より精鋭揃いの北花壇騎士団の団長など務まらない
だが生来の要領の悪さと無闇に高いプライドが自爆フラグを立てまくるため、実戦では実力の四分の一も発揮出来てはいない
「そろそろ止めたほうが良いのではないか?」
シルフィードの頭に飛び乗ったイザベラが転蓮華の構えに入ったのを見て、ガーゴイルは言った

投下終了
354名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 00:29:16 ID:+BsMmir9
乙っしたー。
そーか、きゅいきゅいはイザベラの嫁になったのか……。
355名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 00:34:00 ID:/KN6B94V
乙でしたー
取りあえず鞏家兜指愧破とか転蓮華かますのはメイジとしてどうかと思うんですよ
イザベラさん
つーかもう拳法だけでそこらのメイジ倒せそうだな
356名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 00:39:12 ID:ieHsL58h
珍しくゼロガー長いな。
357名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 00:43:45 ID:XH+Fh5e0
思いっきり遅レスだがタイムマシン云々でタバサなら母親の為にイマジンと契約しそう、と思ってしまった
358名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 00:45:02 ID:IMgYFqXn
投下OKでしょうか? かなりマイナーなネタですが……
359名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 00:46:16 ID:HIJn0+MA
OK牧場
360名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 00:46:48 ID:s5lBD5RA
>>356
4レス使って前の人のさんぶんのいちのテキスト量で長いか…
もっと纏めて投下してくれないとまとめ抜きでは話の全体像が分かりづらい
361使い魔エイト:2007/10/07(日) 00:48:27 ID:IMgYFqXn
 *サモン・サーヴァントだいせいこう!

 使い魔召喚の儀式。
 色々考えた末、コルベールは『ゼロのルイズ』の二つ名を持つ少女を一番最初にやらせた。
 魔法成功率ゼロという偉業(?)をかんがみて、最後にやらせるという方法も考えないでもなかったが……。
 ここ大一番の舞台というプレッシャーをかけることで、一発成功するかもしれないとも考えたのだ。
 で、その結果。

 「……」

 自分の召喚したものに、ルイズは言葉を失っていた。
 はたで見ていたコルベールも、他の生徒たちも。
 それはドラゴンやグリフォンではなもちろんなく、サラマンダーとかバグベアでもない。また、カエルやネズミ、モグラでもなかった。
 ましてや、どこか異世界からやってきたルイズと同年代の平民の少年でもない。
 一言で言うならば、ひとかかえもあるような、四角い箱である。
 そのように、ルイズたちは認識した。
 けれども、もしもここにどこか異世界からやってきたルイズと同年代の平民の少年なんかがいたら、間違いなくこう思ったに違いない。
 でっかいルービックキューブだ――と。
 カラフルな部位で構成されたその箱は、ふよふよと宙に浮いていた。

 「あ、あの……」

 ルイズはぎぎぎと音を立てながら、救いを求めるようにコルベールを見る。

 「おほん……。無生物が召喚されたというのは前代未聞ですが……。一応召喚成功と見てよいでしょう……。さ、ミス・ヴァリエール、使い魔と契約を――」

 「で、でも……」

 あれ、箱ですよ? と、泣きそうな顔でルイズは口ごもる。

 「さすがゼロのルイズ、期待を裏切らない!」

 「でっけえ、箱だな! 何が入ってるんだ?」

 「まさか、人間の死体とか入ってないでしょうね?」

 「じゃ、あれ棺おけかよ!?」

 野次に対し、ルイズは反論する気力もなかった。
 絶望を噛み締めながら、ルイズはふらふらと箱に近づいていく。
 箱。でっかい箱。ふよふよ浮いてる箱。
 それが自分の使い魔。
 実家になんて言おう。
 箱――これ、本当に箱か? 何か浮いているし……。もしかすると、何かのマジックアイテムかもしれない。
 そんな微かな希望をこめて、ルイズは箱に触れた。
 がちゃり……と、力のこめ具合のせいか、箱の一部が動いた。
 これは――がちゃり、ルイズはさらに動かしてみる。
 もしかすると、これ……普通じゃ開かない? そう思いつつ、動かし続ける。
 後ろでは他の生徒たちがどんどん召喚を成功させているが、ルイズはだんだんと箱に熱中し始めていた。
 そして、あることを推測する。
 これって、箱のそれぞれの面を同じ色で統一させるんじゃあ?
 統一させたら、どうなる?
 マジックアイテムという言葉が頭をよぎる。
 そうだ、普通こんな浮いてる箱なんてありえない。すごく貴重なものを、この中に隠しているのでは!?
 きゅぴーん!
 ルイズの中で、希望の光が輝いた。
362使い魔エイト:2007/10/07(日) 00:50:44 ID:IMgYFqXn
 そして、ルイズは箱を――いやいや、ルービックキューブを動かす! 動かす! 動かす!
 ……いくばくかの時間経過。
 他の生徒たちはというと、みんなどんどん使い魔を召喚して、とうとう最後の一人が召喚を終えていた。

 「ミス・ヴァリエール……コントラクト・サーヴァントは終わりましたか?」

 そうコルベールが声をかけたのと、ルイズが『パズル』を完成させたのは、ほとんど同時だった。

 ヴオオオオオオオオ……!
 箱が輝き、不気味な音が鳴り響く。

 「これは……」

 コルベールが自分の杖を握り締めた時、

 <パスワード確認、パスワード確認>

 「「しゃべったあ!?」」

 ルイズとコルベールがハモる。

 ガパア!

 箱が突如として、分解した。
 中から出てきたのは、人形……いや、人間の少年である。
 年はまずルイズよりも下と見てよい。
 少年の着ている奇妙な衣服――肩パット、手甲部、靴、そして後頭部に伸びるように立っている髪を結んだ球状のもの――にそれぞれ、触手のようなものが接続されていた。
 前髪の部分と、後ろの球状のものに、8のマークが見える。

 <ガーディアン・エイト、起動します>

 声と同時に、それらは少年から切り離される。
 そして、少年は――倒れた。

 「ちょ……!」

 とっさに駆け寄るルイズは、箱の残骸がすーっと消えていくのを見逃したが、コルベールはこれをしっかりと見ていた。
 人形? ゴーレム? それとも、人間が何かの魔法であの箱に閉じ込められていたのか?
 ルイズは少年に駆け寄り、固まった。

 「くかー、くかー……」

 少年はただ寝ているだけだ。

 「……この」

 平和そうなその顔に、ルイズはちょっとムカムカした。

 「ちょっと、あんた! 起きなさい!」

 怒鳴りつけてみたが、一向に起きない。

 ――もしかして……箱じゃなくて、この子が私の使い魔?

 何ともいいがたい気分になる。
363名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 00:51:28 ID:2lnyaiiR
ガーディアンエイトか!!
364使い魔エイト:2007/10/07(日) 00:52:01 ID:IMgYFqXn
 ――で、でも、でも! あんな風に箱に入ってたってことは……もしかすると、何かすごい力とかがあるのかもしれないわ! うん、そうよ! 多分……きっと、そうなんなじゃないかな? できればそうあってほしいな…………。

 てな、葛藤をしつつ――

 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我が使い魔となせ――」

 そっと、ルイズは少年にキスをした。
 寝ている少年の左手に、使い魔のルーンが刻み込まれていく。
 すると、髪の毛の球から、声がした。

 <マスターの設定を変更します、マスターの設定を変更します…………。…………変更は無事終了しました>

 「な?!」

 その途端、ぐおんと少年が起き上がった。
 少年はじーっと、ルイズを見つめる。

 「な、なによ……」

 「ごっつあんです!!」

 バッと左手の手のひらを突き出すように、少年は珍妙な挨拶をした。

 「……あ、あんた、誰?」

 「エイト」

 「エイト……? ふーん、そういう名前なんだ? で、あんた何であんな箱に入ってたの?」

 「えーとね……」

 「うん」

 「わかんない」

 「……あ、あんたね……?」

 ルイズは頭をかかえたがすぐに気を取り直し、

 「……もういいわ! とにかく、あんたは今日から私の使い魔よ!」

 「わかった。おまえのつかいまになる!」

 エイトは元気よく応える。

 「や、やけに素直ね? ……って、お前ってなによ!? 使い魔のくせに、ご主人様と言いなさい!」

 「ごしゅじんさま!」

 「……わ、わかればいいのよ」

 あまりにも素直なエイトの態度に、ルイズはちょっと調子を崩しながらも何とか平静を保つ。
 横でコルベールがエイトのルーンを見て何か言ってたようだが、そのへんは聞き逃してしまった。
365名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 00:52:30 ID:dNw/7ijl
吉崎観音作品 支援
366使い魔エイト:2007/10/07(日) 00:53:10 ID:IMgYFqXn
 ルイズはおかしな少年・エイトを自分の部屋へと連れてきていた。

 「まず、使い魔の仕事について説明するから、ようく聞くのよ?」

 「ようくきく。はやくおしえろ」

 素直な返事をするエイトに、ルイズは困ったような顔で嘆息した。

 ――この子、本当に大丈夫なのかしら?

 もやもやとした不安を感じずにはいられなかった。
 たとえ人間であろうが、使い魔として召喚した以上、メイジに服従するのは当然。
 ましてや平民ならばなおさらだ。
 それがルイズの認識である。
 ならば、相手のこちらの言うことに従うのしごく当たり前で、戸惑うことなどありはしないのだが……。
 その素直さゆえに、かえってルイズは戸惑っていた。
 あまりにもこちらに従順すぎる。
 言葉づかいや礼儀はアレだが、戸惑うとか、反抗するとか、そんなものが欠片も見えないのだ。
 常ににこにこへらへらした表情で何を考えているのかわからないくせに、ルイズの言うことに恐ろしいほど忠実である。
 だから、だろうか。
 ルイズはこの少年の素性がひどく気になっていた。
 これがもしも、どこか異世界からやってきたルイズと同年代の平民の少年とかだったりしたら、そんなもの考えずに、有無を言わさず服従をせまってであろうが。
 道すがら、どっからきたのか? 親兄弟はいるのか? そんなことを尋ねてみたが、何を聞いても要領を得ない。
 一応考える様子は見せるのだが、結局は、

 「わかんない」

 である。
 ちょっと頭がおかしいのでは? と思ったりしたが、こっちの命令にはちゃんと従う。

 ――まあ、反抗されるよりはいいか。

 ルイズは不安を押しやりながら、ごほんと咳払いをする。

 「まずはね……そう、使い魔は主人の目となり、耳となるの。つまり視覚や聴覚の共有………。無理みたいね」
 エイトはぼへ〜っとした顔で、ルイズを見ていたが――
 「めとなり、みみとなるってな〜に?」
 「わかんない? しょうがないわね……つまり、頭の見たり聞いたりしてるものが、私にも見えたり聞こえるようになることよ」
 ルイズが答えると、

 ピピピピ…………。

 例の球からまた変な音がした。

 「どうせできないんだから、いいんだけどね。……あのさ、ずっと気になってたんだけど、その髪の丸いの、なんな……」

 言いかけた時、ルイズは違和感を感じた。
 耳が、何か変だ。
 さっき自分の言った言葉を、別の誰かが同時に言っていたような。
 それに、目の奥に残像みたいに見える、このピンク頭の女はなんだ……?

 「へ? これ……私?」 

 ルイズはハッとする。
 感覚の共有ができている。
 今、エイトの見聞きしているものが、ルイズにも伝わっているのだ。
367名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 00:54:34 ID:P7oEP+cZ
支援だ
368使い魔エイト:2007/10/07(日) 00:55:35 ID:IMgYFqXn
 「かんかくのきょ〜ゆ〜って、こういうの?」

 と、エイトが聞いてきた。

 「え、ええ。そうよ! なんだ、できるじゃない……! やっぱできるじゃない!」

 ルイズは驚きながらも嬉しくなり、

 「とりあえず、あんまり続けるのはアレだから、いったん切るとして……。次! 使い魔は主人の必要なものをとってくるの! 薬草とか、硫黄とか、秘薬の材料になるものを」

 「やくそう? いおう? ひやく? ざいりょう?」

 「……わからないわよね、あんた平民だし。それはいいわ。これはパスね。次が一番大事。主人を守ることよ!」

 「ぼくは、ルイズをまもる!!」

 エイトはうなずき、元気に返事をした。

 「やる気はすごく感じるけど……」

 今ひとつ頼りないわね……ま、しょうがないか。と、ルイズはため息をつく。
 こんな子供に、護衛など期待できないだろう。

 「後は……明日にしましょう。朝になったら起こして……それから」

 ルイズは衣服を脱ぎ、エイトに放る。

 「これ、洗濯しといて。そこの籠の服と一緒に……」

 「せんたく?」

 きょとんとした顔でエイトは動かない。

 「……あんた、洗濯もわかんないの? 今までどんな生活してたのよ……。朝になったら、メイドにでもやり方教わりなさい」

 「わかった。メイドにおそわる」

 「なら……今日はもう休むわ。あんたは床よ」

 ルイズは床を指差す。

 「毛布くらいなら貸してあげ……って」

 ルイズが毛布を持って声をかけた時には、エイトはひっくり返るようにして床に寝転がっていた。
 すぴーすぴーと寝息をたてている。

 「寝つきいいのね……?」

 ルイズは呆然としながら、自分もベッドで眠りについた。



 :まずは投下終了です。続きは明日かあさっての夜に……
  ケロロで有名なあの漫画家さんの作品『護衛神エイト』からエイトを召喚でした
369名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 00:58:05 ID:RaWySErl
護衛神エイトかぁ……もう一回読み直す為に引っ張り出してこよう。
GJです。


そして、投下予約を
370名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 00:59:07 ID:2lnyaiiR
支援の魔術師
371名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 00:59:11 ID:ieHsL58h
>>360
いや、これまでたいてい1レスに納まってた気がするから。比較の問題。
372名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 01:00:54 ID:Vybzv+XV

エイトは読みたいけど単行本が手に入らないんだよねぇ…
ガンガンはハーメルンや忍ペンまん丸みたいなメジャー
作品ですら入手困難だったりするから困る
373名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 01:02:13 ID:RaWySErl
では投下しますね
374名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 01:03:15 ID:s5lBD5RA
>ハーメルンや忍ペンまん丸
そういやアニメにもなってるけどビデオすらまともに見かけんな
375GTA:LCS-0 第八回:2007/10/07(日) 01:04:21 ID:RaWySErl
――ルイズ側。
私は心配だった。貴族と平民が喧嘩して怪我で済めばいいほうだから。魔法を使えない平民は、貴族からしてみれば赤子の手を捻るもの
だから。怒り任せに貴族が魔法を使えば、平民なんて消し飛んでしまう。だけど―――
「逃げずに来たのは誉めて……アッ―――――――――――――――――――――!!」
私はトニーが対峙した瞬間眼を背けた。だけど、視点を戻したら聞いた事の無いギーシュの悲鳴と火だるまになっている姿。信じられ
なかった。魔法?……そんな筈ない。トニーは魔法の存在しない世界から来たと言う事は知っているから。疑問は多かったけど、この時に
私の脳裏をある台詞が過ぎる。
《『殺られる前に殺れ』、これが俺たちの生き残る唯一の手段だ》
―――怖い!!私が最初にトニーを見たときに感じた冷淡な感覚のその一端の正体を垣間見えた気がする。だけど、授業で私を庇った
姿や、クールでニヒルな姿が重なるとその感覚が陰に潜む……。
予想通りギーシュのワルキューレによる反撃を被った。あの大きい体が何度も揺さぶられた様は、見ていられなかった。シエスタも
眼を背けてた……でも正直、ここからが理解に苦しむ。トニーの凄い走行量とワルキューレが四散した事。なんであのワルキューレが
砕け散ったのかが分からない。気が付けば、体が焦げて血だるまになったギーシュが運ばれていく姿と、皆で必死になって止めていた
トニーの姿だった……。
「な…何があったの?」
思わず横にいたシエスタに聞いてみた。でも、彼女は両手を口に置き、何も言葉が出せなかった。
376GTA:LCS-0 第八回:2007/10/07(日) 01:06:16 ID:RaWySErl
俺は治療を受けながら、メイジ達から茶とケーキを振舞われた。なぜこんな事になっているのか俺には少々理解に苦しむ事態なのだが、
メイジ達は複雑な笑みを浮かべながら、俺に飲んでくれ、食べてくれ、おかわりはいかが?と振舞ってくる。気持ちの悪い事この上無い
のだが、折角振舞われたのだから美味しくいただく事にする。
「どうぞ、お茶のおかわりです」
分からないのが、このシエスタが心なしか楽しそうに俺に振舞う姿がある。
「なぁキュルケ、これはどう言う風の吹き回しだろうか」
「深い意味はないと思うわ、遠慮なく頂けば良いと思うわよ」
キュルケに聞いてみてもこんな返事が返ってくる。首を捻りたくなる状況だが、こんなのも悪くはないだろう。
「ところでトニー、私が聞きたい事あるんだけど、聞いて良いかしら?」
「答えられる事ならな」
一息ついた頃、キュルケとルイズが俺の正面に座りこう切り出す。
「「なんで、ギーシュが火だるまになったの?」」
二人が声を揃えて聞いてくる。思わず吹きそうになったが、何とか表情を変えずに答える事が出来た。
「それはだな、これを使ったからだ」
そう言って俺は、火の点いていない火炎瓶を取り出す。これを見たキュルケとルイズは二人して首を捻った。この二人、仲悪いが実は
相性いいんじゃないのか?
「これで何で燃えるのよ」
「先に詰め込んでいる紙があるだろ?これをだな……」
俺は火炎瓶の仕組みと簡単に説明する。実に単純なものなのだが、この二人熱心に聞いている。この世界はまだ実用的なものではない
ようにも見えるが、仲の悪い二人が並んで聞いている様は正直面白い光景だ。
377名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 01:06:20 ID:HthLNrS3
8GJ!
学習型だから、そのうち魔法を使い出したりしそうだぜ。
378GTA:LCS-0 第八回:2007/10/07(日) 01:07:54 ID:RaWySErl
夜は夜で食事もマルトーから結構豪勢なものとワインを振舞われ、気持ちの良い気分になる。久しぶりに腹一杯食べた俺は、済んだ良い
空気と、地球では見る事はまずないであろう二つの月の素直に綺麗と言える風景に包まれながら煙草に火を点けて一服をしていた。
……これで元の世界に戻れれば、御の字なのだろうがな。
「トニーさん、どうなされたのですか?」
煙草を吸いながら散歩をしていると、シエスタが後ろから声をかけてくる。
「ああ、食事の後の散歩だ。元の世界に居た時はこんなのんびりな事は出来なかったのでな」
「トニーさんの居た世界は、どんな世界なのでしょう?」
気がつけば、このシエスタと並んで歩いていた。
「知らん方がいいと思うぜ」
流石にこんな娘に《アメリカ最悪の街》リバティーシティを教える気にはならなかった。俺みたいな人種には居やすい街だが、もし自分が
堅気だったなら、絶対住みたくはない町だろう。
「ふふふ」
シエスタは優しい微笑を見せ、
「トニーさん、今度二人で一緒に居ませんか?」
思っても見ない台詞が出て来る。
「ん?おいおい、俺でいいのか?」
「ふふふふ……おやすみなさいトニーさん、また後ほど」
「ああ、おやすみ。シエスタ」
379名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 01:09:34 ID:P7oEP+cZ
支援するぞ
380GTA:LCS-0 第八回:2007/10/07(日) 01:10:07 ID:RaWySErl
今回はこれにておしまいです。
予定より時間が空いてしまったので投下できました。

私はこの作品を書いている間だけ、ゼロの使い魔のイラストが
『VC』か『SA』のイラストになっています。脳内で。
381名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 01:10:10 ID:j/15WD+N
支援
382名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 01:22:03 ID:HIJn0+MA
元の世界では有能で、一流の人材だったのが、
ハルケギニアの環境、インフラの不備などのせいで凡人になってしまう。
そんな使い魔はどうかなあ。

電子の妖精、ホシノルリとかw
383名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 01:23:13 ID:skIGcwAw
投下乙です。
キュルケとかGTAの画風にすごくはまりそうだなー。
あと、炎蛇モードのハゲとか。
384名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 01:44:08 ID:qeyJAca9
スレ68コントロール!
こちらスレ住民、発進許可を要請する!
385名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 01:46:47 ID:SHig01Kw
許可する
386ゼロの使い魔人:2007/10/07(日) 01:50:34 ID:qeyJAca9
…感謝!

…天を貫くかの様に高く掲げられた杖が、鋭く振り下ろされた。
果たして、この挙動を何十回繰り返しただろうか? ただ一心に呪を紡ぎ、
己が裡に在るだろう《力》を注ぎ、解き放つ。
だが……。それに応えるのは、只の土煙と爆音。そしてそれにも増して不快で自身を辱める、
男女入り交じった嘲弄の雨だった。
この日を迎えるにあたって、彼女は心身共に入念な準備を施し、不退転の決意を胸に臨んだ。
――が、度重なる失敗と外野からの呵責無い悪罵、野次がもたらす、焦りと無力感は体力に集中力をも蝕み、
それらが相俟って、『もう後が無い』という事実を彼女に自覚させる。
揺らぐ身体と心に鞭打ち、天地全てに届けといわんばかりの声で、彼女は呪を構築し詠み上げた。
そして……。遂に「それ」が彼女の眼前に顕れた。
それ迄の爆発では無い。七色に煌く、姿見の様な物体が朧に浮かび、表面が波打つや、大きく渦を巻いた。
(や、やった…! 私にも出来…、いけない!)
反射的に浮かぶ歓喜を抑え、彼女は意識を前方の《門》へと傾注する。
もし、この機を逃してしまえば、今の自分が再度この《門》を開ける保証なぞ、一分も無いのだ。
手にした杖を握り直し、残された体力と気力の全てを託す。
「――さあ、来なさい! 我と命運を分かち合いし、半身よ…!!」
凛とした声が響き渡った瞬間。
叫びに応えるかの様に、《門》が一際強い輝きを発した瞬間。
砲弾の如き速度と勢いで、黒い塊が光の中から飛び出した。
「きゃ……!」
突然の事に、正面に立っていた少女は避けきれず弾かれ、その場に尻餅を付く。
彼女を撥ねても影の勢いは衰えず、更に数メイルを転がって近くの草むらに突っ込み、
それを薙ぎ倒した所で、やっと止まった。
……したたかに打った腰の痛みも今は気にならない。
少女は立ち上がるや、自身の『成果』を確かめようと、蹲る影へと駆け寄る。
――黒髪と黄色がかった肌。顔の半分は眼鏡に似ているが、ごつごつとした仮面じみた物体に覆れている。
見慣れぬ色形の衣服。その上にやたらポケットが付いた短衣を着込み、足下は頑丈そうなブーツ。
両手には細緻な彫物が施された、騎士が着用するような黄金色をした小手を填めていて、
又、すぐ近くには彼の荷物とおぼしき、濃緑色の袋と銃に似た細長い金属の塊が転がっていた。
387ゼロの使い魔人:2:2007/10/07(日) 01:52:45 ID:qeyJAca9
――角も無ければ羽も無く、腕が四本だったり、尻尾も見当たらない。
そして何よりも――杖を携えて無ければ、外套(マント)を纏ってもいない。
――つまりは、平民。他の者達が得た様な、幻獣はおろか小動物ですらない、どうでもいい存在。
「…ミス・ヴァリエール。使い魔召喚の儀で、平民など呼んでどうするおつもり?」
「なんだい、成功したようでやっぱり失敗してらぁ!」
「さすがは“ゼロ”のルイズ! どこまでも俺たちの予想を裏切らないぜ!」
「しかも、出てきたのは平民だぜ平民! ま、あいつらしいちゃあ、あいつらしいけどね」
周囲を取り囲む人垣が、どっと笑い声を上げた。その中に気遣いや遠慮といった物は、一つとして無い。
否応無く恥辱と怒りを呼び起こされた少女の白皙の肌は、赫っと紅く染まる。
「ミスタ・コルベール!」
背後に控える中年の男性…この儀式を監督する、担当教師へと少女は向き直る。
「なんだね。ミス・ヴァリエール?」
「あの! もう一度、召喚をさせて下さい!」
「それは駄目だ。ミス・ヴァリエール」
訴え掛ける声は、すげなく拒絶される。
「これは決まりだからだよ。二年生に進級する際、君達は『使い魔』を召喚する。今、やっているとおりだ。
この儀により現れた『使い魔』で、今後の属性を固定し、それにより専門課程へと進むんだ。
一度呼び出した『使い魔』は変更する事は出来ない。何故なら、春の使い魔召喚は神聖な儀式だからだ。
好むと好まざるに関わらず、彼を使い魔とするしかない」
――生存本能に衝き動かされたか、混濁しきった彼の意識は急速に形を整えていく。
それに伴い、神経、筋、腱、骨格、血流、氣脈…。バラけて、停滞していた機能が、
『緋勇龍麻』という人間を動かすべく、有機的に纏まり連携を取り始めた。
(か、は……)
僅かに息をつく。何処からか聞こえて来るのは、あの凄まじい断末魔じみた破壊音に変わって、
ヒトの声…しかも複数のだ…である。
若い女性らしいのと年配の男性…、それ以外にも、少なくない数の人間がいるのがわかる。
その時点で、今居るのはあの崩壊しつつあった遺跡では無く、何処か地上に出ている事は明らかだ。
(く…。地下で、あの鏡みたいなモノへと飛び込んでから、此処で寝転がっている迄に一体、何が、あったと…?)
388名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 01:56:19 ID:HIJn0+MA
支援
389名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 01:57:25 ID:SHig01Kw
支援
390ゼロの使い魔人:3:2007/10/07(日) 01:58:26 ID:qeyJAca9
一方で、全身の自己診断は既に終わっていた。
――僥倖というべきか。全く未知の異変に巻き込まれたというのに、拙い怪我や異常等は感じられ無い。
逃げる時から稼働っ放しだったN.V.Gの電源を落として頭の上にずらすと、二日酔い
にも似た頭痛に眉をしかめつつ、投げだされたままの四肢に力を送り、上体を起こす。
「――いは認められない。彼は…、ただの平民かも知れないが、呼び出された以上、君の『使い魔』
にならなければならない。古今東西、人を使い魔とした例は無いが、春の使い魔召喚の儀式
のルールはあらゆるルールに優先する。彼には君の使い魔となって貰わなくてはな」
「そんな……」
半分方禿げ上がった中年男性の前で、桃色がかった金髪の少女がうなだれるのが見えた。
「…そこの二人組。聞きたい事が有る。一体、此処は何処だ? お前達は、何者なんだ…?」
彼の当然ともいえる問い掛けは無視されたのか、手前にいた少女がこちらへと歩み寄って来る。
「…聞こえていないのか? お前達は誰だ? 何故こんな場所に、俺が居るというんだ?」
敵意や武器は無いようだが、警戒すべき何かを感じ、自然、彼の手は腰に下げた物へと伸びる。
「あーっ、もう! うるさいだけじゃなく、失礼な平民ね! いい? 言うのは一度だけよ。
ここは、ハルケギニア大陸のトリステイン王国。そして、伝統あるトリステイン魔法学院よ。
…後、これが一番大事な事だけど。私はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ヴァリエール。
あんたの主人となるべきメイジよ。覚えておきなさい!」
「な、に……?」
(トリステイン王国? 地名だけなら、ヨーロッパか何処かにありそうだが、仮にそうだとしても、
日本から此処迄の瞬間転移を行った上、着いた先はハルケギニア大陸!? しかも『魔法』学院だと!? 馬鹿な…!!)
経験上、大抵の異変、トンデモには耐性を備えていた龍麻だが、全く予想だにしない事態と地名や語句に
思考を掻き乱される、が…。それに気を取られたのが、彼の人生で二番目の不幸であった。
「……ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔と成せ」
気付けば、息がかかる程の距離にルイズと名乗った少女の顔がある。
「!?」
391ゼロの使い魔人:4:2007/10/07(日) 02:00:23 ID:qeyJAca9
そのまま彼の唇に押し当てられる、柔らかく温かな触感。
「っ…!? いきなり何をするかっ!」
触れたのは一瞬。反射的に身を放した龍麻は、袖で口元を拭う。
「何って、『契約』に決まってるじゃない。…感謝しなさいよね。貴族にこんな事されるなんて、
普通は一生ないんだから」
「契約だと!? 何を勝手なこ…っっ!?」
言い終える前に、左手に感じた違和感に唇を噛む。
火傷…むしろ高圧電流に触れた様な熱と痺れが、左手を起点に全身を這い回る。
「ヴァリエールとか言ったな! 何が原因で、こうなった…っ!!」
「すぐ終わるわよ。あんたの身体に『使い魔のルーン』が刻まれているだけだもの」
言い返すよりも先に、『黄龍甲』の止め具を外すと、左手の状態を確かめる。
――鈍色に光る、文字とも記号ともつかぬ代物。勿論、龍麻が持つトレジャーハンターとしての
知識の中にも、類似する物は全く存在しない。
(これは……!?)
ふと、横から向けられた視線に気付く龍麻。
見れば、あの中年の男がまじまじと左手に刻まれたソレを注視している。
「ふむ…。珍しいルーンだな。少し調べてみるとしよう」
一人ごちると、龍麻達から背を向け、向こうに居並ぶ教え子達に声を掛ける。
「――これにて、儀式を終了する。さあ皆、教室に戻るぞ。遅れないように」
その身体が音も無く浮かび上がり、滑る様に宙を舞った所で驚愕の余り目を見開く。
「何っ!?」
これ迄、異能を宿す奇人、魔人、変人、化人、人外らを相手取り、無数の命の削り合いを演じて来た龍麻だが、こればかりは無い。
しかも後ろにいる、ルイズと名乗った少女の同窓と思しき、男女含めた集団も又、
当然の様に飛び上がり、一団となって動きだしたのだ。
その光景を片や呆然と、もう一方は憮然とした表情で見やる。
そして…。教師であるコルベールと、同級生一同が立ち去った後の草原に、龍麻とルイズだけが取り残された。
「――人が空を飛ぶのはいい。だが、それが『魔法』なんて代物によって成り立つ等と、
デタラメも此処に極まれりだな…!」
「なによ。メイジが飛ばなくてどうすんのよ」
「その発想自体がおかしいんだ。少なくとも、俺にとってはな…!」
目一杯主張する龍麻だが、ルイズは鼻にも掛けずに答える。
392ゼロの使い魔人:5:2007/10/07(日) 02:02:34 ID:qeyJAca9

「あんたの考えなんてどうでもいいし、関係ないわ。ここは、魔法とそれを扱うメイジが全てに先立つ世界よ。
…そうだ。まだ、あんたの名前を聞いていなかったわね」
「…緋勇龍麻。ロゼッタ協会に籍を置く、トレジャーハンターだ」
仮の身分ではあるがな、と胸中で付け加えつつ、名乗る龍麻。
「そ。名前がわかった所はいいとして、取りあえず付いてきなさい。
今からあんたに申し渡しておくべき事が有るからね」
「…奇遇だな。俺からもアンタに対し、言いたい事と確かめたい事が山積しているからな」
近くに転がっていた、自分のバックパックと愛用のドイツ製突撃銃を拾い上げた龍麻は、負けじと言い返す。
互いに対する、敵意じみた警戒心と観察の視線を交わしつつ、黒髪の青年と桃色がかった
金髪の少女は取りあえずの目的地である、草原の先に有る白壁に囲まれた城塞を思わせる建物へと歩いて行った。


――頭上をかすめ飛ぶ異郷人(メイジ)…
紅く輝く黄昏の陽…
異界を成り立たせる常識と法則…
その日、召喚主は“従え!”と言った……。

393名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 02:03:42 ID:ieHsL58h
何故にエリア88か支援
394名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 02:09:28 ID:qeyJAca9
…趣味です。
投下終了です。なんつーか、無駄に長くなった…。
ちょっと他の職人様を見習い、内容をシェイプせんと……。
後、奴の性格は基本【冷】、【怒】、【同】、たまに【友】、【喜】であり、【愛】は滅多に出ないです。
395名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 02:11:10 ID:og7jpSKZ
エリア88といえばSFCのアレが思い浮かぶ。
396名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 02:13:43 ID:x8jG+SBq
遅レスだが護衛神エイト、懐かしすぎるだろwwww
当時リアルタイムで連載読んでたの思い出したよ。
こいつ、魔法すら会得する可能性があるんだよね…
397通りすがり:2007/10/07(日) 02:18:31 ID:Euq8VxxD
突然ですが投下よろしいでしょうか?
398名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 02:22:49 ID:NanYHxHg
>>397
ますはsageようか
話はそれからだ
399名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 02:23:11 ID:qeyJAca9
桶。遠慮は要らないし、支援もするぜ!
400通りすがり:2007/10/07(日) 02:29:53 ID:Euq8VxxD
初めて書いた小説なので文章力の無さは多めに見てください。



ゼロと人形遣い


・・・っう、ううん・・。
遠いようで近いような耳障りな声が聞こえる・・、どうなってんですかい? 確か、アタシは自動人形の野郎に腹を撃たれてくたばっちまったはずじゃあ・・・。
霞んだ頭で考えながら、ゆっくりと体を動かそうと全身に力を込めてみた。すると、死んでしまったはずの体が動いている。

「・・痛っ、なんでアタシは生きてるんですかねぇ・・。それとも地獄にも痛みってやつがあるのかねぇ。」

 なんとか上体を起こしながらつぶやく。無意識に出た言葉だったが、意外とそうなのかもしれない。そうでなければ、罪人に拷問などできはしないだろう。自虐的に笑いながらも、混乱する思考はとまらない。

『でも、それにしちゃあ変わってんなぁ、地獄の青空は、ずいぶんと綺麗なんですねぇ・・・。』

男の感想どうりに、見上げた空は抜けるようなみごとな青空だった。しばらくぼんやりと空を見上げていたが、そこにきてやっと周りも状況に気がついた。
先ほどから聞こえていた耳障りな声、その正体は男の近くで話をしている二人組みのようだ。いや、正確には二人の男と女の女の方が、もっと正確には少女が一方的に男に対して文句を言っているようだ。
401名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 02:31:05 ID:vYhRYKpw
sageれ〜
402名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 02:31:27 ID:P7oEP+cZ
メール欄にsageていれな
支援
403通りすがり:2007/10/07(日) 02:33:56 ID:Euq8VxxD
「――――、――――!」
「――!!」

急に声が増えたので、聞こえた向きを見てみると、そこら中に目の前の少女と似たような格好をした人間がたくさんいる。
そこにきて、初めて目の前にいる少女をじっくりと観察してみると、かなりありえない格好をしているではないか、制服のようなシャツとスカートは別にいい、その上に羽織っているマントも何とかオシャレの範囲だろう。
しかし、その髪はどうだろうか、ピンク色である。しかも無理やり染めたようなキツイ色のピンクではなく、とても自然で美しい髪である。
可愛らしい容姿の少女によく似合っていたが、やはり不自然な色である。確かに、自分の知り合いにも美しい銀髪を持った奴がいたが、そいつらとも別な気がする。
これではまるで、自分の弟が遊んでいたゲームの中のキャラのようではないか、確かあのゲームは何かのファンタジーの・・・。
404名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 02:35:56 ID:TUMw0nRA
sage支援
405名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 02:38:46 ID:mmNRlnfm
阿紫花支援
406名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 02:39:17 ID:Sy2hwm3h
何がどう支援なのかワカラナス
407名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 02:42:08 ID:NanYHxHg
何だ?終わりか?
408通りすがり:2007/10/07(日) 02:42:10 ID:Euq8VxxD
かなり思考が迷走してきたところで、さっきまで周りに向かって叫んでいた少女が、こちらを向いていることに気がついた。
まだまとまりきらない頭でどうしようかと考えていると、少女がブツブツと呟きながら、こちらへと顔を近づけてくる。
また何か言うつもりかと思ったら、なんと少女は自分にキスをしてきたではないか。
女性関係は手馴れている方であるが、だいたい自分から手を出すので、いきなり初対面の女の方からキスをされたのは始めてだ。
 言葉が伝わらないと理解さながらも、とりあえず文句でも言ってやろうと思ったとき、急に左腕に焼けるような痛みが走った。

「ぐおっ、がぁ、あっ熱、・・・くそっ、なんだっていうんですか!!」
「契約のルーンが刻まれているのよ。おとなしくしていなさい!」
「あぁん!なんだって!今あんた何か言いましたかい?」
「あんたとは何よ!使い魔の癖にえらそうねぇ。」

訳がわからない。突然キスをされたかと思ったら、急に左腕が焼かれて、さっきまで分からなかったはずの、処女の言葉も理解できるようになっている。
また頭が混乱してきたが、何とか視線だけでも少女へ向けてみた。すると少女は視線に気がついたのか、ブツブツと呟いていた文句を止めて、こちらを睨みながら言ってきた。

「それで、あんたの名前はなんていうのよ?」

 まだ混乱が解けていない男は正直に答えた。

「へえ、アタシの名前は、阿紫花・・・、阿紫花 英良(あしはな えいりょう)でさぁ。」


今回はここまでです。勢いで書いて初めて投下したので、規則がよくわかりませんでした。
もう一度調べなおしてから、続きを投下します。
409名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 02:43:41 ID:vYhRYKpw
規則っつーかマナー?
メール欄にsageって書いときなはい。
410名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 02:43:47 ID:p4/wLA5y
>>406
掲示板には連投規制というのがあってな。
一人が連続で書き込み続けると怒られるので、それの回避のためにやってる。
411名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 02:44:47 ID:x8jG+SBq
>>408
いいから次回からsageるんだ。
sageかたが分からないならしばらく板を眺めるだけにするんだ。
あと、SS投下のときはテキストに書き込んで貼り付けようぜ。間隔的に直で打ってるぽいし。
412名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 02:44:57 ID:VmaBzE2/
なら少なくともsageくらいわかってからにしろよ……
413名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 02:45:50 ID:Sy2hwm3h
>>410
なるほどトンクス
414名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 02:46:07 ID:NanYHxHg
時間かけすぎ
415通りすがり:2007/10/07(日) 02:47:26 ID:Euq8VxxD
こんな感じですかね。
416名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 02:47:51 ID:TUMw0nRA
>>408
乙。

文章力は酷過ぎなきゃ気にしない。
それよりも先ずはsageだ。
>>402の通りにすればsageられる。

で、今回の文章の場合句点(『。』)毎に改行した方が読み易いと思う。
横に長過ぎると目が疲れるんだ。

改行は60行までだったか?
前回の書き込みから一分以内は書き込み不可。
連投は規制対象外だったと思う。

で良かったよな、確か。
投下した事が無いから合ってるか分からん。
417名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 02:50:51 ID:TROP80J0
まずは半年ROMれ
418名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 03:41:05 ID:/Zh0OJg+
ガーディアンエイト、懐かしい!!
419名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 03:51:13 ID:7svnaYrs
age
420名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 04:57:57 ID:TUMw0nRA
sage
421名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 06:02:22 ID:+zOiVAPH
>>382
せめて山田さんに…

