【ノーマル】ローゼンメイデンのSSスレ 2【一般】
1 :
名無しさん@お腹いっぱい。:
ローゼンメイデン1の頭脳派金糸雀が2ゲットかしら!!
5 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/07(日) 22:40:46 ID:zgeeqXE4
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(:::::::::::::::::// ヽ:::_:::::::::::::::::i l::::l:::::ハ二))
>:::::::,.' ′ | ):::::::::::::::l i:::i:::::(、二))
て::::/ ll l | !| {::::::::::::::::| l::i:::::::::ハ〈
しl | l | | | _!H‐'フ|/て::::::::::彡ミ::::::::( !l
l l l _L | |ノ rT´_ | (::::::::ミ彡::::::ィ l|l
ll ヽ ´ rr、 ヽ__ソ | l! {::l l::::;:::) | リ ローゼンメイデンの第五ドール真紅が
ハ v) l l | リ /::// | | 優雅に>>5ゲットなのだわ!
,' ハ 丶 リ ,| |//´ | | この指輪に誓いなさい!
| 〉 、 ` lレ' | h、 | |
l / || > - ィ 〃 | | l7 | |
ノ' |r j / rr、 〃 | | 〈 \ | |
/' ノl j/ _ト( ノ l ( \ | |
ヽヽ/ヽ j! > ´ / / ハ | |
え
>>1久アリス輪舞曲 私の主演作パクらないでよ!
>2りはプリキュア 作画手伝ったのは、雛苺?
カードキャプター>3くら 奇声なんか発して、かわいいとでも思ってるの?
か>4まし 脚本家も視聴者も、想像以上に下劣ね!
おねがいマイメ>6ディ あの変な詩、とても聞くに堪えないわ。
エウレカ>7 視聴率1%割れなのに、どうして4クール続いたのかしら?
りりかるなの>8 あんな娘が最萌え優勝?
お>9さまは魔法少女 淫乱なコスチューム着て、レディとして最低ね!
ガンダムSee>10 あのラクスとか言う電波女の声、誰かさんに似てほんと腹立つわ!
>11-1000は、お茶を入れて頂戴!
「犯人はこの中にいる!」
蒼星石の声が、リビングに高らかに響き渡る。
その場にいた全員の体に緊張が走り、リビングは重苦しい静寂に包まれた……。
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
| ィ/~~~' 、 | ┌- 、,. -┐ | ___ |
| 、_/ /  ̄`ヽ} . .| く|_,.ヘ_|〉 | く/',二二ヽ> |
| ,》@ i(从_从)) . | ノ イ从|从)、 | |l |ノノイハ)) ..|
| ||ヽ|| ゚ -゚ノ| || .| |ミ|ミ!゚ ヮ゚ノミ!| .| |l |リ゚ ー゚ノl| .|
| ̄ ̄真 ̄紅 ̄ ̄| ̄ ̄雛 ̄苺 ̄ ̄| ̄翠 ̄星 ̄石 ̄|
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
| ┌──┐ .| | ,, ,,_ |
| i二ニニ二i .| , ⌒⌒ヽ | i´ヽヘヘヽノ ..|
| i´ノノノヽ))) . | リノ`ヽ卯) .| (l |ノノ^^ノ)) ..|
| Wリ゚ -゚ノリ .| ,9、゚ ヮ゚ノミ .| £lc○ヮ○l)ヽ..|
| ̄蒼 ̄星 ̄石 ̄| ̄金 ̄糸 ̄雀 ̄| ̄桜田 ̄のり ̄.|
. ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄. ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄. ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ごくり。 何を言ってるんだ。 ここにいるのは、いつもお馴染みの面々じゃないか。
この中に。 この中に、蒼星石を殺した犯人がいるってのか?
一人一人の顔を見回す。 真紅。 雛苺。 翠星石。 金糸雀。 姉ちゃん。 知らない顔は一つも無い。
この中に、殺人……もとい、殺人形犯がいる? ……信じられない。 僕は促されるままに、手元のメモを読み上げた。
【 被害者 】 蒼星石(ローゼンメイデン第4ドール)
【 犯行現場 】 桜田家・のりの部屋
【 犯行時刻 】 n月m日(土) 14:30〜15:00ごろ
【 死因 】 鋭い刃物で背後から刺殺。 被害者は振り向く間もなく絶命。
「蒼星石。 ここまでの事に間違いは無いな?」
「完璧だよ。 流石だね、ジュンくん。」
「……ねぇジュンくぅん。 本当の本当に、それ……その人が蒼星石ちゃんなのぅ?」
もう何度同じ事を聞かれただろう。 姉ちゃんはどうしても納得がいかないらしい。
僕だって信じられない。 僕がいま会話してるのは、翠星石が手に持った1杯のそうめんなのだから……。
最初に蒼星石の遺体を発見したのは、雛苺だった。
時間は午後3時、おやつの時間。 姉ちゃんに頼まれて、皆を呼んで回ったそうだ。
「最初はおねんねしてると思ったの……。」
雛苺の勘違いも無理は無いだろう。 ドールに出血がある筈も無く、現場に凶器は残されていなかった。
だが、どんなに揺すぶっても叩いても、蒼星石の瞳は固く閉じたまま。
雛苺は得体の知れない恐怖に駆られたらしく、泣きながらリビングまで下りてきたのだ。
雛苺の恐慌を見て、真紅は只ならぬ何かを感じ取ったらしい。
次に部屋に行ったのは、他でもない僕と真紅だった。
あの時の真紅の固い声を思い出す。 ローザミスティカが……失われているわ。
ローザミスティカ。 それはローゼンメイデンの魂。 彼女達のレゾンデートル。 アリスに至る7つの欠片。
僕が最初に思ったのは、蒼星石はアリスゲームに敗北したのでは?という事だった。
その考えを口にすると、真紅はキッパリ否定した。
「貴方が考えている犯人は、おそらく水銀燈でしょう。 違って?
でも、のりの部屋に『入口』は無いわ。 金糸雀も含め、この家には5人もローゼンメイデンがいたのよ。
もし一撃で蒼星石が倒れなかったら? nのフィールドから断絶された部屋で、もし5人に囲まれたら? リスクが高すぎる。
私が水銀燈だったら。 必ず『nのフィールドに出入りできる場所』で勝負を賭けるわ。 鏡の部屋のような、ね。」
うっ……。 一理ある。 でも、まずは事実ありきじゃないか?
現実に蒼星石は一突きで倒されているのだ。 誰かが蒼星石を倒し、ローザミスティカを奪ったのだ。
水銀燈じゃなかったら、誰だって言うんだ……?
「……そうね、貴方の言う事はもっともだわ。 でも、水銀燈ほど打算的な子が、こんな危険な橋を渡るとは思えない。」
「そう。 それならば結論は一つしかない。」
突然の声に振り向くと、そこには翠星石が立っていた。 でも、何かがおかしかった。 この喋り方はまるで……。
「蒼星石……?」
真紅が呟く。 そう。 蒼星石そっくりだ。 この光景を見て取り乱さないのも、翠星石らしからぬ行動に思えた。
「私が喋ったのではないのですぅ……。」
戸惑う僕に、これまた困惑顔で翠星石が告げる。 へ? どういう事だ? 意味ありげにチラチラと視線を振る翠星石。
その視線を追うと。 彼女は手にそうめんの入ったお椀を持っていた……。
「まずは事実ありき、か……。」
そうめんを横目に、げんなりと呟く僕。 例えどんなに異常で信じがたい事だろうと。
目の前に展開されている以上、それは紛れも無い事実なのだ。
このそうめんが蒼星石。 言うなればそうめん石か。 ……受け容れなければ、現実を……。
気を取り直し、そうめん石の供述を書き取ったメモを見直す。
被害者自身が体験を元に述べたのだ。 おかげで一気に犯行状況が明確化された。
犯行現場は姉ちゃんの部屋で確定。 犯行時刻は……特定できなかった。
蒼星石は姉ちゃんの部屋で「アリスゲーム」について考えていたらしく、時計を見たのは14:30が最後との事だった。
つまり、犯行は14:30〜15:00の間。 そして、残念ながら蒼星石は犯人の顔を見ていなかった。
今分かるのはこんな所か……。 そうめん石は僕らをリビングに集めると、その場を仕切って語り出した。
「もう充分お分かりかと思うけど、改めて言うよ。 このそうめんが今の僕。 僕の体は……殺されたんだ。」
翠星石が抱えるそうめんが蒼星石。 シュールすぎる発言に、一瞬微妙な空気が流れかける。
しかし、そうめん石の真剣な語り口調と「殺された」という言葉の響きは、とても笑えるようなものではなかった。
「で、でも、そのおそうめんが蒼星石だとして、一体誰に殺されたって言うのかしら〜?」
金糸雀が当然の疑問を口にする。 うんうん頷いて同意を示す姉ちゃんと雛苺。
「僕の体からはローザミスティカが抜き取られていた。」
「えっ! ローザミスティカが!? じゃ、じゃあ犯人は……水銀燈?」
「普段の彼女の素行からすると、当然そう思うだろうね。 でも、これは外部ドールの犯行では有り得ないんだ。」
真紅の方をちらりと見る僕。 あいつも似たような事を言ってたっけ。
「??? え〜っとぉぅ……つまりどういう事なのかしら。 私ったら、ほんと馬鹿でやんなっちゃう。」
姉ちゃんが首を捻る。 馬鹿という点には大いに同意したい所だが、雛苺や金糸雀の表情も似たようなもんだった。
「こういう事さ。 事件当時、桜田家には外部の来訪者はいなかった。 にも関わらず僕は殺された。 ……つまり。」
そうめん石が言葉を切る。 今や、彼女の言わんとする所は全員に伝わっていた。
「犯人はこの中にいる!」
「かっ……カナはやってないのかしらー!!」
「ヒナでもないのよー!」
小っこいの二人が猛然と潔白を主張し始めた。 僕だって、こいつらにそんな事ができるとは思えない。
でも……じゃあ、誰ならできるっていうんだ? 容疑者なんて数える程しかいないじゃないか。
「……どうやら、みんなにアリバイを聞く必要があるね。 このままじゃ犯人は特定できない。
みんなが等しく『容疑者』なんだ。 14:30から15:00までの間、どこで何をしてたか。 ……聞かせて貰えるかな。」
===== 容疑者その1 ===== <真紅>
「14:30から15:00の間なら、私はリビングに居たわ。 くんくんのビデオを見るためにね。
私だけじゃなく、翠星石も、雛苺も、金糸雀も、要するにみんな。 それはのりも知ってると思うけれど。」
姉ちゃんがこくりと頷く。 僕は少しだけ安堵した。 言うまでもなく、真紅は容疑者の最右翼だからだ。
ちびっこコンビや、蒼星石を溺愛していた翠星石。 この誰かが、蒼星石の隙を付いて殺傷? ちょっとイメージが湧かない。
その点真紅ならば、行動力・知力・判断力、全てにおいて申し分が無い。
この犯行を実行するに足るか?と問われたら、イエスと答えざるを得ない資質の持ち主なのだ。
「30分間、一度も席を外したりはしなかったのかい?」
「ええ……初めて見るエピソードだったから。 もっとも一度だけ再生停止して、お菓子を取りに行ったけれど。」
それは気が付かなかったわぁ、と言う姉ちゃん。 まぁ、そんなのいちいち覚えちゃいないよな。
===== 容疑者その2 ===== <金糸雀>
「確かに再生停止されたのは覚えてるかしら。 全く、なんて横暴なのと思ったかし……むぐぐ。」
真紅に頬を抓られる金糸雀。 口は災いの元だ。
「うぅ……。 だけど真紅はすぐに戻ってきたかしら。 たぶん、1分かそこらで。
1分の内に2階に行って、蒼星石を一突きして戻ってくる……ちょっと無理があると思うのかしら。」
確かに。 真紅だったら、犯行に最低でも5分は見積もるはずだ。
「そう言えば、金糸雀は10分くらいどっかに行っちゃってたのよ〜。」
「なっ…何を言うかしら!? ほんの5・6分かしら! 今後の事を考えて、コッソリ侵入経路を調べてただけかしら!
1階は歩き回ったけど、2階には1秒だって行ってないかしら! 滅多な事を言わないでくれるかしら!!」
どうやら、その間のアリバイは証明できないようだ。 いつ、何分席を立ったのか、正確な所が分からない。
7〜8分とすると、犯行は充分可能だけど。 果たしてコイツが何もしくじらずに目的達成できるものか? 僕には分からなかった。
===== 容疑者その3 ===== <翠星石>
「私は最初の15分くらいはリビングにはいなかったです。 おやつをせしめるために下に行ったのですぅ。」
「……ん? お前今、下って言ったよな。 つまり、それまでは2階にいたって事か?」
言うまでもなく、犯行現場は2階だ。 他の連中が1階にいたのなら、俄然犯人である可能性が高くなってくる。
でも……正直、僕はこいつだけは有り得ないと思う。 そんな僕に向けて、にやらと笑う翠星石。
「はいです。 誰かさんを観察してたのですぅ。 いやぁ、いいですねぇ、シークレットブーツ。 20cmですもんねぇ、20せ・ん・ち。」
「なっ……こっ、こいつ、この性悪人形! 隠れて見てたのか! 趣味が悪いにも程があるぞ!」
くっそー、僕にプライバシーは無いのか! あんまり毎日チビだチビだ言われるもんだから、つい見ちゃったんだよ!
「ジュンくん、怒らないであげて。 どうせ照れ隠しの口実なんだから。」
「なっ……何を言うですか蒼星石!? 口実も何も、言ったままの意味なのです!」
そうめん石がとりなしてきた。 口実? 照れ隠し? さっきのセリフのどこに口実や照れ隠しがあるんだよ、まったく。
だけどこのやり取りを聞く限り、翠星石が犯人だなんて思えないのは確かだ……。
===== 容疑者その4 ===== <雛苺>
「ヒナはねーぇ、真紅たちと一緒にずうっとくんくんを見てたの。
のりにジュンと蒼星石を呼んで来てって言われるまで、いっぺんも立ったり座ったりしなかったのよー。」
いや、座ったりはしただろ……。 ともかく、こいつの証言は一見何の問題も無さそうだ。
でも。 遺体の第一発見者は誰だったか? そう、雛苺だったのだ。 それを度外視する訳にはいかない。
蒼星石を呼びに行く、その時。 それは犯行のチャンスでもあったのだ。
って、雛苺が犯行……? 「蒼星石、御免!なのよー!」とか叫んで、一発でバレそうな気がするなぁ……。
===== 容疑者その5 ===== <桜田のり>
「え? 私? う〜ん、私はおやつの用意でずっとお台所にいたけどぅ。
真紅ちゃん達、みんなテレビに夢中だったから、証明するのはちょっと難しいかしらねぇ……。」
意外にも、姉ちゃんは自分のアリバイのあやふやさを理解していた。 そう、姉ちゃんは僕らの「心理的死角」に成り得る人間だ。
土曜日、午後3時前、桜田家。 その時間、「桜田のり」は台所にいるのが当たり前。 誰もそれを疑わない。
移動に時間がかかるドールと違い、姉ちゃんなら1・2分あれば犯行を終えて帰ってこれるだろう。
加えて、犯行現場は姉ちゃんの部屋。 出入りしたとしても、誰が気に留めるだろうか。
ただ、ローザミスティカの事がある。 僕らには、これっぽっちも用が無い代物だ。 姉ちゃんには「動機」が無い……。
===== 容疑者その6 ===== <桜田ジュン>
「僕は、雛苺がドアをドンドン叩くまでずっと部屋にいた。 証明する方法は……」
気付いて、青ざめる。 僕はずっと一人だった。 翠星石の証言から14:45までは裏が取れるが、その後は無理だ。
なんてこった! 僕が一番アリバイが怪しいじゃないか!
「無い、か。 参ったね。 犯人はジュンくんかい? 動機は……真紅のためにローザミスティカ収集、ってとこかな。」
「な!?な!な!!!」
そうめん石の言葉に一気に体温が下がった気がする。 違う! 僕じゃない!
「蒼星石。 ジュンには昼間に危険を冒す必然性が無いわ。 夜中になれば、幾らでもチャンスはあるんですもの。」
真紅! 気付けば、彼女が僕とそうめん石の間に立ち塞がっていた。
「でも、夜中だと犯人はジュンくんでほぼ確定してしまうよね。 僕なら昼間、容疑者の多い時に実行するな。」
睨み合う(?)真紅とそうめん石。 只ならぬ緊張感が迸る。
「……なんてね。 もし犯人がジュン君で僕に不意打ちするなら、身長差から考えても『上から振り下ろす』のが自然。
『背中に刺し傷』が出来たのは、犯人も同じくらいの身長だから。 つまり、ドールって事になる。
ふふっ……ごめん、ジュンくん。 あんまり青い顔してたもんだから、つい……ね。」
…………。 ほぁ〜〜〜〜〜っ。 僕はどでかい溜息をついた。 じょ、冗談かよ……。
でも言い返せなかった。 たかがそうめんに追い詰められたというのに、言い返せる材料が、僕には全く無かったのだ。
冤罪。 僕はその可能性に、今更ながら気付かされた……。
「でもそうなると、僕と姉ちゃんの線は消えるな。 ……そう言えば、今気付いたんだけど、複数犯の可能性って無いのか?」
例えば複数犯だったら、今まで聞いたアリバイも違った意味を持つのではないだろうか。
「うーん………無い、だろうね。 いいかいジュンくん。 複数犯という事は、『計画的な犯罪』という事だ。
前もって計画したなら、必ずアリバイの相互補強をする。 さっき聞いたアリバイに、相互補強になりそうな物があったかい?」
「まず、ジュンくんと翠星石は2階に居た時点でアウト。 なんでわざわざみんなが1階にいる時間に犯行に及ぶんだい?
単独犯ならともかく、複数犯としては有り得ない。 じゃあ1階にいた連中はと言うと、相互補強なんてまるで無し。
例えば金糸雀。 真紅の補強はしたけれど、自分のアリバイはボロボロじゃないか。 雛苺に至っては、共犯者なんて邪魔なだけだ。」
まぁ、言われてみるとそうかもしれない。 犯人はドール、そして単独犯という事か……。
現時点での容疑者は4人。 真紅、雛苺、翠星石、金糸雀だ。 この中で省けそうなのは……。
「真紅……はないよな、蒼星石? 真紅の空白時間はたった1分。 犯行は不可能だ。」
単独犯である以上、金糸雀にアリバイが保証された真紅はシロだろう。
人工精霊を使ったのかとも思ったが、人工精霊は物体には触れなかったはず。 刺殺は無理だ。
「雛苺でもないだろうね。 雛苺の前に金糸雀が離席している。 もしその時に金糸雀が僕を呼んだら?
もしくは、生きている僕の姿を見てたとしたら? 雛苺が犯人だとした場合、『計画的犯罪では有り得ない』事になる。」
「雛苺が衝動的に僕を刺突したとしよう。 じゃあ、『凶器』はどこから持ってきたんだい?
計画的犯罪でなかったなら、凶器は即興で用意したはず。 でも、のりさんの部屋は綺麗なものだった。
僕の覚えてる限り、凶器になるようなものは何処にも転がっていなかったよ。
ジュンくんの部屋で探した? あの部屋で衝動的に凶器を探したなら。 最初に目に付くのは『僕らのカバン』だと思うけどね!」
ほぁーと感心したようにそうめん石を見つめる雛苺。 確かに。 僕の部屋にある刃物なんて、先の丸いハサミと裁縫道具くらいだ。
そんな物を使うくらいなら、カバンで殴り付けた方が遥かに強力に決まってる。
「更に言うなら、雛苺はドアノブに背が届かない。 閉まってる部屋から武器を調達するのも無理だろうね。」
なるほど。 そう言えば雛苺が僕を呼びに来た時、ドアをドンドン叩いて「おやつっ、いちごっ」とか言ってた気がする。
「となると。 残ってるのは…………。」
「す……翠星石はやってないですぅ! 動機は何ですか? 翠星石が、蒼星石を傷付ける訳がありませんです!」
動機。 それが翠星石の一番の強みではないだろうか。
彼女が双子の妹に向ける偽りない愛情は、僕らも良く知る所だ。 ……可愛さ余って憎さ百倍って奴だろうか?
私見だけど。 彼女の気持ちは、そんなちっぽけなものじゃない気がする。
仮に、双子が血肉を賭けて争わなければならないとしたら。 彼女は笑って、蒼星石に斬られる方を選ぶだろう。
「そっ、そんな事言うなら、カナだってやってないかしら! 何かしら! そんな目で見ないでくれるかしら?
フンだ! シークレットブーツに背の伸びる薬。 そんなみみっちい発想だから、カナが悪者に見えるのかしら!」
待て! なんでお前までそれを! ……? 待て。 確かに待て。 なんで、金糸雀まで、それを?
「金糸雀……シークレットブーツは分かる。 でも、なんで『背の伸びる薬』の事まで知ってるんだ?」
金糸雀も自分の発言の意味に気付いたのか。 見る見る内に血の気が引いていった……。
そう。 僕はシークレットブーツだけでなく、背の伸びる薬の通販サイトも見ていたのだ。
でも、さっきの翠星石の発言からは、背の伸びる薬の事は分からないはず。
ガックリと膝を突く金糸雀。 間違い無い。 中座した数分を使って、金糸雀は2階に来たのだ。
「……確かにカナは2階に行ったかしら。 言える訳無いかしら! カナは犯人じゃないもの!
2階を歩き回って、ジュンの部屋を覗いたけれど。 それだけかしら! 蒼星石なんて、一度も見なかったのかしら!」
「そ、そぉよぅ、何かの間違いよぅ〜。 カナちゃんにそんな事できる訳無いものぉぅ……。」
姉ちゃんのフォローが虚しく響く。 僕は金糸雀の顔を直視できなかった。 けれど、事実は変わらない。
2階を歩き回ったのなら、蒼星石を一度も見なかったなんて有り得ないんだ。
? そこで、ふと僕は思い当たった。 一度も見なかった? ……なんだろう。 何かが気になる。
「……なぁ、金糸雀。 正直に答えてくれるか。 お前は『僕の部屋は覗いた』けれど『蒼星石は一度も見なかった』のか?」
「だからさっきからそう言ってるかしら! カナは犯人じゃ……」
「落ち着いてくれって! なぁ、これは凄く大切な事だから、よく思い出してくれ。 なんで『僕の部屋は覗けた』んだ?」
「??? ……ぐすん。 言ってる意味が、良く分からないかしら……。」
「つまりさ。 ひょっとして、お前が蒼星石を見なかったのは『部屋のドアが閉まっていた』からじゃないか?」
「あっ……! 確かにそうなのかしら! でも、何でそんな事が分かったのかしら?」
「……なるほど、ジュンくん。 金糸雀と……雛苺のアリバイから生じるギャップ、だね?」
そうめん石も気付いたようだ。 その通り。 僕は覚えている。 雛苺が僕を呼んだ時。
「雛苺が僕を呼んだ時、こいつは部屋のドアをドンドン叩いた。 なんでか? 『ドアが閉まっていた』からだ。
一方で、金糸雀は『僕の部屋を覗いた』って言ってる。 なんでか? 『ドアが開いていた』からだ。
金糸雀の身長は雛苺と変わらない。 『自分でドアは開けられない』んだ。 つまり、『ドアは最初から開いてた』事になる。
……これと同じ考えが、そのまま姉ちゃんの部屋にも当てはまる。
雛苺は『何をしても蒼星石が起きなかった』。 金糸雀は『蒼星石なんて一度も見なかった』。 これはどういう事か?」
「『金糸雀が訪れた時はのりの部屋のドアは閉まっていたけど、雛苺が来た時には開いていた』……という事ね、ジュン。」
「その通り。 ……そして。 あの時、あの場で、一人だけ。 自分でドアを開け閉めして、部屋を出入りできたドールがいる。」
ガタン! 僕が言い終わるか否か。 立ち上がってこちらを睨み付けたのは、翠星石に他ならなかった……。
「……くんくん気取りでいいご身分ですねぇ、チビ人間。 なんか、私が犯人って言ってるように聞こえましたけどぉー。
穴が分かりませんか? 物的証拠は一つも無いです。 お前が並べ立ててるのは、状況証拠ばっかりですぅ!」
あぁ。 頭がクラクラする。 この口調に秘められた響きで、僕は確信してしまった。 こいつが犯人なのだ。
……ただ、こいつの言う通りだ。 この事件には物的証拠が無い。 出血も、指紋も、ドールには無い。
こいつの口から釈明を聞きたいのに、問い詰める最後の武器が無い……!
可能性があるとするなら。 奪われたローザミスティカだ。 ローザミスティカは意思を持つ魂の欠片らしい。
蒼星石の意思。 蒼星石が拒否さえすれば、奪われたローザミスティカの在処なんて、すぐ分かるんじゃないのか?
それなのに。 今、翠星石の手元に抱えられた彼女は、沈黙を保ったままだった。
「近寄らないで貰えますかぁ? このままだと私が犯人にされそうですぅ。 よりにもよって、双子の姉の私が!
私はこのまま逃げさせて貰うです。 おかしな真似はするんじゃねぇですよ? 一歩でも近寄ったら……このお椀をブチ割るですぅ!」
なっ!? なんだって? ただでさえ、この状況に対処できないでいるというのに。
僕は自分の耳が信じられなかった。 ……あの翠星石が。 蒼星石に、そんな真似をする素振りを見せるなんて。
いや。 それを言うなら。 翠星石は、既に一度蒼星石を葬っているのだ。 まさか二度も? 最愛のはずだった妹を……?
現実が悪夢にしか思えない。 じりじりと後退する翠星石を前に、僕らは誰一人動けずにいた。
「勝手に割ればいいのだわ。」
ずいっ。 え? 気付けば真紅が一歩踏み出していた。 お、おい! そんな事したら、そうめん石は……!
「な、何してやがるですか!? お前には血も涙もねぇーのですか? 動くなです! それ以上動けば本当に……」
「 茶 番 は お し ま い に す る の だ わ ! ! ! 」
ビリビリビリ。 真紅の怒声が響き渡る。 しん……。 静まり返ったリビングに、真紅の声が響く。
「ジュン。 先程の推理、なかなか頑張ったようね。 でも、貴方はやっぱりくんくんには程遠いのだわ。
一見正しい方向に進んでいるように見えたけれど。 あれはまやかし。 貴方は、間違った前提の元に推理を進めていたのよ。」
「へ!? ど、どういう事だよ……?」
真紅はその問いに答えずおもむろに食器棚へ向かうと、お椀を取り出して、妙なモノマネを始めた。
「コンニチハじゅんクン! ワタシしんく! コーチャヲイレテチョーダイ! コーチャヲイレテチョーダイ!」
「………………。 何やってるんだ、お前。 アホにしか見えないぞ。」
真紅はそんな僕の答えに、満足そうに微笑んだ。
「Gut。 それが正しい反応なのだわ、ジュン。 ……ねぇ、ジュン。 翠星石がしたのはこれと全く同じ事なのよ。」
えっ。 最初、僕はその言葉が何を示しているのか分からなかった。
やがて理解する。 そうめん石の事を言ってるのか? そうめん石なんて……「まやかし」である、と。
「でも、実際の貴方の反応はどうだったかしら? 『蒼星石が生き返った』という戯言を真に受けたのだわ。
いいえ、貴方だけじゃないわね。 『死人は喋らない』。 そんな当たり前の事を、なぜ全員が看過したのかしら?
理由は簡単。 翠星石の演技が、あまりに、一分の隙も無く『完璧』だったからなのだわ。
彼女は『蒼星石』と『翠星石』を完璧に使い分けた。 ジュン、貴方も言ったわね。 『まず事実ありき』。
あまりに完璧な『事実』の前に、『常識』は頭の片隅に追いやられ、『非常識』が『常識』になった。
『彼女たちはローゼンメイデンの双子だ……そんな事もあるかもしれない』。 誰もがこう思い込まされてしまったのだわ。」
つまり。 つまり、こういう事か。 ……最初からこの場には『蒼星石なんていなかった』。 全て『翠星石の一人芝居』だった、と。
「ちょ、ちょぉぉぉぉーっと待つかしら! 何かが致命的におかしいかしら!? これが、もし翠星石のお芝居だったとするなら。
なんで『最終的に翠星石が追い詰められるシナリオ』になってるかしら? 普通なら。 自分以外の誰かに嫌疑をかけるかしら!」
金糸雀の頭は早くも事態を把握したらしい……生意気な。 しかし、もっともな疑問だ。 なんでわざわざ『自分に嫌疑をかける』んだ?
「そうね……こう考えては駄目かしら。 『犯人は翠星石ではなかった』と。」
「「「「え゛?」」」」
僕、姉ちゃん、金糸雀、雛苺。 四人の声が見事にハモる。
「いいえ。 それよりもまず。 大前提が間違っていたのだわ。 ……被害者は。 本当に『蒼星石』だったのかしら?」
真紅の言葉が、ゆっくり頭に浸透していく。 そして、唐突に気付かされた。 真実に。
「最初からおかしかったのよ。 私はこの事件を『水銀燈のやらかすタイプ』の事件ではないと思った。
同じように『雛苺のタイプ』でも『金糸雀のタイプ』でも……そして、『翠星石のタイプ』でもないと思った。
この3人には、この事件を破綻なく進めるだけの「冷徹さ」が足りないのだわ。 ……では、一体誰なら相応しいのかしら?」
「正確に一撃で相手を仕留められるのは誰? 鋭利な刃物を持っているのは誰? 被害者と二人きりになれるのは誰?
腹話術で『彼女』になりきれるのは誰? ローザミスティカに拒まれないのは誰? ……もう答えはお分かりね。」
「死人に口無し。 じゃあ語っていたのは誰? 自分の都合のいいように、捜査状況をコントロールしていたのは誰?
『犯人』に決まっているのだわ! ……そう! 『犯人』も『探偵』も! 『被害者』すら同一人物だった!
『 一 人 三 役 』!! それこそがこの事件の本当のトリックだったのだわ!!!
この事件の真犯人は…… 貴 女 な の だ わ !! 『 蒼 星 石 』!!!」
…………。 こいつは、翠星石じゃなくて、蒼星石? 蒼星石が、翠星石を刺した?
遺体を見て取り乱さなかったのは、事切れてると知ってたから。
お椀を割ると脅しつけたのは、それが単なるお椀にすぎないと知ってたから。
奪われたはずのローザミスティカが、拒否反応を示さなかったのは。 ……斬られて、なお。 妹を許したから。
「こっ、この子が……蒼星石ちゃん? ……翠星石ちゃんを? そっ、そっ、そんな……。
ででででもぉぅ。 髪の毛は私のエクステでどうにかできるとしてぇ……目はどうなってるのぅ? カラーコンタクトぉ?」
目。 そうだ。 赤の右目、緑の左目。 それは蒼星石ではなく。 翠星石の証のはずだ。
「人間ならば、デリケートな扱いが必要なのでしょうね。 でも、私達は人形。 ……雛苺。」
真紅が雛苺に耳打ちする。 雛苺はこくんと頷いて部屋から出て行くと、少しの間を置いて戻ってきた。
その手にあるのは……折り紙? あっ。 違う。 あれは、色セロファンだ。 真紅はセロファンを鮮やかに丸く切り抜いた。
「そう。 私達は人形。 難しい事は無いのだわ。 電灯にセロファンを貼って色を変えるように。 こうして、瞳に、ぺたり。」
息を呑む。 真紅の双眸は、瞬間的に青から赤へと色を変えていた。 知らされてみれば、なんと簡単なトリックなのだろう。
「……悪い事はするものじゃないね。 結局こうして……必ず、白日の下に晒されてしまう。 お見事だよ、真紅。」
「捜査に必要なのはどんな小さなことも見落とさない観察力。 ……くんくんの口癖よ。」
ぱさりと落ちる髪。 目から取り出したものは、色セロファン。 現れたのは、紛う事なき蒼星石だった。
「……貴女なのね、蒼星石。 翠星石の背中を刺し。 髪を切り。 服を替え。 『被害者・蒼星石』を作り上げたのは。
凶器は、言うまでもなく庭師の鋏。 のりの部屋なら、邪魔が入らない事も分かっていた。
のりはお台所。 ドールはドアノブに手が届かない。 ジュンが勝手に入るはずもない。 そして、外部犯の可能性も無い。
『犯人・翠星石』を演出するにはうってつけの部屋だったという訳ね。」
「そうだね。 『翠星石』に孤立してもらう事が重要だった。 いつまでも彼女のフリはし通せないし。
いずれ、ふとした拍子に『蒼星石』が戻ってきて、『翠星石』が戻らなくなった時。
『殺害犯人・翠星石』だったら、戻らなくても惜しまれない。 今回の事がバレる危険性を減らせると思って、ね。」
……なんだ。 なんだ、この言い草は? お前は、命を奪ったんだぞ。 誰よりも、お前の事を愛してた、姉の。
くそっ。 くそっ。 くそっ! こんなの、許せない。 許せる訳が無い!
「ジュンくん……。」
いつの間にか、姉ちゃんが僕の横にいた。 僕の手を不安そうに握る。 そうだよ。 これが、本当の姉弟じゃないか。
僕は、姉ちゃんがそこにいる事を確かめるように、小さな手を握り返した……。
「君達の尺度で計らないでくれるかな。 これは悲劇なんかじゃない。 後悔なんて全く無い。
僕と翠星石は、二人で一人なんだ。 今までも、これからも。
二つに一つだったんだ。 彼女が僕の中に生きるか。 僕が彼女の中に生きるか。
……それが、アリスゲームなんだ。 ………彼女は………僕を、抱きしめて………笑って………逝ったんだ。」
今にも膝からくず折れてしまいそうだった。 不意打ちではなかったのだ。 翠星石は『誰に殺されるのか』を知っていたのだ。
間違っていなかった。 彼女は。 翠星石は。 笑って、斬られる事を、選んだのだ。
「馬鹿な事を言わないで頂戴、蒼星石! ……後悔なんて全く無いですって? なら、なぜ貴女は泣いているの。」
「え?」
そうだ。 泣いている。 蒼星石の瞳からは、とめどなく涙が溢れていた。 蒼星石だけじゃない。
僕も。 姉ちゃんも。 真紅も、雛苺も、金糸雀も。 みんなが泣いていた。
こんなのがアリスゲームだって言うなら。 ローゼンなんて、くたばっちまえばいいんだ。
僕ら全員が命の危機に瀕している事も、アリスゲームの功罪も、もうどうでも良かった。
僕らは無心に泣き続けた。 ただ、ただ、翠星石の事を想って。
どれくらいの時が経ったのだろう。 ふと顔を上げた時。 蒼星石の姿はどこかに消えていた……。
その晩。 僕らは、翠星石の霊を弔っていた。 蒼星石は結局戻って来なかった。 これからも、会えない気がする。
それとも、時が来ればお互いの意思に関わらずまみえる事になるのだろうか。 アリスゲームの名の下に。
昨日まで仲睦まじく暮らしていたのに、なぜ急に心変わりしたのか。 今となっては、蒼星石にしか分からない事だった。
「やりきれない事件だったな……。」
短くなってしまった翠星石の髪を撫で付ける。 思えば、こいつとは喧嘩してばっかりで、ちっとも構ってやらなかったように感じる。
ひとしきり拗ねた後の、はにかんだような笑顔を思い出して、何だか無性に悲しくなった。
「それにしても……大胆なトリックだったな。 なぁ、真紅。 一体いつから入れ替わりを疑ってたんだ?」
「言ったでしょ。 最初からよ。 あの子が戸口に姿を現した瞬間に、もう分かっていたのだわ。」
何だって? いや、確かに僕も違和感を感じはしたけれど。 それにしたって、姿を現した瞬間だなんて。
少し見栄っ張りが過ぎやしないか? 僕は、意地悪く聞き返してやる事にした。
「そりゃあちょっと言い過ぎじゃないですか、名探偵さん? 私めにも分かるよう、筋道だった説明をお願いしたいもんですねぇ。」
真紅は心底哀れんだ目で僕を見ると、溜息混じりに言ったのだった。
「本当に本気で言ってるのかしら? あのね、ジュンくん。 そうめんは喋ったりしないのよ。」
<完>
前スレのSSで「蒼星石はカップヌードルになった」っていうものがあったから
すっかり騙されたwww
ふと、真紅はジュンのことを「ジュンくん」って呼ばないような気が…
長すぎて途中でダレた
蒼星石は翠星石になりきってどうするつもりだったんだw
そのまま翠星石として生きるつもりだったのか、とか考えたり
GJ!おもろかったよ
>>20 作中に説明があるじゃん
翠星石(蒼星石)で当分過ごして失踪→蒼星石として戻ってくる
>18
探偵が助手に謎解きをするのはお約束、それになりきってるって事でしょ?ワトソン君
僕も京極や森、それともポーやドイルみたいなミステリ薔薇乙女を書きたくなった
「この世には不思議な事などなにも無いのだわ」なんて
グッジョブ!
>>21 あ、ほんとだ。見事に読み落としてた
やっぱ推理物はちゃんと読まなあかんね
すまんかった
>>17 グッジョブ!
オイラ的には桜庭かぁーずきぃー!(wのミステリー小説『gosick』を思い出したよ。
ビクトリカとかなりカブルんですけど(w
翠星石とジュンを仲良くするために尽力する蒼星石。
そして仲良くなった二人を見て、自分の本当の気持ちに気づく。
「そうか、僕はジュン君のことを…」
こんな展開キボン。
>>25 どこかでそういうシュチュのゲームがあったな。
ジュンが普通に中学に通学してて、授業中いきなり教室にナイフ持った奴らが入ってきて
(または特殊部隊が)そいつらぶっとばしてヒーローになる展開をキボン。
>>27 そいつは
オシイ監督の人形物語なんでないかい?
某ゲームをプレイしてショットガン乱射でいいよ
保守 期待あげ
32 :
薔薇乙女戦争:2006/05/10(水) 21:42:24 ID:8CKcu+Hq
>>前スレ676
薔薇水晶から奪ったローザミスティカを手に、真紅は雪原をふらふらと歩く。
虚ろな目で向かうのは、彼女のマスターの所。ジュンの倒れている所。
仇を取ってしまった彼女は、抜け殻のようになっていた。
全ての姉妹を失い、最も大切な人を失い、それで残されたのは六つのローザミスティカだけ。
そう――「だけ」なのだ。彼女のアリスへの拘りは日に日に薄れていた。
それは、今、彼女が逢いたいと思っている少年の影響が大きかった。
あまりに未熟な彼との日常は、大変でもあり、楽しくもあった。手の掛かる子供ほど可愛いとよく言われるが、まさにそんな感じだった。
人は人の成長を助けることで己も成長できる。人の悪い所を見て、己を省みることができるからだ。
真紅もジュンを見守ることにより、大きく心が成長した。
彼女だけではない。ジュンの周りに居た雛苺、翠星石、蒼星石、金糸雀。多くの薔薇乙女達が、彼と共に成長した。
そして、いつも薔薇乙女達の中心には彼が居た。
年頃のジュンは表立って見せようとしなかったが、本当に心優しい少年だった。そんな彼だから、人形達も心を開いたのだろう。
ジュンをマスターにしてからの生活は、真紅の長い人生の中でも際立って光り輝いていた。黄金時代と言ってもいい。
姉妹達とより深く親しみ合い、犬猿の仲だった水銀燈とも一時は話ができるようになった。
知らぬ間に、真紅はジュンとの毎日に満足するようになっていた。
お父様のためにアリスにはなりたいけれど、姉妹達との生活も捨て難い。真紅はそう思うようになっていた。
しかし、楽しかった日々はもう戻らない。
残ってしまったのは彼女一人だけ。
もう、喧嘩をする姉妹すら居ないのだ。
真紅の心は空っぽだった。
33 :
薔薇乙女戦争:2006/05/10(水) 21:44:15 ID:8CKcu+Hq
夢遊病のように歩いていた真紅が立ち止まる。思わぬ人物と出くわしたのだ。
「アリスゲームを終わりにしましょう」
聞き慣れた声に驚いて立ち尽くす真紅。翠星石に倒されたと思っていた水銀燈が、今になって現れたのだ。
翠星石との戦い以後、水銀燈は全く姿を見せなかったのだが、それには理由があった。それは、彼女の姿を見れば解る。
「貴女、その体……」
真紅からやっとのことで出た言葉はこれだった。真紅は水銀燈から目を逸らせたくても、それができない。何故なら、彼女の姿があまりにも強烈な執念を撒き散らしていたからだ。
水銀燈の姿は壮絶の一言に尽きた。左腕は肩の部分からごっそりと失くし、残った右腕も袖から手が出ていない。服の肘から先の部分がひらひらと風に揺れている。あれでは、髪の手入れもできない。翠星石の捨て身の攻撃により、両腕を失う深手を負っていたのだ。
手が使えない状態で戦いを挑むのは自殺行為に等しい。その辺りは、いくら好戦的な水銀燈でも理解できた。
だが、戦わなくてはアリスゲームの勝者にはなれない。
そこで、彼女はわずかな望みに賭けて、最後の最後まで隠れ通す事にした。ドールズの残りが二体になる時まで逃げ切れば、戦いは一度で済む。その一度に勝利すれば、アリスになれるのだ。
それまでにローザミスティカの数に差はついてしまうが、そこは目を瞑るしかない。早期に手負いだと知られ、集中的に狙われるのだけは避けたかった。
水銀燈は右、左と喪失した自分の腕を見てから、真紅の思わず出た問いに答える。
「これねぇ、翠星石にやられちゃったぁ。あのイカレ女、よりによって道連れを謀ってくれたのよ。いい迷惑だわ……!!」
初めは軽かった水銀燈の口調も、次第に怒気が含まれていく。よほど、辛酸を舐めさせられたのだろう。最後には歯噛みまでしていた。
険しい表情をしていた水銀燈だが、急にはっとなって不敵な笑みを作る。真紅に苦渋の顔は見せられない。こんな姿でも、彼女のプライドは健在だった。
「でも、残ってくれたのが真紅でよかったわぁ。やっぱり、あなたは私に葬られる運命なのよ。そう思うでしょう?」
水銀燈は同意を求め、暗に真紅を責める。
ジュンを亡くしたばかりの真紅には、とても厳しい言葉だった。今となっては、水銀燈の気持ちが痛いほど解る。
「私のジュンも、もう……」
「ええ、死んだわね。あの子も可哀想に……あっちに転がってたわ。でも、それが何?」
34 :
薔薇乙女戦争:2006/05/10(水) 21:46:01 ID:8CKcu+Hq
真紅の言い訳がましい言葉に、棘のある言葉を返す水銀燈。亡くなった今では、わずかでもジュンに思う所があるようだが、真紅を許す気は毛頭無かった。
真紅はそれが悲しくて堪らなかった。水銀燈は、絶望に落ちる寸前に出会えた、今ではたった一人の姉妹なのだ。
「もう姉妹は貴女しかいないの。私には戦えないわ」
「戦えない? 馬鹿言わないで。薔薇水晶を嬲り殺しにしたあなたが、よく言えるわねぇ」
この期に及んで引け腰になる真紅を水銀燈は笑い飛ばす。
水銀燈は遠見の能力を使って全てを見ていた。ジュンを失った真紅が修羅の形相で戦うのを、身震いしながら観戦していた。
勿論、その寒気は恐怖からのものではない。それとは全く逆の、歓喜からくるものだった。
遠い昔から、水銀燈にとって真紅は目の上のこぶだった。いつも上品ぶって、安っぽい常識を振りかざす真紅が我慢ならなかった。そのくせ、実力は水銀燈に劣らない。真紅とは幾度と剣を交わしても、勝敗は決まらなかった。
その真紅が先程の戦いで、水銀燈も唸るような残虐さを見せた。いつも冷静にお澄まししていた真紅が、目の前で化けの皮を剥がしたのだ。これを喜ばずにいられようか。
「あれは……我を忘れただけよ……」
「嘘言いなさぁい。見事な戦いぶりだったじゃないの。あれがあなたの本性なのよ。ねぇ、真紅ぅ」
水銀燈がねっとりと絡みつくような言葉でいたぶる。その顔は実に嬉しそうだ。
すでに力無かった真紅の反論も、これで沈黙した。水銀燈が言う事を完全に否定できなかったのだ。
激しい憎悪に支配された中での暴力は、それは甘美なものだった。
薔薇水晶の背後から襲った時。腕を折った時。瞳を砕いた時。真紅の脳髄はしびれるような快感で満たされた。あの充足感ははっきりと覚えている。
今、姉妹を破壊した感触を思い出しても嫌悪感しか湧かないが、あの時の真紅は別だった。彼女の心の奥底にも、誰もが飼っている悪魔が住み着いているのだ。
「やめてッ!」
己のおぞましい心を理解したくない真紅は、思考を振り払うように頭を左右に振る。
それは、水銀燈が望んだ反応そのものだった。否定しようと苦しむ真紅を見て「ふふ」と笑い声を漏らす。
「今更、何を恐れているの? あなたは私も殺せるはず。そう、めぐの首を絞めたように、あなたは簡単に人を殺せるはず」
「違うっ、違うの……っ!!」
「いいえ、違わない。真紅は人殺しなの。私と同じように」
執拗になじられ、真紅は親に叱られる子供のようにしか反論できない。大切なものを失いすぎた彼女に、この責め苦は酷だった。
思う存分、言葉で真紅を追い詰めた水銀燈は、満足げな笑みを浮かべる。
「真紅、あなたとなら最後を飾るに相応しい戦いになりそうだわぁ」
黒い羽が舞い、戦いの始まりを告げた。
35 :
薔薇乙女戦争:2006/05/10(水) 21:47:19 ID:8CKcu+Hq
真紅は四つのローザミスティカを握り締め、水銀燈の攻撃から逃げ回る。上空から黒い羽が雨のように降り注ぎ、凍った大地に突き刺さる。
空を飛ぶ水銀燈に、手も足も出ない真紅。そう見えるかもしれないが、問題の根はずっと深かった。
それは、ここにきて真紅の病気とも言える戦闘恐怖症が再発してしまったのだ。
真紅は一度はジュンを支えにして立ち直れた。彼を守りたい、彼の期待に応たい、と決意した時、彼女は己を奮い立たせることに成功した。
だが、その彼も今は遠い所へと行ってしまった。
支えを無くした真紅は、立ち直る以前へと逆戻り――いや、それよりも症状が悪化していた。
姉妹やジュンとの別れが相次いだため、以前に増して、彼女は失う事を恐れるようになっていた。
こうなってしまっては、薔薇乙女の悲願である父との邂逅も、真紅には見えなくなる。
無論、彼女も父とは逢いたいが、その前に立ちはだかる恐怖に足が竦んでしまう。
ジュンの存在が大きくなりすぎてしまった彼女を引っ張るには、生みの親の願いを以ってしても不充分だった。
「真紅ぅ、いつまで遊んでるつもりぃ? ちっとも盛り上がらないじゃないのぉ」
水銀燈がおちょくるように文句を垂れるが、真紅にはそれを聞く余裕さえない。
着地した水銀燈の翼が蛇のように伸び、真紅を呑み込もうとする。真紅は鈍い動きで羽を避けるのがやっとだ。
真紅はローザミスティカの数で上回り、身体にも大きな損傷は無い。圧倒的に有利な戦いのはずなのに、完全に圧されていた。
伸縮自在の黒い両翼が、執拗に真紅を追う。
水銀燈は二匹の蛇を巧みに操り、じっくりと獲物を追い詰めていく。
水銀燈がチロリと舌なめずりした時、獲物が網に掛かった。
「いやぁっ」
悲鳴と共に、真紅が黒蛇に呑み込まれた。
つづく
36 :
∀・`)ヤァ:2006/05/10(水) 21:56:23 ID:aDG7F0YN
俺も書いてみたよ。
長いうえに続き物だけど、投下するよ。
37 :
『終章』:2006/05/10(水) 21:58:32 ID:aDG7F0YN
薔薇水晶は力なく地に伏せている。
六つのローザミスティカを取り込むことに失敗し、自壊した体はすでに器としての機能を果たしていない。動くことも喋ることもできないが、意識だけは辛うじて保っていた。
少女の意識を壊れかけた体に繋ぎとめているもの、それは単純明確な憎悪である。
―――壊してやる。
自分を受け入れなかった六体のドール達。
忌々しいその姿は、今でも瞼の裏に焼きついている。
内側から破壊された腹部がズキリと痛んだ。
――― 一体残らず、全て壊してやる。
哀れな贋物と嘲った白いドール。
お父様によって作られた完璧な人形の自分が贋物のはずがない。そう叫びたかったが、口が動かなかった。
やがて白いドールは消えうせたが、胸中に溢れかえる怒りは消えることはなく、皮肉にも薔薇水晶と体の結びつきを強めることになった。それこそが白いドールの思惑だともしらずに。
―――壊してやる、壊してやる、壊してやる。
行き場のない負の感情は、いまや少女にとっての生の糧である。そして創造主から与えられた崇高な使命は、少女の精神を堅固なものにしていた。
全ては自分がローゼンメイデンシリーズを超える存在だと証明するために。
全てはお父様のためだけに。
38 :
『終章』:2006/05/10(水) 21:59:51 ID:aDG7F0YN
だが、薔薇水晶は知らなかった。それがすでに失われた目的だということを。
あの時、光に包み込まれた二人を待っていたのは、無限に広がるnのフィールドの虚空空間だった。どこまでも続く世界と悠久の時は、薔薇水晶に朽ちを、槐に死を与えたのだ。
最愛のお父様が動かなくなったわけを、闘うことしか知らない少女には理解できなかった。理解できたとしても、その死を受け入れることはできなかっただろう。
「おやおや、まだ迷子になられていないご様子で」
視界の隅に見慣れたタキシードが映った。
音も気配も出さずに現れた訪問者は、ゆっくりとした足取りで薔薇水晶に近づいてくる。
少女の眼球がその何者かを捉えようとぎこちなく動くが、その必要はなくなった。
「その器はもはや限界でしょう? 何故そうまでして、その器にしがみつく必要があるのでしょうか? 森の奥でお菓子の家に巡り得たヘンデルとグレーテルのように、迷いは時には思いもしない物をもたらします」
ククッと笑い、「彼らの場合、悪い魔女に捕らわれましたが」と肩をすくませながら付け加える。
この独特の口調と道化的な言動には聞き覚えがあった。
ラプラスの魔。nのフィールドを自由に闊歩することができる唯一無二の存在。
歯をかみ締めて睨みつけている薔薇水晶に気づいていないのか、それとも眼中にすらないのか、人型の白ウサギは平然と頭上のシルクハットを持ち上げた。
39 :
『終章』:2006/05/10(水) 22:01:06 ID:aDG7F0YN
「お久しぶりで、精巧に作られた贋物のお嬢さん。 狭間での幽閉はさすがに堪えましたかね?」
薔薇水晶が目を剥く。
やはりこの空間の干渉を断ち、閉鎖したのはこの道化の仕業だったようだ。だとすれば、お父様が動かなくなったのもラプラスの魔の所為に違いない。
事実がどうであれ、もはや薔薇水晶の双眸は眼前の憎き敵しか捉えていなかった。怒りで顔が歪み、頬を走る亀裂が大きさを増しても、少女の視線はただ一点に注がれ続けた。
「そう怖い顔をなさらずに。 美しい顔が歪むのは、私としても気分が良いものではありません」
ギシギシと軋む球体間接を無理矢理動かし、緩慢ながらも残った片腕で上半身を支え上げる。
「ほぉ……」
ラプラスの魔から感嘆の声が洩れた。
「人を突き動かすには憎悪と怨恨が最適だといいますが……失礼、貴女は人ではありませんでしたね」
細い両足がしっかりと地を踏みしめる。安定はしていなかったが、薔薇水晶は確かに立ち上がっていた。それは彼女にとって数年ぶりの直立だったが、nのフィールドは少女の時間感覚を完全に狂わせていた。
40 :
『終章』:2006/05/10(水) 22:02:41 ID:aDG7F0YN
「いやはや、素晴らしい。 あのお方がここにいないのが心残りなぐらい、実に素晴らしい」
―――うるさい。
「よほど私が気に食わないご様子で。 いえ、貴女が本当に嫌いなのは五番目のお嬢さんでしょうか? それならご安心を、すでに彼女は―――」
―――うるさいッ!!
紫の光が、空間に走った。
辺り一面に突き出した水晶は、瞬く間に空間を埋め尽くしていく。止まることなく増え続ける水晶の群れは意思を持っているかのごとく、ラプラスの魔をグルリと囲い込んだ。
殺風景な空間が、紫水晶に彩られていく様は幻想的である。
「……美しい」
ラプラスの魔が陶酔した声で呟いた。
たとえその水晶が攻撃手段だったとしても、誰もがその光景には目を奪われてしまうだろう。気づいた瞬間に、貫かれていたとしても。
途端、一際大きな水晶が地を這った。ラプラスの魔の瞳は自分めがけて迫る水晶を捉えていたが、動こうとはしなかった。
薔薇水晶の脳裏に疑念がよぎる。しかし、すぐさま頭から振り払う。
もはや少女の頭の中には、眼前の道化を壊す目的だけで占められていたのだ。
だから彼女は気がつかなかった。
背後から音もなく忍び寄る影に。
41 :
『終章』:2006/05/10(水) 22:04:14 ID:aDG7F0YN
―――え……?
背中から胸に突き抜けるような衝撃が伝わった。
状況が飲み込めず泳ぐ瞳は、無傷のラプラスの魔へと向けられる。
「恐れることはありません。 ドールに死という概念はあらず、故に終焉はなく、言うならば眠りにつくのと同じです」
その言葉を合図に、遅れて違和感が滲みわたった。
自らの体に起きている事態を把握できないまま足から力が抜けていく。
ゆっくりと地に崩れ落ちた薔薇水晶は、ふと顔を伏せた。
そして見た。
胸から突き出した一本の白い茨を。
少女の表情は驚愕、次いで絶望へと変化していった。
辺り一面に広がっていた水晶が、甲高い音をたてて砕け散る。それは薔薇水晶の終わりを意味していたのだろう。
不意に、ラプラスの魔ではない、透き通った声が響いた。
「それはしばしの眠り。 いつかは覚める泡沫の夢」
背後から伸びた繊細な指先がひび割れた頬に触れた。
その手が誰のものかはわからない。でも、優しく撫でられる度にこの心を満たすような温かいモノは何なのか。大切なモノが頭の中から零れ落ちていく、この感覚は何なのだろうか。
朦朧とした意識の中、薔薇水晶は、耳元で囁く心地よい声を聞いた。
「だから今はお休みなさい。 深い眠りを、楽しい夢を」
42 :
『終章』:2006/05/10(水) 22:05:13 ID:aDG7F0YN
夢を見た。
眼鏡をかけた黒髪の少年が泣いている。
肩を小さく震わせながら、その弱々しい背中を丸め、嗚咽を繰り返す。
そんな彼の腕の中には、可愛らしい西洋人形が見えた。ところどころが破損しているのが痛々しいが、その精巧な作りの前では少々の破損でも見劣りしない。
この少年は、人形が壊れてしまって泣いているのだろうか。
それほど大切な人形だったのだろうか。
どんな理由であれど、これほどまでに少年に思われている人形は、幸せだったに違いない。
夢はそこで途切れた。
続く
いやぁ、気になるな
てか誰がミーディアムを殺したんだろうな
本物に真紅なのか?まぁ最後に全部分かると思うけど
ご両人供にいい仕事してますねぇ〜w
>>43 オイラもそれが気になるところ。
これからラプラスがどう絡んでくるかが見所と踏んだ。
終盤の展開に期待大ですよ。
>>42 薔薇水晶のイントロダクションに興味津々ですよ、もう。
これからの展開wktk
銀様には生きててほしいけど
これは真紅も銀様も死(ry
まぁドールに死は無いさ
>>35 今まで私用で一週間ほどパソコンから離れていたんですが
ひさびさにこのスレを見させてもらって
いやぁ、お話進んでますねw
薔薇戦争の2回3回分を一気に読ませていただいて
何か得した気分ですw
ジュンまで死するとは予想外の展開でしたが
続き期待していますー
保守
保守
保守替わりにおひとつ
真紅 「ふぅ、疲れたのだわ、大体何でこの私が長距離バスなんて、新幹線位使えなかったの?」
JUM 「すいませんねェ真紅様、文句は実行委員会にお願いします、巴はもっと大変だったんだぞ」
雛苺 「柏葉トモエに〜、けいれ〜い!」ビシッ
JUM 「巴・・・無茶しやがって・・・・」
のり 「じゃ、みなさんコメント録りますからお願いしま〜す」
真紅 「え・・・ちょっ、待ちなさい、JUM!急いで髪と服を直して頂戴!あと霧吹きも」
のり 「じゃ、3,2,1、キュー!」
真紅 「え〜、この私に勝るとも劣らない素晴らしい人形達との触れ合い、素敵だったのだわ」
JUM 「人形好きの僕にとっても、とても楽しい時間でした、やっぱ外に出るのっていいですよね」
雛苺 「JUMみたいなひとがいっぱいいて、楽しかったの〜!」
のり 「カットぉ!、じゃ、皆さんでシメのセリフどうぞ〜」
一同 「あしや人形祭にお越しの皆様、ありがとうございました〜」
のり 「はいオッケーで〜す!じゃ、皆さんお疲れでした!・・・雛ちゃん、後で録り直しましょうね」
あしやかぁ…遠いよなァ〜
期待上げ
ちょっと質問エエですか?
『大きな古時計』の歌をモチーフに元治のSS構想してたんですが
イマイチあのキャラ分からなくて…
誰か、どっか良い解説サイト教えてくだされ。
・・・信じたオイラがバカでした〜。_/ ̄/○
因みに感じとしては、二期終了二ヶ月後
元治を喜ばせようと、ジュンに書かせた蒼星石の手紙。
久しぶりの頼りを喜ぶ元治に、本当の事が言えない翠星石。
二通、三通と出しつづける内にジュンが怪我して手紙が書けなくなる。
途方にくれる翠星石の気持ちを知らずに、元治は手紙を待ちつづけ…そして
…て感じだったけど、まぁいいや。ゆっくり書くよ〜。
そして全てが終わった後、
空を仰いで号泣する翠星石を静かに包み込みながら
雪は未だに降り止まず…
おおお!切ない系でいいですねー。
ever snowとかNORTH WINDが頭の中で流れていきましたよ(音ゲーの曲だから知ってる人いないだろうけど)
のんびりwktkして待ってます。
56 :
熊のブーさん:2006/05/15(月) 01:55:13 ID:y42KjgYD
前スレ>645あたりからの続き投下。
今、地震があってびっくりした……
DELUSION3 桜田家の居候(後編)
〜〜〜前編のあらすじ〜〜〜
めぐがいなくなりました。
「あははは……めぐぅ……何処に行ったのぉ……アハハハ」
「水銀燈が壊れたですぅ!」
「元々壊れてるかしら〜」
生けてある菊の花。
意味はおそらく、いや、確実にアレだろう。
このまま水銀燈を放っておくべきかどうかジュンは判断しかねた。
指示を仰ぐために真紅の方を振り向くが何処にもいない。
「逃げやがったな……」
となると、この中で一番の良識派の蒼星石と相談すべきだ。
彼女も例のごとく病室内にいなかった。賢い奴は行動が速い。
さて、どうするべきか。
どうすれば自然にこの場から去ることが出来る?
ジュンはひたすら考えた。こんなに考えたのは久しぶりかもしれない。
だが、その思案が命取りだった。
「ねぇ……じゅ〜ん〜……」
水銀燈の方から接近してきた。
「ここはお悔やみの一つでも言って逃げ――うおわぁ!」
ジュンが気付いたときには水銀燈はジュンの胸倉をつかんでいた。
ジュンより水銀燈の方が背が高い。
それでも水銀燈が立て膝を付いているのでジュンの太股の辺りに彼女の顔があった。
「私はぁどうしたらいいと思うぅ?じゅん……」
水銀燈の顔が見る見るうちに曇ってきた。大雨注意報だ。
下から半泣きの表情で迫られるのはかなり怖い。ゲームなんてものは所詮仮想現実なんだとジュンは思い知った。
「おい……」
ジュンは水銀燈と目線を合わせるべく少し屈んだ。
「助けられたかもしれないのに。初めてあんな気持ちになったのに……」
「落ち着け水銀燈。まずは深呼吸しろ」
「なんで?私がジャンクだから?誰のせい?私のせい?」
このままでは発狂してしまうんじゃないか?
ジュンの脳裏にいつぞやの時計屋の人が思い浮かんだ。大切な存在を失うショックは、かくも大きいものか。
「絆チョップ!!」
「あぐっ……」
「ああ! ジュンが傷心の乙女に手を上げたですぅ!」
真紅の真似をしてみたが、効果は抜群のようだ。首筋に一撃を受けた水銀燈はあっさりと気絶した。ちょっと力が強すぎたかもしれないが気にしない。
「さて、帰ろうか」
「ジュン、責任とってお前が水銀燈を運べですぅ」
「ヒナ、お腹すいたの〜」
「……私は寄るところがあるかしら」
金糸雀はそう告げるとさっさと出て行った。
「さあ、キリキリ働けですぅ」
「どうやって運べばいいんだよ」
ジュンは気絶した水銀燈を見下ろして呟いた。
水銀燈を背負ったジュンはnのフィールド経由でようやく家にたどり着いた。途中水銀燈が気絶状態にも関わらず、寝言のように狂った笑い声を上げていたが一向は無視を決め込んだ。
「重い〜疲れた〜」
「力仕事は男の特権ですぅ」
「ジュン、あいとあいとー」
「あら、遅かったわね」
優雅に紅茶を飲んでいる逃亡犯(赤)と逃亡犯(蒼)を発見。
ジュン探検隊はついでに、のりも発見した
「おかえり。みんな」
「イッタイ、オマエタチハ、ナニヲ、シテイルノデスカ?」
「お茶を飲んでるのよ。見て分からないかしら?」
ジュンの怒りメーターが振り切れた。
「何様のつもりだ貴様―!! よくも逃げやがったなこの逃亡者Aめ!!」
「黙りなさい」
縦横無尽に動くツインテールが横殴りに飛んできた。しかし、ジュンはとっさの判断で下に屈む。
回避成功のようだ。
「真紅ツインテール破れたり!」
「甘いわね」
ツインテールは弧を描くように急に軌道を変えた。ジュンを上から叩きのめすべく襲い掛かる。
いい音がした。
「あべし!」
「まだまだね。それに私と蒼星石は逃げたのではないわよ。人聞きの悪い」
「戦略的撤退とか?」
「……もう一度叩かれたいのかしら?」
ジュンは、ものすごい勢いで土下座した。
「よろしい。ちょっと調査をしてたのだわ」
「要するに聞き込みだね」
「水銀燈は何処?」
ジュンは黙って部屋の隅を指差す。
いつの間に目が覚めたのか、水銀燈が壁に向かって体操座りをしてブツブツと呪詛のように何かを言っている。完全に鬱銀燈になってしまっていた。
「水銀燈」
「なぁにぃ真紅ぅ〜。ウフフフフ。惨めなジャンクにぃ何か用?」
「貴女のミーディアムは死んでいない」
時間が止まった。
一番初めに動き出したのは水銀灯だった。
「なぁにそれぇ。気休めのつもりぃ?無駄よ無駄。めぐは確かにあの病室にいたもの」
「調査結果を。蒼星石」
「はい、これ」
蒼星石は大き目の茶封筒を差し出した。
水銀燈が興味なさげに中身を引っ張り出す。ジュン達も中身を覗いてみた。
「病院内での聞き込み結果と最近の入院患者のリストよ。入院した人、退院した人、亡くなった人、全部載ってるわ」
「思いっきり個人情報入ってないか?これ。どうやって調べたんだ?」
「秘密よ」
真紅が即答した。
「しいていうなら、世の中便利になったものだよね」
今度は蒼星石がやけに笑顔で答えた。爽やか過ぎる笑顔の裏には一体……?
