〜回想シーン〜(モクモクモク・・・)
この前後の光景について鮮明に覚えている者は少ない。
確か声を発したミスターX氏とロッシート君が何かに導かれるように、前へ歩を進めた。
私は滂沱の涙で殆ど視認出来ず、また今目の前の状況を整理出来ない程胸中掻き乱されいた。
本部陣営を含めて誰もが同じ状態だった。
ひょっとするとあの状況を言語化しようとする試みは野暮なのかもしれない。
それ程神聖で、透明な空間が2人を中心として広がっていたのは確かだ。
「光だ・・・満点の・・・全く穢れのない・・・赤ん坊のような・・・」
私が声にならない声を発したと同刻、我に返った本部代表者がすかさず絶叫した。
「ミスターX氏とロッシートの声を聞くがいい!我等は今一度原点に還ろう!さあ!議長!」
そこには穏健派も過激派も何も無い。
世界中の誰もが一個の人間としてどれだけ土井氏が好きかを試された瞬間だ。
再び喧騒が漏れ出したと思うと、急先鋒である筈の面々が途端に泣き顔を隠さずに手を大きく振った。
モニターではドイツとトルコの戦士達が持っていた武器を万有引力の法則に任せた。
「うむ!よって本案は否決とする!」
世界が救われた瞬間だった。