彼ならそういった世界に飛ばされても「燃えて来たー!」で済むし…

422名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 06:32:33 ID:fpRDhwWX
大悪司の殺ちゃんとか。
いざとなったら一発が来てくれるだろうし。
423名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 06:32:37 ID:GBga38+y
>>421
山田じゃない!ダイゴウジ・ガイだ!
424名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 07:50:01 ID:SsrPlcn/
>>382
アキトに死なれ、一人ぼっちになった後のラピス、というのは考えた事ある。
アキトに依存していて、それを失い、生きる気力や存在意義を喪失したラピス。
(注、俺の脳内設定です)
ルイズに召喚された事により、生きる気力や存在意義を取り戻す事が出来るのだろうか?
「私はルイズの目、ルイズの耳、ルイズの……」このセリフが書きたいだけかもしれんがw

ラピスは、電算能力はともかく、生活能力低そうだから、果たしてどこまでやれるやら。
でも、ラピスの外見、特に桃色の髪はルイズとは姉妹っぽく見えないかな。
実際に書くとなれば、続けるのは大変だし、単に妄想垂れ流しになる危険があるからやりませんけどね。
というわけで、チラシの裏で失礼しました。

>>421>>423
ヤマダ……もとい、ダイゴウジ・ガイなら確かに馴染んじゃいそうですねw
425名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 07:53:26 ID:0VhTee/5
ドラゴンボールからトランクスを召喚。世が世なら若様なんだが。
426名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 08:09:12 ID:ADzbYvfI
>>424
竜の羽衣がユーチャリスならなんとかなるかもしれん……微妙だが
ユーチャリスが手に入ったら最後自力で帰ろうと宇宙に出ちゃうだろうしな……

いやいっそのこと最初からユーチャリスごと召喚ならなんとか……無理ありすぎか
形状的に着陸機構とか無いよな?>ユーチャリス
根本的に地上にラピスが降りてくること自体がありえないか……
427名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 08:44:26 ID:B2MUOo1C
>>426
基本的に宇宙専用じゃなかったっけ?>ユーチャリス
大気圏内でも運用できなくはないだろうけど(なんせナデシコCのプロトタイプ)
性能はがた落ちだろうし。
それと着地は無理だろうな、着水ならともかく。
428名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 08:49:49 ID:ADzbYvfI
>>427
火星の大気圏内で航行してなかったっけ?>最後
基本的に宇宙専用だとは思うけど大気圏内でも移動とかは可能かと
429名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 08:53:06 ID:9IIUIiAC
まあ、ナデシコ級は相転移エンジンだから基本的に大気圏外での運用が望ましいからな…

ユーチャリス自体は相転移エンジンは無事だけど請われて飛べない程度にして
搭載されてるバッタをメインに運用すれば…
って、バッタ使えりゃ修理できちゃうか…
430名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 08:59:11 ID:skIGcwAw
そもそもそのバッタのスペックも何気にヤバイからな。
ユーチャリスの搭載分だけでレコ☆キスとか全滅フラグが立ってるw
伊達に地球連合軍を圧倒した無人兵器じゃないよ。
431名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 08:59:53 ID:ib13FfK+
子供のように純真な目をしてバッタを見つめるコッパゲ先生
432名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 09:03:17 ID:ZAZhNesv
もともと、船って物は港湾施設が有って使えるものだからね。
揚陸艦とかじゃなければ、普通は無理だろう。

似たようなキャラなら、ロストユニバースのキャナル・ヴォルフィードかな
アニメ版なら人間形態実体があるしどうだろう。

小ネタで呼んでみたいのは、地獄少女の閻魔あいかな。
433名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 09:06:57 ID:TUMw0nRA
才人のPCで地獄通信に繋げると仰るか
434名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 09:12:39 ID:cIvOuG6r
>>432
ヴォルフィードは普通に大気圏内航行も発着もできちゃうし、
資材と時間さえあれば自分で補給も修理もできちゃうんだよなぁ。
ゼロ魔ではいろいろと狭すぎる。
435名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 09:16:00 ID:Bc7nQhN/
ディストーション・フィールドあるから無敵じゃね?
436名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 09:23:04 ID:ZAZhNesv
>>433
告知は魔法学園の学内掲示板で募集、依頼方法は学園ポストかな。
適当に閻魔あいが作りそうだけど。

>>434
ソードブレイカーの能力が高すぎるだよね。
437名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 09:27:03 ID:GsPnxHBc
P3からテレッテ召喚
弱点風属性のせいでワルドに勝てず終了
438名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 09:41:44 ID:ZAZhNesv
ポリフォニカからコーティカルテ召喚

どちらも、気位が高く非常に我が侭で短気で尊大w
439名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 09:44:38 ID:CR1nutIw
そういや、P3にゃ土属性がねぇからフーケとかギーシュには一応勝てるだよな
テレッテでも。
440名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 09:46:35 ID:B2MUOo1C
>>435
バッタでさえディストーション・フィールド標準装備だもんなぁ。
頑張ってゴーレムで殴るくらいしかダメージ与えられんような。
火や風のエネルギー系はほぼ完璧にシャットアウト、銃弾とかの質量攻撃も威力減衰だっけ。
つくづく卑怯臭いバリアだ、ディストーション・フィールド
441名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 09:51:29 ID:TROP80J0
>>438
フォロンも一緒に呼ばないと暴走して死んじゃうな
442名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 09:54:50 ID:Bc7nQhN/
>>440
銃弾もある程度当てなきゃ効果無かったと思う
マスケット銃じゃいくら当てても効果無いだろうなあ…
443名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 10:08:35 ID:iNT+R3JX
戦車兵器でようやく対等に持って行けるからなぁ……
だが、魔法ならばフィールドの内側に発生させる遣り方で何とかなるかも知れんぞ。
例えば練金とか。
444名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 10:09:43 ID:TUMw0nRA
>>442
一方ルイズのエクスプロードや失敗魔法はボソン砲扱いなのだろうか。
445名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 10:20:55 ID:OBoAo8hd
>>442
バランスの取りずらいジャンルだしね。
ダメージ与える為には破壊の杖関連か竜の羽衣関連でなんか出すしかないな。
446名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 10:28:53 ID:IAkUFpQZ
あらすじ考えるのは大好きなんだが、文章書くのは難しいんだよなぁ。
あとからあとから妄想が浮かんでくるが、実際書き始めるとすぐに挫折する。
447名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 10:32:07 ID:jedxF2RI
そいつぁ妄想力が足りてないんだ。
妄想力が溜まりまくってると、一旦書き始めたら中々止まらんぜ?
448名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 10:32:22 ID:pfhxS9/I
挫折して、そこで投げ出してたらいつまで経っても書けるようにはならないっす。
下手でも何でも、書き上げることが第一歩っす。
449名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 10:33:37 ID:VuKqosv0
東京アンダーグラウンドのルリを召喚
フーケ戦で負傷して反魂の能力で、ルイズ能力発動とか妄想
450名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 10:34:37 ID:77omkAbF
とりあえずギーシュ戦までを一つの山場として区切って書いてみると書きやすいかもよ?
別にギーシュ戦しなくてもいいけど
451名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 10:37:05 ID:Bc7nQhN/
>>443
未知の金属でも錬金ってかかるか?
少なくともバッタって鉄や鋼鉄じゃ無いだろうし
…そろそろ避難所行きかね?
452名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 10:38:09 ID:pfhxS9/I
「君の居た昨日、僕の見る明日」から、詩月を召喚。
もちろん、学園ごと。
という妄想。
ネタが思いつかないので妄想するだけ。
453名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 11:13:30 ID:QBx8/8b4
これ一発ネタもおk?
454名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 11:21:54 ID:VnNGfEbo
どうぞどうぞ
455名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 11:23:45 ID:zhOVDY+v
Linda3からネオケニアから飛び立った後の箱船を召喚。
ケンとリンダ付き。
456名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 11:30:59 ID:WyfkssgU
リンダキューブとは懐かしい。
457名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 11:40:04 ID:l5Ioh2f3
才人はハルケギニア来る時に「小銭」とか持ってなかったんだろうか
高純度な青銅で作られた10円玉など見たらギーシュがひっくり返りそうだし
一円玉のアルミニウムを錬金出来れば、当時の勢力図すら変わりそう

少なくともコルベールに日本がどういう国かを紹介するなら
五円玉にこめられた「農、工、漁」の調和を見せるだけで充分
458名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 11:43:22 ID:RD/qFknV
なんだったら、ナイトウォッチ召還しちまえ
積んでる兵器の威力がかなアレなんで、アームでどつくぐらいしか出来んがな
459名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 11:50:04 ID:77omkAbF
ナイトウォッチは武装だけじゃなくて、移動速度もやば過ぎるwwww
大気圏内で使用できる兵器じゃねーぞ
460名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 11:56:31 ID:i6eROqHx
おいおい、ナデシコ関係のキャラのクロスだと、必ずこういうものが出てくるぞ
最強黒アキトなるものがね
いや、全部がそうだという訳じゃないんだけどな
461名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 11:59:28 ID:wylAc5Sr
では、固定型の兵器工場になったナイトウォッチはどうだろう?

462名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 12:00:17 ID:zhOVDY+v
>>457
ノートパソコン受け取った帰りなら財布持っているだろうね。
五円玉にはそんな文字が書かれていたのか。でもサイトがそんなこと知ってるかどうかは別。
463名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 12:02:58 ID:UKtwegD6
文字じゃなくて歯車と稲穂と海じゃなかったっけ
464名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 12:08:00 ID:skxD12xD
あれか、あの世界ではアルミニウムが超希少金属で、一円玉ばっかりの貯金箱もってやってきちゃったヒョロい男が超大金持ちに、とかそんなんか?
465名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 12:09:29 ID:zhOVDY+v
アルミニウムってボーキサイトから大量の電気を使って錬成しないといけないんだっけ。
電気をエネルギーとして活用できてないハルケギニアではアルミなんて無理だな。
地球でも16世紀頃は同じ重さの金と交換できたらしいし
466名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 12:10:59 ID:CV19i9VA
>>462
歯車=五円玉の穴
稲葉=五円玉の大部分
海=五円玉の下部分
467名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 12:13:46 ID:pXdeQypX
アルミって、中世ヨーロッパ風世界ではいまいち使い道無くない?
そうでもないのか?
468名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 12:23:43 ID:bS2pFK9j
量さえ確保できれば食器でも船でも何にでも使えますな

軽くて加工性が高いことがアルミの特性

青銅(銅+錫)、鋼(鉄+炭素)のような合金が土から大量に作れるんだから

アルミ合金だって大量生産できて当然だろう
469名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 12:25:26 ID:3XRLwPxB
アルミは便利だぞー、もしハルケギニアで発見されてなかったらコッパゲ先生なら涙流して感動する金属間違いなしだ
470名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 12:25:55 ID:0+7mTws5
>>465
金属アルミが発見されたのは19世紀ですが……
同じ重さの金、ってのはナポレオンの時代ですな。ナポレオン三世。

……ああ、軽い鎧とか作れるか……
471名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 12:29:10 ID:l5Ioh2f3
零戦も機体はアルミ系合金(ジュラルミンだっけ)
あの世界の鉱物や素材に関する考えが少し違ってたら
隕鉄みたいに色々な素材がむしられまくってたかもしれない
防弾ガラスが「薔薇のような香りのする不思議な宝石」として売られたり
472467:2007/10/07(日) 12:30:18 ID:0+7mTws5
いや、そんな劇的に世界を返るほどの役に立つかなあ、と思ったわけですが。
そっか、アルミ合金や不動態なら使い道ありますな。
473名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 12:32:03 ID:2/08xbn6
○×キャラが出てきたら面白そうと言っている人はそのキャラが出てくる話を、
金属談義している人はそれ関連の話を「書くから」語っているんだよね?

ここは妄想を語るスレじゃないから書くと信じて待ってます
474名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 12:34:10 ID:0+7mTws5
いや、ここはSSスレではなかったと記憶しておるが。
てかsageたまい。
475名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 12:35:03 ID:WyfkssgU
>>471
>防弾ガラスが「薔薇のような香りのする不思議な宝石」として売られたり
姉妹スレで召喚されたBTだったらギーシュに売りつけそうだな。
「ちょっと珍しい石を手に入れたんだけどね…、
 匂いを嗅いでみろよ、この石って薔薇の香りがするんだぜ」 
476名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 12:35:46 ID:bS2pFK9j
>>473
アルミ以外の金属需要が大幅に減れば、それこそ産業l構造がひっくり返る
アルミに関わるメイジや平民が金持ちになって、それ以外が没落する

>>473
ギーシュに知識アドバイザーキャラをつけて上記のサクセスストーリーを書いたらいいか?
477名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 12:37:12 ID:l5Ioh2f3
>>473
近く投下するSSの「市場調査」って部分もありましたが
以後は避難所に移ります、失礼!
478名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 12:39:26 ID:zhOVDY+v
>>470
そか、うろ覚えで語ってすまなんだ

>>473
こういう談義はいろいろな意味でネタ提供だぜ?
479名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 12:42:21 ID:VnNGfEbo
>>478
過去一度たりともネタ提供になってないしここで出た作品キャラを書いた作品の多くは空気扱いだ
自分を過剰評価し過ぎだな
480名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 12:43:28 ID:skIGcwAw
>>473
>ここは妄想を語るスレじゃないから書くと信じて待ってます


ここはまさに妄想を語るスレなんだがw
481名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 12:53:04 ID:rlO82azT
>>479
頭大丈夫か?
とりあえず、荒れる発言は止めておけ
つーか、文章読みにくすぎだぞ
読点も使えないのか?
482sage:2007/10/07(日) 12:53:45 ID:k9v2b3RP
>>455-456
全種確保済みの夫婦だと、もはや幻想種だな
韻竜とタイマン余裕?
483名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 12:54:05 ID:JP9glo5x
>>1を読みましょー、ってことね。
某展開予測サイト(連載中の漫画の、次回はこうなるんじゃね?という妄想を披露しあうサイト)が
いつの間にかss投稿に乗っ取られて、展開予測をすると「それssじゃねーじゃん!」と叩かれるようになったのを思い出したぜ。
484名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 12:55:39 ID:zhOVDY+v
>>482
名前じゃなくてメ欄にsageだぜ。

指輪確保済みだと手が付けられないなw
485名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 12:57:42 ID:PqLu4NCp
新材料でいうと現ハルケギニアで唯一、ガソリンを纏めて錬金できるコルベール先生は割とあれなんじゃないか
486名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 13:02:21 ID:HBIrogJI
コルベール先生実はスクエアなんじゃないのか?
火も土も上手すぎだろう
487名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 13:02:24 ID:WyfkssgU
>>485
割とアレだからこそ、あの先生はゲルマニアに行くべきだと思う。
488名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 13:03:34 ID:bS2pFK9j
>>485
ガソリンは炭化水素の混合物だからな。
何十種類の分子を一つ一つ配合比まで複製したならすごいなんてもんじゃない。
化学兵器から抗生物質まで作れるケミカルプラントと言える。
489名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 13:07:38 ID:3XRLwPxB
まぁ、錬金って割りとイメージ勝負臭いから案外そのへんは何とかなるんだろう
実物無けりゃこんなっぽいやつとを!って錬金になるからすっげぇ難しそうだけど、少量ながら実物あるし
490名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 13:11:25 ID:PqLu4NCp
それにしても、せっかく隠遁したのに
魔法戦とは別方面の戦争技術のパイオニアになりつつある先生はかなり哀れだ
491名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 13:13:17 ID:l5Ioh2f3
不完全燃焼した木炭はガソリンの代用品になるとか
エンジン側の改造が不要なので木炭バスは戦後の足となった
コルベールが作ったのもオクタンの低い代用ガソリンに近い物だったのかも

松根油やアルコールも、状況によってはガソリンの代用品になる
492名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 13:13:54 ID:mjO6vLYD
>>475
>姉妹スレで召喚されたBTだったらギーシュに売りつけそうだな。
>「ちょっと珍しい石を手に入れたんだけどね…、匂いを嗅いでみろよ、この石って薔薇の香りがするんだぜ」 

スレ違いを承知で言うが上手いじゃないか
いかにもBTが言いそうな台詞だし、君姉妹スレで投稿してみないか?
493名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 13:14:23 ID:p37js2D+
サイトが学校の教科書を持って召喚されたらコッパゲ的に面白そう
494名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 13:15:34 ID:PqLu4NCp
だがしかし国語
495名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 13:16:40 ID:cIvOuG6r
そういえば、錬金とは逆に成分を分解・分析する魔法もあるのかねェ。
496名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 13:18:52 ID:j/15WD+N
物理か化学かその辺か……
できれば大学の工学の教科書とかそういうもののほうがうれしいだろうな。
サイトが持っていなさそうだが。
497名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 13:19:56 ID:rhwDM807
大学の教科書はまったくの初学者には難しすぎると思うよ
498名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 13:21:21 ID:bS2pFK9j
>>491
低品位のガソリンでは零戦は動かないと思うよ
オクタン価の高い航空ガソリンでないと不具合が出まくり

固定化の魔法は潤滑油などの化学的な変質も防ぐのかね
ロケットランチャーにかけた固定化の魔法は使用時に解除されてたっけ?
499名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 13:21:24 ID:HBIrogJI
大学の教科書は暗号だからな
記号の意味と使用例を知らないと普通はあんなの理解できない
500名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 13:23:58 ID:WyfkssgU
>>492
すみませぇん。
自分ではコレが精一杯です。
ネタ提供スレなんてあったら素敵なんですが。
501名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 13:27:37 ID:PqLu4NCp
>>498
固定化かかった食品を料理できるぐらいだから
化学変化や物理的な着火とかにはそこまで強くないのでは?
502名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 13:28:55 ID:HBIrogJI
ぶっちゃけご都合主義だよ魔法なんだもの
503名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 13:32:10 ID:mjO6vLYD
>>500
>ネタ提供スレなんてあったら素敵なんですが。

非常に同感ですよ
BTに限らず身体能力に特に秀でた所が無く、策やトリックで勝負するタイプで話を作ろうとすると
書く方にそういう事に関する豊富な知識が無いと絶対挫折する
ルーン効果で力押しなんてやるとそのキャラクターらしさが無くなってしまうし…
とかって小ネタでBT召喚した本人が言ってみる
504名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 13:33:27 ID:1LdRA8AA
ジェットエンジンだったら灯油で飛ぶのだがのう。
戦争末期、質の悪いガソリンで飛ばしてた日本の戦闘機を、終戦後GHQの人が高品質のガソリンで飛ばしてみたらめっさ性能が上がったって話を聞いたことがあるような。
505名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 13:35:58 ID:RvmGHdj9
>>498
松根油は馬力を気にしなければいけるらしい。
岩本徹三氏の自伝に「馬力が要る戦闘機にまで松根油が……」と、いった趣旨の記述があった。
零戦に関しては馬力の点で問題があるものの、使えないわけではないってとこだろう。
故障率に関しては記述がないので分からん。
506名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 13:37:09 ID:e54w0KbC
銃をメインで使ってるキャラ呼ぶと弾丸の換えの問題にぶち当たるな・・・
507名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 13:38:57 ID:p37js2D+
周期表を理解するだけでも錬金の技術がどんと底上げできると思う
解剖学の知識で治癒魔法とか

あと禁じ手でアカシックレコード(原作本)召喚
508名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 13:45:50 ID:e/DaC7td
>>505
松根油やらアルコールを使うと馬力落ちる上に、汚れたり詰まったり錆びたりであっという間に壊れちゃうよ。
まあ何しろ漢方薬と酒だし。
でもまあ零戦は馬力低いから低オクタンガソリンでもある程度大丈夫だけどね。後継機たちでは悲劇だが
509名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 13:46:08 ID:jI+ShLb9
PSソフトを整理してたらサガフロンティア2が出てきたぜ

ギュスターヴがルイズに呼ばれたら面白そうだな
立場似てるところあるし
510名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 13:46:37 ID:HIJn0+MA
>>507
だが残念!

向こうの世界のアカシックレコードなんで
ハルケギニアのことは何も書かれてませんでしたw
511名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 13:48:16 ID:zhOVDY+v
>>510
違う違う。
ゼロの使い魔の既刊が召喚て事だよ。
12巻+外伝の13冊
512名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 13:50:30 ID:ogOXNNFp
>>507
原作本召喚!
しかしこのハルケギニアはアニメ版のゼロ魔のハルケギニアだった!……とかはだめであろうか。
513名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 13:50:59 ID:8+O/JEjc
サイトの代わりにゼロの使い魔の既刊が召喚て事はその時点で
大幅に役に立たなくなってないか
514名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 13:51:29 ID:bS2pFK9j
零戦があると思っていたのにB29だったりしたら「笑える
515名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 13:51:48 ID:JpgwqdUr
文明レベルの低い所から呼び出されたキャラで
フーケの奪った宝とゼロ戦のシーンをどう置き換えればいいか悩む
516名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 13:54:21 ID:bNjl0CBa
>>514
あんな化け物絶対飛ばせないぞw
517名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 13:56:09 ID:zFeGGVCC
>>514
竜の羽衣が置かれてる寺院は、壁や扉が鉛で作られて厳重に密封されてるわけだな。
518名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 14:00:22 ID:ogOXNNFp
>>517
……なぜ鉛で密封?
519名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 14:02:16 ID:IWDZzozL
>518
そりゃ、お前さん
太った男やら、小さい少年やらがあったら鉛で封印せざるをえんだろう。
520名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 14:02:21 ID:HIJn0+MA
>>518
エノラ・ゲイのことでも言ってるんじゃね?

だったらとても笑える話ではないがな。
521名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 14:02:43 ID:G89U62tH
>>518
ボックス・カーかエノラ・ゲイなんだろwww
でも鉛で密封は原子炉じゃなかったか?
522名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 14:02:56 ID:l5Ioh2f3
手回し発電機のついたノーパソと無線LAN召喚
なぜか接続できたノーパソは様々な知識を提供するが
ルイズがコテで暴れて鯖通報でアク禁

巻き添えを食ったジョゼフはトリスティン侵攻を決意し
情報を売って稼いでたテファとジュリオは食い詰めてトリスティンに出稼ぎに
そして削除人ビダーシャルの防衛をかい潜り、シャイターンの鯖が攻撃される
523名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 14:03:31 ID:bNjl0CBa
>>518
放射能汚染でもされてるんじゃね?
524名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 14:06:00 ID:ogOXNNFp
リトルボーイやファットマン積んだままなら、才人の世界の歴史が変わるな……
いや、氷見釣りに出発してた三番機ということにすれば・・・・・・
525名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 14:06:48 ID:l5Ioh2f3
太陽を盗んだメイジ
526524:2007/10/07(日) 14:07:07 ID:ogOXNNFp
氷見釣りってなんやねん。
秘密裡やがな。
527名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 14:10:56 ID:zFeGGVCC
>>526
長崎が3発目で、2発目が不発だったというホントかわからん話もあるな。
528名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 14:11:08 ID:bNjl0CBa
>>524
つまりインディアナポリス召喚と
529名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 14:11:56 ID:OBoAo8hd
そんなのをタルブ村を守る為に使われてもかなーり困るな。
530526:2007/10/07(日) 14:13:43 ID:ogOXNNFp
>>527 >>528
ああ、そういう話ってやっぱあるんだ。
そっち方面にはとんと疎いもんで。
531名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 14:13:52 ID:HBIrogJI
虚無の魔法必要なくなるな
532名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 14:19:36 ID:bNjl0CBa
>>530
他にも広島に落とされたウラン型は実験されずにぶっつけ本番で
落とされたことからドイツ製って話もあったり
533名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 14:20:02 ID:QGsvXcmz
>515
別にオーバーテクノロジーである必要はなくて、
使い方が召喚されたキャラにしかわからなければいいのでは
投槍器なんて原始的な代物ではあるけど、
アホみたいな威力あるし、見た目使い方がわからない
534名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 14:20:27 ID:bS2pFK9j
原爆の起爆部分に使われているポロニウムは半減期が短い(138日)から
昔の原爆は数ヶ月たっただけて起爆できないだろう
535名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 14:20:37 ID:JP9glo5x
虚無の初歩の初歩の初歩の魔法「ティルトウェイト(初期)」
だったらエルフが封じたがるのも無理はないかもw
536名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 14:21:25 ID:zFeGGVCC
ツァーリ・ボンバを召喚して、
戦争が始まった段階でアルビオンに叩き込んだらどうなるんだろ。
537名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 14:21:27 ID:l5Ioh2f3
日本は三発の原爆を投下された
一発目は広島にファットマン
二発目は長崎にリトルボーイ
三発目は台湾に蒋介石
538526:2007/10/07(日) 14:23:08 ID:XZxd2fiQ
>>535
TILTOWAITだっけ?核撃。核爆発を起こす呪文だそうですな。厳密には違うか?
539名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 14:24:56 ID:zFeGGVCC
>>534
固定化でおけ
540名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 14:25:02 ID:ADzbYvfI
>>534
そこで「固定化」ですよ
541名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 14:27:05 ID:ADzbYvfI
6秒差……なんという結婚……俺は今バージンロードを歩いてる
542名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 14:27:40 ID:bNjl0CBa
>>539-540
ケコーンおめw
543名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 14:28:44 ID:VmaBzE2/
>>493-494
タバサに国語の教科書朗読させられる才人を想像して和んだ
544名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 14:30:31 ID:bS2pFK9j
>>539-540
固定化かかったままだと原爆そのものが作動しないことになるからなあ
こっちに来てからすぐに魔法かけられるかという問題もある

一番の問題はシエスタの血縁関係がどうなるかだなw
545名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 14:32:01 ID:RvmGHdj9
>>508
へえ、詰まるのか。岩本氏の自伝だとそこまで触れられてなかったから知らなんだ。

金髪碧眼アメリカンメイドなシエスタと聞いて飛んできました。
546名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 14:34:35 ID:ebc03Y6Z
>>538
異空間で核爆発を起こして、熱量だけを引き込むとか都合の良い解説を読んだことがある。

原爆投下を正当化するアメ公らしい発想だなと。
547名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 14:38:56 ID:e6c8SgTc
>>546
その設定作ったのはアメ公じゃなかった筈だぞ
派手にアトミックにどかーんと行く魔法な旨しか触れてない
548名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 14:50:43 ID:JpgwqdUr
これからはブラックホール兵器だそうです
ロシアが開発中
549名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 14:53:20 ID:OBoAo8hd
>>544
> 一番の問題はシエスタの血縁関係がどうなるかだなw

金髪碧眼巨乳のシエスタか。

…なんか似たような外見のキャラが居たような気が…。
550名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 14:54:56 ID:P7oEP+cZ
投下するので支援をお願いする
551名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 14:55:48 ID:RkMW+Cv7
支援だ
552ゼロの少女と紅い獅子:2007/10/07(日) 14:57:14 ID:P7oEP+cZ
トリステイン魔法学院、学院長室。院長のオールド・オスマンは野外の喧騒も何処吹く風と言わんばかりに
使い魔のモートソグニルに餌をやりながらくつろいでいた。
 もっとも、現在学院の教職員の中でこれほど落ち着き払っているのは彼のみである。他の職員は先程突然姿を現した
謎の竜モドキのもたらした被害や生徒の安否の確認に奔走していた。それは彼の秘書であるミス・ロングビルも例外ではなく
彼女も今は席を外していた。
 その学院長室にノックの音が響く。
「あいとるよ」
 顔を上げる事もなくオールド・オスマンが応じる。
「失礼します、オールド・オスマン。報告したい事が」
 入ってきたのはコルベールであった。
「明日の朝、緊急の職員会議を行うのはしっとると思うがの。それとも、それ程緊急かね?」
「先にお耳に入れておいたほうが何かと都合がよろしいかと」
 その台詞に、オールド・オスマンが顔を上げる。この老人の顔から感情を読み取る事は難しい、クソ真面目な顔をして
平気で女性の尻を撫で回したりする。もっとも、今回はそれなりに話を聞く気はあるらしいが。
「君は現場にいたそうじゃな。君があの竜を追い払ったとは思えんのだがね」
「お察しの通りです。あの二匹の竜を追い払ったのはミス・ヴァリエールの使い魔です」
 オールド・オスマンは無言で先を促す。
「正直、私もまだ疑い半分ですが。上空のゲートから突然飛び出してきて竜を圧倒すると、ミス・ヴァリエール
を守るように立ち回りました。あぁ、因みにその時は赤い球だったのですが、いつの間にかコントラクト・サーヴァント
が終わっておりその時には人の姿をしておりました」
 聞き入っていても、オールド・オスマンの表情は変わらない。
 そして頭を一かきして、
「とり合えず、竜は勝手に消えうせたという事にしとこうかの。教員達には流石に説明せねばなるまいが、生徒達の
不安を無暗に煽る事はなかろう。王室の方はわしが適当に誤魔化しておく。一応ミス・ヴァリエールは事情聴取じゃの、使い魔と一緒に」
 そう言って、椅子に身を預けるオールド・オスマンであった。


 一方その頃、ルイズは自室でゲンと向き合っていた。生徒達には万一に備えて自室から出ないようにとお達しが出ていたので、夕食代わりに
厨房から失敬してきたパンをかじっている。
「どう見ても、普通の人間よね。それも平民」
 ルイズがゲンをまじまじと見つめる。ゲンの今の格好は、平均的なトリステインの一平民青年の服装である。
「えっと、えむ……。何だっけ?」
「M78星雲、そこから来た。まあ、正確には敵を追っていたんだが」
「敵ってさっきのブサイクドラゴン?」
「そうだ、アレはレッドギラスとブラックギラス。だがアレはおまけだ、黒い球がいただろう。奴が俺の目標だ」
「何者なの? って言うかあの黒いのも貴方くらいの知能があるわけ?」
 ゲンは頷いて続ける。
「マグマ星人、それが黒い球の正体だ。狡猾で冷酷、自分の欲望のためなら何でもする奴だ」
「そう言うのを追っ掛けてるって事は、ゲンは衛兵か何かなの?」
 ルイズの質問にゲンは暫らく考えて、
「と言うより自警団かな。規模は随分大きいけどね」
 ふうん、と返すルイズ。まさか宇宙全域をその警備対象にしているとは夢にも思わないだろうが。
「でさ、その、まぐませーじん、が何かしたの。て言うか、ここで何かする気?」
「分からない」
 ゲンの即答にルイズは一瞬ポカンとする。そして気を取り直すと、
「はぁ? じゃあ貴方は何をしたか分からない人をおっかけたの。そりゃ誰だって逃げるんじゃない?」
「奴らは一族郎党で既に幾つもの星を侵略し蹂躙している、そしてこれからもだ」
「星って、あの空の星の事?」
 ルイズが今一ゲンの言う事を理解してなさそうなので、彼は説明を変えた。
「君たちの価値観で言うなら奴一人で、そうだな……王国を幾つも蹂躙している。支配するでもなくただ破壊するためだけに」
 その言葉でやっと理解したか、ルイズは途端に顔色を変えた。
「そ、そんなのが来ちゃったの!? なら、王国に知らせないと!」
 だが、慌てるルイズとは対照的にゲンは落ち着いている。
「傲慢な言い方だが、君らの力ではどうしようもない。君たちの魔法と言うのがどれ程の力を秘めているか俺は知らないが
かつてマグマが現れた世界はここより文明が進んでいた、にも拘らず奴には手も足も出なかった」
「そんな……」

553ゼロの少女と紅い獅子:2007/10/07(日) 14:58:37 ID:P7oEP+cZ
「それに気になることがある。奴はここに来るときゲートを何処に繋がっているか分かったような動きをしていた、
もしこの世界の侵略が目的ならとっくに始まっているはずだ。俺に追われて慌てていたにしても妙だ」
「そんな事に頭が回らなかっただけじゃないの?」
 ルイズが気のない返事を返す。
「だといいんだが、とにかく下手に動いて刺激したくない。穏便と言うのも変な話だが、とにかく出方を待つ」
「うん、まあ、それは良いんだけどさ」
 ルイズはそわそわしている。
「私の話もしていいかしら?」
「うん? ああ、すまない。えっと、俺は君の使い魔ということだったな。具体的に何をすればいいんだ」
 ルイズはコホンと似合わない咳払いをすると説明を始める。
「使い魔には、三つの能力を持つとされてるわ。まず一つは主の目となり耳となること
「つまり俺の見たもの聞いたものが君にも見えたり聞こえたりすると。で、どうなんだ」
 途端に渋い顔を浮かべるルイズ。
「何も見えないわね……まあ良いわ。次に使い魔は主の望むものを見つけてくるのよ、例えば秘薬ね。コケとか硫黄とか何だけど」
 そこで、彼女は言葉を切ってゲンに向き直る。
「……無理、よね。幾らなんでも」
「時間がかかるな。ここの言葉、口語は不思議と理解できてるが文字は何を書いてるかあまり分からん」
 そう言いながらゲンは机の上にあった本に手を伸ば表紙の文字を読み出した。
「ええっと、基の、礎の理を論ずる……」
「『系統魔法の基礎理論』よ。何よ読めるんじゃない」
 ルイズが少し驚いてみせる。
「意味が分かるまでは時間がかかるな、勉強すれば何とか……。まあ、それは一まず置いといて、もう一つは?」
 促されて、ルイズが頷く。
「うん、コレが一番大事なんだけど。使い魔はその身を挺して主を守ること。……ねえ、あの赤い球が貴方の本当の姿?」
「いや、あれは移動形態だ。今の姿では君らと基本的には変わらない、むしろ魔法と言うアドバンテージがある分君らの方が
有利かもしれんな」
「ん、まあメイジ同士が戦う事になる事は当分なさそうだし。今のままでも……」
 そう言いながらルイズはゲンの方を見る。
 決して筋骨隆々と言うわけではないが、服の上からでも無駄のない引き締まった体であろうことが分かる。十分に
力を発揮できないと言っても歴戦と自称するなら自信があるのだろう。
「十分強そうだしね」
「まあ、暴漢の撃退くらいなら任せてくれ」
 微妙な回答だったがそれでもルイズは頷くと、ベッドに向かった。
「ま、護衛が必要な事なんてまず無いわ。だから貴方には当分雑用をやってもらうけど、いいわね」
「世話になるのだから仕方ないな」
 満足げに頷いて彼女は続ける。
「朝は私より早く起きて、水を汲んでくること。部屋の掃除、衣類の洗濯、出来るわよね?」
「まるで召使だな……ここは学校だろう。不服は無いが、そう言ったことは自分でするんじゃないか?」
「貴族はそんな事しないわよ」
 さも当然と言った風なルイズの回答に一瞬ゲンは複雑な表情を浮かべたが、ルイズがその表情を確認する前に真顔に戻った。
「それにしても……、よく俺の話を信じる気になったな。普通なら俺の頭が疑われるんだが」
「目の前に貴方だけ来たなら、貴方は今頃牢獄の中だったでしょうね」
 そう言ってルイズは毛布に包まって、思い出したように顔を出して、
「リネン室にいけばシーツとマット位はあると思うわ。それじゃ、お休みなさい」
 
 ルイズが寝息を立てだしたのを確認して、ゲンはそっと部屋を出た。別にリネン室に行くわけではない、彼はそのまま
寮の外へ出た。
 空を見上げる。満天には無数の星と大きな二つの月、彼はそれを暫らくじっと睨んでいたが、
「やはり、異世界か……」
 と、小さく呟いた。
 宇宙のあらゆる場所からでも星の位置さえ見れば大体の場所は把握できるが、今見上げたのはまったく見た事の無い
星空であった。
 それでも彼は次の行動に移る。腕を高々と上げると光の球を大空に飛ばした。球は空のかなたに消えた後、彼にしか見えない
文様を天に写した。宇宙規模で情報を送るウルトラサインである。
 これが光の国に届く確証は無かったが、できる事はやっておきたかった。
「それにしても……」
 まさか年端も行かない女性の召使い、いや彼女らに言わせれば使い魔か、に成るとは思いもよらなかった。美山家の三人や
トオルと同じように接するわけにはいかなさそうだ。
 ――トオル、元気でやってるか? 俺はまた居候だよ――。
 ゲンはそのまま夜風に吹かれていた。
554ゼロの少女と紅い獅子:2007/10/07(日) 15:00:02 ID:P7oEP+cZ
 さて、生徒達は外出禁止、教員も対応に追われているとなれば自然と校内の見回りはなおざりになっていた。おまけに夜ともなれば
もともと真面目に見回りをする宿直もいないため。学院一帯はひっそりと静まり返っていた。
 その静かな闇夜にまぎれて、本塔に忍び寄る影が一つあった。
「一仕事終わったついでによってみたは良いけど、無駄足だったね」
 土くれのフーケ。現在トリスタニア全域を荒し回っている盗賊である。つい先程、トリスタニアの貴族宅で仕事を終え
ついでに怪獣の被害を受けた魔法学院に目をつけて現れたのだった。
 彼女は丹念に宝物庫付近の壁をヒビでも入ってないかと調べていたのだが、ふぅと小さくため息をついた。
「そう上手い事宝物庫を壊してはくれないか。ま、いいさね。ゆっくり頂こうじゃないか」
 そう呟いて再び闇夜にまぎれて消える、つもりだった。だがこの余りの有利さに油断があったか、本塔一階つまり食堂入り口で
問答する二人に気が回っていなかった。

「ああ、シエスタ! その美しい黒い髪が、魅惑の肢体が、僕を惑わせる! どうか僕の愛に応えてくれたまえ!」
「あ、あの、ミスタ・グラモン……お気持ちは嬉しいのですが、あの、その、仕込みを終わらせないと皆さんの明日の朝食が……」
「恥ずかしいのかい? 大丈夫、僕に任せてくれたまえ。ボクは君のその可憐な動作全てが愛しい!」
 『アルヴィーズの食堂』の入り口で問答していたのは女好きで有名なギーシュとメイドのシエスタであった。以前から狙っていた
――彼に言わせれば愛を振りまこうと思っていた――のだが昼は両者とも忙しく、またギーシュはモンモランシーを初めとする
何人かの女性の(彼に言わせれば)誤解を招きかねないので接点が無かったのだが、今回の騒動による静かな夜を好機と見たギーシュは
シエスタに愛を振りまこうとここで待ち構えていたのだった。
 ただし暇なのはギーシュだけであり、シエスタは今この時もまだ仕事が残っているのだが。
「ああ、君の仕事の邪魔をしたくないんだ。しかし君の美しさがボクをたぶらかすのさ! ああ、なんと言うことだ!」
 ギーシュがクネクネしながら言葉を続ける。シエスタはもう困惑してると言うより引いているのだが、貴族相手に余り
強気に出るわけにもいかずほとほと弱っていた。
 