「おっと、これ以上は聞かないでね」
笑顔の蒼星石の手には家庭用鋏が握られていた。
ジュンはこれ以上の追及を諦めた。
「嘘よ……」
水銀燈が資料を捲りながら呟く。心なしか声が震えている。
「めぐの名前が無いなんて……間違えるはずが無いわ。あの病院で、あの病室で私はめぐと一緒にいたのに……ありえない……」
入院患者のリストには『柿崎めぐ』という名前は無かった。
「私たちが人間になったことだってありえないわ。それとね」
「な…なによぉ」
「大切なものを失う気持ちは分かった?」
「!」
水銀燈には色々と前科があった。今、この場にいる誰もが知っている。
それを知っての上での真紅の一言は場に響いた。
「今後どうすればいいか考えなさい。これはお父様が貴女に与えた課題なのかもしれないわね」
「…………」
水銀燈は資料を片手に黙りこくってしまった。
真紅は踵を返して立ち去ろうとした。
「何処にいくですぅ?」
「非常にまずいわ…緊急事態よ」
「どうしたんだ。いきなり」
「今日、私達は何処で寝ればいいの?」
「あーーーー……」
確かに緊急事態だった。
時間は少し遡る。
病院を飛び出してきた金糸雀は、道路の端をせっせと走っていた。
ゴールはみっちゃん宅。もう少しで到着するだろう。
「まさか、みっちゃんが居なくなるなんてことは無いと思うけど」
金糸雀は心配した。
「確認ぐらいは取っておいたほうが良いかしら」
かの、人形好きなみっちゃんも居なくなってしまうのではないかと。
金糸雀はひた走る。走れ金糸雀。
「nのフィールド使えばすぐだったかしら〜」
アパートの階段を大急ぎで駆け上る。息を切らせてようやくゴールにたどり着いた。
「と……到着かしら……」
肩で息をしつつ、ドアノブに手をかけ、回す。
開かない。
もう一度回して手前に引いてみる。やっぱり開かない。
「きっと出かけてるのかしら! すぐ帰ってくるかし…ら?」
ドアの下に挟まっている手紙が目に入った。
引き抜いて読んでみる。
「みっちゃんの字。え〜と、なになに」
「おじゃまするかしら〜」
桜田家では大掃除の真っ最中だった。そこらじゅうで忙しく人が出入りしている。
「何事かしら!?」
「あ、神奈川が帰ってきたの〜」
三角巾にマスクにエプロン、チリトリ装備の雛苺が現れた。
「カナリアかしら!! 何故、こんな時期に大掃除なんて」
「寝る場所を確保するためよ。こんな体では鞄で眠れないわ」
お掃除セットで重装備の真紅がのしのしとやって来た。頭の三角巾にはクモの巣のおまけ付き。
想像できない姿に金糸雀は思わず噴き出した。
「笑っていられるのも今の内だわ。貴女も手伝いなさい」
「状況がつかめないのだけど」
「後で説明するわ。とにかくこれ」
真紅は持っていた雑巾入りバケツを手渡した。
中の水はそうとう汚い。
「拒否権はないのかしら?」
「あるはずが無いでしょう。それの水を入れ替えて二階に来なさい」
掃除は夕方まで及んだ。
「あー終わった終わった」
居間でジュンは大きく伸びていた。腕を上に伸ばし手を組み、上半身を左右に振りつつ動き回る。
「なんか見たことある動きだね」
「……正直、目障りですぅ」
「ヒナもやるの〜」
「カナも負けないかしら」
ジュンの後に雛苺、金糸雀と続いて同じ動きでついてまわる。動きが全く同じリズムの奇怪な行列が出来上がった。
「バッチコーイかしら〜」
「セイセイなの〜」
なんか間違っていた。
しかし、突っ込むものは誰もいない。ある者はテーブルに突っ伏し、ある者は紅茶を入れ、またある者は見向きもしなかった。
「ここで重要な話があるのだわ」
何事も無かったかのように真紅が切り出した。
「人間になって大きくなった私達はもう鞄で寝られないし、ちゃんと人間らしい生活を始めなければならないのだわ。」
皆が動きを止め、真紅のスピーチを聞き入った。
「お父様の意思なのだからしょうがないけれど、衣住食の確保は難しいもの。」
「住むところなら、今まで通りここに住めばいいじゃない」
のりが提案した。何気なく話の腰を折ったのは賞賛すべきかもしれない。
「ありがとう、のり。でも、全て今まで通りにするわけにもいかないの」
「それがお父様の意思、だからか?」
「話の腰を折らないで、黙って聞いてなさい」
真紅が眉を吊り上げて糾弾した。
このやるせなさは何でしょう、とジュンは床に両手を付いて落ち込んだ。
「“住”は今まで通りにするとしても……“衣”、“食”については極力自分達でしていかなければならないのだわ。問題なのは、お金ね」
先立つものはやはり金だった。場に重い雰囲気が流れる。
真紅は苦虫をつぶしたような顔をしたまま、何も言わない。
「……皆の意見を聞きたいのだわ」
ようやく言った言葉はそれだった。
つまり、真紅でも具体的にどうすればいいのか分からないらしい。
「アルバイトなんてどうだろう?」
「私達は戸籍が無いのよ?年齢不詳、出身地不明、過去経歴無し」
「そんな怪しい奴をぉ雇う合法的な所なんて、今の御時世あるのかしらねぇ」
真紅と水銀燈の連携ツッコミが炸裂した。さすが姉妹。
「障害は多いわね」
真紅がため息をつく。
「できるだけ早急に策を練らなければね。このままだと人間になった意味が無いわ」
会議はこれにて終了のようだ。真紅はかぶりを振って部屋から出て行った。
「食費に関しては人形だった時からバクバク食ってるから問題無い……」
髪の毛鞭が飛んできた。如雨露も飛んできた。とどめに鋏が飛んできた。
全段命中。ジュンは動かなくなった。
「ねぇ、黒の服着てる人と黄色の服を着ている人」
何事も無かったかのようにのりが尋ねる。
「貴女達の名前は?」
水銀燈はチラとのりを一瞥し、さも面倒臭そうに、
「水銀燈……」
端的に呟いた。
一方で金糸雀は
「ローゼンメイデン一の策士、金糸雀かしら!」
元気に自己紹介。
「へぇ〜水銀燈ちゃんに金糸雀ちゃんね。貴女達も此処に住まない?」
さっきまでピクリとも動かなかったジュンの指が突如動いた。
ガバッ! とジュン復活。
「まるでゾンビですぅ」
「ゴルァ洗濯のり!! どういう事だ!」
「え……だって、一緒に暮らした方が賑やかかな〜って」
「是非ともお願いするのかしら!」
金糸雀が土下座した。
「お前はミーディアムが居たんじゃないのか」
「みっちゃんは……」
「うぐっ」
ジュンは水銀灯のミーディアムがどうなったかを思い出した。
もしかして、コイツも……
「とにかく、ここに住まわせて欲しいのかしら!!」
「賑やかになるわねぇ。よろしくね、二人とも」
「私はまだ何も言ってないわよぉ」
「さて、夕御飯の準備をしなくちゃ。何人分?ひぃふぅみぃ……
のりは指を折りながら台所に消えていった。
「あの……ちょっと?もしもーし」
水銀燈の声は、のりに届くことは無かった。
その日の夕食は、賑やかなものとなった。
一つのテーブルに総勢八人で食べる夕食である。それぞれが話す会話、食器の触れある音、桜田家の食卓には色々な音が溢れていた。
奏でるその旋律は楽しそうだが、どこか物悲しかった。
結局、真紅達は人間になっても、「寝るのは九時」ルールを守ることにしたようだ。が、
「この部屋にあったものは何処にいった!!」
彼女らが寝るのは鏡があった部屋。物置だったはずだが、いつの間にかきれいさっぱり整理されていた。物が無い部屋のなんと広いことか。
「必要な物は別の部屋よ。物置にもあるわ」
「物置?家にあったかそんなの」
「nのフィールドに置く案もあったけど、却下したのだわ。結局、貴方の通販グッズを使ったわよ」
「“中でこっくりさんをしたら幸せになれる簡易物置”ってやつだよ」
「そんなの買ったっけな……」
「組み立て式のチャチでインチキな物置ですぅ。翠星石と蒼星石が作ったんですよぅ」
ジュンは凄まじい速度で庭に出た。
小さい物置が、あたかも十年前からそこに在りました、と自己主張するかのように、悠然と立っていた。
「僕の知らないところで自分の家が変わっていく〜〜」
夜は更ける。
そろそろ、お化けが出始める丑満つ時。
時間にして午前二時。辺りはすっかり静まり返っていた。
「…………」
水銀燈は屋根の淵に腰掛け、じっと夜空を眺めていた。
「一体、どうすれば良いのかしらね……」
めぐは、いなくなった。今までと同じ、ただ水銀燈の力となるだけのミーディアムだと切り捨てられない、大切な存在がいなくなった。
失くしてから、大切さが身に染みた。
「なにやら鬱オーラ出しまくりかしら」
「何しに来たのよぉ」
いつの間にか金糸雀が後ろに立っていた。しかし、水銀燈は驚くようなそぶりを全く見せず、振り返りもしない。
「これで今日から晴れて鬱銀燈かしら〜。やーい鬱銀とーう」
水銀燈のこめかみに青筋が走った。
「……それは宣戦布告と見なしていいのぉ……」
「あらあら怖い怖い。でも鬱銀燈には、戦う気力なんてこれっぽっちも残ってはいないのかしら」
「うぐ……」
「カナなら、待つかしら」
「大好きなマスターがもし居なくなったら、カナならずっと待つわ。みっちゃんはきっと帰ってくる。そう信じて、いつまでもいつまでも待つかしら」
「ふぅん……なんかどこかの犬みたいねぇ」
「うるさいかしら!」
ビシっと、金糸雀は水銀燈に指を突きつける。
「とにかく、いつまでもウダウダしてないで、カナみたいにどうするかはっきり決めるかしら! 鬱オーラ出されてると、こっちまで気が滅入るかしら!」
水銀燈は俯いてプルプル震えている。拳を握り締め、背中からは黒い羽が湧き出すように生えてきた。
ゆっくりと金糸雀の方に振り返る。
「言いたいことはそれだけぇ……ふざけたこと言ってんじゃないわよ!!」
怒号と共に羽が大きく広がった。瞬く間に黒い壁が出来上がる。
「ひぃぃぃ撤退かしら〜」
金糸雀は回れ右して、物凄いスピードで逃げ出した。掛けてあった梯子をスルスルと降りていく。水銀燈は逃げる金糸雀を胡乱な目つきで見ていた。
「何よ何よ何よ。絶対私の事、馬鹿にしてるわぁ。どうせ真紅の差し金だろうし……うー腹立つぅ」
「お腹が無いのに何をぬかしてるのかしら〜」
まだ庭の方に居たようだ。ボディブローのような指摘に、思わず水銀燈は仰け反った。
「黙りなさい! これが見えないのコレが!」
服をたくし上げ、腹部を下に向かって見せた。服の構造上、服をたくし上げると下着まで見えてしまうのだが、頭に血が上った水銀燈は気が付かない。
しかし金糸雀は、すでに庭に居なかった。夜風が水銀燈の体に吹き付ける。
「なんか私、丸っきりお馬鹿さんじゃないのよぉ……なんか、落ちるトコまで落ちましたって感じぃ……」
また、夜風が吹く。
「うう、寒い寒い」
ひょいと水銀燈は屋根から下の屋根に跳んだ。
手近な窓から侵入を試みる。鍵は掛かっていなかった。
音も無く窓を開け、窓縁に足を掛ける。泥棒のような動き方だ。
「あらぁ」
ジュンの部屋だった。窓際のベットの中では、部屋の主が気持ち良さそうに、寝息を立てている。
「人が悩んで、寒い思いをしている時に、こんな姿見せられるのは何かむかつくわぁ」
水銀燈はジロジロとジュンの寝顔を眺める。ぶるっと水銀燈が身震いした。
「……暖かそうねぇ」
するりと水銀燈はジュンの布団の中に潜入した。布団の中から手だけ出して窓を閉める。
「あー……急に眠気が……」
布団に入って数秒で、水銀燈は眠りの世界へ足を踏み入れた。
翌朝、
「ちーびにーんげーん、あーさですぅー」
翠星石がフライパンと、おたまを持ってやってきた。
「とっとと起きないと騒音攻撃……」
フライパンとおたまが床に落ち、派手な音を立てた。
「違う! 僕は無実だ!」
「しらばっくれんじゃねぇですぅジュン!!」
「他になにか言い残すことはあるかい?」
「無実だ〜〜〜〜」
ジュンは椅子に縛りつけられ、尋問を受けていた。
現在、朝食を取らずに行われている。
「何で水銀燈と絡み合って寝てるですか!」
「ジュン君も大人になったのねぇ……」
「あーんなことや、こーんなことしたんじゃ……」
「Hなの〜」
「違う〜〜〜〜僕は何も知ら〜〜ん!」
「水銀燈」
「なぁにぃ?真紅ぅ」
「……貴女からも何か弁明が欲しいのだわ」
「うふふ。何度も言わせないで。私は欲しいものは全て自分から手に入れる……待つことなんてしないわぁ」
「そう……元気になったようで何よりだけど……色々な意味で取れるわね。その言葉」
「さあねぇ」
水銀燈は笑いながら朝食のパンを齧った。
「あの後、大変だったな〜」
頬杖を付きながら、ジュンはしみじみと呟いた。
「へ〜ぇ、何が大変だったのぉ?」
「!?」
恐る恐るジュンが視線を上げるとそこには仁王立ちの英語教師が立っていた。
流れるような銀色の髪。白い肌。
腕組みをした水銀燈が頬をひくつかせながら立っていた。
「私の授業そっちのけで、な〜に自分の世界に入ってるのよ」
ぐわしと片腕で顔面を掴まれた。必殺アイアンクローだ。
クラスメイト全員が桜田ジュンの冥福を祈り、合掌した。
「イっちゃいなさぁい」
「ぐあぁぁぁぁぁ」
悲鳴が響いた。
終わり
なかなかに楽しませていただきました
ただ、
>>61のりは金糸雀のことは知ってるのでは
クッキーの時に会ってるし
あと >黒の服着てる人と黄色の服を着ている人
これはちょっと違和感感じましたね
珍しくくんくんではなく洋物ドラマを見ている真紅。
「あれ、真紅。何見てるんだ?」
「TWENTY FOURシーズン1よ。CTUの裏切り者が誰なのか気になるわ」
「だろ。このドラマ先が気になってついネタバレ見たくなるんだよなあ」
「同感ね。今もジャックがこの先どうなるのか心配だわ」
「ああ、その先ジャックは敵のボス殺すよ。ちなみに裏切り者はジェイミーで裏で操ってるのはニーナ。ちなみに大統領は死なない。最後はジャックの奥さんがニーナに殺されて終わる、ってところかな」
「な、なんてこと言うの!この先の展開知ったら面白くなくなってしまうのだわ!」
激怒する真紅にジュンは冷静に答えた。
「だって展開気になるんだろ?ま、ネバタレ聞いちゃったくらいでつまらなくなるようなドラマじゃないから安心しろよ」
「こ、こいつは・・・」
終
>>64 JUN大変だなw
めぐとみっちゃんがどこに行ってしまったのか気になります。
祖母が守れなかった約束を果たすため、雛苺を迎えに行ったひとりの少女
ジュン達に拒まれたオディールは、否応なしにアリスゲームに巻き込まれていく
それを聞いたオディールの頼もしき友人達が彼女のため立ち上がった
日本語しか話せない仏移民系英国人 アナ=オディール=フォッセー=コッポラと
4人の苺達の奇想天外な雛苺奪還作戦が始まる
題名は「雛苺ましまろ」とでも?
70 :
薔薇乙女戦争:2006/05/15(月) 21:05:16 ID:ZrtYzSKm
>>35 真紅は十字架にはりつけにされたような格好で宙に持ち上げられていた。
両手両足が羽の鎖で拘束されたその姿は、いつかの光景を思い起こさせる。あの時も、二人は死闘を繰り広げていた。
「ローザミスティカちょうだぁい」
水銀燈の目が真紅の握られた右手を見る。その手には、薔薇水晶から奪ったローザミスティカが未だに残されていた。
途端に、真紅の両腕に圧迫感が走る。腕が強く引っ張られているのだ。
「いっ……ああ……!!」
球体間接がギチギチと嫌な音を立てて軋む。あの時と全く同じ痛みが、真紅の頭にその後に起こった出来事を再現させる。
そして間もなく、頭の中の再現が実際に起こる。
ブチブチと衣服が破れる音がしたすぐ後、絶叫が響き渡る。
「――ああっあぁあああああっっ!!」
肩から外れた腕が、ゴトリと硬い音を立てて地面に落ちる。外れたのは左腕だった。
「ごめんなさぁい、間違えちゃったぁ。でも、私も両方無いし、もう一本いいわよねぇ?」
水銀燈は意味の無い断りを入れて悦に入る。それに対して、真紅は激痛と恐怖で泣き叫ぶ。
「う、腕がっ……!! ジュン! ジュンっ!!」
必死になって助けを呼ぶ真紅。あの時は、片腕になってすぐ、ジュンが助けに来てくれた。
だが、今はそれもありえない。もう彼はこの世に存在しないのだ。
それでも、精神的にも肉体的にも追い詰められた真紅は、マスターの名を叫び続ける。
それが無駄な行為だと判っている水銀燈だが、以前の苦い思い出に顔を顰める。初めて味わった敗北は、忘れられなかった。
水銀燈は喚く真紅を地に降ろし、目の前まで歩み出る。
「ねえねえ、顔だけじゃなく頭までおかしくなっちゃたのぉ? あの人間は死んだのよ」
報復と言わんばかりにありったけの嫌味を詰め込んで、真紅に厳しい現実を教えてあげる。
「い〜い? 死・ん・だ・の」
仕舞いには、一字置きに間を取って、もう一度言い聞かせる。
酷い言葉を受けた真紅は、急に黙って静かになった。
「ジュンは、死んだ……?」
「そうよぉ。もう忘れちゃったの? あの坊やが本当にかわいそぉ」
71 :
薔薇乙女戦争:2006/05/15(月) 21:06:42 ID:ZrtYzSKm
真紅の脳裏に倒れているジュンの映像が鮮明に映し出される。彼の下に広がる血痕まではっきりと思い出せた。
最初にその光景と出くわした時、彼女は怒りで我を失った。
しかし、今は違った。身の危険に晒されている彼女は、怒りに染まることはなかった。
ジュンの死を正面から受け入れられた真紅は、情けなくて叫びたい衝動に駆られる。
マスターを守れなかった。その上、もう二度と見せないと誓った弱い自分を曝け出してしまった。
悔恨の念が尽きない真紅だったが、今は悔やんでいる場合ではない。
守ると言ってくれた彼のためにも、こんな形では負けられない。
真紅の右腕に力が篭る。
「水銀燈、お遊びはここまでよ」
「え……!?」
鎖となっていた羽が、ひらひらと舞い散る。真紅が自力で手足の拘束から逃れたのだ。
様子が一変した真紅に驚き、水銀燈は風に舞う羽を見たまま棒立ちしてしまう。
目の前の真紅はすでに手足を自由に動かせる。水銀燈は判断を誤った。
真紅はそれを見逃さなかった。残った右腕を一気に振り抜く。
ミスに気付いた水銀燈は、慌てて後方に跳んで離れようとする。
だが、出遅れは決定的だった。
ローザミスティカを握り締めた拳が顔面の中央を強打する。
大きく吹き飛んだ水銀燈は、雪の上を何度も転がり滑って止まった。
「ぐく……っ!」
水銀燈は追撃を嫌ってすぐに立ち上がろうとする。肘までしかない右腕だけで懸命に体を起こす。
その間に、真紅は手の中のローザミスティカを己の力へと変える。もう、彼女に迷いは無かった。
四つの宝石が真紅の胸に吸い込まれ、体内で爆発的なエネルギーが生み出される。有り余る力が、真紅の全身から赤い炎の光を放つ。
その様を、水銀燈は尻餅をついたまま眺めていた。
圧倒的すぎる。力の差は歴然だ。勝てる訳が無い。
一気に、彼女の思考は後ろ向きへと加速する。
真紅から溢れ出る力を肌で感じ取った水銀燈は、どうやっても勝てそうに無いのを思い知る。賢い彼女は、それが正しい答えだと解ってしまう。
水銀燈にとっては大誤算だった。ローザミスティカの数が、ここまで決定的な差になるとは思っていなかった。そう思っていたからこそ、彼女は最後まで隠れていたのだ。
真紅が精神的に復活する前なら、まだ勝ち目はあっただろう。最初に外れたのが真紅の右腕だったら、立場は逆転していただろう。
運命は、真紅に味方していた。
72 :
薔薇乙女戦争:2006/05/15(月) 21:08:19 ID:ZrtYzSKm
六つのローザミスティカを手中に収め、現時点で最もアリスに近い存在となった真紅。
その桁違いの力を前に、水銀燈は腰が抜けたように動けないでいた。動くにしても、逃げる以外の作戦が思い浮かばない。しかし、真紅が見逃してくれるとは思えない。遊びで済ませるには遅すぎた。
打開策を模索する間にも真紅は待ってはくれない。今もへたりこむ水銀燈は、間近に迫ってきた真紅を見上げる羽目になっていた。
凛とした青い瞳が、揺れる赤い瞳を射抜く。その青い瞳に、もう迷いは見えない。水銀燈は死を覚悟した。
しかし、真紅が出た行動は最初と変わらなかった。
「これが最後よ、水銀燈。もうアリスゲームはしないと約束して。貴女もこのまま消えたくはないでしょ」
どこまでもお人好しな――いや、頑固な真紅だった。
アリスまであと一歩の所まで来て、未だにアリスゲームを拒むというのだ。これには水銀燈も開いた口が塞がらなかった。そして、その甘さを胸の内で嘲笑った。
真紅の「これが最後」という言葉は嘘ではないだろう。提案を拒めば、この場で水銀燈を始末するつもりだ。生き延びたかったら、嘘でも彼女に従うのが常道だ。
これに、水銀燈は不敵な笑みを浮かべて答えた。
「いいわよぉ。だから、起こしてくれなぁい? 両手が使えなくて大変なのぉ」
いやにあっさりと承諾したことを不審に思わない真紅ではない。それでも、相手を信じないことには約束は成立しない。真紅は水銀燈の隣で膝を折って肩を貸そうとした。
その時、耳元で水銀燈が囁いた。
「本当におバカさぁん」
73 :
薔薇乙女戦争:2006/05/15(月) 21:09:39 ID:ZrtYzSKm
黒い翼が別の生き物のように伸び、瞬く間に二人をすっぽり包み込む。真紅はまんまと騙されたのだ。
そして、あろう事か、水銀燈は自身も包む翼に火を放つ。羽が青い炎で勢いよく燃え上がる。
翼の中で抱き合った状態のまま、水銀燈は囁き続ける。
「一緒に灰になってくれるわよね? だって、姉妹ですもの」
それは、道連れを宣言するものだった。勝つのは無理だと悟った水銀燈は、勝者の生まれない戦いを選んだ。真紅にだけは死んでも勝ちを譲れない。彼女の意地でもあった。
青い炎は勢いを増し、ドレスへと火の手を伸ばす。だが、真紅の顔に焦りは見えなかった。なぜなら、彼女の大きな力の前に、火の手が届かなかったのだ。着実に炎に追い詰められていたのは、水銀燈だけだった。
真紅は悲哀の表情さえ浮かべて、残った右腕で水銀燈を抱き寄せた。
「ごめんなさい、一緒には逝けないの。だから、さようなら……」
服が焼け、水銀燈は裸同然の姿で抱き締められていた。
この散々な結末になっては、彼女も認めるしかない。真紅に敗北したのだ。それも、とても惨めな形で。
燃え盛る炎は、彼女の表皮を墨色へと変えていく。もう、焼け死ぬのも時間の問題だった。水銀燈は最後の憎まれ口を叩く。
「あなたは最低の妹だったわ。このままアリスになれるなんて思わないことね」
「貴女は最低の姉だったわ。でも、嫌いではなかったのだわ」
「ふふ、私は嫌いよ」
ふっと笑った水銀燈の全身から力が抜ける。その笑みは、何を意味しているのか。思いのほか安らかな寝顔の彼女は、真紅の腕の中で粉々の灰になった。
74 :
薔薇乙女戦争:2006/05/15(月) 21:11:57 ID:ZrtYzSKm
真紅はアリスゲームを勝ち残った。
全てのローザミスティカを集め、アリスに生まれ変わる権利を獲得した。
しかし、彼女はすぐにアリスになろうとは思わなかった。アリスになる前に、逢いたい人がいたからだ。その人とは、真紅のままの姿で逢いたかった。
硬い雪を踏みしめて歩く真紅の目に、大切な人の姿が入る。
それは、遠くで倒れているジュンの亡骸だった。
やはり、彼は倒れたまま動かない。
馬鹿げているかもしれないが、彼女はほんのわずかでも期待を抱いていた。
もしかしたら夢だったのかもしれない、と思っても無理は無い。現実があまりに酷い悪夢のようなのだから……。
真紅はどうしようもならない現実を目の当たりにし、ここで初めて涙を流す。
際限無く溢れる涙と共に、どこか冷めていた感情が熱を帯び始めた。
真紅はジュンの元へと駆け出した。
間近でジュンを見た真紅は、一目で彼の死を理解した。
背中にある深い刺し傷。おびただしい量の出血。白い顔。全ての事実が死亡を物語っている。
「貴女は幸せそうね……」
抱き合うように倒れていた金糸雀を見つけ、こんな状況でも真紅は羨ましく思えた。
できるなら、ジュンと一緒に最期を迎えたかった。こんなことを彼に言ったら怒られるだろうか……。
ふと、そんなことを考えてしまった彼女は、それが叶わない願いだと気付いて余計に悲しくなった。
真紅は右腕一本で苦労しながら、覆い被さるジュンを仰向けにし、二人を並べて寝かす。金糸雀の衣服には血がべったりと付き、紅に染まっていた。
それを見て、真紅は再び金糸雀と自分を取り替えてしまいたくなった。真っ赤な服が自分と重なる。
「馬鹿ね、私……。こんなのが幸せなわけないわよね」
真紅は自嘲し、金糸雀の寝顔を見る。
そう言いながらも、その安らかな寝顔が幸せそうにしか見えなかった。
75 :
薔薇乙女戦争:2006/05/15(月) 21:13:06 ID:ZrtYzSKm
ジュンのきれいな死に顔を見つめたまま、真紅はかかしのように突っ立っていた。彼の死は理解している。それでも、別れが惜しくて離れられなかった。
そのまま、映画を二本は見終えることができる程の時間が経過した頃、彼女を見かねてこのフィールドに新たな客が入り込む。
「まずはおめでとうと言っておきましょう。あなたがアリスゲームの勝者です。第五のドール」
ジュンの遺体を挟んで、真紅の前に突然現れたのは、ラプラスの魔だった。ウサギ顔のつぶらな瞳がぱちくりと瞬きする。
祝いの言葉を貰った真紅だが、彼女の顔は怒りで歪んでいた。
彼女が怒るのも当然だ。アリスゲームの開始を決定付けたのは、このウサギの発言だったのだ。真紅をミーディアム殺しの犯人だと言い出したのはラプラスの魔なのだ。
真紅はラプラスの魔を探していたのだが、アリスゲームでそれどころではなかった。それが、今になってひょっこりと現れたのだ。真紅のはらわたは煮えくり返っていた。
「どうして嘘を吐いたの! 貴方が犯人なのでしょッ!!」
珍しく真紅が感情に任せて怒鳴り散らす。
彼女は無実だった。ラプラスの魔は薔薇乙女達に嘘を吹き込んだのだ。
ウサギがどう返答するのか見ものだ。真紅は睨んで凄みを利かせる。だが、ラプラスの魔の態度に変化はない。普段どおり、人を馬鹿にしていると思えるほど落ち着いている。
「虚偽は私の美徳に反します。ですから、あれは私も本意ではなかったのです」
ラプラスの魔は偽証を認め、犯行を否定しなかった。これは、真紅の言葉の全面肯定に等しい。
「貴方がやったのね」
真紅が追求すると、ラプラスの魔は悪びれもせずに訳を話した。
「あの方のご意向には背けません。あしからず」
「あの方?」
「はい、あの方です。あなたのお父様ですよ」
76 :
薔薇乙女戦争:2006/05/15(月) 21:14:39 ID:ZrtYzSKm
真実を知った真紅は、足場が崩れ落ちるような感覚に襲われた。
あのお方の意向。あのお方はお父様。お父様がラプラスの魔に指示を出した。
これらの情報が導き出す答えは一つしかない。それは、薔薇乙女の真紅が信じられるようなものではなかった。
「嘘はよしなさいと言ったはずよ。お父様がそんなこと……」
「嘘は好まないと私も申したはずですが」
ラプラスの魔が嘘を吐いているようには見えない。
真紅は混乱して取り乱してもおかしくない状態だった。何が真実で何が嘘なのか分からない。
アリスゲームが終わり、ジュンを亡くした今、彼女が身を寄せたいと思える相手はお父様だけだ。そのお父様が、真紅をここまで追い込んだ本人だとしたら?
全てを知った真紅は本当の孤独に襲われかけていた。
寒くて震えそうな心が、温もりを求める。自然と真紅の瞳は、静かに眠るジュンの顔へと向けられる。
逢えないお父様のことはわからない。
でも、私には絶対に信じられる人がいる。全てをなげうって守ってくれた人がいる。
真紅はわずかな希望に賭けてみる決心をした。
77 :
薔薇乙女戦争:2006/05/15(月) 21:16:15 ID:ZrtYzSKm
「さあ、あの方はアリスの誕生をお望みです。今こそ、ローザミスティカを一つに!」
ラプラスの魔が両腕を大きく広げて高らかにアリスの誕生を促す。
真紅はその声を合図に、右手を胸元に押し当てて瞼を閉じた。掌の中には、水銀燈が残した最後のローザミスティカが。その輝きは、胸の中へと消えていった。
全身が神々しい光を放ち、アリスの誕生を予感させる。ついに、全てのローザミスティカが揃ったのだ。
身体が焼けるように熱い。大きな変化が始まろうとしていた。真紅がおもむろに瞼を上げる。
「ラプラスの魔、お願いがあるの」
「なんでしょう」
「もし、貴方がお父様と会うことがあったらこう伝えて。わがままな娘でごめんなさい、と」
「なぜ、そのようなお願いをするのでしょうか……?」
ラプラスの魔は依頼の意味が解らなくて首を傾げる。アリスとなった彼女なら、ローゼンと対面できないはずがない。彼女は父親と会いたくないのか。
「私はお父様と会えないからよ」
「おっしゃっていることが分かりません。あなたはアリスになられるのですよ」
「私はアリスにはなれない。こうするから――」
真紅の胸に置いてあった手が、ドレスを突き破ってズブズブと沈んでいく。まるで、手と胸が同化していくようだった。
ラプラスの魔は、その一部始終を興味津々と眺めていた。彼には何を考えているのか分からないところがある。
「なにをするつもりですか?」
「私の命をジュンに与えるの」
「お父様が悲しまれますよ」
「今は……このローザミスティカをジュンのために使いたいの」
「はたして、うまくいくでしょうか」
「わからないわ。でも、私はジュンに生きて欲しいの」
淡々と問答を済ませたラプラスの魔は、真紅の意志の固さを知ってやれやれと首を振る。止める気はないようだ。
真紅が胸に刺した腕を引き抜く。その手には、一つの宝石となったローザミスティカが。その輝きは、どんな至宝でも到底及ばないと思わせるものだった。それほどまでに、薔薇乙女達の命は美しかった。
ローザミスティカが手を離れ、ジュンの心臓へと吸い込まれる。
それを見届けた真紅は、よろよろと覚束ない足取りで彼の元へと向かう。
そして、力尽きた彼女はジュンの胸へと倒れこんだ。
「お願い、ジュン。私の居場所になって――」
真紅はささやかな願いを口にして永い眠りに就いた。彼の胸の中で生き続けることを夢見て……。
78 :
薔薇乙女戦争:2006/05/15(月) 21:17:15 ID:ZrtYzSKm
街路樹の木漏れ日がそよ風に揺れる。人がまばらな通りを、その少女は歩いていた。
白のサマードレスに白の帽子。そして、白の靴。純白で統一された少女の姿は、人の目には眩しかった。単に太陽の光で眩しいだけなのだが、少女を見た人は誰もがそうとは思わなかった。
彼女を見た人は、男女を問わず全員が一目で釘付けになる。別に、少女の容姿が特別に美しい訳ではない。確かにきれいだが、彼女より美しい女性なら、それほど珍しくもないだろう。
それでも、誰もが彼女を美しいと思えてならなかった。常識では測れない特別な何かが、その少女にはあった。
少女が艶のある黒髪を風になびかせて歩く。すれ違う歩行者は足を止め、時を忘れたようにその後姿を眺める。決して、話しかけようとする者はなかった。完璧なまでに美しいと思えたものを、汚してしまいそうだから。
そんな中、白の少女を見つけて追いかける者が一人いた。セーラー服の少女が手を振って駆け寄る。
「桜田君っ」
白の少女が振り向いた。
おわり
79 :
薔薇乙女戦争:2006/05/15(月) 21:18:18 ID:ZrtYzSKm
終わったぁ〜。長かったぁ〜。
気が重くなるようなお話に付き合っていただいてありがとうございます。
ちょっとダークな感じにするのは、初めから決めていたんですよ。
だから、ミーディアムがことごとく碌な目に遭わないこの終わり方もありかなと。
この先のジュンが心配です(無責任なw)
ともかく、最後まで書けて一安心です。
ありがとうございました。
80 :
ケットシー:2006/05/15(月) 21:19:46 ID:ZrtYzSKm
肝心な最後に名前変えるの忘れてた。
ダメだなぁ俺orz
GJ!
真紅ぅー!(つд;)
自分を殺してジュンを生かすとは……
>>80 大作完成お疲れ様です
しかし、
・・・えとJUMの戸籍とかどうしたんだと世俗的なことを考えて俺は下賎な人間ですw
83 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/15(月) 22:04:31 ID:HDJTfrew
ここって、ジュンがもし○○(状態)でもおk?
84 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/15(月) 22:30:18 ID:HDJTfrew
質問、真紅の性格が違ってもOK?
大作GJでした。
…きっと白い少女は、全てのドール達の心を胸に秘めているんだろうなぁ…
真紅の絆や翠星石の献身、金糸雀の思いや薔薇水晶の盲目な愛、水銀燈のやるせない哀しみ…
それがひとつに共鳴し合って、思い出のリフレインを少女の心に奏でるような。
そんな気がした。
GJ!
いや、いやGJなんだけど・・・
なんだけど・・・・翠ぃ〜(っД`)・゜。
乙でした。
ただ、このあとローゼンはどこに行くのかちょっと気になりますが…
まあ、それは話にあまり関わりの無いこと
これもアリスゲームのひとつの形ということ、でしょうね
つまんね
前スレもめでたく順調に使い切り、DAT落ちも近い。
ログはローゼンの過去ログ倉庫で読めるみたいだが
長い作品はスレではさっと読み、保管庫収録後にじっくり読むので
前スレ作品の保管庫収録が待ち遠しい。
非エロ系の所は色々大変で止まってるみたいだけど
更新停止が長引くようなら、俺が頑張ってみるか
個別板のほうのもきっちり使えよ
こっちじゃ下手でも叩かれないから別に良いけどさ
銀様が不幸過ぎる
うわーーーーーーーーーーーー
94 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/16(火) 21:34:27 ID:ps+j3mAt
せつねぇ…せつねぇよコレ…
ローゼンシネ
銀様が〜〜〜
俺もSSが書きたくなったが、3点リーダの使い方で少々迷ってしまう。
3点を2連で使うのが正しいとも聞くし、どうでもいいとも聞く。
ケットシー氏や
>>81、
>>92のように、3点半角をスペース入れて2連ってのが
一番すっきりして見えるんだろうか・・・ ・・・
>>97 スペース入れてるんじゃない。
さんてん で変換してみろ。
…の多様は下手糞の証拠
ローゼンは原作自体が非常に三点リーダの多い漫画なので、(殆ど全てに近いページで使われている)
二次創作の方向性としては正しいんジャマイカ?
>>99 貴方はとてつもなく軽率な発言をした
私も書きたくなってきた・・・
前のスレで質の悪いSS投下しちゃったからね
名誉挽回だ!まってろよ
>>100 …ならどの漫画でも結構頻繁に使ってるよ
>>97 三点リーダは「……」が一般的だと言われているだけ。正しいとかではないよ。
商業出版を目指すとかならともかく、楽しんで書くSSなら自由な使い方でいいでしょ。
漫画やゲームだと「…」一個だったり、「…………」何個も繋げたりするのも当たり前になってるから。
ただ、間を表現するのに三点リーダに頼りすぎると、文が雑に見えるのは確か。
漫画やゲームは絵や音楽で表現を補えるけど、小説では無理だから。
個人的に気になってしまうのは「…」と「・・・」が混在している文。
なんか気持ち悪い。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
やあ薔薇水晶
たかがSSごときで…論争してんじゃないのだわ!
保守
109 :
妄想のままに:2006/05/20(土) 19:12:54 ID:unQY2s4E
タイトル「5月の結婚記念日」
110 :
妄想のままに:2006/05/20(土) 19:14:30 ID:unQY2s4E
「ふわぁ〜」
いつもと変わらない桜田家、そんな家からは眠りを誘うあくびが一つ
昼間の沢山遊んだせいで、ドール達の目はうとうと
時刻はすっかり夜の9時を指していて、もういつもの眠る時間である。
「おやすみなの〜」
「おやすみなさい」
「なさいですぅ〜」
「あぁ、おやすみ」
ドール達が順々に眠りの挨拶を済ませると、真紅と雛苺は鞄を閉じて、深い眠りに付いた
ジュンはと言えば机に体を向けたまま教科書と睨めっこ
そんな彼の背中を、鞄の中から眺めながら
「こんな夜中にまで実らない勉学なんて、よくやるですねぇ」
「う、うるさいな、お前には関係ないだろ」
別に本心なんかではないのだけれど、このちび人間と一緒にいる時は
何か小言を言わないと落ち着かない
「いいから、お前も早く寝ろよ」
「言われなくても寝るですー」
いつもの言い合いを済ませた後、彼女も鞄を閉めた
鞄の中で、翠星石は今日在った出来事を思い返していた
雛苺や蒼星石、幼馴染のドール達と一緒に過ごした思い出、夕飯に食べた花丸ハンバーグの美味しさ
そして、一際ジュンとの思い出が脳裏に強く思い浮かんだ
自然と顔が赤くなる、誰に恥じるわけでもないのに、鞄の中で両手で顔を隠す
彼を思い返す度、私の胸の中が熱くなる
妄想に耽る翠星石だが睡魔は徐々に彼女を覆い、上瞼も次第に重くなっていく
揺らいでいく意識の中で、彼女の心が囁く
ずっと、ジュンと一緒に居れたらいいのに・・・
無意識の内に声に呟いたが、次にはもう寝息しか聞こえてこない
胸いっぱいのまま、彼女も眠りに付いた。
111 :
妄想のままに:2006/05/20(土) 19:16:32 ID:unQY2s4E
次に目を開けた翠星石は、辺りの光景に唖然とした
今まで鞄の中に居たはずなのに、見渡せば四角い大きな広間が広がっている
上を見上げると天井は三角に高く伸び、天井と天井とが先端で重なり合っている
左右の壁には様々な色ガラスが散りばめられた大きな縦長の窓が片方に、二枚ずつ貼られていて
目の前には赤い布が、一直線に敷かれている、その先には両開きの扉
赤い布は、扉の先まで伸びている
敷かれた布の両向かいには木で作られた椅子が左右に5、6席、横一列に並べられていて
その椅子が後ろに等間隔で並んでいる
左右のガラス窓からは柔らかな太陽の光が差込み、広間の中を光で包み込む
光は色ガラスを介し、七色の光が彼女を照らす
そんな光を浴びながら、翠星石は呆然としていた
突然の事で、何がどうなっているのか訳が解らない
なんですかここは、なんで鞄の中からこんな所にいるんですか?
突如の世界の変わり様に、辺りをキョロキョロしながら困惑していると
「おやおや、どうしたのですか?」
聞き覚えのある声、横から問い掛けられ、弾かれた様に振り向いく
そこには木で出来た机を境に、一寸高い台の上に男が一人立っている。白い毛並み、赤い目に鼻をヒクヒクとさせ、長い耳を立てた
「ラプラスの魔!さてはお前の仕業ですか!」
「はてさて、何を仰っているので?」
表情一つ変えず、首を傾げるだけのラプラスの魔に
熱い気持ちが次第に沸いてくる
「とぼけるなですっ!この悪戯の」
「悪戯?お嬢さん、こんな晴れ舞台でそんなに興奮しちゃいけませんよ、お気を沈めて」
興奮冷め止まぬ中、兎の言葉に今度は翠星石が傾げる
「・・・晴れ舞台?」
「はい、せっかくのドレスも乱れてしまいます」
淡々と答えるラプラスの魔に、釣られて着ている衣装に目線を落とす
それにまた唖然とした
「な、なんですかこれは・・・」
着ている衣類は白で統一され、さっきまでの着慣れたドレスはどこへやら
レースの生地で作られたドレスを纏っている
見知らぬ場所に、今度は着換えた覚えのないドレス
もう何が正しいのか解らない
「あぁ〜、もう訳わかんないです〜」
両手で頭を抱え、混乱を全身でアピールする翠星石に
「おやおや、」すまし顔でラプラスの魔が眺めている
112 :
妄想のままに:2006/05/20(土) 19:20:08 ID:unQY2s4E
収集の付かない状況に、今度は後ろの方からも声が跳んできた
「おめでとーなのー」
「おめでとーかしらー」
突然の歓声、振り返ると椅子にはいつの間にか巴やのり、蒼星石達が座っていて
なぜかみんなして笑顔で見詰めている
「ちょ、ちょっとー、なんなんですかー?」
「おめでとう」
「幸せになってねぇ」
「姉さん、おめでとう」
「だ、だからなんなんですかー・・」
突然浴びせられる祝福の声に、ますます頭が混乱していく
パチパチパチパチ!
とどめとばかりに、客席からは拍手が鳴り響いた
もう目まで回ってくる
足もおぼつか無い、あぁ、もうダメ、倒れるです・・・
そう心の中で妥協を決意すると
ふっと力が抜け、頭の圧迫感が消えると同時に意識が遠退いていく
体が落ち葉の様に揺れる、ドレスもそれに合わせてレースのスカートをなびかせながら
ついにバランスを崩し、棒立ちのまま足元の赤い布の地面に背中から倒れこんだ。
ボフッ、
下に落ちて背中に衝撃が走る、が、不思議と痛くない
朦朧とする意識の中でゆっくりと瞼を開けると、体は地面に落ちる寸前に抱きかかえられていて
顔のすぐ目の前にはなぜかジュンが・・・
「ハニー、大丈夫かい?」
「ハ、ハハ・・・ハニー!?」
113 :
妄想のままに:2006/05/20(土) 19:23:02 ID:unQY2s4E
「おい、あまり僕のフィアンセを苛めないでくれ」
ジュンは見ていた兎に振り向き、忠告を告げる
よく見ると、ジュンも服が少し違う、いつかの学校と言う所の制服を着込んでいた
「はぁ、その様なつもりはなかったのですが」
ジュンの忠告に対し、ラプラスの魔は私達に体を向け、謝罪の会釈を一つ
それを見届けたあと、または私に顔を振り向いた
もう顔と顔とがくっ付いてしまうのではと思うくらいの距離
同時に胸が一回大きく高鳴る
「大丈夫かい、痛い所は?」
「へ、平気ですよ」
お姫様だっこのまま、覚束ない口調で告げると
その言葉に彼の表情が安堵の笑顔に変わり、次に別人の様な甘い言葉を綴り出してきた
「そうか、良かった。もし君が痛みで悲しい想いをしたら、僕はどうしようかと」
「え、えーと」
「こんな小さな体で、そんなに頑張らなくてもいいんだよ?時間は沢山あるんだから、二人でゆっくり、頑張ろう・・ハニー」
そう言ったかと思うと、突然翠星石を抱えていた左腕が反対側に回り込り、その腕が背筋まで伸びてくる
背中でジュンの腕と腕とが交差し、お互いの体を抱き合わせてきた
頬と頬とが密着し合い、突然の事に瞬時に恥ずかしさがマックスを越える
「い、いきなりぃ!なんですかぁー!?」
「ハニー・・・」
お構いなしに耳元でその呼び名を囁かれ、ますます顔が赤くなる
「だぁー、だからぁ!ハニーってぇー!」
いきなり始まったラブラブ(一方的)な展開に、客席の観客達は
「大胆なのー」
「ジュン君ったら・・」
小恥ずかしそうに、けれども微笑ましくその光景を眺めている
そ、そんなのいきなり、色々と困るです!とりあえず離れるですー!
くっ付いてるジュンは、引っ張っても取れる気配がない
代わりにこの状況を何とか打開すべく、抱き付かれながらも部屋中を必死に見回す
武器は、―――なさそうだ。
114 :
妄想のままに:2006/05/20(土) 19:25:32 ID:unQY2s4E
あ、蒼星石!助けてですー!このおかしくなったチビ人間をぉ〜〜
・
・・
・・・フリフリ
ちぃー、違うですぅー!なんで笑顔で手なんか振ってやがるですか!そうじゃないですー!
このままじゃあーなってこーなって!あぁ、何想像してるですか翠星石はぁー!
されるがままのパニック状態は続き
そんな中、このピンチを救ってくれたのは意外にも兎だった
「困りますねお二方、誓いの儀は私を通していただかないと」
兎が忠告を促すと、我に返ったのかジュンの絡み付く腕がわずかに緩む
それを逃すまいと翠星石が緩んだ腕を振り解き、勢い良く後ろに蹴り跳んだ
ドレスが宙を舞い、レースのスカートが風で膨れ上がる
そのまま腕を左右に伸ばしてポーズを取り綺麗に着地。心の中で、初めてラプラスの魔に感謝を告げる
「ゆっくり過ごそうと言ったのは僕なのに、先に急がせてしまったね」
「きぃぃーー!」
態度を変えないジュンに、翠星石の気持ちが高ぶる
次に溜まりに溜まったイライラを、目の前の変態ミーディアムに言い放った
「や、やぁいチビ人間!いきなり抱きつくなですこの変態!
変な台詞をごたごたと言いやがりやがってぇ、です!
あ、あぁーと、さっきそこの兎にさりげなくフィアンセなんてぇ、ひゃ、100万年早いです!おととい来やがれですーぅ!」
指をビシッと突き刺し、この変な世界のうやむや感もまとめて言ってやった
ざまーみやがれですぅ、こぉーれでこのチビ人間も
何て勝ち誇ろうとしたが
事態は全く解決しなかった
「あぁ、いきなり抱きついて悪かった
けど、この愛は本当だ!お前は僕が幸せにする!
100万年か、じゃあその100万年、ずっと傍に居てくれるんだね?
僕はその君との時間の中で、フィアンセに相応しいミーディアムに、人間になるよ
これから二人で、100万年間、ずっと一緒に居ようねハニー」
愛たっぷりの返事が返ってきた
ひゃ、100万年って、そう言う意味じゃ・・・
呆然としたまま、突き刺した指も垂れ下がってしまった
115 :
妄想のままに:2006/05/20(土) 19:28:16 ID:unQY2s4E
「大胆なのー」
「桜田君・・・」
場が静まった(?)所で
「コホン」ラプラスの魔がわざとらしく咳を一つ、周りの注目を煽る
辺りがしんと静まり、目の前のジュンも急に神妙な顔付きになる
場の状況に、翠星石も慌てて上げた腕を後ろに回した
「ではこれより、ローゼンメイデン第3ドール翠星石、桜田ジュンとの誓いの儀を執り行います」
広間全体に響き渡る様、高らかに儀の始まりを告げる
誓い?の儀?・・・なんです?
頭の中で考えを巡らす中、その答えはすぐに、嫌でも知る事となった
ラプラスの魔はジュンに首を傾け、一言一言間を置いて問い始めた
「なんじ桜田ジュンは、翠星石を妻とし
病める時も、健やかなる時も、共に支え合い、変わらぬ愛を誓いますか?」
兎の頭上には、金属の黄色く大きな十字架が掲げられている
こ、これって・・・
問い掛けられ、躊躇なくジュンが答える
「誓います!」
えぇー!
でもこれって、つまり・・結こ
考えが導き出される寸前、今度は私の方に問い掛けてきた
「なんじローゼンメイデン、第3ドール翠星石は
病める時も、健やかなる時も、共に」
「ちょ、ちょーっと待つですぅ!」
慌てて兎の口を制止させる
「す、翠星石はぁ・・その・・・」
「変わらぬ愛を、誓いますか?」
制止を無視し、ほんの少し間を置いてから続きを朗読し、問い掛けた
今彼女は、生まれてから一番に混乱している
えと、えーと、
翠星石とジュンはドールのミーディアムです!でも、別に嫌いってわけじゃ、ないですけど!
でも、えーといきなり色々言われても!でも、でもジュンがそこまで言うなやら・・・
でも、色々、えーと・・・・
周りの注目が、一斉に白ドレスのドールに注がれる
広間が静まってから数分、翠星石がついに決断を告げようと、口を開けたその時
「す、翠星石は、ジュンを・・・」
「ちょーっと待つのだわっ!」
116 :
妄想のままに:2006/05/20(土) 19:31:06 ID:unQY2s4E
バターン!突然の衝撃音、聞き慣れた声、足元の赤い布を目で辿った先の両開きの扉が勢い良く開き
そこから差し込んだ光が、突如現れた黄色い髪の少女を眩しく照らしつける
「わ、し、真紅ー!?」
「はぁはぁ・・・翠星石!ジュンは渡さないわ!」
差し込んだ光が弱まり、真紅も同じ白のドレスを着込んでいる
走ってでも来たのだろうか、やや息を切らしている
「真紅!」
「えぇー・・・」
先ほどまでのジュンが、突然迷いだし表情を曇らせる
目の前のミーディアムの一変した態度に、翠星石も呆気に取られる
そこでラプラスの魔が動き出した
「今は誓いの儀の最中、例えお知り合いのドールであろうとも
その儀に割って入る事は神もお許しにはなりません、しばしのご退席を願いましょう!おのおの方!」
さっと兎が手を扉に差し向ける
すると、それまで椅子に座っていた蒼星石や巴達が一斉に席を立ち始めた
参列客らが、駆け足で間の赤い布に序列の陣形を組んで行く
突然の事態に真紅がわずかにたじろぎ
目の前の陣形が組み上がり、足踏みも止まる
「3、2、1・・・ファイア!」
指し示すラプラスの魔が一声を上げると
それを合図に、一斉に参列客らが人の波と化し、一直線に真紅にぶち当たった
「「「わ〜〜!!!」」」
「ジュン!ジューン!」
人波にもみくちゃになりながら、それでも懸命に振り抜けようとする
だが次第にドレスは埋もれ、真紅は人の塊に沈んで行く
あぁ、真紅、す、すまないですぅ・・・
「さぁ、今のうちに、誓いの口付けを」
ラプラスの魔が首を傾け、翠星石にそれを促す
えぇー!?、あの、えと
「ハニー、二人で幸せになろう」
ジュンが両手を広げ、腰を屈めて待っている
え、えーと!真紅!のり!それからぁ・・・、色々とすまんです!
よく解らない事だらけですけど、翠星石は今から一人の女になるです!
誰も恨むんじゃねーですよーー!
意を決して、ジュンに跳び付き口と口とを重ね合わせ、た
117 :
妄想のままに:2006/05/20(土) 19:35:51 ID:unQY2s4E
鞄の上板に顔面から突っ込み、ドスンと音を発てて拍子に鞄が打ち開いた
真っ赤になった顔を両手で覆い懸命に痛みに耐える
「く、うぅ〜〜、ゆ、夢?」
「ん、おい、大丈夫か?」
見渡せばすぐ横にパソコン、申し訳ない程度の棚、いつもの狭い部屋である
「はぁ・・・元に戻ったです」
痛みもやっと引き、ベッドから持たれて自分を窺っているジュンがいる
寝ていたジュンは突然の衝撃音に起こされて、中からはもがく翠星石が出てきたものだから
事態がわからず、とりあえず訊いてみる
「おい、どうしたんだ?」
「・・・・」
返事が返ってこない、どこか悪いのか
すこし心配に
「おい、どうしたん」
「・・・チビ」
いきなり嫌味の一声が跳んでくる、この分だと大丈夫そうだ
「なんだよ、人がせっかく気遣ってやってるってのに
こんな夜中にいきなり起こされて、それでチビってどう言う事だよ!おい、聞いてるのか性悪人形」
「・・・・」
また黙ってしまった
今度はぼーっと翠星石が目を見詰めている。嫌味が返って来ないのでわずかにたじろぐ
何か企んでるのか?
「な、なんだよ」
「やっぱり、そっちの方がいいです」
「え?」
「おやすみです」
バタン
小言の一つも言わずに、また鞄を閉じてしまった
「・・・なんだあいつ」
鞄の中で、翠星石は寝ずにいた
外は夜明けを告げる太陽が顔を出し、ジュンの部屋の窓を通して
鞄の隙間からは淡い光が差し込んでくる
いつもの起きる時間には、まだ少し早い
瞼を閉じ、差し込む暖かな光の中で
少女はあと少しだけ、眠る事にした。
>>117 GJ!!
花嫁(婿だけど)略奪は絶対くると思ったけど、失敗する真紅に笑ってしまったw
まさに辛苦
120 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/21(日) 21:12:53 ID:CNfXxM80
なかなか、おもしろい。次もガンガッテクレ。
「ジュン、紅茶を淹れてきて頂戴。」
「ったく……なんでいつもいつも僕が……。 たまには自分で淹れてこいよ。」
「まぁ、口答えね。 えい。 絆パーンチ。」
ぺちり。 ジュンのほっぺに真紅の手が触れる。
悪戯っぽく笑う真紅。 苦笑を返すも、満更でもなさそうに立ち上がるジュン。
……。
面白くないです。 まったくもって面白くないです。
最近、ジュンは真紅に構ってばかり。 ツーと言えばカー。 山と言えば川。
何だか、二人の関係が出来上がっちゃってるような気さえします。
さらに癇に障るのがあの言葉。
きずな。
それは真紅とジュンの間にあって、私とジュンの間に無いもの。
ううん、きっと、私にもあるのかもしれないけれど。 真紅たちほど強くはないもの。
胸の内がモヤモヤする。 真紅の事は好き。 ジュンの事だって、嫌いじゃない。
なのにどうして、二人が仲良くしてるのを見ると、こんなにイヤな気持ちになるのだろう。
ジュンは。 真紅みたいな子が好きなのだろうか。
真紅は一見すると高慢ちきに見えるけれど、本当の所は誠実で、優しくて、おまけに女の子らしくて可愛い。
私はどうだろう。 ちっとも素直じゃなくて。 うるさくて。 おまけに意地悪だ。
これじゃあ、私に勝ち目なんて無いじゃない。
……勝ち目? ぶんぶんぶん。 何を考えているのか。 そういう話じゃないのに。
駄目。 この方向に考え続けては駄目。
ぺしん。 ほっぺたを引っぱたいて気合を入れる。
そうです! なんで私が悩まなくちゃいけないのですか。 ぜんぶあの唐変木が悪いのです。
ここらで一つ、翠星石の有り難味というものを、じっくり分からせてやるのです……!
「ふんふんふん〜♪ 一本でも日本刀〜♪ 二足でも三戦(サンチン)〜♪ 三蔵でもフォー師ですぅ〜♪」
かここここ。 ここは結菱家の台所。 軽やかなリズムに乗せて、泡立て器も歌う。
ふんわり白い生クリーム。 目にも柔らかなスポンジ。 徐々に形をなしていくそれは、専門店も顔負けの美しさ。
「なかなか出来が良さそうじゃないか、翠星石。 私もおこぼれに預からせて貰えるのかな?」
「心配しなくても、毒見はおじじの役目ですぅ! 変な所があったら、きっちりダメ出しして欲しいです!」
元気そうな笑顔に安堵する。 ケーキを作るから台所を貸してくれ。 窓を突き破って現れた小さな来客はそう言った。
唐突なのはいつもの事だが、今日はなんだか元気が無かった。
どうしたものかと思っていたが、瞳を覗き込んで分かった。 その悩み。 遠い昔に私も持っていた、その悩み。
車椅子の背にもたれて、昔日に思いを馳せる。 それは痛みを伴う記憶でもある。
だが、もう二度と目を背けるまい。 二葉も。 あの人も。 大切な私の一部なのだと。 憎ではなく、愛だったのだと。
蒼星石が教えてくれたのだから。
「うむ……品の良い味だ。 これなら桜田くんも唸らせる事ができるだろう。」
「べっ、別にジュンのために作ってるなんて、一言も言ってないですぅー! これは自分で食べるのです!」
下手な言い訳に、思わず笑ってしまう。 娘を持つ父親の心境とは、こういうものなのだろうか。
あの少年の事を思い出す。 蒼星石が倒れた事に憤激し、人の身でありながら黒いドールに立ち向かった少年。
ローゼンメイデンの背負った悲しき宿業。 あの時、彼なら、断ち切ってくれそうな気がしたものだった。
「で、なぜこうなるですか……。」
桜田家のリビング。 こっそりジュンだけ呼び出すはずだったのに。
「いやぁん、美味しそうな苺の生クリームケーキぃ。 翠星石ちゃんったら、いつの間にこんなにお料理が上手くなったのかしらぁ。」
「……ぅゅー……だぁー……」
「雛苺、そんなに物欲しそうな目で見ては駄目よ。 これは翠星石がジュンのために作ったものなのだわ。」
出来が良すぎたせいなのか。 こっそり運び込んだ甲斐もなく、雛苺のおやつセンサーをかいくぐる事が出来なかった。
こうなると、一人前しか作ってこなかったため、誰のためのケーキなのか、白状しない訳にはいかず。 全くもって晒し者だった。
そうこうしている内に、照れ臭そうにジュンがケーキを皿に移す。 運命の時が来たのだ。
「お〜っ。 見た目は凄いな。 味は知らないけど。」
ふんっ、そんな失礼なセリフを吐けるのも今の内ですからね。
ジュンのスプーンが口に運ばれていく。 何だかローザミスティカがバクバク言ってます。 どきどきどき……。
ぴたっ。 ジュンの動きが止まった。 ……? なんで食べないんですか?
「お前……まさかとは思うけど、このケーキに何か仕込んであるんじゃ……?」
うぐっ。 ううぅ、我ながら信用が無い……。 無言のまま、怒ったように睨み返す。
ジュンは視線を逸らしつつ、ケーキを口に運んだ。 まったく……。 もくもくもく。 ごくん。
彼が感想を言うだろうと待ち構えている間が、私には永遠のように感じられた。
「……ふーん。」
でも、ジュンは一言そう言ったきり、また黙々とケーキを食べ始めた。
な、なんですかそれは。 それで終わりですか? お前はもうちょっと気の利いた事が言えないのですか、このチビ人間!
「美味しかったよ」とか、「嬉しいよ」とか、「翠星石は凄いな」とか……。
かたん。 突然に。 ジュンはスプーンを置いて席を立ち上がった。
「美味かったよ。 ごっそさん。」
え? 机の上のケーキはまだ半分以上残っている。 え? ごちそうさま。 って。
「じゅ、ジュンくぅん。 まだ結構残ってるわよぅ〜? 雛ちゃんが食べちゃっても知らないわよぅ〜。」
「……うーん。 その、味は悪くなかったんだけどさ。 ちょっと僕には甘すぎるんだよな。 とても全部は食べられないよ。」
ぽとり。
いつもみたいに。 怒り出して、ジュンを引っぱたいて。 笑い話にしてしまえば良かったのに。
ぽとり。 ぽとりぽとりぽとり。 あれ。
「え?」
あれ。 あれ、あれ、あれ。 ちがう。 ちがうの。 そんなつもりじゃ、ない、のに。
「翠……っ……?」
私の瞳からは。 涙の粒が、一つ、また一つと、零れ出していた。
「あっ……。」
ジュンの瞳に後悔が浮かぶのが見える。 やめて。 そんなつもりじゃ無いの。
のりも、真紅も、雛苺も。 そんな目で見ないで。
こういう結果だって予想してた。 笑ったり、怒ったり、違う結末を選べるはずだった。
なのに。 今、私の頭は少しも回らなくて。 涙だけが頬を伝っている。
何ですか、この涙。 止まって。 やめて。 これじゃ、同情されたくて泣いてるみたい。
止まって。 止まれですってば。 どうして止まらないの。
ちっとも泣きたくなんて無いのに。 堪えようとすればするほど、一層涙が溢れてくる。
私は今、どれだけ嫌な女に見える事だろう。
私は今、どれだけ幼稚で情けなく見える事だろう。
私は今、どれだけみっともなくて、みじめで、いたたまれなく見える事だろう。
「翠せ……」
ジュンの声。 いや。 慰めの言葉を言おうとしている。 聞きたくない。 聞きたくない。
ジュンのせいじゃないのに。 私が、泣いたせいで。 いや。 嫌。 嫌! 私は逃げるように部屋を飛び出した。
人に見られたって構うものか。 私は当てもなく外を走っていた。
自分で自分が嫌になる。 どんなに奇麗事を並べたところで。 どんなに言い繕ったところで。
私は見返りを期待していたのだ。 絆という言葉に、見返りを要求していたのだ。
真紅とジュンの「絆」に比べて、それは酷くちっぽけなような気がして。 それはそのまま、私自身のちっぽけさで。
いやだ。 また涙がこぼれてきた。 どこまで私は弱いのだろう。
ぽつり。 ぽつぽつ。 雨が降り出した。 こんな気持ちの時に、雨なんて。 嫌い。 みんな嫌い。
泣き疲れて、走り疲れて。 気付けば私は、結菱の庭園にいた。
帰りたくないな……。 このまま雨が、やまなければいいのに。 そんな事を考えていた、その時だった。
「また泣いているの? 翠星石。」
……そんな。 この声。 私が、聞き間違えるはずが、ない。 信じられない気持ちで声の方に振り向くと。
そこには、蒼星石が立っていた。
驚きのあまり声が出ない。 自分は夢でも見ているのではないだろうか。
「あじさい……綺麗に咲いたね。 雨が嫌な季節だけれど。 この花が慰めになってくれる。」
慈しむように庭を回る。 雨が彼女を避けるように降る。 不思議な事ばかりだ。
「蒼せ……嘘……どうして……?」
「君が泣いていたから。」
蒼星石は私にみなまで言わせなかった。 暖かい手が肩に回る。 それだけで、理屈はどうでも良くなった。
気付けば、私は蒼星石にもたれ掛かって、無心に泣いていた。
「どうして泣いているの? ジュンくんに酷い事を言われた?」
優しい声。 蒼星石の指が、私の髪を梳き上げる。 それだけで、暖かい気持ちになれた。
何もかも話した。 真紅とジュンを見ていて、胸が苦しかった事も。
ケーキ作りの顛末も。 自分が相手に見返りを求めていた、その心根の小ささも、何もかも。
うん。 うん。 蒼星石がひとつ相槌を打つ度に、心がひとつ軽くなっていった。
全部話し終えて。 後は何を言うでもなく寄り添って。 そんな時間がどれくらい続いただろう。 蒼星石が問い掛けてきた。
「翠星石はどうしたかったの? 真紅を蹴落としたい……なんて考えてた?」
えっ。 ぶんぶんと首を振る。 私がしたかった事? 言われて、初めて気付いた。
ああ、そうだ。 喜んでほしかった。 いつも、喧嘩してばかりのジュンに。 笑ってほしかった。 それだけだった。
「僕は、みんな同じだと思う。 真紅も、ジュンくんも。 自分のしたいようにしているだけだと思う。
相手に笑ってほしいから。 泣いている顔を見たくないから。 喜んでほしいから。 それは、翠星石と何も違わない。」
私は、答えなかった。 ただ黙って、蒼星石の言葉を聞いていた。
「相手に笑ってほしいと思う事を見返りと呼ぶなら。 僕は、見返りを求めてほしい。
あの人が喜んでくれて嬉しい。 あの人が喜んでくれなくて悲しい。 なんて素敵な事だろう。
だって、ほら。 僕は君からお返しを貰おうなんて思った事は無いけれど。 君が笑うと、こんなに嬉しい。」
そう言って。 蒼星石は綺麗な笑顔で笑ってくれた。 本当だ。 それはとっても素敵だった。
こっしゅんこっしゅん。 鍋で栗を加熱、加熱。
背中におじじの物問いたげな視線を感じるけれど、あえて無視。
「そう言えば……不思議なんだがね。 さっき、庭の方にあの子の姿が見えたような気がしたよ……ふふ。」
「蒼星石は雨女でしたからねぇ。 そういう事もあるかもですぅー。」
そう。 気が付けば蒼星石はいなくなっていて。 カバンを開ければ、そこにはいつも通りに眠る彼女。
当たり前。 ローザミスティカ無しに動ける筈が無いのだ。 じゃあ、さっきのあれは何?
