アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ3
349 :
手修整:
八神はやてと文字通り手痛い別れをした後。
少年パズーは、市街地の中央を目指すべく道路を東進していた。
「シータ……いるかなぁ……」
向かう先に探す少女がいるという確証はない。 だが、市街の中心部ならば人も集まるで
あろうし、その集まる中に彼女がいる確率も高いはず。 パズーは、そんな自分の勘を信じて歩き続ける。
すると、そんな時……
「きゃあっ!」
「うわぁっっととと!!」
突如、女性が路地から飛び出してきて、パズーに衝突しそうになってきた。
しかし、幸いにも、女性はぶつかる直前に立ち止まったので、双方に怪我はなく済んだようだ。
「あ、危ないなぁ……」
「ごめんなさい。少し急いでたもので……。坊やの方は大丈夫?」
「う、うん」
「そう。なら、よかった……」
女性は安堵したように息をつく。 パズーはそんな女性の様子を見て、ひとまず殺し合いに
乗ってる人物ではないんだろうなと推測する。 そして、それと同時に彼は女性のその容姿を見て、
あることを思い出した。 つい先ほど出会った少女が口にしてくれたある人物についての情報を。
「あ、あのさ、一つ聞いてもいい?」
「え?」
「あのさ……おばさん、シャマルって人?」
「……は?」
――で、次はシャマルやね。シャマルはなぁ、短めの金髪した女の子やね。年は……まぁ、あたしよりも年上っぽいかなぁ?
あたしと同じような服か緑色の騎士服を着とると思うよ。んで、一番重要なんはね……この子のバストがこれまたえろえろってところや!
金髪ショート、はやてより年上っぽい女性、軍服、そして豊かなプロポーション。
それらの情報から、目の前の女性を“シャマル”と推測したパズーだったが、どうやらそれは違ったようだった。
女性は、そんなパズーの事情を聞き、納得すると手短に自己紹介をする。
350 :
微修整:2007/10/03(水) 00:04:26 ID:ngcg/2zP
一方、所変わって市街地外縁部にある中華料理店内部。
そこには二人の女性がいた。
「まーったく! 飯出す場所だってのにシケてんねぇ、この店はぁ!」
一人は恰幅のいい中年女性。 彼女は、厨房の奥にあった冷蔵庫を漁りながら、文句を垂れていた。
「これじゃ、うちの船の厨房の方がマシだよ」
そう言いつつ、中年女性は冷蔵庫から肉や野菜などの食材を回収してゆく。
そして、そんな女性の傍で何もすることなく立っている華奢な少女が一人。
「あ、あのドーラさん。何をしていらっしゃるんですか?」
「何って、食べるモンを探してるに決まってるじゃないか!」
「でも、食べるものでしたら、元々カバンの中に……」
「あんな味も素っ気も無いモンだけなんかやってられるかい。――ったく、爆弾と刀渡すくらいなら、飯もいいのをよこせってんだよ、あの螺旋王とやらも」
ドーラと呼ばれた女性は、ブツクサと文句を言いながらも冷蔵庫漁りを続ける。
どうやら、彼女には腰に差す刀の他に、見慣れた爆発物を支給されたようだ。
『ドイツの滑空王も愛用の逸品』と書かれていたが、別にそのようなことはどうでもいいことだった。
「ほらよ、受け取りな!」
そして、ドーラはその冷蔵庫の中から何かを掴むと少女に投げて渡す。
「え? あわわ!!」
少女が受け取ったそれは、チャーシューとレタス(生)であった。
「ニア、女の子だったらね、ちゃんと栄養あるもん食べないとダメなんだよ」
「どうしてですか?」
「どうしてって……そりゃあ、ちゃんとしたもの食べないと肌にも悪いしねぇ、それになによりイザって時に力が出ないだろう」
「なるほど! 確かにそうですね!」
ニアと呼ばれた少女は無邪気な笑みを浮かべる。