 どうしよう、ひっぱたいてでも退散してもらおうかしら? でもそんな事して怒らせたら……。ああ、どうすれば……。

 そう悩むシエスタともう聞かれてもいないのにひたすら言葉を続けるギーシュの直ぐ後ろに一人の人物が降り立つ、言うまでも無く
土くれのフーケであった。
 ギーシュの背後に降りたため位置的にシエスタと目が合う。
「え、えぇ?」
「ちっ、こんな所で何を……」
「ああ、シエス……ん?」
 三者三様の反応、沈黙は一瞬だった。

「な、何奴? 賊か!」
 ギーシュがとっさに杖を抜く。フーケも同時に杖を抜いたが直ぐにそれを折りたたむと踵を返して駆け出した。
 フーケにしてみれば魔法でギーシュを倒す事など造作も無いが、土系の盗賊が出たとなればフーケ参上でございと宣伝する
ようなものである。既にトリスタニアで仕事をした後ここに訪れたとあっては仕事がしにくくなるのは必定、フーケの
望むところではなかった。それでも一応牽制用に呪文は唱えておく。
「おのれ、逃がすか! シエスタ君は衛兵を呼んでくれたまえ。僕は奴を追いかける」
「そんな、危ないですよ! 何かあったらどうするんですか」
「心配してくれるとは嬉しいよシエスタ。だが、背を向けて逃げるメイジに遅れを取る僕ではない!」
 まったく根拠の無い自信だったが、それだけ言うとギーシュも駆け出した。
「ああ、と、とにかく衛兵の人たちに知らせなくちゃ」

 ギーシュに確たる勝算があるかと言えば応えは否である。だが、シエスタの手前逃げ出すわけには行かなかったし、
意外にも敵は逃亡した。これがギーシュのいつもは燻ってる勇気に無駄に火をつけることになった。
「男を上げるチャーンス!!」
 軽い興奮状態の今の彼に冷静な判断は少し難しいのであった。

 
 ゲンがぼんやり夜風に当たっているところに、それは現れた。
「何だってんだい一体、化け物が現れたってのに!」
 校舎の方から走ってきたフーケは一人毒づくと懐から短剣を取りだし、速度を緩めぬままゲンに突っ込む。
「怪我したくなきゃどきな!」
 その切っ先を余裕を持って交わすゲン、続けて手刀を手首に叩き落す。堪らず短剣を落とすフーケ、だがもう片手に
握りっぱなしの杖を短く振るった。
「何だ、これは!?」
555名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 15:01:15 ID:og7jpSKZ
支援。
556ゼロの少女と紅い獅子:2007/10/07(日) 15:01:42 ID:P7oEP+cZ
ゲンの足に土で出来た手が絡みつく。その手をもう片方の足で蹴り砕くものの、その隙にフーケは一目散にその場を
離れた。
 その時になって、先程フーケが走ってきた方から今度はギーシュが走ってきた。彼は息を切らせながらゲンに尋ねる。
「君、怪しい者が走ってこなかったかい? フードを深く被った奴だ」
「ああ、あっちの方に走っていったが」
 ゲンが指で示し応える。
 ギーシュは礼を言って再び走り出した。が、突然止まるとゲンの方に向き直った。
「君、見ない顔だな。平民のようだが何者だ?」
「おれはおおとりゲン。ルイズ・ド・ラ・ヴァリエールに召喚された使い魔だ」
 ゲンがありのままに応えるがそれは逆効果だった。
「ハッ、バカも休み休みに言いたまえ! 幾ら彼女が魔法の才能が絶望的だからといって、幾らなんでも平民を
呼び出すわけが無いじゃないか。何処で彼女の事を知らないが、そのような嘘ではこのギーシュ・ド・グラモンは騙されんぞ!」
 薔薇の造花の杖を振るいギーシュが叫ぶ。多少自己陶酔が入っているが本人は気にしない。
「いや、嘘じゃないんだが。ほら、この左手を見てくれ」
「いい加減にしたまえ、それ位はどうにでもなる。さあ、ここで何を……。ん、まてよ」
 そこでギーシュは言葉を切り暫らく黙考した。そして、
「そうか、貴様がさっきの悪漢だな! そうやって通りすがりの平民を装えば何とか成ると思ったか! だが
相手が悪かったな!」
「話を聞いてくれ、俺はさっきの奴とは別人だ!」
 ゲンが弁解するが、ギーシュはもう聞く耳を持たない。
「問答無用! おとなしく縄につくか、ボクに成敗されるか……」
 彼がそう言いながら杖を振るう。千切れた造花がみるみる内に変化していき、やがて一体の女戦士の像が現れる。
「選びたまえ!」 
 ギーシュの掛声とともにワルキューレがゲンに襲い掛かる、繰り出される鉄拳を瞬時に交わすゲン。
「えぇぇい!」
 そのまま反射的に下から拳を胴に叩き込む。ワルキューレが一瞬浮き上がるほどの衝撃だったが、痛みを感じない青銅の戦士は
続けて合わせた拳を振り下ろす。クロスガードで辛うじて受け止めると、ゲンは今度は正面から蹴りを入れて相手を吹っ飛ばした。
「くっ、や、やるじゃないか! ワルキューレ出ろ!」
 振るわれた造花が舞い散り青銅の戦士が現れる。都合七体のワルキューレの登場である。
「さあ、どうする! まだやるか」
「お願いだ! 話を聞いてくれ!」
「断る! 言っておくが手加減できないぞ!」
 ワルキューレ一体では相手にならなかったのがショックだったか、ギーシュには焦りが見える。だがそれ故ゲンを倒せば
手柄になるとの考えもあった。
 ゲンはジリジリと詰まる間合いを計りながら考える。怪我をさせるわけにはいかない、だがこの数では手加減は無理だ。吹き飛ばして
ギーシュを巻き込まないとは言い切れない。さりとてつかまれば面倒な事になる。もう十分面倒な状況ではったが。
 せめて武器があれば。ふとそう思い、慌てて懐に手を伸ばすとそれはあった。
 マックナイフ、ハイマンガンスチール製の特殊戦闘用ナイフだ。かつて彼が所属したチームの標準装備である。
(これでいけるか……)
 ゲンはマックナイフを懐で握り締める。すると突然左手に刻まれたルーンが輝きだした、同時にナイフが手に吸い付くように
なじみ始める。
「何だ!?」
「ルーンが光っている……まさか」
 二人が一瞬あっけに取られたがそれのつかの間。ギーシュのワルキューレが仕掛ける、正面から迫るワルキューレの顔面に蹴りを叩き込み、
続けて側面から伸びた突きを交わすと、その肘にナイフを振るって破壊する。更に逆手に持ち帰ると背後に迫ったワルキューレの胴体に
再びナイフを突き立て動きを封じた。
「イィヤァァ!!」
「こ、この……ワルキューレ、集まれ!」
 気合の雄叫びを上げるゲンと、残ったワルキューレを密集させるギーシュ。次の動きで勝負が決まるのは両者理解している、互いの緊張が
最高潮になった次の瞬間、

「動くなあ!! 大人しくしろ!」
 ようやく、学園の衛兵が駆けつけてきたのだった。衛兵は槍を構えるとゲンを取り囲んだ。
 ワルキューレ四体に訓練された衛兵数名。今の状態でもゲンならば全力で戦えば負けることは無いが、それはもう
一撃必殺で相手を倒す必要があった。
 ゲンは手を高々と掲げた。
「ミスタ・グラモン、大丈夫ですか!?」
 シエスタが遅れて到着するのを見て、ギーシュが緊張を忘れてクネクネと動き出す。
557ゼロの少女と紅い獅子:2007/10/07(日) 15:02:59 ID:P7oEP+cZ
「ああ、いとしのシエスタ! この窮地に駆けつけてくれるなんて! 素晴らしい! 素晴らしいよ!!」
「あああああの、とにかく泥棒が捕まって良かったです……」
 その時、校舎の方から騒ぎを察知したか何人かが駆けつけてきた。その中には桃色がかったブロンドの少女もいる。
「ゲン!? ちょっとなにやってんのよ。アンタ達、すぐに槍を下ろしなさい! ギーシュ、これはどういう事!」
 ルイズが血相を変えて駆け寄ってきて、すぐさまギーシュを問いただす。
「な、その男は、本当に、君の、その、使い魔なのか?」
「だったら何! 早くワルキューレを仕舞いなさいよ。って言うかゲン! アンタもいきなり何やってんの!?」
「スマン、騒動に巻き込まれてしまった」
 その時になって人垣を分けてコルベールがやってきた。
 コルベールは当事者達を落ち着き払って見渡して、
「ふむ、事情を説明してもらえるかな?」
 

 第二話 終わり
558ゼロの少女と紅い獅子:2007/10/07(日) 15:06:12 ID:P7oEP+cZ
はい、第二話でした。人物描写が薄くて申し訳ない。

支援してくれた方に感謝しつつそれではさいなら
559名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 15:09:47 ID:FAQAf5ek
紅い獅子の人、乙っす。
560名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 15:35:29 ID:mjO6vLYD
投下乙です

シエスタを積極的にくどくギーシュってのもやはり違和感感じるな
もちろんシエスタを憂さ晴らしとばかりに痛めつけるという展開に比べれば斬新な展開だと思うけど
言い寄る相手をモンモンかケティにした方が良かったんじゃないかな
個人的には続きが楽しみっす
561名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 15:41:42 ID:L+E3ffsQ
乙&GJ!
フーケ出番早いな。ギーシュがシエスタを口説くのは珍しいね。
562名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 15:44:43 ID:WyfkssgU
乙。
どんだけクネクネ動いてんだギーシュw

563BPZ:2007/10/07(日) 15:53:14 ID:2m7P6ubF
トーカよろしいでしょうか?
564名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 15:53:29 ID:8+O/JEjc
230行くらい投下します
565名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 15:54:30 ID:8+O/JEjc
やっぱりしません
566BPZ:2007/10/07(日) 15:56:22 ID:2m7P6ubF
あれま、では16:00くらいから・・・
いつも過疎った時にトーカする私
567名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 15:58:05 ID:IWDZzozL
とりあえず、>546は落ち着こう
568名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 15:58:34 ID:jedxF2RI
>>564
「○○行投下します」と言って投下予約してる奴は誰も居ないだろう
投下予約がしたいなら投下予約したいとただそれだけ言えば良い
その書き方じゃ投下予約じゃなくて誰が投下してる最中だろうが無理矢理投下するとしか見えないぞ
569名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 15:59:17 ID:IWDZzozL
>564だった
570BPZ 1/7:2007/10/07(日) 15:59:56 ID:2m7P6ubF
シュヴルーズら土系統の教師陣が錬金で宝物庫の外壁を修復しているのを横目に見ながら、集まった教師達は
事の深刻さに頭を悩ましていた。
鉄壁と思っていた宝物庫がたった一人のメイジに破られたこと。
幸いにして未遂に終わったが、次もそうなるとは考えにくい。

警備を厳重にせんといかんじゃろな。と教師達が騒いでいるのを横目にオールド・オスマンはひとりごちた。

「しかし、ミス・ロングビルが土くれのフーケじゃったとはのぅ」
オスマンは風通しの良くなった宝物庫を見まわしながら、自らの髭をゆっくりと撫でる。
ミス・ロングビルはオスマン自身ががスカウトした秘書だった。
……お尻を触ってしばかれたことが出会うきっかけだったとは口が裂けても言えないのだが。

魔法も使える身でありながら、給仕をしているという所に、なにか事情があるとは思っていた。
他国の間諜を疑ったが、それにしては魔法を使えることを申告するなど、間諜としては言動がおかしかった。
ただ、市井の店で給仕をするメイジというのはちょっと、いや、かなり普通では無い。
非常に危なっかしいので、自分の管理下に置いたほうが安全なのではないか? と判断して雇い入れた。
秘書として若い女の子が欲しかった。などとは断じて思っていない。
日々の生活でそれとなくお尻を撫でたり、モートソグニルを使って監視をしていたが、外部の人間と接触を
とることもなく、外出するでも無し。
ひょっとして思い違いじゃったか? と気を許していた矢先だった。

「まあ、相手が上手だったということじゃの。まだまだ修行が足りんわい。
……しかし、あのお尻は惜しかったのう」

オスマンは軽くため息をついた。


「しかし、我等が魔法学院から宝物を強奪しようとは、身の程知らずもいるものですな!」
「はぁ。しかし、たまたま彼等が遭遇したからよかったものの、誰もいなかったらと考えるとぞっとします」
「ふん、所詮は学生が捕まえることができる程度のこそ泥だったということだな」
「ミスタ・ギトー、確かに学生たちが捕まえたのは事実ですが、土くれのフーケという怪盗が
引き起こしてきた数々の事件を忘れてはなりませんぞ」
「ふん、私が当直であったならば、あっさりと捕まえていたのは確実ですな。ミスタ・コルベール」

「まあまあ、で、そこの3人じゃったかの、土くれのフーケを捕まえた学生達というのは」
「ええ、この三人です」

しばらく考え事をしていたオスマンが、目の前で激しく詰りあっている教師の会話に割り込んだ。
いい加減、一部教師の自己中心的な物言いに飽き飽きしていたコルベールはその言葉でパッと目を輝かし、
後ろに控える生徒達を手招きする。

コルベールの視線は、そのまま桃色の髪の生徒を守る様に壁際に陣取るハジと交錯する。
厳密にいえば、土くれのフーケを捕まえたのは、ハジだったらしい。
たまたまコルベールが最も早く現場に到着したのだが、その時にはフーケは杖を取り上げられて、
暴れるでもなく覚悟したように静かに座っていた。
フーケがミス・ロングビルだったことには心底驚いたしいろんな意味で残念だったが、明らかに怯えたような
視線を時々ハジの方に向けているのを前にして、ミス・ヴァリエールの召喚の際に感じた自らの勘の正しさを
再認識した。
一瞬で脳裏を駆け巡った思考を追い出して、コルベールは生徒達に前に出るように促した。

「ふむ、君たちじゃったか。まずは、よくやってくれたのぅ。君たちのおかげで、秘蔵品を盗まれた
学院という 不名誉を被ることを未然に防ぐことができたわい。更に、土くれのフーケを捕まえたという
大きな、まことに大きな功績をあげてくれた。これは学院全体の名誉でもある。学院の誉れじゃ」
「ありがとうございます」

コルベールに紹介された三人は、微かに緊張を含んだ表情のまま横に並んでそっと礼をする。
にこやかな表情のオールド・オスマンはそれぞれの顔を一通り見渡した。
その様子に、修復を終えた教師達も、先ほどまで口論寸前だった教師陣も口を閉ざしじっと見守っている。
571BPZ 2/7:2007/10/07(日) 16:01:01 ID:2m7P6ubF

「フーケは先ほど城の衛士に引き渡した。そして、君たちの”シュヴァリエ”の爵位の申請を出しておいた。
まあ、ミス・タバサは既に”シュヴァリエ”の爵位を持っておるから精霊勲章だがの」
「ほんとうですか?」
「わしは嘘は言わんよ、あの土くれのフーケを捕まえ、際どいところで破壊の杖を盗まれることを阻止した。
これはいまだ、いかなる貴族であっても成し遂げていない大きな功績じゃ。
上申は妥当なものじゃし、ほどなく受理されるじゃろうて」

その言葉に顔を見合わせた三人であった。
学生の段階でのシュヴァリエの称号の叙爵など滅多にない。と言うより、まずあり得ない名誉なことだった。
ルイズは抑えきれないような喜びの表情を浮かべ、キュルケもまんざらではない表情で微笑んだ。
タバサだけは相変わらず無表情だが、微妙に目が笑っているように見える。
相変わらず無表情なままで、入口近くの壁際にそっと佇んでいるハジの黒い姿を眼の端でとらえたルイズが、
表情を曇らせた。そういえばオールド・オスマンの言葉にハジという名前は入っていない。
今回の功績の大半はハジだというのに、ハジには何もない。
ルイズはその点に気づいて、高揚感が一気に吹き飛んだ。

「……あの、オールド・オスマン。よろしいでしょうか?」
「何かね? ミス・ヴァリエール」
「ハジには、何もないのでしょうか?」
「ふむ。そうじゃのう。一緒に上申したいのは山々なんじゃが、残念ながら彼は君の使い魔だ。
使い魔の功績はそのまま主人の功績となる。君はそのことを誇りなさい」
「ですが」
「慣例とはそういうものなのじゃよ。ミス・ヴァリエール。とはいえ今まで人間を使い魔にするなんぞ
聞いた事もないからの、使い魔という範疇に入れてよいものかどうか分からんのじゃがな。
まあ、とにかく、今回はあきらめなさい。」
「……分かりました。」

ルイズの問いかけに一瞬だけ表情を曇らせたオスマンだが、すぐに好々爺の表情に戻り、とぼけたように
髭を撫でる。
平等なのは学院の中だけであり、外に出れば厳然とした階級社会である。いくら最低位に近いとはいえ、
シュヴァリエの称号は貴族の一員であることを示す。
身元の不確かな、貴族でもなく、ましてや使い魔という立ち位置の人間に爵位を上申するわけにはいかない。
さらに言うと、ハジという存在はもう少し隠匿して置きたかった。
オールド・オスマンはそんな狡猾な老策士の顔を隠して学院長の皮をかぶる。

不承不承ながらも、引き下がったルイズに心の中で”すまんのう。”と声をかけつつ、オスマンは手を叩いて場の解散を命じた。

「よし、では解散じゃ、明日の夜は”フリッグの舞踏会”じゃ、主役は君たちに決定であるからして、
せいぜい着飾るのじゃよ」


―― BLOOD+ゼロ 7章――


三々五々と散っていく教師達に合わせてルイズ達も部屋を出た。
廊下に出てふっと振り返るといつも一緒にいるハジの姿が見えない。
慌てて出たばかりの扉を除くと、ハジが何か考え事をしているように手を顎にあてていた。

「ハジ?」
「先に戻っておいてください」
「行きましょ、ルイズ」

ハジの静かな、しかしいつもと少し違う声に、ルイズが言葉を失った。
硬直したようなルイズの腕を、キュルケがそっと掴んで不安な表情のルイズを引っ張る様に連れて行った。
足音が遠ざかり、やがて学院長とハジだけが静寂の中に残った。
572BPZ 3/7:2007/10/07(日) 16:02:07 ID:2m7P6ubF

「話し難い話題の様じゃの。こっちに来なされ。で、なんじゃ? 座らんか?」
「いえ、このままで」

宝物庫に備え付けてある椅子を魔法で取り寄せたオスマンが促したが、ハジは静かに首を振った。
老人が椅子に腰を据えるのを見たハジは、ゆっくりと肩に背負ったケースを置く。
深淵の闇のようなハジの漆黒の瞳が老人を射抜き、オスマンは真っ向からその視線を迎え撃った。
オスマンは、初めて見るその眼に、コルベールの心配もあながち的外れではないように思えてきていた。

あの眼は戦いに疲れた目だ。

幾多の戦場を戦い、絶望し、数多くの死を見てきた目。
しかし、この若者がここまで磨滅する様な悲惨な戦争は、オスマンの知る限りしばらくなかった。
徐々に緊迫してきてるとはいえ、少なくとも見掛け上は一種の小康状態で国家間抗争の凪の状態だった。
多少は小競り合いで人死にはでるが所詮その程度のものはず。
どうにもわからんわい、と視線を先に外したのはオスマンだった。首筋を叩き、強張った体をほぐした。

「年寄りになんてことをするんじゃ。で、なんじゃね?」
「あの、”破壊の杖”と呼ばれているもの。あれは私の見知ったものです。あれはどこで入手したのですか」
視線による圧迫を暗に揶揄したが、ハジは気にしたふうもなく言葉を発した。
その意味を理解したオスマンの動きが止まった。オスマンの脳裏に、ひとつの言葉が淀んだ澱の中から浮かびあがる。
しばらく視線を彷徨わせていたが、溜息をひとつついて懐かしそうに思いを馳せる。
ハジは何も言わず黙ってオスマンの返答を待っていた。

「ふむ、教えたいのは山々じゃが、あれはもらったものじゃ」
「もらった?」
「そう、三十年ほど前に、私の命を救ってくれた恩人が持っていたのじゃ」
「その恩人は?」
「残念ながら、私の命を救うのと引き換えるように亡くなった。もともと重傷であっての、
治療呪文も効かなんだ」

しばらくして、オスマンがぽつりぽつりと言葉を紡いでいく。
その思い出には苦いものがあった。
何もできなかった無念さ、ただ、助けられたという事実。そして助けることができなかったという過去。
ニガヨモギを噛んだような表情でオスマンは続ける。

「……何か言っていましたか?」
「そうじゃのう、ほとんど意識が戻らなんだからのう、ただ、『元の世界に戻りたい』と
熱にうなされるたびに口にしとった」
「……わかりました」
「なぜ、そのようなことを聞く?」

挑む様なオスマンの視線に、今度はハジが視線を外す。
ふっと壁まで歩いて行ったハジが既に修復された壁に手を当て、空の方向を見上げる。
宝物庫ゆえ、この部屋に窓はない。
なのでハジには壁しか見えていないはずだが、オスマンにはその行動がとても悲しいものに見えた。
壁の方を向いたままハジが口を開く。

「あれは私の世界の武器です。そして、その世界に月は二つもありません」
「……ふむぅ、なるほど、そう言うことか」
「戻り方の手がかりはありますか?」
「いや、わしにはわからん」
「……わかりました」

オスマンは、自分の想像が正しかったとハジの言葉で納得した。
目の前の青年は、この世界の人間ではない。かつての恩人と同じく別の世界の人間だと。
であるならば、返すことは困難なのではないか?オスマンはそう感じていた。
573名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 16:02:33 ID:8+O/JEjc
支援
574BPZ 4/7:2007/10/07(日) 16:03:17 ID:2m7P6ubF

ハジは、オスマンの回答を聞くと巨大なケースを肩に担いで、部屋を出て行こうとした。

「ハジ君といったかの? どうじゃ、こっちにずっといる気は無いか? 結婚相手が欲しければ、
極上の娘さんを探してあげよう」
「……私は何があっても戻らねばなりません」

以前返せなかった恩を思い出したオスマンは思わず引きとめた。が、その言葉を聞いた時のハジの表情に、
軽がるしく口にするのではなかったと後悔した。
音も無く閉まった扉を見て、オールド・オスマンは大きなため息をつき、無意識のうちに握りしめていた拳を
開いた。
手のひらにはじっとりと汗がにじんでいた。

「ふぅ、何をしたらあんな眼になるんじゃ。あんな悲しく、空っぽの、虚無のような眼に。
……ミス・ヴァリエールには荷が重いかもしれんのぅ」

§ § § § § § § § § § § § § § § § §

この一週間ほど、ルイズはなぜかキュルケ、タバサと一緒に行動することが多くなった。
ルイズの行動はあまり変わっていないのだが、ハジを狙っているキュルケが、あの決闘の夜以来、何かと
ルイズに話しかけてくるようになったのだ。
一度、なぜ頻繁に話しかけてくるのか聞いてみた。

「え? そりゃぁ、ハジが貴方の使い魔だからに決まってるでしょ」
「ハジは私の使い魔であってあんたの恋人じゃないって、何度言えば分かるのかしら? キュルケ」
「なに言ってるのよ、恋愛に障害なんてつきものじゃないの。そんな障害があるからこそ、燃え上がるんじゃないの」

髪をかき上げながら、さも当然のように熱っぽく語るキュルケの視線は、当然ながらハジに向いている。
その態度にルイズはいつものようにわなわなと震えつつ、おもむろに杖を取り出した。

「いいいいいいい根性じゃないっ」
「やだ、こんなところで爆発させないでよ」
「あんたがそうさせてるんでしょ」
「あ〜やだやだ、もてない女の僻みって怖いわぁ」
「ツェルプストー、喧嘩売ってる?」
「……大バカだからかしらねぇ」
「なんですってぇ」

キュルケの言葉に本気で呪文を唱えかけたルイズだが、ふっと真顔になったキュルケとその言葉に
意表を突かれ、思わず動きが止まった。
胡散臭げに見つめるルイズを横目にキュルケが一転して楽しそうに笑う。

「話しかけてる理由ね。以前は箱入りのバカだと思ってたけど、今は違うわ」
「なんだって言うのよ」
「あなたはね、救いようのない大バカだったのね、見てて飽きないわ」
「……」
「こらこら、本気で呪文を唱えないでよ」

ぴきっと青筋を立てたルイズが呪文を唱え始めると、本気ではないのが分かっているのかキュルケは
笑いながらフライを使って窓から逃げて行った。
フライが使えないルイズは、窓枠から身を乗り出しつつ地団駄を踏んだ。
しばらくたって我に返ったルイズは、ツェルプストーの人間とこんなに親しく会話ができていること自体が
信じられなかった。しかし、薄暗かった学院生活がなぜか明るくなったように感じるのも事実だった。

キュルケと一緒に行動すると、当然ながらキュルケの友人のタバサとも同席することも多くなる。
無口な少女だが、その実力と知識は相当なものがあった。
たまにいなくなったりするが、大抵の場合は図書館にいけば一心不乱に本を読んでいる姿を見つけることが
できる。
575BPZ 5/7:2007/10/07(日) 16:04:27 ID:2m7P6ubF
読んでいる本のタイトルをこっそり見たこともあるが、危険な幻獣についての本であったり、古代の魔道具に
ついての本であったり、古今東西のありとあらゆる書物を読んでいるらしい。
ルイズ本人も図書館をよく利用するので、タバサの姿を見たことがあるはずなのだが、ほとんど印象に
残っていない。が、タバサの方はしっかりと記憶しているみたいだった。

ある日、タバサと図書館でばったり会った。
ルイズが席を探してきょろきょろとしていると、本を抱え歩いてきたタバサが図書館の一角を指差した。

「貴方の席」
「え?」
「貴方はいつもあそこで読んでいた。私はあっち」

そう言って、何事もなく図書館を出て行ったタバサを、ルイズはぽかんと見つめていた。
確かに、タバサの示した席は何となくルイズのお気に入りの席で、ちょくちょく座っていた。それをタバサは
覚えていたのだろう。
よく考えてみればタバサの方から声を掛けてられたのはルイズにとって初めての経験だった。
なんだかルイズは嬉しくなってふふっと微笑んだ。軽い足取りへ”いつもの席”に向かう。

こうやって落ち着いて周りを見ると、いろいろなことが分かる様になった。
錬金の授業で青銅のバラを錬金したギーシュは、いろんな女の子と話しているようで、結局はモンモランシーと
いう名の女の子のところでいることが一番多いとか、鼻ったれのマリコルヌは女の子に話しかけようとして、
あうあうと言葉を詰まらせて、撃沈していたりとか。

未だ”ゼロ”に限りなく近いが、功績を認められて自分の居場所ができたルイズは入学してから最近まで、
いかに視野が狭かったのか改めて思い知らされていた。

ふと振り返ると影のようにハジが付き従っている。

ルイズの使い魔、ハジ。

困ったような表情のハジの腕に絡まっている、赤いモノを力ずくで撤去することもしばしばあるが、
概ね平穏な主従関係だった。
あの日、どうやって動いているゴーレムの上からフーケを捕まえたか聞いてみたが、はぐらかして
答えてくれなかった。あまり話したがらないというより、悲しい目になっているのに気がついたルイズは、
それ以上追及できなくなった。
いつも静かに、見守る様に従ってくれる年上の青年。
暇なときはチェロを弾いており、授業の時などは時折中庭の方から静かな曲が流れてくることがある。
どうも固定のファンが付いているような噂話も耳に入る。

ただ、ハジの周辺で最近はルイズの神経を逆撫でするような問題が発生していた。

事の発端は”フリッグの舞踏会”でのこと。

舞踏会の席上で学院長のオールド・オスマンから、宝物庫襲撃の事情説明があり、土くれのフーケ捕縛の
功労者としてルイズ、キュルケ、タバサが紹介された。
まさか、あのゼロのルイズが、あの土くれのフーケを捕まえたということに会場が蜂の巣をつついたような
騒ぎになった。

その興奮も冷めやらぬ間に、ルイズはヴァリエール公爵家令嬢に相応しい艶やかな白の豪奢なドレスを着て、
黒のフロックコートで正装させたハジをエスコート役にして会場に躍り出た。
実は出席に乗り気ではないハジを説得し、というより思いっきり泣き落して無理やり参加させたのだが、
一通りの社交儀礼の知識・経験を持っていた。嬉しい誤算だった。
ハジのエスコートはそれなりに洗練されていて、ルイズは安心して身をゆだねることができた。

ハジに手をひかれて典雅に舞い降りた姿に、今までゼロと侮っていた面々はショックを受けた。
そう、ルイズはメイジの実力ではゼロで学院でも最低レベルかもしれないが、れっきとした大貴族の令嬢である。
王族とも近いれっきとしたお嬢様である。
学院の中は、『身分は関係なく学ぶものはすべて平等である』という精神に満ちているところだが、
さすがに舞踏会という場では社交界での影響力が強くなる。
576BPZ 6/7:2007/10/07(日) 16:05:34 ID:2m7P6ubF

ルイズをエスコートした後、即座に場を辞そうとするハジを、ルイズは一度だけでいいから、という懇願に近い
泣き落としでダンスに誘った。
半ば脅迫じみた泣き落としに、溜息をついて肩をがっくりと落としながら、ダンスホールに出た目立つ二人は
周りの生徒の視線を釘付けにした。

男子生徒は主にルイズの可憐な美しさに眼が吸い寄せられ。
パートナーのいない女子生徒は暗い影のある貴公子然としたハジの手を取る自分を夢想した。

一曲舞ったあとに、ハジは逃げるようにその場を辞し、邪魔ものがいなくなったと争うようにダンスを
申し込まれたルイズはすべて丁重に断って、食事をメインにしているタバサの隣でタバサと一緒に
壁の花と化していた。

ふとキュルケは?と思って探してみると、女王蜂のように君臨した姿を見て思わず苦笑してしまった。

その日は確かにルイズ達が舞踏会の主役を張っていた。そして、その世界の中ではゼロのルイズと
蔑まれていた姿はどこにもなかった。

ルイズの短い一生のうちでも最も光に満ちた一日。今までの辛さを吹き飛ばすような一日だった。
自室に帰ったルイズは、嬉しくて思わず泣いてしまった。
ハジがどうしていいか分からないで、おろおろするのを見てまた笑った。
泣いて笑って幸せな一日だった。

明けた翌日から、ルイズのこめかみに青筋が浮き始める。
ルイズが目を離している間に、何故かハジが手紙を持っていたり、奇麗に包まれた袋を持っていたりする。
どうも、女子生徒の中で人気が上がってきているらしい。
確かに学院の男性と言えば、かなり年長の気難しい教師達か、軽薄浅慮な貴族の子弟ばかり。平民の下働きは論外。
学院を出れば、ハジよりも魅力的な男性はいくらでもいるだろうが、この限られた空間の中ではハジは明らかに
別格だった。

また、昨日のルイズの行動を見ていたのか、ハジがどうも女の子のごり押しに弱いということが知れ渡った
らしく、あの手この手の女の子の秘密兵器を使って無理やり押しつけられていたらしい。

夜、ルイズの部屋でテーブルの上に置かれたものを前に、部屋の主人は小さい体を思いきり反らして、
相変わらず無表情なハジを睨みつけた。身長差があるので、見上げる格好になって迫力はかけらもない。
ばんばんとテーブルを叩いて、手のひらと顔を真っ赤にしてハジに詰めよる。

「で、これは何?ハジ」
テーブルの上にある手紙を握りしめてハジにつきつける。

「手紙のようです」
ルイズの持っている紙の束を見てハジが答える。

「これは?」
テーブルの上にあるきれいにラッピングされた小箱を持ってハジにつきつける。

「お菓子だと思います」
小箱をちらっと見てハジが答える。

「で、それは?」
ぴくぴくと、こめかみを引きつらせながら、いつの間にか壁に掛けられている、物騒で細長い金属製品を指差す。

「剣ですね」
壁の方を見もせずにハジが答える。

「なんでなんで、貴方はそんなにプレゼントをもらってくるのよーっ!
っていうかそれはツェルプストーの剣でしょっ!!
捨ててきて!!」
「ハジッ、私の剣を捨てるの? 私が心をこめて選んだのに」
577BPZ 7/7:2007/10/07(日) 16:06:59 ID:2m7P6ubF

ルイズが叫んだ瞬間、ドアがバタンと開いて真っ赤な塊が飛び込んできた。
薄い挑発的なベピードールを着た塊は、唖然とするルイズに目もくれず、ハジの胸に飛び込んだ。
ハジの意外と筋肉質な体に腕を巻き付けたキュルケが、極めて女性らしい体を強調するかのようにハジに擦り寄り、
潤んだ瞳で見上げる。

「キュルケッ! いつの間に」
「あら、いたの? なによ、いいじゃない、プレゼントを贈るくらい」
「っていうかどうやって入ったのよ!」

目の前でハジに抱きついているキュルケを引きはがし、ハジとキュルケの間に割り込んでルイズが手をぶんぶんと振り回す。
キュルケはそんなルイズを面白そうに見ながら、さも当然のように扉を指差した。

「え? どこから入ったってドアからに決まってるじゃない」
「そっか、ドアからか。あら、タバサ。貴方も来たの?」

静かにはいってきた青い少女は、こくんと頷いてベッドにちょこんと腰かけた。

「……じゃなくて、鍵はどうしたのよ、鍵は!!」
「あー、アンロックしたわ」

一瞬納得しかけたルイズだが、我にかえってわなわなと肩を震わせる。
顔を引きつらせながら、ルイズは杖を引き抜いた。
プルプルと震える杖をキュルケに向けた。
キュルケもニヤッと笑っていつも身につけている杖をひきぬく。

「今日という今日こそは決着をつけてやるわ、ツェルプストー」
「大きく出たわね、あなたが私にかなうとでも? ヴァリエール」
「「この間の続き!!」」

いつかの繰り返しのような光景が目の前に広がった。
思わずタバサが杖を手にするが、キュルケとルイズはぎゃんぎゃん言い合いながら部屋を出て行った。

「仲がいい」
「そのようですね」

後には、無表情の二人だけが残った。
ぽつんと漏らしたタバサの呟きに、上から静かな声が降ってきた。
お互い顔を見合せて同時に苦笑した。今日の夜も遅くなりそうだと考えながら。


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第七話は閑話&加速装置話になりました。
支援ありがとうございました。
ハジは、買われてからゴールドスミス家で一応の教育を受けてますので、一応そとっつらはいいのです。
百何十年も前の話ですけど。
578名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 16:22:01 ID:WyfkssgU
GJでした
ハジへ送られたプレゼントを見て憤慨するルイズも姿が容易くイメージできましたw
流石はルイズ!ハジは悪くないのに八つ当たりとはそこn(ry
579ゼロのガンパレード:2007/10/07(日) 16:44:36 ID:3UVavpZd
投下したいのだけどよろしいかしらー?
580名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 16:46:41 ID:Y2FfeqGc
いいんじゃないかしら
581ゼロのガンパレード:2007/10/07(日) 16:50:06 ID:3UVavpZd

マリー・ガラント号の甲板に立ち、ルイズは頬をなぜる風にそっと唇を緩めた。
上を見上げれば青空が広がり、おそらく舷側から見下ろせば雲の海が見えるだろう。
ギーシュとワルドから止められているのでやらないが。
一つ息をつき、腰に下げた空袋の位置を直す。
一般的な水袋の口を広げただけのそれは空を往く者たちの必需品であり、
もし気分が悪くなったのなら使うようにと船長から渡されたものである。
不思議そうにするルイズたちに説明したのはギーシュであった。
兄が空軍の艦長だと言う彼はこう見えて空には詳しい。

「海ならば舷側から身を乗り出せばすむし、万が一落ちても助かる可能性はあるがね。
 ここは空だから落ちたら助からないし、下に誰がいるか解らない。
 君たちだって、いきなり空から汚物が落ちてきたら嫌だろう?」

なるほど、と頷いてすぐに取り出せるように袋を身につけると、
自分たちのそれよりも大きな袋を5つ頼んだ。
使い魔たちの分である。
翼竜であるシルフィードと、ワルドのグリフォンには必要ないのではという気もしたが、
備えをしておくに越したことはない。
結果から先に言うと、袋のお世話になったのはヴェルダンデだけであった。
何しろモグラである。船酔い以前に周囲に土がない広い所が苦手らしい。
ただでさえ苦手な環境に初めて乗る船の振動である。気分を悪くしても仕方がない。
今はギーシュが介抱しているが、もう少ししたら変わってやったほうがいいかもしれない。
火蜥蜴のフレイムは酔いには無縁のようで、つい先ほどまでは甲板で周囲を見回していた。
ただ主人共々に代わり映えのない景色に飽きが来たらしい。キュルケについてどこかに行ってしまった。
タバサとシルフィードはいつもどおりで、身体を丸めた使い魔を枕にして本を読んでいる。
考えてみれば、空を飛ぶ翼竜とその主人である。この景色も見慣れたものなのだろう。
ブータについては、船酔い自体には問題はなかった。
星の海を往く大冒険艦の一員でもあった猫神にとって、空を飛ぶ船も海に浮かぶ船も変わらないらしい。
ただ何時になく上機嫌であったのか、気がつけばマストの一番上に登っていて船員たちを蒼白にした。
なにしろルイズはこの船に乗る時にマザリーニ枢機卿のお墨付きを見せている。
そのような地位の貴族の猫が怪我でもしたら一大事である。
子猫ならまだしもあの巨体だ、抱き上げてマストからおろすなぞ一苦労だし、
手を伸ばしたら嫌がられて甲板に落ちたなどというと目も当てられぬ。
眼下の混乱に気づかぬかのように目の前に止まった燕と睨めっこをしていた大猫は、
ややあって頷くとその身を宙に躍らせた。
船員たちの悲鳴や息を呑む音を気にも留めずに身体を捻り、勢いを殺して着地する。
訝しげに周囲を見回す大猫だったが、主の怒りの鉄拳を喰らって沈黙した。
心配をかけさせるんじゃないわよこの馬鹿猫。

「ルイズ、もう少しでアルビオンが見えるそうだ。
 とはいっても目的地のスカボローまではもう少しかかるから、今のうちに休んでおいた方がいい」
「ああ、ありがとう、ワルド。
 旅行も久しぶりだから、ついつい興奮してしまったのよ」
582ゼロのガンパレード:2007/10/07(日) 16:52:38 ID:3UVavpZd



