リリカルなのはのクロスSSスレその7

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585名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/21(土) 10:04:22 ID:oLAH5mrK
投下したなら(ry
586激突する力(なのはStS+φ’s正伝):2007/07/21(土) 10:04:31 ID:aFTljlG5
『今回皆と模擬戦を行なうのは訓練の話を聞いてぜひ協力させてもらいたいと自ら立候補した……』

降り立った巧はシャーリーの適当に並べ立てられた美辞麗句を耳に入れながら準備運動をしていた。
熱さに関わることが巧は嫌いだがだからといってこのような薄ら寒くなるような話が好きなわけじゃない
……この熱さだというのに作業着で隠された中はほとんど鳥肌状態だった。

(人が涼んでたとこにいきなり呼び出しておいてこれかよ……くそったれ)
『ねえファイズ君? ちょーっとだけ付き合ってくれないかなー?』
「くそったれ! ちくしょう!」
借りがあったとはいえあのような怪しさ全開な言葉に付き合った自分の愚かさに腹が立つ。
頭の中がしだいに熱を帯びていくのが嫌になりデバイスを起動させようとしたが
目の前にいた4人組もどうやら自分のデバイスを持っていたらしく起動させたのはほぼ同時だった

「マッハキャリバー!」「クロスミラージュ」「ストラーダ!」「ケリュケイオン……」
「「「「 セ ッ ト ア ッ プ ! ! 」」」」
“スタンバイレディ”

「くそったれ……仕方ねえ。ファイズメモリー、いくぞ!」
"Mode Set“Normal Faiz”Standing by!"
「変身!」"Complete!"

5人はそれぞれのバリアジャケットを装備し、魔力を変換した力を送るための道が浮かび上がる
巧のデバイスがジャケットと融合し赤い光が広がるのを見て場にいる全員が少し驚く。
暑苦しい空気が遮断されるこの瞬間が巧はたまらなく好きだった。

〔ちょっとなにアイツ? 模擬戦の前なのににやけた顔しちゃって……〕
〔頬も緩んでる……ひょっとしてあの時に頭がおかしくなったんじゃ〕
〔変な目で見るんじゃねえ! いったい何考えてやがったんだおまえら〕

直接口で言えば簡単にことは済むのだがたまには念話を使って突っ込んでみた
一定期に使わなければいつやり方を忘れてしまうかわからない……巧は物覚えがあまりよくない
ただでさえ仕事に厳しい啓太郎のクリーニングのまともな手伝いができるようになるまで数ヶ月掛かった
……たったの3日で完璧にできるようになっていた真理が未だに信じられない

「見たことのないタイプのジャケットとデバイスだね……」
「ユニゾンデバイス……にしては人格がないみたいだし……」
『それはこれから明らかになりますよ! さーって』

なのはとフェイトを差し置いてシャーリーが嬉しそうにモニターを制御する
587激突する力(なのはStS+φ’s正伝):2007/07/21(土) 10:14:36 ID:aFTljlG5
『午前はストラーダとマッハキャリバーのデータを取ります!』
「はい!」「わかりました!」
『射撃魔法は禁止! 接近戦だけで相手してね!』
「ってちょっと待て! まさか午後もやるのかよ!?」
『そうそう、午後は4人のコンビネーションプレーでやるからね?』
「4vs1……苛めと何が違うんだそれは!?」
『大変そうですねぇ? でも、楽しいですよねー♪』
「・・・・・」

歯牙にもかけずに口にした。この瞬間巧はようやく悟った、こいつには何を言ったところで無駄だろうと
馴れ馴れしいだけならともかく人の話を聞いてない……いや聞いてるんだろうが
おそらく何を言ったところで自分の意見は変えないだろう。こいつはマイペースすぎる。

『それじゃあなのはさん、お願いします!』
「うん、わかった。それじゃ……午前の部最後の訓練、特殊模擬戦・・・レディー、ファイトっ!!」
(特殊ってなんだよ……)
突っ込む気力も惜しい巧は大人しく訓練に付き合うことにする・・・負けを認めたような気がした。

「スバル、思いきりぶつかってきなさい!」
「エリオくん、気をつけて!」
「わかった!」「うん!」
〔じゃあエリオ、わたしが先に相手をするから……〕
〔わかりました!〕

ティアナとキャロの言葉に力強い答えを返しエリオとスバルが迫ってくる巧に向かって突っ込んでいく
一瞬自分が傷つけた頬のことが頭を過ぎったがこうして模擬戦に出られるという事は大丈夫ということだ
そう自己暗示をかけマッハキャリバーをさらに加速させ右腕をしならせながら歩いてくる巧に急接近。

(手加減はできない……勝負っ!)
(よりによっていあいつか……殺されたくねーな)

かち合う巧とスバルの目線、お互いに受け止め先制攻撃をしかけようとするスバルにやや遅れる巧。
姉直伝のシューティングアーツが巧を襲うがわずかに動いただけで回避される
スバルの気合に気圧されたのかはたまた最初からやる気がないのか距離を離した巧を追った。
顔面を狙うリボルバーナックルとマッハキャリバーを狙うローキックが同時に繰り出された。

「うおおおぉっ!!」
「……ちっ!」
ナックルを避けずに額で受けても蹴りを止めない巧、デバイスには当たらなかったがブーツに直撃。
体勢を崩すが転び慣れているためすぐに立て直すスバルと後ろに仰け反りながらも踏ん張る巧。
588激突する力(なのはStS+φ’s正伝):2007/07/21(土) 10:23:21 ID:aFTljlG5
額に受けたリボルバーナックルが効いたのか少しふらつく……確認したがどうやら割れてはいないらしい
「ああやって切り返すなんて……やっぱりすごい!」
「何嬉しがってやがるんだよおまえは!」

相手が想像以上に強いことを知りスバルの心は燃え上がるがそれとは対照的に
フィールドがなかったら間違いなく額が粉砕されていたと感じる巧は恐怖で心が冷えていく
しかもスバルが嬉しそうに笑う場面を見てさらに増大していく不安。
過去の傷の一部……というか火傷の跡がほんの少しだけ痛んだ。

「けど、これからが本番だよ!」
「何・・・!?」

反応が一瞬遅れた、スバルの膝蹴りが身体に減り込む。好機を逃がさずリボルバーナックルを放つ
生み出された衝撃波と共に殴りつけ吹き飛ばす、リボルバーキャノンが巧のこめかみに入った。
倒れた巧を追いながら繰り出される蹴りが数回。なおも巧は避ける、全部避ける
対するスバルも独楽のように身体を回しつつ蹴った。攻撃が速く拳も警戒するためにさばくのが精一杯。
少々乗り気じゃなかった巧は並のオルフェノクを軽く凌駕するほどの少女の動きに戸惑っている。

「この……しつこいぞおまえ!」
「こうでもしないと君には勝てないの!」
「なんでだよ!?」
「絶対にあのキックは打たせないよ!」

それは新人フォワードの間で決まったことで既にエリオとキャロにも伝えてある。
スバルとティアナにとって記憶に刻まれたクリムゾンスマッシュの威力は脅威となっていた。
エリオがキャロのツインブーストを受けてやっと倒したガジェットを瀕死の重傷の身で一撃……

(殺されてたまるか……!)
「まだまだぁ!!」

恐怖を拭い去るためにもなおも迫り来てラッシュをかけてくるスバルの攻撃を受けながら
心を決めた巧は容赦をかなぐり捨てていつも通りに戦うことにする。
いつもファイズとしてオルフェノクと戦ってきたように、いつも通りに戦うことに。

「はあっ! ……う!?」
「たまにはこっちにも攻撃させろ!」

突き出してきた左拳を避けつつ掴みそのまま押すようにして動き壁に追い詰める
もがいて振り解いたスバルの顔をぶん殴りよろめかせたところにバリアジャケットの裾と襟を掴み
自分ごと建物に向かって体当たり。壁が壊れたが多少の物理攻撃なら勝手に守ってくれる為気にしない。

「痛…くうっ!?」
「やられた分は返す!」

倒れたスバルを引き摺り起こして打ち上げる拳、よろめいたところに放った拳が突き刺さる。
自分の手首を掻き鳴らしながら一発、また一発と的確に殴る。がら空きの腹部に執拗に連打を続ける。
スバルのガードが下がった瞬間顎を跳ね上げる。躊躇う必要はない、仰け反ったところを蹴り飛ばした。
589激突する力(なのはStS+φ’s正伝):2007/07/21(土) 10:30:06 ID:aFTljlG5
一度攻撃に入らせたらこの女は手がつけられない。だから手を出す前に倒すか、あるいは
「くぅっ……だあっ!」
(次が来る前に入れて、止める!)