分からない。 分からなくていい。 そう。 蒼星石は、いつだって私に勇気をくれる。 大事なのはその事実。
私は、覚悟を決めて、もう一勝負する事にしたのだった。
「はぁ……。」
駄目だ。 あちこち探し回ったけど、全然見つからない。 どこ行ったんだよ、まったく。
通り雨も上がって、空はすっかり夕焼けに染まっている。
下校する学生服もちらほら。 顔を隠すように歩く僕。 くそっ。 もう帰るぞ。
……と、もう何回思っただろう。 その都度、あいつの涙がちらついて。 結局、この時間まで帰れなかった。
仕方ない。 とりあえず、一度家に帰ろう。 ひょっとしたら、もう家の方に帰ってるかもしれない。
「遅いですよ! もうお夕飯の時間ですぅー!」
……。 本当に帰ってやがった。 人をこんだけ心配させといて。
そりゃあ、文句が百も二百も思い浮かんだけれど。 何だかホッとしたのも事実だった。
「それはこっちのセリフだっての。 今度からは行先言って出掛けろよな。 足にマメが出来るかと思った。」
「……ごめんなさい、です……。」
ポンと頭を叩いて、おしまい。 空元気出してるってのは、一目見て分かったから。
これでいいよ。 これで、ケーキ騒動は終わり。
と思っていたのだが。 そうではなかった。
時刻にして夜11:00。 桜田家の夜は早い。 姉ちゃんも真紅たちも、今はとっくに夢の中だ。
風呂上りにリビングでくつろいでいた僕の前に、翠星石が現れた。 手に、ケーキの皿を引っ提げて。
「翠星石は、ケンカとか嫌いですから。 絆パーンチ!とか、そういうのは無理です……けど。」
たどたどしく喋る翠星石は、いつになくしおらしくて。 僕は茶化す事ができなかった。
そして彼女が差し出したのは、手作りのモンブラン。 示す所は一つ。 これは昼間のリベンジなのだ。
「……き………絆モンブラン、です。 ありがたく噛み締めろ、です……。」
何かを怖がっているような、弱々しい瞳。 まるで出会った頃のようなその姿。
いつまでもそんな顔を見たくなかったからだろうか。 僕は、無意識の内にモンブランに手を伸ばしていた。
「ど……どうですか?」
「………甘ぁ。」
僕に合わせて、甘さ控えめに作ったのだろう。 それでも僕には、やっぱり鬼門の甘さだった。 ……けど。
「……でも悪く、ない。 うん。 ………………………美味いよ。 サンキュ。」
碧のゆらめき、緋のしずく。 彼女の瞳はみるみる潤み、破璃の涙が頬を伝った。 うん。 もう仲直り。 うん。
……れしい、です……。 え? 声が小さくてよく聞き取れない。 顔を近づけると、パタパタと手を振って慌しく彼女が言う。
「で、でも、本当に大丈夫だったですか? 本当は無理してるとか……。」
ったく。 泣き虫。 泣くなよ。 笑えって。 今、僕に出来る事。 膝の上にひょいと翠星石を抱き上げた。
「そんなに心配なら、自分でも食べてみろよ。 ほら、あーん。」
え。 え。 え。 いきなりのできごと。 にびに煌く優しいお誘い。 見つめる私はパンク寸前。
耳はガンガンうるさいし、私が薬缶なら今にも吹き零れてしまいそう。
だ、だって……このスプーンは今、ジュンが使ってて……コレで食べると言う事は……つまり…………。
私が私に押し問答。 頭の中は堂々巡り。 食べますか? 食べませんか? 今なら甘ぁいオマケが付いてくるかもです。
少しの沈黙。 ……おずおず。 はくり。 もくもくもく。 こくん。 モンブランが喉を通り過ぎてゆく。
「な? 美味いだろ?」
こくこくこく。 ほんとは、味なんて、全然分からなくて。 茹で上がったこの顔じゃ、とても彼の方は向けなくて。
あぁもぅまったくこの鈍感。 やられっぱなしじゃ収まらなくて。 彼の指からスプーンを取ると、私もケーキを一掬い。
はい、あーん。 湿り気を帯びた銀の輝き。 その煌きの意味する所に、ようやく彼も気付いたようで。
二人して、耳まで真っ赤になって。 ちょっと顔を見合わせて、すぐそっぽ。 あぁ。 もう確かめるまでもないくらい。
これは絆。
アンマァ〜
GJ!!
あま〜〜〜い
けど、蒼い子ちょっとセツナス(´・ω・`)
角砂糖30個くらい混ぜ入れたコーヒー並に甘いですねw
GJ!
「ザ・ワールドですぅ」
「絆絆絆絆絆絆絆絆絆絆絆絆絆絆絆絆絆絆絆絆絆絆絆ァァァァァァ!!!」
「GJSSが台無しなの〜」
佳作
最近駄作多いんだよボケ
まったくこんなに甘いと糖尿になりそうだぜ!
なにがいいたいかっていうとGJってこと。
>>127 …の多様は避けたほうがいい。
なんかキャラが事切れる寸前に見える。
ちょっと泣いた(ノ∀`)
良作GJです。
137 :
ケットシー:2006/05/23(火) 21:36:58 ID:azsCo3+1
甘いの読んで触発された
ネタが被ってるけど勘弁してちょ
138 :
ケットシー:2006/05/23(火) 21:38:53 ID:azsCo3+1
初めてのなっとー
平日お昼の番組に、健康に関する話題はつきもの。
有り余る時間をテレビ観賞で潰していた翠星石は、ほんの気まぐれだが、その番組で紹介されていた食品に興味を持った。
「納豆ですか。そういえば、食べたことがなかったですぅ」
翠星石の納豆への挑戦が始まった。
「今度、納豆を買ってきてほしいですぅ」
夕食の時、翠星石が唐突に話を切り出した。お昼の番組のことを忘れずに覚えていた。
「翠星石ちゃん、納豆が好きだったのぅ?」
家事全般を担当しているのりが尋ねた。納豆は人を選ぶ食べ物だ。確認しておいた方がいい。
「食べたことがないから食べたいだけです」
「そうなのぅ。それなら、明日買ってきてあげるね」
のりは納豆を明日の食事に出すことを約束した。初めての納豆にどんな反応をするのか楽しみでもあった。
これでこの話題は終わりになると思われたが、そうはならなかった。横で聞いていたジュンが口を挟む。
「やめとけ。絶対後悔するぞ」
「チビは納豆が嫌いですか?」
「ああ、大嫌いだ。あんなのを食えるやつの気が知れないよ」
「そんなに不味いですぅ?」
「あれは味以前の問題。不味さの次元が違う」
そこまで不味いと言われると、逆に食べてみたくなるもの。ひねくれ者の彼女なら尚更だ。
「そんな好き嫌いを言ってるから、ジュンはチビなんですよ。明日は翠星石と一緒に食べるですぅ」
「一人で食ってろ」
逆に納豆を勧められ、ジュンは黙って食事に戻った。
139 :
ケットシー:2006/05/23(火) 21:39:55 ID:azsCo3+1
約束通り、翌日の夕食には納豆が用意されていた。
翠星石の席の前にだけ、スチロールの四角いパックが置いてある。
「これが納豆ですか?」
「そうよぅ。食べ方はわかる? まず蓋を開けて、たれとからしを出して」
翠星石は言われるように封を切り、たれとからし、薄いフィルムを取り出す。
その際、フィルムに付着した納豆が糸を引いた。糸を切ろうと手を振り回してもなかなか切れない。細くなった糸が風に揺れて手や顔に付く。
「すごい粘りですぅ。それに、なんだか臭うですぅ……」
想像してなかった臭いに少し顔を顰める。
「これ、腐ってないですか?」
素直な第一印象なのだが、のりは苦笑するしかなかった。あの臭いは、やはり悪臭に近いだろう。
そ知らぬ顔で食事をしていたジュンが、そら見たことかと口を出す。
「それが納豆だっての。そんなの食えないだろ?」
翠星石は勝ち誇ったようにニヤリと笑う彼を見てカチンときた。こうなったら意地でも食べてやる。
「これくらい平気です。のり、このたれを入れればいいですか?」
「あとは泡立つくらいよくかき混ぜて、ご飯と食べるそうよ」
たれを注ぎ、ひたすら箸でかき回す。炊きたてご飯の上からかけたら、納豆ご飯の完成だ。
「い、いただきますぅ」
茶碗を持ち、初めての納豆を恐る恐る口へ運ぶ。
見た目と臭いは最悪だが、普通に食されている食べ物だ。死ぬことはない。
そう自分に言い聞かせて勇気を出し、糸を引く納豆を口に放り込んだ。
「……あ、意外とおいしいですぅ」
食べてみれば、意外に旨味の多いご馳走だった。自然に箸も進む。
おいしそうに食べるのを見て、真紅と雛苺も食べてみたくなった。
「ヒナも食べたいのぉ」
「のり、私の分はないの?」
「はいはい」
微笑んで返事をしたのりは、冷蔵庫から納豆のパックを二つ持ってきた。用意のいい人だ。
140 :
ケットシー:2006/05/23(火) 21:42:16 ID:azsCo3+1
薔薇乙女達が糸を引きながら納豆を食べるのを、ジュンは信じられないという顔で眺めていた。真紅と雛苺も納豆の味に順応できたのだ。
「お前ら、本当にうまいのか?」
人がせっかくおいしく食べているのだから放っておけばいいのに、気になって仕方がなかった。
「おいしいの」
「ジュンも食べる?」
「僕はいいけど、どんな味なんだ?」
ジュンが墓穴を掘った。あれだけ納豆を悪く言っていたのに、食べたことがなかったのだ。典型的な食わず嫌いである。
翠星石の目が怪しく光る。何かをする前兆だ。
「ちーびーにーんーげーん。もしかして、納豆の味を知らないですか?」
「あ、いや、知ってる。もちろん知ってるさっ」
焦った彼は勢いで嘘をついてしまう。当然、そこを追求される。
「どんな味ですぅ?」
「そんなの知るか!」
「はぁ?」
「いえ、違います。なんというか、おいしくない味です」
逆切れしたりと見苦しい言い逃れもここまで。翠星石が箸を置いて椅子の上に立った。
「そんな嘘が通用するかです。罰として、ジュンにも納豆を食べてもらうですよ」
そう言って、庭師の如雨露を手に持った。ドールズの力は色々と危険すぎる。ジュンは顔を青くした。
「お、おい、何をする気――」
「スィドリーム!」
席を立とうとした瞬間、植物の蔓がぐるぐると体に巻きついて椅子に固定された。
動きを封じた翠星石は如雨露を仕舞い、食べていた納豆ご飯と箸を持って椅子から飛び降りる。
そして、向かうはジュンの所。彼の膝に上った翠星石は、納豆を抓んだ箸を向ける。
「チビ人間、口を開けるですぅ」
ジュンは口を開けようとしない。この状況で抵抗できる彼は、意外と根性があるのかもしれない。
「口を開けないと、鼻から食べさせるですよ」
納豆を挟んだ箸を鼻へと向かわせる。ただでさえ微妙な臭いが、ダイレクトに鼻腔へと侵入する。翠星石は鬼だった。
執拗に鼻先に納豆を持ってこられ、ジュンは耐えかねて口を開く。
「いい加減にしろよ!」
「とくと味わえですぅ!」
怒って口を開けた隙に箸を滑り込ませた。翠星石の作戦勝ちだ。
口の中の納豆をどうしようかと、箸をくわえたままのジュン。
少しして、口がもごもごと動く。そして、ごくんと飲み込んだ。
「……意外とうまいな」
こうして、ジュンの納豆嫌いは克服されたのだった。
この後、翠星石がドキドキしながら箸を使ったのは秘密だ。
おわり
141 :
ケットシー:2006/05/23(火) 21:43:33 ID:azsCo3+1
ケットシーは納豆が好きです。
ご飯と一緒に食べずに、そのまま納豆だけで食べてしまうくらい好きです。
だから何だと言われればそれまでですがw
梅干とネギを刻んでマジェマジェしてもさっぱりしておいしい
>翠星石がドキドキしながら箸を使ったのは秘密だ。
モエスwww
>翠星石がドキドキしながら箸を使ったのは秘密だ。
いやん、あま〜いw
そっちが実は本当の目的だったりねw
良い仕事乙
えっと、薔薇乙女達が女子校生な感じで、百合っちいのってここに投下しても大丈夫?
前スレきれいにオワタ
保守
べ、べつに誤爆なんかじゃないんだからねっ!!
154 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/26(金) 17:42:10 ID:UjkhUjYU
上げますよ
保守
156 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/28(日) 17:27:18 ID:IRmHYfGB
リダイヤル
いちいち保守しなくても職人来るから
全11話のお話を投下します
タイトルはICEの曲より頂きました
僕は桜田ジュン
あの時、僕は引きこもりだった
あの時、僕は「ローゼン・メイデン」という、生命を宿した奇妙な人形と出会った
あの時、僕は何ひとつ気づかなかった
あの時、僕のたったひとつの指輪から、運命が動き出した
あの時・・・・・
!
皆が寝静まった真夜中、いつも通りネットを眺めていた僕は、それが窓に当たる音に気づいた
黒い羽根、僕は窓を開けた、黒い翼、空からやってきた黒い天使が、静かに僕の部屋に入ってくる
ローゼン・メイデン第一ドール水銀燈、真紅の宿敵、ドールの破壊者、そして胴体の一部の無いドール
最初に彼女がこうして部屋に来たのも、やっぱりこんな、とても寒い、月の綺麗な夜だった
彼女はある夜、僕の部屋にやってきた、何の前触れもなく、閉めた窓を抜けて僕の部屋に入ってきた
「・・・何の用だ?」
「アリスになるため・・・真紅をジャンクにするため・・・そのミーディアムを殺しにきたの・・・
偵察は基本でしょぉ?、隙を見せた時、油断をした時・・・あなたたちのママゴト遊びを壊してあげる」
水銀燈は嘲るような笑みを浮かべると、何をするでもなく僕の部屋を漂い、長居することなく飛び去った
彼女はそれから夜になると僕の部屋を訪れ、窓の外や中で黙って僕を眺めてから飛び去るようになった
ある夜、僕は懸賞で当たった温蔵庫から熱いミルクティの缶を出し、窓枠の所に置いておいた
彼女が真紅を壊そうとしてるのも、僕を殺そうとしてるのも、その準備の行動も気に食わなかったが
毎晩のように僕の部屋に来る水銀燈がとても寒そうにしているのは、それとは別の問題だと思った
熱いお茶の缶を窓枠に置いては、彼女が目もくれなかった冷たい缶の中身を自分で飲む日々が続いた
水銀燈が暖かい缶を手に取るのには何日もの時間がかかった、缶を開けるのにはもっと時間がかかった
最初は匂いを嗅ぎ、すぐに中身を捨てていたミルクティに口をつけるまでにはさらに時間がかかった
彼女が窓枠の上で甘いお茶を飲み「ねぇ人間・・・」と話しかけるまでには、余り時間がかからなかった
水銀燈はそれから、真夜中に僕の部屋を訪れ、少しの時間を僕と一緒に過ごす事が多くなった
その時も彼女は、姉妹達から奪い合い、壊し合う熾烈なアリス・ゲームを続けていたが
真夜中を二人で過ごす時、彼女は誰も傷つけなかった、アリス・ゲームを忘れるのが暗黙の了解だった
いつか、別室で寝かせていた真紅が、くんくんの人形を取りに来たことがあった、半分寝ぼけている
見られちゃいけない気がした、とっさにに水銀燈を掴み、デスクの下、僕の膝の間に押し込め、隠した
水銀燈の天敵、最も強力なローザ・ミスティカを宿したアリス・ゲームの最大の障害が、今ここに居る
真紅は寝ぼけ眼のまま、とても無防備な姿で僕の部屋に少し居たが、ふらつく足のまま部屋を出た
水銀燈は僕の腿の間で、ただ僕に頬を当てながら目を閉じていた、水銀燈を疑った僕が恥ずかしかった
僕たち二人は、ただ、静かに過ごすのが好きだった、時折、二人の濃密な時間を過ごすのが好きだった
水銀燈の胴体の無い体は、とても美しく、とても敏感で、とても情熱的で、そしてとても軽かった
涙が出るほど、軽かった
彼女がぽつぽつと話してくれる自分のミーディアム、もう永くは生きられないミーディアム
歌が好きなミーディアム・・・水銀燈は、彼女の歌がとても好きだと言っていた
僕はその「メグ」のように歌が唄えない、替わりに、水銀燈が来た時はいつもラジオをつけてあげた
昭和の歌謡が好きだった、時折お気に入りの歌が流れると、体を揺らしながら静かに唄ってくれた
「うまくないけどね」と苦笑いする水銀燈に「そんなことないよ」と言った、そう・・・そんなことない
恋は 私の恋は 空を染めて燃えたよ
夜明けのコーヒー ふたりで飲もうと あの人が云った 恋の季節よ
「ねぇ・・・人間・・・・この部屋には、カレンダー・・・・無い・・・・・・の?」
カレンダーなら、デスクの端に腰掛ける水銀燈のすぐ隣の壁にある
水銀燈が嫌がるので、普段は消したままの部屋の灯りを薄く点けてあげた、カレンダーを指差す
「そう・・・あるの・・・あるの・・・・・ないの・・・・・あるの・・・・・ないの・・・こないの・・・こないの・・・」
水銀燈はかすかな声で呟きながらカレンダーを見つめている、空間の腹を撫で、数字を追いながら
指を折って日にちを数えている「・・・すこし・・・おくれてるだけ・・・・よ、ね・・・・?」
その時、僕は何も気づかなかった、それでも彼女の様子から、何かいつもと違う雰囲気を感じた
「水銀燈・・・どうした?」
「うん・・・何でもない・・・ねぇ・・・人間・・知ってる・・?・・私たちのお父さまが言ってたこと
私たちローゼン・メイデンは・・・命をもった人形・・・ヒトと同じように動き、考え、感じる事が出来る
ヒトと同じように・・・感じる事が出来るの・・・・人とだって、愛を交わす事が出来るの・・・・・」
「知ってる・・・よ」
それが愛ならば・・・僕と水銀燈の、あまりにも身勝手であまりにも不毛な二人の背徳が、愛と呼べるなら
「でもね、人とどんなに愛しあっても、人の子を宿す事は出来ないって・・・・それがドールの宿命だって」
「・・・・・・そうか」
Et Alors・・・それがどうかしたか?ただその一言が言える強さが欲しかった、あの頃の僕、無力な僕
「そうなのよ・・・・そう・・・言ってたの・・・・そう言ってた・・・・その・・・はずなのよ・・・・・
水銀燈は自分のドレスの腹、空っぽの胴体を撫で、また「ないの・・・あるの・・・ないの・・・こないの・・・」
「水銀燈、何か悩みがあるのか?話して欲しい・・・僕・・・・力に・・・・なるから・・・僕、何でもするよ!」
水銀燈はそれを聞くと、ほんの一瞬瞳を輝かせ、すぐに首を振り、目を伏せると、早口で僕に言った
「ん・・・ん〜ん!私は何とも無いわぁ!ダメよ私となんて!もしなんともなくなくなくなかったとしても
ジュンには絶対、迷惑かけないからぁ!わたしは一人で・・・だから、もう、わたしのことは・・・・うううっ」
水銀燈の涙の意味、なぜ僕はその時わからなかったのか、なぜ僕はわからないふりをしたんだろうか
「ねぇジュン!何でわたしなんかに優しくしたの?何でわたしをこんな気持ちにさせたの?・・・何でよぉ・・・
何でわたしと・・・出会ったの?・・・何でわたしを抱いたの?・・・何でダメっていった日に・・・中に・・・」
水銀燈は両手で顔を覆い僕に背を向けると、泣き濡れた紫の瞳を一瞬こちらに向け、そのまま飛び去った
「さよならジュン、わたしはどこか遠くの町で、あなたによく似た子をあやしながら・・・生きていきます」
水銀燈は飛んで行ってしまった、いつもは黒い翼を力強く羽ばたかせ、凛とした姿で飛び去っていくが
その日の彼女はなぜか、ひどくぎこちない姿で飛び去っていた
まるで自分の体を、何か大切な物を、一人では抱えきれないほど重い重い物を胸に抱いて飛ぶかのように
異変が始まった
水銀燈との奇妙な夜が明けた翌日、僕は真紅と二人で、部屋に居た
別にお互い部屋に居るのが好きだし、二人きりだからどうだというわけでもないが
その日の真紅は、なぜかいつもより無表情な、どうにも感情の読み取れない顔をしていた
「ジュン、ここに座りなさい」
「もう座ってるって」
「いいから!キチンと背筋を正して!ここにちゃんと鎮座しなさい!」
真紅はいつもよりも機嫌が悪そうだったので、大人しく彼女の前の床に正座した
「いいこと?男というものは、何かあった時、責任を取らなくてはいけません」
真紅は時々、僕にこんな教訓を垂れる、「下僕の教育は主人の努め」と言って、僕に説教をくれやがる
「うん」
僕は逆らっても仕方が無いと思い、さっさと終わらせようとして肯定の返事をした
「わかってるの?ジュン?男は!男なら責任を取りなさいって言ってるのだわ!」
「そうだね」
真紅は僕の同意の返事の何かが気に障ったのか、時々見せるヒステリックな声を上げた」
「男はぁ!責任を取らなきゃぁ!っダメなのよ!カイショ無しのアンタでもそれくらい出来るでしょ?」
「大変だね、それは」
真紅はもう手のつけられない有様で、拳で床を殴り、名前通りの紅い涙を流しながらわめき立てる
「大変って言った?ねぇ、ジュン?大変って言ったの?大変なのは!ツラいのは!
あなただけじゃないのよ!わたしだってねぇ、元は自分の身の不始末と思い、一生の不作と諦めて・・・・」
血涙を流して床を殴り続ける様に僕の腰が引けたのを感じたらしい真紅は、一転して猫なで声を出した
「ごめんなさいジュン、どうかしてたわ、わたしの生涯のマスターにこんなひどいことを言うなんて
・・・どうしてもこの時期は不安定になるの、ブルーになるの・・・・・わかるでしょ?・・・・・
ジュン、覚えてる?、昔あなたに言ったこと・・・あなたの指はまるで美しい旋律を奏でるようだって・・・
これなら・・・今にその魔法の指で、王女のウエディング・ドレスだって作れるって・・・・・・」
言ったっけ?聞いた気もするし聞いてない気もする、聞いたけど内容が少し異なるような気もする
「だから・・・急がないと・・・・ジュン・・・でも・・・おなかの所は少しゆったりと作らないと・・・ね
その姿で写真を撮って、いつか見せるの、これはあなたを授かった頃の私、とっても幸せだった私って・・・」
僕は、横座りのまま腹に手を添えてうっとりとする真紅を置いて、部屋から逃げ出した
「・・・もちろん・・・夜のアナタも、魔法の指だったわ・・・」
猫嫌いの真紅の猫なで声
血涙絶叫より怖い
雛苺はいつもと変わらないように見えた
ヒナは上機嫌な時、よく子供がそうするように、自分で作詞作曲した歌を大きな声で唄う
その時も大きな声で自分の歌を唄っていた、子供はそういうものだ
「♪ヒ〜ナのおなか、ぽんぽ〜ん!♪ヒ〜ナのおなか、ぱんぱ〜ん!
♪ヒ〜ナのお〜なかで、コビトさんがどんど〜ん!」
雛苺は大きな声で自分の歌を唄っていた、子供はそういうものだと思っていた
何となく姉妹達の異変を感じていた僕から見ても、蒼星石は最初、平静を保っているように見えた
その日も、居間の窓の前に座り、庭を見つめながらぼんやりとしてた蒼星石の横に何気なく腰を下ろした
「ジュン君、この庭に・・・・木の苗を植えてもいいかい?・・・木を・・・桐の木を植えたいんだ・・・」
庭師の能力を持つ蒼星石、草木を愛する蒼星石、やっとまともな会話を交わせる奴が居た事が嬉しかった
「キリ・・・?いいよ、蒼星石ならきっと、大切に世話してくれるだろ、いつか大きい木になるよ」
蒼星石は僕の言葉に過剰反応したように震えた、カラダの方ももう少し過剰に反応して欲しかったのだが
「大切に育てて・・・いつかは大きい木に・・・うぅ・・・その頃には、その桐で・・・
立派な箪笥をひと棹作り、持たせてあげられたらいいねぇ・・・・うううぅ〜・・・・・」
真紅や水銀燈よりさらにわかわからん状態になった蒼星石、僕は腰を浮かせた、危険だ、非常に危険だ
「ジュン君・・・ううっ・・・つまらないものだねぇ、手塩にかけて、蝶よ花よと育てても・・・・いつかは
どっかのウマの骨とやってきて・・・・『今まで長らくお世話になりました』なんて・・・つまらないねぇ・・・」
「蒼星石・・・大丈夫か?、お前本当に大丈夫か?せめてお前だけは大丈夫でいてくれよ〜」
「ご、ごめんね、ジュン君、めでたい門出にしめっぽくなっちゃって、そうだ、桐はやめて栗を植えよう
栗の木を、大きい実がなるように、甘ぁい実がなるように・・・決して・・・戦争なんかでなくさないように
・・・・かなしいねぇ・・・南方で行方知れずになった息子が・・・せっかく帰ってきたのに・・・・うぅぅ〜」
動物としての直感が僕に逃げろと言っている、尻を浮かせたまま後ずさりした、僕はエビになって逃げた
金糸雀は特に変わった様子は見られなかった、暗い廊下で自分の腹に向け呟いていた謎の呪文を除けば
「ふふふ、ローゼンメイデン一の頭脳は受け継がれるかしら、策士の血は一子相伝、ふははは!」
こいつ、わけわかんねぇ
人形師ローゼンは生きた人形を七つ作って、わけわかんねぇ奴らを並べて何がしたかったんだろうか
薔薇水晶は、僕の部屋の入り口から半分だけ姿を現し、半分だけの顔で僕の部屋をのぞいていた
半分だけでは、眼帯で覆われた瞳では何も見えないのに気づいたらしく、彼女は全身を戸口に晒した
ただ僕の目を見つめ、不敵な笑みを浮かべながら、聞こえるか聞こえないかの声で僕に囁く
「疑ってはいけない、それは偽りのないもの・・・・・私から生まれ出ずるモノ・・・それは間違いなくあなたから
生を享ける者・・・疑ってはいけない・・・・それは偽りのないもの・・・・・それは決して間違いのないもの」
囁き声は次第に大きく、僕を煙に巻くかのような、暗示にかけるかのような、低く凄みのある声に変わる
「たとえ槐に似ていても、ウサギに瓜二つでも・・・・疑ってはいけない・・・・それは偽りのないもの・・・・
血液型が怪しくても、黒肌アフロでも、体毛のない緑色の体でも・・・それはあなたから生まれ出ずるもの」
「お、おい待て!」
薔薇水晶は部屋の入り口からシュっと消えた
彼女の言った事が何ひとつ理解出来なかった、理解しちゃいけないような気がした。それにしてもお前・・・
馬鹿な奴ってのは困ったもんで、普段が馬鹿だからホントに馬鹿になった時にわからない
翠星石は歌い踊っていた、僕ら人間社会では廊下で一人歌い踊ってる奴は、一般的に言えば・・・アレだ
「るんたった♪出来ちゃったぁ、出来ちゃったぁ、最初はちょ〜っと出遅れた〜と〜思ったけ〜れど
さ〜すがわたしは翠星石♪一発逆転大当たり♪既成事実っ♪こ〜れでわたしも勝ち組〜ですぅ〜♪」
僕の部屋にくるくる回りながら入ってくる彼女を見た時、正直な話、馬鹿に磨きがかかったか?と思った
刺激しないように、目を合わせないようにおそるおそる聞いてみた「馬鹿に磨きがかかったか?」
「もゥ!チビ人間ったら舞い上がっちゃって!先走り過ぎですぅ!こっちが恥ずかしくなるですぅ!
チビ人間は・・・どっちがいいです?公立か・・・私立か・・・やっぱりお受験とかさせた方が・・・」
この馬鹿、禁句を言いやがったな、絞首刑にしてやりたかったがどうやら相手は心神耗弱状態のようだ
「悪かったな、僕は公立だよ、しかも行ってねぇよ!」
「だ・か・らぁ〜、チビパパ・・・じゃなくチビ人間みたいにダメ人間にならないようにぃ〜
翠星石もちゃんと将来を考えてあげてるですぅ〜、わたしたちの老後だってみてもらわなきゃ〜」
ついに馬鹿が孵化したか、馬鹿はいよいよ常人には理解できない妄想世界にご出陣の様子
「でもぉ〜、チビ人間はこれから忙しくなるです〜お風呂にいれてあげるのはチビ人間の仕事です〜
♪おむつを替えるのもぉミルクをあげるのもぉ、炊事洗濯なぁ〜んでも、チビ人間がしてくれるです〜
でもチビ人間はきっとキミはただ笑っていてくれればいいんだよって言ってくれるに違いないですぅ〜」
翠星石は、きっと男なら例外無く不快を催すであろう内容の歌を、耳障りな高音でうたい始めた
「♪真赤なバラと白いパンジー 子犬のよこには あなた〜、あなたぁ〜〜 あなたがいてほしい〜」
音痴
どんな花よりも気高く、どんな宝石よりも輝く、一点の穢れもない究極の馬鹿を置いて僕は部屋を出た
遠くで馬鹿の雄叫びが聞こえた
「ヒッヒッフー!、ヒッヒッフー!いきんで、いきんで、ヒッヒッフー!」
困ったもんだ
「婆さんや、水銀燈婆さんや、わしのズタ袋を知らんかな?アレは大事なんじゃ、指輪入っとるんじゃ」
「ジュン爺さん、あたしゃ薔薇水晶でございますよぉ〜、今じゃすっかり枝垂れ薔薇ですがねぇ
ヒャッヒャッヒャッヒャッ・・・真紅さんや、入れ歯そろそろ出してもいいんじゃないかい」
「ふひひんほう・・・カポッ水銀燈婆ァは、メグ婆さんと一緒にみのさん観にいっちゃったんですわ」
「しょうがないでふぅ、メグ婆さんは白寿まで生きられないって医者に言われてるでふぅ」
「アノ婆ァとっくに過ぎとるわ、フガフガ、この庭師の鋏も今じゃ鼻毛切りにしか使うておらんて」
「ああああのカッカカッカラスババァ人形、いいいつまであああんなゴッゴッゴッゴスロリ着るつもりかしらぁ」
「ヒ、ヒ、ヒナもみのに嫁のグチでも垂れたいの・・・の・・・なの〜!・・・っ・・・ゲホゲホ!」
「で、え〜と・・・お嬢ちゃんたちは・・・」
「もぅ!大爺ちゃん!ひ孫の名前を忘れるなんて!しっかりしなきゃ、私達のマスターさん!
わたしはローゼン・メイデン第463ドールTD05Hで〜す!夢はもちろん、アリス!」
「私はローゼン・メイデン第1933ドールОбъект、アリスは世界の同志に赤い革命を・・・」
僕は桜田ジュン、今では2401個の指輪を持つミーディアム、オマエラ7人も生むなや
ぼくは、さくらだジュン、しょうがっこう2ねんせい
じつは、ぼくにはにんぎょうのおともだちがいるんだ、ないしょだよ
ありすっていうこなんだ、とってもきれいで、かしこくて、やさしくて、きもちいいんだ
でも、ありすちゃんといっしょにあそぶと、なんだかおちんちんがいたくなっちゃうんだ
そんなとき、ぼくはありすちゃんといっしょに、おちんちんあそびをするんだよ
ぼくのおちんちんと、ありすちゃんのおんなのこのおちんちんでいろんなことをしてあそぶと
いろんなことがおきて、とてもたのしいんだ、とてもおちんちんがきもちいいんだ、ないしょだよ
ぼくとありすちゃんで、おにんぎょうあそびしたりおちんちんあそびしたりしたりして、たのしかったよ
でも、あるひありすちゃんはいなくなっちゃった、ありすちゃんはさいごにぼくにいった
「ローゼン・メイデンは7人の子を産む、いつかきっと私の娘達が、あなたの前に現れる」
ありすちゃん、またあいたいな、ありすちゃんのむすめにもあいたいな、おちんちんあそびがしたいな
「ひー爺ちゃん、どーしたの?ぼやっとしちゃって!」
「あ、ああ、何でもないよ、ちょっと昔のことを思い出してただけで・・・え〜と?」
「第1984ドール、ウォーカーギャリアよ」「第1995ドール、エステバリスです」
「ん、そーだ君ら仏間行っといで、アリス婆ちゃんにお供えしたうにゅー、二人で食べちゃいなさい」
「「わ〜〜〜い!」」
「婆ちゃん達にはないしょじゃぞ?真紅婆さんに知れたら白髪チョップじゃ」
「「ハ〜〜〜イ!」」
ありすちゃん
きみにはもうあえないけど、きみのようなおにんぎょうがたくさんいて、ぼくはしあわせだよ
ほんとうに、しあわせだったよ
(完)
あとがき
地上の王として君臨していた恐竜は、新たに現れた小型哺乳類にあっという間に絶滅させられました
隕石、天変地異、説は様々ですが、それはほんのきっかけで実際は生殖能力の差で滅んだんでしょう
最近、リアルの女に萌える事が少し減りました、末期の恐竜も同様の悩みを抱えていたんでしょうか
人間がしあわせだった統治の時を終え、何者かに、あるいはドールにその霊長の座を委譲するか否かは
ジュンのような、ドールや二次、ょぅι゛ょに萌える奴らのリビドーにかかっているのかもしれません
ではまた
吝嗇
171 :
こがね:2006/05/31(水) 04:07:31 ID:NiNpxZmv
じゃあ続いて投下↓
172 :
引き籠もれ:2006/05/31(水) 04:10:18 ID:NiNpxZmv
雛苺 「あ〜ん真紅ぅ!! 翠星石がヒナの絵に落書きしたの〜〜!!」
翠星石「落書きとは失礼です! ヘタクソな絵をちったぁマシにしてやったですのに」
真紅 「どっちもどっちだわ」
ジュン「あ〜うるさい!!! 遊ぶなら下でやれよなチビ共!」
雛苺 「うりゅ……怒られたぁ」
翠星石「チビ人間は細かい事でいちいちウルサイですぅ。部屋の一つや二つ黙って貸すがいいです」
ジュン「ここは僕の部屋だ。お前らの居るべき場所は下」
翠星石「真紅ぅ〜、学校サボリまくりのひきこもりが何か偉そうですぅ…」
ジュン「なっ……にぃ!? もういっぺんいってみろこの性悪人形!!」
翠星石「ジュンこそ、部屋で引きこもってないで、学生が居るべき場所に、学校行ったらどうですかぁ?」
ジュン「ぼ…僕には必要ないんだよ。わかったらさっさと部屋から出てけよ!」
翠星石「べ〜〜ですっ! さっさと学校いっちまって、部屋を翠星石に明け渡すがいいですぅ」
雛苺 「翠星石、ジュンが学校に行って欲しいのぉ?」
翠星石「あたりめーですぅ。口うるさいのが居なくなれば、きっと清々するですぅ」
雛苺 「ヒナはやだなぁ……ジュンが学校行っちゃったら、ジュンと遊ぶ時間無くなっちゃうもん…」
翠星石「ば、バカ言うなですぅ。たかが学校くらいで、そんな……」
真紅 「そうね、雛苺の言うとおりになるかも知れないわね」
翠星石「……ぇ」
真紅 「日本の学生というのは忙しいらしいわ。学校で勉強して、家でも勉強して、休む暇も無いって話だけど…」
真紅 「私達ドールを構う暇なんて、当然無くなるでしょうね」
雛苺 「ヒナそんなのやだあぁ〜! 翠星石も、やだよねぇ?」
翠星石「え…す、翠星石は…………翠星石は…」
173 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/31(水) 04:12:05 ID:NiNpxZmv
雛苺 「ジュン〜〜! 学校なんか行っちゃやだああぁ〜〜〜!!」
ジュン「うわっ!? お前ら、まだいたのか?」
真紅 「あらジュン、机に教科書なんか広げてお勉強? まだ学校へ多少の未練はあったようね」
翠星石「――っ!?」
ジュン「ち、違う! これはその……ただの暇潰しだ」
翠星石「…学校、行っちゃうですか?」
ジュン「行かないっていってるだろ」
翠星石「じゃあ、じゃあっ……こんなもの、いらないですぅ!!!」
ジュン「な――っ!? な、何捨ててるんだよバカ人形!!」
翠星石「学校行かないなら、こんなもの必要無いはずですぅ!」
翠星石「お、お前は、いつもみたいに…この部屋にずっと、ずっと居た方が………お似合いですぅ」
ジュン「な、何だよそれ…」
真紅 「……ふふ」
雛苺 「やっぱり翠星石もジュンと一緒がいいんだ――!」
翠星石「ななな何いってやがるですかこのバカチビ〜〜!!」
翠星石「す、翠星石は別に……お、おちょくる相手が居ないとサビし…じゃなくて! …張り合いが無いだけで……」
ジュン「……お前ら」
真紅 「居場所があるのは良いことだわ」
ジュン「……」
真紅 「いつでも迎えてくれる人がいるのだから、焦る事はないわ。一歩ずつ進んでいきなさいな」
ジュン「…そうだな」
一歩ずつ、ゆっくりいけばいい。
皆が迎えてくれる、この部屋から…。
ジュン「一歩ずつ、ゆっくり……よーし、まずは…」
ジュン「勉強は明日にして、今日は遊ぶぜ―――っ!!」
桜田ジュン 欠席
174 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/31(水) 09:56:54 ID:xuwC6DBC
>>172 は
わざわざ誰かが書いた後を見計らって
投下してるのか?
>>170 「俺たちは大変な思い違いをしていた・・・。ローゼンの真の目的。
それは人類を駆逐し、地球を人形だけの星にすることだったんだよ!!」
あなたの銀ちゃんへの愛は伝わりました。
177 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/31(水) 18:12:48 ID:BUVRrmqJ
な、なんだってー!
壮大な作戦ですね
>>170問題は人形の子供にオトコノコがいたのかどうかだ。
180 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/06/01(木) 01:08:02 ID:8ZiWJGcB
_,,:-ー''" ̄ ̄ ̄ ̄`ヽ、
,r'" `ヽ.
/ ::. ヽ
. / :: ヽ
.| :: |
__,,__,|__,,____,,____,,____,,___,,____,,____,,____,,___,|____,,___,
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.| ヾミ,l _;;-==ェ;、 _;;-==ェ;、 ヒ-彡|
〉"l,_l||;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;)=f';;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;||゙レr-{
| ヽ"::ヾ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;i, iヾ;;;;;;;;;;;;;;;;;;/ r';' } ニカッ
. ゙N l ::.ヾ====イ;:' l 、====/ ,l,フ ノ
. |_i"ヽ;:...:::/ ゙'''=-='''´`ヽ. /i l"
.| :゙l.''(<T''T''T''T''T'T>)゛|'",il"|
.{ ::| 、 \工工工工/ , il |
/l :|. ゙l;:ヽ========ノ ,i' ,l' ト、
/ .| ゝ、゙l;: ,,/;;,ノ | \
'" | `'ー--──'" ,| \_
182 :
うた:2006/06/01(木) 04:38:41 ID:D+gOn6ij
なにこのマルチ
>吝嗇 ◆G.VR4wY7XY
せめて「。」くらいつけろ
俺は蒼の子とオチソチソアソビが出来れば滅んでも悔いなしw
>>170 恐竜の絶滅と萌えを括るとは
やるなーにーちゃんw
>>185 吝嗇はそういったアドバイスや指摘はことごとくスルーするタイプっぽいから、言うだけ無駄。
気に入らないならあぼんすればいい。
>>188 嫌いじゃないがずっと前から見にくいと思っていてな。
>>185を見て「。」が無い事に初めてきずいた……orz
>>190 いや、何様とかでなくてさ。
エロパロでも投下した後に「。」つけろっていってたヤツがいたから。
また変な論争呼ぶのも嫌だし。
>>191 きずいた、じゃないことには気付いてないのか?
>>166 薔薇水晶…なんて恐ろしい子。
「本気のしるし」の浮世さんみたいだw
「ラジオ深夜便」が聞こえてくる、演歌の薫り漂う銀様にGJ!
「。」くらいつけろって思うよ。
小学生の作文ばかりなんだしさ。
まったく気にならなかった俺は小学生以下ですかそうですか
気にも止めない俺は幼稚園児でいいや
きずいただと思った私は赤ちゃんでいいや(^_^;)
はい雑談ストップ。
大人しく次の投下を待とうぜ。
そもそも批判するなってのが無理だと思うんだが。
不特定多数の人間が見てる以上は尚更。
それがこのスレのルールだろ?
ルールを守るのは当然だと思うが。
批判してもたいして技術向上に役立たない所か、モチュベーションまで下がる。
他のSS書きへの牽制にもなって投下数が減る。これが一番痛い
つまらない作品にはシカトで充分だと思うよ。
>>202 俺の言ってる言葉もう少し理解しろよ。頭悪いやつだな。
なんでおまえの言葉なんて理解せにゃならんのだ?
>>1を読んでROMってろよ。
どうでもイイヨ
つまらない議論を読む為に覗いてる訳ではない
>>1を読んで欲しいね
あんたらの意見を聞くところでもない。
職人は黙って書けばいい。
209 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/06/04(日) 07:21:46 ID:bkIxgrk1
難燃性素材にアスベストを織り込んだ特殊繊維製のオムツに船舶用高粘度B重油を滴り落ちるほど
滲み込ませて、ドレスをビリビリに引き裂いて素っ裸にしたクソ雛苺に装着。
燃焼途中で脱落せぬよう鋼鉄製の超細型コイルにてしっかりと固定しガスバーナーで点火。
JR渋谷駅前にて拘禁を解き明治通りを走らせる。
オムツから不気味なオレンジ色の炎をメラメラ燃え上がらせ、激しい黒煙を振りまきながら短い足で
全力疾走するクソ雛苺。
「ああああ熱いのおおおおおおおおおお〜」と白目を剥いて叫びながら、
「雛、なんにも悪いことしてないの〜」
と、完全に誤った自己認識に基く主張を行なって恥じることのないクソ雛苺の醜悪な姿。
ゲラゲラ哂いながら携帯を向ける女子高生。クソ雛苺に向い指を指して子供を諭す若い母親。
空缶やペットボトルを投げつけるDQN中学生。更には「売国人形」を轢き潰そうと迫る街宣車。
尻に火の点いたクソ雛苺、表参道方面へ向かって走る、走る、走る。
なるほど弱いだけのことはある。逃げ足だけは天下無敵だ。
自らを励まそうとしてか或いはオムツの燃える熱さに耐えようとしてか、無意識に
「あいとっ、あいとっ」と泣きながら自らに掛け声をかけるクソ雛苺の姿は実に陳腐だ。
ところでクソ雛苺をはじめドールの体組織は堅固とは言い難い。
それ故オムツを装着されていた臀部付近が竹下通りに差し掛かった折に崩壊してしまう。
高熱と高速運動の負荷に耐えられなかったのだ。
脚を失い、松明(たいまつ)の如く燃えるオムツを回転させながらクレープ屋の前を転げまわる
クソ雛苺。
それでも一生懸命「あいとっ、あいとっ」
修学旅行の中学生に蹴飛ばされても「あいとっ、あいとっ」
佐川急便に轢き潰され、ぺしゃんこにされても「あいとっ、あいとっ」
雛ちゃんほんとに強情だねえ。
だから苛められるんだよ。
なんだ。向こうの批判厨がこっちに流れてきたのか?
人に歴史あり
アルバムの中にはその人の去来が詰まってる、今となっては恥ずかしくも温かい、人の歴史
柴崎老人のアルバムでは安田講堂のバリケードで笑う赤ヘルメット姿の元治が笑ってる
槐のアルバムでは坊主頭に瓶底眼鏡の槐がボードレールを小脇に抱えてソルボンヌを歩いてる
そして、ラプラスの魔
幾多の時を跨いで生きるラプラスの分厚いアルバムには、白人の大男と写る白崎が居た
その後ろには、プールで濡れた白い水着もはちきれんばかりの豊満な美女達が並んでる
「あの頃は僕も若かったですから、新しい雑誌を興すのに燃えてたんですよ」
白崎と白人大男は、それまでの雑誌の常識を打ち破る新しい雑誌を作るべく青春を費やした
二人の助平男は絶世の美女を集め、世界の助平男のための雑誌を世に送り出す
その後白崎は病に倒れ世を去り、運命の悪戯でラプラスの魔としての命を与えられる事となる
白人の大男は若くして散った助平な雑誌編集者、白崎の墓の前に一冊の創刊誌を供えた
「お前は生きる、たとえお前の命は消えても、お前のエロはわたしの雑誌の中で永遠に生きる」
その白人の大男の名はヒュー・ヘフナー
雑誌「プレイボーイ」の創始者にして、稀代のスケベ男
今週も週刊プレイボーイをめくる白崎の顔は、寂しそうで、どこか照れ臭そうに見える
何やってんだよ、ラプラスwwww
それでは投下させていただきます。
相変わらず、おいらはトロイメントしか見てないので、
1期で一樹とじじーに起きた物語なんぞ知る由もなし。
なので、設定に間違いがあってもご愛嬌ってことでひとつ…
調べてから書きたかったけれど、それもこれもレンタル屋のせいなのさww
その年の冬は訪れが早く、晩秋には雪が降り出した。
大地が霜に覆われる季節の訪れとともに、元治は体を壊し入院した。
老いは誰にも止められない。
そんな元治を心配そうに見舞う翠星石。
「おじじ、大丈夫ですか、どこか痛いですか?何かして欲しい事はないですか?」
元治とマツは、そんな翠星石の気遣いに感謝していた。
「大げさな事じゃないから、そんなに心配しないでおくれ」
老いぼれた夫婦を気にかけてくれるのは、世界で彼女だけになってしまった。
いや、もう一人彼女の妹がいるのだが、どこに行ってしまったのかさっぱり音沙汰がない。
夫婦にとっては、その安否だけが一番の気がかりになっていた。
お見舞いに来た翠星石に、それとなく尋ねた蒼星石の行方。
「きっともうすぐ帰って来るです…だからおじじは元気になって待ってるですよ」
そう言って彼女は寂しそうに困惑するだけだった。
「せめてもう一度、一樹に会いたいものだ」
元治はそう、誰に語るでもなく呟いた。
翠星石の気持は複雑だった。
いま、この瞬間に蒼星石に会わせてあげられたら、どんなに二人は喜ぶだろう。
しかし、誰よりも蒼星石に会いたいと願っていたのは彼女だったかも知れない。
彼等を喜ばせたい一心から、翠星石は悲しみを胸に押し込めて、ジュンに一つの計画を提案し、協力を求めた。
「寒い季節に心温まる話を持ってゆくのです。そうすればきっと体だって良くなるです」
「お前、僕に蒼星石の名前で手紙を書けって言うのかよ…」
「だーいじょーぶですぅ、妹の癖は姉である翠星石が一番良く知ってるですから絶対ばれねーですよ。
ジュンは大船に乗った気で協力するです」
「おい、そういう事じゃなくてだな……」
それは、ほんのちいさな思いやりだった。
『前略、マスターへ。……』
不器用なやさしさが込められた手紙は、元治たちの下に届けられ、彼らの慰めとなった。
この手紙によって、彼らの心はどれだけ癒されただろうか。
こうしてジュンと翠星石による、手紙の病気見舞いが始まった。
「おじじ、蒼星石からの手紙を持ってきてやったです」
新しくしたためた手紙を持って、翠星石は元治の病室を訪れた。手紙はこれで何通目になるだろうか。
『前略、マスターへ。……』
元治は、手紙を一通り読み終えると、何度も最初から読み直す。
それを傍から見て微笑む翠星石。そんな光景が繰り返されて1ヶ月が過ぎようとしていた。
病床にて蒼星石安否を心配する元治の症状は一向に良くなる兆しを見せない。
「そうか、かずきは元気にしておるのか…」
そんな言葉を聞くたびに、本当のことを隠している翠星石の心は傷むのだった。と同時に羨ましいとも感じていた。
翠星石は蒼星石が帰って来ないことを知っている。
故に、素直に待ち続ける元治に、彼女は少し嫉妬していたのかもしれない。
『もう蒼星石は帰ってこないです』……その一言がどうしても言えなかった。
『おじじになにかあったら、蒼星石に申し訳が立たないです』
そう思って元治達の事をあれこれ心配してはいるものの、
本当は翠星石も、蒼星石がいない寂しさを紛らわせていたのかも知れない。
こうした彼女の思いとともに、もう一通、もう一通と蒼星石の便りは増え続けていった。
「チビ人間見ぃつけたですぅ〜!」
翠星石は下校途中のジュンを待ち伏せていた。
ジュンが巴と一緒だった事にムッとして、急いで彼女から引き離す。
少々ぷりぷりしながらも、早速ジュンに協力を強要する。
「チビ人間と翠星石は一蓮托生呉越同舟なのですぅ、さぁ、とっとと家に帰って手紙を書くですぅ」
「お前、言葉の意味を分かって言っているのか?」
「ジュンはあんな女とイチャイチャしてる暇なんかないのです!そんな暇があったら翠星石に付き合うです!」
「イチャイチャって…あのなぁ、お前……」
「おじじの病気はきっと治してみせるです。だからジュンも頑張って協力しやがれです!」
ぐいぐいとジュンの袖を掴んで家路を急ぐ。
はやる気持から赤信号に気付かずに、翠星石はジュンを交差点に引っ張り出す。
突如鳴り響く急ブレーキのけたたましい悲鳴。
「さ、桜田君、大丈夫!?」
驚いて駆けつけた巴に付き添われ、ジュンは救急車で病院に搬送された。
こんな時、翠星石は自分が無力だと痛感せざるを得ない。
巴が近くにいなければ、事故の対応さえする事が出来ずに、きっと呆然とするだけだっただろう。
どうしていいか解らずに蒼ざめる翠星石。
「だいじょうぶ、だいじょうぶだから…」
と言いながらも辛そうな表情を浮かべるジュンの右手は、血の気が失せて妙な方向にひしゃげていた。
その夜、ジュンに謝りに行った翠星石は、それから元治の心の中を訪れた。
おじじの心の樹さえ治すことができれば、きっと元気になる。それが彼女にできる唯一のことだった。
だが、翠星石が元治の心を覗いた時、既に心の樹は枯れかけていた。
生い茂る枝葉とは裏腹に、根元はそれを維持するだけの能力を失っていたのだった。
庭師の彼女は、それがその樹の寿命だということを瞬時に悟った。
「そんな…そんなのダメです!」
ジョーロを取り出した彼女は、瀕死の樹に手当てを施し始める。
「おじじにはもっと幸せを見つけて欲しいです」
しかし、いくら努力しようとも、樹の生命力は快復することがなかった。
決められた時の中で生きる者に必ず訪れる生命の終焉。それは逃れられない運命なのだ。
懸命に樹を救おうとする翠星石、しかし、どうにもならない現実が彼女をひどく落胆させた。
「こんな時、蒼星石さえいてくれれば…救えるかもしれないのに…」
その時、翠星石は、何故か懐かしい手に抱かれた様な気がした。
ふり返る翠星石に『もういいんだよ』と誰かが語りかけた様な気がした。
明け方、ふと目を覚ました元治は、傍らに看病疲れで眠るマツを目に止めた。
「ばあさんや…夢をみたよ。明日、一樹が帰ってくると言っておったよ。
もう待たなくても良いと言ってくれたよ。ばあさんには面倒をかけたね…」
「ジュンー!お願いです、あんなおじじ見てられねーです、後生ですから一通だけでも書いてくれですー!」
「無理言うなよ、それよりも、いつまでこんな事続けるつもりなんだよ」
翌日の午後、右腕を骨折したジュンがギブスを巻いて帰ってきた。
翠星石もジュンを酷い目にあわせてしまって申し訳ないとは思っていた。自分が酷い事を言っているとも理解していた。
でも、彼女が頼りにできるのはジュンしかいなかったのだ。
「いつまででもです、いつまでもいつまでも…おじじが良くなるまで続けるです!」
「ねーちゃんに書いてもらえよ、僕には無理だ」
「それじゃ代筆だってばれるです、チビ人間の字じゃないとダメなのです!」
ジュンだって書ける物なら書いてあげたいと思っていた。それは翠星石も重々承知してはいるのだが、
日に日に生気を失って行く元治を目のあたりにして、居ても立ってもいられなかった。
元治は病床で蒼星石の便りを、心の支えにして待っている。
だから彼女は、例え嘘でもその願いを叶えてあげたいと、必死だったのだ。
「もうチビ人間なんかに頼まねぇです、おじじに何かあったらチビ人間のせいです!」
ジュンの態度に業を煮やし、彼女は夕暮れの街に飛び去っていった。
「やっぱり、翠星石には蒼星石の代わりは無理なのかな…」
あても無く街をさ迷いながら、元治の事をぼんやり考えていた。
翠星石は途方に暮れていた。非力な自分が悔しかった。
どんなに頑張ってみたところで、容姿が似ているだけでは埋まらない溝の存在を、嫌と言う程感じさせられていた。
だけど、だからといって、諦める事など出来はしない。
「そんな事はねぇです、こうなったら自分で何とかしてみせるです!」
不安を払拭するように、そう自分に言い聞かせると、彼女はその夜遅くまで手紙を書き綴った。
時が止まったかのような深夜の白い病室に、廊下から聞こえてくる足音だけがこだましていた。
やけにはっきりとした意識の中で、元治はその足音の主人を待っていた。
やがて病室の扉が音も無く開くと、扉の向こうに青年が現れた。
彼は元治を見つけ、静かに彼に語りかける。
「ただいま。おとうさん」
それは紛れも無い、元治の一人息子、一樹の姿だった。
記憶の中の一樹が、夢にまで見た自分の息子が今、目の前に立っている。
全ての重荷から解放された様な表情を青年に向けて、元治は目を細めた。
「おかえり、一樹……ようやくおまえに会う事ができたのか」
そして、青年の右腕に抱えられた人形の懐かしい笑顔が、元治の目に写る。
「そうか…蒼星石や、君が連れてきてくれたんだね」
蒼星石は照れた様に微笑んで元治を見つめている。
元治は久しく忘れかけていた笑顔の作り方を思い出していた。
「長い道のりだったよ…一樹、もっと良く顔を見せておくれ…」
眩しい青年の笑顔、ありのままに、あの頃の様に。
「帰りましょう…おとうさん。僕達の家へ」
一樹と蒼星石の手が、元治に向かって差し出される。その手を握る彼の頬に熱い涙が伝った。
万感の想いを込めて、彼はゆっくりと目を閉じた。
『そうじゃよかずき、わしはずっとお前達に会いたかったんじゃよ。わしは、わしは……』
「とても安らかな寝顔でしたよ。いったいどんな夢を見ていたんでしょうかねぇ…」
翌朝早くにやって来た翠星石に、マツは元治の死を告げた。
遺体は既に運び出され、この部屋にもう彼はいない。
翠星石の手から手紙がはらりと落ちた。
彼女の努力は実らず、彼は蒼星石の思い出と一緒に去って行った。
元治を励すために翠星石が懸命に書い手紙は、もう永遠に届かない。
永遠の様な一瞬、朝の静寂の中で、昨日までの出来事が翠星石の脳裏をよぎって流れて行く。
やがて、いつか伝えようと思っていた本当の事を、彼女は告白した。
「おばあさん、聞いて欲しいです…じつは、蒼星石は…」
もう遅いかも知れないけれど、言わなければきっと後悔する。
その事実をただ黙って聞いていたマツは、謝りながら話し続ける翠星石をそっと抱き寄せる。
「本当は解っていたのよ、あの人も私も。でも、もしかしたら…って思っていなかった訳じゃないわ」
二人は嘘だと知りながら、それでもやはり、彼女が自分たちを思い、手紙を書いてくれた事が嬉しかったのだ。
「翠星石ちゃんだって妹を亡くして辛かったでしょうに…
あの人に夢を見せてくれてありがとう。だから、悲しまないでおくれ」
マツの腕の中で、黙って俯く翠星石の肩は悲しみに震えていた。
「そんな…そんな約束なんて、できねぇです…」
彼女の瞳から涙がこぼれだし、いたたまれなくなって病室から飛び出した。
翠星石の去ったがらんとした病室の中で、
マツは彼女の落としていった手紙を開き、元治の居ないべッドに向かって語りかける。
「おじいさん、私達の娘は本当に優しい子でしたねぇ…」
そして、翠星石の想いのこもった手紙を、シーツの畳まれたベッドの上にそっと乗せた。
『どうか、げんきになれますように』
お世辞にも上手いとは言えない文字の中に、彼女の飾らない心が綴られていた。
いつしか外は雪が降り出していた。
ジュンは無言で戻ってきた翠星石を心配し、事の顛末を察して歩み寄る。
彼女は庭先に立ち尽くしながら、ずっと舞い落ちる雪を眺めていた。
「もう中に入れよ…さむいだろ」
翠星石は振り帰らずに、ただ、枯れ木を飾る雪を見続ける。
「冬は嫌いです、雪は植物達には無情すぎるです…」
ジュンは黙って彼女に降りかかった雪を払い落とし、自分の上着でそっと包む。
「チビ人間…恨むです」
翠星石は素直になれなかった。
今、ジュンに優しくされてしまったら、叶わなかった願いの全てを彼のせいにして、
思いっきり泣いてしまいそうだった。
ジュンになら、それは許される甘えだったかもしれない。でも、自分が抑えられなくなりそうで怖かったのだ。
「手紙、間に合わなかったです…」
「…ごめんよ、僕は…」
翠星石は寂しそうに振り向くと、小さな声で精一杯の言葉を口にした。
「ジュン…お願いです、翠星石を一人にして欲しいです…」
「……恨んでなんかいないです。むしろ感謝してるです。でも…今は」
ジュンの去った後、舞い落ちる雪を両手に受けながら、翠星石は本当の気持ちをつぶやいた。
雪の結晶は、彼女の落とした涙の雫に混ざりあい、ちいさな手のひらで溶けて消えてゆく。
庭先に立ち尽くす翠星石をいたわるかのように、
雪は静かに、終る事の無いワルツを奏でながら降り積もってゆく。
「辛い…辛いですよぉ……蒼星石ぃ……」
記憶の中の愛する人たちを思い続けながら、ジュンの温もりが残る上着を引き寄せて、
込みあげてくるせつなさに耐え切れず、翠星石は暗い空に向かって号泣する。
溢れ出す思い出が、彼女の胸に傷みを刻んで、涙が止まらなかった。
その心を癒そうとするかのように、雪はゆっくり、ゆっくりと翠星石を包み込んで、世界を白く変えて行く。
悲しみは時を経て、いつか空へと昇って行くものだから…と。
凍った世界を風が吹き抜けてゆく。
春はまだ遠く、いまだ雪は降り止まない。
えー夏コミケに受かってマンガが忙しくなってしまったので、おいらは当分SSから脱落します。ROMります。おいらのSSなんて大して面白くもないでしょうけどw
3期があったとしても、元治は多分登場しないでしょうねぇ…。
一緒に時を刻んだジュークセイコーの話とか、一樹の名前で届くダイレクトメールの話とか織り交ぜたかったけど、長くなりすぎるのでやめました。
1期見てれば話も変わっただろうけど。
それから、安西先生ごめんなさい。あきらめが肝心との教えを破りました。(わかる人だけ解ってくだちい)
>>223 仮に蒼星石の復活があるならジジィも出番必須だと思った。
それはともかくお疲れさま、気が向いたら暇つぶしにでも
またSS書いてくれると読み手の方も楽しみが増えるというもの…。
では。
>>223 切ない話だけど、楽しませてもらったよ。
でだ、
はっはっは、何を言ってるんだ
蒼星石は帰って来るに決まってるじゃないか。
俯きながら「長い間留守にしてごめんなさい」って元治に言うんだ。
でもって、「お帰り、蒼星石」って温かく迎えるシーンがきっとある筈さ。
そんな訳でいつか、また気が向いたらSS書いてくれ。
待ってるから。
>>211 ラプラスよ、あのプレイメイトの蝶タイ姿のウサギはお前だったのかw
ところで白崎よ、週プレは平凡パンチの後継誌で、PLAYBOYとは何の関係も無いぞwww
>>223 夏コミでの活躍を期待してます。
良作SSの保管庫への収録が待ち遠しい。
2ちゃんねる小説保管庫も再開したみたいだし、いっちょお願いしてみるか。
保管の可否については、収録の時にスレで報告って形でいいよね。
良作じゃないやつはゴミ扱いか。
アゲてみる
いちいちあげてるやつウザいよ。
焦らなくても職人来るんだから待て。
はじめまして。
エロパロ板の保管をさせていただいているものです。
さて、あちらの現行スレ(9)の146さんからこちらのSSの保管依頼があったのですが、
こちらの方々的には如何でしょうか?
是非お願いします。
>232
とてもありがたいです。
よろしくお願いします。
できれば総合スレのも保管してくれれば。
作業終了しました。現行スレについては使い切るか落ちるかしてから保管という事でお願いします。
ttp://rinrin.saiin.net/~library/ 間違いとかがないかチェックをお願いします。
また掲載について不都合などがあれば削除しますので連絡を下さい。
>>236 総合スレは私もたまにROMっていますが、まとめサイトと保管庫の両方があったかと思います…
とりあえず近いうちに向こうのスレに確認に行きます。
>>104 居たねー、気色悪いリーダーの使いかたしてたキモい文章書いてたのがw
あんなのがまた出てきたら徹底的に叩いて潰すしか無いってモンよ。
241 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/06/15(木) 21:58:01 ID:hOqKlYvv
亀レスにも程がある
243 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/06/16(金) 12:19:42 ID:iKJLT2GE
どうでもいいから書けよ
>>240 たしかにあれは酷かった
変な間ばっかり空けて書いてたし内容のレベルが低杉
叩きなどどこ吹く風で何一つ作風を変えず淡々と投下を続けた職人と
投下の完結にしたがってファビョり出す叩きクンの必死さが笑えた。
職人叩きに孤軍奮闘しても徒労に終わるのはさぞ悔しかろうと思ったら
案の定スレ荒しをおっ始めたが、スレ自体の浄化作用がこのスレを生んだ。
結局、何も変わらなかったね。
リーダーを文章に使う香具師はレベルの低いクズ
つか 屍ねばいいと思うんだ
「・・・」 「…」 が少し入ってるのはまだ許せる
「......」 これは何だ?
こんなの文章に入れるのなんて初めて見たし聞いた事もない
文法のイロハすら無視し続けただけじゃなくて
リーダーの使い方で読者をことごとくナメてたのが洩れは許せなかったねw
>>246 文法のイロハもわかってない糞野郎?
