魔法少女リリカルなのは(;´Д`)ハァハァスレ 2

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222名無しさん@お腹いっぱい。
親切な人に誘導されてSSを書き散らしにきました。
設定がさらにパラレルになってしまったので原作知らない人にはちと意味不明かも。

≪投下≫
223おかえり。:05/01/17 21:35:36 ID:DkCkW1Vp
「あの小さかったなのはがもう中学生か…… 月日が経つのは早いもんだな」
「本当だね。私と恭也も、すずかとなのはちゃんも、もう何年も一緒にいるんだもんね」
 純和風の家屋の縁側で、青年は妻となった女性の肩を抱く。
傍に無表情なメイドが控えていたりもするのだがこの二人にはそんなものは目に入らない。
なにせ新婚ほやほやだ。一年以上過ぎていたりもするけどほやほやだ。

 なのはたちの小さな事件からもう四年。
 士郎の古傷が再度痛み出したことから両親は恭也に翠屋の全権を任せるようになり、
湯治と称して今までできなかった長期の観光旅行を繰り返している。
これも全てお飾り店長の恭也を除く従業員がしっかり者揃いだからこそであろう。
「で、今日は何があったの? なのはちゃん随分とご機嫌みたいだったけど」
「少し前に電話があってからずっとああだ。なんでも大切な友達が帰ってくるんだと。
これは男だなと思って着信履歴を見てみたんだが、『時空管理局』って何だ? 忍」
「駄目じゃない恭也! 妹の携帯を勝手に見たりしちゃ!!
そうでなくても私の目から見て恭也ってばちょっとシスコン入ってるんだから!」
 同じ女性として夫の無理解が許せない忍。
いくら剣に生きる男にデリケートさを求めても無駄だとはいえここまで酷いとはと嘆く。

「……大丈夫。なのはちゃんは昔からしっかり者だったでしょ?
あの子が好きになった男の子なら絶対にとってもいい子だから。それ以上心配しないで」
「とはいえだな。義理の弟になるのであればやはり晶くらいは逞しくないと」
「気が早すぎっ! ていうか基準が高すぎっ!」
 いつのまにか、なのはは男の事で舞い上がっていることにされてしまっていた。
そんな平日の少し遅い朝食後。まだ出勤してなくていいのか店長。
224おかえり。:05/01/17 21:37:38 ID:DkCkW1Vp
 そして話題の主であるなのははどうしていたかというと―――もちろん教室にいた。
中学生の平日なのだからそんなもんである。波乱に満ちているほうがおかしい。

「くしゅ」
「どしたのなのは。風邪?」
「ううん、たぶん誰かが噂してるんだと思う」
 そう言って笑顔。つられてアリサも微笑み返す。

 なのは・すずか・アリサの三人は海鳴高付属のこの中学でも全員同じクラスになった。
少子化の影響もあるとはいえ全員同じクラスになれる確率はかなり低かったのだが……
これはやはり財力やら裏工作やら豊富な人脈などが絡んだ結果なのだろうか。
ホームルームが始まる前のざわざわとした万国共通の雰囲気の中、すずかが話題を振る。
「そういえば二人とも、今日うちのクラスに転入生が来るって聞いてた?」
「当然よ。先生ってば口が軽いからもうこのクラスのほとんどが知ってるんじゃないの?
でも肝心のどこから来たどんな子なのかっていうのが全然わからないのよね」
「えへへ♪」
「あれ? なのはちゃん凄く嬉しそう。ひょっとして、どんな人が来るのか聞いてるの?」
「うん! 私の、大切な友達……なんだ」
 なのはの発言に顔を見合わせるアリサとすずか。
お互いこの親友の交友関係を全て知っているなとど思い上がってはいたわけではないが、
それでも彼女が『大切な友達』とまで言う人物に思い当たるものがない事に焦りは感じる。

「なのは、それってどんな」
 しかし、アリサの言葉を遮るように扉が開き担任の先生が入ってきた。
その後ろからおずおずと入ってきたのは、―――切れ長の優しい目をした、金髪の少女。
225おかえり。:05/01/17 21:39:20 ID:DkCkW1Vp
「おっはよーん皆の衆! 今日は唯子から良い子のみんなに転入生をプレゼント!
あ、でも持って帰っちゃダメだかんね。私だってちゃーんと我慢したんだから」
 ポニーテールを揺らしながら喋る担任の言葉に耳を傾けている生徒はすでにいない。
クラス中の視線が、新しくクラスの仲間になるというその少女だけに集中していた。
なにせ胸が薄い事を除けば非の打ち所のない美少女だ。男子ならずとも注目する。

