この前エトワール選に出場することになったんです、ミアトル代表で。
で、生まれて初めて失恋の痛みを経験したわけです。
正直最初は想う人の幸せを願って自分から身を引くなんて簡単なもんだと思ってました。
1〜3年生時代はずうっと一人でしたから。
あのね、わたしが間違ってました。あれは初めての恋で経験するもんじゃありませんね。
遊びです、本気じゃないお付き合いだけの人が耐えられるものなのでしょう。
最初にエトワール選の舞台に上がった時、全てを断ち切ってもらおうと全ての思いを込めて渚砂ちゃんの手を握りしめました。
数時間くらいかけて演目を終え。それでようやく全てが終わったものとしてホッとしていました。
そしたら静馬様が「愛してるの!渚砂!」とか大声で訴えてくるんです。
愛しい渚砂ちゃんの心は十二分に解っているがわたしです。
だからいってらっしゃいって言ってあげました。えぇ、そりゃもう背中を押しましたとも。全てを忘れて、リボンも解きました。
いちご舎を回った時の渚砂ちゃんの楽しそうなまなざしとか、
初めて一緒に寝たときにみた夢の事とか、サマースクールの時のかわいい叫び声とか色々思い浮かんでくるのを頭から振り払ってね。
だって長引くと渚砂ちゃんがつらいだろうって思いましたからね。
そしたらとても大変なことに。
もうすごい後悔。そして胸を締めつけるすごい痛み。苦しみで心臓が潰れるくらい。どんな怪我にも病気にも負けないほど。
それで周りを見たらみんながすごい気の毒そうな顔をわたしの方に向けていまして。ホントごめんなさい。
正直「渚砂ちゃんの幸せを心から願ってあげるのがわたしの努め!」なんて見栄張らないで素直に最後まで悪あがきしてしまえばよかった、
せめてエトワール選を断固辞退して後ろ指さされていればよかったと思いました。
心の底から承諾書にサインしてしまった事を後悔しましたわ。
でもエトワール選が終わって暗い部屋で「静馬様って傍若無人すぎますわ!それなのに渚砂ちゃんったら。
あぁ、この部屋はまた私一人だけに戻ってしまったのね」とか呟いちゃって。
ホントわたしってダメなルームメイトですね。
……おかえりなさい、渚砂ちゃん。