「そうか! ならば話は早い! 女、いますぐこんなことはやめるのだ! そして、わたしと共にみんなをおたすけしよう!」
「……おたすけ?」
「そうだ、おたすけだ。人をおたすけするものは、また人におたすけされる。
お前が誰かをおたすけすれば、きっとその誰かがお前を、おたすけしてくれる。
一人では無理なことでも、誰かの力を借りればできる。そういうもんだ!」
女の口から嘆息が漏れた。
「――無理だ。私の望みは誰にもかなえることはできん。できるとしたら、悪魔ぐらいだ。しかも最高に悪趣味の、な」
「やってみなければ分からんではないか!」
「分かっているのだ。これ以上ないほどにな……」
次元の眉間に皺が寄った。
(殺し合いやってる相手の事情なんぞ聞くもんじゃねえなぁ)
この女の望むものとやらの見当がついてしまった。
だから、この女が絶対に止まらないであろうことも分かってしまう。
次元は拳銃を握り直し、女の瞬き一つを見逃すまいと女に神経を集中させた。
次元の視界の中で、女とぶりぶりざえもんの会話は続く。
「私もお前に聞きたいことがある」
「何だ?」
「何故お前は、おたすけとやらをしようとする? この殺し合いのゲームの中で」
女の質問に、ぶりぶりざえもんが大きく胸を張った。
「わたしが、救いのヒーローぶりぶりざえもんだからだ!!」
流石にこの答えは予想していなかったのだろう。
きょとん、としたように女は目を見開いた後、微笑んだ。
おりよく吹いた風が女の桃色の髪をなで上げ、秀麗な鼻先と顔立ちを月光の下にさらけ出す
月の女神ですらたじろぐのではないかというその美しさに、次元ですら一瞬心を奪われた。
「救いのヒーローか……。なるほどな」
花のような笑みを浮かべたまま女が言う。
「そうだ! しかも今は貧血大サービスで助け賃は無料だ!」
女はしばらく考えるそぶりを見せ、
「――なら、1つ頼みをきいて欲しい」
「うむ。言ってみろ」
――ん?
次元の目が細められた。
「死んでくれ」
女の手から缶のようなものが滑り落ち、閃光が辺りを埋め尽くした。
■
(上手くいった)
豚に向かって飛翔するシグナムの視界の中で、動けないブタの像が拡大していく。
元よりブタの戯言などに本気で耳を傾けてなどいなかった。
会話に応じるフリをして脚の治療に専念していただけのこと。
(あれを斬り捨て、魔力の塊を奪ってこの場から離脱する)
魔力の塊があったとしても拳銃使いの男を、無傷で倒すのは難しい。
(よりよい機会を待つ)
剣から焔が発生。
剣の間合いまで後5歩の距離。
(救いだと?)
冷え切ったシグナムの心に怒りの熱が生まれた。
「笑わせるな!」
零歩。
炎を纏った必殺の剣が無力な豚に向かって――
その刹那、弾丸がシグナムの顔面を掠め、きいんという音と共に脳が痺れた。
超大口径銃の銃弾は衝撃波が三半規管を揺るがし、シグナムの脳に衝撃を叩きこんだ。
シグナムの視界がぐにゃりと歪んだ。
速度はほぼそのままにシグナムの体は下方へと向かって突っ込んでいく。
シグナムの視界の中で地面が迫った。
次の瞬間、全身をすさまじい打撃が打ち据え、一瞬意識が消し飛んだ。
そのまま何度も横転し、ようやくシグナムの肉体は止まった。
視界が盛大に回り、体のそこかしこが喚きたてるように負傷を自己申告してくる。
「いくら浮気がいい女の甲斐性っつってもなぁ……。戦ってる最中はよくねぇ」
男の声がどこか遠くに聞こえた。
痛みを無理矢理頭から追いやり体を起こそうとするが、腕と足からの痛みが高圧電流となって脳の回路を焼いた。
塞いだばかりの傷が完全に開いていた。足と手から血が、命が抜けていく。
咄嗟に体内にある全ての魔力を振り絞って、治療を行う。
シグナムは根本的な誤りを犯していたことに気づく。それは、男の本質を捉え損ねたこと。
(あの男は、『拳銃使い』ではなく、銃火器に精通した『戦士』だ)
でなければ、スタン・グレネードを見破り、対抗することなど何故できよう?
神技と呼ぶにふさわしい銃技の輝きがその本質を覆い隠していただけで、
銃技はあの男の技の一つであって、全てではなかったのだ。
――気づくのが遅すぎた。
体内の魔力はつきた。
(もはや、飛んで逃げることもできぬか……)
シグナムは歯噛みした。
「い、命は流石にやれん!」
次元の後ろに隠れながらブタが叫ぶ。何という逃げ足の速さだろう。
「……そうだろうとも」
シグナムは悪意のこもった笑みを豚に向けた。
「だから言ったろう? 誰も私を『おたすけ』などできないと」
シグナムは身を起こした。
その体から妄執と殺意が噴出し、陽炎となってゆらゆらと揺らめく。
「……救いといったな、貴様。自分の命も捨てずに誰かを救おうとする。
甘い……甘くて温い。貴様のもたらす救いとやらは、お手軽すぎる。
遊戯の匂いが鼻につく……。お前も、そう思わないか?」
くろぐろとしたシグナムの視線を男は肩をすくめただけで受け流し、
「生憎と俺はぺらぺらお喋りするのは好かん性分でな……。そろそろ終わりにしようや」
男の瞳が始めて帽子の奥から露になった。
男の瞳に宿る極限まで凝縮された殺意が弾丸となってシグナムを射抜く。
シグナムの心がわずかに揺れた。その揺れにあわせるように、
男の体が前に出た
(なにっ!?)
常に間合いを取ろうとしてきた男が始めてみせた行動に、シグナムの行動が一瞬遅れる。
咄嗟に地を蹴るが、虚を疲れた遅れはそのまま体に伝わり、そして負傷した左腕の動きはその損傷の分だけさらに遅延した。
そして、それを見逃してくれるほど男は甘くなかった。
「っぁ……」
轟音が轟き、シグナムの左腕がダラリと垂れ下がった。
男が後ろに飛びすさった。
またも両者の間に間合いが横たわる。負傷したシグナムにとって、絶望的なまでに遠い間合いが。
じわり、と恐怖がシグナムの心の壁を這い登った。
死など怖くは無い。
だが、自分の命が終わってしまえば全てが終わってしまう。
――それだけが、怖い。
――八神はやてを救えなくなってしまうことだけが、たまらなく怖い。
シグナムは未だ残留した魔力で炎を纏ったままの剣を左腕の傷口に押し当てた。
「ぅぐぅあ……!」
煙と異様な匂いがあたりに充満し、常人なら一瞬で失神するような痛みがシグナムの脳を焼く。
声にならぬ呻きをもらしながら、必死でシグナムは歯を食いしばった。
噛み締めすぎたせいか歯茎から血が流れ、金臭い味が口の中に広がっていく。
シグナムの行為はまだ終わらない。
自分の右耳に刃を押し当てると、くぐもった絶叫と共に、右耳を切断。
「て、てめぇ……。なにを」
推測不能の手負いの美獣の行動に、初めて男の声に驚愕が混じる。
血まみれの右耳をほとんど力の入らない左手で握りながら、シグナムは凄絶な笑みを浮かべた。
――何を驚いているのだろう。
ただ、耳をカートリッジ代わりに使おうとしているだけなのに。
――いらない。私は他に何も要らない
はやてが蘇るなら、自分には何も要らない。
髪の一筋から血の一滴まで、全て、要らない。
シグナムは右腕で剣を振り上げた。
■
(なんてヤツだ……。イカれてやがるぜ!)
戦慄が次元の体を駆け抜けた。
次元の体細胞全てが、警戒警報をが鳴り立てている。
「俺からあんまり離れるな! どうやら、やっこさんはお前さんにご執心のようだ」
後ろのぶりぶりざえもんに向かって怒鳴る。
女の剣が振り下ろされ、爆音と衝撃波が発生。
大きく跳びすさりながら、
(足を怪我してんのに同じ手だと? そんなわけはねぇ……)
この技も先ほどと比べると威力が格段に落ちている。蛮勇しか持たない相手にルパンが負けるはずが無い。
疑問という名の烈風が次元の心で吹き荒れる。
――何かある
次元の心とは裏腹に、戦士の体は自動的に反応し、敵を殲滅せんと索敵する。
荒れ狂う土煙の流れと色が微細に変化。
――あそこか
煙の中から女が飛び出し、低空突進で肉薄してくる。
だが、遅い。遅すぎる。
次元大介が照準を定め、引き金を引くには十分すぎる時間がある。
照準。発っ……
倒れたルパンの体が次元の脳裏に閃いた
射撃行動を強制中断し、回避行動を選択。
「せあぁぁっ!」
高速で弧を描いた剣の軌跡から何とか体を捻って離脱。
顔面スレスレを刃が通り過ぎ、下方に流れていく。
――女の体が紫光に包まれている。
と、思う間もない。
通り過ぎた刃が下から跳ね上がってくる。
(よけられねぇ!)
剣と銃身がぶつかり合い、ガギチと異様な音が響いた。
だが銃身は剣ではない。銃身の上をすべり刃が閃いた。
鮮血が舞い、次元の胸から肩にかけて焼けるような痛みが走る。
片手斬りであったこと、銃身で威力を減殺したことが次元の命を救った。
(接近戦じゃ分が悪すぎらぁ)
二度、三度背後に跳躍行動するが、女はピタリと追撃してくる。
一閃、二閃、三……と刃がひらめき、その度に次元の服が切り裂かれ、小さな痛みが走る。
賞賛べきは、シグナムの数多の怪我、疲労、要素を差し引いても、その剣をかわす次元大介の技量であろう。
そして、次元の知らぬことであるが、シグナムを覆っていた燐光こそがシグナムの奥義が一つ。
鉄壁の盾を身にまとうパンツァーガイスト。
ルパンの銃撃を弾き返し、彼の死の大きな一因となった技であった。
(えぇい、くそっ! 隙がねえ……)
ひたすら回避するだけで背一杯で、反撃できない。
焦燥が次元の胸を妬き焦がそうとするが、鋼の自制心で次元は焦燥を抑えこむ。
再度、後方へ跳躍する。
女が来ない。だが。
剣が来た。
「ううぉ!?」
次元の視界を女が投擲した剣が埋め尽くす。
傭兵時代、殺し屋時代、泥棒時代、幾千幾万の危機を乗り切ってきた次元の全身がこの危機に超反応。
意識の埒外にある動きで、次元の肉体が投擲された剣を回避。
だが、自分の体を一本の矢としたシグナムの蹴撃はかわせなかった。
崩れた体勢では回避も防御もできなかった。
脇腹からすさまじい衝撃が襲い、内臓まで突き抜けた。
浮遊感を感じ、一呼吸置いて背中から背骨が折れたかと思うほどの衝撃。
ソロモンに抉られた脇腹の傷口が盛大に開いた。
幸か不幸か、全身がバラバラになりそうな痛みと、脇腹からの猛烈な痛みが意識をつなぎとめた。
だが、体と意識が連結しない。
揺らめく次元の視界の中で女が銃を構えた。
気力を振り絞って体を起こさんとするが、体が言うことを利かない。
(くそったれが!!)
