我々の銀河から遠く離れた三重連太陽系に突如として複製された地球…。
色素が低下している以外は紛れもなく本物と同一の、
しかし、ソール十一遊星主の野望渦巻く歪んだ星の一角に聳える城がある。
地下に箱舟を封印した暗黒のそこに、足音を響かせて歩くものがいた。
「…呼んだか、パルス・アベルよ」
「意外と早かったですね…もう少しかかるかと思っていました」
もう少しかかるというのは、パレッス粒子の散布についてだ。
やがて迫りくるGGGをいちいち相手にする暇はない彼らは
戦うことなく相手の戦意を喪失させようと画策しているのである。
「あたしたちはしばらく出番ないものねぇ…お暇でもくれるのかしら?」
パルス・アベルと呼ばれた少女に、先ほどからいたのだろうか。
背中に昆虫の羽根を生やした遊星主の一人、ピルナスが声をかける。
「…私たちに暇がないことは分かっているでしょう…」
冷静に答えながら、しかしその顔に微笑を称えて玉座から立ち上がるアベル。
「でしょうが…パルパレーパ…?」
「何だ」
「決して貴方を疑うわけではないのですが…完璧なのでしょうね」
「パレッス粒子の性能のことか…案ずるな」
パルパレーパの眼に絶対の自信が浮かぶ。
「戦意は確実にそぎ…かつ我等が手駒として動くように調整している」
「あぁら…あの子猫ちゃんも大人しくなるのね…ちょっぴり残念?」
ピルナスが半ば残念そうに言う。
彼女としては、子猫―ルネ・カーディフ・獅子王のことだ―は、
屈服させてこそ満足が得られるものだったらしい。
そんな彼女に幸か不幸か、パルパレーパは静かに首を振った。
「…いや、残念だが改造手術を受けた勇者と…件の猫には通用しないだろう」
「…なら、それは直に貴方たちにお任せします…で、さっきの件ですが」
「くどいぞ…パレッス粒子は二名を除いて完璧に作用する」
何事も万全を期そうとする故の、アベルの悪い癖ではある。
どうも他人を疑ってかかるその性質は自分でもどうかと思っているのだ。
「…ああ、すみませんね…しかし、万が一ということもありますし」
それでもなお姿勢は崩さずに、彼女はしばし黙考した。
「……前例がないことですからね…少しテストがいります…」
「テスト…だと?」
ついっと瞳を上げて、二人を見つめるアベル。
「ええ、テストです…私を実験台に、パレッス粒子の効き目を…ね」
「…なるほど、ピサ・ソールの影響下にあるのだから、
最悪の事態になっても一度消滅させて再生させればいい…ということか」
「そういうことです。私の体は遊星主の中でも一番人体に酷似しますし」
「ふぅん…でも、どういう方法をとるの?」
「…二時間…その間だけ、パレッス粒子の影響下に落ちて見せます
どのような配合にするのかは、パルパレーパに任せましょう」
そっと玉座から立ち上がり、二人の前に出るアベル。
大人びた口調とは裏腹に、儚げな肉体を包むローブを翻してゆっくりと歩む。
それを見つめるピルナスの目に、ふと妖しい影が差す。
「ただ怠惰にさせるだけじゃつまらないわよ…ねぇ」
そっとパルパレーパに耳打ちをする。
「…何をしているんです…早く始めましょう」
「…よかろう、パレッス粒子…散布、開始」
パルパレーパの背中の羽から、蛾が燐粉を撒くように粒子が放出される。
キラキラと輝く空気の中で、アベルはそっとその気体を吸い込んだ…
うぃ、なんだか書いてみましたー。
続きは後日…ごきげんやぅです…(眠
>>72乙
なんだかエロスの予感
(*゚∀゚)=3
いいぞピルナスw
何も知らないで粒子を吸い込むアベルたん…
もうすぐ最終回。
結局ルネはさほど活躍しないで終わるのね。
>>76 第1話のノリのまま、単独でピルナスをぶっとぱすくらいはして欲しかったね。
もう、完全にSMとラブラブ天驚拳要員になってしまった。
…………
「何も変わった気がしませんが」
三分ほど深呼吸を続けていたアベルが顔を上げる。
「計画通りだ。何も自覚することはない。あっては意味がない」
「なるほど」
ふ、とため息をつくアベル。
再び玉座へ着こうと歩みを初め…立ち止まる。
「…ふぅん…怠惰とは、まず足に来るものなのですね」
足が重いのだ。
全力疾走をした後とは違う…例えるなら、マラソンの次の日に
足が重く感じるような感覚に陥っている。
「……しかし、私の精神は保たれています…予想とは少し違いますね」
先ほどパルパレーパは「手駒として動くように」と言った。
それはそれで可能なのだろうが、あまり露骨だと不自然になってしまう。
確実に、少しずつ精神に介入していくのか。
「いい出来です…これなら安心でしょう。もう解除して結構です」
粒子によるものだろうか。少し言葉遣いが甘くなっている。
そんなアベルの横に立ちながら、ふとパルパレーパはピルナスを見やる。
「…アベルよ、この女王蜂から一つ提案があるそうだ」
「…なんです?」
唐突に切り出されて、アベルは視線を二人の間で彷徨わせる。
その視線が、とりあえずピルナスに固定された後、彼女はゆっくりと…
「その身体、性交渉には使えるのかしら?」
と問いかけた。
「…………は?」
ぽかん、とアベルが応じる。
なぜ、なぜピルナスにそんなことを聞かれて…あれ?
「さっき、体は最も人類に酷似するって言ったわ」
そう、それがこの粒子の実験の目的で…
「あなたは、あたしの体を見て…どう思う…?」
ねとり、と視線を絡めるピルナス。
目が離せないまま、アベルは必死に考える。
だが、思考が混乱してしまう。
なぜこんなことをピルナスは急に…何の目的で…?
むろん、ピルナスの思惑は単純に嗜虐的な感情の下に
幼女を犯してみたいな、と作者の代弁…もとい感情の赴くままに
思ったことを口に出し、行動に移しているだけだ。意味など、重くはない。
「え、と…あの…ピルナスは色素と昆虫の特色以外は比較的理想の…」
「…おんな…かしら?」
くすっと妖艶に微笑みながら、ピルナスは問いを戻す。
「で、あなたは…その体を武器に出来る…?」
「体を…はぁ、あの…私の名前のパルス、は文字通り…」
「そういうことじゃなくて…ねえ…?」
動けないアベルに、そっと近づくピルナス。
しゃがみこんで、優しく…しかし強引にアベルを床に座らせる。
「その体で…怠惰に陥った男を…いえ、どんな状況でも…誘惑できる?」
羽織ったマントがしゅるる、と解かれていく。
そのことにも半ば意識が働かないままで、アベルはピルナスに魅入られる。
「…も、目的のためなら…何でも出来ま」
「でも、やり方知らないんじゃないかしら…どう?」
論点がずらされ、かわされ、操作されていく。
普段のアベルからは想像も出来ない混乱ぶりだ。
いつもならピルナスにちょっと鼻を鳴らしてから邪険にするだけだが
巧み…というか、行動と共に強引なその態度に流されてしまっているのだ。