/*/



大貴族にしては珍しく、ルイズは旅行というものに縁が薄い。
家族で出掛けるのはそれこそヴァリエール領の中だけであり、
それ以外は父と二人で出掛けるのが常だった。
母とエレオノールはいつも領地にとどまり、カトレアと共にルイズの帰りを待っていたものだった。
空を見上げ、ふと目を閉じる。
ルイズが幼く、何も知らず、自分だけの世界にいたあの頃。
自分で行かないと言った筈なのに、帰ってきたルイズを苛めるエレオノールが嫌いだった。
ちびルイズだけ良いわねぇと頬を引っ張るエレオノールをカトレアが宥め、
小さなルイズは優しいちい姉さまの胸に抱かれて、エレオノールに向かって舌を出す。
顔を赤くして怒るエレオノール。ちい姉さまがお茶を入れてくれて、ルイズに旅行の思い出を聞く。
幼い頃から何度も何度も繰り返したその儀式。
その儀式が終わったのは、エレオノールが魔法学院に入学するために屋敷を出る前の晩の事だった。
小さなルイズを部屋に招きいれた姉は言った。
これからは旅行に行くのは控えなさい、と。
少し前までなら一も二もなく頷いたその言葉ではあったが、
あの人から魔法の言葉を教えてもらったルイズは心の中でその言葉を唱えながら姉に言った。
なぜですか、と。
エレオノールはルイズを見つめると、その視線を窓に向けて口を開く。

「カトレアが悲しむからよ。一人だけ旅行に行けないって」
「……その言い方は、卑怯です」
「そうね、わたしもそう思うわ」

常になら怒り出すはずのその言葉に冷静に答えた姉を置いてルイズは自室に戻ると、
寝台に飛び込んですすり泣いた。

「――――ごめんなさい」

一人だけ屋敷にいればカトレアが悲しむ。
それは確かにそうだろう。だが今まではそんなことはなかった。
なぜか? エレオノールがいたからだ。
優しい姉がいたから、カトレアはそんな思いをしなくてすんだ。

「――――ごめんなさい、大姉さま。ごめんなさい――――」

自分だって旅行したかっただろうに、エレオノールは常にその機会をルイズに譲ってくれていた。
帰ってきたルイズに殊更絡んだのもその為だ。
ルイズがそれに気づかぬように、一人だけ旅行にいけたと罪悪感を抱かぬように。
カトレアが気づかぬように、姉に無理をさせていると知らなくてもいいように。
悪役をかって出て、ルイズに嫌われるのもカトレアの顰蹙をかうのも厭わずに妹たちを守ってくれていた。
なのに自分は何をしたのか、姉さまの優しさに気づかず、意地悪な人だとずっと思っていた。
あの時、言い方が卑怯だと言われた時、エレオノールはどんな表情でそれを聞いたのか。
どんな思いで妹の言葉を聞いたのか。

「ごめんなさい、大姉さま――――っ!」
583名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 16:54:26 ID:Y2FfeqGc
支援
584ゼロのガンパレード:2007/10/07(日) 16:56:09 ID:3UVavpZd
一夜明け、真っ赤に泣きはらした瞳でルイズはエレオノールの前に立った。
今から魔法学院に赴く、しばらくの間は会うことが出来ない姉の前に立った。
ここで謝るのは簡単だ。だがそれは出来ない。なぜならここにはカトレアもいるのだから。
ここで謝るのは、今までたった一人で悪役を担ってきた姉の努力を否定することなのだから。
奥歯をかみ締め、心を殺す。ともすれば口を開きそうになる謝罪の言葉を押し殺す。
出来る筈だ、なぜならわたしはルイズ・ド・ラ・ヴァリエール。
誇り高いエレオノール・ド・ラ・ヴァリエールの妹なのだから。

「いってらっしゃいませ、エレオノール姉さま。
 これからしばらくは苛められなくてすむと思うと寂しく思いますわ」

ルイズの言葉に周囲の使用人たちが強張り、父さえもが絶句する中で、
しかしエレオノールは鮮やかに笑った。
その瞳に光るものが見えたのは、それはきっと少女の錯覚なのだろう。

「生意気なことを言うじゃないの、ちびルイズ」

笑いながら妹に手を伸ばし、その頬をつまむ。
いつもよりも力の弱いそれに驚く間もなく姉の手が離れ、
その指に光る水滴に気づいたルイズは自らの頬に手をやった。

「まだまだね、泣き虫のちびルイズ。
 ま、せいぜい頑張りなさい」

言い置いて、何かから逃げるかのように馬車に乗り込むエレオノール。
その肩が微かに震えているのに気づいたのは、間近にいたルイズだけだった。



/*/



「君はいっつもお姉さんと魔法の才能を比べられて、デキが悪いなんて言われてた」
「事実だもの、仕方がないわね」

マリー・ガラント号の甲板で思い出話をするワルドに、ルイズは困ったように笑い返した。
自分がデキの悪いのは本当のことだ。
魔法では言わずもがな。貴族としての、人間としての心構えとしても同様だ。
ことにエレオノールに対しては、一度も勝てたことなどないと思っている。
自慢の彼女の姉。気高く美しいエレオノール姉さま。
アカデミーで、今もカトレアの病気を治す為の研究を続けている優しい姉。
何よりも研究を、つまりは妹を第一に考えるために結婚もせず、
業を煮やした婚約者たちが『もう限界』と去っていくにも関わらず自分を曲げない誇り高き女傑。
一度も面と向かって言ったことなどないけれど、ルイズは彼女を尊敬していた。

「でも僕は、それはずっと間違いだと思っていた。
 確かに君は不器用で、失敗ばかりしていたけれど」
「意地悪ね」

ルイズが頬を膨らませた。

「違うんだルイズ。君は失敗ばかりしていたけれど、誰にもないオーラを放っていた。
 魅力といってもいい。それは、きみが、他人にはない特別な力を持っているからさ。
 僕だって並みのメイジじゃない。だからそれがわかる」
「まさか」
「まさかじゃない。例えば、きみの使い魔だが」

ぎくりとルイズが身を強張らせた。
585名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 16:56:36 ID:8+O/JEjc
支援。
586名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 16:57:03 ID:Y2FfeqGc
支援
587名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 16:57:24 ID:j/15WD+N
しえん
588ゼロのガンパレード:2007/10/07(日) 16:57:53 ID:3UVavpZd
「ブータのこと?」
「そうだ。ラ・ロシェールで、宿から桟橋まで走った時のことを憶えているだろう?
 きみの使い魔は、魔法衛視隊隊長の乗騎である僕のグリフォンより早く走ったんだ。
 それもきみを乗せた状態で」
「そ、そうね」

ルイズの目が泳ぎ、落ち着かなくあたりを見回す。
これはやばい。非常にやばい。なんとかして話を変えるか打ち切らねば。

「誰もが持てる使い魔じゃない。きみはそれだけの力を持ったメイジなんだよ」

それは、まぁ、猫神ですから。
誰もがブータクラスの神を使い魔にしたら大変だ。世界が変わってしまう。

「きみは偉大なメイジになるだろう。
 そう、始祖ブリミルのように、歴史に名を残すような、
 素晴らしいメイジになるに違いない。僕はそう予感している」

ワルドは熱っぽい口調で、ルイズを見つめた。

「この任務が終わったら、僕と結婚しようルイズ」
「え……」

いきなりのプロポーズに、ルイズははっとした顔になった。
気を利かせたのか、船員たちが甲板からいなくなる。
いや、マストなどの陰に隠れて二人の様子を窺いだした。

「で、でも……」
「確かに、ずっとほったらかしだったことは謝るよ。
 婚約者だなんて、言えた義理じゃない事は解っている。
 でもルイズ。僕には君が必要なんだ」

真摯に見つめるワルドに、ルイズは胸の高鳴りを抑え切れなかった。
幼い頃からの憧れだったワルド。親同士の約束で婚約者となっていた筈の彼が、自分の意思でわたしを求めてくれている。
それは確かに嬉しいことではあった。
だが、とルイズは思う。
今の自分は、本当に彼に相応しいのかと。
彼に聞けば勿論だと言ってくれるだろう。ワルドは優しい。それこそ自分には勿体無いくらいに。
でも、他ならぬ自分自身がそれを認める気にはならない。
自分はまだ半人前で、ただ周囲の人間のやブータの力を借りているだけなのだから。
時間が欲しかった。
自分が一人前になるだけの時間が、ワルドに相応しいのだと自分でも思えるようになるまでの時間が。

「いいわよ、ワルド。
 でも、結婚するのなら、一つだけ条件があるの」
「条件? いいとも、ルイズ。
 きみの為なら何だってしてみせるよ」

ルイズは一度目を閉じると、心の中で尊敬する人物に詫びながら口を開いた。

「……わたしに先を越された形になる、
 エレオノール姉さまの説得とご機嫌取り。よろしく頼むわね」
「なッ……!?」

ワルドは、ひどく狼狽した。
589名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 16:58:13 ID:8+O/JEjc
うおぉすみませんごめんなさい>>585で上げてしまいました支援
590名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 16:59:07 ID:vhZH/O45
これは難題www
支援
591ゼロのガンパレード:2007/10/07(日) 16:59:30 ID:3UVavpZd
今回は以上ですー。

エレ姉さまっていいキャラだよねぇ。
ツンデレ万歳。


あじゅじゅしたー
592名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 16:59:38 ID:2m7P6ubF
しえーん
593名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 17:06:05 ID:rhwDM807
230行の人は投下しないの?
594名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 17:20:04 ID:8+O/JEjc
投下します
5953話:2007/10/07(日) 17:21:46 ID:8+O/JEjc


まだ朝が白み始めた頃、学院の内壁にそって走っている2つの影があった
今にも足をもつれさせて転びそうになっている女生徒と
その後ろから全く息を切らせずに激を飛ばしている教師
『これはもちろん他言無用じゃが、ミスタ・コルベールはかつてアカデミーの中で深くARMSに
関わっていた事がある。ワシより詳しい部分もあるじゃろう。色々と教えてもらいなさい』
「だけど、これは、教える、ってレベル、じゃ、ないんじゃ、ないかしら」
「何をぶつぶつと!魔法であろうとARMSであろうと、力を扱うものにとって心身の鍛錬は欠かせません!」

朝は普段より2時間も早く起きてマラソン、腕立て、腹筋、背筋
授業が終わったあとはコルベールの研究室にて座学。ARMSの性質について、緊急時の心構え
毒草の見分け方、戦術論、サバイバル術、星座で方角を知る術(役に立つのかしら?これ?)等を学ぶ
杖より重いものを持った事などない良家の令嬢にはあまりに過酷な生活であった
「そう、ハァ、いう、もん、ハァ、です、か。 ハァ、ハァ」
ルイズはゴールした勢いで前に一回転。大の字になって新鮮な空気を貪った
「ミス・ヴァリエール。あなたはアレと向かい合って生きていく道を選びました。
その勇気には大いに敬服します。私ならば恐らく右腕を捨てる道を選んでいたでしょう。
ですが、今のあなたは正直未熟です。心も、体も、いまよりもずっと強くならなければならないのです」
陸に打ち上げられた魚のように激しい呼吸をしている生徒は返事をする余裕もない
「さあ、授業が始まる前に体をほぐしておきましょう。ワンモアセッ!」
「も〜〜〜ぃや〜〜〜〜っ!」
どこにそんな元気が残っていたのか、手足をばたつかせて
スパルタ教官から逃れようとする訓練兵の叫び声が中庭にこだまする
「よく続くわねぇ・・・」
ルイズの悲鳴を目覚まし代わりに起床した少女は
ネグリジェの肩紐をかけ直しながらあきれた様子で呟いた
5963話:2007/10/07(日) 17:22:57 ID:8+O/JEjc


「ねぇ、あの二人、虚無の曜日だっていうのに森に出かけたみたいよ」
キュルケは横目にタバサの様子を伺いながら
前髪を指にクルクル巻きつけていじっている
「あんな使い魔、今まで見たこと無いわ。あなたもでしょ?」
「・・・・・・」
キュルケにはわかるのだ
間違いなくこの無口な子はルイズの事が気になっている
(たまに朝ルイズが走ってるのを眺めたり、教室で目で追ったりしてるのよね)
「ね、ちょっと覗きにいってみない?」
「・・・・・・」
パタン
返事は、本を閉じる音だけだった。つまり、「興味がある」ということだ

学院の側の森の中、円形に切り開かれた広場で
桃髪の少女が岩の上に座って目を閉じ精神を集中している
「おそらく見た目から中身まで今までの自分の腕と全く変わらないように感じるでしょう。
でも、集中して、そこに確かにあの使い魔が存在するという感覚を掴んでください」
「・・・・・・」
この姿勢になって既に数十分
「それさえ感じ取れば、おそらく自在に変化させる事もできるようになるでしょう」
「・・・・・・」
ルイズの額から一筋の汗が流れ落ちる
しかし、ルイズの右腕には変化の兆候は一向に現れない
「一旦、休憩にしましょうか」
長く続く緊張から解き放たれたルイズは目を開き
使い魔を使いこなせない己に対する失望から深いため息を吐いた

「そういえば先生、私の使い魔ってどのくらい強いんですか?
この前伝説の使い魔がどうとか言ってましたけど・・・伝説の使い魔なんですか!?」
「残念ながら、ルーンが浮かばない内はそれも分りません」
ガックリと肩を落とす
「でも、仮にトライアングル10人分とかだとして、よく考えるとそんなの先生達でも倒せないんじゃあ」
「ふむ・・・確かにわたしは一介のメイジに過ぎません。だが、それでも」
ルイズと正面から向き合い、しっかりとした口調で言った
「きみがその右腕に飲み込まれた時には、この命に代えても絶対に止めてみせる」
その瞳の奥の強い光に気圧されて、ルイズは思わず頷いていた

「まあ、あまり根を詰めるのもよくありません。そろそろお昼にして、午後は休講にしましようか。
そちらのお二人もご一緒にどうですか?」
突然コルベールが草むらに向かって話しかける
「ありゃ、見つかっちゃったのね」
肩をすくめながら、降参といった感じで葉っぱを払いながら赤い髪の少女が出てきた
そのあとに長い杖を持った少女も続く
「ツェルプストー。なにしに来たのよ」
「べぇつにぃ。あなた何か変わった使い魔を呼び出したって言うじゃない。
おまけに朝から夜から秘密の特訓までして。虚無の曜日にまでどっかに出かけてくじゃないの。
おもしろそうだったから見に来ただけよ。悪い?」
タバサもコクリと頷いた
ルイズは内心驚いていた。あの決闘騒ぎ以来、クラスメイトはみんなどことなくルイズを避けていたからだ
ギーシュなんかはとってもわかりやすい。教室や食堂ではいつも通りなのだが
その他の場所だとルイズの足音すら聞き分けて10メイル以内には近づこうともしない
5973話:2007/10/07(日) 17:24:04 ID:8+O/JEjc
「ルイズくん、心配して来てくれた友人をそんな邪険に扱うものではありませんよ」
「友達じゃありません!わたしの家とツェルプストー家は領地が隣同士で昔から―」
「ほほう、ライバルというわけですか。それはさらに素晴らしい。ある意味友人より貴重な存在ですよ
若いうちほど切磋琢磨して、お互い多くのものを学ぶことができるでしょう」
(ええいこのハゲは)
ちょっとイラっとして、その感情にハッと気付く
怒りは焦りを呼び、焦りは隙を生む。コルベールの教えである
気を落ち着かせたルイズは、キュルケに対しあえて余裕のある態度を見せ付けてみる
「あなたたち、よかったら、わたしのお弁当分けてあげてもいいわよ。シエスタがいつも作ってくれるの」
「そうなの?なんだか悪いわね」
「いいわよ、どうせいつも食べ切れなくて半分は夜食になるんだから」
「そぅお?じゃあ遠慮なく」
言うや否やキュルケは両手に一つずつサンドイッチを持ってパクつき始める
(本当に遠慮がないわね。こういう強かさも学ぶべきなのかしら?)
その様子を懐かしげに見守っていたコルベールは
ルイズの座っている側にとある植物を発見した

「お、これは珍しい。ルイズくん。そこに自生している草は安全かどうかわかりますか?」
ルイズはその草を一瞥して
「はい、これは食べれるやつです」
パクっと口に含み
「ウベー」
丸ごと吐き出していた
「アッハハハハハ!それハシバミ草よ。タバサの大好物」
よっぽどルイズの顔がおもしろかったのか、腹をかかえて笑い転げるキュルケ
「まあ、毒性はありませんが臭いと味に癖がありますからね」
「ゲホ!ゲホ!ちょっとツェルプストー。そんなに笑う事ないでしょうが!
何よこの臭い。何よこの味。こんなのウサギくらいしか食べないんじゃないの!?」
そんな姦しい騒ぎを他所に青髪の少女は
ハシバミ草をもしゃもしゃと手摘みで食べながら、さらに持ち帰る分も集めていた

その後はせっかくの休みだから、という事で
成り行きでタバサの風竜に乗って3人で街まで遊びに行った
ルイズ自身は特に欲しい物があるわけでもなく
キュルケの香水や服を買うのに付き合ったり
タバサの本を買うのに付き合ったり
学院では滅多に出ないような甘いお菓子を堪能したりするだけだったが
「ここは奢ってあげるわよ。ランチのお礼にね」
「ふん、まあ当然ね。い、一応感謝はしておくわ」
普段、誰かと出かけるなんて経験をした事のないルイズにとっては新鮮な一時だった
(ツェルプストーも一緒っていうのが気に入らないんだけど。
でもまあなんだか悪い気はしないから、別にいいわ)

学院に戻ったルイズはシャワーを浴びると部屋に直行した
この一週間でたまった疲れが一気に噴き出してきたのか、鉛のように体が重い
急速に睡魔が襲ってきて、なんとか寝巻きに着替える
ベッドにたどり着くとそのまま突っ伏して泥のように眠った
598名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 17:25:02 ID:Ui+7bYk8
支援
5993話:2007/10/07(日) 17:25:13 ID:8+O/JEjc
。0。0。0。0。0。0。

ルイズは闇の中で目が覚めた。目を開けているのか自信がなくなってくるほどの深い闇
夢のような夢でないような、フワフワした、でも地面からは足が離れない感じ
これに近い感覚をルイズは前に感じたことがあった
(この感じ、あの時と同じだわ)
ルイズの右腕が初めて変化した時と同じ感覚である
『汝か』
不意にあの声が聞こえた
声の聞こえた方を振り返るが、暗すぎてよくわからない
ただそこに何かがいるのがわかるだけだ
そう、ARMSが
(来た来た。まあ主人のピンチに力を貸してくれたんだし、味方には違いないわよね
この機会に主従関係ってものをきっちり教えてあげなくちゃ)
「あなた、わたしの右腕でしょう。名前は何ていうの?」
『・・・ジャバウォック』
「微妙に長いわ、ジャバちゃん。って柄でもないし、ジャバでいいわね
じゃあジャバ、このままでも不自由だしさっさとコントラクト・サーヴァントを済ませるわよ」
ルイズはおもむろに懐から杖を取り出す
『何故』
その言葉を、儀式のなんたるかを理解してない、と取ったルイズは
苛立たしげに物分りの悪い使い魔に講釈を始める
「あのね、あなたは私の使い魔なの。使い魔は全身全霊をかけて主人に尽くす義務があるの!
主人の手となり足となり、魔法の材料の秘薬を集めてきたりね。出来ないなら炊事、洗濯、雑用――」
『図に乗るな』
獣が唸るような低い声がルイズの言葉を断ち切った

暗闇に目が慣れてきてうっすらと己の使い魔の姿が見えてくる
声の位置からしてそれほど大きくは無いと思っていた
ルイズよりは高いが精々2メイルくらいのものだと
だが、その魔獣はゆったりと座っていただけだったのだ
立ち上がれば優に5メイルは越えそうな巨体に大木のような太い腕と脚
ギガンテスでも見劣りするほどの逞しい筋肉
両手足の先にはドラゴンのような鋭い爪
僅かに開いた口からは端から端まで槍のような鋭い牙が見える
全身の皮膚はあの時のルイズの右腕よりも遥かに滑らかで硬質な金属でできており
なによりも、その赤く光る瞳の奥には世界を滅ぼして余りあるほどの憎悪が渦巻いている
ただ目を合わせているだけで、その激情に焼き尽くされてしまいそうだった

再び、地の底から湧き上がって来るような声が響く
『我を 僕にできるつもりか』
口をあんぐり開けて己の使い魔を見上げるルイズの右手から
ポトリと、杖が落ちた

殺される

ルイズは確信した
体の芯から恐怖が伝わってきて肩から脚から勝手にブルブルと震えだす
じんわりと暖かい液体が股間から太腿に沿って広がっていく
この圧倒的な存在に比べたら自分はただの餌だ。ゴミだ。羽虫だ。
ほんの戯れに いつひねり潰されてもおかしくない
たまたま生かされている存在なのだと。その姿を見ただけで理解した
(腕を落とす?封印する?コ、コ、コ、コイツはそんな、生易しいもんじゃないわ)
もはや自分の使い魔に逆らう気持ちなど一ミリも残っていなかった
600名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 17:28:19 ID:F/R8nmj4
支援
6013話:2007/10/07(日) 17:28:19 ID:8+O/JEjc
オスマンの話ではスクエアクラス何十人分だとか言っていたが
スクエアメイジ100人とコレとどっちと戦うか迫られてたとして
自分なら迷わずメイジと戦う方を選ぶだろう
こんなものが外に出たら大変な事になる
でも、逆らえるわけが無い
『力が欲しいのなら くれてやる』
ありがたく頂戴しよう。この力は素晴らしい力だ
多分わたしは飲み込まれるのだろうが
『汝の憎むもの 全てを焼き尽くしてやろう』
世界ごと、ということだろう。でもそれでもいい。逆らえるわけがない
それに魔法が使えるだけでやたら威張り散らすような連中もまとめて消滅だ。ハイ決まり
rァ同意します  同意しません
諦めに支配されたルイズの心身から力が抜けていき、破壊の獣に全てを委ねんとする
6023話:2007/10/07(日) 17:30:07 ID:8+O/JEjc
刹那

たくさんの顔がルイズの脳裏に次々と浮かんできた
いけ好かない同級生達
小便小僧のギーシュ
泣き虫メイドのシエスタ
オスマン学院長
コルベール先生
まだ、友達にもなれていない2人の級友
キュルケにタバサ
尊敬する父
厳しいけれどいつもルイズを気にかけてくれる母に姉
優しいちいねぇさま
そして――― 小舟の上の、幼い日の淡い憧れ

すんでのところでルイズの体に力が戻る
(駄目。それだけは、させない!)
恐怖に痺れた頭を必死に働かせる
(私は選んだ。三つ目の選択肢を。全てに誓った。コイツを手なずける事を)
いついかなる時でも思考を止めるなというコルベールの教えに従い
ルイズは今あるだけの材料で状況を分析していく

ジャバウォックの目的はどうやら世界の破滅のようだ。多分、それだけの力は持っているだろう
やりたいなら簡単にできるはずだ。いつでもわたしを消し去ってその力を振るえばいい
でもやらない。なぜか。おそらく、できないから
まだ今のところはこの体は私のもの、と言うわけだ
だけどわかる
最初は声だけだった
次は顔が見えた
今は全身が見えている
だんだん私の中で大きくなってきているのだ
そのうちコイツは私の意志など関係なく暴走を始めるようになるのだろう
(要するにこれはチキンレースだ。わたしの成長とコイツの暴走。どちらがより早く
大きく、強くなれるか。相手の心を挫かせればそれだけ自分が有利になるのよ)
へたり込みそうになる脚に必死に力を入れ
震える奥歯を無理矢理噛み締め
憎しみに飲み込まれないよう
自分の意識をしっかり保ちながら
鎮座する魔獣を見据えた
睨み返すなど到底不可能だったが、少なくとも目を逸らすことだけはしなかった
(今は絶対無理。でも、いつか、必ず)
臆した分、立ち止まった分だけ成長は遅れていく
そんなことは許されない


負けたら死ぬのだ

自分以外の

全ての人間が


603名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 17:31:28 ID:8+O/JEjc
3話終わりす
604名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 17:38:53 ID:F/R8nmj4
ARMSの人 乙
605名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 17:53:53 ID:Ui+7bYk8
乙!
606名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 17:58:34 ID:77omkAbF
AEMSの人GJ!
あとタイトルはつけた方がいいと思うよ。
607ウィザーズ・ルーン:2007/10/07(日) 18:07:43 ID:gQV9Usfy
投下準備できました

ウィザブレの新刊読んでたら遅くなっちゃった。
608名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 18:09:41 ID:L+E3ffsQ
きゃむん!
609名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 18:10:15 ID:JpgwqdUr
ARMSの人のまとめが無かった(´・ω・`)

そして支援
610ウィザーズ・ルーン:2007/10/07(日) 18:10:17 ID:gQV9Usfy
 二つの月が照らす塔にひっそりと佇むのは、ローブでその身を覆い隠した人物。
 だがいくらローブを纏っていても、わずかにこぼれる長髪や、女性特有の魅惑的な肢体の輪郭までは隠せない。
 女性の正体。それは昨今巷を騒がせている、「土くれのフーケ」であった。
 月明かりだけを頼りに、宝物庫の扉を手探りで調べるのだが、そこから伝わることは、フーケにとってわずらわしいものばかり。
「ええい。なんて数の固定化だよ。馬鹿みたいに厚みがあるし、これじゃ、ちょっとやそっとじゃ壊しようがないじゃないか」
 ええい、とぼやきながら、フーケは苛立ち混じりに扉を蹴とばした。


 当初はこの塔にある「隠れ身の衣」を盗み出す算段だったのだが、春の使い魔召喚でミス・ヴァリエールが船を召喚したことを知った時、考えが変わった。
 フーケはいっそのことだ、このさい船をいただいてしまおうと考えた。
 船丸ごとは無理でも、船に積んであるお宝ぐらいは盗めるだろう。フーケはそう考えていたのだが。
 忌々しいことに、常にあのヘイズという使い魔が船にいるため、どうしても手が出せないのだった。
 寝泊りが船内なのは言うに及ばず、日中は船内にこもりっきりでよく分からない作業に没頭し、その合間に入れ替わり立ち代りする生徒の相談を聞く。
 一日のうちでヘイズが船から出るのは、食事時と厨房の手伝いの時ぐらいなのである。
 食事時はフーケも食事を取らざるを得ないし、厨房の手伝いをしている時は召使が船内を掃除をしに来る。
 もはやフーケが盗みに入るのを、完全に見越してるんじゃないかとおもうほどの、完璧な布陣だった。
 そしてこれがとどめとなるのだが、生徒の一人が話しているのを盗み聞きしていたところ、あの船は動力部の調子が悪く、飛行できない状態にあるという。
611ウィザーズ・ルーン:2007/10/07(日) 18:11:21 ID:gQV9Usfy
 そして当初の目的どおり、宝物庫から「隠れ身の衣」を盗もうと、忍び込む算段をしていたのだが。
「こんなに頑丈じゃ、私のゴーレムでも壊すのは、かなり無理しないとダメだね……」
 フーケは憎々しげに壁を睨みつけた。
 この頑丈な壁さえなんとかすれば、お宝はすぐそこなのに……。
「かといって隠れ身の衣をあきらめるわけにはいかないね」
 歯がゆさをかみ締めながらも、フーケはどうやってお宝をいただくか、腕組みをしながら思考を巡らせ始めた。
 トリステイン中を恐怖に陥れている大怪盗「土くれのフーケ」が、この程度の障害でお宝をあきらめるわけにはいかない。
 これから手に入れるお宝を想像し、フーケは我知らず唇をゆがめていた。



 Hunter Pigeonの操縦室はまたもや大所帯となっていた。
 昼間の面子からギーシュとモンモランシーが抜け、代わりにルイズとサイトが入った形である。
 そしてルイズは城下町であった傭兵相手の大立ち回りを、得意げに語り聞かせていた。
 そこでサイトは買ってもらったばかりの剣を抜いて見せたのだが、
「なんていうか……言っちゃ何だがソレ、ボロボロだな……」
「ねえ、ルイズ。もうちょっと見栄えのいいのはなかったの?」
「ルイズ様の気持ちは痛いほど理解できます。ヘイズは働いても報酬が値引きされるのは当たり前。ただ働きもざらで、ひどい時には借金までこさえました。
いつも変わらず自転車操業でやっているため、ヘイズの家計は常に火の車でして、艦の装備を買うにも困る有様です。
ですから、ルイズ様が剣の購入で節約するのも、よく分かります」
 次々と強烈なツッコミに打ち抜かれ、サイトは崩れ落ちて泣いた。
612ウィザーズ・ルーン:2007/10/07(日) 18:12:50 ID:gQV9Usfy
 話も盛り上がったところで自信満々に抜いて見せた剣に対して、ヘイズとキュルケの哀れみのこもった感想、そしてとどめにハリーの神妙な同情である。
 それはそれは見事な連携であった。
「おいおい、オレのことをそこまで悪く言うかよ。見ろよ相棒の哀れな姿を。こりゃあ相当落ち込んじまってるよ」
「うおっ! 剣がしゃべりやがった!?」
 いきなりカタカタと動きながら、しゃべりだした剣を前に、ヘイズはずざざざっとその身を引いた。
「あら、インテリジェンス・ソードじゃないの」
「かなり希少」
 いきなり剣がしゃべりだすというヘイズのいた世界では絶対ありえない事態に、キュルケとタバサが補足をする。
 この世界は本当になんでもありだな、と呟くヘイズ。
 ハリーも顔の表示されたウィンドウをうなずくように、
「珍しいですね。世界を渡りましたが、剣がしゃべるのを見るのは私も初めての経験です」
 とマンガ顔を折りたたんで上下しながら答える。
 ハリーの発言を聞くが早いか、
「それをオメが言うかね。俺からすりゃ船がしゃべったり、顔を表示したりするほうが非常識に思えるがね」
 とデルフのツッコミが入る。
 確かにハルケギニアで、意思を持って言葉を発する船なんていうものは、どこにも存在しないのだった。


 話が終わり、武器屋で出会った少年のことをヘイズに尋ねられると、「あ忘れてた」と、少年にもらった手紙をいそいそと取り出した。
「こいつは確かに錬の字だな。なになに、エドワード・ザインと世界樹の地で合流? なんのこった?」
 エドワード・ザインと世界中の種と言えば、 元の世界で錬と出会うきっかけになった世界樹事件を思い出す。
 文章から察するに合流ポイントは、始めてエドワード・ザインと出会ったシティ・チューリヒ跡地近郊のプラントか、
世界樹の種を育てていたシティロンドン郊外のプラントあたりのことだろうが、ハルケギニアはもといた世界とは異なる世界である。
 ロンドンもチューリヒも存在しないはずなのだ。
 となれば錬との合流ポイントは、どこになるのやら。
 ハルケギニアではヘイズと錬にしか分からない暗号だが、それゆえにヘイズに暗号の意味が解読できないと合流ポイントの割り出しようがない。
613名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 18:14:10 ID:j/15WD+N
支援
614名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 18:14:14 ID:+zOiVAPH
>>588
竹取物語級の難題キターッ!

615ウィザーズ・ルーン:2007/10/07(日) 18:14:19 ID:gQV9Usfy

「あ、それは多分ラ・ロシェールのことじゃないかしら。あそこには世界樹っていう港が存在するわ」
 ヘイズが疑問に頭をひねっていると、ルイズが助け舟を出してくれた。
 聞けば錬はこの世界でも便利屋をやっていたと言うし、この世界の情勢もある程度調べが付いているのかもしれない。
 だとすれば、そのラ・ロシェールが合流ポイントである可能性もないとは言い切れない。
 ラ・ロシェールに行くには、やはりHunter Pigeonの調整がいよいよもって急務になってきた。
 さてどうしたものかな、とヘイズが考え始めたそのときだ。
 雷でも落下したような轟音と振動が、Hunter Pigeonの外から響いてきた。

「何事だ、ハリー!?」
「スキャン終了。画像、メインモニターに出します」
 阿吽の呼吸で外の様子が、操縦席のメインモニターに映し出された。
「な、なにこれ……」
 モニターに映し出された映像を見て、キュルケは驚きを隠せないように言った。
 そこには30メートルを越えようかというゴーレムが、塔の外壁を殴りつけている姿が映し出されていた。
616名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 18:15:48 ID:F/R8nmj4
全身全霊で支援
617ウィザーズ・ルーン:2007/10/07(日) 18:16:29 ID:gQV9Usfy
 あれこれと考えた結果、フーケの取った手段は「力押し」だった。
 「固定化」の魔法と塔自体の厚みで、まさに鉄壁の守りだったのだが、それでもわずかに歪みの入った箇所があった。
 先日の決闘騒ぎの折り、ミス・ヴァリエールの使い魔が撃った銃の流れ弾が、たまたま塔の壁に傷をつけていたのだ。
 いかに強固な建築物でも、わずかながらでも綻びがあれば、打ち崩すことは容易い。土のトライアングルたるフーケには、そのことがよく分かっている。
 フーケは慌てふためいて出てきたヘイズたちを睥睨し、
「さーて、ガキ共が出てきた。けど、生徒風情が束になったところで私の土ゴーレムは止められないね」
 圧倒的な質量。それこそがフーケのゴーレムの特徴であり、そして中位以下のメイジに対する圧倒的アドバンテージ。
 単純に大きいということは、優れた城塞破壊能力だけを意味しない。巨大であると言うことは、それだけで大きな防御能力を持つ。
 蜂の一刺しでは巨大な竜の鱗を貫くことはできない。
 つまり、完全にゴーレムを破壊する為に必要な、強力な魔法とそれを扱う精神力。どちらも学院の一生徒には、持ち得ないものである。
 それを理解しフーケは嗤う。
「さあ、止められるものなら、止めてみるんだね。けど……わたしのゴーレムはそう簡単には崩せないよ」


 Hunter Pigeonの船外に出たヘイズたちが見たものは、土ゴーレムが塔の外壁を破壊し、何者かが宝物庫に侵入するところだった。
「ああっ! 宝物庫が! 何かを盗まれる前に、あいつを早く捕まえなきゃ!」
 侵入者の姿にルイズが叫び声を挙げるが、
「ゴーレムが先決」
「タバサの言うとおりね。背後から殴り倒されるのは御免だもの」
「決まりだな。まずはあのゴーレムから落とすぜ。ここは教師に任せてオレ達は退却ってのがもっともな判断だろうが、
トライアングルクラスが二人に、規格外も二人だ。この人数ならやってやれねえことはねえ。
あれは恐らく足止めとオトリを兼ねてるはずだから、速攻で破壊する必要があるな。
行くぜサイト、俺たちが前衛だ」
 ここで叩くべきはゴーレム。
 ルイズたちは頷くと、こちらにその拳を向け始めたゴーレムに、雨あられと魔法を解き放った。
618名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 18:16:30 ID:LY9zxTpi
そういえば今月が6下巻出るんだっけ支援
619名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 18:17:45 ID:j/15WD+N
僕のいるところではまだ発売してない支援
620ウィザーズ・ルーン:2007/10/07(日) 18:17:49 ID:gQV9Usfy
 ――でけえな。ウィリアム・シェイクスピアと比べりゃ、さすがに小さいけどよ。
 ヘイズはひとりごちながら、ゴーレムに向けて片手をオーケストラの指揮者のように構え、地を這うように駆け出した。
(I-ブレイン起動。稼働率を三十パーセントに設定)

 ヘイズのI-ブレインには、通常備わっているはずの一切の戦闘用プログラムが存在しない。
 I-ブレインの九割以上を占めるほどに肥大化した演算素子は、その代償に出力端子や主記憶領域といった魔法の使用に必要な一切合財を枯渇させてしまった。
 そのためヘイズは魔法士でありながら、全く魔法が使えない。そのかわりひとつだけヘイズが持っているものがある。
 ヘイズがもつ唯一の能力「予測演算」
 I-ブレインの九割以上を占める演算素子の演算力を用いて、ヘイズはほとんど予知に近い短期未来予測を可能とする。

「うおっ! さすがに直撃したら死ぬな、こりゃ」
 I-ブレインの吐き出すアラートに従って、その身を翻しゴーレムの攻撃を避ける。
(データ取得。誤差修正)
 今のはかなり際どかった。塔の壁を破壊するときの速度を基準にしていたが、攻撃時の速度は見た目に反して速い。
 速度の誤差を修正。これで次からはより正確な予測・回避が可能になる。
 爆発。炎球。氷柱。次々と叩き込まれる魔法に、ゴーレムはわずかに動きを止めるのみ。
「このやろう!」
 神速の動きでゴーレムに肉薄したサイトが、その手に持ったデルフリンガーを、魔法が被弾した箇所に振り下ろす。
 がこの攻撃も、ゴーレムの手首に切れ込みを作るにとどまった。
621名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 18:18:55 ID:j/15WD+N
支援
622ウィザーズ・ルーン:2007/10/07(日) 18:19:25 ID:gQV9Usfy
(予測演算成功。「破砕の領域」展開準備完了)
 駄目押しとばかりに、ヘイズが眼前に掲げた指を打ち鳴らす。
 予測演算により、つぶさに動きをトレースされた空気分子が、ヘイズが打ち鳴らした音に従って、空気中にある論理回路を作り出す。
 空気分子によって作り出された論理回路は、騎士の情報解体と同じ効果をもたらし、切れ込みの入ったゴーレムの手首を抉るように解体する。
 抉られた箇所だけが砂のように崩壊し、自重に耐えられなくなったゴーレムの手が、重力に従って落下した。
「すごい……これがヘイズの魔法……」
 キュルケが感嘆のため息をもらした。ルイズも同意するように、驚いた表情を見せている。
「まあ、厳密には魔法じゃねえんだけどな。……なに!?」
 ヘイズの視線の先では、先ほど破壊したはずのゴーレムの腕が、時計を巻き戻したように再生していた。
 ギーシュのワルキューレは一度破壊すれば再生しなかったため、こいつもサイズが大きいだけで同じだろうと高をくくっていた。
「再生能力付きかよ。これじゃあどうやっても倒せるわけないじゃないか!」
 サイトが吐き捨てるように叫んだ。チートだ、などと言いながらゴーレムの攻撃を防いでいる。
「再生はその場凌ぎ。一撃で破壊すれば、再度生成するのは恐らく不可能」
 タバサが打開策を口にするが、
「でもどうしろっていうのよ! そんな魔法スクウェアクラスでもないと使えっこないじゃない!」
 半狂乱に叫ぶルイズ。
 ――撃てるのは一発限り。しかも三時間は素で戦う羽目になるが、使うしかないか……!
 切り札を使うべきか否かヘイズが逡巡していると、ゴーレムは現れたときと同様に、前触れなくその身を崩壊させていった。
「な、何事なの?」
「……逃げられた」
 キュルケの疑問に、タバサが無表情で答えた。

 後になって駆けつけると、宝物庫の壁には文字が刻まれており、こう記してあった。
「隠れ身の衣、確かに領収いたしました。土くれのフーケ」
623名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 18:21:14 ID:j/15WD+N
支援
624ウィザーズ・ルーン:2007/10/07(日) 18:22:19 ID:gQV9Usfy
投下終了です。
フーケはもうスクウェアでいいと思います。ついでにコッパゲもスクウェアでいいと思います。
タバサのウィンディ・アイシクルでも、キュルケのファイア・ボールでも落とせないって、ゴーレムはどんだけ強いんですか。

最後に一言だけ。
クレアは僕のです、譲りません。
625名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 18:22:23 ID:j/15WD+N
支援
626名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 18:32:45 ID:LY9zxTpi
>>624
乙!
人に使うとショック死しかねない破砕の領域は
戦闘力としては十二分だなぁ

クレアは良いがフィアは譲れんぞ!
627名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 19:05:41 ID:ESinIi6H
遅くなりましたがガンパレードの人GJ!