スバルが拳を振り被ったところに巧の蹴りが突き刺さる、よろめいた最中に目の前まで前進
繰り出した蹴りは避けられさらに殴られる顔面。攻撃が来たら避けて殴る、ただそれだけ。
こういう単純な作業は巧にとって容易い。少なくともクリーニングで啓太郎に認められるよりかは
「ううっ……まだまだっ!」
「まだやる気か」

殴っても殴ってもその度に立ち向かってくるスバルの頑丈さに再び恐怖を感じる巧
軽く30は殴っただろうか、いい加減に巧も固めた拳が痛くなってきた
"φ's Shot Ready"
一撃で決めるべきだと考えた巧は生成したブラッドスフィアを変換させる
デジタルカメラ型パンチングユニット、『ファイズショット』を右手に握り締めた

“リボルバーキャノン” "φ's Shot Exceed Charge"
同時に音声が鳴り響きそれぞれの魔力を込めた右拳同士がぶつかり合う
鍔迫り合いのような状態になり次第に押してきたのは巧。
体力が落ちていたスバルのリボルバーキャノンでは巧の一撃を押し返すことは不可能。

大地を揺るがすほどの衝撃を放つ必殺拳『グランインパクト』が直撃した瞬間、動かなくなる少女
その身体に"φ"の紋章が刻み込まれがくりと項垂れる……声をかけるが応答はない。
呼吸があることから死んではいないようだが立ったままで気絶した、ということだろうか?

「―――だああぁっ!!」
「ちっ、新手か!?」

気絶した少女を蹴り飛ばすことも考えたがまた一瞬躊躇した、瞬間何かが割り込んでくる
巧が後退すると同時に上がった砂煙の中から現れたのは赤い髪をした子供の男だった。
年は10に届くかどうかで背は小さい……どう見ても戦うような人間には見えない。
その少年――エリオ・モンディアルが動こうとしないスバルの殴られた痕跡を見て怒りに震えた

「今度はガキかよ? まったく何考えてやがるんだこいつらは!」
「ひどい、ここまで痛めつけるなんて……こんな戦い方! あなたはそれでも騎士なんですか!?」
「そんなこと俺が知るかよ。……くだらねえこと言ってる暇があったら、さっさと来い」

気だるそうに手招きする巧(実際にはいつもの癖で手首を回していただけなのだがそう見えた)
のその言葉を聞いたエリオは怒りでストラーダを握り締める手に力が入る。
一人前で立派な騎士を目指しているエリオは聖王教会の騎士である巧との戦いを楽しみにしていた。
しかし正々堂々とは思えない立ち振る舞いの挙句に近づいて追い討ちをしかけようとするとは……

自分の理想の騎士像を汚されたと思ったエリオはストラーダを構え高速攻撃を仕掛ける。
当然巧には怒られる理由を完全に理解することはできない。
590激突する力(なのはStS+φ’s正伝):2007/07/21(土) 10:38:41 ID:aFTljlG5
「許さない……ストラーダ、いくよ!」
“ソニックムーブ”

巧の目の前からエリオが消えた瞬間、身体に突き刺さる衝撃。最初は腹部次は背中その次は足……
まるで電気が全身を走るかのように痛みが駆け巡っていく……違う、実際に電気が走っている
自分が魔力を光と血に変換できるようにあの少年は電気エネルギーに変換できるのだろう
防御に回る巧の頭の中に声が聞こえてくる、エリオが念話で話しているのだ

〔信じられない、あなたが聖王教会の騎士だなんて……!〕
〔……ああ、まったくだな〕
(まだ速く走れる! そうだよね、ストラーダ!)
“OK,フルドライブ”

歯牙にもかけない巧に反応しさらにスピードを上げていくエリオの動きは目で追えないほどとなる。
文字通り雷のごとき動きに戸惑い攻撃の糸口をつかめないまま傷つけられていくバリアジャケット。
その執拗なまでの攻めに巧も次第に苛立ってきたが今は我慢するしかない
モニターで見守っていたなのはとシャーリーも目まぐるしく動くエリオについていけない
ただ1人、エリオより性能の高いソニックムーブを自在に操るフェイトだけは別だったが

「デバイスの力なのかな? この前のシュートイベーションのときよりスピードが上がってるよ……」
「すごいでしょう? そろそろなのはも4人を同時に相手にするのは厳しくなってくるかもね」
『でもなのはさんたちにはリミッターもありますし、まだまだ大丈夫ですよ!』

そんな会話が呑気に交わされていることなど露知らず巧は防御に回りっぱなしだった。
傷つけられている間にも念話は止まらない、なぜこうまで傷つけたのか
それは騎士の道に反しているふと先ほどのエリオの言葉が思い出される。
“こんな戦い方をするなんて、あなたはそれでも騎士なんですか!?”

〔立派な騎士は誰かを守るための存在なのに……なぜであなたはこんな誰かを傷つけるような戦い方を〕
〔おまえもべらべら喋る奴だな……つーかうるさいからいい加減口を閉じやがれ〕
〔あ・・・あなたって人はぁ!!〕
〔騎士がどれだけ凄いか知らないが……おまえの考えを俺に押しつけんな、迷惑だよ。〕

只でさえ堪え性がない上に先程から我慢の限界を超えていた巧は大人げない言葉を叩きつける
しかも自分の年の半分に満ちてるかどうか分からない相手に向かって
念話で話しているのだから口は最初から開いてないのだが考える間もなく
頭部に振り下ろされたストラーダを両腕で掴み受け止められたエリオの目が驚愕で開かれた

「……どうだ? 捕まえてやったぜ」
「まさか!?」
591激突する力(なのはStS+φ’s正伝):2007/07/21(土) 10:46:45 ID:aFTljlG5
『0.1秒後出しだ! 俺はファイズだから超人的な動態視力でどんな後出しジャンケンも見逃さない』
じゃんけんに負けた言い訳の筋を通すための手段として以前真理と啓太郎に向かって口にした言葉。
あれは苦し紛れの発言だったとは思うが別に巧は嘘を言っていたわけではない
“動態視力”とそれを最大限に活かす“反射神経”はウルフオルフェノクとして覚醒していた巧にあった。

気が動転したエリオは自分の魔力を全開にしてロケットを吹かし魔力の雷を使いとなんとかして
巧の手を振り解こうとしたがうまくいかない。エリオは焦っていた。
ストラーダのロケットを全開で噴射しているのに腰がやや落ちた程度で防御は抜けない
『スピードだけが取り得』と自称してはいたがまるで通用していないのに驚いていた

現に巧には先ほどのソニックムーブとの応用で与えたダメージもまるで意味がなかった。
せいぜい鬱陶しさに苛ついたくらいでスバルの重い攻撃に比べると、軽い
子供はあくまでも子供、要するにエリオそのものの力はとても非力なのだ。
そして何よりもファイズとして戦った最後の敵、ホースオルフェノク……
自分の夢を絶望の闇に閉ざされてしまった男が繰り出してきた剣と比べるとあまりにも重みも、力もない。

「そんな……ストラーダが、押し返され……!?」
「子供と遊ぶのは別にいいんだけどな……」

不意に海堂が可愛がっていた勇介の無垢な顔が浮かぶ、今ごろどうしてるのか。もう会えないのか……
その気持ちをぶつけるかのごとく言い放った巧は腕を瞬時に振り上げエリオごとストラーダを押し返す。
身体が軽く握ったストラーダとごと宙を回転するエリオに叩き込まれる一撃。

「ガキに痛めつけられんのは大っ嫌いなんだよ!!」

背中に突き刺さった巧の蹴りはエリオの身動きをとれなくさせるダメージを与えるには充分な重さだった。
手加減はしなかった。散々痛めつけたんだからこれくらいしてもいい。先ほどの言葉へのお返しもある。
人を裏切るのが嫌な巧だが、だからといって要らぬ期待に答えてやるほど酔狂でもない。