食いしばった歯が唇を噛み破り、つっと赤い筋が流れた。
――銃声が轟き、
――鮮血が舞った。
ゆっくりと体が地面に伏していく。
音が消え、全てがコマ送りにのように見える。
銃弾が放たれる寸前、自分の目の前に走りこんできた小さな体が倒れていく。
とさっとぶりぶりざえもんの体が地に横たわった。
感情が沸騰し、次元の両眼がカっと見開かれた。
「てめぇぇええ!!」
怒気の塊が喉から迸り、殺意が全身を駆け抜け、激痛も何もかも全て吹き飛ばした。
轟音が空間を震わせた。
454カスール カスタムオートの弾丸は空間を切り裂いて飛び、狙い過たず女の胸にぶち当たった。
甲冑ごと肉体を破壊され、女が仰け反り、崩れ落ちる。
だが、その光景を次元は見ていない。見ようともしない。
彼の意識にあるのは一つ。
「おいっ! しっかりしろ!」
ふらつく足で、ぶりぶりざえもんに駆け寄り、その胸が上下していると見るや抱え上げ、走り出す。
その足取りは信じがたいほど遅く、左右にふらついていた。
それでも次元は懸命に足を動かす。
「死ぬなよ……。死ぬんじゃねえぞ、相棒!!」
次元は叫んだ。
――寒い
全身から力が抜けていくのが分かる。
視界がどんどん暗くなっていく。
――これが、死か。
誰もいない。
当然だ、全て捨ててきたのだから。友も、積年の仲間ですらも。
孤独感がシグナムの心を震わせた。
――寂しい
そう思ってしまった瞬間、凍てつかせたはずの心にヒビが生まれた。
封印したはずの幾つもの光景があふれ出し、頭の中で次々と瞬く。
食欲を誘う芳香漂う食卓、暖かい団らんの一時。
その卓に並ぶ仲間の顔が、戦場で認め合った友の顔が浮かぶ。
ヴィータ、シャマル、なのは、テスタロッサ……。
――会いたい。
彼女達の笑顔がみたい。笑い声が聞きたい。
そして。
――はやて
その名を呼んだ瞬間、何かが爆発した。心の奥底に燃え残った火に、再び輝きが戻る。
何度も何度もはやての名を呼ぶ。呼ぶたびに火は力を増し、眩い輝きを取り戻す。
(そうだ……。はやての魂を、未来を、取り戻す。その時まで私は……。膝を屈するわけには……。いかない!!)
残る力を振り絞って目を見開き、シグナムは右腕を持ち上げた。
左目に指をそえる。
いっきに抉った
「ぐっぎっ……がぁっ!」
脳に電撃を間断なく流し続けるような激痛に悶絶しそうになりながらも、目玉を掴み、引き抜く。
目玉をカートリッジにして、胸の傷を癒す。
――やはり、足りない
他者が見ればあまりの光景に卒倒したかもしれない。
それほど満身創痍の姿で顔面を朱に染めて這いずるシグナムの姿は、すさまじかった。
ようやく剣のある所に辿り着き、剣を拾い上げ、髪を切る。
ろくに動かない左手のせいで、拾い集めるのは予想以上に手間だった。
髪が消失。
――まだ、足りない
ほとんど利かなくなった左腕の五指を開いて地面に押し付け、指に剣を撃ち落す。
切断した指に、残りのクラールヴィントがはまったままの4指を押し付ける。
指が消失。ようやく、胸の傷をある程度塞ぐことができた。
だが失った血は戻らない。他の傷からの出血も止まらない。
――このままでは死ぬ
(あの豚の、魔力の塊を奪い……治療、しなければ……)
半分になった視界がぐらぐらと揺れる。
足がふらつき、痛みが間断なく襲う。
痛い。辛い。苦しい。吐きたい。死にたい。投げ出したい。倒れてしまいたい。
弱音という弱音が頭の中で踊り狂い、悪魔の囁きが耳元でオーケストラを奏でる。
だから呼ぶ。
――はやて
その名だけが体に力を呼び、足を前に進ませる。
――はやて
――会いたい、もう一度
■
大穴の開いている壁からビルの中に飛び込み、次元は荒い息を吐きながらナイフで袖口を引き裂き、
手早く自分の脇腹を縛ると、続いてぶりぶりざえもんの傷口を縛ろうとした。
「……やめておけ。もう、だめらしい……」
力の無い声がぶりぶりざえもんの口から漏れた。
――ふざけんなっ! なに物分りのいいこと言ってやがる!
次元の心はそう激しく叫んだ。
心の中で荒れ狂う感情のままに、そう叫びたかった。
だが、次元は悟ってしまう。
次元の理性が、積み重ねてきた経験が、言っている。
――助からない、と
「痛みは、あるか?」
静かな声で次元は訊いた。
「大丈夫だ……」
どこか澄んだものを感じさせる声だった。
「……すまねえ」
「いいってことよ。これも、おたすけだ」
苦渋と悔恨に満ちた声で詫びる次元とは対照的に、ぶりぶりざえもんの声は穏やかだった。
「……あの女をおたすけできなかったのは、すこし……。残念だ」
ぽつりと、呟くようにぶりぶりざえもんはいった。
「ぶりぶりざえもん、おめぇ……」
「あの女は……。とても苦しそうだった。人を殺して回る奴だというから……。
ホテルで暴れていた、あの化物のような奴かと思っていたのだが……。全然違った」
途中で小さく咳き込みながらも、ぶりぶりざえもんは言葉を紡いでいく。
「人をおたすけするものは……また人におたすけされる……。それが、わたしの掴んだすくいの真髄。
……なのに、あの女のやっていることはその逆だ。あれでは……」
ぶりぶりざえもんの言葉が途切れた。
何度も咳き込み、苦しそうに顔を歪める。
次元はそっと、ぶりぶりざえもんのヒヅメを握った。
(ちいせぇな……)
体が幼児程度の大きさしかないから当然だ。
だが自分を庇ってくれたあの背中は、とても大きく見えた。
「……次元。私は……ヒーローではなかったのだな……。あの女を、おたすけできなかった」
荒い息の下から吐き出したぶりぶりざえもんの声は、震えていた。
「……ヒーローってのはよ。すぐにはなれねえから、ヒーローって言うんじゃねえのか?
ましてや、おまえさんのヒーロー道は、なんたって『救い』だ。
さっきも言ったが、こいつはなかなか難しいもんだ。なるのに時間がかかっちまうのが当然だと思うんだがな」
「……もう少し時間があれば、なれたのだろうか?」
「ああ、なれたさ。きっと、お前さんが考えてるようなヒーローにな」
次元は大きく頷いて見せた。
「少なくとも俺に取っちゃ、お前さんがまぎれもねぇ救いのヒーローさま、さ」
「……ふっ、当然だ……」
いい終わるやいなや、ぶりぶりざえもんの顔が激しくゆがみ、その呼吸がさらに荒らくなった。
苦しげに体を捩るぶりぶりざえんもんのヒヅメを次元は強く握った。
「それによ……。仮に救いのヒーローとやらじゃなくたってよ……。
おめぇは、ヤマトってやつのダチで、俺の相棒だろうが! それじゃあ、不満だってのか?」
「……少し……な」
ぶりぶりざえもんは笑ったようだった。
「馬鹿野郎……。こういうときはな、嘘でも、うん って言うもんだ」
答えは返ってこなかった。
握っていたヒヅメをはなすと、ぶりぶりざえもんの手は地面に落ちた。
同時にぐらっ、と次元の体が揺れた。
(すまねぇな、相棒……。おめぇに救ってもらった命だってのに、俺もすぐそっちに行くかもしれねぇ)
脇腹に撒いたシャツは既に真っ赤に染まり、それでも血は流れ続けている。
「だがよ……。 おめぇと、ルパンの仇だけは、俺が……」
力を振り絞り、震える手で銃を握りなおし、次元は立ち上がった。
あの女が近づいてきていた。
ついさっきまでの月の女神もかくや、という美貌は消えうせている。
髪はザンバラ、左目、左耳、左手の親指は欠け、夥しい出血で、顔も服も赤に染まっている。
墓場から蘇った亡者といった風情だ。
「そうかい……。地獄へ行く準備は万端ってわけだ。安心しな、その格好なら向こうでひっぱりだこだろうからよ!!」
次元は、獰猛な笑みを浮かべ、猛禽の如き視線を歩み寄ってくる女に叩きつけた。
■
男ので倒後方で倒れている豚の尻の下から、翠色と赤色の光が漏れている。
(あれさえ……。あれば……)
一歩、一歩、重い足を引き摺るようにシグナムは歩を進める。
今の状態でどう、あの男の弾丸を掻い潜るか。
(それが問題、だな)
体はこれ以上削れない。五感をこれ以上失って勝てる男ではない。
いちおうの切り札はある。
正真正銘、最後の最後だが、騎士甲冑の魔力を使う。
それをいかに使うか。
――紫電一閃
論外
――パンツァーガイスト
この足、この体ではあの男を斬る前に、効果が切れかねない。
――シュテルングウィンデ
後ろにある魔力の塊を損傷する恐れがある。それでは男に勝っても意味が無い。
騎士甲冑なしであの銃の弾丸を食らえば、腕と脚なら千切れ飛び、
胴体に食らえばどこに当たっても致命傷になるだろう。
だが、迷っている時間はない。
自分に残されている時間は、あとわずか。
覚悟を決め、シグナムは剣を握り締めた。
シグナムの騎士甲冑が消失。
飛行魔法で体を浮かし、一気に体を前方へと運ぶ。
男の像がシグナムの瞳の中でみるみる巨大化していく。
男の左腕の銃口と目が合った。
右方向に急速方向転換。強烈なGが体を締め上げ、体全体に激痛が走る。
轟音が鳴った。
再度、方向転換。今度は一直線に男へと向かう。
どこかへと吹き飛びかける意識を舌を噛んで引き戻す。
男の体が迫った。
「はぁぁ!!」
シグナムの口から咆哮が轟いた。
体力、気力の全てを振り絞った一撃が超速で弧を描く。
刀に衝撃。
シグナムの右目が見開かれた。
男の右手に握られたコンバットナイフと左手の銃が交差し、シグナムの剣を挟みこむように受け止めていた。
そんなことで。
――我が一撃
「あっ……」
――止められるものか!!