言うねーあんたw
そんなに好き勝手相手バカバカ言うなら、書いてくれよ
何のために批判禁止スレにしたのよ?ルール守れない奴は完全スルーで行こうよ。レス返すのも馬鹿の思うツボだよ。言わなくても皆分かってるしさ。
直接指定して批判してるわけじゃない。
批判禁止。直接でも間接でも批判禁止。
そんだけ。
黙って読め。それだけ。
で、糞だったら批判と。
これはもう批判厨に見せかけたアンチ薔薇だな
何を今更……。
職人は黙って書いてればそれでいいんだよ。
読み手の批判訂正や駄目出しをしっかり受け止めて
いいもの書いて実力つければ、いつかは認められるんだし。
だが、クソだと即スルー対象にするから。
次からテンプレに批評禁止と明記キボン
257 :
〜酒〜:2006/06/18(日) 00:56:00 ID:GmEy7zJd
流れを読まずに投下
258 :
〜酒〜:2006/06/18(日) 00:58:04 ID:GmEy7zJd
「まずいな〜、もうこんなもの送ってくるなよ」
ジュンは倉庫のずっと奥の方に『お中元』と書かれた木箱を仕舞った。
おそらく両親宛のものだろうがずっと不在の彼らに送ったところであまり意味がない。
かといって、その木箱に入った品物はジュンにものりにも無用のものだった。
とりあえずジュンとしてはここに仕舞っておく以外になかったのである。
「いつ渡せるか分かったものじゃないよな」
そう言って倉庫をあとにするジュンの影で怪しく光るオッドアイがあった。
「イッヒッヒ、見つけたですぅ、こんなところに隠すなんて所詮チビ人間の
浅知恵ですぅ」
倉庫の奥でニヤリと笑いながら翠星石は木箱を取り出し、両手に抱えて小走りに駆け出していく。当然なのかどうか、翠星石には木箱の中身が何かなど分かっていない。
ジュンには見つからないようにリビングの片隅でそっと木箱を開ける。
「さ〜てご開帳ですう」
木箱の中から出てきたのは年代物らしい(?)赤と白の2本のワインだった。
「お酒、ワインのようですぅ」
翠星石が2本のワインをしげしげと見つめているとき、後ろから声がかかった。
「ねぇ、翠星石何してるの?」
「ヒィィィィッ?!な、何言ってるですチビ苺、す、す、翠星石はべ、べ、別にこの
ワインを独り占めしようなんて、ぜ、ぜんぜん思っていないですぅ!と、とりあえず
駆けつけ3杯ですぅ!チビ苺も飲みやがれですぅ!!!」
あせりまくりながらまくしたて、ワインのコルクを開けてグラスにワインを注ぐ、そして
そのグラスを雛苺に差し出した。
「うぃ?それお酒なの、飲んだらのりがめっめーなのよ」
差し出されたワインを雛苺は受け取らずに翠星石に答える。
翠星石は少しひるんだが、屁理屈をこねてさらに勧めた。
「それは人間の場合ですぅ、私たちローゼンメイデンにはまったく問題なしの
すっとこどっこいですぅ」
「うゆ〜、そうなの〜」
雛苺は差し出されたワインを受け取ると一気に飲み干してしまった。
「うゆ〜、おいしいけど何か変なの〜、頭がクラクラするの〜」
いきなりの千鳥足、フラフラになった雛苺はそのまま倒れて眠ってしまった。
「ちょ、チビ苺!起きるですぅ!たった1杯で情けねえですぅ!」
雛苺の胸倉を掴んで無理やり起こそうとするが雛苺が起きる気配はない。
のりが帰ってくるまでに事態を収拾したい翠星石だった。
259 :
〜酒〜:2006/06/18(日) 00:58:50 ID:GmEy7zJd
「騒々しいわね、何をしているの?」
くんくん探偵を見るためにリビングに下りてきた真紅が翠星石に詰問する。
「雛苺?これは、翠星石、貴女、雛苺に何をしたの?」
「え、あの、その違うです、チビ苺にワインを飲ませたなんてこと、あ、あ、
ありえねえですぅ!」
持っていたワインを後ろに隠したはいいが、思い切り自分の口からバラしてしまっている。
「雛苺にワインなんて100年早いのだわ、それぐらい貴女にだって分かるでしょう」
真紅に睨まれて翠星石は押し黙ってしまった。
「で、そのワインはどうしたの?」
「そ、そのチビ人間がコイツを隠すのを見たですぅ。べ、別にジュンの行動を監視していたわけではないですぅ。真紅とばかりいっしょでちょっとムカついたなんて思ってないですぅ」
後半部分を聞いたときに真紅のこめかみが疼いたのは気のせいだろうか。だがある程度の
事情は飲み込めた。
「とりあえず雛苺に飲ませてしまったことは仕方ないわね。まだワインは残っているのでしょう?」
「もちろんですぅ、でもどうするですか?」
困ったような表情で翠星石は真紅に尋ねる。
「せっかくなのだから私たちで頂きましょう。どうせジュンものりも飲まないのだから、
私たちで始末をつける以外にないでしょう」
そう言ってグラスを持つと翠星石にワインを注がせた。
「分かったですぅ〜、さあ真紅、ガンガン飲むですよ〜」
ワインをなみなみ注いで、さらに自分のグラスにも注いでいく。
「それじゃあ乾杯ですぅ〜」
真紅と翠星石はワインを一飲みで干していく。1杯、2杯、3杯と続けて飲み干していった。
260 :
〜酒〜:2006/06/18(日) 01:00:13 ID:GmEy7zJd
「さてとそろそろ中断するか」
ずっとネットを続けていたジュンがそう言って部屋を出てリビングに向かう。
ガチャ!
リビングに入ったジュンが見たものは!(←火曜サスペンスのテーマを想像して下さい)
酔っぱらった真紅と翠星石の姿でした。(だめだこりゃ)
翠星石はジュンを見るなり喚き散らす。
「おうおうおう!チビ人間!酒だ!酒!酒買ってこいですぅ!!!」
「な、なにやってんだお前ら!!」
「見て分からんですか!このトウヘンボクですぅ!!とにかく酒ですぅ!!」
喚きながらジュンの脛に低空ドロップキックをかます翠星石。その横では真紅が
ジュンをじっと見つめている。
「ジュン」
呼びかけると同時に真紅はジュンに抱きつき、ところ構わずキスしまくる。
「うわッ!わッ!わッ!うわわわッ!!!!」
ジュンは狼狽して慌てて真紅を突き放す。
「ジュン、なぜなの、なぜわたしを拒むの?」
半泣きで真紅はジュンに詰め寄る。ある意味で凄まじい迫力ではあった。
ジュンは半ば逃げるようにリビングを出て翠星石に命じられるまま酒屋へとダッシュした。
261 :
〜酒〜:2006/06/18(日) 01:01:23 ID:GmEy7zJd
「翠星石に会うのも久しぶりだな」
蒼星石は鏡から現れるとリビングへと歩いていった。
「やあ、翠・・・星・・石・・・・?」
蒼星石はベロンベロンに酔っぱらっている姉の姿を見て絶句した。
「おう来たか!蒼の字!駆け付け3杯ですぅ!とっとと飲みやがれですぅ!!」
翠星石は台所にあった焼酎を持って蒼星石に迫る。
「ちょ、ちょっと翠星石、目が座ってるよ。うわ酒臭い!!」
翠星石は蒼星石を捕まえるとコップにも注がず、瓶のまま焼酎をラッパ飲みさせる。
「だ、だめだよ、翠星石、僕、お酒は無理・・・うぐ!」
「酒は飲んでも飲まれるなですぅ。蒼星石もしっかり飲むですよ〜」
言葉とは真逆に完全に酒に飲まれている翠星石、蒼星石は半分残っていた焼酎を
一気飲みさせられ、頭がボーッとなっていった。
「蒼星石、どうしたですぅ?」
うずくまっている蒼星石に翠星石が問いかける。
ギラリ!
蒼星石の両目が光ったかと思うと、蒼星石は翠星石をいきなり正座させ説教を始めた。
「いいかい翠星石、僕たちローゼンメイデンはお父様の願いを叶えることが何よりの使命だ。君には呆れるくらいそうした意識が欠けているよ。そもそもこんなこと・・・」
「そ、蒼星石、酔っぱらってるですか?」
蒼星石の言葉を遮って翠星石が問いかける。
「ぼ、ぼ、僕は酔っぱらってなんかいない!!!ヒック」
完全に酔っぱらってます。ありがとうございました。
このあと蒼星石は酔いの醒めた翠星石に小一時間説教を食らわしました。合掌。
262 :
〜酒〜:2006/06/18(日) 01:02:53 ID:GmEy7zJd
一方の真紅、翠星石に分けてもらった焼酎をちびちびと飲みながら泣いていた。
泣き上戸、キス魔だったらしい。しかも対象であるジュンは逃げてしまっていた。
「ジュン、ジュン、私といっしょにいたいのではないの・・・・」
半ばヤケ酒、ローゼンメイデンの誇りもどこへやら・・・・
その時、TVの画面から黒い羽根を舞わせ水銀燈が現れた。
「あらぁ、おマヌケさんの真紅ぅ、何を泣いているのぉ」
「・・・水銀燈」
「情けない顔、ブサイクだわぁ、でもそれがお似合いよ」
水銀燈にとっては今の真紅は泣きべそをかいたマヌケな人形にしか見えなかった。
アリスゲームを始めるため戦闘態勢に入ろうとする水銀燈にいきなり真紅は抱きついた。
「うわあ〜〜、水銀燈!!」
抱きつかれた水銀燈は虚を衝かれた。
「な、なによ!なんなのよ!!離しなさい!!」
しがみつく真紅に水銀燈は必死に振り払おうとする。
「ジュンは、ジュンは私のことが、ああ〜!!」
「な、なに真紅、貴女酒臭い!!!」
「ジュン〜〜!!うぅ、うえぇぇぇぇぇ・・・・」
なおも振り解こうとする水銀燈だったが、それが思い切り裏目に出た。
目が回った真紅の気分は一気に悪くなった。
「ああああ!!!真紅〜!!私のドレスに吐かないでぇぇぇぇぇ!!!!!」
すべてが遅かった。水銀燈のドレスはゲロまみれになり悪臭が鼻をついた。
今度は水銀燈が泣く番だった。
「し、真紅〜、なんて、なんてことするのよ!うわ〜ん!お父様!!めぐぅ!!!」
真紅は水銀燈を倒した。真紅、お前は鬼か。
「ふんふん♪ちょっと買いすぎちゃったかしら。みんな待っててね、おいしい
花丸ハンバーグを作ってあげるから」
のりは鼻歌を歌いながら上機嫌で家路についた。
「みんな〜、ただいま〜」
返事がないのを不審に思いながら台所へと向かう。そしてリビングで見たものは!!
転がる酒瓶、管を巻く蒼星石、迎え酒の翠星石、そして泣いて吐いてる真紅・・・・
のりを怒りは限界を超えた。
「なにしとんじゃあ!!おどれら!!!」
というわけで、この日の夕飯はもちろん、翌日の朝も飯抜きになりましたとさ。
めでたしめでたし。
GJ!!!
GJ!
とても面白かったです。てか真紅の酒癖がwww
また書いてくれれば嬉しい限りです。
面白かった、カナリアにも出番を!
GJ!
のり怖ぇーwww
「JUN、くんくんがはじまる時間だわ、急いでちょうだい」
さっきまでおとなしく本を読んでいた真紅がJUNの膝の上に飛び乗る
「リビングくらい自分で歩いていけよ」
文句を言いながらも真紅を抱きかかえ、リビングへと向かうJUN
「あれ?こんなとこに鏡?」
廊下に落ちていた鏡を拾い上げ、覗き込んだその時
ピカーーーッ
鏡からあふれる光がJUNと真紅を包み込んだ
「いらっしゃ〜い真紅、あらぁ、今日は情けないミーディアムも一緒なのぉ?」
例によって水銀燈のワナであった
「水銀燈、また貴方なのね、お茶の時間も・・・・・ハッ、くんくん!!」
なぜかソワソワしだす真紅
「真紅〜、今日こそは決着をつけましょう、お父様も痺れを切らしているわぁ」
大きく羽を広げ臨戦態勢になる水銀燈
「待って!!今は貴方と戦うつもりはないの!大事な用があるの!」
「あらぁ、逃げるつもりかしらぁ?そこのミーディアムに笑われるわよぉ」
真紅の言葉を自信の無さと受け取った水銀燈が勝利を確信した時
「くんくんが!くんくんが終わるまで待って!!」
「へ???」
「このフィールドにJUNを置いていくわ、だから30分だけ待ってちょうだい!」
「おバカな真紅、アリスゲームにふさわしくないわぁ」
「私のホーリエも置いていくわ!だからお願い!」
「・・・・・・あきれたわ、薔薇乙女の誇りはどうしたのかしらぁ?」
あまりに必死な真紅に気圧されたのか、水銀燈も引き気味である
「水銀燈!キミたち姉妹は何十年も闘ってきたんだろ?今さら30分も待てないのか?」
JUNとて真紅と共に何度も戦いをくぐりぬけたミーディアムである
(真紅、時間を稼いでる間に雛苺と翠星石を連れてくるつもりなんだね)
これまでの真紅との闘いの思い出が水銀燈の胸を熱くさせた、最後に少しの情けくらいは・・・・・・
「いいわぁ、30分だけ待ってあげる、もし戻って来なかったら、あなたのミーディアムが死ぬだけのこと」
水銀燈の返事を半分も聞かないうちに真紅はnのフィールドから姿を消していた
「ハァハァ・・・・くんくんはまだ始ってないわね?」
リビングにすごい勢いで飛び込む真紅
「真紅〜、おそいよぅ〜はじめの歌が終わっちゃった〜」
ソファの上に座る雛苺がTVを指差しながら答える
「今週は解決編、見逃すわけにはいかないわ、ノリ!紅茶の用意を」
真紅はソファの上に正座し、くんくん視聴の態勢を整える
「真紅〜、今週はね、くんくん2時間スペシャルだって〜〜!雛もワクワクしてるの〜〜」
・・・これが寝落ちか。
ハヤクオキテー
>>258 グッジョブ!やっぱり酒グセの悪い薔薇乙女達にワラタ、変なエロパロよりエロい
>「おう来たか!蒼の字!」
ツボった、
インスパイヤってことで勝手に番外編書きました
「う・・・・うっく・・・ひっく・・・もうやぁよぉ・・・・ぐすっ・・・ズルルッ・・・」チーン
水銀燈は泣いていた
真紅のゲロで汚れた自分に、あまりにも情けない妹達に、そして部屋に充満する酒の気に
あの冴えないミーディアムは泣きじゃくる水銀燈を気遣って色々と話しかけてくるが
水銀燈は泣きながら手と羽根を振り回し「ほっといてよぉ・・・・」と言ってまた泣いた
その時
「おひとつ・・・・・いかが?」
それまで水銀燈を無視して忙しく動き回り、真紅や翠や蒼の不始末を片付けていたのりが
いつのまにか水銀燈の横に座り、湯気をたてるお銚子の中身を、小ぶりな湯呑に注いだ
吐き気がする酒の匂いをたてる熱い湯呑をのりに投げつけてやろうと思ったが
のりはただ黙ってお銚子をそばに置き、自分を散々困らせる同居人達を優しい目で見ている
水銀燈は湯呑を手に取った 「頂く・・・わよぉ・・・」 人肌の温もりに燗した酒に口をつける
「最悪・・・・」湯呑になみなみ注がれた甘く口当たりのいい熱燗を、水銀燈は飲み下した
昔、ずっと昔のミーディアム、人形だけが友達の少女、病に冒された少女を思い出した
水銀燈が風邪をひいた時、少女はお湯で薄めた葡萄酒を飲ませてくれた・・・甘い味がした
「サケ・・・・わたしたちのふるさと、日本のお酒よ、お米で作ったワインなの・・・・」
のりは呟く・・・水銀燈は置いてあったお銚子を取り、近くに転がってた杯をのりの前に置いた
「あなたも・・・・飲みなさいよぉ・・・・」
水銀燈がのりの杯に少しこぼしながらぬるい燗酒を注ぐと、のりは杯を水銀燈に向けて差し上げ
にっこり笑うと粋な仕草で飲み干した、そして再びお銚子を摘み、燗冷ましを水銀燈の湯呑に注ぐ
注いで注がれて、薔薇乙女達が醜態を晒して眠る居間での酒盛りは、静かなまま・・・
水銀燈は桜色の頬に触れながら思った、あの時葡萄酒を口移しで飲ませてくれた少女はもう居ない
でも今の私にはアツカンを注いでくれる気のいい娘が居る、心許すには早いけど、アツカンは美味い
どこまでも不透明なアリスゲーム、幸福なのか不幸なのかわからない自分、今日の災難
後ろでは、床に座り込んだまま酔いの回ったのりが、肩をコキっと鳴らしてため息をついている
ドールの自分には辛いことも多いけど、それはきっと皆同じ、美味い酒が飲めれば、それでいい
水銀燈は立ち上がった、帰らなくちゃいけない、わたしには帰るべき所があるから
うつらうつらし始めるのりと、無防備に酔い潰れる薔薇乙女達、今日は何も奪わずに帰ろうと思った
それでいい、と思った
(完)
酒を勧める上に自分でも飲むのりに激しい違和感
ドールなんだから風邪なんてひくのもおかしいと思うが?
人のまわしで相撲をとるのは難しいね
まぁ一応乙
273 :
妄想のままに:2006/06/18(日) 14:03:23 ID:JcK2K0wd
タイトル「翼と喜怒哀楽」
ジュン君!ジュン君!」
のりの呼びかけにも、彼の返事が返ってくる事はない
ベッドで寝込んでいるジュンは、荒い息を立て苦悶の表情を浮かべている
「はぁ、はぁ、」
のりの後ろで見ているドール達も、心配そうに様子を窺っていた
「ジュン〜・・・」
「・・・チビ人間」
のりは頭の上の湿ったタオルを、ベッドの傍に用意した水の入った桶に浸して冷やし
しっかり絞って、また乗せ直す
病院で言われた事は、渡された錠剤とあとは様子を見る事だけ
のりは、医者の指示に従う事しか出来なかった
目の前に苦しんでいる弟がいるのに、こうして見ている事しか出来ない自分が情けない
一緒に様子を見ていた真紅は、他のドール達に退席を煽る
「私達が居ても邪魔よ、外で待ってましょう」
「・・・なの」
「・・・はいです」
2歩3歩、歩を進める度に雛苺はジュンに振り返る
真紅と雛苺に続き、翠星石も部屋を出る
ドアを閉める際に、翠星石もベッドのジュンに目を向ける
のりの瞳の下で、苦しそうにジュンが荒い息を立てている
何かジュンを助ける方法はないか、ただそれだけを考えていると
頭の中で、ふと何かがひらめいた
部屋を出た廊下で、雛苺は溜まっていた想いを真紅に問い掛けた
「ねぇ真紅〜、ジュン、大丈夫だよね?」
それに真紅も躊躇なく答える
「大丈夫よ、あれくらいで死ぬ家来じゃないわ」
「でもでもー、ジュンとっても苦しそうだったのよー」
「のりだって付いてるんだもの、大丈夫よ、きっと」
口では言う物の、真紅も心の中で不安を抱えていた
ジュンの容態は、右腕の指輪からも感じ取れる
ジュンから流れてくる意識、それが今確実に弱まっている
ドアが開き、のりが部屋から出てきた
彼女の表情は曇ったままで、のりの口元にドール達の注目が一斉に注がれる
「ねぇーのりー、ジュンは大丈夫なのー?」
「お医者さんはただの風邪だって言ってたから、大丈夫だと思うんだけど・・・」
「ジュンは今どうしてるです?」
「渡された薬を飲んで、寝ているわ・・・ジュン君は、苦しそうなままだけど」
ジュンの容態は悪いまま、のりの瞳は不安げな色を浮かばせる
「私、どうしたらいいのかしら・・・」
誰に問い掛けるわけでもなく、その想いが声に漏れる
そんな彼女に、真紅はやさしく語り出した
「そうね、ジュンは今病気と戦ってるんだもの、それなのに貴方が
そんな辛い顔をしていては、ジュンも安心して病と戦えないわ
貴方はそっと、ジュンの傍に居てあげればいいのだわ」
次に壁にもたれ掛かるもう一人の彼女に振り向いた
「それに翠星石、何か思いついた事があるのではなくて?」
まるで心の中を見通された様で、翠星石が顔を上げる
「よくわかったですね」
「顔にそう書いてあるわ」
真紅に促され、翠星石も口を開いた
「ジュンの夢の中に入って、翠星石の如雨露で心の木に栄養を与えてやるです
心の木も、ジュンの体と関係している所があるですから
心の木を元気にしてあげれば、ジュンも元気になるはずですぅ」
みんなに考えを告げると、返事を待つために口を噤む
考えはまとまってる物の、これは翠星石の一存では決められない、ここに居る全員の承諾を必要とした
それから少しの沈黙のあと、のりが真っ先に返事を告げる
「お願いするわ、翠星石ちゃん、ジュン君の苦しみが少しでも、軽くなるなら」
「翠星石〜、ジュンを元気にしてきてなのぉ」
「いい考えね」
みんなの賛同も得て
翠星石は拳をぎゅっと握る
「まっかせるです〜」
握った拳をほどき、ドアに手を掛けようとした翠星石だが
後ろから真紅に呼び止められた
「待って、あと私も行くわ
ジュンはこの真紅の家来だもの、家来の体は主人である私も
見る必要があるのだわ」
真紅の同行に、翠星石も快く受け入れる
「了解ですぅ〜
2人でチビ人間のへたれっぷりを叩き直してやるです〜!」
ドール2人の役所も決まり、残りの雛苺に真紅が指示を言い渡す
「雛苺、貴方はのりと一緒にジュンを見守ってあげるのよ
のりが大変になったら、貴方が変わりに助けるのだわ」
「外は頼んだですよチビチビ〜」
「了解なのー!ジュンものりもヒナが守ってあげるの〜」
早速作戦開始とばかりに
のりの胸に跳び付き、素早くだっこしてもらう
それじゃどっちが守られてるか解ったものじゃないわね
真紅は心の中で呟いたが、口には出さない
のりは雛苺を抱き寄せて、2人で抱擁を交わしている
それに雛苺が笑顔で応え、曇っていたのりの表情も和らいだ
これでまた、彼女が不安に駆られる事はないだろう
みんなの決意も整い、改めて取っ手に手を掛け
真紅と翠星石は、ジュンの待つ部屋へと足を踏み入れた
部屋には、ベッドで頭にタオルを乗せたジュンが布団を被り寝ている
頬は赤くなっていて、その寝息さえもが苦しそうで、荒い
「ジュン・・・」
衰弱したミーディアムを前に、思わず翠星石の口から彼の名前が漏れる
隣にいる真紅も、声は出さないものの心配な目で見詰めている
そして一刻も早くジュンの病を取り払う、本題に体を戻す
まず部屋の端に置いてある自分の鞄を、ベッドの傍まで引きずり寄せる
「うんしょ、うんしょ」
鞄の上板を開くと、中から緑色の光、人工精霊が飛び出てきた
「スイドリーム!」
緑の光は宙を舞い、次の瞬間に鈍い音を響かせ、人工精霊が強く瞬き出す
光はジュンの部屋を緑色に照らし、寝ているジュンの前に
空間が水面の様に揺らいでいる、夢の扉が出来上がる
強い光を発した人工精霊は、小さな光を点滅させながら、まるで力を使い果たしたかの様に
ゆらりゆらりと滑空し、翠星石の両手の上に落ち着ついた
「さぁ、行くわよ」
「はいです」
真紅と翠星石は、互いに意志を確認し合う
「ジュン君をお願いね」
「真紅ぅ、翠星石ぃ〜、あいとなのー」
真紅は意を決し、宙に浮かぶ水面に跳び込んだ
それに翠星石も後を追う
跳び込んだ2人は、水面の中へと吸い込まれていく
水面は波打ち、まるで異世界に何者かが入り込んだ事を知らせるかの様に
彼女らが旅立ったのを確認すると、波打つ水面は徐々に静まっていった。
ここは夢、ジュンの夢の中
真っ先に目に入るのはパソコンが積もった丘に、学校と言う所の本が敷かれた一本道
横を見渡せば、机が幾多にも連なった山々、その先には丘の上にある赤い屋根の小さな家
あの家は昔、ジュンが私を抱えて連れて行ってくれた、思い出の場所
前に来た時は、空も雲の隙間から日差しが差し込み
歪な世界ではあるけれども、光に満ち溢れていた
今2人は、ジュンの夢の中でもひときは綺麗な
木々の中にぽっかり出来た泉の真ん中の、小さな陸地に立っている
「これはひどいです・・」
翠星石が悲しい目で、足元に生えた小さな木を見詰めている
その木はジュン、ジュンの心その物
前に来た時はヘンテコリンな形ではあったけど、陽を浴び、水を浴びて
葉っぱは青々と、地面にしっかり根を生やし、元気な姿を見せていたのだ
しかし、今は葉っぱが萎れ、幹は茶色く瑞々しさを失っている
「これはどう言う事なの?」
真紅の中でも大体察しは付いていたが、あえて訊ねた
心の木に関しては、庭師である翠星石の方がより深く知っている
「今このチビ木は、病気のせいで地面とを繋ぐ根がとても弱ってるですぅ
だから心にも上手く栄養が入らなくて、今とても、チビ木も苦しんでるです・・・
その影響で、空もこんなに真っ暗だと思うです」
空は黒い雲に覆われ、差し込む光もなく、ジュンの夢の中を暗く覆っている
心がこれだけ暗い物に支配されていると言う事は
今ジュンが、それ程までに病に侵されている事を意味している
空を見詰める翠星石は
ジュンを助ける
心の中でそう決意を表すと、再び瞳を心の木に戻す
次にゆっくりと膝を屈め、両手でボールを抱える様に手の平で丸を描く
その上から先程の人工精霊が円を描くと
目の前の空間が揺らぎ、そこから瞬く間に如雨露が具現化する
如雨露は構えていた翠星石の手の中に落ち着き
次に心の中で念じると、中から水が湧き出してきた
これが庭師である翠星石の力、湧き出した水は、如雨露の中を一杯に満たして行く
「これで、元気になるはずです」
抱えていた如雨露を傾けると、先からいっぱいの水が溢れ出してきた
水は如雨露を伝い雨となって、滞りなく心の木に降り注ぐ
雨はやや緑掛かっていて、人の心に栄養を与える事が出来る特別な水
その水を浴びて、枯れ掛けていた心の木がわずかに緑の光を煌かせた、だが
傾けていた如雨露を戻し、水やりを止める
「どうしたの?」
真紅は思わず声を掛けた
「・・・ダメです、心の木はとても弱っていて、翠星石の力じゃ」
そこで口を閉ざす
水をあげた事で、木は一瞬だけ光を発したものの
その光はまたすぐに消え去り、萎びれた葉も、痩せ細った幹も
何一つ、元気な姿を取り戻す事はなかった
「どうすれば・・・」
「他に方法はないの?」
如雨露だけでは、心の木は救えない
しかし、庭師である彼女以外に心の木を救える事は出来ない
翠星石は、ジュンを助け出すための方法を必死に考えていた
考えは浮かんでは消えて、ローゼンメイデンとして生まれてから今日に至る迄の様々な記憶の中で
心の木を救う方法を、手探りで探していた
記憶の奥底、光さえも届かぬ暗い中で小さい何かが光っている
手が、その光の粒を掴もうと腕が伸びる
あと少し、もうちょっと
やっと光に手が届き、それを握り締めると、光った拳を胸元に手繰り寄せた
真紅が問い掛けてから、しばらくの沈黙が流れていた
翠星石は、弱っている心の木を見詰めたまま、地にしゃがみ込んだまま口を開こうとしない
庭師でない真紅には、ただ翠星石を待つ事しか出来ない
もし、彼女が諦めれば
それはつまり、ジュンの心の木はもう治らないと言う事
そして、こうしてる間にもジュンは病に苦しんでいる
悪い事が頭を過ぎり、真紅の顔にも不安の色が見せ始めたその時
「あれなら、もしかしたら・・・」
背を向けたまま、翠星石が呟いた
「翠星石?」
次にすっと立ち上がり、体を浮き上らせる
夢の中では、飛ぼうと思えば誰だって飛ぶ事ができる
「着いて来てほしいです」
こちらに振り返り、それだけを言って口を噤む
真剣な顔付きの彼女、そんな翠星石に、真紅もそれ以上咎めなかった
「えぇ、わかったわ」
翠星石を先頭に、真紅の2人は森の中を飛んでいる
暗いジュンの夢の中を、木々の間を掻き分けて行くと
突然目の前が光だし、その光が瞬く間に広がり、翠星石と真紅の2人を包み込んだ
光の中を臆する事なく進んでいくと
正面の光が晴れて行き、広がる光景が一変する
何もない空間に、大きな"枝"が一本だけ先の方にずっと伸びている
2人はジュンの夢の中から、別の世界に入り込んだ事を確認すると
「これを辿るです」
その枝を辿って、2人はさらに飛び続ける
しばらく辿っていると、何もなかった目の前に一面を覆う壁が見えてきた
その壁は、近づいていく度にどんどん目の前に立ち塞がり
どうやらこの枝は、その壁から生えている物の様だ
2人は壁の前まで飛び進めると、辿っていた枝の上に足を付き、一端そこに降り立った
ここで少しの休憩、真紅はその壁のすべすべとした表面に手を当て、辺りを見回す
この世界には、風は全く吹かない様だ
その壁は、隣を見渡せばどこまでも続いていて、上を見上げればどこまでも高く聳えている
まるでこの世界が、ここで終わりを示しているかの様にそれはずっと聳えている
「これが、世界樹ね・・・」
真紅が手を付いているこの壁は、その樹を成す巨大な幹
世界樹とは、現実世界を構成している一本の巨木の事である
「チビ人間のチビの木も、これだけ大きいと心配はいらないんですけどね」
この巨木の幹を辿れば、やがて世界の根幹に辿り着くと言うが
今だそれを成し遂げた者は居らず、もっとも今回は、世界の根幹探しに来たわけではない
また少し上の方では、巨大な幹から別の枝が生え、それがどこまでも伸びている
真紅はこの巨大な樹の存在を知ってはいたが
間近で見たのは初めてだったので、しばしその大きさに圧倒される
こんな物が一本の樹だなんて言うのだから、驚きだ
翠星石はこれだけ大きな樹が、目の前にあると言うのに顔色一つ変えず
見慣れているのか、さすが夢の庭師と言った所である
休憩も済み、また翠星石は体を浮き上らせる
「そろそろ行くですかね」
「そうね」
真紅も見上げていた目線を戻し、枝を後に、2人は樹の世界の奥へと再び体を動かした
何もない、静寂とした世界に、巨大な木が一本聳え立っている
翠星石と真紅の2人は、世界樹の幹を辿って下へ下へと飛び進んでいた
幹からは大きな枝が何箇所からも伸びていて、そんな景色がずっと続いている
世界樹とは、現実世界を構成している巨木
この樹から伸びている枝の数だけ、人の夢、心が存在している
数え切れない程の枝の中に、もしかしたら、お父様に続く枝もあるのだろうか
しかし、アリスでない私達に、今それを探す事は適わない
それにしても、幹を頼りにあれからずっと飛び続けていると言うのに、世界樹の付け根にあたる場所は全く見えず
この世界の終わりとも錯覚させる巨大な幹は、一体どこまで続いてるのだろう
先頭を行く翠星石は立ち止らず、ひたすらに下を目指し続けている
一応道は合っている様だ、真紅もそれに従い後を追う
2人は、そんな代わり映えのしない景色の中をずっと降りていった
それからしばらく、幹と言う名の壁と、無数の枝だけが続く景色を降りていると
翠星石が突然飛ぶスピードを緩め、宙で体を静止させる
そこにジュンの病を治す方法があるのだろうか
真紅もそこ迄飛ぶと、彼女の後ろで一端動きを留める
「ここです」
翠星石は世界樹の幹に正面を向けたまま、真紅に到着した事を伝える
しかし、後ろの真紅から見えるのは巨大な幹、その木肌が前を塞いでいるだけ
「ここって、何かあるの?」
「着いて来るです」
そう答えると、翠星石は突然正面に向かって顔から突っ込んでいった
しかし、前にあるのは巨大な幹が正面を塞いでいるだけ
それなのに翠星石は、何の躊躇もせず壁に飛び込んで行く
彼女の突然の行動に、真紅は思わず目を塞ぐ
あぶない、ぶつかる!
しかし、なぜか壁に当たる衝撃音が聞こえてこない
不思議に真紅が目を開けると、今度は翠星石まで姿が消えている
「翠星石?」
突然一人取り残され、真紅は翠星石を探し辺りを窺うと
「こっちですよ〜」
彼女の声が返って来た、しかし解らない事に、その声はなぜか世界樹から響いて来る
声は丁度、先ほど翠星石が突っ込んでいった幹の部分から聞こえている
「どうすればいいの?」
「中に入ってくるです」
翠星石は、幹の中に入る様に真紅を促す
とすると、彼女は今世界樹の中にいるらしい
真紅は少し信じられなかったが、この状況で冗談を言う子ではない、それに、ここを越えなければジュンを病から救えない
心の中で意を決し、真紅も幹に向かって突っ込む
壁はどんどん目の前に迫ってくる
そのまま目を瞑り、怖いけど、それを堪え、真紅は壁に向かって飛び込んだ
パタン、足が地面に降り立ち、念のためおでこに手を当てる、幸い痛みもなく、ぶち当たると言う落ちは免れた様だ
目を開けると、辺りは一面の霧が覆っていた、その霧はとても深く、少しの先も窺い知る事が出来ない
視界は全く利かないがとりあえず、ここは別の世界、世界樹の中に入り込んだ事を理解する
「翠星石、ついたわよ、どこなの?」
深い霧の中で、真紅は声を上げて翠星石を探す
視界が利かない以上、頼れるのは音だけだ
「こっちですよー」
返事が返ってきた
真紅は声のした方へと、霧の中を掻き分けながら歩いて行く
左右に目を配りながら、翠星石を見逃さない様に足を進めていると
目の前に緑色に揺らめく陽炎が見えてきた
こう言うときだけ、彼女の着ているドレスはとても役に立つ
真紅は翠星石の傍まで歩み寄り、とりあえず安堵の息を付こうしたが
今度は突然、翠星石とは違う鈍い声が響いてきた
(こんな辺境の地に客人とは・・・1人は、いつかの緑の娘であるな)
声はとても大きく、それなのに、辺りを見渡してもどこから聞こえているのか解らない
「久しぶりですね」
真紅を他所に、翠星石は何の躊躇いもなく言葉を返す
翠星石はなぜか頭上を見上げたまま、頭を下げようとしない
そして、また声が聞こえてくる
(前に言っていた、お父様にはもう会えたのか?)
「・・・まだですね」
(そうか)
淡々と、聞こえてくる声と会話を続けている
お父様の事を知ってるなんて、相手は一体何者だろうか
真紅は現状を把握すべく、見上げている翠星石に問い掛けた
「貴方、誰と話しているの?」
呼び掛けに、翠星石が真紅に振り返る
それに一つ言葉を告げて、再び後ろに向き直し、指を上へと突き刺した
「まだ話してなかったですね、上ですよ、上」
翠星石の指が示す方に、真紅は釣られて目線を上げる
すると、真紅の頭上、霧の中に、緑色の先ほどのドレスとは比べ物にならない程の巨大な陽炎が浮かんでいる
突然の謎の物体に、真紅は目を疑っていると
自然と辺りの霧が晴れ、徐々にその全容が露わになっていく
まず頭上の霧が晴れていく
それは、その物体の顔にあたる部分
その顔は太く胴長で、大木を四本束ねた幹の太さくらいはあるだろうか
顔の後ろには、真紅の頭ほどの大きな黄色い瞳が二つ、真紅と翠星石を見下ろしている
目の後ろには高く硬そうな角が生えていて
頭から辿って首は太く、蛇の様に長く伸びて、頭上でその大きな頭を支えている
さらに胴体はもっと大きい、ジュンの家の二つ分くらいはあるだろうか
首から辿って、その背中にあたる所からは
その胴体に劣らない大きな布が張って出来た様な翼が二枚、高く聳えて生えている
下半身からは尻尾が生えていて、それが見えなくなる迄続いている
体全体は緑色、凹凸のないすらっとした皮膚に覆われていて、小さい山一つ分はあろうかと言うその姿は
丁度昔読んだ本の中に出て来る、竜と言う生き物に良く似ていた
真紅はその巨大な姿を前に、頭上の竜を見上げたまま圧倒される
竜は両腕を組んで地面に寝そべっていて
その腕の指から生やした爪、指は三本、その内の一本だけで真紅達の体を裕に越えていた
(驚かせてしまって、すまないね)
竜は瞳を瞼で覆い
目を瞑り、真紅に謝罪の意を告げる
しかし竜は口を開く事なく、想いが真紅の体に響いてくる
恐らく、テレパシーと言う物なのだろうか
目の前の巨大な物体に謝られて、真紅の頭の中に思考が戻って来る
「こちらこそ・・・、少し取り乱してしまったわ、私は真紅、貴方の名前は?」
(私に名前はない、好きに呼んでくれても構わないよ)
それに翠星石が言葉を付け足す
「翠星石はトカゲって呼んでるですよ」
真紅は目の前の竜の姿をもう一度見直す
トカゲにしては、ちょっと大きさに無理がある様な気もするが
名前に関しては、少し保留にして置く事にした
「えぇ、わかったわ、それで、ここはどこなの?」
これが一番重要なのだ
翠星石は知っている様だが、真紅にはまだ世界樹の中、と言うだけしかわからない
それから少し間を置いてから、竜の意識が体に流れ込んできた
(ここは心の泉、人の心から生み出される、想いが溜まる世界樹の空間)
「心の泉?」
真紅は言葉に釣られて、霧が晴れた周りの光景に振り返る
生えている植物は青々とした緑の芝生が隙間なく生い茂り、地面を緑色に染め上げている、
その緑の地面には背丈の低い黄色の小さな花が、芝生のキャンバスの上に点々と咲き乱れている
そしてその地面に、ぽっかりと丸く切り取られた、大小様々な穴が幾つも出来ている
穴には水が満々と湛え、不思議な事にその水は、穴に寄って一つ一つ色が違っていた
赤い水、青い水、黄色い水
そんな色取り取りの水が泉となっていて、地面に幾つも湧いている
他に山や、視界を妨げる様な木々は一本もなく、見渡す限り、そんな平坦な世界がどこまでも続いていた
(心の泉とは、人が心の中で抱く想い、その想いが己の領海から溢れ出し、世界樹の枝へと注がれる、想いは枝を介して、世界樹の幹を通り
この世界に注がれ、想いは水と言う凝縮体に変わる、その水が溜まり泉を形成した物が、この世界に広がる泉、心の泉なんだよ)
「色んな色があるのね」
(あぁ、人の喜び、悲しみ、怒り、憎しみ、それらが水の色に現れている
ここには様々な泉があるからね、あの桃色をした泉は、人が抱いた恋心と言う物かな)
(私はこの世界樹から生を受け、この泉を管理し、人の心を見守る者)
ここは人の感情の溜まり場、ある程度の事は把握できた
しかし、真紅がここに来たのは初めて、その存在さえ知らなかったというのに
「翠星石、貴方もよくこんな場所を知っていたわね」
「昔のミーディアムの家に居た頃、紅茶と間違ってワインを飲んじゃいましてね
それで夢の中をふらふらしながら彷徨ってる内に、たまたま入っちゃったですよ」
「・・・貴方らしいわね」
「そしたら、目の前にこんなおっきなお前がいるんですから
その時は翠星石も仰天しちゃったですよ、まったくー」
それまで淡々と話を続けていた翠星石だが、急に腕を組み考え込み始める
「・・・でもなぜか、トカゲとは初めて会った気がしなかったんですよねぇ」
(あぁ、私もそうだった、あの時は不思議と、何か近い物を感じたよ)
竜もそれに頷きを返す
「翠星石もそうでしたそうでした、不思議ですねぇ」
(私もずっと長く生きているが、不可思議と言うのは尽きない物だ)
小さい緑と大きい緑が、その難問に苦闘している中
真紅は頭の中で小さく呟いた
「・・・同色の輪は偉大ね」
一通り話も済んだ所で、あれに関しては結局答えが出ないまま、また次に話し合う事にした
(それで、今日は何用なのかね、私に会いに来てくれたのなら嬉しいが
そうではないのだろう?)
トカゲに促され、翠星石の表情にも力が入る
少し後ろに振り向き、真紅が頷くのを確認すると、トカゲに本題を告げる
「あの時の、紫の水を分けて欲しいんです」
(あれを?)
「はいです、今私達と住んでいる人間が、病気で大変なんです
あれがあれば、病気も治せるはずです」
(確かに、あれならあらゆる病を直す事が出来るかもしれん、だが、それはならん)
トカゲの言葉に、翠星石は落胆する
「な、なぜですか、お願いです!」
(ここにある泉は、世界樹の幹より運ばれた神聖な物を、それを外界に出す事は許されないのだよ
・・・それに)
「でも、あれがないと!」
それがジュンを救える唯一の方法、翠星石も諦めない
竜はそう告げると、今まで寝そべっていた体を起き上がらせた
巨大な体が空に向けて衝き上がり、竜の腕の3倍、4倍はあろうかと言う大きな足が2本その巨体を支え、重みに地面が唸り声を発てる
(着いてくるかね?)
どこまでも平坦な地面と、様々な色の泉が続く地上を見下ろしながら、大きな竜の頭の上に乗り、2人は空を飛んでいた
巨大な左右の翼を羽ばたかせながら、一定の速度で飛んでいる
この翼と言う物を見ていると、思わず水銀燈を思い出してしまうのだが
今はそんな事を考えている場合じゃない、真紅は頭の中で考えを揉み消す
(ここは様々な想いが泉となり、混在している場所と言ったが)
竜の意識が、また流れ込んでくる
(ここ一体は、見てごらん、黒い泉が多く見えるだろう)
真紅達は釣られて下に目を移す、すると竜の言うとおり、他の色の泉も見えるが、黒い泉の方が比較的多く地上を覆っている
「本当ね、何かとても、悲しい色だわ」
(あれは人の憎しみ、憎悪が溜まった泉でね、最近は人の争いばかりで、前はここももっと様々な色の泉があったのだが
今じゃそれが全部、黒い水に覆われてしまった、ここだけじゃない、この世界の至る所で黒い泉が増え続けている
やがてあの黒い水が、この世界を埋め尽くすのかもしれない)
竜の悲痛な想いが、体の中に響いてくる
少し先の方では、今頭の上に乗っているこの竜より何倍も大きな泉が、全て黒い水で埋まっている
人が辛い想いをする度に、この黒い水はどんどん増えていく
今私達が目指しているお父様は、どんな気持ちを抱えているのだろうか
(さて、そろそろ降りるぞ)
竜は体制を屈めて、地上へと降り始める
翼を羽ばたかせ、ゆっくりと高度をさげながら、地面に足を踏み締め
真紅達も竜の頭から飛び降りると、とある泉の前に降り立った
「これは・・・」
翠星石が唖然と目の前の泉を見詰めている
その彼女の反応をしばらく見届けた後、竜は相槌を打つ様に言葉を告げる
(そう、これが紫の、幸福の泉)
(紫の水は、人が幸せを感じ、その想いが水となった物
前はこの泉も、もっと世界の至る所で湧いていたんだが)
目の前の泉は、水かさは極端に下がり、枯れ果てた土肌が剥き出しになっている
しかし、底の方にはわずかに紫の水が残っているが
(この穴も、またすぐ黒い泉と化してしまう)
底の方からは、土肌の隙間から黒い水が湧き出していて
わずかに残っていた紫も、黒く濁らせてしまっていた
(これでここ一体は、もう完全に黒い泉で覆われてしまったよ)
辺りの泉一体は、どれもこれもが黒い水を湛えている
地面の芝生も、その影響で茶色く萎びれ、花は枯れ、ここから見回すも、鮮やかな黄色は一欠片も目にする事が出来ない
「まだ、まだ他にも泉はあるはずです!」
(最後に残っていた泉は、ここだけだがね、他の紫の泉はもう、私が監視のために空を徘徊した時には、どこも既に黒い水に侵食されていたよ)
例え、辺りが黒い泉で覆われていたとしても、翠星石には諦める事は出来ない、これを諦めたら、ジュンの病を治せない
しかし、竜の言葉は容赦なく続く
(人は争いばかりを繰り返し、憎しみと言う名の黒い水が、絶え間なくこの世界に注がれている
もう人の心には、幸せと言う気持ちは、無くなってしまったのかもしれない)
「そんなはずないです、紫の泉は・・・翠星石は探すですよ!」
「私もよ、そのために来たのだし、それがないと、ジュンを治す事ができないのでしょ?」
翠星石は頷く
下の娘達の動かぬ意志に、竜も少し言葉を変える
(そのジュンと言う人間、よほど君たちに想われている様だな)
(そこまで君たちの意志が強いと言うのなら・・・よかろう、もしこの世界に、まだ人の喜びが残っていたのなら、その水を外界に持ち出す事を許そう)
「ありがとうです!」
(・・・あればの話だが)
「絶対あるですよ」
根拠はないが翠星石は強く念を押す、真紅の表情も決して揺るがない
そんな彼女達に、トカゲもそれ以上何も言わなかった
(私もお供するよ、そこまできみ達が言うのなら、私も少し信じてみたいからね、構わないかな)
「もちろんです!」
(ありがとう、では少し待っていてくれ、私もやる事があるのでね)
トカゲはそう告げると、突然首を上げ、天上に向かって尖った口を突き立てた
そのままのゆっくりと大きな口を開ける、口の中には尖った歯がびっしりと生え揃っていて、トカゲはその牙を露わにする
翠星石達はトカゲを見上げていると、突然周りの黒い泉の水が、大きな飛沫を上げ出した
黒い水は水柱となって、空に向けて伸び出し、他の泉も、周りの全ての黒い泉から水が空へ向けて伸び出している
翠星石達は突然の事に、空に伸びる無数の水柱を驚きながら見上げていると
無数の水柱が今度は向きを変え、竜の口に向かって一斉に跳んで来た
幾つもの空を翔る黒い水の槍が、竜の口元に突き刺さる!
水と水が口の中でぶつかり合い、ごぉぉぉぉと言う衝撃音を上げながら渦を巻き
竜の腹の中へと流れ込んでいく
翠星石達の見上げる空は、幾つもの黒い水柱が頭上を翔け、中心の竜の口へと一直線に流れ込んでいる
そしてその光景がしばらく続くと、その伸びていた頭上の水柱が徐々に太さを失い、周りが徐々に静まっていく
そして最後の一本が竜の口の中へと消えて行くと
ごくんっ!
大きな音が竜の喉元から響びいて、黒い水を全て飲み込んだ
「だ、大丈夫ですか?」
突然の事に、翠星石は場を把握出来ないでいるが
まずトカゲの容態をいち早く訊ねる、あれだけ膨大な黒い水を飲んで、何ともないで居られるはずがないのだ
(・・・あぁ、大丈夫だ、慣れているからね
この黒い水がこの世界を埋め尽くせば、やがては世界樹の幹自体を腐らせ、現実世界を崩壊させてしまう事になる
だからこれが・・・世界樹の泉を管理する私の役目なんだよ)
そうは言う物の、竜の瞳はかすんでいる、鼻息もやや荒い
翠星石達は、トカゲの体調が落ち着くまで休憩を取る事にした
(すまないね・・・)
「いいんですよ」
「それにしても、それだけ恐ろしい水なのね・・・」
真紅はふと地面に目を傾けると、すぐ先に黒い水の小さな水溜りが出来ている
おそらく水柱の中からこぼれた物だろう、真紅は無意識の内に体が前に、黒い水溜りへと足が動いていく
足元の前まで水溜りに近付くと、手を伸ばし、指先が水面を付こうとしたその時
殺してやる…、よくも…、やめて…、
助けて…、酷い…、殺さないで…、死にたくない…、
擦れた幾つもの声が、真紅の指先から頭に響いてきた
体中に寒気が走り、咄嗟に手を胸の中に引き戻す
(それに、触れてはいけないよ)
後ろから竜に呼び止められた
(それはとても危険なんだ、触れた体は溶けて、触れた者の心は、人の憎悪に埋め尽くされてしまう
悲しい物だろう、今も人の憎しみが水となって、この世界に滞りなく流れ込んでいるんだ)
「・・・そうね、でも、それでも、人の全てが憎しみばかりを抱いているのではないわ
私達と一緒に住んでいる人間もそうね、もっとそんな人間が、世界に増えてくれればいいのに」
(そうだな)
竜の体調も整い、翠星石達は再び竜の頭の上に乗り、竜は畳んでいた背中の翼をいっぱいに広げ、地面を後に空へと飛び上がる
空へどんどん上がっていく度に、先ほどの一幕の後の地上が露わになって行く
地面に点在していた周りの泉は、全てただの"穴"に変わっている、穴は数えれるだけでも20個、21個程はあろうか
これは元あった周りの黒い泉を、トカゲが全て飲みつくした事を意味している
翠星石は改めて関心し、少しトカゲが心配になる
さっきは大丈夫と言っていたけれど、あれだけの黒い水を体に入れたら・・・
(さて、どこからいこうか)
「あっちに行くです」
翠星石は、右に向かって指を指し示す
示された景色には、今までと変わらない、地面に無数の泉を湛えた地上がずっと広がっていて
黒い泉も所々に見えるが、まだ赤や黄色など、他の泉も点在している
まずこの方向から、紫の泉を探す事にした
(承知した、では、しっかり掴まっていてくれ)
広げた翼を羽ばたかせ、示された空に向けて飛び立つ
2人と一匹は、泉の世界の奥へと飛び立った
それから2人と一匹は、宛もなく、空の先へとひたすらに進んでいた
翠星石達は地上を見下ろし、必死に辺りを見回すが
行けども行けども紫の泉は見当たらず、代わりに黒い泉は所々で湧いている
竜はその度に黒い水を口に引き寄せて飲み干し、示された方向へ飛び始めてから、しばらく経った時だ
「ないわねぇ・・・」
「絶対諦めないですよ」
飛んでいる竜の頭の上に乗りながら、翠星石達は紫色をした泉を必死に探す
過ぎ去っていく地上の景色は、平坦な地面と、そこに湧いている幾つもの泉
赤や青、他の色なら見当たるのだけれど、肝心の紫の泉が一向に見つからない
(ふむ、またか・・・)
竜の意識が流れ込んでくると、右に迂回し地面が黒く濁った場所へと向かう
また黒い泉だ、泉には大小様々な物があるのだが、今度のはかなり大きい
竜は黒い泉の真上迄来ると、口を開き、舞い上がってくる黒い水柱を飲み始める
大きな黒い泉は水を抜かれ、途端に水嵩も下がり、あっと言う間にただの穴へと変わり果てる
竜は黒い水を飲み干すと、再び翼を羽ばたかせ飛び始める
「それ以上は危ないですよ、もうやめるです」
頭の上に乗りながら、翠星石が堪り兼ねて言い放つ
(これが私の泉を管理する者の役目、使命なんだよ
それに慣れているから、大丈夫だ)
しかし、また鼻息を荒くさせ、羽ばたいてる翼もどこか動きが鈍くなっている
明らかに今トカゲは弱っている、真紅にもそれが垣間見れた
そうこうしてる内に、また前方に黒い泉が湧いている、竜は翠星石の止めるのも聞かずに、泉から水を吸い上げた
黒い水は水柱となって、宙に浮かぶ竜のその口へと注がれた、その時
ぐらり、突然翠星石達の乗っていた竜の頭が揺らぎ、宙へと2人は振り落とされた
咄嗟に宙に体を浮かし、何とか地面に落とされるのは免れた物の
竜はそのまま地上へと落ちて行き、その巨体が地面に叩き付けられた
大きな衝撃音が上がり、砂煙が空に舞い上がる
重みに地上は地響きを立て、その揺れが宙にいる翠星石達にも伝わってくる
一瞬の出来事だった、砂煙が晴れると、竜がだらりと地上に倒れこんでいる
2人は急いでトカゲの顔の前まで近付くと、トカゲの容態を気掛かった
「トカゲ、大丈夫ですかっ?」
翠星石は大声で叫び、トカゲの口元に手を触れようと腕を伸ばす
彼女の呼び掛けに、竜の瞳が開いた、だが
「翠星石、一端ここから離れるのよ!」
「え?」
「いいから、早く!」
突然真紅が焦り出し、翠星石は訳が解らないまま、2人はトカゲから離れ反対方向に飛び出す
一定の距離を取った所で、真紅と翠星石は後ろに振り返った
「ギャァァァァア」
突然、竜はけたたましい叫び声を上げ、翼を広げ、巨体が空へと飛び上がった
良く見ると片方の瞳が黒く染まっていて、竜は宙に浮かびながら、荒い息を立てまた怒号を上げ出す
耳が痛くなる程の叫び声を何度も発し、二人は堪らず耳を塞ぐ
翠星石はトカゲの突然の豹変に、それでもトカゲに叫び掛ける
「ギャァァァアア」
「やめるです〜〜、トカゲー!」
何度も唸る怒号の間に、力いっぱい叫ぶ、その声が届いたのか、トカゲが翠星石達に振り向いた
竜は叫ぶのをやめ、翠星石が一つ安堵の息を付こうとしたのもつかの間
黒い瞳がこちらを睨み付け、次に物凄い勢いでこちらに突っ込んできた
「避けるのよ!」
真紅は翠星石の腕を引っ張り、横に向かって飛び進む
2人の間を風が斬り間一髪、突っ込んできた竜の横に逸れる、首から続く長い巨体が、翠星石達のすぐ横を翔け抜ける
こんなのに当たったら、間違いなく即死だ
何とか避け切れたかと思った瞬間
しなった尻尾が跳んで来きた、避けきれない!
尻尾が2人にぶち当たり、真紅と翠星石は突き飛ばされる
全身に痛みが走る、それでも何とか堪え、ブレーキを掛けて宙に体を留める
「でも、一体どうしたの、急に」
「きっと、黒い水をいっぱい飲んだせいです・・・」
スピードを緩め振り返った竜は、的を外した事に再び怒号を上げる
すると、今度は片方の黒い瞳の周りも黒く染まり出した
周りの皮膚から黒い点が幾つもにじみ出し、それがどんどん広がり緑色の肌を真っ黒に染まって行く
かと思った瞬間、今度は二枚の翼を大きく後ろに引き出した
「何かする気よ!」
「は、はいです」
2人は慌てて引き下がろうとしたが、もう遅かった
竜はいっぱいに引き付けた翼を、前に思いっ切り打ち付けた
翼は団扇の要領で風を起こし、その巨大な翼から繰り出された突風が、翠星石達に吹き付ける
必死にその突風に逆らおうとするも、圧倒的な力の前に翠星石達は木の葉の様に飛ばされる
真紅はそれでも必死に堪え、かなり飛ばされた後にやっと体を留めるが
朦朧としながら正面を向くと、前からまた竜が突っ込んでくる
今のままでは横に逸れても、避け切れない!
咄嗟に考えた真紅は、竜に目掛けて手を前に、無数の花びらを飛ばし出した
どんどん竜が迫ってくる、正面からまともに真紅の攻撃を受けているのに、全くスピードが落ちる気配がない
せめて、竜の目に当たれば!
真紅は祈りながら花びらを飛ばし続ける、巨大な竜が、どんどん目の前に迫ってくる
!
わずかに竜のスピードが緩んだ、真紅はその隙に突っ込んでくる竜を避け、巨大な体の後ろ側へと回り込む
竜は真紅の狙い通り、瞳に花びらが当たり痛みにもがいている
真紅はその隙に、もう一人飛ばされた翠星石を探し辺りを窺うと
下の方で翠星石が地面に倒れこんでいる、彼女も相当飛ばされたらしい
「翠星石ー」
「う・・ん・・・だ、大丈夫ですよ」
翠星石は立ち上がり再び体を浮き上らせる、幸い、地面に叩き付けられる事はなかった様だ
そのまま真紅の元へ向かおうと体を動かしたが
「待って、貴方は紫の泉を探してきてちょうだい」
真紅が手で待ったを掛け、翠星石はその場で動きを留める
「でも、今はそんな場合じゃ!」
「紫の水は、傷を癒す力があるのでしょう?、それがあれば、この子も元に戻るかもしれないわ」
「だから、早く探してきて、ここはこの真紅が引き付けるわ」
竜は再び目を開き、さっきよりも大きな怒号を上げる
自分に痛みを与えたあいつ、黒い瞳が真紅を探し、竜は首を左右に振り回す
もう今の竜には、真紅の事しか見えていない、それにこのまま戦っても、到底勝ち目がない
方法は、ただ一つ!
「わかりました・・・すぐ戻るです!」
翠星石は意を決し、真紅に背を向けると
まだ探していない方向に向けて飛び立った
「さて、どこまで持つかしらね」
そう呟いたのもつかの間、
竜が後ろを振り向き、黒い瞳が真紅を捕らえた
居場所を気付かれ、真紅は全力で反対方向に飛んで逃げようとするも
翼を羽ばたかせ、それを上回るスピードで竜が後ろから追いかけて来た
幾つにも点在する泉を下に、翠星石はその中から必死に紫の泉を探す
「どこです、どこにあるんです!」
地上には無数の泉が広がってるというのに、肝心の紫色の泉は全く見当たらない
それでも、諦めずに探し続ける、早くしないと、真紅が
翠星石が今見渡している地上にも、様々な色の中で黒い泉が至る所で湧いている
このままじゃ、ジュンは、ジュンは・・・・
自分で悪い事ばかりを考え始めて、慌てて頭を左右に振る
今はそんな事を考えてる場合じゃない、紫の水がないと
トカゲが、ジュンが、真紅が、みんなが危ないのだ
翠星石は諦めず、さらに宙を飛び続けた
巨大な翼を羽ばたかせ、竜が後ろから突っ込んでくる
真紅も全力で飛んでいるが、到底逃げ切れるはずもない
巨大な口が開き、真紅を飲み込もうと目の前に喉元が迫ってくる
真紅は咄嗟に振り返り、竜の口の中目掛けて花びらを飛ばし出した、花びらは刃となって、それが滞りなく口の中に注がれる
竜が堪り兼ねて、スピードを緩め咳き込んだ
真紅はその隙に突っ込んでくる竜の下側に回り込み、真上を駆け抜ける巨大な腹の下を飛び、竜の股の間を潜り抜ける
ことごとく避けられ、竜がまたに怒号を上げる、そしてまた翼を扇ぎ付け、空気を裂く音と共に突風が飛んできた
「翠星石・・・まだなの」
翠星石は宙を飛び続け探していると
なぜか鼻をくすぐる甘い香りが匂ってきた
今はそんな事を気にしてる場合じゃない、翠星石は気を取り直し探し続けるが
前に進んでいく度に、どんどんその匂いが強くなってくる
すると、先の方に黄色い地面に覆われた場所が見えてきた
翠星石はそのまま飛んでいくと、その地面の正体が黄色い花であるという事がわかる
それは、この世界のどこにでも生えている小さな花
その花達が集まり、群集を作り咲き乱れている
花達は中心の泉を覆う様に咲き乱れていて
翠星石それを目にすると、一直線にその泉に向かって翔け出した
翠星石は地面に降り立ち、黄色い花の絨毯に一歩一歩足を踏み入れる
「・・・これで、助かるです」
花に囲まれた泉は、人の幸福が水となり、それらが溜まった時だけに見る事が出来る
色は紫色をしていて、泉が光を屈折させてキラキラと輝いている
これが人の幸せ、紫の泉
翠星石は如雨露を取り出し、泉に向かって心の中で囁き掛ける
少し、使わせてもらうですね
如雨露を泉に浸し、如雨露の中に紫の水が注がれていく
如雨露の中が紫の水でいっぱいになると、翠星石は腕でしっかり如雨露を持ち
急いで真紅の元へと飛び立った
竜は翼を何度も煽ぎ、強烈な突風が滞りなく真紅に吹き付ける
真紅は必死に堪え、それに逆らって花びらを飛ばし、竜にぶつけようとするも
突風の前に、花びらは風に押し負けて、後ろへと飛ばされる
真紅もついに力尽き、突風に体が持って行かれたその時
誰かに後ろから受け止められ、真紅がはっと後ろに振り向く
「大丈夫ですか?」
「翠星石っ、遅かったわね」
「ごめんなさいですぅ、でも真紅、ほら!」
翠星石は如雨露の中にいっぱいに汲んだ紫の水を見せる
これがあれば、ジュンの病を治す事が出来る
「これでジュンは大丈夫ね、あとは、この子をどうするか・・・くるわよ!」
竜は一向に収まらず、また真紅達に向かって突っ込んできた
2人は横に逸れて直撃を避ける
「あの子を元に戻すには、どうすればいいの?」
「この紫の水をトカゲに掛ければ、黒い水を取り払えるんですけど・・・」
竜はまたに怒号を上げる
しかし今近付いて、竜に直接水を掛ける事は容易ではない
真紅はしばらく考え、唐突に話を切り出した
「翠星石、貴方の人工精霊を貸して頂戴」
「どうするですか?」
「今はこれしかないの、早く、またあの子がくるわ」
翠星石は真紅の考えが解らなかったが
今は真紅を信じる事にした
「はいです、スイドリーム、行って来いです!」
翠星石の掛け声と共に、緑の人工精霊が飛び出してきた
そのまま翠星石から離れ、一直線に真紅の元に向かう
竜が大きな口を開けて迫ってくる
それにいきなり、真紅が正面から突っ込んでいった!
「た、食べられちゃうですよ〜〜〜」
真紅の決死の体当たりに、翠星石は慌てて呼び掛ける
しかし、真紅は決して停まらずにそのまま突き進む
「ホーリエ!スイドリーム!」
真紅は左手の中に赤と緑の人工精霊を掲げると
そのまま竜の口の中に入ってしまった
大きな口が閉じ、真紅は完全の竜に食べられてしまう
翠星石は呆然とその光景を見詰め、真紅が食べられた事に
頭の中が真っ暗になっていると
突然竜の顔が強く光りだした、次の瞬間!
赤と緑が交じり合った大きな爆発が、竜の顔を包み込んだ!