なんというか、貴方の書くものは作中のキャラクターへの愛に満ちあふれてると思いました。
ガリア王の台詞じゃありませんが、幾度生まれ変わっても真似ができません。

これからも楽しみにさせていただきます。
628名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 19:21:10 ID:2lnyaiiR
流れぶった切ってちょっと聞きたいのだが、
今ブレイクエイジで真面目にプロット立てているんだが、ちい姉様の病気が病は気から的な理由で多少マシな健康状態になったりしたらまずいかな?
629名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 19:31:55 ID:+zOiVAPH
>>628
私は一向に構わん!

むしろ良識的な部類かと…
630名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 19:35:36 ID:vhZH/O45
>>628
ちい姉様が気合いで「カトレア復活ッ! カトレア復活ッ! カトレア復活ッ!」されても俺は驚かないから安心しろ
631名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 19:38:20 ID:2lnyaiiR
>>629 >>630
サンクス。ありがとう。
これで姉さま達が謎の人物VPファイターとVPエースになれるぜ!
632名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 19:42:02 ID:bNjl0CBa
>>631
ちょw
633名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 19:47:08 ID:6jS9L/0N
>>631
マテコラ(笑
634名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 19:47:53 ID:HZUipDI2
ゼロのOblivion

oblivionゲートを通り抜けたと思ったら、魔術師の格好をした娘が
なにやらわめきながら襲ってきたので思わず反射的にfire ballを三連
火達磨になって周りのガキがマーダーマーダーとうるさいのでfire stormで
みな吹っ飛ばしてやった。

十人ほど黒焼きにした所で装備を漁る
「なんだ、こいつら服と杖しか持ってないじゃないか、しけてんなー」
いらないゴミをその辺に捨てると建物に入った
警備する衛兵が居なかったので取り合えず食料を漁っていると
包丁を持ったコックが襲ってきたので丸焼きにしてやった

そして建物の敷地を出ると見たことも無い世界が広がっていた。

Quest update:水の指輪を手に入れろ
635名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 19:47:57 ID:81Ypxj9R
>>628
ブレイクエイジ知らないで意見して申し訳ないけど、
クロス相手の雰囲気で許される場合と許されない場合があると思う。
極端な場合ブラックジャックや医龍から召喚された時に気合で回復されたら困るけど、
Gガンダムや星くず英雄伝から召喚なら許されるとか。
無銘世界観なら気力を取り戻す時に勇気と誇りと理屈が付いたらなんでも出来そうだし、
ドラゴンランスやエルリックなら妄執さえあれば血を吐きながらでも元気に戦える。
リアル(ロボット)系かスーパー、あるいは熱血(ロボット)系かの違いとゆーか。

ぶっちゃけ、ゼロ魔自体の世界観は、気力が全てを覆せる世界じゃ無いから。
636名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 19:48:04 ID:+zOiVAPH
>>630
ガングロ中国人を召喚とな?

薬膳料理も作れるしね…
(しかも旨い)
637名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 19:48:05 ID:YauhQ9d2
>>628
うつ病だったら水の秘薬じゃ治らんだろうしな。
638名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 19:55:25 ID:d310CEsY
ゼロ魔世界で気合で場をひっくり返せるのはいないということか・・・
一応気合や思いで性能が上がる虚無とガンダールヴもある程度までしかパワーアップしないしな
でもわりとお気楽でファジーな世界観だから、ある日突然気合でひっくり返されてもご都合主義万歳でも別に驚かんがね
639名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 19:56:00 ID:2lnyaiiR
>>635
とりあえずその辺は考えた上で、ブレイクエイジ的にはどこか「優しい」ところがあってもいいかなと聞くだけ機構と思ったんだ。
意見ありがとう。
もう一度プロットも見直してみるよ。


>>637
ちい姉様がうつ病って凄い嫌だww
640名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 19:56:48 ID:HZUipDI2
ゼロのOblivion

街道ぞいに歩いていると少し道から離れた所にキャンプできそうな場所があった
取り合えず今日は寝て明日また考えよう

そして朝になると、目の前にエルフの男が立っていた。
641名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 19:58:19 ID:HIJn0+MA
でもブレイクエイジって、とことん病人にはシビアな世界だけどなあ…
642名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 20:00:36 ID:2lnyaiiR
>>641
いや、分かる、分かるんだけどでもなんか非常に、なんかわかるだろ?




っていうかなんでこんなに知っている奴が要るんだw
643名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 20:04:44 ID:DyR5NA/e
>>642
ブレイクエイジはマイナーメジャーってやつなんだよ。
644名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 20:06:55 ID:tr1mmJxY
Oblivionか、ちっとまとめてくれると面白いかもしんない、
箱○修理に出したころに出て時期逃して買わなかったなぁw
645名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 20:07:31 ID:um+xQYQX
>>637
山岡「じゃあ死ねよ」
646名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 20:07:46 ID:+BsMmir9
女の子と一緒にキャッキャウフフしてるといつの間にか片腕を失って夢を断たれる。
そんな非情な月世界(ムーンレイカー)。
フゥーハハハハー、ホンにブレイクエイジは地獄だぜー。
 
 
あれだ、類は友を呼ぶ。
647名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 20:15:19 ID:HZUipDI2
ゼロのOblivion

「お前には見所がある。わがレコンキスタに入らないか?」
「・・・」
「この国は腐っている 中略 まずはウェールズ皇子を殺してこい」
「・・・」
「それではさらばだ」

Mythic Dawnの奴らに振り回されたのを思い出し
得意のfire ballでエルフを黒焼きにして
装備を漁る
結構良い装備を持っていたので付け替え
指輪と祈祷書を手に入れる
使えないので近所のアイテム屋に持っていったら10000goldで引き取るというので店主を打ち殺し
口を封じる
どう考えても普通じゃない
店の商品から装備用と換金用に拝借すると王都に向かった
レコンキスタがどういう組織なのかわからんが情報を集めるのに
こんな田舎でうろうろしている場合じゃない

盗んだ馬で走り出す十五の夜
648名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 20:33:13 ID:8B6R8SQ6
乙です
ある意味、行動がリアルな主人公だな〜
649名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 20:34:50 ID:L+E3ffsQ
まとめて投下しなよ。
つーか投下予告もなしにやってんのか。

はあ…
650名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 20:39:11 ID:OA6kpSZw
エロ、グロ、バイオレンスがある場合は避難所で。
651名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 20:39:43 ID:HZUipDI2
ゼロのOblivion

種族 ヒューマン
年齢 十五
性別 男

なんやかやで王都に入ろうとすると門番がマーダーマーダーと連呼しながら襲ってきたので
川に飛び込んで逃げ出す それでも泳いで追ってくる門番 気合入りすぎ

やはり近くの厩舎から馬を盗んで逃げ出した俺様

仕方ないので各地を放浪しながら、その辺の家の野菜やら野草やらキノコやら
ねずみの死肉やらでポーションを作り売って生活を続ける事数日
貴族がポーションを買いたいとやってきた

毒薬が欲しいというので高値で売りつけた
652名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 20:43:22 ID:9piZz6Vk
>>647
テンプレと空気読んでから出直してこい
653名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 20:50:10 ID:onznfABl
う、うろたえるんじゃない!スルーが使える住人はうろたえない!!
654名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 20:52:23 ID:KbEbf7T6
まだあわてあわあわわわわ
655名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 20:53:36 ID:4YcB4e0W
なぁに、かえって免疫力がつく。
656名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 20:53:39 ID:6CGgx4oY
>>653
先生!うろたえない見本を!>お約束突っ込み

それにしても、うわ。
作品の評価とかはともかく、ルールは守ってくれないかなあ。
657名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 20:54:02 ID:zOTHuW4V
>>653
使い魔SSスレ住人のスルーは世界イチィ――!
658名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 20:57:55 ID:mZeGymJ6
>>524
核爆弾は整備しないと数年で使えなくなります。
時間がたつにつれ中のウランやプルトニウムが鉛に変わっていき純度が落ちるので60年もたてばぜったいに不発。
あと、ウランは原発みたいに何tもあるわけじゃないので自然に反応してる程度なら、防護壁は要らない。
659名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 20:58:45 ID:3UVavpZd
この愉快な流れを変える為に投下予告!
よろしいかー?
660名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 20:59:27 ID:Tw11Q6dZ
一瞬姉妹スレに来たかと思いました
661名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 20:59:57 ID:vYhRYKpw
>>659
ゴッドスピード!
662名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 21:00:48 ID:mLcX/gvb
歩道が開いているではないか
行け!
663名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 21:01:39 ID:1NX86cnO
行け>>659!スレ住人10億貴様に賭けた!
664名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 21:01:44 ID:k7iXQSlS
支援します
665名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 21:01:51 ID:UKtwegD6
支援支援

>>524
スプリガンに三発目に東京に落とされるはずだった原爆サンダーボルトってのが出てたな
666ゼロの守護者:2007/10/07(日) 21:02:51 ID:3UVavpZd
 視界を覆う白煙が晴れた時、ルイズは思わず自分の目を疑った。
 もう何回唱えたか解らぬ召喚魔法。
 爆発が起こり、今回も失敗だったかと覚悟したが、今彼女の目の前には巨大な獣がこちらを見ている。
「ゼロのルイズが成功した?」
「そんな馬鹿な!」
「そもそも、あれ、なんて動物だ?」
 白い体毛に黒い縞。
 口から伸びる長い牙。
 殆どの生徒たちは知らなかったが、ルイズはそれに見覚えがあった。
 密林に住むという肉食獣、虎。
 姉であるカトレアが飼っている動物たちの一つである。
 だが目の前のそれはルイズが知っているそれよりも一回り大きく、体毛の色も違う。牙もあんなに大きくはなかった。 
 亜種なのかと目を凝らし虎の背に誰かいるのに気がついた。
 黒い服、何かの制服だろうか?
 どうやら怪我をしているらしく、血が白い毛を伝って地面に滴り落ちている。
 思わず一歩を踏み出したルイズの足が止まる。
 虎がこちらを向いて威嚇するように喉を鳴らした。
 よくよく見れば毛皮と背の人物の血で解り難いが、虎自体も怪我をしている。おそらく警戒しているのだろう。
 ルイズは一度唾を飲み込むと、姉から教えられた動物との付き合い方を思い出した。
 杖を置き、両手を上げると、虎の目を覗き込んだまま一歩近づく。
 虎のうなりは大きくなるが、ルイズは意思の力で下がろうとする足を引きとめた。
「ミス・ヴァリエール、危険です!」
「いえ、大丈夫です、先生。これはわたしの使い魔ですから」
 目を逸らさずに言い返す。
 虎か人か、どちらが使い魔にせよ、ルイズはここで引く気はなかった。
 なにしろ自分の呼び声に答えてくれたのだ。ここで放置して、使い魔が死んだとしたら、次に答えてくれるモノがいるかどうかすら怪しい。この機会を逃がすつもりはなかった。
 一歩、また一歩と虎に近づく。
 周囲の生徒の誰かがごくりと喉を鳴らした。
 ついに虎に到達し、軽くその喉を撫でてやる。
「危害を加えるつもりはないわ。ただあなたと、その背中の人を手当てしたいだけなの。許してもらえる?」
 虎は訝しげに首を傾げた。
 目の前の少女の言葉は今まで聞いたこともない響きのものだったからだ。
 だが敵意は感じない。故に虎は自らに出来る方法で親愛の情を表現した。
 すなわち舌を出してルイズの頬を舐め上げたのである。
「許してくれるのね?」
 ふたたび舐められる。
 それを許諾と見て取ったルイズは、コルベールに向かって声を上げた。
「先生! 医務室と水のメイジの準備をお願いします!」
667名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 21:03:07 ID:onznfABl
>>659
「支援する」「執筆も進める」両方しなきゃいけないのが書き手のつらいところだ。
覚悟はいいか?俺は出来てる。
668名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 21:04:51 ID:vYhRYKpw
剣牙虎なのか支援
669名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 21:05:09 ID:+BsMmir9
ちあや 支援
670名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 21:06:33 ID:j/15WD+N
支援
671名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 21:06:46 ID:ib13FfK+
支援

>>663
バルバァァァァスッ!!
672ゼロの守護者:2007/10/07(日) 21:06:57 ID:3UVavpZd
 男が目覚めた時、まずあったのは困惑だった。
 ここはいったいどこか。
 寝台から身を起こさずに薄目を開けて周囲を観察する。建物の形式からすれば<帝国>領に思えるが、最後にいた戦場近くにこのような施設があったなどという報告は受けてはいない。
 誰もいないことを確認して身体を起こし、自分自身を見下ろして眉を顰める。
 記憶ではそこかしこに傷を受けた筈だが、その痛みが少ない、いや、直りかけなのか。してみると僕が捕虜になってからだいぶ時間が経っているのか。
 よろしい、どうやら僕を捕らえた人物は<大協約>の遵守に積極的な人物のようだ。わざわざ包帯を巻いて手当てしてくれているのだから間違いなかろう。
 扉が開き、黒髪の少女が姿を見せたのはその時だった。手には黒い服。彼の軍服だった。
 北領でユーリアの捕虜だった時に見た侍女の姿をしている。やはりここは<帝国>領か、その支配地と見て間違いない。すると少女は北領人か。
 それはまずいな。男は思った。自身が行った焦土作戦で北領人に恨まれていることには自信がある。
 内地への引き上げの際はただ守り抜けなかったことへの怒りのみだったであろうが、あれから数年経った今では男が<帝国>の補給を滞らせる為だけに村を焼き、井戸に毒を投げ込んだことは万民が知っている。
 ところが、彼の思いとは裏腹に少女の目に怒りや憎悪の色は無かった。
 驚いてはいたものの、軍服を傍の机に置くと嬉しそうに男に話しかける。
 彼は首を傾げた。その少女の言葉が理解できなかったからだ。
「すまないが、きみ。<皇国>語か<帝国>語で話してはくれないだろうか」
 少女は困ったように笑い、こちらに何かを押すような身振りをした。どうやら待っていて欲しいと言いたいらしい。
 同意した証に頷くと、彼女は扉から出て行った。
 息をつくと立ち上がり、机に置かれた軍服を手に取る。
 彼は軍人であり、将校であった。
 将校は何時いかなる時でも慌てず、兵士の模範としてあらねばならない。
 ましてや敵の手に落ちた今となっては尚更だ。もう少し見栄を張る必要があった。
 軍服は洗濯され、破れや穴も丁寧に繕われている。
 ありがたいことだと思いつつも首を傾げた。
 傷の具合から考えるに自分が捕虜になってから時間が経っているに違いない。
 なのに少女が軍服を持ってきたのはつい今さっきである。
 それまで放置していたのもおかしな話だ。
 とまれ、そこでそのような些細なことを気にしてもはじまらない。
 軍服を着用して寝台に腰を下ろし、再び扉が開かれるのを待つ。
 欲を言えば剣や銃が欲しいが、捕虜のみではそれは適うまい。
 さて、はたして鬼が出るか蛇が出るか。
 ややあって開いた扉から現れたのはそのどちらでもなかった。
 先ほどの侍女と、見たことのないような桃色の髪の少女。
 それにマントを羽織った頭の薄い男である。
 規則正しいその歩調と伸びた背筋に、どうやら彼が自分を捕らえた軍人なのかと推測する。
 ならばそれに相応しい態度を取らねばなるまい。
 踵を打ち鳴らし、これぞ軍人と言わんばかりの態度で敬礼する。
「<皇国>近衛総軍近衛嚮導聯隊指揮官、新城直衛少将であります。貴官の勇気と道義に敬意を表します」
673名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 21:08:31 ID:NCHINw8f
>>670先生…、メ欄、変です…支援
674名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 21:08:51 ID:+Bey0KVf
御本尊か
西田かと思った
675ゼロの守護者:2007/10/07(日) 21:09:07 ID:3UVavpZd
今回はここまでです。
 
支援ありがとうございましたー
676名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 21:10:48 ID:vYhRYKpw
>>675
ちょwww
「今回は」!? 続き期待してますw

ガンパレで鳥骨さんのキャラがそうだったから多分好きなんだろうなとは思ってたぜー!
677名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 21:14:00 ID:VAUiQjWs
GJ!
コミック版が終了した今、闇夜に明かりを見つけた気分です。
678名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 21:14:19 ID:NCHINw8f
乙ですってか続くのか!複数連載になりますな、頑張って下せえ
しかし、ちぃ姉さまは虎まで飼ってるのかw
679名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 21:15:55 ID:8B6R8SQ6
新城直衛 少将?
       ・・・・
680名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 21:16:46 ID:vYhRYKpw
>>677
小説から漫画化された中で、稀に見る名作だったのにねえ…。
681ゼロの守護者:2007/10/07(日) 21:19:16 ID:3UVavpZd
何故すぐにばれたんだorz


そして少将なのは、9巻より以後の時点で召喚されてるからです。
682名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 21:24:04 ID:NCHINw8f
>>681
日を改めるべきでしたな、IDが変わっておりませぬ。
ってか小説版準拠なんだ、道理で違和感を覚える。
683名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 21:24:27 ID:mLcX/gvb
GJ!
来る人が来たな・・・
・・・キュルケは首締められるの〜?
684名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 21:26:10 ID:skIGcwAw
>>681
投下乙です。


志村ーっ! ID! ID!
685名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 21:29:25 ID:1NX86cnO
>>681
実にGJ!で続きが気になって仕方ないですな
しかしこの場合いったいどちらを使い魔にするのか……
686名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 21:35:27 ID:Z9+Gfcol
虎の方を使い魔にしてしまうと言葉が通じないままになる気がするぜ
687名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 21:45:29 ID:qeyJAca9
>>681
投下乙です。


…枯れ木も山のにぎわいというだろう。
このテのスレには、>>647>>651の様なKY的カキコの一つや二つ、アクセサリーだと思おうや。
688名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 21:46:01 ID:0VhTee/5
舞-HiMEの舞衣かドラゴンボールのトランクスを召喚、誰かしてくれないかのぅ。
689名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 21:48:05 ID:DjPCLMUK
>>688
そんなの簡単さ、君がSSを書けばいい。
690名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 21:49:59 ID:gCsHeEQU
ふとギーシュにゴルェンダァ!をぶちこむヘルカイザーを幻視した
でも実際にやったらギーシュが消し飛びそうで困る
691名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 21:50:15 ID:mLcX/gvb
>>688
       、--‐冖'⌒ ̄ ̄`ー-、
     /⌒`         三ミヽー-ヘ,_
   __,{ ;;,,             ミミ   i ´Z,
   ゝ   ''〃//,,,      ,,..`ミミ、_ノリ}j; f彡
  _)        〃///, ,;彡'rffッ、ィ彡'ノ从iノ彡
  >';;,,       ノ丿川j !川|;  :.`7ラ公 '>了
 _く彡川f゙ノ'ノノ ノ_ノノノイシノ| }.: '〈八ミ、、;.)
  ヽ.:.:.:.:.:.;=、彡/‐-ニ''_ー<、{_,ノ -一ヾ`~;.;.;)
  く .:.:.:.:.:!ハ.Yイ  ぇ'无テ,`ヽ}}}ィt于 `|ィ"~  
   ):.:.:.:.:|.Y }: :!    `二´/' ; |丶ニ  ノノ    
    ) :.: ト、リ: :!ヾ:、   丶 ; | ゙  イ:}    逆に考えるんだ
   { .:.: l {: : }  `    ,.__(__,}   /ノ
    ヽ !  `'゙!       ,.,,.`三'゙、,_  /´   「誰も召喚していないなら自分が書くチャンス」だと
    ,/´{  ミ l    /゙,:-…-〜、 ) |
  ,r{   \ ミ  \   `' '≡≡' " ノ        考えるんだ
__ノ  ヽ   \  ヽ\    彡  ,イ_
      \   \ ヽ 丶.     ノ!|ヽ`ヽ、
         \   \ヽ `¨¨¨¨´/ |l ト、 `'ー-、__
            \  `'ー-、  // /:.:.}       `'ー、_
          `、\   /⌒ヽ  /!:.:.|
          `、 \ /ヽLf___ハ/  {
              ′ / ! ヽ
692名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 21:53:07 ID:ChouFAci
>>688
願うな
書け
さすれば与えられん









だったっけ?
693名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 21:54:11 ID:IWDZzozL
書く者にしかわからん楽しさってのもあるんだろうな
694名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 21:59:46 ID:skIGcwAw
>>688
どうせ書くなら盛り上がりそうにないトランクスよりピラフ、シュウ、マイあたりを頼むよ。
ガジェットにもこと書かないし。
695名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 22:01:24 ID:ADzbYvfI
>>631
神降臨
でも病弱なままゲホゴホを血を吐きながらも何故かDP滅茶苦茶強いちい姉様も有りだと俺は思うぜ
もちろん血を吐くだけで体はなんともないんだがな
696名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 22:02:40 ID:IWDZzozL
血を吐くだけって……どんだけ造血機能過多な体なんだ
697名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 22:03:49 ID:HQcFmi/I
(あのキャラが)いないと不平を言うよりも、進んでSSを書きましょう。

ぶっちゃけ自分の妄想を形に出来るのは自分だけな訳だしな。
698名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 22:09:21 ID:0VhTee/5
ごめんね、私、受験生なの。
ちなみに世界史関連志望。現在の友達にはゼロ魔を読んでニヤリとできる仲間が他にいねぇ。
699名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 22:09:35 ID:bNjl0CBa
ふむ、投下はGJなのだがあのデブの作品からの召喚されたキャラの作品というと
このスレに新作が一切投下されなくなる呪いがかかりそうだw
700名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 22:13:22 ID:UKtwegD6
>>696
つ ハイアット
701夜明け ◆94YaowOotw :2007/10/07(日) 23:14:16 ID:byA63jri
よし、復活! そしてごく短いですが投下予告よろしいですか? ありませんか?
702名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 23:15:23 ID:uZ65amum
進路クリア 発進どうぞ
703名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 23:15:31 ID:ajYMpfMj
鯖が復旧したみたいなので。
自分が以前に避難所で練習投下したネタを手直ししてここで投下したいのですがいいかな?
704名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 23:15:36 ID:+BsMmir9
ダヴァイッ!
705名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 23:16:42 ID:NanYHxHg
お、復活したか

支援準備!
706名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 23:17:08 ID:ajYMpfMj
では自分は夜明けさんの後で〜

支援
707夜明けの使い魔 1/2 ◆94YaowOotw :2007/10/07(日) 23:21:00 ID:byA63jri
「それにしても単騎で……おっと。二匹で我がアムルタートの軍勢に挑もうとはなかなかの英傑ではないか!」
 ガハハと笑いながら、赤い双頭の竜人がタバサの肩を叩く。
 叩かれて、タバサはテーブルに頭を打ち付けた。ごつん、といういい音が響く。
 それでも竜人は一向に意に介した様子もなく上機嫌に笑っているばかりだ。
 相変わらずの無表情で起き上がり、打ち付けた額をさする。
 それを見て、冥龍皇イルルヤンカシュと呼ばれた少女がくくと笑う。
「加減せよアジ・ダハーカ。ヒトは我らほど強靱ではないのだ」
「おお、そうでしたな」
「すまんな小娘」
 二つの顔が交互に言葉を発する。
 未経験の出来事ではあるが、タバサは表面上平然とそれを受け入れている。
 それに対してシルフィードの方は、すごいのね頭が二つなのねご飯が二倍食べられるのねきゅいきゅいと大はしゃぎだ。
「そんなパワー馬鹿には何を言っても無駄ですよイルルヤンカシュ様ぁー」
 タバサの傍らに座っていた竜人が干した杯を卓上に叩きつけながら吼えた。
「これからは力ではなく技の時代ですよ技のぉー」
「何を言うかラハブ! 力こそパワー、パワーこそストレングスに決まっているだろう!」
「時代遅れもいいところですよアジ・ダハーカ殿ぉー。そんなことだから人間の使う巨大ロボに破れるのですよぉー」
「あれこそまさにパワーの権化であろうが!」
「ええい貴様、教育してやらねばならぬようだの……!」
「出来るものですかねぇー。生憎ながら私は日々強くなっていますよぉー」
「吼えたな? では見せてもらおうではないかその技とやらを!」
 互いに酒気に呑まれでもしているのか、白熱した二人は止まることなく売り言葉に買い言葉で一触即発の空気を帯び始めた。
 自らを挟んで行われるその口論に、タバサは小さく溜息を吐いた。
「ついて行けない」
「じゃのう。止めよ二人とも。今は宴じゃ。まずは思うさま腹に詰め込むが良い」
 そう、宴である。
 勇士が来たのじゃ宴をせよと言うイルルヤンカシュの言葉で急遽催されることになった酒宴だ。
 即座に集められるだけの龍将(幹部のようなものだろう、とタバサは認識した)を集めてのあまり大きくはないものではあるが。
 それでもあまり大きくもない民家で、大柄な竜人を含めて六人もが一つの卓につけば充分に賑やかなものだ。
 列席する者は竜人の姿かヒトの姿をしている。流石に竜の姿のままでは宴もできないということだろうか。
 それにならって、シルフィードもヒトの姿となって現在はイルルヤンカシュの傍らに侍らされている。
「ご心配なくイルルヤンカシュ様!」
「既にたらふく喰ろうております。今は腹ごなしに思うさま滾る血のままに暴れたい気分!」
「奇遇ですねぇー。私も丁度今このパワー馬鹿をぐうの音も出ないようにしてやりたいところなのですよぉー」
 言い置いて、ラハブとアジ・ダハーカの二人は席を立った。
 イルルヤンカシュが制止する暇もなく、風のように屋外に飛び出していく。
 それを見送って、仮面を付けたヒトが溜息を吐いた。
「まったく。あいつらは何をしているのか」
 仮面も含め総じて青い騎士甲冑を纏ったその姿に、タバサはどことなく親近感を覚えた。
「そう言うなハイゼンガー。新たな地に足を踏み入れて気分が高揚しているのであろう」
「……言うなればここは敵地。あまり派手に動くのは得策ではありません」
「我らアムルタートにそれは無理と言うものよ」
「確かに。……さて、私はそろそろ出向きます。先遣隊より報告のある時間ですから」
 言って、ハイゼンガーも部屋を発った。いや、それよりも。
 アムルタート。その言葉に、タバサはぴりりと舌を刺激するソースの掛かった肉を噛みしめるのをやめ、ごくりと嚥下した。
 いつの間にかこの宴が催されて参加していたが、そもそも何も情報は掴んでいない。
 彼らがなんなのか、何故ここにいるのか。
 どこか満足げに息を吐きながら、タバサはイルルヤンカシュを見据えた。
「アムルタート。それは、何?」
「む? おお、そうであった。この孤界の者はアムルタートについて知らぬのじゃな」
 失態じゃとばかりに頷いて、イルルヤンカシュはふむと呟いた。
708名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 23:21:38 ID:youK6pqf
夜明けさん来たッ!支援!
709名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 23:21:41 ID:+BsMmir9
支援
710夜明けの使い魔 2/2 ◆94YaowOotw :2007/10/07(日) 23:22:15 ID:byA63jri
「我らはアムルタート。誇り高き竜の一族よ」
 竜の一族。
 とはいえ、タバサの知識の中にはそんなものは存在しない。
 竜と言えば、確かに強力ではあるが人語を解するほどの知性もなく、ましてや人の姿を取ることなどできるはずもない。
 だが、だからと言って彼らが韻竜であるとも考えられない。
 韻竜は既に絶滅したと思われていたほどにその数を減じている。
 それがこれほどの軍勢を伴って表舞台に現れることがあるだろうか。
 ――否。
 言うなれば、アムルタートはありえない存在だ。
 ありえない、存在。
 その言葉に、タバサはふとグレズを思い出した。
 アレもまた、ありえない存在だった。やはり、何か繋がりがあるのだろうか。
「我らはかつてあらゆる孤界にあった竜の、最後の安住の地、アムルタートに棲まう。故にアムルタートと呼ばれておるのじゃ」
「孤界とは、なに?」
「孤界か。孤界はのう。……むう、何と言えば良いのじゃろ。
 ……例えばそう、魔法に満ちたオリジン。我ら竜のアムルタート。財を重んじるネフィリム。各々違う発展を遂げた違う世界なのじゃ」
 違った発展を遂げた世界とは、何だろうか。
 富嶽の人々は、メイジとは違った不思議な力を持っていた。あれがそうなのだろうか。
 その意味を咀嚼しているタバサを見やり、イルルヤンカシュはわずか、その顔に笑みを浮かべた。
「我らは様々な孤界を侵略する者よ。荒れ狂い、暴虐の限りを尽くし、その地の者と命を賭けた争いを繰り広げる」
 言って、イルルヤンカシュはタバサの反応を伺うようにその顔を覗き込んだ。
 その顔にはどこか悪戯っぽい表情が浮かび、タバサの反応を待ちわびているようにも見える。
 だが、タバサがそれにどう反応できると言うのだろうか。
 ただ一言、そうとだけ返すとイルルヤンカシュはむうと唸った。
「おぬしの世界を荒らすと言っておるのにそれだけか。中々に肝の据わった英雄よ!」
 言われて、タバサは内心で苦笑を浮かべた。英雄なんて、そんな立派なものではない。
「そしてわらわがそのアムルタートを統べる女王、冥龍皇イルルヤンカシュである。とは言え敢えてかしこまる必要などないぞ」
「そう」
「……あれ、驚かぬのかや?」
「さっきからいっぱい命令してるのね。見ていれば偉いのはなんとなく分かるの。きゅいきゅい」
 そうか、と少し肩を落として、イルルヤンカシュは残念そうにうなだれた。スカートから覗く尻尾もくたりと力ない。
 その様子を見て、隣に座っていたシルフィードがイルルヤンカシュの頭を撫でる。
「女王様なんてすごいのね。きゅい。びっくりなのね」
「そうかのう?」
 首を傾げながら、イルルヤンカシュはシルフィードの顔を見上げた。
 その視線を受けて、シルフィードも満面の笑みのままこくりと頷く。
 頷きで納得したのか、イルルヤンカシュは小さく息を吐いた。
「ならば良いのじゃ。うむ、わらわはアムルタートの女王ゆえに、そのことを忘れぬようにな」
 先ほどとは打って変わったその言葉に、タバサはこくりと頷く。
 わかったのねー、と理解しているとは思えない軽い口調で答えたシルフィードは、そのまま一つ疑問を口にした。
「結局どういう話だったのね?」
「彼女たちは、別の世界から来た」
「とは言うてもな、おぬしと我らに血のつながりが無いとは言わぬぞ」
 慈しむようにシルフィードの顔を撫で、イルルヤンカシュはその顔に優しい笑みを浮かべた。
711名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 23:23:18 ID:7svnaYrs
,
712夜明けの使い魔 3/2 ◆94YaowOotw :2007/10/07(日) 23:24:41 ID:byA63jri
と。極短いアムルタートの説明シーンでした。
続けて前回言っていたなぜなにハルケギニア侵略を……!
713名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 23:25:44 ID:youK6pqf
なぜなに支援
714なぜなにハルケギニア侵略 1/2 ◆94YaowOotw :2007/10/07(日) 23:26:13 ID:byA63jri
アジやん1「グハハ、人間ども! 夜明けの使い魔の元ネタを理解してもらうためのガイダンス、「なぜなにハルケギニア侵略」を開始するぞ!」
ジョゼフ「お相手はガリアの無能王ジョゼフと」
アジやん2「このアジ・ダハーカ様の右の頭でお送りだ!」
アジやん1「そしてこのアジ・ダハーカ様の左の頭が司会だ!」
ジョゼフ「三人いるように見えて実質二人ではないか」
アジやん1「そのようなせせこましいことを、アムルタートは気にせぬものだ。それではスタート!」

TRPGって、なに?

アジやん1「それでは今回の議題はTRPGについてだ」
ジョゼフ「TRPGとはなんだ?」
アジやん2「うむ。TRPGとは口プロレスで相手を打ち負かし雑魚どもを切り払い最強を誇示するゲームなのだ!」
アジやん1「ガチガチに組んだコンボが見事に決まると爽快なこと限りなし!」
ジョゼフ「……まったく分からん」
アジやん1「要は自らの分身であるキャラクターを造り、そいつに活躍させるゲームなのだ」
ジョゼフ「ほう。そう言われれば成る程分からんでもないな。だがどう」
アジやん2「そしてGMは何にも勝る権力を持つのだ!」
アジやん1「そう、GMの言葉は何よりも重い。俺が法、俺がルールブックなのだ!」
ジョゼフ「いや、だから説明を」
アジやん1「作成初期のキャラクターを強力なクリーチャーで焼き払う時など胸が空く気分がするぞ!」
アジやん2「ただし気をつけねばイルルヤンカシュ様によるお仕置きが待っているので気をつけよ!」
アジやん1&2『グハハハハ!』
ジョゼフ「……明らかに人材のミスだろう、これは」

――シーンを一旦切って、最初からやり直しますね。
715名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 23:26:45 ID:ajYMpfMj
>>712
投下乙です

40分から投下しますね〜
716なぜなにハルケギニア侵略 2/2 ◆94YaowOotw :2007/10/07(日) 23:27:48 ID:byA63jri
イリア「よお野郎ども! 夜明けの使い魔を元ネタとTRPGごと理解してもらうためのガイダンス、『なぜなに未来侵略』の主張版、『なぜなにハルケギニア侵略』だ!」
いるるん「お相手は皆の冥龍皇、イルルヤンカシュと」
ルイズ「ハルケギニア代表、ルイズ・ド・ラ・ヴァリエールでお送りするわよ!」
いるるん「気軽にいるるんと呼ぶがよい!」
イリア「冥龍皇は本物第一回と同じ発言か。まあ良い。とりあえずこのあたし、イリア・ルゥ・レグニツァが司会で第一回、スタートだ」

 TRPGって、なに?