「ああぁぁっ!!」
かまわずシグナムは剣を振り切った。
飛行魔法の推進力も加算した剛刃がナイフと銃身を圧しのけ、刃が男の肩から脇腹への軌道を描いた。
手ごたえはあったが――
――浅いかっ!?
よろめきながら、男が銃を構える。シグナムは回避行動を取り、銃の射線から逃れようとした。
突然、男が前に出た。
――男の右手が見えない
「っふ……」
シグナムの口から呻き声がもれた。その腹部には深々と、コンバットナイフが突き立てられていた。
「っう……」
痛みが腹から脳天に突き上げ、半分になった視界が真っ赤に染まった。
――負ける……
「かあっ!!」
シグナムの額が次元の顔面に叩きつけられた。
怯んだ相手に更に前蹴りをいれ、突き放す。男が吹き飛んだ。
だが、シグナムにできたのはそこまでだった。力が抜け、勝手に膝が落ちる。
右手の剣を支えにして、何とか姿勢を維持するが、足がおこりのように震え、目が本格的に霞んでいく。
どうやら状態は男も似たようなものらしい。
体を起こしはしたが、膝をついたまま立ち上がらない。いや、立ち上がれないのだろう。
この短い攻防で、床には互いの血で咲かせた火牡丹が咲き乱れている。
それなのに男は、シグナムの視界が半分であることと、いやおう無しに銃に目が行ってしまう心理を利用し、そこを突いてきた。
この土壇場の土壇場においてすら、何という冷静さと計算高さか。
(何か、なにかないか……)
この男の息の根を止める方法は無いのか。この男に死角はないのか。
――いかに殺すか
殺意の思考がシグナムの頭を埋め尽くしていく。
シグナムの右目がある物体を捉えた。
シグナムの頭に何かが閃いた。男の行動がいくつもシグナムの中で明滅する。
勝算はある。だが……
――何を躊躇う
心をわずかにかすめた躊躇を、シグナムは嗤った。
(私は全てを捨て、取り返しのつかないものを取り返す!!)
シグナムの唇が半月を描き、瞳に暗黒の炎が宿る。
無理矢理体を引き起こす。
霧散しかけた魔力を無理矢理引き摺り戻し、掬い上げ、飛行魔法を発動。
前方に向かうと見せ、上方に方向転換。シグナムの体が天井近くまで上昇。
それは飛行というにはあまりにも遅く、あまりにも緩やかだった。
大跳躍、といった程度のもの。だが、それで十分。
予想どおり弾丸は来ない。
人の目は、上下運動に弱い。そして半分以下の高さになったあの姿勢では上を狙うこと困難だ。
男の頭上を超える。目標の物体が迫る。
「はぁっ!!」
シグナムは落下の運動エネルギーと位置エネルギーも利用し、思い切り豚の体に剣を突き立てた。
剣が貫通し、ガチンと剣の先端が床に突き当たった。
「ぬぅあぁっ!!」
満身の力を込めて豚の体ごと剣を持ち上げ、男に向ける。
あまりの酷使に体の全ての筋肉が悲鳴を上げ、全ての傷が脳神経を焼ききらんばかりに絶叫を上げた。
シグナムの全身から血がほとばしり、ぐるん、と眼球が上を向いた。
だが、シグナムの八神はやてへの思いは、執念は、それら全てを凌駕した。
肉の盾を構え、シグナムは男に向かって突撃していく。
「っの野郎っっ!!!」
耳をつんざくような怒号が響き、一刹那遅れて轟音。
シグナムの左足に衝撃があり、急に体が軽くなったような感覚が襲う。
遅れてやってきた痛みはまるで地獄の責め苦のよう。
「ぐっっ……」
だが、シグナムは止まらない。歯を軋らせ、鬼の形相で残った右脚で跳躍し、
残りカスの魔力を磨り潰して、体を男に向かって加速させた。
「がああああぁぁっ!!」
狂戦士の雄叫びが夜を切り裂いた。
■
気絶していたのはほんの一瞬らしかった。
あの一瞬。
男の体を貫いた時、力を使い果たし、倒れてしまったらしい。
――だが、勝った。
シグナムは身を起こし、豚の尻ポケットにある魔力の塊に向かって手を伸ばそうとする。
だが、その速度は亀より遅かった。
(あれだ、あれを……あれ、アレぁ……)
右脚からの大量の出血によって、シグナムの意識は混濁していく。
床に赤いラインを描きながら、それでもシグナムは豚へとにじり寄っていく。
――だいじょ……ですか! ごふじん!
突然、男の声が途切れ途切れに聞こえてきた。
シグナムの視界の中に、男の像が出現した。
像がぼやけ、間断なく揺れるせいで顔はよく判別できないが、男の肌が浅黒いことだけは分かった。
――いま……てあてを
男が耳元で叫んでいる。
「……の、ぶたの……で……ひかっている……あれ、を……とってく……れ」
混濁した意識の中に残された執念が、言葉を紡いだ。
――こ……れか?
男が豚に近づいていき、ポケットを探っている。
(たすかっ……た……)
張り詰めていたものが切れ、安堵の吐息を吐き出すと、シグナムは目を閉じた。
(……れでまた……たた……か……える)
それきり、シグナムの意識は永遠の闇に落ち――
二度と戻ることは無かった。
■
「生憎と、目は良くてな……。やむにやまれず味方の死体を使ったというケースも一応考えてみたんだが、
味方を名前で呼ばずに、豚呼ばわりするような奴はいやしない」
女が死んだのを確認し、ゲインは銃をおろした。
豚の首には首輪があり、まだ暖かかった。つまり殺されたばかりの参加者ということだ。
そして、『ぶた』という名前は名簿のどこにもない。
味方でない参加者を殺して特定の物を奪おうとする人間がどんな人間だかは、考えるまでもない。
もっとも、男と豚が女性を二人がかりで襲ったという可能性もなくはないが、
このゲームでチームを組めるということは、参加者を殺してまわる類ではない可能性が高い。
(確かに、殺して回る輩が何かの理由で組む可能性もゼロじゃあないが……)
その低い可能性にかけて、昼間の過ちを繰り返す気にはなれなかった。
あの時、怪我をした女性だからとキャスカを無条件に信じなければ、ひかるはまだ生きていたかもしれない。
のはらみさえの足を引っ張る真似もしなくてすんだ。
(あんなミスは二度とごめんだ……)。
ゲインは一本の剣に串刺しにされている男と豚に近寄った。
無残な有様だった。
銃声を聞いて駆けつけてはみたが、ゲインが走り寄る前に全ては終わってしまった。
(幾らなんでもこれじゃあ、酷すぎる)
だが、二人の体を貫いている剣の柄に触れた瞬間、炎がゲインの腕を這い登った。
慌てて飛びすさり、火を消す。
「っつう……。なんて物騒な武器だ」
手を振り振り、ゲインは顔をしかめた。これでは埋葬も出来ない。
(参ったぜ……)
ゲインは歩きながら頭をかき、破壊された壁から外をみやった。
(埋葬する礼としてもらっていく予定だったんだが)
ゲインの視線の先には誰のものともしれないディパックが転がっていた。
取り上げて空けて中身を確認するうちに、数枚のメモとサングラスが転がり出た。
(俺の趣味じゃないな……)
サングラスはとりあえずディパックに戻し、ゲインはマッチを摺ってメモを読み始めた。
読み進めるうちに、ゲインの表情が喜色の色で輝き始める。
(……どうにかして、このトグサってヤツと接触しなくちゃならんな。
いや、そりゃ贅沢というものか。この際、このメモに載っている人間なら誰でもいい。
さて、どうやって連絡をつけたものか……)
数度読み返し、ゲインはメモをディパックの中にしまった。
「すまない、お二人さん。埋葬の手段を考えている時間はなくなっちまった。
だが、その代わりと言っちゃあなんだが、あんた達二人の命は絶対に無駄にしない。
あの世で見ててくれ。あんた達の運んだものがエクソダスに通じる扉を開く所をな!」
物言わぬ二つの体に誓い、闇の中に再びゲインは駆け出した。
「見ててくれよ! 俺達のエクソダスとギガゾンビの野郎への復讐をな!」
行き先を定めた請負人の足取りに一切の迷いは無かった。
請負人が駆け去った後には、3つの亡骸がだけが残された。
串刺しにされた2つの亡骸と、体に多くの欠損を抱えた女の亡骸。
それが、死闘の果てに、それぞれの思いの果てに、のこされたもの。
【F-7/2日目/黎明】】
【ゲイン・ビジョウ@OVERMANキングゲイナー】
[状態]:疲労(小)、右手に火傷(小)全身各所に軽傷(擦り傷・打撲) 腹部に重度の損傷(外傷は塞がった)、ギガゾンビへの怒り
[装備]:ウィンチェスターM1897(残弾数5/5)、悟史のバット@ひぐらしのなく頃に、『亜空間破壊装置』『監視』『首輪』に関するメモ
[道具]:デイパック、支給品一式×10(食料3食分消費)、鶴屋さんの首輪 サングラス(クーガーのもの)
9mmパラベラム弾(40発)、ワルサーP38の弾(24発)、銃火器の予備弾セット(各40発ずつ)、ウィンチェスターM1897の予備弾(26発)
極細の鋼線 、医療キット(×1)、マッチ一箱、ロウソク2本
ドラムセット(SONOR S-4522S TLA、クラッシュシンバル一つを解体)、クラッシュシンバルスタンドを解体したもの
スパイセットの目玉と耳@ドラえもん、
13mm爆裂鉄鋼弾(21発) デイバッグ(×4)
レイピア、ハリセン、ボロボロの拡声器(使用可)、望遠鏡、双眼鏡
蒼星石の亡骸(首輪つき)、リボン、ナイフを背負う紐、ローザミスティカ(蒼)(翠)
トグサの考察メモ、トラック組の知人宛てのメッセージを書いたメモ
『亜空間破壊装置』『監視』『首輪』に関するメモ
[思考・状況]
基本:ここからのエクソダス(脱出)
1:信頼できる仲間を捜す。
(トグサ、トラック組み、トラック組みの知人を優先し、この内の誰でもいいから接触し、
得た知識を伝え、情報交換を行う)、
2:しんのすけを見つけ出し、保護する。
3:ゲイナーとの合流
4:電車、寺、温泉を廻り、残り三つの亜空間破壊装置を破壊する。
5:ギガゾンビにバレるのを防ぐため、施設内のツチダマは必ず破壊する。可能ならスパイセットも没収。
6:ギガゾンビを倒す。
[備考]:第三放送を聞き逃しました。
:首輪の盗聴器は、ホテル倒壊の轟音によって故障しています。
:モールダマから得た情報及び考察をメモに記しました。
【モールダマ@ドラえもん 機能停止】
【モールの亜空間破壊装置 機能停止】
監視道具『スパイセット』について