 ただでさえ緊張していたのにそこに大量の視線を浴びてはたまったものではなく、
挨拶の言葉も自己紹介も頭から抜け落ち、少女はただぼんやりと目を泳がせる。
すると、喧騒の中からひときわ澄んだ声が聞こえてきた。

「フェイトちゃん!」
 その一言で、少女は我に返った。
 いる。すぐそばにいる。数年もの間会いたくてたまらなかった相手がそこにいる。
「……なのは! 君なのか?」
「うん!」
 そしてようやく今の自分が何をするべきだったのかを思い出してチョークを手に取り、
【フェイト=テスタロッサ】と名前を板書する。
 ……ルーン文字で。
「私の名前はフェイト=テスタロッサ。外国から来ました。よろしくお願いします」
 文字が読めなかったクラスの皆も彼女の流暢な日本語での挨拶に驚き、拍手を鳴らす。

「テスタロッサさんはご家族の都合でこちらで一人暮らしをすることになりました。
日本での住居はあっちの坂を登ったトコにある『さざなみ寮』なんだよね?」
「はい。鷹城先生」
「そーゆーこと。みんなフェイトちゃんと仲良くしてあげてね!」
 名字で呼んだかと思えばすぐに「フェイトちゃん」に戻ってしまっている唯子先生。
彼女の精神年齢はいつだってクラスのみんなと一緒だ。それが良いか悪いかは別にして。
226おかえり。:05/01/17 21:40:49 ID:DkCkW1Vp
 四年前の事件の審判の結果、フェイトには保護観察処分が下されていた。
クロノは罪には問われないだろうと言っていたが、そういうわけにもいかなかったらしい。
だが半端ではないその魔力量ゆえに引き受けられる先は時空管理局を除いて他になく、
行動に制約があったといっても出かける時にクロノが同行する程度の事でしかなかった。
したがってこの世界にももっと前から来ようと思えば来る事ははできたのだが、
誰あろうフェイト自身が全て終わらせるまではと逢いに来るのを懸命に我慢していたのだ。

 だからこそ数日前に電話でその事を知らされたなのははずっと喜びを隠せなかった。
そして今、なのはの後ろの席にフェイトがいる。
「フェイトちゃん、いつまでこっちにいられるの?」
「いつまででもいられる。リンディさんが全部取り計らってくれた」
「ずっと帰らないつもりなの? ……あ、ごめん」
 なのはは不用意な発言をしたことを詫びる。
フェイトにとって帰るべき城や家族は、あの時自分たちが消し去ってしまったのだから。
「アースラのみんなはいつでも里心がついたら戻ってこいと言ってくれたけれど……
私にはアルフがいて、そしてなのはがいる。ここにいさせてほしい」

「……アルフさんも来てるの?」
「一緒だよ。寮の管理人さんが大型犬だろうと霊剣だろうと構やしないって。
犬じゃなくて狼な事は言ってないけれど、奥さんが獣医さんだからわかってると思う」
 霊剣うんぬんの話はなのはには理解できなかったが、フェイトが嬉しそうな事はわかる。
「じゃあこれからは、いつでも一緒だね!」
 ぴったりのタイミングでお互い笑顔に変わる。数年のブランクなど彼女らの敵ではない。
授業中だというのに、実に仲のいい二人である。
227おかえり。:05/01/17 21:42:31 ID:DkCkW1Vp
 昼休み。
 なのはたちはいつもお弁当を持ってラウンジ(中庭)で食事を摂ることにしている。
「フェイトちゃん、お昼どうする? 良かったら私が作ってきたのがあるんだけど……」
「ありがとう。しかし、そんなに世話になるわけにはいかない」
 そこへ割り込む影ひとつ。
「つべこべ言わずに貰いなさいよ! 翠屋の秘伝を受け継いだなのはの手作りなのよ?」
「アリサちゃん、秘伝は言いすぎ……」
 確かになのはは母の桃子からあらゆる料理のコツを数年かけて叩き込まれている。
兄も姉も調理技能は凡庸だったため、彼女が次期料理長として頼りにされているのだ。
しかし、フェイトの視線はお弁当ではなく割り込んできた彼女に向けられていた。
「アリ……シア?」

 フェイトのその一言に、なのはの表情が凍る。
 彼女と同じ左右で留められた金髪。そして「アリサ」というその名前。
フェイトが直視するにはあまりに辛いであろうそれを喚起させるには、充分すぎた。

