多くの現代人がなくしているものの1つに「孤の時間」があります。ここで言う「孤の時間」とは、自分1人になって
何かを思索する時間です(1人になって漫然とダラダラ過ごす時間ではありません)。
特に若い人ほど、孤独な時間を怖がるようです。あるいは、1人でいるのを何か友だちのないカッコ悪いこととして
とらえがちです。しかし、孤の時間を豊かに持つことは、友人・知人を多く持つことと同様に、人生にとって大切なことです。
「我々が一人でいる時というのは、我々の一生のうちで極めて重要な役割を果たすものなのである。或る種の力は、
我々が一人でいる時だけにしか湧いて来ないものであって、芸術家は創造するために、文筆家は考えを練るために、
音楽家は作曲するために、そして聖職者は祈るために一人にならなければならない」(アン・モロウ・リンドバーク著『海からの贈物』)
歴史上のあらゆる偉業や名作には、たとえそれが複数の人間の手で成されたものであっても、根本は、1人の
人間の「孤の時間」の中で芽生え、醸成され、決断された思考や意志が決定的に必要だったのです。
「孤の時間」を持つために、私は2つのことを勧めています。
1つは散歩すること。もう1つは、夜寝る前の30分間はテレビを消して、古典名著や偉人伝など大きな規模の
本を読むことです。週1日でも2日でも、こうしたことを習慣にしてみると、3カ月もすれば自分が何か変わって
くるのが分かるでしょう。そしてそれは5年、10年、20年の時間でみると、人生のコースを変える大きな力になります。
思索といっても、眉をひそめながら何かを考え込むことでなくていいんです。想いや願い、アイデアを自由に
伸び伸びとめぐらせることです。何か答えを見つけようとするのではなく、自分の思考空間が広がっている、
深まっていることを楽しむことです。静寂さを滋養に変える体験をすることです。こうした祈りにも似た作業、
思想の深呼吸をする暇(いとま)を持つことが今の日本人には必要です。
http://www.excite.co.jp/News/economy_clm/20111124/Itmedia_makoto_20111124020.html