〜回想シーン〜(モクモクモク・・・)
それは信じられない光景だった。
ミラクルとしか言えないほどの出来事だった。
穏健派の全てが希望を放棄し、過激派の全てが代わって地球の再構築を企てんとする矢先。
コレージュ・ド・フランスにも用いられるパリの大講堂に1人の男が登場した。
ミスター・X氏である。
(注:余りにも世界に影響が大きく、また先方への許可も取れていないのでここでは名前は伏せておく。)
議会は騒然とした。コレほどの指導者である男が何故ここに?
本部ですらサプライズであるのだから、現地に於いては最早天地がひっくり返る程だ。
男は静かに、しかし尋常でない迫力を備えつつ口を開いた。
「拳を降ろしなさい。恩赦だ」
水を打ったような静けさは1分程続いたが、私を含めた当事者には永遠のような1分だった。
しかし、驚きはコレだけではなかった。
静寂を打ち破るかのように一人の叫び声が講堂に響いた。
「もう止めようじゃないか!皆は今一度、初めて土井さんを見た時を思い出そうよ!」
ふと声の行方を見やると、見覚えのある碧い瞳、金色の天然パーマ、リンゴ色の頬。
まさか・・!そう、声の主はかつて日本のETV特集にも出ていたイタリアのロッシート君であった。
ミラノ大学を出た後、今やすっかり一人前の男としてこの緊急事態に堂々と出席していたのである!