「……おいシャーリー、聞こえたか? さっき言ったとおり2人とも倒したぞ」

倒れたまま動かなくなっているエリオと未だに動かないスバルをしばらく見つめたままで通信をする。
シャーリーから咎められたが巧は黙ったまま空間シミュレーターから立ち去ろうとした。
確かに少々やり過ぎたとは思う、模擬戦とはいえ本気を出せと言われたが確かにここまでやる必要もない
あの子供が言ったことも少しはわかるがだからといって謝る気にはなれない
――不意にめきり、と何か音がした。何かが身体に減り込んだような感覚が巧を襲う

「――ぐ、っ・・・え?」

背中に激痛が走った、突然のことだった。衝撃が身体を貫通していく。膝ががくんと折れた。
心臓が爆発したような感覚がしたがそれは痛みから来る錯覚。だが少なくとも巧には現実に思えた。

『え? 何今の声……どうしたの、ファイズ君?』
「……なんでもねえ、通信は終わりだ!」

シャーリーがまだ何かを言っているが話している暇はないため一方的に通信を切る巧。
592激突する力(なのはStS+φ’s正伝):2007/07/21(土) 10:52:51 ID:aFTljlG5
何が起こったのかは背後を振り返るだけでわかった。呼吸が少し苦しいが立ち上がって戦闘態勢を取る
拳を突き出したまま立ち尽くしている青髪の少女の姿……模擬戦はまだ終わってないということらしい

「おまえ、騙し討ちなんて趣味があったのか……?」
「・・・・・」

巧の問いにスバルは答えない、動かない。その顔に表情はなかった、自分がやったことを理解していない。
唐突にマッハキャリバーの車輪が動く、さっきの不意打ちで動きと反応が若干鈍くなってしまった
攻撃を仕掛けてきた。しかしさっきから何か様子がおかしい、何も答えようとしないならともかく
なぜか動きが先程より速くなっているような気がする……自分が遅くなったのか? 答えは否

(こいつ、まさか……攻撃に躊躇いがなくなってるのか!?)
「ハァァァァァ・・・・ッ!!」

リボルバーナックルを叩きつけ壁まで吹き飛ばした巧に向かってさらに拳を突き出す
避けた巧の後ろを容易く破壊しローラーブーツを振り上げて巧の顔面を狙う。
顔面への致命傷は避けたがバリアジャケットに一本の線が入る、車輪で切られたのだろう
よろめいた巧を追って再び回し蹴りを叩き込むスバル、ガードした巧が吹き飛んだ。
腕の骨が軋む。攻撃力も上がっている、一体何が起こっているのかわからない

「……“ロードカートリッジ”」
「!! "φ's Pointer Ready"」

リボルバーナックルが回転したのを見て背筋が寒くなった巧は反射的に右手のファイズショットを外し
再び形状変化、デジタルトーチライト・ファイズポインターを右足部分に装着して置き上がる
技の体勢に入ったのはほぼ同時。スバルは拳を引いて構え、巧はやや腰を落としてエネルギーを装填。

“ディバインバスター” "φ's Pointer Exceed Charge"

先に動くのは巧、低く跳び上がって空中回転。足を伸ばして必殺の一撃の準備を始める
狙ったのはスバルの前に生成されている魔力スフィア……前の戦いの時に技の概要は聞いている
巧の魔力を注ぎ込んだ真紅のポイント弾が青色のスフィア弾に当たり開いた。
巧ごと撃ち抜くために構わずに魔力スフィアに向かって拳を打ち込むスバルとポイント弾に蹴り込む巧。

「「――――うわあああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」」

ディバインバスターとクリムゾンスマッシュがぶつかり合う瞬間、周囲に魔力と共に異常が走る
サーチャーの全機能が一瞬だけ停止する、巧が初めてこちらに来た時と同じことが起こった
相殺した魔力に飲み込まれた巧はどこからか漂ってきた匂いに意識を持っていかれる

それが不意に周囲を取り囲んでいた花びら――薔薇の匂いだと巧が気付く時には岩壁に叩きつけられていた。
593なのはStS+φ’s正伝:2007/07/21(土) 10:59:52 ID:aFTljlG5
投下完遂・・・前の投下から一週間、遅くなって申し訳ありません
戦闘シーンを考えるのは時間がかかる上につい長くなるから困ります
ディバインバスターvsクリムゾンスマッシュは書く予定になかったのですが……

まああの敏樹様も『いいんだよ、そういうのが面白いんだからさ』
とおっしゃってくださってるのだからいいということにしています
新たな仮面ライダークロスの人も出てきましたしますます負けてられない……
既に負けてるかもしれませんが。そして皆さん本当にGJ
そして更新の速さに少し嫉妬……しながら今日はここまでです
594名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/21(土) 11:05:19 ID:sdqgALNg
巧容赦ねえなぁ。
取り合えずエリオは、鉄パイプで素振り100本かな?
595217:2007/07/21(土) 11:41:11 ID:9SUqeDny
なのはStS+φ’s正伝氏の言うとおり、皆さん投下が速いですね〜

各職人の方々GJです!そして、感想の一つも書かないで申し訳ない・・・
なんだか便乗するような形ですが投下↓
596217:2007/07/21(土) 11:50:30 ID:9SUqeDny
リリカル魂 第二話「魔法と管理局」


「さてと、まずは援護ありがとっ。時空管理局民間協力者の高町なのはです。
じゃあキミの名前と所属世界、それと・・・そのロボットは?」
砂漠に降り立ち、二人に質問をするなのは。
「「・・・」」
固まってる。
「ねぇ、ちょっと?」
「あ。えーと、俺の名前はイッキ、天領イッキ。そんでこいつは」
「オレはメタビーだ。それより・・・・時空なんたらって何だ?」
ロボットが思いのほかスラスラと喋ったことに多少驚きつつも、
「ん〜、詳しい話はアースラに行ってから教えるよ。
それで、イッキくん達はどこから来たの?」
(いや、だからアースラって何だよ?)
新たな単語に頭を捻るメタビー。その横でイッキは、
「どこからって・・・・っていうか、ここは地球、なのか?」
知っているかぎり、地球の砂漠にあんな怪物が住んでいるなんて聞いたことがない。
「確かに似てるけど、ここは地球の砂漠じゃないんだ。
その様子だと自分達で転移してきたってわけでもなさそうだし・・・・
つまり、イッキくん達は別世界に飛ばされてきちゃったってことになるね」
え?何言ってんのこの子?・・・・イッキとメタビーは呆気にとられる。

「とにかくアースラに戻ってからちゃんとお話しよ?
 何があったか分からないけど怪我もしてるみたいだし。
――エイミィさん聞こえますかー?要救助者+αの保護完了。転送お願いしま〜す」
『はいはーい、お疲れ様!すぐに送るからちょっと待ってね』
「ちょ、ま、待てよ!何だよ別世界って?人の話を聞k――」
「おい!その+αってまさかオレのこt――」
最後まで言い切る前に、3人は灼熱の大地から姿を消した。
597217:2007/07/21(土) 11:52:35 ID:9SUqeDny
「転送完了っ、そろそろ戻ってきますね」
「うん、大した異常じゃなくて良かったわ。それにしても『+α』って何なのかしら?」
なのはの言っていた「要救助者+αを保護」の後半部分がちょっと気にかかるリンディ。
救助されたのは年齢的にあまりなのはと変わらない少年のようだが、
それにどんな『おまけ』がくっついているのか。

ほぼ同時刻、アースラの転送ポートに少年と少女とロボットが到着した。
「うわっ、どこだよここ!?ってか俺たちって今まで砂漠にいたのに・・・」
いきなり光に包まれたと思ったら次の瞬間には見知らぬ施設の中にいる。
一体自分はどこにいるんだとキョロキョロするイッキ。
「・・・つまり、ここがさっき言ってた『アースラ』ってやつなのか?」
一方で、メタビーは冷静に状況を見て質問した。
「そうだよ、時空航行戦艦アースラ。ちょっと待ってて、クロノくんを呼んでくるから」
「いや、その必要はない」
メタビーに応えてから歩き出そうとするなのはを制した声の主は、
全体的に黒い服に身を包んだ少年。時空管理局執務官クロノ・ハラオウンだった。
「緊急の用事を頼んですまなかった、なのは。で・・・救助したのがその少年か?」
労いの言葉をかけるクロノ。そして、先ほどから落ち着きのないイッキを一瞥した。
「うん、天領イッキくん。それとそのロボットはメタビーくんっていうんだって」
「・・・そうか、自己紹介が遅れてしまったな。
僕は時空管理局の執務官、クロノ・ハラオウンだ。
天領イッキと、メタビー・・・だったか? 色々と聞くこともあるから
ついて来てくれないか」
言いながら既に歩き出しているクロノ。なのはもその後ろについて
「こっちこっち」と手招きしている。
メタビーも二人の後に続いて歩き出したが、ふと振り返り、
(・・・まったく、あいつは・・・!)
「おいイッキ、いつまでキョロキョロしてんだよ? 置いてくぞ」
メタビーの声に、待てよ〜と言いながら追いかけていくイッキ。