爆音と共に空気が揺れ、空に赤と緑の大きな花火が、地表を明るく照らしつける
翠星石は突然の爆発に、その光に目を覆っていると
しばらくし、爆発の光が治まったのを確認し目を開けると
その顔に直撃を喰らったトカゲが意識を失い、地面にその大きな体が倒れ込んだ
翠星石は急いでトカゲの元へ行き
黒くなった肌に目掛けて、如雨露の紫の水を掛け流した
紫の水は雨となって、トカゲの顔に降り注ぐ
すると、今まで染まっていた黒い肌から突然黒い煙が宙に漏れ出し
それが顔の所々からも噴き出した
黒い煙が顔から出て行く度に、それに従って片目の黒い肌が徐々に薄まりだし
煙が全て顔から噴き出すと、黒く染まっていた肌もすっかり緑に戻った
トカゲが倒れ込んだまま、ゆっくりと目を開ける、黒く染まっていた片目も元に戻っている
(・・・・・すまない、泉を管理する私が、泉に体を支配されるとは、情けない)
「ちょっと、早く開けるのだわ!」
トカゲも正気に戻った様で、翠星石も安堵の息を付く
すると、トカゲの口の中からもがき声が聞こえて来た、その声は
(あぁ、すまない)
口が開き、中から真紅が出て来た
「真紅!無事だったですね」
「これくらい、どうって事ないのだわ」
(きみ達には、感謝をしなければならないね)
「ところでなんだけど、翠星石」
「なんですぅ?」
「その水が傷を癒すって、なんで知っていたの?」
「酔っ払って初めて来た時にですね、酔い覚ましに飲ませてもらったんですよ」
「そ、そう・・・」
それから、紫の水を別けて貰い、翠星石と真紅はトカゲを後にジュンの心の木へと向かった
トカゲはこれからも、心の泉を守り続けるらしい、でも、無理はしないと2人に約束をしてくれた
真紅は泉の世界を出る間際に、「私の家来にならない?」とトカゲを誘ってみたが
トカゲは笑って(私にはこの世界を守る義務がある、それに、現実世界では君達の役には立てないよ)
そう断り、真紅も笑ってそれを受け入れた
「こ、こら、やめろってば」
紫の水を上げた途端、枯れ掛けていた心の木はたちまち息を吹き返し
それからすっかりジュンは元気になった
「いいから笑うです!幸せになりやがれです!」
「そうよ、ジュン、幸せになるのよ」
「さ、さっきまで病気だったんだぞ僕は!、それに何言ってるんだよ、さっきから幸せって・・・今僕はとても不幸だ!」
「やかましいですー、とりあえず口を引っ張って幸せにするですよ!」
「そうね、ジュン、笑えば幸せになるわ!」
「や、やめろって・・・いへ、いへへへふちがひぎれる」
世界樹の奥深く、心の泉の世界は、今日も静かに時が流れている
幹からは絶えず人の感情が流れ、それが水となり泉に注がれている
コポン
小さな泉から、水が湧いてきた
泉からは少しずつ紫の水が湧き、泉の中を満たしていく
竜は傍でそれを見守りながら、泉の世界に目を傾ける
この世界に点在する、様々な色をしたの泉、黒く染まってしまった物もあるけれど
ちゃんとこうして、人は幸せも抱いている
世界樹の奥深く、心の泉には、今日も黄色い花が咲き乱れている
長編乙
長すぎて読む気が失せた。
特に起きたばかりなんで。
悪いけど作品としての魅力が感じられないから途中で読むのやめた。
書いたことについては乙。ちゃんとした締まりのある文章にしたいのなら、
句点→ 。はつけた方がいい気がする。
単にわざと「。」の代わりに「改行」使っただけでしょ。面白かったけども少し短くまとめて欲しかった。
気が向いたらまた何か投下してね。
298 :
268続き:2006/06/18(日) 22:24:46 ID:MhnzGfA9
いつにもまして素晴らしいくんくんの名推理であった
シャムネコ姉妹の入れ替わりトリックを見抜き、オオワシ伯爵を追い詰めるくんくん
真紅と雛苺はTVの前で時間も忘れ応援を続けた
「真紅、チビ人間はどこ行ったですか〜?せっかく翠星石が五平餅を作ったですのに」
「静かに!今、大事なとこなのよ!ああ、くんくんがんばって!」
「あいと!あいとなの〜」
一方、水銀燈とJUNは待ち続けていた
「おそい、おそいわぁ、もしかして見捨てられちゃったのかしらぁ、ウフフ」
「真紅はきっと来る、僕たちには絆があるんだ!」
「あらぁ、仲のよろしいこと、ちょっと妬けるわぁ」
最初はにらみ合っていた2人だったがポツリポツリとお互いのことを話し始めた
真紅の事、メグの事、ドール達との生活、そしてメグの病気のことも
ふと水銀燈は思った、友達が居ないと言っていたメグにこの人間を会わせたら・・・・・・
病院のベッドしか知らないメグに少しでも気晴らしをさせてあげられるなら・・・・・・
「ついてらっしゃい、私のミーディアムにも会わせてあげるわぁ」
「お、おい、待てよ!真紅が戻ってきたらどうするんだ?」
「待たせておけばいいのよぉ、私たちも待たされたんだし、早く行きましょぉ」
退屈な入院生活に飽きていたメグは大喜びだった
最初はぎこちなかったJUNだが、病気で先が短いと聞いたメグのために懸命に話し続けた
引き篭もっていたJUN、入院生活を強いられたメグ、お互いにどこか通じるところがあったのだろう
メグは目を輝かせてJUNの話に聞き入った
「うらやましい・・・私も水銀燈と一緒に遊べたら・・・他の天使さんにも会ってみたい・・・」
「だ、大丈夫だよ!病気が直ったら遊べるし、今度みんなでお見舞いにくるよ」
JUNは真紅と水銀燈の闘いを隠してメグを励まし続けた
水銀燈は窓辺に座り、外を見るフリをしながらそっと涙をぬぐった
話しすぎて疲れたのだろう、メグは枕に寄りかかり目を閉じた
「それじゃ、またお見舞いに来るよ、ゆっくり休んでね、お大事に・・・」
病人を気遣いJUNが席を立とうとしたその時、ふいにメグがJUNの手を握り締めた
「私・・・・・・もうすぐ死ぬの、最後のお願いがあるの・・・水銀燈を独りにしないで・・・」
残された力を振り絞ってメグは言葉を続けた
「お願い、水銀燈のマスターになってあげて・・・JUN君ならJUN君ならできるでしょ・・・」
「メグ、この水銀燈のミーディアムは貴方一人で充分よ、私は独りでも生きていけるわ」
JUNには水銀燈の強がりも耳に入らなかった、メグの命の残り火を宿した強い眼の光に惹きつけられた
「わかった、わかったよ、僕が水銀燈のマスターになるよ、でもキミの病気はきっと治る、負けちゃダメだ」
余命短い病人に嘘をつく罪悪感を隠しながらJUNは答えた
「今すぐよ、今契約をして!できるでしょ!水銀燈!お願い・・・・・・わかるのよ、私が永くないことが・・・」
涙を流しながらすがるメグの迫力にJUNと水銀燈も流された
JUNと水銀燈の契約はすぐ終わった、見届けたメグは安心したように目を閉じた
299 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/06/18(日) 23:35:08 ID:MhnzGfA9
「水銀燈・・・」
口を開きかけたJUNを水銀燈が遮った
「JUNだったかしらぁ?アナタの名前・・・・・・わかっているわ、お前の力は使わない、私の力だけで真紅は倒す」
目をそらしながら水銀燈は続けた
「アナタ、真紅のこと好きなんでしょう?でも、手加減はしてあげられないからぁ、・・・・・・メグのことは礼を言っておくわ」
二人はnのフィールドに戻った、が・・・・誰も居ない
「30分はとっくに過ぎたわぁ、どういうことぉ?メイメイ!様子を見てらっしゃい」
水銀燈の人口精霊が桜田家の偵察に向かう
「ここまでだ!オオワシ伯爵!謎は解けた!」
「ワシワシワシワシィィ」
「くんくん、後ろよ!!後ろにナイフを持ったオオアリクイが!!危ないわ!!」
「くんくん!逃げるのよ〜!あいと!あいと!」
真紅は時間も忘れ、応援を続けていた
「真紅たちはお子様ですぅ〜、それにしてもチビ人間はどこいきやがったですぅ、五平餅が冷めてしまったですぅ」
翠星石は五平餅を温め直しながらJUNの身を気遣った
2時間後・・・
「はぁ〜〜すばらしかったわ!くんくん!、冷静な観察!精密な分析!まさに天才ですわ」
「ひなもかんどうしたのよ〜」
真紅たちが感動の余韻に浸っていた時
「みんな〜ただいま〜今日の夕御飯はミートボールカレーよ〜、それから真紅ちゃんにおみやげ、ハイ」
買い物から帰ってきたノリが手渡したのは
「こ、これは映画館に観にいけなかった『探偵くんくんと謎の奇岩城』DVD!!よくやったわ、ノリ!」
「夕飯の準備が終わるまで、みんなで仲良くDVD見ててね〜」
「わかったわ」
「はいなの〜〜」
「はいですぅ」
戻ってきたメイメイが桜田家の様子を映し出す
「・・・あきれたわぁ、気分が乗らないから今日は出直しねぇ、サヨナラ、JUNクン」
待ち過ぎて気勢を削がれた水銀燈がJUNに話しかけた
「メグに優しくしてくれたお礼に今日のところは見逃してあげるわぁ」
「待てよ!水銀燈!真紅の指輪を契約解除してくれ!」
怒りにプルプル震えながらJUNが水銀燈に指輪のはまった手を突き出す
「あらぁ、いいのぉ?私なら契約解除も容易いことだけど、真紅との絆はどうしたのぉ?」
「いいから!解除!それからついて来てくれ!」
3人のドール達は桜田家のソファでTVに見入っていた
真紅は体の力が抜けていくのを感じた
「ノリ、夕御飯の準備はまだかしら?集中力を使うとエネルギーの消費も多くなるようね」
「おなかすいたのよ〜、ひなのおなかもペッコペッコなのよ〜」
「翠星石は五平餅食べたから平気ですぅ〜、でもカレーもちゃんと食べるですぅ」
突然、TVの画面が黒く変わり大きく盛り上がり、水銀燈を抱いたJUNが現れ、床に降り立った
「真紅、あなたのミーディアム貰っちゃったわぁ・・・ね、JUNクン」
JUNの首に抱きつきながら水銀燈が話しかけた
300 :
268続き:2006/06/18(日) 23:37:15 ID:MhnzGfA9
ブチブチ細切れで投稿しちゃってごめん
どうもイマイチ方向性がさだまらなくて
今日は疲れたんでまたあした〜
なんか面白くなってきたなw
期待している!
せめて「。」くらいうってくれないかな。
「、」使って「。」使わないと物凄く不自然だし、読みにくい。
狂った時計塔
※グロ注意
「ねぇマスター」
声と同時にドアが開いた。
「ん?何だ蒼星石。」
俺がそういうと蒼星石は不敵に笑っていた。
「実はね…マスターを殺せば願いを一つ叶えられるらしいんだ…」
(…なんだそうか。冗談か。)
俺は少しびっくりしたような動作をわざと取り、
「悪い冗談は止めろよ。びっくりしたじゃないか。」
だが、蒼星石は何も言わなかった。
いつもなら笑って返してくれるはずなのに…?
そう思った直後、冷たく、暗い視線が俺を貫く。
「冗談…だと思った?僕はいつだってマスターには本当の事を言ってるよ…?」
そう言うといきなり手が光り、そこからは大きな鋏が現れた。
一歩一歩、蒼星石は俺に近付いて来る…
身の危険を感じた俺は蒼星石を押し倒し、廊下を走った。
息の続く限り。
走ってる時に、蒼星石の声が聞こえた。
「フフフ…逃げても無駄なのになぁ…」
そう言うと、俺の体が吸い寄せられる様に後ろへひきずられる…
「ありがとうマスター。自分から切り刻まれに来てくれて…」
そういうと鋏を構える。そして思い切り鋏を俺に振りかざして来た。
「おやすみ…マスター…」
その瞬間、俺は転がって鋏を避け、すぐ家を出た。
「あともう少しだったのに…あは、あははは…」
俺は雑居ビルの前の警官に話かける。この異常事態を。この警官には、大体理解してもらえたらしい。
「よし。じゃあ私が守るよう手配するから安心しなさい。えーと君のなま…」
どすっ
そこで会話が途切れた。警官はすでに死んでいた。
ビルから出て来た蒼星石に突き殺されていたのだ。
「…!…」
俺は鋏が体を通って、抜けない内にビルへと入った。
「ごめん、警官…くそ…」
そう謝った。だが謝っても謝りきれないぐらいいたたまれない気持ちだ。
「しぶといなぁ…フフフ…」
死体は転がり落ちた。
「はぁ…はぁ…」
俺は恐怖を感じていた。
もし…次現れたら…また代わりに人を殺してしまうのでは…?
だが、俺は逃げなきゃ行けない。全力で。
俺が死んだら警官にも申し訳が立たないから。
そして同時に…これ以上蒼星石に狂った事をさせないように…やめさせなければ。
俺は応接室へ逃げ込んだ。だが…そこには警官が首を吊って…惨殺されていた。俺は気持ち悪くなり、嘔吐した。…きっとこの警官は見回りだろう…可哀想に…
その瞬間…
キィとドアが開いた…
まさか…
俺は机に隠れながら相手の様子を見る。
それはまぎれもない蒼星石だった…
彼女は、体に紅い血を身にまといながら辺りを見回している…
その時、俺と蒼星石の目が合ってしまった。
「…居るのかなぁ?」
俺は急いで椅子の下に隠れた。
下からは蒼星石の足が見える。
鋏の擦り音が聞こえる度に恐怖を感じた…
シャキーン…シャキーン…
バレた?バレてないよな?
「…」
蒼星石は俺の椅子の前に立った。
俺は息を潜めた…
「なぁんだ…気のせいか…」
そういい蒼星石は部屋を出た。
バタン
ふー危ないとこだった…
冷や汗かきまくりだ…
俺は身を大きくさせ、軽く伸びをする。
惨殺死体の前で…見ないように…
「見つけた…」
後ろには蒼星石が立っていた。
俺は心から叫び声をあげる。足も恐怖で動こうとしない…
「フフフ…今度こそとどめがさせるんだね…嬉しいなぁ…」
やめ…やめ…ろ…
「大丈夫。ほんの一瞬の苦しみで死ねるんだもん」
そう言うと、蒼星石は鋏を持ち、振りかぶる。
猛烈なスピードで鋏が俺に襲いかかる
ぐしゃ
骨が砕ける音が聞こえた。
ざくっどしゅぐちゃ
鋏を何回も何回も蒼星石は俺に刺していた…
俺からは大量の血液が外に漏れる…意識がもうろうとし、その度に声にならない叫び声をあげる。
あまりにも激痛すぎてのたうちまわる…
そして俺は動かなくなる。
「あはははは…マスターはしぶといなぁ…早くこうなってくれれば良かったのに…あはは!あはははは!」
蒼星石は狂ったように笑い続けた…
その声はビル全体に響き渡る…
…?光が…
光が辺りを包み、何も見えなくなる。
その光に包まれた瞬間、蒼星石は我に帰ったらしい。
俺は蒼星石を抱き抱え、ビルを出た。
さきほどの警官も、応接室に居た死体もロープが切れ、生き返った。
皆何が起きたかわからなかったみたいだが、いつも通り仕事に戻る。
そう、蒼星石の願いは殺した者の復活だった。
…だから俺も復活したのか…
蒼星石が起きた。
そして泣きじゃくる。
「うわあん…マスター…ごめんね…僕の中に何かが入りこんで…」
「いいんだよ。蒼星石は、俺らの事を願って復活させてくれたじゃないか。」
「ごめんね…」その後も何回も謝られた。
―シザーマンの魂は永久に不滅―
3のシザーマンなんて、私は認めない!!
309 :
299続き:2006/06/19(月) 23:06:59 ID:+/OfZL9G
しばらく呆然としていた真紅であったが数秒で自分を取り戻した。
「まったく使えない下僕ね、誰が主人か忘れてしまうなんて。早く紅茶の準備をしなさい」
「真紅、僕を見捨てるなんて見損なったよ。契約は解除させて貰った、代わりに水銀燈のマスターになることにしたんだ」
真紅との契約の指輪がなくなった手を見せながら冷酷に通知する。
「ま、待って!違うのよ!誤解よ!JUNは水銀燈にだまされているのよ!早く目を覚ましなさい!」
真紅の足から力が抜け座り込んでしまったのはミーディアムを失ったためか、水銀燈に大切な人を奪われたせいか
「チビ人間!なにしてるですか!水銀燈は蒼星石の仇ですぅ!こうしてやるですぅ!」
翠星石が如雨露を構え飛び掛ろうとする。
「あらぁ?蒼星石のローザミスティカいらないのぉ?せっかく返してあげようかと思ってたのにぃ」
JUNの腕の中で水銀燈が微笑む。
「な、なに言うですか!だまされないですよ!」
「翠星石、水銀燈は心を入れ替えたんだ。少し様子を見てくれないか」
JUNにここまで言われては翠星石も引き下がるしかない。
「雛苺ちゃんにはこれをあげるわぁ、ハイ」
水銀燈の翼の中からヤクルトがドサドサッと雛苺の目の前に山積みになる。
「わ〜〜い、じゅーすがいっぱいなの〜〜」
ヤクルトを両手に抱えて雛苺が踊りだす。
「雛苺、だまされないで!それは毒にきまっているわ」
真紅の必死の叫びも届かない。
「あらあら〜お人形さんの新しいお友達ね〜一緒に夕御飯にしましょ〜」
ノリの脳天気な声とカレーのいい匂いが人形たちを現実に引き戻した。
「おいしいわぁ、おいしいわぁ、世の中にこんなおいしいものがあるなんて知らなかったわぁ」
メグの病院食の残りが主食であった水銀燈には至福の時であった。
「水銀燈ちゃん、苦労してきたのね、いっぱい食べてね」
ノリが涙ぐみながらカレーのおかわりを差し出す。
「ガツガツとあさましいわね、育ちの悪さが知れるというものだわ」
真紅が独り言のようにつぶやくと水銀燈も負けじと言い返す。
「ねぇ、JUNクン、はっきり言ってやってくれないかしらぁ。誰が野良乙女になったのか、ウフフ」
「だ、だれが野良乙女ですって!!この泥棒ネコ!!キーーー!」
気の強い女性は浮気されると彼氏よりも浮気相手に当たると言う、今の真紅はまさにそれであった。
「二人とも止めないか!これから一緒に暮らすんだから!」
「一緒に暮らすですって!!??ウーーーーン」
あまりのショックに真紅は寝込んでしまった。
310 :
299続き:2006/06/19(月) 23:07:54 ID:+/OfZL9G
ミーディアムを失った真紅が水銀燈と戦っても勝ち目は無い、それでもJUNの近くに居たい。
JUNは水銀燈と毎日仲良くメグのお見舞いに行く、時には他の人形たちも一緒に。
以前と同じように真紅にやさしく接してくれるJUNだが、もはやミーディアムではない。
真紅はプライドを守るために平静を装い続けたが、JUNに甘える水銀燈を見るたびに心が締め付けられた。
3ヵ月後、メグの命は燃え尽きた。
葬儀にはJUNとノリに抱かれて人形たちも参列した、JUNたち以外は家族しかいない淋しい葬儀であった。
帰り道にメグが入院していた病院の屋上で最後のお別れをすることにした。
「JUNクン、メグは最後に言ってくれたわ、『幸せだった、楽しかった』って・・・ありがとう」
水銀燈が涙をこぼしながらJUNにお礼を言った。
「JUNクンがあの時、一時休戦してメグの幸せだけを考えようって言ってくれたから、私はアリスゲームを忘れることができた」
「こんな僕でもメグちゃんのために何かしてあげたかった、真紅には悪いことをしたけどね」
「JUN、水銀燈!どういうことかしら?説明するのだわ!」
JUNは真紅に説明した、余命短いメグに水銀燈が姉妹と仲良くできるところを見せるために
そしてメグを安心させるために水銀燈のマスターになったことを
「それなら最初から言ってくれれば良いのだわ!いくらでも協力するのだわ」
JUNは笑いながら遮った。
「下僕を忘れちゃう御主人様にお仕置きもしたかったしね」
泣き笑いながら水銀燈も言った。
「真紅の困った顔が見られるって言われなきゃ休戦なんかOKしないわぁ」
「演技にしてはJUNになれなれしかったわね、水銀燈」
「あらぁ、焼いてるのぉ?」
何か思いついたのか、不意に水銀燈がJUNに抱きついた。
「たった3ヶ月だけどミーディアムご苦労様、ご褒美あげるわぁ」
驚く暇もなくJUNの唇にキスをする水銀燈。
「アリスゲーム再開!そして1ポイント先取かしらぁ、ウフフ」
「な、なんて不埒な!!私でさえまだなのに!」
「なんてことするですぅ!許されないですぅ!」
「ひなも〜〜ひなもちゅ〜するの〜」
水銀燈は黒い翼を広げ上空に舞い上がる。
「約束だったわね、蒼星石のローザミスティカは返しておくわぁ」
ローザミスティカが水銀燈の手から零れ落ち、翠星石が慌てて追いかける。
「真紅、次に会うときは本気よぉ、手加減なんかしたらJUNクン貰っちゃうからぁ、ウフフ」
水銀燈は高笑いしながら飛び去った。
「JUN!再契約よ!今度は契約解除なんて許さないのだわ!」
完
GJ!こんなローゼンがあってもいい気がしたよ
是非また書いてくれ
312 :
熊のブーさん:2006/06/20(火) 01:26:24 ID:QFL9hicB
>>310 GJ!!
まだジュンと水銀燈との契約は続いているようなので、もし続くのならば、このまま
水銀燈も真紅一向に加わるという展開も……
一ヶ月ぶりに投下です。
話的には
>>64から繋がってますが…なんともなー
DELUSION4 復活
「痛い……」
ジュンは机に突っ伏していた。
居眠りがあろう事に、「魔女」の二つ名を持つ英語教師、水銀燈にばれた代償は大きかった。
「頭が、みしみしって言ってたもん。絶対やり過ぎだって」
一分間にも渡るアイアンクローと、“連帯責任”として出されたいつもより多めの課題はジュンの体と精神を完膚なきまで叩きのめした。
さらには、クラスメイトからの視線も何処かしら冷たい。
「マジで死ぬかもしれん」
「死ねたら楽だろうねぃ」
前の席の男子生徒が椅子を跨ぐようにして振り返り、合いの手を出した。
「人間、死にたいと思ってる時はなかなか死ねないもんだぜぃ」
「知ったような口を利くよなぁ。全く」
「人生色々あるんですたい」
男子生徒は何故か遠い目をしている。
彼の名は杉浦拓也。ジュンの高校での話し相手第一号だ。ひょろりとしてはいるが、あまり背は高くない。口調がやや変である。
ジュンのことを会ったその日に「ジャム」と呼んだり、軽いといえば軽い人柄だ。
しかし、ジュンにとっては重要な人物の一人である。
「ところでさ、気ぃ付けとけよジャム」
「今回は?」
「今回は水銀党絡みじゃない。が、似たようなもんか……ウチの新聞部がなー」
この学校には様々な部活、同好会が存在する。その中でもジュンにとって最も厄介なのは「水銀党」と「新聞部」の存在であった。
読んで字の如し、水銀党とは水銀燈を崇め奉る同好会なのだが、規模が半端では無い。なぜなら、構成要員が生徒だけではないからだ。この学校の生徒を初めとして、この辺一帯の学校の生徒、さらには一般の人まで合わせると100人は楽に越えると言われている。
「水銀燈の敵は水銀党の敵」だの「水銀燈を守るためなら武力行使も辞さず」だのというかなり危険なキャッチフレーズの元、日々活動しているのだが、ジュンにとってはたまったものではない。
今までに幾度となく水銀燈との関係について尋問や拷問を受けてきた。
もう一つの厄介の種は新聞部。
いつもは適当な記事しか載せず、むしろ四コマ漫画に力を入れているのだが、スクープと呼べるような事態が起きたとなると凄まじい機動力を駆使して
情報収集をするという、どこかの諜報機関のような部であった。最近は水銀燈絡みの記事が比較的多く、常に水銀燈の周りには記者が一人か二人、隠密のごとく付いて回る有様である。
ジュンは以前、桜田家の庭で水銀燈に抱きつかれたところを新聞部にすっぱ抜かれ、危うく水銀党に拉致されそうになった苦い思い出がある。
その時は新聞部員である杉浦が、事前に記事内容をジュンに伝えていたため逃げることに成功した。ジュンにとって杉浦は水銀党と新聞部の魔手から
逃れるための貴重な情報源なのだ。見返りとして何かと働かされているが。
「とまぁ報告終わり。つーことで今日は正門から帰るなよ」
「へいへい」
「なんか素っ気ないぜぃ。もういい加減に慣れたかにゃー?」
「……疲れ果てて気力が出ないよ。ロリコン大尉」
「んなぁ!?き、貴様今なんとぉ?」
杉浦にとって、その言葉はNGワード第一指定である。
「なんでもございません」
なにやら喚いている杉浦をほっといて、ジュンは自分の腕時計に目を落とす。
次の授業まで時間がある。ジュンは惰眠をむさぼることにした。
――「人間」らしい生活を送る。
真紅はまず、そう言った。
例えば? と、皆が聞いた。
真紅は、
「とりあえず生きていくことだわ」
と、適当に言い放った。
「世の中って理不尽だよな」
「そう? 自分にとって都合の悪いことが起こったのなら、素直に受け入れるべきだと思うけどね」
「そんな理不尽なことを乗り越えて、少年は大人になっていくんだよな」
「目の前の現実を認めなさい、ジュン。これは紛れも無い“事実”なのだわ」
「納得いかねぇぇぇぇーーーー!! これは夢だ! 幻だ!」
ジュンは頭を抱えてのた打ち回った。
テーブルの上には書類が一つ。
「見てるんだろ、ローゼン!! 僕はお前を呪ってやる!!」
「お父様の事を悪く言わないで頂戴」
居間には居候している者も含めて八人が神妙に書類を見ていた。その中で唯一、ジュンだけが騒いでいる。
今朝、桜田家に封筒が届けられた。「重要書類在中」だの「二ツ折リ厳禁」だのと、書かれてあることから、大切な物だということが分かる。
中身は住民票とジュン宛の手紙だった。
手紙はドイツ語で書かれており、解読した真紅曰く「手回しはあらかた終わっている。我が愛しの娘達を頼む。なお、生活資金その他は君の銀行口座に随時振り込む。が、おそらく足りないので残りはそっちで何とかしてくれ」とのことだ。
追い討ちとばかりに、ジュンの両親から「知り合いの子を預かることになったから仲良くしてくれ」という電話が掛かってきた。
ジュンがまた絶叫する。
「認めない! 僕は断じて認めない!! 桜田家は僕と姉ちゃんとママとパパだけだァーーッ!!」
「家族が増えたわね〜皆よろしくね」
「黙れ洗濯のり! あっさり認めるなよ!」
「ちょっとぉ、ギャーギャーうるさいわよぉ」
「うるさいうるさいうるさい!!」
「ジュンがメロンパンが欲しいって暴れてるの〜」
「ちょっと、雛苺。あまりそういうことを言ってはダメだよ」
「うゆ〜」
「まぁ、これで戸籍の心配は無いですぅ」
「でも、アルバイトってどうやって申し込むのかしら」
真紅の何気ない一言で場が静まり返った。
この中で正式に働いたことのある者が、皆無だったからである。
どうすればいいのか分かない。経験者が一人も居ないのは痛手だ。
「とりあえず求人情報紙でも見てみるか……?」
「てゆーか、私達って年、大丈夫な訳ぇ?」
ガバッっと身を乗り出して金糸雀が住民票を見た。
「一部はオーケーみたいかしら。私と、翠星石と、蒼星石が同い年で15、雛と真紅が一つ下で14」
「うげ、僕は完全に年下なのか?」
「そうなるかしら。でもでも、ジュンだけ遅生まれよね。じゃあ、ジュンと真紅達は同期ということになるのかしら〜」
「私は何歳ってことになってるのぉ」
「えーと……三十歳かしら〜」
居間にいる水銀燈を除く全員が一斉に吹き出した。
「ねぇ、私の目にはどう計算しても三十にならないのだけれど」
「冗談かしら☆」
「そう、そんなにジャンクにされたいの。貴女は」
水銀燈が恐ろしいぐらい平坦な声で呟いた。いつのまにか右手には、いつぞやの剣が握られている。はらり、はらりと黒い羽がどこからともなく落ちてきた。
「ひぃぃぃ! 許してほしいかしら〜!!」
水銀燈は笑顔で、そしてゆっくりと剣をゆっくりと上に上げた。
「選ばせてあげるぅ。楽に死にたい? 苦しんで死にたい?」
「どっちを選んでも殺されちゃうかしら!」
「何気にそうとう力を使っているけれど、大丈夫なの? 水銀燈」
「これぐらいたいしたことないわぁ。さて、金糸雀。言い残したいことはあるぅ?」
「あわわわ……」
「待ちなさい、貴女は人間よ。人が人を傷つければ法律で罰せられるわ」
「ばれなきゃ良いのよ、そんなの」
ジュンがこれ見よがしに、今に据えてある電話の所まで歩いていった。
水銀燈は舌打ちし、剣を手放した。パキン、と澄んだ音がして剣が掻き消える。
「まぁいいわぁ、覚えてなさいね。いつか、誰も見てないところで後ろから刺し殺してあげるぅ」
「まっぴら御免かしら!」
年齢偽装事件は、一応の終結を見せたようだ。
求人紙をぴらぴらとめくっていたのりが提案する。
「皆で考えましょうか。三人よれば文殊の知恵っていうし、これだけ賢いお人形さん……じゃなくて、人達がいればきっと名案が浮かぶわ」
しかし、結局案が出ず、その日は解散となった。
ジュンの朝は遅い。今日はいつもより遅く、昼頃に目が覚めた。
下がなにやら騒がしい。物音で目が覚めたのだろうか。
もぞもぞとベッドから這い出し、下に向かう。
「うるさいな。何してん……」
ジュンは自分の目を疑った。とりあえず擦ってみる。頬をつねってみる。一度強く頭を壁にぶつけてみた。
それでも、玄関先にいる人物が消えてくれない。夢ではない。
「世の中って理不尽だよな」
ジュンは疲れたように呟いた。
アリスゲームを始めた張本人達。そしてローゼンの手によってnのフィールドに送られたはずの二人。
槐と、人間となった薔薇水晶がそこにいた。
「帰れ、っていうか僕の視界から消え去れ」
「久しぶりに会ったというのにご挨拶だな」
「…………」
敵意をあらわに睨みつけるジュン。
無表情、むしろ涼しげな表情の槐。
じっとジュンを見つめる薔薇水晶。
三者はお互いを睨みつけたまま(?)動かない。
「ジュンくーん。お客さんー?」
「ああ、救い主が来た…姉ちゃん、不審者がいるぞー警察をー」
「あらあら、槐さん。これからよろしく」
「こちらこそ。バイト先に関してはお任せください」
……………………………………あれ?
「なんか猛烈に嫌な予感がしてきたぞ」
「その予感はきっと的中するわね」
ジュンの隣に、真紅がいつの間にか立っていた。
眉をしかめ、苦い顔で放つ言葉は、
「ジュン。これも運命よ。彼女らも、“貴方のお父様の知り合いの子”なのだわ」
「いぃやだぁぁぁぁぁぁぁぁ」
バタッ
「ああっ!! ジュン君!?」
桜田家に新たな住居人が増えたと同時に、ジュンは九秒前の白送りとなった。
「さて……無理に連れ戻す方法か、穏便に済ます方法か、どちらが良いと思う?」
「どちらでも良いから、早くジュンを連れ戻しなさい」
「ぬふぅ」
ジュンは覚醒した。
しかし、そこは見慣れた桜田家ではない。教室だった。
「寝たんだっけ……もう授業か?」
「起りーつ」
「うわわわわぁ」
ジュンは反射的に立ち上がった。
「ふふっ桜田くんったら」
「ってあれ?」
腕時計を見てみる。次の授業にはまだ時間がある。教室を見回す。まだ休み時間ムードだ。
寝起きで回っていないジュンの脳が、遅まきながら結論を導き出す。
「くだらん悪戯をしおってからに、柏葉」
「引っかかるとは思わなかったから」
柏葉巴。
ジュンと中学からの同期であり、復学後のジュンを支えた陰の立役者。しかし、それは今となっては誰にも知られざる歴史である。
今では、こうしてジュンとたわいも無いお喋りをするだけの仲だが、それでも彼女はそれなりに幸せだった。
「ねぇ、ジュン君」
「なんだよ」
柏葉が後ろ手に何か持っている。
「私…言いたいことは何も言えないけれど…」
ジュンは何気ない顔で教科書を机の中から出し始める。
しかし、心臓はドキドキと脈打ち、くんくんが何故かリンボーダンスをしているビジョンが頭によぎるほど混乱していた。
(いきなりなんだこれはまたトラブルか僕のせいなのか担任からの呼び出しか)
「あのね、これ」
(おちつけもちつけ兎だよラプラスだよとにかく冷静を保て僕!)
手渡されたのは、小さな手鏡だった。
「これで、顔を見たら分かると思うから」
柏葉はそれだけ言うと、すぃっと自分の席まで戻っていった。
「はて?」
ジュンは手鏡を覗き込んだ。何もおかしいところは――あった。
額に貼られた、何か文字が書いてある粘着テープ。
鏡文字だが、なんとか読み取れる。“水銀燈は俺の嫁”。杉浦の字に非常に良く似ていた。
「ッ!!」
慌てて剥がし、丸めて放り投げる。これをつけたまま学校をうろついたら、水銀党による半強制的な任意同行が待っていたことだろう。
ありがとう、柏葉。僕は君の事を忘れない。
そして杉浦、僕はお前を許さないぃぃ!!
ジュンは決意を新たに拳を握り締めた。
放課後、正門から脱兎のごとく逃げる杉浦を追いかけたジュンは、張り込んでいた新聞部に捕まり、インタビューという名の尋問を延々と行われ、開放された時には辺りが真っ暗になっていたというのはまた別のお話。
終わり
318 :
熊のブーさん:2006/06/20(火) 01:47:33 ID:QFL9hicB
>>313の「その時は新聞部員〜働かされているが。」のところはあからさまな改行ミスです…
気を付けてたのになぁ…
大家族だなww
>>307 この蒼はもうマスターの傍には居られまい
最近微妙なのばかりだな。
次スレではスレルールで「批評、否定意見禁止」と明言した方がいいネ。
一見まともな日本語に見えても、その実
>>1を読む能力を失調した人間の妄言。
よほどの事が無い限り取り入れない方がマシだし、批評の後の自演反論もウザい。
取り巻きウゼエ
また自治きどりですか
不人気作者必死だな
住人はたまったもんじゃないが職人は気楽なもんよ。
書いてる時や投下してる時はスレの荒れなど考えないし
投下後にしょっぱいこと言われても「アレな奴の言う事」とひと括りに無視できる。
発表の場の引越しも簡単で、スレが荒れれば言質が取れる。
作品を握ってるのは職人、荒らしにはスレはひとつ、職人にはスレは無限。
読んでる側からの意見
批評自体が駄目なんじゃなくて
単に邪魔
ここでは書いた事ないけど、書いてる側からの意見。
表現や誤字の指摘をしてくれると結構ありがたい。
そういった批評が、次のSSに生かせるから。
まあ、ここでは批評禁止のルールがあるから、そこ変えろとは言わないけど。
本来なら見向きもされないヘタクソな作品ばかりなんだから、
指摘されるだけでもありがたいと思えよ。
無視されるよりマシだろ。
なんでそんなに必死なの?
アンチメイデンだからだろ
スルー推奨作家はどうしてこんなに必死なんだい?
とりあえず暇なんじゃない?
>>327 批判も大丈夫ならアニキャラ個別板にも投下してるはず。
それが出来ないってことは結局叩かれるの嫌ってことでしょ。
今度は別の板に誘導ですかと
荒らしは手を変え品を変えよくやるものだ
アリスになる方法は一つじゃない
自分以外のローザミスティカを六つ集めれば、アリスになる方法がわかるかもしれない。
これは他のローザミスティカを取り込むことで、その持ち主の経験したことが得られるからだ。
他のドールズの経験を生かせば、多少近道にはなるかも知れないだろう。
だが私は姉妹同士で殺し合いなんかして欲しくない、
して欲しくなかったんだ。
だからドールズ達よ
できることなら今度こそアリスゲームをせずに、自分達でアリスになる方法を見つけてくれ
私にはわからなかったアリスになる方法…
水銀燈、
君は昔の君じゃない、大切な物ができた、
失う怖さを知った、焦る事はない、ゆっくりと自分の答えを出すんだ
金糸雀、
君は姉妹想いの良い子だね、その優しさはいつまでも忘れないでくれ
君は他のドールズよりも行動力がある、また観察力も高い、だが失敗ばかりする。
だがそれも君の特徴の一つ、挫けずに頑張りなさい。
また私にあの美しいバイオリンの演奏を聴かしておくれ。
翠星石、蒼星石、
君達は、人の夢に入り、そこから世界樹に行くが可能だ
そして庭師の鋏と如雨露、その力は人を成長と腐敗に導くが出来る
だがそれは人間に対してだけだ、
自らを成長をさせることは不可能だ、君達はもともと二人で一つ、初めから不完全だったんだ、
ドールにとっては致命的な事だ、でも君達はアリスになるために生まれて来た、
お互いにダメな所を補いながら、二人で事考えるといい、アリスになる道を
真紅、
君は気づいて無いかも知れないが、大きく成長したね
水銀燈に腕をもがれてしまった時の絶望感、水銀燈を倒してしまった時の虚しさ、
これは君を深い悲しみのどん底に落とした、だがあの少年によって君は救われた。
あの少年は言ったね、この世の物は不完全だ、完全な物などない、意味のない物などないと、
君はあの言葉に救われた、それと同時に君もあの少年に力を与えている。
君とあの少年は、お互いに良い効果をもたらしている。
君とあの少年ならアリスになる方法を導き出せるかもしれない
雛苺、君の純心で無邪気な笑顔は、周りに元気を与えてくれる。
だが純心な故に君はミーディアムであるあの少女を殺しかけた、だがそれも昔の事、今の君は誰よりも強く幸せを願っている、その想いはいつか叶うときがくる、一番幼かった君が一番成長したね雛苺
薔薇水晶、
君は私の弟子、エンジュに作られたドールだ。
でも君にだってアリスになる資格はある、だから道を踏み外すことなくあの不出来な弟子と道を探してくれ
雪華綺晶、
君には現実の体を作ってやることが出来なかったね、
それに君は姉妹の中で末っ子だ、本当の人間なら姉妹や親に甘えているだろう、
それが出来ないドールに生んでしまって、本当にすまない
私の可愛い娘たちよ、君達は等しくアリスになり、幸せになれる権利がある
それを忘れないでくれ…………………
今度は批判ダメよSSスレでも作るかい?w
俺も書いた一人だけど
>>329 に同意、具体的な指摘はこっちにもプラスになる
ただ、あからさまな罵りだけのレスじゃ何の参考にもしようがない
。・゚・(ノД`)・゚・。お父様ー
「。」つけた方が良いくらいは構わないと思うけどね。
不人気作家は少し過剰になりすぎですね。
なんで評論の自由が許されないスレを立てたか理解できんな。
余計にクソがのさばるだけだというのに。
お気に入りの作家とコテが馴れ合うために決まってんだろw
成功の一歩手前で、突然内部の弱点をさらけ出し、組織が崩れる理由は
成功が確実になると、多数の劣悪な品位の無い異分子が組織内で動き出し、
ついに(卑怯な手段で)優位に立ち運動そのものを自分達の利益に奉仕するよう矯正し、
自分達の貧弱な水準まで押し下げられるからである。
つまり、ワインが水で割られた状態になるのだ。
打算向抜きで夢をかけて飛び込んできた人物が、成功と共に利益や自己の幸福を求める集団に取って変られた時、
組織は壊滅に向かう。
苦労を厭う人間は悪人である。
しかし、内面を取繕う事に秀でているため始末が悪いのだ。
見極める目をいかに養うかで組織の命運が左右される。
いかにもって感じの言葉並べておけば良いとでも思っている厨スレか。
>>348 下手くそな作品がスルーされたからって向きにならなくても良いよ坊や。
>>1読め
このルールが守れないんだったら
自分で批評スレでもたててそこでやれば?
更に言えば
批評家というのは、リンゴに巣食う虫だな。
はっきり言って要らない存在。
また論争がしたいのか!あんた達はぁーーー!!!
ここは厨房スレですよ?当然です。
ここは仲良しこよしでチヤホヤされたいだけの素人SS厨が集うスレとして立てられたんだろ。
プロを目指して批判訂正が欲しいヤツはこんなところで油売ってちゃダメですよw
批判厨は無視
もうそれでよくね?
と言うか作品以外スルーでいいし。誰が何をどう感じてるかとか別にどうでも。
SSを書きたい人が書いて読みたい人が読む。
趣味に会わなかったら華麗にスルー
で、批評したい人はすればいい。
そういうのを読みたい人は読めばいいし、嫌な人は華麗にスルー
SSが投稿されない時はみんなで雑談。
他人のSSを否定したかったら見本を見せて。
まぁ、五年生にネットはまだ早いって事だ。
…ってジュンが言ってました。
誰も文句を言えない完璧な作品書けば批判も出ないだろうけどね。
まあ無理だろうけど。
今更スルーに気付く時点でお前らの脳の回転の遅さと、人としての幼さが見て取れる。
362 :
↑:2006/06/23(金) 01:21:13 ID:okK7facR
みたいな邪魔なだけの排除するために批判禁止にしたんだろ?批判出来るスレ他にあるし。
つーか別にプロじゃないから批評いらないし
皆でまったりやれればそれでいい
批判厨はスルーして
次スレを批判禁止にすれば万事解決
>>364 んだ、批判禁止スレと批判自由のスレの二店舗営業が一番望ましいと思う。
棲み分けが出来て切磋琢磨出来るし、今後のテストケースになる。
これだけ関連スレが多いなら、まとめてどっかに亡命するってのもアリだけどね。
串不可ネカフェ不可、スレルール抵触レスはIP開示でいいってんなら俺がやるが。
SSが投稿されたらねぎらいの言葉と一言感想を付け加えるぐらいがちょうどいい
とりあえず、先ずは2店舗営業でいいじゃないか?
>>365 やるなら携帯も不可で
>>367 まぁ、ガチガチ?の所とスレルールのゆるい所の両立を出来ればいいと思ってる。
書き手や読み手が好みに応じて選べて、相互が交流、尊重できればなおいい。
携帯不可は出来るかな、と思ったら出来るとか、他にも荒らし対策はあるらしいし。
「俺が見られないじゃねーか」って意見もあるだろうけど、スレの平和を優先したい。
>>368 携帯不可だと携帯から見れなくなる?
それだと寂しいな
普通書き込み不可だと思うんだが
>>370 俺が見れなくなるじゃねーかって
>>368に書いてあるから
見れなくなるのかと思ったけど違うんだね
なら別にいいや
どうもここは頭の固い厨房が多いみたいだな。
一度批判厨にスレを台無しにされてるからな。
因みに誰も文句を言えない完璧な作品など、俺は見た事が無いぞ。
批判が目的の奴は、プロだろうとノーベル賞作家だろうと文豪だろうとシェイクスピアだろうと批判する。
>>373 批判厨云々より、それをスルーできない人間が多すぎて困るけどね。
要するにお子様が多いと。
もうその話いいから〜
だれかSS投下してくれよ〜
-------------切り取り線----------------
お前ら携帯を不可にすると「俺」という有能なSS職人を失う羽目になるぞ!!!
嘘です。どうせクダラナイパロしか書けませんから。
パロでもいいと思うよ。
変なプライド持ってる不人気職人が批判を恐れてビクビクするだけの状態よりマシだし。
お前が死ぬか死ねば万事解決。
>>378 批評は怖いよ、以前は批判を浴びて自作を改善するってのは充実感があったが
批判がスレを荒らす様や、批評の殆どを占める余計に悪文になるような指導を見て
自作へのレスが自分だけでなくスレ全体の問題になるってのがイヤになった。
批評は読んでくれてる証、嬉しいけどここではヤバいんだ、もう少し頭使ってくれ。
批評自由と批評禁止の2スレ体制、他所への逃亡、どっちも賛成、貢献したいと思う。
携帯不可がイヤなら携帯可、批評可の自由なスレも立ててもらえばいいし、選ぶのは住人。
私論だが不可不可で荒らしを物理的に締め出すスレは「実験的な別館」って形がいいと思う。
どっちに人が集まるかは、立ててみてからのお楽しみ。
朝起きたら体の調子がすごく良かった
こんな気分が晴れやかで気持ち良い朝は初めて
今日は週に一度の検査の日、それを考えると少し気分が曇る
でも今日はなんだかお医者さんの様子が違う、検査が進むたびに驚いてる
いつもより早く検査が終わってちょっぴり嬉しい
病室に戻ってきたらお母さんが泣いていた
「めぐちゃん…本当に良かった…」
何が良かったのかよくわからなかった
なにが良かったの?と聞くと…
「退院出来るのよ」っと言われた
なにがなんだか余計にわからなくなった
なんで退院出来るの?私の病気は直らないんじゃなかったの?疑問がわくけどここはなにもいわなかった
「でも今すぐという訳じゃないの、もうしばらく入院は続くけどね」
嬉しそうなお母さん…嘘じゃないみたい
お昼になってお父さんも来た、目が赤い…泣いてたみたい
「めぐ…退院したらいろんな所に行こうな、今までの分を楽しもうな」
お父さんに聞いた、私なんで退院できるの?っと
「医者の言う事じゃ、今日の検査で病気の完治が見受けられたそうだ、
詳しくは医者の人達もよくわからないみたいだ、
急に完治などあり得ないのに、奇跡としか言いようがないと」
私の病気が治った?五歳まで七歳まで十歳までと言われてた私の病気が?
お父さんは仕事があるとそのまま帰ってしまった一人病室に残された私
なんで急に治ったのだろう…?でも本当に治ったのなら嬉しい
そうだ水銀燈にも教えてあげよう、喜んでくれるかな?
ー数日後ー
最近水銀燈こないなぁ…「コンコン…」
?、誰だろう?どうぞと言うと
「おっお邪魔します…」
見知らぬ男の子が入ってきた、といっても病院内しか知らない私には知り合いは多くないけど
「どちら様ですか?」
「あっと…初めまして、ぼっ僕は桜田ジュンです」
「私は柿崎めぐ、私に何か用ですか?」
「柿崎さん、水銀燈って知ってますか?」
「!水銀燈を知ってるの?!」
「やっぱりか、あいつから手紙を預かったんだ、
今から168時間(一週間)たったら病院のめぐって子に渡せって」
手紙?あの子が私に?
受け取って手紙を開ける、そこには上手とは言えない字でこう書いてあった
めぐ、この手紙をあなたが読んでる時は、あなたの病気が治ってると思うわ、
それと私は、あなたにしばらく会ってないはずよ、だけど私はもうあなたと会えないの
この手紙をめぐが読んでる時、私はもう只の人形になってしまっているはずだから
私の命…ローザミスティカをめぐに使えば、めぐの病気は治るの、
だから私は使ったの、あなたの幸せの為に
ごめんなさい、あなたは嫌がると思いこの事を黙ってたの、許して頂戴
大丈夫、私は消えた訳じゃないわ、
めぐが私を忘れない限り私は消えないから、ずっと一緒だから
「手紙にはなんて書いて…いやごめん僕は知る必要はないか
じゃあ手紙はたしかに渡したから、それじゃ」
「あっ…手紙…持ってきてくれてありがとう」
彼はどういたしましてと言いそのまま行ってしまった
彼が出ていったあと堪えてた涙が一気に流れ出した
私は泣いた、死ぬと言われた時も悲しく無かったのに……
ありがとう水銀燈、あなたはやっぱり天使だったわ
電車の中で泣いた
物語がすっと頭の中に入ってきました
よかったです
>>380 不人気作家は精神まで脆いみたいですね。
批判禁止とかいって2ch内で立ててるうちはいつまでもそれは付きまとう。
>>385 GJ!
また書いておくれ
水銀燈のボディがどうなった気になる余韻がまた良いな
>>381-385 乙ですた。短くまとまってるのはいいね。
関係無いけど今は蒼星石がなぜ離反したのか・・・その気持ちが良く分かる。
青属性っ子が持つ、ある種共通の自己犠牲心から来る(ry
自分の見てて思ったけど脱字が多くて困るね
あと訓読点がなさすぎかな〜
粗末な物を読んでくれた人ありがとごさいます
句読点だった('A`)
無理して褒めなくてもいいのに。
最近はあんまり投下ないな
人がいないのか……
ローゼン第三期でも放送されない限りはな…
熱意がありゃその内書くだろ。
2か月間休載のおかげで熱意が(ry
401 :
妄想のままに:2006/06/27(火) 00:29:16 ID:dCEPtBgv
タイトル「タコ」
402 :
妄想のままに:2006/06/27(火) 00:30:27 ID:dCEPtBgv
今桜田家は、一匹の部外者が台所を占領していた
色は血を思い浮かばせる真っ赤な皮膚に覆われ
何本もの触手で台所の床を我が物顔で伸し歩いている
「た、たぁぁ〜」
そんな侵入者に、桜田家の防衛ラインのりが果敢にも立ち向かう
両手で包丁を高く掲げて、屁っ放り腰で敵に向かっていく、だが
ギロリ
黄色い眼球がのりを睨み付ける
恐怖で背筋に寒気が走り、後ろから尻餅を突いてしまう
「ひ、ひぃぃ」
敵の触手がこちらに伸びる
のりは慌てて後退り
そのまま後ろで見ている弟の背中に一目散に逃げ込む
「ジュンくぅ〜ん、お姉ちゃんどうしよう〜」
「さ、刺さるだろ」
包丁を持ったまま背中にくっ付いてしまった
慌てて包丁をテーブルの上に置き、また背中に隠れ込む
「ご、ごめんねぇー」
「だいたい、何でこんな物買ってきたんだよ」
弟の背中から前方の赤い物体を覗き込み、また隠れる
「だって、食べたかったんだもの・・・」
「それなら刺身で買ってくればいいだろ」
背中でくっ付く姉に煩わしさを感じながら
ジュンも目を奴に傾ける
文句は垂れる物の、自分も少しだけ怖い
「だって、だって、大きい方がいっぱい食べれるでしょ〜」
「どうやってこんなの調理するんだよ、お前わかって買ってきたのか?」
「だってぇ・・・わ、またにょろって!お姉ちゃん怖いよ〜」
弟の背中を手の平で叩き、押された拍子に体制が前に崩れてる
「ちょ、ちょっと待て」
ギロリ
「う゛・・・」
前に押されて、赤い物体がジュンを睨み付ける
目が合い少し恐怖が過ぎるが
後ろの姉に格好悪い姿を晒すわけにはいかない
「な、なんだよ」
負けじと言葉で反発する
だが、赤い物体は触手を伸ばし、吸盤を床に吸い付かせながら近付いてくる
「や、やるかこの〜」
腕を前に構えるが、表情は明らかに強張っている
床を這う物体が、どんどん迫ってくる
403 :
妄想のままに:2006/06/27(火) 00:31:50 ID:dCEPtBgv
「まったくどうしたの、そろそろお昼の時間よ、お腹が空いたわ」
そんな中で、クンクンを見終わった真紅が歩み寄って来た
「し、真紅ちゃ〜ん、助けてー」
台所でしゃがみ込んだままの、のりからの悲痛の声が聞こえてくる
真紅はのりを通り過ぎ、赤い物体と葛藤しているミーディアムの元へ向かう
「・・・真紅、何しにきたんだよ」
「お茶の一つでも注いでるのかと思ったら、まったく、本当に使えない家来ね」
後ろから浴びせられる小言に、ジュンは振り返り鬱陶しそうな目で睨み付ける
真紅は溜め息を一つ付いた後に、前の物体に目線を移す
「それで、この子はなんなの?」
「・・・タコだよ」
自分の訴えを全く無視され、心の中にもやもやを残したまま
仕方なく答える
真紅は赤い物体を見回すと、顔から自然と笑みがこぼれる
「そう、中々個性的な子ね」
「どこがだよ、気持ち悪いだけだろ」
「猫よりはいいわよ」
・・・そうなのか?
ジュンを他所に、真紅はさらに赤い物体に近付いていく
足を進める度に、風に煽られ左右のツインテールを靡かせる
にょろん
突然、赤い物体が2本の触手を前に上げ
それから意味も触手を揺らし出した
なにしてるんだ?威嚇のつまりか?
ジュンが首を傾げ、ふと真紅に目線を移すと、その場でなぜか固まっている
「・・・真紅?」
ジュンの問い掛けにも、彼女は全く首を振り返ろうとしない
ネジでも切れたのだろうか、ジュンは様子を見に足を動かそうとしたが
「こないでっ!」
大声で一喝され、慌てて立ち止まる
ジュンはただ見ている事しか出来なかった、これだけ真剣な真紅は今まで見た事がない
かと思ったその時、今度はツインテールの先を軸にくるくると回し出した、器用な物だ
くるくる
それに続き、タコも上げている触手を回し出す
真紅の目から何かが込み上げ
しばらくして、頬で何かがキラリと光っていた、涙!?
腕で瞳から溢れてくる涙を拭い、真紅はさらに足を進める
タコも全てを受け入れるかの様に、上目遣いで彼女を見詰め、真紅はタコの足元まで近付くと
片膝を屈めてタコと目線を合わせる
宙に上げている触手に、自分の手を伸ばしゆっくりと交あわせる
握手!
「私を解ってくれるのは・・・貴方だけよ」
こうして、今一つの愛が実を結んだのであった
404 :
妄想のままに:2006/06/27(火) 00:33:01 ID:dCEPtBgv
「本当に行っちゃうのね」
真紅はタコを両手で抱えて、桜田家の玄関に立っている
「えぇ、今までお世話になったわね」
「元気でな、真紅」
「ジュン、貴方は最高のミーディアムだったわ、貴方も頑張って」
シュンとのりが、そんな真紅とタコを見送りに暖かい目で見つめている
寂しい気持ちもあるけれど、笑顔で見送るためにその気持ちを押し潰す
「これからどうするの?行く宛がないんだったら、これからも私達と、一緒に・・・」
そこで言葉を留める、のりに問い掛けられ、真紅は腕に抱いている彼(タコ)の体に身を傾ける
彼(タコ)の体温が、私の胸に伝わってくる
「ごめんなさい、彼(タコ)が帰りたがっているの
私は彼(タコ)の故郷で、一緒に暮らすつもりよ」
真紅の決意に、のりもこれ以上引き止める事が出来なかった
胸に寄り添う彼(タコ)が、真紅に振り向いた
彼(タコ)の大きな筒状の口が、物欲しそうに私を見詰めてくる
「もうやだ、貴方(タコ)ったら・・・♪」
真紅は少し顔を赤らめ、ゆっくりと瞳を閉じ、唇を彼(タコ)に合わせ
「ん〜・・・」
「ぶしゅーーー」
彼(タコ)の口から黒い墨が噴出し、赤らめた真紅の顔にぶち当たった
真紅は目を開けると、しばらく彼(タコ)を抱えたまま固まってしまう
顔が墨で真っ黒に染まり、墨が滴となってポタポタと滴り落ちる
真紅の心の中に、急速に熱い物がこみ上げて来る!
「すい・・・」
「水銀燈色はいやぁぁぁ!」
絆パンチ!
拳が彼(タコ)の頬を殴り
玄関の外に勢い良く飛ばされて、勢い良く魂が空へと召される
こうして、桜田家のお昼はタコのお刺身
真紅達は美味しく召し上がったのでした
え?えぇぇえええ?!?!?!
シュールだ……
>>403 とりあえずGJと言っておくが
タコと真紅になにがおこったんだ??
食ったのかYO!
409 :
ぼる:2006/06/27(火) 19:43:56 ID:MLdjPWOQ
妄想のままにへ。利用権が切れた、レスくれ。
利用権ってなんだよ?
欧米ではデビル・フィッシュの二つ名を持つ「タコ」を恐れないとは
真紅はあんなナリして中身は日本人なんだろうか?
銀様は「ひぃっ!」って怖がりそう
この前会った外人普通にタコ食ってたし。
銀だこの前
ラテン系はタコ好きデス
大阪にいたイタリア人、たこ焼き美味しそうに食べてたよ。
コリコリして美味いとか。
タコを食べるのは日本人とイタリア人だけだとか。
ユダヤ、アングロサクソン、ゲルマン、スラブはタコ食わないらしい。
つっても、セルビア人は食ってたから一概には言えんけど。
中国人も食わないって聞くけど、あいつらが食わないなんて信じられん。
あと、猫と銀様は食べんよ。食べさとうとすると嫌がるよ。
なぜ誰も言わないんだ・・・
生タコは赤くない
茹でてから赤くなるんだって
突然だが銀だこに行かなきゃいけない気がしてきた
次は烏賊っぽい流れと見た。
雛「ジュン、イカくさいの〜♪」
日本から見てエスカルゴ食べるのがおかしいのと同じ。
食文化ごときでごたごたうるせえな。
白い米食えるだけでもありがたく思っとけ。
そろそろ、次誰か投下せんかな
なんかエロスレの方はデカイのが投下され始めてるね。
「ジュン、紅茶を淹れてきてちょうだい」
机に向かって勉強をするジュンに真紅が声をかける。
「お前ら人形はどうせ暇なんだから自分で淹れてくればいいだろ」
「ジュン、自分の立場がわかっていないようね、紅茶を淹れるのも下僕の重要な役目、向上心を持って欲しい物だわ」
ジュンはしぶしぶ立ち上がり、階下から紅茶を持ってくる。
「向上心って簡単に言うけど、お前ら人形は毎日遊んでいるだけだろ」
「あら、失礼ね。もちろんアリスになるための努力は欠かさないのだわ」
紅茶を飲みながら真紅が答える。
「具体的には何をしてるんだ?」
「え、えーーと、とにかく!理想の少女アリスは自分でお茶を淹れたりはしないものだわ、下僕の扱い方の練習よ」
「翠星石と雛苺も努力しているようには見えないし、いつになったら家から呪い人形がいなくなるんだろうな」
ピンポーーン!呼び鈴がなった。
「こんにちわ、桜田君、プリントを届けに来たの」
「上がっていけよ、雛苺も喜ぶし」
「と・も・えーーー!!」
雛苺が巴に飛びつく。そのままお茶会となった。
「巴、いつも貴方が持っている筒状の袋、それは何なのかしら」
「ああ、これはね・・・ほら」
巴が袋から竹刀を取り出し、人形たちに見せる。
「木刀ですぅ!根性入魂棒ですぅ!ここでおっぱじめる気ですぅ」
「アホ、竹刀だよ」
「祖父が家で剣道の道場を開いているの。私も子供の頃から習っているのよ」
「・・・・・・巴、私にも剣道を教えてもらえないかしら?」
真紅が神妙な顔つきで頼み込む
「真紅ちゃんが剣道をするの?」
巴が驚いて尋ねる。
「そうよ、アリスゲームため時には修行も必要なのだわ」
「お、おい、真紅。さっきのこと気にしてるのか?」
朝6時、柏葉家剣道場
「キエェェェーーーーーーッ!!、キエェェェーーーーーーッ!!」
朝早くから怪鳥のような声が響き渡る。
「と、巴、どうかしたのかしら?ご近所に迷惑なのだわ」
「これは剣道の気合よ。真紅ちゃんもこれで素振りをしてね」
巴が割り箸で作った人形用の竹刀を手渡す。
「私もその叫び声を言わなければならないのかしら?」
「もちろんよ、真紅ちゃんもがんばってね」
「き、きぇぇ、きぇぇー」
パシッ!巴が真紅のお尻を竹刀で叩く。
「気合が足りなーいっ!気合!」
「キエェーー!キエェー!・・・剣道の修行は厳しいのだわ」
「ほっほっほ、がんばってるようじゃな巴、む!その人形は!!妖怪の類か!成敗してくれる!」
道場の入り口に現れた白髪の老人が木刀を構える。
「待って、お爺様。この子はその・・・ハイテク日本が開発した剣道人形なのよ!」
「剣道人形じゃと・・・?」
「私は誇り高きローゼンメイデンの第5・・・」
とっさに巴が真紅を押さえつける。
(真紅ちゃん、この人は私の祖父なの、お願いだから私に合わせて!)
「この子は日本の伝統である剣道を広めるために作られた高性能攻撃型剣道人形!人形だけど武士を目指しているの!」
「コンニチワ、ワタシはシンク、剣道人形ナノダワ」
真紅も不本意ながら人形のフリをする。
「武士道が失われようとしている世の中で人形の身で武士の道を志すとは・・・見上げた心意気ぞ!」
「真紅ちゃんは武士道を極めるためにぜひ柏葉流剣術を学びたいと道場の門を叩いてきたのよ」
「・・・ヨロシク、お願いスルノダワ」
こうして真紅は巴の祖父から稽古をつけて貰うことになった。
毎朝5時に起床し千本の素振り、質素な朝食の後に3時間の掛かり稽古
1時間の座禅の後は葉隠れで武士道を学ぶ。毎日深夜までの修行が続いた。
いつしか真紅は自らが薔薇乙女であることを忘れ、武者修行を続ける武芸者となっていた。
「真紅よ、武士道とは何ぞや?」
「武士道とは死ぬことなのだわ」
パシッ!師匠の厳しい指導が真紅を叩く。
「ただ死ぬだけには非ず、己の命を捨てる覚悟で一心不乱に向かってこそ主君の命に応えることができるのだ。
真紅よ、武士道とは迷いを捨てることと心得よ。色恋や紅茶などに惑わされては大業は成らぬ」
「お師匠さま、わかったのだわ」
「真紅ちゃん、がんばっているようだけどたまには桜田君の家に帰ったら?きっとみんな心配しているわ」
「そうね、録画を頼んでおいたくんくんのビデオも溜まっているのだわ、少し帰ることにするのだわ」
3ヶ月振りに桜田家に帰宅した真紅が見たものは翠星石と抱き合うジュンであった。
「ジュン・・・ずっとこうしていたいですぅ」
「僕もだよ、翠星石」
真紅は剣の修行に戻った。
ある日のこと真紅はいつに無く厳しい顔つきをした師匠に呼ばれた。
「お主の剣にはまだ迷いがある、切り捨てよ!」
師匠は真紅に果物ナイフを手渡した。
「お師匠さま・・・これは・・・?」
庭に出た師匠は道場で飼われている犬を指差す。
「殺せ、お前の手で討つのだ!」
その犬はどこかくんくんに似た愛らしい仔犬であり、修行に疲れた真紅の心を癒し励ましてくれていた。
「お師匠さま、できません。私には無理なのだわ・・・」
「真紅よ、大事の前の小事に心を奪われてはならぬ。迷いを捨てねば真に大切な者まで失ってしまうぞ」
師匠の言葉に翠星石と抱き合うジュンを思い出し、真紅は不意に我を忘れた。
「御免!私はアリスになるのだわ!」
キャン!!普段かわいがってくれていた真紅に斬りかかられ仔犬は悲鳴をあげる。
果物ナイフを振り回す人形、悲鳴を上げ逃げ回る仔犬。
ついに討ち果たした時、仔犬は数十箇所を切り刻まれ肉塊となっていた。
真紅のドレスは返り血に染まり、赤黒く変色していた。
「真紅よ、よく精進したな。これは餞別だ」
師匠が刀を手渡す。
「柏葉家に伝わる脇差をお主の手に合わせ仕立て直したものだ。必ずや使命を成し遂げよ」
「お師匠さま、お世話になったのだわ」
刀を背負った真紅がペコリと頭を下げる。
「真紅ちゃん・・・変わったわね・・・」
「そう?・・・変わったのではなく思い出したというべきかしら」
巴は真紅を見つめた。
そこには人でも人形でもない機械がいた。
428 :
真紅・死闘編:2006/06/29(木) 02:58:24 ID:atd12993
桜田家近くの川原
「真紅、こんなとこに呼び出して何のつもりですぅ?もうすぐ夕御飯の時間ですぅ」
「簡単なことよ、私はアリスになるのだわ!貴方のローザミスティカ貰い受ける!」
刀を背負った異様な雰囲気の真紅に翠星石は瞬時に命の危機を察した。
「ジュン!ジュン!助けてですぅ〜」
「ジュンがいるの!?翠星石、一人で来なさいと言ったはずよ!」
物陰に隠れていたジュンが姿を見せる。
「真紅、止めるんだ!いったい何があったんだ!」
「ジュン、あなたは私の家来。黙って下がっていなさい」
つつっと間合いを詰め翠星石に斬りかかる。
「スィドリーム!!」
とっさに如雨露で受け止めるが、如雨露は真っ二つになる。
「これで終わりね」
横薙ぎに払った一閃で翠星石の首を切り飛ばす。
「ジュン・・・・」
翠星石の唇がジュンの名前を呼ぶが声にならない。
「翠星石!!」
ジュンは翠星石の遺骸を抱き泣き叫ぶ。
「ジュン、私はアリスになって帰って来るわ。それまで待っててね」
真紅は口を歪めて笑った。
修行編と死闘編のノリの違いに唖然
すごい展開ですね
チャイルドプレイ&座頭一…
今の真紅ならチャッキーを原子の塵に変える事すら簡単だろうて。
>>425が言うからエロSS板の一覧覗いて見たら
多方面のエロSSスレが画面いっぱいに並んでて吹いたw
どれだけ日本全国の男共はエロss書いてるんだよw
しかもハルヒ系列の過去ログ見て
あまりのレベルの違いに激しい嫉妬と挫折感に襲われている俺SS初心者
>>433 初心者以前にハルヒ房は来ないでくださいね^^#
>>434 おっと失礼、ここでは他作品の名前が出るだけでも厳禁だった様だ
すまない
>>435 冗談だ、何となく言っただけなんで
別に気にしないでくれ
しかし、サイズが違いすぎるけどその辺はどうなるんだろ。
短しょ『ry
薔薇水晶は槐に頼まれ夕飯の買い物に来ていた。
「・・・じゃがいも・・・ニンジン・・・クダサイ」
八百屋の店先でメモを読みあげる。
「お人形ちゃん、偉いねえ、お家の手伝いかい?」
「・・・じゃがいも・・・ニンジン・・・クダサイ」
「はいはい、お嬢ちゃんかわいいからオマケしちゃうよ」
「・・・・アリガトウ・・・」
買い物をすませ、家に帰ろうとする薔薇水晶の視界の隅に赤い物が見えた。
チン!