監視はひみつ道具『スパイセット』によって行われており、会場のいたるところに宙を浮かぶ目玉(映像を送信)と耳(音声を送信)が配置されています。
それらから送信された映像と音声は、会場外部にいるツチダマがモニター越しに受信→ギガゾンビに提供という流れです。
特例として、亜空間破壊装置が設置された施設の監視映像及び音声は、担当のツチダマが送信しない限りギガゾンビには伝わりません。
よって、現在モール周辺は担当であるモールダマの機能停止、スパイセットの稼働不能により、ギガゾンビの監視が行き届いていない状態です。
亜空間破壊装置について
会場内に計六つ設置(図書館、遊園地、寺、温泉、電車内、モール)された亜空間破壊装置は、この会場を世界から隔離するためのものです。
これら全てを破壊、機能停止させることで隔離状態は解かれ、外部との連絡が可能になります。
亜空間破壊装置のある施設は原則としてツチダマが番人を務め、それぞれ監視映像の送信、亜空間破壊装置の警備に回っています。
また、図書館に設置されていた装置はロベルタの放火、遊園地に設置されていた装置は劉鳳の破壊活動の被害を受け、既に機能を停止しています。
よって、残る装置は寺、温泉、電車内(それぞれ住職ダマ、番頭ダマ、車掌ダマが担当)の計三つです。
首輪について
首輪には『爆弾』、『収音と送信』、『禁止エリアの電波受信』、『遠隔爆破の電波受信』、そして『戦闘データの計測及び送信』の五つの機能があります。
音声と戦闘データ計測値は常時ギガゾンビ側へと送信されており、ツチダマが要注意参加者をチェック。必要があればギガゾンビへ報告しています。
盗聴器は性能が低く、スパイセットの補助的な役割しか持ちません。また、大きな音によって故障する恐れがあります。
【シグナム@魔法少女リリカルなのはA's 死亡】
【次元大介@ルパン三世 死亡】
【ぶりぶりざえもん@クレヨンしんちゃん 死亡】
【残り25人】
【備考】
以下の物がF-7にあるシグナム、次元大介、ぶりぶりざえもんの死体に、もしくは死体の側に放置されています
獅堂光の剣(次元とぶりぶりざえもんの死体に突き刺さっている)
クラールヴィント(シグナムの死体の指にはまっている)
454カスール カスタムオート(残弾:0/7発) 次元大介の死体が握っている
コンバットナイフ
以下の物がF-7エリアのどこかに放置されています
鳳凰寺風の弓(矢18本) コルトガバメント(残弾5/7)
[シグナムのデイパック]
[道具]:支給品一式×3(食料一食分消費)、スタングレネード×2
ルルゥの斧@BLOOD+、ルールブレイカー@Fate/stay night
トウカの日本刀@うたわれるもの、ソード・カトラス@BLACK LAGOON(残弾6/15)
ハルヒ、ヤマト、アルルゥ。
その三人ともが、映画館から姿を消していた。
館内のどこを探し回ってもその姿は見当たらず、また外に停めてあったはずのトラックもなかった。
(ヤマトじゃ彼女を押し留めるのは荷が重かったか……)
涼宮ハルヒという人間を甘く見ていた。
特に、その根拠のない行動力を。
当初は、最悪の事態――何者かによる襲撃という可能性も頭をよぎった。
自衛には十分な武装を残していった。もし何かあったとすれば、逃げるにしても何かしらの衝突が起きたはずだ。
だが、何者かと争った形跡は全くなかった。
その代わりに見付けたものは、ハルヒがしたためた書き置き。
『トグサさん、SOS団はバイトじゃないから公務員だろうが何だろうが脱退は不許可!』
そんな一文を見て苦笑する。ごくごく短い付き合いではあるが、なるほどいかにも彼女らしい。
他には、団長に断りなく出かけた自分達への憤慨だとか、不甲斐ない団員二人を捜しに出るが数時間したら戻る旨だとか、そういったことが書かれていた。
そして、一日の終わり――新たな一日の始まりを告げる放送が始まった。
ハルヒ、ヤマト、アルルゥ。
その三人ともが、放送では名前を読み上げられなかった。
その一方で、ヤマトの親友だという太一、吸血鬼を倒すために犠牲となった長門、そしてよく見知った名前――タチコマの名前が呼ばれた。
(タチコマ……お前まで逝ったのか。この巫山戯た殺し合いに召喚された公安九課の面々も、もう俺一人を残すのみ。俺みたいなのがまた最後に残るってのは、何か因果めいたものを感じるな)
笑い男事件において、公安九課は一度滅んだ。その時にも最後まで世に残ってしまったのは自分だった。まあ、あれは荒巻課長の取り計らいだったわけだが――
(あの時みたいに、みんなひょっこり生きていてくれれば、どれだけ有り難いか)
そんなことは有り得ない。分かってはいる。
先の放送で呼ばれた名前、計14名。
彼らは死んだのだ。何の慈悲も、容赦もなく。
それまでに呼ばれた37名と同様に。
放送では伝わらないことも多い。長門の死と、彼女が遺したものは、自分の口からハルヒ達に伝えなければ。
どう伝えるべきか。最良の方法は自分には分からない。
映画館を出る。幹線道路を目の前にしてトグサは考える。
放送時点での三人の無事は間違いないだろうが、それがいつまでも続くとは限らない。長門の死を知って、ますます行動をエスカレートさせてしまうかもしれない。
早々に彼女達を捜し出し、改めて保護し、病院へと向かいたい。
(トラックで移動するとなれば、できればこの幹線道路を使いたくなるのが心情。南に行ったのか? それとも北に行ったか、あるいは橋を渡って西に――)
南の方角から聞こえてきた地響き。
瞬時に思考を警戒に切り替え、そちらを見やる。そこから何かが飛び出し、そして上空を通り過ぎていった。
人影のように見えた。だが一瞬のことで、本当に人影だったという確証は持てない。それは北側に着地し、再び地響きを起こす。同じように飛び上がり、ただひたすらに北を目指しているようだった。
自分には目もくれずに。
(……何が何だか分からないが、今は藁にも縋るしかない!)
ここより北に何かがある。それは間違いない。
トグサはマウンテンバイクに跨り、ペダルを踏み出した。それに追いつけるはずがなかろうとも。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
追っ手の気配がないことを確認して、不二子はトラックを止めた。
相変わらずの放送も、もうとうに終わっている。
次元と劉鳳は無事。
特に劉鳳は『銭形警部の変装をする峰不二子』という情報を有している。それを周囲に流布される前に死んでほしかったのだが、彼の能力を考えればそうそう簡単に死ぬことは期待できまい。
いくつかの打算を並行して続けながら、彼女は溜息を吐いた。
(……どうしたものかしら)
隣には、未だ目覚める様子のない少年が一人。
明確な利用価値がなければ、これ以上連れて回る意味はない。拘束し続けるだけでも手間だ。
彼が目を覚ますタイミングによっては、不意にこちらに害を為すことだって十分に考えられる。それがこちらにとって最悪のタイミングだったりすれば、目も当てられない。
彼女の中の天秤は、一方に傾き始めていた。
万難を排するならば、ここで始末しておくのが得策。
要するに、殺して捨てていくということだ。
今更罪悪感がどうこうと言うつもりは全くない。既に少年を一人射殺している。
逃げるのに必死で各々のデイパックの検分はまだ済んでいないが、確かクロスボウがあったはずだ。銃とは違い、周囲に音を聞かれずに済む。
(それじゃ、さっさと済ませましょう)
そしてさっさと済ませるべく、デイパックからクロスボウを――
(――?)
――物音が、聞こえた。ような気がした。
トラックを降りて、そちらに目を向ける。遙か後方。闇は深く、目を凝らしたところで遠くまで見渡せるわけでもない。
空耳。
気のせい。
ストレスによる幻聴。
表現の仕方はいろいろとあるが、まあそういったものであるのかもしれない――不二子がそう思い始めていた、その時だった。
不意に、夜の闇が一層濃くなる。
猛烈な悪寒を感じて天を仰ぐ。何かがこちらに向かって急降下してきている。
「見付けたぁ!」
その叫び声よりも早く、不二子は状況の見当を付けた。同時に行動を起こしていた。
素早く運転席に戻り、アクセルを踏みつける。トラックが急発進する。
わずか数瞬の後。
つい先程までトラックがあった場所に、それ――カズマが空から突っ込む。
病院の正面玄関を吹き飛ばしたのと同じ破壊の渦が、そこに巻き起こった。
その余波にハンドルを取られそうになりながらも、不二子はバックミラーを見やる。
映っていたのは、急速に小さくなるカズマの姿。
彼が、大地に向かって拳を振るう。
そのアルターは劉鳳のそれとは違い、どうやら空を自由自在に飛べるようなものではないらしい。手に装着して何かを殴るためだけにある能力のようだ。
ならば地面を殴って、その反動で飛べばいい。
そういう発想なのである。
(クレイジーね。ほとほと呆れるわ)
彼が突然空から降ってきた理由としては合点がいったが。
しかしながら、これ以上余計なことに思考を割くわけにはいかない。
アクセル全快でトラックを走らせている。
このまま北上したところで、行き着く先は禁止エリアだ。西に行けば河に阻まれ、東にいけば山道で速度が落ちる。
カズマに追いつかれれば、抵抗する術はない。
ヤマトを人質を取っただけでは諸共吹き飛ばされるかもしれない。先程の彼の猪突猛進ぶりから見れば、むしろそうなる可能性こそ高いと考えるべきだ。単純な策では勝算はないに等しい。
(ならどうする? 考えなさい、峰不二子!)
自分にできること。
自分の位置。
自分の所有物。
自分の経験、知識、勘。
何もかもを総動員して、ようやっと――実際には極々僅かな時間だったが――結論に辿り着いた。
(……良かったわね、ヤマト。貴方は”私の役に立つ”わ)
彼女は口の端を歪に釣り上げながら、そう呟いた。胸中で。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
(兄貴が死んだ!? なのはが死んだ!? そんな馬鹿なことがあるってのか!?)