イリア「一回目のお題はTRPGについてだ」
いるるん「夜明けの使い魔の元ネタ、カオスフレアもTRPGじゃな」
ルイズ「……TRPGって、何よ?」
いるるん「ほほう、丁度良い具合に初心者がおるようじゃな。よし、わらわが説明しよう。TRPGとはダイスを振って戦ってロールプレイをする遊びなのじゃ!」
ルイズ「え? ダイスを振って戦うの? ……何よ、それ」
イリア「……はー。よし、代わりにあたしだ。ままごととか、分かるよな?」
ルイズ「え、知ってるわよ。ままごとくらい」
いるるん「わらわの説明ではだめなのか……」
イリア「しょげんな。ままごととか、ごっこ遊びって言うのはそのキャラクター……言ったらお父さんとかお母さんとか勇者とかお姫様とか、そう言うのになりきる遊びだ」
ルイズ「そうね」
いるるん「なりきるというか、おぬしやわらわの場合本物のお姫様や女王じゃ」
ルイズ「……あれ? もしかしてわたし、この中では地位とか、低い方……?」
イリア「気にするな。まぁそんな感じで、基本的にはいろんなキャラクターを演じるわけだ。よし。それじゃああたしがGMでいるるんとちょっとロールするから見とけ」
いるるん「よーし。それじゃあわらわ信長いきまーす」
ルイズ「ちょっとまって。GMって何?」
イリア「GMか。GMはゲームマスターって言ってホスト役。プレイヤーに状況を説明したりプレイヤーが動かすPC(プレイヤーキャラクター)以外のキャラクターを動かしたりするんだ」
いるるん「わかりやすくいうとRPGの機械がやってくれる部分全般かのう。でももっと融通が利くのじゃー」
ルイズ「RPGの機械……?」
イリア「聞き流せ。だいたいは聞いてりゃ分かると思うぜ」
ルイズ「そう。それじゃお願い」
イリア「OK。それじゃ行くぜ。じゃあ今信長はいつものように船を抜けだそうとしたところを家臣に止められてる。『信長様、今日は上様がいらっしゃる日ですぞ。どうか自重してくだされ』」
いるるん「ほほう。『知るか。信長はいねぇと伝えろ』と言いながら家臣を蹴倒して外へ逃げ出すぞ」
イリア「よし。それじゃあ判定だ。……っと。判定ってのはな、口で言うだけなら魔王だって倒せちまう。だからそれがうまくいったかどうかを確かめるってことだ」
ルイズ「具体的にはどうするの?」
いるるん「ここにさいころがある。これを転がしてその出た目を利用するのじゃ」
イリア「そういうのはシステムによって違うから今回は具体的な判定方法は割愛だ。とりあえず成功した。家臣たちは蹴飛ばされて信長は脱出に成功した」
いるるん「『ざまぁみやがれ!』と言いながら外に逃げ出していくぞ!」

イリア「何がどうなってるかは分かったか?」
ルイズ「ええと。キャラクターを演じてその台詞やどんな行動をするかを言うの?」
いるるん「その通りじゃ。それでGMの出してくる条件を攻略すればたいていシナリオ完了、ということになるのじゃ!」
ルイズ「何となく分かったわ。でもこれ、何人くらいでやるの? チェスなんかは一対一だけど」
イリア「だいたいGMが一人とPLが2〜5人くらいかな。基本的には全部で4人か5人くらいがバランスが良い」
いるるん「さて、今回はこんなところかのう」
イリア「そうだな。TRPGについてだいたいは理解してもらえたと思うし」
ルイズ「それでは皆さん」
三人「また次回っ!」
717名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 23:28:26 ID:ajYMpfMj
あ、投下中失礼しました
718なぜなにハルケギニア侵略 3/2 ◆94YaowOotw :2007/10/07(日) 23:29:14 ID:byA63jri
終了です。シルフィードといるるんの相互の保護者ぶりを書きたかったのですが出来ているでしょうか……?
それでは、次回!
719名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 23:31:20 ID:ajYMpfMj
>>718
改めて投下乙です
720名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 23:32:27 ID:9IIUIiAC
乙。

しかし…ようやく繋がった…
しばらく繋がらんで時間も経ってレスも進んでるが
>>690が遊戯王な話題だったので便乗させてもらうが…
デッキだけってあり?
721名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 23:33:39 ID:+BsMmir9
ババア喋りの人外ロリっていいよね!
GJっしたー!
722名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 23:34:56 ID:youK6pqf
乙ー。けどなぜなにも良いけど本編ももうちょっと読みたかったりする俺はきっと贅沢。
723名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 23:38:55 ID:1Y5Q6psW
>>696

つ かりん
724名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 23:40:39 ID:ajYMpfMj
ほいだばぼちぼち投下しますね〜
725ゼロマッド:2007/10/07(日) 23:42:47 ID:ajYMpfMj
盛大な爆発音と土煙が舞い上がる……

(なんか手ごたえある!!)
この日、数十回目の失敗の後。召喚に成功した事を確信したルイズは、拳を握り締めちょっと感動するのだった。

「おい、なんか居ないか?」
「まさかゼロのルイズが成功したのかよ!」

ざわめく生徒達を他所にルイズは期待に胸を膨らませながら(精神的な意味で)土煙を凝視するのだった。
しかしながら、土煙が晴れてくるのと裏腹に表情は徐々に曇るのだった。その理由は、「そこに立っていた人物が奇妙」だったからであった。
まず目に付いたのは、ルイズの背丈ほどはあろうかという大きなお面。
緑を基調としたカラフルでなおかつエキゾチックな人の顔を模したようなお面だった。そのお面をつけている人物の服装はと言えば……   
腰巻のようなものをしているが殆ど裸、しかもその体には何かの模様を刻んでいるのか塗っているのか……   
どこからどうみても平民と言うより本で読んだ未開の地に住むと言われる原住民の様ないでたちであった。
(なんで私だけドラゴンやサラマンダーとかバグベアーとか……せめてフクロウとか猫とかじゃないのよ!! 平民ならまだしもどうみても原住民だし…… 正直言葉通じるのかしら?)
ルイズは色々な事を考えると頭を抱えてその場にしゃがみ込んでしまった。
ここで普段の生徒達ならルイズをはやし立てるのだが、あまりの出来事にちょっと引いていた。
(なんか… やばくね?)
(変な踊りしてるし…)
(それより、すごく気になるんだが…… あいつの周りにいる白いの……  まさか…)

726名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 23:43:49 ID:+BsMmir9
ワーヒーかしら 支援
727ゼロマッド:2007/10/07(日) 23:44:01 ID:ajYMpfMj
コルベールは背中にかいている汗が止まらなかった。なぜならば、自分の経験と知識から照らし合わせれば間違いなくあの白いのは『精霊』であった。
精霊を従えているとなれば先住魔法の使い手の可能性が極めて高かったからであった。
コルベールは小声で生徒達に学院に戻るように指示すると静かにルイズに近づくのだった。
「ミス・ヴァリエール、静かにこちらに来なさい」
小声で呼びかけるコルベールの下へ静かにルイズが向かうと覚悟を決めた表情をした先生からこう言われるのであった。
「ミス・ヴァリエール、私が奴に話しかけたらすぐに学園へ走りなさい」
コルベールの表情と台詞の意味に気がついたルイズは首を振り涙目になりながら訴えるのだった。
「コルベール先生、でもあいつは私が召喚したんです。原住民みたいだけどそれでもやっと呼び出せたんです」
せっかく召喚できた使い魔を殺されると考えたルイズ必死に止めようとするのだった。しかし、コルベールが声に気をつけながらルイズを説き伏せるのだった。
「ミス・ヴァリエール、なるだけなら私もあなたのサモン・サーヴァントが成功したことを祝いたかったのですが… 奴は危険すぎます」
なおも食い下がろうとするルイズに対し、コルベールは奴の周りの白い奴を指差し精霊である事をルイズに告げるのだった。
魔法はからっきしであるが為、他の生徒の誰よりも知識に関して秀でていたルイズはそれを聞いた瞬間に真っ青になり震えながらその場に座り込んでしまうのだった。
(しまった、ヴァリエールが近くに居てはうかつに攻撃することも出来ん)
コルベールは自分の配慮の浅さを呪うのだった。刺し違えても倒すつもりであったが、ルイズがちかくに居ては戦いの巻き添えにしてしまう可能性が大きかった。
ここで、コルベールはさらなるミスを犯していたのだった。それはルイズの行動を見て我が身を呪ってしまった事であった。
そのわずかな時間に奴が接近することを許してしまったのだった。コルベールが気付いた時にはすでに自分とルイズの間に奴は立っていた。
728名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 23:44:41 ID:youK6pqf
む、マッドマンか……以前短編で有ったかな支援
729ゼロマッド:2007/10/07(日) 23:45:28 ID:ajYMpfMj
焦るコルベールを他所に奴はルイズの前で屈むと、不思議そうに首をかしげながらルイズをお面越しに覗き込んでいるのだった。
そんな奴に対して、ルイズは震えながらも貴族としてのプライドだけで気丈に問いかけるのだった。
「ああ、あんた誰よ!!」
奴はルイズの問いかけを聞くとスッと立ち上がり両手を挙げてこう答えるのだった。
「マッドマン!!」
マッドマンと名乗った奴は「ウホ!ウホ!」と叫びながらルイズの前で左右にぴょこぴょこと跳ねながら踊っているのだった。
しかし、突然叫んだかと思うと前のめりに倒れるのだった。
「危なかった…」
倒れたマッドマンの後ろから汗だくになった額をハンカチで拭いているコルベールが姿を現すのだった。
コルベールが踊っているマッドマンにそっと近づき後頭部へ当身をしたのだった。

「助かった…」
突然の出来事に身体を強張らせていたルイズだったがコルベールの機転のおかげだとわかると気が抜けてそのまま後ろに倒れそうになるのだった。
そんなルイズをコルベールは支えてコントラクト・サーヴァントを早く済ませるように促すのだった。
コルベールは契約を済ませれば使い魔として従順になり危険はなくなるだろうと判断したのだった。
コルベールの促しを聞いたルイズは表情をパッと明るくさせ急いでマッドマンの傍へと行くのだった。たしかに奇妙な人物…… 
でも初めて魔法が成功した事、精霊を操る実力者、この人物が私の使い魔になると考えるとさっきまでの恐怖心は消え去り期待に胸を膨らませるのだった(物理的に無理だが)。
ルイズはマッドマンのお面を取ると意外と美形な男だったことに赤面しながらも無事に契約を済ませるのだった。
730名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 23:47:13 ID:RvmGHdj9
鯖復旧記念支援。
731ゼロマッド:2007/10/07(日) 23:47:15 ID:ajYMpfMj
以上で投下終了です。
自分が以前避難所で練習で作って投下した奴を手直しして本スレ投下しました。
ご支援ありがとうございました。
732名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 23:48:59 ID:youK6pqf
なるほど、以前の人か。乙ー。
733名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 23:49:44 ID:eZJJkcgn
マッドマンって実は美形なんだよなあ…ザマス口調だけど。
あと、狂男じゃなくて泥男なんだよな?
734名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 23:53:29 ID:+zOiVAPH
>>696
サムスピ皆勤賞(黒歴史除く)の居合いの達人ですね。

735名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 23:55:02 ID:fmRz58ju
ワーヒッ!(訳:乙ザマス)

少年王の漫画版ではマッドカッターで海を渡るという荒業やってたなあ、彼
アルビオンまでもひとっ飛び
736名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 23:57:05 ID:k7iXQSlS
ふと思ったんだが植物使いってどういう扱いになるんだ
土系統のメイジなのか先住魔法扱いなのか
どうなんだろう
737名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 23:57:46 ID:eZJJkcgn
ところで、投下はOK?
738名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/07(日) 23:58:25 ID:HIJn0+MA
OK牧場
739名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 00:00:23 ID:a/GlUGMB
>>737

なら、自分はその後に投下してもよかですか?
740名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 00:00:56 ID:QDxK2pK5
ばっちこい
741美的センスゼロの使い魔:2007/10/08(月) 00:01:04 ID:eZJJkcgn
―――翌日


「起きてくださいマスター」
「ん〜、もう食べられないわ…」

彼、ダイ・アモンのマスターであるルイズは幸せそうな寝言を漏らしながら布団にしがみついている。

「ええい、こちらが満足な食事も出来ずにいるのに幸せそうな夢を見やがってクソ忌々しいっ!
起きなさいマスター!」

「あと5分…」

「起きろって言ってるでしょうがこの平面胸のメスガキャァぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「キャッ!?」
バキィッ! と言う衝突音と共にベッドが激しく揺さぶられ、ルイズがその衝撃で床に落下。それと同時に響いた
ズシンと言う振動は、ルイズではなくベッドそのものが落下したせいだろう。むやみに豪華な作りの見るからに
重そうなベッドが、さっきの衝撃で完全に宙に浮き上がったらしい。

「いきなり何すんのよこの…」

ベッドから放り出された時にぶつけた頭をさすりながら、ルイズが立ち上がると、
「…アンタ誰?」
そこにはフードを目深に被って顔を隠した、ローブ姿の男が立っていた。

「寝ぼけてるんですかマスター!? 私が(不本意ながら)貴方の使い魔になったダイ・アモンです!」

そう言われて、すぐに思い出した。ルイズが昨日呼び出したやかましくアホな使い魔の事を。
そして、思い出すと同時に怒りがこみ上げてきた。

「…思い出したわ。思い出したけど…朝っぱらからいきなり何すんのよ!」

「なぁ〜にが『何すんのよ!』ですかこのボケナスが! 朝になったら起こせといったのはあなたでしょうが!」

売り言葉に買い言葉とはこのことか、あっと言う間に低次元な口喧嘩になる。とてもじゃないが自称伯爵と
公爵令嬢の会話には聞こえない。

「使い魔なら使い魔らしくもっと丁寧に恭しく起こしなさいよ!
「ムキー! 口の減らない小娘ですね!
いくら丁寧に恭しく起こしても『あと5分〜』とか言って一向に起きなかったのは誰ですか!
おかげで余計な体力使っちゃったじゃないですか! 日中に力を出すのは重労働なんですよ!?」
「うぐっ…! それでも丁寧に起こすのが使い魔の仕事なのよ!
それと、さっきドサクサにまぎれて平面胸とか言ったわね!?」
「ええ言いましたとも、事実を指摘したまでですがそれが何か問題でもあるってんですかこのスットコドッコイ!」
「平面じゃないもん! 少しは膨らんでるもん! 去年より成長してるんだからまだまだこれからだもん!」
「ほぉぉぉう、それは楽しみですねえ。せいぜい期待せずに待ってみる事にしましょう」
「あー、もうムカツクわぁぁぁぁぁ、今日はもう食事抜きよ!」
「え? なんですかそれ!? それはちょっと横暴ですよ!」
「うるさい! それよりも何よその格好! 人型に戻ったなら顔くらい見せなさい!」
742名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 00:01:21 ID:HIJn0+MA
支援
743美的センスゼロの使い魔 第2話:2007/10/08(月) 00:02:06 ID:eZJJkcgn

ルイズがアモンのローブを掴んで引っ張り、アモンがそれを振り払おうとする。
口喧嘩から取っ組み合いにフェイズシフトしようかと言う時、部屋のドアが開き第三者が登場した。

「朝っぱらからうるさいわねぇ、いったいなんなのよ」

呆れたような声で入ってきたのは、ルイズとは対照的な肉体を持つ色気過剰少女、キュルケーだったのだが…
彼女はルイズの様子を一瞥するなり、獲物を見つけた猫科肉食獣のような笑みを浮かべた。

「…あらやだ、ルイズったら面白い趣向じゃない。お邪魔だった?」

揶揄するようなキュルケーの口調に、ルイズはようやく今の自分の姿に思い至った。すなわち
“ネグリジェ姿の少女が男性の服を引ん剥こうとしている”としているという事に。

「ち、ち、ちちちちちちち違うわよ! これはそんなんじゃなくて!」

慌てて否定するが、キュルケーは完全にルイズいじりの体勢に入っている。

「照れなくてもいいじゃない。それにしてもルイズがそんなに大胆に迫るなんてねえ…」
「違うって言ってるでしょこの色ボケ!」
「で、そこの見かけないハニーはどこのどなた?」

ルイズの反論を無視して話を変えるキュルケー。当然確信犯(誤用)である。

「申し遅れましたね美しいお嬢さん。私はダイ・アモン伯しゃk…」
「アンタは黙ってなさい!コイツは昨日の使い魔! ハニーとかそんなんじゃないわよ!」

「あら、あなたの使い魔ってきのう召還した時はジャイアントバットだったじゃない。人型に化けたの?」
「違うわよ! コイツは吸血鬼でこっちが本来の姿!」

「へえ…驚いたわ。あなた、本当に吸血鬼を使い魔にしちゃったのね」
「何よ! 悪い?」

「悪いとは言わないけどねー、やっぱり使い魔ってのはこういうのじゃないとね。そうでしょ、フレイム」
キュルケーがそう言うと、彼女の背後からくけーと鳴き声を上げて大きなトカゲが姿を現した。
オレンジ系の暖色を中心としたカラーリングで、尻尾の先には炎が燈っている。

「おや、これはサラマンダーですか」
「やっぱり判る?」
「ええ、私のかつての主も良く使っておりました。もっとも、実体を持たない完全な精霊体のサラマンダーでしたが」
「へえ、サラマンダーにそんなのもいるなんて知らなかったわ」
「サラマンダーが使い魔ということは、お嬢さんは炎属性?」
「あら、中々わかってるじゃない」

「…主人を無視して勝手に話を進めてるんじゃないわよこの馬鹿使い魔!」
「へぶぎゃッ!」

部屋のインテリアである銀の燭台がアモンの頭部にクリーンヒット。使い魔吸血鬼は無様な声を上げて床に突っ伏した。
744名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 00:02:22 ID:HIJn0+MA
支援
745名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 00:03:00 ID:a/GlUGMB
しえーん
746名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 00:04:16 ID:7CoXCtZT
支援しえーん

>>690
カイザーよりむしろ
ルイズ「いい加減主人の言うこと聞きなさいよこの馬鹿犬「犬じゃあないぃ!!俺様は!
一!十!百!千!万丈目さんだぁ!!」
と毎回のように叫ぶことにより伝説の使い魔マンジョウメ・サンダーとなる物語を幻視
747美的センスゼロの使い魔 第2話:2007/10/08(月) 00:05:13 ID:K99haHQQ
「まったく、何で私の使い魔はこんなヤツなのよ…」
「そんなに捨てたもんでもないんじゃない?
そりゃ私のフレイムには劣るかもしれないけど、話のわかるいいヤツみたいだし」
「余計なお世話よ!」

ルイズにとっては、キュルケーに対しては「話しのわかるいいヤツ」らしく畏まって接するアモンが
余計に気に食わない。そんなルイズの様子を察してか、キュルケーはやや強引に話題を変えた。

「…ところで、さっきはいったい何してたの?」

話がそこに戻って、ルイズはようやく自分がしようとしていた事を思い出した。

「この使い魔はせっかく人型に戻ったのに、ご主人様である私にすらその姿を見せようとしないのよ!」
「そう言うことなら興味あるわね。吸血鬼ってどんな顔してるのかしら。」

キュルケーはあっさりとルイズの意見に同調した。この女が男の顔に興味を示さないはずがない、とはルイズの
心の声である。

「ああ、ムチプリバディの美しいお嬢さんまでそんなことを言うんですか!?」

敵が増えた事を悟ったか、アモンはフードをより深く被ると部屋の隅へと後退った。
徹底して顔は見せたがらない使い魔の態度に、ルイズは思わず怒りを爆発させそうになるが、
理性的に考えれとキュルケーの前で感情的に怒鳴り散らすのはあまり良い事ではない。
“落ち着くのよルイズ…素数を数えるのよ…素数は孤独な数字…私に勇気を与えてくれる…”
113まで数えたところでようやくルイズの心は落ち着いた。
平静を取り戻すと、今度はルイズの心の中の紳士が囁き出す。
“逆に考えるんだ…顔を隠したがる理由を聞けばいいと考えるんだ…”

「あー、もう何でそんなに顔を隠したがるのよ」

心の紳士のアドバイスに従いつつ、ルイズは先にこれを聞くことを思いつかなかった自分の至らなさを反省する。
失敗を反省し教訓として、次に繋げるのはルイズのポリシーである。

「ええ、説明してやりますから耳の穴かっぽじって良く聞きなさいよ!
そもそも召還の際に日光で力を失ったのがいけないんです! 月と血で力を取り戻したとは言え、せいぜい3割程度!
パワフリャで美しい私の姿に戻るには力が足りないのですよ! 貧弱かつ醜い私の真の姿を人目に晒す訳にはいきません!」

「なるほどねえ。そう言うことなら仕様がないんじゃないの?」

キュルケーはアモンの説明に納得したようだ(というより、醜いという自己申告を聞いて興味をなくしたようだ)が、
ルイズはそれで納得はしなかった。いや、顔を見せたがらない理由としてはアモンの言い分を理解したのだが、
それを受け入れる気はなかった。“この際だから徹底して弱みを握ってやろう”と言う結論に達したのである。
理由はそれだけではない。

「顔が醜かろうと、私は構わないわよ。むしろ醜いからって使い魔の素顔も把握してないなんてメイジ失格だわ!
ダイ・アモン…これは命令よ! 顔を見せなさい!」
748名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 00:05:38 ID:QDxK2pK5
支援
749美的センスゼロの使い魔 第2話:2007/10/08(月) 00:06:29 ID:K99haHQQ
ここまで言うと、流石のアモンも諦めたようである。命令されたから爪を気にして受け入れただけとも言えるが。
目深に被ったフードに手をかけると、ゆっくりとめくり上げた。

「え?」
「やだ! 嘘!」

どんな恐ろしい顔がフードの下から現れるかと覚悟を決めて見守っていた二人の前に現れたのは、繊細そうな細面の
白皙の美青年だった。ただの美青年ではない。超美形といってもいいくらいのハンサムぶりである。
ルイズが唖然とする横で、キュルケーは「えーっ! これで醜いって、魔力を取り戻したらどうなっちゃうの!?」
とか騒いでいる。アモンはといえば、「これでもう用は済んだだろう」と言わんばかりに再びフードを被ってしまった。
それも「こんな貧弱な青ビョウタン顔を3人もの目に晒す事になるとは…この屈辱、決して忘れませんよ!」等と言う
捨て台詞付きで。

「…って3人? ここには2人しかいないじゃない…」

ルイズが疑問の声を上げて辺りを見回すと、3人目は確かに存在した。何時からそこにいたのか、入り口の前に
クラスメイトのタバサが存在していたのである。

「って、タバサ? 何時からいたの?」

タバサの親友であるキュルケーさえ、存在に気付いていなかったようだ。

「…『アンタは黙ってなさい!コイツは昨日の使い魔!』あたりから」

「最初の方じゃない!」

つまり、この無口な少女は、この騒動をほぼ余すところなく観察していたのである。
ルイズはキュルケー以外の目にも失態を晒した事に目眩すら感じていた。
しかし、そこまで見ていたからには当然アモンの素顔も見ているはずなのだが、タバサの表情には
何の反応もない。キュルケーなどは思わず“さすがタバサ”と感心してしまう。

「で、何しに来たの?」

キュルケーの親友である以上、用事があるのはルイズではなくキュルケーであると考えるのが自然だろう。
ルイズとキュルケーもそう判断したのか、用件を質したのはキュルケーの方であった。だが、ある意味で
彼女の用件は両者に大きく関わるものだった。すなわち

「朝食の時間。もうすぐ終わり」

と言う事である。

「「な、なんだってー」」

仲良くハモる二人の悲鳴。その様子を見ながら、アモンは「実は凄く仲がいーんじゃないですかこの二人は」と思ったと言う。
750名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 00:06:38 ID:QDxK2pK5
支援
751美的センスゼロの使い魔 第2話:2007/10/08(月) 00:08:36 ID:K99haHQQ

「悪いけど、ルイズ…私は先に行くわ!」

そう言い残しキュルケーは食堂へ向けて走り去っていった。まるで風属性にチェンジしたかのような疾風怒濤振りであった。

「ちょっと待ちなさいよキュルケー!」

と言ってルイズも後に続こうとするが、自分がまだ寝間着姿のままである事に気付くと、

「ごめん、タバサ! また後で!」

と言って勢い良く扉を閉じ、着ていた服を脱ぎ捨てた。

「ちょっと、ルイズ様!? アナタ恥じらいってものがないんですか!?」

アモンが非難の声を上げるが、この際無視。本当は立場の違いをわきまえさせるために取ろうとしていた手段だが、
切羽詰った状況なので仕方がない。

「うるさいわね! 貴族って言うのは使用人相手に恥ずかしがったりしないものなのよ!
そんなことより、その棚から着替えをとってちょうだい! 早く!」

いかにも渋々と言ったしぐさで命令を実行するアモンの手から着替えをひったくると、ルイズは早送りのビデオのような
速度で着替えを済ませ、部屋を飛び出した。あまりの勢いに呆然としていたアモンがようやく一息つくと、

「忘れてたッ!」

と言って戻ってきた。

「私がいない間に勝手にどこか行ったり誰かの血を勝手に吸ったりしないように!」

「へいへい、そのくらいはわかってますよー」

だいたい、吸血鬼は基本的に昼間は寝ているものである。いちいち釘を刺されなくても、ダイ・アモンには
わざわざ何かをする気はなかった。だが、そんな彼の目論見は脆くも崩れ去った。ルイズは先の条件に、さらに

「その脱いだ服、洗濯しておきなさい! それと、今日の授業は基本的に使い魔同伴だから、
用事が済んだら教室まで来ること! わかったわね!?」

と言う要求を付け加えたのである。

「え? ちょっと! それマジですか!? ッて言うか吸血鬼を昼間に働かせるなんてアンタ鬼ですかっ!?
ひょっとしてコキュトスに封印されてた悪魔ですか!? 暖かい人の血は流れてないんですかァァァ!?」

走り去るルイズの背中に向かい、吸血鬼は悲痛な声をあげた。

752名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 00:09:33 ID:QDxK2pK5
支援
753美的センスゼロの使い魔 第2話:2007/10/08(月) 00:10:30 ID:K99haHQQ
“まずはこの洗濯物をどうするか考えねばなりません”

考え込むダイ=アモン。とりあえず部屋から出るにも日光をさえぎる何かが必要だ。今着ているローブは、
実は魔力で編んだ紛い物で自分の体も同然だ。当然、日光を遮断する効果はない。と、言う事はとるべき手段は一つ。

「まー、ご主人様が洗濯とかしろって言うんだから必要なものは勝手に使ってOKですよねぇー」

そう言ってルイズの部屋を物色し始めた。まず衣装箪笥を漁ってみるが、着用できそうなものは皆無。
ルイズとアモンの対格差を考えれば当然の結果である。仕方ないので毛布を被る事にして、物入れの中から
見つかった舞踏用の仮面(マスケラ)を顔につける。視界を確保しつつ日光を避け、(アモンの美的感覚で)醜い
素顔を隠す事が出来るのだ。しかもこの手の(一般的に悪趣味っぽい)アイテムはアモンの趣味に合うのである。
傍から見ると「顔を仮面で隠し毛布に身を包んだ長身の男」と言う凄まじく不審な外見なのだが、このダイ=アモンという
男はそんなこと一向に気にしない。

「あー、めんどくせー」

そう言いながら、ルイズの服を持って移動を開始する。が、当然どこで洗濯をすれば良いかなどわかる筈もない。
出来るだけ直射日光に当たらないように建物内を移動していると、見るからに使用人と思しき女性が洗濯物を運んでいる。

“おおぅ、これはラッキー! 純正100%混じりっ気無しの生娘のニホイですねこれは!”

「済みませんがお嬢さん」
「え…きゃっ!」

悲鳴を上げるメイド。こんな不審人物に話しかけられれば当然の反応と言えるだろうが、そんな常識は当然アモンには
通用しない。

「人が礼儀正しく話しかけたと言うのに悲鳴を上げるとは何事ですか! 躾のなっていない使用人ですね!」
「もっ…申し訳ありません!」

理不尽な物言いだが、悲しいかな使用人根性の染み付いたメイドは反射的に謝ってしまう。
謝ってしまった後で“あれ? 何で私謝ってるんだろう…?”などと疑問に思うが後の祭りである。

「ム・ッウ〜ン素直に謝るのは良い事です。その正直さに免じて今は許して差し上げましょう!
ところでお嬢さん、洗濯と言うのはどこでどうすれば良いのでしょうか?」

相手が面食らっている事も気付かずに、用件を畳み掛ける。他人の都合など気にしない。

「あ、それなら向こうに水場が…ところで、その…失礼ですがどちら様でしょう?
…あの、私はシエスタと申します」

メイドはメイドで、アモンの勢いに押されつい受け答えをしてしまう。本来なら悲鳴を上げて逃げ去っても
おかしくない状況だが、どうもそのタイミングを逸してしまったようである。
実のところは、アモンがその視線に込められた魅了(チャーム)の魔力を発揮しているためでもあるのだが。
754名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 00:11:11 ID:QDxK2pK5
支援
755美的センスゼロの使い魔 第2話:2007/10/08(月) 00:11:46 ID:K99haHQQ

「これは申し遅れました、使用人のお嬢さん。私はダイ=アモン伯爵と申します」

丁寧な会釈をするが、毛布にくるまった仮面男なので怪しい事この上ない。この上ないのだが、視線の魔力で
警戒心の薄れているシエスタには外見の怪しさなど関係ない。

「あの…ひょっとしてミス・ヴァリエールの使い魔の?」

「まあ、不本意ではありますが現在はそう言う立場になっておりますねぇ。何でご存知なんですか?」

「え…あの、生徒の皆さんの噂になっていたので…」

「ほほぅ…さすが、私の美しさは早速人々の噂になっているようですね…まったく美しさは罪です!」

「ええ、まあ…」

シエスタが言葉を濁す。
当然、彼女が聞き及んだ噂はそんな内容ではなく「ゼロのルイズが物凄く奇妙な使い魔を召還した」と言うものだが。

「ところで、ワタクシは洗濯などした事ないのでどうすれば良いのか良くわからないんですが、
お嬢さんはどうやらこれから洗濯をなさるご様子。よろしければコイツもついでに洗ってもらえませんか?」

物凄く厚かましい要求だが、アモンの面の皮はこの程度で遠慮するほど薄くはない。元々雑用を押し付ける
心算もあっての魅了である。

「はい、その位でしたらお安い御用ですよ。寝間着と下着と制服ですね?
終わったらミス・ヴァリエールの部屋に届けておきます」

当然、軽く洗脳されたも同然なシエスタが断るはずもない。

「…ところで、アモンさんはなんでそんな格好を?」

アモンがその気になれば彼女を自我のない人形に変える事も可能だが、現在は自我を保ったままで
彼に対し逆らわないと言う程度にとどめてある。なので、現在は彼女が自分の意思でアモンに疑問を持ち、
質問をする事も可能だ。

「ええ、まあ直射日光に弱いので…」

そこまで言いかけて、アモンは現在抱えている問題を思い出した。

「そうでした。お願いがあるのですが、衣類の調達をお願いできませんか?
フード付きのローブ、日光を通さないように黒で裏地付きの厚手のものを頼みますよ」

「ええ、わかりました。教師用のローブの予備ならすぐご用意できますが」
756名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 00:12:36 ID:QDxK2pK5
支援
757名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 00:12:48 ID:DGDaUryY
支援
758美的センスゼロの使い魔 第2話:2007/10/08(月) 00:12:50 ID:K99haHQQ

そう言うことなら、と言うわけで、洗濯よりまず先に備品類をしまった部屋に寄ると、アモンは教師用の
ローブと皮の手袋を無事確保する事が出来た。そのまま適当に日の当たらない場所を探し、そこで毛布からローブに
着替えるのだが、ちょうどローブを着終わったところで

「あの、サイズは合って…ました…か?」

何気なくシエスタが顔を出し、硬直した。今まさに仮面を付けようとしているアモンの顔を見てしまったのだ。
ある意味で予想外すぎるインパクトに満ちた素顔を。

「…見ましたね…?」

怒りに震える声でそう言いながら、仮面を装着する。

「あ、いえ、その…」

凄みをきかせたアモンの物言いに思わず怯んでしまう。
シエスタは彼の全身から禍々しいオーラが立ち上るのを見たような気がした。

「見てしまったのですね、この私の醜い素顔を!」

“醜いって…どこが?”
シエスタは思わず心の中で突っ込んでしまった。何かの冗談かとも思ったが、アモンは本気で素顔を恥じ、
本気で怒っている。

「ご…ごめんなさい! 申し訳ありませんっ!」

再び勢いに押されて謝るシエスタ。そんなシエスタに折檻を加えようとしたのか、アモンが片手を振り上げた時、
“カランカランカラン”と緊張感のない鐘の音が校内に響き渡った。

「…なんですか今の音」
「…あの、予鈴…です。もうすぐ授業が始まると言う…」

拍子抜けしたように拳を下ろしたアモンの質問に、まだ少し怯えながらもシエスタが答える。
「授業…?」と呟いたアモンの脳裏に『今日の授業は基本的に使い魔同伴だから、用事が済んだら教室まで来ること!』
と言うルイズの声が甦った。
759名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 00:13:19 ID:QDxK2pK5
支援
760名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 00:13:59 ID:DGDaUryY
支援
761美的センスゼロの使い魔 第2話:2007/10/08(月) 00:14:07 ID:K99haHQQ

「やっべー! こんな事してる暇はありませんっ! すぐ教室に向かわなければっ!…って、そうだお嬢さん!」

「は、はい!?」

「教室はどっちですか!」

「あっちですけど」

「ありがとうございます!
それとさっきのアレは見なかったことにしなさい今すぐ忘れなさい決して他言してはいけませんYOooooooooooh!
わかりましたか使用人!」

剣幕に押されて人形のようにカクカクと頷くシエスタを尻目に、アモンはそう言い残して全力疾走で去っていった。
とは言っても、パワー不足であるのでフラフラとよろめきながらの早足程度でしかなかったが。
シエスタはといえば、嵐のように現れて去っていった不審人物に対し、“一体なんだったのかしらあの人…”と言う
疑問を抱くと共に、“凄い美形だわ! ちょっとラッキーかも!?”と言うミーハー心理が彼女の脳内を
駆け巡っていたりするのだが。
もっとも、彼女は自分が本当に幸運だった事に気付いていない。
本来のアモンは人間をゴミクズ同然に扱う残虐な吸血鬼であり、激昂すれば衝動的に暴力を振るう凶人なのだ。
彼を怒らせた時点で、彼女は問答無用で惨殺されていたはずだった。だが、現在は昼間である。出歩くだけで重労働なのに、
今のアモンには素顔を隠すほどの魔力もなく、ルイズ起床時にベッドを蹴り上げたせいで体力も消耗している。怒りに
任せても殴りかかるだけの体力がないのだ。本当にシエスタは幸運だったのである。

ただし、アモンは執念深い。

「あのメイド、シエスタと言いましたね…後で必ず折檻してやりますよ…!」

幸運とは言っても、危険が先に延びただけの事であったが。

762名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 00:14:32 ID:QDxK2pK5
支援
763名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 00:15:15 ID:DGDaUryY
支援
764美的センスゼロの使い魔 第2話:2007/10/08(月) 00:16:13 ID:K99haHQQ
とりあえず今回はここまで。
長くなりすぎてギーシュとの決闘には行けなかった。
765名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 00:17:26 ID:QDxK2pK5
乙でおま


では次いで>>739の人ですな。
766名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 00:18:01 ID:L4St1Bek
乙でした。では次は自分が投下させてもらってもいいですかね?

長編を、5レスほど。
767名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 00:19:05 ID:QDxK2pK5
いつでもOK
768名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 00:19:20 ID:K99haHQQ
どうぞ。
769名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 00:19:29 ID:eNQ80iBN
では、支援を。
770名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 00:19:41 ID:DGDaUryY
どぞ
771虚無<ゼロ>の旋律:2007/10/08(月) 00:19:45 ID:L4St1Bek
「鳴り響け……」

少女は紡ぐ。力ある、言葉を。
眼前には、巨大な敵。拳を振り上げ、死を与えんとする土くれの巨人。
ごう、と大気の唸る音がする。
身の丈を大きく上回る硬き土の腕が、己を押しつぶそうとしていた。
だが、彼女の心に恐れは無い。
思いだしたから、あのメロディーを。
人間が自由に生きていたあの頃の、忘れかけていた『旋律』を。
(私はもう、何も出来ない『ゼロ』じゃない)
心の中で呟き、刹那。頭を振って、それを否定する。

―いや、違う。今この瞬間こそ、私は虚無<ゼロ>になったのよ。

今更ながらに気付いた事に苦笑を浮かべながら、ゆっくりと弓を構え、矢を番える。
後は弦を引き、解き放つだけ。

「鳴り響け……」

聞こえるメロディーが導くままに、狙いを付け『力』を込める。
その体が。
その心が。
その、魂が。
喜び打ち震える。
ボロボロになり、所々破れた服の隙間から覗くは。
3本の黒線と、それを跨ぐ様に描かれた奇妙なマーク。
強いて言うなら音符に似ていた、彼女が召喚した使い魔にもあるそれは、戦士の紋章。
自由と、解放の象徴。

「鳴り響け―」

紋章が光り、その輝きが瞬く間に増して行く。
そして。
力が解き放たれる、その瞬間。
彼女は、思い返していた。
全ての始まりを。
彼女が、先生と呼び慕う事になる使い魔を召喚した、あの時を―
772名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 00:20:15 ID:QDxK2pK5
支援
773名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 00:22:37 ID:CF8Vv8pI
漫画版のが好きです支援
774名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 00:22:39 ID:EHeikXy4
鳴り響け!俺の支援?
775名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 00:23:10 ID:V0EOIDwK
アニメは認めない支援
776名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 00:23:45 ID:hr1dQNhh
鳴り響け俺のエロス!!!!
777名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 00:23:54 ID:wmrfBls0
皆漫画の方が好きなのかw
まぁ俺もだがw 支援
778虚無<ゼロ>の旋律:2007/10/08(月) 00:23:57 ID:L4St1Bek
◇1:召喚・メロスの戦士◇

春。抜けるような青空の下。
ドオン、というこの日何度目になるか分からない、鈍い爆音が鳴り響いた。
此処は、トリステイン魔法学院内にある広場。

「いたっ……!」

爆風にあおられ、尻餅をつく少女。
桃色がかった綺麗なブロンドと、透き通るような白い肌は煤であちこち黒く汚れていた。
彼女の名は、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
王の庶子を始祖に持つ、名門公爵家の三女だが―
彼女には、魔法の才能がなかった。
系統魔法はおろか、自分程の年のメイジならば誰もが扱えるコモン・マジックですら彼女は使う事が出来ない。
どんな呪文を唱えようとも、どんな魔法を使おうとも、爆発しか起こらない。
今も、2年に進級する為に必要な使い魔召喚の儀式において、彼女は召喚魔法の失敗を繰り返していた。
でも、何度爆風に吹き飛ばされようと、心無い級友達から嘲笑を浴びせられようと彼女は挫けなかった。

「もう一度―」

呟きながら、よろよろとルイズは立ち上がる。
ヴァリエール家の名を汚さないために。
1人の貴族として、己の誇りを貫く為に。
未だにくりくりとした鳶色の瞳から意思の光は消えない。
強く、熱いそれを炎の様だと例える人も居るだろう。
最も、炎と言うフレーズは彼女の宿敵でありライバルであり級友である、ある人物を彼女に連想させる為誰もそれを言う事は無いが。

「我が名は―」
「待ちなさい。ミス・ヴァリエール」

尚も召喚呪文の詠唱を唱えようとする彼女を制止する、声。
声の主は、燦々と輝く太陽の光を照り返す禿頭が眩しい、ローブ姿の男性。
名はジャン・コルベール。トリステイン魔法学院の教師の1人だ。
儀式を行う生徒達を監督する役目を負う彼は、彼女の努力を十分に承知し理解した上で、それでも彼女を止めた。
779名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 00:24:37 ID:eVPTkOki
>>776
ヤロウ・・・口にしちまいやがった・・・支援
780虚無<ゼロ>の旋律:2007/10/08(月) 00:25:15 ID:L4St1Bek
「今日はもう止めておきなさい」
「そんな―」

ルイズの顔が、この日初めて絶望の色に染まった。
この教師は私を見切ったのだろうか。
私には儀式を成功させる事は出来ないと、結局は『ゼロ』のままなのだと。
血相を変え瞳の端に光る物を浮かべ、ルイズはコルベールに取りすがる。

「お願いします!今度は、今度は必ず成功させますから!」

ルイズのその必死な姿はとても痛ましく、彼女をあざ笑っていた者達すら決まり悪げに顔を逸らさせる程だった。
そんな彼女の肩を、コルベールは優しく叩く。

「今の君は疲れきり、精神力も尽きかけている。そんな事では成功する魔法も成功しない」
「先生…」
「他の生徒にも迷惑が掛かるというのも、ある。だから、今日はもう休みなさい」

そう、コルベールはルイズ1人の教師ではない。
儀式に成功した、他の生徒の面倒も見なければならないのだ。
その事実が、コルベールに苦渋の決断をさせた。

「君の頑張りを見ている人は見ている。一度位の留年で君の名前は傷つかないとも」
「なんなら、追試と言う形で後からやり直させるよう掛け合っても良い」

其処まで言われては、ルイズもそれ以上抗弁する事は出来なかった。
気休めだと言う事は分かっていた。今まで追試どころか儀式に失敗した前例など無いのだから。
最低限出来なくてはならない事すら出来ない落ちこぼれを、わざわざ救済してやる程この学院は甘くない。
それでも。この教師の精一杯の気遣いに、ルイズは口を噤み、やり場の無い感情のままに唇を噛む。
硬く握り締めた拳からは、血が滲んでいた。
まだ儀式を続ける口実など、もう彼女の頭には浮かばない。
彼女の心には、諦めたくないという一念のみ。
既にルイズを突き動かすのは、留年とか家名を汚す事等ではなかった。
ここで諦めてしまえば、自分の中の『何か』が終ってしまう。
だから。気付いた時には、彼女はこう口走っていた。

「もう1回だけ、やらせて下さい……!」
781名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 00:26:19 ID:QDxK2pK5
支援
782名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 00:26:19 ID:upbQd3zn
俺はアニメ版のエロスが好きだぜ支援
783虚無<ゼロ>の旋律:2007/10/08(月) 00:26:55 ID:L4St1Bek
「ミス・ヴァリ―」
「コレで失敗したら、もう諦めますから!!」

窘めようとするコルベールの言葉を、ルイズは強引に遮る。
一歩も退かない、といった風情の彼女に根負けしたか、コルベールは小さく溜息をつき。

「……では。コレで最後ですよ」
「はい……!」

自分の言葉に嬉しそうに返事をするルイズに、コルベールは世の不条理を嘆かずにはいられなかった。
何故ここまで頑張る彼女に、報いてはやらないのか、と。
奇跡の1つも、彼女に与えてはやれないのか、と。
彼は生まれて初めて、始祖ブリミルを恨んだ。
きっと、彼女は失敗するだろう。
今まで失敗を繰り返していたのに、此処に来て急に成功するようなムシの良い出来事など起こるわけがない。
そう、既に諦めながら。
それでも、心の何処かで彼女の成功を願わずにはいられないコルベールだった。