鍔鳴りの音がした途端、薔薇水晶の首がゆっくり地面に落ちた。
「・・・オトウサマ・・・」
「貴方にローゼンメイデンの名をかたる資格は無いのだわ」
真紅が地面に転がる薔薇水晶の首をゆっくりと踏み潰した。
「水銀燈、今日お見舞いで梨を貰ったのよ、今剥いてあげるね」
「私はいいから、メグが食べなさい」
ベットの隅に座る水銀燈がメグの具合を案じた。
「2249時間32分ぶりね。水銀燈、アリスゲームの用意はいいかしら?」
「真紅!なぜここに!?」
いつの間にか真紅が窓辺に立ち、水銀燈とメグを見下ろしていた。
「貴方が来てくれないから、こちらから出向いたのだわ。感謝しなさい」
「いいわぁ、おもてに出ましょう」
水銀燈が立ち上がり翼を広げる。
「ここで構わないのだわ、すぐに終わるのだから」
「なんですって!?」
水銀燈の羽根が窓辺に立つ真紅に襲いかかる・・・が、真紅は微動だにせず受ける。
「私に小細工は不要なのだわ、その程度の攻撃で私を倒せると思っているのかしら?」
真紅が刀を大上段に振りかぶり、水銀灯に斬りかかる。
水銀燈はとっさに避けるが鉄パイプで作られたベッドが真っ二つになる。
「本気を出しなさい、水銀燈」
横薙ぎの一閃が水銀燈を狙うが避けれなかった、避ければ背後のメグに攻撃が当たってしまう。
水銀燈は腹部で両断され、上半身は壁際まで吹き飛ばされる。
「水銀燈!!逃げて!私の事はいいから逃げて!」
メグが力を振り絞り、真紅の上に覆いかぶさり動きを封じる。
「メグ!!だめよ!!」
メグの体が激しく痙攣し動きが止まった。真紅の剣がメグの体を切裂き邪魔物をどかそうとする。
「真紅、覚えていなさい!必ず殺すわ!」
上半身だけになった水銀灯が血の涙を流しながら夜の空を飛び去っていった。
翠星石が倒された後、雛苺は柏葉家に身を寄せていた。
「真紅はかわっちゃったの、ヒナこわいの」
雛苺が巴に抱きついた。
「大丈夫よ、雛苺は私が守るわ」
「巴、貴方とは戦いたくなかったのだわ」
巴の部屋の三面鏡から真紅の声が響いた。
「真紅ちゃん!?」
「真紅〜嫌なの、巴と喧嘩しないで欲しいの」
真紅が鏡の中から現われる。
「嫌ならアリスゲームに勝てば良いのだわ。いつものように泣いても仕方がないわ、赤ちゃん」
「泣いてないの!真紅のバカ!」
泣き叫ぶ雛苺を背後にかばい巴が刀を構える。
「巴、人の身でローゼンメイデンに勝てると思って?」
「私は雛苺のマスターとなったの、雛苺と一緒なら勝てるわ」
苺わだちが真紅に一斉に襲いかかる。
「巴にケガさせたら許さないんだから!」
苺わだちで動きを止めている間に巴の剣で攻撃する、二人のコンビネーションに真紅は苦戦した。
「なかなかやるわね、間合いに入ることもできないわね」
真紅の脇差と巴の刀、身長も大きく違う、間合いの差は歴然としていた。
「しかし!所詮は人間、誇り高きローゼンメイデンの敵ではないわ!」
振り下ろされた巴の刀をギリギリで避けると、撥ね上げられた刀を左脇に手挟む。
真紅は左腕を斬られながら舞い上がり、巴の顔面に剣を突き立てる。
「もらったわ!」
巴の左目は深くえぐられ、血飛沫が部屋中に舞う。
「ともえーーーー!」
雛苺が倒れこんだ巴にすがりつく。真紅は斬られた左腕が抜け落ちそうになるのを押さえながら告げる。
「雛苺、あなたは優しすぎたわ。せめて眠りながら死ぬといいわ」
真紅が巴の契約の指輪を粉々に砕く、ミーディアムを失った雛苺が巴に寄り添って永遠の眠りにつく。
「巴、大騒ぎしてるようじゃが、いったい何事かな?」
いきなり巴の祖父が部屋の扉をあけた。
「お師匠さま!?」
「お前は真紅か!これはどういうことじゃ!」
左腕を負傷している状態で剣の師と戦うことは出来ない、真紅は鏡の中に消え去った。
「雛苺のローザミスティカ、また改めて取りにいかねばならないわね・・・」
「この左腕はジュンに直してもらうしかないわね、少し帰ることにするのだわ」
1ヶ月振りに桜田家に帰宅した真紅が見たものは水銀燈と抱き合うジュンであった。
「ジュンくん・・・ずっとこうしていたいわぁ」
「僕もだよ、翠・・・水銀燈」
お互いに大切な人を失ったことで惹かれあったのか、ジュンと水銀灯は愛し合うようになっていた。
「ジュン、そんなジャンク相手に何をしているのかしら?」
「真紅!?」
下半身を失った水銀燈は相手にならずと見て、真紅はジュンに説教を続けた。
「そもそも貴方は私の家来となるのを誓ったのだから・・・」
油断であった、水銀燈が上半身をバネのように使い飛びかかる。
普段の真紅ならば難なく避けられたであろうが、負傷していた左腕の反応が遅れた。
「真紅!一緒に死にましょう、ウフフ」
左腕にすがりついた水銀燈がローザミスティカの力を解放し自爆した。
真紅の左腕は粉々に砕け散り、真紅の体もジュンの足元まで吹き飛ばされた。
「水銀燈、やってくれたわね。ジュン、抱っこしてちょうだい」
真紅はジュンを呼ぶが反応がない。
「ジュン・・・・?」
「フフフフ・・・・アハッハハ・・・ハハハハ」
ジュンの心は平衡を失った。
巴は仮死状態となった雛苺を連れて槐のドールショップを訪れていた。
「雛苺を・・・雛苺を直してください」
「これは・・・無理だ、魂が遠くに行ってしまってる、もう戻ることはあるまい」
槐は椅子に置いてある薔薇水晶を指差した。
「この子の魂も遠くに行った。真紅という悪魔の人形に襲われてね」
巴は髪で隠していた左眼を晒した。
「この眼も雛苺も真紅との戦いで失いました、どうすれば真紅を倒せるのですか?」
「人間ではローゼンメイデンには勝てない、ローザミスティカがなければ・・・」
長い沈黙が店の中に訪れた。
「雛苺の中にローザミスティカが有ります、私を人形にしてください」
巴はローゼンメイデンとなり真紅と闘うことを決意した。
SS書く力尽きた、途中で投げ出してゴメン
衝動的に続き書いてみたけど、ローゼンのSSでバトル物は難しいね
やっぱコメディが似合う気がする
真紅シネ
片方のスレでは愛を注がれてるのに、こっちでは愛を潰して回る真紅。
ジュンのフットワークの軽さにワロタ。
つーか、懲りろよw
>>442 リレーなら受けるぜ!と言いたいとこだが、スマン、俺も無理そう
独眼ドール巴と一本腕ドール真紅との、巌流島決闘
真紅「お笑いだわ、宮本武蔵の積もりかしら!」
巴 「いえ・・・マサ斉藤よ!」
そして、途中乱入の金糸雀
カナ「みっちゃんが通販で買った『不自然に高価なパソコン部品』の中に入ってた
マカロフ拳銃で弾いてタマ殺って頂きかしら!」PAM!PAM!
巴 「そんな馬鹿な・・・武人の誇りは・・・死んだの・・・・・?」
真紅「あぁ・・・ジュン・・・時が見えるわ・・・・・・・」
そしてドール達は互いの名乗りで始まり切腹で終わる武人と剣戟の「戦」の時代から
銃と兵士と奇襲で始まり、勝者無き調停で終わる「戦争」の時代へと折り返していく
ローゼン「私達人間が千年かかって手に入れられないもの、彼女達はきっとその手に掴む」
薔薇水晶 「わたしにはこの原子力空母がある限りアリスゲームには負けない」
水銀燈「真紅ゥ!あなたには私の弾道弾をブチこんであげるわぁ、この核弾頭、力が溢れちゃう」
真紅「わたしは平和的なアリスゲームを追求しているのだわ、武力によるローザミスティカ奪取は
永久にこれを禁じてるの、もっとも自衛のためなら空爆もするけどね」
金糸雀「カナの最終ヒト型決戦兵器でパクってズルして頂きかしらーっ!」
我等に、平和を
最後はコバルト爆弾を神とあがめる雛苺がボタンを押して
宇宙で閃光が走っておしまいだなw
真紅・死闘編の衝撃でスレが止まったようだな
夢の終わり
ただ幸せを願う
だから、誰でもいいからはよSS投下しなされ。感想書いてあげるし。
>>446 「…僕の出番は…最後まで…ないんだね…僕の半身…翠星石が…死んだのに…
うふふふ…ははは…どうせ僕なんて…orz」
と私の側で嘆くこの子をどうにかしてください
蒼「真紅!僕にも出番を!」
真「いやよ、めんどくさい」
蒼「(・д・)」
真「それにあなたとっくに死んでるじゃない、原作もアニメもwwww」
蒼「うわ〜ん真紅のばか〜。・゚・(ノД`)・゚・。」
「ゼンマイ」
「ジュン、ゼンマイをまいてちょうだい」
真紅が背中を向けながらせがむ。
「めんどくさいなぁ、翠星石か雛苺にやらせろよ」
巻き巻き・・・
「ゼンマイを巻くのもローゼンメイデンとミーディアムの大切な絆なのよ」
「時計だって自動巻上げ機能ついてるのに・・・」
巻き巻き巻き・・・
「人形と時計を一緒にしないでちょうだい」
「毎日毎日ゼンマイまく身にもなってみろよ、電池交換とかだったら楽なのに」
巻き巻き巻き巻き・・・
「あら?人間だって1日3回も御飯を食べているでしょ、同じことよ」
「お前ら人形は毎日御飯食べてるくせにゼンマイもまいてるだろ!」
巻き巻き巻き巻き巻き・・・
「あら・・・ジュン、少しまきすぎよ、そのへんでいいのだわ」
巻き巻き巻き巻き巻き巻き・・・
「ジュン、止めなさい!もういいのだわ!」
巻き巻き巻き巻き巻き巻き巻き・・・
巻き巻き巻き巻き巻き巻き巻き巻き・・・
巻き巻き巻き巻き巻き巻き巻き巻き巻き・・・
巻き巻き巻き巻き巻き巻き巻き巻き巻き巻き・・・
「ふ〜〜〜、これで1週間分くらいまいたかな。しばらくまかないで済むだろ、真紅」
「ナンテコトシテクレタノ!!!!!!マキスギルト スピード ガハヤクナリスギルノヨ!!!!!」
それから1週間は真紅の速さが3倍になってしまい、ビデオの早回しのような真紅にかつての威厳はなかった。
翠星石、雛苺に散々笑われた真紅はしばらく落ち込んでしまった。
完
これは酷い
赤い彗星…
>>451 「僕はローゼンメイデン第四ドールなどではない……僕は独立戦闘国家『蒼星石』
原潜によるアリスゲーム完全抑止こそ、ドールの世界をひとつにする唯一の道」
バラスィーの原子力空母「ネルソン」に翻弄されそうな予感。
ていうか死亡フラグ
「ティーカップ」
「あら、もう9時なのだわ眠りに就かなくては。ジュン、私のティーカップを洗っておいてちょうだい」
「おやすみなの〜」
「チビ人間もさっさと寝るですぅ」
人形たちはそそくさと鞄の中に入る。
「まったく、自分が使ったものは自分で洗えよ・・・ブツブツ・・・」
真紅専用のミニサイズのカップを台所に持って行き洗う。
カシャン!
洗い終わったカップが手の中から滑り落ち、床の上で粉々に砕け散る。
(ど、どうしよう〜!前にくんくんのビデオを間違えて消した時は5時間の説教だったし・・・)
真紅お気に入りのいかにも高価そうなカップである、割れたとしれば真紅の怒りは語るのも恐ろしい。
(そ、そうだ!)
カップの破片を集め、真紅達を起こさない様にこっそり床に撒く、部屋の中の物を静かに位置を変える。
ジュンは人形たちの鞄を3段重ねにして渾身の力を振り絞って持ち上げる。
「地震だぁ〜〜〜!!!地震!!地震!」
鞄を前後左右に3分ほど思い切り揺さぶって床の上に放り投げる。
「キャーー!な、何があったですぅ!?」
「うわ〜〜ん、ひな怖いの〜〜」
「ジュン!何が起こったの!」
人形たちが目を回しながら出てくる、雛苺は大泣きである。
「たった今、大地震があったんだよ!あ!!真紅のカップが割れてる!」
「地震・・・ですって?」
真紅が疑いの目を向ける。
「ふ〜〜ん、それでジュンが息を切らしてるのはなぜかしら?テレビをつけてみましょうか?地震速報が出るはずよ」
30秒でばれた、朝まで正座で説教された。
完
また名前消し忘れた・・・・
461 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/07/08(土) 21:09:29 ID:kTQtt8mY
カップなら時間巻き戻して直せるじゃないか
462 :
〜花火〜:2006/07/09(日) 01:53:33 ID:dPJmDxBW
“今日の天気は晴れで、気温は30度を超える蒸し暑い日になっています”
TVから今日の天気についてキャスターがコメントを述べている。
人形たちが普通に生活している桜田家にも例外なく真夏日は訪れていた。
「う〜暑いですぅ、日本の夏は不快なことこの上ないですぅ」
翠星石は団扇でバサバサと扇ぎながら疲れたような声を出す。
現在桜田家ではクーラーの設定温度は28度に決められており、それ以下に設定することは禁じられていた。
「翠星石、はしたないわよ。レディたるもの悠然と構えていなければいけないのだわ。
貴女も少しは日本の夏の風情というものを感じなさい」
ソファーでだらしなくグッタリとしている翠星石に真紅がピシャリと言い放つ。
だがその真紅も暑さを払うために先程からジュンを使って団扇で扇がせているのだが・・
「だぁぁぁぁ!!そんなこと言うのなら僕を使わずに自分で扇げよ!!」
さすがに扇ぐのに疲れたのかジュンが怒鳴る。
「あらジュン、私にそんなことをさせるつもりなの。貴方は下僕としての自覚を持つことが大切なのだわ。
正しい主従関係とは私の命令を忠実に守り実行することなのだわ。今私はとても暑いのだわ、ならば下僕である貴方はあくまで私の為だけに涼風を送る。
これはもはや常識、人として当然なのだわ。というわけでジュン、早く扇ぎなさい」
この理不尽女王の前ではジュンの抗議もまったく通用しない。
文句を言えば10倍になって返ってくる。もう何も言わずにジュンは再び扇ぎ続けた。
463 :
〜花火〜:2006/07/09(日) 01:54:40 ID:dPJmDxBW
「は〜いみんな、今日は思い切って出掛けちゃうわよ〜」
のりがリビングに入り、みんなに呼び掛ける。
「のり〜、どこに行くの〜?」
1人元気な雛苺がのりの元に近づいて好奇心旺盛に尋ねる。
「今日はね〜、近くの河川敷で花火大会があるのよ〜、みんなで行きましょう」
「うぃ〜、はなび?」
初めて聞く単語に雛苺は首を傾げる。
「チビ苺は花火を知らねえですかぁ、教えてやるですぅ、花火ってやつは世にも恐ろしい
危険な花ですぅ、その姿は全身に血を浴びたように真っ赤で棘のある枝で人間を襲うのですぅ、さらにチビ苺みたいな弱虫が近づくと〜」
「ち、近づくと?」
「グガアァァァァァァ!!!!」
翠星石は雛苺に物凄い形相で脅しまくる。
「牙のある口から火を吹いて弱虫をムシャムシャと食べてしまうですぅ」
「いやあぁぁぁぁん!!!」
翠星石の作り話に雛苺は泣き出してしまった。
「いやぁ、花火怖いのぉ」
調子に乗って尚も話を続けようとする翠星石をジュンが抑えた。
「のり〜、花火怖いのよ、ヒナ行けないの」
「大丈夫よヒナちゃん、翠星石ちゃん、めッ!」
のりは懲らしめるように翠星石の額に指をあて叱ると翠星石もおとなしくなった。
「雛苺、花火は怖いものではないのだわ。花火とは夜に輝くとても美しい花なのだわ」
「真紅、本当?花火怖くないの?」
雛苺は不安そうに真紅に尋ねる。真紅は優しく微笑んで雛苺を安心させた。
「それにねヒナちゃん、花火には巴ちゃんも誘ったのよ」
横からのりも雛苺を安心させるように声をかけた。
「本当!トモエも行くの?」
のりが頷くと先程とはうって変わって雛苺はウキウキとなっていった。
「ねぇジュン君、ジュン君も行かない?」
翠星石を抑えていたジュンにものりは誘った。少しずつ外の世界へと近づいている弟への
気遣いだった。
「えっ、僕は、僕は・・・・」
ジュンは返答に詰まった。だが以前なら言下に拒絶していたことを考えればこれは前進と言えた。本人はそのことに気がついていないのだが・・・。
「ジュン、折角なのだから行きましょう。私も花火が見たいのだわ」
「で、でも・・・」
「私が行くのなら貴方は行かなければならないのだわ。それが貴方の務めなのだから。
それとも私をエスコートしてくれないのかしら?」
真紅の青い瞳がジュンを見据える。その瞳からは強さと優しさが溢れていた。
「はいはい分かったよ。行けばいいんだろう」
「それでいいのだわ。それと『はい』は1回よ」
その言葉に全員から笑顔がこぼれた。
「よかった〜、じゃあ今日は時間に間に合うように仕度しなきゃね、みんなも手伝って」
「うんするする、ヒナもい〜っぱいお手伝いするの」
「チビ苺より翠星石のほうがずっと役に立つですぅ、任せるですぅ」
桜田家はとたんに慌ただしくなった。雛苺と翠星石はのりについて行き家事を手伝っていった。
真紅は普段と変わらず、マイペースに紅茶を飲んでいた。
時刻はまだ14時、花火大会まではまだ時間があった。
464 :
〜花火〜:2006/07/09(日) 01:57:10 ID:dPJmDxBW
「ただいま〜、カナ!」
息せき切らして、大汗をかきながらみっちゃんが帰ってきた。明らかに走ってきたことが
見て取れる。
「あれ〜、みっちゃん、今日は残業じゃなかったかしら」
マスターの突然の帰宅に金糸雀は喜びながらも驚いた。
「本当はね、でも今日やるはずだった打ち合わせが来週に延期になったのよ。それで今日は何もないから早退しちゃった」
「それじゃあ、この前話してた花火大会に行けるかしら〜♪」
「もちろん!もうカナといっしょに行けるなんてもう最高よ〜」
2人は心底嬉しそうだった。お互いに溺愛している者同士なのだが、いっしょに外出することは滅多にないことだった。それだけに2人ともやたらと気合いが入った。
「さあまずは出掛ける用意をしなくちゃ!カナ、ちょっと待っててね」
みっちゃんは急いでシャワーを浴びて汗を洗い流すとクローゼットを開いて自分と
金糸雀の浴衣を取り出した。
「はいカナ、これ着てみて!」
みっちゃんは金糸雀に浴衣を手渡して着替えを手伝ってあげた。袖を通し、最後に帯を
結んであげる。
「どうかしら?似合うかしら?みっちゃん」
金糸雀はみっちゃんの方を向いて笑顔で尋ねる。黄色を基調とした生地でひまわりをあしらった浴衣は金糸雀の明るいイメージにピッタリだった。
「ああああん!可愛いいいいーっ!カナその浴衣超可愛いからーっ!!!」
箍が外れたというのか堤防が決壊したというのか相変わらずのみっちゃんの壮絶な反応だった。金糸雀を抱きしめて頬を激しく擦り寄せる。
「みっ、みっちゃん!ほっぺが摩擦熱でまさちゅ〜せっちゅっ!!!」
凄まじい愛情表現を受けながらも金糸雀はそれが嬉しくてたまらなかった。
そんなマスターとの2人きりの外出は金糸雀にとって絶対に忘れられないものになる。
そのあと金糸雀は何度も浴衣姿を写真に撮られたのだった。
「あっもうそろそろ時間だね、カナ行こうか」
みっちゃんは金糸雀を抱き上げて、夕方の街を河川敷へと歩いていった。
465 :
〜花火〜:2006/07/09(日) 01:59:12 ID:dPJmDxBW
「ジューン君、こっちこっち!ほらここがよく見えそうよ!」
見物する場所をようやく見つけたのりが後続のジュンに声をかける。
「どうせ高く打ち上がるんだから、どこでも同じだろ」
場所取りに積極的でないジュンがのりに意見する。
「ダメよ、今年は真紅ちゃんたちもいるんだから!見易い所じゃないと」
のりはシートを広げると重し代わりに荷物を乗せた。
「確かにここならよく花火が見られそうだわ、のりなかなか観る目があるわね」
真紅はシートに座るとおもむろに荷物の中から自分のティーカップを取り出した。
見ると荷物の中には紅茶の葉にポットまで用意されている。やたらとかさばった原因が
ようやく分かった。どこまでも自分のペースを崩さない真紅だった。
「ジュン、紅茶を淹れて頂戴」
「ここでか?」
「時にはこのような場所もよいのだわ」
ここまで来た以上ジュンもこれ以上抗うつもりはない。黙って紅茶を淹れる。
「まだまだ紅茶の淹れ方がいまいちねジュン、でも・・温かい味だわ」
真紅はジュンに温かい眼差しを向ける。ジュンは照れた顔を隠すように空を見上げていた。
「そろそろ始まるぞ」
ジュンはぶっきらぼうに真紅たちに言った。
466 :
〜花火〜:2006/07/09(日) 02:02:16 ID:dPJmDxBW
19:00
花火大会が始まった。
“ヒュルルルル〜ドーン、シュルルルル〜ドーン!”
様々な色の様々な形の花火が次々と打ち上げられていく。
「うわ〜すごいのすごいの〜、トモエ花火きれいなの〜」
巴に抱かれながら雛苺は初めて見る花火に驚き喜んでいた。
「雛苺、楽しい?」
「うん!花火とってもきれいなの〜、あっまた上がったの〜」
雛苺の笑顔に巴も誘われて微笑む。何年ぶりだろうこんな楽しい花火を見るのは、
(あなたのおかげだよね、雛苺)
自縄自縛に陥っている今、それをゆっくりと解いてくれる存在、それは両親でも教師でもなかった。いや人間ですらない。
だが彼女は今、巴にとってかけがえのないとても大事な存在だった。
「雛苺、毎年花火大会、いっしょに見られるといいね」
「うん!ヒナずっと一緒にいるね!トモエもジュンものりも真紅たちもみんな大好き!」
雛苺はそう言うと巴に抱きついた。巴は優しく抱きとめると心の中で雛苺にお礼を言った。
467 :
〜花火〜:2006/07/09(日) 02:04:07 ID:dPJmDxBW
「玉屋〜ですぅ〜!!」
何でそんな掛け言葉を知っているのか、関心していいのか呆れたものか蒼星石は迷っていた。翠星石が花火大会の見物の仕度をしているときに蒼星石は桜田家を訪れた。彼女の姿をみるとのりは蒼星石も誘ったのだった。
その場では即答せずとりあえず柴崎家に戻って事情を説明すると老夫妻は快く応じてくれたので蒼星石も喜んでのりの誘いに乗ったのだった。
「どうしたですぅ蒼星石、楽しくないですかぁ」
「ううんそんなことないよ、とても楽しいよ」
「よかったですぅ、ほらほら蒼星石、あそこの屋台で買ったたこ焼きも食べるですぅ」
「あ、ありがとう翠星石」
2人は1箱のたこ焼きを分け合って食べた。何百年経とうと常に2人は一緒だった。
だがそれが断ち切られたとき命ともいえるローザミスティカを蒼星石は失った。
結局のところローゼンとジュンたちとの絆のおかげで蒼星石は『9秒前の白』の世界から
自分を取り戻すことができた。そのため蒼星石は失うものの怖さや重さを実感した。
(あんな思いをしたくない、そして決してさせはしない)
その思いを胸にしまい蒼星石は翠星石や真紅たちに接してきた。
(アリスになる資格は全員が有している)
蘇える寸前に聞こえた言葉をかみしめながら・・・
「ねえ翠星石、きれいだね花火」
2人は寄り添って美しい花火を観賞した。2度と離れることのないように・・・・
「カナ〜、ほらまた上がったわ〜」
みっちゃんは金糸雀を抱きかかえながら無邪気なまでにはしゃいでいた。
「うわ〜すごいかしら〜、すてきかしら〜」
金糸雀もみっちゃんに負けず劣らずはしゃいでいる。
2人がこんな外出ができることなど滅多にないことだから仕方ないことかもしれない。
そして溺愛の理由も・・・。
普段は普通(?)のOLであるみっちゃんは金糸雀のために残業や休日出勤も多く、帰りも遅いことが多いため金糸雀と一緒にいられる時間は極端に短い。だから過剰なまでの溺愛になってしまうのだった。
一方金糸雀にもそうしたみっちゃんの辛さや苦労を汲み取っているのでいっそうマスター思いになっていくのだった。
「あ〜やっぱり会社早退してよかった〜、カナと一緒に花火見られるなんて最高〜」
みっちゃんの心から嬉しそうな言葉を聞き、金糸雀も顔を綻ばせる。
「ねぇみっちゃん」
「うんなにカナ?」
「みっちゃん、ずっとカナをいっしょにいてくれるかしら」
「もちろんよ〜、これからもカナに可愛い服着せて、それからいっぱい写真も飾って、
あぁもう考えただけでバラ色の人生だわ〜!!」
金糸雀に頬を擦り寄せながら喜んでいる。
「カナ・・・すごく幸せかしら・・・」
金糸雀は呟いた。たぶんこれからもみっちゃんと一緒にいられる時間は少ないかもしれない。だがその短い時間はとても充実した素敵な時間になる。2人はそれを確信していた。
468 :
〜花火〜:2006/07/09(日) 02:05:26 ID:dPJmDxBW
次々と打ち上げる花火、真紅は特にはしゃぐでもなく静かに観賞していた。
「なあ真紅面白いか?」
「貴方はどうなのジュン?」
「僕は・・・・・・きれいだと思う」
平凡な答えだ。とジュンも思った。だが真紅はジュンをからかおうとはしなかった。
むしろジュンに同調するかのように頷いて言った。
「素直ねジュン、でもそれでいいのだわ。美しいものを美しいと感じそれを口にできることは貴方が迷路から脱け出せている何よりの証拠なのだわ」
「で、でも僕は・・・そんな・・・」
ジュンは改めて自分を思い直してみる。いまだに学校に行こうとする意思はあるものの
実行までには至っていない。また姉であるのりに対しても素直になれない自分がいることも自覚していた。
「以前も言ったけれども、貴方は弱いわ、でも勇敢よ。自分を見つめ直して自覚ができたのならもうあとは時間が解決してくれるでしょう」
真紅はジュンを見つめて微笑んだ。そして終盤に近づいた花火大会に視線を集中する。
“ヒュルルルルドーン!ヒュルルルルドーン!!”
「素敵ねジュン、あの花火たちは本当に一瞬に輝きそして消えてゆく、貴方たち人間も同じよ。私たちローゼンメイデンは時を巡り、人を巡り咲き誇る。その中でジュン、貴方は私の中でどのように美しく咲くのかしら」
「真紅・・・・」
ジュンは真紅の名前を呼んだまま、何も言わなかった。だがこれからも真っ直ぐには歩けないだろうが確実に前進はしていけるだろう。彼女とともにいる限り・・・・。
花火大会は終わった。見物客は思い思いに家路につく。桜田家も同様だった。
「さあみんな〜、おうちへ帰りましょう〜」
のりが全員を促し帰宅の途につく。
「雛苺、大丈夫?眠くない?」
「う〜ちょっと眠いの〜」
「抱っこしてあげるからそのまま眠っていいよ」
「トモエ、ありがとなの〜、花火楽しかったの〜」
そのまま雛苺は巴の腕の中で眠ってしまった。とても幸せそうな顔で。
雛苺はそのまま柏葉家にお泊りになった。
469 :
〜花火〜:2006/07/09(日) 02:07:04 ID:dPJmDxBW
「それじゃ今日はありがとうございました」
「また明日もどるですぅ」
蒼星石も柴崎家に帰った。翠星石も今夜は蒼星石と一緒にいたいということで
2人は鞄を並べて帰っていった。
のりはジュンと並んで家路につく。もう何年ぶりだろうか姉弟揃って歩くのは、真紅を抱っこしているとはいえこんなに嬉しいことはのりには久しくなかった。
「久しぶりだね、こうしてジュン君と歩いて帰るなんて」
「そう・・・だっけ」
「うんパパとママがまだいたとき以来かしら」
ジュンは無言だった。というよりは姉にどのように接していけばよいか分からなかった。
「ジュン君、今日花火楽しかった?」
「・・・・うん、すごくきれいだった」
たどたどしくジュンが答える。この後ものりが昔の思い出話をジュンに振り、それにジュンはたどたどしく答えていった。やがて家につくとジュンはちょっと疲れたように眠ってしまった。
「ジュン君、少し疲れちゃったかしらね」
「そうねあまり慣れないことをしたから」
のりと真紅はジュンの寝顔を見て顔を見合わせた。
「真紅ちゃん、今日はありがとう」
「私は何もしていないのだわ」
「あんなにジュン君が私にしゃべってくれたことってもう何年もないから」
嬉しさの中に哀しさを持った口調でのりは言った。
「そうねでももう安心してよいのだわ、ジュンは貴女のことでもとても悩んでいる。
今までのことがあるから、どのように接してよいのか迷っている。でもそれを自覚して
少しでも前に進もうとしているわ。貴女はいつもの通りに振舞えばいいことなのだわ」
のりを安心させるように真紅は諭していく。
「ねえ真紅ちゃん、これからもジュン君のことお願いね」
「そうねまだまだ至らないところは多いけど、美しい花になることは間違いなさそうだわ」
そう言って真紅は鞄の中へと入り眠りにつくのだった。
「おやすみなさいジュン、私の大事なミーディアム」
470 :
〜花火〜:2006/07/09(日) 02:09:20 ID:dPJmDxBW
以上で終了です。
読みにくくてすいません。
乙
日常の一コマって感じでイイね
この手のほのぼの話大好き
GJ!正直感動した。こういう心に響く作品を待っていたんだよ。
あんたのファンになりそうだw
つまり今までのはクソだったのか。
乙
全部読ませていただきました
>>474 そう思うんなら、全くその通り以外の何者でもないんだろうね
>>470 乙
だが、惜しむらくは銀様の姿が見えないことか
きっと病院の一室で、めぐと花火の音を聴きながら語らっているのだと、脳内補完しとく
イイネ!
全7話のお話をお届けします
今回も「。」は不精しました
吝嗇ですから、ケチですから、もったいない
では「水銀燈行進曲」、投下します
霊の戦も人間の戦のようにむごたらしい
だが正義の夢はただ「神」の喜びだ
アルチュール・ランボー「地獄の季節」より
それは、彼女達が自我に目覚め、人間を脅かす存在となった時に発動する「絶滅プログラム」だった
昔々、ローゼンという若い気の触れた人形師が居た
ある日、彼は半可な錬金術のまぐれ当たりで「命を宿す石」を作り出した
また科学と錬金術の境目が曖昧だった当時、それは稀に起こりうる現象だった
その「命を宿す石」は例外無く、突然変異の宿命であるほんの僅かな時間の命しか持たなかった
すでに何度かの同様の現象を体験していたローゼンは狂気に憑かれ、その命宿る石を叩き割った
石は7つのカケラに別れた
7つのカケラはそれぞれが命を持ち、互いに向け、外に向け、各々が望む方向へ動き始めた
単なる突然変異だった命宿る石はその時、生ける物の営みを手に入れ、「生物」となった
ローゼンは1個の石から生まれた7体の生物に人形の体を与え、7人の命宿る人形を創り出した
そのカケラに命を与えられた人形は、ひとつの石に戻ろうとした、破片はひとつになる事を望んだ
カケラ達がひとつになろうとする間は、ひとつになる日が来るまでは、カケラ達は動きつづける
その後、永い長い時が流れ、命宿る人形達はいまだにひとつになるための営みを続けていた
ひとつになるために思考の能力を得たカケラ達は「伝説」や「お父さまの望み」を勝手に作りあげ
ギザギザなカケラの破断面を他のカケラで埋めるために、ひとつになるための戦いを続けていた
若い気の触れた人形師ローゼンは、愛おしい娘達が動き出し、言葉を話したことにとても満足した
彼女達がどこから来てどこへ行くのか、それに思いを馳せる事は彼の気の触れた頭には望めなかった
いつかカケラがひとつになる時まで、生ける者の形を捨て、短命な突然変異の石ころに戻る瞬間まで
7つのカケラが織り成す営みは紡がれていく
僕の部屋、誰も居ないのか?・・・ベッドから足だけが見える雛苺、階段の下の真紅と翠星石
僕は翠星石と雛苺のケンカ、たかがショートケーキのイチゴをめぐるケンカに巻き込まれ
なりゆきで彼女達を仲裁する事になってしまった、当然、そんな面倒な事をする気はサラサラない
こいつらに居候されただけで厄介なのに、その上つまらん姉妹ケンカまで始められても困るってもんだ
最初に僕の部屋のベッドの中でふくれてた雛苺は、部屋の隅にダンボールのピケを作り篭城した
雛苺と翠星石の諍い、とばっりちりはゴメンだ、こいつらの揉め事に係った所で何の得にもならない
そのうち、雛のバリケードからミニカーが飛んできた、傷つきペンキが剥げたデル・プラドのミニカー
どーせ一個数十円見当で一山落札した代物だし、僕だってムカついた時は投げたりする
甘く考えてた僕は、自分の額に当たった三菱ギャランE39Aを見て青ざめた、精密な1/48モデル
オートアートの国産旧車シリーズ、人気車種はオクでも業者から買えば一個2Kは下らない
続いて飛んできたホットウィールを辛うじてキャッチした横でエクゾトが壁に当たりイヤな音を発てる
未開封で再出品する予定だったエブロとブラーゴとビデスが一瞬のうちに傷有のノー・クレーム品と化す
フランクリン・ミントとイクソが壁の餌食になった頃には、僕は怒鳴るより泣き声を上げていた
雛苺がどういう能力を使ったのか、一番厳重に保管してたトミカのコスモを掴んでるのを見て凍りつく
「ヒナ・・・たのむ・・・それだけはァ〜〜・・・・イヤぁ!・・・やめでェ〜〜〜!・・・ら、らめぇ!」
コスモスポーツ「MATカー」白地に赤いストライプが塗装された希少なトミカが壁に叩き付けられた
「もう二度と出ない美品」という言葉に釣られ落札したMATカーから、赤いストライプが剥がれ落ちる
白無地のコスモより希少なMAT塗装、無地に極薄シールを蒸着した「偽MATカー」が出回ってるとか
「あの転売屋・・・騙しやがった・・・・」
僕は雛苺と翠星石の紛争、ケーキの苺を引き金に勃発した仁義なき戦いに介入することを決めた
僕と雛苺は部屋の中に居た
階段を挟んだ泥仕合、僕らは階段の上に築いた前線基地から後退し、部屋の中に引っ込んだ
翠星石も階段の下に陣地を据え、消極的ながら翠星石に与してる真紅と何やらひそひそ話をしている
鞄人質、騒音攻撃、真実のワニ、冷蔵庫占拠、くんくん作戦、最後はガラクタの投げ合いになった
お互いに手詰まりになって膠着状態、向こうは疲労し、消耗していた、僕と雛はもっとツラい
こんな所で水銀燈にでもカチ込みをかけられたら・・・と思った頃合に、デスクトップに異変が起きた
通常の異変を表す青バックじゃない、黒バック、ctrl+Alt+deleteでも復旧してくれない異変
ディスプレイが黒い羽根を撒きちらすなんてエラーはwindowsのヘルプには絶対載ってないだろう
ローゼン・メイデンの黒い第一ドールがやってきた、最悪のタイミングで最悪の奴がやってきた
「何してるのぉ?楽しそうじゃなぁい、私もまぜてぇ〜」
「お前こそ何なんだ!よりによってこんな時によぉ・・・勝手に入るな、出てけ!出てけ!」
手に持ってた物を投げつけようとした、それがミニカーだと気づき、上げた手を下ろせぬまま固まる
泣き疲れ腹を空かせた雛苺は乱入してきた水銀燈を見ても何の反応もせず、部屋の隅に蹲っている
水銀燈はしゃがみこんで涙ぐむ雛苺を見て少し眉をひそめ、無遠慮に僕の部屋をずかずかと歩き回ると
戸口に立ち、部屋のドアからサっと目を出して、階段の下で悪巧みの相談をする真紅と翠星石を見た
「なるほど・・・ね」
水銀燈は訳知り顔で頷くと、僕に笑いかけた、友好の意思なんか羽根ひとつほども感じない笑顔
詰問するような笑顔で僕を追い詰める、僕は何も悪くない、でも水銀燈はそれで納得する顔をしていない
「・・・アイツラで勝手に遊んでるだけだ!独りぼっちの君にはわからない事だろうけど」
水銀燈の表情が変わった、それまでのニヤけた顔をクっと引き締め、斬るような目つきで僕を見る
「人間・・・翠星石と雛苺、誰よりも争いを嫌う二人が争っている、その意味がわからないなら
あなたにマスターの資格は無いわ、今すぐその指を切り落とし、指輪を返上しなさい!」
水銀燈は返答に詰まる僕に愛想を尽かしたように背を向けると、雛苺の前にしゃがみこんだ
話す前に、話を聞く前に、まず小さな雛苺と同じ目線で向かい合った・・・僕は・・・雛も翠も見下していた
「さっ雛苺、わたしに話しなさい、誰も聞いてくれなくって辛かったでしょ?わたしは聞いたげる」
雛苺は今まで水銀燈に数え切れないほどひどい目に遭ってる、苺どころでない物を何度も奪われかけた
ヒナは水銀燈に全てを話した、誰も聞いてくれない話を、誰でもいいから聞いて欲しかったんだろう
もとより二人のケンカなんてどうでもよかったが、僕の部屋で桟敷の外に置かれた気分ってのは不快だ
「しっかしコイツラもガキだよな、ケーキのイチゴぐらいで、大体コイツラは食い意地張りすぎ」
水銀燈が僕を見る、さっきより優しい目つき、幼い雛苺に説いて聞かせるような口調はさっきより腹立つ
「人間・・・雛苺が怒っているのは、苺一つのことじゃないわ、雛は戦ってるの、自分の居場所のために」
貴方には縁のない事、と目が言っていた、口に出して言わない水銀燈が大嫌いだ、さっさと続きを話せ
「で・・・翠星石と雛苺、そして真紅を守るマスターたるアナタは今まで何をしていたのかしら・・・?」
僕はさっき翠星石に仕掛けた「真実のワニ」について話した、水銀燈はケラケラと笑いながら首を振り
「アハハっ、逆効果よぉ、外から有無をいわさず押さえれば、あのコがどうなるか判ってるでしょ?」
「じゃ、じゃあ、どうすればいいってんだよ!」
水銀燈は僕が苛立つ様を楽しむようなズルい笑顔で 顎のあたりに手を添え、部屋の中を歩き回りながら
「そうねぇ・・・ここで私があのコらをとっちめても馬鹿みたいだし・・・『芝居』てのはどうかしら?」
「芝居?」
「まぁ・・・ここはわたしに預けてみない?悪いようにはしないわ」
『悪いようにしない』と言った奴がいいようにした試しはない、水銀燈は僕に背を向け雛苺と向かい合う
僕はなぜかこの嘘つきで素行不良な黒いドールのちっぽけな背中にすべて委ねようと思った
水銀燈は雛苺の前に再び蹲った、目を合わせるべきか迷う雛苺の震える瞳を、ただまっすぐ見つめる
「雛苺、聞いて・・・アナタ・・・戦える?自分が正しいと信じた物のために・・・倒れるまで戦える?」
雛苺は立ち上がり両手をバタつかせ、涙ながらに水銀燈に訴えた、髪を飾る桃色のリボンが怒りに震える
「ヒナたたかう!翠星石はこわいけど、ヒナわるくないもん!翠星石がヒナのいちごをとったんだもん!
ヒナのたいせつなもの、とられてがまんするくらいなら、ヒナ・・・こわれちゃったほうがましなの!」
「いいコね、じゃあコレは出来るかしら?雛苺には少し難しいかもしれないけど、アナタ・・・許せる?
一番大切な物を失わないために、我慢出来ない事を我慢して、許せない相手を・・・許せる?」
雛苺は下を向いた、黙って俯く雛苺の下の床にいくつもの滴りが落ちる、雛苺は自分の涙と戦っていた
水銀燈は雛苺が自分で顔を上げるまで、自分の答えを出すまで、ただ黙って待った、ずっと見つめ続けた
やがて雛苺は再び顔を上げた、緑の瞳からはもう涙は落ちてこない、ヒナは歯の間から言葉を押し出した
「ヒナ・・・ゆるすの・・・ヒナのいちごをとった翠星石はゆるせない・・・ヒナのばしょをとったから・・・
みんなゆるせない・・・でも・・・ゆるすの・・・・・・・・だって・・・翠星石も・・・ヒナのだいじなばしょだから・・・
ヒナ・・・ゆるすの・・・ゆるすためにたたかうの・・・みんなだいじだから・・・たたかわないと・・・まもれない」
「うン!それを忘れなければいいわ、じゃあ後はこの水銀燈に、アナタのお姉ちゃんに任せなさい!」
悔しいけどヒナは僕より前を歩いてる、幼い雛苺は傷つきながら自分に絡みつくイバラを切ろうとしてる
水銀燈は颯爽とドアを開け、階段の上、雛の作ったバリケードに仁王立ちした、翠星石と真紅を睨む
突然の客演者に階段の下の翠星石が凍りついた、ヘタレの翠は足を震わせ、目を泳がせて真紅の方を伺う
我関せずとポッキーのチョコを丁寧に舐めとっていた真紅の口から涎まみれのポッキーがぶらさがった
真紅はヘッドドレスの影から片目で覗き、「わたしにはなんの係りあいも無いことなのだわ」と呟くと
チョコの剥げたポッキーを咥え直し、近くに置いたぬいぐるみに向けてポッキーを吹き飛ばした
さっきまで真紅が体をすりつけて愛撫してたくんくんの額に、真紅が吹き飛ばしたポッキーが刺さる
もう小手先の策を弄しても通じない、無関心を装った真紅もまた戦っていた、心を剥き出しにしていた
水銀燈はバリケードの上でたっぷりと時間をかけて真紅と翠星石を睨みつけ、首を回して見得を切る
「なななな何しにきたですかぁ!やるんなら相手になるです!かかって来いです!来ないなら・・・」
「黙 り な さ ぁ い !」
階段を揺るがす水銀燈の叫び、ケタ違いの声量に翠星石は台詞の途中で「ひいっ!」と飛び上がった
人と人がぶつかり合う言葉の重さは、内容より声のデカさで決まることがよくある
「やいやい!下郎な人形風情ども!この水銀燈様が通りがかりに話は聞かせてもらった
貴様ら誇り高き薔薇乙女の風上にも置けぬ外道っぷり、義により成敗いたしてくれる!」
ここで再び大きく見得を切った水銀燈は、突然、階段の最上段で体をくねらせて悶え始めた
「あッ・・・こんな時に差し込みが・・・無念、水銀燈、斬った張ったのこの稼業
まさか昼飯の海老天に斬られるとは、口惜しやぁ!」
やはりたっぷりと時間をかけて階段の上で呻き、爪先で階段の縁を探り、そして体を投げ出した
ごろん!ごろん!ごろん!
水銀燈は階段の上段から一気に転げ落ちた、ひとのサイズ、ドールにとってはかなり大きい階段に
何度も叩き付けられる、階段の中途でゴキっというイヤな音を発てて止まり、そのまま動かなくなった
それまで水銀燈への敵意と恐れでカッカしてた翠星石と真紅の顔から、一瞬で血の気が引いた
読書をしていた真紅、仁王立ちで突っ張ってた翠星石、芝居だと知っている雛苺までもが
階段の中途で呻く水銀燈を皆が案じた、アリスゲームを巡って、ケーキの苺を巡って
複雑な破線を描きヒビ割れていたローゼン・メイデンの姉妹達が、いまひとつになった
「銀ちゃぁ〜ん!!!」
階段の水銀燈、首を変な方向にネジ曲げ、手や足がありえない方向に折れ曲がった水銀燈
僕は水銀燈の身を案じ、階段から身を乗り出した、姉妹達は立ち尽くしている、僕が今助けてやる
水銀燈の片目、僕だけに見える位置の左眼がぐるんと動き、僕に目を合わせると、ウインクをした
そして僕にしか見えない角度で左手を持ち上げると、片目で僕を見ながら手を左右に動かす
「ハケて!ハケて!」ってことか?・・・この場の主役は薔薇乙女達、僕は階段の下手、部屋に引っ込んだ
はじめに真紅、そして雛苺、翠星石、どこに隠れてたんだが蒼星石や金糸雀、薔薇水晶までが現れ
皆で水銀燈に駆け寄った、水銀燈は部屋の戸口から様子を伺う僕を再び見ると、また手を動かす
「シメて!シメて!」か・・・僕は満を持して戸口から姿を現し、誇り高き薔薇乙女達に訴えた
「水銀燈・・・・そして皆・・・・・・・きみたちは・・・・・・・きっと・・・・・・」
水銀燈の手が再び動く、左手を小刻みに回してる、「まいて!まいて!」って事なので、僕は早口で叫ぶ
「きみたちはきっとアリスになれる、アリスゲームだけが道じゃない、きっとひとつに・・・なれる」
一つになることを望み、その進化の過程を絶滅へと突っ走っていたドール達が、今ひとつになった
別々のまま、カケラのまま、7人のローゼン・メイデン達はひとつになることを望んだ
石ころをひとつにしなくとも、心をひとつにすれば、破片の断面はきっと満たされる
ひとつひとつのまま、ひとつになれる、ひとつに戻ることなくひとつになれる
気の触れた人形師ローゼンが作った誇り高き薔薇乙女達は、未来を見つけられるかもしれない
水銀燈の手が上下に動いた 「閉幕!閉幕!」
♪・・・ 虹の都 光の港 キネマの天地 花の姿 春の匂い あふるるところ
カメラの目に映る かりそめの恋にさえ 青春燃ゆる 生命は踊る キネマの天地 ・・・
ではまた
吝嗇
ところでまとめの作業は進んでいるのかね。
>>488 ジュン、おもむろにメガホンを取り出して振りまわしながら
ジュン「カァァァァットカッッットォォォ!!!!
ハァハァ…危うく現場の雰囲気に流されて僕のフィルムグラフィに汚点を残す所だった」
水銀燈「はい?」
ジュン「わっからんのかぁぁ水銀燈!!ゴダールやロッセリーニに何と言って詫びれば良いんだぁ、と言ってるんだぁ!」
翠星石「チビ人間、何青筋立てて怒鳴ってやがるですか?」
ジュン「なんだと?緑?」(メガネを光らせながら)
翠星石「あわわわ」(迫力に気圧されて腰を抜かす)
ジュン「イッカーーーーン!こんな映画なっとるぁぁあぁぁん!!
限られた空間、限られた俳優、限られた観客とによる馴れ合いの演技など
ぅおれたちにはイッラーーーーン!!今こそこの怠惰な日常にバックダンを投げ込まねばならんのだー!
劇は舞台の上でのみ演じられるべきものではない、街こそが舞台なのだ!!
シナリオなどイラン!何もかもがドラマだ!あぁ素晴らしきかなキネマの天地うはははははっははは!!!!」
ドールズ「ひええええ、何だかわかんないけどこわいっ!」
ジュン「と言う訳で、TAKE2!明日から正式なクランク・インだ!いいな!オマエラ!!」
ドールズ「あわわわわ、何でもするから、その血走った目で睨むのだけはやめてぇぇ」
こうしてジュンによる前衛的映画『ローゼンメイデン劇場版』が封切られたのであった。
>>388 俺の脳内でローゼンメイデン実写版が上映されたw
銀様コスの平田満と真紅コスの中村敦夫www
前半はまたしてもアリスゲームの珍解釈だが、後半の銀ちゃん一世一代の階段落ちの方が強烈。
>>490 蒲田行進曲ワロタw
銀ちゃんと銀様をかけたのかw
オモロイ
不人気作家乙
>>493 階段落ちすんのは銀ちゃんじゃなくヤスだけどな
497 :
真紅・陰謀編:2006/07/15(土) 10:29:44 ID:MTO76mmK
真紅「ジュン、いつまで部屋に引き篭もっているいるつもり?学校は?就職は?」
ジュン「うるさいな、あんなとこ行く必要ないんだよ」
真紅「貴方が考えてることを当ててあげるのだわ、『ここで勉強して大検受ければ高校行く必要ない』でしょ?」
ジュン「う・・・」
真紅「はっきり言ってあげるのだわ、貴方には無理よ」
真紅「中学校にさえ行くことが出来ない人間に大検を受けて、より厳しい自己管理の必要な大学進学なんで不可能よ」
ジュン「う、うるさいな!学校行かなくたってここにいれば生きていけるんだ!」
真紅「そう?ノリに迷惑をかけつづけて?誰にも相手にされず、何も生み出さず、一生ここにいるのね?」
ジュン「迷惑なんかかけてない!」
真紅「ノリに聞いてみる?貴方の御両親がこの有様を見たらどう思うかしら」
ジュン「仕送りだけして家に帰ってこないあいつらなんか・・・」
真紅「最近はニートなんて呼んで格好つけてるけど貴方みたいなのは社会のクズって言うのよ」
ジュン「うるさい!!人形のくせに!」
真紅「あらあら、反論できないと人形相手に暴力をふるうの?」
ジュン「ウワーーーーッ!アアアアーー!」
雛苺「ジュンが部屋で暴れてるよ〜」
真紅「もう少しよ、雛苺。ジュンの自我が崩壊すれば完全な私たちの奴隷になるのだわ」
雛苺「うん!ジュンが壊れちゃえば私たちの道具になるんだもんね!」
真紅「雛苺も協力して頂戴、巴とジュンを比べるのも効果的だし、対人関係を強要するのもいいわね」
雛苺「わかったなの〜、ひなもがんばるの〜」
雛苺「ジュン〜、ひなは遊園地行きたいの〜連れてって〜」
…
・・・w
(゚д゚)
501 :
真紅・陰謀編:2006/07/15(土) 21:37:03 ID:MTO76mmK
みなさんは感動のあまり声も出ないようですね
これからもジュンとドール達のハートフルストーリーを書いていきますので
ヨロシク
10中1点
黒歴史
506 :
真紅・中華編:2006/07/16(日) 04:54:34 ID:KEAoyKBg
「卷、来一碗紅茶、好馬?」
「真紅どうしたんだ!なんだい??」
「我要紅茶!快!快!」
いきなり真紅がこれまで聞いたことも無い言葉で喋りだす。
「大変ですぅ!真紅の言語モードが中国語になってしまったですぅ」
「翠星石、どうなってるんだ?真紅は直るのか」
「メーカーのサポートに電話してみるですぅ・・・」
「あ〜それはですね、使用地域設定が初期化されたようですね。
股間のリセットボタン長押しでデータの再取得が出来ますのでお試しください。
ただしこれまでのメモリー内容が全部消去されますのでご注意下さい。
弊社の製品ご愛用ありがとうございます、また何かありましたらお電話ください。」
「・・・というわけなんだが、そんなとこにボタンあるのか?」
「し、しらないですぅ!!触ったことも見たこともないですぅ!!」
「真紅・・・ちょっと見せてくれないか・・・」
真紅のスカートに手をのばす。
「哇!!述是色狼!!」
バシッ!真紅の平手撃ちがジュンを叩きのめす。
「ちょっと待つです!人間!押したら真紅の記憶が無くなっちゃうですぅ!」
結局、真紅のリセットボタンは押さなかった。
ジュンは中国語の勉強を始めた。
真紅は笑いながら告げた。
「我不許述多看別的人形一眼」
今そこにいる僕
ここって虐待はダメだけど、グロは投下していいのかね?
壊れたドールを修復する話を書いてるが、治療の過程でドールがかなり苦しむ描写がある
スレルールや集まるSS、住人の質を見てここに投下したくなったんだけどいい?
いいよ。誰か文句言っても俺は見たいし。
と言うか投下たのむ。
ネタ無いんだし好きにすれば良いと思うよ。
真紅が身体障害者になった。
その日、僕は真紅と雛苺を連れて散歩にでていた、雛苺を抱っこし真紅の手を引きながら商店街を歩く。
「あ〜〜!ともえがいるの〜〜!ともえ〜〜!!」
突然、雛苺が僕の手から飛び出し道路の反対側に駆け出していく。
「雛苺!!危ない!来ちゃダメ!!」
向かい側の歩道を歩いていた柏葉がこちらに向かって叫ぶ、雛苺の目の前に大型ダンプが迫っていた。
情けないことに僕は何もできなかった、足がすくんで動けず声も出せなかった。
突然、目の前を赤い疾風が通り過ぎた。真紅だ!
ガシャーーーン!!
真紅は雛苺を突き飛ばし、ダンプに撥ねられるのを防いだが真紅の両足はダンプに踏み潰されていた。
真紅の両足は細かい破片となって道路に散らばり、小さな靴が道路の真ん中に転がる。
「真紅!!大丈夫か!!」
「真紅ちゃん!」
「真紅〜〜ごめんなの〜〜うわ〜〜ん」
僕たちは慌てて真紅に駆け寄り、助け起こす。
「大丈夫よ、これくらい。雛苺、ケガはないかしら?」
真紅は気丈にふるまったが、真紅がこれから歩けないことは皆が予想できた。
僕は泣きながら真紅を背負って家に帰った。
雛苺は責任を感じて鞄に閉じ篭ってしまい、翠星石も普段の元気が無くなった。
もちろん一番ショックを受けているのは真紅であろうが、努めて取り乱すことはなかった。
「ここまで粉々に砕けてしまってはお父様でも治すのは無理でしょうね」
真紅が自嘲気味に呟いた。
「ジュン、紅茶を淹れてちょうだい」
真紅の定位置は僕のベッドの上、くんくんを見る時と食事の時は僕が抱っこして階下に降ろす。
雛苺は甲斐甲斐しく真紅の身の回りの世話をするようになり、翠星石さえも家事をよく手伝うようになった。
徐々に家の中にも昔の明るさが戻りつつあった。
事故から三週間後、水銀燈が現れたが真紅が両足を失ったことを知ると黙って帰っていった。
次の日からヤクルトやバナナを手土産に水銀燈がお見舞いに来るようになった。
つい先日などは一緒に花見に行くと言い出して、嫌がる真紅をぶら下げてヨタヨタと公園に飛んでいった。
帰ってきた真紅は水銀燈の勝手さに文句を言ったが、とてもうれしそうだった。
「水銀燈、お花見は良いのだけど木の上から見るのは感心しないわね、桜は下から見るものだわ」
「あらぁ、上から見る桜の良さがわからないなんて、おばかさぁん、ウフフ」
「あら、もうこんな時間ね。水銀燈、夕食を食べていきなさい」
金糸雀もよく家に来るようになった、親切のつもりだろうがヘタクソなバイオリン演奏を披露してくれる。
大量の人形用衣装を持ち込み真紅の前でファッションショーも開催された。
真紅も帽子やリボンを身につけたりして女の子らしくはしゃぐ。
「金糸雀、あなたにこのコサージュはふさわしくないのだわ。私の方が良く似合うわ」
「キーー!!言ったわね、真紅!許さないのかしら〜」
真紅は新しい趣味として編み物を始めた、冬までにジュンにマフラーを編んであげるわと宣言した。
翠星石はお菓子作りだけでなく最近は料理にも挑戦しだした。
雛苺は相変わらず遊んでいるが真紅に呼ばれるとすぐに飛んでいく。
僕は人形たちも生長することを発見し、真紅にそのことを話してみた。
「そうね、私は歩けなくなったけど姉妹たちが助けてくれる。皆が助け合えば生きていけると気がついたのは生長ね」
「アリスゲームはどうなるんだろうな・・・」
「闘わなくても生長できることに気がついたのだから、いつかは皆がアリスになれるわ、きっとね」
唐突にいい話かよ!
いかん、目から老廃物が…
真紅・〜編って作者同じ?
目からヤクルトが…
GJ!
>>501の予告通り、中華編に続いてハートフルストーリーだ……
>>513 こっちも過疎ってるし、批判禁止のルール守られてないし、もう無法地帯。
今更ノーマルも糞もないと思うが毎日チェックしてそうな自治さん。
>>520まあ、守ってない人もいるが
だからといって自分達までルールを破っていいってことにはならないしな
我慢できなくて注意する人もいなければいないでこまるし
守れる人は守っていくようにすればいいと思うけどな
昔いた作者もいなくなったしもう終わりかな。
世間が夏休み前なのに、書く暇が全く無いというこの状況はいかに?
同じような境遇の書き手はいると思われ。
そういう願望だけじゃどうにもならないよ。
>>515 ごめん。1つだけささやかなツッコミ。
『生長』じゃなくて『成長』だと思う。
『薔薇』乙女だから生長を使ったという、遊び心なら話は別だけど。
つまり夏からは厨房の質の低い作品が増えると。
バッチコーイ!
それじゃあ、夏なので厨房の質の低い作品を投下しますよ。
529 :
ガラスのくつ:2006/07/19(水) 00:30:21 ID:q/uFZCu5
僕はためらいなく包丁を振り下ろす。
刃先は簡単に肉へとめり込み、血翔が眼鏡に飛び散る。
途端、甲高い絶叫が響いた。
耳を塞ぎたくるような叫びが途切れた後、僕は包丁を引き抜く。
一撃で仕留めれなかったことを後悔するあたり、今の僕は自分でも恐ろしいぐらい冷静だ。
ふと考える。
何故、こんなことになってしまった?
先程まで熱にうなされていた思考がゆっくりと覚醒を始め、回想する。だが思い浮かぶのは二重、三重に塗りたくられた黒い記憶だけ。
自然と口の端が吊り上るのが分かった。
最初から不思議がる必要はないのだ。
ただひとつ、理解しているのだから。
そう、
僕は狂っている。
530 :
ガラスのくつ:2006/07/19(水) 00:31:18 ID:q/uFZCu5
「やめて ! お願い……! こんなの、間違ってる……!」
足下を無様に這いずり回る『それ』は、僕に墾願する。
「 を信じて……また、きっと元通りになるから……!」
『それ』が伸ばした両手は僕を求めるように空気を掴む。
『それ』が動くたびに赤黒い血溜りは大きさを増していく。
僕が侮蔑といっていい態度で鼻を鳴らし睨みつけても、めげることなく芋虫のようにズリズリと近づいてくる。
やがて僕が冷やかな視線で見下ろしているのに気づいたのだろう、『それ』は何を勘違いしたのか穏やかな笑みを浮かべ、小さく呟いた。
「大丈夫。 はずっと、 と一緒だから……」
不快だ。
たまらなく不快だった。
殺意と嫌悪が混じり入った感情が僕を支配する。
こいつは殺す。殺してやる。
だから僕は再び腕を振り上げて、『それ』の首元に包丁を突き入れた。
何度も何度も執拗に切り裂き、突き刺し、返り血を全身に浴びながらも僕の腕が止まることはない。我を忘れて斬って斬って斬り続け、響き渡る断末魔がようやく僕の耳に届いたときには、僕の全身は『それ』の返り血で真っ赤に染まっていた。
531 :
ガラスのくつ:2006/07/19(水) 00:32:10 ID:q/uFZCu5
「……」
鼻腔をくすぐる生臭い匂い。指先に感じる温かい他者の血液。
まるで夢をみているのかのような浮遊感と気怠さ。
常人なら眉を顰めるような惨状も、今の僕には心地よかった。
だから苦痛を感じなくなった『それ』を見ても感慨に浸ることなく、僕は落ち着いて包丁についた血糊を自分のシャツでふき取る。
丁寧に汚れをとり、目上にあげた包丁は僕のしでかした狂気を物語るように鈍く光を反射し、やがて力なく手から抜け落ちた。
床に突き刺さった包丁に目もくれずに、僕は『それ』の横を通り抜けて居間にいき、ソファーに緩慢とした動作で座り込む。
同時に、どっと疲れが押し寄せた。
無我夢中に包丁を振り回している時には気づかなかったが、思っていたより神経をすり減らし、酷使していのだと実感する。
僕の肩から力が抜けた。
睡魔が意識を濁らせる。瞼が重く、目を開けるのもままならない。
夢と現実の狭間を彷徨う僕は、いつしか深い眠りに落ちていった。
532 :
ガラスのくつ:2006/07/19(水) 00:33:00 ID:q/uFZCu5
次に目覚めた時、視界に飛び込んできたのは窓から射し込む夕日に彩られた燈色の世界。
あれから何時間たったのだろうか、いつのまにか日は沈みかけている。
相変わらず生臭い匂いは身体からは消えないが、夕日のおかげで室内中に飛び散る血は目立たない。
それだけでも僕は幾分、気分を落ち着けることが出来た。
もし目を開けたとき、壁や床にこびり付いた血跡を目の当たりにしたら、僕はとても平静ではいられない。きっと悲鳴をあげていただろう。
叫べば当然、周囲の住人が不審に思うはず。もしかしたら余計なお節介で通報するかもしれない。
だからこの住宅街で僕は静かに息を潜める。
何故なら僕は、今やれっきとした人殺しなのだから。
罪の意識がない、と言えば嘘になる。だけど僕は自らが行った凶行を後悔はしていない。
あの時、『あれ』を殺さなければ僕は僕でいられなかった。
自己喪失を抑える術はそれしかなかったのだ。
殺意と憎悪に導かれ、たどり着いた結果がこの有様。
僕はここまで追い詰めた奴等はさぞかし僕を嗤っているだろう。腹立たしいことだが、だからといって今の僕に奴等を皆殺しにする気力もなければ覚悟もない
533 :
ガラスのくつ:2006/07/19(水) 00:34:18 ID:q/uFZCu5
すべてに嫌気がさした僕は、大きく溜息をついて天井を仰いだ。
「もう、疲れたよ――」
独りで呟いて、僕は自嘲しながら目線を下ろした。
日は完全に沈み、闇が侵食する居間。
いつのまにかそこには、その場にはあまりに不似合いな白が佇んでいた。
それは紛れもない少女。
いったいどこから入ってきたのか。そんな野暮な疑問も掻き消す魅力が、彼女にはあった。
頭から足の先まで無垢な白に身を包み、その肌は触れば汚してしまいそうな、新雪を思わせる美しさ。
瞬きをするのも忘れた僕を、色のない瞳が射抜く。右目を隠す薔薇の眼帯さえも、彼女の神秘性をかきたてる要素になっていることに僕は敬服するしかなかった。
「――君は、誰だ?」
まともな思考力を取り戻し、ようやく口から搾り出せた言葉はたった一言だけ。
それ以上は何も言えず閉口した僕を、少女は左目だけでじっと見つめ、やがてその薄い桃色の唇を開いた。
「あなたはだれ?」
彼女の言葉は、僕の言葉を繰り返しただけのもの。
質問の答えにはなっていないが、僕はそのことを追及することはせず、素直に少女の問いに答えてやることにした。
「僕は……誰だろうか。 思い出せない。 いや、思い出したくないのかもしれない」
小首を微かに傾げえる少女に悪い気がしつつ、僕は顔を伏せた。
534 :
ガラスのくつ:2006/07/19(水) 00:35:41 ID:q/uFZCu5
「ごめん、君の質問には答えられそうにないよ」
そんな僕を意外そうに眺めてから、くすり、と目の前の少女が可愛らしく笑う。
幻想的ともいえるその微笑に呑まれ、僕は驚きを隠すことが出来なかった。
少女は僕の戸惑いを見透かしたように片目だけで見つめ返す。
「あなたと私は、とても似ていますね」
「僕と、君が……?」
「ええ、そっくりです」
か細い白い手が僕の頬にそえられる。一瞬、その冷たさに体が震えたが、それよりも彼女が実在することを確信できたことに、僕はなによりの安堵を感じていた。
「自分の居場所を見失ってしまった迷子。 どこに還ればいいのかも分からず、ディラックの海を悠久に彷徨い続ける」
「……?」
「――私と一緒。 本当に、可哀想な人」
目を細めた少女が慈愛に満ちた言葉を投げかけた。
この子の言っている事は理解できない。僕の知識からは飛躍した、聞いたこともない単語を並べられ、僕は肩を竦めるしかなかった。
それにしても――
「迷子って……もしかして君はずっと独りなのか?」
少女が頷く。
「ですが、お父様はおっしゃいました。 すべては噛み合う歯車のようなものだと」
「分かりにくい例えだ。 君のお父さんは物事を遠回しに言うのが好きなのかな」
彼女の微笑みが見たいがために、僕は冗談をまじえて訊ねる。
535 :
ガラスのくつ:2006/07/19(水) 00:37:15 ID:q/uFZCu5
「ふふふっ……本当に可笑しい人」
これほど穏和な表情を浮かべれる者が、この腐った世界にどれほどいるのだろう。
今まで繕った笑顔ばかりを目にしてきた僕にとって、それはとても新鮮なものであり、曇った心が洗われていくのを感じた。
「歯車というものは一度噛み合ってしまえば、その回転が止まることはない。 廻りに廻って、必ずまた巡り合うことができる。 だから、私は待ち続けているのです」
「信じているんだね、お父さんを」
「創造主を信用できない者は、この世界にいませんよ」
彼女はなんて純真なのだろうか。
この世は裏切りに満ちているというのに。
「あぁ、そういえば――」
頬にそえられた白い手の上に僕は自らの手をそっと重ね、微かに震えた彼女の指先を優しく包み込む。
強く握り締めれば壊れてしまいそうな不安に駆られる。
それほどまでに彼女は儚く頼りなかった。
「君の名前を聞いてなかったな」
今更、かな。と続けた僕を、彼女はたしなめることなく優しく受け入れてくれた。
「私の名前は雪華綺晶。 誇り高き薔薇乙女の第七ドール」
続く
始めの方の『それ』が気になりますね。
文章的には元ネタがテキスト形式のゲームのせいか、かなり良いと思います。
しかし、元ネタ18禁ですよね……しかもグロ要素盛りだくさんですよね……
おそらく叩かれるでしょうが、個人的には面白いと思います。
できたら続きを書いて欲しいものですが……
正直wktk
ローザwktk
雪華綺晶がでて来るSSは中々ないのでちょっとグロそうだけど先が楽しみですな
528さんの作品が完結したら私の新作投下しまする
>>540 完結は当分先になりそうなので、お先に新作投下どうぞ。
プルルル・・・プルルル・・・ガチャ
「はい、もしもし、桜田です」
「もしもし、ヒナよ、ヒナかしら〜」
「あら、雛ちゃん散歩中よね。どうしたの?」
「お腹が空いたのかしら〜倒れそうなのかしら〜」
「あらあら、大変。夕飯用意しておくから早く帰ってらっしゃい」
「それでは間に合わないのかしら〜玉子焼きをタッパーに詰めて二丁目の神社に持ってくるのかしら〜」
「わかったわ、雛ちゃん待っててね」
「急がないとお腹が空いて死んでしまうのかしら〜」
ガチャ
ノリは大急ぎで玉子焼きを作り始める。
「うっふっふ、薔薇乙女一の策士、この金糸雀が楽してズルして玉子焼きをゲットかしら〜」
ピチカートが不安そうに飛び回る。
「大丈夫よ、ピチカート。雛苺が散歩中なのは調査済みかしら〜
そしてみっちゃんから借りた金髪ウィッグとピンクのパジャマを着れば雛苺に変身かしら〜」
「雛ちゃん、すぐ玉子焼き持って行くからね、雛ちゃんの好きな苺ジャムを玉子焼きに入れてと・・・」
「ただいまなの〜、お散歩楽しかったの〜〜」
「あら、雛ちゃん!大丈夫?お腹が空いたのじゃなかったの?」
「うん!お腹ぺこぺこなの〜、あ〜〜玉子焼きの匂いなの〜〜」
「夕飯すぐ用意できるから座っててね、雛ちゃんも電話ができるなんて立派になったわね」
「うゆ〜???・・・うん!ひなはがんばってるの〜」
「引き続き待機よ、ピチカート。身代金誘拐は現金引渡しが一番重要、油断は禁物かしら〜」
ぐぅぅうう〜〜きゅるる〜〜
「しっ!静かに!ピチカート!あともう少しで玉子焼きをゲットかしら〜」
3時間後、金糸雀は泣きながら家に帰った。
「あ〜〜〜ん、カナのパジャマ姿もカワイイ〜〜〜」
「みっちゃん、もうすぐ金糸雀は死ぬのかしら・・・玉子焼きの幻が見えるのかしら・・・ぱくっモグモグ・・・」
「カナ!!それはピチカートよ!!食べちゃダメ!今すぐ玉子焼き作るから!!」
みっちゃんに特大玉子焼きを食べさせてもらった金糸雀は幸せに涙するのでした。
のり気付けよwww
いや・・・もう終わり?