カズマは放送で告げられた内容を反芻した。
あのクーガーが、なのはを守りきれずに死んだ。到底信じられなかった。
だが、そういったことも有り得るのではいかと、心のどこかでは理解していた。
例えば、自分達と死闘を繰り広げた金髪の女剣士。ヴィータの犠牲があったからこそ、辛うじて彼女を退けることができた。自分一人の力ではそれすらも叶わなかっただろう。そう認めざるを得ない。
それと同様に、クーガーの速さすらをもねじ伏せる敵がいたとしても、何ら不思議はないのだ。
(くそっ! 今はまだ、小難しいことを考えてるほど暇じゃねぇ!)
地面を殴り飛ばしては高速で滑空する自分から、必死に逃げ惑うトラック。
そこにヤマトがいる。
そこに太一の仇がいる。
今はやるべきことが目の前にある。立ち止まるわけにはいかない。
カズマは立ち止まりこそしなかったが、クーガーやなのはのことを考えまいとすればするほど、逆に意識してしまっていた。
そんな彼の葛藤などお構いなしに、あと何秒で首輪が爆発するだとかどうとか、耳障りな音声が首輪から垂れ流され始める。それが彼の神経を一層逆なでした。
どうやら禁止エリアとやらに突入したらしい。
(うるせぇ、知ったことか!)
だが、カズマにとって、そんなことはどうでもいいことだ。
話は至ってシンプルである。
ならば首輪が爆発する前にトラックに追いつき、太一の仇をぶちのめし、ヤマトを連れて来た道を戻ればいい。
そして、カズマは見た。
自分が追っているトラックが、カーブを曲がりきれず――まるで曲がるつもりがなかったようにも見えたが――そのまま道路の外へと飛び出し、派手に転がっていく姿を。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
――警告します。禁止区域に抵触しています。あと20秒以内に爆破します――
ヤマトを覚醒させたのは、衝撃と、激痛と、騒音じみた警告音――それも聞き覚えのある――だった。
太一を目の前で失った瞬間から、何をどうすればこんなことになるのか。視界に入ったのは、横転して虚しくタイヤを空回りさせているトラックだけ。そのトラックともども、自分は禁止エリアにいるらしい。
とにかく立ち上がらなければ。
「痛っ――」
足に激痛が走る。
どうやら骨が折れたかどうだかしているらしい。立ち上がることもできない。
――警告します。禁止区域に抵触しています。あと15秒以内に爆破します――
(なら、這ってでも何でも、禁止エリアから出なきゃいけない!)
自分が禁止エリアのどの辺りにいるのか分からない。どちらに向かえばいいのか分からない。這っていって間に合うのかどうかも分からない。
それでも、生きることを諦めてはいけない。それが幸運にも生き残った、あるいは不幸にも生き残ってしまった自分が果たすべき責務なのだから。
そして、黒い影が空から降ってきた。
「大丈夫か! ヤマト!」
空から降ってきたそれは、そう言いながらこちらに近付いてくる。
――警告します。禁止区域に抵触しています。あと10秒以内に爆破します――
一人の青年。
その姿には見覚えがあった。
(この人は、確か――)
太一達と一緒にいた青年だ。
「あの野郎がいやがらねぇ――逃げたか!」
こちらが動けないことを見て取ったのか、青年はすぐに自分を背負った。そして悪態を吐きながら舌打ちする。
その言葉を聞いて、ようやっとヤマトは自分の置かれた立場を認識する。あの野郎――太一を殺した奴に、いいように利用されたのだ。逃げるための時間を稼ぐ道具として。
「すぐ病院に連れてってやるからな。しっかり掴まれ! 多少痛くても我慢しろ!」
そして青年は異形の右手で地面を殴り、飛び上がった。この場を離脱すべく、信じられない速度で空を進む。
青年は全く意に介していないようだが、彼の首輪のカウントダウンは既に15秒を切っている。自分を抱えてなおここに来るまでと同じ速度を出せたとしても、かろうじて脱出できるかどうか。それだけの時間しか残されていない。
自分の首輪に残された時間は、青年のそれと比べて5秒ほど少ない。
たった5秒の差。
されど、決して覆せない5秒の差。
生きることを諦めるつもりはない。それこそ、最後の最後まで。
だが。
もしも自分の死が避け得ぬものとなってしまったならば、この青年を巻き込むわけにはいかない。
それがヤマトの下した結論だった。
――警告します。禁止区域に抵触しています。あと5秒以内に爆破します――
やりたいことはいくらでもある。言いたいこともいくらでもある。だが、いざ5秒となれば、せいぜい一言二言程度しか残せない。
デジタルワールドに残してきた仲間達に。
ガブモンに。
父に。
母に。
弟に。
自分が轢き殺してしまった少女に。
SOS団の皆に。
ぶりぶりざえもんに。
太一に。
そして――
――あと4秒――
「ごめんなさい」
――あと3秒――
「それと、ありがとう。ええと――」
――あと2秒――
名前が出てこない。
自らの危険を全く省みず、自分のことを助けようとしてくれているこの青年。その名を呼んで、彼にも言葉を掛けておきたかった。できることならば、その名を胸に刻んでおきたかった。
もう名を聞く猶予すらない。
――あと1秒――
少年はありったけの力と決意とを込めて、両の手で青年の背中を突き飛ばした。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
カズマは不意に突き飛ばされた。
誰に突き飛ばされたのか。
考えるまでもない。自分が助けるべき少年、ヤマトだ。
まさか彼に突き飛ばされるとは夢にも思っていなかった。
ヤマトを背負ってアルター化されていない左手で抱えていたが、彼自身にそれを拒まれてしまえば脆い。振り返ると、そこには虚空に取り残されたヤマトの姿があった。必死に手を伸ばすが、もう届かない。
「何でだ――」
そして、夜の闇に、光が閃いた。
爆音と衝撃。
空中で大きく体勢を崩され、制動を失う。人の頭を吹き飛ばすほどの爆発の威力は、決して小さくはない。あのままヤマトを背中に抱えていたならば、恐らく自分とて無事では済まなかっただろう。
ヤマトの行動にどのような意図があったのか。
理屈では分かる。
だが、感情で納得できるはずがない。
「――何でだよ、畜生!」
カズマは吼えた。
まともに着地することすらままならず、地面に接触し、跳ねるように転がって、そして意識を失った。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
悪が栄えた試しはない、とはよく言ったものである。
そういった悪は二流以下の悪だ。一流の悪は、栄えた瞬間に悪ではなくなる。
奪われる者に奪われる以上の価値はない。その手には何も得られず、何も残らない。ただ失い続けるのみ。
奪う側にいる者にこそ、価値がある。
自分は奪う側にいる人間だ。権力の頂点に立った男や巨万の富を得た男に取り付いて、養分を吸い尽くす。それが峰不二子の生き方だ。
そして、搾取の対象に人の命が含まれた。
たったそれだけのこと。
あとは単純だった。そうと決めてさえしまえば、人の命も”もの”でしかなくなる。所詮は搾取の対象でしかない。だから、利用し尽くし、奪い尽くす。
全ては己の未来のためにある。
峰不二子は走っていた。
闇に乗じて高速で走行するトラックから道路脇の茂みに飛び込み、ヤマトを乗せたトラックをそのまま禁止エリアの奥へと突っ込ませる。
可能な限り奥へ。決して引き返せないように。
カズマのように突き進むことしか知らない単純な人間ならば、何も考えずにそのままトラックを追っていくだろう。
こういった逃走劇はお手のものだ。トラックから飛び降りた際に擦過傷を負ったが、銭形警部の厚手の服のお陰もあって負傷は最小限で済んだ。行動には何ら支障ない。
(爆発音は一回。ヤマトの首輪が爆発したと見て間違いない。それ以降、爆発音はなかった。残念ながらカズマの始末には失敗した、と判断しておくべきね)
ヤマトを助けようとして、首輪の爆発に巻き込まれて死んだ――楽観的にそう考えることもできる。
だが一方で、彼が健在であるという可能性もある。
わざわざ戻って確かめようとするほど不二子も愚かではない。カズマと遭遇すれば、自分は間違いなく殺される。そんな危険な賭けに乗る必要もないだろう。元より、最大にして最低限の目標は、カズマを撒くことにあった。
支払った代償は、トラック一台と、少年一人の命。
そんな安い代償で目標を達成し、自分の身を守ることができたのだから、成果としては上々だ。
カズマとはこのまま二度と出会わずに済ませたい。他の誰か――例えば正義馬鹿の劉鳳あたりと殺し合って、共倒れになってくれれば有り難いのだが。化け物は化け物同士で潰し合って貰うに限る。
最後まで生き残ることができるのは、そんな化け物共ではない。
自分のような人間だけだ。
(あのギガゾンビが素直に願いを叶えてくれるとは思えないけど、最後の一人にさえなれば彼と――まあ、どう考えても男よね――彼と接触するチャンスを得られる)
こんな物騒な出来事に巻き込まれた見返りとして奪うものは、もう決めてある。
(男でさえあれば、いくらでもたらし込んでみせる。あの間抜けな劉鳳と同じように。あとは利用し尽くして、奪い尽くして、そして最後には捨ててしまえばいいわ)