それを見たドーラは、やや苦笑気味だ。
「まぁ、そういうことだよ。分かったら少しはかじっておきな。そろそろ腹も空いただろう?」
「そうですね。それでは頂きます!」
笑顔のままニアは手にしたチャーシューをかじり、咀嚼する。
続けて、レタスを一枚ちぎると、それも口に。
「おいひいです!」
「あぁ、分かったから、一々感動したように言わんでおくれ」
「らっへ、おいひいんですもの」
「あのねぇ、女の子だったら食べながら喋るんじゃないよ。そんなんだと男に逃げられちまうよ」
その言葉にニアは口を閉じると、食事を中断する。
「……ん、どうしたんだい? もう腹一杯になっちまったのかい?」
「いえ……。ただ、シモン達も今頃おなかをすかせていないかと思ってしまいまして……」
351 :
微修整:2007/10/03(水) 00:07:06 ID:cJ0LWB60
「そ、それで、話は変わるけれど一つ聞いて良いかしら?」
「ん? 何?」
「そのナイフで思い出したのだけれど、坊やが配られたのはそれだけなの? 他に武器は?」
「う〜ん、実はこれ、さっき言った神父から貰った物なんだ。僕のカバンに入ってた武器はヘンテコな銃くらいで――」
銃、その言葉にリザは目を見開く。
「坊や、その銃っていうのはどんな物? 年式は? 拳銃かしら? それともライフル?」
「うぅん。トリモチと飛ばすオモチャみたいな奴だったんだ。ハヤテって人に渡したら、一応武器になるって言ってたけどね」
パズーの言葉にリザの表情は一気に落胆に変わる。 オモチャでしかも他人に譲渡した後では、
全く話にならない。 やはり、警察署を頼るしかないようだ。
「……あ、そうだ。もしかしたら僕に使い方が分からないだけかもしれないから、僕の支給品見てみる?」
「いいのかしら?」
「まぁ、僕はこれがあれば何とかなるし、使い方分かるならあげるよ」
リザはパズーから渡されたカバンを受け取ると、その中身を確認する。
するとまず出てきたのは、タロットカードだ。
『殺人事件の見立てに使われた曰く付き』と記された縁起でもない説明書が梱包されていたが、
実際の所は何の役にも立たなそうだった。
そして、次に出てきたのは、親指ほどの大きさをしたプラスチック製の何か。
透明で中には金属で出来た何かが入っており、説明書には『大容量16M!』と書かれていたが、リザには何のことかは理解できない。
「……どう? 役に立ちそう?」
「残念だけれど、私にも使い道は見出せそうにないわね」
「そうかぁ……」
デイパックをパズーに返すとリザ達は再び歩き続ける。
すると、直に彼らは大通りが分岐するT字路にたどり着いた。
「ここを左に行けば、市街地の中央。デパートみたいな施設が集まっている地点ね」
「うわぁ、なんか要塞みたいな建物が一杯見えるなぁ……」
辺境の鉱山街暮らしが長かったパズーにとって、日が昇りかけて明るくなりつつある空に照らされる無数のビルディングは圧巻だった。
「デパート経由でも北上すれば警察署は近い……か。なら、大佐達を探す意味でもそっちを回ってみても意味がありそうね……」
地図を見ながら考え込むリザであったが、それと対照的にパズーは浮き足立っていた。
「ねぇ、早く行こうよ。シータがいるかもしれないんだから!」
「え、えぇ、そうね……」
「よし、それじゃ行こうか、おばさん!」
――ぷちん。
ここまで保ってきたリザの理性は、そこで勢い良く切れた。
そして、彼女は少年の肩をつかむとその頭頂部目掛けて……
――ごちん!
それはパズーにとってはデジャヴュな経験。
だが、彼にはなぜそうなったのか、未だに理解できずにいた。
――――――おばさんとおばさま。
――――――その呼称は時に人に安心を、またある時は痛みを呼び起こすものであるようだ。
修整乙