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール……」

杖を握り締め、彼女は最後の詠唱を始める。
その姿は、どこまでも直向きだった。
その場にいる誰もが固唾を飲んで見守る中、ルイズの詠唱は続けられる。

「宇宙の果てのどこかにいる、私の下僕よ! 美しく、そして強力な使い魔よ!
私は心より求め、訴えるわ。我が導きに応えなさい!」

詠唱が終った、その刹那。一際大きい爆発が起こった。
やはり失敗か、と皆は呆れ顔で溜息をつき。
コルベールは力無く地面に膝を突くルイズに対し、沈痛な表情を浮かべる。
だがそれは、爆発の所為で発ち込めていた煙の中に動く影を見つけた事により、すぐさま喜色に取って代わる。
彼女は、ルイズは召喚に成功したのだ。
784虚無<ゼロ>の旋律:2007/10/08(月) 00:27:59 ID:L4St1Bek
「ミス・ヴァリエール!見なさい!アレを!」

彼女に声をかけ、動く影に向かって指を刺す。
コルベールの声に、顔を上げたルイズは信じられないといった面持ちでそれを見つめ。

「やった……!」

溢れてくる感情を抑え切れず、それは滂沱となって頬を濡らした。
煙が晴れていく。朧気だった影がその輪郭を確かにしていく。
そこにいたのは―

「ここは……?」

疑問の表情を浮かべている、1人の女性だった。
胸まで伸びた黒髪。顔にかけられている、良く分からない材質で出来た黒い眼鏡のようなもの。
その整った顔立ちは、美人と呼ぶのになんら差し支えはないだろう。
タイトミニのワンピースに身を包んだ彼女は、困惑顔で所在なさげに立ちつくす。
だが、困惑しているのはルイズも同じだった。

「平、民?アンタ、誰……?」

疑問の言葉を口にしながら、ルイズは近寄り彼女の顔を覗き込む。
黒い眼鏡のようなもの―後にサングラスと分かるのだが―の奥に凛々しく、それでいて優しい瞳を見つける。

「貴方こそ、誰なのかしら?それ以前に、此処は何処?」

最初は戸惑いがちだったものの、直ぐに落ち着きを取り戻し、ルイズに向かって問い返す。

「先ずは私の質問に答えて。そうしたら、答えられる限りの質問に答えて上げるわ」

小柄なルイズは、女性にしては身長が高めの彼女を見上げながら、精一杯の威厳をもって彼女に言葉を返す。
恐らく彼女が自分の召喚した使い魔なのだろうという、漠然とした、だが確固たる確信を持っていたから。
それを聞いた女性は、微笑みながら頷き。
こう、答えた。

「私は音無 小百合。―メロスの、戦士よ」
785名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 00:28:25 ID:eNQ80iBN
支援
786名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 00:28:53 ID:K99haHQQ
俺のエロス支援。
787名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 00:30:28 ID:a6X3MtFZ
ググっても出てこん支援
788名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 00:30:39 ID:L4St1Bek
以上です。拙い文章ですが、少しでも楽しんでいただけたら望外の喜びです。

召喚されたのは、漫画版「忘却の旋律」の音無 小百合です。

続きは出来るだけ早く書くつもりではいますが、なにぶん遅筆なので期待せず気長に待っていただけると幸いです。

では、あじゅじゅしたー。
789名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 00:31:02 ID:wmrfBls0
一番最初の先生かよ!支援
790名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 00:35:02 ID:kHagpqgE
また名乗るだけで終わりかよ
メロスの戦士って何だよ
どんなキャラか伝わんねえよ
何が面白いのかわかんねえよ
791名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 00:37:41 ID:a6X3MtFZ
>>790
続き書くっての読めない?
最初っからそんな分量求めてもしょうがないと思わないか?
792名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 00:38:34 ID:RfZ96SYX
>>790
作者のやる気そいで何か楽しいの?
793名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 00:40:33 ID:K99haHQQ
荒らしに構うなよ。
794名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 00:40:57 ID:RboFMtWZ
>>791
つ触るな危険。
795零の雷の人:2007/10/08(月) 00:41:43 ID:eNQ80iBN
ええと、これが>>739の方でいいのかな? ID変わっててよく分からない。

で、次に投下よろしいですか?
今回は「第四章 伯爵家、公爵令嬢誘拐(?)事件顛末 その一」です。
796名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 00:41:52 ID:upbQd3zn
まあでも>790の気持ちも分る。
マイナーだものなあ漫画版。
797名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 00:43:29 ID:QDxK2pK5
>>795
OKですぞ。
798名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 00:47:21 ID:j6IAt7cP
最初黒船かと思ったが小百合先生の方か
799封仙娘娘異世界編 零の雷 1/5:2007/10/08(月) 00:47:30 ID:eNQ80iBN
 一


魔法学院の本塔を照らす二つの月。
二重の光は、外壁に垂直に立つ黒い人影を浮かび上がらせていた。
その位置は内部で言うと五階――宝物庫にあたる。
人影の名は、『土くれのフーケ』と言った。
トリステイン中の貴族を恐怖に陥れている、神出鬼没の怪盗である。
『土くれ』の二つ名は、秘宝を守る壁や扉などをその強力な『錬金』の魔法で土くれに変えてしまうと言う、
盗みの手口に由来する。
すなわち、土くれのフーケはメイジである。それも、凄腕の。
そのフーケが、今はギリギリと歯を鳴らしていた。

「さすが魔法学院の宝物庫と言うべきなのか……ふざけた話だわ」
足の裏から伝わる壁の感触。優れた『土』系統のメイジであるフーケにとって、そこから外壁の厚さを測ることなど
造作もない。
だが、それを破壊できるかどうかはまた別の問題だ。
「あのハゲめ……何が物理攻撃に弱い、だ。これじゃ私のゴーレムでもちょいと厳しいか……」
フーケは腕を組んで考える。
そして、懐から小さな道具を取り出した。内側に小さな珠がじゃらじゃらと沢山付いた、不思議な道具。
――見る者が見れば、それが『そろばん』と言う計算機であることに気づいたかも知れない。
「……――」
フーケが小さく声を掛けると『それ』は、途端に鮮やかな緑色のオウムへと変化した。
オウムはバタバタと羽ばたき、フーケの胸の上に留まった。
「――。……この外壁をブチ破るには、どうすればいい?」
「…………」
オウムは答えない。フーケは軽く舌打ちする。
「質問が悪かったか? ……ふむ。では、こうしよう。
 近い内に、私は宝物庫に侵入することができる。――それは何故?」
オウムは、甲高い声で答えた。今度はうまくいったようだ。
「ギー。フーケのゴーレムを狙った『ゼロのルイズ』の魔法が的を外れ、外壁を傷つける。それに乗じて侵入する確率が半分。
 月が四つある確率が半分。ギー」
「……そりゃまた随分とバクチ要素の強い話だこと」
そう言いつつもフーケは満足げに笑う。
「『ゼロのルイズ』……あぁ、あの向こうっ気の強そうな小娘ね。……ふぅん。そりゃ意外」
後半の答えは無視した。当然だ。
月が四つある、などという与太話を信じて何になろう。一方が外れなら、もう一方が当たり。
ただの消去法だが、フーケには絶対の自信があった。
「どちらが正解かはシラヌ。シラヌ」
このオウムの決まり文句だ。……なんとも微笑ましいではないか。
胸の上に手を伸ばし頭を撫でると、オウムは嬉しそうに喉を鳴らした。可愛い奴め。
「で、それはいつ?」
「ギギッ。一週間後の確率が五割。メロンから赤子が出てくる確率が五割」
後半は日時でも何でもない。
「ふむ……まぁ、いいわ。それくらいは待てる」
一週間後――つまり八日後だ。
――あの屈辱に耐えてきた長い年月を思えば、どうということはない。
まぁ、別の意味での屈辱の日々が多少延びることにはなるが……大したことはない。大したことは。

オウムの頭を撫でる手につい力がこもる。
800名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 00:48:44 ID:QDxK2pK5
支援
801封仙娘娘異世界編 零の雷 2/5:2007/10/08(月) 00:49:24 ID:eNQ80iBN
――オウムの苦しそうな呻き声により、我に返る。
「あぁ、悪い悪い。
 ……っと、そうだ。一応、これは聞いておかないとね。
 例の秘宝……『破壊の槍』って、どんな代物なの? 具体的には」
オウムは何事もなかったかのように返答を寄越す。
「ギー。炎を操る巨大な槍。普段は貧相な槍に偽装しているが、真の姿は二メイルを超える。
 その力は殷雷刀をも遥かに凌駕する。と言う確率が半分。
 フーケが秘宝『――――』を手放す確率が半分。ギッギ」

「なるほど……あのインライトー以上とは、そりゃ大したもんだね」
後半の予言は、やはり無視した。考えるまでもない。
私が手放す? 『これ』を? ……馬鹿な。たとえ山一つ与えられたところで売る気はない。
この秘宝は、もはや私の半身も同然。
どうせこれも月が四つあるとか決行日はメロンから赤子だとかと同じ、『あり得ない』と同義だろう。

「一週間後、か……楽しみね」
土くれのフーケは眼鏡の奥の瞳を輝かせた。


 二


『波濤』のモットこと、ジュール・ド・モット伯爵は強欲な男である。
そして、それ以上に好色として知られていた。
彼はしばしば、気に入った若い娘を金の力で強引に召し抱えては、『世話役』などと言う名目で慰み者としていた。
当然ながら、平民たちの評判は芳しくない。

――そんな彼が『それ』を手に入れたのは、決して偶然ではあるまい。

 *

――どうにも、マルトーの説明は要領を得ない。
「連れて行かれちまったんだよ、シエスタが! 無理矢理に!
 だがアレはどう考えてもおかしい!!」
殷雷は顔をしかめた。厨房に近づいた途端、いきなりこれだ。
シエスタ――魔法学院に仕えるメイドの名だ。
いつぞやの『決闘』以来、洗濯を手伝ってもらったり厨房の助っ人に入ったりで、
それなりに親しくしていた娘だ。
彼女の姿が見当たらないと思ったら、この有様というわけだ。
「順を追って説明してほしいのだが……」
「だから笛だよ! 一回吹くと息子で二回だと妻が来て三回吹くとマ」
「落ち着け。分かったから落ち着け。
 一、深呼吸。
 二、当て身。
 三、九鷲酒。
 今すぐ選べ」
「……すー、はー、すー、はー……」
人間、素直が一番である。
802名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 00:49:48 ID:QDxK2pK5
支援
803封仙娘娘異世界編 零の雷 3/5:2007/10/08(月) 00:51:18 ID:eNQ80iBN
「――よし。最初から聞くぞ。一体何があった?」
マルトーは語り始めた。
「……今朝の話だ。モット伯爵って貴族が来てな。使いじゃなく、本人だ。
 そいつがシエスタの事を気に入ったみたいで、身請けするなんて言い出してな。
 ありゃ絶対前々から狙ってやがったな。くそっ」
料理長の言葉にはトゲがあった。
「そのモットとやら、どういう人間なんだ?」
「いけ好かねえスケベ野郎さ。こんな話はこれが初めてじゃない。
 シエスタ以外にも、権力を笠に若い娘が何人も連れて行かれたって話だ。
 だが相手が貴族じゃ、俺たち平民にゃ手の出しようがねえ……」
マルトーは吐き捨てるように言った。
殷雷は顎に手を当て、ふむ、と唸る。
そのモット伯がろくでもない人物だというのは理解した。
だが、正当な手続きをもって取引されたのでは、どうしようもないのではないか?
マルトーもそれは分かっている。
……それにしては、先ほどの態度が気に掛かる。
何やら、猛烈に悪い予感が殷雷の中で膨れ上がってきた。

「……続きを頼む。それで、シエスタはどうしたんだ?」
「ああ、あいつも最初は嫌がってたよ。何しろ突然だったからな。
 ……だが、突然態度が変わったんだ。急にポッ、て赤くなったんだよ。
 『喜んであなたに仕えましょう』なんつってな。
 どう考えてもおかしいだろ!?」
――いつかどこかで、聞いたような話。
「……その辺り、詳しく頼む」
「ん、あぁ……ええと。そうだそうだ!
 何か懐から笛を取り出したんだ! モット伯が」
笛。
「『君にこの曲を捧げよう。きっと気に入るはずだ』とか何とか言って吹き始めたんだが……
 それがまたひでえ音でな。ビィビィと、虫の羽音みてえな――」
虫の羽音。
「俺は近くで聞いてたんだが、笑いを堪えるので必死だったな。
 ……なのに、シエスタはポッ、だ。
 おかしいだろ!? どう考えても!」
幾つもの点が繋がり、線となってゆく。
殷雷は最後の確認をした。
「その笛……どんな代物だった? 縦笛か、横笛か? 色は?」
「横笛だったな。色は……確か赤っぽかったはずだ」
――やはり。
悪い予感は当たった。
その『笛』の事を、殷雷は知っている。

――が、まぁそれはそれとして。
「シエスタのことは分かった。それは良しとする。
 ……俺の最初の質問、覚えてるか?」
そもそもの厨房に来た目的はシエスタではない。
いきなり話が脱線したため、忘れるところだった。
804名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 00:52:29 ID:9bY/7YZ+
モット伯さよならw 支援
805封仙娘娘異世界編 零の雷 4/5:2007/10/08(月) 00:52:48 ID:eNQ80iBN
「……ルイズがさっきから見当たらんのだが、何処に行ったか知らんか?」
最初の質問を一言一句違わず繰り返す。
マルトーは、さらりと答えた。
「だからその話をしてたんじゃねえか。さっきから。
 見たよ。モット伯とシエスタが話してる時、たまたま近くにいたみたいでな」
――ちょっと待て。まさか。
「着いて行っちまったよ。一緒にな」

……な。

「なんだとォォォォォ!?」


――『蜂引笛』。
その音色を聞いた者を魅了する能力を持った、笛の宝貝。
有効射程は、音の届く範囲全域。

対象は『異性』。

異性でさえあれば、後は無差別にして、無条件である。

 *

殷雷は頭を抱えていた。それ以外にどうしろと言うのか。
武器の宝貝である殷雷にとって愛だの恋だの惚れた晴れただのは専門外であり、
気迫が半減するのだ。
はっきり言って、『関わりたくない』という点では彼の知る全宝貝の中でも十指に入る。
「でも、関わらなきゃならんのだろうなぁ、成り行き上……」
シエスタだけならまだしも……と言っては悪いが、ルイズまでも連れて行かれてしまったとなると
流石に放置は出来ない。不本意ではあるが、使い魔としては。
「その……何とか言う笛を奪っちまえばどうにかなるんじゃねえか?」
マルトーに声を掛けられた。
実際、そうするしかないだろうとは思う。とは言え。
「……『元々俺たちの物だから返してくれ』何て言ったところで返してくれる訳は無し。
 金で解決するような話でもない」
そもそもそんな金も無い。
――となるとやはり、強硬手段に訴えるほかあるまい。
マルトーが手を叩く。
「女装して魅了された振りをして近づくってのはどうだ? あのスケベ野郎も女相手なら油断するだろ」
何てことを思いつくのだこの親父は。
どうせやるのは自分ではないと思って適当なことを言って――いるようには見えない。
真剣そのものだ。余計質が悪い。
殷雷が文句を言おうとしたその時。

「――面白い手かも知れないが、それは無理だね」
突然響く第三者の声。
金髪の男が、厨房の入口にもたれ掛かっていた。
薔薇を片手に気取るその男の名は、
「……ギーシュ・ド・グラモン」
「Yes,I am!」
で、あった。
806名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 00:53:25 ID:QDxK2pK5
支援
807封仙娘娘異世界編 零の雷 5/5:2007/10/08(月) 00:55:11 ID:eNQ80iBN
フフン。
ギーシュは優雅に笑った。
……つもりなのだろうが、その姿は何故か滑稽に見えた。
貴族嫌いのマルトーは、さっさと厨房の奥に引っ込んでしまった。
「話は聞かせてもらったよ。ルイズが大変なことになっているようだね」
要は盗み聞きである。
「女装してモット伯に近づこう、なんて考えているようだが、そんなことはやるだけ無駄だよ」
考えたのは俺じゃない、と突っ込みたかったが、話の続きを聞く方を優先する。
「君の顔が女装向きじゃない、とかそう言う話じゃないんだ。

 モット伯に対して、性別を偽るのは絶対に不可能なんだ」

真顔で断言する。その言葉には確かな裏付けがあるらしい。
父から聞いただけで実際に目の当たりにした訳ではないが、と前置きしてギーシュは続けた。
「彼の女好きは有名だからね。妻や娘を取られまいとして、男の振りをさせる人も結構多いらしいよ。
 逆に、女の格好をして近づき、連れて行かれた女性を取り返そうとした人もね。今の君たちみたいに。
 でも、彼は騙されない。絶対にね」
冗談を言っているようには見えない。
「それは魔法の力、なのか?」
「そんな魔法はないよ。少なくとも聞いたことはないね。
 純粋な眼力……いや、そんなもので済まされるレベルじゃないか。
 膨らんだ布団だけ見て、中に居るのが男か女か分かる、とも聞いたな。
 ……生まれ持った才能なのか、鍛錬によって会得したのかわからないけど」
常人ではあり得ない『力』。しかもそれは魔法によるものではない。
当然、宝貝でもないだろう。
……とんだところに超人が潜んでいたものだ。
「『ヒヨコの雄雌判別選手権』で五年連続優勝したって話も聞いたな」
「……そんな大会があるのか」
無駄な技能の有効利用とはこのことか。
……優れていればいるほど馬鹿馬鹿しい技能というのはある意味貴重かもしれない。

まぁ、ともあれ女装作戦は却下と。そもそも採用する気もなかったが。
「夜闇に乗じて忍び込むか、通り魔的に襲いかかって奪うか……」
窃盗か強盗か。……どちらにしても泥棒には違いないが。
「最近モット伯は屋敷の警備を強化してるらしい。もちろん外出する時もね。
 仮にそれを突破できたとしても、それで終わりじゃない。
 彼自身が『トライアングル』のメイジなんだ。
 たとえ君でも一筋縄ではいかないだろうね」
『トライアングル』というのが如何ほどのものなのか殷雷には分からないが、
少なくともギーシュとは比べ物にならないだろう。
ギーシュはニヤリと笑う。
「簡単にはいかない。……君一人では、ね。

 僕も協力させてもらうよ。モット伯のやっていることは、全ての男と女に対する冒涜だ」
真っ直ぐ、殷雷の目を見て言った。その瞳に一切の翳りはない。
……疑う訳ではないが、一応釘を刺しておく。

「笛を奪った後、自分で使おうなどと考えるなよ」
「……………………」
ギーシュが硬直した。
「……おい」
「し、し、失敬だなキミは! そんなこと考えてないよ!! 君が言うまで考えもしなかったよ!!
 いや、でもそいつがあれば……ち、違う!!
 そんな物使うのは、男として最低だよ! 絶対に許されない行為だよ!!
 だから、ええと……と、とにかく、僕はそんな物使わ、使わないんだから! 勘違いしないでよね!?」

……余計なことを言って、無駄な葛藤を植え付けてしまったかもしれない。
808名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 00:58:38 ID:kHagpqgE
急においしくなってきたww支援
809零の雷の人:2007/10/08(月) 01:03:27 ID:eNQ80iBN
以上です。
モット伯に変な設定付けちゃったけど、大丈夫かな……

……あ、最初に出て来たオウムの名前、本当は出すつもりだったんですが、
完全にネタネーミングなんで、どうしようか迷ったあげく伏せました。
正直どうしたものか未だに迷ってたり。まとめの方では出すかもしれません。

あと、修正。
3/5の「……だが、突然態度が変わったんだ。急にポッ、て赤くなったんだよ。」は
「……だが、急に態度が変わったんだ。ポッ、て赤くなっちまって。」に。
「突然」が連続してちょいと見苦しかったので。

もうひとつ。4/5の「着いて行っちまったよ」は「付いて行っちまったよ」の間違いです。


何で投下前に気づかないかなぁ……
810名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 01:04:42 ID:ecEesWa4
まさかのギーシュツンデレ化
811名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 01:11:26 ID:yeeh/Fjh
小小ネタ

「あんた誰?」
「あんた呼ばわりはやめてください。仮にも一応、僕は神なのですから」
812ゼロの守護者:2007/10/08(月) 01:12:04 ID:nlw4ul0o
さて、誰もいなければ投下いたしたいですがよろしいでしょうか?
813名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 01:12:12 ID:L6p+xQRb
モット伯がステキ過ぎるw
なにその無駄なエロ技能ww
814名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 01:13:59 ID:gx4GEmAM
支援いたします
815名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 01:16:13 ID:lq3eiWp+
なんつー超人モット伯ww
いいぞそういうのはもっとやれ
816ゼロの守護者:2007/10/08(月) 01:17:35 ID:nlw4ul0o
トリステイン魔法学院教師、炎蛇のコルベールは目の前の男を見つめた。
 ルイズ・ド・ラ・ヴァリエールが『サモン・サーヴァント』の魔法で呼び出した一人と一匹の片割れである。
 目を覚ましたとの侍女の報にルイズを連れて駆けつけてみれば、いきなり踵を鳴らして口を開く男がいた。
 しかしながら彼の言葉は今までに聞いた事もない響きであった。
 それに驚きはしたが、今コルベールのすべきことは明白だった。
 コルベールもかつては軍人であり、目の前の男も制服やその態度からすれば軍人であろう。記憶にない動作ではあるが、軍人がそれをする以上はそれは敬礼である筈だ。ならばそれに答えぬのは非礼に他ならない。
「トリステイン魔法学院教師、“炎蛇”のコルベールです」
 返礼するコルベールに、新城は内心で胸を撫で下ろした。
 相変わらず言葉は解らないが、目の前の男が礼儀を知る人物であることは間違いない。
 ならば捕虜である自分に対して非道な行いをされることもないだろう。
「え、えっと、トリステイン魔法学院二年生、ルイズ・ド・ラ・ヴァリエールです」
「魔法学院侍女……ええと、侍女でいいんですか? シエスタです」
 ぎごちない手つきで敬礼の真似をして口々に言う二人の少女を見やり、新城は一瞬だけ唇を歪めた。
 子供が軍人の真似事をするべきではない、と新城は常々思っていた。
 なぜなら軍人とは人殺しの同義語であるからだ。
 だがここでは、自分の敬礼に対して返礼を返してくれたその思いを尊重すべきであろう。
 一度咳払いをし、真面目な顔を作ると少女たちに頷いてみせる。
 その様子を見ながら、コルベールは新城の危険度に対する評価を一段階下げた。軍隊の礼儀を知り、子供にすら礼を尽くすことを知る軍人ならば、無軌道に暴れることもないだろう。上官からの命令である場合を除いて、だが。
「申し訳ないが、ここはどこだろうか。そして、僕の剣牙虎はどうなったかご存知ならば教えて欲しいのだが」
 同じ内容を新城は<帝国>語と<皇国>語で繰り返すが、やはりコルベールもルイズも首を傾げるばかりである。
 もしや自分の<帝国>語がおかしいのかとは思うが、それでは彼らの言葉が聞きなれない理由にはならない。
 しばし考えると、一つづつ疑問を解決していくことにした。
 両の拳を握ると自分の上唇に当て、上下に動かす。つまりは剣牙虎の牙を模した形である。
 どうやらこれは通じたようで、ルイズがぱっと顔を綻ばせると新城の手を取って引っ張った。
 剣牙虎の元へ連れて行ってくれるつもりなのだろう。ならばそれを拒む理由は無い。
 医務室のある水の塔から、使い魔たちの厩舎のある学生寮へと向かう。
 その途中、何気なく空を見た新城は驚きに目を見開いた。
「光帯がない、だと?」
 そこには慣れ親しんだ夜空を分割する光の環はなく、代わりと言うように二つの月が浮いていた。
「これはどういうことだ、あれはなんだ?」
 手を取るルイズに尋ねるが、やはり答えはない。
 足を止めた新城を苛立たしげに振り返り、手を握るのを片手から両手に変えて引っ張る。
 新城は逡巡したが、やがて力を抜いてルイズが導くのに任せた。
 天体の異常などは後で尋ねればいい。なにしろ自分がここでやきもきしてもどうにもならぬ。
 剣牙虎の元に連れて行ってくれるというならば、そちらを優先すべきだと思ったからだ。





817名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 01:18:24 ID:upbQd3zn
>811
ルイズと楓はよく似てるからちょうどいい遊び相手になるかもね。
悪口を聞き逃せないから、あっさり帰っちゃいそうだけど。
818名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 01:19:35 ID:WbRDW9X0
うぬれ、よもや命運盤をそのように使うとはー。
爆さん出るか出ないかはまだわからんが、楽しみだぜ。
819ゼロの守護者:2007/10/08(月) 01:22:05 ID:nlw4ul0o
 厩舎に入ると、待ちかねたような吼え声が聞こえた。
 その声に新城の頬が緩む。彼の戦友にして幼馴染みである剣牙虎、千早である。
 例え幾百の剣牙虎の中にあってもその声を間違うことだけはありえない。
 思わず走り出そうとする身体を、しかし腰に力を入れて止める。
 将校はいかなる時もあわててはならない。そう定められているからだった。
 ただし一瞬の強張りを未だ手を握ったままだったルイズから隠し通すのは無理だった。
「どうしたの?」
 振り向いて尋ねるが、新城はただ首を振るだけで答えた。
 あるいは傷が痛んだのかと思ったルイズだったが、新城の顔を見てそれが違うと解った。これは痛みをこらえるというより、嬉しさを抑える顔だ。つまりは、それほどあの虎が心配だったのだろう。
 どうやら悪い人ではないらしい、とルイズは思った。
 なにしろ言葉が通じないと解って最初に気にしたのがあの虎なのだ。
 どのような関係かは知らないが、お互い大切に思っているのは間違いない。
 なにやら座り心地の悪い視線から逃れるように厩舎に入った新城だが、そこにいる使い魔たちの姿を見て目を見開いた。
 フクロウや蛇、カラスなどという新城にも馴染み深いモノに混じり、六本足の蜥蜴や巨大な目玉、蛸人とでも評すべき奇怪な生物たちが集められている。
「これは一体」
 呆然としていたが、足は止めずに厩舎の一角を目指した。そちらから懐かしい視線を向ける剣牙虎を見つけたからだ。
 その途中にあることに気がつく。ここにいる動物たちは、その殆どが一種類につき一匹ずつしかいない。もちろん数匹まとまっているものもいるがそれはむしろ少数派だ。つまりはこの動物たちは鉄虎兵隊のように軍役に使われる為に集められたのではないということだ。
 それに種類にしても戦闘には役立たないものが混じっている。即戦力として使えそうなのは千早と、その横にいる翼龍くらいか。しかし待てよ、翼龍の体色はあんな青かったか?
「無事だったかい、千早」
 声をかけると忠実な剣牙虎はその主人に身体をすりつけ、甘えるように二度鳴いた。その身体にも包帯が巻かれていることを見て取った新城は、それを指差して少女を見た。
「これは、きみが?」
 言葉は解らぬともニュアンスは感じ取ったのだろう、ルイズが頷くと新城は彼には珍しく満面といっていい笑みを浮かべた。
「ありがとう。心から感謝する」
 新城という男の顔は凶相といって差し支えない。少なくとも、女子供が好んで近づきになりたがる類の顔ではなかった。
 だが意外なことに、笑みを浮かべたその顔はひどく印象が違った。奇妙な朗らかさがある。見惚れるということはないが他人、ことに部下を安心させる顔である。
「どういたしまして」
 ルイズもまた微笑むと、一歩下がって新城たち主従の邪魔にならぬようにした。
 それが正しいと思ったからだった。
 見ればコルベールもシエスタも温かい目でこちらを見ている。
820ゼロの守護者:2007/10/08(月) 01:24:29 ID:nlw4ul0o
ルイズは教師の下へ行くと、少し逡巡したあとで口を開いた。
「先生、質問があります」
「何だね、ミス・ヴァリエール」
「もしもわたしが、あの虎と『コントラクト・サーヴァント』をした場合、彼はどうなりますか」
 そうだね、と一度言葉を切り、コルベールは渋々と説明した。
「おそらく、どこかへ移って貰う事になると思う。ここは魔法学院で、多くの貴族の子弟が通う場所だ。
 そして言葉が解らないが彼はどこかの国の軍人のようだ。そんな人物をここに滞在させるわけにはいかない」
 予想していた通りの言葉に、ルイズは軽く眩暈を覚えた。
 一つ息をついて、腰を下ろして虎の喉を撫ぜている軍人を見やる。
 彼と虎が強い絆で結ばれていることは明白だ。そんな二人、いや一人と一匹を引き離すのは嫌だ。
 郷里にいる自分の姉を思い出す。優しい、大好きなちい姉さま。飼っている動物がいなくなっただけで悲しむカトレア姉さま。
 もしも自分がそんな非道なことをしたと、彼と虎を引き離したと知ったら、きっと姉さまは悲しむに違いない。
「じゃあ、彼と『コントラクト・サーヴァント』をしたら、あの虎はどうなりますか」
「そうだね、なついているようだし、ここで飼ってもいいのではないだろうか。勿論世話は彼にしてもらうが」
「そう、ですか」
 俯き、心を整理する。
 悪い人間ではない、それは確かにそうだろう。あそこまで獣になつかれるのだから。
 それに礼儀正しくもある。扉を開けて入ってきた自分たちに敬礼し、礼を返したら頷いてくれた。
 引っ張ればおとなしく厩舎まで来たし、虎の手当てについてお礼――――だろう、たぶん――――も言ってくれた。
 なんてことだ。否定する理由がないじゃないか。あっても彼らを引き離す理由にはなりえない。
 ルイズは観念すると口を開いた。
「コルベール先生。わたしは彼と契約することにします」
821ゼロの守護者:2007/10/08(月) 01:27:33 ID:nlw4ul0o
以上です。
なかなか新城らしさが出ないなぁ……
822名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 01:28:01 ID:kHzS+5wO
「これで終わりよ!」
ミス・ロングビル、いや土くれのフーケが勝利の雄たけびを上げる。
学院の宝物庫から盗み出された破壊の杖を巡る戦い、今この激しかった戦いに終止符が打たれようとしていた。
ルイズの死という形で−。
「ルイズーーー」
すでにぼろぼろのキュルケが叫ぶ、起き上がる力のないタバサが倒れたままルイズの最後を見届けようとし、同行した
メイド、シエスタは骨が折れ血が吹き出ている片腕を押さえ、唇をかみ締めている。
キュルケの炎をかき消し、タバサの風にもびくともせず、シエスタの放つ祖父伝来の秘技エクスカリバーをもってしても
崩れなかったゴーレムの一撃がか弱いルイズを潰そうとしていた。
しかし、当のルイズは杖をかまえたまま動かない。恐怖で足がすくんでしまったのか?いや、違う。
彼女の目はゴーレムの一撃が目の前に迫ってもなお恐怖に怯えることなく敵を打ち砕かんとする覇気にみなぎっている。
(私は−誓ったんだ、姫様の力になると。必ず破壊の杖を取り返して見せると!)
だが、そんなルイズの覚悟をよそに無常にもゴーレムの一撃が決まった。哀れルイズは赤く染まった肉塊になっってしまった、
はずであった。
ゴーレムの一撃が決まった、その瞬間辺りは黄金色の閃光に包まれた。
「〜〜っっ!!なにが!!」
フーケが叫ぶ、そして閃光が収まるとピシピシとルイズを潰したゴーレムの腕が砕け始めた。
「な・・・、あれは!!」
キュルケが叫ぶ。
「ルイズの・・・・・使い魔・・・・・」
力なくタバサが呟く
「おじいちゃんの言っていた事は本当だったんだ・・・」
シエスタが痛みに耐えながら呟く
ルイズの目の前には・・・・金色のオーラを放っているクロス、ジェミニのゴールドクロスが浮かんでいた。
カシャァァァァン
瞬間、ジェミニのクロスがバラバラに分解し各パーツがルイズの体に吸い付くように装着されていく。
本来はアテナを守る為に黄金聖闘士にのみ纏うのを許される黄金聖衣が、この気高い覚悟を秘めた少女を主と認めたのだ。
トランス状態にあるルイズの両手が交錯し、星々が砕けた。
ギャラクシアンエクスプロージョン
星々をも砕くとさえ言われる双子座の聖闘士最強の技、ゴーレムは再生する暇もなく原子単位で砕かれ
土くれのフーケは天高く舞い上がる。ここに破壊の杖争奪戦は決着を迎えた。
823名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 01:28:05 ID:yeeh/Fjh
打ち切りに泣いた支援
824名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 01:29:36 ID:lq3eiWp+
御大の新刊はいつ出んだろうなあ……
825名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 01:30:19 ID:HJeJy0Xy
GJ!
新城が新城らしくなるのは戦場だから仕方が無いと思われる

そういえば新城はライフルの柄で敵を撲殺するくらいは可能な戦闘力持っていたな
826名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 01:31:40 ID:gx4GEmAM
何故に打ち切りになったのか未だに理解できない
827名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 01:31:48 ID:e0+eCiEB
基本軍人だから普通に人間を殴り殺せるくらい鍛えられてるものと思いますがブラザー
828名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 01:34:29 ID:KahHvO1g
>>826
ここで言うのもあれだけど、原作者のチェックが遅すぎて入稿が間に合わんかったらだよ。
それで原作者と出版社側でトラぶって喧嘩別れみたいになった。
829名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 01:36:09 ID:0D5AvcMN
つか皇国は撲殺描写すごいよな
折れた首に引っかかって抜けないとかぶっさした銃剣が折れるとか
実際あそこまで人が壊れるのかと怖気がたつよな
830名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 01:46:09 ID:BzEzR80W
>>828
原作者ってつまり…御大?
831名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 01:57:16 ID:L6p+xQRb
ある意味「遅いからこそ御大と呼ばれるのだ!」的な所があるからなぁ、小説ファン界隈。
832名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 02:00:16 ID:yeeh/Fjh
森岡浩之とかね。
次はお待たせせずに済みそうですってオマエもう3ねn(ry
833名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 02:01:21 ID:BzEzR80W
本当にここで言うのも何だけど、
バスタードぐらい図太く生き残って欲しかったなあ。漫画版皇国。
834名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 02:02:19 ID:LmVWJgFf
デーヴの遅筆は異常の域だろ・・・
835名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 02:05:48 ID:yeeh/Fjh
月と闇の戦記の時はやたら速かったクセにあの野郎…
つうか紋章発売当初小学生だった俺がもうすぐ社会人になろうとしてるってのに戦旗がWまでしか出てないって何だよw
連載にしろや}{gaeといいたくなる
836名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 02:12:42 ID:BzEzR80W
古橋もシスマゲドンや全1巻のはいいからタツモリ書いてくれ〜
837名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 02:17:47 ID:Mgu35R2t
ここで地球防衛軍3のストーム1召喚。
…と思ったんだけど、デルフの出番がないからやめ。
838名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 02:20:59 ID:nUpAbRrw
ギルティギアのファウストなら
ドクターウェストと張り合えると信じてる
839名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 02:21:13 ID:dPq+kfOy
わかった! デーブやガイエが遅筆なのはどこか異世界に召喚されてるんだよ!
840名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 02:29:57 ID:e3kasjc5
 リアルバウトみたいだな……
841名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 02:33:15 ID:yO3YXVwC
まぁ、御大のあれは遅筆ってものじゃないがなもうw
もう新刊なんてでるはずないんだ・・・・・・
842名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 02:33:21 ID:a6X3MtFZ
>>837
デルフは…ほら銃剣みたいな感じで、え〜と・・・照準助けるみたいな?
正直ストーム1ってゲーム中じゃ喋らないし(やられ声は有る様だが)人間性わからないからなぁ
小ネタならともかく長編には向きそうも無いね
843名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 02:47:47 ID:n0nj3ep9
>>836
新刊を求めるあまり黒杖と9とタツモリがごっちゃになった夢を見た
起きたら鼻血出てた
844ゼロのgrandma:2007/10/08(月) 02:54:03 ID:z2HuXgEb
今、行っても大丈夫ですか?