ギガゾンビの全て。
権力だとか富だとか、そんな低俗な次元の話ではない。神にも与する力。それが自分のものになる。
約束された栄光に思いを馳せて、不二子は恍惚に近い昂揚を感じていた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
もう数歩も進めば、禁止エリアであるA-4に足を踏み入れることになる。トグサがそこに辿り着いた頃には、既に全てが終わっていた。
注意していなければ聞き取れないほどに小さな爆発音。
道路の上に倒れ伏している一人の青年。
自分が得ることができた情報は、これだけだ。
「おい、君、大丈夫か!」
マウンテンバイクを放り出し、トグサは青年に駆け寄った。
全身傷だらけで、ボロボロとしか表現のしようがない。心拍や呼吸はあるようだが、いくら揺すっても、呼びかけても、彼の意識は戻らなかった。
夜のとばりは全てを覆い隠す。いくら北に伸びるこの道の彼方を見やっても、ただひたすらに宵闇と静寂が続くのみである。
ここで何があったのか。
爆発音の正体は首輪の爆弾に依るものと考えられる。そう推測はできる。だが、どうしたところで推測の域を出ない。あまりにも情報が不足している。
真実は藪の中。
それを得るには、この青年に話を聞くしかない。
もちろん、青年が危険人物ではないという保証はない。最悪のケースとして、彼が誰かを禁止エリアに放り込んで殺害したという可能性も考えておくべきだろう。
しかし、真実を得るにはリスクは付き物である。刑事として、その程度のことは弁えているつもりだ。
(ともかく、彼を保護する。万が一危険な人物であれば拘束する。どちらにしても、事情は聞かせてもらわなきゃならないな)
幸いにも、職業柄どんな相手であれ人から物事を聞き出すことには慣れている。あとは用心さえ怠らなければいい。
トグサは青年を背負い込んだ。そして、横倒しになったままのマウンテンバイクにふと気付く。
(これを置いていくわけにもいかない、か)
移動の足としての有用性だけでは片付けられない。何だかんだで、既に半日以上を共にした相棒である。今ならバトーの言い分も理解できる気がした。こういったものにも存外に愛着は沸くものだ。
トグサは背中の青年を落とさないように気を付けながら、何とかマウンテンバイクを起こす。そして、それを押して歩き始めた。
【B-4/幹線道路上北端/2日目/夜中】
【トグサ@攻殻機動隊S.A.C】
[状態]:疲労と眠気、SOS団団員辞退は不許可、青年を背負って自転車を押している
[装備]:S&W M19(残弾6/6発)、刺身包丁、ナイフとフォーク×各10本、マウンテンバイク
[道具]:デイバッグと支給品一式×2(食料-4)、S&W M19の弾丸(34発)、
警察手帳(持参していた物)、技術手袋(使用回数:残り17回)、
首輪の情報等が書かれたメモ1枚
[思考]
基本:情報を収集し脱出策を講じる。協力者を集めて保護。
1 :一旦映画館に戻り、青年を保護(場合によっては拘束)する。
その上で、A〜B-4での出来事について聞く。
2 :ハルヒ達を捜し出し、共に病院へと向かう。
3 :病院に人が集まったら、改めて詳しい情報交換を行う。
4 :ハルヒからインスタントカメラを借りてロケ地巡りをやり直す。
5 :情報および協力者の収集、情報端末の入手。
6 :エルルゥの捜索。
[備考]
※風、次元と探している参加者について情報交換済み。
【カズマ@スクライド】
[状態]:気絶、中程度の疲労、全身に重度の負傷(一部処置済)
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
:…………
【B-5/2日目/夜中】
【峰不二子@ルパン三世】
[状態]:軽度の擦過傷
[装備]:コルトSAA(弾数:4/6発/予備弾:12発) 、銭型変装セット@ルパン三世(付けているのは衣服のみ)
[道具]:デイバック×7、支給品一式×7(食料6食分消費、水1/10消費)、ダイヤの指輪、
高性能デジタルカメラ(記憶媒体はSDカード)、携帯電話(各施設の番号が登録済み)、のろいウザギ@魔法少女リリカルなのはA's
鶴屋の巾着袋(支給品一式と予備の食料・水が入っている)、ボディブレード、かなみのリボン@スクライド
コルトM1917(残り3発)、ワルサーP38(0/8)、ホ○ダのスーパーカブ(使用不能)、E-6駅・F-1駅の電話番号のメモ、
コルトM1917の弾丸(残り6発) スーパーピンチクラッシャーのオモチャ@スクライド、USSR RPG7(残弾1)
RPG-7スモーク弾装填(弾頭:榴弾×2、スモーク弾×1、照明弾×1)、スコップ、暗視ゴーグル(望遠機能付き)
ハーモニカ、デジヴァイス@デジモンアドベンチャー、真紅のベヘリット@ベルセルク、ぶりぶりざえもんのデイパック(中身なし)
タヌ機(1回使用可能)、クロスボウ、インスタントカメラ×2(内一台は使いかけ)、トグサが書いた首輪の情報等が書かれたメモ1枚
【薬局で入手した薬や用具】
鎮痛剤/解熱剤/胃腸薬/下剤/利尿剤/ビタミン剤/滋養強壮薬
抗生物質/治療キット(消毒薬/包帯各種/鋏/テープ/注射器)/虫除けスプレー
※種類別に小分けにしてあります。
[思考]
基本:優勝して生き残る。自己の安全を最優先。利用できるものはなんでも利用する。
1 :できるだけA〜B-4から離れる。
2 :参加者を殺害し人数を減らす。
※弱者優先。闇討ちなどの効率の良い手法を取りたい。
3 :カズマや劉鳳など、人間を超越したような輩には手出ししない。
4 :F-1の瓦礫に埋もれたデイバッグはいつか回収したい。
[備考]
※E-4の爆発について、劉鳳の主観を元にした説明を聞きました。
※「なくても見つけ出す!」にて、ドラえもんたちがしていた会話の一部始終を盗聴していました。
※着せ替えカメラの効果により、本来身に付けていた服は一時的に消失しています。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
男の背には、あまりにも多くの死が積み重なっていた。
かなみ。
鶴屋。
君島。
ヴィータ。
太一。
クーガー。
なのは。
そして、ヤマト。
嗚呼、男は何も得ること叶わず、何も守ること叶わず。
ただひたすらに失い続ける。
その果てに、何があるのか。
何もありはしない。
ないからこそ――
【石田ヤマト@デジモンアドベンチャー 死亡】
[残り24人]
>>187 ×譲ちゃん ○嬢ちゃん
>>193 × まさかその豚にルパンが変装しているのないだろうな、と。
○ まさかその豚にルパンが変装しているのではなかろうな、と。
>>204 「せあぁぁっ!」
↓
「せあぁぁっ!!」
女の裂帛の気合が次元の耳を打った。
>>218 モールダマ機能回復。しかし以下の思考によりゲインの行動は露見していません。
「なんとか一命は取り留めたけど、マズイことを喋りすぎちゃったギガ〜。
スパイセットも持っていかれちゃったし、このままギガゾンビ様に報告したら大目玉ギガ〜。
嫌ギガ〜それは嫌ギガ〜……こうなったら何事もなかったかのように店番に戻るギガ〜。
いらっしゃいませギガ〜……ここあんまり人がこないギガ〜……」
――マウントポジション
それは総合格闘技等で取られる有利なポジショニングのことである。
攻撃側が相手の上に乗る、いわゆる「馬乗り」の状態の事を指す。
常に攻撃側の体重が掛かる為普通にしているだけでも防御側にとっては辛い状況である。
更に攻撃側は顔面をピンポイントで殴ることや、相手の頭を掴み地面に叩き付けること。
少し体勢をずらし急所攻撃や、関節技にも即座に切り替えられるなどやりたい放題である。
防御側は如何にしてこの体制から抜け出すかがポイントとなってくるだろう。
このポジションを……例えば豪腕の戦士が非力な魔法使いに取れば。
受ける方に残された選択肢は絶望の二文字だけである。
然し、この世には決まって例外という物存在する。
「力を持つ魔法使い」それは今、彼の目の前にいる。
「あっのレヴィっさげふっ!だから見たな」
「死・ネ」
殴る、顔面を目掛け大振りで突き抜けるように殴る。
「かわいのへっ!リボンなんげっ!知っうぇ!」
「死・ネ」
掴む、ゲイナーの襟を掴み地面へ数度叩き付ける。
「フリルのがふっ!ひらひらドレげほっ!スなんて面相もなっしゅ!」
「死・ネ」
殴る、今度は顎を目掛けて一直線に殴りぬける。
「だからっ人の話しをおえっ!聞いてくださなふっ!」
「死・ネ」
飛ぶ、レヴィの全体重+αの衝撃が腹部を襲う。
「ああレヴィさばふっ!んかばいいぬあっ!とかでんでんおぼってながふっ!」
「死・ネ」
殴る、少し姿勢をずらし、ゲイナーの腹部に重いパンチを浴びせる。
「だがらっ!みでまぜべふっ!だにもじりまぜんがぁっ!!」
「死・ネ」
絞める、逃げようと背を向けたゲイナーの首を絞める。
「……あ…………ぺぷし……」
「死・ネ」
叩き付ける、ゲイナーの髪を掴み地面へと熱いキスを交わさせる。
生き地獄とは正にこの事なのだろうか。
もう言葉を発することも出来なくなったゲイナーの惨状を確認し、レヴィは襟首を掴んで持ち上げた。
「もう忘れたか?
何も見て無いし言うつもりはないって言えるな?
