アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ2
惨劇の後、士郎は気がつくと、川原で佇んでいた。
静かな音を立てて流れる川に向けていた視線を、星の瞬く夜空へ向ける。
星が、自愛に満ちた母親をかたどっているように錯覚した。
少し視線を下げると、繁華街が見える。だが人の気配はなく、寂れた感じを受けた。
ため息をつき、光成が言った殺し合いをしてもらうという言葉に呆れながらデイバックをあさった。
武器には興味は無い。適当な魔術用トレーニング機器が無いか探しているのだ。
もっとも、無くても構わなかった。上は繁華街、重りになるものなど、いくらでもあるだろう。
この殺し合いという異常な場でも、士郎は強くなる事を第一に考えていたのだ。
しかし、中から見つけたのは、食料や地図など以外には紙があっただけだ。
光成から自分に対するメッセージがあるのかと思い、強化外骨格「零」と書かれた紙を開いてみる。
ドズンと、重い音が静かな川原に響いた。
紙を開くと同時に現れたカバンに驚き、紙を上下を反対にしたり、上を見たり、下から覗いたりする。
それは不気味に思っての行動ではなく、単純に好奇心から紙を隅々見ているように見えた。
その彼に、カバンから声がかけられた。
『少年、現在の状況の報告をお願いする!』
一瞬、士郎はポカンとするが、気を取り直す。
「 そうか、あんたが強化外骨格「零」というのか。俺は士郎、よろしく」
『了解。士郎は我々の名を知っているのか。覚悟の行方を知らぬか? 最初の場所で悪鬼に宣戦布告を行った男だ』
「ああ、あの人か。強そうだったな。ごめん、今は知らない」
『そうか……』
気落ちしている零に苦笑を浮かべる。随分と人間臭いカバンだと士郎は思ったのだ。
「そう落ち込むなって。俺も、覚悟って奴に会いたいから、探すの協力するよ」
『まことか!!』
「ああ。その代わり、覚悟って奴との手合わせをお願いしてもらえないか?」
『何故だ? 回答を求む』
「親父を超える為さ……」
『父親?』
零に対して頷く。彼の胸中にあるのは、なぜかかの世界最強の男に挑む、自分の母親。
彼女の、最初で最期の母親としての言葉が、士郎の胸を焦がす。
復讐の念と、最強の渇望を混ぜて胸に無理矢理秘めさせる。
タイガーコロシアムを通じて、最強となるべく戦っているのか、タイガーに対して復讐する為強くなっているのか、多少分からなくなっていた。
それでも、母親の死は今の自分の原点といえる。ゆえに、彼は強くなり続ける事をやめない。
例え、それが途方も無い道のりだとしても。
「ああ、地上最強になる、それが今までの俺だし、これからの俺だ。 そのために戦い続ける必要がある」
『士郎。父親を超えるのは男子の本懐! なんら恥じることなど無い!!』
「ありがとう。そろそろ行こうか。覚悟に会うんだろ?」
言いながら、無造作にカバンを掴む。その士郎の様子に、零は慌てる。
『待て! 我々の重さは……』
「よっと」
士郎は難なく、カバンを担ぎ上げた。
その様子に、ほう……っと零は吐息をつく。
「これくらい重いほうが、ウェイトトレーニングとしては丁度良いさ。いや、軽いくらいかな?」
『ふむ。随分鍛えているようだ。これなら、覚悟ともいい勝負になるかもしれない』
「もちろん、そのつもりさ。そして、勝つのも俺だ」
『言うではないか。覚悟との再会、楽しみが増えた』
士郎は笑みを浮かべて、川原を駆けた。
一人と三千の英霊が宿ったカバンは、宵闇に包まれた道を何の恐れも無く進み続ける。