C-03組 <アナゴさん@サザエさん> 支援
>>87の続き
必死に机にかじりつくアナゴ君。しかし思うように勉強が身に入らない。
いくら参考書を見つめても母を思うと目頭が熱くなる。
しかたなく、アナゴ君は一時間泣いたそうだ。
そして、アナゴ君は母の事を忘れたかのように以前に増して勉強に没頭するようになった。
その様子を見ていた当時の親戚は「まるで鬼が宿ったようだ」と回想する。
そうした努力の甲斐もあり、見事アナゴ君は東大に一発で合格した。
さぁ、一刻も早く病床の母へ知らせにいこう。
そう思った矢先、飛び込んできたのは母の訃報だった。
錦を飾って帰ってきた故郷でアナゴ君を出迎えたのは、冷たくなった母親の遺体だった。
アナゴ君は祝いの席を遠慮し、一人自分の部屋へこもったと言う。
あの優しかった母が死んだ。
なのに。なぜか涙は流れなかった。
東大合格。自らの努力の結晶。念願の成就。こんな高揚感が涙の邪魔をする。
ふと窓から差し込んだ月明かりに目がいく。
窓を開け空を見上げると、少し冷えた夜空に優しく輝く、満月。
それは、あのときの母の微笑みのような満月だった。
気付けば頬に伝う涙。
その瞬間、悲願の達成すらどうでもいい事のように忘れた。
それからアナゴくんは二日間、ただただ母の死を惜しみ泣きはらしたのだと言う。
そして、アナゴ君は勤勉比類なく、東大を首席で合格。
引く手あまたではあったが経済に興味があると言い残し、海山商事へ入社。
同様に早稲田卒のエリートサラリーマンであるフグ田マスオの同期として隣席に座する事となる。