>>545 他の人が連載してる時は短編のがいいかなと
オチが弱かったのは謝る
次回作は真紅・対決編
真紅と水銀燈の血も涙もない戦いを見せてやるぜい
No wktk
548 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/07/21(金) 05:33:12 ID:y6i9TRFE
調子に乗ってる奴が書く物ほどつまらない物はないよな
549 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/07/21(金) 09:00:44 ID:jRahGpwB
550 :
真紅・酒場編:2006/07/21(金) 16:50:45 ID:Bh2UKPoa
>>548 お前は俺のやる気に火をつけた
感動したって言うまでSS書き続けてやるぜ
551 :
真紅・酒場編:2006/07/21(金) 16:52:52 ID:Bh2UKPoa
いらっしゃい、お客さん、この店は初めて?
水割りでいいかしら?
お兄さん、いい男ね。私の昔の彼氏を思い出すのだわ・・・
ジュンって男の子よ、ちょっと線が細い感じだけど「真紅は僕が守るんだ」って言ってくれて
ついつい私も本気になっちゃってね・・・
服飾デザイナーを目指してて二人でがんばったわ、私も内職して支えたのだわ。
あら、こう見えても好きな人には尽くすタイプなのよ。
彼のデザインが初めて採用された時はうれしくてね、思わず泣いちゃったわ
その時は一生この人についていくわって思ったのだけど・・・
彼が中学の時の同級生を妊娠させちゃってそのまま結婚
私はあきらめきれなくて・・・いけないいけないと思いながらズルズルと不倫
10年経って捨てられて気がついたら私もすっかりオバサン・・・
あら、ごめんなさいね。湿っぽい話しちゃって・・・
さ、飲んで飲んで
いいのよ、慰めてくれなくても・・・
貴方にやさしい言葉かけてもらうとジュンのこと思い出しちゃうから・・・
イイネ!
作品ごとに台本形式、三人称、独白形式、スタイルが変わるのが面白い
住人の大多数を占める沈黙の読者を信じて、これからも書き続けて欲しい
553 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/07/21(金) 20:02:26 ID:yaFDjdRo
沈黙の意味を汲み取ってください
554 :
真紅・完結編:2006/07/21(金) 20:28:28 ID:Bh2UKPoa
人形たちの長い戦いは終わった。
真紅の足元には姉妹の亡骸が転がっていた。
「水銀燈、雛苺、翠星石、蒼星石、金糸雀・・・バカな私を許して・・・」
そして、何よりも大切な人を失った。
「ジュン・・・目を開けて・・・お願いよ」
真紅がジュンの遺体にすがりつく。
「私独り残って貴方がいないなんて何の意味もないのだわ」
真紅は胸の中から7つのローザミスティカを取り出し、ジュンに押し当てる。
「ジュン、貴方なら私が動かない人形になっても大切にしてくれるわよね・・・」
ジュンは覚醒した。
傍らに横たわる真紅を見て全ての事情を察したジュンは叫んだ。
「真紅が・・・死んだ・・・ローゼン!見てるんだろ!これがお前の望んだことか!」
突如、辺りが光に包まれ一人の老人が現れる。
「ア、アリスゥ・・・」
長すぎた、永遠にも等しい時間の末にローゼンは人としての心を失い、アリスのみを求める欲望の虜となっていた。
「アリスゥ・・・オマエ・・・アリス」
ジュンはローゼンに殴りかかる。
「真紅を返せ!!真紅は!ドール達はお前のために闘ったんだぞ!」
ローゼンの手がジュンを押さえつけ服を引き裂いていく。
「や、やめろ!!僕はアリスじゃない!!やめろ!!」
「・・・ツ、ツンデレ・・・眼鏡っ娘・・・」
ローゼンがジュンの下着までも取り払った。
「・・・ふ、ふたなり・・・」
「うわあああーーーー!!僕は男だ!!男だ!!」
ローゼンのひび割れた唇がジュンの肌に押し付けられる。
「ウホッ・・・良いアリス・・・」
「アアーーーッ!!」
ローゼンとアリスは永遠の愛の時間を過ごし続ける。
× アアーーーッ!!
○ アッー!
罰として四つん這いになれよ
556 :
真紅・完結編:2006/07/21(金) 21:03:22 ID:Bh2UKPoa
557 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/07/22(土) 04:56:35 ID:sJvSeeTb
調子に乗ってる奴が書く物ほどつまらない物はないよな
つまんない物しか書けないから調子に乗る(必死になる)んじゃね?
ごめんなさいね、こんなオバサンと話してても楽しくないでしょ
うちに雛苺ちゃんって若い娘いるんだけど今日はお休みなのよ
また来た時に可愛がってあげてね、とっても素直な娘なのだわ
いらっしゃ・・・あら、銀ちゃん遅刻よ。罰金500円ね
この娘がうちのチーママの水銀燈ちゃんよ、キレイでしょ
銀ちゃん、カラオケつけてくれるかしら
お客さん、一緒にデュエットどう?
じゃあ、銀ちゃん一曲お願いなのだわ
そうね、明るい曲がいいわ。嫌なことはパーッと歌って忘れちゃいましょ。
マダーイワナーイデ・・・♪
スナック『真紅』の夜は今日もふけていく
560 :
真紅・契約編:2006/07/22(土) 12:12:36 ID:Ko0iMKIv
プルルル・・・プルルル・・・ピッ
「はい、もしもし、水銀燈よぉ」
「私よ、真紅なのだわ」
「あらぁ、真紅久しぶりね。ミーディアムにしたい人見つかったんでしょお?幸せになってね」
「水銀燈姉さん、そのことで相談なのだわ」
「・・・つまり、私にお芝居しろってことねぇ、面倒だわぁ。好きな人がいるなら抱きつけば男はすぐついてくるわぁ」
「ジュンはそんな人じゃないのよ、水銀燈姉さん。一生のお願い!」
「仕方ないわね、まず私が悪魔の人形ってことでミーディアムをボコボコに痛めつければいいのかしらぁ?」
「ケガさせない程度にしてちょうだい、私がすぐにかばいにいくから」
「そこで真紅が天使の人形ってことで格好よく登場ね、私の良い所全然ないわぁ」
「私がジュンと契約して一発殴ったらハデに吹っ飛んで欲しいのだわ」
「わかったわぁ、かわいい妹の頼みじゃ断れないわぁ」
真紅は鞄に詰められて桜田家に配達されていた。
プルルル・・・プルルル・・・ピッ
「真紅なのだわ、今忙しいからまた後で・・・」
「ごめん!今日いけなくなっちゃったのよぉ」
「なんですって!?もうすぐミーディアムの家に配達されちゃうのだわ!姉さん。すぐ来て!」
「代わりの人を手配したから打ち合わせてくれるぅ?クマのブーさんって人、いい人だから大丈夫よぉ」
「水銀燈姉さん!」
プルルル・・・プルルル・・・ピッ
「もしもし?」
「真紅さんでっか?水銀燈姐さんにはいつもお世話になっとりやす、クマのブーさんってケチな無宿者でございやす」
「あ、あの?桜田ジュンって人間を少し・・・」
「へぇ、話はきいてやす。安心してくだせぇ、二度と悪さできねぇように徹底的に痛めつけてやりますから」
「ちょ、ちょっと!」
「桜田さーーん、お届け物です。こちらにサインお願いします」
桜田家を幻冬社の担当が訪れていた。
「・・・というわけで、アニメ特別編の制作も決まりましたし真紅さんに盛り上げて頂きたい訳ですよ」
「それでファンとの握手会ね」
「そういうことです、ぜひ真紅さんに来て頂きたいのですよ」
「そうね、私も忙しいのだけど主人公の私が行かなければ盛り上がらないでしょうね、わかったのだわ」
握手会当日
「ジュン、起きなさい。いつまで寝てるのかしら?今日は握手会があるのだわ」
「ふぁ〜あ、真紅、握手会は昼からだろ。もう少し寝ても間に合うよ」
「何を言ってるの!!私のファンは徹夜で並んでいるに決まっているわ!人数が多いようなら早めに会場を開けないと!」
ジュンは真紅を抱っこし握手会の会場に電車で向かうが、急に真紅がソワソワしだす。
「ジュン、サングラスはないかしら?私が見つかったら大騒ぎになるわ」
「真紅、意識しすぎだよ。人形のフリしてれば大丈夫さ」
会場近くの駅で下車したところで子供たちに指差される。
「「あーー!この赤い奴、ローゼンメイデンだー!」」
「失礼ね!赤い奴ではないのだわ」
口調は怒っているが真紅はうれしそうである、子供たち相手にサービスもする。
「私は誇り高きローゼンメイデンの第5ドール真紅、薔薇の指輪に誓いなさい!」
「「わーーー!本物だーー!」」
突然、一人の女の子が泣きそうになりながら真紅を指差す。
「でも、この赤いのが黒いお人形さんを苛めてたわ!」
真紅は慌てた。
「ち、違うのだわ。黒い人形は悪い奴なのよ、私は正義のために闘っていたのよ・・・」
「でも、黒いお人形さんは病気の女の子のために闘ってたんだよな」
「こいつ、ピンクのヒナちゃんも苛めてたよ!!悪い奴だ!」
子供たちに囲まれた真紅はたじたじとなる。
「ジュン、抱っこして!!走るわよ!」
ジュンは会場めがけて逃げる、ようやく会場の看板が見えてきた。
『ローゼンメイデン・水銀燈ファン感謝祭』
第一部 13:00〜14:00 水銀燈トークショー(聞き手 メグ)
第二部 14:10〜14:40 薔薇乙女隊ミニライブ(出演 雛苺・金糸雀・翠星石)
第三部 15:00〜16:00 水銀燈握手会(特別ゲスト 蒼星石)
よく見ると下のほうに「握手会には真紅もくるよ!」とマジックで書き足されていた。
「こ、これはどういうことなの!!ジュン!」
「どういうことって・・・見たままだろ」
真紅はジュンの腕から飛び出し看板を指差す。
「これではまるで水銀燈が主役じゃないの!!何かの間違いだわ!」
「う〜〜ん、人気の差じゃないかな」
真紅は看板を蹴飛ばす。
「主人公の私が一番人気に決まっているのだわ!」
562 :
真紅・完結編:2006/07/23(日) 18:39:11 ID:UwSgPbZt
会場に入るとスタッフが真紅に駆け寄ってくる。
「真紅さん、お疲れ様です。こちらが控え室になっていますので」
案内された控え室は廊下の突き当りをカーテンで仕切ってパイプ椅子が置いてあるだけだった。
「真紅、さっき『水銀燈様控え室』って札かかった部屋があったから挨拶にいってみようか」
「ジュン、何を言ってるのかしら?挨拶に来るのは水銀燈よ」
真紅は現実を認めようとはしなかった。
「ジュン、紅茶を淹れてちょうだい」
「あ、さっきスタッフの人から缶コーヒーとジャムパン貰ったよ」
「私が来るのに紅茶の用意もしてないなんて!!帰るわよ!ジュン!」
真紅は椅子から飛び下り帰ろうとする。
「おい、真紅。握手会で真紅のファンが待ってるぞ」
「そ、そうね。水銀燈のトークショーなんて前座みたいなものね。握手会で私の人気を見せつけてやるのだわ」
真紅の控え室に水銀燈トークショーの歓声が聞こえてくる。
「みんな〜乳酸菌摂ってるぅ〜?」
ウオォォォーーー!!
「みんな〜私のミーディアムになってくれるぅ〜?」
ウオォォォォォーーーー!!!
水銀燈のトークショーは大盛況であった。
「あの時、真紅に苛められて翼が折れちゃったときは鞄で眠ることもできずに・・・」
メグが聞き手となり水銀燈の苦労話が始まると会場からはすすり泣きの声も漏れてくる。
握手会の準備が始まった。
水銀燈の巨大POPの前にはロープで誘導路が作られ警備員が配置につく。
その横に写真集が山積みになった蒼星石のテーブルが配置される。
「ジュン、私の握手会はここでは無理ね。私のファンが入りきれないわ」
ジュンが黙って会場の隅を指差す、そこには小さな机と「真紅握手会」と書かれた立て看板があった。
「・・・ジュン、私のファンは来てくれるわよね?大丈夫よね?」
ジュンは何も応えることができなかった。
しばらくすると特別ゲストの蒼星石がやってきた。
「蒼星石、しばらくね、元気だったかしら?」
「やぁ、真紅。久しぶりだね、僕の写真集が発売になるので今日は宣伝も兼ねて握手会さ」
「写真集?がんばってるのね、私のファンにも買うように勧めておくのだわ」
「ありがとう、気持ちだけで十分だよ・・・フフフ」
握手会が始まった、水銀燈の列は大混雑、蒼星石の列にも女性ファンが大挙して並ぶ。
「ジュン、ジュン・・・泣いてもいいかしら?」
真紅の机の前には誰もいない。
「大丈夫だよ、真紅。きっと真紅ファンの人はどこで握手会やるのか捜してるんだよ、ここはわかりにくいし」
「そ、そうよね!!そうだわ!ジュン!呼び込みをしてらっしゃい!私のファンを捜してくるのよ!」
「ええっ!?呼び込みだって?・・・・・ゴメン!真紅」
引き篭もりのジュンには無理な要求である、ジュンは走って逃げ出した。
「ジュン!待って!独りにしないで!」
真紅は4人のファンと握手した、握手会は無事に終わった。
「あらぁ、真紅、ごめんなさいねぇ。忙しくて挨拶する暇もなかったのよぉ、今日は来てくれてありがとう」
水銀燈のやさしい言葉がナイフのように真紅に突き刺さる。
「これからみんなで打ち上げ会やるのよぉ、真紅も来てくれるでしょぉ?」
「水銀燈!!次は!特別編では許さないわ!覚えてなさい!」
「へ????ちょっと、真紅どうしたのぉ?」
真紅は一人で家まで歩いて帰った。
「ただいま。ジュン、紅茶を淹れてちょうだい、今すぐよ」
「やあ、真紅・・・おかえり・・・さっきはゴメン」
「いいのよ、ジュン。今日は水銀燈の罠にはまってしまったようね」
真紅はいつもと同じ様子に戻ったようである、ジュンは安心した。
「このままでは済まさないのだわ、『真紅ファンの集い』を開催するのだわ。ジュン、準備しなさい」
「真紅・・・無理だよ」
ジュンの奔走で真紅ファンの集いは市民ホールを借りて開催されることになった。
真紅とのお茶会、ハズレなしのビンゴゲーム、真紅サイン会
それなりに盛況、それなりに人も集まった。
「私のファンは騒ぎ立てない落ち着いた人が多いのだわ、水銀燈のバカなファンとは大違いだわ」
その時、ジュンは誰かと電話していた。
「今日はビンゴゲームの景品を提供してくれてありがとう、水銀燈」
ビンゴゲームで何も知らない真紅が手渡した袋の中身は高価な水銀燈グッズだった。
「いいのよぉ、あれぐらい。真紅の仕事が少ないって聞いてイベントに呼んだのだけど傷つけちゃったみたいだしぃ」
前回のイベントは桜田家の窮状を聞いた水銀燈が好意で真紅を呼んだのだった。
「今日は私も真紅を手伝いたかったけどぉ、スケジュールが空かなくてごめんなさいねぇ」
「いいんだよ、他のみんなが手伝ってくれたし、ファンの集いは大成功さ」
「今度、真紅を連れて遊びに来てね、ジュン君」
ジュンは電話を終えて振り返る。
「チビ人間が土下座して頼むから仕方なく来てやったですぅ」
「ジュンも真紅もだ〜い好きなの〜、ひなは何でもお手伝いするの〜」
「ジュン君と翠星石に頼まれたら断れないよ、今日は楽しかったよ」
「べ、別にお弁当のタマゴ焼きに釣られたわけではないかしら〜」
ジュンは今日のために完璧な布陣をしていた。
翠星石に司会、蒼星石に受付、雛苺にお茶会の給仕、金糸雀に呼び込みをさせていた。
「真紅だけの人気じゃこれだけ人が集まらなかったよ、みんな、ありがとう。真紅に代わってお礼を言うよ」
「ジュン、今日は大成功だったのだわ、ご苦労様。次は海外公演ね、カーネギーホールを予約しなさい」
ワラタ
勢いいいね、ドンドン書いてくれ、僕も頑張って書くよ。
銀ちゃんは、優しいなぁ
戦わなければ引きこもれない!
主人公、桜田ジュンはフリーの引きこもり。
ある日彼は家の物置にある大きな鏡から偶然nの領域へと踏み込んでしまう。
通常の人間がnの領域へと踏み込んでしまうと、自力では元の世界へ戻れず消滅してしまう。
出口を求めてnの領域を彷徨っていたジュンは、そこで契約モンスター真紅と水銀燈の戦いに
巻き込まれてしまった。
「残念だけどお前はここで死ぬわ・・・それが嫌なら誓いなさい」
そしてジュンは、否応なしに”アリスゲーム”へと巻き込まれてしまうのだった!
*これがさいきょうのらいだー、かめんらいだーしんくだ!*
仮面ライダー真紅(桜田ジュン)
パンチ力:10AP
キック力:25AP
ちょうやく力:ひととび40メートル
ソードベント:ローズステッキ(35AP
ストライクベント:ローズテイル(20AP
ファイナルベント:ローズリーフカッター(60AP
■1AP=10d ただし、nの領域から出るとその力は1/10になる。
ジャジャー!シャキシャキシャキーン!
新番組仮面ライダー真紅 この後すぐ!!
フリーの引きこもりってなんですか
この設定で続き書いてほしい
ジュン…
最近私を避ける事が多いわね
悲しいわ
もう私は貴方の幸せなお人形でいられないのね…
ミーディアムである貴方との絆がなくなってしまっては
私は貴方の所にいられない
さよなら…ジュン…
ジ「真紅!!!」
ガチャ…
真「ん…朝から騒々しいわね…何事?」
ジ「真紅!」
真「だから何事なの?」
ジ「真紅…もう寂しい想いをさせないから…
紅茶も上手く煎れれるようになるから!
だから!ずっと僕の所にいてくれ!」真「えっ?!あっ朝からなっ何の冗談なの?////」
ジ「冗談じゃないんだ!本気なんだ!」
真「でっでも私は人形なのよ?///」
ジ「そんな事は関係ない…真紅…君が好きなんだ、僕じゃダメか?」
真「そんな事ないわ…ジュン…私も貴方が…」
雛「真紅にやけてるのー」
翠「チビ人間は少し悲しそうな顔してるですぅ…」
蒼「二人共やめなよ〜…ねてるんだからそっとしといてあげようよ」
の「そうね〜お休みの邪魔しちゃ悪いわね、じゃあ下でおやつにしましょうか♪」
雛「おやつ!うにゅ〜は!?」
の「もちろんあるわよ〜♪」
雛「わ〜いなの〜♪」
翠「ん〜なんかすっきりしね〜ですぅ…」
蒼「えっ?翠星石なにか言ったかい?」
翠「別になんでもね〜ですぅ、さっ早く下でおやつにするですぅ」
蒼「?、うっうん」
翠(二人共寄り添ってねて恋人みたいですぅ…真紅ばっかりずるいですぅ)
ジ「真紅…」
真「ジュン…」
( ・∀・)つ【夢に乱入&幸せな貴方との3P】
573 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/07/26(水) 21:07:34 ID:fcHGP7dC
過疎ってんなぁ
あげとくか
574 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/07/30(日) 18:03:31 ID:RR3ejfXB
〜編の人もいなくなったしここも終わりかな
今書いてるからもう少し待って
>>575 いい子にしてるから必ずここに乗せてなの
約束なのよ
真夜中の病室に水銀燈が降り立つ。
「この婆さんが新しいミーディアム?つまんない感じぃ」
ベットに横たわる老婆の上でメイメイが飛び回る。
「いいわ、メイメイを信用するわ」
老婆がムクリと起き上がり、声を発する。
「看護婦さん、ご飯はまだですかのう?」
「あきれたおばかさぁん、こんな看護婦がいるわけないじゃない」
突然、老婆がベットの上に正座し、水銀燈を拝み始める。
「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏、ようやく私にもお迎えが・・・」
「ちょっとぉ、何を勘違いしてるのぉ、命は貰うけど」
「へぇ、もう思い残すことはありません、どうかあの世に連れて行ってくださいまし」
「話が早くていいわぁ、何か言い残すことはある?」
老婆は頭を擦り付けるように土下座し頼み始めた。
「私の孫に『お父さん、お母さんの言うことをよく聞いて勉強しなさい』と伝えてやってくださいまし」
老婆は息子夫婦と喧嘩してしまったため、孫が見舞いにこれなくなったことを嘆いた。
「面倒だわぁ、ちょっと待ってなさい」
水銀燈はnのフィールドを通り、老婆の孫の部屋へと向かう。
「さっさと起きなさぁい、ちょっとお出かけするわよ」
水銀燈は寝ている幼稚園児をゲシゲシと蹴りつけ叩き起こす。
「ふぇぇ〜〜、なに〜〜?」
「アンタのお婆さんに会わせてあげるから、さっさと起きなさい」
幼稚園児には水銀燈の言葉も聞こえていないようだ、夜中に現れた闖入者の羽根を引っ張って遊び始める。
「トリさ〜ん?カラスさ〜ん?」
「トリでもカラスでもないわ!この糞ガキ!」
水銀燈は孫を振り払い、強引に連れ出そうとする。
「うわ〜〜ん!!」
「ちょっと泣くんじゃないわよ!・・・・ほらほらトリさんよ〜〜」
大声で泣き出した孫をあやすために水銀燈は羽をパタパタさせ慰める。
「ふぇ〜〜?トリさんだーー!」
「お婆ちゃーーん!!」
「さなえ、元気だったかい?お友達と仲良くしてるかい?」
病室では祖母と孫の感動の対面が行われていた。
しばらくすると孫は話し疲れて祖母の膝の上で眠り込んだ。
「もういいかしらぁ?」
「へぇ、ありがとうございました。孫の顔が見れて安心してあの世にいけますです」
「私と契約したらアンタみたいなお婆さんはすぐイッちゃうかもぉ・・・フフフ」
「へぇ、あの世でお爺さんも待ってます、連れて行ってくだせえ」
ぐううぅぅ〜〜きゅるる〜〜
「・・・何の音かしらぁ?」
「お腹が減っておりますが、あの世でおいしいものを食べるまで我慢いたします、早く連れていってくだせえ」
「何が食べたいの!言ってごらんなさい!」
「苺大福がなによりの好物でございます、一つ二つ食べて死ねたら何も言うことはありません」
「ちょっと待ってなさい!」
水銀燈は苺大福を求めて夜の空に飛び立つ。
コンビニ一軒目
「いらっしゃいませー」
「苺大福はあるかしらぁ?」
「豆大福ならありますが、苺大福はちょっと置いてないですねー」
コンビニ二軒目
「苺大福はあるかしらぁ?」
「・・・そっちの棚さがしてみて、なかったらない」
「態度の悪い店員ね、教育してあげるわぁ」
ゲシゲシ・・・ドカドカ・・・バキッ
コンビニ三軒目
「苺大福はある?」
「すいません、ちょうど売り切れになってまして、申し訳ありません」
「困ったわぁ、どこにもないわぁ・・・」
コンビニを数件まわったがどこにも売ってない、真夜中に開いている和菓子屋もない。
「もしかして・・・あの家なら・・・」
水銀燈は宿敵の住む家に向かった。
「雛苺!起きなさい!」
水銀燈は真紅たちを起こさないように雛苺のトランクを揺さぶる。
「おはようなの〜〜・・・水銀燈!?」
寝ぼけている雛苺の口を後ろから塞ぐ。
「雛苺、苺大福のある場所に案内しなさぁい。声を出したら・・・わかってるわね?」
雛苺は台所の棚に案内する、棚の中には苺大福が5個ほどあった。
「苺大福あったわぁ、貰っていくわね」
「う、うにゅ〜・・・」
雛苺は泣きそうな目で水銀燈をにらむ。
「し、仕方ないわね。代わりにこれをあげるわぁ」
水銀燈は翼の中からヤクルトを取り出すと雛苺に押し付け、病院へと飛び去った。
「ハァハァ・・・なんだか疲れたわぁ、ちょっと起きなさぁい」
病院へ戻ると老婆はすでに眠りこけていた。
「へ、へぇ、お迎えですか?」
「食べたがってた苺大福持ってきたわよ!」
老婆はおいしそうに苺大福をほおばる。
「おいしい、おいしい・・・モグモグ・・・ウッー!!」
老婆が苺大福をのどにつまらせる。
「ほらほら、慌てないで味わって食べなさぁい」
苺大福5個をペロリとたいらげると老婆は正座して水銀燈に向きなおる。
「ありがとうごぜえますだ、あなた様は本物の菩薩様ですだ。南無阿弥陀仏・・・」
「こんな真っ黒い菩薩がいるわけないじゃない、まあいいわこれを指に嵌めなさぁい」
水銀燈は老婆に指輪を差し出す、老婆はおずおずと受け取る。
急にメイメイが飛び込み、辺りを狂ったように飛び回る。
「・・・なあに?メイメイどうしたの?人違い!?隣の病室の女の子ですって!?」
水銀燈は慌てて老婆の手から指輪を奪い取る。
「悪いけどアンタはミーディアムじゃなかったわ、せいぜい長生きしなさぁい」
「へへぇ・・・南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」
老婆は水銀燈が飛び去った方をいつまでも拝んでいた。
翌日の桜田家
「みんな〜おやつの時間よ〜」
ノリが人形たちをリビングに集める。
「わ〜い、おやつなの〜」
「ノリ、紅茶の用意もおねがい」
「チビ苺はチビだからおやつも半分でいいですぅ」
ノリが台所の戸棚を開ける・・・が、何も無い。
「あら〜おかしいわね、苺大福入れておいたのになくなってるわ」
「あのねあのね、昨日の夜中に水銀燈が来てね、うにゅ〜を持っていったなの〜」
みんなの視線が雛苺に集まる。
「雛苺、ウソをつくならもっとましなウソをつきなさい」
「チビ苺が食べてしまったに決まってるですぅ、水銀燈が苺大福を取りにくるわけがないですぅ」
「ヒナちゃん、ダメよ〜お腹が空いたなら食べてもいいけど、ウソはダメ」
「うわ〜〜〜〜ん!!!水銀燈のバカ〜〜〜!!」
GJ
良い子にしてたのに〜!!!
酷いの〜!
でも優しい水銀燈は好きなの〜
583 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/08/01(火) 02:22:10 ID:1JWcAdiH
保守
584 :
真紅・巨乳編:2006/08/02(水) 17:02:55 ID:cVL5a13W
桜田家のいつもの食卓
「うゆ〜、ニンジン嫌いなの〜」
「ヒナちゃん、好き嫌いしちゃダメよ。何でも食べないと大きくならないわ」
ノリが雛苺をやさしく諭す。
「翠星石たちは人形だからいくら食べても大きくなったりはしないですぅ」
「ヒナもニンジンいっぱい食べたら、ノリみたいにおっぱい大きくなるの?」
「あらあら、ヒナちゃんはおませさんね、うふふ」
雛苺に胸の大きさを指摘されノリの顔が赤くなる。
「あのねあのね、ジュンもおっぱい大きい人が好きなんだよ」
いきなりの雛苺の爆弾発言である。
「ジュンのベットの下におっぱい大きい人の写真集がいっぱいあったのよ」
「「「なんですって!?」」」」
静まりかえる食卓、ジュンはいたたまれなくなり食べかけのまま二階へ逃げる。
「ヒナちゃん、そんなこと言ったらダメよ」
「うゆ〜、なんでなの〜?」
「ジュンくんが隠してる物は見ちゃダメなの」
真紅も雛苺の発言に冷静ではいられなかった。
「ごちそうさま。ノリ、おいしかったのだわ」
ジュンの後を追うように真紅も二階へあがる。
「ジュン、そこに座りなさい!正座よ!正座」
「な、なんだよ真紅」
部屋に入るなり真紅はジュンに対して説教を始める。
「ジュン、貴方は女性の魅力というものをどのように考えているのかしら?胸の大小はあくまで外見だけ
女性の本当の魅力はその内面にあるということを理解する必要があるのだわ」
「べ、別に人の好みなんかどうでもいいだろ」
ジュンは圧倒されながらも口答えする。
「まあ!私の下僕になることを誓っておきながら!その醜く歪んだ習性を直さなければならないのだわ!」
「真紅の胸が無いからってひがむ事は無いだろ」
ジュンは言ってはならない事を言ってしまった。
バシッ!!
真紅の平手打ちがジュンを部屋の隅にまで吹き飛ばし、ジュンの口から砕けた歯と血が飛び散る。
ジュンは怒りに震えて立ち上がる。が、そこに見たのは泣き崩れる真紅であった。
「わ、私だってもっとバストが欲しかったのだわ、こんな幼児体型じゃなくスタイル良く生まれたかったのだわ・・・」
人形とはいえ真紅も恋する乙女である。
「貴方の幸せなお人形」という言葉で自分をだましてきたが、人と人形との壁を越える普通の恋も夢見てきた。
それが今回のジュンの発言で成長することが出来ない自分が許せなくなったのだ。
「真紅・・・ゴメン、だけど胸があってもなくても僕は真紅のことを何よりも大切に思っているよ」
ジュンは慣れない恋の言葉を捜しながら真紅を必死に慰める。
「そ、それに真紅だってきっと成長するよ!最初に会った時よりなんだか身長も伸びてるしさ」
「本当に?・・・・ジュン、私もがんばるのだわ」
「ジュン、ミルクティーを淹れてちょうだい、牛乳たっぷりね」
GJ
俺は微乳派
真紅・母乳編と見えた俺はきっとミルキー派
真紅のミルクティーは僕ので作る!
ジュン、紅茶一杯入れるのに15分もかかるなんて使えない下僕ね
あら、ミルクが足りないわ
ミルクを足してきなさい
>>588 シコシコ ドピュ
はい。あ、ミルク直飲みする?
「そ・・・そのミルクを私の胸の谷間に飲ませるのだわ・・・早く・・・」
まな板にか?それじゃ、つまらないよ
下半身のお口に飲ましてあげるよ
「ちょwwwペチャパイwwww」
593 :
真紅・首無編:2006/08/05(土) 22:06:36 ID:dO7n/hF3
その日、僕は真紅と雛苺を連れて動物園に向かってた、バスに乗り真紅を窓側に座らせ雛苺を膝の上に抱く。
「ジュン、あのね、象さんとライオンさんどっちが強い?」
雛苺は動物園で見たい動物について夢中で話し続ける。
真紅は初めて乗るバスがめずらしいのか、窓の外の景色をずっと見つめている。
そのうち、すれ違う車に向けて窓から身を乗り出して手を振りはじめた。
「おい、真紅。そんなに窓から出たら危ないぞ」
次の瞬間
ゴシャッーーー!!
真紅の首がすれ違ったトラックに吹き飛ばされた、真紅の髪や顔の破片が道路に散らばる。
僕は呆然として目の前の光景をみていた。
首から上がなくなった人形が手をばたつかせながらバスの中を走り回る。
「真紅!!大丈夫か!?」
乗客たちが悲鳴をあげ逃げ惑う、僕は慌てて真紅を押さえつけてその場でバスを降りた。
真紅は喋ることも聞くことも出来なくなった、紅茶も飲めず、食事もできない。
僕が真紅の手のひらに指で字を書く、真紅はクレヨンでゆっくりと一文字ずつ紙に書いて答える。
「真紅、9時になったよ、寝よう」
「コ・ワ・シ・テ」
「ワ・タ・シ ジ・ャ・ン・ク」
僕は黙って真紅を抱きしめた。
ジャンクでもいいからそばに居てほしい。
翠星石はプライドの高い真紅は首無しで生きていることは望まないだろうと言った。
僕が真紅を壊すのを拒否すると翠星石は家から黙って出て行った。
雛苺はよく状況が理解できないようだった。
いや、理解することを拒むように首なし真紅から逃げ回った。
真紅は部屋の隅に座っていることが多くなった。
時々手を握ってやると、黙って握り返してくる。
ある日、真紅は突然いなくなった。
翌日、水銀燈が訪ねてきた。
「昨日、真紅と戦ってローザミスティカを奪ったわ。もう真紅は戻ってこないわ」
「どうして・・・目も耳も使えないのに・・・」
僕は呆然として呟いた。
「最後に薔薇乙女としての誇りを守りたかったんでしょ、首の無いままこの家に居ても貴方のためにならないと思ったんでしょうね」
水銀燈はそれだけ言うと飛び去っていった。
なんか凄く可愛そう
>>593 失礼ながら
大爆笑で御座います
GJ!
>>593 新しい虐待の道が開けた気がした
おっとここは虐待禁止だったかな?
597 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/08/06(日) 11:26:15 ID:I/ubLwtX
598 :
〜戒〜:2006/08/06(日) 12:54:36 ID:BFNMgpR6
「こ、これは・・・ちょっとマズイかもですぅ・・・」
翠星石は洗面所にあった体重計に乗った瞬間、重々しく呟いた。
プラス6kgオーバー、見た目にはあまり変化はないように見えるが、ここ最近
は妙に動きが鈍いと翠星石自身も感じていた。
「ま、まあこんなものは所詮数字のマジックですぅ、これくらいのこと、翠星石は
平気の平左なのですぅ(汗)」
体重計から降り、じっと鏡を見る。心なしか頬が膨らんでいるように見えた。
「こ、これは目の錯覚なのですぅ、翠星石は十分可愛いですぅ」
とにかく現実から目を逸らそうと、慌てて洗面所から飛び出していった。
その一部始終を見ていた人間がいるのも気づかずに・・・・・・。
「チ〜ビ人間、さっさと起きやがれですぅ!こんな天気のいい日に昼寝ばかり
していたら体がカビだらけになるですぅ!!」
夜更かしというより、復学のための勉強に忙しいジュンは疲れているのか昼寝している
日が最近多くなってきていた。真紅はそんなジュンのことなど気にせず自分のペースを
維持しているのだが、翠星石はかまってほしいのか疲れているにも関わらずジュンを叩き
起こしてくるのだった。
「うるさいな!少しは寝かせてくれ!!」
ジュンはベッドから出ずに怒鳴りつける。そして掛け布団を頭から被り意地でも
寝ようとしていた。
「起きねえというのなら〜、こうしてやるですぅ!!!」
翠星石は助走をつけて大きくジャンプしジュンに強烈なボディプレスを喰らわせた。
「うぎゃああああ!!!」
突然の衝撃にジュンは叫び声をあげる。翠星石はなおもジュンのボディを踏みつけ強引に
叩き起こした。
「こ、この性悪人形め〜、よくも僕を踏みつけたな」
「起こしてやったことを感謝しろですぅ、まったく翠星石がいねえと起きることもできねえヘタレ野郎ですぅ」
翠星石は思い切り毒づくと部屋から出て行った。ジュンは今さら寝ることもできず
踏みつけられた体をさすりながら着替えをして1階へと下りていった。
(あの性悪人形、今にみてろよ)
ジュンの心の中でちょっとした復讐心が疼いていた。
599 :
〜戒〜:2006/08/06(日) 12:55:32 ID:BFNMgpR6
リビングに下りてきたジュン、そこには真紅に雛苺、そして問題の翠星石もいた。
「あ〜ジュンなの〜、ジュンおはようなの〜」
雛苺が無邪気にジュンに挨拶する。おはようといってももう昼なのだが雛苺は
あまり気にしていない。
「ジュン、紅茶を淹れて頂戴」
(起きてきてすぐそれかよ・・・)
ジュンはそう思いながらも素直に紅茶を淹れるため台所に入った。
(でも真紅はまだマシか、紅茶以外は静かだからな)
問題はコイツだ、とジュンは紅茶を淹れながらその問題児の方に顔を向けた。
何かと突っかかってくるその性格、可愛らしいところも無論あるのだがジュンは
そのギャップの激しさについていけないときが多々あるのだった。
「みんな〜ただいま〜」
紅茶を淹れ終えて真紅たちに配っていたときにのりが帰宅した。
リビングではみんな紅茶を飲み、けっこうマッタリとした雰囲気になってはいる。
「あ〜いけない!!」
のりが慌てた声を出すと全員がのりの方に向き直った。
「のり〜どうしたの〜?」
雛苺が怪訝そうにのりに尋ねる。
「今日、借りていたノートをお友達に返さなきゃいけなかったの」
「別に明日でいいじゃないか、そのくらいのこと」
「明日の日曜日はその子が出掛けちゃうから、今日じゃないとダメなの」
心底困った表情でのりは言った。
「じゃあ行ってくれば」
ジュンはぶっきらぼうに返す。だがのりはまだ困った顔をしてジュンを見つめていた。
「のり、いったいどうしたの?」
のりの困った顔を見た真紅が問いかけた。
「えっとね、その友達の家ってここから遠いのよ、だから・・・」
「だから何?」
「お買い物どうしようかなって・・・」
そう言ってまたジュンの方を見つめた。それを聞くと真紅たちも一斉にジュンの方を向く。
「な、なんだよいったい・・・」
8つの視線に射すくめられジュンはおののく。
「ジュン、のりが困っているのだわ、ここはお買い物くらい行くべきなのだわ」
「な、なんで僕があああああ!!!」
ジュンは大声で抗議する。
「ねえジュン君、お願い・・」
のりは拝むようにジュンにお願いする。さすがにジュンも折れざるを得なかった。
「・・・分かったよ、行けばいいんだろ」
「それでいいのだわ、じゃあ行ってらっしゃい」
「お前は何をしてるんだよ!!」
「私は忙しいのだわ」
「紅茶飲んでるだけじゃないか!!」
いつものように真紅とジュンがやりあう、翠星石にはそれが仲良くみえるのか、ジェラシーの炎がオッドアイに燃え上がる。
「仕方ねえですぅ、チビ人間は1人では何もできねえやつなのですぅ、ここはこの
翠星石が付いていってやるですぅ」
翠星石はここぞとばかりにジュンに随行しようとする。彼女の場合は常に口が悪くなってしまうのであるが・・・。
「・・お前が付いていくのかよ・・・・」
さっき叩き起こされたことを根に持っているジュンが露骨に嫌な顔をする。
だが最早致し方ない、ジュンと翠星石はのりに渡されたメモを持って買い物へと
出掛けたのだった。
これが桜田家の生活を変えるとは誰も知る由もなかった・・・・・。
600 :
〜戒〜:2006/08/06(日) 12:56:18 ID:BFNMgpR6
ジュンと翠星石は並んで歩いている。翠背石の足取りは軽いがジュンのそれは重い。
「まず何を買うですぅ?」
翠星石がジュンを見上げながら尋ねる。
「まずは、挽き肉だとさ」
のりに渡されたメモを見ながらジュンが答える。このメモの内容だと今日の献立は
またも花丸ハンバーグのようだ。よく飽きないな、とジュンはある意味感心する。
最もジュン自身も食べているのだが・・・・。
やがてジュンと翠星石はスーパーマーケットに到着するとお肉コーナーへと向かう。
「牛肉♪豚肉♪鶏肉♪キン肉、肉、肉、にく18♪」
翠星石は訳の分からない歌を歌いながら挽き肉を物色している。
ジュンは呆れながらも自分もメモを確認しながらカートに挽き肉を入れた。
(うん待てよ)
ジュンの心にちょっとした悪戯心が湧き上がった。
(さっきの踏みつけのお返しだ)
そう思うとジュンは近くにいた店員に尋ねてみた。
「あのすいません、豚肉6kgってどれぐらいになりますか?」
「えっ6kgですか?!」
店員は作業場にいったん戻ると、巨大な肉の塊を持ってきた。
「そうですね6kgっていうとこのぐらいになりますね」
ジュンはその肉の塊を見たあと翠星石に視線を移す。ジュンの視線に気づいた翠星石の
顔がみるみる青くなっていった。
「宴会でもなさるんですか?」
店員がジュンに訝しげに問いかけた。
「ああ、いや豚肉6kgがどのくらいのものなのかなって思っただけです」
ジュンが答えると店員はその肉の塊を片付けていった。
「う、きょ、今日はサラダにするですぅ」
巨大な肉の塊の重さが自分の増えた体重と同じだと思い知らされた翠星石が慌てた風で
野菜コーナーへと駆け出していった。
「お、おい待てよ、まだ挽き肉を買ってないだろ」
いきなり駆け出した翠星石にジュンが呼び掛ける。
「きょ、今日の夕食はサラダに変更ですぅ、健康バンザイですぅ!」
そう言うと翠星石はカートに中に次々と野菜を放り込んでいった。
ジュンは何度も止めようとしたが翠星石の激しい抵抗に遭いついに諦めてしまった。
601 :
〜戒〜:2006/08/06(日) 12:57:11 ID:BFNMgpR6
「ジュ、ジュン君・・・・これって・・・」
食卓に並んだ何ともヘルシーなメニューを見てのりは絶句した。一応買ってきてもらった
ものをのり自身が調理したのだが、今日本来のメニューからあまりに遠ざかっている。
今日のメニュー、その内訳は、
海草サラダ
ほうれん草のお浸し
五目ひじき
の3品である。当然のことながら他のドールたちの反感を買った。
「うわ〜ん!のり〜!ヒナ花丸ハンバーグ食べたいの〜!!」
「ジュン!なぜ突然メニューの変更になったのか!答えなさい!!」
非難轟々である。無理もないのだが。
「うるさいな、文句ならコイツに言えよ」
ジュンはそう言って翠星石を指差した。
「ええい黙りやがれですぅ!真紅にチビ苺も最近健康に全く無頓着なのですぅ!
ローゼンメイデンたるもの常にヘルシーでセクシーであらねばならんですぅ!!」
セクシーっていきなりなんやねん、翠星石の突然の訳の分からない台詞と剣幕に
全員がその場で固まった。
「ま、まあたまにはこういうものもいいんじゃないかな〜」
のりは何とかこの場を取り繕うとしてようやく食事が始まった。
だが笑顔で食べているのは翠星石のみで他はみんな無言だった。夕食が終わったあと
もどこか暗い雰囲気がリビングに漂った。
だがこの日だけでは終わらなかったのだ。次の日も翠星石のオペレーション・スリムは
続くのだった。
602 :
〜戒〜:2006/08/06(日) 12:58:52 ID:BFNMgpR6
6:00
「チ〜ビ人間早く起きるですぅ!!」
翠星石は朝っぱらから凄まじい勢いでジュンを起こしにかかる。
「な、何だよ、まだ6時じゃないか!!」
「うるさいですぅ!もう6時ですぅ!さっさと起きて着替えやがれですぅ!!」
そう言う翠星石の後ろには真紅に雛苺、そしてのりまで着替えて立っていた。
「着替えるって、いったい何すんだよ」
「エアロビクスですぅ、早く外に出るですぅ」
「エアロビクスって、何で僕までやらなきゃいけないんだ!!」
ジュンは眠気もどこへやら叫びまくる。
「この家はみんな運動不足なのですぅ、ブクブク太る前にしっかりと運動して
ヘルシーな生活を送るのですぅ」
「ブクブク太っているのはお前だけだろう」
朝からいきなり起こされたせいか、ジュンはつい禁句を言ってしまった。
“ドカッ!!”
翠星石のドロップキックがジュンの脛を直撃した。
「ぐあああ!!こ、この性悪人形!!本当のことを言っただけだろ!!」
「黙りやがれですぅ!まったくデリカシーの欠片もねえ奴ですぅ!!」
気にしていることを衝かれたせいか顔を真っ赤にして怒っている。
2人の喧嘩がヒートアップする前にのりが何とか止めようと声をかけた。
「まあまあジュン君も翠星石ちゃんももう喧嘩は止めて、じゃあ外に出て
エアロビクスよ〜、さあヒナちゃんも真紅ちゃんもGO」
のりは先頭に立って真紅と雛苺を外に連れ出す。翠星石がそれに続き、
ジュンも仕方なく外へ出て行った。
庭に出た桜田家の面々は翠星石を中心に1列に並んだ。
「さあ始めるですよ〜、ミュージックスタートですぅ!!」
翠星石はCDラジカセのスイッチを入れ音楽が鳴り出す。
“腕を前から上げて大きく背伸びの運動〜”
ラジオ体操かよ!!!!
まじめにやっているのは翠星石のみ、のりはつき合い程度、ジュンはすでにやる気
まったくナシ、真紅と雛苺はラジオ体操など知らない。
(何でお前がラジオ体操を知っている?)
ジュンたちの視線が翠星石に集中する。そんなことなどお構いなしに翠星石はラジオ体操を続けていた。しかも第2まで。
603 :
〜戒〜:2006/08/06(日) 13:01:27 ID:BFNMgpR6
朝の迷惑極まりないラジオ体操も終わり、ようやく朝食となる。しかしここでも
翠星石のダイエットはしっかり周りを巻き込んでいた。
本日の朝食、
お粥のみ・・・
「・・・・・・・・」
もはやのりは言葉も出ない。
「・・・お粥ね・・・これだけか・・・・」
ジュンから出た言葉はこれのみだった。ひきつった笑いが痛々しい。
真紅に至ってはもうただ沈黙、雛苺はひもじさのあまり泣いていた。
「・・・いただきます」
まるでお通夜のような朝食が始まった。誰も話をすることもない静かな食事風景、
不満と諦めをない交ぜにした表情を1人を除いた全員がしていた。
「ごちそうさまですぅ」
すぐに食べ終わった翠星石がすぐに2階に上がる。これからダンベルダイエットでもするらしい。残された4人は鈍い動きでまだ食事を続けていた。
604 :
〜戒〜:2006/08/06(日) 13:02:53 ID:BFNMgpR6
「見〜つけた、今日も隠密乙女金糸雀が真紅たちを密着マークするかしら〜♪」
庭では隠密にそぐわない可愛らしい黄色いドレスを着た金糸雀が桜田家の食卓を
双眼鏡でしっかり偵察していた。
「あらぁ、今日の真紅たちの朝食はお粥だけ、何て貧しい食生活かしら〜」
やがて真紅たちの食事が終わり、各自が力なくソファーに寄りかかる。
「朝から何て自堕落なのかしら、朝は元気いっぱいにならなきゃいけないかしら」
そう言うと金糸雀は自らそれを実践すべく、シートを広げてお弁当を取り出した。
「そうと決まればエネルギーをチャージするかしら〜、みっちゃんの作ってくれた
お砂糖入りの玉子焼き〜♪いただきま〜すかしら〜」
金糸雀がお楽しみの玉子焼きを食べようとしたまさにその瞬間、横から大きな口を開けて
迫ってきた影がある。
バクゥゥゥゥッ!!
その影はまるでジョーズのように一口でフォークに刺した玉子焼きを食べてしまった。
「キャアアアア!!何かしら!何かしら!!妖怪かしら〜!!!」
驚き恐れる金糸雀だったが、ピチカートが冷静にその妖怪の方を向くように点滅する。
ゆっくりと顔をあげる金糸雀の目にピンクのドレスが映った。
「うゆ〜玉子焼き、甘くておいしいの〜」
そこには飢えた狼のような雛苺の姿があった。
「ひ、雛苺、何てことするのかしら!!」
「うぃ、金糸雀〜、もっと玉子焼きないの?」
反省の色など露も見せず、雛苺はさらに玉子焼きを要求する。
「こ、これはカナの玉子焼きかしら!絶対にあげないかしら!!」
金糸雀はこれ以上とられまいと必死に後ろにお弁当を隠す。
「金糸雀〜、ヒナもっと玉子焼き欲しいの〜」
「いや!ダメかしら!!雛苺はちゃんとお家で食べるかしら!!」
金糸雀と雛苺のせめぎ合いは果てしなく続くと思われた。しかし2人の後ろから
もう1頭の獰猛な赤い狼が近づいてきた。
「2人とも騒々しいのだわ、少し静かになさい!!」
やはり空腹のせいなのだろうか、普段に比べ口調が荒々しい。
「真紅〜、金糸雀が玉子焼きをくれないの〜」
「ちょ、何を言ってるのかしら!これはカナのかしら!!」
真紅は2人のやりとりを苛立たしげに聞いていたがやがて口を開いた。
「よく分かったのだわ、争いの原因になっているのはそのお弁当なのだわ」
都合よく解釈したな真紅・・・・
「ならばその争いの元を絶てば問題ないのだわ、金糸雀、貴女のそのお弁当を私に
渡しなさい」
「えぇぇ!で、でもこれはカナのかしら」
「いいから渡しなさい!これがあるから貴女たちは争うのだわ、ならばその禍根を絶つ
これで万事うまくいくのだわ、だから早く渡しなさい!」
厳しい口調で言われ仕方なく金糸雀はお弁当を真紅に差し出した。
真紅はお弁当をゲットした!(←いいのかそれで)
「あぁ〜、玉子焼き〜・・・・・」
金糸雀はうらめしそうにトボトボとみっちゃんのマンションに帰っていくのだった。
真紅はお弁当を美味しく頂きました。(まさに鬼畜!!)
雛苺は食べ物を求めて徘徊しました。(どこへ行く?!)
605 :
〜戒〜:2006/08/06(日) 13:04:13 ID:BFNMgpR6
「うゆ〜、お腹空いたの〜」
餓鬼の如く食べ物を求めて徘徊する雛苺、その雛苺の前に大きな建物が見えた。
有栖川大学病院という看板が雛苺の目に映る。その病院の裏手から何やら食べ物の匂い
が漂ってきた。
「うゆ〜この匂い、美味しそうなの〜」
匂いにつられ雛苺はフラフラと病院の裏の厨房へと歩みを進めた。そして半開きになっているドアから病院内へと侵入し本能の赴くがまま厨房を目指していた。
厨房ではまさに昼食の準備に追われていた。患者さん用の昼食がその病状ごとに分けられ
用意される。そんなところを雛苺は調理師たちの目を盗んで食料を略奪していった。
「よく分かんないけどご飯があったの、いただきま〜すなの〜!」
持ち出した食料を病院の隣にある古ぼけた教会まで運びこみそこで食べ始める。
「おいしいの〜、しあわせなの〜」
ひもじさに苦しんでいた雛苺にはどんなものでも御馳走らしい、ひたすら夢中で食べた。
「あらぁ、珍しいわねぇ雛苺、今日は真紅と一緒じゃないのねぇ〜」
雛苺が声のする方を向くと、そこには水銀燈がいた。
(これはチャンスね)
雛苺を倒しローザミスティカを奪える。そう水銀燈は判断すると背中の羽を広げ雛苺に
闘いを仕掛けようとする。だが攻撃しようとしたまさにその瞬間に雛苺は猛然と水銀燈
に襲い掛かった。
「う〜、や〜く〜る〜と〜!!!」
まるで場違いな言葉を発し雛苺は水銀燈に襲い掛か・・・・からなかった。
雛苺の標的は水銀燈の後ろにあったヤクルトだった。水銀燈を飛び越えヤクルトを
ゲットする。
「ちょ、待ちなさい雛苺!それは私のヤクルトよ!!!」
とっておきのヤクルトを奪われそうになった水銀燈が羽根を飛ばそうとするが、
一瞬雛苺の方が速かった。無数の苺轍が水銀燈に絡みつき動きを封じる。
「何よこんなもの、引きちぎってあげるわ!」
水銀燈は苺轍を引きちぎろうとするが全くそれができないそれどころか尚も水銀燈
の体をキツク締め付けていった。
「水銀燈〜、ヤクルト貰っていくのなの〜」
そう言った雛苺の顔はまさに餓鬼そのものだったと後日水銀燈は語った。
雛苺、水銀燈からの大金星でヤクルトをゲット!!(座布団は舞ってない)
やがて苺轍も消え、ようやく水銀燈は動けるようになった。
「まったくなんてこと、雛苺ごときに私がやられるなんて・・・・」
水銀燈は自嘲するかのように鞄へと向かう。その通路には雛苺の食べたものの
跡が散乱していた。
「あの子、こんなものをおいしいなんて言ってたの・・・・」
散乱していたものの中には水銀燈もよく知っている食べ物がきれいさっぱり
なくなっていた。水銀燈は呆れるやら何やらで少し頭が痛くなった。
606 :
〜戒〜:2006/08/06(日) 13:05:21 ID:BFNMgpR6
「もういらないわ!」
「そんなこと言わないでめぐちゃん、食べなきゃ元気にならないわよ」
「食べたって元気にならないわ。私のことなんかもうほっといて」
看護婦は仕方なくめぐ用の昼食を片付けた。
めぐはただ窓の外を見て歌っている。まるで誰かを呼ぶように。
「そんな歌を歌ったって、私が来るとは限らないわよ」
窓から水銀燈が少し不機嫌な顔で現れる。
「でも貴女は来てくれたわ」
「相変わらずイッちゃってる子ね。食事はもう済ませたの?」
「ううん、だってあんなゲロのようなもの食べる気なんかしないわ」
そう言っためぐに水銀燈は思い切り突っかかった。
「何言ってるのめぐ!!世の中にはゲロすら食べられない人がいっぱいいるのよ!!!」
凄まじい剣幕で怒鳴りつける水銀燈、そんな彼女の気迫に押されめぐは看護婦さんを呼び出し食事を摂らざるを得なかった。
「あのもしもし、やっぱり食べます・・・・・」
めぐが元気になったのかはそれはまた別のお話・・・・・
607 :
〜戒〜:2006/08/06(日) 13:06:35 ID:BFNMgpR6
「最近物騒ね〜、知ってる?あそこのコンビニ、夜中に真っ赤な鬼が出て
期限切れのお弁当やパンをかっぱらっていくんだって」
「あと有栖川大学病院、あそこ最近昼食の種類が減ってるって噂よ」
ご近所の奥様方の喧しい噂話が桜田家にも聞こえてくる。原因は分かっているのだが
まさかウチの人形たちが犯人ですとはとても言えない。
だがご近所の噂に上っている以上、何としても真紅と雛苺の行動を抑えなければ
ならなくなった。
「なあお前らもう絶対に外には出るなよ!!!」
ジュンが2人に強い口調で命令する。
「だって〜お腹空くのなの〜」
「ジュンこれだけははっきりと言っておくわ、まず第1の原因は翠星石にあるのだわ、
私たちは致し方なく外に出て食料を調達する。この惨めさが貴方にはどれだけ理解できるというの!!」
こう言われてはジュンも言葉は出ない。そう何より最大の原因は翠星石にあるのだから
まずは彼女をどうにかしなければならない。
そしてそのチャンスは意外にも簡単に訪れたのだった。
真夜中の1時、もう全員が寝静まっている刻限、その怪しい人影は台所の冷蔵庫へと
向かっていた。
「だ、誰も見ていやがらねえですね、今がチャンスですぅ」
冷蔵庫を徐に開け中の牛乳やハムを取り出し口へと入れていく。
「さ、さすがに7日目にもなるとキツイですぅ、ふぅ生き返るですぅ」
ガチャッ!!パッ!!
リビングのドアが開き明かりが点く、そしてそこにいたのはジュン、のり、真紅、雛苺、
全員が揃っていた。
「あら翠星石、いったい何をしているのかしら」
殺意も露わに真紅が尋ねる。
「翠星石!ずるいの〜!!!」
「案外あっさりとボロを出したな」
「あらあら・・・・」
のりの無言の表情が恐ろしく不気味だった。
「ち、違うです!す、翠星石は冷蔵庫の中を確認しただけですぅ!!!」
慌てて弁解しようとするが飲みかけの牛乳と食べかけのハムが散乱していては
当然のことながら説得力などない。現行犯逮捕である。
「これじゃ〜ダイエットなんて無理だよな〜、そうだ僕たちがお前用にちゃんとダイエットさせてやるよ」
「そうね、まあ私たちはダイエットなど必要としていないのだわ」
「ヒナたちは普通の生活に戻るの〜」
「翠星石ちゃん、私が翠星石ちゃんにだけ特別メニューにするからね〜」
顔は笑っているが目が笑っていない、のりマジで怖い・・・・
その後
「いただきま〜すなの〜♪」
待ちに待った花丸ハンバーグ、雛苺は零れんばかりの笑顔だ。他の3人も
思いは同じだった。
「・・・・いただきますです・・・・」
翠星石の朝食は、
サツマイモが半分・・・
はだしのゲンか・・・・
食事が終わると翠星石はひたすらのりの手伝いをやらされた。食事の後片付け、
洗濯、掃除、風呂洗い、のりは笑顔(?)で言った。
「働かざるもの食うべからず!」
翠星石がダイエットに成功したかはローゼンメイデンの歴史に記されていない。
ドールの歴史がまた1ページ。
608 :
〜戒〜:2006/08/06(日) 13:08:21 ID:BFNMgpR6
以上で終了です。
>593
悲劇なんだか喜劇なんだか、すごいですね。GJ!
グッジョブ!
6キロってことは、人間サイズに換算して10キロ位w
翠星石はむっちりぷにぷにしててもカワイイな、きっと
真紅はでっぷり太ると賞味期限切れの露西亜娘みたいに見苦しくなりそうだがwww
銀様は・・・恐れ多くも銀様がお太りにならせられるなどありえない
ふっくら程度ならみんな可愛いよ
冒頭で読む気が失せた。
GJ
また書いてくれ
GJ
雛苺が6キロ太って頭に登られたら首が折れちゃいそうだな
>611
お〜っと
此処は批判禁止スレですぜ旦那
知ってたか?
テンプレを読めない奴は
厨って言われるってな!
> 〜戒〜
何も感じなかったが
皆に習って
GJ!
ああそうかい。
作者自演してるのかなこれ。
まあ、蒼星石が太るのだけはありえない話だな。
むしろ重たい大鋏振り回してるせいで筋骨隆々になりました
>>614 >此処は批判禁止スレ
>>611は批判じゃなくて単なる拒否反応だと思う。
ところで、
>何も感じなかったが
>皆に習って
>
> GJ!
本当に『何も感じなかった』なら、黙っとけばいいのに。
付和雷同型「GJ!」って、書き手に対して失礼だと思いませんか?
Bad Job!
長い文を読んで
黙ってるだけだ何て
そんなの、悲しすぎるじゃないですか
>は批判じゃなくて単なる拒否反応だと思う。
同じ事では無いのかな?
『冒頭で』
それこそ書き込む意味が(ry
これこそ書き手に対し失礼(ry
スレ汚しスマソ
作品に対しての批判は
SS総合へどぞ
今更何自治ぶってるの?
このスレ
>>1から見てみると批判結構あるよ
なら統合させようZE、の一言
批判があるなら
分ける意味が分からん
「虐待〜、グロ〜、エロ〜、」
そういう人は少なくなったと思うし
元の鞘に収めてみては? と。
注)SS総合の話な
虐待が原因で分けたのではなく、批判を恐れた小物作者が勝手に立てたスレ。
総合スレには干渉せず、批評禁止、虐待禁止で次スレを建てる、に一票。
結構な量のSS投下と良好な雰囲気があったのはスレルールに拠るものが大きいと思うし
荒れたり過疎ったりした他スレまで引き受けても、共倒れになるのが目に見えてる。
他所から感染してここも荒れだしたら、IP開示の避難所を作ってあるので、そこを提供するよ。
そこまでして読みたいの?