立ち会い業務が終了したので、投下してから爆睡しようかなと。
845名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 02:55:18 ID:e0+eCiEB
お仕事お疲れ様です。
投下支援を始めます。
846ゼロのgrandma 1/6:2007/10/08(月) 02:55:44 ID:z2HuXgEb
大きく息を吸う。
胸を張り、腕をゆっくりと上へ。そのまま横に下ろしてから前に。
その際、ゆっくりと息を吐き出す。
多少熱っぽいが、それは体の代謝機能による対応が順調な証拠。
一部断裂していた各所の神経や筋組織も、ほぼ繋がったようだ。五感にも憂慮すべき点は無い。
肩廻りに違和感が残るが、これはさほど問題では無いと思う。体全体の痛みも、どうやら無視出来るレベルに落ち着いたようだ。

頭の中でラジオ体操終了のナレーションが響く中、リンディは姿見の前で再確認する。
「うん。やっぱりこの方が、身が引き締まるわね」
白色系のストレートパンツにワイシャツ。薄い青のネクタイに、紺に近いジャケット一体型の変形コート。足下は同色のショートブーツ。
提督職を務めていた頃からの管理局制服だ。それが何故ここにあるのだろうか。
実は、これは昨晩リンディが生成したバリアジャケットなのである。つまり魔力にて編んだ防護服。
肌の露出部分も、不可視状態の物で同様に覆われている。それでいて、行動の妨げになる事は一切無い。
防御魔法そのものを物理的な服として着込むそれは、物理・魔力的な外的作用を防ぐ、強力な結界と言えた。

形をこれに決めたのは、自身の心構えを改めるためだ。

現在のところ、悪意に類する人間関係は無い。衣食住揃った環境を与えられ、それでいて大きな義務も生じていない。
未知の世界に単独で放り込まれたにしては、随分と幸運な状況。
――放り込まれること自体が不運ではないのか、というのは、まあ別の話としておいて。
もちろん、これからいくらでも状況は変わる可能性は高い。予想外の苦難もあるだろう。
それが自分だけなら構わない。
常にやるべき事をやってきた自負もある。結果如何に関わらず、それらは全て、自分一人に帰依するものだ。
だが。
自分を使い魔としたルイズが、それらの全ての事柄を、座視しているだけとは到底思えないのだ。
あの意地っ張りで、我が儘で、高潔な少女は。

そもそも、そんな義務など有りはしないのに。
実際には存在しない契約。
当事者であるリンディが、罪悪感や責務を感じるのは、欺瞞だろうか?
いや。欺瞞でも構わない。自己満足でも良いはずだ。
この世界から帰還するまで、あるいは命尽きるまで、自分はルイズを守る義務を負った。それでいい。

さらに、昨晩コルベールから聞いた、ディテクト・マジックなる魔法。
意識の無かった自分に行使されたらしいが、活動中の場合、どういう結果が出るか全くわからない。
希少な才能が必要なのでは無く、どちらかと言うと倫理観によって使用制限のある魔法の存在を聞いて、リンディは覚悟を決めた。
不可解な存在と思われるのは、この際仕方が無い。どう繕っても事実は事実。
しかし、自分の魔道師としての力に、利用価値があると思われては困るのだ。
847ゼロのgrandma 2/6:2007/10/08(月) 03:00:53 ID:z2HuXgEb
客観的に言って、自分は注目に値する力を持っている。
この世界の魔力行使がどういうものかは知らないが、こちらが異質であることは間違いない。
詳細な把握をされてしまう事で、もしかしたら、自分にも伺い知れない利用法を発見される可能性もある。
それは極めて不本意ながら、他世界への干渉結果として現れてしまうだろう。

それ故のバリアジャケット。
探知魔法の解析力が不明とはいえ、不意の使用にだけは対処出来る。
魔力を帯びた物質、と認識はされるだろう。それでも詳細な原理の解析だけは防ぎたいのだ。
もちろん、これで防げなければ諦めるしかない。その時はその時。

(それと、これは特に大事にしないとね)
胸元に光る、子供たちから貰ったブローチ。
向こうから持ってきた、数少ない物の一つ。誕生石の原石をクリスタルで包んだ、簡素だが質の良い一品だ。
両手でそっと触れ、手袋をしていない左掌を返す。
そこに刻まれたのは、この世界では彼女しか読めないだろう五つの文字。ルイズの使い魔としての表向きの証。
「さあて。じゃ、今日から色々と、頑張ってみることにしますか!」
リンディはベッドへと振り返った。まだ寝ているルイズを、そろそろ起こさねばならない。

ちなみに、久々にやってみたラジオ体操は、娘が小学時代の夏休み中に毎朝やっていたのを、一緒に覚えたものである。

   ◆  ◆  ◆

昨日の夕刻。
先ほどの涙を無かった事にしたいのか、ルイズは済ました顔でティーセットを抱え、戻ってきた。
顔には全く跡を残していない。きっと念入りに顔を洗ったのだろう。
(本当、意地っ張りな子よね)
リンディは笑うのをこらえると、
「あの、ルイズさん?」
出来る限り不安そうな顔で、声をかけた。
「――え、あ、なによ」
訝しげに、先に届けられていた同じ物を見ていたルイズは、リンディからの呼びかけに慌てて向き直った。
「わかってるわよ。夕べからずっと寝てたんだから、のどが渇いているんでしょ?」
「えっと、そうじゃなくてね」
恐る恐る、という感じで、リンディは左の掌を開いて見せた。
刻まれた不可解な文字。
「今まで気付かなかったんだけどね。いつの間にか、こうなってたの」
848名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 03:01:30 ID:evjIZRdS
支援
849ゼロのgrandma 3/6:2007/10/08(月) 03:01:58 ID:z2HuXgEb
「――っ!」
大きく目を見開くルイズ。
「な、何でしょうね? もしかしたら、使い魔になるとこういう風になるのかなー、なんて」
「…………」
無言のまま動かない彼女の様子を、リンディは上目遣いでこっそり伺う。
(だ、駄目かしら。やっぱり)
と、思った瞬間。

ガシャン、と抱えていた物を落とす音。
「あ」
一瞬、うわー掃除が大変そう、と思ったリンディに、ルイズが勢いよく抱きついてくる。
(ちょ、ちょっと待って?!)
などと思っても、制止出来るはずもなく。
胸元に飛び込まれ、力一杯体を抱え込まれた途端、脳天を突き抜ける程の痛みが全身を襲う。
いやもう背骨がへし折れたとか、それどころじゃないような。
「――いっ」
景気の良い悲鳴を上げそうになったが、リンディは何とかそれを飲み込んだ。
自分の胸に顔を埋め、震えているルイズを見下ろす。
(もう。せっかく顔を洗ったのに、台無しじゃない)
わざわざ確認することもない。声を出さずに泣いているはずの少女の頭を、ゆっくりと撫でる。
ルイズは小さな声で、何かを繰り返している。
それは謝罪の言葉。
リンディは溜息を吐くと、上を向いて、ぽつりと一言漏らした。
それが同じ内容だったということに、少女が気付くはずも無かったが。

激痛で半失神状態のリンディを見て、ルイズが慌てて教師を呼びに行ったのは、そのすぐ後だった。

「大丈夫ですか? ミセス・ハラオウン」
「ええ、まあ」
「それは良かった。目立った傷病は無いようですが、とにかく安静が一番です」
部屋の隅で縮こまるルイズに、ちら、と目をやってから、コルベールは頷いた。
治療を施した教師は既に退出し、部屋には三人だけとなっている。
「それで、いかがでしょうか?」
「見せて頂いたルーンですが、正直申し上げて全く見覚えのないものです。判断は難しいですが――」
彼はルイズの方へ向き、軽く咳払いをした。
「コントラクト・サーヴァントは、無事成功したものと認めよう。ミス・ヴァリエール」
「は、はい」
複雑な笑みを浮かべるルイズに、コルベールは微笑んだ。
「少々トラブルもあったが、君はしっかりと結果を出せた。以後も努力を怠らないように」
「ありがとうございます」
「それと、ミス・ロングビルに伝言を頼めるかね。この件についての書類を、取り纏めて頂くように」
「え、今からでしょうか?」
「すまないが」
「……はい、わかりました」
ルイズは戸惑ったように返事をすると、リンディと一瞬視線を合わせてから退出した。

850名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 03:04:13 ID:e0+eCiEB
支援いたします
851ゼロのgrandma 4/6:2007/10/08(月) 03:04:25 ID:z2HuXgEb
「さて」
コルベールは、ベッドの脇の椅子に腰を下ろした。
「お伺いします。――お話を聞かせて頂けますかな?」
「申し訳有りません」
しばらく視線をぶつけあった二人は、ほぼ同時に苦笑した。
「まあ、聞かせて頂けるとは思っておりませんでしたが、そうキッパリ言われますと厳しいですな」
「すみませんねえ。大年増なもので」
おほほ、と口に手を当てるリンディに、彼はやれやれと首を振った。
「どちらにしろ、調べてもただの人間としか思えませんでしたしね」
「調べる、って、まさか?」
「いえいえ、そうではなく。失礼ながらディテクト・マジックの結果、そう出たのですよ」
非難めいた視線を受けて、コルベールは慌てたように言った。
「ディテクト・マジック?」
「はい。実は――」

ルイズが戻って来ると、ちょうどコルベールが立ち上がった所だった。
「細かいことは、ミス・ヴァリエールからお聞き下さい。こと先住魔法に関しては控えた方がよろしいでしょう」
「怖がられるのは嫌ですしね。平民って思われた方が楽みたい」
「昨晩の件については――幾人かの目撃者はいるものの、短い時間だったためか、さほど大きな話題となっておりません」
「そうですか」
「ミセス・ハラオウンと直結して考える者もいないとは思いますが、注意してください」
「わかりました」

「何の話してたの?」
コルベールが去った後、ルイズは同じように椅子に座った。
「んー、使い魔って何をすればいいのかなって」
「そ、そうなの」
話し難そうにしている様子に、リンディは思いついたように言った。
「昨日は寝不足だったんじゃない? 早く寝た方がいいと思うけど――ベッドはこれ一つしかないのよね?」
「……う」
「わたしは今夜、どこで寝ればいいの?」
「え、あ、えっと」
「もし良かったら、一緒に寝かせてくれないかしら?」
済まなそうな顔で見上げるリンディに、ルイズは顔を赤らめた。
「い、いいわよ。体調悪いんだから仕方が無いわよね。うん、それくらい許してあげるわよ」
「ありがと♪」
「……リンディ、あんた、わたしを微妙に子供扱いしてない?」
楽しそうに微笑んだリンディを、ルイズは真っ赤な顔で睨み付けた。

その夜。
気が抜けたのか、すぐ寝入ってしまったルイズの横で、リンディは幾つかの結論を出した。

   ◆  ◆  ◆

852ゼロのgrandma 5/6:2007/10/08(月) 03:06:52 ID:z2HuXgEb
起こされたルイズは、リンディの見慣れない姿に、当然ながら驚いた。
しかし、返却された彼女の服――Tシャツにジーンズ――がマジック・アイテムだとの説明に、あっさりと納得した。
不可解がそのまま歩いているような使い魔のことだから、何でもアリと思っているのかもしれない。

「しっかし、変わったもの持ってるのね。下着だって、上は随分変わってるし」
「そ、そう?」
「あんまり聞かないわよ、あんな服。しかも特定の人が着るとそんな格好に変えられるなんて」
「わ、わたしの所では、結構当たり前だったのよ?」
そうか珍しいのかー、ブラの替えはどうしよう、とか悩んでいるリンディに、ルイズは部屋の扉を閉めながら抗議した。
「大体ね、そんな目立つ格好されると、わたしの――」
「あら、ルイズ」
唐突に開いたすぐ側の扉から、赤い髪の少女が顔を出した。
「おはよ」
「おはよう。キュルケ」
「それが、あなたの使い魔?」
渋々挨拶を返したルイズを半分無視して、キュルケはその後ろに立つ女性に目をやった。
にっこりと微笑む顔は適当に流し、胸を見て、ウエストを見て、腰回りを見て……もう一度胸を見て。
ついでに、自分の豊満な胸を見下ろしてから、ふん、と鼻息荒く断言する。
「さっすがゼロのルイズよね。平民を呼び出すなんてあなたらしいわ。――変な格好だし」
「う、うっさいわね!」
「しかも召喚した後、大怪我させて大変だったんですって? そんなひ弱な使い魔で大丈夫?」
「うるさい……って言ったでしょ」
大怪我、と言われた途端、ルイズは口ごもった。言い返せない。
昨日、キュルケに使い魔のサラマンダーを散々自慢された時、自分の使い魔はまだベッドの上だったのだから。
唇を噛みしめる姿に、キュルケは毒気を抜かれたように肩を竦める。
「ま、いっか。変な格好の使い魔さんも、またね」
何故かリンディの胸元に再度目を向けてから、彼女は足早に立ち去っていった。

(上には上がいるってことよね。ツェルプストー)
ルイズはいい気味だと思ったが、すぐに思い直した。
今の考えは自爆じゃないだろうか?
853名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 03:06:55 ID:e0+eCiEB
子供扱いも何も実際リンディさんからしてみたら子供だしなぁ。
って、もしかしたら42のコッパゲより年上の可能性があるのかこのリンディさん支援
854ゼロのgrandma 6/6:2007/10/08(月) 03:10:14 ID:z2HuXgEb
にこにこと笑顔を浮かべたままのリンディを、ルイズはじとっとした目で眺める。
特に、胸元。
「……あんたも、無駄に大きいわよね」
「ん? なに?」
「何でもないわよ!」
怒鳴ってから、ルイズは再度胸元に目を向けた。変な格好なのは間違いないが、ソレだけが浮いている。
歩きながら、何となく聞いてみた。
「それは、服が変わっても変わらないのね」
「ああ、これ?」
リンディはブローチに触れる。
「これは魔法とは関係無いからね。――家族に貰った大切な物なの」
「家族……」
ルイズは思い出した。家族。そう言えば、リンディは既婚と言ってなかっただろうか?
とすると、彼女は夫を残して、ここに来てしまったことになるわけだ。ほんの少し、胸が痛むのを感じる。
「そう。じゃあ旦那さんに貰ったの?」
怖々と口にする。
「いいえ」
少しだけ困った表情を浮かべてから、リンディはそっと微笑んだ。
「これは息子たちが選んでくれた物なのよ」
「こ、子供がいるの?!」
ルイズは青くなった。
いくら正体不明で、人間だか何だかわからない使い魔だとしても、夫や子供がいる存在を召喚して良かったのだろうか?
いや確かにやり直しは効かないけど。
それにしたって問題点が多過ぎる気がしない?
絶句したルイズに構わず、リンディは楽しそうに話し続ける。
「選ぶときは、子供たちみんなで相談したそうなの。でも、結局一番小さい子の意見が採用されたってところが親馬鹿というか」
「ち、小さい子って」
一人どころか数人?!
どう見たって、ちいねえさまと同じくらいの歳なのに?
一体幾つの時に結婚したのよ? と言うか、子供と離ればなれってことだって、凄く大変なことじゃないの?
だとしたら、何だってこんなに平気そうなのだろう、この使い魔は。
だって一生なのだから。一生家族に会えないし――いやそう言えば、家族にも羽とか生えてるのだろうか?
ぐるぐると脈絡無く、様々な考えが浮かんでくる。
ダメだ。頭の処理能力が限界一杯。
「あ、あのね、リンディ?」
「まあ、気持ちはわからないでもないわよね〜」
思い出に浸ってるリンディは、その様子に全く気付かず――あっさりとトドメを刺した。

「わたしだって、初孫は可愛くて仕方が無いもの」

「――は?」
幻聴だとかで流せるレベルではなく。
脳天を直撃したその内容に、ルイズは完全に凍り付いた。
855名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 03:14:16 ID:Qrvl/y/W
初孫めでたいな支援
856ゼロのgrandma:2007/10/08(月) 03:14:35 ID:z2HuXgEb
投下完了です。

深夜なのに、支援感謝です。
後顧の憂い無く爆睡しますです。

次は水曜日、くらいに。
857名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 03:14:43 ID:kjzRrb23
支援します
858名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 03:15:22 ID:xwak32Cr
ゼロの守護者の作者の人〜。

「ゼロの守護者」って名前が小ネタで既に使用されていたため、まとめwikiで同名ページ作成ができず
現在wiki登録上は仮の名前として「ゼロの皇国の守護者」としてあります〜。

以上、避難所にも書きましたが連絡まで…
859名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 03:15:23 ID:e0+eCiEB
ふと、リンディさんと同期のはずのレティ提督も若いままなんだろうかと疑問がわいた支援
860名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 03:17:36 ID:e0+eCiEB
おやすみなさい作者さん
夢も見ないくらいゆっくりと…
861名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 03:30:39 ID:u/JqYZkU
一本投下してよかですか?
862名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 03:33:40 ID:OcvLVDeG
道は開いている。行くが良い。
863名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 03:34:52 ID:lZARWSRE
そういやクロノとエイミィが結婚して子供二人いるんだから提督もおばあ・・・ん、誰か来た様だ

>>861
レッツ・ゴー
864使い魔!!俺?:2007/10/08(月) 03:36:41 ID:u/JqYZkU
ここはトリステイン魔法学院。
今日は二年生進級のための神聖な使い魔召喚の日だ。
そんな神聖な日に合わないゴーカイな爆発音が鳴り響く。


桃色髪の少女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは焦っていた。
まずい、このままでは本当に召喚ができないかもしれない。
そうなれば進級はおろか、もしかしたら退学になるかもしれない。
それだけは絶対にダメ!

気合を入れ直し精神を統一、改めて杖を振った。
それまでより一層大きな爆発が起こった。
周りの生徒たちがボヤいている。
「ゴホゴホ、また派手にやったな・・」
「ルイズー、もう諦めたら・・アレ?」
爆発の煙が晴れるとそこには一人の青年が倒れていた。
その青年にルイズは近づく。
「何コレ、平民?」
ルイズは青年を観察する。
身長は高いがどちらかというと華奢な体つき、髪は長く少し茶色掛かっている。
顔はなかなかの美形だ。ちょっと嬉しい。
しかし杖も剣も持っていない。やはり平民か?
「スゲーよルイズ!サモン・サーヴァントで平民を呼び出しやがった!」
その声で皆がドッと笑う。
恥ずかしさで顔が真っ赤になるルイズとは対照的に教師コルベールは冷静に声をかけた。
「何をしているのです?早くコントラクト・サーヴァントを」
「ええっ!こんな得体の知れない、しかも平民に!?」
「しかし一度呼び出した使い魔は変更できない。彼が君の使い魔です」
「ううー、もうサイアク・・」
倒れたまま動かない青年にルイズは歩み寄り、上体を抱える。
そして契約の儀式である口付けを行った。
865使い魔!!俺?:2007/10/08(月) 03:38:29 ID:u/JqYZkU
青年は唇に妙な感触を覚えたので目を覚ました。
それと同時に左手に激痛が走る!
「痛て!痛たたたたたた!何なのよ、コレ!」
「大げさなのよ!すぐ収まるから心配しないで!」
その言葉通り痛みはすぐ引いた。
目覚めた青年は状況を整理しようとした。

えーと、俺何してたんだっけ?
たしかいつものお得意さんの犬を探してて・・
いや、ダークザイドの大群に一斉に攻撃されて死に掛けたんだったか・・
とりあえず目の前にいるピンク髪のコに聞いてみるか。

「ねえ、君」
「何よ」
「俺何やってたんだっけ?」
「知るわけないでしょ!」
そんなやり取りを見ていたコルベールは青年の左手をじっと眺める。
「ふむ、珍しいルーンですね。あとで調べておきましょう。
それはともかく、これでサモン・サーヴァントは終了です。みんな教室に戻りましょう」
するとまわりの生徒たちは宙に浮いた。
「な、何だ!あいつ等宙に浮きやがったぞ!?」
「何驚いてるのよ、魔法に決まってるじゃない」
「魔法だぁ?なんつー非常識な・・」

魔法も知らないなんて・・
とんでもないハズレを引いちゃったみたい

ルイズはそう思いながら目の前の青年に尋ねた。
「で?アンタなんて名前なの?」
ルイズが聞くと青年は人懐っこい笑顔を見せながら名乗った。
「俺?俺、涼村暁。ヨロシク!」
866名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 03:39:47 ID:MU3gDn3A
しゃ、シャンゼリオン……?
867名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 03:39:50 ID:OcvLVDeG
支援を。
868名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 03:40:35 ID:e0+eCiEB
王蛇の前世キター!?
869使い魔!!俺?:2007/10/08(月) 03:40:45 ID:u/JqYZkU
「・・で、ここはトリステインという国で魔法を教えてくれる学校っていうわけね」
「そうよ、さっきからそう言ってるじゃない」
ルイズの部屋に戻った二人はお互いのことを知るため情報交換の真っ最中だった。
「なんてこったい・・信じらんねー」
「それはコッチの台詞よ!魔法も知らないしチキューとかトーキョーとか訳わかんない国の事言うし。
 ひょっとしてとんでもないド田舎出身なの?」
「だから何度も言ってるでしょーが!俺はこことは全然別の世界から来たの!」
空に浮かぶ2つの月を見ながら暁は叫んだ。
あれを見てしまったらこのように推理するしかないだろう。
納得はしたくはないが、そう理解するよりない。
「信じられないわよそんなこと!・・あーあ、みんなはちゃんとした使い魔を呼び出したのに何でこんな・・」
急にテンションが下がったルイズは悔しそうに呟いた。
「さっきから使い魔使い魔って言ってるけどそれって誰な訳?」
「アンタのことよ!アンタは私に一生仕えるってこと!」
「一生!?冗談じゃねえ!人生は短いんだ、人に仕えて一生を過ごすなんて俺は絶対に御免だ!」
暁はいきなり立ち上がると、外に出ようとした。
それをルイズは大声で呼び止める。
「ちょっと、どこ行くのよ!」
「ここを出てく!俺は使い魔なんぞにならん!」
「何よ、平民が貴族に逆らう気!?」
貴族・・その言葉に反応した暁はルイズに振り返る。
「ん?貴族?君貴族なの?」
「ま、まあ一応ね。どうしたのよ、いきなり」
「そうか貴族、貴族か・・・」
突然暁は真面目な顔になるとしばらく考え込んだ。
そして次の瞬間にはとても邪悪な笑みに変わっていた。
870名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 03:41:24 ID:o4s4vUt3
サバじゃねぇ支援
871名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 03:42:05 ID:MU3gDn3A
知っているか支援
872使い魔!!俺?:2007/10/08(月) 03:42:43 ID:u/JqYZkU
「もー、ルイズちゃんたら!俺を使い魔として雇いたいなら早く言ってくれればいいのに!」
「ど、どうしたのよ突然。いきなり態度が変わっちゃって・・」
態度を180度変化させた暁を少々不気味に思ったルイズはうろたえた。
「いやいや、平民は貴族に仕えるのが義務にして世の摂理というのが貴方様のお話でよーく理解できましたので」
ルイズは急に従順になった暁を怪しいとは感じつつもとりあえず褒められたようなので気分を良くしたようだ。
「わ、わかればいいのよ。とりあえず明日は洗濯を」
「ええ、ええ!もちろんですとも!洗濯、掃除、身辺警護ぜーんぶ請け負っちゃいますよー!」
「ま、まあいいわ。今日は疲れたから私はもう寝るわね。じゃおやすみ」
そういいつつルイズはベッドに入っていく。
「ははー、お休みなさいませ」
暁は今までしたことが無いくらいの深いお辞儀を行った。
そんな暁の様子を眺めつつルイズは満足そうにしていた。

最初は生意気な平民かと思っていたけど結構素直じゃない
使い魔としてはギリギリ合格点かも
これでもっと強そうだったらいいんだけどな

そんなプラス思考なことを考えつつルイズは眠りに落ちていった。

暁はルイズが目を閉じるのを確認すると再び邪悪な笑みを浮かべて、床の上の藁に寝転がった。
暁の頭に妄想が広がる・・

貴族のお嬢様と私立探偵の恋か・・アリだな!

「アキラ!私、家の財産なんてどうでもいいの。ただアキラさえ傍に居てくれれば・・」
「そんなことを言ってはいけないよ。愛に金があれば鬼に金棒だ!
これから二人で面白おかしく生きていこうぜ!」
「不束者ですがよろしくお願いいたします」

妄想終了。
こんな訳のわからん所に来たときはとんでもない不運だと思ったが
いきなり逆玉のチャンスじゃないの!
これってひょっとして超ラッキー?

こうしてハルケギニアにとんでもない男が召喚されてしまったりしたのだった。
873名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 03:45:46 ID:MU3gDn3A
なんという能天気……これがふんわかというヤツか。
874使い魔!!俺?:2007/10/08(月) 03:48:58 ID:u/JqYZkU
投下終了っす
読んでもらってありがとうございました
875名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 03:49:42 ID:MU3gDn3A
乙。
876名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 03:58:37 ID:raPjEgSl
リンディさんは妖精モードにはならないのか…
ちと残念。
877名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 05:12:46 ID:MxmdR1KN
そういえば、リンディさんは次元転移や次元間の念話はできないのかねぇ。
ボルケンズやプレシアとアルフかフェイトはできた筈だし。
まあ、できても管理局に取って未発見の惑星や世界とかだと帰還は絶望的だけどね。
どっちに行けば管理局の勢力圏に帰れるか解らんわけだし
878名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 05:20:27 ID:fQ0WkT+q
あれだよ、次元空間が安定してなくて暫く無理なんだよ、一期ラストのユーノのごとく
879名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 05:50:44 ID:pFTs22fm
しかし、今頃ミッドチルダじゃ大騒ぎなんだろうな。
リンディさんって結構偉いんだし、そんな人物が突然消えたんだから誘拐の可能性も含めて管理局は調査しているのかな、今頃?
このリンディさんがstsの前なのか、後なのかでなのは達の動きも変わりますし。
捜索隊にフェイトとかが志願していそうな?
880名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 05:56:08 ID:9+MH0mc3
>>879
話の流れからするとStS後だと思うが
881名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 06:15:03 ID:yeeh/Fjh
ところで、投下してもよろしい?
882モンコレから色々 見聞者ポケット編:2007/10/08(月) 06:24:13 ID:yeeh/Fjh
反応が無い=予約無し と判断した。投下しまス
覚えてる人いなさそうなので前回分と合わせて。


使い魔召喚の儀式
神聖なものであるこの儀式は、本来厳粛な空気の中で行われるものである。
しかし今、その厳粛であるはずの空気はどこにもない。
タバサを除いた、その場に居る者全員―それは監督役の教師も例外ではない―が爆笑しているのだ。
尤も教師の方はすぐにまじめな顔に戻ったが。

生徒達が爆笑したのは何故か。
それはタバサという少女が呼び出した使い魔が原因である。

その使い魔は以下のような特徴を持っていた。
・小脇に本を抱えている
・鼻の上にはちょこんと乗った小さなメガネ
・知的な瞳
・地味目の服

即ち、召喚主であるタバサに似すぎていたのだ。
それが大きなネズミである事を除けば。

当のタバサは普段の無表情を少々憮然としたものに変えていたが、そのネズミと呼ぶにはあまりにも異質なものが持つ本を見た途端にその表情を一変させた。
それは驚き。
本を持っているということはそれ即ち高い知性を持っているということである。人間の言葉を解するかどうかは定かではないが、恐らく独自の文化形態を持っているであろう。
母が煽った毒は異質な物であった。人間の創造しうる物ではない。
ならば召喚されたこの異質な者が解毒方法を知っている可能性もあるかも知れない。また解毒は出来ないにしても何らかの手がかりは得られるかもしれない。
何せ博識である彼女が見たことも聞いたことも無いのだから。
あまり強そうでないのは少々残念ではある。ではあるが、母の治療が最優先事項である。
なればこそ、この使い魔と確実に契約しなければならない。

そう決心し、一つ頷いてタバサは契約に向かった。
しかしその歩みと同級生の爆笑は使い魔の放った一言によりピタリと止まることとなる。
883モンコレから色々 見聞者ポケット編:2007/10/08(月) 06:26:35 ID:yeeh/Fjh
「ええと、僕は召喚されてしまったのでしょうか?」

その問いに答える者はいない。たっぷり30秒は経った辺りで生徒達がざわめきだした。
「コルベール先生、タバサの呼び出した獣・・・あれは韻獣にござるか?」
「左様」
「左様って・・・」

コルベールとタバサだけの表情だけが変わっていない。そう、ミスターハゲもまた呼び出されたものの特異性に気づいていたのである。
尤も内心は驚いている様で、口調はおかしくなっていたが。

一方のタバサはというと、冷静にこれを分析していた。
一般に韻獣と呼ばれる存在は総じて知能が高い。また先住魔法を操る事も多い。つまり使い魔としては「当たり」である。
その上この韻獣は本を所持していることや、学者のような風体をしていることから特に高い知性を持っていそうなのだ。
思わず顔が綻ぶ。そして再びその歩みを進めた。
そして先程の問いに答える。
「そう」
「え?」
「さっきの質問。貴方には私の使い魔になってもらう」
「使い魔・・・ですか。つまり貴方に仕えろと、そういうわけですね?」
「そう。断ったら実力行使」
「ええええええ、ひどいです!ひとでなし!」
「貴方の力が必要。・・・・・・だめ?」
「・・・・・・・ハァ。わかりましたよ、わかりましたからそんな捨て犬のような目で見ないでください」
「ありがとう」

礼の言葉を呟き、呪文を唱え、キス。
こうして異世界より呼び出されたポケット族の賢者はタバサの使い魔となったのであった。
884モンコレから色々 見聞者ポケット編:2007/10/08(月) 06:28:22 ID:yeeh/Fjh
使い魔との契約を終えたタバサは、使い魔の能力を把握せんとしていたが、背後から聞きなれた爆発音が響くのを耳にするとその開きかけの口を閉じ、召喚を試みている生徒の方へと向き直った。
自らの使い魔と同じくらいその生徒に興味があったのだ。何せ如何なる魔法を使っても爆発という現象が起きるのだ。前代未聞である。
彼女が通う魔法学校に於いて一、二を争う識者である彼女ですらその様な現象は知らない。それがその生徒に興味を持った理由だった。


その生徒の失敗魔法による数回の爆発の後、白く輝く美しい蟲が現れた。これまたタバサの知らぬモノである。
「おや、あれは轟蟲ですねえ。中々珍しい物を…」
どうやらこの韻獣はアレを知っているようだ。
「知っているの?」
「ハイ。あれはですね、轟蟲というとても硬い外骨格を持つ蟲です。産卵直前になるとえらく凶暴になって特定の蟲―鏡蟲というんですが―を捕食するという習性を持ちます。
 そしてその鏡蟲を捕食すると外骨格が更に硬質化します。さながら強化外骨かk…ゲフンゲフン。ともかく、とっても硬くなるんです。生息数は大変少ないので、こうして召喚でもされない限りはまずお目にかかれません。また……」

えらく詳しく説明された。やはりこのネズミ、只者ではないと確信するタバサであった。

延々と続く蟲に関する説明を聞いていると
「さて、最後の召喚も終わりましたな。皆さん帰りますぞ」
教師の帰還を促す声が聞こえた。話し込んでいる間に契約が終わったらしい。
さて帰るかと飛行の呪文を唱え、「ちょ、待ちなさい!」という言葉に後ろを振り返ったタバサは目の前の光景を目にし硬直。直後に意識を失った。

何が起こったのか。端的に言えば、桃色の髪を持つ生徒の使い魔が彼女に激突したのである。

ところで貴方は昆虫の腹を見たことがあるだろうか?見たことのある人はわかるであろう、昆虫の腹というのはよくよく見ると実に気味の悪いモノなのだ。
巨大な昆虫ともなればその気色悪さは数十倍(オリコ○調べ)にもなる。
そして衝突の寸前にタバサが最後に見たのは凄まじい速さで迫る昆虫の腹側。あとは言わなくてもわかるであろう。

!タバサの苦手なものに昆虫が追加されました。
885名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 06:29:11 ID:RboFMtWZ
シエン
886モンコレから色々 見聞者ポケット編:2007/10/08(月) 06:31:15 ID:yeeh/Fjh
目を覚ますと、見慣れた天上が見えた。どうやら自室のベッドにいるらしい。はて、何故だろう。
体を起こし、無表情のまま首をひねっていると
「やれやれ、やっと目を覚ましましたか。」
飲み物の載ったお盆を抱えた私の使い魔が部屋に入ってきた。
そうだ。私は使い魔を召喚したのだ。そして……どうなった?
使い魔を召喚し、部屋に戻ろうとした。そして…………


ムシコワイムシコワイムシコワイムシコワイムシコワイムシコワイムシコワイムシコワイムシコワイムシコワイムシコワイ
ムシコワイムシコワイムシコワイムシコワイムシコワイムシコワイムシコワイムシコワイムシコワイムシコワイムシコワイ
ムシコワイムシコワイムシコワイムシコワイムシコワイムシコワイムシコワイムシコワイムシコワイムシコワイムシコワイ


「蟲はイヤ!」
「はい!?何ですか唐突に」

そうだ。落ち着かなくては。感情を表に出してはいけない。落ち着け、落ち着け。
「なんでもない」
「何でも無いようには見えませんでしたがねぇ。悪い夢でも見たんじゃないんですか?」
ヤレヤレといった様子で肩をすくめるネズミ。少々腹が立ったので、それ以上この話を引っ張るなという意思を込めて睨んだ。
あまりこたえた様子は無かったが黙ったので良しとしよう。

さて。

「状況説明」
「はい?」
「私が気絶した理由と、その後の経過を報告して」
そう、まず原因を究明しなければならない。

「ええとですね、まず貴方が飛行の魔法で空に浮かびました。ここまでは覚えてますよね?」
当然、覚えている。ので、コクリとひとつ頷く。

「その直後に貴方の後ろに居た男子生徒が飛び上がったんですが、その際轟蟲―これも覚えてますか?あの白い蟲です―を召喚した女子生徒を、あの表情から察するに、侮辱したんですね。」
ここまで聞いても未だ予想が付かない。先を促す。

「それを察知したのか、その女生徒の使い魔である蟲の片方が主を侮辱した男子生徒に突進したんです。使い魔同士である為か、その蟲、面倒なので”彼”と呼びますが、彼の怒りが感じ取れましたので、まぁ間違い無いでしょう。」
なるほど。予測がついた。一応確認を兼ねて更に説明を聞く。
887モンコレから色々 見聞者ポケット編:2007/10/08(月) 06:32:59 ID:yeeh/Fjh
「で、かなりの勢いで突進していった彼ですが、その渾身の一撃をかわされてしまったんですね。それで勢い余った彼は、射線の延長上に居た貴方に激突したと。そういうワケです。」
謎は全て解けた。犯人はヤス。

「……その男子生徒の特徴を教えて」
「特徴ですか?えー……そうですねぇ、軽くウェーブした金髪でしたね。それに金属製、恐らくは青銅製の、薔薇の造花を携えていましたよ?」

なるほど。なるほどなるほど。
あのキザ男が全ての元凶らしい。フ、フフ、フ……
「ひっ!」
思わず浮かんだ笑み。それを見たネズミが何やら怯えている。どうしたの?ワタシコワイ?

「いいいいいイイエ、なななナンデモナイデス ヒメイナンテアゲテマセンヨ?エェ。」
そう。ならいい。


……あ。

「何ですか?痛いのは嫌ですよ!?」
「名前。」
「はい?」
「貴方の名前。まだ聞いていない。」
そう、唐突に思い出したが、名前を聞いていなかった。

「ああ。そういえば名乗ってませんでしたね。僕の名はラクシュン。ポケット族の長より『見聞者』の称号を賜っています。」
「私はタバサ。よろしくラクシュン」
「はい、こちらこそよろしくお願いします。」

何故こんな大事な事を忘れていたのだろう?
……ああそうか。あのキザ男の所為だ。フフ、フフフ…
私に新たな精神的外傷(トラウマ)を与えてくれたあの男。どの様に復讐してやろうか。

「ご主人、怖いです……」


一日目 終了


次の日の朝 ボロ雑巾のようになったギーシュが学園の壁に磔にされておったそうな。
888モンコレから色々 轟蟲編:2007/10/08(月) 06:34:36 ID:yeeh/Fjh
一方、この物語の主人公であるはずのルイズはというと。

幾度か失敗しながらも使い魔の召喚に成功していた。
現れたのは白色の大きな2匹の蟲である。どうやらつがいらしく、お互いに寄り添っている。
しかし姿かたちは全く一緒。見分けは付かない。

どっちがメスなのかしら。やっぱりキスするんだから蟲とはいってもメスの方がいいわよね。
でも全く外見は変わらないし……ひょっとしてアッー!な関係なのかしら。それとも逆アッー?
ハッ!ダメよルイズ、こんなはしたない事を考えてはいけないわ!あぁでもこんなに綺麗な蟲だもの。
擬人化したらさぞかし……はふぅ

この妄想は教師のツッコミが入るまで10分間ほど続いた。


「で、ですね。こういった場合どちらと契約すればいいんでしょう?」
「2匹召喚されたのなら、2匹と契約すればいいじゃない」
「なるほど合点。でもその口調はやめてください先生」
889モンコレから色々 轟蟲編:2007/10/08(月) 06:36:10 ID:yeeh/Fjh
召喚の成功、そして契約。
生まれて初めて魔法の成功を体験した私は幸福感にうち震えながら空を見上げていた。
『諦めたら、そこで試合終了だよ』安○先生、貴方は正しかった……!

と。
『私はバグ夫だ。よろしく頼むよマスター。クハッハッハッハッ!』
『ステキよバグ夫さん!あ、私はバグ美。よろしくねマスター』
いきなり大音量で声が聞こえてきた。
驚いて辺りを見回すが私に声をかけている人物なぞ見当たらない。はてな?
OK、ウェイト。そういえばマスターとか言われた。と、言うことは。

『ここだ、ここ』
『ここよ、ここ』

矢張り私の召喚した使い魔が喋っているようだ。
「あなた達、私の言葉がわかるの?」
蟲のクセに。
                                       ビキビキピキーン
『む、何か侮辱されたような電波を受信した。土下座したまえマスター』
『したまえマスター!』

何でわかるのよ……電波って何よ電波って。
「気のせいでしょ。しっかし、やっぱりわかるのね。」
これは……割ととアリかもしれない。いくら綺麗で見たことも無いとは言え蟲を召喚した時は、それってどうなのかと思ったが。

と、予想外の事に驚きつつも喜んでいると
「さて、最後の契約も終わったところで…教室に帰りますぞ」
帰還を促すMr.ゲーハーの声が。

更に
「ルイズ…お前は這え。俺は翔ぶ」
「のろのろ歩いてこいよ、ゼロのルイズ!」
と言ったおなじみの侮辱の声が降ってくる。こんなのはもう慣れっこ。スルーしつつ歩きだそうとした私なのだが

『マスターへの侮辱は私への侮辱と同義!よくも馬鹿にしてくれたなワカメ頭がッ マッハでヘブンナウー!』
私の使い魔は重く受け取ったようだ。上記の言葉を叫びつつ―尤も私にしかその声は聞こえないのだが―突進していってしまった。

「ちょ、待ちなさい!」
令○の元に命ずる!ってムリ!話違う!

                      バグ夫の暴虐を もはや何者も 止め得ず
890モンコレから色々 轟蟲編:2007/10/08(月) 06:37:29 ID:yeeh/Fjh
で、どうなったかと言うと。

「うっひょおおお!?」
という間抜けな言葉と共にギリギリの所でキザ男は身を捻ってバグ夫の突進を回避。

バグ夫はその勢いのまま延長線上に居た女子生徒、確かタバサといったか、に激突。
直後にそのタバサの使い魔の魔法によって吹っ飛ばされて帰ってきた。先住魔法でしょうね。羨ましい……

で。
『フ、今日はこの辺で勘弁しといたるわい』

勝手な行動をした挙句無関係な人間を巻き込む人身事故を起こした私の使い魔がこんな事をほざきやがりましたので
「レビテーション」

おしおきとして爆破してあげました。
後でタバサに謝らなくちゃ……ハァ。

一日目 終了
891名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 06:39:48 ID:yeeh/Fjh
以上、前回分+本日の分ですた。
続き頑張って書いてるけどデーヴ並の遅筆。だめぽ
892名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 06:50:42 ID:kSmNvk7v
>>891
やあ、名無し列翼翔士w
893名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 08:13:25 ID:18CXMv5b
もう499kbなので誘導
あの作品のキャラがルイズに召喚されました part69(実質70)
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1191599178/
894名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 08:15:29 ID:bZO2ZjCF
最近1000行かないで終わるね。
895名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 08:18:18 ID:cSC7MYI0
いいことだ
896名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 08:21:21 ID:yeeh/Fjh
いいことなのか?

>>892
諸君、私はトライフが大好きだ
897名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 08:22:34 ID:AgpErwjR
それだけ投下されてるって事だからいいことなんじゃないか?
898名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 08:26:45 ID:bFi1BDNz
スレの密度が濃くなるのは喜ばしい事だ
899名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 08:28:59 ID:2aj8+o9/
500kdなら俺にSSを書く勇気がでる。
900名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 08:31:23 ID:yeeh/Fjh
500Kbならぬるぽ
901名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 08:34:29 ID:DJO3JYW5
500kbならガッ
902名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 08:35:49 ID:UDiB1waE
500kbならアニメ3期決定
903名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/08(月) 08:35:57 ID:z6dT7NC3
500ならアンとアンアン
904名無しさん@お腹いっぱい。
俺こそが500kbを取るに相応しいっ