「ふーむ、つまりその『メダロット』で戦っている最中に事故が起きたわけね?」
管理局による簡単な手当てと身体検査を受けた後、イッキとメタビーはアースラの
食堂に案内された。そこで待っていたのは一人の女性。
この戦艦の艦長、リンディ・ハラオウンだった。
クロノとなのはも立会い、互いに自己紹介を済ませ今は事情聴取の最中である。
最初の内こそ「別世界って何だ〜!?」とか何とか騒いでいたが、
3人掛かりの熱心な説明により、ようやく理解できたところだ。
598217:2007/07/21(土) 11:54:22 ID:9SUqeDny
「事故っていうか、とにかく電撃を食らって・・・気付いたら砂漠にいたんです」
頭の包帯を指で触りながら、イッキは在りのままを話した。
「なるほどね、イッキくん本人にもなぜだか分からない、か」
顎に指を添え、難しい顔をするリンディ。
9歳の子どもの話からでは、やはり元いた世界の詳しい情報は得られない。
聞く限りでは、どうやらこちらがまだ認知していない世界の住人のようだ。が、
断片的に聞いた内容が、なのはの住む地球のそれと酷似しており、
しかも彼らの世界でも『地球』と呼んでいるらしいことが不可解だった。
ブラックホールを抜けた先に左右が逆なだけの地球が存在するなどという
信じ難い論説があるが、むしろそれを信じる方が楽なくらいだ。

とにかく彼の世界を探索し帰してあげることには職務的にも個人的にも全力を尽くす。
検査の結果、危険因子は発見されなかったし、保護してしばらく様子を見よう。
それにしても、とイッキの隣に視線を移す。
「『おまけ』がこの子か・・・」
「おまけ?」
ポツリと呟やかれた独り言にメタビーが反応する。
「ああ、気にしないで! こちらのことだから」
「?」
独り言のつもりが、実は聞こえていたことに少々慌てる艦長さん。

「それで・・・俺の方からも聞きたいことがあるんですけど」
イッキが口を開く。
「その、なのは・・・ちゃんはなんであんなことができるんですか?」
「ああ、オレもそれは気になってた」
メタビーも同意見のようだ。
イッキの言う『あんなこと』とは、空を飛んだり砲撃を撃ったりといった魔法のこと。
リンディは「そうねぇ」と言い、
「世の中には、『リンカーコア』っていう魔力の源を持つ人がいるの」
「魔力の源?」
「そう。それを持っている人は大小の差はあるけど様々な魔法を使えるわ」
「はぁ」
信じ難い話だ。おとぎ話かメルヘンの産物だと思っていたのだから仕方ないが。
リンディは続ける。
「でもそれはごく少数の人たちで、現になのはさんの世界でもわずか数人しか
確認されてなくてね」
正確には『管理局が認識している魔力保持者』の数であり、
もしかしたらまだ確認されていない者もいるかのもしれない。
599217:2007/07/21(土) 11:57:41 ID:9SUqeDny
「それで、そのごく稀な人たちのほとんどは高い魔力資質を持っていることが多いの。
なのはさんも、そのうちの一人」
「えっ!?」
「つまり、なのはさんは魔法使いってことになるかしらね」
今更ながら、正直驚いた。確かに自分とそれほど変わらない歳の子が
そんな力を持っているなど普通は考えられないだろう。
パッカーンと開いたイッキの口は、しばらく塞がりそうにない。
「ふふっ、まだ小学生の可愛い女の子にそんな力があるなんて思わないわよね」
リンディも初めてなのはのバカ魔力を目の当たりにしたときを思い出した。
あのときはまだ魔道士としての技量は低く、魔力量に頼っている部分も多かったが、
P・T事件、闇の書事件と修羅場をくぐり抜け、よく成長したものだと感心する。

「けど、あのすんげぇビーム見たら納得できるかもな」
と、メタビーは砂漠で見たディバインバスターを思い出す。
巨大ミミズ2頭を一瞬のうちに吹き飛ばしたのは、間違いなく目の前の少女だ。
「えと、あれでも抑え気味だったんだけど・・・」
さらりと怖いことを言うなのは。ミミズたちもあの世でさぞ微妙な心境だろう。
「「・・・・・・(汗」」
「あの・・・イッキくん?メタビーくん?」
イッキとメタビーも何か悪寒を感じたので、その発言はスルーすることにした。


「・・・とにかく、君たちの身柄はしばらくこちらが保護することになる。
なのはの世界ではもう夜も遅いし、今日のところはここまでにしようと思うが」
今まで話の流れを簡潔にまとめ、「よろしいですか?艦長」と尋ねるクロノ。
「そうねぇ。なのはさんもそろそろご家族が心配してるでしょうし」
いくら緊急の用事とはいえ、小学生を夜遅くまで留めておくのは少し問題がある。
ちらりと時計を確認するリンディに対し、
「いえ、仕事によっては遅くなることも家族には話してますし、大丈夫かと・・・」
と弁解するなのは。
「それに、家族のみんなは『無理しない程度に頑張れ』って認めてくれてますから」
「その割には、時折『無理』とか『無茶』を押し通すことがあるようだが?」
「にゃはは・・・(汗」
クロノの指摘に苦笑いを浮かべるなのは。
「確かに、ここのところなのはさんは頑張りすぎかもね」
「そんなぁ〜、リンディさんまで」
艦長にまで追い討ちをかけられた。
「本格的に局の仕事に協力してくれるのは嬉しいけど、本業も忘れちゃダメよ」
「・・・は〜い」
なのはは渋々といった感じで応える。
600217:2007/07/21(土) 12:01:07 ID:9SUqeDny
「うん、良いお返事ね。あ!そういえばイッキくん達の住むところを決めなくちゃ」
思い出したようにポンッと手を打つリンディ。
「オレたちの住むところ?」
「そう。管理局にもちゃんとした居住スペースはあるけど、たぶんあなた達では
息が詰まって暮らしにくいと思うの」

そういえば、とイッキとメタビーは顔を見合わせる。
別世界に飛ばされたとなれば、まずは住むところを探さなければならない。
かといって施設のようなところで暮らすのは正直なところ不安要素が多いわけで。

どうしようかと思案顔をするイッキに、リンディは一つ提案を出した。
「とりあえず今日は私達の家に泊まるといいわ。後のことはまた考えましょう」
「母さ・・艦長!!いきなりそんな!」
予期せぬ提案に一番驚いたのはクロノだった。
「あら、いいじゃないクロノ。別に女の子が泊まるわけじゃないんだし」
「いや男とか女とかの問題じゃなく!決定が急すぎますよ!」
慌てふためくクロノ。

先ほどのすました顔が印象に強かったイッキは、珍しそうな目で今の彼を見る。
(なんだか偉そうなヤツだなって思ってたけど、意外に面白いかも・・・)
内心そんなことを考えていたりする。人は見かけによらないものだったりするわけで。
「なぁ、なのはちゃん。この二人っていつもこんな感じなの?」
「なのはでいいよ。クロノくんがあんなに慌てるのは久しぶりかなぁ」
「ふーん・・・」
やっぱり珍しいのか、とか思いながら相槌を打つイッキ。
その目の前では未だにハラオウン親子の滑稽なやりとりが続行中だ。
本部に掛け合ってみるべきだとか一時的に保護スペースに預けるだとか
まくし立てるクロノを無視し、リンディは「パジャマ用意しなくちゃ」とか言っている。

