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尖閣国有化1カ月 野田内閣“誤算”続く
2012.10.11 05:07
 尖閣諸島の国有化に対する中国側の激しい反発は、野田佳彦首相が「想定を超えていた」と認め
るほどの広がりをみせている。最前線で事態を収束すべき駐中国大使が赴任前に急死、事実上更
迭した民間出身の丹羽宇一郎大使の滞在を延長せざるを得ないなど、首相にとっての“誤算“が続
いたこともあり、関係修復の糸口はつかめていない。

 「両国の経済関係が冷え込むことはどちらにとってもマイナスだ」。首相は10日の米ブルームバーグ
通信のインタビューで、日中関係の悪化は中国経済にも悪影響を及ぼすと言及。関係修復を呼びかけた。

 工場や販売店へのデモ隊襲撃や不買運動…。日系企業は深刻なダメージを受けた。経団連の米倉弘
昌会長は9月末、「『こちらに問題はない』では通らない。相手が問題というなら解決するのがトップの役
割だ」と、有効な対策を講じることができなかった政府に不満を爆発させた。

 事態の打開に向け政府は「法的な立場で妥協の余地はない」としながらも、首脳・外相・事務の各レベ
ルで接触をはかり、緊張緩和に努めているが、目立った成果は挙がっていない。

 尖閣諸島をめぐる主張の国際社会へのアピールという側面でも、政府には“誤算”があった。ある政府
高官は一昨年の中国漁船衝突事件を教訓に、中国が「今回は国際世論を味方につけるため方策を周到
に練っていた」とみる。一方的な領有権主張を強調する「世論戦」はもちろん、「日本包囲網」の構築に出
たのだ。

 その象徴は楊潔●外相が今年9月末の国連総会で「日本が(尖閣を)盗んだ歴史的事実を変えることは
できない」と発言したこと。歴史問題をリンクさせ、島根県・竹島を不法占拠する韓国と対日批判で連携する
構えをみせた。

 日本側も、国連総会での演説で首相が中韓両国との対立を念頭に、日本の主張の正当性を訴えた。
ただし両国の名指しを避けるなどの配慮をした結果、中国の「世論戦」に対し後手に回った感は否めなかった。

 政府はその後、中国に対抗する形で日本の主張を積極的に発信するよう戦略を転換。10日には玄葉光一
郎外相が記者会見で「1960年に中国で発行された世界地図には尖閣諸島が日本名で明記してある」と指摘
するなど、中国の主張に反論。ようやく「世論戦」に乗り出した。

 一方で、尖閣諸島に対する日本側の実効支配を崩そうとする中国側の強硬姿勢はより顕著になりつつある。
海洋監視船などの中国公船は、国有化の数日後から再三にわたり日本領海に侵入。10日まで10日連続で
日本の接続水域に入り、今や周辺海域を支配する意図を隠そうともしない。

 政府は11月の中国共産党全国大会で習近平国家副主席が党総書記に就任するのを待ち、関係修復を本
格化させたい考え。しかし、新指導部が態度を軟化させることは期待できず、対立収束に向けた妙手も見い
だせていないのが現状だ。