作者も大分減ってきてるしちょっとでもスレにそぐわないことがあれば新しいの立てるとかあなたも坊やですか。
>>624-625 喪前らの意見は正しい。
此処が SS書きの温床となったのは確かだし、
書き手が減って来てる事も事実。
ってことで、
住人の人数確認含め、
投票タイムと逝きましょう。
>>624ー不干渉派 ・・・『不』
>>625ー統合派 ・・・『合』
スレのご注文は…
ど っ ち !
何でもありがいいならな総合。
批判・虐待なしがいいならこのスレ。
ルール守れない厨荒らしをスルー出来ない・我慢出来ない人は
>>624の下一行。
で終了。後は大人しく投下待とうよ。
なんかあるとすぐ統合にもって行きたがる奴がいるな
別に統合する必要はないだろ
書きたい人は書きたい所で書いて
読みたい人は読みたいところで読む
まぁスレがいろんな所にありすぎて統合したいんなら統合のが良いけど
批判無しありなのは分けたままで良いんじゃない?新しい書き手は批判無しの方が書きやすいだろうし
しかも最近の批判する奴なんかそれこそ
ただつまんないとか読む気が起きない位しか言わねーし
書き手になんでつまんないかを言わないじゃん
まぁ書き手は自己満でやってかもしれないけど
長くなったが用はアレだ
>>627に賛成なんだ
俺は統合なんて一言も言ってないんだが。
批判見たくないならスルーすればいいだけ。
ルール違反する人を無理に更正させようとする方が馬鹿馬鹿しい。
それと一つ言い忘れ。
大抵、批判に対して文句を言うのは作者本人。
つまり自演。
自分が良いと思ったものを貶されると怒る人って結構居るから、一概にそうとも言えないと思う。
どうでもいいよ小学生の作文みたいなの書くやつがカスなのはガチだから。
って事で、
このスレのまま継続の形で…
しかし、
>>628 の
>書き手になんでつまんないかを言わないじゃん
何処が詰らないかを述べたら
やはり、それは批判になるのかね?
個人的には、
度の過ぎた批判(叩き)がNGで、
軽い指摘は OKだと考えているが、
このスレ的には、どうなんでしょ?
やっぱ、全面的に全肯定?
まあ君達のガキっぽさというか下らなさには呆れるばかりですがね。
クロスSSは投下しないが吉だよね?
争いは止めよう?
また前みたいに気長に作者を待とうよ。
>>633 >>635のような人もいるでしょ?
ただアホみたいに駄作駄文しか言わないのは誰でもできる
だからダメならなんで自分はダメなのかを言ってほしい
まぁここは批判禁止だけどさ
後よくそんなの自分で考えろとか言う奴もいるけどそういう奴こそなにも考えて無いんだろうな
俺もたまに書くからそう思っただけ
ここでは読むだけだけど
議論厨いい加減ウザいよ。
ガキはさっさと寝なさい。
現在それなりの支持を集めた職人が自演によってその地位を固めたのは事実だと思うがね
――――――――切り取り線――――――――――
短編ばっか書いてるから批判されても笑ってられるけど
すんごい長編書いて糞みそに言われたら眠れないくらい腹立つと思う
書くのは自己満足だけど読んでもらえて褒められればやっぱうれしいよ
書いて反応ないよりは黒歴史とか容量の無駄とか言われるほうがうれしい
まずあなたの存在が命の無駄じゃないの。
━━━━━ここからマターリ━━━━━━━
あれだ、煽りでも適切な指摘の上で煽ってる場合は
きっちり読んでると言うことであって、それは読ませるだけの力がある文だという事だよな。
反面、乙とかGJだけの物ってのはそれ以外に言う事の無い薄い中身って事だよな。
つまりだ、
煽られてもちゃんとした指摘のある煽りを貰ったやつは勝ち組。
そうじゃないやつは負け組み。って事になる。
だからはよ書け、読んであげようじゃないか。
批判する価値すらない作品もあることを忘れずに
このスレのは大部分がそれに該当するが
偶然じゃない?
柏葉「雛苺は桜田君のこと好き?」
雛苺「うん!!ヒナはジュンのことだ〜い好きなの〜」
柏葉「私もね桜田君と仲良くしたいの。雛苺、協力してくれる?」
雛苺「うん!!ジュンも巴もだ〜い好きだから何でも協力しちゃうの〜」
柏葉「ありがとう。雛苺、うれしいわ」
雛苺「えっとえっと・・・ジュンに巴がジュンの事好きなのよ〜って言えばいいの?」
柏葉「ダメよ、雛苺。女の子から好きと言ったらダメなの。桜田君が私を好きになるようにして欲しいの」
雛苺「うゅ〜、むずかしいのね・・・」
柏葉「桜田君に私の良い所だけ伝えてね、悪い所は言っちゃダメよ」
雛苺「巴の悪いところって何なの〜?」
柏葉「そうね・・・剣道の練習後は汗臭いとか、胸パット入れてることは絶対に言わないでね」
雛苺「わかったなの〜!絶対言わないのよ〜」
柏葉「桜田君には私がかわいくて料理も出来てスタイルも良くて勉強も出来ることを伝えてね」
雛苺「ジュンに巴のこといっぱいお話するの!」
柏葉「あとは桜田君のことを探り出して欲しいの、好きな子のタイプとか太さとか長さもね」
雛苺「うゅ〜、わかったなの。でもでも覚えきれないのよ・・・」
柏葉「大丈夫よ、雛苺。私が無線で指示をだすから言ったとおりに喋ってくれればいいの」
雛苺「無線・・・なの???」
柏葉「それじゃ雛苺を改造するわね、ちょっと痛いけど我慢してね」
雛苺「ふぇ〜?ヒナ痛いの嫌なの〜!ともえ!そんなドリル何に使うの〜?」
柏葉「雛苺の背中に無線機を埋め込むのよ、あと非常用にこの装置もね」
雛苺「いや〜〜いやなの〜、ヒナはそんなのいらないの!いや〜」
柏葉「雛苺、ワガママ言わないで。痛いのはすぐ済むわ」
雛苺「うぎゃ〜〜〜うわ〜〜ん、いや〜いた〜い〜〜」
柏葉「雛苺、改造は終わったわ。泣かないで」
雛苺「うう・・・ひっく、ひっく・・・・」
柏葉「雛苺、桜田君と24時間一緒にいてね。トイレの中までついていくのよ」
雛苺「うう・・・もう、ともえ嫌いなの・・・」
柏葉「雛苺の好きな苺大福よ。食べなさい」
雛苺「うう・・・モグモグ・・・おいしいの〜・・・」
続きは週末
(失笑)
続き期待します
ふざけてるのかね?
まず誰が喋っているのかをキャラ名で表記してる時点でマイナス80点。
>>655 なんか言ってほしそうですねぇ
特別に三回まわってからワンと言ったら言ってやらなくもないですぅ
とりあえず
>>652よ、一度書いてから親父でも友人でも誰でもいいから読ませてみた方が良い
そこで変に思われたのならここに投下する価値はないと思っていい
良く指摘されるが、中途半端なのを投下して続きは次回ってするより一度すべて書いてから投下した方が良いと思う。
だね。とりあえず続きはよう書いて。
うん、続きが早く読みたい
鬼畜トモエは虐待スレ以来だが、あれはいいもんだ
機械仕掛けの雛苺にwktk
俺は罪の意識もなく、水銀燈の尻を触ったんだ。
すると水銀燈は怒って羽シャワーしてきやがったんだ。
水銀燈「死ぬ覚悟は出来たぁ?お馬鹿さぁん」
俺「…………」
水銀燈「ほらぁ、イっちゃいなさぁい!」
(羽シャワーしてくる)
俺「……ザ・ワールド!!時よ止まれ!」
ド━━━━━ン!!!!
俺「ククク…どうだ?時を止められた気分は?…まぁ今のお前には見えもせず、感覚さえもないんだからな」
俺「さてと……今の内に叩かせてもらうか…。」
俺「無〜駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ぁ!!!」
俺「フフフ…そして時は動き出す……。」
ドギュ━━━━━ン!!
水銀燈「うぐぅ!!?貴方いったい何をしたの!?」
俺「フン…お前に教える事は何もねぇぜ」
水銀燈「…いいわ!貴方の謎の能力!この私が暴く!」
俺「面白い……ならば…………全力でこの俺にかかってこい!!!!」
俺&水銀燈「ハァァァ━━━━!!!!」
こうして二人の激闘は幕を切って落とされた
会話だけで話が進むならキャラ名つけたほうがわかりやすい
作者のサービスだろ
台本形式のSSはめずらしくないし
意味の分かる人だけ読めばいいよ。意味の分からない人が無理して読む必要ないからね。
叩いてる香具師は SS総合での荒らし
これは放置安定。
そして、批判してる香具師
相手がどんな心情で書いているか
それを察して評価しろ。
ジュニア・シニア、ライト・ヘビー
これの違いは分かるだろ?
分別はちゃんと付けようZE
>>662 (苦笑)
選択を見誤ったのでは?
それはともかく
>>652程度の内容ならまとめて投下してくれた方が良いんじゃなかと。
まあ最初の段階で賞賛のレス欲しくて続き書かないんだろうけど。
>>666 他スレを関連付けるのはやめた方が良いと思うが。
あっちは批判自由であって、批判議論や無駄に長いマンセーは嫌われるが、それを分かってない人が暴れてるだけ。
要はここと総合スレのルールを同じだと思ってる
>>1も読めない馬鹿が多いって話。
>>660 あんたの方が頭大丈夫?
キャラ名表記してる時点でマイナスとかバカじゃないの?
やっぱ厨房スレだなあ
夏早く追われ
お前ら初めてか夏は、力抜けよ
674 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/08/12(土) 01:50:37 ID:ge9OxH3P
保守
はい、チュウモ〜ク
叩き、嵐は 放置が嫌い。
きつい批判なら兎も角、
度の過ぎた叩きは 放置して欲しい
恐らく、相手にして欲しいだけだから
寂しいんだろうね…
そんな事をわざわざ言うから自治房って言われるんだよ
そんな事言ってる暇があったら作品の一つでも書いてくださいな
あっ僕は読み専門なんで書けませんので悪しからず
夏厨に占領されたか。
作者もいないし終わりだな。
雛苺「ジュン!ただいまなの〜」
ジュン「おかえり、柏葉の家は楽しかったかい」
雛苺「あのねあのね、ともえが剣道の練習した後は良い匂いがするのよ。ともえのおっぱいは90cmあるのよ」
柏葉(雛苺!!いきなりそれはないでしょ!!)
ジュン「???」
雛苺「ともえはね、色々できるのよ!」
柏葉(雛苺!もういいから好きな娘のタイプを聞いてちょうだい)
雛苺「ジュン!ジュンはヒナのこと好き〜?」
ジュン「あ、ああ・・・雛苺のことは好きだよ、楽しいしね」
雛苺「うん!ヒナもジュンのことだ〜いすき〜」
柏葉(それじゃ参考にならないわ!もっと突っ込んだこと聞いて!)
雛苺「ジュンはどこに突っ込みたい?」
ジュン「・・・雛苺、どうしたんだ??なにか柏葉に言われたのか??」
柏葉(まずいわ!雛苺、桜田君と遊んでごまかすのよ!)
雛苺「ジュン!ジュン遊ぼ〜〜!」
雛苺「ジュン登りなの〜〜!わ〜い!」
ジュン「あはははっ、雛苺重いよ!・・・って本当に重くなったなぁ」
雛苺「ヒナは太ってなんかいないのよ〜」
ジュン「雛苺。なんか背中が膨らんでるけど何入れてるんだ?」
雛苺「え!?え〜とえ〜とえ〜と・・・・うにゅ〜なの!」
ジュン「雛苺は苺大福が好きだな、ちょっとトイレに行って来るよ」
柏葉(雛苺!!チャンスよ!一緒にトイレについていくのよ!)
雛苺「うゆ〜?ヒナはトイレ行かなくても大丈夫なの。それに一緒に入ったら怒られちゃうのよ」
柏葉(大丈夫よ!無邪気に飛び込めば桜田君も追い払ったりしないわ。確認して欲しいことがあるの)
雛苺「わかったなの〜・・・お邪魔しますなの〜」
柏葉(・・・どう?桜田君のは大きい?)
雛苺「すごく大きくて臭いの〜」
柏葉(そ、そう・・・何cmくらい?)
雛苺「20cmくらいあるのよ」
柏葉(す、すごいわ!!)
雛苺「でっかいウンコして流してないの〜ジュンはトイレにいないのよ」
柏葉(そんなのどうでもいいわ!!雛苺がグズグズしてるから桜田君がいなくなっちゃったじゃない!)
雛苺「うゆ〜、とりあえず流しておくの」
ジュン「雛苺、トイレの中で何さわいでるんだ?」
雛苺「あのね、ともえが確認しろって言うの」
ジュン「柏葉が?何を確認するんだい?」
柏葉(雛苺!ごまかしなさい!)
雛苺「えっとね、トイレが掃除してあるのか確認してるの。ともえがトイレ借りにくるの」
ジュン「・・・雛苺、一緒にお医者さんごっこして遊ぼうか」
雛苺「わ〜い!ジュンと一緒に遊ぶの〜」
ジュン「僕がお医者さんするよ。どこか痛いとこはないですか?」
雛苺「え〜と、背中が痛いの」
ジュン「それじゃ、服を脱いで背中を診てみましょう」
柏葉(まずいわ!ばれてしまったみたいね!雛苺、逃げるのよ)
雛苺「うゆ〜、やっぱり背中は痛くないの。無線機なんて入ってないのよ」
ジュン「無線機?」
柏葉(この装置は使いたくなかったわ・・・自爆装置作動!!)
ドカァーーーーーーーーン!!!!!!!!!!!!!!!!!
柏葉「雛苺、あなたの死は無駄にしないわ。・・・さてと桜田君のお見舞いの用意しないと」
くやしい・・・
でも…
笑 っ ち ゃ う
こんな文でニヤリ とか
正直、自分に落胆してますよと...
お疲れ様でした。
ワロタwww
雛ちゃん乙
グッジョブ!ネタが練れてるね
台詞の前にキャラ名が付く台本SSは稚拙だと思ってたが
これ読んで宗旨替えしそうになった
微妙。
トモエ・・・・いやいいんだ。
>>678 wrt
次は当然ヒナの魂をジュンの部屋にある市松人形に憑依させる話だよな?
な
どの辺が面白いのかと
す、すいません
自分は短編しか書けないのであります
続き書くとか苦手であります
今、水銀燈の話かいてるんで
出来たら投下しまっす
銀ちゃんを雛苺とか真紅みたいな扱いしたら社会的抹殺するからな
金糸雀ならOKということでいいのね。
いつものように突然水銀燈はあらわれる。
「真紅、元気だったかしらぁ」
「水銀燈!449時間ぶりね。何の用かしら?」
水銀燈が服のポケットから黒いシックなデザインの携帯電話を取り出す。
「うふふ・・・携帯買ったのよぉ」
「携帯・・・それがどうかしたのかしら」
「真紅に電話してあげようかと思ったの、携帯の番号教えてくれるぅ?」
もちろん真紅は携帯など持っていない。
「・・・薔薇乙女に携帯なんて必要ないのだわ」
「あらぁ?もしかして携帯持ってなかったの?気がつかなくてごめんなさぁい・・・うふふ」
水銀燈は机の上に立ち真紅を見下ろす。
「なにか伝言なら人工精霊に伝えさせればいいのだわ」
「こんな便利な道具があるのに、人工精霊を伝書バトの代わりにするなんてホーリエちゃんもかわいそう」
「最近の携帯は便利よぉ。写真だって取れちゃうんだから」
ピロリロリ〜ン!
携帯の写真で真紅の不機嫌な顔を写す。
「あらぁ、こんな不細工な写真は容量の無駄ね。消去消去・・・うふふ」
「どうせ貴方だって電話かける相手もいないんでしょ、みじめね」
オバカサ〜ン!オバカサ〜ン!
「メグからメールが着たみたい。ちょっとごめんなさいね・・・うふふ」
「その恥ずかしい着信メロディはなにかしら」
真紅はイライラしながらメール操作をする水銀燈をにらみ付ける。
「人と話してるときに失礼なのだわ」
水銀燈が見せつけるように携帯を操作する。
「夕食用意してあるから早く帰ってらっしゃいって、携帯なんか持つと落ち着かないわぁ」
「用がないのならさっさと帰るのだわ」
「暇な時はこれでゲームもできるのよ、真紅やってみるぅ?」
「いいかげんにしなさい!話したいことがあるなら早く言いなさい!」
たっぷり1時間、携帯を自慢しまくった水銀燈は引き上げていった。
「ま、負けたのだわ・・・」
涙をこぼしながら真紅は床に崩れ落ちた。
相手がめぐしかいないのも十分に可哀想だよ……
>>695 きっと真紅が最新型買って水銀燈に自慢しにいくさ
でも真紅は間違えてPHS買っちゃうんだよな
四流のくせに何偉そうにコテつけてるの?
もう少しまともなもの書けるようになってからにしなさい。
薔薇水晶にメールでグロ画像送りつけられて泣く銀様
見るだけで怖いので削除もままならない
>>698 何処をどうすれば
「まとも」になるんだ?
まずは喪前の考える
SSに対しての形を述べよ
>>700 また簡単に引っかかってくれましたね。
読み手も読み手だ。
GJとかアホみたいな称賛はやめとけ。
まあコテと作品タイトルの区別もつけられないようなまともな人間はスルーでいこう
>>702 漏れは
>>693 では無いよ
だが、今書いてるのを
納得の良く形に仕上げたいから 聞いている
やっぱ、先に投稿して
煽られないと駄目か?
>701 >703
悪い、
大事な事なんだ。
隔離スレとしての役割は十分だなここ
ここで元職人だった俺が空気を読まず登場
>>704 納得のいく形、というのは自分が納得すればそれで十分だろ
変な連中はスルー汁
夏になってから急に増えた厨房
そしてクオリティが下がっていくSS
もう終わりだね
これで最後にします...
>>707 個人的には、
やはり 批評もされたい。
自分の納得は 推敲の時点で終わり
作品自体は、他者の意見によって評価が決まる。
なら、取り込める意見や 改善点は
是正して行った方が 得策じゃないかな?
>>708 それはそれで良しとしよう
盛者必衰の理と言うし
新たな風が吹くさ。
スレ内の批評に関すレスを全部読んで見な
それでもこのアホらしい討論の答えが見つからなければ君はただの馬鹿だろう
なんでスルー出来ないのお前等は
坊やだからさ
>>693 銀様が携帯持ったのは、みっちゃんにメールする金糸雀を見て羨ましくなり
メグにおねだりしたに違いない
fromみっちゃん to カナ
今日の晩ごはんはオリジンの茄子味噌炒め弁当とポテトサラダよ!
早く帰ってきてね
fromカナ to みっちゃん
いま、水銀燈のヤサのはりこみがおわってかえるところかしら
はやくあいたい
これを盗み見た銀ちゃんはその晩、「欲しい欲しい!携帯欲しいのよぉ〜」と
手足や羽根をバタバタさせて雛苺並のダダをこねたとか
萌え萌えドピュドピュ
みっちゃんの本名って何んだっけ……?
確か本編ではもう明らかになったよな?
次はリクエストのあった金糸雀で
このスレは虐待、エロ、グロ禁止ってなってるけど
水銀燈が電車の中でうんこ漏らしたりするのはOK?
あと長編になりそうだけど歴史物ってうけるかな?
水銀燈が第二次大戦中にルーズベルト大統領暗殺する話書こうかと
書きたいのを書くべし
受ける受けないは、
やはり、内容に寄るのでは?
>>715 草笛みっ ちゃん
人形はウンコしません
>>1見れば分かると思うが、スカトロは18禁扱いになると思うけど。
「今日はトランプで勝負かしら!」
家に遊びに来た金糸雀がババ抜きで遊ぶことを提案する。
僕も人形たちに混じって参加することにした。
「う〜〜ん、ババはこれかしら?これかしら?・・・良かったのかしら〜!」
何度やっても金糸雀はババを引かないし、いつも良いカードを持っていく。
「ほ〜ほっほっほ、薔薇乙女一の策士、金糸雀がババ抜きで負けるはずがないかしら〜」
5〜6回ほど負けが続いた僕の脇腹を隣の真紅がつつく、視線の先を見ると・・・ピチカートだ!
僕の背後をカーテンの陰に隠れながらピチカートがフヨフヨと飛んでいた。
どうやらピチカートが僕の持ち札をみて金糸雀に教えていたらしい。
「金糸雀!!イカサマしたな!!ずるいぞ!」
「きゃ〜〜ばれてしまったのかしら〜!」
僕はピチカートを掴むと金糸雀に向かって投げつけた。
パチン!!バチバチバチ!!!バチバチバチ!!!シュ〜〜〜〜!
予想外に人工精霊が軽かったので狙いがそれて天井から下がっていた電子虫取り機の中に入ってしまった。
「ピ、ピチカート!?大丈夫かしら〜!!」
ピチカートは線香花火のように激しく輝いて虫取り機の中で撥ね回り、真っ黒な灰の塊になって落ちてきた。
「ピチカート!!ピチカート!」
床に転がる灰の塊がピクリと動いて、そのまま崩れてしまった。
「どうやら貴方の人工精霊は壊れてしまったようね」
真紅が冷静に告知する。
「ご、ごめん。金糸雀、こんなことになってしまうなんて・・・」
「だ、大丈夫かしら〜!ピチカートが壊れるはずがないのかしら〜!」
金糸雀は真っ青になりながらも強がりを言う。
「ピチカートは隠れて遊んでるのかしら〜!探すのかしら〜!」
「ピチカート・・・どこにいったのかしら・・・ブツブツ」
あの日以来、金糸雀は家の中を独り言をつぶやきながら歩き回るようになった。
「金糸雀、あきらめなさい。ピチカートは死んでしまったのよ」
「そんなはずないかしら・・・きっとどこかに隠れているに決まってるのかしら・・・」
うつむきながら一日中探し回る金糸雀はすっかりやつれてしまい、かつての元気さは無くなってしまった。
ピチカートが壊れてから1ヶ月が経ったが、まだ金糸雀は家の中を探し続けていた。
「あ〜〜!金糸雀の頭にハゲがあるのよ〜!ピカピカ光ってるの〜!」
雛苺が歩きまわる金糸雀の頭を指差しながら声をあげる。
金糸雀はストレスのあまり円形脱毛症になってしまったのだ。
「ひ〜〜!!わ、私の髪の毛が抜けてしまったのかしら〜!ツルピカになってしまうのかしら〜!」
真紅に聞いたのだが、金糸雀お得意の策略も本当はピチカートが全部考えていたそうだ。
ピチカートが壊れたのは金糸雀にとっては体の一部を失ったことに等しいだろう。
「ジュン、貴方にはマイスターの才能があるわ。貴方自身のやり方でピチカートを作ってみるのだわ」
「わかったよ、真紅。僕が壊してしまったんだ、代わりの物は僕が作ってみせる」
その日から僕は人工精霊の研究に取り掛かった。
LEDと音声スイッチを組み合わせ声に反応して点滅するようにする。
ボタン電池とLEDを透明プラスチックのカプセルに納める。
カプセルの周りにオレンジに着色したフェイクファーを植えつける。
竹さおを40cmほどにカットしL字型に曲げてLEDカプセルをテグスでぶら下げる。
竹さおを金糸雀の背中に括り付けると・・・
ピチカートの完成だ!!
24時間、頭上についてまわる人工精霊に金糸雀も満足したようだ。
「ピチカート!ケーキが焼けたか見てきてちょうだい」
もちろんピチカートは頭上でフラフラしているだけだ。
「もう、ピチカートったら甘えんぼうかしら、私のそばを離れたくないのかしら〜」
う〜む、
南下違うくね?
どうせなら長文を書いて欲しい
てか、可哀想
なぁ、銀ちゃんちゅっちゅっ
う〜む、不評ですな
次は人気のある水銀燈で再挑戦
725 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/08/17(木) 08:19:41 ID:hIPTLKzA
いいやおもいっきりかましてやれ
色々あってジュンは何とかヒキコモリを克服し、復学する事が出来た。
確かに最初の頃は色々言われたが、無視し続けたかいあって今では
何も言われる事無く、ジュンは普通の学校生活を取り戻した。
(とにかく細かい説明抜きでジュンが復学したと言う前提でこの話は始まる)
そんなある日の事、ジュンが忘れ物をしていた事を翠石星が気付くのだった。
「チビ人間忘れ物してやがるですぅ。救えねぇ奴ですぅ。」
と、口ではそんな事を言っていても、彼女の脳内ではある図式が浮かんでいた。
この忘れ物をジュンに届ければジュンに見直してもらえる→嬉しいと言う物である。
「しょうがねぇですぅ。翠石星が持っていってやるですぅ!」
翠石星は忘れ物を持ち、鞄に飛び乗るとジュンの通う学校へ向けて飛び上がった。
学校へ到着する翠石星であったが、ジュンが何処にいるのか分からなかった。
「ヒィ!人間がこんなに一杯いるなんて知らなかったですぅ!」
姉妹の中で一番人見知りが激しく臆病な翠石星にその光景は恐ろしい物に映った。
そしてこの後どうしようかとあたふたしている翠石星が他の人間に見付かるのも
無理も無い話であった。
「あ!何だアレは!鞄が飛んでるぞ!」
「何々ー?これ人形?」
大勢の生徒が翠石星の所に集まって来た。
「ヒィ!人間が一杯やってきたですぅ!怖いですぅ!」
「うわ!人形が喋った!」
「良く出来たロボットだなー、一体誰が作ったんだ?」
生徒達はまるで宇宙人でも見るかのような目で翠石星を取り囲んでいた。
が、そこで騒ぎを聞いたジュンが駆けつけてきた。
「翠石星!お前こんな所で何をやってるんだ!」
「あ!チビ人間!助けてですぅ!こいつ等翠石星を取って喰うつもりですぅ!」
大急ぎでジュンの背後に隠れる翠石星。
「何でこんな所に来たんだよ!」
「お前に忘れ物を届けてやろうと思ったですぅ!でもここがこんな恐ろしい所とは
思っても見なかったですぅ!」
「忘れ物の事は礼を言うけど・・・とにかくさっさと帰るんだ!」
「言われなくてもそうするですぅ!」
翠石星はジュンに忘れ物を渡すと、大急ぎで鞄に乗って飛んで行った。
しかし、今度はジュンが他の生徒等に迫られる事となる。
「桜田!さっきのはお前の何なんだ!?」
「え・・・そ・・・それは・・・。」
「あ!あれだろ!?俺知ってるぜ。部分的に精巧に出来てるアレだろ?ダッチ・・・。」
「違う!!」
「きゃあ!桜田君って洋物ダッ○ワ○フとお話しする怪しい男だったのね!」
「気持ち悪い!」
「だから違うってば!!」
この時を境に、桜田ジュンは洋物ダッ○ワイ○人形とお話しするキモイ男と言う噂が流れ、
次の日からジュンはまた学校に来なくなった。
「まったくお前のせいだぞ!」
「うわ〜んチビ人間ひでぇ奴ですぅ!」
おわり
GJ
真紅だったらうまくごまかしてくれたかもな
GOOD…?
最後の『うわ〜ん』が惜しかった
薔薇乙女7体による壮絶なアリスゲーム。しかし、その戦いは意外な形で決着が付く事になる。
『私の娘達よ、今まで良く頑張ったね。ご苦労様。』
7体に向けられる謎の声。だが誰もがその声の主が誰であるかは直感していた。
「お父様!」
直後、空間に裂け目が生じ、一人の光り輝く少女が姿を現した。突然の事にあっけにとられる7体。
『紹介しよう。彼女の名前はアリス。正真正銘のアリスだ。』
「え!?」
謎の声の言葉に7体は唖然とした。本来ならばあり得ない事である。7つのローザミスティカを
一つにしなければアリスは誕生しないはず。この光り輝く少女が本当にアリスと言うならば、
私達は一体何なのだと・・・。
『私は君達の前から姿を消した後も、アリスを忘れる事は出来なかった。そして独自に研究を続け
ついに完成した。彼女こそ真のアリス。正真正銘、唯一無二のアリスなのだ。』
「そんな・・・じゃあ私達は・・・。」
衝撃の事実に落胆する7体。しかし、真の衝撃はここからだった。
『今までご苦労様。だからもうお休み・・・。』
直後、アリスの右手から怪光線が放たれ、7体は一気に吹っ飛ばされた。
「な・・・何をするの!?お父様!」
『アリスが完成した以上、君達はもうアリスゲームを行う必要は無くなったんだ。だからお休み・・・。』
「!!」
謎の声の思惑を7体は同時に悟った。そう、アリスが完成した以上、薔薇乙女7体は用済み、
もういらないのだと。だからアリスを持って処分しようとしていたのだ。
「そ・・・そんな!酷いですぅ!」
「雛まだ死にたくないのー!」
薔薇乙女達は己の身を護る為に迎撃した。しかし、アリスの力は圧倒的だった。
姉妹達のいかなる攻撃もアリスには効き目が無く、容易く弾かれた。それでも薔薇乙女達は
立ち上がる。彼女達も死ぬのは嫌なのだ。だが、ただ一人その場に蹲る者がいた。水銀燈である。
「うそ・・・うそでしょう・・・?お父様・・・嘘だと言って・・・。」
水銀燈は姉妹の中で最もアリスになる事に固執していた。その為には手段を選ばず、
様々な悪行にも手を染めてきた。それだけにショックが大きかったのだ。
「水銀燈立ちなさい!貴女死にたいの!?」
真紅が水銀燈の手を引っ張るが、逆に水銀燈が引っ張り返す。
「もう終わりなのよ。お父様に捨てられた以上私達には何も残らないのよ。」
その時、真紅の平手打ちが水銀燈の頬を叩いた。思わず硬直する水銀燈。
「貴女は一人では無いのでしょう?例えお父様に捨てられても、全ての人に捨てられたワケじゃない。
まだ私達の帰りを待っている人がいる。だからここで死んではならないのだわ!」
直後、今度は水銀燈が真紅に平手打ちを返した。
「腹が立つ。お馬鹿さんにこんな事言われるなんて・・・。でも、お馬鹿さんにこんな事言われては
もう戦うしかないじゃない!ここで何も理解せずに蹲ったままだったら、私はそれ以上の
大馬鹿になってしまうもの。」
「水銀燈。」
やる気を取戻した水銀燈は立ち上がり、真紅と共にアリスへ立ち向かった。
姉妹の中でも特に犬猿の仲と言われ、幾度と無く戦い続けてきた本来の二人からすれば
考えられない姿である。しかし、アリスゲームそのものが無意味になってしまった今、その事は
何の意味も成さない。お父様の為ではない。ただ己と己の帰りを待つ者の為に戦っていたのだ。
「ねぇ真紅。」
「何?水銀燈。」
「この戦い、生きて帰る事が出来たら、貴女達がおいしいって言う花丸ハンバーグって言うの、
食べさせて頂戴。」
「いいわ。今度のりに頼んであげるわ。ただし、生きて帰れればね・・・。」
「約束よぉ。私もお返しにめぐの病院の最低にマズイの食べさせてあげるからぁ。」
「・・・。」
最後の一言が何か余計な気がしたが、二人はアリスへ向けて同時攻撃をかけた。
しかし容易く跳ね返され、吹き飛ばされた。
「やっぱり・・・ダメかも・・・。」
やはりアリスの力は圧倒的だった。7体のドールズの攻撃が全く通用しないのだ。
『さあアリス。早く彼女達に永遠の安らぎをプレゼントして差し上げなさい。』
謎の声はやはり薔薇乙女達を処分するつもりだった。やはりアリスが完成した以上、
失敗作には用は無いようである。しかし、それでも薔薇乙女達は立ち上がった。
「もうジュンにもトモエにも会えなくなるのは嫌なのー!」
「私もみっちゃんに会えなくなるのは嫌かしらー!」
「ジュン・・・力を貸して・・・。」
薔薇乙女達は絶望してはいなかった。例えお父様に捨てられようとも、帰りを待ってくれている人がいたからだ。
「お父様が私達を見捨てても、私達は生きる!私達も生きているんだから!!」
7体の心が一つになった時、奇跡が起きた。7体の薔薇乙女達が一斉に強く輝き出し、
その輝きが一つとなると共に一人の薔薇乙女が誕生したのだ。
「合体薔薇乙女!!」
一人の薔薇乙女が自分以外の6つのローザミスティカを手に入れて誕生すると言われるアリスとは
また異なる存在。しかし、それはアリスにも負けない程の輝きと美しさを持っていた。
『そんな事をしても無駄だ。さあアリス、やっておしまい。』
「ハイ、オトウサマ。」
アリスは怪光線を放つ。しかし、合体薔薇乙女は片手で容易く弾き返した。
「!?」
「私は生きて帰る!待っている人達の為に!」
合体薔薇乙女は強かった。7体がかりでかかっても歯が立たなかったアリスと互角に戦っていたからだ。
両者の実力はほぼ互角。しかし、合体薔薇乙女にはアリスには無い物があった。それはマスターとの思い出。
代々のマスターとの思い出の中での経験、それらは何らたわいも無い物が殆どだった。
しかし、世の中いつ何が役に立つか分からない物である。今がまさにそれだった。
「それぇ!ハイキック!マウントパンチ!!」
合体薔薇乙女のハイキックがアリスの顔面に命中し、さらに倒れたアリスに対しマウントポジションを
取って連続でパンチを入れだしたのだ。およそ薔薇乙女らしくない戦い方である。だが・・・
実は翠石星は総合格闘技のTV中継にハマり、その試合中に出た技の数々を面白半分でジュンに掛けていた。
たわいも無い遊びである。しかし、その時の経験が今大いに役に立っていた。それだけではない。
他にも様々な思い出から培った経験がアリスを翻弄した。そして追い詰められ、
フラフラになったアリスに対し合体薔薇乙女が最後の攻撃を仕掛け、大きく右腕を振り上げた。
「これが絆だと言うのよ!!」
最後のトドメは真紅の絆パンチだった。そしてアリスは完全に倒れ、起き上がる事は無かった。
『素晴らしい!君こそが真のアリスだ。おめでとう。』
「調子のいい事ね。これが私達がお父様と呼んだ者の姿と言うの?」
『!?』
合体薔薇乙女は合体を解き、元の7体に戻ると共に一斉に睨み付けた。
「お父様はもう私達が必要では無いのでしょう?さあ、このアリスと共に何処へでも行けば良いわ。」
真紅が倒れているアリスを抱え上げ、ぽいと投げ捨てた。そして7人は去って行く。
「私達は帰るわ。私達には帰る場所があるもの。」
『まて!お前達!』
「もう二度と翠石星達の前に姿を現すなですぅ!」
「めっなのー!」
『待て!待つんだ!』
翌日、何時ものように桜田家でお茶を飲む真紅の姿が見られた。
「ジュン、お茶がぬるいわ。入れなおして頂戴。」
「うるさいよ!そんなに文句があるなら自分で入れれば良いだろ!?」
「嫌よ、面倒くさいもの。」
「何だとぉ!?」
「それはそうと、ジュン、そろそろ学校に行ってはどう?」
「余計なお世話だ!!と言うかお前はどうするんだよこれから!結局何時ものように紅茶飲んで・・・。」
「さあ・・・。これからの事はゆっくり考えるのだわ・・・。」
いつもと変わらないごく平凡な光景。しかし、彼女等の表情はどこか明るい。
アリスゲームと決別し、殺し合いをする必要は無くなった彼女達は今いるマスターとの時と言う
名の新たな道を進み始めた。アリスゲームと言う目標がなくなった以上、何をすれば良いのか?
と言う悩みもあったが、それはこれから時間をかけて考えて行けばいい。
この瞬間から薔薇乙女達の新たな生活が始まるのである。
おわり
感動の最終回吹いた
>フラフラになったアリスに対し
ラプラスになったアリスに見えてワロタw
一切の妥協無き信念
あらゆる面に長けた究極の少女
お父様の心意気に吹いたw
もはや少女の概念じゃねーしwww
何処が基準なんだよオトーサマwww
やはり合体ロボバトルは戦隊ものの華だなw
で、蒼星石はどこ?
「合体」ってのもドール達がミーディアムの元で暮らした記憶から生まれたんだろう
真紅達がジュンと見たロボットアニメとか、水銀燈がメグと見た釣りバカ日誌とか
雪華綺晶の場合は他の6体と境遇が全然違うけど
まあコイツはコイツで死ぬのは嫌やーってのはあったって事かな?
なんとなくその場にいてノリで合体しちゃったんだろう
合体と言うより寄生…
勝ったからって合体を解いちゃうのもったいないじゃん・・・・
「ねぇ、水銀燈。髪とかしてあげようか」
「いやぁよぉ。人間になんて触られたくないわ」
水銀燈はブチブチという音で目覚めた・・・なんだろう
気がつくとメグが水銀燈の羽を楽しそうに毟っていた。
「メ、メグ!何をしてるの!?」
「ふふふ・・・水銀燈がいじわるして逃げちゃうからいけないのよ」
もうすでに翼の半分ほどがむしりとられ部屋中に黒い羽根が散らばっていた。
「メグ!止めて!私の羽が!飛べなくなっちゃう!」
「これからは私とずっと一緒に暮らすのよ。水銀燈のために鳥篭も用意したんだから」
メグが指さすほうを見ると鈍い銀色に輝く鳥篭が置いてあった。
「メグ・・・本気なの?」
メグは黙って水銀燈を押さえつけ羽を毟りつづける。
水銀燈は鳥篭に閉じ込められた、メグはうれしそうに話しかける。
「ねぇ、水銀燈。あなたは天使よ、かわいそうな私を幸せにしてね・・・ふふふ」
「私は天使じゃないわ。メグ、ここから出して、あなたの傍に居てあげるから」
メグは笑いながら告げる。
「ふふふ・・・ダメよ。出したら水銀燈逃げちゃうでしょ」
メグは水銀燈との格闘で疲れたのかベットに上がり眠りにつく。
「メグ・・・貴方・・・どうしちゃったの・・・」
水銀燈はメグの身を案じながらも逃げ出そうと試みる。
篭の隙間から手を伸ばし入り口を固定する針金をゆっくりと解いていく。
「ふふふ・・・逃げちゃダメよ〜水銀燈」
水銀燈が見上げるとメグがベッドから顔をだし笑いながら水銀燈の手を捻り上げる。
メグは寝たふりをして水銀燈を誘っていたのだ。
「みんな私から逃げていくの、水銀燈も同じね」
「メグ、違うのよ。私にはアリスゲームがあるの、貴方をまきこみたくないの」
メグは鳥篭の扉を開け、水銀燈を抱き上げる。
「メグ・・・ありがとう・・・」
グシャッ!
メグは水銀燈を床に叩きつけ、膝で押さえつける。
「アリスゲーム?それがどうかしたの?どうせ私もあなたも死ぬのよ」
病人とは思えない素早い動きで水銀燈の足をつかみ両腕で引っ張る。
「メグ!止めて!私壊れちゃう」
球体関節がメキメキと音を立ててきしみ、やがて限界を超える。
ボグッ!
鈍い音を立てて水銀燈の足が根元から抜け、関節の砕けた破片が飛び散る。
「水銀燈も私も壊れた子なのよ!誰も私たちを救ってくれないわ!」
「ねぇ、水銀燈の体を食べちゃったら私も天使になれるかしら?」
メグは引き千切られた水銀燈の足をゆっくりと口に運ぶ。
カリカリと音をたてながら齧られていく自分の足を水銀燈は怯えながら見つめる。
(なぜ?なにかがメグを変えたんだわ・・・一体誰が・・・)
さすがに疲れたのだろう水銀燈の足を食べ終えたメグはベッドに上がりすぐに寝息をたてはじめる。
鳥篭の中に座り込んだ水銀燈は不意に誰かの視線を感じた。
壁際に置かれた大きな姿見、その中から白い人形がショーウィンドウに貼りつく子供のようにこちら見ていた。
「雪華綺晶!」
鳥篭に閉じ込められた水銀燈を雪華綺晶は無表情に見つめる。
雪華綺晶を見た水銀燈は瞬時に理解した。
(こいつがメグの心を狂わせた!許さない!)
雪華綺晶はポツリとつぶやく。
「カワウソ・・・ウッ!ゴホッゴホッ!!・・・カワイソウ」
「・・・カワウソ?」
「・・・・・・・・・・・・」
雪華綺晶は目を逸らし、立ち去ろうとする。
「あ〜〜〜!!間違えたのねぇ!!カワウソ??なにそれ!笑っちゃうわぁ」
雪華綺晶の肩がピクピクと震え、立ち止まる。
「カワウソはネコ目イタチ科カワウソ亜科に属する哺乳動物の総称・・・」
「いいのよぉ、無理しなくて。誰にでも間違いはあるわぁ・・・うふふ」
雪華綺晶は鏡の中からおぼろげな体を引き抜くようにして出て来るが、様子がおかしい。
「あらぁ?雪華綺晶、貴方まともに歩けないのぉ?喋り方だけじゃなく体もジャンクなのね」
雪華綺晶は産まれたての赤子のように壁にすがりながら水銀等の鳥篭に近寄ってくる。
「カワイソウ・・・出してあげる」
鳥篭の入り口に手を掛けた雪華綺晶を水銀燈は篭の隙間から思い切り引き寄せる。
「いまさら情けをかけるつもりかしらぁ?」
水銀燈は容赦なく雪華綺晶の首に手をまわし締め上げる。
首を絞められながらも鳥篭の針金を外した雪華綺晶は微かに笑ったように見えた。
「貴方はジャンク、もうアリスになれない・・・」
雪華綺晶の体は瞬時に霞のようになり消え去った。
水銀燈は雪華綺晶の言葉を鳥篭の中で反芻していた。
(もう、アリスになれない・・・羽と片足を失って他の姉妹と闘えるのか・・・)
一度は鳥篭の外に出たが再び鳥篭に戻る。
(雪華綺晶は消えた・・・メグも元に戻るはず・・・メグと共に生きよう)
いつの間にか夜が明けていた。
「メグ、起きなさぁい。朝御飯にしましょ」
水銀燈カワイソスと思ったけど、いい話的要素もあって泣けた。
雪華綺晶の扱いはワロッタ。最初はメグに羽と足をやられた水銀燈に
トドメを刺しに来たのか?と思ったけど、全然違う扱いで。
内容は兎も角、
>>678 ⇒
>>742 の変化
意を汲んで言わせて貰うと
自分の文を 一度読み直して見ては?
と。
漏れ『だけ』かも知れないが、
文章にくどさを感じる
まぁ、内容は良かったですよ
次回作に期待
西暦21XX年。科学技術の発達は人格を持つロボットを実現させ、人間とロボットの
共存する社会を生み出していた。その中、人間とロボット共通の娯楽として楽しまれていたのが
ロボットファイト、略してロボファイと呼ばれるロボット同士の戦いによる戦闘競技。
そして今日も我こそが最強ロボと信じるロボット達がスタジアムに集結する。
そんな中、街外れに一つの寂れたジムが存在した。トンゲロボファイジム。
ロボファイの選手を育成するジムであるが、大した選手は殆ど輩出されておらず、
三流ジムと呼ばれていた。そのジムの真ん中の練習用リングの真ん中に一人の男が座っていた。
男の名はトンゲ=ドンペイ。このジムのオーナー兼コーチであるが、その服装は
オッサンシャツに腹巻、ゲタなど、時代遅れも甚だしい格好をしていた。貧乏なのだ、彼は。
しかしその日、ある存在が彼の生活を一変させる事となる。
ローゼンメイデン第一ドール、水銀燈。彼女がドンペイのジムにやって来たのである。
「あ〜らぁ、貴方が私のネジを巻いたのぉ?な〜んか冴えない親父ねぇ〜。」
「コイツはすげぇ・・・。ただの古臭ぇアンティークドールかと思ったらお前ロボットか!?」
「何このお馬鹿さんはぁ。私はローゼ・・・んが!」
水銀燈の言葉を遮り、ドンペイが物凄い勢いで彼女の肩を掴んだ。その時の力は物凄く
思わず関節が外れそうになった。
「お前・・・ロボファイ選手にならねぇか?」
「ちょっちょっといきなり何なのよぉ!話が読めないわぁ!」
「あ・・・す・・・すまねぇ。俺の名はこのジムのオーナー兼コーチのトンゲ=ドンペイ。お前は?」
「ローゼンメイデン第一ドール、水銀燈よ。」
「聞いた事無い型式だな〜。一体何処のメーカーが作ったロボットなんだ!?」
「ロボットなんて下等な物と一緒にしないで欲しいわぁ。私はローゼンメイデン。
お父様が作った誇り高きドールなのよぉ。」
「ああなるほど。個人によるオーダーメイドってワケか。」
「貴方・・・人の話聞いてる?」
ドンペイの態度に水銀燈もカチンと来ていたが、それ以上に気になっていたのは今いるジムの汚さだった。
「それにしても汚い所ねぇ。信じられなぁい。」
「何しろ貧乏ジムでな。門下生も殆どいなくなっちまって。だが、お前は鍛えれば結構行けると見たぜ?
おい!ここで会ったのが何かの縁だ!ロボファイ選手にならんか!?」
「何よそのろぼふぁい?ってぇ〜?」
「ロボファイってのは最強のロボットを決めるロボットの格闘大会よ!」
ドンペイはそう言うと、テレビのスイッチを入れる。そしてテレビではロボファイの中継が行われていた。
多種多様のロボットによる壮絶な格闘戦、入り乱れるビームやミサイル、会場中が大勢の人間や
ロボットで湧くスタジアム、などなど様々な事が映し出されていた。
「どうだ?わかったか?」
「バッカみたぁい。あんなのアリスゲームに比べれば子供の遊びよぉ。」
水銀燈はドンペイをあざ笑うかのような顔で後ろに振り返ろうとした。しかし・・・
「ほぉ。アリスゲームってのが何なのかは分からんが、お前・・・怖いんだろう?」
「な!?こ・・・怖いですってぇ?」
「違うか?この試合見て怖気づいたんだろう?キャア怖い怖いって感じによ!」
ドンペイのその言葉だけで水銀燈を怒らせるには十分だった。水銀燈は背中の翼を大きく左右に広げ、
ドンペイの顔を物凄い形相で睨みつけた。
「分かったわぁ!ならば直接アリスゲームに比べれば子供の遊びだと言う所を見せてやるわぁ!」
「よし決まりだな!試合出場等の手続きは俺に任せろ。」
数日後、大盛況のスタジアムのど真ん中に水銀燈の姿があった。前座扱いだけど。
『彗星の様に現れた期待のルーキー!スイギントー!ゼンマイ動力と言う変り種であります!』
「キャー!小さくて可愛い!」
「ゴスロリロボだー!」
「それにしても良く出来たてるなー!本物の女の子みたいだー!」
観客達が水銀燈をはやし立てるが、水銀燈本人は思い切り緊張していた。
「て・・・テレビで見る以上に・・・本格的じゃなぁい・・・。」
水銀燈が緊張するのも無理も無い話だった。それまで一部の関係者以外の前からは
姿を隠す様な生活を続けていた彼女にとって、これほどの大勢の人間から注目されるのは
初めてだったからである。
『対しましてはー!迫り来る重金属!ビッグバン!』
「ちょっと・・・大きすぎなぁい?」
対戦相手は全身が超合金の重装甲で覆われた2メートル以上の大型ロボットだった。
「全くひでぇ貧乏くじ引いちまったぜ。こんなおチビちゃんを相手にしなきゃならんとは。」
「お!おチビちゃぁん!?」
ビッグバンの最初のセリフで水銀燈は怒った。普段から人を馬鹿にしている者ほど
他人からの馬鹿にされる事には意外に脆い物である。今の水銀燈がまさにそうだった。
『それでは試合開始です!』
そして試合が開始された。ビッグバンがその巨大な腕を振りかぶって水銀燈に迫る。
「その可愛いお顔を粉々に砕いてやるぜぇ!」
「きゃあ!」
その瞬間、水銀燈にある恐怖の記憶が蘇った。かつて彼女は顔面を思い切り殴られると言う
辛酸をなめた事がある。しかも自分が最も馬鹿にしていた相手に・・・
その事が彼女のトラウマとなっていたのだ。
「避けろ水銀燈!!スピードならお前のが上だ!!スピードでかき回せ!!」
「はっ!!」
ドンペイのアドバイスで我に返った水銀燈は翼を広げ、後ろに飛び上がる事でビッグバンの
拳を回避した。そして距離を取りながら羽を飛ばした。
「これで切り刻んであげるわぁ!ってええ!?」
残念ながらビッグバンには通用しなかった。人間やドールなど柔らかい対象を切り裂く事が
出来ても、強固な重金属の塊であるロボットには通用しなかったのだ。
「無駄だ無駄だ!」
「それならぁ!」
水銀燈は羽の中から一本の剣を取り出す。その剣先をビッグバンの肘関節に突きこんだ。
「関節なら脆いはずよぉ!」
「なるほど。考えたな?だが・・・。」
その時だった。ビッグバンの肘関節が火を噴くと共に、肘から先が撃ち出されたのだ。
そう、それは俗に言うロケットパンチと呼ばれる物だった。
「あああ!!」
ロケットパンチの直撃を受けた水銀燈は思い切り壁に叩き付けられ、倒れこんだ。
「か・・・は・・・。」
水銀燈は立ち上がろうとした。しかし、体が動かなかった。
「(う・・・動けない・・・。そんな・・・ロボットなんかにぃ・・・ロボットなんかにぃ・・・。)」
水銀燈はショックだった。自分が子供だましと馬鹿にした相手にこの様にやられるなど
プライドの高い彼女にとってそのショックは想像を絶するものだったからだ。
『無様ね、水銀燈。』
「(!?)」
水銀燈が見た物。それは彼女の姉妹達だった。しかも水銀燈を見下すような顔で見下ろしていた。
『あの時謝って損したのだわ。やっぱり貴女はジャンクなのだわ。』
「(真紅!)」
『頭脳派な私と違って大馬鹿なのかしらー!』
「(金糸雀!)」
『お前はローゼンメイデンの面汚しですぅ。』
「(翠星石!)」
『所詮第一ドールなんて僕達を作る為の試作品。この程度って事だね。』
「(蒼星石!)」
『水銀燈なんて大嫌いなのー。』
「(雛苺!)」
『アナタハジャンク・・・。』
「(雪華綺晶!)」
『アハハハ!ジャンクジャンク!』
「(違う・・・私はジャンクじゃないのよぉ・・・。)」
水銀燈は心の中で必死に叫んだ。しかし、肝心の声が出なかった。
『何時も私達をお馬鹿さん呼ばわりしていた貴女は何処へ行ったの?水銀燈。』
『悔しかったら立ち上がって見るですぅ!』
『ま、ジャンクには無理な話だよ。』
「私はジャンクなんかじゃ無いのよぉぉぉぉぉぉ!!!」
姉妹達に罵倒された怒りからか、水銀燈は立ち上がった。その時の彼女の目付きが変わった。
そして物凄い気迫を発しながらビッグバンを睨みつけていた。
「私はぁぁぁ・・・ジャンクなんかじゃ・・・無いのよぉぉぉ!!」
「何をワケの分からん事を素直にダウンしてれば良いものを!」
ビッグバンはパンチを打ち込むが、水銀燈はビッグバンの頭上に飛んでかわし、
背後に回りこんだ。素早く振り返るビッグバンだが、水銀燈は背を向けたままだった。
「バカめ!敵に背を向けるとは!」
「さぁ・・・。それはどうかしらぁ・・・。」
その時だった。水銀燈の翼が大きく伸びると共にビッグバンに襲い掛かった。
「本当のバカはお前だな!その技はもう通用せんと・・・うわぁ!」
水銀燈の翼はビッグバンの全身に絡み付いた。しかもまだまだ伸びて行く。
「これがローゼンメイデン第一ドールの力よぉ!」
ビッグバンを絡みつかせた水銀燈の翼は何十メートルにも渡って伸び上がり、
そこからさらに高速で振り回したのだ。強風が起こる程にまで・・・。
『これは凄い!スイギントー、重量級のビッグバンを振り回しております!!』
「うおおおおおおおおおおお!!」
「これで・・・終わりよぉぉぉ!!」
高速で振り回した後、その勢いの全てを注ぎ込んでビッグバンを地面に叩き付けた。
それは大きなクレーターが出来る程であり、流石のビッグバンの重装甲もそれには耐えられなかった。
「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・。」
「俺ぁお前におチビちゃんと言ったが訂正するぜ・・・。お前はとんでもねぇおチビちゃんだ・・・。
お前なら勝てるかもしれねぇな・・・。あの桜田博士が作った最強ロボ・・・
あの紅の悪魔に・・・。お前の行く末・・・期待するぜ・・・。」
『やりました!スイギントー!デビュー戦は勝利を飾りましたー!』
「すげぇぜ水銀燈。やはり俺の目に狂いは無かった。」
「や・・・やったのぉ?私・・・。」
水銀燈はロボファイにおいて記念すべき一勝を飾った。しかし、それが彼女の新たな戦いの始まりだった。
おわり
748 :
745:2006/08/21(月) 08:25:45 ID:ki5bCt1I
ロボットが普通になる程の時代になったらローゼンメイデンはどんな反応するだろう?
と随分前から考えていた。そんな時代ならローゼンメイデンも大手を振って外に出歩けるだろうし。
立ち上がれ!水銀燈
彼女の脳内に流れるのはやっぱり「アリス」か?
戻れるんだ・・・これでただのドールに・・・戻れるんだ・・・ラ〜イラライラライラ・・・
GJ
真っ白な灰になって燃え尽きるまでを書いて欲しいね
紅の悪魔が不自然な判定勝ちをすると見た
(#^ω^)ビキビキ
>>744 うん、最後のほうはグダグダだった
もっとシンプルにまとめるべきだった
次は力抜いてかいてみる
754 :
真紅・便所編:2006/08/21(月) 19:50:27 ID:gedwFfKM
「ジュン、紅茶を私の部屋に持ってきてちょうだい」
僕は紅茶を淹れてトイレに運ぶ。
「ジュン、ご苦労様。そこのテーブルに置いておいて」
僕は紅茶を便座の蓋の上に置く。
最初に会った時に説明しなかった僕が悪いんだ。
初めてトイレに入った真紅は芳香剤の匂いと落ち着いた色の壁紙がすっかり気に入ってしまった。
真紅はトイレを自分の部屋に決めてそこで生活するようになった。
幸いにも僕の家には一階と二階にトイレがあるから不自由はないが
トイレで紅茶を飲み、トイレで眠り、トイレでシャワーを浴びるのは問題がある。
いつかは真紅に本当のことを説明しなければならない。
ある晩、僕は腹痛で目を覚ました。
グキュ〜〜キュルル〜〜グリュリュ〜
もう間に合わない!真紅には申し訳ないが二階のトイレを使わせてもらおう。
僕はトイレに駆け込むと床に置いてあるトランクを踏まないように便座にすわる。
ブビッ!ブビビビビッ!ブビビッ!ブピピピ!プシュ〜〜!
ふ〜快感!!食べ過ぎた夕食の中身を全部はき出してしまい、腹内のガスもついでに出す。
そういえばトイレの電気つけっぱなしだった、いつも閉まってる便座の蓋が開いてたな・・・
「・・・なのだわ」
僕のお尻の下からくぐもった声が聞こえてきた。
どうやら真紅は夜中に水風呂につかって涼を楽しんでいたらしい。
僕は黙って尻を拭き、トイレを流した。
背後の人形の悲鳴を聞きながら僕は明日から学校に行こうと決心した。
ふむぅ、着眼点はなかなか…
オチは最悪だがw
>>754 想像すると恐ろしいがワロッタ。
で、その後復讐鬼と化した真紅が○○○まみれの姿で
ジュンの前に姿を現すという展開が・・・無いか
いい加減面白くないよ。
759 :
梅岡大作戦:2006/08/22(火) 08:57:29 ID:bLTEPNwj
「ジュン、お茶がぬるいわ。淹れなおして頂戴。」
「うるさいな。茶位いい加減自分で淹れろ。それとも何か?茶でさえ淹れられないとでも・・・んべ!」
「口の聞き方がなってない下僕ね。早く淹れなさい。」
「やっぱり図星じゃ・・・べふぅ!」
何時ものように真紅がジュンに命令し、口答えしたジュンに真紅の制裁が加えられる。
もはや桜田家にとっては何の変哲も無い平凡な光景。しかし、その日は少し違っていた。
ジュンと真紅のやり取りを監視する何者かの姿があったからである。
「す・・・凄い物を見てしまった・・・。桜田・・・お前はそこまで追い詰められていたのか?」
その男の名は梅岡。ジュンの学校の担任教師である。梅岡はジュンのヒキコモリを治そうと
努力していた。その為に桜田家をこっそりと観察して機を伺っていたのである。
殆ど犯罪では?とも思われたが、ジュンのヒキコモリを治す事で頭が一杯の梅岡には
その問題は全く考えていなかった。
「何と言う事だ。桜田は引きこもり続けた挙句、フランス人形と話をするようになってしまったなんて・・・
しかもあんな主従関係の演技までして・・・うう。一体何がお前をそこまで変えてしまったんだ。」
どうやら梅岡にはジュンと真紅のやりとりが、ジュンが一人でお人形さんごっこをやっていると
映った様である。そしてフランス人形と呼んだのは、まあ素人から見て西洋人形=フランス人形の
図式がある為であろう。
「このままでは桜田は本当にダメになってしまう。引きこもって話し相手がいないからって
何もフランス人形を相手にするなんて・・・。だが自分に何が出来る? ・・・はっ!」
その時梅岡に良いアイディアが浮かんだ。
「これだ!今の桜田を何とかするにはこれしかない!」
数日後、梅岡が桜田家に家庭訪問にやってきた。
「やあ桜田。元気で何よりだ。」
「あ・・・あ・・・。」
ジュンは蛇に睨まれた蛙のような顔をしていた。しかし、梅岡に対してではない。
確かにジュンにとって梅岡の存在は恐怖以外の何者でもない。だが、それさえ気にならなくなる程の
恐怖が、梅岡の肩に乗っていたのだ。
「ああこれかい?これは先生のお友達のウメウメ君だよ。」
『ヤア僕ノ名前ハウメウメ。ヨロシクネ。』
「う・・・あ・・・ああ・・・。」
これこそ梅岡が取った戦略だった。何事も相手の気持ちになって考えるのは大切な事である。
故に梅岡は人形を買い、腹話術をする事でジュンの気持ちを考え、上手くいけばそこを
きっかけにしてジュンと話をし、そこからヒキコモリを治せないか?と考えたのである。
『ジュン君。ドウシタンダイ?』
「ああ・・・ああ・・・。」
ジュンは恐怖に引きつった顔で後ずさりしていた。梅岡が取った人形作戦、確かにそのアイディアは
悪くなかった。だが、それは今のジュンにとって逆効果だった。
梅岡の腹話術が泣きたくなる程下手と言う問題もある。だが、それ以上にこのウメウメ君と
名付けられた人形があまりにもキモかったのである。その人形の造型はどう見ても
日本人好みじゃない外国製で、誰が見ても不気味としか言い様の無い妙なリアルさを持っていた。
確かにジュンが普段接している薔薇乙女達もリアルと言えばリアルなドールなのだが、
あまり不気味さは感じられないし、その存在自体ジュンは慣れてしまっている為に問題は無い。
だが、このウメウメ君は余りにも不気味で怖かった。そして・・・
「う・・・うぇぇぇぇぇぇぇ!!」
ジュンは吐いてしまった。こうして梅岡の作戦はあえなく失敗に終わったのだった。
「やっぱり今日もダメだった。だが、何時の日か桜田のヒキコモリを治して見せるぞ。」
『ウン!僕モ頑張ルヨ!』
帰路の途中でも腹話術をする梅岡。その光景は他の通行人さえ引く程の異様さであったが、
数年後、梅岡は「腹話術先生」と呼ばれ、県内にその名を轟かせる事になる。
だが、それはまた別のお話である。
次スレ立ててきまーす
あれ?もう容量近かったのか
超乙
764 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/08/26(土) 00:18:01 ID:GNr2x6l3
蒼の話
蒼「やあ、ジュン君。ひさしぶり。」
僕は”桜田家”と書かれた墓に着き線香をあげて言う。
蒼「1ヶ月に一回は来れるようにしているのだけど・・・まあいいや
今日は嬉しい報告があるんだ。」
蒼「僕、癌にかかっちゃてさ、半年も生きれないって医者に言われてね。」
墓の前で静かに言う。
蒼「君が死んでもう50年・・・・僕もおばあさんになったし、君にもすぐ
会いたいし、君からみて半年なんてすぐだろ、そっちに逝って君の隣に
女が居たらすぐにどかして君の隣にいくよ。」
木々がざわめく。
蒼「だから・・・まってて。すぐに来るよ。」
蒼「じゃあ、僕は行くよ。半年後に・・・また。」
END
全米が泣いた
そこまで良い物ではないと思う
ぶっちゃけ僕は面白くなかった
01. 【 Y.A.S.S. 】 >6-17
02. 【 薔薇乙女戦争 】 >32-35 >70-78 (ケットシー)
03. 【 終章 】 >36-42 (お兄ちゃんsageて!そいつ殺せない!)
04. 【 -- (あしや人形感謝祭) 】 >49
05. 【 桜田さんちの薔薇少年 】 >57-64 >313-317 (熊のブーさん)
06. 【 -- (TWENTY FOUR) 】 >66
07. 【 5月の結婚記念日 】 >110-117 (妄想のままに)
08. 【 SPOON 】 >121-127
09. 【 初めてのなっとー 】 >138-140 (ケットシー)
10. 【 BABY MAYBE 】 >159-169 (吝嗇)
11. 【 引き籠もれ 】 >172-173 (こがね)
12. 【 人に歴史あり 】 >211
13. 【 -- (元治) 】 >214-222
14. 【 酒 】 >258-262
15. 【 -- (くんくん) 】 >267-268 >298-299 >309-310
16. 【 -- (酒) 】 >271
17. 【 翼と喜怒哀楽 】 >274-293 (妄想のままに)
18. 【 狂った時計塔 】 >304-307
19. 【 -- (ローゼン) 】 >337-340
20. 【 -- (めぐ) 】 >381-385
21. 【 タコ 】 >402-404 (妄想のままに)
22. 【 真紅・修行編〜死闘編 】 >426-428 >439-441
23. 【 ゼンマイ 】 >453
24. 【 ティーカップ 】 >459
25. 【 花火 】 >462-469
26. 【 水銀燈行進曲 】 >481-487 (吝嗇)
27. 【 真紅・陰謀編 】 >497
28. 【 真紅・中華編 】 >506
29. 【 真紅・不死鳥編 】 >515
30. 【 ガラスのくつ 】 >529-535
31. 【 金糸雀・陰謀編 】 >543
32. 【 真紅・酒場編 】 >551 >559
33. 【 真紅・完結編 】 >554
34. 【 真紅・契約編 】 >560-563
35. 【 -- (居眠り) 】 >569-571
36. 【 水銀燈・彼岸編 】 >577-580
37. 【 真紅・巨乳編 】 >584
38. 【 真紅・首無編 】 >593
39. 【 〜戒〜 】 >598-607
40. 【 雛苺・密偵編 】 >652 >678
41. 【 水銀燈・携帯編 】 >693
42. 【 金糸雀・精霊編 】 >720
43. 【 ジュンの忘れ物 】 >726
44. 【 合体薔薇乙女 】 >729-731
45. 【 水銀燈・監禁編 】 >741-742
46. 【 ロボファイ水銀燈 】 >745-747
47. 【 真紅・便所編 】 >754
48. 【 梅岡大作戦 】 >759
49. 【 -- (墓参り) 】 >764
計 49 作品 おつかれさまでした
結構たくさんあったね。
>>767 乙
34の真紅・契約編に真紅・対決編が混じってる
俺のも数に入ってる…うれしいやら恥ずかしいやら…
てか題名はつけるもんなんですね、つけてなかったや
773 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/09/03(日) 17:40:57 ID:0QmrrZiz
最期っぺあげ