分かってるなら分かってますって返事しろコラ」
勿論、返事ができるわけもなく頷きとOKサインを指で作るのが精一杯。
それのどこが気に入らなかったのかレヴィはもう一発鉄拳を叩き込んだ。
後ろで高笑いするギガゾンビのことなど二人の頭からは完璧に――――――。
――――――ギガゾンビ。
この殺し合いを開き、幾多の日常を奪い、命が失われ、人を疑い、殺していく様を愉しみ、殆どの他者にとっては倒すべき存在。
彼女にとっては消えてもらっては困る存在。叶えられない願いを叶えられる、最後の希望。
空に映る顔が読み上げる名を聞いても、何の感情も沸いて来ない。
幸運にも彼女が今いる場所は禁止エリアには選ばれることはなく、あと六時間の猶予を得る事が出来た。
ここで六時間じっとすれば傷の回復と残り人数の減少。
今望むものを二つ、手に入れる事ができる。
場所的に考えても今からここへ突っ込んでくる物好きはそうそう居ないだろう。
居るとすれば……。
「そんな事……今考えても仕方がないですね」
彼女は、静かに空を見上げる。
月は星を照らし、星は虹を照らし、虹は月を照らす。
あの空に映る虹も作り物なのかもしれないが、そうだとしても美しかった。
「輝く星よ、一つだけ聞いてください」
拳を空に突きつけ、ゆっくりと口を開く。
「どうか、私も虹を照らす星に。
いえ、民を照らす星になれますように」
そして、彼女は虹に見惚れる。
――変わることなく月は星を照らし、星は虹を照らし、虹は月を照らし続け。
それぞれが輝きを放ち、すべてに光を振り撒いている。
木に、草に、水に、火に、剣に、銃に、人に、命に。
「へヴぃざん(レヴィさん)」
もはや原形を留めていないゲイナーらしき顔を持つ人間がレヴィに問う。
レヴィはまだイライラが抜けきっていないのか野獣のような眼でゲイナーを睨み返す。
「ひどぶはだしがあづんでず(ひとつ話があるんです)」
そう言うとゲイナーはレヴィを手招きし。地図を地面に広げ、複数の点を指し示す。
「ざっぎのぼうぞうはぎぎのばしばんべぶば、(さっきの放送は聞き逃したんですが)
ぼうぼびんじえでぃあはじぜずをよげでるようだんです(どうも禁止エリアは施設を避けてるようなんです)」
ゲイナーの言葉とも言い難い音声をなんとかして聞き取るレヴィだが、その音声が更なるイラつきを生み出している。
尤も、それを生み出したのは彼女自身だが。
「ぼごででず、ごんがいもじぜづがよげられだどがでいぢまず。(そこでです、今回も施設が避けられたと仮定します)
ばっばらごんごもじぜづがぎんじえりあじなどぅのはがんがえにぐい。(だったら今後も施設が禁止エリアになるのは考えにくい)
ばがらぎょでんにずるのはざいできなんだとおぼいばす(だから拠点にするのは最適なんだと思います)」
聞き取りにくい音声、小難しい話、先程起こったフリフリ事件。
レヴィのストレスが徐々に臨界点へと達しかけている。
その様子をチラとみたゲイナーの言葉が早くなる。
「そぶがんばえりゅとごぶごぶやえいだかんはあんでんでず。(そう考えると高校や映画館は安全です)
じがじごうごうはどじごめだでるがどうぜいがある、(しかし高校は閉じ込められる可能性がある
だがらもじごうごうにひどがいればごどはじをわだっでぎます。(だからもし高校に人が居ればこの橋を渡ってきます)
つばでぃ!えいががんをめざじ、もうずごじあずげばにちでんぶんのひどにあえばず!(つまり!映画館を目指しもう少し歩けば二地点分の人に会えます!)」
「……で?要は映画館めざしゃいいんだろ?」
……後悔とは行動の後でないと着いて来ない。
ハナから「映画館を目指しましょう」と言っておくのが正解だったのだろう。
本日何度目か、もう数えるのもアホらしくなる回数の殴打音が鳴り響く。
「いばっ!」
吹き飛ばされたゲイナーの身体に何かが突き刺さる。
ゆっくりと身体を起こすと所々にキラキラと光る物がくっついている。
「が……ぼう?(画……鋲?)」
「おいおい、ボサっとしてると置いてくぜ?」
一人で先に行くレヴィを追いかけながら、体に引っ付いた画鋲を毟るゲイナー。
「どぼばでみばっでなんでずが、あだだは(どこまで身勝手なんですか、貴方は)」
聞こえないように、小さく、小さく吐いた。
ふと、起き上がるときに見た空には一本の白い線が入っていた。
「……にでぃ?(……虹?)」
彼もまた、少しの間だけ虹に見惚れる。
――月虹は輝く。
それはこの地で散った幾多もの命の涙か。
両者にとって、その虹が在る理由はどうでもいい。
見る者にとってはただ、美しく。
「彼」もまた、照らしているのだ。
――――――を。
剣には剣の輝きを。
銃には銃の輝きを。
知には知の輝きを。
虹には虹の輝きを。
そして、命には生の輝きを。
【C-5/二日目/深夜】
【魔法少女ラジカルレヴィちゃんチーム】
【ゲイナー・サンガ@OVERMAN キングゲイナー】
[状態]:風邪の初期症状、頭にたんこぶ(回復中)、頭からバカルディを被ったため少々酒臭い
顔面ボコボコ、腹部、後頭部に相当なダメージ、前を見て歩くのが精一杯(下記参照)
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、ロープ、焼け残った首輪、フェイトのメモ、画鋲数個
[思考・状況]
1:映画館を目指す。
2:フェイトが心配。
3:トグサと接触し、協力を仰ぎたい。
4:首輪解除の取っかかりを得たい。
5:朝六時にE6駅でフェイトと合流。無理ならその時に電話をかける。
6:さっさと帰りたい。
[備考]
※名簿と地図を暗記しています。また、名簿から引き出せる限りの情報を引き出し、最大限活用するつもりです。
※なのはシリーズの世界、攻殻機動隊の世界に関する様々な情報を有しています。
※第四放送を聞き逃しました
※ 現在↓
l'´ ,..::'! .: {i, ヽ、` 、` ー┐
l _, 。ィ' li:.、ヒァ' ヽ lj /
ノ `ヾ、.:'.::`ミ/゙'、 Y^iイ_
/ ⌒';,゙i, ri:.:i .::' メ、、_ノiトミ>
l ,:' /,';;;}:.ヾ:. 八リ
丶 ' {;!゙' ::.. ,ィ' ヽヽ
【レヴィ@BLACK LAGOON】
[状態]:腹部に軽傷、頭に大きなタンコブ(回復中)、頭からバカルディを被ったため少々酒臭い、まだまだイライラ
[装備]:イングラムM10サブマシンガン、ベレッタM92F(残弾16、マガジン15発、マガジン14発)
グラーフアイゼン(待機状態、残弾0/3)
[道具]:支給品一式×2、予備弾薬(イングラム用、残弾数不明)、NTW20対物ライフル@攻殻機動隊S.A.C(弾数3/3)
グルメテーブルかけ@ドラえもん(回数制限有り:残り18品)、テキオー灯@ドラえもん、ぬけ穴ライト@ドラえもん
西瓜1個@スクライド、バカルディ(ラム酒)1本@BLACK LAGOON、割れた酒瓶(凶器として使える)
[思考・状況]
1:映画館を目指す。
2:見敵必殺ゥでゲイナーの首輪解除に関するお悩みごとを「現実的に」解決する。
3:魔法戦闘の際はやむなくバリアジャケットを着用?
4:ワルいコのカズマ君にはお仕置きが必要。
5:ロックに会えたらバリアジャケットの姿はできる限り見せない。
6:物事なんでも速攻解決!! 銃で
[備考]
※双子の名前は知りません。
※魔法などに対し、ある意味で悟りの境地に達しました。
※ゲイナー、レヴィ共にテキオー灯の効果は知りません。
※第四放送を聞き逃しました
【C-2/二日目/深夜】
【セイバー@Fate/ Stay night】
[状態]:やや疲労、全身に中程度の裂傷と火傷(少し回復)、両肩に小程度の傷(少し回復)、魔力消費大 (少し回復)
[装備]:ドラゴンころし@ベルセルク アヴァロン@Fate/ Stay night
[道具]:支給品一式(食糧は二人分)、スコップ、なぐられうさぎ(黒焦げで、かつ眉間を割られています)@クレヨンしんちゃん
コンバットナイフ、鉈@ひぐらしのなく頃に
[思考・状況]
1:休息
2:エクスカリバーを探してみる。
3:優勝し、王の選定をやり直させてもらう。
4:エヴェンクルガのトウカに預けた勝負を果たす。
5:迷いは断ち切った。この先は例え誰と遭遇しようとも殺す覚悟。
※アヴァロンが展開できないことに気付いています。
※防具に兜が追加されています。ビジュアルは桜ルートの黒セイバー参照。
>>239の
【C-5/二日目/深夜】
【魔法少女ラジカルレヴィちゃんチーム】
を
【B-5/二日目/深夜】
【魔法少女ラジカルレヴィちゃんチーム】
に修正します。
>>196 ×それ故、とり取り返しのつかない物を失った。
○それ故、取り返しのつかない物を失った。
>>210 ×「馬鹿野郎……。こういうときはな、嘘でも、うん って言うもんだ」
○「馬鹿野郎……。こういうときはな、嘘でも、ねえ って答えるもんだぜ」
>>216 × 請負人が駆け去った後には、3つの亡骸がだけが残された。
○ 請負人が駆け去った後には、3つの亡骸だけが残された。
「アーッ、糞ッ!」
月の光も届かない暗く深い森の中、そこを罵声を撒き散らしながら進むのは薄く日焼けした肌に
墨を入れ、怒気と少しの酒気を纏った女ガンマン――レヴィだ。
彼女はその両手に持った銃を振り回して、目の前の鬱陶しい草木を払う。
「何であたしが、
こんな所でアニマルプラネットよろしくジャングル探検ごっこをしなきゃならねぇんだ!?」
「ほぉれは、へヴぃざんがとびょかんひいくばらぼっちのほうがひがいって……」
(訳:それは、レヴィさんが図書館に行くんだったらこっちの方が近いって……)
「うっせーっ! てめぇにゃ聞いちゃいねえんだよっ!!」
向けられた罵声に身を竦めるのは、彼女の後を覚束無い足取りで追う少年――ゲイナーだ。
先刻の彼女からの鉄拳制裁が彼の心に何かを刻んだのか、彼女が言葉一つ吐くたびに反応し
その身体を震わしている。
「……ったく、むかつくぜ」
露出した肌に刺さる葉、五月蝿い羽音を立てる虫を払いレヴィとゲイナーは森を進む。
此処で意識を取り戻した時にあった月がまた再び頭上、空の頂上に浮かんでいる。
つまり一日経ったということだ。それは長くはないが、決して短いと言える時間でもない。
――で、結局あたしは何をしてるのかってことだ。
レヴィは考える。
元々、殺しに禁忌など感じない。例え相手が女子供であろうとも理由があれば殺す――それだけだ。
だからゲイナーを最初に見た時も躊躇いはしなかった……が、下手を踏んだ。
そこから先は下手を踏みっぱなしだ。他の連中がブラッドパーティを楽しみ、すでに50人も死者が
出てるってのに自分は殺すどころかろくに銃も振り回していない。
あげく、コミックの世界の住人達の戦いでは見ていることしかできなかった。
――らしくねぇ。らしくねぇぜ……コレは。
そして、今は駄賃も貰っていないのに餓鬼のお守りだ。
ロワナプラじゃ一目置かれたラグーン商会の女ガンマンがキンダーガーデンの保母さんか?
そんなの笑い話にもならない。
――日和っている? ――いや、ビビってるのか!? ――このあたしが?
怪物相手じゃ戦えません? だからコソコソ地を這う虫のように森の中を進むのか?
ホラー映画の中のブロンドよろしく殺人鬼から逃げ惑うのか?