結局、クロノはリンディにいいように丸め込まれ、承諾させられる破目になった。
「・・・それじゃあ僕と艦長も今日は家に帰るから、なのはもその時でいいか?」
「うん!大丈夫だよ」
「執務官、イッキくんとメタビーくんもでしょ?」
「・・・・保護対象者の天領イッキと+αも一緒に帰宅することになる。以上」
「おい!!なんだその態度の違いは!」
「ってか+αってオレのことかよコラ!!」
あからさまな扱いの違いに、揃って文句を言う二人。それを無視するクロノ。
「まぁまぁ。二人とも落ち着いて」
なのはが仲裁に入り、二人は何とか落ち着きを取り戻す。しかしまだ何か言いたげだ。
「それじゃ、みんな帰りましょうか」
やれやれとリンディが腰を上げ、転送ポートへと向かう一同。
その間、クロノとイッキ達は一言どころか顔も合わそうとしなかった。
そして、彼らの様子を見ながら本日二度目の苦笑いをするなのはであった。
601217:2007/07/21(土) 12:05:54 ID:9SUqeDny
今回の投下はこれにて終了!
やっぱりクロノとの会話が一番の悩みどころですw

にしても、初対面のキャラ同士を馴染ませるのが早すぎたかなと後悔・・・
次回は色々なキャラと顔合わせしていけたらと思います
602217:2007/07/21(土) 12:08:33 ID:9SUqeDny
今回の投下終了!
やっぱりクロノとの会話が一番の悩みどころです

にしても、初対面のキャラ同士を馴染ませるのが早すぎた、後悔・・・
次回は色々と顔合わせの回になる予定ですが、よく考えて投下せねば!
603217:2007/07/21(土) 12:09:56 ID:9SUqeDny
うわ、誤爆した・・・orz
無駄レス申し訳ない!
604悪魔砲少女 対 生機融合猫 3:2007/07/21(土) 12:45:29 ID:KPqevr6w
ロストロギアとして回収された可愛いコックさん人形入りの小瓶はすぐさま管理局内の
ロストロギア封引用特殊倉庫に収められるわけだが、その特殊倉庫に侵入する者がいた。
「管理局の連中も結構ずさんなんだな〜。清掃会社の格好するだけであっさり信用しやがったぜ。」
それは管理局内に収められるロストロギアを盗み出して金儲けしようと企む
名も無きコソドロ達であった。管理局潜入の為に清掃会社の人間に成りすました彼等は
ロストロギア封引用特殊倉庫にまで潜入していたのである。
「よし! とりあえずコレにしようぜ。」
「え? こんなショボそうなのが良いのか!?」
「分かって無いな〜。こういう一見ショボそうなのが実は凄かったりするもんなんだよ。」
名も無きコソドロが盗み出そうとしたロストロギアこそ、なのはとユーノが先程回収したばかりの
可愛いコックさん人形入りの小瓶だった。そして気付かれないようにこっそりと
特殊倉庫から脱出する名も無きコソドロ達であったが、そこでたまたま近くを通りかかった
なのはに発見されてしまった。
「そこ! 何をやってるの!?」
「やべ! 見付かった!」
「しかもあれ白い悪魔じゃねーか!」
名も無きコソドロ達は大慌てで逃げ出そうとするが、その時の弾みで小瓶のフタが開いてしまった。
「!?」
それがいけなかった…。小瓶のフタが開いた瞬間…その小瓶の中に封印されていたデビルが
解き放たれてしまったのである。そしてデビルは何という事かなのはに憑依していた。
「わぁぁ! このロストロギアから飛び出した変なのが白い悪魔に乗り移った!」
『白い悪魔…か…この女は元々そう言われていたのか…。』
「!?」
名も無きコソドロ達は青ざめた。デビルに憑依された直後から、なのはの声が
本来の物では無い地の底から響いてきそうな低い物に変わっていたのである。
それだけではない。なのはの背中からは悪魔を思わせるの漆黒の翼が生え、
頭からは鬼の様な角が…口には野獣の様な鋭い牙が…両手には鋭い爪が伸びると言う
おぞましき姿に変質したのである。
『フハハハ! 白い悪魔とは良い得て妙だな! 確かにこの女の体は素晴らしい!
力が…力が溢れる…フハハハハハ!!』
「うわぁぁぁぁ!! 白い悪魔が本物の悪魔になったぁぁ!!」
恐怖の余り腰が抜けてしまったコソロドであったが、デビルに憑かれたなのは…
いや、デビルなのはは右手を軽く上げ、正面を指差した。
その直後である、デビルなのはの指先から極太の魔砲が放たれ、正面の分厚い壁を
容易く貫き、さらにその向こう側まで完全に吹き飛ばされていた。
『フハハハ! 素晴らしい! 素晴らしい力だ! これならば…奴に復讐する事が出来るぞ!』
「アワワワワワ…。」
恐怖が限界に達して完全に失禁していたコソドロを尻目にデビルなのはは壁に空いた
風穴を通って何処へ飛び去ってしまった。
605悪魔砲少女 対 生機融合猫 4:2007/07/21(土) 12:47:38 ID:KPqevr6w
一方、管理局内では大パニックになっていた。
「一体何が起こったんだ!?」
「ロストロギアを盗み出そうとした不法侵入者を高町隊員が取り押さえようと
した所、そのロストロギアに封印されていたアストラル生命体が解放されてしまい、
高町隊員の身体を乗っ取ってしまった物だと思われます!」
「なんだって!?」
「本日高町隊員が回収して来たロストロギアに封印されていたアストラル生命体は
乗っ取った生命体を怪物へ変貌させ操る事が出来る様子です!」
「何とかして取り押さえろ!」
「既にやっていますが…押されています!」
「何!?」

「構うな! 撃てぇ!」
管理局の武装隊が一斉にデビルなのはに向けて魔砲を発射した。しかし…全く通用していない。
『フフフ…無駄だ…。次はこちらの番だな…。デビルレイジングハート!』
デビルなのはがデビルの力によってグロテスクに変質したレイジングハート
「デビルレイジングハート」を振り上げた。
『デビルディバインバスター!』
「うわぁぁぁぁぁぁ!!」
デビルレイジングハートから放たれる漆黒の魔砲はあっと言う間に
武装隊を飲み込み、全滅させた。本来のなのはの魔砲はピンク色だが、
今は違う。デビルの力によって魔砲の色もどす黒く変質していたのである。
そしてデビルなのはが向かう先にはアースラがあった。
『なるほど…この艦は次元を飛び越えて様々な世界を行き来する事が出来るのか…
面白いな…では…この艦も使わせてもらう事にしよう…。』
デビルなのはがアースラに手を当てた直後、アースラにもデビルの力が送り込まれ
グロテスクに変質。デビルアースラとなってしまったのである。
『さあ行け! これで元の世界に戻るのだ! そして…この力で奴に…クロに復讐する!』

ユーノとフェイトが駆け付けた頃には既に管理局はデビルなのはによって破壊され、
アースラも奪われてしまった後だった。
「な…なんて事…。」
「ひ…酷い…。なのは…何故こんな事を…。」
「いや違う…なのは本人に非は無い。なのははロストロギア内に封印されていた
アストラル生命体に身体を乗っ取られているだけなんだ。」
「え?」
管理局の惨状に呆然とするユーノとフェイトの前にクロノが現れ、そしてさり気なく
あの騒ぎの中でも生き延びていたが、結局逮捕された名も無きコソドロが突き出される。
「悪いのはこいつ等だ。こいつ等がロストロギアを盗み出そうとした為に
あのロストロギアに封印されていたアストラル生命体が解き放たれてしまった。」
「え!? アストラル生命体!?」
「ああ。しかもあのアストラル生命体の力は想像以上の物だった…。
生物無生物に関係無く、物質世界のあらゆる存在を乗っ取る事が出来る様だ。
現になのは本人だけじゃない、彼女のレイジングハートや挙句の果てにはアースラさえも
奴の力によって乗っ取られ、おぞましい姿に変質させられてしまった…。」
「レイジングハートやアースラまで!?」
「それで…なのはを乗っ取ったアストラル生命体は…。」
「アースラを乗っ取った後…あのロストロギアのあった元の世界へ行ってしまった。
今動ける他の次元航行艦を探しているが、一刻も早く奴をなんとかしないと大変な事になる。」
「なのは…。」
ユーノもフェイトもなのはの身を案じていた…。
606名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/21(土) 12:49:59 ID:KPqevr6w
なのはさんがデビルに身体を乗っ取られるポジションでスンマセン
後、そろそろ次スレの必要性ありますけどどうしましょう?

