アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ2

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143戦う運命  ◆CDDi1fgMw2
『周囲に人影なし』
「そうか……寂しいもんだな」
 カバンを担ぐ少年が、一人呟いていた。
 浅黒く鞣革のような皮に巌のような鍛え抜かれた肉体を持っているが、その顔は幼く、年の頃は十七といったところだった。
 第三者がこの光景を見ていれば、不審に思っただろう。
 少年、衛宮士郎は一人しかいなかった。なのに、「会話」をしている。
 彼はカバンを担ぎ直し、川沿いに土手を駆ける。
 街灯は点いているものの、人影は一切なく、精神の弱いものなら異常をきたすような、不気味な光景だった。
 もっとも彼、衛宮士郎にとって、この程度の不気味さなど意にも介しなかった。
 彼は十三という若さで、一人で山へ篭り夜叉猿という化け物と戦いへ向かったのだ。
 不気味と思う感情など、そのときにどこかへと置いてきた。
「本当に殺し合いなんて行われているのか? タイガーは戦いを見るのは好きだけど、殺し合いを楽しむような人とは……」
『だが、あの女は少女を殺した!』
「……そうだよな。あの娘、死んじゃったんだよな。タイガーさんのせいで」
 士郎は光成に対して、少なからず感謝していた。
 自分は死闘を何度も経験する必要があると感じ、死闘の機会が多いタイガーコロシアムへの参加をタイガーへ願い、叶えてもらった。
 今の自分があるのは、タイガーのおかげだといって良い。
 そのタイガーが、殺し合いを始めた。それが自分や範馬独歩や拳王と名乗った男だけの戦いなら分かる。
 「世界で一番強い」という男なら一度は憧れ、捨てる夢を今だ求め続ける馬鹿だからだ。
 そういった男は、死闘の果てに命を落としも恨み言はない。
 光成もそういう男たちの戦いが見たくて、地下闘技場トーナメントを開催したはずである。
 なのに……
「殺しちまったんだな。タイガー」
 ひたすら冷たく、腹の底から響く声で確かめるように、もう一度告げる。
 女が死ぬのは、母親が殺されたときから、士郎の望むことではない。
『応。我々がすることは、民間人の保護! そのためには覚悟と再会する必要がある!』
「分かっている、零。何度も聞かされたって」
 カバンから声が上がり、それが自然であるかのように士郎は返事をする。
 彼は一時間ほど前に、零と名乗るカバンと出会った事を思い出していた。