――違う。全然、違う。これは全然あたしらしくねぇ……。
狭くて暗い視界の中慎重に歩を進めていたゲイナーは、いつの間にかにレヴィの罵声が止んで
いたことに気付き顔を上げた。
その視線の先、5メートル程の位置でレヴィが影の中、片手の拳銃を彼に向けて立っている。
「ヘヴィさん……? (訳:レヴィさん……?)」
「……坊主。少しシリアスな話をしよう。重要なお話だ」
一瞬、風で枝が払われ月光がレヴィの顔を照らす。
それはゲイナーが今までに見たことのない表情だった。
「あたしは自分が生き残るなら周りの全員が死んでも知ったことじゃないし、自分以外の人間が
死んでそれで自分が助かるなら殺すのを躊躇ったりはしねぇ。
だから此処でもそうするつもりだった。でも今はそうしていない……そこで問題だ。
あたしは腰抜けか? ――答えはNO。問題はお前の方にあるのさ」
突然何を言い出したのか。その言葉の真意を汲み取れず、また彼女の不気味さにゲイナーは
寒気を覚える。
「あたしが落ち着かないのは……、つまるところ後ろについて来てるお前が信用できるかって
ことなんだよ。
てめえが今のあたしの雇い主で、それを守るのがあたしの仕事。
……で、報酬は此処からの脱出。簡単にまとめるとこんな感じだ。
あたしは報酬なしじゃ指一本てめえのために動かすつもりはねぇ、だから今ここで確認しておく。
――お前自身はここから脱出できるなんて、本気で信じているのか?」
「ふぁぶぁりまえでふよ。ばにをひまさら…… (訳:あたりまえですよ。何を今更……)」
ゲイナーは即答した。そう、ここからの脱出(エクソダス)を彼は確固たる信念で目指している。
それは彼女にも伝わり、満足させることができたようだ。
「OK。実際、お前に報酬を払う当てがあるのかどうかはこの際目をつぶってやるぜ。
なら次の質問だ。
ここから逃げる――OK、いいだろう。命あっての物種だからな。
だったらその命はどうやって守る? これが次の質問だ。
――お前は人を殺せるか?」
「……ふぉ、ふぉれは (訳:そ、それは……)」
「――too late. 遅すぎるぜ坊や。この質問は即答できなきゃ意味はないのさ」
カチャリと、撃鉄を起す音が鳴った。
「てめえが自分の命と糞の役にも立たねえ道徳心とやらを天秤にかけているうちに、相手の弾丸は
お前の心臓に辿りついている。
殺し合いで重要なのは速さ――殺される前に殺す。それだけだ。
自分の命を心配するのはその後でいい。
――で、お前が自分の命一つ守れないお人よしの薄ら馬鹿だということが証明されたわけだが、
あたしはそんなヤツと組んでへまに巻き込まれるのはゴメンだ」
銃口がピタリとゲイナーの眉間に照準される。
「慈悲深いあたしが、昨日一日の敢闘賞としてお前に10秒時間をやる。
その間にあたしの目の前から姿を消しな。でなきゃここで死ぬことになるぜ。
――10。」
レヴィのカウントダウンが始まる。だが、彼女と向かい合ったゲイナーはその場を動かなかった。
「なめてんのか? あたしがお前を殺さないと?
――9。――8。――……」
7、6、5……とカウントが落ちる。それでもゲイナーは動かない。
「――ゼロ。遺言だけは聞いてやるぜ坊主。
てめえがくたばったら、あたしはあたしやりのやり方で此処を脱出してやるさ」
ゲイナーは一歩二歩と前に進み、彼女の目の前でそれを答えた。
「びょくは、ばなたがびょくをこほさないとしんぢでいばす。
ぞじて、ばなたもびょくをひんじてひるからびまひっしょにいぶ。……ひがいまふか?」
(訳:僕は、あなたが僕を殺さないと信じています。
そして、あなたも僕を信じているから今一緒にいる。……違いますか?)
「外れも外れ、大外れさ――」
レヴィのベレッタが火を噴き、一発の乾いた銃声が静寂な空気を切り裂いた。
「――あんまり外れていやがるんで、あたしの銃も的を外しちまった」
放たれた弾丸はゲイナーの頬をかすめ、彼の背後の木の幹へとめり込んでいた。
「OK。てめえの糞度胸に免じて依頼は続行だ。
お前の命はあたしが代わりに守ってやる。だから勝手に死ぬな。勝手に死ぬヤツは
助けられねえからな。
そしてお前はその骸骨に詰まった脳ミソをフル回転させて、ここから脱出する道を作り出せ。
それができなきゃ、お前もあたしも此処でくたばる。
――理解したか?」
「ひゃい。ばかせてほいてぐだざい (訳:ハイ。任せておいてください)」
「じゃあ、あたしからの質問タイムはこれで終わりだ――先へ進むぜ」
言うが早いかレヴィは踵を返し再び森を掻き分け歩き出した。結局、この問答はなんだったのか……。
(――素直じゃない人だな)
不安もそして親しみも攻撃的でないと表現できない、そんな不器用な人間。
そうレヴィを評すると、ゲイナーも彼女を追って森の中へと歩を進めた。
それから数十分後、ついに彼女らは悪戦苦闘した森を抜け月光の元へとその身をさらした。
で――、
「ぶひゃははははははははははははは……っ!! なんだそのおめーの顔っ!!
マーズピープルっかつーのっ! あはははははははははははははははは……っ!!
それとも打ち上げられた深海魚か!? あひひひひひひひひひひひひひ……っ!!
こんなひどい顔、ロワナプラのアヘン窟でも見たことねーっ!!」
自分がそうしたというのにも関わらず、彼女はゲイナーの時間が経って赤黒く腫れ上がり、
青い筋の走る顔を見て大爆笑した。
「あー……、なんかスッキリした」
「……………………………………ひぼい (訳:……非道い)」
【B-4 南、山と市街地の境目辺り/二日目/深夜】
【魔法少女ラジカルレヴィちゃんチーム】
【ゲイナー・サンガ@OVERMAN キングゲイナー】
[状態]:精神的にちょっと疲れた……というか、レヴィが非道い。疲れてお腹も減った。
風邪の初期症状、頭にたんこぶ(回復中)、頭からバカルディを被ったため少々酒臭い
顔面ボコボコ、腹部、後頭部に相当なダメージ、前を見て歩くのが精一杯(下記参照)
[装備]:なし
[道具]:デイバッグ、支給品一式、ロープ、焼け残った首輪、フェイトのメモ、画鋲数個
[思考]
基本:バトルロワイアルからの脱出。
1:映画館を目指し、そこを拠点に人を探す。
2:映画館で食事と休憩、それと顔面を冷やしたい。
3:ファイトのことが心配。
4:トグサという人物と接触し、協力し合う。
5:首輪を解除する方法を模索する。
6:朝6時にE6駅でフェイトと合流。できなければ電話をかける。
[備考]
※名簿と地図を暗記しています。また、名簿から引き出せる限りの情報を引き出し、最大限活用するつもりです。
※なのはシリーズの世界、攻殻機動隊の世界に関する様々な情報を有しています。
※第四放送を聞き逃しました
※ 現在↓
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l _, 。ィ' li:.、ヒァ' ヽ lj /
ノ `ヾ、.:'.::`ミ/゙'、 Y^iイ_
/ ⌒';,゙i, ri:.:i .::' メ、、_ノiトミ>
l ,:' /,';;;}:.ヾ:. 八リ
丶 ' {;!゙' ::.. ,ィ' ヽヽ
【レヴィ@BLACK LAGOON】
[状態]:ストレスは解消されて、殺る気満々。疲れてお腹も減った。
腹部に軽傷、頭に大きなタンコブ(回復中)、頭からバカルディを被ったため少々酒臭い
[装備]:イングラムM10サブマシンガン、ベレッタM92F(残弾15、マガジン15発、マガジン14発)
グラーフアイゼン(待機状態、残弾0/3)
[道具]:デイバッグ×2、支給品一式×2
予備弾薬(イングラム用、残弾数不明)、NTW20対物ライフル(弾数3/3)
グルメテーブルかけ(使用回数:残り18品)、テキオー灯、ぬけ穴ライト
西瓜1個、バカルディ(ラム酒)×1本、割れた酒瓶(凶器として使える)
[思考]
基本:バトルロワイアルからの脱出。物事なんでも速攻解決!! 銃で!!
1:映画館を目指し、そこを拠点に人を探す。
2:というか、そろそろ喰わねえとヘバっちまうぜ。
3:見敵必殺ゥでゲイナーの首輪解除に関するお悩みごとを「現実的に」解決する。
4:魔法戦闘の際はやむなくバリアジャケットを着用?
5:カズマとはいつかケジメをつける。
6:ロックに会えたらバリアジャケットの姿はできる限り見せない。
[備考]
※双子の名前は知りません。
※魔法などに対し、ある意味で悟りの境地に達しました。
※ゲイナー、レヴィ共にテキオー灯の効果は知りません。
※第四放送を聞き逃しました
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ノ |::l::::/.斤l::::|::;イ:::::::/_.|/ -、`メ::/ /::/-''7::::|::::|:::::|ヘ:lノ`'ゞ,,ノv_,r
|::ト::ヽ,弋l:::|/:|::::;イ 攵;:cリ ̄`// /,ィ-ァ/:::::|::::|:::::| |:! ;o" "';⌒ヽ___
.i:| l:::l.:\,l::::::|::/:|  ̄ /'゙ー゙イ;':::::::l|:::l|::::| ヾ ノ':。,.,:"く ノ巛くゝ
l|.ノ::|::::l:::|i::::|/:::| /、 /:::::::/.|::l.|:: l `ー(_人_,ノ ヾ−'
,ィ''〈 |::::j:::l !:::::::::| ヽ./:::::::/ jノ.l::/ 脱出フラグと死亡フラグ!
/,.;:;:;:;//jメ ヽ:::::| -‐.T:::::/ j/ 重なり合う人と剣!
/{,.;.;.;.;.;.;゙ヽ, \.ヽ;::ト、 `ー-- -‐ ,:イ l::::/ 積み重なる情報と誤解!
/,.;:;:;l,.;.;.;.;.;.;.;.;ヽ, \N. ` 、 ー /|/ .|::/ この地で笑うのは誰だ!
;:;:;:;:;:;:;:l,.;.;.;.;.;.;.;.;.;.ヽ. ヾ、 /、゙ ー ' |/ ギガゾンビか?参加者か?
:;:;:;:;:;:;:;:;l,.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;:ヽ、 \__. ヽ、::,\
;.;.;.;.;.;.;.;.;.l:;.;.;.;.;.;.;.;.;.;:;:;:;\ /-、{;:;:;:,.ヽ、 いいや違う!笑うのは…
r―-<_: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :丶、
!::. : : : : :`丶: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :\
_,.イ'!::::. : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ヽ
r'"´:::::::/:!::::. : : : : : : : : : : : :ヽ、: : : : : : : : : : : : : : : : : : ヽ
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. /::/:::::!::f::::! ヾ:::k \: :ヾ丶、: : : ヽ __,.,_: :丶: : :! : !Z_::!: : : ト、ヽ、
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. /::/!:::::::!:::!:::::ヽ, `Y::{ ヾ´ r',.ィ´o }\: : ヾ: :!: :ヒ_ ,〉 /: !
// l:::::::!::ト、::::::ヽ {弋ヾ、 ´、ゞ-‐' ト、 !ヽ! lノ/ ./| /
!::::ハ::! ヾ::::::::!`¨´ j |: :ヾ: : ,.ト' / ,イ.|/ この僕d
_,.、-‐|:::゙:、 i'\:::::゙:::::::`ヽ、::::::::,.‐":::,.‐,、‐" ゙、j ,.、‐'":::::::::::::r'"`ヽ、
,.‐'"´:::::::::::゙、:::::\ i' ゙'ニ-‐‐‐''''‐-、ノ:,.、‐"/ ヽ‐''":::::::::::::::::::::l" `、
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゙ヽ,:::r''" `''‐---ァ''"゙、 , ,.、-‐''":::::::::::
゙〈 `''y" 〈 -=":::::::::::::::::::::::::
興味あるんでしょ? この狂気と血に塗れたゲーム物語のけ・つ・ま・つ。