>>学校の会談とか関連氏
一まとめにしてしまって済みませんが、恐怖感や絶望感と言うのが
良く表現できてて良かったと思います。

>>217
双方のカルチャーギャップと、馴染みのそれぞれが描かれてたと思います。
ハラオウン家預かりになったイッキとメタビーはこの先どうなってしまうのでしょうか?
607名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/21(土) 12:53:09 ID:PcIJGvu7
ちょwww次元世界オワタwwwww
608名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/21(土) 13:00:35 ID:f3G/CFg3
>>マスカレード氏
投下乙です。
しかしDボゥイ、割とあっさりと復活しましたね。
でもまあ、あの状態で人妻のリンディさんがフラグたてるわけにもいかずw
しかしシンヤ、ホント嬉しそうだなぁw

強さに関してはクロンとの戦闘(?)をみるに、要するに当てることが出来ればどうにかなるんでしょうね。
テッカマンの桁違いの機動性をいかに殺すか、ですかね。
609名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/21(土) 13:02:09 ID:f3G/CFg3
>>606
なのはが乗っ取られたって一番最悪の展開ですねw
どうなるんだろか(汗
610名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/21(土) 13:34:36 ID:4MXl/sUk
デビルって確か自己再生能力もあった様なwww頭吹っ飛ばされても再生するなのはさんコワスwwww
611名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/21(土) 14:42:59 ID:JtHaP4u4
で、次スレは必要ですか?
612リリカル龍騎 ◆l5ZL/l4pJY :2007/07/21(土) 14:43:31 ID:5ppetP1C
職人の皆様方GJです

>>リリカルスクリーム氏
ちょ、フェイトが某洗脳探偵にw
メリーさん怖…って、何でスバルがこんなの知ってるんでしょう…?

>>マスカレード氏
あのエビルが殺さずに止めるとは…どういう心境の変化なんでしょう…
ペガス登場ってことは…次回のハイコート炸裂楽しみに(ry

>>なのはStS+φ’s正伝氏
>(殺されてたまるか……!)
巧…スバルにマッハキャリバーで轢かれたのがトラウマになってるんですね…

>>217氏
メタビー…誰からも+α扱いされて…orz
リンディさん…なんて楽しそうな…

>>悪魔砲少女 対 生機融合猫氏
白い悪魔が本物の悪魔と同化した…どう見ても無敵です。本当に(ry
…南極の時のクロとミーくんの合体でもやらない限り勝ち目なさそうに思えて(ry

では、次スレ立ててきますがいいですね?答えは(ry
613マスカレード:2007/07/21(土) 14:43:57 ID:WcAejm35
>>φ's正伝さん
GJです!
巧がエリオとスバルを圧倒するのは気持ち良かったです
最後のってまさか社長さんですかね……
続き楽しみにしてます!

それと、大分前のジャンクションの話ですが、全然OKですよ。自分もTVの真似しただけですからね……

>>601
GJです!
果たしてイッキとクロノは仲直りするんでしょうか……?
メタビーがどんな扱いを受けるのかとか、色々楽しみにしてます!

>>606
GJです
白い悪魔が体を乗っとられてさらに悪魔度を増すとは……
クロちゃんとデビルなのはの邂逅が楽しみです!

確かにもう480KB越えてますね。そろそろ立てるべきでしょうか
614名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/21(土) 14:47:19 ID:JtHaP4u4
>>612
では管理人様、次スレをお願いします
615リリカル龍騎 ◆l5ZL/l4pJY :2007/07/21(土) 14:47:25 ID:5ppetP1C
エラー…誰か代わりに頼みますorz
616名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/21(土) 14:49:04 ID:JtHaP4u4
では漏れが
617名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/21(土) 14:52:31 ID:JtHaP4u4
俺もエラーorz
・・・あとは頼んだ!

ここはリリカルなのはのクロスオーバーSSスレです。

ガンダム関係のクロスオーバーSSは新シャア板に専用スレあるので投下はそちらにお願いします。
オリネタ、エロパロはエロパロ板の専用スレの方でお願いします。
このスレはsage進行です。
荒らし、煽り等はスルーしてください。
次スレは975を踏んだ方、もしくは475kbyteを超えたのを確認した方が立ててください

前スレ
ttp://anime2.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1184393091/

過去スレ
ttp://anime2.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1183637309/
ttp://anime2.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1182871170/
ttp://anime2.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1182002145/
ttp://anime2.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1180901290/
ttp://anime2.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1179746193/
ttp://anime2.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1177202668/

まとめサイト
ttp://wiki.livedoor.jp/beast0916/d/
618名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/21(土) 14:52:31 ID:7JK6NxYO
いってらっしゃい。
イギーの人帰ってこないかなぁ…
619名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/21(土) 15:02:02 ID:7JK6NxYO
リロードし忘れたorz俺立ててきます
620名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/21(土) 15:06:39 ID:7JK6NxYO
立てました。これが初スレ立てだよ

リリカルなのはクロスSSスレその8
ttp://anime2.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1184997868/
621名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/21(土) 15:13:54 ID:JtHaP4u4
よっしゃ!乙!
622名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/21(土) 15:17:28 ID:JtHaP4u4
どなたか短編書く人はいらっしゃいませんか?
明日の昼まで待って埋め実行委員会は作業を開始します
623リリカル犬狼伝説:2007/07/21(土) 17:03:55 ID:hWWf09m6
 某日某所。
 思わず見惚れてしまいそうな筋肉質(主観的感想)で暑っ苦しい漢が、両手をVの字に広げた「グリコ!」なポーズで大笑いしている。

???「ワハハハハハッ!来た!遂にこの時が来たぞ!
     これで夢にまで見た【リリカル某本編に関わるようであんまり関わらない短編】が載せられるぞッッ!!」

 漢は「トウッ!」と言ってジャンプ!しくるくると空中ねじり十六回転!
 シュタッと着地!

???「じゅってん!じゅってん!じゅってん!!今この瞬間ッ、着地もまた一歩進歩したッ!」

 そして漢は  “ こ ち ら 側 ”  向って叫ぶッッ!!

???「まずは全ての職人に……!」

 右手で懐からもぞもぞとまさぐった後、バッと取り出す!
 大きな白紙に、達筆で清書された『GJ!』の文字ッッ!!

???「そしてええぇッ!感想レスをくれた未来の職人達に……」

 左手で懐から、また巨大な白紙を取り出す!
 これまた美事な達筆で『unixフラッシュ(ゆにっくすふらっしゅ)』と記されていたッッ!!
 二枚の紙を掲げ叫ぶ!

???「ウハハハハハハハハッ!今回も返信を兼ね、1kも無駄にすることなくネタレスをしたぞ!!」

???「む……!?なあにいッ!!生前はA・Mスーツを惰弱な物として着なかったのになんでバリアジャケットで喜んでいるんですか、だとおッッッ!!!
     馬鹿者ッ!弱き者の盾であらんとしても、貫通される“盾”では意味がないのだァ!!
     むろん、ゴッチゴチに関節がうごいては機動力を損ね、しいては守る事が間に合わなくなってしまう!
     『俊敏な盾であれ!』
     どうだ!理解したか!あと生前とか言うな!
     まるで私が、霊的な意味の(ライカンスロープなどの古代に創られたせ生物兵器群ではない)グールや吸血鬼のような言い方ではないかッッ!!
     ……確かに此処最近……ヴァチカンからの挑戦者が増えていたり
     (無論彼ら彼女らには正々堂々と試合をして敗北とは何かを身を持って教えてやったわ!)、
     昨晩はアルトルージュ・ブリュンスタッドと名乗る(あんな少女が死徒二十七祖なわけがあるかッ!私は相手の力量を推し量れない輩とは違う!!)少女が、
     「新入りさん……私と契約してみない?」とか言ってたりもしたが、断じて違うぞ!!
     む、時間だ!それでは庭の草刈という重要な依頼が待っているので此処で失礼する!!」
624魔法少女リリカルスクリームの人:2007/07/21(土) 17:27:50 ID:6SR+9qbC
支援。
625名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/21(土) 17:29:35 ID:JtHaP4u4
支援
626名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/21(土) 17:30:50 ID:J0t6JZ0P
彼なら気合で太陽を克服しそうだ。
627名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/21(土) 19:02:41 ID:Pih7WsRY
つってももうホントに短いのしか投下できないだろうな