「ア・リ・サよ。アリサ=バニングスっ! いきなり間違えないでよね。
で、食べるんでしょ? 私とすずかと四人になるけどいいわよね?」
 鬱になる間も与えられないまま反撃を受け、呆気にとられるフェイト。
だが即座に普段の冷静さを取り戻し、優雅にこう答える。
「済まなかったアリサ。もう二度と間違えないと誓うよ。
そして改めて言わせてほしい、君たちとお昼を共にさせてくれないか?」
「当然!」
「すずかちゃんもいいよね?」
「うん、もちろんだよー」
 満場一致で可決である。男子どもが後ろで悔しがっていたがここでは割愛。
228おかえり。:05/01/17 21:43:56 ID:DkCkW1Vp
「それで、そろそろ話してくれるんだよね? なのはちゃん」
「さあ、洗いざらい白状してもらうわよ? 二人とも」

 昼食が始まるとすぐ、すずかとアリサによる追及が始まった。
それだけ彼女たちにとって自分の知らないなのはとフェイトの関係は気になるのだ。
だが、なのははそこまで真剣に追求されてもどう答えればよいかわからない。
素直に「魔法少女だった時に知り合った異世界の強敵(とも)」と説明すればどうだろう。
常識で言えば到底信じてもらえる話ではないし、彼女の古傷にも触れてしまいかねない。
したがってなのはは言葉をなくし、口ごもる。

「なのは。この二人は君のことを想っていてくれている親友なんだよね。
だったら私は、全部正直に話したほうがいいと思う」
「……いいの?」
 無言で、力強く頷くフェイト。なのはは決心を固めた。

「―――なの。とまあ、そういうわけなんだけど……」
 あらかたの説明を終えたなのはと、信じてはいるようだが反応に困っている二人。
沈黙が息苦しかったのか、フェイトはなのはがわざと言わなかった部分の補足を始めた。
なのはに憎しみの刃を向けたこと、世界を滅ぼしかけたこと、自身の出生の秘密。
彼女は全ての出来事を感情を交えることなく淡々と述べてゆく。
その姿にいつしかアリサもすずかも、彼女たちの話を疑う気持ちを完全に捨てていた。
「だから私は造られた存在。アリシアの姿をしたフェイトという人形。
でも、私は人形でもいい。何かの代わりじゃなくて、私として生きていくって決めたから」
 そう締めくくって、フェイトは静かになのはのバスケット内のサンドイッチを食む。
「……おいしい」
229おかえり。:05/01/17 21:45:20 ID:DkCkW1Vp
「な、何よ。そんな話したって可哀想だなんて言ってあげないんだからね?
今の世の中同情なんて流行んないのよ。……めいっぱいの友情だけで我慢しなさいよね」
 アリサが啖呵を切るが、潤んだ目と最後の一言で伝えたいがことはバレバレである。
そんな友達の様子を微笑ましく眺めながら、すずかもフェイトに話しかける。
「大丈夫だよ人形だって。うちのノエルだってちゃんと人として生活してるもの。
時々潤滑油を挿したり分解掃除したりでお姉ちゃんが大変そうにしてるけどね」

「……は?」

 フェイトが困惑しているのは当然として、なのはもアリサも呆気にとられていた。
ノエルというのはすずかの屋敷にいる侍従長(メイド)の名前のはずである。
だが、先ほどの発言から顧みるにそのメイドは潤滑油や分解掃除を必要とするらしい。
「すずかちゃん、こんな時にそんな冗談言わなくても……」
「本当だよー。なのはちゃんのお兄さんも知ってるんじゃないかな?
ファリンと違ってノエルは純粋な機械人形だから。猫の捕獲にロケットパンチ使うし」
「すずか……あんたまで平然と非日常を語らないでよ。なんか悲しくなるじゃない」

 いきなり蚊帳の外に置かれかけたフェイトだが、気を取り直して返事をする。
「この世界は機械文明がずいぶんと発達しているんだね。これは魔法がないから?」
「うーんと、そうじゃなくてすずかちゃんのおうちがちょっと特殊なんだと思う……」
 苦笑するしかないなのはと、早くも新生活に色々な発見があって嬉しそうなフェイト。
お互いの胸元に光るペンダントの朱玉と金色の板も、再会を喜ぶかのように鈍く輝く。

 海鳴の町は、今日も平和だ。

≪おわり≫
230222:05/01/17 21:46:08 ID:DkCkW1Vp
唯子先生が書きたくて強引に時を何年も進めた。今は反省している。
淫獣は四年後じゃさすがに登場できないよなぁ。