第2回アニメ男さいもえトーナメント 投票スレ・Round25

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87名無しさん@お腹いっぱい。
C-03組 <アナゴさん@サザエさん> 支援

ここでアナゴ君の過去について言及しておこう。

アナゴ君は東北の貧しい農村の、さらに一番貧しい農家で産まれた。
幼少期、アナゴ君は周囲の子供から奇異な容姿のせいでいじめられたのだと言う。
しかし、本来彼を慰めるべき父は若くして他界。
いつもいじめられて泣いて帰った彼を優しく出迎えたのは母親だったそうだ。

母は言う。
「お前は容姿が醜いからいじめられる。
 なら何か人に誇れる物を一つ持ちなさい。そうすれば誰もがお前を認めてくれる。
 だからがんばりなさい。アンタを馬鹿にした連中を見返してやりなさい。」

優しい母だった。まるで満月のように微笑む母をアナゴ君はいつまでも覚えていた。
それからほどなく、アナゴ少年は変わった。
何かに取り憑かれたように勉強し、クラス一、村一番、町一と駆け上がっていった。

そして、アナゴ 18歳。
少年と呼ぶにはもう十分なほど成長した彼を馬鹿にする者はいなかった。
村の蔑み者から村の期待の星へと変貌を遂げたアナゴ君。
当然目指すは日本の最高学府東大。受験の為に親戚を頼り上京するアナゴ君。

上京し、机が変わろうとも変わる事なく勉学に勤しむアナゴ君。
しかし。
試験まであと3ヶ月と迫った折、彼の元に電報が届く。

「ハハ、キトク」

アナゴ君はひどく動揺した。あの、優しかった母が倒れたのだ。
今すぐ手荷物まとめて村に帰る、そう気持ちを固めた瞬間、次に綴られた文字がアナゴ君の目に入る。

「シカシ、カエルニオヨバズ」

母はその日までにどれだけアナゴ君が努力したかを知っていた。
誰よりも近く、誰よりも優しくその姿を見ていた母の思いに息子への甘えなどあろうはずがなかった。
アナゴくんはひどく狼狽したが、親戚の説得の甲斐もあり帰郷せず、そのまま受験勉強に身を没した。

続く
88名無しさん@お腹いっぱい。:2005/12/25(日) 14:50:18 ID:l34pKfnw
C-03組 <アナゴさん@サザエさん> 支援

>>87の続き


必死に机にかじりつくアナゴ君。しかし思うように勉強が身に入らない。
いくら参考書を見つめても母を思うと目頭が熱くなる。
しかたなく、アナゴ君は一時間泣いたそうだ。

そして、アナゴ君は母の事を忘れたかのように以前に増して勉強に没頭するようになった。
その様子を見ていた当時の親戚は「まるで鬼が宿ったようだ」と回想する。

そうした努力の甲斐もあり、見事アナゴ君は東大に一発で合格した。
さぁ、一刻も早く病床の母へ知らせにいこう。

そう思った矢先、飛び込んできたのは母の訃報だった。
錦を飾って帰ってきた故郷でアナゴ君を出迎えたのは、冷たくなった母親の遺体だった。
アナゴ君は祝いの席を遠慮し、一人自分の部屋へこもったと言う。

あの優しかった母が死んだ。
なのに。なぜか涙は流れなかった。
東大合格。自らの努力の結晶。念願の成就。こんな高揚感が涙の邪魔をする。
ふと窓から差し込んだ月明かりに目がいく。
窓を開け空を見上げると、少し冷えた夜空に優しく輝く、満月。

それは、あのときの母の微笑みのような満月だった。
気付けば頬に伝う涙。
その瞬間、悲願の達成すらどうでもいい事のように忘れた。
それからアナゴくんは二日間、ただただ母の死を惜しみ泣きはらしたのだと言う。

そして、アナゴ君は勤勉比類なく、東大を首席で合格。
引く手あまたではあったが経済に興味があると言い残し、海山商事へ入社。
同様に早稲田卒のエリートサラリーマンであるフグ田マスオの同期として隣席に座する事となる。