多分好き好んで投下する奴はいないと思うぜ
628リリカル龍騎 ◆l5ZL/l4pJY :2007/07/21(土) 22:42:21 ID:5ppetP1C
NANOSINGの最新話が出来たんですが…どうしましょう?
ここの残り容量ギリギリくらいの容量ですし…やっぱりこっちに投下して埋めに貢献した方がいいですかね?
629名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/21(土) 22:54:06 ID:Pih7WsRY
>>628
アンタ英雄だよw
どんとこい!!
630リリカル龍騎 ◆l5ZL/l4pJY :2007/07/21(土) 22:55:51 ID:5ppetP1C
「ローマが、法王庁が、ヴァチカン特務第13課イスカリオテ機関が動いています!」
 眼鏡をかけた管制官の男が、インテグラへと報告する。
現在アーカードら3人に与え、遂行させている任務。それにヴァチカンの絶滅機関『イスカリオテ機関』が介入しているというのだ。
「イスカリオテ第13課…ローマカトリックの絶滅機関か!兵力は?」
「派遣戦力は3名!ハインケル・ウーフー、高木由美江、
そして…『聖堂騎士(パラディン)』アレクサンド・アンデルセン神父!」

「やれやれ…由美江、そっちは?」
 一方こちらは現場であるベイドリックの家屋二階。こちらではハインケルと由美江がグールの相手をしていた。
「こっちも終わり。んでもホントわっかんねえなぁ」
 たった今二階のグールの殲滅が終わったところのようだ。だが、由美江は何かがおかしいと感じている。
「わかんない…って、何が?」
「ここの吸血鬼はとっくの昔に神父様がたたっ斬ったはずよね?なのに『何でまだグールがいるのか』気になったからさ」
 確かにそうだ。グールは本来、母体である吸血鬼が死ねば全滅するはず。それなのにまだこれだけの数がいた。
アンデルセン神父が仕留めそこなったという解釈も出来るが、彼の実力から考えるとそれもありえない。
…ならば、このグール達には何かある。そう考えるのが自然だろう。
…と、下の階からバヨネットが突き刺さる音がした。おそらくHELLSING機関と接触したのだろう。
こうしてはいられないとばかりに、二人そろって下の階へと降りていった。

第三話『ANGEL DUST』(2)

「イスカリオテ第13課…ヴァチカンの非公式特務実行部隊…!」
 インテグラの表情が険しいものになる。それを見たシャーリーがインテグラへと聞いた。
「そのイスカリオテって人達…そんなに危ない人達なんですか?」
「ヴァチカンの持つ唯一にして最強の戦力。『イスカリオテ』の名を持つ存在しないはずの第13課。
悪魔退治、異教弾圧、異端殲滅のプロフェッショナル達…こう言えば分かるか?」
「じゅ、十分理解しました〜…」
 シャーリーがそう言うのと同じ頃に、インテグラが葉巻をくわえる。
…だが、そこでシャーリーにはもう一つの疑問が浮かぶ。再び口を開き、インテグラへと聞いた。
「あれ?でも何でそのイスカリオテの人達があの町にいるんですか?
確か協定ではベイドリックはこっち側だって聞いてたんですけど…」
「連中はそんな事どうでもいいのさ。プロテスタントとカトリックの境界ぎりぎりの所に吸血鬼がいて暴れている。
いるのなら絶滅させる手段も方法も選ばない。それが連中だ」
 再びのシャーリーの問いにインテグラが答える。もはや眼鏡の管制官が忘れられているが、気にしないで頂きたい。
「問題は協定違反だけではない。アーカード達だ。
もしあいつらと第13課の面々…特にアンデルセン神父が鉢合わせになったらどうなる?絶対にヤバい」
 インテグラの口調から、その危険性を理解。ゾッとするシャーリーを尻目に、内線電話を取りウォルターと連絡を取る。
631NANOSING ◆l5ZL/l4pJY :2007/07/21(土) 22:56:52 ID:5ppetP1C
「ウォルター!」
『はい、お嬢様。報告は既に受けたまわっております』
「ヴァチカンと連絡を取りたい。手は無いか?」
『すでにカンタンベリー大司教を通じて法王庁と連絡を取りつつあります。
それとこれは独断で準備いたしましたが、戦闘部隊2個小隊を待機させておきました』
「さすがだウォルター…装備は?」
『重装です。下手をするとあのアンデルセン神父とやりあう羽目になるかもしれません』
 ウォルターがそう言うと同時に、受話器の向こうからバサバサという音が聞こえる。
おそらくはウォルターがアンデルセンに関する資料を無造作に広げているのだろう。
『アレクサンド・アンデルセン神父、『聖堂騎士』アンデルセン、『殺し屋』アンデルセン、
『銃剣(バヨネット)』アンデルセン、『首斬判事』アンデルセン、『天使の塵(エンジェルダスト)』アンデルセン。
出身、人種、年齢全てが不明、分かっているのはこの数々のあだ名の他一つだけ…彼が化け物専門の戦闘屋であるということです。
我々にとって化け物に対する切り札がアーカードであるように、彼もヴァチカン第13課の対『化け物』の切り札であるということです』
 アンデルセンの恐ろしさが、ウォルターの電話でさらに強調される。それを聞いたインテグラは奥歯で葉巻を噛み潰し、立ち上がる。
「…私もすぐベイドリックに行く。ヴァチカンの交渉はウォルターに任せる。
部隊は待機させておけ。命令あるまで絶対に動かしてはいけない。下手をするとヴァチカンと抗争になる恐れがある」
『承知いたしております、お嬢様。くれぐれもお気をつけてください』
 そしてインテグラは、近くにいた管制官に、銃と剣、それと二人の護衛を用意するよう命じた。
「化け物殺しのあの『聖堂騎士』が、あの絶滅主義者が、アーカード達を目の前にして何もしないはずが無い!」

 十字の構えを解き、階段から降りてくるアンデルセン。もっとも、血染めのバヨネットは放さないが。
そしてアンデルセンはアーカード達を見て、最高級に邪悪な笑みを浮かべて言う。
「良い月だな、化け物共」
 約一名、吸血鬼ではない人がいるのだが…まあ、アンデルセンが知っていたとしても「奴らに協力している時点で異端の一味だ」とでも言うだろう。
それはさておき、アンデルセンがどんどん近寄ってくる。それを見たアーカードもアンデルセンへと近づく。
「ヴァチカン第13課…特務機関イスカリオテ…!」
「その通りだ、HELLSINGの犬共…お前がアーカードか。
吸血鬼の分際でありながら人間に味方し、吸血鬼を狩るヘルシングのゴミ処理屋」
「ここにいた吸血鬼はどうした?」
「とうの昔に始末したよ。とんだザコだった…楽しむ間すらありはしない」
 そう会話する間にもどんどん距離は縮まり、そしてすれ違ったところで止まった。
「残っているのは貴様らだけ…」
「そうかい」
 お互い素晴らしいくらいの笑顔。ここが戦場じゃなかったらどう見えたのだろう。
…少なくともここが戦場である今は、これから始まる戦いを楽しみにしているようにしか見えない。
632NANOSING ◆l5ZL/l4pJY :2007/07/21(土) 22:57:56 ID:5ppetP1C
「マスターが笑ってる…そこまで強いって事?」
 一触即発の空気の中、ティアナが状況を分析する。
口ぶりから察するに、この男はどうやら真っ向から吸血鬼を斬り伏せたらしい。それだけでも相当の実力だと理解できる。
さらにアーカードが楽しそうな笑顔を浮かべている…HELLSING機関で働いているうちに理解したのだが、アーカードは戦いを楽しんでいる。強い相手なら尚更だ。
もしかしたらアーカードともまともに渡り合えるほどの腕なのかもしれない。そうティアナは理解した。
「おぉぉぉぉぉっ!!」
 背後からの咆哮。振り向くと、シスターの服を着た、刀を持った女…由美江が突っ込んできている。それも刀を振りかぶって。
気づいたときには由美江の間合い。というか振り下ろしている間だった。吸血鬼だったから避けることはできたが、それでもバリアジャケットをかすめていた。
「クソ化け物共めが!偉大なるヴァチカンに逆らうド腐れ外道共!地獄に落ちろ!!」
 こちらもかなりの笑顔。例えるなら、戦いの真っ最中のバーサーカーといったところか。
刀にもかなりの量の血がついている。グールを斬った返り血だろう。
…由美江がいる方向からさらに一人分の足音。サングラスをかけ、二丁拳銃を持った神父服の女…ハインケルがいる。
「ったく、普通仲間をおいて一人でさっさと行く?」
「ああ、ゴメンゴメン」
 この二人は仲間。さらには由美江がすぐに襲い掛かってきたことから察するに、ティアナ達にとっては敵ということだろう。
アーカードはアンデルセンとの闘争の真っ最中。ならば自分達で何とかするしかない。それを理解したティアナは、クロスミラージュを構え直す。
「スバル…あんたはあの刀使いの女をお願い。私は銃使いを何とかするわ」
 もしアーカードがこれを聞いていたら、いい判断だとでも言っただろう。
ハインケルは銃使い。もしスバルのような接近戦型が相手をするとなると、必然的に弾丸を防ぐかかわすかしながらの接近となるはず。
防御魔法を張りながらの移動は困難。かといって単発の銃ならまだしも、相手の武器は拳銃。連射は十分効くはず。弾の連射をかわしながらの接近はさらに困難。
ならば銃使い同士、接近戦型同士で戦った方がいい。そう判断しての指示である。
「分かった。ティア…やられたりしないでよ」
「私がそう簡単にやられると思う?いいから行った行った!」
 互いにうなずいたかと思うと、次の瞬間にはスバルが目一杯マッハキャリバーを飛ばし、由美江を殴り飛ばした。
加速とリボルバーナックルの硬度、さらに全体重を乗せた一撃だったため、由美江が家の外まで吹き飛ばされる。
「…人間ってあれだけ飛ぶものなのね」
 吹き飛んだ由美江を見て、ハインケルがぽつりと呟く。指示した張本人のティアナも、あまりの出来事に唖然としている。
スバルも驚いてはいるが、すぐにそんな場合ではないと頭を切り替え、由美江を追って外に出た。

 決着は一瞬だった。
 アンデルセンが振り向きざまにアーカードへとバヨネットを振りかざし、アーカードの喉を貫く。
だが、ミンチにされても死ななかったアーカードだ。この程度では到底死なない。
アンデルセンがバヨネットを構えると同時に構えていたカスールを撃ち、アンデルセンの脳天に直撃させた。
さすがにこれだけの大口径の銃だ。アンデルセンが思い切り吹き飛び、廊下のドアへと叩きつけられた。
「夜に正面から不意もうたずに吸血鬼に戦いを仕掛けるとは、勇敢な神父だな…だが愚か者だ。だが…人間にしてはやる方か」
 そう言うと、バヨネットを喉から抜き取り、誰に言うのでもなく呟く。
「この剣…生意気に、全て教会で祝福儀礼を施されている。こいつで斬られると我々でも厄介だ。我々でもこれでやられたら、傷をふさぐことができん」
 確かに喉の傷跡から、未だに血が噴き出している…が、抜き取った今治りは早い。すぐに傷がふさがった。
633NANOSING ◆l5ZL/l4pJY :2007/07/21(土) 22:58:56 ID:5ppetP1C
 一方、こちらはというと…
(この人、強い…!!)
 少し戦っただけで、ティアナはハインケルの実力を理解する。「相当強い」と。
「こいつ、魔法を使えるのか…結構手こずりそうね」
 対するハインケルも、魔法を使う吸血鬼の相手は初めてなので、多少いつもより苦戦しそうだと認識する。
…もっとも、魔法をなぜ知っているのかは疑問だが。
「AMEN!AMEN!AMEN!AMEN!!」
 ハインケルの選んだ対処法は、魔法を使う前にしとめるというものだった。
装備している銃弾は、対吸血鬼用の法儀済銀弾。一発でも当たれば相当のダメージになるだろう…『当たれば』の話だが。
「はぁぁぁっ!!」
 クロスミラージュを連射し、発射された弾丸を片っ端から叩き落とす。
ハインケルの銃の腕は確かに良いが、それ故どこが狙いかが分かりやすい。それプラス吸血鬼の持つ動体視力だ。弾を弾で落とすのも不可能ではないだろう。
いつの間にかティアナの瞳が真紅に染まり…吸血鬼のそれとなっていた。

 そしてさらに一方、外では…
「あの人大丈夫かな?」
 先ほど殴り飛ばした由美江を心配するスバルの姿があった。
あれだけの勢いでの一撃だ。死にはしないまでも相当のダメージになるだろう。そう思い、心配して探しているのである。
…だが、その心配は次の瞬間無駄になる。
「あぁぁぁぁぁッ!!」
 正面の崩れた建物から、刀を構え、咆哮しながらの突撃を仕掛けてきた人間がいる…正体は言うまでもない。由美江だ。
「島原抜刀居合流!天山!!」
 自らの扱う剣術『島原抜刀居合流』の技の一つ、目を斬り裂く高速の一閃『天山』を仕掛ける。
「プロテクション!」『Protection.』
 だが、スバルもただではやられない。防御魔法『プロテクション』を刀の軌道上に張り、受け止める。
「へえ、騎士…いや、魔導師か?」
 スバルのプロテクションを見て、そう言いながら由美江が飛び退く。
ハインケルといい、由美江といい、何故管理外世界の人間が魔法を知っているのか。疑問に思ったスバルが問う。
「魔法を知ってる…どういう事?何で魔導師を知ってるの?」
 それに対し、答えながら斬りかかる由美江。
「昔ウチに、第13課に魔導師がいたからに決まってるだ…ろッ!」
 首をはねんと思い切り一閃。再びプロテクションで防ぎ、距離をとる。
『Wing Road.』
 距離をとるべきだと判断したマッハキャリバーが、ウイングロードを自動で発動させてその上へと駆ける。
その際に現場の家の2階に、割られた窓があった…
もしかしたら、ここから飛び降りてきたんじゃないだろうか。そんな疑問が浮かんだが、すぐに頭の中から削除した。
「ありがとう、マッハキャリバー。それじゃあいくよ!カートリッジロード!」
 リボルバーナックルから薬莢が飛び出し、それと同時にナックルスピナーが高速回転を始める。そして…
「リボルバー…シュゥゥゥゥト!!」
 衝撃波が由美江へと飛んだ。
634NANOSING ◆l5ZL/l4pJY
 そして再び、視点はアーカードへと戻る。
彼はここを出るため、結界に使われている聖書のページをはがして回っていた。
これが貼られたままだと、いつまでも吸血鬼のような存在はこの家から出られない。だからはがしていたのだが…
「!?」
 背後からの気配。それと同時に彼の背を貫くバヨネット。
死んだはずのアンデルセンが蘇り、バヨネットを突き刺したのだ。
「何ィィ!?」
「クッ、ククッ、クカカカカッ!」
 高笑いをあげるアンデルセンから慌てて距離をとり、カスールを再び脳天に叩き込む。
今回も狙い通り直撃だが、倒れると同時に腕の力だけで跳ね起きた。
そして袖からバヨネットを取り出し、カスールの弾丸をかわし、バヨネットでアーカードを磔にした。
「シィィィィィィ…AMEN」
 アンデルセンがとどめを刺さんとバヨネットを取り出す。一体あの服の袖のどこにしまっていたのだろうか。
ふとアンデルセンを見ると、傷口から煙が噴き出し、叩き込まれた弾丸がそこから排出され、そして傷が完治した。
「…!再生者(リジエネーター)…!!」
「そうだ…我々人類が貴様らと戦うために作り出した技術だ!」
 人間の…いや、生命体の持つ治癒能力。再生者とはそれを爆発的に引き上げ、吸血鬼並みの再生能力を得た存在。
つまり、アンデルセンがその再生者だということだ。それならば脳天にカスールを何発食らっても生きていることに納得がいく。

 ドカカカカカッ!!

 「一体どこにこれだけの数のバヨネットを持っていた」と聞きたくなるほどの量のバヨネットが、アーカードの全身へと放たれ…そして貫いた。
「ゲァハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハァ!!」
 吸血鬼を屠ったことがよほど嬉しいらしく、アンデルセンが高笑いをあげた。

 そして同じ頃、現場となった家のすぐ近く。
一台のヘリコプターが飛来し、着陸した。
中から降りてきたのは、HELLSING機関長インテグラだ。遅れて護衛が二人降りてくる。
「今はヴァチカンと争っている場合ではない!もしアーカード達が戦闘に至っているなら、止めねばならん!急げ!!」